立花響は特殊な転生者 (龍蟹迅)
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1話
突然だが私、立花響は転生者と言うものです。
それも、ただの転生者ではありません。
今回で
……何故そんな中途半端な数字なんだと言われても私は知らない。
何せあまりにも突拍子もない出来事だったため私にも何が何だか分かりません。
最初の転生で終わりかと思えばさらに続くから驚いた。
一体いつまで死んでは転生するんだと何度思った事か。
当の本人二人は答えてはくれないのでホントにわからん。
とはいえ転生はあまり嫌ではない。
数多くの出会いがあって、別れがある。
楽しい事があったり、悲しい事があったりと様々だったが嫌じゃないと言える。
……寿命が長い者に転生した時は気が遠くなりそうになったけど。
あぁ因みに、前世で私が手に入れてきた、又は使用してきた能力とかは今世に持ち越せると言う能力を獲得している為、「前世では使っていたのに使えない」なんて事はないです。ホントにない。
後、完全記憶能力も備わってます。
それで今回の人生は何事も無い平和に近い世界……かと思った。
何せ、この世界に転生するのは
この世界にはある一つの『災害』と呼ぶべき存在があった。
その名は『ノイズ』
それは人類共通の天敵とされ、私達人類を脅かす認定特異災害。
歴史上に記されている異形の類は大半がノイズ由来のものとされていて、学校の教科書にもその存在が記されていたりと、知名度自体はに高い。
何せ、国連総会で特異災害に認定された程だ。
ノイズ達は空間からにじみ出るように突如として発生して、人間だけを大群で襲撃、触れた人間を自分もろとも炭素の塊に転換させる力を持っている。
近いもので言うと神風特攻隊みたいなものかな?
それとノイズ達は発生から一定時間が経過すると自ら炭素化して自壊する。
それから、一定範囲以内に人間がいなければ、周囲を探索したりはせず自壊するまであまり動くことがない。
サイズもそれぞれで最低でも人間ほどの大きさ、最高でもビルを超えるほどの大きさだ。
ノイズの正体は未だに分からないけど、先史文明期から長く存在している事は確か。
恐らく、今も撒き散らされている“呪い”が関係しているけど。
合計で100年以上はこの世界にいたんだ。
それ位は分かる。
ただ、今の人達はその事を忘れてしまっているけど。
まぁ、大昔の事だか仕方がない。
取り敢えず今は、厄介事に巻き込まれるまでは平和に暮らそうと考えた。
けど……あんな大事件が起ころうとは思いもよらなかった。
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ツヴァイウィング事件
この世界に転生してからおよそ13年位した頃。
今日はとってもビッグな(?)イベントがある。
それは…『ツヴァイウィングライブ』
『天羽奏』と『風鳴翼』によるボーカルユニットで絶大な人気を誇っている(ちょっと大袈裟すぎたかな?)。
そして今日この日がそのボーカルユニットがライブを行うという日である。
私はこの世界での親友である『小日向未来』と共にそのライブを見る約束をして未来を待っているのだが…。
「…未来、遅いなぁ。」
いくら待っても未来はやって来ない。
まさか忘れて…いや、未来に限ってそれは無い。
未来はちゃんと私との約束を守ってくれるし、時間には必ず来る娘だ。
そう思っていると電話がかかってきた。
画面を見れば未来からの電話だったためすぐに出た。
「もしもし?」
『あ、響?』
「うん、そうだよ。」
『あのね、ちょっと行けなくなっちゃって。』
「……………………え?」
未来からの唐突な発言に私は一瞬だけ思考が停止した。
『(ぜ、絶対ショック受けてる…)え、えっとね盛岡の叔母さんが怪我をして…その…お父さんが今から車を出すって……。』
「………そう……なんだ…。」
『えっと…本当にゴメンね。』
「………うん。」
そう言って私は電話を切り、その場で蹲ってしまう。
周りから心配する声が聞こえるが私はそれよりも未来が来れなくなったことに落ち込んでしまっている。
未来とツヴァイウィングのライブが見れないのは本当に残念だ。
しかし、ここで落ち込んでいても仕方ないのですぐさま立ち上がりライブ会場へと向かった。
_____________________
会場に着きしばらく待つとライブが始まる。
今、天羽奏と風鳴翼の歌っている曲は「逆光のフリューゲル」と呼ばれる曲。
やはりというか、ツヴァイウィングの歌う曲はどれも素晴らしい。
前回の世界でもアイドルに関する事をやっていた為、少しだけその良さもわかっている。
私は少しだけ気持ちが昂って思わず曲を口ずさむ。
…未来も来れたらよかったのだが家庭の都合ならしょうがない。
そう思っていると…。
「!?」
異変を感じた。
私はそれにすぐさま気づき、その場から離れ人目のない所まで行く。
そして、それは起こった。
『ドカーーーーーン!!』
会場で爆発が起きて私がそっちに視線を向ければその爆発した所からノイズがわんさかと現れた。
やっぱりかと私は思い、すぐさま右手を左腰側に差し入れ、右腰だめに構え直す。
そして腰辺りにベルト、『オルタリング』が現れる。いや、正確には実体化と言った方がいいかもしれない。
そして左手を左腰だめに構え、右手を手刀のような形にしてゆっくりと前方に突き出していき、右腕を伸ばしきったところで私は戦士へと変わる言葉を大声で言った。
それと同時に両手で勢いよくオルタリングの両側のスイッチを叩く。
オルタリングから強い光が放たれ私の身体を包む。
そして私は一瞬にして戦士『アギト』への変身を完了させた。
私が4回目の人生の時に手に入れた力。
火のエル『プロメス』が人々に与えた超能力。
誰にでも存在する力なのだが、その力に目覚める人は極僅か。
私は走り出しら人に襲いかかろうとしたノイズに蹴りを叩き込む。
「ハァッ!」
蹴られたノイズは瞬く間に炭へと変わって散っていく。
私がノイズを倒した所を周りにいた人達は驚くが、それどころでは無いと思ったのかすぐさま逃げていく。
ノイズは標的を私に変え、突撃してくる。
私は慌てずにオルタリングの左側のスイッチを叩く。
賢者の石の左側にある秘石『ドラゴンズアイ』が青く発光し、左腕と上半身が青い装甲へと変化する。
これがスピードと俊敏性、ジャンプに特化した形態『ストームフォーム』。
私は賢者の石から出たストームフォームの専用武器『ストームハルバード』を取り出しノイズをなぎ倒して行く。
ふと、何処からか歌が聞こえてきたのでそちらに視線を向けると天羽奏と風鳴翼が変わったインナーと装甲を纏ってノイズを倒していた。
天羽奏はチラチラとこちらを見て話し掛けようとするがノイズによる猛攻でそれどころじゃ無かった。
次に私は、オルタリングの右側のスイッチを叩き右側のドラゴンズアイが発光し別の形態へと変える。
左腕は元に戻り、代わりに右腕と上半身が赤い装甲へと変わる。
これはパワーと感覚に優れた形態『フレイムフォーム』。
また、賢者の石から出たフレイムフォームの専用武器『フレイムセイバー』を取り出し、ノイズを斬って行く。
「くっ…そぉ!」
「ぐっ…。」
天羽奏と風鳴翼はノイズの多さに苦戦していた。
倒したと思えば次のノイズが来て、倒したと思えばまた別のノイズが来るの繰り返しで二人に疲れが見えている。
(……しょうが無い。)
私は少しだけため息をつくと余り人には使いたくない力を発動させた。
「うおっ!?」
「な、なんだ!?」
胸の中心にあるワイズマンモノリスが発光すると天羽奏と風鳴翼の周りに服を着た怪物が現れる。
その怪物の名は『アナザーアギト』
その名の通り(?)その怪物は『アギトを歪ませたモノ』である。
元々は仲間の一人が変身していた戦士だったけどこれは違う。
と言うのも、まだ私がアギトとして暮らしていた世界で『タイムジャッカー』と呼ばれる集団が私(と言うよりアギト)のアナザーライダー(らしい)を生み出してその際、アギトの力を奪われアナザーアギトに埋め込むとまんまアギトへと変わった。
その時に偽アギトは他の人たちをアナザーアギトへと変えた。
その能力がそのまま今のアギトに反映されている。
……余計な物まで反映しなくていい。
現れたアナザーアギト達はそのまま拳でノイズを殴りつける。
元の素体が人間だからなのかパワーもスピードも全員バラバラ。
…一応強化はされてるんだけどね。
……待って、ギルスまで混ざってるんだけど、何故?Why?
「!フッ!」
私がギルスまでいる事に呆気に取られているとノイズがその隙をついてくる。
しかし、私は問題無く躱し、今度はオルタリングの両側のスイッチを叩く。
両側のドラゴンズアイが発光し、右腕はそのままに、上半身の装甲は元に戻り、左腕はまた青い装甲へと変わる。
『三位一体の戦士』と呼ばれるこの形態は『トリニティフォーム』と呼ばれる形態。
『超越肉体の金』のグランドフォーム、『超越精神の青』のストームフォーム、『超越感覚の赤』のフレイムフォームの三つの形態を合わせもった形態。
賢者の石からストームフォームハルバードをもう一度取り出し、右腕にフレイムセイバー、左にストームハルバードを構えてノイズを殲滅する。
段々とノイズが減っていき、同時にアナザーアギトを少しずつ撤退させる。
(後は…。)
私は逃げ遅れがいないか周囲を確認する。
私としては既に逃げていて欲しいと願うが、そう簡単にはいかなかった。
(!?子供が!)
視線の先には母親を見失ったのか子供が泣いていた。
今までノイズに襲われなかったのは奇跡と言うべきだろう。
私は天羽奏と風鳴翼に見つからないように瓦礫の影に隠れ、変身を解く。
「大丈夫?立てる?」
私はすぐさま子供の元に駆け寄り、背中をさする。
周りにノイズがいないのを確認して子供を連れてその場から離れようとした。
この時私は、変身を解かなければよかった事とこの後の行動に後悔する。
『バキィッ!』
そんな、何かが折れるような音が響き渡り、私はそちらに視線を向ける。
「な!?」
視線を向ければ天羽奏の持つ槍が折れ、こちらへと飛んできた。
よく見れば天羽奏の纏っている装甲も所々ボロボロになっていた。
私は避ければ良いのにもかかわらず、咄嗟のことに思わず子供を庇ってしまった。
その結果。
『ザシュッ!』
「カハッ……ア…。」
飛んできた槍の破片は私の胸に刺さり、そのままその場に倒れてしまった。
子供が私のこと呼んでいるのが聞こえたのか天羽奏は目を丸くしてこちらに駆け寄る。
「おい!死ぬな!」
天羽奏は私を抱えると必死に呼び掛ける。
周りを見ればノイズがまだいる。
風鳴翼はこちらに気を取られているのかノイズにやや押され気味だった。
このままだと本当に死ぬのかもしれない。
と思ったその時だった。
辺りが緑色の光で包まれる。
同時に緑色の雷が周囲にいたノイズを一匹残らず殲滅した。
「な、何だったんだ……?」
(今のは……もしかして…。)
天羽奏と風鳴翼は困惑するが私にはそれを行ったのが誰だか分かった。
もしかして、
何はともあれ…。
「よかっ……た……。」
「!?お、おい!」
天羽奏の呼び掛けと共にわたしの意識は暗転した。
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青い部屋と付いてき(てしまっ)た者
とんでもないくらいの投稿の遅さに申し訳ございません!!!
さて今回は転生のさなかで付いて来(てしまっ)た者達を紹介します。
最後にはあの人が……!?
ふと、目を開けると目の前に広がるのは青 。
床も、壁も、天井も全てが青色に染まっている。
奥の方には大きなパイプオルガン。
左右の壁にはそれぞれ違う模様の扉が八つ。
パイプオルガンの前に青いテーブルクロスのかかったテーブルが一つ。
そして……
「やぁ。」
そのテーブルの椅子に座っている一人の青年。
彼は『望月綾時』。
二回目の転生以降から付いてきてしまった友達であり、元敵。
と、言うのも三回目の人生で彼は『デス』と呼ばれる滅びの宣告者
その理由は彼がニュクスに取り込まれ、『ニュクス・アバター』となり、その後私が自身の命と引き換えにニュクスごと封印したため今こうして私と一緒に転生し続けている。
綾時は転生し続けている理由をしてるようだけど全くと言っていいほど教えない。
あの時以来、かげながら私のサポートをしてくれている綾時は笑っていたかと思うと「フゥ」と呆れた顔でため息をついた。
「何で変身解いちゃったの?」
「声でバレちゃうかと思って。」
綾時は講義の目で私を見てきたので私は視線を逸らした。
もしあの子からアギトの変身者が女だと思われたら、範囲が絞られるかもしれないと思いあの時は変身を解いた。
けど、それが災いして槍の破片が私の心臓付近に刺さってしまった。
……本当に反省している。
「全く……君って毎回の如く無茶してるよね。呆れるくらいに。」
「……痛い所ついてこないで、綾時。」
綾時の言う通り私は誰かの為なら自らの命を投げ捨ててもいいと言う自己犠牲の精神が強い。
だから大抵死にかけることが多かった。
……本当に反省してる。
「……まぁいいや。さっきのライブが始まる前にタロットを1枚引いてみたんだ。」
「なんで?」
「気分。」
「」
ホントになんで?
そう疑問に思っていると綾時は一枚のタロットカードを私に見せてきた。
そこに描かれてあったのは『塔』だった。
「ウワァ……。」
私はそのタロットカードを見て思わずそう口に出た。
当たり前だ。何せ塔は大アルカナの中でも最もネガティブとされる大アルカナだからだ。
正位置の意味は崩壊や大災害で、逆位置の意味は緊迫状態と言うようにどっちにしろ最悪。
このアルカナが出たということはこの先、とてつもない災難に会う、または世界に影響を与えるほどの災害が起こるということだ。
……一言で言うなら。
「最悪だ……。」
その一言に尽きる。
「まぁそうなるよね……(苦笑)。どうする?今からでも対策考えとく?」
綾時は苦笑いしながら、今後の事をどうするかと聞いてきた。
……正直、今対策を考えておきたいけど恐らく私は今治療中。それに今がどんな状況かも分からない状態で考えても仕方がない。
だから……。
「………今はやめとく。療養に集中したいし。」
私がそう言うと綾時は「分かった」と言って笑いかける。
そして、私はベルベットルームを出ようとする。
カチャ「なら私と綾時で考えておきましょうか?貴女の様子を見ながら。」
扉が開く音が聞こえると同時に、女性の声が辺りに響き渡る。
私は「あぁ、そうだ」と小さく言いながら彼女もいたのだと思い出す。
その女性は腰にまで伸びる薄紫色の髪をして、眼鏡をかけ、いかにも知的な雰囲気を出している。
彼女とは
彼女の名は『
そう、あの有名な石化の魔眼を持つという蛇の怪物である。
こうして見ると本当に怪物とは思えない程綺麗で美しい女性だと思う。
…………………出来るなら少しだけでも添い寝を……。」
「えっと…………コトネ?」
「…………(ºДº)ハッ‼な、なんでもないなんでもない。」
「は、はぁ……。」
「…………。」┐(´∀`)┌ヤレヤレ
メドゥーサの声で私は現実(夢と現実の狭間の中だけど)に戻りなんでもないと告げる。
綾時はヤレヤレという感じの仕草をしてたけどどうでもいい。
因みに「コトネ」は私が初めてメドゥーサと対峙した時の名前である。
「じゃあ……お願いしていい?」
「分かりました。」
「綾時もいい?」
「分かったよ。任せて。」
私が聞くとメドゥーサが承諾を得て微笑む。
綾時にも聞くと綾時もメドゥーサと同じように微笑む。
それを確認して私はベルベットルームから出ていく。
「出来るならばモテメガネをかけて大変な事にならないようn「その話はもうやめて欲しいしもう掛ける気もサラサラないしどうしてその話が出てくるの」」
メドゥーサの言おうとした事を遮って私は出ていった。
…………あれは、大変な事件だったな…………………………。
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(これは…………病院の天井か。)
私にとっては見慣れたであろう病院の天井を見てそう思う。口には酸素マスクが付けられている。
どうやらあの後私は病院に運び込まれ手術をしたらしい。その証拠に胸元に僅かな痛みを感じる。
当たり前か。何せ槍の破片が刺さったのだ、手術になっても仕方がない。
ふと、右腕に重みを感じるのでそちらを見てみると未来がすやすやと寝ていた。
可愛いなと微笑んでいるとその先に別の人物がいた。
私はその人物を見て丸くした。
その人は宝塚に出ててもおかしくないほどの男装の麗人。
私が目が覚めたことに気が付くとふと笑いかけて言った。
「久しぶりだな、アビゲイル。いや、今は響と呼んだ方がいいか?」
彼女の名は『
私の15回目での人生で上司であった人だ。
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