大罪の力使い、ヒロアカ世界に転生 (枸凪)
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設定(登場人物)

黒牙 龍生(くろが りゅうせい) / アサルト

 

個性:全反撃、獄炎(原作通り)

 

魔神化…マンガ初期の魔神化、殲滅状態、魔神王の姿になれる。また、一部にのみ力を

出すこともできる。暴走はしない。使うと髪も黒くなる。

 

女神…エリザベスの能力。エリザベスができたことは全てできる。

 

不老不死…『永遠の生』がバンと同じ純粋な能力になった。13歳の時に発現した。

 

神器…《七つの大罪》の神器及び、魔力が使える。

 

武器:魔剣『ロストヴェイン』

 

刃が赤黒く、柄が黒紫。クナイのような小型ナイフ。7本。常に腰から下げている。

 

メリオダスの生まれ変わり。呪いを解き、聖戦を終わらせて命尽きたが、エリザベスの最後の力によって、前世の記憶・力を持って生まれ変わった。しかし、記憶は9年前、オール・フォー・ワンの襲撃後に病院で目覚めた際に戻った。容姿は前世と全く同じ。頭がすごく良く、運動神経抜群で、戦闘センスもいい。始めてのことでもすぐにこなす天才肌。メリオダスとは違い、見た目も味も完璧な料理を作る。超一流シェフと同じ腕前を持ち、どんな国の料理でも作れる。普段はひょうひょうとした性格だが、戦闘時になると十戒統率時の冷血無慈悲で、無口無愛想、無表情になる。4歳で個性が発現し、13歳の時に『不老不死』の個性が発現した。個性ゆえに親族から忌み嫌われ、両親は9年前に起きたとある事件の時に、オール・フォー・ワンによって殺された。その後、最年少でヒーロー免許を獲得し、オールマイト事務所所属のプロヒーロー『アサルト』として活躍している。しかし、ヒーローと活動している時の敵に対する容赦のなさから、ヴィランたちに『アサルトデビル』と呼ばれている。その実力は、オールマイトよりも圧倒的に上で、人気もすごい。ヒーローとして活躍している理由は、生活費を稼ぐためもあるが、両親を殺された際に期限付きの呪いをオール・フォー・ワンにかけられたため。内容は、『高校を卒業するまでに術者(オール・フォー・ワン)を倒し呪いを解かなければ、誰がなんと言おうが、本人が拒否しようが関係なく望む夢とは逆の立場になる』。オール・フォー・ワンが近づくと、呪いが暴れ回り、体が引きちぎられそうなほどの激痛が起こる。オールマイト事務所の二階に住んでいる。小学2年の時に緑谷や爆豪と同じ小学校に転入し、仲良くなった。また、緑谷と爆豪の中を取り持ち、仲良しに戻した。小学校に転入した年に両親を殺され、防ぎ込んでいたが、緑谷と爆豪によって助けられたため、2人が傷つくことをひどく嫌う。オールマイトの秘密を知っている。ヒーローコスチュームは、アニメ「七つの大罪」初期の服で、常にロストヴェインを身につけている。

 

・オールマイト / 八木 俊典(やぎ としのり)

個性:ワン・フォー・オール

黒牙の秘密を知っている。

 

・緑谷 出久(みどりや いずく) / デク

個性:ワン・フォー・オール

原作とは違い、爆豪との仲はいい。フルカウルを習得済み。黒牙の秘密を知っている。黒牙から、体術を教えてもらっている。

 

・爆豪 勝己(ばくごう かつき) / 爆心地

個性:爆破

原作とは違い、緑谷との仲はいい。黒牙から、体術を教えてもらっている。オールマイトの秘密を知っている。黒牙の秘密を知っている。

 

・1年A組

黒牙の秘密を知っている。

 

・根津(ねづ)、イレイザー・ヘッド / 相澤 消太(あいざわ しょうた)、

リカバリーガール / 修善寺 治与(しゅうぜんじ ちよ)

黒牙の秘密を知っている。

 

・他の原作キャラ




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緑谷・原点(オリジン)

ー市立折寺中学校 中3 教室ー

ガラッ

先「全員席についてるかー。ホームルーム始めるぞー」

 

先「これから進路希望の紙を配るけどー、まあ皆だいたいヒーロー科志望だよねー」

 

と言って、進路希望の紙を投げる。そして、爆豪・緑谷・黒牙を除いた生徒たちが個性を発動する。

 

勝「先生ー、コイツらと一緒にするなよ。俺たちはこんな"没個性"どもと一緒に

底辺なんかいかねぇよ」

先「そういえば、爆豪は雄英志望だったな」

 

その言葉でクラスがざわつく。

 

「マジかよ!」

「毎年倍率300超えてんだろ?」

「でも勝己なら行けんだろ」

勝「俺らは、あのオールマイトを超えて、トップヒーローになるんだ」

「オールマイトを?!」

「ガチで言ってんのか?」

勝「なあ?デク、龍生」

出「な、なんで僕にふるの?!」

龍「ああ」

出「龍君まで!?」

「緑谷はムリだろ」

「無個性だしなww」

「でも、黒牙なら行けんだろ」

「そうだな」

勝「うるせー!デクはつえーんだ!」

先「静かにしろー。週明けには進路希望表提出だからなー、ホームルーム終わりー」

 

勝「デク、龍生、帰ろーぜ」

龍「おう」

出「ご、ごめん。2人とも先に行っててくれるかな?先生に呼ばれてて…」

勝「そんなのほっとけばいいじゃねぇか」

出「で、でも」

龍「ほら、行ってこい。勝己、帰ろうぜ」

出「ゴメンね。埋め合わせは今度するから」

勝「…わかった。いつもんとこの奢れや」

出「うん」

 

龍「お前、ほんと出久に対して過保護だよな」

勝「あ?」

龍「さっきのホームルーム」

勝「俺は本当のこと言っただけだ」

龍「まあ認めなくていいけどよ、勝己はアイツの夢、否定すんなよ」

勝「当たり前だ」

 

龍「じゃあ俺こっちだから」

勝「ん。また明日」

龍「おう」

 

数十分後…

BOOM

龍「なんだ?」

 

黒牙が振り向くと、商店街の方から炎が上がっていた。

 

龍「敵か?」

 

そう言いながら走る。

 

ー商店街ー

Mt.「私二車線以上じゃなきゃムリ~~~!!」

シ「爆炎系は我の苦手とするところ………! 今回は他に譲ってやろう!」

バ「そりゃサンキューッ! 消火で手いっぱいだよっ!! 状況どーなってんの!?」

デ「ベトベトで掴めねーし! 良い個性の人質が抵抗してやがる! おかげで地雷原だ、

3重で手ェ出し辛え状況!!これ以上解決できんのは今この場に居ねぇぞ! 誰か

有利な奴が来るのを待つしかねぇ!」

 

そう言ってヒーローたちは被害を抑えることに注力している。相性の良い個性を持っているヒーローを待って。そこに、緑谷と同じタイミングで黒牙が着いた。それとほぼ同時に、オールマイトも現場に到着した。

 

出「あれは…!」

 

龍「なんだありゃ」

 

するとその時、ヘドロの隙間から、人質の顔が見えた。その顔を見た瞬間、緑谷は飛び出していた。

 

出「かっちゃん!!」

デ「君!危ないから、止まれ!」

 

龍「出久?!勝己?!」

 

その姿を見て、黒牙は走り出した。そのスピードは、だんだん早くなっていく。

 

デ「待て!」

 

黒牙が睨む。と、爆豪と緑谷の会話が黒牙の耳に入ってくる。

 

勝「デク、なんで…?」

出「足が勝手に!なんでかわかんない…けど!君が!助けを求める顔してた!」

勝「!」

 

黒牙が再び走り出す。

 

ヘ「ゴチャゴチャと…うるせぇんだよ!ガキが邪魔するな!」

 

そう言って、ヘドロが緑谷に向かって、爆豪の爆破で攻撃した。が、その寸前でヘドロの手が止まる。ヘドロの上には、黒牙が乗っていた。

 

龍「『神経切断』」

出「龍君!!」

龍「こいつの神経を10秒だけ止めた。今のうちに勝己を頼む」

出「う、うん!」

 

そして、緑谷が爆豪を助け出す。

 

龍「霊槍シャスティフォル第3形態『化石化』」

 

ヘドロが石化していく。その様子を見ながら、黒牙は呟いた。

 

龍「お前は、俺の大切なやつを傷つけた。それが、お前の罪だぜ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

デ「なぜ飛び出した!わざわざ君達が行かなくても良かっただろう!」

出「すみませ 龍「うるせぇ」龍君!」

デ「なんだと?」

龍「そう言うなら、あんたらが行けば良かっただろ」

Mt.「場所が悪くて個性が使えなかったのよ!仕方がないじゃない!」

龍「場所が悪かろうが、相性が悪かろうが、立ち向かえ。それでもヒーローか」

Mt.「はぁ?あんたねぇ、ヒーローの仕事がどんなに危険なのか、知ってるの?」

龍「ああ、知ってるとも。俺だって、ヒーローだ」

Mt.「あんた何言ってんの⁈」

シ「やめろMt.レディ。その子は確かにプロヒーローだ。なぁ、アサルト」

龍「そうだ」

Mt.「アンタがあの…?」

龍「俺はこいつを責める気はない。それでいいだろ」

デ「…今回は確かに我々も悪かった。すまなかったな、少年」

出「あ、頭をあげてください!結果的には、僕もかっちゃんも無事だったんですから」

デ「ありがとう」

 

帰り道…

勝「デク、龍生、さっきは助けてくれて、ありがとな」

龍「礼を言われるようなことじゃねぇよ」

出「かっちゃんが無事で良かった」

 

たわいもない会話をしながら帰っていると、曲がり角から、オールマイトが出てきた。

 

オ「唐突に私がきた!」

出「オールマイト!?」

龍「さっきまで、マスコミに囲まれてたのに」

オ「HAHAHA抜け出すことぐらい、造作もないkガフッ」ボンッ

出「わぁぁぁ、落ち着いてください、オールマイト!」

龍「無茶すんな」

オ「す、すまない」

勝「なあ、デク、龍生。なんで、オールマイトが萎んでんだ?」

出「あ」

オ「え?」

龍「あちゃー」

勝「おい」

龍「オールマイト、こいつは爆豪 勝己。俺たちの幼馴染だ」

勝「…よろしく」

出「ど、どうしよう」オロオロ

龍「こいつは信頼できるぜ」

オ「そうだな。見られてしまったものはしょうがない。爆豪少年にも説明しよう」

勝「は?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・説明中・・・・・・・・・・・・・・・・・・

勝「なるほど…」

オ「このことは、他言で頼むよ」

勝「あたりまえだ」

オ「助かる」

龍「ところでオールマイトはなんでここに?」

オ「あ…」

出「忘れてたんですか?」

オ「すまん…気を取り直して、私は、緑谷少年と黒牙少年に礼と、緑谷少年に訂正と提案を

しにきたんだ」

龍「礼?」

オ「まず、緑谷少年、黒牙少年。君たちがいなければ、口先だけのニセ筋となるところ

だった!! ありがとう!!」

出「そんな、お礼なんて!」

龍「出久、受け取っとけ」

出「でも、仕事の邪魔しちゃって。僕のせいで、ヘドロが逃げちゃったのに…」

オ「そうさ。あの場の誰でもない。小心者で”無個性”の君だったから!私は動かされた。

プロヒーローは学生時から逸話を残している………彼らの多くがこう言う!”考える

より体が先に動いていた”と!君も、そうだったのだろう?」

出「……っ!」

オ「君はヒーローになれる」

出「―――っあぁ………ッ!!」

勝「デク…」

龍「出久…よかったな」

オ「そして、君なら私の力、受け継ぐに値する!!」

出「………へ?」

 

オールマイトが”私の力、受け継ぐに値する”と言った途端、緑谷が情けない声を出し、爆豪が目を見開いた。黒牙は、いつも通りで、動揺していなかった。

 

オ「君たち、なんて顔しているんだ!? 『提案』だよ! 本番は此処からさ!」

出「はい?」

 

オールマイトの個性は、週刊誌などで幾度も『怪力』だ、『ブースト』だ、と囁かれてきた。決まってインタビューでは常に爆笑ジョークで茶を濁し、オールマイトは自分の個性の話を煙に巻いてきた。本人曰く、平和の象徴は、ナチュラルボーンヒーローでなければならないかららしい。

 

オ「私の個性の話だ」

 

オールマイトの個性は、聖火の如く受け継がれてきたもの。チカラを譲渡するチカラ。それがオールマイトの個性。一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い、次へ。そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた、力の結晶。冠されたチカラの名は、『ワン・フォー・オール』。今ではあまり聞かなくなった、チームワークが大切だというスローガンの一部の『一人はみんなの為に』という意味の言葉。オールマイトが言うにはには、元々後継は探しており、緑谷になら渡して良いと思ったらしい。

 

オ「受け取ってくれるかい?」

出「…っ、よろしく、お願いします!」

勝「よかったな、デク」

出「うん!」

オ「さ、この話はここまでにして!」

出「大雑把ですね」

オ「それで、個性の引き渡しなんだけど、明日8時に海浜公園に集合だ」

出「?」

オ「では!」ボンッ

 

いったん言葉を切ったオールマイトは、マッスルフォームになった。

 

オ「また明日!」

出「はい!」




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雄英高校入学編
一話 入試試験


オールマイトとの出会い、そして、緑谷の個性の引き継ぎと、色々あったヘドロ事件から10ヶ月後、黒牙たちは、雄英高校ヒーロー科・入試試験会場へと向かっていた。

 

龍「おー、ここか」

出「き、緊張する…」

勝「さっさと行こうぜ、デク、龍生」

龍「おぅ」

出「うん…」

 

龍「ここにいるの全員受験すんのか?」

出「そうだよ」

勝「まあ、俺らなら受かるだろ」

龍「ん、そうだな」

出「2人ともなんでそんなに自信満々なの?」

龍「逆にお前はなんでそんなに緊張してんだ?」

出「緊張しないほうがおかしいよ!!」

龍「筆記は置いといて、実技は俺と八木さんが教えた通りにすれば、大丈夫だろ」

出「で、でも…(>_<)」

勝「あー!ウゼェ!シャキッとしろや!」

出「ご、ごめん」

龍「早くしねーと始まんじゃねぇのか?」

出「ホントだ!急ごう」

勝「おう!」

 

ー色々飛ばして実技試験 会場ー

龍「さーて、いっちょやるか」

プ『ハイ、スタート!!』

龍「おっ」

 

黒牙は、合図と同時に駆け出したが、他の受験生たちはポケッとしていた。

 

プ『オイオイ、実践にカウントなんてないぜ?敵はヒーローのことなんて待ってて

くれねぇからな!』

龍「『魔神化』」

 

黒牙は素手で仮想ヴィランを倒していった。それはもう沢山。もう残ってないんじゃないかってくらい沢山。

 

龍「そろそろいいかな?」

 

ー雄英教師陣のいる部屋ー

「今年は豊作ですね」

「ああ、特に緑谷 出久・爆豪 勝己。この2人が抜きん出ている」

「この2人は同じ中学だそうではないか」

「爆豪君の個性は”爆破”、緑谷君の個性は”超パワー”だそうだ」

「どれも強力そうだな」

「それに、怪我人を放っておかない」

「この2人は合格だな」

「そうだな」

「それに流石アサルトだ。すばらしい」

「たしかに」

「そろそろ終わりだ。アレを出すか」

「ああ」

 

ー実技試験 会場ー

ドシン ドシン ドシン

龍「ん?」

「ゼ、0ポイントの仮想ヴィランだー!」

「にげろー!!」

龍「あれか」

「何してんだお前!逃げねえのか!?」

龍「ああ」

「どうなっても知らねーからな!」

龍「心配ご無用。『魔神化』タイプ『魔神王』」

「え?」

龍「攻撃 左右ともに10」

 

『魔神王』の姿になった黒牙の両腕(?)から獄炎が現れ、敵を消し去る。周りの受験生たちが唖然とした。なにせ、一瞬で0ポイントヴィランが完璧に消え去ったのだから。

ドンッ

 

「な、なんだ?」

「おい!あそこ見ろ!」

 

ここからはなれた受験会場で、大きな炎が上がり、さらに離れた会場には、巨大な風圧が発生していた。

 

「ヤベェ!」

「他のところでも、アレ倒したやついるのかよ!」

龍「あれは…勝己と出久の……」

プ『しゅーーりょーーーう!』

 

ー雄英教師陣のいる部屋ー

「うん、やっぱりこの2人はすごい!過去にもコイツに立ち向かった奴はいたけど、

ここまで完璧に粉々にしたのは、彼らが初めてだ!」

「爆豪君の個性も強い上に派手だ。緑谷君の個性はオールマイトに似ているな。使い方も

素晴らしい」

 

ー校門前ー

龍「待たせたか?」

出「ううん、僕も今来たところ」

龍「勝己は?」

出「まだ来てないみたい」

龍「そうか」

出「そういえば」

龍「ん?」

出「試験の時に上がってた黒紫の炎って、龍君のでしょ?」

龍「ああ、出久も倒してただろ。風圧が発生してた」

出「!よくわかったね」

龍「まーな」

勝「ワリィ、遅くなった」

龍「気にすんな」

 

出「かっちゃんもあのデカイやつ倒した?」

勝「デクと龍生も倒しただろ?」

出「うん」

龍「ああ」

出「思ってたよりも、簡単だった。スタートも龍君とかっちゃんのおかげで遅れずに

済んだし」

龍「そりゃよかった」

勝「たしかに…拍子抜けしたぜ」

 

勝「明日も特訓すんだろ?」

龍「どうする?出久」

出「やりたい」

勝「そんじゃ、明日9時集合な」

龍「りょーかい」

勝「じゃ、俺こっちだから」

龍「俺もこっちだし」

出「また明日ね」

勝「おう」



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2話 合格通知・個性把握テスト

試験から数日後…

ーオールマイト事務所 2階ー

ピロン

龍「ん?」

 

家でのんびりしていた黒牙のケータイにメールが届く。緑谷と爆豪からの合格通知だった。

 

龍「よかった。2人とも受かってて」

 

黒牙も2人に返信し、寝始める。

 

数日後…

ー雄英前ー

龍「あ」

出「龍君!」

 

雄英の校門前で黒牙と緑谷が会う。そのまま一緒に教室へ向かう途中、爆豪とも会い、教室へ向かう。

 

ー1−A前ー

勝「でけーな」

出「おっきい…」

ガラッ

 

黒牙が扉を開けた。そこには、メガネをかけた人がいた。

 

出「あ、君はあの時の」

?「ぼ、俺は飯田 天哉だ!」

出「僕は緑谷 出久。こっちは幼馴染で親友の爆豪 勝己君と、黒牙 龍生君」

天「緑谷君に爆豪君、黒牙君だな!よろしく!」

出「うん!」

龍「おー」

 

緑谷たちが教室についてからしばらくたった。すると、1人の少女が緑谷に声をかけた。

 

?「そのもじゃもじゃ頭は、あの時の!」

出「え?」

?「同じクラスだったんだ〜。私は麗日 お茶子。よろしくね?」

出「ぼ、僕は緑谷 出久。よろしく、麗日さん」

お「後ろの人たちも、よろしく!」

龍「俺は黒牙 龍生。よろしくな、麗日」

勝「爆豪 勝己だ」

天「俺は聡明中出身の飯田 天哉だ。よろしく、麗日君」

?「仲良しこよしがしたいなら、他所の学校へ行け」

出・勝・天・お「「「「?!」」」」

龍「あ」

 

下から声がした途端、緑谷たちは驚き、黒牙は、何かに気付いたように声を漏らした。

 

?「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。君たちは合理性に欠けるね。俺はこのクラスの

担任の相澤 消太。今すぐこれ着てグラウンドに集合だ」

龍以外『はぁ?!』

出「(教師…ということはこの人もプロヒーローなのかな……?)」

 

それを聞いた緑谷は、雄英の教師ということで、プロヒーローだろうと考えた。

 

ーグラウンドー

相「来たか」

天「これから何をするのでしょうか?」

相「個性把握テストだ」

龍以外『個性把握テスト?!』

お「入学式は!?ガイダンスは!?」

相「そんなことしてる暇なんかないよ」

龍「ふーん」

相「ウチは自由が売り文句だ。それは俺たち教師にも当てはまる」

お「そんな!?」

相「個性禁止の体力テスト、君たちもやっただろ。あれを個性を使ってやってもらい、

自分の個性の限界を知ってもらう。まず、入学主席の黒牙」

龍「ん?」

 

緑谷と爆豪は事前に聞いていたため、驚かなかったが、飯田・麗日含む、他の生徒たちは、「あんな小さい子が入学主席⁈」などといった風に、驚いていた。

 

相「中学の時のボール投げ、いくつだった?」

龍「ん〜、出久、勝己、覚えてるか?」

出「たしか、100mぐらいじゃなかったっけ?」

勝「ああ、素の力でアレだもんな」

龍「だとよ」

?「100!?」

?「素の力で100とか、ヤバすぎんだろ!」

相「じゃあ、個性を使って投げてみろ。円の中からな」

龍「おー」

 

そう言われ、黒牙は、円の中から本気で投げた。個性を使っていない、素手の本気で。そして、しばらくしてから、相澤の手元にある機器から、ピピッという音がした。

 

龍「おー、飛んだ飛んだ」

相「…エラー」

?「エラー?!」

勝「あたりめーだ!」

出「龍君、すごいもんねぇ〜」

相「黒牙、お前、個性使わなかっただろ」

龍「ああ。やっぱアンタにはすぐバレるか」

相「俺の個性を使っても消えなかったからな」

出「(個性を消す個性……)そうか!」

龍「どした?出久」

出「イレイザーヘッドだよ!」

勝「は?」

出「相澤先生は、”抹消ヒーロー”イレイザーヘッドだよ!」

?「イレイザーヘッド?」

?「聞いたことないヒーローだ」

?「マスコミ嫌いなんじゃね?」

相「ああ、そうだ。よくわかったな」

出「だって、先生さっき、”俺の個性を使っても消えなかった”って言ってたから」

勝「そうか、イレイザーヘッドの個性は、見た人の個性を消す”抹消”だもんな」

龍「それだけでよくわかったな」

出「アハハ」

相「まあ、お前らもあまり俺に個性使わさせるなよ。俺はドライアイなんだ」

全『(スゴイ個性なのにもったいない!?)』

 

全員の心が一致した時だった。

 

?「個性ありの体力テスト…楽しそう!」

相「楽しそう、か。よし、トータル成績が最下位だった奴は除籍だ」

天「除籍?!」

?「入学初日なのに理不尽です!」

相「理不尽というが、世の中さまざまな災害やヴィランの暴走といった唐突な事件が

発生する。その度に迅速に対応できないと世の中やっていけねーぞ? それも

踏まえて覆していくのがヒーローってもんだろ?放課後に遊びたいと思っているなら

諦めろ。これから3年間、俺達教師陣はお前たちに様々な苦難を与えて行く。それを

乗り越えてこそヒーローになれるってもんだ」

?「そんなっ?!」

相「『プルスウルトラ』の精神で乗り越えろ。それじゃあ、始めるぞ」

 

*ここから下は、黒牙の記録だけ書いていきます。

50m走…

0.1秒(1位)

?「はやっ」

?「誰か今の見えたか?」

?「見えねぇだろ!」

天「負けた……」

勝「やっぱスゲーな!龍生は!」

出「かっちゃんも早かったと思うよ?」

 

立ち幅跳び…

測定不能(1位)

?「どこまで飛べんだよ!?」

?「向こうのフェンスのところにいるぞ!」

お「スゴイ…」

 

握力…

測定不能(1位)

?「当たり前のように目盛りを振り切りやがった」

?「万力を創造したのに、負けましたわ…」

 

反復横跳び…

測定不能(1位)

?「なんかもう、当たり前のような記録になってきた……」

勝「俺も、龍生に負けてられねー!」

 

上体起こし…

相「おい、黒牙」

龍「なんだ?」

相「お前、これやらなくていい。支えられる奴がいないから」

龍「ほーい」

測定不能(1位)

 

長座体前屈…

80cm(5位)

?「逆にスゲー…」

出「龍君、体柔らかいもんねぇ」

 

持久走…

1位

勝「ハァハァ…」

出「やっ、ぱ、龍君は、はやい、な。ハァハァ」

龍「お前ら、疲れすぎだろ」

?「いや、お前が疲れなさすぎなんだよ」

龍「?そうなのか?」

?「そうだよ!」

 

ボール投げ…

エラー(1位)

?「個性使ったのに、勝てなかった…」

出「やっぱり龍君はスゴイや」

勝「俺たちも負けてらんねーな!」

出「うん!」

 

相「順位はこの通りだ」

 

と言い、手元の機器で、結果を映した。黒牙は他を寄せ付けずに、1位。爆豪は4位で、緑谷は8位だった。

 

相「ちなみに除籍はウソだ」

龍以外『はぁ?!』

相「お前らの全力を引き出すための、合理的虚偽ってやつだ」

?「そのくらい、すぐわかりますわ」

相「そんじゃ、着替えて教室戻れ」

 

ー男子更衣室ー

勝「龍生は、やっぱスゲェな!」

出「うん、やっぱり龍君はすごい!」

龍「ん?そうなのか?」

?「いや、あれですごくないわけないだろ!」

龍「誰だ?お前」

?「俺は、瀬呂 範太。個性は”テープ”!」

?「俺は、切島 鋭児郎だ!個性は”硬化”!よろしくな!」

 

切島と瀬呂が黒牙に自己紹介すると、他の男子たちも自己紹介をし始めた。

 

龍「これからよろしくな、みんな」

出「よろしくね」

勝「ふんっ」

鋭「ああ、よろしく!」

 

放課後…

お「おーい、みんな、駅まで?」

出「うん、そうだよ」

お「一緒に帰ろ!デクくん、黒牙君、飯田君、爆豪君!」

天「デク?」

出「うん、かっちゃんが僕につけたあだ名だよ」

天「木偶の坊と言う意味ではないか!いいのかい?緑谷君」

出「うん。僕の『デク』ってあだ名は、”頑張れ”って意味なんだ!ね、龍君」

龍「ん?ああ」

天「うむ、ならいいが」

勝「早くしねーと置いてくぞ!」

出「あ、まってよ、かっちゃん!」

龍「早く行こうぜ」

お「うん!」



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3話 戦闘訓練

ー雄英高校 1-A 教室ー

ヒーロー科があるとはいえ、雄英も高校。普通の授業ももちろんある。午前中は、授業だった。英語の担当が、プレゼントマイクだったのには、全員が驚いていた。そして、午後からは、みんなのお待ちかね、ヒーロー基礎学があるため、みんなが楽しみにしていた。

 

午後…

?「わーたーしーがー、普通にドアから来た!!」

全『オールマイト!』

鋭「銀時代のコスチュームだ!」

実「画風がぜんぜん違う!」

出「…」。゚(゚´ω`゚)゚。

龍「(コイツ、オールマイトにあうたんびに、泣いてる気がする)」

オ「今日の授業はコレ!」

 

といって、オールマイトは”BATTLE”と書かれたカードを見せた。

 

オ「戦闘訓練!」

勝「戦闘!」

龍「へぇ、楽しそうじゃねぇか」

出「(かっちゃんと龍君がものすごく生き生きしてる…)」

オ「そのために、入学時に申請してもらったコスチュームを着てもらう」ピッ

 

すると、壁から、コスチュームの入ったケースが出てきた。

 

オ「それに着替えたら、グラウンドβに集合だ!来いよ、有精卵ども!!」

 

そういって、オールマイトとは急いで教室から出て行った。

 

ーグラウンドβー

出「龍君はやっぱりそのコスチュームなんだね」

龍「まーな」

お「おーい、デク君!」

出「麗日さ、ん…」

お「ちゃんと要望書いとけばよかったよ。ピチピチや//」

出「に、似合ってるよ。麗日さん////」

お「ありがとう。デク君も似合ってるよ」

オ「みんな揃ったか。じゃあ、説明するよ」

 

その内容は、屋内での対人戦闘訓練。ヒーロー組とヴィラン組(核を持っている)に二人ずつ分かれて2vs2の屋内戦をするというものだ。もちろん基礎学なのだから基礎訓練も必要だろうが、それも踏まえて全員の戦い方を学んでおこうというものも含まれている。

 

梅「勝敗のシステムはどうなるのかしら?」

勝「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」

三「また除籍とかないですよね?」

天「分かれるというのはどういう分かれ方なのですか!?」

優「このマントかっこよくない?」

オ「んんん~~聖徳太子ぃぃぃ!!!???」

 

次から次へと質問をされる新人教師・オールマイトはカンペを見ながら、ヒーロー組は、敵を専用の捕獲テープで捕まえ、核に触れれば勝利、ヴィラン組は、ヒーロー全員を捕獲テープで捕まえるか、制限時間(15分)の間、核を守りきれば勝利だという説明をしていった。

 

オ「チーム分けは、くじ引きで行う」

天「くじ引きは雑ではありませんか?!」

出「ヒーローになったら、いつどのヒーローとタッグを組むかわからないし、雑では

ないんじゃないかな?」

天「む、そうか。それは失礼しました!」

オ「納得したならそれでいいさ」

 

そして、チーム分けの結果、以下の結果となった。

(A)麗日お茶子、緑谷 出久

(B)障子 目蔵、轟 焦凍

(C)峰田 実、八百万 百

(D)飯田 天哉、爆豪 勝己

(E)青山 優雅、芦戸 三奈

(F)口田 甲司、砂藤 力道

(G)上鳴 電気、耳郎 響香

(H)蛙吹 梅雨、常闇 踏陰

(I)尾白 猿夫、葉隠 透

(J)切島 鋭児郎、瀬呂 範太

 

出「一緒のチームだね、麗日さん」

お「がんばろうね」

出「うん!」

勝「飯田か」

天「よろしくな、爆豪君」

勝「足を引っ張るなよ」

天「もちろんだ」

鋭「オールマイト!黒牙はどうすんだ?」

オ「彼には私と戦ってもらう」

百「それでは、先生が勝つのでは?」

梅「ハンデはつけるのかしら?」

オ「ハンデをつけるとしたら、私ではなく、黒牙少年にだ」

透「オールマイトよりも黒牙君の方が強いの?」

オ「おそらく、プロヒーロー全員で挑んでも、彼には勝てないだろうね」

電「スゲーな!黒牙」

龍「サンキュ」

オ「それでは、1戦目の対戦チームを発表する!ヒーロー組は…(A)チーム!対する

ヴィラン組は…(D)チーム!」

出「!かっちゃんと…」

お「飯田君だ」

勝「デクと久しぶりに本気で殺れる…」

天「爆豪君、顔がすごいことになってるぞ!」

オ「ヴィラン組は先に建物の中へ入ってもらい、核を隠したり、トラップを仕掛けたり

する。ヒーロー組は、建物の見取り図を渡しておくから、それを覚えて、5分後に

訓練開始だ!」

 

5分後…

オ『それでは、開始!!』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オ『ヒーローチーム、WIN!!!』

勝「チッ、負けた」

お「やったね、デク君!」

出「うん!(⌒▽⌒)(かっちゃんに勝てた…!)」

 

ーモニター室ー

オ「さて、今回のベストは誰だと思う?」

 

オールマイトがわざとらしく聞く。

 

百「はい」

オ「八百万少女!」

百「緑谷さんだと思います!」

オ「ほう。なぜだい?」

百「はい。緑谷さんは、事前に爆豪さんや飯田さんの行動パターンを予測し、作戦を立て、

公共物への被害を最小限に抑えていたからです。飯田さんは、ヴィランに成り切って

いたのはいいと思いますが、油断していたところがあったこと、麗日さんは、核を少し

雑に扱っていたこと、爆豪さんは、飯田さんと協力していたのはいいと思いますが、

緑谷さんに対し、私怨丸出しだったことが、減点ポイントだと思います。」

オ「あ、ありがとう(思ったよりも言われた…)」

出「楽しかったね」

勝「ああ。今度は龍生と殺りてぇな」

出「はは」

オ「さて、次は―――」

 

そして、黒牙を除く、全てのチームが終わった。

 

オ「最後は、私と黒牙少年だ」

龍「やっとか」

出「龍君、ガンバレ」

龍「おう」

勝「まぁ、龍生なら大丈夫だろ」

オ「私がヴィランで、黒牙少年がヒーローだ」

龍「ほーい」

 

ピーー

龍「よし、行くか」

 

言うが早く、黒牙は3階ぐらいの部屋に窓から入っていった。そこでは、オールマイトが待ち構えていた。

 

オ「やはり、いきなり来たか」

龍「さっさと終わらそうぜ」

オ「その意見には賛成だ!DETROIT SMASH!」

龍「わっ、あぶね」

オ「その割には余裕バリバリだね」

龍「そんなことねぇよ」

 

本人はそういっているが、どう見ても余裕しかないみたいだ。そして、オールマイトは何度も攻撃を繰り出すが、全て避けられてしまった。

 

ーモニター室ー

鋭「すげぇな!黒牙」

電「オールマイトの攻撃、全部避けてやがる」

梅「これを見てたら、”プロヒーロー全員で挑んでも、彼には勝てないだろう”という言葉も

納得できるわね」

勝「(やっぱり龍生はすげぇ。俺もはやく追い付かねぇと…)」

龍『俺もあんたに敬意を表して、俺もアレを使うか』

オ『それはありがたい』

電「アレってなんだ?」

龍『 『魔神化』タイプ『殲滅状態』 』

 

すると、黒い煙のようなものが黒牙から吹き出し、髪と両目が黒くなり、額に、黒い太陽な文様が浮き出て、体が闇で覆われた。

 

オ『…やはり君に勝てる気がしないよ。それを使われたなら、なおさら』

龍『何言ってんだ。コレ使ってもあんたに致命傷、与えられねぇのに』

オ『それは君が手加減してるからじゃ…』ボソッ

龍『なんか言ったか?』

オ『いや、何も』

実「なんだあれ!?」

透「あそこからだいぶ離れてるのに、すごい威圧感…」

龍『ハァァ!!』

オ『っ!危ない危ない』

 

黒牙がオールマイトに攻撃する。蹴る。殴る。それを繰り返す。

 

龍『チッ』

オ『こらこら。舌打ちはいけないよ』

龍『うっせ』

 

と、黒牙の体から闇が離れ、元に戻る。

 

龍『 『神器』霊槍シャスティフォル第5形態『増殖』 』

 

黒牙がシャスティフォルを出し、刃先に捕獲テープを刺す。

 

龍『 『囚われの檻』 』

オ『しまった!』

 

刃先に捕獲テープをつけた『増殖』がオールマイトを囲むようにして壁に刺さる。

 

龍『 『絶対強制解除』 』

 

『増殖』を消し、軽く走って、捕獲テープの先を掴み、オールマイトを捕まえる。

 

龍『俺の勝ちだ』

ピーー

 

オ「今回は、けが人が出ずに無事終わってよかったよ。それじゃあ、着替えて教室

戻ってね」

全『はーい』

実「なんか、相澤先生の後で普通の授業は…」

電「変な感じだな」

オ「(相澤君…君、どんな授業したの…)」



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USJ襲撃事件編
4話 USJ事件(前編)


戦闘訓練の翌日、相澤が、「クラス委員長を決めてもらう」と言った。上鳴や芦戸などがやりたいと立候補したが、飯田の提案により、より多くの票を集めた人が、委員長をすることになった。投票の結果、5票で緑谷が委員長に、2票で八百万が副委員長になった。そして昼、マスコミたちが雄英内に侵入したり、飯田が非常口のマークになったりと、人騒動あったが、無事終了した。放課後、昼に飯田と一緒にいた緑谷が、委員長は飯田の方がいいと言ったことで、委員長は、緑谷から飯田になった。

 

翌日 午後…

相「今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう一人が見ることになった」

出「(やっぱり昨日の件が関係してるのかな…?)」

相「今回は、災害水害なんでもござれの人命救助訓練だ」

電「救助かー、俺苦手なんだよなぁ」

三「私もー」

 

上鳴と芦戸の二人がそう話していた。なにせ2人の個性は限定的なものなので余計に拍車をかけている。

 

梅「ケロ。私は水難の場所が得意だわ」

勝「広けりゃいい」

出「そうだね。僕もかっちゃんも狭いとこじゃ個性使えないもん」

相「それと、黒牙は遅れてくるそうだ」

 

数分後…

各自コスチュームに着替えて移動するバスへと向かっていく。

 

天「バスの席順でスムーズにいくように番号順で二列で並ぶようにしよう!」

 

飯田がさっそく委員長の仕事をしていたので任せた緑谷は満足げだった。だけど、中に入ってみれば縦に席が分かれているものではない方の構造であったために、

 

天「こういうタイプだったか、くそー!!」

 

飯田、男の悔し叫びである。

 

ーUSJ内ー

電「すっげーー!!USJかよ!?」

 

USJ内には、スペースヒーロー13号がいた。

 

13「ここは水難、土砂災害、火事その他の場所を再現した演習場……名付けて『ウソの

災害や事故ルーム』(USJ)です」

A『USJだったー!』

 

あまりにも安直なネーミングにほとんどの者が叫んでいた。だけどみんなの関心は13号に集まっていた。特に緑谷は当然として麗日はファンらしく、

 

出「スペースヒーロー13号だ!災害救助で目覚ましい活躍をしてる紳士的なヒーロー!」

お「わー、私の好きな13号!」

 

各自でテンションが上がる中、相澤はあることを尋ねた。

 

相「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが……」

13「それがですね、先輩。通勤時間に制限ギリギリまで活動したみたいで……」

 

13号はそう言いながら指を三本立てる。

 

13「仮眠室で休んでいます」

相「不合理の極みだな、オイ……仕方ない、始めるか」

 

それで13号がみんなの前に立って話をし出す。

 

13「えー、始める前にお小言を1つ2つ……3つ……4つ……」

全『(増える………)』

 

いくつ話すつもりだろうと思う一同だった。

 

13「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は“ブラックホール”。どんなものでも

吸い込んでチリにしてしまいます」

お「この個性でどんな災害からでも人を救いあげているんですよね!」

13「ええ。ですが、しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう個性がいる

でしょう?」

 

それで緑谷や爆豪を含む数人が頷く。

 

13「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っている

ようには見えます。しかし一歩間違えば容易に人を殺せる”いきすぎた個性“を個々が

持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めて

いる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを

体験したかと思います。この授業では心機一転!人命のために個性をどう

活用するのかを学んでいきましょう!君たちの力は人を傷つけるためにあるのでは

ない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいね」

 

出「(…13号、カッコイイ!!)」

 

緑谷は素直にそう感じた。それは他の者も同様だ。13号の言葉はとても世の中を表している現実だからである。

 

13「以上!ご清聴ありがとうございました」

 

それで起こる拍手喝采。そこで相澤は訓練を始めようとしたのだが、嫌な気配を感じ中央の広場を見る。そこにはなにやら黒い霧のようなものが出現してそこからたくさんの人が出てきたのだ。これも余興の一つか?とあまり状況を理解していないものもいるが、相澤はみんなに警告した。

 

相「一塊になって動くな!あれは……敵だ!!」

 

こうして悪夢の時間が始まったのである……



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5話 USJ事件(中編)

出「これはやっぱり昨日の一件が原因だね」

 

緑谷の発言に爆豪と轟が反応して答える。

 

焦「そうだろうな。センサーも反応しねぇって事はそれだけ用意周到に事を運んで

いたんだろうな。あっちにはそういう個性持ちがいるってとこか」

勝「加えて悪い感じに校舎と隔離されてやがる。さらに俺達クラスが入る時間の襲撃…生徒か

教師の誰かがリークしたんだろうな」

出「頭の回転が速くて助かるよ。さすがだね。とにかく奴らはバカだがアホじゃない。

なんらかの目的があって然るべきだね」

 

そこに相澤が13号に生徒の避難と上鳴に個性での通信を試みるように頼んだ後に、1人で戦いに行くという。それに緑谷は「イレイザーヘッドの戦闘方法じゃ無茶だ!」と言うが、

 

相「安心しろ……なにも死にに行くわけじゃねぇ。それに一芸だけじゃヒーローは

やっていけない」

 

そして、相澤はヴィランの中へ飛び込んでいった。

 

出「相澤先生…」

 

緑谷は心配をしながらも13号の誘導で避難を開始し始めるのだが、

 

?「させませんよ……」

 

緑谷たちの前に黒い霧のヴィランが突如として出現し、

 

?「初めまして。我々は《ヴィラン連合》と名乗っています。僭越ながら本日は

ヒーローの巣窟である雄英高校に入らせていただきました。目的は、平和の象徴

オールマイトを亡き者にするために参りました」

全『ッ!?』

 

オールマイトを殺すというヴィランに緑谷たちに緊張が走る。

 

?「ここにはオールマイトがいるという情報でしたが、なにか事情が変わったの

でしょうか……?まぁ構いません……私の目的は……」

 

ヴィランがなにかを言う前に爆豪と切島が先制攻撃を仕掛けていた。

 

勝「おらぁ!死ね!!」

鋭「おおおおおーーー!!」

出「かっちゃん!切島君!」

 

二人の攻撃は直撃した……ように見えて霧の様な体には一切ダメージが通っていなかった。

 

?「危ない危ない…生徒とはいえ優秀な金の卵である事には変わりありません。

ですので…」

13「みんな、下がって!」

 

13号が何かをしようとする前に黒い霧が出久たちの周囲を覆い尽くした。

 

?「散らして嬲り殺します……!」

 

黒い霧に包まれたもの、なんとか回避できたものはいたが、包まれた緑谷たちは一瞬意識が途絶える。

 

ー中央部ー

「射撃隊!行くぞ!」

「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったのか?!アイツらは誰だ!」

「知らねぇが、1人で正面から突っ込んで来るとは…」

『大間抜け!!』

 

射撃系の個性を発動しようとするが個性は消されているため発動しない。そのことに呆けている敵の隙を相澤は見逃さず装備している包帯を2人に巻き付け頭同士をぶつける。

 

「馬鹿野郎!あいつは見ただけで個性を消すっつぅイレイザーヘッドだ!」

「消すぅ~~?へっへっへ、俺らみてぇな異形型も消してくれるのか?」

 

4本腕の個性を持つ敵が相澤を狙うがそれよりも前に彼のパンチが敵に入った。

 

相「それは無理だ。発動系や変化形に限る。が、お前らみたいなやつらのうまみは

統計的に近接格闘で発揮されることが多い」

 

殴り飛ばした敵の脚に包帯を巻きつけ後ろから来る敵の個性を身を低くして回避するとそのままぶつけた。

 

相「だからその辺の対策はしている!」

?「肉弾戦でも強く、その上ゴーグルで目線を隠されていて誰を消しているからわからない。

集団戦においてそのせいで連携が後れを取るな…なるほど。嫌だなぁ、プロヒーロー。

有象無象じゃ歯が立たない」

 

全身手で覆われている男が冷静に分析をする。

 

?「脳無、イレイザーヘッドを殺れ」

 

手だらけの奴が脳みそむき出しの脳無に命令する。そのスピードに追いつけず、相澤の腕がおられた。すると、手だらけの男のそばに、黒い靄で覆われた敵が戻ってきた。

 

?「死柄木弔」

弔「黒霧、13号はやったのか」

黒「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして……1名逃げられました」

弔「…………は?」

 

生徒が1人逃げたと、そんな報告を黒霧が死柄木にする。

 

弔「はーー……黒霧お前、ワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ……あーあ……」

 

死柄木が、首をガリガリと掻きながらぼやいている。どう見ても子どもじみた様子は、今回の犯人像とはどうも結び付かない。ここまで大がかりな襲撃を、こんな奴が考えられるのか?そんな疑問が相澤の頭に浮かび始め、嫌な予感がし始める。

 

弔「流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。今回はゲームオーバーだ……帰ろっか」

 

オールマイトを殺すと言っておきながら、プロが来ると知れば躊躇無く撤退を決める。これでは雄英の危機意識が上がるだけで、相手にとって今回の襲撃の意味が殆ど無くなってしまう。ゲームオーバーとも言っていたが、まさか遊び感覚でやっているとでも言うのか。相澤の予感が膨れ上がる。

 

弔「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を」

 

しかし、死柄木の続いた台詞を聞いて、相澤の予感が確信に変わった。なぜなら、その先には緑谷・蛙吹・峰田がいたから。

 

弔「少しでもへし折って帰ろうか」

 

死柄木の手が蛙吹の顔に触れるが、死柄木は違和感を感じた。相澤の個性が発動していた。すると、入り口のドアが吹っ飛んだ。そこには、笑っていないオールマイトと黒牙がいた。黒牙は、無表情だがその目は怒りに満ちていた。

 

オ「もう大丈夫。私が来た!!」

A『オールマイト!』

実・梅「「黒牙!/黒牙ちゃん!」」

弔「あーー、コンティニューだ」

出「(オールマイト…笑ってない)」



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6話 USJ事件(後編)

オールマイトside

 

オ「(まったく己に腹が立つ…!子どもらがどれだけ怖かったか…後輩らがどれだけ

頑張ったか…!しかし…だからこそ胸を張って言わねばならんのだ!!)」

 

USJの真ん中に、相澤君がいた。脳みそ丸出しのやつのそばに、今回の主犯格だと思われるヴィランがいる。他の生徒がいないところを見ると、おそらくここの中のどこかにいるだろう。

 

オ「もう大丈夫。なぜって?私が来た!!」

 

オールマイトside out

 

オールマイトと黒牙が中心部へ飛んでくる。黒牙の目つきが、緑谷を見て、少しだけ柔らかになる。

 

出「龍君」

龍「出久…勝己は?」

出「この中のどこかに。みんなバラバラにされた」

龍「その怪我は…?」

出「出力の調整間違えちゃって」

龍「…」

 

黒牙から、とんでもない圧が放たれ、死柄木たちは堪らず後退した。

 

龍「お前らか…」

弔「あ?」

 

黒牙から信じられないほどの低い声が出る。

 

龍「コイツらが、出久が怪我した原因作ったの、お前らか」

弔「ハッ それがどうした」

龍「そうか…なら」

黒「死柄木弔!」

龍「死ね」

 

黒霧が叫ぶが死柄木が反応する前に黒牙の攻撃が襲いかかる。もちろん、個性は何ひとつ使っていないが、加減をしておらず、ロストヴェインによる切り傷が増えていく。黒霧は防ごうとするものの、爆豪により胴体を抑えられ、動けない。黒牙が死柄木へ攻撃すると同時に駆け出したオールマイトが、脳無に向かって拳を打つ。脳無もそれを真っ向から受け止めるように拳を放ち、相殺される。そしてそのまま、真正面からの殴り合いが始まった。

 

オ「ショック吸収!”無効”でなく”吸収”ならば!!限度があるんじゃないか!?」

 

僅かに、しかし確実に脳無が押され始めていた。

 

オ「私対策!?私の100%を超えるなら!!さらに上からねじふせよう!!」

 

どんどん、どんどんと脳無が後退している。

 

出「(やたらめったらのパンチじゃない…全部が全部100%以上の…!)」

オ「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵よ、こんな言葉を

知っているか!?」

 

遂にはオールマイトの力が、個性を上回った。これが、No.1。最強のヒーローの力。

 

オ「Plus Ultra(さらに向こうへ)!!!」

 

雄英高校の校訓である言葉と同時。脳無がUSJの天井を突き抜けて、遥か彼方へと飛ばされていった。それと同時に黒霧の側へ死柄木が吹っ飛ばされる。もちろん、爆豪は避難済みだ。そして、自分の傷を気にせず、吹っ飛んだ脳無を見て死柄木が呆然と呟く。

 

弔「……ショック吸収を無い事にしちまった……究極の脳筋だぜ」

黒「再生も間に合わないラッシュって事ですか……」

 

身も蓋もない言い方の死柄木に、黒霧も同意するように言葉を繋げる。プロの世界を目の前で見せられ、緑谷たちが呆然する中、土煙の中から顔を出したオールマイトが呟く。

 

オ「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だっただろうに……300発以上も撃って

しまった」

 

誰も、何も言えない。一体全盛期とは、どんなものだったのか。誰も想像がつかず、呆然とする中、黒牙だけが、オールマイトのそばに歩み寄った。

 

オ「さてと敵。お互い早めに決着つけたいね」

弔「衰えた?嘘だろ……完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を……チートがぁ……! 

全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ……俺に嘘教えたのか!?」

 

ガリガリと首を掻く死柄木が、何やら重大な情報を喋っている。あいつ、と呼ばれる存在に、オールマイトが弱体化したと言われていたらしい。それがちょっと唆された程度の相手なら良いのだが……ヴィランたちに圧をかけるオールマイト。

 

オ「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが…出来るものなら

してみろよ!!」

弔「うぅうおおぉおおぉおおぉお……!!」

オ「(来るんかい!!)」

龍「『神千斬り』!!」

黒「!死柄木弔!危ない!」

弔「ぐっ」

 

突如、銃声とともに死柄木に弾丸が撃ち込まれた。

 

オ「来たか!」

根「――ごめんよ、遅くなったね。すぐ動けるものをかき集めて来た」

 

オールマイトの安心した声に、USJの入口へと視線を向ける。そこには息を切らした飯田と、その横にずらりと並ぶ大勢の大人。

 

天「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」

 

彼らは雄英の教師、つまりプロヒーロー。待ちに待った救援が、ようやく来た。

 

弔「あーあ、来ちゃったな……ゲームオーバーだ。帰って出直すか、黒霧……ああ、そうだ。

黒牙 龍生 いや、アサルトデビル。先生からの伝言だ」

龍「なに?」

弔「『知らないうちに立派になったね。近いうちに君とあの子を迎えに行くよ』だってさ」

龍「!まさか…!」

 

黒牙の脳裏に、9年前に両親を殺し、己に呪いをかけたオールマイトの宿敵が浮かぶ。

 

龍「キサマ…!」

弔「じゃーな、アサルト」

 

奴らは今度こそ、本当で逃げる気だ。逃がすまいと銃を持ったヒーローが死柄木の両腕両足を撃ち抜き、瀕死の13号がどうにか個性で黒霧を吸い込もうとする。けれど距離が足りないようで、ギリギリで黒霧と死柄木に逃げられる。

 

出「おわ、った…」

実「助かったのか…?」

 

オ「黒牙少年、大丈夫か?」

龍「…わりぃ……少し、動揺しちまった」

出・勝「「龍君!/龍生!」」

龍「出久、勝己」

出「大丈夫?」

龍「ああ。心配してくれてありがとな」

出「龍君は僕の大事な友達なんだ。当たり前だよ」

勝「それに、俺たちは親友だからな」

オ「君たち、そろそろ行きなさい。きっとみんな心配してるだろうから」

出「はい」

勝「行こーぜ」

龍「おう」



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雄英体育祭編
7話 雄英体育祭・数週間前


朝のHRの時間…

いつもの通りに飯田がみんなに席に座るように促していた。自分が座っていない辺りかなりアレだけど。さらには予鈴がなったら教室に、腕を包帯で吊るした相澤が入ってきて騒動になる。

 

鋭「先生!?もう大丈夫なんすか!」

相「……ああ」

 

そう答える相澤。緑谷はそれを心配そうに見ていた。

 

相「俺の心配はしなくてもいい……それよりお前たちの戦いはまだ終わってねぇぞ?」

全『ッ!?』

 

相澤のその一言で一気に教室内が緊張を高める。またヴィラン連合が攻めてくるのかと一触即発の空気が広がったかのように見えて、だが相澤から出てきた言葉は、

 

相「雄英体育祭が迫っている……」

龍以外『クソ学校っぽいのキター!!』

龍「?楽しいのか?それ」

 

緊張したムードから一気にお祭り騒ぎに気持ちが移行する辺り、やはり学生の精神はタフネスだ。だが、ヴィランに攻められた直後でこんな催しをしても大丈夫なのか?という当然の疑問も出てくる辺り現実を見れている子も多い。それに相澤はこう答える。

 

相「それもあるが、気にするな。逆に開催する事で雄英は体制が盤石だというところを

見せるんだろうな。警備も例年に比べて5倍相当に増やすそうだからお前たちは

ただ勝利を勝ち取る精神だけを蓄えておけ。それにこの体育祭は…………お前たちに

とっての最大のチャンスだ」

 

相澤はこう語る。個性が世の中に発現して以降、かつてのオリンピックという競技は公正を保つことが難しくなって次第に縮小していき形骸化した。その代わりに個性使用ありきでのいわゆるお祭り騒ぎ……オリンピックの代わりとなって誕生したのが雄英体育祭だと。3年間の学生生活で3回しか行われないビッグな行事であるためにスカウト戦争も白熱する。トップに近い成績を残した生徒はそのほとんどがトップヒーローの道を開いている。No.1ヒーロー、オールマイトやNo.2ヒーロー、エンデヴァーもそれで上を目指して今の実力と名声を手に入れてきたのだ。

 

相「だからな。ヒーローを目指すのなら必ず通っておいて損はねぇ催しだ。俺のクラスの

生徒であるお前たちには立派に戦って戦果を上げてもらいたい。俺からは以上だ」

 

それでHRは終了して時間は過ぎて行ってお昼休みの事。緑谷は少し悩んでいた。もうすでにオールマイトに師事している以上はこれ以上ないくらい良い環境で、果たしてこの雄英体育祭にそんな中途半端な気持ちで臨んでいいのかという事を…だが、飯田と麗日と黒牙と4人で食堂に向かう前に麗日がとある宣言をする。

 

お「デク君、飯田君、黒牙君……雄英体育祭、頑張ろうね!!」

 

そこにはいつもの麗かな顔ではなく言っては悪いが獰猛な感じの顔の麗日の姿があった。

 

天「全然麗かではないぞ麗日君!」

出「ど、どうしたの麗日さん……?」

龍「どしたん?お前」

お「うん。ちょっと私にも譲れない思いがあってね」

 

それで麗日は自身の家の事を語る。麗日の家は建設業をしているのだが最近仕事がなくて財政難を抱えている事を。それで麗日はヒーローになってお金をいっぱい稼いで親達の暮らしを楽にしてあげたいと思っている事を。

 

お「だからね、このチャンスを逃したくないの」

 

それを聞いて緑谷にも心に宿るものがあった。

 

出「(そうだ…………みんな、理由は違えどヒーローになるために精一杯努力している。

飯田君だって立派なお兄さんの事を目標にして頑張っているのに、僕ときたら…)」

 

それで緑谷は拳を握りながらも、

 

出「うん。僕も頑張る!麗日さんみたいになにかを目指せる人になりたい」

天「おぉ!緑谷君も立派だな!それじゃみんなで頑張るとしようか!」

龍「そうだな」

 

4人でえいえいおー!としている時だった。

 

オ「緑谷少年!黒牙少年!」

 

そこにオールマイトが姿を現してきた。手にはお弁当の包みが握られていて、

 

オ「一緒に、ごはん食べよう?」

 

ギャップがあり過ぎる姿に麗日は思わず「乙女やー!」と叫んでいたり。緑谷は黒牙とオールマイトについていった。

 

とある部屋で一緒に食事をしていた緑谷とオールマイトと黒牙。

 

出「どうしたんですか?」

龍「こんなとこに来て」

オ「君たちに話があってね。それと、緑谷少年」

出「はい?」

オ「君、このあいだのアレでフルカウルの上限、上がっただろう」

出「!よくわかりましたね。10%から12%に上がりました」

 

思いがけない成長にオールマイトは満足そうにしながらも、

 

オ「わかった。それでは雄英体育祭では頑張りたまえ。なにやら麗日少女と飯田少年と

話をして意欲はすでに高まっているようだからな」

出「はい。みんなは考えは違えど必死にヒーローになろうと頑張っているのに、僕だけ

やる気を出さないのは恥ずかしいと思いまして……」

オ「うんうん。いいと思うよ。ここだけの話だがね………私がヒーローとして活躍できる

期限はもう残り少ない」

出「ッ!」

龍「…」ギリッ

 

そのオールマイトの告白に緑谷は顔を辛そうに歪ませ、黒牙は拳を強く握った。

 

オ「だからな、緑谷少年。君は私の力を継いだ以上は目指さないといけない。

雄英体育祭、またとない機会だ。『君が来た!』って事を世の中に知らしめて

ほしい」

出「!!」

 

緑谷はそれで気持ちを高ぶらせた。オールマイトはそれで『ニィッ』と笑みを浮かべて、

 

オ「なぁに、今の君なら十分トップに入れる力を持っている。自信を持ちなさい」

出「はい!」

オ「それじゃあ、緑谷少年。先に戻っていてくれないか」

出「わかりました」

 

緑谷が戻っていく。

 

オ「さて、黒牙少年」

龍「どうした、改めて」

オ「君には雄英体育祭において、特別枠として出場してほしい」

龍「…やっぱオール・フォー・ワンか」

オ「ああ。死柄木の話が本当ならば、君を参加させるわけにはいかない。だが、それでは

逆に怪しまれてしまうと言うことで、最後の種目だけ参加してもらうことになった。

そのためにも、A組には君がヒーローであることを話してもらいたい」

龍「……それだけでいいのか」

オ「ああ」

龍「わかった」

オ「すまない。いつも君にばかり迷惑をかけてしまう」

龍「あんたのせいじゃねぇよ」

オ「…本当にすまない」

龍「もう、いいよ」

 

ー1-Aー

龍「みんな、少しいいか」

出「どうしたの?」

龍「…」

勝「龍生?」

龍「…何人か気づいてるやつもいるだろうが、俺はヒーロー“アサルト”として活躍してる」

実「アサルト?」

梅「様々な個性を駆使して戦ってるの」

電「たしか、史上最年少でヒーローになったんだとか」

龍「よく知ってるな」

梅「ええ。有名だもの」

電「でもなんでそれを俺たちに?」

龍「今度の雄英体育祭、俺は最後の種目だけ特別枠で出場することになった」

百「その理由が、“アサルト”に関係しているんですか?」

龍「ああ」

鋭「だからあんなに強かったんだな!」

龍「へ?」

焦「知らねーのか?アサルトは影で『オールマイトよりも強い』とかの噂が流れてるぞ」

龍「マジか…」

勝「なぁ、龍生。特別枠ってどう言うもんなんだ?」

龍「詳しく聞かされてないからわかんねぇや」

勝「ふーん」

 

その後、放課後に他のクラスとの生徒達ともめ事はあったが、そこでも緑谷は爆豪の気持ちを知れる機会を得られて「頑張ろう!」と思うのであった。そして、緑谷は相澤から選手宣誓を頼まれていた。



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8話 雄英体育祭・予選

2週間という短い期間を静かに時は過ぎて行って、そして雄英体育祭開催当日。今か今かと観客やプロヒーロー達が会場内へと入り込んでいた。何と言ってもやはり今年の目玉は1年生の部だろう。ヴィラン侵入という災難に見舞われながらも、それでも全員が心折れずにこうして体育祭を迎えられた。それだけで荒事の経験を積んだという箔がもうついているのだ。それで普段なら3年生の方に集中する目線が1年生に集中するのは分からなくもない。

 

ー生徒達選手控え室ー

緑谷達みんながもうすぐ始まる行事に思いを馳せていた。すると、緑谷と爆豪に轟が近づいてきた。

 

焦「緑谷、爆豪」

出「轟君」

焦「俺は、お前らに勝つ」

出「!」

焦「お前らに勝って、優勝する」

勝「はっ!やれるもんならやってみろや!」

出「僕も、君に勝つ」

 

そこに『選手達は入場してください!』とアナウンスが流れてくる。

 

龍「出久、勝己。頑張れ」

出「うん!」

勝「おう!」

 

よし、いくぞ!と緑谷は気合を入れてみんなとともに会場へと向かっていく。会場内では実況役としてプレゼントマイクが席について今か今かと待ち望んでいる観客達とヒーロー達に向けて話し始める。

 

プ『さーてついにやってきたぜ!雄英体育祭1年生の部。どうせてめぇらのお目当ては

これだろう!?ヴィランの襲撃にあっても折れない精神で立ち向かっていく

超新星達!ヒーロー科1年A組だろー!?』

 

その言葉とともに緑谷達が会場内に姿を現す。それからヒーロー科B組、普通科、サポート科、経営科と次々と入場していく。A組以外の生徒達はどうせ引き立て役扱いだろうと顔を曇らせている。壇上に18禁ヒーロー、ミッドナイトが立って、

 

ミ「それじゃまずは選手宣誓をしてもらうわよ!1-A 緑谷 出久!!」

 

そして緑谷は壇上へと歩いていく。他のクラスの生徒はただただ壇上に上がっていく緑谷に対して嫉妬の目線を向けていた。

 

出「宣誓!僕たち選手一同はヒーローシップにのっとり、正々堂々と戦うことをここに

誓います!」

「普通だな…」

「普通だ…」

出「それから…」

「まだあるのか?」

出「全員、本気でかかってこい!じゃないと、僕が一位になっちゃうよ?」

「ふざけんな!!」

 

そして緑谷が戻ってくる。その顔はほんのり赤かった。しかし、A組のメンバーは昨日緑谷がこっそり黒牙へアドバイスを求めに行っていたのを知っているので、微笑ましそうに見ていた。

 

ミ「それじゃ第1種目に移らせてもらうわね!」

 

ミッドナイトがモニターを見ながら、説明する。

 

ミ「それじゃ第1種目を発表するわね!これは所謂予選よ。ここで多くの者達が篩に

かけられて脱落して涙を流すわ。その第1種目は―――これよ!」

 

モニターには『障害物競走』と表示された。そして説明を受ける。このスタジアムを1周して帰ってこれたものが次の競技の切符を掴む。だが道中であらゆる障害が行く手を阻むために存在している。それを自らの力で乗り越えてゴールする。コースさえ守れば何をしても構わないバトルロイヤル。ようするに個性で戦い抜けという訳だ。

 

ミ「それじゃ全員位置について!スタート!!」

 

ミッドナイトの言葉によって一斉に走り出す、経営科以外の10組ものクラスの選手達。しかし、全員が走り出した途端に地面が一斉に凍り始めて足を捕られるものが多数でてしまっていた。

 

焦「わりぃな……さっそくふるいにかけさせてもらうぜ」

 

1番ダッシュを決めていた轟が先んじて出ていた。だが、そうは問屋がおろさないとばかりにA組の生徒達は各々でこの攻撃が来ると読んでいたために地面から跳んでいた。

 

勝「そう上手くいかせねぇよ半分野郎!!」

 

それを聞いて轟は内心で予測していたために慌てずに先を走っていく。しかし、突如として前方を立ちふさがる物が出現した。それは、入試試験での0ポイント仮想ヴィランの大群だった。峰田がそれでどつきを食らって跳ね飛ばされていたが些細な事である。それでも、轟にはなんの障害にもならないと感じたのかすぐに仮想ヴィランを凍らせて先に進んでいた。他の生徒達も轟の作った道を通ろうとしたのだが、重さで倒れようとしている仮想ヴィランに、

 

徹「おおおおおーーーー!?あの野郎!潰されちまうだろう!?」

鋭「轟の野郎!それも狙いか!?」

 

個性だだ被りの切島とB組の鉄哲 徹鐵が来るであろう衝撃に耐えようとしたその瞬間だった。背後から緑谷と爆豪が飛び出してきた。そして、個性で仮想ヴィランを壊した。そして、轟に追いつくために走って先を進んでいった。2人が通る先々では仮想ヴィランが次々と壊されている。それによって一直線に通る道が出来上がっていたために、

 

電「すげぇな…!」

天「緑谷君と爆豪君に後れを取るな!」

三「さっすが!」

 

と、次々と主にA組の生徒達を筆頭に先を進んでいく生徒達。

 

プ『おいおい……あれでも入試の仮想ヴィランなんだぜ?強すぎだろ』

相『あの2人の実力なら十分じゃないか?入試でも破壊していたしな……』

 

プレゼントマイクの隣で一緒に座って解説している相澤だった。

 

相『B組や他の生徒達もそれなりに速いが、様々な困難に一度晒された経験が今も活きて

いる。A組の奴らが抜きんでているな』

 

相澤の言葉は的を射ていた。もうほとんどのA組の生徒達は第一関門を突破していたのだ。そして待ち受ける第二関門は落ちたら失格の『ザ・フォール』という、綱を渡って障害を駆け抜けるもの。しかし、轟は綱に氷を張り、滑って進む。緑谷はフルカウルで跳び、爆豪は爆風を利用して飛んでいた。

 

プ『オイオイ、綱の意味がねーじゃんか!』

相『使えるものは全て使う。いいじゃないか』

 

相澤とプレゼントマイクの会話。この時点で3人と後続との距離は結構離されていた。

 

プ『とにもかくにも、これでもう残すは最終関門だー!内容は一面地雷原!怒りの

アフガン!』

 

見渡す限りの地雷原。これをどう突破するかが鍵になってくる。轟は個性で滑り、爆豪は個性で飛び、緑谷はうまく地雷を避けながら個性で跳んで進んでいった。そして最後の一直線。緑谷はスピードを上げ、走り出した。

 

出「ごめんね、かっちゃん、轟君。先行くよ!」

勝「待ちやがれデク!!」

焦「ッ!追いつけない!?」

 

先程よりさらに加速した緑谷に、爆豪と轟はそれぞれ個性を最大限に使って追いつこうとするが、それでも緑谷の足には追いつくことが出来なかった。

 

プ『最初にゴールにたどり着いたのは……緑谷 出久だー!!!』

 

それで一気に観客が歓声に沸いた。ヒーロー達がそれで感心している中で、早速この競技に参加しないで見学していた経営科が活動をしていた。

 

「彼はすごいな」

「ああ。エンデヴァーの息子にも負けていない」

「彼を売り込むと仮定してどうやるかさっそく話し合おうじゃないか」

 

と、すでに考えが違うところにシフトしている辺りさすが経営科。オールマイトも聞き耳を立てていたために、

 

オ「(さっそくやっているな!)」

 

と感心していた。

 

オ「(緑谷少年、本番はここからだぞ…?頑張れ!)」

 

オールマイトが見る先では後からゴールした飯田や麗日に囲まれた緑谷の姿があった。他には爆豪が悔しそうにしていたのも印象的だった。



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9話 雄英体育祭・騎馬戦(前編)

会場はすでに大盛り上がりであった。緑谷はもちろんの事、エンデヴァーの息子である轟と怒涛の接戦を繰り広げた爆豪。この3人がもうすでに複数のヒーロー達のスカウト候補にエントリーしているくらいだからだ。そんな中で、

 

ミ「1位は緑谷君、2位は轟君、3位は爆豪君……それから42位までの結果はこんな感じね!」

 

モニターに各順位が表示される。それを見て爆豪が、

 

勝「デクならともかく半分野郎にまで負けるなんて……ッ!」

 

と、かなり頭に来ていた。そんな爆豪になるべく今は話しかけない方がいいだろうと思った緑谷は黙ってミッドナイトの話を聞いていた。

 

ミ「次からが本戦よ!みんな、気張っていきなさい!そしてその内容は――これよ!」

 

モニターには『騎馬戦』と表示された。一同はそれで少し考え込む。個性ありで騎馬戦とはどうやればいいのかと。だがそれを説明しない程薄情ではないのでミッドナイトは説明していく。そして話を聞いていく内に全員の視線が緑谷に集まっていく。そう、1位の選手にはポイントが1000万も振り込まれるからだ。どうぞ狙ってくださいと言わんばかりの点数に全員の視線が緑谷に集まり、緑谷の内心は、冷や汗が吹き出していた。そして、騎馬戦のメンバーを決めるためのタイムが設けられた。

 

お「デク君!私と組もう!」

 

麗日がそう言ってきてくれた。それには緑谷も嬉しくなった。

 

出「いいの?麗日さん。多分僕と組んだらかっちゃんとかに狙われちゃうよ?」

お「大丈夫、デク君が本気で逃げたらだれでも捕まえられないって!」

出「そう、かな……?」

お「うん。それに、仲いい人とやった方が楽しいよ!」

出「麗日さん……!」

 

緑谷が感激していると突然、

 

?「1位の人!私と組みましょう!」

出「え?!」

?「私はサポート科 発目 明です!」

出「えーと発目さん。理由を聞いても?」

明「あなたと組めば必然的に、私のどっかわいいベイビーが目立ちます!」

出「んー、いいよ」

明「ありがとうございます!」

 

それから緑谷は頭の中で考えていた人に声をかけた。相手は飯田だった。

 

天「緑谷君…?俺と組みたいのか?」

出「うん」

 

緑谷はそれで自身の考えている戦法を麗日と発目を交えて話し合う。その内容は普通なら納得いくものだと飯田も考えた。だが、今回は勝手が違う。

 

天「すまないが、緑谷君。今回ばかりは断らせてもらっても構わないか?」

出「えっ……」

 

それで少し悲しそうな表情になる緑谷。そんな緑谷の顔を見て飯田は弁解するかのように言う。

 

天「勘違いしないでくれ。もちろん緑谷君に頼まれたら普通なら断らないさ。だが今回は

ライバルとして緑谷君と相対したい。挑戦者として君と戦いたいんだ」

出「飯田君……うん、わかったよ」

天「わかってくれたか。それに、実はもうメンバーは決まっているんだ」

 

飯田が進んだ先には轟、八百万、上鳴の三人の姿があった。轟の視線が緑谷を見据える。絶対に勝つという気迫が感じられるからだ。

 

お「デク君、どうしようか……」

出「うん……」

 

それで2人で考え込む。発目は発明品を見て何かしている。

 

出「これで後は防御力がある人がいいんだけど……必然的に僕は騎手になるからあまり

スピード戦には加われない。だから後は……!」

 

それで緑谷は周りを見回してまだ残っている生徒を探る。そしてついに相性がいい人物を見つけた。

 

出「常闇君。僕達と組んでもらっても構わないかな?」

踏「緑谷……?ふむ、理由を聞こうか」

出「うん。常闇君は前に入って、黒影を使って防御に徹してほしいんだ」

踏「ほう……?なかなかいい選択じゃないか」

出「えっ?」

 

それで常闇は自身の個性とその弱点を教えてくれた。その内容を緑谷は吟味して、発目の作品と麗日の無重力の個性を合わせて、

 

出「うん。これならいけそうだね」

踏「考えは纏まったようだな。緑谷、俺を選んだからにはうまく使ってくれよ?」

出「任せて!」

 

緑谷達がメンバーが決まった事によって、こうして防御に長けた面子になった。そこにミッドナイトがチーム決めタイム終了の声を上げる。

 

プ『さーて、ついに始まるぜ!鬨の声を上げろ!今から激しい戦いが幕を上げるぜ!』

 

緑谷達はそんなプレゼントマイクの声を聞きながら、

 

出「麗日さん!」

お「うん!」

出「常闇君!」

踏「ああ」

出「発目さん!」

明「フフフフ」

出「3人とも、よろしくね!」

 

こうして騎馬戦が始まろうとしていたのであった。



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10話 雄英体育祭・騎馬戦(後編)

騎馬戦のチーム分けが決まり、ついに戦闘が始まろうとしていた。緑谷達ももう攻めてこられると思ってすでに身構えていた。常闇の黒影も前面に出している。

 

プ『3……2……1……スタート―――!!』

 

というプレゼントマイクの声とともに一斉に緑谷達に突っ込んでくる生徒達。それは爆豪も例外ではない。

 

勝「デク!おめぇから必ず取るぞ!!」

 

ともう血気盛んに突っ込んでくる。

 

踏「追われしものの宿命、選択しろ緑谷!」

 

妙に中二っぽいセリフの常闇に、本気モードの緑谷は「うん!」と返事をし

 

出「もちろん最初は逃げの一手だよ!時間を稼ぐんだ!」

お「了解!」

 

それで動こうとする緑谷たち騎馬だったが突然地面に足が沈んでいく。

 

明「1位の人!ジェットパックを!」

出「そっか、麗日さん、発目さん、避けて!1回飛んで移動する!常闇君、索敵お願いね!」

踏「任された!」

 

空を飛んで地面から地面へと移動をして、常に黒影で周囲を警戒して移動をする緑谷達。これなら空を飛べない生徒は手も出せないだろう。例外はいるだろうけど。

 

勝「デク!!空を飛べるのがお前たちだけだと思うなよ!?」

出「げっ!かっちゃん!?」

 

そこにはなんと爆豪が、騎馬もいないのに1人だけで爆破の勢いで飛んできた。

 

踏「ッ!黒影!!」

 

かろうじて黒影で爆豪の爆破を防ぐが、まだ周りには知られていないがこれが黒影の弱点だ。そのまま爆豪は不発で落下していくが、それを騎馬の1人である瀬呂がテープを伸ばしてうまくキャッチしてもとの場所へと戻している。

 

出「あれってありなの!?」

ミ「テクニカルなのでセーフよ!」

 

緑谷の叫びは無情にもミッドナイトによってセーフにされてしまった。

 

出「くっ!空はまずい!これからはなんとか地面だけで移動しよう!」

 

それで着地をした途端、

 

お「ん!?デク君、足が何か動かない!」

出「えっ!?」

 

麗日たちの足裏に見た事のある紫の丸いモノ。

 

出「これは峰田君の!」

実「そうだぜ緑谷!」

 

と、障子の腕に覆われている峰田の姿があった。よく見れば一緒に蛙吹の姿も確認できる。緑谷はその瞬間、即座に顔を逸らした。遅れて逸らした所に蛙吹のカエルの舌が伸びてきていた。

 

梅「ケロ。やっぱり反射神経がいいのね、緑谷ちゃん」

 

障子の姿はまるでタンクのようであの鉢巻きを取るのは至難の業だろう。

 

出「(やばい!もうかなりの乱戦だ!)」

 

その通り、すでに鉢巻きを取られているものもいるがそれでも諦めずに特攻を仕掛けてくるものもいる。無くすものがないのなら強気に動けるというものだ。それでまた爆豪が突っ込んできそうになったのだが、そこで物間のチームに取られた上に、煽られて爆豪はそっちの方に集中したために、とりあえず緑谷は爆豪の脅威から逃れることが出来たと安堵した途端、

 

お「デク君!」

出「!」

 

緑谷達の目の前には轟たちのチームが立ちはだかっていた。

 

出「轟君!」

焦「取るぞ……緑谷」

 

そこから2チームによる激しい攻防が始まる事になる。

 

出「(轟君はなぜか左側の炎は戦闘には使わない!そこが突けるところだ!)みんな、

なるべく左側に重心を置いて!」

焦「ッ!察しが早いな……さすがだな」

 

轟が氷しか使ってこない事を察しているのか、緑谷はそれで3人に何度も指示をしていき、避ける避けるの防御姿勢を取る。途中で突っ込んできた他の生徒も轟達の攻撃ですでに凍り付いていて、さらには囲むように氷のバリケードが展開されている。現時点で、緑谷達の勝機は薄い。そして、氷で追撃を図ろうとした轟に、飯田が声をかける。

 

天「これを使ったら俺はもう使いモノにならなくなる!必ず取れよ!」

 

飯田が妙案があると言って一気に駆けようとする。それに気づいた緑谷は悪寒に従って身構える。

 

天「レシプロバースト!!」

 

飯田がものすごいスピードで横を通り過ぎ、轟がハチマキを奪い取る。さっきも言った通り、飯田は一度使ってしまえばエンストを起こしたかのように排気筒から煙を吹かせてしまっており、移動に難が出てしまっていた。

 

出「しまった!」

お「デク君!」

出「取り返す!」

焦「そうはさせない!」

 

そして、緑谷が跳んで取ろうとし、爆豪が氷の壁を超えてくるが、

 

プ『時間は後5秒!4……3……2……1……タイムアップだ!!』

 

プレゼントマイクからの終了の合図。轟たちは逃げ切れていた。

 

出「ごめん、みんな…僕が油断してたせいで…」

お「そんなことないよ!」

出「え?」

踏「緑谷が隙を作ってくれたおかげで、なんとか奪い取れた」

 

そう言って、黒影が奪い取ったハチマキを見せる。

 

最終順位

1位…轟チーム

2位…爆豪チーム

3位…緑谷チーム

4位…心操チーム



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11話 轟の過去

昼、緑谷に轟が声をかけてきた。

 

焦「緑谷、ちょっといいか?」

出「うん」

 

場所を移動して裏の道に続く入り口で2人は向かいあう。

 

出「それで……なにかな?」

焦「……ああ。こういう話はお前には少し重たい話になるが聞いてもらいたい。なぜか

お前には話しておかないといけないって気がしたんだ」

 

それで轟は話す。己の過去の事を。親であるエンデヴァーはオールマイトを超えるヒーローを作るために金と実績で母親の個性を手に入れるために個性婚をした事。それで複数の子供が生まれて2人の個性が同時に発現したのが自分だと。さらに左側の火傷は母親から「お前の左が醜い」と言われ煮え湯をかけられて出来た事も……

 

出「それって……」

焦「ああ。酷い話さ。親父のただの自己満足だけで俺は生まれたんだからな」

出「轟君……その」

焦「俺は親父の“個性”は使わない。右の力だけでトーナメントを勝ち進む。それだけを

お前に知っておいてほしかったんだ」

出「なんで、僕にその事を……?」

焦「なんでかな……?よくわかんねぇんだ。でも、俺はお前にも勝たないといけない。

時間を潰しちまって悪かったな」

 

それで轟はその場から離れて行こうとするが緑谷が声を出す。

 

出「轟君!うまく言えないんだけどね……僕も君には負けないよ。いろんな人たちの

助けがあって今の僕があるんだ……だから。それにできることなら轟君にも全力を

出してもらいたい。そうすればきっと君の悩みも解決できるかもしれないから」

焦「……ああ。右だけでの全力で相手をしてやるよ」

出「そうじゃない!エンデヴァーの個性を引き継いでいたとしてもそれはもう君の――…」

 

大事な事を緑谷は伝えたかったけど、もう轟はその場を離れて行ってしまっていた。こんな時に大事な事をしっかりと伝えられなかったことに緑谷は少しだけ後悔の念を感じていた。

 

轟side

焦「(俺は…)」

龍「よう!」

焦「!黒牙」

龍「出久と何話してたんだ?」

焦「聞いていたのか」

龍「うんにゃ、知らねーよ」

 

昼休憩が終わる前に、戻ろうとしたら、黒牙に捕まった。『知らない』と言ってるが、こいつは信用できねぇ。

 

焦「お前には関係ない」

龍「そうだな。でも、“全くの無関係”ってわけではないだろ」

焦「?どういうことだ」

龍「いまはまだ知らないくていい。でも、」

 

黒牙が意味深げに笑う。その顔はどこか寂しそうだ。

 

龍「互いに“血”のせいで大変な目にあってるんだな」

焦「っ!お前やっぱり…」

龍「さてさてさーて。なんのことやら」

焦「ホントお前は食えないやつだよ」

龍「にしし。それはお互い様だろ」

 

初めて、黒牙に共感したかもしれない。

 

轟side out



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12話 雄英体育祭・トーナメント(緑谷vs心操戦)

遅くなってすみません


緑谷はレクリエーションの時間の間に尾白と部屋で騎馬戦の時の話を聞いていた。

 

猿「緑谷。とにかくあの心操という奴の声には耳を傾けるな」

出「傾けるな?騎馬戦の時になにかあったの?」

猿「ああ。さっきも言ったけど騎馬戦が始まった時にあいつの声を聞いて返事をした

以降、もう記憶がほぼないんだ。ここからさっするにあいつの個性は…」

出「洗脳の類…かな?」

猿「多分そのまんまの個性だと思う」

 

洗脳と言っても多岐にわたる。だがそのまんまの洗脳なら対策はもう決まっている。

 

出「つまり心操君がなにかを言ってきても無視を決め込んでいけばいいんだね?」

猿「そうだ。緑谷なら余裕だろ?そして速攻で仕掛けて場外にでもしてしまえばいい」

出「そうだね。ただ、心操君はきっと僕になにかしらの揺さぶりをかけてくると思う。

そこをどう凌ぐかで対処は変わってくるかな…」

猿「そうだな。とにかく頑張れよ緑谷」

出「うん!」

 

それから時間は経過してセメントスによる闘技場作成も完了し、ようやく試合が始められる。

 

プ『セメントスサンキュー!そんじゃそろそろ始まるぜ!やっぱり最後はガチンコ

勝負っしょ!己の力を信じて最後まで戦い抜け!!この勝負で勝ち残った奴が

ヒーロー科1−A黒牙 龍生と戦う権利が得られるぞ!!!』

 

プレゼントマイクの叫びが聞こえてくる中で緑谷は会場に入る前の通路で呼吸を整えていた。そこに背後からオールマイトがやってきた。

 

オ「緑谷少年。ここまでこれて私としても嬉しい限りだよ」

出「オールマイト……」

オ「だからな。ここまで来たんだ。最後まで駆け抜けてみろよ!君なら十分やって

いけるさ!」

出「はい!頑張ります!」

 

オールマイトに見送られながらも緑谷は会場の中に入っていった。

 

プ『それじゃ1回戦を始めるぜ!まずは障害物競争で優秀な成績を収めたヒーロー科、

緑谷 出久!』

 

客席から歓声が巻き起こる。

 

プ『対していまのところ目立った活躍はしていない能力は未知数の男子!普通科、

心操 人使!』

 

プレゼントマイクがこの戦いでのルールを説明している中で緑谷と心操がそれぞれで向かい合う。まだ試合開始のコールは言われていないがすでに心操は緑谷に話を振ってきていた。

 

人「なぁ緑谷……もうここからは心の勝負なんだよ。将来の為には形振り構っていちゃ

いられない」

出「………」

 

緑谷はそれを無言でなんとかやり過ごす。そして、プレゼントマイクがスタートの合図をした。

 

人「そういえばさっきの辞退した尻尾の奴だが、プライドがどうとか言っていたが、

チャンスをドブに捨てるなんてどうかしているとは思わないか?」

出「……ッ!そんな事な」

人「これで、終わりだな…」

プ『おおっと!?最初の戦いでいきなり緑谷、完全停止!?これはどういうこった!?』

 

今の緑谷には周りの声が頭に靄がかかったかのように聞こえてこない。そこに心操の声が聞こえてきて、

 

人「そのまま振り向いて場外まで出て行ってくれ……」

出「…………」

 

緑谷はそれで振り返り、場外に向かって歩き出す。

 

プ『おーっとぉ、まさかの心操、2回戦進出か?!』

出「(せっかく尾白君が教えてくれたのに…止まれ止まれ止まれ…止まれ!)」

 

そんな緑谷の眼に、8人の人影が見えた。すると急に指が動くようになり、ワン・フォー・オールを起動させる。そして、指を思いっきり地面に叩きつけた。緑谷の個性で盛大に陥没するステージ。空へと巻き起こる嵐。そんな光景に会場の全員は驚いた。まるでオールマイトのような、そんな錯覚を覚える。ジンジンと叩きつけた指が痛む感覚を味わいながらも緑谷は意識を取り戻して心操の方へとゆっくりと向き直る。

 

人「く、羨ましいな!そんなに強い威力を発揮できるなんてな!」

出「………」

 

緑谷は答えない。ただひたすらフルカウルで移動をして心操の服を掴んでそのままステージ場外まで投げ飛ばした。心操は抗える術などなくそのまま場外まで落ちて尻餅をついていた。

 

ミ「心操君、場外!これによって緑谷君、2回戦進出!」

プ『意外と地味だったけどこれにて終了だ!!』

 

そして2人は向かいあう。

 

出「…どうして心操君はヒーローに?」

人「なりたいと思ったんだから仕方がないだろう……」

 

それを聞いて、もしオールマイトに出会えていなかったら緑谷にも何か言えたのだろうけど、今では彼に話しかける言葉は少ない。だが、それは代わりに同じ普通科のクラスの生徒達が彼の事を褒めていた。「お前は普通科の星だよ」と。それだけで心操は少しだけでも嬉しい気持ちになった。ヒーロー達も心操の個性は対ヴィランに使えると言っていたので、見てもらえている事がなによりも将来の役に立つことになる。

 

人「確かにヴィランみたいな能力だろうよ。それでも俺はヒーローとして駆け上がって

やる。いつか絶対にヒーロー科に上り詰めてお前らより立派なヒーローになる……

それまで足元掬われないように注意しておけよ?」

 

それだけ言い終わって心操は会場から出て行った。緑谷はただただ苦しい戦いだったと思った。通路に戻るとそこにはまたオールマイトが立っていた。

 

出「オールマイト……僕、僕……」

オ「いいんだ緑谷少年。苦しかっただろう…だがこれも糧に君はまた成長できる。まずは

勝利を喜ぼう」

出「はい……」

オ「それから指をリカバリーガールに見てもらおうか。きっとフルカウル制御時以上の

力を出していたと思うからね」

出「わかりました」

 

こうして緑谷にとって苦しい第1回戦は終了した。それとさっそくステージが壊れたので修復作業で少し時間を使うとの事であった。



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13話 雄英体育祭・トーナメント(2〜8試合)

第2試合…

轟と瀬呂の試合。向い合う中で試合開始とともに瀬呂がテープを速攻で伸ばして場外狙いの先制攻撃を仕掛けたものの、イラついていた轟の大氷結によって一瞬で決着がついた。ヒーロー達の「ドンマイ」コールが起きる中で、こうして緑谷と轟の試合が決定したのであった。

 

第3試合…

上鳴とB組の塩崎茨との戦い。上鳴は最初から放電を繰り出したが、塩崎の個性であるツルでとことん電気は外に逃がされて最終的にはいつも通りにウェーイと言いながらツルに捕まってしまって終了。

 

第4試合…

飯田と発目の試合。発目が飯田を利用して自分の発明品を宣伝し、満足したのか、自分から退場していった。

 

第5試合…

芦戸と青山の試合。最初は青山のネビルレーザーで避けることに専念していたが、隙をついて近距離戦に持ち込んで自慢の酸攻撃でサポートアイテムを溶解してそのままグーパンで芦戸の勝利。

 

第6試合…

常闇と八百万の試合。これは事前に八百万が武器を創造していたにもかかわらず、常闇の黒影による連続攻撃には歯が立たずにそのまま常闇の勝利となった。

 

第7試合…

これは切島と鉄哲の試合なのだが、互いに”硬化”と”鋼鉄化”というダダ被りの個性のためにほぼ殴り合いのために実力も拮抗していたためにダブルノックダウンと相成った。これに関しては後に腕相撲で決着が行われて、”鋼鉄化”は鉄分を摂取しないと継続が難しいために”硬化”を維持していられる切島に軍配が上がり切島の勝利となった。

 

第8試合…

麗日と爆豪の試合。緑谷は麗日に対策を教えようとしたが、ズルしたくないし真っ向勝負で戦いたいという麗日の気持ちを汲んで送り出した。だが最初の方は予想通り何度も爆豪の爆破に晒されて苦戦を強いられていた麗日。そんな爆豪の女子に対しての苛烈な扱いにヒーロー達もさすがに見ていられなかったのか爆豪に酷いブーイングの言葉を何度も投げかけたが、そこで解説の相澤が、

 

相『今、遊んでいるっていったのは何年目のプロだ?本気で言っているなら帰って

転職サイトでも見ることだ』

 

と、言い放った。爆豪は決して油断をしていないで本気で麗日と戦っている。それだけ油断も出来ない戦いなのだという。それは本当の事だった。今まで爆破を続けていた爆豪の散らしたステージの破片を麗日は空に浮かばせて、さらにはそれを最後まで爆豪に気づかせなかった。そして準備が整った麗日は爆豪に捨て身の流星群を叩き落とした。これでなんとかすれば勝てる!そう思っていた麗日だが、爆豪はなんと空の破片全てを爆破させたのだ。これにはさすがの麗日も堪ったものではなく、そして爆豪も麗日の事を認めたように、今まで『丸顔』と呼んでいたのを初めて『麗日』と呼び、本気で挑もうとした。だが最後には麗日の許容重量で動けなくなってしまいそのままリタイアとなった。



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14話 雄英体育祭・トーナメント(緑谷vs轟、2〜4試合)

第2回第1試合…

緑谷と轟の試合。

 

(お前、オールマイトに目 かけられてるよな)

焦「来たか」

プ『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!両者並び立ち今!緑谷 vs 轟!START!!』

出「(まず氷結が来る!)」

焦「(あのパワーを好きに撃たせるのは危ない。開始瞬間にぶつけろ!!)」

 

緑谷に轟の氷結が襲いかかる。しかし、

 

出「(間に合うか?!)SMASH!」

 

その氷結が、緑谷のデコピンで発生した風圧により、破壊される。

 

出「いたっ(調節間違えたかな…?)」

「うわ 寒っ!」

焦「やっぱそう来るか…」

プ『おぉぉぉ!!破ったぁぁぁ!!』

 

再び氷が緑谷へ襲いかかる。

 

出「SMASH!」

プ『まぁーーた破ったあ!!!』

焦「ちっ……」

出「(轟君の戦いは知る限り、いつも一瞬だから情報が少ない。この戦いの中で隙を

見つけないと…!背後に張った氷は多分吹っ飛ばされない為の対策。とすれば、指で

正解だった。見極めろ…考えろ…見つけるんだ…!)」

焦「おまえは………」

 

再び氷が放たれる。

 

出「わぁっ!!!」

 

鋭「しまった 始まってんじゃん!」

電「お!切島、2回戦進出おめでとう!」

鋭「サンキュ。次、おめーとだ 爆豪!」

勝「ぶっ殺す」

鋭「ハッハッハ やってみな!…と言いたいが、おめーや轟、黒牙は強烈な範囲攻撃ポンポン

出してくるからなー…」

勝「ポンポンじゃねぇよ」

電「ん?」

勝「筋肉酷使すりゃ、筋繊維が切れる。走り続けりゃ、息切れる。個性だって身体機能の

ひとつ。奴にも何らかの限度はあるハズだろーが(俺だって、出せる威力には限度が

あるから、コスチュームで最大威力の爆破をノーリスクで撃てるよう考えたしな…)」

鋭「そりゃそっか…ん?でも黒牙はポンポン出してんじゃんか」

勝「こいつは規格外すぎるから除外」

龍「規格外すぎるって…」

鋭「(否定できねぇ…)ってことは、緑谷は瞬殺マンの轟に…」

 

焦「耐久戦か。すぐ終わらせてやる」

出「!」

 

再び氷が放たれる。

 

出「SMASH!(そろそろ右手、ヤバイかな…)」

プ『轟、緑谷のパワーに怯むことなく接近!!』

 

轟が氷を足場に飛び上がる。緑谷が氷を破壊するも、轟からの反撃を喰らいかける。

 

出「っぶなっ!」

 

再び個性を発動した轟の氷によって、緑谷の右足が凍りつく。しかし、腕でSMASHを放った緑谷の攻撃により、氷もろとも轟も場外の手前まで吹き飛ばされる。

 

「うわっ」

 

焦「…さっきよりずいぶん高威力だな」

出「うゔゔ」

 

勝「龍生」

龍「ああ。今ので右腕いったな」

 

出「(個性だけじゃない…判断力、応用力、機動力…その全ての能力が、強い!!)」

焦「守って逃げるだけでボロボロじゃねぇか」

 

と、緑谷は轟が震えているのに気づく。

 

出「…?(震え…?)」

 

「もうそこらのプロ以上だよ…」

「さすがはNo.2の息子って感じだな」

 

出「(そういうことか?ちくしょう)」

焦「利用して悪かったな。だがありがとう 緑谷。おかげで、」

 

轟が観客席を見上げる。そこには、エンデヴァーがいた。

 

焦「奴の顔が曇った」

(左を使わず1番になることで、奴を完全否定する)

焦「その腕じゃもう戦いにならないだろ。終わりにしよう」

プ『緑谷に反撃の隙を与えず攻め続けた轟!!とどめの氷結を―…!』

出「どこ見てるんだ…!」

焦「!」

 

緑谷が轟へとSMASHを撃つ。

 

焦「ぐっ……!」

 

それにより、轟は場外ギリギリまで飛ばされる。

 

焦「てめェ…(壊れた指で…)何でそこまで…」

出「震えてるよ、轟君。個性だって身体機能のひとつだ。君自身、冷気に耐えられる限度が

あるんだろう…?でも それって、左側の熱を使えば解決できるものじゃないのか?

皆…本気でやってる。勝って、目標に近付く為に…1番になる為に!それなのに半分の

力で勝つ!?まだ僕は、君に傷一つつけられちゃいないぞ!全力でかかって来い!」

 

(轟君も、あなたじゃない)

エン「(あの小僧…)」

 

(いいのよ、おまえは――…)

焦「……何のつもりだ。全力…?クソ親父に金でも握らされたか…イラつくな…!(近距離の

氷結ならお前は対応出来ないはず…!)」

 

緑谷が駆け出し、轟の鳩尾を殴る。

 

焦「がはっ」

 

「すげぇ…」

「どう見てもボロボロなのは緑谷なのに」

「轟に一発入れやがった…!」

 

出「僕だって、全力でやってるんだ…(彼に…彼らに追いつきたい。君に比べたら些細な

動機かもしれない…けど!)もっと相応しい人がいたかもしれなかったのに、何の力も

持たない僕を信じて力をくれた英雄、小さい時から不器用ながらも、“無個性”だった僕を

守ろうとしてくれた幼馴染、何より!自分のことは後回しで、いつも周りにばっか気を

回してる彼の、彼らの期待に応えたい!」

焦「ッ!!」

 

龍「アイツ…」

勝「なっ//」

 

観客席では、緑名の声が届き感心している黒牙と、ほんのりと耳が赤くなってる爆豪がいた。しかし、その声は2人にしか届かず、切島や上鳴、瀬呂たちが滅多に見られない爆豪の様子をからかいながら、理由を聞き出そうとしていた。

 

電「おぉ…珍しいな、爆豪が赤くなってやんのww」

勝「っるせ」

範「言葉に覇気がないなww緑谷に何か言われたか?」

勝「なんにもねーわ」

龍「勝己」

勝「…」

龍「お前らも、そう詮索してやるな」

電「わかったー」

 

出「だから、全力も出さないで1番になって、完全否定なんてふざけるなって今は

思ってる!」

焦「うるせぇ…俺は親父を…」

出「君の、力じゃないか!!」

焦「!!」

 

轟の脳裏に、まだ母と暮らしていた頃にテレビで見たヒーロー特集の、オールマイトの言葉と、母の言葉が浮かんだ。

 

オ(個性というものは、親から子へと受け継がれていきます。しかし、本当に大事なものは、

その繋がりではなく 自分の血肉だと…自分である!と認識することだと思います。

そういう意味もあって私はこう言うのさ。『私が来た!』ってね)

焦 母(でもヒーロにはなりたいんでしょう?いいのよ、お前は。血に囚われる必要なんて

ない。なりたい自分に、なっていいんだよ)

 

突如、轟の左から炎が吹き出す。

 

プ『これは…!?』

 

(戦闘に於いて熱は絶対使わねぇ)

天「使った…!」

 

オ「(まさか轟少年を…救おうと…!?)」

 

焦「勝ちてぇくせに……ちくしょう…敵に塩送るなんてどっちがふざけてるって話だ…」

 

その様子を見て、エンデヴァーが笑う。

 

焦「俺だって、ヒーローに…!!」

出「!!」

 

エン「焦凍ぉぉ!!やっと己を受け入れたか!!そうだ!良いぞ!!ここからが

お前の始まりだ!!俺の血を持って俺を超えて行き、俺の野望をお前が果たせ!!」

 

しかし、轟は反応しない。

 

エン「………」

 

オ「………」

 

プ『エンデヴァーさん、急に激励…?親バカなのね』

焦「…」

出「凄っ…」

焦「何笑ってんだ。その怪我で、この状況でお前……イカレてるよ。どうなっても俺は

知らねぇぞ」

 

2人は同時に構える。轟は、炎をそのままに足を踏み出し、氷を作る。緑谷は、体勢を低くしてフルカウルを発動させ、いつでも踏み込めるようにする。

 

セ「ミッドナイト!(さすがにこれ以上はもう)」

ミ「(彼の身がもたない!!)」

 

その様子に、セメントスは2人の間にいくつも壁を作り、ミッドナイトは腕の部分の服を破り、個性を発動させる。そんなヒーローたちの様子も気にせず、緑谷は轟の方へと跳ぶ。

 

出「(なるべく近くで…ありったけを…!)」

焦「ありがとな、緑谷」

 

轟の個性と緑谷の個性がぶつかり合い、巨大な爆発が起こる。

 

セ「威力が大きけりゃ良いってもんじゃないが……すごいな……」

プ『今の何…?お前のクラス何なの……』

相『今まで散々轟の個性で冷やされたのが瞬間的に熱され膨張したんだ』

プ『それでこの爆風て…どんだけ高熱だよ!ったく何も見えねーよ。オイ、これ勝負は

どうなった…』

ミ「っー…!」

 

だんだん煙が晴れ、赤い靴が現れる。

 

オ・エン「「!!」」

 

そして、完璧に煙が晴れる。緑谷は入り口そばの壁で気絶しており、ステージ上に立っていたのは、周りを氷で囲み、吹き飛ばされないようにしていた轟だった。

 

ミ「緑谷くん…場外」

焦「ハァハァ…」

ミ「轟くん…3回戦進出!!」

 

「緑谷、煽っといてやられちまったよ…」

「策があったわけでもなくただ挑発しただけ?」

「轟に勝ちたかったのか負けたかったのか…」

「何にせよ、恐ろしいパワーだぜありゃ」

「騎馬戦までは面白い奴だと思ったんだがなァ」

 

龍「轟は成長の余地がある。育てたら面白そうだ」ボソッ

勝「…」

 

黒牙が呟いた言葉を聞き、爆豪がむすっとする。

 

ーリカバリーガール 出張保健所ー

龍「リカバリー」

リ「お前さんか」

龍「出久の様子は?」

リ「まだ起きていない」

龍「そうか…」

リ「この子はいつもこんな風なのか?」

龍「…ああ」

リ「この子が起きたら伝えておいてくれ。この右手は、決して治らない。一生、この歪な形の

ままだと」

龍「わかった」

 

しばらく沈黙が続く。が、黒牙がリカバリーガールへ言葉を紡ぐ。

 

龍「リカバリー、今回は俺がこいつの怪我治すよ」

リ「いいのか?」

龍「ああ」

リ「それじゃあ、頼んだよ。アサルト」

龍「おう」

 

リカバリーガールは、部屋から出て行く。その様子を見た黒牙は、息を吐き出す。無意識のうちに体がこわばっていたようだ。

 

龍「『回復』」

 

そして、緑谷へ黒牙が手をかざす。すると、そこから暖かな光が溢れ、緑谷の傷が完治する。

 

龍「……頼むから、もうこんな無茶はしないでくれ。こんなんじゃ、前みたいに心臓が

いくつあっても足りねーよ…俺はもう、目の前で大切なやつを失いたくねーんだ。」

 

静かな部屋へ響いた声は、黒牙本人と、ドアのそばを通りかかった轟だけが知っている。

 

第2試合…

飯田と塩崎の試合。開幕と同時に、飯田が塩崎にレシプロバーストを入れ、塩崎が気絶して終了した。

 

第3試合…

常闇と芦戸の試合も同じようなものでやはり常闇の黒影によって何度も場外まで持っていかれて酸攻撃もまともにできずに場外リタイア。

 

第4試合…

爆豪と切島の試合。これは切島が持久戦をさせないために体を最大限硬化させて爆豪に挑んでいき、そのタフネスで耐えながらも仕掛けていたが、爆豪の爆破がそれを上回って気張り続けていた身体も耐えることが出来ずに最後には「死ねぇ!!」という言葉とともに爆破を食らってダウンしてしまった。

 

これによって、ベスト4の四人が揃った事になった。



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15話 雄英体育祭・トーナメント(轟vs飯田、爆豪vs常闇)

第3回第1試合…

轟と飯田の試合。飯田がレシプロバーストで仕掛けるものの、轟により凍らされ、降参したため、轟の勝利。

 

第2試合…

爆豪と常闇の試合は、終始常闇の防戦一方だった。緑谷は、その理由にすぐ気がついた。

 

出「かっちゃん……無意識に常闇君の弱点を分かってる」

 

そう、常闇の弱点は炎、光と光る物なのだ。闇を保つことが出来ずにどんどんと黒影が弱くなってしまうのだ。だからたとえ暗闇の中でも光系の攻撃を受けてしまえばすぐに弱体化してしまう。そこをどう克服するのかが今後の常闇の修行次第だろう。そしてあっという間にフラッシュをくらってしまい、爆豪に押さえつけられる反対の手で爆破をし続けられてしまい降参した。

 

ミ「常闇君、降参!よって勝者、爆豪君!」

プ『これで決勝に出場する選手が決まったぁ!』

 

ー観客席ー

飯田side

天「緑谷君!」

龍「おかえり」

出「ただいま」

出「飯田君、なんかテンション高くない?」

天「ん?そうか?」

お「うん」

天「実は…」

 

回想…

天・母『天晴がヴィランに……!!』

天「…は?」

 

母さんからかかってきた、兄さんがヴィランにやられたという知らせ。僕は理解に時間がかかる。信じたくなかったからだ。

 

天「兄さんは!無事なのか!?生きてるんだよな、母さん!!」

天 母『天晴は怪我してるわ…!全然無事じゃないわよ!こんなことならヒーローに

なんて…』

天「どういうことだ!?と、とにかく、僕も直ぐに病院にいく!いまどこの病院に

いるんだ!?」

 

僕は母さんに兄さんの安否を訪ねるが、わかったのは怪我をしてることと、母さんがとても動揺していることだけだった。こうしてはいられない、直ぐにでも兄さんの元に向かわねば!!

 

天 兄『なにいってんだ天哉!お前まだ競技の最中だろ!』

 

電話口から母さんではない声が聞こえて、僕を叱る。なんでだ…この声は―――

 

天「兄さん!?天晴兄さんなのか!?どういうことなんだ……兄さんがヴィランに

やられたのにその兄さんが電話に!?」

天 兄『落ち着け、天哉!俺は死んじゃいない、母さんが大袈裟過ぎるだけだ』

天 母『大袈裟なもんですか!大事な息子が大怪我したのよ?心配するじゃない!!』

天 兄『わかったよ、心配かけてごめんよ母さん。でもこの通り、大した怪我じゃない

から!』

 

動揺している僕を尻目に、母さんと兄さんは電話口で言い合いをする。兄さん、思ったより元気そうだ……良かった…!

 

天「兄さん、説明してもらってもいいかな?」

天 兄『ああ、どこから話すかな―――よし、最初から順序立てて話そう』

天「ならそれで、よろしく兄さん」

 

僕は兄さん説明を求め、兄さんがそれに答える。さあ聞かせてもらおう、なにがどうなったのかを…

 

天 兄『ことのきっかけは、今から1週間くらい前、うちの事務所に1本の電話が入って

きたんだ。相手先はなんとあのオールマイト事務所!内容としては俺らの

活動拠点のうちのひとつ、保須市に凶悪なヴィラン、ヒーロー殺しが出没する

可能性が高いから警戒するように、ってものだったんだ。それに出没するのは

路地裏なんかの人目につかない場所だとか、個性の特徴だとか、具体的な出没の

日にちとか、詳しく教えてくれたんだ。超一流ヒーロー事務所ともなると、

調査力も凄いんだなって思い知らされたよ。それで、そのアドバイスに従って

4人1組の警戒態勢で巡回をしていたんだか、ホントに現れたんだよ、ヒーロー

殺しが!発見した途端に戦闘になってな、ホントにイカれたヴィランだったよ。

直ぐに警戒中だった他の相棒連中にも連絡して、チーム韋駄天の総勢60名近くの

数で迎え撃ったんだ。だが非常に凶悪かつ強力なヴィランでな、特にスピードが

半端なかった、囲まれないように立ち回りながら、1人負傷させられたよ…

その時に相棒を庇って俺もやられちまってな。結局、数の利があったから負けは

しなかったんだが、逃げられたよ……」

 

兄さんはホントに最初から話してくれた。そんなことが起きていたなんて……

 

天「でも兄さん、怪我したんだろ!?大丈夫なのか!?」

天 兄『ああ、医者が言うには特に後遺症とかも残らず、ひと月くらいで治るとのことだ』

天「ああ、良かった…!兄さんが再起不能になっていたらと思うと、ゾッとするよ」

天 兄『警戒してなかったら確かに危なかったな……だが、怪我が治ったら次こそは

ヒーロー殺しを捕らえてやるさ!』

 

兄さんはそこまで重症ではないようで、再起とリベンジに燃えていた。

 

天「ああ、兄さんならきっと出来るよ!なにせ兄さんはインゲニウムだからね!」

天 兄『ありがとうな、天哉。お前もこのあと試合あるんだろ?病院のベッドからテレビで

応援してるぞ!頑張れよ!』

天「ありがとう、兄さん!兄さんに恥ずかしくないように頑張るよ!!」

天 兄『おう』

回想終了…

 

天「ってことがあったんだ」

お「やからテンション高いんやね!」

天「ああ、そうだ」

龍「アレか」

天「む?もしかして兄さんの事務所に電話をかけたのは君か?」

龍「ああ。気づいてたのに見逃せねーし」

天「ありがとう!君のおかげで兄さんが助かったよ!」

龍「人助けはヒーローの基本、だからな」

天「それでもだ!」



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16話 雄英体育祭・トーナメント(決勝戦 爆豪vs轟)

ー轟 控え室ー

コンコン

焦「どうぞ」

龍「よっ!」

焦「黒牙か…どうした?」

龍「んー ちょっとな」

焦「?」

龍「轟さ、出久との試合で炎使ったろ?」

焦「ああ」

龍「もしもまだ迷ってんなら、その気持ちを捨てずに抱えてろ。いつか、その気持ちも、

報われるから」

焦「?」

龍「じゃ、次の勝己との試合も頑張れよ」

焦「あ、ああ」

 

轟はしばらく悩んでいたようだが、試合の開始時刻が近づいてきているため、部屋を出た。

 

プ『さー、ついにやって来たぁ!!雄英体育祭1年の部、決勝戦!!派手な個性で勝ち

上がって来た、ヒーロー科、爆豪 勝己!対するは、これまでの試合で実力の差を

見せつけて来た、ヒーロー科、轟 焦凍!今回はどんな試合を見せつけて

くれるのか?!』

 

プレゼントマイクの言葉とともに入場してくる2人。爆豪はどこか緊張した面持ちだが、相変わらず不敵な笑みを浮かべている。それに対し轟は、いつものような涼しげな顔だが、その瞳は闘志をうつし、光っていた。

 

プ『START!!!』

勝「オラァッ!!」

BOOM

 

開始と同時に爆豪が爆破を仕掛ける。が、軽々と避けられる。それを追いかけ爆破を仕掛ける爆豪。

 

勝「避けてばっかじゃ勝てねーぞ、半分野郎!!」

焦「俺はもう、半分野郎じゃねぇ」

 

轟の左半身から炎が出る。

 

勝「ハッ そうかよっ!!」

BOOM

 

再び爆破を仕掛ける。轟は炎で応戦する。しかし、今まで左の練習をしてこなかったのが仇となったのか、轟が押され始める。

 

焦「クッ」

勝「どうした?!そんなんじゃ俺に勝てねーぞ!」

 

氷も使い攻めていくが、やはり氷と爆破は相性が悪く、なかなかうまくいかない。それをじれったく思ってる轟の耳に、爆豪の声が入ってくる。

 

勝「なんで龍生はこんな奴に目をつけてんだか」

焦「なに?」

勝「龍生が言ってたぜ。“轟は成長の余地がある。育てたら面白そうだ”ってな」

焦「黒牙が…?」

 

黒牙が言ったと言う言葉を聞いた途端、轟の個性の威力が上がる。

 

焦「俺は、お前に勝つ。そして、あいつと戦う権利を手に入れる!」

勝「勝つのも、あいつと戦うのも、俺だぁ!!!」

プ『おーっと?!ここで2人の個性の威力が上がる!ここにいても吹き飛ばされそうだぜ!』

 

プレゼントマイクの言う通り、2人の強個性の衝突により、ステージ上に、暴風が発生していた。

 

数分後…

勝「ハァハァ…」

焦「…」

 

しばらく攻防が続き、肩で息をしている2人。

 

勝「おい、轟」

焦「なんだ」

勝「そろそろ終わらせよーぜ」

焦「その意見には賛成だ」

 

と、急にステージの温度が下がる。爆豪も爆風で飛び上がる。

 

勝「『榴弾砲着弾』!!」

焦「『膨冷熱波』」

ドカァン

プ『なんだ?!何が起きた?!』

相『おそらく、2人の個性が衝突したことにより、巨大な爆発が起きたのだろう』

プ『解説サンキュー!イレイザー。さぁ、勝敗はどうなった?!』

 

ステージ上に広がっていた煙が晴れる。そこには、壁に衝突し気絶した轟と、肩で息をしながらもしっかりと立っている爆豪がいた。

 

ミ「轟君、場外。よって勝者、爆豪君!」

プ『今までで1番続いた決勝戦!!その勝者は、爆豪 勝己だぁ!!!』

ワァッ

プ『よって、1-A 黒牙 龍生と戦うのは、同じく1-A 爆豪 勝己!特別枠決勝戦は、20分後に

始まるぜ!』

 

ー観客席ー

出「かっちゃんが勝ったってことは…」

龍「俺の相手は勝己か」

鋭「黒牙と戦うのはバクゴーかぁ」

龍「(アレからどれだけ成長したか、見せてもらうぜ?勝己)」

 

黒牙の口角は、上がっていた。



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17話 雄英体育祭・トーナメント(特別枠決勝戦 爆豪vs黒牙)

20分後…

プ『さぁて、雄英体育祭・トーナメント 特別枠決勝戦!1-A 黒牙 龍生へのチャレンジャーは

同じくA組 爆豪 勝己!!』

 

2人が向かい合う。

 

勝「今度こそお前に勝つぞ、龍生!」

龍「やれるものなら、やってみろよ。勝己」

プ『START!!!』

勝「オラァッ」

BOOM

龍「『完全なる立方体』」パチン

 

黒牙の周りに『完全なる立方体』が形成され、爆豪の攻撃が弾かれる。

 

龍「『神器』霊槍シャスティフォル第5形態『増殖』 『炸裂する刃雨』」

勝「チィッ」

BOOM

 

麗日戦で見せたように、全て爆破する爆豪。

 

龍「…流石だな、勝己」

勝「おかげさまでな。なぁ、龍生。アレ使ってこいよ」

龍「いいのか?」

勝「ああ。せっかくだからな」

龍「わかった。『魔神化』タイプ『魔神王』」

 

『魔神王』となった黒牙に、爆豪が襲いかかる。

 

勝「死ねぇ!!」

BOOM

龍「…右の大振り」

 

戦闘訓練の時のように、背負い投げをされ、場外に飛ばされかけるが、爆風により、ギリギリで止まる。

 

勝「あぶねっ」

龍「やっぱすぐには終わらないか」

勝「あたりめぇだ!!」

 

電「勢いありすぎじゃね?」

鋭「緑谷と同じようにしてるはずなのに、吹っ飛びの距離が違いすぎるだろ…」

出「龍君と同じ威力を出せたらすごいよ…なんかもう、色々と規格外だから」

 

龍「攻撃 右 10、左 7」

勝「『徹甲弾 機関銃』!」

 

爆豪の攻撃により、全て消され、煙が出る。そして、煙が晴れた時、そこに黒牙の姿はなかった。

 

龍「悪いな、勝己」

勝「なっ」

龍「攻撃 右 5」

 

慌てて避けようとするものの、黒牙のスピードがそれを上回り、至近距離で獄炎を打たれたため、爆豪は場外へと飛ばされた。

 

ミ「爆豪君、場外!よって特別枠勝者、黒牙君!」

プ『これで全部の試合が終わったぜ!』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ミ「それではこれより表彰式に移りたいと思います!」

 

ミッドナイトがそう宣言すると、拍手が沸き起こる。飯田・常闇・轟・爆豪が表彰台に登っている。ミッドナイトは、話を進めていく。

 

ミ「それではメダル授与式を行います。当然授与するのはもちろんこの人!」

 

その瞬間、どこからともなくオールマイトが式場へと飛び出てきて、

 

オ「私がメダルを持ってやってk ミ「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」……」

 

オールマイトとミッドナイトの声が被ってしまい、微妙な空気になってしまうのはある意味で様式美である。そしてオールマイトは咳ばらいをしながらも、メダルを持ちまずは飯田・常闇へ渡していく。

 

オ「常闇少年、おめでとう!君は強いな」

踏「勿体ないお言葉……」

オ「だが、個性に頼り切りな場面が多かった。これからはもっと地力を鍛えていきな

さい。そうすればもっとうまく立ち回ることが出来るだろう」

踏「御意……」

オ「そして飯田少年、今回は惜しかったな!」

天「ありがとうございます!」

オ「もっと個性の訓練をすれば、レシプロの使用時間も伸びるだろう!頑張れ」

天「はい!」

 

次に、轟へと渡していく。

 

オ「轟少年!だいぶ顔がスッキリしてるな!」

焦「緑谷のおかげです。あいつと戦って、ちゃんと家族と向き合っていきたいと思いました」

オ「よかったね。これからも頑張ってくれ」

焦「はい」

 

飯田・常闇・轟へのメダル授与が終了して、今度は爆豪の前へと立つオールマイト。オールマイトは爆豪の肩に手を置き、

 

オ「爆豪少年、優勝おめでとう。そして、黒牙少年との戦い、惜しかったね」

勝「…それ、龍生にも言われたっす」

オ「そうか。だが、君は素晴らしい個性があるし、ライバルだっている。今回の敗北を

糧に頑張ってくれ」

勝「おう」

 

メダル授与式は終了して閉会式に移行する。オールマイトは会場中を見渡しながら叫ぶ。

 

オ「さぁ!!今回は彼らだったわけだ!!だが皆さん!この場の誰にもこの場に立つ

可能性があった!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていく

その姿!次世代のヒーローの卵達は確実にその芽を伸ばして成長をして前へと

進んでいる!」

 

そんなオールマイトの言葉でこの雄英体育祭に挑んだ全生徒達は心を震わせる。そうだ、まだ学校在学中はあと2回チャンスがある。それまでにさらに先へと強くなっていこうという気概を感じられる。オールマイトは生徒達のその決意の表情を見て満足そうに頷き、

 

オ「てな感じで最後に一言!」

 

来るかと、ヒーロー達も生徒達も身構える。そして、

 

オ「皆さんご唱和ください! せーの!!」

「プルス」

「プル」

「プルスウル」

オ「お疲れ様でした!!」

「プルス……え!?」

「ええ!?」

「それはないでしょオールマイト!?」

 

と、見事に最後の締めを期待通りにできなかったオールマイトがその後に謝る光景が印象的だったと緑谷は思った。



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番外編 みんなで遊ぼう!
18話 駅前に集合&追加設定


雄英体育祭後…

着替え終わり、教室へ戻ってきた緑谷たち。教室には、先に戻ってきていた黒牙が、携帯を見ていた。

 

勝「龍生」

龍「おー お疲れさん」

鋭「さんきゅ!」

龍「突然なんだけど、明日空いてる人いる?」

出「空いてるよ?」

勝「俺も」

電「空いてるぜ!」

三「急にどうしたのー?」

龍「『今日の打ち上げみたいな感じで遊んできたら?』って連絡がきたんだ」

出「?だれから?」

龍「俺の同居人」

梅「女の子?」

龍「ああ。で、もしみんなが空いてるならそいつも一緒に遊園地とかにでも行こうかと」

透「行く!」

電「いこーぜ!」

龍「なら、全員参加でいいのか?」

A『うん!/ああ』

龍「じゃ、駅前に9時集合でいいか?」

焦「いいんじゃないか?」

龍「それじゃ、また明日。出久、勝己、帰るぞ」

出「う、うん。今行く!」

勝「龍生、待てよ!」

 

翌日…

ー駅前ー

緑谷が爆豪とたまたま偶然途中であった轟と飯田と駅前に着くと、黒牙を除く全員が揃っていた。

 

お「おはよう!デク君、爆豪君、飯田君、轟君!」

出「おはよう、麗日さん」

百「黒牙さんと一緒じゃないんですね」

天「どうやら少し遅れてくるようだな…」

 

と、話していると黒牙が一人の少女と一緒に駆け寄ってきた。

 

龍「よ!はえーな、お前ら」

勝「龍生、そいつ誰?」

龍「昨日行ってた同居人。ほら、神輪。挨拶して」

神「メリオダスと一緒に暮らしてる天月 神輪です。よろしくお願いします」ニコリ

A『メリオダス?』

龍「あー 俺のことだわ。気にしなくていい」

電「ていうかよ、その背中のって…」

龍「ああ。羽だな」

A『なんで?!』

龍「こいつの個性」

出「そうなんだー。僕は緑谷出久。龍君の幼馴染だよ」

 

緑谷をはじめとして、全員が天月に自己紹介を始める。

 

神「みなさん、今日はよろしくお願いします」

 

 

 

天月 神輪(あまつき しんり)

 

誕生日:6月12日

 

身長:150cm

 

個性:癒し…死んでさえいなければ、どんな傷でも治せる。副作用や許容量オーバーなどはない。

 

友達…ディアンヌとエレインの技が使える。黒牙の個性『神器』で出したディアンヌの神器・戦鎚『ギデオン』も使える。副作用や許容量オーバーなどはない。

 

不老…13歳で発現した。老いることがない。ただし、不死ではないため、命に関わる傷を負えば死ぬ。

 

言霊…言葉を操る。普段は発動しないが、意識して言葉を発すると、対象者はその言葉に従ってしまう。(この個性を使った時の言葉『』)

 

本名は、『柏出 リツキ』。両親に捨てられたため、この名前を嫌う。本名は黒牙しか知らない。16歳。少し緑がかかった銀色の腰までの髪に、目にかかるくらいの長さの前髪。両目とも水色で、女神族の文様が浮かんでいる。背中には、二対の純白の羽がある。エリザベスそっくり。エリザベスの生まれ変わり。前世の記憶はないが、たまに“エリザベス”のように振る舞ったりする。雄英関係者を除くと、唯一の黒牙の前世を知る者。黒牙のことは、「メリオダス」と呼んでおり、黒牙とともにオールマイト事務所の二階に住んでいる。料理上手。心根は優しく、大人しい。意志が強く、一度決めると、なかなか意見を変えない。代償なしで大傷も治せる『癒し』と、言葉を操る『言霊』を持っているため、オール・フォー・ワンに狙われ、逃げていたところにパトロールをしていた黒牙に遭遇し、一緒に暮らすこととなった。それ以来、黒牙にとても懐いてる。黒牙と出会ったのは3年前。その事もあり、黒牙から外出禁止と言われている。例外は、黒牙と出かける時。基本的に服は、アニメ「七つの大罪 戒めの復活」の、イスタール後の服。ヒーロー科に入っているものの、本人はヒーローになるつもりはないため、ヒーロー名やコスチュームはない。黒牙からは「神輪」または「エリザベス」、オールマイト事務所のヒーローたちからは「神輪ちゃん」、雄英高校ヒーロー科1−Aからは「天月」「天月さん」「神輪」、「神輪ちゃん」と呼ばれている。黒牙の影響か、緑谷と爆豪のことを「出久」「勝己」と呼んでいる。黒牙がこの名前をつけた。『天月』は“メリオダス”が始めて“エリザベス”に出会い恋心を自覚した時に、“エリザベス”の存在がまるで、決して手の届かない天で輝く月のように感じたから。『神輪』の『神』は『女神族』から、『輪』は『永劫の輪廻』からきた。

 

黒牙 龍生

 

誕生日:7月25日

 

身長:152cm

 

16歳。天月のことになると、雰囲気が鋭くなる。場合によっては、敵意や殺意が丸出しになる。基本的に彼女のことは「神輪」と呼ぶが、たまに「エリザベス」と呼ぶ。唯一天月の本名を知っている。天月の名前をつけた張本人。他者が、天月のことを「エリザベス」と呼ぶこと、天月以外に「メリオダス」と呼ばれることを嫌う。

 

優先順位

1. 天月

2. 緑谷、爆豪

3. 他のA組メンバー

4.根津校長、リカバリーガール、オールマイト、イレイザーヘッド

5. 残り



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19話 遊園地到着

皆さん、あけましておめでとうございます
不定期更新にはなりますが、少しずつ投稿していきたいと思いますので、今年もよろしくお願いします

では、19話へどうぞ


三・透「「ついたーーー!!」」

電「ひろっ!」

龍「先輩がここでバイトしてんだ。で、ここのチケットくれたからお前らを誘ったんだ。

息抜きに丁度いいしな」

範「サンキュー!黒牙」

龍「さて、どうする?この間の体育祭で色々注目されてるだろうけど」

天「いくつかのグループに別れて回ろう!」

出「そうだね」

お「せっかくだし、仲の良い人でグループになる?」

焦「…それがいい」

 

1グループ:黒牙・天月・緑谷・飯田・麗日・轟

2グループ:爆豪・切島・上鳴・瀬呂・常闇・峰田

3グループ:青山・口田・障子・尾白・砂藤

4グループ:芦戸・蛙吹・耳郎・葉隠・八百万

 

龍「それじゃあ、何かあったら連絡しよ」

神「それなら、それぞれのグループのリーダーを決めたら?」

梅「そうね。その方が連絡を取りやすいかもしれないわね。ケロケロ」

龍「じゃあ、1グループは飯田、2グループは勝己、3グループは尾白、4グループは八百万。

   これでいいか?」

百「いいと思いますわ」

天「今は9:30ぐらいだから、16:00にここに集合だ!では解散!」

 

1グループ…

焦「まずどこに行くんだ?」

出「せっかく来たんだし、あれ乗ろうよ!」

 

そう言って緑谷が指さしたのは、ジェットコースターだった。

 

天「そうだな!」

お「じゃあ行こー!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

神「楽しかったね」

龍「そーだな」

神「次はどうする?」

龍「んー…お前ら行きたいとこある?」

お「お化け屋敷!」

龍「んじゃ決定」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

龍「腹減った」

出「言われてみれば確かに」

天「もう12時をすぎている!昼にしよう!」

焦「あっちにフードコートがあるらしいぞ」

お「そーなのー?」

焦「ああ。あそこの看板に書いてあった」

神「それじゃあ行きましょう」

全『賛成!』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

神「おいしかった」

出「次はあれに乗ろうよ!」

龍「元気だなー、出久」

出「うん!みんなと来れたのが嬉しいんだ!」

天「うむ!そうだな!」

焦「早くしないと時間がなくなるんじゃないか?」

お「そうやね!せっかく来たんやし全部回りたい!」

龍「じゃあさっさと行こーぜ。見た感じ、あんま並ばなくても乗れそうだし」

神「うん」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

出「楽しかったー」

龍「そーだな」

焦「次はどこに行くんだ?」

天「なら、 「キャアッ!」 なんだ?!」




誤字脱字等ありましたら、ご指摘お願いします


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20話 敵退治

続けて投稿します


龍「チッ 敵だ!お前らはそこで神輪と待っててくれ!」

 

そう言って黒牙が走り出す。しかし「待っててくれ」と言われた緑谷たちも走り出す。

 

龍「出久!?」

出「いやだ!」

龍「こんな時にわがまま言うな!」

出「わがままなんかじゃない!」

焦「黒牙、俺たちはヒーローになりたいんだ」

お「困ってる人を見捨てるなんてできないよ!」

天「それに敵がいるなら、一人よりも複数人の方が楽だろう!」

龍「あー もう!わかった!『アサルト』の名においてお前たちの個性使用を許可する!

   ただし!救助や避難にだけだ!いいな!」

出・天・お・焦「「「「うん!/ああ!」」」」

龍「神輪は他のグループへの連絡を頼む!」

神「わかったわ!」

龍「見えた!」

 

到着した場所はジェットコースターの前だった。そこでは、3人の敵が一人の女性を人質にとって逃走しようとしていた。

 

「じゃあな!バカなヒーローども!」

龍「待て!」

「あぁ?」

「お、おい…あいつ、アサルトじゃねーか!」

「なんでこんなとこに?!」

龍「逃すわけないだろ」

出「みなさん!こっちです!」

天「我々の指示に従って!」

お「落ち着いて避難してください!」

焦「黒牙、こっちは避難完了した!」

龍「よし!『神器解放』!!」

「「「?!?!」」」

 

黒牙がロストヴェインに手をかざし、『神器解放』と言うと、黒牙の姿が揺らめいた。すると、敵を囲むように黒牙が何人も現れる。

 

龍「人質は返してもらうぞ」

「なぁっ?!」

 

人質を捕らえていた敵のそばに現れた黒牙が、人質の女性を保護する。

 

龍『 『付呪・獄炎』!!』

「「「ぐわぁぁ!!」」」

龍『おとなしく捕まってもらうぞ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ありがとうございました」

 

黒牙に助けてもらった女性が礼を言う。

 

龍「俺はヒーローとして当然のことをしただけだ。気をつけて帰れよ」

「はい」

 

女性が帰っていく。

 

出・勝「「龍君!/龍生!」」

龍「おー 出久、勝己」

勝「敵は?」

龍「警察に連れて行ってもらった」

勝「チッ 遅かったか…」

龍「?」

出「かっちゃん、龍君と一緒に戦いたかったんじゃないかな?」

龍「そうなのか?」

勝「ちげぇ!!」

鋭「まあまあ落ち着けよ、バクゴー」

電「黒牙、コイツさー 神輪ちゃんからの連絡聞いてスッゲー顔色変えてたぜ?」

龍「心配してくれたのか」

勝「だから、違う!」

龍「サンキュー 勝己」

勝「…フンッ」

 

そっぽを向く爆豪。しかし、その耳は赤くなっていた。

 

百「みなさんが無事でよかったですわ」

梅「そうね、ケロッ」

神「メリオダス 、もうそろそろ帰らないとこの子たちの親が心配するわ」

龍「もうそんな時間か」

神「ええ」

龍「よし、んじゃ帰るか」

A『うん!/ああ』

 

ー駅前ー

龍「ここで解散だ!また明日な!」

出「またねー!龍君!」

三「バイバーイ!」




追加設定に少し追加しました。


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保須市襲撃事件編
21話 ヒーローネーム


雄英体育祭から数日後…

ー1-Aー

三「やっぱり結構声かけられたよー!」

電「俺も俺も!」

範「俺なんて小学生の奴らにドンマイコールされたぜ?」

電「ドンマイw」

 

そんな感じで教室の中は終始楽しそうな空気が流れていたが、

 

相「おはよう」

 

相澤が教室に入ってきた瞬間に全員はすでに自分の席について無駄口を一切しないという徹底ぶり。相澤の教育が実に忠実に行き届いている証であった。そして、教室に入ってきた相澤の腕から、包帯が取れていた。

 

梅「先生、包帯取れたのね。よかったわ」

相「まぁな。ばーさんの処置が大げさすぎるんだよ。本当なら雄英体育祭の時にはもう

包帯はとっても良かったほどだからな」

 

それが本当なのか、強がりなのかは、本人しか知らないことである。

 

相「それより、今日やる“ヒーロー情報学”は少し特別な内容だ。気を引き締めていけよ?」

 

そう話す相澤の言葉にまたしても教室中は緊張をする。ヒーローの法律関係を学ぶのか、はたまた小テストをするのか……学が少し疎かな生徒達はそれで何が来るのか戦々恐々としながら次に相澤の話す次の言葉を待っていた。

 

相「今日のヒーロー情報学は……『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

全『胸膨らむやつきたぁぁぁぁぁ!!』

 

それによってまたしても賑やかになる教室。だが、その騒ぎは相澤の睨みで一瞬で冷めて静かになる。だが、ヒーロー名。それはヒーローとして活躍するためには必須な項目。いい加減な名前を付けてしまったら生涯その名で呼ばれ続けることになるから大事な事である。相澤が話す。プロヒーローからのドラフト指名の事に関して。今回はまだ興味だけであるが将来的には使えないと判断されれば切られる事もあるという。「大人は勝手だ」と峰田が思わず愚痴るが、それは世の常識なのだから仕方がないのである。

 

相「ま、そんな感じでこの間に話したプロからの指名の集計が……これだ」

 

電子黒板にそれが表示される。やはり、トップに入った爆豪や轟、飯田などが多く、緑谷も5か所ほどからきていた。

 

相「まぁ各自で思うことはあるだろうが、それも踏まえて全員にはこれから職場体験を

してもらう。USJでもうすでに味わったと思うが、改めてヒーローとして

どうやるのかを学べるいい機会だ」

鋭「そのためのヒーロー名なんすね!」

相「ああ。だから慎重に決めろよ」

ミ「そうよ!適当に決めると地獄を見るわ!」

 

そこにミッドナイトが教室に入ってくる。それから始まるミッドナイトのヒーロー名に関しての説明。ちなみに、相澤のヒーロー名は、プレゼントマイクに決めてもらったそうだ。

 

ミ「それじゃあ、決まった人から発表してね」

全『(発表形式?!)』

 

そして、蛙吹や切島たちが発表し、残るは、緑谷・爆豪・飯田となった。

 

ミ「決まったかしら?」

天「はい!」

ミ「それじゃあ、飯田君!」

天「俺のヒーローネームは、”インゲニウム2号”です」

ミ「お兄さんの名前を継ぐのかしら?」

天「はい。兄は、俺の目標で憧れですので」

ミ「憧れの名を背負うのなら、責任は重いわよ」

天「覚悟の上です!」

ミ「いいわぁ、そういうの」

 

そして、飯田の発表に続くように、緑谷と爆豪も発表した。緑谷は”デク”、爆豪は”爆心地”と言うヒーローネームになった。

 

相「それじゃあ、職場体験の紙配るぞ」

 

全員の発表が終わって、相澤が、指名がきていた生徒にはそのヒーロー事務所が書かれた紙を、きていなかった生徒には受け入れ可能なヒーロー事務所が書かれた紙を配った。

 

相「明後日までに提出な。じゃ」

 

と言って、相澤は教室から出た。それに続いて、ミッドナイトも教室を出た。



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22話 職場体験決め

ー雄英高校 1-Aー

雄英高校1-Aの一同はコードネームもだいたい決まったので今度はどこに職場体験に行くのかを話し合っていた。

 

「デク君たちはどこにいこうとしているの?」

「うーん…まだここって場所は決めていないんだ」

「俺は、兄さんのところだ!」

「インゲニウム、復帰できたのか」

「ああ」

「そーなんやー」

「麗日さんはもう決まったの?」

「うん!”ガンヘッド”の事務所!」

「え!」

「思いっきり武闘派じゃねーか」

「君は、13号のようなヒーローを目指しているのでは?」

「うん、最終的にはね。でも、強くなればそれだけ可能性が広がるし、やりたいこと

だけしていちゃそれだけ見聞も狭まっちゃうからまずは自分にないところを見つけて

みようと思ったんだ!」

「そっか!うん、いいと思うよ。麗日さん、近接戦闘を鍛えたらきっと強くなると思う

から。一度でも相手に触れられればそれだけでどうにかできちゃうのにそこに

接近戦が加われば鬼に金棒だよ」

「やだなー、そんなうまくいくとは限らないですよー」

 

と、不意に上鳴たちと話していた切島が黒牙の方を向いた。

 

「そういや黒牙のヒーロー名は誰がつけたんだ?」

「ん?俺か?」

「おう」

「黒牙のヒーローネームは“アサルト”だっけ?」

「あんま聞いたことないよね、アサルトって言葉」

「俺がつけたんだ」

「黒牙が?」

「ああ。この名前な、昔呼ばれてた名前から取ったんだ。あんまいい意味じゃないけど、

 “突撃”とか“猛攻撃”の意味も持っているから、“お前ら敵を捕まえるヒーローの名前だ”って

 わかりやすいだろ?」

「そうなのか!」

「それと、俺自身への戒め、かな」

「戒め?」

「そう。俺は許されない罪をいくつも犯した。だから、それを忘れないようにするため。

 あとは…」

(たとえどこへ生まれ変わっても、オイラたち《七つの大罪》の団長はメリオダス、君だけだ)

(それに俺たち全員が団ちょの親友だぜ♪)

(だから忘れないで。僕たちのこと。エリザベスのこと)

「あいつらとの約束を守りきるため」

「あいつら?」

「うん。俺の仲間」

「そっかー。教えてくれてサンキューな!」

「どういたしまして」

 

そんなこんなで放課後になった。緑谷たちが帰るために教室のドアを開けようとすると、突然ドアが開き、かなりの低姿勢のオールマイトがいた。

 

「わわ私が独特の姿勢でやってきた!!」

 

オールマイトの登場に、緑谷は突然であったために、

 

「オ、オールマイト?どうしたんですか……?」

「まぁまぁ……それより少し君に用があるから来なさい」

「わかりました」

 

緑谷はそれでオールマイトについていく。そして、緑谷は人があんまり来ないところまで来たところで尋ねる。

 

「それで、どうされたんですか?」

「うむ。君にはプロヒーローから指名が来ていると思うが、私からたっての頼みで

よかったら行ってもらいたい場所ができたのだ」

「それってどなたの事ですか?」

「その人の名は”グラントリノ”。かつて私が雄英高校に通っていた時に1年だけだが私の

担任だった方だ」

「え!?それって、まさかオールマイトの師匠ですか!?」

「そうだ。そしてグラントリノは当然ワン・フォー・オールの事もご存知であり、私の

先代のワン・フォー・オール保持者であった人物の盟友でもあった」

「そんなすごい方がいたんですか!でも、僕は聞いた事がありませんよ?そのような

ヒーローの名前は……」

「なにぶんもうとうの昔に隠居したものだと思ったのだが、おそらく君の事を

雄英体育祭で見て興味を持ってくれたのだろうな……わ、私の指導不足を悟られたのか、

どうかは、分からないのだが……かつての名で指名してくるとか……こえぇ、

こえぇよ……」

 

次第に言葉が震えてきているオールマイトの姿に、緑谷はどんな恐ろしい人なのだろうと逆に興味を抱いていた。そんな事もあり出久はグラントリノの事務所の場所が書かれた紙を渡された。

 

ー教室ー

「やっときたか、デク」

「待っててくれたの?先に帰っててもよかったのに…」

「そんなこと言うなって」

「龍生の言う通りだ。早く帰ろーぜ」

「うん!」

 

職場体験当日…

 

「それじゃお前ら。コスチュームは無くすんじゃないぞ?」

『はーい!』

「伸ばすな!」

 

相澤に注意されながらも、各自でどこに向かうのか話し合っている。こうして、職場体験は始まった。

 

 

狂った歯車が回り始めるまで、あと少し…



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23話 職場体験1日目

ーオールマイト事務所ー

ガチャ

「おはよう」

「アサルト、おはよう」

「今日の予定は?」

「とりあえずパトロールだな」

「ん、了解」

「それと、明後日は保須市に行くぞ」

「保須?」

「ほら、今ってヒーロー殺しが出てるだろ?だからパトロールに行くそうだ」

「はぁ…」

「どうせしばらくは雄英も職場体験なんだろ?」

「まあ、そうだけど。あっちにもヒーローはいるだろ?なんで俺たちが?」

「まあまあ、人助けだと思って」

「…わかった」

「じゃあ、パトロール行くか」

 

と、事務所のドアを開けて黒牙の先輩ヒーローが入ってきた。その片手には、携帯を持っていた。

 

「アサルト、今日は雄英に行ってきてくれるか?」

「なんで雄英?」

「イレイザーヘッドから電話が来てな、“アサルトに用事があるから呼んでくれ”と」

「イレイザーが?」

 

黒牙が訝しげに聞き返す。

 

「ああ」

「わかった」

「アサルト、明日は一緒にパトロール行くぞ」

「ああ」

 

すると、事務所に天月が入ってきた。

 

「メリオダス、もう行くの?」

「おう」

「気をつけてね?」

「わかってるよ、神輪」

 

黒牙に呼ばれた天月は、嬉しそうに笑った。

 

ー雄英高校 職員室ー

コンコン

「イレイザー、入るぞ」

ガチャ

「きたか」

「何の用だ」

「天月は?」

「神輪?あいつがどうかしたか?」

「聞いてないのか?」

「なにを」

「“天月を連れてこい”って」

「…初耳だぞ」半眼

「ハァ…連れてこい」

「わかった」

 

ーオールマイト事務所 二階ー

「神輪ー いるかー?」

「メリオダス。おかえり。はやかったね」

「イレイザーが、お前も連れてこいってさ」

「…いいの?」

「ああ。心配すんな」

「わかった。ちょっと待ってて」

 

「おまたせ」

「じゃ、行くぞ」

「うん」

 

ー雄英高校 職員室ー

「イレイザー、連れてきたぞ」

「ん」

「で?なんで神輪まで呼んだ」

「校長が天月もここに入れるという意見を出しててな、本人の意見を聞きたかったんだ」

「神輪を?」

 

黒牙の雰囲気が鋭くなる。

 

「ああ」

「なんで急にそんな話が出たわけ?」

「“USJの時に、ヴィラン連合に襲撃された。そこのボスに狙われていた天月も、狙われる

可能性がある。そうなると、ここにいたほうが守るのが楽だから”だそうだ」

「ヴィラン…連合?」

「…なんだ、話してなかったのか」

「ああ」

「メリオダス、なんの話?」

「ん?いや、ちょっとな」

「?」

「理由はわかった。神輪、お前はここに入りたいか?」

「メリオダスと同じ高校?」

「ああ」

「…人、いっぱいいる?」

「いるぜ。でも、怖い奴はいないよ」

「ホント?」

「俺がウソついたことあったか?」

「ううん」

「どうする?」

 

天月はしばらく思案する。そして、頷いた。

 

「行きたい」

「よし、じゃ、決定だな」

「校長には伝えておく。もう帰っていいぞ」

「頼んだ」

「…」ペコリ

 

夜…

「神輪、ほんとに大丈夫か?」

「うん。だって、メリオダスのクラスメイトなんでしょ?」

「まあな」

「ふふ、楽しみだね」

「ああ。そうだな」




設定を少し編集しました。


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24話 職場体験2日目

ー黒牙の部屋ー

「メリオダス…?」

 

黒牙の部屋に、天月が入ってくる。

 

「起きなくていいの?」

「ん…しん、り……?」モゾモゾ

「今日も仕事なんでしょ?朝だよ」

「わかった…」

 

黒牙が眠そうに起きてくる。

 

「朝ごはん、もう作ってあるよ。一緒に食べよう?」

「ああ」

 

「昼は、冷蔵庫にあるの適当に使っていいからな」

「わかってるわ。夜には帰ってくるんでしょう?」

「ああ」

「それじゃあ 夜ご飯、作って待ってるね」

「頼んだよ、神輪。行ってくる。留守番よろしく」

「ええ。いってらっしゃい」

「おう」

 

ーオールマイト事務所ー

「おー、アサルト。来たか」

「もう行くのか?」

「ああ」

「わかった。ちょっと待ってろ」

「ちなみに今日は、他のヒーローたちと演習だ」

「は?パトロールじゃなかったのか?」

「急に変更になったらしい」

「どこ?」

「フォースカインドさんだと」

「わかった……ん?どこだって?」

「フォースカインド事務所」

「フォースカインド…」

 

合同演習先がフォースカインド事務所だと聞いた黒牙が、何かを思い出そうとしている。

 

「どうした?アサルト」

「いや、確かクラスメイトの誰かがそこに行ってたような…(切島だったっけ)」

「ほぉー、クラスメイトか」

「ああ。まあいいや」

「準備できたか?」

「できた」

「よし、行くぞ」

「おう」

 

ーフォースカインド事務所ー

「こんにちはー!」

「おお、よく来た。アサルトも、遠出お疲れ」

「あざっす」

「え?黒牙?!」

「コラッ」

「いたっ」

 

黒牙が切島にチョップする。

 

「ここでは“アサルト”だぞ、烈怒頼雄斗」

「わりぃ。でも、なんでくろ、アサルトがここに?」

「こことうちの事務所で合同演習すんだと。聞いてねぇのか?」

「一言も」

「あらら」

「お、A組の黒牙じゃねぇか!」

「?だれだ?」

「B組の鉄哲 徹鐵、ヒーロー名は『リアルスティール』だ!」

「おー、そうか。俺はアサルトだ。よろしくな、リアルスティール」

「おう!」

「オラ、何してる!さっさと行くぞ!!」

「「オス!!」」

「おう!」

 

ー演習場ー

「それじゃあ始めるぞ!」

「「よろしくお願いしまーす!!」」

「じゃ、アサルト。説明頼む」

「任せろ。オールマイト事務所所属のアサルトだ。今日の演習の説明をさせてもらう。

  まず、―――」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「今日はこれで終わり!」

「「ありがとうございました!!」」

「烈怒頼雄斗、リアルスティール。おつかれ」

「アサルトもお疲れ!」

「アサルトー、帰るぞー!」

「わかった!じゃあ、また学校でな。頑張れよ」

「おう!」



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25話 職場体験3日目・前半

朝…

「アサルト、準備できたか?」

「ああ」

「メリオダス、もう行くの?」

「そうだよ。どうした?」

「私も行きたい」

「……は?」

「私も、保須市に行きたい」

「なんで急に」

「メリオダスの仕事の様子を、そばで見て見たいから」

「…ダメって言ってもくるんだろ?エリザベス」

「ええ」

「…わかった。ただし、絶対に俺のそばから離れるなよ」

「わかってるわ」

「つーことで、センパイ。神輪もくるそうだ」

「え…」

「まあ、アサルトのそばにいるならいいんじゃないか?」

「わかりました…よし、それじゃあアサルト、神輪ちゃん。行くぞ」

「ああ」

「ええ」

 

ー保須市ー

「よし、そんじゃあパトロール開始だな!」

「ん」

 

「キャァッ」

「今のは…!」

 

黒牙と先輩ヒーローが駆け出す。それに続いて、天月も2人を追う。

 

「!あれは」

「だ、誰か助けて…」

「アサルト!」

「わかってる!!」

 

3人が到着したところでは、五人組のヴィランが暴れていた。しかも、そのうちの一体は小さな子供を人質を取っている。途端に黒牙の雰囲気が鋭くなり、表情が消える。

 

「『神器』神斧リッタ『無慈悲な太陽』!」

「ぐわぁっ」

「あ、あいつは!!」

「アサルトデビル!」

「なんでこんなところにいんだよ!!」

 

“アサルトデビル”と呼ばれ、少し傷ついた顔をする黒牙だが、すぐになんでもないように振る舞う。そんな黒牙を、天月は心配そうに見ていた。

 

「大人しく人質を渡せ。そうすればすぐに楽にしてやる」

「ああ、渡してやるさ。死体になった後になぁ!!」

 

人質をとったヴィランが人質を殺そうと、攻撃を仕掛ける。が、今まですみの方で見ていた天月が前に出て、ヴィランへと言葉を発した。

 

「『やめなさい』!!」

「あ?」

「神輪!?」

 

すると、天月の言葉を向けられたヴィランの動きが止まる。

 

「な、なんだ?!」

「『その子をこちらに渡しなさい』」

 

ヴィランが大人しく人質を離す。人質だった子どもは、まっすぐ天月の方へと向かってきた。

 

「大丈夫?怖くなかった?」

「う、うん」

「ほら、お母さんが心配してるよ。戻って安心させてあげなさい」

「ありがとう、」ブルブル

「どうしたの?」

 

天月が訝しげに尋ねると、子どもは震えながら天月の後ろを指差した。天月が振り返ると、人質を取っていたヴィランが彼女へ向け、ナイフを振りかざしていた。

 

「あ…」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「お姉ちゃん、危ない!」

 

天月はその場から動けず、ナイフが刺さると全員が思っていた。が、ナイフは彼女に刺さる直前で弾かれた。

 

キィン

「なっ!?」

「…」

 

ヴィランと天月の間には、クナイのような小型ナイフを持った黒牙がいた。

 

「今、何しようとした…?」

「あ?」

「今、お前は、エリザベスに、何をしようとした?」

 

途端に黒牙からヴィランへ、殺気が向けられた。静かな、だけど確実に人を殺せそうな鋭い殺気が。そして、ヴィランを見る黒牙の目も、怒りが滲んでいた。しかし、殺気を向けられたヴィランは黒牙の目に浮かんだ感情に気づかず、ただただ震えていた。

 

「あ……あ…」ブルブル

「答えろよ。お前は俺の大切な奴に…エリザベスに何をしようとナイフを向けた?」

「メリオダス、もうやめてあげて」

「…エリザベス。お前はどっちの味方だ?」

「もちろん、メリオダスよ。でも私は、これ以上あなたがだれかを傷つけるのを

見たくないの」

「…」

「お願い…」

「……ハァ…わかったよ」

 

黒牙は殺気を消し、天月の方へ向き合った。そして、ほかのヒーローたちが敵を捕まえた。

 

「アサルト!」

「おー センパイ」

「お疲れ!」

「そっちこそ」

「まあ、お前ほど活躍してねぇけどな」

「ま、いいんじゃないか?それより腹減ったな」

「昼行くか?」

「いいですね」

「どこにする?」

「そうだな―――」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「そんじゃアサルト、また後でな」

「ああ」

 

午後からは、黒牙・天月、先輩ヒーローに分かれて見回ることになった。黒牙は天月とともに保須のパトロールを始めた。

 

夕方…

「メリオダス、そろそろ…」

「そうだな、連絡するか」

 

黒牙が連絡を取るために携帯を取り出すと、2人から離れた地で爆発音が鳴り響き、様々な場所から炎が上がった。

 

「神輪!」

「うん!」

「どこに行くんだい?」

「なっ!」

 

向かおうとした途端、2人の背後から声が聞こえ、黒牙が苦しみ始めた。その様子は尋常ではなく、天月は慌てて駆け寄った。

 

「ぐ、がぁぁぁあぁぁぁぁあぁ!!!」

「メリオダス!」

「ああ、よかった。僕のかけた呪いはまだ健在のようだね」

 

その場に天月の悲痛な声が響くが、場違いな声が2人に降り注ぐ。黒牙は、霞む視界の中でその人物を認め、目を見張った。

 

「な、んでお前が…ここ、に…?!」

「ひどいなぁ…まるで僕がここにいたらだめみたいな言い方じゃないか」

「オール・フォー・ワン…!」

 

そこにはオールマイトの宿敵であり、黒牙に呪いをかけたオール・フォー・ワン、その人がいた。

 

「久しぶりだね、龍生君、天月 神輪君。元気だったかい?」

 

その顔に、楽しそうな笑顔を乗せて。



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26話 職場体験3日目・後半

「オール・フォー・ワン…」ブルブル

「がぁぁぁあぁ!ぐっ カハッ」

 

オール・フォー・ワンに恐怖を抱えている天月は震えだす。しかし、いつもなら彼女を落ち着かせるために抱きつく黒牙は呪いにより、苦しんでいた。

 

「そんなに怯えられると、いくら僕でも傷つくんだけどなぁ…」

 

そう言いつつも、天月の怯える様子を、黒牙の苦しむ様子を見て、楽しそうに笑っている。

 

「なに、しにきたの…」

「いや?あの時君を逃したのはやっぱり惜しいと思ってね、迎えに来たんだよ」

「え…」

「さあ、僕と一緒に行こう。天月君」

「い、いや…」

 

天月が弱々しく抵抗するものの、オール・フォー・ワンは気にならないという風に彼女の腕を引っ張り、立たせる。しかしその時、黒牙からフラフラとだが立ち上がり、天月をオール・フォー・ワンから引き離し、守るように立ち塞がった。その様子には、流石のオール・フォー・ワンも驚き、大人しく腕を離した。しかしそれも一瞬のことで、興味深そうに見る。

 

「へぇ…まだ立ち上がれたのか」

「神輪は、俺が守る…絶対に、連れて行かせはしない…!」

「メリオダス…」

「でもさぁ、立ってるのもやっとだというのに、龍生君はどうやって彼女を僕から

守るつもりなんだい?」

「…」

「考えも無しに出てきたのかい?君も大概バカだね」

「それでも…俺は、こいつを守りたいんだ…!」

 

黒牙は、強い意志を宿した瞳でオール・フォー・ワンを見る。その目を見たオール・フォー・ワンは、しばらく思案していたが何かを決めたように顔をあげた。

 

「よし、龍生君。君が僕と一緒にきてくれるなら、天月君は諦めよう」

「俺?」

「うん。僕は君のことも欲しかったからねぇ。もし来るなら、彼女に手は出さない。

どうだ?いい案だろう?」

「俺、は……」

「メリオダス、ダメよ!貴方がいなくなるなら、私が行く!」

「天月君はこう言ってるけど、君はどうする?いや、どうしたい?」

「本当に、エリザベスに手を出さないのか」

「もちろん。これでも僕は義理堅いんだ。約束はちゃんと守るよ」

「…わかった」

「メリオダス?!」

「その代わり、絶対に手を出すな」

「交渉成立だね」

「少し、待っててくれ」

「わかった」

 

黒牙は、天月へと向いた。

 

「『神器』戦鎚ギデオン」

「メリ、オダス…?」

 

天月の方へと振り返った黒牙は、戦鎚ギデオンと小型ナイフを一本、彼女へ渡した。その瞳は光が宿っておらず、表情も消え、まるで“3000年前のメリオダス”のようだった。

 

「お前なら使えるはずだ。護身用として渡しておく。俺はもう、お前を守れないから」

「ッ!待って、待ってよ!私を置いて行かないで…!」

「じゃあな、エリザベス。いや、“柏出 リツキ”」ボソッ

 

そして、黒牙はオール・フォー・ワンと共に姿を消した。先輩ヒーローが戻ってくると、そこには黒牙から渡された『神器』戦鎚ギデオンと小型ナイフを抱きかかえ、泣いている天月だけがいた。のちに天月は、オール・フォー・ワンが現れた同時刻に、ヒーロー殺し ステインと脳無が現れ、現地にいたヒーローたちは、そっちの対処に追われていたと聞く事となる。先輩ヒーローの連絡により到着したヒーローや警察が黒牙を探したが見つからず、天月は雄英の校長により、ヒーロー殺しと遭遇したA組の3人と同じ病室へと入れられた。

 

 

そして歯車は回り始める…



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27話 職場体験・その後

ーとある病院ー

保須市にてヒーロー殺し ステインと遭遇、戦闘し負傷した緑谷・飯田・轟。身体検査を終え、病室へ戻る3人は、話しながら戻り、緑谷がドアを開け―――

 

「……え?」

「緑谷?」

「どうしたんだい?」

 

固まった。

 

「…ねぇ、飯田君、轟君。ここって、僕たちが入院してる病室だよね?」

「?ああ」

「誰かいたのかい?」

「なんで天月さんがここにいるの?」

「?」

「ほら」ビシッ

 

飯田と轟が緑谷に言われ、病室を覗くと、そこには、天月がベットに丸まり、眠っていた。その様子を見た飯田と轟も固まった。しばらくして、相澤が来た。

 

「おい、お前ら」

「!」ビクッ

「あ、相澤先生!」

「こんなとこで何してる」

「え、えっと…」

 

緑谷が恐る恐る天月を指差す。天月を見た相澤は3人がなぜ固まっていたかを理解した。

 

「とりあえず中入れ。なんで天月がここにいるかも、全部説明するから」

 

そう言って相澤は3人を病室に入れ、周囲に誰もいないことを確認し、ドアを閉めた。

 

「天月はしばらく雄英で預かることになった」

「雄英で?」

「ああ」

「でも、天月って確か…」

「ッ!相澤先生、龍君は?!龍君に何かあったんですか?!」

「そうなんですか!?」

「…あいつ……黒牙は…」

 

相澤は少し言い淀んでいたが、はっきりと言葉を紡いだ。

 

「…敵に連れ去られた」

「え」

「?!」

「連れ去られたって…どういうことですか!?」

「保須市にステインが出没した時、黒牙も保須にいた。だが、敵に遭遇。敵が天月を

  連れて行こうとしたため、天月を大事に思ってる黒牙が反抗した。そして、天月の

  代わりに黒牙が連れて行かれたそうだ」

「でも、龍君がおとなしくついていくわけが 相「お前は黒牙のなにを知っている?」 え」

「相澤先生、そんな言い方しなくても!」

「…いいんだ、轟君。龍君について、僕が知ってるのはあくまで2年から。それより前の、

  なんでヒーローになったかとか………龍君の家族が死んだときのことも、なにも

  知らないから」

「?!」

「黒牙君の家族が…死んだ?」

「そこから先は俺から話す」

「相澤先生が?」

「黒牙が連れて行かれた理由に、黒牙や天月の過去が関わってる。天月に関しては、

  起きるのを待つしかないが、黒牙からは、自分に何かあればお前たちに話してもいいと

  許可を得ている。だから、先に黒牙の過去を話す。このことはあの現場にいた

  ヒーローしか知らない」

 

そして、相澤は語る。過去最悪と言われた事件を。黒牙の心に深い傷を残して消えた、あの時のことを。そして、黒牙がなぜヒーロー名を“アサルト”にしたのかを。

 

 

 

*次から、相澤がナレーター(?)になります。



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