時に人は嫌悪を抱く。人は何に対しても嫌悪を抱く。環境、うるさくなく蝉、ゴミを食い散らかす鴉、同じ人、妖怪。自分の害になるものは何でも嫌悪する。そして、嫌悪を他者と共有しようとする。共有された嫌悪はやがて悪意に変わり嫌悪するものを無くしてしまおうとする。人は何時だってそうであった。人は嫌悪という感情を無くせなかった。嫌悪は悪意を生み、悪意は破壊を生む。そんな嫌悪によって消えていったもの。人の意志で生まれ、人の意思で消えた哀しきモノ。嫌悪され、消えていったものそれらは何処へ行く。
日曜日はいい。日曜日は目覚まし時計のなる音も時間に厳しい学校も気にする必要はない。ゆったりとした時間が流れている。そんな日曜日の朝、俺の目覚めは最悪だった。悪夢に叩き起こされたのだ。内容は覚えていない。まあ、その方が有難い。時計を見ると5時であった。まだ寝るにも起きるにも中途半端な時間だった。仕方がないので近くのコンビニまで行く事にした。俺が住んでいるアパートの向かいにコンビニはあった。季節は冬。まだ、辺りは暗い。はずだった。煌々とそれは光っていた。それはまるで剣のような形をしていた。それの中心をよく見ると金髪の少女が一人それを持つように立っていた。あぁ、あれか。俺はまだ夢を見ているのか。そう思った。瞬間、それは俺の家の向こう側のコンビニをなぎ払った。ボガァという音がした。コンビニは跡形もなかった。俺はゆっくりとしかし、しっかりとアパートの自室に戻った。それはもう消えたようだった。俺はもう一度寝た。目が覚めたらもう12時だった。酷く腹が空いている。無造作に冷蔵庫を開ける。何も入っていない。仕方がない、コンビニに行こう。ドアを開けて外に出る。何だか騒がしい。外を見るとパトカーが数台止まっている。フラフラと出ていく。コンビニはなかった。何故?脳が理解を拒む。そうか、これが俗に言う正夢か。そうか、そうか。こんなこと今までなかったから驚いてしまった。そんなことより腹が減った。近くのファミレスにでも行くとしよう。あぁ、なんて日だ。折角の日曜日も後半日しかない。満喫しなければ。ファミレスに行ったあと何処かに出かけよう。
実験は成功した。モルモット一号は可哀想だが仕方がない。たかだか、一人の幸せなんて安いものだ。いや、安いのだろうか。人でもない私が人の価値なんて語る資格はないか。なら、人でもない私が人の幸せを気にする必要もないだろう。ゴミ箱に捨てられた私達が。
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狂気
よりにもよって日曜日という日に呼び出された。異変というのはどうして、もっとこう面倒くさい会議の時に起こってくれないのだろうか。一体私は何故研究所に勤めているのだろう。自分の好きな事を研究するなら研究所にいるよりも自分一人でやった方が楽だ。しかし、社会は非情である。自分一人で研究する資金など何処にもなかった。だから、研究所の所長に言われれば命令通りに動かねばならない。まあ、その代わり給料がでるのだが。今回の調査は並々ならぬものらしい。何でもコンビニが突如消滅したのである。手掛かりは消滅する前後に凄まじいエネルギーが感知された事だけである。なんと面倒くさそうなことだろう。取り敢えず、目撃者でも探すとするか。
結局日曜日はファミレスに行って終わってしまった。月曜日からはまた学校へ通う日々である。大したことはないが面倒くさい。それになんだか頭が痛いことが多い。あれか、病気か。まだ、9時だがもう寝てしまうか。しかし、その考えは破られた。
ピンポーン
チャイムが鳴った。こんな、夜に一体誰だろうか。警戒しながら扉を半分だけ開ける。見た感じ、健康そうには見えない男が立っていた。
「どちら様でしょうか?」
「△△研究所の×× ○○です。伺いたい事がありまして参りました。」
△△研究所。聞いたこともない名前だ。一体、何を聞こうというのだ。私は早く寝たいのだ。
「今日は忙しいのでまた日を改めてくれませんかね。」
咄嗟に出た言葉だった。帰ってくれればそれでいい。
「…ち」
舌打ちが聞こえた気がした。刹那。私の意識は何処か遠くへ行ってしまった。
私は玄関にいた。目の前には赤い水たまりがあった。少し泥が浮かんでいて汚い。掃除をしなきゃ。そう思った。どこからか、声が聞こえてきた。
「私はあなたの中にいるの。」
掃除をするには雑巾がいる。雑巾はどこだっけ。
「私はやがてあなたから羽化するの。」
雑巾はタンスの3番目の引き出しの中だ。取りに行こう。
「あなただって見えてたくせに。」
バケツもいる。バケツは手洗いにあった。
「あなたにだって私は見えてたんでしょう?初めから。」
あぁ、包丁、包丁もいる。
「目を逸らして。」
包丁?なんで、ホウチョウ?包丁!ホウチョウはいる。
「まあ、もう関係ないことかな。」
あハァハハッ、赤が、片付けていた赤が溢れてくる。赤が、赤が!
最悪の目覚めであったことは記憶している。気づいたら瓦礫と真っ赤であった。私の中で一体何が起こっているのか?恐ろしい何かが私をとり殺そうとしているのか?考えても仕方ないので私は近くの高層ビルに入った。人々は叫び声を上げる。気にせず、屋上まで向かう。もう、考えるのは面倒くさい。しばらく眠っていたい。そうして、私はビルから飛び降りた。
どことも知れぬ場所でドアノブみたいな帽子をかぶった金髪の少女は呟く。
「どうあがいても、無駄ですわ。」
ヒタリ、ヒタリ、シュルリ、シュルリ…
彼女の周りに蠢くモノがいる。彼女はそれを気にもとめない。
「くだらない…」
彼女の愚痴は何処かへ消えていった。
きっと次はもっと早く投稿するでしょう
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