俺の青春は本当にこれでいいのだろうか (ハーピス)
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第1話 俺の日常が少しずつ変わっていく
良い感想お待ちしています!!
春が過ぎ、夏が来た。
俺は青春高校2年A組の滝沢英太。ごく普通の高校生。顔はまぁー以外とイケメンだとは思っているが今はどうでもいい。問題は高校の名前だ。青春高校はその名の通り、青春、いわゆる恋をしたいと思っている奴らが来る高校だ。学校の授業も行事も全て恋愛ばかりで埋め尽くされている。
だとしてもなんだ!なぜ、堂々と「青春高校」なんて高校の名前にしたんだ。この名を作った奴はバカなのか!それとも、そうとう「青春」の2文字に黒歴史を抱えているのか。というか、青春は密かにやるものでは無いのか!なぜ、青春が主になる学校なんて作るんだ。
俺は父さんの事があって、この学校に進学することになってもう1年がたった。でも、俺はまだ彼女がいない。それすら女子の友達もいない。これからの人生が少し不安だ。
✕ ✕ ✕
「お兄ちゃん。お兄ちゃんてば」
「どうした菜々香」
俺は妹に起こされ静かに起きる。そう、俺には自慢の妹がいる。
「お兄ちゃん。学校の時間大丈夫?」
「時間?ん~~?」
俺は目をこすって、時間をみた。
「イャーーーーーー!!」
俺は急いで着替えてパンを加えて家を出た。
「ヤバいヤバい。遅刻する~」
俺は今年最大のダッシュをしていた。その時
ドカン!!
俺は誰かとぶつかった。まるでよくある漫画のように。
「いてててて。あのぉ、すいません。大丈夫ですか?」
「あ、すいません。大丈夫です」
顔があまり見えなかったけどすぐ、その人は去っていった。
なんとか授業には間に合った。そして5時間目が終わり次は学活だ!学活は楽だからいいなぁ~。そんな気持ちでいた。この時俺はこの後の悲劇は知らなかった。
「はーい!みんな座れー」
「みんなぁー。夏と言えばなんだ」
独身の先生。そう、俺らの担任の今谷水葉先生だ。てか急に「夏といえば」とか。ここは学園クイズかよ。
ちょっと待て。なんか嫌な感がする。
そしてそれは当たった。
「そう!夏休みだ」
でたーーーーーー!今の今まで忘れてた。そうえばあと3日くらいで夏休みだった!
みんなの夏休みといえば、恋愛や家族旅行などで良い休みかもしれない!だが、俺の夏休みは違う。毎日家でゴロゴロしたりゲームしたりするけど、暇で暇で一周回って地獄なのだ。もちろん一緒に遊ぶ女なんかいない。人生は疲れるなぁー。
✕ ✕ ✕
涼しく気持ちの良い風。綺麗な景色。鳴り止まないセミの声。夏休みだなぁーー。俺は1人寂しく個室でそんなことを言っている。
「今日もまたゲームざんまいか」
「お兄ちゃん~。アイス買って来てくんない」
「自分で行けよ」
「嫌だよ。暑いし、お兄ちゃんいつも暇だし」
俺も好きでこんな暇な人生をやってる訳じゃ。
「わかったよ」
「いやった~」
妹は万円の笑みを浮かべている。こいつどんだけ兄貴利用してんだよ。
「久しぶりの外だな~。でも、周りを見渡す限りリア充ばっかだな」
「さっさとアイス買って帰るか」
俺はナマケモノ以上なまけているかもしれない。
俺はアイスを2個買ってすぐさま帰った。
「菜々香~。アイス買って来たぞ」
「はーい」
俺は菜々香にアイスを渡す。
「お兄ちゃんセンスなーい」
「何がだよ」
「何がって。味のセンスだよ」
「何がダメなんだよ」
「だって、焼きそば味のガリガリ君なんて誰も買わないよ」
「そうか。美味しそうじゃん」
「お兄ちゃんキモイ」
グサッ!
「もうお兄ちゃんには頼まない」
グサッ。オゴォォ。オェェ。
「菜々香。言い過ぎじゃないか。お兄ちゃん泣きそうだよ」
「だってお兄ちゃんが悪いもん」
俺は心が折れかけている。ていうか、折れている。初めて妹にこんなにしばかれた気がした。こいつ悪魔だ!怖い。怖すぎる。あと怖い。
「次からは気おつけるからそんなことは言わないでくれ」
「ん~~。分かった」
「ありがとうございます菜々香さん」
俺は涙目になった。やっぱり俺の妹は怖いけど、いい妹だ!
✕ ✕ ✕
こうして夏休みが終わり登校日が来た。
俺はいつもの様にゆっくり夏の風を浴びながら登校している。
「はぁ~~。早く彼女が欲しい」
それも巨乳で美人の彼女がいいなんてことは胸に閉まっておいた。
教室に入り席に着いたら先生が何か嬉しそうにみんなを席に座らせた。
「はーい、みんな聞いてくれ。今日から転校生がくる」
「転校生か~。珍しいな」
「どうぞ入って」
ガラガラガラ!
扉が開いて入って来たのは、髪は赤色のロングヘア。赤い瞳。透きとーる肌。でも、こいつどっかで見たような?
「神崎彩月です。これからよろしくお願いします」
その可愛らしい顔に男子はみんな、みとれていた。そして神崎は俺の隣の席だった。一応あいさつはしておこうと思い声をかけた。
「これからよろしくね」
「よろしく。でもあまり話しかけないでくれるかしら」
この時の神崎の目は「次話したら殺す」的な目だった。いや、本当だよ。マジで。俺は恐怖でそれ以上喋れなかった。神様、やっぱ可愛いやつほど性格が怖いというのは間違っていなかったよ。女子怖い。俺はいつもと変わらない日常へと戻ったのだった。
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン。
「はぁーー。帰るか」
俺は部活に入って居ないため授業が終わるとすぐさま妹の元へ、俺たちの住まいの元へ帰る予定だった。でも、廊下で珍しい部活のチラシをみた。
「なんだこの部活。この学校にこんなのあったか?」
だが、部活名が書いてない。部活に部活名取ったら何がのこんだよ。
帰ってもゲームばかりでつまらないので、1度行ってみることにした。部室らしきとこに着くとそこはまだ使われていない特別棟の部屋だった。
「失礼しまーす」
俺は思い切って扉を開いた。そこにいたのは、椅子に座って窓をみて、夕日に照らされている神崎だった。
「し、失礼しました」
なんであいつがここにいるんだよ。しかも1人って。もしかしてここに来たやつみんな食べちゃったとか。
「何の用ですか?」
このまま逃げるのは失礼なので再び扉を開いた。
「あ、あなたは隣の席の…………。もしかしてあなたは私のストーカーなの?」
「なんでそうなんだよ」
こいつ頭どんだけおかしいんだよ。
「で、何の用かしら。話があるなら早くお願いね」
「いや別に、どんな部活なのかなって」
「もしかしてあなたあのチラシを見て来たの?」
「まぁーそうだが」
「そう。ならここが何部なのか教えてあげるから入って」
「いや俺今、部室入ったら死んでしまう病が出てしまったのでここで聞く」
「なら1度死んで話しましょ」
いや死んだら話せねーし。ていうか、怖。何こいつ悪魔。それともバンパイアとかなんかなの。恐怖を感じながら一歩づつ部室へ入った。
「で、ここはなんの部活なんだ?」
「いったんそこは置いといて、あなた今彼女はいるの?」
何これ。急展開なんだけど。俺やっぱもてちゃってる系!
「いや、今は居ないけど」
ここであえて「今は」を強調していうことによって女に安心感を与える。これが俺、滝沢英太の女子を安心させる青春法だ!
「そう。だと思ったわ。あなた人に好かれるような男子には見えないもんね。」
ムカ。こいつアニメだったら即悪役決定だ!俺の期待返せ。
「お前はどうなんだよ」
「あら。お前呼ばわりは失礼じゃないかしら。神崎さんと呼びなさい」
俺は今とことんこいつを軽蔑した。こいついつか後悔させてやる。
「神崎さんはどうなんですか」
「私は付き合っていないわよ」
やっぱりか。こいつは性格が悪すぎて誰も近寄って来られないレベルにやばいからな。
「なぜ、付き合えないか教えてやろうか?」
「何を言っているのかしら?私は付き合えないじゃなくて付き合わないのよ」
「お前は負けず嫌いかよ」
「だって私、告白された回数53回。ふった回数53回なのよ。ちなみに告ったことはないから」
「げ。な、なんだその数。てか告られた回数数えてんのかよ。しかも全部ふるとか、どんだけいい男子いなかったんだよ」
ふられた53人可哀想だな。
「あなたは。どんなのかしら」
「お、俺は…言いたくねぇ」
「あなた女子に言わしといて言わないなんてクズの領域を超えてヘタレね」
「わ、わかったよ」
「えーと、俺は告白した回数12回。ふられた回数9回。話を変えられた回数1回。それと、聞こえなかったフリで無視された回数2回。告白された回数……0回」
あーーーーーーーーーーー。こんな黒歴史誰にも言いたくなかったのに。てかあまりにも黒歴史すぎて俺も回数覚えてたし。改めて自分がむなしくかんじたよ。
「あ、あなたといると二度と恋なんか出来なさそうに感じるのは私だけなのかしら?」
このクソビッチが。今にもシバキ回したい気分だよ。
「そんなことはどうでもいいんだよ。結局この部活は何部なんだよ?」
「そうね。あなた恋愛って簡単に出来ると思う?」
「そうだな~。考えたことは無いけどみんながみんな簡単にできるとは思わない」
そうえば、俺が最後に恋をしたのは4年前くらいか。それ以降、恋が嫌になった。ていうか、こうやって妹以外の女子と話すのもめちゃくちゃ久しぶりな気が……
「それがなんだよ」
「あなたのいう通り、誰しもが簡単にできるとはいえない。そして誰しもが恋に悩んでいる。運命の赤い糸なんてごく一部の人にしかおとずれない。ある人はその運命に報われず死を選ぶ人もいる」
この時の神崎の顔は少し怯えているように感じた。
「つまり何が言いたいんだよ」
「この部活はそんな恋する人達の力になってあげる、そんな部活なの。名付けて
青・春・相・談・部」
「………」
「どうしたの?」
「いやめっちゃシンプルな名前だなって思って」
こんなにシンプルな部活世界で初なんじゃね。俺この部活、嫌だわ。
「そうえばあなた名前なんっていうの?」
「た、滝沢英太」
「そう。滝沢くん。これだけは覚えてなさい。シンプルisベスト」
神崎は「私今スゲーいい事言ったよね」的な感じでキメ顔で言ってきた。
うん。もうこいつとは関わらないでおこう。とてもイラッと来たので話を切るように俺は立ち上がった。
「話はだいたい分かったのでもうこれで失礼しまーす」
俺は立ち去ろうとする。だが、神崎は俺を引き止める。
「ちょっと待ちなさい」
「なんだよ」
「部員が1人だとつまらないから、滝沢くんあなた、ここの部…」
神崎は人差し指を合わせて照れながら何かを言おうとしている。でもここから言うことは大体わかる。だが俺は怯まない。
「だ、だからそのここの部」
「断ります」
俺はスパッと言い切ってまた立ち去ろうとした。でも
「ちょっと待ちなさい。断ったらどうなるか、分かっていのかしら」
神崎は今にでも殴る気満々の体勢で俺を睨んでいた。思わず喉ちんこが裂けそうな勢いで「イャャャャャャャャャーー」って言いたくなるくらい怖い。こいつ本当に人間?悪魔にしか見えん。
「こ、断ったらど、どうなるんですか」
俺は恐怖でまともに声が出せない。
「今からあなたを気が済むまで地獄の底に落として、それから明日全クラスにあなたが私のストーカーをして、急に襲いかかってきて、わいせつ行為したといいふらすわ。でも、それはそれで楽しいかもね」
「お前最低だな」
そんなことされたら死を選んじまうだろ。
✕ ✕ ✕
そんなことで俺は今日から青春相談部の一員となった。
「はぁ~。なんで俺があんな部活に入んなきゃ行けないんだよ」
俺は空を見上げて神崎のことを思い出す。
「やっぱりあいつどこかで見た事ある気がするんだよなぁ~。でもあいつ顔はいいのに性格鬼すぎるだろ」
この時俺は後ろにヤバい気配を感じた。
「だ~れ~が~鬼だって。滝沢く~ん」
ビクッ!ヤバいヤバい。俺は恐る恐る後ろを向いた。
「あ、ギァァァァァァァーーーー」
「ねぇ滝沢くん。もう1回聞いとくね。誰が鬼だって?」
「えっ、あ、そ、その。ほ、本当に鬼がいたら怖いなーって」
「ほんとにそうかしら」
顔が怖いよ神崎さん。俺今日で死ぬのかな~。
「か、神崎さんはなんの用でしゅか」
ヤバい。震えが止まらない。思わず噛んでしまった。死ぬ前に妹に遺書を残しておきたかったな、なんて考えるくらい怖い。
「何をそんなに怯えているのかしら。た~き~ざ~わ~く~ん」
「神崎さん。俺こんな死に方嫌だよ。望んでないよ。聞いてます神崎さん」
「きこえないよーーーー」
神崎は殺意の塊のようなパンチをくりだした。
「ぐゎゎゎゎーーーーー」
神崎の拳が俺の腹にめり込んだ。俺はその場に倒れ込んだ。
「これで済むと思わないでくださいねー」
さらばよ、我が妹よ。しっかり大人になれよ。俺の頭の中はそんな言葉で、埋め尽くされていた。
次の授業はお腹が痛くて欠席した。
「マジか。もう部活だよ。俺休みたい」
そう言いながらかれこれ10分くらい部室の扉の前に立っている。
「多分この闇へと続く扉を開けると神崎が魔王になって待っているに違いない」
「勇気を出せ俺。よし、行くぞ」
俺は全身を無にして部室へと足を運んだ。
「し、失礼しまーす」
ところが神崎は部室にはいなかった。でも、そんなはずがない。絶対どこかにいるはずだ。
「滝沢くん。こ・ん・に・ち・は」
う、後ろにいたーーーーーーー!!
「ご、ゴンニチハ、か、カンザキさん」
「さぁて、お仕置の時間と行きましょうか」
「ど、どうかこの命は残しておいてください。この命だけは…」
「冗談よ。さっきの一撃でスッキリしたわ」
た、助かった~。以外に心の器広かった。
「でも、次何か言ったらその時は容赦しないから、気おつけておいてね」
神崎は人を虫けらのような感じで言ってきた。さすがにこの目付きには慣れ始めている。でも、そんな俺が少し情けない。
「以後気おつけます」
「はい。気おつけて下さい」
はぁ~。俺はこんな人生になりたかった訳じゃないのに。もっといい女と巡り会わないかな~。
「そうえば滝沢くん。もうすぐ体育祭よね?」
「あ~そうだったな。」
今の今までわすれていた。そうえば体育祭のプログラムこいつまだ知らねぇよな。
「ねぇ滝沢くん。体育祭の借り物競走の件だけど」
こいつ以外と知ってんのかな。プログラム。
「あれってクラスの1人づつ、借りるものを紙にかいて提出するのよね?」
「それがなんだよ」
「あなたはどんな内容にするのかしら?」
「そうだな~。例えば「1番胸がでかいと思うやつ」とか」
「滝沢く~~ん」
や、やっちまった。こ、殺される~。
「ぐゎゎゎ。うぐ、ゲヘヘヘ、ゴホホホホホ」
こうして、俺の腹に神崎のゴットブローが10発以上めり込んだ。
そして次の日、俺の腹は重症をおって学校を休んだ。
やっぱりあいつは、世界最強のクソビッチだ。
✕ ✕ ✕
体育祭まで、あと3日になった。そろそろ教室もざわつく頃だ。俺は体育祭が大の苦手だ。苦手というより、ただただ嫌なのだ。何より今年のプログラムが酷すぎる。
《プログラム》
「1、開会式」
「2、男女で手を繋いで障害物競走(手が離れたら失格とする)」
「3、男子は女子をおんぶしてリレー」
「4、どの男子が女子を1番キュンとさせられるか、壁ドン対決」
「5、屋上で愛の告白タイム」
「6、昼食(男女で食べる)」
「7、愛の告白タイム2」
「8、愛の借り物競走」
「9、閉会式」
なんだこのプログラムは!いくら青春高校だからってやりすぎでは?なぜ、校長はこれを許したんだ。もしや、俺を陥れるためなのか?この学校の奴らはバカなの?本当に。それとなぜ告白タイムが2回もあんだよ。男女でペアー組めとか俺、災難すぎるんだけど。
あ、でも、神崎も残念だな。あいつには親しい男子が……
「俺と障害物競走してください」
「俺はおんぶリレー」
「一緒に昼食食べてください」
な、なにーー!!神崎が他の男子から誘われているー!
なぜなんだ。あいつがなんで~。
神崎は、悔しがっている俺を見て「ざまぁーみろ」的なあざ笑いをした。あいつ殺してぇ。
結局放課後まで俺は、女子からの誘いは来なかった。それすら、話してすらいなかった。いつもと変わらないがな。心が少し折れながらも俺は部室へと進んだ。
「はぁぁぁぁ」
「どうしたのそんな薄汚いため息なんかして」
「薄汚いは余計だ」
そしていつも通り神崎は俺に毒舌ばかりいう。
「残念だったわね。誰にも誘ってもらえなくて」
知ってるよ。泣くぞ。マジで。
「お前はもう誰か決めたのかよ」
「いえ、誰も決めてないわ」
「は?でも、あんなに誘って貰ってたじゃねぇかよ」
「全部即答で断ったわ」
ま、まじかこいつ。ていうか、即答って。あいつら今頃泣いてるのかなぁ~。俺がアイツらの立場なら今頃は天に召されているだろうな~。
「なら、どうすんだよ。他の男子と組むのか?」
「私の心配よりあなたはどうするのかしら」
そうだ。俺もまだ決まってなかったんだ。でも、この流れだとワンチャン行けるかも。
「そうだな。か、神崎さん、もし良ければお、俺とその…」
「ごめんなさい。それは無理」
「即答すぎんだろ。ていうか最後まで言わせろ」
大体わかっていてもそんな即答だと恥ずかしすぎるだろ。
こうして俺と神崎はいつも道りの日常を過ごした。はぁ~、早く彼女欲しい。
✕ ✕ ✕
体育祭前日。まだ俺と神崎は、ペアーが決まっていない。
「なぁ~、お前ほんとにペアーどうすんだ?もう前日だぞ」
「知らないわよ。あなたこそどうすんのよ」
「そうだよな~。本当、どうしよっかな~」
元はこいつが俺と組むのを頑固否定するからこうなってんだ。俺そんなにダメなの?菅田将暉より5倍かっこよければな。
そうこうしている内に部活終了時間が迫ってきていた。すると、俺ら青春相談部に初めての客が来た。
「失礼します」
「誰かしらこんな時間に」
「さぁ~」
部室に入ってきたのは2年A組の佐藤菜月だ。
彼女は笑顔を見せるだけで男子を恋に落とせるとかなんとかで有名だが、1番の魅力といえば、学校1、2を争う巨乳美女なのだ!
「ここの部活って恋の相談に乗ってくれるのよね?」
「そうですね。で、どんな恋の相談なのかしら」
「私、今年の体育祭で工藤凛くんに、ペアに誘って告白タイムで告白したいんです」
佐藤は顔を真っ赤にしながら言った。工藤凛は、サッカー部エースで、クラスでは大人気のイケメン王子。こいつを好きな女子は、うじゃうじゃいそうだ。そしてこの時俺は、「ワンチャン佐藤とペアーになれるかも」という1つの希望の星を工藤に取られてしまった。今からでもこの場を離れたい。美少女が困ってるところを見ると心が痛い。まじ、可愛すぎんだろ。
「なろほどね。あなたは、工藤くんが好きなのね。その相談受けましょう」
「あ、ありがとうございます」
神崎は、チラッと俺を見て苦笑いした。こいつ殴りたい。
一方笑った佐藤の顔は別段に可愛かった。毎日話したいな~。どっかの氷姫とは違って性格良さそうで可愛いし……可愛い。
「では話を聞きましょう」
「はい。えっと私実はすごく弱虫で、だ、だからその、誘ったり告白したりする時どうしても恥ずかしいから上手く言葉にするのができなくて」
「なるほどね。なら今は工藤くんもいないので、私を工藤くんだと思って、ペアに誘って見てみましょう。そうしたら自信もつくかもしれないしね」
「………」
「どうしました。佐藤さん?」
「あ、いや。何を言っているのか理解ができなくて」
俺も同感だ。こいつは何がいいたいのかさっぱりわからん。いや、大体は分かっているがなぜ告白されるのがお前なんだ。ここに男いるだろ。俺、1度でいいから、嘘でもいいから、告白されたい。
「だから、私を工藤くんだと思ってちゃんと言葉にしてペアに誘ってみてください」
「おい、お前ここに男子いるんですけど」
「あ、忘れてたわ。でも、あなたが彼女に告白されると、あなた本当だと勘違いして彼女を襲いかかりそうだから、あなたが告白されるとなると警察を呼ばないといけないわ」
「お前は、俺をなんだと思ってんだよ」
「そうね。あえて言うなら、世界最強の女垂らしで、世界最強のド変態とか」
「なら、いつかお前を地獄に引き落としてやるよ」
こいつえげつない悪魔だな。ゲームではトップクラスの悪キャラだよ。しかもあいつ、あえて言うならって言ったぜ。あれ以上最強のあんのかよ。
「プ、ハハハハハ」
「あなたなんでそんなに笑っているの?」
「いや、面白いから。2人で2人の本音を言い合って、ちょっと羨ましかったな」
「そうかしら。まぁ~そういうことでいいです。では本題に戻って私を工藤くんだと思って誘ってみて下さい」
「あーえっと、ペアに誘えばいいんですよね?」
「そうよ」
「あ、はい。やってみます」
結局告白されるのは、俺ではなかった。
「じゃあ~。あ、あの工藤くん。わ、私とい、一緒にぺ、ぺ、ぺ…ダメです。やっぱり恥ずかしいすぎます」
「あともう少しのしんぼうですよ」
ここは俺が助けてやるべきだ。氷姫が、かよわい美少女をいじめている時は俺の唯一の出番なんだよな。
「あ、あの~」
「何かしら、ド変態さん。嫉妬でもしているのかしら」
「してねぇよ」
いや、少しはしていたけど。
「なら、何なんですか」
「いや、なんで言葉で伝えようとしてんのかなって」
「どうゆうことですか?」
「いや、だから言葉じゃなくたって、手紙でも相手には伝わるし…」
「滝沢くん。いや、ド変態さん」
なんで言い直すんだよ。まだ変態は許せる。が「ド」は余計だ。
「大事なことはちゃんと言葉で伝えた方がいいでしょ。ていうか、それが常識ではないかしら」
「確かに大事なことは言葉の方がいいかもだけど…」
「何が言いたいのかしら」
「説明すると、工藤だって一応男だろ。だから、女の子から、手紙を貰うだけで嬉しいんだよ。それでペアになってくれるかは、わからんけど佐藤の気持ちは十分手紙で伝わると思うんだよ。だから言葉じゃなくて、手紙でもって」
え、待って。俺今めちゃくちゃいいこと言ったよな!
「なるほどね。あなたに言われるとあまり説得力がないけど、あなたがそんなこと言うのは以外だったわ。確かに滝沢くんの言っていることは間違ってはいないわね。でも、この後どうするかはあなたに任せるわ、佐藤さん。あなたは可愛いのだから自信をもって下さい」
「はい。ありがとうございました、神崎さん。そして滝沢くん」
ズキューン。さ、佐藤に名前を呼ばれた。俺は今人生で1番幸せだ~。ありがとう神様、仏様。俺は一生分の運を、使い切ってしまったみたいだ。
佐藤はあの後、手紙で工藤を呼び出し、ちゃんと言葉で気持ちを伝えたようだ。そして2人はペアーになった。結局どっちの意見も使ったってことだな。
「俺も困ったな。佐藤にあんなこと言ったけど、俺はまだペアーいなかった」
どうすればいいのか分からないまま俺はひと夜を過ごしてしまった。はぁ~誰か俺を助けて。
本当、恋なんて残酷なものだ。
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第2話 佐藤彩月は成長の1歩を踏み出す
そして工藤に恋を抱く佐藤。
滝沢の運命は。神崎の運命は。そして佐藤の運命は。
第2話スタート
体育祭当日。俺はいつもより朝早くに登校し、すぐさま神崎の元へ向かった。そう、俺は今から死をかけて、悪魔に戦いを挑もうとしている。
「はぁ~はぁ~。神崎!」
ビク!
「何の用ですか。あなたがこんなに朝早くに来るなんて珍しいですね。もしかして1秒でも早く私と会いたかったのかしら」
「ちげぇーよ。出来るなら1秒いや、1時間くらいは短くいたいくらいだ。そうじゃなくて、お願いだ。俺とペアーになってくれ」
俺はさげたくもない頭を、さげたくもない相手に全身全霊でさげまくった。これが俺の本気だーー。
神崎はビックリした顔で俺を見てきた。いや、見てきたと言うより「何こいつ。あんなに言われてもここに来るってドMなの?」みたいな感じで視線を送ってきた。だが、今引き下がったらもうあとはない。許可が出るまで頼み続けてる。
「呆れたわ。あなた、あんなに言われたのに…もしかして私のことを狙って…」
「なんでそう捉えるんだよ。ポジティブ思考すぎんだろ」
「だって私可愛いじゃない」
「いや、知らねぇし。てか自分で言うとかどんだけ自分の顔に自信あんだよ。お前には恥ずかしいという気持ちがないのか」
佐藤は少し、こいつのバカメンタル強いとこを見習って欲しいし、こいつはこいつで、佐藤の少し恥ずかしいくて顔が真っ赤になるようなところを見習ってもらいたいよ。
「しょうがないわね。あなたの頑張りに免じてぺアーになってあげましょう」
「あ、ありがとうございます」
あれ意外とあっさりと。
「でも、滝沢くん。1つ条件があります」
「なんだよ」
「まず、下品な目でこちらを見ないこと。それから、プログラム以外は話しかけないこと。あと、全種目1位でなければ、あなたがシスコンであることを、全クラスにばらまくわ。大丈夫よ、死までは追い詰めないから」
あっさり決めた理由がわかったよ。ていうか、1つじゃないじゃねぇかよ。全種目1位だと!そんなの壁ドンとか無理だろ。シスコンは嘘じゃねぇかよ。あとこいつ怖いよ。いや、怖すぎるよ。
「まぁ~本当にありがとな」
「でも、あなたがもし妙な真似したら…しっかり技をかけちゃうかもしれないから十分気をつけてね」
「あんたはプロレスラーかよ!あとそこはうっかりだろ。しっかりしてどうする。俺はなんでこんなやつと…はぁ~」
今日は短いため息が多かった。
俺はとにかく神崎の条件と引き変えに体育祭でのペアーができたので一安心だ。条件が酷すぎんだけどな。
× × ×
「位置について。よーい」
パァン!
体育祭が始まった。グランドいっぱいに響くピストルの音。必死に走る男女の生徒。暑苦しい太陽の光。数多くの観客。そしてデカデカと飾られた、体育祭のテーマ。
「なんだあのテーマは。何が《青春を楽しめ!若者ども》だ。十分楽しんでんだよ」
そうだ、十分楽しんでだよ。楽しんでるんだよなぁ~。未だに彼女いないけど。
「なぁ~神崎。今聞くのはあれだけど、やっぱりお前俺とどっかで会ったことあるか?」
「滝沢くん。条件を忘れたの。プログラムが始まるまでは私に喋り掛けないって」
あ、忘れてたよ。こいつあの条件マジで言ってたんだ。
「あ~、すまん」
「でも、私も最近そんな気がしてたの。あなたとどこかで会ったことあるような気が」
「お~、そうか」
こいつもやっぱり気がついていたのか。でも、あってるとしたらどこでだ?ん~思い出せない。
「位置について、よーい」
パァン!
今は1年生による男女で肩を組んで100メートル走。名ずけて
「恋にこがれろ競走!」
いや、名前おかしずぎるだろ。俺も1年でこんなことやったけど、こんなに名前が酷くなかった。どんだけ進化してんだよ。
もうそろそろで2年生の、男女で手を繋いで障害物競走だ。
「意外と緊張するもんなんだな」
「次は2年生による男女で手を繋いで障害物競走です」
アナウンスが入り俺たちはグランドへと走り出した。俺と神崎は最後から3番目にいる。でも1番の疑問は、なぜか神崎が手袋をしている事だ。
「なんでお前手袋してんの?」
「決まっているじゃない。あなたに生で触りたくないからよ」
「おいおい。俺をバイ菌扱いするのはやめなさい」
神崎は「この人、言われることわかっていてきいたの?もしかしたらドMなの?」的な目で見てきた。こいつが付き合えない理由を垣間見た気がしたよ。
「はぁ~。誰かバナナの皮とか踏んでずっこけないかなぁ~」
「あなた、考える事が最低レベルね。キモイを超えて軽蔑するわ」
「いや、キモイ超えたら尊敬しないか普通」
てか、こいつにだけは言われたくない。早く帰って菜々香に会いたい。
「よーい」
パァン!
少しずつ俺たちの番に近づいてくる。その頃次のペアーは、佐藤と、工藤だった。
「あいつら上手くいってるようだな」
「そうね。でもまだこれからよ。告白タイムで佐藤さんがどこまで出来るか」
「そうだな」
本当だったら俺が工藤の場にいるはずなのに。って言うのは幻想でしかないか。俺はこの、クソビッチと組んでるんだからな。
「俺らの番だな」
俺は1位の座を取らないと、クラスでは、ある意味大人気のシスコンやろーになってしまう。俺は隣の対戦相手を見た。
「え~と、俺らの対戦相手はっと」
俺は声が出なくなった。なんで男子で2番目に足の速い遠藤と女子で2番目に速い桜藤がペアーなんだよ。ちなみに男子で1番速いのは工藤だからってあいつは完璧すぎんだろ。ていうか、俺の周りの奴らは「藤」のつく名前がやたらと多いな。
「神崎、これ1位取れんのか?」
「大丈夫ですよ。なんせ私は女子で1番いや、学校で1番足には自信があるのだもの」
「自信だけじゃ乗り切れないこともあんだろ」
「ま、見ときなさい」
「位置について」
「よーい」
パン!
ピストルの音がなり全力で走ろうとした。でも、俺の足は一瞬で宙に浮いていた。
「なんだこれ。お前どんな足してんだよ」
「喋ってる暇があったら手を離さないようにしっかり握ってて下さい」
「お、おう」
速い。丸で光のスピードだ。こいつもしかしたら殺せんせーに似た宇宙人なのか!
俺と神崎は200メートルを約15秒で、もちろんダントツ1位で走り抜けた。
「お前どうしてあんなに速いんだよ」
「逆に聞くけどどうしてあのスピードについて来れないの?」
「お前、頑張って走っている全人類に謝ってこい」
「私は生まれつき足が速かったのよ。小学生も中学生せいでも走ることに関しては負けなかったもの」
「これは足が速いとかの問題じゃねぇーと思うぞ」
「でも、1位になれたのだからよかったじゃない」
「それもそうだな」
俺は何もやってないのだけれど。でも、あと俺が出るのは4つくらいだから頑張らないとな。
「そうえば、さっきから観客が静かだな」
「そうね」
「多分お前のせいだが。この空気どうすんだよ」
俺は辺りを見渡してどうするか考えてた。すると大きな歓声が一気に響き始めた。
「すげーーーーーーーー。あの女の子何者なんだよー。俺あの人と友達になって見ようかな~ーーー!」
「お前だいぶこれで目立ち待ったな」
「そうね。これから大変なことになるかもしれないわ」
神崎は何の感情も込めずに言う。もしかしたらこいつには元から感情がないのかもしれない。そんなことをふと考えてしまう。俺は呆れながらため息混じりで言う。
「さぁ~て、この先どうすっかな~」
「どうもしないわ。ただ単に勝てばいいのだから」
またもや即答で言う。説得力ないのに地味に言っていることはあっている所がムカつくよな。
こうして俺と神崎は1種目を何とか乗り切った。
そして3年のプログラムも終わり1年のプログラムに入った。
「え~と、次はおんぶリレーか。この体育祭辛い。辛すぎる」
俺は心無しに言葉を言う。神崎も俺におんぶされて嫌なのかな?そう神崎に聞きたい気持ちが多少ある。だって胸当たっちまうだろ。まだ神崎の慎ましやかな胸だからいいものの、これが佐藤とかの胸だったら、よーいの時点で倒れるだろう。
時は徐々に過ぎていく。
3年、1年と種目が終わりいよいよ2年のおんぶリレーだ。俺は入場場所に行き一応ストレッチなど準備運動をした。そこに少し遅れて神崎が来た。
「神崎、お前ホントに大丈夫か?」
「なんのことかしら」
「だっておんぶの時そ、その当たっちまうだろ」
「あなたやっぱり、ド変態さんね。大丈夫よ、対策はしてあるから」
神崎は少し苦笑いを浮べる。待って対策って何?俺何されるの。怖いよ。
「次は2年生による男女でおんぶリレーです」
会場に響き渡る嫌なアナウンスがなった。ついに始まったか。俺は1歩ずつ踏み出していく。
「位置について、よーい」
パァン!!
徐々に順番が終わっていく。俺もそろそろで、恐怖というか緊張からで足が震えだしていた。
「何震えているの。もしかして足が勝手に震える、ぷるぷる症候群なのかしら」
「そんな症候群あったらお前は相手をどん底へと突き落とす、毒舌症候群か」
「ちょっと何を言っているか理解が出来ないのだけれど」
そんなの俺も同感だよ。何がぷるぷる症候群だよ。名前のセンス無さすぎだろ。どうでもいい会話を打ち切り、次のランナーを見る。
「えーと次は、あ、佐藤だ。おい神崎、佐藤が走るぞ」
「そんなに驚かなくても知っているわよ。あと別に佐藤さんが走る訳では無いわよ」
そこの所はどうでもいいよ。だって工藤の背中に佐藤の胸が思いっきり当たっちゃてるんだもん。あれだけ当たっているのに耐えている工藤が少し羨ましく思う。
「工藤のやろー、主人公的な立場になりやがって」
「何を悔しがっているの。もしかして自分があの立場にたてるとでも思っていたのかしら。いくらなんでも幻想が激しすぎるわ」
「おいおい、そこまでハッキリ言われるとさすがの俺でも心が痛むぞ」
ホントに今にも死にそうなくらい心が痛い。心が…心が…やばいあまりの虚しさに涙出てくるかも。そんなことしていたらとっくに順番が近ずいていた。
「次だな」
「そうね。約束通り1位になって貰わないとね」
「あ~、できる限り頑張るよ」
あまり自信なさげに俺は言う。だって自信ないもん。俺、かよわいもん。神崎よりも弱いもん、なんて考える余裕もない。
よーい、パン!の音が聞こえてランナーが走り、俺らの番になった。
「神崎、準備するぞ」
俺は神崎の前にしゃがみ背中を見せた。神崎はゆっくり俺の背中に乗った。
「落ちないようにしっかりつかんどけよ」
「分かっているわ」
「い、いたいたいたいたいたいたい。お前何すんだよ」
「何ってしっかりつかんでんじゃない」
「強すぎだよ。お前握力何キロあんだよ。あとなんだその乗り方は。なんで直立になってんだよ」
でも、地味に軽いなぁ~。こいつもう少し重いと思ってたぜ。
「言ったでしょ、対策してあるって。これならあなたには、私の胸は当たらないでしょ」
「そうだけど走りにくいだろ」
「大丈夫よ。その事もちゃんと対策してあるから」
おいおい。その対策ホントに大丈夫かなぁ~。嫌な汗が止まらないのは俺だけか。
「位置について」
俺と神崎は定位置に足を運ぶ。
「よーい」
「……」
パァン!!
俺は全力疾走した。でもやっぱり運動部のペアには、差が開けていく。その時神崎は薄笑いしていた。
「滝沢くん。ここからが勝負よ」
「はぁ~、何が言いたいんだよ」
「ここからが本番だってことですよ」
「だから…い、いたぁぁーーーーー」
なんかケツが痛い。まさか神崎が俺のケツを足で蹴ってる。
「痛い神崎さん痛い」
「早く終わらしたいならもっとスピードをあげなさい」
「あ、痛い。も、もうやめてあ、あ~ん」
俺はいつの間にか自己最速のスピードで駆け抜けて見事に1位でゴールした。こんなんで1位になっても、自己最速出ても嬉しくな~い。
「はぁ~はぁ~はぁ~。おいてめぇ、やっていい事とダメなことくらい判断しろよ」
「判断してやっていいと思ったからやったのだけれど」
「いくらなんでも痛いよ。100メートル走るのになんで27回もケツを蹴られなきゃいけないんだよ」
「でも、おかげで1位になれたじゃない。あなたは私に感謝するべき立場ではないのかしら」
「こんなやり方で感謝できるか!」
こいつはもはや、サイコパスの領域に入っている。これが俺だからいいものの、他人の男なら今頃泣きながら先生に訴えているところだぞ。1位になれたのはよかったけど他に対策なかったのかよ。はぁ~、体育祭ってこんなに疲れるものだったかなぁ~。
その後、壁ドンは恥ずかしながらも「神崎、いや、彩月。俺と、俺と付き合ってくれ」っと顔をキス直前まで近ずけて何とか1位になれた。あの時の神崎の目はもはや、この世の生物ではないかのような今までで1番鋭くとても恐怖に満ち溢れた目だった。もちろん振られたけど。
そして告白タイムも終わった。ちなみに佐藤の告白タイムは午後のだ。佐藤がどれだけ頑張れるかは見とかないとな。
昼食は神崎と一緒に食べた、が、3メートル以内には近ずかないでと言われたので俺は5メートルくらい離れて昼食をとった。もうそれ2人で食べてるって言わないよね。
こうしてあとは、借り物競走で1位を取れば約束通りシスコン扱いは無くなる。まぁ~妹は好きだけどな。
「え~と、次は……」
「佐藤さんの告白タイムね」
「お、いたのか神崎」
「その私が空気見たいな言い方やめて貰えるかしら。よっぽどあなたの方が空気扱いされている事に早くきずいたら」
「あ~その事は1年前から築いてるよ」
ハッキリ言えば小学生5年生の頃からだけどな。あの日は忘れたくても忘れられない、俺がぼっちになった瞬間だったからな。
そう、これは俺が5年生だった冬の頃。俺にはたった1人の、男子友達がいた。その子はイケメンでクラスではとても目立ち、俺なんかが友達になってもいいのかと思うくらい、色んなことが完璧だった。が、ある日突然その子に相談を受けた。その相談に俺はびっくりした。
「俺明日、めぐみに告白する。だから瑛太には応援して欲しい」
という内容だった。めぐみというのは、美人で性格良くて、俺も好きだった女の子だ。だから俺はとっさに言ってしまった。
「あいつはやめとけ。お前じゃ相手にされないかもしれないから」
この言葉で俺はたった1人の友達を失ってしまった。最後には決定的な言葉を言われた。
「お前なら分かってくれると思ったのにな。見損なったよ。さよなら」
イャャャャャャ!こんな思い出は思い出したくなかったのに。あの後は一言も喋らず6年生になり、卒業してしまった。あいつ今どうしてるのかなぁ~。
まぁ~俺の話はここまでにして、いよいよ佐藤の告白タイムだ。
「続いては、告白タイムセカンドです」
「始まったな」
「え~、佐藤さんちゃんと言えるかしら」
「俺らは見守るしかできないからな」
神崎は少し不安な顔をしていた。こいつって以外と人思い的な部分あるのかな。長々と話している暇もなくアナウンスが流れる。
「まず1人目は~。重岡竜也くん」
こうして告白タイムは、スタートした。この告白タイムでリア充になったり、振られたりして1人1人の告白タイムは、終わっていく。俺は、もちろんそこで告白される訳もなくひたすらに佐藤の番を待ち続けた。神崎は1回だけ言われてたような気がする。まぁ~多分断っただろうけど。すると佐藤の番がきた。
「続いて14人目。佐藤菜月さん」
アナウンスが鳴り佐藤は屋上へと出てきた。頑張れ、佐藤。佐藤は緊張しているように見えた。
そして震えながらも声を出す。
「え、え~と。私には好きな人がいます。に、2年C組の工藤凛くん」
なぜ、人は名前を聞くだけでこんなに騒ぐんだろ。佐藤の言葉でグラウンドは、歓声に溢れていた。それにより佐藤はさっき以上に震えていた。
「あ、あ、あの~。工藤くん。私は私は」
やばいな。佐藤の声がだんだん小さくなっていってる。心配になり俺は神崎の方を見た。でも、神崎はただずっと佐藤の方を見て、止まっていた。その顔は不安もあるが、佐藤を信じている顔の方が強かった。
それに気づいたのか、佐藤は俺と神崎を見た。この時神崎は声には出さずに何かを呟いた。すると佐藤は震えが止まり、笑った。佐藤はゆっくり息を吐き、グラウンドいっぱいに叫んだ。
「私は私は、工藤凛くんのことが好きでーーす。凛くん。もし良ければ、私で良ければ……付き合ってくださーーーーい!」
佐藤は顔を真っ赤にして、観客に、生徒に、そして工藤に、愛を全力で伝えた。俺の想像の遥か上にいく完璧な告白だった。俺の横で立っている神崎を見ると、笑っていた。こいつの純粋な笑みは、初めて見た。そして佐藤の告白に、工藤はどう答えるのか、みんなが耳をすませている。佐藤の運命は……。
告白タイムは、終了した。佐藤は真っ先に、俺らの所にきた。そして言葉を放った。
「ごめんなさい。必死に相談に乗ってくれたのに、振られちゃって。本当に私って弱虫ですよね」
佐藤は悲しい顔をして今にも泣きそうな目で言う。そう佐藤は惜しくも振られてしまった。だが、神崎はそんな佐藤を責めたりはしない。いや誰しもがこんな佐藤を弱虫だなんて責められるわけがない。神崎は微笑みながら優しく声を出す。
「あなたは頑張ったわ。だって誰よりも1番凄い告白だったもの。告白は実らなくても、あなたの勇気は絶対にみんなに届いたわ。少なくともそこにいる滝沢くんや私には、あなたの告白に感動したもの。あなたはもう弱虫じゃない。自信を持って。泣きたいなら泣きなさい。今は泣いてもいいのよ」
神崎は少し目に涙を浮べて笑っている。こんなの誰もが感動するに決まっている。佐藤は神崎の言葉で緊張が溶けたのか少しずつ涙を流す。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー」
神崎はそんな佐藤を抱きしめ寄り添っている。俺は最後に言葉を言って去っていった方が良さそうだ。
「大丈夫。あとは俺に任しとけ」
「そうね。頼んだわよ滝沢くん」
「あ~。佐藤の分は俺が取り返す」
こうなったら俺は、借り物競走で絶対に1位をとるしかない。いや、取らないといけない。絶対に。
「続いては男子による愛の借り物競走です」
ここからどうすっかなぁ~。好きな人とか引いたら誰を連れ出せばいいんだよ。
「では、男子による男子だらけの愛の借り物競走を開幕」
ん、今言ったの誰だ。なんだよBL好きかよ。どうでもいいや。
「位置について、よーい」
パァン!
軽々とピストルの音が鳴る。一斉にランナーは走り出す。ランナーは男を連れて行ったり女を連れて行ったりして、最後には自分が取った紙を見せあっていたりする。条件のないランナーは気軽でいいなぁ~。しかも俺は順番が迫っていく事に緊張して足がぷるぷるしている。これがいわゆるぷるぷる症候群か。
そんなこと考えてたら真っ先に俺の番がきた。
「次の選手は準備してください」
俺は3レーンからスタートだ。たとえどんなに緊張してても、どんな条件でも、佐藤の為に1位を取ってやる。
「位置について、よーい」
「……」
パァン!!
ピストルがなり俺は走り出した。もちろん紙を取るまでは最後尾で走っていた。何とか紙を取って中身を見た。
「え~と、《独身の教師》だと。誰がこんなもん入れんだよ」
いや待て。1人いるではないか。俺らの担任の今谷先生が。こんな奇跡人生でもう無いかもしれない。俺は全力で今谷先生がいる所へ走った。
「い、今谷先生。一緒に来てください」
「わ、私。ちょっとびっくりだなぁ~。なら後で紙、見せてね」
「はい」
その奇跡のおかげで俺は1番にゴールテープへと駆け出した。すると後ろから男女で近寄ってくる影が見えた。
「先生急ぎますよ」
「分かっているけどもうこれ以上は走れないわ」
そうか。先生は運動出来ないんだった。俺らはゴールテープまで5メートルくらいだけど、後ろからどんどん近ずいてくる男女に追いつかれそうだ。こうなったらやるしかない。
「先生、しっかりつかんでてくださいね」
「何をする気なの。え、え、あの滝沢く~ん。いゃゃ」
俺は先生をお姫様抱っこし残りの距離を走りきった。そして見事にギリギリでナンバーワンになった。
「おいしょっと。良かったですね先生」
「何がよかったのよ。急に抱っこなんかするからさすがにびっくりしたわよ」
「あ、その事はごめんなさい」
「まぁ~でもありがとう。では、約束通り紙を見せて」
「分かりました」
俺はポケットに入れた紙を広げて先生の前に出した。
「これです」
「えーと、《独身の教師》………」
「あの先生」
先生の表情に異変が起きている。これはやばいかも。
「ねぇ~滝沢くん。あなたは私にどうされたい」
「で、出来るならこの事は忘れて欲しいです」
「そんなこと、そんなことしてたまるかーー」
「や、やめてーーー」
グォ。オェェ。ブハハ。
先生に思う存分殴られた。この感触は神崎にもやられたなぁ~。
これで俺は条件をクリアして、今年の体育祭を終えた。
俺は閉会式の後、部室に荷物を取りに行った。すると部室には神崎がいた。
「はぁ~、やっと終わった」
「よくやったわね。独身の先生を連れ出した最低男子くん」
「え、なんでお前が知ってんの」
「噂に流れてるわよ。もう少し上手くやれなかったのかしら」
「うるせぇー」
あれ以上上手くは出来んだろ。
「ま、お疲れさん。じゃあな」
荷物を取ってお先に帰ろうとした時、部室に佐藤が入ってきた。
「どうした佐藤」
「あ、滝沢くん。もう帰るの?」
「まぁ~な。用は済んだし」
「そ、そうなんだ」
「どうしたのかしら。なにか用でも」
「あ、いやちゃんとお礼したくて。滝沢くん、神崎さん、本当にありがとう。2人ののおかげで私、自信が着きました。ホントにホントにありがとう」
佐藤は何回も頭を下げて笑顔で言う。でも本当は、俺らが謝らないといけないのにな。
「別にあなたがお礼を言うべきじゃないわ。工藤くんを恋人に出来なくてごめんなさい」
「あ、いや顔をあげてください。大丈夫です。たとえ恋が実らなくても私の中ではこの青春がすっごい最高の思い出になりました」
「そうなの。ならよかったわ」
いや、立ち直るのはぇーな。
ここで神崎から思わぬ言葉が出た。
「佐藤さん、あなたこの部活に入ってくれないかしら」
なんだよその急展開。まぁ~俺としても入ってくれたら嬉しいけど。こいつと2人とかもう嫌だよ。佐藤ーー。
「え、あ、ありがとうございます。少し考えておきます」
「そう。待ってるからね」
「はい。2人ともホントにありがとうございました」
こうして地獄の体育祭が終わった。ホントに地獄だった。帰って菜々香に癒してもらおっと。
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