ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 (カルディス)
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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #1

これはとあるカルデア職員の言葉。

オリ主あり、カルデア職員と英霊との接触ありとなんでもあり。
大丈夫な方だけどうぞ


吹雪。

ここカルデアの外はずっと変わることなく、一面の銀世界。

自分は電気ストーブのついた部屋で細々と仕事を続けていた。

少し傷のついたテーブルには大学生の時から使っているパソコンに、多言語の辞書、数多の書類。

まるでどこかの作家の汚部屋のように成り下がっていた。

着任当時の、あの綺麗な部屋は夢かのように消え去っていた。

 

自分はそこまで仕事、というものは得意ではない。

ただ、魔術師の家の分家、というだけだった。

親はなにやら自分に期待していたようだが、自分は分家の分際で何を望んでいるのやらと自嘲気味だった。

そこまで高名な家でもない癖に、と。

自分は、あまりにも凡人(つまらない人間)なのであった。

 

ふと気付いたとき、部屋の扉が開いていた。

大方、自分が閉めたつもりになっていたのだろう。

これではストーブも意味を成さない。

どうりで寒いはずだと、閉めようと思ったが、食堂に行こうと思いついた。

コーヒーの一つでも飲んで、気を紛らわせよう。

電気ストーブの電源を切り、部屋を出た。

 

カルデアの利用者は、その数の都合上英霊のほうが多かった。

今もそこそこ遅い時間なのだが、そこかしこに英霊がいた。

「やあエミヤ、コーヒーを一つ頼んでも?」

自分でインスタントを作るのもいいが、エミヤがいるのであれば、彼に頼むのがいい。

彼のコーヒーは、現代に生きていたんじゃないかと疑うほどの美味しさだった。

「あぁ、もちろん。……随分遅くまで起きているんだな」

「俺は鈍くさいから。ん、ありがとう」

へらっとした笑みを浮かべてコーヒーの入ったマグカップを受け取る。

どうやら、今日はショコラテのようだ。

大方、誰かがチョコレート菓子でも頼んだのだろう。

 

それからゆっくりと食堂内を見渡した。

その時目に入ったのは、目を伏せ頬杖をついた──────賢王(暴君)ギルガメッシュだった。

 

 

賢王とは、英雄王の晩年の時分を指す。

噂によると酷いホリックワーカーで、藤丸立香の制止がなければ四六時中働いているのだとか。

が、中身は英雄王と(人類最古のジャイアニズム)変わらないため、職員からすれば気を遣う人なのは変わらない。

 

自分は賢王から離れた場所に陣取りコーヒーを飲み始めた。

紙片類でも見ていれば、誰も邪魔してこないだろう。

 

 

結局自分が腰を上げたのは飲み始めてから一時間が経った頃だった。

エミヤに一言声をかけて、おかわりを手に食堂を出た。

いつの間にか食堂には片手で数えられるほどにしか英霊は居なくなっていた。

 

湯気を立たせながら、部屋路につく。

窓辺の辺りはライトが消灯になっていて、窓から入る月明かり……のような物だけが、廊下を照らしていた。

誰一人、自分以外が居ないこの空間が何故か神秘的だった。

外は未だ吹雪のままだったが、それがより神秘性を高めているような、そんな気がした。

 

「おい」

────―そう思っていたからこそ、声が聞こえた時、飛び上がりそうになった。

後ろを怖さ半分に振り替えると、薄暗い中、赤い瞳と目があった。

まるで蛇のように鋭い目、重力に従って真っすぐに下りた金糸の美しい髪。

──―そこに立っていた(声を掛けてきた?)のは、賢王、ギルガメッシュだった。

「なん、ですか」

自分は、あくまでも務めて冷静に答えた。

「貴様は、眠らんのか」

貴方が言うのかと、言いそうになって慌てて言葉を喉の奥に押し込んだ。

彼のような、王様系サーヴァントは機嫌一つ損ねるだけで首が飛ぶ。

自分はまだ、死ぬわけにはいかなかった。

「……まぁ、自分、鈍くさいので」

エミヤの時と同じ返答なのに、不思議とトゲトゲしく言っていた。

その返答に、賢王は

「ほう」

とだけ零した。

目は、自分を射抜かんばかりの鋭さのまま。

自分、もう行っていいっすか、と口を開こうとした時、賢王はそれを遮って再び問いを口にした。

 

 

「貴様は、此処カルデアをなんとする?」

──―はい?

と危うく零しそうになった。

 

カルデア。

人理継続保障機関、フィニス・カルデア。

保障機関とは名ばかりの、アムニスフィアの、天体科の魔術工房。

おそらくは、マリスビリー前所長の根源を目指すための。

時計塔にお世話にならなかったものの、なまじ魔術を齧っていた自分は、彼がロードであることを知っていた。

時計塔のロードが、ここまで大規模な工房をつくるのは、おおよそ根源に辿り着くためだろう。

 

──―それを、なんとする?

つまり、“どう思うのか”を聞いているのだろうか。

自分は返答しかねた。

嘘をついたところで、賢王にはバレてしまうし、機嫌を損ねようものなら首が飛ぶ。

 

賢王はただ返答を待っていた。

自分は、目線を外光に照らされた廊下の床に下げ、こう告げた。

 

「ここは、地獄だ」

 

「見も知らぬ、顔も知らぬ、名も知らぬ誰かの為に、一般人が生命(イノチ)をかけねばならない。」

 

「────地獄だ、地獄以外に当てはまるわけがない」

 

「もし仮に、此処が地獄でないとするのならば────」

 

「この世、全てが地獄だった、というだけだ」

 

────それだけ言うと、自分は大きく息を吐いた。

冷やされた息は、白い湯気となって、上に上って、消えた。

 

 

実を言えば、一般人と言ったのは藤丸立香(人類最後のマスター)のことではない。

自分は、のことを、一般人だと思ったことはない。

 

余りに恐ろしいサーヴァント達と友達になろうとする藤丸立香(人類最後のマスター)の、どこが一般人なのか、自分には理解できなかった。

魔術を齧っただけの自分のほうが、余程一般人だと思った。

もし、自分が一般人とはいえなくとも、藤丸立香(人類最後のマスター)は我々とはベクトルが違う。

少なくとも、一般人ではない、と自分は思っている。

 

暫くの間、沈黙が場を支配した。

恐る恐る、顔を上げると、賢王は居なくなっていた。

返答に満足したのか、途中から詰まらなくなったのか。

自分にはわからなかった。

ただ、分かったのは、

 

ショコラテが温くなるほどここで相対していた、ということだけだった。

 



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「ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話」#1の後書きとちょっとした妄想

これはとあるカルデア職員の言葉の裏側で考察していたものの残滓。オリ主あり、カルデア職員と英霊との接触ありとなんでもあり。大丈夫な方だけどうぞ。
あと投稿主バリバリ出ます


はい、ということで「ちょいやさぐれカルデア職員」のお話を読んでいただいて有難うございます。

いいねやブックマークを多数頂いて本当にうれしいです。重ねてお礼申し上げます。

 

今回のお話は、主人公を「中途半端ではあるけれど、魔術知識のある職員」にしてみました。

いろいろピクシブのほうでお話をROM専が如く読み漁っているのですが、みかける数では本編のダストンのような、

元々一般人あがりの職員のお話が多くみられたので、こういった主人公になりました。

今ではそうじゃないかもしれませんが、まぁなんとなくなイメージです。

 

ちなみに、シルビア程の魔術協会組にしなかったのは、シルビアのような考え方の魔術師協会の職員って、まぁめったにいないだろっていう推察と、あとはカルデアを地獄であると主人公に言わせるためでした。

だって、魔術師からしたら人理は燃えましたが、カルデアって垂涎の品ですよね。

地獄だなんて考えに至らないと思うんです。

 

さて賢王は何を思って魔術師もどきの主人公に声をかけたのか。

はっきりいって想定していません。

でも良くも悪くも、カルデアという組織を“王”というか、リーダー的視点でみるのって彼みたいなタイプだと思うんです。

自分のマスターに害になりそうな、特にマスターと似たような環境の人間がいたら、接触を図りそうだな、と。

主人公はマスターに対して懐疑的な思考はしていましたが、魔術協会に売るほど嫌悪的ではない。

ある意味、興味が湧きかけたって感じでしょうか。

 

でもマスターのほうがおもしろいから、敵対したらマスターに着くと思います。さすがにね?

 

さて、残りはちょっとした妄想をば。

 

七つの人類悪に、主人公は入るのか否か。

七つ目がカルデア関連なのは、ほぼ確定なんじゃないかと言われていますが、人類悪って単独権限で時間関係の

攻撃って無効化されるんですよね。

だからCCCイベで(投稿主は未参加のイベ)キアラに殺された主人公は、メルトの時間遡行によって復活したため、

当てはまらないだろうとする考えが多いです。

すると必然的に、カルデアに取り込まれた彼女がそうなんじゃないか?と考えられますが、私はすこし考えが違います。

なんというか、もともとEXTRA民だった私にとって、SERAPHは常に並行世界であるという認識が強いんですよね。

常に多重屈折的というか、数多の可能性が重なり合い続けているというか。

一度殺された主人公は、本当にプレイヤーのぐだなのか?みたいな妄想がグラグラしてるんです。

それか、殺されたのは真実だけど、SERAPHという場所で死んだから、みたいな理由なのか。

SERAPHって本来、肉体は侵入する際死んでないんですよね。

魂が死ぬから、結果的に死んでいる、と判断されるだけで。

まだ主人公って、肉体は、死んでませんよね?っていう屁理屈がまだ残ってるな、と。

コフィンも元々死を誤魔化せるものですし。

だからこの屁理屈が木っ端みじんになるまでは、ぐだ=人類悪のⅦ説はまだ通るんじゃないかと。

 

そもそも、最初のほうで「設置」されたっていうのが盛大に不穏。

人類悪も、各時代に「設置」されたものである、と言っていた考察者さんがいましたが、

じゃあ同じく「設置」されたぐだは?という疑問も残ります。

契約自体はギャラハッドが繋いでくれたものですが、本人同士の相互理解って、彼が居てもいなくても、

難しいと思うんです。

スパさんなんか、特にそうだと思うんですよ。

圧制者は敵、つまり自身に令呪を使えるマスターは…ってなる場合もありえるんですから。

そんな彼であっても、犯罪界のナポレオンであろうと、神霊であろうと。

主人公に害悪な感情を痛烈に吐露する英霊って、居ないじゃないですか。

これは召喚陣に昔のマスターを重ねさせる術式を組み込んである、という考察もあるんですが、

それだとギャラハッドは?ってなりませんか。

ギャラハッドが召喚されるなんて言うのはレクイエム世界とFGO世界だけですよね。

最悪、マシュが死ぬ可能性もあったわけで(特にオルタだとそうなることも視野に入ると思うんですが)。

死なせないために残ったのですが、それでも憤りを感じていたわけです。

そんな中、彼女の手をにぎって、看取ろうとした主人公をみて力を引き渡す。

この場合、中にいるギャラハッドは主人公をすぐに信用できるんでしょうか?

良くも悪くもカルデアのマスターである主人公が、一般人(例の実験をする連中じゃない)だなんてすぐに判断する。

それって根拠なしに可能なんでしょうか。

マスター前例がないギャラハッドが信用できる。

それも、ある意味「獣」としての力が関わっていると置き換えても問題はないわけです。

 

まぁ根拠が乏しすぎる上にマシュの発言のほとんど否定するはめになるので本推しにはできませんね。

 

ゲーティアはある意味主人公を追い詰め続けた「人類悪」の中で特別だと思います。

彼は唯一、「功績によって」獣になったわけですが、逆にいえば、「功績さえなければ」ただの術式どまりなのです。

その功績が、唯一の人理焼却をなしえた世界線が、主人公の存在一つで無に記したわけですから。

ある意味、主人公にとっても特別なのではないか、と考えられますよね。

ビーストⅠの特別って、相当ヤバい存在だと思うんです。

そんな主人公が、普通な人間って、ありえないなぁと漠然と思ってしまいませんか?

私はそう思いました。

終章はめちゃくちゃ急いでクリアしてたんで(大奥イベ中のこと)、飛ばしてしまっていた部分も多いんですが。

でも何度も変身して主人公を何度も足止めしてきたのって、彼だけだと思うんですよ。

キアラはメルトにトドメさされますし、カーマは爪が甘すぎますし、フォウ君戦ってないし。

ビーストⅡのティアマトの場合は、足止めとは違うと思うんです。あれ、主人公側が足止めしなきゃいけないので。

そういう意味でも、ゲーティアの執着、つまり特別なんですよ。

 

ちょっと何言ってるのか分からなくなったので話を変えましょう。

 

そうそう、今回の「ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話」の主人公に言わせたかったのは、

「カルデアとは地獄である」っていうことなんです。

いわずもがな、「一般人にとって」ということなんですが最終頁にもあった通り、

この話における、主人公にとっての一般人というのは自分です。

どうあっても、魔術師的にも一般人的にも、末恐ろしい英霊と友人のような親しさのある藤丸立香は

一般人ではありません。

ただ、自分よりも一般人的思考である、という認識です。

誰であれ、力を出し合う仲間とは仲良くしたいですが、英霊って仲間……仲間?みたな立ち位置じゃないですか。

彼らは死者だし、価値観違うし、そもそも世界も違う。

気に食わなければ殺す、という輩も居ないわけじゃない。(笑い声が喧しい人たちとか)

そんな、ある意味全員が怪物のような(生者の人間からしたら)存在と友人的な思考をしあうって、

「一般人」じゃありえないですよね。

なので、個人的にはダ・ヴィンチちゃんのいう、主人公は普通。っていう本編内容に、クエスチョンがでたのですよ。

それを今回は主人公(カルデア職員)にいってもらったわけです。

 

ロストベルトは第五章まできましたが、ぐだ本人の不穏さは一切拭われていない。

最悪、デイヴィットのロスベルトで並行世界のぐだ(ビーストⅦ)がでてきて、本世界のぐだがビースト覚醒する。

なんてことがあり得るのかな、と思ったり。

マシュも本格的に英霊になりつつある今、主人公だけが普遍的って絶対免れないと思うんですよ。

また再び選択を強いられる場面が必ず来ると踏んでいます。

良くも悪くも、英霊に近しくなっていくは、家には帰れないんですが、

何処に還るんでしょうね?

 

それでは今回はここまで。

次のお話は、藤丸立香(人類最後のマスター)を英雄視するということ」についてです。

各話ごとに後書きを書くつもりです。それでは!



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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #2

第六特異点、エルサレム――――否、キャメロット。

そこは本来、宗教に関する戦争があるはずの聖地(エルサレム)だった(・・・)

だが、藤丸立香 (人類最後のマスター)が降り立った場所は、もはや聖地(エルサレム)ではなかった。

聖都(キャメロット)”だった―――。

ムスリム達は多くが死に絶え、生き残った者はハサン・サッバーハら“山の民”に匿われていた。

挙句、エルサレムとは違う土地であるはずのエジプト領まで出現している始末である。

 

そんな、恐ろしい、悍ましいとも云える魔境を藤丸立香(人類最後のマスター)を乗り越えた。

否、乗り越えてしまった(・・・・・・・・・)

この事を受けて、皆は喜んだ。

残る特異点は、一つになったのだから。

 

―――自分は、というと。

素直に喜ぶ気持ちにはなれなかった。

これでまた一つ、藤丸立香は一般人から離れていくのだから。

 

自分は、藤丸立香と会話することはほとんどない。

好きでもなければ嫌いでもない。

―――ただ漠然と、彼に対する親近感と、畏怖とが心にあった。

だからこそ、喜ぶことができなかった。

 

一般人から離れていく、ということは彼にとってどういう意味を持つのか。

 

今まで乗り越えてきた特異点。

オルレアン、セプテム、オケアノス、ロンドン、北アメリカ大陸。

それらが修復されるたびに、自分はそんなことを考えていた。

そのため、他の職員が藤丸立香の勝利を祝ったりする行為(コト)に、付き合えなかった。

 

自分は、藤丸立香(人類最後のマスター)を一般人だとは思っていない。

“藤丸立香、という人物は一般人ではないが、ある一般性を以て英雄と縁を結ぶことの出来る人間”だと思っている。

 

―――つまり、一般性があるから縁を結べている、と考えている。

 

その一般性というのは、誰かと友達に、親しくなりたいという所だ。

が、その対象に英霊までもが入ってしまうのが、藤丸立香(人類最後のマスター)の一般人でない所以である。

彼らはすでに死人だ。

そして彼らには彼らの世界(価値観)がある。

余りにも違い過ぎる彼らと、友人になろうとする……と言うのは語弊があるだろうか。

仲間というのは勿論のことだが、友人の様に思っているフシがにはある。

 

そこが、一般人(我々)と違う所である。

 

さて、自分は今、廊下を歩いている。

賢王の時とは違い、煌々と廊下を照らす電燈が幾つも並び起動していた。

 

自分は第六特異点修復祝いに参加する気が起きず、こうして一人、廊下を歩いて部屋路についてる。

外は未だ、吹雪だった。

 

「おい」

 

そんな事を考えていたからなのか、とても幼いその容姿から、想像出来ぬ程の低い声に一瞬反応出来なかった。

 

「あ、はい、なんですか、―――ええと、アンデルセン、さん」

 

―――ハンス・C・アンデルセン。

劇団員や脚本家を目指す半ばで折れ、詩や童話を生きる道とした男性。

生前は酷いコンプレックス持ちで、初恋すら実らず、その手紙を持って亡くなったとされる。

世界三大童話の一つを担い、唯一オリジナルを生み出し続けた人物だ。

 

―――そんな人物がここカルデアではまこと幼い姿なのはこの際置いておくとして。

「貴様、今暇だな?」

「……えぇ、はい、まぁ」

だから寝かせてください。

とは、言えなかった。

言ったところで彼は聞かないし、そこら辺の一線を見極める事は出来るだろう。

「よし、なら書斎にコーヒーを二つ持って来てくれ」

「エドモン・ダンテス氏は?」

「バカめ、彼奴はマスターの傍に居るタイプだろうが」

 

―――つまるところ、エドモン・ダンテスの代わりにコーヒーを淹れろ、と。

「そこの書斎でいいんですよね」

「あぁ、頼んだぞ」

それだけ言うと、アンデルセンは書斎の中に消えていった。

まったくもって、勝手な人である。

 

こういったことは、何も珍しいことではない。

エミヤ達英霊のほうがむしろこういったことをしてくれる、というだけで。

とはいえ、彼らの好みは推し量れないので角砂糖やミルクも盆に乗せる。

ちょっとしたお茶請けも添えて。

 

アンデルセンの所――――書斎は元々今は亡き職員のモノだったが、

今ではもっぱら作家系サーヴァント達の溜り場になっていた。

そのことに職員の反発もあるが、自分はそうは思わなかった。

コチラが助力を願っているのだし寧ろそれだけで済むのだから良いほうだろう。

 

重い扉が開き、中に入った。

仲は恐ろしい程真っ暗で、視力が秒で落ちそうな程だった。

「おぉ、出来ましたかな?吾輩、待ちかねていましたぞ!」

やはり、というべきか部屋にはシェイクスピアも居た。

山のような羊皮紙に原稿用紙を見たところ、今まで彼らと乱闘をしていたらしく、シェイクスピアは大きな伸びをした。

 

ウィリアム・シェイクスピア。

英国が誇る随一の劇作家。

四大悲劇は勿論のこと、ロミオとジュリエットなど、有名な作品群を世に送り出した偉人。

 

―――それが、サーヴァントになってもこんな場所でカンヅメしているなんて。

ファンが知れば卒倒することだろう。

自分はそんな事毛ほども思わないが。

「好みが分からなかったから、色々持ってきましたが」

「構わん、そこにおけ。―――――おい、お前はそこに座れ」

置いたらすぐにでも帰ろうと思ったのだが、コレである。

アンデルセンにバレてしまった。

というか、何故引き止めるのだろうか。自分を。

「茶請け付とか、吾輩、感動モノですなー」

「なんだ、貴様日本生まれか?妙に気が利くな」

「ナチュラルな偏見どうも。―――――日本にいたこともあるけど」

「そうか」

「……えぇ」

聞くだけ聞いてコレである。

彼らが休憩中、手持無沙汰だった自分は、適当な本を開いて読み始めた。

 

ちょうど、本の一章分を読み終えたところだろうか。

お茶請けを食べ終わったアンデルセンが口を開いた。

 

「そういえば、この間。貴様キャスターの方の英雄王に噛みついたらしいな?」

「……ただ聞かれたことを答えただけです」

「ここを地獄といったらしいが?」

「我々にとっては地獄ですな!主に原稿t的な意味で」

「……まぁここが地獄なのは間違いじゃない。――――特に、藤丸立香(マスター)にはな」

「そうですな、まぁ吾輩、楽しければ何でもいいのですが」

「それは貴方だけでしょうが……」

自由気ままな劇作家(シェイクスピア)に、自分は酷く呆れた。

サーヴァントは皆そうだが、シェイクスピアは特段そうだろう。

 

「お前にとって彼奴(マスター)は何だ?」

「何、って」

「確かに、カルデアの職員の方がマスターについてどう思っているのかは気になりますな」

コーヒーを飲みながら、イヤに笑顔になってシェイクスピアは言った。

大方、ネタにでもするつもりなのだろう。

 

「……少なくとも、藤丸立香(人類最後のマスター)が特異点を修復するたびに、

 あぁやって、もてはやすのは不適切だとは思ってる」

「ほう?どういった了見だ?」

興味が湧いたのか、アンデルセンはカップを盆に置いた。

自分に視線を投げられるのは嫌な気分だが、自分は少しずつ考えを述べ始めた。

 

藤丸立香(人類最後のマスター)を一般人だと、此処において思ったことはない」

「一般人としても、魔術師としても、異常――――異端者だろう」

 

「だが、本来その力は生者―――彼と共に生きる者に向けられるはずだった。

 こんな状況だからサーヴァントに向かってしまっているだけだ」

「力、というのはなんだ?」

「なんというのか、君等(サーヴァント)と親しくできる、ところかな」

 

ふむ、というだけで、アンデルセンは何も言わなかった。

「どうぞ、続けてください」

逆に、シェイクスピアが続きを催促する。

 

「もう一度言うが、藤丸立香はもう(・・)一般人じゃない。だけど―――――

 彼が一般人であったことを忘れるのは最もしてはいけない、とも思う」

 

「あんな風に―――特異点を修復するたびに藤丸立香(人類最後のマスター)を英雄の様に扱うべきじゃない。

 ドクターロマンや、ダ・ヴィンチ、マシュなんかは気にしているんだろうけど、他はそうは見えない」

「藤丸立香は――――一般人として生きるべきだった」

 

「だけど、もう戻れない(・・・・・・)。ならせめて、此処(カルデア)でだけでも、彼をそう扱う――――

 この表現はダメだな。そう対応すべきだ」

そうでなければ、藤丸立香が壊れてしまう――――

そう思いはしたが、口にはしなかった。

本当にそうなってしまう気がした。

 

「それが、貴様の考えか。――――――では、それに対する俺の見解を述べよう」

一通り聞き終わったアンデルセンは、コーヒーを一口、口に含みながら、そういった。

自分を見据え、ひと呼吸おいて。

 

「貴様のそれ(・・)は間違いではないだろう」

「すくなくとも彼奴(マスター)を英雄視するべきではない、というのは同意できる」

 

「最近はハロウィンだか天竺だかくだらん特異点すら修復するのが当たり前になっている。いや、なってしまっている(・・・・・・・・・)

「だからこそ、職員も慣れてしまっている。俺たちは既に“生き方(アイデンティティ)”が決まっているからな。

 弊害はない。だが貴様らは自由に生きることができる。その分適応力というモノに振り回されやすい」

 

「その点、貴様は物事を俯瞰的にみることが出来るんだろうな」

 

つらつらと語るアンデルセンに自分は目が点になった。

流石は人間観察Aというべきか、彼は周囲の人間をよく見ている。

彼はそのまま、こう続けた。

 

「そういった考えを持てる人間は彼奴(マスター)にとっても貴重だろう」

出来るなら、忘れてやらないでやってくれ。

 

そしてアンデルセンは目を伏せた。

 

「いやぁ、ごちそうになりました」

いつの間にか、お茶請けもコーヒーも茶渋……コーヒー渋?を残し、空になっていた。

「どうして中々、悪くはない。どうだ、ここに習慣的に来ないか?」

「暇があれば」

「ほう、ならば今!片手間に貴方の来歴でも教えていただきたい!」

「……は?」

「それはいい。どうせ暇だろう。ネタになるかもわからん、話せ」

 

自分は面倒くさくなって本で顔を覆って、瞼を下ろし、彼らの質問に無視を決め込むことにした。

 

 



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「ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話」#2の後書きとちょっとした妄想

はい、何時も読んでいただいて有難う御座います!

今回もつらつらと語らせていただきます!

 

今回主人公に言わせたかったのは、「藤丸立香を英雄にすること」です。

新宿のシナリオにて、職員さんは彼/彼女を気遣い、功績はドクターのものにすることで、守ろうとしてましたね。

そこからヒントを得ています。

少なくとも、特異点修復中はお祝いがあったのは確かだと思います。

良くも悪くも、人間ってそういうの好きですからね、自分も好きです。

特に第六特異点は、PLAYERとしても難易度爆上がりで、ガウェインで絶叫した方も多いのではないでしょうか。

そういう意味で、乗り越えた時は御祝いをしたと思うんですよ。

 

でも、それって、藤丸立香にとって「プレッシャー」になりますよね。

期待の反対はプレッシャーみたいなところあるじゃないですか。

とってもしんどいと思うんです。もともと一般人あがりの数合わせだから。

 

職員にそういう気持ちはなくても、主人公……藤丸立香にとってはそうなることも考えられる訳です。

だって生きたいから、してるのに出来て当然みたいになってくるわけですよじわじわと。

しんどすぎません?ということで、そんな事を考えてくれる職員を描いてみました。

もちろん、気を使ってくれる職員さんはいるとは思うんですが、具体的に本編やらイベントには出てない気がするんです。

彼/彼女を明確に一般人だ!っていってたのは本編一部の大きいダ・ヴィンチちゃんぐらいだと思うんです。

なのでこうなりました。なんて雑ゥ!なんでしょうか。

 

さて、今回の妄想をば。

前回はSERAPHだから、肉体死んでなくね?獣いけるくね?とかいう場違いすぎる妄想を垂れ流したわけですが。

なので、今までの獣に肉体は必ず必要なのか?を考えます。ついでに精神がなくてもいけるのか?ていうのも。

 

まず、ビーストⅠ「ゲーティア」。

彼はもともと人理補正式であるため、肉体はソロモンの遺体を使用していました。

最終的に獣、として顕現する際にはその肉体を捨てています。

これ、肉体だけじゃなくて、「思い」――――つまり精神体だけでも獣になれる根拠ではないでしょうか。

 

ビーストⅡ「ティアマト」。

これは分かりやすいですね。彼女は本編で「攻撃したくない」と頭脳体を自ら拘束していたのに子らに殺されましたが、

結果的に神の御体をもって獣として蹂躙しました。

つまり、知能やら精神は死んでいてもOKなわけです。

一度そう「思って」行動したら体にしみつく――――というのは考えすぎでしょうか。

 

ビーストⅢ/R「殺生院キアラ」。

彼女の場合は自ら肉体をすてて電脳科してますよねこれ。

え?ですよね。

これ精神体だけでも獣になれるってこと示してませんか?もともと月のキアラ(肉体無)と同機したわけですし。

そういうことだと思うんですけど……うーん。

 

ビーストⅢ/L「カーマ/マーラ」。

彼女を語る際に重要なのは、シヴァに体を第三の目で焼かれたから宇宙でもある、という点だと思います。

重要なのは、「宇宙=カーマ/マーラの体」なのではなく「カーマ/マーラ=宇宙」という点です。

あくまでも、宇宙とカーマ/マーラは同一なのであって、宇宙がカーマ/マーラの体というわけではない、と考えてます。

え?宝具演出?大量のカーマ/マーラ?ははは、なんのことやら。

あれって、宇宙と同質だから体の中に宇宙があるってことでは?

でもそれだと、あの大量のカーマ/マーラに説明がつかないんですよねー。

宇宙と同質だから、宇宙がカーマ/マーラに見えるということでひとつ……。

 

ビーストⅣ「キャスパリーグ」。

彼も分かりやすいかな、[[rb:中身 > 精神]]をすてても顕現できてます。

でも中身がないと彼の場合獣になれない気もするんですよね。

でもでも、あれってあくまで敵対してるから比較で強くなるんですよね……?

 

うーん、参考になるのが前半3名だけですね……。

正しくは裏付けになりそうなのが、ですけれども。

 

別に主人公に獣を押し付けたいわけじゃないんですけど……。

クリフォトビースト考察に基づくと、たしかⅦって無神論ですよね。

それができるのは、現代に生きてて異聞帯滅ぼしてる主人公くらいのものじゃないかと思うんです。

 

なんででしょうね、当てはまるのが彼/彼女かオルガ(イツカ)くらいですから。

なんとなーく、所長は不穏なんですけど、あの異聞の巫女じゃないか?っていう直感が残ってて…。

じゃないと、アニメだったか、マシュに手を伸ばす必要性がない気がします。

あくまでマシュ・キリエライトに入れ込んでいたのはビーストⅠならぬフラウロス。

ほかのビーストはマシュガン無視なんですよ。

その点、あの異聞の巫女ちゃんはマシュを助けたり、マシュに手をのばしたり……

あれこそ、ちゃんとマシュと向き合おうとしたオルガマリーなんじゃないかな、と。

あとオルガマリーは、滅ぼしてないんですよ。

滅ぼしていってるのは主人公なのであって、彼女は似たような事はしようとしてましたけど、その前に死に続ける状況に追い込まれてますよね。

なのでオルガマリービースト説はどうかな、と。

あくまでカルデアスは世界を滅ぼす兵器ではありませんし。

 

ぜひここらへんの考察を教えてほしいです。えぇぜひ。

 

後は、そうですね。

アンデルセンをマスター贔屓というか優しい感じにしたのは、彼をお人よしというかなんだかんだ人間好きだと思ってるんですよ。

良くも悪くもマスターを導く人間だと思っているのでああなりました。

あとシェイクスピア書きにくすぎませんか。面倒すぎる。

アポの先生もいってましたね、なんでこんなキャラクターにしたのか。

 

あとあと、アニメ放映おめでとうございます!

2話に関してはもう雨やら台風で大惨事だったので綺麗に見れないかなとかおもってたけどありがとうB〇11!

めちゃくちゃ綺麗でうれしい。すき。

 

キャメロットも映画化順調ですよね。本当に愉しみです。

あと獅子王がどこから来たのかも描かれるといいですね!1時間越えの映画なので、ぜひ考察のヒントが欲しい所です。

 

最後に、ネタ切れなのでコメントにぜひリクエストください……。

○○について語ってほしいとか、○○のイベントについてとか。ぜひぜひ下さい!

 



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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #3

カルデアの施設は多岐に渡る。

自分にとってはもはや見慣れた景色だが、外は凄まじい吹雪である。

それ故に、必然とも云えるだろう。

 

例えば、大浴場。

職員や英霊を含むカルデアに滞在する人々が利用出来る大きな風呂。

もっぱらローマ出身者や日本出身者が利用する。

 

例えば、地下図書館。

紫式部が司書を務める図書館で多くの英霊、職員が利用する。

マスターである藤丸立香も新たな英霊が召喚されるたびに籠っているようだ。

 

例えば―――――そう、自分が居るこの温室もそうだ。

花も咲くこの温室は、元来食料確保のためのものだった。

ある職員によって種が蒔かれたのを期に、一区画だけ花壇になっている。

自分がカルデア(ココ)に来た時に既に咲いていたが。

 

この区画に居れば、話しかけられることはほぼない。

口下手な自分にとっては、部屋以外で唯一気が休まる場所だった。

 

そう“だった”のだ――――――。

 

「やぁ」

このウーパールーパーみたいな魔術師(英霊によってはグランドロクデナシ)が現れるまでは。

 

このウーパールーパーもどきは、『アーサー王伝説』に登場する宮廷魔術師である。

人と夢魔の混血で、人格こそあれど感情はない。

その上湖の精霊(ヴィヴィアン)を誑かし、果ての塔に幽閉されている。

人理焼却といった事態でなければ召喚もできないとは本人談である。

 

「おーい職員君?」

「……」

「無視はよくないぞぅ!」

「……なんなんですか、御用は」

「御用?御用はないともさ!」

 

このキャスターは何故どや顔なのだろうか。

ここ最近、ずっとキャスターに付きまとわれている気がする。

そう思い、自分は

「そうですかさようなら」

とその場を離れようとした、が。

 

「わーっまってまって!ね、話だけでいいから!」

「御用はないんでしょうが」

「まぁまぁすわって!」

 

流石に筋力Bにはかなわず、自分はここに長居するはめになった。

こんな風に表情をコロコロさせるが、感情というものはないらしい。

 

「ふふん」

「何をそんな上機嫌なんです?」

「だってウワサの職員君と話せるんだよ?喜ばないわけないじゃないか」

 

“ウワサ”?

(自分が?何故?)

「あはは、なんでって顔してるね。ほら王サマ――――賢王ギルガメッシュに噛みついただろう?」

「誤報です。ただ問いに答えただけです」

「あの言い方じゃあ噛みつくでも間違いないと思うなぁ」

「……まさか」

「そのまさかさ!」

「……はぁ」

 

マーリン(この男)は本当に質が悪い。

賢王との対話を千里眼(現在視)で見ていたのだ。

 

「プライバシーとかわからないんですかね?」

「なんだいそれ」

「これだから魔術師は……」

「嫌だって王サマが職員――――一職員にちょっかいかけにいくんだよ?面白いに決まっているじゃないか」

 

これだからウーパールーパー(グランドクソ野郎)なのである。

 

「あの問答を、アンデルセンさん達が知っていたのは――――」

「あぁ、僕の仕業(せい)さ」

 

マーリンはのんびりと答えた。

つまるところ、自分があのキャスター二人に絡まれ、この男にも絡まれているのはあの問答のせいだったのだ。

 

「あの事を知っているのは誰です?」

「キャスタークラスは皆大体知ってると思うな。別クラスが知るのも時間の問題さ」

「なんという……」

「だって面白そうだからさ」

「そんなんだから職員に反発する人が出るんですよ」

 

昔ほど酷くはないが、それでも未だに反発する人は少なくはない。

これは現在(イマ)のカルデアの重大な問題のひとつだろう。

マーリンは笑うだけで、何も答えなかった。

あずかり知らぬ、と言いたいのだろうか――――――。

 

「あぁそうそう、藤丸立香(マスター)の事だけど」

藤丸立香(マスター)がどうかしましたか」

「マスターに対しては、そのままであってほしい。先達として、人生の心配として、ね」

「珍しい、貴方にとって大切なのはアーサー王だけだと思っていました」

「そりゃあ、アルトリアは大事さ。でもマイロード(マスター)だって大切なんだよ」

 

「マスターは、夢の中ですら休みがないから、ね」

 

マーリンは遠い明後日をみて言った。

 

「夢の中ですら……」

「そう。例えば狂王を暗殺しそこねて散った英霊達・“聖罰”によって虐殺されたムスリム達」

「聖なる槍で散った英霊、村人たち――――特異点で死んだ人々に対する後悔。そんな辛い“味”ばかりだ」

 

(マーリン)は夢魔だ。

藤丸立香(マスター)のサーヴァントとして、いくつもの夢を喰べたのだろう。

 

「辛い味、ですか」

「あぁ、むしろ幸せな味を喰べたのは片手で数える程さ。きっと、もっと救えたはずだって、そう思ってるんだよ」

 

「そうですか、ですが――――それは傲慢です。藤丸立香(マスター)の傲慢さが見せる夢ですよ」

「……というと」

「単純です。今でこそ、多数の英霊―――無論貴方も含めますが―――がいます。きっと、藤丸(マスター)

これだけいるのだからと」

「思っているのでしょう。えぇ、ですが、救えないもの(・・・・・・)救えない(・・・・)

 

「例えば、特異点Fへの強制レイシフト前の管制塔爆破。これによって出た死傷者をここにいる英霊で全て救えますか」

「……それは」

そういうこと(・・・・・・)です。例え抑えられたとしても藤丸(マスター)は救えたはずと言うでしょう。……これを傲慢といわずしてなんというのですか」

 

 

「君はやっぱり、変わってるよ」

キョトンとこちらを見ていたマーリンが笑みを浮かべて言った。

 

「どこがです」

マイロード(マスター)の味方なのに斜に構えているところ」

「だからどこがです」

「さっきのところとか特にそうさ。うんうん、そういう人物(キャラクター)も、マイロード(マスター)には必要さ」

まるで、おもちゃを見つけたかの様に笑うマーリンに、自分は引いていた。

 

「よーし次は、そうだな、君について教えておくれ」

「イヤですよ」

「え、どうして。私と君の仲じゃないか」

「たかだか30分ですよね?」

何を言っているのだろうこの夢魔は、と思っていると

「おーい、ちょっと……げぇマーリン!?」

「やぁロマニ・アーキマン」

「ちょっと!職員に手を出してないよね!?」

「もちろん、どっちかっていうとおも」

「ちょっと!?君大丈夫!?」

「は、はは……」

 

自分は、苦笑いを浮かべる他、なかったのだった……。



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「ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話」#3の後書きとちょっとした妄想

今回のお話は人間性と感情皆無の夢魔マーリンと、主人公に懐疑的な職員との対話でした。

ウ―パール―パーやらグランドロクデナシやら雑言ばかり使用して申し訳ありません。この場を借りてお詫びします。

 

今回言いたかったことは、彼/彼女(藤丸立香)の傲慢性でした。

良くも悪くも人を救いなれている彼/彼女(藤丸立香)が救った後に思うのは、

救えた人々に対する喜びではなく、救えなかった人々に対する悼み、後悔です。

死者を悼むことは、ヒトにとって当たり前ですが、彼/彼女(藤丸立香)はあまりにも、

救えたということに対して無機質だと思うのです。

さも、“救えるのは当たり前”とでもいうように。

ソーシャルゲームという媒体のため、主人公である彼/彼女(藤丸立香)の作成コンセプトは

「一般性」と「普遍性」でした。

某菌糸類曰く、「実はこんなのでした、というのはない」そうなので、おおよそ間違いではないと思います。

この点において、そのコンセプトから彼/彼女(藤丸立香)は離れているように思えたため、

あの様な作品になりました。

 

さて、皆さんがお待ちかねかどうかは分かりませんが、ざっくり考察タイムです。

今回のネタは前回からの続き、ということで、

「オルガマリーは異聞からの巫女か、ビーストⅦか」です。

2部1章をクリアした方々は、空想樹を取り除いたあの子を覚えていらっしゃるでしょう。

今回はあの子=オルガマリー説と、オルガマリー=ビーストⅦ説を比較していこうと思います。

 

根拠①ビーストⅠに、カルデアスにぶち込まれた

根拠②オルガマリーは自己顕示欲が非常に強い

根拠③ビーストⅠ、フラウロスの台詞より「カルデアスの中で死に続ける……」

 

この説はオルガマリーこそがビーストⅦである、というモノ。

 

根拠の①は、ギルガメッシュの「Ⅰが居るのならⅦももう居る」(要約)というのを元にしたものです。

Ⅰのフラウロスによって、オルガマリーがⅦになったとするなら、この発言と合致します。

 

根拠の②は、これは“自己愛”という名の人類悪(人類愛)なのではないか、というもの。

人間の善性と悪性の粋を集めた部分なのでらしく感じますね。

 

根拠の③は、死に続けるということは生き続ける事と同義であるとして、単独顕現の力の一端だと推察したもの。

この根拠を元に考察をしてる方もいますね。

 

では、反論を考えてみましょう。

 

①については、彼女が取り込まれたのは観測モデルのカルデアスであるため、滅ぼすような事は出来ないのでは?

 

②については、自己愛という観点において、殺生院キアラという前例者がいるため厳しいのでは?

 

③については、彼女が死を感じる時間が長いだけで現実では一瞬であった可能性がある。レフの台詞も比喩では?

 

どうでしょう、どちらもらしい、といえばらしいので悩ましいですね。

 

 

根拠①アニメ「ロストルーム」でのオルガマリーに伸びる複数の手

根拠②2部におけるキリシュタリアの語り掛け

根拠③[[rb: 彼/彼女>藤丸立香]]を助けるような動き、また諦めかけた際の侮蔑的な感情

 

この説は先述した通り、オルガマリーが巫女なのではないかという説になります。

 

根拠の①は、E検体という異聞の巫女にあたると思われるモノへの人体実験ではないか、という考察。

本編において巫女がオルガマリーであるとは認められていない頃のアニメであったため、オルガマリー(正体)を

使ってE検体を表現したのではないでしょうか。

 

根拠の②は、オリュンポスでの定例会議におけるキリシュタリアの語り掛けについて。

「机上の空論だというマリスビリーの理論を完成させる。見ているがいい……」という部分などが含まれます。

 

根拠の③は、2部1章と5章での動きについて。

彼/彼女(藤丸立香)らに落胆するのも、助けるのも巫女―――――異聞帯側であるのなら必要ないハズ。

元になった人間、ないし人格がありそれがオルガマリーではないかという考察です。

 

恒例的に反論を考えましょう。

 

①については、これは刻印に関する表現でE検体とは関係ないともとれる。

作り上げた当人以外には血族であっても毒になる刻印。そのメンテナンスともとれなくはない。

 

②については、これは独り言としてもとらえられる表現なので良い切りはできない。

ただし、5章アトランティスの発言のみを切り取るのであれば語り掛けと言い切りはできる。

 

③については、未だ明確に彼女の立ち位置が明かされていない以上どうとでも取れる。

1章の空想樹切り取りについてはともかく、5章の侮蔑については敵対しているとも普通にとれるだろう。

 

さて、筆者がどちら寄りの結論をもっているかと聞かれれば後者です。

前々からあとがたりで言っているように、ビーストⅦは彼/彼女(藤丸立香)

もしくは並行世界の彼/彼女(藤丸立香)だと考えているからです。

ぜひ皆さんの意見もコメント欄でお聞かせ願います!反論も肯定意見もじゃんじゃんください!

 

長々と書いてきましたが、今後彼/彼女(藤丸立香)は根源を目指していくのでしょうか。

戻る保証もない汎人類史、「カルデアの者」の忠告、武蔵守の先のない未来……。

できれば筆者は彼/彼女(藤丸立香)には平穏な高校生に戻ってほしいと思っているので、

彼らの旅路に喜びと幸がもたらされることを願っています。

 

次回はツイッターで公開していたネタを消費していきます。

 



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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #4

カルデアの食堂を営むおは料理に関係するサーヴァント―――――という訳ではない。

それらしい逸話はなくとも、それをするサーヴァントは多い。

 

例えばタマモキャットがいい例だろう。

彼女はキャスター・玉藻の前の分身、1側面で、日本的に言えば分け御魂といえるだろう。

そも、玉藻の前はかなり身分の高い人物―――――らしい。

らしい、というのは余り自分は彼女について詳しく無いためである。

と、言うよりも彼女について知る職員は居ないような気がする。

日本のサーヴァントが半数を占めるのに、カルデアの職員の日本人は藤丸立香(マスター)くらいのものだろう。

もしかしたら、他にも居るのかも知れないが、自分には預かり知らぬことだった。

玉藻の前の話に戻るが、身分の高い女性はどこの国も家事というものをしないし、知らないものだ。

すくなくとも、彼女の生きた時代(とき)はそうだったらしい。

そんな彼女に料理の逸話があるはずもない。

ということは当然、分霊であるタマモキャットにも無いわけである。

 

――――そも、あの手でどう料理をするのか、とか、毛は入らないのか、とか考えてはいけない、様な気がする。

そんな事があればクリミアの天使(ナイチンゲール)が飛んでくることだろう。

今の所、そんな事例はないが。

 

自分は普段部屋で、たった一人カップラーメンをすする事が多い。

あまり他人と食事をすることを好まないからだ。

最近はどこぞ(グランド)ロクデナシ(キャスター)のせいで、より外に出にくくなっていた。

だが、そうはいかなくなる時もある。

 

「……あー、やってしまったな」

自分の目の前には、空っぽの排水管しかない下棚があった。

本来ならカップ麺やカンパンといった簡易的食料があるのだが、先日消費したのをすっかり忘れていた。

 

取りにいけばいいとは思ったが、今日は会議があった。

食事は手早く済ませなければならなかった。

倉庫までは距離がある上に、認証ロックやらがかかっていて面倒だった。

 

致し方なく、自分は食堂に行くことにした。

 

「―――む、君か。珍しい事もあるものだ」

「今日は事情があってね」

「いつになればここで食事を取るようになるのかね?」

「ははは、また来世。―――誰かと食事することが苦手なもので」

エミヤに小言をいわれていると、厨房の奥から赤髪の女性――――ブーディカが現れた。

ローマ帝国に踏み荒らされ、手折られた、古きブリテンの花。

イギリスの勝利の女王、それが彼女だ。

「それなら、カウンターはどう?端の方とか」

「仕事をしながらなので、お邪魔でしょう」

「もう、根を詰めすぎるなんて駄目なんだからね」

「……ええ、そうですね」

 

それが出来たら、どれ程よかったか、とは口に出さなかった。

彼女は善意で言ってくれていたのだから、嫌味をいうべきでないのは分かっていた。

 

「軽いものを用意しよう、待っていたまえ」

――――そう言われて、自分は一つの丸テーブルに座った。

暫くして、耳に女性の声が入ってきた。

「あーッ!うどんだぁッ!」

そう騒ぎ立てているのは、日本の剣士―――二刀流で有名な―――宮本武蔵だった。

江戸の[[rb:時代>とき]]において、小話の中で有名になった“男”の剣士。

佐々木小次郎を好敵手(ライバル)とする、日本では1、2を争う戦士。

―――それがこのカルデアにおいては女になっているのはどういう事か。

自分には分からないし、分かりたくもない。

「君も食べるか?」

「いいの?頂きます!」

「あぁ、持っていくから座っていたまえ」

「やったぁー!」

 

―――と、ここまでは別に(どうでも)よかった。

彼女がこちらに来るまでは。

「ね、この席座ってもいい?」

「え、あ、は?」

「失礼しまーす」

聞く気がないのに何故聞いたのだろうかこの剣士は。

「……はぁ」

「溜息?ダメだよ、幸せにげちゃうよ?」

「席なら、他にもあったでしょう」

溜息の当てつけの様に嫌味をいうと、彼女は目を丸くして、キョトンとした顔で言った。

「だって、君は初めて見たから。私、色んな職員に話を聞いてるの。皆、色んな国からきてるのね~」

楽しそうに言う彼女は、どうやらのウワサを聞いてきたワケではないようだ。

「貴方は?どこから来たの?」

「……自分、は」

「すまない、うどんが出来たぞ」

「わーッ!おうどんだ!」

すでに彼女の興味は、うどんに移ってしまった。

自分勝手さが、ここに極まっている気がする。

「3つ……?」

エミヤのもつ盆には椀が3つも置かれていて、ふとした疑問が口をついた。

 

「私も少し休むことになってね。後しばらくはブーディカがしてくれる」

「おっ、そうなんだ。じゃ」

 

「頂きまーす」

「頂きます」

「頂きます」

 

この日本のうどんというのは、日本人のマスターの希望から始まった。

どういう訳か、マスターはしばらくの間、うどんだけを口にしていた。

そういった事もあって、職員たちにとって一番なじみのある日本食だった。

「おいしー!肉うどんは最高ね!」

「口にあったのならなによりだ」

「……そうだな」

「あ、そういえば」

と、武蔵は思いついたように言った。

「君はめったに見ないけど、どうして?」

「部屋でカップ麺食べてるから」

「えーっもったいない!こんなおいしいご飯が食べられるのに!」

「君からももっと言ってくれ。彼ぐらいのものだぞ、部屋でカップ麺など……」

「カップ麺……いいかも」

「おい」

「いやいや、思ってないよ!そんなよさそうだな~なんて!……あ」

「はぁ……」

一人突っ込みをする武蔵を横目に、エミヤは大きな溜息を零した。

「無理に、とも毎日こいとも言わないがね。体を労わるつもりがあるのなら、たまにはきたまえ」

「労わる必要がない人がいいますか」

「労わる必要がないからだ」

「さいですか」

 

エミヤは一通り食べ終わると、再び口を開いた。

「マスターも似たような事を言って、しばらく食堂にこないことがあった」

そう聞いた武蔵は、あぁ、と思い出したように。

「お医者様と看護師さんが言ってたわね、そういえば」

お医者様とは、キャスター・アスクレピオス。

看護師さんは、バーサーカー・ナイチンゲールを指している。

無論そこにはドクターロマンもいたのだろうが、彼らが零していたなど、露程も知らなかった。

「一体なにが?」

「マスターを取り巻く状況は一変した。それによる急激なストレスで一時的な拒食症になっていた様だ」

「そんなの、知らなかった……。でも、そう、よね。あの子、今まで普通の生活をしていたのだもの」

急に世界が貴方の双肩に懸かっているなんて、耐えられる訳ないわ。

そう、武蔵は言った。

「しかし、マスターは生身の人間だ。君と同じく、な。……最初は点滴にする、という案もあったらしいのだがな。イヤ、そうならなくてよかったと思うが」

「もしかして、それで始まったのが……」

エミヤは鷹揚に頷いた。

 

「そう、この“うどん”だったわけだ」

「だから、今日もうどんを?」

まぁ、な。とエミヤはチラリとこちらを見た。

「マスターは、最初こそなかなか来てくれなかった。食べてもくれない」

 

「だがな、少しずつ、少しずつ来てくれるようになった。[[rb:現在>イマ]]のようになったのは、本当に最近の事だ」

「そうだったんだ……。私、召喚されたのはこの間だったから、知らなかった」

「まぁ、認識してくれればい」

『ちょーっとゴメンよーッ!』

エミヤが話していると、急にダ・ヴィンチの声が響いてきた。

『えー1名の職員が行方不明なんだ!会議なんだけどね!名前は――――』

続けて、自分の名前が垂れ流される。

「……すまない、話過ぎたな」

「ご、ごめんね!」

「いや、大丈夫……多分」

 

目玉は避けられないだろうな、とぼんやりと考えながら、自分は急いで廊下を走る。

この後、盛大に笑われたのは別の話。

 



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「ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話」#4の後書きとちょっとした妄想

今回も読んでいただき有難う御座います。

 

え?前回からひと月経ってる?

 

あっホンマ……、すいませんでした。

 

純粋にテスト期間と風邪にドッキングされて阿鼻叫喚だったのです。

 

気が付いたら2月でバレンタインデー。

 

清少納言とか嘘やろ!となっていますが、私は元気です。

 

 

 

今回のテーマは、カルデア最後のマスターの食生活について、です。

 

彼/彼女(藤丸立香)は本来、補欠要因で、ただの一般人でした。

 

そんな彼/彼女(藤丸立香)が緊急とはいえ、英雄として担ぎ上げられることになったわけです。

 

単純にそんな環境が変われば発狂するなり精神障害が出ていても可笑しくないわけです。

 

事実、突然レムレムタイムに入ったりする精神障害が度々起こっていました。(武蔵国とかね)

 

これらは魔術的な障害だったわけですが、身体的な障害があっても可笑しくないわけです。

 

無論それらはカルデアの(恐怖の)医療班がいる限り、許される病魔ではないわけです。

 

あんまり描写はされてなさそうだなーと思ったのがことの始まりだったのです。

 

いいのかそれ?ということで作品になりました。

 

エミヤは確定として、あとは話に主人公を巻き込んでくれる役割が必要でした。

 

なので武蔵守を登場させました。

 

良くも悪くも部外者である彼女は巻き込む役にぴったりだったのです。

 

ドクターは出そうか考えてやめました。

 

彼の話はダビデに丸投げします。皆、ダビデ育てて幕間みて!

 

 

さて今回の考察枠ですが。

 

ホームズにしたいと思います。新宿のアーチャーの幕間もきたからね。

 

私、ホームズピックアップ(抱き合わせ)で尽く新茶に邪魔されて新茶の宝具レベル2なんですが、

 

彼ですらホームズの存在に懐疑的なのです。

 

なので考察します。

 

さて、彼の不穏おぶ不穏な行動がこちら

 

・ヘルメス・トリスメギストスに触れても発狂しない

・六章キャメロットにての単独顕現

・新宿への単独顕現

・後ろの幾何学的な奴何?宝具何あれ?

・いつのまにかカルデアに居座る

 

彼の味方だと思える描写は

 

・彼/彼女藤丸立香を助けるために死の淵を彷徨う

・各特異点でのサポーター

・プレイアブル化

・例の推理イベント時

 

さて、彼はさんざんフォーリナーじゃないかと言われていますが、それは非常に在り得ます。

 

自分は幾何学的な例の宝具も気になりますが、一番気になるのは1.5部での彼の行動です。

 

かなり飛ばし気味でシナリオを読みふけりましたが、彼が動いたのは4章。

 

例の「クトゥルフ神話」特異点のみです。

 

それまで彼は格納庫にこもりきりで、ダ・ヴィンチちゃんに呼ばれたからとはいえ、拒否することもできました。

 

それがわざわざ出てきてヴァイオリンを弾こうとする始末です。

 

結局、最終では出番をキャスターにゆずり、出てくることはありませんでした。

 

しかし、彼が特異点中管制塔に居ないわけがないのです。

 

と、考えると途中の通信で登場しても可笑しくありませんでした。

 

しかし、出てきたのはダ・ヴィンチちゃんとキャスターだけ。

 

結局、出番は無かったわけです。

 

では、彼はわざわざ管制塔に足を運んだワケはなんだったのか。

 

当時プレイしていた方々はこの特異点がクトゥルフを核にしていることは、

 

すぐに想像できたのではないでしょうか。

 

そうです、ヨグ=ソトースさんです。

 

事実、彼はアビゲイルを受け入れ力を与えました。

 

宝具演出や、アビゲイルの友人のウェイトリーちゃんから分かる事です。

 

何が関係あるんだよということなんですが。

 

これ「ヨグ=ソトースを確認しようとした」と考えています。

 

おいおい、ホームズは管制塔にいたけど通信には出てこなかったろ!

 

となりますが、あくまで結果論です。

 

通信にでしゃばってくっちゃべらなかったの、すっごく違和感があるのです。

 

こういう神秘を暴き立てることは、ホームズの業なわけです。

 

ですが、彼は登場すらしなかった。

 

では管制塔から何ができる?と考えた結果。

 

彼の中にいるある「神性」が、「ヨグ=ソトース」の姿を確認しようと動いた。

 

その結果、普段真実を饒舌に語る口は閉じ、目だけが働いていた、と考えています。

 

「神性」は動画が某笑顔動画にあります。考察動画をみて、どうぞ。

 

では、ヨグ=ソトースを確認するとなにがあるのかですが。

 

>>>>わかんないです。<<<<

 

いや、仮に某動画の神性があっていたとして、その神性とヨグ=ソトースに関係性があるのか、というとないです。

 

ヨグさんからすれば、全である以上、その神性でもあるといえますが、その神性からすればなんの関係もありません。

 

ただ、ふたつを結びつけるものが皆無かといえば、そうではない気がします。

 

「知」です。

 

彼らは「知識」という観点において神性を獲得しています。

 

では、知識を得るために?いいえ、それはありえません。

 

「ヴェールをはぎとる」彼は、“全てを見る”ことができます。

 

ですので、いちいち知を求める必要性がありません。見ればいいわけですから。

 

なんだったらあの幾何学宝具で真実捏造でもすればいんです。

 

わざわざ確認したのにはなにかしら理由があると思います。

 

認識に注視したからこそ、口を閉ざしていたと考えます。

 

なにがあるんでしょうか。

 

あとは、そうですね、BBがクラスカードデザインになっていることもあり、

 

フォーリナーのクラスカードデザインはホームズでは?という意見があります。

 

そう、ですよね?あれね?

 

最近実装された中国の美女のせいで私揺れてるんですが、あれホームズですよね?

 

どっちみち、彼が二転三転しするのは間違いないでしょう。

 

カルデアの者に警戒されているのは、おそらく彼とダ・ヴィンチちゃんなのでしょうから。

 

 

くっそへたくそな考察をかましましたが、私は元気です。

 

次回は、そうですねえ、クリスマスです。

 

カルデアのマスターのクリスマスについてです。こうご期待!



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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #5

カルデアにはそれぞれの部屋以外に談話室、というものも勿論存在している。

大抵は六~七人が座れるような、そこそこの広さのもので、大人数のそれこそ宴でもやるような広さはない。

英雄(彼ら)にとっては些事なのであろうが。

職員はともかくとして、英雄(彼ら)は片付けというものを知らない輩も多い。

英雄(彼ら)と職員の間で、ルール―――――要は片付けろという事なのだが―――――が設けられたのは最近のことだった。

そのおかげか、職員たちもちらほらと利用する事が多くなっていった。

 

かくいう自分は、というと。

利用する殆どを私室の代わりにしていた。

午後の三時ほどになると大多数が食堂に集まるため、談話室が空いていることが多いから、だった。

 

「……ナニコレ」

適当に入った、六人掛けの談話室に恐ろしい程の洋菓子の山があった。

自分も嗜みこそするが、これほどの量は見たことがない。

つまるところ、誰かしらがここを予約しているということである。

「つーことは、誰か来るのか。……帰ろ」

戻ってこられる前に立ち去る方がお互いのため、そう思っていたのに。

 

「きゃあっ」

「うわっ」

自動ドアが急に開き、危うく誰かとぶつかりそうになる。

「ごめんあそばせ、職員さん。貴方もこの部屋に御用?」

「いいえ、間違えただけですよ―――――王妃サマ」

「まぁ!王妃だなんて、間違ってはいないけれど、ここではマリーと呼んで頂戴な」

 

フランス王妃、マリー・アントワネット。

音楽家のアマデウス・モーツァルトに求婚される程の美しさを持ち、フランスとオーストリアの国交のため、幼いながら未来のルイ16世に嫁いだ。

民を愛し、国を愛し、子を愛し、人を愛した、フランスに燦然と輝く白百合の花。

最後こそ断頭台の露と消えたが、その美しさは英霊になった後も変わりはしない。

 

「分かりました、マリー。……えぇと、それではこれで」

「あー、悪いけどオタク、どけてもらえる?」

「え、あ、ああすまない、ロビンフッド」

「分かってもらえればいいんですけどねっ、と」

漸く出られると思った矢先にこれである。

後ろにロビンフッドが立っていたのに気が付かなかった。

 

ドルイド、または森の狩人。

イングランド王、ジョン失地王の時代の義賊。ロビン・フッド。

森に住み、村の人々を愛せずとも、村の生活を愛し、守らんとした狩人。

死に瀕し、放った矢が落ちた場所―――――すなわち、イチイの木に葬られた、ロビン・フッドたる“誰か”。

あくまでも、ロビン・フッドたるというだけで、彼は複数いる内の一人、ということらしい。

 

……つまるところ、フランスの王妃がイギリスの一般人、それも義賊を供にしているという、ちんぷんかんぷんな状況になっているのである。

「えぇと、職員さん。職員さんはこの後お暇かしら?」

「え、あ、ま、まぁ」

元々資料やらレポートやらの整理をしたかっただけなので、暇かと云われれば暇である。

「なら、ちょっとしたものではあるけれど、お茶会に参加して頂きたいの!」

 

これがちょっとした、とは流石フランスの王妃である。

輝かんばかりの瞳を向けてくるマリーから逃げる様に、ロビンフッドに視線を投げる。

ロビンフッドはチラリと視線を合わせた後、目を伏せやれやれと苦笑した。

……どうやら、参加した方が吉、らしい。

 

「……えぇ、いいですよ。丁度、休憩したいと思っていたので」

「本当?うれしいわ、すぐに用意するわね!」

「いや、自分で」

「いいの、いいの、座ってらして。私こういうことをするの、意外と好きなの。だから、座っていらして!」

と、マリーは嬉々として支度を始めた。カップ、サーバー、茶漉し。

非常に手際よくこなしていく。

王妃であったのにも関わらずこういったことをこなせるのはひとえに、彼女の性質によるものだろう。

「はい、どうぞ。ああ、ロビンのはこっちね」

「はいはい、頂きますよ」

それぞれがカップを持ち、誰からともなく。

「頂きます」

琥珀色の、よい匂いの紅茶を口に含んだ。

 

鮮やかな琥珀色と、それ以上のインパクトを与える華やかな香り。

少しの砂糖の甘味も、それをより際立たせていた。

「これは」

「こりゃあ、イギリスのものでも日本のものでもないですね。どこのです?」

流石イギリス人、紅茶の違いがよく分かる事分かる事。

「やっぱりお分かりになるのね!」

マリーは嬉しそうに、頬を少し赤らめた。

 

マリー曰く。

「アマデウスはどれも同じというし、サンソンは恐縮して来てくださらないの」

これはひどい、何が酷いとはいえないが、これはひどい。

 

「今日の茶葉はフランスの二ナス―――――生前、私が良く飲んでいた茶葉なの」

「ひえ」

危うく紅茶を零しそうになった。

フランスの場合、イギリスとは違って日常的に飲まれるのはコーヒーだ。

嗜好品としているフランスのものは、日常的に茶を嗜む日本のものとは違い安価ではない。

それが、マリー・アントワネット――――フランスの王妃が愛飲していた茶葉ともなれば、我々一般人からすれば目玉が飛び出る程の値段でも可笑しくない。

「一体どこでこの茶葉を?」

サーヴァントも利用できる共用の茶葉類にそんな大それた高級品はない。

レイシフト先の物は持ち帰る際に逐一報告される物だし、現代にレイシフト、なんて聞いたことがない。

 

「フランス出身の職員の方がいらっしゃって、紅茶の事でお話が合ったの!それで少しだけだけれど、分けて頂いたの」

フランス出身というと、ムニエルあたりだろうか。

彼ならサーヴァントに対し友好的な方だし、フランス出身ともなれば喜んで協力するだろう。

だが彼に――――ムニエルにそんな趣味があっただろうか。

 

思い出そうと頭を捻っていると、顔が自然と険しくなっていたのかマリーが心配そうに此方を見ていた。

「御口に……合わなかったかしら?」

「い、いえ!そんなことはないですよ、非常に美味しいです」

「そう?よかった、心配していたの」

イギリスの方は、茶葉に厳しいと伺っていたから―――――とマリーは言った。

どうやら、自分はイギリス人だと思われていたらしい。

「あの、お聞きしてもよろしいですか」

「えぇ、何かしら?」

「どうして、私を誘ったのですか」

ただの一般職員である自分は、サーヴァントと関わることは本来少ない。

やるべきは書類整理にデスクワーク。

あの事件(賢王問答)以来それは崩されつつあるが。

 

「貴方が、現在()を生きている人だから―――――というのは、理由にならないかしら。そうね、私、いつもはマスターとお茶会をしているの」

マリーはカップをソーサーにおいて、鮮やかな琥珀色の水面を見つめた。

 

「マスターはいつも美味しいって言ってくれるし、貴方達のお話をいつも楽しそうに話してくれるの。お祝いの話、ご飯の話、レイシフトの話――――――本当に沢山、話してくれるの」

微笑みながら、マリーは再び紅茶を口にした。

「私も、それはうれしいの。でも、マスターは自分の話はなさらないの。ひとつも、ひとつもよ?―――――だから、貴方(職員さん)から聞いてみたかったの。……ご迷惑だったかしら」

 

彼女が、あまりにも困った顔をするものだから。

「……いいえ。私の主観――――少ないものですが、それでも良ければお話しますよ」

「本当?うれしいわ!――――あ、こちらをお食べになって!とっても美味しいのよ!」

「クグロフですね、頂きます」

「えぇ、えぇ!沢山お食べになって!」

彼女は嬉しそうに、クグロフ(それ)を皿に盛った。

これが“マリー・アントワネット(彼女)”が“フランス王妃(彼女)”たりえた、生来の性質なのだろう。

たったひとりの、藤丸立香(マスター)を知りたい。

藤丸立香(マスター)に、少しでも近づきたい、という愛が、感情が、である。

 

「じゃ、俺はここらで……」

ロビンフッドが、カップをおいて立ち上がろうとした。

「あら、どこにお行きになるの?」

お暇だったのでは?とマリーはキラキラと変わらず輝く目で問いかけた。

ロビンフッドは、う、と小さくうめき声をあげると前とは反対に、逃げる様に視線をこちらに投げてきた。

「……美味しいですねー」

自分は、笑顔で無視した。

「あー……スイマセン、オカワリイタダケマスカ」

「ええ、もちろん!あ、こちらも―――――」

 

結局マリーに押し負けたロビンフッドは、この不可思議なお茶会が終わるまで、王妃から逃げることは叶わなかったのであった―――――――。

 

 



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