とある科学の絶対能力者《レベル6》 (語部シグマ)
しおりを挟む

序章:〝絶対能力者(レベル6)〟と〝超能力者(レベル5)
プロローグ


 ……

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 …………………………………………

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………飽きた

 

 

 

 

 心の底から飽きた

 

 

 

 

 産まれた時から既に大能力者(レベル4)としての能力に覚醒(めざ)め、年を経るごとにその力は底知れぬ成長を見せた

 

 気がつけば俺は能力者達の高み…………学園都市のクソな研究者共が揃って望んでやがった〝絶対能力者(レベル6)〟にまで進化していた

 

 

 ──〇〇君、君の能力について研究させてくれないかな?──

 

 ──君は我々にとって…………いや、この世の全ての能力者達にとっての希望だ!──

 

 

 耳触りの良い言葉を並べて近寄ってくる馬鹿共は例外なく消してやった。文字通り〝消して〟やったんだ

 

 俺の能力は〝素粒子支配〟…………この世の万物(ありとあらゆるもの)を構成している物質を自分の意のままに操る事が出来る能力だ

 

 一つ一つ分離させその形を崩したり、配列を組み替えて全く別の物質にしたりをしている内に、研究者共はこの能力を〝分解・再構築〟と勘違いしていたがな

 

 まぁ、そんな能力を使って気に食わねぇ奴を消してたもんだから、研究者共はいつしか俺に関わろうとはしなくなった

 

 そういや〝木原幻生〟とかいうジジイが俺から手を引くって言ってた時には、他の研究者共は揃って驚いてやがったな?

 

 施設の外にゃあ出して貰えなかったが、俺が望んだものは手に入ったし、服と寝床と飯にも不自由は無かったんで不満はなかった

 

 だが……その内、何故か俺の世話係だと言う女がやって来て、それからは俺の自由奔放な生活は終わりを迎えた

 

 俺が何かをする度にギャーギャー騒いでは耳にタコが出来るぐらいの説教を開始する

 

 本当に五月蝿い女だった…………まぁ、〝五月蝿い〟ってだけで、不思議と煩わしくは無かったがな

 

 とは言え、この頃はまだ名前なんて無く番号で呼ばれていたせいか、いきなり〝君に名前をつけてあげよう〟とか言いだして勝手に名前付けやがったり、〝今日から君の新しいお友達だ〟とか言って見ず知らずの雌ガキ連れてきたりと、俺に負けず劣らず好き勝手やりたい放題な女だった

 

 いつしか俺の方があの女から目が離せない────完全に立場が逆転してしまったようにも思えるが……

 

 だが、あの女が作るアップルパイだけは美味かった

 

 そんなある日、何故かその日に来たのはあの女では無く、よく分からんおっさんが来た

 

 おっさんは〝今日から私が君の面倒を見る事になった〟と言いだして、あれこれ命令しては俺に無理矢理従わせようとしてきた

 

 

「〇〇は?」

 

「あぁ、彼女は一身上の都合でここを出てしまってね」

 

 

 俺は一瞬でこのおっさんが嘘をついている事に気づいた……だがそれ以上追求しても、おっさんはあの女の事について教えちゃくれなかった

 

 後々知ったのだが、おっさんは軍の人間だったらしく、だからこそあの体躯や体育会系の言動だったのだと、俺は人知れず納得していた

 

 それから数日後…………俺がいつもの様に夜中に能力を使って施設の中を散策していると、何やら壁から女の呻き声が聞こえてきた

 

 その声がする壁に耳を当てると、呻き声の他に何かを叩く音…………そしてその叩く音が聞こえる度に女の悲鳴が聞こえてきた

 

 正直、面倒事に自ら進んで首を突っ込みたくはないが、その時はどうしても中を確認したくなり、俺は壁に人一人分の穴を空けた

 

 すると…………

 

 

「────チッ、やけに聞いたことある声がするなと思ったら…………やっぱりテメェか」

 

 

 そこに居たのは、新しく俺の世話係になったおっさんと、その前でボロ雑巾のようになっていたあの女だった

 

 

「〇〇……?」

 

「なんだ……君か、0010番」

 

 

 勝手に俺の前から消えて、こんな所で地べたに這いつくばってやがったあの女にも苛ついたが、それ以上にこの俺を番号で呼びやがったおっさんに無性に腹が立った

 

 まぁ勝手に名付けられたとは言え、少なからずこの名前を気に入っていたらしい

 

 

「何してやがんだ?」

 

「0010番、君には関係の無い事だ。だから君は大人しく部屋へ戻るんだ」

 

「あ〜、なるほど……そうかい?それじゃあその命令は却下させて貰うわ」

 

「……なに?」

 

 

 命令に従わない俺に対し、おっさんは眉をピクリとさせ睨みつけてくる

 

 

「また〝お仕置き〟を受けたいか?」

 

「お仕置きだァ?あぁ……あの〝じゃれ合い〟の事を言ってんのか?」

 

「き、貴様ァ……」

 

「あ〜、そうそう……この際だから言っとくが、俺ァ前々からテメェの事が気に食わなかったんだよ」

 

「なっ────」

 

 

 その間抜けた声を最後に、おっさんは俺の前から跡形もなく消え去った

 

 

「キヒヒ……腕っ節だけが取り柄の凡人如きが、ちっとばかしテメェのくだらねぇお遊びに付き合ってやっただけで俺を支配出来たと勘違いしてんじゃねェよ?さて……」

 

 

 おっさんを素粒子レベルで分解してやった俺は、今度は床に転がっていたあの女の方へと顔を向けた

 

 すると女は緊張が解けたのか、それとも殴られたダメージによるものか、その場で気を失っていた

 

 

「……ったく、あれほど俺に〝気合いだー〟とか言ってやがったクセに、テメェこそ気合いが足りねーじゃねェか。全く、世話が焼ける奴だな」

 

 

 俺は気を失ったその女に触れると、殴られた事による腫れや破裂した内臓を元に戻し、施設を片っ端から破壊し、その限りを尽くしてその場を後にした

 

 その際に奴らの研究資金が入った金庫を見つけたので、これからの生活の軍資金として有難く頂戴し、その内の一割をあの女の為に残した

 

 今後、俺を追う者が出てくるだろうが関係ない…………片っ端から消してやるだけだ────そう思っていたのだが、驚いた事に始めに俺の前に現れたのはあの女と、施設にいた頃に俺に押し付けてきた雌ガキだった

 

 

「君は目を離すと直ぐに好き勝手暴れ回るからね……だから今後も監視させて貰うよ、〝宵夜(しょうや)〟」

 

「私も、貴方の傍に居させて下さい」

 

「────チッ…………勝手にしろ」

 

 

 これは、学園都市唯一の絶対能力者(レベル6)であるこの俺、〝叢雲(むらくも)宵夜(しょうや)〟と、そんな俺の保護者となった〝叢雲天理(あめり)〟、そして〝叢雲風鈴(フォンリン)〟による愉快痛快、傍若無人な日常の物語である

 




【次回予告】

ある日、義妹である風鈴(フォンリン)の買い物に付き合わされた宵夜(しょうや)は、そこで偶然にも学園都市第一位の一方通行(アクセラレータ)と遭遇する。

公認された存在(アクセラレータ)〟と〝秘匿された存在(叢雲宵夜)〟……互いに互いを認識した瞬間(とき)────二人の間に不穏な空気が流れ始める。

次回、〝第一話:一方通行〟


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。