阿良々木暦は望まない(副音声) (鹿手袋こはぜ)
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ちあきフレンド
「歩物語、第一話ちひろフレンドをお読みになられる皆さま、ご拝読誠にありがとうございます。第一話の副音声を担当させていただきます、希望ヶ峰学園三年の阿良々木暦と申します」
『同じく希望ヶ峰学園三年の戦場ヶ原ひたぎです』
「いやあ、なんだか緊張するな」
『死ねば良いのに』
「はい!?」
『ああ、ごめんなさい。ついつい別時空の私が出てきてしまったようね。正しくは「死ね」よ』
「僕らの世界の戦場ヶ原のほうが酷いことを言っていないか!?」
『志は常に高く持たなくっちゃ。そうじゃないとヒロインなんてやってられないのよ』
「そのタイプのヒロインは大成しないぞ」
『嫌ね。ゴキブリみたい』
「こいつ、『いやね、〇〇じゃない』って弁明するような形でさらっと罵倒しやがった!」
『仕方ないじゃない。罵倒される方が悪いのよ』
「近年稀に見る暴論だ! これは酷い!」
『だってそう思わない? ほら、イジメだって、イジメられる側にも問題がある、なんていう話をよく聞くじゃない。それと同じで暴論を論じられる阿良々木くんの方が悪いのよ』
「いやいや、それ自体が暴論っつーか……。さもありなん、まるで真理が如く語ってはいるけれど、結局大局的に見てみれば受け手の方は人より欠点が目立つってだけで、特になにも悪いことはしてないんだからさ。それにそれだとお前にだって非はあるわけだし」
『さっきからうるさいのよ。で、どうして緊張しているの? そろそろ話しておかないと、読者の皆々様も冒頭の出来事を忘れてしまうわよ』
「こいつ! 話を切りやがった!」
『で、どうしてなの?』
「ぐぬぬ……。……いやほら、僕は物語の主人公だっていうのに今まで一回しか副音声に出たことがないからさ。それもその一回の相手は副音声最多出演の羽川なもんだから、副音声には結構並々ならぬ思いがあったりするんだよ。だから緊張してたっていうか」
『話は終わった?』
「だから僕の話を聞けって!」
『アバン終了です』
「聞けよ!」
『OPです』
「……OP? え、なに? この二次創作、さっきから聞いてるとアバンだとかOPだとか……まるでアニメのようにことが進んでいるけれど、たかだか二次創作の小説にOPなんて大層なものが存在しているのか?」
『台本にOPって書いてあるんだから、あるにはあるんじゃないの? それにそもそも副音声なんてアニメやら映画やらの動画媒体につけるものなんだから、言ってしまえば、こんな文字を媒体にしているものに副音声なんて付けてる方がおかしいのよ』
「おい、いま複数人の二次創作者を敵に回したぞ」
『敵に回ったことを後悔させてあげるわ』
「怖っ!」
『そもそも味方でもなんでもないのだけど』
「それもそうだがな……」
『私を批判する人は全員敵、味方する人も敵』
「なんちゅうやつだ」
『考えてもみなさいよ、私に味方する人間なんていると思う? いたところで、絶対裏切られるわよ』
「それを自分で言うか?」
『ところでOPの話はどうなったのかしら?』
「ああ、それだがな……台本にはOPって書いてあるな。やっぱりあるのだろうか? OP。だったら僕が歌ってたりしないだろうか」
『しないわよ』
「すぐに否定するなよ! あるかもしれないだろう、僕のキャラソン!」
『いや……だって、冷静に考えてみなさいよ。これはクロスオーバーなわけで、そして副音声は私たち物語シリーズが担当してるんだからOPくらいは向こうがやるんじゃないの? 苗木くん……だっけ? の声優さん、随分ベテランでしょ』
「急にメタいな……確かに、原作ゲームでも歌ってたりしてたけど、あれEDでじゃなかったっけか?」
『じゃあOPは日向くんが歌ったりして』
「日向がか……いやでもさ、僕は一応この二次創作の副音声ではパーソナリティみたいな役割なもんだから、今後誰と副温席をするのかっていう話は少し聞いてるんだけどさ。普通にいたぜ? ダンガンロンパの人」
『そう? じゃあ最原くんとかが歌うのかも』
「最原?」
『ああ、あなたは知らなくて良い話よ。OP終了です』
「っと、Aパートです」
『……ふーん、ふむふむ』
「……どうしたんだよ、急にそんな何かを検分するみたいな言葉を使って」
『いやほら、七海さんの寝顔を見てニヤニヤと鼻の下を伸ばしてる阿良々木くんを見て、性格をプロファイリングしていたのよ』
「僕は断じて鼻の下を伸ばしてなんかいない! そもそも、やっと副音声らしく本編に触れたかと思ったらそんなことかよ!」
『私、犯罪プロファイリングは結構得意なのよ。あとサイコパス診断も結構当たるし』
「……お前が一人でそんなことしていると想像したら、ツッコミを忘れてなんだか悲しくなってたぜ」
『一人なわけないじゃない、私は
「僕の名前にぼっちとルビを振るな!」
『神原とやったのよ、神原と。あなたも知ってると思うけど、あの子心配になるくらい対戦ゲームに弱いから、家で遊ぶようなときは診断系とか占いなんかをよくするのよ』
「あー……、確かに。あいつは運や駆け引きの才能を代償に運動能力を手に入れたんじゃないかってくらい、そういった要素が絡んでくるゲームはめっぽう弱いもんなあ」
『やめて! 神原にゲームの勝敗を口実に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに!』
「しねえよ。したいとすら思わえねよ!」
『これだから阿良々木くんは節操がないって八九寺先生に言われるのよ』
「嘘だろ!? あの八九寺先生がそんなことを?」
『さあ? でも、知らぬ変態と……んん、そうね、ええ』
「上手いこと言おうとして失敗してるんじゃない! ……っていうか、話は戻るけど、よくもまあ遊んでただけで、性格のプロファイルなんてよくできるな」
『できるわけないじゃない』
「なんの嘘なんだよっ」
『じゃあプロファイリングしてあげましょうか? ロリコン変態ペドフェリア』
「適当に言うな……っ!」
『嘘に理由なんていらない、そこに君がいるだけでいいんだ』
「嘘をそれっぽい言葉で取り繕うなよ! 安っぽいなあっ」
『「大切な人がいなくなる」とか、「不器用」とか、「同じ空の下」とか、そういう悲壮感を連想させる言葉を入れておけば安っぽくても大体の人は共感し感動してくれるのよ。情報源はJ-POPとツイッターでよく画像を上げている人のリプライ欄』
「やめろ! それ以上何も言うな!」
『いなくなってしまった不器用な君は きっと同じ空の下にいる』
「だからやめろって! 消されるぞ!」
『Ah... Ah... (突然現れる英語の歌詞)』
「それ以上はやめておけ、J-POP好きを敵に回すぞ」
『どこかの歌と歌詞が被ってそうで怖いけど、安い言葉を歌詞に使う方が悪いのよ。訴えられても悪態ついてやるわ』
「被るのは仕方ないとして、もっと穏便に事を進められないのか?」
『眠れぬ夜は多かったけれど 何かが変わる気がした wow wow 瞳閉じて 翼広げて さあ明日に向かって走りだそう あぁ あの頃に戻りたい』
「結局最後、後悔してんじゃねえか! そこまでやるなら悔いなく突き進めよ!」
『でもある程度“お決まり”があった方が良いのかもしれないわね。オーケストラの作曲にテンプレートがあるように、お話を作るにも起承転結、序破急があるように』
「……どちらかというと歌詞は話の構成というよりも話のネタの部類に入る気がするけどな。小説で言えば、推理物とか、今巷で流行の異世界転生とか」
『ああ、あのトラックで死ぬやつ』
「間違ってないんだけど違う」
『少し違うんだけど、ジョジョの奇妙な冒険第四部「ダイアモンドは壊れない」に出てくる吉良吉影っていう登場キャラがいるじゃない……ああ、ここから先はネタバレ注意ね。まあアニメ化もされたし、有名な作品だし、そこら中に出回ってる情報だからあんまり意味ないかもだけど……そうそう、ネタバレって本当に酷いわよね、昔友達に──』
「早く話をしろよ……っ。そしてお前の友達がいた前提で進む話は絶対に嘘だろ!」
『嘘に理由なんていらな──』
「それはさっき聞いたっ」
『ともかく吉良吉影は救急車……それこそ「命を運ぶ」車で死んでしまったわけだけど、そのあとデッドマンズQで記憶がない幽霊として殺し屋を営んでたりするの。これだって言ってしまえば異世界転生みたいなものよね……ひょっとしてそういう系統の元祖だったりするのかしら? トラックじゃないにしても、救急車にはねられてるし』
「まあ……そこらへんはグレーゾーンというか、もちろんそれよりも前に似たような設定はあっただろうし、それに『イルカって海泳いでるんだし、魚類みたいなものよね』といったニュアンスが否めないが」
『良いのよ、そこら辺は。というか私最初に「少し違うんだけど」って言ったじゃない』
「結構微妙な感じで違うかったものだから、思わず言葉が出たんだよ」
『なあに? そのイキリオタクみたいな発言は……思わず言葉が出たって……阿良々木くん、もしかして握力三十一?』
「彼女はアスナに似ていない」
『超高校級かなーやっぱ。一応落ちこぼれだけど彼女いるし、退けない性格だしそこら辺めっちゃ超高校級って言われる()腹筋も割れててクラスの女子にたかられる。←ぼっちだからやめろ! 僕、これでも高校三年生ですよ? ps、彼女はモノクマ似です。(聞いてねえ)。ハッシュタグ、あなたっぽいアニメキャラクター』
「フルで言うな! っつーか超高校級って言われるってなんだよ! どういう意味なんだ?! そしてナチュラルに童貞触れるなっ、お前も似たようなもんだろう!」
『あなた、超高校級の才能がまだ発表されてないらしいわね。あれなんじゃない? 戯言遣いさんみたいな感じで本編が終了しても才能が公表されないんじゃないの?』
「……いや、それはないだろう、さすがに。そもそも僕だって一時期は超高校級の勝負師なんていう肩書きで活動してたりしたんだからさ。今は亡き設定だけど」
『あなたも亡くなってしまえばいいのにね』
「うっ……いや、僕は一回死んでるし、その点で言えばお前のその願いは叶っているようなもんだぜ?」
『死ぬと亡くなるは違うのよ。一回死んできたら?』
「やだよっ。……つーか、そんなに変わらなくないか? 死ぬと亡くなる」
『……あなたなら死んでも生き返るけど、亡くなってしまえば生き返ることはない、というところよ』
「あー……」
『ちなみに私の中で母は亡くなったわ』
「話が重いんだよっ!」
『そんな私には重みがないの』
「軽はずみな言動ばかりって意味なら、まったくもってお前の言う通りだよ」
『Aパート終了ね』
「Aパート終了!? おい待て、大いに待て。まだ僕達本編の内容について全然触れていなくないか?」
『こんなものよ、副音声って。阿良々木くんは一度しか参加したことがないようだから教えてあげるけど、本編に触れることの方が稀よ』
「それって副音声としてあるまじき行為のような気が……?」
『実況してるわけじゃないんだから構わないわよ。それともなに? あなたが同級生の女子の寝顔を見てどぎまぎしている様子を詳細に細部に至るまで語った方がいいのかしら? ……ああ、でもそれならR18カテゴリーに移動したほうがいいかもしれないわ』
「なにをどう語るつもりなんだよ! 僕と七海がお茶してるってだけの光景を!」
『あることないことを見てもないのに言うだけよ』
「事実であろうがなかろうが、見てもないのに言ってる時点で全部ないことだよ!」
『……、Bパート始まってたようね。気付かなかったわ』
「うわ、本当だ」
『うわってなによ、うわって。公然猥褻で通報するわよ?』
「公然猥褻!? どこが!?」
『……? どこって、全部……?』
「不思議そうに首を傾げるな……!」
『阿良々木くん、あなた後輩からなんで呼ばれてるか知ってる?』
「……なんて呼ばれてるんだ? おおよそ予測はつくが……どうせ歩く猥褻物陳列罪とか言うんだろ?」
『残念、正解は……』
「正解は?」
『…………』
「? どうしたんだよ」
『今のが答えよ。正解は、そもそも阿良々木くんは後輩に認知されてないから呼ばれてすらいない、でした』
「ぐうっ?! な、なんだそれっ、変に罵倒されるより辛いぞっ」
『まあでもよかったじゃない、あなたの悪評が伝わってないようで』
「そういう問題か?」
『そういう問題よ……まあでも、私が一、二年生にあなたのことを触れ回っておいたから、伝わってないというのは過去の話になるんだけど』
「最悪だ! デマを広められた!」
『デマじゃないわ。私、生まれてこのかた嘘をついたことがないもの』
「見え見えの嘘をつくなっ、その言葉を使うやつはみんな嘘つきなんだよ、僕の統計によるとな」
『友達ゼロの阿良々木くんの統計なんて、信用ならないわよ。参考資料一人とかじゃないの?』
「僕にだって小学校中学校時代に友達はいたし、今だっている!」
『それ、本当に友達? 私がみてる限りじゃ、少なくともそうとは思えないのだけれど』
「……なにが言いたいんだ?」
『私この前八九寺先生に「阿良々木くんがクラスで孤立しているようだから、声、かけてあげてくれない?」って言われたんだけど』
「だとしたらえらい人選ミスだな!」
『人生ミス? 確かにそうね、あなたの人生はミスばかりね』
「むむ……心当たりがある分、反論しづらいんだけど」
『反論しなくていいのよ、なんだって正論だもの。私はいつも正しい』
「それ、危険思想じゃないか?」
『私に逆らう人間はみんな死んでいい、だって悪だもの』
「独裁者の思想だ! こいつ、独裁者と同じ考え方をしているぞ!」
『独裁者で思い出したんだけど、ドラえもんでどくさいスイッチってあったじゃない?』
「ああ、あるな。あれだろう? 人の名前を言いながらスイッチを押すと、その人が世界から消えてしまうってやつ。……その人が消えてしまったという世界をシミュレーションさせているだけで実際に消えてしまったわけじゃない。人を消すんじゃなくって孤独の怖さを知るための道具──っていう話のオチだった気がするけど」
『そうそう、それ。よく知ってるわね。ひょっとして、いやひょっとしなくても、阿良々木くんってドラえもんガチ勢さん?』
「ちげえよ、このくらい誰でも知ってるだろ……有名な話だしさ。それにガチ勢っていうなら、千石のほうがよっぽど詳しいぜ?」
『で、そのどくさいスイッチなんだけど、結局最後は孤独の怖さを知ってから終わる……というオチじゃない?』
「ああ、そうなるな」
『でもたとえば、本当に殺したいほど憎んでいる相手を消した場合はその人がいなくなっても悲しむなんていうことはきっとないだろうし──言ってしまえば、スイッチを押した人はその世界でずっと暮らしたがるんじゃないかって思うのよ。違法なことはなにもせず、いなくなって欲しい相手がこの世界から跡形もなく消えて無くなる──憎んでいたなら復讐はできないだろうけど、それでも邪魔に思うことはもうないでしょうし、それに誰の記憶からも消してしまうっていう真の意味での死を与えることができるんだから』
「確かに……作中じゃあ、のび太が誰も彼も消してしまったから孤独な世界になってしまったわけだけど、逆に住みやすい世界だって作れるわけだもんな」
『そう、阿良々木くんがいない世界みたいにね……。私はあのどくさいスイッチはもしもボックスのような物で、特定の人がいなかったらっていう世界に限って叶えてしまう道具だと思っているんだけど、だからひょっとすれば劇中に登場する未来の世界というのは、誰かがもしもいなかったらの世界でもあるのかな──って』
「話の腰を折るようで悪いんだけど、さっき、僕がいない世界が住みやすい世界だって言わなかったか?」
『ええ言ったわよ。だって、性犯罪者が一人いなくなるんだもの』
「誰が性犯罪者だ! 確かにちょっと際どいことは度々やっているけど、全部僕の意思じゃないし、それに大抵合意の上だ!」
『知ってる? 阿良々木くん。痴漢をして逮捕された人は、みんなあなたと同じようなことを言っていたそうよ?』
「痴漢なんてしたことがない……! そもそも自転車通学だし」
『知らないわよそんなこと。聞きもしていないことをべらべら喋って、唾を飛ばさないでくれない? 性犯罪が移るわ』
「性犯罪が移るってなんだよ! ……ていうか、この前もこんなやりとりしなかったか? あのときは童貞が移るとかなんとか……」
『馬鹿ね、女に童貞は移らないわよ』
「知ってるよ! つーか、男にも移らねえよ!」
『ツイッターで見たんだけれど、攻め込んだことのない兵士と攻めこまれたことのない城という例えは秀逸よね。私、あれを最初に見たとき感動したわ』
「もっと他のことで感動して欲しいものだが……そもそもツイッターなんてやってたんだな」
『あら、知らなかったの? みんなやってるわよ阿良々木くん以外』
「そんな馬鹿な!」
『ちなみに羽川さんとはインスタグラムでも繋がっているわ』
「は、羽川がインスタグラム?!」
『映えー、って、よく写真を上げているのを見るもの。羽川ならぬ映え川さんよ。あとはそうね……あなたとよく絡んでいる江ノ島さんなんて凄い人気よ。超高校級のギャルって凄いのね』
「江ノ島よりも、羽川のほうが気になる。ちょっとどんな写真が上がっているのか教えてくれないか? こう、私服とか写ってないだろうか?!」
『……きもっ』
「なっ……! べっ別に下心があるわけじゃないんだからいいだろう!」
『必死すぎるのが怖いのよ……直接聞けばいいじゃない……羽川さんに……』
「それもそうなんだけど、なぜだか分からないが羽川には教えてもらえない気がする」
『じゃあ私も教えられないわ、羽川さんが嫌がることはできないもの』
「そ、そんな……!」
『自分を憎むのね、そして死ね』
「なっ!?」
『ああごめんなさい、別世界の私が出てきてしまったようね。正しくは「██」よ』
「おいやめろ! 放送事故だ、放送事故!」
『私たちが既に放送事故みたいなものじゃない……? 何回事故しても大して変わらないわ、ねえ████』
「僕のことを████と呼ぶな! っつーか、それもアウトだよっ」
『だってしょうがないじゃない、████なんだから。それともなに? ███とか██と呼んだ方が良かったかしら』
「あーあー! 聞こえないぞう!」
『……まあ冗談はこれくらいにして、Bパート終了よ』
「……なっ、な!? 待て、大いに待て。まだまともに本編見ていないんだけど!」
『EDです』
「淡々と進めるな……。いやしかし、EDもあるんだな」
『そりゃOPがあるんだから、EDもあるに決まってるじゃない。なあに? もしかして阿良々木くん、アニメでEDが始まったらチャンネルを変える派? ひょっとして、小説を読み終わってもあらすじは読まない派?』
「観るし読むよ。……そもそも、観ることも読むことも、それをする機会自体があまりないものだから絶対に観たり読んだりするとは言えないけど」
『EDといえばアニメ化物語のEDが印象的よね。歌もアニメーションも、どちらもとても良かったことをよく覚えているわ』
「確かに、あれは良かった。EDで走るアニメは名作が多いと言うけれど、走ってはいなかったものの、名作と呼ぶにふさわしいアニメだったと思うぞ。化物語は」
『打って変わってこのEDは……ううん?』
「おいおい、微妙な反応するなよ……そもそも観ることも聴くこともできてない、何も知らないEDの評価をしようとするなよ」
『私くらいになれば、観なくても聴かなくても大体分かるものなのよ』
「私くらいって、どのくらいになればそんなことができるんだ? いやどんなレベルに達しようと、んなことできねえよ!」
『阿良々木くん、ちょっと静かにしてくれないかしら? EDの曲が聞き取りづらいのだけど』
「……誰が歌ってるんだ? ED」
『これは……真綾さんなのか、それとも春川さんなのか……』
「誰だよ! っつーか、どっちが声優でどっちがキャラクターの名前なのか、僕には分からないんだけど」
『真綾さんが声優さんで春川さんがキャラクターよ。どちらもあなたと縁が深いじゃない』
「両方知らないな……ん、いや待てよ? この声どこかで聞き覚えが」
『忍さんの声優さんよ』
「ああ……忍か、通りで聞き覚えがあるわけだな」
『歌がとても上手っていうのは知っていたけど、どうして原作アニメでは歌わないのかしらね?』
「さあ……? けど、大人の事情ってわけではないだろう。アニメ化物語の曲を声優さんが歌うときってほとんどはキャラソンだけれど、忍の声を担当しているから曲が出せてないってだけなんじゃないだろうか──ほら、僕のキャラソンが出ていないように。吸血鬼はキャラソンが歌えないのかもしれない」
『ああ……なるほどね。忍さんはまだしも、ロリコンを地上波アニメという公共の場に出すわけにはいかないものね』
「……話を聞いてたか? 僕は吸血鬼だからかもと言ったんだ」
『ED終了です』
「話を聞け!」
『そんなわけで、歩物語第一話ちあきフレンド、お相手は希望ヶ峰学園三年の戦場ヶ原ひたぎと』
「終わらせねえぞ! 最後くらい話を──」
『……ちっ。希望ヶ峰学園三年、阿良々木暦もいました』
「あーっ! お前今、舌打ちしたよな!?」
本家の方の副音声が面白いから、円盤買って聴こう!
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