サイヤの咆哮 (パライソオタマ)
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プロローグ 下級戦士と上級戦士

時間は午後10時、自分の統括する下級戦士達の惑星侵略報告、殉職報告、出産時戦闘力の報告等々の書類を提出し終わり一日の面倒な業務を忘れるためにヤケ気味に酒を飲む。

 

餓鬼の頃は自分の力のままに暴れ、沢山の異星人を殺してきたが大人になり、この職に就いてからは退屈な毎日を送っている。

 

酒を2ビン程飲み切りつまみを食べきった所で今日は寝ようと布団に腰をかけたその時スカウターから連絡が入った。

 

〈おい、リーキか?夜中に悪いが仕事だ。酒場で下級戦士どもが喧嘩騒ぎで暴れていて手がつけられないらしい。

 

とりあえず仲裁に入って騒ぎを収めててやれ。…方法は好きにやりな。〉

 

こちらの返事を待たずに言いたい事を言うだけ言って通信が途切れた。チッとオレは舌打ちをして戦闘服に着替え、騒ぎのある酒場へ向かった。

 

酒場へ到着すると中々酷い有様だった、酒や食い物が散乱しカウンターやテーブルが所々壊れている。

そして何十人もの下級戦士共がのびており、店の奥の方で独特のカニ頭の下級戦士が別の下級…いや服装から察するに中級戦士の胸ぐらを掴み顔面を殴り続けている。

 

オレはケンカは止めるためにその男に声をかけた。

 

「おいそこのカニ頭の奴、いい加減にしろ!殺されたく無かったそいつを離しな。」

 

オレの声に気づき男はこちらを向く、頬が赤くなっておりどうやら相当酒が回っている様だ。

たがその男がこちらに気づいた時点で仕事は終わったも同然だ。

 

自分のプロテクターについている上級戦士の証、これをみたサイヤ人は下級戦士はおろか中級戦士でさえ地べたに這いつくばり許しをこうのだ。

この男もそうだろう、そう思ったオレに予想外の返答が帰ってくる。

 

「上級戦士サマが何の用だ、オレはこのクズ野郎をぶっ殺してるんだ!!邪魔だから引っ込んでやがれ!!」

 

下級戦士の分際でこのオレにそんな態度、自分の頭の辺りからプツリという音が聞こえた気がした。

こいつは殺す、そう心に決め手にかける前に一つだけ尋ねる。

 

「ずいぶんな口聞いてくれるじゃねぇか!お前を殺す前に聞いておいてやろう。なぜこんな騒ぎを起こしやがった?」

 

「この野郎はギネに…オレの女に手を出そうとしやがったんだ!絶対に許せねぇ、解らった邪魔すんな!!さっさと失せろ。」

 

またもや予想外の返答に呆れて少し冷静になる。この男はサイヤ人のクセにたかがツガイに手を出されただけでここまで暴れたのか?サイヤ人の面汚しめ。

 

オレは拳を構えその男に最期の声をかけた。

 

「くだらん、女ごときの事でバカ騒ぎしやがって。そんなに腹がたつならオレにかかって来やがれ、すぐにぶっ殺してやる。」

 

その言葉を聞き先程から怒り続けていた下級戦士の男がニヤリと笑った。

 

「へへっ、解ってんじゃねぇか。はっきり言ってこいつじゃ物足りなかったんだ。オレを楽しませてくれよ上級戦士サマよ!」

 

(バカが…お前はここで死ぬんだよ。)

 

そう心の中で呟いた瞬間オレの体がぐらりと揺れ思わず床に手をつく。その瞬間口から血を思いっきり吐いた、その後ジワジワと腹部から痛みを感じて来る。

 

(オレは何をされた?腹を、腹を殴られたのか!?)

 

その答えを知る間もなくオレは後頭部に強い衝撃を受け意識を失った。




ちょっと「下級戦士」って単語使いすぎてゲシュタルト崩壊しそう。良い言い回しないかなぁ…。

リーキ
このssの主人公。

戦闘力:3800(このss開始時)

謎の下級戦士

戦闘力:7200


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不快な目覚め

最近バーダックの活躍するssが減ってる気がするので
バーダック成分を求めて書く…
まあ今回バーダックでないんですけどね。


身体を覆うひんやりとした水の感触、鼻につく薬品の臭い、馴れない嫌な感覚で目が覚める。

 

目を開けるとメディカルマシンの医療液越しに数人の人影が見える。

何人かは部下の雑務兵、そしてあと一人は…。自分の上司のパラガス大佐だった。

 

大佐はオレが目を覚ました事に気づくと呆れ果てた様な表情をこちらに向けメディカルマシンの治療完了までの時間を確認している。

 

現状の気まずさに視線を下げているとシューッと音がなり医療液が引いていく、どうやら治療が完了した様だ。

気は進まないが身体を起こし機械から出る。

治療が完了したオレにパラガス大佐が声をかける。

 

「昨晩は災難だったな、昨日の件についてだがあの後例の下級戦士はお前を散々殴った後満足したのか全てをほったらかしにして店を後にしたそうだ。

 

今は店の修繕費、飲食店内での暴動の罰として単身での惑星侵略を命じられ少し前にこの星を出ていったよ。」

 

「そ、そうでしたか。」

 

 パラガス大佐から昨晩の事件の結末までを聞かされる、だが俺にとって今そんな事はどうでもいい。

問題は上級戦士の俺が下級戦士に負けた事、そして目の前に自分よりさらに上の人間が目の前にいるという事だ。

 

何か醜態を晒せば例え上級戦士でも罰則が下る。惑星制圧の期間が遅れたり、戦線を離脱し逃亡を図ったりすると責任を取るという形で上層の者直々に手が下される。

 

しかも今回の俺の失態は下級戦士に敗北するという前代未聞の事件、酒場で気を失ってる間にゴミの様に消し炭にされなかったのが信じられない位だ。

 

だが幸いな事に相手は甘っちょろい事で有名なパラガス大佐だ、何か大きな活躍を見せれば命だけは助かるかも知れない。

 

恐怖で思考回す中、大佐の口が開く。

 

「そして残念なお知らせだが君にも罰が下っている、

内容としては所持している惑星5つの内3つの没収と半年の減給処分だ。

 

そして早速だが働いて貰うぞ、この後午後1時に惑星フッグへ向かってくれ。征服期間は1週間以内を目標としてくれ。」

 

「そ、それだけですか?」

 

「ああ私はここで失礼するよ、全くこちらはもうすぐ息子が産まれるから忙しいというのにくだらん騒ぎを起こしおって…。」

 

 あまりにも軽くあっさりとした罰につい思った事を口にこぼしてしまったが大佐はその事も意に返さず自らの子供の事を気にとめながら去って行った。

 

戦士としては王族に次ぐ優秀な人物なのは違い無いのだが本人の甘さがサイヤ人らしからぬ気味の悪い人だ。

まあ最もそのおかげで今回俺は助かったのだが…。

 

そう思いつつも俺は早速昼食をすませ惑星フッグへ向った。




このssでの現在のパラガスの戦闘能力は6700程です。
大佐という地位と老いても戦闘力4200という実力から全盛期はこの位かな?と思い設定しました。

ドラゴンボール超の映画ブロリーより惑星バンパに飛ばされた息子を心配し助けにいくといったサイヤ人らしからぬ優しさを見せるシーンを見てこのssでは優しいパパ的なキャラとしてます。

まあ後から知った小説版によると小心者で若い頃の戦闘力は4000で伸び悩んでいたそうです。

ブロリーは父のパラガスがサイヤ人にしては比較的に温厚で家族想いだったからS細胞が多くなって伝説の超サイヤ人適正が高かったとか妄想してたんですがねぇ…。


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3話 復讐の前準備

「はじけて、混ざれ!!」

 

 自分の戦闘力を手に集め、惑星の酸素と混ぜ合わせながら天高く打ち上げる。するとさっきまで薄暗くじめっとしたこの惑星がまるで真昼のように明るく照らされる。

 

 すると俺や周囲にいる俺の部下達の呼吸が荒立ち、身体がみるみる山の様に大きくなって行く。

 

『グガァァアアア!!!!』

 

「ひ、ひぃぃっ!ば、バケモノ共め。」

 

 パワーボール、惑星の酸素と己のエネルギーを混ぜわ合わせる事により1700万ゼノを超えるブルーツ波と言う特殊な光を放つ小さな月を生み出す事ができる。

 

そのブルーツ波を目から取り入れる事により我々サイヤ人は大猿の姿へ変身する事ができる、その変身による戦闘力の上昇は変身前の10倍にも及ぶ。

 

このインチキじみた技はサイヤ人の中でも上級戦士という限られた者でしか生み出す事ができない。

 

そしてこの技にも欠点がありこのパワーボールを生み出すのにかなりの体力を消耗する。

更に率いている下級戦士達はその戦闘力の上昇に耐えきれず理性を失いメチャクチャに暴れまわるため、同士討ちや惑星をキズつけてしまい売り払う時の価値を下げてしまったりする。

 

 フッグ星人の戦闘力はおおよそ400〜600程、強い者で850にのぼる者もいるがしょせんその程度。

連れてきている下級戦士の戦闘力が900〜1300、わざわざパワーボールを使わずとも容易にこの星の制圧はできただろう。

 

 だがこんなくだらない星にわざわざかけてやる時間は俺には1秒もない、早く惑星ベジータに戻りこの俺に恥をかかせた下級戦士をこの手で葬り去らなければ腹の虫が治まらない。

 

 3日後フッグ星の知的生命体は絶滅した。大勢の大猿で星をめちゃくちゃに荒らし回ったため売値は下がり上から何か言われるだろうがそんな事は俺の知った事じゃない。

 

 

 惑星ベジータへ帰還後、制圧の報告を済ませすぐにサイヤ人下級戦士管理書を開き目的の人物を探す。

下級戦士故に似たような顔つきが多く、探し出すのは気が遠くなりそうだが幸いにも奴には顔に十字の傷があり『まぐれ』ではあるが上級戦士のこの俺にダメージを与える事ができる実力を持っている。

これだけ特徴があれば最初に戦闘力と所属だけ書かれ放置された雑魚達とは違い何とか絞り込み見つけ出す事ができるだろう。

 

 それに奴は店で暴れた罰で俺の様に他の惑星の制圧に出ていっている。ポッドの発進記録も合わせれば…。

 

「いた、こいつだ!名はバーダック。

下級戦士のみで構成された少数チーム、バーダックチームのリーダー。

数々の惑星を攻め落としており下級戦士の間ではそれなりに名が通っている。

またバーダックはかなりの好戦家としても知られており様々な敵に挑んでは瀕死のボロボロになりながらも勝利を掴み、一部のサイヤ人からは最もメディカルマシンを使用したサイヤ人とも言われている。か

 

戦闘力数は820、最終測定日は…十数年前か。こいつ戦闘力の定期報告を無視してやがるな!…まあ上級戦士に管理されていない下級チームだとよくある事か。」

 

なにはともあれ目的の人物は見つけた、どうやらこいつも惑星の制圧は終わっている様だあと2日後にはこの星へ帰ってくる。

 

奴が惑星ベジータへ戻り次第すぐにこの手で殺してやる。

拳を強く握りしめた後に模擬戦室の使用予約を入れた。

 




戦闘能力
リーキ:3800→6500

下級戦士:7200→???


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戦闘民族サイヤ人

 

 戦闘室を予約して約3日、目的の人物が惑星ベジータへと帰還した。

 

 ポット発着場に着陸したポットが開かれ中から血まみれで瀕死の男の姿が露わになる。

 緊急の生命維持装置が使われ、口にはマクスがあてがわれており外から覗き込んでいるこちらへの反応は無い。

 

 下級戦士は己の戦闘力の低さを仲間との連携でカバーする、そんな下級戦士が一人で惑星を攻め落としに行ったらこうなるのは当然といえば当然か。

 奴が攻めに行った星はイゾウサ星だったか?本来ならフリーザ軍と合同で攻め落とす予定だった星だったが、まあまぐれでも俺を倒しただけの事はあるか。

 

 すぐに戦えそうに無い下級戦士を見てため息をつきながらも奴を担ぎ上げメディカルマシーンに放り込んだ。

 

 

 

 

 模擬戦闘室で待つと奴は気怠そうに現れた。人を舐めた態度に腹が立つがそれも敗北の屈辱を同時に晴らせるのであればこの際目をつむってやろう。

 

 不気味にニヤつくリーキに対し面倒そうに下級戦士が口を開く。

 

「上級戦士サマがわざわざこのオレに何の用だ?

こっちは身に覚えの無い事で面倒な事になってるって言うのによう。

 

 まあこんな場所にわざわざ呼んだって事はオレと遊んでくれるって事か?それなら丁度いい、憂さ晴らしに思いっきり暴れさせてもらうぜ。

 

 上級戦士サマならすぐにギブアップなんてことは無いだろう?」

 

「き…貴様、自分が殴った相手の事すら覚えていないのか。

まあいい、まぐれでもこの俺を倒したんだ少しは調子にのっても仕方ないだろう。

 

 だがそれもここまでだ!!エリート戦士であるこの俺を散々コケにしやがって。

 

 じっくり遊んでやろうと思ったが止めだ、すぐにぶっ殺してやる!!」

 

 手に戦闘エネルギーを溜めて一瞬で距離を詰める、下級戦士はおろか中級戦士にすら視認できない速度だ。やつの腹に大きな風穴を開けるため渾身の右ストレートをふるい…

 

 それは空を切った。

 

「何ぃ!?」

 

 下級戦士は身体を横に反らし、いとも容易くこの俺の攻撃を躱した。

あの時と違い慢心はしていたかもしれないが油断は決してしていない。

文字通り自身の最高の攻撃の一つを奴にお見舞いしたはずだった。

 

避けられたという現実を飲み込む前に動揺して隙きだらけの俺に下級戦士はカウンターのボディブロウを叩き込んで来た。

 

「かっ、は。」

 

 肺の中の空気が無理やり外に押し出される。そしてそのまま奴の立っている所から戦闘室内の壁まで殴り飛ばされた。

 

俺が壁に激突した事により壁は大きく凹み蜘蛛の巣状に亀裂が走る。

激痛によりその場から動けそうに無い、目がチカチカし意識が朦朧とする中、凄まじい突風の様な物が正面から吹き付けて来る様な感覚を感じた。

 

 奴が来る!そう肌で感じ取った俺は咄嗟に地面に向けて思いきりエネルギー弾を放ちその衝撃で上空へ逃げた。

 その勢いのままファイティングポーズを取り直し自分が元いた位置を確認する。

 

 もっとも自分の放った気弾により爆炎が立ち上がり元いた場所は煙に飲まれ目視では確認しきれなくなっていた。

 

「くそう、どうなった!」

 

 早すぎる展開についていけぬまま焦りが募る、そんな事などお構いなしに後ろから声が響いた。

 

「遅ぇ、後ろだ!!」

 

 リーキを殴り飛ばした後追撃に距離を詰めた下級戦士はリーキの咄嗟の空中移動にも難なく対処し、すぐに切り返しリーキの背後上空まで飛び上がっていた。

 そしてそのままがら空きの後頭部にスレッジハンマーを叩き込む。

 

「が…は…。」

 

 圧倒的な一撃により地面に叩きつけられた俺はそのままムシケラの様に地面に這いつくばった。

 

「く…くそう。こんな、はずは…。」

 

 激しい頭痛で身体が上手く動かせない何とか立ち上がろうとするが身体をぷるぷると震わせるだけで精一杯である。

 

 そんな俺の姿を一瞥し下級戦士は模擬戦闘室から立ち去ろうとした。

 

(これで…終わり?下級戦士ごときに、いや関係ない。

相手が何者であれ、ただただ殴られ続けて何もできないまま負けるだと。

そんな事あってたまるか。)

 

「ま、まて何処へ行く気だ!まだ戦いは終わっていないぞ、この部屋を出るのならこの俺を殺してから行け!!」

 

 その言葉を聞き下級戦士はバーダックは振り返った。

対するリーキは舞空術で無理やり身体を浮き上がらせ何とか構えをとっているが、その手足は未だに震えている。

 

 だがまだその目には闘志の炎がまだ燃えている。

 

「…。へへっ、いいだろう。そっちがまだやる気だってんならとことん闘ってやろうじゃねぇか!!」

 

 バーダックは再び構え直した、相手が構え直したのを確認し俺は思いっきり奴に突撃した。





本来バーダックにはシリアル星を攻めに行ってもらうつもりでしたが、念の為単行本を購入し確認した所ここはバーダック一人で攻め落としたらだめだと思い急遽適当な惑星を作りました。

イゾウサ星→ぞうさい→惣菜


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