この幸運を司る駄女神に祝福を!  (エルメール)
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こんにちは、エルメールです!
今作はエリス様とアクア様の逆転です。
これは正直かなり難しい…
前作の10倍は難しいです。
正直作者も完結できるかわかりません!
投稿はかなり遅くなりますが勘弁してください。


転生者

 

地球で死んで異世界に転生した人間達。転生者は異世界に降り立つ際に特典として一つだけ望んだ力を与えられる。女神は特典を授けたら報告する義務があるらしい。これを忘れると始末書が大変な事になるとか……

 

エリス教

 

幸運の女神エリスを御神体として崇める宗教。娯楽の街エリクレインを総本山として活動している。信者達は女神エリスの祝福を受けているので幸運値がとても高い。賭け事が好きな人間が多く、エリス教徒なら子供すらカジノに入り浸るなど当然の事。

エリス教徒は日々熱心に勧誘を行っていたり夜中でも構わず騒いだり等様々な迷惑行為を働いている。だがさすがのエリス教徒もアクシズ教徒には頭が上がらないようで、街中で正座をさせられてお説教されている姿をよく見かける。

 

アクシズ教

 

水を司る女神アクアを信仰するこの世界の最大宗派で国教にもなっている。アクア様は女神エリスの先輩だという事は広く知られており、エリス教徒が迷惑行為を働いた時には代わりに頭を下げて謝罪している姿が度々目撃されている。

アクアの人柄が反映されており、困った者には無償で救いの手を差し伸べるなどを教義としている。一方で悪魔やアンデッドにはいつもの慈愛の精神はどこへやら、苛烈なまでの敵意を示す。

 

娯楽の街エリクレイン

 

エリス教徒の総本山。別名「欲望の街エリクレイン」その名の通り様々な娯楽施設が集まっているが一番多いのはカジノや賭博場。

住民のほとんどは幸運値の高いエリス教徒で、何も知らずに賭博場に足を踏み入れた観光客は一時間もしない内にパン一にされてしまう。そして負け分を払えなくなった哀れな観光客に「入信すれば負け分はチャラにしてやる」と囁いて入信書にサインをさせるのだ。

そして何より恐ろしいのはこの街が王国の経済の中心で国に対して絶大な影響力を持っているという事。

 

通貨

 

今作での通貨は原作と同じ「エリス」「逆転しているのだから単位は「アクア」じゃね?」と思われるかも知れないがこれにはきちんと理由がある。

と言っても大した理由はなく、普通に王国の経済の中心がエリクレインだからというだけだ。(作者は最初、単位を「アクア」にしようと思ったが○○アクアだと違和感があるのでやめたという裏事情も…)

 

 

※注意!

 

・このお話にはオリジナルの展開が多数入ります。その為原作イベントがあまり進みません。

・作者は下書きとか一切書いてません。行き当たりばったりで書いています。なので更新は超不定期になると思います。



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銀髪の毒舌女神、その名は…

どうも、エルメールです!
昨日は仕事でとても疲れたのでこの後酒でも飲もうかな…
いやいや!今回はバックアップもとってあるので安心ですよ!?
では、本編どうぞ!


ここはどこだ?

 

俺の名前は佐藤和真、気が付けば俺は知らない場所にいた。そこは目の前の椅子以外本当に何もない空間だった。

 

「佐藤和真さん。ようこそ死後の世界へ。私はエリス、あなたを新しい道へ案内する女神です。あなたはつい先ほど不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたは死んだのです」

 

そう言いながら歩いて来たのは小さな銀髪の女の子。普通なら「何言ってんだコイツ」で終わらせるような話だが、このおかしな空間や少女から感じる神聖なオーラのせいで嘘だとは思えない。

……そうか、俺は死んだのか。少しずつ思い出して来た。確かトラックに轢かれそうになった女の子を助けて……。

 

「すみません、一つ聞いていいですか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「俺が助けた女の子はどうなったんですか?」

 

「生きてますよ?あなたが突き飛ばしたせいで膝を少し擦りむいた位です」

 

よかった、あの子は助かったのか。俺の死は無駄じゃなかったんだ。やり残した事はまだたくさんあるけど、最後に人の役に立てたんだ。

悪くはないな。

 

「まぁ、あなたが突き飛ばさなければ怪我もしなかったんですけどね」

 

「……え?嘘でしょう?俺が助けなければトラックに轢かれて」

 

「トラックですか?……ああ、そうでしたね。フフッ

 

何を笑っているのだろう、何故か嫌な予感がする。

 

「あなたがトラックだと思っていたのはトラクターですよ。本当なら彼女の手前で止まっていたんです。クスクス……それをあなたが突き飛ばしたせいで彼女は怪我をしてしまったという訳です」

 

は?じゃあ何か?俺はトラクターに耕されて死んじまったってのか!?

 

「いいえ?ショック死です」

 

「ショック死?」

 

「はい、ショック死です」

 

意味が分からない、何故ショック死なのだろう。

トラクターに耕されて死んだというならまだわかる、あまりにもダサくて分かりたくないがまぁ分かる。

だが、ショック死?どういう事だ?

 

「あなたはトラックに轢かれたと思い込んであまりの恐怖に失禁、心臓麻痺を起こして死んでしまったんです。そしてそのまま病院に搬送されたはいいものの、医者も看護師も死因が分かった途端大爆笑。笑っている間に手遅れになりあなたは……」

 

「うわぁぁぁ!やめて、聞きたくない!!」

 

嫌だ!これ以上聞いていたら俺の中の大事な何かが壊れてしまう!

 

「家族も最初は悲しんで泣いてくれたようですが……ふふふっ今は笑い泣きといった感じですね。まぁそれはそうでしょう。あなたの死に方はとても滑稽……いえ、愉快でしたから。もしかして芸人を目指していらっしゃるんですか?」

 

「違います!」

 

誰が芸人だ!というか今滑稽って言ったか!?本当に女神かこいつ、人の死因を笑うとか絶対邪神の類いだろ。

目の前の女を殴りたくなったが我慢する。この女は腐っても女神らしいし、怒らせたらどうなるのか分からない。

 

「まぁあなたが何だろうが興味はありません。私はただ導くだけ。今あなたには二つの選択肢があります。一つ目は天国ですね」

 

「天国?」

 

天国っていったらあれか?俺の知っている天国と同じだよな?行けば幸せになれるっていうあれだよな?

 

「そんな訳ないじゃないですか。あなた達は天国と聞いたらとても良いところを想像しているんでしょうけど、あなたの大好きなゲームやパソコン等はありませんし、そもそも体も無いから食べる事も性欲を満たすことも出来ません。老人のように1日中ぼーっとして過ごすだけです」

 

そんなもん地獄と一緒じゃねぇか!つーかなんでこいつは俺の考えてる事が分かるんだ!?女神ってそんな事も出来るのかよ!

 

「もちろん出来ませんよ?ただ人間がここに来た時の反応はほとんど同じですからね。読みやすいんですよ」

 

そういうものなのか。まぁいきなりこんな場所に来たらそりゃあ似たような反応するだろうな。

とりあえず納得して天国は嫌だと伝える。

 

「そうですか。では赤ん坊からやり直しますか?記憶は消してから転生させるので心配はいりませんよ」

 

それも嫌だな、記憶が消えるという事は俺という存在がいなくなるという事だ。

 

「分かっていますよ。どちらも嫌なんですよね?そんなあなたには特別にもう一つの選択肢を与えましょう」

 

とても怪しい、怪しいが天国も赤ん坊も嫌なので最後まで聞いてみる。

 

「あなたはゲームをやっていて『自分も主人公のように冒険したい!』と思った事があるでしょう?」

 

確かに俺もそんな冒険が出来たらいいなと考えた事はある。ゲームのように魔法を使ったりとか剣でモンスターを倒すとかやってみたい。

 

「他の世界に転生してみませんか?条件はその世界にいる魔王を倒す事だけ。まぁその世界には他にも転生した人がいるので、魔王討伐はその人達に任せておけばいいでしょう。正直あなたのようなニートには期待していませんので、自由に異世界を楽しんではどうですか?」

 

「……でも異世界に行ってもすぐに殺されたら意味がないだろ」

 

俺は引きこもりだ、戦闘なんて出来る訳がない。

だがRPGには必ずモンスターがいる。剣も振った事のない俺がそんな世界で生きていけるのか?

それ以前に言葉が通じるかも分からない。

 

「あぁ、心配はいりませんよ。異世界に転生する人達にはどんな物でも一つだけ特典として授ける事になっているんです。何でも切り裂く剣やどんな魔法でも使える能力など、お好きな物を選んでください。言語に関しても問題ありません。異世界に送られる際に脳に直接ダウンロードするので読み書きも完璧ですよ。……まぁ、運が悪ければ頭がパーになってしまいますけど

 

「おい、もう一度言ってみろ。パーが何だって?」

 

「さぁ?何の事でしょう、それよりもこれを差し上げます」

 

そう言って紙の束を渡してきた。見てみると色々な武器や能力が書いてある。

これはまさか……

 

「はい、その中から一枚選んで下さい。もちろんそこに書いてある物以外でも構いませんよ。ですが一つしか選べませんので注意してくださいね」

 

一つだけか、結構悩むな。この女が言った事が正しければ他にも転生している奴らがいる筈だ。そいつらも当然この特典を受け取っているだろう。

それでも勝てないとか魔王強すぎるだろ……これは慎重に決めないと詰む。

 

 

2時間後

 

 

「そろそろ決まりましたかー?どうせあなたのようなニートなんか何を選んでも一緒なんですから早く決めなさい。私だって暇じゃないんですよー?」

 

クソッこの女、バカにしやがって!

……ん?ちょっと待てよ?

 

「なぁ、さっきここに書いてないものでも良いって言ったよな?」

 

「……?えぇ、構いませんよ。やっと決まりましたか?全く、私を待たせるとは良い度胸ですね。今日は見たいドラマがあったのに」

 

「ドラマ!?……まぁいいか、あぁ決まったよ。異世界に持って行く「モノ」だろ?」

 

「早く言いなさい」

 

「お前」

 

俺達の間に数秒間沈黙が訪れる。

 

「は、はあああぁぁぁ!?そんなの常識的に考えて出来るわけないでしょう!?何を考えているんですか!」

 

まさか人の死因を笑う奴に常識を説かれるとは思わなかった。こいつは駄目だと言うが本当に出来ないのだろうか。

この女はどんな物でも一つだけ持っていけると言っていた。ならばたとえ女神だとしても問題ない。

答え合わせの様に俺と女神の足元に魔方陣が現れ、上から神々しい光と共に背中に羽を生やした女性が降りて来る。

 

『佐藤和真さん。あなたの申請は受理されました。今この瞬間より、女神エリスをあなたの特典として認めます』

 

「嘘でしょう!?そんなの嫌です!そもそも女神を特典なんて出来る訳が……あれ?もしかしてこの男と一緒に行けば女神の仕事をしなくても良い?」

 

あれ?女神の様子がおかしい。最初はいい気味だと思って見ていたが……

いや、気のせいだろう。何せ女神だ、多少性格に難があると言っても能力は高いだろう。

 

『……言っておきますが、帰って来るのが遅ければ仕事は溜まっていきますよ』

 

「そんな!私を下界に送るならその間の仕事は全部終わらせておいてください!」

 

『しばらくは私が代わりにやっておきますがあまりにも遅いなら後は放置しておきます。そうしないといつまでも帰って来ないでしょうから』

 

「ぐぅっ!そ、そんなことはないですよ!?その……ええい!ちょっと長めの休暇だと思えば!」

 

どうやら俺はとんでもない間違いを犯してしまったのではないだろうか。いや、まだ決まった訳ではない!

諦めるな佐藤和真、諦めたら試合終了だろう。

とりあえず……

 

 

「チェンジでえぇぇぇ!!!」

 

「行って来まああぁす!!!」

 



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駆け出しの街、アクセル

こんにちは、未だに前書きって何を書けばいいのか分からないエルメールです!
いや本当に何を書いたらいいんでしょうか。
近況報告?それなら活動報告欄に書くし…
下手な事を書くとネタバレになっちゃうし…
なら前書きは書かなくていいよと言われてしまえばそこまでなんですけどね。


気が付くと俺達は町の真ん中に立っていた。町並みは中世のヨーロッパ。道には腰に剣を携えた男や、杖を持った魔法使い等様々な人間が歩いている。

 

「おお、すげぇ!まさに異世界って感じだ!なぁエリス、この世界なら魔法とか使えちゃったりするのか?モンスターと戦って強くなれたりするのかなぁ!?」

 

モンスターと戦ってレベルを上げる、魔法を使って仲間を援護する。そんな妄想が膨らんでいく。危険だと分かってはいるが憧れの方が勝ってしまう。

 

「おい!早く行こうぜ、RPGならまずはギルドが定番だよな!」

 

俺は早く行こうとエリスを急かす。だが……

 

「嫌ですよ。何で職場から逃げ出せた(休暇をとれた)のにわざわざ冒険なんて疲れることをしなければならないんですか?幸いしばらくの間はあの天使が代わりに仕事をしてくれる様ですし、ゆっくりしましょうよ」

 

「ふざけんな、俺は冒険がしたいんだよ。こんな風景見せられて我慢なんか出来るわけないだろ?いいから行くぞ、ギルドはどっちだ?」

 

「さぁ?私もそこまで詳しくは知りません。そもそも異世界はここだけではありませんから。そんな数ある世界の、しかもこんな辺境の町なんて知るわけがないでしょう」

 

……こいつ、使えねぇ。

 

「あぁそうだ。この世界では私のことはクリスと呼んで下さいね」

 

「何でだよ。普通にエリスで良くないか?」

 

どうして偽名なんか使うんだろう。別に悪いことをしている訳でもあるまいし……

 

「この世界の通貨がエリスだからですよ。そのまま名前で呼ばれては面倒な事になるのは当然でしょう?これだからヒキニートは……少しは考えて発言しないと頭が足りないのがばれてしまいますよ」

 

「ヒキニートはやめろ、引きこもりとニートを足すな」

 

一言多いんだよ。それにしても通貨にこんな女の名前を使うとは……この世界は大丈夫なのか?

まぁいい、とにかく今はギルドだ。しかし場所が分からないとどうしようもない。

 

「おや?何か困り事かい?」

 

どうしようか考えていると優しそうなおじいさんが話しかけて来た。俺は正直にギルドの場所が分からないと伝える。

 

「ふむ、君たちは冒険者になるのかな?ギルドならあそこだよ。ほれ、向こうに大きな建物があるだろう」

 

そう言っておじいさんが指差したのはかなり大きな建物だ。成る程、言われてみれば確かにそれっぽい建物に見える。俺はおじいさんにお礼を言って早速ギルドに向かう。

 

ギルドに入るとそこはゲームでよく見る光景そのものだった。酒場があってクエストボードがあって、まさに冒険者ギルドという感じだ。異世界に来たという実感が増し感動していると、近くに座っていたモヒカンマッチョなおっさんが話しかけて来た。

 

「おいおい、何だお前ら。ここは子供の遊び場じゃないんだぜ?それになんだその格好は。冷やかしならさっさと出ていけ」

 

「いや、実は俺達は遠くから来たばかりでな、今この街についたところなんだ。冒険者になりに来たんだよ。魔王軍と戦い、魔王を倒す為にな」

 

「ああそうかい、命知らずめ。ようこそ地獄の入り口へ!ギルド加入の受付ならあそこだ」

 

そう言って奥のカウンターを指差す。俺達は言われた通りに受付に向かって歩く。

 

「なかなかやりますね。その咄嗟の作り話や巧みな話術。あなた冒険者よりも詐欺師の方が向いてるんじゃないですか?」

 

「誰が詐欺師だ!異世界から来ましたなんて言える訳ないだろ?」

 

「それもそうですね。しかしこんなに出来るのに何故引きこもりなんてやっているんですか?毎日毎日ゲームばかり……やはりあなた方オタクというのは理解出来ません」

 

「おいうるさいぞ。いいかエリ……いや、クリス。今日はギルドの登録と泊まる場所の確保まで進める」

 

「分かりました。ゲームはよく分かりませんが『お約束』というものですね」

 

「そういう事だ。よし行くぞ」

 

クリスも納得した所でカウンターまで進む。いくつかあるが俺は迷わず一番綺麗なお姉さんの所へ向かう。心なしかクリスの視線が冷たくなっているが気のせいだろうか?

 

「さすがカズマさんですね、迷わず若い女性を選ぶとは。言っておきますが彼女も友人もいないような童貞オタクには靡かないと思いますよ」

 

「うるさい!こういう綺麗な受付嬢には色々あるんだよ。元凄腕の冒険者だったりな。そんな人と仲良くなっておけばアドバイスをくれたりするかもしれないだろ?」

 

「ふむ、これも『お約束』という訳ですね」

 

全く失礼な!俺を何だと思っているんだ。でも今はこいつに構っている場合じゃない。

 

「すみません、冒険者登録をしたいんですが」

 

「そうですか、では最初に登録手数料がかかりますが?」

 

「はい、手数料ですね……え?」

 

手数料!?聞いてないぞ?

 

(おいクリス、お前金持ってるか?)

 

(フフッ女の子からお金を巻き上げるんですか?ひどい男ですね)

 

(おい、何笑ってんだ?まさかお前……)

 

(どうしたんですか?何か気になることでもありました?)

 

(知ってたな?登録料の事、知ってて黙ってたな?)

 

(クスクス……やっと気づいたんですか?ええ、そうですよ。たとえ冒険者登録だとしても、手続きをする以上手数料が発生するのは当たり前です。地球でも契約や手続きにはお金がかかるでしょう?それ位引きこもりでも知っていて当然ですよ)

 

ぐぅっ!正論過ぎて言い返せねぇ。

 

(世間知らずのヒキニートが手数料の事も知らずにドヤ顔で「冒険者になりにきたのさ……キリッ」……なかなか面白かったですよ)

 

チクショー!ここぞとばかりに煽って来やがる!

本当に女神かよこいつ。女神ってのはもっとこう……慈愛に満ち溢れていて、優しく包み込んでくれるような……

 

「あのーすみません。冒険者登録、どうしますか?」

 

「ああ!ごめんなさいごめんなさい!えっと、今は持ち合わせがないのでまた後でもいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

やべぇ、完全に忘れてた。だがお姉さんは笑顔で許してくれた。そうだよ、女神ってのはこういうのだよ。お姉さんに謝りひとまずギルドの食事席に移動する。

 

「おい、最初から躓いたぞ。普通こういうのって少し位金を持って始まるものじゃないか?ジャージ一丁でどうしろってんだよ」

 

「私は冒険者にならなくても大丈夫ですよ?働きたくないですし」

 

「そんな事言ってる場合じゃねーんだよ!このままじゃ泊まる所はおろか飯を食う事も出来ないんだぞ!?」

 

「ニートはやはり使えませんね、格好良かったのは最初だけですか。仕方ありません、ついてきなさい」

 

クリスに連れられ、ギルドを出て少し歩く。ずいぶん自信があるようだが何をするつもりだろうか。

 

「この辺でいいでしょう。さぁ刮目しなさい、これが女神の力です!」

 

クリスが目を閉じて集中するといかにも金持ちな男が目の前を通り過ぎる。何かを落としたようだ。それをすかさずクリスが拾い男に話しかける。

 

「すみません、この財布あなたのですよね?落としましたよ」

 

「む?ああ、ありがとう。これはお礼だ、受け取りたまえ」

 

「なぁっ!?」

 

金持ちからお礼としてかなりの金を渡されるクリス。男に見えないように「計画通り……」といった顔をしている。あんなの女神がしていい表情じゃないだろ。

 

「どうです?これが私の力です。ほら、少しだけ恵んで差し上げます。冒険者になってしっかり稼いで来て下さいね」

 

「お前もやるんだよ!つーかなんだ今の、ただのマッチポンプじゃねぇか!」

 

だが金は手に入ったのだ。うるさく言うのはやめてやろう。ここで機嫌を損ねてやっぱ返せと言われたらたまらない。

 

 

「あの、手数料持って来ました」

 

ギルドに戻った俺達はさっきの受付嬢に金を渡す。

 

「はい、二人で2000エリス頂きます。ではこちらの水晶に手を翳して下さい。そうすれば冒険者カードに名前やステータス等が刻まれますので」

 

俺はワクワクしながら言われた通り手を翳す。

さぁ、俺の冒険者生活の第一歩!そのステータスは……?

 

「はい、ありがとうございます。サトウカズマさんですね、えっと……どれも普通ですね。知力がそこそこ高い位で……おや?幸運値がかなり高いですね!まぁ冒険者に幸運はあまり必要ないんですが……これなら冒険者ではなく商人になるのをオススメしますよ?」

 

「おい、いきなり冒険者人生を否定されたぞ。どうなってんだ?」

 

「さぁ?特典に武器や能力を選ばなかったのでそれが元々あなたのステータスなんじゃないですか?まぁニートなら当然ですね」

 

クリスに抗議するが軽く流される。

 

「それでも冒険者になりたいなら基本職の「冒険者」にしかなれませんけど、どうしますか?」

 

「……冒険者でお願いします」

 

「ま、まぁレベルが上がれば転職も可能ですし、気にしない方がいいですよ?」

 

お姉さんの優しさが痛い。あぁ、この女神もこれ位優しければいいのに。

 

「次は私ですね」

 

今度はクリスの番か。性格のステータスがあれば間違いなくマイナスだろうな。そうすれば思い切り笑ってやるのに……

 

「は、はあああぁぁぁ!?何ですかこのステータス!」

 

「どうしました?そんなに凄いんですか?」

 

「凄いなんてものじゃありませんよ!?魔力はかなり低いですがそれ以外の数値が大幅に平均値を越えてますよ!そして何より幸運値が異常です。ここまで高い人は初めてみました、あなた何者なんですか?」

 

「まぁ当然ですね。こんなニートとは違うのです」

 

ニートニートうるさいぞ!というかこういうのは俺のイベントじゃないのか?くそっ特典でチートを貰っておけば……

 

「これなら魔力を必要とするウィザード系やプリースト系は無理ですがそれ以外なら何にでもなれますよ!ソードマスターやクルセイダー、アサシン等ありますがどうしますか?」

 

「そうですね、剣を振ったりするのは疲れますしアサシンでお願いします」

 

アサシンって暗殺者の事だよな。仮にも女神がそれってどうなんだ?

 

「アサシンですか、盗賊の上級職ですね。敵感知や罠解除などの盗賊スキルは勿論、敵に多様な状態異常を与えたり不意打ちや奇襲が得意な職業です」

 

そう言われ俺達の冒険者カードを渡される。

 

「ではクリス様、ギルド一同あなたのご活躍をお祈りしています!」

 

ギルド中から拍手と共に様々な声が聞こえてくる。俺はおまけかよ、なんか気に入らねぇ。

だが関係ない、これからレベルを上げて活躍してやる!それでハーレムなんか作っちゃったりして……夢が広がるな。

 

「おや?カズマさん、そんな変な顔をしてどうしたんですか?元から変な顔なのであまり変わりませんね」

 

「誰が変な顔だ!これから俺の異世界生活が始まるんだから楽しみなのは当たり前だろ!」

 

まぁいい、これから夢の異世界生活が始まるんだ!あぁ、本当に楽しみだなぁ……




今回はこれでおしまいです。
お礼を貰った時のエリス様の表情が気になりますか?
夜神月君がLを殺した時の顔を思い浮かべれば大体合ってます。
DEATH NOTEを知らない人は「夜神月 計画通り」
と検索すればでてくると思います。


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ジャイアントトードを討伐せよ!

今回はクエストです!
原作ではアクアがアホなせいで散々でしたがこの作品のエリス様はかなり頭がいいし…
でも読者的には簡単にクリアしてしまっても面白くないでしょう?
なので展開を考えるのは大変でした。

やはりこのすばで完璧なチートはお呼びではないとエルメールは思う訳ですよ。
能力は高いのに中身が駄目なせいでうまく実力を発揮出来ないとか…
なので納得がいくまで何度も書き直してしまいました。


……地獄でした。


「よし、じゃあ早速クエスト行くぞ!早くレベルを上げて強くなりたいからな」

 

やっぱりクエストをクリアして金を稼ぐのはゲームの定番だよな!クリスから貰った金はまだ残っているがそう多くはないし。何より自分で稼がないとまたクリスにバカにされるし……

 

「何を言っているんですか?自分の格好を見てから言ってくださいね。あなたの装備、ジャージだけじゃないですか。剣も持たず丸腰でモンスターに挑むとはさすがカズマさんですね」

 

「ふん、さっきのお姉さんの説明を聞いてなかったのか?クエストの報酬から少し引かれるけどギルドでは武器の貸し出しもやってるんだよ」

 

そう、冒険者登録を終わらせてから軽い説明会のようなものがあったのだ。何でもこの街で冒険者になる人間にはたまに全くと言っていい程何も知らない奴がいるらしい。

……そいつら絶対転生者だろ。まぁそんな人間の為にギルドでは希望者に講習を行っているのだとか。

 

「貸し出しているとは言っても最低限でしょう。安物の剣やナイフくらいしか貸してくれないんですよ。そんな装備でモンスターを倒せると思ってるんですか?」

 

確かに貸し出しは最低限の武器だけだ。だがここは駆け出しの街アクセル。弱いモンスターしかいないだろうし何とかなるだろう。

 

「分かっていないようですね。どうせここは最初の街だから弱いモンスターしかいない。だから弱い装備でも簡単に倒せるとでも思っているんでしょうけど、この辺りの弱いモンスターは駆除されてもうほとんど残ってませんよ」

 

「はあ?何でだよ、ここは初心者の街だろ?」

 

「自分達でも倒せるモンスターをわざわざ冒険者に頼む必要はないでしょう?依頼人も困っているから依頼するんです。現実はそう甘くはないのですよ」

 

くそっ!ゲームみたいな世界なのにどうしてこういう所だけ妙に生々しいんだ!

 

「……いや、行くぞ。強いモンスターしかいないなら武器の貸し出しなんて意味がないだろうし、きっと少ないだけで何かあるだろう」

 

「随分勘がいいですね。無くはないですが……」

 

なんか含みのある言い方だな。何だって言うんだ?

 

俺達はクエストボードの前まで移動する。ボードにはかなりたくさんクエストが貼ってある。だがどれも高難度と呼べる物ばかりで初心者向けのクエストはほとんど無かった。

 

「良いのが全然ないな。なぁクリス、お前がさっき言ってたクエストってどれなんだ?」

 

「これですよ。ジャイアントトードの討伐依頼です」

 

そう言って一枚の紙を剥がすクリス。

その紙には

 

『ジャイアントトード5匹の討伐 

 報酬 10万エリス』

 

と書かれていた。

 

「ジャイアントトード?でかいカエルか……それを5匹倒せばいいんだな。簡単じゃないか」

 

「その余裕がいつまで続くんでしょうね。ではこれを受けますか?」

 

勿論受ける、いくら最弱職だからってカエルごときに負けてたまるか。クリスがクエストの受注を終わらせて戻って来る。

 

「終わりましたよ。では早速行きましょう」

 

「何だ、随分やる気だな。さっきまであんなに嫌がってたのに」

 

「早く終わらせればその分早く帰ってこれるでしょう?私は無駄な事はしたくないのです」

 

「……俺を煽って来るのは無駄じゃないのか?」

 

「ええ、だって楽しいですし」

 

「お前性格歪みすぎだろ。人の嫌がる事はしちゃいけないって昔親に習ったんだが」

 

「その両親だってあなたの死因を笑ったじゃないですか。あなたは笑われて嫌じゃなかったんですか?」

 

「お前も笑っただろうが!」

 

全く、ああ言えばこう言う。この瞬間俺の中での目標が決まった。この女を言い負かして悔しがる顔を拝んでやる!

 

「そんなことより、武器も借りて来ましたし早く出発しませんか?このままでは日が暮れてしまいますよ」

 

「誰のせいだと思ってんだ!?」

 

今は口喧嘩では勝てないと思った俺は文句を言いながら武器を受け取る。

 

「じゃあ行くか。見てろよクリス、カエル程度簡単に倒してやるからな!」

 

 

―――………

 

 

「うわああぁぁ!!助けてくれえぇぇ!」

 

ジャイアントトードを狩りに草原まで来た俺は現在カエルに追われている。カエルなんかで大声出すとか情けないと思うかも知れないがでかいのだ。具体的には俺の体の倍……いや、それ以上。

こんなもんどうやって倒せって言うんだ!

 

「あらあら、先程何やらカッコいい事を言っていたカズマさん。カエルと鬼ごっこですか?楽しそうですね」

 

「うるせーぞクリス!いいから早く助けてくれよ!」

 

「すみませんが私はか弱い女性なので、戦闘などとてもとても……」

 

「嘘つけ!お前上級職だろうが!」

 

「だって面倒ですし。カエル程度簡単なんでしょう?頑張ってくださいね」

 

「俺が悪かったから!謝るから助けてくれ!……ってあれ?」

 

必死で逃げているとなぜかカエルはクリスの方に向かって行った。

 

「はぁ?なぜこちらに来るんですか!?あっちに行きなさい!ほら、あの冒険者なんてどうですか?すごく美味しそうですよ!?」

 

カエルはクリスの言うことには耳を貸さずにどんどん近づいていく。今あいつ俺を売ろうとしたな?そのまま食われちまえ!

 

「やめなさい!近づかないで!いや、いやぁぁ!」

 

あれ?様子がおかしい。食われてしまえとは思ったがクリスのステータスならあんな奴一撃だろうに、何であんなに怯えているんだろう。

まさかあいつ……カエルが怖いのか?

 

「嫌です!こっちに来ないでください!助けて、たぷっ!」

 

食われた。頭からパクリといかれたようだ。女神の踊り食いと名付けよう。

 

「なんて言ってる場合じゃねぇ!おいクリス、大丈夫か!?」

 

俺は剣を構えて走り出す。カエルはクリスを食うのに夢中なのか一歩も動かない。これなら俺でも何とかなるだろう。

 

 

―――………

 

 

「ぐすっ、何で私がこんな目に……ただカズマさんが無様に逃げ回っているのを見ていただけなのに」

 

「だからじゃないか?きっと神様がお前に罰を与えて下さったんだよ」

 

「あなた私の正体を知っているでしょう!?性格の悪いニートですね!」

 

ボコッ!ボコボコッ!

 

「「えっ?」」

 

クリスがニートと言った途端に地面から大量のカエルが姿を現した。

 

「ほらっ!やっぱり天罰だよ!」

 

「違います!今のは大きな声に反応しただけです!」

 

「とにかく逃げるぞ!一匹なら(クリス)がいれば何とかなるがあれだけいたら流石に無理だ!」

 

「今餌って言いました!?もうカエルに食べられるのは嫌ですよ!忘れてるみたいですけど私は女神ですからね!?」

 

騒ぎながらアクセルまで逃げ帰って来た俺達はまず銭湯に行って汗を流す事にした。クリスが粘液まみれで生臭かったのだ。そのせいで街に入ってから変な目で見られる事になった。

 

風呂に入ってさっぱりした後はギルドに戻って夕飯を食べる。

 

「そう言えばクリス、お前カエルが苦手なのか?」

 

「ななっ、何を言っているんですか!?私は女神ですよ!カエルが苦手とかあるわけないでしょう!」

 

ストレートに聞いてみたがどうやら当たりらしい。女らしい所もあるもんだと思い見ていると……

 

「何ですかその目は!ニートの癖に女神を疑うとは不敬ですよ!?」

 

「そんな事言ってるとまた天罰が下るかもな」

 

「ひぃっ!」

 

「ほらみろ、やっぱり怖いんじゃねぇか。無理すんなよメガミサマ」

 

「そのニヤニヤとした顔をやめなさい!不愉快です!」

 

珍しく優位に立つことが出来た俺はどんどん煽っていく。

 

「いやぁ、恥ずかしがることじゃないんだぜ?お前も女だからなぁ……」

 

「……っ!御馳走様でした!先に宿に行ってますよ!寄り道せずに帰ってきなさい!」

 

そう言ってギルドを出ていってしまった。少しからかいすぎたか。残りを食べ終えて俺も宿に戻る。明日もカエルと戦うのか……

少しやり方を考えないと駄目だなぁ。




どうでしたか?
やはりエリスも女の子ですし、こんな弱点があってもいいと思いませんか?
カエルに怯えるエリスちゃん…かわいいですね!

原作の馬小屋暮らしに対してこっちではきちんと宿に泊まっています。
初日のエリス様のおかげですね。

皆さんは原作アクアと駄女神エリス…どちらと異世界に行きたいですか?


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爆裂系美少女、パーティー加入?

こんにちは!最近寒くなって来ましたね。
家では早くもこたつ、湯タンポ、暖房という三種の神器を解禁しています。
でも暖かくなると花粉がなぁ…
エルメールは花粉症なので春はとても辛いです。


次の日、俺達はギルドでパーティーの募集をする事にした。昨日のクエストで倒せたのはカエル一匹。それも動かないカエルを倒しただけだ。流石にこのままではまずいと悟ったのだ。

 

朝飯を食べながらしばらく待っていると一人の少女がこちらに向かってくる。

 

「募集の紙、見させてもらった……我が扱うのは禁じられた魔法、爆裂魔法!汝我が力を欲するならば我に力を示せ!」

 

「冷やかしに来たのか?」

 

「ちがわい!!」

 

とても痛々しい子だ。こういうのを中二病というのか?どうせ禁忌の魔法とか言っても少し強い魔法を使うだけだろう。

 

「まぁ良い、この邂逅は世界を揺るがす大いなる運命……我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!さぁ、我と共に新たな伝説を刻もうではないか!」

 

めぐみんと名乗ったその少女の格好はゲームでよく見る魔法使いそのものだ。

 

「さっきから色々言ってるが……もしかしてパーティーに入りたいのか?」

 

「ええ、そう考えてもらって構いません」

 

ふむ、確かこの子はアークウィザードと言っていたな。魔法使いならかなりありがたいが……

 

「その紅い瞳、まさかあなたは紅魔族ですか?」

 

「その通り!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が最強の魔法は山をも崩し……岩をも…砕……く」

 

ドサッ……

 

何だ?いきなり倒れてしまった。具合が悪いんだろうか。それならば早く帰って休んでほしい。

 

「もう三日も何も食べてないのです。何か食べさせて頂けませんか?」

 

どうやら腹が減りすぎて動けないらしい。このまま放って置くのもあれなのでまずは飯を食わせてやるか。

 

「ああ、いいぞ。好きに注文しろ」

 

「ありがとうございます!」

 

そう言って次々と料理を頼んでいくめぐみん。

 

「ちょっと待て!俺達もそんなに金がある訳じゃないんだ!少しは遠慮ってもんを……」

 

「大丈夫ですよ。私がいればどんなモンスターでも一撃です。お金の事は気にしないでもいいですよ」

 

「それなら三日も食べれないなんて事はないんじゃないか?クエストで稼げばいいだろ」

 

「大丈夫ですよ。私がいればどんなモンスターでも一撃です。お金の事は気にしないでもいいですよ」

 

「いやだから……」

 

「大丈夫ですよ。私がいればどんなモンスターでも一撃です。お金の事は気にしないでもいいですよ」

 

……これはあれだ、ド○クエで有名な「はい」を選ばない限り永遠に同じことばっか言う奴だ。無限ループって怖くね?

 

めぐみんが食べ終わるのを待ってから本題に入る。

 

「で?どうして俺達のパーティーなんだ?言っておくが俺達はカエルすらまともに倒せないんだぞ?」

 

「ふっ、あの張り紙を見た瞬間に気付いたのです。あなた達こそ我が仲間に相応しいと!」

 

ふむ、嬉しい事を言ってくれる。見た所かなり強そうな魔法使いだし、ぜひうちのパーティーに入って欲しい。

 

「俺は賛成するが、クリスはどうだ?」

 

「いいんじゃないですか?メンバーが増えればその分私の仕事も減りますし。それに彼女は紅魔族です。戦闘でも役に立つでしょう」

 

「紅魔族?さっきも言ってたな。なんなんだ?」

 

「紅魔族とは生まれつき高い知力と魔力を持った種族です。そのため全員がアークウィザードになれる素質を秘めているんですよ。特徴として紅い瞳と変な名前を持っているので分かりやすいですね」

 

変な名前か、確かにめぐみんとか名乗っていたな。……渾名とかじゃなかったのか。

 

「変な名前とは何ですか!私から言わせれば街の人の方が変な名前ですよ!」

 

「ちなみに両親の名前は?」

 

「母はゆいゆい、父はひょいざぶろー!」

 

「……とりあえず紅魔族ってのは凄い魔法使いが多いんだよな?」

 

「おい!私の両親の名前に文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

興奮するめぐみんを宥めながら冒険者カードを見せてもらう。この子がアークウィザードなのは間違いがないようだ。能力値も優秀で期待出来そうだ。

 

「じゃあこれからよろしくな、めぐみん!俺はカズマ、職業は冒険者だ」

 

「私はクリス、アサシンです。よろしくお願いしますね」

 

俺達はめぐみんをパーティーに加えて再度カエル狩りに向かう。

 

 

―――………

 

 

草原に着いた俺達は早速カエルを探す。

すると10m程先に3匹集まっているのが見えた。

 

「いたな。めぐみん、あいつらに向かって魔法を撃ってくれ」

 

「我が爆裂魔法は最強です。ですが発動までには準備が必要なので少し足止めをお願いします」

 

なるほど、詠唱ってやつか。相手は3匹だが足止め程度なら何とかなるだろ。既にめぐみんは詠唱を始めている。

 

「おいクリス、俺達で時間を稼ぐぞ!お前は確か奇襲が得意だったよな?まずは突っ込んでカエルの注意を引くんだ」

 

「お断りします!もう食べられるのは嫌なんですよ!カズマさんが行けばいいでしょう!?」

 

「バッカお前俺は最弱職だぞ!?あのカエルよりはお前の方が早いんだし逃げ回っていれば捕まることはないだろ。分かったら……」

 

「あなた男でしょう!?いいから……行きなさい!!」

 

「うおおおぉぉ!ふざけんなぁぁ!」

 

あの女投げ飛ばしやがった!クリスに投げられた俺はカエルのど真ん中に落ちてしまう。カエルは俺を見た途端舌を伸ばして食おうとしてくる。

食われてたまるかと俺が避けると今度は跳びながら追いかけてきた。あいつ後で覚えてろよ!?

そうしている間にめぐみんは詠唱を終えたようだ。素人でも分かる位に魔力が集まっている。

 

「今です!カズマ、避けてください!」

 

避けろったって……ちくしょう、どうにでもなれ!

俺は力を振り絞って思い切り横に跳んだ。

 

『エクスプロージョン!!』

 

ズッガァァァン!!!

 

「ぎゃあぁぁぁ!」

 

とてつもない光が放たれる。続いて耳をつんざくような轟音と吹き飛ばされるかのような爆風。その魔法が炸裂した後、そこには何も残っていなかった。本当に跡形もなく消し飛ばしたようだ。

 

「すっげぇ……これが魔法か。凄いじゃないかめぐみん!……あれ?」

 

めぐみんを見ると……倒れていた。俺があまりの光景に動けないでいると地面から大量のカエルが現れた。確か昨日もこんなだったような……。

 

「おいめぐみん?どうしたんだよ、そんな所で寝てると食われちまうぞ?」

 

「爆裂魔法は禁じられた魔法。その強大な威力の代償として魔力をほとんど持っていかれるのです。簡単に言えば魔力を全部使ったので身動き一つとれません。すみません、助けてもらっていいですか?このままでは……食べられてぴゅっ」

 

食われた。その姿は昨日のクリスと全く同じだった。名付けるなら紅魔族の踊り食い……って

 

「だからそんな事考えてる場合かーー!」

 

俺は剣を構えてカエルに向かって走る。だが流石に数が多すぎてまともに近づく事も出来ない。

 

「はぁ……カズマさん、私もお手伝いしましょうか?」

 

「当たり前だろ、お前もやるんだよ!役に立ったら罰は軽くしてやるから!」

 

「罰!?何でこの私がニートごときに罰なんか……」

 

「俺を投げ飛ばしやがっただろうが!」

 

「元はと言えばカズマさんが私を囮にしようとしたからでしょう!?」

 

「アサシンってそういう職業だろ!ってそんな事言ってる場合じゃねーんだよ!さっさと行ってこい!!」

 

流石は上級職というべきか、あっという間にカエル達からめぐみんを取り返すクリス。食料を奪われたカエルは怒ってこちらに向かって来たがしばらく走っていると諦めたのか土の中に潜って行った。

 

「ふぅ、どうやら逃げ切れたようだな……よし、今日はもう帰るぞ。流石に疲れた」

 

「でもまだ4匹しか倒していませんよ?このままではクエスト失敗になってしまいます」

 

「……明日じゃ駄目か?」

 

「私も出来ればそうしたいですが……多分明日になるとやる気が無くなると思いますよ?」

 

そう言われるとそんな気がしてきた。仕方ない、もう1匹だけ倒すか。後ろから攻撃すれば何とかなるだろ。

 

 

―――………

 

 

あれから不意打ちでカエルを倒し、街に帰ってきた俺達は粘液まみれのめぐみんを担いで銭湯に向かっていた。

 

「なぁめぐみん、爆裂魔法が凄いのは分かった。だが今度からは普通の魔法を使ってくれ。流石に一発撃って終わりじゃ使い勝手が悪すぎる」

 

「使えません」

 

「え?今何て言った?」

 

「ですから私は爆裂魔法以外は使えません」

 

はぁ!?何言ってんだこいつ!

 

「どういう事ですか?爆裂魔法なんて凄い魔法を使えるなら他の魔法も取っているでしょう?」

 

「いいえ、私が取っているのは爆裂魔法だけです。これから先もスキルポイントは全て爆裂魔法に使う予定ですので、他の魔法を覚えるつもりはありません」

 

「……そうか、頑張れよ。大変だろうが応援してるから。今回の報酬は等分だよな、パーティーの話だがやっぱり無かった事にしてくれ」

 

めぐみんを降ろそうとするが思い切りしがみついているのか全く引き剥がせない。こいつは魔法使いの筈だよな!?どんな力してんだよ!

 

「我が望みは爆裂魔法を撃つ事のみ。なんなら無報酬でもかまいませんよ?そう、アークウィザードの強力な力が、今なら食費と雑費だけで……!これはもうパーティーに入れるしかないのではないだろうか……?」

 

「いやいやいや、カエルすらまとも倒せない俺達ではその力を扱いきれる気がしない」

 

「いえいえいえ、カエルなんか倒せなくても大丈夫ですよ?私も上級職ですけどレベル6ですから、ね?だから私の手を引き剥がそうとしないで欲しいです」

 

「ふざけんな!お前絶対他のパーティーにも追い出されたクチだろ!1日1発しか撃てない魔法使いとかお断りだ!というかダンジョンに潜った時には狭い中じゃあんな威力の魔法使えねーし、いよいよ役立たずじゃねーか!」

 

ザワ…

 

何だ?周りが騒がしい。

あれ、クリス?お前なんでそんなに離れてんだ?

おい、何を笑っているんだ?そして何で息を吸い込んでるんだ?

 

「きゃあああ!こんな所にいたいけな少女を粘液まみれにして喜ぶ変態がいます!!!」

 

おいおいおいおい……

 

「なんって事を言いやがるクソ女ぁ!」

 

やりやがったこいつ!いくら何でもやって良いことと悪い事があるだろ!

 

ニヤリ…

 

その瞬間めぐみんも嫌な笑みを浮かべる。

 

「お願いします、私を捨てないで下さい、何でもしますから、私を捨てないで下さい!どんなプレイでも耐えてみせます!今日みたいなカエルを使ったヌルヌルプレイでも!それとも私とは遊びだったんですか!?1度やったら飽きてしまったんですか!?

 

「よーし分かった!入れてやるからそれ以上喋るな!」

 

そうして俺達のパーティーに新しくめぐみんが加わった。




無事…無事?めぐみんが仲間になりました。
めぐみんも魔法の威力は凄いしかなり役立つと思うんだが…
いや、1発限りだしどうだろう。


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金髪の女騎士、パーティー加入!

「痛い痛い!痛いです放してください!あれ!?もしかして怒ってます!?すみませんでした、謝りますからこれ以上強く締めないで……嫌あぁぁ!!」

 

ふぅ、酷い目にあった。

あの後衛兵に捕まって取り調べを受けていたのだ。嘘発見の魔道具のおかげですぐに釈放されたが……

 

「カズマさん!これはちょっと洒落になりませんって!頭が、頭の形が変わってしまいます!私の可愛らしい顔が潰れてしまいます!!」

 

俺達はギルドの中にいる。カエル退治の報酬をもらう為というのもあるが、何より……

パーティーメンバー募集の紙はまだ貼ってあるし、出来れば新しい仲間を見つけたい!

最弱職の冒険者、性悪アサシン、1発限りの魔法使い。正直こんなパーティーでやっていける自信はない、せめて1人位まともな奴が欲しい!

 

「カズマさん!?聞こえていますか!?そろそろ限界なんですけど!放してください、もうしませんから!!」

 

さっきから何をしているかって?お仕置きである。アイアンクローって知ってるか?掌で相手の顔面を掴んで、指先に力を入れ思い切り締め上げる技だ。

 

「うるせぇ!お前のせいで大変だったんだぞ!?少しは反省しやがれーーっ!!」

 

「きゃーー!!」

 

 

―――………

 

 

「うぅ、酷い目に合いました……女の子に暴力なんて最低ですよ!鬼!幼女趣味(ロリコン)!和魔!」

 

「なんか言ったか?」

 

「ヒィッ!な、なんでもありません!」

 

全く、酷い目に合ったはこっちのセリフだっつーの。いつもいつもバカにしやがって……。

しばらくクリスと話していると1人の女性がこちらに向かって歩いてくる。

 

「失礼、パーティーの募集はまだやっているだろうか」

 

それは美しい金髪の女騎士だった。おお、かなり美人だ!スタイルも良いし、ぜひともうちに入って欲しい。

 

「勿論ですよ!あなたなら大歓迎です、さぁどうぞ座ってください」

 

「いや、そんなにすぐ決めていいのか?他のメンバーに相談とか……」

 

しかもすごく常識的だ!素晴らしい、俺はこういう人を待っていたんだよ!

 

「カズマさん、彼女の言う通りですよ?まだめぐみんさんも来ていませんし、それまでは待ってもらいましょう」

 

「そのめぐみんはどこに行ったんだよ!すぐ戻るって言ったのに来ないじゃないか!」

 

そう、めぐみんとは風呂から出てすぐに別れたのだ。正門の方に向かって行ったがまさかアクセルを出たんじゃないだろうな!

いや、それはないか。めぐみんは今日はもう爆裂魔法を使っちまってる、戦えないのに街を出る程バカじゃないだろう。

 

しばらく待っているとギルドの扉が開き、めぐみんが勢いよく飛び込んできた。

 

「はぁ、はぁ、お待たせしました!」

 

大粒の汗を流し、息を切らせている。よほど急いで来たのだろう。せっかく風呂に入ったというのに。

 

「遅いぞめぐみん。何してたんだ?」

 

「うぅ……すみません、少し届け物を忘れていまして」

 

「まぁいいか、次は気をつけろよ」

 

やっとメンバーが揃った事だし、早速本題に入る。まずはお互いに自己紹介からだ。

 

「初めまして、俺はサトウカズマと言います。お姉さんの名前を聞かせてもらえませんか?」

 

「気持ち悪い……」

 

「なんか言ったか?」

 

「いいえ?何でもありませんよ」

 

クリスの奴、お仕置きが足りないみたいだな。俺が掌を向けると顔を青くしてめぐみんの後ろに隠れた。

 

「あの、もういいだろうか」

 

「ああっ!すいません急に……」

 

「いや、構わない。頼んでいるのはこちらなのだからな」

 

優しい、すごく優しい……。それに比べてこの女は!

 

「私はダクネス、上級職である聖騎士(クルセイダー)を生業としている。どうか私をこのパーティーに入れてほしい」

 

「ええ勿論。こちらこそよろしくお願します」

 

「「カズマ(さん)!?」」

 

うるさい!こんなに素晴らしい人材、逃がしてたまるか!

 

「なんだお前ら、何か文句あるのか?なぁめぐみん、クルセイダーといえば前衛だ。この人がいれば安心して爆裂魔法が使えるぞ?」

 

「一緒に頑張りましょう、ダクネス!」

 

よし、次はクリスだ。

 

「クリス、ダクネスがパーティーに入ればかなり仕事が減るとは思わないか?」

 

「勿論、歓迎しますよ!」

 

「という事で、全員不満は無いようなので……」

 

「ああ、ではこれからよろしく頼む」

 

やった!漸くまともな人が仲間になった!しかも上級職だし、これでクエストも大分楽になるぞ!そうだよ、今までのは何かの間違いだったんだ。

 

他のメンバーの自己紹介も終わり、クエストの報酬をもらった後、俺達は夕飯を食べていた。

 

「そういえばダクネス、なぜこのパーティーに入ろうと思ったのですか?」

 

「ああ、実は町で貴方達の噂を聞いてな」

 

噂?なんだろう、すごく嫌な予感がする。

 

「なんでも、年端もいかない少女を粘液まみれにした男がいるとか、その少女とは遊びで飽きたら捨てるとか……」

 

おいふざけんな!全部冤罪だっつーの!ていうか……はぁ!?もう噂になってんのか!?さすがに早すぎるだろう!

くそ、これも全部クリスのせいだ。早く誤解を解かないと!

 

「あ、あのですね?貴女が聞いたのは……」

 

「それにさっきもクリスをいじめていただろう?」

 

「いやそれはクリスが……」

 

「やはり私の目に狂いはなかったっ!」

 

この人全く話を聞かねぇ!つーか今何て言った!?まさかこの人も……?

 

「どうか私にも、同じ事をしてほしい!!」

 

やっぱりか!ちくしょう、この人はまともだと思ったのに!いや、諦めるのはまだ早い。もしかしたら今のは何かの間違いかもしれない。

 

「あの、それはどういう……」

 

「いや違う!パーティーに入ったのだから一緒にクエストに行きたいと言いたかったのだ!」

 

そうだよな!こんな綺麗なお姉さんがそんな事を言う筈がない。だがハァハァと息を荒げているのは何故だろう。この世界に来てから何度か感じた嫌な予感がするが気のせいだと自分に無理やり言い聞かせる。

 

……大丈夫だよな?




ダクネスが仲間になりました。
ドM成分が足りないですか?
まぁ初登場なので許してください笑

※クリスが和魔と言っていますが誤字ではありません。


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青いプリーストアリア、その正体は…

すみません、前の投稿から少し時間が立ってしまいました。
実は仕事がかなり忙しく投稿している暇がなかったんです。
家に帰ってからも疲れて続きを書く元気がなく、少しずつ書いてはいるんですが中々進まず…

これからも更新が止まる事があると思いますがその時は「今忙しいんだなぁ…」と思ってください!
別にエタってる訳ではありません。


「なぁクリス、スキルってどうやって覚えるんだ?」

 

あの後部屋で冒険者カードを見るとレベルが上がっていた。スキルポイントというものも増えていたが肝心のスキルのとり方が分からない。

 

「スキルですか?それなら冒険者カードのスキル欄から……ああ、そういえばカズマさんは冒険者でしたね。冒険者は誰かに教えてもらわないとスキルを習得出来ないんですよ」

 

確か冒険者はどんなスキルでも習得できるらしいが、爆裂魔法なんかも覚えられるのだろうか。

 

「試しに私のスキルを覚えてみますか?」

 

何を企んでいるのだろう。クリスがこんなに素直にスキルを教える?あのクリスだぞ?

 

「何ですかその目は。私は楽をする為なら手段は選びません。罠解除とか敵感知とか面倒な仕事はお任せします」

 

「じゃあ教えてくれ、どうせお前にそんな仕事は期待してないし。便利そうなスキルなら是非習得したい」

 

「どういう意味ですか!」

 

こんなに面倒くさがりな奴がそんな地味な仕事をやる筈がないって意味だよ!

 

「むぅ……まあ教えるにしても実際にやって見せないと覚えられませんし、この部屋で出来るスキルならスティールとかどうですか?」

 

「スティール?物を盗むのか?」

 

「ええ、相手の持ち物をランダムで1つだけ盗むスキルです。幸運が高ければ盗む確率も上がりますし、幸運しか取り柄のないカズマさんにはぴったりのスキルじゃないですか?」

 

「誰が幸運しか取り柄がないだ!もっと言い方があるだろ!」

 

「どうでもいいです。ほらいきますよ、『スティール』」

 

クリスの手が光るとその手には見覚えのある財布が握られていた。というか俺の財布だ。たいした金額ではないがそれでも俺の全財産には違いない。

 

「随分軽いですね。まるで羽のようです」

 

「羽は言い過ぎだろ、財布返しやがれ!」

 

「せっかくスキルを習得出来るんですから盗み返してみたらどうですか?」

 

冒険者カードを確認するとスキル欄にスティールが表示されている。よし、見てろよ!絶対に取り返してやる!俺は迷わず習得するとクリスの方へ手を向ける。

 

「いくぞ……『スティール!』」

 

さっきのクリスと同じ様に手が光るが特に何も盗めた感じがしない。おかしいな、俺は幸運は高い筈なのに。

 

「クスクス……女神である私がただの人間に負ける訳がないでしょう。しかも私は幸運の女神ですよ?」

 

あっ!そうだった、あまりにも女神らしくないから忘れてた。

 

「忘れてたんですか!?あなたの頭はどうなっているんでしょう……」

 

「黙れ!財布を盗む女神がいてたまるか、さっさと返せ!」

 

「いいですよ。こんなはした金必要ありませんし」

 

「はした金とか言うな!」

 

財布を放り投げて来たクリスに文句を言うが無視される。

 

それから敵感知や潜伏など、便利そうなスキルをいくつか教えてもらい習得できた。中々使い勝手がよさそうだ。

 

「よし、さっさと寝るぞ!明日も早いんだ、寝坊なんてしたらたたき起こすからな!」

 

「分かってますよ。子供ではないんですから寝坊なんてする筈がないでしょう」

 

俺達は布団に入るとすぐに眠りについた。

 

 

―――………

 

 

「おら朝だ、起きろ駄女神!」

 

翌朝、行儀良く寝ているクリスをたたき起こす。昨日しっかり宣言したので許される筈だ。

 

「うぅん……どうしたんですかぁ?大声を出さないでくださいよぅ……」

 

「何寝ぼけてんだ!早くギルド行くぞ、今何時だと思ってんだこらぁ!!」

 

「わわ、布団返してください!」

 

起きるんだから布団なんかいらねえだろ!お前が後5分で必ず起きるとか言うから信じてたのに!

 

「いいから行くんだよ!めぐみん達が待ってるんだから」

 

もう約束の時間まで10分もない。俺達は急いで準備をしてギルドに向かう。

 

 

ギルドに着くとめぐみん達が朝飯を食いながら待っていた。

 

「何をしていたのですかカズマ……」

 

「どうしたんだめぐみん、随分疲れているみたいだが」

 

「どうしたではありませんよ!この人とんでもない変態です!」

 

ああやっぱり。昨日の嫌な予感は本物だったんだ。何となく予想はしていたが……。

 

「くぅっ!変態だと?いいぞ、もっとだ!」

 

「何がですか!勝手に興奮しないでください変態!」

 

「あぁん!人前でこんな辱めを……フフ、カズマだけかと思っていたが、めぐみんも中々の逸材ではないか!」

 

「何を訳の分からない事を言っているのですか!カズマ、助けてください!」

 

ここで見捨てたら泣いてしまうだろう。正直関わりたくないが仕方ない。これ以上不名誉な噂を増やしてたまるか!

 

「おいダクネス、そろそろ勘弁してやれよ。めぐみんが可愛そうだろう」

 

「ならばカズマでもいいぞ、さあ街で鬼畜のカズマと言われている実力を見せてみろ!」

 

「断る!」

 

もうやだこいつ!無駄に美人なのが余計腹立つ。

ああ、なぜ神はこんなに残念な奴に無駄な魅力を与えたのだろうか。いや、神がこんなだからか。俺は隣のクリスを見つめる。

 

「な、何ですか?私の顔に何かついてますか?あの、そんなに見つめられると……」

 

「いや、何でお前が女神やってんのかなぁと。天界も人手不足なのか」

 

「どういう意味ですかニート!私だって女神なんかやりたくなかったんですよ!いつも同じ事を言う人間ばかりでつまらないですし、予想外の事故で死ぬ人が多いのでサービス残業なんて当たり前ですし!」

 

め、女神も大変なんだな……こいつが働きたくないのも分かる気がする。だからと言って甘やかしたりはしないが。

 

「おいクリス、女神とはどういう事だ?」

 

やっべえ、ダクネス達を忘れてた!どうする?めぐみんも不思議そうにクリスを見つめている。これはバレたか!?

 

「あれ?ダクネスじゃない。こんな所でどうしたの?」

 

「アリア!?アリアではないか!お前こそどうして……今の時間は教会にいるはずだろう」

 

助かった!一瞬でも意識が逸れれば十分だ。

 

「なぁダクネス、知り合いか?」

 

「ああ、この前まで一緒にパーティーを組んでいたんだ」

 

この変態(ダクネス)とパーティー?

大丈夫なんだろうか。なんか「これで誤魔化せる、やったぜ!」とか思ってたのにそれ以上に面倒な事になってきてないか?

 

「それでダクネス、この人達は誰なの?」

 

「ふふ、聞いて驚け!なんと私のパーティーメンバー達だ!」

 

「嘘でしょ?あなたがパーティーなんて断られるに決まってるじゃない……。え?嘘よね?」

 

残念ながら嘘じゃないんだ。

 

「当たり前だろう。お前はいつも私にパーティーなんて無理だとか言っていたが、私だってその気になればすぐに見つかるのだ。見ろ、このカズマの表情!目を血走らせて私に欲情しているに違いない!きっとこれから、「へっへっへ、俺に捨てられたく無ければ言うことを聞け。さぁまずは鎧を脱ぎ、俺にそのいやらしい身体を見せてみろ!」とか言って無理やり……」

 

「うわぁ、最低ですねカズマさん。実はダクネスさんをパーティーに入れたのもいやらしい事をする為なんですか?」

 

「するかぁ!何て事を言いだすんだ!お前らのせいでなぁ……もう街では変な噂でいっぱいなんだぞ!?」

 

人前で変な事を言うな!声が大きいせいで何人かこっちを見てるじゃねーか!

しかもこそこそと何か話してるし……

 

「はぁ……ごめんなさいねダクネスが。自己紹介が遅れたわね!私はアリア、この街でプリーストとして活動しているわ。よろしくね」

 

この人は中々まともそうに見えるが本当にそうだろうか。どうせまともに見えるのは最初だけとかいうオチじゃないのか?

いや、いくらなんでも出会う人全員を疑っていたらキリがない。とりあえず俺達も軽く自己紹介をする。

 

「へー、カズマは冒険者なのね。それなら丁度いいわ!プリーストのスキルを教えてあげる!ダクネスが迷惑をかけたお詫びよ」

 

プリーストって事は回復魔法!?回復役のいない俺達にはかなりありがたいスキルだ!早速教えてもらおうとするが……。

 

「決まりね。じゃあギルドの裏に行きましょう。少しあなたと話したい事もあるし」

 

もしかして告白!?やったぞ、ついに異世界らしいイベントが!

 

 

「ごめんなさい!」

 

アリアさんに連れられて裏庭へ足を運んだ俺はいきなり頭を下げられ謝罪された。

 

「ど、どうしたんですか?ダクネスの事ならスキルを教えてもらえれば構いませんよ?」

 

「違うの!それもそうだけど……エリスの事よ。あの子は昔から面倒くさがりで毎日のように仕事をサボるの。きっとあなたも大変だったでしょう?」

 

あれ?今エリスって……。

 

「あのすみません。名前を間違ってませんか?あいつはクリスですよ?」

 

「誤魔化さなくていいわ、あの子は女神。そうでしょう?最初はびっくりしたけどね」

 

「ええ!?な、何でそれを」

 

「ふふん!それは私が女神だからよ!この世界で女神アクアと言えば有名なんだけど……知らない?」

 

この人も女神!?クリス以外にもこの世界に来た女神なんていたのか。

 

「そう、知らないの……まぁいいわ。あらためて自己紹介を。私はアクア!アクシズ教徒が崇める御神体、女神アクアよ!ここではアリアって名乗っているわ。よろしくね」

 

おお、女神っぽい!どこかの駄女神とは大違いだ。

 

「じゃあ早速スキルを教えるわ。まずこの短剣で……」

 

「ちょっと待った!何してるんですか!」

 

アリアさんはどこからか短剣を取り出すと迷いなく自分の腕に突き刺そうとした。

 

「何って……回復魔法を使うなら怪我をしないと駄目じゃない?」

 

何かおかしな事を言った?と言わんばかりに、不思議そうに首を傾げるアリアさん。いやおかしいから、いくら治るとしても自分の体は大事にしてほしい。

 

「じゃあどうするのよ?誰かが怪我をしないとスキルが使えないんだけど」

 

「俺がやります!だからその短剣を……」

 

「分かったわ、えい!」

 

ブスッ!ブシャァァ!!

 

「ぎゃあああ!だから何してるんですか!」

 

短剣を渡してと言いかけた瞬間に思い切り刺された。とんでもない量の血が吹き出し、まるで漫画のようだった。

 

「ああごめんなさい!ここまでする気は……」

 

「いいから早く魔法!回復魔法を!」

 

「わわわ分かったわ!今治すから……」

 

 

びっくりした、まさかいきなり刺されるとは思わなかった。どうやらアリアさんは極度の天然らしい。泣きながら謝ってくれたが別にそこまで気にしていない。

……とは言えなかった。悪気はなかったとしても流石にやり過ぎだ。血が足りないせいかクラクラするし。今回は回復魔法だけという話だったがとっておきのスキルを教えてもらう事になった。

 

「じゃあカズマ、まずはさっきの短剣で指を少しだけ切って頂戴!」

 

言われた通り指先に少し傷をつける。

 

「『ラック・オブ・ヒーリング!』」

 

眩い光が俺を包むと指先の傷がきれいに消えていた。さっきの魔法とどう違うんだ?

 

「今のスキルも回復魔法の1つなんだけど、ただの『ヒール』よりも魔力消費が少ないの。その代わり使用者の幸運によって回復力が変わるのよ。私は幸運値が低いからあまり使わないんだけどね」

 

つまり幸運が高ければ高い程効果が上がるって訳か!これはいい、魔力消費も少ないならこれから重宝するだろう。

 

「ありがとうございますアリアさん!」

 

「さっきも言ったけどこれはお詫びなんだからお礼なんていらないわよ。それと敬語やさんもいらないわ」

 

「そうか、じゃあアリアと呼ばせてもらうよ」

 

「うんうん、それでいいのよ。ほら、ダクネス達が待ってるんだから早く戻りなさい」

 

流石に血塗れのまま戻る訳にはいかないのでどうしようかと悩んでいるとアリアが水で洗い流してくれた。水なんかで血が落ちるのかと思ったが、この水は神の力が宿っているので特別だと言われた。

 

「これで大丈夫でしょ?庭の血も流しておくから心配しなくていいわ」

 

庭に飛び散った血液を流しながらアリアは早く行けと急かす。ここはアリアに任せて先に戻る。

 

「じゃあねカズマ、エリスによろしく。あの子もあなたを気に入ってるみたいだしね」

 

いやそれは嘘だろ。あんなに散々言われて夢を見れる程バカじゃないつもりだ。

 

「本当よ~女神様を信じなさい!」

 

 

「あ、戻ってきましたね、どうでしたかカズマ?きちんと覚えられました?」

 

「いや、スキルポイントが足りないからレベルが上がったら覚えるつもりだ」

 

昨日クリスからたくさんスキルを教わったからな。スキルポイントを全部使ってしまったのだ。

 

「カズマ、もしよかったら爆裂魔法を教えてあげましょうか?」

 

「……ちなみに覚えるとしたらどの位かかるんだ?」

 

「バカな事を言わないでください。冒険者が爆裂魔法を覚えるなんて数年間ポイントを使わず貯めて、ようやくなんですよ?それに最弱職のカズマさんが覚えたって魔力が足りないので使えません。分かりましたか?最弱職」

 

うるさい!そんな事は分かってるんだよ!それでも少しは憧れてもいいだろ!アリアには嫌われている訳じゃないと言われたが本当にそうなのか?

いまいち信用できないんだが……

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!冒険者の皆様は大至急、街の正門に集まってください!繰り返します、冒険者の皆様は大至急、街の正門に集まってください!』

 

そんな話をしているとギルドに大音量のアナウンスが流れる。内容を考えると恐らく街中に流しているのだろう。

 

「何だ何だ!?いきなりどうしたんだよ!」

 

「この時期に緊急クエストなんて決まっているだろう」

 

「ああ、アレですね」

 

「アレって何なんだよ!分かるように話してくれ!」

 

「騒がないでください。街を出ればすぐに分かりますよ」




今回はここまでです。
ついにアクアが登場しました!
少しだけうっかりを強めに書いてしまった…
アクアさんは国教がアクシズ教なので原作クリスと同じように偽名を名乗っています。


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緊急クエスト!新鮮なキャベツを収穫せよ!

今回はキャベツです。
キャベツってごま油と混ぜればかなり美味しいですよね。
酒のおつまみに最高です。


アナウンスに従って俺達は正門に集まった。緊急クエストと言われたが何だろう。

 

「この時期に緊急クエストと言ったらキャベツに決まってるじゃないですか」

 

は?キャベツだと?何だろう、モンスターの名前かな?

 

「おいクリス?キャベツって何だ?」

 

「知らないんですか?世間知らずもいい加減にしてください。キャベツというのは緑色の野菜です。シャキシャキした歯ごたえが美味しいんですよ」

 

「知ってるわそれくらい!どうしてキャベツが出てくるんだって聞いてんだよ!」

 

何がキャベツだ!冒険者に農家の手伝いでもしろってか!?

 

「そう言えばカズマさんは知らないんでしたね。いいですか?この世界のキャベツは……」

 

「皆さん!今年もキャベツの季節がやってきました!今年のキャベツはかなり出来が良いため、1玉1万エリスで買い取らせていただきます!」

 

キャベツ1玉で1万エリス!?かなり美味しいクエストだ、だが……

 

「なぁ、収穫は良いがどこにキャベツがあるんだ?」

 

ここは街の正門、畑なんかある筈もない。どうやってキャベツを収穫するんだ?

 

「何を言っているんだカズマ、上を見ろ」

 

「上?……何だあれ?」

 

言われた通りに空を見ると緑色の何かがこちらに近づいてくる。緑色?まさか……あれ全部キャベツか!?何でキャベツが空飛んでんだよ!

 

「驚きましたか?この世界のキャベツは飛ぶんです。収穫の時期が近づくと、食べられてたまるかと言わんばかりに野を越え、山を越え、海を越えて、世界のどこかにあるという秘境でひっそりと息を引き取るんです」

 

キャベツの癖に無駄に壮大な設定だな!

 

「だったら私達は、そんなキャベツを1玉でも多く美味しく食べてあげようと言う訳です。ちなみに旬のキャベツは栄養価が高く、経験値も多く含まれているので食べればレベルが上がるかもしれませんよ?」

 

「何やってんだ!さっさと捕まえるぞ、手伝えクリス!」

 

そんな大事な事は早く言えよ!はーっはっはっは!これで俺も高レベル冒険者の仲間入りだ!

 

「あくまで食べればなので捕まえてもレベルは上がりません……って、聞いてませんね」

 

「おらキャベツ共!大人しく俺の経験値になりやがれー!!『スティール!!』」

 

窃盗スキルを使うと俺の手にキャベツが収まる。大した抵抗もされないのでどうやら1度捕まえれば大人しくなるらしい。

 

「『スティール!』『スティール!』『スティール!!』ははっ大量だぜ!」

 

「くっ、ニートの癖にどうしてそんなに手際が良いんですか!このままでは女神の名が泣いてしまいます……この男にだけは負けたくありませんし、私も少しだけ本気を出しましょう」

 

はっ何が本気だ、俺はもう15個目だぞ?だがこいつは腐っても女神だ。……少しペースを上げるか。

 

「ふん、余裕でいられるのも今の内です。すぐに追い越してあげましょう」

 

そう言ってキャベツに向かって行くクリス。

何をする気だ?

 

「いきます、『スティール!』」

 

クリスも窃盗スキルを使ったようだ。その手には3個のキャベツ。

 

「おい卑怯だろ!俺は1個ずつしか盗れないんだそ!?くそっ、『スティール!』」

 

やはり1個しか盗れない。どうやって3個も……

 

「私は上級職です。貴方のような最弱職とは違うんですよ!」

 

その後もキャベツを盗っていくがどんどん差が広がっていく。そして気づけばキャベツはいなくなり、クエストが終了した。

 

報酬は後日という事なのでクリスを連れて宿に戻る。ダクネス?あいつは知らん。キャベツの姿を見た途端に息を荒げて全力で突っ込んで行った。顔を赤く染めて興奮していたみたいだが俺は知らない。

めぐみんはキャベツに向かってあろうことか爆裂魔法を撃ち込もうとしたのだ。当然殴って止めた。大事な経験値を消し飛ばされてたまるか。

 

「ふふん、今日は私の勝ちですね。まあ当然と言えば当然ですが」

 

「はいはいすごいねー……ん?」

 

「なっ何ですかその反応!……おや?」

 

「「ウィズ魔法店?」」

 

こんな店あったか?いや、まだこの世界に来たばかりだしきっと見落としていたんだろう。

 

「魔法店か。少し寄って行こうぜ!」

 

どんなのが売ってるんだろう。やっぱり魔法店っていうからにはマジックアイテムとか魔道書とかかな?

 

「えー?今日は疲れました。早く帰りましょうよ……いえ、やはり入りましょう」

 

「はぁ?急にどうしたんだよ。疲れたんじゃないのか?」

 

「この中からアンデッドの気配を感じます。女神として、見過ごす事は出来ません!」

 

何言ってんだこいつは。アンデッドが街の中にいる訳ねーだろ!

 

「行きますよカズマさん、アンデッド退治です!私達の街で好き勝手はさせません!」

 

「待てクリス、少し落ち着け!」

 

店に突入するクリスを止めようとするが、逆に腕を掴まれ引き摺られながら一緒に入る。

 

「オラァ!出てきなさいアンデッド!」

 

「いらっしゃいまきゃあああ!」

 

クリスが茶髪の女性に掴みかかる。女性は必死に抵抗するがクリスの方がステータスが高いので振りほどく事が出来ないようだ。

 

「おいやめろ、お姉さんが困ってるだろ」

 

「ふざけないでください!こいつはアンデッドですよ!?神の理に逆らう、ゴキブリ以下の存在なんです!」

 

「酷い!」

 

お前ゴキブリは言い過ぎだろ!つーか本当にこのお姉さんがアンデッドなのか?

 

「さぁ覚悟しなさい、切り刻んでモンスターの餌にしてあげます」

 

「落ち着け駄女神!」

 

俺は凶悪な顔で短剣を引き抜くクリスを殴って止める。

 

「痛っ!殴りましたね!?ニートごときが、神聖な女神様に暴力なんて許されると思ってるんですか!?」

 

「当たり前だ!この人のどこがアンデッドに見えるんだ!?つーか短剣なんてどこで買ったんだよ!」

 

「これは神具です!それと、この女は間違いなくアンデッドですよ。私の女神センサーに反応があります」

 

女神センサーって何だ!いい加減な事を言うな、お姉さんが泣いてるじゃねーか。

 

「確かに私はリッチーですが……悪いリッチーじゃないですよ!?」

 

「聞きましたかカズマさん!アンデッド、しかもリッチーですよ!リッチーと言えば最上位のアンデッドです、倒せばレベルアップは間違いないですよ!」

 

「そんな手に乗るわけねーだろ!……だからやめろっつってんだろバカ!」

 

「みぎゃあぁぁ!」

 

再びお姉さんに攻撃しようとしたクリスを殴って止める。さっき殴った所を狙ったのでかなり痛い筈だ。

 

「はぁ……悪いなうちのバカが。大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます。助かりました」

 

どうやら特に目立った怪我はないみたいだ。それでもクリスが迷惑をかけたのは事実なので謝るが笑顔で許してくれた。

 

「それで、あんたはアンデッドなのか?」

 

こんなに優しい人がアンデッドとか何かの間違いだろう、そう思い聞いてみるが……

 

「はい、私はリッチーですよ。この店の店主、ウィズと申します」

 

アンデッドといえばゾンビを思い浮かべるが、イメージとは全く違う。

 

「本当にアンデッドだったのか……」

 

「これで分かりましたか?分かったならそこを退きなさい」

 

まだ痛みが治まらないのか頭を抑え、涙目になりながら剣を構えるクリス。もう諦めろよ……。

 

「やめとけ、店をやってるって事は街の人と知り合いだって事だ。ウィズがいなくなったら困るだろう。何よりウィズがかわいそうだし」

 

「でも!」

 

「文句があるなら帰れよ」

 

「……帰りません。リッチーが何かするかもしれませんし、ここで見張ってます」

 

まあ大人しくしてるならいいか。少しでも変な事をしたら追い出してやると脅してから店の中を見て回る。ウィズの店には日本では見た事のない商品ばかり置いてあるのでとても楽しい。

 

「なあウィズ、これは何だ?」

 

「それは開けると爆発するポーションです」

 

「危なっ!……じゃあこれは!」

 

「水に浸けると爆発するポーションですね」

 

「だから危ねーよ!……ならこれは?」

 

「飲むと爆発するポーションですよ」

 

爆発ばっかじゃねーか!普通のポーションは無いのかよ。

……もうポーションはいいや、他の商品を見てみよう。例えばあそこに立て掛けてある鏡。随分古そうだがあれも商品なんだろうか。気になったので聞いてみる。

 

「なあ、あの鏡は何だ?」

 

「さあ?昔からあるんですが私にもよく分からないんですよ。友人が言うにはなんでも異世界を覗く鏡だとか……」

 

「異世界を覗く……?クリス、お前なんか知ってるか?」

 

異世界の事ならこいつの専門だろ。だって女神だし。

 

「………何で…これが下界に……あっ!」

 

「おいクリス?お前絶対なんか知ってるだろ。この鏡は何なんだよ」

 

「し、知りませんよ!?知りませんけど……ねぇアンデッド、いえウィズさん?この鏡譲ってくれませんか?お金ならいくらでも払いますから……」

 

「ええ……?これは非売品なんですが……でもそろそろ何か売らないと生活が……。ううっ、分かりました、お売りします」

 

 

「それで結局この鏡は何だ?お前があれだけ慌てるなんて相当大事な物なのか?」

 

ウィズから鏡を買い取ったクリスに聞いてみるが何度聞いても知らないと言われる。それでもしつこく聞けば観念したのか少しずつ話し出す。

クリスによればこの鏡はパーの鏡という神器で本来なら平行世界を自由に覗ける鏡らしい。今は持ち主がいないため力を十全に使う事は出来ないが、それでも平行世界の自分と会話位は出来るそうだ。

何それ面白そう。




この鏡を特典として貰った転生者はその能力で毎日女風呂を覗いていたそうです。
オプション機能の1つ、ステルス機能を使って向こうの人にバレないように楽しんでいたのだとか。


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二人のエリス

原作エリスと出会ったらどうなるか楽しみとの感想をいただいたので、遅くなりましたが書いてみました。



『では頑張ってくださいね。魔王を討伐した暁には、どんな願いでも1つだけ叶えて差し上げます』

 

パアアァァ……!

 

『ふぅ、これで今日は終わりですか。早く報告書を書かないと……』

 

「へぇ、これが平行世界のお前か。それにしては真面目そうだな」

 

「どういう意味ですか!」

 

「そういう意味だよ駄女神!」

 

『え?……な、何ですかこの鏡!いつの間にこんな所に……って私!?』

 

ようやくこちらに気付いたようだ。鏡の中のエリスは驚いたように俺とクリスを見つめる。

 

『え?え?なんで私が……』

 

状況をよく飲み込めていないエリスに軽く説明してやる。この鏡は他の世界の自分を映すのだ。

 

『……なるほど、平行世界の自分を映す鏡ですか。確かにそんな神器もありましたが、いつの間に下界に……』

 

「でもこの世界にあるからと言ってそっちにも同じ場所にあるとは思えないんだが」

 

『いえ、下界にあるのはほぼ間違いはないと思います。恐らく先輩が特典として授けた後報告を忘れていたんでしょう』

 

先輩ってのはアクアの事だよな。確かにあの天然のアクアならやりそうだが。

 

『そちらの先輩ではなくてですね』

 

ほう、どうやら向こうのアクアも少し抜けているらしい。だがこちらのクリスもこの鏡を把握していないという事は……。

 

「おいクリス、お前もさっき鏡を見て驚いてたよな。ちゃんと報告したのか?」

 

「うぇ!?ととと当然じゃないですか!特典の報告は女神の義務ですよ!?忘れる訳……」

 

「面倒くさいから後でやるとか言って忘れたんじゃないか?まさかこの鏡を欲しがっていた理由って……」

 

「ぐぅっ!だから違うと言ってるでしょう!?別に無くした鏡が下界にあるとバレたら怒られるから証拠隠滅とかではありません!なっ何ですかその目は!女神を疑うとは不敬ですよ不敬!」

 

この反応、やはり図星らしい。鏡の中のエリスも冷たい目で見ている。

 

『これが私ですか……。カズマさんも苦労していますね』

 

あれ?俺名前言ったっけ?

 

『いえ、カズマさんとは何度か会ってますから。死んだ時に

 

おい今なんつった?え……死んだ?俺が?しかも何度かって言ったよな!

嘘だろ、平行世界の俺……。

 

『えーと、あまり気にしない方がいいですよ?こういう事はその、不幸な事故だと思って……』

 

「俺幸運高いんですけど」

 

『えっ!?いやいや違います!私が言いたいのは』

 

泣けてきた。こんなにいい人がエリスだなんて信じられない。

 

「もし良かったらうちの女神と交代しませんか?歓迎しますよ」

 

「ちょっと!何であっちの私には敬語なんですか!?というか交代ってどういう事ですか!私がいなかったら困るでしょう!女神ですよ女神、尊い存在なんですよ!?」

 

「うるさーい!お前とエリス様を一緒にするな!お前がいなくても困らないっつーの!女神なら女神らしく少しは慎みを持ったらどうなんだ!いつもいつも俺をバカにしやがって、お前が尊い存在ならゴブリンだって尊いわ!」

 

「何言ってるんですか?ねぇ何て事を言うんですか?冗談ですよねカズマさん!」

 

『うわぁ、さすがカズマさんですね。他の世界でも全く口撃力が変わりません』

 

「そもそもお前を特典として選んだのが間違ってたんだよ、女神の癖に性格が悪いし。返品出来るならさっさと返品して……」

 

「ぐすっ、ひっく……かずまさんのばかぁ!もういいです、そんな事言うならもう知りません!そこのエリスと仲良くしてればいいじゃないですか!」

 

そう言うと泣きながら店を飛び出して行ってしまった。

 

『あの、追いかけてあげないんですか?』

 

「あいつは優しくするとすぐ調子に乗るんですよ。やれ働きたくないだとか、やれニートの癖にだとか」

 

『でもそう言う割にはかなり楽しそうですよ?彼女もカズマさんに特に悪い感情は抱いていないようですし』

 

アクアにもそんな事を言われたな。

 

「……何で分かるんですか?」

 

『ふふっ内緒です♪』

 

敵わねぇなぁ。確かにクリスは黙っていれば美少女だし?性能だけ見ればかなり強いし?

全く、仕方ねーなぁ!

 

『迷いは晴れたようですね』

 

「はい、もう大丈夫です。ありがとうございました!」

 

 

―――………

 

 

あれからクリスはすぐに見つかった。町の真ん中にある広場に座り込んでいたのだ。

 

「おーいクリス、そんな所に座ってないで帰るぞ」

 

「ぐすっ……何しに来たんですか?あの女とパーティーを組むんでしょう、私はいらないじゃないですか……」

 

こいつ、そこまで気にしてたのか。

 

「俺が悪かったよ。さっきのは冗談だから」

 

「本当に悪いと思ってるんですか?」

 

「ああ、思ってる思ってる。思ってるから早く帰ろう」

 

「ならこれからは私にも敬語を使いなさい。それからエリス教に入信して、毎日私を崇めなさい」

 

ああもう、早速調子に乗りやがって!

 

「お前、言うほど落ち込んでないだろ」

 

「あはっバレました?これでも演技力には自信があったんですけど」

 

「ふざけんな!俺の心配を返せ!」

 

「ほら、早く行きますよ。今日のご飯はカズマさんのおごりですからね!」

 

「まぁそれ位ならいいけどさぁ……」

 

元気に振る舞うクリスだがその顔にはくっきりと涙の跡が残っていた。こいつも落ち込む事なんかあるんだな。今日はクリスの新しい顔が見れた。

 

「何してるんですかカズマさん!私はお腹が空きました、置いて行きますよ!」

 

「今行くよ!」

 

「遅いですよ、さっさと来なさい!」

 

少し元気過ぎるんじゃないか?まぁ泣いているよりはいいか……。

クリスを追いかけて2人でギルドまで走る。




この作品と原作の世界では少し時間がずれています。
具体的にはこっちはキャベツ狩りの後ですが向こうでは原作小説の6巻辺りですね。


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その後、宿屋にて…

こんにちは、エルメールです!
設定と合わせて記念すべき10話目ですね。
え?設定は本編じゃないから話数には含まれない?……これは失礼しました。

えーと、まずはこんな駄作を読んで下さっている皆様、そして感想や評価をして下さった皆様、本当にありがとうございます!
これからも頑張って書いていくのでエルメール、エルメールをよろしくお願いします!

長々とすみません、では本編をどうぞ!


「美味っ!なんだこれ、キャベツってこんなに美味かったか?」

 

ギルドに戻り、今日収穫したキャベツを食べた俺はあまりの美味しさに驚いた。味も歯応えも日本で食っていたキャベツとは比べ物にならない。

 

「旬のキャベツは経験値を多く含んでいますから、とても美味しいんですよ……すみません、おかわりください!」

 

「おいどれだけ食うんだ、そろそろ金がなくなってきたぞ」

 

こいつには遠慮ってもんがねーのか!もう3皿目だぞ?本当に食えるのかよ。

 

「そうだ、食べ終わったなら冒険者カードを見てみたらどうですか?たぶんレベルが上がってますよ」

 

そういえばそんな事も言ってたな。

カードを見ると本当にレベルが上がっていた、しかも4レベルも。キャベツを食べるだけで強くなるとかふざけた世界だな。

スキルポイントも増えていたのでアリアから教えてもらったスキルを習得した。

 

クリスがキャベツを平らげた後、宿に戻った俺達はあらためて冒険者カードを確認する。レベルは7、ステータスもそこそこ上がっていたし、これだけあればカエル相手でも何とかなるだろう。

次はスキルだ。とっているのはスティールや潜伏等の盗賊スキルに今習得した回復魔法。後は攻撃魔法があれば完璧だな。

 

「まあこんな所か、クリスのカードも見せてくれよ。お前もレベルは上がったんだろ?」

 

「構いませんよ。その代わりカズマさんのも見せてくださいね」

 

お互いにカードを交換して目を通す。クリスのステータスはとても高く、レベルは12になっていた。あれだけキャベツを食べれば当然だが。

スキルポイントも最初からたくさんあったようでとれるスキルはほとんどとっている。盗賊スキルにアサシンの状態異常各種、潜伏の上位スキルだろうステルス。即死攻撃に拷問スキルまで。

……拷問スキル!?何でこんなもんとってんだよ!

 

「お前このスキルで何をしようってんだ?」

 

「もちろんアンデッド用に決まってるじゃないですか!ちょうどこの街にも1匹いますし」

 

「ウィズの事言ってんのか?そんな事したらダクネスにお前が拷問スキルをとってる事バラすからな」

 

あのドMなら喜んでつきまとう事だろう。クリスも同じ想像をしたのか嫌そうな顔をしている。

今度から余計な事をしたらこれで脅すか。

 

「そんな恐ろしい事を言わないでください!……え?嘘ですよね?ちょっと!?嘘だと言って、こっちを見なさい!」

 

「なあクリス、さっき買った鏡はどうするんだ?ずっとここに置いておくつもりか?」

 

「露骨に話を変えましたね……まあこの話は後でするとしましょう。それで鏡でしたっけ?そうですよ、流石にこのサイズの物を持ち歩く訳にもいきませんし。天界に持っていくにしても魔王を倒さなければ帰れませんから」

 

「邪魔なんだが」

 

「仕方ないでしょう。これを持ち帰らないと怒られ……いえ、なんでもありません」

 

だったらせめて自分の方に置けよ。ただでさえ部屋が狭いのにこんなでかい鏡を置いたら邪魔で仕方ないぞ。

 

「あまり気にする必要はありませんよ、暫くすれば慣れますから」

 

「慣れたくねーよ!ああ、広い家が欲しい。そうだよ、こんな狭い部屋に2人とか普通に考えて無理があるだろ」

 

「安い宿なんですから狭いのは当然でしょう、宿代を節約する為に1部屋にしたのが間違いでしたね」

 

「分かって言ってんだろお前、今の俺達に2部屋も借りる余裕なんかねーんだよ。なんならまた力を使っても良いんだぞ」

 

「なんて甲斐性のない男……しかもまた私に働かせようとは良い度胸です。言っておきますが安易に力を使ってお金を稼ごうとすれば後で手痛いしっぺ返しをくらうんですよ?」

 

何だと?そんな大事なことは早く言えよ!いざとなったらこいつに力を使ってもらおうと思ったのに……。

 

「何を考えているのかは大体分かりますがさせませんよ、下界で力を使うのはかなり疲れるんです。そもそも私は女神なんですよ?偉いんですよ?もっと楽をさせてください」

 

「楽をするにも金がいるんだよ。聞けばキャベツの報酬は3日後だそうじゃないか。それまでどうやって食っていくんだよ」

 

「そこはほら、カズマさんが頑張って稼いでくればいいじゃないですか。……貴方には頼もしい仲間達がついています。さあ行きなさい勇者よ、私が認めた貴方達ならばどんな困難でも乗り越えられるでしょう!」

 

「女神っぽい事言えば騙されると思ってんじゃねーぞ!鬱陶しいからその神々しいオーラをしまえ!」

 

明らかにこいつには似合わないオーラだ。そういうのはもっと心の綺麗な人が出す物なんだよ!

 

「何十年も練習してやっと習得した技術ですよ!?それを鬱陶しいとか言わないでください!」

 

「それって練習して出来るもんなのか!?それに何十年って……思いっきり時間の無駄だよな」

 

「これが出来るだけで女神としての評価が上がるんですよ。若くして死んだ童貞共にこのオーラを出しながらお願いすれば一発で異世界行きを決めてくれるのでノルマの達成も簡単ですしね」

 

「お前真顔で何言ってんの!?本当に女神かよ、やり方が完全に悪女のそれだぞ」

 

じゃあ他の転生者からは自分を導いてくれる綺麗で心優しい女神様に見える訳か。騙された奴らも可哀想に……。

 

「最後にいい夢を見れたんですよ?いえ、最初にと言うべきですか。特典も与えて可愛い娘の多い異世界に送ってあげたんですから感謝こそされても恨まれる筋合いはありません。特典をうまく使えば彼女位すぐに出来る筈ですよ」

 

確かにそうだが、何か納得いかねぇ。

 

「まあいいや、俺はもう疲れた。明日も早いしそろそろ寝るぞ」

 

「そうですね、お休みなさい」

 




二次創作を書いている他の作者さん達は4000文字や5000文字は当たり前な人が多いんですよね。
今回は2200文字程度なんですが…これは少ないんでしょうか?


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特殊クエスト、謎の古代遺跡を調査せよ!①(①)

今回はオリジナル回です。
普通の話なら少しアレンジを加えつつ原作をなぞればいいので簡単なんですが…
オリジナルは1から展開を考えなければダメなんですよね。
中にはそっちの方が書きやすいという人もいるかもしれませんけど…


「あーあ、なんか金になりそうなクエストはねーのかよ」

 

「そんなのがあったら他の冒険者にとられていますよ。いいじゃないですか、もうすぐ大金が入るんですし」

 

俺達は今日もギルドに集まりクエストを探している。だがボードに貼ってあるのはどれも高難度のクエストばかりで、今の俺達では歯が立たないだろう。

 

「貰えるのまだ先だけどな!昨日お前がキャベツを食いまくったせいでもう3000エリスしか残ってねーんだぞ!」

 

「そうですよクリス、私は爆裂魔法を撃ちたいのです。早くクエストに行きましょう!」

 

いいぞめぐみん、もっと言ってやれ!

 

「爆裂魔法ならカズマさんに着いて行ってもらえばいいでしょう。クエストなんかごめんです……。おや?これは……悪魔の匂い!」

 

お前は犬か!悪魔なんかどこにいるってんだよ。

 

「こっちです、早く来なさい!」

 

クリスはクエストボードの前まで走る。そんな所に悪魔?怪しいがクリスがせっかくやる気になっているんだ。

俺達はクリスの後を追ってボードまで歩く。

 

「クンクン……クンクン……ありました、この紙から悪魔の匂いが漂ってきます!」

 

「恥ずかしいからやめろ!……で?どれから何の匂いがするって?」

 

「これですよ、この依頼書です!」

 

クリスが剥がしたのは一枚の依頼書だった。だが色がおかしい。その依頼書は真っ黒に染まっていた。

 

「これは、あからさまだな……。よしやめよう。こんなに怪しいクエスト、受ける必要はない!」

 

「何言ってるんですか!悪魔ですよ悪魔!存在そのものが害悪みたいな奴等です!さっさと倒しに行きますよ!」

 

「行きません!」

 

「行きましょうカズマ!悪魔が相手なら不足はありません!我が必殺の爆裂魔法で消し飛ばしてやりましょう!」

 

「やりません!」

 

「行こうカズマ!ああ……悪魔だと?素晴らしい!きっと私などでは想像もつかない程鬼畜なプレイを!」

 

「させません!ふざけんじゃねーぞバカ共!こんなパーティーで悪魔なんか倒せる訳ねーだろ!」

 

ボードの前で騒いでいると受付のお姉さんが話しかけてきた。

 

「あの、すみません。他の冒険者様のご迷惑になりますのでもう少し静かにしてもらえませんか?」

 

あまりにもうるさいので注意しに来たようだ。ちなみにルナさんと言うらしい。

 

「すみませんすみません!すぐにどきますんで!」

 

「いえ、気をつけてくれればいいんです。ところで……何を見ていたんですか?」

 

ルナさんに依頼書を見せる。こんなに怪しいクエストを貼ってどういうつもりなのだろうか。

 

「あら?これは……少々お待ちください」

 

そう言うと依頼書を持ってギルドの奥へと確認に行った。

しばらく待っていると不思議そうな顔をして戻って来た。

 

「お待たせしました。どうやら申請は通っているようです。ですが黒い依頼書など私は見たことがありません。念のため他の職員にも聞いてみましたが、誰も知らないそうです」

 

ギルドの職員でも知らない依頼?普通に考えてありえない、やっぱりやめておこう。

 

「行きます!そのクエスト、私達に任せてください!」

 

「おい何勝手に受けてんだよ!俺は行くなんて一言も……」

 

「情けないですよカズマ、男なら覚悟を決めなさい!」

 

お前は爆裂魔法を撃ちたいだけだろ!

 

「そうだぞ!本当に悪魔ならばとても気持ちいい……ではなく危険な力を持っているんだ。騎士として放っておくわけにはいかん!」

 

バレバレなんだよこの変態!

 

「「「カズマ(さん)!!」」」

 

「あーーっ分かったよ!行けばいいんだろ行けば!ただし危険だと思ったらすぐに帰るからな」

 

ルナさんから依頼書を受け取って確認する。

 

『遺跡の調査 

 

北の森にある古代遺跡の謎を解いて囚われた魂を解放してください』

 

「古代遺跡?そんなのがあるのか?」

 

「ああ、北の遺跡といえばかなり有名ですよ。何でも中には財宝が眠っているとか……でも扉は固く閉ざされ入れないらしいですが」

 

「ふむ、つまりその扉を開けて中の何かをどうにかすればいいんだな?」

 

物凄くふわっふわだが中の様子も分からないんだから仕方ない。つーか囚われた魂ってなんだよ、中二病か。紅魔族じゃないんだから分かりにくい言い回しはやめてはっきり言ってほしい。

 

「ええ、出来れば探索もして貰いたい所ですが……扉を開くだけでも構いません。期限も特に決まっていないようなので、急がなくてもいいですよ」

 

「よーしさっさと行くぞ、扉を開けるだけでいいんだな?こんなもん早く終わらせてやる」

 

「カズマさん、悪魔!悪魔をぶちのめすのを忘れてますよ!」

 

「ぶちのめすとか言うな!せっかく扉を開ければ終われるんだからそれでいいだろ!いつも働きたくないって言ってるのにこんな時だけやる気になるな!」

 

 

―――………

 

 

森に足を踏み入れた俺は様子がおかしい事に気づく。モンスターが全くいないのだ。

 

「おや、カズマはこの森の話は知らないのか?ここは何故かモンスターがいないんだ。アクセルの子供もよく遊んでいるぞ」

 

「いないって……何でだ?」

 

「そんなの悪魔の仕業に決まっているでしょう。やはりあんな奴等を生かしておく訳にはいきませんね……見つけ次第ぶち殺して差し上げます!」

 

だから物騒な事を言うな!仮にも女神がぶち殺すとか言ってはいけません!

 

「いくらなんでも話が飛びすぎですよ。モンスターがいないからって悪魔の仕業など……」

 

まぁ何も知らない人間はそう思うだろう。だが俺には分かる、クリスが言っている事は本当だ。

 

まずはあの依頼書。さっきも言ったがギルドも知らない依頼とか普通に考えてありえない。

次にこいつが女神である事。女神であれば悪魔を感知する力もありそうだ。女神と悪魔って仲が悪そうだし……。

そして最後にこの森だ。モンスターはともかく獣や鳥、虫すらもいないとか怪しすぎる。

 

とか言っている内に何かが見えてきた。随分古そうな建築物だ。おそらくあれが目的の遺跡だろう。扉には黒い宝石が左右それぞれ1つずつ嵌まっている。

 

「ありましたよカズマ、遺跡です!いやーカッコいいですね!紅魔族の琴線にビンビンきます」

 

「だがどうやって開けるんだ?見た所鍵らしき物もないし……おいカズマ、扉の前に何かあるぞ?」

 

ダクネスが指をさした方を見ると確かに扉の前に台座のような物がある。

 

「真ん中に窪みがあるな、この手の台座は何かを嵌めれば扉が開くんだよ」

 

何か無いかと探しているとクリスが石板のような物を見つけてきた。見れば先程の窪みにぴったり嵌まりそうな大きさだ。

 

「よし、たまには役に立つじゃないか。じゃあ戻って台座に嵌めてみるぞ」

 

「たまにはってどういう事ですか!訂正しなさいニート!」

 

クリスを無視して試してみると、右の宝石が白く光っただけだった。

 

「あれ?おかしいな、ゲームではこれで開く筈なのに。まだ何か秘密があるのかもな」

 

他に無いかと探しても特に変わった物は見つからなかった。これ以上は何も無さそうだし、今日はこれで終わりにして街に戻ろう。クリスは悪魔がどうとか騒いでいるがいるが、開かない物は仕方がない。

 

「ほら帰るぞ、こういうのは時間が立ってから来れば色々変わってるもんなんだよ。台座の数が増えてたり、扉が光ってたりな」

 

冒険を進める事でイベントが発生する、RPGのお約束である。期限も決まっていないと言われたしまた今度来ればいいだろう。

 




早速扉の秘密に気づいた読者さんはかなり勘がいいですね。
というかかなりの人が気づいてそうですが…
すみません、作者は伏線とか苦手なんです笑


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ニートハザード

久しぶりの更新です。
まだスランプは続いてるので次の更新も遅くなるかも…申し訳ない。


「カズマさん戻りましょう、悪魔を倒すんです!」

 

ごねるクリスを引きずってギルドに戻ってきた俺達は次のクエストを探していた。え?またクエスト行くのかって?金がないんだよ!

 

「だから悪魔を倒せばいくらでも」

 

「さっきから悪魔悪魔うるさいぞ、文句があるならあの扉開けてこい」

 

「それは!むぅ……仕方ありませんね、分かりましたよ。今回は貴方に従います、でも!もし扉が開いた時には必ず倒しに行きますから!」

 

「さて、朝ボード見た時は良いクエスト無かったし、どうするか」

 

「カズマカズマ」

 

「はいカズマです」

 

「後3日でキャベツの報酬がもらえるんです。ツケというのはどうですか?」

 

ツケ!いかにも冒険者らしいじゃないか、何で思い付かなかったんだ!そうだよ、あれだけ収穫したんだし3日位ツケても平気だろう。

 

「ふっ、そうだな。ここはツケでいこう」

 

「ふふふ、カズマならそう言うと思いましたよ!さあ早速注文しましょう、すみません!これと、これと、後これもお願いします。会計は一緒で!」

 

「あっ、お前これが目的だったな!ふざけんな、自分のは自分で払え!」

 

「いいではないですか!どうせ報酬はたくさん貰えるんでしょう!?これ位一緒に払っても変わりませんよ!」

 

「では私もこれとこれと、これをください。勿論会計は一緒で」

 

「それ俺は絶対に払わないからな、つーかお前の方が稼いだんだし会計一緒ならお前が払えばいいんじゃないか?」

 

「はあ?女性に全額払わせるとかあなたそれでも男ですか、この甲斐性無し」

 

「残念だったな、俺は真の男女平等主義者。男だから奢るのが当たり前って考えが嫌いなんだよ」

 

めぐみんがゴミを見るような目で見ているが関係無い。どうせ俺を非難してどうにか自分のも払わせようとしているんだろう、そんな手に引っ掛かってやるものか。

 

「おい落ち着けカズマ、どうしてもと言うなら私が払っても構わんぞ。『おいメス豚、お前の有り金を全てよこせ!』と言ってみろ」

 

「誰が言うか変態。俺を宥めたいのか怒らせたいのかはっきりしろ」

 

「勿論宥めるつもりだったのだが、カズマは怒れば容赦がないからな……ごくり」

 

ごくりじゃねーんだよ。おいこっちを見るな、目がイッてるんだよ。

 

「まあいいや。報酬までの生活は何とかなりそうだし、また3日後にギルドに集合でいいよな?」

 

「ええ賛成です。私達は少し働き過ぎでしたからね、この辺りで休憩も必要なのではないでしょうか」

 

「カズマ、それにクリスまで何を言っているのですか!働き過ぎという程働いてないでしょう!?それに爆裂魔法はどうなるんです?街中で撃てとでも言うつもりですか!?」

 

「テロリストかお前は!そんなに撃ちたきゃ一人で行ってこい。カエルに襲われても知らねーけどな」

 

爆裂魔法なんて撃ったら音でモンスターが集まってくるに決まってる。俺は行かない、絶対行かない。

 

「というか、3日も休んでお前達は何をするんだ?」

 

「何も?」

 

「「は?」」

 

「だから何もしないって言ってるんだよ。宿でゴロゴロして過ごすんだ、眠くなったら寝て腹が減ったら食べる。最高じゃないか」

 

「あー良いですね。毎日ゴロゴロ、素晴らしいです」

 

おお、クリスも話が分かるじゃないか。やっぱりゴロゴロは最高だよな。パソコンがあればもっと最高なんだが贅沢は言えない。

 

「いけません、いけませんよ!それでは駄目人間になってしまいます。あなた達はニートですか?いいえ、冒険者です!冒険者とは冒険をするものです!」

 

うるさいな、冒険ならやったよ。でもな、稼げないんだよ!命懸けでカエル倒しても10万しか貰えないし、遺跡じゃ冒険どころか扉さえ開けなかったんだぞ!一番稼げそうなのがキャベツってどういう事だよ!

 

「という訳で俺は引きこもる事にした。ニートでも何でも好きに呼べ」

 

「この男開き直りましたよ!何がという訳なんですか!駄目です、絶対に認めませんよ!ダクネスも何か言ってください!」

 

「だがこのカズマは私の理想にかなり近いぞ、完璧な駄目人間だ。きっとそのうち『ダクネス、ちょっと酒買ってこい。勿論お前の金でな、何?金がない?ならその身体で稼いでこい!』と言い始めるのだろう!」

 

「言わねーっつってんだろ!何でお前はいつもそういう話に持って行きたがるんだ?……いや、疲れそうだしやっぱいいわ」

 

「くぅっ!はぁ、はぁ、自分で聞いておいてこの仕打ち……!」

 

こいつの頭カチ割ったらピンクのモザイクが大量に出てきそうだな、やらないけど。

 

「ではそういう事なので、また3日後にお会いしましょう。行きますよニート」

 

「お前もこれからニートになるんだからな。じゃあなめぐみん、ダクネス」

 

そう言って俺達はギルドを後にする。ここで大切なのは振り返ったり後ろからの声に耳を貸さない事だ、そんな事をすればせっかくのニート生活が無くなってしまう。

 

「ちょっとカズマ!?まだ話は……行ってしまいました」

 

 

 

―――………

 

 

 

「ちょっとカズマ!?まだ話は……行ってしまいました」

 

本当に勝手な男ですね!こうなったら私も引きこもってやりましょうか。どうせニートなんて長くは続きませんし、いつかお金が無くなります。そしたら嫌でもクエストに行かなければなりませんから、私の強大な力を貸してくれと泣きついてくるでしょうね。

 

「仕方あるまい、幸いこれからやる事もないのだ。爆裂魔法ならば私が付き合ってやろう」

 

「ダクネスとですか?それは大丈夫なのでしょうか」

 

「ああ任せろ、倒れた仲間を庇いながら必死に戦うが力及ばず、魔物に蹂躙される……ああやめろ、めぐみんには手を出すな。やるなら私をやるがいい!だが身体は好きに出来ても、心まで自由に出来ると思うなよ!」

 

「すみません、やっぱり無しでお願いします」

 

「そ、そうか。だが気が変わったらいつでも声をかけてくれ」

 

「そうですね、気が変わったら一緒に行きましょう。それでは私はこれで失礼します」

 

「ん?何か用事でもあるのか?」

 

「ええ、そんな所です」

 

私の存在がパーティーにどれだけ大切かを思い知らせてやるのです。カズマが謝るまで絶対にクエストに着いて行ってあげません!

 

 

 

―――………

 

 

 

「ふぅ、これで3日間ゆっくり出来るぜ」

 

「ですね、何しましょうか。って寝るだけなんですけど」

 

ふははははは!そうだよ、寝るだけだ。異世界まで来てまたニートだよ!……普通さぁ、もっとその……こう……あるじゃん。チート能力でモンスターをなぎ倒すとか、世界を救ってハーレムとか。いや俺もね?やる気がない訳じゃないんだよ。でも理想と現実があまりにもかけ離れてるってゆーか、モンスターすらまともに倒せないとかRPGとして終わってるだろ。

 

「さあ着きました、早速ゴロゴロしましょう」

 

そんな事を考えているといつの間にか宿に到着したようだ、部屋の扉を開けるといつものバカでかい鏡が出迎えてくれる。いい加減邪魔だから早めに何とかしてほしい。

 

「難しい事を考えていますね。いいですかカズマさん、私達はニートです。ただ心の赴くままに惰眠を貪るだけでいいんですよ?賭博で稼げばお金にも困りません」

 

クリスは早速ベッドでゴロゴロしながら女神として言ってはいけない事を言っている。どうやらニートの魅力に取り憑かれてしまったようだ。

俺もクリスに習ってベッドに飛び込む。フワフワでとても気持ちいい、仄かにお日さまの香りがする。

 

「お前確か女神の力はあんま使いたくないとか言ってなかったか?でもそうだな、賭博かぁ。いいぞやってこい」

 

「別に力なんか使わなくても人間相手に負けたりしませんよ。私は女神ですからね」

 

「女神が博打なんてやってもいいのかよ」

 

「いいんです。私が女神だとバレなければ問題ありません」

 

「フラグにならなければいいな」

 

「そんなフラグありませんよ。全部へし折って差し上げます」

 

だといいがな。どうせ他の転生者に見つかるのがオチだ、それかアリアに見つかるかもな。

 

「まあ今日はもう寝て、明日も存分にゴロゴロしよう」

 

「分かりました、お休みなさい」




という事でパーティーの内三人がニートになりました。
…これからどうしよう。


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このすば!クロスワールド編
ついにニート生活の始まり!の筈が……


前回のあらすじ

謎の遺跡を調査し、街に帰ってきたカズマ達。
キャベツの報酬までの繋ぎとして、ツケという生き残る術を手に入れたカズマは…ニートになる事を決意したのである!



ついに始まった……異世界での引きこもり生活の一日目!さあ、思い切りゴロゴロしよう。

 

ゴロゴロゴロ……ガツン!

 

ゴロゴロゴロゴロ……ゴツン!

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ガツン!

 

「だああぁぁっ!!さっきから鏡が足に当たってるんだよ!おいクリス、やっぱこれそっちに置け!」

 

「嫌ですー、だって邪魔ですもん。ていうかその鏡、どうも壊れてるみたいなんですよね。危ないですしそこに置いといてください」

 

「危ないならさっさと直すか捨てるかしろよ!何回も蹴っちゃったんだけど大丈夫なのか!?」

 

「仮にも神器なんですからカズマさんの貧弱ステータスで何回蹴ろうが大丈夫ですよ……たぶん

 

おい聞こえたぞ!たぶんって何だ、自信が無いならさっさとどうにかしろ!

 

「でも天界に持って行く時壊れたままだと色々不味いんですよね。正直面倒なんですが……仕方ありません。邪魔なのでそっち行ってなさい」

 

あー……なんか報告忘れたとか言ってたな。いつもの俺への態度と一緒に一回怒られればいいと思うぞ。

そんな考えを読み取ったかのだろうか、クリスは俺を乱暴に自分のベッドに投げ飛ばすと鏡をいじり始めた。直せって言ったのは俺だがどうやる気だ?

 

「なあクリス、神器って直せるもんなのか?剣とかなら打ち直せばいいんだろうが鏡だぞ?そもそも本当に壊れてるのかよ」

 

「しっかり壊れてますよ、見れば分かるでしょう。中の回路がおかしくなって時間軸がズレているみたいです」

 

見れば分かるって言われても困るんだが。ただの古い鏡にしか見えないぞ?言われなきゃ神器だって事にも気付かない程だ。

 

「サッパリ分からん、見分け方でもあるのか?」

 

「分からないなら黙っていてください、気が散ります」

 

「……まあいいさ、ちゃんと直るなら文句はないからな。ただ間違えて暴走するとかはやめろよ?」

 

「私がやるんですから失敗なんてする訳がないでしょう。大体、こんな異世界を覗くだけの鏡が暴走したってたかが知れてます。私が失敗するなんて、あ・り・え・ま・せ・ん!」

 

「馬鹿野郎!お前そんな事言ったら……」

 

「は?何を言って……きゃあああ!!」

 

俺はクリスの発言を止めようとしたんだが少し遅かったらしい、鏡から白い手が生えてきた。それも一本や二本ではない、十本……二十本……まだまだ増える。ほら見ろ、だから言ったじゃねーか!つーか何だその手、キモっ!怖っ!

やがて謎の手はクリスの全身に纏わりつき鏡の中へ引き込もうとしているようだ。

 

「怖い怖い怖い!おい大丈夫なのか!?くそっ、今助けてやるから!」

 

「当たり前です、早く引っ張りなさい!」

 

「それが人に物を頼む時の態度か!って今はそんな事どうでもいい、ちょっと痛いだろうが我慢しろよ!?ふんぎぎぎぃっ!……こいつ力強いんだけど!?」

 

全力で引いてもびくともしない、逆に俺まで引きずられる始末だ。それでも諦めずに引っ張り続けるが、健闘虚しくクリスは鏡の中に消えていった。

 

「おいクリス!?聞こえるか、クリス!」

 

やばいやばいやばいやばい、マジで鏡に入りやがった!こんなもんどうやって連れ戻せばいいんだ!?俺は冒険者であって霊媒師じゃねーんだぞ!

 

「クリス!返事しろ、クリス!……駄目か。いや、絶対に手はある筈だ。まずは皆に相談しないと!」

 

ニートなんて言っていられない!ギルドに行けば誰かいるだろう、そう考えて宿を飛び出した。

 

 

 

―――………

 

 

 

「ダクネス、めぐみん!いるか!?」

 

「あら?カズマさん、そんなに慌ててどうしたの?ダクネス達ならいないわよ」

 

「ハァ、ハァ、アリアか!いや実はな……」

 

そこまで言って気がついた。こいつも女神じゃん!なら話は早い、アリアに今までの事を全て話す。

 

 

「はああああ!?パーの鏡に吸い込まれた!?今すぐ案内しなさい!」

 

「そ、そんなにヤバいのか?いやヤバいのは分かるが……」

 

「いいから案内して!」

 

あまりの剣幕に内心ビビりながらもクリスが心配なので急いで宿に向かう。部屋に案内するとアリアは鏡を調べ始めた。

 

「おい、そんなに触って大丈夫なのか?お前までやられたらどうしようもないぞ?」

 

「確認するけど、エリスは間違いなくこの鏡に取り込まれたのよね?」

 

「あ、ああ間違いない。鏡から無数の手が出てきてな、頑張って助けようとしたんだが無理だった。俺まで取り込まれるかと思ったんだが何故かクリスだけ鏡に……」

 

「まず、パーの鏡に人を取り込む機能はないわ。これはただ平行世界を覗くだけの物だから、あの子が鏡に入ったならどこかの平行世界に飛ばされた可能性が高い」

 

「じゃあ死んだ訳じゃないんだな?」

 

クリスが生きていると分かって安心する。だが腰が抜けてその場にへたりこむ俺を無慈悲な言葉が貫いた。

 

「確かにまだ死んだ訳じゃないけど安心は出来ないわよ。もし飛ばされた世界がモンスターで溢れかえった世界だったら?もし魔王軍が世界を滅ぼした後だったら?平行世界っていうのはもしもの世界だからそういう事もあり得るの」

 

「じゃあどうすればいいんだよ、そもそもこの鏡に人を取り込む機能はないんだろ?何でこんな事に……」

 

「まだ分からないわね。転生者が勝手に改造したのか、何らかの不具合で神器の能力が変質したのか。とりあえず私はこれから天界に行って報告してから色々調べてみるわ、カズマさんはパーティーメンバーに知らせておいて頂戴」

 

「ああ、連絡は任せろ。それくらいしか出来ないが……」

 

「いいのよ、これは私達の不手際だもの。ああそうだ、危ないから鏡には触らないように言っておいてね」

 

当然だ、あんな事が起きた後に鏡に触るのは馬鹿のやる事だろう。クリスと同じように取り込まれても飛ばされる世界まで同じとは限らないし、今の段階でそんなリスクは犯せない。

 

「じゃあ行ってくるわ。報告、お願いね」

 

アリアは走って部屋を出て行った。何かクリスを救出する方法を見つけてくれる事を祈ろう。だがアリアだけに任せてはいられない。俺もめぐみん達を探しに宿を出る。




平行世界に飛ばされてしまったクリス、無事に帰る事ができるのか!
鏡ってホラーにもよく使われますよね。
作者はホラー系かなり耐性ありますよ?
……本当ですよ?


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飛ばされた先は… 

今回はクリスsideです。
いつもカズマさん視点で書いているので中々新鮮でした笑


「う……ここは……」

 

目が覚めると私はアクセルの中央広場にいました、どうやら気を失っていたようです。何故こんな場所で……。

いえ、段々思い出してきました。確か私はあの鏡に吸い込まれた筈。という事はここは鏡の中?でもこの景色はどう見てもアクセルですし……。

 

「うーん、分かりませんね。なら今考えても仕方ありません。ここがアクセルならカズマさんもいるでしょうし、とりあえず探してみますか」

 

まず最初に私が向かったのはいつも泊まっている宿でした。カズマさんがいるとすればやはりここでしょう。途中で私にそっくりな人が二度見してきましたが何だったんでしょうか……。そんな事はどうでもいいですね、早く部屋に入りましょう。

 

「カズマさーん、今帰りましたよ!びっくりしました?この私があんな訳の分からない手にやられると思いました……か?」

 

おや?鍵がかかっています。何ですか?私に見られたらまずい事でもやっているんですか?

 

「カズマさん!開けなさい、カズマさん!いないんですか!?このへっぽこ冒険者!」

 

……返事がありません、どうやら本当にいないみたいですね。ならばギルドでしょうか、この私に手間を取らせるとはいい度胸です。

カズマさんがいないならこの宿に用はありませんね、早くギルドに向かいましょう。

 

さて、ようやくギルドに着きました。着いたのはいいんですが……ここにもカズマさんはいないようです。あの男はどこに行ったんでしょう、誰かに聞いてみますか。

 

「という事なので、カズマさんの居場所を教えなさいチンピラ」

 

「何がという事だか分かんねえが、人に物を尋ねるならそれなりの態度ってモンがあるんじゃねーか?それと俺の名前はダストだ」

 

チンピラは親指と人差し指をくっつけて円を作りながらゲスい笑みを浮かべています。喧嘩を売っているのなら買いますよ?

 

「何ですかその手は?頭に風穴を開けてほしいなら口で言ってください」

 

「金よこせって言ってんだよ!風穴開けてくださいなんて言う訳ねーだろ!」

 

「どうしましょう、いきなりカツアゲされてしまいました。こんなか弱い美少女からお金を巻き上げようとは人間の風上にもおけないクズです。生きてる価値も無いゴミです。根性がねじ曲がったチンピラです。頭のおかしい犯罪者予備軍です」

 

「おい後半ただの悪口じゃねーか!」

 

「落ち着いてくださいチンピラ、私はカズマさんがどこに行ったのか知りたいだけなんです。教えてくれないとあなたにカツアゲされかけた事を言いふらしますよ?」

 

「好きにしろよ、今更悪い噂が一つ増えたって変わらないからな。言っておくがこの街じゃあ結構有名人なんだぜ?それと俺の名前はダストだ」

 

それたぶん悪い意味での有名人なのでは?威張って言う事ではないでしょう。もう他の人に聞いた方が早い気がします。

 

「もういいです、あなたには聞きません。さようならチンピラ」

 

「ダストだ!おい待て、分かったよ教えてやる。カズマならアルカンレティアに行ったらしいぜ」

 

「どういうつもりですか?」

 

「そう警戒すんな、困ってる奴がいたら助けてやるのは当然だろ?」

 

「成る程、さっきお金を要求してきた人は素晴らしい事を言いますね」

 

「悪かったって、教えてやったんだから細かい事は気にすんな。それで、代わりと言っちゃなんだがお前に頼みがあるんだ」

 

ほらきました、そんな事だろうと思いましたよ。どうせお金を貸してくれとでも言うんでしょう?絶対に嫌です、返ってくる未来が全く見えません。

 

「カズマに会ったら『例の喫茶店に可愛い娘が入った』って伝えてくれ」

 

喫茶店?ああ、どうせカズマさんの事ですしメイドカフェとかその類いでしょう。本当に男ってどうしようもないですね。

 

「まあ、いいでしょう。伝えておきます」

 

これで次の行き先も決まりましたね、しかしアルカンレティアですか。カズマさんはお金を持ってなかった筈ですが、どうやってあんな遠くまで……。

まあそれもどうでもいいです、会えば分かるでしょう。確かアルカンレティアまではテレポート屋がありました。馬車で行ってもどうせ追い付けないでしょうし、使いますか。

 

ギルドを出た私は急いでテレポート屋へ向かいます。少し高いですが払えない金額ではありません。

 

「いらっしゃいませー!こちらはアルカンレティア行きになっておりまーす!」

 

あれですね。うわぁ……とんでもない行列です、これ何時間待ちなんでしょうか。少なくとも一時間では終わりませんよ?まあ整理券を貰えばいいだけの話なんですけど。

 

という事で整理券を貰ってきました。あんな行列に並んでなんかいられませんし、このシステムを考えた人は天才ですね。

ちなみに待ち時間を聞いてみたら四時間待ちらしいです。四時間ですよ四時間、どれだけですかアルカンレティア!

 

「あーあ、時間まで何をしてましょうか。宿に戻ろうにも鍵はカズマさんが持ってますし……大体、何故私があんな遠くまで行かなければいけないんですか」

 

そうです、そもそも仲間がいなくなったなら必死になって探すのが普通でしょう!?何をのんきに温泉街なんて行ってるんですか、行くならせめて私も連れて行きなさい!

別に置いていかれたのが悔しいとかではありませんけど。羨ましいとかそんな事ありませんけど!その、少しは心配してくれてもいいじゃないですか……。

ええい、もういいです!そっちがそうくるなら私にも考えがあります。とりあえず出来るだけイケメンな通行人に話かけて……。

 

「あの、すみません。少しお時間よろしいですか?」

 

「ん?君は……」

 

「初めまして、私はクリスといいます。あなたに一つ、お願いがあるのです」

 

「僕はミツルギキョウヤ。皆には魔剣の勇者と呼ばれているよ、よろしくね。それでお願いって何かな?」

 

ミツルギキョウヤ……名前からして日本人ですか、これはラッキーですね。

 

「実は友人の住んでいる街が魔王軍に脅かされているのです。見た所あなたはかなりのレベルの冒険者でしょう?どうかそのお力を貸してもらえませんか?」

 

強力な特典を貰い、更に魔王という明確な悪の存在を知った日本人は大抵が正義感に溢れています。この少年もそんな人たちの一人でしょう。何せイケメン、一人称が僕、ミツルギキョウヤなんていかにもそれっぽい名前ですしね。こういう人間は女の子が困っていれば助けずにはいられないのです、まして魔王軍なんて聞けば尚更。

 

「何だって!?詳しく聞かせてくれ!」

 

ほらやっぱり、予想通りです。後は適当に丸め込んで同行してもらいましょう。

計画はこうです。まず彼と一緒にテレポート屋でアルカンレティアまで行きます。それからカズマさんを探して、気づかないフリをしながらイチャイチャするのです。そうすれば嫉妬したカズマさんは改心して、二度と私をぞんざいに扱う事はないでしょう。紳士的なミツルギさんなら『女性に払わせるなんてありえない!』と言って代金を全部払ってくれそうですし、我ながら完璧な作戦ではないでしょうか!

 

「申し訳ありません。詳しい事は私も分からないのですが、先日友人から手紙が届きまして……手紙にはアルカンレティアで怪しげな男を見たと書いてありました」

 

「なっ……そ、それは本当か!?」

 

うっわ、いくら何でもチョロ過ぎでしょう。怪しい男を見たからってそれが魔王軍とは限らないでしょうに。この人にとっては怪しい=悪人なんですか?これから色々説明するつもりだったので手間が省けたと言えばそうなんですが、何だか複雑な気持ちです。

 

「はい、今はその友人とも連絡が取れません。グスッ……勇者様、どうか私に着いてきてくれませんか?」

 

「いや、アルカンレティアには僕一人で行こう。危険だから君はここで待っていてくれ」

 

「え!?嫌です、私も行きます!勇者様が危ない目にあっているのに私だけ安全な場所で待っているなんて出来ません!それに、友人が心配なんです。お願いします、私も連れて行ってください!」

 

「……分かった、じゃあ僕から離れないと約束してくれないか?」

 

「ありがとうございます!勿論、私はあなたから離れません」

 

流石に苦しい言い訳でしたが、この人が馬鹿で助かりました。でもこれで一応一緒に行動する理由はできましたね、カズマさんの反応が楽しみです。




原作世界に飛ばされたクリス。
カツラギさんに色々言っていましたが勿論クリスは魔王軍の事とか何も知りません、適当に言っただけです。
マツルギさんには二人の仲間がいましたが、魔王軍が関わっていると知って置いていくみたいです。(エンシェントドラゴン戦では一緒に戦って?いましたが)


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いざ、アルカンレティアへ!

魔剣のなんとかさんと幸運の駄女神、アクシズ教徒の巣窟へ出発です。
一人はアクア様を尊敬するナルシスト。
一人はアクシズ教の仇敵、女神エリス。
これからどうなってしまうのか、それは誰にも分からない(作者も含む)


「では早速行きましょう!……と、言いたい所なんですが。まだ三時間ちょっとあるんですよね。どうしましょう」

 

このまま何もせず待っているだけじゃつまらないですし、どこかで時間を潰しましょう。

 

「あの、ミツルギさん。アルカンレティアに行く前に準備をしませんか?ほら、備えがあれば憂いもないでしょう?」

 

「それなら三時間後にまたここに集合でいいかな?僕もパーティーメンバー達に言っておかないといけないからね」

 

やっぱり仲間がいましたか。その人達は置いて行くんですか?いえ、私としてはありがたいんですが……君達は足手まといだよと言っているようなものだと思うんですけど、どうなんでしょう。

 

 

 

―――………

 

 

 

その後ミツルギさんと別れた私は着替えを求めてブティックに向かいました。荷物は全部宿に置いてあるので鍵がないと取りに行く事ができません。仕方がないので新しい物を買ってしまいましょう。

 

「いらっしゃいませー!まあ、可愛らしいお嬢さん!さあさあこっちへいらっしゃい。はぁ、はぁ、大丈夫、心配しないで?すぐ終わるから」

 

「は……?え、ちょっと何を……」

 

「いいからいいから、お姉さんに任せなさい!うふふふふ」

 

「待ってください!引っ張らないで、何をするつもりですか!」

 

「あら、可愛い子がいたら着飾りたくなるのは当たり前じゃない!」

 

そんな何言ってるの?みたいな顔で見ないでください、それはこっちの台詞です。悪い人ではなさそうですが、少し苦手なタイプですね。

 

「あの、そういうのはいらないので適当にいくつか持ってきてくれませんか?上下2つずつあれば十分なので……」

 

「駄目よ!年頃の女の子がお洒落しないでどうするの!さあ来なさい、綺麗になりましょうねー」

 

ああ……この店員、完全に目がイッちゃってます。これは抵抗しても無駄なやつですね。

それからは地獄の時間でした。着せられた服は優に50を越え、そろそろ店を出ないと集合時間に間に合わなくなってしまいます。

 

「ああ、これも似合ってるわぁ。じゃあ次は……」

 

「いい加減にしてください、時間がないんですよ!もうこの2つでいいのでお会計をお願いします!」

 

「ええ!?後ちょっとだけ……駄目?」

 

「駄目です!あなたのちょっとは信用できません、待ち合わせに遅れてしまいます!」

 

すぐ終わると言ってたじゃないですか!もう三十分もありませんよ?これ以上やってたら本気でまずいです!

 

「ご、ごめんなさい!少し熱くなりすぎちゃったみたい」

 

「そんな言い訳が……いや、今はそんな事どうでもいいんですよ!とにかくお会計をお願いします」

 

「はい、かしこまりました。全部で16700エリスなんですが……今回はご迷惑をかけてしまったので代金は結構です」

 

「いいんですか?後で怒られたり……」

 

「あはは、本当はいけないんですが私のお給料から引かれるだけなので。ご迷惑をかけたお詫びです」

 

「しかしですね……」

 

 

結局ただで貰ってしまいました。だって仕方ないでしょう、問答してる時間が無かったんです!どうせ私が遠慮しても折れないんでしょう?なら時間の無駄じゃないですか!

 

 

 

―――………

 

 

 

「すみません、遅くなりました!」

 

「僕も今来た所だ、気にしないでくれ」

 

おお、何という紳士っぷり!カズマさんなら『遅いぞ、何やってたんだ!あーあ、俺足が疲れちまったよ。罰として荷物は全部お前が持てよな』とか言うのに……。

 

「そう言ってもらえると助かります。では行きましょうか」

 

「そうだね、アルカンレティアは女神アクア様を信仰するアクシズ教の総本山だ。そんな街が魔王軍に襲われているとなれば黙ってはいられないよ。というか四時間待たなくても事情を話して順番を譲ってもらえばよかったんじゃないかい?」

 

駄目ですよ、馬鹿じゃないですか?いきなり知らない人に魔王軍がいるかもしれないから順番を譲ってくれなんて言っても、信じてくれる訳ないでしょう。証拠を出せと追い払われるのがオチです。

 

「あの、そんな事をすれば他のお客さんやアクシズ教徒の皆、何よりあなたの尊敬する先ぱ…アクア様に迷惑をかけてしまいますよ?」

 

「それは……確かにその通りだ、でも魔王軍はそれだけ危険なんだよ。今あの街に行く人は止めた方がいいだろう」

 

「知ってますけど、それでもです。アクア様から頼まれたのは魔王討伐だけですか?世界を救ってほしいとも言われた筈です。ならば人々を護るのもあなたの仕事ではないでしょうか」

 

「クリス……ありがとう、おかげで目が覚めたよ!そうさ、たとえ何人いようと全員僕が守ってみせる!」

 

うーん、この勇者様単純というか……なんて扱いやすいんでしょう。いくらなんでも私が知りすぎているとは思わないんでしょうか。正義感が強いのは良いことですが、強すぎると早死にしてしまいますよ。

 

「とにかく、ここで話していると邪魔になりますし早く行きません?」

 

「よし、行こう。待っていろよ、魔王軍!」

 

すみません、魔王軍は嘘なんです。当然そんな事を言えば流石の彼でも怒るでしょうから黙っておきますけど。

 

 

 

―――………

 

 

 

「着いたよ、ここがアルカンレティア。いつ見ても綺麗な街だ」

 

「へぇ、前に来た事があるんですか?」

 

「当然さ、何せ敬愛する女神様の街だからね。フィオとクレメアと一緒に何回か来た事があるよ。何故か最初は他の街を勧めてきたけどね。きっと二人共緊張していたんじゃないかな」

 

ふーん、恐らくそのフィオ、クレメアというのはミツルギさんの仲間……パーティーメンバーなのでしょう。名前からして女性のようですが……あれ?私、彼女達に恨まれていませんか?嫉妬とか面倒臭いのは嫌なんですけど。

 

「へぇ、ところでミツルギさんはそのフィオさん?達にこの街に来る事を説明してきたんでしょう?何て言ったんですか?」

 

「クリスと一緒にアルカンレティアに行ってくるって言っただけだよ。魔王軍の事は言ってないから安心してくれ」

 

違います!別に魔王軍と聞いてあなたの仲間が心配するかもしれないとかではありません!というかその言い方だと誤解されるじゃないですか。

はぁ……どうしましょう、絶対に帰ったら絡まれますよね。全く、本当に厄介な事をしてくれたものです。

 

「それはありがとうございます。私もあなたの仲間には余計な心配をかけたくないので、助かりました」

 

こう言うしかないんですよね、わざとではないんでしょうから怒るに怒れません。私の計画には彼の協力が必要ですから出来るだけ機嫌を損ねたくないというのもあります。本来なら女神が人間の顔を伺うなどありえないんですがこればかりは仕方ありません。

 

「礼には及ばないよ、それより君の友人を紹介してくれないか?詳しい話が聞きたいんだ」

 

「うっ……そ、それは……そう!さっきも説明した通り、今は連絡がとれないんです。なので友人を探すついでに街を回ってみませんか?確かあの人は温泉が好きだった気がします!」

 

「ふむ……じゃあこの街の温泉を回ってみようか。もしかしたら会えるかもしれない」

 

「そうですよね!ではまず宿をとりましょう。1日で見つかるとは思えませんから仮の拠点とするんです」

 

「賛成だ、でも宿と言ってもたくさんあるよ?どこにするのか決めているのかい?」

 

「ミツルギさんは何度か来た事があるんでしょう?いい所を知りませんか?」

 

「じゃああそこにしよう、僕が二回目に来た時に泊まった宿。あそこなら宿に温泉もあるし、君の友人もいるかもしれない……いつまでも友人では呼びづらいな、名前を教えてくれないか?」

 

いや温泉街の宿で温泉がない所なんかある訳ないでしょう、そんなのがあればもう潰れています。なんて言ってる場合ではありません、そこまで考えていませんでした!

 

「えっと、えっと、カ、カスマです!友人の名前はカスマさんといいます!」

 

「カズマだって!?……いや、カスマか。すまない、知り合いの名前にとても似ていたからついね」

 

「そ、そうなんですか?それは偶然ですね」

 

あー、びっくりしました。そうですよね、こんなイケメンがカズマさんと知り合いとかある筈ないですよ。でも今カズマと聞こえたような……勘違いだといいのですが。

 

「まあいいです。ほら、早く案内してください!」

 

「分かった。こっちだ、着いてきてくれ」




はい、クリスの友人はカスマさんになりました。
勇者様はまだ気づいていないようです。


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カズマパーティーと合流!だが少し様子がおかしいようで…①

今回でついにカズマ達が出てきます。
うん、やっとです。
これ書くのに何度もやり直しました、そこそこ面倒臭かったです。
でも頑張って仕上げた後は、何ていうか、達成感というものがありますね。


「すみませーん、部屋空いてますか?」

 

「ん?お客さんかい?部屋なら空いてるよ。一人7000エリスだ、二人部屋なら合わせて12000エリスでいいよ」

 

「部屋を二つでお願いします」

 

この勇者様と同じ部屋なんて論外です、手紙の件とか色々聞いてくるのは目にみえていますから。

 

「ミツルギさんもそれでいいですか?」

 

「勿論、交際していない男女が同じ部屋というのは良くないからね」

 

毎日カズマさんと同じ部屋で生活してます、なんて言ったらお説教されそうですね。そんなのは天界の老害……ではなく上司だけで十分です。

 

「さあ、早く部屋に荷物を置いて温泉に入りましょう。実はかなり楽しみなんですよね」

 

「こら、遊びに来た訳じゃないんだぞ」

 

「固い事言わないでください。今からそんなに気を張っていたら体が持ちませんよ?まだ初日ですし、焦ってもうまくいきませんって」

 

「言い分は正しいのにうまく丸め込まれた気分だよ。何なんだろうねこの気持ち」

 

「気のせいです」

 

むぅ……少しずつ勘が良くなってきてませんか?このままでは嘘がバレるのも時間の問題です、何か策を講じなければいけません。

 

「で、では私は温泉に入ってきますね」

 

私は逃げるようにその場を離れます。別に本当に逃げた訳ではありません。これはこの後どうするかを考える為の時間を稼ぐ、高度な作戦なんです。

 

 

「はふー、いいお湯ですねー」

 

あー、これだけでも来てよかったですねぇ。こんなに気持ちいいと眠ってしまいそうです、いや寝たら死んじゃうんですけどね。

それにしてもこれからどうしましょうか。

 

「今回の目的は、大切な仲間を置いて温泉街に向かった薄情なカズマさんを探す事です」

 

その為には情報が必要ですね。そもそも今回は不可解な事が多すぎます。

 

まず、あの時私は鏡に吸い込まれた筈……。夢だった?いえ、確かに街の広場に倒れていましたがあんな所で寝た覚えはありません。まあこれは後でいいでしょう。

 

次にカズマさんです。お金も無いのにどうやってこの街に来るんでしょうか。馬車やテレポート屋もただではありません、仮に来れたとしても遊ぶお金なんか……パーティーメンバーに借りたんですか?ダクネスさんなら財布扱いすれば喜んで貸してくれそうですからね、それなら分かります。

 

では次、何故今この街に来るのか。旅行に行きたいなら何も今じゃなくてもいいでしょう。仲間がいなくなったら探すのが普通なのに、温泉街を優先した理由は?私が見つからなかったか、この街に急ぎの用事があったのか。それとも何か別の理由?

急ぎの用事ならギルド等に伝言を頼む筈なのでないとして、なら見つけられなかった?まさか、あんな目立つ所に倒れていて見つからない訳がありません。衛兵を呼ばれなかったという事は眠っていたのはそう長い間ではないでしょう。カズマさん達が出発してから誰かが運んだ?誰が、何の目的で?カズマさんと引き離す為であれば、それこそ私を解放する意味が分かりません。いくら引き離してもテレポート屋を使えばすぐに合流できますし、用済みになったなら殺すのが普通です。これは私とカズマさんが合流する事が犯人の狙いと考えるべきですね。

 

「もう面倒臭くなってきました。何故部屋でゴロゴロしていただけでこんな事になるんですか?」

 

文句を言っても始まりませんが、それでも言いたくなるでしょう。仕方ありません、早めに解決して帰りますか。

選択肢は二つ。カズマさんに合流するか、合流せずに予定通りミツルギさんと「デート」するか。合流する場合はまあ、犯人の思い通りになる訳ですから何かしら事件が起こるでしょう。それがどんなものかは知りませんが、悪い事が起きるのは確かです。

では合流しない場合、こっちは犯人が襲ってくるかもしれません。ミツルギさんはいますが彼の実力が分からない以上、警戒はしておいた方がいいですね。

ふむ、ならば私がとるべき行動は……あら?視界が回って……あー、のぼせてしまいましたか。しかし倒れる程ではありません、ですがそろそろ上がりましょうか。

 

 

「ミツルギさん、お待たせしました」

 

「遅かったね、水分補給をした方がいいよ」

 

「え?そんなに遅かったですか?すみません、自分では気づきませんでした」

 

謝りながら水を受け取り飲み干します。お風呂上がりは牛乳が良かったんですが贅沢は言えません。この街の水は美味しいので、我慢してあげましょう。

 

「それを飲んだら行くよ。魔王軍は待ってくれないからね」

 

「あの、話聞いてました?まだ初日ですからゆっくりしてましょうよ。それに今外に出たら湯冷めしてしまいます。明日からにしませんか?」

 

「なら仕方ない、僕一人で行ってくる」

 

さっき自分から離れるなとか言ってませんでしたっけ?まあそれならば好都合です、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらいましょう。ふふん、残念でしたね。どうせ一人で行くと言えば着いてくると思ったんでしょうが、そんな手には乗りません。私の目的はカズマさんの捜索ですが、今日はゆっくりすると決めました。

 

「そうですか、頑張ってくださいね」

 

そう答えると本当に出て行ってしまいました。うーん、怒らせてしまいましたか。まあ私には関係ありませんね。部屋で寝てましょう。

 

 

 

―――………

 

 

 

「おい朝だぞ、起きないか!」

 

「む……朝?でも後5分だけ……」

 

「そんな事を言っている場合じゃないだろう、今日からやると言ったじゃないか!」

 

うるさいですね、ドアを叩かないでください。確かに言いましたけど、眠いものは眠いんですよ。でもそろそろ真面目にやらないと本気で怒られますか……。

 

「分かりました、準備をしますから下で待っていてください」

 

とりあえず、着替えを済ませてロビーに向かいます。今日の服はペプロス……古代ギリシャの服飾みたいなやつにしました。この服妙に羽衣に合うんですよね、勿論昨日ブティックで買った服です。いつも修道服みたいな格好だったので新鮮ですね。ロビーの扉を開けるとミツルギさんがいかにも準備万端といった格好で待っていました。昨日と同じ鎧姿です、いやそれで温泉街歩くんですか?一緒に歩くのちょっと恥ずかしいんですけど。

 

「その服、中々似合っているじゃないか。というかその羽衣は何なんだ?何かのマジックアイテムかい?」

 

「そんなところです、効果は状態異常になりにくいというだけですけどね」

 

本当は状態異常の完全無効化なんですが……説明するのが面倒ですし、これでいいでしょう。

 

「それでは行きますよ、まずは定番の聞き込みからです」

 

私は意気揚々と街に繰り出します。最初は簡単だと思っていましたが、やってみると中々難しいものでした。

 

「ようそこの嬢ちゃん、何か困り事か?」

 

「ええ、ある冒険者を探しているんです。茶色の髪に緑の目をした、いかにも冴えない男を見ていませんか?」

 

「冒険者ねぇ、そんなもんこの街にいくらでもいるからな。一々覚えてねえよ。ああでもこの紙に名前を書いてくれたら思い出すかもな」

 

「これは……入信書?」

 

「おう!我らがアクシズ教の入信書だ」

 

私、女神なんですけど。女神が他の宗教に入信するとかありえないでしょう。まあ正体は隠しているので仕方ないんですが……とりあえず断っておきますか。

 

「すみません、私エリス教徒なんです」

 

実は私は女神なんですとか言えませんし、こう返すしかありません。ですが次の瞬間、この男がとった行動に目を疑いました。

 

「ぺっ!」

 

何と地面に唾を吐き捨て、去って行ったのです。ふざけないでください!何でエリス教徒ってだけでそんな態度をとられなければいけないんですか!?え?アクシズ教徒ってこんなんでしたっけ?

……きっと今の男は例外なんでしょう、他の人はまともな筈です。

 

「ねーえそこの可愛らしいお嬢ちゃん達、デートかしら!お似合いのカップルだわぁ。それはそれとしてこのお鍋なんだけどね?焦げないの!今入信すれば必ず貰えるのよ?これはもう入信するしかないでしょ!?」

 

結構です、お鍋なんていりません。着いてこないでください!

 

「むむっ!あらあらそこの人、お散歩ですか?そんな2人にはこの洗剤を!これ凄いんですよ?普通に使っても汚れがよく落ちるのに、なんと飲めるんです!さあこの紙に名前を……」

 

結構です、飲める洗剤とか誰が使うんですか!着いてこないでください!

それからも何度もしつこく勧誘されましたが、私がエリス教徒だと言うと皆揃って唾を吐き捨て、どこかに去って行きました。

だから!どうしてエリス教徒ってだけで!こんな態度をとられないといけないんですか!ミツルギさんも何か言ってやってください。

 

「少し勧誘熱心なだけじゃないか?僕もよく勧誘されたけど、アクア様にふさわしい冒険者になるまで信者にはなれないって言ったら無くなったよ」

 

「あれで少しとか意味分かりません!もういいです、ちょっと文句言ってきます」

 

「文句ってどこにだ?」

 

「決まってるでしょう、教会です。この街の責任者に直接言ってくるんですよ」

 

「アポとか取らなくていいのかい?」

 

「こんな人をなめ腐ったような街の責任者にそんなもの必要ありません!アポというのは忙しい人がスケジュール調整する為にあるんです!住人の暴挙を見逃しているあたり絶対仕事も少ないですよ」

 

 

という訳で教会までやってきました。扉を開け中に入ると、通路にとても見覚えのある人が座り込んでいました。特徴的な紅い瞳、同じく紅い眼帯に黒いローブ。そう、めぐみんさんです。私達のパーティーメンバーであるめぐみんさんが何かに怯えるように膝を抱えて震えていました。私が近づいても全く気づく様子はなく、うわ言のように「アクシズ教徒、コワイ」と呟いています。よく見れば目も虚ろですが大丈夫でしょうか。

って、そんな事よりめぐみんさんがここにいるって事は他の人達も近くにいるんじゃないですか!?チラリと外を見ると、ダクネスさんが子供達に石を投げられていました。

 

「……は?」

 

その冗談みたいな光景に目を疑いました。何回目を疑うんだと言われるでしょうが、仕方ないじゃないですか。外を見たら仲間が、それも上級職であるクルセイダーが子供達に石を投げられているんですよ?私が固まってしまうのも仕方ない、仕方ないんです!でもいくら仕方ないとしてもこのまま放置しておいたら人として終わってしまいます。私女神ですけど。

 

「こら!何をしているんですか!その人は私の仲間です、離れなさい……ちょっと、石を投げないで……やめなさいって言ってるでしょう!」

 

「何だ、姉ちゃんもエリス教徒なのか。エリス教徒は出てけー!」

 

「出てけー!」

 

こ、このガキ共……!この街は子供すらこうなんですか!?なんてふざけた街なんでしょう。

 

「おい君たち、人に石を投げたら危ないだろう!さあ謝るんだ」

 

「うるさい!エリス教は悪い奴らだってお父さん言ってたもん!」

 

「私たちが街を守るの!だからエリス教徒は出てけー!」

 

「ああん!?はっ倒しますよクソガキ!」

 

「ひぃっ!」

 

「クリスも落ち着いてくれ、子供達が怖がっているぞ。いくら何でもそれは言い過ぎだ」

 

はあ?あなたはどっちの味方なんですか。明らかに悪いのはそこのチビ共でしょう!偽善者を無視してダクネスさんに話しかけます。

 

「ダクネスさん、怪我はありませんか?」

 

「む、クリスか。何故ここに……いや、それより聞いてくれ!この街は中々にレベルが高いぞ!皆私がエリス教徒だと分かるとまるでゴミのように扱ってくれるんだ!そうだ、お前もエリス教徒だったな。一緒にここに住まないか?」

 

ああ、この人はこういう人でした。余計な心配でしたね。もういいです、勝手に盛っていなさい。

 

「すみませんでしたクソガキ共、この人にならいくらでも石をぶつけてくれていいですよ」

 

さて、カズマさんは……いましたね。この状況で会わない訳にはいきません。ミツルギさんもいますけど、2人は初対面の筈ですし何とかなるでしょう。

 

「おーい、カズマさん!やっと見つけましたよ。私を置いていくなんて酷いじゃないですか!」

 

「あれ、クリス?いや違うな。エリス……様?」

 

「──は?」

 

え?何ですかこの反応?……女神としての勘が更に面倒な事になりそうだと言っています。




はい、ここまでです。
アクア様の登場は次回まで待っててください。

それと活動報告で爆裂魔法の詠唱を募集しますのでカッコいい詠唱をください……
ゆんゆん、めぐみん、どっちでも構いません。
カッコいい詠唱を求めます。


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カズマパーティーと合流!だが少し様子がおかしいようで…②

本当にすまない!前回アクアが出ると言いましたが……もう少しだけ待ってください。


「サトウカズマ!?どうして君がここに!」

 

「エリス様!え?本当にエリス様!?こんな所で何をしているんですか!?」

 

「わああああっ馬鹿馬鹿馬鹿!この街でそんな事言ったら……」

 

慌ててカズマさんの口を塞ぎますが、少し遅かったようです。どこからともなく人が集まってきました。

 

「サトウカズマ、聞いているのか?何故君がこの街にいるんだ!というか君がいるという事は女神様もここにいるのか?」

 

「おい、今エリス『様』とか聞こえたが……てめえまさかエリス教徒じゃねーだろうなぁ?」

 

「あれ?この女……そうよ!確かさっき街を歩いてたエリス教徒!私が洗剤渡そうとしたのに無視したのよ!?」

 

「おいおい、エリス教徒なんかに我がアクシズ教団の洗剤を渡そうとしたのか?こんな奴そこらの泥水で十分だろ!」

 

「仕方ないじゃない、その時はまさかこいつがエリス教徒なんて知らなかったのよ!」

 

「ああおぞましい!あの暗黒神エリスの信者が神聖なるアクシズ教の教会に立ち入るとは!」

 

「この邪教徒め!」

 

あっという間に囲まれてしまいました。敵意を通り越して殺意の籠った視線が私達を貫きます。チラリとカズマさんを見ると顔を真っ青にして震え、めぐみんさんに至っては気を失っていました。そのまま少しずつ近づいてくるアクシズ教徒達、皆目が青く輝いています。

 

「「「ぶっ殺せええぇぇ!」」」

 

「……くっ、カズマさん!声を出さないでくださいね!『バインド!』『ステルスッ!』」

 

カズマさんとめぐみんさんを担いでから縄で周りの人間の動きを封じ、ステルスで透明になってその場を離れます。全方位を囲まれても頭上を飛び越えれば問題ありません。その際に私を邪教徒や暗黒神と呼んだ2人を思い切り踏んづけてやりました。そのまま正面の扉から脱出して全力で逃走します。

 

 

 

―――………

 

 

 

「はぁ、はぁ、こ、ここまで来れば大丈夫でしょう」

 

「エリス様!何でここにいるんですか、説明してください!」

 

「説明してほしいのはこっちです。一体いつから彼らはあんな無法者になったんですか」

 

「いやアクシズ教徒は前からあんなんだったらしいですよ?それよりも、何故エリス様がこの街にいるんですか!?」

 

前からって……そんな訳ないでしょう。私の知るアクシズ教徒はあんな滅茶苦茶な狂信者では無かった筈です。それと、何故この街にって?あなたが私を置いていったからでしょう。

 

「カズマさんを追ってきたんです。私達はパーティーなんですから仲間外れは良くないと思いますよ?」

 

「俺とエリス様がパーティー?何言ってるんですか。そりゃあ俺もアクアの代わりにエリス様とパーティー組みたいなーとか思ってますけど」

 

「はぁ?アクア先輩と?意味が分かりません。大体、私を特典に選んだのはカズマさんでしょう。忘れてしまったんですか?」

 

「いやいや!俺が選んだのはアクアですよ!?あのいっつも余計な事しかしない、知力2の駄女神アクアです!」

 

「ふざけてないで真面目に答えなさい」

 

「ふざけてるのはあの駄女神です!今日だってさっきの教会の懺悔室で遊んでますし」

 

んん?どういう事でしょう?嘘をついているようには見えませんが、内容は完全にふざけています。そう考えた瞬間、私の頭に1つの可能性が浮かびました。いや、でもまさか、そんな馬鹿なことが……。

一応!一応聞いてみます。絶対に違うでしょうが、不安要素は排除しておくに限りますからね。

 

「あの、カズマさん?あなたが特典として選んだのは……何ですか?」

 

「アクアです。あいつが俺をバカにしたので、ついイラッとして連れてきてしまいました。今は凄く後悔しています」

 

うっわー、確定じゃないですかー。

どうやら私は異世界に来てしまったようです。確かあの鏡は平行世界を覗く鏡でしたね。それにさっきのカズマさんの話からして……ここは私の代わりにアクア先輩が特典に選ばれた世界のようです。

この事を黙っていたらいつまでたっても話が噛み合いませんし、教えてあげましょう。

 

「カズマさん、落ち着いて聞いてくださいね?間違っても大声を出してはいけませんよ」

 

「はい、何でしょうか」

 

「どうやら私は平行世界から来てしまったようです。つまりあなたが知っている女神エリスではありません」

 

「は、はああああ!?ゴフッ!」

 

「だから大声を出さないでください。いくらあの教会から離れたとはいえ、ここはまだ街の中なんですよ?アクシズ教徒が来たらどうするんですか」

 

「だからって何も殴ることは……いえ、何でもありません」

 

分かればいいんです。なんかこのカズマさん、やけに素直ですね。平行世界だからと言えばそうなんですが、違和感が半端ないです。

 

「それで、平行世界ってどういう事ですか?女神なら別の世界に来るなんて簡単だったり?」

 

「無理に決まっているじゃないですか。そんな簡単に平行世界に干渉出来るのは、最高神様くらいです」

 

「じゃあどうやってこの世界に来たんです?」

 

「それがよく分からないんですよね。状況的にあの鏡しかないんですが、あれはただ他の世界を覗くだけの鏡ですし」

 

「鏡?」

 

「ええ、鏡です。随分前に紛失してしまった神器なんですけどね、その鏡に吸い込まれてこの世界に放り出されてしまったらしいんですよ」

 

私が無くした事は言わないでおきますか。折角カズマさんが従順なんですから、余計な事は言わない方がいいでしょう。

 

「あれを見つければ帰れると思うんですが、手がかりになりそうなのはあのアンデッドがやってる店しかありません……」

 

「アンデッドがやってる店って、めっちゃ心当たりある……エリス様、その店って何ていう名前ですか?」

 

「名前?確かウィズ魔法店とか言ってましたね。あれ?どうしたんですか?」

 

「あー、やっぱり……」

 

「知っているんですか。こっちのカズマさんも、あの糞アンデッドの店を知っているんですか。いえ、別にいいんですけどね?どの道帰るにはあの店に行かなければなりませんし」

 

「エリス様、エリス様!顔が怖いです!」

 

おっと、やってしまいましたか。ですが怖いと言われても、これは癖のようなものなので仕方ありません。

 

「それより、これからどうするんですか?私としては今すぐ帰りたいんですけど」

 

「それは同感ですけど、アクア達を置いていく訳にはいきませんし」

 

「いいじゃないですか、アクア先輩なら大丈夫ですよ。何たってアクシズ教の御神体ですから。ダクネスさんはほら……アレですし。随分この街が気に入ったようなので、置いて行っても問題ないでしょう」

 

ミツルギさんもアクア先輩といられて本望でしょう。何も問題ありませんね、では帰りましょう。

 

「そういう訳にも……あれ?それで良いのか?いやいや駄目だろ。でもあいつらなら……」

 

随分悩んでいますね。これは押せばいけるのではないでしょうか。……やりましょう。許してくださいねカズマさん。それもこれも、全部アクシズ教徒が悪いんですから。

 

「それにですね、この街にいたらいつ襲われるか分かりませんよ?カズマさんも見たでしょう。あの人達の目、あれはヤバイです。逃げた方が賢明ですよ?」

 

「あー、逃げたいのは山々ですけどね。まだウィズがいるんです。あいつを置いて行く訳にはいきません」

 

「よし、帰りましょう。街にアンデッドが侵入していますよと叫びながら街を出ましょうね」

 

「どれだけ嫌いなんですか!やめてくださいよ、ウィズ良い奴なんですから」

 

「アンデッドが良い奴ですって!?冗談は顔だけにしておきなさい。いいですか?あいつらはゴキブリのようにしぶといだけの害虫です。騙されてはいけません」

 

「騙されている訳じゃありませんよ!確かにウィズはアンデッドですが、人に危害を加えた事はないんです。信じてやってくれませんか?」

 

何ですかその目は……はいはい分かりましたよ、信じれはいいんでしょう?全く、どうして私がアンデッドなんか……。

 

「分かりました、そこまで言うなら信じてあげます。ただし!あいつが一度でも人に仇なす事をすれば、容赦なく浄化しますからね!」

 

「ありがとうございます!流石はエリス様です!」

 

そうです、慈悲深い私に感謝しなさい。これが先輩なら問答無用で浄化されますよ?もっと誉めるのです。

 

「ところでエリス様、そろそろ移動しませんか?いつまでもここにいても仕方ないですし」

 

「エリス様はやめなさい。この街でそれは本当に洒落になりません。私の事はクリスと呼んでください」

 

「ああ、それも聞きたかったんですが……エリス様って妹とかいるんですか?」

 

「何故そんな事を?」

 

「実はアクセルにエリス様にそっくりな奴がいるんですけど、もしかしたらエリス様の妹なんじゃないかなって思いまして」

 

あー、それたぶんこの世界の私ですね。聞いてくるという事は彼女も正体を隠しているんでしょう。適当にごまかしてあげますか。

 

「いいえ、私に妹はいませんよ。カズマさんが言ってるのは、恐らく私の信者でしょう。私も最初は驚きましたが本当にそっくりなんです。それと、私の事はクリスと呼びなさい」

 

「じゃあ名前が同じなのも……」

 

「同じ?どういう意味ですか?」

 

「そいつもクリスっていうんですよ。偶然じゃないですよね?」

 

「えっ……そ、そう!彼女から借りたんですよ!あは、あはははは……」

 

危ない危ない、危うくバレる所でした。こっちの私もクリスを名乗っているとかどんな偶然ですか!もっとあるでしょう。セリスとかアリスとか、あるでしょう!

 

「ところでカズマさん、移動したいんですよね?早く行きましょう」

 

「デートですね?分かりました」

 

「さて、こんな街でデートが出来るかどうか……。追われてるって理解してます?」

 

「うぐっ!で、でも街の人間全てに追われている訳じゃありませんし」

 

「そうですか?ここはアクシズ教徒の巣窟ですよ。あれだけエリス教徒を目の敵にしている人達が、街の住人に呼び掛けない筈か無いと思いますけどね」

 

めぐみんさんだっていますし、デートなんて無理でしょう。

 

「そりゃあそうですけど……」

 

「いずれにしろ、まずはめぐみんさんを起こさなければいけません」

 

とはいえ、どうやって起こしましょうか。そうですね……ここはカズマさんに任せましょう。

 

「ほら、早く起こしてください。眠り姫は王子様のキスで目覚めるのが定番でしょう?」

 

「犯罪的な絵面になるので遠慮します」

 

「ならどうするつもりですか?」

 

「うーん……そうだ!エリス様、少し向こうに行っててもらえませんか?」

 

「ねぇ、私をエリス様と呼ぶのはわざとですか?クリスと呼べって何度も言っているでしょう。敬語も……最初は気分が良かったですけど、違和感しかないのでいりませんよ」

 

「え?いいんですか?」

 

「まあこの世界のエリスとは違いますし、そんなに畏まられても……」

 

元の世界のカズマさんならいくらでも敬語を使ってくれて構いませんが、この世界のカズマさんが使うと違和感を感じるんですよね。何かが違うというか……うまく説明できませんけど、何かが違うんです。

 

「ならこれからはクリスって呼ばせてもらうよ……うん、これだと今度は俺が違和感あるんだけど」

 

「我慢してください。それでは私は向こうで待ってますからね。ナニをするつもりなのかはあえて聞きませんが、程々にしておくんですよ。私も違う世界とはいえ仲間が犯罪者になるのはごめんですから」

 

「しねーよ!いいから向こうで待っててください」

 

「ほら敬語!また出てますよ」

 

「そんな事言われても……慣れるまでは我慢してくださいよ」

 

言われた通り少し離れて観察していると、カズマさんが耳元で何かを囁きました。それと同時にめぐみんさんが凄い勢いで飛び起きます。完全にセクハラしたようにしか見えませんね。

 

「カカカ、カズマ!起きました、起きましたからスティールはやめてください!」

 

「カズマさん、何をしたんですか?やはりナニですか。いえ、責めている訳ではありませんよ?でもあまり私には近づかないでくださいね」

 

「距離をとらないでくれ!その顔でそんな事されると心が痛い」

 

「おや、クリスではないですか。あなたも来ていたのですね。おや?何か雰囲気変わりました?」

 

「後で話しますから早く行きましょう」




次は絶対アクア出します、待っていてください。
ちなみにアクシズ教ボロクソに書いてますが、私はそこまで嫌いではありません。
今も彼ら彼女らをどう活躍させようかなーとか思ってたり……


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