ダンジョンに夢と希望を求めるのはまちがっているのだろうか。 (しろくまお)
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始まり

2作目です。楽しく書いていければ良いなと思っています。よろしくお願いします。


「冒険」

それは、全ての男のロマンである。あるものは富、あるものは名声、あるものは力、はたまた出会いを求めて冒険する。これは、そんなどこにでもいる冒険者に憧れる少年の物語。

 

 

ある夏の日、巨大な都市であるオラリオの中心にそびえ立つバベルの塔、ギルドのある所から小柄な少年が1人

とぼとぼと南のメインストリートに向かって歩いていた。彼の名は、ハク・トリトン。名前の通り真っ白な髪をもつ人間《ヒューマン》だ。オラリオから遠く離れた田舎から冒険者というものに憧れこの地に来たはいいが冒険者になるにはどこかのファミリア(神が親の家族みたいなものだ。)に入っていなければなれないということを知らされ、絶賛落ち込み中だった。しかし、別に焦ることはない。聞けばこのオラリオには神が多くいるということではないか。きっと自分を拾ってくれる神がいる、ハクはそう信じて止まなかった。そう楽観的に考えながら街を少し散策していると何か腹部に冷たい感触があったった。見てみると服に赤いしみができじわじわと広がっていった。みるみるうちに服は赤く染まり周りの人も異変に気付いたようにこちらにた駆け寄ってきた。

「ひっ、ひぅ、はっ」

怖くて痛くて声にならない声を上げた。このまま自分は死ぬのか、まだ冒険者になってすらいないのに。その思いがハクを頭をよぎった。死ねない、死んでたまるか。僕は、、、。僕の意識はそこで途絶えた。

 

 

人の声が聞こえた。なんでだ?僕は死んだんじゃないのか?ガバッと体を起こすとそこはベッドの上だった。体を見ると傷も無くなっている。

周りを見渡す、全体的に木でできた部屋でありお世辞にも綺麗とはいえないほどあらゆる所が埃を被っていた。

そんな埃まみれの場所にぽっかりと穴が空いたように埃が舞い散っていない場所があり、そこには1人の女性が本を読んでいた。いた。緑のショートヘアーで全身ダボダボの白い布を一枚羽織っているだけの僕はその芸術品のような均整のとれた顔立ちに思わず

「綺麗だなぁ」と声を出してしまった。

するとその女性は、こちらに顔を向けると一言、笑いながら

「ありがとう」

といった。

そのときの気持ちを僕は一生忘れないだろう。それほどに綺麗だった。

 

「ねぇ、君、もし良かったら僕のファミリアに来ない?」

そう聞かれた。この人は神だったのか。そうと分かれば僕は自分でも驚くほどのスピードでくびを縦に振り全力で肯定の意思を示した。

「でも、本当に良いんですか?見たところ助けて頂いたみたいだしその上ファミリアに入っても。」

「良いよ、だって私のファミリア今0人だもん。」

「私だって1人で寂しかったんだよ。だから、これはwin-winの関係」

そう言われてしまうとこちらとしても是非よろしくしたい。

「こんな僕ですがこれからもよろしくお願いします。」

 

「うん、よろしい。じゃあ今日から君は私の家族だ。えーっと、君の名前は?」

「ハクです。ハク・トリトン」

「よし、じゃあハク、ようこそ、ヴァーユファミリアへ。」

ヴァーユ様が僕に手を差しのべてくる。

これが僕の長い冒険の始まり

 



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準備と問答

お気に入りしてくださった方がいました。嬉しいです。


あの埃を被った部屋の中で入団を済ませた数日後、僕は周りの掃除をただひたすらにしていた。なにしろ今のままでは人が住めない、それほどに汚かったからだ。神様は神様だから大丈夫だとしても僕は人間だ。あまりに不衛生な場所にいると病気にかかってしまう。そのためここ数日間はずっと掃除に精を出していた。おかげで部屋はだいぶ綺麗になりなんとか2人が住むのには問題ないほどの環境になった。掃除が終わりその辺に転がっていた椅子を立て座って休憩しているとヴァーユ様が右手に何かを持ってこちらに近付いてきた。

「これ、君が倒れてた横に落ちていたやつなんだけど何だか分かる。?」

 

そうやって見せてきたのは弓矢と注射器の混ざりあったようなものだった。薬品を入れるシリンジから矢柄が伸び矢羽が付いている。きっと注射針が矢尻の役割を果たす物なんだろう。そしてこれが僕を傷つけたもの。弓矢のように放たれたのだからあの量の出血は納得出来る。そこでふと、今更ながらのような気もするが疑問が生まれた。

「ヴァーユ様、そういえば僕の傷ってどうやって治ったんですか?」

すると、神様は高く積まれた棚から緑色の液体が入ったフラスコを取り出してきた。

 

「これは、回復薬《ポーション》といってね体にかけるとけがが治ってしまうというすぐれ物さ。効果の強さや何に効くかなんてのはそれぞれ種類があるから全部は説明しきれないけどね。なんせ今、私の手元にはこれしかない。」

 

「そんな大事そうなものを僕のために、、あのお代を出しますので。」

 

「そんなお金君には無いだろう?というか治療のため少し体をいじらせてもらったけど、君、何も持ってなかったじゃないか。」

そういわれると痛い。田舎育ちだったので大都市に要るものが分からずなんとかなるさの精神で僕はここまで来てしまったのだ。

 

「まぁ、これから何らかの方法でお金を稼いでくれれば良いさ。ところで、君は何しにこのオラリオにやって来たんだい?」

僕は特になにを考えるでもなくずっと温めてきたおもいを打ち明けた。

「僕は、冒険者に憧れてこの街に来ました。貪欲に夢を求めて冒険するその姿に憧れて。」

 

それを聞いたヴァーユ様は少し顔をしかめたあと

「悪いが、その考え方をしてるうちは私は君が冒険者になることには反対だな。」

突然の否定に一瞬、頭が真っ白になったが僕はすぐさま聞き返した。

「どうしてですか。この考え方のどこがいけないんですか?」

 

そう聞くとヴァーユ様は僕の目をしっかり見て諭すようにいった。

 

「冒険者に憧れる。それは良いだろう。だがこの街では冒険者にはすぐになれてしまう。そしたら次はなにを求めて君は冒険する?もう冒険者になりたいという夢はかなったじゃないか。」

「その先の目標を自分で見つけないと、君はきっと堕落する。」

 

衝撃を受けた。自分が追い求めてきたものはスタート地点に過ぎないとそう言われた。そこからなにを成したいと問われた。でも、僕には分からない。今まで冒険者になるためだけにここまで来た。どうしても次の目標が見付けられない。僕が呆然としていると、いつの間にか近くにいたヴァーユ様が僕の頭を撫でるのを感じた。顔をあげると。彼女は静かに微笑み

 

「君が自分の危うさをきちんと自覚してくれたら嬉しい。目標はダンジョンの中で見つけちゃえば良いよ。」

そう言った。

そうだ、一つ夢を叶えたくらいで満足しちゃいけない。だって僕は貪欲に全てを求める冒険者になりたかったのだから。

 

「さあ、まずは冒険者にならなくちゃ。ステイタス刻むよ。こっちにおいで。」

 

準備をする神様を横目に僕は再び希望を胸に灯した。



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謎とステイタス

冴えカノの映画、見てきました。キュンキュンしました。


 

これから目標を見つけようと意気込んでいると、ヴァーユ様がこちららを見ているのに気付き、僕は少し気恥ずかしい気持ちに苛まれながらもステイタスを刻むためにヴァーユ様に近づいた。

 

「ねぇ、ハク さっきは話がそれちゃったからまだ聞けてなかったんだけど君の持ってるやつホントに何か分からない?」

 

そうい言ったヴァーユ様の言葉に僕はそういえばと思い出し右手に握っていた注射器のようなものを見た。別に何も変なところは造形以外は無い。弓矢の構造の矢尻の部分が空のシリンジになっているというだけだ。

 

待てよ、空のシリンジだって?中身がない?ということは?身体中から嫌な汗が流れた。これ、元々何か薬品が入ってたんじゃないか?もしかしてその薬品は今、僕の体内に?僕は震えそうになっている体を無理やり押さえ込みヴァーユ様に聞いた。

 

「ヴァーユ様、こ、これ、シリンジの中身が空なんですけど、僕の体内に入ってるんじゃないですか?」

 

すると、ヴァーユ様は特段慌てた様子もなく

 

「まあ、そうだろうな」と言った。

 

「そんな軽く反応されても、もし劇薬だったらどうするんですか?」

 

「大丈夫、大丈夫、そうだったらとっくに君には症状が出てるよ。」

 

「まぁ、そうですけど。」

 

「今、それについて分かっていることは何も無いんだね?そしたら話は簡単だ。私たちはなにも分からない。確かにその形は見たことがない。そこから誰が撃ったのかを特定出来るかもしれない。でも、今の私たちにはそんな余裕はない。なにしろ私たちはとてつもなく貧乏だからね。そもそも君を狙ったのかさえ分からない。もしかしたら狙いが外れてたまたま君に当たったのかもしれない。」

 

「だから、その弓矢だか注射器だか分からないやつについては私たちはなにも出来ないのさ。」

 

「いいね、じゃあ、今度こそステイタス刻もう。」

 

完全に納得とはいかないものの確かに今、僕たちに何が出来るわけでもないので僕はおとなしく神様の指示通りに即席で用意したベッドに上着を脱いでうつぶせになった。

 

「じゃあ、始めるよ。」

 

そうヴァーユ様がいうと背中が何だか温かくなったような気がした。少し、その気持ちよさに身を委ねていると、スタイタスが刻み終わったらしく、ヴァーユ様が紙にステイタスをサラサラと書き写したものを見せてくれた。

 

「これが君のステイタスだ。珍しいことにもうスキルが発現している。」

 

「何ですかこれ?目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》?」

 

「まぁ、レアスキルだろうねぇ、聞いたこと無い。詳しいことはまだ書ききれてないからちょっと待っててね。」

 

ステイタスの詳細まで記された紙にはごく一般的な数字が刻まれていた。ただ一点を除いて。

 

ハク・トリトン

 

Lv.1

 

力: I 10

 

耐久: I 10

 

器用: I 10

 

敏捷: I 10

 

魔力: I 10

 

《魔法》

 

 

《スキル》

 

目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》

 

・目標達成時までのみ早熟する。

・目標への意欲により効果向上



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ギルドと勉強会

僕だけがいない街のアニメ、面白いですね。愛梨が好きです。


ステイタスも刻まれたことだしさあ、リベンジだ。待ってろよ。ギルド、と意気込んでいると。ヴァーユ様から一部ステイタスの秘匿を命じられた。

 

「君のスキルは、珍しいからね。他の神々に知られると。厄介なんだ。ちょっかいかけられるかもしれない。」

 

「まぁ、それさえ気を付けてくれれば、あとは問題ない。さぁ、ギルドに行って君の輝かしい冒険者ライフを始めようじゃないか。」

 

「はい、ヴァーユ様」

 

僕はそういうと、ギルドに行く準備をしだした。だが、いかんせん故郷から何も持ってきていないので準備はすぐに終わり僕は太陽の下に繰り出した。先ほどはファミリアに入ってないからという理由で冒険者になることを断られたが今の僕はヴァーユファミリアの団員だ。なにも恐れることはない。さぁ、行くぞと意気揚々とギルドへの道を急ぎ足で歩いた。ギルドに入ると、そこは先ほども見た冒険者たちの姿があった。さすがに朝来たときよりも人は減っている。きっとみんなダンジョンに潜っているのだろう。自分も今からその一員なんだと期待に胸を踊らせながら受付に足を運んだ。

 

「あのー、すいません。」

 

「はい、何でしょう?」

 

その声と共に出てきたのは、眼鏡をかけたとても綺麗な女性だった。今朝の人とは違う。耳がとがっているからエルフの血が混ざっているのだろう。彼女は僕を見て少し微笑ましそうにこう言った。

 

「もしかして、冒険者になりたくてきたんですか?」

 

「はい!そうなんです。でも、何でわかったんですか?」

 

「だって、君すごい冒険者を見ては顔をかがやかせていたから。」

 

自分の行動が周りにどう見られているのか分かって、恥ずかしい。多分、顔も赤くなっていると思う。

 

「でも、冒険者というのはいつ、命を落とすかも分からない職業なんですよ。君みたいな子にはまだ早いと思うけど。」

 

彼女は心配そうに、それでいてまた諭すように僕に言った。でも、僕はもう決めたんだ。冒険者になるって。今までだったら夢はそこで終わってた、でも今は違う。ヴァーユ様に教えて貰った。常に先を見ること、目標がなければ人はダメになる。僕はなって、さらに次のやりたいことも見つける。それが、今の僕の夢。

 

「いえ、僕は冒険者になります。」

 

確かな覚悟を込めて僕は彼女の目を見て言った。その意志が通じたのか、彼女は浅くため息をつくと一枚の紙を僕の前に出してきた。

 

「これが冒険者登録に必要な紙です。ここに必要事項を書いてください。」

 

「では、いいんですか。冒険者になっても」

 

「ほんとはOKしたくはないんですか君の情熱は分かりました。でも、くれぐれも危ない目には会わないでね。」

 

「でも、冒険は危ない目にあってこそじゃないですか。」

 

そう言いながらスキルの欄だけごまかして書いた紙を渡すと、彼女は再びため息をついた。

 

「これで、君はもうは冒険者です。今後、君のアドバイザーを勤めることになりました。エイナ・チュールです。よろしくね、ハク君。」

 

急にフレンドリーになったことに少しドギマギしながらも早速ダンジョンへの入り口へと向かおうとすると、首根っこをぐいっと捕まれた。ぐぇっと変な声がでてしまい恨めしそうに彼女を見るとさっそく何か僕はやってしまったみたいで彼女は額に青筋をたてて笑っていた。

わぁ、器用。なんて言えるわけもなく僕もひきつった笑みを返すと彼女は僕にものすごい勢いで喋りだした。

 

「普通、なにも装備せずにダンジョンに潜ろうとする?まず、死ぬよ。ギルドには貸し出し用の装備もあるからまずはそれを使ってそして一番の問題はその危機意識のなさ、ダンジョンは危険がいっぱいなんだよ。今日はこれから私がダンジョンの恐ろしさと対策をしっかり教えてあげる。さあ、ついてきて。」

 

これだけをエイナさんは息継ぎなしで言いきると僕の手を引っ張ってギルドの一室へと連行した。その勉強会はとてもしんどかったとだけ言っておこう。

 

 

 



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ダンジョンと勝利

ついにハクがダンジョンに入ります。どうなるんでしょう。


地獄のような勉強会から1日がたった。昨日は終わったあとあまりに疲れていたためダンジョンに潜る事が出来なかったが今日は違う。昨日、エイナさんにも一応の知識はついたということでダンジョンに潜る許可も下りたし、ヴァーユ様もいつもの緩い感じで送り出してくれたし大丈夫。装備オーケー、体調オーケー、忘れ物なーし

よし、行くぞ。期待と不安を胸に僕はダンジョンに足を踏み入れた。

 

ダンジョンの一階層は全体的に薄暗く少しの明かりが通路をぼんやりと照らしていた。通路を抜けると少し開けた場所に出た。昨日、エイナさんに教えて貰った。きっとここはルームなのだろう。ダンジョンはルームという開けたところがつによっていくつも繋がっている構造になる。戦いにくい通路は避けてなるべくルームで戦闘するように言われた。そして、昨日、一番しつこく教えられた所、モンスターの襲来だ。

 

壁がミシミシと軋むような音を出し何かがぼとりという音をたてて落ちてきた。それは濁った目をこちらに向けながら威嚇するように小さく唸った。小さいながらも今日が初めてのダンジョンである僕からしたら強敵のモンスター、ゴブリン。昔、家に置いてあった英雄譚ではよく出てきていたが実物を見るのは初めてだ。僕の住む近くではゴブリンは出なかった。幸いにも生まれたゴブリンは一体だけでこちらの出かたを警戒しているかのようにすぐには攻撃しては来なかった。おかげで僕の方は目の前のゴブリンをどう倒すかだけを考えれた。ゴブリンが警戒しながらも長い爪をこちらにつき出すように攻撃してきた。僕はサイドステップでゴブリンの背後をとり、背中 魔石が埋まっているであろう場所に向けてギルドから支給されたナイフを振るった。しかし、力が弱いためか深手は負わせたものの致命傷にはならない。激昂したゴブリンが振り返りざまに長い爪で引っ掻いてきた。左腕に痛みが走り僕はとっさにバックステップをした。引っ掻かれた左腕からは血が出ており装備が少し赤く染まった。どうやら支給された装備の隙間を裂かれたらしい。僕はその血をみて恐怖に少し足がすくんでしまい。次のゴブリンの攻撃に防御を間に合わせることが出来なかった。次にゴブリンが繰り出してきた攻撃は突進、壁におもいっきり叩きつけられた。空気が体から出る。

 

もうおしまいか?エイナさんにも絶対に無茶はしないと約束させられている。今日はもう、このまま帰ってもいいんじゃないか。そんな思いが一瞬頭をよぎる。でも足はゴブリンに向けてしっかり立っていた。ここで逃げたらダメな気がする。何か大切なものを無くしそうな気がする。そんな思いで僕はゴブリンと戦う道を選んだ。

 

このまま長引かせたら新たにモンスターが生まれる。それだけは防がなくてはならない。ならどうするか。答えは簡単、短期決戦だ。なんとか動かせる左手にダンジョンの土を握らせる。そのまま突撃、ゴブリンは僕が急に動いたことで攻撃が一瞬遅れた。さらに僕の攻撃時間を伸ばすために左手に持っている。土をゴブリンの顔に投げつける。充分だ。これだけ時間があれば奴を倒せる。僕は今持てる最大の力でナイフをゴブリンの胸に突き立てた。ゴブリンは2、3度痙攣したあと魔石を残して綺麗さっぱり消えた。良かった。魔石は傷つかなかったらしい。

 

今日の収穫は魔石一つだけ、左腕を負傷。初戦にしてもひどい結果に肩を落としながら僕はギルドへの帰路へとついた。もっと強くならなければ、そう思った。その思いを抱いた直後、背中が少し熱くなった気がした。



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説教と優しさ

明日から、fgoのイベントが始まります。楽しみです。


決して華々しく勝利を飾ったわけではないが僕はそこそこ誇らしい気持ちを胸にギルドへと帰った。エイナさんに報告しようと受付を見渡すが見当たらない。せっかく初戦闘でゴブリンを倒したのだ。少しは誉めてもらいたい。そんな気持ちが通じたのかエイナさんが受付の奥の方から出てきた。そして僕の方を見て、軽く目を見張るとこちらに早足で歩いてきた。誉められるのではないかと期待した。が、待っていたのは説教だった。

 

「なにかな、その格好は」

 

開口一番、そう言われた。

 

「えっと、ゴブリンを倒してきたんですけど」

 

「それは、顔を見たら大体分かる。私が聞きたいのはねぇハク君、どうしてそんなに怪我してるのかってこと。」

 

ふと自分の体に目を落とす。そこで気づく、血だらけだ。しまった、ポーションをすっかり忘れていた。ダンジョンに入る前にあんなに念入りにチェックしていたのに恥ずかしい。エイナさんはそんな僕を見て軽くため息をつき疲れたように話し出した。

 

「あのね、ハク君。私は仕事柄、多くの冒険者達のアドバイザーをしているの。でもね、アドバイスするだけでダンジョンが100%安全になるかと聞かれたらそれは、NOだよ。」

 

「今のハク君のように期待を胸にダンジョンに入った冒険者がそのまま帰ってこなかった事なんてざらにあるの。ダンジョンに絶対的な安全はない。私のアドバイスではダンジョンの恐ろしさから君を守るには貧弱なんだよ。でも無いよりはマシだからせめて私が言った最低限の事ぐらい守って。」

 

「そんなんじゃ、すぐに死んじゃうよ。」

 

だんだんとエイナさんの声が消え入りそうになっていく。すぐに死ぬ、その言葉が深く心に響いた。

そうだ、僕は何をやっている。更なる目標を見つけに行くんだろ?死んでどうする。

エイナさんへの申し訳なさと自分の未熟さに嫌気がさした僕はエイナさんにしっかりと謝ったあと自分のホームにとぼとぼと帰って行った。

 

ホーム(やっと人が住めるようになった小さな部屋だが)に帰ってくると、ヴァーユ様が椅子に座りながら本を読んでいた。僕に気づいたヴァーユ様は僕の顔を見ると、何かを察したように穏やかな笑みを浮かべた。

 

「おおかた、アドバイザーの人に注意でもされたんじゃないかな?顔がすごい悲壮だよ。」

 

とにかく今の気持ちを長い間持っておきたくなかったため僕はヴァーユ様にスタイタスの更新をお願いした。ヴァーユ様が分かったと答えると僕は早々に上着を脱ぎベッドの上にうつぶせになった。スタイタスの更新をしていると。ヴァーユ様が僕の背中に向けて静かに語りかけてきた。

 

「ハク君、君はもう冒険者だ。これからは常に危険がつきまとう。でも覚えておきなさい。あなたの無事を願って待っている人はきっといる。だから決して無理はしてはいけないよ。帰ってこれなくなってしまう。」

 

涙が溢れそうになるのをぐっとこらえて僕はしっかりと決意を声に出した。

 

「はい、必ず帰ってきます。」

 

 

 

 



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猫人と過去

探偵ナイトスクープの新局長が松ちゃんに決まりましたね。なんかスタジオの雰囲気変わりそうです。


ダンジョン15階層、中層とよばれる場所で一人の猫人《キャットピープル》の女性がモンスターと戦っていた。得物の長剣を振るい、次々とモンスターを屠ってくる。一通りモンスターを狩り終わると魔石を集めバックパックに入れると帰るために上層を目指し出した。

 

彼女はモンスターを殺す時、決まってあることを思い出す。

 

昔、人を殺したときの事だ。小さい頃だった。まだ、自分がうまく行かないことがあれば癇癪を起こしていた。そんな何も分かっていないガキ時だった。

 

その日は、どしゃ降りの雨でひどく足元が悪い日だった。その日、彼女は1人雨の中何も持たずに必死に薬草を探していた。彼女の両親の病気を治す薬草を。急に容態が悪化したのだ。薬が必要になったが医者が来るのはまだまだ先、今のままでは先に両親が死んでしまう。幸いどんな薬草をとってくればいいかは医者に聞いており、その薬草が採れるのもそんなに遠くではないということで、彼女は両親の制止も聞かずに飛び出した。目的地を目指して走る、走る、走る、何者にも止められないような剣幕とスピードをもって走り続けた。しかし目的地についても薬草は見つからない。周りを見渡すとちょうど目当ての薬を持った人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。おそらくそれが最後の薬草だったのだろう。

 

取らなきゃ、そんな思いが芽生えた。しかし、まだ純粋な少女であった彼女にはそんなことはしてはいけないことだと分かっていた。しかし、このままでは両親が。そんな思いがぐるぐると頭の中をかき乱す。ふと、彼女が目線を下げるとそこなには大きな石があった。ちょうど人を殺せそうな尖った石。それを見た瞬間、彼女の中でプツリと何かの糸が切れた。

 

気がつくと、人が彼女の足元に倒れていた。頭からは血が大量に流れている。きっともう死んでいるのだろう。幼心にそれを悟った彼女は覚束無い足取りで薬草を奪い家に帰った。

 

家に帰るといつもは小さいながらも聞こえてくる「おかえり」の声が聞こえてこない。嫌な予感がした。両親が寝ているベッドに向かう足が自然と速くなる。顔にはもう、涙を浮かべていた。彼女は分かっていた。でも、信じたくなかった。今日はいつもよりぐっすり寝てるだけだって自分に言い聞かせた。寝室につくとノックもせずに扉を開ける。ベッドに寝ている両親の顔は驚くほど綺麗だった。呼吸もせず、心臓も動かず、ただの人形のようだった。

 

彼女の両親はもう、亡くなっていた。

 

彼女には、夢があった。薬屋を開くという夢が。しかし、その夢を諦めさせるのに今回の出来事は充分過ぎるほどの影響を与えた。自分は人を殺した、それだけでも人を生かす職業である薬屋からは遠く離れているのに、その上両親までも死なしてしまった。どんな顔をして薬剤師になりたいと言えるのか。

 

彼女は懺悔した。ひたすらに毎日毎日。

 

時が経ち彼女はオラリオにいる。薬剤師にはなれなくていい、でも役にはたちたい。その一心で素材を集めては、医療関係大手のディアンケヒトファミリアに匿名で送っている。誰にも知られることなく。誰にも感謝されることなく。

 

その頑張りを見てくれる、知ってくれる、誉めてくれる、そして、過去のしがらみを解いてくれる。そんな人に彼女が出会うのはもう少し後の話だ。



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豊穣の女主人

「やっと更新したか。待ってました。」
そんな言葉をかけてもらえるような小説を書きたいです。
ヒカルの碁とルパン三世が面白くて面白くて。


決して華々しいスタートとは言えない初のダンジョン探索を終えた日から数日、僕は今、なぜか豊穣の女主人という店のモップ掛けをしています。はて?なぜこうなった?僕は今朝の事を思い返した。

よく晴れた気持ちの良い朝だった。ダンジョンに向かうメインストリートを人波に逆らわず進んでいた。そしたら急に隣で一緒に流されていた人が持っていた花瓶を、手を滑らせたのかなんなのか宙に飛ばした。そのまま花瓶は僕の所まで来るとそのまま勢いに任せて僕を人波から突き飛ばした。まるで投げたんじゃないのかといわんばかりの力で飛んできた花瓶と僕は一つの店に派手な音を立てて転がり込んだ。それがこの豊穣の女主人だ。

 

その結果、店内はびしょびしょになりミアさんという物凄く怖い主人にどやされ今、ここで掃除をしているというわけだ。

 

なんというとばっちり、花瓶の持ち主も掃除させるべきだろう。と思ったがいつの間にかその姿は消えていた。

それは店で働いている店員さんも分かってくれているようで、時々、こちらに近寄ってきて労いの言葉をかけてくれる。特に声をかけてくれるのは薄鈍色の髪の毛をしたシルさんという店員さんだ。彼女は僕と話すとき必ずと言って良いほど、男性が喜びそうな仕草をする。あざとい、本当にあざとい。自分の魅せ方を理解し最大限に発揮している。強かな女性は良い。好感が持てる。

 

店の掃除も終わり、少し椅子に座らせてもらっていると1人のエルフが近づいてきた。確か、リューさんといった、エルフ特有の尖った耳と整った顔立ち、さぞモテることだろう。でも、エルフは他の種族との接触はおろかエルフ同士でも仲の良い者としかはだの触れ合いを許さない種族と聞く、恋愛出来るのだろうか?そんなどうでもいいことを考えているとリューさんは口を開いた。

 

「私は、シルをとても尊敬している。そんなシルがあなたにはとても話しかけている。私は知っている。彼女はただの客や相手にはそんなことはしない。嫉妬とかではなく純粋にあなたの事が知りたい。」

 

ともすれば、告白ともとれるその言葉。そう思ったのは僕だけではないらしく、近くにいた店員さんが目を大きく見開き、どうしたものかと所在なさげに視線をうろうろさせていた。その姿に若干の申し訳なさを感じながら僕はリューさんにはっきり言った。

 

「僕は、ハク・トリトン。見たまんまの駆け出しの冒険者です。」

 

自分の事をハッキリと伝えた。自分は未熟な冒険者、そう伝えなければいけない気がした。自分で自分の在りかたを再確認したようだった。

 

彼女は、納得はしていないようなものの一言、「ありがとうございました。」というと店の奥に戻っていった。

 

全てを終えミアさんから許しを得た僕はもうすでに昼になって賑わっているメインストリートをバベルの方へと駆け出した。強い冒険者になるために。

 

その翌日、豊穣の女主人のエルフの店員が駆け出し冒険者に告白したという噂が流れたのはまた、後のお話。

 

 

 



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武器

ヒカルの碁、アニメ全話視聴しました。囲碁をやろうとは思いませんでしたが、とても面白かったです。ヒカルはあかりと早くくっついて幸せになってください。あと伊角さんの活躍をもっと見させてください。


ある空気が乾いた日のことだった。僕は何回もダンジョンに潜るも納得のいく成果が得られないため、武器が問題なんじゃないかと思い、バベルの塔の上、ヘファイストスファミリアの店があるところに赴いた。

 

あまり高いのは当然のごとく変えないので、エイナさんに教えてもらったヘファイストスファミリアの中でも新米の鍛冶師が打った武器が買える店へと入った。

 

古びた店内は至るところに武器が置いてある。短刀、長刀、鎧や籠手 面白いほどにそれらの武器が雑多に置かれている。

 

「うーん、来たはいいもの僕はこれから何を見つければ良いのだろう?武器っていっても自分に合っているのがどんなのかも分からないからなー。」

 

「なんか、探してんのか?」

 

突然掛けられた声に振り向くと、そこには茶髪の快活そうな印象を受ける青年が立っていた。

 

「えぇ、まぁ、はい、探してはいますけど。」

 

僕は警戒混じりにそう答えた。するとそれを感じとったのか彼はニカッと笑い手を頭のうしろに回した。

 

「いきなり呼び止めて悪かった。俺の名はイリス、ヘファイストスファミリア所属の下っ端鍛冶師さ。なんかさっきから見てると色々まよってそうだったからよ」

 

「ありがとうございます。僕はハク・トリトンと言います。確かに僕は武器を探していますが人に頼るつもりはありません。己の武器は己で決めると決めているので。」

 

「まぁそういうな。お前なんも分かってないだろ。自分が何を得物とするかも。」

 

痛い所を突かれ僕は黙ってしまう。確かに鍛冶師に選んでもらった方が良いのはそうなんだろう。でもそれで自分は納得出来るだろうか、いざダンジョンで失敗したときに武器のせいにしてしまいそうだ。

 

そんな僕の心情を知らずか彼は、適当な所からいくつも武器を取っては僕に渡してきた。

 

「とりあえず使ってみろ。それで分かる。」

 

勢いに流されるまま次々と僕は武器を試す。さっき、威勢よく断っていた自分が恥ずかしい。

何種類も試すうちに、僕が唯一、今までダンジョンで使っていたナイフが回ってきた。いつものイメージを崩さず丁寧に振りかぶる。あまり幅が広くないため小振りにはなったがイリスさんには分かったのか、首を振り最後の武器、弓を渡してきた。

 

 

手に持つ。ふむ、あり得ないほどしっくりくる。まさか僕の得物は弓なのか?

 

それを感じとったのは僕だけではなく、イリスさんも思案した顔をすると、店の店員さんに近づいた。

 

「これを試し射ちしたいんですけど少し修練場をお借りしても?」

 

店員さんは頷くと、イリスさんを連れて歩き始めた。

なるほどこういう店には試す場所が必要なのか、確かに試しは大切だよね、ほんと。

 

少し歩き着いたのは広いドーム型の所だった。バベルの中にこれが入るのがびっくりな程広い。

 

「よし、射ってみろ」

 

イリスさんは僕に先ほどの弓と何本かの矢を渡してきた。弓の大きさは僕の身の丈程、かなり大きな弓だ。

矢をつがい、僕は30メートル程離れた的を狙う。

思い切り矢を引き絞り視線を合わせ射る。

その一連の動作が驚くほどスムーズにできた。放たれた矢は、寸分の狂いなく的の中心に突き刺さった。

 

「やはりな、それがお前の得物だよ。」

 

そう語るイリスさんを尻目に僕は初めての感覚に感動を覚えていた。

 

 

 



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契約

ルパン三世のアニメほぼ全部見ました。近年の作品は昔の方がルパンらしいと何かと批判されがちですが僕は全部好きです。一番好きなルパンファミリーは五ェ門でしたが見ていくうちに次元も好きになってきました。格好いいですよね、次元。一番好きなヒロインはテレビシリーズ10番目の炎の記憶に出てくる一色マリアです。可愛かったです。


あの後、イリスさんは次々と的を変えて僕に射ぬくように言った。僕は興奮さめやらぬままに射って射って射ちまくった。気がつくと周りには使った矢が散乱としており、端からみればさぞ大きな戦いをしたのだろうと思われる程の散らかりようだった。

 

しばらく呼吸を整えているとイリスさんは、僕の所に颯爽と駆け寄ってくるとぽんっと僕の肩に手をあてにっこりと笑いながら言った。

 

「さすがに、試し射ちにしては射った数か多すぎる。これは、矢の代金を頂かないとな。」

 

時が止まった気がした。まさかとは思うがこの人最初からこのつもりで僕にいっぱい射たせたんじゃないだろうな。

 

いや、そのつもりだな、これは。現にすごい笑顔だ。

 

「あの、イリスさん?この矢を作ったのは誰ですか?まさか、あなたとかではないですよね。」

 

たとえ作った人がイリスさんじゃなくてもお金は払わないといけないのだか僕は震える声でそう尋ねた。

 

「俺だけど。」

 

たった五文字、でもこんなに破壊力のある五文字を僕は知らない。

 

「ちなみにどのくらい出せばいいんですか?」

 

「100万バリス」

 

「ひゃく?!」

 

心臓が止まりかけた。でも仕方ないと思う、だってそれだけの額をかせぐとなると今の自分では何年かかるか分からない。焦る気持ちを隠すことなく泣きそうな顔でイリスさんを見ると彼は腹を抱えて大笑いしていた。

 

「な、何でそんな笑ってるんですか?下級冒険者からお金をむしりとれるという愉悦からですか?」

 

若干自暴自棄になりながら聞くとイリスさんは笑い過ぎて涙目になっていた目を指で擦ると、少し申し訳なさそうに肩を縮こまらせた。

 

「いや、悪い悪い。お前がすごく真剣に射つから、こいつ後のこと考えてんのかなーと思って、ちょっとからかいたくなった。」

 

「えっ、じゃあ」

「あぁ、金額は嘘だ。でも矢の作り主は本当に俺だ。どうだ?射ちやすかったか?」

 

僕は金額が嘘だということに安堵し良からぬことを口走ってしまった。

 

「はい、できればずっと作って欲しいぐらいです。」

 

その言葉を聞いた途端、イリスさんはその顔を少し歪めこれからが本題だとばかりに話し出した。

 

「よし、じゃあお前、俺と専属契約を結ばないか?」

 

「専属契約?」

聞きなれない言葉に僕は首を傾げる。

 

「ようは、お前専門の鍛冶師ってことだ。他の客の武器も作るがもちろんお前の注文が入ればそちらを優先する。どうだ?悪い話じゃないだろう。それにお前は俺の矢の代金を払わないといけない。それを無しにしてやるよ。」

 

確かにありがたい話ではある、でもなぜ僕と契約しようとしているのか?もっと強い人と契約したほうが名前が売れるのではないだろうか。

 

そんな疑問が顔に出ていたのだろうか。

 

「俺の感だよ。感」

 

そういわれてしまった。

 

「どんな感なんですか?」

 

恐る恐る僕が聞くと彼はどこか遠くを見据えているかのようにドームの上空を見る見ながら

 

「お前は強くなるって感さ。」

 

そう、答えた。

 

「それでどうだ?俺と契約を結んでくれるか?」

 

僕は深く考えた。契約を結ぶメリット、デメリット、全てを洗いだし考えていく。すべてのことを考えたあと、最後まで考え抜いた最大のメリットは、強くなるための足掛かり。

 

僕が、手を出すと、イリスさんは少し驚いたような表情をしたあと、嬉しそうに僕の手を取った。

 

ここに契約は成立した。

 

 



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初めての勝利

Banana Fish 全話視聴しました。ネタバレになるため詳しい内容は書けませんが、とても面白かったです。BLアニメだと思っていた節があったので受け入れられるか不安だったのですが思っていたよりBLシーンが少なく割と抵抗なく見ることができました。全て見て、これはBLじゃないもっと崇高な何かだ。と考えを改めました。声優の内田雄馬さんの演技もとても良かったです。


ある日、僕は東のメインストリートをバベルに向かって駆け足で走っていた。理由は単純で先日、専属契約を結んだイリスさんの作った弓と矢が完成したのだ。駆け出し冒険者が使うということもあり、まだまだ質素で素材も上等なものではないが、自分にピッタリな物ができたとイリスさんに言われたため、いてもたってもいられなくなりイリスさんの工房がある場所から走ってきたのだ。

 

きっと武器を目にしたらすぐにでもダンジョンに行きたくなってしまう、というか行くつもりでいた僕は予め用意しておいた防具に着替えギルドにいるエイナさんに挨拶をして、ワクワク気分でダンジョンに入った。

 

いつもは見慣れたダンジョン、でも自分の武器を持つことでこんなにも素晴らしい場所に思えて仕方ないほど僕は浮かれていて、そして油断しきっていた。こんなところエイナさんに見られたらお小言が1つや2つでは済まないだろう。

 

期待に胸を膨らませ、モンスターを岩陰のようなものにかくれて待つ。基本、弓兵は獲物と距離を取って戦うそのため接近戦に弱い。そのため待ち伏せや奇襲などを主な戦法とする。正面きっての戦いは不得手であり、更にここは、言ってしまえば屋内である。ある程度広さを必要とする弓に取ってはこの閉鎖された狭い空間は少々厳しいものがある。

 

「よし、出てきた。」

 

小型のゴブリンが壁から音をたてて生まれる。弓をかまえ矢を引き絞り敵の中心、魔石があるであろう所に狙いを定める。静かに、しかし極限まで鋭利に引き絞られた矢はまるで運命を切り開く一筋の光明にも見えた。

 

「よし!」

 

矢を放つ。ヒュッと音をたて矢は一寸の狂いもなくゴブリンの中心に吸い込まれた。ゴブリンは一瞬、何が起こったか分からないような顔をし、そのままゆっくりと後ろに倒れこみ、頭が地面につくと同時に跡形もなく消えた。

 

ひとまず、敵を射てた安心と喜び、その両方の感情が体を駆け巡り僕は静かに両手を握りしめた。

 

やった。僕はやったんだ。

 

初めてモンスターを倒したという気さえした。ここまでしっくりくる武器を作ってくれたイリスさんに感謝しつつその日は上層を中心に次々とモンスターを倒していった。

 

すっかり日は落ちて夜の帳が街に降りる。僕は、ウキウキ気分で僕は帰り道を急ぐ、今日はいつもよりもずっと稼ぎが良かったのだ。なにかヴァーユ様に美味しいものでも買って帰ろうと人混みの中を掻き分けるように進むと、前方からヴァーユ様が押し流されているのを見つけた。ヴァーユ様もこちらに気付いたのか、無理やりその小さな体をねじ込ませて、こちらに近づいてきた。

 

「ヴァーユ様、なぜここに?」

 

「いやぁ、なに可愛い僕の家族を迎えにいったまさ。」

 

そうヴァーユ様は少し照れながらもそう答えた。

 

なんだこの可愛い生き物は。危うく抱きしめそうになった手を僕はとっさに隠すと、神様はその嬉しそうな表情から一変、申し訳なさそうな顔をした。

 

「あのね、その顔を見る限り、君が今日とても楽しく過ごしたというのは僕にも良く分かる。あぁ、でもごめん今日は僕、行かなきゃいけないところがあるんだ。ごめんよ、一緒にいてやれなくて」

 

そういうと、ヴァーユ様はまた人混みの中に消えていった。

 

寂しい気持ち半分、しょうがないと思う気持ち半分でとぼとぼと人混みから抜けて歩いていると、ふと今日の夜ご飯のことをどうしようかと思った。一人でホームで食べるというのも味気ない。今夜は楽しく過ごしたい。その気持ちを解決するにはどこに行けばいいのだろう。

 

考える前にも答えは出ていたのに長い間無駄に考えて、僕はその方向に向かって歩き出した。

 

僕が唯一知っている店、豊穣の女主人に。

 

 

 

 



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少年の始まり

蟲師ほぼ全話、視聴しました。あのなんとも言えない懐かしさに襲われる音楽と暖かみが有りながらもときに残酷さをより鮮明に表現する画のタッチが好きです。毎回、見終えた後、物悲しい気持ちになるアニメですね。


多くの冒険者で溢れかえる酒場、次々と店員が料理をせわしなく運んでいる。響き渡るは酒を飲んでいい気になっている冒険者の笑い声。そう、ここが僕の唯一よく知っている店、豊穣の女主人である。

 

今、僕はカウンター席のちょうど真ん中辺りに座っている。弓は少し邪魔になるかもしれないが立て掛けさせてもらっている。入店したとき、リューさんに案内されたのだが、確かに店員としては当然の対応をしてもらったとは思う。しかし、案内のときに顔を赤らめるのは勘弁してほしい。僕としても前回、この店に来たときの告白まがいのセリフが頭をよぎってしまう。

 

適当な魚料理を頼みなぜかサービスだと勝手に出されたお酒と一緒にちびちびやっていると、店の出入り口からぞろぞろと団体さんがやって来た。

 

彼らは慣れた感じで、予約していたのだろうか、僕の後ろにある一角にどかっと腰を降ろすと各自、料理を頼みだした。

 

「おいおい、あのエンブレム、ロキファミリアだぜ。」

 

「スゲー、ってことはあれが剣姫か。」

 

僕のすぐ横にいる客からそんな声が聞こえる。話す声音からして、有名でなおかつ一目おかれている強いファミリアなんだろう。

 

ちらっと顔を向けると長い金髪をたなびかせるまるで人形のような顔をしたえらく無表情な少女と目があった、、、ような気がした。いや、あったかな?

 

僕は強くなりたいとこの前、心に決めたばかりである。強いファミリアの方に話を聞けばなにか参考になるかもしれない。

 

なにかメモを残せるような物はあったかなとバックパックの中をごそごそとしていると、狼人らしき青年が大きな声でバカ笑いをしながら誰かを貶めているであろう声が聞こえた。

 

どうやら、ミノタウロスをが上層に上がってきて駆け出しの冒険者を襲った、その冒険者は手も足も出なかったが、間一髪、間に合った剣姫、名前はアイズ・ヴァレンシュタインさんというらしいが助けた。しかしその返り血でトマトみたいになっていたという内容だったらしい。

 

周りの団員も笑いを堪えきれずに吹き出すなか、僕はカウンターの端っこで顔をうつ向かせている少年を見つけた。白髪の頼りない体をした見るからに弱そうな冒険者。すぐそばには、シルさんが心配そうな顔でその様子を見ている。

 

きっと彼なのだろう。貶めている冒険者というのは。ここからでは顔は見えないがきっと泣きそうな顔をしていることだろう。自分の情けない所を馬鹿にされるのは気持ちの良いものではない。

 

そうこうしているうちに、狼人の話も終盤に差し掛かっているように感じた。団員の中にこの空気がまずいと感じ始めたものがいるのだろう。

 

しかし、狼人はそれに気付かず、僕にとってはよく分からないが、きっと少年にとっては悔しく思うことなんだろう。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ。」

 

その言葉が発せられた途端、白髪の少年は椅子を蹴り店の外に飛び出していった。店が一瞬にして静かになる。

 

「うっわ、ミア母ちゃんのところでやらかすなんて・・・怖いもん知らずやな。」

 

赤髪で糸目の人がそういうと、アイズ・ヴァレンシュタインさんが店の前まで出ると少年が去っていった方をじっと見つめていた。

 

僕は食べ終えた皿を重ねるとそのまま会計に進む。先ほどの静けさは段々となくなっていき徐々に騒がしさが戻ってくる。会計はまたしてもリューさんだった。なんだろう、きっと偶然なんだろうけど、すごい嬉しい。やっぱり、綺麗な人と接点を持てるというのは良い。

 

そこそこ高い値段だったため財布は痛いがしょうがない、心を痛めながらもお金を払うと彼女と手が触れてしまった。

 

投げ飛ばされるっ、こうなればやけくそだ。すごい低い姿勢で謝ってやるぞと腰を曲げようとしていると彼女は何事もなかったかのように会計の続きをしていた。

 

あれ、おかしい。この人本当にエルフ?その耳はもしかしてつけ耳?

 

そんな馬鹿みたいな考えをしているのを不思議に思ったらしい。リューさんはこちらを戸惑った顔で見ると

 

「トリトンさん、あの、会計はもう終わりましたよ。」

 

と声をかけてくれた。

 

「あぁありがとうございます。また来ます。」

 

混乱した頭をなんとか落ち着けそう返すと、リューさんはこちらを見ると

 

「またの、ご来店を。」

 

そう言ってくれた。

ホームへの帰り道、僕は白髪の冒険者のことを考えていた。さっきのそしりがあの少年にどう影響を与えるのか、このまま腐ってしまっても正直どうでも良いのだがあのシルが目をつけている相手だ。何かしら面白いものを持っているのだろう。シルの後ろに時々、魔王が見えるのは僕だけじゃないと思うんだ。

 

今回の件があの少年の起爆剤になったら何か面白いことが起きるんじゃないかと思いながら喧騒の中を僕は急いだ。

 

あっ、ロキファミリアの方に話聞くの忘れた。



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気持ち

凪のあすから、全話視聴しました。綺麗な風景とたくさんの人の気持ち。感動しました。美海が好きです。小学生時代から可愛いと思ってました。けどロリコンではないです。えぇ、違いますとも。


人が成長するきっかけというのは何なのだろう?自尊心、対抗心、信念など色々な理由が挙げられる。先日の白髪の冒険者のことが頭から離れない。彼はあれからどうなったのだろう?あのときはどうでもいいような考えを持っていたが、いざ考え出すとだんだん自分の考えが分からなくなっていく。

 

「僕は、あんな風に感情を素直に出せているのかな?」

 

誰に聞かれることもなくその呟きは消えていく。

そしたら成長出来るだろうか?

 

僕は、昔から人に合わせてばかりだった。オラリオに来るまで住んでいた村でも周りの大人や同学年の友達の顔色をうかがってばかり、唯一、自分の素を出せたのは兄の前だけ。それが嫌で外に出てもっと見聞を広めようともともと憧れていた冒険者にもなれるオラリオを訪ねて来たのに。何も変わってはいない。僕はいまだに素を出せていない。

 

さらに、芯が無い。心に一本ちゃんとしたものが通っていない。ただなんとなく来てなんとなく冒険者をやっているに過ぎない。

 

初めは目標を見つけてるために冒険者になった。でも特に目標は見つからない。そんな簡単に見つかるものでもないとは思う。けど、どうしても焦ってしまう。酒場での少年の顔が否応なしにもそのことを思い出させる。

 

「ダメだ、考えが煮詰まってきた。少し、外に出るか。」

 

今日はダンジョンに行く予定はないので必要最低限の荷物だけ持って街にくり出した。

 

しばらく歩いていると豊穣の女主人が見えてきた。

 

「どうしよう。リューさんに挨拶しておこうかな、でも開いてるかな。」

 

なにげなしに近くまで行ってみると、店の中に人がいるのが見えた。どうやらある冒険者が店主に向かって頭を何度も下げている。何かやらかしたのかな?とよく見ていると僕の今のモヤモヤの原因である白髪の冒険者だった。 もっと近くで見たい欲求に流され一歩、足を踏み出した途端

 

「トリトンさん、何かご用でも?」

 

バッと声のした方に顔を向けると、そこには制服姿のリューさんが箒を片手にこちらを見ていた。

 

「あぁ、いえ、別に用というわけではないんですが、あの、えーっとですね」

 

なんだよこのキョドり具合、いくら相手が綺麗だからって、頑張れ僕、負けるな僕、フレーフレー僕、よし落ち着いた。

 

「今、店内で謝っている人がいますよね。」

 

「あぁ、クラネルさんですね。それが何か?」

 

「実は、彼のことを考えるとなんだかモヤモヤして。」

 

「はぁ、もしやトリトンさんは同性愛者のかたなんでしょうか。」

 

急なホモ認定、これには僕も急いで反応する。

 

「いえ、それは違います。違いますとも、僕は女の子が大好きです。」

 

すると、リューさんはクスッと笑うと

 

「分かってますよ。そんなことは」

 

と言ってくれた。助かった。どうやらホモではないと分かってもらえたらしい。というか、今、リューさんの笑顔を僕は見てしまったのか?なに、可愛い。

 

「クラネルさんはもう少ししたら出てくるでしょう。」

 

「ありがとうございます。でも、良いんですか?」

 

「何がでしょう?」

 

「さっきから、酒場の店員さんが何人かこちらをじっとし見ているんですが。」

 

リューさんは怪訝そうな顔をしながら振り返った。リューさんと猫人の人の目が合う。猫人がニヤリと笑う。その途端、リューさんは顔を真っ赤にしてこちらに向き直り早口で戻らなければと言いお店の奥に戻ってしまった。

 

何か釈然としない気持ちを抱えたまま僕はクラネルさんという冒険者を待つ。

 

出てくるまでボーっとしておくかと考えていたそのとき、後ろからポンポンと肩を叩かれた。

 

反射的に後ろを振り返るとあの晩、豊穣の女主人にいたロキファミリアの一員であるアマゾネスの少女が人懐っこい満面の笑みを浮かべて立っていた。



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1つの答え

『氷菓』全話視聴しました。圧倒的な作画と落ち着いた雰囲気、とても面白かったです。推論の中でたんたんと答えが導き出されているのは見ていて気持ち良かったです。文化祭での千反田さんの写真、僕は断然ペンギン派です。


「な、なんでしょう?」

 

いきなり目の前に現れた少女に僕はおおいに戸惑う。酒場で見たときには感じられなかった強さがここではビシビシと伝わってくるというのもあるのだろうが、一番の原因はその格好にあると思う。

 

アマゾネスという種族は女性しかおらず開放的で性に奔放だと聞いたことがある。案の定、目の前の少女も纏っている衣服の布面積は少ない。そのため、男としてはどうしても目のやり場に困ってしまう。見てはいけないと思いながらも男としての本能が胸のあたりに意識を向けてしまう。なるほど、これが万乳引力か。でもそこまで引力を持つほどの重量は無さそうだが。

 

そこまで考えたところでとんでもない殺気を感じた。目線をあげるとにっこりと笑った彼女、可愛い。でも願わくばその握りしめている手を緩めてくれませんか。殴られたら僕は死ぬと思うんです。

 

話し掛けられてからこの思考を展開し、殺気を向けられるまで、わずか三秒。自分のしょうもない頭に戦慄していると拳をおろした彼女は声をかけてきた理由を思い出したのかキラキラした目線を向けてきた。

 

「ねぇねぇ、この前酒場で見たんだけどあの大きな弓はどうしたの?」

 

彼女の興味はあの弓にあったらしい。確かに自分の身長と同じ大きさの弓を持っていれば気になるのは当然のことかもしれない。

 

「今は持ってきてないんです。ダンジョンに用があるわけじゃないので。」

 

「じゃあなんでこんなところにいるの?買い物?」

 

「いえ、ちょっと彼に用があるというかなんというか。」

 

僕の指差す先に目を向ける彼女はクラネルさんを見つけると不思議そうな顔をした。

 

「あれ、あの子どこかで見た気が、、、」

 

「あなたたちのファミリアの狼人がやっちゃった最近の豊穣の女主人での宴会で見たんじゃないですか?」

 

「そうそう!途中で飛び出していっちゃった子ね。なんであんなことしたんだろう?」

 

やっちゃった狼人が原因ですよとは言えない。普通なら身内が悪く言われるのは嫌だろう。たとえそれが正論でも、いや正論だからこそ耳が痛い。僕は曖昧に返事をすると会話を切り上げようとした。今、あまり長い間クラネルさん以外と話していると、肝心のクラネルさんにあったとき何を聞こうとしたか忘れてしまいそうな気がした。

 

ただでさえ自分が何を聞きたいのかがわからない。この状態で話すと余計、混乱する気がした。

 

しかし、彼女は僕を逃がしてくれる気などさらさらないのかぐいぐいと距離を詰めてくる。最初に話題に昇った弓のことなどもう忘れてしまったかのように話はコロコロと変わっていく。彼女もひまなのだろうか?

 

適当に質問に返していると彼女は何を思ったのか店で話している。クラネルさんと僕を見て

 

「で、あの子に何を聞きたいの?」

 

自分に話してごらんというように促してきた。

 

今日の、いやこれからの指針になるかもしれない答えをこの人から聞けるのだろうか?と目の前の少女を見る。

 

あくまでも、彼女が聞いたのは何を聞くかであって、その答えを彼女が言うかは何も明言していないのだがそこには気づかない抜けてるトリトンくん。

 

僕は、少し逡巡したあと彼女に自分の悩みを打ち明けた。

 

「僕は、自分がどうしたいのかが分からないんです。」

 

「何を目標に動いているのか、フラフラと生きているだけなんじゃないか?」

 

「そう、思ってしまうんです。漠然と生きるのがとても怖い。」

 

彼女は僕の言葉を静かに聞くと、少し唸ったあとにこう言った。

 

「あのね、私、あんまり難しいことはよく分かんない。」

 

「私だって強くなることを目標に生きてきたけどそれも正直、漠然とした思いだよね。」

 

「でも、それは誰しもが持っているもの。でもみんなはそれに囚われて生きているようには見えないんだ。」

 

「なぜだと思う?私ね、それを他のもので埋めているからだと思う。」

 

「趣味だったり仕事だったり。それでみんなやってきている。」

 

「確かに、それは自分を騙しているのかもしれない。でもその先に新しい扉が開けるかもしれない。」

 

「私が言いたいのは、行動してみてってこと。行動しないと何も始まらない。今の現状を変えることは出来ない。」

 

彼女はそう言うとバベルに向かって歩いていった。

 

行動しないと何も始まらない。確かにそれはこの世の真理だ。生きていくうえで漠然と感じる不安を消すには一番かもしれない。今までの自分は何か難しく考えすぎていたのかもしれない。

 

晴れてきた気持ちを押さえきれずに、僕はダンジョンに潜るためホームに弓を取りに帰った。クラネルさんには今度また話を聞こう。

 

後日、あの少女がギルドの掲示板に載っていた。なにやらクエストを異例のスピードで達成したらしい。なんとなく納得ができてしまった自分がいるが、そこは大事ではない。注目すべきはその名前。結局、お互い名乗らずに別れてしまったため分からなかったが、掲示板にはこう、記されてあった。

 

『《大切断》ティオナ・ヒュリテ 凄まじい躍進』

 

ありがとうございます。ヒュリテさんと心の中で礼を行ったあと、僕は弓を携えダンジョンに潜って行った。

 

 



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趣味

「宇宙よりも遠い場所」全話視聴しました。一話一話、ワクワクしながら見てました。南極への旅路の中でそれぞれの過去やコンプレックスに一歩踏み込んでいくキマリや皆の姿に元気をもらえました。
最初、ペンギンを見てビートたけしの声が頭の中で再生されたのは内緒です。



ハク・トリトン

 

 

 

Lv.1

 

 

 

力: E 452

 

 

 

耐久: F 325

 

 

 

器用: C 687

 

 

 

敏捷: D 528

 

 

 

魔力: I 10

 

 

 

《魔法》

 

 

 

 

 

《スキル》

 

 

 

目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》

 

 

 

・目標達成時までのみ早熟する。

 

・目標への意欲により効果向上

 

 

 

「だいぶ成長したね。」

 

上半身の服を脱ぎ、うつぶせになっているハクの上にヴァーユは馬乗りになって、更新したステイタスを確認していた。

 

恩恵を刻んでから約1ヶ月、ランクアップ出来る可能性があるD以上のステイタスもいくつかある。特に器用が突出して伸びている。毎日、ダンジョンで弓を射っているので命中させることで器用の経験値がたまっているのだろう。

 

しかし、いくらなんでも成長速度が早い。これもスキルの影響なんだろうか?目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》に関する詳細は未だ刻まれたハクはおろか主神であるヴァーユも把握出来ていない。

 

(せめて、あまり目立たないようなスキルであってくれよ。)

 

ヴァーユは心の中でそう祈った。しかし、目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》は間違いなくレアスキルである。神のなかでは比較的、常識、教養があるヴァーユがその事を知らなかったのは自分の趣味、そしてこの前の神会《デナトゥス》での出来事が関係している。

 

ハクが豊穣の女主人で夕食をとったあの夜にヴァーユはどこか適当な宿をとり、そこで神会《デナトゥス》への準備を進めていた。ホームで出来なかったのはハクに見せたくないものをたくさん用意しなければなかったからだ。それは百合本、そう女の子同士がキャッキャウフフする本である。

 

彼女は女の子×女の子というカップリングを非常に好んでいた。しかし、下界に降りてきてからというものその手の本は手に入らなかった。やはり神と子どもたちの感性は違うのかと愕然としていたときに思い付いた妙案が神会《デナトゥス》である。子どもたちでは作れないとしても自分と同じ感性を持つ神ならば百合好きだっているだろうし、天界と下界の文化を調合させた素晴らしいものを作れるだろうと予想していた。

 

そのため、自分が天界で読んで記憶していた百合本の詳細を書き留め書類にして他の神からの情報提供を促そうとしたのだ。結果として作戦は成功、情報だけでなく現物をただで渡してくれる神もいた。その神いわく

 

「大丈夫、それは布教用だから。百合の素晴らしさを分かってくれる人には喜んで差し出すよ。」

 

とのことらしい。

 

そのため、ハクがダンジョンに行っている間、ホームの掃除や洗濯など日常生活を送っている傍らもらった本を食い入るように見ながら、神と人の奇跡を頭に入れていった。

 

そういった理由があるため、今、彼女はハクのことをあまり把握出来ていない。基本的に放任主義ではあったもののこれはあまりにもひどい。

 

だからだろうか。神の天罰がくだったのは(神が神の天罰をくらうというのも変な話だが。)

 

突然、ハクが心ここにあらずのヴァーユを座らせ少しかがんで目線を合わせこう、語りかけてきた。

 

「ヴァーユ様、僕は貴方にとても恩を感じています。出来ることならなんでもしてあげたいです。でも、今のヴァーユ様にはなんだか覇気がありません。今のままではこのファミリアは終わってしまいます。」

 

「僕も、これまでの行いに思うところはあります。」

 

「そこで、しばらく離れて暮らすというのはどうでしょう?お互い、自分を見つめ直せばなにか分かるかもしれません。安心してください。必ず帰ってきます。」

 

そういってハクは出ていってしまった。突然のことに空いた口が塞がらないヴァーユは少し経ったあと、急いでホームから飛び出したが、ハクの姿はどこにも見えなくなっていた。

 

「あぁ、ごめんよ。ハク君 私がこんなに頼りないから君は出ていってしまったんだね。」

 

大粒の涙を流しながらヴァーユはホームに戻っていった。己を見つめ直す。ハクに言われたことを実践するために。

 

所変わって、東のメインストリート。

 

ホームを出たハクは今夜からお世話になる宿へと足を進めていた。

 

「ヴァーユ様、これで心おきなくあの本を読めるよね。このときのために宿もとってたし、前から実行しようとしてたってバレたら怒られるかなぁ」

 

ハクには自分の主神の考えはお見通しだったらしい。

 

 



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リリルカ・アーデ

「けいおん」全話視聴しました。良かったです。ただただキャラが可愛い。個人的にはムギちゃんが一番好きなのですがりっちゃんの前髪を下ろしたときの破壊力もなかなかにヤバい。更には憂ちゃんの溢れでる出来る子感。全てにおいて優しい気持ちで見れました。僕にも憂ちゃんみたいな妹いたらなー。あーあ。それで、ムギちゃんがお姉ちゃんにいたらなー。あーあ。


ハクがヴァーユと離れて生活するために選んだ宿はノームの店主が経営している。古ぼけた店だった。店主はここで鑑定士をしているらしいのだが、実際鑑定しているところは見たことがないため目利きなのかは定かではない。

 

その店はいくつか部屋も用意されているらしくて、住み込みで働かせてくれと頼み込んだらしぶしぶ了承してくれた。しかも、ダンジョンに行く時間もしっかりと取ってくれた。ありがたい話だ。

 

お世辞にも綺麗とは言えない外観を見ながらドアを開けると、ノームの店主が小さい女の子と話していた。店主はこちらに気付くとその子をくいっと指しながら

 

「今日から、お前と一緒に働くことになる。リリルカ・アーデだ。ま、仲良くしろとは言わないが喧嘩は辞めてくれよ。店の物が壊れちまう。」

 

と言った。

 

少女はこちらを向くと生気がないような顔でペコリと頭を下げた。

 

「リリルカ・アーデです。よろしくお願いします。」

 

「あ、あぁ、よろしく。アーデさん。」

 

若干動揺しながら、たどたどしく返すと彼女は、用はすんだとばかりに上に上がっていってしまった。

 

店主はそんな彼女の後ろ姿を見ながら呟くように言った。

 

「良くなれば、いいな。」

 

僕はその意味を問おうとしたが、店主に上へ追いやられ仕方なく一階を後にした。

 

次の日から僕はダンジョンに入る傍ら店の手伝いをしだした。といっても素人である僕に鑑定の仕事など出来ない。僕が出来ることといえば身の回りの整理、要は家政婦まがいなことだ。

 

同じく仕事をしているアーデさんと一緒に掃除や洗濯、食事など生活に必要なことをなんでもやっていく。しかし、一緒に作業をしていても僕らの間には会話はない。アーデさんはなるべく人と関わらないように生きているのかと思ったが時々、大きなバックパックを背負い外に出ていくのを見たので外との交流がないわけではないらしい。

 

しかし、数日もすると何か変わったのか少しずつではあるが彼女が話しかけてくれることが出てきた。

 

「ハク様は、どうして冒険者になろうと思ったんですか?」

 

ある夜、二人で夕食後の皿洗いの時間に彼女はそう聞いてきた。

 

「そうだなぁ、特に理由は無かったんだ。」

 

僕は、語る。僕の原点を。

 

「冒険者になれば何か自分にも出来るんじゃないかって思ってたんだ。でも冒険者になったらそこから何をしたらいいか分かんなくなっちゃってさ。しばらく思い悩んでたんだ。」

 

「今はもう違うと?」

 

「うん、ある人にね言われたんだ。そんな小さいことうじうじ考えてる暇があったら動け。行動しろってね。その先に何かあるかもしれないって。」

 

「確かに今、不安だよ。この道が本当に正しいのか、それとも間違っているのか。」

 

「でも、間違いなく言えることは、前ほど苦しくないってことさ。前の僕は難しく考えすぎていたと思うんだよね。」

 

そう言うと、彼女は何かを我慢した表情を一瞬見せたがすぐに笑顔に戻った。

 

「ありがとうございます。何かリリにも分かった気がします。」

 

そう言って彼女は皿洗いを済ませ自分の部屋へと戻っていった。

 

何かあるなとは思ったが、僕には彼女を助けるなんて余裕はなかったため見て見ぬふりをした。ふと、彼女がきた最初の日に店主が言っていたことが頭に浮かんだ。

 

「あぁ、ホント、良くなればいいな。」



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繋がり

「鬼滅の刃」全話視聴しました。流行には見事に乗り遅れましたがそんなものは関係ありません。面白ければいいんです。
感想ですが、しのぶさんにガチ恋しそうでした。なんすかあの感じ。妖艶でミステリアスで美しい、はぁー、好き。
炭治郎とカナヲちゃんもなんかいい感じでしたし胸がキュンキュンしました。
鬼との対決も格好良かったです。岩の呼吸ってあるじゃないですか。あれどういった技なんでしょう?気になって夜しか眠れません。





店で働き始めてから1ヶ月が経った。そろそろこの店からもお別れだ。この1ヶ月でヴァーユ様も何かしら変わっただろう。もちろん僕も変わった。掃除、洗濯、料理など家事の技術が物凄く向上したと思う。ホントに冒険者だよな?僕。

 

貸し与えてもらった部屋を綺麗に片付け、店主にしっかりとお礼を言ったあと、僕は共に働いたアーデさんの部屋へと向かった。

 

扉をコンコンと二回ノックする。中からバタバタ音がしたと思ったら、少し元気のなさそうなアーデさんが扉から少しだけ顔を出した。

 

「大丈夫?なんかやつれてない?」

 

そう言うと、アーデさんは少し嫌そうな顔をするとこちらから顔を逸らしポツポツと話し出した。

 

「リリは冒険者様が嫌いです。」

 

「自分のことを一番上だと思い込んでいる冒険者様が嫌いです。」

 

「でも、」

 

そこでアーデさんは一瞬、言葉を詰まらせたが続けざまにこう言った。

 

「リリはそんな冒険者様にいいように使われている自分が一番嫌いです。」

 

僕は何も言わなかった。アーデさんが何か抱えているのは前から知っていたからだ。最近、妙に元気になったのでその問題も少しは軽くなったのだと思っていたがそうではなかったらしい。少し残念な気持ちで聞いていると、アーデさんは背けた顔を僕に向けて優しい顔でこう言った。

 

「でも、信じれる、この人なら大丈夫と思える冒険者様もいます。」

 

「リリは救われました。まだ、しがらみはありますが。最悪の状態から抜け出せました。」

 

そう言った彼女の顔はとても可愛らしく、あぁ、きっと本来はこうやってよく笑う子だったんだなということが伝わった。

 

「だから、ありがとうございます。ハク様。リリが救われた要因の一つはあなたです。」

 

しらずしらずのうちに僕の両目からは涙が溢れていた。人を救うなんてたいそれたことは自分には似合わない。けど、このオラリオにきてヴァーユ様に助けられて、今まで誰にたいしても深く踏み込んで行かなかった自分に向こうから飛び込んで来てくれた。

 

それが堪らなく嬉しかった。人との本当の繋がりを感じられたようで嬉しかった。

 

「実はですねぇ、今日のために少し作業をしていまして。」

 

僕が泣き終わったのを見計らってアーデさんはポケットから何かを取り出した。良く見るとそれは石で作られた小さな首飾りだった。魚をモチーフにしたのだろうか鱗まで綺麗に作られている。

 

「なぜかトリトンさんを見ていると魚が思い浮かびまして。こんな物ですが受け取って下さいますか?」

 

僕はぐいっと涙を腕で拭うと精一杯の笑顔で答えた。

 

「もちろん!!」

 

 

 

見慣れた外装に一礼し、僕はホームへと帰る。もしかしたらヴァーユ様は怒っているかもしれない。帰ったら説教かなと苦笑いしながらメインストリートを走る。

 

首に魚のネックレスをつけて。

 

 

 



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帰郷

「七つの大罪」シリーズ見ました。十戒が格好いい。なんで、こういう漫画の敵幹部や敵グループっていうのは格好いいんですかね。個人的にはモンスピートが好きです。大罪メンバーではキングが好きです。憤怒の審判では作画、期待してますよ。


見慣れた部屋、ゴツゴツとした岩の上に建っている部屋、家の様相はなくただ、剥き出しとなった部屋だけがそこにある。そう、帰ってきたのだ。我がホームに。

 

「ヴァーユ様はどこかな?帰っているかな?」

 

強く押せば壊れてしまうであろう戸をそっと押して僕は中に入った。あまり長い間家を開けていたわけではない。けど、久しぶりに入った部屋はなんだかとても懐かしい気持ちにさせた。

 

一通り探したがヴァーユ様は見つからない。どこかに出掛けているのだろうかとヴァーユ様が行きそうな場所を頭に思い浮かべていると、何かが足元にぶつかった。

 

ふと視線を下ろすと、そこにいたのはくたびれた毛布にくるまって眠っていた一人の女性。耳がピンとたっていることから猫人だろう。

 

少し良く見ようと近づいたとたんに彼女は素早く起き上がり、俊敏な動作で毛布の中に一緒に隠していた長剣を僕の方に突きだした。

 

「何者だ、お前。」

 

「僕の方こそ聞きたい。あなたは誰なんだ?ここは僕とヴァーユ様のホームだぞ。」

 

彼女はヴァーユ様の名前を聞くとピクッと耳を動かしてこちらを訝しげに見てきた。

 

「白い髪とその明るい緑の目、そうかお前が眷属のハク・トリトンか、。」

 

彼女はそういって長剣を納めるとこれまでの経緯を話し始めた。

 

彼女はもともと、冒険者だったらしい。しかし、運悪くお世辞にもあまり良い神に巡り会わなかったらしく、先日ファルナを消されたらしい。その後、空腹で倒れたところを助けたのがうちの主神であるヴァーユ様ということらしい。

 

行く宛が決まっておらず、途方にくれていた彼女にヴァーユ様はうちのファミリアに入らないかと誘っているらしい。

 

「それで、すぐには決められないから少し厄介になってるってとこだ。」

 

彼女はどこかバツが悪そうにそう答えた。

 

僕が見た感じ、彼女は悪い人ではないと思う。そりぁ、初対面で斬りかかられたことは第一印象としては最悪だが、このファミリアに悪影響を及ぼすものではないはずだ。

 

そうなると後は彼女の気持ち次第の所があるので僕はこうなると何も出来ない。気ままに待たせて貰おうといつもの所定場所である椅子に座った。彼女がチラチラとこっちを見てきているが気にしない。元来、人と話すのはそんなに好きではないのだ。いずれは直さなければならないものだとも理解しているがまだそのときではない。

 

暫く無言の時間が続く。彼女もこちらを気にするそぶりをやめ落ち着かないのか長剣をずっと触っている。

 

暫くすると、戸が開いてヴァーユ様の声が聞こえた。

 

「シェン、いる?起きてる?」

 

入ってきたヴァーユ様は

こちらに気づくと目尻に大粒の涙を浮かべ一直線にこちらに飛び込んできた。

「ハク君、ハク君なのかい?」

僕はヴァーユ様をしっかりと抱き止めると出来るだけ優しい声音で言った。

 

「はい、ヴァーユファミリアのハク・トリトンです。急に出ていったりしてごめんなさい。」

 

 

「バカ、本当にそうだよ。でも、良かった。見放されたかと思った。」

 

「よっぽどのことがない限りは大丈夫ですよ。必ず戻ってきます。」

 

そういうとヴァーユ様は、そこは、どんなことがあっても見放さないくらいは言って欲しかったなと満面の笑みで言った。

ヴァーユファミリア、ここに小さな小さな復活である。



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神の画策

「僕らはみんな河合荘」視聴しました。律っちゃんが可愛い。僕がアニメを見るようになったきっかけが花澤香菜さんの「恋愛サーキュレーション」なんですが、久しく正ヒロインの座に花澤さんのキャラがついたアニメを見ていませんでした。原点に、帰った気さえします。それとやっぱりショートヘアーって良いもんですね。宇佐くん、頑張れ!!


ヴァーユとプチ感動な再会を喜ぶこと数分、落ち着いてきたハクはシェンと呼ばれた猫人をちらりと横目で見て自身の主神に尋ねた。

 

「あの、ヴァーユ様。彼女は、、、」

そう言うと、ヴァーユは目元の涙を手でぬぐうと思い出したかのように答えた。

 

「あぁ、彼女は名前はシェン・リン。レベル2の冒険者さ。君よりもずっと強いんだよ。今はちょと訳ありでここで面倒を見ているところなんだけどね。」

 

あらかじめその辺の話を聞いていたハクは、ヴァーユの説明を申し訳なさそうに遮ると今後のファミリアの方針と成長したであろうステイタスの更新をお願いした。

 

「良いのかい?拾ってきた私がいうのもなんだけど彼女はすごい狂暴だよ。」

 

心配そうにこちらを見つめるヴァーユ、それに対しハクは安心させるように笑顔を浮かべながら言った。

 

「良いんですよ、ヴァーユ様が問題ないと思ったんでしょ?なら大丈夫です。僕は全然反対しませんよ。」

 

自身の子の自分への全幅の信頼を感じ再び目に涙を浮かべるヴァーユを尻目にハクはもう一度シェンと呼ばれた猫人を見た。

 

自分よりも背が高く、髪は自分とは真反対の真っ黒。瞳の色は黄褐色で出るとこはでて引っ込むところは引っ込むスタイル。そして何より美人。つり目がちな目が一見きつい印象を与えるも、先ほどヴァーユ様と自分の熱い抱擁を見て少し目を細めたそのギャップ。

いわゆる、お姉さんタイプの人である。

 

先ほどは敵対者であるかもしれないという可能性があったため、警戒心バリバリで気にも止めなかったが、落ち着いて見てみると、とても魅力的な人だと分かった。

 

ハクもまだ少年とはいえ、立派な、男の子である。豊穣の女主人のシルやリューなどとは違う大人の女性の魅力に少しやられたのか顔が少しずつ赤くなってきた。

 

硬直したハクを不思議に思ったヴァーユがハクの顔と見て、その視線の先にいるシェンを見てニヤリと笑う。そこには自身の眷属との再会に喜ぶ純粋な笑顔ではなく、いたずら好きの神としての顔があった。

 

ヴァーユは今まで抱き合っていたハクの体を180度回転させシェンの方向に背を押しながら進んでいった。

 

「ちょ、ちょっとヴァーユ様、あの、、、」

 

抵抗するハクを無視しシェンの前に座らせると胸を張ってまるで自分はとても良いことをしたと言わんばかりの顔でハクの隣に座った。

 

「さぁ、今から改めてお互いに自己紹介をしよう。もしかしたら同じファミリアになるかもしれないんだ。今のうちに親睦を深めておくのも私は悪くない案だと思うんだよ。」

 

ニコニコと、しかしではどうハクをからかってやろうか画策しながらヴァーユは続ける。

「では、お互いにまず名前から。」

 

ハクにとっては恥ずかしい時間が始まった。

 



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