とある吸血鬼と一方通行 (reima1341)
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序章
第零話 プロローグ


処女作になります。誤字脱字等あるかと思いますが暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。よろしくお願いしますm(_ _)m@ペコ


プロローグ

「はンッ わかッてンだよ… こんな人間のクズがァ今更助けよォだなンてバカバカしいってことぐらいよォ.......全く…甘過ぎるんだよォ…自分でも虫唾が走る.......」

 

頭からおびただしい量の血を流しながら少年は語る。

 

白い髪。白い肌。紅い目。傍から見たら男性とも女性とも見て取れる程の細い華奢な身体。

 

そう、彼は学園都市に7人しか居ない超能力者【LEVEL5】その中でも最強である第一位 一方通行(アクセラレータ) である。

 

彼の能力は【ベクトル操作】である。

運動量・熱量・光・電気量など、あらゆる種類の力の向き(ベクトル)を観測し、 一方通行に触れたベクトルを自由に変換する。

それが学園都市最強の能力である。

 

能力の基本的な使用法にして、一方通行を「最強」足らしめる主要因。

『反射』(ベクトルの反転)により、自身に加えられた攻撃を自動的かつ正確に180度跳ね返してしまう。

力の大小や種類を問わず本人が認可していないベクトルは全て反転し、「反射できる限界」は存在しない。

 

そんな彼が頭に銃弾を受け、満身創痍になっている。

本来ならばそんなことは起こるはずがない。

 

何故か.......

 

冒頭の彼の言葉を思い出して欲しい。

そう、彼は助けたのだ.......

今まで1万人以上も殺してきたクローン『妹達』を。

 

妹達(シスターズ)とは簡単に言えばとある実験の為に第三位 御坂美琴の遺伝子から造られた。クローン人間である。

彼は実験の過程でその妹達を10,031体も殺してきたのだ。

 

だが彼は助けたのだ。そして守っている。20001号通称『打ち止め』(ラストオーダー)を。

 

一方通行「…けどよォ……このガキは関係ないだろ。

確かに俺はァ 1万もの妹達をぶっ殺した……

だからってなァ、残る1万を見殺しにしていいハズがねェんだァ…… アァ…綺麗事だってのは分かってる…でも違うんだよォ…

例え俺達がどれほどのクズでも…どんな理由を並べても…」

 

一方通行は吠える。

 

一方通行「それでコイツが殺されていいことにはならねェだろがァ!!」

一方通行は研究員に殴りかかる。

 

一方通行『クソォ……意識がァ……』フラッ

 

ドサッ……

 

一方通行「死ぬのかァ…俺は…… ハッ クソッタレの悪党にャお似合いの末路だぜ」

 

 

???「…………………ぇ……ない…」

 

???「…君はまだ死なせない。やってもらうことがあるからね。」

 

一方通行『ダレだァ…クソッタレがァ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「私の駒として……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プツッ

 

そして一方通行は深い眠りに堕ちた。




最後まで読んでいただきありがとうございます!
初めて書かせていただきました。
できるだけ頑張りますが、投稿ペースが遅いかもしれません。
これからもよろしくお願いします!


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第一話 目覚め

前回の続きです。
今回はついに一方通行が幻想入りします。
処女作だけあってあまり慣れていませんが、何とか頑張ってみます。
これからもよろしくお願いします!


一方通行は水の中に漂っている。

 

一方通行「どこだァ?ここは・・・・・」

 

???「実験開始まであと30秒です。準備は整っていますか?と、ミサカはライフルを構えます。」カチャ

 

一方通行「あァ?」クルッ

 

10031号「ミサカのシリアルナンバーは10031号です。それでは実験を開始します。」

 

ミサカと名乗った少女はライフルを一方通行へ向け発射する。

わけのわからなかった一方通行は反射の設定を変えることができなかった。

発射された銃弾はすべてミサカへと跳ね返っていく。

 

ズドン!!!

 

一方通行「・・・はァ?」

 

ミサカ「・・・ぁ・・・ぅ・・・」

 

一方通行「オイ!!なンで・・・実験は凍結したはずじゃァ・・・・・」

 

???「・・・なんで」

 

一方通行「あァ・・・・・・ッッ!!」

 

一方通行は驚愕した。振り向いた先には自分が今まで殺してきた『妹達』の屍が10030体もあるのだ。そしていま1体追加された。『妹達』の虚ろな目は全て一方通行に向いている。

 

10012号「なんで・・・ミサカは殺されなくてはならなかったのでしょう?」

 

一方通行「・・・実験の為だ・・・・やりたくてやったンじゃねェ」

 

03656号「あなたは楽しそうにミサカを殺していたではありませんか?」

 

一方通行「違う・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・」

 

01244号「何が違うのですか?殺したのはあなたですよ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前が殺した。」

オマエガコロシタ オマエガコロシタ オマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタオマエガコロシタ

 

一方通行「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

ゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポ・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「」ハッ!

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・どこだァ?」

 

一方通行は見知らぬ天井を眺めながらそっと呟いた。

見渡す限りは一昔前の和室らしい。棚に薬が置いてあることから医院であることがわかる。少なくとも学園都市ではないだろう。

 

一方通行(いくら外の技術が10年遅れているとはいえイマドキ電気がない家なンてあるのかァ?)ムクッ

 

一方通行はふと額に手を当ててみる。包帯が巻かれている。

しばらくして彼は驚くことに気づいた。脳が修復されているのだ。

 

一方通行(ありえねェ 脳が・・・)

 

彼は研究者の銃弾を額に喰らってしまい、本来ならば右半身麻痺、言語能力と演算能力を失っているハズだ。それを修復してしまう技術は学園都市にすら存在しない。だったらなぜ一方通行は無事なのか・・・

 

一方通行(能力は・・・使えるな

もしかすると学園都市は脳を修復する技術を持ち合わせてたのかもしれねェなァ・・・

そして、混乱を防ぐために外部で治療させた・・・そう考えるのが妥当だな・・・

・・・・・・・・・・・・・ここにいるのは危険だ)スクッ

 

???「病室から物音がする・・・目が覚めたのかな?)スタスタ

 

???「意識が戻りましたか?・・・っていない」(´・ω・`)

 

その頃一方通行は竹林を歩いていた。ここは迷いの竹林と呼ばれ自力で脱出することはかなわない。

案の定一方通行は迷っていた。歩けど歩けど出口が見えない。次第に彼はイライラしていき、もう竹林を吹き飛ばそうかなとか考えていたが・・・

 

一方通行(空飛びャいいンじゃねえかァ)ダァン!

 

彼は風のベクトルを操作して背中に小さな竜巻を四本造って飛んで行った。

彼には目的地は無いがとりあえず空からここがどこか位置を把握しようとした。

さっきは竹林で見えなかったが空が異様に紅い。夕暮れとかそんなレベルではない。

 

一方通行「やっぱここが地獄かァ・・・ケヶッ にしちゃア俺はまだ何の罰も受けちゃァいねェがなァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとある神社。鳥居には『博麗神社』と書いてある。

神社であるためもちろん巫女はいるだろう。しかしその巫女は神に仕えている者とは思えないほどダラダラしている。そんな彼女も一方通行と同じく紅くなった空を眺めていた。

彼女の名は『博麗霊夢』博麗神社の巫女にして『幻想郷』に発生する事件『異変』の解決を生業としている。しかし彼女はすごく面倒くさそうだ。

 

霊夢「紅い空とはねぇ・・・しっかしよく妖怪たちは懲りずに異変起こすわよねー

しかも一瞬だけど博麗大結界も緩んでいたし・・・ただの異変じゃなさそうね・・・面倒くさい。」スクッ

 

そういいながらも彼女は重い腰を上げ空へと飛び立つ。異変解決のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は霧で覆われた湖の上空を飛んでいた。するとほとりに三人の子供がいるのを見つけた。

 

一方通行(ちょうどいい、あのガキどもからここの情報を聞き出すか。)

 

彼は子供たちの後ろに降り立ち声をかけた。

 

一方通行「オイ、ガキども ちょっと聞きてェことあンだが」

 

チルノ「ガキじゃないよ!あたいにはチルノってりっぱななまえがあるんだよ!!」

 

大妖精「チルノちゃん・・・いきなり喧嘩腰はよくないよ・・・あっ私は大妖精です。」

 

一方通行「大妖精ィ?それがオマエの名前かァ?」

 

大妖精「はっはい!!」ビクッ

 

ルーミア「ルーミアなのかー」

 

一方通行「それで、聞きてェンだが・・・ここはどこだァ?」

 

チルノ「ここはげんそーきょーだよ!」

 

一方通行「げんそーきょーォ?」ハァ?

 

大妖精「幻想郷です。外の世界で忘れさられた物や人間、妖怪などの様々な種族が暮らす最後の楽園です。こんな事も知らないとは・・・外来人の方ですか?」

 

一方通行「外来人?」

 

大妖精「外の世界から来た方の方のことを総称してそう呼んでいます。・・・あなたはどこからいらしたのですか?」

 

一方通行「学園都市t「つまりはさーその人外来人ってことでしょ?」

 

一方通行「あァ?」

 

ルーミア「じゃあさー 博麗神社の保護対象外ってことだよねー・・・なら・・・・・食べちゃってもいいよね?」ニカッ

 

一方通行「はァ?何を食べるってェ?」

 

ルーミア「?もちろんあなたのことだけど?生きたまま内臓を引きずり出して新鮮な状態で・・・もう我慢できない!いただきまーす!!!」ヒュン

 

一方通行「ギャアハハハハハハ!!!!この俺を食うってかァ!?面白ェなァオマエェ!やれるものならやってみやがれェ!!まァ最もォそンな時間を与えるつもりはねェがなァ!!!!」ダァン!!

 

大妖精「・・・チルノちゃん、止めたほうがいいんじゃ・・・」

 

チルノ「大ちゃん!ルーちゃんはひとくいようかいなんだよ!ふだんがまんしてるからがいらいじんぐらいたべさせてあげようよ!!」

 

大妖精「・・・でも」

 

一方通行は地面を強く蹴るとルーミアへあり得ない速度で一直線に突進した。

 

ルーミア(このスピード人間じゃない!?・・・人間の匂いがするから人間のハズ・・・)

 

一方通行「考え事する暇があるのかァ!?余裕だなァオイ!!」

 

ルーミア「当たり前じゃん。人間ごとき余裕に決まっているでしょ?」カッ

 

ルーミアは弾幕を張った。確実に一方通行を殺すために四方八方避けられる隙間を与えないように。

一方通行に弾幕が届くまであと数センチ。ルーミアは勝利を確信した。

 

ルーミア「勝った!」「誰に勝ったってェ?」

 

一方通行はルーミアの後ろにいた。

ルーミア「ッ!」(なんで・・・さっきまで正面にいたのに)

 

一方通行「終わりだァ・・・落ちろォ」スッ

 

ブォン!

 

一方通行「はァ!?」(なんだァ急に暗くなりやがった)

 

この闇はルーミアが生み出したものであり、彼女の能力『闇を操る程度の能力』によるものだ。

 

ルーミア(この闇の中ではアイツも動けないハズ

今のうちに弾幕を張ってあの白いのを倒す!)カッ

 

弾幕が一方通行に迫っていく。彼は微動だにせずにポケットに手を突っ込んだままだ。

 

ルーミア(よしっ!気づいてない!今度こそ勝った!)

 

ギュイン!!!!

 

ルーミア「なんで!?弾幕がすべて跳ね返って!?・・・」

 

一方通行「アテが外れたかァ?」

 

一方通行はポケットから左手を伸ばし能力を使った。

 

ブワッ!!!!

 

闇がすべてなくなった。

ルーミアは驚きのあまりすぐに動くことができなかった。

目の前に一方通行がいるのに・・・

 

ルーミア「ハッ!?」ガシッ!

 

ルーミアは胸ぐらをつかまれた。一方通行の凶悪な顔が目の前に迫る。

そして最恐の悪党は口を開く

 

一方通行「オマエの能力のタネは割れてンだよォ・・・光だろォ?

半径200mの光を奪うことによって闇を生成する・・・・・・

そして本命は動けない相手に最大火力の弾幕?とやらを打ち込むことォ・・・」ニタァ

 

ルーミア「手を・・・放せ・・・」

 

一方通行「あァいいぜェ!!!!!」ギュイン

 

ルーミア「かはっ・・・」ドンッ

 

一方通行「よくもまァこんなしょうもないもンで俺を殺せると思ったなァ?・・・

さァこれでもまだやr「ダメッ!!!!」・・・あァ?」

 

チルノ・大妖精「それ以上やるなら私(あたい)が相手になる!!!!」ガタガタ

 

一方通行「・・・・・・」スッ...パチン

 

チルノ・大妖精「ぁ・・・・・ぅ・・・・」ペタン

 

一方通行は両手を二人の妖精へ伸ばしデコピンした。

 

一方通行「命張る程のヤツならこンなことする前に止めるべきだったろ・・・」スタスタ

 

一方通行は霧の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗霊夢は霧の湖の上空を飛んでいた。この湖の向こうに今回の異変の犯人がいる。

そう、突き止めたのだ。青い空を紅く染め上げた犯人を。

 

霊夢「この霧の向こうに突然現れた不気味な館・・・ね。犯人はそこに居るっていう烏天狗の情報はホントっぽいかも」

 

ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!

 

霊夢「何!?(この音,ほとりの方から??とにかく行かないと!犯人かもしれないし・・・)ビュオ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「なンだ?高速でナニかが近づいてくる。」

 

ビュオッ!!!!!!!!!!!!!

 

一方通行「チッ!!」

 

???「あなたね!この空を紅く変えたのは!!」

 

一方通行「紅く変えただァ?ナニ言ってやがる?」クルッ

 

霊夢「あなたを倒して解決させてもらうわ!この異変!!」

 

一方通行「わけわかンねェがァ・・・ケンカ売ってンなら買ってやるぜェ!!!!」




今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
二作目とはいえ処女作である為あまりうまく書けていないように思えます。
誤字脱字等あれば報告よろしくお願いいたします。
今後ともよろしくお願いします。

  次回・   学園都市最強 対 博麗の巫女

次回もお楽しみに!!


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第二話 学園都市最強 対 博麗の巫女

プロローグ、第一話に引き続き読んでいただき誠にありがとうございます!
今回はタイトルにある通り一方通行と霊夢が戦うお話になります!
前作の終わりにあった通り一方通行は大暴れしてしまったために霊夢に濡れ衣をきせられてしまいました。一方通行自身は何のことやらわかっていないようですが、とりあえず売られたケンカを買っただけって感じです。
それでは本編スタートです。


一方通行「なンだ?高速でナニかが近づいてくる。」

 

ビュオッ!!!!!!!!!!!!!

 

一方通行「チッ!!」

 

???「あなたね!この空を紅く変えたのは!!」

 

一方通行「紅く変えただァ?ナニ言ってやがる?」クルッ

 

霊夢「私は博麗の巫女 博麗霊夢よ!あなたを倒して解決させてもらうわ!この異変!!」

 

一方通行「わけわかンねェがァ・・・ケンカ売ってンなら買ってやるぜェ!!!!」

 

唐突に表れた紅白の少女に白髪の少年は一瞬戸惑いを見せる。

しかし、売られたケンカは倍の値段で買う。それが彼の『悪党の美学』の一つである。

 

だが、彼には一つ懸念があった。この世界の者たちは空を飛べることはさっきの戦いで既に認識しているが、あの少女たちが見せた弾幕の数々や闇など非科学的な力を持っていることである。一体どんな仕組みで能力を発動させているのか一方通行には全くわからない。ルーミアに関しては能力に直接触れることにより解析を行った結果、力の出どころは不明だが使用されている物質にベクトルが存在していたため掌握し操作することができた。しかし今回はどうだろうか。先ほどの力とは全く違う力が霊夢の周りを流れている。しかも登場から察するに相当の使い手だろう。

 

短時間の間に一方通行はこれだけのことを把握していた。

 

霊夢「しっかしまあ紅い空なんか作って一体何がしたいの?」

 

一方通行「だァかァらァァァァァァァ・・・知らねェし関係ねェッて言ってンだろうがよォ!!!!!」

 

霊夢「白々しいにも程があるわよ。見たところ外来人だし・・・どうせ自分が住みやすいように幻想郷を変えようって魂胆でしょ?」

 

一方通行「話聞かねェヤツだなァオマエ。仕方ねェから一旦強制的に落ち着かせてやるよ!!」ダァン!!

 

霊夢「めんどくさい言い訳してくれなくて助かるわ。とりあえずあなたを撃墜して神社に帰るわ」ヒュン

 

一方通行と霊夢はお互い正面から突進していく。先手を打ったのは一方通行だ。

彼は白い手を霊夢へと伸ばすが、その手は空中を切り裂いていた。

 

霊夢「なるほど、ただの人間ではないとは思っていたけどまさか能力持ちだとはね」

 

一方通行「あァ・・・だがオマエラの持つ能力とはかなり違うがなァ・・・・・・

俺はこンな非科学的な能力は初めて見た」

 

霊夢「科学とかよくわかんないけど私の能力は『空を飛ぶ程度の能力』よ。」

 

一方通行「ご丁寧にありがとよォ。俺は学園都市最強の超能力者(LEVEL5)一方通行(アクセラレータ)だァ。能力は運動量、熱量、摩擦量、電気量・・・あらゆるベクトルを操る能力だァ」

 

霊夢「アクセラレータ?変な名前ね・・・あなた日本人でしょ?」

 

一方通行「アクセラレータは能力の名前だァ・・・名前なンて忘れちまったァ」

 

霊夢「そしてぶくとる?聞いたこともないわね」

 

一方通行「ベクトル操作だァ。オマエ達の言い方に置き換えれば・・・そォだな・・・『あらゆる力の向きを操る程度の能力』ッてのはどうだァ」

 

霊夢「なるほど、わかりやすくて助かるわ」

 

一方通行「話は終わりだァ・・・さァたっぷり楽しもうぜェェ!!」ダァン!!

 

一方通行は地面に足を叩きつけた。すると周辺に生えていた木が槍のように霊夢へと向かっていった。

 

霊夢「甘いわ」クルッ

 

霊夢は空中で身を翻し一方通行に弾幕を打ち込んだ。

 

ギュイン!!!!

 

霊夢「なっ!!」

 

一方通行「だァかァらァ言ったろ。力の向きを操るってなァ(反射がギリギリ間に合った!アブねェ・・・弾幕の軌道は逸らせるが完全に掌握できねェ。これ以上の攻撃は反射できねェなァ多分・・・)

 

霊夢「さすが最強を名乗るだけはわね・・・ならこれはどうかしら!」

 

霊符「夢想封印」

 

霊夢の放った札が一つの陰陽玉を築き、それが散って無数の攻撃となる。

一方通行は避け続けるも自動追尾してくるため逃げきれない。

終いに囲まれて連撃を受けてしまう。

 

ドォン ガァン ダァン ドォン・・・・・・・・

 

一方通行「グッ! がァ!! ゴハァ!? ギッ!!」バキドゴッ

 

フォン!!

 

霊夢「消えた!?」

 

一方通行(あの三下に殴られたあとでよかったぜェ・・・おかげで気絶せずに済んだ・・・これが根性ってヤツかァクソッタレがァ)

 

一方通行(さっきのルーミアってガキの技の応用だが、自分に当たってる光をすべて反射することによって姿を隠す。上出来じゃねェかァ)フッ

 

一方通行(一回だァ一回だけでもヤツに触れることができれば・・・)スッ

 

一方通行は霊夢に近づいていく・・・・・・・・・・・・・・そして触れた。

 

霊夢「キャッ!?」ビクッ

 

一方通行(なンだこれは!?ベクトルが存在しねぇだとォ!?いや・・・そンなこたァありえねェ!

未知のエネルギーだなこれはァ・・・さっさと公式を見つけ出して・・「なぁにすんのよっ」ドゴォ

 

一方通行「ガハァ!?・・・テメエ・・・・・・なァにしやがる」ギロッ ハナヂブー

 

霊夢「それはこっちのセリフよぉ!なんで触ってくるのよ!!意味わかんない!!///」カァァァ

 

一方通行「知るかボケェ!!触れなきャ解析できねェだろうがァ!!」

 

霊夢「うるさい!!このバカぁ!!!!」バァン

 

一方通行「うォッ!アブねェ!!」チラッ...ハッ

 

ビュオッ!!!!

 

霊夢「あっ!待ちなさい!!」

 

一方通行(なンであのガキ出てきやがったァ!!)

 

霊夢が発射した弾幕が地上を歩いていた妖精、大妖精に迫っていた。

一方通行は即座に気づき彼女を守ろうとしている。

彼の『悪党の美学』にはカタギには手を出さないし出させないというものがある。今、彼は自分の信念に本能的に従い行動している。

 

一方通行「大妖精ィ!!!」

 

大妖精「はい!?ってえぇ!!??」ガシッ

 

一方通行は今、大妖精に覆い被さる形で彼女を抱きしめている。

 

大妖精(え?え?どゆこと?そゆことなの?///)ドキッ

 

ガガガガガガガガガガガガアァァァァァァァァァァァン!!!!

 

一方通行「」シュゥゥゥ

 

大妖精「・・・あの・・・お兄さん・・・」ドキドキ

 

ポタッ・・・ポタッ・・・

 

大妖精「・・・ぇ?」

 

キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!

 

大妖精の上には額から血を流している一方通行がいた。

 

霊夢「そんな・・・うそ・・・」オロオロ

 

一方通行(濡れ衣を着せられた上にこンなことになっちまうとはなァ・・・不幸だァ・・・)

 

一方通行は意識から手を離した。

 




今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
最後に上条さんの「不幸だ・・・」が一方通行さんの口からこぼれ出ましたね(口からはこぼれてない)
さて一方通行はどうなってしまうのか・・・濡れ衣を訂正できるのか・・・

次回・第三話 紅霧異変  
 
                  次回もよろしくお願いします!


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第一章 紅霧異変
第三話 紅霧異変


今作も見ていただきありがとうございます!!
今回はついに本格的に異変解決に乗り出すお話です。
では、本編開始です。


一方通行は額から血を流して倒れた。

 

しかし霊夢の攻撃は一方通行をそこまで痛めつける威力ではなかったのだ。

 

つまり彼はこの戦闘で負ったダメージでこうなった訳ではない。

研究者に受けた傷。それが開いたのだ。彼は本来五日は絶対安静にしなくてはならなかったのだ。しかし目覚めて数分で出歩き、能力を使ったのだ。彼の能力は脳で演算をしてベクトルを操作する。演算をしてる最中は彼の脳内の血流は普段の二倍近く早く動いてるのだ。今までの戦闘では全力の二割程度で抑えて戦闘していたため、何とかなっていたが、今回大妖精を助けるために本気で能力を使ってしまったのだ。

 

結果、脳の血管が破れてしまい出血してしまったのだ。幸い脳内部からは出血しなかったため、表面の傷さえ塞げば大事には至らない。

 

だから、すぐに一方通行は意識を取り戻した。

 

一方通行「・・・ン・・・・アァ?・・・」パチッ

 

大妖精「よかった・・・!目を覚ました!」ホッ

 

大妖精「霊夢さーん!外来人さんが目を覚ましたあ!!」

 

一方通行「・・・俺の名前は・・・外来人なンかじゃねェ・・・」

 

霊夢「目覚めたのね!?・・・ごめんなさい私が放った弾幕が・・・」

 

一方通行「・・・元はオマエが俺を沈める為に攻撃したもんだろ」

 

霊夢「で・・でも・・・なんで異変を起こした張本人が身を張って大妖精を守ったの?」

 

一方通行「簡単なことだァ・・・カタギには手を出さねェ。それが『悪党の美学』ってもンだろうがァ・・・。あと、俺はこの異変とやらは起こしていない。」

 

霊夢「え?でもあなたここで大暴れしてたじゃない・・・」

 

一方通行「売られたケンカを買っただけだァ。オマエみたいになァ」

 

霊夢「じゃあ私、勘違いであなたに攻撃してたわけ?」

 

一方通行「そォだ。ただ聞きてェことがあったから尋ねようとしてただけだァ」

 

霊夢「ごめんなさい・・・私てっきり・・・なんてお詫びすれば・・・」

 

一方通行「そォだなァ・・・じゃあ俺の質問に答えろォ。それで許してやる。」

 

霊夢「わかったわ。そんなことでは埋め合わせできるとは思ってないけど。」

 

一方通行「まず、ここはどこだ?学園都市ではねェしそもそも日本なのかァ?さっき会ったガキどもは幻想郷だとか言ってたが・・・そんな地名は聞いた事がねェ」

 

霊夢「そうよ。ここは幻想郷。日本の人里離れた山奥の辺境の地存在するわ。ここには妖怪などの人外のものが多く住んでいるけど、僅かながら人間も住んでいるわ。」

 

一方通行「妖怪だァ?さっきのガキどももそォだってのか?それにいくら山奥とはいえ人口衛星の目をかいくぐることなンてできるわけねェだろォ」

 

霊夢「人口衛星?って何か分からないから置いといて、幻想郷は博麗大結界によって外界と隔離されているから、外からここの存在を確認することはできないし、入ることもかなわないわ。」

 

一方通行「じゃァなンで俺はここに入ることができた?」

 

霊夢「もちろん例外もあるわ。幻想郷には外の世界で忘れられ『幻想になった』ものが集まるの。つまり外の世界で減少した生き物がここに来たり、外の世界で消えつつある道具などが幻想郷に現れることもあるの。」

 

一方通行「俺は忘れられることはねェハズだァ。俺は第一位だからなァ」

 

霊夢「だったら『アイツ』しかいないわね。」

 

一方通行「『アイツ』だァ?」

 

霊夢「『境界を操る程度の能力』を持つ妖怪よ。多分アイツはなんかの意図があってあなたを連れてきたんでしょうねぇ。」

 

一方通行「つまりはその妖怪をぶっ潰せば俺は帰れるってェことだな?」

 

霊夢「多分無理よ。アイツは普段めったに姿を現さないし、おまけにあなたじゃ勝てないわ。」

 

一方通行「上等じゃァねェェェかァ・・・」ニタリ

 

霊夢「私が悪い状況で申し訳ないんだけど私、これから異変を解決しなくちゃならないわ。いつまでも空が紅いままじゃ、気分が悪いからね。」

 

一方通行「やっぱりここの空は元々青だったのかァ?」

 

霊夢「そうよ、悪いけどそろそろ行かせてもらうわね。戻ったらちゃんとお話しましょう。それじゃあね。」ヒュン!

 

霊夢は霧の中へ飛んで行った。

一方通行は特にすることもないのでどうしようかと考えていた。

 

一方通行(暇だしィ、あの巫女を追いかけてみっかなァ?)スクッ

 

一方通行は背中に四本の竜巻を発生させ、霊夢が飛んで行った方向へ飛んで行った。

 

大妖精「私、空気・・・」ポツーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は空を飛んでいた。異変の元凶のもとへ。

 

霊夢(紅い霧はこの湖の中央から出ている。だったらそこに今回の異変の犯人がいるハズね・・・)ヒュオオオオオオオ

 

霊夢「・・・何・・・アレ?」(前来た時にはこんなものなかった・・・)

 

霊夢の目の前には赤いレンガでできた不気味で巨大な館が異様な雰囲気でたたずんでいる。

その建物の時計台付近から紅い霧が出ている。

 

霊夢(・・・間違いないわね)

 

霊夢はその館の門前に降り立った。門には門番が厳格な雰囲気を醸し出して見張って・・・いない。

 

霊夢(寝てるし・・・)ナニコイツ

 

霊夢は門番を無視して館に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢が館に侵入したころ一方通行は館の上空にいた。

 

一方通行(なんだァ?この趣味のわりィ建物はァ・・・)スタッ

 

一方通行は館の門前に降り立った。

霊夢の時は門番は寝ていた・・・しかし今回は起きていた。頭にナイフが刺さっているが・・・

 

美鈴「『紅魔館』へようこそ。私はこの館の門番紅美鈴と申します。申し訳ないですが、ここを通すことはできません。ケガをしたくなかったら素直に帰ることをおすすめしますが・・・」

 

一方通行は美鈴を無視して館に入ろうとする。

 

美鈴「忠告はしましたよ。」スッ

 

美鈴は拳を構えて気を溜めると一瞬で一方通行に殴りかかる。

 

ギュイン!!!!バキバキバキバキ!!!!!

 

美鈴の拳が一方通行に触れた瞬間美鈴の腕がバキバキに折れた。

 

美鈴「ギャアアァァァァァッァァァァァァァァァァァァァァl!!!!」

 

美鈴「」ドサッ

 

美鈴は痛みと出血のショックで気絶してしまった。

一方通行はそのまま進もうとするが・・・

 

一方通行(チッ・・・めンどくせェ)クルッ スタスタ

 

彼は振り返り、美鈴へと歩み寄る。そして彼女の傷口に手を触れ、能力を使った。

周囲に零れた血液をベクトル操作で彼女の体内に戻し、動脈をつないだ。

すると、彼女の傷がすぐに塞がり始めた。

 

一方通行(どォなってンだァ?妖怪の回復力はァ・・・)

 

改めて一方通行は館の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は館の中で妖精メイドを次々に倒していた。

 

霊夢(広すぎるでしょ、この館。外見よりも圧倒的に広い。

まあテキトーに進んでれば何とかなるでしょ。)

 

霊夢は大きな扉の前にたどり着いた。

彼女はためらいなく重い扉を開けて中へはいっていく。

そこは広い空間で本棚がたくさんあり図書館みたいだった。

図書館内を進んでいるうちに空飛ぶ赤髪の女を撃墜した気がしたが、多分気のせいだろう。

 

小悪魔「」チーン

 

霊夢(結構進んだけどなかなか奥までたどり着かないわね。なんか魔力も感じるし・・・

魔法使いがいるのかしら?しかも相当の使い手・・・魔理沙以上ね。)

 

???「あなたね、例の侵入者ってのいうのは。」フッ

 

テレポートでもしたのかそいつは突然霊夢の背後に現れた。

 

霊夢「ッ!」ブン

 

霊夢は慌てて大幣を振るがその攻撃が敵に当たることはない。

振り返った霊夢が見たものは、一見紫色の寝間着を着たニートだ。

片手に分厚い本を持ち空中を浮いている。

彼女からあふれ出す魔力からして大魔法使いの域に達しているだろう。

 

パチュリー「私はこの図書館の管理者・・・司書っていったところかしらね。パチュリー・ノーレッジよ。

よろしく。まあ、覚えていても意味ないだろうけど・・・だって・・・あなたは生きてここを出れないもの。」パサッ

 

パチュリーは本を開く。霊夢は即座にそれが魔導書だと気づき距離をとる。

するとパチュリーの周りに炎の玉が複数現れた。

 

霊夢「あなたが紅い霧を発生させてるの?迷惑だからさっさと消しなさいよ。私はさっさとあの霧をなくして日向ぼっこしたいの。」

 

パチュリー「残念だけどわたしが発生させているわけではないわ。消すことはできないこともないけど、この館の主人は太陽の光が苦手なの。だから無理ね。」

 

霊夢「ならアンタを早く倒してそのご主人様のもとへ行かなきゃいけないわね・・・覚悟しなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は紅魔館のロビーにいた。

目の前には大きな階段が二つあり、それぞれ一つの入り口につながっている。

そして左右にも扉が存在していた。

 

一方通行(御大層な館だなァ・・・この館の持ち主は相当の金持ちみてェだ・・・)

 

一方通行は先へ進もうとする。そして階段へと足をかけようとしたとき一方通行は部屋の入口に戻っていた。一方通行はたいして驚かなかった。学園都市にも似たような能力を持ったやつはいたからだ。

 

一方通行「瞬間移動(テレポーター)ってところかァ?」

 

???「・・・少し違いますわ。」

 

部屋の奥から女の声が聞こえた。

 

???「私の能力は『時を操る程度の能力』です。」フッ

 

途端に後ろから声が聞こえた。

そしてその声の主は一方通行の耳元で囁く。

 

???「・・・紅魔館へようこそ。・・・たっぷりおもてなしをさせていただきますわ・・・」

 

一方通行の口には笑みが浮かんでいた。




最後まで読んでいただきありがとうございました。
紅魔館メンバーはほとんど姿を現しましたね。
美鈴は一瞬で一方さんにやられ、こあさんにいたっては普通の妖精メイドみたく倒されてしまいましたね。フランを早く出したいがゆえに少し走り気味になっていますが気を付けたいと思います。

次回・第四話 『ベクトル 対 時間』『霊力 対 魔法』
 
                            次回もお楽しみに!


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第四話 『ベクトル 対 時間』『霊力 対 魔力』

今作も見ていただきありがとうございます!
今作は皆さんおなじみのパッチェさんと例のメイド長との戦闘です。
ただでさえ一話一話が短いのですが今回はさらに短いかもしれないかもしれません。
申し訳ないのですが次話を少し長くする予定なのでどうかご勘弁ください。
それでは本編スタートです!


一方通行は笑っていた。久々に楽しめると思ったからだ。

自分に認識させずに背後に回り込んだ人間は初めてだからだ。

そして時を止める能力。一方通行はその能力を解析したくて溜まらなかった。

非科学的な上に、時という世界の理を捻じ曲げる能力。

 

一方通行「もォ、いろんなトコロが勃っちまいそォだぜェ!!」

 

???「まぁ、下品な殿方ですわね。」ヒキッ

 

一方通行「まァ、最低最悪の悪党だからなァ」ニタァ

 

咲夜「(怖っ)ご紹介が遅れました。私は紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します。

以後、お見知りおきを。みたところ私たちと同じく外の世界から来られた方らしいですね。」

 

一方通行「そォだ。さっき飛ばされた。帰れるもンなら帰りてェが、どォやら帰れねェらしいみたいでなァ。暇だから霊夢とかいう巫女さンについてきたンだァ。」

 

咲夜「それは災難でしたね。ですが最後の言葉は聞き捨てなりません。暇つぶしならばお帰り願いたいですわ。下手するとあなたを殺してしまいかねない。」

 

一方通行「俺を殺すってェ?ギャアハハハハハハ!!!!面白れェなァオマエもォ!!

幻想郷には面白れェヤツばっかだァ!!!!やれるもンならやってみやがれェ!!!!

まァオマエが血みどろになる未来はもう決定してるがなァ!!!!」

 

咲夜「あなたも能力持ちだということは承知しております。しかし未来は私の能力によって決定します。・・・あなたが血塗れで死ぬという未来がね。」チャキ

 

咲夜はナイフを構える。

一方通行はポケットから手を出した。

 

戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「フッ!!ハァ!!!!!」ダァン!ドォン!

 

パチュリー「・・・クッ!!」カキーン

 

霊夢は次々に攻撃を出しているがパチュリーの防御結界によって防がれている。

だが、彼女は徐々に押していた。体力勝負に持ち込めばこれまでいろいろな難関を潜り抜けていたため霊夢に分があった。

 

霊夢(だけど・・・まだまだ余裕そうだわ。私の霊力もつかしら・・・この後さらに強いやつと戦わなきゃいけないってのに。)ダァン!バァン!

 

パチュリー(・・・もう・・・無理・・・死ぬう・・・・・・・なんでこいつこんな体力あるのよ・・・魔力はまだまだあるけど・・・それをこうする体力が・・・)ゼェゼェ

 

パチュリーは頭の良さと魔力はこの世界のトップレベルといっていい程のやり手だ。

しかし彼女には致命的な弱点があった。・・・体力があり得ないほどないのだ。

普段図書館にこもりっぱなしの彼女にとって長時間の戦闘は地獄に等しい労働なのだ。だから戦闘の際には短期戦にとどめ効率よく仕留めなくてはならなかった。

しかし霊夢は予想以上に強くてこずっていた。

・・・・要するに彼女はもう限界なのだ。

 

パチュリー(魔力はまだまだある・・・もうすべての魔力を使い切ってでも倒すしかない・・・なりふり構ってられないわね・・・)ハァハァ

 

霊夢(相手の気配が変わった・・・来るわね。だったらこっちも・・・)スッ

 

パチュリー「土&金符『エメラルドメガリス』!!!」バァーン!!

 

霊夢「夢符『封魔陣』!!!!」バァーン!!

 

お互いのスペルカードがぶつかり合う。

しかしパチュリーの弾幕は全て霊夢の弾幕にかき消され、結界のようにパチュリーを囲んでいく。

 

パチュリー「・・・何!?」

 

霊夢「終わりよ・・・」

 

次第に弾幕の結界は収束していき、パチュリーを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「ギャアハハハハハハ!!!!ギャァァァァへへへハァァァァァァ!!!!!」キィーン

 

咲夜「なんで・・・ナイフが刺さらない・・・!?」

 

一方通行「オマエやっぱ面白ェよォ!!メイドなンか辞めてェ、マジシャンにでもなったらどォだァ!?」

 

咲夜「私が?人間のところで?面白い冗談ですわね。」

 

咲夜は時を止めて確実に一方通行の死角から攻撃していた。しかしナイフは彼に刺さるどころか倍以上の速度で自分に帰ってきているのだ。

ナイフの処理に手を焼いているうちに一方通行は風のベクトルを操り、風の刃で咲夜を攻撃してくる。

彼女は防戦を強いられていた。

 

咲夜(いくらナイフを投げても効かない。あの男は飛んでくるナイフを認識して弾いているに違いない。だったらアイツが対応できない程の攻撃をすれば・・・勝てる。スペルカードのコンビネーションで行くわ!)

 

咲夜「申し訳ございませんが、私は仕事があるためこれにておもてなしを終了させていただきます。」

 

一方通行「なんだァ!!逃げンのかァ!?」

 

咲夜「いえ、ただ終わらせるだけです・・・あなたの命を。」スッ

 

そう言い終わると咲夜は両手に大量のナイフを取り出しスペルカードを唱えだした。

 

「咲夜の世界」

 

咲夜「人間から怖れられ、忌み嫌われてきたこの力、本気でふるえば・・・!」

 

幻象「ルナクロック」

 

メイド秘技「操りドール」

 

メイド秘技「殺人ドール」

 

彼女は止まった世界の中で、次々にスペカを放っていく。

一方通行の周りに大量のナイフが迫る。360度すべてを囲まれている。逃げ場はない。

ナイフを投げ終わった咲夜はナイフ三本と懐中時計を構え着地する。

 

咲夜「あなたは何も理解できないまま死ぬ。」

 

咲夜「私を理解できるのはお嬢様だけ・・・」

 

揺れていた懐中時計が動きを止める。

 

咲夜「解除!」

 

止まっていたナイフは一斉に一方通行に襲い掛かる。

次第にナイフで一方通行は見えなくなっていった。

 

咲夜「さあ、遺体のお掃除を・・・」

 

???「誰の遺体を掃除するってェ?」

 

バァーン!!!!!

 

ナイフがすべて弾き飛び無傷の一方通行が姿を現した。

 

一方通行「今から俺はメイド学校のセンセーだァ。オマエに正しい悪党を教えてやるよォ」ニタリ

 

咲夜「」ビクッ

 

一方通行「なンだその面はよォ・・・こっちのテンションが下がっちまうだろうがァ・・・アアァァァアアアァァ!?」ダァン

 

一方通行は一瞬で咲夜に近づいた。

 

一方通行「オマエはちょっと働きすぎだァ!喜べよォ!!いいベッドが見つかったぜェ!!」

 

咲夜「クッ」サッ

 

咲夜は一方通行のあまりの気迫に時を止めることを忘れて、そのまま後ろに跳んでしまった。

 

シュン!!一方通行「遅ェよ。」ガシッ・・・ダァン!!

 

一方通行は一瞬で咲夜の背後に回り込むと彼女を壁にたたきつけ、彼女の鳩尾に触れた。

 

一方通行「人間の身体にゃァ生体電気ってのが流れてンの知ってっかァ?ちっとばかし弄ってやるから楽しめよォ。」ピリッ

 

バリバリバリバリバリバリィ!!!!!

 

咲夜「あがっ・・・ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

咲夜「」ガクン!ピクッピクッ

 

一方通行「ちっとは楽しそォな顔しろよォ・・・まァ無理かァ・・・このベッド寝心地悪そォだかンなァ」

 

チョロロロr

 

一方通行「あァ?・・・・・・チッ、このメイドションベン漏らしやがった。それでもメイド長かよォ?クソガキがァ・・・」スタスタ

 

一方通行(あの階段を上りゃァご主人サマのお部屋に着きそォってもンだが、敵はそのことを読ンでるかもしれねェ・・・ここは敢えて下に行ってみるか・・・)スタスタ

 

そうして一方通行は地下へと続く道を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュリー「ゴホッ、ゴホッ」ズザァ

 

パチュリーは本の山に突き刺さる形で埋まっていた。

 

パチュリー「貧血でめまいが・・・」グデェ

 

こあ「大丈夫ですかパチュリー様!?無理をなさるから・・・」ピクピク

 

霊夢「ねえ、あんたら倒れてないでこの館の主人の居場所を教えてほしいんだけど・・・」

 

パチュリー・こあ「」チーン

 

霊夢「し・・・死んでる・・・」

 

そして霊夢も進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「上が騒がしいなぁ・・・誰か来たのかな・・・」

 

静かな部屋で少女はつぶやく・・・

 

???「今回は・・・・・・・・・・・・私を楽しめてくれるかな?」ニタァ




最後までご覧いただきありがとうございました!
次回はついに館の主人と遭遇?

次回・『吸血鬼の姉妹』

               お楽しみに!


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第五話 吸血鬼の姉妹

今作も見ていただきありがとうございます!
投稿を開始して4日になりますかね?
早速応援の感想をいただきました!そういった感想はssを作る上ですごく励みになります!
ありがとうございました!

それでは本編、スタートです!


咲夜とパチュリーを倒した一方通行と霊夢は目的は違えど紅魔館の主人の元へ向かっていた。しかし一方通行は地下へ、霊夢は上へ。真逆の方向へ進んでいた。

 

 

 

 

一方通行はロビーを左に進んでいた。彼はこちらの方に地下への道があると思っている。根拠は・・・・・・

 

一方通行(俺と同じ匂いがするぜェ・・・)スタスタ

 

・・・勘である。

しかし彼の勘はよく当たる。しかも相手が悪党であったり、自分と似たような者であったときは特に。

しばらく歩いていると扉が近づいてきた。

一方通行はゆっくりと扉をひらく。

 

ガチャッ・・・ギィィィィィ・・・

 

一方通行(・・・ビンゴォ♪)

 

扉の先には下へと続く階段があった。暗くて先はみえない。

しかし彼は躊躇うことなく闇へ消えていった。

 

一方通行(クソッ・・・傷は応急処置で包帯巻いただけだかンなァ・・・本気で能力は使えねェなァ・・・)スタスタ

 

一方通行(・・・ここかァ)

 

一方通行は扉を見つけた。しかもさっき見た扉より豪華な装飾がなされている。彼はノックをすることも無く扉に手をかけた。

 

ガチャ 一方通行「・・・あァ?」ガチャガチャ

 

扉は開かない。鍵がかかっているようだ。

ならばやることは1つ。一方通行は白い顔を歪めた。

 

 

 

 

 

彼女はひとりぼっちだ。もう何百年ひとりぼっちか自分でも分からない。たまに咲夜が食事を運んできてくれる。しかし配膳が終わればすぐに彼女は出ていき、扉に鍵をかけられる。

なぜ彼女は閉じ込められているのか?何が悪いことをしたのか?

いや、何もしていない。文字通り何もしていない。

何年かに1度ぐらいの頻度で咲夜が『オモチャ』をもってきてくれる。

だけど遊んだ瞬間に壊れる。人間は特に。

彼女は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』をもつ。

それゆえその力を恐れた姉に閉じ込められている。

彼女は吸血鬼だ。見た目は小学生並に幼いが、495歳と途方もない年月を生きている。白い肌、金色の髪、紅い眼。そして何より特徴的なのは長く、鋭い牙だ。みんな彼女を怖がり、嫌い、憎まれてさえいた。

そして彼女は狂気という名の闇に堕ちた。

 

???(足音が聞こえる。咲夜かなぁ・・・)

 

彼女はこの部屋に近づいてくる。足音を聞いていた。

 

???(あ・・・止まった・・・・・・?ガチャガチャやってる。鍵をもってないの?・・・もしかして)

 

ダァァァァァァァァァァァァァァン!!!!

 

一方通行「おォォォじャャャャァァァァまァァァァしィィィィィまァァァァァすゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」

 

???「!?!?」ビクッ

 

一方通行は扉をぶち破って来た。少女は思いもしなかった展開に驚きを隠せない。

 

一方通行「あァ?おいクソガキ、館の主人はどこだァ?ここにはいないのかァ?」コキンコキン

 

???「お姉様なら上よ?それにフランクソガキじゃないもん!」

 

一方通行「上かァ、ンじゃさっさと行くかァ」クルッスタスタ

 

フラン「ちょっと!フランについてはスルー?」

 

一方通行「うっせェなァ・・・聞いてやるから静かにしてろォ」

 

フラン「私は紅魔館の主の妹にして吸血鬼。フランドール・スカーレットよ。よろしくお願い致しますわ。」タドタド

 

一方通行「つたねェ挨拶ありがとよォ。俺は学園都市最強の超能力者、一方通行だ。それじゃあな」スタスタ

 

フラン「まってよぉ!まだ能力話してないでしょ!?」

 

一方通行「知るかァそンなもン。戦うつもりもねェし、興味もねェ。失せろ。」

 

フラン「むーっ!!壊れちゃえ!!」グッ

 

フランが小さな手を握りしめた瞬間空気が変わった。

途端に一方通行に不可解な力が加わる。

一方通行「グッ・・・がァ・・・・!!」グググググググ

 

一方通行(なンだァ・・・心臓が直接握られてるよォだァ・・・

外部からじゃねェ・・・内部から力がかかってる・・・なンだァ・・・一体・・・)グググググ

 

フラン「フランの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』だよ。生意気言った人間のおにーさんは苦しんで死んでいってね。♪」ニタリ

 

一方通行は自分の心臓を握っているものを解析していた。だから苦しみさえするが暴れることは無く冷静に対処していた。

そして、

 

一方通行(解析、完了ォ)ギャイン

 

一方通行は自分にかかっていた能力を全て反射した。すると破壊のエネルギーは部屋の家具を粉々にした。

 

フラン「すごーい!なんで生きてるの?」

 

一方通行「オマエの能力を解析しただけだァ。オマエの能力はきかねぇよ」

 

フラン「おにーさん強いんだね!じゃあ簡単には壊れないよね!フランのオモチャになってくれる?」

 

一方通行「イィぜェ、ママゴトは嫌いだがァ、とことン付き合ってやるよォ!!」ダァン

 

フラン「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」ダァン

 

一方通行はフランの攻撃を反射し命に関わる攻撃はせず、かといって手加減していることを悟られないよう戦っていた。

 

フラン「楽しい!楽しいよ!!こんなに楽しいのは久しぶり!!もっと楽しませてちょうだい!!アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

一方通行「ギャアハハハハハハ!!!!ギャアアアアへへへへへへへ!!!!」いいぜェ思う存分楽しませてやるぜェ!!」

 

一方通行(何か引っかかるぜェ・・・試してみるか)

 

フラン「あなたすごいわ!じゃあこれはどうかしら!禁忌『レーヴァテイン』!!」キィーン!!

 

一方通行「こォいよォ!!まァその剣が俺に通用するかわかンねェがなァ!!」

 

一方通行はフランのレーヴァテインを適当にあしらっていく。そして・・・

 

フラン「アハハハハハハハハハハ!!!!これで最後よ!!」ブゥン!!

 

一方通行「ぐァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァ!!!!」ダァァァァン!!!!

 

一方通行は消失した。

 

フラン「さよなら、おにーさん・・・」

 

フランは一方通行が消えた場所を見つめ、呟く。その顔はどこか悲しげだった・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は大きなステンドグラスがある部屋に行きついていた。

そして彼女の視線は背の高い座に向いていた。

 

???「来たのね・・・博麗の巫女」

 

霊夢「あなたが異変の主犯ね。」

 

レミリア「ご挨拶するわ。私はこの紅魔館の主にして誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレット」

 

霊夢「博麗霊夢、知ってるみたいだけど博麗の巫女で、妖怪退治が仕事。言わなくてもわかると思うけど、あんたらの出してるあの霧、迷惑だからやめて頂戴。今すぐ!」

 

レミリア「吸血鬼の弱点が太陽の光だって知っているでしょう。あの霧はそれをさえぎるためのもの。もはやこの幻想郷に陽は射さない・・・そう、つまりこの幻想郷はわが手に落ちたも同然!」

 

レミリアが笑顔を消す。

 

レミリア「博麗の巫女、お前さえ倒せば!!」

 

霊夢「あらそう、つまり私に退治されたいのね?そうなんじゃないかと思ったわ。」

 

レミリア「さあ、決戦と行きましょう、博麗の巫女!勝者が手にするのは、この幻想郷すべて!」

 

レミリアは魔法陣を展開する。初めから本気で行くようだ。

 

霊夢「そんな面倒な物いらないわよ!あんたらが迷惑だから退治する、それだけよ!」

 

レミリアは弾幕を放ち、霊夢に攻撃する。一方霊夢は弾幕を出さずに華麗な動きですべて受け流してゆく。

弾幕では霊夢を倒せないと判断したレミリアは弾幕で小さな槍を作り霊夢に接近してそれを振り回す。

しかし霊夢はそれを避け、一瞬でレミリアの間合いに入る。

そしてゼロ距離で夢想封印を放つ---------------

 

レミリア「・・・!!待って!!!!」バッ!!

 

霊夢「あん?なによ?」

 

レミリア「この勝負、私の負けで構わないわ。だけどお願いがあるの。」

 

霊夢「急にしおらしくなったじゃない。お願いって何よ?」

 

レミリア「下手すれば幻想郷・・・いや、世界中の者が死んでしまうことになるわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「やっぱり跡形もなく消えちゃった・・・人間は特に壊れやすくてつまんないわ・・・」

 

ツー・・・・・・

 

フラン「・・・・・・ごめんなさい・・・」ツー

 

「誰が消えたってェ?それに何泣いてンだよォ?」

 

フラン「!?」ゴシゴシ

 

フラン「へぇ、あの攻撃をかわしたんだ。思った以上にすごいね・・・おにーさん」

 

一方通行「かわすまでもねェ。オマエの攻撃など俺には届かねェよ」

 

フラン「手加減してたんだ。そういえばおにーさんについてほとんど聞いてなかった。あくせられーただっけ?あなたの能力はなぁに?」

 

一方通行「ベクトル操作。それが俺の能力だァ。」

 

フラン「べくとる?なにそれ?」

 

一方通行「そォだなァ・・・いろンなもンをぶっ壊しちまう能力ってとこかなァ」

 

一方通行はフランに対して積極的に接していた。彼は幼き日の自分と今のフランを重ね合わせているのだろう。彼女には自分と同じ闇に堕ちてほしくない。そう思っているのだ。

 

フラン「ホント!?フランと一緒だね!!」

 

一方通行「あァ、一緒だなァ」

 

フラン「戦いはやめ!こっちきてお話しよ!」キラキラ

 

一方通行「あァ(コイツは狂気に傾きかけちゃァいるがまだ純粋だ・・・簡単に何色にも染まる。だがこのガキは闇とは関係ねェ・・・黒に堕とすわけにはいかねェ。)」

 

そうして一方通行とフランはベッドに腰かけ会話を始める。

 

フラン「ねぇねぇ!あくせられーた!あなたについてもっと教えて!」

 

一方通行「ギブアンドテイクだ。俺のことは何でも話してやる。だが、オマエのことも話してもらう。どうだ?」

 

フラン「ぎぶあんどていくが何かはわかんないけどいいよ!じゃあまずね!まずね!あくせられーたはどこに住んでるの?」

 

一方通行「俺はなァ、幻想郷の住人じゃねェンだ。」

 

フラン「それも一緒だね!フランも元は外の世界で暮らしてたんだよ」

 

一方通行「話を続けるぞ。俺は学園都市というところから来た。この幻想郷より技術が発展しててなァ科学の街とも呼ばれてた。そこに住んでる人間のほとンどが学生でなァ・・・」

 

フラン「がくせいってなぁに?」

 

一方通行「学校に通ってる子供たちのことだァ」

 

一方通行「そこでは能力開発ってのが行われててなァ、それを受けると一部の人間に特別な能力が宿る。火を噴いたり水を操ったりとかなァ。そして能力の強さに応じてゼロからファイブまで格付けされるンだァ。」

 

フラン「あくせられーたはそこで最強なんでしょ?能力のことももっと知りたいな!」

 

一方通行「俺の能力名は『一方通行』(アクセラレータ)だ。能力の内容をざっくり言っちまいゃァこの世に存在するありとあらゆるものの力の向きを操るってことだァ。オマエの能力が聞かなかったのもこの力のおかげってワケだァ」

 

フラン「能力名があくせられーたなの?じゃああなたの名前と一緒ってこと?」

 

一方通行「いや、違ェなァ。俺には昔人間らしい名前があった。苗字二文字と名前三文字だァ。さっき能力開発を受けた者が能力を使えるといったが俺は違ったんだァ。ガキの頃から能力が使えた。小学生の頃ガキらしくケンカしちまってなァ。能力を切るのを忘れちまったンだァ。それでそいつをケガさせちまったのが始まりだったァ。次に警察、さらには軍隊。仕舞いにゃァ核爆弾っていう幻想郷を一瞬で吹き飛ばすぐれェのヤツを打ち込まれるぐれェになっちまった。つまり世界中から命狙われてたンだよ。」

 

フラン「能力が強すぎたから恐れられてたの?」

 

一方通行「そォだ。俺は静かに過ごせればなンでもよかった。けど世界が許してくれねェ。だから俺はクソみてェな研究者共のモルモットになり、さらなる力を手に入れようとしたンだァ。」

 

フラン「なんで?あくせられーたは今もすごく強いよ?」

 

一方通行「俺の他に超能力者は6人いる。だから他のヤツらと一緒にされて襲ってくる奴もいりゃァ単に最強の名が欲しくて挑ンで来るやつもいる。戦ったらソイツらみンな傷つけちまうだろ?だから挑もうとも思えなくなるほど強くなりゃァこの手で傷つけずに済むし、平穏も訪れる。万々歳ってやつだァ。」

 

フラン「でもそれって『孤独』になるだけじゃない?」

 

一方通行「傷つけるくらいならそれても構わねェ」

 

一方通行「そォして、研究所にずっと閉じ込められ、脳に電極やらなンやらぶっ刺され、薬漬けにされた挙句、20000人殺せとか抜かしやがった」

 

フラン「それでどうしたの?」

 

一方通行「10031人もの『人間』をぶっ殺しちまったァ。だが、こンなくだらねェ実験はバカバカしいって殴られてなァ、辞めちまったンだ。」

 

フラン「あなたを殴れた人がいたの?」

 

一方通行「そォだよ。ボコボコにやられちまった。しかも無能力者になァ。」

 

フラン「えぇ!?ウソぉ!」

 

一方通行「大マジだァ、ンで今に至るってことだァ。」

 

一方通行は全てを語った。こんなことを誰にも話さなかったし話すつもりもなかった。しかし、少しでもフランに心を開いてもらおうと一方通行なりの精一杯の努力だ。

フランは明るく、気さくで、優しい子供だった。

知らないことには興味を示し、面白いと思ったら素直に笑う。純粋なただの女の子だ。しかし孤独が彼女を狂気に堕とし、殺人鬼にしてしまった。一方通行は一瞬目を伏せてからフランに向き直る。

 

一方通行「俺の全てを話した。次はオマエの番だァ」

 

フラン「う・・・うん」ウツムキ

 

一方通行「ゆっくりでいい。今だけなンでも聞いてやる。」

 

フラン「あくせられーたは優しいんだね」

 

一方通行「バカ言ってんじゃねェ。俺は最悪の悪党だ。」

 

フラン「フランはね、生まれてからずっと紅魔館から出たことないの」

 

一方通行「ずっと一人ぼっちだったってかァ?」

 

フラン「ううん、外には出たことないけどお姉様が遊んでくれたから寂しくなかったの。だけど、お姉様の当主就任祝いで来客が来たの。能力を見せて欲しいというから嫌って言ったら、能力使わなかったら美鈴を殺すと言われたから仕方なくやったら加減ができなくてお客さんを壊しちゃったんだ。」

 

一方通行「俺と似たよォなもンじゃねェか」

 

フラン「うん、それでね最初は罰としてこの地下室に1週間閉じ込められたんだ。美鈴も家族の一員だから殺されるのが嫌だったから助けただけなのに・・・」

 

一方通行「・・・」

 

フラン「その時からお姉様はフランに対して冷たくなって遊んでくれなくなったの。何日かたったある日大勢の兵隊さんがうちに攻めてきたんだ。フランが前に壊しちゃったお客さんのかたき討ちを依頼されたらしいの。妖精メイドたちが次々に殺されて、我を忘れてみんな壊しちゃった。それを見た妖精メイドがおびえ遂にはお姉様からこの部屋から出るなって言われてずっと閉じ込められたまま。館の侵入者がたまにフランの部屋に連れてこられてお姉様に殺せと言われるんだ。お姉様の言うこと聞いたらまた前みたいに優しくしてくれるかなって思ったからずっという通りにいい子にしてたけどそんなことはなかった。どうやらお姉様がフランに望む姿は化け物みたい。だから部屋に入ってきたら壊した。ずっと壊した・・・でもそんなの嫌だった・・・嫌だったんだよぉ!!」グスッ

 

フラン「うっ・・・ひぐっ・・・ぐすっ・・・嫌だったんだよぉ・・・!壊したくなんかなかったのにぃ・・・お姉様に・・・お姉ちゃんにぃ・・・えぐっ・・・嫌われたくないからぁ!」

 

一方通行はどうすればいいのかわからなかった。こんなに長く話を聞いたことが無いし、悲しんでいる子供の励まし方がわからなかったからだ。だから・・・

 

一方通行はフランの頭をなれない手つきで、しかし優しくなでた。

 

この少女は本当は優しい心を持った純粋な少女だ。しかし自分と同じ生まれ持った能力のせいで周りから化け物扱いされ忌み嫌われていた。一体どれ程永い時間を孤独に過ごしてきたのだろう。改めて一方通行はそう思った。

 

しばらくしてフランは泣き止んだ。

 

一方通行「わりィがコーヒーが飲みてェもうこの部屋から出るぞ。」

 

フラン「うん・・・ほんとは行って欲しくないけど、おにーちゃんを困らせたくないからフランは我慢する。人間のおにーちゃんがフランを恐れないでお話してくれたこと、とっても嬉しかったよ。」ニコッ

 

幸せな時間は早く終わってしまう。初めて自分を怖がらなかった人。初めて自分に勝った人。そして初めてフランに正面から向き合ってくれた優しい人。そんな彼はこの部屋から出ていこうとしている。また孤独か、さみしいなと―「なに言ってンだァ?オマエもくるんだ。」

 

え?彼は何と言ったのだろうか・・・フランにはよく理解が出来なかった。オマエもくるんだ?一緒に行くということ?それはつまり・・・

 

フラン「フランをこの部屋から連れ出してくれるの?」

 

一方通行「そォだ。」

 

フランは困惑する。自分がこの部屋から出ればまた人を殺してしまうかもしれない。怖い、怖い、怖い

 

フラン「駄目よ。フランが外に出ればまた人を傷つけちゃう。」

 

一方通行「ンなこたァ俺がさせねェ。オマエは俺みてェに闇に堕ちたらダメだ。」

 

フラン「でも今度はおにーちゃんも命を狙われるかもしれないんだよ!?」

 

一方通行「構うこたァねェ、元々狙われてた命だ。オマエを狙うヤツがいりゃァ俺がぶっ潰す。」

 

フラン「・・・うぅ」ポロッ

 

一方通行「俺があらゆる闇からオマエを守ってやる。」

 

フラン「・・・うぁぁ」ポロッポロッ

 

一方通行「ンでェ・・・来るのかこねェのかどォすんだ?オマエの人生だァ・・・自分で選択しろ。ただなァ・・・」

 

一方通行「悔いが残らねェ方を自分で選べェ」

 

フラン「あくせられーた、怖くないの?」グスッ

 

具体的な言葉ではなかった。だが一方通行は彼女の言いたいことがわかった。

 

一方通行「闇の中にいる自分が自分の力で人生を歩ンでいくのが怖くねェかってことかァ?」

 

フラン「・・・うん」ヒック

 

一方通行「怖ェとか怖くねェとかじゃねェだろォ。他の野郎に指図されず、自分の思うよォに生きてェと思ったらなァ・・・」

 

一方通行「戦わなきゃァいけねェだろうがよォ」スッ

 

一方通行は手を差し出した。

 

フラン「あくせられーた・・・ありがとう」ニカッポロポロ スッ

 

一方通行「なんってェ顔してやがる。」ガシッ

 

一方通行「・・・さっきの話は俺たちだけのヒミツだァ・・・いいな?」

 

フランは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらいままでで一番の笑顔を見せた。

一方通行とフランは手をつないだままもう片方の手を天井に向けた。

そして天井を破壊し、差し込む光へと向かって飛び立った。

 

外に出るとフランは括目した。初めて見る世界に驚いているのだ。

 

フラン「綺麗・・・」

 

一方通行「空が青かったらもっと綺麗だぜェ」

 

一方通行「・・・チッ!!」ギュッ

 

フラン「え!?ええ!?////」

 

ドガァーーーーーーーン!!!!!!

 

一方通行「どォいうつもりだァ!!霊夢ゥ!!!!」

 

一方通行とフランに弾幕を放ったのは霊夢だった。

そしてその傍らにはフランと同じくらいの少女がいた。

 

フラン「あっ・・・おねぇさま・・・」

 

一方通行「なンでェ!異変の主犯の横にいるのかって聞いてんだ!!あァ!!??」

 

霊夢「それはこっちのセリフでもあるわ。一方通行、なぜレミリアの妹を連れてるのかしら?」

 

一方通行「確かにィ、コイツはそこのレミリアとかいうガキの妹だァ・・・強ェ力も持ってる。だがなァ、コイツは関係ねェだろ!今回コイツはなンにも悪いこたァしてねェ。ただやべェ能力持ってるってだけで自由を奪われていい理由には、ならねェだろォがァ!!」

 

レミリア「フラン、部屋で大人しくしていろと言ったはずよ。」

 

フラン「お姉様!わたし、お姉様をやっつけて外に出るわ!」

 

レミリア「今なにか・・・おかしな言葉が聞こえたような気がするわね。私を、やっつやっつけるですって?フラン、自分がいったい何を言ってるかわかってるの?」

 

レミリア「・・・そのネズミになにか吹き込まれでもしたのかしら?」

 

一方通行「ほォ、俺のことをネズミ呼ばわりたァいい度胸だなァ。余程自分に自信があるか、ただのバカかァ」

 

レミリア「嘆かわしい」

 

一方通行「あァ?」ギロッ

 

レミリア ビクッ「スカーレット家の吸血鬼が人間ごときにそそのかされるなんて、恥を知りなさい。」

 

一方通行「いい度胸してンじゃねェかァ」ニタァ

 

フラン「わたし、お姉様の言うことを聞いてずっといい子で我慢してきたの・・・」シュン

 

一方通行「・・・」チラッ

 

フランは思い出す。孤独だった時を。一人で人形ごっこをしていた時。ダーツで遊んでいた時。パチュリーが離れていく。咲夜が離れていく。美鈴が離れていく。そしてレミリアさえも。

部屋にあるものすべてに当たり散らし破壊しつくしていた時。

 

ガシッ!!

 

一方通行はフランの胸倉をつかむ。

 

一方通行「自由になるんだろォがァ!!そのためにここまで来たんだろォがァ!!だったらブレてンじゃねェ!!!!言ったはずだァ、自由になりたいならァ迷わず手を伸ばしてェ全力で戦い抜けェ!!!!」

 

フラン「っ!!!!」

 

フラン「お姉様・・・」

 

フラン「もうおしまいにする!フランもういい子でいるのやめる!」

 

フランが目つきを変えた。覚悟を決めたようだ。

 

フラン「お姉様をやっつけてあくせられーたと外に出るわ!!」

 

禁忌「レーヴァテイン」

フランは両手を合わせ力を籠める。エネルギーを凝縮し、炎の剣を生み出す。

 

一方通行「よォく言った!!フランドールゥ!!俺の力を貸してやるぜェ!!」

 

そう吠えると一方通行は湖の水をベクトル操作で分解し酸素と水素をフランのレーヴァテインに纏わせた。

するとレーヴァテインは膨張し強大になった。

 

フラン「すごい・・・!」

 

一方通行「それをふるえばオマエの剣に化学反応を起こして爆発する。上手く使い分けろォ」

 

フラン「うん!」

 

霊夢「長い話は終わったかしら?その子、危険らしいから捕えさせてもらうわよ。」

 

レミリア「博麗の巫女、陽は沈んだわ。協力の証として紅い霧は除去するわ。」

 

霊夢「じゃっ、さっさと終わらせるわよ。」フワッ

 

レミリア「では、行きましょう」フワッ

 

フラン「いきましょう!あくせられーた!!」フワッ

 

一方通行「上等ォじゃねェかァ・・・」ヒュオオオオオオ・・・

 

レミリアとフランが魔法陣を展開し、霊夢は陰陽玉を展開する。一方通行はポケットに手を突っ込んだままだ。

 

フラン「わたしは自由を手にするために戦って勝つ!」ブン!!

 

ガァン!!!!!

 

フランがレーヴァテインでレミリアに斬りかかった瞬間レミリアはフランと同じく圧縮したエネルギーで槍を作りだした。

神槍「スピア・ザ・グングニル」

 

レミリア「どうやら、おしおきが必要のようね・・・」ギギギギギギギギガァン!!

 

フラン「!!」

 

フランはレミリアに押し負け跳ね返される。フランは空中で身を翻し突きで攻撃する。レミリアも同じく突きで応戦する。巨大なエネルギー同士のぶつかり合いで空気が揺れる。

 

フラン「むぐっ・・・!(やっぱり押し負けちゃう!)

 

ズドドドドドドドドドドドドドォォォォォォンンンン!!!!!

 

フランのレーヴァテインが赤い閃光を放ち、レミリアのグングニルを内部から破壊する。

 

レミリア「何っ!?」

 

フラン「やった!」

 

フラン(ありがとう!あくせられーた!これでお姉様と対等に戦える!!)

 

フラン「たぁー!!」

 

すかさずフランはレミリアへ弾幕へ放ち追撃を行う。

 

 

 

一方通行(やるじゃねェかァ・・・いい顔で戦いやがる。)フッ

 

霊夢「よそ見するほど余裕があるのかしら?」ダァン

 

一方通行「当たり前だァ。テメェの攻撃はすでに解析済みだァ。もォ操作できンだよォ!!!!」

 

霊夢「・・・クッ!」

 

霊夢は一方通行の攻撃を間一髪で避ける。

 

霊夢「そんなに能力を使って大丈夫なのかしら?あんたの頭の傷は結構深いはずよ。そろそろ限界なんじゃない?」ハァハァ

 

一方通行「・・・哀れだなァ、本気で言ってンだとしたら抱きしめたくなっちまうぐれェ哀れだわァ・・・確かに頭の傷は深ェ。能力も本気ではつかえねェ。だがなァ、俺が弱くなったところでオマエが強くなったわけじゃァねェだろォがよォ・・・あァ!!??」ダァン

 

一方通行「ギャアハハハハハハ!!!!ギャアアアアハッ!!」

 

一方通行は背中の竜巻を加速させ、霊夢に急接近する。

霊夢は陰陽玉を盾にしようと前に出す。

 

一方通行「ギェェェェェハァ!!」ダァン!!

 

しかし一方通行の右ストレートにより陰陽玉が粉々に砕ける。

 

一方通行「わァりィがァ!!こっから先は一方通行だァ!!大人しく尻尾巻き筒らえてェ!!無様に元の居場所へェ引き返しやがれェェェェェ!!!!!」ズドン!!

 

一方通行は霊夢の顔面に容赦なく右ストレートを打ち込む。

 

霊夢「ぶふぅ!!」ドグシャッ

 

霊夢は100メートル先の紅魔館の外壁にたたきつけられ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「やぁ!たぁ!!」ブン!!ブオン!!

 

レミリア「クッ・・・(強い・・・!)」

 

フラン「わたしもう、誰かのいいなりにはならない!!わたしの人生は私で決める!自分の足で生きていくの!!」

 

レミリア「フラン・・・」

 

フラン「・・・!!」ハッ!

 

レミリア「いつの間にかこんなに大きくなってたのね・・・身体だけじゃなくて心も・・・」ニコッ

 

フラン「・・・お姉様、わたしのことが嫌いなんじゃないの・・・!?」

 

レミリア「そんなわけないでしょう?たった一人の私の妹なのよ。」ギュッ

 

フラン「お姉様・・・」

 

レミリア「いままで過保護だったかしら。でも、全てはあなたのためなの。」

 

レミリア「ごめんなさい・・・私のせいであなたが苦しんでいるとは知らなかったの。あなたが狂気に堕ちかけてしまったのも、殺しをさせてしまったのも全部私のせい。あの男に気づかされたわ・・・

(『コイツはなンにも悪いこたァしてねェ。ただやべェ能力持ってるってだけで自由を奪われていい理由には、ならねェだろォがァ!!』・・・か)」フッ

 

フラン「あくせられーたのこと?」

 

レミリア「あくせられーた?」

 

フラン「おにーちゃんの名前だよ!あの人フランでもかなわない位強いの!」

 

レミリア「そう、そんなに強いのね。(いつぶりかしら、フランの笑顔を見たのは・・・)」ニコッ

 

一方通行「やけに幸せそォだなァ。お姉様よォ。ケンカしてたンじゃなかったのかァ?」

 

フラン「あっ!あくせられーた!!霊夢を倒したの?」

 

一方通行「あァ」

 

レミリア「すごい・・・人間なのにそんなに強いのね…」

 

一方通行「レミリアさんよォ、博麗の巫女とやらは伸びちまったンだァ。幻想郷支配続けるかァ?」ニタリ

 

レミリア「クスッ やめとくわ・・・・フランでも勝てないのに私が戦ってもバラバラにされるだけよ」

 

ドカーン!!!!!!

 

一方通行・フラン・レミリア「!?」

 

霊夢「よくもやってくれたわね・・・まとめて吹っ飛ばしてあげるわ!!」

 

一方通行「レミリアァ!!フランを連れて離れろォ!!」

 

レミリア「フラン!!行くわよ」

 

フラン「おにーちゃん!!!」

 

霊夢「夢想封印!!!!!」

 

霊夢は最大火力の夢想封印を放った。これが爆発すればフランたちはただでは済まないだろう。

 

 

ビィガァァン!!

 

一方通行は夢想封印を散らそうとする。

 

ズザザザザザザザザ!!!!

 

一方通行「・・・クッ!(ベクトル操作で散らせねェ!コイツもクソみてェなもンが混じってやがるのかァ・・・)」

 

一方通行(だがァ・・・やるしかねェ!!なによりィ、アイツに届く可能性があるならァ・・・)

 

一方通行(なりふり構ってられねェだろォがァァァァ!!!!!!)ダァン!!

 

一方通行の脳はすでに限界を超えている。

それでも、夢想封印がフランに届く可能性があるならと死に物狂いで演算を続けている。

 

一方通行(残ったすべての体力をォ演算脳に注ぎ込めェ!!立ってる必要もねェ!!!!)

 

一方通行は意識さえも演算脳に注ぎ込む。限界を超えた頭からは出血している。

 

一方通行(全てをォ・・・)グググ

 

一方通行(俺の全てをォォォ・・・)グググググ

 

フラン「・・・ッ!!あくせられーた!!!!」ダッ

 

一方通行の頭にはフランの笑顔が浮かんでいた。そしてその顔を守りたいと願った。

 

スアッ!!!!!

 

途端、彼の背中に真っ黒な翼が生えた。そしてその翼は竜巻のように渦を巻き、天に向かって伸びていく。

 

一方通行「全てをォ・・・掌握するゥ!!!!!!!!!!!!!」

 

ガァン!!!!!!!!!!!!!!!!

 

夢想封印のエネルギーは一点に集められ、天へと放たれた。そしてそのエネルギーは宇宙空間に消えていった・・・・・

 

力を使い果たした一方通行と霊夢は地面に向かって落ちていった。

 

 

 




最後までご覧いただきありがとうございました!
紅魔郷のクライマックスいかがだったでしょうか?
フランはちょっと純粋すぎますね!少し打ち止めを意識しています。

次回・第六話 自由の凱旋、そしてー 

                            次回もお楽しみに!!


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第六話 自由の凱旋

ご覧いただきありがとうございます!
今作はほのぼの回となります。
一方通行たちの織り成す茶番にご期待ください!

それでは本編スタートです!


静かな湖のほとりに波が打ち付けられている。

その近くにたたずむ影が三つ。

 

「あくせられーた・・・」ボソッ

 

少女の膝に頭を乗せられた少年はピクリとも動かない。頭から流血し口からも血を流している。

 

フラン「あくせられーた・・・あくせられーた!・・・あくせられーた!!」

 

フラン「起きてよ!あくせられーた!!お願いだから目を開けてよぉ!あくせられーた!あくせられーた!!」

 

レミリア「・・・あっ!」

 

一方通行「・・・疲rfgjt・・・うrsjfカラ・・・黙r・・・」ボソボソ

 

フラン「はぁ・・・」ジワッ

 

ポタッ・・・ポタッ・・・

 

一方通行の顔に無数のしずくが落ちる。

 

フラン「うぅ・・・えぐっ・・・ぐす・・・えへっ・・・えうっ・・・えへへ・・・はは・・・」ポタッポタッ

 

フランは泣きながら笑っていた。心から笑っていた。胸の中から熱いものが次々に溢れてくる。生きてる、生きててくれてる。

そこにいる二人を祝福するように雲の間から月明かりが差し込んでいる。

 

レミリア(今日は月が綺麗ね・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は目を覚ました。

 

一方通行「・・・ここは・・・あァ、最初にいた医院かァ・・・」

 

「おっ、起きたわね」

 

一方通行「・・・誰だァ?」

 

永琳「前にも会っているのだけれど・・・あの時は意識がなかったものね。私は八意永琳。この永遠亭で医師をしているわ。」

 

一方通行「じゃァ、最初に来た時に俺を世話したンはオマエってことかァ」

 

永琳「そうよ。ここに運ばれてきたときあなたはひどい状態だったわ。前頭葉まで傷が入っていて、処置が遅れていたら半身まひに計算能力、言語能力を失うことはおろか、死ぬところだったわ。」

 

一方通行「・・・待て、前頭葉まで傷が入っていたンだろォ?だったらなぜ俺は喋れる?演算ができた?身体も問題なく動いた?脳は修復できないハズだァ・・・」

 

永琳「本来ならね・・・だけど私は月の技術をもった医者なの。方法は教えられないけど脳を修復するのなんか容易いわ・・・」

 

一方通行「月だとォ?この前学園都市が徹底調査を行ったハズだァ・・・その時にはなンにも見つからなかった。文明などねェハズだ。」

 

永琳「地球人に見つからないようにカモフラージュすることぐらい簡単よ。あまり月の科学を舐めないことね。」

 

一方通行「科学かァ・・・久しぶりに聞いたなァ。」

 

永琳「話を戻すわよ。とりあえず今回は頭の傷を塞いどいたわ。前回は後遺症が残らなかったようだけど、今回は・・・残念だけど後遺症が残ってしまってしまったわ」

 

一方通行「後遺症だとォ?」

 

永琳「えぇ、右手を動かしてごらんなさい。」

 

一方通行はいつものように右手を動かそうとする。

 

一方通行「・・・う、動かねェ・・・!」グググググググ

 

永琳「そう、右半身の麻痺だけは治すことができなかったわ。頭から流血したときに脳神経そのものがダメになっちゃったようね。本来ならあなたは三週間は入院してもらう予定だったけど、いなくなっちゃったと思ったらまた運ばれてくるんだもの。」

 

一方通行「・・・あンときは混乱してたからなァ。」

 

永琳「とにかく、今回は自業自得なんだから大人しくしときなさいよ。」

 

一方通行「あァ、礼を言うぞ。月の医者ァ・・・なンだ?」

 

永琳「あなた、お礼言えたのね。」

 

一方通行「チッ・・・俺も礼くらい言える。」

 

永琳「狂暴すぎて手が付けられないって聞いてたからね。博麗の巫女をあんなにするぐらいだから。」

 

一方通行「霊夢もきてンのか?」

 

永琳「もう帰ったけど・・・あなた、あとで霊夢に謝っときなさいよ。女の子の顔面をあんなにするなんて男のやることじゃないわ。」

 

一方通行「・・・チッ」

 

永琳「・・・じゃあ、そろそろ行くわね。診療が入っているから。」

 

一方通行「・・・」

 

「・・・んむぅ」モゾッ

 

一方通行は声の主へ目を向ける。

 

フラン「・・・んぅ・・・むぅ・・・・・・あっ・・・起きたぁ・・・!」ゴシゴシ

 

フランは眠そうな目をこすり一方通行の目覚めを認識する。

 

フラン「って!!」ピン!

 

フラン「心配してずっと起きてたのにぃ!肝心な時に寝てしまったぁ!!なんだかすごく残念な感じ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

とフランはわめき散らしながら一方通行のベットに寝っ転がり足をバタバタさせて暴れている。するとフランの靴が脱げ、一方通行の頭に愉快に激突する。

一方通行は呆れた目でフランを見ていた。すると突然フランは停止した。

今度はそっと一方通行の手を握りー

 

フラン「大丈夫・・・かな・・・?」

 

その問いかけに一方通行はそっぽを向き・・・

 

一方通行「当たり前だ。」

 

フラン「何か食べたい!?リンゴって言われるとフラン剥けないから不安になるけどそう言われないよう願って聞いてみるね!」

 

一方通行「いらねェ。」

 

フラン「なんでそんなに冷たいの!?昨日はすっごくフランに優しかったじゃん!!」プンスカ

 

一方通行「いや、コーヒーをくれ。ブラックがいい。」

 

フラン「無視!?・・・まぁいいや!こーひーってものが何かわからないけど先生に聞いてみればわかるかも!行ってくるね!!」タッタッタッ

 

フランは病室を出ていった。

そういえば彼女はいままで外に出たことがなかったからコーヒーを知らないのも納得かと一方通行は嘆息する。

 

一方通行「・・・ンでェ?なんの用だ?」

 

彼がそう言うと部屋の隅からレミリアが姿を現す。

 

一方通行「無様な俺を笑いに来やがったかァ?」ハッ

 

レミリア「無様というのにはあなたは痛々しすぎるわ。だってフランを闇から救うために傷ついたのよ。笑えるわけがないじゃない・・・」

 

一方通行「別にオマエたちを助けるためじゃねェ・・・俺は俺の好きでやっただけだ。」

 

レミリア「フフッ、優しいのね。あなたは。」

 

一方通行「優しくなンかねェ。俺は最悪の悪党だ。」

 

レミリア「これからどうするの?傷が治ればあなたは退院できる。だけどその身体じゃあ家もなしに生きていくのは大変よ。」

 

一方通行「幸いあの医者のおかげで能力は使える・・・なンとかするしかねェだろ。」

 

レミリア「あなたが良ければだけれど、紅魔館に来ない?歓迎するわ。」

 

一方通行「他のやつらはいいのかよォ。中にゃァかなりエグイ倒し方したやつもいる。そいつらが俺をこころよく迎えられるわけねェだろうが。」

 

レミリア「意外とそうでもないわよ?みんなあなたに興味津々よ?」

 

一方通行「ほンとかよォ・・・」

 

レミリア「あなたが来てくれるとフランも喜ぶわ。ぜひ来て頂戴。今回のお礼もしたいし。」

 

一方通行「感謝されるよォなこたァ何もしちゃいねェがそこまで言われちゃァお世話にならねェわけにはいかねェなァ。」

 

レミリア「決まりね。改めてよろしく一方通行。」

 

一方通行「あァ。」

 

フラン「あーっ!お姉様いつの間に!一体何を話してたの?フランにも教えてよ!」

 

レミリア「フラン、喜びなさい。彼、しばらく紅魔館に来るらしいわよ。」

 

フラン「あくせられーたが!?やったぁ!!」

 

一方通行「チッ・・・うっせェなァ・・・」

 

フラン「あっ!これこーひーね!」

 

一方通行「あァ・・・」ズズ

 

一方通行「悪くねえェ」

 

レミリア「じゃあ、私たちは行くわね。」

 

フラン「フランにできることがあったらいつでも言ってね。あなたの出来ないことは私がなんでもやるから!じゃっ!バイバーイ!!」

 

一方通行(なンか急に疲れた・・・)

 

一方通行はコーヒーを飲み干すと再び眠りについた。

 

 

 

 

 

レミリア「咲夜、先に帰っていて頂戴。あとでフランと一緒に帰るわ」

 

咲夜「ですが、お嬢様・・・」

 

レミリア「大丈夫よ。フランと一緒に帰りたいもの。」

 

咲夜「わかりました。お気をつけてお帰り下さい」

 

そう言うと咲夜は紅魔館へと帰っていった。

 

レミリア「フラン、一緒に来なさい。」

 

フラン「なんで?」

 

レミリア「ちょっと・・・ね?」

 

レミリアはフランの手をとった。フランは心なしか無性に嬉しくなる。

そのまま2人の姉妹は診察室へと入っていく。

 

レミリア「今大丈夫かしら?」

 

永琳「大丈夫だけれど・・・どうしたの?」

 

レミリア「一方通行についてなんだけれど、何とか歩くだけでもさせてあげられないものかしら。」

 

フラン「フランもお願いしてみる!」

 

永琳「無理よ。右半身の運動を司る神経組織そのものが機能していないもの。代わりの脳でもあれば話は別だけど。でもそんなこと出来るわけないからやっぱり無理ね。」

 

レミリア「これを参考に出来ないかしら。彼が戦闘中落とした物よ」スッ

 

レミリアはポケットから一方通行の携帯電話を取り出した。

 

永琳「なにかしら?これは」

 

レミリア「外の世界の機械らしいわ。さっき詳しいという河童の元に持っていったけど、電気というものをエネルギーとし、ある特定の波長を送受信するものらしいわ。・・・これが資料よ。」

 

フラン「なんの話してるかわかんないよぉ・・・」

 

永琳「!なるほど・・・一方通行の脳と誰かの脳に似たような機械を取り付け、脳の機能を代理作動させればドナーとなる者も死ぬことは無い・・・」

 

レミリア「そこで、ドナーとして推薦したいのがフランなのよ?」

 

フラン「呼んだ?」ピョコ

 

レミリア「フラン、一方通行の身体を動かすためにあなたの脳を借りたいの。簡単に言えばあなたと彼の頭の中を波長で繋げて、一方通行に足りない機能をあなたが補うの。分かるかしら?フラン」

 

フラン「うーん・・・やっぱりよくわかんないけど、あの人に出来ない事はなんでもするって決めてるからフランやる!」

 

レミリア「ありがとう、フラン。・・・永琳先生、必要なものと費用は全てうちでもつわ。なんとかしてもらえるかしら。」

 

永琳「・・・分かったわ。河童と協力してやってみる。私としても患者がよりよくなってくれる方が嬉しいもの。」

 

レミリア「決まりね。河童は手配しておくわ。何かあったら使いを寄越して頂戴。ところで、ここはあなた一人で営業されているのかしら?」

 

永琳「違うわ。私の他に二人ほどいるけど、今は出払ってるの。」

 

レミリア「そう。あなたも大変ね。さて、私たちはそろそろお暇するわ。」

 

フラン「バイバーイ!」

 

永琳「ええ、また来て頂戴。」

 

永琳(彼も恵まれているわね・・・)フフ

 

レミリアとフランが出ていった扉を見ながらそう思った永琳だった。

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ!霊夢!!元気してるか?」

 

そう元気に博麗神社に入ってきたのは霊夢の親友。霧雨魔理沙だ。

 

魔理沙「今回の異変大変だったらしいな?私も行きたかったぜ」

 

霊夢「ホント最悪だったわー。外来人入ってくるし、そいつにボコされるわでもうホント最悪だったわー」

 

魔理沙「でも、そいつ人里では今回の異変解決の立役者として英雄扱いされてるぞ」ホラ

 

そういうと、魔理沙は新聞を霊夢に手渡した。

 

赤い霧を発生させた、今回の異変を外来人が解決。半狂乱になった博麗の巫女が霧の湖を消し飛ばそうとしたが、外来人が食い止める。

見たところ人間であるがその正体は依然として不明でありーー

 

霊夢「なによ!私が悪いみたいじゃない!」

 

魔理沙「でも、実際霧の湖を消し飛ばそうとしたんだろ?」

 

霊夢「仕方ないじゃない!なんか外に出すとやばい奴がいるって聞いて戦ってみれば外来人に顔面殴られて気絶するし、気づいたら異変の主犯があいつらと一緒に居るし!勘違いもするじゃない!」

 

魔理沙「勘違いで吹き飛ばされちゃあ、笑うもんも笑えないよな」

 

霊夢「うぐ・・・」

 

魔理沙「でさ、どんなやつなんだよ?その外来人の人間って」

 

霊夢「とにかく白い、モヤシ、頭おかしい、バカみたいに強い、以上!」

 

魔理沙「なんだよ!よくわかんないじゃねぇか」

 

霊夢「私の攻撃が効かないのよ!あんなの人間じゃないわよ!目も赤かったし!あいつ絶対吸血鬼よ!吸血鬼!!」

 

魔理沙「人間でお前を倒せるやつはいなかったからさすごい会ってみたいんだぜ!」

 

霊夢「ケンカ売るのはやめときなさいよ。下手したら死ぬわよ、あんた。」

 

魔理沙「霊夢がそんなに言うなんて相当ヤバいやつなんだな。」

 

霊夢「宴会はどうするの?あいつらも誘うんでしょ?」

 

魔理沙「もちろんだぜ!会って話をしたい!」

 

霊夢「はぁ、ブレないわねあんたは・・・ところで魔理沙、その新聞。出版社はどこ?」

 

魔理沙「文々。新聞だな。」

 

霊夢「ちょっと用事出来たわ。失礼するわね」ゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

魔理沙「待てよ!霊夢!!」

 

今日も幻想郷は平和である。




最後までご覧いただきありがとうございました!
今回は事後編というわけでいかがだったでしょうか?
さて、次回は

第七話 MOON DOCTOR

次回もお楽しみに!


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第七話 MOON DOCTOR

今作もご覧いただきありがとうございます!
今回の主役は天才ドクター永琳先生です。
にわか知識なので、そこはご了承くださいm(_ _"m)

では、本編スタートです!


???「具合はいかがですか?」

 

一方通行「あァ。問題ねェよ。そこに縛りあげてあるクソガキが来たこと以外は問題ねェ。」

 

???「ああっ!てゐ!!また何かやったの!?」

 

そう叱責するのは鈴仙・優曇華院・イナバ。彼女はこの永遠亭で永琳の助手をしている。

そして縛りあげられている少女、因幡てゐ。彼女も永琳の助手をしているが患者に対するイタズラで、いつも鈴仙に叱られている。

 

てゐ「ふん!今回は何もしてないよ!部屋に入ったとたん能力で縛り上げられたんだ。」

 

一方通行「オマエが来る時はイタズラの時以外ねェだろォが・・・もういい加減学ンだわ。」

 

永琳「騒がしいわね・・・何かしら?」

 

鈴仙「師匠!いえ、てゐがまたイタズラを・・・」

 

てゐ「だから今回は何もしてないって!」

 

一方通行「このクソガキどもがうるせェ。さっさと追い出して欲しいとこだな。」

 

鈴仙・てゐ「なっ!?」

 

永琳「二人とも、出ていきなさい。いくら患者が元気といえど、ここは病室です。その点を忘れないように。」

 

鈴仙・てゐ「はい・・・」

 

鈴仙とてゐは肩を落としながら部屋を出ていった。

 

一方通行「これで静かに寝れる。助かったぜェ、永琳。」

 

永琳「それはどういたしまして。でももうちょっと起きててね。」

 

一方通行「なンだ?」

 

永琳「あなたの体が動かせるようになるかもしれないの。」

 

一方通行「脳神経が死ンでンだろォ。無理って話じゃァなかったのか?」

 

永琳「それが可能になるかもしれないの。これをご覧なさい。」スッ

 

一方通行「これは・・・俺のケータイか?」

 

永琳「ええ、戦闘中あなたが落としたらしいわ。珍しいものだったからレミリアが回収したらしいけど。」

 

一方通行「これと俺の身体が動く可能性にはどう関係ある?」

 

永琳「これはある特定の波長で動いてる。電波というやつね。そしてそれでネットワークに繋いで情報を送受信している。違わない?」

 

一方通行「あァ、おおよそは合ってる。しかしなンで電波とかネットワークを知ってンだ?」

 

永琳「月にも似たようなものがあったからね。まさか用語まで同じだとは思わなかったけど。」

 

一方通行「・・・続けろォ」

 

永琳「要するにネットワークを作ってあなたの右半身の脳神経の働きの代理を他のものにしてもらうって訳。」

 

一方通行「そンなことができンのか?」

 

永琳「理論上はね。そしてその相手も決まっているわ・・・いらっしゃい」

 

永琳が呼びかけると部屋の外からフランが入ってきた。

 

一方通行「フラン?オマエが代理脳の対象か?」

 

フラン「うん、わたしがあくせられーたの脳の代わりをするの!」

 

一方通行「おぃ医者ァ、それをすることによってこのガキに何かしら影響は出ないのか?」

 

永琳「大丈夫よ。その辺の工夫はしてるわ。・・・これをご覧なさい」

 

永琳は箱に入った二つの機械を取り出す。

 

永琳「これをあなた達に取り付けるわ。」

 

一方通行「なンだァ、イヤフォンみてェだなこりゃァ」

 

フラン「わーいあなたとおそろいだ!!」

 

永琳「チョーカー型代理脳装置よ。このコードの先の電極をあなた達の脳内にさして通信するの。」

 

一方通行「この四角いのはなンだ?」

 

永琳「これはバッテリーよ。満タン状態で通常72時間、戦闘モード40分と言ったところかしら。」

 

一方通行「やけに差が広いな」

 

永琳「当然よ、戦闘モードはリアルタイムで通信するから電力消費が早いの。それは我慢して頂戴。」

 

一方通行「身体が動かせるようになンだァ。そこまでは望まねェよ。」

 

一方通行「しかし充電はどォする?幻想郷には電気はなかったはずだが。」

 

永琳「その辺は大丈夫よ。河童が発電装置を造ってくれたから。なんでも燃料を入れて燃やすだけで電気が生まれるとか。」

 

一方通行「火力発電ってとこかァ。」

 

フラン「またフランにわからない話してる!」プクー

 

一方通行「うるせェ、少し黙ってろ。」

 

フラン「むぅー!!」

 

永琳「あんまりその子に冷たくしない方がいいわよ?その子が電極を切ればあなたは動けなくなるんだから」クスクス

 

一方通行「・・・ちっ」

 

永琳「手術は今晩行うわ。動けるようなら早く動きたいでしょ?」

 

一方通行「あァ。」

 

永琳「そんなに大きな手術じゃないから明日の昼には退院できるわ。

それと、フランちゃん。あなたにも埋め込むから今日は帰れないわよ」

 

フラン「でも・・・お姉様が・・・」

 

永琳「レミリア嬢には許可はとってあるわ。部屋は一方通行といっしょね!」

 

フラン「やったー!!あなたと一緒だ!!」

 

一方通行「・・・チッ」

 

フラン「あくせられーた、遊んでくれないかなー?」

 

一方通行「遊ぶわけねェだろォ・・・」

 

フラン「今のは独り言だもん!」

 

一方通行「あぁ!!うっせェなァ・・・独り言ってレベルじゃねェぞォ・・・ったく」ゴロン

 

フラン「フフーン!」クルリンパ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあいるかい?永琳」

 

永琳「にとりかしら?」

 

にとり「もうすぐ二人の手術するんだって?」

 

彼女は河城にとり。河童の妖怪で機械学に精通している。今回の代理脳装置と発電装置を造ったのは彼女である。

 

永琳「おかげさまでね・・・」

 

にとり「あの吸血鬼が持ってきた機械には驚かされたよ。外の世界ではあんなに技術が進歩しているなんてね。まあ、それを利用しようと考えた彼女もすごいんだけどさ。」

 

永琳「レミリア・スカーレットね。彼女は『運命を操る程度の能力』を持っているわ。あのケータイってのに何か感じたのかもしれないわね。」

 

にとり「へー、あれケータイっていうんだ。・・・あっ!そうだそうだ、ネットワークの構成が終わったよ。今から代理脳装置に組み込みたいんだけど出してもらっていいかな?」

 

永琳「ええ、お願いするわ。しかしよくこんな精密機械を短時間で造れるものね・・・あなた月の科学者にも匹敵するんじゃない?」

 

にとり「月の技術をもった大先生にそう言ってもらえるなんて光栄だよ」カチャカチャ

 

にとり「よし、あとはインストールするだけだ。」

 

永琳「早速使ってるのね最近入ってきたっていうパソコンってやつ」

 

にとり「うん!これはすごいよ!いままで幻想郷に入ってきたコンピュータ類のものは大体高速計算機みたいなものばっかりだったけどこれは違うね。プログラムを作ったり組み込んだりできるんだ。今回みたいな精密機械を作るときに重宝してるよ。」ピッピッ

 

にとり「よし!インストール完了だ!あとはコイツを取り付けてもらうだけだ。じゃ、頼んだよ!永琳先生!」

 

永琳「あの子たちには会ってかないの?」

 

にとり「会う機会はいくらでもあるさ。それよりも早く取り付けてあげなよ。」

 

永琳「わかったわ。ありがとね。」

 

にとり「ん」ガラガラ

 

にとりは帰っていった。手術の時間まで後一時間。永琳はカルテをもう一度見直し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「ねぇ・・・あくせられーた・・・」

 

一方通行「ンだよ?」

 

フラン「手術って頭を切るんだよね・・・?」

 

一方通行「あァ、そォだ。怖いのか?」

 

フラン「ううん、そんなわけじゃないけど・・・フランは吸血鬼の力ですぐ再生できるけど・・・もし失敗してあなたが死んじゃったらどうしようって・・・」

 

一方通行「大丈夫だ、あの医者は俺の脳を二度治してる。アイツにとっちゃァこンな手術屁でもねェだろォ」

 

永琳「その通りよ。なぜなら私、失敗しないので。」

 

永琳は自信たっぷりに某ドクター〇のセリフをはいた。

 

永琳「時間よ。執刀は私、八意永琳。第一助手は鈴仙・優曇華院・イナバ。麻酔科医は因幡てゐが務めます。質問はないわね。」

 

一方通行「ねェな。」

 

フラン「・・・あのね、あのね!」モジモジ

 

永琳「なぁに?フランちゃん。」

 

フラン「フランはどうなってもいいからあの人だけは絶対治してあげて・・・」

 

永琳(この子はどこまでも優しい子ね・・・)ホロリ

 

永琳「言ったでしょう?失敗しないって。安心して私たちに任せて。」

 

フラン「・・・うん!」

 

永琳「では、麻酔を、てゐ。」

 

てゐ「はい。では麻酔を開始します。男性のほうは点滴による静脈麻酔を。少女のほうにはマスクによる吸入麻酔を行います。」

 

一方通行とフランは数十秒後意識を失った。

 

永琳「優曇華、てゐ、クランケをオペ室へ。」

 

鈴仙・てゐ「了解。」

 

二人は担架に乗せられ手術室へと運ばれ、手術台へと乗せられた。

 

永琳「酸素マスクから気管挿管に変更します。気道確保。」

 

鈴仙・てゐ「気道確保。気管挿管を行います。」

 

てゐ「O2 6 L/分 投与。プロポフォール TCI で目標濃度を 3~4 µg/ml で持続投与。ETCO2問題なし。」ピッピッ

 

永琳「続いて、筋弛緩薬投与。」

 

てゐ「筋弛緩薬投与。小児にロクロニウム 0.6mg投与。続いて男性に1mg投与。バイタル、問題なし。」ピッピッ

 

永琳「パルスオキシメーターは?」

 

鈴仙「問題なく作動。」

 

永琳「小児の方に麻酔による合併症の恐れがある為、先にオペします。」

 

永琳「これより、代理脳装置装着術を始めます。よろしくお願いします。」

 

鈴仙・てゐ「よろしくお願いします。」

 

永琳「11番メス。」

 

鈴仙「11番メス。」スッ

 

永琳は素早い手つきでフランの頭を切開していく。

 

永琳「モノポーラ。」

 

鈴仙「モノポーラ。」スッ

 

手術室に肉が焼けるような臭いが立ち込める。

 

永琳「電極を差し込みます。代理脳装置、メッツェンバウム。」

 

鈴仙「代理脳装置、メッツェンバウム。」スッ

 

永琳はフランの脳内に電極を打ち込んでいく。

 

永琳「打ち込み完了。止血し縫合に移ります。バイタルは?」

 

てゐ「血圧78/42、心拍数79。」

 

永琳「バイポーラ。」

 

鈴仙「バイポーラ。」スッ

 

手術室が再び肉の焼ける臭いで充満する。

 

永琳「止血完了。鈴仙、縫合よろしく。」

 

鈴仙「了解。第三助手、9/0非吸収糸・・・」

 

フランの方は手術が完了したようだ。鈴仙が縫合を終え、看護うさぎ達に引き渡している。

 

永琳「さて、もういっちょやるわよ。」

 

永琳「11番メス。」

 

鈴仙「11番メス。」スッ

 

先ほどと同じ手順で手術が行われていく。

 

永琳「神経部分切除及び代理脳装置を挿入します。」

 

神経を切除し始めた瞬間。

 

ピーッ!!ピーッ!!

 

てゐ「血圧低下!警戒域に到達!」

 

永琳「昇圧剤投与!」

 

てゐ「昇圧剤投与!」ググ

 

てゐは昇圧剤の入った注射器をカテーテルに接続し、一方通行に投与していく。

 

ピーッ!ピー/プツ ピッピッピッピッ

 

てゐ「バイタル正常域に戻りました。」

 

永琳「神経切除を続行します。」

 

常人とは思えないほどの速さで処置がなされていく。

そしてバイポーラで傷を塞ぎ、縫合していく。

 

永琳「術式終了。バイタルは?」

 

てゐ「血圧102/73、心拍数112でサイナス。」

 

永琳「お疲れ様でした。」

 

一同「お疲れさまでした。」

 

永琳は手袋を投げ捨て、手術室を後にした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上から、何か降ってくる。そしてそれは一方通行の手に落ちた。鉄くさい臭い。ふと手のひらに視線を向けると真っ赤な液体がべっとりついていた。自分の周りは血の海だ。彼は何をするわけでもなく手のひらを見つめ血の海に座っていた。全身真っ赤な姿で・・・

すると突然世界が明るくなり、彼は目を細めた。再び目を開けると、そこには見慣れた天井があった。そして今度は自我が突然戻ってきて彼は飛び起き、酸素マスクを外した。

隣を見ると酸素マスクをつけたフランが幸せそうな顔で眠っている。

 

鈴仙「あっ!起きた!体調は問題ないですか?吐き気等ありませんか?」

 

一方通行「問題ねェよ。それよりあの医者は?」

 

鈴仙「師匠なら眠っておられます。徹夜続きからの手術でしたので、お疲れになられて・・・」

 

一方通行「そォか。目ェ覚ましたら礼を言っといてくれ。」

 

鈴仙「はい。それとあなたも寝ていたほうがいいですよ。体力が消耗していますし。」

 

一方通行「あァ、そォする。」

 

そして再び彼は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約一時間後・・・

 

レミリア(大丈夫かしら・・・心配だわ・・・)ソワソワ

 

コンコン

 

咲夜「失礼いたします。お嬢様、来客でございます。おそらく永遠亭の使いかと・・・」

 

レミリア「・・・!わかったわ。今行く。」

 

レミリアはやる気持ちを抑えながら応接間へと向かう。

 

咲夜「こちらでございます。」

 

咲夜が扉を開けた先には看護ウサギがいた。

 

レミリア「よく来てくれたわね。お疲れのところ申し訳ないけれど、フランたちについて話していただけるかしら?」

 

看護ウサギ「はい、現在フランドール・スカーレット様及び、一方通行様は病室にて寝ております。術後の経過は順調で快方へと向かっております。」

 

レミリア「・・・つまり成功したのね?はぁ・・・よかった・・・」フラッ

 

咲夜「!?お嬢様!!」ガシッ

 

レミリアはフランと一方通行が心配で一睡もしていなかったのだ。おまけに代理脳装置のために本来寝ているはずの昼に奔走し、疲れがたまっていないわけがない。

 

咲夜「お嬢様・・・お部屋に戻られて睡眠をとられては・・・」

 

レミリア「そうね・・・私も休むことにするわ・・・客人の方?あなたも疲れておいででしょう。今夜はとまっていきなさい。」

 

看護ウサギ「・・・ではお言葉に甘えて」

 

レミリア「咲夜、妖精メイドに彼女の部屋と食事を用意させなさい。」

 

咲夜「かしこまりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳「・・・ん」パチッ

 

鈴仙「師匠!目覚められましたか。」

 

永琳「・・・ん。で?術後の経過は?」

 

鈴仙「二人とも問題ありません。一方通行に至ってはすでに目覚めました。今は眠っておくように言っておきましたので、多分眠っているでしょう。」

 

永琳「ありがとう、んじゃあ起きたばっかりだけど私も寝ることにしましょうかね。」

 

鈴仙「はい!おやすみなさい。」

 

永琳「おやすみ。」

 

 

手術時間合計 六時間二十五分。     ここに天才ドクターの戦いは終わった。




最後までご覧いただきありがとうございました!
永琳先生のおかげで一方通行たちに例の装置が付いたわけですが、次回どうなることやら・・・

今作のタイトルについてですが、第六話にて新生活と発表いたしましたが、永琳先生の手術が思ったより長引いてしまったため、第八話に移動させていただきます。

※本作のタイトルを『とある吸血鬼と一方通行』に変更します。
 訂正ばかりですみません。

次回・第八話 新生活 (今度こそ)
                       次回もお楽しみに!!


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第二章 新生活編
第八話 新生活


ご覧いただきありがとうございます!
今作は一方通行の引っ越しのお話になります。
吸血鬼姉妹と一方通行の会話にご期待ください!

では、本編スタートです!


深夜遅く・・・永遠亭に居る者たちはみんな寝静まっていた。

 

「ん・・・んむぅ・・・」

 

かわいらしい寝息を立てているのは吸血鬼の少女フランである。彼女は一方通行のために手術を受け、体力を使い果たし一方通行とともに寝ていた。

 

フラン「・・・んんぅ・・・・おしっこ・・・」ムクッ

 

尿意に襲われたのかフランは起き上がりトイレへと向かった。

何とか意識を保とうと頑張り、無事用を足すことができた。

そのまま強烈な眠気と戦いながら、自分の病室へ戻っていく。

 

フラン「・・・んぁぁぁ」バタン

 

フランはベッドに戻るとそのまま寝込んでしまった。そのベッドが一方通行のものであると知らずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリアは朝食を食べていた。朝に起きたのなんて初めてだ。

 

レミリア(もういっそ昼夜逆転させようかしら・・・)

 

そんなことを考えながら紅茶をすする。

 

レミリア「咲夜。」

 

咲夜「お呼びでしょうか?お嬢様。」

 

レミリア「咲夜、今日は朝から永遠亭に行くわよ。準備しておきなさい。」

 

咲夜「かしこまりました。食器の片づけが済み次第、お部屋に参ります。」

 

レミリア「慌てなくていいからね?」

 

咲夜「心得ております。」シュン

 

そう言うと咲夜は消えていた。レミリアの食器も消えていた。

 

レミリア(相変わらず仕事が速いわね・・・)

 

そう思いながらレミリアは自室へと戻り出立の準備をした。

 

コンコン

 

咲夜「私の準備は整いました。お嬢様の準備が整いましたらお声がけください。」

 

レミリア「こちらも準備はできてるわ。行きましょう。」

 

レミリアは日傘をさし、咲夜とともに紅魔館を出て永遠亭に向かった。

 

レミリア「咲夜、この辺に果物屋ってなかったかしら?」スタスタ

 

咲夜「少し道を外れますがありますよ。いかがなさいますか?」

 

レミリア「お見舞いの品がないのは紅魔館の主として恥ずかしいわ。買いに行こうかしら・・・」

 

咲夜「では、私が・・・」

 

レミリア「待って頂戴。私が選びたいの。私からの気持ちとして・・・」

 

咲夜「・・・かしこまりました。」

 

少し道を外れた先に青果屋を見つけた。レミリアは咲夜とともに店へはいっていく。

 

店主「いらっしゃい!」

 

レミリア「お見舞いの品が欲しいのだけれど・・・」

 

店主「だったら定番のリンゴなんかどうだい?」

 

レミリア「そうね、まずはそれを4つ頂こうかしら。あと、このメロンなんかもよさそうね・・・」

 

店主「まいどあり!」

 

レミリア「ありがとう、店主さん。」

 

レミリアと咲夜は青果屋を出て再び永遠亭へ向かった。

迷いの竹林に到達し、案内人の案内を受け、永遠亭に到着した。

二人は案内人に礼を言うとそのまま玄関口へ向かった。

 

ガラガラガラガラガラ

 

レミリア「お邪魔するわね。」

 

咲夜「失礼いたします。」

 

鈴仙「フランちゃんのお姉さんですね!ししょムグッ!!」

 

大きな声で永琳を呼ぼうとした鈴仙を慌てて呼ばれた本人が口を塞いで黙らせた。

すると鈴仙を落としつつレミリア達の方へ顔を向け・・・

 

永琳「レミリア嬢ね、こっちいらっしゃい。面白いものが見れるわよ。」クスクス

 

そう言われきょとんとするレミリアと咲夜だったが永琳についていった。

 

永琳「ここが、あの子たちの病室よ。」

 

促され一番先に入った咲夜が悶絶して倒れた。

 

咲夜「・・・我が生涯に・・・一片の悔いなし・・・!!・・・グフッ」チーン

 

レミリア「咲夜!?いったい何が・・・って!?!?」

 

レミリアの視線の先にはフランが一方通行のお腹に丸まる形で寝ている。

まるで、親猫に寄り添って寝ている子猫のようだ。

そして二人の表情である。寝てるときは本人の素直な表情が現れるというがこれがまたヤバい。フランは一方通行に寄り添って幸せそうな顔して寝ていて、一方通行は普段の凶悪な悪人面からは想像もできないような優し気な表情で寝ている。

咲夜が昇天したのも納得である。

 

永琳「ね、この二人すっごくかわいいでしょ?」

 

レミリア「で?術後の経過は?」ツー

 

永琳「レミリア嬢、鼻血出てるわよ。」

 

レミリアは一生懸命平静を保とうとしていたが、身体のほうは正直だった。

 

レミリア「・・・ごめん・・・私も死にそう・・・」プシップシャッ

 

レミリア両手で鼻を抑えているが手の間から血があふれ出している。

 

永琳「・・・とりあえず出ましょうか。詳しいことは診察室で話すわ。」

 

レミリア「・・・お願いするわ。ほら!咲夜起きて!」

 

咲夜「」ズルズル

 

レミリアは咲夜を引きずりながら診察室へと向かっていった。

 

永琳「そこに座って頂戴。メイドさんは・・・診察台にでも寝かせときなさい。」

 

レミリア「わかったわ。ほら!はしたないわよ咲夜!」ストッ

 

永琳「メイドさんも幸せね。」クスクス

 

レミリア「ホントにとんでもないメイドだわ。」

 

永琳「・・・本題に移るわね、術後の経過は使いが報告した通りよ。電極も問題なく装着できてるわ。

後は、バッテリーを充電して起動するだけね。」

 

レミリア「発電機械はどこに設置するの?」

 

永琳「ここに一つ。紅魔館に一つっていうのはいかがかしら?彼、行く当てなさそうだし。」

 

レミリア「彼は紅魔館で引き取ることにするわ。フランも喜ぶだろうしね。でも、喧嘩っ早い彼のことよ?どうせまたケガしてここに戻ってくるだろうし。装置の配置はそれで問題ないと思うわ。」

 

永琳「そうね、それがいいわ。」

 

ガヤガヤギャーギャー!!

 

永琳「どうやら二人とも起きたみたいね。」

 

レミリア「行きましょうか・・・」スクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行はゆっくり目を覚ました。こんなに安心して眠れたのはいつぶりだろうか。学園都市にいたころは常に命を狙われていたため、いわゆるノンレム睡眠という浅い眠りにしかつくことができなかった。

しかしこの幻想郷というのはお人よしのバカばっかりだ。だが、居心地は悪くない。なぜなら一方通行はこのような平穏な日常を手に入れるために絶対能力者(LEVEL6)になろうとしていたのだから。

しばらくすると感覚がだんだんとはっきりしてきた。すると腹の近くに異物感を感じた。

ふと腹の方向に視線を向けると布団の中で上下に動いているものがある。一方通行は掛布団をめくった。

すると自分の腹に顔をうずめ、幸せそうな寝息をたてている金髪の少女がいた。

 

一方通行(なンでここで寝てンだァ?このクソガキは・・・)

 

一方通行がフランから離れようとすると少女は彼にしがみつき放そうとしない。

 

一方通行「クソッ!放せ!放しやがれェ!!・・・どわっ!!」バタン!

 

彼はフランを振り切ろうと暴れたが自分がベッドから落ちてしまった。

一方通行は自力でベッドに上がろうとするも右半身が動かないため上がることができない。

 

一方通行(クソッ!ポンコツ脳がァ・・・立ち上がることすら出来ねェってのか・・・!)チッ

 

一方通行は悪態をつきながらベッドに上がるのをあきらめ、ベッドを背に座り込んだ。

 

フラン「・・・ん・・・枕・・・」ガシッ

 

フランはベッドの下に落ちた一方通行の頭に抱き着く。

 

一方通行「だァれがァ枕だァ!?クソガキィ!!!!」ガシッ

 

フラン「いてててててててててて!!!!潰れる!潰れちゃうよぉ!!」 ギギギギギギギギギ

 

一方通行はフランの頭を左手で鷲掴みにし、思いっきり力を込めた。

痛がるフランに容赦なく力を籠める一方通行。フランが涙目になったところで・・・

 

永琳「はいはい、そこまでよ。・・・全く、朝から元気ねぇ」

 

一方通行「めんどくせェ・・・」

 

フラン「みゅぅー」プクー

 

レミリア「全くもう、ほら!一方通行!」スッ

 

一方通行「すまねェなァ・・・」パシッ

 

レミリアは一方通行に肩を貸し、ベッドに座らせた。

 

永琳「さあ、記念すべき代理脳装置の起動するわよ。二人とも、このバッテリーをチョーカーの左側につけなさい。」スッ

 

一方通行「あァ」カチャ

 

フラン「うん!」カチャ

 

永琳「バッテリーの上部にスイッチがあるわ。それを長押ししてみなさい。」

 

一方通行「ここかァ・・・」スッ

 

フラン「え?どこどこ?」

 

レミリア「ここよ・・・」

 

フラン「あった!」スッ

 

ピッ!

 

永琳「どう?ちょっと右手を動かしてごらん。」

 

一方通行「・・・動く」スッ

 

レミリア「じゃあ右足は?」

 

一方通行「・・・こっちには少しマヒが残ってるな・・・だが、一応動く。」

 

永琳「杖を持たせれば問題なさそうね。」

 

フラン「じゃあ、成功だね!!」

 

永琳「そうね、うまくいったわ。次は戦闘モード、電源ボタンを短く押してごらんなさい。」

 

ピッ!キュィィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

フラン「おぉ!なんかビビッときた!!」

 

レミリア「フランにも感覚が出るのね。」

 

一方通行「元通りだ。むしろ前より身体能力が上がってンじゃねェか?」

 

永琳「吸血鬼の脳を使ってるからね。その際に発生する生体電気の量とかが違うんでしょ。」

 

レミリア「まあ、よくなる分にはいいでしょ。」

 

永琳「問題ないようね。じゃあ、戦闘モードを切っときなさい。普段も電力は節約しときなさいよ。」

 

一方通行「わかってる・・・」ピッ!

 

一方通行「しっかし、他人に運動神経を任せるってのは慣れねェなァ・・・」

 

永琳「これからゆっくり慣れていけばいいのよ。あっ、そうだこれ充電器ね。」スッ

 

フラン「これでエネルギーを補充するんだね!」カチャ

 

一方通行「コンセントだなァ・・・わかりやすくていい。」カチャ

 

永琳「さて、一方通行、フランちゃん。最後に身体検査を行うわ、診察室にいらっしゃい。あなたはこの杖を使いなさい。」

 

一方通行とフランは永琳に連れられ診察室へと向かう。

 

永琳「一方通行からね。フランちゃんはここで待っててもらえるかしら?」

 

フラン「はーい!」

 

永琳「フフ・・・いい子ね。」

 

一方通行と永琳は診察室へと入っていく。

 

永琳「そこにかけてちょうだい。」

 

一方通行「自分の足で歩くのは何日ぶりだァ・・・ったく」ストッ

 

永琳「でもよかったわ。電極がちゃんと動いて・・・ほら、あーん」

 

永琳は一方通行の診察をしていく。

 

永琳「特に問題ないわね。麻酔の副作用も起こっていない。」

 

一方通行「じゃァ行くぞ。」スクッ

 

永琳「待ちなさい。問診が終わってないわ。」

 

一方通行「必要ねェよ。ンなもン。」

 

永琳「あなたは頭部にダメージを負ったせいで脳に欠損がある。」

 

一方通行「・・・」ピタッ

 

永琳「主に、言語機能、計算機能、運動機能の一部に影響が出ているハズよ。前者二つは完治させた。だけど運動機能は治っていない。しかし脳は未だに未知の部分が多いからね。状況によってはあなたの致命傷になるかもしれないわよ。」

 

一方通行「脅してンのかよ・・・」

 

一方通行は永琳をにらみつける。

 

永琳「私は自分の患者のケアを十全にしたいだけよ。」

 

一方通行「・・・チッ」ストン

 

永琳「あなたの名前と経歴を。」

 

一方通行「一方通行(アクセラレータ)。学園都市に七人いるLEVEL5の超能力者、第一位だった。能力は運動量、熱量、電気量、あらゆるベクトル操作。かつて絶対能力移行計画(LEVEL6シフト計画)に参加して、そして・・・結果こンなガラクタに頼らないと立ち上がることすら出来ねェポンコツと成り果て現在に至る。ってところかァ」フッ

 

永琳「うん・・・問題ないみたいね」ニコ

 

一方通行「ハンッ」スクッ

 

一方通行は杖を突いて立ち上がる。

 

一方通行「皮肉が効いてンじゃねぇかァ」

 

 

 

 

 

 

フラン「ふんふふんふふーん」パタパタ

 

フランは診察室前の椅子に座って足をバタバタさせている。

 

ガラガラガラ と診察室の扉が開く。

 

永琳「終わったわよ。フランちゃん、いらっしゃい。」

 

フラン「はーい!・・・ってねえねえ」

 

一方通行「ンだよォ?」

 

フラン「お注射とかされなかった?」

 

一方通行「・・・されたぞォ、それも特大のをなァ」スタスタ

 

フラン「ええー!?やだやだ待ってー!!あくせられーたぁぁぁぁ!!」

 

永琳「さあ、いらっしゃい」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

フラン「あわわわわわわわわわわわわ」ガタガタガタガタガタ

 

「イイイイイィィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

永遠亭、いや竹林中にフランの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ・・・

 

一方通行は自分の病室に戻りベッドに寝転んだ。

 

レミリア「ねぇ、今の悲鳴なんだと思う?」

 

一方通行「フランだ。診察の時に脅かしてきた。」

 

レミリア「断末魔みたいな声上げてたわよ。あなた、結構エグイ脅かし方したのね。」

 

一方通行「特大注射打たれるぞォーって言っただけだ。あンなので騙されるとは思わなかったなァ」

 

レミリア「かわいそうに・・・」

 

レミリアは一方通行にもてあそばれたフランを心底哀れに思った。

 

レミリア「そうだ、一方通行。荷物をまとめておきなさい。」

 

一方通行「もォ行くのか?」

 

レミリア「フランの診察が終わり次第ね・・・」

 

一方通行「っても持ってくような荷物はねェがな。」

 

レミリア「あなた、丸腰で幻想郷に来たの?」

 

一方通行「俺はオマエ達と違って無理やり連れてこられたンだ。丸腰に決まってらァ」

 

レミリア「どうしましょう・・・紅魔館に男物の服はないわ。」

 

一方通行「ここにも人間は住ンでンだろォ。そこに行きゃァ服ぐれェ売ってンだろ。」

 

レミリア「お金はあるの?」

 

一方通行「一応あるが、いくら入ってンだァ?」ゴソゴソ

 

一方通行の財布には四万五千円ほどはいっていた。

 

一方通行(キャッシュカードがなくなってやがるがどうせこの世界では使えねェだろ。)

 

レミリア「へぇ、あなたお金持ちだったの?普段財布にこれだけ入れてる人間なんかいないわよ。」

 

一方通行「・・・俺がいたところでは第一位だったンだぞ?奨学金は多いに決まってンだろ。」

 

レミリア「ふーん」

 

ガラガラガラ

 

レミリア「帰ってきたようね。」

 

フラン「あ~く~せ~ら~れ~た~!!!!」

 

フランがかなり怒った様子で部屋に入ってきた。

 

フラン「嘘ついたのね!すっごく怖かったんだから!!あーんなんて言われたときなんか口にお注射打たれると思ったんだから!!」

 

一方通行「あー・・・うっせェうっせェ・・・静かにしやがれ・・・」

 

フラン「キー!!!!!」カチッ

 

フランは電極の電源を切った。

 

一方通行「テメッ・・・!このクソガキ!電源を戻しやがれ!!」

 

フラン「あくせられーたが悪いんだもん!フラン悪くないもん!」プイッ

 

一方通行「ンだとォコラァ!!上等だァ!こっちとら身体動かなくとも能力は使えンだァ!!縛り上げてやる!」

 

ガブリ!!!!

 

一方通行「アァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

フランは一方通行の頭に思いっきりかみつき、血を吸い始めた。

 

レミリア「頭はやめときなさいよ。頭は。」ハァ

 

永琳「あらあら、仲がよろしいことで・・・」

 

レミリア「フラン、そろそろ帰るわよ。」

 

永琳「あら、もう帰られるの?」

 

レミリア「あなたには世話になったわ。紅魔館を代表してお礼を申します。」

 

永琳「やめてよ。レミリア嬢。医者として当然のことをしただけよ。」

 

レミリア「フラン、そろそろ電極をつけてあげなさい。」

 

フラン「・・・はーい。」シブシブ カチッ

 

一方通行「・・・クソッタレ」スクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳「じゃあ気を付けて帰りなさいよ。」

 

フラン「バイバーイ!!」

 

一方通行「・・・世話になったなァ、あのうさぎ達にも礼を言っといてくれェ」

 

永琳「ええ、わかったわ。」

 

レミリア「それじゃあ行きましょうか・・・ってああ!!」

 

一方通行「どォしたンだ?」

 

レミリア「傘、咲夜が持ってっちゃった・・・」

 

フラン「ええー!?じゃあフランたち死んじゃうよぉ!」

 

一方通行「太陽が駄目なンか?」

 

レミリア「そうよ!私たち焼け死んじゃうわ!」

 

一方通行「・・・オマエら、俺に触れろ。」

 

フラン「なんで?」

 

一方通行「いいから触れェ」

 

レミリアは一方通行の服をつまみ、フランは彼の手を握った。

 

一方通行「行くぞォ」カチッ キュィィィィィィィィィン!

 

そう言って電極のスイッチを入れると日向へ出ようとした。

 

レミリア「あなたさっきの話忘れたの!!私たち死んじゃうわよ!!」ジタバタ

 

フラン「フランまだ死にたくないよぉ!!!!」ジタバタ

 

一方通行「チッ・・・うるせェなァ・・・大人しくしてろォ」

 

レミリア「死ぬとわかってておとなしくするわけないでしょ!?」

 

一方通行「・・・ハァ」

 

一方通行は吸血鬼姉妹に近寄ると両脇に抱えて背中に竜巻を発生させた。

 

フラン「やだやだやだやだやだやだやだやだ!!」

 

レミリア「」チーン

 

ダァン!!!!

 

一方通行は地面を強く蹴ると空へと飛び立った。

 

フラン「あれ、焼けてない・・・?」

 

一方通行「簡単なことだろォがァ・・・ようは日光に当たらなきゃいいンだろォ?なら、日光そのものを反射すりゃァいいだけじゃねェか」

 

フラン「すごいよ!!あくせられーた!あなたと一緒ならお昼もお外にでられるね!」

 

一方通行「・・・」

 

レミリア「」チーン

 

フラン「お姉様!起きて!」

 

レミリア「ハッ!灼熱地獄は!?」

 

一方通行「ねェよ、ンなもん・・・」

 

レミリア「って太陽ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

レミリア「・・・あれ?死んでない?」

 

一方通行「・・・二度は説明しねェ。」

 

フラン「あくせられーたの能力なんだよ!太陽の光を反射してるんだって、お姉様!」

 

レミリア「へぇー便利ねその能力。いままで咲夜に傘持ちさせてたけど、これからはあなたの手を握って外出しようかしら・・・」

 

一方通行「誰がやるかァ・・・めんどくせェ」

 

レミリア「ふふ、冗談よ。しかし吸血鬼の私がこうして太陽の光を拝められるようになるとはね・・・」

 

フラン「お日様見てるとなんか気分いいよね!」

 

レミリア「そうね、悪くないわ。」

 

一方通行「お上品にしてンのはいいが、今のオマエのカッコからは上品さのかけらもねェな」

 

レミリア「ハッ!放しなさいよ!」

 

一方通行「別にいいが、オマエの丸焼きが出来上がっちまうぞ・・・」

 

レミリア「・・・むぅー」

 

一方通行「フランよォ、オマエのお姉様意外とガキだな」

 

フラン「お姉様か~わいい~」

 

レミリア「・・・覚えてらっしゃい」

 

一方通行「もォすぐ着くぞ。」

 

一方通行は紅魔館の門の前に着地する。

 

フラン「はい!あくせられーた!」

 

一方通行「杖かァ、わりィな・・・」

 

一方通行は電極のスイッチを切り替え杖を突き、歩き出す。レミリアは左手に、フランは一方通行の背中にはりついている。

 

一方通行「・・・あァ?」

 

門に着いたはいいが門番は寝ている。

 

レミリア「美鈴!起きなさい!」

 

一方通行「門番がこンなンだから俺みたいのがくるンだぜ」

 

レミリア「返す言葉もないわ・・・」

 

レミリア「ほら!美鈴!」ペチペチ

 

美鈴「・・・んぁ・・・お嬢様!?」

 

フラン「やっほー美鈴!」

 

美鈴「妹様まで・・・そうだ!お二方!太陽は大丈夫なのですか!?」

 

フラン「この人にくっついてれば大丈夫だよ!」

 

美鈴「よくわかりませんが・・・大丈夫だというならいいです。どうぞお入りください。」

 

一方通行たちは門を抜け紅魔館内へと入る。

 

「おかえりなさいませ、お嬢様。」

 

館内に入るとメイドが出迎えにきた。

 

レミリア「咲夜、あなた日傘持って帰ったでしょ?」

 

咲夜「!申し訳ありませんでした!・・・お聞きしたいのですがお嬢様方はどのようにしてお帰りに?」

 

レミリア「一方通行の能力よ。太陽光を反射してもらったの。彼に触れている限り大丈夫だったわ。」

 

一方通行「出るときなンか失神してたけどなァ」

 

レミリア「!一方通行!!」

 

フラン「お姉様死んでたね。」フフフ

 

レミリア「フランまで!」

 

咲夜「クスッ それは災難でしたね。それでは、お部屋に参りましょうか。」

 

レミリア「笑った!今咲夜笑った!!」

 

咲夜「笑ってなどおりませんわ。私はお嬢様の味方でございます。」

 

一方通行「お漏らしメイドォ、嘘はよくないぜェ」ニタッ

 

フラン「お漏らし?」

 

咲夜「ななななななんでもございませんわ!!さぁ参りましょう!」

 

レミリア・フラン「?」

 

咲夜「一方通行様・・・!このことは内密に・・・!」ヒソヒソ

 

一方通行「・・・なンのことだァ?」

 

咲夜「っ~~~!!!」

 

一方通行(コイツいじンの面白れェなァ・・・)

 

長い廊下を進むとひときわ豪華な扉が出てくる。

 

咲夜「こちらでございます。」ガチャ

 

レミリア「ここが私の部屋よ。改めてようこそ紅魔館へ。」

 

こうして一方通行の新生活が始まった。




最後までご覧いただきありがとうございました!
レミリアの意外と子供っぽいところがかわいいですね。
これからどんなカリスマブレイクを見せてくれるのかたのしみです!
咲夜も一方通行におもちゃにされそうな予感。

さて次回は、第九話 執事、一方通行
                     
                        次回もお楽しみに!!


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第九話 執事、一方通行

今回もご覧いただきありがとうございます!
今作は紅魔館での平凡な日常生活を描いた作品となります。

では、本編スタートです!


一方通行は永遠亭を退院しレミリアの館。紅魔館へと住むことになった。

今回の一件で打ち解けたレミリアは一方通行に対し子供っぽいところを見せてしまった。そして咲夜は弱みを握られオモチャコースまっしぐら。

フランは一緒に一方通行と暮らせることにご満悦である。

 

レミリア「咲夜、あなたは紅魔館内を案内してあげなさい。」

 

咲夜「かしこまりました。」

 

フラン「フランも行くー!」

 

レミリア「いいわよ。フランも行ってらっしゃい。あなたはずっと地下室だったから咲夜が増やした部屋は知らないでしょう。ついでにフランも見てらっしゃいな。」

 

フラン「わーい!」

 

一方通行「あァそォだ、俺はしばらく世話になるが落ち着いたら自分の家を見つける。いつまでも居候ってンも癪に障ンかンなァ」

 

フラン「えー!そんなぁ!」

 

レミリア「わかったわ。それまでここにゆっくりしていきなさいな。」

 

咲夜「一方通行様、妹様。そろそろ・・・」

 

一方通行「あァ、今行く」

 

フラン「行ってきまーす!」

 

レミリア(フラン明るくなったわね。本当に明るくなった・・・いままであの子の自由を奪ってきた分あの子にしてあげないとね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「お漏らしメイドォ、どこからいくンだァ?」

 

咲夜「おもっ!!言わないって!」

 

フラン「さっきからお漏らしってなあに?」

 

一方通行「あァ、このメ「あああああああああああああぁぁ!!」

 

咲夜「そうだ!妹様あとでプリンを作って差し上げますわ!!」

 

フラン「わーい!!やったぁ!!」

 

咲夜「・・・ふぅ(何とかごまかせた・・・)」

 

一方通行「・・・」ニタニタ

 

咲夜「ここが調理室です!ここでメイドたちがご飯を作っています!!」

 

フラン「咲夜?怒ってる?」

 

咲夜「怒ってません!!」

 

フラン「」ビクッ

 

フランは咲夜の気迫に怯えてしまったのか一方通行の後ろに隠れる。

 

一方通行「怖がっちまっただろォが・・・」

 

咲夜「ももも申し訳ございません!妹様!私は怒ってなどおりません!どうかお許しを。」

 

フラン「・・・怒らないほうが咲夜はかわいいよ?」ピョコッ

 

咲夜「妹様・・・」ウルウル

 

一方通行「シワも増えるぞォ」ケケ

 

咲夜「キィィィィィィィィ!!」

 

妖精メイド「あの冷静沈着なメイド長があんなに取り乱すなんて・・・」

 

妖精メイド「あの男の人ただ物じゃないわね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「ここが浴室ですわ・・・」

 

フラン「今度は静かになった。」

 

一方通行「思ったより広いなァ。さすがは館ってとこかァ・・・」

 

咲夜「紅魔館のメイドにお申し付けくださればいつでもご用意いたします。」

 

一方通行「夕飯食ったら入る。メイド長ォ。」

 

咲夜「かしこまりました。夕食後には入れるようにしておきます。」

 

一方通行「結構有能じゃねェかァ・・・」

 

咲夜「当然ですわ!なんたって紅魔館のメイド長ですもの!!」フンス!

 

一方通行「・・・ですわ?」

 

咲夜「?」キョトン

 

一方通行「紅魔館のメイド長ですもの!!」

 

咲夜「」イラッ

 

一方通行「十六夜咲夜ですわ!!」

 

咲夜「」イラッイラッ

 

一方通行「お漏らしメイド長ォですわ!!」フンス!

 

咲夜「野郎ぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!ぶっ殺してやるぅぅぅぅぅぅうぅ!!!!!」ブンッブンッ

 

一方通行「反射ァ。」ギュイン

 

咲夜「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!」ジタバタ

 

一方通行「フランよォ、こンな大人にはならねェよォにしねェとなァ?」

 

フラン「うん!咲夜みたいな人にはならない!」

 

咲夜「・・・ゴファ!?」ブシャッ!!

 

フラン「・・・うわぁ」ドンビキ

 

咲夜「ガハァ!!」ドプシャァ!!

 

一方通行「風呂が汚れちまったじゃねェか・・・」

 

フラン「フラン血は好きだけど、こんなお風呂入りたくないよ・・・」

 

一方通行「俺らが入るまでに掃除しとけよォ」スタスタ

 

咲夜「」チーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ・・・

 

一方通行「戻ったぞォ」

 

フラン「ただいまー!!」

 

レミリア「おかえりなさい、どうだった?我が紅魔館は?」

 

一方通行「結構広かった。メイドの掃除が大変そォだなァ」

 

レミリア「その辺は咲夜が時止めで何とかしてくれてるわ。・・・って咲夜はどこ?」

 

フラン「あー・・・ね?」

 

レミリア「?」

 

一方通行「仕事が増えたってよ。」ケケ

 

レミリア「そう、咲夜も大変ね。メイドの人員増やそうかしら・・・って言ってもまともに働く妖精メイドはいないんだけどね・・・はぁ、どうしたものかしら。」

 

一方通行「・・・」

 

咲夜「お嬢様方・・・ご夕食の準備ができました・・・どうぞお召し上がりください・・・」ゲッソリ

 

レミリア「咲夜!?あなたどうしたの!?」

 

咲夜「なんでもございませんの・・・ただ疲れただけですの・・・」

 

レミリア「本格的に考えたほうがいいわね・・・」

 

レミリア達は食堂へと向かった。

 

フラン「ごっはん♪ごっはん♪」ルンルン

 

レミリア「やけにご機嫌じゃないの。そんなにご飯が楽しみなの?」

 

一方通行「いままで味の薄い飯だったかンなァ、わからなくもねェ」

 

咲夜「ブツブツ・・・」

 

ガチャッ

 

咲夜「ここでございます・・・」

 

一方通行「・・・また御大層ォな部屋じゃねェか」

 

レミリア「まあ、かけなさい」スッ

 

フラン「わーい!」スッ

 

一方通行「・・・」スッ

 

パチュリー「あなたが客人ね?」

 

一方通行「あァ?」

 

パチュリー「初めまして。私は紅魔館に存在するヴワル魔法図書館の司書、パチュリー・ノーレッジよ。」

 

一方通行「異変の時には会わなかったなァ」

 

パチュリー「ええ、博麗の巫女と戦ってたからね・・・」

 

こあ「私はパチュリー様の助手、小悪魔です。こあって呼んでください!」

 

美鈴「私は紹介しましたよね。無視された上に一瞬でやられましたが・・・あの時止血をしてくれてありがとうございました。あのままだとさすがにヤバかったです・・・」

 

一方通行「たしか・・・紅美鈴とか言ったかァ?」

 

美鈴「!聞いてないと思ってましたが聞いててくださったんですね!」

 

レミリア「一方通行、あなたも紹介してあげなさい。」

 

一方通行「一方通行(アクセラレータ)だ。オマエらと同じく外の世界から来た。能力は熱量、電気量、摩擦量などあらゆるベクトルを操る能力だァ。」

 

フラン「ねぇねぇ、もう食べよ?フランもう我慢できないよぉ」グイグイ

 

レミリア「そうね、ほらあなたたち食べ始めましょう。」

 

フラン「せっかく日本にいるんだから日本式でやってみたい!!」

 

咲夜「では、私が・・・いただきます!」

 

「「いただきます!」」

 

一方通行「・・・」

 

フラン「あなたもやって?」

 

一方通行「・・・」

 

フラン「お願い・・・」

 

一方通行「・・・チッ」プィッ

 

フラン「・・・だめ?」ウワメヅカイ

 

咲夜「ガハァ!!」ブシュ!

 

美鈴「あぁ!!私のご飯に咲夜さんの鼻血が!!」

 

一方通行「・・・マス」ボソッ

 

フラン「聞こえない!」

 

一方通行「・・・いただきますゥ!!これで満足かァ!?クソガキィ!!」

 

フラン「はい、よくできました!」ニカッ

 

こあ「おやまぁ・・・」

 

美鈴「これは・・・」

 

パチュリー「・・・」ニタニタ

 

一方通行「・・・何か言ったやつから殺す。」ギロリ

 

こあ・美鈴・パチュリー「」

 

咲夜「」ピクピク

 

レミリア「あ、一方通行はどんなところから来たとかパチェ達聞いてなかったわよね・・・」

 

美鈴「私も聞きたいかなぁ・・・って」ハハ

 

フラン「?あくせられーた、教えてあげよ?」

 

一方通行「チッ・・・俺は学園都市っていうとこにいた。そこの人口のほとンどを学生が占め、ソイツ等を対象に学園都市は能力開発を受けさせていた。」

 

パチュリー「誰でも能力が使えるようになるの?」

 

一方通行「そォじゃねェ、そこでは能力の強さによって無能力者(LEVEL0)から超能力者(LEVEL5)に格付けされている。その学生の中でも大半が無能力者だ。」

 

美鈴「一方通行はどのぐらいのレベルにいたんですか?」

 

一方通行「超能力者第一位だったァ。」

 

美鈴「最強じゃないですかやだー」

 

こあ「そりゃあ美鈴さんが負けるわけだ。」

 

フラン「それどころかフランにも勝ってるんだよ!」

 

レミリア「博麗の巫女にもね・・・それに半狂乱になった巫女の攻撃から右半身を犠牲にして紅魔館と私たちを守ってくれたのよ。」

 

パチュリー「・・・すごいわね」

 

美鈴「あのぉ・・・さっきベクトルを操るって言ってましたけどそれってなんですか?」

 

一方通行「この世界に存在するあらゆる力の向きを操るってことだァ」

 

美鈴「私が殴り掛かった時になぜか私の腕がぐちゃぐちゃになりました。あれはどんなことをしたんですか?」

 

一方通行「簡単な話だァ、自分に当たる攻撃の向きを変えただけだァ。」

 

パチュリー「いわゆる反射ね。」

 

こあ「ええー?それじゃあ無敵じゃないですかぁ・・・」

 

一方通行「そォでもねェ。オマエ等の能力は最初届いた。」

 

美鈴「なんでですか?」

 

一方通行「美鈴は別だが、オマエらが使う弾幕とやらは最初喰らっちまった。俺にとっちゃァ未知の物質が使われたからだァ」

 

フラン「たしゅかに、ふりゃんの攻撃最初届いたけdmgmg]モグモグ

 

レミリア「飲み込んでからしゃべりなさい・・・」

 

フラン「ゴクン! フランの攻撃最初に届いたけどその後から跳ね返されちゃって全く歯が立たなかった」

 

一方通行「俺は運動量でも熱量でも必ず公式を作り出して演算して能力を使う。たとえ未知の物質だったとしても一度触れちまえば解析できる。」

 

パチュリー「つまり一瞬で計算し、能力を行使しているというの!?人間業じゃないわよ・・・」

 

レミリア「その天才的な脳こそが最強の秘訣ってやつかしらね。」

 

レミリアはフォークの手をとめ、一息おく。

 

レミリア「みんな、聞いてちょうだい。この館のメイドを増やそうと思うのだけれど・・・何か意見あるかしら。」

 

パチュリー「妖精メイドをまた雇う気?あんなの何人いたって働かないじゃない」

 

レミリア「そうだけど・・・咲夜がかわいそうで・・・」

 

パチュリー「逆に雇ったとして、そのメイドの世話を咲夜がするのよ?仕事が増えるだけじゃない・・・」

 

一方通行「・・・俺が働くってンはどォだ?」

 

レミリア・パチュリー「え?」

 

咲夜「ハッ!?嫌な予感が!!」

 

一方通行「掃除ぐれェなら俺の能力で楽勝ォだァ。十分戦力にはなンだろォ」

 

レミリア「それはありがたいけど、あなたは恩人よ?食客としていてもいいのよ?」

 

咲夜「そうです!頼みますから大人しくしててください!!」

 

パチュリー「咲夜はなぜ必死なのかしら?」

 

一方通行「一時的とはいえ、住む場所提供してもらってンだァ。なンかしねェと癪だかンなァ。」

 

咲夜「いけませんわ!お嬢様!!こんな奴に働かせては・・・」

 

レミリア「いい加減にしなさい!!一方通行は善意で申し出てくれてるのよ!それを無下にするどころか罵倒までして・・・恥を知りなさい!!!!」

 

咲夜「・・・ゥっ」

 

一方通行「自分から申し出といて厚かましいが、一つ条件がある。」

 

レミリア「なにかしら?」

 

一方通行「給料をくれねェか?この先暮らしていくにはどォしても金が要るかンなァ」

 

レミリア「そんなこと・・・お安い御用よ」

 

一方通行「決まりだなァ」

 

レミリア「それじゃあ、明日一方通行の服と一緒に執事服買いに行こうかしらね。」

 

フラン「ごちそうさま!!お腹いっぱい!!」

 

レミリア「みんな、食べ終わったようね。一方通行、良ければ風呂に入ってらっしゃい。」

 

一方通行「あァ、そうさせてもらう。」

 

フラン「フランも一緒に入る!!」

 

咲夜「!?」

 

レミリア「あら、いいんじゃない?」

 

美鈴「一方通行のお背中流してあげたらどうですか?」

 

パチュリー「一方通行、フラン自分で頭洗えないから洗ってあげてちょうだいな。」

 

こあ「なんか親子みたいですね!」

 

一方通行「断る、美鈴でも洗ってやれ」

 

フラン「いやだぁ!!あくせられーたと入るの!」

 

咲夜「いけません!妹様!!一方通行にあんなことやこんなこと・・・」

 

レミリア「するのはあなただけよ・・・」

 

一方通行「このメイド長解雇したほォがいいンじゃねェかァ?」

 

レミリア「クビまでとはいかなくても降格処分にしようかしら・・・」

 

咲夜「そんな!?お許しを!!」

 

フラン「いこう!あくせられーた!!」グイグイ

 

一方通行「ハァ・・・面倒くせェ」スタスタ

 

美鈴「いってらっしゃーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行とフランは大浴場に入っていた。

 

フラン「ばっしゃーん!!って感じでお風呂に飛び込む!!そしてバシャバシャバシャってバタ足してみる!」

 

一方通行「つーかよォ・・・いくらこの風呂が広いからってェ勝手に解放感にひtバシャッ!!!!

 

一方通行はシャンプーで頭を洗っていたがフランに風呂の水をかけられる。一方通行は立ち上がりフランにつかみかかろうとするも右足が動かず転倒してしまう。

 

フラン「右半身が不自由だと不便だね~。気の毒~」フフン

 

一方通行は頭に片手を置き怒りを抑えている。

 

フラン「それにしても、シャンプーで涙ぐむってどうなの?最強の名が聞いて呆れるよね!」

 

一方通行「・・・クッ!涙ぐンじゃいねェ!!それにオマエの脳利用すりゃァ、すぐnバシャッ!!

 

一方通行「メイド長ォ!!なンでこの俺がこのクソガキの面倒みンだよォ!!」

 

咲夜「仕方ないじゃない!・・・まったくうらやましい」ボソッ

 

バシャッ!!!!

 

一方通行「咲ァ夜ァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

フラン「ふんふふんふふーん♪」

 

レミリア「あら、出たの?」

 

フラン「うん!すっごくさっぱりした!」

 

一方通行「このクソガキとは二度と入らねェ・・・」

 

咲夜「ほら、一方通行。部屋に案内するわ。」

 

一方通行「敬語がなくなってねェかァ?」

 

咲夜「明日から同僚よ?当然じゃない」

 

一方通行「まァ、なンでもいいかァ・・・」

 

咲夜「ここよ、ゆっくり休みなさい。」

 

一方通行「あァ、そォさせてもらう。」

 

ガチャッ

 

一方通行(小綺麗な部屋だな・・・ン?)

 

一方通行の部屋の机の上に箱が置いてある。

 

一方通行(制服かァ?だがレミリアは明日買いに行くとか言ってたなァ・・・)

 

一方通行は箱を開ける。

 

一方通行(!?こりゃァ・・・)

 

箱の中には大量の現金となくしたはずのキャッシュカード、学園都市においてきた衣類が入っていた。

 

一方通行(・・・俺を連れてきた妖怪の仕業かァ?まァありがてェがな・・・しっかしこれだけありゃァ働く必要無いンじゃねェかァ?)

 

一方通行はさっき自分が言った言葉を少し後悔したが・・・

 

一方通行(泊めてもらってる恩があンだァ・・・やってやらァ)

 

そう思いながら彼はベッドに向かい電極を外し充電器に接続し、横になった。

 

一方通行(やっぱ電極が有るか無いかじゃァかなり違うなァ・・・これも全部フラン達のおかげだァ・・・今日は怒っちまったが少し優しくしてやっかなァ・・・)

 

一方通行(なに考えてンだ俺は・・・)

 

一方通行は眠りについた。そして、明日から一方通行の執事としての仕事が始まる。




最後までご覧いただきありがとうございました!!
一方通行とフラン達の日常、いかがだったでしょうか?
そして次回から一方通行の仕事が始まります!
働いたことのない彼は大丈夫なのか・・・

次回、 第十話 最初の仕事
   
                             次回もお楽しみに!!


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第十話 最初の仕事

今作もご覧いただきありがとうございます!
最近テスト期間ですので、投稿ペースが遅くなる可能性があります。
申し訳ありませんがご理解いただきますようよろしくお願いします。

さて、今回は一方通行の執事としての初めての仕事になります!
では、本編スタートです!


「朝だぞぉ!おきろー!!」バーン!

 

元気に扉を開けた金髪の少女は寝ている白髪の少年に飛びつく。

 

一方通行「うっせェうっせェ・・・オマエ吸血鬼だろォが・・・だったら夜まで寝てろ・・・」

 

フラン「むー!今日はあくせられーたの為にお買い物行くって言ってたからせっかく早起きしたのにぃ。」

 

一方通行「そォか、よかったな・・・」ゴロン

 

フラン「だぁかぁらぁ!お・き・る・の!!」バサッ

 

フランは一方通行の掛布団を勢いよくはがした。

 

一方通行「クソガキィ!何しやがる!!」ムクッ

 

フラン「お買い物行くんだって!それに今日から仕事でしょ?」

 

フランのその言葉で一方通行はやっと脳を覚醒させた。

一方通行が起きたのを確認するとフランは一方通行の部屋を探索する。

 

フラン「・・・なんだろこの箱」パカッ

 

一方通行「クソガキィ、人の荷物勝手に開けてンじゃねェ!」

 

フラン「うわぁ・・・お金がいっぱい・・・それにあなたの服がいっぱい!なんで?ここに来た時には何も持ってきてなかったのに・・・」

 

フランは少し考える。

 

フラン「まさか・・・みんなが寝てる間に強盗でもしてきたの?フランはあなたをそんな子に育てた覚えはありませんよ?」

 

一方通行「勝手に開けた挙句勝手なこと抜かしてンじゃねェよ・・・この中には俺の銀行のキャッシュカードが入っていた。それに幻想郷にはこンな服は売ってねェはずだろォ。多分俺をここに連れてきたヤツがご丁寧に学園都市から持ってきてくれたンだろォよ」ハァ

 

フラン「それにしてもこんな大金・・・フランみたことない」

 

一方通行「オマエのお姉様もこンぐれェ持ってンだろ。」

 

フラン「服もたくさん入ってるから買い足す必要ないね!」

 

一方通行「あァ」

 

フラン「それじゃっ、ご飯食べにいこっか!」ピョン!

 

フランと一方通行は部屋を出て食堂に向かう。

扉を開けるとすでに咲夜が朝食を用意していた。

 

咲夜「おはようございます。妹様、一方通行。朝食の準備が整っております。どうぞお召し上がりください。」ペコッ

 

レミリア「おはよう、二人とも。」

 

美鈴「おはようございます!」

 

一方通行「・・・パチュリーと取り巻きがいねェじゃねェか」

 

美鈴「パチュリー様はまだ寝ておられます。小悪魔はパチュリー様の身の回りの準備を。」

 

一方通行「すげェ堕落した生活だな」

 

フラン「さっきのあなたからして人のこと言えないよ。」

 

レミリア「そろそろいただきましょうか。」

 

「「いただきます!」」

 

一方通行「・・・いただきます。」

 

美鈴「おや・・・」

 

咲夜「これは・・・」

 

レミリア「・・・フフ」

 

フラン「よくできましたぁ!!」ニカッ

 

咲夜「がはぁ!!」ブシャッ!

 

美鈴「あぁ!私の食事がぁぁぁ!!」

 

一方通行「・・・面倒はゴメンだかンなァ・・・」

 

一同は食事を進めていく。

 

レミリア「さて、今日の日程だけれど一方通行のための買い物ね。」

 

一方通行「それが昨日の晩俺をここに連れてきた野郎ォが学園都市から金と着替えもってきやがった。だから服は大丈夫だァ」

 

レミリア「でも、執事服は必要でしょ?」

 

一方通行「どォしても着なきゃダメか・・・?」

 

レミリア「ここで働く以上服装はきちっとしないとね。」

 

咲夜「では午前九時より出発いたします。それまでに準備をお済ませください」

 

フラン「はーい!」

 

一方通行「フランも行くのか?」

 

レミリア「行きたいっていうからね・・・当然私も行くわよ。人里がどんなところか興味あるしね。」

 

一方通行「今度は日傘忘れンなよ。」

 

レミリア「あれは咲夜が持ってっただけよ・・・」

 

咲夜「・・・申し訳ございませんでした・・・」

 

美鈴「まあまあ・・・」

 

一方通行「先に部屋に戻ンぞ」スクッ

 

フラン「フランも!」

 

レミリア「それじゃあ九時前にロビーね。」

 

一方通行「・・・」

 

フラン「はーい!」

 

ガチャっ・・・バタン・・・

 

一方通行(外出の時に傘が必要なンは面倒だろォ・・・夜、電極に細工してみるか・・・)スタスタ

 

フラン「何かんがえてるの?」スタスタ

 

一方通行「なンでもねェ」スタスタ

 

フラン「おしえてよー」

 

一方通行「明日になったら分かる・・・てかオマエの部屋はあっちだろォが、なンでついてくる」スタスタ

 

フラン「フランもう準備終わってたんだよ!暇だからあくせられーたのお手伝いするの!・・・あー!でも、うるさいからあっち行けってのは無しね!」

 

一方通行「あァそォかよ」ガチャッ

 

フラン「あっ!待ってー!!」

 

一方通行は部屋に入るとベッドに横になった。

 

フラン「もぉーまた寝るの?準備は大丈夫なの ?」

 

一方通行「準備なンているかよ。財布だけ持ってきゃァいいンだろォが」ゴロン

 

一方通行はダルそうに寝返りをうつ。

 

一方通行「オマエ、ついてくるとか言ったが金は持ってンのか?」

 

フラン「ううん、もってないよ?」

 

一方通行「何しに行くンだよ・・・」ゴソゴソ

 

一方通行は財布から五千円を取り出した。

 

一方通行「ほらよ、自分で考えて使え。」

 

フラン「でもフランお金の使い方わかんないよ?」

 

一方通行「とりあえず五千円だ。その額で何が買えるか自分で学べェ」

 

フラン「うん!わかった!!」

 

一方通行「オマエ数学・・・いや算数はできンのか?」

 

一方通行はふと思ったことをきいてみる。

 

フラン「出来ない!!」ニカッ

 

素晴らしい笑顔だった。

 

 

 

 

準備を済ませた一方通行達はロビーに集合した。

 

レミリア「集まったわね。」

 

咲夜「では、参りましょうか。」

 

フラン「わーい!」

 

一方通行「はァ・・・」

 

レミリア「一方通行、ため息なんてどうしたの?」

 

一方通行「オマエは大事な妹に生涯学習もさせてこなかったンだな。」

 

レミリア「うっ・・・だって教え方わかんないんだもん。」

 

一方通行「他の奴らに頼みゃァよかったじゃねェか・・・」

 

レミリア「妖精メイドは論外だし、他のみんなは忙しいのよ!」

 

一方通行「その結果おバカなクソガキの誕生ってわけか。」

 

レミリア「くっ・・・なんで急にそんなこと」

 

一方通行「あのガキに小遣いを与えた。数くらい数えられると信じてェが数学に関してはまったく教養がないらしい。」

 

レミリア「・・・あなた、確か演算で能力使うんだったわよね?」

 

一方通行「だったらなンだ?」

 

レミリア「フランに勉強教えてくれない?」ニコッ

 

一行は玄関口の扉を開け、紅魔館の外に出る。

 

一方通行「やなこった。誰がそンな面倒ォなこと・・・」

 

レミリア「じゃあ紅魔館の主として執事に命令します。フランの教育をなさい。」

 

一方通行「・・・チッ、職権乱用しやがってェ」

 

紅魔館の庭を抜け門へ到達する。

 

レミリア「開けてちょうだい。」

 

レミリアが一言発すると門番の美鈴が外から門を開けた。

 

美鈴「お出かけですか?」

 

フラン「うん!お買い物行くんだー!」

 

咲夜「寝たら・・・分かってるでしょうね。」

 

美鈴「は、はい!分かっております!この紅美鈴命に代えても紅魔館をお守りします!!」

 

レミリア「じゃあ行くわよ。」

 

レミリア達は歩いて人里へと向かった。

フランは道中咲く花や動物、建物などなんにでも興味を示し、はしゃいでいた。初めて見るものに対しては特に。

咲夜は意識を保つのに必死だった。

 

フラン「わぁー・・・」

 

一方通行「・・・なンかァ、江戸時代みてェな街並みだなァ。」

 

レミリア「そうねmgmg日本の文化というのはなかなかどうしてmgmg」モグモグ

 

一方通行「・・・みたらし団子がそンなにうめェか」

 

レミリア「それはもう!最高だわ。」

 

一方通行「オイ、買い物にきたンじゃなかったのか?」

 

レミリア「私は咲夜とここに居るわ。あなたとフランは買い物してきなさい。」

 

一方通行「服はどォすンだ?」

 

レミリア「紳士としてふさわしいものならなんでもいいわ。」

 

一方通行「ちっ、テキトーいいやがる。」スタスタ

 

フラン「待ってよー!あくせられーた!」タタタ

 

咲夜「いいのですか?お嬢様。」

 

レミリア「構わないわ、フランも楽しんでいるし。それよりもっと日本のお菓子というものを食べたいわ。」

 

咲夜「お供致します。」

 

 

 

 

フラン「手ぇつなご?」

 

一方通行「断る。なンでそンな面倒なこと・・・」

 

フラン「傘閉じちゃうよ?」

 

一方通行「チッ・・・クソガキがァ」

 

フラン「えへへ♪」ギュ

 

フランは一方通行の手を握り傘を閉じた。

 

一方通行「どォいうつもりだァ?」

 

フラン「反射で太陽の光から守ってくれるんでしょ?」

 

一方通行「・・・ハァ」

 

フラン「人里はすごいにぎわってるね。」

 

魔理沙「・・・ん?(あんな奴ら幻想郷にいたか?それに銀髪の少年に金髪の子供?親子か?にしては年が離れすぎだろ・・・だったら兄妹?)」スタスタ

 

一方通行(あの魔女みてェなヤツなンか俺たちのことずっと見てくンなァ・・・一応スイッチ入れておくか・・・)ピッ!キュィィィィィィィィィン!!

 

フラン「!ビビッときた!!あくせられーた、なんかあったの?」

 

一方通行「・・・念のためだ。あの仕立て屋にいくぞ。」スタスタ

 

フラン「うん!」タタタ

 

仕立て屋

 

店員「いらっしゃいませー!」

 

フラン「この人の執事服が欲しいの!」

 

一方通行「はしゃぐンじゃねェ」

 

店員「かしこまりました。ではあちらにスーツ類がございます。どうぞゆっくりお選びください!」

 

フラン「フランがみたげる!」

 

一方通行「その必要はねェ。こンなもンでいいだろ。」ヒョィッ

 

フラン「そんな適当じゃダメだよ!ちゃんと選ばなきゃ!」

 

一方通行「じゃァオマエがえらべェ」

 

フラン「いいの!?」

 

一方通行「面倒くせェかンなァ(ついてきてやがンなァ)」

 

魔理沙(付いてきちまったぜ!・・・しっかしスーツなんか見て何に使うんだ?)

 

フラン「こんなのどう?」ヒョィ

 

一方通行「いいンじゃねェか?」

 

フラン「ちょっと着てみてよ」

 

一方通行「いや、いい。オマエが選らンだンだァ、間違いねェだろォ。」

 

フラン「そんなこと///」

 

一方通行(チョロいな)

 

フラン「お金払いに行こ!」

 

一方通行「あァ。」

 

店員「六万五千円になります。」

 

一方通行「・・・」スッ

 

フラン「お~」キラキラ

 

店員「ちょうどいただきますね。ありがとうございました!」

 

魔理沙(おっ、買い終えたか)

 

一方通行「フランよォ、オマエ一人で買い物できるか?」

 

フラン「やってみたーい!」

 

一方通行「あそこに駄菓子屋がある。あそこで好きなもン買ってみろォ。ちゃンと買えたか後で見てやる。」

 

フラン「はーい!」トテテ

 

一方通行(・・・さて)スタスタ

 

魔理沙(別れた!子供の方は駄菓子屋かー・・・なら追うのは)スタスタ

 

一方通行(かかったか・・・)

 

一方通行は人里の人気のない路地裏に入る。もちろん魔理沙も続いていく。

 

一方通行「さっきからついてきている魔女さンよォ・・・そろそろ俺になンの用か聞かせてほしいなァ!!」ダァン!!

 

魔理沙「おわっ!!」ズザザザザザ

 

一方通行は地面を蹴り能力で魔理沙を自分の足元に引き寄せた。

 

一方通行「さっきから俺とあのガキをつけてたな?なンの目的だァ?」

 

魔理沙「・・・お前を倒すためだと言ったら?」

 

一方通行「血みどろ確定ェ。」

 

魔理沙「こんな危険人物放ってはおけないぜ!お前たち外来人だな?」

 

一方通行「それがどォした?」

 

魔理沙「外来人は大体異変を起こすって相場が決まってらぁ!異変を起こされる前に倒す!」

 

一方通行「いいだろォ・・・俺にケンカ吹っ掛けたことォ、公開させてやる・・・」ニタァ

 

魔理沙「先手必勝!!いきなり最大火力!!恋府『マスタースパーク』!!!!」ドォルルルルルルルルルルルルルル!!!!

 

魔理沙は極太レーザーを発射し、一方通行を一撃で撃破しようと接近する。

 

一方通行(真正面からの一直線攻撃・・・馬鹿か?コイツは・・・)

 

一方通行はスイッチを切り、左手を前に突き出した。

 

ギュィン!!!!

 

マスタースパークは軌道を変え空へと消えていった。

 

一方通行(解析完了ォ)

 

魔理沙「何っ!?」

 

一方通行「どォだ?これでもまだやるかァ?」

 

魔理沙「なめんな!!」

 

魔理沙はマスタースパークの最終系ファイナルスパークを発動させた。

 

一方通行「バカの一つ覚えだなァ」ギュイン

 

今度はファイナルスパークを多少分散させて魔理沙に向けて反射した。

 

魔理沙「うわっ!!!!」

 

ズガガガガガガガガガァァァァァァンンンン!!!!

 

一方通行「どォだァ?自分の技ン味はァ?」

 

魔理沙「ぐぅ・・・かはっ・・・」

 

一方通行「終いだァ・・・寝てる分には何もしねェが、起き上がってくンならオマエを血みどろにしてやる。」

 

魔理沙「まさか・・・お前は・・・」

 

一方通行「オマエの意識を残しておいたのには理由がある。話せ、誰の差し金で俺たちを付けた?」

 

魔理沙「誰の差し金でもねぇよ。興味あったからついてきただけだ・・・」

 

一方通行「信じられねェなァ・・・楽しい楽しい拷問をしてもいいンだぜェ?」

 

魔理沙「ホントに・・・なんも隠してないって」

 

一方通行「まァいい、二つ目だ。オマエはなにもンだァ?」

 

魔理沙「霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ。たまに霊夢と一緒に異変解決してる・・・」

 

一方通行「霊夢だと?・・・オマエ霊夢の知り合いか?」

 

魔理沙「霊夢を知ってんのか?大親友だぜ。」

 

一方通行「肩を並べて親友っていうにはオマエにはたりねェもンが多すぎる。そンなンじゃァ俺はおろかあの巫女にも届かねェ。」

 

魔理沙「・・・くっ」

 

一方通行「今回俺はたまたま悪党だったからよかったが、これがカタギだったらどォする?オマエはただのクソッタレの小悪党ォだァ・・・

それこそ異変の犯人とかいうヤツになっちまうンじゃねェかァ?」

 

魔理沙「・・・お前もしかして紅霧異変の英雄か?」

 

一方通行「あァ?」

 

魔理沙「この強さ・・・間違いないと思うんだが・・・」

 

一方通行「さァな・・・俺はただの悪党ォだ・・・クソッタレ。」スタスタ

 

路地裏から出た一方通行は駄菓子屋に向かう。

 

フラン「あー!あくせられーた!!」

 

一方通行「ちゃンと買えたかァ?」

 

フラン「みてみてー!」スッ

 

フランの両手には駄菓子がいっぱいあった。おまけにポケットにもあふれんばかりのお菓子が詰め込まれている。初めての買い物が大成功してフランはご満悦の様子だ。

 

一方通行「ちゃンとできてンなァ。初めてにしては上出来じゃなェかァ」

 

フラン「えへへ・・・あなたにも分けてあげる!」

 

一方通行「持って帰って食べるぞ」

 

フラン「うん!」

 

 

 

 

レミリア「あら、終わったの?」

 

咲夜「」チーン

 

一方通行「なンでコイツは死ンでンだァ?」

 

レミリア「お団子102個辺りからこうなってたわ。」

 

一方通行「どンだけ食うンだよ・・・」

 

レミリア「人間の限界を見てみたかったの。結構入ってびっくりしたわ。」

 

フラン「うわぁ・・・口にいっぱい棒がささってるよ・・・」

 

一方通行「エグイ事すンなァ」

 

レミリア「一方通行の買い物が終わったことだし、そろそろ帰りますか・・・」スクッ

 

一方通行「コイツはどォすンだァ?」

 

レミリア「ほっといていいわよ、そのうち起きるわ。」

 

フラン「ちょっとかわいそう・・・」

 

 

 

 

 

 

一方通行たちは咲夜をおいて紅魔館へと帰った。

帰るなり一方通行は買ってきた執事服をフランに着せられ、遊ばれていた。

 

フラン「すごいすごい!よく似合ってるよあくせられーた!」

 

一方通行「あァそォかよ・・・ったく」

 

レミリア「普通に様になってるわよ。」

 

一方通行「・・・」

 

レミリア「では、早速仕事をお願いしていいかしら?」

 

一方通行「なンだ?」

 

レミリア「館の掃除をお願いするわ。」

 

一方通行「このバカデカい屋敷をかァ?俺一人で?」

 

レミリア「仕方ないじゃない咲夜おいてきちゃったし。」

 

フラン「がんばれー!」

 

一方通行「クソがァ・・・」ピッ!キュィィィィィィィィィンンンン!!!!

 

一方通行はスイッチを入れると部屋を飛び出した。

能力を使って掃除をするつもりだ。

 

一方通行の三分クリーニング

 

1、風を紅魔館全体へ吹かせ、ゴミを外へ飛ばします。

 

2、湖の水を使い、紅魔館を水没させます。

 

3、最後に水を全て湖に戻して終了。

 

 

一方通行「まァこンなもンかァ・・・」カチッ

 

一方通行は掃除を終え、レミリア達のいる部屋にはいった。

 

一方通行「終わったぞォ」ガチャ

 

レミリア「あなたがガサツで神経質なのは知っていたけど・・・ここまでひどいとは思わなかったわ。」

 

フラン「サボりはいけないよ!」

 

一方通行「じゃァ廊下見て来いよ。文句はそれから言えェ。」ポスッ

 

フラン「ちょっと見てくるね!」ガチャ

 

フラン「」アゼン

 

レミリア「どうしたの?」

 

フラン「綺麗・・・」

 

レミリア「嘘おっしゃい、こんなに早く終わるわけ・・・」アゼン

 

一方通行「どォだ?まだ文句あるかァ?クソガキども。」

 

レミ・フラ「「滅相もございません。」」

 

レミリア「それにしてもこんな早く・・・どうやったの?」

 

フラン「フランも知りたーい!」

 

一方通行「簡単な話だァ、まず風のベクトルを操ってゴミを外に出す。」

 

フラン「うんうん」

 

一方通行「次に湖の水を使って紅魔館を水没させる。」

 

レミリア「ん?(今ヤバいこと聞いた気がするけど気のせいよね)」

 

一方通行「後、脱水すれば終わりだァ。」

 

レミリア「なるほど(気のせいだったようね)」

 

フラン「あなたの能力って便利だね!フランもその能力使えたら太陽なんて怖くないのに・・・」

 

レミリア「仕方ないじゃない、能力は生まれ持ってのものなんだから。」

 

一方通行「もォ仕事は終わりかァ?」

 

レミリア「いいえ、悪いけどあなたには昼食を作ってもらうわ。」

 

フラン「あくせられーたのお料理!?食べてみた~い!!」

 

一方通行「ふざけンなァ!俺ァ自炊なンてしたことねェぞォ!!」

 

レミリア「あなたは執事よ。主の命に従いなさい。」

 

フラン「フランは家庭的あくせられーたを期待してたんだけどなぁ・・・」キラキラ

 

一方通行「チッ・・・」スタスタ ガチャ

 

レミリア「どこへ行くの?」

 

一方通行「厨房だ・・・どンな物でも文句言うなよ・・・」キィー バタン

 

 

 

一方通行(クソがァ・・・なンで俺がこンなこと・・・)スタスタ

 

パチュリー「あら、一方通行じゃない。執事服なんて着てどうしたの?なかなか似合ってるわよ。」

 

一方通行「見ての通り働いてンだァ。」

 

パチュリー「面倒くさいから深くは聞かないわ。あなたも聞いてほしくないようだし。」

 

一方通行「チッ・・・」スタスタ

 

パチュリー「頑張ってね。」

 

一方通行(所々妖精メイドどもが居やがるがちっとも働いてねェじゃなェか・・・)スタスタ

 

さぼりまくっている妖精メイドを見ながら一方通行は厨房へと着いた。

 

ガチャッ

 

一方通行(来たのはいいがどォすりゃァいいンだ?どっかに料理本でもありゃァなンとかなりそォだが・・・)ガサゴソ

 

一方通行は棚をあさり、本を見つける。

 

一方通行(料理本の横にロリもンのエロ本あったぞ・・・あのメイド長ォとンだエロメイドじゃァねェか・・・)

 

彼は咲夜に呆れながらレシピ本を開ける。

 

一方通行(ハンバーグ?まァこンなもンでいいだろォ・・・後は冷蔵庫に肉が入ってるかだがァ・・・)

 

バカッ・・・

 

一方通行(あンじゃねェかァ)

 

一方通行(基本となるハンバーグの材料は『合びき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳、おろしにんにく』で、ここに塩や胡椒といった基礎調味料を加えて作りますゥ?材料はァ・・・そろってンなァ。)

 

一方通行は調味料の置き場所がわからず苦労したが、なんとか見つけて材料をそろえた。

 

一方通行(フライパンにサラダ油大さじ1を入れて強めの中火で熱し、みじン切りの玉ねぎを加えて時おり混ぜながら炒める・・・色が軽くついてきたら弱めの中火に火を落としていく。)トントン ジュワーッ

 

一方通行(ボウルに合びき肉を入れ、混ぜる前に材料を順にすべて加える。・・・混ぜンのめんどくせェなァ・・・いいこと思いついたァ。)

 

一方通行は重力と空気のベクトルを操り、ハンバーグのタネを浮かせ、圧縮していく。

 

一方通行「圧縮、圧縮ゥ!空気を圧縮ゥ!!いいぜェ!いいかンじだぜェ!!」ググググググググググ

 

そして一気にハンバーグのタネを分けて空気を抜き、形を整えた。後は焼くだけだ。

 

一方通行「フライパンなンて必要ォねェ!!直接焼いてやるぜェ!!」

 

彼は火を操作し絶妙な加減でしっかりハンバーグの中まで火を通した。

 

一方通行(あとはソースだな・・・)

 

一方通行は調味料を合わせる前に残った脂の分量を確認し、肉から出た脂や肉汁を活用してソースを作っていく。

 

一方通行(ケチャップ…大さじ6、ウスターソース…大さじ2と1、醤油…大さじ2・・・)トポトポ ジュワーッ

 

ソースをハンバーグにかけ、周りにトマトとゆで済みブロッコリーを盛り付ける。

そして、コーンスープも作った。(インスタントだが)

 

一方通行(料理程度でテンション上がっちまったァ・・・なにやってンだ・・・俺。)ハァ

 

一方通行は廊下でしゃべっていた妖精メイドたちを恐喝し、無理やり料理を運ばせた。

 

ガチャッ

 

一方通行「お待たせいたしました。本日の昼食ですってかァ?」

 

レミリア「あら、できたの?」

 

パチュリー「一方通行の料理なんて正直不安しかないけど・・・」

 

こあ「でもすっごく興味あります!」

 

美鈴「お腹すきましたぁ」

 

フラン「見せて見せて!」

 

咲夜「いい匂いがするわね。」

 

一方通行「あァ?いつ帰ってきた?」

 

咲夜「さっきよ?気が付いたらおいてかれててびっくりしたわ。」

 

一方通行「残念だがァ、オマエの分はねェ。」

 

咲夜「そんな!?」

 

一方通行「・・・嘘だァ」ケケ

 

咲夜「ムキー!!」

 

一方通行「オラ、配膳しやがれクソガキども。」

 

一方通行は妖精メイドに配膳させ、自分も席に着いた。

 

レミリア「・・・驚いた。あなた、どうやって妖精メイドたちを?」

 

一方通行「ちょっとお願いしただけだァ。」チラッ

 

妖精メイド達「」ビクッ

 

レミリア「ふーん、すごいわね・・・あら、美味しそう。」

 

フラン「すっごく綺麗!」

 

パチュリー「見た目は良くて味が最悪というパターンかしら・・・」

 

こあ「さすがにひどいですよ!パチュリー様!」

 

美鈴「これは・・・美味そうですね」ジュルリ

 

咲夜「一方通行、あなた料理の経験があるの?」

 

一方通行「ねェよ。レシピ通り作っただけだァ。」

 

レミリア「それにしても綺麗にできてるわ。」

 

フラン「そろそろ、食べたいよ!お姉様!!」

 

レミリア「そうね。ではいただきましょうか。」

 

「「いただきます!」」

 

パクッ

 

フラン「んん!?」

 

咲夜「これは・・・」

 

パチュリー「以外・・・美味いわね・・・」

 

レミリア「味付けもいいし、中まで完璧に火が通っているわ。」

 

こあ「ソースも最高です!」

 

一方通行「あァそォかよ・・・(いい出来栄えだなァ)」

 

咲夜「でも、初めて作った料理がこんなに上手なんて・・・」

 

フラン「また能力使ったの?」

 

一方通行「そォだ。」

 

パチュリー「なんでそう思ったの?」

 

フラン「あくせられーたの能力は便利だもん!もしかしたらと思ってね!」

 

レミリア「それにコーンスープをつけるとはなかなかセンスがいいわね。」

 

一方通行「学園都市のレストランがそォだったかンなァ。」

 

咲夜「一方通行、ご苦労様。後は私に任せて今日は休みなさいな。掃除をしなくていいだけでも相当楽になったわ。ありがとう。」

 

一方通行「お嬢様の命令だかンなァ。」

 

レミリア「最初にしては・・・じゃなくてすごく戦力になるわ。今日はありがとね。」

 

一方通行「あァ、俺は部屋に戻る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は自室に戻ると部屋のベッドに横になった。

 

一方通行(いままで働いたことなかったかンなァ。体力的じゃなく精神的にもキツイわァ・・・)

 

そんなことを考えていたら彼は寝てしまった。

 




最後までご覧いただきありがとうございました!

一方通行は今回初仕事で掃除と料理をしただけで眠ってしまうほど疲れていますね!
彼にとっては慣れないこと、らしくないことは疲れることなのでしょう。

さて次回 第十一話 代理脳装置
                            次回もお楽しみに!!


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第十一話 代理脳装置

今作もご覧いただきありがとうございます!
今回は一方通行がフランのために動き回る話です。
執事として頑張る一方通行は仕事を終え、午後から代理脳装置の改造のため必要なものを集めるため幻想郷を走り回ります。

※作品品質向上のため評価や感想をたくさん御寄せいただけると幸いです。どうかよろしくお願いします。

それでは、本編スタートです!!


一方通行は目を覚ました。

 

一方通行「・・・寝ちまってたか。」

 

寝起きで眠い目をこすりながら時計を見る。時計の針は1時半頃を指していた。

 

一方通行(そンなには寝てなかったよォだな・・・)ムクリ

 

一方通行はベッドを離れ、自室のドアを開けた。

 

一方通行(ン?)

 

外側のドアノブに袋がかかっていたようだ。一方通行はそれを拾い上げる。袋の中身はお菓子だった。午前中フランと買い物に行った時のものだ。一方通行はあの時一緒に食べるという約束をしたのを思い出した。

 

一方通行(・・・)スッ

 

一方通行はポケットの中にお菓子をしまい込み部屋を後にした。

静かな廊下に杖の突く音だけが響いていた。

 

 

 

一方通行「開けろォ!」

 

門の前に立った一方通行は外側の門番に向かって声をかけた。

 

ガチャン!!ギィィィィィィ・・・

 

美鈴「お出かけですか?しかもおひとりで?」

 

一方通行「あァ、訪ねたい所があってなァ。」

 

美鈴「そうですか、確かにあなたもここに来て日が浅いですもんね。探索とかしたいでしょう。どうぞお通りください。」

 

一方通行「あァ」スタスタ

 

一方通行は門の外に出ると背中に2本の竜巻を発生させ、大空へと飛び立っていった。

 

美鈴(飛んでいくなら門を開けろとは言わないはず・・・パチュリー様の結界に気づいていますね・・・全くあの人は。)フフ

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(永遠亭は・・・確かあっちだったなァ)ヒュォォォ

 

カシャッ!!

 

一方通行「あァ?」

 

???「いやぁ、やっと見つけましたよ!」

 

一方通行は後ろからしたシャッター音と女の声に驚き後ろに振り返る。

 

文「こんにちは!私は文々。新聞の清く正しい射命丸文です!」

 

そう名乗った新聞記者は再び一方通行の写真を撮った。

見た目は黒髪の女にしか見えないが背中の大きな烏のような黒い羽がそのイメージを壊している。

 

文「その白い髪、紅い眼。まさしくあなたですね?外来人でありながら紅霧異変を解決したという方は!いやーあの時は姿は見れたもののカメラに収められなくてですね!ようやく撮れましたよ!」

 

一方通行「・・・いきなり勝手に写真とりやがった上に勝手なことほざいてンじゃねェぞ三下がァ!!!!」

 

文「三下ですかぁ・・・・・・・・・・・・・・・あまり妖怪を舐めるなよ人間。ひき肉にするぞ・・・」

 

そういうと文は目にも止まらぬ速さで一方通行の後ろに回り込み首をつかむ・・・はずだった。

 

一方通行「あまり人間を舐めンなよォクソカラスゥ・・・羽根もぎ取って手羽先にすンぞォ・・・・・・・」ニタァ

 

一方通行はさらに文の後ろに回りこみ、首を握っていた。

 

文「・・・かっ・・・はぁ・・・(人間なのにこの握力・・・どうなってんの?)」グググ

 

パッ

 

文「ゲホッ!ゴホッ!」

 

一方通行は文の首から手を離した。

 

一方通行「今回はこの程度にしといてやる。・・・俺の写真は消しとけェ。」

 

そういって一方通行は永遠亭に向かおうとする。

 

一方通行「・・・オイ、クソカラスゥ」ピタッ

 

文「クソカラスって呼ばないでください!私には射命丸文という立派な名前があります!・・・で、なんですか?」

 

一方通行「機械に精通してる河童とやらを知ってるか?」

 

文「知ってると言ったら?」

 

一方通行「居場所を教えろォ。」

 

文「いいですけど交換条件があります。」

 

一方通行「だったら永琳に聞きに行ったほォがいい。」

 

文「河童達の住んでるところは人間は立ち入り出来ませんよ?入ったが最後攻撃されます。」

 

一方通行「だったらオマエみてェに蹴散らすまでだァ。」

 

文「やめといた方がいいですよ?あなたもこれからここで住むんでしょう?なら、幻想郷の住人とは友好な関係を持っておかないと。」

 

一方通行「・・・チッ、条件を言えェ。」

 

文「あなたについて詳しく取材させてください!」

 

一方通行「・・・クソッタレがァ。」

 

文「案内しますので一緒に来てください!道中取材します!」

 

 

 

 

道中一方通行は文に様々なことを吐かされた。当然闇の部分については隠しておいたが。

 

文「なるほどなるほど・・・つまりこっちの能力とはまた別の能力というわけですか。ベクトル操作か・・・これは敵いませんね。」

 

一方通行「・・・オイなンか山が近づいてきたぞ。」

 

文「ああ、あれが私たちの住処、妖怪の山です。河童もここで暮らしてます。」

 

文は妖怪の山のふもとへ向かって降りて行った。一方通行も続く。

次第に木々の中に綺麗で透明度の高い川が流れていた。川には遊んでいる者が何人か見受けられる。

文は川岸に降り立ちその者たちに声をかける。

 

文「やあやあ河童の皆さん!清く正しい射命丸文です!にとりさんはいらっしゃいますか?」

 

河童「文か・・・なんで人間がここにいるの?」

 

文「この人が例の英雄ですよ。にとりさんにお世話になったらしいのでお礼に来たらしいです。」コソコソ

 

河童「えぇ!?あの人間が?」

 

文「少なくとも妖怪の山に危害は加えませんがあまり怒らせないほうが良いかと・・・」

 

河童「なんで?能力持ちったてしょせんただの人間じゃん。」

 

文「さっき手羽先にされかけられました・・・」

 

河童「・・・マジ?」

 

一方通行「・・・いつまでコソコソやってンだァ?俺はそのにとりとやらに会いてェンだが。」

 

文「だそうです。後はお願いできますか?」

 

河童「ええ!?私一人ですか!?」

 

文「大丈夫です。危害は加えませんから・・・多分。」バサッ

 

河童「多分ていった!多分ってなに!?おーい!!」

 

一方通行「そろそろいきてェンだが・・・」

 

河童「はいぃ!すぐにご案内いたしますぅ!!」

 

 

 

ガララララララララララ・・・・・・

 

「物資ならまにあってるよ。」

 

河童「いえ、客人ですよ。にとりさん。」

 

にとり「客人?」クルッ

 

一方通行「よォ、オマエが俺たちの電極を開発したンだってなァ。」

 

にとり「そのチョーカー・・・じゃあ君が?」

 

一方通行「あァ、そォだ。」

 

河童「あのぉ・・・わたしそろそろ・・・」

 

にとり「ああ、ありがとう。もう行っていいよ。」

 

河童「はい。」

 

そういうと河童はにとりの工場から出ていった。

 

にとり「さて、一方通行くん。今日は何の用かな?電極に何か不具合でも?」

 

一方通行「いや、そンなことはねェ。完璧な設計製作だァ。」

 

にとり「じゃぁどんな用事かな?」

 

一方通行「電極の設計図とパソコンを貸してほしい。」

 

にとり「どうしてかな?」

 

一方通行「俺の脳の代理を務めてるフランっていうガキがいるだろォ?あいつが俺の反射の能力を使えるようにしてやりてェンだよ。太陽のもとでも動けるよォになァ。」

 

にとり「彼女は吸血鬼で夜行性だろ?そんなことしなくても問題ないはずじゃない?」

 

一方通行「あのガキは俺に合わせて起きてこようとする。もォとっくに昼夜逆転してンだろォよ。」

 

にとり「事情は大体わかったけど君がフランの電極にそのプログラムをインストールするの?」

 

一方通行「そォだ、夜の間にやっておく。」

 

にとり「インストールするとき彼女は電極を切るんだよ?当然君の身体は動かなくなる。」

 

一方通行「左半身が動きゃァ問題ねェよ。」

 

にとり「わかったよ、終わったらしっかり返してね。リュックにまとめて入れておくから。拡張子はわかる?」ガサゴソ

 

一方通行「電極を解析すりゃァ問題ねェよ。」

 

にとり「はい、これ。」

 

一方通行「すまねェなァ。」スッ

 

にとり「改造に必要なパーツも入れておいたからね。設計図はパソコンに入ってるから。」

 

一方通行「あァ、わかった。」

 

一方通行は工場の出口へ向かう。

 

にとり「もしよかったら私がやろうか?」

 

一方通行「必要ねェ。自分でやる。」

 

にとり「さすが、人間離れした脳の持ち主は違うね。」

 

一方通行「ハッ。」スタスタ ガララララララララ

 

文「随分かわいいリュックですね。」

 

一方通行「あァ?なンだカラスか。」

 

文「いい加減名前で呼んでもらえませんかね?」

 

一方通行「ンで、何のよォだ?」

 

文「あなたにこれを。」スッ

 

一方通行「なンだァ?通行手形ァ?」

 

文「白狼天狗にもらってきました。これでいつでも妖怪の山を行き来できます。」

 

一方通行「要するにオマエがついてなくても入れるってェことかァ。」

 

文「そういうことです!それじゃあ私は仕事があるので、それじゃあ!」バサバサ

 

一方通行(もォ一か所よってくかァ・・・)ピッ キュイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

 

一方通行はスイッチを入れると竜巻を発生させ、ある場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(こンなに見つかりやすいとはなァ・・・)スタッ ピッ

 

一方通行は博麗神社と書かれた鳥居の前に降り立った。

彼は杖を突いて神社の建物へ向かった。

 

霊夢「あら、一方通行じゃない。杖なんか突いてどうしたのよ?」ブチッブチッ

 

一方通行「・・・何やってンだ?」

 

霊夢「みてわからないの?食料調達よ。」

 

一方通行「雑草食ってンのか・・・」

 

霊夢「仕方ないじゃない!収入が賽銭しかないんだから!」

 

一方通行「異変解決の報酬とかでねェのかァ?」

 

霊夢「出るわけないでしょうが!無理やり押し付けられてんのよ!」

 

一方通行「・・・チッ」ジャラジャラ

 

霊夢「そんなに!?」

 

一方通行「この前の詫びだァ・・・とっとけェ。」

 

霊夢「それこそ私が謝るべきよ。あの時仮にも幻想郷の一部を消し飛ばそうとしたんだから。とめてくれて感謝するわ。」

 

一方通行「感謝される筋合いはねェよ。俺は俺のやりたいよォにやっただけだァ。」

 

霊夢「あの子は今どうなってる?金髪の子よ。」

 

一方通行「フランか、今では普通のクソガキだァ。」

 

霊夢「じゃあ危険分子はないのね。」

 

一方通行「テメェらみたいのが危険危険とほざくから、あんなガキを作り出しちまうんだァ。」

 

霊夢「あの子に結構肩入れしてるのね・・・どうしてあなたはそんなにあの子に?」

 

一方通行「どォでもいいだろォンなこたァ・・・」

 

霊夢「・・・言いたくないのなら無理には聞かないわ。あっそうだ!あなたたちが完治したのなら宴会しないとね!」

 

一方通行「あァ・・・?宴会だァ?」

 

霊夢「この幻想郷では異変を解決したのちに主犯も含め、宴会をするの。」

 

一方通行「異変の主犯も含めェ?ンなこと他の住民どもが快く思わねェンじゃねえのかァ?」

 

霊夢「この宴会には和解の意味も込められてるの。快く思わない者なんていないわ。たしかあなた紅魔館にいるんだったわよね?早速明日の夕方行うわ。レミリア達も呼んでおいてね。」

 

一方通行「俺はパスだァ、ガラじゃねェ。それに俺は異変の犯人ってワケでもねェしなァ・・・」

 

霊夢「あなたは今回の異変解決の立役者なのよ?参加しないといけない理由はちゃんとあるわ。」

 

一方通行「俺は悪党ォだァ、宴会をメチャメチャにぶっ壊すかもしれねェぞ?それに俺は未成年だ。酒は飲めねェ。」

 

霊夢「ここは幻想郷よ外の世界のルールは適用されない。それに悪党悪党言ってるけどあなた結局悪いことしてなくない?」

 

一方通行「・・・チッ。」スタスタ

 

霊夢「あら、もう行くの?」

 

一方通行「あァ、帰ってやらなきゃいけねェことがあるかンなァ。」ピッ キュイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

 

霊夢「その首についてるの何?それに杖なしで・・・」

 

一方通行「どォでもいいだろォが・・・じゃァな。」ドォン!!

 

一方通行は紅魔館へ向かって飛んで行った。

 

魔理沙「よぉ!霊夢!!」

 

霊夢「あら魔理沙じゃない。」

 

魔理沙「今誰かが飛んでったけど誰か来てたのか?」

 

霊夢「例の彼よ、お賽銭を入れてってくれたわ。」

 

魔理沙「あの『英雄』か?あいつが?なんで?」

 

霊夢「この前のお詫びだそうよ。彼、素直じゃないけど。」

 

魔理沙「んで?いくら入れてくれたんだ?」

 

霊夢「結構入れてくれてたわよ・・・」ノゾキ

 

霊夢「・・・!!」

 

魔理沙「どうした?」

 

霊夢「10万・・・」

 

魔理沙「え?」

 

霊夢「10万円くらい入ってる・・・」

 

魔理沙「嘘だろオイ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「・・・」スタッ ピッ

 

美鈴「zzz...zzz...]

 

一方通行「・・・オイ。」

 

美鈴「zzz...zzz...]

 

一方通行「開けろォ・・・」

 

美鈴「zzz...むにゃ...」

 

一方通行「・・・」スッ 

 

一方通行は美鈴の額に手を置く。

 

美鈴「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」ビリビリビリビリビリビリビリビリ!!

 

一方通行は美鈴の生体電気を軽く暴走させた。

 

一方通行「目ェ覚めたかァ?」

 

美鈴「あ、一方通行さん!?おかえりですか!?」

 

一方通行「あァ、開けてくれェ。」

 

美鈴「かしこまりました!ちょっと待っててくださいね!」

 

美鈴「ふん!」ギギギギギギギギギィィィ・・・・・

 

紅魔館の門が開いた。

 

一方通行「・・・」スタスタ

 

美鈴「あぁそうだ。さっき妹様が探してましたよー」

 

一方通行「・・・」スタスタ ガチャ

 

一方通行はまっすぐ部屋に戻りリュックを下した。

 

一方通行「さァて・・・」カチャッ

 

winndowsXp

 

一方通行(winndowsXpだァ?古すぎンだろォ・・・)カタカタ

 

一方通行はログインし、ファイルを探す。

 

一方通行(代理脳装置・・・これかァ。)カチッ

 

一方通行はデスクトップにある代理脳装置の設計図を見る。

 

一方通行(構造は大して変わンねェかァ・・・)

 

リュックを開け、改造に必要な部品等取り出す。

 

一方通行(色ンなもンが入ってンなァ・・・)

 

にとりは一方通行のやろうとしていることがわかってるのだろうか・・・

 

一方通行(とりあえず、プログラムを作る。プログラムの方は簡単だァ・・・俺の運動神経をフランに代理してもらっているよォに俺の演算部分のみをフランが使えるよォにすればいい。フランの電極には現在、送信機能のみついてる。そして俺には受信機能のみ。面倒ォなのは電極自体に送信機能と受信機能をつけたさなきゃァならねェ・・・あの河童には一人でできると言っちまったが、正直キツイなァ・・・)

 

コンコン

 

レミリア「入るわよ。」ガチャ

 

一方通行「なンのよォだ?」

 

レミリア「あなた、昼から出かけてたそうね。フランが探し回っていたわよ。」

 

一方通行「その割には静かだがァ?」

 

レミリア「疲れて寝ちゃったわ。・・・で、何やってるの?」

 

一方通行「代理脳装置の改造プログラムだァ。」

 

レミリア「あなたとフランについてるやつね。改造って一体どうするの?」

 

一方通行「俺とあのガキの電極にはそれぞれ受信機能、送信機能しかついてねェ。それに送信機能、受信機能をつける。」

 

レミリア「そうすればあなたの脳の能力が使えるようになるわけね。しかしどの部分をフランに使わせるの?」

 

一方通行「演算機能だァ。あのガキは太陽のもとで不自由なく遊びたいと願っていた。それをかなえるだけだァ。」

 

レミリア「それは違うかもね。」

 

一方通行「あァ?」

 

レミリア「あなたが昼に活動するからじゃない?あの子はどこでもあなたについていこうとする。それはあなたがフランにとってかなり大きい存在になってるからよ。あの子、あなたを親のように思ってるのかもね。」

 

一方通行「兄妹じゃなくか?」

 

レミリア「だって、周りから見たらあなたが保護者にしか見えないもの。」

 

一方通行「・・・・・・・・・ンで、なんのよォだ?」

 

レミリア「別に用というほどでもないわ。あなたが帰ってきたというから見に来ただけ。」

 

一方通行「それなら頼みがある。パチュリーを連れてきてくれ。」

 

レミリア「あなた執事のくせして主をパシリに使うのね・・・クスッ、わかったわ。呼んでくるから待ってなさい。」

 

一方通行「・・・助かる。」

 

レミリア「えらく素直じゃない。」バタン

 

一方通行(プログラムは完成したァ。あとは電極を改造するだけだ。今のうちに受信パーツと送信パーツを作っておくか。)カチャカチャ

 

 

 

 

 

 

 

レミリア(・・・全く何やってるのかしらね私は。でも、一方通行があんなにフランのことを想ってくれてるなんてね。フランも彼を好いているようだし・・・ちょっと妬いちゃうわ。)スタスタ

 

咲夜「あら、お嬢様。どこへ行かれるのですか?」

 

レミリア「ちょっとパチュリーを呼びにね。」

 

咲夜「では、私が・・・」

 

レミリア「いいわよ、私が頼まれたことだし。」

 

咲夜「誰にですか?」

 

レミリア「一方通行にね。」

 

咲夜「一方通行ですか!?あいつ執事の分際で・・・!」

 

レミリア「かまわないわ、なんせフランのためですもの。」

 

咲夜「一方通行が妹様に?」

 

レミリア「ええ、なんでも太陽のもとでも不自由なく活動できるようになるとか。」

 

咲夜「それで、パチュリー様に?」

 

レミリア「そうよ、あなたは仕事に戻りなさい。」

 

咲夜「かしこまりました。」

 

レミリアはそのまま図書館へ向かった。

 

レミリア「パチェ、いるかしら?」

 

こあ「お嬢様?なぜここに?」

 

レミリア「ちょっとパチェに用があってね。」

 

こあ「そこにおかけください。ただいま連れてまいります。」

 

レミリア「ええ、助かるわ。」ストン

 

しばらくしてパチュリーがやってきた。

 

パチュリー「どうしたの?レミィ、私に用って。」

 

レミリア「ちょっと一緒に来てもらえないかしら?一方通行がパチェの力を借りたいって。」

 

パチュリー「彼が?人の手を進んで借りようとしないタイプの人間だと思ってたのだけれど・・・」

 

レミリア「いいから来て頂戴。」

 

パチュリー「あなたがここまでするということは、フランに関係することね。」スタスタ

 

レミリア「そうよ、太陽のもとでも出歩けるようにしてくれるらしいの。」スタスタ

 

パチュリー「それで私を?あいにく私は魔法には精通しているけど機械はさっぱりよ?」

 

レミリア「それでも呼んだんだから何か意図があるに決まっているわ。」

 

パチュリー「わかったわ、とりあえず行きましょう。」

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

レミリア「連れてきたわよ。」

 

一方通行「わりィな・・・」カチャカチャ

 

パチュリー「私に用って?」

 

一方通行「レミリアから大方聞いてると思うが、この電極を改造してフランに俺の反射の能力を宿らせる。そうすりゃァ太陽のもとでも遊べンだろォ。」カチャカチャ

 

パチュリー「で、そのパーツを電極に組み込むってことね。」

 

一方通行「そォだ、これを組み込ンでそこにあるパソコンでプログラムをインストールする。・・・だが、問題があってなァ。このパーツを組み込むとき俺とフランの電極を外さなきゃなンねェ。」カチャカチャ

 

パチュリー「つまり、外している間あなたは右手が使えないと。」

 

一方通行「だからオマエに作業を頼みたい。」カチャカチャ

 

パチュリー「私、機械に疎いわよ?」

 

一方通行「俺が指示を出す。その通りにやりゃァ問題ねェハズだァ。」カチャカチャ

 

パチュリー「それじゃあ、そこに居るレミィでも務まったんじゃない?」

 

一方通行「オマエは魔法を扱うぐれェだし結構器用かと思ってなァ。」カチャカチャ

 

パチュリー「わかったわ、協力しましょう。」

 

一方通行「わりィな・・・助かる。」

 

パチュリー「えらく素直じゃない。」

 

レミリア「さっき私もそれ思った。」

 

一方通行「どォでもいいだろォが・・・よし。」

 

一方通行はパーツを全て完成させた。

 

一方通行「それじゃあ、フランが寝たころに電極の改造を行う。頼んだぞ。」

 

レミリア「でもどうするの?フランの電極取っちゃったらあなた動けないじゃない。」

 

パチュリー「簡単なことよ。フランを一方通行の部屋で寝かせればいいのよ。」

 

レミリア「なるほど。」ポン

 

一方通行「なんでンなことォ・・・」

 

パチュリー「簡単じゃない、効率がいいから。ちゃんとフランを誘っときなさいよ。」

 

一方通行「チッ・・・なンで俺が・・・」

 

レミリア「仕方ないわね。私がフランを誘導するわ。」ハァ

 

一方通行「レミリア・・・」パァ

 

レミ・パチェ(急に顔が明るくなったわね・・・)

 

パチュリー「じゃあそういうことだから。また後で。」

 

一方通行「あァ。」

 

レミリア「また夕食時にね。」

 

ガチャッ・・・バタン・・・

 

一方通行(・・・宴会のこと言うの忘れてたな・・・飯ン時でいいか・・・)

 

一方通行(最近コーヒー飲んでねェ・・・)

 

 

 

 

フラン「・・・ハッ!」ムクリ

 

フランは唐突に目を覚まし、起き上がった。

 

フラン「おかえり!あくせられーた!」

 

シーン・・・・

 

フラン「あれ?一瞬あくせられーたが近くにいたような気がしたんだけどな・・・」

 

咲夜「お目覚めですか?妹様。」

 

フラン「わわっ!!びっくりした!いつの間に?」

 

咲夜「さっきからここで妹様の寝顔でおnゲフンゲフン!一方通行が帰ってきたことをご報告に。」

 

フラン「あくせられーたが帰ってきたの!?」

 

咲夜「左様でございます。」

 

フラン「探しにいってくる!!」ダダッ

 

咲夜「妹様!!(ヤッてたの気づかれなくてよかった・・・)」

 

フランは自室を飛び出し一方通行を探す。するとレミリアとパチュリーを見つけた。

 

フラン「お姉様!パチュリー!あくせられーたがどこにいるかわかる?」

 

レミリア「起きたのねフラン。一方通行なら自分のへやn「ありがと!お姉様!!」ダダッ

 

パチュリー「忙しい子ね・・・」フフッ

 

レミリア「全くもう・・・」クスッ

 

やっと帰ってきた!!あの人が!!やっと一緒にお菓子食べれる!!

フランは廊下を猛ダッシュで走り、一方通行の部屋へ向かった。

 

バタン!!!!

 

フラン「おかえり!!どこ行ってたの?」

 

一方通行「うるっせェなァ・・・もっと静かにできねェのかァ・・・」

 

フラン「相変わらずダラダラしてるね」

 

一方通行「馬鹿言うなァ、今日は働き詰めだァ・・・ったく」

 

フラン「お菓子食べよ?約束したよね?」

 

一方通行「これか・・・」ガサッ

 

フラン「扉に掛けたの持っててくれたんだね!うれしい!!」

 

一方通行(集中した後だァ・・・甘ェもンも悪くねェだろ・・・)

 

一方通行「甘いもんにはコーヒーが合う。コーヒーも飲みてェ。」

 

フラン「わかった!咲夜に頼んでコーヒーもらってくるね!」

 

一方通行「頼む。」

 

フランはコーヒーを持ってすぐに帰ってきた。おそらく咲夜が扉で盗み聞きしていたのだろう。

 

一方通行(あの変態メイドがァ・・・)

 

フラン「おまたせ!コーヒーのブラックだよ!」コトン

 

一方通行「二つ?オマエも飲むのか?」

 

フラン「うん!あなたいっつもコーヒーコーヒー言ってるからおいしいのかなって。」

 

一方通行「オマエにはまだ早い。」

 

フラン「むぅ~そんなことないもん!」ゴクッ

 

一方通行「バカ!そンなに一気に飲みゃァ・・・」

 

フラン「うぇぇ・・・にっが~い・・・」ウルウル

 

一方通行「だからやめとけっつたろォ・・・」

 

フラン「・・・でも大丈夫!!お菓子でお口直し!」パクッ

 

一方通行「・・・(うめェ)」ゴクッ

 

フラン「あなたも食べて?ほら、あーん。」スッ

 

一方通行「・・・」

 

フラン「あーん。」

 

一方通行「・・・」

 

フラン「・・・」ウワメヅカイ

 

一方通行「・・・チッ」パクッ

 

フラン「どう?おいしい?」

 

一方通行「悪くねェ。」

 

フランとの小さなお茶会は一方通行にとって悪くなかった。ゆっくり過ぎていった時間も終わりの時を迎える。

 

コンコン

 

咲夜「失礼いたします。夕食のお時間となりました。食堂へいらしてください。」

 

一方通行「いくぞ、フラン。」

 

フラン「うん!」

 

キィ・・・バタン・・・

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

咲夜「妹様と一方通行をお連れしました。」

 

レミリア「ご苦労様。それじゃあいただきますか。」

 

「「いただきます!」」

 

フラン「ん!おいしい!」パクッ

 

レミリア「ねえ、フラン?」

 

フラン「なあに?お姉様。」

 

レミリア「あなた、できることなら太陽のもとでも遊びたい?」

 

フラン「うん!もちろんだよ!だってあくせられーたにどこでもついていけるんだもん!」

 

一方通行「なンでついてくる前提なンだ。」

 

レミリア「それでね、フラン。今日は一方通行の部屋で寝てごらんなさい。」

 

フラン「どうして?」

 

レミリア「いいことが起きるはずよ。」

 

フラン「あくせられーた!今日はあなたの部屋で寝ていい?」

 

一方通行「・・・騒ぐんじゃねェぞ、クソガキ。」

 

フラン「やったー!!」

 

パチュリー「よかったわねフラン。」

 

こあ・美鈴「?」

 

咲夜「」ギリギリギリギリギリ

 

一同は食事を進めていく。

 

レミリア「ごちそうさま。じゃあ私は先にシャワー浴びてくるわね。」

 

フラン「気になってたんだけどさぁ、あくせられーたの時はゆぶねに浸かったのにどうしてみんなはつからないの?」

 

レミリア「それは洋式と日本式との違いよ。まあ、試しに湯船に浸かってみるのもいいわね。」

 

一方通行「風呂にはでけェ浴槽があった。なぜだァ?」

 

レミリア「それは先代当主が風呂マニアでね。特に日本式にハマってたみたい。」

 

一方通行「だからあるのかァ・・・」

 

レミリア「じゃあ、行ってくるわね。」ガチャ

 

 

 

 

 

 

三時間後ー

 

フラン「すぅー・・・すぅー・・・」

 

一方通行「寝たか・・・」ムクリ

 

一方通行は自分のベッドにフランを寝かせ添い寝していた。フランは幸せそうに一方通行の服をつかみかわいい寝息をたてていた。

一方通行はフランの手をやさしく引き離すと起き上がり扉を開けた。

 

レミリア「寝た?」

 

一方通行「あァ、ぐっすりだ。」

 

パチュリー「かわいいものね。」

 

一方通行「・・・始めるぞ。」

 

フラン「・・・ん(あくせられーた?)」

 

フランは今のやりとりで目を覚ましたがレミリアとパチュリーが入ってきたことで寝たふりをした。

 

一方通行「レミリア、そこの箱をとってくれ。」

 

レミリア「はい、これね。」スッ

 

パチュリーはパソコンを持ってきた。一方通行はそれを操作しプログラムインストールモードを呼び出す。

 

一方通行「それじゃァ電極を外すぞォ。」

 

フラン(なんで!?そんなことしたらあくせられーたが・・・!)

 

一方通行「・・・くっ・・・あっ・・・」ドサッ

 

レミリア「大丈夫?」スッ

 

一方通行「・・・すまねェ。」パシッ

 

レミリアは椅子に一方通行を座らせる。

 

一方通行「俺の電極も外すぞ」スッ カチャッ

 

パチュリー「で、どうするの?」

 

一方通行「このパーツをそれぞれの電極に取り付けろォ。この設計図を見ればわかる。」

 

パチュリー「わかったわ。」カチャカチャ

 

レミリア「このくらいなら私もできるわ。あなたのは任せて。」カチャカチャ

 

一方通行「わかった。」

 

パチュリー「できたわ。」

 

レミリア「私もよ。」

 

パチュリー「で、次は?」

 

一方通行「このコードをパソコンへつなげェ。それから電極にもだァ。」スッ

 

パチュリー「こうね。」カチッ カチッ

 

一方通行「これで、全ての材料は揃った。インストールを始める。」カタッ

 

レミリア「これで・・・フランは太陽のもとでも自由に遊べるのよね・・・」

 

一方通行「あァ、これでアイツは完全に自由だァ。あのガキは今まで身も心も不自由だったァ。だが俺は、俺が生きてる間だけでもコイツを不自由なく生きさせてやりてェ。だからァ、今こうしてやってンだろォがァ。」

 

フラン(あくせられーた・・・あの時の事覚えてたんだ・・・それで・・・)ジワッ

 

フランは一方通行が以前発していた独り言を覚えていた。そしてフランのためにそれを実行している。

 

フラン「ウグッ・・・エグッ・・・(あくせられーた・・・なんで・・・そんなにやさしいの?・・・どうして?・・・どうして?)」ポロッポロッ

 

パチュリー「ゲージみたいなのが溜まったわよ。完了ですって。」

 

一方通行「次だ、俺の電極に送信機能をインストールする。」

 

パチュリー「これでいいのよね。」カチッ

 

一方通行「・・・」カタッ

 

一方通行はエンターキーを押した。

 

パチュリー「これで終わりね。」

 

レミリア「あなたには私の尻拭いばかりさせてるわ・・・なんとお礼を言っていいやら・・・」

 

一方通行「尻拭いってなンだァ?俺はフランの願いを叶えただけだがァ。」

 

レミリア「私は495年もあの子の自由を奪ってきた張本人よ。わたしが奪ってきた分あなたはフランを幸せにしようとしてくれている・・・だからよ。」

 

一方通行「俺は昔、俺の命一つじゃァ贖いきれねェ程の罪を犯した。それでも停滞することは許されねェ。前へ進み続けなけりゃァならねェンだ。たとえ今更だったとしてもだなァ・・・オマエは、まだ間に合うだろォがァ・・・」

 

レミリア「・・・一方通行。」ジワッ

 

パチュリー「・・・終わったみたいよ。」カチッ

 

一方通行「それをフランに着けておけェ。」

 

パチュリー「わかったわ。」カチャッ

 

パチュリーは電極をフランにつけた。

 

一方通行「これで最大3時間は太陽の光を反射できるはずだァ。公式は後で教えておく。」

 

レミリア「本当にありがとう・・・どう埋め合わせすれば・・・」

 

一方通行「・・・ならコーヒーをくれ。」

 

レミリア「わかったわ。行ってくるわね。」

 

パチュリー「私は戻ってもいいかしら?本を整理したいの。」

 

一方通行「かまわねェぞ、今日は助かった。」

 

パチュリー「はいはい、おやすみなさい。」ガチャッ

 

一方通行は静かな部屋にたたずんでいた。

 

一方通行「・・・なァ、フランよォ・・・オマエには罪を贖おうとする優しい姉がいる・・・しかし、俺はここにきていよいよ罪を償うことができなくなっちまったァ・・・俺はァ・・・」

 

フラン(あくせられーた・・・もしかして、)

 

ガチャッ

 

レミリア「コーヒー持ってきたわよ。」

 

一方通行「あァ。」スッ

 

レミリア「今日はお疲れ様。じゃっおやすみなさい。」ガチャ バタン

 

一方通行「・・・」ズズズ

 

暗く、静かな部屋に一方通行がコーヒーをすする音だけが響いている。




最後までご覧いただきありがとうございました!!

なんだか長くなってしまいましたね。
ですがこれによりフランが傘なしで自由になれたので良かったです。
次回は一方通行の家探し?を行います。ぜひご覧ください!

次回 第十二話 物件探し
                  
                            次回もお楽しみに!!


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第十二話 物件探し

本作を見ていただきありがとうございます!
投稿ペース遅くてすみません。
おまけにタイトル回収も遅いです笑
今回な一方通行の新居探しです!
フランのものまねにも注目です!
それでは本編スタートです!!


フランは朝早く目覚めた。そして真っ白な少年の寝顔を見つめていた。

 

一方通行「スー・・・スー・・・」

 

フラン「あくせられーた・・・」フフッ

 

フランはしばらく一方通行の愛しそうに寝顔を見ていたが、彼の柔らかそうな頬に目が移り、唐突に触れたくなった。

 

フラン「・・・」ツン

 

一方通行「・・・すぅー・・・ン・・・」

 

一方通行は一瞬顔をしかめたがまた素直な表情になった。その反応はフランの小悪魔心を刺激した。

 

フラン「・・・フフ」ツンツン

 

一方通行「・・・ン・・・ンン・・・」フィッ

 

一方通行は顔を別の方向に向けてしまった。

突っついていた頬が隠れてしまったので、すこししょんぼりして羽を縮ませたがすぐにまた広がり、小さくパタパタさせた。

彼女の興味は一方通行の唇に向いたのだ。

 

フラン「・・・」スッ

 

フランは一方通行の唇に指を乗せ少し開いた彼の口を塞いだ。

 

一方通行「・・・ンむ」パチッ

 

フラン「・・・あっ」ピクッ

 

一方通行「・・・」

 

フラン「・・・」ダラ

 

一方通行「・・・」

 

フラン「・・・」ダラダラ

 

一方通行「・・・」

 

フラン「・・・えへへ」ダラダラダラダラ

 

一方通行「・・・」ガシッ ググググググググググ

 

フラン「いてっ!!いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!!!」

 

一方通行「なにやってたンだァ?」ググググググググググ

 

フラン「あなたの寝顔がかわいくてつい・・・イタイイタイ!!」ギギギギギギギギ

 

一方通行はフランの頭を握る力を強めた。フランは涙目になりながら一方通行の左手を引き離そうとしている。一方通行は手を離した。

 

一方通行「ハァ・・・」

 

フラン「おはようございます・・・」ヒリヒリ

 

一方通行「電極のスイッチを入れろォ・・・」

 

フラン「うん・・・」ピッ

 

一方通行「・・・」ピッ

 

一方通行「ほら、行くぞォ。」ガチャッ

 

フラン「うん」バタン

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

レミリア「あら、おはよう。」

 

美鈴「おはようございます!」

 

こあ「おはようございます!」

 

咲夜「おはようございます。妹様、一方通行。」

 

フラン「おはよう!!」

 

一方通行「・・・」コキコキ

 

レミリア「フラン、頭おさえてるけどどうしたの?」

 

フラン「あくせられーたに握りつぶされそうになったの・・・」

 

美鈴「あらまあ・・・」

 

こあ「oh...」

 

レミリア「あなたまた一方通行にイタズラしたんでしょ?」

 

一方通行「・・・好き放題やりやがってェ・・・このクソガキィ。」

 

フラン「うぅ・・・」

 

咲夜「ま、まあいただきません?」

 

フラン「うん、食べる。」

 

「「いただきます!」」

 

一方通行「メイド長ォ、今日の仕事はなンだ?」

 

咲夜「今日は館の掃除、昼食の準備ね。昨日みたいに午後からは自由よ。」

 

一方通行「・・・午後からは出かける。」

 

美鈴「また、どこかにいかれるんですか?」

 

一方通行「前にも言ったが、そろそろ家探しを始める。」

 

フラン「えぇ!?出て行っちゃうの!?」

 

一方通行「いつまでも世話になンのはわりィかンなァ。」

 

レミリア「迷惑なんかじゃないわ。いつまでもいてくれていいのよ?」

 

美鈴「そうですよ!」

 

一方通行「最初からそォいう約束だったろォが・・・」スクッ

 

フラン「ほんとに行っちゃうの?」

 

一方通行「あァ。」

 

フラン「フランもついてく!」

 

一方通行「ダメだァ・・・レミリアが許さンだろォ。」

 

フラン「お姉様!」

 

レミリア「あら、いいんじゃない、ついていったら?」

 

フラン「本当!?」

 

レミリア「一方通行なら任せても大丈夫そうだしね。」

 

フラン「やたー!!」

 

一方通行「勝手に話進めてンじゃねェよ!!なンでついてくること前提になってンだァ?あァ!?」

 

レミリア「まあまあ、いいじゃないの。なんだかんだでいつも一緒じゃない。」

 

一方通行「・・・勝手にしやがれェ。」

 

フラン「やったー!!お姉様ありがとう!!」

 

一方通行「仕事だァ・・・掃除するからこの部屋からでンじゃねェぞ。」ガチャッ

 

フラン「はーい!」

 

一方通行は部屋を出るとまっすぐ図書館に向かった。

 

一方通行(パチュリーの野郎が部屋からでねェよォにしねェとなァ。)スタスタ

 

ガチャッ

 

一方通行(確かパチュリーの司書室は一番奥にあったなァ・・・)スタスタ

 

ガチャッ

 

一方通行「オイ、パチュリー。」

 

パチュリー「何の用かしら?」

 

一方通行「なンだ・・・起きてンじゃねェかァ。」

 

パチュリー「で、何しに来たの?」

 

一方通行「掃除するから部屋から出るな。」

 

パチュリー「わかったわ、しっかし便利ねーその能力。」

 

一方通行「オマエのも汎用性は高ェだろォが。」

 

パチュリー「フッ・・・そうね。」

 

一方通行「じゃァ始めンぞ。」ガチャッ

 

パチュリー「頑張ってね~」

 

一方通行は能力を使い昨日と同じように紅魔館を掃除した。

掃除が終われば昼食まで暇なため、洗濯物を干しておくことにした。

それでも時間が余ったため何をしようかと考えていたら唐突にコーヒーが飲みたくなり、咲夜のもとへ向かうことにした。

勘を頼りに食堂に戻ると咲夜が朝食の片づけをしていた。

 

咲夜「一方通行、仕事は終わったのかしら?」

 

一方通行「あァ、昼飯まで暇だァ。コーヒーが飲みてェ。どこで淹れればいい?」

 

咲夜「厨房にあるわ。ちょうどコーヒーメーカーが二つあるから、豆とともに持ってきなさいな。お湯は部屋にあるコンロでできるでしょ?」

 

一方通行「わかった。」

 

一方通行は厨房へと向かうとコーヒーメーカーとポッドを紙袋につめ、自室へ行こうとするが・・・

 

一方通行(昼飯の下準備したほォが後が楽かァ。)

 

とりあえず彼は袋を置き、その場でコーヒーを淹れてレシピを見ながら飲んだ。

 

一方通行(今日はどォするかァ・・・)ペラッペラッ

 

ふとあるレシピに目が留まった。

 

一方通行(炒飯・・・今日はこれを作ってやることにするか。)

 

炒飯は調理にそんな時間がかからないため彼は自室の戻ってコーヒーを楽しんだ。

 

フラン「あくせられーた!」バタン!!

 

一方通行「ノックもできねェのかァ、クソガキがァ・・・」ズズッ

 

フラン「改めてあなたの執事姿を見るとなんか新鮮だなぁ。」

 

一方通行「人の話を無視してンじゃねェよ。」

 

フラン「また、そのまずいの飲んでるの?」

 

一方通行「ガキにゃわかンねェよ。ンで、何しに来た?」ズズッ

 

フラン「午後のお出かけ、フランもつれてって」

 

一方通行「ダメだ・・・・・・いや、ついてこい。」

 

フラン「ホントに!?」

 

一方通行「あァ。(電極のチェックができるからなァ・・・)」

 

フラン「わ~い!!(太陽の光のもとで傘持たなくてもよくなる!早くお出かけしたい!!)」

 

咲夜「一方通行、お嬢様が呼んでおられるわ。行きなさい。」

 

一方通行「・・・新しい仕事かァ?ったく・・・」スッ

 

フラン「フランここで待ってるね!」

 

一方通行「あァ、咲夜行くぞォ。」

 

一方通行と咲夜はレミリアの部屋に向かった。

 

コンコン ガチャ

 

咲夜「十六夜咲夜、一方通行ただいま参りました。」

 

レミリア「よく来てくれたわね。忙しいのにありがとう。」

 

一方通行「なンの用だ?」

 

レミリア「只今より一方通行に仕事を与える。フランを外へ連れ出し、電極の試験運転を行いなさい。咲夜は一方通行の仕事を引き継ぐように、いいわね。」

 

咲夜「かしこまりました。お嬢様。」

 

一方通行「それは構わねェが午後から行くつもりだったぞ。それにメイド長ォの仕事増えンぞォ?」

 

咲夜「私は構わないわ。掃除がないだけでもだいぶ楽よ。」

 

一方通行「・・・昼飯は炒飯だァ。材料と精米はしてあるから後は頼む。」

 

咲夜「わかったわ、任せて。」

 

レミリア「問題ないようね。では、一方通行は準備が出来次第すぐに出かけるように。」

 

一方通行「了解だァ。」ガチャッ

 

一方通行はレミリアの部屋を出るとフランの待つ自室へと戻った。

 

フラン「おかえり!!お姉様なんだって?」

 

一方通行「仕事が無くなったァ。」

 

フラン「ってことは?」

 

一方通行「すぐに出かける。準備しておけェ・・・傘は忘れンなよ。」

 

フラン「あっ・・・うん!(まだ教えてもらってないもんね・・・知らないふりしないと。)」タタッ

 

一方通行「先にロビーで待ってンぞ。」

 

 

 

 

フラン「おまたせ!!」トテテ

 

一方通行「この公式を覚えておけ」スッ

 

フラン「こーしき?」カサッ

 

一方通行は反射の公式が書かれた紙をフランへと手渡した。

 

 

R=F+2aN

壁と平行なベクトルはP=F+aNP=F+aN

目的の反射ベクトルはR=F+2(−F⋅N)N

 

 

一方通行(フランにつないでいる電極は演算のみだァ。この公式を覚えさせておきゃァ俺が演算できる。)

 

フラン「うん!覚えたよ!!」

 

一方通行「嘘つくンじゃねェ、そンな早く覚えられるワケねェだろォが。」

 

フラン「むぅ~・・・ホントだもん!」

 

一方通行「じゃァ紙よこせェ。」パシッ

 

フラン「あっ・・・」

 

一方通行「基本の反射ベクトルは?」

 

フラン「R=F+2aNでしょ?足し算はわかるけどRとかわかんない。」

 

一方通行「わかンなくてもいい、公式さえおぼえてりゃァなァ。」

 

フラン「わかった!!」

 

一方通行「次だ、壁と平行なベクトルは?」

 

フラン「P=F+aNP=F+aNだよね!」

 

一方通行「・・・次だァ。目的の反射ベクトルは?」

 

フラン「R=F+2(−F⋅N)Nだよね!完璧!!」ドヤッ

 

一方通行「・・・正解だァ(驚いたなァ・・・完全記憶能力でも持ってンのかァ?)」

 

フラン「どう?」ニコニコ

 

一方通行「・・・問題ねェならさっさと行くぞォ。」

 

フラン「少しは褒めてくれてもいいじゃん・・・」ムスー

 

一方通行「オマエ、完全記憶能力でももってンのかァ?」

 

フラン「ちっさいころから記憶力は良いんだ!お姉様もいいんだよ!!」

 

一方通行「レミリアもか?吸血鬼ってのはみンな記憶力がいいのかよォ・・・」

 

フラン「ううん、私たち姉妹だけだよ!」

 

一方通行「そォか、不思議なもンだなァ・・・」

 

一方通行とフランは門へ向かった。すると門は開いていた。

 

美鈴「お嬢様からお話は聞いてます。どうぞいってらっしゃい!」

 

フラン「いってきまーす!!」

 

一方通行「あァ、そうだ。言い忘れてたが今日の夕方博麗神社で宴会が行われる。絶対参加しろだそうだ。」

 

美鈴「了解しました!昼食の際報告しておきます!」

 

フラン「えんかいってなぁに?」

 

美鈴「行ってみればわかりますよ。」

 

一方通行「じゃァ行くぞ。」

 

フラン「はーい!」

 

一方通行は橋の中腹に来た辺りでフランに改造した電極の使い方を教えることにした。

 

一方通行「フラン、空を飛ぶぞォ。傘を閉じろォ。」

 

フラン「でもそんなことしたらフランやけしんじゃうよぉ・・・(今教えてくれるの?)」

 

一方通行「電極のスイッチを短く押してみろォ。」

 

フラン「うん!」カチッ キュイイイイイイイイイイイイイイイイイン

 

一方通行「・・・さっき教えた公式はしっかり覚えてンな?」

 

フラン「うん!もう勝手に思いつくくらいだよ!」

 

一方通行「無意識の域に達しかけてンな、上出来だァ。」

 

フラン「それってほめてくれてるの?」

 

一方通行「かなりな・・・ほら、行くぞ。」ヒュオオオオオオオオオオ

 

フラン「あっ!待ってよぉ!!」カシュ バサバサ

 

フランは日傘を閉じ、独特な羽をはばたかせて飛び立ち、一方通行を追った。

 

フラン「はやいよー!!」バサッバサッ

 

一方通行「あまり驚いたりしねェなァ。」

 

フラン「だって前に抱えられた時に慣れちゃったもん」

 

一方通行「そォかよ。後、バッテリーは3時間しか持たねェ。オマエのバッテリーが切れると俺の代理脳も働かなくなる。節約して使えェ。」

 

フラン「3時間ね、わかった!フラン時計持ってないからしっかり気をつけなきゃ・・・」

 

一方通行「残り30分ぐれェで警告音が鳴る。それでわかンだろォ。それに俺のこたァ気にしなくていい。能力を使えば大抵のことはなンとかなるからなァ。」

 

フラン「わかった!ありがとう!!」

 

一方通行「・・・つゥかよォ、電極の改造が太陽光の反射のためだったとなぜわかった?」

 

フラン ギクッ「え、えーと・・・覚えさせられたこーしきに反射ってことばがあったからかな・・・」

 

一方通行「・・・思ったより頭いいンだな、オマエ。」

 

フラン「・・・!そうだよ!!フランは天才なんだよ!!」ダラダラ

 

一方通行「なンでそンなに汗かいてンだァ?」

 

フラン「なんでもない!早く行こ!」ヒュォ!!

 

一方通行「チッ・・・目的地も聞いてねェのにどこ行くンだァ?」ヒュォ!!

 

 

 

 

 

人里ー

 

フラン「ついたー!」ファサッ ピッ

 

一方通行「早速節約してンじゃねェか。」スタッ ピッ

 

フラン「ふふーん♪」

 

一方通行「俺は妖怪の山にパソコン返しに行ってくる。オマエは人里でテキトーに遊ンどけ。」

 

フラン「妖怪の山?」

 

一方通行「世話になった奴がいるからなァ。」

 

フラン「分かった!いってらっしゃい!」

 

一方通行「前の駄菓子屋前で待ち合わせだァ、30分で戻る。」ダァン

 

フラン「行っちゃった・・・」

 

フランは自分が連れて行ってもらえなかったことに少し不満だったが、それはお買い物の楽しみですぐに消えた!

 

フラン「次は・・・あのお店!」タタタ

 

フランが次のお店に向かおうとする時・・・

 

「離してください!!」

 

「いいからこっちこいよ!」グイッ

 

「俺たちと遊ぼうよ~」

 

若い女性が2人の男に路地裏に連れていかれるのを偶然みてしまった。

 

フラン(あれっていわゆる誘拐ってやつだよね!?どうしよう!?あの人はいないし助けようとする人もいないし・・・)

 

フランは迷いながらも3人を追って路地裏に入っていった。

 

 

 

妖怪の山ー

 

一方通行「河童に用があってきた。通行手形も持ってる。」

 

白狼天狗「拝見します。・・・間違いないですね。どうぞお通りください。」

 

一方通行「あァ。」

 

一方通行は妖怪の山の麓の川へ向かい。河童の住む集落に辿り着いた。

そして更に進むとにとりの工場が見えてきた。

 

ガラガラガラガラガラガラ・・・

 

一方通行「にとりィ!借りてたもンを返しに来たぞォ!!」

 

にとり「ああ、キミかぁ。まあそこに置いといてよ。」

 

一方通行「助かったぜ、これがなきゃァなンも出来なかった。」

 

にとり「その口振りだと成功したみたいだね。よかったよ。それにしでも君すごいね、素人なのに私の作った電極を改造しちゃうなんて。」

 

一方通行「設計図がありゃァどうってことない。」

 

にとり「どんな改造したのか詳しく聞かせてもらっていいかな?いいよね!?」

 

一方通行(面倒ォなことになっちまった。あのガキ大丈夫かァ・・・)

 

 

 

人里 路地裏ー

 

フランは路地裏の物陰に隠れながら様子をみていた。

 

男1「だからぁ俺たちと遊ばない?」

 

男2「俺たちと一緒ならいい思い出来るぜ。」

 

男1「なんせ豚箱上がりだからな、経験が違うぜ」

 

女「嫌です!離してください!」

 

男1「なんだとクソアマ!?せっかくみんな幸せになれる方法を提示してやったっていうのによぉ!」

 

男2「俺たちだけが幸せになることも出来んだぜ?」

 

フラン(あわわわわ・・・どうしよう!?このままじゃあのお姉さんが・・・!そうだ!!)カチッ キュィィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

フランはこの場を収める名案を思いついた。

彼女は電極のスイッチを入れ、傘を閉じるとそれを杖みたく突いて歩き始めた。そして顔をできる限り凶悪なかんじにしようとしたが可愛らしいだけだった。

 

フラン「騒がしいから来てみればなンだァ?この三下はァ・・・」

 

一生懸命一方通行のマネをして、悪党感を出す。

 

男1「ガキ?」

 

男2「兄貴、どうする?」

 

男1「所詮ガキだ。この女と一緒に遊ぼうぜ。」

 

男2「そうだな・・・妖怪だったとしてもガキだから恐るるに足らん」

 

フラン「哀れだなァ・・・本気で言ってンだとしたら抱きしめたくなっちまうぐれェに哀れだわァ・・・(首がならないよぉ〜)」グイッグイッ

 

フラン「確かにィ・・・俺はガキだし、小せェ・・・だがなァ、俺にハンデがあったところでオマエらが強くなったわけじゃァ、ねェェだろォォォォォォがよォォォォ・・・あァァァァ!!??」ドォン!!

 

男1「うわっ!?」グラッ

 

男2「地面が・・・!」ヨロッ

 

フランが地面を強く蹴ると女の周りを残して地割れが起こり、男たちはバランスを崩した。当然、『一方通行』の能力ではない。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』で地割れを起こしたのだ。

 

フラン「わりィィィィがァァァァ!こっから先は一方通行だァ!!」バキッ

 

男1「ぐはぁ?!?!」ズドーン

 

男2「兄貴!!」

 

フラン「大人しくしっぽ巻きつつ泣いてェェ!無様に元の豚箱へェェェ

!!引き返しやがれェェェェェェェェェェ!!!!!!」ドゴォ

 

男2「ぶほぉ?!?!」メキメキ

 

フランは一方通行が霊夢にやったように男1の鳩尾を殴り、男2の顔面を渾身の右ストレートでぶっ飛ばした。

 

フラン「まァ確かに・・・このザマじゃァ舐められンのも無理ねェなァ」カチャッ

 

フランは傘を拾う。

 

女「あなたは・・・」

 

フラン「ただの悪党ォだ・・・クソッタレ・・・(決まったぁ〜!!)」スタスタ

 

一方通行(なにやってンだァ・・・あのクソガキがァ・・・)ハァ

 

屋根の上に降り立ち、その様子を見ていた一方通行は嘆息した。

 

 

 

 

フラン「あっ!あくせられーた!おかえり!!」

 

一方通行「待たせたなァ。・・・さっき固定以外のベクトルが働いたァ、一体何してやがった?」

 

フラン ギクッ「あ、あれだよ!さっきコケちゃって・・・それで・・・」アタフタ

 

一方通行「チッ、まァいい。・・・今度は悪党を語るな。」

 

フラン「ギクギクぅ?!(なんでバレてるのぉ〜・・・)」

 

一方通行「オラ、行くぞクソガキ。」

 

フラン「どこへ行くの?」

 

一方通行「飯だァ、どォせ食ってねェだろ。」

 

フラン「やったー!フラン和食っての食べてみたい!!」

 

一方通行「調子のいいヤツだ・・・」ハァ

 

ガラガラガラ

 

店員「いらっしゃいませー!何名様ですか?」

 

一方通行「2人だ。」

 

店員「お座敷とテーブル席どちらになさいますか?」

 

一方通行「テーブr フラン「お座敷で!!」

 

店員「か、かしこまりました」ビクッ

 

一方通行「オイ・・・」ジロッ

 

フラン「ふふーんっだ!」クルリンパ

 

店員「それではご案内いたします。・・・こちらになります。」

 

フラン「すごーい!フランお座敷に座ってみたかったんだ!」セイザ

 

一方通行「あァそォかよ。」スッ

 

フラン「もう!ちゃんと正座しなきゃダメなんだよ!」

 

一方通行「うるせェなァ・・・そンなの俺の勝手じゃねェか。」

 

店員「失礼します。お茶になります。お熱いのでお気をつけてください。」コトッコトッ

 

フラン「わ〜」(ᵒ̴̷͈ᗨᵒ̴̶̷͈ )✧

 

店員「お決まりになりましたらお呼びください。」

 

フラン「メニューはこれだね!フラン外食初めてだから緊張しちゃう」

 

一方通行(そォいやそォだったな。)オチャズズ・・・

 

フラン「あくせられーた!」

 

一方通行「あァ?」

 

フラン「このとんかつていしょくってなに?」

 

一方通行「豚肉にコロモつけて揚げたやつだ。」

 

フラン「じゃあ、このいくらどんってのは?」

 

一方通行「鮭という魚の卵を醤油漬けにし、メシの上にかけたものだ。」

 

フラン「これは?」オスシユビサシ

 

一方通行「寿司かァ?酢を染み込ませたメシを握り、その上に生の魚の切り身を乗せたもンだ。」

 

フラン「生の魚を?フラン生の魚なんて食べたことない!」

 

一方通行「日本独自の食文化ってヤツだ。」

 

フラン「おお〜!!日本には美味しそうなものでいっぱいだね!!」

 

一方通行「美味いもンばっかで幸せだな。」

 

フラン「フランおすし食べる!!」

 

一方通行「好きにしろォ・・・」

 

フラン「あくせられーたは何にするの?」

 

一方通行「コーヒーでいい。」

 

フラン「えーっ?ちゃんと食べなきゃダメだよ!」

 

一方通行「チッ・・・トンカツ定食とコーヒーだ。」

 

フラン「じゃあフランはおすしとオレンジジュース!」

 

フランは元気に手を挙げ、店員を呼んだ。

 

フラン「すみませーん!!」

 

店員「ご注文はお決まりですか?」

 

フラン「えーっと、おすしと、とんかつていしょくとオレンジジュースとコーヒーで!」

 

店員「コーヒーはブラックで?」

 

一方通行「あァ。」

 

店員「確認致します。お寿司と・・・・・・コーヒーのブラック。お間違えないですか?」

 

フラン「大丈夫でーす!」

 

店員「かしこまりました。少々お待ちください。(ヤダ、あの子かわいい!同じ色の目してるし、兄妹かしら・・・)」

 

フラン「ねぇねぇ、この後どこ行くの?」

 

一方通行「家探しだ。」

 

フラン「この人里で?」

 

一方通行「いや、できるだけ人のいねェ場所にしたい。」

 

フラン「森の中とか?」

 

一方通行「そォだなァ・・・オマエも来るンだァ、オマエの好きなところでいい。」

 

フラン「近くに小さい川とかあったらいいよね!」

 

店員「お待たせいたしました。とんかつ定食とお寿司、コーヒーにオレンジジュースになります。」

 

フラン「まってましたぁ!!」

 

一方通行「静かにしてろォ・・・」

 

フラン「いただきまーす!!」

 

一方通行「・・・いただきます。」

 

フラン「・・・んぅ~、トロトロでおいし~。」

 

一方通行「オイ、店員。ここら辺に不動産とかねェか?」

 

店員「うーん・・・人里の北側入口にあったと思いますが・・・」

 

一方通行「助かった。」

 

店員「はい。」

 

フラン「ふどうさんってなに?」

 

一方通行「簡単に言やァ家を売り買いする店のことだァ。」

 

フラン「そこで家を探すの?」

 

一方通行「そこしかねェだろォしなァ。」

 

フラン「じゃあご飯食べたらいこっか!」

 

一方通行「あァ。」

 

一方通行たちは昼食を楽しみ、人里の端にある不動産に向かった。

 

フラン「ここかな?」

 

一方通行「看板にそォ書いてある。間違いねェだろォ。」

 

ガラガラガラ

 

「いらっしゃい。」

 

一方通行「あァ?河童かァ?」

 

河童「私たちのことを知ってるの?」

 

一方通行「にとりたちも似たよォな帽子を被ってたからなァ。」

 

フラン「かっぱ?」

 

一方通行「俺がさっき会いに行ってた妖怪の仲間だァ。工業に精通している種族だ。」

 

フラン「こうぎょー?」

 

一方通行「いろンなもンを造れるってことだ。」

 

河童「ここに来たということは家探しってことでいいんだよね。」

 

一方通行「あァ、そういうことだァ。フラン、オマエはあっちで待ってろォ。」

 

フラン「大人の話し合いだね!フランも参加したいけどここは我慢する!」

 

一方通行「やけに聞き分けいいじゃねェかァ。」

 

フラン「フランは天才だからね!」タタタ

 

河童「で、立地条件は?」

 

一方通行「周りに人がいねェ所・・・森の中がいい。それに近くに小川も欲しいところだ。」

 

河童「今のところそれに合った空き家はないね。新築になってくるけど・・・」

 

一方通行「新築でも構わねェ。具体的にどのぐれェ時間がかかる?」

 

河童「建てる家にもよるね。それに建てる土地も見ないと。」

 

一方通行「わかった、時間は良い。新築で家を買いたい。どォすればいい?」

 

河童「先に土地だね。土地を確保して検地するほうが先決だ。」

 

一方通行「じゃァ土地探しはいつ行う?」

 

河童「できるだけ早いほうがいいだろう?私たちも仕事がないしそれぐらいなら今日でもできるよ?」

 

一方通行「今からってことか?」

 

河童「そういうこと。」

 

一方通行「フラン。」

 

フラン「よんだ?」ピョコッ

 

一方通行「これから土地探しを始めるがどォする?オマエは先に帰っててもいいンだぞ?」

 

フラン「フランが希望したんだもん!フランもいくよ!」

 

河童「ならすぐに出かけよう。」スッ

 

一方通行「あァ。」スッ

 

フラン「りょーかい!」タタッ ギュッ

 

フランは一方通行に駆け寄り、服をつまんだ。

 

一方通行「・・・なンのつもりだァ?」

 

フラン「別にいいじゃん!」

 

ガラガラガラ

 

一方通行「ンで、森と言ってもどこの森にすンだァ?」

 

河童「周辺アクセスもいいし魔法の森と言いたいけど無理だろうね。」

 

フラン「なんで?」

 

河童「お嬢ちゃんの方は大丈夫かもしれないけど人間の方がね。魔法の森は湿度が高いだけならまだしもきのこの胞子で充満してる。それを吸い込めばたちまち幻覚症状に陥り、生きてはいられないからね。」

 

一方通行「そこは俺の能力で問題ねェが・・・どうする?」

 

フラン「多分フランも大丈夫だろうけどじめじめしてるのはやだな。」

 

一方通行「だそォだ。」

 

河童「だったら豊穣の森なんかどう?あそこだったら住みやすいんじゃない?」

 

一方通行「じゃァそこへ下見にいくぞ。」

 

フラン「おー!!」

 

 

 

 

 

豊穣の森、玄武川支流付近ー

 

フラン「わぁー・・・きれーい!」.。.:*・'(*°∇°*)'・*:.。.

 

一方通行「あァ、ここなら静かに暮らせそォだ。」

 

河童「ここはちょっと川が大きいね。大雨なんか来たら氾濫しそうだ」

 

一方通行「もっと細い川の方がいいのか?」

 

フラン「フラン探す!!」ピッ キュィィィィィィン!!

 

フランは傘を投げ捨て、川沿いを走り出した?

 

一方通行「おい待て、クソガキィ!あンまり奥行くなよ!」

 

フラン「はーい!!」

 

河童「追いかけましょうか・・・」

 

一方通行「あァ・・・」スタスタ

 

フラン「すごいすごい!緑がいっぱい!!」タタタ

 

チチチ・・・

 

フラン「本物の鳥さんだ!あはっ、うさぎさんもいる!!」キャハハ

 

フラン「ねぇねぇあくせられーた!川の中に何かいるよ!!」ニカッ

 

一方通行「川魚かァ・・・俺も初めてみたなァ・・・」

 

河童「おっ、ここに支流があるよ。」

 

一方通行「フラン、行くぞ。」スタスタ

 

フラン「うん!!」タタタ

 

一方通行(やはり森を選ンでよかったな。フランが見たことないものばっかだし、開放感に溢れてるからなァ・・・何より、ここは静かでいい。)

 

一方通行はこの温かい森の中でコーヒーを飲むのを想像していた。

心なしか彼も心踊っていた。こんなに希望に満ち溢れた気持ちは絶対に学園都市ではありえなかった。

 

一方通行「ここならいいンじゃねェかァ?」

 

河童「そうだね・・・地盤もよさげだし、川の氾濫の心配もない。だけど、木をどかさなきゃね・・・」

 

一方通行「フラン、ここはどォだ?」

 

フラン「うん!ここでいいよ!!」

 

一方通行は能力を使用し、木に手を触れると生えていた木を根っこごと引き抜き1箇所にまとめた。

 

一方通行「こンなもンか」

 

河童「・・・じゃあ決まりでいいね。後は私たちで検地しとくから、今日は帰っていいよ。」

 

一方通行「土地代とかはいいのか?」

 

河童「土地に金?いらないよそんなの。」

 

一方通行(外の世界とはちげェってことか・・・)

 

一方通行「わかった。後は頼む。」

 

河童「明日になったら立てる家を相談するよ。またあの店に来てくれ」

 

一方通行「あァ、わかった。」

 

フラン「ねぇ、あくせられーた。」グイグイ

 

一方通行「なンだ?」

 

フラン「えんかいの時間まで遊んでいっていい?」

 

一方通行「・・・好きにしろ。」

 

フラン「やたー!!」トテテ

 

フランは大喜びで森の中へ走っていった。彼女は鳥を追いかけたり、虫を捕まえたり、川に足を突っ込んだりしていた。

 

フラン「ちべた!!」バシャッ

 

反射が効いていても冷たいものは冷たい。太陽と流水を克服したフランは普通の女の子のように駆け回った。

一方通行はさっき引き抜いた木に座り、その様子を見ていた。

彼女にバッテリーをあまり使われると自分も危ないのだが今だけは無意識に許していた。そして自分の顔が綻んでいることにも気づいていなかった。

 

フラン「あーっ!!あくせられーた、今笑った!!」

 

一方通行「笑ってねェよ。」

 

フラン「嘘だぁ!今フラン見て笑ったもん!!」プンプン

 

一方通行「ハッ、確かに笑ったかもなァ。マヌケすぎるオマエのカッコみて。」

 

フラン「やっぱり笑ってたぁ!!」(`・н・´)プクー

 

温かく、静かな森にフランの怒声だけが響いていた。




最後までご覧いただきありがとうございました!
フランの一方通行のものまねどうだったでしょうか?
本人は完璧にできたと無い胸を張っているようです。
次回は宴会です。紅魔郷メンバーだけじゃなくいろんなキャラとのセッションが行われます。

次回 第十三話 宴
次回もお楽しみに!!


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第十三話 宴

今作もご覧いただきありがとうございます!

今回は宴会になります。
最後に一方通行が珍しくデレます。

それでは、本編スタートです!


一方通行(結局寝ンのかよ・・・)

 

一方通行は嘆息する。さっきまで自分が座っていた木から無理やり下ろされ、地面に座らされたと思ったらすぐにこれだ。

彼の膝の上には小さな金髪の少女が寝ている。遊び疲れたのだろう。

能力使用モードも切り忘れている。

 

一方通行(ったく・・・バッテリー切れたらどォするつもりだ。)カチッ

 

一方通行はフランの首に手を伸ばし、電極を切った。

太陽光は一方通行が全て反射しているため、フランか焼け死ぬことは無い。

 

起こすか否か。

一方通行は面倒ごとは好きではない。この少女を抱き抱え、博麗神社に向かうのも面倒くさい。

 

一方通行(起こすか・・・)スッ

 

彼は少女を起こすため頬を叩こうと手を伸ばす。

すると・・・

 

フラン「んぅ・・・む・・・」ギュッ

 

フランは一方通行の手を握ると自分の顔にもっていく。

そして幸せそうに彼の手に頬ずりを始めた。

 

一方通行「・・・ったく、めんどくせェ」ハァ

 

一方通行は彼女を起こさないことに決める。

そして一方通行はもう少しだけ、森に留まることにした。

 

 

 

 

 

 

その頃、博麗神社では来たる宴の準備をしていた。

 

霊夢「んしょ、んしょ」ガラガラ

 

魔理沙「大変だな霊夢ー」

 

霊夢「そう思うならあんたも手伝いなさいよ!」

 

魔理沙「私は客だぜ?来てやってるだけありがたいと思え。あと茶くらいだせよな?」

 

霊夢「図々しいってレベルじゃないわよあんた・・・」

 

霊夢はあまりの厚かましさに心底呆れた。

 

霊夢「で、宴会の呼び込みどうだった?」

 

魔理沙「みんな来るらしいぜ?でもよ今回の異変の犯人たちは呼んでないぜ。呼ばなくていいのか?」

 

霊夢「外来人が伝えてくれてるわ。なんでも彼、あの館に住んでるらしいわよ。」

 

魔理沙「マジで!?仮にも人間だろ?それが妖怪の館に住むだなんてやべぇな・・・」

 

霊夢「ま、彼らは来るから大丈夫よ。」

 

アリス「こんにちは。準備はすすんでるかしら?」

 

魔理沙「おっ、アリスじゃないか。」

 

今神社に入ってきた彼女は魔法の森にすむ妖怪、アリス・マーガトロイド。彼女はもとは魔界出身だが訳あって地上に住んでいる。

度々魔法の森に迷い込んだ人を泊めてあげたりもしている人格者だ。

 

霊夢「アリス、来てくれたとこ悪いけど手伝ってくれるかしら?」

 

アリス「わかったわ。」

 

霊夢とアリスは宴会の準備を進めていく。

 

アリス「聞いたわよ。今日は外来人の人間ながら異変を起こした妖怪と博麗の巫女を圧倒した英雄が来るらしいわね。」

 

霊夢「一方通行ね。レミリアたちは来るだろうけど彼は来るかしら?」

 

アリス「アクセラレータ?変な名前ね。日本人ではないの?」

 

霊夢「日本人。そして名前は彼の能力名よ。本当の名前は忘れてしまったらしいわ。」

 

アリス「自分の名前すら忘れちゃうなんて・・・」

 

魔理沙「・・・あいつ、まともな育ち方してないぞ。」

 

霊夢「一方通行と会ったことあるの?」

 

魔理沙「そいつが白い髪で紅い目を持つやつなら間違いない。

あの野郎、私を圧倒した後すぐに何を聞いてきたと思う?」

 

アリス「お前何者だー!・・・とか?」

 

魔理沙「それも聞いてきたがあいつは誰の差し金で俺たちを狙った?・・・だぜ。」

 

アリス「普通じゃないわね。」

 

魔理沙「あぁ・・・常に命を狙われてたような口ぶりだったぜ。」

 

霊夢「てかなんであんた一方通行に攻撃したの?」

 

魔理沙「いやー人里で見ない顔の兄妹を見かけてよぉ、つけてみたら見つかってなんかすんごい悪そうな顔してたし言動も危なかったからヤバいやつだと思って・・・」アハハ

 

霊夢「無傷で済んでよかったわね。私なんて鼻が折れて見るに堪えない顔だったんだから。」

 

アリス「霊夢まで圧倒するなんてね・・・何者なの?」

 

魔理沙「それこそ今日聞けばいい話じゃないか!」

 

霊夢「じゃあさっさと準備するわよ。魔理沙も手伝いなさい!」

 

魔理沙「うぃーす。」

 

 

 

 

 

 

紅魔館ー

 

レミリア「なかなか戻らないわね、フラン達・・・」

 

咲夜「宴会の時間まで後二時間ほどです。いかがいたしますか?」

 

レミリア「多分そのまま博麗神社に向かうつもりでしょう。フランはともかくあの一方通行よ。彼がいるなら大丈夫よ。」

 

咲夜「ですが、心配事が・・・」

 

レミリア「心配事って?」

 

咲夜「彼の性格です。もしかしたらバックレてしまうのでは?」

 

レミリア「それこそフランの出番よ。彼についていかせたのは何も電極のテストのためだけじゃないわ。あの子だったら無理やりにでも連れて行かせるでしょう。」

 

咲夜「お嬢様・・・もしや以前から宴会のことをご存じでしたか?」

 

レミリア「能力でね。たまたま見えただけよ。」

 

咲夜「そこから今日のことまで考えておられたのですか。流石ですね。」

 

レミリア「美鈴がフランに興味をもたせたらしいからね。効果は絶大のハズよ。」

 

咲夜「確かに・・・彼は行くしかありませんね。」フフ

 

レミリア「そうでしょう。」フフ

 

レミリアは紅茶を啜る。

 

レミリア「パチュリー達にも準備ができたか聞いて来て頂戴。」

 

咲夜「かしこまりました。」ガチャッ

 

レミリア「もう陽が落ちるわね・・・」ズズッ

 

 

 

 

 

一方通行(いつまで寝てンだァ、このクソガキ・・・)

 

もう陽が落ちてしまった。宴会の時間まであまり時間がない。

 

フラン「・・・みゅう・・・スー・・・」

 

一方通行(流石に起こすか・・・宴会に参加させなかったらあとが面倒ォだかンなァ・・・)

 

一方通行「オラ、起きろクソガキ。」ペチペチ

 

フラン「・・・ん・・・んんぅ・・・」プイッ

 

一方通行(そっぽ向きやがった・・・)

 

一方通行「起きねェとおいてくぞ。」ユサユサ

 

フラン「・・・むぅ・・・やぁ・・・」ガクガク

 

一方通行「・・・クソッタレが。」カチッ キュィィィィィィィィィィィィン!!

 

一方通行は電極を戦闘モードに切り替えると杖と日傘を脇に挟み、フランを抱きかかえた。

そして、博麗神社へ向けゆっくり飛び立った。

 

一方通行(真っ暗だ・・・夜ってこンな暗かったンだな・・・)

 

一方通行は幻想郷の夜に飛び立つのは初めてだ。

空からみた夜の幻想郷は学園都市にくらべてすごく暗かった。

人里に少し明かりが見えるくらいだ。

 

一方通行(学園都市は常に明るかったが『暗』かった。ここは暗いが『明』るい・・・)

 

彼はふと月を見上げる。

 

一方通行(俺が求めてたもンはこれだったのかもしれねェな・・・)

 

一方通行はさらにスピードを落とし、博麗神社へと向かった。

 

 

 

 

 

博麗神社ー

 

霊夢「もうすぐ始まりね。」

 

魔理沙「まぁ、私の手にかかれば準備なんて楽勝だぜ!」

 

アリス「あなた邪魔しかしてなかったじゃないの・・・」

 

文「あら、異変解決御三家の方々ではありませんか!」

 

魔理沙「早えーなおい。」

 

霊夢「どうせ紅魔館組に取材でしょ?」

 

文「大当たりです!一方通行さんにはお話を聞くことができましたが、吸血鬼のお嬢さん方には聞けてないですからね!」

 

魔理沙「あいつに取材できたのか!?ぶっ飛ばされそうな気がするんだが・・・」

 

文「もちろん手羽先にされそうになりましたよ。」

 

霊夢「ほらやっぱり。」

 

アリス「でも、ちゃんと文の取材受けるなんて意外と優しいのかも?」

 

文「いえいえ、最後まで抵抗されましたよ。首根っこ掴まれて普通に死ぬところでした。」

 

魔理沙「じゃあどうやって取材受けさせたんだ?」

 

文「どうやら彼は妖怪の山に用事があったようでして、道を教える代わりにってわけです。」

 

霊夢「なるほど、交換条件ね。」

 

アリス「あなたも汚い手を使うわねー」

 

文「失礼な!この清く正しい射命丸文の取材方法が汚いと!?ギブアンドテイクですよ!ギブアンドテイク!!」ズイッ

 

アリス「わ、わかったからはなれなさい・・・」ヒキッ

 

文「分かってくださりましたか!それではスタンバイするので後ほど」

 

魔理沙「相変わらず忙しいやつだな。」

 

霊夢「あんたが言えたことでもないでしょ。」

 

アリス「だね。」

 

魔理沙「な、なっ、なんだとぉ!」

 

霊夢「ほら、そうこうやってるうちに集まってきたわよ。・・・あれは、レミリアたちも来たようね。」

 

魔理沙「あいつが吸血鬼・・・ガキにしか見えん。」

 

アリス「でもどこかの誰かと違って佇まいが大人ね。」

 

魔理沙「・・・アリス、覚えてろよ。」

 

アリス「まぁ、怖い怖い。(棒)」

 

魔理沙「(#^ω^)」ピキピキ

 

レミリア「博麗の巫女、博麗霊夢。今夜は招待いただき感謝するわ。」

 

霊夢「よく来たわね。みんな揃ってる?」

 

レミリア「それがフランと一方通行がいないの。先に来てないかしら?」

 

霊夢「こっちも来てないわ。」

 

魔理沙「やっぱりバックれたんじゃね?」

 

アリス「こら!魔理沙!!」

 

レミリア「そちらの者たちは?」

 

霊夢「あぁ、こいつらは・・・」

 

魔理沙「普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ!よろしくな!」

 

アリス「アリス・マーガトロイド。人形使いをやってるわ。よろしく。」

 

レミリア「紅魔館の主にして誇り高き吸血鬼。レミリア・スカーレットよ。以後お見知り置きを。」スッ

 

レミリアはスカートの端を掴み丁寧に挨拶をした。

その後、その他の面々も挨拶を済ませ、話題は一方通行に戻っていた。

 

霊夢「魔理沙の言ったとおり、一方通行はやっぱり来ないのかしら?」

 

レミリア「その辺は心配いらないわ。彼は必ず来る。いや、来ざるを得ないといったところかしら。」

 

魔理沙「そりゃまたなんで?」

 

レミリア「私の妹が一緒にいるのよ。連れてこなかったら後が怖いから、彼は必ず連れてくるわ。」

 

霊夢「あー・・・納得したわ。」

 

魔理・アリ「?」

 

レミリア「まぁ、来ればわかるわよ。」フフ

 

霊夢「とりあえずあそこに座ってて。みんなに紹介するから。」

 

レミリア「感謝するわ。博麗霊夢。」

 

霊夢「霊夢でいいわよ。私もレミリアって呼ぶから。」

 

レミリア「ふふっ、ではそうさせてもらうわ、霊夢。」スタスタ

 

アリス「結構集まってきたわね。」

 

霊夢「後は一方通行とフランね。」

 

魔理沙「あのレミリアってやつが姉だったんだな。私はてっきりそのアクセラレータってやつの妹かと・・・」

 

霊夢「まぁ確かに似てるとこあるわよね。紅い目とか。」

 

アリス「ますます会ってみたくなったわ。」

 

チルノ「あくせられーた!!どこにいるー!このちるのさまがやっつけにきたぞー!!」

 

大妖精「やめなよチルノちゃん!」

 

魔理沙「ちび共も集まってきたようだな。」ケラケラ

 

萃香「霊夢ーまだ始めないのー?」

 

霊夢「もう少し待ちなさい。」

 

ワイワイガヤガヤ・・・

 

一方通行「ンだァ?このどンちゃン騒ぎはァ・・・」ザッザッ

 

霊夢「あ!一方通行!!」

 

魔理沙「やっぱりあいつだったか。」

 

アリス(なんかカッコイイ///)

 

レミリア「フラン!?何があったの?」

 

一方通行「なンもねェよ、ただ遊び疲れて寝てるだけだ。」

 

霊夢「あらあら、幸せそうな顔して。」

 

魔理沙「子供らしいな。」

 

アリス「お姉ちゃんとは対照的ね。」

 

一方通行「オマエは?」

 

アリス「あっ、あ、あ、アリス・マーガトロイドよ。よろしく///」

 

一方通行「一方通行『アクセラレータ』だ。(なンだコイツ・・・変なヤツだな)」

 

魔理沙「みんなー!!全員揃ったぜ!!」

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

一方通行「チッ・・・うるせェなァ。」

 

霊夢「えー、今回の異変を通してこれからこの幻想郷に住むことになった新しい住人を紹介したいと思います。まずは・・・」

 

レミリア「レミリア・スカーレットよ。霧の湖にある紅魔館の主にして誇り高き吸血鬼。この前は迷惑をかけたわね。そのお詫びとして・・・咲夜。」

 

咲夜「ここに」スッ

 

レミリア「私たち紅魔館はこのワインを皆さんに贈ります。どうぞ楽しんでちょうだい。」ワインカカゲ

 

わあああああああああ!!

 

レミリア「続いて私の家族を紹介するわ。まず、私の右に立ってるメイド。」

 

咲夜「十六夜咲夜でございます。どうぞよろしくお願い致します。」

 

ザワザワ・・・

キレイナヒト···

ドウギョウシャノニオイガ···

 

レミリア「そしてこのチャイナ。」

 

美鈴「紅美鈴です。紅魔館の門番をしています。よろしくお願いします!(え?チャイナ?)」

 

チチデカイ···

ウラヤマシイ···イヤネタマシイ···

 

美鈴(なんか一部から殺気が・・・)

 

レミリア「次はそこの紫ニート。」

 

パチュリー「誰がニートよ!・・・パチュリー・ノーレッジよ。紅魔館にある魔導書図書館の司書をしてるわ。動かない図書館なんて言われるけどちゃんとご飯とか食べに図書館から出てるわよ。」

 

ケッキョクニートジャナイ···

ジタクケイビイン···ココニモドウギョウシャガ···

マドウショトショカン?チョットカリニイクカ···

 

レミリア「そこの彼に抱かれて寝てるのは私の妹、フランドール・スカーレットよ。あの子は知らないことが多いからみんな教えてあげてね」

 

ナニアノコ···カッカワイスギルッ

ホショクタイショウガ···

ケッコンシヨ···

 

レミリア「以上が私たち紅魔館組よ。仲良くしてちょうだいね。」

 

こあ「あれ?私は?」

 

霊夢「それじゃああなたの番ね。一方通行。」

 

一方通行「チッ・・・一方通行『アクセラレータ』だ。」

 

ナンカコワクナイ?

カタギジャナイヨアノヒト

 

霊夢「言葉が足りないわよ。一方通行。」

 

一方通行「なンで俺がこンなこと・・・」

 

霊夢「ここで暮らすうえで交友関係は大事よ?」

 

一方通行「クソッタレが・・・」

 

一方通行は少し考えてから口を開いた。

 

一方通行「俺は学園都市ってところから来た超能力者(LEVEL5)だ。その中でも最強の第一位だった。以上だ。」

 

ヤッパリアイソワルイ

ナレテナイダケジャナイノ?

アトデキイテミヨ

 

霊夢「これが今回の異変を解決した立役者よ。彼も幻想郷で暮らすらしいからよろしくね。」

 

萃香「霊夢ーもういいだろぉ?」

 

霊夢「そうね・・・それでは!一方通行と紅魔館組を歓迎して、乾杯!!!!」

 

乾杯!!!!うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

フラン「・・・うるさいなぁ」パチッ

 

レミリア「あら、起きたのね。」

 

フラン「お姉様・・・ハッ!ここはどこ!?」

 

レミリア「宴会会場よ。あなた遊び疲れて寝てしまったんだってね。一方通行が抱きかかえてきたわよ。」

 

フラン「あくせられーた・・・ちゃんと連れてきてくれたんだね。」ゴシゴシ

 

霊夢「あら、目を覚ましたのね。」

 

フラン「あ、霊夢」

 

アリス「この子がフランドール・スカーレット?」

 

フラン「長いからフランって呼んでね!お姉ちゃん!!」

 

アリス(か、可愛い!!)

 

一方通行「起きて早々やかましいヤツだな。」

 

魔理沙「まあまあ、いいじゃねえか!」

 

フラン「魔女のお姉ちゃんはだあれ?」

 

魔理沙「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!よろしくな、フラン!」

 

フラン「よろしくね!まりさ!」

 

アリス「私はアリスよ。アリス・マーガトロイド。人形作りをしているわ。よろしくね。」

 

フラン「ありすお姉ちゃんお人形さん作れるの?」キラキラ

 

アリス「ええ、作れるわ。今度作ってあげましょうか?」

 

フラン「うん!ありがとう!!」ニカッ

 

レミリア「よかったわね、フラン。」

 

フラン「うん!フランすっごくうれしい!!」

 

レミリア(嗚呼、全くこの子は・・・)ホロリ

 

萃香「どうした?もう酔っちまったか?」

 

レミリア「ええ、ちょっとばかし酔ってしまったわ。」

 

アリス「ほら、この唐揚げ食べる?一方通行もいかがかしら?」

 

フラン「食べる食べる!」

 

一方通行「自分でとるからいい。」

 

アリス「そんなこと言わずに、ほら!」スッ

 

一方通行「勝手においてんじゃねェ!」

 

霊夢「あら、早速打ち解けてるじゃない。」

 

一方通行「打ち解けてなンかいねェ!!」

 

フラン「あなたもせっかくの宴会なんだからもっと素直になろ?」

 

魔理沙「そうだぜ!フランの言うとおりだ!」

 

一方通行「あァ・・うっせェうっせェ。」

 

萃香「なんだ?お前まだシラフか?宴会なんだぞ、飲め飲め!」

 

一方通行「ふざけたこと抜かしてンじゃねェ!!第一俺は未成年だ!酒なンて飲めるかァ!!コーヒー持ってこい!コーヒー!!」

 

萃香「ごちゃごちゃ言ってないでほら!」グイッ

 

一方通行「オイバカやめろォ!!(なンだ!?コイツの力ァ・・・!強すぎて引きはがせねェ)」グググ

 

萃香「おらぁ!!」グッ

 

一方通行「ムグッ・・・ングング・・・」ゴクゴク

 

一方通行アルコールメーター

 

Empty ← Full

 

一方通行(クソッ・・・!マジィ・・・)ゴクゴク

Empty ↖ Full

 

萃香「もっといけいけー!」

 

Empty ↑ Full   

 

霊夢「いい飲みっぷりねぇー」

 

Empty ↗ Full 

 

一方通行(やべェ・・・もォ・・・)ゴクゴク

 

Empty → Full

 

一方通行「」チーン!マンタンニナリマシタ

 

一方通行「」プハッ

 

フラン「・・・大丈夫?」

 

萃香「おっ、エンジンかかったか?」

 

一方通行「・・・・・・ギャハッ・・・」

 

霊夢「え?」

 

一方通行「ギャアハハハハッ!!ギャァァァァハハハッハハハァ!!!!」

 

魔理沙「なんかやばくないか?」

 

一方通行「やべェよォ!!最高ォに飛ンじまったよォ!!クソ野郎ォ!!!!」

 

萃香「お!いいテンションじゃないか。こっち来いよ。」

 

そういうと一方通行は鬼たちの元へ連れていかれた。

一方通行は平時や冷静な状態では淡白で無関心的な言動が多いが、戦闘中に感情が昂ると凶暴な言動や残虐な戦い方をしたり、敵を痛めつける際に快楽を感じるような危うい面も見せる。表情も淡々とした無愛想な物やしかめっ面が多く、嗜虐的な笑み以外では笑顔はあまり見られない。

だが、酒を飲んだことによって戦闘以外でも感情が昂ってしまった。正直危険極まりないが・・・

 

霊夢「鬼たちが何とかしてくれるでしょ。」

 

フラン「ホント!?」

 

魔理沙「鬼たちと一緒になって暴れ始める可能性は?」

 

アリス「確かに。」

 

霊夢・フラ「あっ・・・」

 

オマエニンゲンノクセシテヤルジャナイカ

ギャアハハハハハハハハハハッ!!

 

アリス「彼ら同士で潰しあってるわね。」

 

魔理沙「あれならしばらく大丈夫だろう。」

 

霊夢「フラン、あそこに妖精たちがいるわ。話しかけてごらんなさいな。友達になれるかもよ。」

 

フラン「ホントに!?フランにお友達が?」

 

霊夢「そうよ、できるかもよ。」

 

フラン「でも、ちょっと恥ずかしい。」

 

アリス「勇気を出していってらっしゃい。きっと仲良くなれるわ。」

 

フラン「・・・うん!フランいってくる!」タタタ

 

魔理沙「頑張れよー!」

 

霊夢「・・・友達・・・できるといいわね」ズズッ

 

魔理沙「あいつならできるさ、それよりも・・・」

 

勇儀「その程度か?人間。」

 

一方通行「くかっ、くかき・・・くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけこきくかくけけこかくきけこくくけくかかきくけけこかきくけかくかきけこかかきくけききこかかきくここくけけこきくかくけけこかくきけこくくけくかかきくけけこかきくけかくかきけこかかきくけききこかかきくここくけけこきくかくけけこかくきけこくくけくかかきくけけこかきくけかかかかかかかかァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

魔理沙「あいつ頭大丈夫か!?」

 

アリス「なんかヤバそうよ!」

 

霊夢「なんか空気が・・・」

 

一方通行「圧縮!圧縮ゥ!!空気を圧縮ゥ!!いいぜェ愉快なこと思いついたァ!!」ヒュォォォォォ!!

 

勇儀「なかなかやるじゃないか人間!」

 

鬼達「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

魔理沙「ヤバい!ここら一帯吹き飛ぶぞ!!」

 

アリス「やばいやばい!」

 

霊夢「やめなさい!わたしの神社がああああああああ!!!!」

 

フラン「おふざけがすぎるよ!あくせられーた!」カチッ

 

一方通行「くはっ・・・」ドサッ

 

勇儀「なんだ!?一方通行が急に倒れて・・・!」

 

ザワザワ・・・

 

一方通行「クソガキィ!!何しやがる!!」

 

フラン「ていっ!!」ブンッ

 

一方通行「ガハッ・・・」バキッ! チーン・・・

 

萃香「一方通行が一瞬でやられた!何者だ!?あの子!!」

 

鬼「さっき寝ていたレミリアとかいう吸血鬼の妹じゃないか?」

 

鬼「確か・・・フランドール・スカーレットとかいう。」

 

勇儀「是非とも手合わせ願いたいね。」

 

霊夢「助かった・・・フランありがとぉ~。」

 

魔理沙「やるな・・・フラン。」

 

アリス「みて、一方通行が引きずられてくわよ。」

 

フラン「もう・・・だらしないんだから。」

 

一方通行「」ズルズル

 

レミリア「あらあら」フフッ

 

咲夜「あの一方通行が・・・」

 

ミテ、アクセラレータガヒキズラレテル。

イガイトコワイヒトデモナイノカモ。

 

霊夢「あっ、こっち来た。」

 

フラン「あのね、この人を休ませられるところある?」

 

霊夢「なら、境内裏に・・・」

 

フラン「ありがと!!」グイグイ

 

一方通行「」ズルズル

 

アリス「白目向いてたわよ。一方通行。」

 

魔理沙「あんなに強くてもフランには勝てなかったな。」ハハハ

 

 

 

 

 

フラン「全く、お酒なんか飲むから・・・」

 

一方通行「zzz・・・」

 

フラン「・・・フラン友達ができたんだよ。チルノと大ちゃんとルーちゃん、みすちー。みすちーはね、お食事やさんやってるんだって。こんど一緒に行こうね。」

 

フランは寝ている一方通行に今日の成果を嬉しそうに語る。

 

フラン「・・・コーヒーもらってくるね。」トテテ

 

しばらくして一方通行は目を覚ました。

 

一方通行「・・・ッ・・・!頭いてェ・・・」ムクッ

 

一方通行(一気に大量の酒飲まされちまったからなァ・・・クソッタレ。)

 

一方通行は能力を使い、アルコールを分解しようとする。

 

一方通行(ダメだァ・・・頭痛くて演算できねェ・・・)バタン

 

彼は再び横になった。

 

一方通行(コーヒー飲みてェ・・・)ズキズキ

 

フラン「あっ!起きた!」テテテ

 

一方通行「・・・あァ?」

 

フラン「コーヒーもってきたよ!ふふっ、究極の選択だよ!右手と左手、どっちのコーヒーがいい?」ハイッ

 

一方通行「オマエにしちゃァ気が利くじゃねェか。・・・てか、なンだァそりゃ、どっちも同じじゃねェか。右手のをよこせ。」

 

フラン「はいどうぞ!」

 

一方通行「つーか、もう一つはどォすンだ?」

 

フラン「これはフランの分だよ!」

 

一方通行「・・・前に飲んでマズイって言ってただろォが。飲めンのかオマエ?」

 

フラン「もちろんっ!前ので慣れたから一気に飲み干しちゃうよ!」

 

フランはコーヒーカップを掲げて自信満々に飲み始める。

 

フラン「ごくっごくっ・・・・・!・・・げほっ、げほっ!うう、やっぱり苦い・・・・・・。」

 

一方通行「・・・ナニやってンだァオマエ?やっぱり飲めねェンだろ。」

 

フラン「思ってたより苦かった・・・・・やっぱり大人の味だぁ~。苦くて・・・飲みきれない・・・」

 

一方通行「チッ、もォ飲まねェならよこせ。」

 

フラン「ううん、大丈夫・・・!持ってきたのはフランなんだから、最後まで責任取って自分で何とかできるもん!」

 

フランはそう言うと一気にコーヒーを飲み始めた。

 

フラン「ごくっごくっ・・・・・!ほ、ほら、飲みきったでしょ!げほっ・・・・・・うぇ~・・・みゅ~・・・お口の中、苦ぁ~・・・」

 

一方通行「・・・なァ、オマエ。なンでまた急にコーヒーなンて飲もうと思ったンだァ?」

 

フラン「うーんとね・・・あなたと一緒が良かったの。あなたと同じものを食べて、同じものを飲みたかったの。そうすれば苦いコーヒーだってもっとおいしくなるかなって。」

 

彼は一気にコーヒーを飲みほした。

 

一方通行「・・・・・・チッ、クソガキが。オイ、もういっぺん貰ってこい。」

 

フラン「え、なんで?そんなにたくさん飲むの?」

 

一方通行「今日はコーヒーの気分じゃねェンだよ。いいから別のもの持ってこい。」

 

フラン「それって、もしかして・・・フランのため・・・?」

 

フランの問いかけに一方通行は黙ってそっぽを向く。

 

フラン「・・・ふふっ、わかった!じゃあ、今度は甘いの二つもらってくるね!」タタタ

 

フランは嬉しそうににぎやかな宴会会場へと走っていった。

その風景を見ながら一方通行は静かに微笑んだ。




最後までご覧いただきありがとうございました!

フランちゃん、さいごまでかわいかったですね。
次回は妹様を出そうと思っています!

次回、第十四話 妹達

                            次回もお楽しみに!!


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第三章 妹達異変
第十四話 妹達(シスターズ)


今作もご覧頂きありがとうございます!!
残念ながら平和回は終わってしまいますが、これから始まる戦いは見ものです。
一方通行は過去のトラウマに打ち勝てるのか・・・

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それでは本編スタートです!!


博麗神社は静まり返っている。境内ではみんな酔いつぶれて寝てしまっている。

レミリアでさえもブルーシートの上で他の妖怪たちと雑魚寝している。

フランは霊夢が普段寝泊まりしている部屋に布団を敷いてもらいすやすやと寝ている。

一方通行はその部屋の月が良く見える縁側に座っていた。

 

フラン「スー・・・スー・・・」

 

一方通行(ここは平和だ・・・ここにいると学園都市で殺しあってた時のことを忘れちまう。)

 

一方通行はふと学園都市にいたころを思い出す。

 

一方通行(確か最初は・・・そォだったなァ、小学生の頃だった・・・俺の能力は生まれつきのモンで、ほかのガキとケンカしたとき反射を切り忘れちまったときからか・・・)

 

彼は学園都市に行く前、いたって普通の少年だった。10歳の頃に自分の能力が際限無く周囲を傷つけた件で自らの危険性を自覚したことを機に、他者へ感情を向けることに非常に消極的になり、さらに実験による影響も受けて常に周りを拒絶するようになる。一方で自身が最強の絶対能力者(LEVEL6)になることで周囲の人間を傷つけずに済むのではないかと思うようになり・・・

 

一方通行(絶対能力移行計画『LEVEL6シフト計画』に加担し、第三位の遺伝子から造られた妹達『シスターズ』を一万もぶっ殺した・・・・・・)

 

一方通行の頭にある少年の声がよぎる。

 

「あいつらだってなぁ・・・精一杯生きてきたんだぞ。全力を振り絞って、必死に生きて、精一杯努力してきた『人間』が、なんだって・・・テメエみてぇな人間の食い物にされなきゃなんねんだよ!!」

 

一方通行(その時俺はこう思った・・・『人間』?いや、『人形』だろ?・・・・・・ってなァ。だが、違った。アイツらはちゃンと意思を持っていた。最後に死にたくねぇからあのクソヒーローとともに戦った。)

 

彼が変わるきっかけになった言葉をぶつけた人物。それは彼に初めて傷を与えた最弱。そして彼に初めて勝った最弱。

 

無能力者(LEVEL0)、上条当麻だ。

 

一方通行(あのヒーローには俺に持ってない強さがあった。倒れれば楽になるのにアイツは痛めつけても痛めつけても何度でも立ち上がってきた。そして妹達を全員救った・・・)

 

一方通行は自分を負かした人物、上条当麻の決意に満ちた顔を思い出し、思う。

 

一方通行(俺は向こうで贖いきれねェ罪を犯した。だが、ここなら・・・ここでならヒーローになれるか・・・?まだ・・・間に合うのか・・・?なァ・・・教えてくれよォ・・・三下ァ。)

 

一方通行は迷っていた。ここで生きていていいのか?いや、そもそも自分は生きていていいのか?自分の罪を忘れ、のうのうと怠惰の限りを尽くす。妹達への贖罪もせずに・・・・・・

 

一方通行(・・・いいわけねェだろォが・・・!自分だけ平穏を手に入れ、幸せになる?ンなことが許されるわけねェだろォ。打ち止め(ラストオーダー)はどうする?計画が終わっても妹達の司令塔であるあのガキが研究者どもに利用されれば、残った一万もの妹達が軍事利用されるだろォ・・・ンなことがわかってていつまでもここにいるわけにはいかねェ。)

 

一方通行は振り返り、寝ているフランを見る。

 

一方通行(・・・今まで甘い夢を見よォとしてたンだ。俺にはこのガキのそばにいる資格はねェ。)スッ

 

一方通行は杖を持ち、立ち上がると暗い森の中に進んでいく。

 

一方通行(なンとかして帰る手段を見つける。その間、知り合いのヤツらに会わねェよォにしねェと・・・)スタスタ

 

???「一方通行ですね?」

 

一方通行「あァ?・・・・・・・・ッッ!!」クルッ

 

???「一方通行ですね?と、ミサカは再度確認を取ります。」

 

一方通行「・・・なンで・・・!なンでオマエが!ここにいる!!」

 

14024号「ミサカのシリアルナンバーは14024号です。打ち止めの最優先命令により、一方通行を直ちに拘束、及び連行します。」カチャッ

 

一方通行「クッソがァァァァァァあああああああ!!!!!」カチッ キュィィィィィィィィィンン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラン「・・・!ビビッときた!!あくせられーたが電極を入れたんだ!」ムクッ

 

フランは勢いよく起き上がると布団を跳ね除け外へ飛び出した。

 

???「フランドール・スカーレットさんですね?と、ミサカは金髪の幼女にたずねます。」

 

フラン「!だれ!?」クルッ

 

15488号「ミサカのシリアルナンバーは15488です。打ち止めからの最優先命令により、あなたを拘束、連行します。」

 

フラン(シリアルナンバー?らすとおーだー?・・・もしかして、あくせられーたが言ってた例の!!)

 

15488号「先手必勝です。と、ミサカは上の空に少女へライフルをむけます。」

 

フラン(何あの武器?わかんないけどとりあえず・・・)カチッ キュィィィィィィィィィンン!!

 

 

 

一方通行(あのガキ、電極を使いやがった!)・・・チッ!!」ヒュン!!

 

スドドドドドドドドドドドド!!!!

 

14024号「よそ見している暇があるのですか?と、ミサカは一方通行に警告します。」

 

一方通行(万が一身に危険が迫った時にも電極を入れろと言っておいた。今太陽が昇ってねェってことはあのガキに危険が迫ったってことだァ。しかも、それなりに強えェアイツが電極を入れたってことは、アイツにとって未知の攻撃が来ると判断したからだァ・・・例えばライフルとかなァ。)ズザザザザザザ!!

 

一方通行は御坂妹に攻撃できずにいた。意識だけを落とせばいいのだが過去のトラウマで脳が無意識のうちに攻撃するための演算を拒んでいる。

 

一方通行(クソッ!これは壁だ。俺が乗り越えなくちゃならねェ壁だァ!!)

 

14024号(幸い、一方通行は反射を切っています。と、ミサカは仕事が楽になることを喜び心の中でつぶやきます。)

 

一方通行「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」ダァン!!

 

 

 

 

ズドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

フラン「・・・くっ・・・ふっ・・・!(やっぱり知らない武器だ!)」サッ

 

15488号「・・・」ズドドドドドドドドド!!

 

フラン(目を見れば悪い人じゃないのはわかるけど・・・なんだろう、あの目からは意思が感じられない・・・まるで操られてるロボットみたいに・・・)キーン クルッ

 

フランは御坂妹に攻撃せずに迫りくる弾丸を避けている。時々当たってしまうものは御坂妹に当たらないよう身体をひねり、別の方向へ弾いている。

 

フラン(この人は・・・絶対に殺しちゃいけない!!)ブゥゥン!!

 

フランは魔法陣を展開すると弾幕を張る準備を始めた。しかし過去のトラウマから少し戸惑い、魔法陣がブレ始めていた。

 

フラン(これはフランが乗り越えなくちゃいけない壁!!いままで殺すことしかできなかったこの力・・・今度は・・・!)

 

フラン「人を助けるために使って見せる!!」キュィィィィィィィィィンン!!

 

魔法陣がはっきりと描かれ、弾幕が光り輝いた。

 

フラン(あの人の手は借りない!自分だけの力で!!)カチッ

 

フランは電極を切り正面から御坂妹に向き合った。

 

15488号「未知のエネルギーを確認。一旦距離をおきます。と、ミサカはさりげなく自分の頭の良さをアピールします。」サッ

 

フラン「逃がさないよ!!」ギューン!!

 

15488号「ッッ!!」ズドォン!!

 

フラン(当たった!威力はうまく調節できてる。だけど意識を奪うことはできなかった・・・!)

 

15488号「今です!と、ミサカは再度少女に発砲します。」ズドドドドドドドドド!!

 

フラン「やぁ!!・・・たぁ!!」スッ! サッ! ギューン!!

 

フランは連続で発射されるアサルトライフルの銃弾を縦横無尽に飛び回り避ける。そして隙を見て弾幕を打ち出す。今まで加減して戦ったことがないので弾幕の威力の調節に苦労していた。

 

フラン(レーヴァテインを使えばこの弾幕は簡単に弾けるけど・・・それで攻撃したら間違いなくあのお姉ちゃんは死んじゃう・・・だけどこのままじゃ追い詰められちゃう・・・だったら!)ヒュォォォォォ!!

 

フラン「禁忌「フォーオブアカインド」!!」ニッ

 

フランがスペルカードを唱えるとフランの周りに三体の分身が現れた。

 

フラン(まずあの武器を壊す!)キュッとして・・・ドッカーーン!!」ギュ

 

15488号「きゃっ!」ドガァン!!

 

フランが拳を握ると御坂妹が持っていたARが粉々に壊れた。

そしてほかの三体が御坂妹を取り押さえる。

 

15488号「・・・ッ!・・・ッ!!」ジタバタ

 

フラン「これで・・・・・・最後!!!!」ブンッ

 

フランは御坂妹に手刀をふるう。

 

ドスッ!!

 

15488号「かはっ・・・・・・」ドサッ

 

御坂妹は気を失い、その場に倒れた。フランは狂気に染まっていた頃のトラウマを完全に断ち切った。

 

フラン「やった・・・できた・・・!」

 

フランは一瞬達成感に浸ったがすぐに一方通行を探し始めた。

 

フラン(あっちこっちでさっきの武器の音が聞こえる・・・みんな戦ってるんだ。もし、このお姉ちゃんたちが来たのがあの人が立ち去った後なら・・・・あの人なら・・・きっと暗いところに行くハズ。)タッタッタッ

 

フランは暗い森の中へ走っていった。

 

 

 

 

一方通行「ほらよォ!!」ヒュォォォォォ!!

 

一方通行は風のベクトルを操り、御坂妹を吹き飛ばしながら巻き込まれた砂や木片などで攻撃していた。

 

14024号「なぜ、一方通行は攻撃してくるのですか?ネットワークの情報にはそんな表記はなかったのですが・・・と、ミサカは情報と違う一方通行に困惑します。」

 

一方通行「簡単だろォ?よォは殺さなきゃいい話だろォが。きっちり意識だけを落とす。それだけできりゃァ十分だァ!」

 

14024号「くっ・・・!」ズガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

一方通行「弾丸なンか効かねェことぐれェわかってンだろォが。」キーン!

 

一方通行は御坂妹に当たらないよう弾丸を操作して反射した。

 

一方通行「さァァァァァどォォォォォするゥゥゥゥゥゥ?なァァァァァァ??だァかァらァァなァァンとォかァ言えよォォォォォォ・・・・・・・・・」ニタァ

 

一方通行は弾丸を弾きながら御坂妹に顔に迫る。

 

14024号「ぁ・・・あ・・・」

 

一方通行(今だ・・・!)スッ

 

一方通行は御坂妹の額に触れると彼女の生体電気を操作し意識を奪った。

 

14024号「」フラッ

 

一方通行「・・・」サッ

 

彼は意識を失い倒れそうになった御坂妹を抱きかかえると、彼女を寝かすべく神社へ向かった。

 

「あっ!あくせられーた!!」

 

一方通行「無事だったか。」

 

フラン「うん!大丈夫だったよ!・・・その人・・・!」

 

一方通行「なンだ?コイツらと戦ったのか?」

 

フラン「うん・・・似てるとかじゃなくてその人本人から・・・」

 

一方通行「言ったろ、クローンなンだから似てて当たり前だろォ。」

 

フラン「そういえばそうだね。」

 

一方通行「オマエ頭イイのか悪いのかわかンねェなァ・・・・・・。とりあえず神社に戻ンぞ。」

 

フラン「うん。!じゃなくて大変なの!!この人と同じ武器を持った人がほかの人たちと戦ってるの!!」

 

一方通行「なンだと・・・!」

 

フラン「みんな強いから大丈夫だろうけど・・・」

 

一方通行「とにかく行くぞ!」ダァン!

 

フラン「うん!」バサッ!!

 

一方通行とフランが飛びあがると境内のあちこちで妹達と幻想郷の住人との戦闘が行われていた。

 

一方通行「幸い誰も死んでねェよォだなァ・・・」

 

フラン「なんで?あの人たちは外の世界の人じゃないの?」

 

一方通行「あァそォだ・・・なぜここに入ってこれたンだ?」

 

霊夢「一方通行!!」

 

一方通行「霊夢か・・・!」

 

霊夢「二人とも大丈夫!?いきなり同じ顔したのが現れて銃で攻撃してきたの!ってその子!!」

 

一方通行「あァ、俺と同じく学園都市から来たンだろォ。アイツらは人間の遺伝子情報から造られたクローン人間だ。しかもアイツらはミサカネットワークってのでつながってて全員打ち止めって司令塔に操られてる。」

 

霊夢「じゃあその打ち止めってのを倒せばいいの?」

 

一方通行「そォじゃない。打ち止めもクローンの一人だ。だから打ち止めを救わなきゃならねェ。ソイツの脳には恐らくまたウイルスをぶち込まれてる・・・それを排除することによって救うことができる。」

 

霊夢「ほかのみんなはどうすればいいの?」

 

一方通行「狙われてンのは俺だけだァ。オマエ等がこの神社から離れれば襲われることはない。」

 

フラン「なんかあの人フランもつれてくって言ってたよ?」

 

一方通行「なんだと・・・!!(コイツが・・・!?なンでだ?コイツは関係ねェハズ・・・・・・学園都市はナニ考えてる・・・?)

 

霊夢「ならあなたについて行かせた方がいいんじゃない?」

 

一方通行「そォする。霊夢、オマエはどォする?」

 

霊夢「私は私の仕事をするわ。博麗の巫女としてのね。」

 

一方通行「異変ってことか。」

 

霊夢「そうよ、ところで学園都市ではあの子達を総称してなんてよんでるの?」

 

一方通行「妹達(シスターズ)だ。」

 

霊夢「ならこの異変は『妹達異変』と名付けるわ。」

 

フラン「フランはレミリアお姉様のシスター!!」ピョコ

 

一方通行「バカなこと言ってねェでさっさと行くぞ。」

 

フラン「どこに行くの?」

 

一方通行「今回妹達を操ったやつ・・・ソイツを見つけ出してぶっ潰す・・・!」ギリッ

 

霊夢(そうとう怒ってるわね。彼とあの子達と何があったのかしら?)

 

フラン「ならわたしも!」

 

一方通行「ついて来いとは言ったが、オマエは後ろに下がってろ。」

 

フラン「それは出来ないよ!!」

 

一方通行「あァ?」ギロッ

 

フラン ビクッ「だって・・・だって!やっと自由になれた子達なんだよ!?私と同じで・・・。だからまたその子たちのは自由を奪うやつは私も許せない!!」

 

一方通行「・・・・・・・・・勝手にしろ。」

 

霊夢「やることは決まったわね。私もこの場を治めたらすぐに犯人探しに向かうわ。あなた達も気をつけて。」

 

フラン「れいむもね!」

 

一方通行「レミリアに伝えろォ・・・・このガキだけは何があっても俺が守ってみせるってなァ。」

 

霊夢「わかったわ!必ず伝える!」ヒュォォォォ

 

霊夢は空へ飛び上がると境内へ向かった。

 

一方通行「俺達もいくぞ。」

 

フラン「うん!」

 

一方通行とフランも「妹達異変」の解決のため幻想郷の空へと飛びたった。

 

一方通行(妹達を再び利用したクソッタレのクソッタレのクソ野郎ォ共・・・今に見ていろォ・・・・・・テメェらの余裕の表示、すぐに絶望の顔に変えてやンよォ・・・・)ニタァ····

 

一方通行は今までにない怒りを胸に、飛ぶスピードを上げた。




最後までご覧頂きありがとうございました!

一方通行とフランは見事過去のトラウマに打ち勝つことができました!
今作は第四章のプロローグということで短くなってしまいましたが、次回から多分また長くなると思います。(多分)

次回 第十五話 妹達異変
次回もお楽しみに!!


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第十五話 妹達異変

今作もご覧いただきありがとうございます!
今回はちょっと長めになっていますがご了承ください。

後、感想にて台本形式が苦手な人が多いということでタグをつけたほうがいいとのことでしたので一応つけようと思います。
あと、初心者のものでどんなふうに書けばみなさんが見やすいかわからないので出来れば感想にてアドバイスをお願いします。

では、本編スタートです!


「うるっさいわねぇ・・・」

 

レミリアは酔いつぶれて寝ていた・・・のだが周りがとてつもなくうるさいため起きてしまった。まだアルコールが抜けきっていないため、レミリアの頭はぼんやりしていた。

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガカン!!!!

 

彼女の眠りを妨げた騒音はゴーグルらしきものを付けた少女の手に握られた火花を発するーーー

 

レミリア「銃!?」バッ!

 

キュィィィィィン!!!!

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガカ!!!!

 

ズドォン!!!!!!!

 

咲夜「お嬢様!ご無事でしたか!!」タッタッタッ

 

レミリア「咲夜!?その傷は・・・」

 

咲夜「かすり傷です・・・問題ありません・・・・」ハァハァ

 

レミリア「他の人たちも戦ってる・・・何が起こったの?」

 

咲夜「わかりません。彼女たちは突然現れ、突然攻撃してきました。ですが殺すつもりは無いようです。私も何発か喰らいましたが致命傷は避けてくれています。」

 

レミリア「相手に殺す気がないにしてもうちの家族に手を出したのは許せないわね・・・・・・」

 

咲夜「お嬢様・・・」

 

レミリア「殺すまでとはいかなくても腕の一本二本いただくわよ!!」ヴォン!!

 

レミリアは魔法陣を作ると弾幕を御坂妹へ向け一斉に放とうとした。

それを見たほかの妖怪たちも同じように弾幕を張ろうとする。

 

霊夢「待って!!!!」

 

レミリア「霊夢!?」

 

霊夢「遅くなったわね、みんな彼女たちは殺さないでちょうだい!!」

 

萃香「なんでよ霊夢。こいつらいきなりあたしたちを攻撃してきたんだ。売られたケンカは買うのが鬼のポリシーってもんだ!」スッ

 

勇儀「そうだよ。いくら博麗の巫女って言っても邪魔するんなら容赦しないよ!」ズザザザザザザ

 

魔理沙「ゆっくり話してる暇なんかないぜ!」ギュィーン!!

 

アリス「まずはこの場を切り抜けないと・・・上海!蓬莱!」シュッシュッ

 

霊夢「説明は後で必ずする!とにかくこの子たちは殺さないで!!意識を落とすか拘束してちょうだい!!戦えない者はすぐに神社から離れなさい!!神社から離れれば攻撃されないわ!!」

 

霊夢はそれぞれの人間や妖怪たちに指示を飛ばしていく。腑に落ちない者たちが多くいたが霊夢の必死の頼みからみんな指示通りに動いた。

 

レミリア「霊夢!!」

 

レミリア「フランは!?あの子が見当たらないの!それに一方通行も!!」

 

霊夢「彼らはこの異変の元凶を探しに向かったわ。」

 

レミリア「一方通行が動くということは今回の異変は彼が元居た世界に関係してるのね。・・・だけどなんでフランも?」

 

霊夢「一方通行が狙われてるのはわかるわよね?そしてなぜかわからないけどフランも狙われてるらしいわ。その時はここに残すより一方通行についていかせたほうが安全だと判断したからついていかせたわ。」

 

レミリア「なんですって!?関係ないはずなのにどうして・・・!」

 

霊夢「もう一つ理由があるわ。これはフラン本人の意思よ。あの同じ顔した子たちはどうやらクローン人間らしいの。よくわからないけど以前あの子たちは操られて自由を奪われてたんだって。その自由を再び奪ったやつらがフランにとっては許せないみたい。」

 

レミリア「過去の自分と重ねてしまったのね。」

 

 

霊夢「それに一方通行にとってもあの子たちは特別な存在みたいだわ。彼、彼女らが操られてるの見て激昂してたもの。その時の彼からは煮えたぎる憎悪の念が感じられたわ。」

 

レミリア「一体学園都市ってなんなの・・・」

 

霊夢「とにかく私は異変の元凶をさがすわ。境内の騒ぎも収まりつつあるし・・・あとは魔理沙とアリスに任せればいいわ。」

 

レミリア「そうね、それがいいわ。私と咲夜も手が空いたらフラン達を追いかけるわ。先に行っててちょうだい。」

 

霊夢「悪いわね、助かるわ。」

 

霊夢は境内の外へ出るために飛び立とうとする。

 

霊夢「あっ!」

 

レミリア「どうしたの?」

 

霊夢「一方通行からあなたへの伝言、忘れるところだった。・・・『このガキだけは何があっても俺が守ってみせる。』ってよ。」フフッ

 

レミリア「あらあら、あの白モヤシがえらく男らしいこと言うじゃない?そこまで言うんなら信じてあげましょうか。」フフッ

 

霊夢「それじゃ、お互い気を付けて。」ヒュォ!!

 

レミリア「無事を祈ってるわ。」

 

レミリア(信じるとは言ったもののやっぱり心配ね・・・早く片付けないと。)ヒュォ

 

レミリアは戦場に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

フラン「あくせられーた!あくせられーたってば!!」ヒュオオオオオオオオオオ

 

一方通行「ンだよ、うっせェな。」カチッ ヒュオオオオオオオオオオ

 

一方通行は携帯電話を閉じると視線をフランに移す。

 

フラン「まっすぐ飛んでるけどどこ行くの?まだ妹達の出現場所がわかんないでしょ?」

 

一方通行「アイツらはミサカネットワークってのでつながっていて、打ち止めからの命令もそれを通して出されている。それを探知すりゃァ簡単に見つかる。」

 

フラン「でもそのらすとおーだーがそもそも幻想郷にいるかどうかもわかんないんだよ?」

 

一方通行「だから、探知できるって言ってンだよ。」

 

フラン「だからどうやって!?」

 

一方通行「このケータイを見てみろ。」スッ

 

フラン「そんなの見せられてもわかんないよ。」

 

一方通行「だが、これが外の世界の電波で通信していることはわかるだろォ。だから幻想郷では使えない。だが、なぜか電波が入ってる。ってことはどういうことだかわかンな?」

 

フラン「・・・!幻想郷と学園都市がつながってるってこと?」

 

一方通行「そォいうことだ。だからこの電波が強くなってる方へ向かえば学園都市につながる道が見つかるはずだ。」

 

フラン「さすが!!あなたはやっぱり頭がいいね!!」

 

一方通行「オマエも今の話が理解できたってことはかなり頭の出来がいいンじゃねェか?」

 

フラン「えへへ・・・それほどでも!」

 

一方通行「話はここまでだ。急いで向かうぞ。」

 

フラン「まって!あくせられーた!!」

 

一方通行「ンだよ?急がねェとえらいことになンぞ。」

 

フラン「ちょうどこの方向・・・永遠亭があるから充電していこうよ!!」

 

一方通行「時間が惜しい。バッテリーは十分持つと思うが・・・何故だ?」

 

フラン「もしだよ?もし、むこうで思ったより戦いが長引いたりしたら大変だよ!それに相手のところに行くってことはその・・・えと・・・」アタフタ

 

一方通行「・・・万全でない状態で相手の懐に飛び込むってことは自殺行為だ・・・そォ言いたいのか?」

 

フラン「うん、そういうこと。」

 

一方通行「・・・・・・・・わかった。」

 

一方通行とフランは迷いの竹林から永遠亭を探し、降下していった。

 

コンコン

 

フランは永遠亭の扉を叩く。・・・しかし返事がない。

 

フラン「留守なのかな?」

 

一方通行「・・・・・・なンかあったとかじゃねェよな・・・?」カチッ キュィィィィィィィィィンン!!

 

一方通行は念のために電極を戦闘モードに切り替える。

 

「はーい・・・」

 

ガラガラガラガラガラ

 

輝夜「あら、一方通行じゃない。」

 

一方通行「ヒキニートか、永琳たちはどォした?」

 

輝夜「毎度毎度会うたびに失礼な奴ね!・・・永琳は奥よ。ついてらっしゃい。」

 

蓬莱山輝夜。一方通行が以前永遠亭での入院生活中時々会っていた姫である。その彼女の身分は不明だが一方通行は彼女の生活からただのヒキニートとして評価している。

 

輝夜「ところで一方通行。その子はどこのお嬢さんかしら?」

 

フラン「綺麗な人・・・そして佇まいも・・・」

 

一方通行「見た目に騙されるなよフラン。コイツの正体は怠惰を貪り食うただのヒキニートだ。」

 

フラン「女の人に向かってそんな言い方!でりかしーってのがなってないよ!」プンプン

 

輝夜「まぁ、この子はそこの白い悪魔と違ってやさしいのね。」ナデナデ

 

フラン「えへへ~」ニコニコ

 

一方通行「・・・チッ。」

 

一方通行たちは奥へと進んでいく。しかしいつまでたっても永琳の部屋に着かない。

 

一方通行「なァ、ここの廊下ってこンな長かったか?」

 

輝夜「あら、ごめんなさい。無限回廊を切るのを忘れてたわ。」フッ

 

フラン「むげんかいろう?」

 

輝夜「そうよ緊急時とかに奥の部屋に来させないために使う技よ。」

 

一方通行「ってこたァ今何が起きてるか知ってるってことだな?」

 

輝夜「詳しいことはうちでもわかってないけど、外来人が多数侵入してきて幻想郷の住人を攻撃してるのはわかるわ。」

 

一方通行「なぜそンなことがわかった?」

 

輝夜「それは私よりも永琳の方が詳しいはずよ。それにあなたのために何か作ってたようだし・・・」

 

一方通行「俺のためだァ?ナニを?」

 

輝夜「それこそ行ってからのお楽しみってやつよ。」

 

フラン「お姫様もしかしてしらないんでしょ~?」

 

輝夜「フフフ・・・それはどうかしらね?」

 

一方通行「チッ・・・いちいち面倒ォな女だぜ。」

 

輝夜「クスクス・・・ほら、もう着いたわよ。」

 

気が付くと目の前に見慣れた扉が現れた。

 

フラン「ありがとう!お姫様!!」ギュー

 

輝夜「あらあら、可愛らしいこと。」フフ

 

ガチャッ

 

一方通行「オラ、行くぞ。」

 

フラン「ばいばーい!!」フリフリ

 

バタン

 

一方通行「オマエ、アイツはあんなヤツじゃねェからな。」

 

フラン「またそんなこと言って・・・!」プンスカ

 

永琳「入ってくるなりいきなりごちそうさま。」

 

一方通行「どういう意味だコラ。」

 

永琳「そのままの意味よ。充電器、そこにあるから。」

 

一方通行「チッ」ドスッ

 

一方通行は乱暴に床に座ると首のバッテリーを外し、充電器に接続した。

 

一方通行「オマエも早く充電しろ。」

 

フラン「うん。・・・ところでせんせい、何作ってたの?お姫様がなんか言ってたよ。」カチャ

 

永琳「姫様が・・・結構見ていらしてるものね。」カチャ

 

そう言うと永琳は机の上にあった鉄製の物に触れた。

 

一方通行「ンなことはどォでもいい。今外でナニが起こってンか知ってンだろ?知ってることを話せ。」

 

永琳「今、鈴仙やてゐたちがいないでしょ?『アレ』を見張らせてるの。」

 

一方通行「質問に答えろ。今なにが起こってるか話せ・・・」ギロッ

 

一方通行はかなり荒れていた。いくら電極がなくては動けないとはいえ充電の為に時間を食っている。今この瞬間に打ち止めになにかされていたらと思うといても立ってもいられない。彼は無意識に永琳を睨みつけていた。

 

永琳「(何があったか知らないけど相当頭にきてるようね・・・)とりあえず最後まで聞きなさい・・・永遠亭近くの竹林内に前から空間に歪みがあったの。」

 

一方通行「空間の歪みだと?いつからだ?」

 

永琳「ちょうどあの時あなたが血を流して倒れていた辺りに。」

 

一方通行「じゃあそれが学園都市に繋がる穴ってことか・・・」

 

永琳「ほんとにそうかは分からないわ。だけどあの穴の近くにいたうさぎから急に同じ顔の人間がたくさん出てきてバンバンうるさい武器で攻撃してきたってのを聞いたわ。」

 

一方通行「妹達かァ・・・・・・オイ、今そのウサギはどこにいる?」

 

永琳「鈴仙たちと歪みの見張りをやってるわ。後で案内するわ。」

 

フラン「ねぇねぇ、あくせられーた。」グイグイ

 

一方通行「あァ?ンだよ?」

 

フラン「おトイレ行ってきていい?フランずっと我慢してたの」モジモジ

 

一方通行「勝手にしろ。」ハァ

 

永琳「今中のトイレは壊れてるの。外のトイレを使ってちょうだいな」

 

フラン「はーい!」タタタ

 

一方通行「忙しいヤツだな。」

 

永琳「あら、可愛いじゃない。」

 

一方通行「あァそォかよ。勝手に可愛いがってろ・・・」

 

永琳「・・・ねぇ、一方通行。」

 

永琳はおもむろに話題を変えようとする。

 

一方通行「なンだ?」

 

永琳「好意を向けることがそんなに怖い?」

 

一方通行「ンだと・・・?」

 

永琳「君はフランドールからの好意を受け入れているみたいだけど、自分からあの子へ好意を向けることは拒んでいる。それが裏目に出て取り返しがつかなくなることが怖いから・・・」

 

一方通行「・・・説教か?」

 

永琳「ま、私ごときに君の『闇』を理解できるとは思わないけど。住んでた世界が違っただけにね。」

 

一方通行「・・・・・・・」

 

永琳の言葉に一方通行は押し黙る。お互いに住む世界が違えども医者である永琳には眼や表情を見ればその人間がどんな人間か大体わかる。そして永い年月を生きていることもあり子供についても熟知しているから子供が抱えている『闇』は大体理解できた。しかし、一方通行の抱えているものは今まで見てきたどんな子供よりも暗くどす黒いものだった。ゆえに少し年長者として永琳なりに言いたいことがあったのだ。

だから上手に一方通行の心を誘導し喋らせることで少しでも今の彼を楽にしてあげようとしていた。

 

一方通行「・・・・・・俺は昔、特力研・・・特例能力者多重調整技術研究所。俺は九歳までそこに放り込まれてた。あそこは生きた人間を処分するための掃き溜めさ・・・・どんな場所か想像もつかねェだろ?」

 

永琳「私も昔はよく幻想郷の外で医者をやってた時があってね・・・軍医みたいなものだった。能力者たちと戦ってケガを負った兵士をよく手当てしてた。確か・・・『アンチスキル』だったかな?」

 

一方通行「!!オマエ・・・学園都市にいたことがあるのか・・・!」

 

永琳「そうよ。誰にも話したことなかったからね・・・君ほどの闇を持つ人間を造れる場所は私が知る中であそこだけだけだもの。」

 

衝撃の事実に一方通行は驚きを隠せない。しかし今までの言動や行動、何より見ず知らずのはずの人間にあそこまで親身になるものだろうか・・・・・・否、彼女は以前から一方通行を知っていた。そして彼女の所属していた場所はアンチスキル。ということは・・・・・・

 

永琳「私はよく『黄泉川愛穂』という女隊長の部隊にいてね、特例能力者多重調整技術研究所・・・あそこを制圧、解体したのは私がいた部隊だったからね・・・その名はよく覚えてるわ。」

 

一方通行「そりゃどォも。」

 

永琳「私も見たよ。重たい扉の向こうに横たわっている『ソレ』を・・・・・・」

 

一方通行「俺は・・・その特力研さえも持て余す程の怪物だったンだ。・・・・・・芳川ってやつは知ってるか?知ってたら俺が実験でナニしてきたか・・・・・・償いさえできねェクソ野郎ォが好意なンか向ける資格なンかあるわけねェだろ。」

 

永琳「芳川って研究員はいたわ。あの時の私は学園都市の闇を理解したくて仕方なくてね・・・途中までしか知らないけど、超電磁砲(レールガン)御坂美琴の遺伝子情報を利用して造ったクローン。あれを軍事利用の目的で造っていたということしかわからないわ。そこまで調べたところでアレイスターに感ずかれてここに逃げてきたけどね。たしか・・・五年ぐらい前のことだったかしら?」

 

一方通行「・・・・・ソイツらは軍事利用されることはなかった。代わりに俺を史上初の絶対能力者(LEVEL6)にするための実験・・・絶対能力移行計画(LEVEL6シフト計画)が計画、実行されて俺はソイツらを一万人ぶっ殺した・・・・・・・・・これが俺のやってきたことだ。」

 

永琳「だけど、そんな自分を嫌悪している。違う?・・・・・・これは私が自分に課しているルールなんだけど、子供に対して専用のメスを使う。例えどんなに楽なオペでもね・・・・どうしてかわかる?」

 

一方通行「・・・・・・・・・・」

 

永琳「・・・・・・・・・・・・・そういうことよ。」

 

一方通行は永琳の言った言葉の意味を理解していた。彼女ほどの者でも過去に過ちを犯していたのだ。

永琳は言葉を続ける。

 

永琳「確かに君とは比べ物にならないかもしれないけど・・・負債を抱えていることに変わりはない。だったらどんなに無様でも払い続けるしかないじゃない。今回の異変はそれができる。それに君には私と違って何かを変えることのできる『力』がある。手はいくらでもあるわよ。」

 

一方通行は目を細める。その視線はいつものように鋭く、睨むだけで相手を殺せそうな強いものではない。明らかに後悔の目だ。

 

一方通行(・・・もしも、この力で実験を止めていれば・・・・もしも死の道に突き進むアイツらを抑えつけることができていれば・・・・もしも、今からでも遅くないのなら・・・・・・・・)

 

そして彼はあの瞬間を思い出す。打ち止めを救うため演算能力のすべてをウイルス削除に注ぎ込み、その隙を突かれ放たれた銃弾が自分の眉間を撃ち抜く瞬間を・・・・・・・

 

一方通行(もしも・・・・・・・・・・・)

 

一方通行はふと我に返った。

 

一方通行「・・・くっだらねェ。」

 

永琳「そのくだらないものの積み重ねが負債を返していくのよ。あなたはあの子に好意を向ける資格がちゃんとある。今はわかんないかもしれないけどそれに気づいたときあなたは負債を返せたことになるのよ。」

 

一方通行「・・・・・・・・・」

 

ピー!

 

永琳「・・・充電できたみたいね。あら?フランちゃんの分は?」

 

一方通行「さっき、トイレ行くとき持ってった。アイツのほォが早く充電終わってたかンなァ。」

 

永琳「そう、気づかなかったわ。・・・ところであの子少し遅くない?」

 

一方通行「確かにそォだな。電極は・・・ついてるな。」カチッ

 

永琳「こんな夜よ。少し心配だわ。少し見に行きましょう。」スッ

 

一方通行「あァ。」カチャッ

 

一方通行は杖を突いて立ち上がる。

 

永琳「あっ、そうだ!すっかり忘れてたわ。」カチャッ

 

立ち上がる一方通行の様子を見て永琳は何かを思い出して机の物を持ってくる。

 

永琳「はい、これ。」スッ

 

一方通行「なンだァ?これは?」

 

永琳「いいから、そこの持ち手のボタンを押してみなさい。」

 

永琳はその機械の持ち手らしき部分のスイッチを押すように言った。

 

一方通行「これか?」カチッ シュコッ!「うおっ?!」

 

彼が驚くのも無理はない。なぜならボタンを押すとその機械から棒が伸び、杖になったのだ。

 

永琳「今の杖と持ち替えなさい。」

 

一方通行「あァ。」カチャッ

 

永琳「ちゃんと持ったかしら?なら、もう一回ボタンを押してごらんなさい。」

 

一方通行は言われた通り親指部分にあるボタンを再度押した。

 

カラカラカラ・・・シュコン!

 

杖は縮んでいき、完全に持ち手の中に隠れた。そして、杖の発射部分が下がるとそれと同時に持ち手部分からベルトが出てきて一方通行の腕に巻き付いた。

 

永琳「すごいでしょ、それ。戦闘中杖が邪魔になったり拾いに行くの面倒でしょ?だから作ってみたの。どう、感想は?」

 

一方通行「あァ、悪くねェ。しっかり杖の役目は果たしてるし、何より便利だ。」シュコッ!

 

永琳「それは良かった。なら、早いとこフランちゃんを見に行きましょ。」

 

一方通行「あァ、そォだな。」

 

永琳(少しは楽になったかな・・・?)

 

一方通行はこころなしかここに来た時より大分落ち着いていた。

 

 

 

 

 

 

フラン「ハァ・・・!ハァ・・・!」タッタッタッ

 

ザワザワ・・・・・・・

 

フラン(話し声が聞こえる・・・やっと見つけた!)ハァハァ

 

フランは単独で迷いの竹林を走っていた。さっき永遠亭をうまく抜け出せたのは幸運だ。永遠亭の屋内のトイレがたまたま故障していたため、特に怪しまれずに外に出れた。

 

フラン(早く・・・!あの人が気づく前に!)タッタッタッ

 

そう、フランはこの異変を一人で解決するつもりなのだ。学園都市に行けば必ずまた一方通行は傷つくことになる。自分の罪に潰され、もがき苦しむ彼の姿を見たくない。だからフランは走る。妹達が入ってきた空間の歪みへと。

 

フラン(見えた!あれだ!!)タッタッタッ

 

視線の先にはたくさんのうさぎたちがいる。きっとあの中心部分に入口があるのだろう。

 

フラン「そこをどいて!!」タッタッタッ

 

鈴仙「うわっ!?フランさん!?」

 

てゐ「なんでここに!?」

 

鈴仙たちは突然現れた意外な人物に驚いた。

 

フラン「いいから通して!フランはその穴に用があるの!!」

 

鈴仙「事情は知りませんがここを通すわけにはいきません。師匠の命令です。」

 

フラン「お願い、通して。」

 

てゐ「うさぎに使いをだしたし、もうすぐと師匠と一方通行が来るからそれまで待てばいいじゃん。」

 

フラン「!!それは・・・それだけは絶対にだめ!!」

 

てゐ「どうしてよ?」

 

フラン「あの人はフランの事心配すると思うんだ。」

 

てゐ「ふーん意外といい奴じゃないか。」

 

フラン「弱いんだよ・・・あの人は向こうでいっぱい傷ついて、手の中のものを守れなかったばかりか、それを救おうとした手もボロボロになっちゃってるの・・・だからこれ以上は負担をかけたくないし・・・今度はフランがあの人を守ってあげるんだ!!だから、そこを通して!!!!」ダッ!

 

鈴仙「ちょっ!?」

 

てゐ「あっ・・・」

 

フランは突然走り出すと鈴仙たちを振り切り、学園都市へとつながる穴へと駆けていく。

 

フラン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」グッ ダァン!!

 

フランは足に目一杯の力を込めると歪みの中へ飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

永琳「・・・・いないわね。」

 

一方通行たちは外のトイレの前にいた。

どれだけ呼びかけても返事がない上に鍵がかかっていない。

 

一方通行「あのガキどこ行きやがったンだ?」

 

永琳「私たちと行き違いになったとか?」

 

一方通行「それはねェだろ。普通あの道しか通らンはずだァ。」

 

永琳「・・・・・・まさかあの子、穴の方へ行ったんじゃ!」

 

一方通行「なンだと?」

 

永琳「あの子はあなたの痛みを知ってるはずよ。ならあの子はあなたのために1人でーーーーー」

 

一方通行「あンのクソガキがァ!!」ピッ キュィィィィィン!!

 

一方通行はスイッチを入れ、杖を収縮させると空へと飛び立った。

永琳もそれを追う。

 

一方通行(どこだ?どこにある?)

 

地上を見渡していると竹林の間に複数の明かりが見えた。

 

一方通行(あそこかァ・・・!)ヒュオッ!!

 

永琳「待ちなさい!一方通行!!」

 

一方通行は永琳の呼びかけを無視、急降下して明かりの元へ突進する。

さらに近づくと空間に歪みが生じ、『スキマ』とも呼べるような狭間があった。おそらくあれが学園都市への入り口だろう。

 

一方通行「どきやがれェェエエ工!!ウサギ共ォォォォオ!!!!」

 

鈴仙「えっ?!ええ!?!?」

 

一方通行は見張りにあたっていたうさぎたちを強引に跳ね除けると穴へと突入する・・・・・ハズだった。

 

ギュュュュゥゥゥン!!ピシャッ・・・

 

一方通行「あァ!?なンだ?!」

 

スキマは突然うねり始めると吸い込まれるように消えていった。

それがあった場所には小さなプラズマしか残っていない。

一方通行は勢い余って向こう側の竹に激突してしまった。

 

一方通行「ッ!!クソがァ、ナニが起こりやがったンだァ?」スッ

 

永琳「消えたのよ。学園都市への入り口が・・・」スタスタ

 

一方通行「消えただと?何故だ。」

 

永琳「あの子の能力を思い出してみなさい。あなたが来れないように向こう側からスキマを破壊したんだわ。」

 

一方通行「クソッタレがァ!!アイツも自分が狙われてること分かってンのかァ!?あァ!!??」ダァン!!

 

一方通行は再び激昴した。せっかく手に入れた贖罪のチャンス。フランのそばにいるための、好意を向けられるようになる資格を得る為の手段が全て奪われた。それも1番守りたい存在に。

 

一方通行「なンでこンなことになっちまった!?あァそォだ!!あのガキを着いてこさせたからァ!!余計な情報を知らせちまったからァ!!そンな事しなけりゃンな事にならなかったンだよォォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!」ヒュォォォォォォ

 

一方通行の怒りに呼応するように地面が砕け、竹林は風圧により折れかけている。

 

永琳「落ち着きなさい!一方通行!!」

 

一方通行「ギャアハハハハ!!ヘェェヒャハハハハハハハハァァ!!」

 

一方通行は怒りに身を任せ嗤う、嗤う、嗤う。地面はえぐれ、竹はなぎ倒され、もはや誰も彼に近づけるものはいなかった。

 

「方法ならまだあるわ。」

 

一方通行「あァ??」クルッ

 

永琳「!その声は!!」

 

一方通行を含め声のした方向を全員が見る。

 

ギュオォン・・・

 

突然空間が歪んだかと思うとそれが裂け始め、中から人が出てきた。

 

???「永琳は久しぶり。他のみんなははじめましてかしら?」

 

一方通行「誰だオマエはァ?」

 

紫「一方通行くんね。はじめまして・・・ではないけど、私は境界を操る妖怪、八雲紫よ。スキマ妖怪なんて呼ばれ方もしてるわね。」

 

一方通行「そのスキマ・・・さっきあったのと同じだ。じゃあオマエが俺をこの幻想郷に引き入れ、今回の異変の原因ってわけでことでいいンだな・・・・・」

 

紫「ええ、そうよ。」

 

ヒュオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・!!!!

 

一方通行の周りに再び強風が吹き始める。

 

一方通行「・・・・・・俺をここに引き入れ、妹達への贖罪の機会を奪った上、スキマを開いたままにし、妹達を呼び寄せて学園都市に利用させ、今度はフランさえも間接的とはいえ被害にあわせた・・・・・・・テメェは一体どれだけの関係ないヤツらを傷つけりゃァ気がすむンだァ?スキマを開いたままにしなけりゃ・・・妹達だってェ!打ち止めだってェ!こンなひでェ扱いを受ける事はなかったンだぞォ!!!!」

 

永琳「冷静になりなさい!妹達もこの異変が原因でこんなになったわけじゃないわ!!」

 

紫「いいのよ、永琳。全て私の責任だから。」

 

一方通行「随分潔いじゃねェか。どォやって殺して欲しい?生体電気暴走か?それとも血流操作で爆散するかァ?」ニタァ

 

永琳「そんな事したらもう二度とあの子を助けに行けないわよ!!」

 

一方通行「・・・・・・それ以上ナニか喋ってみろォ、オマエを血みどろアートにしてやる。」ギロッ

 

永琳「ッ!!(ダメだわ、完全に冷静さを失ってる。)」

 

鈴仙「・・・あっ、あのっ!!」

 

一方通行「あァ!!??」

 

鈴仙 ビクッ「あっ、あのっ!フランさんはこう言ってました!あなたは向こうでたくさん傷ついて、手のものを守れなかったばかりか、それを救っていた手もボロボロになってる!だから今度はフランが守ってあげるって!!あなたが元居た世界がどんな場所だったか私には想像もつきません!だけどフランさんはあなたが一人で背負い込んでいたものを今度は自分があなたの代わりに背負おうとしてる!確かに今回悪いのはその人です!ですが、殺してしまえば・・・殺してしまえば、あなたが守りたかったものも本当に守れなくなってしまいますよ!!!!!!」

 

鈴仙は一方通行への恐怖から涙目になっていた。だが、フランの気持ちを少しも理解していない一方通行に対して怒りを覚えた。だから叫んだ。彼女がどんなに彼を想っているか、それを理解して欲しかったから。

 

一方通行「・・・・・・・・・・・」フッ

 

すると一方通行の周りに生じていた力は消えた。

 

一方通行(ナニやってンだ、俺・・・・・・地団駄を踏ンだって、ナニも変わンねェってのに。)

 

永琳(やるじゃない鈴仙。あの一方通行を鎮めるなんて。)

 

一方通行「確かにオマエの言う通りだ、鈴仙・・・俺はあのガキのことをわかっているつもりだった。だが、何一つわかっちゃいなかった。だから・・・あのガキを連れ戻してちゃんとわかってやらねェとな。」

 

永琳「落ち着いたようね。・・・じゃあ話をしましょうか。」

 

紫「一方通行、あなたの怒りは最もよ。」

 

一方通行「あァ、このヤマが終わったらオマエを血みどろにしてやる。だが、それは後だ。俺を学園都市まで飛ばせ。」

 

紫「それはもちろんよ。だけど学園都市に一人で行って戦うのは大変よ。増援を待たないと。」

 

一方通行「必要ォねェ。これは俺の世界の問題だ。それに関係ねェヤツを巻き込むわけにはいかねェ。」

 

永琳「でも・・・」

 

一方通行「問題ねェよ。俺は第一位だ。」

 

紫「わかったわじゃあ学園都市へのスキマを開くわね。」

 

一方通行「あァ。だが、俺に何かあったとしても絶対にスキマを開くな。いいな?」

 

紫「思ったんだけど私のスキマでフランを回収すればいいんじゃない?」

 

一方通行「それはだめだ。学園都市の闇どもは俺らの想像の上をいってくる。オマエのスキマだって攻略されてる可能性もある。」

 

紫「そこまですごいの?・・・とりあえず了解したわ。」

 

一方通行「じゃあ始めンぞ。」

 

紫「わかったわ、じゃあ開くわよ。」

 

紫はそういうと学園都市につながるスキマを開いた。

 

一方通行「それじゃァ行ってくる。」

 

永琳「待ちなさい、一方通行。」

 

一方通行「なンだ?」

 

永琳「これを持ってきなさい。」スッ

 

一方通行「充電器か。」

 

永琳「そう、向こうのコンセントに対応してるわ。・・・しっかりね。」

 

一方通行「はン、心配ねェよ。絶対に取り戻してくる。」スッ

 

そうして一方通行はスキマへ入り、再び学園都市に舞い戻る。

 

一方通行「学園都市最強の超能力者、復活ってかァ?」ニタァ




最後までご覧いただきありがとうございました!

次回から物語のフィールドが学園都市へと変化します。
がんばって書きますのでご期待ください。

次回、第十六話 学園都市
                        次回もお楽しみに!!


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第十六話 学園都市

今作もご覧いただきありがとうございます!

今回は投稿が遅れ本当に申し訳ありません。なにせ最近テストが多いものでして・・・
今回はついに学園都市編スタートです。一方通行は学園都市の闇とどう向き合うのか?

それでは本編スタートです!


フラン「・・・うぅ」ガタガタ

 

フランは無事に学園都市にたどり着いた。だがフランは路地裏で震えていた。彼女の性格的に見たことないものにはなんにでも興味がわくハズなのだが学園都市は違う。空を覆う高層ビルの数々、うるさい音を発しながら高スピードで走る車。この町が放つ異質な雰囲気、何より一人だということがが彼女を怯えさせていた。

 

フラン(何あれ・・・建物が空を覆うぐらい高いし、ブンブンうるさい生き物が走ってるし・・・・・怖い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だけど・・・あの人のため・・・)グッ

 

フランは一方通行の顔を思い出し、己を鼓舞しながら立ち上がる。

強い覚悟を持ち、一歩踏み出そうとする。すると・・・

 

???「ジャッジメントですの!あなた、学園都市の人間ではありませんわね。不法侵入の疑いがあります。一緒に来ていただけませんこと?」

 

???「ちょっと黒子、こんな小さな子供よ?不法侵入なんかするわけ・・・」

 

フラン(じゃっじ・・・?なんだろうそれ。・・・って!そんなことよりどうしよう!?人に会っちゃった・・・・・・・・・・・・?あの顔!まさか!!)

 

美琴「ほら・・・びっくりしてるじゃないの。こんにちは、あたし御坂美琴。よろしくね!」ニコッ

 

黒子「私、風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子ですの。あなたのお名前を教えていただけます?」

 

フラン(どうしよう・・・?そのまま答えてもあれだし・・・それにフランを捕まえようとしてるようだし・・・・・・そうだ!)アタフタ

 

フランは突然のことで混乱して正常な判断ができなくなってしまっていた。

 

フラン「・・・・・学園都市最強の超能力者?あくせられーただァ・・・。」

 

美琴「一方通行!?あなた・・・!何故その名を!?」

 

黒子「第一位って・・・!?」

 

フラン「そのままお家に帰れば見逃してやる。だがなァ・・・このまま俺に構うってンなら、おまえたちを血みどろにしてやる・・・」

 

黒子「マズイですわ!お姉様!!いくら私たちでも第一位とは・・・!」

 

美琴「いやあんた一方通行じゃないでしょ。」

 

フラン ギクッ(この人あくせられーたのこと知ってんのぉ~?)

 

黒子「ですがお姉様!あの凶悪な物言い、それに異質な雰囲気。絶対ただ物ではないですわ!!」

 

美琴「いや、そもそも一方通行は白髪だし、高校生だし・・・・・・死んじゃったっていうし。」

 

黒子「確かに・・・冷静に考えてみれば第一位は死んでいるハズ。それにお姉様、第一位に会ったことございますの?」

 

美琴「ええ、この前ちょっと・・・ね?」

 

フランはどうしようか悩んでいた。一方通行のモノマネも彼の知り合いの前なら意味をなさないし、御坂美琴と名乗る少女たちは悪人に見えない。果たして信頼に足る人物かどうか。

 

フラン(この人さっきの人たちと違っていきなり襲ってこない・・・それに、悪い人じゃなさそうだし・・・・正直に話したら協力してくれるかな・・・?)

 

美琴「あなたここの人じゃないんでしょ?それに一方通行を知ってるってことはアイツと何か関係があるようだし。」

 

フラン「えと・・・・・・・ごめんなさい。あの人のマネをしてました。それにお姉ちゃんたちが言った通り、フランはここに住んでないよ。」

 

黒子「やっぱりそうでしたか。申し訳ございませんが同行願いますわ。」

 

そういうと黒子はフランの手を引き、連れて行こうとする。

 

美琴「まあまあ、待ってちょうだいな黒子。ここはあたしに任せてくれないかしら?」

 

黒子「いくらお姉様のお願いといえど、不法侵入者を見逃すわけには・・・」

 

美琴「ちょっと心当たりがあるのよ・・・後でちゃんと説明するから。」

 

黒子「・・・・・・わかりましたわ。後で納得のいく説明をお願いいたしますわね。」

 

黒子は路地裏から離れていった。

 

美琴「・・・・・・あなた、一方通行を知っているわね?アイツは・・・生きてるの?」

 

美琴は無意識に顔をしかめていた。当然だ、なぜなら自分のクローンとはいえ、それを楽しんで殺していた残虐非道な殺人鬼なのだから。そんな彼が原因不明の事故で死んだと聞いたとき正直、うれしく思ってしまった。あの子たちと同じように苦しんで死んでいったのならなおさら・・・・・・・・・・・・・

だが、突然自分の前に現れた少女は一方通行のモノマネをし、よく知っている素振りをみせた。ということは彼が生きている可能性があるということだ。内心穏やかではなかった。

 

美琴「答えなさいよ・・・・・アイツは・・・アイツは生きてるの!?」ガシッ

 

フラン「ひっ・・・!」

 

美琴「一方通行を知ってるってことは、あの実験に関わってたはずよね?もしそうなら・・・子供だろうがアンタを許さない・・・!!」グググ・・・

 

フラン(やっぱり、この人は妹達の元なんだ!・・・・だけど、あの人は望んで殺したりしてなかった!!もとはといえば・・・・・・・・・!)

 

フラン「許さないって・・・?あなた、さっきから聞いてたら勝手なことばっかり言って!あの人がどんな気持ちでいたか知ってるの!?それに、もとはといえばあなたが遺伝子なんかほかの人たちに渡さなければ・・・こんなことになってないんじゃないの!?関係ないフランはあまり偉そうに言えないけどさ、あなただって加害者じゃないの!?自分を棚に上げて・・・!あの人はそもそも、自分の力で誰も傷つけないように最強のさらに上を目指して、絶対的な存在になることで自ら孤独になろうとしてたんだよ!!それに、あの人は幻想郷に来る前、打ち止めって子と妹達を救うために命がけで戦ったんだよ!?あの人はずっと妹達に償いをしたいって言ってた。そのために傷ついて、しかも償いの機会まで奪われて・・・・・・。」ジワッ

 

フランは罪悪感やいろいろな感情がこみあげてきて胸が熱くなる。目からも熱いものが零れ落ちてくる。でも、彼女は叫ぶのをやめない。

 

フラン「あの人、あの後身体が動かなくなっちゃったんだよ!?自分でも無様だって笑ってた。でも、あんな目にあっても!ここに帰ってこれなくても!ずっと妹達を気にかけてた・・・!」ポロポロ

 

フランは大きく息をする。

 

フラン「例えあの人が直接の加害者でも・・・例えそれを贖いきれなくても・・・!それであの人だけが責められていい理由には・・・ならないでしょうが!!!!!!」グスッ

 

その一言を発した後、今まで抑え込んでいた感情が爆発した。

 

フラン「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」ボロボロ

 

美琴「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

この少女の言葉に、なにも言い返せなかった。

それどころか一方通行の本心を知って愕然とした。彼は決して楽しんで殺していたわけではなかったのだ。彼も自分と同じく生まれつき能力を持っていたと聞く。ただ自分と一方通行の力に差がありすぎた。たったそれだけのことでたったそれだけの違いで彼は闇への道を余儀なくされた。

そうだ。悪いのは彼だけじゃない。自分もそうだし、何より彼や自分を利用して富を得ようとした研究者たちだ。そして美琴はさっきまでの自分の発言を後悔した。自分を棚に上げ、利用されて苦しんでいる一方通行の死を喜び、さらに彼の知り合いというだけの実験とは何も関係のない幼い少女に対して勘違いから責めたてた。これで何を許さないというのだろうか。

 

美琴「・・・・ごめんなさい、あたしが間違ってたわ。一つだけ教えてちょうだい。・・・一方通行は生きてるの?」

 

フラン「ヒグッ・・・エグッ・・・」コクッ

 

美琴「そう・・・・・・もう一度会ってちゃんと謝らないとね。」

 

フラン「・・・それはよくないかも。」グスッ

 

美琴「どうして?」

 

フラン「あの人、そういうの好きじゃないから、ケンカになっちゃうかも・・・」ズズッ

 

美琴「そうなの?」フフッ

 

こんなときでもフランは美琴を気遣い、明るくなるように努めた。

しかし感情の波は高く、彼女は泣き止むことはなかったので流石に美琴も困っていた。

 

黒子「・・・・・・大きな声が聞こえましたけれど、なにかありましたの?」スタスタ

 

美琴「・・・黒子。」

 

フラン「グズッ・・・あぅっ・・・」

 

黒子「・・・oh」

 

そりゃあ黒子じゃなくても固まるだろう。どうみたって美琴が少女をいじめているようにしか見えないのだから。

 

黒子「お姉様・・・・幼女をいじめて快楽を感じるような性癖をお持ちだったとは・・・!例えお姉様がどんな性癖を持っておられようともこの黒子、愛し続けますがいくらなんでもこれは・・・・・・・・」

 

フラン「うっ・・・えぐっ・・・」

 

美琴「違うの、黒子!あっいや、違くはないけど・・・・」

 

黒子「流石にこれは見逃せませんわ。お姉様、ご同行願います。」

 

美琴「待ってよ!あたしも逮捕されるの!?」

 

黒子「当たり前ですわ!こんな小さな子を恫喝したのですよ!」

 

美琴「うぅ・・・・」

 

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・

 

美琴・黒子「・・・え?」

 

フラン「・・・っ!」カァァァァァァ///

 

音の原因はフランのお腹からだった。そういえば宴会の時遊びまわって全然食べていなかった。

 

黒子「・・・先にファミレス行きましょうか?」

 

美琴「うん・・・」

 

フラン「・・・」ズズッ

 

 

 

 

 

 

一方通行「・・・・・・・・帰ってきたか。」

 

一方通行は第七学区に到着していた。そして久しぶりの学園都市の空気に顔をしかめた。

 

一方通行(相変わらずここの空気はよどンでやがる。)スタスタ

 

彼は裏路地へと歩き始めた。フランを手当たり次第に探したところでこの入り組んだ地形からは見つかることはないだろう。ならば統括理事会に近い施設を攻め落とし、学園都市内の管理プログラムで見つけたほうが効率がいい上、見つかりやすくなる。さらに打ち止めの居場所もわかるかもしれない。

ならば・・・

 

ブーッ!ブーッ!

 

一方通行(着信か・・・非通知?)カチャッ

 

一方通行「・・・」

 

「元気だったかぁ!?一方通行!ハッハハハハハ!」

 

一方通行「ッ!!」

 

一方通行は電話の男のことをよく知っていた。なぜならその男は一方通行の育ての親といっても過言ではない人物だったからだ。

 

一方通行「木原クンよォ!ンだァ?その思わせぶりな電話はァ?人の面見ンのにビビッて目ェ背けてたインテリちゃンたァ思えねェよなァ。」

 

木原「俺としてもオマエと関わるのはお断りだったんだけどなぁ、てかオマエ死んだはずじゃぁなかったか?上の命令だから仕方ねんだよ・・・なんでも緊急だとかで手段を選んでる余裕はねぇんだと。だから打ち止め救うのに必死だったオマエの意思を無下にしちまったわ。わりぃけど、邪魔しねぇでくんねえかぁ?」

 

彼の名は木原数多。一方通行の能力を開発した第一人者であり、一方通行のことを誰よりも理解し、そして誰よりも殺意を持ってた。

 

一方通行(どォやら打ち止めは木原の元で利用されてるよォだな・・・・しかしヤツは昔から見つけ出すことと隠れることがうめェ。しかも現在進行形で利用してるのもヤツだ。ちょっとカマかけてみるか。)

 

木原「それにしても学習装置(テスタメント)ってすげぇよなぁ。人間の頭にウイルスぶち込めるなんて普通じゃねぇよ。アッハハハハハハハ!」

 

一方通行「で、俺はなンてリアクションすりゃァいいンだ?」

 

木原「あ?」

 

一方通行「腹ァ抱えて笑ってやンのが正解かなァ?マゾ太クン。」

 

木原「・・・おいおいテメェ、状況判断力が壊れちまっってんのか?」

 

一方通行「そっちこそなンであのガキを殺さねェ?どうせオマエを雇ってるヤツはァ、無傷で回収しろなンて涙あふれるセリフをはいちゃいねェよなァ?にも関わらず妹達は動いてる。もしかしてブルっちゃって指一本触れられねェオマエはなンなのよォ?」ニタァ

 

木原「・・・・・・殺す。」ブツッ

 

木原はそう言い残し、電話を切った。

 

一方通行(やっぱりなァ・・・あの野郎の人格ならここまで言われりゃァ、打ち止めの目玉の一つぐれェは弾いてるハズだァ・・・・・。それがなかったってことは・・・オヤオヤ、コイツは本格的にパシリ確定かよォ。あの木原を思いとどまらせる程のバック・・・・まさか、学園都市そのものかァ?なら最初に考えた通り、『統括理事会』。そっちを調べて見りゃァフランの居場所もわかるってかァ?・・・・・・・・・・ヘヘヘッ、オイオイすげェなァ。あっという間に進展しちまったァ。)ヘヘッ、ヘヘハハハァッ!!」フラッ

 

一方通行の中で今、全てがつながった。簡単に言うと目的はわからないが学園都市がとある計画のため妹達やフランを利用しようとしている。おまけに居場所も統括理事会を調べれば打ち止めとフラン。二人の居場所がわかる。

 

一方通行「・・・・・・ふざっけンじゃねェぞォ!!ナメやがってェェ!!!!」ピッ!キュィィィィィィィィィンン!!

 

彼は電極のスイッチを入れると杖をしまい、ビルに拳を文字通り突っ込んだ。

 

一方通行「グゥゥゥッッ!!アァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!」ググググググク

 

ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!

 

一方通行は雄叫びとともにビルを持ち上げ、それを紫色に光る『窓のないビル』へと投げつけた。

 

ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!!!!!

 

ビルは轟音を立てながら大通りを通ってまっすぐ『窓のないビル』へと進んでいく。

 

ドォン!!!!!!!ズガァァァァァァァァン!!!!!!!!!

 

彼が投げつけたビルがソレに当たると辺り一面に砂ぼこりが巻きあげられ視界が悪くなる。

やがて砂ぼこりが晴れ、一方通行の周りの視界が開けてくる。すると・・・・・

 

一方通行「・・・ッッ!!」

 

ソレと同じぐらいの高さを持つビルを投げつけたのに『窓のないビル』には一切傷すら入っていない。

 

一方通行「クッ!!ウゥガァァァァァァァァ!!!!!」ドスッ!!

 

一方通行はその場へへたり込むと振り上げた両方の拳を思いっきり地面にたたきつけ悔しがった。その姿はこの事件の首謀者からすれば哀れなピエロにすぎなかった。

 

 

 

 

 

???「ふむ・・・何やら表が騒がしいようだが・・・・・AIM拡散力場を利用した虚数学区五行機関は展開完了した。この学園都市内部で魔術を行使すればあらゆる魔術師は暴走、自爆する。『前方のヴェント』だったか?それは貴様とて例外ではない。現在の出力では世界を覆うことはできない。だが、『ヒューズ・カザキリ』の出現により形成はそのまま逆転する。」

 

ビーカーのような容器に逆さに浮かんだ人間はその口元に笑みを浮かべる。

彼は統括理事会理事長、アレイスター・クロウリー。学園都市の最大権力者であり、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える「人間」。

窓のないビルに設置された生命維持槽にて外界を窺い、基本的には表に出ない。

そんな彼の目的は学園都市に侵入した魔術師を殲滅すること。

手始めに彼は魔術師の侵入ルートを探るべく木原に捕えさせた打ち止めを使い、妹達を侵入経路捜索に駆り出していたところ、第七学区に存在していた謎の空間の歪みを発見。明らかに科学の力によるものではないためそれを魔術と断定。そこから妹達を侵入させた。しかし、妹達どころか魔術師さえ出てこない。

出てきたのは真っ赤な服を着て、羽を生やした少女と死んだとされていた一方通行だ。

当然、一方通行は死んでなどいないとわかっていたが行方はつかめていなかった。

しかし、彼が戻ってきたのはむしろ好都合だ。自分の計画をまた進めることができる。

そしてあの少女。明らかに人間ではないことはアレイスターにもわかった。あれは今後脅威になるかもしれない。

 

アレイスター「排除・・・いや、木原に任せるか・・・・・」

 

アレイスターは再び笑みを浮かべた。

 

アレイスター「プランに縛られた現状ではイレギュラーこそ最高の娯楽だ・・・・・・猟犬部隊(ハウンドドッグ)、木原数多。」

 

ヴィン・・・

 

木原『こちら、木原。』

 

アレイスター「一方通行とはコンタクトが取れているな?」

 

木原『はい、とりあえずぶっ殺す予定ですが。』

 

アレイスター「彼とともに侵入した赤い服を着た金髪の少女がいるはずだ。彼女は今、第七学区のファミレスに超電磁砲たちとともにいる。それを回収した後、後は任せる。」

 

木原『それが今回の魔術師侵入とどのような関係が?』

 

アレイスター「関係は皆無に等しいだろうが、君は一方通行に恨みを持っているだろう?彼女は一方通行の守るべき大切なものだ。彼女を手に入れれば君は一方通行の精神に多大なダメージを与えられる。」

 

木原『なるほど、そりゃ面白いことになるでしょうなぁ。とりあえず了解。』

 

アレイスター「気を付けたまえ、あの少女は少なくとも人間ではない。とらえる際は十二分に注意するようにな。」

 

木原『了解。』ブツッ

 

 

 

 

 

 

アレイスターの言った通りフラン達はファミレスにいた。

 

フラン「うわ~・・・おいしそうなものがいっぱい・・・・」

 

美琴「さあ、好きなだけ食べなさい。」

 

黒子「今回はお姉様が全て奢ってくださるそうですわよ。」

 

美琴「ちょっと黒子、あなたには奢らないわよ。」

 

黒子「あら、ではジャッジメントに応援を求めましょうかしら?」スッ

 

黒子は携帯を取り出す。

 

美琴「黒子様!ぜひぜひこの美琴めに奢らせてくださいませ!!」

 

黒子「では、私はお姉様を注文いたしますわ!さあ、いただきますの!!!!」ピョーン

 

美琴「調子に乗るなぁ!!!!!!」バチバチバチ

 

美琴は抱き着いてきた黒子に電流を流した。

 

黒子「あぁ、おお!あぁん////お姉様激s」ビクンビクン

 

フラン「黒子、悦んでない?」

 

美琴「・・・コイツはほっときましょ。」

 

すごくビミョーな空気になってしまったがフランと美琴は食事を注文し、会話を楽しんでいた。

 

美琴「そうだ、ドリンクバー行きましょ。」

 

フラン「どりんくばー?」

 

美琴「あんた、ホントに異世界から来たのね・・・いいわ!教えてあげるから来なさい!」スッ

 

フラン「わーい!」スッ

 

黒子「」チーン

 

美琴「・・・!伏せて!!!!」ダッ!

 

フラン「えっ?・・・わぁ!!」ズザザ

 

突然美琴はフランに覆い被さり、地面に伏せた。

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!

 

店の窓ガラスの向こう側からの銃撃に美琴はとっさにフランを抱きかかえ、奥の柱に隠れる。

 

美琴(他の人たちは大丈夫かしら・・・)

 

 

 

 

 

 

カチッ・・・ピッ

 

「こちら黄泉川から本部へ。コール334についての詳細を求める。」

 

ジー・・・・・・・・・プツッ

 

黄泉川(この女が学園都市に侵入してきてからここの住人がバタバタと倒れ始めた。打ち止めに関係しているとみて間違いないじゃんよ・・・)

 

彼女は黄泉川愛穂。高校の体育教師であり、警備員(アンチスキル)の一人。

高能力者の生徒が相手でも、子供に銃を向けない事がポリシー。平均的な能力者(レベル3程度)の相手なら、銃器を使わず鎮圧する事が出来るほどの格闘技能を持つ。またその様から「シリアスをコミカルに始末する女」と言われているらしい。

また、美人であり、スタイルの良い大人の女性だが、本人はその大人の色気には全くの無頓着。

そんな彼女は今、打ち止めを探していた。

 

黄泉川(警備員が次々と倒れ、通信が取れなくなってる・・・これはどうなっているじゃんよ。)

 

まさか、魔術とかいう非科学的なものが本当に・・・?

魔術師が学園都市に侵入したという報告があってからすぐ黄泉川邸に何かの部隊が踏み入ってきて打ち止めを連れ去ったと芳川から電話があった。その頃残業で出払っていたため何の抵抗もできなかった。

その後、様々なデータベースを芳川とともに調べ、統括理事会を調べてみると猟犬部隊による打ち止め捕獲作戦。及び、『ヒューズ・カザキリ』の出現による魔術師討伐。

 

黄泉川(わからないことだらけだけど、必ず猟犬部隊を見つけ出して、打ち止めをとりもどすじゃんよ。

そしてまた三人で・・・・・・・!)

 

黄泉川は強い決意を胸に車を走らせる。

 

黄泉川「・・・!」キーッ!

 

彼女は突然ブレーキを踏み、車を急停車させた。そしてすぐに車を降りると見つけた者のもとへ走り出した

 

黄泉川「ちょっと!そこの君!!白いモヤシみたいな君だよ!!」

 

一方通行「誰が白モヤシだコラ。ケンカ売ってンのか?」

 

黄泉川が見つけた人物とは一方通行だった。かつて行われていた絶対能力移行計画、そして死んだとされていた第一位の生存。これは今回の事件と関係していてもおかしくはなかった。

 

黄泉川「一方通行で間違いないじゃんね。なんで生きてるじゃん?」

 

一方通行「いままでここじゃねェ別の世界にいた・・・っつても信じねェだろォ?」

 

黄泉川「・・・・それも魔術ってやつに関係してるじゃん?」

 

一方通行「魔術?何言ってンだ?」

 

黄泉川「まあいいじゃん。とりあえず聞きたいことがあってね。君、打ち止めがどこにいるかしってるじゃん?」

 

一方通行「打ち止めだと?」

 

一方通行は少し驚いた。だが、コイツも何か打ち止めを利用しようとしてるかもしれない。それにその情報は今自分が喉から手が出るほど欲しい情報だ。

 

一方通行「・・・・それを知ってどォする。」

 

黄泉川「あの子を取り戻す。そしてあの子がいる平和な日常をとりもどすじゃんよ。」

 

一方通行「オマエ、あのガキの保護者やってンのか?」

 

黄泉川「そうじゃん、だからあの計画に参加してた君なら何か知ってると思ったんだけど・・・・」

 

一方通行「あいにくだが俺はまだ何も知らねェ。これから直接統括理事会のアジトに行き、調べる予定だ。俺には打ち止めの他に連れ帰らなくてはならねェクソガキがいるかンなァ。」

 

黄泉川「つまり君はあの子を今回利用しているんじゃなく救おうとしているということでいいんじゃんね?」

 

一方通行「ああ、例え、どんなに難しくても木原をぶっ殺し、打ち止めを無傷で救い出す。それが・・・それこそが、俺がなすべき償いだ。」

 

黄泉川「なんか・・・聞いてたイメージと大分違うじゃんね。私、黄泉川愛穂。覚えてる?特力研を制圧したときに会ったはずなんだけど。君、まだ小さかったから・・・」

 

一方通行「永琳ってやつから聞いてる。あそこを制圧、解体したのはオマエの部隊だったってなァ。」

 

黄泉川「八意を知ってるの!?それに、聞いたって・・・・?あいつは生きてるじゃん?」

 

一方通行「あァ、俺が飛ばされた異世界で医者をやってた。それに首のコレを造ったヤツも永琳だ。」

 

黄泉川「それって?」

 

一方通行「俺は脳を撃ち抜かれて死ンだってことになってンだろ?死んじゃァいねェが脳を撃たれたのは事実だ。実際、俺はコイツがなきゃァ動くこともできねェポンコツに成り果てちまった。」

 

黄泉川「そういえば君、杖を突いていたじゃんね。」

 

一方通行「だが、コイツがあればフル充電状態で40分はかつてのよォに動ける。」

 

黄泉川「さすがは永琳といったところじゃん。」

 

一方通行「そォいうことだァ。後は俺がやっておく。オマエはさっさと通常業務に戻りやがれ。」

 

黄泉川「そういうわけにはいかないじゃんよ!あの子は私の大切な娘じゃん!!私もやる!!」

 

一方通行「今回の闇はオマエが知ってるどンな闇よりも深ェ。関わると戻れなくなるぞ。」

 

一方通行は今回の事件の危険性を説き、黄泉川に引き返させようとする。

 

黄泉川「例え私がどうなろうとあの子を取り戻す。それだけじゃん!」

 

一方通行「チッ・・・勝手にしろ。だがなァ、あのガキの帰るところだけは無くすな。それはオマエが死ぬことも同義だ。それだけは絶対に忘れるな。」

 

黄泉川「驚いた・・・君は思ったよりやさしいのね。」

 

一方通行「わかったらさっさと行け。」

 

一方通行はムズ痒い感覚に顔をゆがめると杖を突いて歩き出す。

 

黄泉川「待ちなよ、車、乗ってかない?」

 

一方通行「いらねェ。」

 

黄泉川「じゃあこうしようか。こっちが持ってる情報と交換だ。一緒に来てくれるなら打ち止めの情報を教えるけど?」

 

一方通行「・・・・・チッ、勝手にしろ。」

 

一方通行は黄泉川に負けた。そのまま車に乗せられそうになった時----

 

一方通行「・・・」ピッ キュィィィィィィィィィンン!!

 

キキーッ!!ドガァァァァァァァン!!!!!

 

一方通行「あァ?」クルッ

 

黄泉川「何じゃん!?」

 

突然加速音とスキール音が聞こえたと思うとワンボックスカーがガードレールを突き破り、一方通行たちに突っ込んできた。轢かれる寸前で一方通行はスイッチを入れ、潰れたのは車の方だった。

 

「ヒィッ!ヒィィィィィィィ!!」ガタガタ

 

黄泉川「猟犬部隊じゃん?」

 

一方通行「まァ来ると思ってたンだ、こういうバカが。俺に恨みがあるか、木原の手先のヤツか、どっちかはしンねェが・・・・」

 

一方通行は凶悪な笑みをその白い顔に張り付ける。

 

一方通行「ブチ、殺す・・・!」ニィッ

 

猟犬部隊「ヒィィィィィィィ!」

 

彼は反射の能力を使い、男のマスクを破壊するとその口に手を突っ込んだ。

 

猟犬部隊「ムグッ!!」

 

一方通行「ギャアハハハハッ!!!!」ブン!

 

彼は男を車から引きずり出すと壁へ叩きつけた。

 

ドグシャッ!!!!

 

辺りに血が飛び散る。

 

一方通行「エヘヘヘヘ・・・・・・」

 

「うぅ・・・・・・」

 

一方通行「あァ・・・?」ニタァ

 

どうやら車にもう一人乗っていたようだ。ぶつかった衝撃でシートに身体が挟まり出られないらしい。

 

猟犬部隊「うぅ・・・あぐっ・・・!」

 

一方通行「ァァ・・・・ヘヘッ・・・ギャアハハハハッ!!!!」

 

一方通行は横転した車の中へ入っていきシートを投げ捨てていく。

 

一方通行「ア``ぁ``楽しいィ!!ギャハハハッ!!やべェよォ!!」ズィッ

 

彼は男に詰め寄りその絶対的な悪を見せつける。

 

カチャッ!

 

男は拳銃を向けるがそんなものが彼に効くはずがない。

 

一方通行「最高ォに飛ンじまったよォ・・・・・・・・・クソ野郎ォ!!!!!!」

 

ズドン!!ズドン!!

 

銃声が鳴り響く。するとすぐに他のワンボックスカーも到着し、ドアを開けると猟犬部隊の男たちが自動小銃を構えていた。狙っていた車から飛び出す影が一つ。男たちが目で追うとそれは血塗れになった仲間の死体だった。

 

ダァァァァン!!

 

一方通行は横転した車の上側のドアを弾き飛ばし、顔をのぞかせる。

 

一方通行「あァン・・・?」

 

そして自動小銃を構えた複数の敵を認識する。どうやら彼らの狙いは一方通行ただ一人らしい。その証拠に黄泉川は狙われていない。彼女は自分の車に戻り、武器を探していた。

 

一方通行「ふぅン、ハァ・・・つまンねェ。」

 

彼は心底つまらなさそうな顔をした。しかしすぐにその顔は狂気に染まった顔へ変貌する。

 

一方通行「ギャアハッ!!!!」ズドン!!

 

一方通行は拳を上げると思いっきり車を殴りつけた。すると車は大爆発して、辺りを炎で包み込む。猟犬部隊は爆風に耐えられず後退する。

 

猟犬部隊「くっ・・・!」

 

一方通行「ギャアハハハハッハァッ!!!!演出ご苦労ォ!!華々しく散らせてやるから感謝しろォ。」

 

黄泉川「子供だけに・・・やらせるわけにはいかないじゃん!!」カチャッ!

 

黄泉川は車から取り出した自動小銃を猟犬部隊へ向ける。

どうやら彼女は『殺し』の覚悟を決めたようだ。

 

一方通行「ワンコさンたちよォ!今日は親犬は来ねぇのかァ?」

 

黄泉川(そういえば木原数多がいないじゃん・・・)

 

猟犬部隊「へへっ、喜べ化け物!木原さんは今、お前が守りたがっていた羽の生えたガキを捕まえに行ってるところだ!!あの人のことだ、きっと『沙理沢』にでも売り払うってハラだろう!!」

 

黄泉川(沙理沢・・・?)

 

一方通行「チッ・・・・・・」ギリッ

 

黄泉川は猟犬部隊全員の命が終りを告げることを察した。なぜなら少ししかいたことはないが彼がここまで怒ったところは見たことないからだ。

 

一方通行「ウォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオ!!!!!!!!!!」ヒョオオオオオオ!!

 

一方通行の周りに爆風が巻き起こる。そして砂を巻き込み、火災旋風が発生する。

そして猟犬部隊の兵士たちを一人残らず巻き込み、跡形もなく消し去った。

 

黄泉川「・・・・ん?」

 

黄泉川は自分もまきこまれることを覚悟していたが、自分の周りだけ何事もなかったかのように無傷の道路と車がある。

 

黄泉川「一方通行・・・・・・・!はっ」

 

一方通行「ぅぅ・・・・・・クッ・・・・・ッ!!!!」ギリギリ

 

黄泉川が一方通行へ視線を向けると彼は肩を震わして怒りを抑え込んでいた。

 

黄泉川「・・・・・・一方通行。」

 

一方通行「・・・・・・・行くぞ。」

 

黄泉川「あぁ・・・乗るじゃんよ。」キュルキュルキュル ブォォォォン

 

一方通行は杖をしまい、黄泉川の車に乗り込んだ。

 

黄泉川「どこに行くじゃん?」

 

一方通行「統括理事会、その顔の連中の一人のところに向かう。そこに行きゃァ何かしら掴めるかもしンねェかンなァ。」

 

黄泉川「居場所がわかるのは親船最中とトマス・プラチナバールじゃんね。」

 

一方通行「オマエ、調べたのか?」

 

黄泉川「こっちには芳川桔梗っていう優秀なニートがいるからね。」フフッ

 

一方通行「ババアの方はダメだ。平和思想すぎて闇については教えられてないだろォ。・・・あたるなら・・・」

 

黄泉川「トマス・プラチナバール、ね。」

 

一方通行「あのガキと妹達をこンなに扱った野郎ォ共はぶっ殺して、必ず無傷で助け出す。血みどろになンのは悪党だけで十分だ。そこに闇に関係ねェオマエらを巻き込むことは許さねェ。」

 

一方通行は拳を握りしめる。

 

一方通行「何もかもを血みどろに救ってやる・・・・・」ニタァ

 

一方通行たちは統括理事会の顔の一人、トマス・プラチナバールの住居へ向かった。




最後までご覧いただきありがとうございました!

今作の設定として打ち止めの保護者は黄泉川ということになっています。
彼女は打ち止めがさらわれてから警備員の仕事を抜け、単独で打ち止めを探していました。芳川さんはそのバックアップです。

さて、次回 第十七話 家族としての責任(ほごしゃとしてのせきにん)

                            次回もお楽しみに!!


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第十七話 家族としての責任(ほごしゃとしてのせきにん)

今作もご覧いただきありがとうございます!

今回はたまたま暇だったので早く投稿することができました。
ついに木原の居場所がわかるのか?そしてそれぞれの保護者の心配と責任は?
今作からアツい展開になっていきます!

それでは本編、スタートです!!


幻想郷----

 

レミリア「こっちは何とか収まったみたいね。」

 

レミリアたちは妹達の制圧を続けていた。だが、一方通行が学園都市に渡った時にすぐに妹達は停止し、正気?に戻った。

 

霊夢「しっかしまぁ上手いこと致命傷避けてるわね。あの武器、反動が強くて狙いにくそうなのに。」シュルシュル

 

霊夢は妹達を含めたけが人の手当てを行いながら自動小銃を眺めていた。

 

レミリア「銃ね、私のいた世界にはこんなに進化したものはなかったわ。」カチャッ

 

ミサカ「今回は誠に申し訳ありませんでした。と、ミサカは妹達を代表して心から謝罪します。」

 

レミリア「もう終わったことだし、いいのよ。それにしても人間を遠隔操作できるなんて・・・・発達しすぎた科学も考えものね。」

 

ミサカ「ミサカたちの上位個体20001号、通称『打ち止め』。あのクソガキから発せられる上位命令文には逆らえないのです。と、ミサカは悔しさに歯噛みをします。」

 

霊夢「あんた、結構毒舌なのね。」

 

ミサカ「ミサカにも最近個性というものが発生し、それぞれ性格が出てきたのです。と、ミサカは妹達内で個性を競い合ってることを内密にしながらどや顔で報告します。」

 

レミリア「内密にできてないわよ。」

 

咲夜「お嬢様、永琳先生から包帯をいただいてきました。」

 

レミリア「ありがとう、あなたもケガしてたでしょ?ちょっと診せなさいな。」

 

咲夜「大丈夫ですわ。こんなものかすり傷です。」

 

レミリア「いいから!」グイッ

 

咲夜「あっ・・・」

 

レミリアは強引に咲夜の腕を出し、手当てを行いはじめた。

 

ミサカ「これが、家族というものでしょうか?と、ミサカは聞いてみます。」

 

霊夢「そうね・・・・これが本当の家族というものなのでしょうね。」

 

レミリア「あなたには家族はいないの?」

 

ミサカ「ミサカには家族といえる存在はいません。しかし、上位個体にはいます。ミサカネットワークを通じて家族の温かみというものを感じました。と、ミサカは内心あのクソガキに嫉妬しながら話します。」

 

霊夢「その上位個体の話ばっかりね。なんだかんだで大事なんじゃない?」

 

ミサカ「そうでしょうか?と、ミサカは質問の本質が理解できません。」

 

レミリア「つまり、妹達は家族ってことじゃないかしら?ってことよ。」

 

ミサカ「確かにミサカたちは遺伝子情報もすべて同じですが、あなたたちみたいにそんなに温かくありません。と、ミサカは疑問に思います。」

 

レミリア「でも、時々他の子たちが心配になるのでしょう?」

 

ミサカ「心配?その感覚はわかりません。と、ミサカは未知の感情に興味を示します。」

 

霊夢「そのうちわかるわよ。」

 

そうこうしているうちに三人はけが人の手当てを終えた。

 

ミサカ「あの方々の手当ては大丈夫なのですか?と、ミサカは罪悪感に胸を痛めながら聞いてみます。」

 

霊夢「問題ないわ、妖怪はね。あいつらはもう傷が治ってるわ。」

 

ミサカ「そうですか、大事に至らなくてよかったです。と、ミサカは少し安心します。」

 

御坂妹は少しためらった後、霊夢たちに切り出した。

 

ミサカ「ミサカたちは、電気操作能力や常に放出している電波、全個体の脳波が同一であることを利用し、脳波を電気信号として発信することで意識や思考を共有しています。ですから情報を送受信して組織行動を取ったり記憶のバックアップを取ることで、死後や記憶喪失後であっても記憶を永続させたり、並列コンピュータのように並列演算することなども可能です。これにより、「妹達」は各々を神経細胞とする巨大な1つの大脳のようにも機能するのです。と、ミサカは説明します。」

 

永琳「なるほどね、だからあんなに統制が取れていたわけね。」

 

霊夢「永琳!?いつの間に・・・」

 

ミサカ「そして『妹達』の中では上位個体である打ち止めのみ、ミサカネットワーク全体や他の個体に対する制御や命令権限を有しているので、打ち止めが操られたためにこんなことになってしまった。と、ミサカは目を細めます。」

 

霊夢「逆らうことはできないの?」

 

ミサカ「はい、打ち止めはミサカたちの制御のために造られた個体です。残念ながら逆らうことはできません。しかし、命令に逆らわない程度に行動することは可能でしたので、皆さんの致命傷を避けるようにとミサカネットワークで他の個体に指示しました。と、ミサカはこれぐらいしかできなかったことを悔やみます。」

 

レミリア「でも、よくやった方だと思うわ。みんなをできるだけ傷つけないようにするだなんて・・・」

 

霊夢「実際どんな命令が来たの?」

 

ミサカ「空間の歪みの中へ行き、その場を制圧しろとのことでした。しかし、殺せとは命令文になかったのでそれを利用しました。と、ミサカは下位個体なりに頑張ったことを告げます。」

 

永琳「で、学園都市とのつながりが消えたから元に戻ったわけね。」

 

ミサカ「一方通行は今、どこにいるのですか?と、ミサカは伝えたいことがあるので聞いてみます。」

 

レミリア「一方通行なら私の妹と一緒に学園都市に向かったわ。打ち止めを救い出すんですってよ。で、伝えたいことって?」

 

ミサカ「今回の事件はミサカネットワークによってAIM拡散力場全体の指向性を操作し、虚数学区・五行機関を制御し、アレイスター=クロウリーが街に侵入した魔術師をヒューズ=カザキリという科学によって人工的に生み出した天使を利用し、討伐しようとしていることから始まったことです。ミサカネットワークはヒューズ=カザキリの現出のカギとなっているので打ち止めを使い、さらにそのついでにミサカたち下位個体も利用された次第です。と、ミサカは向こうに残ったミサカを気にします。」

 

霊夢「それを心配っていうのよ。」

 

ミサカ「これが・・・心配?」

 

御坂妹いまいち理解できていないようであったが、霊夢はしっかり心配できていることを知って、少し安心した。

 

レミリア「このことを伝えるにしてもスキマ妖怪の協力を得ないと・・・・」

 

霊夢「紫はどこにいるの?」

 

霊夢のその呼びかけに答えるように空間にスキマが現れ、中から金髪の美女が姿を現した。

 

紫「あら、呼んだかしら。」

 

レミリア「一方通行に伝えてほしいことがあるのだけれど。」

 

レミリアの願いに紫は首を横に振った。

 

霊夢「どうしてよ?」

 

紫「一方通行が言ってたの。もし自分になにかあってもスキマは絶対に開くなって。」

 

レミリア「それじゃあどうするのよ。」

 

紫「一方通行を信じるしかないわね。」

 

永琳「では、学園都市の様子を見ることはできないかしら?」

 

紫「それはできたわよ。今も見てたとこだし。」

 

紫のその言葉に全員が彼女に詰め寄る。

 

霊夢「今どうなってんの!?」

 

レミリア「フランは!?フランは大丈夫でしょうね!?」

 

紫「待ちなさい・・・待ちなさいって!少し落ち着きなさい。」

 

そう言って紫は見たことを報告する。

 

レミリア「そう、フランと一方通行は離れ離れになってるのね・・・それにいま襲われてると。」

 

紫「えらく冷静ね。」

 

レミリア「あの子は強いわ。あの程度の武器で攻撃されているくらいなら問題ないでしょう。それに向こうの最強格の一人と一緒らしいし、もし何かあっても一方通行が何とかしてくれるわ。」

 

紫「一方通行のこと・・・信用してるのね・・・・」

 

レミリア「『このガキだけは何があっても守ってみせる』ってらしくないこと言ってくれたしね。確かに心配だけれど私は彼を信じるわ。」

 

レミリアは星空を見上げる。

 

レミリア(フラン、一方通行・・・必ず無事に戻ってきなさい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美琴はフランを抱きかかえ、ファミレスの奥の柱で様子をうかがっていた。

先ほどまで凄まじいほどの銃声が聞こえていたのに急に静かになった。

 

美琴(・・・・・・どうゆう状況?なんで仕掛けてこない・・・?)

 

???「ハァ~イ!ビックリしちゃったかな?怖がってないで出ておいで~。こっちにも事情ってものがあるからさ。」コツコツ・・・

 

店の外から誰か近づいてくる。声からして女だ。美琴は警戒心を強める。

 

???「あんまり言うこと聞いてくんないと~・・・グッチャグチャの塊にすんぞコラァ。」ブン

 

女が手に持つハンマーのようなものを振り下ろすと、美琴の頭上の壁に亀裂がはしり、砕けた。

 

美琴「キャッ!!・・・・・・・・・あんたは!?」

 

美琴の問いかけに女は口に含んだ十字架を吐き捨てると答えた。

 

ヴェント「神の右席の一人、『前方のヴェント』。目標じゃないけど天罰が効いてないのは不思議だし、なによりそこの赤いの・・・・アンタ吸血鬼よね?吸血鬼は悪魔だから見過ごすわけにはいかないの。」

 

ヴェントは舌に小さな鎖でつながった十字架を垂らしながら答える。

 

ヴェント「そういうわけでさっさとぶっ殺されろ悪魔共!!!!!!」

 

女はその顔面を狂気にゆがめると攻撃を始めた。

 

美琴「っ!!」グッ

 

ヴェント「そんなに緊張しなくてだいじょぶだよ。痛みなんて感じる暇もないんだから!!」ブン!!

 

美琴「ハッ・・・!クッ!!」ドン!

 

フラン「キャッ!!」ドスッ

 

美琴はフランを突き飛ばし、ヴェントの攻撃を回避する。

 

美琴「隠れてなさい!フラン!!」

 

ヴェント「アッハハッ!!!」ブンッ

 

ヴェントはエネルギー弾のようなものを発射し、美琴を仕留めんとする。

 

美琴「学園都市第三位、なめんじゃないわよ!!」チャリーン

 

美琴はポケットからコインを取り出すと右手に電気を収束し、コインを光の速さで発射した。

 

ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!!ドガァァァァン!!!!!!!!

 

超電磁砲はエネルギー弾をかき消すとそのままヴェントへと向かった。

しかしヴェントは無傷でそこに立っていた。

 

ヴェント「ハッハァ!さすがは学園都市が誇る第三位!その能力は健在ね。よく頑張ってついてくるねぇ!!!!」カキーン

 

ヴェントはハンマーで十字架をたたいた。即座に次の攻撃が来ると判断した美琴は再び超電磁砲を発射する体制に入る。

 

美琴「上!!・・・・キャァァァァ!!!!」ズドーン!!

 

エネルギー弾は美琴の予想外の動きを見せ、彼女の身体をかすめていった。

 

ヴェント「楽しいぃ~!!幻想殺し(イマジンブレイカー)でもないくせに上手いこと防ぐわね。ところどころ織り交ぜてる私の本命が見抜かれてるわ。」

 

ヴェント「しっかし、これだけじゃよくわかんないし・・・試してみっかぁ!!」ブンッ!

 

ヴェントは倒れている黒子に向かって攻撃を放つ。

 

美琴「やめなさい!!」ギュイイイイイイン!!

 

美琴は再び超電磁砲を放ち、エネルギー弾の軌道を変えた。

 

ヴェント「はぁー、そうなってんのねぇ。その能力・・・・・すんません!!なーんか、痛みを感じる暇もなくってのは無理みたーい。だから、幸せになりたかったらマゾにでも目覚めてね。」カキーン

 

ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!ドガァァァァン!!!!!!

 

美琴(さっきからハンマーの動きと攻撃がずれてる・・・!)まさか!その十字架で!?」

 

ヴェント「いや~ん!バレちゃった?」キィーン

 

美琴「クッ・・・・」ズザザザザザザ

 

美琴は滑り込んで攻撃を避ける。

 

ヴェント「あーらーなんだか面倒くさくなってきちゃったなー。」キィーン

 

美琴「キャァァァァ!!・・・・・うっ!!」ドガッ

 

フラン「・・・・・ぁ」スッ

 

美琴は壁にたたきつけられ痛みに声を漏らす。右足からは血が出ている。その様子を見ていたフランは美琴に駆け寄ろうとする。

 

美琴「逃げなさい!!」

 

ヴェント「ふふっ・・・・」ブンッ!

 

ヴェントはフランへ向けエネルギー弾を発射する。

 

ギュイン!!!!!!!!

 

突然ヴェントの攻撃が消えた。当然美琴にはそんな能力はない。フランは困惑と恐怖でとても戦える状態ではない。

 

ヴェント「・・・来たわね。幻想殺し(イマジンブレイカー)。『上条当麻』!!!!」

 

ヴェントがそう叫ぶと攻撃をかき消したツンツン頭の少年は美琴に駆け寄る。

 

当麻「大丈夫か?御坂。」

 

美琴「大丈夫、こんなのかすり傷・・・・・・・っう!!」

 

当麻はフランに振り返るとこう叫んだ。

 

当麻「逃げろ!!ここは俺に任せて行け!!!!」

 

その言葉にフランは店の外へ駆け出した。

 

ヴェント「あんたって残酷ねぇ、あんな小さな子に暗闇の中を逃げ続けさせるなんて。一緒に殺してあげたほうが幸せなんじゃないの?」

 

当麻「俺が迎えに行けば問題ねぇ・・・だから俺は死なない!」

 

ヴェント「あら楽しい。でもでも、五臓六腑を人肉ジュースにしても同じ事が言えるかしら?ま、最優先標的はあんたなわけだし、逃げないってんなら大助かりなんだけどさぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ・・・・・チャキッ!ズドーン!!!!!!!!

 

黄泉川「これで最後じゃん?」カチャッ

 

一方通行「あァ、コイツが統括理事会12人の一人、トマス・プラチナバールで間違いねェだろォ。」

 

一方通行と黄泉川はトマス・プラチナバールの屋敷を訪れ、銃による奇襲で制圧していた。

途中、一方通行の杖に不具合があったため、彼は急遽、杖代わりにスナイパーライフルを装備している。

 

黄泉川「こっちに端末があるじゃん。画面が3つあるからきっとこれじゃん!」ピッピッ

 

一方通行「オイ、誰に連絡してンだァ?」

 

黄泉川「桔梗じゃん。パソコンにはロックがかかっているハズじゃん。それを解いてもらうんじゃん・・・・おっ出た出た、もしもし桔梗?」

 

桔梗『愛穂?どうしたの?』

 

黄泉川「ちょっとパソコンのロックを解除してほしいんじゃんよ。」

 

桔梗『とりあえず渡しておいた端末をパソコンに接続してくれない?』

 

黄泉川「これ?よいしょっと。」カチッ

 

一方通行「貸せ・・・・・オイ芳川、久しぶりだな。」

 

芳川『一方通行!?あなた生きてたの!?』カタカタ

 

一方通行「オマエも生きてたよォだな。」

 

芳川『今愛穂といるの?だから統括理事会に・・・・』

 

一方通行「まァそういうことだ。オマエ達の『娘』は必ず俺が取り戻す。じゃァな。」

 

一方通行は黄泉川に携帯電話を返す。

 

黄泉川「こっちには最強がいるじゃん!絶対に取り返してやるじゃんよ!それが親として当たり前のことだからね!!っと接続は終わってるじゃんよ。」

 

芳川『待って、もう終わるわ。』カタカタ

 

ようこそ トマス・プラチナバール様。

 

黄泉川「開いた!」

 

一方通行「後は任せろ。」カタカタ

 

芳川『接続した端末はそのままにしときなさい。データを吸い取れるわ。』

 

黄泉川「了解、ありがとじゃんよ!」ピッ

 

一方通行は統括理事会で同期されたファイルから次々に漁っていく。

 

黄泉川「これじゃない?私が知ってる情報にこの単語が出てきたじゃん。」

 

一方通行「作戦コード名・・・ANGEL。正体不明の脅威を取り除くため、打ち止めを回収。ウイルスを上書きして対抗する・・・・・・・ふざけやがって。」カタカタ

 

黄泉川「ウイルス?」

 

一方通行「学習装置(テスタメント)って機械で、それを使えば人間の脳にウイルスブチ込めるってクソみてェなもンだ。過去に打ち止めを誘拐した研究者が似たよォな手段で妹達によるテロを起こそォとしたことがある。」カタカタ

 

黄泉川「8月31日にね・・・・・・」

 

一方通行はキーボードをたたく速度を上げる。

 

一方通行「ってことはあのガキはまだ生きてるってことだァ・・・・・・・・木原の野郎ォ、どこに隠れてる?」カタカタ

 

ピピピピピピピピピピ・・・・・・・

 

黄泉川「?芳川からじゃん。」ピッ

 

芳川『一方通行に代わって頂戴。』

 

一方通行「ンだァ?なンか用ォか?」カタカタ

 

芳川『あとはこっちで解析しとくわ。あなた達はそこから立ち去りなさい。』

 

一方通行「何故だ?」

 

芳川『猟犬部隊の残りが来る可能性があるからよ。』

 

一方通行「問題ねェ。来たら来たでぶっ殺せばいいだけの話じゃねェか。まァやっておいてくれンなら助かる。こっちも見つけなきゃならねェクソガキがいるかンなァ。」カタカタ

 

芳川『・・・・・・・監視カメラの映像をあたれば見つかるかもね。コードはskillsecurity95875よ。』

 

一方通行「・・・・助かる。」プツッ

 

一方通行はデスクトップにあった監視カメラの映像確認ソフトを立ち上げ、コードを入力した。

 

一方通行「黄泉川、念のために警戒は怠るンじゃねェぞ。」カタカタ

 

黄泉川「わかっているじゃん。」カチャッ

 

黄泉川は自動小銃の空になったマガジンをポケットにしまい、新しいマガジンにリロードした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェントは第七学区の大きな鉄橋の上にいた。アレイスターの仕掛けた虚数学区・五行機関の影響で魔術師であるヴェントは苦しんでいる。

 

ヴェント「うぅ!!げほっ・・・げほっ!げほっ!!」ベチャッ

 

雨の降るコンクリートの上に血が広がる。

 

ヴェント「ハァ・・・ハァ・・・・(これは一体なんだ?さっきから、この正体不明の気配。まだ膨らみ続けてる。)

 

ヴェントは新たな気配を感じ、振り返るとこちらへ向かって走ってくる人影が一つ。

 

ヴェント「上条、当麻・・・!」

 

当麻「テンメェ・・・・!」

 

ヴェント「わざわざ殺されに来たってこと!?」ブンッ

 

エネルギー弾が上条当麻に向け高速で発射される。

 

当麻「うおおおおおおお!!」ギャイン!!

 

しかし、その攻撃は当麻の右手に宿る幻想殺しにかき消される。

 

当麻「あの女の子をどこへやった!?」

 

ヴェント「あの女の子ぉ?あぁ、あの悪魔か。知らねぇよ!そんなもんはぁ!!まぁ後でぶっ殺すけどなぁ!!!!」

 

当麻「なんだとこのy キュイイイイイイイイイイン!!!!!

 

当麻が怒りの咆哮を上げようとすると突然左方向から眩い光が差し込んだ。

その後、暴風に当麻は吹き飛ばされ、道路に転がった。

 

当麻「一体なにが!?」ムクッ

 

ヴェント「・・・そうか、これが虚数学区・五行機関の全貌ってことか。テメェみたいな小物は後回しだ。舐めやがって!!そうまでして私たちを貶めたいか!!!!」ズガァァァァン!!

 

当麻「クッ・・・・・・・・・・消えた?」

 

ヴェントはハンマーを地面にたたきつけるとその土煙に姿を消した。

 

当麻「あいつは何を見ていたんだ?」

 

当麻は橋の向こうへ視線を向ける。

 

当麻「!・・・・・・・・嘘・・・だろ・・・?」

 

 

 

虚数学区・五行機関ガ展開ヲ開始。上位個体打チ止メハ、コードヲ認証。コレヨリ、『ヒューズ・カザキリ』ガ出現シマス。関係各位ハ不意ノ衝撃ニ備エテクダサイ。

 

アレイスター「・・・・・・・・・」ニタァ

 

上空の空間が歪み、爆風が学園都市を走り抜ける。そして、収束された光は翼のような形状となり第7学区の中央に広がった。

 

当麻「まさか・・・・『天使』!?」

 

突然翼が動き出し、街を破壊し始めた。

 

当麻「ここにいるとヤバそうだ。でも、あの女の子はどこに!?」スッ

 

当麻は美琴へ電話をかける。

 

プルルルルルルルル・・・・・プルルルルルルルル・・・・・・

 

美琴『なによ?』

 

当麻「なぁ、あの子は見つかったか?」

 

美琴『全然ダメ。あたし、第五学区の方探してみる。』

 

当麻「お前も見ただろ?あの光の翼。俺はあの天使を止めなくちゃならない。だからあの子を一緒に探すのは難しくなる。」

 

美琴「まさかアンタ、アレを止めに行くつもり!?」

 

当麻「・・・・・悪い。・・・・・・・死ぬなよ。」

 

美琴「アンタもね!!」プツッ

 

 

 

 

 

木原は第七学区のビルにいた。そして出現したヒューズ・カザキリを猟犬部隊とともに眺めていた。

 

木原「ハッハハァ、すっげぇなぁオイ!アレは一体なんなんだぁ?チクショウ、飛んでやがんなぁアレイスター。理論のりの字もわかんねぇぞ!科学者の癖に科学を否定するたぁ何たる科学者だよ。見ろよテメェら!聖書ってのはいつから飛び出す絵本・・・・・」クルッ

 

木原は楽しそうに部下たちに語っていたが、猟犬部隊の顔を見ていてなにか違和感を覚えた。そして再び窓の方向へ振り向く。

 

木原「あぁ?」クルッ

 

ビュォォォォォォォォォ!!!!!!!

 

木原「ッ!!」

 

パリィィィィィィィィィン!!!!!!!!!ドガッ!!クルッ!スタッ!

 

影は20階の窓ガラスを割り、飛び込んでくると隊員を蹴り飛ばし、着地する。

 

一方通行「木ィィィィィィィィィィィィィィ原ァァァァァァァァくゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!!!」カチャッ

 

一方通行がライフルを構えると即座に木原は隊員の一人を押し出した。

 

ズドォォォォン!!!!!ドグシャァ!!!!!!!

 

木原「ほらぁ・・・ちゃんと撃てよ。じゃねぇと、みんなの迷惑だぜぇ!!!!」

 

カチャッ・・・ジャキッ・・・・・

 

猟犬部隊はそれぞれの武器を構えるが、それを使わせる間もなく一方通行は急接近し、隊員一人の装備していた手榴弾のピンを抜き、他の隊員にむかって男を蹴り飛ばした。

 

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!グチャベチャッ・・・・・・

 

猟犬部隊「ヒィッ!う、動くな!!」ガシッ

 

猟犬部隊はそばの机に寝かせてあった打ち止めを人質にとる。

 

一方通行「・・・あァ?」スタスタ

 

一方通行は構わず男に接近し、持っていたライフルを振りかぶった。

 

猟犬部隊「ヒィ・・・うぅ・・・・・!」

 

一方通行「・・・・・ハァッ!!」ブンッ!!

 

ドガァァァァン!!!!バキバキバキバキ・・・・・・・

 

男の頭蓋骨とともにライフルが砕け散る。一方通行はその様子をゴミを見るような目でにらむ。

そして、放り出された打ち止めを抱きとめると後ろに下がり、机に寝かせた。

 

木原「カァァァァッコイイイイイイ!!!!惚れちゃいそぉだぜぇ!!一方通行ぁ!!!!」

 

一方通行「さァて・・・・!スクラップの時間だぜェ!?クッソ野郎ォがァァァァァァァァ!!!!!!」




最後までご覧いただきありがとうございました!

ついに木原との戦いが始まりましたね!原作ではⅡの集大成ともいえる場面ではないでしょうか?それを黄泉川とフランというイレギュラーが発生した状況で物語が進むとどうなるのか私も楽しみです。

次回、 第十八話 どんなに打ちのめされても
 
                          次回もお楽しみに!!


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第十八話 どんなに打ちのめされても

今作もご覧いただきありがとうございます!

ついに木原との戦いが始まりましたね!
美琴の方はフランの捜索。上条当麻はヒューズ・カザキリを止めに・・・

この章も終わりが近づいてきました。頑張って書いていきますので応援よろしくお願いします!
それでは本編スタートです!!


天使の翼が見える高層ビルの窓の中、一方通行は宿敵、木原数多と対峙していた。

 

一方通行(バッテリーにはまだ余裕があるが、ここで全部使い果たすわけにはいかねェ。コイツをぶっ殺して、フランを探しに行かなけりゃァならねェかンなァ。だが、とにかくコイツを殺せば学園都市で起こってることはすべて終わる。俺には帰らなきゃならねェ場所がある・・・・・ならこのヤマを終わらせて、フランと帰ることだけ考えろォ!!!!)ダァン!!

 

一方通行は床を強く蹴り木原へと突進する。彼が何をしようと一方通行の反射の前では意味をなさない。よって一方通行が木原に触れた瞬間勝負が決まる・・・・・・・・ハズだった。

 

バキィッ!!!!

 

一方通行「グハッ!!(反射が・・・効いてない!?)

 

木原が行ったのはカウンターのアッパーパンチだ。だが、ただの拳。一方通行の反射の前ではどんなに強いパンチであろうと効かないはず。しかし木原の拳は一方通行の顔面をしっかりとらえた・・・・何故?

 

木原「オイ、クソガキ。そのつまんねぇ力はどこの誰が与えてやったモンだと思ってんのよ・・・・・・・・?ほぉれ・・・思い出したろぉ!!」ブンッ!!

 

再び木原は一方通行へ拳を振るう。

 

ドゴォ!!!!

 

一方通行「ガハッ!!」

 

一方通行は鈍い音とともに後方へ吹っ飛ばされ、壁に激突して止まった。彼はぐぐもった声を発した。

 

木原「あっ!そうだそうだ!テメェと一緒に来た赤いガキな?あれ、沙理沢にあげちゃったからぁ。なんでも『アリスシステム』?だか何だかに使えないか実験するんだと。だからテメェは安心してここで潰れて壁のシミにでもなっててくれ。そっちのほうがテメェらしいだろうしな。」

 

一方通行「クッ・・・テンメェ・・・・!!」

 

一方通行は唐突にフランと過ごしたくだらない日常を思い出した。

 

一方通行「舐めてンじゃねェぞォ・・・・・このォ!三下がァァァァァァ!!!!!!」ヒュォォォォォ!!

 

彼は窓から入ってくる風のベクトルを操作し、二本の竜巻を作り、木原を押しつぶさんと迫る。

 

木原「ダメなんだよなぁ・・・・・・・」ニィッ

 

ヒュィィィィィィィィィィィィィィン!!!!

 

竜巻が直撃する寸前、笛のような音とともに一方通行の竜巻が掻き消えた。

 

一方通行「ッ!?」

 

木原「ハハハハハハハハハハ・・・アハハハハハハハハッハハハハハハ!!」ブンッ!!

 

木原は高笑いしながら一方通行の顔面を蹴り、吹き飛ばされた一方通行は壁ににたたきつけられる。

 

一方通行「グハッ!!・・・・オマエ、まさか・・・自分の身体に超能力の開発を・・・?」

 

木原「あん・・・?ハハ・・・ハッハハハハハハハ!!違う違う、そうじゃねぇよ!そういうのは実験動物の仕事だろうがよ。あんなバカげた力使わなくったて、テメェ一人潰すことに苦労なんかしねえんだよ。」

 

木原は一方通行に近づくと鉄製のグローブをいじり始めた。

 

木原「今日はコイツの調子もいいしなぁ。」カチャッカチャッ

 

一方通行(反射をすり抜ける秘密はあのグローブにあンのかァ?なンらかの細工が施してあるだろうな・・・なら、あのグローブさえ破壊すりゃァ・・・・・・)ムクッ

 

一方通行「ウォォォォォァァァァァァァァァ!!!!!」ダァン!!!!

 

一方通行は壁から立ち上がると摩擦のベクトルを操り木原に急接近すると彼のグローブに触れた。

 

バリィィィィン!!!!

 

ガラスが割れるような音を立て、グローブが粉々になる。

 

一方通行「とりあえず死体決定だァ!!クソ野郎ォォォォォ!!!!!」

 

一方通行は木原の顔面に手を伸ばす。

 

木原「そっかそっか・・・力のヒミツはこのグローブだと思ったのか。」グルン

 

木原は身を翻し、一方通行の腕を躱すと彼の間合いに入った。

 

木原「けどそうじゃねぇんだ。フハハハハハハハハハ!!」ブンッ!!

 

ドゴォォ!!!!!!!!

 

一方通行「ゴハァァァァァ!!!!」

 

一方通行の急所に木原の拳が入る。

 

木原「いつまで最強気取ってやがんだ!この、すっとこどっこい野郎が!!」ドォン!!

 

木原は一方通行のあごにアッパーを叩きこんだ。殴られた一方通行は頭から床に叩きつけられる。

 

木原「テメェの反射は絶対じゃねぇだろが。ただ向かってくる力のベクトルを反対に変えてるだけだ。なら話は簡単でよぉ、直撃の寸前に拳を引っ込めりゃいいんだ。言っちまえば寸止めの要領だ。つまりお前は自分から殴られに行ってるってことだよ。わかってくれたかな?マゾヒスト君?」

 

木原は「ポケットからゴムボールのようなものを取り出すとそれを押しつぶし、音を鳴らした。

 

木原「さっきの風も同じことだ。テメェの能力はベクトルの計算式によって成立している。なら、そいつを乱しちまえばいい・・・・・」

 

木原は倒れている一方通行の顔を蹴りながら再びしゃべりだした。

 

木原「特定の音波やなんかでジャミングできんだよ!!こっちはテメェの特徴、計算式、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)。すべて把握済みだぁ!!」ゲシッゲシッ

 

一方通行「グハッ!ガハッ・・・!ゲホォッ!!」

 

木原「こっちも伊達にテメェの能力、開発してねぇぞ!!」ゲシッ

 

パシッ!

 

一方通行は木原の足を手で止めた。

 

木原「あぁ?」

 

一方通行「クッ・・・アァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!!」グググググク

 

一方通行は起き上がり、拳を構えた。

 

一方通行(コイツに能力は聞かねェ・・・それに反射を使えば、ダメージが倍になるだけだ。なら・・・・反射を切り、なおかつ純粋な力だけで勝つしかねェ。勿論勝てる見込みはねェが、やるしかねェ!!)

 

木原「少しは強くなったんじゃねぇか?一方通行。能力に頼りっぱなしで、体力の方は皆無に等しかったテメェが自ら拳を構えるとはなぁ・・・・・」

 

木原も拳を構える。

 

木原「ご褒美に教えてやるよ。あの赤いガキは第十九学区にある廃ビルにいるぜ。まぁテメェが行くことはねぇだろぉがなぁ。」

 

一方通行(第十九学区?再開発に失敗し、急速に寂れちまった学区か・・・・・)グッ

 

一方通行は握る拳に力を込める。

 

一方通行「ありがとなァ!木ィ原クゥゥン!!おかげですぐに見つけられそォだぜェ!オマエをぶっ殺して、すぐに行くとするかァ!!!!」ブンッ!!

 

木原「テメェごときの拳で、この俺を倒せるわけねぇだろぉ!!!!」ドォン!!

 

一方通行「クッ・・・!」グッ

 

一方通行は何とかこらえるとそのまま踏み込み木原へ突進していく。

 

木原(そうか・・・!コイツ反射を切りやがったんだ!!だから俺の対抗策は無効になるってことか!!)

 

一方通行「アァァァァァッ!!!!」ブンッ!!

 

木原「ゴハァッ!?」バキッ!

 

木原の顔面に一方通行の拳が直撃する。

 

一方通行(通じた!感謝するぜェ鬼どもォ!!)

 

一方通行は宴会の際、鬼に強いパンチの出し方を教わっていた。一方通行は酔っていたがそれだけはたまたま覚えていた。

だが、木原もまた格闘戦の達人である。

 

木原「オラァァァ!!!」ブンッ!!

 

一方通行「ゲホォッ!!」ドサッ

 

一方通行は再び急所に拳を打たれ、床に倒れこむ。

 

木原「ハハハ、ハァァァァハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 

体中が痛い。あばらも何本か折れてる。顔も腫れ上がり、クラクラして呂律も回らない。

 

一方通行「・・・ィハ・・・・ス・・・・・・」

 

木原「あぁ?なんか言ったか?」

 

一方通行はゆっくりと起き上がり始める。

 

一方通行「・・・木ィ・・・・原ァ・・・・・・・。」グググググ

 

そして完全に立ち上がる。満身創痍の身体を引きずりながら。

 

一方通行「キィィィィィハァァァラァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ググググググググググググググググ

 

木原「ハンッ、面白れぇ・・・そうだよなぁ?そんなに簡単に倒れちまったらつまんねぇもんなぁ。サービス精神旺盛で助かるぜぇ!一方通行!!」

 

木原は拳を鳴らし、顔をゆがませる。

 

木原「こっちもテメェにゃ、ムカつきっぱなしだったんだ。殺す前に拳でたっぷりと沈めてやるぜぇ!!」

 

一方通行(ここで倒れるわけにはいかねェ!打ち止めを救って、あのガキを助けに行かなきゃァなンねェンだ!!)グッ

 

二人は互いを屠らんと拳を掲げ、駆け出す。

 

一方通行「ウゥゥゥァァァァアアアア!!!!!!!」

 

木原「オォォォォォラァァァァァアアアア!!!!!」

 

先に拳が到達したのは経験の差か、木原だった。

 

バキィッ!!!!!

 

一方通行「ウガッ!・・・ッ!!」ググッ

 

一方通行は持ちこたえ、木原へカウンターを叩きこむ。

 

一方通行(身体の軸を 右45度程度に傾け、前に左腕・左足、後ろに右腕・右足が来るように構える。左足を前に踏み込み、右足を反時計回りに回転させ、その回転の威力を腰に伝える。さらに腰を反時計回りに回転させ、足から腰へと伝わった回転の威力を右腕へ!!)ギュイ!!

 

ドカァッ!!!!!

 

木原「うがはぁっ・・・・・!響かねぇぞ!小僧!!!!!!」ドゴォ!!

 

一方通行「ガハァッ!!」ズザザザザザ

 

一方通行(クソッ・・・!ダメなのか・・・・・)

 

木原「よぉし!調子が出てきた!!ハハッ!!・・・もうちょっと面白くしてやるからさぁ、もっとやる気出してくれよぉ!!!!」ピンッ・・・ブンッ

 

木原は懐から手榴弾を取り出すとピンを抜き、それを一方通行へと投げつけた。

 

一方通行(ヤベェ!!今は反射を切ってる・・・!今から張り直しても間に合わねェ!!)

 

木原「じゃぁな、一方通行。」

 

一方通行「クソッタレがァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!ドォン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(なンだ?なンの音だ?)

 

ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

手榴弾は一方通行の身体ではなく窓の外で爆発した。

 

木原「・・・・・・・・カハッ!」ビチャッ!

 

「全く・・・子供に対してやることじゃないじゃんよ。あんたそれでも大人?」カチャッ

 

木原「誰・・・・だ・・・?」

 

黄泉川「黄泉川愛穂。打ち止めの保護者じゃん。娘を取り返しに来たじゃんよ。」

 

一方通行「黄泉川・・・か・・・・?」

 

黄泉川「遅れてすまなかったな、一方通行。二十階も階段上るのは大変でさ。」

 

その後ろで木原が立ち上がる。

 

木原「何が娘だ・・・?あんなモルモット・・・造ろうと思えばいくらでも造れるような人形をかぁ?笑わせんな、このクソアマ。」ズズ・・・

 

黄泉川「あんたらクズの研究者からすればこの子はモルモットかもしれないけど、あたしからすれば打ち止めはかけがえのない家族じゃん。どんなに傷ついても、自分の命を投げうってでも守りたい存在じゃん。そして一方通行は過去の贖罪のためにやってきて傷き、妹達を再び救った。そして彼にも取り戻したい家族がいるじゃん。・・・あんたみたいな人間にはわからないだろうけど。」

 

木原「そりゃわかんねぇなぁ。」

 

黄泉川「あんたはあたしの家族に手を出し、こんな目に合わせた。残念だけど許すことはできない。」カチャッ

 

黄泉川は拳銃を木原に向ける。

 

一方通行「待て、黄泉川。」スッ

 

一方通行は立ち上がると黄泉川の持つ拳銃に手をかける。

 

一方通行「コイツを撃つのは俺だ。わざわざオマエまで血に染まる必要はねェ。」カチャッ

 

一方通行は黄泉川の手からから拳銃を奪い取る。

 

黄泉川「でも、コイツは・・・!」

 

一方通行「オマエはそこのガキの親なンだろォが。だったら綺麗な手でそのガキを撫でてやれ。・・・・それに・・・」ジャキッ

 

一方通行は撃鉄を起こすと拳銃を木原へ向ける。

 

一方通行「オマエも善人にやられるよりかはいくらかマシだろォ?」カチャッ

 

木原「ハハッ、違ぇねえや。」

 

ドォン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かなビルの中に血と火薬の匂いが漂っていた。

 

黄泉川「しっかしまぁ、随分ひどくやられたじゃんよ。」シュルシュル

 

一方通行「能力が効かなかったンだ・・・ッ!」

 

黄泉川「最強じゃんよ、しっかりするじゃん!」グッ

 

黄泉川は一方通行の手当てをしていた。折れた個所の応急処置、アンチスキルの黄泉川には慣れたものだった。

 

一方通行「もういい、それより・・・・」

 

黄泉川「あぁ。」

 

一方通行と黄泉川は立ち上がり、打ち止めの様子を見た。

 

一方通行「BC・・・確かブレインセル、脳細胞稼働率の表示か。」

 

黄泉川「どうやったら助けられるじゃんよ?」

 

一方通行「ちょっと待て・・・・・・」スッ

 

一方通行は打ち止めの頭に手を置く。

 

一方通行「クソッ!前とウイルスコードが違ってる!」

 

黄泉川「!ちょっとこれ。」スッ

 

黄泉川は床に落ちていたチップを拾い上げる。

 

一方通行「そりゃァ・・・木原が持ってたものか?」

 

黄泉川「おそらくはそうじゃん。」

 

一方通行「もしかしたらそれに打ち止めの元の人格データが入ってるかもしれねェってことか。」

 

二人は活路が見えてきたことに喜びを感じた。

 

一方通行「学習装置もあるな・・・・オイ黄泉川、後は芳川と協力して何とかしろ。・・・・・俺はあのガキを助けに行く。」

 

黄泉川「・・・あてはあるじゃん?」

 

一方通行「第十九学区の廃ビル・・・・あのガキはそこに居ると木原が言ってた。」

 

黄泉川「そう・・・・ねぇ、一方通行。」

 

一方通行「なンだ?」

 

黄泉川「必ず、救い出してきなさい。・・・家族として。」

 

一方通行「・・・・・・・くっだらねェ。だが、あのガキは必ず助ける。」スタスタ

 

一方通行はスイッチを切り、その辺にあったライフルを拾い上げるとそれを杖として代用し、歩き出した。

そして部屋を出て、階段を降りようとすると人影が複数道を塞いでいた。

 

???「一方通行、お話がありますが・・・よろしいですか?」

 

唐突に暗闇から男二人と女が一人姿を現した。

 

一方通行「あァ?どォでもいいが邪魔だ。道を開けやがれ。俺は行かなきゃなンねェ所があンだ。」

 

???「そんな時間はとらないにゃー。」

 

サングラスをかけた金髪のツンツン頭がしゃべる。

 

一方通行「チッ・・・なンだ?」

 

???「あなたが引き起こした一連の騒動。並びに学園都市が被った損害についてのご相談をと思いまして。」

 

一方通行「俺を滅多切りにして研究材料にでもすンのかァ?」

 

???「それも道の一つですが・・・・・」

 

一方通行「あァ・・・?」

 

一方通行は男の含みのある話し方に疑問を覚える。

 

???「我々と行動を共にする気はありませんか?」

 

一方通行には男の言っている事の意味が分からなかった。コイツは責任を取らせに来たハズなのになぜか一緒に来いと言い出した。自分を学園都市側に引き入れる。ということは・・・・

 

一方通行「学園都市は戦争でも始めるつもりかァ?」

 

???「お答えできません。」

 

一方通行「そォかい・・・・・俺が言うべきことは一つでだけだァ。・・・ふざけンじゃねェよ。」ニィッ

 

???「学園都市はここが正念場です。我々はこれに抗いたいし、あなたには協力してほしい。あなたが帰ってきた今、この学園都市が消えれば我々能力者の居場所はあるのか、またそのほかの技術においても同様です。」

 

一方通行「関係ねェ。俺には帰るべきところが別にある。」

 

???「打ち止めや妹達はどうすんのさ?」

 

赤髪の女がしゃべる。

 

一方通行「俺がいた場所に連れていく。打ち止めさえいなけりゃ、妹達は悪用されることはない。」

 

???「でも、また造られることだって・・・」

 

一方通行「その辺はあのガキの親御さン方が何とかしてるだろォしなァ。・・・それに。」

 

???「それに?」

 

一方通行「あのクソヒーローがいりゃァ学園都市は妹達に手は出せねェよ。」

 

???「クソヒーローとはどなたの事ですか?」

 

一方通行「どォでもいいだろォ、ンなこと。とりあえず他あたれ。」スタスタ

 

一方通行は三人を押しのけ、階段を下ろうとする。

 

???「第十九学区、沙理沢、赤い服を着た少女。」

 

一方通行「・・・」ピタ

 

一方通行は足を止めた。この男たちはフランの居場所と何かを知っている。

 

一方通行「知っていることをすべて話せ。」ピッ キュイイイイイイイイン!!

 

???「怖いにゃー、いきなりスイッチ入れないでほしいにゃー。」

 

一方通行「さっさとはけ。じゃねェと殺す。」

 

???「残念ながら我々もこれぐらいしか知りません。ですが、学園都市から沙理沢という女の処分を命令されています。そこであなたが探している女の子の情報を手に入れました。どうです?協力する気はありませんか?」

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・今回・・・今回限りだ。後、一つだけ教えろ。」

 

???「何でしょう。」

 

一方通行「今回の首謀者の名前だ。あのガキどもをこンな目に合わせた人間の首を切り落とす。」

 

???「構いませんが・・・どうせスケープゴートですよ。」

 

一方通行「フッ・・・なるほどォ・・・・・・」

 

???「で、協力していただけるということでよろしいでしょうか?」

 

一方通行「・・・・好きにしろォ。」ニヤ

 

???「よい返事です。どうぞよろしく、一方通行。」

 

???「じゃあ早速自己紹介と行くか。」

 

金髪の男がそう言って一方通行に近づいてきた。

 

土御門「土御門元春だ、よろしく。」

 

赤髪の女は土御門に続いて名を名乗り始めた。

 

結標「結標淡希よ、座標移動(ムーブポイント)のLEVEL4よ。よろしく。」

 

土御門「ちなみに結標はおっぱいが魅力なショタコン女~」

 

結標「だだだ、誰がショタコンよ!!」

 

???「はいはい、そこまでにしましょう。土御門、あなたも変態でしょう。」

 

土御門「変態とはなんだ変態とは!俺はただ妹を愛してる優しい優しいお兄ちゃんなんだぞ!!」

 

一方通行(なンだァ・・・?コイツ等はァ・・・・・)

 

海原「ほら、一方通行も呆れてますよ。・・・おっと私は海原光貴です。まぁ、顔も名前も偽物ですが。」

 

一方通行「・・・・・・これが学園都市の『暗部』ってことか。」

 

海原「そう、これが学園都市の暗部の一つ。『グループ』です。」

 

土御門「そして、一時的だが、オマエも仲間だ。」

 

一方通行「・・・・・クソッタレが。」

 

結標「おまけに私たち『グループ』は学園都市のために作られた組織だけど、私たちは少し違ってね。」

 

土御門「ルールに従ってるだけじゃ上を出し抜けない。普通の方法じゃダメってことさ。」

 

一方通行「まさかオマエ等・・・!学園都市を出し抜く気か?」

 

海原「表向きは従順にふるまっておきながら裏で統括理事会勢力をひっくり返すだけの材料を集めるということです。」

 

土御門「上にとってお前はよほど大事な物らしいからな。今回限りだが・・・手を結ぼうぜ、一方通行。」

 

結標「これは学園都市のグループとしてじゃない。あたしたち三人のグループと手を組まない?って話。」

 

一方通行「面白れェ。つまりあのガキを救うことで学園都市に泡ァ吹かせられるってことだな?ただし、オマエ等が足を引っ張れば容赦なく切り捨てる。」

 

土御門「フッ、威勢のいい小僧だ。正確には沙理沢を処分し、『アリス』という子供をこっちの手に入れればいいってことさ。」

 

海原「そうすればアリスを材料にいろいろできますからね。」

 

土御門「そろそろいくぞ。ついてこい、そろそろ上の連中に反撃しようぜ。」スタスタ

 

土御門に続いて海原、結標が階段を下りていく。

 

一方通行「フッ・・・・・」ニヤリ

 

一方通行は顔に笑いを浮かべると思った。

 

一方通行(楽しいねェ・・・・目的があるっていうのはァ・・・・・・本当に楽しィ。)スタスタ

 

一方通行は協力者ができたことによりフランを救いやすくなったことに正直うれしく思い、土御門たちに続いて闇へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二時間前----

 

美琴「ハァ・・・ハァ・・・うぅ!」ズキン!

 

美琴はフランを探していた。足を撃たれたせいでまともに歩けず苦労していたが、血を流しながら探し続けていた。

 

美琴(闇雲に探しててもダメね・・・・手当てもしなきゃいけないし・・・・・・そうだ!)

 

美琴は風紀委員の詰め所に向かうことにした。初春飾利なら、きっと調べられるだろう。

彼女は痛む足を引きずりながら歩き出した。

そして橋の上に到達するとふと光の翼の方向を見た。

 

美琴「翼が・・・・消えてく・・・・・・!」

 

つまり上条当麻はヒューズ・カザキリを止めることに成功したのだ。

 

美琴(アイツ・・・・ホントにやっちゃったのね////・・・って何うれしくなっちゃってんのよあたし!別にアイツが何しようがあたしには・・・・・)ブンブン

 

黒子「お姉様!!」ダダダ

 

美琴「黒子!?」

 

橋の向こう側から突然黒子が猛ダッシュで近づいてきた。

 

黒子「あぁ!!麗しきお姉様!よくぞご無事で!!」ギュー

 

美琴「アンタも無事でよかったわ。ファミレスの時に気絶してから会ってなかったものね。」

 

黒子は美琴の全身を舐め回すように見る。そしてその視線は美琴の右足へ・・・

 

黒子「お姉様!?右足から血が・・・!」

 

美琴「ファミレスの時にちょっとね・・・でも大丈夫よ。」

 

黒子「とても大丈夫と呼べる傷ではありませんわ!!とりあえず、詰め所に行って手当てを・・・!」

 

美琴「ちょうどあたしも行こうと思ってたのよ。初春に頼みたいことがあってね。」

 

黒子「初春に?そういえばフランさんはどこですの?」

 

美琴「アンタが寝てる間に連れ去られたわ。あたしが一人にしちゃったから・・・・・」

 

黒子「・・・・事情は道中お伺いいたしますわ。とりあえず乗ってくださいまし。」スッ

 

美琴「アンタあたしより小さいのにきつくない?」

 

黒子「お姉様のためならこのくらい・・・・」

 

美琴「・・・・・肩貸してちょうだい。それで十分よ。」

 

黒子「わかりましたわ。」スッ

 

黒子は美琴に肩を貸すと柵川中学校風紀委員活動第一七七支部へと向かった。

 

美琴「でも、また第七学区に戻ることになるとはね・・・」

 

黒子「骨折り損のくたびれ儲けってやつですわね。」

 

美琴「ホントよ・・・全く。」

 

その後、美琴は今まであった出来事を黒子に事細かに伝えながら歩いていた。そうこうしているうちに柵川中学校に到着した。

 

黒子「お姉様、頑張ってくださいまし!もうすぐ詰め所に着きますわ!」

 

美琴「悪いわね・・・・」

 

美琴たちは階段を上り、風紀委員詰め所に到着した。

 

黒子「初春、いらっしゃいますか?」ガチャ

 

初春「あっ、白井さん。それに御坂さんも・・・」

 

黒子「どうかしましたか?なんだか眠そうなお顔をしてらっしゃるけれど。」

 

初春「はい、なんだかさっきまで気を失っていたようでして・・・・」

 

美琴(先の事件の影響かしら・・・・・)

 

初春飾利。風紀委員『ジャッジメント』第一七七支部に所属する、黒子のバックアップ担当。

「歩く花瓶」のような髪飾りに、甘ったるい声とのんびりした性格。

風紀委員として、身体能力は決して高くはないが、

意思の強さと集中力、観察力は高く、特に情報処理を得意としている。

美琴はその情報処理能力に目を付け、協力を仰ぎに来たのだ。

 

初春「・・・・・えぇ!?御坂さんその傷は!?ていうか流血してるじゃないですか!?」

 

美琴「あたしのことはいいの。それより、初春さんに頼みがあって・・・・」

 

初春「そんなことより手当ですよ!!白井さん!救急箱!!」

 

美琴「お願い!!話を聞いて!!」

 

黒子「お姉様の応急処置は私が行いますわ。初春はお姉様のお願いを聞いてあげてくださいまし。」

 

初春「お願い・・・?」

 

美琴は初春に今回起こった事件の事と、それに巻き込まれたフランの存在をすべて話した。

 

初春「・・・・・・わかりました。協力しましょう。とりあえず、学園都市中の監視カメラの映像を洗ってみます。」

 

美琴「結構っていうかとてつもない数あると思うんだけど大丈夫?」

 

黒子「問題ありませんわ。初春は情報処理関係はプロ以上ですもの。」

 

初春は第七学区から監視カメラの映像を人間離れした速さで確認を始めた。

そして、五分くらいたった後、初春は驚くべき人物を発見した。

 

初春「・・・・・・この人って!?」カタカタ

 

美琴「どうしたの?」

 

初春「いえ、死んだとされていた第一位が第七学区を歩いてるんですけど・・・・」

 

美琴「あぁ、話していなかったわね。一方通行もフランと一緒に来たのよ。」

 

初春「ってことは第一位は今まで異世界にいたってことですか!?!?」

 

美琴「まあ、そうなるわね。」

 

初春は起きてから信じられないことが身の回りで起きすぎて混乱していた。が、キーボードを叩く手を止めない辺り流石といったところである。

 

黒子「第一位様もあの子を探しているのでは?」

 

美琴「その可能性も高いわね・・・・・」

 

初春「監視カメラの音声拾ってみます。」カタカタ

 

初春のその声に手当て途中だった二人は画面に詰め寄る。

 

ジィィィィィィ・・・・・・・

 

「で?あのガキの居場所は正確にわかってンのか?」

 

「そこまではわからん。が、向こうは必ずお前に接触してくるだろう。」

 

「どういうことだ?」

 

「今回沙理沢は学園都市を裏切り、『アリスシステム』を民間企業に売るつもりでしょう。」

 

「そのことにあのガキはどォ関係がある?」

 

「おそらく何らかの実験材料にするか、一方通行、あなたを脅迫する材料にするつもりでしょうね。」

 

「人質ってことか・・・・だが、何故俺を脅迫すると踏ンだ?メリットはあンのか?ンなことわかンねェだろォが。」

 

「あなたが学園都市に帰ってきたからです。死んだとされていたあなたにここでの居場所はありますか?当然居場所がなければ様々な所から狙われる。おそらく沙理沢はあなたに学園都市側から守ってもらうことを条件に女の子の命を保証するつもりだろうと考えました。」

 

「あ~もぉ~!どうでもいいから早く『第十九学区』へ行きましょうよ!行けば何かしらわかるでしょ!」

 

「いえ、一旦アジトに戻れとの命令です。」

 

「チッ・・・・」

 

「戻るしかないか~。」

 

「・・・・・断る。」

 

「ん?」

 

「今すぐいかねェなら俺は勝手に行くぞ。」

 

「上からの命令だ。仮にもグループの一員なんだから従ってもらう。」

 

「なら、さっきの話は無しだ。俺は単独で動く。」

 

「・・・・行かせてあげましょう。」

 

「海原!?」

 

「なんで!!」

 

「上からの命令です。一方通行には自由に動いてもらって構わないと。」

 

「上は何をかんがえてるんだ!!」

 

「そういうことだ。俺は行くぞ」スタスタ

 

「待て!一方通行!!」

 

ブツッ・・・・・

 

黒子「第十九学区とおっしゃってましたわね・・・・」

 

初春「グループって・・・暗部じゃ・・・・・」

 

音声を聞いて詰め所は沈黙に包まれていたが、それが終わるとそれぞれ思ったことが口から漏れていた。

 

美琴「今は暗部とかは良いわ。とりあえず第十九学区。そこにフランはいるハズね。」

 

初春「第十九学区の過去の監視カメラを確認しておきます。」カタカタ

 

美琴「ありがと、初春さん。」

 

黒子「よし、もう立っていいですわよ。」

 

黒子は美琴の手当てを終えた。美琴の傷は深かったが何とか動けるまでになった。

 

美琴「結構動けるものね。」フリフリ

 

黒子「あまり足を振らないほうが良いかと・・・・・」

 

初春は美琴たちのやり取りをよそに第十九学区を調べていた。

 

初春「!これを見てください。」

 

美琴・黒子「・・・・!」

 

その部屋にいたもの全員が凍り付いた。

 

 

 

 

ハァ・・・ハァ・・・

 

結標「クソッ!こうなったら・・・!」スッ

 

土御門「オイ!!」グイッ

 

物陰から飛び出そうとした結標を慌てて土御門が引き戻す。

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!

 

海原「落ち着いてください。今のは危なかったですよ。」

 

結標「あんなの私一人で始末出来るわよ!」

 

土御門「無理だな。全員を同時に倒すことができなきゃ、蜂の巣だ。」

 

結標「じゃあどうすんのよ!?」

 

海原「逃げる。・・・しかありませんね。」ダッ

 

海原に続いて二人も走り出す。一方通行を除いた三人は命令によりグループのアジトへ戻っていた。報告を済ませ、作戦を立てていた所に突然踏み入ってきた多数の部隊によって襲撃された。

奇襲による混乱もあるが、なにより・・・・・

 

結標「数が多すぎる・・・・・!」ダダダ

 

土御門「クソッ!!どこから情報が漏れたんだ・・・?」ダダダ

 

 

 

 

???「あなたの言ったとおりだったわね・・・・・・。」

 

「俺が嘘を言うと思ったか?」

 

???「少しね・・・・ごめんなさい。」

 

「だがこれで俺が味方だということは証明できた。」

 

???「ええ、そうね・・・。あなたはこれで私たち『家族』の一員よ。」

 

「オマエ等を守ってアリスシステムを完成させれば人間の心を操り、妹達を守る盾にできる・・・だったか?」

 

???「ええ、私たちはあなたに守ってほしい。あなたは妹達を守りたい・・・利害の一致ってやつよ。

だけど、さっきも言ったように利害だけの関係じゃないわ。私たちは家族・・・・この仕事が終わった後も一緒よ。」

 

男「沙理沢様!外に不審な人物が!」

 

沙理沢「・・・・・・またアイツ・・・!」

 

「誰だ?コイツは?」

 

沙理沢「『アリス』を捨てた張本人。父親よ・・・・」

 

ガラン「どうしますか?」

 

沙理沢「部隊に任せなさい。あの男を追い払ってちょうだい。」

 

「・・・・・いや、俺が行こう。」

 

沙理沢「あなたが出るほどの事じゃないわ。」

 

「俺たちは家族なンだろ?だったら任せろ。」コツコツ・・・

 

沙理沢「ありがとう・・・。信用してるわ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     一方通行。」




最後までご覧いただきありがとうございました!

更新が遅くて申し訳ありません。
何とか頑張りなす。

次回 第十九話 守るものがある

                        次回もお楽しみに!!


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第十九話 守るものがある

遅くなり申し訳ございません!!
失踪されたと思われる方も少なくないと思います。
どうしても年末年始は忙しくて編集作業が滞ってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。

今回は長編になります。まぁ、本章のクライマックスというやつです。
沙理沢たちの元へ入った一方通行はどうなってしまうのか。
科学と妖怪が交差するとき、物語は始まる。

さぁ、本編スタートです!!


一方通行「俺達は家族なンだろォが。・・・なら俺に任せろ。」コツコツ

 

一方通行はグループを裏切った。フランを奪ったハズの敵に協力者を売ってまで味方についた。

 

一方通行「あァ・・・そォだ。今回、アリスシステムを売りつけるクライアントの名前を教えてくれ。」

 

沙理沢「どうしてそんなことを聞くの?」

 

一方通行「単に興味が湧いただけだ。家族なら隠し事はナシにしよォぜ。」

 

沙理沢「パープル社、それが今回のクライアントの名よ。」

 

一方通行「そォか、ありがとよ。」コツコツ

 

一方通行は杖を突いてビルの外へ向かった。

 

ガラン「意外とこちらに協力的ですね。あの子供を奪ったことは知っているのか疑わしいくらいに・・・」

 

沙理沢「もしかしたら本当に知らないのかもしれないわね。最終信号が攫われたことを知った一方通行は激昴してたそうよ。ましてあの子は妹達より大事な存在みたいだし・・・・。知ってたらすぐに殺しにくるわよ。」

 

ガラン「しかし上手いこと利用できましたね。妹達を守る肉の壁を作る・・・よくこんな嘘を信じましたよね。それに何故あの子供のことを伏せているのですか?」

 

沙理沢「できるだけ信用してもらうためよ。そうすれば一方通行を扱いやすいでしょ。」

 

一方通行(チッ・・・・やはり嘘だったか。)コツコツ

 

一方通行は沙理沢の部屋に盗聴器を仕掛け、彼女らの会話を聞いていた。

 

一方通行(ヤツらのことは信用してなかったがあのガキ・・・フランがここにいることはわかった。後はうまく謙ってあのガキの居場所を割り出すか・・・・・・)

 

「ん?なんだ?」カチッ

 

一方通行(!マズイ、気づかれたか・・・!)

 

「どうしたの?ガラン。」

 

「いえ、何も・・・ただのゴミでした。」バキッ

 

ジィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・

 

一方通行(・・・・クソッタレ、盗聴器が壊されちまったか。しかし何故アイツは、このことを沙理沢に伝えなかった?・・・まぁいい。)カパッ

 

一方通行は携帯電話を取り出すと連絡先のリストを開き、電話をかけた。

 

プルルルル・・・・プルルルル・・・・ガチャッ!

 

「裏切りは俺の専売特許のハズだが?」

 

一方通行「だが、そォしたおかげでここに入り込むことができた。それにヤツらのクライアントの名前を突き止めた。」

 

「・・・・・誰だ?」

 

一方通行「個人じゃない、企業だ。パープル社とか言ってた。」

 

「パープル社だと・・・!?」

 

一方通行「知ってるのか?」

 

「表向きは世界最先端の技術を開発、生産、販売を行う会社だが、裏ではその技術を利用した武器や生物兵器を生産して売ってるような奴らだ。教えろ・・・一体沙理沢たちは何を売ろうとしてる?」

 

一方通行「『アリスシステム』。心理系能力者のガキをシステムに組み込み、相手の意識に介入し、精神や感覚を操作できるよォになるらしい。沙理沢は学園都市を裏切り、これを作って売るつもりだ。」

 

「金に目がくらんだってやつか・・・・」

 

一方通行「パープル社についてはまだ上に報告するな。」

 

「何故だ?」

 

一方通行「俺がスパイしてるということがバレた。下手すりゃヤツらはアリスシステムを使って学園都市を操り、テロを起こすだろう。」

 

「わかった、あの子供は?」

 

一方通行「機をうかがって取り戻す。後、ヤツらからアリスの父親の排除を命じられた。」

 

「アリスの父親だと?学園都市の外にいるハズじゃ・・・!」

 

一方通行「非合法な手を使って入ってきたンだろ。大体想像がつく。」

 

「わかった、バックアップは任せろ。」

 

一方通行「土御門、物資搬入路を抑えるのを忘れンなよ。・・・・・そろそろ外に出る。」

 

「気をつけろよ、あの子を人質にとられたらお前は動けない。」

 

一方通行「わかった、切るぞ。」プツッ

 

一方通行は廃ビルの外へ出てアリスの父親の元へ向かった。

 

一方通行「オイ、こンな所でナニしてやがる。殺されてェのか?」

 

アリス父「ッ!!誰だ君は!?」カチャッ

 

アリスの父親は拳銃を構え、一方通行へその銃口を向ける。

 

一方通行「拳銃か・・・それはどこで手に入れた?」

 

アリス父「は、ははっ、これか?こんなの非合法な方法で手に入れたに決まってるだろ。アリスを取り戻すためならこのぐらいやるさ。」

 

一方通行「アリスを取り戻すだァ?沙理沢のヤツはオマエがアリスを捨てたって言ってたぞ。」

 

アリス父「私が娘を捨てるわけがないだろう!!あの子はやつらに奪われたんだ!あの子たちの病気が治るかもしれないってな!!」

 

一方通行「病気?あの子たち?」

 

アリス父「アリスの母親もアリスと同じ病気を患っていてな、遺伝的な病気だ。次第に筋肉が動かなくなっていき、終いには横隔膜すらも麻痺して死んでしまうんだ。」

 

一方通行「そこで学園都市側からその病気が治るかもしれねェから研究材料として寄こせと。」

 

アリス父「その通りだ。しかし、やつらが欲しがったのはアリスの方だった。アリスの方が体力があるからとのことだった。・・・だが、本当の目的は違った。」

 

一方通行「能力・・・か。」

 

アリス父「そう、アリスには生まれつき能力があった。だからやつらはそれを利用して何かをするためにあえてアリスを選んだんだろ。」

 

一方通行「沙理沢たちはアリスをシステムに組み込み、パープル社に売り飛ばすつもりだ。」

 

アリス父「パープル社だと!?」

 

一方通行「知ってるのか?」

 

アリス父「私もパープル社の社員だった。最も広報課の下っ端だったがね。」

 

一方通行「・・・・・・・・・・」

 

アリス父「その頃の私は若くてね、真実というものに取りつかれてしまい、上層部のデータベースにハッキングして情報を仕入れた。知ってると思うがパープル社は表向、健全な技術開発会社だが裏向きは兵器等危険なものを作っている会社だ。当然このことがバレてクビになった。」

 

一方通行「クビで済んでよかったな。普通なら口封じで殺されてたぞ。今回だって同じだ、すぐに殺されるぞ。娘ってのは無謀なことまでして救いたいものなのかァ?」

 

アリス父「当たり前だろ!!どんなに離れていようと、二度と会えなかろうと、私達は家族なんだ!!!」

 

アリス父は再び声を荒げたがすぐに激情を抑え込み、拳銃に手をかける。

 

アリス父「もういいかね?事情は話した。邪魔するというのなら君が子供でも撃つ。」カチャッ

 

アリスの父親は一方通行に再び銃口を向ける。しかし、その手は震えていた。

膠着状態が続いていると廃ビルの中から自動小銃を持った部隊が多数出てきた。

 

一方通行(チッ・・・俺ごと殲滅する気か!!)

 

兵士たちは銃を構えると一方通行達に発砲した。

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!

 

アリス父「ヒィッ!!ヒィィィィィィィィ!!」ダダダ

 

一方通行「オイ待てェ!!・・・・・チィッ!」ピッ キュイイイイイイイン!!

 

一方通行はスイッチを入れ、敵の前に出て行った。

そして弾丸を全て反射し、兵士を一人残らず始末する。

 

一方通行「・・・余計な手間かけさせやがって。あのクソ親父を見失っちまったじゃねェか。」コツコツ

 

一方通行は沙理沢とアリス父、そして黄泉川の『家族』という言葉を思い出した。

 

沙理沢(あなたは私達の家族なのよ。)

 

アリス父(当たり前だろ!!どんなに離れていようと、二度と会えなかろうと、私達は家族なんだ!!!)

 

黄泉川(この子は私の大切な娘・・・家族じゃんよ。)

 

一方通行「チッ・・・家族かよ・・・・・。」

 

一方通行には家族と呼べる人間はいない。血縁関係上、親と呼べる人間はこの世界のどこかにいるのかもしれない。しかし、親と呼ばれるはずの人間はとうの昔に一方通行を捨てている。もう赤の他人である。

しかし、一方通行は幻想郷に飛ばされ、短期間ながらも紅魔館の者たちと過ごし、どこか居心地の良さを感じていた。学園都市にいたころは最強の能力と最高の頭脳を持っている限り、食べていくのには困らなかったし、実験にも素直に参加していたし、もともと一人の方が好きだった。

だが、そんな彼にも最近人といてよかったなと思えることがあったのだ。

 

「こうしてみんなでご飯食べていると、なんだかみんな家族も同然だとおもうの!」

 

「ハァ?いきなりナニ言ってンだオマエは。ついに脳がイかれたかァ?」

 

「なんなの!?その態度~!!」ムスッ

 

「食うかしゃべるか死ぬかどれかにしろォ。さっきからオマエの口から飛ンできたもンが服や飯にかかってンだ。」

 

「そこでさらに追い打ちかける!?普通!!」

 

「まぁまぁ、それにしてもお二人は本当に仲がよろしいですねぇ。」フフ

 

「オマエは目が腐ってンのか?美鈴。」

 

「こんな面白い光景が見られるなら腐ってたって本望のはずよ。ねぇ美鈴?」

 

「そうですとも。」

 

「ガキのくせして酒なンぞかっ喰らいやがって・・・・。」

 

「夜なのだからいいじゃない。それに私は500歳よ、子供扱いしないでほしいわね。今日は固いこと言いっこ無しでいきましょう。」ゴクゴク

 

「・・・つーかレミリアのヤツ、飲みすぎじゃねェのかァ・・・・・・?」

 

レミリアは珍しく羽目を外している。その証拠に大量のワインを飲み、彼女の頬は紅潮し誰が見ても酔っている。

 

「ねぇねぇねぇねぇ!フラン達は家族も同然だよね??」

 

「必死こいて味方を作ろォとしてンじゃねェよ・・・・。」

 

フランは食卓から立ち上がり、咲夜へ詰め寄る。

 

「そうですわね・・・。家族というものをどう定義するかにもよりますけど、そういっても間違いないかもしれないですわね。」

 

「わっは~い!!!!やっぱり!?やっぱりそうだよね!!」ピョーン

 

「いちいちガキの戯言に付き合わなくていいンだぞ、咲夜。」

 

「あなたは黙ってて!!」プンスカ!

 

フランは数の力を利用して一方通行に対して強気な姿勢を見せるが、それは彼を怒らせるだけだ。

 

「こンの・・・クソガキィ・・・・・・!」ゴゴゴ

 

「も、もしフラン達が家族だったら、どんな家族構成になるのかな??」アタフタ

 

フランは一方通行の機嫌が悪くなっているのを察し、慌てて話題を変えてみる。

そしてフランの問いかけに一番早く反応したのはパチュリーだった。

 

「そうね・・・・まず私が一番上の姉だとして、レミィは次女。」

 

「何でよ!?私が当主なのだから私が一番上のハズよ!!」ガタッ!

 

「そして、美鈴がお父さんで、咲夜がお母さん。」

 

「ちょっと!無視しないでくれるかしら!!」

 

「三女が小悪魔。」

 

「わ、わたしですか?」

 

「不満かしら?」

 

「いえ、そんなことはありますん!むしろ家族としてみていただけているなんて・・・・・。」

 

小悪魔は心から嬉しそうな顔をする。その一方、レミリアは羽を閉じていじけている。

 

「そして小悪魔の次はフランで、一番末っ子の問題児が一方通行。」

 

「いぇーい!!」ガタッ!!

 

フランは一方通行より上の地位を確保できたことに全身で惜しみなく喜びを表現する。

 

「俺がそのガキより下だと?」

 

「あら、妥当な順番じゃない。」フフ

 

レミリアは自分の立場がパチュリーより下だったことへの腹いせに一方通行を煽る。

 

「ねぇ~」

 

「ねぇ~」

 

そして吸血鬼姉妹は顔を見合わせた後、ドヤ顔で一方通行を見下ろす。

 

「いい度胸してンじゃねェかオマエラ・・・・あァ?」ゴゴゴゴゴ・・・

 

一方通行の睨みにひるむことなくフランは続ける。

 

「何か悩みがあるなら、いつでもお姉さんに打ち明けてくれていいんだよ?」フフン

 

「ふざけてンじゃねェぞこのクソガキがァ・・・・。」

 

「このお姉さんの胸に、どーんって飛び込んできなさい!」バッ!

 

フランは両手を大きく広げ、薄い胸を精一杯張ってみる。

 

「オマエの貧弱な胸なンかに飛び込ンでいったら、肋骨全部砕けンぞ。」

 

「どんだけの勢いで飛び込むつもりなの!?」

 

フランは驚愕したような表情を作り、一方通行からじりじりと離れていく。

 

「ハァ・・・・。なンだよこりゃァ、どンなままごとだよ・・・・・・バカバカしい。」

 

「えぇ~、つれなぁ~い。」

 

フランは食卓に向きなおろうとする一方通行の背中に愚痴を吐きかける。

 

「ままごとでいいじゃないの。」

 

急にレミリアが理性を取り戻したかのように大人げたセリフを吐く。

 

「バカバカしくたって、誰かに迷惑かけてるわけじゃないし・・・・・。」

 

「俺の精神的平穏には迷惑をかけられてる。」

 

一方通行は相変わらずふてぶてしい態度をとるが構わずレミリアは続ける。

 

「例え一瞬でも、その時に光り輝くような思い出が作れればそれだけで人は生きていけたりするわよ。」

 

「あァ?」

 

「家族っていう定義は人によってそれぞれ異なるだろうけど、そこに居る人達が家族って認めればそれはもう家族なのよ。」

 

レミリアはさらに顔をほころばせる。

 

「そして私は一緒に食事して、一緒に寝起きしているあなた達をもう家族って認めてる。」

 

「・・・・・・言ってろ。」

 

「時にはうっとおしかったり、時には邪魔くさかったりするかもしれないけど、ここはいつでも帰ってきていい場所なのよ。この先何があるかわからないけどそれだけは忘れないでいてちょうだいね。・・・・一方通行。」

 

「・・・・・あァ、そォかよ。」

 

「・・・・なんてね、お酒が入ったせいで饒舌になっちゃったわ。フフフフフフ・・・・・・。」

 

「はンッ・・・・・。」

 

すると一方通行の横で大人しくしていたフランが一方通行の腕に小さな手を置く。

 

「あのね、あのね、あくせられーた!」

 

そして控えめに彼の服の袖を引っ張る。

 

「・・・・・なンだァ?」

 

「フランもあくせられーたのことを家族だと思ってる。家族っていうのは一緒にいたいことの言い訳なのかもしれないけど・・・それでもフランはあなたと一緒にいたいし、離れ離れになったとしてもあなたが来てくれるのをずっと待ってる。それだけは忘れないでほしいな。」

 

フランはレミリアと同じようなことを言いながら、本心を一方通行へ伝える。

 

「・・・あァ・・・そォかよ・・・・・・・・・。」

 

一方通行は先ほどのレミリアへの返答とは違い、その声色に棘が無くなっていた。

フランのその言葉は誰よりも一方通行の心に響く。

 

「うん!そうなんだよ!」エヘヘ

 

プルルルル・・・・プルルルル・・・・

 

唐突に鳴り響いたその音によって一方通行の意識は現実へと引き戻される。

 

一方通行(なンだァ・・・?土御門か。)ピッ

 

「一方通行!とんでもないことになった!!」

 

一方通行「どォした?今忙しいンだが。」ダダダ

 

「もうすぐ、そこが爆撃される。」

 

一方通行「ンだとォ!?ここの制圧は俺らの仕事だろ。・・・まさか土御門ォテメェ、クライアントの名前を・・・!」ダダダ

 

「言われた通りまだ話していない。学園都市はおそらくそこまで突き止めたんだろう。奴ら、万が一にも『アリスアバター』が外部へ漏れないようにするためにつぶす気だろうな。」

 

一方通行「クソがァ、ここにはあのガキもいるンだぞ。」ダダダ

 

「あ~、もしもし?いいニュースと悪いニュースがありますが・・・どっちから聞きたいですか?」

 

一方通行「テメェ海原ァ!いきなり回線に割り込ンできやがってェ!」ダダダ

 

「いいニュースってのから聞こうか。」

 

「この廃ビルの爆撃予定時刻が遅れることになりました。」

 

一方通行「予定時刻を遅らせるだァ?そンなことしてヤツらにメリットがあンのか?」ダダダ

 

「その理由が悪いニュースです。その廃ビルに第三位、御坂美琴嬢が侵入しました。」

 

「なぜ超電磁砲が動く?情報が漏れたのか?まさか、どこかから雇われたとか・・・・・」

 

「御坂さんに限ってそのようなことはないでしょう。」

 

一方通行「どっちでもいい。アリスを助けに来たンなら好きにさせておく。だが、あのガキの害になるってンなら・・・・容赦はしねェ。」タッタッタッ

 

「おい!一方通k ブツッ!

 

一方通行(なンとなくだが爆撃を遅らせた理由が分かった。学園都市は超電磁砲を失いたくねェンだろォ。何故なら、外部からの敵が攻めてきているこの状況で、LEVEL5の第三位を失うことは大きな痛手になる。だが、この状況はむしろ好都合だ。あのガキを取り戻し、アリスとかいうガキも助ける。バッテリーはもォそンなにもたねェだろ。戦闘モードはあと60秒ってとこか。・・・・急がねェと。)ダダダ

 

一方通行はアリスの父親が入っていったと思われる中央制御室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

黒子「お姉様、無事に侵入できましたわね。」

 

美琴「えぇ、あんたの能力ってこういう時に助かるわ。」

 

黒子「それはそれはどういたしましてですの。・・・一人で行くなんておっしゃられた時などこの黒子、肝を冷やしましたわ。」

 

美琴「危ない現場についていかせるわけにはいかないでしょ?」

 

美琴と黒子は廃ビルの地下に侵入していた。初春のバックアップもあり、比較的早くこのビルを見つけ出すことができた。

 

美琴「黒子、わかってるわね。」

 

黒子「えぇ、お姉様の電撃でここの機材を破壊しながら進み、フランさんを助け出す。でしたわね?」

 

美琴「そうよ、だけど初春によるとここのやつらは他にも何かしようとしてるらしいわ。敵の迎撃もあるかもしれない。万が一、あたしが足手まといになるようなことがあればフランを連れてテレポートで逃げなさい。」

 

黒子「でも、お姉様は・・・?」

 

美琴「あたしは大丈夫。仮にも学園都市第三位なんだから!」

 

黒子「・・・・わかりました。」

 

美琴と黒子は地下研究所らしき部屋に到着した。そこには女が一人、男が一人いた。

そして部屋の中央に巨大な試験管のようなガラス容器があった。そしてその中には・・・・

 

黒子「女の子・・・?」

 

美琴「フラン・・・なの?」

 

美琴たちは試験管の中にいる少女がフランであるかどうか確かめようと接近する。

 

ガチャン!!

 

美琴「しまっ・・!!」

 

沙理沢「誰!?」クルッ

 

美琴は机の上にあったビーカーをうっかり落としてしまった。

そしてバレてしまったことで隠れても無駄だということを悟った美琴たちは堂々と沙理沢の前に姿を現した。

 

沙理沢「あなた達・・・誰?」

 

美琴「学園都市の超能力者第三位、超電磁砲。御坂美琴よ。」

 

黒子「白井黒子、ジャッジメントですの!!」

 

男「こんなところにガキがなんの用だ!?」

 

沙理沢「第三位はともかく風紀委員・・・?まさか、計画がバレて・・・!」

 

黒子「計画?なんのことですの?私達はフランさんを取り戻しに来ただけですわ。さあ、返していただきましょうか!!」

 

沙理沢(計画はバレていない・・・・確か、木原の部隊があの子を攫うとき第三位と交戦したって・・・

つまり、風紀委員や警備員は動いていない。・・・・単独ね。)

 

美琴「一つ聞くわ、この試験管に浮かんでる子はフランなの?」

 

沙理沢「違うわ、その子はアリス。親に捨てられた子よ。あの赤い服着た子は上にいるわ。」

 

美琴「そのアリスって子になにをしているの?」

 

沙理沢「答える義理はないのだけれど・・・・・」

 

美琴「いいから答えなさい!!」

 

美琴は心中穏やかではなかった。何故なら試験管に浮かんでいる少女は彼女のクローン、妹達を思い出し、さらに絶対能力進化計画を思い出させるからだ。

 

沙理沢「いいわ、答えてあげる。この子には生まれつき能力があってね。」スッ

 

沙理沢は試験管を愛しむように撫でる。

 

沙理沢「心理操作系の能力、それを能力者本人をシステムに組み込むことによって利用する。」

 

黒子「何故そんなことをするんですの?」

 

沙理沢「この子は親に捨てられた価値のない子よ。そんな子に新しい価値を与える、それが私の使命。」

 

美琴「価値のない子ですって・・・!?」

 

沙理沢「そうよ、価値がないと判断されたから親に捨てられた。違うことはないでしょ?」

 

黒子「人間に価値の無い者などいませんわ!ましてそれを決めつける権利も人間にはないはずです!!」

 

沙理沢「子供に言っても仕方ないでしょうね・・・・。」ピッ

 

そう言って沙理沢はポケットから取り出したスイッチを押した。

 

美琴「何をしたの!?」

 

沙理沢「傭兵部隊を呼び寄せたのよ。あなたには勝てなくとも時間稼ぎにはなるでしょ?」

 

黒子「時間稼ぎが何になるというんですの!?」

 

沙理沢はその顔に笑みを浮かべると黒子に答えた。

 

沙理沢「アリスアバターの能力によってあなた達の心を書き換える。それができなくてもこちらには第三位ですら敵わない超能力者がいるからね。」

 

美琴「だれなの?そいつは・・・?」

 

美琴はその超能力者が誰か想像がついてしまった。が、フランの話を聞いて信じたくなかった。

 

沙理沢「学園都市最強の能力者、一方通行(アクセラレータ)。」

 

その名前を聞いて美琴たちの顔はみるみるうちに青ざめていく。

 

美琴「そんな!?だってアイツは・・・!」

 

沙理沢「驚いたかしら?彼は私たちの『家族』になったのよ。」

 

美琴は一方通行に心底失望した。フランを奪った連中の味方に付き、彼女の心からの信頼を裏切ったのだ。

やはり一方通行はどうしようもない悪党だった、と。

一方、黒子は冷静だった。もしかしたら一方通行はフランを内部から救い出すためにスパイ活動をしているのではないかと考えていた。先ほど盗聴した会話から黒子はそうとしか考えられなかった。

 

黒子「お姉様、一方通行はもしかすると・・・「黙ってなさい!!」

 

地下研究室に美琴の怒声が響く。

 

美琴「アンタたちも、一方通行も、みんな倒してフランとアリスを救い出す!!」バチバチ

 

黒子「お姉様、少し冷静に・・・・・・」

 

沙理沢「やれるものならやってみなさい。アリスの価値を奪うなら私は許さない。」

 

もはや黒子の話など誰も聞いていない。そして研究室内に自動小銃を持った兵士たちが突入してきた。

 

沙理沢「やってしまいなさい。」

 

傭兵「ハッ!」カチャッ

 

沙理沢が命令すると傭兵部隊は美琴たちへ銃口を向けた。

 

黒子「考えるのは後ですわね・・・!」チャキッ

 

美琴「早く切り抜けてフランのところへ・・・!」バチバチッ

 

美琴たちの戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

アリス父「はっ・・・はは・・・!案外簡単に侵入できたじゃないか・・・!」ハァハァ

 

アリスの父親は中央制御室へとつながる廊下を歩いていた。もうすぐ娘を奪った者たちに会える。やっと娘を救い出すことができる。ようやく非合法な手段を用いてでも成し遂げたかったことができる。

アリスの父親は恐怖に支配されながらも、ようやく娘の元へたどり着けることに希望を感じていた。

しかし彼は気づいていなかった。ここまでおびき寄せられていたことに・・・・・・

 

ガシャン!ウィィィィィィィィン・・・・・・・

 

アリス父「沙理沢ぁ!娘を返してもらいに来た!!アリスはどこだぁ!!!!」

 

「アリスはここにはいないよ。」

 

アリス父「誰だ!?」

 

暗闇の中から男の声が聞こえた。アリスの父親は声のした方角に振り向き、拳銃を向ける。

 

ガシャン!!!!

 

唐突に中央制御室の照明がつく。

 

ガラン「あなたがアリスの父親かね?」

 

アリス父「そうだ!アリスを返せ!!」

 

ガラン「そうはいかん。彼女は私達の研究素材であり、商品であるのだから。」

 

アリス父「ふざけるな!アリスは貴様らのモルモットなどではない!!私の・・・私たちの家族だ!!」

 

ガラン「家族だと?ハハハハハハハハハハ!!笑わせる。」ガシャン

 

ガランはその身に着用しているパワードスーツの音をたてながらアリス父に歩み寄る。

 

アリス父「う、動くな!!!」ジャキッ

 

アリスの父親とガランの距離は段々と近づいていく。

 

ガラン「どうした?撃たないのか?」

 

アリス父「うるさい!」ガタガタ

 

ガラン「私達を撃つために手に入れたものだろう?」

 

アリス父「うるさい!うるさい!!」ガタガタ

 

ガラン「敵が目の前にいるというのに・・・・ほら、撃てよ・・・。」ピコッ キュイイイイイイイイイイイイイイイイイン

 

アリス父「な、何をした!?」

 

ガラン「アリスシステムを起動させたのだ。組み込む前にもこれくらいなら使える。最も、アリス本体にダメージを与えてしまうから多用はできんがな。」

 

アリス父「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

拳銃の銃口にガランの左胸が当たる。

 

ガラン「・・・残念、時間切れだ。」

 

ドスッ!!という鈍い音とともにアリスの父親は床に崩れ落ちた。

腹部からは鮮血が流れ出ている。

 

ガラン「残念だったな。お前ではアリスを取り戻すことはできなかったようだ。」

 

アリス父「チクショウ・・・・チクショウ・・・・!」ポタッ・・・ポタッ・・・

 

ガランはアリスの父親にとどめを刺そうと横たわる彼に再び近づく。が、ガランは足を止めた。

 

ガシャン!ウィィィィィィィィン・・・・・・・

 

中央制御室の扉を向こうからカツ・・・カツ・・・と音がする。そして向こう側の暗闇の中から一人の少年が現れた。白い髪、白い顔、紅い目。

 

アリス父「き・・・君は・・・!」ググ…

 

「っつたくよォ、なンてザマだよ。このクソ親父。」カツ・・・カツ・・・

 

ガラン「一方通行じゃないですか。今、侵入者を排除するところです。お手数ですが沙理沢様たちも何者かと交戦中です。援護に行っていただけますか?」

 

ガランは先ほどアリスの父親にとった態度とは打って変わった様子で一方通行に話しかける。

 

一方通行「下手な芝居はよせ。全部知ってンだろ。」

 

ガラン「おやおや、せっかく盗聴器の件は目をつむっておいたというのに。恩を仇で返すとはまさにこのことだな。」

 

一方通行「チッ・・・・・」スタスタ

 

一方通行はアリスの父親に近寄ると能力を使い、破れた動脈をつないでいく。

 

アリス父「なんてことだ・・・・・。せっかく学園都市に入れたというのに・・・せっかくアリスを・・・がはっ!・・・・返すことができる・・・というのに・・・・・・。」

 

一方通行「アリスを返すだァ?オマエは父親だろォが。」

 

アリス父「私は父親失格だ・・・・。妻やアリスの病気が治るという一筋の希望にすがりたくなり、愚かにも娘を奪われてしまった・・・・・。学園都市からこの話が来た時・・・妻は反対した・・・。しかし私は妻に内緒で引き渡してしまった・・・・・・・。それから妻とは離婚し、私は・・・それからアリスを取り戻して妻に返すことだけを考えていた・・・・!」

 

一方通行(クソッ・・・!切れた血管が多い。血が止まンねェ・・・!!)

 

アリス父「だが、このザマだ・・・。闇に片足を突っ込み、用意できた学園都市への入口も、非合法な手段を用いて手に入れたこの拳銃も・・・・結局・・・一発も撃てなかった・・・。目の前に敵がいるというのに・・・・!!」

 

アリスの父親は心底悔しそうな顔を浮かべた。自分にはどうすることもできない。無力さに打ちひしがれたような表情だった。

 

一方通行「・・・・・・・・それが正しい人間ってもンだ。」カチャッ

 

一方通行は床に落ちていたアリスの父親の拳銃を拾い上げる。

 

アリス父「一方通行君・・・何を・・・・・?」

 

一方通行「この拳銃は俺が撃つ。・・・・・・・こっからは闇同士の戦いだ。」スッ

 

一方通行はジーンズのポケットに拳銃を仕舞い、ガランに向き合う。

 

一方通行「特別大サービスだ。オマエは俺の能力で殺してやる。」ピッ キュイイイイイイイイイイン!!

 

ガラン「一方通行(アクセラレータ)。学園都市最強の能力者に力を使っていただけるとは光栄だな。だが、ここに来たときからお前はボロボロじゃないか?・・・・そんな状態で私に敵うとでも?」

 

一方通行「オマエごときの三下ァ、すぐに片付けられる。これぐらいのハンデどうってことはねェ。」

 

ガラン「まぁ確かにお前の能力なら満身創痍だろうとある程度戦えるだろう。いや、普通の人間ならばすぐにころせるだろうな。だが私には・・・・武道の心得がある!!」ダン!!

 

ガランはそう言い放ち、一方通行へ向け突進する。

そしてその拳が一方通行の顔面を捉える瞬間、

 

一方通行「へへェ!!」

 

ギュィィイン!!!!!

 

ガラン「ぐっ!!」ズザザザザザザ

 

一方通行へと加えられるハズだった力は全てガランへと跳ね返り、全てのダメージが彼に加えられた。

 

一方通行「オイオイ、オマエェ、俺の反射を忘れてンのかァ?今のオマエなンざ、俺に一発入れることすら出来ねェぜ。」

 

一方通行はポケットに手を突っ込み、ガランに言い放つ。

 

ガラン「今のでお前の脳のポートは取得できた。」ムクッ

 

一方通行「あァ?何言ってやがる。」

 

ダンッ!!!!!!

 

ガランは再び一方通行へ急接近する。

 

一方通行(バカなのかァ?コイツは・・・・・。木原は反射の膜を拳を引き戻すことによって無効化していたが常人にそンなことはできるはずがねェ。もう一度反射されるのがオチだ。・・・さァて、どォ料理してやろォか・・・・・・。)ニヤリ

 

ボゴォ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美琴たちは傭兵部隊と戦闘を続けていた。

 

沙理沢「息が上がっているわよ。この数相手にいつまでもつかしら?」

 

美琴「くっ・・・・そんなことないわよ。」ハァハァ

 

黒子「・・・お姉様、能力の使用はできるだけ控えた方が良いかもしれませんわ。」

 

美琴「どうしてよ?」

 

黒子は研究室の中央にある装置を見つめていた。

 

沙理沢「あら、さすがは風紀委員といったところかしら。そう、アレはAIMジャマ―。能力者の演算をジャミングする機械よ。刑務所や統括理事会の建物とかで見るでしょ?」

 

黒子「でも私たちクラスの能力者はジャミングされていても能力は使えないこともなくってよ?」

 

沙理沢「それでも使わないほうがいいと思うわ。能力の暴走を引き起こすこともある。ましてや超電磁砲なんて暴走したらとんでもないことになるはずよ。」

 

美琴「その点は問題ないわ。簡単な演算でできる技を使えばいいだけ。」

 

虚勢ではない。美琴には演算を妨害されようと問題なく使える能力はある。不利な状況であろうと対応できる汎用性の高さ、それがLEVEL5の称号を与えられた能力者である。

 

沙理沢「その心意気に敬意を称して教えてあげる。私達が研究していたアリスの能力『アリスアバター』。もともとはヒューズ・カザキリのバックアップ。つまりミサカネットワークの予備用として用意された子だった。」

 

美琴(ヒューズ・カザキリ・・・・さっきの天使か・・・!ここでも妹達とつながるの!?)

 

沙理沢「アリスの新しい価値は『アリスアバター』の能力を応用した大規模な意識コントロールシステム。ネットワークを通じて、人間の意識情報を書き換える一種の洗脳システム。これさえ使えば、どんなに無名な候補者でも圧勝で大統領に当選することが可能となる。」

 

黒子「つまり・・・どういうことですの?」

 

沙理沢「さぁ、どういうことでしょうね?ここまでヒントを与えたのにわからないかしら?」ピッ

 

沙理沢がリモコンのスイッチを押すと研究室内に機械の起動音が鳴り響く。

 

美琴「どんな小細工をしても私たちに勝つことはできないわ!!」バチバチ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「グハァァァァァァァァァア!!!!」ズザザザザザ

 

ガラン「ほぉ・・・その首の受信機を破壊するつもりだったが、とっさに守ったか。・・・勘の鋭い奴だ。」

 

一方通行(あの野郎ォ何をやった!?どうして反射が効いていない!どうして早く動ける!あの鎧だけでそンなことが出来ンのか!!『アリスシステム』はそンな装置なのか!?)

 

ガラン「計算してポートを割り出したと言ったろう。お前の反射を情報操作によって無効化している。・・・そのためにアリスシステムの出力を上げたのだ。」

 

一方通行「!テメェ!!ンなことすりゃァ、アリスの命は・・・!」

 

ガラン「あぁ、生命維持に支障が出るだろうな。だが、問題ない。すぐに終わらせる。」

 

一方通行「クッ・・・!!」

 

ガラン「理解できたか?己の敗北を。」ズヒュゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

一方通行「なっ!!」サッ

 

ドガァ!!!!!

 

一方通行「ガハァッ!!!!!!」ドカッ

 

ガラン「また受信機を守ったか。・・・もういい、ならそのままのお前をなぶり殺しにするだけだ。」

 

一方通行「ッッ!!このォ!!!!」ムクッ

 

ガラン「ほぅ・・・立ち上がってくるか。・・・・ならもっとやる気を出させてやろう。」ピッ

 

ガランは取り出したリモコンのスイッチを押す。すると中央制御室の壁が開き、強化ガラスで覆われた十字架が出てきた。そしてその中央に縛り付けられているのは・・・・・・

 

一方通行「フランッ!!!!!」ダッ!!

 

ガラン「おおっと、行かせないよ。」ドスッ!

 

一方通行「グッ・・・・!!」

 

一方通行(なンで大人しくやられている?フランならそこらのゴミ共につかまる程弱くはねェ。それに吸血鬼なンだァ、傷だってすぐに治る。・・・・まさか、能力を封じられてンのか!!)

 

一方通行はフランの姿をよく凝視した。彼の視線がフランの顔に行くと再び一方通行は驚愕した。

 

フラン「うっ・・・ぁ・・・・・」ポタッポタッ・・・

 

フランを縛り付けているものは有刺鉄線でフランがもがくたびにその白い肌を傷つけ、常に彼女に苦痛を与えている。しかしそれだけで彼女の能力は封じられることはない。何故なら彼女の「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」は彼女が視認したあらゆるものを破壊する。自身の身体を縛り付けるものなど容易く破壊できるハズだ。だが、今の彼女にはそれができない。

 

一方通行「テメェ・・・フランの目を・・・・!」ギリッ

 

ガラン「そうだ。彼女の能力は少し厄介な物だったのでな。目を潰せば能力が発動できないことがわかったから、拘束する際眼球に杭を打ち込ませてもらった。」

 

フラン「・・・あ・・・あく・・せられーた・・・?」ギギ

 

一方通行「ッ!フラン!!」

 

フラン「何・・で?あなた・・・には来てほしくなか・・たのに・・・・・・。」

 

一方通行は先ほど思い出していたフランたちとの会話を再び思い出した。

 

一方通行「・・・家族を取り戻すのに理由なンかいるか?」

 

フラン「!あくせられーた・・・・」グスッ

 

一方通行「ここまでよく耐えた・・・・。オマエは俺が必ず救い出す。」

 

フランは意識から手を放した。そして一方通行は傷だらけの身体を鼓舞して完全に立ち上がる。

 

ガラン「このガキがお前の家族か?・・・ふん、笑わせる。絶対能力進化計画で一万人以上殺戮した人間がなにを夢に浸っているのかな?いまさらたった一人救っただけでヒーロー気取りか?・・・・・お前は一生泥の中だ。」

 

ガランの言葉にトラウマを掘り返され、一方通行は動揺するもすぐに落ち着きを取り戻す。

 

一方通行(ヤツの言う通り俺は闇の世界の人間だ。例え一生泥の中でも構わねェ。だがなァ、俺が求めてンのはそこじゃねェ。さっさとコイツを殺して、フランを救い出す。地獄に落ちンのは俺とオマエだけでいい。そこにあのガキを巻き込むンじゃねェ・・・・!)

 

一方通行は鬼に教わった格闘術の構えをとる。

 

一方通行(バッテリーは残り少ねェ。木原との戦闘で負った怪我も深い。それにヤツに反射が聞かねェ。だがァ、不利な状況でもやるしかねェ!!)

 

ガラン「さぁ第二ラウンドといこうか。」ガチャ

 

一方通行「ガランさンよォ、あのガキを人質にとるつもりはねェのかァ?そォすれば俺を簡単に殺すことができるはずだろォ?」

 

ガラン「確かにそういう手もあった。だが、どれだけ傷つけてもすぐに再生する能力がある以上、人質の価値はない。それに・・・・・・・」

 

ガランは一方通行に急接近する。

 

一方通行「ッッ!!」ザッ!

 

ガラン「アリスシステムの力を試してみたいしなぁ!!」ドゴォ!

 

ガランのアッパーが一方通行の鳩尾付近に直撃する。

 

一方通行「ガアァァァァァ!!!!」メキィ!

 

一方通行の服を突き破り肋骨が姿を現す。今の攻撃で折れていた肋骨が圧迫され外部に突出してしまったのだ。当然彼の体には激痛が走る。

 

フラン「・・あくせられーた!!!!」

 

一方通行「問題ねェよ!心配なンかすンじゃねェ!!」

 

ガラン「ふん、勇ましいことだな。なら、これならどうかな?」ピコッ ヒュイィィィィィン

 

一方通行「・・・?」

 

ガラン「アリスシステムの出力をさらに上げさせてもらった。ここまで上げればアリスの生命維持に関わるが・・・・・・・すぐに終わらせるから問題ない。」

 

一方通行「テンメェ・・・・!!」ギリィッ

 

ダァァァァン!!!!ドゴォ!!!!

 

一方通行「ギッ・・・・がァッ・・・・!!!!」ドサッ

 

一方通行「・・・・くっ・・・・そ・・・・・・!」スッ

 

一方通行は壁にたたきつけられるが根性ですぐに立ち上がろうとする。

その時・・・・・・

 

ポタタッ・・・ポタポタポタッ・・・・・・・

 

一方通行(なンだ?この音は??・・・そうか、アリスの父親の血が床に落ちる音か・・・・。あァ・・・あの音だと、出血多量で間違いなく死ぬなァ・・・・・。)

 

一方通行はアリスの父親の血液が落ちる音を聞き、そう考えた後アリスの父親を見る。

しかしアリスの父親からは音程の出血はしていない。

 

一方通行(?待て・・・なンで血の落ちる音がこンなに早いンだ?血液の粘度は水よりも高い。もっと音は低くなるハズ・・・・・・。それなのに・・・・何故・・・?)グググ

 

そう考えながら一方通行は立ち上がる。

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!!!!!

 

一方通行「グッ!がァ!!!!」ズザザザザ!!

 

不覚だった。考え事をしている隙にまた重い一撃を喰らってしまった。

 

一方通行「ゲホッ!ゲホッ!!・・ハァ・・ハァ・・・・。」ビチャ!

 

ガラン「はっはっは、無様だな。学園都市最強がこのザマとはなぁ。」

 

その時、一方通行の頭の中で歯車が合うような音がした。体中に快感が走る。

 

一方通行「フッ・・・ヒヒッ・・・フヘヘヘヘ、エヒャヒャヒャヒャ!!ギャァァァァァハハハハハハハハッ!!!!!!」

 

ガラン「フッ・・・壊れたか。」

 

一方通行「ヘヘヘヘヘッ、本当に無様だぜ。この俺がオマエみたいなヤツにこンなにやられるとはなァ。」

 

一方通行はポケットに入れていた拳銃を取り出す。

 

ガラン「今更拳銃なんか取り出して何をしようとしてるんだ?私はお前が引き金を引くより速く動ける。」

 

一方通行「オマエェ・・・・俺の受信機を壊そうとしてたよなァ?・・・・なら、オマエの望み通りにしてやるよォ。」カチッ

 

一方通行は電極の電源を自ら落とした。

 

一方通行「グッ・・・がァ・・・・!!アァァァァァァァァァァァァァアアアア!!!!!!」グググググ

 

ガラン「自ら受信機の電源を切り、覚悟を決めたか。」ピコッ ヒュゥゥゥゥゥゥゥン

 

ガランはアリスシステムを停止させた。

 

一方通行「なめてンじゃねェぞォ・・・!」

 

ガラン「あそこにいるガキはお前と同じような機械をつけているが、あのガキは我々がそれをとろうとした時、必死に抵抗した。そこであれはお前の生命線だとわかった。要するにあれは脳波を共有する機械だろう。・・・・ミサカネットワークのようにな。だが、それがなければお前は地面をはいずる芋虫にすぎん。我々の盾になれない学園都市最強などに用はない。今、殺してやる。」スタスタ

 

ガランはナイフを取り出し、一方通行に接近する。

 

ガラン「安心しろ一突きで殺してやる。」スッ

 

そう言うとガランは倒れている一方通行に勢いよくナイフを突き刺す。

 

ギュィィィィン!!!!!!

 

ガランの腕がナイフとともに砕けた。

 

ガラン「ぐあぁぁぁぁぁぁ!?!?」ドサッ

 

ガランは激痛に床を転げまわる。そして彼の頭にある疑問が浮かぶ。

 

ガラン「なぜだ!?なぜ!?反射を使用できる!?なぜ計算能力を失ったお前が能力を使用できる!?一方通行ぁ!!!!」

 

ガランは学園都市の報告書から一方通行は脳を撃ち抜かれた後、姿を消したと知っていた。

だがその後、学園都市側から一方通行は発見した。県外の病院にて療養中とのことと報告を受けた。

8月31日、第一発見者とされる芳川桔梗の報告により、一方通行は前頭葉を撃ち抜かれているため、少なくとも言語能力と運動能力、そして計算能力に影響を及ぼしているとも報告を受けている。

現に運動能力に多大な障害を及ぼしている。なのになぜ言語能力と計算能力が生きている?

思い返せば一方通行は電極を切った後も喋っていた。

どんどん湧き上がる疑問にガランは混乱していく。そしてその疑問の答えはその謎を持つ一方通行自信がもたらしてくれることになる。

 

ピッ!キュィィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

電極の起動音とともに一方通行が立ち上がった。

 

一方通行「なぜ?なぜかってェ?ヘヘハハァッ!!そンなの簡単だァ。俺は、言語能力も計算能力もォ・・・・失ってなンかいねェんだからよォ!!」

 

ガラン「そんなバカな!脳を撃ち抜かれたという情報はデマだったのか!?」

 

一方通行「デマじゃねェよ。確かに俺は8月31日、天井亜雄に脳を撃たれて死の淵を彷徨った。」

 

ガラン「なのになぜ言語能力と計算能力を失っていない!?」

 

一方通行「俺を治した医者が、この学園都市の科学力をも上回る技術で治してくれたンだ。もとは運動能力も戻ってたンだぜ?それは俺の自業自得で失っちまったが。」スタスタ

 

一方通行は右手を抑え、自分を見上げているガランに拳銃を向ける。

 

一方通行「あばよ三下ァ。コレはアリスとその父親の分だァ。そして、俺にケンカ売ったことを後悔してくたばれェ。」カチャッ

 

ズドォォォン!!!!

 

ポタッ・・・ポタッ・・・

 

一方通行「グッ・・・!!アァァァァァァアア!!!!!」グググ

 

一方通行は大腿を抑えながらうずくまり、苦痛の声を上げる。

手にしていた拳銃もどこかへ飛んで行ってしまった。

 

一方通行「・・・ッ!何を・・・・・?」

 

ガラン「拳銃だよ。君が持っていたものと同じ、ただの拳銃だ。」

 

一方通行(クッソ・・・・痛ってェ・・・!だが、幸い着弾したのは大腿だ。なンとか動けねェこともねェ。能力を使って立ち上がるのを補助すれば・・・!!)グググ

 

一方通行はいつものように能力を使おうと演算を始める。

 

ガラン「・・・・・・・・・だが、弾はちょっと特殊だがな。」

 

一方通行(演算が・・・できねェ・・・・。なぜだ?何をされた!?・・・・・まさか!!)ギリィ

 

ガラン「気づいたかな?そう、超小型のAIMジャマーだよ。刑務所などでよく使われている能力者の演算を妨害する装置・・・・。しかも今君に打ち込んだものは演算を完全にできなくするほど性能が良くてね。どうだ、演算ができないだろう?ただそれは対象の体内に直接打ち込まないと効果を発揮できないのが玉に瑕なのだ。だが打ち込んでしまえば・・・・私の勝ちだ。本当は使いたくなかったのだがな、こうなってしまった以上は仕方ない。」ピッ

 

ガション!ウィィィィィィィィィィィィィン・・・・・・

 

ガランは拳銃を投げ捨て、取り出したリモコンで扉を開けた。

すると入口の奥から学園都市でよく見る警備ロボットのようなものが出てきた。

だが、それは普通の警備ロボではなかった。

 

一方通行「対人専用軍用ロボか・・・・。」

 

ガラン「そうだ。絶対能力進化計画が始まる前、よく相手してただろう?能力が使える状態のお前なら壊すのは容易いだろうが、今のお前ならどうかな?」

 

一方通行「その能力使えない俺に、軍用ロボ百体は酷すぎやしねェか?」

 

ガラン「ほう、これを数えられるだけの計算能力が残っていたとは驚きだな。だが、いくら能力が使えないとはいえ学園都市第一位だからな、念には念をということだ。」

 

一方通行「そりゃァどォも。それにしても高みの見物たァ、いいご身分だな。」

 

ガラン「すぐにそんな言葉も吐けなくなる。・・・・行け!」ピッ

 

ヒュィィィィィィンという音を立てながら軍用ロボたちは一方通行へ進行していく。

 

一方通行(ヤベェ!もう打つ手がねェ!!このままだと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

対人戦闘ロボがチャージを終えたレーザービームを発射する。

そして無数の光線は一方通行の全身へと光の速さで穿たんとする。

 

一方通行(死ンじまう!!!!!!!!!!!!!)

 

一方通行は考える。ひたすら考える。演算ができない=能力が使えない。拳銃=はるか遠く。素手で戦う=アリスシステムを使われれば確実に負ける。このままだとフランは救えない。幻想郷に帰れない。

その瞬間、一方通行は万華鏡のように散らばった記憶の断片を瞬時に見ていた。

 

一方通行(走馬灯か・・・・・・・・・・)

 

走馬灯は己が死にそうになる時、今まで経験してきた記憶の中から死を回避するために見るものだとされている。現に一方通行は自身の死を回避するために考えている時に走馬灯を見ている。

記憶の万華鏡の世界の中、一方通行の意識はどんどん過去へとフラッシュバックしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(ここは・・・・・・・・公園?)

 

気が付くと俺はとある公園にいた。

自身の姿を見てみると、背中には黒いランドセルを背負い、杖を突かずとも立っていられる。

なのになぜか身体は自由に動かせない。過去の自分の身体に今の俺の魂だけ入り込んでる・・・・そんな感覚。そして過去の自分とリンクすることにより、色々思い出す。

俺にも昔は人間みてぇな名前があった。日本人らしい珍しくもなんともない名前だ。

確か・・・名字は二文字で、名前が三文字だったか?思い出せねェ。

目の前には俺をにらみつけている小学生。

あぁ・・・そうだ。確かケンカしてたんだったか?

目の前のヤツが俺を罵倒している。俺は何も言わずただ聞いているのみ。

その態度にムカついたのかそいつは殴りかかってきた。

 

「○○ ○○○!!!!!!!」ダッ!!

 

(ヤバい!!反射を切らなきゃ!!!!)

 

過去の俺の思念が流れ込んでくる。

だが、俺が反射を切るより早くソイツの拳が到達した。

 

ギュィィィィィン!!!!

 

ソイツはぶっ飛ばされた。

多分手は折れているだろう。俺は罪悪感の中、謝ろうとソイツに近寄ろうとした。

すると、コイツは顔を真っ青にして悲鳴に近いような声を上げ、俺から逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(ここは・・・・・・・・・)

 

次に気が付くと俺は繁華街にいた。思い出した、ここは俺が昔住んでいた地域の地下街だ。

 

「○○ ○○○君。君の力は脅威だ。悪いが拘束させてもらう。」

 

俺は声のした方に振り返る。

そこにはスーツ姿の男4人が立っていた。

俺はただ立っているだけで何もしていない。

 

「○時○○分、○○ ○○○を確保。」

 

男たちの手が俺に触れる。その瞬間俺の反射が働き、男たちが軽く吹き飛ばされる。

 

「くっ・・・!抵抗するな!!」グッ

 

男たちは一斉につかみかかってくる。

 

ギュィィィィィン!!!!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「う、腕がぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!!!」

 

俺は何もしていない。ただ反射を切ってなかっただけだ。

こいつらがつかみかかってきたからこうなった。自業自得だ。

俺はそのままほっといて帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またここか・・・・・・・・

今度はなんだ?昨日と似たようなスーツ姿の男四人。

 

「○○ ○○○、お前は危険だ。可哀そうだがここでやらせてもらう。」カチャッ

 

男たちは各々のホルスターから拳銃を取り出す。

安全装置は外されている。どうやら本気で俺を殺るつもりらしい。

つーかこいつら何も学ばなかったのか?昨日俺に反射されてわかったはずだろ。

俺にそんなもん撃ったって効かないことぐらい。てか死んじまうぞ。

おまけに日本で拳銃所持しちゃダメだろ。明らかにこいつら警察じゃないし。

 

バン!!バンバン!!!!ズドン!!

 

あ~あ、撃っちゃった。でも殺すのは気が引けるし、操作して拳銃だけ破壊しとくか・・・・・・・

 

ギュィィィィィン!!!!

 

ドガァァァァン!!!!バラバラバラバラ・・・・・・・・

 

「な!?なんだ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「じゅ、銃が・・・・!!」

 

「おじさん達、もう帰っていいかな?いい加減めんどくさくなっちゃった。」スタスタ

 

俺は手を痛めてうずくまっている男たちにそう言い放ち、家路についた。

まぁ、帰っても家族なんかいねぇけど・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は日差しが強いな・・・・・・・・・・。

まぁ、反射しているから俺にはほとんど関係ねぇけどな。

それにしても・・・・

 

ブゥゥゥゥン・・・・・・ パタパタパタパタパタ・・・・・・・・

 

今日はやたらと騒がしいな。

最新鋭のVTOL機に軍用ヘリ。道路には戦車や特殊部隊が多数。

歩道橋の上からだとよく見えるな・・・・・・。今日は軍事パレードでもやるってか?

それにしては不自然だ。一般人が一人もいない。

俺は、ふと戦車の方を見る。するとその砲身は・・・・・・

 

「俺狙いってことか・・・・・・。」

 

普通子供一人殺すのに軍隊出動させるか?

危険危険って言われるけど俺はお前らが何もしなかったら何もしねぇぞ。

ただ向かってくる力を逆向きにしてるだけだから。

 

「発射用意!!!!!」

 

 

 

 

あぁ・・・・そうか。

 

俺はこの時理解した。

 

この力はいつか世界を敵に回し、本当に世界を滅ぼしてしまうかもしれない。

 

「だが、最強の先へと進化すれば何かが変わるかも。」

 

眼鏡をかけたスーツ姿の男が俺に近づいてくる。

 

「そのためには計画に従い、実験の遂行を。」

 

前歯に金の差し歯を差し、伊達メガネを付けた研究者が近づいてくる。

そして消えた。残ったのは幼い頃の俺だけ。

 

 

モルモット。人間。クローン。

 

力が争いを生むのなら、戦う気も起きなくなる程の絶対的な存在になればいい。

 

そうすれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつか、また・・・・・・。

 

そうすれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もォ、誰も・・・・・・・。

 

 

 

 

     だから、俺は一人のほォがいいンだ。俺の周りにいるヤツはみーンな死ンじまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死体まみれの闇の中に佇んでいる一方通行の目の前にふと小さな光が現れる。

 

なンだ?眩しい・・・・・・・・・・・。

 

眩しいがその光はなぜか懐かしい感じがした。

一方通行はそれに無意識に手を伸ばす。

するとその光は弾け閃光のように激しく光りだす。一方通行はあまりの眩さにたまらず目を瞑る。

目を開けるとどこまでも白く温かい世界が広がっていた。

ずっとここにいたい。だけど自分はここにいていい人間じゃない。早く闇の中へ戻らなければ。

一方通行は光の世界に目を背け、闇の中へと帰ろうとする。幼き日の自分がいる闇へ。

 

「あくせられーた!!」

 

効きなれた声、なのに懐かしい声。まるで遠く離れた故郷に帰ったようなそんな感じがする。

一方通行はその声がした方へ、光の方へ振り向く。

 

一方通行「オマエは・・・・・・・・・。」

 

フラン「フランもあくせられーたのことを家族だと思ってる。家族っていうのは一緒にいたいことの言い訳なのかもしれないけど・・・それでもフランはあなたと一緒にいたいし、離れ離れになったとしてもあなたが来てくれるのをずっと待ってる。それだけは忘れないでほしいな。」

 

そォだ、待ってるンだ。

立場なンぞ知ったことか。例え俺がどれだけの罪を犯した大罪人でも、クソッタレの悪党だとしても関係ねェ。正しいかどうかなンて問題じゃねェ。あのガキ助けるのに合理的な理由なンかいるか!

ただ俺が助けてェンだ!守りてェンだ!!失いたくねェんだ!!!!

そのためなら俺の大事なものなンかいくらでも捨ててやる!

だが、俺にはできねェ。俺だけじゃァできねェ。

・・・・・だが、アイツの力を借りればできる!!

助けてくれ!協力してくれ!一緒に戦ってくれ!!!!

 

一方通行「フラン!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は立ち上がる。満身創痍の身体で走り出す。

全身の体温が急激に上昇する。

目は紅く光り、瞳孔は猫のように細くなる。

そして彼の犬歯だけが鋭く、鬼の牙のように長くなっていく。

 

一方通行「禁忌・・・・・・・・・・・・・」

 

一方通行の手の中で炎が形成され広がっていく。その炎に包まれながら、背中から服を突き破り黒い棒のようなものが生える。そしてそれは瞬く間に開き、蝙蝠のような大きな翼へと変化させた。展開された大きな翼をはためかせ、飛び立つ。

さらに炎は勢いを増し、強大になるもどんどん収束していき、剣の形になる。

 

一方通行「レーヴァテイン!!!!!!!!!」ズバッ!!

 

飛んできたレーザーとともに軍用ロボは灰塵に帰す。

 

ガラン「っ!?!?クソッ!一斉に撃て!!!!」

 

軍用ロボたちは一斉にレーザーを放つ。

ピッ!ジュウ・・・・・・・・・・

一方通行にレーザーが掠る。だが、彼は止まらない。

 

一方通行(止まるな、進み続けろ!ここで止まっちまえば、電極を無理やり違う用途に使用した跳ね返りが来る。そうすりゃァ、バッテリーが切れて俺は動けなくなっちまうだろォ・・・・。だからァ・・・・今仕留めなきゃなンねェ!進めェ!!フランを救うんだァ!!!!!)バサッ!バサッ!

 

一方通行「ウオオオオォォォォォォォォォォァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

一方通行は咆哮し、約百体の軍用ロボへ飛び込んでいく。その細い瞳孔はガランしか捉えていない。

一つ、また一つ、軍用ロボたちを鮮やかな深紅の炎剣でレーザーとともに焼き払っていく。

飛び出た肋骨が痛む。全身が軋む。だが、止まらない。

少なくとも今、フランに取り巻く理不尽の全てを焼き払うまでは。

 

ガラン「コイツッ!!」ダッ

 

ガランは突然起きた予想外の出来事に混乱し中央制御室を逃げ回る。

一方通行はガランを追撃しようとするが軍用ロボに阻まれる。

発射された無数のレーザーを身を翻し避ける。さらにそのまま回転しながらロボを斬り、道を開く。

そして目の前に立ちふさがるロボを五体同時に斬り伏せる。

ガランへの道は開けた。もう彼を守るものは何もない。

 

ガラン(なんだ!?能力は使えないはずだろ!?そしてあの姿、まるで・・・・・吸血鬼じゃないか!!)

 

ガランを中央の柱に追い詰める。

 

一方通行(追い詰めた!ここだ!!)

 

ガランは拳銃を取り出し一方通行に構える。

 

一方通行(今ここでぶち殺せ!!地獄に落ちンのはァ・・・・俺達だけで十分だろォがァ!!!!!!!)

 

ガランは引き金に手をかけ、一方通行は炎剣をガランの首へと振るう。

 

 

 

 

(・・・・ラ・・ン・・・・・・フラン・・・・・。)

 

フラン(・・・・だれ?)

 

レミリア(起きなさい、フラン。起きてあなたも戦うの。)

 

フラン(ぅん・・・・おねぇさま・・・?)

 

レミリア(あの人が戦ってるわ。あなたも加勢なさい。)

 

フラン(でもお姉様、フラン目を潰されて、能力が・・・・・・。)

 

レミリア(一方通行も能力を封じられてる。だけどあの人はあなたの能力を使ってる。)

 

フラン(フランにはできないよ。あの人みたいな計算なんかとても・・・・・。)

 

レミリア(フランにならできるわ。だって・・・家族の絆でつながっているんですもの。)ニコッ

 

 

ギュィィィィィン!!!!

 

フランの目に打たれていた杭が外れ、目を見開く。

 

フラン「ぐうぅ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」グググググ

 

そしてフランは反射のベクトルを応用し、縄だけでなく十字架まで粉々にした。

 

一方通行「!!」

 

ガラン「なにぃ!!!!」バッ!

 

ガランはとっさに銃をフランへ向ける。

 

フラン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ヒュゥゥゥゥ!!

 

フランは制御室内の機材を風のベクトルを用いて瓦礫にし、竜巻のようにしてガランの手を吹き飛ばした。

 

ガラン「うわぁぁぁぁ!!!!手が、手がぁぁぁぁぁぁ!!!!」ドクドク

 

ガランは大量の血を流しながら悲鳴を上げる。

 

キィン!!キィン!!ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!

 

そしてフランの作った竜巻は瓦礫同士がぶつかり、その摩擦で発生した火が瓦礫に着火して火災旋風へと成長した。さらに火災旋風の中にガランを閉じ込めた。

 

ガラン(この火災旋風はベクトル操作によるもの・・・!あのガキが使ってやがるのか!?一方通行(アクセラレータ)を!!!!!)

 

ゴォッ!!!!

 

炎の中から白い吸血鬼が現れる。

 

ガラン(バカな!瓦礫が舞う中、突っ込んできただとぉ!?!?)

 

一方通行はレーヴァテインを振りかぶり、ガランの首に向け、振るう。

 

ガキィィィン!!!!!

 

ガランの首のアーマーに炎剣が当たる。

 

一方通行「家族(フラン)に手ェ出すことは・・・・・・・・・」

 

ガランの首アーマーが融解し始める。

 

一方通行「俺がァ・・・・・」グググ・・・

 

一方通行はレーヴァテインを握る手に全力を込める。

 

ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

一方通行「許さねェ!!!!!!!!!」グググググ・・・

 

ザァァン!!!!!!

 

紅い火花と鮮血とともにガランの首が宙へ舞い上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                         ビーッ!ヒュゥゥゥゥゥゥン・・・・・

 

                         二人の吸血鬼の電極の明かりが消えた。




最後までご覧いただきありがとうございました!
かなりの長編になってしまいましたがどうだったでしょうか??
色々あって書く時間が少ないですがなんとか続けていけたらなと思います。
応援よろしくお願いします。

次回、第二十話 「行き違い」

                       次回もお楽しみに!!


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第二十話 行き違い

一方通行「家族(フラン)に手ェ出すことは・・・・・・・・・」

 

ガランの首アーマーが融解し始める。

 

一方通行「俺がァ・・・・・」グググ・・・

 

一方通行はレーヴァテインを握る手に全力を込める。

 

ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

一方通行「許さねェ!!!!!!!!!」グググググ・・・

 

ザァァン!!!!!!

 

ビーッ!ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン・・・・・・・・

 

ドサッ・・・・

 

フランは気が抜けたのか電極のバッテリーが切れた瞬間、気を失った。

 

一方通行「ッ!クッソォ・・・・・・!!」ドサッ・・・

 

目は元に戻り、牙はなくなり、羽は折りたたまれ一方通行の体内に吸い込まれていく。

一方通行は元の人間に戻った。

一方通行はバッテリーが切れた影響で倒れてしまう。

 

パキャッ!!

 

一方通行「ガァァァァァァ!!!!ッ!グゥゥゥゥゥ・・・・・!」ハァ・・・ハァ・・・

 

うつ伏せに倒れたせいで飛び出た肋骨がへし折れた。

一方通行は激痛に身をよじらせ吐血する。

 

一方通行(チィッ!肺に穴が開いたか・・・・!)ヒューヒュー

 

彼はもう長くはもたない。だが、フランを回収して幻想郷へ帰るぐらいの体力はある。

万が一にも病院に運ばれるわけにはいかない。フランの正体が学園都市に知れればとんでもないことになる。それだけは絶対に避けなければ。

 

一方通行(ッ・・・フラン・・・!)ズズ・・・ズズ・・・

 

一方通行は動かせる左半身を精一杯動かしてフランに向かって這って進む。

 

コツコツコツコツコツ!!!!!!

 

一方通行(誰か来る!一人、イヤ、二人・・・・グループか?)

 

一方通行はフランへ向かう速度を上げる。

 

「あっ!いた!!」

 

「この子か!?」

 

一方通行(男一人、女一人・・・・。?両方ともどこかで・・・・・?)

 

一方通行は顔を上げて、男女の顔を確認する。

 

一方通行「テメェは・・・・・・!」

 

????「お前は!?」

 

二人は刮目する。かつて一人の少女を救うために戦った相手。かつて無敵への進化のために戦った相手。

 

一方通行「上条ォ・・当麻ァ・・・・・・・!」ギリッ

 

当麻「・・・一方通行(アクセラレータ)・・・・・・!」

 

今はコイツに構っている暇はない。一方通行は余計な雑念を振り払い、フランの元へ急ぐ。

 

???「フラン!!」ギュ

 

一方通行がフランへ手を伸ばした瞬間、短髪の少女がフランを抱きかかえ、上条当麻の元へ戻った。

 

一方通行「そのガキを放せェ!超電磁砲(レールガン)!!!!」

 

美琴「放しなんかしないわよ!この、クソ野郎!!」

 

当麻「御坂から聞いたぞ・・・。てめぇ、またくだらねぇもんに手を出しやがったらしいな・・・・・。」

 

一方通行「だったら・・・なンだ?」グググ・・・

 

一方通行は机につかまり、立ち上がる。

 

当麻(こいつ・・・・なんで満身創痍なんだ?)

 

美琴も当麻と同じことを考え、制御室内を見渡す。

 

美琴「ひっ・・・!」ビクッ

 

美琴は中央の柱にあるモノを見て恐怖する。

 

当麻「どうした!?御坂!・・・・・・っ!!」

 

視線の先には首をはねられた血塗れの男の姿があった。

 

当麻「お前・・・・コイツは仲間だったんじゃないのか!?」

 

一方通行「仲間だァ?ヘヘッ、ンなわけねェだろォ。こンな三下ァ、付き合う価値なンかねェ。俺は都合よく利用してただけだ。」

 

美琴「アンタ・・・本当にクズね。」

 

一方通行「そォだ、俺は泥まみれのクズだ。だが、そのガキは何としても返してもらう。」

 

当麻「てめぇ、今度はこの子を利用してまた何かしようとしてるのか!?」

 

一方通行「答える義理はねェよ。」

 

一方通行は机に寄りかかりながら答える。ただし、自分が立っているだけでも限界だということを悟られないように。

 

美琴「大ケガしてるとこ悪いんだけど、倒させてもらうわよ。第一位(アクセラレータ)!!」ビリビリ

 

当麻「御坂は下がってろ。あいつの反射の前にはどうやってもお前の電撃は届かない。そのためにここに呼んだんだろ?」

 

美琴「で、でも!」

 

当麻「お前はその子を守ってくれ。頼んだぞ。」

 

美琴はフランを抱きしめ、静かにうなずいた。

 

当麻「さぁ、一方通行!ここでお前を倒す!!」

 

一方通行「ヘヘッ、あン時の借り・・・ここで返させてもらうぜェ!ヒーローォ!!!!」

 

一方通行は右半身麻痺のため自分から当麻に接近、攻撃できない。

だから、当麻が攻撃してきた時に動かせる左腕でカウンターで攻撃しようと考えていた。

 

当麻「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」ダダダダ

 

一方通行(来やがった!!)グッ

 

一方通行は左手だけで格闘術の構えをとる。

 

当麻(右半身ががら空き!!)オラァ!!」ブンッ!!

 

一方通行「グハッ!!(クソッ!右半身がガードできねェ。)

 

一方通行は吹っ飛ばされ、床を転がりまわる。

 

当麻「くだらねぇもんに手ぇ出しやがって・・・・。全然何も変わってねぇじゃねぇか!!」

 

一方通行「グッ・・・!」グググ

 

ドゴォォ!!!!!

 

一方通行「ッ!!!!」

 

一方通行は美琴の方へ吹っ飛ばされる。

そしてその勢いを利用して、美琴に接近し、一撃目で吹っ飛ばされた時に拾って隠し持っていた瓦礫の一部を美琴の顔に投げつける。

 

美琴「キャッ!!」バッ

 

当麻「御坂ぁ!!!!」ダッ

 

一方通行は左手を振りかぶり、美琴を殴り飛ばそうとする。

 

美琴「っ!!」バチバチバチ!!

 

美琴は一方通行に電撃を喰らわせ、吹き飛ばす。

 

美琴(反射が・・・・効いてない?)

 

ダァァァァン!!!!

 

一方通行は壁にたたきつけられ、地面に落ちる。

 

美琴「あれ、フランは?」キョロキョロ

 

当麻と美琴はフランの姿がないことに気づき、周囲に目を配る。

 

一方通行「ガハッ!・・・へ・・ヘヘッ、わりィなァ。ガキは返してもらったぜ。」ベチャッ

 

一方通行は吐血しながら当麻たちへ向け、そう言い放つ。

彼の腕の中には眠っている金髪の少女がいた。

彼の中にギリギリ残った演算能力を電撃からフランを守るためだけに使ったからフランには傷一つない。

 

美琴「フラン!しまった!!」

 

当麻「この野郎!!」

 

一方通行はフランを抱きしめる腕に力を込める。

 

一方通行「コイツは離さねェぜ。」ニィッ

 

当麻「フランを離せ!!三下!!!!」ダッ

 

一方通行「その名を軽々しく呼ぶンじゃねェ!!三下ァ!!!!」

 

ヒーローたちは互いに吠える。

 

美琴「一方通行は多分能力を使えないわ!私も加勢する!!」

 

美琴は再び帯電する。

 

一方通行「これだけは絶対ェ譲らねェ!負けるわけにはいかねンだァ!!」

 

当麻「いいぜ、こんなことを繰り返し続けるなら・・・・そんなくだらねぇ幻想は俺が何度でもぶち殺してやるよ!!!!」ダッ!

 

一方通行「オマエ等にとっちゃァどんなにくだらなくても、俺にとっちゃァ最後の希望なンだ!このたった一つの幻想を守り抜くためなら俺はどンな現実だって打ち砕いてやるよォ!!!!」グッ

 

当麻は駆け出し、一方通行へ拳を放つ。

 

バキッ!!

 

一方通行「ガッ!!」グラッ

 

バチバチバチ!!!!

 

当麻「電撃はやめろ!フランにまで電撃が行っちまう!!」

 

美琴「わかってる!だから、超電磁砲で狙ってんでしょうが!!」バチバチバチ!!

 

ドガァァァァン!!!!!!

 

雷が落ちたような音とともに光の速さでコインを打ち出した。

 

チュドォォォォォン!!!!!!

 

超電磁砲は一方通行の左肩に着弾し、貫通する。

肉が焼け付く痛みに一方通行は気を失いそうになるがなんとか踏みとどまる。

 

当麻「うぉぉぉぉ!!!!」ブンッ!!

 

一方通行(左手ももう使えねェ。もォこうするしか・・・・・・!)サッ

 

一方通行はフランに覆いかぶさった。

 

当麻「離せ!このっ!!」

 

当麻は一方通行を蹴り始めた。フランを取り戻すことで精一杯なのだろう。

美琴も超電磁砲で援護する。

 

一方通行「ガッ!グッ!ゲホッ!!」ビチャビチャ!

 

ドロ・・・・・・・・・・

 

どこかの太い血管が切れたのか大量の血が流れだす。

 

一方通行「グゥゥゥゥ・・・・・(クソッ、誰か・・・黄泉川、芳川、グループでもいい。せめて、せめてこのガキだけはァ・・・・・。)ボタボタ

 

一方通行は出血多量でもう持たない。せめて、フランだけでもと懸命にかばい続ける。

当然、当麻と美琴はフランに危害を加えるつもりはない。だがそんなことを一方通行知るはずもない。

勘違いによる一方通行な暴虐が続いていく。

 

「そこまでだ。」カチャッ

 

当麻と美琴は背中に拳銃を突き付けられ、動きを止めた。

 

「ホントは御坂さんに拳銃を突き付けるマネはしたくなかったのですが・・・」

 

当麻「何のつもりだ、土御門!!」

 

御坂「海原光貴・・・・・・・。」

 

土御門元春、海原光貴(エツァリ)、結標淡希。『グループ』のメンバーだ。

 

土御門「それはこっちのセリフだ。なにをしているんだ?上条当麻。」

 

当麻「何って・・この子を助けようと・・・!」

 

海原「それが一方通行を一方的に痛めつけることだとは・・・・聞いて呆れますね。」

 

美琴「何ですって!?」

 

結標「一方通行はフランを助けるためにボロボロになってたの。アンタらが来る前からぼろ雑巾だったでしょ?」

 

当麻「でも、それって・・・・。」

 

「そいつの言った通りじゃん。」コツコツ

 

土御門「誰だ!?」

 

黄泉川「彼に娘を助けてもらった者じゃん。」

 

打ち止め「アクセラレータ!!」

 

美琴「打ち止め!?」

 

打ち止め「あなたたち・・・何てことしてくれたの・・・・・!?」ギリッ

 

打ち止めはいつものミサカは~という口癖を忘れるぐらいに激昂している。

 

当麻「何でここに・・・?」

 

打ち止め「恩人を助けにきたに決まってるじゃない。ってミサカはミサカはお姉様たちを睨みつけながら言ってみる。」

 

美琴「恩人?」

 

黄泉川「この子、さっきの天使の出現のために利用されてたのを一方通行が助けてくれたじゃん。」

 

打ち止め「木原数多っていうヤツに反射を封じられて、ボロボロになりながらも救ってくれたの。ってミサカはミサカは言ってみる。一方通行はもともと異世界と呼ぶべき場所にいて、もう学園都市に関わらなくてもいいはずなのに、操られてるミサカたちを見かねてわざわざ来てくれたの。

おまけに一緒に来た女の子のことよりミサカたちのことを優先してくれた。すべては贖罪のためだってミサカはミサカは・・・・・・。」ウルッ

 

 

フラン「・・・ん・・・?あくせられーた?」

 

一方通行「おォ・・・・・お・・きたか。・・・・・・・だ・・大・丈夫・・・か・・・・・・?」

 

フラン「うん、大丈夫。助けてくれてありがとう。」ニコッ

 

フランは一方通行に精一杯の笑顔を向けた。できるだけ彼に心配させないようという彼女なりの心配りだ。

 

ベチャッ・・・・・

 

フラン「・・・・・・え?」

 

フランの笑顔が凍り付く。

 

一方通行「・・・・そりゃァ・・・・・・よ・・かっ・・・・・・。」ガクッ

 

一方通行はフランの言葉に笑顔で返事をした後、フランにもたれかかる。

彼から流れ出した鮮血がフランの服をさらに赤く染めていく。

 

フラン「はっ・・・はっ、はっ・・・・・。」ガクガク

 

フランは過呼吸を起こし、痙攣する。

そして畳み掛けるようにかつてのトラウマが彼女の脳内にフラッシュバックしてくる。

そう、狂気に染まり、虐殺を続けていた時のことを・・・・・・。

 

フラン「・・・ぁ・・・ぁ・・あ・・・・・・・。」ガタガタ

 

土御門「ヤバいな・・・・・。全員下がれ!!」

 

土御門はフランの不穏なオーラを感じ、みんなを離れさせる。

 

フラン「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっあっぁっああぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ドォォォォ!!!!

 

フランの翼は突然巨大化し、背中には紅い魔法陣が発生した。

 

美琴「なに・・・あれ・・・・?」

 

当麻「魔術か!?」

 

土御門「わからない・・・だが、間違いなくお前の右手の出番だ。」

 

フランは当麻と美琴に視線を向ける。

 

フラン「お前たちはあの人に何をした!?」

 

当麻「・・・・・一方的に痛めつけた。」

 

美琴「で・・でも、仕方なかったのy「取り繕ってんじゃないわよ!!」っ!」ビクッ

 

フラン「なんであの人がこんな目に・・・?今回は何にも悪いことなんかしてないのに・・・・・・。どうしてこんなに苦しめられなくちゃならないのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」ドドドドドドド!!

 

当麻「ぐっ・・・!」ギュゥゥゥン!!

 

フラン「確かに・・・この人には贖いきれない罪がある。だけど学園都市の呪縛から逃れられたにも関わらず、あの人はずっと妹達への贖罪ばかり考えてた。今ならわかる・・・・・きっとあの人が幻想郷に溶け込もうとしなかったのはそんな資格自分に無いと思ってたから。みんなと笑って暮らす資格がないと思ってたから・・・・わかるの、だってフランも同じような罪を背負ってるから。」

 

美琴「フラン・・・・・・。だけどコイツは・・・!」

 

土御門「フランを裏切り、そして拉致したやつの味方についた。と、言いたいんだろう。カミやん、お前もそう聞かされてここに来たんだろ?」

 

当麻「あぁ、その通りだけど・・・・・・」

 

土御門「残念だが、勘違いだ。一方通行は打ち止めを救い出した後、俺達『グループ』と協力し、フランドールとアリス、両方助けるために慣れないことをさせ、スパイとして潜入させた。正面から突入すれば少なくともどちらかに多大危害が及ぶ可能性が高い。だが、内部工作をすればその可能性を著しく下げることができる。だから、俺達を裏切ったふりをしていた。

俺達がその話を持ち掛けたとき、あいつは良い顔をしなかった。ガラじゃねぇってな。

だが、あのガキどもを助けるためだといい、プライドを捨てた。

おまけに俺達と会った時点で一方通行はすでに重傷だった。」

 

美琴「じゃぁ、一方通行は・・・・・・・。」

 

海原「はい、今回は善意の協力者ですよ。」

 

土御門「だが、お前たちは抵抗もできない満身創痍の身体障害者に対し、一方的に暴力を振るった。」

 

黄泉川「警備員としてじゃなく一人の人間として許すことはできないじゃん。」

 

打ち止め「この人でなし!!ってミサカはミサカは二人を罵ってみたり!!」

 

美琴「あたしたちのやったことは・・・・・・・。」

 

結標「ただの暴力・・・だね。」

 

当麻「それに身体障害者だって・・・?」

 

打ち止め「8月31日、絶対能力進化計画が中止され、職を失った研究員によってミサカが連れ去られ、脳にウイルスを打ち込まれた。その内容は人に対する無差別攻撃。それを上位命令文に変換し、ミサカネットワークを介して全ミサカたちに感染させ、全国に散らばったミサカたちに実行させる。そしてこのミサカは死ぬはずだった。それをアクセラレータは助けてくれた。・・・脳を撃たれて自分の運動能力を失ってまで。ってミサカはミサカは説明する。」

 

土御門「本来なら、運動能力だけでなく言語能力と計算能力も失っているハズだったんだが、どうやら治療した医者がすごかったらしい。」

 

当麻「じゃあ、一方通行がまた悪事を働いてるってのは・・・・・。」

 

土御門「超電磁砲の勘違い。一方通行はただの哀れな被害者だ。」

 

当麻と美琴は血の海に倒れている一方通行をみて狼狽する。

 

フラン「・・・・・・・・・・・・・・勘違い?・・・そんな・・・・・そんな・・・・・」

 

フランの魔法陣がさらに肥大化し、彼女の目の白い部分は真っ黒に染まっていく。

 

フラン「・・・・・そんなしょうモナイコトノためニ、アノヒとハこんナめニアッたのカカァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」ドォォォォ!!!!

 

フランは完全に理性を失ってしまった。彼女はかつての抑えきれない破壊の衝動に完全に支配されてしまった。怒りのまま、狂気のままに嗤いながら弾幕を放ち続ける。

 

フラン「アハハハハハハハハッ!!アーハハハハハハハハハハッ!!!!!!!」ドドドドドドド!!

 

当麻「っ!!」ギュゥゥゥン!!

 

海原「黄泉川さんと娘さんはこのビルから出てください!」

 

打ち止め「で、でも・・・・・」

 

海原「急いで!!!!」

 

黄泉川「行くじゃんよ、打ち止め。」ダキッ

 

黄泉川は打ち止めを抱きかかえると中央制御室から出て行こうとする。

 

フラン「ヘェ・・ハァッ・・・・・?」クルッ ドォォォン!

 

フランは動き出した黄泉川たちへ向け弾幕を放った。

 

当麻「クソッ!!」ギュゥゥゥン!!

 

黄泉川「・・・・・・・・・ありがとう」ダッ

 

黄泉川たちは脱出に成功した。抱えられた打ち止めは姿が見えなくなるまで子供とは思えない表情で当麻を睨みつけていた。

 

土御門「一方通行ももう限界だ・・・・・・!カミやん!超電磁砲!フランを止めろ!!」

 

当麻「止めるって言ったって・・・どうやって?」

 

美琴「・・・・・・・・・。」

 

土御門「力ずくでだよ!海原は外じゃないと魔術を使えないし結標は・・・・わけ合って戦えない!!」

 

当麻「でも・・・俺は・・・・・。」

 

美琴「あたしも・・・・無理・・・。」

 

土御門「そんなこと言ってる場合じゃ!!・・・クソッ!こうなったら俺が・・・・。」

 

土御門が折り紙を取り出すとケースのふたを開け、四方へ放つ。

しかし・・・・・・・

 

ヒュォォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・

 

土御門「折り紙が・・・・吸い込まれていく・・・・?」

 

フランを中心に空気が集められていく。

そしてその手のひらに小さな炎を作り出した瞬間、酸素に反応して巨大な火の玉に一瞬で成長した。

 

フラン「アハッ!!アハハハハハハハハッ!!」ゴォォォォォ

 

土御門「テレズマに限りなく近いものが形成されていく・・・・・・。」

 

海原「えぇ、火を司る天使ウリエルのテレズマとそっくりですね・・・・。」

 

魔術師たちは冷や汗をかく。

 

結標「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!あれどうするの!?」

 

結標は当麻たちの方へ視線を向ける。

 

結標「あんた達!どうにかしなさいよ!!幻想殺しに超電磁砲でしょ!?お願いだから何とかしなさいよ!!!!」

 

当麻・美琴「・・・・・・・・・・。」

 

そうこうしている間にも火球はどんどん肥大化していく。

 

フラン「・・・・・・・・infj死hdkn・・・・・・。」ニタァ

 

ブン!!!!

 

フランが掲げていた手を当麻たちに振り下ろす。

 

ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

小さな太陽はゆっくりとしかし着実に中央制御室のものを焼き尽くしていく。

当麻と美琴は防ごうともせず座り込んだままだ。

土御門たちは身構えている。

 

土御門(もう成す術がない!クソッ!これもアレイスターの計画だっていうのか!!!!)

 

当麻(俺にはあの火の玉を消せない。・・・・消しちゃいけないんだ。)

 

美琴(あたしのせいでアイツまで・・・・・・・・。)

 

 

 

 

ズズ・・・ズズ・・・・

 

何かがはいずるような音が聞こえる。

 

当麻「・・・・・・何だ?」

 

「ぁ・・き・・・めて・・ンじゃ・・・ねェ・・・・・・ょ・・・・ヒー・・ロォ・・・・・・。」ズズッ

 

血塗れの白い少年が顔を地面に擦りながら這ってきた。

 

当麻「・・・・・ア・・一方・・・通行・・・・・・。」

 

ガシッ・・・・・!

 

一方通行は当麻の肩をつかみ、それを支えにして立ち上がる。

胸のあたりからはかなりの量の血が流れている。

 

ボタッ・・・・・ボタッ・・・・・・・・

 

当麻「おい!立つな!!」

 

タッ・・・・タッ!

 

一方通行はふらつきながら火球へ向かっていく。

 

当麻「やめろ・・・やめてくれ!」

 

タッ・・・タッ・・・・・・!

 

一方通行「アァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」ググググググ

 

一方通行は裏返るような声を張り上げ、意識を保つ。

目は血走り、食いしばりすぎた口からは血が流れ出る。

 

ヒュゥゥゥゥォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

一方通行の周りに待っていた誇りと火の粉は吹き飛び、一方通行の周りの視界は開けた。

 

ファサッ!!!!!

 

背中から真っ黒な翼が発生した。吸血鬼の翼ではない。竜巻のような翼だ。

 

海原「土御門さん・・・・・・・・・!」

 

土御門「あぁ、フランドール・スカーレットと同じだ。テレズマと酷似している。だが、あの真っ黒な翼はどの天使とも適合しない。正体不明としか言いようがない・・・・・・・まさか!!」

 

海原「まさか・・・なんです?」

 

土御門「あくまで推測だが、一方通行は先ほど科学が生み出した天使を見ている。それにフランドールの力も・・・・もしかしたら一方通行はそれを無意識に解析し、限りなく近いものを再現したのではないのか、と思ったんだ。」

 

一方通行の黒い翼は火球を受け止め、抑え込む。

 

一方通行「グッ・・・!ガッ・・・!ガァッ!!」ググググググ!

 

火の玉がどんどん分散していく。

 

フラン「hdfえai!hbsfij魔kadj!?」

 

一方通行「inrweujsakンdk・・・・!」グググググ

 

フランと一方通行は意味不明な言葉を互いに叫びあっている。

 

土御門「何を言って・・・・・・」

 

当麻「会話してるのか?」

 

当麻の推測は当たっていた。だが、二人とも口を使ってはいるが実際会話は繋がった意識の世界。つまり、リンクした精神世界で行われていた。

そして黒い翼は2人を文字通り包み込んだ。

 

フラン「どうして邪魔するの!?こいつらはあなたを理不尽に痛めつけた奴らでしょ!?」

 

一方通行「もォいいンだ。アイツらはヒーローで俺は悪党だ。だから、これでいいンだ。」

 

フラン「理由になってないよ!だってあなたは今回妹達を助けて、フランも助けてくれた・・・・そんな姿になってまで・・・・・・。」

 

一方通行の痛々しい姿を見る度に当麻たちへの怒りと憎しみが膨れ上がっていく。

 

フラン「あなたはフランのこと家族って認めてくれた。電極からあなたの想いが伝わってきたもん。だから助けてくれたんだよね?じゃあフランもあなたの、あくせられーたの家族として、あいつらに相応の報いを受けさせる・・・!!」

 

一方通行「俺が何したか知ってンだろ。俺の罪は許されていいもンじゃねェ。一度や二度アイツらを救っただけじゃァ、到底贖いきれない。これも、俺への罰だ。罪から目を背け甘い夢に浸ろうとしていた俺への罰。むしろありがてェってなァ。」

 

フランは目を細め、俯く。

 

フラン「・・・・そんなの・・・悲しすぎるよ・・・・・。」

 

一方通行「だが、それだけの罪を犯した。俺は幻想郷の住人になっちまった。だから、学園都市に来れるのも、妹達にしてやれることもこれで最後になるかもしれン。だから、これぐらいの方がいいンだ。」

 

フラン「フランは・・・・・・・・」

 

一方通行はフランを抱きしめ、言葉を続ける。

 

一方通行「オマエも俺と似たよォな罪を背負ってる。似たもの同士だからこそ言わせて欲しい。」

 

フランは顔を上げ、一方通行の顔を見る。

一方通行は自分を慈しむ天使のような優しい顔をしていた。

いつもの彼ではない。だが、これが彼の本来の顔なのかもしれない。

 

一方通行「オマエには・・・オマエだけには・・・これ以上罪を重ねて欲しくない。」

 

ファァァァ・・・・!!

 

土御門「なんだ?!」

 

2人を包み込んでいた黒い翼に白い光が混じり始める。

 

結標「光・・・?ッ!!眩しい!」

 

眩い光を発しながら漆黒は光り輝く白へと変化していく。

当麻と美琴はその光をただただ呆然と眺めていた。

 

一方通行「こンな俺の為に怒ってくれて・・・・・ありがとう。」

 

フラン「あくせられーた・・・・・・・。」

 

一方通行「帰るぞ・・・・・・・俺たちの家に。」スッ

 

一方通行はフランに手を差し出す。

 

フラン「・・・・・・うん。」スッ

 

フランも手を伸ばし、手と手が結ばれる。

途端、精神世界は眩い光によってつつまれた。

 

 

 

 

 

 

 

海原「光が・・・・消えていく・・・・・・・。」

 

土御門「テレズマが霧散しているのか?」

 

結標「二人は!?」

 

当麻美琴「・・・・・」スッ

 

グループのメンバーと当麻たちは光の中心へと走っていく。

 

当麻「・・・・・・・一方通行。」

 

そこにはしっかりと抱き合う白い少年と紅い少女がいた。




最後まで見ていただき、ありがとうございました!!
学園都市編は次で終わりかもしれません。
また楽しみにしていてください!!

次回 、第二十一話「鼓動」

             次回もお楽しみに!!


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第二十一話 鼓動

当麻「・・・・・・・・・一方通行。」ボソッ

 

一方通行は激闘の末、見事妹達(シスターズ)とフランを無事に救い出した。

誰も犠牲にすることはなく、限りなく不可能に近い難題を成し遂げた。

だが、危機は去ってはいなかった・・・・・・・・。

 

土御門「カミやん!!ボーっとすんな!!まだ終わってないぞ!!」

 

当麻「・・・・!!」ハッ!

 

土御門の声で当麻は我に返った。

一方通行は今もあらゆる所から流血し続けている。

出血性ショックで死んでいてもおかしくはないはずなのに、気力で命をつないでいた。

だが、刻一刻と彼の命のタイムリミットは迫ってきている。

 

海原「とりあえず圧迫止血しましょう!少なくとも今よりは出血を止められる。」ギュッ

 

海原はハンカチを一方通行の傷に押し当て、止血を試みる。

 

当麻「とにかく!病院に連絡を・・・・・!」スッ

 

土御門「やめろカミやん!!一方通行とフランドールは今、この世界に存在していないことになってるんだ!病院なんかに引き渡してみろ、一方通行はともかくフランドールはいいモルモットだぞ!」

 

当麻「そこは大丈夫だ。俺の知り合いにカエルみたいな顔した医者がいてな、妹達も保護してくれているぐらいだからそこに運べば・・・・・・」ピッピッ プルルルr・・・・

 

結標「だけどこの傷よ?そんじゃそこらの医者に救えるの?」

 

土御門「・・・・多分問題ないと思う。俺の予想が正しければその医者は冥途返し(ヘブンキャンセラー)だ。」

 

海原「冥途返し(ヘブンキャンセラー)?」

 

土御門「ああ。不可能といわれたどんなケガや病気でも治してしまうといわれている究極の外科医だ。瀕死の患者を次々と蘇らせていく様子から、冥途返しと呼ばれるようになった。放棄された妹達が無事に生きていることから多分、彼が調整をしているのだろう。あそこならアレイスターの手も届かないハズだ。」

 

結標「それなら、私の能力で・・・・!」

 

土御門「待て!向こうにも準備がある。早く搬送できても準備できてなきゃ意味がない。」

 

結標「ならどうするの!?このまま一方通行が死に腐るのを見ていろっていうの!?」

 

土御門「・・・・全員で一方通行の止血をするんだ。今は、それしかできない。」

 

結標「っ!わかったわ・・・・・・・・ほら!アンタも手伝いなさい!!」グィッ!

 

美琴「・・・・・・・ぁ・・・・。」グラッ

 

美琴は放心状態だった。

一方通行が、あの男が妹達を助けた?二度も?それにたった1人の子供を助けるためにあんなになってまで戦った??

信じられない。

あの男は一方通行は絶対能力進化計画で妹達を楽しんで殺したクズ野郎じゃないの?

 

未だに目の前の事実を信じることが出来なかった。

だが、彼は現に死の淵をさまよい続けている。

 

妹達やフランのために死ね。

 

そう言われれば彼は喜んで自身の命を差し出すだろう。

美琴は困惑すると共にそうとも思うようになった。

フランの言った通り本当に贖罪の為に戦ったのだとしたら、自分たちのやったことは到底許されていいものではない。

美琴は結標の手を払いのけるとタオルを取り出し止血を始める。

 

美琴「アンタ、死ぬんじゃないわよ。聞きたいことも、言いたいことも、それに・・・・・・・謝りたいんだから。」グッ!

 

海原「脈が弱まってます!このままだと心停止します!!」

 

土御門「クソ!カミやんはまだか!!??」

 

土御門は電話をしている当麻の方を見る。

 

当麻「・・・はい・・・・・はい・・・・・わかりました!」

 

当麻「今すぐにでも受け入れ可能だ!!」

 

土御門「よし!結標!!座標移動(ムーブポイント)だ!!」

 

結標「任せなさい!!」スッ

 

結標は待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。

 

結標「私は飛べないからアンタたちに任せるわよ。」

 

土御門「ああ、それじゃあ頼む。」

 

土御門の言葉に首肯し、結標は演算を始める。

 

中央制御室から6人の姿が消えた。

 

結標(彼、もうダメかもしれないわね・・・・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜永遠亭

 

現在、幻想郷では厳戒態勢が敷かれ、霊夢は博麗大結界の直接制御、人里の人間は博麗神社の境内へ避難、その他は奇襲にも対応出来るよう戦闘用意をしていた。

しかし、準備をしていない妖怪たちがいた。

大切な家族の帰りを待つ、紅魔一家だ。

彼女らは一方通行とフランが気にかかって準備どころではなかった。

紫が持ってきた陰陽玉から映し出される学園都市の様子を食い入るように見ていた。

 

咲夜「一方通行たちが消えた!?」

 

レミリア「・・・・・もう見てられない。私も行かせてもらうわ!」

 

パチュリー「待ちなさいレミィ!第一、どうやって行くつもり!?」

 

レミリア「どうやってもよ!」

 

咲夜「ですがお嬢様、スキマ妖怪でないと向こうへいけませんよ?」

 

レミリア「どうやってもと言ったでしょう?どこにいたって見つけ出して痛めつけてでも行かせてもらうわ。」スッ

 

永琳「落ち着きなさい、レミリア嬢。」

 

レミリア「永琳・・・・!」

 

永琳は外へ飛び出そうとしたレミリアを制止する。

 

永琳「もう大丈夫、心配ないわ。」

 

レミリア「どうしてそんなことが言えるの?」

 

永琳「一方通行たちが運ばれたのは恐らく第七学区にある病院。・・・・・・かつて私が務めていた場所よ。」

                 

咲夜「第・・七学区・・・・ですか?」

 

永琳「学園都市の地区の一つよ。そこの病院には私の知り合いの医者がいてね、顔がカエルそっくりだから貫禄がないけど腕だけは確かよ。専門医のライセンスと叩き上げの外科のスキル。手術においては私に引けを取らないわ。」

 

パチュリー「あなたにそれほど言わせるのなら問題なさそうね。・・・・ほらレミィ、部屋に戻りましょう。」

 

レミリア「だけど、もしあの病院が襲われたらどうするの?そんなことになったら医者は何もできないわよ。」

 

永琳「大丈夫よ、統括理事会もそうそうあの病院に手を出したりしないわ。」

 

レミリア「何故それが言えるの?」

 

永琳「さっき話したカエル顔の医者ね、実は学園都市の一番偉い人間の命を救ってるの。・・・・・・ある条件を出して。」

 

咲夜「ある条件・・・・・?」

 

永琳「学園都市ができるずっと前、あの病院で私は彼の下で働いていたの。丁度勤務して三年になるところかしら・・・・・。とある急患が運ばれてきた。」

 

パチュリー「それが今の学園都市のトップ・・・・・。」

 

レミリア「・・・・・・・。」

 

永琳「そう、だけど彼・・・アレイスターは人間のはずなのに何か違った・・・・・一目見てそう思ったわ。」

 

レミリア「人間なのに人間じゃない?どういうことよ??」

 

永琳「異能の力を持った者であることは間違いないのだけれど、どう考えても普通の人間とは気配が異なっていたの。」

 

レミリア「妖怪?珍しくはないじゃない?」

 

永琳「いいえ、あの世界ではまだ異能の力が存在してはいけない場所だった。何人も診てきたけどあんな人間は初めてだった。」

 

永琳はアレイスターが運ばれてきた当時を思い出した。

急患だというので搬入口に行ったがその男の姿を見て驚いた。

男とも女とも子供とも老人ともとれるその雰囲気。

そしてこの男から漏れだす力・・・・魔力。

 

永琳「その男からは魔力があふれ出していた。そして私の記憶が正しければ術式は恐らくテレズマを利用したMagick系魔術。1904年から始まる新時代(ホルスの時代)ではこの体系が支配すると言われていた。だけどその中でもイシスの時代やオシリスの時代などの古い魔術とは明確に区別されていて、それよりも古いものを感じた・・・・・・・・。」

 

パチュリー「ピタゴラスの時代・・・・・・ってこと?」

 

永琳「そうなるわね、だけどそんな古い魔術が形も変えず、こんなきれいに残ってると思う?」

 

パチュリー「・・・・・!まさか!!」

 

永琳「ええ、おそらくは・・・・。」

 

パチュリーと永琳は額に汗を流す。

 

レミリア「ねぇ、二人で納得してないで私にもわかるように言ってよ!」

 

パチュリー「簡単に言うと、学園都市のトップは私達よりもさらに先に生まれているってことよ。」

 

レミリア「それがどうしたのよ、私達より長く生きてる者なんかごろごろいるわ。」

 

永琳「よく思い出してみなさい、人間の寿命は大体何歳?」

 

レミリア「よく生きて100歳・・・・・あっ!」

 

永琳「そういうことよ、アレイスター=クロウリーは1000年以上も生きている。」

 

咲夜「そんなまさか!?」

 

永琳「・・・・・・・話が飛んだわね、で瀕死の状態で運ばれてきたアレイスターを当然彼は助けようとしたわ・・・・だけど私は反対した。」

 

レミリア「まぁ当然ね。そんな危険なモノ、生き返らせたら大変なことになるもの。」

 

永琳「そう、彼は私の話を全て信じてくれた。けど、信じたうえで彼はアレイスターを助けることに決めたの。」

 

レミリア「なんでよ?」

 

永琳「助かるために戦っている患者がいるからだ・・・・って。」

 

咲夜「医者の鑑ですわね。」

 

永琳「助けるにしても病状は原因不明。生命維持装置がないと生きていけない身体だった。」

 

レミリア「じゃあ今どうやって生きてるの?病院にいるわけじゃないんでしょ?」

 

永琳「できないことをやってみるのが彼の性分でね、工学を学んでただけあって病院外でも設置しておけるビーカー型の生命維持装置を造ったの。」

 

パチュリー「まるで科学の魔術師ね。」

 

永琳「そう、そこで科学に目を付けたアレイスターは科学によって異能の力を作り出そうとした。」

 

咲夜「でもどうしてですかね、なんで魔術があるのに科学による異能の力なんかを?」

 

永琳「カエル顔の医者から聞いた話なんだけど、どうやら彼は魔術を討ち滅ぼしたいらしいわ。・・・・理由はわからないけどね。」

 

パチュリー「それでその病院の周りに学園都市を作り上げたと。」

 

永琳「そうよ、学生たちは能力開発カリキュラムを受けてどんどん能力を発現させていった。」

 

レミリア「一方通行もそうして能力を発現させたのね。」

 

永琳「それは違うわ。」

 

パチュリー「違うってどういうことですか?」

 

永琳「彼は通常のカリキュラムを受けていないっていうことよ。」

 

レミリア「どういうこと?」

 

永琳「彼は不特定多数の研究者からいろんな実験をされて、今の能力を発現させたの。」

 

咲夜「なんで彼なんですか?」

 

永琳「彼には人よりもとある才能が秀でていた。ただそれだけよ。」

 

パチュリー「『計算能力』ね。」

 

永琳「そう、学園都市の能力者は演算して能力を発動する。その過程で必須となる計算能力。それが人より秀ででいるのは研究者たちが黙っているわけないからね。」

 

永琳は一息おいて再び話を続けた。

 

永琳「結果、数えきれないほど脳をいじくり回され、彼の精神は歪んでいき、能力も不安定だった。だけど最後に彼に関わった研究者の腕が良かったのでしょうね。彼の演算能力と能力を安定させ、学園都市最強の能力、『一方通行(アクセラレータ)』を完成させた。」

 

レミリア「ひどい・・・・・。」

 

永琳「彼は成功例だからだ良い方よ・・・・・・特力研に横たわっていた子たちを見たときは・・・・・・・・。」

 

永琳は悲惨な顔をした。

 

永琳「・・・・・そこで、そのことを知ったカエル顔の医者は自分の患者にだけは手を出すなと条件を出した。でなければ生命維持装置を停止させると脅しをかけてね。だから、彼の患者になってしまえば一方通行達は大丈夫なはずよ。」

 

レミリア「・・・・・・こんなこと聞いてよかったのかわからないけどとりあえずは信用するわ。」

 

パチュリー「一方通行が学園都市に一人で向かったフランを必死になって追いかけたのもわかるわね・・・・。」

 

咲夜「おまけにクローンまで・・・・・・。」

 

永琳「だから無暗に向こうへ行けば無事に帰ってこれるかわからないし、一方通行がどんな顔するかわからないわよ。」

 

レミリア「もどかしいけど待つしかないわね・・・・・・・。」

 

永遠亭に重い空気が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~窓のないビル

 

窓のないビルの深層部、巨大なビーカーの中に逆さに浮かぶ男がいた。

 

アレイスター「ふむ、一方通行は命を取り留めたか・・・・。おおむね計画通りだな。

だが、フランドール・スカーレットは大きなイレギュラーだ。それにアレがいると一方通行はここではない世界へと帰ってしまう。プランがかなり前倒しになるが、そろそろ使い時か・・・・・・・・。」

 

???「そうはさせないわよ。」

 

部屋の暗い部分から足音とともに女の声が聞こえてきた。

 

アレイスター「・・・・・・誰だ?」

 

紫「一方通行とフランドール・スカーレットを・・・・・・私の世界の住人を傷つけることはこの私が許しません。」コツコツ・・・

 

アレイスター「お前は誰かと聞いている。」

 

紫「そうね・・・・・幻想郷の統括理事長とでも言っておきましょうか。」

 

アレイスター「・・・名乗るつもりはないようだな。まあいい、それで幻想郷とやらのトップがこの私になんの用だ?」

 

紫「さっきも言った通り、あの子たちにこれ以上危害を加えないよう忠告に来たの。」

 

アレイスター「忠告?ハハハ・・・・面白いことを言う者だ、この私に対して。お前は私が誰だかわかっているのか?」

 

紫「馬鹿にしないでちょうだい。私はあなたが生まれるもっと前から生きているのよ。」

 

アレイスター「・・・・・・・・ほう?」

 

二人の間に重苦しい空気が流れ始める。

 

紫「学園都市の統括理事会理事長、アレイスター=クロウリー。そして・・・・・・・・・・。」

 

紫はビーカーのような生命維持装置にもたれかかり続ける。

 

紫「黄金の魔術師、アレイスター=クロウリー。」

 

アレイスター「どうやらお前の言っていることは本当のようだな。それに、姿形は人間でも、お前は人間ではない。」

 

紫「あら、洞察力が高いのね。私からあふれ出す力に気が付くとは・・・・。」

 

アレイスター「フランドール・スカーレットを見ていてわかった。お前たちの世界には人外なるものが存在していると。」

 

紫「あの子たちの戦いを見ていたわけね。」

 

アレイスター「超能力者とはいえ人間を吸血鬼化させる能力。・・・・実に興味深い。」

 

紫「そうやって、いろんな人間を実験動物(モルモット)にしてきたわけね。」

 

アレイスター「汝の欲する事を為せ。それが汝の法とならん。」

 

紫「随分と自分勝手な思想ね。だけど面白い・・・・・・。」

 

アレイスター「驚いたな。お前は上条当麻みたいな者だと思っていたが。」

 

紫「・・・・・・で、返事は?」

 

アレイスター「NOと言ったら?」

 

紫「この生命維持装置を地球の裏側・・・・いえ、太陽系の外へほっぽり出すわ。それだけじゃないってのは言わずともわかるわね?」ゴゴゴ・・・

 

紫は今までの軽い調子から一変、幻想郷最強格の重厚な気迫を醸し出した。

 

アレイスター「・・・・私としても一方通行を失うのはプランに大きな影響が出る。もう止める段階は過ぎている。」

 

紫「でも、一方通行は一度この世界から消えたわ。まさか計画を諦めたわけではないのでしょう?」

 

アレイスター「当然だ。私がこの計画を諦めることはない。」

 

紫「なら、代替案も考えていたはずでしょう。なら、一方通行は存在しなかったことにしなさい。」

 

アレイスター「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

紫の言葉にアレイスターは押し黙る。彼にとっては一方通行は計画の要の一つ。そうそうに手放せるものではない。だが、この女を敵に回すとこのビルどころか学園都市全体を滅ぼしかねない。

アレイスターは迷っていた。だが、選択の時間は紫がビーカーから離れたことによって終了した。

 

紫「さあ、どうするの?」

 

アレイスター「・・・・・・・・・わかった。一方通行及びフランドール・スカーレットには手を出さないでおこう。」

 

紫「賢明な判断ね。」

 

アレイスター「それに摘んでおこうと思っていたが、新しい可能性も芽生え始めていることであるしな・・・・・。」

 

紫「私はあの二人が無事に帰ってくるなら何も口は出さないわ。交渉は成立ね。」

 

アレイスター「ほぼ脅しだったがな。」

 

紫「あら?美女のお願いは聞けなくって?」

 

アレイスター「年m「何か言ったか?」・・・何も。」

 

紫「フフフ・・・・・じゃあね。統括理事長さん。」ニコッ

 

紫は暗闇の中へ消えていった。

 

アレイスター「・・・・・・・・この交渉私に得無くね?」

 

アレイスターは自分に利益がないことを今更ながらに気づいたが遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラカラカラカラ!!!!!!!!

 

冥途返し「急ぐんだね!!心拍が弱まってる!!」

 

ナース「オペ室、確保できました!三番です!!」

 

冥途返し「ああ、わかった!君は患者(クランケ)の血液型判定を!!」

 

ナース「了解!!」ダッ!

 

美琴「あたしたちは?」

 

冥途返し「君たちにできることは何もないんだね!悪いが邪魔しないでくれ!!」

 

美琴「っ!!」

 

その場にいた者たちはただただ搬送されていく一方通行を見届けるしかなかった。

 

当麻「なぁ・・・・」

 

美琴「・・・・・わかってるわよ。」

 

二人は自分の犯した取り返しのつかない罪と無力さを痛感した。

 

看護師「ねぇ、君たち。」

 

唐突に看護師から声をかけられ、一同は看護師の方を向く。

 

看護師「女の子の方は目立った傷もないし、バイタルも正常だからあの子の病室にいてくれてもいいわよ。」

 

当麻「で、でも・・・・。」

 

看護師「あの子の知り合いなんでしょ?目覚めた時に病室に1人だと不安だろうから行ってあげなさいな。」

 

当麻・美琴「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

土御門「・・・・・・・カミやん。」

 

土御門は当麻を促すとフランの病室へ向かった。

それに続くように美琴もついていった。

 

土御門「カミやん、超電磁砲。」

 

唐突に土御門は2人に話しかける。

 

土御門「あの子はお前たちを恨んでいるはずだ。」

 

なにをそんな当たり前のことを?

と言わんばかりに2人は土御門を見る。

 

土御門「だが、あの子はお前たちを許すんじゃないかと思うんだ。」

 

当麻「・・・・なんでだよ?」

 

美琴「フランにとってアイツは大事な・・・家族みたいなものでしょ?それを死ぬ寸前まで追い詰めたアタシたちを許すはずがないじゃない。アタシだって妹達を殺された時に同じことを思ったもん。」

 

土御門「そうだな。だが、それは一方通行が死んだときに言えることだ。妹達と違って今回アイツは死んでない。」

 

美琴「だけど、あんな傷・・・・・死んじゃうかもしれないのよ!」

 

土御門「あの医者を誰だと思ってる。お前たちも知ってるだろ?一方通行は絶対に助かる。だから、お前たちがやるべき事は一方通行と同じだ。」

 

3人はフランの病室の前で立ち止まる。

 

当麻「2人に謝って謝って・・・・死ぬほど謝って、そして犯した罪の分払い続ける。だろ?」

 

土御門「そうだ。お前たちの罪はまだ取り返しがつく。だからそんなふうに考えることを放棄してちゃダメなんだぜ。」フッ

 

土御門は2人に笑いかける。

 

当麻「あぁ、その通りだ。」

 

当麻と美琴は病室の戸を開けて入っていった。

 

 

 

 

 

集中治療室〜

 

ナース「血液鑑定、終了しました!・・・・・が、」

 

冥土帰し「どうしたんだね?」スッ

 

冥土帰しはナースから資料を取り上げる。

 

冥土帰し「・・・・・?!」

 

ナース「機械の故障でしょうか?」

 

冥土帰し「いや、機械の故障だとしても遺伝子構造が異なることなどありえないんだね。」

 

ナース「じゃあ・・・・・・」

 

冥土帰し「・・・・・・あぁ、輸血が出来ない。」

 

ナース「そんな!助けられないんですか!?」

 

冥土帰し「いや、なんとかする。僕は必ず戦いに勝つ!今も患者が独りで戦ってるんだ。諦めるわけにはいかない。」

 

冥土帰しは鉗子を手に取ると止血を開始しようとする。

 

ファン!!ファン!!ファン!!

 

突然バイタルの異常を知らせる警告音が手術室に鳴り響く。

 

冥土帰し「どうしたんだね!?」

 

麻酔科医「血圧、心拍数急上昇!・・・変です!血圧が上がることはありえない!!」

 

第一助手「見てください!!」

 

止血を行っていた医師が冥土帰しを呼び、傷口に指を指す。

 

ジュゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・・・

 

冥土返し「損傷箇所が・・・・・修復されていってる・・・?!」

 

一方通行の傷口から蒸気のようなものが立ち込めている。

そしてそれはゆっくりとではあるが破れた動脈を修復している。

冥土帰しは一瞬驚きを見せたがすぐに冷静さを取り戻した。

肉体再生を扱う能力者は学園都市ではめずらしくない。

だが血圧、心拍数、及び体温が蒸気を帯びる程上昇することは確認されていない。第一、人間の肉体では耐えきれず死に至るはずだ。

そんな考えがよぎったが、今は治療に集中しようと己に言い聞かせる。

 

冥土返し「これは下手にいじくり回さない方がいいかもしれないね。第一助手、縫合を頼めるかい?」

 

助手「よ、よいのですか?」

 

冥土帰し「能力による肉体再生に並行してオペしてもいいが、それはメスを入れなければならない緊急時だけなんだね。今の彼はゆっくりとだが回復し、致命傷を回避している。自然に回復するならその方が体力的に有利になるんだよ。」

 

助手「・・・・・分かりました。」

 

冥土帰し「閉じるのは皮膚から皮下脂肪までにしておいてくれ。いくら肉体的に再生しているとはいえ、彼はまだ瀕死の状態だ。再生を妨げることはなるべく避けたい。」

 

冥土帰しはそう言うとゴミ箱に手袋を投げ捨て、手術室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・そう。」

 

朝日が昇る中、カーテンで陽の光を遮られた部屋には宝石のような翼を輝かせる幼い少女がそう呟く。

 

当麻「フラン・・・いきなりお前の大事な人を傷つけて悪かった。」

 

美琴「許してくれだなんて言わないわ。だけど謝罪の言葉だけは言わせて欲しいの。」

 

フラン「あなた達がしたことはとても許せる事じゃない。フランは到底許すことができない。」

 

フランは静かに落ち着いた声で答える。

だがその瞳の奥には燃えたぎる怒りの炎を秘めている。

 

フラン「ミサカミコト。」

 

美琴はその声に顔を上げる。

 

フラン「あの人から聞いたよ。絶対能力進化計画だっけ?あくせられーたが犯した罪。他のも全部。」

 

美琴は妹達の屍の上で狂ったように嗤う一方通行の姿を思いうかべた。

 

フラン「・・・・・・・少しはあの人の気持ちが分かった?」スッ

 

フランは美琴へ息がかかる程に近づき、その紅い瞳で茶色の瞳を覗きこむ。美琴はまるで、心を覗かれているような感覚に陥る。

 

美琴「・・・・えぇ、わかった気がするわ。アタシとアイツじゃ生きてきた世界が違うけど、今ならその気持ちが痛いほどわかる。加害者側になって始めてわかったわ。他人から憎まれる気持ち・・・・・どれほど突き刺さるものか。」

 

フラン「あの人はその気持ちだけじゃないよ。あの人はその心を受け止め、一人で抱え込んで押し潰されそうになってる。だけどそれでもなお、残ったものをこぼさないように掬いつづけている。」

 

当麻「一方通行、変わったんだな・・・・・・。」

 

フラン「変わる前のあの人をフランは知らない。だけどその闇の片鱗を見て、少しわかった気がした。フランもその闇を味わったことがあるから。」

 

当麻・美琴「・・・・・・・・・・・・・。」

 

フラン「あなた達はあの人と同じような罪を犯した。だけどそれを心から悔やんでいる。」

 

フランは言葉を止め、2人を一瞥する。

 

フラン「だから、フランはあなた達を壊さない。あの人だってきっと許すと思うから。」

 

フランはその見た目にそぐわぬ雰囲気を醸し出し、2人にはっきりと告げた。

 

当麻「フラン・・・・すまねぇ。」

 

美琴「本当にごめんなさい・・・・・・・。」

 

フラン「その言葉は本人に伝えなさい!」

 

いつもの子供らしい雰囲気に戻った。

その後、当麻たちはフランに悪いと気を使い部屋を出ようとした。

 

その時、

フラン「待って。」

 

その声に2人は振りむく。

 

フラン「今の話は全部あの人が助かったらの話だよ。もし、助からなかったら・・・・・・・・・・・・」ココココゴ

 

当麻・美琴「・・・・・・・助からなかったら?」

 

フラン「体をかっ捌いてー、腸をソーセージにしてー、お尻の肉はステーキにしてから、血を全部飲んであげる。生きたまま♪♪」

 

フランはどこからか取りだしたナイフとフォークで音を鳴らす。

 

当麻・美琴「」ソソソソソソソ

 

その音に涙目になりながら病室を後にする高校生と中学生だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクン・・・トクン・・・・トクン・・・・・・ドクン・・・・・・・・

 

一方通行「・・・・・・・ハッ!?!?」ガバッ

 

一方通行は見知らぬ町のベンチに寝ていた。

ご丁寧に点滴と酸素マスクもセットだ。

 

一方通行「・・・・どこだァ?ここはァ・・・・・・・・っグ!!」

 

一方通行は胸の痛みに地面に蹲る。

彼は痛みに耐えながらも考えを巡らす。

 

一方通行(確かオレはあのクソヒーローにぶっ飛ばされて・・・・クソッ、そこから先の記憶がねェ。)

 

一方通行は必死に状況を整理する。そして胸にある縫合後を見つめる。

 

一方通行(待てよ、治療を受けたンだったらオレは病院に居なきゃおかしいだろ。それが何故この古臭ェ町のベンチに寝てたンだァ?酸素マスクと点滴と手術痕があることから病院にいたことは確実なンだが・・・・。)

 

一方通行は点滴棒につかまり、なんとか立ち上がると夜の町を見渡す。

 

一方通行(幻想郷かァ?いや、こンな町はないはずだ。この建物の建築方法からみて、明治から大正ってとこかァ・・・・・。しっかしなンでこんな所に・・・・・・・・?)カラカラ

 

人の往来により綺麗に押し固められているが舗装されていない大通りであるから点滴棒を転がすのに苦労しながら歩き出した。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!!!」

 

唐突に近くで女の断末魔のような叫び声が聞こえた。

 

一方通行「!!なンだァ、一体?」

 

一方通行は点滴棒を持ったまま地面を蹴って空へと飛び上がり、声のした方へ向かっていった。




最後までご覧いただきありがとうございました。
最後の話の繋がりが意味不明・・・・・と思われる方もいらっしゃると思いますが次回にて繋がるので楽しみにしていてください。

次回 第二十二話 「羽をもがれた蝶」

次回もお楽しみに!!


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第二十二話 羽をもがれた蝶

月が光り輝く夜空の中、一方通行は下を眺め、何かを探している。

その何かとは先程聞こえた叫び声の主だ。

彼が小さな通りに視線を向けた時、地上に光るものを見つけた。

おそらく、月の光が反射したものだろう。

 

一方通行(鏡か?・・・・いや、)ヒュオオオオオオ

 

一方通行はその場所へと降下してゆく。

 

スタッ!!

 

???「おや?こんな時間にここへ来るなんて・・・もしかして彼女のお仲間かな??」ニコッ

 

一方通行「・・・・・・あァ?」

 

地上に降りたところでかけられた男の声に一方通行は顔を上げる。

 

???「それにしては君、変わった格好してるね。変な棒もってるし、鬼狩りの服はみんな一緒だと思ったんだけど・・・・。」

 

屈託なく笑う男は相変わず笑顔で喋り続ける。

その足元には血まみれの蝶の形の髪留めをした長髪の女が倒れている。

 

一方通行(コイツにやられたのか・・・・・それにこの男、お馴染みの臭いがするぜェ。)

 

いまいち状況が掴めないがひとまず男に向き合う。

 

一方通行「鬼狩りィ?なンのことだ?」

 

???「君のその棒は刀なんだろ?それにしても不思議な格好してるねぇ。」

 

自分の質問に答えず、好き放題喋る男に一方通行はイラついた。

 

一方通行「・・・・・・・さっきから好き放題喋ってンじゃねェぞ。この三下がァ!」グッ

 

傷を負っている上、電極のバッテリーが切れている為、一方通行は空中へ飛び上がろうとする。

 

「・・・早く・・・・・・逃げ・・・・・て・・・・・。」

 

一方通行「あァ!?・・・・・・ッ!!」ズザザザサ!!

 

頭と胸の痛みで演算が精一杯なのにいきなり女に声をかけられ、一方通行は勢い余って転倒する。

 

???「あれぇ?どうしたんだい?さっきはあんな華麗に空を舞っていたのに、急に動きが悪くなったねぇ。」

 

一方通行「るっせェな、クソ野郎・・・・・。」

 

男の足元で伏せる形で倒れていた女が顔を上げ、一方通行の方を見る。

 

(この人、見たことも無い格好をしてるわ。それに異能の力・・・・・・もしかして、この人も・・・!)

 

一方通行「邪魔すンじゃねェ!このアマァァァ!!」

 

(怖っ!やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・・・鬼なのね。)

 

女は一方通行を自分の取り合いに来た鬼と認識した。

 

鬼。主食人間。手足を切り落とそうが何度でも再生する。

強くなれば特殊な異能の力、血鬼術を使う鬼もでてくる。

そんな鬼を倒せるのはは太陽の光、もしくは・・・・・・・

 

(この・・・『日輪刀』のみ!)グググ

 

満身創痍であろうと鬼を滅殺するという心、闘志の炎は消えない。

女は刀を握りしめ、立ち上がろうとする。

 

一方通行「バカか、死ぬぞ。」

 

一方通行はそう吐き捨てた。

別にこの女が死のうが生きようが自分には関係ない。

だが、そんな彼でも目の前で人が死ぬのはいい気がしない。

 

一方通行「死にたくなきゃ、おとなしくしてろ。このナルシ野郎はオレがブチ殺す。」

 

「・・・・!」

 

女は驚いたような顔を見せると立ち上がるのをやめた。

 

???「うーん、よくわかんないけど朝も近いし。獲物を横取りする気なら容赦しないよ。」シャキッ

 

そういうと男は扇のようなものを取り出し、一方通行に切りかかる。

 

一方通行「ッ!(速ェ、人間の動きじゃねェ!肉体操作系の能力者か!?)」

 

男の人間離れしたスピードに一方通行は反応出来なかった。

しかし・・・・・・・

 

ギュイン!!!!

 

その攻撃が一方通行に当たることはない。

なぜなら手負いの状態だろうと彼の反射は健在だからだ。

男の両手はひしゃげたように折れている。

しかし、痛がる様子もない。むしろ楽しそうな顔で笑っている。

 

???「俺の攻撃に反応は出来なかったはず。へぇ、面白い術だね。君、鬼の気配はしないけどそういう便利な血鬼術がつかえるのかい?」

 

一方通行「血鬼術だァ?それがオマエの能力か?」

 

???「おや?知らないのかい??君のその特殊な力血鬼術じゃなきゃ何だって言うんだい?人間がそんな異能の力を使えるわけがない。」

 

一方通行「ひとつだけ教えてやる・・・・・・・・。」ヒュオオオ・・・・

 

一方通行は己の周りに風を発生させ始めた。

 

一方通行「オマエみたいな三下をミンチにする悪党だァ!!!」ニタァ

 

顔面を狂気に歪めながら作り出した竜巻を男に撃ち出す。人間ならばこの攻撃を受ければ彼の言うとおり文字通りのミンチになるだろう。

だが、それはあくまで人間であればの話だ。

 

???「風かぁ、いやーすごいね。俺の血鬼術が遅れていたら君がいった通りになってたよ。」

 

一方通行(空気を凍らせやがった・・・!)チッ

 

一方通行の周りには男に向かって伸びる竜巻の形をした氷像が残っていた。 この男は氷を操るのか・・・・・・。

そう考えた一方通行は男に近づくのをやめた。

なぜなら空気中の水分を肺で凍らされたら、いくら一方通行でも対処が困難になる。ましてや今の状態では即、戦闘不能に陥る。

そう仮定する。

 

???「じゃあこんなのはどうかな?」シャキッ

 

男は扇を構えた。一方通行はとっさに身構える。

 

???「・・・・・・・・・と言いたいところだけど。」

 

男は攻撃を中止する。

突然の男の言葉に一方通行は思わずきょとんとしてしまう。

 

???「そろそろ夜明けだ、残念だけどここまでだよ。これ以上ここにいたら俺が死んでしまうからね。」

 

そういうと男は扇を懐にしまい込む。

 

???「君ほど面白い人間は初めて見たよ。いつかまた会おう、その時は俺が食べてあげるからね。」スッ

 

一方通行「逃がすと思うかよォ!!!!」ダァン

 

一方通行は地面を蹴り、地割れを起こすことによって男を埋めようとしたが土埃が晴れた時、そこに男はいなかった。

 

一方通行「・・・・・・・・チッ。」カラカラカラ

 

一方通行は女を放置して立ち去ろうとする。

 

「ま・・・まって・・・・・・。」

 

その言葉に彼は立ち止まる。

 

一方通行「・・・・・・なンだ?」

 

「・・・あなた・・くっ…、人間?」

 

一方通行「はァ?見りゃわかンだろ、人間だ。」

 

「その特別な力・・・・血鬼・・術かと思・・・ったけど・・・」

 

一方通行「血鬼術?知らねェな。それよりオマエ、死ぬのが怖くねェのかよ?」

 

「怖くないって・・・言えば・・・嘘になる。だけど私は・・・・鬼殺隊に入った・・時に覚悟してる・・・・・それに・・・・・・・・」

 

女は一方通行の背中を見上げる。

 

「私の後を継いでくれる・・・立派な妹たちが・・・・いるから。」

 

一方通行「・・・・・・・・・・・。」

 

女は涙を流す。

 

「だけどね・・・あの子たちには・・・・普通の女の子として・・幸せに暮らしてもらいたい・・・・・・。だけど私が死んだら・・・・・あの子たちが・・アイツを追って・・・・・・。」ポロポロ

 

一方通行は女の話を黙って聞いていた。

妹・・・・・。その言葉で妹達(シスターズ)、打ち止めを思い出した。そしてフランの事も。

 

「だからお願い。・・・・・あなたのその力・・鬼を倒せる刃になると思うの。あの哀・・れな鬼を・・・救うこ・・も・・・・・・」ポロポロ

 

一方通行「興味ねェし、やらねェ。そもそもオレには関係ねェ。勧誘なら他当たれ。」カラカラカラ

 

一方通行はフランのいる学園都市が気にかかるし、なにより傷の痛みで意識が飛びそうなので早く元の時代へ帰りたかった。

それに、オカルトなどは信じないが、ここでこの女の言う通りにしてしまったら歴史が変わってしまうかもしれないと懸念した。

自分でも心底バカだと思ったが・・・・・・・。

 

「・・・うっ・・・・ううっ・・・・・・グスッ・・・・・。」

 

背後で女がすすり泣く音が聞こえる。

 

当麻(妹達だって精一杯生きてんだよ!!)

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・。」カラカラカラ

 

当麻(何だって・・・・お前みたいな奴に殺されなきゃなんねぇんだ!)

 

そうだ、なぜあンなヤツなんかに奪われなきゃなンねェ?

この女はなンにも悪いこと、してねェンだろ?

自分と同じような悪党が善良な者の命を奪う?

 

 

 

ふざけンじゃねェ。

 

そンなこと、許されるわけねェンだ。

だから、あのガキたちを守ってンだろォが。

 

一方通行(もう一度、やり直すことが出来るのか?・・・・・・・・・あのヒーローみてェに・・・・・・・・・。)ピタ

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・チッ。」クルッ

 

 

「・・・・ごめん・・ね・・・・・・・ごめんね・・・・・・」ポロポロ

 

グルッ!

 

突然、うつ伏せ状態から仰向けにされた。

 

「キャッ!」

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・。」

 

あの白髪の人が立っていた。

綺麗な目・・・・・・。男かな?それとも女かしら?

それにしても・・・・寒いな・・・・・・・・・・。

 

そんなことを考えていると白髪の人はしゃがみこみ、自分の傷口に指を入れてきた。

 

「ぐっ!・・・・・な・・・何を・・・・!?」

 

一方通行「喋ンな、大人しくしてろ。」

 

お腹でこの人の指が動いているのが分かる。

不思議と痛くない。もう、痛みを感じない程弱っちゃったのかしら?

それに・・・・・・・・・・。

 

「・・・・あたた・・かい・・・・。」

 

一方通行「黙ってろって言ってンだろォが。」

 

一方通行は女の破れた血管を繋いでいた。

自分も満身創痍で頭と胸は相変わず痛い。

少し気を抜けば自分は意識を失い、この女を殺してしまう。

 

一方通行(前もこンなことあったな・・・・・。確か・・・あのアホ毛のガキのウイルスを駆除したときだっけか?あん時は駆除しきる寸前で天井に脳を弾かれたンだったなァ・・・・・。我ながら甘い選択をしたぜェ。)

 

もうすぐ繋ぎ終わる。

女の顔色が微かによくなっている。

 

一方通行(おかげさまで危うく、くたばるとこだった。)スッ

 

一方通行は指を離す。

 

「な、何をしたの?」

 

一方通行「破れた血管を繋いだ。ただそれだけだ。だが、血は足りねェ、このままだとくたばっちまうだろォな。」ブチッ!

 

一方通行は自分に着いている点滴の針を強引に抜くと、点滴棒を投げ捨てた。

 

一方通行「羽織が邪魔だァ。悪ィがここに置いてくぞ。」ヒュオオオオオオ

 

一方通行はそのままでは立てないので、背中に竜巻を発生させ、女を抱き上げた。

 

「えっ?!えっ?!なに!?!?」

 

一方通行「・・・・・・・瀕死の割には元気じゃねェか。」ドオオォ!

 

一方通行は一気に上昇し、朝日が昇る空へと飛びたった。

 

「姉さぁぁぁぁん!!!!!!」

 

地上から少女の声が聞こえた。

 

「しのぶだわ!降ろして!!」

 

一方通行「バカ言うな、オマエを病院に送るのが先だ。」ヒュオオオオオオ

 

一方通行は構わず飛び続ける。

 

「姉さんを・・・・!返せぇぇぇぇ!!!!」ダァン!

 

少女は屋根を走り追いかけて来ている。

 

一方通行「どうやら、一緒に来てくれるそォだぜ。」ヒュオオオオオオ

 

「あらあら・・・・・・。」

 

一方通行「オマエ、この辺りに詳しいか?」

 

「診療所なら来る時寄ったわ。携帯用の医薬品が欲しくて。」

 

一方通行「案内しろ。」

 

一方通行は女の指示通り、病院へ向かった。

・・・・・・・・・地上に少女を連れて。

 

「見えたわ、あそこよ。」

 

女が指を指す方向にそれらしき建物が見えた。

一方通行はスピードを上げ、到着を目前にしたところで・・・・・・・

 

視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~二時間程前

 

ブツン!ウィィィィィン!

 

手術中のランプが消え、出てきたのは冥土帰しだった。

彼は先程一方通行に起こった出来事を考えるのに夢中だ。

だから、自分を呼ぶ小さな少女の声など聞こえていなかった。

 

フラン「おじさん!ねぇ、おじさんってば!!」グイッ!

 

冥土帰し「おっと!すまない・・・・・おや、目覚めたんだね??」

 

フラン「おじさん!あの人はどこ?」ソワソワ

 

心配でソワソワしているのだろう。冥土帰しはしゃがみ、フランと同じ目線まで合わせると彼女に告げた。

 

冥土帰し「もう大丈夫なんだね。あの子のことは心配ないんだよ。」ニコ

 

冥土帰しはフランの頭を撫でる。

 

冥土帰し「学園都市第一位の名は飾りではなかったんだね。まさか、自分で致命傷を修復してしまうとは流石の私も驚かされたんだよ。」

 

フラン「あくせられーた、自分で治しちゃったの?!」

 

冥土帰し「その通りだよ。意識がない状態でなおかつ力を使い続けた。彼、肉体操作の能力でもあったみたいだね。メスを入れようとした途端肉体から蒸気のようなものが発生してね、瞬く間に致命傷を治してしまったんだね。」

 

フラン「・・・・・・!それって」

 

当麻「なんでもアリだなベクトル操作。」ポリポリ

 

美琴「でも、ホントに助かって良かったわ」ハァ

 

冥土帰し「君たち、そんなに彼のことが心配だったんだね。いやはや、彼も恵まれてるねぇ。」

 

フラン「うんっ!!♪♪」ニカッ

 

当麻・美琴「はい・・・・(一方通行が死んでたら食われてた・・・・)」:( ;´꒳`;):

 

冥土帰し「おや、グラサンかけた子達はいないのかい?」

 

当麻「そういえば!」

 

美琴「どこへいったのかしら?」

 

フラン「なに?だれだれ??」

 

当麻「俺の同級生と・・・・・」

 

美琴「ストーカーとショタコン女ね。」

 

フラン「わぉ・・・・・・・・(なんなすごいメンツ)」

 

ピコン~♪♪

 

当麻「?メールだ。」カパッ

 

from:土御門

to:上条当麻

件名:俺たちゃ先帰ってるぜ

 

『悪ぃなカミやん!俺たち仕事があるからさー、おいとまさせていただくにゃー。結果はあえて聞かないぜぃ!冥土帰しの事だ、絶対に治してくれるからな。一方通行は無事助かっただろ??

 

それと、フランにはちゃんと謝れたか?

仮にもあいつの大事な人を傷つけたんだ。折り合いはつけろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追伸(ココ重要!)

あのロリっ子、メイド服絶対似合 』ガチャン!!!!!!

 

当麻「ハァー・・・・ハァー・・・・・。」

 

美琴「どうしたのよ?」

 

当麻「なんでもない!ホントなんでもないから!!」スッ

 

美琴「怪しいわね・・・・・。見せなさいよ」グィッ!

 

当麻「ちょっ?!?!」

 

フラン「フランが命ずる!ミコト、トウマからそれを奪い取れ〜!!」

 

美琴「Yes、MAM!!」グググググググ

 

当麻「なんで従順な犬みたいになってんだ!!・・・・・っておい!やめろ、噛み付くな!!」イデデデデデデ!!

 

「ミサカもミサカも面白そうなことに参加してみたりぃ〜」ヒョイ

 

当麻「あっ!ちょっと待て!!」ガシッ

 

打ち止め「待てと言われてまつミサカはいないのだ〜!ってミサカはミサカはフランちゃんにパス!」ポイッ

 

当麻「おいコラ!」

 

冥土帰し「コラコラ病院では静かにせんか。」

 

フラン「ナイスキャッチ!だけどフランは使い方わかんないからミコトに流れるような華麗なパス〜♪♪」ポイッ

 

美琴「ナイスパス!さてさて、何が書いてあるのかしらー??」カパッ

 

美琴は当麻から奪い取った携帯のメールを眺める。

 

美琴「なんだ、普通の内容じゃない。?まだ下がある?・・・・・・・・・・~~~~~~~~~ッ!!!!」ガチャン!

 

美琴は当麻と全く同じような動作で携帯を閉じた。

 

美琴「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

当麻「あの・・・・・・御坂さん?」オソルオソル

 

美琴「・・・・・・・・・・・ア〜ン〜タ〜はぁ〜・・・!!」ビリッ

 

美琴が肩を震わせながら帯電する。こうなったらどうなるか当麻はよくわかっている。

 

当麻「・・・・・・・・フランさん、ミニミサカさん助けていただけないでせうか?」

 

当麻のその問いに二人の幼女は顔を見合せた後、彼に満面の笑顔を向ける。

 

フラン「よくわかんないけどじょーじょーしゃくりょーの余地なし!」

 

打ち止め「あなたには悪いけど、お姉様の力を見てみたいかも!ってミサカはミサカはワクワクしてみたり!」

 

当麻「嗚呼、ここには天使はいないのか・・・・・。」

 

フラン・打ち止め「地獄をあなたに♪ HELL(ヘル) 2U(トゥーユー)!!」ニカッ

 

当麻「」

 

美琴「この・・・・・・・ロリコンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」バチバチバチィ!!!!

 

冥土帰し「いかん!誰か彼女を止めてくれ!!」

 

こうして手術室前のやり取りは上条さん、数名の看護師及びカエルの丸焼きが完成したところで幕を閉じた。

ちなみに御坂さんは後ほどジャッジメントの方々にこっぴどく叱られたそうな。

そして一方さんは・・・・・・・・・・・・手術室に放置されていた。

 

ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・

 

一方通行「・・・・・・・・」スゥ...スゥ...

 

ギュォォォォン・・・・・・・

 

一方通行の周りに異空間が開く。

意識のない一方通行は為す術なくそれに吸い込まれていく。

医療機器ごと・・・・・・・。

 

 

 

 

~スキマ世界

 

紫「なんとかスキマ世界に移すことには成功したようね。」

 

スキマ世界で揺らめくのは妖怪の賢者において幻想郷の管理者、八雲紫である。

 

紫「どこの誰ともしれない馬の骨にあの子を任せられるものですか」

 

紫は一方通行が学園都市で治療されるのをよく思っていなかった。

アレイスターには釘を刺しておいたので一方通行とフランに手を出すことはないと思うが万が一ということもある。

 

紫「さて、と。急いで永遠亭に・・・・・・!」

 

その時だった。

 

紫「なにこれ?!スキマが・・・・っ!!」

 

突然制御できていたはずの異空間が歪みはじめた。

 

紫「アレイスター・・・・・あの子を逃がさないつもりね!」

 

恐らく何らかのジャミング攻撃。学園都市には能力を封じる機械があると聞く。学園都市でスキマを使った時に解析されたのだろう。

 

紫「あのビルで力を使ったのが不味かったか・・・・・。」

 

紫は一方通行を確保しようと接近する。

 

紫「!歪みが・・・・・!!」

 

一方通行はぐにゃりと歪んだ異空間の渦へ吸い込まれていった。

 

紫「少なくとも学園都市から離れた所に・・・・・!」グググ

 

紫は拳を握りしめ、自分に宿る全能力を使って操作した。

適当ではあるができるだけ学園都市から離れた世界線へ。

それだけを考え、歪んだスキマを操作していく。

それが彼女に出来る最大の努力だった。

 

紫「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

紫は歪み、崩壊していくスキマ世界の中で考えている。

 

紫「・・・・・・・・・とりあえず、私も出ないと。」

 

紫は壊れゆくスキマ世界を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です!オペ室にいた少年がいません!!」

 

病院内に看護師の声が響く。

 

冥土帰し「馬鹿な!入口はここしかない!!出ることなど出来んはずだ!!」

 

当麻「能力を使ったとかは?」

 

冥土帰し「手術室にはAIMジャマーが仕掛けてある。不可能だ。」

 

美琴「確かに手術室前だけど少し演算しにくかったわ。」

 

冥土帰し「患者はまだ院内にいるかもしれん。探しなさい!!」

 

看護師「り、了解しました!」ダッ

 

当麻「俺たちも探すぞ!」

 

美琴「ええ!!」ダッ

 

フラン「待って!!」

 

探しに行こうとする当麻たちを制止したのは1番心配であるはずのフランである。

 

フラン「あの人ならきっと大丈夫。・・・多分迎えが来ただけだから」

 

その言葉に一同は驚愕する。

 

当麻「迎えが来たってお前・・・・・!」

 

美琴「死んだって・・・・・!」

 

打ち止め「そんな・・・!ってミサカはミサカはハンカチを・・・・。」スッ

 

当麻たちに迎えはくたばるほうの迎えと捉えさせた。

 

フラン「?なんで死んだことになるの?幻想郷への迎えが来たってことだよ?」

 

美琴「なんだ・・・・・・・」

 

当麻「ビックリさせんなよ・・・・・・・・。」

 

フランを除く一同は心底安堵した。

 

美琴「でも、フランは?一方通行に迎えが来たってことはアンタにも来るはずよね?」

 

フラン「多分、あの人が重傷だからだと思うの。心配した紫が永琳の所へ運んだんだと思う。」

 

冥土帰し「永琳だって!?」

 

冥土帰しの声にフランは肩をビクつかせる。

 

冥土帰し「フランくん、永琳っていうのは八意永琳のことかい?」

 

フラン「うん、そうだけど・・・・・・。」

 

冥土帰し「生きていたのか・・・・・!」

 

当麻「あの〜、話についてけないのですが・・・・・・。」

 

打ち止め「ついてけないどころかミサカ完全に空気。ってミサカはミサカは自己の存在をアピールしてみたり!」

 

冥土帰し「ん?いや、知り合いってだけなんだね。問題ないよ。」

 

当麻「はぁ。」

 

打ち止め「無視なの!?」

 

冥土帰し(この子達がきてから驚かされることばかりなんだね。)

 

打ち止め「おーい!」ピョンピョン

 

冥土帰しは動揺を隠すとすぐにいつもののほほんとしたカエル顔になった。

 

フラン「ねぇ、かえるのおじさん。」

 

冥土帰し「なんだね?」

 

フランは不安そうに冥土帰しの裾を掴む。

 

フラン「もし、もしかしたらの話だけど・・・・・・フランの迎えが遅くなったらどうしよう・・・・・。」

 

当麻「大丈夫だろ、一方通行が連れてかれたとしたらすぐ来るって。」

 

フラン「あの人、どっかの誰かのせいで重症なんだよ?フランにまで手が回らないかもしれない・・・・・。」

 

美琴「うぐっ・・・・・痛いとこ突くわね。」

 

冥土帰し「よく頭が回る子だねぇ。見た目小学生とは思えない。

まぁ、この子の言うことも否定できないんだね。どこで保護するか決めた方がいい。」

 

フラン「フラン、どうすればいいの??」

 

冥土帰し「丁度うちでは君みたいな子をたくさん預かっていてね、良かったらここに留まるかい?」

 

フラン「うん!そうしようかな。」

 

当麻「そうだな、ここにいれば大丈夫かもしれねぇな。」

 

ひとまずフランの処遇は決まった。この病院は量産型能力者計画(レディオノイズ計画)の際に生産された御坂美琴のクローン、妹達(シスターズ)の保護をしている施設であるから学園都市に緊急事態が起こらない限り統括理事会も手を出さない。

 

美琴「じゃあ、お願いできますか?」

 

冥土返し「任せてほしいんだね。この子は彼に引き渡すまで責任をもって預からせてもらうんだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14024号「我々のホストコンピューターともいえる上位個体、もとい打ち止め(ラストオーダー)は一方通行、及びその他の方々によって保護されました。よって、上位個体による上位命令文が中止されたためミサカネットワークは通常稼働します。と、ミサカは報告します。」

 

現在、幻想郷では事態の収拾にあたっていた。死者は出なかったものの、宴会に来ていた妖精や妹達に負傷者が出てしまった。幸いこの場にいたのは能力持ちが多かったので被害は最小限に留めることができた。

しかし、制圧には時間がかかった。上位命令文による支配が解けた後も未知の世界に混乱し、錯乱状態に陥り、暴れだす個体がいたからだ。

 

霊夢「じゃあ、もうあなた達を拘束する必要はないってことね。」

 

14024号「はい、ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」

 

レミリア「ねぇ、ミサカネットワークはそれぞれの個体が得ている情報を共有することができるのよね?」

 

14024号「ミサカネットワークに重大な負荷がかかっていたため、一部の機能は停止していますが、視覚情報、聴覚情報、及び記憶。これらにおいては問題なく機能しています。と、ミサカは復旧の早さを自慢し、妹達の有能さをアピールします。」

 

魔理沙「なんか自己主張の激しいヤツだな・・・・・・。」

 

レミリア「それならお願いがあるのだけれど、いいかしら?」

 

14024号「はい、ミサカのできる限りであれば何なりと。と、ミサカは少しでもお詫びができればとレミリア嬢のお願いを聞きます。」

 

レミリア「お詫びなんていいわ。あなた達が悪いわけではないのだから。でも、ありがとう。じゃあお願いだけれど学園都市にいる個体と交信できないかしら?」

 

14024号「というと?」

 

レミリア「あなた達のために学園都市に向かったフランと一方通行の状況が知りたいのよ。まあ、彼がついてるから心配はないと思うのだけれど・・・・・・やっぱり心配じゃない?」

 

14024号「わかりました。現在一方通行、及びフランドール・スカーレットの付近にいる個体に今の会話の情報を送信します。と、ミサカはできる女を見せつけます。」

 

魔理沙「だから、自己主張が激しいなお前は・・・・・・。」

 

ミサカ14024号はしばらく黙り込んだが、情報を受信したのか顔を上げ、レミリアに向き直った。

 

14024号「お二人に関する情報を入手しました。どうやら、上位個体がフランドール嬢の傍で空気になっているようです。と、ミサカは心配そうにしているあなたに言います。」

 

レミリア「フランだけなの?一方通行は?」

 

14024号「・・・・・・・どうやらさっきまで手術室にいたらしいのですが突然消えた。と、ミサカは報告します。」

 

霊夢「消えたですって!?」

 

咲夜「一体どこに・・・・・・。」

 

14024号「こちら側に空間移動系の能力者はいらっしゃいますか?と、ミサカは皆さんに問いかけます。」

 

魔理沙「空間移動系能力者?」

 

咲夜「そんなのいたかしら?」

 

レミリア「瞬間移動とか?」

 

14024号「いえ、こちらの世界と学園都市をつなぐことができる空間移動系能力者です。と、ミサカは補足説明します。」

 

空間を自由に移動できる能力者で幻想郷と学園都市を行き来できる者。

・・・・・・・いた。一人だけいた。妖怪の賢者で、境界を操る妖怪が。

 

霊夢「・・・・・・もしかして、紫?」

 

14024号「そのユカリという方が誰かは存じませんが該当する能力者がいるのですね。と、ミサカは確認をとります。」

 

魔理沙「でも、そんなこと今の話と関係ないだろ。」

 

14024号「ミサカもそう思いましたが、上位個体がフランドール嬢から聞いた話で納得がいきます。と、ミサカはうなずきます。」

 

レミリア「つまり、一方通行は紫が連れ帰ったということなのかしら?」

 

14024号「おそらくは。どうやらフランドール嬢を含め、その場にいた一同はその場面を直接見ていないようです。」

 

霊夢「密室から消えたってわけね。学園都市にそういった能力者はいないの?」

 

14024号「いるにはいますがあの病院には超能力者の演算を妨害するAIMジャマーが存在します。よって、能力の使用に大きな制限がかけられるので一方通行を連れ去ることは不可能かと思われます。と、ミサカは考察します。」

 

魔理沙「十中八九、紫で間違いないな。」

 

レミリア「手術室って言ってたけど彼は大丈夫なの?それだけ大きな傷を負ったということでしょう!?」

 

14024号「病院到着当時は瀕死の状態だったそうです。ですがあの病院の名医、冥土返しによって一命をとりとめたそうです。と、ミサカは報告します。」

 

咲夜「よかった・・・・・・・。」

 

レミリア「それでも心配した紫が重症の一方通行を先にこちらへ引き戻したってことは・・・・・。」

 

レミリアの言葉に14024号を除く一同はある考えが浮かぶ。

 

一同「一方通行は永遠亭にいるハズ!!」

 

霊夢「レミリア、咲夜は永遠亭に向かってもらえるかしら。その他はここで引き続き事態の収拾を。」

 

14024号「あの・・・・ミサカたちは・・・・・・・・。」

 

霊夢「妹達はけが人の手当てを手伝ってもらえるかしら。操られてたことはみんな分かってるからそんな気負わなくていいわよ。」

 

14024号「わかりました。と、ミサカは他のミサカたちに指示を出します。」

 

レミリア「じゃあ、申し訳ないけど行かせてもらうわね。」バサッ!

 

魔理沙「おう、一方通行によろしくな!!」

 

レミリアと咲夜は大空へ飛びあがった。

 

レミリア「もうすぐ太陽が昇る・・・・・・急ぐわよ!」バサッ!!

 

咲夜「わかりました。」ヒュン!!

 

朝焼けの空の中二人は猛スピードで竹林を目指した。

家族の一人がいるであろう永遠亭へと・・・・・・・・。

 

 

 

 

咲夜「何とか日の出までに間に合いましたね。」

 

レミリア「山と竹林に囲まれているおかげね。そうじゃなきゃ完全に焼け死んでたわ。」

 

レミリア達は迷いの竹林もとい永遠亭に比較的早くたどり着いた。

道中出会った藤原妹紅(ふじわらのもこう)と名乗る女性に案内してもらったからだ。

永遠亭の門前でその女性に礼を言い、彼女らは敷居を跨いだ。

 

レミリア「永琳ー!戻っているかしら!?」

 

レミリアは扉の前で声をかける。

しばらくして扉に人影が映り、その人物は扉を開けた。

 

鈴仙「レミリアさんですか?」ガラララ

 

レミリア「鈴仙じゃない。永琳、戻っているかしら?」

 

鈴仙「師匠ですか?一応戻っていますが今手が離せないようでして・・・・。」

 

咲夜「手が離せないということは今誰かの治療中ですか?・・・・・・・もしかして一方通行とか。」

 

鈴仙「一方通行?彼はここに来てませんよ?現在師匠は紫さんと部屋に入ったまま出てこないのですが・・・。」

 

レミリア「一方通行がいない!?それは確かなの!?」

 

鈴仙「ええ、それは間違いないです。」

 

レミリアと咲夜は衝撃の事実に驚愕する。

14024号の話では一方通行は手術室から突然消えた。

学園都市には彼を連れ去れる能力者はいないこともないが、その病院では対策されているらしい。

ならば連れ去ったのは現状紫しか考えられない。

しかも一方通行が重篤な状態ならば彼女は永遠亭に運ぶはずだ。

だが、ここに一方通行はいない。

 

レミリア「・・・・・・・?今あなた、紫がここに居るって言ったわよね?」

 

鈴仙「はい、ここに来ていますけど。」

 

咲夜はレミリアに耳打ちする。

 

咲夜「紫さんが来ていらっしゃるということは紫さんは一方通行を連れ帰っていないのでしょうか?」

 

レミリア「その可能性も出てくるわ。だけれど、紫がここにいるなら直接彼女から話を聞いた方が確実だわ。」

 

レミリアは鈴仙に向きなおる。

 

レミリア「申し訳なかったわね、待たせてしまって。」

 

鈴仙「いえ、構いませんが・・・・・。」

 

レミリア「忙しいところさらに申し訳ないけど紫に会わせてもらっていいかしら?急用なの。」

 

鈴仙「それが叶うかは師匠によりますが、部屋の前まで案内することはできます。今回の異変に関係することでしょうし・・・・・ついて来てください。」

 

咲夜「ありがとうございます。」スッ

 

レミリア達は鈴仙に案内され、中庭を抜けて永遠亭の奥へ進む。

 

レミリア「永遠亭ってこんなに広かったのね。」

 

咲夜「前来た時は治療室と病室にしか入ってませんでしたからね。」

 

鈴仙「師匠の部屋はこの中庭を抜けていくんですよ。レミリアさん、陽の光大丈夫ですか?」

 

レミリア「大丈夫よ。この竹林のおかげね。」

 

レミリア「でも・・・・・・・・・・・」

 

レミリアは竹林から漏れる薄い日光を眩しそうに見つめる。

 

レミリア「フランがうらやましいわね。」クスッ

 

気が付くと目の前に小さな小屋の入口があった。

 

鈴仙「ここが、師匠の部屋です。ちょっと待っててくださいね。」

 

そう言うと鈴仙は部屋の中に入っていった。

 

咲夜「離れに小屋だなんて・・・・風情があっていいですね。」

 

レミリア「そういえばあなたも日本人だったわね。」

 

咲夜「ええ、まぁ・・・・・・・。」

 

咲夜は少しさみしいような悲しいような表情を浮かべたがすぐにいつもの表情に戻した。

 

レミリア「・・・・・・・・・・・・・。」

 

スー・・・・・・・・。

 

ふとした瞬間に襖の戸が開いた。

 

永琳「よく来たわね。さ、入って頂戴。」

 

鈴仙「それでは私は負傷者の手当てを続けますね。」

 

永琳「お願い。」

 

永琳に連れられ、部屋の中に入る。

彼女の部屋はとても質素でどこか懐かしい雰囲気に包まれていた。

 

永琳「好きな所に座って頂戴。」

 

レミリア達は促され、各々座る。

 

レミリア「さて・・・・早速で悪いんだけれどお話を聞かせていただいていいかしら?」

 

レミリア「・・・・・・・・・・紫。」

 

レミリアは部屋の奥に座っている八雲紫に紅い瞳を向ける。

その瞳が捉えた妖怪の顔は少し青ざめていた。

 

紫「そうね・・・どこから話せばいいかしら・・・・・。」

 

レミリア「じゃあ私から質問させてもらうわ。学園都市から一方通行を連れ去ったのはあなた?」

 

紫「ええ、間違いないわ。あんなところに危篤状態の彼をおいてはおけないもの。」

 

レミリア「二つ目、何故フランを回収していないのかしら?一方通行を優先して回収したのはわかるわ。だけどフランがなぜそのまま放置されているのかがわからないのよ。」

 

紫「そう、その理由が一番重要なこと。」

 

レミリア「どういうこと?」

 

紫「学園都市の病院から彼を回収していた時の事よ。無事に彼をスキマ世界に回収することに成功したわ。だけど、以前開いたスキマの波長を学園都市のトップに解析されていた。そして運搬途中に妨害されて、スキマ世界が破壊されたの。」

 

レミリア「あなただけの世界に介入されたってこと?」

 

紫「ええ、あの時使われた力は学園都市に存在する超能力とは完全に異なっていたわ。」

 

レミリア「それで、一方通行はどうなったの?」

 

紫「スキマ世界が完全に壊れる前に私の全能力を使って別の世界に飛ばしたわ。できるだけ学園都市から離れた世界に。」

 

レミリア「それじゃあ彼を取り戻すことはできるのよね?」

 

紫「結論的に言えばできるわ。だけど問題があって・・・・・・。」

 

咲夜「その問題というのは?」

 

紫はうつむき、小さな声でつぶやいた。

 

紫「・・・・・・か・・のよ。」

 

レミリア「え?なんて?」

 

紫「霊力がすっからかんなのよ・・・・・。」

 

紫はもう勘弁と言わんばかりに両手を振った。

 

紫「あらゆる空間、境界を操ることは容易だわ。だけど時間を超えた境界を操るのは相当な霊力を使うの。前に、こうなった時はすぐに寝てしまったわ。今も気を抜けばすぐに眠ってしまいそう・・・・。」ファ~・・・

 

紫はあくびをしながら言った。どうやら彼女は以前にもこういったことがあったらしい。いつか、霊夢が紫早く冬眠してくれないかな。とか言っていたような気がする。とレミリアは思いだした。

 

永琳「そう、だから私の出番。」

 

レミリア「月のお医者様は使い切った力をも回復させることができるの?」

 

永琳「厳密に言うとコレは医学ではないわ。単に私の持っている霊力を紫にあげるだけ。」

 

咲夜「永琳先生も霊力を?」

 

永琳「持っているだけよ。使ったことはないし、使い方もわからない。まさかこんな形で役に立つとは思わなかったわ。」

 

レミリア「それで、紫はまた力を使えるの?」

 

永琳「私は紫や霊夢ほど霊力を持ち合わせてないの。だからこのなけなしの霊力で時空を操る程の境界操作が行えるかはわからないわ。」

 

紫「そこは任せて、何とかして見せるわ。」

 

レミリア「大丈夫なの?」

 

紫「もともと私のせいで起こったことだし・・・・・少なくともこの幻想郷にだけは連れ帰ってみせるわ。」

 

紫は永琳の方へ視線を向ける。

 

紫「永琳、お願いできるかしら?」

 

永琳は無言でうなずいた。

そして紫の肩に右手を置く。

 

永琳「さっきも言った通り、私は霊力の使い方がわからないわ。だから紫、あなたが私の右手を媒体として私から霊力を吸い取って頂戴。」

 

永琳がそう言った後、紫は目を静かに閉じる。

その後、少し力んだような表情になると永琳の身体が白く光りだした。

レミリア達はその光景をあっけにとられた様子で眺めていた。

その姿はとても神秘的で美しい。

永琳から発せられた白い光は一点に収束し、彼女の右手を伝って紫へ注がれていく。

そしてその光は紫の胸の辺りまで進むと吸い込まれるように消えていった。

心なしか紫の顔色は良くなっている。

 

永琳「・・・・・・・・・・・・これが私の出せる全ての霊力よ。」

 

永琳は紫の肩から右手を離す。

 

紫「思ったよりたくさん持ってたのねあなた。以外と回復できたわ。」

 

レミリア「どう?いけそうかしら?」

 

紫「ええ、これならなんとかいけそうだわ。」

 

紫は座禅を組み、再び目を閉じる。

 

紫「これからある程度スキマ世界を再建するわ。悪いけど一人にしてもらえるかしら?」

 

レミリア「わかったわ、ちなみにそれにはどれぐらいかかるの?」

 

紫「三十分で何とかしてみせるわ。その間あなた達は一方通行を探す準備をしてちょうだい。」

 

咲夜「一方通行を探す準備ですか・・・?」

 

紫「さっきも言った通り、彼を連れ戻すだけで精一杯かもしれない。だから彼がこの幻想郷のどこに落ちるかわからないわ。もし重篤な状態の場合、一刻も早く誰かが見つけなければならないでしょう?」

 

咲夜とレミリアは納得したように首肯し、襖を開ける。

レミリア達に引き続き永琳も部屋を出る。

紫は襖が閉まるのを確認すると瞑想に入る。集中するときは瞑想が一番である。

スキマ世界の再建が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~五十分後

 

一方通行「ハッ・・・・・!!」ガバッ!

 

一方通行は突然目を覚ました。相変わらず頭と胸が痛い。

ついでに言うと重い。主に腹の部分が重い。というより痛い。

窓から差し込む太陽の光に目を細めながら身体を起こし、腹の方へ視線を移す。

 

一方通行「夢だと思ったンだがなァ・・・・・・。」

 

いま自分はベッドに寝ている。学園都市の病院ではないため、幻想郷へ帰ってきたんだろう。だとしたらここは永遠亭。色々と理解が追い付いていないが今はそんなことはどうでもよかった。

今、ベッドの横で座っている幼い姿をした吸血鬼に一番聞きたいこと、それは・・・・・・・・

 

一方通行「・・・・・・・・・・なンでこの女が俺の腹の上で寝てンだ?」

 

レミリア「知らないわよ。運ばれてきた時からこの状態だったのだもの。動かしたらマズイんじゃないかなとか思っちゃうじゃない。」

 

その言葉に一方通行は呆れたように目を細める。

すると、カーテンが勢いよく開かれ、ここの医者が入ってきた。

 

永琳「あら、起きたのね。」ニコッ

 

一方通行「小動物を見るような目で俺を見るンじゃねェよ。それより、なンでこの女が俺の上で寝てンだ?」

 

永琳「あぁ、その子ね。実はあなたが発見されたときその子も一緒に倒れてたのよ。この子も重傷だったから一緒に連れ帰って治療しようかと思ったのだけど、その子意識がないのにすごい力であなたの服の裾を離さないのよ。だからその状態ってこと。」

 

一方通行「・・・・・にしてもだ、もっと他の寝かせ方あっただろォが。俺の横に寝かせるとかよォ。」

 

永琳「あら、それもそうね。」

 

一方通行「この野郎ォ・・・・・・。」ググググ

 

永琳「や~ね~、なんでそんなに力強く拳が握られるのよ。」

 

レミリア「まぁまぁ、彼が短気なのはいつものことじゃない。」

 

一方通行「おいこの500歳児。オマエの脳みそ耳からひねり出して犬のエサにしてやろォか?」

 

レミリア「だれが500歳児よ!!」

 

咲夜「まぁまぁ、これ以上やると収拾がつかなくなりますので・・・・・・。」

 

一方リア「うるせェンだよ(さいのよ)!このお漏らしメイドが(ァ)!!!!」

 

咲夜「」

 

このバカみたいなやり取り。一方通行が悪くないと思ったこの空間。

ようやく幻想郷に帰ってきたと認識できる。

だが、まだ足りない。ここにいるべきやかましいクソガキがまだ帰っていない。

連れ帰らなければ。もう一度あのクソみたいな世界へ行こうとも。

一方通行は腹の上の女をどかそうとすると手に固いものが当たった。

 

一方通行「なンだ・・・・・・・・?」

 

彼は手元に視線を向ける。

そこには片方の羽根が折れた蝶々の髪飾りがあった。



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第二十三話 陽光

学園都市に完全に日が昇った。

しかし、その光はこの街の全てを照らすことはない。

ビルの密集した街は密やかに闇を隠している。

そして時にそれは光をも浸食しようと流れ出してくる。

主に、異様な雰囲気を醸し出す紫色に発光する窓のないビルから・・・・・・。

しかしその闇に光が完全に飲み込まれないように闘う者たちはいる。

 

自分の信じたものを疑わずまっすぐに突き進む者。

 

与えられた才能以上の力を努力によって引き出せる者。

 

そして、かつて犯した贖いようのない罪に苦悩し、正しい道を進もうとする者。

 

彼らはそれぞれの守るべきものを持っている。

それは人であったり、尊厳であったり、天使だったりもする。

そして、その中の一人の白い少年は妖怪を守るべき対象としている。

これは絶対に交わることのなかった少年と少女の物語。

彼はどんなに打ちのめされようとも守るもののために何度でも立ち上がる。

それは今も例外ではない。紅い瞳は再び開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園都市 病院

 

学園都市の病室では騒がしい少年少女によってにぎわっていた。

 

フラン「それでね、あの人ったらいっつもフランを突き放すの!」

 

美琴「ふ~ん、普段は随分とものぐさなのね。」

 

打ち止め「フランちゃん、ミサカもわかるよその気持ち。うちのヨミカワったら帰ってきたらずっとビールばっかり飲んでミサカのお話まともに聞いてくれないもん。ってミサカはミサカは憤慨してみたり。」

 

フラン「でも、反応してくれるだけいいじゃない。フランなんか何を言ってもうるさいからあっち行けーだもん。」

 

フランはツンツン頭の少年の膝の上で頬を膨らませる。

 

当麻「あの~・・・・なんで上条さんの上でガールズトークをしていらっしゃるのでせうか?」

 

フラン「だってこの方がなんか収まりがいいっていうか、落ち着くんだもん。いやいや言いながらもあの人もやってくれるし。」

 

当麻「同情するぜ、一方通行・・・・・・。」ボソッ

 

フラン「?何か言った?」

 

当麻「いえ、何も。(不幸だ・・・・・。)」ハァ・・・

 

美琴「そういえばアンタの保護者はどこにいるのよ?」

 

打ち止め「ヨミカワのこと?ヨミカワならいまアンチスキルのお仕事に行ってるよ。ってミサカはミサカは答えてみる。」

 

当麻「あのお姉さんアンチスキルの人だったんだな。」

 

打ち止め「そうだよ。今回の事件が及ぼした被害は決して少なくない。だから風紀委員だけじゃてが足りないんだって。ってミサカはミサカは補足説明してみる。」

 

グゥー・・・・・・・・。

 

唐突に誰かの腹が鳴った。

 

美琴「アンタねぇ・・・・。いくら貧乏だからってこの子たちの前でお腹空かすなんてなんたることよ。」

 

当麻「いやいや、俺じゃないって。確かに上条さんのお腹は常にペコペコですが・・・・・。」(´・ω・`)

 

打ち止め「自分で言って自分で落ち込んでる・・・。ってミサカはミサカは憐れんでみたり。」

 

フラン「・・・・・・・・・・。」カァァァァァァァ/////

 

当麻「フラン?」

 

フラン「・・・・・・・・・ごめんなさい。」

 

フランは真っ赤になった顔を両手で抑えながら小さな声でつぶやいた。

 

美琴「なんかデジャヴを感じるわね・・・・・・・。」

 

当麻「じゃっ、ファミレス行くか?この時間だし空いてるだろうぜ。」

 

打ち止め「ねぇねぇ、ミサカもついていっていい?ってミサカはミサカは確認をとってみる。」

 

当麻「全然いいぜ、お前も来いよ。」

 

打ち止め「やったー!!ってミサカはミサカは喜びを全身で表してみたり―!」クルクル

 

美琴「アンタ、行く気満々だけど大丈夫なの?」

 

当麻「ん?あぁ、金ならおろせばなんとか・・・・・。」

 

美琴「それはアタシが出せばいいだけの話なんだけど、ってそうじゃない!」

 

美琴の言葉に当麻は首をかしげる。

 

美琴「あの腹ペコシスターは大丈夫なのって意味よ。今頃その辺で野垂れ死んでるんじゃないの?」

 

当麻「」

 

当麻の顔がどんどん青くなっていく。

その顔には尋常じゃない量の汗が流れ出している。

 

フラン「顔色悪いけど大丈夫?」

 

当麻「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

無言で当麻はクラウチングスタートの体制をとる。

 

当麻「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ダダダダダタ

 

GTーR並みの加速で病室をでていった。

 

美琴・フラン・打ち止め「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

美琴「行こっか。」スッ

 

フラン・打ち止め「うん。」トコトコ

 

美琴は当麻がこの後どんな目に合うのかは大体想像できた。

 

美琴(ご愁傷様・・・・・・。)

 

せめて彼が安らかに逝けるよう祈りながらファミレスへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳「・・・・・・で、どうするの?」

 

竹林から漏れる僅かな陽光が窓から差し込む永遠亭の一室で永琳は問いかけた。

 

一方通行「フランのことか?」

 

永琳「そのこともそうだけど、この子よ。この子別の時代の人間でしょ?あなたとセットでここに来ちゃったけど大丈夫なの?」

 

一方通行「コイツが元居た世界で殺されかけて、それから病院に運ぶ途中ここに連れ戻されちまったからなァ。大丈夫かどォかなンて知らねェし。むしろ生きてるだけ感謝してもらわねェとなァ。」

 

永琳「時代が変わってしまうかもしれないのよ。」

 

一方通行「俺が行った時代は明治から大正だ。その時代に『鬼』とかいうヤツが存在していたなンて聞いた事がねェ。つまりコイツはかなりマイナーな存在だ。だから大して時代は変わらねェだろォよ。」

 

永琳「どこかの偉い人が草一本抜いただけで世界が変わるとか言ってたわよ。」

 

一方通行「世界がどうなろォがオレは知ったこっちゃねェ。それより、この女の治療は済ンでンのか?」

 

永琳「一応ね。服から手を離さないからあなたの横で施術したわ。そしてあなたの方は処置済みだったし。もうわけがわからないわ。」

 

一方通行「じゃァここに寝かせるときもそうすりゃァ良かったじゃねェかよ。」

 

永琳「き、急用を思い出したからもう行くわね。お大事に~。」スタコラ

 

あからさまに悪意があったといわんばかりの態度をとり、逃げて行った。

 

一方通行「チッ・・・・・。」スッ

 

首元に手を当て、電極に触れてみる。

 

カチッ・・・・・・・ピーッ、ピーッ、ピーッ・・・・

 

一方通行(永琳のヤツ充電してくれてたのか。だが、反応がねェ。電波は向こうと通じるようになってるって紫が言ってたな。ということは、フランの方の電極が切れてンだなァ・・・・・・。)

 

フランの方の電極がついた時のために一方通行は電源を入れたままにした。

そして立ち上がり移動しようとするが、女が服から手を離さない。

彼は今この一瞬だけはこの女に感謝した。もしこのままベッドから降りていれば間違いなく地面とキスすることになっていただろう。

だが、うっとおしいことに変わりはない。

 

一方通行「オイ・・・・いい加減離せよ・・・・・。」グイッ

 

一方通行が服を強引に引っ張っても離さないし、起きる気配もない。

 

一方通行「・・・・・・・クソッタレが。」ヒョイッ

 

背中に身体が浮く程度の風を発生させ、女を何とか抱き上げた。

 

ガララララララララ!

 

永琳「あら、もう行くの?」

 

一方通行「あァ。・・・・・そういやァ、レミリア達はどォした?さっき出てったっきり帰ってきてないが。」

 

永琳「さっき応接間でお茶を飲んで博麗神社へ戻ったわ。何か手伝えることがあるとか言って。」

 

一方通行「確か、オマエンとこの姫さンも博麗神社にいるンだったな。」

 

永琳「ええ、異変が起きたときからずっと寝てらしたわ。今も寝てるでしょうね。」

 

一方通行「呑気な野郎ォだ。」スッ

 

永琳「痛み止めとか渡しておくわね。」

 

一方通行「必要ォねェよ。」

 

永琳「ダメよ、あなたの能力は演算で発動するのだから、どこか痛んだら演算が狂うでしょ?」ガサゴソ

 

一方通行「ンなこたァねェ、オレは学園都市最強の能力者だぞ。」

 

永琳「ここは学園都市じゃありませんよ~・・・・っと。」スッ

 

永琳は棚から薬を取り出し袋に入れた。

 

永琳「そういえば、その体制じゃ持って帰るのは大変ねぇ・・・・。」

 

彼女はまた棚をあさり、小さなショルダーバッグを取り出すとその中に薬袋を入れた。

 

永琳「これで良しっと。」

 

永琳は一方通行の首にショルダーバッグをかけると壁に寄りかかった。

 

永琳「その子もつれていくのね。」

 

一方通行「あァ、世話になったな。」

 

永琳「それにしてもあなた・・・・・・・。」ピクピク

 

永琳は唐突に肩を揺らし始めた。

 

永琳「お姫様抱っこって笑笑」クスクス

 

一方通行「うるせェな、これが一番運びやすいンだよ。コイツ手ェ離さねェし。」

 

永琳「モテモテね。」クスクス

 

一方通行「オマエ・・・・そろそろ黙らねェとその口縫い上げるぞ・・・・・・。」

 

永琳「お~こわいこわい。・・・・そんじゃ気を付けてね。」

 

一方通行「レミリアがここに来たらオレは先に帰ったと伝えてくれ。」

 

永琳「任せてちょうだい。」

 

一方通行は窓を開けると竜巻を巨大化させ、空へと飛び立った。

 

永琳「玄関から出ていきなさいよ、玄関から・・・・・・。」

 

紫「あら、言っちゃったの?」

 

永琳「行かせない方がよかったかしら?」

 

紫「そのほうが助かったけど、まぁいいわ。だって、あの子から来るはずよ。学園都市からフランを連れ帰せーって。」

 

永琳「っていうことは今はできないのね。」

 

紫「はい、すっからかんでございます。」

 

永琳「回復にはどれぐらいかかるの?」

 

紫「うーん、多分それほどかからないけど疲れちゃったから軽く四か月ぐらい寝そう・・・・・。」

 

永琳「そんなことは彼が許さないでしょうね。」

 

紫「そうなのよ~、だから寝ないように頑張ってるの。」

 

永琳「じゃあどうするの?」

 

紫「決まってるじゃない、霊夢から拝借するのよ。」

 

永琳「やっぱりね。」

 

紫「じゃっ、私も博麗神社へ向かうとしますかね。」ヨッコラショ

 

永琳「私も行くわ。向こうにまだ負傷者がいるかもしれないしね。」

 

そうして、紫と永琳はそれぞれの目的を果たすべく博麗神社へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「これでケガ人は最後かしら?」

 

咲夜「はい、これで全員みたいですね。」

 

大妖精「すみません。紅魔館の当主の方に手当てしていただくなんて・・・・・。」

 

大妖精は申し訳なさそうに顔を下げる。

 

レミリア「いいのよ、困ったときはなんたらこーたらでしょ?」

 

咲夜「お嬢様、お互い様です。」

 

レミリア「そう!それよ。だから気にしないでね。」

 

大妖精「助かりました、ありがとうございました。」ペコ

 

大妖精は頭を下げながら友達妖精たちの元へ走っていった。

 

レミリア「みんな大したケガじゃなくてよかったわ。もっとこう、血がブシャ―っての想像してたけど。」

 

魔理沙「すごく物騒な想像だな。そんなことになってたら大惨事だぞ。」

 

霊夢「アンタ、よく我慢できたわね。血、大好きなんでしょ?」

 

レミリア「失礼ね、私をそんなはしたない生物としてみないでくれるかしら。誇り高き吸血鬼の末裔なのよ。」

 

霊夢「はいはい、わかったわよ。」

 

霊夢とレミリアが幼稚な口論をしているとミサカ14024号が近づいてきた。

 

14024号「こちらも手当て終わりました。」

 

霊夢「そう。で、どうだった?」

 

14024号「作業は滞りなく進行しました。他のミサカたちも問題なく処置できたそうです。と、ミサカは報告します。」

 

霊夢「そうじゃなくて、みんなの反応よ。」

 

14024号「・・・・・・・・・正直、拒絶されることを想定していましたがそんなことはなく、むしろ友好的に接してくれました。と、ミサカは少々驚いたことを伝えます。」

 

魔理沙「ここの奴らは変わりもんばっかだが、みんないい奴だからな。」

 

14024号「はい、でも皆さんに危害を加えたのは事実・・・・・本当に申し訳ございませんでした。と、ミサカは懇切丁寧に謝罪します。」

 

霊夢「だから、アンタたちのせいじゃないって言ってるでしょ。」

 

魔理沙「そうだ、ガクエントシ?の奴らが悪い!」

 

14024号「そう言っていただけるとミサカたちも気が楽になります。と、ミサカはあなた達の寛大さに感謝します。」

 

レミリア「しかしまぁ変なしゃべり方ね。一言発する度にミサカは~って。みんなそうなの?」

 

14024号「はい、現在製造されている個体は全てこのような話し方をします。なぜこうなったのかミサカにもわかりません。と、ミサカはあまり考えなかったことを考えます。」

 

レミリア「まぁ、話し方は自由だからどうでもいいけど・。気になるわね~・・・・・。」

 

咲夜「お嬢様、そろそろ・・・・・。」

 

レミリア「そうね、そろそろ帰るとしましょう。」

 

霊夢「あら、帰るの?」

 

レミリア「ええ、いくら傘を持っているとはいえ、長い間太陽の下で活動するのは結構辛いからね。」

 

魔理沙「吸血鬼って大変だな。」

 

レミリア「そういうわけだからお暇させていただくわね。」

 

霊夢「ええ、ありがとね。」

 

レミリアは咲夜とともに博麗神社を後にしようとする。が、なにかを思い出したようなしぐさをすると霊夢たちの方へ振り返った。

 

レミリア「そうそう、その子たち・・・・妹達のことね。行く当てがないならうちで泊めることもできるからそれを視野に入れといてね。すぐに帰れそうもなくなったら紅魔館へ連れてきなさい。」

 

霊夢「いいの?」

 

レミリア「一方通行も目覚めたし、学園都市にいた者同士なにかしら都合のいいこともあるでしょう。」

 

霊夢「じゃあ、もしそうなったらお願いするわ。」

 

霊夢の言葉にレミリアは片手で応え、長い階段を下りて行った。

 

咲夜「お嬢様、彼を迎えに行かなくてよろしいのですか?」

 

レミリア「その必要はないわ。だって彼、もう帰ってるだろうし。」

 

咲夜「運命がみえたのですか?」

 

レミリア「違う違う、彼の性格を考えてみなさいな。」クスクス

 

咲夜「確かに、そうですね。」クスッ

 

レミリア「さぁ、彼もお腹を空かせてるだろうし早く帰りましょう。」

 

咲夜「はい。(お嬢様、妹様のことが心配なはずなのにそれを私たちに悟られないよう、気丈にふるまっている・・・・・・。)」

 

心なしかレミリアの歩くスピードがいつもより速い気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「ったく、手間ァかけさせやがって。」

 

一方通行は紅魔館へと帰還していた。いま丁度自分のベッドに女を寝かせたところだ。

しかし、彼女は相変わらず一方通行の服を離さない。

 

一方通行(まだ離さねェのかよ・・・・・・・。)スッ

 

一方通行は彼女の頭に触れると生体電気の操作を行った。

半ば強制的に手を開いたのだが、その開いた手はずっとこわばっていた。

 

一方通行(力入りすぎだろォ。一体どォなってンだ?)

 

不思議な生体電気の流れに興味を持った一方通行は血流、脳波などを調べてみることにした。

 

一方通行(・・・・・・・・血流が異常に速いし、血中酸素飽和濃度が極端に高い。)

 

血液に含まれる酸素の量が異常に多い。大量に取り込まれた酸素により体内組織が異常に活性化している。

 

「フゥゥゥゥゥゥ・・・・・フゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・・。」

 

一方通行(これは・・・・・・呼吸か?)

 

彼は彼女の呼吸器系に意識を集中させる。

 

一方通行(肺が、以上に大きい。それに空気の取り込み方が普通じゃねェ。コイツホントに人間かァ?)

 

とりあえずメカニズムは理解できた。著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法。

そんなものが存在していたとは彼は全く知らなかった。それにこのような無茶な呼吸法を行えば肉体には相当の負荷がかかるはずだ。

それをこの女は当たり前になおかつ継続して使用している。

 

一方通行(オマエの方ォが化け物じゃねェか・・・・・・。こんな力で握ったら刀が壊れちまいそうなモンだがなァ・・・・・・。)チャッ

 

一方通行は女の枕元に鞘に入れた折れた日本刀を置くと彼女から離れ、近くに会ったソファに寝転がる。

 

一方通行(これで能力まで封じられてたらオレはただの廃人だな・・・・・・。)ゴロン

 

このところ精密な演算続きでさすがの彼も疲弊していた。

それに至る所が痛むのにも関わらず、肉体を酷使し続けた。

彼は死んだように深い眠りに堕ちた。

 

 

 

パチュリー「あら、おかえりなさい。」

 

レミリア「パチェ、一方通行は帰ってるかしら?」

 

パチュリー「ええ、さっき結界に反応があったわ。今は・・・・・部屋にいるみたいね。」

 

レミリア「ありがとう。」

 

レミリアが図書館を立ち去ろうとするとパチュリーが呼び止めた。

 

パチュリー「ねぇ、レミィ。」

 

レミリア「なにかしら?」クルッ

 

パチュリー「結界に一人知らない人間が反応してたわ。一方通行と一緒だったから通しちゃったけど、良かったのかしら?」

 

レミリア「大丈夫よ、彼女は私の客人だから。」

 

パチュリー「そう、呼び止めて悪かったわね。」

 

レミリア「そうそう、幻想郷に侵入してきたクローンの子たちだけど、もしかしたらうちで引き取ることになるかもしれないから。」

 

パチュリー「当主はあなたでしょ。私は口出ししないわ。」

 

レミリア「一応、ね。」

 

そう言うとレミリアは図書館を後にし、一方通行の部屋に向かった。

咲夜には美鈴の目覚まし時計になってもらったため途中で別れた。

彼のことが心配だし、学園都市でなにがあったのか聞きたい。

そして彼が連れ帰った女のことも気になる。

 

レミリア「しかし、疲れたわねぇ・・・・」スタスタ

 

そんなことを思っていると彼の部屋の前に到着した。

 

コンコン・・・・・・

 

一方通行「あァ?誰だァ?」

 

レミリア「失礼するわね。」ガチャ

 

一方通行「レミリアか。」

 

レミリア「身体の調子はどう?」

 

一方通行「問題ねェよ、かすり傷だ。」

 

レミリアはそう言って傷の深さを隠そうとする一方通行を心から心配していた。彼は普通そうにしているが服の下に巻かれている包帯の膨らみから相当な傷を負ったのだろう。

一方通行はそんなレミリアの思いが分かってしまったため、バツが悪そうに視線をベッドに移す。

 

レミリア「その子・・・・・。」

 

一方通行「あァ、すまねェがしばらくここに置いておくことはできねェか?」

 

レミリア「別にいいわよ。もともと妹達を引き取ろうと考えてたのだから一人増えたところで変わらないわ。」

 

そう言ってレミリアは女の元へ近づく。

 

レミリア「綺麗な髪飾りね。・・・・・あら、この縛り方ならもう片方もあるはずじゃないかしら?」スッ

 

レミリアは女の髪に触れようと手を伸ばす。

その瞬間・・・・・・・・

 

ドォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・!

 

一方通行(!空気が、重く?!?!)

 

チャキ!!

 

金属の音がする。

 

一方通行「ッ!!!!」バッ

 

女はいきなり起き上がり、柄を握りしめている。

 

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・!!」

 

レミリア「え?!なに?!」

 

「花の呼吸、肆の型 紅花衣!!」ブォッ!

 

女は折れた刀身を大きく円を描くように振るった。

斬り付けられる寸前にレミリアは何も無いはずの空間に紅い花でできた衣に包まれる光景を見た。

不思議な剣技に見惚れるレミリアの頸に刃が届く。

 

ギュィィィィィィィン!!!!

 

だが、その刃が彼女の首をはねることはなかった。

 

「え!?何故、呼吸の型が・・・・・!」

 

「決まってンだろォ・・・・・・。」

 

握られている刀身が砕け散る。

 

一方通行「この俺が・・・・・・止めたンだからなァ!!!!」グッ

 

一方通行はもう一方の手で女を殴り飛ばす。

女は壁に叩きつけられ、苦痛の声を漏らす。

 

「くぅっ・・・・・・・・!」

 

そして、一方通行が手を女の方へ向けると、彼女は壁に磔にされた。

 

(なんなの!?これ・・・・・。落ち着け、呼吸で・・・!)フゥゥゥ...!

 

だが、彼女は呼吸をすることは出来なかった。

驚きと焦りで女の額に汗が流れる。

 

一方通行「驚いたかァ?オマエのチカラの源はとっくに割れてンだよ。」ズィッ

 

一方通行は女に顔を近づける。

 

一方通行「酸素だろ?血中に一度に多量の酸素を送り込み、それによって膨張した筋肉によって瞬間的に爆発的な力を得る。

なら話は簡単だァ。肉体を強化するために取り込んでいる酸素の供給をを止めちまえばいい。つまりィ・・・・・・・・。」グッ

 

一方通行は拳を握りしめる。

 

一方通行「呼吸させなきゃいいンだろォがァ!!!」ニタァ

 

彼は空気の流れを操り、彼女の手、足、首を風の枷で拘束していたのだ。そして今、彼が拳を握ったことにより更に締め付けが強くなる。

 

「・・・・ぁ・・・・・・・はっ・・・・」

 

女は窒息した魚のように口をパクパクさせている。

 

一方通行「オマエがどンな理由でレミリアに斬りかかったのかは知らねェ。だがなァ、コイツらに害を及ぼすヤツは誰であろうと許さねェ。」

 

「・・・・・な・・・ん・・・・で・・・・・・?」

 

一方通行「・・・・・あァ?」

 

「そいつは・・・・鬼。人間じゃないはず・・・・・・。危・・・な・・いわ・・・・・。な、のに・・・・・人である・・・・あな・・たが・・・・・な・・ぜ・・・・・?そんなに・・・ボロボロ・・に・・・なってまで・・・・・・・。」

 

一方通行「人?鬼?関係ねェよ。例え人外の存在であろォがそれが必ず悪党とは限らねェ。コイツらのよォな反吐が出るほどの善人だっているンだよ。」

 

レミリア「・・・・・・・・・一方通行。」ボソッ

 

一方通行「さァ、どォする?このままやるってンなら全身の血液を逆流させて、愉快な血風船にしてやる。せっかく拾った命、無駄にするか大切にはするか、オマエが選べ。」

 

「・・・そ・・・の・・子は・・・危険・・じゃ・・・ないのね・・・?」

 

一方通行「バカがァ。オレみてェな悪党とコイツを一緒にするな。見ず知らずの人間の為にここまでしてやるヤツのどこが悪人だァ?」

 

そう言って一方通行は女に部屋を見渡すよう促す。

彼女は部屋を見渡した後、ここが小さな人外の者の屋敷であることに気づく。

 

「・・・・・・・・・・・。」パッ・・・

 

チャキ・・・・・・・・。

 

刃の無くなった柄が床に落下する。

どうやらレミリアを、というより一方通行を信用したらしい。

 

フッ・・・・・・・・・

 

それと同時に一方通行も風の操作を停止する。

風の操作をすべてやめてしまったがゆえに彼の身体を支えていた風も消えてしまう。

 

一方通行「ッ!」フラッ

 

ガシッ!

 

レミリア「っと、危ないわね。・・・・・全く。」

 

レミリアは一方通行をソファに座らせる。

 

一方通行「ったく、神経の補助がねェとこンなに面倒ォだとは思わなかったぜ。」

 

遠回しにレミリアに礼を言った(?)一方通行は床に這いつくばり、咳き込む女に視線を向ける。

 

「げほっ!げほっ!・・・・・・・・・・フゥゥゥ.......」

 

レミリア「すぐに呼吸を整えてる。ただものじゃないわね。一方通行、この子の名は?」

 

一方通行「・・・・・・そういやァ、なンも聞いてねェな。」

 

レミリア「名前すら?嘘でしょ・・・・・・・。」ハァ

 

レミリアは呆れたといわんばかりのため息をつき、女へと歩み寄った。

 

レミリア「うちの者が失礼したわね。私はこの紅魔館の当主、レミリア・スカーレットよ。」

 

「え!?当主?そこの白いのの娘じゃなくて??」

 

どうやら女は一方通行が当主でレミリアがその娘であると勘違いしていたらしい。

 

一方通行「」ブフッ!!

 

レミリア「・・・・・・・・。」ギロッ

 

一方通行「・・・・・・・・・。」

 

レミリア「私、こう見えて500歳なのよ?」

 

「あぁ、そうなのですね・・・・・(そういえば鬼もそのぐらい生きれるわよね。)」

 

レミリア「あなた、名前は?」

 

カナエ「胡蝶、胡蝶カナエです。先程はいきなり斬りかかってしまい申し訳ありませんでした。」サッ

 

カナエはかしこまり、頭を下げた。

 

レミリア「かしこまらなくていいわよ。それに敬語もいいわ。もう知ってると思うけど、そこの白いのはすっごく口が悪いのよ。」

 

一方通行「ンだと?」

 

レミリア「あら、白いの。なにかしら?」

 

完全にさっきのことを根に持っている。

こうなってしまったのは自分が原因なので流石に短気な一方通行も怒りをぐっとこらえた。それに自分より年上とはいえ、見た目ガキみたいなレミリアに怒っているのをを見られるのは恥さらしだ。

 

カナエ「あらあら、その人の口が悪いのはもう知ってるわよ。」クスッ

 

一方通行「・・・・・・・・。」ギロ

 

カナエ「」ビクッ!

 

レミリア「やめなさい、怯えているでしょ。」

 

一方通行「なンもしてねェよ。」

 

レミリア「あなたただでさえ目つき悪いんだから気をつけなさい。」

 

カナエが怯えるのも無理はない。先程、自分の命を文字通り握られていた男に睨まれたのだから。

 

一方通行(ホントに睨ンでねェってのに・・・・・・。)チラッ

 

カナエ「ひっ・・・・・・!」ガタガタ

 

どうやら一方通行が横目で見るだけで睨んでいるように見えてしまうらしい。

 

一方通行「わかった、わかりましたよォ。もう横目で見ねェからそンなに怯えンな。」ガサゴソ

 

一方通行はズボンのポケットを漁り出した。

そして何かを取り出すとまた風を操作し、カナエにゆっくり近づいた。

 

一方通行「オマエが寝てたとき、病院のベッドにあったモンだ。壊れちまってるが・・・・・・・・大事なモンなんだろ?」スッ

 

そっと拳をを開き、手のひらをカナエに差し出す。

 

カナエ「これは・・・!」サッ

 

カナエは慌てて自分の髪を確認する。

片方はあるがもう片方がない。

 

一方通行「あの時、下に居たしのぶってガキか?アイツも同じやつ着けてたなァ。」

 

カナエ「えぇ、これは私の、とても大切な・・・・・・。」スッ

 

一方通行の手にカナエの手が置かれる。

髪飾りごしだが一方通行の手はすごく温かった。

カナエの身体の震えは止まらない。

だが、それは恐怖による震えでは無くなっていた。

すごく熱いものが込み上げる。

 

カナエ「大切な人から貰った大切な蝶々だから。そしてあの子たちと私を繋ぐ、大切な絆だから。」ポロッ

 

カナエは止まらない涙に困惑している様子だ。

一方通行とレミリアは黙ってその様子を見ていたが、ふいに一方通行が言葉を発した。

 

一方通行「命拾ってよかったじゃねェか。だから、オマエが持つ大切なものってェのをこぼさねェようにしろ。・・・・・・オレとは違うンだからよ。」

 

レミリアは目を伏せる。一方通行の過去は学園都市から帰ってきた姿をみれば、相当酷いものであると分かってしまったからだ。

カナエは一方通行が一瞬見せた悲しそうな表情を見逃さなかった。

 

カナエ(私と同じでこの人も何かを失ってるの?)

 

聞きたい気持ちもあったがカナエの口は動くことは無かった。

自分ではこの人の闇を理解できるとは思わなかったからだ。

それほどまでに一方通行からは底知れぬ闇を感じた。

 

レミリア「あなたって冷たいのか優しいのかわからないわね。」

 

重い空気はレミリアの気の抜けた言葉で払拭された。

 

一方通行「・・・・・っせェなァ。」

 

一方通行はため息をつくとソファに座り、疲れたといわんばかりに横になる。

 

レミリア「寝るの?」

 

一方通行「考え事するだけだ。ソイツを連れて出ていけ。」

 

一方通行にはまだやるべきことが残っている。

まだ、この館に帰ってくるべき少女がいない。

レミリアは即座に察してカナエを促し、彼の部屋を後にした。

 

カナエ「あの人って何を考えているのかわからないわ。」

 

レミリア「彼にはやることが残ってるの。それを成すために何か考えてるんじゃない?」

 

カナエ「やることって?」

 

レミリア「・・・・私の妹をここへ取り戻すこと。」

 

レミリアは低くつぶやく。心配で仕方がないのを他人に悟られないように努めていたがどうしてもそれが漏れだしてしまう。

カナエにはその気持ちが痛いほどわかった。

向こうにおいてきた妹たちのことが心配で仕方がない。

 

カナエ「・・・・・聞かせてくれるかしら?あなたの妹のこと。」

 

レミリア「えぇ。」ニコ

 

人外の存在を憎み、斬り伏せる者との絆が初めて生まれた瞬間だった。



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