デート・ア・ライブ イトカエクストラ (コーラ中毒)
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第一話
・隣界
デート・ア・バレットの舞台
霊力で構成されており、生き物は準精霊以外存在しない
第一領域から第十領域で構成されており、夢の揺籃は第九領域の地方名
・準精霊
隣界に住む、霊結晶の欠片を持つ少女たちの総称
精霊と同様に無銘天使と霊装をもつ
・エンプティ
準精霊が夢を無くした姿。全身真っ白で、準精霊に手下として扱われることもあるが……?
・隣界編成
精霊の感情の揺れ動きに連動した隣界のゆらぎ
デート・ア・バレット1巻時点で士道のファーストコンタクトの追想が描写されるが、過去にも発生しているため、今作では隣界と現実の間の時系列は対応していないものとする。
隣界では、生きる意味が必要だ。
そうでなくちゃ
でも私は仕事を受け取って、喫茶店でパフェをダースで買い込んで。
そういう風に、仕事をしつつ甘味を取れれば存在できる。必要とされれば存在できる。私はそういう人間だった。
隣界を巻き込んだ大事件は収束したので、しばらくはゆっくりしたい。生業の動画編集は在宅ワークみたいなものなのでわりと人恋しいこともあるけど。
突然の地響きに思考が中断される。
窓から見える範囲に黒い柱、何度かみたことのあるそれ。続いて柱から棘が現れた。
・・・・・・隣界から去った精霊たちは、時折無慈悲に隣界へと影響を及ぼす。
精霊たちの心の揺らぎ……それが
それはプラスの時もあるけれど、マイナスの時もある。悪影響を受ければ
とある少年に恋した少女は
滅多なことでは好かれないそれに。
……でも、私には考えがあったから、そのまま家を飛び出した。
……昔から考えたことがある。もしこの
自身を情報化できる私はこの結晶にアクセスできるのでは、と。
少しだけ逡巡して……知り合いへの連絡も考えたけれど。私は、黒い柱に飛び込んだ。
そして、
士道が六喰にキスをされた、その瞬間のことだ。
「あっ、やば……しヌ……」
血袋となったヒトガタから、絞り出すような声がする。
「おい!大丈!うぐっ……」
肉の断面図をモロに見た六喰と士道がうずくまる。
「スマ・・・・・・」
血だまりとスマホを残して少女は吸い込まれるように消える。
「令音!今すぐ回収して!士道もしゃんとする!」
「わずかですが霊力に反応あり!精霊です!」
「11人目の精霊……ね」令音がひとりごちる。
フラクナシスEX艦内にて、管制室。
「六喰は寝かせてきたぞ。あの子はどうなったんだ。琴里」
「んー、解析中。フラクナシスも非戦闘態勢に移行したからリソースを回してるわ、マリア?」
MARIAの合成音声が告げる。
「なかなかの難問です。未知の保存形式ですね。人型の立体データが保存されているとみていますが、仮想空間の人型データと比較しても容量にムラがあり、かつ密度が足りません。全身から血を流していましたし、欠損しているとみて間違いないでしょう。」
「ですがこちらから精査を掛けるたびに、仮称人型データから反応があるので意識はあるかと」
「つまり、取り合えず生きてるんだな……?」
少しだけ安堵する。ズタボロになることはあったけど、今まで客観的にああいったスプラッタな場面は見たことがないから耐性はない。
「呆れるわね、まるで士道みたい」
「あのなぁ……」
士道の再生能力は琴里由来なのだが。それなり以上にお世話になっているので文句は言えない。
「生きてるってわかっただけでいいでしょ?」
「物質が情報化した現象については未知ですが、自ら情報化したのであればその逆もできるはずです。保存形式の解析並びに一般的な保存形式のデータを与えて反応を見ます。個人的に情報の物質化のプロセスが興味深いですね。」
「MARIAもやっぱり現実に出たいのか……出たいよな。」
「ええ、すでにバンダースナッチを応用した顕現装置が開発中ですのでご安心ください」
「すでに開発中だった!」
「んで少年とまーりあ、用事だよね?」
遅れてダウンを着込んだ女性が顔を出した。
「遅いですよ駄、二亜」「訂正っぽい風で実は訂正してないのやめようぜー!」
MARIAがいつもの毒を吐いた。
「んでグロ映像だっけ、専門じゃないけど耐性はあるからまかせなさーい!」
「うわグッロ、少年誌には載せられない感じだねこりゃ」
「近頃の少年誌というものをなかなか信用できないんだが俺は。」
「SILVER BULLETはそういうのじゃないから、安心だよ!」
「なんの宣伝なんだよ一体」士道がつっこむ。
「本題に入りますよ二亜、
「むり、相変わらずの落書き状態。」
天使も顕現させずに即答だった。
「やっぱり役立たずですね、ランニング10週追加です」
「辛辣!そして無関係な罰が私を襲うぜ!」
「あーあー、テステス、聞こえてますか?」
「そして役に立つのは私だったようです。えっへん。」
件の少女が、目を覚ましたらしい。
(あー、死ぬかと思った…)
マジで死ぬかと思った。全身のステータスは赤文字とエラーまみれである。そして全身血まみれである。外圧か陥没かわからないが内側に潰れる感覚は初めてであった。私はドンパチする準精霊じゃないのに。
(たぶん現実だよな…外)
外に出ると潰れるとか深海魚か何かだろうか。ちなみに隣界に魚はいない。
(もしや…詰んだか?)
せめて誰かスマホを拾って充電してくれないか。時間さえあれば修復できるので。外に出られないかもだが。
(そもそも充電できるか怪しいんだよなぁ…)
隣界にもスマホはあるのだが、稼働は霊力で行われる謎仕様であるので。
(まぁ最悪電子の妖精コースだな、うん)
(とりあえず自己修復だなー)
そのへんを漂う画像データを取得する。破損していた。
(うわぁ、予想してたけどどこ参照すりゃいいんだ)
体の一部が破損したときは逆方向のデータとか、前回のバックアップを参照したけれどどこも壊滅である。
ふいにぞわっとした。
(外部アクセスとかマジかよ!)
マジで洒落にならない。どういう目的か知らないが、自己防衛すら危ういので自己修復まで待って欲しかった。
迫り来るデータの群れに覚悟を決める……が。
(止まった…?)
触れるぎりぎりで全データが停止する。
適当にデータを手に取る。どれも形式はバラバラだが手首のデータらしい。
(あー、なるほどなるほど?)
異文化コミュニケーションである。使えるデータを消化しつつ、私の手首データ(破損)を送り返す。
周辺のデータに合わせて私自身をコンバート。
次のデータは言語データだったので英語と日本語を選んで消化。今気づいたが言語データも破損していた。
向かいからざわざわ言ってるのが聞こえる。
「あーあー、テステス、聞こえてますか?」
「初めまして?精霊さん?」
赤い髪の少女(とても偉そう、かわいい、そして平たい)の威厳ある問いかけである。
「初めましてお嬢さん。責任者は貴方でよいのでしょうか」
「私よ、私がこのフラクナシスEXの艦長、今後ともよろしくね」
「最初に聞きたいのですがここは隣界ですか?それとも現実?」
「現実よ、てことは隣界から来たのは間違いないんでしょうけど……」
どうやら現実への突入は成功したらしい、これを成功というのであれば。
「いろいろ聞かせてもらうけど、体は大丈夫なの?」
「ええ、構いません、と言いたいところですがぶっちゃけやばいです、HP残り1割です。瀕死です」
「さすがの準精霊でもこれはヤバイですね、霊力くださいませんか?」
人間なら即死である、ちなみに準精霊でも死んでいる。
「ちょっと待ってくれるかしら。『準』精霊?精霊ではなく?」
なにか違う常識を感じる、本当に現実っぽい。
「準精霊は準精霊ですよ、人間より強靭で、精霊より儚い、そんな存在です。わたし以外にもたくさんいますよ」
「ちょっと、待ってくれるかしら。あなたは準精霊である、隣界には準精霊がいる、そうよね?」
「ええそうです。」
「となると私たちの仮説、というか常識がだいぶ覆されるわ……これは一大事よ、マリア、ちゃんと記録しておいてね」
「承知しました」
「そこで私を頼っていただけないのは我が子の成長を見守るようで痛ぁい!」
「このバカは無視してていいわ」
「男がたくさんいますね……実は隣界には女の子しかいないんですよ」
「なにその!?」
本当に現実に来たらしい。
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