ナイトガンダム物語 円卓の騎士伝説 異聞編   星命樹マナ探索行 (にしかわ)
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円卓の騎士

地球とはまったく違う遠い異世界、地球とはまったく違う生命が住まう世界スダ・ドアカワールド。

 

人間とMS族が共存するこの世界には様々な国があり、その一つブリティス王国には不思議な力を持つ円卓がありそこに王を含めた13人の騎士が集い平和の為に戦うという、そんな彼等を人々は畏敬の念を持ってこう呼んだ

 

 

                   

 

                    円卓の騎士と・・・・・

 

 

   その精強なる騎士団ようするブリティス王国は一度落日の憂き目を見るそれはスダ・ドアカワールドを支配せんとするグレートデギン率いるザビロニア帝国によるものであった、彼らの策略により王であるキングガンダムは討ち死にし円卓の騎士達は散りじりになりブリティス城は陥落、そして多くの民が圧制に苦しめられる事になった。

 

しかし滅ぶ間近で脱出した王子クラウンナイトガンダムが七年の歳月の後ブリティス復興の為に立ち上がりその彼の元に新たな騎士達が集った、そして苦しい戦いの末ついにブリティス王国を解放し聖杯による不死の力を手に入れようとするグレートデギン否、邪獣王ギガサラマンダーを倒し平和を取り戻した。

 

 

そして新たなる円卓の騎士と新たなブリティス王に即位したクラウンナイトガンダム改めキングガンダムⅡ世によりブリティスの新しい時代が始まったのであるそして幾許かの年が過ぎた。

 

 

 

 ブリティス王国首都バーリントン市かつて戦争によって荒廃していた城下町は復興し今や昔以上の賑わいをみせていた、路上には子供たちのはしゃぐ声が聞こえ、地元の商人だけではなく、様々な地方や外国から来た商人で賑わいを見せ住宅からは炊事洗濯の音が聞こえてくる平和そのものともいう光景が広がっていた。

 

その城下町を三人の円卓騎士が歩いていた、一人は重し鎧に身を包んだ騎士いかにも豪快な様相見せる、剛騎士ヘヴィガンダム一人は真紅の鎧に身を包んだ優雅な身ごなしの騎士、麗紅騎士レッドウォーリア、一人は鮮やかな深緑の鎧を纏い軽やかで清廉な騎士、嵐騎士ガンダムマークⅡである。

 

彼等は新たに円卓に集った騎士であり、その流星の如き速さから流星の騎士団とも呼ばれている者達である、彼等はブリティスに潜む魔物退治を終えた後しばしの休みがてら城下町の様子を見回っていた。

 

「いやぁーーーしかしここも本当に賑やかになったもんだな最初に来た時とは大違いだ、なぁ二人共」

 

「そうだな、あの時の荒れ果てようが一時の夢のようだ」

 

「確かに、これもここに暮らす人々が力を合わせて努力したからだろうな」

 

「へへそれに俺も頑張ったんだから当然だよな重い岩は木材なんかこの俺様手にかかればちょろいもんよ」

 

「ふっ、力しか取り柄がないおまえらしい言葉だな」

 

「何だとォおまえそりゃどういう意味だ」

 

「二人とも喧嘩はやめろ城下の人々の迷惑になるぞ」

 

ヘヴィガンダムとレッドウォーリアーが口喧嘩になりそれをガンダムマークⅡがいつもの如くたしなめ止めていると向こうから幼い子供達の歓声が聞こえてきた。

 

三人が声が聞こえきた方を見ると子供達がわらわらと三人の元に集まって来る

 

「円卓の騎士様だーーー」

 

「ねえねえ何かお話して!!!」

 

「だっこしてだっこ」

 

 

「おお、ちびっ子共俺の活躍が聞きたいかそれじゃあ、セダンの要塞突破したの話をしてやるかな」

 

「おいこらマントをひっぱるな、わかったわかった、だっこするから順番にな」

 

「ははは、そら、高い高ぁーい」

 

 子供達を優しく相手する円卓の騎士達と歓声をあげる子供達それを和やかな表情見る市民達とても穏やかな時間がそこには流れていた。

 

 

しばらく子供達と穏やかな時間を過ごした三人は再び街の散策を続ける

 

 

「ちびっ子共相変わらず元気でなによりだぜ」

 

「あまりマントをひっぱられのは勘弁して欲しいのだがな」

 

「子供は好奇心旺盛だから,しかたないさ、こういうのも平和の証というものだろう」

 

「マークⅡの言うとおりだぜあとこのうまい飯も平和の証だな、パンがふわふわで肉汁がたっぷりそんでこのソースがまた最高だぜ~~~」

 

「おまえ城であれだけ食べておいてまた食べるのか」

 

「ははは・・・・」

 

 途中の露店で買った肉をパンで挟んだ軽食に舌鼓を打つヘヴィガンダムにレッドウオーリアーは呆れがちに見るそれをマークⅡは苦笑しながら見るとふとある事を思い出した。

 

 

「そういえばレッドウオーリア、キングガンダムⅡ様はまだお戻りになられないのか」

 

「うん?ああ少々離れた場所を視察されに向かわれたからな」

 

「たしかアルマナだったけか、離れているといってもそこまで遠い所じゃないだろう」

 

ヘヴィガンダムは不思議そうに言うが、レッドウォーリアは表情を固くしたその様子にマークⅡは何かを察する

 

「その様子だと相当ひどい事になっているという事か」

 

「その通りだ唯離れているだけならここまで苦労せんのだがな・・・・」

 

「そんなに酷いのかよ・・・・」

 

三人は空を見上げる雲一つない晴天であるがその遥か先には未だ暗い暗雲が立ち込めている場所があるのだと、そこに視察に赴いている国王と仲間達の事を思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

アルマナ地方・・・ブリティスより少し離れた所にある緑豊かな土地でありそこで取れた農作物や果実は色々な地方へと商人の手により運ばれ多くの人達の食料を潤してきた所であるしかし十年以上前にザビロニア帝国の侵略と彼等の邪悪な魔法により次第に荒れていき今ではもう人が住むことすら困難になりつつある荒地となってしまった。

 

 

「なんてありさまだ、ここがかつて豊かな大地だったなんて信じられないな」

 

 

その大地を悲痛な表情で見つめながら言葉を呟くMS族の青年がいた重厚にして壮麗な鎧に身を包み腰には王の証たる聖剣キングキャリバーを差しキングシールドとそこに収められたヴァトラスの剣を持ち若くも威厳と勇敢さと深い慈愛を宿したその瞳と表情はまさに偉大なる国王というに相応しい、彼こそはブリティス王国を復興せし若き国王キングガンダム二世である。

 

彼はアルマナ地方からブリティスへと避難してきた人々を保護した最この地の現状を視察するため幾人かの円卓の騎士達と賢者アントニオを連れてやって来たのであった。

 

 

「土がぼそぼそだ、これじゃ作物が育たねえだよ・・・・・・畜生ザビロニアのやつらめ」

 

「まったくですな、ザビロニアめとんだ置き土産を残していきおったな」

 

勇騎士プラスが土をつかみそのやせ細った有様を嘆く、元百姓だからかなおの事痛々しく思うのだろう、それに相槌を打つ賢者アントニオ、彼もザビロニアの横暴には常に激怒していた、例えそのザビロニアが倒れたとしても彼等が残した負の遺産は依然として世界を蝕んでいた。

 

「グレートデギンのやつめは不死の力の探求に取り付かれておったからな、それが生来の暴虐さをさらに悪化させたのであろう」

 

 

「不死となれば飲食せずとも生きる事ができる、まして死を恐れる必要もない、それはより周りを顧みなくなるという事だ、不死への妄執がより圧政をひどくさせたという事ですな」

 

 

僧正ガンタンクRが不死の探求の愚かさと弊害をかみ締めるように言い、重甲騎士F90が重々しく肯いた。

 

キングガンダムⅡ世が力強い表情で振り返り同行してくれたアルマナの長老に声をかけた

 

「長老殿はるばる同行してくれて申し訳ない、それと何か不足はないか」

 

「いえ不足はありません私を始めアルマナの皆はようやく落ち着く事が出来て安堵しております、援助所か態々ここまで視察に来てくださってもらえて申し訳ないくらいです」

 

「あまり気にしないで欲しい荒れた地を復興する為に自分の目で現状を視察するのは当然だ、それと何か必要な物があったらまた言って欲しい」

 

「重ね重ねのご厚意本当にありがとうございます、このご恩アルマナの皆共々一生忘れませぬ!」

 

長老の感謝の言葉に表情を柔らかくして肯くとキングガンダムⅡ世はアントニオとガンタンクRに顔を向けた

 

「アントニオにガンタンクRこの地を復興させるのに何か知恵はないか」

 

「ウーム唯荒れているだけなら従来の方法でも時間かければ元に戻せるんですが」

 

「ザビロニアの魔法によって無理矢理大地から生命エネルギーを引き出した反動によって急激に衰退してしまったのだ、この大地は今や死の大地へと変わりつつある、これを復活させるには大地に新しい生命エネルギーを与えるしかないでしょうな」

 

「しかしそれだけの生命エネルギーどこから持ってくれば良いのだ」

 

「それは・・・・・・」

 

F90の指摘に言葉につまる二人を見て、長老は嘆くように呟いた

 

 

「ああこんな時に星命樹マナがあれば・・・・・」

 

「っ!!!!!」

 

「星命樹マナ?長老殿それは一体」

 

キングガンダム二世が長老の言葉を詳しく聞こうとした後ろで、賢者アントニオが内心の驚愕を押し殺していた。

 

「このアルマナの地の長老にのみ口伝で代々伝えられれた伝説の木の事です、元々このアルマナははるか昔もモンスターが暴れたり等あり荒れ果てていたそうです、そこに一人のガンダム族の騎士が現れモンスターを倒しその後星命樹マナの雫を大地に与えこの地を蘇らせたそうです」

 

「へぇーそんな木があるのか、それでその木の雫さえあればなんとかなるだな、んじゃオイラがサクッとくひとっ走りして」

 

「だがその木は一体どこにあるのだ場所がわからなければ探しようがないぞ」

 

「うっ、そ・それは・・・・あっちこっちで聞いて回れば」

 

「代々の長老しか知らないのだぞ、おまけに口伝である以上他の者が知っている可能性は低いぞ」

 

勇騎士プラスはに重甲騎士F90の指摘に言葉につまってしまい額から汗が伝うその姿にやれやれとなるF90であった。

 

「長老殿は何かしらないのか」

 

「それは・・・星命樹マナがどこにあるのかはまったく、その騎士も何も言わずいずこかへと去ってしまいそれ以上の事は何も申し訳ありませんあてもない事を言ってしまい」

 

「かまわない、このようなありさまである以上なにかにすがりたくなるのも無理はないからな」

 

「何度もお心遣いしてもらい本当に申し訳ありません」

 

「キングガンダムⅡ世、もう日も暮れて来ましたから野営地に戻りましょうモンスターが襲って来ないともかぎりませんのでな」

 

「そうだな、それでは皆引き上げるぞ」

 

「「「「はっ」」」」

 

賢者アントニオの言葉に肯くとキングガンダムⅡ世は野営地に戻るべく号令をかけたその言葉にその場にいる全員は肯き野営地へと歩き出す、その時キングガンダムⅡ世にアントニオは近づき他者に聞かれないように耳打ちした

 

(キングガンダムⅡ世城に戻ったら少し話しがあるんだが)

 

(どうしたんですかアントニオおじさん)

 

(星命樹マナについてだ)

 

(っ!!!それは一体)

 

「はっくしょん、うう荒地は冷えますな はははははっ」

 

「じいさん大丈夫かよ年寄りの冷や水なんじゃねえか」

 

「ばかもん、わしは生涯現役じゃのうガンタンクR殿」

 

「おいおいわしまで年寄りあつかいは勘弁してくれ」

 

 

驚いて聞き返そうとしたキングガンダムⅡ世だがアントニオはそのまま足早に野営地へ向かおうとしたその時彼等の前方から土煙を上げて何かが向かって来ていた。

 その土煙の合間から幾つもの異形の姿が見えたそれは歪な狼の姿をしていた、体毛は針金のように硬質で口の中から覗く牙は普通の狼より大きく歪だった、その姿を見て兵士が警告を発した。

 

「サンドガスウルフだ」

 

「ザビロニアの生み出した魔物か!!」

 

「キングガンダムⅡ世」

 

「うむ、皆迎撃するぞ、アントニオに長老殿は我々の後ろへ」

 

「わかったぞ、長老殿こちらえ」

 

「は・はい・・・」

 

「よーし一丁やってやるぜ」

 

長老とアントニオを後ろに下がらせキングガンダムⅡ世達円卓の騎士達はそれぞれ武器を構えそして勇騎士プラスが土煙から飛び出したモンスターをむかえうった。

 

「グオオオオオオ」

 

「おっと、・・・・そりゃ」

 

 掛け声と共に飛び込んできたサンドガスウルフの爪牙を体を逸らし巧みに避けプラスはロングソードを横薙ぎに振るいサンドガスウルフの体を切り裂いた。

 

 サンドガスウルフの悲鳴があがりその悲鳴が終わらぬ内にプラスの背中目掛けて別のサンドウルフが襲い掛かってくる。

 

「甘いぜ」

 

「?!」

 

 するとプラスはすばやく前転をし攻撃を避け体が起すと同時に背後に振り向き様に剣を振るい奇襲を避けられ驚愕したサンドガスウルフの頭部を両断する。

 

その鮮やかな身のこなしと振るう剣の素早さと鋭さ、かつて騎士に成り立ての時と違い洗練された剣士にして騎士のそれであった。

 

「へっ、ざっとこんなもんだぜ・・・・って!!」

 

と余裕を見せるプラスに目掛けて数頭のサンドガスウルフが口から砂と小石の混じったブレスを勢いよく吐き出す

 

「うわっと危ねえな」

 

「油断禁物だぞプラス」

 

慌てて回避するプラスの前にF90が立ちはだかり大盾とマントでブレスを受け止める、鋼の鎧をまとった一般兵士の一団を軽くを薙ぎ倒すブレス数発を同時に受け止めてもF90はまったく動じることなく大盾とマントに闘気を込め。

 

「むんっ」

 

と気合とともに盾とマントに込めた闘気を解き放つこれぞ円卓の騎士の技の一つ「ストライクバッシュ」盾の打撃を闘気を介して放つ技である。

 

「ギャン」

 

放たれた闘気の衝撃波にサンドガスウルフは吹き飛ばされ地面に転がり起きようとするも衝撃に打ち据えられた体は思うように動かないそこに

 

「爆ぜよ業炎、破壊の力となり数多を砕き尽くせ・・・・メガバズ」

 

ガンタンクRの爆炎魔法メガバズによる大爆発が起きサンドガスウルフを悲鳴を上げる間もなく粉砕した。

 

その仲間の死なぞまったく意にも介さず別のサンドガスウルフ達が今度はキングガンダムⅡ世とその後ろにいるアントニオと長老に襲いかかる。

 

「あわわわ・・・ももうだめじゃ」

 

「大丈夫だ長老殿ほら落ち着いて」

 

「そうですよ長老殿、直ぐに終わらせるので動かないで下さい」

 

 怯える長老を励ますアントニオを見てキングガンダムⅡ世は安心させるように優しく声をかけ、襲い掛かってくるサンドガスウルフにを見やるとサンドガスウルフは一時的に怯んだ、キングガンダムⅡ世の放つ気迫に圧されているのである。

 しかしザビロニアによって生み出された魔獣はそのような事では逃げ出さないように作られている為すぐに凶暴な表情となり襲い掛かる。

 

するとキングガンダムⅡ世はヴァトラスの剣に闘気を込め一閃しサンドガスウルフ達を一撃で全てを両断したのであった。

 

「逃げる事すら許されないとは、哀れな・・・」

 

望まぬ生を与えられただ破壊する事しかゆるされないザビロニアの魔獣を悲しげに見つめるも気を取り直して状況を確認するべく辺りを見渡す。

 

「皆怪我はないか」

 

「キングガンダムⅡ世、皆たいして怪我は負ってはいません」

 

「ああ、あの程度ならたいした事ないぜ」

 

プラスやF90はたいして怪我は負っておらず他の兵士達も円卓の騎士達の活躍の為かかすり傷くらいの者しかいなかった。

 

「では、皆早く・・・・・うんっ?!!!」

 

再び野営地に戻ろうとしようとした時突然あたりが地震が起きたかのように揺れだした

 

 

「な・なんだこの揺れは」

 

「お、おいあれを見ろ」

 

兵士達が指を指すほうを見るとそこの大地がどんどんひび割れていきひび割れが大きくなるほど揺れが大きくなってくる。

 

「これは、何か大きなモンスターが現れようとしているのか」

 

「で、でもこの大きさは普通じゃねえぞ」

 

「もしや、これは」

 

「何か心当たりでもあるのかガンタンクR」

 

F90とプラスがあまりの大きなモンスター出現の予兆に警戒し緊張した面持ちになり、ガンタンクRはふとこのモンスターに思い当たる節があった、ザビロニアの事を調べる時偶然知ったあまりに忌まわしき魔獣の事を。

 

「ザビロニアがたった一体だけで国を滅ぼせる魔獣を魔道実験で産み出そうとしていたとか、だが制御できず失敗に終わったはず、ま・まさか奴らめそのまま殺さずアルマナに放ったのか」

 

「な・なんだってザビロニアめなんて事を・・・・・」

 

ガンタンクRの言葉にキングガンダムⅡ世は驚愕と怒りを顕にすると周りの兵士達に逃げるよう指示を出す、兵士が慌てて逃げ出すと同時に亀裂はどんどんキングガンダムⅡ世達円卓の騎士達の前に近づきそして大地が爆ぜ割れその禍々しい巨体を顕にする。

 

「な・なんだこりゃ」

 

「むうこれはなんというものを・・・」

 

 プラスとF90二人の円卓の騎士が目の前に現れた異形に絶句して言葉を失う、それほどまで目の前の異形は禍々しかった。

 頭はドラゴンとワームを醜悪に混ぜ合わせたよう異形で口腔には牙がびっしりと生えていた、全身の巨体は棘のような鱗で覆われていた手足はなく体を蛇のようにうねらせて移動し体長は50m以上もある、もはや悪夢の産物といっても差し支えないといってもいい魔獣であった。

 

「ギガントデスワーム・・・・・・」

 

ガンタンクRが呻くように魔獣の名を呟いたそして現れた魔獣は辺り一帯に轟くような雄たけびをあげて禍々しい顎を開き円卓の騎士達に襲いかかる。

 

「皆、散開せよここで止めるぞ」

 

「はっ!!!!」

 

キングガンダムⅡ世の言葉に円卓の騎士は散開し魔獣の突進を避けるもその巨体が大地を打つ衝撃は凄まじく円卓の騎士を打った。

 

「うわっプッ」

 

「ぐうっ」

 

「おおっ」

 

「くっ」

 

円卓の騎士達は苦鳴をあげるもすかさず攻撃に転じた、プラスとF90が剣で切りかかった。

 

「はああああ」

 

「ふっ」

 

 しかし体表の棘と硬い鱗に阻まれ思うように攻撃が通らない、魔法による攻撃さえも大地を盾がわり使われ思うように有効なダメージを出せなかったしかし。

 

 「そこだぁぁぁぁぁーーーー」

 

魔獣が襲い掛かってきたタイミングを見計らいその顎をかわしキングガンダムⅡ世が裂帛の気合と共に聖剣で切りつけるとその刃は魔獣の表皮を切り裂き魔獣にけたたましい悲鳴あげさせた。

 

 「流石キングガンダムⅡ世、よおしこのまま一気に」

 

 「いやどうやらそうはいかんようだ」

 

魔獣を傷つける事ができ騎士や兵士達に希望が生まれるが、彼等の目の前で魔獣の体の傷がどんどん回復していく、そして回復すると同時に周囲の荒地が益々荒廃し砂漠のようになっていった。

 

「やつめ周囲の大地から生命力を吸収しているのか、アルマナを荒廃させたのは奴の仕業だったのか」

 

「ならばなおさらここで倒さなければここで逃せば今度は別の所が荒らさてしまうぞ」

 

「でもどうするんだよォ剣も魔法も効かないんだぜ」

 

「・・・皆少し時間を稼いでくれないか私に考えがある」

 

「キングガンダムⅡ世考えとは」

 

「私の聖剣ならば奴を傷つける事が出来るしかし生半可な傷では直ぐに癒えてしまう故に一撃で仕留る為の力を溜めなければならないその溜めが終わるまで足止めをして欲しいそして合図と共に私の方に魔獣を誘導しろ」

 

「そ・そんな無茶だキングガンダムⅡ世」

 

「ならばここで奴を見逃そうというのか、そうすればまたアルマナのような悲劇が繰り返される事になる、そうなれば多くの人々が苦しむだろう、それを防ぐ為にも皆私に力を貸して欲しい」

 

「わかりましたぞキングガンダムⅡ世ですがあまり無理はせぬようにな」

 

「しょうがないな、でもそれでこそキングガンダムⅡ世だぜ」

 

「元よりこの命と力は御身と共に!!」

 

キングガンダムⅡ世の威厳と強い決意と意志の言葉に円卓の騎士達は肯き魔獣を足止めするべく向かっていく、そしてキングガンダムⅡ世は半身になり右手に持った聖剣キングキャリバーの刀身を左手の甲の上にいくように構え意識を集中し始めた、すると聖剣に闘気のエネルギーが集まり光の刃を形成していくこれぞ必殺の構え不知火の型である。

 

(あの魔獣にはこちらからの攻撃は難しいならば、攻撃にあわせてカウンターを狙うしかないしかし目で追ってもこの砂塵が舞う状況では無理だならば)

 

するとキングガンダムⅡ世は不知火の構えを解き聖剣を下段に構え意識をさらに集中し始めたすると光の刃がさらに収束し鋭さを増していった不知火の型が炎とするならさながら静謐な水と例えるべきであろうかそしてが溜めが終わるとキングガンダムⅡ世は合図を出した。

 

「皆、今だ魔獣をこっへ誘導しろ」

 

その言葉を聞き円卓の騎士達は魔獣をキングガンダムⅡ世の方へ誘導する、キングガンダムⅡ世の構えをみてF90は驚愕する。

 

(不知火の型ではないもしや新しい型をこの土壇場で編み出したというのか!!!!)

 

「キングガンダムⅡ世なに目を閉じてんだよそんなんじゃ攻撃が当たらないぞ」

 

「いやあれで良いのだプラス」

 

「なんで?!」

 

「この巻き起こされる砂の嵐ではヤツの姿を目では追えぬ、ならばあえて目を閉じてヤツの気配に集中すればよいという事だ」

 

「そ・そんな事本当に出来るのかよ」

 

「数多の戦いを乗り越え厳しい鍛錬を成し遂げた者になら可能だ・・・」

 

 

キングガンダムⅡ世は目を閉じ意識を集中させると周囲の気配を探り始めた徐々に集中を高めていくと耳触りな砂の音を意識の外においやられ無音の闇となるするとキングガンダムⅡ世の意識にいくつもの気配が克明に浮かび上がって来た。

 

(この力強い気配はF90・・・勇ましい気はプラス・・・・)

 

 いくつもの気配を感じ取っていると不意に下から禍々しい殺気が現れるいやこれはもう殺気とすら言えないのではないだろうか、飢えや憎悪・怨嗟等の悪意に濡れ切った混沌しか言いようのない物だった。

 

その意識が爆発した瞬間キングガンダムⅡ世はカッと目を見開きと両脚に蓄えていた力と気を解き放ち天へと勢い良く飛翔しそれを追って魔獣も禍々しくも鋭利な牙が並んだ顎を開き地上へと飛び出す。

 

飛翔したのはキングガンダムⅡ世だが勢いは魔獣が上だったそのままキングガンダムⅡ世をかみ砕かんとするとき

そこに何者かが飛び込んできた。

 

「プラス!!?無理だ」

 

「やらせっかよーーーー」

 

そう叫ぶとプラスは剣を振り上げた状態で全身を縦に高速回転し突撃する

 

「剣も魔法でもだめなら剣と魔法ならどうだーー」

 

とプラスが叫ぶとガンタンクRがすかさず呪文を唱える。

 

「震えよ天空、我が手に雷霆の力をもたらしまえ・・・メガファン」

 

ガンタンクRの手に膨大な雷光が生じそれをプラスの剣に向けて放つ

 

「サンキュー爺さん、はああああああぁぁぁーーーー」

 

「私はまだ爺さんではないんだが・・・・・」

 

プラスは雷光が宿った剣にさらに闘気を込めて裂帛の気合と共に魔獣に叩きつける。

 

「くらえ・・・ラウンドサンダーカッター」

 

雷光の剣に切りつけられた魔獣は強烈な斬撃とそこから体内に侵入する雷に身を焼かれ動きが怯むそれが致命的な隙となった。

 

「キングガンダムⅡ世、今だ」

 

「ありがとう、プラス・・・はあああああぁぁぁーーー」

 

キングガンダムⅡ世は渾身の力と共に膨大な闘気をを秘めたキングキャリバーを魔獣に振り下ろした。

 

「ギ・グギャアアアアアアアアーーーーーーーーーー」

 

魔獣は聖剣によって一刀両断にされけたたましい悲鳴と共に完全に絶命されるのであった。

 

 

「お見事です、キングガンダムⅡ世」

 

「はは、すげえや!!!」

 

「これ程までに成長なされていたとは」

 

その見事な一撃に円卓の騎士は感嘆としながらキングガンダムⅡ世に駆け寄り、周囲の兵士達は歓声を上げる。

 

アルマナの長老と賢者アントニオも目の前事に驚嘆する。

 

「な・なんとあれ程の巨大な魔獣を倒されるとは」

 

「ははは流石の円卓の騎士の頂点に立たれる方ですな・・・」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・すまない」

 

 周囲の歓喜の声とは裏腹にその賞賛を受けるキングガンダムⅡ世の表情は悲しげだった、それは対峙した時に感じた魔獣ギガントデスワームの発した混沌のとも呼べる感情その今わの際に発した気に悲しみを感じたからだった、

その悲しみは戦う為だけに作られた自分の運命かどんなに食らっても癒えぬ空腹に対するものかそれはわからなかったがただ一つだけ言える事はこの魔獣は決して望んでこんな事をしているわけではない事だった。

 

「おまえはもうなにも壊さなくていいんだ、ゆっくりと眠れ・・・・」

 

そう悲しげに魔獣の骸に声を掛けるとキングガンダムⅡ世は仲間達の元に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリティス城の円卓の間

 

 

円卓の騎士の由来となる、円卓それはブリティスの象徴にして代々受け継がれてきた神秘のアイテムである、円卓に座するに相応しい騎士を選びその騎士に更なる力を与えるという。

 

一見すればただの飾り気のない食事をするための円卓だろうしかしいざ近ずこうとすると円卓の放つ神聖なる厳粛なる空気に圧倒される、まるで試すようにおまえに円卓の騎士として戦う意志はあるのかと言わんばかりに。

 

今そこに13人の円卓の騎士が集まっていた。

 

 

 

          ブリティス王   キングガンダムⅡ世

 

                   重甲騎士ガンダムF90

 

                   白金卿

 

                   勇騎士プラス

 

                   嵐騎士ガンダムマークⅡ                                         

                   麗紅騎士レッドウォーリア

             

                   剛騎士ヘビィガンダム  

 

                   灼熱騎士ガンダムF91

 

                   騎士F90ジュニア

 

                   重騎士F90ジュニア

                   

                   法術士F90ジュニア

 

                   僧正ガンタンクR

                       

                   闇騎士ガンダムマークII

 

とそうそうたる面々が揃っていた、そして円卓の傍らには賢者アントニオが佇んでいた重要な話があるためか円卓の騎士達は全員緊張した表情をしていた。

 

キングガンダムⅡ世は円卓の面々を見やりおもむろに口を開いた

    

 「みんな急に集まって貰ってすまないな」

 

 「いえそのような事は、しかしキングガンダムⅡ世、重要な話とは一体」

 

 「話とは他でもないアルマナ地方の事とそして星命樹マナについてだ」

 

 「えっ星命樹マナってあの長老が言っていた木だよなもしかして場所がわかったって事」

 

 「キングガンダムⅡ世それは一体」

 

プラスとガンダムF90が驚きの声をあげるとキングガンダムⅡ世は賢者アントニオに視線を向けた。

 

 「それについては賢者アントニオからは話があるそうだ、ではアントニオ話を」

 

 「はっキングガンダムⅡ世、ですがまずこの話は円卓の騎士以外の皆にはできれば他言無用でお願いしたいのだが、なぜならこの話を教えてくれた方からできれば内密にと言われたので」

 

 「その方?まさか!!!」

 

  「ええキングガンダムⅡ世、その方とは他でもないあなたのお父上キングガンダム様です」

 

アントニオの言葉に円卓の騎士全員が驚愕した特に先代から仕えているガンダムF90と白金卿驚きが大きかった

 

「な・なんとそのような事なにも聞いてないぞ」

 

「ブリティス王家には代々王にのみ伝えられている伝説があると聞いたがまさか」

 

「二人共落ち着いてくれこのままでは話ができない」

 

キングガンダムⅡ世の言葉に二人は席につくそしてアントニオは話始めた。

 

「何故キングガンダム様が話さなかったのには理由があるのです、それはこれから話ます、まず星命樹マナなのですが確かにそれは実在しております、しかしいくらこのスダ・ドアカワールドを探してもみつからないでしょうな」

 

「スダ・ドアカワールドにはないとはどういう事だ」

 

 

「それはこの世界とは時空を隔てた異世界にあるのですから」

 

「異世界だって!!! だがどうやって異世界の物がこの世界にあるんだ」

 

 

「それはですな、このスダ・ドアカワールドには誰が作ったか、わかりませんがいくつか時空を越えるゲートがあったそうです、もっともそのほとんどは崩壊するか、この世界の神々によって破壊されたのだとか、ですが今だ稼動しているのもあり、その中の一つがここブリティス近辺に存在していたらしい」

 

 

そこで一旦言葉を区切り重々しくとある王の名を口にした。

 

 

「そして事の始まりは遥か昔のブリティス王ユーサーガンダム様の代で起こったのです」

 

「ユーサーガンダム!!!あの伝説の聖槍王か」

 

「ユーサーガンダムって誰だ・・・・」

 

「歴代ブリティス王でも指折りの名君だ、剣技もそうだが、何よりも槍術や馬術にも長けていたという、なんでもどんな荒馬も乗りこなし戦場では一度も落馬した事がなくその槍の一閃は岩はおろか鋼やドラゴンの鱗すら穿ったというそして神々が扱ったという聖槍を唯一使いこなした騎士でもあり先代キングガンダム様以前に円卓の騎士達を組織された方だ」

 

 

「ユーサーガンダム様が各地を視察している最中に獣の耳と尻尾がある人間族を保護し、城に連れ帰り、傷が癒えたその人間族から詳しい話を聞いたのです、その者が異世界からやってきた事とその異世界が暴食の業龍ギンヌンガカプという魔龍とその配下の魔物によって多くの人々が苦しんでいる事を、それを聞き哀れに思ったユーサーガンダムは円卓の騎士を率いて遠征する事を決意したのです」

 

「そしてゲートを使いその異世界へと向かったウーサーガンダム達の前には苦難にあいながらも必死にみんなで助け合う善良な人々の姿がありました、その姿にますます感銘を受けたウーサーガンダム達は幾多もの魔物を討伐しついに最後にギンヌンガカプを倒しその世界を救ったのです、その時異世界の人々からお礼に貰ったのが星命樹マナの雫なのです」

 

 かの伝説の王は異世界をも救う偉大なる王だった事に深い感銘を受けそっと円卓の騎士は感嘆のため息をついた。

 自分は未だ未熟かと思いかの王に負けぬように精進せねばとキングガンダムⅡ世は内心決意をあらたにするのであった。

 

 

 

「そのような事があったのか・・・・・」

 

「それではアルマナの長老が語ったガンダム族の騎士とはウーサーガンダムの事だったのか」

 

「それにしてもなんでその事を秘密にしたんだ」

 

円卓の騎士達の疑問にアントニオは苦い表情になり理由を言った。

 

 

「それはその異世界に悪しき者達が侵略してくるのを防ぐ為だったのです、このスダ・ドアカワールドにはグレートデギンのような悪しき者達がおります、その者達がかの世界を知ったら我が物にしようと考えるでしょう、それを防ぐ為でした、この事を話てくれたキングガンダム様もよほどの事がないかぎり話てはならないと念を押していましたからな」

 

 

「なるほど、その世界の平和の為だったのか・・・・・・しかし何故今になってこの事を」

 

 

「それはですなユーサーガンダム様はこう言い残していたそうです、再び星命樹マナを必要とする時がくる、そしてその力を狙う悪しき力も現れるだろう、その悪しき力より星命樹マナを守らねばならない、そのとき円卓の騎士の力が必要になると、あの時の長老殿の言葉を聞いてもしやこの事ではと思ったのです」

 

 

「そうだったのか、今まで秘密を守り抜いてくれてありがとうアントニオ」

 

「いえそんなたいした事ではありませんよ、むしろ子守の方が大変でしたな」

 

 

アントニオはおどけたように笑い、その言葉にキングガンダムⅡ世は苦笑するのだった。

 

 

 

すると闇騎士ガンダムマークⅡがアントニオを見、ある疑問を口にした

 

「アントニオ殿、星命樹マナが実在するのはわかったが、その異世界へのゲートはいったいどこに?」

 

「それが、このブリティス近辺としかそれにそのゲートを起動する銀の鍵も必要だというのですが、それもまったく」

 

「・・・ゲートを見つけたとしても鍵がないのではどうしようもないぞ相当時間が懸かる可能性があるか・・・・キングガンダムⅡ世私に探索を御命じください、円卓の騎士全員で事にあたるわけにはいきますまい」

 

闇騎士の言葉に弟である嵐騎士ガンダムマークⅡが反論する。

 

「兄さん一人で行くのは危険だ異世界なんだ複数の騎士で事にあたるべきだ自分も共に行こう」

 

「そうはいかんおまえはこれから円卓の要の一人となる騎士だ俺一人でいくべきだ」

 

「そういう兄さんこそ王を除けばあなたは円卓の中でも随一の騎士ではないか」

 

「おまえ達やめぬか、王の御前で兄弟喧嘩するのか」

 

「「!!申し訳ございませんキングガンダムⅡ世」」

 

口論になりそうになるのをF90に諌められはっとなり二人はキングガンダムⅡ世に謝罪する、そんな二人をキングガンダムⅡ世は気にするなと言ったそして次の日にまた話し合う事になり会議は解散となったその終わりの時にキングガンダムⅡ世はアントニオにその世界の名前を聞いた。

 

「そういえばアントニオ、その異世界の名はなんというのだ」

 

「ふむ名前は確か・・・・・フロニャルドというそうです」

 

 

 

 

この時騎士達は知らなかったこの一件が幾多の世界の運命を揺るがす大冒険になるとは。

 

 

    これより新たなる円卓の騎士伝説が始まる。

 

 

 

 

 

               

 

                                

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘シーンが本当に辛いです・・・・


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異界への誘い 退魔の剣士

シンク達の出番はまだ先です。


 深夜のブリティス城のバルコニーで闇騎士ガンダムマークⅡは城下を眺めながていたその

 

表情は深い苦悩と憂いがあった、彼はザビロニアに操られキングガンダムⅡ世達と敵対した

 

が父親の霊と弟の嵐騎士ガンダムマークⅡの身を挺した行動によって正気を取り戻したもの

 

の自分の行った事を忘れたわけではなかったキングガンダムⅡ世は許してくれたがそれでそ

 

の罪の意識が消えるわけではなかった。

 

 

 「・・・・・・俺は・・・ここにいてもいいのだろうか」

 

 「兄さん・・・・」

 

そう辛そうにしている彼の後ろから弟である嵐騎士ガンダムマークⅡが声をかけたその声には兄を気遣う優しい心情があった。

 

「嵐騎士マークⅡかすまないな情けない所を見せてしまった」

 

「別に気にしてはいないさ兄さんの気持ちも無理はないだけど自分をそんなに卑下しないで欲しい」

 

「しかし・・・・・俺は皆をそしておまえを・・・・手にかけようとしたんだぞ」

 

「それはザビロニアに・・・・」

 

「それでも恐ろしいんだ!また自分が魔に悪に染まりはしないかと・・・」

 

「そんな事はない、兄さんはまた魔に染まったりはしないしそんな事はさせない」

 

「だ・だが・・・・」

 

「嵐騎士の言うとおりだぞ闇騎士」

 

苦悩する二人の前びキングガンダムⅡ世が現れ静かにされど威厳のある声をかけた。

 

「「キングガンダムⅡ世!!?」」

 

「二人の様子が気になってな・・・やはり昔の事で苦悩しているのか闇騎士ガンダムマークⅡ」

 

「はい・・・・」

 

「そしてまた悪にならないか不安という事か」

 

「その通りです・・・・・」

 

キングガンダムⅡ世の問いかけに闇騎士ガンダムマークⅡは辛い表情で頷きその横で嵐騎士もやるせない表情になった。

 

「二人共その事で伝えたいがある」

 

「伝えたい事ですか・・・・」

 

「ああ、聖山ロンデニオン行く前に二人の父の魂が私の前に現れたんだ、息子達の事で伝えたい事があると」

 

「「父上が!!!」」

 

驚愕する二人にキングガンダムⅡ世はふかく頷くそして二人を真っすぐと見る

 

「そうだ」

 

「それで、父上から何と・・・」

 

「無理に手を出さなくても大丈夫だと息子に任せてほしいと、流石に見過ごせないと私は言ったんだが、二人の絆を信じてほしいとその力はザビロニアの力には決して負けはしないとまた息子達がその事で苦悩していたら、己を信じて欲しいと、もし真に悪であるなら改心そのものがありえないだろうそして苦悩するという事は良心があるからこそ苦悩するのだからそれはおまえの中に光がある事の何よりの証拠なのだと、だから自分を信じても良いのだと」

 

「ち・父上・・・・・」

 

父の言葉に闇騎士ガンダムマークⅡは体を震わせ目に涙を浮かべる。

 

「そして最後におまえ達の事を愛しているぞと・・・・」

 

「ちちうえーーーーーー」

 

堪えきれず号泣する闇騎士ガンダムマークⅡに嵐騎士ガンダムマークⅡは肩に手を置きキングガンダムⅡ世は天を見上げて目をつむり心の中で今は亡き二人の父嵐騎士ガンマガンダムに語りかける。

 

(これでよかったんだな嵐騎士ガンマガンダム)

 

「グスッ泣けるじゃねえか・・・・」

 

「フッ・・・・・」

 

バルコニーから少し離れた所から様子を見ていた剛騎士は涙を浮かべ麗紅騎士は優しく微笑んでいた。

 

そんな彼等を満天の星と月が優しく照らしているのであった。

 

 

 

 

 

     地球

 

様々な生命が生きる大地だがスダ・ドアカワールドとは違い知恵ある命は人間だけの世界であり魔法等は架空の物だとされている、しかし多くの人々は知らないそれはあくまで表向きだという事に。

 

そうあるのだ、超常の力というのは存在しているのである、もっともそれが幸か不幸なのかはわからないが。

 

 

 

 

 日本のとある深夜の街で一人の幼い少女が逃げるように必死に走っていた。

 

「ママ、パパ助けて・・・」

 

 何故に深夜の街を幼い少年が必死になって走っているのかそれはその少年が学校が終わり家への帰り道の半ばで少年の愛犬であるハルを見かけたからであった、しかし本来ならそれはありえない、何故ならハルは半年前に既に亡くなっているからである。

 

それが気になり少女はその背を夢中で追いかけていたらいつのまにか辺りは暗くなっており気が付いた時には街のはずれにある山の中に来ていたそれも昔祖父に近づいてはいけないと何度も言われていた所である。

 

 怖くなって急いで家に帰ろうとした時、目の前に死んだはずのハルがいた心細さから駈け寄ろとしたらハルの姿が歪に歪みあっというまに漆黒の蠢く異形に変わり襲い掛かって来たのである驚愕と恐怖で慌てて逃げ出し街へ逃げて来たが様子がおかしくどんなに走っても家につかず回りの街並みも同じままであった、最もそんな事に気づくいとまなぞ少女にはなかったが・・・。

 

「あう、いたっ」

 

ついに少女は力尽き転んでしまったそこに異形が禍々しい笑みを浮かべ口を大きく開けて少女に食らいつこうとする。

 

「いやっいやあああああああーーーーー」

 

その牙が少女をくらいつこうとした時

 

「疾っ」

 

鋭い掛け声と共に繰り出された横薙ぎに走った鋼の銀光に遮られた。

 

「グギャッ」

 

くぐもった悲鳴を上げて異形は吹き飛ばされるも立ち上がり今しがた邪魔をした相手をねめつける。

 

「えっ・・・・」

 

何も起きない事を不思議に思い少女が顔を上げるとそこには一人の青年が立っていた耳元まである黒髪に顔立ちは整いその瞳は澄んだ光をたたえている、正に眉目秀麗という言葉が似あうであろう、その身にまとう凛とした空気と共に見れば時代劇の秀麗な若武者のような印象を抱くだろう、黒い制服に身を包つつみその手には一振りの澄んだ輝きを放つ長刀を持っていた。

 

「誰・・・・・?」

 

青年は少女の様子を見ると特に怪我をしている様子がない事に少し表情を和らげた後再び表情を鋭くして異形に向き合う。

 

「堕ちた犬神の類か、もうかつての己を完全に見失ってしまったか」

 

そう青年は哀感を滲ませた言葉を呟くと刀を構えたその時少女は青年の体から白銀の光が発しているように見えた

 

すると異形は口を開くとその口から幾つもの小さい獣の頭部の形をした黒い塊が飛び出し青年に襲い掛かっていった。

 

青年の持つ刀が神速で閃き襲い掛かってきた黒い塊を悉く切り払っていく、これを見た異形は相手が手強いと察するも逃げ出す事はしなかった。

 

なぜなら異形は長い封印の中で飢えていた急いで青年の後ろにいる少女を食わなければ存在を維持しきれないからであるしかしその為には目の前の青年が邪魔であったしかし倒す事はできそうにない、そう倒すことはだが。

 

青年は襲い掛かって来た黒い獣の頭部達を全て切り払うと目の前の異形はけたたましい雄たけびを上げた、悍ましき叫びに少女が恐怖で身をすくませ、青年は何かを仕掛けてくると察すると刀を油断なく構える、すると異形の全身から再び獣の頭部が現れたしかしその数は先までより多かったそしてそれらは直ぐに二人を襲わず、回りを円陣を描くように回るだけであった。

 

「そう来たか」

 

「ひい、いやっ」

 

少女は囲まれてしまった事に怯えて身を震わせる

 

「大丈夫だよ後少しで終わるからじっとして」

 

青年が優しく声をかけ少女に笑顔を向けるとそれに不思議な安堵感を少女は抱き小さく頷く

 

その時周囲を旋回していた黒い獣の頭部が青年に向けて一斉に襲い掛かっていった、異形は獣の頭部を青年の足止めに使ったのであるそのまますかさず少女に襲い掛かろうとした。

 

「おおおおっっ」

 

青年は強烈な気迫を解き放つと全身から白銀の霊力と共に強烈な雷が発生するそれは周囲の暗黒を切り裂くかのように鋭く雷神の如き威容を見せるそして迸る雷は青年の手にある刀に宿る。

 

青年は雷を宿した刀を下段に構え下から上に切り上げると共に全身を回転させる

 

「雷公三式 龍牙廻天」

 

神速にて閃く白銀の雷刃があたかも天をかき回さんとする雷龍の如く周囲を旋回し薙ぎ払い黒い獣の頭部を悉く消滅させていきその凄まじい威力は周囲を白色に染め上げていく、そしてその龍の牙は少女に襲い掛かろうとした異形も切り裂きその身を焼く。

 

「ギグギャアアアアアアアア」

 

強烈な一撃に異形は悲鳴を上げてそのまま地面に落ちなんとか立ちあがろうとしたが出来た事はそれだけであった、そして異形が最後に見たのは。

 

「滅」

 

鋭い掛け声と共に自身に振り下ろされた白銀の雷刃であった。

 

 

悲鳴を上げるいとまもなく両断された異形は黒い煙を出して消え始め最後黒い泥濘のような塊になった後塵になって完全に消え去った、その様子を見て青年はふと息を吐くと構えを解き刀を鞘に納め少女の振り向くと安心させるように笑いかける。

 

 

「大丈夫かい怪我はない?」

 

「うん・・・・あっ」

 

 少女はほっとして小さく頷くと辺りを見回して驚愕する何故なら、今まで街中を走っていたはずなのに周囲は逃げ出したはずの山の中だったからである。

 

少女は驚いて目をぱちくりしていると、青年も辺りを見回して合点がいったのか苦笑する

 

「隠の業だよ化生の類がよく使う呪術の一つさ、神隠しと言えばいいかな」

 

まだ呪術の事など全く知らない幼い少女には理解できず目パチクリしてるう少女に無理もないと苦笑し少女の目線を合わせて屈み手を伸ばす

 

「とりあえず無事で良かった、立てるかい」

 

「うんっ 助けてくれてありがとうお兄ちゃん」

 

少女はその手を取り立ち上がると回りを見渡し悲痛な表情をになる、その表情に何かあると思い青年は言葉をかけるすると少女は辛そうに話し出した。

 

 以前ハルを散歩に連れて行った時ふとした拍子に綱を離し、ハルが駆け出してしまい止める事もできず慌てて追いかけるも道路にハルは飛び出しそして事故にあい死んでしまったという事だった。

 

「お兄ちゃんハルは私の事を嫌いになっちゃたのかな」

 

「どうしてそう思うんだい」

 

「あの時私が綱を離したからハルは死んじゃったの、だからきっと怒ってるよ」

 

そう言うと少女は目に涙を浮かべ俯くとすると青年は少女の前に屈み目線を少女と合わせると柔らかに首を横に振った

 

「そんな事ないよハルは君の事を嫌っていないよむしろ君の事をずっと心配していたんだよ」

 

「どうしてそう思うの」

 

「どうしてって、それはね僕がここに来れたのもそのハルが案内してくれたからだよ」

 

「えっ・・・ハルが・・・」

 

「そうだよ、あの異形から君を守ろうとしてずっと傍にいたんだよでも君の自責の念が強すぎてうまく伝えられなかったようだね、そして君の念をかぎつけたあの化外はハルに化けて君をここにおびきだそうとしたんだよ」

 

少女が慌てて辺りを見渡すもハルの姿は見当たらないすると青年はちょっと待っててねというと、手に霊気を集中し何もない所に手かざすとそこに光が溢れそこには少女の見知った犬の姿へと変わる。

 

驚いた少女は泣きながらハルに抱き着いた。

 

「ハルごめんね本当にごめんね」

 

優しく抱きしめながら泣きじゃくる少女にハルは優しく鳴いた少女の悲しみを癒すために限られた時に全てを伝える為に。

 

少しして少女は泣き止み青年に顔をむける、青年は優しく微笑む。

 

「ほら、ハルは君の事怒ってなかったね」

 

「うん、本当にありがとうお兄ちゃん」

 

すると少女の腕の中にいたハルの姿が薄れだした。

 

「ハル?!どうして」

 

「時間が来たんだ本来死んだ魂は天に帰らなきゃいけないんだでも君への未練で無理して今まで留まっていたけど全てが終わったから、天に帰る時が来たんだ」

 

「そんな一緒にいられないの」

 

「ごめんね、それは出来ないんだ無理に現世に留めれば色んな念にさらされて魂が歪んでしまうんだ最悪消えてしまうかもしれない」

 

「そうなんだ・・・・」

 

「だからここでしっかりとお別れをしよう辛いと思うけどハルに未練を残さない為にも」

 

「うん・・・・わかった」

 

すると少女はハルに向き合った

 

「いままでずっと一緒にいてくれてありがとうハル愛華はもう大丈夫だから・・・・だから・・・・さよなら」

 

その言葉を聞きハルは安心したのか優しく一声ワンと鳴くと完全に消え一筋の光となり天へと昇っていった。

 

愛華と青年はハルの魂が天へと昇り消えるのをじっと見守る。

 

そんな二人を月が明るく照らすもどこかその光は淋しかった。

 

 青年は愛華を彼女の家送にる事にした異形を倒したとはいえ真夜中だ少女一人では危険である、幸い家はそんなに遠くなく歩いて向かう事にした。

 

「お兄ちゃんてテレビに出てくる霊能者さんなの」

 

「ウーンまあそんな所かなちょっと違うけど」

 

「ああいうのいつも相手にしているの」

 

「まあね」

 

「怖くないの」

 

「それは怖いさでも怖がってばかりじゃ誰も助けられないだから心を磨くんだ勇気を絶やさないためにね」

 

「勇気」

 

「そうああいうのはどんなに強くても心が負けていたらどうする事も出来ないからね」

 

(不思議なお兄ちゃんだな)

 

色々話ているうちと道の突き当りから一人の女性が現れるかなり焦燥しているようで辺りを誰かを探すようにきょろきょろしている。

 

「あっママだ」

 

どうやら愛華の母親ようであった、愛華は母親に駆け寄り抱き着いた。

 

「ああっ愛華探したのよもうっ」

 

「ママごめんなさい」

 

「でも無事で良かったどこか怪我してない」

 

「大丈夫だよ、霊能者のお兄ちゃんに助けてもらったの」

 

「そう、その人はどこに」

 

と母親は辺りを見回すも青年の姿はなかった。

 

青年は親子から少し離れた木々の上で親子の様子を見ていた二人が青年を探すのをあきらめて帰路についたのを確認すると

 

安心したように息を吐くと木を降り踵を返すと帰路につくのであった。

 

 

長野県  八重木神社

 

 神社としてはそんなに大きくはないが歴史は古く地本の文献では平安時代から既に存在しているらしい、地本では有名で参拝者もそれなりにいるが、だからといって特に観光の目玉になっているわけではないある意味ありふれた神社である、表向きはであるが。

 

 その実態は古より退魔の力を継承する一族である鞘八斗一族が代々受け継いでいる神社であるもっとも一族といっても直系の一家のみであるが。

 

 神代から長く時が過ぎ科学が信奉され始めた為か妖等もそのほとんどが表立って現れなくなっている、だがそれでも悪しき妖魔等が完全に消える事はないのだ人の内に悪ある限り絶える事はなく、そしてそれを払う人もまた絶える事はないのだ。

 

 そんな真夜中の神社の参道を先ほど異形を滅ぼした青年が歩いていた、山中にあるせいか街の明かりが遠くその為、足元がほとんど見えない程暗かったが、その足取りに特に困った様子はなかった。

 

 そして神社にたどり着き本殿で祈りを済ませると社務所の隣にある家に向かったそして玄関の所にたどり着くとそこには一人の巫女服の美しい女性が立っていた年齢は20歳くらいで容姿はかなり整っており目鼻はすっとしてその瞳は穏で柔らかなまなざしをしているいわゆる大和撫子といった所か。

 

そして女性は穏やかな風貌通りの穏やかな声音で青年をねぎらった。

 

「ただいま姉さん」

 

「お帰りなさい武 怪我はない大丈夫」

 

「大丈夫だよそんなに強い妖魔じゃなかったし先も電話した通り特に怪我はないよ」

 

「そう良かったわ、そういえば夕食はまだだったわね、待っててね今温めるから」

 

「ありがとう姉さん、そういえば梓乃のはどうしたのもう寝ちゃった」

 

「あの子は武兄さまが返ってくるまで起きてると言っていたけどあなたが電話で無事を伝えた時気が緩んじゃったのかすごく眠たそうになってね、明日学校もあるから寝かせたわ」

 

「そう、良かったお勤めの時いつも無理に起きていて体調を崩さないか心配だったんだ」

 

「あの子もあなたの事が心配なのよ」

 

「うん、それはわかっているんだけどね」

 

武は苦笑すると姉と一緒に家に戻ると姉は晩御飯を温めに台所にいき武は自分の部屋で着替えをすませ一息つくと、部屋の前の廊下を元気な足音がかけると部屋のドアが開き一人の少女が飛び込んできた。

 

「武兄さまお帰りなさい」

 

 明るい笑顔で兄の武に抱き着いた少女はとても利発で明朗な少女であった姉にも負けない艶やかな黒髪は肩から少し下の所で揃えており容姿はまだ幼く可愛いという表現がピッタリな少女だがそれでも成長すれば姉に負けずとも劣らない程の美女になるであろう。

 

「梓乃もう寝たんじゃなかったのか」

 

「武兄さまが帰って来る音が聞こえたから起きちゃいました」

 

「そうか、ただいま梓乃待っててくれて有難う、でももう寝ないと駄目だよさもないとおっきくなれないぞ」

 

「むー、全然眠くないですそれに寝なくてもおっきくなれます」

 

「武ご飯できたわよってこら梓乃もう寝なさい、明日学校でしょ」

 

「あっ星華姉さま」

 

家からは兄弟姉妹の仲の良い団欒による穏やかな笑い声が静かな夜に響くのであった。

 

 

 

ブリティス城

 

 星命樹マナに関しての調査が始まり数日が過ぎた異界のゲートに関して何か文献等に何か手掛かりはないかどうか賢者アントニオが僧正ガンタンクRと共に調べその間にもキングガンダムⅡ世と円卓の騎士達は日々の務めに励んでいたそしてアントニオとガンタンクRから調査結果が出たと連絡があり円卓の間に全員が集まったのであった。

 

 

「それで賢者アントニオに僧正ガンタンクR、ゲートでわかった事があると連絡を受けたんだがそれは一体・・」

 

「うむゲートの位置についてだが今だわかってはいないんだが銀の鍵の事はわかったぞ」

 

「銀の鍵がどこにあるかわかったのか」

 

キングガンダムⅡ世が驚き他の円卓の騎士達も驚いてアントニオとガンタンクRを見つめると二人は何故か苦笑していた。

 

「いやまさかワシも驚いたよ、のうガンタンクR殿」

 

「ええまさかもう既に銀の鍵が我々の元にあったとは」

 

二人の驚愕の発言に円卓の騎士達は騒然となる。

 

 

「既に我々の元にあるだと・・・????」

 

「どういう事だそりゃ」

 

「ねえ重騎士F90俺たち銀色の鍵なんて持ってたっけ」

 

「いや俺達持ってないはずだよ法術士F90は何か知らないか」

 

「僕も知らないよ・・・父上は何か心当たりある」

 

「いやわしも心当たりはないが」

 

「アントニオにガンタンクR教えてくれないか銀の鍵とは一体」

 

キングガンダムⅡ世の言葉に二人は頷くと視線を嵐騎士達、流星の騎士団に向けると厳かに告げた。

 

「それは流星の騎士団が持つシルバーディスクの事なのです」

 

「我々の持つシルバーディスクが?!!!」

 

「本当かよ」

 

「いや良く考えてみればシルバーディスクは時空を越える力を持つんだゲートの鍵でもおかしくはない」

 

 流星の騎士団達は驚くも納得するシルバーディスクによって何度も窮地を救われその力をよく知っているからである、かつて獣騎士ベルカ・ダラスとの死闘において彼等は幻夢界に引きずり込まれた際その力に翻弄されあわや全滅かという時にシルバーディスクの時空を跳躍する力に助けられたからであるその後もシルバーディスクに彼等は度々救われる事があった。

 

「ならば後はゲートを探すだけだが、調査はどうだ」

 

キングガンダムⅡ世は騎士達に質問するが答えは芳しくなかった。

 

「それが、文献等を漁ってみたのですが全く」

 

「ゲート自体が秘密にされていたからな知っている者はいないのかも」

 

「それなら全員でブリティス近辺を調べてみるしかないか」

 

そう円卓の騎士達が相談していると流星の騎士団達の手に持つシルバーディスクが突如光を放ち始めたのである眩い光が円卓の間を照らすその様はまるで白銀の太陽のようであった。

 

「シ・シルバーディスクが光を」

 

「キングガンダムⅡ世これは一体」

 

「わからないがもしかしたらシルバーディスクは何か伝えようとしているのかもしれない」

 

シルバーディスクは光を放ちながら流星の騎士団の手元を離れると浮かび上がり円卓の中心の真上に移動し光を真下に放つすると円卓の騎士達の前に光のヴィジョンが浮かび上がる。

それはどこかの山の上の光景であったさらに山の麓に町らしきものがあった。

 

「あの町知っているぞ」

 

「本当か麗紅騎士」

 

「ああ、あそこはランスローの町だ山頂からの景色をみた事があるから間違いない」

 

「ランスローって言えば湯治場で有名な町じゃないかここから大分離れているが特に危険はない所だ」

 

 

「キングガンダムⅡ世どういたしますか」

 

「まずは探索の騎士を送ろう」

 

キングガンダムⅡ世は流星の騎士団達を見ると重々しく口を開いた」

 

「嵐騎士ガンダムマークⅡ、麗紅騎士レッドウォーリア、剛騎士ヘヴィガンダム」

 

名前を呼ばれた三人は居住まいを正し厳粛な表情になる。

 

「三人にゲートの探索を命ずる、何かわかったら直ぐに城に戻り報告してくれそれとゲートの事は街の人達には秘密にして欲しい、民が万が一近づいて危険な目に合わせるわけにはいかないからな」

 

「「「はっ」」」

 

流星の騎士団達は臣下の礼を取りながら命令を受け力強く頷くのであった、ここに円卓の騎士達の星命樹マナの探索行が始るのであった。

 

 



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聖騎士の伝説

   

 

            フロニャルド

 

 

 

 この世界を初めて見た者達は皆等しく感銘を受けるだろうまるで楽園のような神の世界だとある意味その通りなのかもしれない幾多もの精霊や神々や神獣が息づきその全てが善性がとても高いのである、そんな世界の為かそこに生きる人々も善良な人々が多く殺し合いという戦争自体がないのである。

 

 そんな平和な世界でもそれを脅かす存在が尽きないというのは悲劇なのであろうそれとも平和と争いは表裏をなすものだという事なのだろうか、それでも人々が血を流しあわないそれだけでも究極の奇跡と言わざる得ない事に変わりはないのだ真の楽園とは心の内なる善性のみが可能とするのかもしれない。

 

 

     パスティヤージュ公国

 

フロニャルドの南方に位置する国であり昌術と言われる独特の技術の研究が盛んでありまた

大型の鳥類ブランシールの飼育がおこなわれいる古い歴史を持つ国でありその首都であるエスナートは芸術の都でも有名である。

 

そして今現在のフロニャルドを作った切っ掛けとなった国である。

 

その首都エスナートにある領主が住まうエッシェンバッハ城の地下で二人の男女が向かいあいながら調べものをしていた。

 

女性のほうは美しい金髪に瞳に星のマークが浮かんでおりその雰囲気はとても穏やかで優しい空気をまとっていた

 

対する男性は狼の耳と尻尾があり、銀髪に鋭利な雰囲気を放っているがその瞳には深い知性の輝きを持ちどこか透徹した雰囲気を纏っていた

女性の名前はアデライト・グランマニエそして男性の名前はヴァレリア・カルヴァドス

 

彼等はかつて数百年前にパスティヤージュ公国を建てた祖でありそして幾多もの魔物を打倒し平和な時代を築き上げた英雄達である。

 

自分達の為すべきことが終わったのでその後眠りについていたのだが、ふとした事から目覚めることになり、しばらく今のフロニャルドの様子を見守る事を決めしばらく滞在する事にしたのであった。

 

「ふあああーーなあ アデルちょっと息抜きしようぜこうも毎度毎度書物とにらめっこばっかりしてたらカビがはえちまうぜ」

 

「もうヴァレリーはそのセリフは何度目なのです」

 

「だってよ、こうも地下にこもってばかりだとなぁ」

 

「それで、外に行って覗きとかしようしているのではなくて」

 

「うっ、そ・そんな事ないぞ本当にただ外の新鮮な空気がすいたいなーと」

 

ヴァレリーが額に汗をかきながら言い訳を言いそれに半目になりながらアデルは溜息ををつくと二人のいる部屋の扉が勢いよく開き一人の少女が飛び込んできた。

 

リスの耳と尻尾にお転婆な雰囲気と好奇心旺盛な瞳が印象的である、名前はクーベル・E(エッシェンバッハ)・パスティヤージュ。

 

現パスティヤージュ公国の第一公女であり時期領主見習いでありアデルとヴァレリーの子孫でもある。

 

「ご先祖様、お茶を用意したぞ少しは息抜きせんとな」

 

「まあクーベルありがとう」

 

「おっいいタイミングだぜちょうど息抜きしたかった所だ」

 

「ふふん、時期領主としてこれくらい当然なのじゃ」

 

と胸を張るクーベルの背後から紅茶とお菓子が乗ったカートを押した侍女達が現れ恭しく準備をすると一礼して去っていくのであった。

しばしお茶とお菓子に舌鼓を打った後、クーベルがアデル達に尋ねた。

 

「それでご先祖様、一体何を調べておったのじゃ」

 

「それは昔の伝説で少々気になった事があったので」

 

「気になること」

 

不思議そうに首を傾げるクーベルにヴァレリーが頬月をつきながら答えた

 

「ああ、俺達よりもっと昔に魔物達と戦った奴等の事だ」

 

「ご先祖様達よりも前じゃと?それは一体どういう話なのじゃ」

 

「それは今から千年以上前にあった戦いなのです、その時は今程技術等が発展しておらず人々は魔物から隠れ住んだり強力な土地神や精霊の庇護を受けたりしながらくらしていたそうなのです・・・ですが」

 

「ですが?」

 

困惑した表情になるアデルにクーベルが質問すると今度はヴァレリーが答えた。

 

「なんでもある日突然今まで見た事のない魔物が現れたんだとさ体が金属や石で出来ていてなしかも倒しても倒しても際限なく現れやがったんだとよ」

 

「なんじゃそれはそもそも魔物とは土地神や精霊の病気ではなかったのか」

 

「ええ、確かにそうなんですがその時現れた魔物達は違った、書物に書かれたその姿はまるで心のない機械のような印象を受けるのです」

 

「んでもってそうこうしてるうちに遂にその魔物達の親玉が現れやがったんだそうだ、青白い瞳に鉱石の体と翼を持ちその吐息は雷で血はまるで油のようだったんだってよ」

 

「その悍ましい姿から人々はその魔物達の王をこう呼んだのです暴食の業龍ギンヌンガカプと」

 

「そして真の恐怖はそこから始まったそうだ、なんでも手あたり次第に自然や生命を食い散らかしさらに土地神や精霊も結構犠牲になったらしい」

 

「な・なんとそんな魔物がおったとは、それでその後どうなったのじゃ」

 

「フロニャルドの人達は土地神や精霊と協力して戦ったのですがまったく敵わずそしてみんな次第に追い詰められて行ったそうなのです、それでもなんとかフロニャルドを守ろうと最後まで戦おうとしたのです」

 

そうしてアデルは一息をつき紅茶のカップを手に取り少し冷めた紅茶を一口だけ口に含むそんあアデルにクーベルは待ちきれない様子で続きを促す。

 

「そんな時ある集落で一人の幼い子供が病に倒れたでも薬草を取りに行こうとも魔物達が蔓延る所を通らなければならない、皆が困っているとき一人の少女が周囲の人々が止めるのを聞かず集落を飛び出し薬草を取りにいってしまったのです」

 

「そして数日たっても帰ってこなかった人々は魔物に襲われてしまったのではないかと思ったそうです」

 

そんなアデルの言葉は当時の悲痛な様子を想像していたのか辛そうだった、となりのヴァレリーも顔をしかめていた。

 

「そんな中遂に魔物の大群が押し寄せて来ましたもう駄目かとみんながあきらめかけた時少女はかえってきたのです、不思議な姿をした13人の騎士を連れて」

 

「13人の騎士は瞬く間に魔物の大群を打ち破り人々を助け出しましたそして13人の騎士の長はこう名乗ったのです、自分達はスダドアカワールドから来たブリティス王国の国王にして円卓の騎士団が長ユーサーガンダムと」

 

「スダ・ドアカワールド?!ブリティス王国じゃとまさか????!!!」

 

驚愕するクーベルにアデルとヴァレリーは苦笑する背伸びはしていてもまだこういう所はまだ子供だなと思い。

 

「そう彼等はシンク達とは別の異世界から来たということなのですそれも人間ではなくMS族というまるでロボットのような容姿をしていたそうなのです」

 

「そして人々から話を聞いたユーサーガンダムと円卓の騎士達は魔物達の討伐を決意し彼等の元にフロニャルドの人々は団結して戦いそして遂にユーサーガンダムの持つ聖槍ロンによってギンヌンガカプは滅ぼされ再び平和を取り戻したのです」

 

「おおっ凄いではないか」

 

「ええそしてその後人々はユーサーガンダム達円卓の騎士団に感謝のお礼として星命樹マナの若木と雫を送ったのですそして彼等は自分達の世界へと帰ったそうなのです」

 

「ご先祖様以前にもそのような方々がいたとは、そういえば星命樹マナとは一体なんなのじゃ?」

 

「フロニャルドに遥か昔から存在する神樹だそうだ、星の力を蓄え天に届かんばかりの大きさを持ちその木の葉から生じる雫はどんな荒れ果てた大地を復活させる事ができるんだとよ」

 

「ええ私達もその星命樹マナを探した事があるんですが、見つける事は出来なかった」

 

「ご先祖様が世界中を探し回ってもか」

 

「いくら探し回ってもなにも見つからなくてな結局断念する事になっちまった」

 

「恐らく何か鍵となるものが必要だったのではないかと私は考えているのですが」

 

「そうなのか、しかしそのユーサーガンダムというお方はすごい方じゃのう遥々遠い異世界から来てたすけてくれるとは」

 

「ええ書物ではとても高潔で優しくて紳士な騎士だったそうなのです」

 

「にひひ、つまりヴァレリー様とは正反対という事じゃな」

 

「なっおいそこで俺とくらべんなよ第一魔王なんて呼ばれている俺が紳士を気取ってどーすんだよ・・・」

 

「まったくです、ヴァレリーも少しは見習って欲しいです」

 

「おいアデルーーーー!!!」

 

嘆息するアデルを見て情けない声を出すヴァレリーそんな二人を見て意地悪な笑みを浮かべるクーベルとても穏やかな空気が流れていた。

 

「そういえば、そろそろシンク達がやってくる時期でしたね」

 

「うむ!久しぶりにレヴェッカと会えるのじゃ色々準備せねば」

 

「あいつらが来るのかどうりであちこちソワソワしているわけだ」

 

「ミルヒ姉とレオ姉も楽しみにしておるじゃろうしのどんな歓迎にしようかの」

 

久しぶりに会う大切な友人達の事を思い浮かべながらクーベルは楽しそうにするのであった。

 

 

 

武はふと闇の中で目覚めたしかし彼の意識は今自分が夢を見ていると何故か理解できていた、闇の中で漂っていると彼の前で極光が現れたそれは様々な色彩を放ちながら力強く輝きを放つまるで銀河の光のような神秘的な印象を受けた。

 

(これは一体????・・・・)

 

すると光から幾つもの光の粒子が力強い輝きを放ちながら飛び立ちそれがいつの間にか目の前にあった地面に落ちるとそれは瞬く間に巨大な大樹へと姿を変えるすると地面から清らかな泉や深緑の草に覆われた平原、豊穣に満ち溢れた森等が生まれた。

 

 

(神代の時から伝えられた世界樹みたいだなでも一体何故?)

 

訝しむ武の前で豊かな大地から次々生命や精霊が現れ穏やかな営みを始め瞬く間に世界に広がっていった。

 

生命が溢れた後しばらくして、大樹から光が溢れそれは一人の女性の形になるその女性は嬉しそうに目の前の美しい光景を見守る、その姿はまるで慈愛の女神のような深い愛に満ち溢れていた。

 

このまま穏やかな日々が続いていくのかと武が思っていると、大地から昏い影が現れだし生命や精霊を襲い始めたその光景を目にした女性は光の剣を手に影を払うも影はどんどん現れ豊かな大地を蝕んでいくその内女性も追い詰められていきついに影は大樹に取りつこうとしたその時武の頭上で黄金の輝きが現れた。

 

(今度はなんだ?!!)

 

 驚いた武は顔を上げるとそこには神々しい光を放つ黄金の竜神がいた力強く雄々しい翼と深い威厳を携えた瞳が大地を見ると竜神は悲しみの涙を流しながら自分の体の一部を切り離し大地に落とす、すると白銀の涙と竜神の欠片は絡み合い一つになって大地に落ちそれは黄金と白銀の鎧を纏った騎士となり影を次々と切り払っていった。

 

打ち破られた影は一つになって巨大な獣になり騎士と女性を襲うも光の剣と騎士が持つ光の槍の前についに力尽きて滅びるがその時女性も力尽きて倒れてしまいそれと同時に大樹も枯れ始めてしまう、その女性の回りでは幾多の動物や精霊が涙を流しながら悲しみそして騎士達も涙を流し悲嘆する。

 

彼等の流れ落ちた涙が女性に掛かるとその女性は光を発して苗木へと姿を変えていたそしてその傍らには光の剣が変わらず輝いていた。

 

 

「武兄さま起きて、武兄さま!」

 

突如聞こえてきた妹の言葉に武はハッと目を覚ました。

 

「梓乃?・・・」

 

「どうしたの武兄さま?」

 

「ああいやなんでもないよ、それよりおはよう梓乃」

 

「おはよう武兄さま」

 

満面の笑みを浮かべながら抱きついてくる梓乃の頭を優しく撫でながら武は今しがた見た夢を思い起こす。

 

(夢にしてはやけにはっきりしてたな何かの予兆なんだろうか)

 

何か強い予感を感じ不安を覚えるのだった。

 

 

 朝食の食卓の上には炊き立てのご飯が温かい湯気を上げ新鮮な鮭を丁寧に焼いた焼き鮭が食欲を刺激する匂いをだしこれまた丁寧にだしを取った味噌汁の匂いが落ち着かせる、主菜は昨日からしっかりと味をしみこませた鰤大根がまたさらに食欲をさらに引き出す。

 

両親が家を留守にしている時は鞘八斗家の台所は長女の星華の担当である、しっかりとした料理の出来に満足気に星華は頷くと台所に武と梓乃が入って来た。

 

「おはよう、武、梓乃」

 

「おはよう姉さん」

 

「おはよう 星華姉さま」

 

「今朝ご飯が出来た所よ冷めない内に食べましょう」

 

「うん」

 

「はい、姉さま」

 

姉が作った朝食を梓乃は嬉しそうに頬張るその横で武は先まで見ていた夢が気になりせっかくの食事もどこか上の空であった、そんな武の姿が気になったのか星華は声をかける。

 

「どうしたの武ボーとして調子が悪いの」

 

「あっいやなんでもないよ姉さんちょっと考え事してて」

 

「そう,もし何かあったら無理せず相談するのよ」

 

「ありがとう姉さん」

 

そうして食事が終わり空いた学校までまだ時間があったためお茶を飲みながらゆっくりしているとテレビのニュースでアイアンアスレチックの特集が映される、そこには黒髪のショートの少女と金髪の少年が色々な障害物を越えている姿があった。

 

「あっアイアンアスレチックだ」

 

「梓乃は本当にアイアンアスレチックとか好きね」

 

「うん」

 

「この放送は今年のか少年の部はこの二人の独断場だったね」

 

「二人とも幼馴染で師弟関係なんだって」

 

「フーンそうなんだ、去年は黒髪の子が勝っていたけど、今年は同着か来年はどうなるかわからないな」

 

「うん、二人ともかっこいいよね武兄さま」

 

「そうだね梓乃来年が楽しみだ」

 

「武、梓乃そろそろ学校に行く時間よ」

 

「あっ本当だ」

 

梓乃は星華の言葉に慌てて自室に戻り武も席を立とうとすると星華が声をかけてきた。

 

「武、今年も修行に行くの?」

 

「ああ そうだけど、どうしたの姉さん」

 

「お父様とお母様から年末には戻るって連絡があってね年末はみんなで過ごそうて」

 

「そうなんだ!わかった今年はなるべく早く切り上げてくるよ」

 

「ええ、お願いね武」

 

話がおわった所に登校の準備が終わった梓乃が台所にやってきて慌てた様子で武に声をかける。

 

「武兄さま早く学校に行こう!」

 

「わかった今行くよ梓乃それじゃ行っきます姉さん」

 

「行ってきます星華姉さま」

 

「いってらっしゃい二人共気を付けてね」

 

学校に向かう二人に星華は手を振りながら送り出すとふっと息を吐く天を見上げる

 

「もうあれから、随分たつのね・・・叔父様、梓乃は元気に育っていますよ」

 

その表情は優しくも嬉しそうであったが一抹の悲しみがあった。

 

 

 

 

ランスローの町は湯治場として有名な場所でありあちこちから温泉の湯気が立ち上りのんびりとした空気が漂っていた。

 

ランスローの町の長の家から嵐騎士ガンダムマークⅡ達、流星の騎士団が出てくるとその後から町長が現れると彼等に頭を下げるその町長の様子に嵐騎士ガンダムマークⅡは気にするなと告げると彼等は探索を再開するべく町長の家を後にするのだった。

 

「最近特に異常な事はなしか・・・どうやら山頂にあるわけではないようだな」

 

「そうだな、山頂にあるなら何か異常に気付くものが現れても不思議ではないしな」

 

「それじゃあ山の中しらみつぶしに探すしかねえってことか」

 

三人は腰を据えて探そうと決意をすると彼等の持っているシルバーディスクが淡い光を放ち始めた。

 

「これはシルバーディスクが反応を!!!」

 

「おおってことは近づいているって事かいやー本当に便利なアイテムだぜ」

 

「しかしこれ程の物一体誰が作ったんだろうな」

 

「別に誰でもいいじゃねえか便利なんだしよ」

 

不思議な力を持つシルバーディスクを訝しむ麗紅騎士に剛騎士が能天気に返すと彼等はシルバーディスクの光が強くなる方向へと向かうのであった。

 

町を後にしようとする流星の騎士団達を物影から見つめるフードを深く被った人物がいたフードに隠れてその顔は見えないがフードから覗く口元がニヤリと笑みを浮かべると彼等を追い山へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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フロニャルドヘ

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。




愛知県紀乃川市鴇野町

 

 

一地方都市の緑の豊な土地であり特にこれといって普通の町である。

 

冬の町の所処に落ち葉が散見され日中とはいえどこか年が暮れていく寂しさみたいなものが感じられる中そんな空気等吹き飛ばすような快活な空気を纏った少年と少女が話をしながら歩いていた。

 

一人は金髪碧眼の少年シンク・イズミと茶色の髪と緑眼の少女レベッカ・アンダーソンである彼等は異世界フロニャルドで紆余曲折あって勇者をしている者達である。

 

「本当シンクは冬でも元気よね」

 

「もちろんだよベッキーいやむしろ冬だからこそ目一杯体を動かさないとね病気にならないように!!」

 

「シンク・・・それ夏の時も同じような事言ってなかった」

 

「えっ?!そうだっけ」

 

どんな時もどこか天然な空気が抜けないシンクに若干呆れたようにレベッカは返すと話題を変える

 

 

「ねえそれよりそろそろ冬休みよね、またフロニャルドのみんなに会えるわね」

 

「うんっプレゼントとか色々考えないと」

 

「そうだね、どんなのにしようかな、・・・・」

 

フロニャルドの事で盛り上がって話しこんでいる二人に冬の冷たい風が吹き付けベッキーは身震いをする。

 

「ううっ寒っ・・フロニャルドって冬でもここまで寒くないそうだし、あーーークー様と一緒にお昼寝したいな・・・あの尻尾とっても温かいんだよね」

 

「僕は姫様とフリスビーで遊びたいな」

 

「ほ・本人が喜んでいるからいいけど、どうなんだろう、あれ」

 

一国の姫相手にフリスビー遊びをするのはどうなんだろうかとレベッカは内心冷や汗を流すただ投げ合うだけならともかくシンクが投げたフリスビーを姫に取ってこさせるのである、しかも姫は犬の尻尾と耳がある為か傍でみればもう事案でしかないという有様である、しかしその姫本人が喜んでいるのでは文句も言えないのだがもっともベッキーも人の事は言えないが。

 

一際強い風が吹き二人の歩いている道路を駆け抜けていき二人は身じろぐと,むかいから歩いてきた幼稚園児の黄色い帽子が飛んで行ってしまい幼稚園児が手を伸ばした時には遅くどんどん風に乗って飛んでいく。

 

「あっ帽子がってシンク!?」

 

「ベッキー鞄をお願い」

 

シンクは鞄をベッキーに渡し帽子を取ろうと駆け出そうとした時二人の後ろから来た自転車が急に止まり乗っていた青年が一瞬で自転車の座席を蹴って跳躍し宙に浮かんでいた帽子を取り道路に綺麗に着地をする、着地の瞬間屈む事で衝撃を大地に逃がしたのか特に何事もなく立ち上がると帽子を幼稚園児に渡す。

 

「これ君の帽子?」

 

「うんありがとうお兄ちゃん!!!」

 

「どういたしまして、これから気を付けるんだよ」

 

「うんっ!」

 

幼稚園児はお礼を言い幼稚園に向かっていったそれを見て青年は穏やかに微笑むと自転車に向かう。

 

「うわあ凄いね」

 

「うんっそれに気づいたベッキー」

 

「えっ何を?」

 

「あの人の自転車が倒れていない事」

 

「えっどういう事」

 

「ほら良く見てよベッキーあの人の自転車支えを下ろしていない」

 

「あっ!!本当だっ!!でもじゃあなんで倒れてないの」

 

「うーんよくわからないけど、相当なバランス感覚で自転車が倒れないように足に力を入れたんじゃないかな」

 

「いや、良くわからいけれどとにかく凄い事はわかったわ」

 

 

青年が跳躍した時自転車の座席を蹴って跳躍したのであるしかも支えもしていないのだ普通は自転車が倒れるだろうしかし自転車は倒れていないという事はどれ程の身ごなしなのかベッキーには見当もつかなかった。

 

「あの人、もしかしたら何か武術とかやっているのかも」

 

「武術って、七海みたいに?」

 

「うんっそれも本格的にやっている人かもしれない」

 

青年は驚いている二人に苦笑すると声を掛ける。

 

「ごめん、驚かせちゃったかな」

 

「いえ、気にしてないですよ、それにしても凄い跳躍力とバランス感覚ですね」

 

「いやそれほどでもないよ」

 

興奮するシンク達に苦笑しながら青年・・・武は謙遜すると遠くで学校のチャイムが鳴る音が響てきた。

 

「あっシンク早くしないと遅刻しちゃう」

 

「そうだったそれでは失礼します!!

 

「失礼します!」

 

「気を付けてね慌てて怪我しないように」

 

「「はいっありがとうございます」」

 

 二人はお辞儀をすると慌てて学校への道を急ぐべく走り出す、その二人の姿を微笑ましく思いながら武は自転車に乗り込むと走り出すのであった。

 

 

自転車を走らせながら武はふと数日前に見た夢を思い返していた、世界樹としか言いようのない大樹に女神と黄金の竜神とそこから生まれた黄金と白銀の騎士そして世界の運命をかけた戦いその後に起きた女神の死と再生。

 

まるで神話の一幕をリアルタイムで見たようであった、しかも夢なのに今でも鮮明に思い出せる、唯の夢ではない事は明確だった。

 

あの後姉に相談するも姉でもまったく見当がつかなかった唯何かの予兆ではないかと言ってはいたがそれだけであった。

 

(予知夢の類だろうかでも自分にはそういう素養はなかったはずなだけどな)

 

 強大な力を持つ者が稀に夢で未来や過去の光景を見たりすることがあるという話はかなり聞くがだからといって強大な力を持っているからといって必ずしも予知夢等をみるとは限らず全く見ない人もいるまたふとした事から普通の人が正確な予知夢を見たという事もあるので素養というのも微妙なものが予知夢の類である。

 

(そういえば、香港から高名な道士の一族の後継者が来ているって聞いたけどたしかあの一族は予知夢とかにも詳しいそうだし父さんと相談してみるかな)

 

と色々考えながら武は自転車を漕ぎどんどん山を越え谷間を越えた山間にある窪地の深い森までやって来た。

 

 深い森の前には小さなトラックや農機具や納屋等がある農家のような一軒家があった、そこから生木を斧で割る音が規則的な間隔で聞こえてくる。

 

「相変わらず元気そうだな」

 

とそんな事をつぶやくとごめんくださいと家の裏に向けて声を掛けると音が止み一人の初老の男性がやってくる一見すると普通の初老の男性のように見えるがその歩みにスキはなく相応の人物ならかなりの使い手だと気づくだろう。

 

「よお、武坊ちゃん久しぶりだな今年も修行に来たのかい」

 

「もう坊ちゃんて言われる年じゃないですよ・・・お久しぶりです進藤さん 今年もお世話になります」

 

「毎年来てくれるのは嬉しいけど星華さんや梓乃ちゃんに心配かけちゃだめだぞ」

 

「はい今年は両親も家に帰ってくるので少し早めに帰るつもりです」

 

「そうかい、それしても本当に真面目だねおまえさんは最近の若い奴はてんで真面目に修行しなくて困るよ」

 

「僕以外いないんですか」

 

「ああ、数か月前に数人来たけど直ぐに帰りやがったよまったく」

 

苦々しく愚痴をこぼす進藤に武は苦笑する彼はこの地の管理人をしている人物である、この地は霊的な力が他所よりも高く修行場として退魔士や武術家等に開放している場所であるが近年は利用するものが段々と減ってきているのであった。

 

「それじゃあ、森の小屋をお借りしますね」

 

「おう、今年も好きに使ってくれ、ほれ鍵だ」

 

「ありがとうございます」

 

「そういやいい味噌が手に入ったんでよとっておきの豚汁を作るから今夜食べに来な」

 

「本当ですか、あれ凄く好きなんですよ、それじゃ今夜ご馳走になります」

 

「ああ、楽しみにしてな」

 

武は嬉しそうにお礼を言うと毎年使っている森の小屋へと向かっていくのであった、その後ろ姿を見つめながら進藤は遠い目になり呟く。

 

「あれから8年か月日が流れるのも早いねえ益々親父さん達に似てきているな、しかし・・・無茶する所まで似なくてもいいのにね・・・・」

 

 

武は毎年寝泊まりに使っている小屋に向かう途中不意に不思議な気配を感じ、そっちの方向に顔を向けた。

 

「なんだ、この気は?」

 

毎年使っている修行場だがいままでこんな気を感じた事がなかった為違和感となって武の気を引くには充分だった

 

「邪気は感じられないな、でも少し調べてみるか、万が一常世にでも繋がっていたら大変だ」

 

霊質が高い場所は常世といったこの世ならざる幽明と繋がる事がありそこから怪異が侵入する場合もあり最悪の場合大惨事になる事もある為見つけ次第閉ざす必要があった。

 

そして武は違和感のする所へ向かうとそこには洞窟があったその洞窟をみて武は益々訝しんだ、この近くにこんな洞窟はなかったはずである直ぐに管理者である進藤に伝えてみても良かったがその前に軽く調べて見ようと思い洞窟の中に入って行く。

 

「随分深い洞窟のようだなどこまで続いているんだろう?・・・・んっ?」

 

そろそろ引き返そうと思った時武の耳に微かな水音が聞こえてきた、無視して引き返そうと思ったが何故か嫌な感じがせずむしろ自分を呼んでいるように聞こえその音のほうへと足を運ぶとそこには半径10メートルくらいの空間がありその真ん中には1メートルくらいの澄んだ水が称えられた泉があった。

 

「ここは?・・・」

 

武は泉に近づき覗きこむと澄んでいるのに底が全くみえずそれなのに水そのものが光を放っているのかただ澄んだ青色が限りなく広がっているのであった。

 

「な・なんだこれ!?・・・・はっ!?」

 

武が慌てて周囲を見回すといつの間にか当たり一体が澄んだ水で覆われていたそして彼がいままで来た道は消えていたそして水は突然澄んだ瑠璃色の光を発すると辺りが光に包まれる。

 

「しまった罠だったか・・・・うん?」

 

当たりを見渡し突破口を開こうと自身の霊気を開放しようとした時足元に何かの気配を感じるとそこから美しい女性の手が伸びていたまるで切実なまでに彼を誘うように、そして武は水面を見るとそこにはこの世とは思えない美しい女性がいた

壮麗な衣に包まれたその姿は女神としかいいようがないそしてその姿に武は見覚えがあった。

それは夢で見た光剣を携えた女神にそっくりだったからである。

 

「あなたはまさか???」

 

その女神の表情は悲しみと申し訳なさで一杯であったその深い憂いの表情と切実なまでに伸ばされた手を思わず武は掴んだ。

 

すると女神は悲しげに微笑み武の手を引くと武の体は水に沈んでいく慌てて息を吸うが不思議な事に水の中に完全に浸かってもまったく息苦しくなかったまるで自分が魚にでもなったかのようだ。

 

そして女神に手を引かれながら、武の体はどんどん深く深く沈んでいく、しばらくすると水の奥深くに光が見える

 

 

「なんだあの光は???」

 

光はどんどん大きくなり視界一帯が完全に光に包まれるといつの間にか女神はいなくなっていた。

 

 

「あの人は?ってええええええ!!!????」

 

光が消えると武はいつの間にか遥か空の上にいた、周囲を見渡すと雲しか見えない。

 

 

「お、落ちるってこれは??」

 

慌てる武だったが自分がいつの間にか水球に包まれている事に気づくそして武を包んだ水球はゆっくりと雲を抜けると眼下の光景が明らかになる。

 

「これは日本じゃない?」

 

 眼下の光景は明らかに日本ではなかったいやそもそも地球ですらなかった、遠くには島が浮かび明らかに地球ではいないであろう巨大な鳥が空を飛んでおりまた空の色は紫であった。

 明らかに地球とは違う光景が広がっていた。

 

「これは??!!!僕は一体どこに来たというんだ」

 

 混乱する武であったがとにかく自分の置かれた状況を把握しようとしたその時自分を覆い守っている水球が少しづつ小さくなっている事に気づく、そして小さくなるにつれ地上が近くなってくるどうやら森におりるようであった

 

「この様子なら大丈夫そうだな・・・って!!??」

 

武は体制を整え気を高め落下の衝撃に備えようとするとふと下に人がいる事に気づく

 

「なっひ・人がこのままじゃ激突する」

 

そして危険を知らせようと思いっきり声を張り上げる

 

「危ない!!早く逃げて!!!!!」

 

眼下の人いや少女は不思議そうに辺りを見渡し上を見ると驚愕し目を見開く。

 

「くっ」

 

水球が消え体が自由になった武は身をを捩り近くの木を蹴りなんとか少女に衝突するのは回避したが近くの岩にぶつかってしまう

 

「がっ!!!」

 

衝撃のあまり視界がどんどん暗くなってくる彼の前には血相を変えて駆け寄る少女の姿があった

 

(無事で良かった・・・しまった意識が・・・・)

 

「大丈夫ですかっ!!??しっかりしてください」

 

武の身を案じる少女の声が聞こえた所で武の意識は途切れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 流星の騎士団達三人はシルバーディスクの光を便りに山へと分け入り深い森をかき分けるとシルバーディスクが一際輝く場所で足を止めた。

 

彼等の目の前には人ひとりが入れるくらいの横穴があった中はかなり奥まであるのか明かりを灯しても奥までみえなかった。

 

「どうやら、ここのようだな」

 

「なんかあっさり見つかったな」

 

「そうだな、シルバーディスクがあったとはいえこれは早すぎるな」

 

(むしろ急がせているようにも思える、何かが起きようとしているのかそれとも)

 

麗紅騎士は内心で疑問を感じる、あまりにも順調すぎたからである、こういう探索であるならもっとてこずったとしてもおかしくはない、しかしそんな疑問を胸にしまいこむ。

 

「まあとにかく早速調べようぜ」

 

「ああ、行こう麗紅騎士」

 

「わかった」

 

彼等は洞窟へと入って行くと中は途中までは自然の洞窟だったが1時間程歩くとと岩肌の壁にたどり着くここで洞窟は終わりのようであった。

 

「ここで行き止まりか?」

 

「いやどうやら違うようだ」

 

嵐騎士がシルバーディスクを掲げると岩肌の壁が消えその先には明らかに人工物と言える石畳で出来た回廊があらわれた。

 

「なるほどな、どうりで誰もしらないわけだ」

 

「ああ、シルバーディスクがなければ唯の洞窟にしか見えないしな」

 

剛騎士が感心したようにぼやき、嵐騎士が納得したように頷くと彼等は回廊へと足を進める。

 

最初は石畳の回廊の壁には三人が見知らぬ文字が書かれており神殿のような印象を受けるそのまま彼等は進むと大きく開けた場所へとたどり着くその空間は壁や天井が淡い光を放っており柱が真っすぐ並びその柱は表面は見慣れない刻印が刻まれておりどこか浮いた印象を受けるそして並んだ柱の先には階段がありその先に白い光を放つ物があった。

 

「これが・・・ゲートなのか?」

 

「恐らくはな・・・想像と随分違うが」

 

「なんだこのガラスと輪っか?扉にゃとてもみえねえぞ」

 

彼等の視線の先には透明なガラスのような材質の直径10mくらい円盤がありその上には一部が欠けた白い輪っかが5本重なるようにして浮かんでいる。

 

「とにかく軽く調べてみよう」

 

「そうだな・・・・・だが」

 

嵐騎士の言葉に麗紅騎士は頷きつつも意味あり気に二人に目くばせをする二人は軽く頷くと瞬時に武器を取り出し構えると柱の影にむけて鋭い視線を向ける。

 

「ああ・・そこにいんのは誰だ」

 

「もしやザビロニアの残党か」

 

「いや・・・この気配は」

 

すると柱の影からフードを被った男が両手を上げながら現れた。

 

「はいはい、降参、降参だからそんなかっかしなさんなって」

 

「その声はまさか」

 

「イヤー久しぶりだねぇ騎士様方」

 

飄々とした声と共にフードが下ろされるとそこには全員が見知った顔があった、どこか掴みどころのない軽薄そうな空気を纏った男、盗賊カイである。

 

「カイじゃないか久しぶりだな」

 

「おう、キングガンダムⅡ世の戴冠式いらいだな」

 

「それにしても何故ここにいる?」

 

「いやーお宝の情報集めている時おたくらを街で見かけてねもしかしたらなんかあると思ってついてきたのさ」

 

「なんだおまえ相変わらず盗賊やっているのか」

 

呆れたようにぼやく剛騎士にカイはムッとした顔になる

 

「オイオイ人聞きの悪い事いうなよ今の俺はトレジャーハンターなんだぜ」

 

「トレジャーハンター??」

 

「そうよ遺跡という遺跡を渡り歩き狡猾な罠や凶悪な魔物を切り抜けお宝を手にする夢追い人の事さ」

 

「おおっすげーかっこいいなそれ!!」

 

「だろう」

 

歌うようにトレジャハンターの素晴らしさを喧伝するカイに感銘を受ける剛騎士だったが麗紅騎士は冷めた表情になり嵐騎士は苦笑いをする。

 

「つまり遺跡荒しという事だろ結局盗賊と変わらないじゃないか」

 

「うっそ・そりゃあまあ・・・アハハハハハ」

 

「あっててめー騙したな」

 

「いやいやこれは言葉の綾っていうやつで!!」

 

言い争いをする剛騎士とカイに嵐騎士は苦笑し後真顔になるとカイに問いかける。

 

「やれやれ相変わらずだな・・・しかしカイよ、本当に良かったのか」

 

「うん、何がだ??」

 

「戴冠式の折、キングガンダムⅡ世から正式にブリティス王国に仕官しないかと誘われただろ」

 

「そうだな、キングガンダムⅡ世もそうだがアントニオ殿も気にしていたぞ無茶やっていないかとな」

 

「オイオイ勘弁してくれよ俺が誰かに仕えるように見えるかよ」

 

「でもよお盗賊するよりかはいいんじゃないか」

 

「それともキングガンダムⅡ世に不満でもあるのか」

 

「いや別にキングガンダムⅡ世に不満があるわけじゃねえよ唯俺は自由が信条でねどうも王宮勤めは肌に合わないのさ」

 

「そうか・・・だが何かあったら相談して欲しいおまえには随分助られたからな」

 

「そうだなキングガンダムⅡ世もカイにあったらそう伝えてくれといっていたからな」

 

「ヘイヘイわかりやした、たく相変わらずのお人よしだな」

 

「そこがあの方の良いところだぜなあ」

 

「フッそうだな」

 

「ああっ」

 

旧交を温めるようにかつての事を思い出しふと和やかな空気が流れるがその時流星の騎士団は何者かの集団がこの場に近づいて来るのに気づいた。

 

「なんだ、この気配は??」

 

「この様子だと6人くらいか??」

 

「オイオイ今度は誰だよ???」

 

「ウーンこの足音からだとどうやら探検しにきた子供って感じじゃないな」

 

カイの言葉に流星の騎士団は武器を油断なく構えるとそこに深いフードを被った武装した集団がやってくる。

 

「フッようやく会えたな円卓の騎士共」

 

「何者だ?!」

 

集団の一人が進みでフードと外套を脱ぎ捨てる。

 

「俺の顔を忘れたか・・・なあ・・・・」

 

「お・おまえは!!!」

 

「オイオイ冗談じゃねえぞ」

 

「ザクエスロードかしかしその姿は!!」

 

嵐騎士と麗紅騎士とカイが驚愕に目を見開く、相手はかつて倒したザビロニアの騎士だったからであるしかしその姿は継ぎ接ぎだらけになり、その瞳は昏く淀んでいた。

 

「フハハハハハ俺はザビロニアの魔術で息を吹き返したのだ貴様らに復讐するためになもっとも動けるようになった時にはザビロニアは滅ぼされた後だったのだがな!!!」

 

「何っ??!!」

 

「まさか他のやつも??」

 

「息を吹き返したのは俺だけさ他は皆朽ちていったがな、まあそんな事はどうでもいい貴様らを地獄に送れればなぁぁぁ」

 

怨念にも似た言葉をはくとザクエスロードは固まっている剛騎士に目を向ける。

 

「フッ俺が生きているのが恐ろしいか剛騎士よ」

 

「いや・・そのよう・・・」

 

剛騎士は言いにくそうかつ首を傾げ悩みなが絞り出すように口を開いた。

 

「おまえ・・・・誰?」

 

その場が一瞬固まりなんとも微妙な空気が流れた、嵐騎士と麗紅騎士がジト目になりザクエスロードは目を見開きワナワナと震え出しカイが呆れた表情になる。

 

「おまえなあ、相手を忘れてどうする」

 

「まったくだ」

 

「そうだぜ剛騎士さんよお・・・・少しは空気読もうぜ前あった事あるだろ・・・・ってどこだっけ??」

 

剛騎士に注意しようとしたカイだったが彼はザクエスロードと会った場所を忘れていたのであった。

 

「貴様等そろいもそろって俺を愚弄しおってまあいいここで貴様等を葬りキングガンダムの奴に苦しみを味わせてやる」

 

「ならば相手になろうザクエスロード、その怨念ここで断ち切らせてもらう」

 

嵐騎士の言葉にザクエスロードは不適に笑うと背後いる仲間の兵士ハイザックに目配せすると彼等らは腕に抱えているのを騎士団に見せた。

 

「フンこれを見て戦えるかな騎士共」

 

「なっ・・き・・貴様」

 

腕に抱えられていたのは幼い少年と少女だった皆怯えた表情でこちらを見ている。

 

「これでわかっただろうこいつらの命が惜しかったら武器を捨てろ」

 

「くっ・・・・わかった」

 

嵐騎士と麗紅騎士は悔し気に答え武器を捨てるそして剛騎士も武器を捨てるが今度は荷物袋を漁り出す。

 

「なんだ貴様武器を捨てろと言ったのがわからんのか」

 

「いやちょっとまて今武器をだすから」

 

「うん??・・・・」

 

剛騎士は荷物袋から武器を取り出し始めるとまあ出るは出るは。

 

バトルアックス5本、ハンドアックス10本、大型ナイフ30本、バトルハンマー15本、ブロードソードにロングソードにバスタードソードにモーニングスターにユニコーンスピアとどんだけ集めているのか敵、味方共々唖然とした表情になる明らかに道具袋の容量を大幅にこえているとしか言えなかった。

 

「んでこれが俺のとっておきのハルバードっとふう・・・・こんなもんか」

 

彼等の前には武器の山が出来上がっていたしかも全部金属製の武器である重量については見当もつかない。

 

「貴様どんだけ持っているんだ!!!!」

 

「まあいい、さあ次は貴様だ盗賊!!」

 

 

ザクエスロードは盗賊カイに声を掛けるがカイは微動だにしなかった。

 

「盗賊???」

 

「なんのようだい?」

 

「なっ!!!??」

 

突然盗賊カイの姿が消えて近くからカイの声が聞こえてくると突然幾条の銀光が奔り子供達を捉えていた兵士ハイザックの手に当たりハイザック達はたまらず手を離してしまい子供達はその隙に逃げ出す。

 

「クソッ逃がすか!!」

 

「そうはいかないってね!!」

 

「何!!!?」

 

するとカイは両手を突き出し呪文を唱える

 

「大気に遍く満ちる精霊よ疾く駆けよ汝ら阻む者はなし・・・・レイウィンド」

 

するとカイの両手から強烈な烈風がザクエスロード達に襲いかかりあまりの風の強さに足を止めるしかなく身動きが出来なくなるハイザックの一人が持っている槍を子供達に向けて投げようとすると。

 

「おらよ」

 

カイが懐から取り出した袋を投げつけるとレイウィンドの風に乗り彼等に炸裂すると中に入っていた砂が目に入り悶える。

 

「しまったガキ共が!!!」

 

子供達を捉えようとするも既に円卓の騎士達が子供達を保護し後ろに庇うと彼等は捨てた武器を拾いあげていた。

 

「助かったぞカイ」

 

「どういたしましてっとそんじゃ後はまかせるぜ」

 

「おう、まかされたぜ」

 

「形勢逆転だな・・・」

 

「クッ貴様等アァァァァァァ」

 

 

ザクエスロードは怒りの声を上げて襲いかかってくるそれに続くようにハイザックも襲いかかってくる。

 

「フッ」

 

麗紅騎士のレイピアとブロードソードが閃光の如くは奔るとハイザックの一人は受ける事も敵わず切り裂かれ倒れ伏し一人はレイピアの怒涛の連続突きに蜂の巣にされ絶命する。

 

「オリャアアア」

 

剛騎士の大剣が地面に叩くと大剣に込められた闘気が炸裂し周囲を吹き飛ばし巻き込まれたハイザック達を粉砕するこれぞガンダム流剛闘法・・・フォースバーストである。

 

仲間が死んだ事を意にも介さずザクエスロードは嵐騎士にバスタードソードで切りつけると嵐騎士は槍の刃でいなすと槍の石突でザクエスロードの腹を突きザクエスロードを後退させる

 

「グックソッ」

 

「どうやら前より力が増しているようだな」

 

「当然だ!!!ザビロニアの魔力を甘くみるな!!!」

 

するとザクエスロードは鋭い剣捌きで嵐騎士に切りつけるその斬撃は嵐の如く荒ぶり闘気の刃が周囲をくだい砕いていく。

 

「ハハハどうした嵐騎士よ我が力の前に怖気づいたか」

 

嵐騎士は斬撃を紙一重で冷静に捌いていくも攻撃できずにいるようだった。

 

「確かに前より力は増したがそれでは俺は倒せん」

 

「何っ??!!!」

 

すると嵐騎士は攻勢に転じ神速の槍捌きで今度は攻め立てていく

 

「くう何故だ何故押されるんだ」

 

「貴様は力は増したがそれに振り回されているだけだおまえは自分の持つ力に負けている!!!」

 

「なんだとオオオオオォォォォ」

 

「ザクエスロードよその悪しき怨念ここで絶つ」

 

嵐騎士は槍に闘気を集中させ神速の踏み込みと共に槍を繰り出しザクエスロードは慌てて受けるもバスタードソードは砕け散ってしまいさらに強烈な衝撃により動きが一瞬止まる。

 

「し、しまっ」

 

「受けてみよこれぞガンダム流槍法 流星槍!!!」

 

嵐騎士の槍が神速を越え無数の残像を虚空に描きながら繰り出されるそれはさながら無数の流星が奔るようであった。

 

「グアアアアアアアァァァァァーーーーー」

 

無数の突きを無防備に受けたザクエスロードは悲鳴を上げながら吹き飛ばされ動かなくなるのであった。

 

戦いが終わり怯えている子供達を落ち着かせ話を聞くと彼等はランスローの街で暮らしている子供達でこの洞窟を秘密基地にしていたらしく森で遊んでいるとき捉えられたらしい。

 

 

「とにかく子供達を街に帰そうその後で改めて調べよう」

 

「そうだな、それに腹が減って来たしな街でなんか食おうぜ」

 

「ヤレヤレまた食事かでもまあ少し休んだ方がいいだろう」

 

「へえー前よりちょっと丸くなったんじゃない」

 

麗紅騎士の言葉をカイが茶化すように言うと、麗紅騎士は鼻を鳴らして照れたようにそっぽを向く。

 

「それにしても腕を上げたなカイ」

 

「そうだよな、呪文とかナイフとか前とは段違いだぜ」

 

「まあ俺も寝てたわけじゃないんでね遺跡とか潜るんにゃこれくらいは出来ないとな」

 

「遺跡荒しの為でなければ、いう事なしなんだがな」

 

嵐騎士と剛騎士の賞賛に照れたように笑うカイに呆れたように麗紅騎士はぼやきふとザクエスロードが倒れている所を見るとそこには呻きながら体を震わせるザクエスロードの姿があった。

 

「なっまだこいつ息があるぞ」

 

「何っ??!」

 

「円卓の騎士共せめて貴様等だけでも道連れにしてくれる!!!!」

 

そうザクエスロードは叫ぶと全身に魔力を漲らせると全身が赤くなっていく。

 

「自爆するつもりか」

 

「やべえぞみんな俺の後ろに来い」

 

剛騎士が全員の前に出ると大楯を構え闘気を収束し完全な防御態勢になりその後ろを嵐騎士と麗紅騎士が固めカイと子供達がさらに後ろに回ると同時にザクエスロードは凄まじい爆発を起こした赤い爆光が周囲を容赦なく吹き飛し衝撃破が辺りを激震させる。

 

爆発が終わり辺りが静かになるとカイは身を起こし辺りを見渡すと無傷の子供達がいたが衝撃を受け止めた流星の騎士団はゲートの所まで飛ばされていた。

 

「おいおまえら大丈夫か」

 

「だ・大丈夫だ特に怪我はないそっちはどうだ子供達は無事か!!?」

 

「ああおたくらのおかげで全員無事だ」

 

とにかく全員無事な事に安堵したその時異変が起こった。

 

「んっこれはシルバーディスクが!!!!」

 

「な・ゲートが動いてんのか」

 

 シルバーディスクが強烈な光を発すると宙に浮かび上がり激しく回転するとそれに合わせてゲートが光だし回転しだす。

 

    ・・・・・MS・・・・確・・・・

 

            ・・・・・座・・・・定

 

まったく知らない無機質な音声が響きわたると最後にある言葉が響き渡る。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・フロニャルドへの転移を開始します。

 

「何フロニャルドだと!!!!」

 

するとカイの動揺し慌てた声が響く

 

 

「おい一体全体どうなってんだ何が起こってんだ」

 

「カイ!!!キングガンダムⅡ世に伝えてくれ我らはフロニャルドへの道を発見したとそして子供達を頼む」

 

その言葉が終わった後ゲートが一際強い光を放つと流星の騎士団の姿はなく辺りを静寂がつつみそしてあまりの事態に呆然としているカイと子供達だけがいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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邂逅は予兆と共に 箱庭の少女

遅れてすいません仕事等でモチベーションが上がらずなかなか書けませんでした。


ビスコッティ共和国

 

フロニャルドにある国の一つで住民は犬の耳と尻尾を持つ人が多い、穏やかな国である、この国を治める姫ミルヒオーレは国民からとても慕われておりその歌声は国の内外に関わらず大変な人気があるという、今この国ではその姫がコンサートを行っていた。

 

一人の姫が舞台で歌い踊る人々の為に今だ見ぬ数多の命の為に、ならばこれは一つの神楽舞だろうかしかし、ここまで無垢なる祈りと共に歌う女性は果たしてどれ程いるだろうか。

 

その歌声は祝福となって観客達にそして幾多の生命に降り注ぐこの姫の優しさと思いやりの心こそがこの力の源泉であるという事は疑いようがない、正に神に愛された歌姫と言えるであろう。

 

「みんな今日は来てくれてありがとう」

 

歌い終わったミルヒオーレ姫は観客達にお礼を言いそれに答えるように観客達は大歓声を上げる。

 

「さて実はみんなに重大な発表があります」

 

重大な発表という言葉に観客達はどよめき声をあげるそれは一体なんなのか。

 

「なんとこの年末に勇者様達をおまねきして年末の大イクサ興行を行おうと思います!!!」

 

ミルヒオーレ姫のこの発言に観客達から大歓声があがり皆一様に興奮し場の空気が盛り上がる。

 

「色んなイベント等が沢山ありますからみんなで目一杯楽しみましょうさらに勇者様だけではなく遠くからお客様をお迎えしようと思います!!みんな笑顔でお迎えしましょうねどんな方々なのかは当日までの秘密です楽しみにしていてくださいね」

 

観客の歓声が高くなるみんなまだ見ぬお客様を楽しみにしているようだった基本フロニャルドの人々は来訪者には寛容なのである。

 

「そういう事なのでみんな頑張って参加して楽しいイクサ興行にしましょうね!!!」

 

観客達の大歓声を背に浴びながらミルヒオーレ姫は楽屋へと戻ると控えの侍女達と一緒に一人の女性が待っていた

 

「おお、ミルヒよ今回も中々であったぞ」

 

それは隣国のガレット獅子団領の領主であるレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワであった。

 

「まあレオ様、ありがとうございます」

 

「うむ相変わらずでなによりじゃそういえば年末の興行で相談あるそうじゃな」

 

「はい、実は空鯨の方々をお招きしようと考えてましてレオ様に相談しようと思っていたんです」

 

「おお、それは丁度良かった」

 

「丁度良かった・・・という事は」

 

「うむ、ガウルの奴も地上の祭りを見せてあげたいと言うておってのただ何分前例がないのでそちらに何か良い考えがないかと思っていたのじゃ」

 

「そうだったのですか、実はリコが空鯨の民の為の客席を考えていてちょっと見て欲しかったのです」

 

「ほうそれはどんなものじゃ」

 

幼馴染の来訪にミルヒオーレ姫は喜ぶとレオ姫と軽く雑談や今後の興行の事で色々話たり等楽しく会話を弾ませるとそこへ険しい顔をした騎士が一人楽屋へと現れた。

 

緑のショートカットに少し鋭い雰囲気を持った騎士の女性ミルヒオーレ直属親衛隊の隊長エクレール・マルティノッジであった。

 

「姫様!!歓談の途中突然で申し訳ございません、辺境で魔物が現れました」

 

「エッそれは本当なんですかエクレール」

 

「なんと、よりにもよってこんな時にか」

 

突然の魔物の出現に二人は驚くも直ぐに居住まいを正し王族としての顔になると気を引き締める。

 

「はい、辺境警備の騎士の所に商人が血相を変えて駆け込んできて、大型の魔物を見たと」

 

「大型の魔物?どのような姿をしているのですか」

 

「それが、その姿を聞いたリコが調べたら恐らく太古の昔に封じられた伝説の魔物・・・山砕きの魔爪ではないかと」

 

「なんですって」

 

「なんと」

 

「まことに勝手と思いますが火急の事態故に姫様に了承を取らず各国に連絡しています」

 

「いえ、良くやって下さいましたエクレ・・・レオ様」

 

「うむ、わしらガレット獅子団領も力を貸そう」

 

レオ姫の力強い言葉にミルヒオーレ姫は表情を嬉しそうにすると侍女達に戦闘準備をするように命じるのであった。

 

 

 

鏡面の如く磨き上げられた床に壁には幾本かの木刀が掛けられているそれ以外は特に飾り気のない普通の道場だが

そこに流れる空気は清冽だった。

 

武は幼子心にその空気が好きだった、穏やかな気性なれどやはり剣士の性を持って生まれたからだろうか、そんな道場に二人の剣士が木刀を持って稽古していた、一人は自分の父、清悟で一人は叔父の和輝だった。

 

互いが切磋琢磨している姿を幼い自分がじっと見ていたやがて稽古も終わり二人は自分達をじっと見つめている武に気づき笑顔になると武の頭をなでる大きくごつい手なれど優しく力強い手が好きだった。

 

武は気づくああまたこの夢かと、もう二度と見る事叶わぬ光景だった。

 

 

武は夢から醒めると自分が簡素なベッドの上で横になっている事に気付いたふと頭に布が巻かれている事に気付くどうやら治療がされているらしく痛みはなかった。

 

「ここは?・・・・・」

 

身体を起こし周囲を見渡すと、椅子やテーブル等簡素な木製の家具に蔦で編まれた籠等があり穏やかな雰囲気がする、そして部屋の奥から布で仕切られた場所がありそこは台所なのだろうか火が燃える音と何かを煮ている音が聞こえ薬草の匂いが漂ってくる。

 

「ピィー!!?」

 

可愛い鳴き声が聞こえた時武の目の前に薄い紫の4枚羽の生えた白い髪の妖精が現れた、表情から武を気遣う様子がうかがえる。

 

「よ・・妖精!!!」

 

現世ではほとんど目にすることができない妖精が目の前に現れた事に武は驚く常世等に関わりのある事を仕事にしている彼でも木霊等の小精霊をみた事があるくらいである。

 

妖精は武が気が付いた事に気付くと台所に向かって飛んでいったするとなにやら話し声が聞こえてくる。

 

「リィズどうしたのもしかしてあの人が起きたの?」

 

「ピィー!!」

 

「本当!!それじゃ今行くわね」

 

鈴を鳴らすような美声と温厚な声音がすると布をかきわけ一人の娘が武の前に歩いてくる。

 

「よかった、気が付いたんですね、どこか痛む所ありますか」

 

「えっ・・・ああ大丈夫・・・・・・・痛みはないよ」

 

「そうですか頭を打っていたから心配したけど」

 

「治療は君がしてくれたの」

 

「はいっ!!何事もなくて本当に良かった」

 

目の前の娘は輝くような表情でうれしそうに微笑んだその美しい笑みはまるで辺りが輝かせるかのようだその表情見た武は照れた表情になる。

 

「あ・ありがとう本当に」

 

「?」

 

 キョトンと不思議そうに首を傾げる娘に武は思わず赤面してしまったそれ程目の前の娘は美しかった。

 

 年の頃は武と同じくらいだろうか光沢のある茶色の長髪は背中の下まで伸び微かに波打ち光を放っている。

 肌は上等な白絹のように白いが病的な白さではなく命の息吹に満ち溢れている。

 一見ほっそりしているようでいても出るところは出ておりその体線は女性らしい肉付きと共に優美な曲線を描き足はカモシカのように細かった、白いゆったりとした衣服の胸の部分を押し上る豊かな胸の膨らみは異性の目を否応にもなく引いてしまうだろう、その胸元には蔓がからまった金色の十字架のようなネックレスをかけていた。

 

 その容貌は一度見れば異性はおろか同姓すら見とれてしまうだろうという程に美しく整っており顔のラインは滑らかなカーブを描きすっとした鼻筋も同様であった、薄く上品な唇は上質な口紅を引いたかのような鮮やかなピンク色で可憐かつ優美な曲線を描いている。

 

 そしてなかでも目を引くのはパッチリとした二重瞼の中にある深緑に輝くエメラルドグリーンの鮮やかな瞳であろうかその瞳には穏やかな優しさに溢れていた。

 

 

 

最も驚くべきなのは化粧の類を一切していない事であろうか素でここまでの容貌を持つ女性が果たしてどれ程いるだろうか。

 

 

 

ただ容姿が美しいだけではない魂の美しさが容貌をより引き立てているのだと理屈を越えて理解できてしまうそんな絶世の美を持つ娘に10代の青年がドギマギするのもいたしかたないであろう。

 

「顔が赤いですねもしかして熱があるのかもちょっといいですか」

 

「ね・熱はないよ大丈夫・・・起きても大丈夫だよ」

 

と武の額に手をあてよとしたので武は慌てながらもやんわりとその手を止めた。

 

「そうですか・・・もし辛かったら遠慮せず言って下さいね我慢は体に毒ですよ」

 

「ありがとう・・・・そういえば君は一体それにここは何処」

 

「そういえばまだ名前を言っていませんでしたね、私の名前はアンジェそしてこの子はリィズと言いますここは私達の家で倒れたあなたをここまで運んだんです、あなたは」

 

そう優しい声で自分と妖精の紹介をするアンジュその瞳には好奇心が溢れていた。

 

「僕の名前は鞘八斗 武」

 

「サヤト タケル??」

 

「ああっと性と名前が逆なのかな名前は武で鞘八斗は苗字なんだ」

 

「そうなんですかでは武さんと呼べばいいんでしょうか」

 

「それでいいよ・・・ええとアンジェさん」

 

初対面の娘を名前で呼ぶのに気恥ずかしさを感じるのかややためらいがちに名前で呼ぶとアンジュは嬉しそうに微笑むを浮かべる。

 

「アンジュでいいですよ武さん」

 

「えっ・・・いいの?じゃあ・・・アンジェ」

 

「はいっ!!」

 

「ピィーーー!!!!」

 

そんな二人の様子にリィズが怒ったような声を上げるアンジェははっとした顔になり申し訳なさそうな表情でリィズの方に顔を向ける。

 

「ご・ごめんねリィズ放っておいちゃって」

 

「ピィッ!!」

 

まったくだと言うようにむくれるリィズに苦笑するアンジェの微笑ましい姿に思わず武は笑みがこぼれてしまう。

 

「それにしても驚きました突然空から人が降って来るなんて思っていなかったから」

 

「ピィッ」

 

アンジュの言葉にリィズは相槌を打つ何故か表情には驚きよりも喜びが強いようにも見えた。

 

「驚かせてごめん」

 

「そんな謝らないで下さい、でもどうして空から??」

 

「それは・・・・・・」

 

武はいままでの事をアンジェに説明したアンジェは真剣な表情で説明を聞きホウっと息をついた。

 

「それじゃタケルさんはその人に連れられてここに来られたんですね」

 

「うん、それに、どうやら自分のいた世界とは違うみたいなんだ」

 

「えっ違う世界??」

 

どういう事かわからず困惑するアンジェに武は内心苦笑する突然異世界なんて言われてもわからないだろと。

 

「アンジェ、地球という言葉に心当たりってある?」

 

「チキュウですか、いえ全く知らないです・・・ごめんなさいお力になれなくて」

 

「いやいいんだ、気にしなくていいよ」

 

「ありがとう・・・・では武さんはそのチキュウという所からきたんですか」

 

「うんそうなんだ正直信じられないと思うけど・・・・そういえばここはなんて言う所なのかな」

 

「ここはフロニャルドという所ですよ」

 

「フロニャルド??」

 

「はい、心当たりないですか」

 

「うん、どうやら僕は本当に異世界にきちゃったみたいだね」

 

武は驚くもなんとも言えない気持ちであったまさか小説などでよくある異世界に転移するとは思ってもみなかったからだしかも自身が当事者になるとは。

 

(昂矢が聞いたらうらやましがるだろうな・・・・・異世界転移だああああって興奮するんだろうか)

 

学校の友人にして同じ退魔士の顔が思い浮かんだがすぐに消し、いまは自分の状況とこの世界の事を調べる必要があるだろう家族もみんな心配しているだろうし早く戻る為にもこの世界事を調べるのは急務といえた。

 

(それに僕をここに誘ったあの人の事も気になるな、・・・あの表情あれは)

 

「ピィッ!!」

 

リィズの心配そうな声が聞こえ思わず武は顔を上げてしまったどうやら考え込んでいたようだ。

 

「タケルさん少し思いつめた顔していますよ」

 

「えっ・・・・そう見えた」

 

「ええでも無理はないと思います突然こんな事がおきたら誰だってそうなりますよ」

 

「ピィッ」

 

「でもだからこそあまり思いつめるのも良くないですよ悪い考えばかり浮かんじゃいますから力を抜く事も必要だと思うわ」

 

「そうだね・・・ありがとうアンジェ」

 

武はふっと息をつき肩の力を抜いた確かに思いつめるのは良くないなと思い直し顔に笑みを浮かべお礼を言う、確かに突然こんな場所に飛ばされたが親切で優しい人に出会えたというだけでも最悪ではないだろう。

 

「フフッ、気にしないで下さいあっそういえば武さんお腹すいていませんか今シチューができたんですが」

 

「んっそういえば・・・・・」

 

軽く微笑んだ後にアンジェはそう提案してきた、そういえば朝食を食べてから何も食べてない事を思い出した途端武のお腹が急になりだした。

 

「あっ、お腹がお返事していますね」

 

「ハハッ、そうだね、それじゃご馳走になろうかな」

 

「わかりました今用意するので待ってて下さいね」

 

思わずプッと吹き出したアンジェの姿に思わず武も釣られて笑ってしまう優しくも暖かな空気が流れる不思議と武の中にあった不安感が消えていた。

 

 

 

簡素でもどこか温かみのある円形のテーブルの上に並んだ料理は質素なれど食欲をそそる香りがする、シチューはしっかりと煮込まれており野菜や芋にシチューやハーブの味がしっかりとしみこんでいるようだ。

 

蒸かされた芋に焼いた茸等にはハーブやチーズ等が掛けられておりシンプルながらすごくおいしそうである。

 

「ごめんなさい急だったので簡単な物になってしまって」

 

「そんな事ないよ凄くおいしそうだしなによりご馳走になっているのは僕のほうだし」

 

「そんな、気にしないで下さい武さん、それじゃいただきましょう」

 

「うん、頂きます」

 

「ピィーーー」

 

そう言うと武達は料理に手を伸ばした。

 

食事も終わり武は食後のお茶を飲み一息を吐いた料理は素朴なれどどれもとても美味しくあっという間に平らげてしまった。

 そして片付けを済ませた後まだやる事があるという事でアンジェは台所で薬湯をかき混ぜているどこか嬉し気な調子の鼻歌が聞こえてくる、居間にいる間に武は手持ち無沙汰になったので外の空気を吸おうと家の外に出ると辺りはすっかり日が落ちていた。

 

「もう夜か・・・今日一日色々な事があってあっという間だったな・・・」

 

ふとそう疲れたように呟きながら空を見上げるとそこには絶景が広がっていた。

 

「これは・・・・すごいな、家も結構綺麗だと思っていたけどここはそれ以上だ・・・」

 

 そこには幾多もの色とりどりの星々が宝石の如き輝きを放っていたここまでくるともう明かり等必要ないのではないかと錯覚しそうになる遠くに見える天の川の如く星々の無数の連なりは煌めく星光が重なりカレイドスコープのように様々な色彩を映し出すかのようだったまず武の生きる地球ではありえない光景だった。

 

美し絶景に圧倒され声も出ず武は夜空を見上げる口から洩れる息が冬の冷たい空気に触れ白く煙る。

 

しばし陶然と夜空を見上げているとそこにアンジェが落ち着いた足取りで武の傍にやってきた。

 

「武さん」

 

「アンジェ・・・」

 

「随分熱心に夜空を見上げていますけど星を見るのが好きなんですか」

 

「うん、夜に満天の星々を眺めるのは好きだよ、それにしてもここまで美しい星空を見るのは生まれて初めてかな」

 

「そうなんですか私も星を見るの好きなんです」

 

「そっか君も好きなんだそれじゃ、どんな所が好きなの」

 

「そうですねいつも変わらずそこにいてずっと見守ってくれているようで寂しい時や悲しくなりそうな時夜空の星を見ているとほっとして慰めらたような気持ちになるんです」

 

「そうなんだ・・・・」

 

武はふとある事に気付きアンジュに顔を向けたアンジュはキョトンした表情になる。

 

「アンジュ君はここでリィズと二人だけで暮らしているのかい」

 

「・・・・はい・・・・」

 

その武の質問にアンジェは表情を一瞬表情を強張らせた後少しうつむき寂しげに軽く頷いた

 

「ごめん嫌な事聞いて」

 

「ううん、気にしないで下さい・・・それにみんながいますから」

 

「みんな?」

 

「はい大切な友達達でみんな気の良い子達ですよ明日武さんに紹介しますね」

 

そう楽しそうに言うともう夜も更けてきたという事で二人は家に戻るとそこでアンジェはある事に気付いて赤面してしまった。

 

「あっあのタケルさん・・・・今夜の寝床ですけど・・・その/////」

 

「えっ・・・・あっ/////」

 

そう言われて武は気づくこの家にはベッドが一つしかないのだ17歳の青年がうら若き乙女と一緒のベッドで寝るわけにはいかないだろう。

 

「じゃじゃあ僕は床で寝るよ」

 

「そ・そんな悪いですよ、ちょっと大きめの椅子がありますから私がそこで寝れば」

 

「女の子に無理させるわけにはいかないよ、それにちゃんと寝袋を持ってきているし心配いらないよ」

 

「・・・・わかりましたでもせめて毛布だけでも使って下さい後藁を床に敷きますね夜は大分冷えますけどこれで暖かくなるはずです」

 

「わかったありがとうアンジェ」

 

そうして二人は寝床につくが武は中々寝付けなかったやはり色々あったせいなのだろうか目がさえてしまい寝付けなかったふと隣のベッドで寝ているアンジェに目を向けると偶然アンジェもこちらに目向けておりお互い目があってしまいお互い気恥ずかしさからか視線をそらし天井に目を向ける。

 

「タケルさん眠れませんか」

 

「うんちょっと目が冴えてさ」

 

「そうですよね・・・こういう時何か数を数えると良いですよ」

 

「へえこっちにもそういうのあるんだ」

 

「タケルさんの所にもあるんですか」

 

「うん例えば羊の数を数えたりとか」

 

「わあ・・・なんかとっても可愛い言い伝えですね」

 

「そうだね・・・・・それとアンジェ」

 

「なんですかタケルさん??」

 

「今日は色々ありがとう本当に見ず知らずの僕にここまでしてくれて」

 

「そんなお礼を言いたいのは私の方です」

 

「えっ??」

 

「お客さんをもてなすのは初めてだったから武さんには不謹慎だと思いますけど楽しくて嬉しかったんですごめんなさい」

 

「・・・・・」

 

 アンジェのその言葉とそこに込められた寂しさと悲哀を感じ何とも言えない気持ちになり何か言おうとしたが気にしていないと返答するとそうですかと安堵したような返事が返ってきた。

 

 気を取り直し武は目を瞑ると段々睡魔が押し寄せてきて眠りえと落ちていくその間際にアンジェの穏やかな寝息が聞こへてくるそして武は眠りへと落ちるのであった。

 

 

 

 

「ウッここは・・・・・」

 

嵐騎士ガンダムマークⅡは呻くと体を起こした周囲を見渡すとすぐそばに剛騎士ヘヴィガンダムと麗紅騎士レッドウオーリアが倒れており慌てて二人を起こす。

 

「二人共大丈夫か起きれるか」

 

「ムウッ・・・嵐騎士か・・・大丈夫だ・・・」

 

「むにゃむにゃ・・・あ、おばちゃん肉大盛でお願い・・・・」

 

「こっちは・・・・大丈夫そうだな」

 

「そうだな・・・・・」

 

 寝ぼけながらも食堂で食事する夢でも見ているのか呑気に寝言を呟く剛騎士に二人は安堵とも呆れともつかない溜息を漏らすしかしこのままにしておくわけにもいくまい二人は剛騎士を揺り動かすしかし中々起きない。

 

「オイ早く起きろ剛騎士」

 

「仕方がないこうなれば」

 

「何か手があるのか麗紅騎士」

 

「ああ・・・・あまり気は進まんが・・・」

 

そして麗紅騎士は剛騎士の耳元でこう囁いた

 

「おばちゃんスペシャルグリーンサラダ大盛キノコのバターソテーを添えて三人前で頼む」

 

「ウオオオオオ俺は野菜は嫌いなんだ特にキノコは無理なんだヨオオオオオってハッ」

 

「起きたか剛騎士・・・・」

 

若干ゲンナリした様子で麗紅騎士が呟くが

 

「おう二人共どうしたんだってここ何処だあ食堂じゃないのか」

 

「まだ寝ぼけているのかおまえは・・・・」

 

「エッあーーーそうだ俺達にゲートに飛ばされてつうかここ何処だ」

 

慌てて立ち上がり周囲を見渡す剛騎士と共に二人は辺りを見ると前までいた場所とは違う場所であった神殿のような場所ではあるが辺りを植物の蔦が覆われている。

 

「どうやら目的の場所には着いたみたいだな」

 

「そのようだなムッあれは・・・・」

 

「どうした麗紅騎士??」

 

麗紅騎士は何かを見つけのか指を斜め上向けるその先には巨大な大樹のレリーフがあった。

 

「これはまさか星命樹マナの絵なのか・・・・」

 

「恐らくはな」

 

「なあ一番上にいる女性がいるけどありゃ誰だ」

 

剛騎士の言葉に二人は視線をさらに上に向けるとそこには女神のような女性が描かれておりその手には荘厳な剣が握られている。

 

「わからないなアントニオ殿も星命樹マナについては不明な所が多いと言われているからな」

 

 嵐騎士はそう言うと改めてレリーフを眺めるそこには大樹から光が地上に降り注ぎそこから木々や植物が生え始めその周りには人々が跪づき崇めている姿が描かれているそして木の周囲には妖精や精霊が嬉し気に飛んでいる姿があった。

 

「とにかくよおここにいてもしょうがないから外へ出ようぜ」

 

「そうだな・・・そういえば嵐騎士シルバーデイスクはどうだ」

 

「ああそういえばムッこれは・・・・」

 

嵐騎士はいつの間にか手元に戻っていたシルバーデイスクを改めて見ると今まで白銀に輝きがうそのようにくすんだ色になっており力を失っているようだった。

 

「シルバーデイスクが・・・・」

 

「まいったなこりゃこれじゃ戻れないぜ」

 

「いやユーサーガンダム様達は戻る事が出来たんだ何か他に方法があるかもしれない要は探し物が増えただけだ」

 

「それならなんとかなるだろう諦めない限り道は必ずあるってキングガンダムⅡ世も言っていたしな」

 

「ああっその通りだ」

 

「フッ今回ばかりは剛騎士に賛成だな」

 

剛騎士の力強い言葉に二人は力強く頷くそうこの俯仰不屈の精神こそ円卓の騎士の素養の一つなのかも知れないそれこそが如何なる邪悪にも立ち向かう力の源なのだから。

 

そう決意を新たにした三人は改めて遺跡の探索を始めた余り大きな遺跡ではなく特に何か落ちている訳でもなく直ぐに外への階段を見つけ階段を昇ると外の光が見え始めると三人は歩を早め遺跡の外へと出た。

 

「やっと外に出られたな・・・・んっ?」

 

嵐騎士が背後を見ると階段に石畳がせり出し蓋をしそこに植物の蔓が覆い完全に隠してしまった。

 

「ここまで厳重に隠すとは余程この世界を守りたかったのだろうな」

 

「そうだな・・・・・」

 

「オイ二人共向こうに丘がある行ってみようぜ」

 

「ああ、わかった」

 

剛騎士の言葉に二人は頷き丘の見晴らし良い場所に出ると彼等はそこで絶句するそこには今まで見た事もない神秘的にして美しい光景が広がっていたからであった。

空は紫色だが澄んだアメジストのようであり所々で光の加減か青になったりしており幻想的であった遥か空には幾つか島が浮かんでおりそこから美しい鳥達が飛び交っている遠くの山の稜線には雪が積もっているのが見られ日の光を受け輝きより神秘的に世界を彩っている。

 

「これはなんて美しい・・・これがフロニャルドか・・・」

 

「ああっ天上の楽園とはこのような所を言うのだろうな」

 

「すごすぎだぜこりゃあ・・・・うお空が紫だしかも島とか浮いてるぞ・・・」

 

 流星の騎士団の三人はしばし見とれていたそして確信するここには必ず星命樹マナがある事にここまで神秘的で自然豊かな世界ならば強大な恵の力が生まれても不思議ではないと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になりタケルはアンジェの作った朝食を食べた後紹介したい子がいるというアンジェの話を聞き外に出るとアンジェは森に向かって声をかける。

 

 

「ホーーーールーーーーンおいでーーーー」

 

「ピィーーーーーー」

 

すると森から一匹の鹿のような姿をした動物が現れたその姿に武は驚愕する

 

(この気はまさか幻獣か!!!)

 

一見すると鹿のようだが角が銀色で毛皮は純白に輝き四肢の蹄は水晶であった。

 

「フォーン」

 

ホルンと呼ばれた幻獣はその名ように金管楽器のような美しい鳴き声を発すると甘えるようにアンジェにすりよる。

 

「おはよう、ホルン今日も元気一杯ね待っててね今ご飯持ってくるから、それと紹介したい人がいるの」

 

アンジェはホルンに抱きつき優しく抱擁するとホルンは気持ちよさそうにしながら穏やかな鳴き声をはっする。

 

「ほら昨日背中に乗せて運んだこの人よ」

 

アンジェはホルンから離れると武を紹介する。

 

「この方は武 鞘八斗さんというのよ優しい人だから仲良くしてね」

 

ホルンは武を見ると一際高い声を出す、特に嫌っているようではないようだ。

 

「君が僕をここまで運んでくれたんだねありがとう僕は武 鞘八斗よろしくホルン」

 

武の言葉に何かを感じたのかホルンはジッと武を見ると頬ずりをし始めた。

 

「この子随分人なつっこいね」

 

「ええ・・・怪我している所を助けたらなついてくれてそれからずっと一緒にいるんです」

 

「へえ、そういえば友人達って言っていたけど他にもいるの」

 

「はいっタケルさんもきっと仲良くなれますよ」

 

 その後世話になっているのに何もしないのも悪いというタケルの申し出にアンジュは快く頷くと二人でキノコや野草の収穫や薪を集めたりなどを行いその合間に友人達を紹介していくそれは精霊だったり手のひら大の小人のような種族だったり不思議な姿の動物だったり等様々であった。

 

皆一様に温厚にして善良な者達で武とも直ぐに仲良くなったのは言うまでもない。

(アンジェの優しい心がこの場を作っているんだろうな)

そう思い武はアンジュを見るそこにはリィズと一緒に精霊や動物達と戯れる姿があったその様はまるで天上の女神を彷彿させるかのようだった。

 その姿に見とれてしまい思わずじっとアンジェを見つめてしまうその視線に気づいたアンジェは武に向かって優しく微笑むその表情に思わず武は赤面してしまいバツの悪そうな顔になり視線を逸らすも心臓が聞こえてしまうのではないかと思う程高い心音を刻む。

そのな武をみたアンジェは照れているのかなと思い武に近づきその手を取ると友人達の元に赴くと全員が一斉に飛び込んできた。

 

「うわっっと!!」

 

「アッ!!ウフフフ」

 

もみくちゃされた二人はお互い顔をを見合わせるとお互い破顔する楽し気な笑い声が冬の寒さを暖めるかのように当たりに響き渡るのであった。

 

 

夜になりアンジェの家から少し離れた見晴らしのいい崖の所で美しい夜の景色をながめながら武は物憂げな表情になる。

 

(明日にでも出発しないとこのままずっといるのも申し訳ないしなでも・・・・)

 

 武はふとアンジェの事が気にかかった見ず知らずの自分をここまでもてなしてくれたその行動には自分の事を真摯に気遣う気持ちがありそこから、おおよそ裏表とは無縁な少女である事がわかる、しかし明るい言動の中に深い孤独が見え隠れしていた。

 その推測を後押しするように彼女以外に人を全く見かけておらず近くを散策しても他の民家等まったくなく人の気配がなかった。

 

(何故あの人は僕をここに誘ったんだろうかまさかアンジェが関わっているのか・・・・駄目だ情報が足りないか)

 

 色々考えが浮かぶもまとまらず気晴らしに武はジャケットの内ポケットから白色のオカリナを取り出し口に当て吹く素朴な音色が辺りに響き渡り気が落ち着いてくる。

 一心に一曲吹きおえると背後に気配を感じ振り向くとそこにはリィズを肩に乗せたアンジュが立っていた。

 

「オカリナとても上手なんですねタケルさん」

 

「ピィ」

 

「ああ、叔父さんが得意でさ昔せがんで良く聞かせて貰っていてその時見様見真似で吹いていたら自然にね」

 

「そうなんですか」

 

「そうだアンジェも何か楽器とか弾けるの」

 

「私ですか・・私は歌うのが得意ですね良くみんなに歌ってあげるんですよ」

 

「へえ、もし良かったら聞かせて貰ってもいいかな」

 

「いいですよタケルさん」

 

アンジェはにっこりと笑うと手を胸に当て歌い出した。

 

「ラ~~~♪~~~~~♪~~~♫~~~」

 

辺りに染み入るかのように響き渡る美声が歌声となり旋律となり心を震わせるここまで美しい歌を武は知らなかったそれは水晶のように透き通り慈母のように穏やかで包み込むかのようだった。

 

ひとしきり歌いあげると感動して興奮している武に向かってアンジェは少し照れたように微笑む。

 

「すごいな、こんなに美しい歌を聞いたの生まれて初めてだよ」

 

「そんなおおげさですよタケルさん」

 

「そんな事ないよ本当にすごいよアンジェは」

 

「フフッありがとうございますタケルさん」

 

 そうしてふと二人は会話が途切れてしまいお互い沈黙してしまう何か言いたい事があるのに切り出せない沈黙に武は意を決して切り出した。

 

「アンジェ、君に聞きたい事があるんだ」

 

「はい・・・なんでしょうかタケルさん」

 

なんとなく察しが付いていたのだろうかアンジェの表情は固かった。

 

「明日ここを出発しようと思うんだ何処か人里がある所を知らないかな」

 

「ごめんなさい私ここ以外の事全く知らないんです・・・・南の山の向こうに山道が見えたのでそこを通っていけば人里があるかもしれません・・・」

 

半ば予想していた答えだったがそれでも驚かずにはいられなかった。

 

「ここ以外知らないってじゃあ君ずっとここで??」

 

「はい多分そうだと思うんですが・・・・」

 

「多分??」

 

どういう事かと疑問に思う武だったが流石に踏み込みすぎたかと思い罪悪感が沸いてしまうがアンジェはなにか言いたげだった。

 

「アンジェ別に無理して言わなくていいんだ、でも言って楽になるなら言ってもかまわない相談に乗るよ」

 

「ありがとうタケルさん・・・・その・・・・私は三年くらい前から以前の記憶がないんです」

 

「えっそれってじゃあ家族は・・・・」

 

「わかりません気が付いたらあの家のベッドでリィズと横になっていて覚えていたのは自分の名前とここがフロニャルドという事くらいで後は薬草の知識とか身の回りの事くらいしか覚えていなくて」

 

あまりにも重い真実に武は絶句するまさか記憶喪失で三年間もの間過ごしていたとは思いもよらなかったからである。

 

「そんな・・・・・いや待てよリィズは何か知っているんじゃ・・・」

 

その武の言葉にリィズは申し訳なさそうな表情になり静かに首を振る。

 

「私もリィズに聞いたんですがあの子も何も知らなくて」

 

「そうだったんだ・・・・ごめん辛い事聞いて・・・」

 

「いえそんな先武さんも言った通り誰かにこの不安を聞いて欲しかったんだと思うから少し胸のつかえが取れたような気がします、本当にありがとうございます武さん」

 

「本当にそれだけ・・・・・」

 

「えっ・・・・・?」

 

武はとっくに分かっていた確かに今の言葉は本心でもあるだろうでもそれとは別に自分の事を知りたいという思いが強くなっているという事にも気づいていた。

 

「本当は自分の事が知りたいんじゃないのか・・・」

 

「それは・・・・勿論知りたいですでも・・・・・」

 

「でも?」

 

「何故かわかりませんでもここにいなければいけないと思ってしまって」

 

「もしかしたらここで待っていて欲しいのかもしれないとか、それとも本当はここに誰かが帰ってくるかもしれないと、もしそうなら今度はその人が一人なってしまう、そう思ったら外に行けなくなっていて・・・本当はわかっているんですこのままじゃいけないって・・・・・でも私・・・・」

 

俯いて辛く悲しそうな表情になり重苦しい口調になり絞り出すようにアンジュは自らの苦悩を口にする。

 

「ピィィ・・・・」

 

「アンジェ・・・・・・」

 

その言葉にリィズは悲し気に鳴き武は痛ましげにアンジェを見つめ歯噛みする彼女は本当に優しすぎる辛い時でさえまだ見ぬ誰かを思っているのだから。

 

「アンジェ、君が誰かを思って頑張るのは間違いじゃないでも自分の気持ちに正直になる事も大切だよ」

 

「タケルさん・・・・でも・・・・」

 

「君はとても優しい子だみんなの事を思っているのもわかるでも回りのみんなもそんな君を心配していると思うんだ、だから君は自分為に頑張ってもいいと思う」

 

「・・・・・・ごめんなさい・・・・」

いたたまれなくなったのか家に向かって走り出すアンジェを武はただ見つめる事しかできず拳を悔し気に握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 その姿を見た者は一様に恐怖するであろうか深い峡谷の底の光届かぬ闇の中でそれは巨体をを揺らしながら歩いていた一見すればその姿は二足歩行する熊であろうかしかし所々が岩で覆われておりその目は赤紫色に禍々しく輝きその手は巨大な鉤爪になっていたその身から溢れる妖気は禍々しく全てを呪おうとしているかのようであった。

 

その魔物は何かに誘われるかのようにある場所を目指しているようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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刀剣交差 かくて運命は動き出す

戦闘シーンはやっぱり難しい。


朝になり流星の騎士団の三人は体を起こした野宿を何度も経験した事のある彼等は特に困る事はなく目覚めは爽快であった。

 

「ふあーックウウーーーー良く寝たぜーーーーなんか爽快な目覚めだなーーー」

 

「昨夜は特になにもなしか・・・・・平和そのものだな」

 

「そうだなこんな人里がない未踏の場所でも魔物の気配がまったくないとは自分達の世界とは大違いだ」

 

 スダドアカワールドでは魔物は自然発生したり邪悪なる者達によって生み出される事があり平時においてもそれなりにいたりする流石に街道や大きな街の付近の森とかではそう現れないが街道から離れると危険な魔物と遭遇しやすくなり特に古から人が入らない場所は魔物の巣窟になっている事がほとんどである。

 

「しっかし伝説の地だけあって景色がすげえぜまったく見飽きないし空気と水がこんなにうまいなんて思いもしなかったぜ」

 

「確かにな空気が甘いと感じたのは初めてだ」

 

「体の隅々まで歓喜しているような感覚だな活力が四肢に行き渡っているようだ」

 

「おう、体がとっても軽いぜ、この世界空気に何か混ざっているんじゃねえのか」

 

「一概にないとも言えないのが何とも言えない所だな・・・・・」

 

剛騎士の言葉に二人は頷く野宿でここまで心地よい感覚を受ける事は滅多にないまして今は冬なのだ体に若干の負担がでても不思議じゃないしかしそれがないのである。

 

 

そして彼等は携帯食料で朝食を取り始める、燻製肉の香ばしい香りと焼けたパンの香りがなんとも食欲を匂いとなり辺りに漂う。

 

すると近くの草むらがガサガサと音がなりその音に三人は瞬時に反応する。

 

「むっ・・・・・野生の獣か・・・・」

 

「にしちゃあ殺気とか感じないぞ」

 

「待ってくれ二人共・・・・我らは敵ではないここが君達の縄張りならば直ぐに立ち去るので安心して欲しい」

 

すると草むらから小さな人影が現れた大きさは丁度手の平に乗るくらいで緑色の肌をした小人であった頭には葉っぱがついている。

 

「これは・・・この世界の精霊か・・・??」

 

「どうやら驚かせてしまったようだな」

 

「オオッ小っちゃくて可愛いな・・・・んっ」

 

小人達は何かを小さなクルミのような木の実を運んで来ると三人にの前に置きどうぞという感じで勧めてきた。

 

「これを我等にあげるという事か・・・・」

 

そういう嵐騎士の言葉に小人達は頷く。

 

「おっしんじゃ早速」

 

「待て剛騎士我等が食べて大丈夫かどうかわからんぞ」

 

剛騎士が喜び殻を割り口に運びその無警戒な様子に麗紅騎士は慌てるもどうやら大丈夫だったようである

 

「おっ クルミに似ているかなと思ったが栗みたいにホクホクで甘いぞ」

 

「そうなのかどれ・・・・・おっ」

 

「ヤレヤレ全く・・・・・・・・むっこれはうまいな」

 

クルミのような見た目に反して中はホクホクしており濃厚なれど上品な甘さが口の中に広がるその美味しさ故に三人はあっという間に食べきってしまった。

 

「とても美味しかったよ有難う、もしかしてこれをあげる為に我々の前に現れたのかい」

 

嵐騎士の穏やかなお礼の言葉に小人達は嬉しそうに頷くそこに邪気はなく純粋な好意があった。

 

「なんて、いい奴等なんだ感動したぜ」

 

「そうだな・・・・善良な者達が多いと聞いたが聞きしに勝るとはこのことだな」

 

と穏やかな空気が流れるなか突然慌ただしい空気と共に小人の一団がやって来るそこに続くようにして色々な小動物達が何かから逃げるようにして彼等をの間を走り抜けていく。

 

「これは・・・・なにかから逃げているのか」

 

「そのようだがこの様子だと尋常ではないぞ」

 

「つまり何事もなく、とはいかないって事か上等だぜ」

 

気を引き締める三人の前に一部の動物達と小人達がやって来るとに何事か話合うと逃げてくる方向とは逆の何かが起きている方向に向かって走りだした。

 

「オイそっちは危ねえぞーーー」

 

「まさか、逃げ遅れている仲間がいるのでは」

 

「何いだったら助けに行かねえと」

 

「そうだな行こう二人共急ぐぞ!!!」

 

「おうよ!!!」

 

「わかった!!!」

 

流星の騎士団の三人は異変の元凶がある所に向けて全速力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神社の参道を険しい顔で下る男が一人いたそれを追いかける一人の男と一人の女性、父の誠吾と母の千鶴だったそして険しい顔で神社を去ろうとするのは叔父の和輝だった。

 

 二人は追い付き何とか和輝を説得しようとするもそれでも叔父は止まらなかった。

 

 

 そんな三人を幼い星華と武が悲痛な表情で見ていた結局叔父は二人を振り払い去って行った。

 

 武が初めて後悔をした時でもあった何故あの時なにも言わなかったのか唯一言「行かないで」という言葉が出なかったのか、確かに自分の言葉で止まるとは限らないだろうでも止まったかもしれないという可能性もあった。

 

ああそうかと武は思う結局この場面での自分の最大の後悔は何もしなかった事ただそれだけだったその後悔が重くそして過ぎ去った時は果てしなく遠いのだそれこそ久遠の如く。

 

 

 

 

 

 翌朝武はアンジュと食事を済ませると途中まで送ると言うアンジュの言葉を受け二人で南の山の山道をへと向かっていた昨日の事もあってか二人は表情が固く会話も少なかった。

 

そして南の山を登り始めるしばらくすると道が見えて来たあまり使われている道ではないのだろうか整備されている様子はなく落ち葉や枯れ枝等が散乱しておりどこか物悲しい寂寥感を抱かせる。

 

「ここの道を南に進めばいいと思います、前にここを通っていた方を見かけた事があったから」

 

「案内してくれて有難うアンジェ、君には本当に世話になっちゃったね」

 

「そんな私の方こそタケルさんと一緒に過ごせて楽しかったんです、だから本当に気にしないで下さい」

 

「ピィ!!」

 

「そっか実を言うと僕の方も楽しかったんだ・・・・・」

 

「本当ですか良かった・・・・・」

 

嬉しそうに微笑むアンジェに武は別れを言い歩き出そうとするも何故か足も口動かなかった。

 

(何故だどうして動かないんだ・・・みんなの元に戻らなければいけないのに)

 

          本当は分かっているんだ

 

(彼女はここにいる事を望んでいるだぞ無理に付き合わせるのか)

 

          言い訳ばかりが先に出てどうする何がしたいのか彼女は望んでいるんだろう

 

 

              あの日の後悔を繰り返すのか・・・・・・

 

(そうだったそういう事かだから僕は)

 

 

意を決して武はアンジェに向き直った武の真剣な様子にアンジェは少し怯んでしまった。

 

「タケルさん??・・・・」

 

「アンジェ、君に言いたい事があるんだ」

 

「なんですか」

 

アンジェは何故か分からなかったが頬が熱を帯びるのを感じたわけも分からず恥ずかしい気持ちになる。

 

「君の・・・・・」

 

そう言いかけた時武のは強烈な妖気を感じて弾かれたように気を感じた方を見ると遠目にも分かるほどの巨体が見えたその姿はまるで熊を醜悪かつ凶悪に歪めた姿だった。

 

「ア・・・・アアア・・・・」

 

アンジェも妖気を感じたのか顔を青ざめさせ怯え始めた。

 

「なんて妖気だこれじゃまるで・・・・」

 

(8年前の大妖に匹敵するぞ・・・・)

 

「こっちに来ている??」

 

魔物は何かを探しているらしく所々を薙ぎ払いながらこちらに向かってきていた視線はこちらの方に向いているが正確な場所がわからないのだろうか。

 

「フォーーン」

 

「ピィ!!」

 

鳴き声が聞こえた方に目を向けるとホルンが大慌てで駆けてくるとアンジェと武の前で立ち止まりせかすように鳴く。

 

「アンジェ君は何処かに隠れているんだ」

 

「タケルさんは?!」

 

「ヤツの狙いは良くわからないけどこの場所にある何かかもしれない僕が奴を止める」

 

「そ・そんな一人でなんて危険過ぎますタケルさんも逃げましょう!!!」

 

「ピィーーー!!」

 

「それはできないあれだけの瘴気を放っているんだヤツを野放しにしたらここら一体が汚染されて誰も住めない場所になるそうなれば君達の居場所がなくなるそんなの許すわけにはいかない!!!」

 

そうタケルはアンジェを説得しようとした時魔物の視線がこちらに向いた明らかにこちらを視認しているいや正確には。

 

(今アンジェの方を明らかに認識した!!狙いはアンジェかもしかして彼女の生命力か)

 

高位の妖魔は霊質の高い存在の血肉等を好む特にアンジェは極めて高い霊気を持っている狙うのも頷けるそしてアンジェも自分が狙われている事に気付いたらしい。

 

「わ私を狙って??・・・・」

 

「アンジェ早く逃げるんだ」

 

「できません!!・・・タケルさんを置いていくなんて」

 

「大丈夫、妖魔を倒すのが僕の役目だからそれにこのまま戦うと君達を巻き込む事になる、そうならない為にも早く避難するんだ」

 

「役目??・・・・」

 

「さあ、早く行くんだ」

 

「っ・・・・!!!!」

 

「行けっっ!!!!」

 

「っわかりました・・・・タケルさんどうか無事で・・・・」

 

 目に涙を蓄え押し殺すような声で武の無事を願うと、アンジェはホルンにかけよるとホルンはすぐさまアンジェを背に乗せ走り出すそれを追おうとして魔物は突進しようとするが強烈な気配を感じ足を止める。

その目前には白銀の霊力を間欠泉の如く放ちながら立ちふさがる武の姿があったその霊力に煽られるように白いロングジャケットがはためき、その手には一振りの刀が握られている。

 

「ここから先へはいかせない」

 

刀が瞬時に抜刀されると白刃が鮮烈な輝きを発し雷光を煌めかせる。

 

「八雷奉神流  鞘八斗 武・・・・推してまいる!!!」

 

普段の穏やかな様相とは一変させ冷厳なる雰囲気を纏い厳かに告げ刀を正眼に構えると魔物へと立ち向かう。

 

魔物はアンジェよりも武を優先する事にしたのか雄たけびを上げながらを襲い掛かる、数十メートルはあろうかという巨体の叫びと猛進は周囲を震撼させ大地が悲鳴を上げるかのように震える。

 

その猛りのまま巨大な凶腕を振り上げ武に向け叩きつける。

 

「クッなんて凄まじい力だ・・・・」

 

 大振りの一撃を見極め飛びのき躱すと叩きつけられた大地が震え砂礫が飛び散るその様子に武は表情を歪めるも長刀を上段に構えると歩術にて瞬時にトップスピードまで加速し一息に踏み込み長刀を裂帛の気迫と共に振り下ろす、これぞ八雷奉神流の基礎にして要諦の一つ

 

「布都壱式 天ノ閃星」

 

白銀の霊刃が星閃くが如く奔り凶腕を切り裂き破邪の霊力が斬撃として顕現し凶腕を破断する巌のような腕が落下する。

 

「手ごたえがおかしいまさか!!!」

 

嫌な予感を感じ一旦間合いを広げ振り向くと落ちたうでが岩塊へとかわり崩れるが回りの砂礫を取り込み

 

(霊核による操作系か霊核を止めなければ駄目か)

 

魔物は今度はこちらの番だと言わんばかりに武に向かって幾多もの鋭利な岩の礫を放つ

 

「その程度っ!!!」

 

襲い掛かる礫を身を翻して躱し当たりそうな攻撃を長刀で切り払い礫が途切れた所で長刀に破邪の雷光を纏わせを連続で突き出す。

 

「雷公弐式 射光連照」

 

 引き絞られた矢の如き鋭利な雷矢が幾多に魔物を襲うが体表を削るだけで内にまで浸透していかないようだったそれがわかるのか魔物は防御を一切行わず両腕を組むと激しく大地に叩きつけると衝撃破が大地を割り砕きながら押し寄せてくる。

 

武は近くの木の枝に飛びあがりしなった反動を利用してさらに飛び上がり木々の合間を駆け抜けるその下を衝撃破が駆け抜けていく。

 

(直撃を受ければただではすまないか)

 

背中に冷たい汗が流れるしかしそれでも気おされず武は心に勇気を猛らせ魔物に向けて駆けていく

 

(遠距離の攻撃じゃ奴の体表を削るだけだ霊核を見つけ出すには相手に直接霊撃を叩き込むしかないならば)

 

 武は覚悟を決め相手の懐に飛び込み天の閃星を足に叩き込み動きを止めると体を駆け上がり斬撃を次々と見舞うがその攻撃を意にも介さず魔物は腕を薙ぎ払おうとするが武が体に密着しているため爪をぶつける事ができなかった巨体が逆に仇になってしまったのだった。

 

がだからといって武も無事ではなかった大きな怪我はなくとも魔物の巨体が体をかすめる都度切り傷が生まれそこから血が流れていく。

 

(持ってくれよ僕の体よ霊核をみつければ一気にアレで決着をつける)

 

そして武はもう一つの懸念があった

 

(アンジェ達は無事に避難出来たんだろうか)

 

 

 

 

 アンジェは動物や精霊達を集めると薬草の保存に使っている小さな洞窟に全員を避難させていた。

 

そんな中他の動物達もやってきて全員隠れるとアンジェは僅かに安堵の吐息をもらした。

 

「これで全員ねみんな無事で良かった・・・・」

 

すると離れた所で轟音が聞こえ地響きが起き恐怖で思わず体が震えてしまう。

 

「タケルさん・・・・・・」

 

「ピィィ・・・・」

 

洞窟に集まった全員が寄り添うように集まる中アンジェは洞窟から飛び出す、精霊達が制止しようとするが申し訳なさそう表情になり声を掛ける

 

「ごめんねみんなここで隠れていて大丈夫必ず戻るから」

 

優しく微笑むとアンジェは祈るように手を合わせると周囲から草の蔓や葉っぱが伸び洞窟を覆い隠す。

 

「ホルンお願い私をタケルさんの所に連れて行って」

 

ホルンは戸惑うように鳴くも彼女の決意が固い事に気付きアンジェを背中に乗せると一際大きな地響きが起き身を震わせる。

 

「っ!!ホルン」

 

「フォーン!!!」

 

アンジェの叫ぶような懇願に頷きホルンは走り出した。

 

 

流星の騎士団の三人はその異名の名の通り流星の如き速さで疾走していた彼等の疾走により草は逆立ち葉や枯れ枝等が中空を舞い上がる。

 

そして丁度盆地が見える所まで来ると地響と共に振動と轟音が何度も響いてくる。

 

「この邪気は!!どうやら近いようだな」

 

「そのようだしかしこの様子もしや誰か戦っているのか?!」

 

「ああ麗紅騎士の言う通りのようだぜ」

 

「あれか!!!・・・・・」

 

邪気に近づいているのに気づき気を引き締める嵐騎士に振動の様子から何者かが戦っている事を麗紅騎士が察する、その言葉に剛騎士は首肯し疾走しながら盆地の様子を見る。

 

そこには巨大な熊の形をした魔物とそれを相手取りながら勇敢に戦う剣士の姿があった遠目では良くわからないがどうやら青年であるのはわかる。

 

「なんだあの魔物はこの世界特有の者かもしやギンヌンガカプの眷属か?」

 

「何とも言えんそれにしてもあれ程の魔物を相手あそこまで戦える若者は一体??」

 

「んな事は後だ後とにかく急ごうぜ・・・・オオッなかなかやるじゃねえかアイツ」

 

彼等は若者に加勢するべくさらに加速していくそれは運命の早さを加速していく事になるとは思いもしない事であった。

 

 

武は魔物と切り結び続けていた一見すると互角に戦っているがその実武は押されていた相手は疲れを知らないがこっちは体力も霊力も限度があるかてて加えて幾つもできた小さい傷からの出血がさらに体力を削っていく、切り札を使えば一時的に圧倒出来るがもし倒しきれなかった場合は身動きが取れなくなってしまいそこで終わりである。

 

(霊核がなかなか見つからない体内深くにあるのかならば一か八か仕掛けるしかないのか)

 

魔物が暴れたせいで周囲の地面は陥没し木々はなぎ倒され荒れ地へと変わっていたその窪地に着地した武は一瞬立ち眩みをしてしまった。

 

(しまった!!!)

 

そんな武めがけて凶腕が振るわれるがなんとか躱すも衝撃破までは躱しきれず咄嗟に岩塊を蹴り後ろに飛び霊力を全身に収束させ防御するが衝撃破を受ける。

 

「うわあああああ」

 

武は後方に吹っ飛び草叢の中にまで飛ばされるなんという判断力だろうか攻撃を躱し切れないと悟った武はダメージを軽減するために角度を計算して草叢に飛ばされるようにしたのである。

 

しかしそれでもダメージは大きいのかヨロヨロとしながら立ち上がる。

 

「クックソォ・・ゴフッ」

 

(骨は折れていないようだが打撲が酷い左腕はしばらく使えないかもう余裕もないアレを解放するしかないか)

 

そう判断し力をより高めようとすると地震よ衝撃により近くの岩塊が崩れて武の方に落ちてくる。

 

「なっしまった」

 

とその時草叢が深緑色の光を放つと蔓や葉が瞬く間に生い茂り武を守るように囲むと落ちて来た岩塊を阻み押し返す。

 

「これは・・・・?」

 

訝しむ武の耳に焦燥に駆られた声が聞こえてくる。

 

「タケルさん大丈夫ですか?!!」

 

「アンジェなんでここに」

 

「タケルさんを置いて逃げるなんて出来ません」

 

「ピィーーーー!!!」

 

真剣な表情でいうアンジェに武は何も言い返せなかった。

 

「ホルン、リィズ力を貸してお願い」

 

するとリィズの手に風が渦巻ホルンの回りに無数の氷塊が現れそれらが一斉に射出されるそれらは魔物に当たり体のあちこちを凍らせるが完全に身動きを止めるまでには至らず束縛を破ろうともがきだす。

 

「武さん体は大丈夫ですか」

 

「左腕が動かないんだごめん迷惑をかけた」

 

「気にしないで下さい今治療しますね」

 

「えっ?・・・・これは!!!」

 

 アンジェは武の左腕に手を当てるとそこに白色の穏やかな光が生まれ左腕を優しく包むと痛みが引き腕が動くようになった。

 

「どうですか?」

 

「ありがとう、助かったこれでまだ戦えるだからアンジェ今度こそ逃げるんだ出来るだけ遠くへ」

 

「駄目です武さんも一緒に逃げましょう」

 

「無理だあいつは完全にこっちの匂いを覚えているこの状態じゃ逃げきれない」

 

「そんな・・・・」

 

「だから君だけでも・・・・」

 

逃げろと言おうとして魔物が束縛を破り怒りのような絶叫するそして体を丸めると高速で転がり始めた。

 

 

「アンジェつかまって!!」

 

「えっキャッ」

 

武はアンジェを抱えるとホルンに飛び乗りホルンは武の意図を察したのか走り出す彼等が駆け出した後方に魔物は転がりながら突っ込み辺りを轢砕する。

 

武達は後ろを向きながら雷や氷塊混じりの風を放つが高速回転する魔物の体表にはじかれてしまう。

 

そして魔物は大きく飛び上がり全身を広げ武達めがけて落ちてくる武達はなんとか躱すも衝撃で地面になげだされてしまう。

 

「ううっみんな大丈夫」

 

「僕は大丈夫・・・・クッ」

 

「ピイイ・・・」

 

武とリィズは大きな外傷はなかったが武は戦闘での疲弊と衝撃により中々立てずにいたホルンが弱弱し声を出す

 

「ああっホルンあなた足が・・・・」

 

見るとホルンは足から血をながしていた。

 

(クソッもう使うしかないか)

 

「アンジェここにいて決して動かないでね」

 

「武さん何を・・・・・」

 

 

武は長刀を杖に無理やり立ち上がり自身の奥底に眠る力を呼び覚まそうとするがその気配に魔物は何かを感じたのか再び体を丸めて突進し武を轢殺せんとせまる。

 

「なっ!!!」

 

         その時であった

 

「そこまでだぜ化け物ヘヴィブレイカーーーー!!!!」

 

黒い人影が飛び込んできて手に持つ大振りのバトルアックスで魔物を横殴りに吹き飛ばすそこにこめられた膨大な闘気が爆発し相手を大きく後退させ転倒させる。

 

そこにさらに追い打ちを掛けるように今度は真紅の閃光が奔り魔物を穿つ

 

「遅いどこを見ている、スカーレットピアサー」

 

魔物は絶叫し礫を無数に放ち近くの岩を持ち上げて投げつけるがそれは深緑の烈風が渦巻き幾つもの竜巻となり吹き散らす。

 

「させん!!!ガンダム流風槍術ストームロンド」

 

武達の前に三人の騎士達が現れ魔物から守るように立つ。

 

円卓の騎士 嵐騎士ガンダムマークⅡ、麗紅騎士レッドウオーリア、剛騎士ヘヴィガンダム

 

騎士の誇りと愛と正義を守護する聖騎士達の伝説が遥かなる時を越え再び降臨した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          

 

 

 

 



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闇を正すは刃に非ず 旅立の朝

週間で投稿している人達って本当にすごいんだなと思い知らされます

まして毎日ペースってどんだけ。


 

 武は唖然としていた自分達の前に突然三人の騎士が現れたからである、その姿は騎士の鎧を纏っているが明らかに人間ではなかった一見すればロボットのように見えるだろうしかしその瞳は高潔なる騎士のそれであった。

 

 だがなにより驚嘆させられるのは彼等の放つ気であったそれはいままで会った事のある幽世の者達とは違う聖光に祝福された光輝のようであった、伝説に謳われる聖騎士とは正にこういう者達なのであろうか。

 

「無事か君達、動けるか???」

 

「あっ・・はい・・・なんとか・・・助けてくれてありがとうございます」

 

「礼は後だ、まだ戦いは終わっていないんだからよ」

 

「その通りだここは我等にまかして怪我している者達を安全な所へ連れていけ」

 

「わかりました、アンジェ、ホルンを治療した後リィズを連れて隠れていて」

 

「はいっ、 ホルンもう少し辛抱して今治してあげるからね」

 

突然現れた不思議な騎士達に内心驚くも加勢してくれる事に武は感謝し魔物の様子を見る魔物は突然現れた騎士達に怒りの雄たけびを上げる。

 

「色々聞きたい事もあるだろうが今は後回しだ、少年、君はあれと戦っていたようだが何か知っているのか」

 

「いえ自分達も急に襲われたので良くわからなくて唯わかっているのは奴の体は岩石を操って出来ているもので攻撃してもすぐに元通りになる事だけです」

 

嵐騎士の問いかけに武は自分の推測を伝えるそこに麗紅騎士は疑問を述べる。

 

「操っているという事は本体がいるという事か」

 

「ええ恐らくあの体のどこかに核があるはずそれを止めれば倒せるはずです」

 

「あんだけの巨体から本体を探さなきゃいけないのかやっかいだな」

 

剛騎士がぼやくと魔物は武達に突進し右の凶腕を振り上げ殴り掛かってくる。

 

「なんのガンダム流剛楯法 ギガンティックガード!!!」

 

剛騎士がその攻撃をなんと持っていた鋼の大楯で正面から受け止めた構えた盾に莫大な闘気が収束されその剛騎士の周囲の景色が揺らいで見える程であった。

 

(なんてパワーだあれを正面から受け止めるなんてしかも揺らいでもいないとは)

 

そして大楯に収束されている闘気が爆発し魔物を襲う至近距離で爆発を受けて右腕が砕け散り怯んでしまい隙を作ってしまうそこに麗紅騎士と嵐騎士が同時攻撃を仕掛ける

 

「このまま畳みかけるぞ、ガンダム流槍法 流星槍!!!」

 

「わかった・・・・・  ガンダム流剣法 双彗星!!!」

 

嵐騎士の槍が無数の流星の如く奔り麗紅騎士のレイピアとブロードソードの斬撃が二つの彗星のように虚空を駆け魔物に突き刺さり切り刻んでいく。

 

そしてさらに

 

 

武は全身の霊力を漲らせた腰を沈め後居合の構えを取り納刀した長刀に霊気を限界まで収束して居合切りの要領で抜刀し一文字の斬撃を放つすると十メートルはあろうかという白銀の霊刃が発生し魔物の胴体に突き刺さり胴体を破断する。

 

「布都漆式 裂空翔破!!!」

 

「これは!!!」

 

「ほう見事だな」

 

「へへっやるなあこりゃあ俺達も負けてられねえぜ」

 

 

魔物はけたたましい絶叫を上げるそれは何故か悲鳴に聞こえた。

 

アンジェは彼等が戦う様を悲痛な表情でみながらホルンの足の怪我を治療する幸いそこまで深いものではなく治療もすんだホッと安堵の溜息をつくと耳をつんざく絶叫が聞こえてくる。

 

「これは・・・・・悲鳴???」

 

アンジェは何故か悲鳴に聞こえたいや最初に魔物を見た時何故か苦しんでいるような印象を受けていた

アンジェは目を閉じ精神をおちつかせ耳を澄ますようにすると。

 

(痛いよお・・・苦しいよお・・・・・誰か・・・ダレカ・・・・・)

(ニクイノロワシイイイイイイイシニタエロアアアアチヲチヲチヲヲオヲヲヲヲヲッヲオオヲーーーー)

 

「っまさかあの子は・・・・・・」

 

魔物がなんであるか気づきアンジェは目を開ける魔物を見ると魔物の頭の部分の角の根本に昏い赤紫色をした禍々しい力が溢れているのが見えた。

 

武と流星の騎士団の三人が魔物と戦っていると背後からアンジェの声が聞こえて来何事かと振り返るとアンジェは魔物の頭部の角の部分を指さしていた。

 

「あそこにあの子を苦しめている物がありますあれを壊して!!!」

 

「!!!あそこに霊核があるのかアンジェ」

 

「ええあそこにある者があの子を呪って苦しめているの、あの子は望んでこんな事してはいないの助けないと!!!」

 

「わかったよアンジェ任せてくれ」

 

武は流星の騎士団の三人に話しかける

 

「自分が霊核を浄化するので援護をお願いできますか」

 

「オイオイ大丈夫なのかよ」

 

「あれだけの一撃を放ったのだ無理は禁物だぞ」

 

「大丈夫です手はまだありますから」

 

三人の言葉に武は力強く頷くと流星の騎士団の三人はお互い顔を見合わせ頷く。

 

 

「よし、ならば連携攻撃を仕掛けるぞ剛騎士奴の動きを止めてくれ」

 

「よっしゃ任せろ」

 

「麗紅騎士私が合図したら奴に攻撃と彼のフォローを頼む」

 

「いいだろう」

 

「という事だ少年私達が奴の動きを止めるから浄化を頼む」

 

「わかりました任せて下さい」

 

「タケルさん・・・気を付けて・・・・」

 

不安気なアンジェに優しく微笑むと武は残った霊気を全身に漲らせるそれを見た流星の騎士団の三人は散開すると魔物に向かって行く怯みから立ち直った魔物は妖気を漲らせ襲いかかる。

 

魔物は全身を丸めると再び転がり始める先ほどまでと違うのは纏う妖気の密度だろうか攻防一体のこの姿なら弾かれても砕かれる事はないと考えたのだろうしかし相手が悪かった。

 

剛騎士が愛用の大剣を抜き放ち闘気を収束して渾身の力で大地に打ち付ける。

 

「よっしゃいくぜガンダム流剛剣法タイタニックゲイザーァァァァァ!!!!」

 

大地に打ち付けられた大剣を中心に半径数十メートル内で激烈な衝撃破が巻き上がるそして魔物その衝撃破によって体を打ち上げられる。

 

そこに嵐騎士が神速で踏み込み腰を深く沈め下段に構えた槍に膨大な闘気と風が渦を巻いているそれを渾身の力と共に槍を右斜め上に振り抜くと巨大な竜巻が天を目指して駆け上がる龍の如く巻き上がる。

 

「まだだガンダム流風槍法 ライジング・・トルネェェェェェド!!!!!」

 

強烈な勢いで天へと上る竜巻に巻き込まれ魔物は空へと打ち上げられる魔物は丸まっている事ができず藻掻くように手足を振り回すが強烈な風の刃に全身を切り刻まれるとそこに麗紅騎士が現れる

 

「おとなしくしてもらおう、ミラージュピアサー」

 

独特の緩急をつけた足運びで残像を生み出しながら魔物の巨体を駆け上がり強烈な突きを無数に放ち魔物の動きを完全に封じるそしてその勢いのまま頭頂部まで駆け上がる。

 

武は自身の力を高めると同時に奥底に眠る力の箍を緩めると全身に強烈な力が駆け巡る。

 

「グッ・・・・」

 

(今の状態では完全開放は無理かでもこれなら!!!)

 

力の猛りのままに足に込めた力を解き放ち魔物に向けて跳躍する

 

アンジェは強烈な風が吹き荒れ砂煙が立ち上る中武の様子がおかしい事に気付いたが砂煙のせいで良くみえなかったがそれでも何かおかしいと感じた。

 

「タケルさん?・・・・」

 

 

 

 

「ここが霊核の場所かムッ?!」

 

麗紅騎士は下から強大な力が急速に近づいているのを感じるがそれが武である事に気付いたがその強大さに違和感を感じた確かに強大だがどこか酷く不安定な物を感じたからである。

 

だが今はそんな場合ではないと思い直しレイピアとブロードソードに闘気を収束するそして背後に強烈な気配を感じその力が爆発したのを感じると同時に剣を突き出す

 

「武雷壱式 神威御雷!!!!!」

 

強烈な白銀の雷光が視界で弾けさらに麗紅騎士の神速で繰り出された剣が5メートルはあろうかという角がを破砕するとそこには熊の姿をした精霊に禍々しい意匠が施された刀が刺さっていた刀であってもまるで生き物のような生々しさを感じる。

 

「これが元凶か、しかしなんという事をこれでは生き地獄だぞ」

 

「全くですね、何者かは知りませんが外道の所業にも程がある」

 

武は戦慄していたここまで禍々しい呪具はそうあるものではないしかも精霊の命を奪わずここまで悍ましい化外に変えるとは一体どんな怨念があればこんな物が作れるのか見当もつかなかった。

 

 妖刀の類は本来普通の刀や霊刀が怨念や妖気に曝され続けそれでも清め等を怠った場合になり果ててしまい持ち主に災いをなすがこれは最初から妖刀として生み出された物だとその歪んだ意匠から武は気づいた。

 

「とにかくこの妖刀を砕けば解放できるはず」

 

「わかった」

 

武は長刀に残った霊気をつぎ込み麗紅騎士は気を高めると麗紅騎士の円卓の紋章が光輝き破邪の光となって剣にやどる。

 

その気配に妖刀は最後の抵抗と言わんばかりに妖気の刃を飛ばすもただの悪あがきに過ぎず一瞬で切り払われるそして。

 

「外道の呪具よ無へと帰れここは汝のあるべき所に非ず」

 

「円卓の光よこの哀れなる魂を悪しき力より解き放ち給え」

 

「「ハアアアアアアアアアアアアア」」

 

二人の渾身の一撃が妖刀に突き刺さり破邪の力が徹底的に妖刀とそこに宿る怨念を浄化し粉砕する

 

(グギャアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーー)

 

強烈な絶叫と共に妖刀は粉砕されそれと同時に魔物の巨体が崩れるのであった。

 

魔物の巨体が崩れ去るのを見て地面にいた三人は安堵する。

 

「どうやらうまくいったみたいだな」

 

「ああそうだな」

 

「タケルさん・・・みんな無事でよかった・・・」

 

 

安堵する三人の前に武と麗紅騎士は降りてくると武は膝を着く霊気はもう使いきり切り札の反動で体が軋んでいるかのような悲鳴をあげていたそのまま倒れこまなかっただけでも大したものである。

 

「大丈夫か少年」

 

「だ・だい・・・じょ・・ぶ」

 

「オイオイ全然大丈夫じゃねえぞしっかりしろ」

 

「タケルさん!!!」

 

 

武の様子にアンジェは慌てて武に駆け寄ると再び武の腕を治した時と同じように白い癒しの力で武を癒すと武の荒かった呼吸は落ち着き脂汗も止まり体にあった軋むような感覚が消えていた今だ重い疲労感はあるものの動く事は出来るようにはなった。

 

「タケルさん大丈夫ですか・・・」

 

「ああ大丈夫本当にありがとうアンジェ」

 

「良かった・・・ごめんなさい私達の為にこんな無理をさせてしまって」

 

アンジェは罪悪感で悲痛な表情をするが武はそんなアンジェに気にしてないと笑いかける。

 

「気にしないでそれに助けられたのは僕だって同じだよありがとうアンジェ」

 

そんな武の言葉にアンジェは涙ぐむとそこに麗紅騎士の緊迫した声が響いた。

 

「待てあの精霊まだ様子がおかしいぞ」

 

「何!??」

 

妖刀を砕かれ呪いから解放されたはずの精霊は苦しみ悶え黒い妖気を放ちながら少しづつ砕けていく。

 

「まさかもう手遅れだったのか」

 

「いえまだです・・・・」

 

「アンジェ??危険だ近づいたら君まで」

 

「無理をするな!!!」

 

「大丈夫ですよ後は私に任せて下さい」

 

今だ黒い妖気を放つ精霊にアンジェはゆっくりと近づくと優しく精霊に手を差し伸べる

 

(痛いよお苦しいよおみんなみんなどこ一人はいやだよおおお助けて助けて怖いよおおおお)

 

「大丈夫よ安心してもうあなたを怖がらせる物はないわ」

 

精霊の悲鳴にアンジェは優しく囁くと暴れる精霊を抱き上げるするとアンジェの胸のペンダントが光を放ち精霊とアンジェを優しく包むするとアンジェは優しく安心させるような子守唄を歌い出した。

 

「アンジェ・・・君は一体??」

 

「これはなんと美しい」

 

「すげえ・・・」

 

「なんという歌声これ程の美声は聞いたことがないぞ」

 

穏やかなアンジェの歌声に呼応するようにペンダントの光は強まると腕の中にいた精霊から完全に妖気は消え去り穏やかな表情になるとその全身を水色の結晶体が覆うとアンジェは歌うのをやめる。

 

「おやすみなさい良い夢を見ててね、大丈夫次起きた時はみんながいるわ」

 

そう労わるように囁くと精霊は頷くように息を吐きいつになるかわからない程久しぶりな安らかな眠りにつくのであった。

 

 

魔物との戦いが終わりとりあえず落ち着いた場所で話そうという事になり全員でアンジェの家で話し合う事になった。

 

「助けて頂いて本当にありがとうございます私の名前はアンジェこの子はリィズと申します」

 

「僕の名前は武 鞘八斗です力を貸して下ってありがとうございます」

 

「いや騎士としての務めを果たしたまで気にしないで欲しい」

 

「おうよむしろこっちも助かったからおあいこだぜ」

 

「そういう事だ霊核の場所とやらがわからなかったら苦戦していただろうからな」

 

 

 

「そう言ってもらえると助かります、それであなた達は一体何者なんですか」

 

「我等はスダ・ドアカワールドから来たブリティス王国の円卓の騎士団の者だ私は嵐騎士ガンダムマークⅡという」

 

「俺の名前は剛騎士ヘヴィガンダムだよろしくな」

 

「私の名は麗紅騎士レッドウォーリアよろしく頼む」

 

「スダ・ドアカワールド??ってここの世界の方ではないんですか・・・」

 

武は驚いていたまさか自分の世界とは違う世界の人々が来訪してくるとは普通は考えもつかないであろう。

 

「ここの世界の?どういうこった」

 

「あの・・・地球という言葉を知りませんか」

 

「チキュウだといや知らないな」

 

「まさか君は我々とは違う世界から来たのか」

 

武の言葉に剛騎士は疑問符を浮かべるが麗紅騎士は武が自分達とは別の世界からきたのではないかと気づいた。

 

「ええその通りですまさか僕以外にも異世界の方々来るなんて思ってもみなかったけど」

 

「そうだったのかでは武殿・・・・」

 

「武でいいですよ・・ええと」

 

「嵐騎士でいい特に呼び方にこだはりわない、公私をわけてくれるだけでいい」

 

「わかりました嵐騎士と呼びますね」

 

「ああ、それで武、君もゲートでここに来たのかい」

 

「ゲート?いえ僕は違いますある人に連れて来られたんです」

 

「ゲート以外の方法で来ただとどういう事だ??」

 

「それは・・・・」

 

武は自分がここに来た経緯を三人に話した。

 

「そんな事があるとはな」

 

「でもよおなんだってその女神はおまえをここに誘ったんだ」

 

「それはまったく心当たりがなくて・・・・」

 

「しかしここまで来ると偶然の一言では片づけられないな」

 

「そうですねそういえばあなた方は何故ここに来たんですかさしつかえなければ教えて欲しいのですが」

 

武の質問に三人は顔を見合わせ相談すると事実を話そうという事になり武に向き合う。

 

「我等はこのフロニャルドにあるという伝説の星命樹マナを探して来たのだ」

 

「星命樹マナ・・・?」

 

「えっ?」

 

(なんでどうしてマナなんて聞いた事ないのにどうしてこんなにも懐かしいと感じるの?)

 

アンジェは何故か星命樹マナという言葉に懐かしさを感ると共に掻きむしられるような悲しみを感じた。

 

 流星の騎士団の三人の説明を受け武は信じられない思いだった遥か古の王が異世界を救いそして遥かな時を越えて荒れ果てた地を蘇らせる為に再び伝説を求めて騎士達が旅立つそれは正に古の英雄譚そのものであったよもや自分がその当時者に会うとは夢にも思わなかった。

 

その傍らではアンジェがどこか不安気な表情になりながら黙って彼等の話を聞いているがどこか心ここにあらずのようだった。

 

「そんな事が・・・・・」

 

「我々とは別の世界から来た君にとっては信じられない話だと思うが」

 

「いえ自分の世界にもそういう世界を支える神樹の伝説とかありますから」

 

「そうなのかい」

 

「ええそれに自分が最近見た夢にもそれと似たのがでてきたので」

 

「夢だと・・・それはどんなのだ」

 

「それは・・・」

 

武は自分が最近見た夢を説明した大地に豊かな恵みを齎す神樹とそこから生まれた女神そして邪悪な影との戦いそして黄金の竜神とその涙から生まれた白銀の槍を携えた黄金の騎士そして影との戦いで力尽きた女神と神樹そしてその再生。

 

「随分不思議な夢だなぁ」

 

「ええ最初は訳がわからなかったんですけどただあなた方の話と何か関係があると思ったんです」

 

「確かに我々がこの世界にきた時に見たレリーフに描かれている女神に酷似しているが」

 

「そうなんですか!!!ここまで来ると偶然の一言では片づけられないですね」

 

「そうだな、他にも心当たりはないか」

 

「いえ全く正直何故自分をこの世界に連れ来たのかわからなくて」

 

「そういや 帰り道を探しているんだったか」

 

「はい、みんな心配していると思いますから」

 

「ならよぉ俺達と一緒に行かないか」

 

「剛騎士!!どういうつもりだ」

 

剛騎士の言葉に武は目を丸くし嵐騎士は思案気になり麗紅騎士は驚いて剛騎士は詰め寄る。

 

「だってよ一人ぼっちでここに来たんだろほおっておけないぜそれに帰り道をさがす必要があるのは俺達も同じだろだったら一緒に探そうぜ」

 

「そうだな剛騎士の言う通りだな・・・」

 

「嵐騎士おまえまで・・・・・」

 

「帰り道を探すのもそうだが彼の見た夢も気になるもしかしたらここで会ったのも何か意味があるのかもしれない無論彼が良ければだが」

 

「いいんですか?大切な使命があるのに」

 

「気にしなくていい見ず知らずの異世界を一人で旅するのは大変だろうそれに帰り道を探したいのは私達も同じだだから協力できると思うんだが」

 

「わかりましたそれではよろしくお願いします」

 

「そうか良かったこちらこそよろしく頼む」

 

「まったくだが確かに嵐騎士の言う通りか・・・・」

 

「おうよろしく頼むぜそれと敬語はなしでいいぜ」

 

「いえ流石にそれは・・・・・」

 

剛騎士の言葉に武は言いよどむ王国の騎士団の聖騎士で目上の人物である、神社の神主の息子である武は礼儀作法等幼い頃しっかり教わってきておりまた武自身も真面目な性格である為流石にそれは難しかった。

 

「オイオイ固い事言いっこなしだぜ」

 

「まあ無理強いする事はないだろう」

 

「確かになあまり軽すぎると頭も軽くなるしな誰かのようにな」

 

「おいおいそれはどういうこった」

 

軽く言い争いを始める麗紅騎士と剛騎士の二人にやれやれといった表情になる嵐騎士に武は苦笑するとふとアンジェの方を見るとどこか悲痛そうな表情だった。

 

「アンジェ、ごめん勝手に話し込んじゃって」

 

「いえ、大事な話だというのもわかりますし気にしないで下さい」

 

「けど・・・・」

 

「大丈夫ですから・・・・ちょっと気分が優れないので夜風に当たってきますね」

 

そう言うとアンジェは足早に外へと行くのであった。

 

「随分ふさぎこんでいるな」

 

「あんな魔物に襲われたんだ無理もない」

 

「そういえばここで一人で暮らしているんだっけか」

 

「いえリイズと一緒にですよ」

 

「ピィ!!」

 

自分を忘れるなと言わんばかりのリィズの様子に剛騎士は悪いと謝るとそれに苦笑する武は真剣な表情になると三人に向き直る

 

「あの少し相談したい事があるんですかいいでしょうか」

 

武の言葉に三人は何事かと思ったが武の様子からアンジェの事だと気づく。

 

 

「そうかそういう事なら構わないただ最終的には彼女が決めなければいけない事なのはわかるなそして決めたからにはやり遂げるんだぞいいのか」

 

「はい元よりそのつもりです」

 

武の真っ直ぐな表情にフッと嵐騎士は表情を和らげると武の背を押すように言葉をかける

 

「ならばこちらから言う事はない、きちんと自分の思いを伝えるんだぞ」

 

「ありがとうございます嵐騎士じゃいってきます」

 

「おう頑張ってこいよ」

 

「フッ・・・しくじるなよ」

 

嵐騎士の背中を押すような言葉と剛騎士と麗紅騎士の励ましに武はお礼を言うとアンジェを追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

家の外から少し離れた丘でアンジェは悲し気に夜の星空を見上げていたいつもは慰められる美しい絶景でも心は晴れなかった。

 

孤独を紛らわせるように自身の体を抱きしめるも今朝の事もあり不安も恐怖も消えず体は無意識に震えていた。

 

(私は一体誰なの??どうすればいいんだろう)

 

「アンジェ」

 

「タケルさん・・・・どうしたんですか」

 

「どうしたってそんな泣きそうな顔していたら気になるよそれに君に話したい事があるんだ」

 

「話したい事ってなんですか」

 

アンジェの質問に武は真っすぐにアンジェを見つめるその真剣な表情にアンジェは思わず目をそらしかけるがそれは失礼だと思い武と向き合う。

 

「アンジェ僕と一緒に行かないか」

 

「えっタケルさんとですか・・・・」

 

「うん、君の記憶を取り戻してあげたいんだその為にも一緒に行こう」

 

「で、でもタケルさんは帰り道を探さなきゃいけないんじゃ」

 

「もちろん探すよだから二人でお互いの探し物を見つけに行こう・・・・いやかな」

 

「嫌じゃないですでも大変なんじゃ」

 

「そうかもねでも二人なら探す広さも半分になるよ」

 

武のおどけた言い方にアンジェはプッと小さく笑うと涙ぐむ。

 

「本当にいいんですかご迷惑じゃ・・・」

 

「迷惑とかそんなの関係ないよ大事なのは君がどうしたいのかだよアンジェ」

 

「私のしたい事・・・」

 

「そうだよ君の本当の想いが知りたいんだ」

 

「私は・・・・見つけたいです自分が何者なのかそしてどうしてあそこにいたのか知りたい、例えそれがどんなに辛い事でもそれが私でもあるから」

 

「それじゃあ」

 

「はいっ 私も武さんと一緒に行たいです、いいですか」

 

胸中に不安を滲ませながらもアンジェは自分の気持ちを告げるそれは三年前に目覚めた時からいつも心の中にあった思いだった。

 

「勿論、それじゃ決まりだねこれからよろしくアンジェ」

 

「うんっ!!タケルさん」

 

武の言葉に満面の笑みでアンジェは答えるふと胸中にあった不安は消え暖かい気持ちが胸に溢れる。

 

「でもどうしてそこまで」

 

「困っている人を助けるのに理由なんていらないよ助けたいから助けるんだ、君だってあの時僕を助けに来たじゃないか」

 

「それはそうですけど・・・・」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「泣きたいのに泣けない笑いたいのに笑えないのはもっとも悲しい事だと思うんだだから無理に強がらなくていいんだよ、アンジェ泣きたいなら目一杯泣けばいいんだ」

 

武はそう言うとアンジェに優しく微笑むと武のその言葉にアンジェは今まで貯めていた不安や悲しみが一気にあふれ出し思わず武に抱きつき泣き出した、それは悲しみの涙と嬉しい涙がないまぜになったものだった。

 

「アンジェ・・・・」

 

「うっうっタケルさん・・・・ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーー」

 

今まで抱えいた思いを涙と共にさらけだし抱きつくアンジェを武は優しく慰めるのだった。

 

 

 

 

ひとしきり泣いた後アンジェはようやく落ち着いたのか恥ずかし気に俯いてしまう心なしかその頬は赤かった。

 

「落ち着いたアンジェ・・・・」

 

「うん・・・・ありがとうタケルさん」

 

「もうさん付けはいいよ、これからはタケルって呼んで欲しい」

 

「タケルさん・・・・いえタケル・・・」

 

「うん」

 

「改めてこれからよろしく、タケル」

 

「こちらこそよろしくアンジェ」

 

二人はそう言いお互い優しく笑いあうその二人をフロニャルドの夜空に輝く星々が優しく祝福するように照らしていくのであった。

 

「オイオイ二人共俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

「その通りだ我等も力を貸そう」

 

「ヤレヤレまったく確かに二人だけでは心もとないか・・・・」

 

二人の前に流星の騎士団が現れ二人に力を貸す事を決めるような言葉をかける。

 

「みなさん・・・・」

 

「二人ではなくこれで五人だな」

 

「ありがとうございますみんな・・・・」

 

アンジェの嬉しそうな声に武と流星の騎士団は顔を見合わせ笑いあうとそこに。

 

「ピイィィィィーーーーーー(# ゚Д゚)」

 

リィズが自分を忘れるなと言わんばかりに怒りと抗議の声をはっする

 

「おおっと6人だったかワリイワリイしかし可愛いなこのちっこいの」

 

「ピィ!!」

 

 ちっこいの言うなというようにまた抗議の声をリィズはあげるその様子がおかしくて他の4人は思わずわらってしまうのであった

 

 

 

翌日・・・・朝から荷支度を終えた五人はいよいよアンジェの家から出発する事になったがその前にアンジェはみんなにお別れの挨拶をしたいと言うと4人は快く了解する、しばらくしてホルン達がアンジェの前に集まってくる。

 

 

「みんな今までありがとう私自分の記憶を探す為に武さん達と行こうと思うのだからみんなとここでお別れしないといけないでも私みんなの事は絶対に忘れないから」

 

そういうアンジェに精霊や小動物達は寂しそうな表情になる者がいるがアンジェ気持ちを思ってか拒否するものはだれもいなかった。

 

そんな中ホルンがズズイと前に出ると武達の所に並ぶ。

 

「ホルンあなた一緒に来てくれるの?」

 

「フォーーーーーン」

 

アンジェの言葉にホルンは力強く頷くとアンジェ顔に頬を寄せる。

 

「ホルンまたこの間のような危ない事に巻き込まれるかもしれないよいいの」

 

「フォン」

 

ホルンの意思は固く例えここで置いて行ってもついて来てしまうであろう事は容易に想像がついた。

 

 

「ありがとうホルン、これからもよろしくねでも無理はしないでね」

 

そのアンジェの言葉にホルンは嬉しそうに鳴くとアンジェの顔を舐める

 

「もうくすぐったいわホルン」

 

そして改めて友人達に向き直ると寂しげな笑顔でわかれを告げる

 

「さよならみんな今まで本当に有難う・・・・それじゃ行ってきます!!!」

 

その言葉に精霊や小動物達は一斉に鳴き声を上げたり手や足を振ってアンジェを送り出すアンジェはそんな彼等の声援に涙ぐみながら武達に向き直るそして武はアンジェに手を差し出す。

 

「さあ・・・・行こうアンジェ」

 

「うん行きましょう・・・タケル」

 

アンジェは武の手を取ると穏やかに頷き踵を返して歩き出すその後を流星の騎士団が続く

 

「グスッ・・・クゥーーー泣けるじゃねえか」

 

「必ず守り抜かねばならないな彼等を」

 

「フッそうだな」

 

涙脆い剛騎士が涙ぐみ嵐騎士が新たに決意を固め麗紅騎士はクールにそれでいて力強く頷き武とアンジェと共に歩き出すのであった。

 

そして彼等が見えなくなるまでアンジェの友人達は彼等を見送り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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焦燥の英雄   水の漂流者   

創作活動って時に迷路を彷徨うような気分になりますよね。


 空から山々を見下ろしながらクーベルは難しい顔をしていた、ビスコッティ共和国とガレット獅子団領から伝説の魔物、山砕きの魔爪が現れたと連絡を受け、調査の協力を快諾し自身の騎士団を率い空から調査を行っているが思うように進んでいなかった。

 

 クーベルは自身の輝力武装であるスカイヤーに同情しているビスコッティ共和国の幼いながらも首席研究士をしているリコッタ・エルマールを見るとリコッタも難しい顔をしながら最近開発した魔物探知機をのモニターを見色々操作しながら探知を行っているようだが難航しているようだ。

 

「リコよどうやら探知はうまくいってはおらぬようだな」

 

「ごめんなさいであります、大まかに北に向かっているくらいしかわからないであります」

 

「そうかかなりの巨体だから直ぐにみつかると思っておったのだが」

 

「ヴァレリー様の話からだと山砕きの魔爪はその力もさることながら本当に恐ろしいのは神出鬼没で突然現れては無差別に破壊を行い直ぐに行方が分からなくなる事だと聞いたであります」

 

「もしや地中を移動しているのではないかの、それならなかなか見つからぬと思うが」

 

「恐らくそれだと思うでありますが、それでも何か痕跡が残ると思うでありますでも計器にはほんの微弱な反応しかないであります」

 

「そうか・・・・早く見つけて止めないと人々が危ないのじゃ引き続きよろしく頼むぞリコよ」

 

「はいであります」

 

クーベルの言葉にリコは力強く頷くと観測に集中するのであった。

 

「地上の様子はどうであろうか何か見つかっているとよいが」

 

 

 

 

 地上ではビスコッティ共和国の騎士団と隠密隊、ガレット獅子団領の騎士団が共同で探索を行っていたかつて何度か伝説級の魔物を相手にした事があった為全員緊張した面持ちであった。

 伝説級の魔物による災害は実に天災級の被害をもたらし過去には国が滅亡した事もあり彼等の中にもかつて国を滅ぼされた者や住んでいた村が破壊され追われた者も少なからずいるのであった。

 

セルクルというダチョウに似た鳥であり騎乗鳥にまたがり部下から報告をうけながら自分達も探索を行っているミルヒオーレとレオンミシェリは思うように進まない事に表情を曇らせていた。

 

「ヴァレリー殿から聞いていたが中々尻尾をつかませんなどこにいったのやら」

 

「北の方角だという事はわかっているのですが・・・」

 

「しかし方角だけではなおまけにここいら一体は山々や峡谷が多い故身を隠すには持ってこいだしの」

 

「周辺には人里がないので被害を受けている方がいないのは幸いなんですが」

 

「うむ、だからかここは旅人や商人が嫌がり遠回りしてでも安全な街道をいくからなその為か全く人がよりつかん」

 

難しそうにレオンは思案する大陸中央にある山々の複雑な連なりがあり小さい盆地がいくつかあるがそれ以外は険しい山で構成されておりおまけに加護の力たるフロニャ力もあまり強くなくその為か旅行者や商人等はここを避けて通る為ほとんど未開の地である。

 

思案している二人の前に森から忍装束に身をを包んだ狐耳と狐尻尾の女性が飛び出して来ると二人の前に膝を着くそれは隠密隊の筆頭ユキカゼ・パネトーネであった。

 

「姫様にレオ様ご報告があるでござる」

 

「まあユッキー急にどうしたのですかもしかして何か見つかったの」

 

「おおユキカゼかどうじゃ何か見つかったか」

 

「いえ魔物自体は見つかっておりませんが魔物を見かけた人がいたとの報告があったでござる」

 

「そうだったのかで何かわかったのか」

 

「魔物はどうやら山々の方に向かっていったようでござる今ガウル殿下とジェノワーズが調べに行ったででござる」

 

「そうですか、その見つけた方は大丈夫なのですか」

 

「その方に特に怪我はないでござるが一つ気になる事を言っていたでござる」

 

「気になる事ですかそれは一体?」

 

「なんでも一年くらい前に薬草を探しに山の奥深くわけいった時に一人の少女の姿を見た事があると言ってたでござる」

 

「このような険しい所で少女が一人で暮らして居るだと」

 

「そんな・・・・」

 

「その方も気になったのですが何分峡谷を隔てた所を遠目で見ただけで声を掛けようにも直ぐに山中に去っていったそうでござる、その後も気になって探していたのようなのですが何分お年を召したかただったので山を越えるのは無理だったようでござる」

 

「そうですかユキカゼ良く知らせてくれましたレオ様みんなにも連絡して山の調査を行いましょう」

 

「うむ、そうじゃな・・・・ビオレ皆に通達を頼む」

 

「はい、承知いたしましたレオ様」

 

レオは近くで調査していた紫のショートヘアに猫の耳と尻尾を持つ昔から自分に仕えてくれた側役に通達を頼むと険しい山へと向かうのであった。

 

ガレット獅子団領の若き王子ガウル・ガレット・デ・ロワは先の少女の情報を聞き山林を一足先に探索していたその後を彼の親衛隊であるジェノワーズの三人が追いながら周囲を探索する。

 

「ちょっとガウ様そんな焦らんでもまだその少女が襲われとると決まったわけじゃないんやから」

 

ジェノワーズの一人であるトラの耳と尻尾を持つ少女ジョーヌ・クラフティが焦り気味のガウルを諫めるように声を掛ける。

 

「そうだよガウ様、無理して遭難したら却ってみんなに迷惑かけちゃうよ」

 

ジョーヌの言葉を後押しするようにジェノワーズの一人でありガウルと最も付き合いの長い黒い猫の耳と

尻尾を持つ小柄な少女ノワール・ヴィノカカオも賛同する。

 

「そうですよ、ガウ様その少女が心配なのはわかりますけど」

 

仲間の二人の言葉に頷きつつもガウル心境を思って言葉を掛けるのは兎の耳と尻尾を持つベール・ファーブルトン彼女もまたジェノワーズの一員である。

 

「ああ、わかってる、・・・・わかっちゃいるんだがよ・・・・」

 

三人からの言葉にガウルは不承不承頷くもこんな場所で少女が一人寂しく暮らしているのを放っておけないと思い先を急がずにはいられないのであろう。

 

普段は自信家で悪ぶっているが実際は優しく面倒見の良い人である為当然と言えば当然と言えるが。

 

(なあベールやっぱあの子の事と重ねて見とるんかなガウ様)

 

(多分そうかもでもやっぱり一人ぼっちの子を放っておけないもんね)

 

(そうだね、あの子が年末にここに来るから早く魔物を止めたいと思っているのかも)

 

「おいお前ら聞こえてんぞ第一アリアは関係ねえだろうが!!!!」

 

彼女達の言うあの子の事が誰か一瞬で思い浮かんで顔を赤くしながら怒鳴るが三人はクスクスと笑うのであった。

 

「あれーーうちはアリアちゃんなんて言っておらへんけどななあノワ」

 

「そうだよ言ってないよ」

 

「ねーーーー」

 

その三人の言葉にガウルは語るに落ちた事を悟りバツが悪そうになるとその背中にノワールが声をかける。

 

「ガウ様心配なのは分かるよでも慌てても仕方ないしそれでもし怪我したらみんなもアリアも悲しむよちゃんと足並み揃えていこう大丈夫みんなで探せばきっと見つかるよ」

 

ガウルと一番付き合いが長いノワールの言葉にガウルは気を使われた事に気付き固い表情から力を抜く。

 

「わかったよ、すまねえなお前らちょっと頭に血が上っちまったみてえだな」

 

「気にせんでいいで心配なんはみんな一緒やだから力をあわせな」

 

「そうですよガウ様」

 

「ああわかった、取り合えず戻って一旦報告だ何か情報が入っているかもしれないしな行くぞおまえら」

 

ガウルの言葉に三人は頷くとレオ達の所に一旦戻るのであった。

 

 

 

 三国の騎士団が探索に地道を挙げている時にその魔物を倒した武達は山道を通りながら人里を探すべく山林をかき分け進んでいた。

 

 アンジェの家を出て数日経つが幸い魔物の襲撃等はなく道中で食料となる山菜等を採取しながら進んでいたしばらくすると開けた場所に出たのか視界が一気に広がり先等が見渡せるようになる。

 

 少し先に切り立った断崖がありそこから見えるのは膨大な水を湛え澄み渡った美しくも広大な湖が広がっていた対岸まではかなりの距離があり目を凝らしても霞んで良くみえない程であった。

 

 あちこちにある大きな滝から膨大な水が流れ落ち莫大な量の水しぶきを上げ朝の陽光をを反射しあちこちに虹のアーチを生み出しそこを色とりどりの霊鳥が飛び交い、美しい羽根を広げるながら気ままかつ優雅に精霊が空を飛びその軌跡に美しい燐光が尾のように流れていくそれらが幾重にも重なり美麗な彩りを生み出す。

 

 湖には様々な生き物が思い思いに回遊し無邪気に戯れるそうかと思うと全長数十メートルはあるだろう巨体に目が冴えるような美しく輝く蒼い鱗に覆われた水竜が湖を割り思いっきり飛び出し優雅に中空を舞い再び湖に戻り大きな水の波紋を残す。

 

 正に幻想世界の絶景にして美景の極致と言っても過言ではないだろうあまりの美しさと壮大さに武達は言葉を失うそれは否が応でもこの世界の広大さと雄大さを予感させる物であった。

 

 特に武はあまりの非現実な光景に思わず眩暈がしそうであったもはや溜息しかでないそれは円卓の騎士達も同じであった彼等も円卓の騎士として様々な所を巡り数々の神秘を見た事があるがここまでの神秘的な絶景があるかと問われれば否としか言えないであろう。

 

そんな光景に目を奪われつつも歩を進めると太陽は天頂にあり丁度昼に差し掛かる冬とはいえ快晴の為か日差しは柔らかくも力強く彼等を照らし暖かい陽気となり朝の寒さで冷えた体を温めるのであった。

 

「ウーーン・・・陽気がとても気持ちいいねタケル」

 

「そうだねアンジェ、今が冬とはとても思えないな」

 

「そうね、それにしてもこんなに気持ちいいと眠たくなっちゃうかも・・・・ねっ、リィズ、ホルン」

 

「ピィーー」

 

「フォン」

 

アンジェのリィズとホルンは頷くとリィズはアンジェの肩に止まるとスヤスヤと眠り出しその姿にアンジェと武は微笑ましそうにに笑いあう。

 

「フアアアーーーー確かになこうも気持ちいいと昼寝がしたいぜ」

 

「ヘヴィガンダムよ騎士ともあろうものがそんな大欠伸してどうするみっともないぞ」

 

「いいじゃねえか城の中じゃねえんだしよ」

 

「気構えの問題を言っているのだ全く」

 

「二人共こんな時まで喧嘩する事はないだろう」

 

 剛騎士ヘヴィガンダムと麗紅騎士レッドウォーリアが軽い口喧嘩をヤレヤレと仲裁する嵐騎士ガンダムマークⅡの姿に武とアンジェは思わず苦笑する。

 

「仲が良いんですね騎士様方」

 

「「別に良くない(ぜ)(ぞ)」

 

異口同音な二人の言葉に武は吹き出す。

 

「その割には息がピッタリですよ二人共」

 

「「あっ」」

 

 武の指摘にまたもや異口同音に言葉を発する二人に堪えきれず他三人は笑いだし釣られて二人も笑い出す暖かい陽気に相応しい笑顔があった。

 

「あっそろそろお昼ですね、みんなお昼ご飯にしましょう」

 

「おっしゃ飯だ飯だー」

 

アンジェの提案に剛騎士は喜ぶがそこに嵐騎士がしたり顔でこういった。

 

「アンジェさん、へヴィガンダムだけ野菜多めに頼む」

 

「はい、いいですよ」

 

「それは勘弁してくれーーーー」

 

「ヘヴィガンダムよ淑女のもてなしを無碍にするのは騎士あるまじき行為だぞ」

 

「野菜は苦手なんだよおおおおおーーーー」

 

麗紅騎士の言葉に剛騎士の悲鳴が当たりに響くのだった。

 

好き嫌いは世界を越えた共通の悩みなんだなと武はそんな他愛のない事を思うのだった。

 

 

 

 

 武達が後にした湖で気持ち良く回遊していた主たる蒼い鱗の水竜はふと何か不思議な気配を感じ辺りを見渡すと球形の淡い極光が突如として出現しその中に一人の少女が現れる。

 

 その少女は白く飾り気のない装束を身に纏っており唯一アクセサリーと言えば長く美しい金髪につけられている青いリボンだけだろうかしかしその容姿端麗な美貌は未だ十代半ばの幼さから考えれば成長すればそれこそ多くの人を惹きつけるだろうか。

 

 水竜は不思議そうに首を傾げた少女から強い水の力の気配を感じたからである思わず引かれるようにして少女に顔を近づけると少女の口から空気がゴボリとあふれ出す、どうやら意識はないが生きているようだがこのままでは危ないと思った水竜は少女を頭に優しく乗せると水面へと顔を出す。

 

水竜の頭上で少女は落ち着いた表情になる、どうやら大丈夫そうだと思うと湖にある小さな陸地の一つに少女を下ろそうとするといつも湖の上で遊んでいる精霊が興味津々といった様子で来る。

 

その精霊の姿を一言表すなら水の妖精といった所であろうか半透明な水色の魚の鰭を思わせる羽根を持ち

髪は青色でその瞳も青色であった耳は尖った長い耳をしており肌の色は透き通った透明感のある明るい青色で所謂水縹色をしていた。

 

精霊は良く遊んでくれている湖の主である水竜の頭上の少女を心配そうに見ると少女の閉じた瞳から一筋の涙が零れてくるとその唇が微かに動きある言葉を切なげに悲しく紡ぐ。

 

「・・・・ルーネス・・・・・」

 

そう少女は呟くと深い眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 深夜の山中で手ごろな洞窟を見つけた武達はそこを今夜の寝床にする事に決め火を起こし焚火を焚くと夕食を取るべく道中で見つけたり洞窟の近くで見つけた山菜や茸等で夕食を作っていた。

 近くではホルンがのんびり草を食べているが耳はピンと張りつめており周囲を警戒しているのがわかる。

 

調理が得意なアンジェが鍋をゆっくりかき混ぜながら鼻歌を歌い少し離れた所では武が刀の手入れをしていた。

先の魔物との戦いの為か所処で傷みが出ていたそれはむべなるかな強大な力を持つ岩石の魔物相手ではいかに丁寧に鍛えられた霊刀でも物理的にも霊的にもかなりの負担を強いる事になるのは明白であった

 

(流石にあれだけの激戦をしたんだ折れなかっただけでも幸いか・・・)

 

そう思いなおすと荷物から特別に清められた御神酒を取り出し口に含み一気に吹きかけ清めるとの残りの酒の雫を綺麗に拭き取り目釘等の確認を終えると息を吐く。

 

「なんとも美しい剣だな異界の剣はみなそうなのか」

 

「いえ僕の生まれた国固有の剣で日本刀と言うんです」

 

「ほう・・・・少し拝見してもいいか」

 

「ええいいですよ手入れもすんだので」

 

「では失礼して・・・・むう・・・これはすごいな」

 

麗紅騎士は一見してこの剣が尋常な技術で作られた物ではない事に気付いた余程腕の良い剣工によって鍛造されたのだろう細いながらも粘り強く丁寧に叩き上げられた刀身は美術品でも通ってしまいそうな程だが剣として扱う為の強靭さも備わっているがしかし。

 

「だが、随分痛んでいるな、あの戦いのせいか」

 

それは素人ではわからないものであっただろうが一流の剣士にして円卓に坐する事が許された幾多の戦いを乗り越えた百錬の騎士として視点が刀身の綻びを見逃さなかった。

 

「わかりますか、刀身がほんのわずかですが歪んでいて刃も若干潰れてしまって、まだまだ未熟ですね刀にここまで負担をかけるなんて」

 

「そこまでわかっているならこの刀の事で特に言う事はないが・・・・」

 

どこか含むような言い方に武は疑問を感じる

 

「何かありますか・・・・・」

 

「ああ君の場合は未熟とは少し違うような気がしてなまあそれを含めて未熟とも言えるが」

 

「・・・・???」

 

「武、食事まで少し時間がある手合わせをしてみたいんだが良いか」

 

「ええいいですよ」

 

武は麗紅騎士と一緒に洞窟の外に出ると距離を取りお互い構える。

 

「では・・・一手お願いします」

 

「うむ・・・ではいくぞ」

 

「はい」

 

そして二人はそれぞれ獲物を手に取り手合わせを始まった。

 

 それぞれの武器が神速で閃き攻守を目まぐるしく変えながら紅と白の影が閃き舞い刀と剣が切り結ぶ都度に火花が散る様は流麗なる輪舞を鮮烈に彩る。

 

 麗紅騎士のレイピアとブロードソードが神速で閃きそれを武は刀で流しつつ踏み込み切りつけるが麗紅騎士は巧みな足さばきで躱し武の横合いをすり抜け様に反撃の斬撃を繰り出すもそれを予期していたのか咄嗟に上に飛び躱すと全身を縦に回転させながら斬撃を繰り出す。

 

「布都肆式 円月転輪 !!」

 

その技に麗紅騎士は軽く目を向くと自らも技を放つ全身の力を一点に収束して神速の踏み込みを無拍子で放つ高速強襲の突閃撃。

 

「スカーレットピアサーーー」

 

斬撃と突きが衝突した結果威力で負けた武は吹き飛ばされるも空中で神速の体捌きで態勢を整えると後ろにあった木の幹に両足を着くと刀を矢を引くように構えると木の幹を全力で蹴りつけ突進し神速の突きを繰り出す。

 

「布都弐式 鉄穿牙」

 

凄まじい突進と突きによる一撃を繰り出す技だがそこには霊気は通っていない威力が上がり過ぎてが危険なためである武自身寸止めにするつもりだったが、その突きが麗紅騎士に当たる寸前で彼の姿がぶれ赤い燐光となって消え去る。

 

(残像か?!!これだけのをこの一瞬で!!!)

 

武は空振りで終わったが勢いがついていた為たたらを踏み体制を立て直そうとした時に背後に気配を感じ振り返り様に刀を振るおうとしたが、眼前にレイピアが付きつけられていた。

 

「参りました、お見事です」

 

「君もな中々の突きだったぞ当たればこちらが危なかった」

 

「恐縮です」

 

「だが一つわかった事がある」

 

「なんですか」

 

「君は確かに未熟だがそれは成長の余地がまだまだあるという事だそれぞれの技もしっかり練り上げられているのがわかるだからこそおかしい」

 

「おかしい・・・・?」

 

「あれだけの技ならば刃が欠ける事はあるかもしれないが、潰れる事はないはずだつまり潰れたのはあの魔物と戦った時のあの技が原因ではないか?」

 

「っ!!!それは・・・・」

 

「どうやら思い当たる事があるようだな、あの時の力に原因があるのではないか」

 

「ええ・・・・僕はまだあの力を扱いきれていないんです」

 

「そうか・・・・確かにあれだけの力だ扱いきれないのも無理はないが、どこか君が強い忌諱を抱いているように思えてな」

 

「!!!」

 

「あれだけの力だ恐怖を感じるのは無理もない、己の力に恐怖の一つも抱けないないのは逆に危険だ、だがしかし恐怖に怯えすくむだけでは何もならないという事だ良く覚えておくとよい」

 

「はいっ忠告ありがとうございます」

 

「ふっ少し気になっただけだ」

 

武は内心深く動揺していた自分の力の大きさに恐怖を感じているそれはそうだろうしかしそれとは別に何か焦燥と身を焼くような悔いを内に感じるのは何故なのかその答えは未だ出ないのであった。

 

 

「おーーい二人共飯が出来たってよ早く来ないと冷めちまうぜー」

 

「むっああわかったでは行くか武」

 

「はい・・・・」

 

洞窟に戻る武の背中を見ながら麗紅騎士はふと思った事を呟いた。

 

「恐怖というよりどこか自暴自棄に近いように思ったが、気のせいだろうか・・・・」

 

そう不安を滲ませるも頭を振り洞窟へと戻るのであった。

 

 

 




今話で登場した新キャラが思いっきりネタバレしている件。www


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オリジナルキャラ紹介

キャラクター紹介です話が進み次第随時更新していきます。


             鞘八斗 武 (17歳)身長178cm

 

 

 

 この話の主人公格の人物日本の八重木神社の神主の跡取り息子にして八雷奉神流退魔剣術を継承している。

 家族は両親と姉と妹がおり家族仲はとても良く特に妹からはすごく懐かれている。

 

 性格は温和で真面目で誠実な人物で街の人々から慕われており子供からも人気がある学校等ではクラスから結構信頼されているが同時に怒らせてはいけない人物でもある、もっとも彼を怒らせるのは大抵悪事等の為怒らせる方が悪いのだが。

 

 容姿はすらっとした長身だが体はしっかりと鍛えこまれ引き締まっており黒髪黒目の眉目秀麗を絵に描いたような美青年である。

 

 幼い頃から剣術を学んでいる為、剣術に関してはかなりの域まで磨かれておりシンク達よりも腕前は圧倒的に上であり、レオンミシェリと比べると剣技とスピードは武が上だがパワーと耐久力はレオが上である。

 

 その性格と容姿と武術の腕から親友から京劇なら趙雲子龍が時代劇なら源義経が張れるぜ等とからかわれている。

 

謎の女性によりフロニャルドに連れて来られた後アンジェと出会い彼女の孤独と悲しみをしり何とかしてあげたいと思い彼女の記憶を取り戻す為に円卓の騎士団の三人と共にフロニャルドの探索へと赴く謎の女性のある表情に何か引っかかる所があるようだが?。

 

 

 

 

 

                 アンジェ (17歳?くらい) 身長160cm

 

 

 フロニャルドに連れて来られた武を介抱した少女、三年前より以前の記憶がなく自分の名前以外では薬草に関する知識や身の回りの事くらいしか覚えておらず、今住んでいる家でリィズと目覚めてから武に会うまでずっとそこで住んでいた。

 

 とても優しい少女で傷ついている生命を放っておけなかったり危険な時も内心の恐怖に耐えながら誰かの為に行動できる気丈さと恐怖と不安や孤独に涙する少女として相応の脆さを持つそれでもなお他者への労わりを優しさを絶対に失わない。

 

 容姿は背中の下の太ももまでと届く程の美しい茶色の長髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ容姿端麗で武自身最初は女神か精霊かと思った程。

 

 スタイル抜群かつプロポーションも抜群でありグラビアアイドルやモデルが裸足で逃げ出すレベルもっとも容姿あわせて本人特に鼻にかけるような事はまったくない。(ちなみに胸のサイズはGカップ)

 

植物の力を操り治癒の力や邪気を浄化し傷ついた精霊等を癒す力を持ち回復力もかなりのものがある。

 

精霊や幻獣、小動物等にとても好かれかつ本人も精霊や小動物好きでとても大切に面倒を見るまた家事に優れ料理や裁縫等も得意で大変家庭的である。

 

武との出会いを切っ掛けに自身の失われた過去を探す旅に出る事を決意する果たして彼女の過去の正体とは・・・?。

 

何故かフロニャルドの人々の特徴である動物の尻尾と耳を持っていない。

 

 

ユーサーガンダム

 

遥か昔のブリティス王にして円卓を組織した王、剣術よりも槍術と馬術に優れその槍撃は竜の鱗や巨岩や鋼の鋼板すら容易く穿ったというさらに戦場では一度も落馬した事がなかったとも言われている。

 

フロニャルドからやって来た少女を保護した後事情を聴きフロニャルドを救う為にゲートを使いフロニャルドへ遠征し激戦の末に暴食の業竜ギンヌンガカプを討伐したという。

 

蒼銀の鎧を身に纏い神々が振るいし聖槍を持って戦う様は正に聖騎士のそれだったという。

 

その晩年は謎に包まれておりそのミステリアスさがよりこの王の神秘性を高める要因になっている。

 

果たしてこの王は何を見たのだろうか・・・・・?。

 

 

 

 

 

 

 

 



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精霊の導き   時空の狭間

荒涼とした砂漠をカイはひたすら走っていたここはかつて激戦があったセダンの要塞の前に広がっている砂漠である。

 

カイはゲートの一件をキングガンダムⅡ世に伝える為に子供達を街に帰した後首都バーリントン市を目指して急いでいた。

 

 

「ふう・・・まったくなんで俺はこんな事やってんのかな」

 

口では愚痴を言いつつも急ぐ足を緩めない辺り普段の軽い言動に隠れがちだがなんだかんだで筋を通す義理堅い男である。

 

 

「まったくあいつらに会ってからなんだかんだでお人よしが移っちまったのかね・・・・あんっ?」

 

 

ふと後方に気配を感じ振り返ると鋭い嘴を持つ4足歩行の鳥型の魔物と禍々しい獅子のような魔獣が追いかけてきていた恐らくカイを狙っているのだろうそれに気づくとカイは慌てて走り出す。

 

 

「クソッよりにもよってかよ」

 

カイがこちらに気付いた事に気付いたのか魔物達も疾走してくるいかにカイが足に自身があっても魔獣の方が足が速く次第に距離が縮まってくる。

 

「やべえなこのままじゃ捕まる・・・ゲッ」

 

カイは砂漠の砂に足が引っかかり躓いて倒れてしまったそこに魔獣が牙を向きカイに襲い掛かるその時カイの周囲を風と砂が渦巻きカイを守るように包み込むその勢いの激しさに魔物達は怯む、そして風が収まるとそこにカイの姿はなかった。

 

カイは気が付くと砂漠の外れにいた魔物はどうやら付近にはいないらしく安全なようでありカイは安堵の吐息つく。

 

「ふうーーー危なかったぜ・・・しかし今のは一体なんなんだ?」

 

そう首を傾げるカイの周囲に再び風が渦を巻くと声が響きカイに語り掛けてくる

 

「円卓に縁を持つ物よ・・・・・」

 

「えっそれって俺の事か??」

 

「キングガンダムⅡ世に伝えよユーサーより託されし力を汝に渡す時が来たとそして心せよ新たなる闇が星命樹マナを脅かそうとしていると」

 

「ユーサー?星命樹マナ?なんだそりゃっておい」

 

カイの質問に答える事もなく風はやみ回りを静寂が包む。

 

「ったく言うだけ言っておさらばかよ、まっ命があったたげでもめっけもんか、それになんだかんだでお宝の予感もするしな」

 

そうつぶやくきニヤリと笑うと再び歩き出すのであった。

 

 

 

武達は洞窟の中で焚火を囲んでいた焚火の上には鍋が火にかけられ中では様々な食材がグツグツと煮え焚火の周囲には茸や茶色の木の実が木の枝に刺さり炙られ食欲をそそる匂いがたちこめる。

 

「この茸や木の実が見つかって良かった、これとっても美味しんですよ」

 

「そうなんだ、そういえばこの木の実なんか焼いた肉の匂いがするんだけど」

 

「ええ、この木の実は焼くとまるで焼肉のような味がするの」

 

「それはまた、なんとも不思議な木の実だな」

 

「へえーーそうなのか、おっどうやら焼けたようだな、んじゃ早速」

 

剛騎士が焼けた木の実を頬張ると口一杯に焼いた肉のような味が広がり暖かい果汁は豊かな肉汁のような味で喉を潤す。

 

「うお、本当に焼肉みたいだしかも汁気タップリで水いらずだぜ」

 

「そうですね、本当に美味しいな、こんな木の実があるなんて」

 

「ああこうして焼肉と言われて出されても気付かないだろうな、この茸も肉のような味がするのか」

 

「いえ、その茸は焼くとパンのような味がするんです、茸嫌いの人でも食べられると思いますよ」

 

「だそうだ剛騎士食べてみたらどうだ」

 

 嵐騎士の質問にアンジェが答え、その答えを聞き麗紅騎士がからかうように剛騎士に食べる事を勧めるが剛騎士は表情を固くする。

 

「い・・いや俺は茸が苦手で・・・・」

 

「好き嫌いはいけないですよ騎士様食べ物が可哀そうだわ・・・・」

 

アンジェがそう窘めるように剛騎士を諭すその姿はどこか好き嫌いを窘める母と子を思わせた。

 

そのアンジェの言葉に罪悪感が沸いたのか剛騎士はええいままよという感じで意を決して茸を口に含み咀嚼すると突然フリーズする、何故かその時武は剛騎士の背後に電流が走ったように見えたのきっと目の錯覚だろうか。

 

「こ・この食感この味なんてこったこれは本当に茸なのか・・・」

 

「本当に美味しいですよねこの茸さらにチーズをかけるともっと美味しいですよ・・・はいリィズ小さくきったから慌てずに食べてね」

 

「ピィーーー」

 

 

剛騎士の言葉にアンジェは嬉しそうに笑うとさらに家から持ってきたチーズを削って振りかけるとチーズが解けてより食欲をそそる匂いを出す。

 

「はいタケル溶けたチーズは少し熱いから気を付けて食べてね」

 

「うんありがとうアンジェ・・・・うわ本当にパンみたいだな・・・」

 

武は茸を食べると驚きつつもチーズが掛かってチーズトーストのような味になった茸に舌鼓を打つそんな武の様子をアンジェ嬉しそうに眺めるその笑顔は剛騎士の時より深かかった、その二人の様子を麗紅騎士は見つめながら優し気に笑うのであった。

 

 

食事も終わり後は寝るだけになったがまだ時間もあるという事で武達はお互いの事等で話等を始めた食事の後なのかみないつもより口が軽い。

 

「そういえば武、君はどこでその剣を学んだんだ」

 

「僕の実家で父さんと叔父から学んだんです家は代々退魔剣術を受け継いでいるので」

 

「ほう・・・では武の一族は剣士の一族という事なのか」

 

「そうですね、まあ表向きは神社の神主をつとめているんですが」

 

「ジンジャのカンヌシ?」

 

タケルの言葉に他の5人は首を傾げる。

 

「えーーと神殿の神官を務めているて言えばいいのかな。」

 

「なるほどタケルの国では神殿や神官をそういうのだな」

 

「少し意味合いも違うんですがそんな感じかな」

 

「でもよお神官がなんで剣術を伝えているんだ」

 

「それは・・・・」

 

武は疑問に答えるかつて神代の時代大地には様々な化外があふれ精霊や様々な神々がそこかしこに居た、その中には人に仇なすものや人々を守護する者達もいた。

 

そんな中神々を祀る者達の中から加護を受け退魔を生業とする者達が現れ始めた自分の先祖もそんな退魔を生業としつつも人を守護する神々を祀る者でもあった。

 

しかし時が経つにつれて神代の者達は幽世という異界へと去りあまり深く人々と交わらなくなっていった。

 

それでも幽世から人の生気や魂を狙う化外や古の呪術によって歪められた自然霊が人々を影ながら襲う事があり今でも退魔を生業とする者はいるもっとも昔に比べると大分少なくなったという。

 

自分はその中でも剣と雷に纏わる神を奉る者達の末裔でありその為代々剣術を磨き伝え続けていた。

 

「なるほどな・・・・ある意味我等ガンダム族に近いのかもしれないな」

 

「あなた達にですか?」

 

「そうだ我等ガンダム族は元々剣士の一族だと言われているまあ最も今では魔術師を志すものいるがな」

 

武が軽い驚きに嵐騎士がそう説明する。

 

「それじゃあよタケルの世界じゃ魔物とか殆んどいないという事か」

 

「ええ、少なくとも余程霊的に危険な場所でない限りそいうのに襲われる事はないですねそもそも魔物とか架空の存在としていないという事になっていますし」

 

「うらやましいな、魔物の驚異がない世界というのは」

 

「でも皆無ではないですよ、時々現れる事があるので結局油断は出来ないんですけどねそれでも日ごろから心配するほどではないですけど」

 

「でもタケルはすごいわ、人知れずに多くの人々を守っているんですもの、私はこんな事しか出来ないけど」

 

「それは違うよアンジェ、・・・君の方が凄いよ」

 

「えっ??」

 

「僕が戦ってきた魔物達の中には古の呪術師達によって存在を歪まされた自然霊や動物霊もいて中には正気を完全に失い邪気の塊になり果ててしまった哀れな者達もいるんだ」

 

「なんと・・・・」

 

「そ・・・そんな・・・」

 

武の言葉に他の全員は絶句する特にアンジェはタケルの悲痛な表情を見ていたたまれなくなってしまう。

 

「助けられる者をいたけど完全に魔物になり果てて倒さざる得なかった者もかなりいたよ」

 

そう独自する武の表情と声音はどこか懺悔するかのような雰囲気であった。

 

「だからアンジェのように救う力がどれだけ大切か良く分かるよあの時の魔物もアンジェがいなかったら消滅していたかもしれない」

 

武はアンジェを見つめて嬉しそうにどこか憧憬を滲ませる。

 

「だから君の癒しや救う力の方が凄いし大切だよ・・・・」

 

そう言うと暗い表情になりどこかやるせない表情になる。

 

「ときおり、凄く嫌になるんだこんな事でいいのかもっと大切な事を忘れていないだろうかって・・・」

 

そう言うと武は拳を握り締める、そこには悔恨と無念と悲哀があった。

 

「でも・・・」

 

「えっ・・・」

 

「あの時タケルがいなかったら私達は多分死でいたわあの魔物の子もずっと苦しみ続けていたかもしれないあなたや騎士様達がいたからみんな助かったのそれは紛れもない事実よ、だから自分の事を卑下しないで」

 

「アンジェ・・・」

 

「タケルの言っている事も分かるわ、でもだからといってあなた自身を否定しないで欲しいの」

 

「・・・ありがとう」

 

 武はどこか胸のつかえが取れたような、ほっとしたような表情になりその表情を見たアンジェは嬉しそうな表情で微笑む。

 

麗紅騎士は、なるほどと合点がいった、先の彼の剣から深い哀しみを感じたからである

 

(彼の剣からは深い悲しみを感じたが散っていった命への哀惜だったのか、それが彼の強さの源泉なのだろうな以に彼はまだ強くなるだろう)

 

悲しみの一つも抱かぬ強さに何が救えるというのだろうか唯空しいだけだという事に気付いたのはいつだろうか思えば我らが王に仕えるようになってからだろうか・・・・。

 

ふと嵐騎士と視線が合うそれでお互い何が言いたいのか分かったこの若者にこの旅の最中に出来る限りの事をしてあげようと決意するのであった。

 

そして剛騎士にも確認しようとしたが彼の前には食事が終わったにもかかわらず、未だにチーズの掛かった茸を平らげる剛騎士がいた。

 

「剛騎士食べ過ぎだぞいい加減それくらいにしろ」

 

「んな事言ってもようこの茸美味すぎて手が止まんないだ」

 

「あの・・・スープをもう一度温めましょうか・・・・」

 

「おう悪いな、いやーーーーしっかし流石伝説の世界だな飯がうまいのなんのって野宿でこんなにうまい飯にありつけたのは初めてだ」

 

「まったくおまえの呑気さが時折羨ましなるな」

 

「おおらかって言えよ、おおらかと、まあとにかくよ」

 

「武おまえの剣技は見事だったし何より誰かを守る強い意志がお前にあるそして弱者を労わる心もな後はそれさえ忘れなければ大丈夫だ」

 

「剛騎士・・・・」

 

「だから、胸を張っていいんだ、俯いていたら大切な者が見えなくなっちまうぞ」

 

「そうですね・・・みんなありがとう本当にアンジェも」

 

「気にすんな俺達もう仲間だろう」

 

「そうよタケル」

 

そう力強くいう剛騎士とアンジェの優しい言葉にタケルは嬉しそうに頷くのだった。

 

 

食事も終わりフロニャルドの事で色々話が出たがそこで彼等はある事に気付いた。

 

「フロニャルドの人達が獣の尻尾や耳が付いているんですか」

 

「ああ我等が聞いた伝説ではそうあるが・・・」

 

「そういえば前に遠目で見た人も耳と尻尾が付いていたわ」

 

「えっでもアンジェ君には・・・・・耳も尻尾もないけど」

 

「それは・・・・」

 

「まあでも昔の話だもしかしたら普通の人間もいるかもしれないからなあまり気にしない方がいいだろう」

 

「はい・・・・そうですね・・・・」

 

そう返事を返すもアンジェの胸中には一抹の不安がよぎるのであった。

 

 

 

 

朝の光が照らす中で上空から調査していたクーベル達は荒れた場所を発見しすぐさま他の人員にも連絡をいれすぐさまそこを重点的に捜索する事を決め各自が調査を開始していた。

 

その結果緑色の屋根の家を発見するもそこには最近まで住んでいた痕跡はあったが付近には人影がなくもしかしたら魔物に襲われたのではないかと急いで捜索が行われていた。

 

そして彼等は魔物との戦闘が行われたであろう場所を発見したのであった。

 

「うーーむこれは凄まじいな・・・・」

 

レオンミシェリはその戦闘跡から戦いの凄まじさを感じ唸っていた。

 

「本当にそうですねでもあの家に暮らしていた人は大丈夫なんでしょうか」

 

ミルヒオーレは心配そうに呟くこの有様では家で暮らしていた人がどうなったのか分からず最悪命を落としている可能性も捨てきれなかった。

 

「ミルヒよまだそうと決まったわけではあるまい大丈夫だ」

 

「そうですね、もしかしたらどこかに避難しているかもしれませんしね」

 

「その通りなのです、あきらめるにはまだ早いという事なのです」

 

「その通りだどうやらここであの魔物は倒されたようだしな」

 

「アデル様にヴァレリー様!!」

 

「おおアデル殿にヴァレリー殿」

 

古の英雄の二人が現れた事に二人は一礼をする。

 

「あの魔物が倒されたとはどういう事なのでしょうか」

 

「それは戦いの戦闘跡からヒナが禍太刀の欠片を見つけたからなのです」

 

「禍太刀の欠片が!!それはどうなっておるのだアデル殿」

 

「見つけた時には邪気が完全に消え去っていたのですヒナによれば何か強力な浄化の力で破壊されたのではないかと」

 

「それではダルキアン卿に匹敵する退魔士がいたという事か」

 

「恐らくとしか・・・・」

 

「だがなあ、この戦いの様子だとどうやら数人で戦っていたようだぜ」

 

「あの切り裂き御坊にすら匹敵すると言われた魔物を数人でですか」

 

ミルヒオーレが驚く伝説の英雄達ですら倒し切れなかった魔物を打倒する者達がいたという事である。

 

「むう一体何者であろうか・・・・」

 

「そうですね何より魔物を倒してくれたのですからお礼を伝える為にも探さないと」

 

「そうじゃな」

 

ミルヒオーレの言葉にレオンミシェリは頷くするとそこにエクレールが慌てて駆けつけてる。

 

「姫様、クーベル様とガウル殿下達がここから離れた所にある湖で気絶した一人の少女を保護したと連絡が」

 

「本当ですかそれでその少女は・・・」

 

「大分衰弱が激しくしっかりとした医療機関がある所で見ないといけないようだと」

 

「その少女もしや先程の家に暮らしておった娘ではないのか」

 

「そこまでは分かりませんが・・・・」

 

「とにかくその子を医療機関に連れて行きましょう、そして元気になったら改めて事情を聞いてはどうでしょうか」

 

「そうじゃな、では一旦戻るぞ皆」

 

「ハッ!!」

 

何者が倒したか分からないが魔物が倒された事と少女を保護する事が出来全員が安堵するともかく一旦戻る事がきまり彼等は帰路につくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡る。

 

 

 

 漆黒の空間に老爺と老女が何かを探すようにしていたこの漆黒の空間は所謂時空の狭間であり時間の流れからも隔絶した場所である。

 

並みの人間では身動きが取れなくなるであろう場所だがこの二人はそんな空間でも怯むことなく動いていた。

 

ある程度霊的な感覚を持つ者であったなら二人の秘めたる力に気付き驚愕していただろうか、最もこの空間には前述した通り並みの者では身動き一つ取れなくなるが。

 

二人はゆったりとした所謂魔術師が身に纏うローブをまとっていたその表情はいつになく焦りがあった二人は悟っていたもう自分達にはあまり時間がない事にそれでもなんとかしたい事があった。

 

自分達は未来ある若者達4人に凄惨な仕打ちをしてしまった時間がなかったからとはいえそれでも許される事ではないだろうだからこそ少しでも彼等の重荷をかるくしてやりたいという思いから彼等はこの狭間を彷徨っていた。

 

そして二人はついに一人の少女を見つけたそれは長い金髪に青いリボンを結んだ15歳くらいの少女であった。

 

二人は慌てて様子を見る、この少女はある男の子を守る為に呪いの矢を受けてしまったその呪いで死んでいるはずだったがどういう事か死んではいないようだったその胸元には青い清浄なる輝きが溢れ少女を蝕む呪いの黒き力を抑え込んでいた。

 

 

「あの場におらぬ故、もしやここにいるのではと思ったがそういう事だったのか」

 

「クリスタルの欠片があの時にこの子を憐れんで守りながらここに連れて来たんだね、ここなら時間の流れからも乖離しているからね、死の一歩手前で食い止めていたんだね」

 

「ウネまだ力は残っているか・・・?」

 

「なんとかね・・・最もここで魂が完全に潰えてもいいくらいさ」

 

「ウネ・・・・」

 

「ドーガそういうあんたも力は残っているのかい、いくらこの子を救えてもここから出してあげないと私達と違ってこの子は肉体があるんだここに長くはいられないよ」

 

「大丈夫だ、それより早く始めよう」

 

「ああ、そうだね」

 

そういうと二人から強大な力があふれ出して来るもしこれを他の者が見たら驚愕していただろうどう考えても力が弱まった魂が放てる力ではなかったからだ。

 

二人の力が眼前の少女に流れ込み青い光が輝きを増すがそれにつられるように黒い呪いの力もより大きくなって飲みこもうとするまるで絶対に許さないと言わんばかりの怨念のようだ。

 

「これは!!!ザンデめここまで力を込めておったとはそれほど憎かったのか・・・・」

 

「ザンデ・・・・」

 

二人は歯噛みするもそれでも自身の存在を維持する力すべてをつぎ込んでも救う為力を振り絞るがそもそもここにくるまで力の殆んどを使い果たしてしまい後はもう純粋な魂の力だけであった。

 

黒い闇が益々大きくなり少女を飲み込もうとするその闇は一人の男の顔を象るそれは自分達の弟弟子であるザンデだった、しかしそれはもう本人ではなく残された怨念であろうか。

 

「なんて事だいまさか死んだ事で怨念が強まるなんて」

 

「しっかりしろウネこのままではこの少女が・・・・」

 

二人は最後に残された力を振り絞ろうとするがそれでも足りず次第に力が弱まり闇が力を増して来るその時だった。

 

天から白き聖なる光のエネルギーが走り闇の力を浄化してくるこれには闇も溜まらず力が大きく減衰する。

 

「これはホーリーかい、一体誰が」

 

ウネが驚くと後ろから一人の褐色の肌をした白装束の男が現れるその男は口元を白いターバンで覆っておりその瞳は高潔な輝きがあった。

 

「何が起きているかは知らぬが、どうやらお困りの様子ゆえ勝手ながら助勢しよう」

 

「すまぬ私の名はドーガ」

 

「わたしゃウネだよ・・・・あなたは名は」

 

「私の名はミンウ、どうやらあなたがたはあの少女を救おうとしているようだが・・・」

 

「ああその通りだよ、ただあの怨念を晴らさないとあの子を救えないんだが予想以上に力が強まっていてねこちらももう余力はあまりないんだ」

 

「だからミンウ殿先のホーリーに我等の力を上乗せして放ちたいのだがよろしいかな」

 

「構いませぬ、ではいきますぞ」

 

するとドーガとウネの力がミンウに流れ込みミンウの手に莫大な白い光の力が生じると彼はそれを解き放つその光は螺旋状にうねりながら怨念の闇を覆いいままでより強い力で怨念を焼く。

 

「「「はあああああああああーーーーーーーーーー」」」

 

三人は全力をホーリーに振り絞ると聖光は勢いを増し怨念の闇を完全に浄化するそして当たりは静寂に包まれる。

 

「なんとか闇を浄化出来たね後は、ドーガ・・・」

 

「うむ・・・・・」

 

二人は最後の力の残滓を振り絞り少女に力を注ぐと少女の胸元にあった矢傷が消えていき少女は穏やかに呼吸をし始めた。

 

「これで良し・・・頑張ったねエリア・・・」

 

「これでもう大丈夫だろうミンウ殿でしたか助けて下さり申し訳ない」

 

「気にしないで欲しい私は既に死んで運命を全うした身ゆえ最後に人助けが出来て良かった」

 

「そうかい・・・見た所まだお若いのにねえ・・・・」

 

ミンウの様子から何かを察したらしく二人は表情を曇らせる今まで多くの悲劇をみてしまった為か若い人が亡くなるのは見てて辛いのであろう。

 

その二人の様子にミンウは穏やかにされどしっかりとした意思で首えお横に振る。

 

「気遣いは感謝するが私は最後に信頼出来る若者たちに未来を託し巨悪を討つ事が出来た故、思い残す事はありませぬ」

 

その言葉に二人は何か自分達と似たものを感じ、ミンウもまた二人に何か感じる事がありお互いの事を話し始めると、驚くべきことにお互いが別の世界の出身者である事がわかった、そしてお互い若者達に未来と希望を託した事も。

 

「そうか我等と同じか・・・・」

 

「奇妙な縁もあったもんだね、・・・・それよりもドーガ早くエリアをここから出してあげないと」

 

「そうだなしかしあまりにも力を使い過ぎてしまった・・・これでは時空の狭間を開く事が出来ぬ」

 

「そんな・・・・」

 

「ならば私の力を貸しましょう私のアルテマなら時空に僅かな亀裂を付けられるはず」

 

「アルテマ・・・・もしやあの伝説の大魔法かい!!!」

 

「なんと我等の師ノアが最後まで見つける事が出来なかった究極魔法をお主が・・・」

 

「そうだ時空に亀裂を作れば残された力でも時空魔法が効くはずだ」

 

「わかったでは頼む」

 

「なにからなにまですまないね・・・・」

 

「いえお気になさらずではいきますぞ・・・・」

 

するとミンウは両手に力を集中し詠唱を始めるすると両手に先までとは比較にならない程の絶大なエネルギーの光が生まれる。

 

「時空の狭間を開け・・・・アルテマ!!!!」

 

ミンウは両手の力を解放し放つとアルテマは莫大なエネルギーの奔流となり時空の狭間にある僅かな揺らぎに当たり無理やりこじ開け時空に亀裂を生む。

 

「今だ、お二方早く!!!」

 

「ああいくよドーガ!!」

 

「わかった!!!」

 

時空の亀裂が出来たのを見ると二人は時空の魔法を唱えるとエリアと呼ばれた少女は光に包まれ出来た時空の亀裂へと運ばれていく。

 

「エリア信じるんだよ必ずみんなに会えるとそして幸せになっておくれ!!!!」

 

「けっして・・・けっして希望を捨ててはならぬぞエリア、そして我等のようにはなるではないぞ」

 

そう祈るようなウネとドーガの言葉を受け水の巫女エリアは時空の亀裂へと姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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光の四戦士の新たな旅立ち  聖王の遺産  

かつて無から光と闇が生まれそこから様々な生命が世界が生まれたしかし時は残酷に全てを押し流し再び滅ぼし無に帰そうとする。

 

しかし滅びをくい止める力があったそれは万物を切り裂く無双の剣でもなく数多の奇跡を起こす魔法でもないそれは心の内より生まれる正しき力・・・。

 

愛・・・・勇気・・・・慈しみ・・・・知恵そして

 

 

 

                希望

 

 

それらにより無に至る力を打ち破り命と世界は次へと受け継がれていく。

 

 

その世界も幾度も滅びの危機を迎えるもその世界を支える地火風水のクリスタルが4人の戦士を選び世界を守る為に旅立たせた。

 

今代の光の4戦士は闇の暴走を起こし世界の時を止めた魔王ザンデを倒しそのザンデが呼び起こしてしまった無へと至る意思を持つ現象たる暗闇の雲を倒し世界を救った。

 

それは偉業にして聖業と言えるだろうだが彼等は忘れないその為に犠牲になった者達の事を。

 

遥か古の超文明の遺産たる浮遊大陸その大陸の山奥にあるウルの村そこに世界を救った4戦士ルーネスとアルクゥが暮らしていた。

 

 世界を救った後彼等は故郷である村に帰り穏やかな日々を過ごしていた偶にシドの作った飛空艇で世界を回ったりする事もあったが特に何かが起こる事もなかったそして一年の月日が流れた。

 

銀髪に紫色の瞳をした少年4戦士の一人ルーネスは井戸から汲んだ水を抱えながら家に向かっていた。

 

ふと離れた所を見ると小さい子供達が元気良く駆け回っており一年前までどこか漂っていた不安の影はなく空を見上げると青い空がどこまでも広がっていた。

 

「平和だよな・・・・」

 

そうふと呟き遠い目になる平和を取り戻したというのに時折どこかここではないどこかに意識が向いてしまう事がある。

 

「あれから一年かなんというかあっという間だよな・・・・・」

 

自分達の旅そのものに後悔がないと言えば嘘になるがそれでも様々な良き出会いがあったのも事実だそして悲しい別れもあった。

 

ふと自分をかばって命を落とした水の巫女エリアを思い出す彼女の事を思い出す度に胸の中で心の古傷が疼きだす。

 

世界の時が止まり殆んど一人ぼっちのままでいながらそれでも希望を守ろうとした優しい少女だった、その彼女はもういないそして誰もエリアの事は覚えていなかった、それが無性に悲しくなるふと視線を落とすと桶の水に映る自分の顔が揺らぐ滲む、自分の目に涙が浮かんでいる事に気付き目を拭う。

 

「ルーネスどうしたのボーとして」

 

そんなルーネスの後ろから同じく4戦士の一人であり弟分でもある茶色い短髪に茶色の目をした少年アルクゥが声を掛ける。

 

「ア・・アルクゥ・・・別に何でもねえよ唯あれから一年たったんだなって思ってちょっとな」

 

「そっか、あれから一年たったんだね、夢みいたいだよね、あんな冒険があったなんて」

 

「そうだよな、世界を救うなんて思いもしなかったよな」

 

 そう当たり障りのない会話をしながら家に向かうっていると村の入り口が騒がしい何事かと二人は見るとそこには一匹のチョコボがいたどうやら野生のチョコボが迷い込んできたようだが、どうにも様子がおかしいので二人は様子を見に行くとチョコボの背中に一人の妖精がしがみついていた。

 

 その妖精に二人は見覚えがあったそれは長老の木にいた妖精だった、驚いた二人はチョコボに駆け寄り様子を見るとどうやらチョコボに必死にしがみついていたらしく疲れているようだった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・やっとついたァ・・・・・」

 

「おまえ長老の木の所にいた妖精だよな」

 

「どうしてここに?」

 

ルーネスとアルクゥは首を傾げたかつて闇に落ち邪悪な魔物になり果てた魔術師ハインによって長老の木は荒らされてしまいその傷を癒す為に長い眠りにつき誰も長老の森に入れないように自らと森を封印したはずである。

 

「あああーーーーやっと会えたーーーー・・・・キュウ・・・・」

 

そう興奮気味に叫ぶと妖精はルーネスとアルクゥに飛びつこうとしたが疲れていたせいか飛べずにそのまま落ちてしまうそれを二人は慌てて受け止める。

 

「オイ大丈夫かよ・・・・」

 

「ねえしっかりして、・・・」

 

「ふにゃああ・・・つ疲れたァァァ・・・」

 

自分達の手の中で疲労で目を回す妖精を見た二人は取り敢えず家に連れ帰る事にする事に決めたのであった。

 

二人は家に戻り父であるトパパに事情を説明し妖精から事情を聞きだすべく部屋に自室に入るとお茶と焼き菓子を出すと妖精は嬉しそうに頬張り人心地ついたのかほっと息を吐く。

 

「落ち着いたようだね良かった」

 

「うん、ありがとう」

 

「でもよお、どうして俺達の村に来たんだもしかして何かあったのか」

 

「まさかハインみたいな人が現れたの?!」

 

「ううん違うよあれから森には誰もきてないよ魔物も殆んどいなくなったし平和そのもだよ」

 

不安を滲ませる二人に妖精は首を振るどうやら長老の木に異変があったわけではないようだ。

 

「じゃあなんでここに」

 

「それはね長老の木があなた達を呼んで欲しいって言ってきたの」

 

「えっ長老の木が俺達を呼んでいるって」

 

「でも長老の木は長い眠りについたはずじゃ」

 

「そのはずだったんだけど、少しだけ覚醒されて私達に伝えてきたのあなた達を呼んで欲しいって」

 

「俺達を?」

 

「うん」

 

「でもどうして?」

 

二人の質問に妖精は答える、それは二人にとって驚愕する事であった。

 

 

「それはね、眠っている時に夢にウネという人が現れてあなた達を呼んで欲しいと言っていたの」

 

「なんだって!!ウネが!!!!」

 

「そんな!!一体何が!!!」

 

「詳しい事は長老の木が話してくれるはわ、だから急いで来て欲しいの、長老の木は今あまり長くは起きてられないから」

 

「ルーネス・・・」

 

「ああわかった直ぐにレフィアとイングスを呼んで長老の木へ行こう」

 

二人は立ち上がると出発の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 常に砂塵が舞う砂漠は今は凪の大海のように静かだった時折思い出したようにふくそよ風はより静けさを強調しているようである。

 

 カイから連絡を受けたキングガンダムⅡ世は残りの円卓の騎士団と何故か同行を申し出たカイを連れて砂の精霊が待つ砂漠へと赴いていた。

 

キングガンダムⅡ世達は到着すると馬を降り歩き出すと間もなく風が吹き出し始め砂塵が舞い上がり始める。

 

 

「これは・・・砂の精霊かが現れたのか」

 

ガンタンクRの言葉に答えるように風は勢いを増していく。

 

「砂の精霊よユーサー様から預かりし力を受け取りに来たどうか案内して欲しい」

 

キングガンダムⅡ世の声が当たりに響くと突如声が聞こえ始める。

 

「円卓の長キングガンダムⅡ世よ、良くぞ来た・・・・しかしユーサーの力を託すには汝を試さなければならぬ・・・汝をその場へと導こう・・・」

 

円卓の騎士達が動揺し顔を見合わせる中キングガンダムⅡ世は毅然とした態度でその言葉に頷く。

 

「わかった、砂の精霊よその試しを受けようどうかそこに導いてくれ」

 

「キングガンダムⅡ世危険ではありませぬか」

 

「そうかもしれない、だが、力には相応の責務が伴う物だそれを託すからには相手を試すのは致し方ない事だろう」

 

「でもなあ・・・それならザビロニアとの戦いの時に託して欲しかったよ」

 

勇騎士プラスがぼやくように言うがそれだけ扱いが難しい力でもあるという事である。

 

「それだけ危険な力という事なのだろうプラスあまり愚痴を言うものではない」

 

キングガンダムⅡ世の言葉にバツの悪そうな顔になりプラスは頷く、そしてキングガンダムⅡ世達は前に進むと風と砂塵が吹き荒れ一行の姿は消えるのであった。

 

 

キングガンダムⅡ世達の視界に風と砂塵が吹いた後景色だ一変していた一面の砂から緑あふれる場所へと変わっていたからである、一見すればオアシスのようであるがかなり広く彼等を導くように柱が並んでいた。

 

「どうやらこの奥に試しの場があるようだな」

 

「その通りだキングガンダムⅡ世よ奥へと進むが良い」

 

キングガンダムⅡ世の言葉に答えるように砂の精霊の声が響くと風が背中を押すように一行の背中から吹いてくる。

 

そしてキングガンダムⅡ世達は奥に進むとそこには数百メートルはあろうかという湖がありその上には石で出来た円形の広場があったその中心には一頭の馬の石像があったそれは石像でありながらまるで生きているようであった、その鬣は雄々しくその体躯は強靭でありながらしなやかな美しさがあった。

 

「これは一体・・・・」

 

「ムウもしやこれは・・・・まさか・・・」

 

「知っているのかガンタンクR」

 

馬の石像を見たガンタンクRは伝説を思い出し唸り出す

 

「キングガンダムⅡ世もしやあれは伝説の神馬ドゥン・カイラムではないだろうか」

 

その言葉に白金卿が驚愕するそれは伝説の聖槍王ユーサーガンダムが跨った神馬の名前だからである。

 

「ドゥン・カイラム・・・あの伝説の神馬かその健脚は日に何千里をも走破し空をも駆け抜けたと言われているが」

 

その白金卿の言葉を続くように重甲騎士ガンダムF90が伝説を言う。

 

「そして・・・聖槍王ユーサーガンダムと共に戦場を流星の如く駆け抜け数多の剣槍と矢に怯むことなく雄々しく立ち将兵を勇気付け数多の伝説を残したというがまさかここに眠っていたとは」

 

「では試練とは神馬に認められるという事なのか・・・」

 

キングガンダムⅡ世の呟きに呼応するように再び精霊の声が響く

 

「その通りだキングガンダムⅡ世よこれよりかの神馬の封印を解く見事越えて見せよ」

 

「試練って何をするんだろう」

 

「神馬と追いかけっこするとか」

 

「嫌違うね、きっと綱引きで力比べをするんだ」

 

「お前達な・・・・」

 

「こんな時何を言っとるんだ・・・・」

 

 F90ジュニア達のズレた発言にゲンナリした様子でぼやく灼熱騎士ガンダムF91と父重甲騎士ガンダムF90の姿には若干哀愁が漂っていたふと灼熱騎士の脳裏に父F90の息子達への呼称が脳裏に浮かんだが慌ててかき消す今はそんな事考えている場合ではないのである。

 

 キングガンダムⅡ世はそんな彼等の様子に苦笑すると湖の上にある広場へと歩み出ると広場にある神馬に語り掛ける。

 

「神馬よ私の名はキングガンダムⅡ世当代の円卓の騎士の長だ、あなたの力を借りたく、ここに試練を受けに来たどうかその真の姿を現したまえ」

 

 そのキングガンダムⅡ世の声に反応するかのように石像だった神馬の姿が石像からかつての姿へと戻っていくその体躯は目の覚めるような白色で光を浴びて白銀の輝きを放ち、その赤い鬣は燃える炎ようであり、その瞳は清冽な青い輝きを放つその姿は正に伝説に語り継がれる神馬そのものであった。

 

「これが神馬ドゥン・カイラムか!!!なんという神々しさだ!!!」

 

 神馬からあふれ出す神気による神々しさにキングガンダムⅡ世は思わず感嘆の声を出す、すると神馬は一声いななきと全身から青い光があふれ出しそれが神馬の背中の上で陽炎の揺らめく人影を生むそれは蒼銀の鎧を纏った長槍を持つガンダム族の騎士であった。

 

 

「なんだあの騎士は?」

 

「よもやあれはユーサーガンダムではないか・・・」

 

「何だって!?」

 

「それは本当かガンタンクR」

 

円卓の騎士達は驚愕の声を出すまさかかの伝説の王が降臨するとは思わず動揺の声を上げる。

 

するとどこからか砂の精霊の声が響いてくる。

 

「否あれはかの神馬が作りしありし日のユーサーの幻影・・・・」

 

「されど幻影であれその力はユーサーそのものに限りなく近い」

 

「キングガンダムⅡ世よ見事にかの王の幻影を越えて見せよ」

 

「なるほど共に駆け抜けた神馬の思いから生まれた幻影という事かならば受けてたとう・・・行くぞ神馬よ」

 

 その言葉を受けキングガンダムⅡ世は気迫を漲らせながら神馬と幻影のユーサーに戦いを挑むべく聖剣を抜き放った。

 

そのキングガンダムⅡ世の闘気に呼応するかのように神馬は再び雄々しく鳴くとキングガンダムⅡ世に向けて突撃してくる。

 

「ムッ!!!これは速い!!!!」

 

 その突撃は正に疾風迅雷の如くとあまりの早さにキングガンダムⅡ世は相手が急に巨大化したように見えた。

 

 そしてユーサーの幻影は持っていた長槍を突き出すそれもまた迅雷の如き速さでもって繰り出されるしかも一瞬の交差で幾重にも槍撃が放たれるそれをキングガンダムⅡ世は聖剣で弾きいなすも全てを躱し切れず一撃を貰ってしまい後ろに吹き飛ばされる。

 

「キングガンダムⅡ世!!!!」

 

 円卓の騎士達は驚愕の声を出すがキングガンダムⅡ世は直ぐに立ち上がり剣を構えるどうやら咄嗟に後ろに飛びのく事によりダメージを軽減したようであった。

 

「幻影とはいえ、いや幻影でもこれ程だとは・・・・」

 

 闇騎士ガンダムマークⅢが呻くように呟くもしあの槍撃をまともに受ければ並みの騎士では一たまりもないであろう、ザビロニア帝国のエビルクラスを持ってしても足止めにもならず草を薙ぐかのようになぎ倒される姿以外思い浮かばない。

 

「クッならばっ!!!」

 

 キングガンダムⅡ世は構えを必殺の不知火の型に変え聖剣に闘気を収束させると一閃させるかつての戦いの時よりも威力速度共に比ではない一撃だったが神馬は一瞬の内に身を翻し襲い掛かって闘気の斬刃を回避する躱された斬刃は石畳を切り裂き遥か後方にあった、巨岩を悉く切り裂き彼方へと消えていった。

 

 そして神馬とユーサーの幻影は再び強烈な突進を行いキングガンダムⅡ世に迫っていく。

 

「何っ!!!??」

 

 キングガンダムⅡ世は驚愕したその突進は途方もない物であったからだ神馬と幻影のユーサーが青い燐光に包まれたかと思うと閃光のように突進し衝突の瞬間に烈光の如き突きが繰り出される。

 単純なれどもはや全てが極まった鮮やかかつ流麗なる一連の動きはもはやそれ自体が奥義であると言えた。

 

「うわああああーーーーー」

 

「キングガンダムⅡ世!!!」

 

キングガンダムⅡ世は咄嗟に盾で防ぐが防ぎきれず高速でせまるダンプカーに轢かれたかのように吹き飛ばされ盾は広場の淵まで転がっていき湖に落ち波紋を描く。

 

「クッ・・・皆心配するな大丈夫だ」

 

よろけながらも立ち上がり聖剣を構えるその姿に円卓の騎士達はほっと安堵の息を吐く。

 

(流石伝説に謳われし王、これほどとは!!!)

 

キングガンダムⅡ世は人馬一体の域まで練り上げられた馬術と神域へと至らんばかりの槍撃に感嘆する。

 

(このまま目で追ってはダメかあのアルマナで戦った魔獣との戦いで見出したあの技にかけるしかない)

 

そしてキングガンダムⅡ世は不知火の型の構えからかつてアルマナで戦った魔獣を相手にした構えに変える。

 

閉眼し意識を集中し相手の闘気を読む事に意識を向けると神馬とユーサーの幻影は様子の変わったキングガンダムⅡ世に警戒したのか距離を取り相手の様子を伺うそしてその相手の出方を伺うべく遠距離から闘気の槍撃を放ってくる。

 

キングガンダムⅡ世は迫りくる幾多もの闘気の槍撃を先とは違う身のこなしで躱し薙ぎ払っていく。

 

「あ、あれはアルマナで見せた新しい型か!!!」

 

「不知火の型以外の技を編み出したのか!!!!」

 

「なんと・・・・・」

 

円卓の騎士達が驚愕しているがキングガンダムⅡ世はそこまで余裕があるわけではなかったなぜならばこの型はまだ未完成だからである。

 

(クッどうしても一瞬出遅れてしまうか!!!!)

 

そうかつてアルマナで戦った魔獣ギガントデスワームとの戦いでも相手の気配を読みきれず出遅れてしまい危うい事になったのである、プラスが助けてくれなかったら大怪我はまぬがれなかっただろう。

 

神馬とユーサーの幻影はキングガンダムⅡ世の構えの能力に気が付いたのかそのまま押し切らんと突撃を慣行するその速度に対応しきれずキングガンダムⅡ世は再び跳ね飛ばされてしまう。

 

「グゥゥ・・・・これでも駄目なのか・・・」

 

なんとか立ち上がったキングガンダムⅡ世の眼下に湖の水面が移るそしてそこにいくつもの石畳の破片が落ち波紋が生まれる。

 

(そうか、これだ!!!)

 

 再びのを突撃を大きく躱し闘気の刃で牽制し間合いを大きく取ると再び意識深く沈めると今度は自身を中心にして静かな湖を浮かべそのイメージのままに自身の気を静めると聖剣の刀身から発される闘気の刃がより静謐な湖面や大海を思わせる青へと変わっていく。

 

 キングガンダムⅡ世の意識から音等が消えてそれこそ無音となり閉眼した暗黒で唯静謐な湖が意識に浮かび上がるその水面が揺れた瞬間キングガンダムⅡ世は身を翻したその瞬間再び襲って来た闘気の槍撃が駆け抜けていくが今度は全く掠めず全て当たらない。

 

「そこだ!!!」

 

闘気の槍撃を躱した瞬間に聖剣を横薙ぎに一閃すると青い闘気の刃が超高速で飛来し今度は神馬とユーサーの幻影は躱し切れず一撃を受けるがすぐさまに態勢を立て直す。

 

 その時何かを悟ったのか神馬とユーサーの幻影は全身の力を収束させると、一気に後方に下がり今までにない程の力を凝縮させる、その凄まじい収束は周囲の景色が歪み空間が歪曲しているかのようであった。

 

 そしてそれに呼応するかのようにキングガンダムⅡ世は自身の闘気を聖剣にさらに収束させてくる青い闘気の刃は広大なる大海のような重厚さを持っていき青い光はまるで恒星のような輝きを放ち刀身を中心にまるで一つの青い星がうまれたかのようであった。

 

強烈な力の気配と極限の集中に円卓の騎士達はもはや何も言えなかった何かの拍子でこの停滞が崩れ爆発するのは目に見えていた全員の顔に汗が浮かび玉になり頬を伝い地面に落ちる。

 

           

 その時神馬とユーサーの幻影はキングガンダムⅡ世に向けて突進していく100メートル以上の距離を刹那で駆け抜けるそして闘気が収束された槍撃を繰り出す。

 

誰がしろうかこれぞかつてのユーサーガンダムの奥義 天煌星槍破だという事を、この一撃に耐えた者は誰一人おらず全て砕け散り灰燼と化したと言われる。

 

 幻影故に完全な物ではないがかつて共に駆け抜けた神馬が再現した技であるそれは真に迫るものであった。

 

キングガンダムⅡ世は未だかつてない一撃を迎え内凄まじいまでに集中力が増大していたそれはもはや時が止まったかと錯覚するかのようだった。

 

自身の意識の水面に強烈なさざ波が怒るがまだだと告げるそして凄絶な一撃がどんどん近づいている。

 

「まだだ・・・・・・・・・・ッッ!!!!」

 

キングガンダムⅡ世の意識の水面に一際大きな漣を感じた瞬間に聖剣を一閃する。

 

 

 両社が交差した瞬間に凄まじい衝撃と轟音が天にまで届かんと言わんばかりに起こり周囲を襲い爆発的な砂煙があがり砂礫が飛び散り遥か彼方まで飛んでいくそれは隕石同士が衝突したかのような凄まじさだった。

 そのあまりの強烈さに見守っていた全員が膝を着く。

 

「ど・・・・どうなったんだ・・・・」

 

衝撃が収まり舞い上がった砂煙が晴れるとそこにはお互いの武器を振り抜いた状態の二人がいた。

 

「グッ・・・・・」

 

キングガンダムⅡ世が呻くと肩から血が流れる。

 

「キングガンダムⅡ世!!!」

 

円卓の騎士達が驚愕と悲鳴のような声を上げるがそれをキングガンダムⅡ世は手で制す。

 

「心配ない・・・大丈夫だ」

 

 そう言うと後ろを見ると神馬とユーサーの幻影は悠然と振り向くがその様子は先程までとは打って変わって穏やかなものだったふと幻影のユーサーが微笑んだように見えた瞬間幻影は消え去りそこには神馬が佇んでいた。

 

「おお・・・キングガンダムⅡ世の勝利だ!!!!」

 

「やったぜ!!!!」

 

「肝が冷えましたな・・・・・」

 

「うむだがしかしかの伝説に迫る程になられたとは」

 

「それにしても不知火の型以外の技を編み出すとは」

 

「まるで鏡面のように穏やかな水のようだ・・・・」

 

「では水鏡の型と言うべきか」

 

 円卓の騎士達が喜んでいると神馬は悠然たる足取りでキングガンダムⅡ世の元に来るとその身を屈める、それは騎士が忠誠を誓った王に傾づくようであった。

 

「神馬ドゥン・カイラムよ私を認めてくれるのか」

 

キングガンダムⅡ世の言葉に応えるかのように神馬は軽くいななくその様子にキングガンダムⅡ世は厳かに頷くとその雄々しき背中にまたがると神馬は勇ましく鳴く。

 

「見事だキングガンダムⅡ世よ・・・・」

 

「砂の精霊よ今まで神馬を守っていただき礼を言う、この力を必ず平和を守る為に扱う事を誓おう」

 

「その誓い努々忘れるではないぞ・・・・キングガンダムⅡ世」

 

「そしてお前にはまだ伝える事がある」

 

「伝える事それは一体・・・・」

 

「神馬は鍵なのだ大いなる翼の封印を解くためのな、詳しい事は湖の主である水竜に聞くとよい・・・・ではさらばだ・・・・円卓の騎士達よ・・・星命樹マナを頼むぞ」

 

「まって欲しい星命樹マナの危機とはなんだそして大いなる翼とは一体?」

 

キングガンダムⅡ世の疑問に砂の精霊は何か言いよどむような気配を見せる。

 

「何が起きているかは分からぬただ災いが起きている事は確かだ、そして大いなる翼とは時空を駆ける力を持つ翼だというが詳しい事は我も知らぬただ今どこにあるか知っているのは湖の主のみ、彼の者に聞くが良い」

 

 そう砂の精霊の言葉が当たりに響くと再び砂塵と風が巻き起こり一行を包むと彼等を砂漠の出口まで送り出す。

 

余りにも一瞬の出来事で全員夢ではないかと思ったが神馬ドゥン・カイラムに跨ったキングガンダムⅡ世

の姿に夢ではない事を確信する。

 

「それでは皆湖の主の元に行くぞ」

 

「ハッ!!!!キングガンダムⅡ世!」

 

(それにしても大いなる翼そして災いかいよいよ何かが始まるようだな彼等も無事だと良いが)

 

新たなる戦いの予感に闘志を静かに燃やすキングガンダムⅡ世と円卓の騎士達であった。

 

 

 

 

 

長老の木の森それは遥か悠久の時を生きた木を中心に深い森がありそこには妖精や精霊等が住まう穏やかなな森である一年前に魔術師ハインの手によって傷つけられたが4戦士たちによって解放され今は森ごと自らを封印し長い眠りについていた。

 

その深い森の前にチョコボに乗った4人がいたルーネス・アルクゥ・レフィア・イングズ達光の4戦士達である。

 

「その話は本当なの長老の木の夢にウネが現れたって・・・・」

 

レフィアは少し俯きがちに妖精に声を掛ける

 

「にわかには信じがたいな・・・・・それに何故今になって」

 

イングズが疑うような視線を向け疑問を口にする

 

「本当だよーーーーでもなんか凄く弱弱しかったって言っていたよ」

 

「俺達を助ける為にかなり無理していたようだったからね」

 

「そうだな・・・・」

 

ドーガとウネ二人はザンデが潜んでいるクリスタルタワーと禁断の武器が眠る地エウレカの封印を解くために自分達の全てを掛けて命を落としてしまった死後も自分達を見守り色々手助けしてくれた温厚な人たちであった。

 

 そんな二人を自分達は手にかけてしまったやむを得ないかったとはいえそれが他ならぬ二人の意思だったとしてもその事は自分達は一生抱え込まなければいけないだろう二人と親しい人達が4人を殆んど責めなかった事も辛かった恨みの一つも言って欲しかった。

 

「長老様ーーーみんなを連れて来たよー」

 

「ありがとう無理を言ってすまなかったな・・・・そして良く来たな4戦士よ・・・・」

 

妖精の言葉に長老の木の声が当たりに響くと森が開け4人を招くように奥まで開けていくそれを見た4人は長老の木へと向かうとそこには少し回復した長老の木と妖精達がいた。

 

「一年くらいじゃまだ治らないようね」

 

「仕方ないよ数百年は掛かるって言う話だし」

 

「それよりも何が起きたのか教えて欲しいんだが」

 

「そうだなウネが伝えて来た事ってなんだ」

 

「うむそれなんだが・・・・・水の巫女エリアという娘を覚えているか・・・・」

 

「っ!!!!!」

 

その名前は忘れるどころではない一生忘れられない名前だったドーガとウネ同様彼女も自らの身を挺して自分達と希望を守り抜いた少女だった。

 

「覚えているに決まっているだろ!」

 

ルーネスが動揺したように声を荒げるがそれを抑えるようにイングズが前に出て話を聞こうとする。

 

「エリアの事は覚えている忘れられるわけがない彼女が・・・・水のクリスタルの所で命を落とした事も・・・・」

 

「そうだな・・・だが疑問には思わなかったかシルクスの塔にエリアが現れなかった事に・・・・」

 

「でもそれは・・・・彼女が死んでいたからじゃ」

 

「されど死んでも魂は残るなのにエリアの魂が現れなかったのは何故か・・・・」

 

その長老の木の言葉に4人は動揺し驚きを口にする

 

「まさかエリアが生きているっていうのか!!!??」

 

「そんな嘘でしょ!!!??」

 

「信じられないよ!?」

 

「フェニックスの尾やエリクサーでも駄目だったんだぞ!!」

 

4人が驚愕し疑問を口にするそれを抑えるように長老の木の穏やかな声が響く

 

「お前達の疑問も最もだだがあの時エリアはクリスタルの欠片の力で仮死状態となり次元の狭間に落ちていったそうだ」

 

「次元の狭間ってあのシルクスの塔から闇の世界へ行くときに通ったあそこに!!」

 

「そうだそしてドーガとウネは大いなる魂へと帰る前に一縷の望みを託して探しそして見つけてあの時のお前達と同じように蘇生を試み・・・成功した」

 

その言葉に4人は喜色を浮かべお互いの顔を見合わせ喜び合う。

 

「本当かよ!!!!」

 

「じゃあエリアは生きているのね・・・・」

 

「良かった・・・・ありがとうウネ、ドーガ」

 

「それなら何故エリアはここにいないんだ???」

 

「それは蘇生に力を使い過ぎてしまいこの世界に戻す事が出来ずかろうじて次元の狭間から出す事しかできなかったそうだ恐らく此処とは別の世界へと飛ばされたのであろう

 

「そんな・・・・・」

 

「クソッ!」

 

「次元の狭間を越える方法なんてどうすれば・・・」

 

「方法はある」

 

「えっ・・・・」

 

「それはどういう事だ」

 

「浮遊大陸の外の世界の海底遺跡に古代文明が作った次元移動装置があるそれを使うのだ、ノアのリュートがお前達を導くだろう・・・そうウネが言っていた」

 

「次元移動装置・・そんなのがあるのかよ・・・・」

 

「ルーネスどうするの・・・・」

 

「もちろん俺は行くよ、みんなはどうするんだ」

 

「どうするって・・・・」

 

「これは世界の危機とは関係のない事だ無理していく付いて行く必要はないんだぞ」

 

「水臭いよルーネス、友達がそんな無茶をするのにほっとくなんて出来ないよ」

 

「そうよ、ルーネス」

 

「その通りだ」

 

「みんな・・・ありがとう」

 

ルーネスは3人を見渡し強く頷くと海底遺跡に向かう決意を固めるこれにより光の4戦士の新たなる冒険が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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