艦娘ライダー吹雪 蒼き世界の破壊者 (波音四季)
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プロローグ ~彼が生を受ける前~

本編の前、序章です。

第1章はすでにプロットが出来上がっており、あとは文字に起こすだけです。

1週間以内に投稿する予定なので、しばしお待ちください。


どこかの島、浜辺に緑のスカートの黒いジャケットの少女が座っている。空は黒い雲で覆われて海を荒れている。

 

「ここにいたか。睦月。」

 

白い服の青年が少女に話しかけた。

 

「・・・。」

 

「睦月、戻ってこい。みんなも待ってるぞ?」

 

「・・・もう無理だよ。吹雪ちゃんがいないとこに戻って何の意味があるの?」

 

「意味ならある。ここで戦うことは無意味だ。」

 

「無理なんだよ。今の私の心には、吹雪ちゃんを殺した奴らと吹雪ちゃんに力を与えたアナタへの憎しみしかないの。」

 

「どうしてもやるのか?」

 

睦月はその問いに答えず、両手を腹部にかざす。すると、腰に黒く発光する黄金の装飾が施されたベルトが出現する。

 

「っ!・・・もう、戻れないんだな。みんなで笑いあってたあの頃には・・・。」

 

そう言うと青年は白いバックルを腰に装着し、駆逐艦娘吹雪の顔が描かれたカードを取り出す。

 

「「変身!!」」

 

睦月がモーションをとると、セーラー服とスカートが黒く染まり、血管のような金色のラインが浮き上がる。さらに瞳が光のない黒に変わり、手首足首に黒いオーブの嵌め込まれたブレスレット・アンクレットが出現する。

 

青年がカードを挿入する。

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

電子音と共に青年の姿がマゼンタ色のセーラー服を着た駆逐艦吹雪の姿へと変わる。

 

「デヤァ!」

 

「ウオォ!」

 

2人の拳と拳がぶつかり合い、脚と脚とがぶつかり合う。

 

「オラァ!」

 

バリン

 

「ガハッ!」

 

吹雪の拳が睦月のベルトに当たり、大きなヒビを入れる。

 

「ウアァァァァァァ!!」

 

バキン

 

「アグッ!」

 

睦月の拳が吹雪の頭に当たり、真っ赤な血が服を染めていく。

 

「ハァァァァァァァァァァ!!」

 

「オォォォォォォォォォォ!!」

 

2人の艦娘が右の拳にエネルギーを溜める。

 

「ヤァァァァァァァァァァ!!」

 

「ハァァァァァァァァァァ!!」

 

2人の拳がぶつかり合い、ぶつかり合った2つのエネルギーが暴走を起こす。暴走を起こしたエネルギーが巨大なエネルギーの奔流を巻き起こし、2人を包み込む。

 

 

 

 

俺たちはどこで間違ってしまったんだろう?

 

 

 

 

俺たちはどうして仲間同士で殺しあってるんだろう?

 

 

 

 

俺たちはどうしてこんな所にいるんだろう?

 

 

 

 

あぁ、神様、もしいらっしゃるのでしたら

 

 

 

 

次に生まれてくる時は、同じ過ちを繰り返さないよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エネルギーの奔流が収まった時、そこには誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1つの物語が終わる時、新たな物語の幕が開く。

 

これは、世界を救うために破壊を続ける艦娘ライダーと艦船たちの物語である。

 




初っ端から暗い話で申し訳ない。

今後、後書きは艦娘ライダー図鑑としようかと思います。

艦娘ライダー吹雪
言わずと知れた10番目の仮面ライダーの力を得ている艦娘。他の艦娘ライダー達の力を使用できる。変身した青年は2代目であり、先代は吹雪本人が変身していた。

艦娘ライダー睦月 アルティメットフォーム(ブラックアイ)
平成最初のライダーの力を得ている艦娘。心が憎しみで染まってしまっているため、凄まじき戦士となってしまっている。


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第1章 旅の始まり
第1話 天馬の少女


アズールレーン第1話を見た時の反応
空飛ぶユーちゃん→お前が飛ぶんかい!
加賀の狐→コイツ誰やねん!
艦載機に乗るエンプラ→レイダーに乗るカラミティか!

4話も観たけど、あの戦闘からまさかの爆発オチなんてサイテー!



とある国、海が見える街から少し外れた丘の上の小さな家

 

「すぅ、すぅ・・・」

 

淡い紫の髪の少女がベッドでスヤスヤと眠っている。そこへ翼の生えたユニコーン(角の生えたペガサス?)のぬいぐるみが近づいてきた。

 

ツンツン

 

「んぅ~・・・」

 

ぬいぐるみは鼻先で少女を突く。

 

「んぅ?・・・ユーちゃん?おはよう。」

 

少女―ユニコーンに撫でられて、ユーちゃんは嬉しそうに尻尾を振る。

 

「あれ?お兄ちゃんは?」

 

ユニコーンの問いにユーちゃんは「知らない」という風に首を振る。

 

「行こ?」

 

ユニコーンはユーちゃんを抱き上げると、自分の部屋を出た。

 

 

「うむ!今日は快晴!絶好の釣り日和だな。」

 

「あぁ、こう天気がいいと畑仕事が捗って助かる。」

 

家の外に出ると、角の生えた女性と銀髪の女性が話し合っている。

 

「三笠お姉ちゃん、エンターお姉ちゃん、おはよう。」

 

「おぉ!ユニコーン、おはよう!」

 

「おはよう。よく眠れたかい?」

 

「うん。あの、お兄ちゃん知らない?」

 

「ツカサか?我が起きた時にはいなかったな。」

 

「私も今日は見てないな。プリンツなら知ってるんじゃないか?」

 

「聞いてみる。ありがとう。」

 

 

家の裏

ガキンガキン ガキンガキン

 

「はいはい、落ち着いて。ご飯はまだあるから。」

 

銀髪に赤いメッシュの入った女性が、主砲が取り付けられた龍のような2体の艤装に生の魚を与えているところだ。

 

「プリンツお姉ちゃん?」

 

「ん?あら、ユニコーン、おはよう。」

 

「おはよう。ねぇ、お兄ちゃん知らない?」

 

「ツカサ?アイツなら街へ行ったわよ。風景を撮るとか言ってたわね。」

 

「あ、ありがとう。」

 

「待ってればそのうち戻ってくるだろうから、待ってなさい。勝手に行っちゃだめよ?」

 

「・・・うん。」

 

ユニコーンは自室で大人しくしていた。していたのだが・・・。

 

「プリンツお姉ちゃんは待ってろって言ってたけど、ユニコーン、早くお兄ちゃんに会いたい。」

 

このユニコーンという少女、兄に依存しすぎている節がある。それゆえに突拍子もない行動を取ることもしばしばある。

 

「ユーちゃん。」

 

ユーちゃんは「ダメ」と言うように首を振る。

 

「お願い、ユーちゃん?」

 

ジーっと見つめてくる主に首を振るユーちゃん。

 

「お願い?」

 

発汗しないはずのユーちゃんが汗を流している。

 

「お願い?」

 

 

「行くよ、ユーちゃん!」

 

結局主に押し切られたユーちゃんは、飛行ユニットモードになってユニコーンを乗せている。

 

「これ絶対後で怒られる」と思いながらユーちゃんは街へと羽ばたいた。

 

 




ユニコーンみたいな妹が欲しい人生だった。

KAN-SEN紹介
ユニコーン
ロイヤルの軽空母。ある理由から主人公と一緒にいる。それについては追々。

エンタープライズ
ユニオンの空母。ある理由から主人公と同居している。それについては追々。

三笠
重桜の戦艦。ある理由から主人公と隠居している。それについては追々。

プリンツ・オイゲン
鉄血の重巡。ある理由から主人公にくっついてきた。それについては追々。


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第2話 通りすがりの

私は、艦これもアズレンも好きなので、並行してやってるんですが、最近、デレステやデュエルリンクスも面白くて・・・大変だよホント・・・。

もとからいるキャラクターをベースに作ったキャラクターは、オリ主と言えるんだろうか?誰か教えてくれ。


街の広場

老若男女が平和に過ごしている。純白のドレスを着てぬいぐるみを抱えた少女、ユニコーンもそこにいた。

 

「お兄ちゃん、どこだろう?」

 

あたりを見回すが、自分がよく知っている人物はどこにもいない。

 

「あっちに行こう。」

 

街の細い路地へと入っていくユニコーン。その様子を見ていた人物がいた。茶髪を黄色のリボンでツインテールにした少女、しかし、奇妙なことに店のショーウィンドウには映っているが、その目の前には誰もいない。さらに、少女の腰には龍の紋章が描かれたバックルのベルト、左手には赤い龍の頭を模した手甲らしきものが握られている。

 

『見つけた、司令に近い子』

 

そう呟くと少女はショーウィンドウから姿を消した。

 

 

「お兄ちゃん?どこ?」

 

ユニコーンが細い路地を歩いていると、目の前に2人の男が立ちふさがった。

 

「おやおや、珍しい。お嬢ちゃん、迷子かな?」

 

「ううん、お兄ちゃんを探してるの。」

 

「へぇ、お兄ちゃんはどんな人?」

 

「えっと、えっと、カメラを持ってると思う。」

 

「あぁ!そいつならさっき見たぜ!俺たちが案内してやるよ。」

 

「でも、知らない人に着いてっちゃいけないってお兄ちゃんが。」

 

「大丈夫、僕たちはお兄ちゃんの友達だからね。お兄ちゃんの友達なら君の友達でもあるだろ?」

 

「え?で、でも・・・。」

 

「大丈夫だって!さ、一緒に行こうぜ!」

 

「い、いや!離して!」

 

「おい。」

 

「あ?」

 

「うん?」

 

ドガ!バキ!バゴ!メキ!

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

「いてぇ!!」

 

2人の男は突然現れた黒髪でポラロイドカメラをぶら下げた青年にぶっ飛ばされた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「全く、世話焼かせるなよ。大丈夫か?」

 

「うん!」

 

ユニコーンは青年に抱き着き、抱き着かれた青年はユニコーンの頭をやさしく撫でる。2人に押しつぶされる形になったユーちゃんは苦しそうだ。

 

「だ、誰だよてめぇ・・・。」

 

「通りすがりのカメラマンだ。」

 

パシャ パシャ

 

青年は倒れている2人をカメラで撮影すると、出てきた写真を見る。

 

「ハァ、またダメか。」

 

そう言って写真を放り捨てる。写っている男たちは歪んでいる

 

「んだよ、この写真?」

 

「さぁな、俺が教えてほしいよ。行くぞユニコーン。」

 

「うん。」

 

先ほどの広場

ユニコーンは、青年―角谷ツカサが撮った風景の写真を見ていた。どれもひどく歪んでおり、とても良い写真とは言えない。

 

「どうだ?」

 

「・・・いいと、思う。」

 

「世辞を言うな。正直に言ってくれ。」

 

「・・・ひどいと思う。」

 

「だよなぁ。いつもこれだ。俺が写真を撮ると、いつもこうなる。カメラを変えても、被写体を変えても、場所を変えても、ガキの頃からずっとこれだ。」

 

「どうしてこうなっちゃうんだろうね?」

 

「そんなの分からん。20年間ずっと考えてきたが、答えが見つからない。」

 

「まるでお兄ちゃんに撮られるのが、イヤみたい。」

 

「ふん、世界が俺に撮られることを嫌がっている、か。言い得て妙だな。」

 

そう言ってツカサはカメラのレンズを覗く。すると、レンズの中に黒髪の少女が現れた。

 

「ん?」

 

『角谷司令官』

 

「っ!?」

 

『今日、あなたのいる街が終わります』

 

「誰だ?」

 

『早く逃げて、そしてバックルとライドブッカーを見つけてください』

 

「何を言ってるんだ?」

 

『さぁ、早く、ユニコーンさんを連れて逃げて』

 

それだけ言うと、少女の姿は消えてしまった。

 

「何だったんだ?」

 

「お兄ちゃん?」

 

ユニコーンの声に振り返ったツカサは、目を見開いた。ユニコーンの後ろの上空に巨大な銀色のオーロラが揺らめいているのだ。

 

「何だあれは・・・。」

 

そう呟いた瞬間、オーロラから黒い虫のようなモノと白くて丸いモノが無数に出てきた。

 

「ユニコーン逃げるぞ!」

 

ツカサが叫んだ瞬間、無数の小さなモノたちの真下で爆発が起こった。

 

 




次回、バトルが始まり、ません!こういうライダー系の小説ってライダーが出てくるまでが長いよね、うちもだけど。
途中で出てきた2人の紹介は、そのうち。

人物紹介
角谷ツカサ(かどや つかさ)
この物語の主人公。20代後半、黒髪、面倒なことがキライ。名前がディケイドの変身者に似てるが、全くの別人。指揮官ではなくただの一般人だが、KAN-SENを引き連れている不思議な人物。とある国の丘の上で家庭菜園や釣りをしながら暮らしている。生計は情報屋みたいなことをやって立てている。撮る写真がすべて歪んでしまうのが子供のころからの悩み。


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第3話 崩壊の序曲

第1章が完成したので、チマチマ投稿していきます。

この先、ユニコーンにはキツイ展開が続きます。ご注意を。


街の惨状は丘の上のツカサの家からも確認できた。

 

「いったい何事だ!?セイレーンが攻めてきたのか!?」

 

「分からない。だが、あんな艦載機は見たことがない。とにかく街へ行こう。ツカサを探さないと。」

 

「ちょっと!ユニコーン知らない?どこにもいないんだけど!」

 

プリンツの声を聞いてエンタープライズと三笠は顔を強張らせた。ツカサだけでなく、ユニコーンもあの爆発の中にいるのだ。

 

 

「走れユニコーン!」

 

ツカサはユニコーンの手を引きながら懸命に走る。街のあちこちで爆発が起こり、それに混じって人の悲鳴が聞こえてくる。

 

(なんとかを探せって言ってたけど、そんな暇ねーよ!とにかく安全なところに!)

 

だが、走っているツカサたちの前に奇妙な集団が現れた。黒い服に白い肌の女性たち、脚の生えた黒い異形の魚、人の身体が一部だけ残っている怪物たち。

 

(なんだこいつら?セイレーンの新型か?)

 

怪物たちの周りに人間の死骸が転がっているのを見るに、友好的な存在でないのは明らかだ。

 

「いやぁぁぁ!」

 

死骸を見たユニコーンはツカサの手を振りほどいてもと来た道を駆け出した。

 

「待てユニコーン!うおっ!?」

 

ツカサも後を追いかけるが、突如現れた銀色のオーロラに突っ込んでしまった。

 

 

「ここは・・・?」

 

オーロラを抜けた先は夜だった。先ほどまでの喧騒は嘘のように静まり返り、静寂だけがそこを支配していた。

 

「角谷司令官。」

 

振り向くと、先ほどの黒髪の少女が立っていた。

 

「お前、誰なんだよ?ここはどこだ?あの化け物は一体?」

 

「覚えてませんか?」

 

「?」

 

「艦娘ライダー。」

 

「艦娘、ライダー?」

 

「深海棲艦。」

 

「深海棲艦・・・。」

 

 

 

『司令官!私は■■です!』

 

「!?」

 

『司令官のバイオリン、私にも教えてくれませんか?』

 

「あ、あぁ・・・。」

 

『いきますよ、キバット!』

 

「あ、さ・・・。」

 

『艦娘ライダー■■、出ます!』

 

「っはぁ!はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

 

「おい、朝潮。アイツまだ思い出せないみたいだぜ?」

 

少女の横で手の平サイズのコウモリが口を聞いた。

 

『朝潮、見つけたわ』

 

「陽炎さん、ご苦労様です。あとはこちらで。」

 

朝潮が手をかざすと、ツカサの後ろに再び銀のオーロラガ現れる。

 

「あの子を救ってあげてください。」

 

「待て!お前は!」

 

ツカサがオーロラを抜けると、再び昼間の廃墟だった。だが、先ほどとは違い、爆発音も悲鳴も聞こえない。

 

「ユニコーン?ユニコーン!どこだ!」

 

ツカサはユニコーンを探して走り出した。

 




私はユニコーンが嫌いではないです。むしろ綾波の次くらいに大好きです。こんな目にあわせてごめんよ。


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第4話 蘇る記憶

さっそく評価が、と思ったら評価0で草生える。

まぁ、どうせ自分が読みたいから書いてるだけだし。文章とか、キャラの動かし方の下手さとか分かってるし。

こんなんでもよかったら、自由に見て自由に評価してください。


「ユニコーン!」

 

「お兄ちゃん!」

 

程なくしてツカサはユニコーンを見つけた。だが、ユーちゃんを抱えていない。

 

「無事だったか。ユーちゃんはどうした?」

 

「分かんない。どっかで落としちゃったかも。」

 

ツカサはこのユニコーンに違和感を感じた。まるで目の前のユニコーンが自分の知っているユニコーンではない、そんな気がしたのだ。

 

「とにかく、安全なところへ行こう。ユーちゃんは後で探して・・・え?」

 

「お兄ちゃん?」

 

ユニコーンの手を握って歩き出そうとしたツカサの前に、ユーちゃんを抱えたもう1人のユニコーンが現れた。

 

(ユニコーン?・・・じゃあ、コイツは誰だ?)

 

恐る恐る振り返ると、後ろのユニコーンが不気味に笑ったかと思うと、瞬く間に姿が変わり、腕に鮫のような武器を持った黒いビキニの女になった。

 

(こいつ、さっきの!)

 

女が腕を振るうと、ツカサは振り飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「ぐ、あぁ!」

 

さらに同じ姿の女が数体出現し、ユニコーンへと迫っていく。

 

「イヤ!来ないで!あっち行って!」

 

「ぐぅ、ユニ、コーン・・・。」

 

(あぁ、ダメだ・・・また、同じ過ちを繰り返してしまう・・・過ち?俺の過ちって?)

 

そのとき、ツカサの目に白いバックルとケースのようなものが映った。

 

『バックルとライドブッカーを探してください』

 

(あれか!)

 

ツカサは痛む身体に鞭打って、バックルとライドブッカーを手に取る。

 

「イヤ!怖い!お兄ちゃん助けて!」

 

ユニコーンを殺そうと近づく怪物たち。

 

「待ってろユニコーン、今助ける。」

 

ツカサがバックルを腹部に当てると、ベルトが装着される。ライドブッカーから「FUBUKI」と書かれたカードを取り出す。

 

「吹雪、そうだ。思い出した、思い出したぞ!俺は、艦娘ライダー、吹雪だ!変身!」

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

複数の像が重なり合い、少女の姿となる。黒髪に緑の瞳、マゼンタ色のセーラーには「十」を模したバッチが付き、白いスカートには黒のラインが入っている。

 

「吹雪、もう1度、俺と一緒に戦ってくれ!」

 

艦娘ライダー吹雪となったツカサは、ユニコーンから怪物たちを引き離す。

 

「お兄、ちゃん?」

 

「大丈夫だ。お前は死なない。俺が守るから!」

 

邪魔されて激昂した怪物たちは、超高速で吹雪に攻撃を仕掛けた。

 

「ぐ、うわ!これは、クロックアップ!こいつらワーム型の重巡リ級か。」

 

吹雪は「SIRATUYU」と書かれたカードを取り出し、バックルに挿入する。

 

『KANMUSURIDE SIRATUYU』

 

吹雪の姿が、赤いセーラーに黒いスカート、青い瞳に赤いカチューシャを付けた少女、白露に変わる。

 

『ATTACKRIDE CLOCK UP』

 

白露がカード読み込ませた瞬間、超高速で動いていたリ級たちが通常の速度に戻る。実際には戻ったのではなく、白露がリ級達と同じ速度になったのであり、ユニコーンの視点だと突然白露の姿が消失したように見えている。白露となった吹雪はライドブッカーをソードモードにして深海棲艦を切り捨てていく。リ級たちは緑の炎を上げながら爆散した。

 

「ふぅ。」

 

白露の姿を解除し、吹雪に戻る。

 

「白露・・。」

 

『もちろん!あたしが1番に決まってるじゃん!』

 

『食事は大事、人が良くなるために必要なことだもんね!』

 

『天の道を往く人が言っていた。あたしの進化は光より速い!』

 

「あぁ、懐かしい。」

 

そこへ銀のオーロラが現れ、1台のバイクが出現した。

 

「マシンディケイダー、朝潮がデメンションゲートから送り込んだのか?」

 

吹雪はバイクにまたがると、ユニコーンの傍に来た。

 

「帰るぞ、ユニコーン。」

 

「お兄ちゃん、なんだよね?」

 

「あぁ、今は時間がない。後で説明するから乗ってくれ。」

 

「うん。」

 




初変身でした。クロックアップは汎用性高くて好き。

艦娘ライダー図鑑
艦娘ライダー吹雪
ツカサが変身する艦娘ライダー。カードを装填することで、他の艦娘ライダーに姿を変えることが出来る。変身した艦娘ライダーの固有技や武器、マシンを使用できる。


艦娘ライダー白露
仮面ライダーカブトの力を有している艦娘ライダー。変身直後は防御に特化したアーマーモードだが、キャストオフすることでスピード特化のライダーモードになる。使用武器はゼクトクナイガン、必殺技はライダーキック。もちろんクロックアップも使える。


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第5話 艦娘ライダーの力

本作を書くにあたって、ディケイドをネガの世界まで見直したけど、やっぱり面白いわ。


吹雪とユニコーンはマシンディケイダーに乗って廃墟を疾走する。道中には深海棲艦に殺された人々の死体が転がっている。その中には、先ほどユニコーンを攫おうとした2人組もいた。

 

(あんな連中でも生きていたのに、なんでこんなことが出来るんだ・・・。)

 

深海棲艦の行動に深い理由などない。殺したいから、食いたいから、仲間を増やしたいから、そんな勝手な理由で罪のない人々の生命を奪っていく。それを思い出したツカサは強い怒りを感じた。それ故に気づかなかった、灰化した死体から触手が伸びてきたことに。

 

「きゃっ!」

 

触手の攻撃を受けてユニコーンがバイクから落ちてしまう。

 

「ユニコーン!」

 

「大丈夫・・・ユーちゃん!」

 

ユニコーンはぬいぐるみを引き寄せる。だが、その背後から異形の怪物が出現する。

 

「灰から出てきた?オルフェノク型のヘ級とホ級か。」

 

「イヤ!来ないで!お兄ちゃん助けて!」

 

「今助ける。」

 

そう言うと、ライドブッカーから緑の髪の少女のカードを取り出す。

 

『KANMUSURIDE YUUGUMO』

 

吹雪の姿が赤いラインが入った制服の黄色の瞳の少女、夕雲に変わる。

 

『ATTACKRIDE AUTO VAJIN』

 

マシンディケイダーが銀のスマートなバイクに変わったかと思えば、人型ロボットに変形して飛行、上空からの銃撃で深海棲艦を退けた。

 

「ユニコーン、隠れてろ!バジン、彼女を守れ!」

 

そう言うと夕雲はバジンからファイズエッジを引き抜き、深海棲艦に突撃する。オートバジンはユニコーンを守るように立ちふさがる。

 

夕雲は敵の攻撃を恐れることなく、次々と斬撃を食らわせる。斬られた深海棲艦たちは青い炎を噴き出し、Φの紋章を浮かび上がらせながら灰化消滅した。

 

「ふぅ。」

 

夕雲の姿を解除し、カードを見つめる。

 

「夕雲か・・・。」

 

『提督?少しは夕雲に甘えてくださいね?』

 

『バジンさん!味方ごと撃つ人がありますか!』

 

『夢ですか?ない・・・と言えばウソになりますね。』

 

「結局、聞きそびれちまったな。」

 

「ギャオォォォォォォン!!」

 

咆哮の方を見ると、人型の深海棲艦が巨大な蟹や昆虫たちを使役している。

 

「魔化魍型か。」

 

『KANMUSURIDE AKATUKI』

 

吹雪の姿が紫のセーラーと帽子の少女、暁に変わる。

 

『ATTACKRIDE ONGEKIBOU REKKA』

 

2本の鬼の顔の赤い撥を手に取り、火炎弾を撃ち出す。撥を振るうたびに火炎弾が撃ち出され、当たった深海棲艦と怪物たちは爆散していく。

 

「これでラストか。」

 

暁を解除して吹雪に、さらに変身を解除してツカサに戻る。

 

「暁・・・。」

 

『一人前のレディとして扱ってよね!』

 

『大丈夫よ。鍛えてるから。』

 

『ナデナデしてくれても、いいのよ?』

 

「あいつが1番デカイ敵と戦ってたよな。」

 

「お兄ちゃん!」

 

「ユニコーン、無事だったか。」

 

「ロボットさん、バイクに戻っちゃったよ?」

 

「あぁ、変身を解除したからな。」

 

「おーい!」

 

「ん?三笠!エンタープライズ!プリンツ!」

 

「無事でよかった!なかなか見つからないから心配したぞ。」

 

「もうユニコーン!勝手に行くなって言ったじゃない!」

 

「ご、ごめんなさいプリンツお姉ちゃん。」

 

「待て、叱るのは後だ。奴らが来る前に家に戻るぞ。」

 

「奴らは何なんだ?我の主砲が全く通じなかったぞ?」

 

「私の艦載機もほとんど落とされた。あれは一体?」

 

「ちょっと!アレ!」

 

プリンツが指さした先には、街のシンボルである時計塔に群がる深海棲艦と天辺で仲間の深海棲艦を貪り食っている巨大な腕の怪物がいた。

 

「共食いしてやがる。」

 

「う、うげぇ・・・!」

 

人の死体以上に凄惨な光景を目にしたユニコーンが口を押えながら蹲る。

 

「見るなユニコーン!ツカサ、早く行こう!」

 

 




ディケイド1話の魔化魍同士の共食いって結構なグロシーンだと思う。怪物とはいえ、明確に「生きたまま生物を食う」という描写はなかなかないし。

ライダー図鑑
艦娘ライダー夕雲
ファイズの力を得た艦娘ライダー。変身状態では常に制服にフォトンブラッドが流れているため、下位の深海棲艦なら殴ってるだけでも倒せる。必殺技はクリムゾンスマッシュ、グランドインパクト、スパークルカット。オートバジンも扱える。

艦娘ライダー暁
響鬼の力を得た艦娘ライダー。変身すれば肉体が強化され、並みの攻撃では大破はおろか小破することさえない。また、口から鬼火を吹くこともできる。音撃鼓と音撃棒を使用した音撃打で敵を倒す。


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第6話 旅の始まり

第1章はこれでおしまい。第2章は起承転結の承転結はできてるのですが、導入で詰まってるので、1~2週間ほどお待ちを。


家に着いた一行は、かなり疲弊していた。とくにユニコーンは何度も襲われたことで精神的に参っていたため、早々にプリンツが部屋に連れて行った。街からはもう悲鳴も咆哮も聞こえず、すべて終わったらしい。

 

「ツカサ、あいつらが何か知ってるんじゃないか?」

 

三笠がツカサに問いかける。

 

「・・・・あぁ、知ってる。」

 

「なら教えてくれないか?一体何なんだ?」

 

「・・・・少し、整理させてくれないか?」

 

「む・・・。」

 

「三笠、彼も疲れている。休ませた方がいい。」

 

「・・・分かった。だが、後で必ず話してくれ。」

 

「そうする。」

 

ツカサはエンタープライズに感謝しつつ、自室に戻った。

 

「はぁ~・・・。」

 

机の上にバックルとライドブッカーを放り出すと、ベッドに横になった。

 

(どうなってんだよ一体。この世界にいるはずのない深海棲艦、吹雪のドライバー、ディメンションゲート・・・訳が分からない。」

 

『司令官。』

 

「!・・・朝潮?」

 

その瞬間、ツカサの部屋が消失し、灰色の空間に変わった。対面には黒髪の少女、朝潮がいる。

 

「朝潮!」

 

「やっと思い出してくれましたか。」

 

「あぁ、すまない。ずっと忘れていた。」

 

「いいんです。今のあなたにとって、私たちの世界は前世。忘れていて当然です。」

 

「悪かった・・・他の皆はどうだ?元気にしてるか?」

 

「えぇ、色々問題もありますが、元気にやってます。」

 

「そうか・・・。睦月は、どうだ?生きてるのか?」

 

その質問に朝潮は答えず、悲しげな顔で首を横に振った。

 

「あぁ・・・やっぱり、いなくなったんだな・・・。」

 

「はい。司令官と睦月さんの最期の戦いの場所には、何もありませんでした。」

 

「くそっ。・・・・朝潮、教えてくれ、何故深海棲艦はここにいる?奴らディメンションゲートを通ってきたぞ?」

 

「・・・それが、ゲートの技術が奴らに奪われたんです。」

 

「何故だ!?あれは俺と静海元帥が厳重に管理していたはずだ!」

 

「その静海元帥が裏切ったんです!」

 

「なっ!?」

 

「司令官が死んだあと、あの人は勝ち目がなくなったと言って、ゲートの技術を深海棲艦に流したんです。国の存続と引き換えに。」

 

「あの野郎!信じた俺がバカだった!」

 

「奴らは5年かけてゲートを解析し、この世界を見つけ出しました。転移する前に私たちもなんとかこちらに来ようと試みましたが、上手くいきませんでした。かろうじて私がこの空間を介しての干渉、陽炎さんがそちらのミラーワールドに入ることが出来るだけです。」

 

「5年?なるほど、この世界とそっちじゃ、時間の速度も違うみたいだな。」

 

「えぇ、しかし驚きました。この世界を調べているときにあなたの反応を見つけたときは。」

 

「俺は別人さ。記憶はあっても、そっちの俺とは違う存在だ。」

 

「例えどんな姿をしていても、あなたは私たちの司令官です。私と陽炎さんでなんとかあなたを見つけ出した時は、手遅れの直前でした。もっと早く伝えられていれば・・・。」

 

「過ぎたことを悔やんでもしょうがない。これからどうする?」

 

「私たちがこちらで深海棲艦の侵攻を食い止めます。しかし、それでもかなりの数がそちらに侵攻してしまうでしょう。司令官、あなたにはこの世界を巡って深海棲艦を倒してほしいのです。」

 

「世界を巡るって、どうやってだよ?」

 

「ディメンションゲートの技術を使って、あなたの家を特異点にします。そうすることで深海棲艦の反応が強くなった場所にあなたを家ごと転移させられます。」

 

「そんなことが出来るようになったのか。明石と夕張の技術の進歩は凄まじいな。」

 

「ただ、これを行ってしまうと、あなたと一緒にいるKAN-SENの方々も一緒に行くことになります。」

 

「それについてはこっちで何とかする。お前は転移の準備を頼む。」

 

「はい。それからもう1つ、静海元帥に一部の艦娘ライダーの力が奪われました。」

 

「お前、サラっととんでもないこと言ったな?」

 

「申し訳ありません。元帥の裏切りが発覚する前だったので、油断してました。奪われた力は元帥傘下の艦娘たちがすでに手にしてます。それにここしばらく元帥の消息が途絶えています。注意してください。」

 

「分かった。お前らも気をつけろよ?」

 

「はい。司令官、こちらの世界は任せました。」

 

「あぁ、すべてを破壊し、すべてを守護る。それが俺の、彼女の使命だからな。」

 

そう言った直後、ツカサは自分の部屋に戻っていた。

 

「皆に話さないと。」

 

 

 

「なるほど、そういうことだったのか。」

 

「艦娘、深海棲艦、別の世界の存在。それが攻め込んでくるとはな。」

 

「連中に対抗できるのは艦娘だけだ。この世界でその力を持ってるのは、俺だけ。つまり奴らと戦えるのも俺だけということだ。」

 

「ツカサよ、そのかんむすとやらの力、我らが使うことはできないのか?」

 

「無理だ。こいつを使えるのは、本来の持ち主である吹雪と適合に成功した俺だけ。」

 

「しかしツカサ、いくら戦えるとはいえ、君は一般人だ。」

 

「関係ない。俺が一般人だろうが、何者だろうが、俺は戦わなければならない。すべてを破壊し、すべてを守護る。それが吹雪と交わした約束だから。」

 

「ツカサ・・・。」

 

「それで、ツカサはこの話を私たちにしてどうするつもりなの?」

 

「俺はこれから戦いに出る。お前たちはここを離れて内地へ行け。そうすれば、奴らに殺されることはない。」

 

「イヤよ。」

 

「断る。」

 

「私も反対だ。」

 

「おい、お前ら。」

 

「我らの攻撃が奴らに通用しないのは百も承知。だが、だからと言って関係ない所で平穏な暮らしをするつもりはない。」

 

「そうだ。私たちにだってできることはある。なくても、ツカサの傍にいてやることぐらいはできる。」

 

「ここまで来たら一蓮托生よ。最後まで着いていくわよ?」

 

「はぁ、全くお前らは・・・。ユニコーン、いるんだろ?おいで。」

 

ドアが開き、ユーちゃんを抱えたユニコーンがトテトテと歩いてきた。

 

「お兄ちゃん、ユニコーンのこと、置いてくの?」

 

「本当は連れて行きたくない。ここから先はお前にとってもツライ戦いが始まるだろうから。でも、お前を1人にする方がもっとツライ。一緒に行こう。皆でな。」

 

「うん!」

 

「それでツカサ、その転移とやらはどうやってやるのだ?」

 

「分からん。朝潮が何とかしてくれるはずだが、とりあえず今日は寝よう。考えるのは明日からだ。」

 

 

 

翌日

「Zzz」

 

「ツカサ!起きろ!」

 

「んぅ?エンタープライズか、なんだよこんな朝早く?」

 

「いいから外に来てくれ!」

 

ツカサが外に出ると、目を何度も擦った。それくらいに目の前の光景が信じられなかったのだ。

 

「ここは・・・。」

 

目の前には昨日の廃墟となった街は存在せず、たくさんの桜に囲まれた和風建築の建物が並んだ母港が見えた。

 

「ツカサ、ここは。」

 

「あぁ、間違いない。重桜だ。」

 




重桜編に続く

艦娘ライダー図鑑
艦娘ライダー朝潮
キバの力を得た艦娘ライダー。ファンガイア型深海棲艦3体を従えており、キャッスルドランの主でもある。リーダーシップの高さから他の艦娘ライダー達のまとめ役も買っている。必殺技はダークネスムーンブレイク。

艦娘ライダー陽炎
龍騎の力を得た艦娘ライダー。変身状態ならば、ミラーワールドと通常世界を自由に往来できる。ミラーワールドから攻撃してくるミラー型深海棲艦に唯一対処できる。必殺技はドラゴンライダーキック。


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第2章 桜の国と闇のゲーム
第7話 桜の母港へ


重桜編スタート


「まさか我が故郷、重桜に再び戻る日が来ようとはな。」

 

「三笠がいたのもあの母港?」

 

「うむ。以前と変わってなくて安心したよ。」

 

「だが、何もかも同じというわけではなさそうだ。新聞を見てみろ。」

 

エンタープライズが配達されたばかりの新聞を差し出す。本来なら、昨日までなかったはずの建物に新聞が配達されるという訳のわからん状況なのだが、昨日から異常事態の連続だったためか誰一人として気にも留めない。

 

「どれどれ?『セイレーンと異なる漆黒の艦隊現る。海軍はここ数日に渡って、重桜に攻撃を仕掛けてくる正体不明の艦隊の撃滅に成功していると発表した。この艦隊は世界各地で目撃されており、セイレーンと戦闘を行っている姿も目撃されていることから、彼らとは異なる第3の勢力と見られている。アズールレーンはこの脅威に対し、ユニオンと鉄血による解析が進められている。また、アズールレーンはこの正体不明の艦隊を「未確認艦隊通称アンノーン」と命名した。』か。」

 

「正体不明の艦隊って言うのは間違いなく昨日の深海棲艦って連中ね。でも、撃滅できたって本当かしら?」

 

「おそらく嘘だろうな。お前たちKAN‐SENの攻撃が通じなかったのに、撃滅なんてできるわけない。国民を不安にさせない為なんだろ。」

 

そう言ったツカサは陸軍将校の制服を着ている。首からポラロイドカメラをぶら下げているのは変わらないが。

 

「何なの?その格好?」

 

「知らん。机の上にあったから着た。見ろ、隊長クラスだ。たぶん朝潮が母港に入りやすいように用意したんだろう。というわけで、行ってくる。」

 

「ツカサ、我も行こう。久々に後輩たちの顔も見たい。」

 

「いや、内部の状況が分からん状態でむやみに出るのは危険だ。先に俺が様子を探ってくる。それまで待ってろ。」

 

「むぅ、分かった。では、状況が分かり次第、連絡してくれ。」

 

「あぁ。それから、ユニコーンを見張っとけよ?昨日みたいなことがあったらまずいからな。」

 

「大丈夫よ。今度はちゃんと目を光らせとくわ。」

 

 

重桜母港

「ここか。ちょっといいか?」

 

門の前に立っていた憲兵に話しかける。

 

「何か御用で?」

 

「今日からここに配属されるんだが?」

 

「辞令書はありますか?」

 

懐を探ると、封筒が出てきた。

 

「これだ。」

 

「拝見します。・・・・新しい隊長でしたか!そうとは知らず、失礼しました!」

 

「そんなに畏まるな。入っていいか?」

 

「はい!どうぞ!あ、ところで、そのカメラは?」

 

「あぁ、俺の趣味だ。丁度いい、1枚撮ってやるよ。」

 

「え?いや、しかし。」

 

「隊長が撮ってやるって言ってんだから遠慮すんな。別に魂を取られるわけじゃないんだから。」

 

「で、では、お言葉に甘えて。」

 

憲兵はかっこよく敬礼をしてみせ、ツカサはそれを撮影する。だが、出てきた写真を見ると「またか」というようにウンザリした表情を浮かべた。

 

「どうでしたか?」

 

「ハァ・・・やるよ。」

 

「よろしいのですか?ありがとうございます!」

 

写真を憲兵に渡すと、さっさと門の中へ入っていく。「なんじゃこりゃあ!?」という声を背にツカサは母港の探索を開始した。

 




ゲームでは年がら年中桜が咲いてるけど、どういう気候してんだろう?


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第8話 獣の少女たち

まさか6話で実装済みの睦月型全員出るとは、最高かよ。あと、赤城が優しいお姉さんしててなんかいいなぁって思った。

この物語、ロイヤル編、鉄血編までは大方構想できてるんだけど、ユニオン編が難しくてね。もしかしたらユニオンの前にワン、ツークッション挟むかも。


重桜の母港は和風建築が多い一方で、階段もとても多い。どこへ行くにも石や木でできた階段を上ったり下がったりしなくちゃいけない。健康にはいいかもしれないが、普段から運動は必要最小限に抑えてるツカサにとってはいい迷惑だ。

 

「くそっ、ほんといい迷惑だぜ。」

 

長い階段を上りきると、海が見える茶屋があった。辺りを見渡すが、数名の少女がお茶をしているだけで道がない。

 

「行き止まりかよ。構造が分かんねぇ。」

 

さっきの憲兵に地図を貰っておけば良かったと後悔しつつ、ポケットを探る。財布を取り出し中をのぞくと、小銭は重桜の硬貨に変わっている。ツカサは気が利く別世界の仲間に感謝しつつ、茶屋に入った。

 

「うん。この羊羹うまいな。お茶のお供にぴったりだ。」

 

ユニコーンたちへのお土産にしようか、と考えていると。

 

「ちょっと、そこのあなた。」

 

向こう側でお茶していた黒髪に犬耳の少女が話しかけてきた。

 

「見かけない顔ね?新しく来た人?」

 

「あぁ、今日来たんだ。角谷ツカサ、覚えなくていい。」

 

「私は時雨、幸運の駆逐艦よ。覚えておくといいわ。あ、ちょっと!あんたたちも挨拶しなさい!」

 

「わぅ?なんだ?メシか!?」

 

「違うわよ。新しく来た人なんですって。」

 

「角谷ツカサだ、覚えなくていいぞ。」

 

「夕立だ!」

 

「雪風様なのだ。」

 

「綾波、です。」

 

「新入りってことは、ここは初めてなのよね?この時雨様が案内してあげるわよ?」

 

「いや、いらん。1人旅の方が気楽でいい。」

 

「なんですって!?私と一緒じゃ気が休まらないって言うの!?」

 

「そういうとこなのだぞ、時雨。」

 

「なぁなぁ、お前ケンカ強いか?」

 

「お前って言うな、ツカサって言え。ケンカは、まぁ強い方だぞ?」

 

「じゃやろう!今すぐやろう!」

 

「引っ張んな!あとやらねぇよ!大人はむやみやたらにケンカなんかしないんだよ!」

 

「え~、夕立つまんないぞ~!」

 

「ったく、ゆっくりお茶もできやしねぇ。そろそろ行くよ。じゃあな。」

 

「あの。」

 

「うん?綾波、だっけか?なんか用か?」

 

「・・・いえ、別に。」

 

「ん?ま、いいや。じゃあな。」

 

「綾波?何か気になることでもあったの?」

 

「はい。ちょっと、気になって。」

 

「もしかして、一目惚れとか?」

 

「何!?綾波!アイツに惚れたのか!?」

 

「わぅ?何言ってんだ?」

 

「そういうのじゃないです。ただ、なんていうか、違和感っていうか、異物感を感じて。」

 

「異物感?」

 

「あるべき場所でないのに、居る。そんな感じがしたです。」

 

 

再び探索を始めたツカサは道場のような建物の傍まで来ていた。庭では黒髪に白い服の女性が木刀を振るっている。

 

「ちょっといいか?」

 

「ん?拙者に何か用か?」

 

「道に迷ってな。地図があれば貰いたいんだが。」

 

「少し待っててくれ。探してくる。」

 

女性は数分もしないうちに戻ってきた。

 

「ほら、地図だ。」

 

「サンキュー、えっと・・・。」

 

「高雄だ。KAN-SENの高雄。そなたは?」

 

「角谷ツカサ。今日来たばかりだ。」

 

「新人だったのか?以前はどこに?」

 

「民間人上がりだからここが初めてだ。」

 

「民間人・・・にしては・・・角谷殿、ひとつ拙者と手合わせしては貰えぬだろうか?」

 

「ツカサでいい。手合わせって、おっと。」

 

言い終わらぬうちに高雄が別の木刀を投げ渡す。高雄は持っていた木刀を正眼に構える。ツカサは地図を仕舞うと、刀身を撫でてから顔の横で構える。

 

(この男、やはり只者ではない。)

 

(めんどくさいけど、やるか。)

 

「参る!」

 

先に動いたのは高雄、振り下ろした木刀はツカサの木刀で受け止められる。ツカサは高雄を押し返し、横に薙ぎ払いつつ距離を取る。

 

「ハァ!」

 

「っ!」

 

再びツカサに木刀が振り下ろされるが、今度は木刀を振り上げて弾き返す。さらに返す太刀で袈裟懸けに切り下す。高雄は身体を仰け反らせて辛うじて回避する。

 

「やるなぁ!民間人上がりとは思えんくらいだ!」

 

「そりゃどうも。もういいか?」

 

「あぁ、時間を取らせてすまなかった。」

 

去っていくツカサの背を見ながら高雄は考えていた。

 

(KAN-SENの一撃を受け止めたり、弾き返したり、一体彼は何者?)

 

 

「どこだここ?」

 

とりあえず海を目指していたはずなのだが、いつの間にか桜に囲まれた広めの東屋のような建物が橋でつながれた場所に来ていた。構造が複雑すぎて地図を見てもほとんど理解できなかったのだ。

 

「幻想的だな。」

 

そう言いつつカメラのシャッターを切るが、出てきた写真はいつもの如く歪に写っている。

 

「レンズ越しに切り取った景色はいつも歪む。俺に撮られることを望む景色はこの世界にないのか。」

 

「そこにおるのは誰だ?」

 

不意に幼い子供のような声が聞こえてきた。歩を進めると、一際大きな桜の木の下の東屋に黒髪に狐耳の少女が座っている。

 

「誰だ?」

 

「質問しておるのは余だ。その方から先に名乗れ。」

 

「・・・角谷ツカサ、今日来たばかりだ。」

 

「ふむ、新入りか。見学の途中で迷ったといったところか?余は長門、重桜の長門である。」

 

「アンタが長門?噂には聞いていたが、思っていたより・・・。」

 

「幼い、か?」

 

「あぁ。最初はもっと厳つい頼りがいのありそうな女性かと思ってた。」

 

「物をはっきりという奴だな。まぁ確かに、最近の執務は赤城に任せっぱなしだからな。威厳がないと言われても仕方ないが。」

 

「仕事を他人に任せて、アンタは何してんだ?」

 

「余と妹の陸奥は重桜の象徴たる存在、おいそれと人前に出られんのだ。」

 

「それでこんな所で引きこもってんのか?いい場所だが、長くいると飽きるだろう?」

 

「四六時中ここにいるわけではない。ところでツカサとやらよ。1つ質問してもよいか?」

 

「俺に答えられることなら何でもどうぞ。」

 

「お主から妙な違和感を感じる。まるでこの世の者ではない奇妙な感覚だ。」

 

「ふん、バカな。俺は生まれた時からこの世界の人間だ。」

 

「そうだろうな。では、この違和感の正体はなんだ?いるべき場所を違えたかのような感覚、それにお主からは別の存在の気配も感じる。」

 

「・・・・・。」

 

「お主は、何者だ?」

 

「・・・俺は、」

 

その時、母港中に警報が鳴り響いた。

 

「なんだ?」

 

「えぇい、また奴らか。」

 

「奴ら?アンノーンか?」

 

「あぁ、これで4度目だ。奴らに我らの攻撃が通らぬ故、手をこまねいておるのだ。」

 

「なるほどな。」

 

「待て、どこへ行く気だ?」

 

「長門、さっきの質問だが、俺は通りすがりのカメラマンだ。それ以上でも以下でもない。そして、俺は俺にできることをしにいく。」

 

そう言い残し、ツカサは長門の許を去った。

 

「自分にできることか。やはりお主は只者ではなさそうだな。では、見せてもらおうか。お主のできることとやらを。」




なげぇよ。自分で書いててもそう思う。

特殊深海棲艦
通常の深海棲艦とは異なり、特殊な能力を有している深海棲艦群のことを指す。大きく分けて9つに分類されており、そこからさらに細かく分類される。
・グロンギ型
・ロード型
・ミラー型
・オルフェノク型
・アンデット型
・魔化魍型
・ワーム型
・イマジン型
・ファンガイア型


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第9話 深海の遊戯

グロンギ語難しい。ゲゲル考えるのも難しい。クウガの脚本やってた人達ってみんな天才なだろうなぁ。


海上では一方的な戦いが繰り広げられていた。といっても味方によるものではなく、アンノーンつまり深海棲艦による攻撃によってだ。この戦闘によって戦艦山城が流血するレベルの被害を受けており、重桜艦隊は防戦一方の戦いを強いられていた。

 

「もう!なんなのよコイツら!」

 

「量産型もすべて倒されました!これ以上はもう!」

 

戦闘中の古鷹と加古が高雄に叫ぶ。

 

「くっ、奴らは一体何なんだ!」

 

艦隊と相対するのは、ヘ級1体とニ級3体、そして、戦艦ル級と戦艦タ級だ。

 

「ロブデビパザダギダグ、ガンジャボゾロパゾググス?」

 

「ヅギゼザ。ギズレデギボグ。ゾグゲゲゲルビギギョグパガスラギ。」

 

ル級とタ級は奇妙な言語で会話しているが、その内容が分かる者はここにはいない。

 

「一体何を話しているんだ?どこの国の言葉だ?」

 

「高雄さん!」

 

綾波が高雄の隣に立つ。

 

「綾波が囮になるです。山城さんを連れて撤退を。」

 

「ダメだ!そんなことできん!」

 

「誰かが囮にならないと、逃げられないです。早く。」

 

「しかし!」

 

その瞬間、高雄たちの周囲に爆発とともに強大な水柱が立ち上がった。撃ったのは当然ル級とタ級だ。

 

「ジャガバ。」

 

ル級が漆黒の主砲を向けたその時、どこからか飛んできた弾丸がル級に命中し、仰け反った。

 

「ザセザ!?」

 

弾丸を放たれた方向に目を向けると、そこにはバイクに乗ったマゼンタ色のセーラー服を着た少女がいた。

 

「誰だ?」

 

艦隊の誰もが疑問に思った。あんな少女重桜では見たことがない。そもそも重桜艦船の特徴である獣の耳や角が存在しない。

 

「ビガラ、バンルグレサギザザムツキバ!?」

(貴様、艦娘ライダー睦月か!?)

 

「ムツキ?ヂガグバ、ゴセパバンルグレサギザザフブキザ!」

(睦月?違うな、俺は艦娘ライダー吹雪だ!)

 

「同じ言語をしゃべってる?」

 

「攻撃したところを見るに、敵の仲間というわけじゃないさそうだけど。」

 

「お前ら、下がってろ!こいつは俺がやる!」

 

「重桜の言葉をしゃべれるのか!?いったい何者だ!」

 

「こいつらは俺じゃないと倒せん。黙ってみてろ。」

 

ライドブッカーをソードモードにして刀身を撫でると、カードを挿入する。

 

『ATTACKRIDE  SLASH』

 

強化された斬撃がヘ級とニ級達を切り裂き、爆散した。

 

「すごいです。」

 

「一撃で倒すなんて。」

 

(あの刀を撫でる仕草・・・まさか。)

 

「ジャボンヅンザギゼ!ボソギデジャス!」

(雑魚の分際で!殺してやる!)

 

ル級が突撃してくるが、吹雪は次のカードを挿入する。

 

『ATTACKRIDE ILLUSION』

 

吹雪が3人に分裂し、ル級を取り囲む。

 

「バ、バンザボセパ!?」

(な、なんだこれは!?)

 

「「「どうした?俺を殺すんじゃないのか?」」」

 

『ATTACKRIDE BLAST』

 

3人の吹雪がライドブッカーをガンモードにし、分裂した銃口から光の弾丸を撃ち出す。

 

「ガッ!グガァ!」

 

連続攻撃を受けたル級はゆっくりと崩れ落ちたのち、爆散した。

 

「残るはお前だけだ。」

 

「ジョグザンジャバギ!ビゲスグバヂザ!」

(冗談じゃない!逃げるが勝ちだ!)

 

「逃がすか!」

 

『FAINAL ATTACKRIDE FU FU FU FUBUKI』

 

吹雪とタ級の間に10枚のライドカードを模したホログラムが出現する。吹雪は跳躍し、ホログラムを貫きながらタ級に必殺技ディメンションキックを放った。その一撃を受け止めきれるわけもなく、タ級はあっさりと爆発四散した。

 

「ま、こんなもんか。」

 

吹雪はお仕事終了というように手を払い、マシンディケイダーに跨る。

 

「待て!貴様何者だ?KAN-SENか?それともセイレーンの新型か?」

 

「話すことはない。あと、俺はセイレーンじゃない。じゃあな。」

 

方向転換し、バイクを走らせる。

 

「待て!とまれ!」

 

だが、吹雪は止まらず、出現させたディメンションゲートの中に消えていった。

 

 

その夜 憲兵詰め所

ツカサが電話をかけていた。場所は当然自分の家だ。

 

ジリリリリ ジリリリリ

 

ツカサの家の黒電話が鳴る。今時黒電話?と思うかもしれないが、三笠が多機能電話は難しいというのでこちらに変えたのだ。

 

「はい、角谷です。」

 

電話に出たのはエンタープライズだ。

 

『エンタープライズか?俺だ、ツカサだ。』

 

「ツカサ!連絡がないから心配してたんだ。そっちはどうだ?」

 

『あぁ、深海棲艦どものせいでちょっとヤバイ状況だ。もしかしたら三笠に来てもらわないといけないかもしれない。』

 

「そんなに酷いのか?分かった、三笠にも伝えておこう。」

 

『頼む。それからユニコーンは?』

 

「彼女なら、オイゲンが寝かせたよ。ツカサが帰るまで起きてると駄々を捏ねていたが。」

 

『そうか。心配かけて悪かったな。明日には帰るって伝えておいてくれ。』

 

「分かった。そっちも気をつけて。おやすみ。」

 

「あぁ、おやすみ。さて、行きますか。」

 

受話器を置いたツカサは、詰め所をあとにした。

 

 

重桜母港会議室

長門、赤城、加賀の3名が集まり話し合っていた。

「まったく、アンノーンだけでも厄介だというのに、この上まだ厄介なものが出てくるとは。」

 

「加賀、少し落ち着け。赤城よ、この娘について分かっていることはあるか?」

 

机の上には上空から撮影されたらしい吹雪の写真が複数置いてある。

 

「はい。まず、この娘は我々同様水上に立つことができます。しかし、御覧の通り重桜KAN-SEN特有の耳や角が存在しません。艤装も既存のものとは若干異なるようです。」

 

「重桜でないとすると、他の陣営か?」

 

「高雄曰く『流暢な重桜語を話していた』とのことですので、判別がつきません。それから娘の武器ですが、銃、剣、札入れの3つに変形させることができるようです。」

 

「札というのは?」

 

「彼女の腹部に取り付けられている機械が分かりますか?どうやらそれに札を入れることで、能力を発動しているようです。ロイヤルに札を艦載機に変える空母がおりますが、関連は不明です。」

 

「そして、この娘はアンノーンを全滅させた後、銀幕の中に消えて行ったと。」

 

「はい。我々の攻撃が一切通じなかったアンノーンを赤子の手をひねるかのように易々と倒してしまったとのことです。」

 

「長門様、やはりこの娘、セイレーンの新型兵器ではないでしょうか?こちら側にアンノーンに対抗できる兵器がない以上、奴らのものと考えるのが妥当ですが。」

 

「それはどうかしらね、加賀。高雄たちは彼女自身の口から『自分はセイレーンではない』という発言を聞いているのよ。」

 

「そんなもの当てにはなりません!」

 

「止さぬか加賀。余もこの娘のことは気に掛かるが、脅威がない現段階では対処する必要もあるまい。」

 

「私もそう思います。今は、アンノーンについてです。」

 

「加賀、確認を。」

 

「はい。アンノーンによる襲撃はこれで4回目。すべて海上の大桜を中心に半径2海里以内の地点で起きており、1回の襲撃ごとに誰かしら轟沈寸前の重症を負わされております。1回目は飛龍、2回目は長良、3回目は夕暮、そして此度の4回目は山城。以前の3回まではアンノーンを倒すことはできず、撃退に成功しております。」

 

「撃退というより、向こうが用は済んだというようにさっさと帰ったいった感じですが。」

 

「奴らの目的はなんだ?なぜこんなまどろっこしい戦いをするのだ?」

 

ガチャ

 

「お、ここか。」

 

突然扉が開き、ツカサが入ってきた。

 

「な、何者だ!?今は会議中だぞ!」

 

「悪いな、手詰まりになってるんじゃないかと思って手伝いに来た。」

 

「なんだと?」

 

「お主、さっきの、ツカサと言ったな?」

 

「よう長門、数時間ぶりだな。」

 

「貴様!長門様になんという口を聞く!」

 

「待ちなさい加賀。あなた、確か新任の憲兵隊長さんね?手伝うとはどういうことかしら?」

 

「なぁに、襲撃の法則性が分かったから教えてやろうと思ってな。」

 

「法則性だと?」

 

「ふむ、やはり法則があったか。で、それを教えてはもらえぬか?」

 

「そうしたいのは山々なんだが、急いできたもんだから喉が渇いてな。」

 

「加賀、この御方にお茶を。」

 

「ね、姉様!?しかし!」

 

「加賀、早くなさい。」

 

「・・・はい。」

 

「あまり熱くしないでくれよ。猫舌なんでな。」

 

「厚かましい奴め。」

 

程なくして戻ってきた加賀からお茶を受け取り、ゆっくりと飲む。

 

「いいお茶だな。静岡産?なんか飲んでたら、小腹も空いてきたな。」

 

「加賀、この御方にお茶菓子を。」

 

「何で私がこんなことを・・・。」

 

「あ、羊羹はさっき食ったから、最中か八つ橋にしてくれよ。」

 

「ホントに厚かましい奴!」

 

再び戻ってきた加賀から最中を受け取り、それを食す。

 

「羊羹も旨かったが、この最中も旨いな。腕のいい給糧艦でもいるのか?」

 

「それで、そろそろ法則性とやらを教えてもらえないかしら?」

 

「・・・地図あるか?」

 

「貴様!このうえまだ食い物を要求するか!」

 

「チーズじゃない!地図だ!耳ついてんのか?」

 

「加賀・・・。」

 

「ち、違うんだ姉様、聞き間違えただけで。」

 

「何でもいいからはよう地図を持ってこぬか。」

 

ツカサは地図を受け取り広げ、襲撃された地点に×印を書き込む。続いて襲撃地点の近くにある島と島を線で結んでいく。するとどうだろう、歪な形ではあるが、五芒星が出来上がった。

 

「見ろ、襲撃地点の近くにある島同士を線で結ぶと、五芒星が完成する。襲撃はすべてこの五芒星の内側で行われている。」

 

「なるほど。だが、まだ5回目の襲撃は起きとらんぞ?」

 

「これから起きるんだよ。まだ襲撃が起きていないこの島の近海、ここには誰も近づけさせるな。」

 

「なるほど、よく分かったわ。加賀、直ちにこの島付近への接近禁止令を出しなさい。」

 

「分かりました!直ちに!」

 

そういい残して加賀は会議室から出て行った。

 

「じゃ、俺も帰るぜ。お茶と最中旨かったぞ。」

 

「えぇ、礼を言うわ。あなたのおかげで皆が救われた。ありがとう。」

 

「余からも礼を言おう。」

 

「止せよ。礼なんていらない。じゃあな。」

 

「行かせてよろしかったのですか?」

 

「あぁ。角谷ツカサ、なかなか興味深い男だ。」

 

 

出撃ドック

高雄は1人考え事をしていた。

 

(あの剣を撫でる仕草、それに太刀筋、まるで彼のようだった。いやしかし、そんなことありえるのか?)

 

「高雄さん?」

 

「ん?綾波か。どうしたこんな時間に。」

 

「気になることがあって眠れなかったのです。」

 

「気になること、あの娘のことか?」

 

「はいです。高雄さんは、アンノーンとあの娘の会話で聞き取れた部分がありますか?」

 

「ふむ、やはり綾波にも聞こえていたか。」

 

「『ふぶき』と『むつき』、綾波たちの知っている名前なのです。」

 

「なぜ奴らがその名を知っているのか?どういう意味で言ったのか?」

 

「気になることはそれだけじゃないです。」

 

「というと?」

 

「角谷ツカサ。」

 

「っ!」

 

「あの人が来た丁度その日に、アンノーンを倒すことができる人が現れる。これは偶然なのでしょうか?」

 

「あの2人には、何か関係があると?」

 

「ツカサさんからは奇妙な違和感を感じたのです。同じ違和感をあの娘からも感じた。偶然とは思えないのです。」

 

「実は拙者も彼が只者ではないと感じていた。しかし、関係があるという証拠もない。あまり人を疑いすぎるのはよくないと思うぞ。」

 

「はいです。」(でも、もしあの娘が、あの人が言っていた吹雪なら、綾波は・・・。)




文中の翻訳の有無は、理解できる者がいるかどうかで決まります。

グロンギ型深海棲艦
特殊な言語で意思疎通を図り、人や艦娘をゲームのように殺していくことを生きがいとしている。
駆逐・軽巡・雷巡はゲゲルを行えず随伴しかできない。潜水・重巡・戦艦・空母からゲゲルを行うことが出来る。鬼・姫は基本的にゲームマスターや審判を務めるためゲゲルをすることはめったにない。ゲゲルを成功させた者は、自分の艦種と対応する鬼とギンバゲゲルを行い勝利することで、敗北した鬼の力を得る。また、同じ手順で鬼が姫になるためのヂョグギンバゲゲルも存在する。


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第10話 綾波vs綾波

サブタイネタバレ注意(手遅れ)

ブレイドは未使用も含めて優秀なラウズカードが多い印象。マグネットやタイムやスコープとかも使ってほしかった。シャッフルの効果がいまいちよく分からんけど。


翌日

「うむ、今日もいい天気だ。母港の桜もいつも通り美しい。」

 

早起きした三笠は、庭で軽くストレッチをしていた。

 

「ユーチャンハヤク」

 

「ん?」

 

不意に聞こえてきた声の主を探るため家の裏手に回ると、そこにはユーちゃんに跨ったユニコーンがいた。

 

「こ、こら!ユニコーン!待つんだ!」

 

「ユーちゃん!早く飛んで!」

 

三笠は慌てて止めようとするも間に合わず、ユーちゃんはユニコーンを乗せたまま天高く舞い上がった。

 

「た、大変だ!」

 

三笠はユニコーンの後を追って走り出した。

 

 

一方、ツカサに呼び出された高雄は指定された小島に来ていた。

 

「来たか。高雄。」

 

「ツカサ殿、こんな所に呼び出して何の用だ?」

 

ここは昨日、ツカサが会議で次の深海棲艦の襲撃地点と予測したエリア。現在は接近禁止令がでているはずだ。

 

「話す前に、もう1人きたぞ。」

 

「ん?」

 

振り向くと、白髪の少女が近づいてきていた。

 

「綾波?なぜ?」

 

「高雄さんが1人で出るのを見て、何かあると思ったです。」

 

「まぁいいさ、人が多い方がパーティは楽しいからな。」

 

「パーティだと?」

 

「昨日会議で俺が話した五芒星云々の話、あれは嘘だ。」

 

「なんだと!?」

 

「そもそも五芒星なんて、点が5つあれば適当に書けるんだよ。場所は別に重要じゃない。重要なのは、3つ。1つ目は沈めないこと。ゲームで人を殺すことを目的としているグロンギ型が誰も沈めてない時点でピンときた。」

 

「ぐろんぎ?ツカサ殿、何を言って?」

 

「2つ目は艦種。戦闘記録を見ると、奴らは駆逐艦を駆逐艦で、軽巡洋艦を軽巡洋艦で、空母を空母で、戦艦を戦艦で攻撃している。そして、残るは潜水艦と重巡、雷巡の3つ。しかし奴らの潜水艦は潜水艦を攻撃しても倒すことはおろか傷つけることすらできない。そして現状重桜に雷巡はいない。となると残るのは重巡。ここにいる重巡といえば・・・。」

 

「まさか、私か?」

 

「ツカサ!あなたは奴らの仲間です!?」

 

「話は最後まで聞けよ。っと、お客さんだ。」

 

「何?」

 

「ビデスンザソ?ゼデボギジョ!」

(来てるんだろ?出て来いよ!)

 

ツカサが海に向かって叫ぶ、すると海中から重巡リ級と重巡ネ級が姿を現した。

 

「っ!高雄さん!敵です!」

 

「まずい!」

 

「ボセゼゴパス。ゴンゴンバンヂガグリビバガセセダ、ジャリンゲゲルパバングギガセス!」

(これで終わる。その女の血が海に流れれば、闇のゲームは完遂される!)

 

「ジャリンゲゲルグバングギガセセダ、ボンブビパパセパセンロボドバス!」

(闇のゲームが完遂されれば、この国は我々の物となる!)

 

「ゴセパゾグババ?ロボゴドグゴググラブギブドパゴロパバギゾググギギゾ?」

(それはどうかな?物事がそう上手くいくとは思わない方がいいぞ?)

 

そう言うと、ツカサはポケットから小さなナイフを取り出し、人差し指に切り傷を入れる。

 

「痛ってぇ。」

 

「ツカサ殿?何を?」

 

「3つ目、奴らは沈めないにもかかわらず、沈む寸前の状態になるまで艦船たちをぶちのめしている。それこそ血が流れるくらいにな。」

 

「何が言いたいんです?」

 

「奴らが必要としてるのは艦種の異なる艦船たちの血。だが、そこに艦船以外の血が流れたどうなる?」

 

ツカサは、自身の血が付着したナイフを持って大きく振りかぶる。その意図に気づいたリ級とネ級がギョッとする。

 

「ジョゲ!ジャレソ!」

(よせ!やめろ!)

 

だが、ツカサは止まることなくナイフを放り投げた。リ級とネ級がナイフを追うが、間に合わず、ナイフは海に落ちていった。

 

「オォォォォォォォォォォ!!」

 

リ級とネ級が激昂して雄たけびを上げる。

 

「成功したみたいだな。艦船以外の血が流れたことでゲゲルは失敗した。」

 

「ビガラ!ジョブロジャデデブセダバ!」

(貴様!よくもやってくれたな!)

 

「ジュスガン!ボソギデジャス!」

(許さん!殺してやる!)

 

「ジャデデリソジョ。ゼビスロンバサバ。さぁ、あとは奴らを片付けるだけだ。お前らは下がってろ。」

(やってみろよ。できるもんならな。)

 

「下がれって、何をする気だ?」

 

「こいつらを破壊する。それだけだ。変身!」

 

ツカサは、装着したバックルにカードを差し込む。

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

姿が変わり、艦娘ライダー吹雪となる。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

吹雪はリ級とネ級に接近し、打撃戦を仕掛ける。

 

「あれは昨日の・・・やはり彼がそうだったのか。」

 

「吹雪、艦娘ライダー吹雪・・・やっぱり、あの人が。」

 

ライドブッカーをソードモードにして2体の敵を切り裂く。敵も隙をついて反撃を試みるが、あっさりと避けられてダメージを与えられない。

 

「終わりだ!」

 

『ATTACKRIDE SLASH』

 

バックルに斬撃を強化するカードを読み込ませ、リ級を袈裟懸けに切り下す。返す太刀でネ級を切り上げる。斬撃を受けた2体の深海棲艦は爆散した。

 

「こんなもんか?昨日の奴らの方が強かったぞ?」

 

「ハァッ!」

 

一息ついていた吹雪に突然綾波が切りかかった。

 

「何すんだ!?」

 

「話に聞いてるです!すべての艦船を破壊し、この世界を滅ぼす悪魔!」

 

「おい!何の話だよ!?」

 

「何をしてる綾波!やめろ!」

 

高雄も呼びかけるが、綾波は止まらない。吹雪は綾波の斬撃をライドブッカーで防ぎつつ距離を取る。

 

「お兄ちゃん!」

 

「ユニコーンか。来るなよ、巻き込まれるぞ?」

 

「なんで、戦ってるの?」

 

「知らん。向こうが切りかかってきたんだ。」

 

「悪魔め、綾波が倒すのです!重桜と仲間たちは、綾波が守る、です!」

 

「俺をご所望らしい。こうなったら仕方ない。気のすむまで付き合ってやるよ。」

 

吹雪はライドブッカーからサイドテールの少女のカードを取り出す。

 

「綾波対決といこうじゃないか。変身!」

 

『KANMUSURIDE AYANAMI』

 

吹雪の姿が青いセーラーとスカートに赤い瞳の少女、綾波(以下綾波R)に変わる。綾波Rは自身の得物、ブレイラウザーを構える。対して艦船の綾波(以下綾波K)も刀を構える。

 

艦娘の綾波と艦船の綾波、異なる世界の同じ存在同士の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

先に仕掛けたのは、綾波Kだ。刀を大きく振り上げ、渾身の力を籠めて振り下ろす。対する綾波Rはブレイラウザーで刀を受け止めはじき返す。そして、カードを取り出してバックルに挿入する。

 

『ATTACKRIDE  SLASH』

『ATTACKRIDE  THUNDER』

 

斬撃を強化するスラッシュリザードの力によって、ブレイラウザーの切れ味が強化される。さらにサンダーディアーの力で刀身が電気を帯びる。斬り合いを再開するが、刃がぶつかる度にブレイラウザーから放電が発生し、綾波Kはダメージを受ける。

 

(刀身に電気が流れてる?接近戦は不利、なら!)

 

綾波Kは距離を取ると、艤装の砲を向け発砲する。

 

『ATTACKRIDE METAL』

 

だが、綾波Rはメタルトリロバイトの力で全身を硬化し、主砲によるダメージを無効化する。

 

「これも効かない!?」

 

「こっちの綾波はカードが豊富だから、使いやすくて助かる。」

 

『ATTACKRIDE MACH』

 

マッハジャガーの力で超高速移動しながら、綾波Kを切り裂く。

 

「ぐ、うぁ!」

 

思わぬ猛攻に膝をつく綾波K。

 

「すごい。あの綾波に膝をつかせるとは。」

 

いつの間にか観戦に回っていた高雄も感嘆の声をあげる。

 

「どうだ?まだやるか?」

 

「まだ、です!まだ綾波は、戦えるのです!」

 

「懲りない奴だ。だったら戦えなくなるまで相手してやる!」

 

再び斬り合いを始める2人。その様子を鳥居の上から見つめる老人がいた。

 

「ツカサ、お前の存在は邪魔でしかない。」

 

老人は手をかざすと、銀のオーロラ―ディメンションゲートが出現する。

 

「やれ!角谷ツカサを倒すのだ!」

 

 

「お兄ちゃん!あれ!」

 

「ん?なっ!」

 

ユニコーンが指差した先にディメンションゲートがあった。

 

「こんなときになんだ!?」

 

「アレは、何です?」

 

ディメンションゲートから緑髪と赤髪の少女が現れ、ゲートは消滅した。少女たちの腰にはベルトが巻かれ、緑と茶色のバッタらしき機械が取り付けられている。

 

「姉貴、ここにもいたよ?艦娘ライダー。」

 

「えぇ、行くよ江風。地獄を見せてあげよう。」

 

緑の艦娘ライダー山風は綾波Rに、赤の艦娘ライダー江風は綾波Kに向かった。




地獄姉妹、満を持して登場

艦娘ライダー綾波
ブレイドの力を得た艦娘ライダー。チェンジAで変身し、12枚のラウズカードを駆使して戦う。朝潮不在時には臨時リーダー務める程度に統率力があり、信頼されている。また、艦娘ライダーたちの中では3番目に強いとされている。


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第11話 地獄の姉妹

ホッパーが必殺技するときのアンカージャッキが好き


艦娘の綾波(以下綾波R)に向けて蹴りを放つ山風、対する綾波Rはラウザーでガードする。

 

「お前ら、静海の艦娘だな!」

 

「そんなことが今重要?ハッ!」

 

山風は反対側の脚で蹴り飛ばす。飛ばされた綾波Rはすぐさま体勢を整え、ラウザーを構える。一方、KAN―SENの綾波(以下綾波K)は刀で江風のパンチを受け止める。

 

「なんなのです!?あなたたちは!」

 

「うるせぇ!オラッ!」

 

江風の打撃が綾波Kの刀を弾き飛ばす。

 

「くっ!」

 

後転して距離を取る綾波K。

 

「いいよなぁ、アンタは。友達がたくさんいてよぉ。どうせアタシなんか。」

 

「ほんとになんなのです、この人たち?」

 

「知らん。育て方を間違えて捻くれちまったんだろ。」

 

「ベラベラとうるさいよ・・・。やるよ江風、地獄を見せてあげよう。」

 

「汚してやる、太陽なんて!」

 

2人はバックルのバッタ―ホッパーゼクターの脚に手を置く。

 

「ライダー、ジャンプ・・・。」

『Rider Jump』

 

「ライダージャンプ!」

『Rider Jump』

 

山風と江風の左足にエネルギーが蓄積され、天高く飛びあがる。

 

「やっべ!」

『FINAL ATTACKRIDE A A A AYANAMI』

 

綾波Rは「綾」という字が描かれた黄色いカードをバックルに挿入する。読み込みが終わると同時に跳躍し、山風に向けて電撃を帯びたキックライトニングブラストを放つ。

 

綾波Kは艤装の主砲を構えて江風に標準を合わせる。

 

「ライダー、キック・・・!」

『Rider Kick』

 

「ライダーパンチ!」

『Rider Punch』

 

上空から山風はキックを、江風はパンチを叩き込む体勢をとる。

 

山風の足と綾波Rの足がぶつかり合う。その一瞬、綾波Rの足から電気エネルギーが放たれ、山風の脚のアンカージャッキによってタキオンエネルギー瞬時に叩き込まれる。エネルギー同士がぶつかり合い、さらに反発しあった結果、上空で爆発した。2人は地面に落下し、綾波Kは吹雪の姿に戻ってしまった。

 

江風の方は綾波Kの砲撃を受け、最初の2発は耐えたが、その先を耐え切れずに地面に落下した。

 

「いてて!クッソ!」

 

「ふん。」

 

「っ!アナタ、今、江風を笑った?」

 

起き上がった山風は吹雪を無視して、綾波に攻撃を仕掛ける。江風も山風と一緒に綾波に殴り掛かる。ほったらかしにされた吹雪は、状況がよく分からず、ポカーンとしている。

 

 

「バカ娘どもが。誰と戦ってるんだ。」

 

鳥居の上で戦闘を見物していた老人は、吹雪を無視して綾波を攻撃し始めた2人に悪態を吐くと、手をかざしてディメンションゲートを出現させた。

 

 

「なんだ?ゲート?」

 

「姉貴、おしまいみたいだよ。」

 

「うん。行こう江風。次の地獄が待ってる・・・。」

 

山風と江風はゲートに飛び込み、姿を消した。綾波は刀を杖にして膝を付き、肩で息をしている。

 

「綾波、もうやめよう。こんな戦いは無意味だ。」

 

「まだです!綾波は、悪魔を、倒すまで、うぐっ!」

 

「そこまでだ!」

 

現れたのはユニコーンを追ってきた三笠だ。

 

「み、三笠大先輩!?」

 

「三笠姉ちゃん。」

 

「この勝負、三笠が預かった!両名とも武器を収めよ!」

 

吹雪は変身を解除し、ツカサの姿に戻る。

 

「綾波、剣を向けずに話をしよう。」

 




第2章はいよいよクライマックスへ

艦娘ライダー山風
仮面ライダーキックホッパーの力を得た艦娘ライダー。蹴り技が得意。静海元帥傘下の艦娘で、仮面ライダーザビーの力で白露たちと共に深海棲艦と戦っていたが、敗北を重ねた結果ザビーゼクターに見放されたうえ、江風にとられてしまったことで、やさぐれてしまった。

艦娘ライダー江風
仮面ライダーパンチホッパーの力を得た艦娘ライダー。格闘戦が得意。静海元帥傘下の艦娘で、艦娘ライダーになることを夢見ていた時、山風を見限ったザビーゼクターに認められた。しかし、1度も深海棲艦はおろか白露たちに勝つことも出来なかったため彼女もまた見放される。同じ境遇ということで山風に拾われ、2人で地獄姉妹を名乗っている。


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第12話 朽ちる桜

アズレンアニメも佳境だねぇ。綾波と五航戦姉妹はアズールレーンに下るのか、それとも自分たちの場所に変えるのか。


「いやぁ、お客様なんてほんとに久しぶりだよ。」

 

場所はツカサの家、テーブルにツカサと三笠が座っており、2人と対面するように綾波と高雄が座っている。そこへエンタープライズが上機嫌で料理を持ってきた。

 

「ツカサはここに友達を連れてくることがないからな。来てくれて嬉しいよ。」

 

「余計なこと言うなよ。」

 

(ぼっちなんだ。)

 

(なぜユニオンのエンタープライズがここに?)

 

目の前のやりとりを見てこんなことを考えている綾波と高雄をよそにエンタープライズは料理を並べていく。

 

「うちで採れた野菜を使った麻婆茄子だ。好きなだけ食べてくれ。」

 

「ナス・・・。」

 

ツカサはナスという言葉に心底嫌そうな顔をすると、エンタープライズが目を逸らしている隙に箸を取ってナスだけを綾波の皿に放り込む。

 

「ちょ、ナスだけいれないでほしいです。」

 

「お前ナス好きだろ?俺のナス分けてやるよ。」

 

「ツカサ、好き嫌いは良くないぞ?」

 

「嫌ってない。コイツがナスが好きだって言うからあげてるんだ。」

 

三笠がたしなめるが、ツカサはやめない。分かっているとは思うが、綾波がナスが好きというのはツカサのでっち上げであり、皿がナスばっかりになってしまった綾波は迷惑な顔をしている。

 

「あなた、ほんとに悪魔みたいな人です。」

 

「なんだよ?その悪魔ってのは?」

 

「ある人に言われたです。近いうちに悪魔が現れ、この世界のすべてのKAN-SENを滅ぼすって。」

 

(十中八九静海の仕業だな。さっきの山風たちといい、どこかで俺のこと監視してやがるな。)

 

忌々しい裏切り者の顔を想像して、頭を抱えるツカサ。

 

「君はその言葉を間に受けたのか?誰とも知れない人物の言葉を。」

 

「綾波だって、最初は信じられなかったです。でも、あの人はアンノーンの出現や奴らに綾波たちの攻撃が通じないことも予言してたのです。だから、悪魔のことも信用できると思って。」

 

「ツカサ、その様子を見るに綾波に接触した人物を知ってるみたいだな。」

 

「三笠の言うとおりさ。綾波、お前はあいつに騙されて都合のいい駒にされてんだよ。俺がお前らに何かしたか?」

 

「確かに。ツカサ殿は拙者たちを助けてくれた。それにアンノーンの闇のゲームとやらも阻止してくれた。」

 

「でも、あの力は強力すぎです。戦ったから分かるです。あなたの力は悪魔の力、あんなのがもし重桜に向けられたら。」

 

「違う!」

 

「ユ、ユニコーン?」

 

「お兄ちゃんは悪魔なんかじゃない!だって、ユニコーンのこと、助けてくれたもん!守ってくれたもん!」

 

「あ、えっと・・・。」

 

「ユニコーン、あっち行きましょう。」

 

プリンツがユニコーンを連れて部屋から出て行った。

 

「綾波、俺の事をどう言おうがお前の勝手だ。だが、あの子の前で悪魔とか2度というな。」

 

「・・・・・。」

 

「ま、闇のゲームは阻止したし、この国で俺がやるべきことも終わった。明日にはいなくなるよ。」

 

「何?ツカサ殿、この国を去るのか?」

 

「あぁ。お前らが気にすることなんてなにもない。」

 

そう言ってツカサは少し冷めた麻婆を口に運んだ。

 

 

その夜、重桜母港の沖、聳え立つ大桜の麓に老人―静海元帥は立っていた。

 

「ふん。闇のゲームを阻止しただと?バカめ、そう簡単には終わらせんぞ。」

 

そう言い終えた瞬間、ディメンションゲートが出現し、黄金の制服を纏った淡い水色の髪の少女が現れた。少女は手に青いバラを1本持っている。

 

「原理は不明だが、重桜の連中はこの大桜によって海上での加護を受けている。つまりコイツが枯れてしまえば、加護もなくなるというわけだ。海風、やれ!」

 

海風はベルトに装着してあったカブトムシのような機械の角をレバーのように押し倒す。

 

『Maximum Rider Power』

 

続いてブレスレットに装着されたコーカサスカブトのような機械のボタンを押す。

 

「ハイパー、キック・・・。」

『Rider Kick』

 

昼間、山風が使用したライダーキックよりも遥かに強力なエネルギーの込められたキックが大桜の幹に直撃した。大桜から桜の花びらが次々と散り、木そのものが朽ちていく。

 

「これでいい。これでこの国は滅びる。ツカサ諸共な!」

 

そう言い残し、2人はゲートの中へ消えていった。

 




元帥は大変な物を盗んでいきました。あなたのハイパーゼクターです。

艦娘ライダー海風
仮面ライダーコーカサスの力を得た艦娘ライダー。静海元帥傘下の艦娘。仲間に対しては献身的で優しいが、敵に対しては驚くほど冷酷。倒した敵の死体に青バラを置いていくというよく分からん美学を持っている。
ハイパークロックアップによる神速と圧倒的な攻撃力から静海元帥の精鋭部隊七天の1人に入っており、朝潮たちからは「ゴッドスピーダー」の二つ名が付けられている。


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第13話 迫りくる闇

原作クウガの終盤の絶望感はヤバかったけど、ディケイド版クウガの世界の絶望感も違う意味でヤバかった。


起床して外に出たツカサは、顔をしかめた。そこには昨日とまったく同じ重桜の景色が広がっていた。

 

「どういうことだ?まだ終わってないのか?」

 

「ツカサ、我とともに母港へ向かってくれないか?何か嫌な予感がする。」

 

「分かった。」

 

ツカサと三笠はマシンディケイダーに跨り、母港に向けて走り出した。

 

 

母港では警報が鳴り響き、人や艦船たちが慌しく走り回っている。

 

「これは一体?あ、おい!お前!」

 

「ん?あ、隊長殿!」

 

ツカサが声をかけたのは、先日門番をしていた憲兵だ。

 

「何が起こったんだ?」

 

「母港の沖にアンノーンの大群が出現したんです。しかも、大桜が枯れてしまって、艦船たちは力を発揮できなくなってしまっているんです。」

 

「大桜が枯れただって!?」

 

「三笠、どういうことなんだ?」

 

「我ら重桜の艦船は、重桜の領海内では特殊な加護で守られている。その大元となっているのが大桜だ。あれがある限り、重桜の艦船たちが沈むことはありえない。だが、それが枯れてしまったということは。」

 

「まずいな。相手は加護が合っても、轟沈寸前まで追い込む連中だ。加護なしで戦えば、確実に死者が出るぞ。」

 

「隊長、我々はどうすれば?」

 

「非戦闘員を連れて安全なところに避難しろ。三笠、行くぞ。」

 

 

「戦える者は海に出ろ!奴らに重桜を攻めたことを後悔させてやれ!」

 

「加賀殿!いくらなんでも無茶だ!大桜の加護がなければ、みなまともに戦えぬのだぞ!」

 

「そんなことは分かっている!だが、どうしろというのだ!?このまま重桜が滅ぼされるのを指を咥えて見てろというのか!?」

 

「そ、それは・・・。」

 

「おい!お前ら!」

 

「貴様、あの時の!」

 

「ツカサ殿、どうなっている?闇のゲームは阻止したのではないのか?」

 

「そのはずだ。ゲームを尊重するグロンギ型がなりふり構わずこんなことするとは思えない。誰か、裏で糸を引いてるやつがいる。」

 

「何をこそこそ話している!この非常事態に!」

 

「赤城と長門はどこだ?」

 

「赤城殿は長門様と陸奥様の避難を護衛している。」

 

「加賀さん!長門様と陸奥様の避難が完了したと、報告がきたです。」

 

「ご苦労綾波。よし、アンノーンを迎え撃つ!勇気あるものは私につづ「どけ。」うわっ!貴様!なんの真似だ!」

 

「お前らじゃ奴らは倒せない。無駄死にするだけだ。俺がやる、1人でやる。」

 

「寝言は寝てほざけ!艦船でもない貴様に何ができる!?」

 

「確かに俺は艦船じゃない。でも、艦娘ではある!」

 

バックルを装着し、吹雪のカードを構える。」

 

「変身!」

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

ツカサの姿がマゼンタのセーラー服に緑の瞳の少女に変わる。

 

「貴様、その姿は?」

 

「三笠、こいつらを安全な場所に連れて行け。まともに戦えない奴がいても邪魔になるだけだからな。」

 

「・・・・分かった。」

 

「ツカサ殿、拙者も共に行こう。」

 

「必要ない。来るな。」

 

「しかし、敵は大群だ。とても1人では・・・。」

 

「来るなって言ってるだろ。足手まといなんだよ。」

 

「な!?」

 

吹雪はマシンディケイダーに跨ると、アクセル全開で海に飛び出した。その様子を見ていた綾波は1人、誰にも悟られぬようその場を後にした。

 

 

海上、枯れてしまった大桜を横に目にしながら疾走していた吹雪はマシンディケイダーを停止させた。前方からは無数の深海棲艦が迫ってきている。重巡、戦艦、空母、さらにはゲゲルの資格を持たない駆逐、軽巡までいる。吹雪はライドブッカーから睦月のカードを取り出す。

 

「睦月、ケンカ別れみたいになっちまったな・・・。いつか再会できたら、謝らないとな。そのためにも、今は力を貸してくれ!変身!」

 

『KANMUSURIDE MUTUKI』

 

吹雪の姿が赤いセーラー服の少女、艦娘ライダー睦月に変わる。バイクから降りると、睦月はグロンギ型深海棲艦の群れに向かって走り出した。

 




次回、原作ディケイドが使用してないライダーカードが出ます。

艦娘ライダー睦月
仮面ライダークウガの力を得た艦娘ライダー。睦月の姿のまま服が赤く染まった姿は、「マイティフォーム」「マイティ睦月」と呼ばれ、格闘戦に特化している初期形態。
他の艦娘ライダーと違ってフォームチェンジで服の色だけでなく顔つきまで変わるかなり異質な存在。吹雪を除けば、艦娘ライダー最強ともいわれている。


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第14話 孤独な戦い

原作クウガではライジングがあるけど、ディケイドでは小野寺ユウスケがライジングを発現せずにアルティメットになってしまったため、ライジング系のカードも存在しない。それが納得いない。


艦娘ライドで睦月に変身したツカサは、グロンギ型深海棲艦の大群と死闘を繰り広げていた。向かってくる敵に打撃や蹴撃を与える。攻撃を受けた敵は睦月が持つ封印エネルギーと吹雪の破壊の力で魔石ゲブロンが爆発し、次々と姿を消していく。だが、それでも数が多すぎる。睦月はライドブッカーから青い髪の少女のカードを取り出す。

 

「こういう時、こう言うんだっけ?超変身!」

『FORMRIDE MUTUKI DRAGON』

 

睦月の姿が青い髪に青い制服の少女に変わる。スピードと跳躍力に特化した水の戦士、艦娘ライダー睦月ドラゴンフォームだ。睦月は都合よく漂流していた木の枝を蹴り上げて手にすると、モーフィングパワーを発揮してドラゴンロッドに変化させた。

 

「どっからでも掛かって来い!」

 

再び突撃し、深海棲艦たちの身体にロッドを叩き込む。封印エネルギーによって次々と爆発していく深海棲艦。それでもまだ数は減らない。それどころか、重巡以上の高火力艦が海中から次々と出現してくる。

 

『FORMRIDE MUTUKI TITAN』

 

カードを使って、ドラゴンフォームから紫の髪に紫の制服のタイタンフォームへと変わる。防御に特化させて無理やり押し返そうという作戦だ。ロッドをへし折ると、2本のタイタンソードに変化させて斬り掛かる。強力な砲撃にも全くひるまず、次々と斬撃を食らわせていく。タイタンの防御力とツカサの奮闘のおかげで深海棲艦の数もかなり減ってきた。

 

「よし、あと少しだ。」

 

そのとき、睦月の周辺に巨大な水柱が立ち上った。視線を向けると、腕に異形の艤装を纏った白い肌の女性が海上に立っている。

 

「南方棲戦姫!」

 

「ギサギャギャギ、バンゲギグスパベ」

(いらっしゃい、歓迎するわね)

 

戦姫は腕の艤装で睦月を砲撃する。睦月はこれを回避し、2本のタイタンソードを構えたまま突進する。

 

「デヤァァァァァァァ!!」

 

ソードの切っ先が戦姫の腹部に突き刺さった。

 

「どうだ!」

 

「フ、フフッ、フフフフフフフフ!」

 

だが、戦姫は笑みを浮かべるだけで、全く意にも介していない。睦月は更に力をこめてソードを押し込もうとするが、足が滑るだけでビクともしない。

 

 

「ルザジョ」

(無駄よ)

 

睦月を艤装で殴り飛ばすと、突き刺さったままのタイタンソードを引き抜き、握力で刀身をへし折ってしまった。

 

「なら!」

 

『FORMRIDE MUTUKI AMAZING』

 

今度は黄金の刺繍が施された黒い制服に黒髪の少女、アメイジングマイティフォームに変わる。さらに「睦」と書かれた黄色いカードを取り出し、バックルに挿入する。

 

『FINAL ATTACKRIDE MU MU MU MUTUKI』

 

睦月の両足首のマイティアンクレットから放電が発生し、さらに足の裏から炎が噴出する。

 

「ウオォォォォォォォォ!!」

 

雄叫びを上げながら走り出し、跳躍して空中で一回転した後、両足をそろえてアメイジングマイティキックを繰り出す。戦姫は狂ったような笑みを浮かべると、防御も砲撃も行わずに両腕を開いて受け止める体勢をとる。キックは戦姫の胸に命中し、封印の紋章が浮かび上がる。だが・・・。

 

「クフフフフ、アハハハハハハハハ!!」

 

「っ!?」

 

なんと戦姫はそれを掻き消してしまった。目の前で起きたことが信じられず、呆然としてしまう睦月の隙を戦姫は見逃さなかった。気が付いた時には、すでに間合いは詰められていた。回避しようとする睦月の腕をつかんで、空いている方の手で殴りつける。

 

「ぐふっ!ごほっ!げぁ!」

 

「アハハハハハハハハ!!」

 

さらに腕をつかんだまま振り回して、海に叩きつける。そして、大きく振りかぶって投げ飛ばす。投げ飛ばされた睦月は滅茶苦茶に回転しながら鳥居に激突し、地面に落下した。落下すると同時に変身は解け、元のツカサの姿に戻ってしまった。

 

「ぐ、ガハッ!うぐ・・・!」

 

「ヅザラベェ?ルバンベギバセンヂュグゾラロデデ、ビズヅギデ、ゼロダグベデブセスジドパザセロギバギ。ゾンドグビヅザラバビンゲン」

(無様ねぇ?無関係な連中を守って、傷ついて、でも助けてくれる人は誰もいない。本当に無様な人間)

 

「くっ・・・!」

 

「ガバダパラザボソガバギパ。ゴボゼリデバガギ。ガンブビグゲギゲンンジャリビヅヅラセスドボソゾ!」

(あなたはまだ殺さないわ。そこで見てなさい。あの国が永遠の闇に包まれるところを!)

 

「そんなことさせ、ぐぅ!」

 

「ガァ、ギビラギョグ。ジャヅサゾ「ヤァ!」ッ!?」

(さぁ、行きましょう。奴らを)

 

突然、何者かによって奇襲を受けた戦姫。攻撃を腕の艤装で受け止め、弾き返す。視線の先にいたのは。

 

「あ、綾、波・・・?」




フォームライドアメイジングがあったっていいじゃない?

艦娘ライダー睦月 ドラゴンフォーム
スピードと跳躍力に特化した姿。このフォームになると、姿は艦娘の水無月と同じになる。故に「ドラゴン水無月」と呼称されることもある。
打撃力が大幅に低下しているため、ドラゴンロッドで補っている。

艦娘ライダー睦月 タイタンフォーム
防御に特化した姿。このフォームに変わると、姿は艦娘の弥生と同じになる。そのため「タイタン弥生」とも呼称される。
モーフィングパワーによって物質をタイタンソードに変化させられる。

艦娘ライダー睦月 アメイジングフォーム
マイティフォームがライジングマイティを経てさらに強化された姿。この状態での姿は艦娘の三日月と同じなため、「アメイジング三日月」とも呼ばれている。


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第15話 共闘

「ここではリントの言葉で話せ。」ってセリフ汎用性高くて好き。


南方棲戦姫に奇襲をかけたのは綾波だった。しかし、攻撃してきたのが艦船だと分かると、戦姫は不適な笑みを浮かべた。

 

「ゴソバベ。パダギゾダゴゲバギドパバデデデルバデデスバンデ」

(愚かね。私を倒せないと分かってて向かってるなんて)

 

「ここでは重桜の言葉で話せ、です。」

 

「本当に愚かな娘、自分の命が惜しくないのかしら?」

 

「綾波の命と引き換えに重桜を守ることができるなら、この命惜しくなんてないのです!」

 

再び戦姫に斬り掛かり、袈裟懸けに斬ろうと刀を振り下ろす。だが・・・。

 

バキン!!

 

「なっ!?」

 

斬るどころか逆に刀の方が真っ二つに折れてしまった。

 

「無駄なことを。ふん!」

 

戦姫は綾波を殴り飛ばし、吹っ飛ばされた綾波は鳥居に激突した。

 

「気が変わったわ。そんなに死にたいなら貴方達から先に殺してあげる。」

 

「ぐ、ここまで・・・なの・・・?綾波は、誰も守れないで、死ぬ?」

 

「諦めるなよ。まだ、俺たちは生きてるじゃねーか。」

 

「どうして、どうしてこんな状況で、そんなこと言えるんですか!?」

 

「誓ったからだ。この世界で記憶を取り戻した時、胸に誓った。」

 

ツカサの脳裏に記憶が蘇る。

ぶつかり合う吹雪と白い吹雪、光の粒子となって消えていく吹雪、手を伸ばすツカサ、掴む前に消えてしまった吹雪、残されたバックル、絶望し叫ぶツカサ

 

「もう誰も死なせない。すべてを破壊し、すべてを守護る!それが俺の使命だ!」

 

「ツカサさん・・・。」

 

「『さん』はいらねぇよ。綾波、お前はどうする?何もせずにここでくたばるか、精一杯足掻いて生き延びるか。」

 

「あ、綾波は・・・綾波は!生きたい!生きて、皆の所に帰りたい!」

 

「じゃあ行こうぜ。」

 

綾波に手を伸ばすツカサ、綾波は躊躇うことなくその手をとる。

 

「愚か!実に愚か!苦しまずに死ねるというのに、なぜまだ苦しもうとするの!?」

 

「決まってるだろ。俺はすべてを守護るために!」

 

「綾波は、重桜と皆を守るために!」

 

「例えこの先に待つのが苦しみだとしても、俺たちは戦い続ける!大切なものすべてを、守るために!」

 

「貴様ぁ!何者だ!?」

 

「通りすがりの艦娘ライダーだ!覚えておけ!変身!」

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

「綾波、艦娘と艦船の共闘といこうじゃないか?」

 

「はいです!」

 

そのとき、ライドブッカーが開き、2枚の黄色のカードとマゼンタのカードのあわせて3枚のカードが吹雪の手の中に納まった。何も描かれていないカードに絵と文字が浮かび上がる。マゼンタのカードには隣に立っている綾波の姿が、黄色のカードには重桜のエンブレムが、もう1枚の黄色のカードには綾波と刀の絵が描かれている。

 

(繋がりができたことで、新たなカードが生まれたのか?よし!)

 

『FINAL FORMRIDE A A A AYANAMI』

 

「ちょっとくすぐったいぞ。」

 

「え?」

 

吹雪が綾波の背中ををトンッと突くと、綾波の身体と艤装が無数の青いキューブに変わる。さらにそれらが吹雪の手に集結し、1m以上はある刀を形成した。見た目は先ほどまで綾波が使っていた刀に酷似しているが、弱冠形状が異なっている。

 

『な、なんですかこれ!?あ、綾波、刀になってるです!?え!?え!?』

 

「落ち着け。これが俺とお前、2人の絆が創り出した力だ。」

 

『2人の絆・・・。うん、ツカサ!』

 

「あぁ!いくぞ!」

 

「バレスバ!ジャデデギラゲ!」

(舐めるな!やってしまえ!)

 

戦姫は海中から十数体のグロンギ型深海棲艦を出現させる。だが、吹雪は綾波を変化させた刀、アヤナミカリバーですれ違いざまに斬り捨てていく。1対1では不利と悟った深海棲艦たちは包囲して袋叩きにしようとする。だが、吹雪はアヤナミカリバーを2本に分解し、柄頭を連結して振り回す。斬撃を受けた深海棲艦たちは次々に爆散していく。

 

「ふざけるな!艦娘とライダーの力がなければ、何もできない人間風情が!」

 

「確かにその2つがなければ、俺はただの人間だ。でも、今の俺は、艦娘ライダー吹雪だ!」

 

『FINAL ATTACKRIDE  A A A AYANAMI』

 

「これで決める!」

 

吹雪は跳躍し、アヤナミカリバーを回転させながら戦姫に振り下ろす。戦姫は腕の艤装でガードする。吹雪は連結を解除すると、舞うように2本の刀で斬り付ける。戦姫の艤装は連続斬撃に耐え切れず、破壊されていく。

 

「バンザド!?」

(なんだと!?)

 

「デリャアァァァァァァァァ!!」

 

アヤナミカリバーを再び一振りに戻し、戦姫の脳天から縦一直線に叩き斬った。

 

「ギャアアアアアアアアア!!!」

 

魔石ゲブロンごと真っ二つにされた戦姫は断末魔を上げながら爆散した。




いろいろクロスオーバーさせてるんだから、これくらいやらんとね?

ファイナルフォームライド
専用カードを読み込ませることで、艦娘ライダーを一時粒子化、再結合させて対応した武器やマシンに変形させる。艦船の場合は粒子ではなく無数のキューブに分裂する。

アヤナミカリバー
艦船の綾波をFFRで変形させた姿。初期状態は大振りの刀であり、この状態をソードモードと呼ぶ。分解して二刀流にでき、この状態をデュアルモード、さらに柄頭を連結した状態をハルバードモードと呼ぶ。この武器を持った状態で行うFARは「綾波流鬼神演舞」となる。
モデルは綾波改の刀。


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第16話 笑顔

重桜編完結


リーダーである南方棲戦姫が死んだことで、残ったグロンギ型深海棲艦は大慌てで逃げていった。吹雪は逃げる者たちを追撃することはせず、手に持っているアヤナミカリバーを上空に放る。すると、アヤナミカリバーは無数のキューブに戻り、海上で集結して綾波の姿に戻った。

 

「よう、大丈夫か?」

 

「振り回されすぎて、ちょっと目が回ってるです。」

 

吹雪の手をとり、フラフラと危なっかしい足取りで立ち上がる綾波。

 

「リーダーが死んだ以上、奴らは当分この国には来ないだろう。」

 

「ツカサ、ありがとです。それと、悪魔って言って攻撃したこと謝ります。ごめんなさい、です。」

 

「気にすんな。俺は気にしてない。さてと、あとはアレだな。」

 

ツカサが見上げるのは枯れ果ててしまった大桜。これがなければ、重桜の艦船たちは加護を受けられなくなってしまう。

 

「コイツを元通りにしないとな。」

 

「そんなことが出来るのですか?」

 

「あぁ、きっとうまくいく。」

 

『KANMUSURIDE AKATUKI』

 

吹雪は暁の姿に変わると、大桜の麓に向かった。

 

「近くで見るとでかいな。よし!」

 

『ATTACKRIDE INOCHINOOTO』

 

バックルから飛び出した音撃鼓火炎鼓が幹に固定され、直径3mほどの大きさになる。

 

「ハァァァァァ!生命の音!」

 

暁は音撃棒烈火を使って火炎鼓を叩き始めた。

 

 

生命の音とは、ツカサの前世である艦娘ライダーたちの世界で艦娘ライダー暁が使用した技だ。かつて、暁がとある島で魔化魍型深海棲艦と戦闘を行った際に火を噴く大型魔化魍によって島中の森が焼き尽くされてしまった。魔化魍の殲滅には成功したが、森が焼かれそこに住まう生き物たちが消え去ってしまったことを悲しんだ暁は、音撃鼓で生命の音を奏でることで、新たな生命を芽吹かせようとした。だが、これは奏者の体力を奪い取ってしまう諸刃の技でもあるため、最初は暁の体力が持たず失敗するかと思われた。だが、そこへ駆けつけた響の音撃管烈風、雷の音撃真弦烈斬、電の音撃弦烈雷の四重奏で体力の損耗を分散することで暁の負担を軽減、結果生命の音を完奏に成功。小さくも新たな生命を芽吹かせることができた。

 

今ツカサが行っているのは、その生命の音そのもの。枯れてしまった大桜を復活させようとしているのだ。しかし、奏者の体力を奪ってしまうのもまた同じ、次第にツカサの身体から力が抜けていく。

 

「ぐっ、まだだ!まだ、倒れるな!」

 

必死に自分を鼓舞し、演奏を続ける。その様子を見守る綾波、そしてもう1つ、少し離れた鳥居の上に銀髪の少女が立っていた。

 

「ふ~ん、お宝探しに重桜まできたけど、面白いことしてるじゃない、ツカサ。」

 

少女は右手に持っている青い銃に3枚のカードを装填する。

 

『KANMUSURIDE』

 

「折角だし、手伝ってあげますか。」

 

『HIBIKI』『IKAZUCHI』『INAZUMA』

 

「お願いね。」

 

響は音撃管烈風を、雷は音撃真弦烈斬を、電は音撃弦烈雷を構え、演奏を始める。

 

 

(ん?なんだ?身体が軽い?)

 

先ほどまで体力の損耗によって重く感じていた身体が今度は軽く感じることに違和感を覚えるツカサ。

 

(まさか、響たちが向こうの世界から手伝ってくれてるのか?)

 

見当違いな推測をしつつ演奏を続ける。負担が減ったことで演奏もスムーズに出来ている。

 

「これで、ハァ!!」

 

ドォン!

 

最後の一叩きを終えた瞬間、幹の色が変わっていく。枯れていた先ほどとはうって変わって明らかに活力を取り戻している。枝には小さな蕾が膨らんでいる。大桜は復活したのだ。

 

「これでいい。時間は掛かるが、大桜は必ず元通りになる。」

 

「すごい。」

 

「さて、俺は行くとするか。」

 

「皆に会っていかないのですか?」

 

「あぁ、質問攻めにされても困るしな。お前からよろしく言っておいてくれ。じゃあな!」

 

「ツカサ、ありがとう、です。」

 

吹雪はマシンディケイダーに跨り、走り去っていった。

 

 

「これで貸し借りゼロよ、ツカサ。」

 

そう言うと、少女は鳥居の上から煙のように姿を消した。

 

 

重桜母港

「綾波!無事だったんだな!」

 

「高雄さん、ただいまです。」

 

「ツカサ殿は?」

 

「あの人は、行きました。」

 

「そうか。」

 

「むぅ、奴には色々と問い詰めたかったのだが。」

 

「まぁよいではないか。」

 

「長門様!赤城姉様も。」

 

「あ奴はアンノーンを倒し、重桜を救った。感謝すべきであろう?」

 

「長門様のおっしゃる通りよ加賀。綾波、あなたもそう思うでしょう?」

 

「はい。ツカサは大桜も蘇らせてくれたです。」

 

「あの男はそんなことまで?一体奴は何者なんだ?」

 

「あの人は、通りすがりの艦娘ライダー。ただそれだけです。」

 

「通りすがりの艦娘ライダー、か。ふむ、それならいずれまた重桜を通りすがるかもしれんな。」

 

「その時は、私が相手になります。私に給仕をさせたことを後悔させてやる!」

 

「おーい!綾波ー!」

 

声のした方向を見ると、夕立、時雨、雪風が手を振りながら走ってくる。

 

「行きなさい、綾波。皆あなたのことを心配してたわよ。」

 

「赤城さん、はい。行ってくるです。」

 

綾波は手を振りながら3人の元へ向かう。

 

少し離れた物陰でツカサと三笠はその様子を見ていた。

 

「よかったのか?別れの挨拶をしなくて。」

 

「あぁ、どうも俺にはアイツとはこの先、縁がありそうな気がするんだよ。」

 

綾波は夕立に飛びつかれ、時雨と雪風に揉みくちゃにされている。だが、その表情は明るく笑っている。

 

「またな、綾波。」

 

そう言ってツカサはポラロイドカメラのシャッターを切る。出てきた写真はいつも通り歪んでいたが、綾波の笑顔ははっきりと写っていた。

 

「行こう三笠。次の戦いが俺を待っている。」

 

「あぁ、共に行こう。」

 

2人は母港を後にし、帰路についた。

 

 

その上空

「もー!重桜にツカサがいるからって、お兄ちゃんとエンプレスが言ってたから来たのにどこにもいないじゃない!どこにいるのよー!」

 

小さな白いコウモリの小さな叫びを聞く者は誰もいなかった。




正体不明の艦娘ライダーについては、いずれ。

艦娘ライダー???
仮面ライダー???の力を得た艦娘ライダー。他の艦娘ライダーを召喚できる。


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第3章 鏡写しのロイヤル少女
第17話 新米執事


9話、10話と良回が続いた後に3か月待ちはひどすぎる。円盤買うか。


「あらま。ちょっと困ったことになっちゃったわね。」

 

「ちょっと!ここはなんのなのです!?」

 

ここはディメンションゲートの中。白い小さなコウモリが作り出したその空間に偶然近くにいた綾波が入り込んでしまったのだ。

 

「ごめんね~。巻き込むつもりはなかったのよ?」

 

「なら早く戻してほしいのです。」

 

「う~ん、それは出来ないのよねぇ。」

 

「出来ないじゃ困るのです!」

 

「こうなったら仕方ないわ。話は通しておくから、向こう側でなんとかやってちょうだい。」

 

「向こう側って、ちょ!待っ!」

 

ゲートの空間を通り抜けた綾波が目にしたのは、明らかに重桜とは異なる西洋風の景色。

 

「ここは?」

 

 

 

 

『吹雪!』

 

『ハァ…ハァ…司令、官…私…勝ちました、よ。』

 

『ダメだ吹雪!逝くな!!』

 

『後は…任せ、ます…。この、世界、を…守護、って…。』

 

『吹雪ぃぃぃぃぃ!!』

 

 

「ッハァ!」

 

ツカサは目を覚ました。視線を動かすと、ツカサの左腕を枕にしてユニコーンが眠っている。

 

「夢か。ふぅ・・・。」

 

ユニコーンの頭を撫で、起こさないように腕を抜き、ベッドから降りる。机の上を見ると、きれいに折りたたまれた服が入ったビニール袋が置いてある。

 

「これがこの国での俺の役割か。」

 

着替えてポラロイドカメラを首から下げる。階下に降りると、他の3人はすでに起きていた。

 

「おはよう、ツカサ。その格好は?」

 

「おはよう。これがこの国での俺の役割らしい。」

 

「あら、執事服?よく似合ってるじゃない。」

 

「それより外を見てみるといい。変わってるぞ。」

 

外に出ると、昨日までの桜の母港は存在せず、西洋風な街並みと母港があった。

 

「ここはロイヤルか?あまり気が進まないな。」

 

「ツカサ?どうかしたのか?」

 

「エンタープライズか。なに、あそこに行くのが気が進まないってだけさ。」

 

「何故だ?」

 

「昔色々あってな。とはいえ、行かないわけにはいかない。飯を食ったら行くか。」

 

「心配なら私も一緒に行こうか?」

 

「イヤいい。あの人に会わないようにすればいいだけだから。」

 

 

ロイヤル母港

門番によってツカサはロビーに通された。そこにはツカサを待っていたと思われる銀髪のメイドがいた。

 

「初めまして。私はロイヤルメイド隊のメイド長、ベルファストです。」

 

「角谷ツカサだ。よろしく。」

 

「お話は聞いております。男性の執事を迎え入れるのは初めての試みだと。」

 

「まぁ、そんなところだ。で、俺は何をすればいい?」

 

「本日は私と共に1日の業務の確認をします。具体的な仕事内容はその後に。」

 

「分かった。」

 

「ところで、そのカメラは?」

 

「あ~、やっぱりダメか?」

 

「はい。業務に差し支えるかと。」

 

「仕方ない。おい、門番。」

 

「はい?」

 

「これ預かっといてくれ。壊すなよ?」

 

「分かりました。」

 

「では、参りましょうか。」




ツカサは誰に会いたくないのか?それは追々。


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第18話 狙われた少女

明けましておめでとうございます。年末年始はバタバタしてたうえに、導入部分で詰まってしまってなかなか筆が進みませんでした。2章は今月中には終わらせるので、ご安心ください。


『ハァハァハァハァハァッ』

 

『フフフフフフフフフフフ』

 

『誰!?誰なの!?』

 

『私はアナタよ、ジャベリン。鏡に映ったもう1人のアナタ。』

 

『グォオオオオオ!!』

 

『何あれ?大きな、サメ?』

 

『あの子たちは力を付けてる。もうすぐアナタに会えるわ。』

 

『グォオオオオオ!!』

 

『イヤァアアアア!助けてぇぇぇぇ!』

『誰かぁぁぁ!助けてくれぇぇぇ!』

 

『人?何をする気なの?』

 

『もっと、もっと彼らに力を!』

 

『グォオオオオオ!!』

 

『ダメ!やめてぇ!!』

 

ガリッ バキボリ グチャ グチャ

 

『イヤァァァァァ!!』

 

『安心してジャベリン。アナタはもうすぐ私になる。そうすれば、苦しみからも、哀しみからも解放される。』

 

『ア、 アァァ!』

 

『だから安心して、待ってて。』

 

 

「ッハァ!」

 

ジャベリンは自分の部屋で目を覚ました。冬だというのに寝巻は汗でぐっしょりと濡れている。

 

「ハァ、ハァ、あ、学園行かなきゃ・・・。」

 

 

 

ツカサはベルファストに連れられてやたらと長い廊下を歩いている。

 

「この母港は結構広いな。」

 

「当然です。女王陛下の威光を示すためですので。」

 

「なるほどな。重桜も結構広かったが、こっちはこっちで広いな。」

 

「重桜の母港に行かれたことが?」

 

「あぁ、ちょっと縁があってな。ん?」

 

ツカサたちの対面から紫の髪に王冠の髪飾りの少女がふらふらと歩いてくる。

 

(アイツ、どうかしたのか?)

 

そう思った瞬間、少女が膝から崩れ落ちた。

 

「ジャベリン様!?」

 

「おい!大丈夫か!?」

 

2人は慌ててジャベリンに駆け寄る。

 

「ベルファストさん?ご、ごめんなさい、大丈夫です。」

 

「眠そうだな?しかっり眠れてないみたいだな。」

 

「あ、あなたは?」

 

「角谷ツカサだ。メイド長、彼女を医務室に連れて行こう。寝かせた方がいい。」

 

「分かりました。案内します。」

 

「い、いいです!ジャベリン、どこも悪くないですから!」

 

「しかし、ジャベリン様。」

 

「大丈夫です!ち、遅刻しちゃうからもう行きますね!ありがとうございました!」

 

「おい!」

 

2人の静止を振り切ってジャベリンは知って行ってしまった。

 

「あいつ、またぶっ倒れるんじゃないか?」

 

「心配ですね。私が後で学園の方に連絡しておきます。」

 

「あぁ、そうしてくれ。」(それにしても妙だな。なぜ眠るのをあそこまで嫌がるんだ?)

 

ツカサが考え込んだその時

 

キィィィンキィィィン

 

「!?」

 

ツカサの耳に耳鳴りのような音が聞こえてきた。これは近くにミラー型深海棲艦がいるという合図だ。ツカサは窓を見るが、自分の姿が映っているだけで何の変化もない。

 

(おかしいな?確かに反応があったのに?)

 

耳鳴りはすでに聞こえなくなっている。

 

「ツカサさん?どうかなさいましたか?」

 

「・・・いや、何でもない。気のせいだ。」

 

ツカサとベルファストは再び歩を進めた。

 

(さっきのは間違いなくミラー型だ。誰かを狙っていた?だとすると、早く行動しないと大変なことになる。)




次回、ミラーワールドで初戦闘。

ミラー型深海棲艦
ミラーワールドでの活動が可能になった深海棲艦。代償として知性の大半が失われており、このタイプの多くが生きるため、または自分を強化するために人や艦娘を捕食している。陸上での活動がメインのため、元からある武装はほとんど使用せず、肉弾戦を行うことが多い。しかし、1度倒された後に再生し強化された個体は陸上でも砲撃や爆撃を積極的に行うようになる。
通常の艦娘で撃破は可能だが、不利になるとすぐミラーワールドに逃げ込む上に、姿が映るものがある場所なら突発的に襲って来るため対処が難しい。さらに、1度ターゲットにされると執拗に追い回してくるので逃げ切ることもできない。故にミラー型に確実に対処できるのはカードデッキを持つ艦娘ライダーだけである。
撃破されると、コアとなっている光球が出現する。契約モンスターや他のミラー型に取り込まれることで、それらを強化する。


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第19話 14番目のライダー

まさか、アイツがライダータイム龍騎に出るとは思わなかったよ。ていうかなんんでファムリストラしたし。


新米執事としてツカサに割り当てられた最初の仕事は掃除だ。先輩メイドと一緒にロビーの掃除をすることとなったのだが・・・。

 

ガシャーン!

 

「シリアス!俺の仕事増やすな!」

 

「申し訳ありませんツカサさん!どうか、この卑しいメイドに罰を!」

 

「するか!バカ!」

 

人選ミスとしか思えない人物だ。だが、今のツカサにとっては好都合だった。

 

「この割れた花瓶捨ててくるから、細かい破片の掃除しておいてくれ。」

 

「後輩にフォローしてもらうような情けないメイドで申し訳ございません。」

 

「全く、どっちが先輩だか分かんねーよ。」

 

抜け出すことに成功したツカサは、割れた花瓶を捨てるとシリアスの所へは戻らずにジャベリンを探しに学園へ向かった。

 

(ミラー型の出現音の範囲は狭い。あの場にいたのは俺とメイド長とジャベリン、あの後メイド長と2時間ほど一緒にいたが何もなかった。つまりミラー型が狙っているのは。)

 

 

学園

ジャベリンは1人、教室の机に突っ伏してした。

 

(あの夢は何なの?ここ数日毎日見てる。しかも、食べられてた人達は新聞の行方不明の人達とそっくり。)

 

キィィィンキィィィン

 

「な、なに?」

 

突然、金属音のような音が聞こえてきた。音の発生源を見ると、窓ガラスに2体の黒髪の女性が映っている。しかし、教室にはジャベリンしかいない。

 

「イヤァァ!」

 

ジャベリンは教室から逃げ出し、校舎の裏側に来た。

 

「ハァ、ハァ、なんのあれ?」

 

キィィィンキィィィン

 

「また!」

 

ギュインギュイン

 

「シャアアアアア!」

 

「きゃあ!」

 

突如、窓ガラスから2体のミラー型深海棲艦ル級が姿を現す。

 

「やめろ!」

 

ツカサがル級とジャベリンの間に割って入り、ル級たちを蹴り飛ばす。ル級たちは窓の中に飛び込んで消えた。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「う、う~ん・・・。」

 

ジャベリンはあまりの出来事で気を失っているようだ。

 

「大丈夫そうだな。なら、あっちをやるか。」

 

ツカサは自身の腹部にバックルを装着する。

 

「変身!」

 

『KANMUSURIDE FUBUKI』

 

ツカサの姿がマゼンタ色のセーラー服とスカート、緑の瞳、襟に漢数字の十を模したバッチが付けられた艦娘ライダー吹雪の姿に変わる。

 

「ミラー型ならこいつの出番だな。変身!」

 

『KANMUSUIDE KAGEROU』

 

カードを読み込ませると、吹雪に鏡から出現した複数の鏡像が重なり合い、違う姿の艦娘ライダーの姿となる。赤いベストとスカート、瞳も赤く、髪は黄色のリボンでツインテール、左手には龍の頭を模した龍召機甲ドラグバイザーを持っている。ミラーワールドでの戦いに特化した艦娘ライダー陽炎だ。

 

「さて、行くか。」

 

陽炎はミラー型深海棲艦が飛び込んだ窓に飛び込んだ。

 

ミラーワールドと現実世界は異次元空間でつながっており、そこを移動するためには専用マシン「ライドシューター」を使用する必要がある。だが、吹雪はディケイドの能力の1つである次元移動能力によってわざわざライドシューターを介して移動する必要はない。

 

ミラーワールドに出現した陽炎の目の前にミラー型のル級が2体、待ち構えていた。

 

『ATTACKRIDE SORWDVENT』

 

カードが読み込まれると同時に、上空に現れたドラグレッダーが自身の尾を模した剣を投げて渡す。

 

「でりゃあ!」

 

陽炎は刀身を撫でると、ル級達に向けてドラグセイバーを振るう。ル級達は両側に逃げて回避し、陽炎に組み付いて動きを封じる。そこへもう1体が打撃を繰り出す。

 

「ぐっ!がっ!この!」

 

腰のライドブッカーの銃撃で退けつつ、組み付いていた方の腕を振り払って斬撃を食らわせる。

 

「レアとミディアムとウェルダン、どれがいい?」

 

『ATTACKRIDE  STRIKEVENT』

 

陽炎の右腕にドラグレッダーの頭を模したドラグクローが装着される。クローを構えて腰を落とすと、クローの口から炎が溢れ出す。

 

「ハァァァァァァ!デヤァァァ!」

 

クローを突き出すと同時に燃え盛る炎弾が撃ち出される。耐えられると思ったのだろうか、ル級は回避することなく炎弾を受ける。当然耐えきれるはずもなく、ル級は爆散した。

 

「お前はこっちで料理してやる。」

 

『FINALATTACKRIDE KA KA KA KAGEROU』

 

陽炎の周囲をドラグレッダーが舞う。陽炎が跳躍すると、空中で錐揉みしながらキックの体勢をとり、ドラグレッダーが撃ち出した火炎弾を纏いながらル級に突撃する。

 

「っ!」

 

ル級は背を向けて逃走を図るが、如何せん遅すぎた。陽炎の必殺技ドラゴンライダーキックはル級の背中を捉え、ル級は爆発四散した。

 

「よし、こんなもんだな。ん?なんだ?」

 

不意に誰かの気配を感じ、視線を向けると人が立っている。しかし、胸より上は建物の影が覆い隠しており、顔を見ることはできない。辛うじて見える青いスカートがその人物が少女であることを証明している。そして、腰にはベルトと鮫のレリーフの青いカードデッキがはっきりと見えた。

 

(誰だ?それにあのデッキは?)

 

ライダーはデッキからカードを引き抜き、左腕の鮫のようなバイザーにカードを差し込む。

 

『STRIKEVENT』

 

ライダーの右腕に左腕のバイザーとは形状が異なる鮫のようなクローが装着される。ライダーは腰を落としてクローを構える。それを見た陽炎はとっさにカードを挿入する。

 

『ATTACKRIDE GUARDVENT』

 

ドラグレッダーの腹部を模した2つの盾を構えて防御態勢に入る陽炎。謎のライダーがクローを突き出すと、ライダーの背後から巨大な津波が出現し、陽炎に迫る。

 

「ちょ、それは無理!」

 

津波の勢いを小さな盾2つで防げるわけもなく、押し流されて建物に激突する。

 

「ゴハァッ!ゲホッゲホッ!」

 

大量の海水を飲み込んでしまいむせる陽炎、2つのドラグシールドは津波に流されてどこかへ行ってしまった。

 

「てめぇ!」

 

『ATTACKRIDE  STRIKEVENT』

 

再びドラグクローを装着して構えた後、火炎放射を発射する。だが、ライダーはサメのクローの口から水流を発射する。炎と水がぶつかり合うが、火が水に弱いのはどの世界も同じ。水流は水蒸気を上げながら火炎を押し返していく。

 

「な、なんて威力!炎が蒸発してやがる!」

 

不利を悟った陽炎は水流が自身に命中する直前に回避する。

 

(このままじゃ勝てない。仕方ないか。)

 

陽炎は自分が出てきた窓に飛び込んでミラーワールドから脱出した。

 

「逃げたか。まぁいい、邪魔してくるなら今度は殺す。」

 

謎のライダーは暗がりの中へ消えていった。




何のライダーの力なのか、誰が変身してるのか、聡明な皆さんならもうお分かりだろう。

艦娘ライダー陽炎
仮面ライダー龍騎の力を得た艦娘ライダー。ミラーワールドに入ることが出来、ミラー型に対処できるライダーの1人。癖の強い陽炎型艦娘ライダー達のまとめ役であり、妹想いな長女。それ故に、静海元帥とともに離反した妹達と戦うことに迷いを抱いている。
使用カードは原典から変更はなく、サバイブにならなくてもストレンジベントが使用できる。
余談だが、アメリカには彼女と全く同じ力を得た艦娘ライダーが存在するらしい。


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