S級ヒーローはクロスオーバー枠 (arc)
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21撃目巨大隕石

『本日の「のっぴょぴょ~~ん 超常現象対策」の番組は、

 巨大隕石の襲来による避難勧告により放送が延期となりました。

 延期で済めばよいのですが、皆さま、S級ヒーローの活躍に期待しましょう!!』

 

 Z市に全長200mの巨大隕石接近。ただちに非難を!!

 テレビ、非常放送などの様々な放送や通信媒体から警報が鳴り響く。

 ヒーロー協会から出動要請を受けた鬼サイボーグ:ジェノスは落下予測地点に急ぐべく、ビルの上をその優れた性能を持つサイボーグボディで疾走していた。

 

 「オレの灼熱砲で対処できるのか」

 

 19歳の男子にとって、いかにサイボーグだったとしても、S級ヒーローという実力があったとしても、今回の隕石はデカ過ぎた。ビルの屋上で真下から見上げたそれは赤く、はるか上空にあるはずなのに目視できる大きさにジェノスは、逃げるべきか、または彼の最大火力で攻撃した後の対応など、行動を決めかねていた。

 

 「適当でええんじゃ」

 

 その場にもう一人、白髪白鬚の老人がいた。ジェノス同様に協会から要請を受けたシルバーファングという拳法家である。

 

 「結果は変わらん。それがベストじゃ」

 

 隕石の落下地点で、あ、これ、助からんかも。助っ人こないかのう。と考えているおじいちゃんだったりする。ジェノス君ぐらいは落下阻止を失敗しても逃がせれるじゃろうか。なんて十分人生を楽しんできたものとして、若者のために一肌脱ぐかと思っているのかいないのかは不明である。

 

 適当がベストか……なら

 

 「伏せていろ! この一撃にすべてをささげる!!」

 

 ジェノスの左手にある灼熱砲から最大出力の熱線が隕石めがけて解き放たれる。

 隕石を押し返している……ようにも思えなくもない威力だった。

 

 「だめ、か」

 

 エネルギー切れで倒れるジェノス。

 カツカツと二人に近づいてくる影があった。

 

 「じいさん、こいつのことを任せるぞ」

 

 頭部の肌はきらりと光り、白いマントをたなびかせたヒーローがやってきた。

 

 「シルバーファングさん、遅れました」 

 

 そしてもう一人、金髪碧眼、変わった模様のある鉢がね、白いマント。

 

 サイタマ先生……A級2位の黄色い閃光か。なぜ先生と一緒に?

 

 ジェノスは状況がいまいち理解できなかった。自分が師と仰ぐC級ヒーローのサイタマとA級ヒーローが同時に現れたこと、シルバーファングは差ほど驚いていないことに。シルバーファングはにっこり微笑み、任せなさいとジェノスのそばに移動した。

 

 「ミナト、ぶっこわしてくるかんな。細かいのは頼むぞ」

 

 そういって、屋上に大きなひび作り隕石めがけて飛び上がるサイタマ。

 

 一撃

 

 たった一撃で爆散する巨大隕石

 

 「今回は間に合いそうだ。螺旋超光輪舞孔を決める」

 

 数十に増えた、正確には分身した黄色い閃光が、手に持ったなにか、少し形のいびつな苦無を四方八方に投擲する。

 次の瞬間にはその場から黄色い閃光が消えて、爆散してもなお降り注ぐ隕石の屑のもとに現れては屑をさらに粉々になっていく。

 

 「速い、ワシが出会った中で、おそらく最も……ジェノス君は、まあ、ナイスファイトじゃったの」

 

 「先生を知って、S級やA級ヒーローがなぜ?」

 

 「サイタマ君じゃろ。本人も知らんが、S級1位一撃必殺は彼じゃよ。知らんのも無理はない。S級ヒーローには秘密が多いんじゃ」

 

 S級でも知らん奴は知らんし。まあ、ミナト君はA級じゃが、S級を断ってA級にとどまっとるから特殊かの? タツマキちゃんは知らんかったか。む、それ以外は知っとるか?

 

 「ジェノス君もS級で頑張ってほしいもんじゃ」

 

 これがS級。オレでは、まだまだ実力が伴っていない……ということか。

 いつか、先生のように強くなれるのだろうか。

 

 

 

 災害レベル竜:巨大隕石 処理完了

  対応ヒーロー

  ・S級ヒーロー シルバーファング

  ・A級ヒーロー 黄色い閃光

  ・S級ヒーロー 鬼サイボーグ

  ・C級ヒーロー ハゲマント

 

  被害状況

  ・Z市周辺に多量の灰が付着する。

  ・避難時に怪我をする人が多々あり。

 

 

『以上のように、今回の災害はヒーロー協会により対処されました。

 ありがとうヒーローの皆さま。被害を受けた皆さま、強く生きていきましょう。

 私たちは常に皆様とともにあり続け、明日を迎えるため手を取り合ってまいります。』

 

 「へえ、ミナトもじいさんもヒーローだったんだなー」

 

 昨日の隕石のニュースを見ながら、サイタマお茶を飲んでいた。

 

 「先生、知り合いではなかったんですか?」 

 

 「え? 知り合いだけど?」

 

 それがどうした。と続いて聞こえた気もしたが、ニュースが天気予報に変わり、えー今日は雨かよ。とぶうたれるサイタマだった。

 

 「あー、そういえば、怪人が出るたびにミナトやじいさん達が迎えに来るんだよ。おれもヒーローとして現場に直行? できるし、助かってるんだけど。ジェノスが来てからは、はじめてだったっけか。飯もたまにおごってくれるし。うん、いい知り合いだな」

 

 「そう、ですか」

 

 

 

『次のニュースです。S級17位ヒーローが、またもや警察に任意同行されました。

 本人は「俺があの熟れた桃のようなお尻の傍に居るために今までどれだけの地と汗と涙を流してきたと思ってんだあぁあぁあああぁ~!!!!」と意味の分からない供述をしており、いつものように覗き、公然わいせつ、またはセクハラを行ったものと考えられます。

 ヒーローの中にも変わった人がいるという事実に、自助の大切さを考えさせられます。

 警察の皆さま、お疲れさまでした』

 

 

 

 Next 災害レベル竜:深海王

 



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24撃目 深海王

 「なんでや。なんで、むさくるしい刑務所に入らなあかんのや!」

 

 牢屋の格子をつかんで、頭を打ち付け、殴り、蹴とばし、ごろごろ転がりまわる男が一人。

 他の受刑者が一様にボーダーの服を着ているのに対して、ジージャン、ジーパン、頭には赤いバンダナ。

 周囲の凶悪犯であっても、もう彼の奇行には感心を示さない。最初のころ、といっても数度前に彼が刑務所に突っ込まれたときのことだが、その時に脅して虐めてと接触したところ、彼の霊能力で撃退され、誰もかれも駄目な絡み方はNGという認識で一致していた。

 

 「おまえが、ここのトップか?」

 

 ただし、初見の人はそんなことも知らずに、奇行に走る男に声をかけた。

 

 「えーと、おしりあいでしたっけ?」

 

 野郎の顔なんて覚えてる方が少ないからな? 昔の依頼者かな? あれ、でもこの感じは嫌な予感がする。とバンダナの男は思考する。

 

 「いや、お前のようなふざけた男にやられた恨みをはらしたいだけさっ!!」

 

 この男、自称音速のソニックという忍者。サイタマに偶然会って、偶然たまたまに一撃喰らって気絶していたところ、賞金首だったので収容されることになった。

 いま、目の前にA級賞金首に囲まれた中で自由にいる変わった人が、無事にここで過ごしているのは、クロマティ高校理論からも異質。

 そしてふざけている感じも、サイタマに何となく近似していると感じる。らしい

 

 そんなソニックがとった行動は、真正面から最速のけりをかます。と見せかけての斜め後ろから側頭部を狙う一蹴だった。

 

 「のわっと!! いきなりなんなんじゃー!」

 

 しかし、ソニックの目にも留まらずに回避、常人の4、5歩の距離を取って、まったくの無傷でソニックをにらむ。涙だだ漏れで。

 

 「やはり強者だったか。何者だ?」

 

 「名前も知らんのに蹴りかかるのかおんどれわ!」

 

 まあ、なれてるんだけどと、一息ついて。

 

 「男に名乗る名前なんて無いわい!!」

 

 ドーンッと聞こえそうな、聞こえなさそうな。

 という感じでにらみ合って、バンダナの男はどう逃げ出そうかなと考えている中、刑務所に備え付けられているテレビから緊急時速報が流れ始めた。

 

 『J市に怪人が複数現れました。海からの襲撃となり、海水浴場は怪人に占領されました。怪人は市街地に向けて進行を進めており、J市にお住まいの方は避難をしてください。本日は、他市においても怪人の被害があり、現在即応できるS級ヒーローは……え、いないの? 失礼いたしました。できても数十分かかる想定となります。A級ヒーローで対応できれば良いですが、住民の皆さま、大至急避難してください。』

 

 と繰り返すように速報が流れ、進行予測が映し出される。

 

 「J市の海水浴場……美女がワイを待っとるんや~」

 

 急に走り出すバンダナの男。下卑た理由で走り出す。

 そして脱獄。どうやったのか……サイキックソーサー(霊能力の一つ)⇒壁爆破⇒二度と来ないからな⇒盗んだバイクで走り出す……という流れだった。

 もう姿が見えないが、ちちしりふともも、という言葉がなぜか聞こえる。

 

 「なんなんだ。いったい」

 

 ソニックもこれには困る。刑務所生活の長い人が語りだす。

 

 「S級17位のギャグマン。横島忠夫。数々の霊能事件を解決し、女性の胸を見て、怪人を倒し、美女の太ももを触り、魔人すら倒し、女風呂をのぞき、英雄となった男、そして逮捕されそれでも僕はやっていないというヒーローだ」

 

 「それはヒーローなのか?」

 

 「……ヒーロー協会に所属はしている」

 

 沈黙!!

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ところかわって、怪人が発生したJ市では、A級ヒーローの奮闘により、一般人への被害は最小限に抑えられていた。

 しかし、建物は破壊され、A級ヒーローたちにも限界がみえはじめていた。

 今回の怪人は、個体ではなく軍団。海底人と名乗る海の幸、いや生き物だった。

 

 雑魚といってもA級ヒーローが、一人5体倒せればという怪人が20体の集団にたいし、遅滞戦闘を続け、S級ヒーローの到着を待っていた。今も立っているヒーローは三人。

 

 「スティンガー、まだやれるか?」

 「限界だぜ。イナズマ、スネックは」

 「簡単にやられるつもりはないが、正直、ダメだ。刺し違えられたら御の字」

 

 A級の仕込み靴のイナズマックス、たけのこ槍のスティンガー、蛇咬拳のスネック。

 顔は腫れ、服は破け、装備も消耗した。汗だくで息が切れ、ひざもがくがくとなっている。

 残すはあと3体、ヒーローも3人、にらみ合う両陣営、均衡を崩したのは

 

 「あらあら、まだこんなところまでしか進んでないなんて……人間も以外にやるのね」

 

 怪人側の一体の増援、以外にも人間に近いシルエット。頭には王冠、肩からマントたなびかせ、胸にハートのシール?

 現れた瞬間、いままで戦っていた怪人から歓喜の叫び。聞こえるのは、我らが王、海の覇者など。

 

 「やつらの親玉なのか?」

 

 A級ヒーローに絶望がおそう。

 

 「あのね、あなた方不快だから死んで構わないわよ」

 

 一人一撃ずつで終わると脳裏をよぎる。そんなとき、けたましいバイクのエンジン音、そして悲鳴。

 

 「ひょぇー、どいてけれー」

 

 まず、ヒーローの一人、スネックがひかれ、ついで怪人の王様がひかれた。

 これが、真のジャスティスクラッシュ。

 漫画のような爆発がおき、残りの怪人もろとも、炎につつまれた。

 

 「こ、これは事故や」

 「スネックしっかりしろー!」

  

 S級ヒーローはパニック。A級ヒーローもパニック。

 敵さんは……

 

 「効いたわ……少しね」

 

 無傷の王っぽいのが、ゆったり歩を進めてくる。

 

 「あんた、S級だろ、なんとかなんないのか?」

 

 「ちちしりふとももを見たいだけや。なぜに、こげな、バケモンと戦わないかんのや?」

 

 「内輪揉め? 私の前で、深海王たる私の前で余裕ね!!」

 

 今回の怪人の王、深海王がS級ヒーローの横島に殴りかかる。A級ヒーローには目にもとまらない速さ。

 

 「あぶな。この魚人おもったより、強いのか?」

 

 手から六角形のサイキックエネルギーの塊を出して、盾のように防ぐ。横島の霊能力のひとつ、サイキックソーサーである。瞬時に今度は右手に霊能力を集め、籠手のように形作る。

 

 「あなた、つよ」

 

 「栄光の手ハンズオブグローリー!!」

 

 深海王が何か言おうとする隙をついて、手から伸びたエネルギー状の刃で深海王を縦に真っ二つにした。

 

 「で、水着の女の子は、何処におるんじゃ!!」

 

 「もう、避難していないっすよ」

 「スネーック、しっかりしろー!」

 

 もう、なんとも言えない結末をもって、深海王の進軍は幕を閉じた。

 

 うまく表現できないが、ギャグのようであり、悠々と能書きを垂れる敵を待つことなく仕留めた鮮やかさを誉めるべきなのか。

 はては、変身を残しておく方がバカなのか。

 

 なお、サイタマとジェノスは別件でヒーローのノルマをこなしていた。

 

 



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33撃目 話を聞かないS級たち

 「おめでとう、サイタマくん、今日からB級に昇格だ」

 

 サイタマは深海王とは別にノルマを達成して、黒服のヒーロー協会関係者から昇格を告げられていた。本人としては、なんかやらかしたか? という内心びくついていたのだが、あ、それならよいか。と、説明を受けていた。

 説明をしている協会関係者のしたっぱは、態度悪いな今回のヒーローと思いつつ、若干表情にもでているが。

 

 「であるからして、C級よりも強い怪人の対応が増え、災害時の招集も多くなりますからね……見た目も大事なんですよ」

 

 それを見ている昇格決定権者(上司)は、サイタマさん、なんでC級で登録しなおしてんの? あれ? あなた、すでに……ん? S級の新人と行動しているというのは、いったい? もしや、新人教育をしてくれているのか? サイタマさんなら、任せても、竜巻娘より大丈夫のはず……。あと、とりあえず、この部下の対応は少しとがめておこう。と考えていた。

 

 「それでは、B級として、恥ずかしくない行動をとってください」

 「あいよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから数日後、サイタマとジェノスは、シルバーファングに誘われて流水岩砕拳の道場にきていた。

 武術とはなんなのか。教えてもらっていた。正確には、模擬戦闘をしていた。

 

 「おい、じいさん、無理するなよ」

 

 「なんのなんの。若者に負けんよう渇を入れ直しておるから大丈夫じゃよ。これが、第六感の先を極めるとできる速さじゃ」

 

 「金ぴかのやってるやつか。こうか?」

 

 「それに加えることで、こうなる」

 

 「じいさん、それは、よくわからん」

 

 身体能力を上げることについては、サイタマも真似できたりするのだが、流水岩砕拳については、カッコいい動きという認識のみにとどまっていた。

 それを見ているジェノスは、光しか見えん、これが、S級の実力……隕石のときも、バングだけで対応できたのではないか? オレは強くなれるのか。落ち込んでいた。

 というところに、けたましい音をたてながら、ヒーロー協会の職員が道場に飛び込んできた。

 職員の後ろには、黒い穴があり、魔法のような光を放っていた。

 

 「いたたた、常人にはこの移動方法は無理があるような。 失礼しました。シルバーファング様、鬼サイボーグのジェノス様、……とワ……サイタマ様、S級ヒーローの緊急会議の招集です。どうぞ、こちらの移動門ゲートを通って、本部までお越しください」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 場所を移してヒーロー協会本部会議室、サイタマ達の前に、豪華なローブを纏った人骨、銀髪銀眼に大剣をもった華奢な女性、白を基調としたマントの筋肉質な男性、緑のウネウネ髪の小さい女性の四人が席についていた。

 

 「さっそくですまないが、今回の招集に参加できたのは、君たちですべてだ。最上位ヒーロー17人しかいないS級のうち、7人、いや6人に集まってもらえて嬉しく思う。他のヒーローは怪人退治に、拘留中、デート、アルバイト、修行、暗躍……一部、もう少しなんとかならないものか。いや、君たちに言っても仕方ないのだかね。今回の案件は、この半年以内に地球がヤバいと占いがあった。いつもヤバいと思うのだが。明日かもしれないし、来週かもしれないが、これを伝える必要があるのか疑問だが、備えてほしい」

 

 とりあえず、お茶をくれないか?

 酒ならあるぞ。

 飛天よ、サイタマくんは飲まんのは知ってるじゃろ。

 先生、どうぞ。

 

 筋肉質の男は飛天と呼ばれ、手には酒瓶、腰には白木拵えの長刀。バングとは、親しげにはなし、サイタマとも既知のように接している。その横でジェノスが甲斐甲斐しく働いていた。

 

 あんた、もう少し愛想よくできないの?

 無理だ。

 キーッ、変身後も腹立つけど、前もムカつくわね!

 それは、テレサにいってくれ。

 同じでしょ!

 

 で、女性二人は、小さい方が、大きい方に絡んでいた。結局この六人は、長々と話をしている協会職員をほぼ無視していた。ただ一人の苦労人は、一応気にかけていた。

 

 一応、警戒を強めるか。センス・エネミー……なんだと?

 

 「上空に……敵だ。私の縄張りで、勝手をしようとするなら、罰をあたえようではないか」

 

 宣言と同時に、協会本部の警報が鳴り響く。

 

 「時間停止=タイムストップ」

 

 とある魔法によって時間を停止。直後、転移魔法で移動を開始する。

 同時にサイタマと飛天、シルバーファングが動き、それぞれジェノス、小さい方、大きい方をつれて、転移に追従した。

 

 「A市、G市、O市の中間位置の上空に未登録飛行体を確認、え、皆さん、どこに? 先ほどまで」

 

 状況説明をするも、会議室のS級は全員退室済み、別の職員が再度情報を確認すると

 

 「本社屋上にS級ヒーローを確認。未登録飛行体を見据えております」

 

 「さすがS級だ、行動が早い」

 

 外に出たS級達は、怒りからどす黒いオーラを出す人骨をなだめていた。

 

 「敵だと、その能力でわかったとしても、実際に攻撃や威嚇行為が無いのに排除はできない。自分の守る街で、この状況では落ち着かないと思うが、少しオーラを抑えてくれ」

 

 「銀眼の魔女さん……すみません。この骨の身を温かく受け入れてくれた民達を思うと、どうしてもな」

 

 「隣接するA市、O市、G市は主を旗印に、ナザリックと称し、魔導王と崇めているんだ。民を守るなら、暇なときは協力してやるさ。バカ弟子たちにもしっかりしてほしいがな」

 

 「飛天さんも、ありがとうございます」

 

 大きい方の女性が銀眼の魔女と呼ばれており、細身の身体に、大きなクレイモアと称された大剣を扱うS級9位のヒーローである。その身には、妖魔を宿しているとかいないとか。

 飛天は正確に飛天御剣流当代、民のために大昔から刀を扱い、圧政者や不当な暴力と戦っていた流派、その当代がS級4位となっている。

 そして、魔導王と呼ばれた人骨、死霊系魔法詠唱者であり、アインズ・ウール・ゴウンと名乗ることもある。頭文字のAOGと守る街がたまたま同じ上に、行く宛もないところを助けてもらったこともあって、恩には恩で返す、困っていたら助けるのが当たり前が心情で、いつからか魔導王と市民から呼ばれ、行政からもお伺いをうける立場となっていた。S級12位ということにもなっている。

 残りの小さい女性は、超能力者のタツマキさんである。

 

 紹介は、以上として、未登録飛行体が空に現れてから、住民は混乱し、しかし魔導王が現れてから歓声があがった。

 

 そして、飛行体に動きがあり……下面の砲門が稼働した。

 

 「やはり戦闘か? タツマキさん、頼めますか?」

 

 「はいはい、やってあげるわよ」

 

 タツマキが、超能力で砲撃をそのまま跳ね返す。

 

 「すみませんが、ごみの回収もお願いできますか?」

 

 「あんたね! やってあげるけど、なんでも私にやらせないでよ!!」

 

 そうこうしていると、飛行体から頭がたくさんついた怪人が降りてきた。

 

 「貴様ら、よくも我らの船を!! 貴様ら、許さんぞ!!」

 

 「フハハハ……いやいや、許してくれ。あまりにも雑魚にふさわしい台詞に笑いをこらえきれなかった。」

 

 魔導王から、再度どす黒い絶望のオーラが発せられる。

 

 「許さないのは、私の方だ。貴様らには死を送らせてもらおう」

 

 即死耐性はあるのか? リアリティスラッシュではどうだ。

 

 縦に真っ二つにしたが、笑いながらそれ以上に怪人は分裂して動き出した。ちょうど、たくさんついた頭の数に分かれた。

 

 「こいつらつよい?」「でも」「我らの方が」「強い」「皆殺し」「やっちゃおう」

 

 「地上のは、わし、飛天、銀眼、ジェノスくんで対応しよう」

 「タツマキさんは上の警戒をお願いします。サイタマさんは先に乗り込んでいってください」 

 

 戦闘が開始する。

 地上では、飛天が斬り込み、まずは一体に一瞬に九撃を与えて倒せるかの確認をする。ダメだとわかると銀眼の魔女が右腕に大剣をもち、高速で剣を走らせる。5体ほど巻き込んでバラバラにしていった。その他にも燃やしたり、ボコボコにしたりもしたが……

 無駄無駄と怪人が騒ぐだけだった。

 

 「広場ひとつを潰すことになるが、皆さん私の方に敵を集めてください」

 

 魔導王が言うと同時に背中に大きな時計を背負った。

 ジェノスは、初めて共闘するからわからずもながら、怪人を魔導王の方に殴り飛ばす。他のS級達も蹴り、斬り飛ばす。

 

 「いかんいかん、ジェノスくん近くによりすぎじゃ」

 

 シルバーファングが、ジェノスを掴んで魔導王から距離をとる。

 

 「あらゆる生あるものの目指すところは死である」

 

 魔導王の宣言により、周囲十数メートルは植物も怪人も地面もなにもかもが砂、死に還った。

 

 ちなみに上空では、サイタマが飛行体の内部で暴れ、外からはタツマキが、ちぎっては叩きつけを繰り返していた。

 少したってから、飛行は続けているが、飛行体のボスがサイタマの一撃でふっとばされ、今回の戦いが決着した。

 

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 後日のニュースでは

 「本日、魔導国上空に怪人が現れましたが、S級ヒーローの方々の尽力により、死傷者ゼロ、唯一の被害は魔導王の必殺技によるアマイマスク緑の公園がアマイマスク砂場の公園へ変更してしまったことでしょうか。地域の子供達からはお砂場がほしかったの、などの好意的なメッセージが多く、結果として……アインズ・ウール・ゴウン魔導王万歳、アインズ・ウール・ゴウン魔導王万歳、アインズ・ウール・ゴウン魔導王万歳であります!!」

 今日も、AOG市は笑顔が絶えない。

 



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