学戦都市ッッッ (有楽 悠)
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入門

自分が色々別小説とか書いてる時に息抜きで書いてた地上最強ドリームマッチみたいな夢小説的な物を綴ります。
だからといかなんというか、自分の好きなように適当やります
あと、主人公やら何やらはそのままなんですが、一部オリジナルキャラクターが登場するので、そこに関しては要注意です。
個人的にはジェーンの話とかピラミッドの話とか世界中にばら撒かれた範馬の種の話とか色々集めながらウルトラマンダイナの『ユメノカタマリ』みたいにゆっくりと大きくさせていきたいと思うので()


カッ、カッ、カッ、

と黒板に軽快になるチョークの音。

そして雲ひとつない青空。

『外』の者からすればその『異物』は雲よりも優先するべきはずなのだが、この街の人間にはそれは当たり前のようである。

 

「つまりここは……」

「先生…」

 

同じ様に気付かなければそのまま当たり前の様に成っていた。

全員が等しく感じる体の異変。

かつてない異物の予感。

 

「体の震えが止まらないので保健室に行ってもいいですか?」

 

来たる災いと希望を。

この街に住む全ての生物が感じた。

 

「俺も…」

「それ私も……」

「あ、あれ? 先生も…不思議ね?」

 

その予感が超能力を凌駕する超暴力である事を

この街の人間はまだ知り得ない。

 

_________________________________________

 

同時刻

この街に一人の青年が入門(はい)ろうとしていた。

彼は嘗て『地上最強』の名を冠した者。

世界一を果たし、敗北を与え、4000年を嘲り、古代を超越(こえ)、地上最強の生物をも凌駕し、史上最強を土に還し……

そして今

彼は未来を超越(こえ)

 

_________________________________________

 

「ようこそ学園都市へ…範馬刃牙クン?」

 

黒髪の男が入り口で範馬刃牙を出迎える。

その男は表情(かお)は確かに慈愛に満ちているがその中の殺意が隠しきれていない。

 

「オッサン…無害偽るんだったら殺意(やる気)位隠したほうが良いぜ」

「すまないねェ…でもあのオーガの倅って聞いてたから期待してるんだ。少しはコッチの事情も察してくれると嬉しいな。 実は私も彼の伝説は常々聞いていてね」

「そんなに楽しみなら…」

 

刃牙が実力を誇示するかのように寸止めのジャブを放とうとするが

 

「成る程。 0.5秒をも上回る…噂通りのジャブだ」

「‼︎」

 

男はその腕を難なく掴み、合気を使って刃牙の体を一回転させた。

 

「無論私には効かんがね?」

(強い…!)

 

ストン。と刃牙は優しく着地するが、それは刃牙の必死の抵抗の結果では無く寧ろ何も出来なかった刃牙を気遣ったとも言える程のもので、その一撃とも言えぬ技は確かに刃牙のプライドを傷付けた

が、

 

「だが、落ち着きたまえ…私は君に敵意はない。 だからこそ君は私の動きが読めなかったし、私は君の動きが読めたのだよ。 それにここで戦うのは君にとっても私にとっても利益がない。 そうだろう?」

「確かにな…」

 

この男

実力はあるが、確かに殺意を感じない。

優しい拳は誰をも殺さぬが、それ故誰にも悟られぬ。

かつて渋川剛気がマホメド・アライJr.にあっけなくやられてしまったように

愚地独歩が、わざわざ『菩薩の拳』と呼ばれる技を作ってまで殺意を消したように

殺意の有無こそ

殺意を察知されるかこそが勝敗を大きく左右する。

それ故(こころ)は試合を握る。

 

「まァアンタとは、そのうち()りあうことになるだろうし」

「もちろん…っと、自己紹介を忘れていたね。 私は木原電脳、暫く仲良くさせてもらうよ」

 

木原電脳は範馬刃牙と握手を交わすと

 

「‼︎」

「ふふふ…」

 

範馬刃牙がべシャンッ、と

まるで突然自重に耐え切れなくなったかのように潰れる。

合気

 

「すまないな…驚かせるのが好きなものでね」

「あぁ……」

 

範馬刃牙は飛び起きると同時

豊饒(ほうじょう)な、それでいて厳かな上段廻し蹴りを繰り出す。

まるで芸術作品のようなその美しい一連の動作は、木原電脳に反撃の余地も与えずに意識を数瞬ではあるが遠くへと誘った。

 

「…流石だ、この私でも対応できない攻撃が存在していたなんてな」

「計算尽くの科学者には辿り着けない領域があるッて事さ……」

「やはり調整が必要みたいだな…」

 

木原電脳はそんな蹴りを食らっていて尚

決して地に伏す事はなく

寧ろ倒れかかる前に戻った意識は瞬時に自らの状況を判断し、地に着いた手を起点に蹴りを放った。

それもまた範馬刃牙の手によって防がれたものの、互いの力量は完全に把握した。

 

「なるほど…ね」

「やはり武術は机上の空論ではどうにもならんな…はは」

 

握手を交わすが、決して互いの闘志は消えてなどいない。

だが、ここで燻り続ける場合でもない。

 

「一先ず…この学園都市の『最高権力者』の下まで案内しよう」

「さ、最高権力者ァ…? 何のために俺をそんなところに…」

「私がこの科学の街に武術の誘致を行った。 君の力を以てその価値を認めさせてやって欲しい」

「なるほどな…」

 

兎にも角にも範馬刃牙という怪物が学園都市という要塞に入門した。

数多くの変化と共に




こんな感じで毎回多分戦ったりします
次回は戦いませんけど()


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拮抗

とても久しぶりな気がします。気じゃないんですけど。
と言うことでとりあえず何もなかったかのような顔をして投稿を再開したいと思います。


範馬刃牙と木原電脳

二人は静かに人のいない街を歩いていく。

 

「普段は今よりずっと賑やかなモンなんだが…『学園都市』という性質上学生が多くを占めるものでね」

「別にそんなんどうだっていい…ここに来た理由だって『馴れ合い』なんかじゃ無い」

「その辺りに関しては安心したまえ。 ここはきっと君にとって素敵な場所になる」

 

機械が忙しなく動く『違和感』に満ちた街。

そんな中でのとりわけ『違和感』を放つ二人がその中を歩いている。

 

「まず君にはとある少女に会ってもらう」

 

_________________________________________

 

「昔々…東洋に『ドラゴン』と呼ばれる『人間』が存在していた…」

 

暗い部屋の中で男が演説をしている。

彼は曰く『弱き民を解放する者』

ドラゴンこそその手がかりになると彼は言う。

 

「私の独自資料の結果…」

 

「現在、東洋にはドラゴンと呼ばれる人間が『3人』いる」

 

彼らはエジプトで発見された壁画を聖典とする邪教。

だがしかし、それらが『ドラゴン』の起源を掘り起こすトリガーになる事を彼ら自身もまた知らなかった。

 

_________________________________________

 

「「「破ッ」」」

 

中国某所

無数の見習い達が切磋琢磨する中、一際異彩を放つ存在がその見習い達とは少し離れた場所にいた。

彼は、修行場という施設にも関わらず率先してトレーニングをしない。

彼は、絵描きをしている。

それもただの絵ではなく、無数のキャンディ。

それを何やら中腰?の姿勢でひたすらに描き続けている男がいる。

 

「站椿…ですか?」

「はい、中国武術で下半身を強化するトレーニングとして使われています」

「それにしてもまるで『空気椅子』のような…」

「あの深さで、彼はあの机の上に置いてある山盛りのキャンディを全て舐め終わるまで続けているのです。 おかげさまで彼はリハビリ当初よりも20kg以上体重が増加してしまいまして……⁉︎」

 

意外か否か、彼の異変に一番最初に気付いたのは取材に来たレポーターであった。

 

「あの…あれもいつも通り…なんですよね…?」

「え? それはどういう……」

「思い出した…」

 

ドリアンは両手にレポーターと案内人の頭を鷲掴みにしながら一人でに呟いていた。

 

「まさか、最後の最後に自分自身にかけた催眠がこうも上手くいってしまったとは…」

 

大の大人をまるで石ころの様に豪快に投げ飛ばすと、ドリアンは不敵に笑う。

その瞳には、海王『ドリアン』として日本で死闘を繰り広げた時のあの邪悪さが宿っていた。

 

「さァ、君たち…戦おうか……」

 

ドリアンは一歩一歩ゆっくりと見習いの元へと向かう。

まるで死刑宣告の様にゆったりとした恐怖が辺り一面に漂う。

決して逃げることが出来ないと悟った彼らは、精一杯の虚勢をはる。

ここにいる全員が束になってかかったところで敵わないと理解(わか)っていながらも。

 

_________________________________________

 

「はい、それで…」

 

土御門元春は『とある商談のため』と言われ、学園都市を少し離れていた。

学園都市暗部で知らないものはいないと言われながらも、語られる事は少ない都市伝説。

上層部の誰もがその存在を知りながらも、上層部の誰もがその存在を見たことが無いと言われている『学園都市最高権力者』木原電脳からと伝えられたとある商談。

その相手は

 

「成る程…」

 

「神心会道場の学園都市支部設立ですか……」

「はい、この件は我々の上層部も非常に歓迎しておりまして、待遇に関しても出来る限りの厚遇をと……」

「構わん」

 

神心会元会長

武神とも称される現代空手の父

愚地独歩は手で土御門を制す。

隣に並ぶ愚地克巳も、突然口を開く父親の姿に動揺を隠せない。

 

「どうしたんだ? 親父ィ…」

「いや、そうだな……克巳、一瞬だけ席外してくれねェか?」

「は、はい…」

 

愚地独歩は克巳を部屋の外へと追い出すと、実に滑らかな動きで土御門元春の元へ近付き

その腰に隠されていた銃を土御門本人すら気付かない速度で奪い取る。

だが、愚地独歩には憤りなんかの感情は感じることができない

 

「何も。別にこれについて怒ってる訳じゃねェ。大方ここに来る前に誰か殺してきたか」

「…」

「それが悪いかどうかについて触れるつもりもねェ…お前さんみたいな高校生がこんな役に連れ出されて、ついでかどうか人も殺してんだ。 …少なくとも(おい)らが簡単に触れていいレベルの問題じゃァないんだろう……」

 

愚地独歩は酒をくいっと一杯飲み干すと、深くため息をついた。

 

「でも、だ。 こんな時くらい気楽に話してみたらどうでぇ。 本当に神心会を設立して不良共を更生させる…言っちゃ悪いがそれだけの理由の為にお前さんみたいなやつが呼び出されて、上層部も動くモンなのか? 学園都市ってのはァ……」

「……」

 

土御門元春は暫く黙っていた。

だがしかしその顔には決してその沈黙が漫然的に延ばされている間ではない事をはっきりと示していた。

そこまでの事情がここにはあり

そこまでの事情が彼にはある。

 

「はっきりと言わせてもらいますが、『分かりません』」

「?」

「この提案は上層部の指示によるものです。 しかし、その上層部の正体は分かりません。」

「誰か知らねェやつの指示に従ってるのか?」

「はい。 その先については他言できません。 貴方がこの件を承諾すればおそらく当人側から接触がある筈です」

「なるほどな…」

 

愚地独歩はゆっくりと歩みを進め、扉の外に出たかと思うと、克巳を呼び出した。

それに応じ、克巳がソファに座るとほぼ同刻。

 

「克巳ィ…」

「はい」

「行くぞ。学園都市に」

「…はい」

 

こうして新たな武士(もののふ)がこの戦に名乗りを上げた。

彼らと共にこの混沌の戦場は更なる熾烈を極め、嘗てないほどに大規模な戦争となる




ここからは長らく仮失踪的な形になっていたため、ネタバレ的な要素を含みますが、大まかなストーリーの展望を述べて置く事でしっかりと完結までの道筋自体は出来ていたんですよ。と言い訳をするパートになります。全然普通にこの話から最終回までの章分けの話をしてるので、ネタバレが嫌な方(そもそも誰が見ているのかと言う指摘は勘弁願いたい)はこの後書きは無視してもらえると嬉しいです。






と言うことで

一応物語の流れとしましては、『とある』原作小説の1巻〜22巻まで(いわゆる『旧約』箇所)を切り貼りしながら(予定としては1,2,3,6,8,12&13,14,15,16,20~22の内容を一部かすりながら)、完全オリジナル部分(予定としては死刑囚編、範馬の血族編、武蔵再来編、最大トーナメント編)を間間に入れて行きたいと思います。
範馬の血族と出ていながら、原作ではジャック(&疑惑の範海王)しかいないのではないか?と言う指摘はあると思いますが、そこはオリジナルキャラを出して補完して行きたいと思います。
というか、そこ以外でもオリジナルキャラや、今回の途中で挿入されたエジプトの壁画(刃牙シリーズ第3部『範馬刃牙』参照)を含めた独自の解釈が入ると思います。恐ろしく気が向かなくなったら同じように放り投げるかもしれませんが…
と言う形です。


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木原

実は既に3話まで投稿されてると思ってずっと4話5話をどうするか考えてました。
これからは頑張って投稿していきたいと思います。
週一とはいい切れませんが、死ぬまでに完結する頻度では


窓のないビルの中

アレイスター・クロウリーはそこに漫然と存在していた。

未だ嘗てない程に虚ろな存在。

刃牙はその実体を視認しながらも、そこに自らのイメージに満たない程の幻を浮かべた。

1に足らないその存在は、どこまでも強大に見え、またどこまでも脆弱に見えた。

範馬勇次郎に限りなく近いようにも、限りなく遠いようにも見えた。

否、その時点で範馬勇次郎には一寸たりとも近くないのかもしれない。

しかし、近いと思わせるようで遠いと思わせる。

そんな矛盾に満ちた『塊』がそこにいた。

肉塊なのか、ただのデータの集合体なのか。

そんなものすらも朧げにしてしまう矛盾。

それがそこにいた。

 

「はい。 彼は己の身一つしか秀でた能力を持っていませんが、それだけが超能力に匹敵します。 我々の発展に確実に役に立ちます」

「…」

 

ただ強くある。

それだけを目標に生きてきた少年範馬刃牙には彼らの意図するところは分からない。

自身が呼ばれた事にどれほどの意義があるのか。

そんなものには一寸たりとも興味がない。

だがしかし、彼は確かに困惑(とまど)っていた。

噂に聞いた学園都市。

超能力が開発される都市とは聞いていた。

しかしである。

このビルに自らを連れてきたあの少女もである。

彼らの話に出てくる範馬刃牙(ちじょうさいきょう)に匹敵する『超能力者』もである。

自分は何のためにここに呼ばれたのだろうか。

初めての中で範馬刃牙には確かに迷いが存在していた。

 

「…まァ、」

「?」

「『プラン』の中で試験的に戦わせてみれば分かります。 彼は『規格内』の中ではおそらく最強かと」

「そうか…」

 

ブツブツと目の前で繰り広げられる会話に

範馬刃牙は一切注目をしていない。

だがしかし、確かに気付いている

この街に広がる『雰囲気』

地上最強の少年範馬刃牙は、この街が作り出した風斬(ちから)を無意識ながらに察知していた。

眼下に迫る不穏な

それでいて掴み所のない謎の力を前にして範馬刃牙は身震いをしていた。

強大な敵を前にした時にする武者震いを

 

「お任せ下さい。 この木原電脳の名に懸けて『有効活用』してみせましょう」

 

_________________________________________

 

結論として、範馬刃牙が出る幕はアレイスターの前では無かった。

無論、刃牙はそんなことに興味はないが、それは重大な意図を示している事に刃牙は気付かなかった。

目の前にいる存在がどこまで強いのかということに。

 

「晴れてキミは自由だ。 キミの寮も既に用意してあるから、後は本当にキミの思うがままに動けばいい。 この地図にその寮の場所も記してある」

「アンタと戦うも自由…か?」

「そう…と言いたいところだが、私はこれから仕事があるのでね…なに大丈夫、君が『強くあれ』ばいつか戦う運命になる」

 

何かの端末で忙しなく指示を飛ばしながら

しかし確実に『隙が無い』と分からせながら

木原電脳は此処に於いて特異な匂いを放っていた

それはとても懐かしい匂い

機械の街で彼はただ一人

戦場の懐かしい匂いを

 

_________________________________________

 

「それは魅力的な提案じゃ…」

「そうでしょうそうでしょう? 私だってその為にずっと調整を続けてきたんですから魅力的でなければ困ってしまいます‼︎」

 

物々しい雰囲気の漂う道場

『大日本武術空道』当主

マスター国松がそこに佇んでいた。

 

「して木原さん…」

 

「あんさんの目標は一体?」

 

その提案は口にした通りあまりにも魅力的

故に怪しい

木原電脳と名乗るその人物との面識は無いはずだった

それに

 

「学園都市は最近色々な武術家を呼んでいるという噂も気になる… もちろ」

「それらの計画も全て私が主導で行っております」

「ほう…?」

「全て私の我儘ですよ…言ったでしょう。 この為に私は今まで半生を費やしてきたんですよ」

「成程…」

 

国松がじっと木原を睨む。

その男はまるで目の前にいる人物の偉大さなど気にもかけていないような表情

そのような否定的なニュアンスで捉えるべきではない。

まさに純粋無垢

その目はまるで

 

「わしが初めて武術を志した時と同じですな」

「?」

「ならわしもやる事は一つ…」

「来て頂けますか」

 

その男の目の輝き

正に狂気

戦いに取り憑かれた目をしていた。

 

「老体に鞭を打たせるんだ…相応のものは期待しとるからな?」

「必ずや約束を果たして見せますとも」

 

国松

学戦都市(せんじょう)へ入門




今更ながらの注意になりますが、私の作品は世間的には所謂『原作レイプ』というか、多少の改変を含んでおりますので、その辺りに関してはご了承願います。
例としては、最初からずっと出てる木原一族の新キャラだとか、次の次あたりに出てくる勇次郎が世界中に撒いた『種』だとか、原作に書かれてる物だったりなんだったりを最大限に活用して自分が望む展開に向けていきます。
一応、とある魔術の方の大ストーリーを絡めようとすると、個人的には手に負えなくなりそうな気がしたので、あくまで刃牙たちが『プラン』に直接干渉したりどうこうってのは最小限になってると思います。
あと、『ここが原作と違う』と思った点が有りましたらご指摘いただけると嬉しいです。


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微睡

週一維持出来ました
ただ、次週に上条当麻を入れるかどうかを迷い続けて二週間ほど経ってます。
もし決断出来なければ今作は基本的に刃牙たちに焦点を当てて原作をなぞりながらという形にはならないかもしれません。
じゃあなんで学園都市入れたんだって話になりますが


「…」

 

その男はあまりにも静かだった。

植物だってもっと活発だ。

だって

 

「一点をジー…っと見つめて…一言も喋らないんです。 収容された日からずーッとですよ。 一日でもそうではない日なんてなかったんです。 あんなの」

 

「神だって騙されます」

 

_________________________________________

 

「…」

 

何日が経っただろうか。

自分がここに収容(いれ)られてから

 

「…」

 

頭の中を過る光景はたった一つ

 

「…」

 

地上最強の名を持つその男

あの拳が頭から離れない。

 

「……」

「なァとっつぁん…」

 

あの時だ

最後に遠のく意識の中聞こえた

 

「…」

「とっつぁん…動けるかい?」

 

『勝手に決着つけさせてもらった』

あまりに傲慢な振る舞い

だが、それに足る圧倒的な暴虐

あれは紛れもなく…

 

「とっつぁん…悪いが勝手に動かさせてもらうぜ」

「‼︎」

 

瞬間

 

「ひィッ‼︎⁉︎」

「そうだ…」

 

今私は何をされた

看守に腕を触れられた

それに私は何をした

看守の手を払い除けた

これは何か

紛れもなく

自らの意思による抵抗である

 

「私はまだ動ける」

「た、助け…」

 

私は今自分の意思で動いている

範馬勇次郎ですら私を永久的に止めるに至らなかった

私はまだ

 

敗北(まけ)てなどいない…」

 

神すら騙し

自らすらも騙し続けた微睡の中から

猛毒が解き放たれた

 

_________________________________________

 

「房の外からみたあの光景…私は生涯忘れませんよ」

 

「シーツは暴れ踊り、血飛沫と悲鳴が飛び交うあんな光景…それに」

 

「シーツが舞い降りた時、柳龍光は既に留守だったのです」

 

_________________________________________

 

アリゾナ州立刑務所

通称ブラックペンタゴン

ここには地上最自由の名を冠する繋がれざる者がいる。

 

「やぁミスターアンチェイン。 君に会うのは初めてかな?」

「あァ…確か……木原、と言ったかな?」

「流石、ミスターは何でも知ってらっしゃるのですね」

「そう畏まる必要もないだろう木原。 で、何の用事だ」

「あ、そう? なら普通に行くけど、生憎今回は君自身に用はなくてね…ここにいる『地上最不自由』に用があるといえば分かるかな?」

 

瞬間

確かに2人の間には無『音』が流れた

あまりの禁忌に空気が震える

 

「…木原、君もなんでも知っているんだな。 彼の事を知ってるのはここの所長と私とオーガ位のものだと思っていたよ…」

「まぁこっちも手段ならあるって事だよ。 で、会わせてくれるかい? 無理なら実力行使で行くだけだが…」

「ここで一戦やるのも悪くはないが、その実力は知っている。 会いにいけばいい」

 

アリゾナ州立刑務所

通称ブラックペンタゴン

ここには地上最自由の名を冠する者がいる

そのものは法では繋ぎ止められないことから繋がれざる者(アンチェイン)と呼ばれる

そしてもう一人

ここには繋ぐ必要のない者と呼ばれる超極秘人物が存在する。

 

「……」

「そんな全てを諦めてしまったような目をするんじゃないよ…」

 

「全ての死刑に耐えて死に損なってしまったからと言ってさ」

 

地上最強にして地上最不自由

その男は木原電脳になど目もくれず

世界を諦めていた。

 

「まぁ今日は挨拶に来ただけだ。 準備が整ったらまた来るよ」

 

「ミスター範馬」

 

最強を運命付けられた死刑囚

未だその微睡から目覚めず

 

_________________________________________

 

「そうか…私は最後の最後に自分自身に負けたか…」

 

道場からは遠く離れた某所

海王はそこにいた。

自らの敗北を強く望んでいた

が、しかしその人生には未だ一度の勝利も飾られることのなかった

最強との呼び声もあった異例の白人海王。

だがしかしその海王は今

無勝の最中迷走していた。

 

「勝利を知りたい…」

 

以前の彼からは出る(よし)もなかった言葉。

その目にもかつての輝きは無い。

 

(彼と戦えばまた何か変わるだろうか…)

 

迷いに満ちたその顔は

何も見据えることは無く

 

「お待ちしておりました。ミスタードリアン」

「…」

 

虚空に響く声

空洞の様に何も返ってこない

 

「私に戦いを申し込むのであれば悪いが断らせてもらう。私はもう疲れたんだ」

「あなたに死に場所を与えるために来たのですよ」

「‼︎」

 

その汚名は大擂台祭で知れ渡ったが、だからと言って決して軽んじられることのない経歴

しかし叩かれたその口は決して軽くはなかった。

 

「君がか…?」

「いいえ、『烈海王』がです」

「ッッッ」

 

予期せぬ言葉にその目が輝きを取り戻す。

彼についていけば

自らの望みが

遂げられる

 

「…君の言葉は信頼に足るのかな」

「今すぐにとは言えませんが直に分かりましょう」

「ならば向かおうか…とその前に君の名前を」

 

彼の目に嘘は見えない

まさに最後の希望であった。

 

「私は木原電脳…貴方には再び東京へ向かってもらいます」

 

微睡の最中

啓の一歩を歩み始めた




ハーメルンで私が作るのは主に私が『見たかったもの』になります。
なろうとかでは自分の中で出来上がっていたものを文章化するような形になりますが、そうではなくこちらは見たいものを考えて作る過程ですので、なんというか行き当たりばったりな感じです。
この作品に関しては、直感で分かるであろう通り彼らの戦いを見てみたいというものと、刃牙の中で投げ出された伏線のようなものを出来るだけ回収したいというものです。あとは全員が救われてほしいというものでしょう。この3つは大体全作品に共通していますが。
という事なので、また来週にも何かコンセプト的なものを話せるように小分けにして今回は終わりたいと思います。


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学舎

色々学園都市の年表とか見て厳密に行こうと思っていたんですが、1日単位で色々書かれてたの見て絶望したのでIFの物語であると言う事を改めて強調し、矛盾があっても刃牙特有の『ライブ感』という単語で乗り切らせていただく事をここに宣言します。


 

「ここが俺の部屋…」

 

範馬刃牙に与えられた部屋

それはただの学生にしては特例と言えるものであった。

 

「地下室…」

 

自らの家の地下室に似たものが用意されていた。

まるで

 

「知られてるのか…?」

 

木原電脳と名乗る男

まるで霧の様に正体の知れぬその男は確かに格闘家の影を匂わせていた。

確実に『こちら側』に関わりのある

 

「まァ…」

 

強く有る

それだけがここで彼に与えられた使命だった

 

「試合してェ〜…」

 

かつてない種類の強敵

衝撃を前に彼の細胞は歓喜していた。

 

_________________________________________

 

「…」

「ということで貴方にはこれから学園都市に入学していただきたいと」

「…」

 

寡黙な侠客

花山薫は喋らない。

 

「範馬勇次郎……本当に来るんだな…」

「それだけじゃありません…きっとあなたにとってはもっと素晴らしい出会いが待っていることでしょう‼︎」

 

木原電脳は大袈裟に両手を広げて演出して見せた。

だがその言葉に嘘は感じられない。

 

「私はこれまでの半生をかけてここまで築き上げてきた…あなた方を小手先の嘘で騙す様な小さな存在ではない‼︎‼︎」

「…」

「勿論、素晴らしい出会いの中には私も含まれているのですよ…」

「!」

 

瞬間、花山の隣には木原電脳の拳があった。

目に見えない拳

頬に一筋

 

「どうです? 話に乗っていただけないなら実力行使に出ますが」

「それも悪くねェが…」

 

巨体が立ち上がる

初めて見た人間はそれを岩と見間違えることこそあれ、高校生だとは思うまい

 

「その話、乗る」

 

花山薫、学園都市に入門す

 

_________________________________________

 

「…ということで今日から特別講師が来てくれるじゃんよ」

 

黄泉川愛穂

学園都市にあるとある高校の体育教師の隣にいたのは特別教師として登場するにはあまりにも頼りのないシルエットだった。

 

「じゃあ渋川先生、よろしくお願いしますじゃん」

「ただいまご紹介に預かった通り今日から特別講師としてここに来た『渋川剛気』といいます。 以後お見知り置きを」

 

小さな

まるで年端もいかぬ少女のような体躯の老人は深々とお辞儀をした。

まるで頼り無い…

 

「とは言ってもこんなに小さい老人の言うことなんて信じられんじゃろ?」

「…」

「そこまで畏まらんでもええが…この中で一番真面目なのはおるかね?」

「それなら…」

「わ、私?」

 

全員の目線が静かに吹寄制理の元へ集まる。

 

「嬢ちゃん、随分慕われとるようじゃの?」

「き、恐縮です…」

 

ささ、と促されるままに吹寄は渋川の真正面に着き

渋川は一瞬きっと睨みつけると

 

「とは言えいきなり激しくやるつもりはありゃせんよ。礼儀の基本は握手から…」

「は、はい…ッッッ‼︎」

 

渋川の『華奢な手』が吹寄の手によって覆われるたその直後

しっかりと地を踏みしめていたその両足はまるで骨が無くなったかのようにへたり込む。

握手

ただそれだけのことのように見えた

 

「すまんすまん、驚かせてしまったの…でも、これで本物って分かったかの?」

 

月詠小萌が「達人って言われてるすごい人らしいのですよー!」と軽く言っていた程度であり、一部学校にいる武道好きな生徒がざわついているから漠然とすごい人だとは思っていた。

だがこれは…

 

「まるで魔法だ…」

 

誰とはなしにそう呟き始めた。

この科学技術が発展しきったような街で

 

「魔法…のぉ」

「いいえ、本当に魔法のよう…」

 

吹寄制理が渋川剛気に手を引かれて立ち上がる。

 

「いや、こんなに上手くいったのも嬢ちゃんがワシを信頼してくれとったからじゃな…あ、悪い意図はないんじゃよ? 変に抵抗されたりしたら無傷にならない可能性もあったって話で…」

 

静寂

握手を抵抗したら無傷ではない

今までケンカといえば腕力か能力だったところに横から全く異質な『技術』が入り込んできた。

 

「と言うことで、疑ってるなら前に来てくれれば見せるが、あまり堪えすぎると大怪我するから気をつけての」

 

渋川剛気の前には誰一人立ちはだかることはなかった。



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降魔 壱

降魔は弐か参で終わると思います。
というか弐で終わろうと思ってたけどこの調子では参ですかね



「今日の稽古はこれで終わりだ」

「「「押忍ッッッ」」」

 

学園都市に招かれてから数週間

愚地独歩はまだ自分が呼ばれた理由について理解できていなかった。

 

(上層部…)

 

独歩が呼ばれた理由は『分からない』

わざわざ交渉役として呼ばれた少年すらもその真意を知らないままに来ていた。

ここに来ればきっと依頼主が話してくれるだろう。

本能が底知れぬ戦いを見出したからここに来た。

だが…

 

「まだ、何もねェ……」

「どうしたんだ? 親父」

 

数週間経っても何もない

交渉役が連絡を忘れたなんてことはないはずだ。

あの少年は『知ってる』

そんなヘマをするわけがない。

 

「ちょっと外に出る」

 

_________________________________________

 

学園都市第七学区

中高生がその人口の殆どを占める学園都市の中心に神心会学園都市支部は場所を用意されていた。

待遇に不満なんてない。

生徒に問題があるわけでもない。

ただ

 

「分からねェ…」

「や…やめてくださいっ」

「…何だァ?」

 

考え事をしながら路地を歩く最中、何やら声が聞こえた

不穏な路地裏

 

(あん)ちゃんたち…嬢ちゃんが嫌がってんだからやめてやりな…」

「あぁ? オッサン何様のつもり?」

「何様かじゃねェと人助けする権利すらねェのかい?」

 

どうやら少女が不良グループに絡まれているようだ

異能力がどうこうと聞いていたが、なんというかこの辺の事情に関しては能力のない都市と変わりないようだ

なんて思いながら独歩が一歩前に出ると、対抗するように不良たちのリーダーと思しき男が睨みつけてくる

 

「おっさん警備員(アンチスキル)なのか知らないけどさ…武器無しどころか素手で俺らなんとかできると思ってるの? 俺レベル3だよ?」

(あん)ちゃんがどんな能力持ってるかどうかは知らねェが…」

「あぁ?」

 

不良のリーダーが一歩

いやまだ半歩にも満たないが前に進み出した

次の瞬間

 

(おい)らァ武器持たねェ主義なんだ…」

「ひ、ひぃ…」

「もう半歩前に出てたら鼻持ってかれてたなァ…」

「な、嘗めるなよ…俺は元々発火能力(パイロキネシス)の神童って言われて…‼︎」

「危ないっ!」

 

仲間の静止を振り切って少女が叫ぶとほぼ同時

レベル3による至近距離からの能力行使

怒りに任せてのそれはその1秒後にリーダーに後悔を抱かせた

『感情に任せて無駄に重い罪を犯してしまった』と

それほど確実に死を予測できる程の渾身の一撃だった

一般人相手であれば

 

「おいおい…こっちは手加減したってのに危ないじゃねェか…」

「え…⁉︎」

「な、なんで…」

「廻し受け…って言われても知らねェか」

 

「…さて」

「お、おいお前ら…」

 

気付けば取り巻きは皆消えていた。

単なる暴力によって纏め上げられた組織などあまりに脆弱

愚地独歩はただ一言呟いた

 

「まだ、()るかい?」

 

その質問を言い切るまでもなく目の前から走り去っていった。

 

「って…もうちょっと根性はねェのかァ?」

「あ、あの…」

「嬢ちゃん怪我はないかい?」

 

少女に手を伸ばそうとした

その時に気づく

 

「その『愚地独歩様へ』ってヤツ…」

「え? これですか? 実はさっき…」

「いや、悪いな」

 

背後から男の声と、機械の軋む音がする。

一度も会ったことのない不審な男

だが、独歩にはそれが只者ではないと分かった。

更に言えば、きっと彼こそがこの間の話の中に出てきた『上層部の人間』なのであろうという野生の勘も

 

「お使い頼んだところ悪いね初春ちゃん、その手紙もう捨てちゃっていいよ」

「わ、分かりましたが貴方は…」

「その手紙の送り主、木原電脳。それ以上は何も言えないし聞こうとすればきっと君は後悔する」

「は、はい…‼︎」

 

不良に絡まれていた少女

初春飾利はそれでも手紙を木原電脳に律儀に手渡し、愚地独歩の方に深々と頭を下げると、急いで路地裏から逃げ出した。

 

「それで…(おい)らァここに連れてきたのは」

「そう、私が君をここに呼ぶように頼んだ。ある程度代償だって払ったんだよ?」

 

先程までは明らかに分かる危険さだった。

不良たちがいて、少女が襲われていて、それを止めに来た大人に対して明らかに敵対的な態度をとっていた。

誰が見ようと確実に不良と少女は仲良しというわけではないだろうし、大人とも良好な関係が気付けていないと分かるだろう。

だが今はそうではない。

ただ二人の大人が向き合っているだけである。

それを見るだけではただ何か駄弁っているだけだと思われるだろう。

あるいは、路地裏で何か『良くない事』をしていると思われるかもしれないが、あからさまに不穏な空気などは流れていない。

だが、戦士の勘だけが告げていた。

お互いがお互いを危険であると信号を全力で発していた。

 

「なに、今すぐここで()ろうって言ってるわけじゃないんだよ。ただ一言挨拶をしておこうと思ってね」

「何のために呼んだんだ? 代償を払ってまでそうする必要があるような言い方だったが…」

 

独歩は警戒を緩めない。

そうして『スポーツ気分』でいればすぐ負ける相手であろうことは一眼見れば分かる。

彼はアライjr.なんかとは比べ物にならない程恐ろしい

 

「いやぁ…言い方悪いけど君だけでもないんだ。今、私は世界中から格闘者を集めていてね、後々にはオーガだって呼ぶつもりだ」

「‼︎」

「ただ確かめようと思ってるだけだよ…」

 

「私が『地上最強』だってことをね」

 

高らかなる武術の冒涜の宣言を行う

目の前の男はかつて地下格闘技場では見たことのない不吉なオーラを放っていた。




すごく久しぶりの投稿だと思いますが、これからも歩みがどれだけ遅くとも完結させるつもりだけはあります。


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