ゴブリンスレイヤーRTA 小鬼殺し√ (ラスト・ダンサー)
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小鬼殺し.mp1

最近の流行りに乗ったので初投稿です。
この為だけにゴブリンスレイヤーTRPG買いました。
純粋に設定資料集としても優秀なので興味があったら買ってみるのもいいでしょう。
ちなみに買ったのは電子書籍版です。

追記:誤字報告ノンケニキ連絡くれるのは有り難いけど括約は誤字じゃなくてはネタなのでそのままでオナシャス!


 はーい、よーいスタート。

 

 王道を征くけどやってることは邪道な小鬼を殺すRTAはーじまーるよー。

 

 ニューゲーム選択と同時にタイマースタート。

 

 キャラクリ画面では迷わず性別:男を選択。

 

 この四方世界、ひいてはゴブリンスレイヤーの世界観で女はゴブリンとかいう畜生以下の生物のせいで非常に大きなデメリットを背負うことになります。

 

 ゴブリンはどこにでも現れるためその影響は大きく、仮に捕まってしまえば特殊性癖のノンケ大興奮の大乱交スマッシュゴブリンズが始まり大幅なロスです。

 ヘタするとそのままキャラロスト(死亡もしくは再起不能)となります。

 助かっても高確率でゴブリン相手にバッドステータスが発生し続けるトラウマ状態に陥るのでよっぽどでもなければ再走案件です。

 

 RTAにおいて性別は何か特別な理由が無い限りは男一択です。まあ男で捕まれば即座に殺されミンチルート直行ですがどっちみち捕まれば再走確定なので気にしません。

 

 続いてステータス設定ですが、種族は安定性を重視し只人(ヒューム)。見た目はデフォルト1のなんの面白味もない平凡極まる、黒髪黒目中肉中背のザ・モブです。

 

 続いて経歴設定。冒険者になるまでの経歴をここで決めることができます。経歴ボーナスが得られますが多少スタートダッシュを決めやすくなるくらいで本編に大きく影響を及ぼすほどのものでもないです。

 

 面倒なので私はランダムを選択。

 出自は商人。来歴は平穏。邂逅は親友。

 要するにコイツは、商人の家に生まれて平穏に暮らし、親友にも恵まれるというなんの苦労もしてそうにない人生勝ち組のようです。

 

 商人で仕度金にボーナスがかかり、平穏で幸運技能を自動取得します。親友は何か困ったときに助けに入ってもらえるイベントが挿入される可能性があります。どれも微妙な感じですが気休めにはなるでしょう。

 

 TRPG要素の強いゴブスレでは基本ステータスは固定値かダイスロールでのランダムで決定することができます。今回は固定値より高くなることを期待してダイスロールで決めます。ダイスロールでも種族補正により只人(ヒューム)なのに森人(エルフ)圃人(レーア)以下の筋力しかないなんてことには基本ならない(筋力がこちらより高くならないとは言ってない)ので、安心して運に任せてダイスを振りましょう。

 

 さて緊張の瞬間です。

 これによりどのようなスタイルで小鬼を殺すかが決まります。

 結果は……なんとも只人らしい平均的ステータスになりました。魔術師を除く呪文職に向かないのと咄嗟の対応が鈍いのを除けばやや体力や技量が高く戦闘職で括約できるステータスです。

 

 鈍いのは致命的じゃないかって?

 そこはプレイスキルでのカバーの見せ所です(フラグ)

 

 職業はポイントを【戦士(ファイター)】2【斥候(スカウト)】1と振ります。

【戦士】は武器や鎧などの能力補正を上げるので攻撃力や防御力に直結する、本RTAの要の職業です。【斥候】は探索技能などの痒いところに手が届く技能に補正がかかり、不意のガバに対応しやすくなります。

 

 技能は【忍耐】と【盾】を選択。

 特に【忍耐】はプレイキャラが苦痛や疲労に耐えて行動し続けることのできる技能で、睡眠時間を削ってのステータス上げに当てるなどの多少の無茶ができるようになるので非常に有用な技能です。あまり過信しすぎると過労死でのキャラロストとかいう笑えない結末を迎えることがあるので注意しましょう(1敗)

 

 名前は疾く走れるよう【疾走戦士】とします。

 え?ホモ?なんのことですか?

 

 オマケに冒険者となった動機と経緯の設定。

 特にステータスには影響しないロールプレイのためのフレーバーテキストを決めるだけなのでこれもランダムで決定。

 

 へ!?

 

 コイツ啓示を受けて冒険者になったとか言い出しましたよ!?

 お前バリバリの戦闘職で信仰心なんて欠片も無いだろうが!

 まあ【RTA走者】という中の人に行動方針を操られているという点では啓示を受けたと言えるかもしれません。

 

 さて、まどか神の世界観解説と共に流れるムービーの間に本RTAの概要をお話しします。

 

 本RTAでは変なのことゴブリンスレイヤーの一党に加わる、王道の小鬼殺しルートをいきます。原作のストーリーを追体験する人気のルートですが危機に陥る場面も多く死亡する可能性が非常に高いルートです。そのためこのルートではパーティーメンバーを最大限活用する必要があり仲間との協力は必須です。

 

 まずはここに入れと言わんばかりにギルドの建物がアップになりますが、これは開発者の罠です(濡れ衣)

 操作可能になったらギルドへは入らずに工房へ直行します。理由は後述します。

 

 工房に入ったら迷わずショートソードとラウンドシールド、ハードレザーアーマー一式を購入。今回は出自が商人なので仕度金が通常銀貨100枚のところ銀貨50枚の追加ボーナスがあり若干余裕があります。さらに幸運の技能が仕事をしたのかなんとグレートヘルム、通称バケツが中古で売られていましたのでそれも購入。その場で装備していきます。

 

 ついでに治癒の水薬と解毒薬を購入。工房の主人は嫌そうな顔をして出し渋りますが、少し粘ると売ってくれます。本来の販売場所まで移動するよりここで少し粘って買った方が一石二鳥で短縮になります。まあ使わない可能性もあるんですが一応保険に。

 

 色々買ったのでこれで残りは銀貨20枚。もしバケツが中古で売ってなかったら宿泊費や食費すら危ぶまれていたところでした。幸運技能仕事した。ちなみに冒険者セットは最初から持っているので間違って買わないようにしましょう。

 

 装備を整えたら今度こそギルドへ向かい、カウンターで冒険者登録をしましょう。バケツヘルムに突っ込まれますが無視します。ドン引かれながら登録を終え、認識表を受け取ったら、受付嬢からの質問に『考え中』を選択。ここで『ちょうどいいクエストはないか』を選択すると溝浚いか巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)などの討伐を斡旋され、変なのとの合流が遅れます。イベントは進まないので通常プレイなら経験値を溜めに向かってもいいですが、今回は行きません。

 

 一定時間クエストを決めずにうろうろしていると、変なの2号こと女神官ちゃんがやって来ます。彼女の登録が終わるまで暇なのでここで女神官の解説をしたいと思います。

 

 この時点では神殿から出てきたばかりの女神官。耐久はまだ変なのに薦められて鎖帷子を装備していませんので紙の一言に尽きます。身体能力も同年代の一般人とほとんど変わりません。むしろ若干劣っています。序盤は彼女に敵を近づけてはいけません。ちょっとしたダメージでも怯んで動けなくなってしまいます。

 

 しかし彼女はこう見えて神官レベル3のエリートです。出自【神官】により最初から神官レベル1なのに加えて、初期ポイントを神官レベルに全振りしています。さらには来歴【神殿】により神学技能を保持、さらにはお馴染みの小癒(ヒール)聖光(ホーリーライト)を覚えている他、3回も呪文を唱えられるなど、原作と同じく支援特化の優秀なヒーラーです。

 

 ちなみに周回によるプレイキャラの技能持ち越しをした場合、前の周回で変なのが死亡していると、この時点で女神官が金等級並に超強化された修羅モードで出現します。流行りの死に戻りかな?

 

 彼女は人喰鬼(オーガ)くらいなら単独討伐するヤベー奴です。興味があったら出現させてその力を見るのも一興です。

 なお私は彼女の地雷を踏み抜き聖擊(ホーリースマイト)で消し炭にされました。女神官ちゃん強い、強くない?

 

 女神官の登録が終わったのを確認したら、例のパーティーが話しかける前に彼女に話しかけましょう。選択肢はよほど変なものでなければ適当で大丈夫です。ある程度会話を進めると横から剣士、武闘家、魔術師のパーティーが小鬼退治の勧誘を持ち掛けてくるので、これを受けることで小鬼殺しルートのフラグが立ちます。やはりゴブリンか……いつ出発する?私も同行する(花京院並感)

 

 直後に受付嬢さんから忠言が飛んできますが、例のパーティーは聞く耳を持ちません。

 時間の無駄なので彼らに同調して早々に会話を切り上げましょう。おっ、そうだな(便乗)

 

 この時点で装備が無い場合、準備イベントが発生しますが、事前に準備を終えているとスキップできます。

 だから工房へ直行する必要があったんですね。

 では早速小鬼の巣穴へイクゾー!

 

 移動中は暇になります。

 

 そ ん な み な さ ま の た め に ぃ ~

 

 このゴブリン退治について解説します。

 

 このクエストは原作同様、初見殺しです。序盤最難関と言っても過言ではありません。いきなり上位種である田舎者(ホブ)呪術師(シャーマン)が固定配置されるうえ、横穴を見逃すと不意打ちを食らって哀れな犠牲者の仲間入りをすることになります。あまりのムズさにこのRTAやめたくなりますよ~。

 

 とにかく耐えて一定時間が経過するか、一定数のゴブリン撃破で変なのがエントリーし、ホブとシャーマンを淡々と殺戮してくれます。私も初見時は死に物狂いで逃げ回り、結局原作通り女神官しか生き残れませんでした。もちろんこれはRTAなのでゴブリンの一定数撃破による短縮を狙います。

 

 お、ちょうど巣に到達したみたいですね。ここから巣の攻略に入ります。例の如くシャーマンの存在を示すトーテムがありますが、これが何なのかわからない一行は不気味なオブジェがあるなぁと思考停止してしまいます。まぁ、駆け出しだから多少はね?

 

 洞窟内ですが、当然のごとく暗いです。【暗視】の技能か松明などの照明器具がなければほとんど見えません。疾走戦士君は剣と盾という伝統の戦士スタイルで両手が塞がっているため、光源は女神官か魔術師に持って貰う必要があります。剣士が松明を持っていますが一党の後衛組を照らすには不十分なので女神官に手持ちから松明を渡しておきましょう。松明は床に落ちても光源として機能し続けるので多くあるに越したことはないです。

 

 疾走戦士君は退路の確保を名目に最後尾に陣取ります。横穴の発見をミスった場合に直ぐ様仲間の盾になるためです。盾持ちのクセにまるで婦女子を盾にするクズのようですが、私には横穴からの襲撃に対応するという大義名分があります。なんの問題ですか?

 

 ある程度進むとまたトーテムが配置されており、止める間もなく剣士と武闘家が先に行ってしまうイベントが発生します。こ↑こ↓で後衛組が松明を持っていると偽装された横穴に気づく可能性が高くなります。運が悪いと発見できませんが、今回は無事に横穴を見つけられました。おっ(横穴が)開いてんじゃーん。

 

 この時点で後衛組より前に出ておきましょう。

 

 不意打ちこそ防げましたが横穴の発見から数秒後には横穴と正面からゴブリンが沸いてきます。事前に待ち構えていたので、ゴブリンに不意討ちカウンターを浴びせながら初戦闘開始です。基本はショートソードで盾チクして、飛び掛かってくる奴をシールドバッシュで迎撃しましょう。【盾】技能の使い所さんです。イキッて凸ると現在の装備だとほぼ確定で毒もらってピンチに陥ります(1敗)やめましょう。たまに魔術師から火矢(ファイアボルト)で援護が入りますがそれは上位種にとっておいてくれよな~頼むよ~。

 

 どうにかそれを凌ぎきると、その頃には剣士がリンチされてミンチ(激ウマギャグ)にされています。

マモレナカッタ……。

 

 いやこれに関してはマジで無理です。

 原作よりもゴブリンの数が追加されており、後衛組を守っているといつの間にか死んでしまいます。なんで剣士すぐ死んでしまうん?

 

 仮に剣士を生存させるとなると、極短時間で横穴のゴブリンを始末し、剣士が長剣を洞窟の壁に引っ掻ける前に正面のゴブリンも始末する必要があります。

開発の剣士くんへの殺意高スギィ!

 

 (実を言うと剣士は助けると挿入されるイベントのせいでロスになるためメリットは)ないです。

 (元より助ける気など微塵も)ないです。

 

 幼馴染がミンチにされた怒りで武闘家も疾走戦士に後衛組を守るように言うと突っ込んでいってしまい、予定調和でホブにダウンさせられ、そのまま突っ込まれ(意味深)てしまいます。剣士くんがロストするとほぼ確定で武闘家もリタイアするのほんとイヤらしいです。

開発はそこまで武闘家をレイプ目(ガチ)にしたいのか……。

 

 こうなってしまっては仕方がないです(武闘家を囮にすることに成功しました)

 今のうちに女神官と魔術師に逃げるように指示しましょう。

 先程の戦闘で横穴のゴブリンを複数撃破してるため、この時点で既に変なの参戦フラグは立っています。

 急いで来た道を戻りましょう。

 

 逃げる時は絶対にプレイキャラを殿にしておきます。

 自分だけ我先に逃げ出すと魔術師が追い付かれ高確率で瀕死にされロスになります。

 逆に「ここは俺に任せて先に行け!」的ムーヴでの孤立も事故からの負傷によるロスに直結しかねないです。

 逃げる後衛組と距離を保ちながら後退しましょう。

 置いて行くのも置いて行かれるのもダメです。

 

 途中、追撃のゴブリンの放った矢が何度か襲いかかりますが、ラウンドシールドの守備範囲では胴体の一部を守るのが関の山です。最悪当たっても死にはしませんので足に当たらないことを祈りつつ逃げましょう。このとき余裕があれば突出してきた先走りゴブリンをぶち殺しても構いません。

 

 あっ、疾走戦士をすり抜けた矢が女神官の肩に命中しコケてしまいました。

 これが歴史の収束か……(怠慢)

 まあ誤差だよ誤差!

 

 さてお待ちかねの変なのことゴブリンスレイヤーがここで満を持して登場します。

 薄汚れた鎧に兜から漏れる赤い眼光、元ネタのさまようよろいばりに不気味な主人公らしくない主人公です。

 

 キーパーソンに負傷者が出てしまったので応急手当をすることが確定しています。疾走戦士は【応急手当】技能を持っていないのでゴブスレさんにやってもらいます。

 

 速やかに手当に移って貰うため、ゴブスレさん登場と同時くらいには攻撃に移ります。追撃のゴブリンを殲滅しておきましょう。せいぜい2~3匹ぐらいなので盾チク&シールドバッシュで確実に仕留めます。またゴブスレさんに気を取られている個体は喉あたりを突いておけば自分の血で窒息してくれます。

 

 女神官治療後はそのままゴブスレさんに同行して、巣のゴブリンを皆殺しにしましょう。原作より戦力に余裕があるので処理が速くなります。

 

 基本的にはやることは変わりません。

 盾チクとシールドバッシュで殺します。遠距離の奴はゴブスレさんが投げナイフで処理しちゃうので任せてしまいましょう(他力本願)

 

 このあたりでショートソードが血糊で滑り剣として使い物にならなくなりますが、ショートソードは刺突、切断、殴打の属性を持つオールラウンドな武器です。相手を怯ませるくらいの威力は持ってるので、ここからは鈍器として扱い、怯みからのシールドバッシュコンボで撲殺しましょう。

 

 ゴブスレさんに倣って武器を拾うか奪うという手段もありましたが、あれはゴブスレさんが器用貧乏にあらゆる間合いの武器を使えるからこそ成立する戦法なので疾走戦士は間合いの違いからスカりまくるのでやめました。

 

 通路を掃除したら残りは奥の大部屋にいる奴等の制圧です。

 ゴブスレさんが即席のワイヤートラップを仕掛けるのを手伝いましょう。ほぼ誤差ですが少し早くなります。

 聖光の目眩ましに合わせてゴブスレさんが突入し、槍の投擲でシャーマンに手傷を負わせ、魔術師が火矢で追い打ちをかけます。焼けば死んだフリなんてできない。当たり前だよなぁ?

 

 ちなみに疾走戦士はワイヤートラップ手前で待機しています。みんな前に行ってるのに後ろで引きこもるようでアレですが、出来ることがないので、仕方ないね♂

 

 シャーマンの処理が終わるとみんな戻ってきますが、女神官と魔術師は一定確率でワイヤートラップを飛び越えるのに失敗する、もしくはそのまま罠にかかる、などして転びます。

 今回は魔術師がおもいっきり引っ掛かりました。

 はー、つっかえ。

 

 スッ転ばれると負傷から文字通りのお荷物になることもあるので、予め待ち構えておいて間抜けを受け止め、素早くゴブスレさんより後ろに下がらせます。

 コイツ重いな(失礼)

 

 追いかけてきたホブは聖光からのワイヤートラップで転倒したところを、ちゃっかり回収されていた剣士くんのロングソードで延髄を切断され処されるので、魔術師を置いたらワイヤートラップ手前に戻り残りのゴブリンをスレイします。

 前述の通り原作より数が追加されているので意外と多いです。焦らずゴブスレさんと協力して処理しましょう。

 ホブの死体を使ったガソリン放火アタックは魔術師の火矢で着火すれば松明でやるより殺傷能力が増します。短縮のため効果的なタイミングでやりましょう。

 

 奥からゴブリンが出てこなくなったらこれで戦力になるゴブリンは全滅です。死んだフリをするシャーマンも既に炭になったので死亡確認の必要もありません。あとは子供ゴブリンを抹殺すれば終わりです。

 

ここで何もしないとゴブスレさんはゴブリンの死亡確認を先にしようとするので中々子供ゴブリンを見つけに行きません。なのでここは自分で子供ゴブリンの発見イベントを発生させたほうが早いです。

 

 まるで知っていたかのように椅子(人骨製)の後ろの隠しスペースを暴くと強制イベントシーンです。

 

 イベントシーン後、女神官が何か言っていますが構わず子供ゴブリンを撲殺すればクエスト完了です。女神官の目が死にますが、彼女の精神はタフなのですぐに立ち直ります。

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 




(続くかどうかわから)ないです。
(ストックは1文字も)ないです。

気になる方は自分でキャラクリして走って、どうぞ。
俺も書いたんだからさ(同調圧力)


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小鬼殺し.mp1:裏

感想、評価ありがとナス!

短いかつ雑だけど描写パート投下するから見とけよ見とけよ~。


 春、多くの新人冒険者達がこの辺境の街に訪れる季節。

 

 三つ編みが特徴的な受付嬢は今日も冒険者の対応に追われていた。通常業務に加えて、新人の登録、その他雑務諸々をこなさなければならず、多忙ではあったが疲労の色を見せず、今日も営業スマイルで仕事に励んでいた。そんな一応ベテランの域に入る彼女はバケツヘルムを被った不審者の登場に久々に頬をひきつらせていた。毎年多くの冒険者志望を見てきたが、ここまで異様な風体をした者を見るのははじめてかもしれない。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「冒険者登録がしたいのだが」

 

「字は書けますか?」

 

「書けるぞ」

 

「ではこちらの冒険者シートに記入を」

 

「わかった」

 

 字は書ける。冒険者シートの記入にも淀みがない。なんとなく育ちが良いことは分かった。身なりはまだ小綺麗な装備からして新人であるとは推測できる。声は籠って判別し辛いが青年のものだ。だがその妙に使用感のあるバケツヘルムが気になって仕方がなかった。なぜ冒険者登録時にバケツヘルムで顔を隠すのか、理解が及ばなかった。

 

「書けたぞ」

 

 疾走戦士と名乗る彼の書類を確認するが、やけに達筆で書かれた冒険者シートに不備はない。書類の作成に慣れている。商人の出か?だとすると家業を継げない次男坊か三男坊あたりだろうか。あまり詮索するものでもないが、異様な雰囲気の彼にはいろんな意味で注意が必要だった。ぶっきらぼうな喋り方や素顔の見えないその姿が、なんとなくあのゴブリンゴブリンとうるさい彼を彷彿とさせた。

 

「はい、書類に不備はありません。今後のご予定は?」

 

「考え中だ」

 

「そうですか。ではまたご用があれば遠慮なく受付にいらしてください」

 

 疾走戦士はクエストボードの手前に立ち、微動だにしなくなった。たまに唸り声が聞こえるあたり本当に考え中なのだろう。気にはなるがあまり構う余裕もない。受付嬢は一応気に留めつつ、仕事に戻った。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 突然横から話しかけられ、そちらを見るとバケツを被った変な人がいた、というのが女神官の彼への第一印象だ。冒険者登録をする前から受付横のクエストボードでうんうん唸っている人がいるなぁ、くらいには認識していたが、改めて話しかけられるとその異様さに思わず後退りしてしまった。

 

「貴公も新人か?今後の予定は決まったかね」

 

「私ですか?いいえ。まだです」

 

「そうなのか。私も託宣(ハンドアウト)に従って冒険者になったはいいが、これからどうしたものかと考え中でね。こうしてここで考えていたわけだ」

 

託宣(ハンドアウト)ですか?」

 

「特にどの神を信仰しているという訳でもないのだが、ある日突然冒険者になれと啓示を受けてな。何か意味があるに違いないと勢いで冒険者になった。特に立派な理由など無いよ」

 

 それって覚知神とかの外なる神とか邪神の類では?という一言を女神官は飲み込んだ。特に強制されたような様子もなく本当に勢いで冒険者になったようだ。疾走戦士と名乗る彼はどこかのんびりとした性格のようで、戦士を名乗るにしては穏やかな人だと女神官は感じた。

 

「勢いって……ご家族は?」

 

「実家は弟や妹に任せてきた。私などよりよほどうまくやるだろうさ」

 

 この男、本来なら家督を継ぐべき立場なのにそれをあっさり放り捨てて冒険者になったらしい。なんというか、ずいぶん気楽な生き方をしているようだ。それに託宣(ハンドアウト)も大雑把過ぎる。やっぱり外なる神に魅入られた危ない人なのではないかと女神官は思い始めた。

 

「なぁ、君たち新人だろ?」

 

「は、はい!」

 

「そうだが」

 

「なら丁度いい!今からゴブリン退治に行くんだけど人手が足りなくてさ。良かったら君たちも来てくれないか?」

 

 横から声をかけてきたのは同じく駆け出しらしき三人組。村から出てきたばかりだという青年の剣士、その幼なじみだという武闘家の少女、都の賢者の学院の出だという女魔術師の一党だ。どうやら近隣の村娘がゴブリンに拐われたのをきっかけに退治のクエストが出されたらしい。拐われた者がいるという緊急性のあるクエストだ。断る理由もない疾走戦士と女神官は一党に加わり、ゴブリン退治へ出発する。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 ゴブリン退治に向かった一党は、皆これが初の冒険であった。期待に胸を膨らませ、いつか竜ですら倒して見せると笑いの絶えない道中であったが、疾走戦士だけはやけに気を張っていた。彼がギルドで見せたのんびりとした雰囲気は鳴りを潜め、周囲に気を配り警戒を強めている。

 

 緊張のし過ぎだと剣士に茶化されても気を緩めることをせず、ゴブリンの巣に到着してからも退路の確保だと言い最後尾で背後からの強襲に備えていた。周りも初めての冒険で緊張しているだけだと思い込んだ。魔術師などは臆病風に吹かれたかと疾走戦士を揶揄ったが、自分はひどく臆病なのだと逆に言い張る始末であった。そして、それは臆病などではなく慎重さだったと気付くのに時間はかからなかった。

 

「む」

 

 最後尾を進んでいた疾走戦士がピタリと止まり、壁を睨み始めた。彼は一党の中でも重武装故、歩くとがちゃりという音がするのだが、その音が途絶えたことに気づいた魔術師が苛立たしげに声をかける。ただでさえ不気味なトーテムに反応して前衛の2人が先行しているのだ。素人考えながらも、不要な戦力の分断が悪手とというのは明白なことだった。

 

「ちょっと、置いていくわよ」

 

「どうかしましたか?」

 

 灯りが1つだけでは足りぬと疾走戦士に預けられた松明を片手に女神官が近寄ると、疾走戦士はなにかを確信したのか盾を構えさっきまでの穏和な喋り方からは想像もできないほどドスの効いた重低音で叫んだ。

 

「下がれッ!横穴だ!」

 

「え?」

 

 大声に身を縮める女神官を尻目に疾走戦士は腰を落としたかと思うと、周囲の空気を巻き込むような勢いで盾を突き出した。

 

「GOBUO!?」

 

 するとどうだろう、少し土をかけて偽装された横穴からゴブリンが飛び出してきたではないか。しかしそこへ疾走戦士が繰り出したシールドバッシュがぶち当たり、首がおかしな向きにねじ曲がって押し返されていく。その横穴からも続々とゴブリンが湧いて来ている。

 

「このッ!このおぉぉッ!」

 

「ちょっ、危ない!」

 

 正面からもゴブリンが来ているようで、先行している2人も戦闘に突入したようだが、剣士が長剣を振り回すせいで武闘家が近寄れず戦力を遊ばせてしまっている。それに構うほど一党には余裕も冷静さもなかった。

 

 疾走戦士は女神官と魔術師を守るべく、どっしりと盾を構えてゴブリンを迎え撃っている。その様は壁の如し。決して前に出ず、油断など微塵もなく、容赦なく確実にゴブリンを倒していく堅実なその戦法は、後ろに控える2人を守るには不足ないものだったが、同時に正面の剣士への援護が間に合わなくなることも意味していた。

 

 そして、鈍く響く金属音が死神の来訪を告げた。

 

「がっ、あああ!やめっ!ああああああぁぁ!!」

 

 大振りになった長剣が洞窟の天井へとぶつかり、反動で武器を手放してしまった剣士へと複数のゴブリンが覆い被さり、棍棒を、短剣を、容赦なく叩きつける。急所を一撃、などという生易しい死に方など望めるはずもない。ゴブリンは相手が動かなくなるまで執拗に攻撃を加え続ける。結果として、生前の見た目を保てていないぐちゃぐちゃの死体が出来上がった。

 

 追い打ちをかけるように奥から大柄なホブゴブリンが現れ、武闘家が捕まって慰み者にされていく様に戦慄する女神官と魔術師。そこへ横穴からのゴブリンを退けた疾走戦士が、ホブゴブリンの率いる一団の間へと割って入り、叫ぶ。

 

「逃げるぞ!」

 

「え?で、でも」

 

「前衛が壊滅したのだ!貴公らまでやられる気か!」

 

 その言葉は遠回しに武闘家を見捨てると言っているように女神官は聞こえたが、事実そうだ。本来彼女らを守るはずの剣士は殺され、武闘家も戦闘不能。2人を守りつつ武闘家を救出するのは不可能だと判断した疾走戦士が憎まれ役を買って出て、言外に彼女を囮にすると冷酷ながらも判断したのだ。聡明な魔術師はその意図を読み取り、女神官の手を引いた。

 

「……行くわよ!」

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!」

 

「走れッ!」

 

 2人が走り出したのを確認した疾走戦士も後方を警戒して盾を掲げながら後を追う。時折追い付いてきたゴブリンを迎撃し、異様に長く感じる洞窟をひた走る。暗闇から襲いかかるゴブリンにどうにか対処していた疾走戦士だったが、暗闇より放たれた矢を受け損なってしまい、その矢は手を引かれていた女神官の肩に命中し、痛みからよろけた女神官に巻き込まれる形で魔術師ごと転んでしまう。後ろからはゴブリンの声。立ち上がらなくては、と痛みを堪えながら女神官が上体を起こしたときであった。

 

「ほう、そこそこ持ち堪えていたか」

 

 聞き覚えのないくぐもった声が洞窟に響く。松明の灯りがこちらに向かって来ている。他の冒険者に間違いない。それだけ確認した疾走戦士は足を止め、こちらを追って来ていたゴブリンへ痛烈な盾の一撃を打ち込み、闖入者に驚き立ち止まっていたゴブリンの喉元へ小剣を突き込んだ。自分の喉から迸る血によって溺れるゴブリンを蹴飛ばし、血払いをして周囲を警戒するが追ってはいない。お楽しみに食いついてあまり追って来なかったか。

 

 矢を容赦なく引き抜き、悲鳴をあげ倒れる女神官に治癒の秘薬を渡しながら、油断なく周囲を見回す薄汚れた鎧姿の冒険者。一見すると生きた鎧(リビングアーマー)にしか見えないが、その首元には在野において最上位とされる銀に輝く認識票。まごうことなき銀等級の冒険者だ。いきなり現れてゴブリンの内臓をかっ捌いて、婦女子をゴブリンの体液濡れにするその男は、こう名乗った。

 

 小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)と。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 ゴブリンスレイヤーは手慣れた様子で短剣とも小剣とも言えぬ中途半端な長さの数打ちの剣でゴブリンを数匹切り倒し、血糊で滑るようになったと見るや躊躇なくそれを投擲し使い捨ててはゴブリンどもの粗末な剣や棍棒を奪うのを繰り返した。

 

 罠にかけ、合理的にゴブリンを殺していく。それは戦いなどという大したものではなく、駆除と称するに相応しいまで効率化された作業だった。そこには慢心など欠片も有りはしない。ただただゴブリンを殺すという明確な殺意の具現化したような冒険者だった。

 

 そのやり方にもっとも順応したのは疾走戦士だった。短時間で効率的に如何に安定して素早くゴブリンを仕留めるか。彼の戦い方は突き詰めればそこに源流がある。効率的であるなら罠だろうが待ち伏せだろうが躊躇なく実行する。今回はその対象がゴブリンだったというだけだ。

 

 その歪さに女神官が気づいたのは、ゴブリンシャーマンの巣食っていた奥の広間での戦いが終わった後だった。生き残りや死んだフリをしたゴブリンがいないか、一体ずつ喉笛に奪った錆まみれの剣を突き立てているゴブリンスレイヤーを傍目に、疾走戦士はまっすぐに人骨で作られた椅子へ向かうと、唐突に盾でそれを打ち払い、裏に隠されていた粗末な木板を蹴り倒した。

 

 そこにはゴブリンの成長前の個体がぞろぞろと両手では足りぬほどの数が身を寄せあっていた。命乞いをするようにか細く鳴き、小さな手で身を庇っている。そこへ死亡確認の終わったゴブリンスレイヤーもずかずかと棍棒片手に歩み寄っていく。

 

「子供も……殺すんですか?」

 

 その返事は打撃音と悲鳴で返された。洞窟に鈍い音が木霊する中、血糊で滑るのか小剣を鞘に叩き込んだ疾走戦士は取り外した盾の縁で容赦なく頭蓋を叩き割り続け、ほどなくしてゴブリンスレイヤーと疾走戦士は全てのゴブリンを殺した。そして殺し終えると疾走戦士は血塗れでこう言ったのだ。

 

「これで一段落。疾く終わってなによりだ」

 

 これで村は安心だ、とか拐われた娘が助かって良かった、ではなく、『はやく』終わったことに何よりも安心している。まるで、それが最重要の事柄であるかのように。

 

 何かが決定的にズレている。

 

 仲間を守ろうと奮闘したその姿を間近で見ていた女神官は、それを演技だとか偽善だとは思わない。それくらいに疾走戦士は必死で彼女たちを守ろうとしていたし、実直な人柄をしているのは今日出会ったばかりの彼女でも理解できるほどだ。

 

 だがその根底が他人とは掛け離れた、ひどく歪なものではないかと感じてしまったのだ。




じゃあ、俺感想(燃料)もらって帰るから……


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小鬼殺し.mp2

なんか急に評価されてきたので初投稿です。

誤字報告、感想、評価ありがとナス!
ゲージが急に真っ赤になってきてやべぇよ……やべぇよ……。

追記:細部の調整と疾走戦士君の装備描写を追加。ちなみにイメージは十字軍の騎士。個人的にはハイデの騎士もええぞ!ええぞ!


 メイン武装が盾な小鬼殺しRTA、はーじまーるよー。

 

 前回ゴブリン退治を終えたところからです。

 

 町に戻ってクエストの報告をしましょう。クエストの報告をすることでクエストで得た、所謂経験値と呼ばれるものがここでようやく加算されます。冒険中に突然成長するなんて都合の良いことが起きるほど四方世界は甘っチョロいところではないのです。当たり前だよなぁ?

 

 本作は成長システムもTRPG要素が強く出ており、少し複雑です。クエストを完了することで得られるのは経験点と成長点です。

 

 経験点は累積点によって冒険者レベルが上昇します。キャラが冒険者としてどの程度経験を積んだかの目安です。特殊な敵を倒すか、冒険を成功させることで多く貰えます。逆に多くの敵を倒しても貰える経験点はほんの僅かです。場数>討伐数です。

 

 累積点が一定値を超えたので、疾走戦士君は冒険者レベル2にランクアップです。これにより技能の習得段階を初歩から習熟まで上げることが出来るようになりました。また経験点は職業レベルの上昇にも使います。戦士をレベル3に上げたいところですが、少しだけ経験点が足りません。ここは我慢して次まで貯めておきます。

 

 続いて成長点ですがスキルポイント的なやつです。消費することで技能を新しく覚えたり、習得段階を上げることができます。今後に備えて【盾】技能の習得段階を習熟に上げておきましょう。他に【強打攻撃・殴】を取得。ええそうです、シールドバッシュ戦法のためです。

 

 そして、お待ちかねの報酬ですがゴブリン相手かつ複数人で山分けなので大した額を貰えません。疾走戦士君に加え、生き残った魔術師、女神官、帰省予定の武闘家でたかだか20枚の銀貨を分け、見舞金がわりに亡くなった剣士の分の取り分を武闘家に渡すので取り分は銀貨4枚程度です。安いギャラですよ……。

 

 ちなみにゴブスレさんはロハです。聖人君子に見えますが、彼はただゴブリンを殺したいだけだゾ。

 

 ここからは次のイベントクエストに向けての準備期間です。憔悴した魔術師と女神官を傍目にクエストボードに向かいます。

 張り出されている中で受けられるのはゴブリン退治や溝浚い、下水路での不快生物退治などです。

 

 ゴブリン退治は依頼により報酬の差が激しいですが、平均すれば実入りは他の初級向けクエストよりやや高いです。しかしリスクと報酬が釣り合いません。ローグ時代のゴブスレさんのように単独で挑むのはほぼ無理ゲーです。彼は糞鬼畜師匠から特殊な訓練を受けており、冒険者登録時点で今の疾走戦士君よりステータスも装備も上でしたが何度も死にかけています。疾走戦士君も中の人の知識こそあれど判定上気付けなくて反応できないので真似しようなどと考えないようにしましょう(21敗)

 

 そうすると臨時の仲間を募集する必要がありますが、そうなれば安全と引き換えに報酬は山分けです。儲けは少なく仲間集めに時間もかかるとなるとこの時点でのゴブリン退治は論外です。

 

 そこで実行するのはこの単独下水路金策です。やることは簡単、地下の下水路に潜ってそこに蔓延る不快生物を虐殺します。この類のクエストは一回に張り出される数が多く、まとめてこなせば結構な収入になります。毒に気を付ける必要はありますが噛まれたり、返り血を浴びて長時間放置したりしなければ大丈夫でしょう。早速、巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)の退治のクエストをまとめて受注することを受付嬢に伝えましょう。

 

 すると苦笑いで一度休むように言われますが無理矢理受注します。複数のクエストに独りで挑むのにも良い顔をされませんが【交渉:説得】技能を使いゴリ押しします。思わず胃の辺りを押さえる受付嬢には申し訳ありませんが、何をするにも金がかかるのです。しかたないね。

 

 この後は工房へ向かい、ゴブリン退治で得た報酬を使いショートソードの整備とラウンドシールドの改造をしてもらいます。改造と言っても持ち手を干渉しない位置に付け直し、腕にベルトで直接固定するゴブスレスタイルにしてもらうだけですが。以前も言いましたが疾走戦士君は伝統の戦士スタイルのため両手が塞がり、照明器具を持てません。ゴブスレさんに遭遇することで盾と照明器具の同時持ち改造が解禁されます。これは薄暗い地下の下水路でクエストをこなすのに必要な出費です。将来的には腰に吊るすタイプのランタンで照明を確保する予定ですが、あれ高いんですよ。なので今はゴブスレ改造で松明を保持します。

 

 整備が終わったら下水路に向かいます。下水路は迷うと脱出に時間がかかりロスになるのでちゃんとどこをどう進んできたのか覚えておきましょう。地図を買えばそんな心配をする必要もありませんが、買いに行く時間とお金が惜しいので今回はなしです。

 

 適当に少し歩くと鼠やゴキと遭遇します。今回はゴキでした。非常に不快な見た目をしていますが気にせず接近し隙あらばシールドバッシュでゴキを押し潰します。絵面はグロいですが鼠もゴキもゴブリンに比べれば大したことありません。多少ゴキはしぶといですが淡々と駆除を続けましょう。ちなみに鼠は斬擊、ゴキは打撃に弱いです。鼠はザクザク切り刻み、ゴキはシールドバッシュコンボで潰しましょう。これ以降はただ疾走戦士君が不快生物を駆除するだけなので倍速です。

 

 疾走戦士駆除中……

 

 なんで等速に戻す必要があるんですか?

 

 は?(行き止まりにぶち当たるガバ)

 あれっ?(ちょっと迷子になるガバ)

 ファッ!?(キングサイズの巨大鼠に遭遇)

 お願い許して!お願い許して!(必死の抵抗)

 ぬわああああん疲れたもおおおおん(無事討伐)

 

 ……はい、規定数の駆除が完了しました。

 

 本来ならもう一回くらい回せるのですが、まさかのキング鼠に遭遇からの予想外の死闘で疾走戦士くんが死にかけた上に癒しの秘薬と解毒薬を消費しました。【忍耐】技能でどうにかなる疲労値でもないので今日は大人しく引き上げましょう。

 

 キング鼠こと暴食鼠(グラトニーラット)は想定外でしたが悪いことばかりでもありません。ヤツには討伐報酬がかかっており、その額なんと銀貨50枚!序盤の極貧生活においてはゴールデンスライムみたいな有り難い奴です。冒険者なりたての疾走戦士君に負けるあたりお察しかと思いますが、油断せずに下がりつつ殴るだけで倒せるただ固いだけのデブです。今回は稀少行動のゲロ吐きや、下がった先が行き止まりだったせいで壁と鼠でプレスされたりしましたがどうにか勝てました。やっぱり地図買った方が良かった気もしますが結果的に経験点やら信用度の向上に繋がってプラスになったのでよしとします.

 

 疾走戦士君が鼠の返り血やゴキの体液で凄いことになっているので、帰りは下水路入り口近くにある水場で水浴びをして汚れを落としましょう。実は毒になるギリギリのタイムでした。危ない危ない。毒以外にも汚れているとデメリットがあります。そのままギルドに行くと受付嬢に追い出され、挙げ句説教で長時間拘束され大幅なロスです(1敗)

 

 さらに評判も下がり等級審査に響くなどメリットは欠片もないです。冒険者は無頼漢ではないということを心得ておきましょう。信用が大事なのはどこも同じなんやなって。

 

 後はギルドに向かい、受けていた鼠とゴキの規定数駆除クエストの報告をします。この時、暴食鼠討伐の証である巨大な前歯も合わせて提出しちゃいましょう。討伐報酬と達成報酬を同時にもらってかなりのうまあじです。

 

 さて次は宿の確保です。ギルドの2階が宿になっているのでそこを借ります。宿はちゃんとしたものであるほど疲労などの回復効率がよく、環境が悪い場合は本当に寝るだけでたいして回復しないなんてこともあります。例としてタダ同前の馬小屋の間借りなどはほとんど回復しません。私はケチらずに個室を借ります。町の片隅にある古い空き家を改築して拠点とするのが人気みたいですが、疾走戦士君はそんな金を使う余裕も無いし、そもそも立地的にギルドから遠く移動に地味に時間がかかるのでRTA的には、駄目です(コナー並感)

 

 やることもないので後はさっさと寝ましょう。

 

 はい、おはようございます。翌朝です。

 

 起きたらギルドに併設されてる酒場で朝食を摂ります。この時間は仲間や知り合いとのコミュニケーションタイムです。知り合いがいるかどうかはランダムなのですがどうかな……。

 

 おや、女神官と魔術師です。ちょっとぎこちないながらも友情を深めようとするその姿勢はイイゾ~コレ。レズ(百合)ホモ(薔薇)も似たようなもんだろ(暴論)

 

 私は百合に割って入る無粋な輩ではないので挨拶にとどめておきます。微妙に視線を感じますが無視です無視。今日も忙しくなりますからね。

 

 朝食を食べ終えたら定位置についてクエストの張り出しを待ちます。張り出しが終わると冒険者が群がり混雑しますが、お目当ての下水路のクエストは定位置に張られるので慌てずもぎ取りましょう。

 

 後は昨日と同じ事を延々と繰り返すので倍速です。

 

 代わり映えのない場面を延々と垂れ流すのもアレなので、

 み な さ ま の た め に ぃ ~

 

 疾走戦士君の育成方針についてお話しします。

 

 疾走戦士君のビルド構成はこれまでの行動から大体わかってるでしょうがタンク構成です。高い体力と防御力で味方を守り、パーティーの生存率を高める重要なポジションです。タンク構成の理由は原作でも常々指摘されていたゴブスレ一党の前衛の少なさをカバーするためです。鉱人道士は本来後衛の呪文職なのに斧片手に前に出ざるを得ない状況になっているあたりあの一党の前衛不足は深刻です。

 

 将来的に取得する技能は、【受け流し】、体力の最大値が増える【頑強】、移動によるヘイトコントロール技能の【戦術移動】、重量ペナルティを軽減する【過重行動】、身代わり技能の【護衛】、敵の移動阻害による釘付けをする【鉄壁】などです。

 疾走戦士君には頑張って一刻も早くゴブスレ一党の盾になれるように頑張ってもらいましょう。

 

 倍速中に累積経験点が一定値に達し、冒険者レベル3にあがったので、戦士の職業レベルを前回溜めてた経験点で一気に4まで上げ、新たに【護衛】を取得した以外は【忍耐】を習熟に上げました。【強打攻撃・殴】を習熟に上げるか迷いましたが現状でも火力は足りてるので疲労耐性により【忍耐】に軍配が上がりました。これでもっと酷使できるな(ブラック企業並感)

 

 そして貯めたお金で盾を新調しました。最初に買った円盾(ラウンドシールド)、あれほとんど木製で表面に皮張ってるだけですからね。今回買ったのは騎士盾(ヒーターシールド)です。盾に関してはこれが最終装備となります。防御力は勿論の事、縁を鋭く研ぎ、斬擊も可能なゴブスレ改造を施してありますので攻防一体の装備です。やっぱこの重さと固さを……最高やな!

 

 防具はハードレザーアーマーの下に鎧下(ギャベゾン)という厚手の服を着込むことで防御力を底上げしました。あと直接防御には関係しませんが血避けの為の防水加工の外套を着ています。合羽じゃないですマントです。血糊で剣が使えなくなるというステータスが存在する本作では血塗れという隠しステータスがあり、血塗れになると血で濡れた分だけ僅かに重量が加算され動きが鈍くなります。それを防ぐためにブラボの狩人様みたいなマントの少し長いやつを買いました。腕の部分にはスリットがあるので行動も阻害されません。これで鎖帷子があれば趣味と実用性を兼ねた十字軍コスが完成するのですが、ヒーターシールドより高いためまだ買えてません。金策をしてないはずの女神官が鎖帷子を購入してましたが、その金はどこから来たんだ?仕度金の残りか?これもうわかんねぇな。

 

 朝起きて朝飯を食べて下水路潜って鼠とゴキ駆除して溝浚いして達成報告してまた下水路潜って鼠とゴキ駆除して溝浚いして達成報告して夕飯食って水浴びして寝る、という規則正しい生活をしていたところギルドからお呼びがかかり、監督官に談話室に連れていかれました。この世界労基とかあったっけ(確信犯)

 

 監督官は至高神の信徒であり、看破(センス・ライ)の奇跡が使えるため嘘で誤魔化そうとしたり、意図的に情報を出し渋ったりすると即座にバレ、ギルドの信用を大きく損ないます。質問には正直に答えましょう。まずは年齢を教えてくれるかな?

 

 なにを聞かれるのかドキドキしていると、なんと早くも昇級の話がギルド内で上がっているようです。なんだ労基に引っ掛かったのかと思ったら違うのか。

 

 勤勉さや実力に関しては特に問題ないそうですが、最初の冒険以降パーティーを組んでいないので、仲間との連携に疑問が残り決定が保留になっているようです。そこで、上位の冒険者と臨時でパーティーを組んで冒険に赴き、連携に問題なしと判断されれば晴れて昇級となるとのこと。組む冒険者は一任するが見つからない場合ギルドから紹介をするとのこと。

 

 これは昇級試験クエストですね。冒険者レベルが一定値に達すると発生するもので、試験の内容は毎回ランダムですが今回は時期的にちょうど良く目的と合致するクエストがあるのでそれと一緒に済ませてしまいましょう。

 

 談話室を出たら今日はクエストボードに張り付かずに少し待つと、冒険者達が目ぼしいクエストを持っていった後にゴブスレさんが出現します。話しかけて同行を願い出るとゴブリンを殺す人手はいくらあっても足りないという理由で即了承されます。その後女神官が合流し、ちょっとした会話イベントを終えたらさっそくゴブリンを殺しにいきましょう。

 

 目的は古い森人(エルフ)の砦に巣食ったゴブリンの退治という女神官ちゃんの新しく授かった奇跡を悪用する例のイベントです。ぶっちゃけ砦に放火さえしてしまえば疾走戦士君は生き残りをサーチアンドデストロイするだけの簡単なお仕事です。

 

 現地についたら女神官と協力して火矢を製作します。松明に使う油紙を矢に巻き付け、火を起こす準備だけしておきます。今火を起こすと、煙でゴブリンに存在がバレます。同じ事をゴブスレさんにも言われるので意図してやらない限り失敗はありません。

 

 準備が完了したらわざと見張りに見つかりに行きます。これで巣のゴブリンの誘き出しが完了しました。火を起こして火矢に着火する役を女神官に任せ、後は弓持ちや投石布(スリング)持ちからの攻撃から【護衛】技能を使って味方を守ります。ゴブスレさんが攻撃されると、矢を避けるor打ち払う、投石で僅かに硬直する、微妙によろめく、などの無駄に多彩なリアクションを取ってしまい、火矢を撃つモーションが止まってしまいますので、速やかに焼却するためにも邪魔をさせないようにしましょう。

 

 後は突撃してきたゴブリンの群れが女神官の聖壁(プロテクション)で閉じ込められるので、溢れたやつをゴブスレさんと処理したら燃え尽きるまで待機です。知ってるか、ここチャート組んでないのに既にほぼ最適化されてるんだぜ……?(震え声)

 

 まあ普段からゴブリンの巣全滅RTAを走ってるジャンル違いの偉大なる先駆者様ですからね。再走に再走を重ねて洗練された美しいまでのチャートでゴブリンを皆殺しにするその姿に憧れて本RTAを始めたと言っても過言ではありません。

 

 あとは死に損なったゴブリンを追いたてて、殺して回ればミッション完了です。どのあたりに隠れているのかはランダムですが、大体居るエリアには目星がついています。林の影に潜んでいたり、縦穴の中でブラ=サガリをしていたりと、隠れ方のパターンは少ないので意外にもこのクエストに限っては慣れれば見つけるのは難しいことではありません。手分けして仕留めて回りましょう。

 

 全てのゴブリンを殺し終わればクエスト完了です。さっさと戻って達成報告をします。これで残りのメンバーとの合流フラグが立ち、彼らが水の都からこちらに到着するまでが準備期間です。人喰鬼(オーガ)の攻撃に盾受け失敗しても即死しない程度に疾走戦士君を強化するという安定チャートを取っていますので、期間内に鎖帷子の購入と【頑強】技能の取得をします。

 

 ギルドに戻り達成報告をする際にはゴブスレさんに任せてはいけません。口下手なゴブスレさんだと報告にやけに時間をとられます。詳細説明はこちらで行い、ゴブスレさんには事実確認の「そうだ」としか言わせないようにします。そうだよ(事実確認)

 

 報告が終わると監督官と受付嬢から呼び出しがかかり、ゴブスレさん共々談話室に連れていかれます。簡単な質疑応答の後、無事に黒曜等級に昇級することができました。黒曜等級の認識票を受け取りますが、次のイベントクエスト後に鋼鉄等級審査が始まるので実は一番付き合いの短い認識票になります。

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 



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小鬼殺し.mp2:裏

評価、感想ありがとナス!
誤字報告ニキも毎回本当に助かってるゾ。
ガバい文書でも成り立つのはニキ達の助力のお陰なんやなって……改めて思うので初投稿です。




 どっぷりと陽も落ち、騒がしかった酒場も疎らになり始めた頃。今日は遅番の監督官はカウンター奥の机でうず高く積もった書類の山に囲まれながら仕事をしていた。髪のハリも失われ目にも隈をこさえ、濃いめのお茶で目を覚ましながら必死に書類を捌いているその姿は哀愁を漂わせていた。

 

 春はギルドにとって繁忙期に相当する。ただでさえ冬の閑散期の反動で冒険者が増えて忙しいのにやれ新人登録だ、等級審査だ、と目が回るような毎日だ。あの子もよくあの営業スマイルを毎日維持していられるものだと常々思う。クエストの達成記録を帳簿にまとめ、冒険者シートと擦り合わせて確認し記録していく。厳正なる等級審査のためにはこういった地道な確認作業が必要なのだ。貢献度確認だけでも大変なのに信用調査やら人格考慮やらと考えるだけで頭が痛くなるので監督官は思考を一旦放棄し、目の前の書類に集中した。

 

 ゴブリン退治ばかりしているあの子の想い人の記録をいつも通りまとめ、次に取りかかる。巨大鼠(ジャイアントラット)退治、大黒蟲(ジャイアントローチ)退治、溝浚い、暴食鼠討伐、となんだこれは。やたらと下水路関係のクエストを処理している冒険者がいるではないか。しかも白磁等級。名前は、疾走戦士。一瞬ピンと来なかったがああバケツ頭くんねと1人納得した。

 

 ギルド職員の間でも話題になっている期待の狂じ……新人である。登録時には既にあのバケツ頭であり、未だ素顔を見せたことがないという異様な人物。ギルドの調査によるとさる商人の子息ではないかとの説が有力で、商人の家族で行方不明者がいないか確認中である。初の冒険では組んでいた一党が半壊。その直後から何かに駆り立てられるように下水に潜り続けており、お陰で町の下水路のある区画では一時巨大鼠や大黒蟲の姿が消えるといった事態が起きている。

 

 それとなく様子を窺ったりしているが如何せんあのバケツ頭で表情どころか顔色すら確認できていないので断言できないが大きな異常はないようだ。食事もちゃんと摂っているし、身嗜みにも気を使っているようだ。実力も単独でクエストをこなせるあたり、白磁にしてはずいぶんと手慣れた様子。暴食鼠の討伐経験もある。しかも1日に4件近くの討伐系クエストを処理し、空いた時間で溝浚いもするという勤勉さで貢献度はうなぎ登り。達成率の高さから信頼度もそこそこ。

 

 条件を並べてみると不審な点はなく優良な冒険者のようだが、やはりどこかおかしいように感じてしまうのも事実。故に鋼鉄等級並に貢献度は累積しているが未だに黒曜等級への昇級を見送られている状態だ。早いところ昇級してさっさと色んなクエストを達成してくれというのがギルドの本音だが、少しでも不審な点があるのならそうホイホイと昇級させるわけにもいかないのが現実。

 

 今度の会合で話題にあげてみるかと判断した監督官は疾走戦士の書類を昇級審査対象の棚に放り込むとまたペンを走らせる作業に戻った。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 正直、甘く見ていた。都の学院で優秀な成績を収め、魔術を使えるようになっただけで高くなっていた鼻をへし折られた気分だった。一党に誘ってくれた剣士は無惨な死を迎え、心を壊された武闘家は故郷へと帰っていった。少し運が悪いだけで簡単にこうなる。冒険は甘くないのだ。そうして私は賢者の学院に逃げ帰るわけでもなく、惰性でこの辺境に留まりギルドで代筆の仕事をしながらみっともなく生き延びている。

 

 これからどうしたものかと、憂鬱な気分になりながら酒場兼食堂のカウンターで朝食のパンをかじっていると、あの、と横合いから声をかけられた。

 

「貴女……」

 

「ど、どうも」

 

 あの冒険で無事生き残った1人、女神官だった。お互い気まずい雰囲気でしばらく無言だったが、わたわたと何か言おうかと口を開き掛けては閉じるのを繰り返す女神官を見て、真面目に悩んでいる自分が馬鹿らしくなってきた。

 

「……馬鹿みたいに立ってないで座れば」

 

「あ……はい!そうさせてもらいます」

 

 そう言って子犬みたいにすり寄ってきて隣に座る女神官。しっかりしているようで年相応の振る舞いも見せる彼女も、まだ昨日の衝撃から立ち直れていない様子。何を話したものかと2人でまごまごしている。なんとも焦れったい。

 

「む?貴公らか。おはよう」

 

 通り過ぎるように掛けられたくぐもった声に目をやるとあの特徴的なバケツ兜の冒険者、疾走戦士の後ろ姿があった。あのクエストの直後から単独で冒険に挑み始める異様な姿は記憶に新しい。しかも下水路のものばかりを受けているという。こちらはまだ立ち直れておらず、薄暗くて狭い場所に行くと未だに身が竦むというのにあのバケツ兜は下水路に潜っている。恐ろしくはないのだろうか?

 

 代筆の仕事をしていると聞くのだが下水路のクエストは誰も進んでやろうとしない。臭いは恐ろしくキツいし、出てくる怪物は気色が悪くおぞましいものばかりで、稀に巨大な怪物の親玉と遭遇することもあるという。疾走戦士はその悪環境に耐え、先日その親玉を倒したという。ここで燻っている私とは大違いだ。

 

 その疾走戦士はというと、気を使ったのか何なのか知らないが、少し離れた場所に座り、バケツ兜を被ったまま顎下からものを突っ込むようにして器用に食事をしている。なんなんだその異様な食事方法は。しかもやたらと早い。

 

「食べてるわね……」

 

「どうやってるんでしょうか。あれ……」

 

 あっという間に食事を平らげるとさっさとクエストボードの方に向かい、少し手前で微動だにしなくなる。まさかクエストが張り出されるのを待っているのだろうか。……まあ色々と変なやつだが、前に進めているのだということがわかる。いつまでもくよくよしていてはなんのために冒険者になったのかわからなくなる。

 

「私……まだよくわからないけど、あの人についていってみようと思うんです。疾走戦士さんみたいに前に進み続けようって」

 

 ポツリと女神官が呟く。よりによってあのゴブリン退治しかしないという冒険者についていくと来たか。未だにあの歪んだ笑みと叫びでよく眠れない身からするとよくやろうと思うものだと感心した。

 

「前に進む……か」

 

 私の場合はまずは新しい一党探しからかしら?

 

 そう思ってふと視界を巡らせた魔術師の目に、肘鉄を食らってむせる冒険者なりたての戦士と、彼を尻に敷いている同じく冒険者なりたての天秤剣を携えた少女の2人組が映った。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 ギルドに向かう前に工房で購入した鎖帷子がまだ馴染まない。子供にしがみつかれているような重さで少々動きづらいが、工房の店主からは動いときゃその内慣れると投げ遣りに言われたのでとりあえず言う通りにしていた。地母神の神官としてこういった鎧を着ることに抵抗がないわけではないが、毒の短剣が刺さるか刺さらないかで生死を分けることもあると妙に実感のこもった様子でゴブリンスレイヤーさんも言っていたことだし、自衛など錫杖を不格好に振り回すくらいしかできないのだ。これくらいは準備しなければ。ゴブリンスレイヤーさんに言わせればまだ足りないなどと言って全身を防具で固められそうだ。

 

 ギルドの扉を潜り、いつものようにゴブリンゴブリンと言っているゴブリンスレイヤーさんを探す。そしてその粗末で悪目立ちする鎧姿を見つけるのに時間はかからなかった。そしてその近くにいた同じく目立つバケツヘルムの冒険者の姿も。

 

「先日ぶりだな貴公」

 

「疾走戦士さん!?」

 

 何故ここに彼が?という思いが一番に浮かび上がった。連日のように下水路に潜り、超過密な日程で単独でありながら通常のかけだしの一党の5倍は稼ぐと噂されている疾走戦士。トレードマークとなりつつあるバケツ頭ことグレートヘルムを被っているのは変わらないが装備が変化していた。鎧下(ギャベゾン)の上にハードレザーアーマーを身につけ、さらに防水加工の外套をまとっている。後から聞いたところ返り血で体が重くならないようにするためのものだとか。そして盾は騎士の持つような立派な盾に変わっており、かなりの存在感を放っていた。

 

「今回はこいつも同行する」

 

「ギルドの昇級試験とやらでな。上位の冒険者の下で連携ができるのか示せと言われたのだ。私の知る上位の冒険者となるとゴブリンスレイヤー殿くらいしか思い当たらなくてな」

 

「ゴブリンを殺す人手はいくらあっても足りん」

 

「……ということらしいのだ」

 

「な、なるほど。わかりました。よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ、女神官殿。ゴブリン退治は一度しか経験がない故、立ち回りの参考にさせていただこう」

 

「行くぞ」

 

 今回向かうのは北にある枯れた森人(エルフ)の砦だ。打ち捨てられたそこにゴブリンが巣食ったらしい。拐われた娘の奪還のため既に一党が向かったが戻らなかったという。もう3日も前のことだ。手遅れだ、とゴブリンスレイヤーさんは言う。幾度となくゴブリンを退治している彼の言うことだ。私が何を言おうともうどうしようもないのだろう。ここ最近彼についてまわって実感させられた。ゴブリンスレイヤーさんは風下から砦に近づき、ある程度の地点で歩みを止めた。

 

「ここで準備を整える。火矢を作れ」

 

 矢に油紙を巻き付けて火矢を拵え、火口と火種の準備をする。事前の説明では新たに授かった奇跡で私が砦の入り口を塞ぐとのことだが、本当にあんな使い方をして大丈夫なのだろうか。地母神様も苦笑いしている気がする。

 

「なに、2人とも自分の役割に集中したまえよ。矢が飛んでこようが礫が飛んでこようがコイツで防いでやろうとも。それしか取り柄がないからな」

 

 そう言って盾を構えて見せる疾走戦士。確かにあの盾なら矢や礫など容易く受け止めてしまうだろう。本来は馬上で振るわれる大槍や長剣を受け止めるために造られた品だ。心配はないだろう。

 

 わざと見張りに見つかるように歩いていき、ゴブリンの大騒ぎする声が聞こえたら火矢に点火し地面に突き刺し、それをゴブリンスレイヤーさんが出来た端から次々と長弓で放っていく。火避けの加護の消えた乾いた木の砦はよく燃える。あっという間に火が回っていく。時々見張り台からゴブリンが矢を放ってくるが、そこへ盾を構えた疾走戦士が躍り出た。

 

「はあッ!」

 

「射つぞ」

 

「承知した!」

 

 かつんと情けない音とともにゴブリンの矢が弾かれ、疾走戦士はすかさずしゃがむとその背後からゴブリンスレイヤーさんが火矢でゴブリンを射抜き、燃え上がったゴブリンが転げ回ることでさらに火が回る。疾走戦士が飛んで来る矢や礫を弾き、邪魔を全く受けていないゴブリンスレイヤーさんが疾走戦士の背後から悠々と矢を射かける。疾走戦士も下手をすると背後から矢が刺さるというのに、意にも介さず防御に集中している。何だかんだとゴブリンスレイヤーさんも疾走戦士も相手に合わせ、お互いに信用しているからこその動きだろう。

 

 ……私もあんな風に信用してもらえているのだろうか?前に出て戦う疾走戦士とは違い、後ろで奇跡を行使する私は役に立っているのだろうか。ゴブリンスレイヤーさんはあまりそういったことでは喋らないのでわからない。

 

「やれ」

 

「はい!《いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください》『聖壁(プロテクション)』!」

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

「という具合に女神官殿の見事な聖壁(プロテクション)で燃える砦にゴブリンを閉じ込めてだな。閉じ込め損なったのを始末してあとは焼き殺した。直後に雨が降ってきて確認したが延焼はない。違いないかゴブリンスレイヤー殿」

 

「そうだ」

 

「その後は生き残りを探して焼け跡に踏み込んだり周辺を散策して生き残りを殺して回った。たしか私のほうで5体、ゴブリンスレイヤー殿が7体だったか」

 

「そうだ」

 

「ふむ、私の覚えている限りではもうないが、他に何か言うことは?」

 

「俺は特にない」

 

「私も特には」

 

「では報告は以上だ受付嬢殿」

 

「はい、詳細な報告ありがとうございました」

 

 疾走戦士は冒険中のことを事細かに覚えている記憶力やそれを詳細に分かりやすく説明するなど話術に長けているようだった。本人が言うには家督は放り出して来たものの商人の家系の出とのことなので、なるほど商人らしいと思った。ただ報告中にだんだん受付嬢さんが笑顔なのに威圧感が増していったのはなんだったのだろうか。

 

「……次からはゴブリンスレイヤー殿の言葉で報告された方がよろしいやもしれんな。馬に蹴られたくはないのでな」

 

「……?」

 

「ああ、なに、たかだか白磁の私ばかりがべらべらと話しても信憑性に欠けると思ってな。やはり本人の言葉のほうが重みがあるように感じるだろうさ」

 

「……そうなのか?」

 

「そうでしょうね。私も何となくその方が良いと思います!」

 

「そうか……そうだな」

 

 無言で立ち尽くすゴブリンスレイヤーさんもなにか思うところがあったのか、考え込んでいる様子。言葉足らずなところがあるのは何となく察していましたがここまでひどいとは……。ゴブリンをどう殺すか話すときにはあんなに饒舌なのに……。そんなことを考えていると奥から監督官さんが顔をひょっこりと出して書類片手に叫んだ。

 

「バケツ頭く、んんっ!……間違えた。疾走戦士さんとゴブリンスレイヤーさん!お時間よろしいですか?」

 

「ああ、そういえばそうだった。頼めるかゴブリンスレイヤー殿」

 

「構わん」

 

「では、私はこれで。お疲れ様でしたゴブリンスレイヤーさん」

 

「ああ」

 

 出発前に言っていた昇級審査のことだろうと察しのついた女神官は今日のところは解散することにした。明日もまたきっとゴブリン退治だろう。早く休んで備えるとしよう。疾走戦士さんと組んでいるとなんだか妙に疲れる気がするし。

 

 そしてその翌日。

 

「晴れて黒曜等級になったがまだまだ先達から学ぶことが多いと感じてな。これからも同行することになる。よろしく頼むぞ」

 

 その日からゴブリンゴブリンとうるさい変なのと、やっぱり色々と頭がおかしいバケツ頭に挟まれ、健気に冒険に赴く女神官の姿が見られるようになった。




盾で味方守ってわかりやすい報告して……あれ?
おかしい、疾走戦士が今回まともじゃね?(当社比)

変なのと頭がおかしいのに挟まれた女神官ちゃん。
お前も変なのになるんだよぉ!

追記:続きがいつになるかは……んにゃぴ……よくわかんないです。


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小鬼殺し.mp3

荷物配達すっぽかして資源を強奪しながら国道整備していたので初投稿です。

(意訳:デスストランディングやってました)

追記:ダメージ算出ややこしいみたいなんでちょっと表記と解説加えた。許して。


 忍耐技能が仕事し過ぎで労基に怒られそうなRTAはーじまーるよー。

 

 前回、黒曜等級に昇級したところからです。

 

 まずは昇級イベントで後回しになっていた成長を行います。累積点が一定値を超えたので冒険者レベル4になり、技能の習得段階を熟練まで上げられるようになりました。さらに黒曜等級になったことでレベルアップ時にもらえる成長点が若干増えたので技能を習得しやすくなります。職業レベルは戦士を5に上げ、そろそろガバを警戒して付け焼き刃ですが斥候を2にしておきます。技能は前回の宣言通り【頑強】を取得し、いきなり習熟に上げておきます。ついでに【過重行動】も取得しました。

 

 後は鎖帷子の購入ですが、そのためにこのままゴブスレさんに合流します。多いときは1日に複数の巣を潰すゴブリン金策を普段からやっているこの一党に参加することで資金を稼ぎます。ゴブリンの上位種は1体につき最低でも銀貨5枚の討伐報酬がかかっており、達成報酬以上の収入が見込めるのでメンバーさえ揃えばこちらの方が下水路金策より効率が良いです。女神官ちゃんが鎖帷子を買えたのはこの金策のせいですね間違いない。

 

 あとはゴブリンの巣を潰して回るだけなので倍速です。

 

 その間にダメージ計算について解説しましょう。本作のダメージは、攻撃側の暫定ダメージ判定から算出された値から攻撃を受ける側の装甲値と盾受け値を合算した値を引き、残った値、適用ダメージを受けます。

 

 適用ダメージ*1=暫定ダメージ*2-(装甲値+盾受け値)

 という式で計算されます。

 

んにゃぴ……よくわかんないですという方はザックリいうと武器や呪文の攻撃力は鎧や盾の防御力である程度まで防がれると覚えてください。受けきれなかったダメージが貫通して入る感じです。

 

 前回掲げた目標の人喰鬼(オーガ)の一撃を受けても即死しない疾走戦士君を一例に挙げて説明しましょう。余談ですがこの先のイベントで登場する個体は名称こそ人喰鬼(オーガ)ですがステータス的には上位個体である人喰鬼の将軍(オーガジェネラル)なんだよなぁ。

 

 強化前の疾走戦士君の生命力は16。装備による装甲値は6。タンクを名乗るにしてはやけに低いですねクォレハ……。対してオーガ(ジェネラル)の振るう巨大武器の威力は4D6+2の判定で算出されます。これは6~26ダメージが出ます。つまりこの時点では22以上のダメージを負ったら即死圏内ということです。こんなんじゃ勝負になんないんだよ(ビビり)

 

 では鎧で装甲値を高め、【頑強】で体力を底上げした対オーガ戦仕様の疾走戦士君で計算してみます。装備による装甲値は鎖帷子のものを加えて10。【頑強】は習熟段階なので生命力+10。つまり対オーガ戦仕様の疾走戦士は生命力26の装甲値10です。最大値の26ダメージを叩き出されても食らうのは16ダメージだけ。残り生命力が10残る計算です。

 

 まあ追撃食らったら盾受けしても生き残れるか怪しいですが。そのへんは宣言通り即死しないだけです。TRPG版だと生命力の2倍までなら継戦カウンター(なくなると力尽きて死ぬ)がゴリゴリ減るかわりに死なずに踏みとどまれるのですが、本作は普通に生命力が0になったら問答無用で死にます。救いはないんですか!?

 

 ちなみにまたもや倍速中に冒険者レベルが上がり冒険者レベル5になりました。まだ冒険者になって半年も経ってないんですがそれは……。成長期かな?まあ疾走戦士くん15歳なんで間違いでもないですね。本当はプレイキャラ補正とかでしょうけど。実力的には青玉とか翠玉あたりの中堅クラスに差し掛かりました。女神官共々とんだ等級詐欺です。まぁ適正難易度のクエストを放置してずっと雑魚狩りしてるので当たり前ですが。ならゴブスレさんは一体何度ゴブリン退治を受けたのか……。誰か検証して(未検証)

 

 職業レベルは戦士を6に上げ、斥候を3に上げます。技能は盾受けの成功率を上げるため【盾】の習得段階を熟練に上げ、新たに【戦術移動】を取得しました。着々とタンクとして疾走戦士君が成長しつつあります。いいゾ~これ。

 

 さて、そうこうしてるうちに金策も終了したのでゴブスレ一党から一時離脱して朝から工房に向かい、念願の鎖帷子を手に入れることが出来ました。これでそうそう死ぬことはないでしょう。ついでに余ったお金で広刃の剣(ブロードソード)を購入。小剣(ショートソード)と比べると刺突属性がなくなる代わりに威力が安定して出せるようになります。今後はブロードソードをメイン武器、ショートソードをサブ武器として扱っていきます。もちろんシールドバッシュが大本命なのに変わりはありませんが。

 

 後はイベント発生までの空き時間に商店に向かって水と食料を予備含めて2日分、嗜好品であるレモンの蜂蜜漬け一瓶を購入し、ギルドに戻って待機です。しばらくすると妖精弓手(金床)鉱人道士()蜥蜴僧侶(杉田)の3人組がカウンターで受付嬢にオルクボルグはどこだ、かみきり丸はどこだ、と騒ぎ始めるのでさっさと答えを教えておきましょう。多分ゴブリンスレイヤーのことだと思うんですけど(名推理)

 

 この会談イベント、無駄に話が長いのでもちろん短縮のためにあらゆる手を尽くします。まずゴブスレさんが戻ってくるまでに談話室を押さえます。監督官あたりに話しかければ大丈夫です。次に【交渉:説得】技能でしれっとこの場に居座ります。なんだコイツと言わんばかりに怪訝な顔をされますが、ゴブスレさんが来るまでどうにか間を持たせましょう。俺はゴブスレさんのマネージャーなんだ……誰が何と言おうとマネージャーなんだ……。

 

 ゴブスレさんが到着したら仲介役として話を円滑に進ませます。普通に会話させるとゴブスレさんが無愛想過ぎるせいで2000歳児がキレるので速やかに話題をゴブリン退治に持っていきます。魔神王の復活とか世界の危機とかの前置きはどうでもいいからさっさとゴブリンの話をするんだよあくしろよ。ゴブリンの話しないとゴブスレさんが食いつかないダルォォ!

 

 はい、ゴブスレさんが食い付きました。では有無を言わさず同行することを一方的に告げましょう。同行を提案するだけだと、

 

「(君連日ゴブリン退治だったが大丈夫か?ひとまず一旦)休め。今回は(どうする?一緒に来るか?無理してまで来なくていいが。無理そうならその時は)1人で行く」

 

 という圧縮言語が飛び出して疾走戦士くんが数秒間茫然自失状態になり操作を受け付けなくなります。圧縮してはいけない部分まで圧縮する話し方やめちくり~。

 

 同じ流れで女神官の困惑イベントもスキップです。行っていいかじゃなくて強制参加は確定事項なんだよなぁ。お前がいなかったら誰が火玉(ファイアボール)に対処するんだよ。女神官に火玉の対処をぶん投げているので彼女が不在だと一党がこんがり焼けてしまいます。アツゥイ!

 

 ではここから初の長距離移動クエストです。今までは日帰り可能な距離のクエストだけでしたが、目的地が遠方の場合移動に1日使うなんてことが多くなります。長距離移動は疲労が溜まるので目的地到着時に疲れきっていたなんてことが無いように野営で疲労値を回復したり嗜好品を持ち込んだりしてコンディションを整える必要があります。

 

 長距離移動時は水や食料などが必須です。本作は食事を怠ると空腹により疲労値が溜まりやすくなり、水を飲まないと脱水状態になり最悪そのまま死にます。今回はそんなに遠いわけでもないので予備を含めて2日分用意すれば大丈夫です。さらに帰りは馬車で早く帰ってこられるので長距離移動のあるクエストとしては難易度は低めでしょう。なおボスのオーガに関しては考慮しないものとする。あれは本来倒すんじゃなくて逃げるのが正規ルートだって蝸牛創造神が言ってた。

 

 ここで旅支度のために商店に向かい、集合場所に時間までに戻ってくるという買い物イベントが発生しますが、用意は既に完了しているので集合場所に直行します。少し突っ立っていれば意外に準備の早い一党がすぐに集まります。時間より大分早く来ているあたりみんな真面目です。疾走戦士君は見越していたかのように旅支度を終えていましたがなんででしょうね?(すっとぼけ)

 

 一党が揃ったら早速移動開始です。フル装備で野営用の荷物を背負っての移動はアホみたいに疲労値が溜まっていくので休憩や水分補給をちょくちょく挟まないとすぐにバテてしまい、移動速度の低下、休憩時間の増加を引き起こします。それにより明日の陽の出ている内には到着しているはずが、夜に到着すると日の出を待つことになってダンジョンアタックが遅れるなんてこともあります(3敗)このスタミナ管理頭にきますよ!

 

 移動速度は一定に、進行ルートも街道を行った方が最短距離を突き進むルートより疲労が少なく休憩時間も短くなるので結果的に早く今夜の野営ポイントに到着します。急いては事を仕損じる、急ガバ回れです。運が悪いと街道で狼に襲撃されるなんてこともあるようですが、いい乱数を引いたようで何事もなく野営ポイントに着きました。設営はちょっと薪拾ってワァーって火を起こしてパパパッとやって終わり!

 

 野営はまあサバイバル系の奴でよくある普遍的な感じです。食事と休憩で疲労値を回復したり、装備を点検したりできます。本作では嗜好品をこの時に使用することで、仲間の信頼度を高めたり、回復効率上昇や疲労耐性などのバフを掛けることができます。原作同様、他の面子は火酒とか焼き菓子とかチーズとか出してますね。疾走戦士君は買っておいたレモンの蜂蜜漬けを出します。効果は疲労回復効率上昇です。まあバフはなんでもいいんですよ。信頼度を上げるのが目的です。戦闘時に信じてもらえないタンクに価値なんかないんだよぉ!

 

 野郎共は一口摘まんでチーズや火酒に戻りましたが、残りはお子様舌の妖精弓手にほとんど食われました。2000歳児ィ!

 

 そして中々に面倒な就寝の時間です。野営では当然ながら交代で見張りをする必要があります。呪文職は休ませるので見張りは戦士と野伏で交代するというゴブスレさんの提案で見張りはゴブスレさん、疾走戦士君、妖精弓手のローテで回します。疾走戦士君は【忍耐】技能で長時間の見張りに強いのでわざと交代時間で妖精弓手を起こさずにその分回復してもらいます。少しでもコンディションを良好に保たせましょう。なにせこの後彼女のメンタルを削るイベントが目白押しなので。彼女の消耗を抑えるとオーガ戦で二連撃ちによる両目潰しを決めてくれることがあります。オーガ戦までは要介護要員ですがその分見返りは大きいのでやらない手はないです。

 

 日が昇ったらいよいよダンジョンアタックです。入り口の見張りは妖精弓手がサクッと始末してくれるので、特に何かする必要はありません。入り口に近づくと妖精弓手がゴブリンの体液濡れにされるイベントが発生しますが、抵抗されると時間がかかるので背後から不意打ちでぶっかけましょう。妖精弓手のメンタルダメージその1です。これはそんなにダメージが大きくないので早さを優先しました。兜の2人組に血を塗りたくられるという邪教の儀式みたいな光景ですがこれは歴とした対ゴブリン用隠蔽術です。馴れますよ。

 

 ダンジョン内部はこれまで潜った下水や洞窟とはワケが違います。通路はダクソ並の即死トラップ満載です。他にもゴブリンの仕掛けた鳴子トラップがあるので不用意に進めません。そもそも疾走戦士君のステータスでは罠の発見に時間がかかりすぎるので本職に任せましょう。

 

 ヒヨコのように後をついていくと、T字路に突き当たります。ここから生き残りの森人冒険者のイベントによる妖精弓手のメンタルダメージその2です。これは吐瀉物を撒き散らす程度にはダメージを受けます。あまり長時間見させると後々の休憩で膝を抱えてしばらく動かなくなってしまいますので急いで処理します。部屋に入ったらゴブリンが潜んでるあたりに松明を投擲。ゴブリンが反応して人質を盾に取られる前に接近すれば確定で飛びかかりが来るので迎え撃つようにヒーターシールドの縁で殴り飛ばします。これであの紛らわしい殺して発言のくだりをスキップできます。最初からゴブリン隠れてるって言えば済むんですが、まぁ拷問された後だからね。混乱してても仕方ないね。

 

 ゴブスレさんを除いた他全員から何やら視線が突き刺さりますが気にせずに森人冒険者の拘束を解いてから松明を拾い、彼女の雑嚢を探しておきます。見つけたら地図を抜き出してゴブスレさんに渡し、雑嚢は妖精弓手にちゃんと手渡しで預けましょう。後は少しほっとけば勝手に立ち直ります。フォローは他の奴に押し付けるスタイル。

 

 ここから先はゴブリンが徘徊するようになります。小規模な戦闘が発生しますがパーティーが強いので問題にもなりません。銀等級冒険者の集団に勝てるわけないだろ!

 

 ひたすらダンジョンを突き進み、決戦のバトルフィールドである回廊の手前で最後の休憩をします。この時の妖精弓手の反応でメンタルの消耗具合の途中経過がわかります。目に見えて顔色が悪い場合、二連撃ちをしてくれる確率が絶望的になりますが多少の軽口を叩けるようなら特に心配はありません。様子は……微妙に顔色が悪いですが言い返す元気はあるようです。これは……どっちだ?ちょっと判別がつきません。まあ成功したらラッキーくらいに思っておきましょう。なくてもチャート的には支障はないかもしれません。今回の疾走戦士君はタンクの癖に長期戦を想定していませんので、運が悪いと乙るやもしれません。

 

 回廊の底はゴブリンの寝床になっており、かなりの数がいます。ここでは鉱人道士の酩酊(ドランク)と女神官の沈黙(サイレンス)の合わせ技で泥酔状態の相手を無音で殺して回るという妖精弓手のメンタルダメージその3です。さっきの反応が微妙だったので、ダメ押しで術者である鉱人道士と女神官の護衛という名目で上に残しました。これが吉と出るか凶と出るか。ではゴブスレさんと蜥蜴僧侶に混じってゴブリンを速やかに処理しましょう。ちなみにモタつくとオーガに合流されて大変なことになります(1敗)

 

 盾を外して両手で構え、ギロチンを落とすように縁の尖った方で首元をザックリやっていきます。血糊云々とか関係なくなる程度にはヒーターシールドは重く、切断出来なくともそのまま押し潰せるので気にせずに続けます。この作業では結構返り血を浴びるので、血避けの外套でも弾ききれないくらいには血塗れになります。作業が終わったらエモート機能より露払いをしましょう。一見すると外套をバサァするだけですが、文字通り露を払う効果があるので血塗れになったときや雨天時にやることで重量増加の隠しステータスをリセットすることが出来ます。

 

 回廊底のゴブリンの全滅後、一党が合流してから少しするとオーガが登場します。なまじ人並みの知性があるせいか前口上が長いのでそこら辺に落ちているゴブリンの武器でも投げつけておきましょう。これでダメージが入……らないんだよなぁ。

 

 オーガ(ジェネラル)は装甲値が9あるので疾走戦士くんの腕前だと目にでも当たらない限り攻撃が通りません。通常攻撃でも疾走戦士君のブロードソードでは威力最大値が出ても装甲値で相殺され、弱点に当たったことによるボーナス判定が発生してようやくダメージが与えられます。しかしオーガ(ジェネラル)は再生持ちで一定間隔で生命力が8ずつ回復し続けますので、イヤーキツいッス。

 

 当然のことながら台詞を遮るように開幕武器を投げつけた疾走戦士君にヘイトが集まります。当たり前だよなぁ?まあタンク的には願ったり叶ったりなので問題ありません。いいよ!来いよ!

 

 一党の前に出てオーガとの距離を詰めましょう。オーガも突っ込んでくるのである程度前に出たら盾受けの構えです。オーガは通常攻撃の全てに吹き飛ばし効果があり、筋力判定で対抗することが出来ますが、クリティカル引かないと無理なんで諦めます。

 

 繰り出されたのは横薙ぎ。構えにいやらしいディレイがかかっているくせにその後の振りが速い苦手な人は苦手な攻撃ですが、ここはプレイスキルの見せ所さんです。別キャラで散々潰されながらモーションは把握しているので盾受け判定以前のところで躓いてられません。しっかりと盾を攻撃に合わせましょう。

 

盾受けが成功した場合は前述の計算式に基づいて装甲値に盾受け値が加算された計算がなされます。ヒーターシールドの盾受け値は4。そこに【盾】技能の熟練補正でさらに+3。装甲値と合わせて17ダメぐらいまでなら無傷で耐えられます。堅い。ダメージは……なし!装甲値と盾受け値で受け切ったようです。ただし吹っ飛ばされました。滑り出しとしてはまあまあです。

 

 このオーガ(ジェネラル)は立ち位置としてはギミックボスに近いです。要はゴブスレさんが転移(ゲート)のスクロールでのウォーターカッターをゴブリンではないオーガに使用する気になるまで時間を稼ぐという感じです。疾走戦士君の立ち回りはタンクらしくヘイトを稼いだり、味方を庇ったりして攻撃を自身に集中させることにあります。ゴブスレさんも放っておくと攻撃をまともに食らって原作同様瀕死になったりしてスクロールの使用が遅れるので文字通り身を呈して守らなくてはなりません。

 

 スクロールの使用に至る条件は次の3つ。通常攻撃が効かないこと、かろうじて通ったダメージも再生されることを確認すること、オーガが2度目の火玉(ファイアボール)を使ってくることです。これによりゴブスレさんがスクロールの使用に踏み切ります。まあそれまでが地獄なんですけどね。

 

 オーガの初擊の後の行動は火玉で固定されていますので急いで女神官の周りに集合します。女神官が超過祈祷もしくは限界突破(オーバーキャスト)と呼ばれる回数以上の呪文行使による聖壁(プロテクション)の重ねがけでどうにか防いでくれます。火玉が霧散したらゴブスレさんに女神官を下がらせるように言ってからタゲを取るためにブロードソードでペチペチしましょう。当然ながら厚い筋肉の鎧で弾かれ効きません。この時に正面からではまともに攻撃が通らないことを一党内に周知しましょう。そうすることで一党が目や関節、腱などに攻撃を集中するようになります。攻撃無効、ヨシ!(現場猫)

 

 直後に疾走戦士狙いでオーガが攻撃モーションに入りましたが鉱人道士の石弾(ストーンブラスト)で動きが止まったのでその間にオーガの間合いから離れます。

 

 おっ!妖精弓手の二連撃ちが炸裂しオーガの両目を潰しました。やりますねぇ!これで一時的に視界が失われるので攻撃が単調になり対処しやすくなります。蜥蜴僧侶が召喚した竜牙兵と共に撹乱し、その隙にゴブスレさんが足の腱狙いで凸りますが、あのクッソ粗末な剣では薄皮が切れるだけです。そしてまだ目が見えていないはずのオーガはゴブスレさんを狙ってかちあげ攻撃をしてくるので割って入ります。

 

 カラコロカラコロ……

 

 ちょっと待ってGM(真実)今の不穏なダイスロールは何!?

 

 は?(呆然)

 

 このタイミングで痛打(大成功によるクリティカルヒット)!?オーガお前実はチラチラ見えてただろ!

 

 痛打に対して防御する場合、盾受け判定で大成功して相殺しなければなりませんが……だめみたいですね(諦め)

 

 ああああああ痛い痛い痛い!しかもなんでここで最大値近い12ダメも貰ってんですかね?間が悪すぎるにもほどがあります。既に半殺し状態の疾走戦士君ですが、痛打はランダムで必ず何かしらの特殊状態異常が発生します。当たった状態異常は骨折。判定でも中々にしんどいのが来やがりました。骨折は装甲値で受けた後のダメージが2倍になる状態です。

 

 外見的には盾こそ多少のヘコみがある程度ですが、装備していた腕が衝撃に耐えられず骨が突き出ちゃってるような有り様です。動かせなくはないですが凄まじい激痛が発生しており【忍耐】技能がなければ動くことすらままならなかったでしょう。あと肋も何本か逝ってるみたいですが誤差だよ誤差!今さらですが本作はグロ注意です。

 

 その状態でさらに吹き飛ばしでちょっと宙を舞った後柱にぶつかって止まりました。他の仲間が何事かとこちらを見ますが大丈夫だと言い張りましょう。仲間が大ダメージを受けるとそれを庇うように一党が動き始めてしまうのでロスになります。疾走戦士君ごときのために遅れがでるなどあってはならないのです。位置的に骨が突き出てるのも盾に隠れて見えないでしょうし、とりあえず突き出た骨を急いで元の位置に押し込んで気休めですが治癒の水薬を飲んでおきましょう。回復値は5。値段の割にはやくそうみたいな回復効果しかないですねこれ。

 

 女神官が手持ち無沙汰なのか様子を見に来ますが、近づかれると当然盾の裏が血でグッチャグチャなのに気づかれます。もちろん黙っていてもらうようにお願いします。戦闘中に騒がれると他の一党が集中出来ないだろいい加減にしろ!

 

 ここで面倒になったのかオーガが2度目の火玉を放つために詠唱に入りました。馬鹿め、お前のそれは「なんか静かですね」と同じくらいの死亡フラグだ!ゴブスレさんが悠々とスクロールを発動させてオーガを半分にしたら戦闘終了です。しかも運良く発生したウォーターカッターが横ではなく縦だったので辞世の句を言う暇すらなく死にました。日々更新を怠らない姿勢、さすが先駆者様です。

 

 戦闘終了後、女神官に騒がれて怪我の隠蔽がバレますが問題ないです。このタイミングでゴブスレさんが負傷していてもいなくても、術者達が尽く消耗しているのでそれを理由に撤退することになります。後は来た道を戻って森人(エルフ)の戦士たちに現場を引き継いだら帰りの馬車に乗りましょう。やることがなければ後は街に着くまで寝ます。

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

*1実際に受けるダメージ

*2武器や呪文のダメージ




評価、感想、誤字報告ありがとナス!
今後は1……か2週間ぐらいのペースになりそうです。
まあ気まぐれなので早かったり遅かったりしますが。
あと私はホモではない、それだけは伝えたかった。


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小鬼殺し.mp3:裏

剣聖 葦名一心を倒したので初投稿です。


 辺境の街のギルドは相も変わらず運営されていた。処理されないクエスト、冒険者の情報管理、人手が足りないことに変わりはないがそれでも何とか回っている。そんなギルドに今日は珍しい客が現れていた。新緑のような鮮やかな色合いの髪にツンと尖った耳が特徴的な森人(エルフ)野伏(レンジャー)、妖精弓手。低めの身長ながらも恰幅がよく真っ白な髭を蓄えた鉱人(ドワーフ)精霊使い(シャーマン)、鉱人道士。この辺境では珍しい鋭い爪に強靭な尾と堅い鱗を備えた蜥蜴人(リザードマン)竜司祭(ドラゴンプリースト)、蜥蜴僧侶の3人組だ。

 

 異種族の入り混じった物珍しい組み合わせに誰もが一瞥をくれるが話しかけようとしない。それは何故かというと、先程から何やらカウンターで受付嬢と揉めている様子だからだ。おまけに全員が銀等級の冒険者。よっぽどの恐れ知らずか馬鹿でもなければ割って入ろうなどとは思わないだろう。

 

「だからオルクボルグよ!オルクボルグ!ここに居るんでしょう?」

 

「かーっ、耳長言葉が只人に通じるわけなかろう!かみきり丸じゃ。かみきり丸。これでわからんか?」

 

「あの……ちょっとよくわからないです」

 

 捲し立てる妖精弓手に鉱人道士。受付嬢は困り顔で愛想笑いを浮かべるばかりだ。その様子をみていた蜥蜴僧侶も腕を組みながら困った様子で呟く。

 

「いやはやこれは困りましたな。我々はそこまで探し人に詳しくないが、こうも裏目に出るとは」

 

「ふむ。失礼、何やら困り事のようだが」

 

 一同が振り向くとそこにいたのは珍妙なバケツのような兜を被った戦士だった。肩からは外套を纏っており、下には皮鎧や鎖帷子が見えているが防具は一律してくすんだ様になるまで徹底的に艶消しが為されており、灰塵を被った戦場帰りのような有り様だ。端的に言ってみすぼらしい。異様な雰囲気であるが首から下がっている認識票は黒曜。まだまだ新人なのかワケがあって等級が落とされたのか判断がつかない人物だった。それに何故か旅支度でもしていたのか荷物を抱えている。

 

「ああ、疾走戦士さん。こちらの方々なのですが誰かを探されているようなんです」

 

「人探しか。私でよければ話を聞くが」

 

「まあこの際誰でもいいわ。オルクボルグを知らない?」

 

「だからかみきり丸だと言っておろうが」

 

「オルクボルグ、かみきり丸……」

 

 話を聞いた疾走戦士はううむと唸って何かを思い出すかのようにバケツ頭を傾けながら少し考え込んだが、心当たりがあったのか確認するように話し始めた。

 

「私の記憶違いではなければ……どちらも剣の名前ではなかったかね?昔なにかの伝説で名前を聞いた覚えがある。どちらも小鬼が近づくと青白く輝く伝説の剣だったはずだ」

 

「ほう、中々に博識ですな」

 

「こう見えても昔は本の虫でね。伝説やら伝承やらばかり読んでいたことがあるだけだ。そしてその伝説の剣に共通する異名が小鬼殺し。つまり探し人とはゴブリンスレイヤー殿のことではないかね」

 

「ああ!ゴブリンスレイヤーさんのことでしたか。彼でしたらまだ戻ってませんが」

 

 合点がいった様子で受付嬢はぽんと手を打ち合わせた。

 

「彼にわざわざ用があるとは、疑うまでもなくゴブリン退治の話だろう」

 

「なんでそう言いきれるの?」

 

「彼はゴブリン以外に興味をもたないからだ」

 

 事実、妖精弓手たちは小鬼殺しと呼ばれるゴブリン退治を専門としながら辺境三勇に数えられる人物への依頼をするべく派遣されたという背景がある。各種族の王たちは現在復活した魔神王への対策を協議中だが、その足並みは揃っているとは言い難い。国の地盤を揺るがすかのようにじわじわと被害を出し始めているゴブリン相手に軍を動かそうものなら要らぬ疑惑を持たれることになる。故に軍が動けぬのなら冒険者を使ってゴブリンを駆除させようという話になり、送り込まれたのが妖精弓手たちというわけだ。

 

 そしてややこしい(まつりごと)の話をするならと疾走戦士は監督官に談話室を貸してくれるように頼むと、あれよあれよという間に話を通し、そのまま妖精弓手たちを談話室へと案内すると、壁に寄りかかって談話室に居座っていた。

 

「ちょっと。アンタなんでまだいるの」

 

 怪訝に思った妖精弓手がソファーに沈み込みながら問うと、疾走戦士はバケツ頭をガチャリとならして答えた。

 

「ゴブリンスレイヤー殿は、無愛想というか無頓着というか、おそらく貴公らと会話するにしても悪気はないんだが無自覚の内に神経を逆撫でするようなことを平然と言い放つ方でな。要らぬ軋轢を生まぬように同席させてもらう。彼とは一党を組んでいることだしな」

 

 なんでそんな変なやつが銀等級になったのかと一同が疑問を浮かべていると、そこへ受付嬢に連れられて薄汚い全身鎧の男がズカズカと無遠慮な足取りで談話室へ踏み込んできた。

 

「俺に用事があると聞いた」

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

「今魔神王が復活「待たれよ」なんなのよ人が話してるときに!」

 

 妖精弓手が事の始まりから説明をしようとすると、疾走戦士が話の腰を折るように口を挟んだ。これから話そうとしていることより大事なことがあって止めたんだよなと言わんばかりに妖精弓手がバケツ頭に不機嫌な視線を向けた。

 

「魔神王だのなんだの政の話は結構。しかし背景や思惑などどうでもいいことだ。ゴブリンスレイヤー殿にわざわざ依頼することなどゴブリン退治ぐらいしかあるまい。それ以外ならゴブリンを殺すのに忙しいと断られるだけだ」

 

「ゴブリンを殺すのに忙しいって……」

 

 あまりにインパクトのある文面に唖然とする妖精弓手をよそに、ゴブリンスレイヤーはピクリと反応を見せた。

 

「ゴブリンか」

 

「いや、あの」

 

「ゴブリンでないのか、どうなんだ」

 

「…………ええ、そうよ。ゴブリン退治よ。森人(エルフ)の領域の近くにある古い遺跡に」

 

「受けよう」

 

「へ?」

 

「規模は?上位種の有無は?現地の地図はあるか?」

 

 水を得た魚のように急に生き生きとしだしたゴブリンスレイヤーは必要な情報を捲し立てるように聞き出すと報酬は好きにしろと言い放つと席を立った。

 

「では私も同行する。ゴブリンは疾く殺さねば」

 

「そうか」

 

 ズカズカと揃って談話室を出ていく兜の2人組。なんなんだアイツらという感想が場を支配するがさまようよろいとバケツ頭は気にも留めなかった。そうして談話室から出てきたところで、魔女と話して時間を潰していた女神官が飼い主を見つけた子犬のようにゴブリンスレイヤーに近づいてきた。そして話しかけようとしたところで、脇にいたバケツ頭が女神官の肩を叩く。

 

「女神官殿、旅支度を」

 

「へ?」

 

「いつも通りゴブリン退治に行くが、今回は遠出になる故に急いで旅支度を。今回は他の冒険者も加わるので回復役が足らんのだ。それにゴブリン退治に慣れた神官など貴公しかこの辺境にはいないからな。であろう?ゴブリンスレイヤー殿」

 

 返事を促されたゴブリンスレイヤーはちらりと兜を女神官の方に向けてしばらく黙っていたが、またズカズカと無遠慮に歩きながらボソリと呟いた。

 

「好きにしろ」

 

「……はい!好きにします!」

 

 その後さらっと集合場所に一番乗りしていた疾走戦士は、特に何か準備をしたようには見えない。妖精弓手が初めて見たときと同じく灰を被ったような装備に荷物を抱えた姿だ。普段から多くの道具を持ち歩くような質かと思っていたのだが、女神官が言うには普段は雑嚢に最低限の装備だけを持ち歩いているらしく、今回のように荷物を担いでいるのは珍しいことらしい。もしやコイツどこからか情報を仕入れてきた間諜の類ではないか?と疑うほどに疾走戦士は用意周到だった。

 

「足はあまり上げぬように、地面と少し擦るように歩くといい。普段の歩き方で長い距離を歩こうとすると存外しんどいものだ」

 

「そうなんですか?」

 

「まあこの歩き方だと靴底の爪先と踵の減りが速いから貧乏人には向かぬがな」

 

 また疾走戦士は旅慣れしていた。疲れない荷物の背負い方、足を痛めぬように長距離を歩く方法などを熟知しており、旅慣れしていない女神官に時折助言をし、少しでも疲れが溜まったと見るや小休止や水分補給をちょくちょく挟むように気を配っていた。曰く、溜まった旅の疲れは一晩寝て全て回復するものでもないとのこと。故になるだけ疲れを溜めぬように移動し、万全の状態で翌日に臨めるようにするらしい。女神官は疾走戦士が商人の出自ということを知っていたため、行商で歩いた経験なんだろうと1人納得した。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 陽も落ち、すっかり暗闇に包まれた平原。照らすのは星々の煌めきと2つの月。その一角では暖かな焚き火の光が一党を淡く朱色に染め上げている。食い物にうるさい鉱人道士と蜥蜴僧侶は肉だの酒だのを早々に持ち出しては酒盛りに精を出していた。鉱人道士の火酒が振る舞われ、ゴブリンスレイヤーがそれをぐいと飲み干す。当然ながら野郎の1人である疾走戦士にも杯が回ってきたが、器用にバケツ頭に杯をねじ込むようにしてちびりと少しだけ嗜んだが、ううむと唸って杯を眺める。

 

「やはり強い酒は私にはキツいな」

 

「なんでぇ、そのナリで下戸か?」

 

「こう見えても歳は女神官殿と同い年でな」

 

 興味津々に疾走戦士の杯をひったくり、火酒を口に含んだタイミングだった妖精弓手は、火酒がキツイのと疾走戦士が自分の100分の1も歳を食っていないことに驚いたのが合わさり盛大に吹き出した。もったいねぇ、と鉱人道士が顔をしかめるが彼もてっきり20と少しくらいと勝手に思っていたので驚きが強いのは同感だった。

 

「さて、酒に弱い御同輩はこちらでもどうかな?」

 

 疾走戦士は旅用の背負い袋から取り出したのは衝撃をやわらげるために布が幾重にも巻かれた瓶だ。それを取り外すと中には黄金色の液体が揺れている。珍しい物好きな妖精弓手がズイと顔を近づけてなんだそれはと目を輝かせた。

 

「なにそれ!」

 

「白葡萄酒だ。香りがよく、口当たりも甘く爽やか。酒精も薄く飲みやすい」

 

 酒を飲むとしたら専らこればかりでな、と疾走戦士が蓋を外すと通常の葡萄酒とは違った独特な香りが広がる。寄越せと言わんばかりに無言で杯を突き出す妖精弓手に疾走戦士も無言でそれを注いでやる。野郎共も気になったのか杯を寄越すので、結局全員に飲ませることになったが疾走戦士は好みが別れると注意した上でまずはお試しにと少しだけ注いだ。

 

「わぁ~!私この味好き!」

 

「はい。甘くて飲みやすいですね」

 

「ん。まあ女子供には喜ばれる味だわな。儂はやっぱりこれ(火酒)よ」

 

「拙僧はこれもアリだとはおもいまするが、やはり酒は血のように濃くなくては」

 

「……………………」

 

 女性陣には好評だったが鉱人道士は趣味が合わなかったらしい。ちなみにゴブリンスレイヤーは火酒の時と同じく一息に飲み干して無言のままだ。疾走戦士も兜を意地でも外す気がないのか、またバケツ頭に杯をねじ込んで白葡萄酒を味わっていた。

 

「この酒は造る際に白葡萄の皮と種を取り除く手間暇がかかるから流通量が少なくてな。それに好むのは私のような物好きか女子供ばかりであまり一般には出回ってないのだよ」

 

 貴族連中は酒精より香りと味にこだわるからそっちではいくらか出回ってるらしいが、と付け加えるように呟く疾走戦士。じゃあこれ貴族向けの酒なのかと値段が心配になってきた妖精弓手だったが、どうやらツテでどこからか仕入れて来ているらしく、辺境の街のギルドの酒場にもさりげなく仕入れられているらしい。地味に一部の冒険者や受付嬢ギルド職員から好評らしく一定の需要を得ているのを後に女神官は知ることになる。

 

「ところで、みんなはどんな理由で冒険者になったの?」

 

 酔いがいくらか回ってきた頃、妖精弓手が唐突に言い出した。それに鉱人道士は旨いもんを食うため、と妙に堂々とした様子で答えた。蜥蜴僧侶は異端の心臓を喰らい位階を高めて竜に至るためと答えた。妖精弓手は首を傾げたが、祖竜信仰という偉大なる祖先を崇め、自分達もその領域まで鍛練すれば竜に至れるという考えだと疾走戦士が注釈を加えた。蜥蜴人(リザードマン)は皆戦で死んでしまうため正確な寿命がわからない種族だ。死なずに鍛練を続ければ延々と成長を続けると言われているため、もしかすると本当に竜になれるかもしれない。少なくとも当人達はそう信じているようだ。

 

 女神官は困っている人のためになればと思って、と答えた瞬間に顔が赤くなり始めている妖精弓手にもみくちゃに撫で回されていた。まるで酔っ払った親戚のような有り様だったが被害は女神官だけなので一党は生暖かい目で眺めるにとどめた。ゴブリンスレイヤーはゴブリン、と言いかけたがアンタはだいたいわかってると妖精弓手に止められた。無言で微動だにしないゴブリンスレイヤーの表情はわからないがどこか釈然としない様子だ。

 

「で?アンタはどうなのよバケツ頭」

 

 遠慮してそれとなく言わないようにしていたのにとうとう口に出して言いやがったコイツ、という鉱人道士の視線をものともせず白葡萄酒のおかわりを要求しながら疾走戦士に問う妖精弓手。それに怒るでもなく白葡萄酒を注いでやりながら疾走戦士は返答をした。

 

「以前女神官殿には語ったが冒険者になれと託宣(ハンドアウト)を受けてな。アルトゥーエ?だかアルティーエと名乗る神、この世界風に言えば疾走神と言っていたか。故に冒険者になるきっかけをくれたこの謎の神にあやかって私は疾走戦士と名乗っているのだよ」

 

 疾走戦士の名前の由来を聞いた一同はそれは外なる神とか邪神じゃないのか?と以前の女神官が抱いたものとほぼ同じ感想を抱いた。

 

「なに?あんた神官戦士なの?」

 

「いいや?だが何故か向こうがわりと頻繁に託宣(ハンドアウト)を寄越すのだ。ここをこうしたほうが早いだの、そこにゴブリンが隠れているだのやけに具体的なのを。面白がられているのか、気に入られたのかはわからんがな」

 

 本人が気にしていない様子なのであまり強くは言えないが、相手は何を由来とするのか不明な外なる神だ。自分だけでも気に留めておこうと女神官は思った。

 

「では、1枚でいいから摘まんでおくといい。疲れに効く」

 

 そう言って疾走戦士はまた荷物を漁ると小ぶりな瓶が取り出された。中には薄くスライスされたレモンが蜂蜜とともにこれでもかと詰め込まれている。レモンの強烈な酸味が蜂蜜で緩和された手頃なデザートだ。お子様舌な妖精弓手がひょいひょいと数枚を口に放り込み、甘味が染み渡る感覚に歓喜の声をあげているのを傍目に、女神官も1枚口に含んでみる。甘く濃厚なやさしい味わいが口に広がる。今度神殿のみんなにも持っていきたいと思うほどには癖になる一品だった。

 

「もうちょっと……」

 

「耳長娘、少しは遠慮せんか。おまえさんそんなだからいつまで経っても金床のままなんじゃ」

 

「なんだと~う!」

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 もぞり、とダンゴムシのように丸まっていた妖精弓手は身じろぎと共に目を覚ました。今は何時だ?たしか交代で見張りをするという話になってオルクボルグ、バケツ頭、私の順でやることになってたはず。というところまで思い出した妖精弓手は意識が急激に覚醒すると共にがばりと起き上がった。空を見れば東の空の果てがうっすらと明るみ始めている。

 

「寝過ごした!?」

 

「よくお休みだったようで」

 

 振り返ると焚き火の傍にはバケツ頭の謎の人物、疾走戦士が座り込んでいた。疾走戦士は火を絶やさぬように薪を放り込みながら、合間に盾を手入れしつつ番をしていたようだ。

 

「交代なんだから起こしなさいよ」

 

「いや、よく眠っておられる様子だったからな。起こすのは忍びなんだ」

 

 代わりに遺跡の探索では期待している、などと大袈裟な世辞を言って見せる。そう言われては妖精弓手もこれ以上言うのは野暮というものだ。なら先達らしく実力を示してやろうではないか、と鼻息を荒くした。

 

 そして、実力を示した直後に妖精弓手はひどい裏切りを受けることになった。

 

「…………」

 

「イヤよ!絶対イヤあああああああ!!」

 

「ならば次からは匂袋で誤魔化すのをおすすめする」

 

 抵抗虚しく、前方をゴブリンスレイヤー、後方を疾走戦士に挟まれた妖精弓手はあまりのおぞましさに悲鳴をあげた。兜の2人組にゴブリンの体液を前から後ろからと満遍なく塗りたくられる。事の始まりはゴブリンは鼻が利く、と突然死体をえぐりだしたゴブリンスレイヤーだった。前方からにじり寄るゴブリンスレイヤーから逃れようと振り返ったら疾走戦士に襤褸でこしたゴブリンの体液を振りかけられたのだ。疾走戦士のひどく無慈悲なその口調が怖かった。遠い目をした女神官がひどく実感のこもった様子でこう言った。

 

「なれますよ」

 

 こんなのに慣れたら負けだと思う。妖精弓手はそんなことを考えて現実から目を逸らした。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 多少のハプニングこそあったが遺跡の探索は順調だった。罠の発見は本職の妖精弓手と器用貧乏なゴブリンスレイヤーが発見し回避することで戦闘もなく進めていた。ほどなくすると分かれ道にぶつかり、鉱人道士は床のすり減り方からして左がねぐらだと判断したがゴブリンスレイヤーの提案で先に右の探索をするという話になった。

 

「逆の方に行ってなにがあるっていうの?」

 

「若輩者の浅知恵ではあるが、こういう場合は大抵犠牲者が転がってるか、まだ生きているものがいるかの二択の場合が多いと思う。生き残りを救うにしても残留物から情報を得るにせよ、背後にゴブリンが1体でもいるというのは面白くない」

 

 まだ遊んでいる輩がおるやもしれん、と不穏なことを口走る疾走戦士にそれはどういうことかと聞こうとしたときに行く先から漂う強烈な悪臭に一同は眉をしかめ、妖精弓手は思わず鼻を押さえた。平気そうなのはゴブリンスレイヤーと疾走戦士、そして意外にも女神官。良くも悪くも嗅ぎ慣れた臭いだった。

 

 ゴブリンスレイヤーが粗末な戸を蹴破り一党が突入すると、汚物溜めとして扱われている不潔な部屋の中央には、半身を惨たらしく潰され弄ばれた森人(エルフ)の冒険者の姿があった。それを確認するやいなや疾走戦士は突如として松明を森人(エルフ)の冒険者の足元に投げつけると同時に駆け出した。何を、と問おうとする間もなく肉を抉る音が響く。松明を投げた先にはゴブリンがおり、詰め寄ってきた疾走戦士に反射的に飛びかかったところを縁の鋭利な盾で切り裂くようにして打ちのめされたのだ。

 

 一党が騒然とするのを気にも留めず、疾走戦士は松明を拾いつつゴブリンを踏み潰して確実に息の根を止めると森人(エルフ)の冒険者の拘束を断ち切り、女神官に手当てをするように声をかけた。慌てて女神官が駆け寄り小癒(ヒール)の奇跡で傷を癒し始めたのを確認すると、周囲の血と汚物にまみれたガラクタの山を漁りだした。

 

 押し寄せた吐き気でどうしようもなくなっていた妖精弓手がおかしなものを見る目で疾走戦士を目で追うと、彼はガラクタの山から雑嚢を引っ張り出しているところだった。

 

「ゴブリンスレイヤー殿、手書きの地図だ。おそらくはこの遺跡のものだろう」

 

「見せろ」

 

 地図をゴブリンスレイヤーに預けた疾走戦士は、結局吐き気に耐えられず吐瀉物を部屋の隅に撒き散らしてえずいていた妖精弓手にずいと手にした雑嚢を渡してくる。

 

「同胞のものだろう。貴公が持っているといい」

 

「あれも……託宣(ハンドアウト)だっていうの?」

 

「そうだな。ゴブリンの存在を知らせるものだった」

 

「なら一言でも声をかけるとかないワケ?」

 

「時間が惜しかった。ゴブリンにいつ人質をとられるやも知れぬ状態だったのだ」

 

 言われればああそうかと納得してしまいそうな理由を疾走戦士は並べ立てる。確かにそうなる可能性もあるにはあるだろう。だが、それはそこまで性急に成さねばならないことだったのか?僅かな違和感を感じるものは感じただろう。なぜそこまで()く必要があるのかと。だが、それを感じ取ったのは彼とそこそこの場を共に踏んできた者の中で、壊れていない者。ゴブリンスレイヤーは早くゴブリンが死ぬのならそれに越したことはないと納得してしまい気付かぬだろう。唯一、以前感じた歪さを再び垣間見てしまったのは女神官のみだった。

 

 おかしな見た目から異様さを感じることこそあれど、商人の生まれによる育ちの良さと教養から生じたであろう性格は多少やり過ぎな面こそあれど勤勉な人格者のそれである。それがギルドに評価され同期の冒険者では真っ先に黒曜等級へと昇級したほどだ。だが冒険中に見せる常識外れの不可解な行動の根底には急ぐことへの強い執着心があるように見えた。

 

 もしや、過去に何かに間に合わなかったことによる後悔があるのだろうか?あの時急いでいればという自責の念からあんな極端な行動を取るようになってしまったのか?

 

「行くぞ。地図があればゴブリンの襲撃への対応がしやすくなる」

 

「地図は実際の地形との確認こそ必要だが前情報のあるなしは大きい。地図が正確なら道に迷うことなく、それだけ早く元凶にたどり着けるというわけだ」

 

 思考に耽っていた女神官はゴブリンスレイヤーの声にハッとして現実に引き戻される。森人(エルフ)の冒険者は蜥蜴僧侶の召喚した竜牙兵(ドラゴントゥースウォリアー)によって遺跡外に連れ出され、一党は探索を再開しようとしていた。考え事は冒険の終わった後にしよう。そんなことを考えているほどの余裕は未熟な自分にはないのだから。改めて気を引き締めるように女神官は錫杖をぎゅっと握りしめた。

 

 何度かの小規模の戦闘も危なげなく乗り越え、遺跡の最深部近くまで一党は到達した。少し開けた安全なスペースを確保し、最後の小休止として体を休めている最中である。みな腰を降ろし疲労の回復に努めるなか、遺跡へ突入する直前からゴブリンの体液を塗りたくられ、無惨な同胞の姿を目撃し、色々と精神的ダメージを受けたことにより遺跡に突入する前の快活さはどこへ消え失せたのか、意気消沈気味の妖精弓手がやや血の気の引いた青白い顔をして虚ろな表情を浮かべていた。

 

「貴公、2000歳と聞いていたが精神年齢は下手をすると成人前の童並なのか」

 

「おいおいおいさすがの儂もからかうのを自重してたというにおまえさんには容赦というものがないんか」

 

 そこへ疾走戦士のドギツイ皮肉が突き刺さる。さすがの鉱人道士も事実だが今それを言うこたぁないだろと諫めるが、表情のわからないバケツ頭が何を考えているかは鉱人道士には読めなかった。

 

「うるっさいわね。私の100分の1も生きてない奴に言われたくないわよ」

 

 顔色こそ悪いが、額に青筋を浮かべながら皮肉を返す妖精弓手。半分くらいはお前らのせいでダメージを受けているんだよと言わんばかりに兜の2人組を睨み付けた。

 

「まだ言い返せるようで結構。辛い疲れたと喋れる内はまだまだ大丈夫だ。本当に限界の者は無言で倒れて気がつくと遥か後方で置き去りになってしまうものだ」

 

「嫌に実感の籠った言葉ね、それ……」

 

 これが疾走戦士なりの激励だということは薄々感じていたが、うら若き上の森人(ハイエルフ)の乙女にかける言葉がそれかと思うところもある。いや別にお姫様扱いしろというわけでもないが。これでも銀等級の冒険者なのだ。先達には先達の矜持というものがある。いつまでも情けない姿を晒すものでもないか。そう思ってからの妖精弓手の回復は早かった。

 

「まったく単純な奴だのう」

 

「何か言ったかしら?」

 

「いんやなんにも」

 

 森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)の長年続くもはや種族間の伝統と化した皮肉の応酬をしているほうが“らしい”のだ。ようやくいつもの調子に戻ってきたことに、鉱人道士は不器用なフォローを入れた疾走戦士に感謝した。放っておいたらもっと不器用なかみきり丸が容赦ない一言で荒治療する可能性もあったのだから。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 遺跡の奥は吹き抜けの回廊になっていた。回廊の底はゴブリンのねぐらになっており、かなりの数が確認できる。両手両足の指を合わせても足りぬだろう。そこで一党が取った手段は単純明快、精霊術によりゴブリンを泥酔させ、奇跡により音を消し去った状態で寝込みを襲う。無防備に寝ている悲鳴もあげられぬゴブリンをゴブリンスレイヤー、蜥蜴僧侶、疾走戦士がそれぞれ草でも刈るかのように命を刈り取っていく。

 

 ゴブリンスレイヤーは転がる雑多な武器を使い捨てるようにして、蜥蜴僧侶は祖竜術により呼び出した鋭き爪のごとき刃で喉元をかっ捌き、疾走戦士は縁の鋭く研がれた盾を振り下ろし処刑するようにして圧し切る。血にまみれながらのそれは命を奪っていると言うのになんの感情のやり取りもなく、ただただ作業的だった。

 

 その異様な有り様を上から見ていた鉱人道士と女神官、そして2人の護衛として残った妖精弓手。彼女は複雑な心境で思わず呟く。

 

「……情けないわね、私」

 

 銀等級にもなって、たかがゴブリン相手だというのに、黒曜等級の後輩に気を使われて護衛などと聞こえのいい理由であの殺戮から遠ざけられている。きっとあの殺戮で精神をすり減らしてしまうのではと守られているのだ。なんと情けないことか。いくら歳を重ねようとも森にいた頃より多少冒険をするのが上手くなっただけ。だから森の爺さまたち長老や姉さまに子供扱いされるのだ。

 

「いつもこんなことしてるの?あなた達」

 

「ええ、まぁ。概ねこんな感じですね」

 

 女神官はこれほどひどいのは初めてですがと、付け加えた。規模が違うだけで、彼らはいつも薄暗い巣穴に潜って血にまみれながらああやってゴブリンを殺しているのだろう。それがひどく腹立たしく思えた。だって不公平ではないか。片や冒険者となった小娘が未知の発見に目を輝かせ、片や黙々とゴブリンを駆除しているだけだなんて。そんなものが冒険だとは断じて認められなかった。

 

「……終わりか」

 

「終いですな」

 

「一段落だな」

 

 ゴブリンスレイヤーは血糊で使えなくなった錆びだらけの短剣を投げ捨て、蜥蜴僧侶はびゅんと刃を振るい血払いをし、疾走戦士は盾を装備し直した。まだ遺跡は奥に続いているようだ。上で待機していた一党も合流し、いざ進まんとしたところで低く恐ろしい声が地響きと共に回廊に反響した。

 

「小鬼どもがやけに静かだと思えば、鼠が紛れ込んだか」

 

 現れたのは筋肉の鎧で全身を包み、鋭い角と爪牙を持つ巨人だった。巨大な武器を担いだそれは歩く度にずしりと地面が揺らぎ、対峙するものには怖じ気が走る。恐るべき怪物、人喰鬼(オーガ)である。

 

「オーガッ!?」

 

「…………?ゴブリンではないのか」

 

 慌てる妖精弓手をよそにゴブリンスレイヤーは的外れな疑問を抱いていた。銀等級冒険者でありながらゴブリン以外に興味を持たなかった弊害だろう。

 

「貴様、我を小鬼風情と……ッ!?」

 

 唐突にオーガの言葉が途切れる。飛んできた粗末な手斧が分厚い胸板に当たり弾かれたのだ。下手人は疾走戦士。何を思ったのか落ちていたゴブリンの武器を不意打ちで投げつけたのだ。混沌の勢力とはいえオーガも尖兵を率いる将軍を任せられるほどの者だ。矜持もあるし、戦いの前の名乗りや前口上を蔑ろにすることは意外にも少なかった。むしろそうやって名乗りをあげたものを正面から叩き潰すことに拘りがあると言えるほどに武人肌である。それを邪魔されたオーガが烈火の如く怒りを抱くのは当然と言えた。

 

「戦の礼儀すら知らぬ蛮族ならば相応の代価を支払わせてくれよう!!」

 

 止める間もなく疾走戦士は盾を構えて飛び出していく。オーガは鉄塊のごとき戦槌を大きく振るい、迫り来る壁のような一撃でもって薙ぎ払った。疾走戦士は振るわれる戦槌へと盾を合わせ、鈍く響く金属のぶつかり合う音を奏でた次の瞬間には押し戻されるように一党の元へと弾き返された。

 

「……ぬぅ、浅いか」

 

 忌々しげにオーガが呟く中、床を滑りながらも姿勢を崩さずにすっ飛んできた疾走戦士を蜥蜴僧侶が咄嗟に受け止めた。なぜ挑発するような真似をという言葉を呑み込み、女神官が怪我の有無を確認するように尋ねる。

 

「疾走戦士さん!怪我は!」

 

「子細なしだ。ただ奴の得物が大きすぎて反動は受け切れなんだ」

 

「馬ッ鹿じゃないのアンタ!?あれ金等級の冒険者が相手にするような怪物なのよ!?」

 

 平然と言い切る疾走戦士の姿に、おかしなものを見る目で妖精弓手ががなり立てた。バケツ頭をひっ掴み、おもわず左右に揺すりながらである。お前本当に黒曜等級なのかと疑いたくなるような疾走戦士の盾の腕前には蜥蜴僧侶も戦士としての血が滾るというものだ。

 

「いやはや、あの一擊を防ぐとは見事。これは我らも負けてはいられませぬな」

 

 あの巨大な戦槌を防ぐには単純に盾で受けるだけでは足りない。馬鹿正直に受け止めるのではなく全身に衝撃を分散する巧みな受けの技術が必要だろう。よくその年で修めたものだと蜥蜴僧侶は興奮よりも驚きの感情の方が強かった。戦闘民族の感想など余人にはあまり参考にはならぬだろうが。

 

「よく受けた、蛮族にも褒美はやろう。受け取るがいい……!《カリブンクルス(火石)》……《クレスクント(成長)》……」

 

 ぼ、とオーガの掲げた掌に小さな火種が現れたかと思うと、それは急激に膨れ上がり始め、熱波が周囲をじりじりと焦がし始めた。

 

「真言呪文……!火玉(ファイアボール)が来るぞッ!!」

 

「ボールなんてサイズじゃないでしょあれ!」

 

「んなもん球体なんだからどこまでいってもボールじゃろがい!」

 

「うっさいわねわかってるわよそんなの!」

 

「仲がよろしいのは結構ですが、このままでは黒焼きになってしまいますぞ!」

 

「皆さん私の後ろに!!」

 

 女神官の叫びに一同は彼女が何をするのかを一瞬で察し、彼女を支えるように周囲に集った。錫杖を構え、深呼吸する彼女の肩を支えながらいつもの調子でゴブリンスレイヤーは命じた。

 

「頼む」

 

「はいッ!《いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください》」

 

 地母神への祈りは地の底であろうとなんの障害もなく通じ、清らかなる光が女神官に集う。閉じていた目を見開き、女神官は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。

 

「『聖壁(プロテクション)』!」

 

「《ヤクタ(投射)!》」

 

 放たれた火玉は一党を守る聖壁へと突き刺さり、確かに受け止められたが火玉は未だに前進を止めていない。軋むような音と共に聖壁にひびが入った。めきり、めきり、と押し潰すようにひびが広がっていく。聖壁を維持するために女神官は歯を砕けんばかりに噛み締め、祈りを続ける。しかしこのままでは突破されるのが時間の問題であることは術者である彼女にはよくわかっていた。故に彼女は賭けに出た。すでにこの術の行使で回数は消費しきっていたが、それを承知の上で女神官はもう一度聖壁を唱えた。

 

「《いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、大地の御力でお守りください!!》」

 

 そして彼女の祈りは届いた。失神しかけるほどの精神力と引き換えに奇跡は成った。もう一枚、先程よりも強固な聖壁が今度こそ火玉の勢いを食い止めた。迫り来る高熱を見事受け切り役目を全うした女神官は急に膝に力が入らなくなりその場に崩れ落ちたが、傍にいたゴブリンスレイヤーが受け止める。

 

「よくやった」

 

 その言葉に戦闘中だというのに女神官はひどく安心してしまい、『誉められた!』という一文が胸中をかけ巡る。脳内のちび女神官たちも大騒ぎである。

 

「女神官殿を下がらせよ!時間はこちらで作る!」

 

 聖壁が消えるとほぼ同時に、熱で煙の上がる床を蹴り、疾走戦士が名の通りに疾走した。煙に紛れてオーガへと詰め寄ろうというのだ。

 

「あの弾丸坊主め、壁役(タンク)の動きとしちゃあ満点だが黒曜等級を盾にしたのでは儂らの立つ瀬がないわい!」

 

「拙僧らも参りますぞ!」

 

「ああもう!」

 

 疾走戦士は詰め寄るやオーガに斬りかかったが正面から打ち付けられた刃はさほど沈まず、厚い筋肉に阻まれ浅く切り傷をつけるに留まった。しかも見る間に湯気をたてて傷が塞がっていくではないか。

 

「正面からは筋肉で刃が通らん!急所を狙え!」

 

「ええい鬱陶しいぞ蛮族めが!」

 

 疾走戦士を叩き潰そうと鉄塊のごとき戦槌を肩に担ぐようにしてミシミシと筋肉の収縮する音を立てながらオーガは必殺の一撃を構える。

 

「『石弾(ストーンブラスト)』ォ!!」

 

 そこへ裏で術を行使していた鉱人道士の石弾がオーガを次々と打ち据えた。たまらず動きの鈍ったオーガの隙を見逃さず、疾走戦士は戦槌の届かぬあたりまで下がる。

 

「食らえッ!」

 

「ぬおおおおおッ!?」

 

 礫から目を庇っていたオーガへと盾にしていた腕をすり抜けるような軌道で矢が飛翔し両目を潰した。妖精弓手が放った二連打ち(ダブルショット)での同時目撃ち(アイショット)という超絶技巧でもってオーガの視力を奪って見せた。

 

 期に乗じてゴブリンスレイヤーと蜥蜴僧侶、召喚した竜牙兵(ドラゴントゥースウォリアー)が次々と足の腱を断つべく疾駆する。2本足で立っているのだ。構造が人と然程変わらぬなら腱を断てば巨体を支えられなくなるはず。苦悶するオーガの足へと刃を走らせた、しかし強度はまた別の問題だったようで、なんと表面を浅く切っただけ。怪物の筋肉は急所であろうと堅牢なのに変わりはないということか。

 

「侮るなよ矮小な猿風情が!」

 

 一瞬の驚きからかゴブリンスレイヤーが思わず身を止めたその場所へ、狙い済ましたかのように戦槌が床を削り取りながら迫ってきていた。まずいという思考のみが先行したゴブリンスレイヤーは、戦槌の代わりに横合いから突き飛ばされた。何を、と唯一追いついた視線を巡らせると、疾走戦士がゴブリンスレイヤーを庇うように戦槌との間に割って入っていた。ゴブリンスレイヤーは拳1つ分の距離を戦槌が通り過ぎて行き、それが疾走戦士の盾を僅かに捲るようにして直撃するのを目撃した。

 

 疾走戦士は蹴られた小石のように地面に水平に吹き飛び、回廊を支える巨大な柱へと盛大な砂埃をあげながら叩きつけられた。あれはマズイと一党の誰もが思ったがそれに反して砂埃の向こうから大声が響く。

 

「大丈夫だ!!集中されよ!」

 

 疾走戦士の兜でくぐもっているにしてはやたらと響く声に背を押されるようにして、一党は戦いの手を緩めずに一層の攻勢を強めた。それを後ろで見ているしかできない女神官は、砂埃に隠れた疾走戦士を案じ、駆け寄った。そして、見てしまった。

 

「疾走戦士さ…………!?」

 

「後生だから騒がれるな女神官殿。たかが骨が飛び出ただけで騒いでは冒険者などやってられん」

 

 盾に隠された腕はひどくひしゃげ、肘のあたりからは鮮血とともに白いものが突き出している。それを疾走戦士は何でもないように言うと、ぐい、と無造作にもう片方の腕で元の位置に戻すように無理やり押し込んだ。唸るような苦悶の声が反射的に兜から漏れるが疾走戦士はそれを忍耐力で捩じ伏せると雑嚢から治癒の水薬を引っ張り出して呷った。ぐちゃぐちゃだった腕は多少は元の形に回復したがそれでも治りきっていない箇所からは血が滴り骨が見え隠れしている。その状態であろうことか疾走戦士はよし、などと宣う。

 

 止めないと。この人を止めないとあの暴風の渦へとまた飛び込んで行ってしまう。女神官は知ってしまった。疾走戦士は無自覚の狂信者なのだ。あんな大怪我をしても目的のためにそれを精神力で捩じ伏せてしまう。非人間的なほど目的へ邁進する純粋さ故の狂気。それが女神官の感じた歪みだったのだ。現に彼は自分を庇おうとすることを余計なことだと断じて戦闘に戻ろうとしている。感じた危うさから女神官は咄嗟にまともに力の入らない手を伸ばそうとしたが、回廊に響き渡る砲声のような怒号がそれを阻んだ。

 

「貴様らあああああ!!塵も残さず焼き付くしてくれる!!《カリブンクルス(火石)》……」

 

「また火玉!?次はもう耐えられんぞ!!」

 

 再度詠唱に入ったオーガを止めるほどもう一党に余裕はなく、耐える術もない。術者は全員が術の使用回数を使い果たしかけており、鉱人道士も鞄の触媒の残りを確認して青ざめた。しかし飄々とした態度で肥大化し始めた火玉へまっすぐ歩みを進める者がいた。ゴブリンスレイヤーである。雑嚢から丸められた羊皮紙を取り出し、それを片手にオーガの前に立ち塞がる。

 

「二度も同じ手を使わせると思ったか」

 

 兜から赤い眼光が尾を引くような幻覚を見せる薄汚い鎧の冒険者と開いたゲートから吹き出す水流がオーガの最期に見た光景となった。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

「大丈夫じゃないじゃないの!?」

 

辛うじて元の形を保っているといった有り様の疾走戦士の腕を見て妖精弓手はほぼ悲鳴に近い叫びをあげた。大丈夫だと自信満々に言うものだからすっかり騙された。

 

「あの状況で盾持ちがお荷物などとオーガに知れたら一大事だろう」

 

「だからって……怪我を隠す理由にはならないと思います!」

 

「ひとまず拙僧の『小癒(ヒール)』で傷を癒そう。戻ったらしかるべき所でしかるべき処置をなされよ。戦傷は勲章なれど治療をせぬ理由にはなりませぬからな。《古兵(ふるつわもの)たる鴨嘴竜(ハドロス)よ、傷の痛みを克己せし、その強さを分けたもう》」

 

蜥蜴僧侶が手をかざし詠唱すると、疾走戦士の腕は血塗れのままだが見え隠れしていた骨は皮下にしっかりと納められ、本来の姿を取り戻した。あとは医者なり治療士の領分だろう。

 

「さすがにそろそろだわな。引き際を見誤るほど愚かではなかろう。のう?かみきり丸」

 

「ああ。今回は終いだ」

 

あっさりと引き下がることを決断したゴブリンスレイヤーに続くようにして一党は来た道を引き返した。入り口には森人(エルフ)の里から寄越された戦士たちが迎えの馬車と共に待ち受けており、労いの声をかける戦士たちをほぼ無視するように一党は馬車へと乗り込んだ。残党の後処理をするべく遺跡に突入していく姿を尻目に馬車は走り出した。

 

 ガタガタと車輪が立てる音を子守唄に、一党は辺境の街へと向かう馬車に揺られていた。オーガ討伐を成した一党は大半が泥のように眠っている。そんな中で妖精弓手は釈然としない様子で呟いた。

 

「やっぱり嫌いだわ……オルクボルグもバケツ頭も」

 

 ゴブリンを殺すために手段を選ばずそれ以外に興味のない冒険者と、目的のためになら腕から骨が飛び出そうが構わない冒険者。非常に気に食わない。普通ではないことが普通になっているのだ。そんなのおかしいではないか。断じてそんなものは冒険者とは認められない。戦うだけが能なら傭兵か兵士にやらせればいい。

 

 妖精弓手にとって冒険というのは未知の発見による喜びや達成感を得られる楽しいことなのだ。いつかあの馬鹿2人にもそれをわからせてやらなくてはならない。冒険とは楽しいことなのだと。でないと、あまりにも救いがない。命を懸けて得られるのが血にまみれることと自己満足などでは。

 

 だからいつか本当の冒険につれていってやるのだ。

 




なおバケツ頭こと疾走戦士君は自己満足だけで幸せなのでどう足掻いても救えない模様。RTAなんて所詮自己満足だからね仕方ないね。


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幕間 いつのまにか一緒に遊んでる神がふえる話

副題:変な奴がいるぞ!
ままええわ。そんなことよりこ↑こ↓に新しい遊びがあるんだけど遊ばない?じゃけん今からやりましょうね。


 かつて神々は宇宙の支配権を争って長い長い戦いを繰り広げていました。あんまりにも長く戦いが続き、なかなか決着がつかないので神々は飽きてしまいました。神々は勝敗を宿命(フェイト)偶然(チャンス)に任せて賽子の目に委ねました。しかし何度賽子を転がしても一向に決着がつきません。

 

 その内、神々は争うために作られた世界で戦いのために産み出した駒たちが巻き起こす数々の出来事を暇潰しに眺めるようになりました。紡がれる物語が面白いと思ってしまった神々はいつしかその物語に夢中になってしまいました。

 

 勝敗を決めるという当初の目的も、駒たちの物語を眺めるための理由付けに成り下がりました。神々はかつて争っていたことなど半ば忘れ去り、今や四方世界と愛しい駒たちを見守るこの娯楽に夢中です。

 

 今日も戦いのためではなく遊びのために賽子は振られます。

 

 そんなある日のこと。神々がいつものように賽子を転がして一喜一憂していると、アルティーエが新しい遊びの提案をしてきました。アルティーエは覚知神とおなじく外なる神で、神々もいつからいたのか覚えていませんが、いつのまにかいっしょに楽しく遊んでいたのはたしかです。ちなみにアルティーエというのはアダ名です。誰も彼の本当の名前を知りませんでした。

 

 まあそんなことはどうでもいいのです。アルティーエの提案してきた新しい遊びというのは、四方世界を元にしたもうひとつの四方世界にアルティーエの作った駒を入れて、アルティーエがその駒に指示を出しながら決められた目的をいかに速く達成できるか、という遊びでした。

 

 アルティーエの駒がいることで本来の流れとは異なる物語が紡がれ、速く目的を達成するためにとんちんかんな動きをするアルティーエの駒にまわりの駒が示す反応も見ていて飽きません。試しにアルティーエがひとりでやってみせたそれに神々は興味を示し、一味違ったこの遊びをみんなでやることになりました。

 

 目的は神々の間でもなかなか賽子を振らせてくれないことで有名な彼、ゴブリンスレイヤーの物語を決めたところまで進めることに決まりました。

 

 他の神々も見ているだけではなく、もうひとつの四方世界のようにいつも通り干渉することができます。アルティーエはあくまで駒を託宣(ハンドアウト)で操るだけです。

 

 はりきった真実が怪物を多めに設置し、幻想もわくわくしながらそれを眺めます。地母神もお気に入りの子がどんなふうに動いてくれるのか心配でもあり楽しみでもあります。

 

 アルティーエのもちこんだ変な戦士の駒がどんな風に物語を進めるのか、それもまた宿命と偶然に左右されるのです。アルティーエもなるべく賽子がふられないように綿密に作り上げた工程表を片手に時計を見ながら立ち回りますがやはりどこか詰めが甘く、出目が悪いと悲鳴をあげて転がり回ることもあり、それをみて神々は大笑いしたりします。

 

 今日も神々は賽子遊びに夢中です。

 




クッソ短いプロローグ。疾走戦士誕生の瞬間である。

疾走戦士がうまくやればやりますねぇ!と神々は綿密に組まれたアルティーエのチャートを誉め、疾走戦士がピンチになればウッソだろお前wwwと神々はアルティーエのガバを笑い倒します。

神々が淫夢に汚染されてますねクォレハ……。

追記:ちなみに疾走戦士君は神の手先であるお手製の駒、もしくは化身なので本体に操作されるぶんにはその通りに動きます。操作されてないときは知りませんが。裏パートでの発言は四方世界に溶け込むためにそれらしいことを駒側で喋っているという設定です。ヒンドゥー教のアヴァターラみたいな感じですかねぇ。つまりどっちみち疾走戦士君は狂人なんやなって……。


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小鬼殺し.mp4

ちょっとくらい……遅れてもバレへんやろ。

追記:分かりにくい表現があったので色々と直したゾ。


 見所さんを作ろうとしてピンチに陥るRTA、はーじまーるよー。

 

 前回、オーガを討伐したところからです。

 

 辺境の街に戻ったら、まだ陽が出ていますが疲労がヤバいので装備を修理に出したらさっさと部屋に戻って寝ます。想定していたよりはマシとはいえ、負傷は負傷です。帰りに蜥蜴僧侶に追加で回復してもらいましたが治ったのは生命力だけで疲労は抜けてません。戦闘での負傷による疲労は移動で発生する疲労などとは比較にならないほど重いので次のイベントまでに療養を済ませなければなりません。少しでも早く疲労を回復するために朝と夕に強壮の水薬を飲んでおきましょう。栄養ドリンクがぶ飲みとかマズイですよ!

 

 ちなみに国が依頼主なだけあって今回のオーガ討伐の報酬はなかなかうまあじです。金貨一袋ポンとくれたぜ。金貨は銀貨の10倍の価値があります。魔法の装備を買おうとしなければ早々お金が足りないなんてことはないでしょう。ちなみに魔法の装備は武器、鎧、盾、などなど無数に存在しますが値段がぶっ飛んでいるので買いません。お財布壊れちゃ~う。そもゴブリン相手に魔法の装備とかもったいないってそれ一番言われてるから。

 

 次のイベントクエストは小鬼の王(ゴブリンロード)の襲撃ですが諸々の対策ができるのはゴブスレさんのお願いイベント後になります。というのも、疾走戦士君はあくまで新人冒険者でしかないので事前に戦場になる土地の所有者に協力を仰いでも耳を貸してくれません。影響力のない新人の言うことなんか聞いてくれなくて当たり前だよなぁ?

 

 なので、イベント発生まではフリータイムでわりと暇です。まあイベント発生後は超過密スケジュールなんですが。装備も実のところ被弾はオーガの一撃以外皆無なので盾が歪んだのと防具が一部やられた以外は問題ありません。なので意地でもバケツヘルムは脱ぎません。ただでさえ没個性なのにアイデンティティーが崩壊しちゃうだろいい加減にしろ!

 

 この間にギルドで彷徨くと受付嬢か監督官あたりに呼び止められて昇級審査が発生します。質問も適当に答えてれば問題なく昇級できるでしょう。疾走戦士君見た目こそあれだけどギルドでの評価は同年代最高峰ですからね。ちなみに同席したのはランサーニキでした。受付嬢に呼び止められて喜んだのも束の間、事務的な用事だったと判明したときの彼の表情は涙が出ますよ。なおこれはこれでいいかと立ち直るのも早かった模様。

 

 というわけで鋼鉄等級に昇級できました。認識票も鋼鉄等級のものに交換されましたがこれ見た目も材質もまんまドッグタグでは?黒曜等級の方が見た目が良かったです(我儘)前にも言いましたが経験点と冒険者ランク的には翡翠等級あたりが本来なるべきランクなのですがやはりゴブリン退治や下水路での駆除作業では評価が上がり辛いみたいです。逆に依頼主が国や神殿などの案件はバンバン評価が上がります。ギルドも国営組織ですからこのあたり大人の事情がありそうです。

 

 等級審査が終わったのでとりあえずギルドの待合室にある長椅子に座ります。

 

 …………やることがないですね(暇人)

 

 いやホントにイベント発生まで暇なんですよぉ!ゴブリンの足跡探しに行ってもゴブスレさんじゃないと何故か足跡が見つけられないんだよぉ!これは全く動きのない倍速という禁忌を犯すしかないのか……?

 

 おや、新米剣士と見習聖女の一党です。後ろには久しぶりの女魔術師もいます。どうやら例の一党壊滅後はこちらに合流したようです。しかもおっかなびっくり話しかけてきました。何故か対応がゴブスレさんに対するものとほぼ同じなのが疑問ですが、それはともかくどうやら新米戦士くんが剣を下水路で紛失してしまい、それを回収したいようです。

 

 これは……チェストバスター(TDN剣)ローチキラー(TDN棍棒)のサブイベントですね。なぜか発生時期が安定しないのが特徴のサブイベントですがなぜこのタイミングで……?ままええやろ。

 

 なんでゴブスレさんじゃなくて疾走戦士君にこの話持ってきたのか素で疑問に思いましたが、そういえばゴブスレさん怪我してないから死んだ魚のような目をした女神官を連れてゴブリン退治に出掛けちゃってるんでした。それに疾走戦士君は下水路での不快生物駆除を短期間でこなした実績があります。おそらく受付嬢の差し金でしょう。

 

 武器を回収しに行こうにも武器がない、という服を買いに行く服がないみたいな状況の新米戦士くん。予備の武器を貸して欲しそうにこちらを見ていますが……駄目です(デトロイト並感)

 

 お前試走時に貸した剣をあっさりなくしたあげく、見習聖女巻き込んで農奴&娼婦落ちしたの忘れてないからな!こっちが悪くないのに悪いことしたみたいになってすっげぇ後味悪かったゾ。お前の腕にくくりつけてある盾は飾りか?盾で殴ればいいダルルォ!?神代だと円盾(ラウンドシールド)に縄をくくりつけて武器にしてたやつがいるらしいしヘーキヘーキ!まぁ私が手塩に懸けて育てた疾走戦士君と比べるのも酷でしょう。

 

 オリチャー発動!見所さんをつくるためにこのサブイベントをこなしましょう。メリットは新米戦士が強化されるだけでRTA的には……ナオキです(小声)というわけで武器を貸すくらいなら同行した方が早いのでさっさと下水路に潜ります。あと行く前に新米戦士に棍棒を購入させます。これがないと剣と棍棒の変則二刀流マンが生まれないからね。疾走戦士君も照明道具のランタンを購入、理由は後述します。

 

 この失せ物イベントは達成条件が特殊で、考えなしに敵を倒してしまうと新米戦士が十分な経験を得られず、普通に剣を取り戻してチェストバスターもローチキラーも生まれないという不完全燃焼クリアになってしまいます。真のクリアを目指すには新米戦士がゴキを一定数撃破する、剣を飲み込んだゴキに新米戦士がトドメを刺す、という条件を満たしながら剣を回収する必要があり、不用意にゴキを倒してはいけません(3敗)特に松明なんかを掲げているとゴキが疾走戦士君に殺到しちゃうので……やめようね!だから光量の調整ができるランタンを購入する必要があったんですね。盾はヒーターシールドが修理中なのでラウンドシールドを引っ張り出して来ました。防具も修理に出してて装甲薄くなってるけど大丈夫やろ!(慢心)

 

 基本は新米戦士に任せつつ、原作より配置数が増えているために新米戦士がキャパオーバーした敵を補助的に倒すという介護プレイをすることになります。たまに新米戦士が普通に鼠に負けそうになったりするので適時フォローを入れられるようにしましょう。

 

 そしていざ出発しようとすると受付嬢さんに止められました。何の問題ですか?(パンツレスリング語録)は?もっと休めって?アドバイスするようには仕向けたが同行しろとは言ってない?

 

同期が困ってるのを見過ごせないだルルォ!?(建前)

休んでたら禁忌の動きのない倍速することになっちゃうだルルォ!?(本音)

 

疲労に関しても強壮の水薬飲んでるしこの程度の依頼の疲労なんて誤差だよ誤差!というわけでさっさと下水路にイクゾー!(カーンカーンカカカカーン!デーン)

 

 下水路に潜ったら、まずは魔女から貰った物探しの蝋燭の反応を確認しながら探索を開始します。物探しの蝋燭の火が強くなる方向を確認し、その方向に進めば剣を飲み込んだゴキが出てくるので難しくはありません。あとは鼠とゴキを淡々と殺していくだけなので倍速です。動きがあるからセーフだって!

 

 

 なんで等速に戻す必要があるんですか?(怯え)

 

 

 ファッ!?(驚愕)

 お前はキング鼠こと暴食鼠(グラトニーラット)!?ちょっと~またクズ乱数引いてんよ~。そんなんだから賽子を振らせてるのは甘えとか言われんだよ。しかし今回は瞬間火力に優れる術者が2人もいます。以前は多少のガバもあり辛勝でしたがこの戦力で冷静にタコ殴りにすれば恐れる相手ではありません。3人(+疾走戦士)に勝てるわけないだろ!

 

 おや……?なぁーんでみんな絶望顔で腰が引けてるんですかねぇ……(察し)あれか?見せかけで超ビビってるな?

 

 ……そういやコイツら白磁等級だったわ。

 

 

ああああああああああああ!!!(目力先輩)

 

 

 ちょっ、ちょっと待って下さい!待って!(懇願)コイツらが動けるようになるまで下がれねぇじゃんアゼルバイジャン!キング鼠は引きながら殴る分には弱いけど正面から殴り合うとダメージレースに持ち込まれます。今の疾走戦士君なら負けることこそ無いでしょうが多少のダメージは覚悟しなければなりません。つまり負傷による疲労値の蓄積がメインイベントに影響してくる可能性が出てきました……が!もしかしたらガバを帳消しにするチャンスがあるかもしれないので続行します。バカ野郎お前俺は勝つぞお前!!

 

ヌゥン!ヘッ!ヘッ!

 オォン!(負傷)

ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛

ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!

 アァン!(負傷)

ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!

フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!

フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!(迫真)

 

 はい、途中から女魔術師のクッソ遅い《火矢(ファイアボルト)》の援護が入ったのでどうにか勝てました。最初からそうして……?(届かぬ願い)地味に生命力がオーガ戦並に消耗してて草も生えません。早く剣回収して帰りたいです。あと一応討伐報酬は出るのでさっさと牙を回収しておきます。しかし残念ながらさっきのキング鼠はボスでもなんでもなくTDNレア湧きなだけです。本番は剣を食ったゴキに近づいたタイミングでのラッシュです。目標のゴキをさっさと新米戦士に始末させて離脱しないと囲まれて厄介なことになります。

 

 ここは前に取って出番のなかった《戦術移動》の技能を駆使しましょう。《戦術移動》は一党を組んでいることが前提の1人では使えない技能で、集団の中で目立たないように動く、逆に目立つように動くなどしてヘイト管理を行うスキルです。目立たないように動けば狙われる確率が半分程度に下がり、目立つように動けば狙われる確率が1.5倍に上がります。この技能、中の人含めて無意識に習得してる人が多そうですね。集団行動……2人組……うっ、頭が。

 

 物探しの蝋燭の主張が激しくなってきたのでそろそろかな……お、いました。Lサイズのゴキです。元からデカいのにはつっこんではいけない。ヤツがターゲットで間違いないでしょう。おまけに後ろに取り巻きのゴキがいますからね。あの取り巻きを引き付けるのが疾走戦士君の役目です。なんか後ろからお前本当に同期?みたいな視線が突き刺さりますが気にしない。別に倒してしまっても構わんのだろう?(フラグ)

 

 まあ実際自分1人だけならどうとでもなります。守る対象がいると難易度は跳ね上がりますが。守るって難しいねんな……。いくら技能で補正をかけているとは言え、結局のところ相手が釣られるかどうかは運が絡んできます。頼むから半分以上が新米戦士に行くとかはやめてほしいんですが……よし、ほとんどこっちに来ました。溢れた奴が新米戦士の方に向かっていきましたが1~2体くらいなら大丈夫でしょう(希望的観測)

 

 お、そうだ(唐突)ゴブスレさんに慣れ親しんだ諸兄なら知ってると思うけど新米戦士のチェストバスターとローチキラーは両方ともゴキ由来の命名です。チェストバスターは文字通りゴキの腹を突き破って回収したことから、ローチキラーは道中ゴキを撲殺したことから安直に新米戦士が命名します。そういう意味では新米戦士も疾走戦士と同じく下水路に育てられた穴兄弟だった……?(誤解を招く表現)

 

 そうこうしている内に一党が小便を漏らしつつ、Lサイズゴキを倒し、無事?に目標を達成しました。実はこの冒険、依頼でもなんでもないロハなんで目標を達成したらさっさと逃げます。この時、運動慣れしてない上に足の遅い女魔術師が案の定お荷物になります。この場合は文字通りのお荷物扱いをして、担いで逃げた方が早いです。防具が減ってる分重量に余裕があるのでお米様抱っこで逃げましょう。……コイツ減らした分の防具より重いんですけど。まあ多少は早くなるので我慢して逃げます。担いだお荷物から漂うアンモニア臭は気にしないことにします。

 

 はい、無事帰還しました。ぬわああああん疲れたもおおおおん。予想通り疲労値がヤバいことになってますねぇ……。剣1本回収するのにこんなに被害出してちゃ商売になんないんだよ(元商人並感)

 

 とは言え、これで新米戦士が遠からず二刀流に目覚めることでしょう。ところでそれは小鬼の王(ゴブリンロード)のイベントには間に合いますか……?(震え声)

 

 ポテンシャルだけで言えば将来的には辺境勇士の1人として詩が都で吟われるレベルになるんですが、いささか成長速度が遅い大器晩成型です。疾走戦士君も下水路マラソン並に疲労が蓄積してますが《忍耐》技能でどうにかしてもらいましょう。因果点使って賽子振り直せばよかったんじゃないかって?因果点はイベントで大量消費するから今は温存するんだ……。

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。




ちなみに原作スケジュールではなくアニメ版スケジュールで動いていることに気づいて阿鼻叫喚になる案もありましたが没になりました。チャート壊れる。


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小鬼殺し.mp4:裏

転職に成功したので初登場です。

追記:なんか新米戦士くんの発言がアレだったんで諸々修正というか改変しました。ちゃうねん、疲れた頭で書いたから支離滅裂な感じになってん(苦しい言い訳)

筆者に新米戦士君を辱しめようという意図はありません。これだけは伝えておきたかった。なんかもう色々とお詫び申し上げます。


「はぁぁぁぁぁぁ……」

 

 ギルドの待合室の一角で、新米戦士は大きな溜め息を吐いた。どんよりとした空気を振り撒き、カビや苔が繁殖しそうな様子でうなだれている。ふと首を回して視線を後ろに向けると、彼の背には中身のない鞘が吊るされている。肝心の剣は先日の依頼で落としてきてしまったのだ。中身が空の鞘を見て新米戦士はまた溜め息を吐いた。

 

「ふんッ」

 

「がはぁッ!?」

 

 突如、死角からの衝撃が新米戦士の脇腹を襲う。一瞬の内臓が浮き上がるような感覚の後、鈍い痛みが殴打された部分を中心にじんじんと広がっていく。涙目になりながら振り返ると、せっかくの美人だというのに表情に怒気を滲ませた見習聖女が立っていた。

 

「さっきから辛気くさいわねぇ……しゃきっとしなさいよ!」

 

 わかっている。彼女の骨の間を縫うような鋭い一撃は、不甲斐ない自分に発破をかけようという思いから繰り出されているのは重々承知している。だがそれはさておき、毎回脇腹を殴打される身としてはやめてもらいたい。普通に痛い。

 

「……毎回よくやるわね」

 

 呆れたような目をしてこちらを見やるのは少し前に一党に加わった女魔術師だ。毎度毎度繰り返されるそのやり取りには飽々したと言わんばかりに物憂げな──実は眠いだけ──表情でお茶を啜っている。

 

 現在、新米戦士の一党は危機に陥っていた。村から出てきた時に奮発して購入した剣、貴重な商売道具であるそれを新米戦士がなくしたことにより術師を守るはずの前衛が武器を持っていないという致命的な状態なのだ。都会派の女魔術師あたりなら上手いことやって食いっぱぐれることはないだろうが、学のない田舎育ちの新米戦士と見習聖女はこのままでは遠からず農奴や娼婦に身を落とすだろう。

 

 冒険をするには武器が必要だというのにその武器をなくし、武器を回収しに行くための武器がないというにっちもさっちもいかない状態だ。端的に言って原因は金がないことに全て起因するのだが、駆け出しの冒険者の懐事情などどこもそんなものだろう。もちろん、例外はいるが。

 

 ちらりと視線を待合室の端の方へ向けると、長椅子に手持ち無沙汰な様子で座っている冒険者の姿がある。同時期に冒険者になった男。今日も変わらずバケツのような兜を被り、素顔を知るものは工房の親方ぐらいではないかとの噂の変人。疾走戦士である。

 

 新米戦士ではまだ手の届かない鎖帷子を装備したその姿。いいなぁと羨んだ回数は数知れず、それを見ていた見習聖女に肘を打ち込まれた回数も数知れず。首から下がる認識票は鋼鉄等級のそれ。未だに白磁の新米戦士とは文字通りの段違い。疾走戦士は宿屋の個室住まい、新米戦士は馬小屋。いろんな意味で新米戦士の上位互換のようなヤツだった。どうやって装備を整えたのか、どうしてそんなに余裕があるのか、と考えれば考えるほど羨ましくなり、自分と比べてみては勝手に落ち込んでいた。今日は随分と軽装だが、そういう日もあるだろう。

 

 バケツ頭の変人を羨む話はさておき、今はどうやって下水路のどこかにある剣を回収しに行くかである。伝を辿って同じ白磁仲間に武器を貸してくれと頼んでみたが解答は芳しくなく、熟練の冒険者から武器を借りるのは失くしたり壊したりしたときが怖い。結局どうにもならず、どうすりゃいいんだと何回目かわからない溜め息を吐くしかなかった。

 

 それを見兼ねてか、あるいはカウンター近くを辛気くさい様子で彷徨くのを邪魔に思ってか、受付嬢が助け船を出した。

 

「では、下水路での探索に慣れた方に話を伺ってみてはどうでしょう?」

 

「下水路の探索に慣れた冒険者?」

 

 そんなやついるのかと訝しむ新米戦士に、受付嬢はある方向を手で示した。掌の向けられた先には長椅子に座り込むバケツヘルムの姿がある。

 

「え?アイツ?」

 

「はい。下水路での巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)の討伐を何度もこなした経験がある彼の意見なら、無駄にはならないでしょう?」

 

 笑顔で変人を紹介する受付嬢を見て、女魔術師はなにか思い出した様子で頷く。

 

「……ああ、彼ならそうでしょうね」

 

「知ってるのか?あの、バケツ(アレ)のこと」

 

 そのあんまりな言い草に再び見習聖女の肘が炸裂し、新米戦士が崩れ落ちかけるが、それを意にも介さず女魔術師は続ける。

 

「最初の冒険で一党を組んでいたことがあるだけよ」

 

 なんでもない風に女魔術師は語るが、とてもではないがなんでもないようには見えない。どう見ても滅茶苦茶引きずっている。嫌いなわけではないが苦手という複雑な感情が渦巻いているようだった。

 

「連日下水路に潜って依頼をこなしてたそうよ?日に3度潜ることもあったとか」

 

 好き好んで下水路の依頼を受け続ける物好きなどバケツ頭の変人以外居らず、踏んだ場数は下水路に限ればそこらの冒険者以上なのではないかと噂されている。一日に何度も下水路に潜り、暇があれば溝浚いをするという常軌を逸した行動を繰り返していた疾走戦士は無事に変人扱いされるようになっていた。

 

「やっぱりやべぇヤツじゃん!」

 

「さすがにちょっと、ねぇ?」

 

 聞けば出てくる頭のおかしいヤツの話に新米戦士と見習聖女はドン引きである。件の疾走戦士はやはり噂通りに色々とどこか常識から外れた人物であるらしい。いくら切羽詰まっているとは言っても変人に助力を請うのはさすがに躊躇う。

 

「まぁ変なヤツなのは否定しないけど、ああ見えて誠実よ?」

 

「うぅん……とりあえず話だけはしてみるか」

 

 さすがに1人で話しかける勇気はないため、情けないが一党の2人についてきてもらいながら、恐る恐るといった様子で新米戦士はバケツ頭に話しかけた。

 

「な、なぁ!」

 

「む?」

 

 がちゃり、とバケツ頭が勢いよくこちらに向いた。驚きから飛び上がりそうになりつつも、それを押し殺して話を続けた。

 

「アンタ、下水路に詳しいんだって?」

 

「ふむ、人に誇れるほどではないが地図を見ずとも歩ける程度には慣れている。困り事か?」

 

「そうなんだよ。剣をそこで落としちまってな。拾いに行こうにも武器がなくて困ってるんだ」

 

「確かに私は武器の予備があるから貴公に貸すことはできる。しかし……こう言っては何だが、武器を落としたと言う相手に自分の武器を貸そうと思うか?」

 

 全くもって正論だった。話の流れから武器を貸してくれと言い出そうとしているのを読まれたのか、先手を打たれたようだ。変人と言われているがかなり頭が回るらしい。新米戦士はぐぅの音も言えずに押し黙るしかない。

 

「ところで貴公、盾は持っているな?」

 

「そりゃあ、まぁ」

 

 新米戦士は背負った円盾の位置を確かめるように身を捩る。剣と同じく奮発して購入した大事な代物だ。しかしなぜ盾のことを?必要なのは武器なのだが。

 

「それで殴ればいい」

 

「へ?」

 

「盾は敵の攻撃を受け止めるための防具だが、逆に言えば攻撃を受け止められるくらい頑丈で硬いということではないか?なら打撃武器としても使えるということだ。当然盾で殴り付ければ普通に殴るより威力が出るし、構えながら突進し相手にぶつかれば体重の乗った一撃となる。身を守りながら攻められるという防御を兼ねた攻撃ができる素晴らしい装備だぞ盾は」

 

「お、おう」

 

「しかし、そうした盾の扱いは一朝一夕で身に付くものでもない。何より盾のみを頼りとするのは厳しいだろう。盾の本懐は武器との同時運用にあるからな。代案としては何だが棍棒を買うのはどうだろうか?新しい剣は無理でもあれなら安価だと思うのだが」

 

 急に盾について熱く語り出したと思ったら途端に落ち着いて代案を出してくる疾走戦士に気圧され、新米戦士は思わず腰が引けた。やたらと饒舌な上にテンションの上がり下がりが激しすぎる。本当に大丈夫な人なんだろうかという一抹の不安が過った。

 

 しかし、棍棒と来たか。棍棒とはあれだろう。木を削り出して持ち手に布を巻いただけの簡素な武器。イメージとしてはなんだか格好が悪い武器というくらいか。あとなんか山賊が持ってそう。

 

「棍棒は安価だが、侮ってはならない。いくら木であろうとあれだけ強度のある物体で勢いよく殴られれば衝撃で内部にダメージが通る。鼠はもちろん、硬い甲殻を持つ虫にも効率よくダメージが与えられるだろう。それに剣とは違って多少乱雑に扱っても欠けたり折れたりせんからな」

 

「棍棒かぁ……」

 

 確かに棍棒くらいなら一党の共有資金を少し崩せば買える。無理に新しい剣を買うよりは現実的な案だろう。まさか盾や鞘を頼りに下水路に潜るわけにもいかないだろう。というかまともな武器もなしにあそこに潜りたくない。

 

「なら、私も行こう。探索は人手があった方が効率がいい」

 

 悩む新米戦士を見兼ねてか、疾走戦士が同行を申し出た。

 

「大丈夫なのか、ほらその、予定とか」

 

「暇をしていたところだ。是非とも」

 

 何となくヤバいヤツとは組みたくないなぁ、という思いはあるが断る理由もないのも事実。どうしたものかと悩んでいると女魔術師から声がかかった。

 

「いいんじゃない?1度しか組んでないけど、壁としては優秀よ、ソイツ」

 

 1度とはいえ一党を組んでいたことのある女魔術師の意見だ。無下には出来ない。そして事実、新米戦士の一党は新米戦士が見習聖女と女魔術師の2人を守らなければならないため、新米戦士の負担は大きい。それに加えて剣を失っている状態だ。ここは素直に申し出を受ける方がいいだろう。

 

「なら、頼めるか?」

 

「期待には応えよう。では装備を整えてくる。失礼」

 

 そういうと疾走戦士はさっさとギルドの2階にある自室へと向かって行ってしまった。そして大して時間も経たない内に疾走戦士は戻ってきた。随分と早い身支度である。変わったことといえば円盾と冒険用の雑嚢を装備してきたくらいか。

 

「もういいのか?」

 

「必要最低限の装備は整っている。ではそちらの準備を整えながら行こうか」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「む」

 

 慌てた様子で受付嬢が横合いから割り込んできたかと思うと、疾走戦士をぐいと引っ張って行った。よくもまあその細腕で大の男1人を引っ張って行けるものである。

 

「疾走戦士さん、貴方先日の怪我は?まだ治ってないんじゃ?」

 

「傷は完治している。それとも彼らを助けるのに何か不都合が?」

 

「そういう話ではないんですけど……」

 

「なら、問題ないだろう」

 

「そうじゃなくてですね……」

 

 しばらく何やら揉めていた様子だったが、受付嬢は諦めた様子で疾走戦士を見送り、カウンターの定位置に戻って行った。疾走戦士はずかずかと忙しない足取りで新米戦士達のところに歩み寄る。

 

「手間をかけた。さあ行こう」

 

「なぁ、大丈夫なのか?なんかマズイことでもあるのか?」

 

「気にすることはない。前の冒険の怪我が治っているのか確認されただけだ」

 

「ちなみに前の冒険はいつの話なの?」

 

「つい先日だ」

 

 ちょっと前に怪我をしたばかりのやつを本当に連れていって良かったんだろうか、と後悔しつつも手遅れ感が否めない新米戦士一党であった。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 下水路の探索において、気を付けるべき点がいくつかある。毒と暗闇だ。

 

 下水路では当たり前だが下水が流れている。下水は不浄の温床であり、それが流れる溝に間違っても落ちてはいけない。落ちれば最後、黒死病にかかってしまう。高位の治癒術師にかかることができれば助かるかもしれないが、新人冒険者に払える治療費ではなく、まず助からないとみていい。

 

 巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)の下水路を徘徊する怪物たちも毒を持っている。巨大鼠の牙は溝と同じく不浄の毒を帯びている。噛まれれば鼠毒と呼ばれる毒に冒される可能性がある。同じく大黒蟲も病の源であり、倒した際に飛び散った体液を被ったまま長時間放置すると毒を受けることがある。これは鼠の返り血も同様だ。

 

 そして、下水路は当然ながら明かりに乏しい。光源もなしに潜った日には暗視のできる怪物たちにいいようにやられてしまうだろう。

 

 毒と暗闇への対処手段として解毒薬(アンチドーテ)と照明器具は下水路の冒険には必須の品である。

 

 しかし、そうもいかないのがかけだし冒険者の辛いところである。なんせ解毒薬は銀貨10枚もするのだ。だが命あっての物種。こういう部分をケチってロクなことになった試しがないという。なので新米戦士の一党はもしも鼠に噛まれたりした時のことを想定して、1人につき1本の計算で常に3本持ち歩くようにしていた。実際なんだかんだで新米戦士に鼠の牙が掠り、必ず1本は消費するのだ。これでも少ないくらいである。

 

「んじゃ装備点検やるわよ、革鎧!」

 

「留め具もしっかり留まってる。よし!」

 

「棍棒!」

 

「銀貨6枚で買ったばっかで問題なし!」

 

「値段はいい!次!」

 

 冒険への出発前、新米戦士と見習聖女が互いの装備を呼称し、状態確認を行っている。まるで遊びに行く子供の忘れ物がないかを確認する親のようだが、忘れ物が死に直結する冒険では笑い事ではない。2人にとっては細かな確認から準備を可能な限り万全にするための儀式のようなものだった。

 

「いつもあれをやっているのか」

 

「私が一党に入った頃には既にやってたわね。滑稽だけどやらないで馬鹿を見るよりはいいでしょ」

 

「違いない」

 

 既に確認を終えた、というよりされた女魔術師が答えるのを聞きながら、疾走戦士は興味深そうにしていた。有効な確認方法に違いないが、自分が何を持っていて何を装備しているのかという目録が頭の中にあると錯覚するほど、常日頃から何が何処にどのくらいどんな状態であるのかを把握するように習慣付けて育てられた疾走戦士はあまり必要性を感じなかったが。忘れ物などしようものならこっぴどく叱られたものだ。

 

 確認を終えた一党は薄暗く鼻を突くような臭いの漂う下水路へと潜っていく。前回剣を落としたときは慌てて逃げ出したのもあって落とした場所を正確に把握しているわけではない。だが、今回は剣を捜索するための秘策があった。

 

「火を点けて……と」

 

「これで剣のことを思えばいいんだな」

 

「物探しの蝋燭か」

 

「親切な魔女に譲ってもらったのよ」

 

 火を点けて探し物を強く思い浮かべると、探し物に接近した際に炎が強くなるという魔法の蝋燭。見習聖女の持つそれはぶっちゃけ探している剣より数倍は高価な代物だったりするが、それに関しては思考を放棄して心の平穏を保つことにした女魔術師だった。

 

「方向は?」

 

「……向こうね」

 

「そちらはだいぶ奥まで続いているルートだ」

 

 ある程度構造は把握しているという疾走戦士の言は真実だったらしく、見習聖女が指差した方向がどういったルートなのかを諳じてみせた。

 

「俺たち前にそっちに行ったっけ?」

 

「剣が動かされた、ということも考えられる。紛失したときの状況は?」

 

「鼠に刺さって抜けなくなったんだ。群れに襲われそうになって、そのままって感じ」

 

「下水路には時折大きめのサイズの個体が出没する。そういった大きな個体に死骸ごと食われたと考えた方がいいだろう」

 

「……え?」

 

「失くしたのは長剣(ロングソード)だったな?ならそれ以上の体長を持つ個体だろう。虫だった場合が面倒だ。知っての通り奴らはなかなかしぶとい」

 

「ちょっと待って。長剣よりデカい奴?いるのか?」

 

「いるとも。以前通路が窮屈に思えるサイズの鼠と遭遇したことがある」

 

 疾走戦士はそれ以上は言わなかったが、それは鼠に限った話ではなく、当然ながら黒光りするあの平たい虫がそうなっている可能性もあり得るということだ。人のような大きさの黒い虫を想像して、疾走戦士以外の3人はあまりのおぞましさに身震いした。

 

 隊列は新米戦士を先頭に術者の見習聖女、女魔術師と続き、背後を疾走戦士が固める形となった。奇しくも、あの時と面子こそ違えど隊列の位置は同じ。そして背後を守る奇妙なバケツ頭の戦士も同じ。女魔術師はまたあんなことになるかもしれないなんて悪い想像を振り払うようにして、震える手を杖を握り締めることで誤魔化した。

 

 道中、幾度か巨大鼠や大黒蟲に遭遇したが、そこは新米といえど戦士である彼が力に物を言わせて幾度となく殴打を浴びせることで動かなくなった。新米戦士が処理しきれなかった個体は疾走戦士が剣で切り伏せ、トドメに盾で叩き潰す独特な一連の動きで始末していた。割合としては剣が4、盾が6である。普通逆じゃないのかと新米戦士は思った。盾で戦えなどと嘯いたのは伊達でも酔狂でもなく真面目な話だったらしい。やはり何処か思考が常人からズレている。

 

 順調に見えた探索であったが、ずしりという地響きに一党は歩みを止めた。何かの聞き間違いではないかとも思ったが、地響きが連続すれば嫌でも異常事態であることを認識させられた。その証拠に、無言で疾走戦士が一党の先頭に陣取った。

 

 疾走戦士は雑嚢から松明を取り出し、ランタンから火を移して点火するとそれを放り投げた。そして照らされた前方から耐え難い悪臭と共に巨大な前足が見えた。

 

 それは酷く肥え膨らんだ巨体を引き摺るようにして歩く、通路を塞いでしまうほどの大きさの鼠、暴食鼠(グラトニー・ラット)だった。その大きさは荷馬車くらいはあるだろう。裂けた口からは杭のような歯が乱雑に生えており、噛みつかれればひとたまりもないだろう。そんな文字通りの怪物がずしり、ずしり、と緩慢な動作でこちらに迫ってきていた。

 

「ひ……!」

 

「あ……ああ……」

 

 自分より巨大な相手というのは本能的な恐怖を感じさせる。巨体の体当たりをまともに食らえば、いくら鎧を着込んでいようが中身が衝撃でぐずぐずになってしまうだろう。大きいということはそれだけで単純かつ明確な脅威となるのだ。それに初見で臆してしまうことを誰が責められようか。どんな勇士も、最初は新米なのだ。

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

「ウ"ォオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!」

 

 故に、交戦経験のある疾走戦士は壁のように新米戦士たちと暴食鼠の間に立ち塞がった。暴食鼠が肝が縮み上がるようなおぞましい叫びをあげると、それを打ち消さんとするかのように疾走戦士は人の喉から発せられたとは思えないほどの音量で叫んだ。どちらが怪物のものか判断がつかないような叫びの応酬の後、両者は激突した。

 

 首を振り回すようにして頭突きを繰り出した暴食鼠の一撃をどっしりと構えた疾走戦士は愚直に盾で受けた。勢いを殺しきれずにやや後退しつつも、疾走戦士はそれを耐えきり、ブロードソードで暴食鼠の鼻先を切りつけ、盾で殴り飛ばす。痛みに怯んだ暴食鼠が数歩退き、怯んだ隙にまた疾走戦士は前に出る。一進一退の攻防、その繰り返しだ。

 

 疾走戦士も当然ながら無傷では済まず、じわじわとダメージが蓄積していく。全身を防具で固めた疾走戦士の負傷は分かりにくいが、盾を持つ腕からは血が滲み、ポタリポタリと僅かだが床に滴っていた。

 

 

 ▼△▼△▼△

 

 

 体は固まって言うことを聞かないが、女魔術師の思考は状況の把握に努めていた。端的に言って自分達は足手纏い以外の何者でもない。疾走戦士を矢面に立たせ、その背に守られている。またか。また仲間が傷を負うのを我が身可愛さに黙って見ているのか。それでは、あの時と変わらない。あの剣士を、武闘家を、見捨てるしかなかったと言い訳を並べ立てたあの時と。

 

 杖を握り締めながら、女魔術師は意を決して真言呪文を唱え始めた。体が恐怖で固まろうとも、口は動く。舌をもつれさせながらも、懸命に女魔術師は呪文を唱える。

 

「≪サジタ()≫……≪インフラマラエ(点火)≫……≪ラディウス(射出)!!≫」

 

 紡がれた真言呪文は滞りなく発動し、火矢が下水路を照らしながら飛翔する。そして狙い通りに火矢は暴食鼠(大き過ぎる的)に命中し、あっという間に燃え上がった。脂肪の塊が体表を覆う暴食鼠は脂の塊のようなものだ。女魔術師はさぞ燃えやすいだろうと思っていたが予想以上に火の勢いは強かった。熱さから悶えるようにして暴れる暴食鼠だが、巨体故に下水路に飛び込んで消火することもできず、そのままパチリパチリと熱せられた脂の弾ける音を鳴らす焼死体と化した。

 

「……し、死んだの?」

 

「確認する」

 

 恐る恐るといった様子で声を漏らした女魔術師。やや息を乱した様子の疾走戦士は、返り血なのか自身の血なのか分からないくらい真っ赤になりつつ、暴食鼠が暴れた際に何処からか転がってきた瓦礫を適当に拾い、熱で目が溶けたことで露になった巨大な眼孔へと投げつけた。ピクリとも反応を示さない事を確認すると、焼死体からやや煤けた杭のような牙を解体用のナイフで歯茎から取り外す作業に取りかかっていた。

 

 緊張が解けて力が抜け、安堵からか女魔術師は崩れ落ちるようにして座り込んだ。

 

 今回は、動けた。前のようにただ見ているだけの卑怯者ではない。動き出すのは遅かったかもしれないが自分は確かに役目を果たせたのだ。未だに足腰の震えは止まらないが、それでも冒険者としてのなにかを掴んだ。そんな気がした。女魔術師は杖を支えに立ち上がる。もうさっきまでとは違うと主張するように爛々と瞳を輝かせながら。ただ、下半身が生暖かいのを意図的に意識の外へ追いやっていたので格好がつかなかったが。

 

「ちょっと手を貸してくれる……?なんか立てない」

 

「お、おう。待ってろ。俺もなんか歩きにくい」

 

 腰を抜かしてしまったのか上手く立てないでいる見習聖女に、膝部分のみが石化でもしたかのようにぎこちない動きで新米戦士が歩み寄っていく。まるで出来の悪い操り人形のようで、不謹慎ながらも笑いを誘う光景だった。

 

「全員無事か」

 

「いやアンタが逆に大丈夫か!?その……俺、結局ビビって動けなかったからさ」

 

「どんな勇士も最初は新米なのだ。恥じることはない」

 

 血塗れの男に心配されるとはなんの冗談か。新米戦士は臆して動けなかったことを恥じたが、疾走戦士は気にもしなかった。皆、最初はそんなものだと。もちろん、それをそのままの意味で受けとるほど新米戦士も馬鹿ではない。耳あたりの良い言い方をしたが、要は冒険者としてはまだまだということ。足手纏いだったことは百も承知だ。次はしっかりやるさと新米戦士は意気込みを新たにした。

 

 それを他所に、疾走戦士は防水加工のなされた短い外套をバサリと払う。外套を払う度にびちゃりと血が滴り、それを幾度か繰り返すと血塗れであることには違いないが幾分かマシになった。濡れると衣服が水を吸い重くなるのは子供でも知っていることだが、ただでさえ防具を着込む冒険者はその影響をより顕著に受ける。血に濡れれば装備は重くなるし、血脂で滑ることもあるだろう。それを幾分かでも軽減するための外套らしい。雨合羽みたいで格好悪いと思っていた新米戦士だったがその効果を知って納得がいった。無論、真似しようなどとは露程も思わなかったが。何が悲しくて血塗れになる前提で冒険をしなければならないのか。

 

 各々態勢を立て直し、装備を簡易的にだが点検してまだ進むべきか考慮する。幸いなことに消耗は女魔術師の術の消費が一回と、疾走戦士が軽傷を受けたくらいで、疾走戦士はさっさと治癒の水薬を飲んで回復したので実質ないようなものだ。一党はまだ行けると判断し、探索を続行する。暴食鼠は剣を呑み込んではいないようで、物探しの蝋燭の反応はさらに奥を示していた。

 

 そして進んでいると見習聖女のもつ物探しの蝋燭が熱いくらいに輝き始めた。蝋燭を入れたランタンは怪しげな紫の光を胎動するかのように一定間隔で強めていたが、その間隔も狭まりこちらを急かすようにしている。

 

「熱っ!ねぇこれもしかして近いんじゃない!?」

 

「剣がもう近くにあるってことか!?」

 

「ようやくね……」

 

 だが喜んだのも束の間。がさり、という何かが蠢くような音がいやに響いた。一転して押し黙った一党が音のした方へと意識を向けると、そこには一際大きな大黒蟲がおり、しきりに触覚を動かしているのが見えた。それだけではない、大きな個体を取り巻くように何体もの大黒蟲がおり、ちょっとした群れを成していた。

 

「もしかして……アレか!?」

 

「もしかしなくてもアレよ!!」

 

「嘘でしょもうホントに勘弁して」

 

 今からアレを相手するのかとげんなりするやら数が多くて真面目に危険を感じるやらで、一党の士気が一気に下がった。女魔術師など死んだような目で文句をつらつらと述べ始めており、動揺具合が窺える。

 

「ふむ、全て相手取るのは無謀に過ぎる。ここは役割を分担しよう。取り巻きを引き付けて時間を稼ぐから、あの大物を仕留めて剣を回収してくれ」

 

「いくらなんでも無茶だろ!!」

 

「なぁに、壁役には自信がある。半分以上は引き付けるから残りは頼むぞ」

 

 そう言うと疾走戦士は新米戦士が止める間もなく、注意を引き付けるような独特な動きで前に出た。敵意を集め、相手に狙われやすいような位置取りをする疾走戦士に大黒蟲が殺到していく。飛びかかってくるそれを疾走戦士は盾で打ち払い、一党から徐々に距離を離していく。

 

 もう行ってしまったのはどうにもならないので、新米戦士たちは腹をくくって剣を呑み込んだであろう大黒蟲へと狙いを定めた。

 

「ここが正念場だ!全力で行くぞ!」

 

「逃げる余力は残しなさいよ!」

 

「≪サジタ()≫……≪インフラマラエ(点火)≫……」

 

 詠唱を中断したが術は発射前を維持する、という地味に高度なことをやってのけた女魔術師が照準を定めて待機したのを確認した新米戦士は棍棒を片手に突撃した。まずは取り巻きを排除すべく、疾走戦士に釣られなかった個体を棍棒で強かに打ち付ける。意外に甲高い鳴き声をあげて怯む大黒蟲。だがしぶといことに定評のある大黒蟲はこの程度では死なない。嫌というほどそれを知っている新米戦士は容赦なく連続で棍棒を振り下ろし続ける。体液が飛び散り不快極まりないが、気にしている余裕はない。

 

「……≪ラディウス(射出)≫」

 

 取り巻きのもう一匹が飛びかかろうと不快な羽音を立て始めていたが、それを察知した女魔術師が術を発動させ、≪火矢(ファイアボルト)≫を射出。見事に対象を射抜いた。急に火矢が飛んできたことに僅かながら驚きつつもきっちりと取り巻きの息の根を止めた新米戦士は、一度下がった。

 

「よし!今の内に頼んだ!」

 

「≪裁きの司、つるぎの君、天秤の者よ、諸力を示し候え!≫」

 

 天秤剣──天秤の飾りの付いた剣の形を模した錫杖──を掲げてすばやく詠唱を終わらせ、天秤剣を対象に向かって突き出すようにかざした。すると天秤剣の先端には青い白い雷光が迸り、対象へと聖なる雷が槍のように放出されると巨大な大黒蟲へと誘導するように突き刺さった。大黒蟲は羽を何度も開閉させ、足を出鱈目に動かしてもがく。嫌悪感を催すその動作に一同はたぶん一生コイツらとは相容れないと確信した。

 

 後は文字通り虫の息の対象にトドメを刺すだけだと、一瞬気が緩んだその時である。なんと≪聖擊(ホーリー・スマイト)≫を食らった大黒蟲が突如として翔んだのである。バタバタという耳障りな羽音を立てて飛翔した大黒蟲は見習聖女へと突っ込んでいき、そのまま見習聖女は大黒蟲に押し倒された。

 

「ぃいいいやああああああああ!!」

 

 カチカチという口の開閉音を鳴らしながら噛みつこうとする大黒蟲を見習聖女は天秤剣で必死に食い止める。噛みつかれれば鎧など纏っていない彼女などひとたまりもない。

 

「離れろこのッ!」

 

 すぐさま駆け付けた新米戦士が横合いから大黒蟲を殴り飛ばし、転げ落ちたそれにすかさず追撃で殴り付けた。悲鳴をあげてもがくしぶとい大黒蟲に大上段からの渾身の振り下ろしを食らわせると、メキと大黒蟲の腹から異音がした。見れば割れた腹から目的の長剣がはみ出している。やはり呑み込んでいたようだ。ならばと大黒蟲の腹をもう一度渾身の力で殴打するとそのまま腹を突き破って長剣が飛び出した。腹を裂かれてしこたま殴られた大黒蟲は、ようやく動かなくなる。なんなのか見当をつけることすら嫌になる粘液に濡れたそれを新米戦士は苦虫を噛み潰したような顔をしながら取り上げた。

 

「……こいつを今からチェストバスターと名付けよう」

 

「……やめてよね、そういうの」

 

 ひとまず適当な布で粘液を拭い、軽くて仕方がない背中の鞘にそれを納めた。数日ぶりの重さにようやくしっくりきた様子の新米戦士。頷くと未だに奮闘している疾走戦士へと合図を出した。

 

「剣は回収した!!逃げるぞ!!」

 

「承知した!!」

 

 返事はすぐに返ってきた。退路を塞ぐ大黒蟲を踏み砕きながら群れから逃れてこちらへと走る疾走戦士。その体は大黒蟲の返り血やら体液やらで正直近寄らないで欲しい有り様であり、思わず「こっち来んな!」と叫びかけた女魔術師はよく自制したものだと思った。

 

「走れ!!半端に痛め付けたぶん凶暴化している!!」

 

「マジかよ?!」

 

「ああもう最悪!!」

 

「……いっそ笑えてくるわね!!」

 

 背後からはうぞうぞとどこからか現れる大黒蟲が群れをなして迫ってきている。一党は脇目も振らずに駆け出した。

 

「次どっちだ!?」

 

「突き当たりを右!!その先二つ目の交差路を左だ!!」

 

 最短ルートを暗記している疾走戦士が殿を務めつつ、先頭を走る新米戦士へと行き先を指示する。やっぱり連れて来てよかったと今更ながらに思う新米戦士の一党であったが、今はとにかく大黒蟲から逃れるのが先決だ。

 

「はっ……はぁっ、は……」

 

「……遅い!!失礼する!!」

 

「ちょっ!?おわあああ!!」

 

 一党の中でも体力のない女魔術師の足元が怪しくなってきたのを目敏く気づいた疾走戦士は、無遠慮に女魔術師を肩に担ぎ上げた。年頃の女子が出して良いものではない悲鳴をあげながらなされるがままの女魔術師は羞恥と疲労と、あとなんかこの担ぎ方お腹が圧迫されて苦しい、なんてことを考えていた。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……全員いるか……?」

 

「いるわよー…………」

 

「右に同じく。返事はないが魔術師殿もいる」

 

 死屍累々といった有り様で下水路の入り口近くに汚濁に濡れた一党が身を投げ出していた。新米戦士は身体を大の字に投げ出し、見習聖女は崩れ落ちるようにして膝を突き、疾走戦士もどっかりと腰を下ろした。その脇には雑に女魔術師が置かれており、肩が上下していることから辛うじて生きているのが確認できる。

 

「そういえば、これを渡しておこう」

 

「ん?ってうおおおいっ!?なんだこれ!?しかもくっさ!なにこれくっさ!」

 

「牙だ。それは暴食鼠の討伐証拠になる。あとでギルドに引き渡せ。新品の長剣が買える程度の報酬が出るだろう」

 

 下水路で既に慣れたと思っていた激臭を上回る臭いのする杭のような巨大な牙を投げ渡されて悲鳴をあげながらも、新米戦士はアレは銀貨数十枚の討伐報酬がかかった怪物だったということを今更ながらに知る。

 

「いやいやいや、俺なんもしてないのにいいのか?討伐報酬はアンタが持っていってくれよ」

 

「懸賞金のかかった怪物の討伐報告は一党の頭目にその権利と義務がある。私はあくまで外野だ。貴公が報告したまえ。分配は平等に4分の1で構わん」

 

確かにトドメはこちらの一党である女魔術師が刺したかもしれないが、それならただ怯えていただけの新米戦士と見習聖女が報酬を受けとるのはあまりにも図々しくないかと思う。

 

「いや、分配は戦闘に関わった2人で決めてくれ。俺には決められない。決める権利がない」

 

「……どうする?」

 

未だに地に伏せたままの女魔術師に疾走戦士が問うと、首だけ動かして顔を向けると、それ今決めないと駄目?みたいな表情でしばらく沈黙した後に口を開いた。

 

「……好きなだけ持っていってくれて構わないわ。私はお金じゃ得られないものがあったから」

 

「なら4分の1でいい。……いや遠慮しているのではない。嫌みではないのだが白磁を相手に報酬をほぼ独り占めするのはさすがに外聞がよろしくない。内実がどうであれ白磁を囮に楽して稼ごうとしたと思われるのも癪なのでな。どうしてもというのであれば、貸しにしておいてくれ。何かあったら助けてくれ」

 

「……随分と返すのが難しそうな借りね」

 

先が思いやられるとばかりに女魔術師は脱力して大きな溜め息を吐いた。それを見習聖女は引きずって井戸の方へと駆けていく。まずは粗相や汚濁で汚れた服をどうにかするらしい。

 

「なぁ、あの……ありがとうな。今回は助けられっぱなしだった。……報酬もほとんど譲ってくれるみたいな感じで……いつか絶対にこの借りは返すからな。今すぐにはちょっと難しいけど」

 

「いつでも構わんよ。ところで剣の臭いは取れそうかね」

 

「それは言わないでくれ……」

 

 陽の傾きつつある辺境の街に、ポツリとつぶやかれた新米戦士の言葉が溶けて消えた。

 




遅れたのは許して下さい!
なんでもはしません(断言)

討伐報告うんぬんの件はオリ設定です。

ちなみに新米戦士のバケツ頭への評価はこんな感じです。

同行前:なんかスゲーけど変な格好のヤベーやつ。よくわからんけど怖っ、近寄らんとこ……。

同行後:ちょっと色々とアレだけどめっちゃ良いやつやんけ!
あと今回の冒険で今後の戦闘スタイルのヒントは得た。大丈夫だよ、バケツ頭。俺も頑張っていくから。

いよいよ最終話が見えてきましたね……。
あと2話くらいかな?


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小鬼殺し.mp5

年内最後なので初投稿です。


 最後にものを言うのは信用とコネなRTA、はーじまーるよー。

 

 前回、下水路から帰って来たところの続きからです。

 

 何だかんだで懸賞金持ちの暴食鼠を仕留めたのでロハではなかったですね。まずは帰還直後の新米戦士に暴食鼠の凄まじく臭い牙を押し付けましょう。これは嫌がらせでも報酬を譲るためでもなく、単純に討伐報告等の事後処理をするのは原則一党の頭目、この場合は新米戦士と決まっているから疾走戦士くんが持っていても仕方ないからです。別に臭いものをずっと持っていたくないとかそういうのではないです(目逸らし)

 

 その後の分配等の取り決めは一党に任されます。基本は平等に分配が多いですかね。疾走戦士くんは討伐報酬の4分の1が取り分となります。ここで疾走戦士くんが分配に不満があると主張すれば報酬額をつり上げることは可能ですが、別に金に困っているでもないし、そもそも等級が2つも上のくせに白磁相手にがめつく報酬つり上げ交渉をするなどみっともない上に外聞も悪いってそれ一番言われてるから(建前)ぶっちゃけそんなことをしてる間に小鬼王(ゴブリンロード)のイベント始まっちゃうんで割とどうでも良いです(本音)

 

 ひと悶着ありましたが、最近の習慣となりつつある強壮の水薬(スタミナポーション)をイッキ飲みしたら今日はもう休みます。睡眠時間を増やして少しでも疲労回復に努めようという試みですが6時間までしか睡眠時間による回復効果を得られないので6時間以降の睡眠はぶっちゃけ惰眠です。

 

 チャートでは翌日の早朝にゴブスレさんが小鬼王の斥候の痕跡を発見し、昼前にはギルドに助けを求めに来ます。その前に忘れずに修理に出した装備を回収し、動きやすくするための最適化を施しましょう。あれ意外と時間かかるんで朝から行かないとスケジュール的にギリギリです。

 

 はい、おはようございます。翌朝です。早速起きがけの強壮の水薬をキメて身支度を整えたら工房に修理に出した盾と鎧を受け取りに向かいます。前述の通り装備の最適化を施し、現状で最善の装備が整いました。あと今更ながらに不安になってきたので付け焼き刃ですが戦槍(パイク)を購入。火力の強化を狙います。長大で洞窟では取り回しが悪く、大型の武器なので命中率が良くないです。しかしその火力はかなりのもので、両手持ちでないと装備できない長槍が多い中で珍しく片手でも扱えるという利点があります。今回のイベントでは戦闘はだだっ広い平原で行われるので邪魔になることもなく、狙う相手も的が大きいのでさしたる問題にはならないはずです。

 

 ギルドへ急いで戻るとかなりギリギリだったのか後ろからゴブスレさんが現れ、小鬼王の襲撃への対応協力を求めるイベントがしばし流れます。終わるまでの間に今後の動きについて説明しましょう。この後、辺境の街の冒険者の総力をあげて小鬼王の軍勢に対する迎撃戦が展開されます。本作最大規模の野戦イベントです。

 

まずは準備フェーズです。戦支度のために戦場となる平原に小鬼騎兵対策の柵を建てたり、擬似槍衾用の杭を繋ぎ合わせたものを作ったりと夜までに急ピッチで準備を進めます。準備フェーズは製作したキャラの特性によって取れる選択肢が異なり、戦士などの脳筋キャラだと資材の運搬や土木工事などの肉体労働、術者などの頭脳労働担当は裏方で事務処理や作業の効率化を図るなどがあります。仕事効率化しなきゃ(意識高い系)

 

 では疾走戦士くんは何ができるかというと、親のコネを使います。以前からちょくちょく言ってましたが彼は商人の家の生まれです。経歴表によると冒険者になるにあたって実家と揉めて、半ば失踪する形で冒険者になったみたいです(他人事)今更どの面下げて……みたいな感じですが使えるものはなんでも使います。これも葦名のため……(違う)

 

 実家が営む商会の人に話をして、上手いこと話を運べれば協力が取り付けられ、運が悪いと関係者を名乗る不審人物扱いされて門前払いされます。最悪因果点とかいう賽子振り直しポイントを使用することも辞しません。だから《幸運》技能仕事しろよ~頼むよ~。

 

 よし(安堵)無事に1発で話が取り付けられました。というか話をつけたのが冒険者になる以前の知り合い、もとい親友だったようです。あっ、ここかぁ!(来歴表を見つつ)なんか実家とのあれやこれやの面倒事の気配がするので、あとの段取りは任せて退散しましょう。モタモタしてたらパパに怒られちゃうだろ!(家出息子並感)

 

 これにより資材の運搬や土木工事に辺境の街の土建屋や運送業者を巻き込むことができるのでかなり準備にかかる時間を短縮することができます。親のコネ万歳!あとは他の冒険者に混じってほどほどにサボりつつ準備に勤しみましょう。みんな必死になってるのに水を差しているわけではないです。ここで頑張りすぎるとバテて戦闘で大変なことになります(3敗)今回はガバによる疲労が足を引いてるので尚更です。疾走戦士くんには後で命を燃やして貰わなければいけないので仕方ないね。

 

 ここからはノンストップで事態が進行していくので念入りにチャートを組んであります。でーすーがー、残念なことに私の手の及ばない範囲でのあれやこれやのせいで成功率は7割5分ってところです。TRPGでは信用できない数値ですねクォレハ……。本イベントは集団戦であり、同時に動くキャラが多いせいか乱数が文字通り乱れまくります。仮に疾走戦士くんが生き残ろうとも乱数が最悪だと仲間が全滅し辺境の街がゴブリンに占拠されるような事態になったりします。ふざけんな(マジギレ)

 

 こうなれば悲壮感溢れるBGMを聞きながら完全にゴブリンを殺すだけの機械となってしまった覚悟ガンギマリの真ゴブリンスレイヤーさんと共に淡々とゴブリンを殺して終わるBADエンドルートに突入します。鉄心エンドかな?このルートやらないと獲得できないトロフィー、『ゴブリンにとってのゴブリン』なんてものも存在します。トロコンRTAやる人は心が折れそうですね(小並感)

 

 さて、いままで露骨に詳細を伏せていた本RTAの目標であるトロフィー『小鬼殺し3号』の取得条件ですが、以下の通りです。

 

 ・小鬼王襲撃イベントを大成功判定でクリア。

 ・イベント終了時点でのゴブリンの累計討伐数が100体以上に達している。

 ・小鬼王襲撃イベントで出現する小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)を討伐する。

 

 この3つです。累計討伐数はゴブスレさんに同行していれば余裕でイベント前に達成できるので楽勝です。イベントの大成功判定はこちらの人員の死亡数が一定数以下であることなので、序盤のゴブリンの攻勢をほぼ無傷で潜り抜ける必要があります。これは事前準備をいかに万全に行えたかが大きく影響します。準備ガバはゴブリンに殺される原因ワーストですからね。今回は街の住人からも商会経由で協力を得られているので準備に関しては特に心配してません。極々稀に開幕で大量に死者が出てしまうこともありますが、単発ガチャで目当てのSSRを1発狙い撃ちで引くらいの確率なんで考慮しないものとします。

 

 問題は残りの小鬼英雄の討伐ですが、ぶっちゃけお祈りポイントです。ゴブリンのステータスは今回の小鬼王や水の都地下で出現する小鬼英雄、小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)などの特殊個体を除いてランダムです。乱数によって強さの上下が激しく、ホブに毛の生えたような小鬼英雄もいればオーガに迫るような肉体の小鬼英雄も生成されます。ホブに毛の生えたようなヤツが来るのを祈りましょう。クッソ強いのに当たったら後は気合いでどうにかするしかありません。それを懸念しての戦槍購入だったりします。

 

 小鬼英雄戦ではファンブった時や判定負けした時には因果点で振り直しをするという賽子ガバを力技で捩じ伏せるという身も蓋もない戦法を容赦なく使います。命中しても威力が低かった際も振り直します。溜め込んだ因果点を惜しげもなくドバーッと解放する因果点の使い所さんです。ちなみに因果点は本作では12点までしかストック出来ないので上限は12点です。仮に因果点を使い切ってしばらくしても小鬼英雄を倒せなかったら……諦めましょう。だいたいそのくらいで横合いから銀等級ないしそれに準じる等級の冒険者が助勢に入り、こちらが必死に削った小鬼英雄を横からかっ浚われます。人の獲物を横取りしやがって人間のクズが……(怨嗟)

 

 さて、日没を迎え、いよいよ戦闘フェーズです。開幕はギミック戦となっており、肉の盾とされている人質の回収、小鬼騎兵(ゴブリンライダー)を擬似槍衾で処理するなどの原作通りの迫力ある攻防(ほぼ一方的)が見られますが、この場面では全く疾走戦士くんの出番はありません。出番があるのは搦め手(小鬼視点)の効果が薄いと判断した小鬼王が力押しに切り替え、策もなにもなく数を頼りとした雑兵ゴブリンが突っ込んでくる場面です。基本は背後を取られないようにしつつ、集団の前列を担うように立ち回り、タンクらしくヘイトを稼いで他の冒険者にゴブリンを狩らせましょう。突出したゴブリンさえ潰しておけば基本味方が上手いことやってくれます(他力本願)

 

 乱数もなかなか良かったようで死者は今のところ小鬼騎兵から分離した狼に喉笛を噛み千切られた奴が1人くらいですね。生きている雑兵ゴブリンが疎らにしか見えなくなってきたら、一旦下がるフリをして牧場の端の方へと猛ダッシュで向かいます。この時に他の冒険者に見つかると何だかんだと理由をつけて引き留められるので注意しましょう。

 

 今くらいのタイミングで本編同様主戦場付近ではホブを引き連れた小鬼英雄が複数体出現しますが、端の方にはぐれかボッチかは定かではないですが取り巻きも引き連れずに小鬼英雄が単体で出現します。まぁ恐らく他のゴブリンを出し抜いて自分だけ良い思いをしようという姑息なヤツなのでしょう(盛大なブーメラン)本隊とも距離が離れているのでタイマンを張るには絶好の条件です。横取り鎖マン野郎が来るのも大分遅くなるので尚良しです。

 

 肝心のボッチ小鬼英雄の出現位置はおおよその場所こそ決まっていますが明確にこ↓こ↑という出現地点はありません。地道に捜索します。探すのに手間取るとただでさえ少ない戦闘時間が削られます。死に物狂いで見つけましょう。どこだぁ~探すぞぉ~(必死)

 

 おっいたいた!……ですがどうみても手練れっぽいやつですね(遠い目)これは……強い方のやつじゃな?幸い、金棒などの打撃武器を持っていることの多い小鬼英雄にしては珍しく大剣を装備しています。直撃時のダメージこそ金棒よりしんどいですが、攻撃判定がやや低めなので盾受けでの対抗判定で勝りやすく、ダメージを軽減ないし無効化しやすいです。盾受けをガバらなければ疾走戦士くんにとってはカモですね。そのガバも出たら因果点で振り直すので危険性はやや下がります。問題は結構ガッチリ鎧を着込んでるってことですかね。タンク性能全振り盾ビルドである疾走戦士くんは現状では火力面に不安があります。これ時間内に仕留められますかね……?

 

 現状はこちらが一方的に捕捉している状態なので、隠蔽判定に成功すれば不意打ち攻撃が可能です。完全な不意打ちにならずとも避けられないタイミングで攻撃を仕掛ければ、開幕の一撃を確実に当てられます。運が良ければ大成功もあり得るので狙う価値は十分にあります。ちなみに隠密判定には基本値から技量集中、【斥候】or【野伏】の職業レベル、取得していれば《隠密》の技能ボーナスを加算した値から、鎧などの隠密判定にペナルティ効果のある防具を装備に設定されている数値を引いた値─本作では防具の重ね着が出来るためペナルティ効果が複数ある場合は一番高い効果のみを適用する─が基準値となります。基準値+2D6で達成値を算出し、相手の達成値より対抗判定で上回れば成功となります。全ての判定における判定値は以下の通りの式で計算されます。

 

基本値(PCのステータス)+職業レベル+技能ボーナス)-ペナルティ=基準値

 

 基準値+2D6=達成値

 

 こんな感じで実は今までも攻撃とかそんなタイミングの裏で判定がされてました。一々描写してるとテンポがあれなんで重要なタイミングでのみやってましたが。

 

 疾走戦士くんの技量集中は7。ペナルティ判定を少しでも下げるために取っていた【斥候】がレベル3。技能ボーナスはなにも取っていないのでなし。装備している鎖帷子が隠密性が悪いため-8。つまり基準値は2。うん、はい、【斥候】レベル上げてなかったらマイナスになりますね。でも鎖帷子がないとオーガ戦で死んでたかもだからねしょうがないね(早口)

 

 2D6の結果は8!つまり達成値は10です。微妙。ちなみに小鬼英雄の達成値は2D6+1です。やだ……怖い……アイアンマン……。結果は6!ペッ雑魚が(イキり)はい、というわけで隠密判定成功です。しかし、本作ではプレイヤー側に限り命中判定や盾受け判定云々の攻撃が当たるか否かの判定に失敗してもプレイスキルや立ち回りでカバーできるので割とどうにかなります。数少ない原作よりマシな点ですね。FPSの上手い方の場合精密狙撃魔術師チャートとか組めるんじゃないですかね。なお、相手が大成功した場合やこちらが大失敗した場合は判定がそのまま適用されます(無慈悲)

 

 暴れんな……暴れんなよ……イキますよ~イクイク……ヌ"ゥン!!

 

 よし。向こうは突然奇襲され避けることが出来なかったようです。戦槍の威力は3D6+2で算出されます。結果は14!この戦槍の威力と……殺意を……最高やな!この調子で3~4回小突いたら殺れますね。ガハハ!買ったな!

 

 ファッ!?適用ダメージが5!?うせやろ?(真顔)

 

 コイツ装甲値9も持ってますね……通常の倍以上の装甲値とか常識ねぇのかよ……。この時点でゴブリンガチャに失敗したことが確定しました。これ絶対生命力26以上ありますね。恐らく40前後はあると見て良いでしょう。先制ダメージを差し引いても最低でも7~8回くらい突かないと倒せないでしょう。

 

 やべぇよ……やべぇよ……(焦り)

 

 想定より倍近く戦闘が長引きそうです。これは横取りの危険性が高くなりますねぇ!(ヤケクソ)しかし上手いことラストアタックをモノに出来る可能性があるためRTAは続行します(鋼の意思)

 

 では小鬼英ゆ───

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 




いまさらですが本RTAの計測方式等について補足。

・タイマースタートはニューゲーム選択時。

・タイマーストップはトロフィー獲得時。

・行動時間としてカウントするのは疾走戦士が起きて活動している時。睡眠時はカウントしないものとする。ただし戦闘中の状態異常での気絶や睡眠はカウントされる。

・視聴者(神)が飽きるようなプレイはなるべくしない。
(本RTAはRTAという遊びを布教するためのRTAであるという前提があるため)

・≪真実≫の意向により怪物の出現数などを調整し原作より難易度を上方修正するものとする。
(原作知識ありきで行動出来ることへの対策。「メタ知識持ってる奴を増やすんだから当たり前だよなぁ?それにハプニングのない冒険は面白くない」by≪真実≫)

・その他修正ルールを適時追加する。

・ゲームシステムの運用のために≪真実≫がGMを担当する。


では皆様良い御年をお迎えください。


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