刀使ノ指令ダグオン (ダグライダー)
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序章、ダグオン誕生編
零話 邂逅!刀使とヒーロー?


皆さん、初めまして。この度この様な怪文書染みたモノを投稿した者です。
最近ハーメルンに登録し、何分、スマートフォンでの操作の勝手が未だ理解出来ない為、練習と機能の確認、文章反映の様子見等をを兼ねて投稿致しました。
又、今作は、クロスオーバー物の二次小説です。
以前から、刀使ノ巫女二次創作でダグオンとのクロスオーバーが中々見当たらなかった故に自分で書き上げた次第です。
それと、今回はプロローグのプロローグモノの為、とじみこ側のネームドはミルヤ以外出ません。又、ダグオンもブレイブ星人以外は、オリジナルキャラクターです。
その為、後に出すライアン、ガンキッドも原作とは登場経緯が異なります。
私の独自解釈や、物語進行の都合上、改変等もあるでしょう。
長々と言わせて貰いましたが、興味を持って頂けたらと思います。では



 

side???

 

━━━無限に広がる大宇宙、様々な星が煌めくその片隅に数ある銀河の1つ、太陽系第三惑星地球……なーんて、堅苦しい前降りは此処までにして。

やぁやぁ、初めまして、人類の諸君!ボクの名前は………、そうだなぁ、"管理者"とでもしておこう。

いきなりだが、地球は狙われている!━━━━おや?、反応が芳しく無いね。まぁしょうがない。

何故なら、狙われているのは君達の地球ではないのだから。

 

 そう、君達の知識に即するならば異世界。その異世界の地球を悪の魔の手から守る為、ヒーローが必要だ!!

その為に、ココにある魂を喚んでみた。

早速、起こしてみよう!

ハロー?起きてる?意識ある?元気してる?

コホン、やぁ勇敢で誠実な魂くん。初めまして、ボクは管理者。世界を観測し時に介入もする、まぁ、ある種の秩序の守護者さ。

 

君がかつて、ある地球の若者達に授けた力を、ボクがこれから何とかしようとする世界の地球の者達にも授けて欲しい。人選については心配要らない。既に選別済みさ!

 後は君が、その世界の地球の危機に立ち向かう為に、ボクに選ばれた少年達を導くだけだ。

 

━━━━頼んだよ、ブレイブ星人。

 

 

 

 

 

 

ふぅ、これで良し。

後は、他の連中があの地球に目を付けなきゃ尚良し。ボクも趣味人なトコあるけどアイツら、よりにもよって、悪の秘密結社に異能犯罪者や侵略者共を色んな世界に送り込むなんてさ。対処が大変だよ………。

連中ってば輪を掛けて快楽……否、狂楽趣味なんだから嫌なっちゃう。

アハハ…、諸君には少々みっともない姿を見せてしまったね…。

 

 

本当に頑張ってくれよ。新たな勇者指令ダグオン……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideとある世界・地球

 「はぁ!」

夜の帷に支配された古き景観を伴った街に裂帛の叫びが木霊する、それは複数の細い影。

その身に淡い光を纏い、その手には刀が握らている。

相対するは、異形。それは、影とは異なり禍々しく紅く不気味に光る…………異形の名は"荒魂"《あらだま》。

 

大型の獣とも蟲とれる異様をもつ荒魂に、周囲を囲う影……皆一様に同じ、恐らくは制服であろう服を纏った少女である"刀使"《とじ》達は果敢に挑みかかる。

 「よし、陣形を維持したまま追い込め!このまま仕留める」

 「了解!!」

指揮官と目される眼鏡の少女が指示を飛ばす。周りの少女達はその声に従い、荒魂との距離を狭め斬り浸ける。しかし、異形も為されるが儘ではない、巨躯を奮わせ"━━オォォォ"と唸りを上げて抵抗する。荒魂のその抵抗に彼女達は咄嗟に身を守るも吹き飛ばされる。

「きゃあ!?」

「くっ…、もう写シが……」

「うぅ…」

「あぅ…」

「…誰か、増援の連絡を……」

「ちっ…、何人かは既に限界か…しかし撤退する訳には……」

指揮官たる眼鏡の刀使、"木寅ミルヤ"はその有り様に悪態を思わず溢す。

倒れ傷付いた彼女達の声は弱々しい、何せ、この荒魂とかち合う以前にも、小型だが複数の荒魂の相手をこなしている。

刀使達の纏う光"写シ"は彼女達が持つ"御刀"に因って精神を集中させ身を守る現象である。故に写シが剥がれれば相応に精神を消耗するのだ。

 しかし、荒魂が未だ健在している以上、被害を抑える為に容易く退く訳にはいかない。

だが、刀使の数は決して多いとは言えない。

彼女達は御刀に選ばれ戦場に立つ。故に、選ばれない者達も存在する。その為、実動部隊の刀使は常に人手不足に追われている。

 警察や自衛隊等の組織とも連携は取るが、やはり御刀でなければ荒魂に有効打は与えられない。

 既に心身共、限界近い少女達にもう一度写シを張る力は無い。これを、好機とみた荒魂は手近な少女に狙いを定め大きな牙を向ける。

「ひっ…!?」

彼女の口から小さな悲鳴が洩れる。当然だろう、戦う手段が有ろうとも、まだ年若く、本来ならば遊びたい盛りの多感な思春期の少女である。

 しかし、荒魂には関係無い。己を痛め付けた敵の1人を屠るだけ、只々それだけ。

そうして、荒魂の振り上げた巨大な腕によって今にも1つの命がこの世から消え行こうとする刹那、それは起きた。

━━━ガキッィン

 甲高い金属音が鳴り響き、巨腕が少女の前から弾け跳ぶ。

 突然の事に皆、荒魂さえも困惑したかのように呆ける。

音の正体は少女の目の前に"いた"、新たなる影。その姿を言葉に著すならば炎だろうか…、赤い装甲らしきモノを纏っている背中しか見えないが、翼の様な意匠のマントと思われる装飾がある。体格は自分よりも大きい。顔は見えないが恐らく男性。

「大丈夫か?」

「………は、はいっ!」

  新たに現れた闖入者が、挙げた第一声。その言葉がヘタリ込んだ自分に向けらたのだと気付くのに、一瞬返事が遅れる。しかし、闖入者は気にした素振りも見せず、眼前の異形へと視線を向けたまま。

そこで周りも現実へと意識が戻る。そうして疑問を抱く、突如現れた者は一体何者なのかと…。

 

「いくぞ!」

闖入者━━━炎の怪人が気合いの声を挙げ、走り出す。勢いを付け、拳を振り上げる。

恐らくは、先程もそうして、荒魂を吹き飛ばしたのであろう、振り上げた右拳を突き出す。未だ混乱しながらも、今まさに自らへと迫る怪人に怒りを向け荒魂はその攻撃を真っ向から迎え撃つ。が、再び己に向かって来た拳は、今度は荒魂を吹き飛ばさず頑強な巨躯を貫く。

 悲鳴を上げる荒魂、怪人は荒魂の怯んだ隙を逃さず、連続で拳や蹴りを叩き込む。

「スゴい………」

ゴクリと驚愕に息を呑む少女達、しかしそれも当然であろう。一般に、荒魂に対し有効な攻撃手段は刀使の振るう御刀だけである。にも関わらず、目の前で繰り広げられるのは怪人による半ば一方的な蹂躙。幾ら、自分達が先に戦い追い詰めていたとは言えだ。

そうこうしている内に、怪人は荒魂から距離を取り構え叫ぶ。

 「ファイヤーバード、アタァァァァァック!」

掛け声と共に怪人はその姿を炎の鳳へと形を変える。そしてそのまま荒魂へと突っ込み爆発が起こる。

爆煙の中から再びヒトガタへと戻った怪人、荒魂は既に無く、残ったのはノロと呼ばれる液体。先程まで荒魂だったモノの残骸。

 「ふぅ…。ま、こんなモンかな」

炎の怪人が息をつく、するとー

 「どうやら、終わった様だな」

 「やれやれ、いきなりどっかスッ飛んで行くもんだからビビったぜ~」

 「そうですよ。追い掛けるコチラの身にもなって下さい」

 「ふむ、刀使達の助太刀に入ったのか…」

途端に、新たな声達が怪人と刀使達だけとなった空間に割って入る。

現れたのは、新たなる怪人達。

炎の怪人とは異なる装甲を身に纏った影は4人。

「此方の任務は既に終了した。余計な事に首を突っ込むな」

青い装甲の怪人が炎の…否、他の影に併せるならば赤い怪人に苦言を上げる。

「けど、放って置けないだろ」

「気持ちは分かるぜ。オレもカワイコちゃんのピンチとあっちゃ、助けないわけにゃいかねぇ…ケドよ?」

と、緑の装甲の怪人が赤い怪人に多少は同調を見せるも

「そうです。僕達で決めたじゃないですか!彼女達とは出来うる限り関わらないって…」

白い装甲の怪人が、緑の怪人の言葉に続けるように科白を言う。

「出来る限りだろ?ってコトは今回みたいなピンチなら助ける為に関わってもしょうがないじゃねぇか」

赤い怪人が反論する。

「姿を見せずともやりようはある」

紫の装甲の怪人が、その反論を切って捨てる。

うぐっ…と赤い怪人が言葉に詰まると、青い怪人が追い討ちのように小言を言い始め、白い怪人が嗜め、緑の怪人が笑い。紫の怪人は我

関せずを決め込んだ。

この怪人達のいきなりのやり取りに、またもや呆然としてしまう刀使達。

「兎も角、我々は既に目的を達した。徹底する」

暫くして、青い怪人がそう口にし、立ち去ろうとする。

「待て!」

ミルヤが御刀を構え、眼鏡を光らせ警戒しながら声を掛ける。

「おっと!?」

「貴様達は何者だ?一体、何処の所属の者だ?洗いざらい詳しく話してもらうぞ」

「おいおい、刀を下ろしてくれ、コチラは君らとは事を構える気はない」

「…その発言を信じろと?証拠も何も無しに?」

「まぁ、急に現れて怪しいかもだが保証はある」

「何?」

「今、君らと話をしている。」

「それが何だと言うんだ!」

「君達と敵対するなら、助け無いし、現に会話もしない」

「……成る程。納得はし難いが、確かに敵意は見られない。ならば、先程の質問に答えてもらう」

「悪いが詳しくは言えない、ただ名前だけは教える。

…俺達はダグオン、正義の味方って奴だ」

「はぁ!?」

「じゃあな!縁があればまた!」

そうして、ダグオンと名乗った怪人達は跳び去った

「ダグオン?一体何だったんだ奴等は……」

こうして、彼女達の長い一夜が明ける。

不思議な出会いと共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、我々の知る世界とは僅かに異なる歴史を歩んだ世界の物語。これは、"荒ぶる御霊"を鎮める為、御刀を振るう少女の物語。

そしてこれは、ある世界を救った勇者達、その力を受け継いだ新たなる勇者達の物語である。

 

 

≪トライダグオン!!≫

 

 


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 俺の名は鳳焔也、美濃関学院高等部1年刀匠科所属の生徒だ!

ある時、俺は刀匠としての腕前鍛える為、見聞を広めに青砥館に向かっていた。

 そこで、偶々顕れた荒魂から子供を守る為、飛び出した!

 そしたら、何かおかしな光に包まれて、同じ様に飛び出した連中と一緒に訳の解らないヘンな奴に力をやるからこの星を守れだとか侵略者と戦えだのと言いやがる。

 おいおい、冗談だろ!?

 

次回、刀使ノ指令ダグオン!

   始動!新たなる勇者達のプロローグ!

 

 

次回も、"トライダグオン"!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしょうか?未熟ながらも己の頭にあるイメージを文章へと興してみました。
皆様、読みずらい、おかしい、誤字誤用がある等は御座いませんでしたでしょうか?
何分、慣れない事なので、大変でした。今回の作品は言うなれば連載前の冒頭に当たる部分です。
自己満足が強い作品かとは思いますが衝動に抗えず書かせて頂きました。
勇者指令ダグオンは私が初めて観た勇者シリーズでした。そして、冒頭前書きでも綴った通り、ハーメルン刀使ノ巫女二次小説内に於いてクロス物でヒーロー作品はライダーは数在れど、ロボット物はない。無いなら作るしかない。
そうして、出来上がったモノがこれです。
一応、続きを考え書いております。
前書きに次いで長々とした文と相成りましたが、宜しければ此れからもお暇が有れば目を通して頂けたら幸いです。


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第一話 始動!新たなる勇者達のプロローグ。

皆様、どうもダグライダーです。
刀使ノ巫女×勇者指令ダグオンのクロスオーバー作品、刀使ノ指令ダグオンの2話になります。
今回は、前回のプロローグで登場した管理者についてここで少し触れます。
全てでは在りませんが。元々、私は転生作品モノに際して登場する神様の存在に僅かながら疑問を持っていました。
"神様のミスで云々"って幾らご都合主義でも、流石にどうなんだろうと……、其所で世界の管理者と名乗らせました。
彼は神では無く、あくまでも幾重も連なる世界の内のいくつかを管理観測、時に気付かれずに(己の趣味嗜好故)多少介入するというその世界に対しての上位次元存在という設定です。
詳しい設定等は何れ載せます。では本編です。


地球、それは広大な宇宙に於いて奇跡に等しい惑星である。

彼の星には数多の生物が存在している。中でも人間は火を扱い文明社会を築き、多くの道具を造り出した。

 しかし、果たして彼等は知っているのだろうか。この無限の如き宇宙には、我々の想像を絶する文明や道具を生み出す生命体が居る事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━東京━

 「ここが東京か……、遂にやって来たぜ!」

多くの人間が闊歩する大都会の中に、決意を感じさせる声が響く。

近くを通り掛かる人々は、声の主に視線を移し、ある者は胡乱に。又ある者は苦笑を漏らし、或いは無関心に通り過ぎてゆく。

 声の主の少年は気にせず周りを見渡す。彼はある目的の為に東京へと降り立ったのだ。

「さぁて、先ずは観光を兼ねて腹拵えだな」

………どうやら、目先の欲望を優先したようだ。

彼の名は鳳焔也【おおとり えんや】、伍箇伝の一校、美濃関学院刀匠技巧科程

の高等部1年生である。

刀使とは女性にしかなれない、伍華伝の各学校も基本的には女子生徒や女性教員ばかりである。

 美濃関学院は数少ない共学の学舎である。その上伍箇伝中、最も刀工に関する学科が豊富である。刀匠、研師、鞘師、刀袋職人等が存在する。

 焔也もまた、常日頃荒魂と戦う刀使を支える刀鍛冶として腕を磨く毎日を送っていた。

 近々、折神家にて御前試合が行われる事を聴き、焔也は気分が高揚していた。御前試合では美濃関のみならず、他の四校の御刀を目にする事が出来る。

それは彼にとって価千金のイベントだ。幼い頃から御刀を見て育った焔也はその美しさに心惹かれた、美濃関への入学も迷いは無かった。

彼は己が刀鍛冶の道に進む事を当然と感じていたからだ。少なくとも、今日迄は。

 

 そんな訳で、高ぶった感情のままに行動した結果、伍箇伝から代々仕事を請け負ってきた青砥館へ見識を広めんと勢い勇んで高速バスで東京へと向かった。

 これが、かれこれ約四時間前の出来事である。

「兎に角、飯だ。なるべく安くて量があってウマイ奴。で、空いた時間を観光しながら青砥館を目指す!」

━━我ながら完璧だな。

などと、嘯きながら街の喧騒へと歩みを進める。

 これからの自分の運命を代える出逢いが在るなどと知りもせず…………。

 

 

 

 

「いやぁ、やっぱ初見のラーメンは醤油に限る!」

食事を終え小休止も早々に、青砥館への土産探しという名の観光に洒落混む焔也。果して、東京の人間に己が地元の名産では無く、現地のモノを土産と言い張るのは如何なものか。

「あン?ありゃ……」

何かに気付き、足を止める。視線の先には小さな子供と何処から現れた小型の荒魂。

「おいおい!?不味いって!」

ダッと駆け抜ける焔也。よく見れば他にも子供を助けようとした者達が居るではないか。

 如何にも生真面目そうな制服を着用した青年。

 少々、軽薄さを感じさせる制服を着崩した青年。

 幼さを残した穏やかそうな顔つきの眼鏡に白衣の青年。

 長髪にジャージ姿の美しい顔の青年。

彼等も共に子供を襲わんとする荒魂を見て助けに動いたのだ。

 しかし、間に合わない。距離がありすぎるのだ。それでも焔也を始め彼等は諦めなかった。

その時、不思議な光が空の彼方から降って5人を包む。

 

    「「「「「うわぁぁぁあ!?」」」」」

 

 

 

 

━???━

「……ぁぁぁぁあ!?…あ?」

 

「此処は一体……?」

 

「オレたち、どうなった?」

 

「たしか…子供を助ける為に荒魂に向け飛び込んだ筈です」

 

「ならば、この空間はあの世か…」

 

 

「何をバカな!?」

≪そうとも!此処は死後の世界なんかじゃないよ!!≫

<意識は問題無いようだな>

 

「何者!?」

<私はブレイブ星人、君達は今、通常の一万分の一の時間の中に居る>

≪ボクの計らいでね♪≫

 

「なっ!?何だよアンタ!?」

「ブレイブ星人だと?」

「って言うか、ナンかもう一人居ね?声が聴こえんだけど」

「姿はブレイブ星人と名乗った方以外に見えませんが……」

「……」

≪ボクは、此処とは違うトコロから話し掛けているのさ≫

「ええい、一体何なのだ貴様達は!?」

≪まぁまぁ、そんなにカッカしないでよ。燕 戒将【つばくろ かいしょう】くん≫

「なっ!?……何故、名前を!?」

≪他にも、色々知ってるよ?難病の妹が居る事、その妹を両親が見捨てた事、今は戒将くんが共に暮らしてることなんかね♪≫

「ズケズケと個人的なことを、其所まで知っていると……まるで神だとでも言わんばかりだな…」

≪ちょっと違うね。≫

「ならば、何者か?」

≪管理者って呼んでよ、六角 龍悟【むすみ りゅうご】くん≫

「ほぅ……」

「何がナンだかサッパリだ、説明してくれんのかよ?ええ!?ナンタラ星人さんにカミサマよぉ!」

≪勿論だとも。鎧塚 申一郎【よろいづか しんいちろう】くん。後、管理者だから≫

「お…おぅ」

≪じゃあ詳しく説明宜しくブレイブ星人くん≫

<了解した>

「あっ、管理者さんでは無いんですね…」

<問題ない、ワタシの側でもある程度把握している。説明は可能だ、渡邊翼沙【わたなべ つばさ】

「何と……」

「で、結局。俺たちが助けようとした子供は無事なのかよ?」

<………>

≪へぇ、自分じゃなく子供の方を気にかけるんだ≫

「?当然だろ?」

≪………クッ…クフ、フフフ…アハハハハハ!!いい!実に良いよ鳳 焔也くん。うん、子供は無事さ。今の所はね。どうだい、ブレイブ星人。ボクが見込んだ彼等は?≫

<嗚呼、彼等ならばきっと大丈夫だ>

「ダイジョブって何がよ?」

「話が一向に見えませんね」

「笑うことないだろ……」

「いい加減にしろ!何か話すならさっさと話せ!」

「…同感だ。早く荒霊を何とかしなければ」

<済まない、であれば単刀直入に言おう。君達にはダグオンになって貰う>

「「「「「だぐ…おん……?」」」」」

≪そう、ダグオン。この地球を悪の魔の手から護るヒーローさ!≫

 

「ヒーロー?」「ふざけているのか!」「あっ、こりゃ夢だな。ウン」「……どうにも現実味のない話だ」

 

≪なら、君達の左手首の辺りを見てごらん。面白いモノが有るから≫

「「「「「面白いモノ…?」」」」」

 

「何じゃこりゃあ!?」

 

「……何かの玩具か?」

 

「いえ、何らかのデバイスではないかと」

 

<それは、ダグコマンダー。君達が戦う為の力だ>

 

「ダグコマンダー……」

≪……っ!?遂に現れたね…、君達!残念だけど悠長に説明している時間は無くなったようだよ。≫

「何だよ、いきなり切羽詰まったように?」

<管理者の言葉のままの意味だ。我々…イヤ、この地球の敵が出現した>

「だからと言って一体、何をどうしろと言うのだ?」

≪ダグオンに変身するんだ!≫

<手段は今から指示する>

       「「「「「…………。」」」」」

 

 

    「なぁ、最後に1つ訊いてもいいか?」

       ≪何だい?焔也くん≫

 

     「コイツは戦う力なんだよな……?」

        ≪…そうだよ≫

 

      「なら、荒魂とも戦えるのか?」

    <勿論だ。倒す事も不可能では無い>

 

(ガキの頃、どうしてオレは御刀を持って荒魂と戦え無いのかって思った。成長するにつれ、それは仕方無い事なんだと心の何処かで納得しちまってた。だから、刀使を支えらる道を選んだ……でも)

 

 

 

(荒魂と戦える……ダグオンとやらで?彼奴等の技術は、今の我々人間を凌駕しているのか…?ならば、妹の病も……)

 

 

(ナンか知らねーケド、用はコイツを使えりゃ可愛いコちゃん達が泣かなくて良いんだろ!それなら…)

 

 

(興味深い出来事ばかりで正直、頭が一杯です。でもコレが荒魂に有効だとしたら試してみる価値はあるかも)

 

 

(……俺が荒魂と戦えれば、アイツも怯えずに済むやもしれん。であるならば………)

 

 

 ≪さぁ!準備は良いかい?左腕を手前で上向きに掲げてダグコマンダーに触れてカバーを下にスライドさせて叫ぶんだ!≫

 

     <≪トライダグオンと!≫>

 

 「腕を掲げる…」 「…スライドさせる…」 「叫ぶ…」 「トライ…」 「…ダグオン?」

 

「よっしゃ!こうなったら出たとこ勝負だ。行くぜお前ら!」

「指図するな!」

「男は度胸!」

「いきます!」

「……ああ」

 

 

「「「「「トライ!ダグオン!!」」」」」

 

 

「ファイヤァァァ!エンッ!」

 

 

「タァァァァァボ!カイッ!」

 

 

「アァァァマァァ!シィィンッ!」

 

 

「ウイングゥゥゥ!ヨクッ!」

 

 

「シャドォォォ!リュウ!」

 

 

<ゆけ!ダグオン!!人々の明日を守り戦うのだ>

 

 

        「「「「「応!」」」」」

 

続く


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

燕 戒将だ。

突如、管理者なる者とブレイブ星人によって、戦士ダグオンへと変貌した我々。その力で荒魂を討伐する。

そんな我々の前に凶悪な犯罪宇宙人が現る。

良かろう、早急に妹の治療をする為にも、この様な輩、さっさと片付ける!

 

次回、刀使ノ指令ダグオン。

初陣!5人のダグオン。

 

次回も"トライ!ダグオン!!"

 




はい、以上二話でした。
またもや、とじみこのキャラは出ず。
しかし、作中で記した通り、カイとリュウの2人は彼女達の兄です。
とじみこ作中で、共学の美濃関を除いて学校名が女学院が付かない平城、綾小路には今作中では男子生徒が存在します。
原作ファンの皆様、ご免なさい。
因みに、ヨクの苗字である渡邊はとじとものあのキャラです。登場は未定ですが、ヨクとは親戚にあたる関係です。
他にも、胎動編や波瀾編、ゲキやライの本作での設定など、既にプロットはありますが、遅筆な為、更新は時間が掛かると思いますので悪しからず。では

※Wikipedia見たら、最初から平城と綾小路は共学だったんですね……(*/□\*)ハズカシイ


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第二話 初陣!5人のダグオン。

どうも、ダグライダーです。
刀使ノ指令ダグオン、三話目になります。
それと、閲覧して下さった皆様。評価を点けて下さった方、お気に入り登録してくれた方々。ありがとうございます!
未々、拙い新人ではごさいますが嬉しく思います。
今回は何人かとじみこキャラクターを出せました。
誰かは本編中にてご確認下さい。
まあ、場所的に分かるかもしれませんが……。



"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 

平和な筈の都心の昼下り、突如現れた荒魂。

子供を守る為、5人の若者が駆け出す。

その時、上空から光が彼等を覆い包む!

光の正体は、宇宙警察機構のブレイブ星人だったのだ。

ブレイブ星人は、自らを送り込んだ管理者と共に、5人を勇者ダグオンに任命する。

彼等の戦いの火蓋は今切って落とされた。戦え!ダグオン!!

 

 

そして、遥か宇宙の彼方から謎の存在が飛来していたのだった……。

 


 

荒魂の牙が幼い命を喰らおとする。

絶体絶命の瞬間、5つの光が荒魂を弾く。

光が晴れる。降り立ったのは5つの人影。

の五色の戦士。

「おぉ…こいつは凄え、本当に荒魂をブッ飛ばした……」

赤い炎の戦士となった、鳳 焔也━━ファイヤーエンが驚愕に声を溢す。

「呆けている場合か、荒魂は顕在だ」

青い何処となく車を思わせるマフラーが付いた戦士、ターボカイとなった燕 戒将から忠告を受ける。

「ヤベぇな、マジかよ。オレら変身してホントに勇者ってヤツになったのか」

エンの戦い振りを見た鎧塚 申一郎こと濃緑の重装甲、アーマーシンが僅かに震える。

「みなさん、あまり長引かせては後々色々と面倒な事になります。早々に決着を付けましょう」

水晶を思わせる意匠とツバサを持つ白い戦士、ウイングヨクへと転じた渡邊 翼沙が荒魂を見据え、紫の忍者の如き戦士、シャドーリュウ……六角龍悟が無言ながら構える。

荒魂は突如現れた5人に怒りの奇声を上げる。

その叫びに応じたかのように、新たに小型荒魂が数体出現する。

「オイ、増えたぜ!?」

 

「ならば手分けして対応するぞ」

「…承知した」

「任せろ!!」

「はい!」

 

カイが音頭を取り、4人がそれに応え、それぞれ荒魂に向かって行く。

「シャドーックナイ…!」

リュウがクナイを投げ、牽制をする。

「オレもやるぜェ!ブレストォ、モーターキャノンンン!」

シンが併せて、胸の4連装砲を噴かせる。

この一連の攻撃で大半の荒魂が駆逐される。

残った少数が幾つかの群れを成すが、それが命運の尽き。

「ブリザァァァド、ハリケェェェン!」ヨクの胸に付いたファンが高速で回転、冷気の風か勢い良く1つの群れを襲い凍結する、そしてそのまま砕け散る。

 

「ショルダァァァバァァァァァン!」エンの両肩から発せられた豪火が、もう1つの群れを焼き溶かす。

 

「シャドォォォ!手裏けぇぇん!」リュウが投げ放った手裏剣が空から逃げ出そうとする荒魂達を切り裂く。

 

「アーマー、ミサイルッ!」辛くも難を逃れた荒魂には、シンのミサイルが降り注ぐ。

 

「ターボッホイィィィィル!!」中央に残った群れを、カイが車のタイヤに刃が着いた様な円形の台座らしきモノに立ちながら突っ込み切り刻む。

 

この間、僅か数分で荒魂は殲滅した。

 

 「終わったな」 「…残敵、無し…」「何か、呆気なかったな……」

カイ、リュウ、エンがそれぞれ呟き、辺りを見渡す。

「てか、強スギじゃね?」

 シンが実感がまるで湧かないとばかりに呆ける。

「これは、凄いですよ!?今まで荒魂相手は刀使でしか対応が出来なかったにも拘らず僕達はこの強化スーツの力で荒魂を完全に倒した!実に興味深い…ブツブツ」

ヨクは、この結果に興奮し、1人思考に没頭し始める。

そこに、サイレンの音が鳴り響く。特別祭祀機動隊を伴い、警察がやって来たのだ。

「直ぐにこの場から離れるぞ!」 カイの言葉に皆頷き、跳躍する。後にはノロと静寂が残るのみ。

 

 

 

 

 ダグオン達が去った現場に、移送車がパトカーと共に表れる。

移送車からは、機動隊の警官や刀使達が降りてくる。

しかし、彼、彼女達は困惑を露にする。

「あれぇ?!荒魂なんて、何処にも居ないゾ!」

刀使の1人、"藤巻みなき"がその場の全員の声を代弁するかのように驚く。

 

 「ンだよ、ガセかァ?」

悪態を衝く刀使、"七之里呼吹"。

彼女は、荒魂に対し並々ならぬ執着を持ち、嬉々として任務にあたる人物だ。故に、今回も例によって喜び勇んで我先に飛び出したが、目の前には肝心の荒魂は居ない。

 「でも…、ノロ残ってる……」

 そう指摘したのは、人形の様な印象の少女"糸見沙耶香"。彼女達は主に関東エリアを中心に活動する鎌府女学院の刀使である。

 

 

 

 

 

 その様子を離れた建物の屋上から眺めるダグオン達。

「何とか、遭遇せずに済んだか…」

「ですね」

「何で逃げんだよ?」

「…あの場に俺達が居ては不味い事になる……そうだろう?」

「あぁ~、可愛コちゃんとの出逢いのチャンスが~……」

 約1名、全く関係無い事をほざいているが、気にせず会話する。

「あのまま、場に残れば特祭隊と警察に絡まれていた。それは、避けたい」

カイが理由を述べ。

「ええ、この技術は明らかにオーバーテクノロジーです。特祭隊のスペクトラムファインダーやS装備等よりもよっぽど…」

同意を示すヨク。

「やっぱ、秘密か?ヒーローとしては定番だけど、何だかなぁ」

エンは今一つ納得がいかない様子で文句にならない文句を言う。

 

 「…空を見ろ…」

リュウが何かに気付き、皆に言う。

 

 「ありゃ、何だっ!?」

エンが見上げた先を視て驚愕の声を挙げる。

 

 「むぅ……!?」

カイは信じられんとばかりに唸る。

 

 「UFO…、だよ…な?」

シンは自分の中で思い当たる言葉で言い表す。

 

 「此処へ来て未確認飛行物体とは、もしやブレイブ星人のお仲間でしょうか?」

ヨクが興奮を抑えながら、推察する。

 

 「……若しくは、俺達の敵か……」

リュウが図張と答えを当ててみせる。

 

 視線の先に浮かぶのは妖しく発光する円盤、フヨフヨと不思議な音を立て宙を翔ぶ。

円盤はまるで、ダグオン達を観察するかの如く暫く浮遊し、しかし次の瞬間、彼等に攻撃を開始した。

「おい!撃ってきたぞ!!?」

「俺に振るな、オカルトは門外漢だ!」

突然の攻撃に5人は即座に回避、エンとカイが怒鳴り合う。

「何なンだよ、一体!?今日は次から次へと、訳ワカンネぇことばっかしでョ!」

「今までの常識が180度変わった気分です!」

シンは、今日一連の出来事に悲鳴混じりの愚痴を溢し、遂に興奮を抑えきれなくなったヨクが嬉々として言う。

「…逃げてばかりでは、きりがない……」

1人、リュウが結論付ける。

 上空の敵に成す術無く、逃げ惑うダグオン達。そこに、管理者からの通信とおぼしき声が掛かる。

≪アレは、トラルク円盤人。円盤それ自体が生命体の宇宙人だよ。トラルク円盤人によって多くの惑星が滅んだ、凶悪な宇宙犯罪者だ!≫

 管理者によりもたらされた円盤の情報、何とあの円盤自身が犯罪宇宙人だという。更に管理者は、言葉を続ける。

 

 

 

 果して、ダグオン達はこのまま卑劣な侵略宇宙人に敗北してしまうのだろうか?

 

続く

 


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

よぉ!絶讚恋人募集中!!鎧塚 申一郎だぜ。

 ったく、ダグオンとかになっちまったお陰でトンデモナイことばかりだ……。オレは可愛コちゃんとヨロシクしたいだけだってのに…。

 管理者のヤツから敵さんの情報を聞いて、迎え撃つオレ達。正気か?相手は空の上を自由に飛び回ってんだぞ!

 何ィ?エンの最大の技なら倒せる?協力しろォ?

チッ、こうなりゃトコトンヤってやりゃあ!!

 

 次回、刀使ノ指令ダグオン。

 秘境、ダグベース!

 

次回も"トライダグオン"!

 




第三話、いかがでしたでしょうか?
沙耶香ちゃんにふっきー、序でにみなきちゃんも登場しましたね。
話は変わって、実は今作を執筆するに辺り、他にも候補が有りました。
刀使ノ巫女×スカルマン、リリスパ×ダグオン、刀使ノ巫女×超者ライディーン、リリスパ×スカルマン等です。
特にスカルマンクロス物が私の中でダグオンに次いで観てみたい二次作品でした。
ストーリーイメージ的には小林靖子脚本チックなスカルマンです。
まあ、靖子さんみたいに書けないんですけどね。
 もしスカルマンが主役だった場合、物語は最終的にバッドエンド手前のグッドエンドかビターエンドになってました。うん、無・理・!(誰か書いてくれないかなあ)チラチラ
では次回もお楽しみに。

とじとものガチャのVRSの真希ちゃん、どう視ても対魔に……


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第三話 秘境、ダグベース!

こんばんはダグライダーです。
はい、まだとじみこ原作突入前なので少しペースを上げて執筆しました。四話です。

前回の後書きで挙げたスカルマンクロス物はリリスパが最有力候補でした。まぁ、容量の問題でリリフレ未プレイで諦めましたが…。

因みにとじともは桜華という部隊名で活動してます。見掛けたら宜しくお願いします。


"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 5人の若者達がダグオンへと変身し、荒魂を容易く殲滅。自らの得た力に困惑や興奮を覚える彼等。

 特別祭祀機動隊の刀使、警察機動隊との接触を避け人気のない場所から様子を伺う。

 しかし、突如上空より飛来した円盤がダグオン達に襲いかかる。

 空中を飛び交う敵を前に成す術無く逃げ惑い苦戦する5人。其処へ、管理者から敵の正体が明かされる。

 

   果して彼等の運命や如何に!?

 


 

 「くっっっそぉおおおおお!」

怒号が木霊す。

声の主は赤い炎、ファイヤーエン。

 ダグオン達は突然表れた謎の敵……犯罪宇宙人トラルク円盤人の攻撃に曝されていた。

 「くっ、何か……何か手はないのか!?」

ターボカイが必死に相手を見据えながら独りごちる。

 「オレのミサイルで撃ち落とすか!?てか、オマエ飛べネーのかよ?」

アーマーシンがウイングヨクを横目に視ながら提案する。

 「生憎とあの高度では、どうにも……」

即座に否定するヨク。どこか悔しげだ。

 「…手詰まりだな…」

シャドーリュウが落胆を滲ませつつも、クナイや手裏剣を投擲する。

 

 それら全てを嘲笑うかのように、トラルク円盤人は飛び交う。まるで、━━━貴様ら未開の下等生物には何も出来まい。とでも言っているようだ。

 ≪君達?ボクを忘れてやしないかい?≫

今尚、危機的修羅場のダグオン達に緊張感の欠ける声が掛かる。

 「オマエ声だけじゃん!」 「用がないなら黙っていて下さい!」 「ええい!鬱陶しい!」 「……」 「ヤバイヤバイヤバイって!」

 いきなりの空気を読まない管理者に対しあんまりな対応だが、ヨクすら怒り出しているので、この結果は仕方ない。だが、管理者は何も、理由無く声を掛けたワケではない。

 ≪ひどっ?!じゃないや!エンの最大の技ならヤツを倒せるんだよ!≫

 「何っ!?」 「それを早く言えよ!!」 「ハーリー、ハーリー!」  「…手早く頼む」 「且つ手短にお願いします!」 ≪君らねぇ…、兎に角!エンのファイヤーバードアタックならあの円盤を倒せるのさ。≫

5人の敬意も何も無い、粗雑な対応に泣きたくなるも説明を続ける管理者。

 「俺の最大の技!?どうすりゃいいんだ?」

指名されたエンが尋ねる。

 ≪その前に、カイ!スモークシールドだよ!≫

「何?……成る程、スモォォォク、シイイイイルドォ!

 管理者の意図を読取り、即座に両肩のマフラーから煙幕を張るカイ。

張り巡らされた煙がトラルク円盤人のビームを弾く。

 「今だ!シン、ミサイルを撃て!リュウ、撹乱しろ!」

更にシン、リュウへと指示をとばす。 

 「お…オウよ!喰らえ!」 「…承知」

煙幕の中から飛び出したミサイルとリュウ、トラルク円盤人がリュウとミサイルの迎撃に意識を向ける。

 「……フッ」

リュウが短く息を吐く。その瞬間、彼の姿がぶれる。

それは、正に分身殺法というべき業。円盤の攻撃を翻し、縦横無尽に駆ける。

 「行くぞ!エン、ヨク!俺に続け!!ターボホイィイイル!」

 ターボホイールに乗って円盤目掛けて突っ込むカイ。

「…成る程解りました」 「え?は?おぅ!?」

同じく意図を汲んだヨクにいまいち理解が追い付かないエン。

 ヨクがターボホイールの下部にエンを伴って掴まり、ある程度の高さに達したカイはターボホイールを己ごと上下反転、蹴り出す。

 「頼むぞ、ヨク!」

「任せて下さい。いきますよエンっ!」

 「おぉおお?!」

打ち出されたホイールを踏み台にエンを掴みながら翔ぶヨク。そこから、ハンマー投げの要領でエンをトラルク円盤人に向け投げ放つ。

 無論、敵も為されるがままではない。素早く標的をエンに切り替える。が……

 「オラオラァ!アーマーライフルゥ!!

シンが己の長銃でエンを援護する。

 「よしゃっ!此処まで来ればぁああ!!ファイヤァアアア!バアアアドォ、アタアアアアックウウウ!!」

 エンが炎を纏い、円盤に向け火の鳥へと転じ突き進む。

 「#¥¢@*&ΛεЭж▼☆?!」

トラルク円盤人が地球上のどの言語にも当てはまらない断末魔を上げ爆散する。

 「よっしゃああああッ!!」

 

 

 こうして、5人は初めての戦いを切り抜けたのだった。

 

 

 

 戦闘を終え、変身を解いた5人。その顔には疲れが滲んでいる。

 「おっ……わったぁああああ!」

「流石に、堪えた…」

「もう動けネェ……」

「これは……明日は筋肉痛でしょうか?」

「……まさか、こうも疲れるとはな………」

 

≪疲れが有るとこ申し訳ないけど、君達にはこれからある場所に行って貰うよ。ブレイブ星人!5人を彼処へ≫

 

「「「「!?」」」」

瞬間、彼等の周囲が光に包まれる。

 ひと息つく暇無く、管理者によって何処ぞへと送らる若者達、一体何処へ跳ばされたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━静岡県 某所

 「「おぉわああぁぁぁぁあ!?」」

生い茂る木々によって人の気が、一切感じられぬ山。

そこに場違いな悲鳴が轟く、動物達は驚き、鳥達は飛び去る。

 いきなり墜ちてきた5人の人間。

 「此処は?」 「何処かの樹海でしょうか?」 「…日本ではあるな…」

 悲鳴を上げ、伸びている2名を後ろ手に同じく墜とされたことを感じさせず、戒将は土を払い、翼沙は周りを見渡し、龍悟が国内であると判断する。

 <よく来たな。ダグオン達よ、私の声に従い先に進むといい>

 ブレイブ星人の声が頭に響く、当惑しながらも焔也と申一郎を起こし指示に従って森を進む5人。

 

 暫くして、見えてきたのは…滝の流れが木霊す洞窟。

更に進めと促され、辿り着いた先で目にしたモノは巨大な建造物。それを一言で形容するならば"箱型のナニカ"

ビルともつかないソレに驚愕を隠せない彼等。

「これは…!?」

「でけぇ…」

「ハハハ……」

「……何だコレは…?」

「又しても未知の塊が!?一体何なんでしょうこれはいえ今は先ずよく観察しなくては見たところ地球上の金属では無いようですがそれにしては岩の間にキレイに収まっている洞窟内にこれ程大きな建物がありそれが恐らくは…………

 

 

各々リアクション上げ立ち止まる。

 ≪さあさあ、惚けてないで入った入った!≫

管理者が建造物の中に入るよう促す。

 

建造物の名はダグベース。ダグオン達の基地にして空母、空母にしてロボットという正にヒーローのお約束である。

 

 

こうして彼等の長い1日が、漸く半分を過ぎたのであった。

 

続く

 


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 どうも皆様、渡邊翼沙です。

未知の敵との戦闘を終え、基地へと導かれた僕たち5人は、其所でブレイブ星人からこの世界の話をされます。そして、改めて地球を守るために戦うよう頼まれるのですが……皆さん、反応が著しく無いようで………。

 

 

次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 解散?!バラバラの心。

 

 次回も"トライダグオン"です!

 




以上、四話でした。
 まだ先の話ですが、今の所胎動編ではダグオン達は融合合体は致しません。
 もし合体するとしてもダグファイヤーだけだと思います。
取り敢えず、胎動編をとじともで振り返らねば……。
何処かにとじみこのファンブックとか売ってませんかねぇ?駿河屋とか……。


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第四話 解散?!バラバラの心。

はい、そして五話目ですね。おはようございます!
今回の話は、私なりに彼らの葛藤を表現した回です。
ぶっちゃけ、四話より五話が難産でした。
そのせいか、今までで一番長い文章だったかも。
それでもおかしいところが有るかもしれませんが頑張りました。

何より難しのは高津学長のヒステリー具合の再現。
あの人、いざ書いてみると難しいなあ

という訳でみんなのヒスリヒメこと高津雪那の登場回でもあります。
 高津のオバチャンに思考が割かれて親衛隊のキャラが少し不安ですが、何かおかしければご指摘下さい。




前回の刀使ノ指令ダグオン"

 

 トラルク円盤人を5人の連携で撃破したダグオン達。

疲れもそのまま、管理者の手で新たな場所に転送させられる。

 辿り着いた先は閑散とした樹海。果して5人を待っていたものは巨大な移動要塞たるダグベースであった。

 


 

 ━━???

 

 「トラルク円盤人ノ反応ガ消失シタ」

 

「ナント!?アノホシニヤツヲタオセルヘイキガアルノカ?」

 

「イヤ、ドウヤラ我々ト同様ニ異星ノ技術ノヨウダ……恐ラクハ、管理者トヤラノ仕業ダロウ」

 

「それって、れいのれんちゅうからきいたはなしのやつかな?そうかな?そうならいいなあ!」

 

 「笑止、何で在れトラルクの蛮人めは慢心故に敗れたのだ!」

 

「我々。渇望。強者。闘争、蹂躙、悲鳴、絶望。」

 

「Ahaaaa …」

 

 果てしない暗闇が支配する空間に数多の異形が集っている。

ソレらはありとあらゆる言語で会話を繰り広げる。

「フン…兎モ角、今ハ雌伏ノ時ダ。地球ニ我ラニ対抗スル手段ヲ持ツ者達ガ存在スル以上、不用意ニ仕掛ケルコトヲ禁ズル」

 

「えええ!?つまんないなあ。たいくつだなあ。あそびたいなあ。」

「果して、貴様の指示に何れ程の者が従うのか……クク」

 

 侵略者達の会議は続く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━神奈川 特別刀剣類管理局、特別祭祀機動隊本部

 

 「以上で報告を終ります……」

巨大なモニターや様々な機器に囲まれた大部屋に声が消えてゆく。

 報告を挙げた刀使に非はない。しかし、余りにも荒唐無稽な内容に部屋の中央に陣取った妙齢の女性が苛立たしげに叫ぶ。

 「ふざけているのかしら!?荒魂発生の報告があってから現場に到着する迄の間に既にカタが着いていた…?馬鹿馬鹿しいにも程がある!!」

 ヒステリー気味に怒鳴る彼女の名は高津雪那、特別刀剣類管理局、特別祭祀機動隊本部の現本部長にして鎌府女学院の学長である。

「も、申し訳ありません…!」

その気迫に刀使の少女は怯えてしまう。

 

 「そこまでにして頂きます高津学長。幸いにも周辺への被害は最小限で済んだのですから、彼女に当たるのは筋が違うのではなくて?」

 そう口にして割っては入るのは、茶色の制服に紅い髪を一部後に纏めたお嬢様然とした少女、此花寿々花。

彼女は、此処特別刀剣類管理局の局長にして20年前の英雄たる折神紫の親衛隊、その第二席を務める刀使である。

 「親衛隊……!貴様等ごときが私に意見するのか!?」

 

 「事実を述べたまでです。」

雪那の剣幕にも怯まず、飄々と受け流す寿々花。その態度が雪那を余計に苛立たせる。

 「貴様等なぞ紫様の側に居るだけしか能の無い失敗作が……ならば、もう一つの件は何か判ったのかしら?」

 小声だが明らかに聴こえる大きさで寿々花を蔑む彼女、荒魂の件を切上げ、別の事件を訊ねる。

 「それについてはまだ何も、情報が錯綜していて混乱しているようでしたわ」

 

「使えない…、何故紫様はこの様な連中をお側に…」

 

最早、隠す気もなく悪態を吐く雪那、そこへ新たに親衛隊の制服を纏った少女が2人。

 「今戻った、例の現場には戦闘痕と見られるモノが

幾つか発見されたようだ…」

 「紫様より、未確認の戦闘行為については、継続して調査を進めよ……とのお達しです…」

 1人は短く切り上げ右側に編み込んだ一房の髪が何処か獣を思わせる麗人の少女、もう1人は肩に架かる程度に切り揃えた髪の毛先だけが黒く染まった能面のように無表情な少女。

 前者は折神紫親衛隊第一席、獅童真希。

後者は親衛隊第三席、皐月夜見。

 彼女達は其々に先の戦闘の調査にあたっていたのだ。

「お疲れ様ですわ。獅童さん、夜見さん。」

寿々花が労いの言葉を掛ける。

 「獅童……、夜見…、貴様達揃いも揃ってぇ…!」

何はなくとも彼女達の態度が気に障るのか雪那は拳を強く握り混む。

 「現場の隊員に通達!早急に結果を出しなさい!!」

その怒りの矛先はこの場に居ない隊員に向けられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━静岡県 某所、ダグベース。

≪さあさあ、何時までも惚けてないで入った入った!これから君達に説明があるんだからね≫

 

 時同じくして、ダグベース周辺。

焔也達は管理者に言われ、ダグベースに足を踏入れる。

幾つかの通路を進みエレベーターに揺られ、辿り着いたのは精密機器が並ぶとおぼしき大広間。

部屋には地球儀のような装置とブレイブ星人が並ぶ。

<待っていたぞ、勇者達よ>

部屋に入った5人に掛けられた彼の第一声だ

 「ふん…では、詳しく話して貰うぞ」

戒将が代表して訊ねる。

<承知した>

ブレイブ星人が応え、これ迄の経緯を説明し始める。

自分の事、管理者の事、此処とは違う世界の地球やダグオンの事等々。全ての話を聴き終えたこの世界の若者達は暫し黙り混む。

 「つまり、貴方方は異なる歴史の地球から来て、僕たちの住まう世界を、同じ世界から来た悪人達から守る為に現れた?

<その通りだ>

「所謂、只の平行世界ではなく、立体交差平行世界ですか……」

 翼沙が己の推測による結論を述べる。

≪この世界はブレイブ星人の元居た世界より時代が進んでるし、かなり離れてる世界だけどね。それより…どうだい?改めて地球を守ってくれるかい?≫

<私としても、諸君が力を貸してくれるのは非常に有難い>

管理者が問い、ブレイブ星人が懇願の旨を伝える。

 

 「俺は構わねえ。力貰って、はいさようならじゃあ、男が廃るしな」

焔也はあっさり承諾する。

 「荒魂に対しこの力が有効なのは理解した。しかし、侵略者共と戦うかは別問題だ…」

 戒将は迷いを口にする。

「別にィ?やりたいヤツがやりぁあ良いんじゃないですかね。オレは御免被るけど」

 申一郎は関わりを避けたがる。

「色々興味が尽きませんが……だからといって戦うのは、…その…」

 翼沙は言葉を濁す。

「……義理は果す」

 龍悟はある程度はやる気を見せる。

<ふむ、ならば少しの間、各々で考えるが良いだろう。>

その反応を受け、ブレイブ星人は彼等の意思を尊重した答えを出す。

≪う~ん、仕方無い。ならボクらは暫く席を外すから、君達だけで色々話し合ってたら?≫

 果して、この場に居らず声だけの超次元存在にそんな器用な芸当が出来るかは於いておく。

後に残されたのは、何とも謂えない微妙な空気に支配された5人だけの空間。

 

 「取り敢えず、改めて自己紹介するぜ。俺は鳳 焔也、美濃関学院の高等部1年、刀匠科所属だ」

 場の空気を変える為、焔也が他の4人に先駆け名乗りを上げる。

 「そ、そうですね。では僕も…、コホン。綾小路武芸学舎高等部2年研究科程専攻、渡邊翼沙と申します」

 続いて翼沙がそれに倣う。

 「え?同じ学校かよ?……鎧塚 申一郎、ソコのメガネ君と同じ綾小路の生徒だ、高等部2年で一応技巧科」

 「…………燕 戒将、綾小路武芸学舎高等部2年警邏科専攻」

申一郎、戒将が渋々と言った様子で溢す。

 「…平城学館、高等部1年…警邏科…六角龍悟…」

最後に龍悟が淡々と締める。

 

 「なぁ……お前ら、このままで良いのか?折角、荒魂と戦う力が在るんだぜ」

 

 「だが、本来はあの円盤の様な異星人に対抗する為のモノだ…」

 

 「ショージキ、荒魂とやり合うってだけでもアレだぜ?オレはよぉ、カワイイおんにゃのことお近づきになりたい、だからまあ、荒魂とは戦うぜ?ウチュウジンは御免だ」

 

 「ですが、既に刀剣類管理局は何らかの情報を掴んでいる筈です。もしかしたら僕たちの事も調べられるかも……」

 

 「……燕……先輩、あんたは何か他に目的が有るんじゃないのか…?」

「?!」

 

 4人が意見をぶつける最中、脈絡無く龍悟が戒将に尋ねる。戒将は思わず返事に詰まる。

構わず、龍悟は続ける。

 「…俺達は、動機の大小はあるだろうが、皆…刀使の為に戦う事を選んだ……ならば迷う事はあるまい…?」

 「そうだぜ!俺達が戦えば刀使が傷付くことも減るだろうし、宇宙人だって俺たちは倒せたじゃないかよ!」

 

 「ぬぅ…、未だ心の迷いは晴れぬが……俺も家族の為にこの技術を欲している。ならば、覚悟するより他に在るまい」

 「此処の設備を使えば、荒魂に関する研究も大幅に進むかもしれません。異星人に関してもデータを集めれば役に立つかも…」

龍悟と焔也に諭され、戒将と翼沙は覚悟を決めた。しかし、申一郎だけは渋る事をやめない。

 「オイオイ、正気か?下手したら……下手しなくても一歩間違えば死ぬかもだぜ?」

 「…強制はしない」

 「もう、いい時間です。今日は解散しましょう。1人になって考える時間も必要みたいですし……」

龍悟が述べ、翼沙が総括する。

 「帰るっても、どうすんだよ?」

≪こんなことも有ろうかと♪≫

焔也の疑問に、管理者がいきなり声を掛け皆驚く。

 ≪このダグベースの転送装置で君達を望む場所に送ってあげよう!≫

 「そんな事まで可能なのか!?此処は…」

 「なら、トットと帰ろうぜ…色々あったせいで疲れちまった」

 

 

 こうして、5人其々の想いを秘め、ダグベースを後にしたのだった…。

 

続く

 


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 …六角龍悟だ…。

 未だ揃わぬ俺達の心、しかし敵はそれを待ちはしない…。

 ブレイブ星人は言う。俺達には異星人と戦う為の切り札が有ると……。

 

次回"刀使ノ指令ダグオン"

 覚悟の証。己の答え

 

 …次回も…"トライ…ダグオン"!

 




以上、五話でした。
後、2話くらいダグオン側をやって、刀使ノ巫女本編に入りたいと思っています。
 まあ、アニメよりもとじとも拠りかもしれませんが……。
 とじともと言えばミホっち、ミホっちと言えば…加州清光ですね。私的に加州清光と言えば、某擬人化作品のオシャレ男子ではなく、もう一つの擬人化作品、吐血(特に持病とかじゃない)する方の可愛らしい茶房の美少女店員の方が印象が強いです。
それではまた次回、御逢いしましょう。



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第五話 覚悟の証。己の答え

こんばんおはようございます。ダグライダーです
六話目になりました。
新たに今作を閲覧し、お気に入りに登録して下さった方々ありがとうございます。
 また、感想も戴けて嬉しく思います。
六話も又々長くなってしまいましたが、楽しんで頂けたら幸いです。


"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 

ダグオンとなった彼等に襲い掛かる、凶悪な宇宙犯罪者。

 トラルク円盤人は、尖兵に過ぎない!

我々の知らぬ間にも異星人達の思惑は進む。

 時同じくして、刀剣類管理局にもダグオンとトラルク円盤人の戦いが知れ渡る。

 彼女達の困惑を他所に、世界は廻る。

 

 一方、当事者達は未だ一つに成りきれないでいたのだった……。

 


 

━━━太陽系 木星周辺

 音の無い宇宙にプラズマが迸る。

それは、しかし、プラズマではなく白い亀裂。

空間を割る様に現れたのは、月を優に凌ぐ大きさの小惑星。地表はまるで生きているかのように鳴動し、中からは無数の影、影、影。

小惑星の正体は嘗て全宇宙の凶悪犯罪者を収容していた牢獄、"タイプサルガッソ小惑星型次元圧縮監獄エデン"。

今や様々な次元の犯罪宇宙人の巣窟となっている。

 地表に変化が起きる、大地が割れ機械的な部分が露となり、大きなカタパルトが出現する。

 「どこいくの~?」

場違いなまでの明るい声が響き渡る。

声の主は一見、幼い子供の姿。少年とも少女ともとれる容姿は、奇妙な色気を醸し出す。

 相対するは…昆虫のような異形。螳螂と鍬形を足したかのような二足歩行姿、そんな彼は訊ねた子供に言葉を返す。

 「ダリモツノンナハタガスノソ」

 「かわいいでしょ?あのほしのぶんめいをつくったげんせいせいぶつのすがただよ♪」

「…ムシルクニイカリ」

 平然と行われる妖精と異形のやり取り。妖精が異形に目的を問う。

 「あのほしにあそびにいくの?いいなあ!ついてていい?たいくつなんだ」

 「カキウョシ?ゾスカタクゴジ、チマチタハココバレレナハガマサキ」

妖精の懇願に対し驚きを表す蟲人、彼からすれば信じられない事を宣うのだ。無論、そんな勝手は許される事ではない。

 「ヨセウョチジ、ハレコノシタワ、ダジシノツヤ…」

「むう、ざんねん。それじゃあおしごとがんばってね?」

 素直に注言を聞き入れた妖精は踵を反し去って行った。

見届けた蟲人……斬殺宇宙人ギロザバス星人は、やがて小型宇宙船に乗り込み地球へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━静岡県 某所、ダグベース

 昨日のやり取りを経て、人気の無いダグベース。

やがてメインオーダールームに3人の影が現れた。

焔也、翼沙、龍悟の三名である。

 「まさか、渡邊せんぱいが来るなんてな、あんた他の2人程じゃないがイマイチ乗り気に見えなかったし」

 

 「昨日の話し合いで、君達に諭されてからは、僕も一応戦う事は決めていましたよ?」

 

 「でも、進んでって訳じゃないんだろ?」

「それは……まぁ、はい。出来れば侵略者の方達には穏便にお帰り願いたいですね」

ーそれと翼沙で良いですよと、焔也と会話する。

龍悟は眼を閉じ、壁に背中を預け佇むだけだ。果して、次に現れたのは戒将、観たところ表情に迷いは見られないようだ。

 「お前達、先に着ていたのか」

「……来たか」

「おはようございます。燕さん」

「おっす!先輩。結局あんたも戦うつうことで良いんだよな?」

 「ああ。私的な事ではあるがな……戦う事自体にもう迷いは無い」

 「これで後は、あのナンパ野郎か…」

こうして、4人は再び戦う道を選んだ。そこへダグベース内にブレイブ星人が現れる

 <良く戻って来てくれた、ダグオン。早速だが君達に見せたい物がある。>

着いてきてくれと言葉を残し、姿を消すブレイブ星人。彼が消えた跡には床に矢印の誘導が彼等を導くように出現する。

 「おっ…おい!?」

「仕方あるまい。この矢印に従って移動するぞ」

焔也が声を上げるも、時既に遅く。戒将が皆に指示し部屋をでる。

 暫くして辿り着いた先は、何やら車に新幹線、飛行機が並ぶ格納庫であった。

 「此処は…?」 「…見た所、格納庫のようだな…」

「でもよ?あるのは普通のパトカーとか新幹線にジェット機だけだぜ。ヒーローのメカにしちゃあ普通っていうか……」

 格納庫で見た物に対し、僅かに不満げに疑問を口にする焔也。しかし、翼沙があることに気付く。

 「これは…!?皆さん、よく視てください。パトカーは日本車種では無いようですし、新幹線は三両共既に現役引退済みの車両です。それにジェット機にしては妙な型です」

 

 翼沙のいう通り、パトカーは"ランチア・ストラトス"をベースにした"ファイヤーストラトス"。

 新幹線は其々、"300系のぞみ"ベースの"ターボライナー"。"E1系Maxやまびこ"ベース、"アーマーライナー"。"400系つばさ"ベース、"ウイングライナー"。各車後部車両が着く筈の部分には其々のダグオンの特徴があるパーツが付属している。

 そしてジェット機は"Fー15イーグル"をベースとした紫色の"シャドージェット"。翼沙の言う妙な型とは、シャドージェットの背面の竜を模した部分の事だろう。

これらを一望する彼等にブレイブ星人は告げる

<これは君達ダグオンの戦力となるライドビークル、ダグビークルだ>

 「ダグビークル?」

「確かに、特殊な部分は在るが…これが本当に我々の戦力となるのか?」

「見た目は地球の乗り物そのものですしね」

「……強いて言うならば、あのジェット機が最も戦闘向きではあるがな…」

 4人が各々に言う。

<心配は無用だ。ダグビークル達はどれも高い性能を誇る。そして、六角龍悟…君にはこれを渡そう>

 

 皆の反応を余所に、ブレイブ星人は淡々と告げ、龍悟に三枚のカードを渡す。

 「…これは?」

<ガードアニマル。君の手助けをする獣型のロボットだ。普段はカード状にして収納している>

渡されたカードには其々、狼、虎、鷹のイラストが描かれている。

 

「何い!?六角だけずるいぜ!俺にはなんか無いのか!?」

<無い。ガードアニマルはシャドーリュウ専用だ>

焔也の言葉に即答し切って棄てるブレイブ星人。

<君達ダグオンが更なる覚悟を決めた時、ダグビークルは起動し最大の切り札となるだろう>

 

「最大の切り札…」 「一体、どうなんだ?」 「少なくとも、僕達には想像もつかない事なんでしょう」 「……」

 その時、ダグベース内に警報が鳴り響く!

【緊急事態、緊急事態】

「何事だ!?」

<どうやら、新たな犯罪宇宙人が地球へ来たのだろう>

「何ですって!?」

 「まだ全員揃ってねえぞ……」

「…だが、放置は出来まい。行くぞ…!」

 

出撃するダグオン達、1人欠いた彼等の次なる戦いが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

━━京都 綾小路武芸学舎

          

 所替わって綾小路の校舎、鎧塚 申一郎は自らの日常を過ごしていた。

 「ヘイ、彼女!今からオレとお茶しな~い?」

「何あの人…」 「やだ…ナンパ…?」 「…汚らわしいわぁ~

 女子生徒から軽蔑の視線と声が向けらる。

「ソコのキミ達~!どうだい?オレが奢るからさぁ~!」

 

 (これだよ…、これがオレの"何時もの"なんだよ……。ヒーローとか柄じゃネェ。……だってのに、ナンでモヤモヤしてンだよ)

 女子生徒へ声を掛けながらも、心中は暗いモノが渦巻く。

そんな申一郎に声を掛ける女子生徒が1人。

 「また、ナンパしとるんどすか?鎧塚はん。」

「おっ!?……って、何だ仲野ちゃんか。もしかして、オレに付き合ってくれるとか?」

「ヤやわぁ~、冗談はそのお顔だけにしておくれやす。」

 「ヒデェ!?」

女子生徒の名は"仲野 順"特祭隊の前線で活躍する刀使の1人だ。

以前、お互い一年生の時に申一郎からのナンパを受けて以来、稀に話し合う関係になったとかならなかったとか。

 「こんなイケメン捕まえて、そのセリフはないぜ……」

鎧塚申一郎という男、確かに顔立ちは悪くないが如何せん美女、美少女とみたら口説き始める為、異性からの評判はあまりよろしくない。

 「そうなん?何や…何時もみたいな鬱陶しさが

感じられへんよ?」

「…!?…」

図星を言い当てら動揺する申一郎、そこに腕のダグコマンダーから敵襲来の報せが鳴る。

 「ッやべ!?」

「何なんそれ?すまーとうぉちにしては大きない?」

「何でもネェって、んじゃオレはこれで…!」

順の質問に誤魔化すように答えその場を離れる申一郎。

 

 

暫くして校舎の人気の無い場所に逃げ込む。

 「クソ!止まれってンだよ」

コマンダーを操作するも音は中々鳴り止まない。色々と四苦八苦している内に通信の受信機能がオンになる。そこから聴こえてきたのは、昨日会った4人の悲鳴。

 

 

 [ぐあああっ!][こいつ!?][接近戦は危険です!][…手強い]

 恐らく戦闘中であろうやり取りに驚く申一郎、彼はその場にしゃがみ耳を塞いで踞るも、コマンダーは腕に装着されている為、意味を成さない。

 その間にも通信越しの音は強くなる。

[せめて、遠距離からの攻撃と耐久力に特化した者が居れば…]

[んなこと言ったって!?]

[…無い物ねだりをしても使用がない]

[鎧塚さんが来るのを信じましょう。彼も心に熱いモノは持っているのだから]

[…フッ…]

[そうだな!何だかんだであの時あいつも戦ったんだもんな]

[であれば、今は自分達に出来ることをするより他に在るまい]

まるで、自分を責めるかの様に聴こえるやり取りに顔歪める申一郎、遂にコマンダーを外そうとする。

 しかし、直後聴こえた翼沙の言葉に手を止める。

そこから更に、3人の言葉が続く。

 

 「ダァあああ?!クソっ、何なんだよ!ドイツもコイツも、人の気ィなんざ知らねぇで勝手に好き放題言いやがって!!」

 (ああ、そうだよ。あの時オレはこの力なら守れるって思った。女の子ばかりが危ない目に遭うなんて間違ってる…そう思ったんだ!だから…)

 遂に覚悟を決め腹を括った申一郎、改めて今度は変身するために左腕のコマンダーに手を掛ける。

 

 

 「トライ!ダグオオオオン」

 

 「アァアアマアアアシィイインン!!」

 「ヘッ…待ってろよ、オレ様が今行くからな!」

 

アーマーシンはそう言い捨て駆け出す。

果して、シンは間に合うのか?

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 やあ!管理者だよ♪

やっと覚悟を決めた申一郎君。遅い遅いよ!?

君もっと軽い奴なんだから、ウジウジ悩むなんてらしくないよ!

 さて、合流して5人になったダグオン達、シンの火力とパワーが敵を圧倒する。

 良いぞ!その調子!!ボクも頑張ってファイヤージャンボ組み立てるから、君達も頑張れ!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

   集結。そして胎動へ。

 

次回も"トライダグオン"だよ!

 




如何でしたでしょうか?
 今回出て来た。とじみこのキャラは仲野順さん、とじともに登場する綾小路のサポートキャラですね。
 京言葉難しいです。間違っていたら申し訳ありません。

いよいよ、ダグオン序章編もクライマックス、胎動編が見えて来ました。
 う~ん、なるべくとじみこ本編は原作に沿いたいとは思いますが、ダグオン達が絡むので多少台詞等が本編とは違うモノになると思います。ご了承下さい。では


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第六話 集結。そして胎動へ

お待たせ致しました。七話です。
いやぁ、展開は頭に有るし、プロットは書き出してるんですが、いざ始めると…ああでもない、こうでもない…と何度も書き直してまして。
遅れてしまいました。
 一昨日息抜きに天華百剣って(謎の動詞)いたんですが、石がソコソコ貯まったので回したら。典廐割が来てくれました。いやぁ、ピックアップの御剣が来たのは久しぶりでテンション上がりましたね。

 え?関係ない?……はい、スミマセンデシタ
ではどうぞ



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 ダグベースでの話し合いを経て、異星人達との戦いへの覚悟を決めた焔也、戒将、翼沙、龍悟の4人。

 そんな彼等にブレイブ星人はダグビークルの存在を明かす。そこへ、新たな犯罪宇宙人の接近を報せる警報が鳴る。

 申一郎を欠いたまま、出撃するダグオン。

その頃、申一郎は自らの心の内で葛藤をしながら、日常を過ごす。そんな彼の元にもダグコマンダーが敵の襲来を報せる。

 悩む申一郎、しかし、4人の想いを知り彼も又、決意する。

 走れ、アーマーシン!仲間達の下へ急げ!!

 


 

時は、敵襲来の報せを受けたダグベース内へと針を戻す。

 「何事だ!?」

<どうやら、新たな犯罪宇宙人が地球へ来たのだろう>

「何ですって!?」

 「まだ全員揃ってねえぞ……」

「…だが、放置は出来まい。行くぞ…!」

 

 「「「「トライダグオン!」」」」

 

<転送装置へ急げ、敵の現在地付近へ転送する>

 「ダグビークルは使えないのですか?」

<先にも言ったが、今の君達ではビークルの真の力は引き出せないだろう。それ故の転送だ>

 

 「使えないのならば仕方ない、急ぐぞ!」

「「応!」」 「はい!」

カイが先陣を切り、3人が続いて転送される。

果して、光に包まれた彼等が次に目にしたのは、碧い海。

 

 ギロザバス星人が上陸した地は沖縄、西表島。

彼に与えらた目的は、人間以外の脅威が存在するか否か。結果として、該当対象は一部を除き、無し。

その一部、嘗て荒魂であったモノ…ノロが彼の足下に散らばる。

 彼にとってはあまりに容易い相手であった。━次はあの島か……といった面持ちで歩き出す。

 「ンウノンア、イコクヤハ……」

そう溢すギロザバス星人。もう1つの目的……個人的な興味も含んだ、トラルク円盤人を倒した謎の存在。既に自分の事を感知した筈、ならば後は現れるのを待つだけだ。最早、調査など二の次、頭にあるのは未知の存在との闘争のみ。実に凶悪な思考は彼もまた犯罪者たる証左。

 

 ダグオン達を待つ為、ゆったりと歩みながら、周囲を手当たり次第に切り刻み進む。

 「ホィイイイルゥキイイイックッ!」

蒼い閃光が走る。ギロザバス星人は鎌の如き腕を交差して防ぐ。

閃光の正体はターボカイ、脚の側面に付いたタイヤが激しく回転する。

 「ゾタビワチマカタキ!」

「ぬぅ…!?」

 「カイっ!?」

「……出来る…」

「離れて下さい!カイ!…クリスタルブゥゥメラァン!!」

 ファイヤーエンとシャドーリュウが戦慄し、ウイングヨクが牽制の為、ブーメランを投げる。

 「ナクャシコ…!?」

 

「済まない、助かった」

「見た所、あの昆虫の様な異星人の武器は両腕の鎌と口元の鋏だけのようです。距離を取って戦いましょう!」

「おっしゃあ!」

「…承知した」

ヨクの分析により中、遠距離からの攻撃に切り替えるダグオン達、しかしギロザバス星人はそれを物ともしない。

「ワイナハトコタシイタドイテノコ!」

 

 「全然効いてねぇ?!」

「パワーが足りないんです!」

「ではどうする!?」

「…俺達では奴は倒せない……!?」

遠距離技を用いた攻撃では倒せないと焦る4人、だが迂闊に近付けば、ギロザバス星人の餌食となる。

「ゾクイラカラチコバラナカノイナコ!」

そう叫び、両腕を大きく振りかぶるギロザバス星人、その両腕から真空の刃が飛び出る。

 

 「っ…ぐあああっ!」「なっ!?こいつ!?」「待って下さい接近戦は危険です!」「…こんな芸当も出来るとは…手強い」

 追い詰められるダグオン達、ふとカイが呟く。

 

「せめて、遠距離からの攻撃と耐久力に特化した者が居れば…」

「んなこと言ったって!?」

「…無い物ねだりをしても使用がない」

「鎧塚さんが来るのを信じましょう。彼も心に熱いモノは持っているのだから」

「…フッ…」

「そうだな!何だかんだであの時あいつも戦ったんだもんな」

「であれば、今は自分達に出来ることをするより他に在るまい」

 申一郎が来ると云う僅な希望に一縷の望を賭け、ギロザバス星人と向き合う……その時。

 

 「ちょぉおおおと、待ったアアア!!」

 

空から声と共に何かが降ってくる、その正体は、待ちに待ったアーマーシンその人である。

 「アーマーシン、只今参上!…ってか?」

どこかおちゃらけた様に言うシン。

「シン!」

「馬鹿者め…」

「来てくれたんですね!」

「……全く、待たせてくれる…」

どこか嬉しそうに、4人それぞれの反応を示す。

 「へへっ、待たせちまったミテェだな?こっからはオレ様のターンってヤツだ!」

シンが吼える。ギロザバス星人は5人目の存在に驚くも、喜色に躰を奮わす。

「イコ!」

 

「いくゼェ!ハンドミサイィィイル!」

シンの両腕の装甲からミサイルが発射される。

 「ノモナンコ!」

ギロザバス星人は難なく切り落とす。

「まだまだぁアアア!全弾発射ァア!!」

「ニナッ!?アアアゴグ!!」

矢継ぎ早に放たれる銃弾やミサイルに遂に躰を砕かれ、鎌を折られ、顎の鋏は欠け、膝を衝くギロザバス星人。

 

「今です!」

「一斉攻撃だ!」

「「「応!!」」」

ヨクとカイが言い、エン、シン、リュウが応じ、各々の攻撃をする。

「ガトコナンコナカバァアアアア!?」

 悲鳴を叫び爆発する、ギロザバス星人。

彼等は再び、心を一つとしたのであった。

 

 

 

 「そういゃあ、どうやって此処に来たんだ?」

暫くして、元の姿に戻った5人、焔也が申一郎に問い質す。

「あ?……あー、管理者のヤロウがさ、いきなり声を掛けてきやがったんだよ。ー場所が遠いから今回はボクが特別に送ってあげるネ♪ーーーってな」

 「あの人?も謎ですね」

「だが今回は助かった」

「…ああ」

 

 「…あー、何だ、つうワケで……これからもヨロシク頼むわ!!」

「このぉ、調子いいことこきやがって!」

 

ワハハハと笑い声が木霊する。こうして想いを1つに絆を深めたダグオン達であった。

 

 

 

 

 

 

━━特別刀剣類管理局本部、折神紫の執務室

 

 夜の暗闇に染まった外に、視線を向けて立つ女性が1人……彼女こそ全ての刀使の頂点、約20年前に起きた大災厄を沈めた英雄、折神紫その人である。

 「……どうやら、妙な連中が騒いでいるな………」

まるで、其処にもう1人居るかの様に溢す紫。

彼女の瞳が妖しく揺らめく。

 そうして、また、夜は更けていく。様々な思惑を載せて……。

 

 

続く

 


 

次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 ヨッ!ダグオンのアーマーシン、鎧塚申一郎サマだ!

へへっ、今回は妙なトコ見せちまったな…。

オレ達がダグオンになって数日、最近は侵略者どもも大人しい、お蔭で大抵は荒魂相手の戦いばかり。

 そんな時、折神家主催の御前試合を行う為、伍箇伝各校で代表選抜試合が始まる。

 ンンッ?何か美濃関におかしなヤロウがいるぜ?

オイオイ、大丈夫かぁ?

 

次回"刀使ノ指令ダグオン"

 カチコミ!?謎の風来坊!

次回も、"トライダグオン"っ




 如何でしたでしょう?
次回より本格的にとじみこ本編(とじとももあるよ)になります。
しかし、執筆中に本作以外のアイディアが出るわ出るわ。困りモノです。
 とじみこ本編に進む前に一度、現時点での設定集なんかも上げたいと思います。
ではまた


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刀使ノ指令ダグオン:序章設定

皆様おはようございます。
という訳で、胎動編を前に序章のキャラクター設定です。
 初期メンバーの名前は勿論、勇者指令ダグオンの5人。
大堂寺 炎、広瀬 海、沢邑 森、風祭 翼、刃柴竜の名前を弄ったり捩ったりして考えたものです。

ちなみに、ダグオン達の纏うダグテクターはテレビアニメ版のモノです。悪しからず



序章現時点での詳細

 

 鳳 焔也

7月27日生。獅子座O型。身長173。体重58。

好きな物:拉麺、カレー、ハンバーグ、牛丼。

嫌いな物:ピーマン、グリーンピース。

趣味:ゲーム、御刀観賞、鞘・鍔細工。

座右の銘:勇往邁進。

 ファイヤーエンに変身する、美濃関学院高等部に所属する1年生。

専攻科程は刀匠科だが鞘細工や鍔細工等にも興味がある。一般的な科目の成績は体育以外は中の下~下の中を入ったり来たり。

 幼い頃はヒーローに憧れていた。

一時期、パルクールに嵌まっていて、現在も体力作りに活用している。以外と喧嘩っぱやい。

御刀を初めて視た際に、自分も振るう事を夢見たが、御刀を扱えるのは女性のみと知り断念。以後、刀匠として少しでも御刀の近くに居る事を望む。

 ダグオンになった経緯は青砥館へ向かう途中目撃した荒魂から子供を助ける為。

 

 

 燕 戒将

10月10日生。天秤座A型。身長182。体重65。

好きな物:学校のA定食、納豆、鯖の味噌煮。

嫌いな物:特に無し。

趣味:将棋、釣り、読書、武術の鍛練。

座右の銘:公明正大

 ターボカイに変身する、綾小路武芸学舎高等部所属の2年生、警邏科程専攻。

折神紫親衛隊第四席である燕結芽の実の兄。

 両親が結芽を見棄てた事に憤りを感じ、彼女の入院中の面倒を見る。ある時期を境に回復した結芽が親衛隊入りした為、自らも刀剣類管理局のある鎌倉に向かう。

 未だ、予断を許さぬ身である結芽が何故回復したのか疑問に思うも、同時に安心している。

此花寿々花とは、彼女がまだ綾小路に在学中、面識がある。

 最近の悩みは、妹が自分の事を鬱陶しがっている事(実際には結芽の照れ隠し)。

 ダグオンへの経緯は、綾小路からの特別出向と言う体の手続きの為、本部に向かっていた時に焔也と同じく子供を助ける為。

 

 

 鎧塚 申一郎

12月6日生。射手座B型。身長183。体重72。

好きな物:豚カツ、ステーキ、サラダ、うどん。

嫌いな物:梅干し、柳葉魚、マンゴー。

趣味:ジョギング、ボクシング、デート、ナンパ。

座右の銘:明眸告歯、美女(美少女)の笑顔は絶対。

 アーマーシンへ変身する、綾小路武芸学舎高等部所属2年、技巧専科(の筈だが他の科にも顔を出している)

実家の家族が男兄弟ばかりの為、華を求めてナンパにくり出す、所謂チャラ男。

それなりに厳しい家柄の為、現在は寮暮らし。最近はダグベースに住もうか本気で考え始める。

 入学したての頃、在学中の女子全員をナンパしている(仲野順ともその時クラスで会った)。現在は1年や中等部の娘を中心にナンパ中。

実は、趣味のボクシング以外にも部活動で古式空手をやっている。

女性のストライクゾーンは14、5~37歳迄。

特に好みの女性は、「足が細くて肌が綺麗で髪が長くて、多少スレってても良いから出るとこ出てる可愛い女の子」

 ダグオンとなった経緯は鎌府女学院生徒をナンパする遠征の途中、荒魂に襲われる子供を見て助けようとしたから(珍しく全く下心無しで)

 

 

 渡邊 翼沙

3月12日生。魚座A型。身長164。体重50。

好きな物:激辛麻婆豆腐、激辛カレーパン、珈琲。

嫌いな物:アンパン、餡菓子全般、黒い物体X。

趣味:読書、勉強、機械弄り、生物研究、ストレッチ。

座右の銘:一意専心、理路整然。

 ウイングヨクに変身する、綾小路武芸学舎高等部所属2年生。研究専科。

眼鏡を掛けた物腰柔らかで童顔の人物。所属こそ綾小路だが、実家は長船近辺。

その為、長船女学園に年の近い従姉が居る。

 彼自身は普段は比較的常識人だが、趣味の機械弄りや研究が絡むと途端にマッドな一面を見せる。

荒魂について、生物的な観点から研究を行っている。

 序章時点では舞草の存在は知らない。

ダグオンとなった経緯は私服でのプライベートでロードワーク中(あわよくば、本部や鎌府の研究施設に侵入する気だった)に子供を心配して助ける為と荒魂を近くで観察出来るかもと言う2つの理由。

 

 

 六角 龍悟

8月25日生。乙女座AB型。身長175。体重60。

好きな物:羊羮、栗ぜんざい、鮭の塩焼き。

嫌いな物:鶏肉、蝗の佃煮、レーズン。

趣味:バードウォッチング、ひよこの雌雄判別、バイト。

座右の銘:山紫水明、七転び八起き。

 シャドーリュウに変身する平城学館高等部1年、警邏科所属。

基本的に無口で、あまり愛想の良い方ではないが、顔立ちが良く、黙っていれば服装によっては女性と間違われる事も多い。

中等部の六角清香は大切な妹。

御刀さえ関係無ければ、大抵の相手は流派や型に関係無く制圧出来る身体能力を持つ。又、隠密活動も得意。

 あまり家に寄り付かず、大抵は何処かの木々の枝の上で寛いでいる。

 稀に、バイトに入れ込み(学業はしっかりしている)空腹で倒れたりする。

 よく人を観察する為、十条姫和の様子がおかしい事を見抜く。又、ダグオン任命以前の警邏研修の際、獅童真希と知り合っている(龍悟は既に忘れている)

 ダグオンとなった経緯は関東近辺のバイトを物色途中に荒魂を見掛け、子供を護ろうとした為。

 

 

 ブレイブ星人

原作の勇者指令ダグオンにて5人の若者をダグオンに任命し、途中彼等を庇い殉職した本人。

管理者の手により魂となって存在する。その為、ダグベース内のメインAIに替わりダグベースをコントロールする。

 

 

 

 

 

 序章に登場した宇宙犯罪者

???:"エデン"内会合に登場した影、主に管理牢獄ごとに代表が居る。とある超次元生命体達からの誘いにより本作の地球へ襲来した。

 

 トラルク円盤人

最初にダグオンと戦った異星人。

彼は自らの母星を喰らって進化した宇宙人。その為、他の同朋は既に存在しない。

母星を取り込み進化したからか、次々と他の星を襲い喰らう。

会話出来る知能はあるが、目先の欲を優先するタイプ。

地球には影達の制止や忠告を無視し独断専行で表れた。

名前の由来はトルク回転と羅針盤から。

 

 

 ギロザバス星人

シンを欠き、4人だったダグオンを追い詰めた異星人。

元は、己が星の軍人だったが、相手を斬り刻む快感に目覚め殺人鬼となる。

 より強い相手を斬る為、様々な星で斬殺を繰り返し投獄される。

並大抵の攻撃は鍬形虫の如き装甲で防ぎ、蟷螂の様な腕で敵を斬る。

地球へは影の頭目と目される者からの指示で、ダグオンや人間以外の脅威の有無を調査する為。

言語は作劇上、カタカナの逆さ言葉だが、作中の人物達には母星訛りの共通宇宙語で聴こえている。

名前の由来は、ギロチンと斬首刑から。

 

 

 

 管理者

正式名、立体交差平行世界管理上位超次元生命体アルファ。

自身の管理している世界ならば、ある程度色々な事が出来る。

今回の事件は、自らと同様の管理上位超次元生命体が管理とは名ばかりの暇潰しで犯罪宇宙人や人類敵対種を放った事が発端。解決の為、自分と考えを同じくする数名の管理者達と各々の世界を守るため動く。

 性格は子どもっぽく、楽天家。

容姿の固定はしていないが、女の子として観測しては欲しくない為、ダグオン達には声だけで接触している。(管理者達は観測した世界に実体を伴う時、人に因って見える姿が千差万別になる)

刀使の存在する世界は既に何百通り観測している、今回はそんな世界の中で最も見透し辛い世界だった為介入した。

 




如何でしたでしょうか?
余談ですが、刀使ノ巫女キャラクターそれぞれのダグオン側への評価を一部掲載。

焔也の評価:可奈美「何だか熱血ぽい良い人、御刀の事や流派の話が出来る先輩」 
舞衣「御刀の調整をしてくれる先輩、鞘袋も頂いて何だか申し訳無いです」 
美炎「服部先輩とは別方向で変な人、先輩にだけはバカって言われたくない!」
羽島学長「もう少し、通常学業の方にも力を入れて欲しい。あまり、問題を起こさないように…」

戒将の評価:結芽「本人の前だと恥ずかしくて言えないけど、大好きなお兄ちゃん!」
寿々花「以前、お会いした印象は真面目なけれど、融通は利く方。もし、御刀が男性にも反応していれば、十分通用する実力の殿方ですわ」
ミルヤ「風紀に厳しく、とても頼りになる人です」
相楽学長「優秀かつ人望もある人間。やや真面目過ぎるが堅物ではない為、余程の相手でなくば大抵の相手は認める事が出来る器の持ち主」

申一郎の評価:寿々花「あまり思い出したくありませんわ」
順「おもろいヒトどす~。せやけど、程々に~」
水科絹香「二年生の頃にナンパされました。妹に手を出したらタダじゃおきません!」
相楽学長「女生徒限定だが顔も広く、技術の腕も悪くない。後ナンパは自重してくれ…」

渡邊翼沙の評価:葉菜「まだボクが長船にいた頃、少し会った事があるだけなのにボクを気に懸けてくれる先輩。相談に乗ってくれて、大分気持ちが楽になったよ」
土師景子「たまに、よく解らない物の作成を頼まれます。困ります。先輩ご自身で作った方が速いんじゃ…」
森下きひろ「同志!私からはそれだけです!フンス」
相楽学長「優秀な研究者で技術者、しかし些か度が過ぎる事がある。爆発はしないように……」
エミリー「私の事、言えないでしょ!?」

龍悟の評価:清香「優しく頼りがいのある兄さんです」
姫和「最近、視線を向けられた気がする…」
真希「彼が男性である事が惜しい、それほどの逸材だった」
辰浪 桃「バイトで偶に一緒になるね。あんま喋ったりしないヤツだけど良いヤツさ」
鴨 ちなみ「カッコいいですよね!美人さんだし」
小池彩矢「前に一度、一緒に警察研修に行ったけど、凄い身のこなしだったわ」
五条学長「口数が少ないのが偶にキズやけど、得難い才を持っとる子ぉやなぁ」

といった具合になります。




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胎動編
第七話 カチコミ!?謎の風来坊!


 ハイ、刀使ノ指令ダグオン新章にして、刀使ノ巫女胎動編に突入の八話です。
今回、ダグオン側にあるキャラクターが登場します。 
彼は元々のモデルのインパクトが強いので割りと元のキャラクターままな感じになっちゃいましたね……。
 
 私の執筆スタイルは、スマホで今作を書きながらテレビを観たり、本を読んだり、ゲームしたりです。ペルソナ5ロイヤル、楽しいです。
執筆だけに集中しない訳ではありませんが、何かしながらの方がアイディアが纏まるので…お許し下さい。
では、どうぞ!



 "前回迄の刀使ノ指令ダグオン"

沖縄に現れた犯罪宇宙人"ギロザバス星人"、鋭い鎌が近付くものを容赦なく斬り裂く。

 4人は、遠方から攻撃するも効果は見られ無い。

斬撃を飛ばし、ダグオンを追い詰める星人。

あわや、此までかと思われたその時、アーマーシンが

降って来た!

 起死回生、猛攻を掛けるダグオン!ギロザバス星人は爆炎の露へと消え、5人は再び集い地球を守る事を誓う。

 

 そして、始まる。運命の御前試合まで後……


 

━━静岡県 某所ダグベース

 

 「いやぁ、今日も何事もなく平和だなあ!」

ダグベースのメインオーダールームに、焔也の気の抜けた声が響く。

 「貴様!面倒ごとになるから、刀使との接触は控えろとあれだけ言ったであろう!」

 「まぁまぁ。幸い変身していて、暗がりで彼女達も疲弊していましたし、声も多少変えてますから、正体がバレる事は無いでしょう」

 戒将が怒鳴り、翼沙がそれを諫める。

「ホントだよ……、オレだって可愛コちゃんが居ても自重したってのに…」

「…当たり前だろう」

 申一郎が愚痴り、龍悟が呆れる。

前回のギロザバス星人との戦い以降、彼等5人、何や間やと親交を深め、地球侵略にくる宇宙犯罪者達を何度か撃退している。

 その際、決め事としたのは、刀使との不用意な接触は避けるべし。特別祭司機動隊や警察と事を構える事を禁ず。異星人や荒魂を倒したら即座に人目の着かぬ所に去る。正体を秘匿する事の4つ。

 焔也が叱りを受けているのは、前日に出現した犯罪宇宙人撃退の際、荒魂に苦戦する綾小路の刀使を助けた事に起因する。

 戒将の説教は続く。

「大体貴様、あの後観光をするなどと……ふざけているのか!!」

 「しょうがねえじゃん、京都観て回りたかったんだし…」

「…この際、観光についてはとやかく言った所で仕方ないだろう…問題はその後だろう?」

 龍悟が、焔也の起こした事件について口を出す。

そう、焔也はあの後、京都観光に繰り出し、其処で観光客であろう人物と喧嘩になったのだ……。

「ありゃあ、スゴかったな色んな意味で……」

「あんな人、今時存在するんですね……」

 申一郎と翼沙が思い出したかのように苦笑する。

 「やべっ!?そろそろ時間じゃねえか!お説教はまた今度なっ!」

「なにっ?!…待て焔也!」

オーダールーム内の時計を見上げ慌てる焔也、戒将が引き留めようとするも、そそくさと退室してしまう。

 「全く、困った男だ!」

「まあ、良いんでないの。最近はウチュウジンも積極的じゃねえし」

「……荒魂相手ならば、余程の事でも無い限り苦戦はしまい」

「僕達もそれぞれの学校に戻りましょう」

 こうして、残った4人もダグベースを立ち去る。

 

 

 

 

 

━━岐阜県 美濃関学院門前

 

 良く晴れた朝の空気の中、活気に満ち溢れた声が溢れる。白い制服に赤いスカート、腰に各々御刀を提げ学び舎へと向かう少女達。

 同じ様に学び舎を目指す少年達。

 美濃関学院の生徒である事を示す衣服に包まれた男女。その中に在って一際目立つ男が1人……。

 「此処がぁ、美濃関学院か……良しっ!」

 

  「頼もぉおおおおう!!」

 

「ここにぃ、鳳焔也と言う男が居ると訊いたぁ!ワシと勝負しろぉお!!」

  

 大声を出して立ちはだかる人物、時代錯誤な黒い長学ランにバンカラ下駄、頭につばが少し割れた学帽、口許に何らかの植物の葉が着いた茎……所謂、昭和の番長が其処には居た。

 

 「何…?」 「誰?」 「今どきあんな格好……」 「…ダサっ

突如現れた人物に周囲はどよめく、そんな事等お構い無しに男は怒鳴る。

 「誰じゃい!?今、ワシをださいとほざいたのは!!格好いいじゃろうがっ!」

どうやら、自分の格好を馬鹿にされたのが気に障ったらしい。

と其所へ……。

 

 「退いたどいたぁああ!」

「のわぁ!何事じゃい!!」

男の横を焔也が駆け抜ける、焔也は彼を気にも留めない。

 「待てぇえいいぃ!逢いたかったぞ、鳳焔也ぁあ!!」

「あん?誰だ?」

焔也を引き留め、憤慨する男。しかし、肝心の本人には覚えが無いようだ。

 「んなっ!?ワシを忘れただとぉ!ええぃ、耳の穴かっぽじって良く聴けい!ワシの名は田中 撃鉄、最強を目指す流離いの漢じゃけぃ!!」

「あっそ、じゃ、急いでっから」

 男……撃鉄が名乗りを挙げるも、焔也は取り合わない。

「貴様ぁ!京都での事、忘れたとは言わさんぞぉ!」

そう、焔也が京都観光の際に騒ぎを起こし、喧嘩した相手こそこの田中撃鉄である。

 「あー…、ああ!あの時のオッさん!?何してんの?」

「オッサンではなああああい!ワシはピチピチの18歳じゃあああ!貴様にリベンジしに来たに決まっておるだろうぉおおお!!」

更に叫ぶ撃鉄、耳を塞ぐ周りの生徒達。

校門前に人集りが出来てゆく。

と、騒ぎを聞き付けた美濃関の教員がやってくる。

 「こらぁあ!そこ、何騒いでるの!?」

 やって来たのは美濃関学院刀匠科教員、田中妙子。

妙子は嘗て美濃関の刀使であり、刀使を引退した後、刀匠の道に興味を持ち、教員となった人物である。

 「先生…」 「何だか喧嘩みたいです」 「鳳先輩と誰かが……」

周りの生徒達が経緯を説明する。

「また鳳?いい加減にしなさいって…あれほど……ハァ」

 疲れた溜め息を溢し、生徒の波に割って入る妙子。

「うん?センコーが来たようじゃが、関係ない。始めるとしようかのう!」

 「良いワケ無いでしょ、この愚弟!」

妙子が人混みを掻き分け、撃鉄の後頭部を叩きつける。

 

 「「「「「ええぇぇぇぇぇえ!?」」」」」

明かされた衝撃の事実に絶叫が木霊する。

 果たして、妙子と撃鉄の関係は?

本当に姉弟なのか?

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 安桜美炎です。もうすぐ、折神家主催の伍箇伝合同、御前試合の選抜代表決定戦!

 わたしも頑張らなくっちゃ!

でも何だか鳳先輩がまた騒ぎを起こしたみたい!?

しかも、相手の人は先生の弟さんみたい!?

うえぇ!?一体どうなってんの!?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"!

 驚愕?姉と弟、それと代表選抜戦!

なんか、代表戦がオマケみたいになってるぅうう!?

じ、次回も……"トライ?ダグオン!?"

 ナニコレ?




如何でしたでしょうか?
今回からとじみこ、とじとものキャラクターも次回予告に参戦です。
ところで、とじみこの次回予告に流れたBGMの名前判ります?
私、サントラ持って無いんですよね。
判る方が居ましたら、もしお手数でなければご教授下さい。
 では、また次回でお会いしましょう。


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第八話 驚愕!?姉と弟、そして代表選抜戦!

はい、こんばんは。
ダグライダーです。
いやはや、今回は所謂日常描写的な話だったんですが……難産でしためちゃくちゃ難産でした。
 正直、今までで一番疲れました。
 もう皆様お察しとは思いますが、そうです。彼が六人目のダグオンです。
まあ、胎動編では変身しませんがね。
最近、資料としてとじみこのコミカライズの単行本を買いました。次は小説かな……、ドラマCDはネットに上がって無いかなぁ。

ではどうぞ



"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 

ダグオンとしての戦いも慣れが出てきた5人。

焔也は戦闘後の観光にまで繰り出す始末。

 異星人達の侵攻も疎らとなり、荒魂との戦い以外は平和な日が続いていた。

そんなある日の美濃関学院に謎の男が現れる。

 焔也との因縁があると言う男、田中撃鉄。当の焔也は記憶に無かった。

混迷の場を納めに現れた教師、田中妙子。

 彼女はなんと、撃鉄を弟と言い放ったのだった!

 


 

 「「「「「ええぇぇぇぇぇえ!?」」」」」

 

 辺り一面、驚愕と困惑の絶叫が響く。

突如として現れた撃鉄と名乗った大男、その後頭部に手刀を叩き込んだ美濃関教員、妙子。

 彼女の発言にどよめく生徒達、焔也も驚き間の抜けた顔をする。

撃鉄は手刀が程好い具合に決まった為か、意識を失っている。

 「重っ…、またデカくなったみたいね……。」

妙子は撃鉄を背負い、呟く。

「ほらほら、もうすぐ御前試合の代表戦でしょ?散った散った!」

 ━━あっ、鳳は私と一緒に来なさい。と焔也に釘を刺す。

彼はショックを受け、ガックリ項垂れる。

 トホホ…そんな漫画のような事を口にしながら妙子の後ろに続く焔也、その足取りは重い……。

 

 

 

 

 「ここで良いか……さて、話を聞こうじゃない?」

手近な場所として保健室を選び、ベッドに撃鉄を放置する妙子。そのまま、養護教諭に暫くの人払いを頼む。

そうして、雑談用のソファーに腰を降ろし、焔也にも視線で座るよう促す。

 「話っても……ちょっと前に色々あって…………」

まさか、ダグオンとして京都に行っていた━━等とは言えず、口を濁す焔也。

その反応を観て、しばし思案する妙子。考えが纏まったのか、少々呆れを含んだ表情を焔也に向ける。

 「話たく無いみたいね…、ならしょうがない。授業態度に多少問題があるけど、刀匠科の生徒として真剣なのは、私がよく知っている。アンタ達が何処でどう知り合ったかは聞かないでおいてあげる」

 「あざっす!」

妙子の案に勢いよく応える焔也、そのままベッドに眠る撃鉄に視線を向け、疑問を口に出す。

「あの…、アイツって本当に先生の弟なんッスか?義理とか親戚とかじゃなく?」

 「ええ。甚だ不本意だけど、血の繋がった立派な家族よ。似てないってよく言われるけど」

彼の疑問に正直に返す妙子、疲れが顔に出ている。

 「じゃあ次、あの愚弟と何があった……って喧嘩以外無いか、アンタ達の場合」

「ひでぇ!?いや、違わないけど!他の可能性とか考えないんッスか!?」

 「なら聞くけど、あるの?」

「無いッス…」

あまりにも解りきった答えを出すも、抗議の声が挙がり、一応の対応をする妙子に焔也は間髪いれず返事をする。

 「ハァ…ま、良いわ。コッチは私が面倒見とくから、アンタは後で反省文ね」

 ━━代表戦、観たいんでしょ?と妙子が話を切り上げる。

 焔也は有り難いと言わんばかりの勢いで保健室の扉を開け……思い出したかのように礼を言う。

 「サンキュー!流石、姐御は伊達じゃねぇ!」

そう言葉を残し走り出す焔也。後に残った妙子は……。

 「誰が姐御か……、後、廊下は走らないって、もう聴こえちゃいないわね…これも反省文に追加」

そう決めた妙子であった。

 

 

━━美濃関学院武道館

 

 武道館では、折神家御前試合の決勝が今正に始まろうとしていた。

決勝に残った刀使は互いに中等部の生徒。

 1人は肩まで切り揃えた短髪に短く左サイドに黒いリボンで纏めた髪を一房垂らす、活発そうな少女"衛藤可奈美"。

 もう1人は艶のある黒髪をサクラ色のリボンで纏め上げた大人しそうな少女"柳瀬舞衣"。

2人が模擬刀を手に向かい合う。

 「これより、決勝戦を行います!二年二組、衛藤可奈美!」

「はいっ!」

 「同じく、二年二組、柳瀬舞衣!」

「はい」

 「礼!」

 審判の教員の声に答える2人、互いに親交が深い間柄の彼女達、その顔は真剣ではあるが対象的だ。

 「始め!!」

その声を合図に打ち合う2人、舞衣の一撃を受けかわす可奈美、追撃に移る舞衣、その一撃を反らし体制を低く回り込むようにして一閃!

 舞衣の胴の脇腹に一打が決まる。

勝者は可奈美。その顔は何処か楽しげだ。

 「それまで!勝者、衛藤!」

周りに歓声が沸く、焔也は最後の瞬間を目に留めるのみとなり、残念そうに溜め息を付く。

 

 

 

 

 

 代表戦の後、講堂に集う生徒達、代表者2名を激励する美濃関学院学長、羽島江麻の言葉に可奈美と舞衣は朗らかに答える。

 

 

 「あ~あ、肝心な部分が見れなかったぜ…」

そう項垂れながら歩く焔也の前に、元気の無い少女が1人……、彼女は"安桜美炎"。衛藤可奈美、柳瀬舞衣と同じクラスであり代表選抜戦の出場者にして、準決勝で可奈美に破れた少女だ。

 「よっ!なんだよ安桜、敗けたの気にしてんのか?らしくねぇな、何か奢ってやろうか?」

「げっ!?鳳先輩!!?別に気にしてませんー!って言うか、先輩の場合、わたしが奢らされちゃうじゃないですか!」

 そう言い顔を膨らす美炎、焔也は彼女と可奈美、舞衣のクラスによく顔出しては彼女達の御刀の砥などをさせて貰っているのだ。

 「まぁまぁ、今回はちゃんと奢るって、大丈夫大丈夫。ついでに衛藤と柳瀬、後服部パイセンとか何人か呼ぼうぜ!」

 「それ何て嫌がらせですか!もういいです!」

美炎は焔也の言葉に憤慨し去っていく。それを見送った焔也は今度は後ろに向き直り、誰かを探す。

果たして、見付けたのは、先程話題に上がった2人、衛藤可奈美と柳瀬舞衣である。

 「おーい!衛藤!柳瀬!」

「あっ!先ぱーい!」

 「鳳先輩、どうもこんにちは」

焔也の存在に気付いた可奈美と舞衣が近付いてくる。そのまま話始める3人。

 「衛藤、柳瀬、代表決定おめでとう。いやぁ、肝心なとこ見逃して悔しいぜ!どうだ?これから視てやろうか?」

御刀の様子を視ようかという提案はしかし、2人共断ってくる。

「そんな…悪いですよ。この間も鞘袋を戴きましたし」

「うーん、ごめんなさい!今回はいいです」

 「おう、そうか残念だ」

亦してもフラれる焔也。そこに舞衣が疑問を挟む。

「あの…鳳先輩?今朝の校門での出来事なんですけど…」

 

 「あー、アレな?取り敢えず、あのヤロウとは前にちょっとな」

「はいはい!あの人って本当に先生の弟さんだったんですか?」

 可奈美が撃鉄と妙子の件を尋ねる。

「詳しくは知らねぇけどそうらしいぜ。あっ!後で反省文書かされるんだった……」

 「「あ、アハハ…」」

焔也の反応に苦笑する2人。その後も他愛のない会話をし2人と別れた焔也、すると、遠方から彼に近づく大きな足音が…。

 「見付けたぞ、鳳焔也!」

件の男、田中撃鉄である。

「おう、起きたのか?」

「うむ、今回は姉貴の顔に免じて大人しく引き下がる。が、次はこうはいかんからのう!さらばじゃ!」

 そう捨て台詞を残し去っていく撃鉄。

「嵐みてえなヤツだったな……」

 

この後、焔也が門前の事に加え廊下を走った件の反省文を書かされたことは、言うまでも無いだろう。

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ダグオンファイヤーエンの鳳焔也だ!

遂にやって来た念願の御前試合!他の学校の刀使の御刀が選り取りみどり!

 試合も中々見応えあるぜ。

で、迎えた決勝。衛藤と対戦すんのは平城の十条とかいうペッタン子……って、おい!?アイツ何してんだ!!?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

戦慄の御前試合!切先の向かう先。

 

次回も"トライダグオン"!

 




 如何でしょうか?
個人的にはかなり頑張ったので皆様の反応が少し不安です。

まあ、気持ち切り替えていきましょう!
最近また、アイディアがでまして、イースシリーズ新作の怪人達の能力を使った奴が頭にうかんじゃったんです。

まあ、この作品を完結させるまでスカルマンと共々、短編か何かで出してみて評判良さそうなら連載とかしようかとか不相応な事を思ってしまいました。
ではまた


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第九話 戦慄の御前試合!切先の向かう先。

おはようございます。ダグライダーです。
 今回は大分端ってますが刀使ノ巫女のアニメの1話でもある話の部分ですね。
 まあ、二次作品ですし、クロスオーバー要素もあるし、とじみこは閲覧してくださる方々もアニメや先達の方々の作品で御前試合関係は知っているだろうからそこまで詳細に描写しなくても大丈夫かなと思い、
ダイジェスト風味でお送りしてますごめんなさい。
ではでは、どうぞご覧下さい


"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 妙子の発言に戦く生徒達、倒れる撃鉄。

聴取される焔也。始まる代表選抜戦。

決まる美濃関代表、項垂れる焔也。

そして迎える御前試合。果してそれは……

 


 

 ━━木星衛星圏周辺 エデン内大広間

 無数の怪物が蠢く嘗ての牢獄、そこに怒号が響く。

「いったイイツマデ大人しク指ヲ咥えテイレバ良いのだ!!?」

1つの異形がその大きな躰を怒りに奮わす。

 「オチツキタマエ、レイノワクセイノチョウサハマダマダフソクシテイル」

「其ハ何時までカト聴いているノダ!」

 「うんうん、わかる、わかるよ!つまんないよね?たいくつだよね!あそびたいよね♪」

 「嘲笑、怠慢、無意味、雌伏、忍耐、時期尚早」

巨体の宇宙人を宥める道化師のような宇宙人、巨体を煽る妖精。巨体を笑い、耐える事を覚えろと言う甲冑の宇宙人。

 それらを座して黙する鬼のような宇宙人。やがて、重々しく口を開く。

「指示ニ変更ハナイ、今ハアノ星ノ全容ヲ知ル事ガ何ヨリモ優先サレル、以上ダ」

 そう言い捨て、奥へ去る鬼。他の宇宙人達も含む所は在るも、方々へ去る。

そんな中、残った影が1人……。

 「バカなヤツ、ズウタイだけの単細胞。そう思わないかワタシ?」

誰も居なくなった広間で語るそれは、人間であるならば正気を疑われるだろう行為、だが……

「そうだな…だがアノデクノボウが言った事も一理アルト思わないかねわたし?」

先程の言葉に返す様に、別の声が聴こえてくる。

そうして1人にして2つの声の影は何処へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

━━神奈川県鎌倉

 御前試合の為、伍箇伝各学校の代表者、そして応援や観戦に訪れる学生達。その中に一際目立つ者が居る

 

 「ウッヒョ~♪可愛いコちゃんが選り取りみどりジャン!」

 「恥ずかしいので、離れて下さい」

「アッチが鎌府、アッチの白いのは美濃関、あの渋い緑は平城、んでアッチのやたら強調してんのが長船、御前試合バンザイ」

「はぁ…」

女生徒を見て騒ぐ申一郎だ。翼沙は呆れながら距離を取る。そこに、現在綾小路から特別出向扱いの戒将が現れた。

 「何を騒いでいる!全く、迎えに来いなどと連絡を寄越したと思えば……人の趣味性癖をどうこう言いたくは無いが、自重せよ!」

 はしゃぐ申一郎に戒将が忠告する、翼沙はどこか申し訳なさそうに周囲に視線をやる。

その光景を別方向から見据える平城の制服を纏った龍悟、隣に居るのは中等部の女子生徒。

 「…ふっ」

「どうかしたんですか?」

「…いや、知った顔を見付けただけだ。…可笑しかったか?」

「そうなんですね、とても機嫌が良かったみたいだったから気になって」

会話からは親しげな雰囲気を醸し出す2人、龍悟と共に居る少女の名は"六角 清香"、彼の妹である。

 

「やって来たぜ鎌倉!」

焔也もまた、鎌倉の地に降り立った。

「お?何か見知った奴がチラホラと……後でちょっかい出しに行くか」

 騒ぐ綾小路3人組や六角兄妹を横目に、焔也は焔也で折神家に向かうのだった。

 

 

 

 

━━折神家屋敷前

「でけぇ……」

道中、市街に荒魂が出現するも美炎を含めた数目の刀使達によって討伐された為、ダグオンになること無く折神家に到着した5人。焔也があまりの大きさに感嘆を漏らす。

 「ホント、デケェな…」

「本部と隣接しているからな」

「有事の際に即座に対応する為に…ですね」

 焔也の後ろから彼の言葉に併せる様に申一郎が驚き、戒将が説明し、翼沙が補足する。

 「よぉ!駅前の、見てたぜ」

「あまり、見られて嬉しいものではないがな……」

「オレは満足だゼ、可愛いコちゃんも見れたし」

「勘弁して下さい…」

1人浮かれる申一郎に対し疲れを見せる2人。

 暫くして龍悟が合流する。

「…相変わらず賑やかだな」

 「六角か、あまり嬉しく無い賑やかさだがな」

「よっす!あれ?さっき女の子と一緒にいたよな?」

「ナニィ!?彼女持ちかよぉ!テメェコンニャロウ羨ましいぞ!チクショウ!!」

「やめて下さい…みっともない」

「……生憎、妹だ」

焔也の振った話に申一郎が食い付き一方的に嫉妬し羨む、あまりの情けなさに翼沙も辛辣な物言いだ。

 「む、そうか、六角には妹が居るのか…仲は良いのか?」

「…悪くはない」

同じ兄妹同士、思うことでもあったのか訪ねる戒将に、龍悟は短く返す。

 「そろそろ時間か、ではなお前達、俺は本部の方に用がある。問題を起こすなよ」

そう言い残し去った戒将。残る4人は各々の学校の応援に向かう為、解散した。

 

 

 遂に始まった御前試合、会場には多くの刀使達や応援の生徒が見受けられる。

 中には警備だろう、親衛隊の姿も見られる。

二階、観覧席入口付近に獅童真希と此花寿々花、一階、代表選手入口付近に燕結芽…少し離れて戒将も見える。

 皐月夜見を除いた三名の親衛隊に加え、数名の刀使と警邏科生徒による警備態勢が敷かれている。

 

 第一回戦、第一試合は平城学館代表者と綾小路武芸学舎代表者の戦いとなった。結果は平城の勝利。

平城の代表は十条姫和。彼女は写シを張り、試合開始の合図と共に即座に構え迅移による踏み込みで相手を即座に切って捨てた。

 正に電光石火の如し、斬られた綾小路の代表は写シを剥がされ倒れ伏す。

 「……速いな…だが、まだ先があると見た…」

龍悟は姫和の迅移を見て、本気ではないと判断を下したのだった。

 

 続く第二戦、美濃関対鎌府の戦い。

美濃関からは可奈美、鎌府からは糸見沙耶香。

開始直後、沙耶香が素早く連撃を繰り出し可奈美は防戦一方となるも、受け、かわし、反撃する。

可奈美の攻撃に沙耶香は反応を返すも、斬られ敗北。

勝者は可奈美、敗北した沙耶香は特に何も感じていないかのように即座に控え席に戻っていった。

 

 三戦目、舞衣と長船の益子薫の戦い、緊張の面持ちを前にする舞衣に対し、全くやる気の無い薫。

そのまま身の丈を越す大太刀の御刀をやる気の感じない声と共に振り卸すも卸しきる前に、舞衣に斬られ敗北。

 無気力を出したまま長船の席に戻っていく。

同じ代表の刀使にも何事かを言われているようだ。

 

 

そうして、瞬く間に試合は進む。

準決勝、美濃関同士の戦い。選抜戦からの再戦となる可奈美と舞衣の戦いは、可奈美の柳生新陰流に対し、舞衣は居合いをもって対応するも抜き手を押さえ込まれ、敗れ去ったのだった。

 

 

 

 「かっー!柳瀬のヤツ惜しかったなぁ。しかし、衛藤のヤツは相変わらずか……決勝は会場、場所が違うんだよな。早いとこ移動しとくか」

観覧席から先程の戦いを見ていた焔也は直ぐに席を立ち移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

━━御前試合決勝会場

 「これより、折神家御前試合、決勝戦を行います。両者前へ!」

昼の休憩をはさみ、再開した御前試合、その決勝戦。

可奈美と相対するのは十条姫和、可奈美は彼女との戦いを楽しみにしていたのだ。

 前日、事前に現地入りした際にすれ違った時から何か言葉では言い表せないモノを感じていた可奈美。

事実、姫和の戦いを目にし試合が出来る事を楽しみに思っていたのだ。

 決勝は折神紫も観戦に現れる。隣に付き従うのは親衛隊第三席、皐月夜見。

 周囲が固唾を飲んで見守る中、前に出て構える2人。

無行の位で相手の出方を視る可奈美、姫和は車の構えで身を低くする。

 「始めっ!」

一瞬の静寂の後、審判が合図を告げる。

瞬間、姫和が消える。ガキンッ!という金属の打ち合う音が会場に響き渡る……、可奈美に…ではない、なんと折神紫の前に姫和は御刀を突き出しているではないか。

 

 突き出された姫和の御刀"小烏丸"を一体何時取り出したのか二本の御刀で防いだ紫。彼女は姫和に向かって言う。

 「予備動作無しの三段階迅移……、それがお前の"一つの太刀"か?」

「…ッ!まだっ!」

 

 自らの必殺を防ぎ、余裕を見せる紫に対し姫和はもう一度斬りかかろうとするも、背後から真希によって写シを貫かれ剥がされる。

 三段階迅移により、精神の気力を疲弊させた姫和に真希の刃が振るわれる。死が迫り来る正にその時、姫和と真希の間に割り込む影、なんと可奈美が姫和を庇ったのだ!

 「迅移!」

 

「待て!」

「良い…追うな」

可奈美は姫和に迅移を行うよう口にする。

それを止めようとする真希に対し紫は追わぬよう指示する。

迅移によって高速で移動する2人、しかし突如背後から迫る小さな影。

 「アハッ♪面白そう!わたしもま~ぜてっ♪」

影の正体は親衛隊第四席、燕結芽。彼女が楽しげに嗤い御刀を構える。

 「結芽っ!?」

一連の出来事に息つく暇も無い戒将が、しかし、妹の突然の行動に驚きの声を挙げる。

その瞬間出来た結芽の僅な隙を見逃さず、八幡力によって強化された身体機能で跳躍し逃亡する可奈美と姫和。

 

 「千鳥と小烏丸、まだ幼い二羽の鳥よ……」

周りの混乱など気にせず、感慨を溢す紫。

 

 こうして衛藤可奈美、十条姫和の両名は反逆者となった。

 

続く

 


 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 美濃関学院、中等部2年、柳瀬舞衣です。

突然、紫様に御刀を向けた十条さんとそれを庇った可奈美ちゃん。そのまま逃げた2人……可奈美ちゃん、一体どうして……?

 混乱する最中、鳳先輩達は可奈美ちゃん達を追い掛けます。

 そこに謎の人物が現れ先輩達の前に立ち塞がるのでした。

 "次回、刀使ノ指令ダグオン"

 逃亡!2人の反逆者。

次回も"トライダグオン"です……可奈美ちゃん……。

 




 如何でしょうか?
今回、新たに出ました宇宙人、詳細は次回になります。
話は変わって、今作品の結芽は、戒将という兄の存在も有り、行動はそこまで変わりはしませんが、割とブラコン入ってます。
 いやね、彼女がアニメで彼処まで強い事…凄い事に拘る理由が両親の存在が起因しているので、兄が居れば多少依存的にはなるかなぁと思いまして……ブラコンと相成りました。
 お叱りは覚悟の上です。
では次回、御会いしましょう



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第十話 逃亡!2人の反逆者。

おはようございます。仕事前に投稿です。
大和田伸也役大和田伸也のインパクトがまだ残ってる……。
いやぁ、宇宙人の名前を考えるのお陰で苦労しましたよ。

ところで、可奈美のお兄さんって名前とかの詳細、反面してましたでしょうか?
してないなら色々都合がいいんですが……。
取り敢えずどうぞ


"前回の刀使ノ指令ダグオン"

 

 鎌倉で行われる御前試合、伍箇伝各代表が凌ぎを削る。

迎える決勝試合、相対する衛藤可奈美と十条姫和。

しかし、姫和は開始の合図と共に何と、折神紫に御刀を向ける。

己に向けられた刃を防ぐ紫、驚愕に目を剥く姫和。

獅童真希により写シを剥がされ、沫や絶体絶命。

その瞬間を救ったのは可奈美だった。

その場から逃げる2人……果たして何が起きているのか?

 そして、2人を見詰める謎の影が一つ。

 


 

 ━━鎌倉 折神家屋敷前

 

 門前の屋根上から2つの影が飛び交う。

十条姫和と衛藤可奈美、御前試合にて折神紫に刃を向けた暗殺者とそれを庇った刀使、混乱する会場を尻目に逃げる彼女達、それを木蔭より覗く謎の人物が2人。

 「見たかい?わたし。この星の原生生物は愚かだね、同族同士で殺し合って」

「そうね、ワタシ。こんな星のこんな小さな島の同列人種ですら完全な意志疎通が出来ないなんて…」

「あのムシケラが消えた地だと言うから、どれ程かと思えば…所詮、文明を創りあげようと猿でしかない」

「サル?それはこの星の非文明種でなくて、ワタシ?」

「奴等は猿から進化したらしいよわたし」

 

お互いをお互いに私と呼称する男女、性別と極一部肉体的な違いを除けば、寸分違わず同じ顔、同じ身長、同じ体重、まるで双子の様な2人……しかし彼等は双子に非ず、彼等の視線は逃げていく可奈美と姫和を離すことなく見詰めていた。

 

 

 

 ━━御前試合会場

 「一体、何がどうなってやがる!?」

突如起きた事態を呑み込めず、狼狽える焔也。

周りの生徒達も未だ理解が追い付かないのか、困惑は治まらない。

 「可奈美ちゃん…」

柳瀬舞衣もまた、親友の突然の行動に動揺を隠せないでいた。

 何故あの場で十条姫和を庇ったのか?何故共に逃げたのか?

舞衣の頭の中は疑問で埋め尽くされる。

 「落ち着いて、こちらの指示に従い、別命有るまで待機せよ。不審な行動は即懲罰の対象とする」

警備に参加していた戒将を含めた者達が周囲に伝える。

 しかし、既にその時、龍悟は姿を消していたのだった。

 

 混乱もひとしおに、各学校同士で集められ美濃関と平城は事情聴取の為本部近辺に待機、綾小路、長船はバスへと集められていた。

 「アノ2人、まだ捕まってないみたいデスネー」

「オレ達は一体いつまで放置されるんだ……」

「ね~…」

長船の人間が集まる場所の一角に、そんな事を口にする2人組、1人は金髪碧眼でグラマラスなハーフであろう刀使、"古波蔵エレン"。

 もう1人は、頭上に奇妙な小動物を乗せる一見すると小学生と見違えるほど小さな刀使、"益子 薫"。

そしてその小動物、"ねね"。

彼女達はエレンが後ろから薫を抱え込む様に座り、ねねが薫の頭上とエレンの胸の間に挟まっている。

 「あー…早く風呂入って寝たい…」

「デスねー」

 

 

 そんな中人目を避けるように集まる4人の男子生徒……ダグオンの若者達は顔を合わせていた。

 「なんかトンデモ無い事になってんな……」

「まさか、暗殺だなんて……」

「俺も驚いている。主犯は平城の生徒だが……あの美濃関の生徒に関して知っている事を喋って貰うぞ、鳳」

申一郎、翼沙の反応に対し最低限の言葉で返し、戒将は焔也に可奈美の事を訊ねる。

 「んなこと言われても…衛藤は暗殺なんてする奴じゃねぇ……何で平城の、十…条?だかを庇ったのかはわかんねーけど…」

 可奈美をそれなりに知る焔也は彼女が不義を働く人物ではないと断言するも姫和を庇った事に関しては解らないと答える。

 「大体、平城って言ゃあ六角の奴が………、あいつ何処だ?」

 「そう言えば、先程から見掛けませんね?」

「トイレか?」

「ふむ奴めの、ダグコマンダーに通信を掛けるか?」

 「なら、俺が聞く。一応美濃関の事でもあるしな」

戒将の提案に則り、龍悟のダグコマンダーに通信する焔也。暫くして

 

 『…何だ?』

「何だ?……じゃねぇ!今、どこに居やがる!?」

 『……例の2人を追っている。用がそれだけならば切るぞ』

「何だと!?待て六角!詳しく聞かせろ」

 『…悪いが、アチラに気付かれたく無いのでな…、落ち着いたら連絡する』

龍悟のまさかの発言に驚く焔也と戒将、戒将が詳細を訊ねるも、一方的に通信を切ってしまった龍悟。

 「こうしちゃ居られねぇ、俺達も追っかけようぜ!」

「待て、今不用意に此処を動けば怪しまれる!」

「ならよ、燕がナントカして鳳に同行、オレらは監視的な役割で助っ人扱いで同行……てな感じでドウよ?」

 「流石に無茶では………」

直ぐにでも追おうとする焔也に対し戒将が注意するも申一郎が助け船を出し、翼沙が穴だらけのそれにツッコむが、戒将は暫く黙り混み考える素振りをすると口を開く。

 「いや、それで行こう。あまり好きでは無いが上には俺が適当な理由をでっち上げ、六角に合流する。念のため、変身して追うぞ!」

 「よしっゃ!」

「変身すんの?目立つダロ?」

 「いえ、下手に生身で動けば素性がバレてしまいます。ならばいっそダグオンになって仕舞えば特祭隊の意識は正体不明の怪人としての僕達に向く…ダグオンの身体能力なら逃げ切る事も不可能ではありません。つまりは、そう言う事ですよね?」

 「ああ、では人気の無い場所に移動していてくれ。俺も報告を終えてから合流する」

 

 

 

 「「「「トライダグオン!」」」」

 

 

こうして、戒将の策を実行した4人。折神家屋敷の敷地内から飛び出し、道行く人々が捉えられぬ程の速さで走り、屋根づたいに駆ける。と、人通りの無い場所に来た瞬間それは起きた。

 「ふん……オマエ達がトラルクの大食いとギロザバスのムシケラを倒した連中だな?」

 そう言って現れたのは、一見何の変哲も無い男性、しかしその姿は擬態に過ぎない。

 彼は先程の暗殺騒ぎの際、逃げ行く可奈美と姫和を見ていた人物の1人……

 4人は突如現れた謎の人物を前に警戒する。

「何者だ?我々の動きを完全に捉えている…」

「おい、あんた何でこんなとこに居る?迷子ならちょいと目立つが案内するぜ?」

「ワリィけど用が無いんなら退いてくれ。アンタに構ってるヒマは無くってヨ」

「僕達は怪しいかもしれませんが、危害は加えません。なので、この事は見なかった事に」

 カイが男性を怪しむも、エン、シンが気にせず冗談混じりに誤魔化し、ヨクも警戒しながらもあくまで一般人に触れる様に接する。

 

 「ワタシはジェンゲンガ星人、宇宙監獄エデンの犯罪者だ」

 

 「なっ!?」 「ここに来て、久しぶりの宇宙人かよ!?」 「空気読めよコンチキショー!」 「そんな事言っても仕様がないですよ、それより警戒してください!」

 

 「キサマ達は何だ?」

男性…ジェンゲンガ星人が名乗り、4人に緊張が走る。

ジェンゲンガ星人は更に彼等に誰何を訊ねる。

 

 「知らねぇってんなら、憶えとけ!俺達はダグオン。お前ら犯罪宇宙人の侵略から地球を守る正義のヒーローだ!」

 

 「ダグオン……、成る程、記憶しておこう……ヌン!」

そう言ってジェンゲンガ星人は、姿を変える。

青い肌に二の腕から生えた爪、鋭い牙が覗く口元、但しその顔の場所は人間でいう所の左胸の部分、本来顔がある場所にはのっぺらぼうのような頭がある。

 

 「イクゾ、ダグオン!」

ジェンゲンガ星人が跳び掛かる、4人はバラバラにかわし、迎撃する

 

 「へっ、今までの奴に比べたら大した事無いぜ!」

 

 「油断するな馬鹿者、確実にダメージを与え倒すぞ!」

 

 「おうよ!喰らいな!アーマーライフル!」

 

 「任せて下さい!クリスタルブーメラン!」

シンとヨクの攻撃がジェンゲンガ星人にヒットし怯む、動きを止めた星人にエン、カイが更に追い討ちを掛ける。

 「よっしゃっ!カイ、こいつで決めるぜ!ファイヤーナックルゥッ!!」

 

 「うむ。止めだ!ホイールキィイック!」

 

「ぐぅ!?あがぁ!!」

 

エンの炎を纏った拳とカイの超速から繰り出された蹴りにより吹っ飛び倒れるジェンゲンガ星人、吐血し遂にその体は生命活動を停止した。

 

 「何だ?全然大した事なかったな」

「手応え無さスギだろ、今まででイチバン弱くね?」

 「確かに……それに遺体まで残るのも初めてです」

「………気になる事も多いが、今は六角との合流を優先すべきだ。回収は後回しで奴の遺体は目立たぬ場所に捨て置くしかあるまい」

 こうして、ダグオン達によって、人目の着かぬ場所に放置された死んだジェンゲンガ星人の肉体、其所に片割れであった女性が現れ、死体に話掛ける。

 

 「どうだった、ワタシ。戦った感想は?」

 「中々にやるようだ。ワタシしか居なかったとは言え、見事にやられたよわたし」

即座に返ってくる答え。何と死体だった筈のジェンゲンガ星人の口が動きみるみる内に傷が再生し、立ち上がったではないか。

 「これは暫くこの星で様子見かな?ワタシ?」

「不承不承だがね、奴等の戦力を分析せねばならないよわたし」

 

「「フフフフフ…」」

2人にして一つの声が響き消える。

一体、ジェンゲンガ星人とは何者なのか……。

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 やあ、管理者だよ!って、今ボク色々忙しいんだけどぉ!?ファイヤージャンボ造って、ファイヤーラダーにファイヤーレスキューも完成させて、今作ってるライアンの魂をちょっと……ヴぇぁ!?

 ……………うん、そんな事より次回予告だね♪

ジェンゲンガ星人を退けた4人、一方、龍悟くんは可奈美ちゃんと大和へ……姫和ちゃんを尾行していた。

 やれやれ覗き見なんて、趣味が悪いナー。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 追跡?反逆者はデート中?

 

さぁ、次回も"トライダグオン"だ!

どうしよう……

 




 はい、如何でしたでしょうか。
次回予告でチラッとライアンについて言ってますが、登場はまだです。
そして龍悟の忍者ムーブは、ほら勇者指令ダグオンの竜も諜報能力高いしこれくらいなら出来るかなっと思いまして……。
ではまた次回お会いしましょう


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第十一話 追跡?反逆者はデート中?

 こんばんは?おはようございます?
お待たせしました。ダグライダーです。
 今回も龍悟がさらりととんでもないことしてますがお気に為さらずに……これも竜が神出鬼没気味だったのが悪い。
何か龍悟に変なキャラが着いた気もしますが彼は至って真面目です。本当なんです!信じて下さい!!



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 御前試合中に起きた折神紫暗殺、未遂と終わるも周囲は未だ混乱収まりきらない。

 周辺の鎮静化に奔走する戒将をはじめとする警備の人間達、只々茫然とする焔也達。

 そんな中、龍悟はいつの間にか姿を消していた。彼は何と、追われる身となった2人を尾行していたのだ!

 龍悟からの連絡により、彼と合流を図る4人。その前に表れた新たな異星人、ジェンゲンガ星人の男。

 戦闘となる4人、しかし、即座に彼を降す。

その頃、龍悟は………

 


 

 ダグオンの4人がジェンゲンガ星人と戦闘をこなしていた頃、可奈美と姫和を尾行、監視していた龍悟。

 彼は何時の間に着替えたのか、紫色のジャケットを羽織った私服姿である。

 人の波に紛れながら、自分からは見え、彼女達からは気付かれ難い距離を維持する。

当の彼女達はというと……

 

 

 「おっきーい!すっごいね!」

東京の街並みを彩る高層ビルを見上げ感嘆する可奈美、その様子は追われているとは思えない程能天気だ。

 「はしゃぐな…!」

「だって、テレビで見るのと全然違うんだもん…」

呆れる姫和に対し反省するも無邪気な子供のような事を言う可奈美。

 首都高にて検問を掻い潜り、潜伏に使ったトラック内で互いに自己紹介等のやり取りを済ませた後、東京へとやって来たのだ。

とは言っても、突き放して来る姫和に、可奈美が押し掛けるように着いていっているだけなのだが…。

 「はじめから東京に来るつもりだったの?」

「平城のある奈良や美濃関の岐阜へのルートは警戒されている。東のほうが手薄と判断したまでだ」

 「なるほど~」

「急ぐぞ」

 「待ってよ姫和ちゃん、何処かアテでもあるの?」

「あるわけ無いだろ。このままでは目立つ、それに宿も探さなくちゃならないからな」

 「それなら、御刀は隠さなくちゃね。後制服も、このままじゃ刀使ってバレちゃう」

「どうするつもりだ?」

 「任せてよ♪」

といった具合のやり取りをし、近くの店舗……若者向けのディスカウントストアに入っていく2人。

龍悟はそれを、店の入り口が見えるオープンカフェから眺める。

 暫くして、黒いパーカー付きのコートにギターケースを背負った乙女が揃って出てくる。そのまま何処ぞへと向かう2人に対し追跡を再開する。

 つかず離れず、しかし、不自然無く尾行する様はまるでプロの刑事か諜報員のようであった。

 

 

 

 

 同じ頃、刀剣類管理局本部では柳瀬舞衣、岩倉早苗両名の尋問が行われていた。

 舞衣は可奈美の取った行動に全く持って心当たりが無いことを包み隠さず話した。可奈美と近しい彼女が知らないのだ。あくまでも、一クラスメイトにすぎない姫和の事を早苗が知るよしも無いだろう。

 

 「獅童さん、其方はどうでした?」

「此方は何も知らない様だ。寿々花、君の方…も同じ様だね」

親衛隊の2人が其々の尋問を終え、通路の窓際で互いの情報を交わし合う。結果はシロ、柳瀬岩倉両名は暗殺の件に関与せずと結論が出た。

 「手掛かりは無しか……」

「そう言えば、戒将さんが何やら外で関係者を尋問なさっているとか…」

 「戒将?すまない、寿々花。その人物は何者だい?」

「あら、ご存知ありませんの?燕戒将、結芽のお兄様ですわ」

 「……兄が居るとは聞いていた…戒将という名前だったのか……」

2人の話題に挙がった戒将だが、現在彼は仲間と共に異星人との戦闘中であった。

 

 親衛隊からの尋問を終え解放された舞衣。

俯く彼女の顔色は芳しく無い。

 「柳瀬さん!」

と、そこに声を掛ける人物が表れる。

「羽島学長!?」

その人物の正体は羽島江麻、伍箇伝美濃関学院の学長である。

 「遅くなってごめんなさい。辛い思いをさせちゃったわね…」

「いえ……」

自身の胸元に舞衣を抱き締める江麻、その様子は子を励ます母のようだ。

 「それより可奈美ちゃ…衛藤さんは?!」

気を取り戻した舞衣が江麻に問い詰める。彼女は優しく笑い後の事を自分達に任せるよう舞衣を宥めた。

 

 「あらまぁ、江麻ちゃんも紫ちゃんもお久しぶりやねぇ~」

局長室に緩かなおっとり声が通る。

平城学館学長、五条いろはの声である。

 江麻共々、今回の暗殺未遂の件で招集されたのだ。

「局長もいろはさんもお変わりないようで」

 「いやぁ、ホンマにお変わりないのは紫ちゃんだけと違う?」

旧来を温め合うような口振りのいろはと江麻に対し紫は表情を崩すこと無く問う。

 「同窓会で呼んだ訳ではない。」

「あら、御免なさいねぇ…ついつい」

 「2人の生徒の潜伏先に心当たりは?」

「御免なさい。特には…」

「同じく。すみません、どうしてこんな事態になったのかも……」

学長達も今回の件は寝耳に水だった様で、少なからず驚いている。

 「では質問を変えよう。平城学長、管理局への届出には小烏丸は平城学館預り、適合者無しとなっているが?」

紫がいろはに姫和の御刀の事を問う。

 「報告が遅れて申し訳ありません。……小烏丸があの娘を選んだんです」

何もやましい事はないという顔で答えるいろは、江麻はそんないろはの顔をチラリと見やる。

 「衛藤可奈美は"千鳥"、十条姫和は"小烏丸"。逃亡中の2人は其々の適合者だ」

「千鳥と小烏丸ーーーですか…」

紫の発言に何処か憂いを浮かべ呟く江麻、その言葉の意味は彼女達にしか預り知らぬ事である。

 

 

 

 

 

 再び、場所は戻って東京。

可奈美と姫和は手近なビジネス旅館に宿を訪っていた。

「ふぅ~、何とかなったね!」

窓からカーテン越しに追手を気にする姫和に対し、可奈美は自然体で寛ぐ。

此処に至る迄に様々な事があったというのに能天気そのものだ。

 

 「あ、そうだ!下にコインシャワーあったよ、姫和ちゃん先に行っておいでよ。私、その間にお弁当買って来るから」

「呑気な奴だ、こんな時に食欲なんて……」

 「でも、腹が減っては戦は出来ぬって言うでしょ♪」

可奈美の言葉に呆れ果てる姫和、可奈美は構わず言う。

 

因みに、龍悟はまたしてもいつ着替えたのか、今度は清掃員姿で可奈美達の部屋近くの通路をモップで磨いていた。

 

 

日も沈みかけ、空が茜色に染まる頃、舞衣は可奈美の無事を願っていた。

 (どこにいるの可奈美ちゃん……どうか無事でいてお願い…)

そこにブー、ブーと手にした携帯に着信が入り震える、画面を見れば公衆電話からのモノ、一体誰とも知らぬ相手からの電話に僅かに怪訝ながらも出る。すると

 

 『…舞衣ちゃん?』

 

かっ…今どこ?」

 可奈美からの突然の電話に一瞬、大きな声を上げそうになるも、即座に周りを見回し潜める舞衣。

そうして居場所を聞き出す。

 

『それは…えっと、……此処どこだろ?あのね、色々迷惑かけてゴメン。私は大丈夫だから、心配しないで』

 

「可奈美ちゃん…全っ然大丈夫じゃないよっ!?」

 心配無用と言う可奈美に対し、現状全くそんな事は無いと反論する舞衣。しかし…

『ゴメン、もう切れそう。小銭無いんだ』【此方は防災台東です。子供達の見守りを…】『えっと、私の荷物預かっと……』

「あっ、待って!」

手持ちの小銭に持ち合わせがなかったのか通話が切れてしまう。しかし、舞衣は電話越しに微かに聴こえた放送に着目した。

 

 

 

 「2人とも無事でいてくれたらええんやけど…」

「鎌府が協力を申し出ているようですね」

本部の入り口から出てくる2人の学長、互いに可奈美と姫和を心配しているようだ。

 「はぁ、そうなると益々ややこしくなるわねぇ……六角君が居たら助かるんやけど……」

 

 「学長!」

いろはは鎌府が出者張る事が不安なようで、ついつい龍悟の名を口走る。江麻がそれに返そうとすると呼び止める声。

 

 「柳瀬さん?どうしたの、皆の所に戻って…」

「お願いがあります。私に衛藤さんの捜索許可を下さい!」

舞衣が現れ、可奈美を探す許可求めて来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 「この辺りか…?」

「イネェ…」

「呼び出しましょう」

「おし、任せろ」

ジェンゲンガ星人との戦いを終えた4人、コマンダーの反応を頼りに東京へとやって来たのだ。

 変身を解除し龍悟を探すも見当たらず、呼び出す事とした。暫くすると、またいつぞや着替えたのか再び私服姿に戻った龍悟が現れる。

 「…来たか」

「来たか。……じゃねぇよ!お前何処に居たんだよ?ってかあの2人は?」

 「…慌てるな、2人はこの直ぐ近くの旅館に居る」

「六角、君の所感を訊きたい。彼女達は我々の敵となりうる存在か否か?」

「オイオイ!?あんな可愛いオンナの子達を敵って…」

「だが、彼女達がしたことを鑑みれば、極端な話その可能性はあるのだ」

 「…デートだ」

「「「はっ!?」」」

「デートとは?」

 龍悟と合流し情報を聞き出す戒将、場合によっては敵対もやむ無しと言い出す。

それに対して帰ってきたのはデートと言う単語。あまりに意味不明な事を言い出す龍悟に揃って驚き惚ける4人。翼沙がその言葉の意図を問う。

 「…言葉通りだ。彼女達は逃亡中の身でありながら、楽しそうであったという事だ……いや、あの衛藤と言う少女に十条が振り回されていただけとも言える」

過去最大の口数で話す龍悟に寧ろそちらに驚いて仕舞う4人。

 

 「ンッんん!兎に角、理由は解らないが放置する訳にはいかん」

「…ならば、暫く俺に監視させてくれ」

 「何…?」

「…問題無い、この手の事は慣れている。お前達は戻れ。…ではな」

そう言い残し、旅館の方に踵を返す龍悟。後に残った4人は目が点になってしまう。

 「待てって!」

「行っちまった…ドウする?」

 「帰れと言われておめおめ帰れるものか」

「………いえ、此処は戻りましょう。実は少し気になっていた事があるんです」

戒将は憤慨するも翼沙が従うよう、説得する。

どうやら気になる事があるようだ。それは果たして

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ターボカイ、燕戒将だ。

渡邊の言葉に従い、我々は一度本部へと帰還する。

気になる事とは一体……?

そんな中、反逆者の捜索に当たる柳瀬舞衣。

そして、赤羽刀捜索の為に結成される調査隊。

 何処もかしこも目まぐるしく動いていく。

次回、"刀使ノ指令ダグオン"

捜索!赤羽刀と逃亡者。次回も"トライダグオン"。

 ぬ?結芽何をしている?

 




 はい、如何でしたか?
次回は調査隊メインになります。
ところで皆様、文字の上にルビを振る方法をご存知でしょうか?私、この手の知識に疎いので誰か教えて戴けたら幸いです。
ではまた


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第十二話 捜索!赤羽刀と逃亡者。

はい十二話です。

前回を読み返したら、あんまりデートらしい描写してなかったですねすいませんでした。

今回はとじともの調査隊の話ですが、ダグオンの方もある手段の事にさらっと触れています。

ではどうぞ


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 東京へと逃げた可奈美と姫和を尾行する龍悟。

焔也、戒将、申一郎、翼沙が合流し引き続き龍悟が2人を監視する事が決まった。

 一方、舞衣は公衆電話から掛かって来た可奈美の声を聞き、捜索を願い出す。

 

 時同じくして、鎌倉では赤羽刀捜索の為のチームが結成されようとしていた。

 


 

 赤羽刀。それはこの世界に於いて、錆びた御刀の事を指す。

 元来、御刀とは特殊な鉱物である珠鋼を鍛え打った刀である。それを御刀に選ばれた刀使が隠世の力を引き出す事により、写シを行う事が出来るのだ。

その為、本来ならば御刀とは折れず、欠けず、錆びる、などという事はまず無い。

 但し、何事にも例外はある。

終戦直後、アメリカが日本から持ち出そうとした御刀、約5千~1万本が浦賀沖に沈没。

その後に出没する荒魂より排出され回収された錆びた御刀こそ赤羽刀である。

 理由は不明であるが錆びない筈の御刀が荒魂がその身の内に赤羽刀を取り込んでいると言うのだ。

 

 そして、此処にもう一つの例外にあたる先端が欠けた御刀を持つ刀使が現在進行形で頭を抱えていたのだった。

 

 

 暗殺騒ぎの直ぐ後、安桜美炎は可奈美を追い掛け飛び出したのだが、紆余曲折あり特祭隊の刀使を撃退してしまう。その際、共に居た長船の刀使、"瀬戸内 智恵"に諭され本部へと帰還し、羽島江麻学長によって自身の行いを不問とする代わりに、赤羽刀捜索の為の調査隊に智恵共々組み入れられるのだった。

 調査隊のメンバーは、美炎、智恵の他、江麻によって紹介された六角清香、鎌府より高津雪那学長の推薦(という名のある種の自慢)である七之里呼吹、そして綾小路より、ヘリに乗って現れた木寅ミルヤの以上5名である。

 ミルヤ加入の際、本部敷地内での荒魂との戦闘等あったが、ミルヤの指揮の下、見事討ち果たした。

 

 こうして、話し合いの結果、清香の"原宿に行きたい"の一声で調査隊は東京は原宿、青砥館へと向かっていたのだが……

 

 「いやー、奇遇だな安桜!こんなとで遇うなんてよ」

彼女達は原宿で偶然、焔也と遭遇したのだった。

 「何で…」

「美炎ちゃん?」

 「何で先輩がいるんですかぁ!?」

「うぉ!?びっくりしたぁ、急に大声出すなよ」

 「いや、そうじゃなくて!どうして先輩はここに居るんですか」

バッタリと鉢合わせた焔也に大声で問い詰める美炎。

智恵は美炎のあまりの剣幕に心配そうな素振りを見せる。清香、ミルヤも何事かと目を見張る。

 呼吹だけは興味無さそうにしているが……。

「ちょっと、青砥館に用があんだよ」

焔也はそう語る。では何故、焔也が原宿に居るのか?

事は数時間前に遡る。 

 

 

 

 あの後、龍悟と別れた焔也達は一度ダグベースを訪れていた。

 「ンデ、何なんだよ気になる事って?」

開口一番、申一郎が切り出したのは翼沙が言った"気になる事がある"という言葉。

 人の目を避ける為、念には念をという事でダグベースで話し合う事と相成ったのだ。

 「そうだな、俺としても納得のゆく説明が欲しい」

「わざわざ転送までしてダグベースに…だしな。俺も少し気になるぜ」

 戒将、焔也もまた翼沙に目を向ける。翼沙は皆に座るよう促し、口を開く。

 「燕さんが納得いくかは解りません、ですが、この情報は話しておくべきと思いました」

 翼沙はどこか躊躇いがちに言う。

 「実は、折神家は荒魂を利用していると言う情報があるんです……」

「荒魂の利用?」

「ンダよそりゃ?ワケわからん」

 「正確には回収されたノロを使った人体実験…です」

「馬鹿な!?そんな事が有り得る筈が無い!」

翼沙の言葉を即座に戒将が否定する。

 「ですが、幾つかの疑惑があるのです」

そうして、翼沙は己の知る疑惑を語る。

現行の数世紀先を行く、スペクトラムファインダーやストームアーマーの技術、回収されたノロが全て折神家の一括管理の下、何処かへと運ばれた事、そして、鎌府……高津学長が主導しているノロを使った人体実験の事。

「その話が事実だとして、渡邊……貴様どこでその情報を手に入れた?」

戒将が何故翼沙がそう至ったかの理由を問う。

 「皆さんは、"舞草"と言う言葉に聞き覚えはありますか?」

「も…くさ?」

「あー、確か御刀……ってか日本刀を初めて鍛錬した刀鍛冶の集団だかだったよな?」

「オマエ、本当に鳳?」

「どうゆう意味だ…こら!?」

まさかの焔也の解答に申一郎は目を剥き問う。

「舞草…聞いた事がある。反折神紫勢力として、現在の刀剣類管理局と敵対している勢力だな」

 「その通りです。そして、Sアーマーの開発者"リチャード・フリードマン"氏と"折神朱音"様が率いている組織でもあります」

 「なっ!?」

バカ2人の漫才は取り合わず、戒将の答えに肯定する翼沙、更に衝撃的な事を言い出す。

「誰だよ、そのリチャードなんちゃらって?」

「ヤロウの名前何ざオレが知るかよ…」

 「まさか…そんな事が……、では結芽は!!?」

「親衛隊であるならば、可能性は有るかと…」

重苦し空気が広がる。誰もが口を閉じ静まったその時。

 ≪おや?いらっしゃい皆、良いところに来てくれたね♪≫

そんな空気をぶち壊したアホが現れた。

 「空気読めッテノ…」

「いや、逆に読んだんだろ?」

 「正直、有難いです。あまり好ましい方向に行きそうになかったので」

「……、何の用だ?」

 

 ≪え?何か雑じゃない?僕偉いんだけど~≫

「いいからとっとと要件話せよ」

またしてもいつぞやの様にあんまりな対応に文句を言い出す管理者、焔也が話の先を促す。

 ≪ま、いっか!うん、近々君達の学校合同のチームが結成されるからさ、誰か付いていってよ≫

「ハァ?!」

「それは伍箇伝でと言うことですか?」

 ≪そだよ、何だっけ南む…南无薬師景光だったかな?それを探す為に結成されるらしいから≫

「マジか!?南无薬師瑠璃光如来景光を!!?やべぇ、俺も行きてえ」

≪あ、じゃ焔也くんで良いよ。本当は龍悟くんに頼みたかったけど居ないし≫

 「よしゃあ!」

「あー、管理者ヨォ、何でンナコト知ってんだよ?」

 ≪それは勿論、管理者だ「そんな事はどうでもいい」ヒドイ!≫

 「何故、このタイミングで僕達にそんな話を?」

 

 ≪………怒らない?≫

「つまり、怒られるような事だと言う事だな?」

 あれよあれよと話が進み焔也が調査隊に同行することが決まる。申一郎は何故そんな情報を知っているのか問い、管理者は自慢気に言おうとするも戒将に遮られ、翼沙が何故調査隊の話を自分たちに振ったのかを聞く、すると、途端に子供のような事を言い出す管理者。

 戒将は呆れている。

 

≪実は……君達の戦力アップの為に用意したとある物を落としちゃって………てへ♪≫

 「落としたって…それだけで俺達に?」

≪うーん、色々質問される前に、簡潔にいいます。剣創った。落とした。約500前に。多分赤羽刀と同じような状況。以上≫

「「「「…………」」」」

 

 

 「バカだコイツ」 「何をやっているのだ貴様…!!」

「何と言うか…言葉が出てきません」 「なんでだよ!」

あんまりな理由にしばし沈黙し、しかし次には各々に言い出す4人。

≪いやー、手が滑って…つい。でもでも、後3つはちゃんと持って来たから!格納庫へレッツゴー!≫

 

━━ダグベース格納庫

 こうして管理者の無理矢理なノリで格納庫へと来た4人、そこには新たなマシンの姿が…。

 「これは…旅客機か?」

「消防車に救急車もあります」

「でもよ、オレら乗れないだろ?」

「真の覚悟がーってやつな」

 ≪え?乗れるよ?≫

「は?」

「しかしブレイブ星人は…」

 ≪あーあ、アレの事かぁ。≫

「アレ?」

「アレとは何でしょう?」

 ≪ま、ブレイブ星人が言ったことは半分本当だよ、でもただ乗り回すだけなら今の君達にも出来るから≫

ーそれじゃあ頼んだよと言い残し管理者の気配が消える。

 

 

 

 

 

 そして再び場面は戻り、以上の経緯を経て、焔也が原宿に居たのだった。

 

 

 

 

 その頃の舞衣は可奈美からの電話に紛れ聴こえた町内放送から居場所を特定し、2人が宿泊している旅館に赴いたのだった。

 しかし時既に遅く、部屋は藻抜けの空、徒労に終わる。だが舞衣は諦める事無く、捜索を続けるのだった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 瀬戸内智恵です。

 美炎ちゃんの美濃関学院の先輩である鳳焔也さんと共に私達調査隊は青砥館へと向かいます。

 ってええっ!?いきなり現れたあの人はいったい?

随分、独特な格好だけど……鳳さんとのリベンジマッチ?喧嘩はお姉さん許しません!

 

 次回、風来坊再び。チョコミントと忍者?

次回も"トライダグオン"!って、何かしら?

 




如何でしたか?
舞衣ちゃんのパート短めでしたが今回の場面はチョコミントに下りの為に短く切るしかなかったので申し訳ありません。

後、次回また彼が登場します。
余談ですがダグベースの転送はダグオン達が一度でも行った事がある場所や異星人反応がある場所以外転送出来ない使用です。

ではでは、また次回でお会いしましょう。


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第十三話 風来坊再び。チョコミントと忍者?

 どうも皆様、ダグライダーです。
今回思っていたよりも長くなってしまいました。
何せ原作に沿いながら、オリジナリティを挟むので中々上手い事いきません。まぁそれも楽しみの1つですが……。
 とじともガチャのパジャマのサポート、雪那ちゃん……あれが拗れちゃうのか……と思うくらい可愛さ出してますね。ホント、高津のオバチャン何であそこまで拗らせちゃうん?



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 剣を失くしたから探して来てネ♪by管理者

 

     

私の仕事~!?


 

 明朝、舞衣が僅かな手掛かりを元に旅館へと踏み込んだその頃、可奈美と姫和は対面の建物の路地裏から外に停まる黒塗りの車を観ていた。

 「思った以上に早いな……。どうして此処を特定出来たんだ?」

警戒をしながらも、想定以上の捜索の手の早さに疑問を浮かべる姫和、その答えはすぐ下に屈んで同じ様に覗く可奈美から返ってきた。

「ゴメン…私のせいかも、昨日公衆電話から友達に電話したから……」

 アハハと伏し目がちに笑う可奈美に姫和はジト目を向ける。可奈美は再度ゴメンと謝る。

「……まぁ、どうせそんな事だろうと思った。おかしな奴だとは思っていたが友人を気にするような普通の学生らしい所もあったんだな」

 嘆息する姫和、だが可奈美の新たな一面を知り、それ以上怒る事はしない。

 

 「これからどうしよう?」

「そうだな…、人の多い場所なら紛れてかえって目立ったないかもな」

そうして、そのまま移動する2人であった。

 

 

 

そして原宿━━

 「だからと言って…観光に来たわけじゃないぞっ!」

「だって、人の多いとこなんてココしか知らないもん。私達くらいの制服の子もいっぱい居るし、見つかりにくいじゃない?」

 パーカーにギターケース、一見すると部活帰りの女学生という出立ちのまま原宿に降り立った2人。

 可奈美の言う通り、周囲は多くの若者や学生で溢れている。

 「確かに人は多いが……」

「そんな所で立ってたら、逆に目立つって!」

 「お、おいっ!?」

「普通に楽しそうにしてた方が自然だよ!」

可奈美が姫和の手を取り、駆け出そうとする。

 「…待て、そういう事なら━━」

それに待ったをかける姫和、彼女には何事かの妙案があるようだ。

 

 

 ━━アイスクリーム店前

姫和の提案とは、アイスの買食い。2人はそれぞれに注文した物を口にする。可奈美は無難なモノを、姫和はチョコミントをチョイスする。

 「……っ!」

「姫和ちゃん、チョコミント好きなんだ~」

 「これは小休止だ!……決してチョコミントが食べたかったワケでは!」

「…でも、チョコミントってなんか歯磨き粉みたいじゃない?」

 「馬鹿っ!!」

「ばか!?」

 可奈美の何気無い一言が琴線に触れたのか、大声を挙げる姫和。

 「チョコミント論争でその例えはもう言い尽くされているぞ!禁句と言っていいッ!!」

「そ、そうなの…なんかゴメン……」

あまりの剣幕の姫和に謝る可奈美。

「ふふっ、あははっ!さっきの話だけど、姫和ちゃんも普通の中学生っぽいとこあったんだねー♪」

 「なっ?!」

「よーし、中学生らしく次はパンケーキ!」

 「おいっ!」

年相応にはしゃぐ可奈美とそれに引っ張られる姫和、その顔はどこか楽しそうだ。

 

 「……悪くない…」

それをやや離れた所から尾行しながら、手にチョコミントアイスを持つ龍悟。どうやらチョコミントは彼のお気に召したようだ。

 2人を追って龍悟も人の波に消えていった。

 

 

 

 一方で調査隊の面々と対面を果たした焔也はというと━━

 「んじゃ、改めて。俺は鳳焔也、安桜と同じ美濃関の生徒で高等部1年だ。宜しくな!」

「瀬戸内智恵です。長船女学園の高等部三年生で美炎ちゃんとは幼馴染みよ」

 「へぇー、安桜にこんな美人の知り合いが居たのか、よろしくッス」

「どうゆう意味ですかっ!?」

智恵を見てつい零れた言葉に美炎が噛みつく。

 「まぁまぁ、んで他は……」

「七之里呼吹……」

 「その制服は鎌府だなよろしく」

「ケッ…」

 「………えっと、なんか機嫌悪いな。そこの平城の子は……」

ひゃっ!?……六角清香です……

 「六角……?なぁ君、兄貴が居たりするかい?」

「えっ!?兄さんを知ってるんですか?

 「あ…ああ、ちょろっと縁があってな…(声小せぇ、兄貴とは別の意味でやりずらい子だな…)」

清香に対し適当に誤魔化しながら最後にミルヤに目を向ける。

「綾小路武芸学舎高等部二年、木寅ミルヤです。貴方も青砥館にご用が?」

 「ああ、前に行き損ねてな。不謹慎かもしれないけどよ、御前試合で折角関東に来たんだし、改めてと思ってな」

ミルヤの自己紹介ついでの質問に無難に返す。まさか赤羽刀に混じった剣を荒魂から探す為に調査隊に同行するなど言える筈もない。

「なら先輩だけでさっさと行って来たら良いじゃん」

「ダメよ美炎ちゃん、そんな事言っちゃ」 

「そうですね、目的地が一緒ならば共に行く方が効率的です」

私は皆さんが良いのなら…

「アタシは別に…、荒魂ちゃんも関係なさそーだしどうだっていいぜ」

 「なら決まりだな!」

こうして、一先ず青砥館までの同行をする事になった焔也、とはいえ彼女達は元々、清香の要望で原宿を楽しむつもりであった為、暫くは観光に付き合う事になる。

 呼吹は興味が無いのか一人別行動。

清香は目を輝かせながら、ミルヤを連れ洋服店へ勇んで向かって行った。

 「何処からまわろっかなぁ~!」

「何だかんだ言ってみんな楽しんでるわね」

 「ちぃ姉も行こ!」

「(俺、二度目なんだよなぁ)」

 「アイス♪アイス~♪」

「もう美炎ちゃんたら結局甘いモノに夢中じゃない」

 「え~、だって原宿だよ!一度は来てみたいよね!変かな?ちぃ姉はなに食べる?私はメロンシャーベット」

「そんな事無いわ。じゃあ私はコットンキャンディーで」

 「こっとん…きゃんでぃ?」

「綿菓子のこと」

 「なるほど!解った、行ってくるね♪」

「(綿菓子ってコットンキャンディーってのか)あ、俺バニラな」

 「先輩は自分で買ってくださーい」

残され美炎、智恵、焔也の3人はアイス屋に向かう。

美炎は上機嫌で鼻唄を口ずさみ、智恵の分も含め走り出す。焔也の要望は無視だ。

 「ちぇ、しゃーねえ。自分で買うよ」

「ごめんなさいね鳳くん、美炎ちゃんも悪気は無いから」

 「大丈夫ッス、解ってるんで。瀬戸内先輩は待っててくださいッス」

焔也も美炎を追うように人混みを掻き分けて行く。

「うふふ。何だか私も楽しくなってきちゃった」

智恵も楽しそう微笑み、2人を追う。

「待って美炎ちゃん、やっぱり私も並ぶ……どうしたの?」

 「あ…、ちぃ姉。あれ」

追い付いた智恵はアイス屋の前で固まり動かない美炎に不振に思って声をかける。

彼女が指した方に視線をやれば、可奈美と姫和━━2人の逃亡中の反逆者が楽しそうにアイスを食べていた。

 「可奈美…」

「どうするの美炎ちゃん、みんなに連絡して集まる?」

 「ううん。私はあの時可奈美を信じるって決めたから。それに今ミルヤさん達を集めたら可奈美達を捕まえなきゃいけないし」

「そうね……って、鳳くんは?」

 「先輩?見てないけど…」

可奈美達を見逃す判断をした美炎に同意し、しかし先程美炎を追った焔也の姿が見えず、彼女に問い掛ける智恵

「何処に行ったのかしら?」

 「もう、迷子だなんて「鳳ぃえんやあああ!!此処で会ったが百年目ぇえええ!!」うぇ?!な、何?」

 突如、轟く大声に慌てる美炎と智恵。

声の方向に視線を飛ばせば、そこに居たのは焔也とかつて美濃関に現れた時代錯誤の格好の男、田中撃鉄の姿があった。

 「げぇ、何でテメェがいんだよ!?」

「ふん!武者修行に決まっとるじゃろが、それより良いとこで会ったのう…」

 「俺は会いたくなかったけどな」

「キサマの都合なぞ知らん!あん時のリベンジじゃ!」

 撃鉄は焔也に京都での…そして美濃関で有耶無耶になった勝負の決着を着けようと彼に啖呵を切る。

 

 「あー、あの人…前にウチの学校に来て先輩に喧嘩を売った人だ」

それを遠目で見た美炎が思い出したかのように言う。

「大変!?止めないと」

 「え~、辞めとこうよちぃ姉。先輩ってああ見えて強いし、大丈夫だよ」

「美炎ちゃん!往来の真ん中で喧嘩なんて見逃せません。兎に角、私は止めに行くから」

そう言い残し、騒ぎの中へ進む智恵。

 「今忙がしいってんだろ、空気読めよ!」

「ワシと闘って勝てば去ろう。じゃから闘え!」

 

 「待ちなさい!」

 「な、何じゃ!?」

「こんな所で喧嘩だなんて許しません!きっちり平和的に話し合うべきです!」

 「誰か知らんがオトコの喧嘩ぁ割って入るとは良い…度胸………」

 智恵の制止に文句を言おうと彼女へ顔向けた瞬間、語尾が弱くなっていく撃鉄。

どうしたと言うのか。

 「あの…聴いてます?喧嘩なんて「可憐じゃ…」やめ…はい?」

「ちぃ姉、大丈夫!?」

 「お嬢さん、宜しければお名前を伺ってもよろしいでしょうか!」

「なんだこいつ」

智恵を前に突然礼儀を正した撃鉄、そのまま名前を尋ねる姿に焔也は軽く顔を引き吊る。

 

 「え…?あ、はい。瀬戸内 智恵と言います」

「智恵さん!素敵なお名前ですね。ワシは田中撃鉄と言います。以後お見知りおきください」

 「は、はぁ」

いきなりの撃鉄の行動に呆気にとられる智恵。焔也も美炎も困惑するしかない。

 

 そんな騒ぎもなんのその、既にあの後アイス屋から離れパンケーキ目指した可奈美達は騒ぎに気付く事なく途中、姫和の持つスペクトラム計の反応が表れる。

 「「荒魂!?」」

「近いな…」

 「よし、行こっ!」

可奈美は即座に荒魂を退治しに向かおうとする、しかし姫和は躊躇する。

「放っておこう、今はそんな事やっている場合じゃ無い……」

 「えっ!?だっ、駄目だよ!」

「管轄の刀使達がもう補足しているかもしれない、鉢合わせたら面倒だ…」

 「でも…」

「そもそも、私達だけでは荒魂を退治してもノロの回収は出来ない。散らすだけだ」

 「それでも良いよ!被害が出るよりは……行こう姫和ちゃん」

しかし姫和は動かない。だが次に可奈美が言った言葉が胸に刺さる。

 「捕まるのが嫌だからって荒魂を放置するなら、姫和ちゃんがやった事自体もおかしくなるよっ!」

 

「!?…お前……まさかあの時見えて━━」

 「行こう!姫和ちゃん。荒魂を倒しに」

驚愕する姫和に手を差し出す可奈美、彼女の迷いの無い瞳に姫和も覚悟を決め駆け出す。

 2人を付けていた影はそれを見届けると、己の左腕を掲げ、告げる。

 

 「…トライダグオン…」

 

 「シャドー…リュウ…!」

 後には紫色の疾風が吹く……

2人の刀使の決意に呼応した戦士は荒魂目掛け走り出すのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 六角龍悟……ダグオン…シャドーリュウだ……。

…衛藤、十条の両名を追い荒魂と対峙する2人の助太刀をする…。

 十条に不審がられたが……問題ない、そのまま荒魂を討滅する。

 …そこに柳瀬が現れ……。

次回"刀使ノ指令ダグオン"

 刀使の使命、疑惑の折神家。…次回もトライダグオン。

 




 
 はい、後書きですね。
実は今回あらすじに出た管理者ことアルファ。
あのあらすじ空間は彼らの世界だったのです!
今まであらすじを語っていたシータ氏、仕事を盗られました。
 シータ氏の世界はあれ今のところ平和なんであらすじしてます。
 ではまた次回でお会いしましょう。


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第十四話 刀使の使命、疑惑の折神家。

おはようございます。ダグライダーです。
いやはや天華百剣の復刻コラボイベントやっていたら遅れました。 申し訳ありません。
では十四話です。


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 姫和のチョコミントに対する想いが炸裂。

 出現する荒魂、駆ける2人。追うシャドーリュウ。

 一方、調査隊と合流した焔也は再び撃鉄と衝突。

 智恵が止めに入ると撃鉄は態度を一変させた。

 


 

 エデン監獄西棟

 「フム、ジェゲンガセイジンガイナイ?」

「うむ、吾輩が何度も確めた。彼奴はこの監獄内の何処にも居ない」

 地球から遠く離れた木星の衛星付近を漂うエデンの西棟にて交わされる会話。

一人は道化師のような異形の存在、エデン大広間の会議にも居た宇宙人だ。

 「トイウコトハ、ヤツハドクダンデチキュウニオリタノカ……」

「そういう事になる」

会話に応じるもう一人はカイゼル髭を蓄えた単眼に下半身が帆船の異形、西棟を執り纏める道化師の補佐役である宇宙人、ガレプテン星人である。

「して、如何にする?」

 「ステオケ、ヤツジシンカラノレンラクデジョリョクヲモトメテコナイカギリ、スキニサセロ」

「良いのか?他の連中に報告せんでも?」

 「ワレワレハモクテキハオナジデモ、ドウシデハアルマイ。オシエルギリナドアルマイ」

「カカカ、此は吾輩とした事が早まったやもしれんな!」

 「ナラバ、コノハナシハワレラダケノウチニトドメオケ」

「相判った、では吾輩は引続き作業に戻るとしよう」

道化師の言葉に同意し、何処へと消えるガレプテン星人。道化師はそれを見送り、薄く笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スペクトラム計の反応を頼りに、荒魂へと向かう可奈美と姫和。

 現場は既に混乱して市民が逃げ惑っている。

 「特別祭祀機動隊です!荒魂から離れて下さいッ!」

可奈美が周囲に身分を明かし、避難を促す。

「可奈美!」

姫和の叫び声に荒魂を見やる。━━ズシンと重量を感じさせる音、大きな顎に頭部から角のように繋がる翼、背骨に直接生える3足の脚、尾は槍の如く鋭い。

 荒魂は可奈美達に低く唸りを上げる。

 「思ったより大きい」

「ここで食い止めるぞ」

 「私が行くから、姫和ちゃんは後方から支援をお願い!」

「了解」

 ある程度回復したとは言え、三段階迅移によって消耗した姫和を気遣い自ら前に出る可奈美。

 千鳥を構え、荒魂に斬り掛かる。しかし荒魂はそれを翼を拡げ飛行する事で回避する。

 「外した!?ごめん姫和ちゃん!」

「ああ」

 そのまま姫和の方向に飛ぶ荒魂、姫和も応え小烏丸を振るい斬り裂く。

「しまった浅かったか!」

だが、与えたダメージは浅く、荒魂は未だ健在。

 

 「シャドー手裏剣!」

 

その時、何処から途もなく手裏剣が舞い込み荒魂に突き刺さる。更に━━

 

 「…シャドークナイ!」

 

 続けて鎖が繋がった刃が荒魂を絡めとり引摺り落とす。

「何だ!?」

 「…?!今なら!」

突然の事に驚く姫和、対して可奈美は即座に切り替え、荒魂にトドメを差す。

 御刀によって斬られ、消滅する荒魂。

 後にはノロが散乱するだけとなった。

 「やったね、姫和ちゃん!姫和ちゃん?」

「今のは一体………」

 「姫和ちゃん!姫和ちゃんってば!」

「…ああ、済まない。だがどうする?ノロを回収出来ない以上、この場に留まる訳には──」 

 

「ノロの回収は私が連絡をします」

新たに割って入った声、それは可奈美を捜索していた舞衣であった。

 「舞衣ちゃん!?どうしてここに?」

「可奈美達を追っていたら荒魂の反応があってここに寄ったの……お蔭でやっと会えた」

 舞衣もまた刀使としての使命を個人の感情より先に優先したのだ。

「美濃関の追っ手か」

 「違うよ姫和ちゃん!舞衣ちゃんは私の親友で…」

「親友?だったら何故、御刀を向けている?」

 姫和は舞衣を追っ手と判断し、可奈美がそれを否定するも舞衣が御刀を納めず、刃を向けた事から警戒を解かない姫和。

「聞いて、可奈美ちゃん!羽島学長が約束してくれたの、私と一緒に帰ってくれば可奈美ちゃんの罪を軽くしてくれるって」

 舞衣は可奈美に語り掛ける。

「でも条件があるの……。十条さん、貴女も一緒に折神家へ出頭してもらいます!」

 自身が江麻より取り付けた条件により、御刀を構え姫和に警告する舞衣。

「残念だが、それには協力出来ない」

 しかし、それを承服せず姫和もまた御刀を構える。

「協力しなくていいです。私が力ずくでねじ伏せますから」

 「待って!二人供、御刀を納めて」

可奈美が必死に止めるも一触即発の空気は治まらない。

「親友だから…可奈美ちゃんは私が助けます!!」

 言葉と同時に舞衣は姫和に向け駆け、姫和もまた迎え撃つ為動く。

一合、互いに刃が交わり弾く。

 「ダメぇぇぇッ!!」

再び斬り結ぼうと振るった瞬間可奈美が二人の前に割って入り、更にはまた何処から途もなく手裏剣が地面に刺さる。

「…またか!?」

 姫和はまたしても介入した手裏剣の主を探す。

「可奈美ちゃん!どうして…ッ!?」

舞衣は何故可奈美が姫和の肩を持つのか理解出来ず叫び、可奈美はそんな舞衣に語る。

 「私、見たの!──あの時…御当主様が姫和ちゃんの技を受け止めた時……何もなかった空間から二本の御刀を取り出して──その時、後ろによくないモノが…」

可奈美は言う御前試合の最中、紫の背後から善くない物を見たのだと。

「御当主…様?よくないモノって……」

「やはり、お前には見えていたのか……」

舞衣は困惑し、姫和は可奈美がそれを見えていた事に驚く。

 「一瞬だったし見間違いかとも思ったけど、でも、やっぱりあれは───荒魂だった

 構わず語る可奈美が最後に口にしたのはまさかの事実。━━折神紫が荒魂であると言い放ったのだ。

 

「荒…魂?な…何を言っているの?」

 困惑がより大きなものとなる舞衣。

「だってそんな事…あの方は──折神家の当主様で…大荒魂討伐の大英雄で………「違う!」

 

 舞衣の言葉を遮るように姫和は叫ぶ。

「ヤツは──折神紫の姿をした大荒魂だ!!」

 続けて姫和は紫が紫ではなく嘗て討伐された筈の大荒魂であると断言する。

「……じゃあ、折神家が管轄する警察庁の刀剣類管理局も、刀使養成学校の伍箇伝も……?」

 

「そうだ。その全てを荒魂支配している」

 

 遂に明かされた姫和の反逆の理由、それは折神紫の姿を借りた大荒魂を討ち果たす為だったのだ。

 「…成る程、御前試合の視線の意味はそういう事か…」

そこへ新たな闖入者が現れる。

 「誰!?」

「何者だ!!?」

 謎の人物の声に驚き、誰何を問う舞衣と姫和。可奈美も視線を向ける。

 「……此処は敢えて姿を晒すべきか…」

そう言いながら現れた闖入者の正体は紫色の装甲を纏った人物──シャドーリュウ──であった。

「何者だ貴様?!」

 あまりに想定外の人物の登場に酷く動揺する姫和、不審者を見たとかそんな簡単な言葉では言い表せないのだろう程の狼狽えぶりだ。

 

「あなたは?」

 舞衣もまた動揺していたが、姫和がより激しく狼狽えていた為、いくらか冷静に訊ねられた。

 「………ダグオン、シャドーリュウ…」

リュウはそんな二人の心中を知ってか知らずか平然と答える。

 「ダグ…オン?」

可奈美は二人程驚きは無いのか、リュウの名乗ったダグオンと言う言葉に首を傾げるだけだ。

 「………」

リュウはそれきり喋らず、ただ手から手裏剣を取り出しただけだ。

「それは!?やはりあの時荒魂を攻撃したのは貴様か!」

 「……済ませるべき事があれば早くしろ。もたもたしていると追っ手が来るぞ…」

 警戒する姫和を尻目に淡々と口にするリュウ、その言葉で状況を思い出したのか可奈美が舞衣へ言う。

 「と、とにかく今は私は姫和ちゃんを一人に出来ない。だから、お願い舞衣ちゃん!」

 改めて、自身の意思を伝える可奈美。

「──本気なんだね?」

舞衣は可奈美の真剣な顔を見て悟る。そして二人は抱き合う。

「分かってるよ…だって親友だもの…」

 「舞衣ちゃん…!」

曇天から雨が降りだす。パトカーのサイレンの音が近付いて来た。

「行って、後の事は私に任せて」

 「う、うん」

「それからこれ……荷物は押収されちゃって返してもらえなかったんだ」

 「わぁ!舞衣ちゃんのクッキー!」

舞衣は事後処理を買い出て、可奈美に自身の手作りクッキーを渡す。

 その間も姫和はリュウに対し矢鱈と警戒し、当のリュウは特に構えもしない。そんな姫和に舞衣は近付く。

「十条さん」

 姫和はリュウを警戒しつつも声をかけた舞衣へと意識を切り替える。

「可奈美ちゃんを宜しくお願いします」

 

「…私は自分のなすべき事を果たすだけだ」

 頭を下げた舞衣に対し素っ気なく返す姫和、そのままリュウを警戒しながら先へと進む。

 可奈美も姫和の後を追おうとして一度立ち止まり舞衣へ振り返る、舞衣が微笑み手を振ると可奈美は安心したのか嬉しそうに顔を綻ばせる。

 「あの、ありがとうございました」

そして途中リュウに対し礼を言い、改めて姫和の後を追う。

 

 

「可奈美ちゃん……。──貴方には聴きたい事があります。出来れば大人しく…って、え?」

 舞衣が二人を見えなくなるまで見送った後、リュウに事情を訪ねようと顔を向けるも既にそこにリュウは居なかった。

 

 

 

 

 

 「…うぅ…ぐす、美味しいよ…舞衣ちゃん…」

現場から離れ、クッキーを泣きながら食べる可奈美。

姫和の視線に包みを差し出す。

 「姫和ちゃんもたべる?」

「いい。それはお前が食べろ」

 泣きべそを描きながら言う可奈美に姫和は何とも言い難い表情で断る。

 「あれ…、これなんだろ?」

 その時、可奈美はクッキーの包みに入った折り畳まれていたメモの存在に気付く。

 メモに書かれていた事とは?

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 十条姫和だ。私達が荒魂と戦い、ダグオンとか言う謎の不振人物と邂逅していた頃、別の場所でも荒魂が暴れていた。

 何だヤツは!?生身で荒魂に向かっていくぞ!!?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 もう1つの戦い!再会のダグオン。

 次回も……ってなんだこれは!?




 はい、第十四話でした。
ひよよんが遭遇したのがリュウであったのが幸運なのか不運なのか……。
 そろそろ新しい宇宙人を地球に降ろさなくてはいけないし、胎動編はまだまだ序盤だし、色々頭を捻っています。
 息抜きに、別の作品プロットも書いちゃうし、これはヤバいですね!
 すいません。別にペコさんの真似したつもりは無いんです。すいません


 


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第十五話 もう1つの戦い!再会のダグオン。

 こんばんはダグライダーです。
お待たせしました、刀使ノ指令ダグオンの十五話目です。
 いやぁ、十六話以降のプロット作りながらなので時間が懸かりました。後スカルマンのクロス物書いてました申し訳ありません。
 しかも、いつもより長くなってしまった。
後、アニバーサリーアイプロも始まったので更に遅れるのなんの……誠に申し訳ありません。



 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 荒魂と戦う二人の前にシャドーリュウが現れ助太刀をする。

 舞衣もまた、荒魂の反応を感知し二人と遭遇、御刀を構えるも可奈美の…そして姫和の理由を知り彼女達を見逃す。

 そう、嘗ての英雄折神紫の正体は討たれた筈の大荒魂であったのだ。

 

 その一方で調査隊は━━

 


 

 ━━静岡県某所

 

 ダグベース内の1区画、開発室と研究室を兼ねる部屋の一角にて、手を忙しなく動かし何らかの装置を作っている翼沙。

 「ふぅ、こんな物でしょうか?やはり、未知の技術はワクワクしますね…」

<終わったか>

 「ええ、設備と資材を貸して頂いてありがとうございます。綾小路の作業場は現在、出禁になってしまったので……」

<そうか、役に立ったのであれば何よりだ>

 「場所の融通から操作方法、材質の特徴の講義など、何から何まで本当にありがとうございます」

 翼沙の言う通り、ブレイブ星人は彼に地球外の技術で創られたダグベースの装置の扱いを手解きし、こうして翼沙は目的の物を完成させたのだった。

 

 「これを後は例の逃亡者に何とか着ける事が出来れば……」

手のひらサイズの小さな装置を眺めながら呟く翼沙。と、そこに最近ダグベースの居住スペースに住み始めた申一郎が現れる。

 

「ヨォ、何かカチャカチャやってたみたいじゃん?」

 「あ、どうも…騒がしかったですか?」

「うんにゃ、偶々見かけただけだ。ンデ、何だよソレ?」

 「これは発信器です」

「…………お前、犯罪だけはカンベンしろよ」

 「え?あ!いえ!?これはそんな目的では無く、例の2人の居場所を把握出来ればもしかしたら折神家の疑惑が解るかもしれなくて別に彼女達のプライベートを侵そうとかではなくそもそも盗聴機能等は搭載されていないのでやましい事など何もなく──」

「わ、悪かった!悪かったからそこまでそこまでにしてくれ!」

 申一郎の疑惑の目を受け、途端に捲し立てる様に喋りはじめる翼沙、流石に不味いと感じたのか申一郎も焦って翼沙を止める。

 

 「兎も角、万が一異星人が出現した場合、相手の能力如何によっては全員で対処する必要があります。その為、六角くんにこの発信器をどうにかして彼女達に付着させて居場所を常に此方で周知しておけば」

「折神家のノロを使った実験の真偽が解るってか?」

 「はい。なのでこの後六角くんに合流しようかと」

「はーん。ま、ガンバんな…オレはガッコに課題出さねーと」

 「あははは……」

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京原宿竹下通り

 

 可奈美達が離れた後、焔也、美炎、智恵は撃鉄を加え行動する事になっていた。

 

 「いやあ、刀使と言うんは大変ですなぁ!赤トンボ何ぞ探さにゃならんとは」

 そうワハハと豪快に笑いながら、智恵に言う撃鉄。

「え、ええ…」

 智恵は困ったように苦笑しながら、相槌をうつ。

「ねえ、先輩?」

 「何だ安桜」

「何であの人私達についてくるの?」

 「俺だって知らねーよ、あの野郎さっきまで散々リベンジだの何だの言ってやがったのに」

「て言うか、あの人って元々先輩が目当てなんだから先輩が離れればちぃ姉も解放されるんじゃ…」

 「いや、寂しい事言うなって目的地一緒なんだからそこまで行こうぜ」

と、いったやり取りを智恵達の後ろで繰り広げている。

 

 「おや?何やら人が増えていますが…何かあったのですか?安桜美炎さん、説明を」

知らない内に怖い人が居るよぉ

 そこへ買い物から戻ったのかミルヤと清香が合流する。

「ええっ!?私ぃ?!……えと、あの人は田中撃鉄って言って、鳳先輩のインネン?の相手らしくて…それでなんか知らないけどちぃ姉が喧嘩になる前に止めようとしたら……あの人がちぃ姉を気にいったみたいで……」

 ミルヤから説明を求められ、拙いながらも話始める美炎、そこに後ろから声がかかる。

「なんだそりゃ、アタシが居ない内に少しはおかしな事なってんじゃん!」

 ある程度、ふらついて飽きたのだろう呼吹が戻って来ていた。

「七之里さん!」

 ミルヤは暫し考え込み、やがて口を開く。

 「つまり、話を総括すると、あちらの田中撃鉄さんが鳳焔也さんと縁があり、暴力沙汰になる前に瀬戸内智恵さんが彼に見初められたと」

「う~ん…たぶん」

 「なんか悪ぃな、元は俺の蒔いた種だってのに…」

 「それは瀬戸内智恵さんに言うべきでしょう」

「面白いから暫くほっとこうぜ」

 謝る焔也にミルヤは智恵に同情の視線を向けながら言う。呼吹は完全に他人事な為、楽しそうに嗤う。

 

 「んん?何時のまにやら人が増えとるじゃないか!」

「みんな…戻って来ていたのね」

 後ろの会話に気付いたのか振り向く撃鉄と智恵、撃鉄は気持ち悪いくらい滅茶苦茶笑顔である、対象に智恵は疲れたのかどこか窶れた様な顔に見える。

 唐突に撃鉄が何か思い付いたのか調査隊に宣言した。

 「おう!智恵さんの連れの嬢ちゃん達、ワシも赤トンボ探しとやら手伝うぞ!」

 「赤羽刀な」

 「それじゃ!」

「ええっ!?」

ついてくるの……

「マジかよ…」

 「お気持ちは有難いのですが、これは我々調査隊の任務です。一般の方をお連れする訳には…」

 「遠慮はいらん!探し物は人手が多いに越したことはないからのう、ワシに任せておけい!」

 「しかし…」

「あの田中さん…「撃鉄とお呼び下さい」…撃鉄さん、流石にそれは私達としても万が一の場合がありますから」

 撃鉄の提案にミルヤは渋い顔をし、何とか断ろうとするも、撃鉄はそれを意に介さず乗り気でいる。ミルヤは困り果て、智恵が代わりに説得を引き継ぐ。

 「むむ、智恵さんがそう仰るならば…非常に!とても非常に!名残り惜しいですが、引き下がりましょう!」

 「「「「ええぇ…」」」」

智恵の言葉に即座に引き下がった撃鉄を見て、焔也、美炎、清香、呼吹が呆れ返る。ミルヤなど先程の智恵の様な疲れ具合だ。

 「しからば!男、撃鉄、智恵さん御一行の目的地である青砥館まではご一緒させて頂きましょう!」

 今度はそう宣言し前を歩きはじめる。

「場所をご存知なんですか?」

 「知りません!なんとかなるでしょう!ガハハハ」

「大丈夫なのかよ、あのオッサン」

「ダメかも」

「あわわ…」

 「はぁ…」

 「本当悪ぃ」

一行は改めて青砥館へと道を進みはじめる。

 

 「そうです、良い機会なので皆さんにお尋ねします。」

歩き始めてすぐ、ミルヤが皆に話題を口にする。

「なぁにミルヤさん?」

 「皆さんはダグオンと名乗る集団を目撃した、或いは聞いたことは?」

「ダグオン?」

「んだよそりゃ?」

「聞いたこと無いです…」

「ダグオン……残念だけど、知らないわ。どうして?」

 「以前、私が指揮する部隊が窮地に陥った時助けて頂いたのです。以来各地でそれらしき目撃情報はありますが、どれも現場は既にもぬけの殻のようで、私の他に遭遇した方がいらっしゃればと思いましたが……居ないようですね」

 

 「(……あん時の京都で会った刀使が彼女だったのかよ!?)」

 ミルヤの話に今の今まで彼女が自分達が助けた刀使の部隊の隊長だとは気付いていなかった焔也は大いに驚いていた。

「助けた……って、荒魂を倒したって事?!」

「その人達って、刀使とかでは無いんですよね?」

 「ええ、男性のようでしたし、徒手空拳で戦っていました」

「ハッ!素手で荒魂ちゃんを倒したって事かよ、ありえねだろ」

 「厳密には素手ではなく何らかの強化アーマーを纏っていたのですが…」

「それでも凄い事だわ。荒魂を刀使以外の存在が倒してしまうなんて」

 ミルヤの目撃したダグオンの話題に驚きに湧く調査隊の面々、焔也は只々、冷や汗を掻いていた。

 「ほほう!そのダグなんちゃらとか言う連中、中々見どころあるのう!貴様とは違ってのう」

撃鉄が彼女達の会話に反応し焔也に視線を向け、言い放つ。

 「うっせ!普通、刀使以外の人間は荒魂相手には無力なんだよ!(俺がそのダグオンだとか言えねー!!)」

 正体を明かす事が出来ないため、無難な返しで応える焔也──その時、スペクトラムファインダーに警告音が鳴る。

「近くに荒魂が出た!?」

「いけない!警報が発令されてから管轄の刀使が来るまで時間があるわ」

 「私達で対処する他ありません」

「アタシらが一番乗りかよ!最高じゃねーか」

「そんな!荒魂と戦うなんて

 

呼吹が嬉々として駆け出したのを皮切りに、荒魂の居場所へと急ぐ調査隊。清香だけは消極的だったが、皆に置いていかれまいと、追従する。

 

 「よぉし!ワシも行くとするか!!」

 「ばっかっ!?お前、荒魂相手に刀使でも無い奴がでしゃばるなよ!?」

撃鉄が彼女達の後を追おうとするのを止める焔也、しかし撃鉄はその手を振り払い

 「だから大人しく逃げろっちゅうんかい!?ワシはそんな漢らしく無いことは御免被る!──オオオッ!ワシも行きます待って下さい智恵さぁあああああん!!」

 そう言い残し走って行った。

 

 「んなこと、テメぇに言われなくても、俺だって御免だね。……まずは人気が無い場所を探さねえと…」

 逃げ惑う人の波に逆らいながら、人の目が無い場所を探す焔也。程なく路地裏の影に身を隠しながら左腕のコマンダーを起動する。

 

 「トライダグオンッ!!」

 

 「ファイヤァアアッエン」

 

 路地の闇が一瞬瞬きファイヤーエンが現れる。彼はそのまま跳躍し、屋根を伝って荒魂に向かった調査隊を追いかける。

 既に戦闘は始まっており、調査隊のメンバーは各々の戦いに掛かりきりだ。

 清香など震えて身を竦めている。

 「ハハッ!愛してるぜ荒魂ちゃん!」

呼吹は一人突出し二振りの短刀の御刀"北谷菜切"と"二王清綱"で果敢に斬り込んで行く。

 「数が…多いっ!」

美炎は智恵と共に清香をなるべくカバー出来る位置取りで立ち回る。

 「七之里呼吹!周辺の避難が完全でない内に突出するな!」

 ミルヤは叫び指示を飛ばすも、当の呼吹は聞く耳を持たない。

 「私達だけじゃ持たないわ…」

智恵も清香を視線の端に入れながら防戦に徹し荒魂を斬る。

 「いやぁあ!!来ないでぇ!?」

清香は泣き叫びながら我武者羅に御刀を振るっているが、荒魂は間合いの外からじりじりにじり拠って来る。

 調査隊の戦場に到着したエンはどうにかバレないように援護しようと辺りを見回して、そこで撃鉄の姿が見当たらない事に気付く。

 「野郎、まさかもう荒魂にやられたのか?!」

まさかの状況を想像し、バイザーの下で顔を青ざめさせていると、何やら五月蝿いくらいの声が聴こえて来た。

 

 「おおおおぉお!!漢は度胸おおおおぉお!!」

 

 そんな叫びと共にどこで手に入れたのか鉄骨を抱えながら走って来る撃鉄、そのまま清香の近くに群がっていた荒魂をフルスイングで吹き飛ばす。

 

 「しゃあっ!どんなもんじゃい!!」

 

 

 「うっそだろ…小型とは言え荒魂を吹き飛ばしやがった!?」

 上から見ていたエンは撃鉄の大胆かつ無謀な行動に開いた口が塞がらない思いで驚く。

 当の撃鉄はフルスイングで腕が痺れたのか、鉄骨を荒魂の方に投げ棄てた。

 これには流石の調査隊の面々も茫然としてしまう。

 「何をしてるんですか!?撃鉄さん!ここは私達に任せてあなたは逃げて!」

いち早く正気を取り戻した智恵が撃鉄に逃げる事を促す。しかし撃鉄は首を横に振り

 「泣いてるオナゴを見捨て逃げるなんざ、ワシの流儀じゃありゃしません!智恵さん、どうかワシも力にならせて下さい!」

 「ですけど……」

「仕方ありません。瀬戸内智恵、貴女は田中撃鉄氏と六角清香の護衛に、下策ではありますが、私は七之里呼吹の援護に行きます。安桜美炎!此処は暫く一人で持ちこたえなさい!」

 ミルヤが孤立していく呼吹をフォローする為、前に出る。

「待って、美炎ちゃん一人でなんて!?」

「行ってちぃ姉!私は大丈夫だから!」

惑う智恵に美炎は大丈夫だと言い、清香達の方に向かうよう促す。

 それらのやり取りを全て見ていたエンは隠れての援護など考えるのを辞めた。

 

 「デリャァア!」

 

 叫びと共に屋根から飛び降りエルボークローを荒魂に食らわせるエン

 

 「な、何?!」

「新手?!」

「もう嫌ぁ!!」

 「何じゃい?」

「あん?」

 

 「あれは……!?」

 突然起きた大きな破裂音のような音にその場を注視する面々、 唯一ミルヤだけがその姿を見て思い至る。

 京都で自分の隊がピンチに陥った際現れた謎の怪人。

あの時と変わらぬ姿で現れた赤いシルエット───ダグオンと名乗った存在がこの危機的状況に再び推参したのだった。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 流離いの漢、田中撃鉄じゃ!

 ワシらの前に現れた謎の赤いヤツ。何と次々荒魂を倒していくではないか?!

 ううんむ、ワシも負けていられん!

この鉄下駄キックをお見舞いしちゃる!

 はい?何ですかな智恵さん?危ないから駄目?

なんの頑丈さには自信があります任せて下さい!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 猛ろファイヤーエン!暗躍する者達。

 

 次回も"トライダグオン"じゃい!

 




 十五話でした。
実は執筆中、急に脚が痛みまして病院に行ったんですよ。幸い、大したことではなかったのですが、皆様も寒さで体調を崩す事が無いよう気を付けましょう。

 では次回で


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第十六話 猛ろファイヤーエン!暗躍する者達

どうも皆様、ダグライダーです。
相変わらずの遅筆で申し訳ありません。
プロットから本文に至るまで展開を一部変えたり直したりを繰り返してはなので遅れる遅れる…。
 そろそろダグビークル活躍させたいですね。



 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 原宿にて再び再会した撃鉄と共に青砥館を目指す中、出現した荒魂。

 管轄の刀使に代わり、荒魂を倒す為に向かう調査隊。

戦闘に突入するも、互いに噛み合わない彼女達。

 そんな中、清香のピンチに撃鉄が現れ荒魂を吹き飛ばす。彼の奮闘を見たファイヤーエンは心の意思に従うままに調査隊の前に助太刀する。こうして、異なる場所で刀使とダグオンが再び邂逅したのだった。

 


 

 「え?何?!誰っ!!?」

荒魂との戦闘中、数で劣る調査隊は苦難の只中に置かれていた。智恵は縮こまる清香と未だ戦闘に参加しようとする撃鉄を守りに、ミルヤは孤立しかけている呼吹の援護に回った為、美炎は一人で荒魂の群れを対処せねばならない。

 ピンチに陥った彼女達、しかし突如現れた謎の人物、それも見たこともない装備で全身を包んでいる存在に美炎はただ驚き困惑するばかり、だが此処は戦場、僅かな隙も命取りとなる。

 

 「美炎ちゃんっ!?」

 

 一瞬の事に気を取られた美炎に近づく荒魂、智恵が声をあげるも間に合わ無い。美炎も迎え撃とうとするも、彼女の欠点である集中力の短さ故、反応が遅れる。

 駄目だやられる!──そう思った刹那、赤い影が動いた。

 

 「オォオリャア!」

 その雄叫びと共に炎を纏った拳"ファイヤーナックル"を荒魂に浴びせ、美炎に飛び付く荒魂の方へ吹き飛ばす。襲いかかった荒魂を巻き込んで転がる燃え盛る荒魂。炎に焼かれ断末魔のような悲鳴をあげノロへと還っていった。

 「嘘…」

 

 「荒魂を倒した…!?」

 

 「すごい……

 

 「コイツ…マジか」

 

 「やはり、彼はあの時我々を助けた存在…」

美炎は消え行く荒魂を倒したエンを信じられないようなモノを見るような目で見つめ、智恵は刀使以外が本当に荒魂を倒した事に驚き、清香は興奮気味に呟き、呼吹は己の獲物を盗った存在が理解の範疇の外にある事で呆然とする──但し、自身の近くの荒魂はきっちり倒している。

 ミルヤはエンがあの時京都で自分達を助けた存在だと確信する。

 

 「よぉ、大丈夫かおま……君?」

 

 エンが美炎に歩み寄りながら無事を訊ねる。途中、素で訊ねてしまいかねたのを誤魔化して初対面の如く振る舞う。

 「……ふぁい…」

 美炎も普段使わない頭を巡らせて搾り出した返事はなんとも気の抜けるものだった。

 「戦いはまだ終わって無い、立てるか?」

 「だ、大丈夫です!戦えます!」

差し出されたエンの手を取り、慌て立ち上がる美炎、エンの顔を伺おうと見るも青いバイザーに阻まれその目を見る事は出来ない。

 ただ、彼女はエンの手を取った時にどこか既視感を覚えたのであった。

 「確かに大丈夫そうだな、なら行くぞ!」

「は、はいっ?!」

 そう言うやいなや、エンは荒魂に向かって炎を飛ばし、或いは殴り、蹴り上げ、残った荒魂を一掃していく。

 「おい!アタシの荒魂ちゃんだぞ!」

 矢継ぎ早に荒魂を倒していくエンを見て、呼吹が文句を上げながら最初の勢いを取り戻し自身の周囲の荒魂を斬り刻んでいく。

 「どうやらまた助けられたようですね」

ミルヤが眼鏡に指を充て、クイッと位置を直す。

 

 「強い……(あれが以前、舞草の報告にあった沖縄に現れた謎の集団、その一人、本当に荒魂を歯牙にも掛けていない…一体何者なの)」

 エンの獅子奮迅振りを眺めながら密かに思う智恵。

そうしている合間に、次々荒魂を殲滅していくエン、清香は既に怯えも消え、へたり込んだまま可愛らしく口を開けてその戦いを見ていた。

 「…あんなにいた荒魂を倒しちゃった……」

 

 「おぉ、何処のドイツか知らんが中々やりおるのぅ!まぁ、ワシだって得物がありゃあんくらい出来るがのう!」

 撃鉄は先程から下駄で荒魂相手に奮闘していたが、智恵が危険を見咎め下がらせたのであった。

 エンが現れてから数分としない内に荒魂を倒しきった調査隊。美炎、清香は安心し御刀を鞘に収めたが智恵とミルヤは未だ抜き身のまま、前者は警戒心を込めて、後者は敵意こそ無いが相手の素性を問い質す為、エンを見る。

 そんな中、呼吹だけが空気を読まずエンに突っ掛かる。

 「おい、テメぇ何してくれやがる!あれは全部アタシのもんだってのによぉ!」

 エンによって荒魂が倒された事が不服なのか因縁をつけてくる呼吹。

 「そいつは悪かったな、でもピンチの娘も居たみたいだし、何より街中で暴れる荒魂は放って置けなかったでな。余計なお世話かも知れなかっただろうが介入させてもらったぜ」

 呼吹の剣幕に内心でこの娘大丈夫なのかと思いながら飄々と返すエン。

 「止めなさい七之里呼吹。また会いましたねダグオン、京都以来でしょうか…今回はお一人の様ですが」

 駄々を捏ねる呼吹を止め、再会の挨拶と共にエンに近寄るミルヤ、御刀を下げてこそいるが何時でも構えられる状態でいる。

 「あ、ああ。京都の時の隊長さんか、まぁ、俺達も四六時中一緒なわけじゃないからな」

和気藹々とまではいかず、然りとて過度に剣呑な空気では無いが僅かな緊張感が支配する中で豪快な笑いが響く。

 「ヌァハハハハッ!お主、中々に見所が有るではないか!だが!ワシとて負けん!まぁ、今回は助かったがな!ハッハッハッハ!」

 呼吹以上に空気を読まない男、田中撃鉄。彼の行動によって智恵とミルヤの気が弛む。

 「お…おぅ、じゃあ俺はこれで」

バシバシと肩を馴れ馴れしく叩く撃鉄の手を振りほどき、近くの建物の屋根に跳躍するエン。

 「後、ダグオンってのはチーム名みたいなもんだ!俺はファイヤーエン。また近い内に会うかもな」

 そう言い残し、走り去るエンをつい眺めて見送ってしまった調査隊、撃鉄は何やら頻りに感心していた。

 

 

 

 

 「見たかいわたし?再びヤツが現れた」

「ええ、見ていたわワタシ、刀使とかいう連中を助けていたようだけど」

 避難指示によって人通りの少なくなった竹下通りの建物の影から覗く視線、ジェゲンガ星人の擬態した男女である。男の方の顔は最初に現れたモノとは別人だ。

 女の方も男に答えながらベリベリと何かを剥がす音を立て顔を押さえる。

 女が手を顔から離せばそれは男と全く瓜二つのモノへと変化していた。

 彼等の足下には赤黒い液体が幾つか見てとれる、奥には数人横たわって動かない。

 赤黒いそれは動かない者達の血溜まり、物言わぬ身となったソレ等に興味を抱かず2人は会話を続ける。

 「刀使と呼ばれる未成熟な雌猿が戦っていたもの…あれがこの星に蔓延る脅威と言うわけだ」

「アラダマだったかしら?やはりこの星の連中は愚か者ばかり、自身が生み出したモノに脅かされるなんて」

 「フフフ、私達や我々と一緒にしてはいけないよ。猿共も必死なのさ」

「そうだったわねワタシ」

 「しかし、もう少し詳細な情報が欲しいね、ダグオンがどこまで我々に対抗出来るのか……ふふ、エデンに情報の一部をリークしようか」

「良いの?ウルサイ奴が来るけれど」

 「勿論、それが望みさ。あのデカイだけで威張り散らすデクノボウは目障りだからね。そろそろご退場願おう」

「素敵!そうね、そうすれば私達も労せず奴等の仔細が知れるものね」

 

   「「フフフフフ……」」

 

 笑い声が木霊する。路地裏には既に2人の影も周りに転がる死体も消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉 刀剣類管理局本部

 

 「──報告は以上です」

あれから──可奈美達を見送り、後始末を駆け付けた管轄の刀使に任せた舞衣は、姫和から知らされた折神紫が大荒魂である事などを伏せ、追跡の顛末を報告していた。

 「とんだ時間の無駄でしたわね」

報告を聞く者達の一人、親衛隊第二席である此花寿々花が然したる成果の無い報告に落胆する。

 

「居場所を特定出来ただけでもお手柄よ。あなたは休みなさい」

 江麻は学長として生徒である舞衣を労う。

  「事件発生から30時間、現状、この件はまだ内部で留め報道は控えています」

 親衛隊第一席、獅童真希がこの場に居る美濃関、平城両学長に説明するように言う。

 「学生達も調査しましたが、他に共謀者はなく十条、衛藤両名のみの犯行と思われます」

 

「もたもたするな親衛隊!!」

そこに割り込む大きな怒声。

 「何を生ぬるい事を言っている!」

「…鎌府学長!」

 声の主は鎌府学長にして特祭隊本部長、高津雪那。

整端な顔を怒りで歪め、吊り上がった瞳で舞衣を見やる。

 「報告にあった追撃に当たった刀使は貴様か…何故直ぐに応援を要請しなかった!

 

 「それは、ノロの回収が先だと判断しました…」

 「ノロなど放置しろ!」

 刺など生易しいと思う様な敵意の籠った声が自分に向けられ、僅かに怯む舞衣。

 「あろう事か協力して荒魂を鎮圧など…!」

半ば理不尽とも言えなくもない言葉と共に舞衣に近付いてくる雪那。

 「貴様まさか、逃亡を幇助したのではあるまいな!?」

 「いえ、そんな事は……」

 

 「貴様らもだ親衛隊!!御前試合での恥ずべき失態…もう忘れたか!さっさと出撃して反逆者を討て!

 舞衣の言い分などに興味は無いのか、そのまま矛先を親衛隊の2人に向ける雪那、しかしそれを受け止める2人は冷静だ。

 「私達も出来るならばそうしたいですわ」

 「我々親衛隊は紫様の警護命令が出ている為、動けません」

 

 「チッ!まあ、いい…後は我々鎌府が処理する。両名の消失点周辺の防犯カメラを解析させろ」

 親衛隊の態度に苛立ちを隠さずに爪を噛みながら指示を出す。江麻、いろはの両学長に視線をやり弾劾するように言い放ち、発令所を後にする。

 「紫様に御刀を向けるなど…、逆賊を育てた罪は重いぞ両学長!」

 

「……雪那ちゃん、昔は先輩先輩言うて可愛かったのに──いつからタメ口になったんやろうねぇ…」

 いろははそんな雪那を少し淋しそうに見送るのだった。

 

 

 「紫様!何故私にご命令頂けないのです!」

発令所を後にして直ぐ紫の執務室に向かった雪那、紫に向ける表情は恍惚と歓喜の入り交じった顔だ。

 「親衛隊が動けないのであれば、我が鎌府にお任せ下さい」

 紫はそんな雪那に向き直り淡々と言い放つ。

 「お前を呼んだ覚えは無いが」

 「私の判断で参りました!」

 「必要無い、余計な事をせず己の任に戻れ」

冷徹な物言いに狼狽えるも、紫の側付をしていた夜見を睨み拳を握り混みながら吐き捨てる。

 「夜見…紫様のお側にいながら……役立たずが!!」

「申し訳ありません」

 一般的な道徳心のある人が見れば眉を潜めたくなるような雪那の物言いも、夜見は顔色どころか眉一つ動かさず無表情で佇む。

 

 

 

 「ふっふ~ん♪…!」

本部の廊下を鼻唄混じりに歩く少女、親衛隊第四席燕結芽。彼女は視線の先に憂いを帯び下を向きながら歩く舞衣に気付く。その顔はまるでオモチャを見つけた悪戯好きの子供の様だ。

 「おねーさん」

「…!親衛隊の…」

 「聞いたよぉ、反逆者に逃げられちゃったんだて?──それって弱いからだよね」

 笑みから一転、射殺すような視線と声を出す結芽、御刀"にっかり青江"を舞衣に向ける。

 「…何を…?!」

いきなり向けられた御刀と殺意ともとれる剣気に驚愕する舞衣。

 一触即発の空気が支配しようかという最中、舞衣の後ろから江麻が現れる

「そこまでよ燕さん」

 「…羽島学長!」

 「ちぇ、つまーんなーい「つまーんなーいでは無い!」……お兄ちゃん!?」

 江麻の後ろから更に戒将が姿を見せ、結芽を叱る。

 「申し訳ありません、羽島学長。それと柳瀬舞衣さん、妹が無礼を働いたようですまない」

 江麻に頭を下げ、舞衣に謝罪する戒将、隣の結芽は不貞腐れている。

 「失礼します。結芽、後で説教だ」

 「えー?!」

結芽を連れ去っていく戒将、舞衣は終始驚いたままだったが江麻に肩を叩かれ、持ち直すと江麻を見て決心したのか彼女に告げる。

 「あ、あの羽島学長、ありがとうございます。…それと、事の重大さは理解しています………でも私は可奈美ちゃんを信じていて、それで…──」

 必死に捲し立てる舞衣に江麻は微笑みを絶さず、舞衣に耳打ちをする。その内容に舞衣は思わず江麻を凝視するのだった。

 

 続く

 


 

 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 木寅ミルヤです。

 我々調査隊がダグオンの助力により窮地を切り抜けた後、鳳焔也さんと合流し青砥館に再び向かいます。

 青砥館にて赤羽刀、南无薬師景光の手掛かりを得て向かう我々。

 一方、反逆者の2人はメモの指示に従いとある人物と遭遇します。

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 交錯する思惑、近付く新たな脅威。

 では次回も"トライダグオン"…この言葉には一体どんな意味が?

 




 十六話でした。
 年末が近付くと仕事が忙しくなるから中々、思う様に進みませんね。
 最近寝不足で執筆途中に寝落ちしてしまいますし、もっと休みが欲しいですね切実に
 では次回でお会いしましょう。


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第十七話 交錯する思惑、近付く新たな脅威。

 ダグライダーです。
 十七話目です。
今回、エデン監獄からネームド宇宙人が出ます。
まぁ、ジェゲンガ星人の挑発染みたリークに踊らされる噛ませになってしまう運命の宇宙人ですが……。
 後、今回矢鱈場面転換してしまいましたが……もう少しセンスが欲しいなぁ。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 調査隊のピンチを颯爽と駆け付け救うファイヤーエン

 そんな彼と彼女達を見つめるジェゲンガ星人メイルとフィメル。

 ジェゲンガ星人はダグオンの詳細な情報を 求め、ある企みを案じる。

 刀剣類管理局では高津雪那学長が動き出す。

美濃関学長、羽島江麻は舞衣にある事を打ち明ける。ダグオン、反逆者2人、調査隊、折神家、エデン、様々な勢力が入り交じり暗躍するこの世界の行く末は果たして──

 


 

 ファイヤーエンが去った後、調査隊は小休止を挟んだのち再び青砥館に向かう。

 「さて、皆さん休息は十分ですね。任務に戻りますよ」

ミルヤがメンバーを見渡し宣言する。

 「だァあああ!クソッ!?何なんだよあのヤローは?!アタシの荒魂ちゃんだぞっ!」

 呼吹だけはエンによって荒魂が倒された事に文句を叫んでいる。

 「七之里呼吹さん、そこまでにしておきなさい。我々が危機にあり、助けられたのは事実なのですから」

 「…チッ」

「うんうん、何者か知らんがかなりの漢気を感じる奴じゃ、また会いたいのう」

 「…撃鉄さん、まだついてこられるんですか?」

撃鉄の反応を見て、智恵が訊ねる。

「ん?なっはっはっはっ!ご心配召されるな智恵さん!ワシは貴女が望めばこの世の果てまでお供致しますぞ!」

 「……あ、は…はは、ありがとう…ございます…」

 撃鉄の返答に愛想笑いで返す智恵、内心もうどうとでもなれと自棄っぱちな気がしないでもない。

 

 「おーい!無事かー?!」

そこへ焔也がやってくる、彼はあくまで先程まで共に戦っていた事を悟られないよう、戦闘終了後に調査隊の様子を見に必死に駆け付けたという体裁で走ってくる。

 「あ、先ぱーい!大丈夫だったー!?」

美炎が気付き応える。エンに既視感を感じる彼女もまさか自分の危機を助けた相手が焔也とは思わない。

 こうして調査隊プラスアルファwith撃鉄一行は再び青砥館へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 燕戒将は悩んでいた。

己の後ろを着いてくる結芽を見ては思い悩む。彼女が先程仕出かした事に──では無い、翼沙から聞かされた疑惑についてだ。

 

───焔也が剣を捜索する為に原宿に向かった後、戒将は翼沙に折神家のノロを使った実験について詳しく問い詰めた。

 結果、その情報の出所が長船である事、そして折神朱音とリチャード・フリードマンが関わっている事がその情報の真偽を決定付ける確証が高く、しかし立場上馬鹿正直に尋ねる訳にもいかず…彼は悩み、そして焦っていた。

 折神家が──折神紫がノロを使って何らかの実験をしているのならば親衛隊も何かしら知っている筈、だがそれを聞けばたちまち拘束され自身も反乱分子とされる可能性がある。

 それでは妹の病をダグオンの技術で完治させる事が出来なくなってしまう。それだけは避けたい。

 故に彼は思い悩む。そしてそのまま管理局発令室の扉の前に足を止める。

 「お兄ちゃん?」

説教すると言いながら何も言わず、一向に扉の前で動かなくなった兄を見て、結芽は声を恐る恐る掛ける。

 最近の兄は悩む事が多くなった。自分の事だけではない、他にも色々あったのか話してはくれないがよく眉間に皺を寄せている。

 「入んないの?なら遊んで来ていい?」

 

 「っ、すまない、入るとも…そして説教があるから遊ぶなどもっての他だ」

 気を取り直した戒将に、藪蛇だった結芽は思わず嫌な顔をする。

 かくして、部屋へと踏みいれば何やら妙な話が展開されていた。

 

 「ダグオン…一体何者なのでしょうね、例の者達と関係があるのかしら?」

 「少なくとも、ボク達の知らない技術を持っている事は確かだろう」

 部屋の片隅では寿々花と真希が逃亡中の2人を追っていた舞衣の報告の中に出たシャドーリュウ、延いてはここ最近目撃情報のあるダグオンと名乗る者達について話をしていた。

 荒魂との戦闘中、刀使のピンチに颯爽と現れ救った集団、かと思えば何やら各地で荒魂相手とは違う何らかの戦闘行為を行っている情報もある。

 謎だらけの存在に寿々花は自身の毛先を指で弄りながら疑問を口にする。

真希もまた特祭隊とは違う技術を持つ彼等に僅かな警戒を抱く。

 「おねーさん達何の話してるの?」

 「結芽」

 「戒将さん」

そこへ結芽が割って入り、真希が驚き、寿々花は後ろの戒将の存在に気付き軽い会釈をする。

 「ねぇ何の話?」

 「最近、各地で目撃情報のある集団の事ですわ」

 「何でも、その内の一人が例の反逆者と共に荒魂を倒したらしい、別の場所でももう一人が荒魂の対処に当たっていた刀使を助けたそうだ」

 それを聞いた戒将は思わず頭を抱えたくなった。

何をやっているんだと…。

 「どうなさいました?」

 「いや、何でもない…些細な事だ気にしなくて結構」

寿々花の配慮に感謝しつつも、誤魔化す戒将。ただ、寿々花と真希に向ける視線はどこか厳しい。

 戒将の苦悩は未だ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、舞衣と別れ、クッキーの包装袋に入ったメモの場所に向かった可奈美と姫和。彼女達はそこでとある女性に会う。

 女性の名は"恩田 累"。現役時代は美濃関の刀使であり、現在は伍箇伝に関わる企業に勤めている。

 そんな彼女が現れ、警戒を顕にした姫和だったが、累から江麻より自分達の事を聞かされていると言う言葉に可奈美がにべもなく信用し、彼女の車に揺られ累の住まうマンションの一室へと至った現在。

 「いらっしゃい!ささっ、少し散らかってるけど上がって上がって」

 そういって部屋に上がるように促す累。

「お邪魔しまーす」

「………お邪魔します

 陽気な可奈美と対称的に一応の礼儀をするも未だ警戒をする姫和、累はお構いなしに部屋の奥に進んでいく。

 「一人暮らしだし、私の他に誰も居ないから安心して」

「……罠じゃないのか?」

「羽島学長の知り合いみたいだし、悪い人じゃないと思うけど…」

 

 「何者なんだって顔してるね~。ま、仕方ないか」

「………」

 「私は美濃関学院出身の元刀使よ、今はもう引退して御刀も返納しちゃったけどね」

 キッチンにコンビニ弁当と缶ビールの入った袋を置きながら自身の経歴を2人に明かす累。

 可奈美は美濃関のOGという事で流派を訊ね、姫和は刀剣類管理局の追手かと更に警戒を顕にする。

 そんな2人のやり取りを、手にした缶ビールを煽りながらコントの様だと評する累に毒気を抜かれる。

 「二人とも疲れてるでしょ?今日はゆっくり休んで。私も朝早いから寝ちゃうね~」

累は自身の寝室へと向かい、最後に可奈美達に自身の居ない間、家のものを好きに使うように言い残すと扉を閉めた。

 その後、2人は累の用意した食事に手をつけ、入浴する。その際、可奈美に言われた折神紫に勝てないという言葉に姫和は浴室にて思案する。そして可奈美が自身すら見えなかった紫の動きを見抜いていたことに驚くのであった。

 

 可奈美は夢を見る、深い霧に包まれた夢を──

その夢には自分以外の住人が居る。自身と同じ千鳥を持つ少女、歳は自分よりも少し上の彼女とはいつも夢の中で手合わせしている。

 可奈美は今も夢の中で彼女と闘い、語り合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━エデン監獄南棟

 「おのれぇええ!

エデンの監獄の一つ、南に位置するその場所は牢獄であった面影など既に残っておらず、闘技場と化した其所は歓声が響く。そのコロシアムの一室に歓声とは別の怒号が挙がる。

 「お、落ち着いて下さいギガンタース様!?」

怒り暴れ狂う巨体に声を掛ける者達、既に何人かは暴れる巨体に潰されたのか夥しい血が流れている。

 「落ちつけだどぉおおお!いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも!もう限界だ!これ以上待つなど出切る筈がなかろうがっ!!」

 南棟を管理する巨体の宇宙人、惑星蹂躙巨人ヘカント星人ギガンタースは吼える。

「ですが」

 「うるさい!目の前に極上の獲物がいるのに耐える事など、何故出来ようか!」

「は、はぁ…(知るかっ!こっちはお前を宥める為に何人犠牲になったと思ってやがる。唯々でかくて力が強い事くらいが取り柄のゴミがっ!!)」

 内心ギガンタースに悪態を吐きながら、相槌をうつ部下を務める宇宙人。と、そこに部屋に常備された端末に情報が届く。

 「何だっ!?」

「少々お待ちを………!?これは?!」

 部下が端末に届いた情報に目を通す、その内容はジェゲンガ星人が地球に降り、ダグオンと戦闘をしたという情報。

 それを聞いたギガンタースは又しても怒り狂う。

 「おのれおのれおのれおのれおのれぇええ!あの卑怯者めぇええ!抜け駆けしよってからにぃいい!」

「落ちつ─ブベッ?!」

 ギガンタースの巨大な拳に潰される部下、真新し血溜まりが出来る。

 「ふん!最早待ってなどいられん!こうなれば好きにやらせて貰う。誰か輸送船を用意しろ!」

 新たな部下に言い放ち、部屋を後にするギガンタース。

 今、新たに地球に迫る脅威、エデンの監獄を治める強大な犯罪者がその魔の手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━原宿 青砥館

 調査隊一行は無事青砥館に到着した。

 青砥館は主に御刀の装飾や鞘の拵えを伍箇伝各学校の刀使から依頼を受け、オーダーメイドで鍔や鞘の拵え装飾を製作する店である。

 清香曰く、白鞘が普段着ならば青砥館の仕事で拵えたモノはお洒落した服装に通じるものらしい。

 美炎はよく解っていなようだが。

「いらっしゃいだ」

 彼女達を出迎えたのは、青砥館店主"青砥陽司"。甚平に羽織、豊かな白髪混じりの頭部にはバンダナらしき布を巻き顎髭を蓄えた、ナイスミドルな御仁である。

「俺の店にお客さんかな?しかも可愛らしい刀使が5人も、みんな制服がバラバラみたいだが…こりゃちょっとした花畑だな。なぁ、お嬢様方?」 

 「か、可愛い…」

 「お嬢様…」

 「そんな、神懸かった別嬪さんだなんて」

 「は?言ってねーよ」

 「申し訳ありません、騒がしい者達ばかりで…」

 反応は上から順に美炎、清香、智恵、呼吹、ミルヤである。

「良いって事よ、それより刀身以外の事なら相談のるぜ?サービスしとくからよ!」

 「ちょいとオトン、お客さんに色目使わないでよ!」

そう言って、割って入るのは鎌府の制服着た頭に陽司と同じ様に布を巻いた少女、彼女は"青砥陽菜"、陽司の娘であり、御前試合に乗じ里帰りとして青砥館の手伝いをしているのである。

 「そうだ!今日と明日お店手伝ってくれない?布団も出すし、御刀の調子も見てあげるサービスするからさ」

 「いえ、我々には任務が…」

 こうして調査隊は陽菜によって青砥館に招き入れられるのだった。

 「俺らは?」

 「ワシの中では智恵さんは神以上の別嬪ですぞ!」

暫く焔也と撃鉄は蚊帳の外であった。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 お初に御目に掛かる、我は超高次元管理生命体シータである。

 おいアルファよ前回の予告では赤羽刀の情報を手に入れるなどと書いた原稿をあの世界の者に渡したそうではないか!?

 明らかに詐欺であろう!何?我がさっさと考えないのが悪いだと?貴様ふざけるなよ!毎回毎回、我を引っ張り出してはあらすじをやらせ、挙げ句、ビークルの素材集めまでさせて更には、例の剣星人モデルのアレを紛失するという愚行を犯しおってからに……。

 ええい、次回"刀使ノ指令ダグオン"

 新たな刺客。ようこそ青砥館。

 そも予告とはある程度決まっ──ブチッ

 

 

 

 

 

 

 




 後書きですね
 余談ですが、アルファこと今作中の管理者が管理する世界は刀使世界以外に四国を神樹結界で守ってる世界や急に歌うよ~な世界があります。まあ分かりやすく言えば原作がメディアミックス関連のアニメ主流世界ですね。
 その中でもゆゆゆ世界にはレジェンドラの……まぁ、そこはとじみこゆゆゆコラボのシナリオ書く機会があればその内に
 では次回、お会いしましょう。


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第十八話 新たな刺客。ようこそ青砥館。

 大分手こずりましたダグライダーです。
いやはや、プロット箇条書きして初期原稿であーでもないこーでも無いと悩んで、結果、一旦沙耶香襲撃を次回に伸ばしました。
 そうしないと薫とエレンが出せなかったので……。
その為に、気分転換というか頭の整理の為、スカルマンの続きを書いてしまう始末。申し訳ございません。
 では十八話です。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 ア:次回予告空間は一種のメタ時空だったんだよ!

デ、イ、ゼ:な、ナンダッテー!!?

 シ:……… 

 


 

 ━━━エデン地表カタパルトゲート

 「あーあ、いっちゃったね」

「見過ごしてしまって宜しかったので?」

 カタパルトに程近い、宇宙船の格納ドックに二つのヒトガタがゲートの先を見据えている。

 少年とも少女ともつかない妖精のような宇宙人と、それに付き従うドレスの女性。

 妖精はギガンタースが独断で地球に向かう様子を楽しんで観ていたのだ。そしてギガンタースがエデンを発ち妖精は途端につまらなそうに呟き、ドレスの女が疑問を口に出す。

 「だっておもしろそうだったんだもん!」

「困った御方ですこと…でも、そんな所が愛らしいのですけど」

 「んー、はやくぼくもちきゅうにいってみたいなー!」

「それはまた、大分先の事になりますでしょうね」

 「うー、うー、うー!」

妖精の発言に対したおやかに返すドレスの女、妖精はそんな彼女の反応がお気に召さないのか駄々を捏ねる。

 「だぐおん……はやくあそびたいな。ぎがんたーすなんかにやられないでね」

 一通りごねた後、即座に切り替え地球の方向へ視線を向ける妖精、口にした言葉はとても犯罪を犯したとは思えない程に無邪気であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉 刀剣類管理局本部

 夜が明け、鎌府を除く伍箇伝の生徒達がそれぞれの学校行きのバスに乗り込む。

 聴取により、反逆者とされた二名以外の反乱分子は居ないと判断され拘束を解放されたのだ。

 朝日が照す空の下、眠気を押し殺しながらも次々とバスに乗る生徒、そんな美濃関行きのバスに並ぶ生徒を見つめる舞衣。

 彼女は先日の報告の後に自身の学校の学長である羽島江麻から聞かされた『二人なら大丈夫』と言う言葉の真意を図りかねていた。

 「みんな帰るんだ……」

自分は可奈美達を探す為に残る選択をしたが、他の皆は帰るという状況にどこか淋しさを覚える。

「柳瀬さん」

 そんな舞衣に声を掛ける生徒、その制服は反逆者の一人、十条姫和と同じ平城のもの。

 「あっ、岩倉さん」

「帰る前に挨拶を…と思って」

 見覚えのある顔、十条姫和と同じく平城の御前試合の代表であった岩倉早苗である。

彼女もまた舞衣と同じく、姫和の反逆者扱いにより親衛隊ひいては折神家から詳細な事情聴取を受けていたのだ。

「──御前試合…あんな事になるなんてビックリしたよね。柳瀬さんは大丈夫だった?」

 「はい……岩倉さんこそ」

「私も親衛隊の人に取調べを受けたの、でも私、十条さんの事全然知らなくて……」

 淋しそうな顔で姫和の事を吐露する早苗、クラスにて委員長を勤める彼女は姫和に何度か声を掛けていたのだ。そんな早苗に何処か通じるモノを感じたのか舞衣も早苗の言葉に静かに応える。

「それじゃ…元気でね」

 「はい岩倉さんも」

数度言葉を交わした後、早苗は平城行きのバスへと去って行った。

 

 早苗を見送る舞衣、ふと視線を本部側にやると、そこには雪那が一人の女生徒を伴って歩いてくる。

 報告の際の対応から雪那に苦手意識のある舞衣は離れていると判っていても身構えてしまう。

 次いで雪那の後ろに付く少女を見る、鎌府の制服を纏い幼さの残る顔に短めの限りなく白に近い色素の薄い銀髪、本来ならば相応に感情豊かであろうその顔は人形のように冷たい。

 「(あの子…一回戦で可奈美ちゃんと当たった鎌府女学院の)」

 御前試合で可奈美と当たった相手であった為か舞衣は直ぐに彼女が誰か思い至る。

 舞衣の視線に気付いたのか少女がちらりと舞衣の方に視線を寄越す。

 

「沙耶香」

 雪那が少女の名を呼ぶと少女が雪那に顔を向ける。

「あなたは東京に向かい潜伏中の逆賊どもを討ち取るのよ」

 「………はい」

少女──糸見沙耶香は雪那の命令に淡々と従う。

 雪那は沙耶香の顔に手を添え言う。

「あなたこそ我が鎌府が誇る最高の刀使。親衛隊のような試作品とは違う」

 

 雪那は満足そうにそのまま沙耶香を引き連れ歩いていった。

 

 

 「Hey!!!Lady 柳瀬!」

沙耶香の消えた方向に舞衣が気を取られていると、後ろから新たな声がかかる。

 振り向けば、二人の刀使。一人は声をかけたであろう金髪…恐らくはハーフであろう長身の少女、もう一人は逆に小さく、小学生くらいの身長のツインテールの気だるい顔の少女、金髪の少女に抱かれ顔にめんどくさいと書いてある。

 「あなた達は長船の…」

 「古波蔵エレンデース!」

 「益子薫だ…」

返事も片やテンション高く、片やダウナー気味。舞衣は…いや、舞衣でなくともこう抱くだろう、凸凹コンビと。

 「私に何か?」

舞衣は何故このタイミングで彼女達が自分に声をと疑問を顔に出す。

 「オーウ、ワタシの両親とアナタのパパは仕事のパートナーなのデス!」

 「私の父とですか……?」

思わぬ接点に驚いてしまう舞衣だが、古波蔵という名に聞き覚えがあったのか納得する。

 「お友達のコトは大変でショウ?頑張ってクダサイ応援してマース」

 「おい、エレンそろそろ行くぞ」

舞衣に対しどこまでもフレンドリーに接するエレンに対し、薫は面倒そうに言う。

 「お二人はこれから休暇ですか?」

 「Yes!!一足速いサマーバケーションデス」

 「絶好の海日和だからな」

薫がやたら嬉しそうなのは気のせいでは無いのだろう、舞衣が返答に困っていると、薫の頭とエレンの胸の間から何かが舞衣の胸目掛け飛び出して来た。

 「ねねー!」

それはウサギ?いやネズミ?はたまた新種の何か?兎も角正体不明の小動物であった。小動物は奇妙な鳴き声を挙げ舞衣の胸に一直線に飛び付く──かに思われた。

 「ねー!?ねねっ!」

飛び付く寸前薫の手により尻尾を捕まれ落下する小動物、舞衣はそんな不思議生物を見て驚く。

 「コイツはねね、俺のペットだ」

薫が不思議小動物の正体を告げる、告げられたねねは不満そうだ。

 「あの…でもそれ荒魂じゃ?」

 「安心しろ無害だ」

 「Yes!それにねねはお友達デース」

薫とエレンの言葉にねねを見つめる舞衣、薫曰くねねは代々益子の家で守護獣として扱われているとの事、但しやたらと胸の大きい女性が好きで飛び付く癖があるとか、そんな他愛の無い話を幾ばかし、長船コンビは去っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 ━━青砥館

 昨日、陽菜により青砥館で一夜を明かした調査隊。

ミルヤは陽司に礼を述べる。

 「昨日は泊めていただき、ありがとうございました青砥陽司さん」

「良いって事よ。それよりそんな堅苦しい言い方は無しだぜ、敬語なんか使わないで俺の事は陽司さんかヨージでいいんだぞ」

 「ヨー……いえ、無理です。やはり青砥陽司さんと。馴れ合う事は役目──目的ではありませんので」

「真面目だねぇ、あそこの兄ちゃん達なんか気軽に呼んでくれたぜ?」

 陽司が言う兄ちゃん達とは勿論、焔也と撃鉄である。あの後にちゃんと二人も青砥館に宿泊したのだ。

 その事はさて置いて、ミルヤは陽司に問う。

 「我々が探している赤羽刀…南无薬師景光についてお訊きします。」

 南无薬師瑠璃光如来備前長船住景光、 戦国時代の猛将武田信玄が富士山浅間神社に納めたとされ、江戸の時期に行方知れずとなったとされる御刀である。

 調査隊牽いてはミルヤの目的はその南无薬師景光の写しを回収する事にある。

 陽司との会話により写しの存在については確認がとれたものの、陽司自身お目にかかれた事は無いらしい。

 結果、ミルヤは残念そうに話を切上げた。

 

 

 「ってのがついさっきの話だ」

店の奥にてミルヤとの会話の内容を話す陽司、相手は智恵である。二人の会話は場所と雰囲気からより機密性が高いのか皆からは離れている。

 「そうですか、南无薬師景光…。教えて頂きありがとうございます陽司さん」

 智恵はミルヤが何故特定の御刀を探しているのか疑問に思う。

 陽司もこれといった心当たりなど当然無いのか知らんと答える。

 それよりもと話を替える陽司。

 「智恵ちゃんも来るなら来ると連絡の1つも寄越してくれりゃいいのに」

 その発言は智恵とは初対面では無いと言う言葉と取れる。

 「紗南のお嬢ちゃんでもファインマンの爺さんでも構わんが連絡をくれてれば、お・も・て・な・し──準備くらいしたのによ」

 更には長船の学長、そして謎の人物の名が挙がる。

 「いえ、そもそも来るつもりはなかったので」

 「バッサリだな」

バッサリと言い切る智恵に陽司は落胆を口にする。

 そもそも調査隊が原宿──青砥館に来たのは清香とミルヤの希望であった為、更には焔也と遭遇、撃鉄との邂逅もあってか渾沌としてしまったのだ。

 「本当に偶然なんです…()()()()()の活動が漏れる可能性を考えたら接触は避けたかったので」

 智恵の言う活動とやらに陽司も肯定する、その上で智恵に長船学長からの伝言を伝え、もう一晩泊まるように薦めるのであった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 衛藤可奈美です!

何だか美炎ちゃん達大変みたい。

 私たちの方は累さんが姫和ちゃんに紹介したい人がいるらしいし、そしたら新しい追っ手の人が?!

 でも何だかあの子の剣おかしい……。

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 心なき刃、忍び寄る者。

 鳳先輩の方も何だか慌ただしくなってるみたいだしどうなっちゃうんだろう?

 

 




 前書きで今話の事は言うだけ言ったので、後書きは他愛の無い話をば。
 私、モバゲーでシンデレラガールズをやってます。
現在、スパロボコラボイベントなので中々楽しいです。
 いやまさか唯ちゃんに専用のゲシュペンストが用意されるとは……。
 それにスフィアにも触れたと言うことはその内また、コラボしてバルゴラとかブラスタとかジェニオンとか出るのがワンチャンあるのではと期待してたりします。
 ではまた、次回……今度はなるべく早く上げたいものです。


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第十九話 心なき刃、忍び寄る者。

 こんばんは、ダグライダーです。
いやぁ年末が近づくと中々忙しいですね。
 今回はちょっと最初が詰まりましたが、何とか形になりました。
 可奈美ちゃんのお兄ちゃんが今回言及されてますが……これは大分ヒントになっちゃったかなぁ
 
 それでは十九話です。


  "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 青砥館に到着した調査隊一行、ミルヤは店主青砥陽司にある御刀の所在を尋ねる。

 ミルヤの目的に不信を懐く智恵。

 刀剣類管理局では、雪那が可奈美達に新たな刺客を差し向ける。

 それと並んで太陽系では新たな脅威が刻一刻と地球に近づいているのだった。

 


 

 調査隊が青砥館にて再び世話となっている頃、可奈美と姫和が居るであろう累の部屋を見上げる龍悟、ダグコマンダーを通信状態にしながら街路樹に背を預けている。

 

 『という訳で、六角くんにはどうにかして彼女達に発信器を取り付けて欲しいんです』

 「……理解した、手段は此方に一任して貰う…。しかし、俺は今此処を離れられん……そちらから此方に来て貰おう……」

 『そうですね、判りました。準備をした後そちらに向かいます』

 通信の相手は翼沙、内容は可奈美と姫和に発信器を取り付けると言う要件。

 

 そんな話題の渦中たる者の1人、姫和は小烏丸を手に瞑目し気力を高めていた。

 「…………よし、全快だ」

既に三段階迅移によって疲弊した心身は快調した、後は再び折神紫となった大荒魂を伐つだけだ──心の中でそう改め決意する姫和。ふと隣のリビングからやけに物音がするので覗くと、可奈美が頭に三角巾を巻いて作業をしている。

 「何をしているんだ?」

 「あ、姫和ちゃん!お世話になったから、何かお礼出来ないかなと思って!」

 「…そうだな」

可奈美の案に乗り、累の部屋の炊事、掃除といった家事を始める二人、因みに可奈美は掃除をすると余計に散らかすので早々に姫和が指示を出すようになり、可奈美がそれに従って動くという形に落ち着いた。

 

 「すごーい!姫和ちゃん料理上手なんだねー」

 「以前よく、母親に作っていた、最近は全くだが…」

 「お母さん?」

 「長患いの末、去年亡くなったがな……」

 「そっか……、姫和ちゃんのお母さんも」

可奈美の『も』と言う言葉に反応する姫和、可奈美はぽつぽつと語り出す。

 「私のお母さんもね、去年辺りに亡くなったんだ」

可奈美が語る可奈美の母の話を黙って聴く姫和、それを視線で確認し続ける可奈美。

 母が刀使であった事、その母が最初の剣の師匠である事、父と兄に見守られながら母とよく稽古をした事、母が死んでから周りは哀しんだが自分は何故だか哀しくなかった事を滔々と語る。

 その雰囲気に可奈美自身耐えられなくなったのか母の話から父と兄の話に変わる。

 「お父さんはお母さんが亡くなった後色々頑張ってくれて、だから家の事は主にお兄ちゃんがやるようになってね、私も手伝いしたんだけど……何故か止めるように言われて……後、お兄ちゃんってば料理するけどキノコだけはダメなんだよね、キノコを見るだけで顔色が変わっちゃって……他にもお兄ちゃんってば最近、バイクの免許証を取るんだって張り切っちゃって、免許取ったら乗せてあげるよ。なんて言うんだもん──」

 「か…可奈美、手が止まっているぞ」

 話の内容が段々とおかしな方に舵を切っているのが判ったのか姫和は可奈美の口を止め食器を洗う事を促す。

 何せ途中から兄の話が矢鱈と多いのだ父はほんの僅かしか語られないのにも関わらず兄は母と同じくらい語る。それはもうブラコンを疑ってしまうくらい語るのだ。

 兎も角、夕飯の支度を済ませ、累の帰りを待つ二人は一時の穏やかな時間を過ごすのだった。

 

 夜、累が帰宅し三人で食卓を囲む

「美味しい~!仕事から帰って美味しいご飯が待ってるって良いもんなんだねぇ……ありがとう」

 累の素直な言葉に照れる姫和とはにかむ可奈美

 「エヘヘ、姫和ちゃんが作ってくれました!」

 「掃除は可奈美が……あまり役に立ちませんでしたが」

「2人とも家にお嫁に来ない?」

 和気藹々とした会話を続ける中、累が箸を綺麗になった茶碗の上に置き、二人に告げる。

「実は2人に会って欲しい人がいるの」

 累からの突然の提案に顔を見合せ、一瞬の思考の後頷く二人。

 累はある部屋に二人を案内する、そこには起動済みのパソコンがチャットの画面を映している。

 チャットルームにある名前は【グラディ】簡単なデフォルメの眼鏡顔のキャラクターのアイコンが表示されている。

 カーソルが点滅していることから累のハンドネームなのだろう。

 もう1つやけに可愛らしいマスコットのようなキャラクターからチャットが表示されている。

 [ようこそ。グラディのご友人達。我々は君達を歓迎する。]

 【FineMan】と表記されたアイコンのフキダシは二人に対して向けられたモノと分かる。

 累に好きに答えるように促され、姫和がチャットに応対する。FineManに対し誰何を問えば、味方であると返し続けて姫和が持つ手紙について言及する。

 最後にFineManは問う。"立ち向かう覚悟はあるか?"と姫和がYESを選択しFineManが合流場所を教えようかという時、突如ベランダの窓ガラスが割れる。

 割れた窓から現れたのは、鎌府の制服に着た刀使──糸見沙耶香。  

 

 

 時同じくして木蔭から累の部屋を見上げていた龍悟、そして合流した翼沙が沙耶香の襲撃を目撃していた。

 「…あれは……?!」

 「まさか!?」

 

 もう一組、その襲撃を目撃する者達。

「どうやら愉快な事になりそうだねわたし」

「ええ、楽しみねワタシ」

 彼等は不敵に顔を歪める。

 

 

 

 

 カキンッと金属同士がぶつかる音、沙耶香の剣戟を姫和が受け止め可奈美に千鳥を持ってくるよう促す。

可奈美は累を退避させつつ千鳥の元に向かう。

 「貴様は鎌府の…!」

姫和の驚愕に沙耶香は無感情な瞳を返すばかり、そのまま姫和を外に押し出す。

 「速いっ…この迅移、二段階以上か!」

落下しながらも構えを取る姫和に追い縋るように連続して二段階迅移を使用し追撃する沙耶香。

 「(馬鹿な…二段階の迅移がこんなに続くはず……何故持続出来る!?)」

 沙耶香の技量に驚愕しつつも、回復した自身の身を瞬間的に三段階迅移で相手を上回り写シを斬る姫和。

互いに八幡力で強化された身体能力で地上に着地する姫和と沙耶香、沙耶香は連続迅移の使用の影響か既に写シを張る事が出来ない。流石に終わりかと一瞬気を抜く姫和に沙耶香はあろうことか生身で斬り掛かる。

 無念無想──写シを剥がされ尚戦う沙耶香は正に物言わぬ人形が命令された事を唯々従うのみ、姫和に迫る凶刃に取れる手段それは──

 「もう、……斬るしか…ない」

意思なき殺意に対し殺人の覚悟を迫られる姫和、再び2つの刃が交わる──その瞬間

 

 「ダメェエエエッ!」

静寂な広間に二人を止める声が響く。

 声の主は二人を追って降り立った可奈美、彼女はそのまま自身の御刀で2つの刃の間に割って入る。

弾かれる三人、姫和は可奈美に顔を向ける。

 「退いて姫和ちゃん。私が相手する」

 「お前にこいつを斬る覚悟があるのか!?」 

 

 「斬らないっ!」

 「!!」

姫和の殺める覚悟があるかと言う問いに可奈美の宣言は

単純明快、斬らないというモノ。

 「(この子の剣、前はこんな虚ろじゃなかった…。剣から何も伝わってこない)」

 可奈美は以前交えた沙耶香の剣と今の沙耶香の剣を比べ意思の無い剣気に勝機を見出だす。

 「そんな魂の篭って無い剣じゃ──何も……斬れないっ!」

 "柳生新陰流無刀取り"──御刀を収め、斬り込む沙耶香に対し素手で相手の握り手の甘くなった部分に自身の手を入れ刀を弾く、御刀 妙法村正を弾かれ動きを止める沙耶香、徐々に瞳に生気が戻る。

 正気に戻った彼女が最初に目にしたのは、差し出された手 。

 「覚えてる?一回戦で戦った衛藤可奈美」

差し出された手と掛けられた声の主に視線を向けると──笑顔の可奈美が嬉しそうに語る。

 「あの試合すっごく楽しかった!…ずっとドキドキしっぱなしだったんだよ!!また私と、試合してくれない?」

 先程の剣呑さなど意にも反さず沙耶香に対して嬉々として差し伸べる可奈美。彼女の行動に姫和は飽きれ、累は全力で走ったせいか息を切らし、蔭から変身して見守っていたヨクとリュウは安堵の息を洩らす。

────無論、そんな結末を望まぬ者がいることも知らずに。

 

 「つまらない幕引きだ。これでは意味がない」

 「そうね。わたしが暴れましょうか、ワタシ?」

 「いや、丁度ゴミの処分をしようと思っていた所だ。奴からくすねた薬を使おう」

 ジェゲンガ星人は自身の擬態の際に皮を剥がした人間の死体達を混ぜ合わせ薬瓶を取り出し、1滴雫を垂らす。死体だったモノが鳴動を始める。

 

 

 

 沙耶香が止まった事により、一段落ついた。そう可奈美、姫和、累は思っていた、しかしそこに新たに乱入する者が一人──。

 「何ッ?!」

 「姫和ちゃん!」

 「……!??」

「何事!?」

 四者四様に反応する彼女達、砂煙が晴れるとそこに立っていたのは肉の塊──そう表現する他に無い怪物であった。背中に腹、上半身至る所から腕が生え足が垂れ下がり首がおかしな場所にくっついている、それは正に人を粘土の様に捏ね回して作りましたと言わんばかりの醜悪な見た目だ。

 

 「荒魂!?」

 「いや、私のスペクトラム計に反応は無い。それにこれはどう見ても……」

 二人は再び戦闘態勢を取るも、あまりに醜悪なソレに僅かに怯む。

 『ア……アアアァ、……テェ!』

何事かを呟き、迫る肉人形。二人は気を取り直し迎え撃たんとするその時。

 「ブリザードハリケーン!」

 二人の後方から間を縫うように小さな嵐が通り抜け、肉人形を凍らせる。

 そこへ更に紫の旋風が舞う。

 「大回転剣風斬!!」

旋風が氷像となった肉人形を砕き細切れにする。

 「なっ?!」

 「今の…」

「えぇ何なのぉ」

 「……」

 

 怪物を倒した闖入者は二人。白い戦士と紫の戦士。

紫の戦士には可奈美と姫和も見覚えがある、追っ手から逃げる際に現れた荒魂を倒した時に助太刀したくれたダグオン シャドーリュウと名乗った人物だ。

 「怪我はありませんか?」 「また貴様か!」

ヨクと同時に姫和が声を挙げる。

 「え?また?」

 「…以前、少しな…」

ヨクの追及に短く返すリュウ。姫和は再び現れたリュウ、そして共に現れたヨクに警戒心を剥き出しにする。

 「わぁ!あの時の!また助けてもらっちゃいましたね」

可奈美はやはり姫和と対照的にお礼を口にする。

 「…無事か?」

 「はいっ!」

 「ええっと……僕達はその怪しい者ではないです。ダグオンという……なんと言えば良いのか、所謂正義の味方だと思って頂けたら」

 姫和、累、そして沙耶香に向け、及び腰で説明するヨク、厳ついアーマーでそんな事をするヨクに流石の姫和も落ち着きを取り戻す。

 「皆さん、怪我は本当に大丈夫ですか?」

 「問題無い、お前達が現れたお陰で傷らしいモノも何一つ無い」

 「良かった、それでは僕達はこれで」

ヨクはそう告げて然り気無く姫和の後ろを通りすぎる。リュウも可奈美の肩に手を軽く置いた後、風と共に立ち去った。

「何だったの?」

 「……?」

 「姫和ちゃん、また助けてもらっちゃったね」

 「本当に何者なんだ奴等、もしやまだあんなのが居るのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 「やはり人形風情では大した事は出来ないか」

「けれど、ダグオンとやらが現れたわ。しかも2人も」

 「紫のヤツはワタシは見覚えが無いな」

「なら、ワタシが見たものを合わせて奴等は5人いると言う事になるわね」

 遠方より先程のダグオンの戦いを見ていたジェゲンガ星人、こうしてまた一つ彼等は情報を得たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 ダグベースメインオーダールームに五人の若者が集う。

 「で?上手くいったのカヨ」

「…ああ」

 「ふむ、では今後我々は彼女達の動きを把握しつつ、別の事に集中出来ると言う事だな」

 「ええ、管理者の言っていた剣探しにも人数が割けます」

「マジか!いやぁ、流石に何時までも調査隊に引っ付く訳にはいかねえからな」

 原宿より折を見て帰還した焔也、先に来ていた戒将らを加え翼沙は成果を報告する。

 「……1つ報告がある」

そこに龍悟からの発言、皆は彼に注目する。

 「…その例の反逆者の十条だが、折神紫を襲撃したのは……折神紫が大荒魂だからだそうだ」

 「「「なっ?!」」」

「マジカヨ…」

「馬鹿な…荒魂を使った実験だけでなく御当主自らが荒魂だと……渡邊、お前はこの事を?」

「いえ、僕が聞かされていたのは折神家の荒魂を利用した実験までで…まさか紫様が荒魂だなんて……」

「こりゃえらいことになったぜ……」

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ウイングヨクの渡邊翼沙です。

折神御当主様が大荒魂だと知った僕達、そんな折、衛星軌道上に巨大な反応が顕れます。

 あんな大きなモノ放って置いたら大変な騒ぎになってしまう!

 一体どうしたら……え?今こそ活躍の時?何の事ですか?

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 出動!ダグビークル。

 次回も"トライダグオン"!




 今回のスパロボコラボ公演イベント、凄いな……!?
はい申し訳無い、私、ちょくちょくモバマスやってます。今イベント最終ラウンドですが、今回は色々はっちゃけてますね!
 唯ちゃん専用ゲシュペンストから始まり、アストラナガンにユー……ウーゼスと、もう本当に楽しかったです。
 ところでダグオンは何時スパロボに出ますかね?


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第二十話 出動!ダグビークル。

 クリクマス寿々花ゲットォオオオオオ!!
こんばんにちわ、ダグライダーです。
 既にガチャは新しいモノに更新されましたが、その前に寿々花をゲットしました。
 勝利の動き可愛い、滅茶苦茶可愛い、超可愛い。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 累のマンションに身を寄せる可奈美と姫和、二人は累に恩返しするため家事を受け持つ。

 夜分、累から会わせたい人物の話を振られる二人。

その人物の名はFineMan。

 FineManとの問答に返事を返したその時、襲撃者があら≪沙耶香ちゃんキタ━(゚∀゚)━!≫ ……

 

 ───暫くお待ち下さい──

 

からくも沙耶香を退ける二人の前に正体不明の怪物が現れ襲い掛かる!

 しかし、それを撃退したのはリュウとヨク、二人のダグオンであった。

 


 

 沙耶香が襲撃に現れ、謎の怪物をダグオン達が撃退した翌日、まだ朝陽も昇らぬ早朝、累の車に乗り何処へと向かう可奈美と姫和。

 道中、あの後保護した沙耶香を降ろし、所轄の警察に任せ先に進む。

 

 車中にて姫和は可奈美のとった昨晩の行動について思案していた。己は沙耶香が写シも張らず向かって来た時、最早殺す他に手段を考えなかった事に対し、可奈美は最後まで沙耶香を出来る限り傷付けず、生かす為に無刀取りなどという自らの危険を省みない手段を取った、等々を考えている内に累の車が検問に差し掛かる。

 

 検問より離れた所から車を降りる二人、累は窓から顔を覗かせる。

「合流地点まで送ってあげられなくてごめん」

 「い、いえっ!累さん、お世話になりました」

 「この礼はいずれ」

「気にしないで。大変だろうけど頑張ってね」

 駆け出し去っていく二人を見つめ、累は大人としての己の不甲斐なさに苦虫を噛み潰しながら来た道を戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球衛星軌道

 その日、国際宇宙ステーションに駐留するアストロノーツ達は信じられない物を目撃した。

 

 ISSの倍はあろうかという大きさ、全高はおおよそ30m全幅は翼を含めればISSよりも長い、恐らくは飛行機と見られる機体。全身が黒くまるで一昔前のステルス機のようなソレは彼等など存在すら認識していないかのように地球に降下してゆく。

 

 近くの軍事衛星が防衛機能として迎撃行動を開始したが、装甲は無傷、逆にステルス機らしき宇宙船から反撃を受け、敢えなく撃沈した。

 

 

 

 時同じ頃、ダグベース内にて龍悟が放った衝撃的な事実にダグオン達は困惑していた。

 「つまり何か?俺達伍箇伝の学校を取り仕切ってる折神家はとっくの昔に荒魂の手の内ってことか!?」

 「当主自らが荒魂となっていたとはな……親衛隊へのノロの注入疑惑も最早疑惑にすらならんか」

 「実験どうこうって話のスケールじゃねぇナ、真っ黒じゃねーカヨ…」

 「御当主様が荒魂であったなら、確かに辻褄が合います。スペクトラムファインダーの早期導入量産に加え、S装備の実用化、これら全てが荒魂によって引き起こされたものならば、何かしらの企みがあるはずです」

 「……人に紛れ何を企てているのか、見当が付かんな…」

 各々に意見を交え、自身の心の乱れを整理しようとする彼等、それだけ今まで信じていた存在が覆った衝撃は大きい。

 

 「宇宙人などと言う存在を目にし、最早早々に驚く事など無いと思っていたのだがな……」

戒将が力の篭らない声を挙げる。

 「完全に別の技術として割り切れるこちらと違い、特祭隊の技術には人類の叡知も少なからず影響している……そう思いたいですね」

 宇宙の未知のテクノロジーではなく地球で生まれたのだから人間だけで至る事が出来たのではと考えたい翼沙。

 

 

 「結局よォ?どうすんだヨ?」

申一郎がこれらの事実を踏まえた上で皆に問う。

 「……俺の目的は変わらん、荒魂であろうと宇宙人であろうと…平穏を脅かす存在とは刃を交える…それだけだ」

 龍悟は既に答えを出しているようだ。

 

 「俺もさ、紫様……折神紫が荒魂ってのは驚いたぜ?ただまぁ、やっぱやること変わんねーわ。刀使の連中が少しでも傷付かずに済むんならその大荒魂とだってやってやるさ」

 焔也も彼なりの答えを返す。

 

 「そうですね、紫様の姿をした大荒魂がこの世界を破滅に追いやる存在なら僕らが戦いましょう」

翼沙もまた己の目的を定める。

 

 「っても、例の反逆者ちゃん達がダメだった時に助太刀するくらいが良いと思うぜ?何せ大多数の刀使は真実を知らねぇワケだし、信じられないだろうし」

 「……最悪の場合の切り札と言う訳か…フッ」

申一郎の提案に笑って答える龍悟、そんな中先程から黙ったきりの戒将が口を開く。

 

 「皆、今から言う事は俺の我儘かもしれん。だがどうか聞いて欲しい。親衛隊第四席……我が妹、燕結芽をこの基地に連れてきたい!」

 「おおう?!ナンだよいきなり?」

 「妹さんですか?親衛隊となるとノロの……」

 「皆が戦う決意をしているのは理解している。だが下手をすれば親衛隊は確実に敵に回してしまう……そうなる前にどうにかあの子を此処に……此処の医療施設に連れてきたいのだ!」

 戒将が悲痛な面持ちで言葉を紡ぐ。

 「妹さん、どっか悪いのか?」

 「胸……心臓に関わる病らしい、現在の医療では完治は出来ないとも言われた……」

 「それが本当なら、ノロの力で命を繋いでいる事になりますが……根本的な解決にはなりませんね。恐らくですが時折、苦しむような事があるのでは?」

 「ある……のだろう。俺の前では見せないが、まず間違いない」

 翼沙の問いに対し、戒将が知る限りの結芽の状態を挙げていく。

 「確かに、この基地、牽いては異星…それも別世界の物ならば可能性はあります「ならばっ!?」ですが、サンプルとなる情報がなければ治療のしようがありません」

 翼沙が非情とも取れる発言をする。

 

 「サンプルだと……?結芽のような病状を他にどうにか探せと……無茶だ、時間が足りない…」

戒将が悲痛に顔を歪める。最早、手段を絶たれた──そう思った時、空気など読まずに姿なき阿呆が現れた。

 ≪喚ばれてなくてもジャジャジャジャーン!≫

 「「(空気読めよッ!!)」」

焔也と申一郎が心の中ですかさずツッコむ。構わず話を始める管理者ことアルファ、その内容は先程の折神紫大荒魂事件よりもある意味衝撃的であった。

 ≪サンプルあるよ?≫

 「なんですって?」

アルファの発言に思わず知能指数が下がった形で訊ねる翼沙。

 ≪だから、結芽ちゃんの病気でしょ?あるんだなーこれが≫

 「それは一体どう言う事だッ!?説明して貰うぞ!」

 ≪怖い怖い怖い!落ち着いて今説め──≫

姿があれば詰め寄らんばかりの形相の戒将に怯えるアルファ、彼ないし彼女かもしれない存在が説明をしようと次の言葉を紡ごうとしたその時、基地内にけたましい警報が鳴り響く。

 

 

 「ッ…!こんな時に何事だ!?」

<ダグオンの諸君、緊急事態だモニターを見てくれ>

 ブレイブ星人が顕れ、オーダールームのモニターに映像を写す、そこには巨大なステルス爆撃機のような飛行物体が映し出されている。

 ≪ゲェ!?あれはヘカント星人の武装輸送機ぃ!≫

 「こんな時に敵かよ!」 「コレ(アルファ)とは別の意味で空気読まねーナァ!?」 「……それで管理者、貴様はヤツを知っているようだが?」 「確かに!先のサンプルの事も気になりますが、まずは敵の情報の詳細を」

 

 口々に言う若者達にアルファは答える。

≪ボクが持つ数少ないエデン囚人の情報でね、あの宇宙輸送機に乗ってるのは惑星蹂躙巨人と呼ばれるヘカント星人の物なんだ、ヘカント星人は監獄を取りまとめる、言うなれば幹部。そんなヤツがこんな早くに来るなんて!≫

 想定外だよ──と叫ぶ管理者アルファ、声だけではあるがその焦りは本物だ。

 「ようは滅茶苦茶強いのが攻めて来たんだな!?なら、どうにかとっとと倒して、先輩の為にもさっきの話の続き聞かせて貰うぜ」

 <待て、あの巨大輸送船は改造され武装が取り着けられている。ダグテクターを纏っただけでは勝てない>

 勇んで飛び出そうとする焔也をブレイブ星人が止める。

 「ならどうすんだよ?!」

 「策はあるのか?」

 「まぁ確かにデケェ……何時もみたくはムリっぽいな」

 <ダグビークルを使え>

 「ダグビークル…ですが僕達では動かす事しか出来ないと」

 ≪ビークルモードだけでも戦える武装は十分あるよ!それにヘカント星人の囚人はけっこう血の気の多い単細胞みたいだから、場所さえ何とかなれば≫

 「……ビークルでも勝てる可能性はあるか…」

<ではダグオン諸君、出撃だ!>

ブレイブ星人が指令を出す。

 

 

 ダグベースが鳴動する。胸部が足下まで開きレールを作り出す。

 肩に着いた信号が赤から青に替わる。

 ゲートから順にターボライナー、ウイングライナー、1つ路線を空けてアーマーライナーと発進していく。レールの先は海となっており、ライナービークルが突入する。

 

静岡県の人気の無い海上近辺の波が揺らめく、海中からライナービークル達が飛び出し、備え付けられたブースターで空を駆ける。

 

 ダグベースのある近くの滝つぼが円を描くが如く割れる。水のカーテンを突き破り現れたのは、発射台に備えられたシャドージェット。スラスターが点火しジェットが空に飛び立つ。

 

 山間道のトンネル内にて車の通りが少ない車線の壁面が突如せり出す。上から見る事が出来れば扇状に開いたそれは発進ゲート。

 そこから飛び出るのはパトカーを型どったライドビークル、ファイヤーストラトス。

 サイレンを鳴らし、前を行く車を追い抜く、そうして現在起動している全てのビークルが発進した。

 

 

 

 

 

 ダグビークルが発進した後、ダグベースではアルファとブレイブ星人が会話を繰り広げる。

 ≪行っちゃったね、勝てるかな?≫

 <我々に今出来るのは信じる事のみだ>

 ≪そうだね、もしかしたら5人の内誰かがアレを発動するかもしれないし≫

 <…融合合体……最早、誰が出来てもおかしくはないのだが、果たして>

 ≪そこはまぁ、なるようになるさ≫

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 諸君、私はブレイブ星人だ。

 

 突如地球に現れたヘカント星人の武装輸送宇宙船。

人類の奮闘も虚しく、有効打を打てず次々と犠牲が出てくる最中、遂に我等が勇者達が輸送船と対峙する。

 各ダグビークルの武装を使い、敵の輸送船を破壊するも、爆炎の中より現れ出でた影は…。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 強襲!ギガンタース!

 次回も共に"トライダグオン"!

 




 どうも、前書きにてテンションがおかしくなったダグライダーです。可愛いからしょうがないネ。

さて、前回の前書きにて発言した衛藤家兄について果たして何人があの意味に気付いたやら……。
 次は天華百剣の毛利イベントとクリクマスガチャ回さないと……。


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第二十一話 強襲!ギガンタース!

 こんばんは、ダグライダーです。
いやぁ、大筋は決まってるんですがビークルの戦闘描写をどうしようか考えながら書いていたら、先にスカルマンの方が出来てしまい、遅れました。
 それに最近は年末が近いからか忙しく、疲れで寝てしまう事も……申し訳ありません。
 では後書きでお会いしましょう。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 宇宙より襲来した巨大武装輸送宇宙船。

 その正体は惑星蹂躙巨人ヘカント星人を運ぶ輸送機であった。今までに無い、巨大な敵に対しダグオン達はダグビークルの出撃を決意するのだった。

 


 

 ギガンタースを搭載した武装輸送船が地球上空に現れ、ダグオン達がその反応をキャッチしていた頃。

 可奈美、姫和は新たに伊豆方面に向かう長距離トラックに乗せられ、沙耶香が所轄から保護を受け、エレンと薫がバカンス擬きに興じ(薫は紗南から任務を言い渡されて)、調査隊が青砥館から得た情報により伊豆に発つ。

 「あの人行っちゃったね、ちぃ姉」

「なんとも濃い人物でしたね、瀬戸内智恵さん」

 「暑苦しかったし、居なくなってアタシは清々したけど、チチエはどうよ?」

私も居なくなってくれて嬉しいかも。瀬戸内さん大丈夫ですか?」

 「みんな、どうして私が別れを惜しんだみたいな風に言うのかしら?」

 四者四様の言葉に笑みを引き吊らせる智恵。

件の撃鉄は先んじて青砥館を出立し、何処かへと旅立った。その別れ際…〔智恵さん!非情に名残惜しいですがワシは再び修行の旅に出ねばなりません。まっこと残念ではありますが、こればかりはワシとしても止めるワケにはイカンのです。ではいずれまた逢いましょうぞ!!〕と10m進む毎に振り返りながら歩んでいったのだから苦笑する他ない。

 

閑話休題

 

 

 

 

 さて、ダグベースから出撃した各ダグビークルに搭乗したダグオン達。

 ウイングライナーが先行する形でターボライナー、アーマーライナー、シャドージェットと空を駆ける四機、それを地上から追うファイヤーストラトス。

 「糞ッ!?お前らだけ飛べるとかズルくねぇか!?」

「って言われてもナァ……飛べちまうんだからしょうがねぇべ?」

 「文句は製作者に言え」

「あはは、……取り敢えず僕達が先に輸送機と接触します。エンは後から駆け付けて下さい」

 「……妥当な所だな、それで…敵と会敵したとして、そのまま空戦を行う訳にもいくまい?」

「ええ、万が一下が市街地であった場合、被害は洒落になりませんから…」

 「ならどうすんだよ?海に落とすか?…海走れんのかな俺のファイヤーストラトス…」

「それな!オレたちは飛べっから良いけど、お前ホントどうなんだろナ?」

 「ふむ、座標から見てかち合うのは鳥取上空辺りだな」

「はい、ですので砂丘で戦うのが良いかと。その為に、まず相手を引き付けます。そこから砂丘に落とし僕達のビークルの持つ全火器で迎撃しましょう」

 「……不確定要素は砂丘の民間人か…?」

「ええ」

 「ならそこは俺が確認するぜ、お前らはそれまで上手く時間稼ぎしながら逃げ回ってくれ」

「それっきゃネェか」

 「決まりだな、そのプランで行くぞ!」

こうして道中での会議を終え、ターボ、アーマー、ウイングライナー、シャドージェットが輸送機にファイヤーストラトスが砂丘に向かう。

 

 雲を眼下に巨大な影が写り混む。

それは一目で分かるほどの大きさ、しかしその中は実を言えば狭い。

 何せ巨人を搭載しているのだから。

とは言えこれでもまだマシなのだ、ギガンタースは輸送スペースに背から生えた腕を体に折り畳む様にしまい、細胞を操作し、普段よりもやや縮小する。

 更に操縦は部下に任せているので特にする事も無い、強いて言えばその部下に当たり散らす事だけか…。

 「まだかぁ!」

輸送船に大声が木霊す、操縦桿を握っている部下は内心、上空で奴を放り棄てようかと思うも、後で死ぬのは自分だと思い至り、怒鳴る上司(一応)を宥める。

「落ち着いて下さい、ギガンタース様。既に地球の大気圏を突破致しました!後は例の報告にあったと言う連中が居るらしき場所に向かうだけです」

 「まどろっこしい!星に着いたならば後はこのギガンタース自らが暴れるだけよ、ダグオンなる連中はその過程で叩き潰してくれるわ!」

 最早、我慢の限界を越えようか、今すぐ元のサイズに戻らんとしかねないギガンタースに肝を冷やす部下、罪を犯した罪人でありながら、彼は母星が信仰する神に祈りを捧げる。その時、コックピットのレーダーが反応を示す。

 

「ギガンタース様、敵が現れましたぁ!」

その言葉と共に雲を突き破り、自衛隊の戦闘機が二機、眼前に姿を晒す。

 「捻り潰せ!」

「は、はいっ」

 ギガンタースの指示により船に搭載された武装を使い自衛隊機を迎撃する輸送船。

 自衛隊機も奮戦したが、相手は埒外の技術を誇る異星の船、チャフすら物ともしないミサイルに撃墜されてしまう。

 「ふん、この星の戦闘員の防衛兵器か、つまらん」

「ギガンタース様!?」

 「今度は何事だっ!」

再び声を上げ狼狽える部下に苛立ち紛れに返すギガンタース。

「敵です!今度は例のヤツらです!」

 レーダーが示したのは此方と同じレベルかそれ以上を指す反応、新たに雲を破り現れた空を飛ぶ新幹線と先程撃墜した戦闘機に似た紫色の戦闘機が行く手を塞ぐ。

 

 

 「遅かったか…が、どうやら此方の誘いに乗ってくれそうだな」

「オッシ!後は奴さんを砂の海に落としてやるだけだゼ」

 「犠牲になった自衛隊の方の為にもなんとしても勝ちましょう」

「……早急にカタを着ける…」

 各ライナーが後部ユニットからミサイルを発射する。シャドージェットが輸送船の武装の死角を縫って攻撃を仕掛ける。

 

 「ええいっ!チマチマと小賢しいぃッ!?さっさと払い落とせぇエエエエエエ!

「は、はっ!(さっきからやってんだよ!!)」

 ダグビークルからの攻撃に苛立ちを募らせるギガンタース、部下は心中で彼への悪態を付きながらダグビークルを撃墜しようとするも、空を飛ぶ四機は悠々と回避する。

「…くっ、こいつゥとっとと墜ちろよ!」

八つ当たり気味に目の前のダグビークルに対し攻撃を続ける。その内、四機のダグビークルはこちらに背後を向け飛び去る、敵が逃げた事に安堵する部下はしかし、悪寒を感じギガンタースの方に振り返る。

 「逃げる?……このギガンタース様をあれだけおちょくり、最後まで決着を着けずに逃げる?……ふざげるなぁあアアアアアアアア!!追えっ!奴等を地の果てまで追い詰めろぉオオ!

 ギガンタースの怒声が輸送船を軋ませる、自らの上司の行いで輸送船が堕ちてしまっては堪らないと部下は逃げた四機を追跡する。

 

 

 「順調に追ってきてますね、もうすぐ例のポイントです。皆さん準備は良いですか?」

「オウヨ!今度は全火力で相手してやらぁ!」

 「エンは上手くやっているだろうか」

「……どうやら、少なくとも人は居ないようだな……」

 リュウの言う通り、目的地の砂丘には人影は1つとして無く、ファイヤーストラトスだけが佇んでいる。

 「待ちわびたぜ、みんな!」

 「やってくれたかエン」

「うっし、これで周りを気にせず戦えるぜ」

 「高度を下げながら敵を砂丘に落としましょう」

「…来るぞ…」

 

 

 合流し五機となったダグビークルを目にしギガンタースの部下は誘い込まれた事を悟る。

「ギガンタース様!?罠です!奴等は我々を此処に誘き出すために逃げたフリを…「それがどうしたぁ!」…しかし!」

 「罠など捩じ伏せれば良いだけだろうが、構わず潰せ!」

 虚仮にされ頭に血が登ったギガンタースは、最早部下の言葉など気にも留めない。

 

 「よっしゃ、いい位置に来てくれたぜ!喰らいやがれ、スパークフラッシュ!

ファイヤーストラトスのパトランプが強く発光し強力なビームとなって輸送船の翼のエンジンに直撃する。

 「我々も畳み掛けるぞ、ホイールミサイル」 

「シャッ!アーマーミサイル!

 「クリスタルミサイル!

シャドーバルカン!

 ファイヤーストラトスの攻撃を皮切りに次々と輸送船に攻撃をするダグオン達、猛攻に曝される輸送船はエンジンが火を吹き、先の空戦でのダメージもあり機体に亀裂が走る。

「だっ脱出を…」

 部下は船の限界を悟り脱出しようとするもコックピットに攻撃が直撃し悲鳴を上げる間もなく絶命した。

 「オオオオッ!?」

爆炎に包まれる機内にギガンタースの絶叫が響く、炎と共に砂丘に墜落する輸送船、地上に着いた途端に爆炎と砂塵が吹き上がる。

 「「よっしゃあ!」」

 「敵の撃墜を確認!」

「……作戦成功…だな」

 「ええ、これで後は管理者に先の話の続きを………いえ、待って下さい!この反応は!?」

 武装輸送船を撃破し勝鬨を上げるダグオン達、ヨクが

ダグベースで聞いたアルファの話の続きを聞くため皆に戻る旨を伝えようとしたその時、ウイングライナーのレーダーが生命反応をキャッチする。

 

 

 

 「まだだぁ!まだぁ終わらんぞぉオオオオッ!!」

 

 立ち上る黒煙と砂煙の中から巨大な人型の影が表れる。

 人間を巨大化したシルエットに黒い肌、本来の腕の他に肩甲骨辺りから生える二本の腕、鎧の様な硬質化した筋肉、血走った目がダグビークルを捉える。

 

 今此処に、惑星蹂躙巨人と呼ばれた侵略種族ヘカント星人のギガンタースが地球に降り立ったのだ!

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 ハァイ!古波蔵エレンデース!

何やらワタシ達がバカンス中に世界中は別の話題で大騒ぎのようデスネ、そしてココ日本でも大変な事が起きていたのデス。ワァオ!?ジャイアントですネ、果たしてダグオンの人達は勝てるのでショウカ?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 焔の融合合体!ダグファイヤー誕生!前編

次回も"トライダグオン"、ファンタスティックな言葉デース!

 

 





 はい、遂に次回、融合合体です。
いやー長かった、胎動編初の融合合体は予告通りダグファイヤーですが、なんと前後編になりました、プロットから起こした第一項がこんなに長くなるとは思わなかったのでこちらで上げる為に別けました。
 その前に久々に刀使ノ指令ダグオンの現時点設定でも上げようかと考えてます。
 それではまた


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第二十二話 焔の融合合体!ダグファイヤー誕生!前編

 時間的にはおはようございます!
 新年二回目の投稿です!
前回のマテリアルの際は失礼しました、いずれ恒常化するとはいえ、以前から目を着けていた富田江が一発で来たので興奮してしまいました。
 ええ、恐らくそこで新年の運を使い切ったのかアリスギアの方は王女がでない、とじともも既存の星4しか出ないと…まぁ散々でした。
 


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 地球に現れたギガンタースの武装輸送船、ダグオン達はダグビークルで出撃、鳥取の砂丘で迎え撃つ作戦を執る。見事、輸送船を撃破した彼等、しかし爆炎と砂塵の中より怒りの巨人が現れる。

 今までにない巨大な敵にどう戦うダグオン?!

 


 

 「貴様らぁあああああアアアアアア!」

 

 ギガンタースの怒りに満ちた声が砂の大地に響き轟く、彼の背後には残骸と成り果てた輸送船が散らばる。

 「ゆるざん!ゆるざんぞぉギィザァマァラァ!!」

血走った瞳で己を虚仮にした者達を睨み付けその巨体を揺らし歩み始める。

 

 「おいおい、あれで無傷かよ!?」

エンがフロントガラス越しから見えるギガンタースに驚愕する。

 「恐らくはあの表皮が鎧の役割を果たしているのでしょう。それにしても限度がありそうなモノですが…」

 ヨクが迫って来るギガンタースを眺め指摘する。

 「…冷静に分析している暇は無いぞ……、見ろ」

リュウが何かに気付き、皆に声を掛ける。果たして彼等の視線が向いたその先には騒ぎに惹き付けられたのか、チラホラと人影が見える。

 「オイオイオイオイ!?何で人が集まってくんだよ?ちゃんとエンが追い返したんじゃネーノか!?」

 シンが信じられない事が起きた為、狼狽える。

 「もち走り回って此処がヤバい事は伝えたぜ、見た目パトカーだし、ちゃんと確認だってしたからな?!」

 エンが即座に4人が時間を稼いだ間の己の役割を果たした事を報告する。

 「おかしな事ではない、人は危険と聞かさせると好奇心が働くものだ。一旦は退いても、集団が騒ぎを聞き付ければ野次馬が現れるのも無理は無い」

 カイがマスクの奥で苦虫を噛み潰しながら現れた野次馬達を見て理由を述べる。

 「大方、警察が態々車両1つで退避勧告をした事に数人が疑問を持ったのだろう。今の時代ネット1つで噂が簡単に広がる…アレもその類いだ」

 カイの言葉通り、野次馬は遠巻きとはいえ次々と集まっており、果ては地方局の物であろう報道ヘリまで飛んでいる。

 「こりゃあメチャクチャヤバくないか…オレら悪い意味で全国デビューしちまうぜ?!」

 「全国で済めば良いですけどね……最悪、世界規模となる可能性もあります」

 シンとヨクが現状に対し悪い想像をする。

 「……ヘリが厄介だ、野次馬はまだ距離があるがマスコミはそうはいかん…。どうする?俺が牽制するか…?」

 リュウがヘリを見ながらカイに指示を仰ぐ。

 「………………そうだな、リュウはヘリを遠ざけろエンは野次馬が近付かないように我々より後方に、残った我々で奴を仕留める」

 暫しの黙考の後、4人に指示を飛ばしギガンタースの前にターボライナーを繰り出し攻撃を再開する。

 「「「「了解」」」」

4人がカイの案に即座に動く、シャドージェットがヘリの方向へ進路を転換し、ファイヤーストラトスが人々の方に走り去る。

 残ったアーマーライナー、ウイングライナーが先に攻撃を再開したターボライナーに続きギガンタースの攻撃に参加する。

 「ぬぅぅうううううんんんんんん!!」

雨あられと降り注ぐミサイルを意に反さず歩みを止めないギガンタース。

 「くっ!硬い…!!」

 「まさに堅牢と言うわけですか…」

 「オイオイ、どうすんだよアイツ等呼び戻すか!?」

ギガンタースが進むのに合わせ、じわじわと後退していくライナービークル達、3人は焦りを見せ始める。

 その頃、ヘリに向かったリュウもまた中々引き下がらない報道陣に手こずっていた。

 「……ここは危険だ、下がれ……!!」

「ちっ、何だよこの戦闘機は?!自衛隊が出たのは知ってたがあんなの見たこともないぞ!」

「もっと近付けませんか?戦闘機とパトカーは兎も角、あの新幹線、線路も無いのに動いてますし1つは飛んでますよ!?」

「無茶言うな!さっきからあの自衛隊機が邪魔して近付きたくても出来ないんだよ!」

『御覧ください!先程鳥取砂丘に墜落した謎の飛行物体から現れた巨人らしき影に、何と新幹線らしきモノが攻撃を仕掛けています!』

ヘリの中では操縦士と恐らくは責任者であろうディレクターが言い争い、カメラマンとリポーターが現在の位置から捉えられる範囲で現状を実況している。

 『これは決して映画の撮影などではありません!今この瞬間も現実に起きているのです!』

 「…っ、埒が明かないか……。致し方無い、当てはしないが上手く避けろ…」

痺れを切らしたリュウが最後の手段としてシャドージェットの機銃をヘリに向け放つ。

 当たらないように距離を空け射線をずらしたとはいえ、いきなりの発砲にヘリは慌てふためく。

「う、射ってきたぁ?!冗談じゃないよ!」

「ちょ?!もうちょいあるでしょ?報道管制引かれた訳じゃないのに、こっちは民家機なんだぞ!ってか今の撮れたか!?」

「バッチリっす、マジ怖い!」

『ご…御覧頂けたでしょうか!?守るべき国民に向けこの仕打ち、自衛隊は何を考えているのでしょうか!?』

 威嚇を受けても尚引く姿勢を見せないヘリに、最早処置なしと見たリュウは己の判断の誤りも含め僅かな後悔と苛立ちを含みながら仲間の下に向かっていった。

 同じ様に地上の野次馬に対処していたエンも思うようにいかない状況にストレスを感じていた。

 「逃げろっていってんだろ!死にてえのか!!?」

「なんだよ!別に近付いてる訳じゃないんだから良いじゃんか!」

「ウェーイ!見てる~?今スッゲーことになってまーす」

「警官なら市民に対してもっとちゃんと対応しろっ!」

「あれって荒魂?」

「さぁ?でも刀使いないし違うんじゃない?」

「マジで合成じゃなくてあんなの居んの?ウケる~」

 彼等のあまりに好き勝手な発言にどう対処してよいのか分からないエン、構わず愚痴や文句を投げつける者や動画や写真を撮る若者達に自分達のやっている事が馬鹿馬鹿しく感じてしまった彼は一瞬、邪な考えが過るも首を振り根気よく声を掛け退避を促し続ける。

 砂漠の激闘が続く最中、広がり続ける騒ぎを聞き付け、新たな報道ヘリや報道車が現れる。

 そして、ギガンタースと相対していたカイ達が攻撃しながら後退を続けていた為、遂にギガンタースは市民や報道陣の目と鼻の先にまで迫っていた。

 「不味い!このままではまだ距離があるとはいえ、被害が出てしまう」

 「……済まない、ヘリを追い返す事は出来なかった…」

 「しゃーねべ、あんなんオレだってイラってきて撃っちまう、当てなかっただけオマエは偉いぜ」

 「これではエンの方も難しいでしょうね……次策は?」

 「残念だか無い。後は特攻でもしてみるか?」

 「笑えねェ冗談だ、っても今んとこそれしか無いのがナァ」

 「……エンが頑張ってくれているお陰で空は兎も角、地上はまだ猶予があると取るべきか…」

 エンを除いたダグオン達は、いよいよ取れる手段が無くなったのか攻撃を続けながらそんな会話を繰り広げる。

 「先程からチクチクと痒い攻撃ばかり……鬱陶しい!

 その声と共に拳を握り砂丘に思い切り叩き付ける。砂塵が勢いよく上がり、砂丘全体が大きく揺れる。

 「っ!」

 「なんちゅーう威力だよ?!アレ喰らったらオレ達もヤバくネェか!?」

 拳一つで地震を起こしたギガンタースに戦慄を覚えるダグオン達、そして流石にこれには命の危機を感じたのか市民達は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

 「先程から小うるさいハエが飛んでいるなぁ?」

ギガンタースはそう言って上腕を伸ばし近くのヘリを掴む。

 「しまった!?こんな場所まで近付かれていたのか?!」

カイも焦りと攻撃に集中していた為に気付け無かったヘリの存在にギガンタースは気付いたのだ、それもその筈、ギガンタースにとってはダグオンの攻撃など蚊が刺した程度の物でしかない。故に随分前から視界に映るヘリに怒りを表し掴みあげたのだ。

「ひ、ひぃい!?」

「何なんだよぉ?!」

「母ちゃぁぁぁん!!」

『何?!何なのよぉ!!??」

ギガンタースに捕まったヘリは先程リュウが対処していた報道ヘリ、中に居る乗員達は突然の事に思考が追い付かないのか逃げ場の無い場所で慌てふためく。

 「丁度いい!このハエで貴様等を潰す!」

その言葉と共にヘリを掴む腕を振りかぶるギガンタース、投石の要領でライナービークル目掛け投げ付ける。

 「「「うわぁああああ!!?」」」 「嫌ぁああああああ!!?」

思い切り投げ付けられたヘリは爆発し、それが更に混乱を加速させた。

「……は?」

「にに、逃げ…逃げ…」

「逃げろぉオオオオ!!」

 誰かが上げた悲鳴に一斉に走り出す残った市民達、しかし到底受け入れ難い現実を前に人間は正常な判断など早々出来るものではない。躓き、転がり、混乱は大きく広がるばかり、そんな彼等の怯え慌てる様を見てエンはファイヤーストラトスのハンドルに拳を叩き付ける。

 「くそっ!どうにもならないのかよ!!」

顔を伏せ、やり場の無い怒りを募らせるエン。彼はそのままギガンタースに視線を向ける

 「こうなったら俺もみんなに合流して戦うしかねぇ!」

その言葉と共にハンドルを切り、ギガンタースに向かう。

 

 「くぅっ!しまった!?」

 「クソッタレ!離せ、離しやがれてんダヨォ!!」

 「……このまま僕らをマシンごと握り潰す気ですね」

 「…脱出は難しいか……」

4人はヘリを無理にヘリをかわし、体勢を崩したビークルをギガンタースに捕獲されてしまっていた。

 「フハハハ!温い、温いなぁ!?地球という惑星の生命体はこの期に及んで戦うよりも逃走を選び、唯一戦う貴様達もこの体たらく…全く随分と期待ハズレな星だ!」

 「ヤロウ…好き勝手にほざきやがって」

 「……だが、奴に対して有効な対抗手段がこの様だ……」

 「せめて何か弱点でもあれば……」

 「このままでは我々どころか地球全てが奴の手に掛かってしまう…!」

 四つの腕にそれぞれ捕らえられるダグビークル、ギガンタースが手に力を込めビークルが軋みを上げる。

 管理者の手により嘗てのモノより性能面が上昇しているとはいえ、エデンの囚人達もサルガッソの囚人より強力な者達が数多く存在する。ましてや相手は単純な力のみで1つの監獄を治める凶悪な異星人だ。

 「このぉおおおお!仲間を離しやがれぇええ!」

エンがファイヤーストラトスでギガンタースに突っ込む、しかしギガンタースはそれを右足で止める。

 「んん?地を這うムシケラが一匹増えた所で何が変わるぅ?」

 巨人はそのまま足に力を加え、エンを踏み潰そうとする。体重がのし掛かり悲鳴を上げるファイヤーストラトス。

 「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょぉおおおお!」

エンが…焔也が慟哭する、巨人が嗤う、人々が逃げ惑う、仲間達が苦悶する。

 「俺にもっと力があれば……みんな守れるんだ!頼む、お前にはまだ隠された力があるんだろ!?確かにさっきの俺は野次馬の連中に苛ついた。けど、このまま負けちまったら俺は俺の心に嘘ついちまうんだ!だからっ!!」

 その時、ファイヤーストラトスがその叫びに応える様に唸りを上げる。

 「何イィ!!?」

ギガンタースの足を弾き、走り出すとUターンし再びギガンタースに向け走ってくる。

 「フン!今度こそ踏み潰してくれよう!!」

ギガンタースが再び足を上げる。

 「エン!?」

 「バカ野郎!自殺行為だ!」

 「逃げて下さい!」

 「…エン!」

仲間達がエンの行動に驚愕し止めるように声を掛ける。

 「こいつは…そうか解ったぜ!」

エンはファイヤーストラトスの声なき声を理解し、制止も効かず突っ込む。その時──

 「融合合体!」

その声と共にエンがファイヤーストラトスからすり抜ける様に屋根に仁王立ちし、ファイヤーストラトスから跳ぶ。

 無人となったファイヤーストラトスのフロント部分に線が走り、パトランプまでのパーツが競り上がり割れる。

 人の脚の様に変形したそれは次にリアの部分が割れ肩となりドアが腕の様に変形する。

 最後に顔が現れ、変形したファイヤーストラトスの足元に立ったエンが蜃気楼の様に変形したファイヤーストラトスと同じ大きさまで巨大化し溶け込む様に一体化する。

 人型となったファイヤーストラトスの瞳に光が宿る。

 『ダグ…ファイヤァァァアアアア!』

 変形し炎を纏いそれを散らし生まれたのは10メートル近いロボット、遂にダグビークルの真の力が解放され、ファイヤーエンはダグファイヤーへと再誕したのだった!

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 よぉ、ファイヤーエンの鳳焔也だ…って、何じゃこりゃあああ!!?

 何かロボットになってるぅうう?!とにかく、これで少しはあのでかいのと戦えるぜ!

 って、やっぱ硬ってぇ!?どうすりゃ奴を倒せるんだ?

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 焔の融合合体!ダグファイヤー誕生!後編

 次回も"トライッダグオン!"

 




 ふぅ、中間の描写に最後まで悩みましたが、野次馬って大体こういった面もあるよね。という部分を誇張して表現しました。でも実際、自分も恐いもの見たさに近付いちゃうかもしれないので……。
 そんな訳で次回後編にてお会いしましょう!



颯出てくれぇええ!


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第二十三話 焔の融合合体!ダグファイヤー誕生!後編

 どうもこんばんは、ダグライダーです。
後編、思いの外手直しなどしていたら遅れました。
 その間にまた新しく作品上げてしまってすいませんでした。
 ただ、前々からやってみたいネタだったのでつい。
さて今回で巨人ギガンタースは退場です。果たして咬ませキャラぽかったのかどうか……。




 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 砂丘にて繰り広げられるダグオンとギガンタースの戦いはしかし、予期せぬ形で進んでいた。

 騒ぎを聞き付け集まる人々、それにより若き勇者達は思うように戦えない……。

 ギガンタースによってエンを除く4人が捕らわれてしまう。仲間のピンチ、そして地球のピンチに慟哭するエン。その時エンの駆るファイヤーストラトスに変化が表れる。

 何と、エンとファイヤーストラトスが融合したのだった!

 


 

       「融合合体」

 

 『ダグ…ファイヤァアアアア!』

 

 「あれはッ…!?」

 「エン…ナンだよな!!?」

 「もしやアレがブレイブ星人達が言っていた…?」

 「……ダグファイヤー、それがあの姿の名か…」

ファイヤーストラトスと融合を果たしたエンの姿に目を見張る4人、マスク越しの顔に浮かぶのは驚きの感情。

 

 『うおっ!?何だこりゃあ?コイツと心の赴くまま動いたら何か知らねぇ内にロボットになってやがる!』

 エン改めダグファイヤーは自身に起きた変化に戸惑っているようだ。

 それを見たギガンタースが嗤う。 

 「フン!それが何だと言うのだ?精々鼠が子供に変わった程度よ!!」

 ギガンタースの言う通り、ダグファイヤーとギガンタースの差は子供と大人の様な背丈の差であった。

 『うっせぇ!さっきに比べりゃ大分マシに戦えらぁ!』

 ダグファイヤーはギガンタースの馬鹿にする態度が気に食わないのか憤慨する。

 『いくぜ!』

そう言うや否や、ギガンタース目掛け駆けるダグファイヤー彼の狙いは巨腕に捕らわれた仲間達、未だ大きさでは劣るダグファイヤーだがその力はファイヤーエンの時の比ではない。

 『そこぉ!ファイヤァアアナァックゥルッ!』

 巨人の目前へと躍り出て、より強烈な威力と化したファイヤーナックルをその巨腕に見舞う。

 最初に右上腕を、殴った勢いを利用しその身を回転させ左下腕を攻撃する。

 「今です!」

 「シャッ!助かったぜ!」

それぞれの腕に捕まっていたウイングライナーとアーマーライナーが脱出する。

 「ちぃっ!?小癪な真似をッ!」

 『まだ終わっちゃあいないぜ!』

その宣言通りアッパーカットの要領で巨人の顎を打つダグファイヤー。ギガンタースは頭を仰け反らせるも倒れない、しかしそれで拘束が緩んだのか残ったターボライナーとシャドージェットも脱出に成功する。

 『仲間は返して貰ったぜ!……にしても硬ぇ?!』

仲間の脱出を確認し素早く巨人の間合いから飛び退くダグファイヤー、当のギガンタースは自分に体格で劣る者に数秒意識を飛ばされた事が信じられないのか、或いは信じたく無いのか仰け反った体制のまま拳を握り込み震える。

 「この俺がァあんなチビにィ僅かでも劣っただどぉ?有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん断じてありえええええんん!!

 怒りと共にダグファイヤーを睨み付けるギガンタースその様は阿修羅の如しだ。

 『やべぇかなこれ?』

 「ダメージはあるがこれも決定打には至らないか」

 「何か弱点とかねーのカヨ!」

 「分析しているんですが何とも…」

 「……俺達でダグファイヤーを援護しながら探り当てる他に無い」

 ギガンタースの逆鱗に触れたダグファイヤーは人の時であれば冷や汗を流したであろう言葉を発し、カイとシンが倒すに至らない状況に焼きもきするのかヨクも敵の情報を探る。リュウの案に従って主戦力をダグファイヤーとし四機のダグビークルは支援に徹する。

 「砂地も奴には然したる問題にならんか、であれば海に落としてしまうか」

 「確かに、本来であれば砂に足を取られてもいい筈ですが……果たして海辺に誘き出す事が吉と出るか…」

 カイとヨクが戦況から得られた敵の情報に対し明確な有効打を見出だせず、賭けに出るべきかと考える。

 「ゴチャゴチャ考えても埒明かねーって、やるだけやっちまおうゼ!」

 「……実際に試してみれば有益かどうか判るだろう…」

頭脳役の2人に対し行動を伴わねば何もわからないと言うシンとリュウそこにダグファイヤーも加わる

 『もしかしたらあの野郎、カナヅチかもしれないぜ?』

 「……っはは!成る程確かにそうだ。何事も試してみなければな」

 『決まりだ、おいっ!デカブツ!!最初の自信はどうした?もしかしてチビったのか?』

 「ォアオ?ギザマァ、ブザゲダゴドォ抜かすなぁアア!!」

 怒りによりどんどん知性が消えてゆく言葉遣いとなるギガンタース、彼の頭の中は自分を馬鹿にしたダグファイヤーを如何にして潰すかに占められる。

 「うへぇ…ありゃオレ達はもう視界に入ってねぇナァ」

それを見たシンが引き気味に評する。

 「好都合だ、あれならば我々が多少攻撃してもダグファイヤーを追うことは止めないだろう」

 「……ならば、乗れダグファイヤー」

カイが怒りに溺れるギガンタースの状態を好都合と見て作戦を進める。リュウはダグファイヤーをシャドージェットの上に乗るよう促す。

 『応!』

シャドージェットの背に乗りギガンタースを挑発するよう顔を向ける、ギガンタースはそれを見て益々怒り狂う。

 「凄まじいですね……顔を見ただけであそこまで怒り心頭とは…」

 「よっぽどアタマに来てンダナ、一応またあの腕に掴まれねーように距離はとっとこうぜ」

 シャドージェットに乗ったダグファイヤーを追うギガンタースを後方からある程度距離を置いて追跡する。

 「……着いてきているか?」

 『ああ、凄い顔して追って来てら…っと見えて来たぜ』

先行するリュウはダグファイヤーにギガンタースが追って来ているかを訪ね、それに答え苦笑を漏らすダグファイヤー、視線を前に戻すと海岸が覗く。

 『上昇してくれ!』

 「…了解した、振り落とされるなよ」

水際にたどり着き、そこから一気に垂直に急上昇する。

 

 「オノレェ!戦えぇえ"え"え"え"!!」

 空を仰ぎ吼えるギガンタース、太陽を背にダグファイヤーが落ちてくる。

 「ヌァアアアア!?」

巨人と言えども太陽を直視すれば眼が光に焼かれる、その隙を逃すダグオン達ではない。

 『今だ!一斉に行くぜ!!』

 「「「「応ッ!」」」」

 『スターバァァァアン!』

 「喰らえ!」

 「全弾持ってけェ!」

 「押し込みます!」

 「……沈め!」

ダグファイヤーの胸の逆三角形が灼熱に光、中に描かれた星が炎のエネルギーとなってギガンタース目掛け飛んでいく、それに追従しミサイルや機銃による攻撃が巨人の鋼の肉体を打ち付ける。巨人は一歩また一歩と後退し遂に水に足を盗られ背中から海に倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヤツノ弱点?」

「アア、シッテイルンダロ?」

「疑問、解答、早急、知己」

「へーじゃくてんなんてあったんだねー」

 その頃のエデンではギガンタースの単独地球蹂躙についてが議題に挙がっていた。

 「フム、マァ知ッテハイル。ガ、奴自身ソノ自覚ハ無イ」

「トイウト?」

 「アレノ種族ハアル種ノカウンターガ仕込マレテイル」

「かうんたー?」

 「塩分ヲ含ンダ高密度ノ水ヲ浴ビルトアノ鎧ノヨウナ肌ガ紙屑ノヨウニナルノダ……丁度アノ星ノヨウナ、ナ」

「爆笑!喝采!愚者愚者愚者愚者愚者愚者愚者!!」

 巨人の唯一の欠点を聞いた甲冑は高らかに嗤う。

「デハヤツハミズカラシチニトビコンダワケカ」

「ならちきゅうはぎがんたーすのおはかになっちゃうんだねー」

 エデンにて明かされたギガンタースの弱点、それは何と海水。遥か昔に彼等ヘカトン星人を造り出した何者かが巨人達が反乱を起こした際に止める為のものであったのだろう、それをしかし遂に使われぬまま創造主達は衰退し後には凶悪な破壊者の群が宇宙に解き放たれたのだ。

 何故、鬼が彼等の弱点を知っていたのかは定かでは無い。そして、今まさに地球ではダグオンの若者達が意図せず巨人を死の淵に至る所まで追い詰めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グォアォオオ?!何だこれは?体が思うように…動かない……何故だぁ!?」

 己すら知らぬ弱点に困惑するギガンタース、そこにダグファイヤーが星の輝きを纏った炎の塊となって突進して来る。

 『こいつで止めだ、喰らいやがれぇええええ!』

 「俺ばぁ!誇り高ぎぃ!ギガンタース様だぞぉおおお!」

 『バァアニィングスタァアアタァァックッ!!』

 一閃、炎が巨人を穿つ。

着地したダグファイヤーの背から覗く、大きく穴の空いた異形の人形のシルエットが立ち尽くす。

 暫しの沈黙の後穴を中心に亀裂が走り巨人は事切れたまま爆発した。

 

 遂に強敵ギガンタースに勝利したダグオン、しかしエデンの囚人達はまだまだ居る、明日を守る為戦えダグオン!

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 あー面倒くせー、あ?次回予告?あーハイハイ、俺は益子薫、長船の刀使だ。

 反逆者どもと合流し舞草について説明してた時、妙ちくりんな荒魂に襲われる。

 ソイツを操っていやがったのは親衛隊のヤツで…

 おいっ!ウチのペットに何しやがる?!

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 死闘決着、新たなる戦地へ。

 俺たちの前に現れたお前らは──

 

 




 さて次回は遂に山狩りですね!
第一席がネタ枠扱いされる一番の切っ掛けになったあの山狩りですね!!
 違うんです!真希ちゃんは強いんです!やれば出来る子なんです!ただ、メンタルがちょっとアレなだけで基本常識人枠なんです!

 とかいってたらシンデレラ百剣のネタの方が頭をよぎるぅ?!
 ではまた次回お会いしましょう


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刀使ノ指令ダグオンMATERIALその1

 新年明けましておめでとうございます。
ダグライダーです、今年もよろしくお願いいたします。
 さて新年最初の投稿が所謂設定になってしまいましたが(天華百剣の追加されたピックアップガチャを回しながら)いやはや、設定情報は去年の内にあげたかったのですが、仕事に忙殺されてしまい(どうせ回しても大したもん出ないだろうなぁ…まぁ、石が十連一回分はあるから回さないと)遅れました申し訳……富田お姉様来たぁアアアアアアアアアア!
すいません興奮しました、すいません。


 

 刀使ノ巫女世界のダグオンの各装備設定

 

 ダグテクター

 デザインはテレビアニメ版同様、性能は管理者達の手により勇者指令ダグオン時の物より向上している。

 刀使の八幡力五段階、金剛身五段階の内五段階目に匹敵する出力を出す事も出来る。(実際はそれ以上ではあるが目安として)

 また、ターボカイとシャドーリュウのダグテクターには迅移に対抗出来る機能がある。(他3人も三段階迅移までならセンサーが知覚する事は出来る)

 

 ファイヤーエン

 鳳焔也がダグコマンダーを用いて変身、装着されるダグテクター。

 全身赤い色の装甲に青いアイガードバイザー、不死鳥を思わせる羽の様なマント、炎をイメージしたシルエットの頭部。

 パルクールと喧嘩によって鍛えられた焔也の動きを十全に発揮する。

 焔也の性格故、荒魂、異星人との戦闘時は常に八幡力、金剛身四段階以上の出力で戦闘している。

 主な戦闘スタイルは徒手空拳、主だった装備は肘の爪によるエルボークロー。

 使用する技は、肩のアーマーから発せられる炎を放つショルダーバーン、拳に炎を纏わせるファイヤーナックル。

 ファイヤーエンとしての奥の手とも言える必殺技はダグテクターの機能によって物理法則を無視したような変形で鳥形になり炎を全身に纏い突撃するファイヤーバードアタック。

 

 ターボカイ

 燕戒将がダグコマンダーを用いて変身、装着されるダグテクター。

 装甲の色は原色に近い青、バイザーはオレンジ、肩と頭部の側面に車ともバイクともとれるマフラーの様なパーツが、脚首よりやや上の外側にタイヤの様なパーツが附属している。また、戒将が主だった指揮を執る為、相互通信情報センサーは高い精度を誇る。

 荒魂相手には八幡力三段階、金剛身三段階並みの出力、異星人には五段階、四段階の状態で攻撃依りではあるが常に戦場を把握出来るようにしている。

 戦闘スタイルはエン同様、徒手空拳だがカイは蹴りを主体にしている。主な装備はターボホイール。

 主だった技は防御から目眩ましまで使えるシールドスモーク、脚のタイヤの回転により威力を上げて放つ蹴り技ホイールキック。

 必殺技はターボホイールに乗り敵に向かって突進、切り刻むターボホイールアタック。

 

 アーマーシン

 鎧塚申一郎がダグコマンダーを用いて変身、装着するダグテクター。

 装甲は濃淡依りの緑、バイザーはカイ同様オレンジ。

 現在のダグオンメンバーの中で一番力の出力と装甲の防御力に秀でている。

 また、全身に火器を搭載している為、遠距離攻撃力も高い。

 荒魂相手には金剛身二段階、八幡力二段階レベルで対応出来、異星人相手でも相性如何では力押しだけで制圧する事も理論上可能。とは言え申一郎当人は割りと常に全力気味である。

 戦闘スタイルは装備である銃火器を用いた遠距離攻撃だが、申一郎自身の経験を生かしたボクシングスタイルによる近接戦も可能。装備=技である為、携行武器のアーマーライフルを含めハンドミサイル、ショルダーミサイル、ブレストモーターキャノン全てが技。

 必殺技は全身の火器を一斉発射する全火力斉射。

 

 ウイングヨク

 渡邊翼沙がダグコマンダーを用いて変身、装着するダグテクター。

 全体的に白い装甲に部分に水晶の様な意匠が見られる、バイザーは赤。

 現ダグオンメンバー唯一の飛行能力を持つ(エンもマントによる滑空やファイヤーバード形態での飛行は可能)

 彼のダグテクターはカイとは別の情報収集機能が高く、敵のアナライズもこなす。

 戦闘スタイルはこれといって無く、主に技による支援や乱戦の際は我流武術で戦う。

 荒魂に対しては八幡力金剛身共に三段階レベル、異星人には情報を解析しながらなので金剛身四、八幡力二レベルの状態で対応する。

 主だった技は空気を凝固、冷凍し結晶を作り出し武器にするクリスタルブーメラン、ダグテクターの胸部のファン、或いは背部の翼に付いたファンを回転させ絶対零度の竜巻を起こすブリザードハリケーン。

 必殺技は全てのファンを全力回転させ放つ超絶対零度のブリザードハリケーンフルパワー。

 

 シャドーリュウ

 六角龍悟がダグコマンダーを用いて変身、装着するダグテクター。

 装甲は紫だが他4人と違いアンダースーツは白い、バイザーは薄い緑。

 他4人よりも全体のシルエットは丸みがあるが胸の装甲は竜の顔を模していて、肘の辺りにあるシャドークナイの鋭利さにより4人に負けず劣らずの物々しさがある。

 カイ以上に機動性を重視している為、荒魂や異星人相手でも金剛身二レベルの強度で、攻撃は牽制もこなす為、三~四段階の八幡力レベルで戦闘している。

 龍悟自身、特に学んだ訳でも無いが何故か忍術的戦闘スタイルになる。

 主な装備はシャドークナイ、シャドー手裏剣。

 技はクナイによる捕縛や斬撃、手裏剣の乱れ射ち、分身殺法。

 必殺技は自身が回転しクナイの刃で切り裂く大回転剣風斬。

 

 

 

  ダグビークル

 各ビークル共に外見こそ勇者指令当時と同様だが装甲の耐久力や機動性攻撃力は向上している。

 また、発進に際して対レーダーステルス機能が搭載された為、自衛隊や各国に感知されない。

 ライナービークルは標準機能として飛行能力がある。

 更に、ダグオン達を強化するある力を秘めている。

 

 

  ファイヤーストラトス

 ファイヤーエン専用のダグビークル。

 ベースとなった車種はランチア・ストラトス、本来は希少なレーシング用の外車だが原典では何故か日本のパトカーとして登場しそれを元にコピー、製造されたのが本機である。

 ランチアは2人乗りだが、ファイヤーストラトスは後部座席があり右ハンドルである。

 焔也は無免許な為、ファイヤーエン状態でしか乗り回せないが、レーシングゲームで培ったセンスで難なく運転をこなす。

 また、光学偽装として一般車の見た目になる機能を刀使世界にて追加された。

 標準機能として壁面、水上走行が出来る。遠隔でも焔也或いはエンの状態での呼び出しに応じ現れるなどの機能がある。後部座席はゴミまみれではない(重要)、但し寝袋や野営キットはある。

 主な武装はパトランプから発射される高熱のレーザー、スパークフラッシュ。

 未だ解放されない力がある模様。

 

  

 ターボライナー

 ターボカイ専用ダグビークル。

ベースとなった車両は新幹線300系のぞみ、ライナービークルの中では最も地上における機動性が高い。

 外見は当時のぞみとして運用された300系の新幹線の先頭車両に、車のエンジンを思わせる巨大なホイールタイヤの着いたユニットを後部に附属させた物。

 他のライナービークルと違い、コックピットの操縦桿は車のハンドルに近い物になっている。

 戒将はターボライナーのデザイン上、日常にはあまり利用しない、緊急時を想定しある程度の治療キットや非常食を積んでいる。光学偽装は現行の車両になる。

 武装は後部ユニットに搭載されたバルカンとミサイル。

 未だ解放されていない機能が眠っている。

 

 

  アーマーライナー

 アーマーシン専用のダグビークル。

ベース車両は新幹線E1系Maxやまびこ、現時点のライナービークル最硬を誇る装甲を持つ、外見はMaxやまびこの先頭車両に重火力戦車の様なユニットを連結したデザイン。

 コックピットは新幹線よりもロボットアニメのモノに近い。

 申一郎はアーマーライナーを便利な足として日常でも活用する手段を考えている。光学偽装は現行の車両になる。

 武装は後部ユニットの重火力戦車に搭載された火器全て。

 未だ解放されていない機能が眠っている。

 

 

 ウイングライナー

 ウイングヨク専用のダグビークル。

ベース車両は新幹線400系つばさ、ライナービークル各機の中で一番飛行時の速度が高い、外見は400系つばさ先頭車両にクリスタルの様なウイングが着いた後部ユニットを連結させた物。

 コックピットは飛行機のモノに近い。

翼沙はウイングライナー含め、ダグビークルの技術に着目している為、足として利用する発想はあまり無い。光学偽装は現行の車両になる。

 武装は各ライナービークルと同じく、後部ユニットに搭載されたクリスタルミサイルとなる。

 未だ解放されていない機能が眠っている。

 

 

 シャドージェット

 シャドーリュウ専用のダグビークル。

ベースとなった機体はF―15イーグル戦闘機、他四機と違い元になったマシンからして戦闘用の為、ビークル時の武装もほぼ元の物同様。

 外見はある程度F―15イーグル戦闘機だが、所々竜の様な意匠とパーツが見られる。

 コックピットも元のイーグルよりはスペースに余裕はあるがほぼそのまま。

 龍悟自身が神出鬼没である為、戦闘以外での利用は余程の事が無い限り使われる事はない。光学偽装は光学迷彩によるステルス。

 未だ解放されない力が眠っている。

 

 

 

 ファイヤージャンボ

 序章終盤時点で管理者アルファが制作し、完成させたファイヤーエン専用の大型ビークル。(操縦だけなら他のダグオンも可能)

 外見のベースはジャンボ旅客機ボーイング747、コックピットは1人用に改良されている。

 本来の機体には存在しない格納スペースが在る為、旅客機というよりは輸送機のように見える。その格納部には後述する二機の車両が搭載されている。武装は不明。

 ファイヤーラダー

 ファイヤージャンボに搭載されたライドビークルの一機、梯子消防車をベースにしたデザイン、梯子車としての機能の他、梯子の籠部分に放水機が着いている。また、放水機は攻撃用の機銃としての切り替え機能もある。ダグベースから直接発進も可能でダグオン以外でも認証さえあれば操縦可能。

 ファイヤーレスキュー

 ファイヤーラダー同様、ファイヤージャンボに搭載されたライドビークルでトヨタ・ハイメデックをベースとしている。また、普通の救急車で言う寝台部分は簡易的な治療ポッドがあり、地球上の病気はある程度簡単に治療出来る。これまたラダー同様ベースから直接発進、認証によるダグオン以外の操縦も可能。

 

 

 

 

 

 

 現在までに登場したエデンの犯罪者達

 

 鬼の様な宇宙人

 エデンの囚人達の実質的トップ。

彼個人の目的は未だ不明な点が多い。

 

 道化師の様な宇宙人

 エデン囚人達の中で鬼の宇宙人に次ぐ位地にいる正体不明の宇宙人。

 

 妖精の様な宇宙人

 鬼とも道化師とも立場が異なるらしい宇宙人。子供の様な言動とは裏腹にエデンの何かを握っているらしい。

 

 甲冑の様な宇宙人

 道化師同様、エデンの監獄棟の1つを取り纏める宇宙人。姿以外の全てが未だ謎のベールに包まれている、口調は単語を区切ったかのよう。

 

 ガレプテン星人

 エデン西監獄棟を道化師に代わり取り纏める宇宙人。

エデン監獄の操舵も担当する。犯罪歴は不明、カイゼル髭がチャームポイント。

名前の由来はガレオン船と船長から、見た目のイメージはガオガイガーのペンチノンの体を木目調にしヒトの上半身を生やしたモノ。ヒトの方のイメージは単眼の機械化したサーヴァントのコロンブスと黒髭を足して2で割った感じ。

 

 ジェゲンガ星人

 会合後のエデン囚人達を出し抜き単独?で地球に侵入した宇宙犯罪者。男と女、両方の性別を持ち、分離するとそれぞれ意思を持った男と女になる。1つの時でも双方の意思はある。一人称は男がワタシ、女がわたし。

 男はメイル、女はフィメルという呼称で区別されている。

メイルはダグオンに倒された後、何故か復活、再びフィメルと暗躍する。元々は雌雄同体の種族が住む星の出身、同胞達の中でも取分け自尊心が強く、他の同胞を不完全と見下し星を発つ、後に他の星で己を完全に近付ける為、殺人を犯し投獄。擬態の際は現地の知的生命体の皮を剥ぎ被る手段を取る。

名前の由来は双子のジェミニと性別のジェンダーにドッペルゲンガー。メイルは男性を意味するメイルそのままから、フィメルは女性を意味するフィメイルを捩っただけ。ジェゲンガ星人の謎についてはスルガが出て来るまで伏せておきます。

 

 ドレスの女の宇宙人

 妖精と共に居た宇宙犯罪者。

特殊な趣向の持ち主らしい。犯罪歴は不明。

 

 序章と胎動編にてカットされた京都に現れた宇宙人

 サンドール星人、ザゴス星人、エレクトロン星人。

サンドールとエレクトロンは2代目、ザゴスは嘗ての群れから追放された者達が新たな女王を要した集団。

 巨大化、切り札など使う間もなく殲滅された。

 

 惑星蹂躙巨人ヘカトン星人

 個体名ギガンタース、遥か古の彼方、何処かの惑星で生まれた人工種族。ギガンタースは中でも特別強力な個体の一人。彼等により滅ぼされた星は数知れず、彼等自身も互いに強さを競い殺し合う為、種族の総数は少ない。ギガンタースは鬼や道化師、甲冑等同様監獄棟を支配する犯罪者の一人、ジェゲンガ星人からリークされた情報を元に地球に襲来、ダグオンと戦闘に突入する。

 感情が昂ると濁点が増える。

名前の由来はヘカトンケイルから、個体名の由来はギガント、タイタス或いはティターンから。

見た目は十戒のドロールと鎧の巨人を掛け合わせた物から腕を二本減らし、肌を黒くして髪が硬質化して角の様になったビジュアル。

 

 

 可奈美と姫和、沙耶香に襲い掛かろうとした肉人形

ジェゲンガ星人の手により放たれた、捨て駒の兵士。

その正体は擬態の為殺された人間達。

ジェゲンガ星人がエデンを発つ前に盗んだ薬品を使い混ぜ合わされ一塊の肉塊となりそこから人形となった。

 既に意思は無く、生前の最期の言葉『タスケテ』を薬の作用によって口にするだけの存在。

 

 ギガンタースの部下

 力こそ全てを掲げるギガンタースの下に付いてしまった憐れな犯罪者達、ギガンタースが彼等の監獄担当でなければこうはならなかっただろう。

 ギガンタースによって直接的な戦闘力を持つ者以外は冷遇される環境にある。輸送船のパイロットを勤めた者もそういった冷遇されるエデン内の軽犯罪者である。

 

 




 まさか新年早々に富田江がくるとは……、モバも颯がメダルだし頑張ろう。
 では次回、またお会いしましょう。


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幕間 エデンの囚人達

 どうもこんばんは?ダグライダーです。
何となく幕間を書いてみました。
 囚人達の話です。今回も新たにネームド囚人登場です。
 因みに鬼の囚人、甲冑の囚人、道化師の囚人、妖精も名前は考えてあります。
 ただ、彼等の名前は波瀾編からなので胎動編はではそれぞれの特徴呼びが続きます。


 

 ギガンタースがダグオン達によって打倒された頃、監獄エデンでは未だ会合が続いていた。

 「サテ今頃奴ハドウナッテイルカナ?」

「ギモンナノダガ、エンブンヲフクンダミズガジャクテンナラバヤツハスデニホカノワクセイシンリャクデシンデイルノデハナイカ?」

 ギガンタースの結末を予測する鬼に道化師が疑問を投げ掛ける。

 「遺伝子ニ刻マレタ本能ガ直感的ニ避ケテイタノダロウ、何ヨリ奴ガ蹂躙シタ水ノ惑星ハ地球ノ様ナ塩分ヲ含ンダ星ハ無カッタノモ大キイ」

「じゃあこんかいはどうして?」

 「長年ニ渡ル監禁生活、自分ガ後回シニサレル状況、己ガ格下ト思ッテイル者ニ出シ抜カレタ事実、ソレラニ溜マッテイタフラストレーションガ爆発シタノダロウ」

 

「笑止!見事なまでに自業自得よな!」

 

 新たに巨人を嘲笑するのは老人の声。

 「オヤ?随分ト遅イ参列ダナ、最初ニ地球ニ跳躍シテ以来カ?」

 鬼が声に皮肉気に返す、すると暗闇から新たに現れたのは燃え盛る蒼い炎、ヒトガタに見えなくもないそれは鬼の言葉にもカカと笑い飛ばす。

「元より儂らは何をしようが自由だろうて?現に儂が来るまでこの会合に参加していたのは特別官房を治めるお主と西の道化、南の単細胞、東の臆病者、そして我らがエデンの御印だけであったろうに」

 「アア、ダガソレモコレマデダ。君モコレカラハ参加シテクレルノダロウ?」

「ふん、まあ五月蝿い奴が消えたからな。此より儂も参列しようではないか!……して、何時までその喋り方を続けるつもりじゃ?お主」

 「ククッ……矢張バレていたか、まぁ、別段隠していたつもりは無かったがね」

「訂正!急務!」

 蒼い炎の指摘に流暢な共通語で話す鬼、そこへ先程臆病者呼ばわりされたのが気に食わないのか甲冑が蒼い炎を批難する。

 「…だそうだ」

「カカッ!臆病者は事実であろうに、何を憤る若造?」

「無礼!侮辱!否、否!臆病者…否!」

「これは異なことを、お主もしや「そこまでにしてやってくれ」…む?」

 「あまり他者の素性を暴くものでは無いよ、メレト」

「……良かろう。それよりお主、次の南の統括者は如何にする?」

 鬼より窘められる甲冑と蒼炎、メレトと呼ばれた蒼炎は思う事がありながらも不在となった南の監獄棟の統括する者をどうする気かと訊ねる。

「ソウダナ、ワタシモキニナル」

「不要!解散!迎合!増援!」

「え~?!もったいないよー!あのころしあむけっこうすきだったからのこそう?」

 その話題に道化師が同意を示し、しかし甲冑は残った監獄の統括者達の下に着けるべきと反論し、妖精は娯楽の為、残す事を望む。

 「何、万が一の為の代理さ」

「ソレハ、ドチラノイミデ?」

 「好きなように解釈すると良い」

「………」

「ヤレヤレ…」

「ふふ、もうこたえなんてわかりきってるくせにひどいひとだなー♪」

「カッカッカッ!」

 「さしあたっては、地下牢獄の彼女も呼んで議題を推し進めるべきかな」

 新たな異形を交え、エデンはより一層脈動するのであった────

 

 

 

 

 

 

 エデンの囚人を執り纏める鬼、その彼はもう1つ特別官房と呼ばれたエデン囚人の中でも各監獄統括者と同様に凶悪な囚人を収監している牢獄の統括者でもあったのだ。

 そして西を治める道化師、東を治める甲冑、北を治めるメレト、南を治めていたギガンタース、地下を治める別の囚人、そして妖精…。

 嘗ては七人、そして既に六人へと数を減らした統括者達はしかし、仲間意識などあるわけでは無し互いに暇潰しの玩具程度の認識と言っても過言では無い。

 ダグオン達はこの凶悪な異星人達と果たしてこれからどう戦って行くのだろうか……。

 





 以上幕間でした。
ところで度々前書き、後書きでも話題に出してますが、このサイトで天華百剣知っていたりプレイしてる人ってどのくらいなのかなと思ったり、まぁシンデレラ百剣のコンセプト的には知らなければこれを気に知ってほしいかなと書いたので……はい、これはとじダグですね関係無かったですね申し訳ないです。


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第二十四話 死闘決着。新たなる戦地へ。

 こんばんわァ…。
遅れましためちゃくちゃ遅れました。
 唯でさえ牛歩のごとき執筆速度なのにここまで遅くなるとは……。
 しかしやっと納得出来る形で纏まったので投稿。
最近は疲労で少しづつ書きながら眠っていたので申し訳ございません。


 

 "前回迄の刀使ノ指令ダグオン"

 融合合体を果たし、ダグファイヤーとなったファイヤーエン。エデン囚人の統率者の一人ギガンタースを仲間と共に倒す事に成功する。

 だが、彼等には次なる戦いが待っているのだった。

 


 

 ━━鳥取砂丘

 巨人を倒し、新たな野次馬が集う前に砂丘から引き上げるダグオンの若者達、ダグファイヤーは融合合体を解かずシャドージェットの背に乗っている。

 『悪いな、まだ戻り方もよく解んねえし戻っても俺だけ陸を走らなきゃいけねえからさ』

 「……気にするな、今回の功労者を無下にはしない…」

リュウの表情を伺い知る事は出来ないが、その声は特に不愉快を感じている訳では無さそうだ。

 「しかし、強敵だった…。守れた筈の者も守れなかった……」

 「気にスンナ…ってのは流石にムリだよな、オレもまだちょっとな……」

 「彼等は確かに無遠慮かつ不用意でした、ですが目の前で実際に命を落とされると……心に来るものがあります」

 カイは今回の戦いを振り返り、死した人々に対し罪悪感を抱く。

 普段はお気楽気味なシンもこの時ばかりは何時もの調子の語尾が弱々しくなっていく、ヨクもまた犠牲となった彼等にマスク越しに沈痛な面持ちで言葉を溢す。

 『一番責められるのは俺だ…。俺がもっと早くこの姿になってりゃあ、あのヘリだって助けられたんだしよ』

 「……どうにせよ、既に起こってしまった事を嘆いたところで死が無かった事にはならない」

 ダグファイヤーの後悔にリュウは彼なりの言葉で発破を掛ける。

 「そうだな、我々が悔やんだとして彼等は帰っては来ない。それよりも、後の面倒を避ける為とは言えあの巨人が乗って来た船の残骸を放置する羽目になってしまった事が問題だ」

カイの言う通り、砂丘にはギガンタースが乗り付けて来た武装輸送船の残骸が放置されていた。

 恐らくは近くの警察ないし自衛隊等の政府の回し者が回収するであろう事は見てとれる。

 その火災もある程度鎮火し、細長い煙が立ち上る残骸跡に不自然に蠢く液体の様な塊が空を行くダグビークルを見詰めていた事は彼等の知るよしも無い事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━伊豆山中某沖付近

 さて、ダグオン達が砂丘で死闘を演じていた頃、可奈美と姫和はFineManの指定した合流地点である石廊崎へ向かって通りがかりのトラックに乗合いしサービスエリアに降り立ち、そこで覚悟について一悶着、更に刀剣類管理局より刺客として長船の2人の襲撃でもう一悶着あったのだ。

 長船の2人───益子薫、古波蔵エレンの両名は見事なコンビネーションで可奈美を追い詰め窮地に陥らせる。間一髪姫和が助けに入り両者互角、しかし長船の2人組はS装備を持ち出す…が、可奈美達が逃亡を選択した為に無駄骨となる。

 また、親衛隊が出動と同時に高津雪那が捜査責任者を外されるもS装備空輸強襲コンテナが射出が露見。雪那が独自の判断にて捜査を続行。

 そして現在、薫エレンの両名からの逃亡と山中を降りしきる雨から逃れる為に近場にあった無人の商店に身を潜めて、改めて可奈美は姫和に感じた剣の重さに対する思いの己の覚悟『姫和ちゃんの目的を守るよ』と宣言したのだった。その覚悟を聞き姫和は全てを語り出す。

 

 始まりは母に宛てられた手紙にあった、嘗て20年前にあった未曾有の荒魂災害"相模湾岸大災厄"──江ノ島に現れた史上最悪とされる大荒魂を折神紫を筆頭として現在の伍箇伝学長達で編成された特務隊が討伐をした、そしてその中に姫和の母も存在していたのだ。しかし、その記録は世間には知られてはおらず歴史の闇に消された。世界の存亡を賭けた戦いに大荒魂を唯一滅ぼす手段を持っていたのが彼女の母であった事、しかし完全には討伐出来ず折神紫に成り済ました事、何より刀使としての力を失い年々弱っていく母が、自らを責めながら息を引き取った事を彼女の死を看取った姫和は母の仇であり母がやり残した務めを代わりに果たすのだと誓った──

 「…お前の言う重たさの半分は、刀使としての責務だが……半分は私怨だ。だから付き合う必要は──」

 「そうだね」

怒りかはたまた悔恨か…複雑に入り雑じった感情を手紙を持つ手に表す姫和の手に可奈美は手を添え告げる。

 

 「重たそうだから半分…私が持つよ」

 

 

 

 雨上がりの山の麓に幾つかの大きなのテントが張られている。

折神紫親衛隊を始めとした特別祭祀機動隊のテントである。現在此処には燕結芽を除いた3名の親衛隊が存在している、山の出入口を封鎖し一切の侵入または脱出を防ぎ、親衛隊自ら逃亡した反逆者を討たんとする為だ。

 「ちょうど雨が上がりましたわね」

空を見上げ寿々花が呟く、既にこの山中に反逆者が潜んでいる事は目撃証言から裏が取れている。

 真希が山を見据え宣言する。

 

 「さぁ…山狩りだ!

 

 

 

 雲間から月が覗き始めた空を見て姫和は可奈美を伴って再び動き始める。

 「行くぞ可奈美、なるべく早く指定された合流地点を目指す」

 「うんっ!」

目的地を目指し歩き始める2人…とその後ろから声が掛かる。

 「や~~~っと見つけマシた~~~

 

  「「!?」」

こんなトコロで仲良く雨宿りしていたのデスね…

 「へっくしゅ!」

再び現れるエレンと薫、その声は雨に濡れた為か震えが混じっている。薫など頭に乗せたねね共々くしゃみしている始末だ。

 「…さっきの!?」

咄嗟に御刀に手を掛ける可奈美達に対し、不適な笑みを浮かべ懐に手を差すエレン達、一瞬の沈黙の後長船の2人組がいち早く動く。

 瞬間鳴り響く破裂音、呆気にとられる可奈美と姫和。

 「「はぁ?」」

 「お前ら合かーく」

 「ウェルカム舞草~!私達はアナタ達を歓迎シマース!」

「ねっねー!」

 先程までの剣呑な空気など何のその、呆気にとられたままの2人を尻目に呑気に盛り上がるエレンと気だるい顔の薫プラスはしゃぐねねに姫和は激昂する。

 「ふざけるな!邪魔をするというのなら…」

 「ダイジョーブ♪そんなに急がなくても石廊崎は逃げマセンよ」

 エレンの発した一言に驚きより警戒する姫和、可奈美は舞草という聞き覚えのない単語に首を傾げる。

 「何故私たちが石廊崎に向かっていると知っている!?」

 「私達"舞草"は折神紫率いる変革派に抗い、御刀と刀使の在るべき姿を取り戻す為の組織デス」

 「折神家に抵抗する組織?じゃあ姫和ちゃんと一緒って事…?」

 「YES!目的は同じデスね」

エレンの言葉を聴きつつも警戒は弛めない姫和、彼女はエレンに対し探りながら訊ねる。

 「……舞草…、もしかしてFineManと言う名に聞き覚えはあるか?」

 「あのアバターは趣味が悪いからやめろといつも言ってマス」

 姫和の質問に苦笑しながら返すエレン、明らかに関係者である。

 「やったね姫和ちゃん!味方だよー!!」

 それから、改めて自己紹介を始めるエレンと薫そしてねね、可奈美は単純に可愛いと評し姫和は荒魂であるねねを警戒し折神家と同類だと糾弾するもエレンが出したスペクトラムファインダーの反応、そして姫和のスペクトラム計の反応も無い事から無害である事が証明され、同時に益子の家に由来する守護獣であると説明を受ける。

 「…っ、だからと言って「ヒヨヨンは頭が固いデスね~」ひよよん?!」

 「くすぐった~い!」

エレンによって突如名付けられるあだ名に困惑する姫和を横に可奈美に飛び付き甘えるねね、端から見れば少女と小動物の可愛いらしいやり取りだろう……ねねの顔がイヤらしく緩んで無ければ。

 「そうそう、ねねはビッグなバストが大好きなのデス」

 「そして将来、胸のでかくなる女の可能性をかぎわける」

エレンと薫の説明を耳にしながらねねを見る姫和、ねねが視線に気付き姫和を……より正確には姫和の胸を視る。

「ねー…」

 「は!?

 明らかに期待外れだと言わんばかりに顔を反らすねねに奥底から声を出す姫和。

 「やはり斬る!」

 「もうっ!姫和ちゃんに失礼でしょ」

と可奈美が一番失礼な事を言っているが和気藹々とした空気になり始めたその時、ねねが何かを感知する。

 「どうした?ねね」

 「荒魂!?囲まれているぞ」

森の中に向かって威嚇するねねに訊ねる薫に姫和はスペクトラム計を見やり警告する、エレンもスペクトラムファインダーを見るが反応は無い。

 「コチラは反応無しデスか、折神家から支給された最新式なのデスけどね…」

 「来るぞ!」

その言葉と共に森林から小さな蝶の様な荒魂が大量に群がって襲ってくる。

 たちまち分断される4人、薫は森に消えたねねを追い可奈美と姫和はそのまま荒魂に追われ、エレンは木の上に退避し荒魂を観察思案し始める。やがて何かを思い付いたのか手を合わせ納得する。

 「…決まりました、この手で行きマショウ!」

 

 

 

 

 一方、ねねを追い山中奥深くまで来た薫は蝶の荒魂によって崖から落ちかけるも祢々切丸を刺し何とか助かる。

 「正直、舞草なんてエレンに付き合って入っただけだったが……俺も少し本気出すか」

 薫を見付けた蝶荒魂が襲い来る、薫は御刀祢々切丸を振り荒魂を蹴散らす。

 そうしてより奥へ進むと人影を見付ける薫、影の正体は親衛隊第三席皐月夜見、夜見は自らの手首を切り荒魂を産み出す。

 

 「とんでもないなぁ。人間が荒魂を作った、いや、生んだ…。お前、確か親衛隊のやつだなぁ。悪趣味が過ぎるぞ、折神家」

「親衛隊第三席、皐月夜見。なるほど。あなたは舞草の人間のようですね」

「知るか! ただ、お前のペットに俺のペットが世話になった。その借りを返すだけだ」

「そうですか。どうぞご随意に。私はただ、壊すだけです」

 片や荒魂と共生を代々重ねて来た一族の刀使、片や自らにノロを注入し使役する刀使、夜の山に荒魂と深い縁を持った2人が激突する。

 目の前に居る敵に夜見は新たに荒魂を産み薫にけし掛ける、薫は鬱陶しそうに御刀を振る。

 夜見の血液より産まれる小型の蝶は群れが1つの獣の様に襲い来る。傷付いたねねを気にしながら戦う薫は徐々に劣勢になっていく、そこを荒魂は容赦なく襲う、間一髪その時──

 

 「ブリザァアアドハリケェェェン!」

 「「!?!」」

突如冷気の暴風が荒魂を凍てつかせる、2人が暴風の現れた先を見れば木々の間を歩いてくる白い戦士、ウイングヨクが姿を現した。

 「まさか、親衛隊がこんな場所に居るとは思いませんでした。それも反逆者では無さそうな刀使と戦う現場に出会すとは……」

 「お前……」

 「貴方は……?」

 「ダグオン、ウイングヨク故あってそちらの長船の刀使に加勢させて頂きます」

 「マジか?」

 予想外の援軍…それもヒーローの様な格好の人物に薫の心のテンションは爆上げになった。

 夜見は新たに増えた予想外の敵に心中穏やかではない。

 「出来れば荒魂を中心に相手にしたいので親衛隊の方を任せられますか?」

 「お、おう。どのみちコイツには借りがあるし、任せる」

 ヨクにより次々と駆逐される蝶の荒魂、数が減るも薫の周りはまだ多くの蝶がいる、それを見た薫が叫ぶ。

 「あー、超うざい!一瞬いや一秒でかたずける!」

そう決意し祢々切丸を大きく振りかぶる。

 「キエェェエエエエエッ!!

雄叫びの如く裂帛の猿叫を上げ夜見に向かって叩き付ける。その一撃は正しく夜見を捕らえ断ち切る、かわす間も無く写シを両断された夜見は一緒に絶ち切られた岩に背を預け薫に向け言葉を放つ。

 「他の親衛隊の方達を私と同じとは思わない事です」

そう言い残し、僅かに回復したのだろう迅移で撤退した。

 「退いた様ですね、良かった」

 「あー、疲れた…ねね無事か?」

「ねー…」

 「大丈夫ですか?(……この小動物は荒魂?!興味深いですね)」

 「あー、悪い少し寝る、暫く守ってくれ(ついでに後でサイン貰おう)」

 「え?えぇぇ!?」

 

続く

 

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ウイングヨクです。長船の小さな刀使を助けた僕、その状況に至るには少し時間を戻します。

 ええっ?!サンプルの一部が手に入る!?

解りました、手掛かりは1つでも多い方が有難いです!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 山狩りの夜、現れる戦士。

 




 
 いやはや、遂に薫が生ダグオンと接触しました。
次回は何故ダグオンが山奥に現れたのかです。
 また遅れる事があるかもしれません。
では次回でお会いしましょう。


転職すべきか…


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第二十五話 山狩りの夜、現れる戦士。

 こんばん…いえ、おはようございます。
まぁ、私はこれから一旦寝て昼から仕事なんですけどね。
 それにしても今度のとじともコラボは超電磁砲ですか、どんなシナリオとなることやら──楽しみです。
 今回のあらすじを担当したのは管理者ζことゼータ。
彼女?の担当世界は所謂異世界転移モノ系、彼女?の性格はご覧の通りとなります。シータ氏の胃は大分ピンチ。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 ちょーやばい巨人を倒して基地に戻る系なダグオンのメンズ達。んでちょい戻って山ん中で逃げてるかなみんとヒヨヨンにエレンっちとかおっち合流したじゃん?したら、親衛隊が来てるしマジヤバい!かおっちのねねちんがピンチ!?でかおっちもピンチ!な時にウイングヨク登場で夜見ちゃんメチャ涙目、夜見ちゃんソッコーで逃げて、かおっちはおねんね、翼沙きゅんコンワクゥ♪

 てか、沙耶香ちゃんはよ

以上、今日の前回のあらすじ担当管理者ゼータちゃんでした♪

 

 貴様?!何故アレにあらすじを任せたァ!アルファアア!! 

 


 

 夜見を退け、そのまま倒れ深く眠りに付く薫とねねを眺めながら、ヨクはダグテクターのセンサー感度を最大にしながら周囲を警戒する。

 それにより聴こえてくる音は此処より下方で行われている戦闘の音、気にはなるが薫に守ってくれと言われたのでヨクは律儀に薫の側に立ちながら思案する。

 これだけの戦闘ならば仲間達の誰か或いは自分以外の4人は彼方に居るだろうと結論着け、ここに至るまでの経緯を思い起こすのであった───

 

 

 空を駆ける四機の飛翔体、それは死闘を終え帰還せんとするダグビークルであった。

 シャドージェットの背には未だにダグファイヤーが乗っている。

 「さて、敵は倒した。帰還後は管理者を問い詰めるだけだ」

 ダグテクターのマスクの奥で決意の籠った眼差しをするカイ、アルファは実体こそ無いがただでは済まないだろう。

 「オウオウ、燃えてんなカイのヤツ」

 「仕方無いのでは?あの時の意味深な発言は僕も気になっていますし」

 『あれはタイミングがなぁ』

シンの言葉にヨクが出現間際のアルファの発言を思い出す、ダグファイヤーもそれに同調する様に頷く。

 やがて静岡県上空に差し掛かり、ダグファイヤーがリュウに降ろす様に促す。

 人目の無い広い場所を見付け、地上へと降りたダグファイヤーは幾ばか振りにファイヤーエンとファイヤーストラトスへと分離する。

 「お~!戻った。いやぁ、何か変な感じだったぜ」

 「……俺達も何れ味わう事になるか…」

 「ま、取り敢えず一息つけんジャネ?」

 「そう…だな、確かに少し休息を挟むべきか」

 「ダグベースに連絡を取りましょう、とは言っても彼等ならこちらが勝利した事を知っているかもしれませんが…」

 体の調子を確かめる様に腕を前後に回すエン、リュウはその様子をしげしげと観察する。

 シンはそれを見ながら期せずして小休止がとれる事をカイに進言するとカイも己と皆の疲労を鑑み了承する、そこでヨクがアルファとブレイブ星人の待つダグベースへと連絡の為、通信を入れる。無論、ヨクの言う通り彼等はギガンタース撃破の結末を既に知り得ているのだが。

 ≪やぁやぁ、ダグオンの諸君。強敵撃破おめでとう!≫

 通信を繋げて聞こえた第一声がこれである。

 「……呑気だな」

 「つーか、やっぱ普通に知ってんのな…」

 「丁度良い、小休止がてら聞かせて貰う。あの発言の意味を」

 アルファが早々に対応した事で好都合と捉えたカイが出撃で聴けず仕舞いであったサンプルの件を話題に持ち出す。

 ≪あー、うん、アレね。何て言うかさ…、前に説明したよね?君たちをダグオンに任命した時に≫

 「立体交差平行世界ですね、ではサンプルと言うのはもしや……?」

 ≪いぐざくとり~♪要は刀使が存在する可能性のある世界の幾つかで今回の様に折神紫ちゃんを暗殺しようとする事件があったのさ≫

 「「「……(紫ちゃん……)」」」

 「貴様の御当主の呼び方は兎も角、ならばその事件に関わりのある者の中に我が妹も居たのか?」

 「彼の言い分を鑑みるに間違いないかと」

アルファの紫に対する呼称に些か反応しずらいエン、シン、リュウをよそにカイが疑問を挙げ、ヨクが補足する。

 ≪んー、まぁ世界の流れがそれぞれ微妙に違うから結芽ちゃんは独りっ子なんだけどね、他にも兄弟姉妹が居たり居なかったりする世界もあるし≫

 割りとざっくばらんな説明をするアルファ、因みにエンとシンは最早話半分で聞いている。リュウも所々をスルーする事に決めたようだ。

 「成る程、大まかにではあるが…見えて来た。つまりは結芽はどの世界でも病に苦しんでノロを投与されたのか……で、あればサンプルとは──」

 「………燕結芽の死にまつわる情報か…?」

 「恐らく他にも親衛隊が投与されたノロのデータ等もあるはずです」

 ≪わぁ、話はやーい。いやうん、説明を細かくしなくて助かるけどね、とは言え悪魔でも他所の世界の話。この世界はこの世界で本人の情報がいるし、出来ればこの世界のノロ…それも投与前か、或いは既にかなりの投与をされた被検体の情報も欲しいかな≫

 触りの説明だけで大筋を理解したカイと、その様子から察したリュウ、更に仮説を組み立てたヨクがおおよその事情から結論を出す。

 「なぁ、分かるか今の話?」 「ア?アー、まぁ、大体は?

 「まじかよ?!」

後ろではエンのフリにシンが見栄を張って答えエンがショックを受けていた。

 ≪そんな訳で朗報?うん、朗報です!なんと!この近くで親衛隊が例の2人を追って出動してます。ダグベースからのセンサーで捉えた映像解析によれば、数は3人≫

 「3人……結芽の性格を考えて顧みるに…現場に居るのは獅童、此花、皐月か?」

 ≪正解!?凄いね戒将くん。つまりは彼女達とどうにか上手く接触すれば、サンプルが手に入るって寸法さ!その為にウイングライナーに採血アンプルを積んだからね≫

 アルファの言葉に急ぎウイングライナーを確認に行くヨク、その言葉通りウイングライナーの積載スペースに銃のような注射器や保管用のジェラルミンケースがあった。

 「いつの間に……!?」

 驚き固まるヨクの後ろ姿を確認しカイはアルファに問う。

 「随分と用意が良いな、矢張貴様は我々の知らない事件も熟知しているのだな」

 ≪……熟知って言うか、おおよその世界で大体は結末が一緒だからね……稀にifもあるけど。そういう意味じゃ、この世界は全く不透明かな≫

 「…………だが、今の所は貴様の知る歴史通り。違うか…?」

 アルファの返答に対し熟慮しながら聞き返すカイ、暫くは彼とアルファの問答が続く。

 

 

 「結局どういうことだよ?」

 蚊帳の外のエンが頭に疑問符を大量に浮かべる。

 「…要は管理者とやらの言う世界とは無数に存在すると言う事だ」

 「ついでに言えば、僕達と容姿性格思考が同じでありながら、僅かに違う選択をした自分がいる。それが平行世界です、そして幾つかの平行世界と更に隣あった全く別の歴史を辿った世界を時間的概念を含め、交わる場がある事を表すモノが立体交差平行世界だと思って下さい。漫画等であるでしょう?歴史上の偉人が女性だったとか?」

 「「なーる」」

 正確には少し違うがエンとシンに分かりやすく理解させる為、サブカル染みた例えを出すヨクに2人は揃って頷く。

 事実、織田信長はどの歴史でも大抵本能寺しているので、後の結果が死んでいようと生きていようと、その事実だけは変わらないのだ。

 「それで、貴様は我々に何をさせたい?」

 ≪石廊崎に向かう可奈美ちゃん姫和ちゃんを追う親衛隊を巧い事妨害してね♪≫

 そう言い残し、通信を切り上げるアルファ。

 「簡単に言ってくれる。つまりは反逆者達を助け、親衛隊の血液とあわよくばノロを回収してこい。そう言う事か」

 「そりゃまたメンドーなこって」

アルファの意図を察し、頭を振るカイにシンもやれやれとばかりに肩を竦める。

 「ですが、確定情報とあれば好都合でもあります。隙を突き何とか血液、或いはノロのアンプルが手に入れば、妹さんの治療はまず間違いなく成功するでしょう。」

 「……不確定な平行世界のサンプルだけよりは成功率が違うと言うわけか…」

 ヨクはアルファの案に賛成の意を示し、リュウもそれに納得する。

 「どうすんだ?あんたが決めてくれカイ」

エンに請われるカイ、果たして彼が出した決断はアルファの提案に乗ると言うモノであった。

 「知れた事、我々はこれより貴重なサンプル情報入手の為、親衛隊の反逆者追跡に介入する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───こうして、ダグオン達は件の山に現れたのだった。そして手分けした結果ヨクのセンサーが捉えたのは薫と夜見の戦闘。

 薫の劣勢を見て技を放ち、加勢。薫が夜見を撤退に追い込んだのであった。

 「……………一向に起きる気配がありませんね、とは言え放って皆さんと合流するのも憚られますし、暫くはこのままかな」

 端から見れば何とも不可思議極まり無い光景がそこにあった。

 

 

 ヨクと薫、夜見との接触から少し時計の針を戻す。

赤羽刀南无薬師景光の調査の為伊豆近辺に来ていた調査隊は反逆者、親衛隊と同じ山に居た。

 突如現れた荒魂に対し戦闘を開始する彼女達、七之里呼吹はスペクトラムファインダーに反応の無い荒魂に何かを察したが、最終的にそんな事はどうでもよいと言わんばかりに暴れ、荒魂を駆逐する。

 ある程度、荒魂を討伐した後エレンと薫の2人に先に行くよう促す智恵、彼女達は互いに同じ組織に属する者としてのやり取りをし智恵は足止めを引き受ける。

 そこへ現れる獅童真希、此花寿々花の二名。

反逆者の可奈美達を追って遭遇した様だが、調査隊に美炎と智恵の存在を認め、在らぬ言い掛りを着ける。

 寿々花が口を挟むも苛立った様子を隠さない真希に調査隊は口を閉口する。そして寿々花が言う。

 「仕方ありませんわね。ま、どうにでもなりますから止めはしませんけど…」

 その言葉を聞いた真希が嬉々として御刀"吼丸"を調査隊に向け告げる。

 「なら黙ってなよ。今回の山狩り、出ている命令は確保じゃなく駆除だ。丁度良いからお前達で存分に遊ばせてもらうよ」

 最早、公ではなく私という欲求に従って動く真希、寿々花は呆れながらも止める事はしない。

 狼の如き殺気と獅子の如き勢いを纏った真希の刃が調査隊に襲い掛かる───その時。

 

 『Garlooo!!』『Golrraa!』『Cooorrruuu!!』

突如響く獣の様な怒声、真希と調査隊の間に割って入った巨大な2つの影と空を舞う1つの影。

 「っ!何だ!?」 「何事ですの!?」

 

 「何?なになに!?」 「何だアレは…!?」 「狼?」 「虎だぁ?」 「空に飛んでいるのは鳥…いえ、鷹かしら」

 現れた三匹…否、三体の正体。それはメカメカしい獣。緑の狼、鮮やかな黄色と黒の縞模様の虎、蒼い鷹の三体であった。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 オッス、アタシは七之里呼吹。予告だぁ?ちっ、メンドクセ。

 アタシらの前に現れた謎のメカ獣ども、なんか勝手に親衛隊のやつらを相手してるし訳わかんねぇ。

 別にどうでもいいけど、取り敢えず誤解は解けたらしいアタシら。はぁ?反逆者討伐の手伝いをしろォ?

 アタシは荒魂ちゃんと戦いたいんだっての!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 機獣見参!問われる真意。

 獣の次は忍者かよ!?

 

 




 胎動編、融合合体はエンのみですがガードアニマルを登場させないとは言ってない!
 と言う訳で彼等も立派なダグオンの戦士ですので登場させました。無論、ガードアニマルが居る以上、シャドーリュウも居ます。
 ガードアニマルの鳴き声どうしようかが一番悩みました。
 彼等はダグオンの正体がいずれバレた時には清香ちゃんは当然として、沙耶香ちゃん、結芽ちゃん、後ついでにねねとも仲良くして頂きたい(願望)


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第二十六話 機獣見参!問われる真意。


 遅れましたが投稿です。ダグライダーです。
私事でごたついていたので中々、進まず、合間を縫って何とか投稿出来ました。
 2月は暫くごたつきが続くので、遅れる事が多くなりますが今後ともご愛顧お願いします。


 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 薫と夜見の戦闘に介入したウイングヨク、夜見を退けた後、眠りに着く薫を見守りながら此処に至るまでの経緯を思い出す。

 管理者アルファより語られるこの世界の理、己の暮らす世界の事実を前にダグオンの若者達は新たな決断を下す。

 一方、伊豆山中にて現れた荒魂を討伐する調査隊の前に立ち塞がる親衛隊の二人、在らぬ因縁を前に一触即発となったその時!

 


 

 日も沈み、空には夜の帷が広がる山奥にて繰り広げられる光景、それは彼女達にとっても未知の出来事でありまた、何故こんなことになったのかと思わずにはいられない状況でもあった。

 調査隊の面々にとっては仲間が反逆の片棒を担いでいると言う、言い掛かり甚だしい理由から襲撃してきた親衛隊をやむ無く迎え撃ち話を聴いて貰う為構えんとした時。

 そして親衛隊──獅童真希にしてみれば、忠義を捧げる折神紫に牙剥く愚か者に誅伐を喰らわせる山狩りで偶然、以前刃を交えた反逆者に通じている疑いのある安桜美炎、瀬戸内智恵の両名を含む不審な刀使の集団に八つ当たりと準備運動を兼ねた戦いを仕掛けた瞬間──

 

 彼女達の間にいきなり現れ、割って入った存在は今までに見た事もない巨大な獣、それも命ある存在ではなく明らかに人工のモノであろう鋼鉄の巨躯を持つ獣が現れ、調査隊を庇い守る様に、そして親衛隊の二人に警戒する様に唸る。

 

 『Gaullllll!』『Guooo』『Cuorr…!』

陸と空、双方から此方に何時でも飛び掛からんばかりの三匹…否、三機の機獣を前に真希は先程の態度が嘘の様に困惑していた。

 「…な…っ一体コイツら何なんだ?!」

彼女とて今までに数多くの荒魂を討伐せしめた熟練の刀使ではあるが、流石にこの様な経験は無い。

 相方である此花寿々花も当惑している。獣越しに調査隊の面々に視線を投げれば、彼女達も理解が追い付いていないのか驚いている様子。

 「っ!寿々花ぁ!」

 しかし腐っても親衛隊第一席、一早く意識を切り替え御刀を向ける先を調査隊から謎の獣に変える。

 真希が斬りかかったのは緑色の狼"ガードウルフ"、如何に未知の存在と言えど、御刀に斬れぬ物は無いと断じ力に任せ吼丸を振り下ろす。

 

──カーンッ!

 

 「……は?」

山中の森に響いた空しい金属音、それは斬るどころか、傷さえ一つ無く、あまつさえ刃を弾くという結果。

 流石に真希と言えども間抜けな声を出してしまう。

御刀吼丸──源氏に連なる宝刀に膝丸を始めとして様々な名を持つとされた御刀をまるで、鉄パイプを弾くかのような音を立て無傷のまま動かぬガードウルフ。それも当然でもあろう、何せ世界が違う。

 

 嘗て此処とは別の地球を守る為に戦い、数多くの侵略者を葬って来た勇者達の装備であり仲間であった彼と同朋のガードアニマル達はこの世界にて再び使命を果たすに辺り、新たに強化を施されている。

 いくら御刀が特使な金属珠鋼を使って特別な工程によって打たれた物であっても、相手は広大な宇宙に巣食う犯罪者達と戦う為に生み出された人類では未だ到達をなし得ぬオーバーテクノロジーの塊である上に()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()のだから傷付かぬ事の方が当たり前なのだ。

 

 『GAaaaaaa!』

咆哮と共に真希に向け片方の前脚を横払いに振るガードウルフ、彼女がギリギリ避けられる程度に加減を加えてあるが、無論それを彼女は知る由もない。

 「っ…!一体、何なんだ!?コイツらは!」

真希が自棄糞気味に吠える。

 「少なくとも、荒魂でない事以外私にも解るわけありませんわ」

 寿々花とて未だ混乱は治まらないが真希が感情的な分、幾ばかは冷静になっていた。

 

 「何が起こっているというの……」

一方、調査隊の者達も目の前で繰り広げられる光景に理解出来ないでいた。

 「ええっと…あのデッカイ狼と虎と鳥は私達の味方なのかな?」

 美炎が慎重に言葉を探しながら隣に居る智恵に訊ねる。

 「それは……解らないけど、あの狼達は私達を守る様な位置取りをしているのは確かね」

 「加えて、親衛隊にも出来るだけ危害を加えないようにしていますね」

 智恵の見解にミルヤも同意し更に機獣達の意図を察する。

 「なんでもイイケドよォ、結局アタシらはどーすんだ?」

 「無論誤解を解いて貰います」

最初こそ驚いていた呼吹も三機が此方に対し敵意が無いことを知ると、途端に何時ものペースに戻りミルヤにこの状況をどうするかと問う。

 因みに、ガードウルフ、ガードホークが親衛隊を牽制する中、ガードタイガーは清香の近くで彼女を守る様に側に居る為、清香が少々怯えているのであった。

 「ひぅ…!」

 『………?』

無論、タイガーに悪気は無い。しかしだ、考えてみて欲しい、いきなり現れた未知の巨大存在が自分の近くに居る、しかも御刀を平然と弾き見た目は大型の肉食獣……怯えない方がおかしい。

 まぁ、彼等は主人からの命を実行し、尚且つ彼等の敵は宇宙から来るエデンの犯罪者達なので、彼女達を攻撃する必要が無いのだ。ウルフ、ホークの牽制も悪魔で刀使である真希と寿々花を害そうとするものではなく、リュウから仰せつかった命令に従っての行動である。

 

 やがて、鼬ごっこのような攻防が続き、親衛隊が攻めあぐね辟易し始めた頃、見計らっていたかのように新たな人物が現れた。

 「……どうやら、少しは話を聞ける状態になった様だな…」

 「貴方は!?」

 「え?だ、誰?!忍者!!?」

 「いきなり現れたぞ!?」

 「でも待ってどこか見覚えが……」

 「えっ…!(兄…さん?)」

 ミルヤは現れた人物に見覚えがある為に驚き、美炎は全く見知らぬ為声を上げ、呼吹は影も形も無いかのように現れた事に眼を剥き、智恵はファイヤーエンを見た時の事を思いだし、そして清香は己の近しい大切な存在を頭の片隅に浮かべていた。

 「くっ、新手か…!」

 「次から次に…何なんですの!?」

これには親衛隊の二人も参ったのか、焦りを滲ませる。

 しかし、現れた人物──シャドーリュウは彼女達の敵愾心など異に還さず淡々と告げる。

 「……本来ならば、此方に戦闘の意思は無い…。だが……お前達は彼女達に対し、明かに殺意を込めた刃を向けた…故に、介入したまで………」

 「だが、そこの二人…安桜美炎と瀬戸内智恵には反逆者の仲間である可能性がある。二人と共にいる者達も同様にだ!」

 機獣達に水を差され、多少周囲を視られる様になった真希がリュウに叫ぶ。

 

 「待って下さい!我々は各学園の学長レベルからの正式な命令で動いている、伍箇伝直属の特務部隊です!折神家に!いえ!綾小路武芸学舎の相楽結月学長に確認を!確認をお願いします!!」

 話が通じる今を好機と見てミルヤが必死に訴える。

そこへ美炎も続けて抗議する。

 「本当ですって!一昨日に勝手な事をして見逃してもらう替わりに、この部隊に着任……編成されたんです!!」

 この訴えには流石に真希も面をくらい冷静になる。

 「………そうなのか?」

真希の問いに寿々花は呆れながら説明を始める。

 「だから止めましたのに……あの子が言っている事は本当ですわ。私達の出立前に、高津学長からも、赤羽刀調査する為の部隊だと、事前連絡がありましてよ?──そうですわよね、七之里呼吹さん?」

 そのまま呼吹に話を振る寿々花、呼吹は苦い顔をしながら答える。

 「だから最初からそう言ってんだろ……」

それを見た真希は釈然としない顔ながらも一応の納得をしたようだ。

 「分かった…。物足りないけど、ここまでにしておこう。さあ、五人とも来るんだ」

 御刀を納め真希は調査隊に同行を促す。

 「どこへです?」

美炎は真希の態度に眉を潜めながらも聞き返す。

 「この近くに反逆者達が潜んでいる。その為の山狩りに人手が欲しい」

 

 「……誤解は解けたか、ならばこの場は失礼させて貰う…」

 一連の遣り取りを見届けたリュウは、一瞬清香の方を見やり、この場を去ろうとする。

 「お待ちなさい!これだけの事をして貴方は只で帰れるとでも?」

 寿々花はリュウの帰還を許さないとばかりに声を掛ける。しかしリュウは彼女に対し冷たく返す。

 「……今のお前達では、決して()()()()()()()()()

 「なっ……「…万が一仕掛けて来るのであれば、容赦はしない…!」っくッ…!」

 明かに謎の技術を使うであろう存在に、勝てないと言われ絶句する寿々花、そのままリュウは襲い掛かって来れば容赦しないと忠告を残し消えていった、同時に先程までこちらを威嚇していた機獣達も消えている。

 「寿々花…」

 「行きましょう真希さん、信じられない事ですけど彼は既に消えました。追っても無駄に終わるでしょう」

 

 

 親衛隊と調査隊が去った後の森、シャドーリュウは再びその場に現れた。

 「…行ったか……」

 「全く……貴様という奴は、不用意に接触しおって……お陰で要らぬ警戒心を植え付けてしまったではないか」

 その後ろより、木々を掻き分けターボカイが歩いて来る。

 「……済まない」

カイの言葉に素直に謝罪するリュウ、それを見て真剣に反省しているのだと理解したカイは自身も兄として妹が危機に陥れば感情的にもなるかと思いそれ以上責める事はしない。

 「しかし、どうしたものか……あの2人には暫く接触出来んな。致し方無い、駐屯しているベースキャンプに手掛かりを探すか」

 「……ならば、名誉挽回も兼ねて俺が潜入しよう。場所は判っているのか?」

 カイの提案に対し、己の犯した失態を注ぐ為に進んで役割をこなそうとするリュウ、カイも潜入となればリュウ以外では難しいだろうと思い了承する。

 「良かろう。目星は着いている、頼めるか?俺は反逆者の少女達を探す」

 「…承知」

そうして、再び夜の森に消える二人のダグオン。彼等の目的は果たして叶うのだろうか──

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ヨッス!アーマーシンだぜ。

 いやぁ、何かアイツら大変そうだナア。

オレはオレで好きにやって…お?オイオイオイオイ!?

 何で閉鎖した場所にあんな奴が居るんだよ?!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 反逆者対親衛隊。そして田中撃鉄?

 

 シャレになんねーゾ、こんなん!!?

 





 ところで、超電磁砲コラボのちぃ姉に中学生の性格は無理が……何でもないです。
 ゴタゴタが片付いたら近々リリスカの方も上げたいですね。
 ではまた次回でお会いしましょう


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第二十七話 反逆者対親衛隊。そして田中撃鉄?

 春はあげぽよ、おはようございます、おやすみなさい。お久しぶりです。ダグライダーです。
 多少私事が一段落しましたので投稿です。
え?はい、キラキラな人が来ましたので感染しました。まさか一発で来るとか思わなかったです。
 それはともかく私事の方はまぁ要するに祖父関連で家の若い労働力が私だけでしたので……はい。

 そして、そのせいなのかどうなのか…リリスカが少しスランプ気味に。まぁ元々あの作品は時間掛かるのであんまり今までと変わり無いんですがね、やっぱり宣言した手前、守らなくてはね?
 ともかく、二十七話です。



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 調査隊と親衛隊の間に突如として割って入った存在、その正体はシャドーリュウの従者たる機獣【ガードアニマル】であった。

 美炎達調査隊を守る様に、真希と寿々花の前に立ちはだかる彼等とシャドーリュウ。その気に乗じ、身の証を立てるミルヤの訴えにより彼女達の疑惑は晴れたのであった。

 


 

 ━━エデン監獄

 太陽系の一際巨大な惑星である木星、彼の星には本来ならば三つの衛星が今は四つ……否、四つ目は衛星ではなく元は巨大な監獄であった物だ。

 そんな監獄エデンの奥、地下監獄の一つで笑い声とも嘆きとも憤りともつかない声が一つ。

 「私、僕、俺、儂、某、朕、余。ふふ……君、貴方、貴女、貴君、貴殿、彼、彼女。嗚呼、面白い…面白いわぁ」

 その人物は表情と声色と発言が全く一致していない。

 「只、唯、質、允、廷、直…興味深い興味深いわぁ」

同じ様な言葉を繰り返し、何かを書き出している。書かれているのは地球の様々な言語、彼女はその中で今日本語中心を重点的に書き綴っている。

 

 「お楽しみの様だね」

 

そんな人物の様子を評する者はエデンを取り纏める鬼、彼の声に反応し振り返る人物──四つ目が光る機械を頭部に被る女性型の宇宙人が声だけは喜びを表しながら応える。

 「とても、とーっても楽しい、楽しいわぁ。星のレベルは低いけど、言語の形は面白いの、そこからあの星の有り様も見えてくる。ええ、面白いわぁ」

 「それは良かった。やはり君という存在は貴重だ、生かしておいて正解だった。さて、ではお楽しみのところ悪いがね君の所から一人貸して欲しい囚人が居るんだよ」

 「アナタの頼みは断らないわぁ。一体、誰が欲しいのぉ?だぁれぇ?」

 「あの詐欺師を頼むよ、そろそろ此方の世界の異星の同胞にコンタクトを取りたくてね」

 「…ふふふふ、恐いヒト…」

 「君程では無いと思うよ…ククッ」

邪悪に嗤う二つの存在は粛々と、しかし確実に地球にとって脅威となる計画の為に暗躍を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伊豆のとある山中にて、親衛隊獅童真希の命令により反逆者狩りの片棒を担がされる調査隊の面々。

 真希、寿々花は夜見と一度合流し追い込む算段をつけている。親衛隊同士の話が着いたのか、真希がミルヤを呼び出し彼女を連れて仔細を詰める。

 残されたメンバー、中でも清香、美炎、智恵は親衛隊に対し悪い感情しか無い。

 何せ清香がいの一番に『あの人達、嫌いです』等と嫌悪感を明確に表すくらいだ。美炎と智恵も今回の作戦の内容に物申したい事が溢れる程あるのだろう。現行の体制に不信と不満、不平に嫌疑と渦巻いている。

 果たしてこれは本当に正しい事なのかと……。

 

 調査隊が任された捜索範囲は南西方面、斯くして再び行われる山狩り。

 夜見が荒魂を放ち、反逆者側を追い込む。そこを挟撃の形で仕留める事が親衛隊の思惑なのだろう。

 ミルヤの指示に従い山中を練り歩く調査隊、呼吹は夜見が反逆者を追い込む役と聞いた時からえらく上機嫌だ。流石に不審に取った美炎が物申すと呼吹は嗤いながら溢す。

 「解ってないのはお前らの方だよ、これから始まるのはアタシにとって最高のパーティーだ!」

 この発言には四人も無視は出来ない。荒魂にしか興味を抱かない七之里呼吹と言う人間がここまで上機嫌になるのは何故なのか?その答えは直ぐに解った。

 

 突然、降って沸いたかのような荒魂の群れ。通常とは異なる反応を示すスペクトラムファインダー。

 美炎、智恵、清香は困惑し、ミルヤもまた驚きを顕にしながら荒魂に対応する。

 是等の出来事を知るであろう呼吹に事の是非を問う。

呼吹は至極面倒臭いと言わんばかりの表情になったが、それで黙っていても埒は明かない、何より智恵辺りが煩いと判断し、この荒魂を親衛隊の皐月夜見が使役していることを明かす。

 事ここに至り、調査隊を率いる隊長としてミルヤが下した決断は、人として、そして刀使として荒魂を狩るという事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時同じくして、彼女達とは正反対の場所にて。

 「おぉぉおおおおお?!此処はどこじゃぁあああいっ!!

 そんな絶叫が山中に響き消える。

誰であろう声の主は、時代を逆行したかのような長ラン学帽に下駄とサラシに口に葉が付いた茎の不良スタイル、座右の銘に努力と根性と漢気を掲げる無頼漢、田中撃鉄その人である。

 何故、彼が居るのか?実は調査隊(主に智恵)と泣く泣く別れた後、野生の勘に従って伊豆下りまで来ていたのだ。

 この男、山に来たは良いが肝心な所が甘いのか迷ったのである。因みに場所が良いのか悪いのか、特祭隊の面々には気付かれていない。

 「ぬぅううう、ワシとしたことが一生の不覚!まさかこの歳で迷子になるとはぁああああ!!」

 と、言った具合に叫んでいる。

そして、それを見詰める…見守る?影が一人。

 (オイオイオイ、アイツ確か、前に京都で焔也のヤツとバトってたヤローじゃねぇかヨ!?何だってこんな山に居やがる……)

 アーマーシンである。彼もまた、仲間と別れ反逆者を探していたのであるが、そこで偶々見付けてしまったのである。

 (なぁんで、よりによってヤローに出会すかねぇ?オレ的にはカワイコチャンが良かったのにナァ…)

 シンとしては完全にハズレ扱いである。これがエンやヨクならば接触し退避を促すだろうし、カイやリュウならば尾行しながら対応を決めるだろうが、シンである。彼としては放っておきたい心境が8割だが、仲間達…特にカイからお説教を受ける可能性がある為、仕方無く行方を監視しているのだ。

 

 「出口はどこじゃぁああああ!?

 (だぁああ!メチャクチャ煩ぇえええ!!)

ダグテクターの集音機能の高さ故に撃鉄の声が聴こえてしまうシン。無論、最低状態の集音でこの反応である。田中撃鉄あな恐ろしや。

 

 「んんっ?」

その時、撃鉄が何かに気付く。黒く染まった木々から淡い、しかし禍々しい橙色の燐光が1つ、2つ、その正体は夜見が放った荒魂の蝶。

 「ぬぉっあ?!なんじゃこの羽虫はっ!!」

 「っ!!(荒魂!?マジか…)やるっきゃネェ」

撃鉄に群がろうとする荒魂の大群を見て、流石に見過ごす訳にはいかなくなったシン、即座に両手にアーマーライフルを構える。

 撃鉄に当たらない様に狙いを着け弾丸を撃ち放つ。

 「をぉお?!今度はなんじゃ!?」

 「オイ!そこの化石ヤロウ!とっととココを離れな、さもなきゃ荒魂に喰われっちまうゼ」

 驚きの連続で戸惑う撃鉄を尻目に林から飛び出し荒魂を迎撃するシン、とは言え彼の武器で有効打足るのはライフルとブレストモーターキャノンぐらいであろう、腕と肩のミサイルでは山の地形を変えかねない、それでは折角の隠密行動も意味を成さない。

 女好きの彼とて、ターゲットの目標である可奈美と姫和、或いはターゲット自身であろう親衛隊ならばいざ知らず、他の特祭隊には出来る限り接触を避ける心掛けであるのだ。

 さてしかし、そんなシンの胸中など知らず、撃鉄は逃げる素振りを見せない。最初は怯えすくんだかとシンは思ったが、しかし果たして先頃巨人を倒すよりも前の会合にて、撃鉄が荒魂を撃退せんと戦った事を聞かされている彼はそんな事 は無いだろうと頭を振るう。

 「オイっ!?どうした?さっさと逃げ「逃げんっ!」アアッ?!」

 「ワシは借りは作らん!お主、見たところ前に現れた赤いのの仲間じゃな?ならばワシにも手伝わせろ!!」

 「手伝わせろ!!……って、一体どーすんダヨ?!」

シンの疑問に撃鉄は背を向けると手近な太さの木を体でガッシリと掴むと、全身に力を入れ始める。

 

 ──メキメキッ!バリッ!

 

 木と大地の軋む音が響く。

 「オイ…オイオイオイ!?まさか、ウソだろ?バカかアイツ…………いや絶対バカだろっ?!」

 「ド根性ぉおおおおおおお!!

その絶叫と共に木を根っこから抜き、持ち上げる撃鉄。火事場の馬鹿力にも限度があろう行動である。

 「喰らえぇい!ヌゥウンッ!!」

その言葉と共に抜き出した大木を振り回す撃鉄、これにはシンも唖然とする。

 さて、撃鉄が馬鹿力を発揮して奮戦している所ではあるが、基本的に荒魂に対し有効な武器は御刀のみである。唯一の例外はこの場に居るアーマーシンを含めたダグオンの武器や装備であるが……つまり、いくら撃鉄が大木を振り回しても意味は無いのだ。

 「……意味ネー。っと、しゃあねぇヤローを助けるのはちとばかし主義に反するが、それが目の前で死なれても後味悪いしな」

 その言葉を口にすると同時に撃鉄へ向けて跳躍するシン、そのまま撃鉄の持つ大木を器用に弾き、腹に腕を回して俵抱きするシン。

 「ぉをを?!何をする緑のぉおおおお」

 「ウッセェ、テメェの気合いは認めるケドなぁ、効果無いんだから逃げるぞ!!」

 そのまま、山の奥に消えたシンと撃鉄であった。

 

 

 

 

 

 そして、反逆者とされた可奈美と姫和は──

渦中の二人は現在進行形で荒魂に追われていた。長船コンビと分断され山中を宛もなく走り回り、遂に開けた場所に出る。其処は小川の畔、夜にあって星の光を反射する川の美しさが映える場所である。

 しかし、彼女達は逃げ切ったのでは無い、何故ならば…。

 「流石は夜見、良い仕事をしてくれる」

二人の前に立ちはだかった者達が居るから。

 「ええ、此処までに想定外がありましたけど、これでチェックメイトですわ」

 獅童真希と此花寿々花、二人の前に行く手を塞ぐ様に立つ親衛隊。姫和は彼女達を前に憎々しげに睨みながら吐く。

 「親衛隊が荒魂を使役とはな…!」

やはりと言ったニュアンスを込めて投げつける。

 実は道中、美炎に見付かっていた二人は諸々あって調査隊と協力しその場を切り抜けていたのだった。

 とは言え、一向に減らない荒魂により再び調査隊と別れ、こうして目の前の光景が広がっているのだ。

 互いが御刀を抜き既に臨戦態勢へと移っている。

 「さぁ、大人しく捕らえられてくれるかな?」

明らかにそんな気は無いであろう顔でぬけぬけと言ってのける真希に対し姫和は正面からその言葉を切って棄てる。

 「ふざけるな…!」

獅子と烏が刃を打ち鳴らした。

 

 

 「貴女の相手は私でしてよ、衛藤可奈美さん!」

寿々花が御刀を手に可奈美へと斬り掛かる。可奈美はそれに対し刃で受ける事で防ぐ

 「…っ!?」

千鳥を鮮血に染めんと紅き華が舞う。

 

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ハロー、儂イプシロン。次回予告を乗っ取りに推参。

きっと後でシータがキレるかもしれないが無問題。

 次回は六角さん家の清香嬢が活躍する筈。

きっと、多分、恐らく、絶対?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 勇気の決意!刀使として

久しぶりの"トライダグオン"!キリッ

 




 ああぁぁああ!
私、一人称モノローグ文は三人称補足文より苦手なのかもしれない。
 とは言えリリスカの方は一人称だからこそ意味があるので変えられないジレンマ。
 と言う事で、暫くはとじダグと偶にシンデレラ百剣くらいですかね。
 ここだけの話、FGOのマリー(ライダーでもキャスターでも可)を見てダンまちベースのクロス物とか面白そうだなぁとか思ったのはナイショ


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第二十八話 勇気の決意!刀使として

 どうも何日振りでしょう、ダグライダーです。
いやはや、祖父が入退院を繰り返し、再びてんやわんやし、自転車を買い換え、ジェイルに潜入し、司令が給仕服着て、巫女さんアクトレスが来たりと大忙しです。
 3月は投稿ペースが元に戻ると良いなぁ。
いえ、話自体は大まかに出来てるんです、文章として書き綴るのが遅いだけなんです、本当に申し訳ありません。



 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 追う者、追われる者。翻弄される者、抗う者。

彼等彼女等の想いが交錯する山の夜、二羽の小鳥を喰らわんばかりの狩猟者、抗う小鳥達。

 そして己の為、仲間の為、駆ける五色の勇者。

 訳の判らぬまま運命の掌で踊る五人の刀使。

遠き宇宙の果てより蠢く闇、間もなく夜が明ける。

 


 

 僅かに覗く月の光が降り注ぐのは、静かな闇夜に流れる小川のせせらぎ。しかしそんな世界に不釣り合いな剣戟が木霊する。

 「さぁ、少しはボクを楽しませてくれ」

獣の様な笑みを浮かべながら姫和に切迫する真希、力強い斬擊を姫和は何とか受け流す。

 「くっ…!強い…」

あまりの猛攻故に苦言を溢す姫和、相手は伊達に親衛隊に名を背負っていない、腐っても高い実力を持った刀使である簡単な敵では無い。

 次第に追い込まれ木を背にする姫和、彼女とて決して弱い刀使ではない。しかし、相手はノロによる更なる身体強化を用いる上に突きを主体にした速度重視の己と 相性が悪い。

 防戦一方の姫和に対し攻め手を緩めない真希、その状況を寿々花を相手取りながら見やる可奈美。

 「姫和ちゃん?!」

 「余所見だなんて、そんな余裕はありませんわよ?」

空かさず距離を詰める寿々花に対し千鳥を振るうも、寿々花の九字兼定によって刃を押さえ込まれる。

 絡め取られた状態から一閃、可奈美の腕が飛ぶ、無論写シである為、血が流れる事は無いが写シ越しであれダメージは否めない。

 寿々花との距離を取り、再び写シを張り直す可奈美は寿々花が強敵であることを改めて認識する。油断なく御刀を構え、寿々花の後ろにて展開されている姫和と真希の戦闘に意識を向ける。

 「姫和ちゃん!」

姫和に対し声を掛け、視線で何かを伝える。

 (あいつ戦闘中に何を…私より自分の心配をしろ!……いや、待て、あいつがただ心配するだけなどとあるのか?…そうか!)

 「また余所見ですの?気に入りませんわね」

姫和が可奈美の視線の意図を解し、互いと相手が直線的になるように立ち回る。

 寿々花がまたしても自身ではなく、別に意識を向ける可奈美に対し苛立ちを募らせる。そうして生まれた僅かな隙をもって可奈美は千鳥を投げ放つ。

 「どこを狙っていますの?…っ!?真希さんっ!!」

しかし、千鳥は寿々花を通り抜け在らぬ方に飛ぶ、可奈美の不可解な行動に嘲笑するも、即座に彼女の狙いに気付き相方に声を飛ばす。

 「何だ…?ちぃっ!」

寿々花の声に反応し振り向く真希、自身に向かって飛んできた千鳥を身を捻りかわす。そして一瞬、僅か一瞬だが姫和から意識を反らしてしまう、それが運の尽き。

 「貰ったぞ、親衛隊!」

 真希の隙を逃さず、小烏丸を上に振り抜く姫和。先程とは真逆、川の土手原に真希を追い詰め突き斬った。

 「っ!しまった?!」

そのまま写シを剥がされ膝を衝く真希、姫和はその隙に千鳥を回収する。

 「可奈美!」

 「うん!」

可奈美に千鳥を投げ渡し、互いに迅移を使い戦場より逃れる。

 「してやられましたわね。真希さん、大丈夫ですか?問題無いようでしたら彼女達を追いますわよ」

 可奈美達の逃げた先を見据えながら真希に近寄る寿々花、しかし真希は俯き茫然自失としている。

 「斬られた…ボクが、このボクが斬られた…?紫様をお守りするボクが……紫様の刃であるボクが…

 「真希さん?」

真希の様子を不審に思い覗きこむ寿々花、そこに新たな足音が近づく

 「可奈美ー!」

その場に現れたのは美炎を始めとした調査隊の面々、美炎は親衛隊がこのまま反逆者となった可奈美を殺害する事が耐えられなかった為、二人の応援に来たのだが既に勝敗は決していた。

 「貴女達…一体何をしていますの?早くあの反逆者達を追いなさい」

 現れた調査隊に命令を飛ばす寿々花、だが彼女達は動こうとしない。

 「お断りします」

最初に美炎が口を開く、その口から飛び出した答えは拒絶。

 「……何だって…?」

自失から意識を戻した真希が怜悧な瞳を調査隊に向ける

 調査隊の言い分は単純だ、荒魂を捨て置いて反逆者の討伐に参加する事は出来ない、刀使として我々は力の無い者達の為に戦う事が本分である。とミルヤが代表して宣言したのである。

 「どこまでも……弱者の分際でボク達に楯突くのか…?」

 「貴女の相手は私がしましょう獅童真希」

 「木寅ミルヤか、良いだろう歯向かった事を後悔するといい!」

 ミルヤが真希に仕掛ける。一方の美炎には、寿々花が相対する。未だ残る夜見が放った荒魂を駆逐するのは呼吹だ。智恵と清香はフォローに回る形となった。

 「私も貴女達の相手をするのは吝かではありませんわよ?」

 反逆者を捕り逃し、再び調査隊と刃を交える親衛隊の二人、そしてその様子を離れて見詰める青い人影。

 

 ターボカイこと燕戒将である。シャドーリュウと別れた後、調査隊や親衛隊、反逆者にすら気付かれない様に距離を取ってダグテクターの機能を使い監視していたのだ。

 無論、先程の可奈美と姫和対親衛隊の戦闘をも視ていた。いざとなればシールドスモークで逃走の補助をするつもりであったのだ。

 結果的には彼女達自身で乗り越えた為その必要は無くなった。だが今度は調査隊が親衛隊と再び戦う運びとなり、カイは三度静観する事にした。

 (先の戦い、危うい所もあったが彼女達は乗り越えた。ならば調査隊の面々も俺が手を出さずとも問題は無かろう、であれば獅童此花の隙を伺うとするか…)

 状況を観察しながら頭の中でこのように思案するカイ、綾小路武芸学舎在学時から親衛隊の此花寿々花、調査隊の木寅ミルヤとは共に面識があり彼女達の実力もある程度熟知しているのである、しかし、それはあくまでもその二人の実力しか知らないのである。その為他の調査隊もメンバーの実力を読み違えた。

 気付けば美炎は追い詰められ、智恵が何とか助太刀しているものの芳しくなく、ミルヤも真希に釘付けにされ、呼吹は荒魂を追って何処かに消えた。清香は怯えすくんでいる。

 (む、読みが外れたか?いや、彼女等とて弱い訳では無い。であれば経験、覚悟の問題か…だがあの美濃関の少女は不味いな、あのままではやられる)

 調査隊に不利となった状況に万が一の手段として助太刀に入る態勢を取るカイ。

 だがしかし、勇者が助力をするよりも早く、怯えていた少女が動いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六角清香にとって刀使であることは誇れるものでは無い。

 趣味は読書、特に好きなのは恋愛小説、剣を振るのはその次くらい。

 彼女にとっては幼少時に叔父の道場でひたすらに剣を降り、強いね、凄いねと周りの人々に褒められた事が嬉しかった。

 だからひた向きに努力した、彼女には大抵の事は何でもこなす兄が居たから、だからその兄も褒めてくれる剣の道に進む、そして御刀に選ばれた。

 でも現実は甘くなかった。写シがあっても命懸けの荒魂との戦い、一歩間違えたら死が待つ世界、そうして傷付く周りの刀使達、それを自覚した瞬間自分が傷付く事が恐くて清香は戦いから逃げた。

 だから…最初の御刀に拒絶されたのだと清香は思う。結局は新しい御刀を手にして今も伍箇伝の刀使として清香は居る。でも荒魂とは戦えない、戦いたくない、恐いのは嫌だから、でも刀使を辞める事は出来なかった、そうして過ごす内にいつの間にか赤羽刀探索の為の特務部隊に編成された、調査ならきっと戦う事などないから安心だった。…その筈だった、けれどもやはり現実は優しくない。

 何度も荒魂と遭遇して、何回も皆の後ろで震えていて、今度は親衛隊が襲ってきて……本当に自分はこのままで良いのかと思う、皆戦ってる、必死に戦っている。

 安桜美炎は友達の為、瀬戸内智恵はそんな美炎を助ける為、木寅ミルヤは刀使としての使命の為、七之里呼吹は……自分の為、では自分は?自分はなんの為に此処に居る?

 調査隊は清香にとってとても居心地が良かった、最初こそ緊張と恐怖があった、でも楽しかった。渋谷での買い物や青砥館での事も…だから、こんな訳の分からない事で皆が傷付くのは嫌だ……だからこそ立ち上がる、前を向く、御刀を手に取る、今目の前で仲間を傷付けようとする嫌な人から友達を守るその為に──

 

 

 

 

 

 

 「ダメです…

 

 

 「なんですの?ああ、貴女平城の…まだうろちょろしていたのですか?役立たずは見逃してあげますから何処へなりとも……」

 

 

 

 「ダメです、わ……わたしのせいでみんなが………、そんなのは、イヤです…!

 

 「イヤなんです!!

 

 

 俯いていた気弱な少女は叫ぶ、守る為に御刀を手に立ち向かう。

 寿々花に一瞬で距離を詰め刃を交える。

寿々花自身、驚愕した。何せ先の先まで唯々泣いてへたり込んでいた有象無象であった少女が自分に歯向かって来たのだから。

 

 

 六角清香は己を鼓舞する、その瞳は力強い意思に溢れていた。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 糸見沙耶香……、予告?うん…頑張る。

 親衛隊に追い詰められる…調査隊の人たち……、そんな時、平城の人が親衛隊…二人を相手に互角に戦う…。すごい…。

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"…明ける夜、一時の休息。

 呼吹…、一人で勝手に動いたら…ダメだよ?

 




 後書きは何を綴るべきか、あ!勇者シリーズと言えば、トランスフォーマーの金型流用ライバル枠ですね!ダグオンには居なかったかな?今作はその辺り出したいですね!
 沙耶香ちゃん、予告するならこんな感じかしら?


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第二十九話 明ける夜、一時の休息。

 こんばんは、ダグライダーです。
少し手間取りましたが29話です。
 それとデジモンとSHIROBAKOを観に行って来ました、どちらも多々賛否両論あるようですが楽しめました。特にデジモンは居酒屋のシーンで映った川島さんの存在感に目が釘付けでした。


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 山中の川原にて対峙する可奈美、姫和と真希、寿々花。戦いを始める四人、親衛隊優勢の中、可奈美の機転で真希を退ける姫和、そして彼女達は再び逃走する。

 そこに新たに現れる調査隊、親衛隊からの追撃命令が下されるも拒絶、それにより彼女達は親衛隊から再び敵として扱われる。

 徐々に追い詰められ危機に陥る調査隊、その時清香が覚悟を決める。

 


 

 「…も、もう……やめて、ください…ハァ……ハァ………」

 未だ月明かりに照り返す小川の畔、傷付き伏した仲間の為に御刀を振るうか弱い少女が、襲い来る相手に疲れを滲ませながらも投げ掛ける。

 「なんなんですの、この娘。役立たずかと思ったら、思いの外やりますわ……」

 「防戦一辺倒とはいえ……傷付いた二人だけでなく、木寅ミルヤまでも庇いながらボク達親衛隊を相手に渡り合うなんて」

 寿々花の思わず洩れる驚愕と真希の指摘通り、六角清香は彼女達を相手に互角と云っても過言ではない戦況を造り上げていた。

 何せ格上と言ってもよい二人を相手に既に戦力としては心許ない美炎や彼女を庇い倒れた智恵のみならず、真希の相手をしていたミルヤをも守っているのだ、並大抵の刀使では出来ない。

 

 「正直………侮っていたよ」

防戦に喘ぐ清香を見て自身の見込みを改める真希、そして記憶の片隅に留めていた事を思い出したのか、自己完結染みた確認を投げ掛ける。

 「ああ、そうか……忘れていた。名門、神前道場の六角清香。ウチの学校には上級生顔負けの腕前を持ちながら、実戦では、まるで役立たずの生徒が居るって」

 その言葉に僅かに反応する清香、真希は構わず続け寿々花に提案する。

 「寿々花、この娘ボクにやらせてくれ。同じ校の先輩として稽古をつけてやるよ…但し、授業料は吼丸の錆になることだけどね。さぁ、六角清香……」

 ──吼丸に喰い散らかされろ…!

殺意と共にその言葉を清香に向け御刀を振り上げたその瞬間、殺伐とした空間に響く電子音。

 音の主は寿々花の携帯端末、その場に居た全ての人間が彼女に視線を注ぐ。

 「こんな時に!夜見から…?なんですの?本部から連絡…、ですか……」

 電話の先の主は皐月夜見、薫、ウイングヨクとの遭遇、戦闘、撤退の後にベースキャンプへと戻ったのであろう彼女からの連絡はこの場の状況において調査隊の面々にとっては天の助けに等しい。

 寿々花の口によって伝えられた内容は鎌府、綾小路両学長からの調査隊と事を構えるなとの厳命。

 まるで今この場に起こっている状況を分かっているかのような内容に真希が驚愕しミルヤに視線を投げる。

 「どういう事だ…綾小路武芸学舎がわざわざ?まさか木寅ミルヤ……お前が手をまわしたのか」

 「最近はこんな山中にも電波が届くのですね……お陰で助かりました」

 息を軽く整え、眼鏡を直しながらイタズラが成功した様な笑みを浮かべるミルヤ。

 「………貴女まさか、携帯を通話状態にしたまま戦っていたんですの?」

 「フ……勝敗は剣術だけで決まる訳では無い、と言うことです」

 ミルヤのまさかの策に寿々花も思わず絶句する。

 

 「キサマッ!!」

 出し抜かれた事に声を荒げる真希、そんな真希を諫める寿々花、そして他者に聴こえぬよう真希に顔を近付けながら何事かを囁く、真希は不承不承といった形で寿々花共々その場を離れようとする──その時、一迅の蒼い風が吹き荒れた。

 一瞬、ほんの一瞬の事であった、二人が共に僅かに感じた頸の違和感…しかし触れた場所には異物らしきものは無く、振り返っても誰も居ない。

 朝陽が昇り、周りには僅かだが霧が立ち込めてきた。

結局、朝霧の雨露が頸元にまとわり着いたものと判断してキャンプの方向に消えていく。その後ろ姿を覗く影に気付かずに。

 

 

 「成功……とは言い難いな、が、無いよりはマシと捉えるべきか」

 蒼い風、そして親衛隊の後ろ姿を覗く影の正体、ターボカイは手元のアンプルを弄びながら呟く。

 あの瞬間、彼は自身のダグテクターの瞬間加速機能を使用、これにより周囲の時間流から外れ傍目には何かが通り抜けたのかが分からない。近い例えで表すならば十条姫和が折神紫暗殺の際使用した、"一つの太刀"の迅移による最大加速であろうか。そらによって真希と寿々花に近付き採血用の注射器を頚に宛てた、そして彼女等が振り返る瞬間に離脱してのけたのだ。結果、採取出来た血液は微々たる量である。雀の涙よりは少しマシな具合か、兎も角目的を達したカイ、彼の視線は親衛隊が去った事により緊張の解けた調査隊に向かう。

 先の戦闘、自身が助太刀するより早く清香が動いた為、結果的には姿を現さずに済んだ。何よりミルヤの機転により戦略的に勝利を納めた彼女達はこれ以上親衛隊から絡まれる事は無いだろうと踏み、カイは親衛隊の血液を採取する事に集中出来た。

 加速機能を使用し肉体に負荷が掛かった筈だが、それをおくびも出さず思案するカイ。

 薄情かとも思ったが、そもそも今回の目的は出来うる限り極秘裏に進める事が望ましい、だからと言う訳では無いが既に姿を晒したファイヤーエン、シャドーリュウは仕方無いにしても彼女達との不用意な接触は避けねばならない。であればあの判断は致し方ないと言えよう。

 「(まだ迷いがあったか……まだまだ未熟だな)」

助ける事に対する躊躇、親しい相手を敵に回す躊躇、二重の意味での迷いが出た結果がこれかと自虐する。

 頭の中でそう結論付けたカイは潜入を任せたリュウ以外の仲間に一度連絡を取るべきと判断し、その場を跡にした。

 この後に最大のチャンスがやってくる事を彼はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──翌朝

 

 親衛隊、そしてカイが去った場所、朝陽が高く昇った山奥にて調査隊は一先ずの休息にとっていた。

 彼女達は与り知らぬ事ではあるが、同じ頃別の場所で激闘が繰り広げられているのだった。

 美炎と清香は半ばへたり込んでいる。呼吹は未だ帰ってこない。

 そんな彼女達から離れた陰になっている場所でミルヤは1人電話を片手に何処かへとダイヤルを掛けた。

 連絡先の相手は綾小路武芸学舎学長、相楽結月。

 2、3回のコールの後、電話が繋がる。

 「──昨夜の件、ありがとうございます。学長の口添えが無ければ、親衛隊を相手に全滅していたと思います」

 まず口に出したのは親衛隊とのいざこざに対する礼。ミルヤは全滅と口にしたが、近くにカイが存在していた為、実際に最悪のケースにはならなかったであろう……無論、彼女の知る限りでは無いが。

 「それで、調査報告ですが…赤羽刀については進展無く。調査隊の面々も先の報告以上に変わった事は無く………いえ、ひとつだけ」

 報告を続けるミルヤ、赤羽刀に関しては手掛かりは依然無く、自身が率いる調査隊の話へとシフトする。

 「現状を見る限りですが、伍箇伝の学長から明確に指示を受けて動いていると断定出来るのは七之里呼吹ひとりです」

 調査隊結成の裏側にある伍箇伝の思惑を類推して考えるミルヤ、故に呼吹が親衛隊が荒魂を使役していた事に関係が在るのではと端末の向こう側、顔の見えない学長に問い掛ける。

 「彼女は、親衛隊と荒魂の関係についても知っているようで……ですが、はい、了解しました。この件については、以降触れないようにします」

 学長であれば何かしら知っているであろうと訊ねたものの、それ以降は命令という形で触れる事は許されず、彼女もまた自身の立場故に命令に従う。

 「いえ……南无薬師景光については、まだ。はい。学長のおっしゃる通り、確保に努めます」

 向こう側からは新たに赤羽刀の手掛かりとなる情報について訊ねられ、先の会話に思う所あるも、己の役割を全うする為応える。

 「昨夜はイレギュラーな通話でご迷惑おかけしました。次の定時連絡までは、直通での通話は控えます」

 最後に謝罪をし通話を切るミルヤ、その顔はやはりどこか釈然としない。

 

 

 

 ミルヤが相楽学長に定時連絡を取っていたのと同時刻、彼女とは反対の陰にて瀬戸内智恵が電話を何処かに掛けていた。

 「お疲れ様です、真庭学長」

智恵の口から飛び出した名は、長船女学院の学長、真庭紗南。彼女もまた、自らの役目の為に上司である真庭学長に連絡を取っていた。

『エレンと薫のサポートご苦労だった。先程、衛藤可奈美と十条姫和を仲間に迎えるテストは、無事終了したと連絡があった』

 電話の向こうから掛けられる労いの言葉、そして彼女の所属する組織としての目的が果たされた事を知らされる。

『今頃彼女達は、"舞草"との合流地点へと向かっている筈だ』

 「役に立てて良かったです。それで学長、私たち調査隊は、これからどう動けば……いえ、彼女たちを()()()()()()いいでしょうか?」

 会話の中に出てきた舞草という言葉、ダグベースにて翼沙も示唆していた反折神家勢力の名である。

 智恵の次の指示を仰ぐ言葉に真庭学長が下知を下す。

『親衛隊に同行している指揮下の機動隊に、協力者がいる。彼女が赤羽刀に関して面白い情報を持って来てくれる筈だ。ここで直接……と言いたいところだが、何処で聞かれているかも判らないからな』

 「分かりました学長。では私は、そちらからの接触を待つことにします」

 新たに与えられた指示に了承の意を示し通話を切り上げる智恵、彼女の眼は険しく虚空に向かれていた。

 

 

 

 「ゴメン!六角さん!このとーり!!」

 

 「え………え……なにがですか?」

年長者達の思惑など知らぬ調査隊の残された面々、美炎は回復すると共に開口一番、手を併せて清香に頭を下げる。

 当の清香自身は何故美炎が謝罪するのか全く心当たりが無い。

 「たくさんゴメン!今回親衛隊から助けてもらったこともだけど………」

 僅かに頭を上げ申し訳無さそうに理由を話し始める。

 「正直……清香のこと、刀使に向いてないっておもってた!戦えないなら、何でここにいるんだろうって。でも……何か清香さ、わたしなんかより全然強いじゃん!」

 聞くものが聞けば失礼極まり無い言い分だが清香は苦笑している。

 「すごかったよ!親衛隊相手にしのぎきってたよね!」

 「そんなこと……やっぱり、私ダメです。さっきも…怖くて怖くて………やっぱり戦うのはイヤです」

 再び顔を俯かせる清香、しかし何か思い出したのか微笑みを美炎に向ける。

 「ああ………でも今、1つだけいいことも……。安桜さん、私のこと"清香"って呼んでくれました」

 「えっ?ああっ!?ごめんつい!!」

呼び方が変わっている事に今頃気付き再び頭を下げる美炎、清香は気にした風も無く続ける。

 「さっきの戦闘の時も咄嗟に清香って……」

 そう、親衛隊との戦闘にて、美炎は清香を気遣う際に無我夢中で彼女の名を叫んでいたのだ。

 「あああぁぁぁっ!本当にゴメン!馴れ馴れしかったよね!!」

 清香に指摘され思いだし羞恥に顔を真っ赤に染める美炎、もし此処に焔也が居れば大爆笑していたかもしれない。

 「ふふっ……謝ってばっかりですね。でも、本当に嬉しいんです。ちょっとだけ、安桜さんと仲良くなれた。そんな気がします」

 清香の嬉しそうな表情に美炎も顔を綻ばせる…その時二人の近くの茂みが物音を発てる。

 「……なんだ、てめぇらくたばってなかったのかよ。って……ウチの隊長とチチエはいねぇのか?」

 果たして現れたモノの正体は荒魂を追って消えた七之里呼吹であった。いきなり現れた呼吹に美炎と清香が驚いて抱き合うも、その正体が分かると途端に安心し、美炎は呼吹の疑問に答える。

 「チチエって……、ふたりは定期連絡とかあるみたい。それより呼吹さん、どこ行ってたのさ!戦闘中にいきなり居なくなるから、心配したよ!」

 「あん?アタシの荒魂ちゃんを、山盛りブッ潰しに行ってたに決まってんだろうが。あ~もう!すっげぇ楽しかったっての!またやろうぜ!!」

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ターボカイだ。どうやら俺が立ち去った後の彼女達はまた一つ距離が縮まったようだな。

 さて、本来ならば我々が合流した際の話をすべきなのだが、視点を替えよう。

 我々が山奥にて任に当たっている間、鎌倉の本部、宇宙の監獄に動きがあるようだ。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 温もりの交流と現れた男、新たなる監獄主。

 次回も"トライダグオン"!

 




 さて、最近世間は色々慌ただしいですね、私もこの時期はよく体調を崩すので大変です。
 幼少の頃の小児喘息の影響で毎回倦怠感があって執筆もひとしおです。
 次回は以前可奈美の話に出た七人目の影をそろそろ出そうかなと思います。


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第三十話 温もりの交流と現れた男、新たなる監獄主。

 こんばんはー!
ダグライダーです!…や、まぁ可笑しなテンションで申し訳ございません。
 私事の考えですが、誤字とはあまりお友達になりたくないダグライダーです。
 そういえば、─86─エイティシックス、アニメ化するらしいと聞きました。本当なら楽しみにです。
 あの作品好きなので、一応話は一巻以内でも纏まりますけど、三巻までやらないかなぁ。
 制作アタリだといあなぁ。


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 親衛隊の猛攻を凌ぎ続ける清香、彼女の予想外の実力に真希は興味を抱き清香に迫り来る。

 あわやピンチのその時、突如、寿々花の携帯に連絡が入る。それは、ミルヤが仕込んだ奇策。

 伍箇伝直々の命により御刀を渋々納める真希、窮地を脱した調査隊は束の間の休息を得る。

 そして燕 戒将(ターボカイ)もまた、目的を僅かとはいえ果たしたのであった。

 そんな濃密な一日が行われていた頃、鎌倉では──

 


 

 ダグオン達が巨人(ギガンタース)との闘いの為に出動していた頃、そして親衛隊が反逆者討伐の為の隊を率いて山狩りへと向う前の頃まで刻の針を戻す。

 

 

 可奈美と姫和に敗れ、累に保護された糸見沙耶香。

彼女は可奈美達を見送った後、所轄によって改めて保護され、鎌倉の本部へと引き渡された。

 そして──

「沙耶香!」

 鎌倉、刀剣類管理局本部入口のホールにて佇む糸見沙耶香に掛かる怒気を孕んだ声。

 沙耶香が振り返ればそこには眉根を吊り上げ不機嫌を顕にする鎌府学長にして刀剣類管理局本部長である妙齢の女性、高津雪那の姿があった。

 

「…来なさい!」

 雪那はそう言うや否や、沙耶香の細腕を掴み何処かへと連れていく、そしてそれを少し遠巻きで目撃したのは岩倉早苗と話し込んでいた柳瀬舞衣であった。

 舞衣はその時、何とはなしに沙耶香の表情が気になったのだろう、彼女のこれからの行動の為の心の指針が決まったのだった。

 

 

 そして、神奈川県鎌倉──折神本家のある地に、唸るバイクのエンジンの音と共に降り立つ一人の影。

 「ここに折神家……刀剣類管理局本部があるのか…」

 その言葉と共に一度、汗ばんだ頭部を乾かす為に、ヘルメットを取り顔が顕になる。

 細身ではあるが、引き締まった身体つき、日本人の男性にしては珍しいくらいのきめ細かい白い肌、髪型や声、肉付きから性別は男だとはっきり判るが、六角龍悟とは違った意味で中性的で僅かに童顔染みた顔つき、少し青みがかった黒髪、光彩の薄い空色の瞳、しかし何処か可奈美と似た人好きするような目や口元。一体この青年は何者であろうか。

 「さぁて、舞衣ちゃんを探さなきゃ…」

 舞衣の名を口にし再びヘルメットを被り直し、視線を前に向け先を見据えると彼はアクセルを回しバイクを進める。

 「はぁ~、広いなぁ~。何処に本部があるんだろう?」

そんな彼は早速迷子になっていた。

 

 

 

 ━━刀剣類管理局本部発令所

「賊を発見したですって?!」

 その報告を聞くや否や、苛立ちをデスクにぶつける雪那、彼女はその神経質そうな目を細め爪を噛む。

「(夜見……錄に御刀も使えない、半端者の分際で……!一刻も早くアレを完成させなくては…。紫様の為に生き、紫様の為に死ぬ…最強の刀使を……。)」

 つい先程、紫に独断で動いた事を叱責され、親衛隊が矢面に立ち続ける事に胸中で嫉妬と不平と憤怒と焦燥に駆られる雪那、彼女が思い浮かべるアレ──糸見沙耶香、雪那にとって沙耶香こそが己の大願の為の希望の鍵なのだ。

 

 その沙耶香はと言うと、本部のとある一室にて椅子に一人寂しく座っていた。

 そこは簡素な部屋であった、調度品は必要最低限の物、カーテンは締め切り外から中の様子は見えない。

 なまじ、建物が時代を感じさせるアンティークな造りであり、照明が古いのか黄色く光る為、簡素な机や椅子と相まって冷たい印象を受ける。

 そんな冷たい部屋の扉が開かれる。

 「えっと…糸見沙耶香ちゃん?ちょっといいですか?」

 扉を開け部屋に入って来た者の正体は柳瀬舞衣、遠慮がちに沙耶香へと訊ねる舞衣、沙耶香はそれを無言で肯定した。

 

 

 「可奈美ちゃん無事なのね!良かったぁ~。あ、こんな事、沙耶香ちゃんの前で言うことじゃなかったね、ごめんね」

 「別に…、勝てなかったのは事実だもの」

 舞衣の不用意な言葉に、特に悔しさも感じさせず義務のように淡々と答える沙耶香。それを受けて少し困った様に苦笑する舞衣。

 「沙耶香ちゃん…鎌府だよね?帰らないの?」

 「この部屋を出るなと命令を受けたから…」

やはり、今一つ感情が乗らない声で答える沙耶香の顔を見詰める舞衣、すると沙耶香の頬に傷がついていることに気付く。

 「えっと…あれ?頬っぺた怪我してるね」

 そう言って沙耶香の髪を優しく掻き上げ、ポケットから可愛らしい絆創膏を取り出して沙耶香の頬に貼る。

 「こんな子供っぽいやつでごめんね。上の妹が好きだから…」

 沙耶香の頬を優しく撫でた後、申し訳無さそうにする舞衣に困惑が混じった視線を向ける沙耶香、そんな沙耶香に彼女は更にクッキーが包まれたビニールの包みを渡す。

 「そうだ、これよかったら。クッキー。少し落ち着こうとしたら、作り過ぎちゃって……。沙耶香ちゃんは甘い物好き?」

 「…うん」

戸惑いながらもはっきりと返答を返す沙耶香、それを見た舞衣は顔を綻ばせ笑顔を浮かべる。

 「良かった~。じゃあ、食べてくれると嬉しいかな」

 二人の会話が一段落着いたタイミングで外から扉が叩かれる。

 時間が来たのだろう、鎌府の監視役が扉を開き舞衣の退室を促す。

 「じゃあ見つかると怒られちゃうし、私もう行くね。そうだ!また可奈美ちゃんと勝負してあげてね!遠慮なんていらないから」

 沙耶香に向けガッツポーズと共にウインクし去って行く舞衣、見つかると怒られる相手とは十中八九、雪那の事であろう。

 そうして、再び部屋に一人きりとなった沙耶香、渡されたクッキーを口にする彼女の心はどこか温かいモノで満たされていた。

 

 

 部屋から出た舞衣はそのまま宿泊施設に向かう、その時彼女前から現れたのはご機嫌な足取りの親衛隊第四席燕結芽。彼女は舞衣を気にも留めず、そのまま去って行く。舞衣もまた一瞬結芽に視線を向けるも、関わる理由が無い為、彼女達はそのまますれ違った。

 

 

 「~♪」

 さて、では結芽の目的はと言えば、親衛隊で唯一待機を命じられ、兄も何処かへといつの間にか消え失せていたので退屈を持て余していた。

 そんな彼女がこれから向かう先は刀剣類管理局局長執務室。つまりは折神紫の部屋である。

 「紫様~♪あーそーぼ」

 その言葉と共に笑顔でスキップして入室したかと思えば、いきなり御刀を抜刀、即座に加速し紫に斬りかかる。対する紫は顔色1つ変えず、椅子に座したまま、結芽の猛攻を物ともせずに自身の御刀で捌く、驚くべき事なのは、彼女がどうやって御刀を取り出したのか…まるで空間から直接取り寄せた様に手に顕れ結芽と剣戟を交わす。

 御刀ごと上に弾かれた結芽は天井を足場に落下の勢いを掛け紫に迫るも、座した彼女の二振り目の御刀に弾かれ、壁へと吹き飛ばされる。

 「もぉ~!また勝てなかった~」

そう叫んで、ふて腐れる結芽。御刀を納刀し紫の前に立つ。

 「そんなに退屈か?」

 「私を出してくれれば、あんな弱い子達すぐにやっつけちゃうのに!」

 紫の問いに間髪入れずそう答える結芽、兄不在も相まって相当のようだ。

 「今は待て。じきに面白い遊び場を用意する」

 「ほんと!なら良い子で待ってる!」

紫からの提案に、言葉の通り大人しく待つ事に笑顔で従う結芽、その笑顔はその時が来るのを今か今かと待ちきれない感情が見え隠れしている。正に、無邪気な子供そのものであった。

 

 

 

 

 

 

 「あぁ、すっかり日が暮れてしまった~!どうしよう。道はこっちで合ってるのかなぁ」

 一方で例の青年は未だに鎌倉の地をさ迷っていた。

 「可奈美の前に僕がヤバイかもしれないなんて……」

実はこの青年、先程からちょくちょく本家前を通っているのだが、それが折神家とは気付けていない。

 結局、彼は一晩中は迷い続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 ━━その頃のファイヤーエン(鳳 焔也)

 「思ったより広いな、この山…」

 皆と別れ、各々で反逆者と親衛隊を探しているダグオン。エンは他4人とも違う場所を探していた。

 「さぁて、衛藤達は何処だ…っと!?」

前方に人の反応を確認し、咄嗟に陰に隠れる。

 「あれは……長船の、金髪タイ捨流」

 彼の目の前を行く人影の正体は、薫と別行動を取っているエレン。彼女の進行先を見てエンは困惑する。

 「あの金髪は衛藤達の追っ手じゃないのか?それに……こっちを下ると、確か特祭隊のベースがある筈…」

 気取られないよう、一定の距離からダグテクターの機能を使い観察するエン、エレンは何やら迷いの無い足取りで進んでいく。

 「…………駄目だ、分からねぇ…皆のとこに戻るか」

エレンの行動が読めず、迷ったエン。この状況下で単独行動は危険だと感じ、最終的に皆の判断を仰ぐ事に決め、その場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 ━━木星近辺エデン監獄

 ギガンタースが倒され、ダグオン達が山へ向かい、親衛隊の捜索に当たったのと同時刻。

 監獄内の中央ホール、嘗ては簡素な場所であったそこも、今では囚人達の会合の場としてすっかり見る影もない。 

 その広い中央ホールの更に中央、普段は各監獄を管理する代表者と妖精、囚人達の中でも一際知恵の回る者達が集う円卓、しかしいつもと違い、今回はホールの吹抜けを覗く各監獄へと通じる通路にまで密集するかの様に覆い尽くす異形の群れ。

 入りきらない者達はそれぞれの階層の通路から下を覗き込む様に円卓を眺める。

「ミエナイゾ!」

「邪魔ダ!」

「お前が邪魔だ!」

 等の罵詈雑言が飛び交う。

円卓には既に、鬼を除いた全ての監獄管理者が集っている。

 「ヤツハマダカ?」

 「憤慨!退屈!意図不明!」

 「彼奴め、また何か企んでおるな…」

 「めずらしいね!せんせいがここにいるなんて」

 「あらぁ?妾だってぇ偶にはぁ、こちらに参加くらいするわぁ」

 まずは円卓のいつもの面子である、道化師、甲冑、蒼炎、妖精に新たに地下の管理を勤める先生と呼ばれた異星人。

「まままだだだかかか???はははやややくくく、たたたかかかいいいににに!!!」

「グプッ!可笑しいねぇ、何を言ってんのか全然解んないねえ!」

「Ahha…」

「やれやれじゃのう」

「嗚呼、あの女!!(ワタクシ)の光とあんなに親しくゥゥゥウ!」

「何や、折角ワイのお披露目やってのに…これじゃインパクト薄いやん」

 続いて彼等の後ろに控えている異形、甲冑の後ろに控える不明瞭な言語を無理矢理言葉にする異形、それに嘲笑と共にツッコむ特徴的な笑い声を上げた異形、蒼炎の後ろに控える唄う異形、道化師の後ろに控えるガレプテン星人、妖精の後ろで妖精と先生と呼ばれた異星人のやり取りに布を噛み切らん勢いで嫉妬を露にするドレスの女の異星人。

 そして空席となった南の管理者の席に座する胡散臭い喋りの異星人。

 そんな彼等と同じ様にエデン監獄の囚人全てがざわつき目的の人物が現れるのを待ちかねている。

 

 「やぁ、諸君。待たせたね!」

そして現れる鬼の異星人。まるで舞台に上がる主演の様に仰々しい振る舞いで自身の席に着く。

 その後ろには彼の付人であろう、鋼の如き肉体を持った禍々しい白い機人。

 「まずは、遅れたことに対する謝罪を!そして、死した同志に黙祷を!」

 鬼の異星人は周囲の囚人に頭を下げ、ギガンタースに対して思ってもいない黙祷を捧げる。

 「では、先ずは新たなる管理者の誕生を祝福しよう!それと同時に我等の目的を妨げる敵の存在を皆にも周知してもらいたい!!」

 鬼の言葉に反応するかの様に円卓に照明が灯り、南の椅子を照らす。

 「何や!やっとこさ出番かいな!ほなら、自己紹介や」

明らかにエセ関西弁にしか聞こえない胡散臭い喋りの異星人が立ち上がる。

 「ではでは~!ワイが新たに南監獄の管理を任された、ゼニーンド星人のマッニー言いますん、宜しゅうな!因みに前任者と違うて、商人やさかい、優秀なら作戦は丸投げしますわ」

 マッニーの発言に南監獄の囚人達は大いに沸いた。それもそうだろ、前任者のギガンタースが力で無理矢理屈服させ、己の異に沿わない者を排除していたのに対し、事実上の放任主義を言い放ったマッニー、どちらが良いかなど聞くまでも無い。

 「盛り上がりは十分のようだね、では次に君達も気になっただろう、我々の目下の敵。既に既知の者もいるだろうが……知らぬ者達の為にも教えよう!奴等の名はダグオン!そう!嘗て我々をこの監獄に閉じ込めた宇宙警察機構の手の者だ!」

 ダグオンの存在を聞いた瞬間、囚人達の空気が変わる、怒気と驚愕、憎悪を含んだざわめきが空間を支配する。

 その雑踏の中にダグオンと言う言葉に一際反応を示した者が……。

 「ダグオン……。まさかこの異世界の地球で再び名を聞くとはな……クク、奴の仇を取らせて貰おう」

 他の囚人が騒ぐ中、彼は一人牢獄へと戻った。

 

 「フフ、彼もやる気になったか、さて、盛り上がりも最高潮のようだが後一つ、この世界に存在する同志を新たに迎えたいと思う!」 

 鬼の宣言に応える様に複数の光の球体が現れる。

 「彼等はエネルギー生命体故、現状肉体を持たぬが…時が来れば頼りになる戦力となるだろう!」

 「「「「「「オォォオオオオオ!」」」」」

 囚人達が吼える。地球に生きる者達を襲う驚異は新たな渦を伴いより巨大になっていく……彼等が動く時は近い。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 あ…六角清香です!私たちが危機を乗り越えた後、衛藤さん達は益子さんと合流します。

 ねねちゃんに急かされ古波蔵さんの救援に向かう衛藤さん達、そこに現れたのは親衛隊の皐月さん。でも何だか様子がおかしい様な……?

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 共闘?反逆者とダグオン。

 え、え?あの人達は!?あの時の!




 はい、新しい監獄主はエセ関西弁の自称商人です。名前もちょっとありきたり感ありますね。
 最後に出てきたエネルギー生命体は、所謂地球のモノを模倣して体を造るトランスフォーマーぽいあれですね。
 枠的にはシリアスなガイスターの四馬鹿かな?
 では、また次回でお会いしましょう。
 


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第三十一話 共闘?反逆者とダグオン。

 こんばんは、遅れましたとじダグ31話です。
最近のコロナ時勢と仕事のシフト変更で上手くモチベーションが上がらず筆が進まなかった脆弱者です。申し訳ございません。
 次はなるべく速く投稿したいな!


 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 ダグオンのみんなが山の中で頑張ってるよ!

可奈美ちゃん達と親衛隊が戦ったよ!調査隊も頑張ってたよ!でも、実はその裏で鎌倉では色々あったよ!

 沙耶香ちゃんに舞衣ちゃんが接触して沙耶香の心に温もりがインストールされたよ!可奈美ちゃんと似た雰囲気の男が現れたよ!

 新しい監獄主が生まれたよ!

 以上、あらすじ終わり!!

 


 

 伊豆の山奥、厳しい夜を越えた者達は未だそれぞれの思惑の元に行動している。

 その内の一人、伍箇伝長船女学園の生徒にして舞草の構成員たる刀使"古波蔵エレン"もまた来るべき時、成すべき事の為に行動していた。

「何者だ!止まれ」

 「怪しい者じゃありませ~ん!通りすがりの刀使デース」

 まだ陽も低く朝霧が薄く掛かった山中の封鎖された道路に警戒体制の中一人現れた刀使に機動隊は銃を向け誰何する。それに対するエレンの返答、この状況で親衛隊と共に展開された部隊から見れば胡散臭い事この上ないだろう。

 そしてエレンを利用してもう一人潜入した者が居る事をエレン自身も機動隊も気付もしなかった。

 

 

 

 

 投降の後、ベースキャンプにて真希、寿々花、そして数人の機動隊に囲まれながら改めて目的を問われるエレンであったが、知らぬ存ぜぬとばかりにすっ惚ける。ただし、視線は鋭く周囲を観察しながらであるが、周囲には悟られぬよう一瞬の瞬間にそれとなくを装って、視線を巡らせ何らかが運び込まれた事を確認すると、後はされるがままに連行されていくエレン。

 そして、それを離れた所で機動隊の装備を纏いながらつぶさに観察していた龍悟は彼女の狙いに乗ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな麓近くのやり取りとは別に、薫はねねと共に朝を迎え、気付けばウイングヨクの姿は無く、サインを貰いそびれた事に軽いショックを受けつつも自らの端末に届いたメッセージを確認した後、行動を起こす。

 怠惰な彼女なりに舞草としての使命を果たす為、可奈美と姫和、現折神体制への反逆者となった二人と合流を急ぐ。

 

 

 

 

 

 そして再び、麓近くのベースキャンプでは指揮所となるテントでは寿々花によってエレンの尋問が行われていた。

 「ごちそうさまデシタ~!」

 「お口に合いまして?」

さしあたって、エレンの要望通り食事を採らせた寿々花。

 綺麗に食された空のコンビニ弁当の箱がエレンの目の前に置かれている。

 「コンビニのお弁当はお漬物も一緒にチンしてしまうのが玉に瑕ですネ」

 「そうですか?(わたくし)アレはアレで嫌いではないですけど」

 「…変わった人デスネ」

 寿々花のお嬢様とは思えぬ一面に流石にエレンも当惑する。その一時の緩んだ空気も次の瞬間から張り詰めていく、寿々花がいの一番に訊ねたのはS装備輸送強襲コンテナの件。機動隊が現場に赴いた頃には既に何処へと持ち去られた後、エレンは自分は関係無い事とすっ惚ける。

 「珍しい苗字ですわよね古波蔵って。でも何処かで聞いた気がしましたの」

 次いで寿々花が切り出したのは古波蔵という姓について。指で髪を弄りながら視線に確信を籠めながらあくまでも世間話の様に語る。DARPAより出向しているS装備開発技術者、ジャクリーン・アン・古波蔵の名を出す。

 「ジャクリーンなら私のママデス!ついでに言っておくとママと働いている古波蔵キミタケがパパデスね!」

 エレンはそれをあっさりと認め、ついでに聞かれてもいない父の事も話す。無論、寿々花とて現在S装備の全てが折神家の管理体制の元にある事は理解している。

 それが無登録のモノとは言え、エレンの両親が開発技術者だからと言って簡単に持ち出せる物ではない。但し、例外は存在する。

 そして両親の話から更に深く切り込む様に寿々花はエレンに問い質す。

 「──けど、貴女のお爺様ならどうかしら?」

 「グランパですか?グランパは今…」

エレンの祖父リチャード・フリードマン。S装備を始め、ノロの軍事利用の理論を提唱した天才とされる科学者。5年前、自ら企業した会社を売却した後音信不通となっている、しかし、その彼が日本に入国した形跡があり、舞草の中核となる人物である可能性があるのでは?とエレンに問う寿々花。

 互いの顔に浮かぶ表情は笑顔と笑み、何とも白々しいやり取りである。正に狐と狸の化かし合いである。

 エレンは舞草と聞いてお灸デスカ?等と飽くまで知らぬ存ぜぬを通す、寿々花としてもどうあってもシラを切るのかと詰問する。

 やがて、これ以上問い詰めても尻尾を見せぬと践んだのか、話題を昨夜の益子薫と皐月夜見の戦闘へとシフトさせる。これにはエレンも驚いたのか微かに目を見開く。

 

 

 

 一方でその薫はと言えば、抜身の祢々切丸を引摺りながらねねの先導の下、無事可奈美達と合流を果たしたのであった。

 「薫ちゃん!無事だったんだね!!」

 「合流地点まで送る。ついてこい」

2人を見つけるなり、舞草との合流場所へと足を向ける薫、しかし、ねねは彼女と逆の方向へ向かおうとする。

 可奈美がねねの尻尾を掴んでいる為、それ以上進む事は叶わないが何処かへと付いてきて欲しいという意思を感じ、可奈美は薫に問う。

 「……エレンちゃんはどこ?」

可奈美の問に薫は無言で彼女を見詰め返した。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ダグオン達は──

 「来たか…」

 変身を解き手頃な岩場に腰を掛けていた戒将が瞑っていた目を開く。

 「お待たせしましたか?」

 「ァァア…しんどかったァ~」

 「おう!……って六角の奴は?」

翼沙、申一郎、焔也と続々と現れ4人が揃う。

 「六角は現在潜入任務中だ。鎧塚、随分疲れているが何があった?」

 「任務中?もしや麓に展開している部隊に関係が?」

 「あー…ならあれもそうなのか?」

 「あ?あー…ちょっとナァ。おい鳳、後で何か奢れ」

 「何でだよっ!?」

 焔也の疑問に答え、次いで申一郎の状態を訪ねる。すると申一郎は疲労の濃い顔を戒将に向け言葉を曖昧に濁した後、焔也に八つ当たりを兼ね責任を取れと絡む。無論、撃鉄との経緯を知らぬ焔也からしてみれば理不尽な事には違いない。

 「ふむ…まぁ、今は深くは訊かん。さて、では一人欠いてはいるが、各々状況経過の報告をするとしよう」

 申一郎の身に起きた事を後に回し、各員の結果を話し合う場を設ける。

 「では先ず俺からだな。渡邊、此れを…」

言い出しっぺと言う事で口火を切った戒将、懐より少量のノロが入ったアンプルを2つ取り出し翼沙に渡す。

 「コレは…、まさか彼女達からの摂取に成功したのですか?!」

 「ああ、とは言っても、雀の涙程の量でしかないがな」

 「いえ!全く無いのとでは少量でも雲泥の差です!コレは大切に保管しておきましょう」

 苦渋の顔の戒将に対し、翼沙は興奮気味に熱弁する。そのまま翼沙は自分が遭遇した出来事を話始める。

 親衛隊第三席皐月夜見と長船女学園益子薫との戦闘に介入、夜見の荒魂使役を目撃し薫と共闘した事等を報告した。

 「──と言う訳でして、三席を退ける事には成功しました」

 「マジか……夜見チャンカワイイのにナァ……」

 「成る程、これといった実績の無い皐月が親衛隊入りした理由が今一つ解らなかったが、そういう訳か」

 「それ本当にまだ人間なのかよ?」

翼沙の報告により各員が相応に反応を返す。次に翼沙の話題に出た長船女学園の刀使に反応した焔也が自身が見た事を話始める。

 「そう言や、俺も見たな長船の刀使。何か親衛隊と機動隊が展開してるキャンプに向かってたぜ?長船が親衛隊と敵対してんならおかしくねぇか?」

 「ふむ……先の皐月と対峙した長船の刀使、そして鳳が見た刀使は特徴からして代表戦の者達か、舞草とやらの中核人物の一人はDr.フリードマンだったな?」

 「はい、間違いありません」

 「ならば双方共に同じ舞草に属する者、であれば鳳が目撃した長船の刀使は舞草としての思惑故の行動と見るべきか……」

 2人の話を総合し仮説を立てる戒将、しかし、情報の精度が浅い為、今一つ確証を得ない。故に一先ずは頭の隅に置き、申一郎の話を聞き動きを決める事にした。

 「オレからは、まぁ特に特別な話は無ぇナ。精々メンドーなヤローを見掛けたってだけサ」

 その時の状況を思いだし苦虫を噛み潰した顔になり簡単に話して終わりにした申一郎、他3人もその顔を見て剰り詳細を知られたくないのだと察する。が万が一もある為、戒将としては聞いておきたい、故に口を挟もうとしたその瞬間、4人のダグコマンダーに通信が入る。

 

 「六角か、何があった?」

 『…例のキャンプから拘束されていた長船の刀使が脱走した。それを三席が追撃しているが……どうやら長船の刀使はノロのアンプルを盗み出したようだ。その後、例の反逆者ともう一人の長船の刀使と合流、戦闘に突入した……好機だ、増援を頼む…』

 「何だと!?」 「アンプルが盗まれた…と言うことは…?」 「用はドサクサ紛れのネコババ狙いってワケね」 「おいおい、マジか?大チャンスだぜ!」

 通信を聴き、急ぎ立ち上がり変身する4人。

 そのまま現場へと急行するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南伊豆の山中の中原、エレンを追い戦闘に突入した夜見、エレンから鳩尾に一撃を喰らうもノロを投与し強化された肉体には変化は無く、エレンを追い詰める。其処へ薫が助太刀に入りエレンを逃がす。可奈美と姫和が更に合流し可奈美はエレンに肩を貸し姫和は薫と共に夜見の足止めに残り可奈美にエレンと共に逃げる様に促す。夜見は更にノロを投与し彼女の顔に変化が表れる、その様はまるで鬼。荒魂の様な角が右目を覆い潰すような変化に流石の4人も息を呑む。

 そうして山原を動きつつも幾重にも居た夜見が放った荒魂を倒し夜見本体へと刃を

 「終わりだ…!」

夜見の発した荒魂を全て払いのけ二対一の状況に姫和は勝利を確信めいた一言を発する。

 「終わり?…本当にそうでしょうか」

しかし、夜見は新たに8本のアンプルを取り出し自らの首に注射する。

 すると右側の角に縦に切れ目が走り、瞼を開く様に目玉が現れる。そして夜見の纏う雰囲気がより禍々しいものとなる。

 そして爆発するかの様な形で小型荒魂が現れる、遠目から赤黒いオーラが可視化出来る程の大きな変化にエレンと夜見を追っていた親衛隊の2人、そしてダグオン達も変化に気付く。

 「何だ…?」 「夜見!?」

 

 「おい!あそこ!?」 「…っ、急ぐぞ!」 「間に合ってくれヨ!」 「手遅れにだけは何としても…」 「……!」

 

 果たして、先に渦中に辿り着いたのはダグオンの若者達であった。

 

 「オイオイオイオイオイッ!シャレになんねぇぞ!どうする?!」

 シンが渦中の戦況に動転気味にカイへと行動の是非を訊ねる。

 「迷うまでも無い、この戦局に我々は我々の正義に従い介入する。行くぞ!」

 「おう!」 「はい!」 「っだよナァ!」 「承知…!」

途中合流したリュウと共に彼女達の間に割って入る為に跳んだ。

 

 

 「姫和ちゃん!?」

 「来るな可奈美っ!こいつはもう……」

そして姫和達の異変に気付いた可奈美は咄嗟に叫ぶ、薫が夜見に弾き飛ばされ、姫和と鍔競り合いとなる。が敢えなく推し負け倒れ伏す姫和、可奈美はエレンから肩を放し千鳥を手に夜見に相対する。

 「…こっちだよ!」

その声に従い夜見は可奈美へと標的を移す、最早化け物と言って差し支え無い夜見を見て姫和は叫ぶ。

 「斬れ可奈美っ!そいつはもう人じゃない!?」

しかし可奈美は躊躇し、その一瞬が隙となり尻餅を着いて追い詰められる。はや危機一髪その時──

 

  「シャドークナイッ!」

 突如、夜見の後方より鎖付の刃が彼女の両腕に巻き付きその動きを阻害、クナイの刃は地面へと突き刺さる。

 「っ!?今のは…!!」

 「ワッツ?!何事デスカ!!?」

 「おい、もしかして…」

 「これ…あの時の?!」

現れた予想外の出来事に彼女達は驚く、そして更に現れた4人の影が夜見を取り押さえる。

 「エン、シン、ヨク!彼女を制圧する。抜かるなよ!リュウ、そのまま抑えていろ!」

 カイが即座に指示を飛ばしエン、シン、ヨクが夜見の身体を抑え込む。

 「何て力だ、八幡力なんてレベルじゃねぇぞ!」

クナイの鎖によって空いた両脇をエンが後ろから抱え込む様に抑える。

 「何と言う姿……これではまるで…!?」

夜見の持つ水神切兼光を腕ごと抑え振り下ろされぬ様に阻害する。

 「流石にコイツはショッキングだなぁオイ!」

正面からはシンが夜見の二の腕を掴み、こちらもやはり動きを阻害する。

 「そこの美濃関、平城、長船の刀使!彼女は我々が止める。君達は退け!」

 唯一手の空いたカイが可奈美達へこの場から逃げる様に促す。しかし、姫和だけはそれに反論する。

 「ふざけるな!?そいつは既に人とは言えない!私達が逃げ出す訳には」

 「待って!姫和ちゃん見て!」

しかし可奈美からの声に全員が夜見に視線を向ける。すると彼女から爆発の様な現象が起こり、ノロの光が柱を造り天に登る。

 オーバードーズ、投与されたノロの過剰な量に夜見自身の肉体が耐えられなくなり起こった現象。

 誰かが手を下すまでもなく、夜見の自滅によって戦闘は終局した。

 「助かった…のかな?」

 「ソウみたいデス。多分、ノロと力のバランスが取れなくなったんデスネ」

 人の体にノロを入れるなんて無茶するからデスとエレンが評する。

 「成る程な、やはり人間には過ぎた力か…」

 「兎も角、最悪は免れましたね……」

カイとヨクはその現象を目の当たりにしノロの危険性を再確認、また最悪の事態を免れた事に安堵を覚える。

 「………」

倒れ伏した夜見の身をまさぐり始めたリュウ、それを目にしたエンとシンがすわ何事かと驚く。

 「ちょ、おま…何してんだよ?!」

 「この状況でセクハラとか……オマエ顔に似合わずやるな?!」

 「……?何を言っている、俺はアンプルが残っているか確認しているだけだ…」

 2人の疑問に首を傾げ、ノロが入ったアンプルを見付け取り出すリュウ、それを見てバツが悪くなった2人。

 「…良かった生きてるよ!」

 そして可奈美は夜見に近付き生きていることを確認する。

 「もしもし!タクシー一台お願いシマース!」

エレンは懐から携帯を取り出し何処かに電話を掛ける。

 「タクシー…?」

姫和は一連のやり取りを目撃しながらエレンの口にした言葉に疑問を浮かべる。

 「どうやら君達は自前の逃走手段が有るようだな、もし良ければ我々が親衛隊を足止めしよう」

 カイが姫和達に近付き、協力を提案する。姫和は若干警戒しながら他の面々に視線を配る。

 「願ってもないな、頼む。後、サインをくれ、昨日そっちの白いのから貰い損ねたのも含め五人分な」

 薫が代表しダグオン達に言葉を返す、ついでにサインをねだる。

 「頼まれよう。しかし、サインか…残念だが、ペンの持合せは無い、それに君も書けるモノは持っていないし時間もあるまい?」

 カイの子供に言い聞かせる様な優しい声音から出た至極真っ当な理由にガックリと肩を落とす薫であった。

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 やぁ!みんなアルファだよ!

え?誰かって?やだなー管理者だよー!

 立体交差平行世界超次元生命体、三人の管理統括長の一人アルファだよぉ~。あらすじに続いてこっちもボクがやるのさ。

 いや~みんな頑張ったね。これで夜見ちゃんからも一応ノロを回収したら任務完了だね!おや?あの時代錯誤ファッションの彼は……

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 発覚?!暴かれた正体!

次回はトライダグオン出来ないかも?!




 いやはや、コロナ騒動がいち早く終息する事を切に願います。でないと気分転換の外出が出来ないのでネタが詰まってしまいます。とりあえず暫くプロットに没頭しながら時偶シンデレラ百剣上げると思いますのでよろしくお願いいたします。


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第三十二話 発覚?!暴かれた正体!

 こんにちは、ダグライダーです。
やっと書けました32話、初期のプロットから大分修正してのモノです。
 いやぁ、宇宙人達の名前を考えるのが大変です。誰かネタを下さい。
 今回はオリジナル色が強い話です。まぁ、可奈美達が潜水艦で逃げる前の状況を少し膨らませたモノなんですが、兎も角どうぞ。



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 虎穴に入らずんば虎児を得ず。

 自ら親衛隊へと投降し、探りを入れるエレン。尋問を終えた後、ノロのアンプルを盗み出す。しかし夜見による追撃を受け危機を向かえる。そこへ現れた薫そして可奈美と姫和の加勢により、夜見を抑え込むも夜見がノロを過剰摂取、狂戦士とかす。だが、同じく機動隊に変装し、潜入していた龍悟からの通信により駆け付けたダグオンの手で夜見を傷付ける事無くその場を切り抜けたのであった。そして──

 


 

 「さて、取り掛かるとしよう」

ターボカイのその言葉を皮切りにダグオン達は行動を開始する。

 「シン、やれ。但し当てるなよ」

 「あいヨ。っても中々難しいぜこれはヨォ」

カイが視線を向く、その方向に何かを確認したのかシンへ指示を飛ばす。それに応え、火器の発射体制を取るアーマーシン、とは言え対象を攻撃する事が目的では無い為難題な注文につい愚痴っぽく溢してしまう。

 「一応、僕の方でもデータを構築、計算して送りますので…」

 ウイングヨクが苦笑しながらもフォローする、各員のダグテクターのデータリンクを利用しカイが親衛隊他旗下の機動隊の現在地を感知し、それをリアルタイムでシンに送る、そこへヨクが算出されるルートパターンを構築、どこへどの様にすれば被害が少ないのかを計算しているのだ。

 

 「任せておいて何だが、大丈夫なのか?」 「ねー?」

エレンが呼んだタクシー到着まで猶予が在るため、ダグオン達が何を行うのか気になっている薫が近くに居るカイに訊ねる。そして薫を真似る様にねねも首を傾げて疑問の鳴き声を挙げる。

 「問題無い、此方で彼方の動きを常に観測している。ヨク……あそこに居る我々の仲間であるあの白い戦士がそれを元にある程度の誤差を修正し連中の動きの先を予測している、後はシン、緑の戦士が外さなければ君達が逃げ切るに十分な時間は作れる」

 「ほぅ、便利だな」

 「もしかして、そのスーツの力デスカ?そうだとしたらかなりの技術ですネ」

 相方のやり取りにが気になったのか話に割り込むエレン、その顔はダグオンという未知に対する興味が全面に表れている。

 「悪いが詳しくは言えない、我々は君達の敵ではないが、完全に味方と言う訳では無い」

 「それはどう言う意味だ…?」

エレンの問いに対し、己が知らぬ知識を答えようが無いカイは、しかし、そういった事を悟られぬ様に言葉を濁す。そしてカイが言放った言葉の後半に反応を示した姫和、彼女の中では未だダグオンの立ち位置は正体不明の怪しい集団であり、それが敵対はしないが明確に味方でも無いと聞けば警戒も顕になろう。

 

 「おいおい、そう構えんなよ。別に俺らは君らにとって悪いことするつもりは無いぜ」

 ファイヤーエンが慌てて姫和とカイの間に割り姫和を宥めようとする。

 「済まない、言葉が足りなかったな。我々は君達を含めた刀使、延いてはこの地球に住まう人類、それらを支える生命を守護する者だ。故に、極端な見方になるが、君達の立場と親衛隊含めた現折神家体制の刀剣類管理局での出来事は内輪揉めとも言える」

 「っ、だがそれは大荒魂が折神紫の姿を借りて行っている統治だ!荒魂は我々の敵だろう!」

 「おい、忘れんな、ねねみたいなのもいるんだ」

カイの出した意見に反発する姫和、大荒魂の手中にある現在の刀剣類管理局は信用するに値しないと彼女は言いたいのだろう、何より彼女の母が大荒魂を伐ち損じて志半ば目の前で伏した事も大きい。だからこそ荒魂を敵対視するのだが、そこにねねと言う歴代の益子の刀使との対話により守護獣と化した荒魂と共存する薫が口を挟む。それに対し姫和は何か言いたげな目でねねを睨むも、スペクトラム計が反応しなかった事は事実なので黙り混む。

 

 「あの…じゃあ皆さんって一体何と戦ってるんですか?」

 そうして険悪な空気になりかけた時、可奈美が悪意の欠片も無い何と無しの疑問を口に出す。

 「俺たちが何と戦ってるのか、ね……まぁあれだな宇宙人」

 「え?」 「はっ?」 「マジか」 「WAO!!エイリアンデスカ!?」 「ねねー!?」

 可奈美の疑問に対し自信たっぷりに宇宙人と戦っていると言い張るエン。彼女達からはマスクで顔が見えないがきっとちょっと小生意気な感じに偉そうに目を瞑っているんだろうなと可奈美は思った。

 「(あれ?何でそう思ったんだろう……?)」

 「待て、宇宙人だと……?気は確かか?」

 可奈美が自分の感じた感覚に疑問を生じている傍ら姫和は可哀想な人を見る目でエン達を見る。

 「……疑いたくなるのは、解らなくもない、が、事実だ……。お前と美濃関の娘は見た筈だ、あの荒魂とも違う敵意を持った奇妙な存在を……」

 姫和の否定的な視線に今まで黙っていたシャドーリュウが口を開き答えた。

 「それって…もしかしてあの時の……」

 「貴様と白いのが倒した奴か…」

厳密にはあれは異星人では無く、その被害者を利用した屍人形なのだが、夜の暗闇であの醜悪な姿は、宇宙人と言われても納得出来てしまう見た目であった。

 「おいおい、今更だろ?こんな明らかにガチでヒーローしてます的な連中が居るんだ、怪人や宇宙人の1人や2人居るに決まってんだろ!」

 そして何故か薫が熱弁する。

 「エンの言い分は兎も角として、我々の敵はその異星の脅威、そして人類に仇なす荒魂のような敵性存在だ。と言っても荒魂に関しては君達が居るからな、悪魔でも君達の手に負える相手で無い時は我々が力を貸そう」

 「ナルホド、つまり貴方達は私達が私達で解決出来るならそれに越した事はないと言うワケデスネ?」

 「ああ。もし君達が大荒魂に敗れそうになれば我々も手をこまねくつもりは無い。そろそろか、シン」

 「ラジャ、サァて威力は低く、爆発は派手に、んでもって当てずに、親衛隊とその他が少しでも足を止める感じに、ハンドミサイル!」

 エレンの推測に肯定で返し、自身の視覚情報から得たデータをヨクを介してシンへと送るカイ、それを頼りに現在親衛隊と機動隊が居る位置の数十キロ手前と外周にミサイルを撃ち込むシン。見事、ミサイルは目標へと着弾し派手な土煙を立て石の雨を降らせ木々を揺らし或いは倒す。

 これには八幡力を使える親衛隊の二人は未だしも、機動隊の重装備では足を止めざる終えないだろう。

 「ッシ!こんなとこカァ?どうよ!?」

 「お見事です。彼女達も目立った外傷は無いようですし機動隊も動揺が見てとれます」

 「ふむ、上々だな。よし我々も退くぞ、既に此処には用はない」

 「おう!」 「あいヨ!」 「はい」 「承知」

成果を確認し、撤退を始めるダグオン。

 

 

 「……息災でな…」

シャドーリュウが姫和に向けてそう言い残し、始めに消える。

 「縁があればまたお会いしましょう」

ウイングヨクが長船の二人に言い残し飛び去る。

 「ま、あれダナ。長船のちっこいの、制服の着こなしが残念だから頑張ンナ。んで、平城の娘は……御愁傷サマー!」

 「おい、どういう意味だ…!?」

 「貴様、今ドコを見てそんな言葉を吐いた?!」

 アーマーシンが、彼の事を周知していれば隠す気があるのかと言わんばかりの科白を吐いては跳躍して消える。それに対し言われた側の二人の顔に青筋と血管が浮き出る。

 「彼奴は……済まない、奴には後でよく言い聞かせておく。ではな、次は出来ればもう少し穏便に会いたいものだ」

 ターボカイがシンの行動に呆れながら、言われた二人に謝罪し、その上で次はお互い落ち着いた立場で再開したい旨を込め疾風の様に去る。

 「あー、まぁあれだ。元気でな、後…衛藤、柳瀬によろしく言っといてくれ」

 「え!?は、はい!」

最後にファイヤーエンが、これまた隠す気があるのかと思う様な事を洩らし跳んで去っていった。

 

 

 残された四人は──

 「全く、何なんだヤツは!?」

 「全くだ、俺にはねねがついてるのにコイツの同類扱いとはな」 「ねー」

 「は?

 

 「何であの赤い人、私や舞衣ちゃんの名前知ってたんだろ?それにあの時感じたのって……?」

 「正に嵐の様な人達でしたネ!(ダグオン…デスカ、実際に目にすると明らかに今の技術では不可能な事が多い。ですが、やはりあのテクノロジーは荒魂に関するモノとは明らかに別種のモノでした。ンー謎が増えマシタネ)」

薫、ねねと姫和が漫才染みたやり取りを繰り広げている状況を他所に可奈美はエンが残した言葉、名乗ってもいない自身の姓と彼等が知る筈もない舞衣の姓を知っていた事に首を傾げ、エンがとった態度に何故か知っている人物像を重ねた事も相まって余計に混乱していた。

 エレンは以前から舞草の報告に挙がっていた集団に実際に遭遇した事で彼等が使用する技術が既知のモノとはかけ離れた物だと確信し、それ故に余計に正体が判らなくなった事が分かり心中で吐露する。

 そして数十分後には彼女達は沖合いに出て迎えのゴムボートに乗り、崖岸から眺める親衛隊他追っ手を他所に、逃走手段である潜水艦にて逃亡したのであった。

 

 

 

 

 

 「はー、まさか潜水艦とはなぁ」

その様子をダグビークルを隠してある山から眺めながら思わず溢すエン。

 「成る程、アレならばそう易々とは追えないな」

 「マジかァ、舞草ってのはそんなにデケェ組織なのかヨ?」

 「少なくとも、長船女学院のほぼ過半数が舞草と見て間違いないでしょうし、以前説明した通り、彼方にはあの方も居ますから」

 カイ、シン、ヨクが各々にモノを言う。

 「……それで、俺達はどうする?…このまま帰るのか…?」

 リュウがこれからの方針を訊ねる。

 「ふむ、そうだな……」

その問いを返す為、カイが思考し始めた時だ、シンが変身を解いた。

 「ッアァ~!疲かれたァ~、ようやく楽になれたゼ」

 「お、俺も」

それに便乗してエンが変身を解く。

 「2人とも急に解除するなんて不用意過ぎますよ!」

 「ヨクの言う通りだ、万が一他の人間に見られたらどうする!」

 ヨクとカイが焔也と申一郎に苦言を呈する、そこに──

 

 

 

 「な、何じゃとぉぉぉおおおお?!」

 

 割れんばかりの絶叫が響く。

 「……手遅れのようだ…」

 リュウが淡々と告げる。

 

 「この、明らかに空気なんぞ読まんと言わんばかりの聞き覚えのある叫び声は……まさか?!」

 「何と言う事だ……」

 「ゲェ……あのヤロウ、まさかアソコから脱走しやがったのか!?」

 「彼は……確か以前、京都で…」

 焔也が明らかに誰なのか心当たりがある説明口調で驚愕し、カイが手を額に当て天を仰ぎ、申一郎が追って来れないよう対策した筈の相手に、とてもげんなりした顔で狼狽え、ヨクが見覚えのある特徴的な衣服に、以前京都で焔也と乱闘騒ぎを起こした人物に思い至る。

 

 「お、お、鳳焔也ぁぁ!?貴様があの時の赤い奴じゃとぉぉぉおおおお?!」

 その人物、田中撃鉄は嘗て新宿にて目撃したダグオンの正体がまさか自身が知る因縁の相手である事にとても驚いていた。

 「……………やべ、しくった」

今更後悔しても既に正体がバレてしまったのでは手遅れである。

 「それに、そこの奴はワシをぞんざいに.扱った挙げ句、何ぞよく分からん怪しい連中の近くに置いてきぼりした緑色!」

 そう、申一郎はあの時撃鉄を、機動隊が彼を発見出来る場所に下ろしてから、ダグテクターの強化された身体機能でアーマーシン自身は見付からない様に機動隊近くを通過し、撃鉄はそれを追い掛けようと大声と共に走った、となれば機動隊が彼を発見、拘束するのは自明の理である。

 その後、取調べを受けていたのだが、詳しくは別の折に触れよう。

 「何たることじゃ、あの時見所があると思うた奴が…あの鳳焔也だとは」

 ガクッとorzのように膝を着き落ち込む撃鉄、しかし次の瞬間には立ち上がり、焔也に詰め寄る。

 「ええいっ!貴様一体全体、それはなんじゃい!?」

 「お、お、お前、ま、ま、まずは、お、お、お、落ち着けって、て、て、て、て」

 自分の首元を掴み揺らす撃鉄に、焔也は言葉を絞り出して落ち着く様に言い聞かせるが止まらない、そこへ既に変身を解いた龍悟が近付き──

 「……眠っていろ…」

 「あひゅ?!」

恐ろしく素早い手刀で撃鉄の顎を掠め、それを喰らった撃鉄は間抜けな声を上げた後、ばたりと倒れ気絶した。

 

 「ドースンだ、これ?」

 「流石にこのまま放置…とはいけませんね」

 「致し方無い、我々の基地に運ぶぞ」

綾小路組が倒れ伏した撃鉄の処遇を決める。

 遂に第三者に正体がバレたダグオン、果たして撃鉄は無事明日を迎える事が出来るのであろうか?

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 どうも潘つぐみです。いやはや私今のところ一切本編に出番が無いのですが、予告に出ても良いんでしょうか?可愛いから大丈夫、ですか?

 ともあれ、番長ルック田中さんに正体がバレてしまったダグオンの方達、彼等は田中さんを自らの拠点に連れ込みます。

 一方、我らが刀剣類管理局では色々と新たな事件がありまして…。

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 撃鉄危機一髪!調査隊新たなる地へ。

 では次回でお会いしましょう、"トライダグオン"

 

 




 はい、遂に撃鉄がダグオンのと言うかファイヤーエンとアーマーシンの正体を知りました。
 これでやっとドリルゲキフラグを1つ回収出来た。
さて、お次はライアンとサンダーライの方を頑張らねば……!
 ではまた次回でお会いしましょう。


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幕間 田中撃鉄の心境と受難。山狩りの変

 
 こんばんは。幕間二回目です。
今回はタイトルの通り撃鉄の話、彼が何故京都で焔也に喧嘩を売ったのか等の理由を記しました。

 それはそれとして、つぐみちゃん、多分何時か出番作るのでごめんね。


 この話は、古き良き番長の矜持を貫かんとする男の身に起きた出来事である。

 

 

 

 田中撃鉄。彼が修行の為に訪れた伊豆のとある山奥。

 修行とは言っても彼は本能に従いこの山に入ったので土地勘など有りはしない、とはいえ陽が高い内に入山したので迷う事など無いだろうとタカを括ったのが運の尽き。本人としては滝行が出来ない事が心残りであったが修行に気を取られ夢中になること数十時間、気付けば辺りは暗くすっかり陽は沈み何やら物音がちらほら聞こえてくる。

 そして思わず叫ぶ。

 

 「おおぉぉおおおおお?!此処はどこじゃぁあああいっ!?」

 一頻り叫ぶ、叫ぶ。そして叫んでいる内に思考を纏める。

 「ぬぅううう、ワシとしたことが一生の不覚!まさかこの歳で迷子になるとはぁああああ!!」

 という訳で勝手に自己完結し迷った己を恥じる為に、また叫ぶというか唸る。

 出口は何処か判らないので取り敢えず叫ぶ。

 実は近くにアーマーシンが居るのだが、彼にそれが分かるわけもない。

 すると暗くなった木々の木陰を縫って珍妙な羽虫が現れる。最初はこの辺り特有の種かと思ったが、何やら自分目掛け襲い来るではないか!?

 とりあえずヤられっぱなしは性に合わない、道端の石コロを拾っては投げ付ける。

 そして叫ぶ、木の枝を拾い振り回す、そして叫ぶ、石コロを投げる、叫ぶ、振り回す、叫ぶ、繰り返しである。

 すると自分のやや左後ろから更に物音が、何事かと振り返れば、現れたのは緑色の装甲を纏う、恐らくは新宿で遭遇した赤い奴の同類。

 その緑色のダグ何某が逃げるように指図してくるがそれは彼としては頑として譲れない。新宿に続き助けられては、己が何のために武者修行を始めたのか……。

 

 田中撃鉄にとって今の世間の時勢は"気に入らない"の一言に尽きる。

 年端もいかぬ頃より御刀という人の命さえ簡単に奪える強力な刀を、荒魂という搾りカスから産まれた訳の分からない怪物を退治する為に少女達が前線に立って戦うのだ。

 訓練を受けた?それは生き残る為にも勝利する為にも当然だろう。

しかし実態は常に被害は減らない命懸け。まだ生きてやりたい事がある者もいたはずだ。大怪我をして満足に生活出来ない者もいる。それが気に入らない。

 御刀に選ばれた女しか戦え無い?自衛隊、警察は精々が避難誘導や足止めの時間稼ぎ?論外だ!

 もっと何か出来るはずだ!手をこまねいて見ているだけでは彼女達が無為に消耗するだけだ。

 鎌府や長船は女子校故に仕方がない、しかし、美濃関は?平城は?綾小路は?男の生徒もいるだろう。

 人には向き不向きがあるのも理解している。だがだからと言って何もせずに彼女達に任せるだけ、ただ御刀を研ぐだけ、装飾を作るだけ、それだけか!?他に何も無いのか!?だから気に入らない。

 勿論、自分が身勝手極まり無い事を宣っているのだろう。だがそれでも黙って見るのは己の中の漢がする事じゃあない!

 だからだろう、あの時京都で見掛けた伍箇伝の男子生徒、それを見て抑えが利かなくなった。

 つい、喧嘩を売ってしまった。

だがどうだ……あんなヘラヘラした奴に、鍛えた己が敗北したではないか?!

 己を負かせたこの男が気に入らん。

 だから美濃関まで出向いたのだ。まぁ、気付けば実姉に殴られ何も出来なかったのだが………。

 

 その後は新宿でまたしてもあの男──鳳焔也と遭遇、今度こそ決着を付けようと意気揚々近付けば、自分を止める声が聴こえる、一体誰が漢同士の喧嘩に割って入ったのかと思い振り向けば、そこには彼の人生観では見たことも無い可憐な華が居るではないか!!

 その瞬間だけ、鳳焔也の事など頭からすっぽ抜けた。

それぐらい衝撃だった。

 そこからは浮かれてよく覚えていないが、何やら奇妙な刀を探しているとか、ならば自分も手伝おうではないか。

 等と決心していたら荒魂が現れた。故に逃げない!鳳焔也は避難と称して逃げたようだが、自分は逃げない。

 だがどうだ、己の力を振るい奮戦しても荒魂は倒せない、だが諦めない。

 そうしたら突然現れた謎の戦士、何と奴は荒魂を蹴る殴るで倒したではないか!?

 何やら炎を纏っていた気もするが、そんなのは些細な事だ。だから奴は見所があると思う。

 己も一層励まねば!

それが田中撃鉄と言う男である。

 

 

 

 緑色の戦士は内蔵した銃火器と両手に構えた銃で戦っているが見ているだけなど漢では無い。

 辺りを見回し、何か武器が無いかを探す。そして見付けた。

 近くの大木を身体を使って掴み持ち上げる。根性で持ち上げる。振り回す。

 しかしどれだけ奮戦しようとも結局、荒魂に効果は無いのだ。

 赤い奴と緑の奴、そして自分……一体何が違うのか?

等と僅かに思考した一瞬、その緑色が自分を抱えその場を離れるではないか!

 冗談では無い!まだ何も成していない!

しかし抵抗虚しく、何処かへと降ろされる。文句の一言でも言ってやろうかと顔を緑色に向ければいつの間にか跳び去って行くではないか!

 このまま逃がす訳にはいかない!追わねば!

そして走り出す。あの力の秘密を解き明かすのだ!

 

 

 そうして気付けば何やら麓近くに展開していた謎の連中、刀剣類管理局がどうの、機動隊がどうの、親衛隊がナンタラカンタラ、反逆者がどうたら。

 自分は修行で山にいたと訴えれば何を馬鹿な事をという目で見られ、そのまま拘束される。

 親衛隊とやらが立て込んでいるらしく、機動隊の何某に取調べを受ける。

 嘘はこれ1つも吐いてないが向こうは一切信じてくれない。その内何やら外が騒がしい、自分の取調べを行った連中も自分に手錠を掛けその場を離れた。

 

 暫く様子を伺い、これは逃げ…もとい脱け出すチャンスと捉え、馬鹿力で手錠を破壊する。

 取り敢えず、この怪しげな連中が向かう方向とは逆に走る。走る。

 気付けば夕方となっているではないか!

取り敢えず下山せねばと思い歩いていると声が聴こえるではないか、顔を出して窺えば、何とあのダグオン何某ではないか?!

 すると、緑色が何やら光出す、光が収まれば何と何処かで見覚えがある顔が……だが、衝撃はその後に来た。

 新宿で遭遇した赤い方が緑の奴と同じ様に光ると、何とその正体はあの鳳焔也!?

 

 

 「な、何じゃとぉぉぉおおおお?!」 

 思わず叫んでいた自分がいた。

 もう何が何だか自分でもよく分からないが兎に角、連中の中に突っ込み焔也の襟首を揺さぶり問い質す。

 焔也が何かほざいているが、関係ない。兎に角どういう事か聞き出さねば!!

 そして夢中で奴を振り回す内に何やら近付く何者かに何かをされた。

 「あひゅ?!」

自分でも間抜けな声だと思い田中撃鉄は意識を手離した。

 

 彼がその信念に見合う力を得るのは、まだもう少し先の事だ

 





 はい、幕間その2でした!
そろそろジェゲンガ星人も動いてもらわねば…。

 まぁ、次はシン百を投稿すると思います。
ところでシン百を閲覧している方で此方を見ている方にも言っておきますが、私はお山は大(゚ω゚(◯=■〇×♀♂&*#£ゐゑΖヴ


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第三十三話 撃鉄危機一髪!調査隊新たなる地へ。

 こんばんやすみなさい。
 はい、とじダグです。ここ最近はシンデレラ百剣優先で執筆していたので少し執筆勘がズレてましたが最新話を投稿です。
 覇界王読みました、いやぁ、相変わらずヤバいですねアルジャーノン。そして敵となった勇者ロボとかね。
 それはそれとして、西遊記結芽欲しかったなぁ。
女性の孫悟空とか箱庭の斉天大聖美猴王を思い起こします。私、あのシリーズ好きなんですよ、勿論ラストエンブリオも読んでます。
 それにしても、猪八戒扱いでショックを受けた真希ちゃん、やっぱ乙女なんだなぁ。そして一人沙悟浄に消去法で決まった何か言いたげな夜見……可愛いかよ


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"……ねぇ前も思ったけどぉ。これ長いから略しちゃわなぁい?ダメ?ちぇっ

 ダグオンのイケメンメンズくん達がかなみん、ヒヨヨンとエレンっち、かおっちの激ニゲダッシュ丸を手助けするジャン?んで、あれとかこれとかで何かぁ、めっちゃ古臭い感じの脳キンイケボくんに正体バレてマジウケるー!ってか申一郎ちゃんさぁ、女の子の一部を見て着こなし云々はセクハラだしぃ、ゼータちゃん的にはあり得ないつーか。まぁでぇもぉヒヨヨンは残念賞なのは事実だよねぇ♪

 

 おのれ!又してもあらすじを私物化しよってぇ!!

 


 

 ━━静岡県某所ダグベース

 伊豆の山々から帰還したダグオンの若者達。

親衛隊からのノロの回収、反逆者の逃亡の幇助という目的を果たした彼等、しかし、その顔には達成感よりも疲労の色の方が濃い。

 その理由は戒将と焔也が担いでいる人物にある。

 田中撃鉄──何の因果か、偶然同じ山に居合わせ、もっとも最悪なタイミングで……いや、ある意味では最高のタイミングでダグオンの正体を知ってしまった男である。

 「重っ!こいつ重すぎだろ!?」

 「見た目以上に筋肉があるのだろうな……今は迷惑でしかないが」

 左右から撃鉄の肩を支え担ぐ、焔也と戒将が各々に愚痴る。

 「とりあえず、基地の房室までの辛抱ですから」

 翼沙が士気が下がっている二人を何とか励まそうと言葉を掛ける。

 そう、ダグオンの基地であるダグベースは元は宇宙警察機構の装備である。その為、何らかの事情で拘束した相手を収容する独房部屋があるのだ。 

 独房のある区画まで撃鉄を担ぐ二人と翼沙を尻目に、申一郎と龍悟は先へと進む。彼等は先にオーダールームに戻り、管理者アルファとブレイブ星人に報告をするという役割があるのだ。因みにではあるが、それらの分担はじゃん拳で決まった。

 「じゃ、オレら先行ってるゼ」

 「……何かあれば呼ぶといい…」

そう言い残し、上のフロアへと消えて行く二人の背中を見送った後、再び独房へと歩き出す三人、翼沙としては早々にノロの解析をしたいであろう気持ちを抑えての同行である。

 「では彼には気の毒ですが、暫くはこの中で大人しくしていただきましょう」

 独房前のコンソールを弄り、扉を開く翼沙。簡素なレイアウトの部屋に撃鉄を担いだ二人が入室する。

 「大丈夫かよ、こいつ結構馬鹿力だぜ?」

 「確かに話に聞いた限りでは、中々に常人離れしているようだが、だとしても奴は人間だ。問題は有るまい、曲がりなりにも此処は宇宙人の技術力で造られた施設なのだからな」

 焔也が部屋の様相に不安を洩らすが、戒将は問題無いと断じ撃鉄を部屋の中央に寝かせ、二人して部屋から退出、翼沙が再びコンソールを操作し扉を閉めた。

 

 

 「つーわけで、テメェに言われた通り仕事をこなしたってワケだ」

 ≪いやぁ、ご苦労様だったね。いや良かった良かった。こっちとしても上手くいくかちょっと不安だったし≫

 「……確証も無く頼んだのか…?」

 ≪まさか!?でも万が一……億が一って可能性もなきにしもあらずってヤツだよ≫

 三人がオーダールームに戻ると、既に報告を始めていたのか、アルファと話し合っている申一郎と龍悟がいた。

 <戻ったか、勇者達よ>

三人がオーダールームに顔を出したと同時にブレイブ星人も姿を現す。

 「ああ、少々予定外の事も起きたが、敵を倒し、任務は遂行した」

 ≪ああ、何か正体バレちゃって、その子独房に入れてきたんだって?≫

 撃鉄をその子と表するアルファ。別段おかしな事ではないのだが、如何せんアルファの声はダグオン達からしてみれば幼さが残る少年とも少女とも聴こえる声色なのでいくばかの違和感が拭えない。

 「迂闊だった、そう言い他にあるまい」

 「いやぁ、確かにケーソツだったけどヨォ…ほぼ一日半、色々ありすぎてちょっとばかし解放感が欲しかったんだよ……悪かったって、そんな睨むなヨ」

 申一郎と焔也の起こした迂闊な行動に戒将が非難の視線を向けると、罪悪感があるのか遠慮がちに、しかし反省とは言い難い理由を口にし翼沙や龍悟からも非難の視線が向けられる。焔也も流石に自分が迂闊であった自覚があるのか申し訳無さそうに視線を反らす。

 ≪まぁバレちゃったなら仕方無い。その子には何とか忘れて貰おうかな≫

 「という事は、まさか記憶を改竄する装置があるのですか?」

 ≪無いことはないね、デカ過ぎて携帯出来ないのが難点だけど……だよね、ブレイブ星人?≫

 <ああ。ダグベースにはそう言ったシステムも存在する>

 アルファが記憶の操作を提案した事に翼沙がまさかと驚き訪ねると、感慨も無く淡々と装置の存在を肯定し、尚且つその大きさに不平を口にする。話を振られたブレイブ星人も又、短く肯定する。

 「はー、そんなモンまであんのか……宇宙ヤベェ」

 「感想としてそれはどうなのだ……、と言うかだな鎧塚、貴様先のアレは戴けないぞ」

 申一郎の語彙力なんて知ったことかと言わんばかりの感想に戒将が呆れて嘆息する、ついでに山で起きた刀使達との別れ際の出来事にも言及する。

 「アン?先のってえと……もしかして山でカワイコチャン達と別れた時のコト言ってンのか?」

 「そう言えば鎧塚君、長船の益子さんと平城の十条さんに向けて何か失礼な事を言っていましたね」

 「……確かにな、アレはセクハラではないか…?」

 「てか、長船のチビの方、別に普通に着こなしてたじゃん?」

 申一郎が思い出していると、翼沙、龍悟、焔也の順に次々と非難が飛ぶ。

 ≪へぇーそんなこと言ったんだ~≫

 「いや、違くて。ほら長船って言やあスタイルつーか、ご立派な胸のコが多いジャン?で、制服がそれを強調するワケで、それに平城の黒髪チャンは残ね……だからそんな睨むなって、悪かったよ」

 この場に居る自分以外全ての責める様な視線から最後まで言葉を紡ぐことをせず、謝る申一郎。

 要するに、この男の個人的な好みのから来る長船の制服のイメージが胸を強調してなんぼであると言うモノであっただけである。

 

 <それで例の少年の方はどうするのだ?>

 ≪ああ、そうだったそうだった!ていうかだね、その目撃者の子は名前何て言うのさ?≫

 ブレイブ星人のお陰で本来の話に戻る面々、アルファが撃鉄の名を訊ねる。

 「ん?ああ、確か……フルネームは田中撃鉄だ。うちのガッコにあいつの姉貴が居て教師やってる」

 「美濃関で教員の田中……田中妙子女史か」

 ≪撃鉄だって?!≫

戒将が本部務めに中って覚えた伍箇伝のデータから教員の名を挙げたと同時にアルファが驚愕の声を上げた。

 「イキナリどうした?」

 「彼をご存知なんですか?」

 その反応の大きさにダグオン達も驚き申一郎と翼沙がアルファに訊ねる。

 ≪あ……いやぁ何でも無いよ、でもちょっと予定変更。その田中撃鉄くんにはもう暫くは此処に居て貰おうかな≫

 「……随分と急に意見を変えたな、奴に何かあるのか…?」

 ≪それはまだ秘密。でもまぁ君たちにとっても悪いことにはならないよ≫

 「本当かよ…」

龍悟の指摘に言葉をはぐらかすアルファ、焔也も胡乱気に愚痴る。

 「ふむ、どうせ今訊ねた処で貴様は真面に答えはしないのだろう?ならば、任せるだけだ。では俺は一足先に管理局本部に戻らせてもらう」

 戒将がこれまでの付き合いからアルファが答えはしないのだろうと分析し、流石にこれ以上、刀剣類管理局から姿を消すのは不味いと踏んで、一人オーダールームより退出、転送装置の方へと消えて行った。

 「……俺達も一度戻るべきだろう…」

 「ですね、流石に長く空けすぎました」

 「まぁ燕はトモカク、オレや渡邊ナンカは割りと居なくても違和感無いダロ?」

 真面目な戒将は別として、ナンパでサボる申一郎と研究室に籠りきりになる事が多い翼沙、そして神出鬼没な龍悟等は実の所、授業等に出なくとも違和感は無いのだ。

 「いやでもやっぱ一旦戻ろうぜ。俺も疲れたし」

 「…同感だ」 「ですね」 「ま、しゃーねカ」

焔也の言葉を皮切りに次々とオーダールームから退出する若者達、後に残るはブレイブ星人とアルファのみ。

 <して如何する?>

 ≪撃鉄くんの事?まぁボクに任せてよ≫

こうして、未だ意識の戻らぬ撃鉄の与り知らぬ所で彼は自身に迫っていた危機を何とか回避した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、伊豆より帰還した調査隊の面々はというと──

 「帰ってきたー!鎌倉ー!」

 安桜美炎が身体の内から声を発するかの如く叫ぶ。

 「たった数日だったけど、なんか目茶苦茶旅した気分」

 「ですね。そう言えば、わたしのホテルの部屋どうなっているんでしょうか?………わたし、いきなり召集されたので、御前試合の観戦の為に借りた部屋に荷物が置きっぱなしになっているんです」

 「それは……でも、平城学館の人達が回収してると思うわ。最悪でもホテルが保管しているんじゃないかしら?」

 「そ、そうですよね……はずかしいモノ…見られてないといいなぁ……

 等といった具合に清香が懸念し智恵の推測に不安混じりに荷物の心配をする。

 結局の所、赤羽刀の手掛かりは伊豆には存在しなかった。青砥館店主青砥陽司からもたらされた情報は空振りと終わったのだ、表向きは。

 結果としては美炎は可奈美と僅とは言え再会出来た、智恵も舞草として目的を果たした、清香など親衛隊相手に一歩も譲らず奮戦した。

 とはいえ今回の件で以降、木寅ミルヤとしては「もう関わるべきではありません」と口にしていたが、勿論、ミルヤの言い分は正しい。今回の事で親衛隊がノロ──本来倒すべき荒魂の力を使い、反逆者とはいえ同じ人間を殺害も辞さない指令を受けていた事が彼女達には大きな衝撃であった。

 「あんなの……正義じゃない」

美炎のとしては色々と感情が自らの中でぐちゃぐちゃに入り雑じった胸中である、それを外に溢した科白が正義と言う言葉。

 「こわい、です。何が起きてるか分からなくて……。わたし達のしてる事は、本当に正しい事なんでしょうか……?自信が無くなってしまいます……」

 清香など特別祭祀機動隊、延いては刀剣類管理局の存在異議すら疑問を呈してしまう。

 「正義って言えばさ、あのヒト達…ダグオン?だっけ?何かさ、改めて考えたら格好いいよね!?」

 意気消沈した空気に美炎が慌てて話題を変える。

 「何者なんでしょう……、あの赤い人も、山であった紫の人も、あんなヒト達がいるなんて」

 「私も詳しくは無いのだけれど、どうもここ最近、全国で目撃されているみたいなの」

清香が正体不明の存在であるダグオンの事を振り返り、やはり今までに無い存在である事、そしてシャドーリュウから感じた既視感からほんの僅かに猜疑と恐怖が入り雑じった声で美炎達に返す。

 それに対し智恵は彼等の目撃情報が以前よりあった事を述べる。

 「そうなの?でも木寅さんは知ってたんだっけ…」

 「私もあの後、ちょっと調べてみたのよ」

勿論嘘である。智恵は既に舞草の情報網でダグオンの存在は認知していた、無論実際に目にするまでは半信半疑であったが…。

 そんな会話をしていると、先に別れた七之里呼吹が何やらうろうろしているではないか。

 話を聞くと鎌府の研究施設に向かうと言うではないか、それを聞き呼吹の背中を見送る三人であった。であったが……。

 

 

 「おい、何でてめぇらがここにいるんだ?」

 「いや、なんとなく気になったから」

 「安桜さんが、ついていこうって言ったから……」

呼吹を追いかけ、鎌府に同行した美炎と清香。因みに年長者二人は別に用があるため不在である。

 「いや、それは聞いてねえよ」

 「ん……まぁ、七之里さんのお友達と言う事でしたら。問題無いでしょう」

 新たに現れた声、呼吹と同じく鎌府の制服を着た生徒である。

 「模擬戦闘オペレーターの播つぐみです。私達の班は成果処理を担当しています。主に他の班の研究成果を実地で確認する係ですね」

 少女は播つぐみと名乗り、この場所や己らの役割等を説目する。

 要するに呼吹曰く、実験用の荒魂を最終的に処理する施設なのだそうだ。

 かくいう呼吹は早く荒魂達と遊びたくてウキウキしている。

 つぐみも慣れているのか、淡々と準備をしていく、美炎と清香が見守る中で装置が稼働を始める。

 新たな波乱の産声の如く──

 

続く

 

 


 

 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ブレイブ星人だ。

 我々が新たな問題に直面しているのと同時期に、鎌倉の鎌府女学院では一波乱事件が起きた様だ。

 彼女達も又、我々とは違ったカタチでこの惑星を守る戦士、困難等には屈してはならない。

 

 次回、刀使ノ指令ダグオン、荒れ狂う燕。疾や駆ける燕。

 次回も"トライダグオン"

 




 さて、調査隊が鎌倉に帰還したので、やっと潜伏している雌雄胴体宇宙人にもスポットが当てられます。
 いやぁ忘れてはいないんですが、如何せん胎動編は宇宙人達は消極的に動かさざる負えないので、つい出番が少なくなりまして。

 ともあれ次回でお会いしましょう。


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第三十四話 荒れ狂う燕。疾や駆ける燕。

 
 こんばんは、ダグライダーでございます。
はい、遅れました。どうにも暑さでぐたり、プロットの段階から遅々として進まず、それでも何とかグダグダしながら書き進め、何とか仕上げました。
 その間に9代目シンデレラガールが決まったり、乱藤四郎が可愛いパジャマ着たり、りんちゃん探検隊が復刻したり、requiemコラボ始まってボイジャーが新たなフォーリナーとして登場したりと目間狂しいですね。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 まさかまさか……こんなところで、六人目が見付かるなんて僥倖だね!皆には感謝しなくちゃ!

 まずは説得だ!

 何てボクが盛り上がってる時に、鎌倉では何だか不穏な感じがするね?

 どうなるのかな?

 

 

 ─むむむ……まぁ、ギリギリあらすじとして良しとしよう!

 


 

 ━━神奈川県鎌倉・某所

 「「く、く……ふははははっ!」」

 とある商店街の路地の影、付近の家電量販店の街頭展示品のテレビから流れるニュースを聞き嘲笑を上げる二人の人影。

 「死んだな、やっと死んだ」

 「そうね、やっと死んだ。ついでに少しは役に立ったわね、ワタシ」

 「そうだなわたし。私達の予想通り、ワタシの一度目の死だけでは分からなかったダグオンの連中の戦力も暴いてくれた。単細胞にしては充分な戦果を挙げてくれた」

 「ええ、お陰で大分楽が出来たわ。後は……刀使とか言う人間と荒魂とか言う下等生物ね、どう料理する?」

 一人にして二人、2人にして1人のジェゲンガ星人が嗤い、嘲り、次なる企みを企てる。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京原宿・青砥館

 「どうもお世話になりました、このお礼はいずれ」

青砥館の店先、扉の前でバイクの横に立った青年が、青砥陽司と青砥陽菜に礼を告げ頭を下げる。

 「いや、こっちはお前さんを一晩泊めただけだぜ、そこまで畏まることねぇだろ?」

 「いえ、一宿一飯の恩は恩ですから。それと地図もありがとうございます」

 陽司の言葉に青年は改めて感謝の礼を告げる。

 「ホントに大丈夫?よければ途中まで送っていくよ」

 「そんな!?こちらはバイクもありますし大丈夫ですよ、お気持ちだけ受け取っておきます」

 陽菜が青年に同行を申し出るも、青年自身はバイクがある為、その好意だけ受け取り申し出を断った。

 「まぁ、なんだ。また何か困ったらいつでも俺んとこを頼りな、力になるぜ」

 「オトンだけじゃ不安だったらあたしの方を頼りなよ」

 「おいおい、そりゃないぜ」

父娘のやり取りを微笑ましく眺めながら青年はバイクに跨がる。

 「はは、また機会があればそうさせて戴きます。本当にありがとうございました、それでは!」

 青年がアクセルを回しバイクが走り出す。青年の去り際を見送る父娘が彼の背中が見えなくなってからポツリと呟く。

 「ああは言ってたが、あの兄ちゃん本当に大丈夫なのかねぇ」

 「ま、まぁ、地図も描いてあげたし流石にまた迷って家の方までなんてないと思いたいけど……」

 不安だ──と父娘の気持ちが1つになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌府女学園・特別研究棟第十六班演習施設

 装置の起動により放たれた荒魂を七之里呼吹は意図も容易く切り刻む。

 だがその顔はどこか退屈そうであった。

 「弱ぇ……これで終わりかよ、こんなのしか居ねえのかよ?」

 荒魂のあまりの手応えの無さに、むすっとした不機嫌顔で、装置を操作し管理しているだろう播つぐみに問い掛ける。

 「まま、そう怒らないで。残念ながら今は七之里さんが喜びそうな荒魂は居ないんです」

 呼吹の文句を左から右へと聞き流し、粛々と作業するつぐみ。その彼女が弱い荒魂しか居ない理由を口にする。

 「七之里さんが留守の数日間、ふらりと現れては処理していく方がいて…」

 「あン?誰だ、そいつ?……っ!?」

 つぐみが語った人物、呼吹がその名を訊ねようとした瞬間、彼女が何かを感じ取る。

 

 ──キンッ!

 

 金属同士が打ち合う音が館内に響く、それは御刀同士が交わり火花を散らした音。

 

 「わったしー」

 

 「ちっ……てめぇか」

 

 呼吹の持つ二振りの小太刀、その1つが襲撃者──燕結芽の御刀にっかり青江のを防ぐ。

 「ちぇー。受け止められるなんて思わなかったなー。せっかくのふい打ちだったのに、つまんないよー」

 防がれた事に不満を顕にし頬を膨らませる結芽、その退屈で退屈で仕方がないと言わんばかりの口から更に不満を溢す。

 「ここの荒魂も弱くてひまつぶしにもならないしー」

 「やっぱり、そんなこったろうと思ったぜ。てめぇ人様の荒魂(おもちゃ)にナニしてくれてんだっての」

お兄ちゃんも居ないしと言う僅かに溢した微かな声は呼吹の怒気を孕んだ不平に打ち消された。

 「え?え?どういこと?この子、誰?」

いきなり現れ、呼吹と打ち合った結芽に対し、何一つ状況を理解出来ていない美炎が狼狽える。

 「燕結芽。局長サマの親衛隊……四天王の残りの1人だよ」

 「えっ!?このちっちゃい子が……」

 「親衛隊ですか!?」

呼吹が告げた結芽の正体に美炎と清香は大いに驚いた。

 「ふぅーん?ふぅーん?ふぅーん?」

当の結芽は清香にじろじろと視線を向けている。

 「な、なんですか?わたしになにか……

 自分達に襲い掛かった親衛隊、その最後の1人が自分を見ている。その事に恐怖し声を縮こませ身をすくませる清香、そこへ呼吹が割って入る。

 「結芽、てめぇさっきも、アタシじゃなくて清香のヤツを狙っただろ?」

 「え?え?わたしですか…?」

 「バレちゃった?だってこのおねーさん平城の六角清香だよね?聞いたよ、強いって!」

 結芽の先程の不意打ちの目的、それは清香であったのだ。幼子の様に瞳を輝かせてはしゃぐ結芽は笑う。

 「真希おねーさん達相手に、1人で戦ったんでしょ!」

 「あン?………そういう事かよ、だったらお前らで好きにヤってろ」

 「ええっ!?」

 しかし呼吹は結芽の目的を知ると、途端にやる気が失せ、清香の前から離れる。

 これには清香も驚嘆し美炎も見かねて結芽を止めようとする。

 「ちょっ!呼吹さん!?待って結芽さん!親衛隊は、もう私たちに手は出さないって……。それに私たち、あの事はまだ誰にも………」

 「かんけーないよ、そんなの。だって私はそのおねーさんと戦いただけだもん」

 伊豆での事を出してこの場を納めて貰おうとする美炎、必死に言葉を尽くそうとするが結芽はそれに取り合わない。

 「いやだから、ダメだって!いくら親衛隊でもそんなことさせるワケには……」

 「あ、そ。じゃあおねーさん達さ、みんなで遊んでよ!私が相手してあげる」

 その言葉を皮切りに結芽はその場にいる美炎、呼吹、清香へと飛び掛かる。

 やむなく応戦する3人、しかし、結芽の剣戟は速く鋭く、何より強い。

 あっさりと美炎と呼吹をかわし2人を斬り捨て、清香へと切迫する。対して清香は受け身でこそあれ、結芽の剣閃を見事流している。

 「ふぅん…千鳥のおねーさん程じゃないけど、やっぱり強いんだね」

 とは言え、動揺する清香と比べ余裕の表情で御刀を振る結芽、彼女はニヤリと笑い告げる。

 「決めた」

 「えっ……な、何をですか?」

 「もう少し楽しませてくれるよね?おねーさん!」

完全に清香のみに相手を絞った結芽、まさしく新しい玩具を前に喜ぶ子供の顔である。

 「だからね、弱い人たちは邪魔だからどいて!」

 「どかないよ!」

 「ウゼぇ…」

 それ故に愚かにも再び邪魔をせんと向かって来た弱者に対して不愉快だと言わんが如く唾棄する。

 「ふたりとも邪魔だって言ってるのに…、おとなしくお休みしててよね!」

 立ち塞がる藁の盾を振り払うべくにっかり青江を振り切らんとする結芽。しかし、そうはさせまじと蚊帳の外にいたつぐみが一計を案じる。

 「そんなことはさせません!そうです!……荒魂を解放すれば!……えい、シャッターオープン」

 些か気が抜ける掛け声だが、つぐみの取った行動により研究棟の搬入口が開放される。

 同時に、装置から解放された荒魂達が溢れ返る。

 「七之里さん、お友達を連れて今のうちに逃げて下さい!」

 「はぁ?何やってんだ!バカかテメェ!そんなことしてねぇで、さっさと人を呼びに行けばいいだろがっ!!」

 「あっ。…………そういえばそうでした、思わずテンパッてしまって」

 彼女にしては割りと珍しい事に、思いの外動揺していたらしい。とは言え、降って沸いた好機に美炎は呼吹に声を掛ける。

 「呼吹さん!こうなったら荒魂を蹴散らしてから、播さんと一緒に逃げるよ。とにかく被害が広がらないようにしないと!」

 「当たり前だ!楽しい玩具を前にして大人しく退散出来るワケねぇだろうが!」

 とは言え荒魂、それが大量に現れた為、周囲の被害を気にしつつも外へと逃げる美炎。呼吹は当然の様に沸いた荒魂達を見て笑みを浮かべる。彼女からすれば人を相手にするより喜ばしいのだから、その機嫌もひとしおだろう。

 「くくっ……さあ、狩りの時間だ!アイシテルぜ、アタシの荒魂ちゃん達!!」

 「いや、そうじゃなくて………ああもう!どうしてこうなるのさ!!」

 呼吹の見当違いなはしゃぎっぷりに美炎は頭をかきむしりたくなる思いに晒される。

 

 

 

 

 

 「何だ?……妙に騒がしな」

一方で、ダグベースより鎌倉の本部へ戻って来た燕戒将、一度管理局から宛がわれた部屋に戻り休息と仮眠をとったのであったが、鎌府の校舎がある方向が騒がしい。

 快復して早々、彼は結芽を探しているのだが、本部司令統括室にも居なければ、普段彼女が入り浸っている局長室や他の部屋にも居ない。

 さて、後自分が顔を出していないのはどこであったか等と思案していると先程の騒ぎ。

 「可能性はあるか……」

万一、妹が問題を起こしている様であれば、止めねばなるまいと、帰還した序でに綾小路から持ち寄った竹刀を片手に鎌府の方へと足を向け駆け出した。

 

 

 

 

 「安桜さん!荒魂の退治、あらかた終わりました。残りは数匹だけです」

 渦中である鎌府の研究棟では、美炎達が荒魂を片付け、退路を切り開く。

 「わかったよ清香、播さんこっち!早く!」

 「あ、はい!七之里さんもこちらへ」

 残るは数匹程度となり頃合いと見て清香と美炎はつぐみを連れ逃げようとするが、呼吹は逃げるどころか未だ荒魂との戯れに興じている。

 「はぁ!?まだ終わってねぇだろうが!!」

やはりと言うべきか、彼女にとっては逃げる事より荒魂を倒す事の方が優先な為不満を叫ぶ。

 「いいですから、一緒に逃げて下さい!」

 「気に入らない、せっかく楽しめそうだったのに……何で?」

 つぐみも流石に呼吹を安じてか逃走を促す。

 それを燕結芽は無言で見詰め、相手の行動に不満を覚え苛立ちが顕になる。そこへ横合いから荒魂が割って入るが苦もなく斬り捨てる。

 「邪魔」

 「うそ……その子A+なのに一瞬で、親衛隊ってそこまで強いの…」

 A+であれ何であれ、結芽からすれば、精々が羽虫が目の前を飛んでいて鬱陶しいから叩き落としただけだ。

 つぐみは驚いた様だが、結芽にとっては何でもない事に過ぎない。

 「チッ…」

その光景には呼吹も舌打ちと共に流石にマズイと苦悶する。

 「駄目だよ!逃がすわけないでしょ!見ててよ私の方が強いって教えてあげるからっ!!」

 外へと逃げていく彼女達を視線に捉えながら、狂喜を含む結芽、彼女にあるのは己が最強である事の証明それだけである。

 

 

 「む、あれは……。木寅!」

 戒将が鎌府の研究棟の騒ぎを聞きつけ、件の場所へ駆けていると、見覚えのある顔が長船の制服を着た生徒と連れ立って走っているのを見掛け声をかける。

 「貴方は…燕戒将さん、お久し振りです。最後に会ったのは1年の頃以来でしたか?申し訳ありませんが、今急いでいますので…積もる話はまたの機会に…」

 「君達が向かう場所には俺も用がある。共に行こう、構わないか?」

 綾小路の制服を着た見覚えのある顔、木寅ミルヤ。共に居るであろう長船の生徒は瀬戸内智恵だ。

 「…っ!?いえ、しかし……それは……」

ミルヤが一瞬躊躇する、智恵も会話にこそ割り込まないが、戒将の名……燕の姓を聞き、僅かに警戒をする。

 彼女達からすれば親衛隊所属の刀使第四席燕結芽の兄、直接は関わっていないとは言え、味方とは言い難い。が、戒将からすればそれは善意から出た言葉である。

 そうこう迷っている内に騒ぎの音が近しくなる。

 流石にこれ以上、一所に留まる訳にはいかない為、智恵が痺れを切らしミルヤに提案する。

 「ミルヤさん、迷っている時間は無いわ。この際、彼も一緒に来てもらいましょう」

 「助かる。君は……」

 「長船女学園の瀬戸内智恵です。詳しい話は後で、今はとにかく急ぎましょう」

 「了解した」

こうして3人は連れ立って騒ぎの中核へと向かって行く。

 

 

 

 研究棟から外へと出て、つぐみと途中別れ逃げる3人、中庭付近で止まり一度息を整えると清香はつぐみを安じる。

 美炎はそれに対し、結芽の狙いは清香のいる此方なのでつぐみは無事だろうと確信を持って答える。

 その返答に清香は何故己が狙われなければならないのかと悲嘆に暮れる。

 「どうしてなんでしょうか。……わたし何もしてないのに」

 「同族嫌悪ってヤツじゃねえの?お前ら二人とも『神童』って呼ばれてたんだし」

 呼吹の推測にそんな昔の話を蒸し返されてもと、若干涙目になる清香、見かねた美炎が話題を変える意味も込め、現状の解決策を口にする。

 「でもさ、これだけ騒ぎが大きくなれば高津学長も手を回してくれるよね!」

 ──伊豆の時みたいにさ。等と希望的な意見を出すも呼吹が即座に否定した。

 「無理じゃね?て言うか、あの燕結芽がウチの学長の言う事なんざ聞くかっての。少なくともウチの学長はアタシの……アタシらの事なんざ──」

 「うん。高津のおばちゃんが大切にしてるのは沙耶香ちゃんだけ、おねーさん達の事なんて替えの利くパーツくらいにしか思ってないんもんね」

 呼吹の吐いた科白を引き継ぐ様に結芽が言葉を被せる。

 3人はその言葉の真意よりも、追い付かれてしまった事に緊張を走らせる。

 「二人ともまだ写シいける?」

 「「……」」

美炎の言葉に無言で頷く清香と呼吹、3人は再び結芽と相対し御刀を構える。

 「燕さんは強いよ…。正直、三人でかかっても勝てるか分かんないけど……やろう!」

 「あははははは!うん、そうこなくちゃ!」

三度向かって来る3人を前に結芽は再び狂喜乱舞する。

 先程と違い、屋外での3対1の構図で大きく動いて何とか凌ぐ様に立ち回る、だというのに結芽の顔は焦るどころか、より深く笑みを浮かべてこの状況を楽しんでいる。

 「おねーさん達おもしろいよ!『アレ』を使う程じゃないけど、少しだけ本気になってあげてもいいかも!」

 何と、彼女はまだ先があると言う。最早、息も絶え絶え余裕が無い3人からすれば絶望的な状況である。

 それでも尚、震える身体にムチを打ち身構える美炎達、しかしそこに救済の手がのびる。

 「そこまでだ」

 「「「「!?」」」」

突如として現れた竹刀が結芽のにっかり青江の鍔付近の峰を抑え、結芽の次の動きを阻害する。

 一瞬誰が己の楽しみを害したのか、怒りと共に顔を声の方に向けば、その主は血の繋がった実の兄。

 それを認識した瞬間、結芽は僅かにたじろぐ、そして結芽と相対していた3人は自分達と結芽の間に現れた男子生徒に困惑を顕にする。

 次いで戒将に遅れてミルヤと智恵が現れる。

 「彼の言う通り、それ以上は看過出来ません」

 ミルヤが結芽に向かい美炎達を庇うように前に出る。

 「……だぁれー?」

内心兄の存在に怯えが出つつも、ミルヤ達の登場に表面状は不機嫌を装いミルヤと智恵に誰何を問う。

 「うん、その子達のお姉ちゃんズ、かな…」

 「そういう事です」

智恵の答えにミルヤが追従する、そしてそんな2人の登場に美炎が安堵の声を洩らす。

 「ちぃ姉…!ミルヤさん!」

 ミルヤが美炎達と結芽の状況からそれとなく経緯を把握する。

 「なるほど、まさか伊豆の続きですか……。我が校の学長からは止められていますが、親衛隊が手を出して来るのであるならば、私達も相手をさせて頂きます」

 結芽を抑える戒将の表情を注意しながら年長者2人が庇うようにして構える。

 その行為の何かが結芽の癪に触ったのか、突如としてやる気を失う。

 「……何それ、おねーさん達群れすぎ。……うん。知ってるよ、知ってる。弱いから群れるんだ。…………はぁ、つまんなくなっちゃった…。弱い人たちを倒しても私は……つまんない帰る」

 戒将が口を開き叱責を飛ばすよりも早く、御刀を納め踵を返す結芽。

 「…………あの子は…。君達、妹が失礼をした。この借りは何れ何らかの形で誠意を持って返そう。済まない」

 調査隊の面々に頭を深く下げる戒将、そのまま頭を上げると、彼女達からの言葉を聞かずに結芽の後を追うように去っていった。

 

 「「「………」」」

美炎、清香、呼吹の3人は暫く沈黙し燕兄妹が見えなくなってから息を吐く。

 「た、助かった~」

まず美炎が安堵して身体の力が抜ける。

 「どうなることかと思いました…」

清香も集中を霧散させ安心したのかへたりこむ。

 「……」

呼吹だけは何処か釈然としない表情だ。

 そこへ智恵が近付いて声を笑みを浮かべて声を掛ける。

 「ありがとう呼吹ちゃん。美炎ちゃんと清香ちゃんを守ってくれて」

 「は?そんなんじゃねーっての!」

智恵の言い分に照れ臭いのか悪態を吐く呼吹、しかし智恵は気にしない。

 「そう?それでもお姉ちゃん嬉しいわ。ともかくみんな無事だったんだもの」

 「…チッ……」

 「無事と言うには満身創痍な気がしますが、大事に至らずに済んだのは僥倖です(燕戒将……刀使と違い迅移を使えないとは言え、あの時あの速さ…誰よりも先に動いていた、恐るべき技術です。世が世なら正に疾風の如き疾駆、彼は果たして我々の敵に……いえ、これ以上は考えても詮なき事)」

 ミルヤは調査隊のメンバーを心配ししかし、目立った被害が無いのを見かね、去っていった戒将に思いを馳せる。とは言え此方から進んで関わる訳でも無いので思考を切り替える。

 「とにかく、一刻も早くここを離れましょう。その上で皆さんに話したい事もありますので」

 こうして、刀剣類管理局にて起こった珍事は一応の終息をみたのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 どうもどうも、何やら興味深い所にお招ばれしてしまいましたね。うん?いきなり現れてお前は誰かって?

 これは失敬!私、姓は渡邊、名はエミリー、あ!ハーフじゃないですよ、両親の趣味です。悪しからず。

 え?そんな事より予告しろ?

せっかちですねぇ、ま、良いでしょう。

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 舞草への道中、潜水艦にて。赤羽刀、新たな手掛かり。

 おや、今までで一番長いタイトルですね、ところで翼沙はどうしてるんですかねぇ…?




 次回も少し時間が掛かりますが御容赦の程を……。
 夏生まれが暑さに強いワケでは無いのです……、エアコン掃除せねば…。
 それではまた次回


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第三十五話 舞草への道中、潜水艦にて。赤羽刀、新たな手掛かり。

 こんばんはダグライダーです。
いやはやプロットで大まかに流れ作ってたんですが、思いの外キャラクターが動いた部分があって手直ししながら細々書き直してたら時間が掛かりました。
 取り敢えず高津のオバチャンの心中を彼女の顔や発言の声色からプロファイルしてたんですが……彼女は何時から紫の中のタギツヒメを知っていたのかふと、気になりましたね。
 胎動編は多少は改編しても大まかにはまだとじみこ原作をなぞるのでその辺の匙加減考えながら各キャラクターの動き等をプロファイリングしてます。
 ファンブックレットなんかあればもう少し楽なんですが……。



 

 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 親衛隊、燕結芽の強襲によって思わぬ戦いを強いられた美炎、清香、呼吹。

 共に居たつぐみの機転から屋外へと戦場を移す。しかし、結芽の強さには三人でも及ばない。

 当初の想定よりも遊べる相手だと認識し上機嫌となる結芽、しかしそこに戒将の竹刀が割って入る。それと並んでミルヤと智恵による加勢、が、多勢となった瞬間、結芽はやる気を無くす。

 又しても調査隊は厄介事に巻き込まれ、幸運の巡り合わせで事なきを得たのだった。

 


 

 ━━鎌倉刀剣類管理局・本部

 調査隊と燕結芽による昼間の騒動から時間は巡り、夜の虫も鳴く時分にて伊豆の山狩りから皐月夜見が負傷により──と言っても夜見自身の自爆がおおよそを占めるのだが──医務室へと運ばれ、獅童真希、此花寿々花の両名は折神紫の元へと報告に馳せ参じていた。

 反逆者2人が舞草の構成員と合流、未登録と思われる所属不明──十中八九舞草関係のモノであろうが──潜水艦によって逃亡した事実を述べる。

「米軍より入電。哨戒網に反応無し、目標発見できず。とのことです」

 本部の司令部にてオペレーターが報告を読み上げる。

 その報告を聞き高津雪那は吊り上がった目尻を更に鋭く尖らせる。

 「親衛隊が三人も揃ってなんだこの失態は!しかもその内一人は…──」

相も変わらずヒステリックが形を為したような彼女は、親衛隊の失態をこれ幸いとばかりに責め詰る。

 真希、寿々花は言わずもがな。この場には居ない治療中の夜見も纏めてやれ役立たずだの、何だのと罵声を浴びせている。

 「──挙げ句、例の所属不明の集団にまで好き勝手されるなどとっ!」

 自分よりも齢十数歳離れた少女達を、嬉々として貶めるかつての後輩の大人気の無さに美濃関、平城の両学長も流石に親衛隊の2人には同情の視線を向けてしまう。

 「お気の毒様やなぁ…」

 二重の意味を込めて呟く平城学長五條いろは。雪那の口撃が途切れたのを見計らい、真希が紫に向き直り改めて謝罪を述べる。

 「紫様、申し訳ありません…。この度の失態、申し開きも……」

 「良い。気にするな」

 真希が言葉を最後まで紡ぐのを遮り、赦しを与える紫。そのまま羽島江麻、五條いろはの両学長へと沙汰を下した。

 「美濃関学院、平城学館の両学長は現時刻を持ってこの特別任務から解任する。それぞれ自分の職務に戻れ」

 両学長に決定を伝えると次は雪那へと向き直り告げる。

 「鎌府学長」

 「はい!」

この時の雪那は内心でやっと紫様が役立たず共を見限り、我が鎌府──延いては私を頼って戴ける。と舞い上がっていた。

 「お前は自分の持ち場を離れるなと言った筈だが」

 「はい…」

しかし、返って来た言葉は彼女が望むもので無く、かといって雪那が紫に口応えなど出来よう筈も無く、これ以上不興を買いたくはない故に肩を落とし部屋から退出していった。

 折神紫は美濃関羽島、平城五條、鎌府高津の3人の学長が退出した扉を見据えたまま──

 「来訪者共は静観し、紛れた星屑は異端児達が片を着ける。二羽の鳥は未だ此方の手の内にある。案内して貰おうではないか」

 確信があるのだろう、一切の乱れも無く言い切った。

 

 

 

 特別任務より解任され、司令部より退出した羽島江麻は同じく解放されヘリに乗り込む五條いろはが平城へと帰還するのを見届けてから、離れた場所で待たせていた柳瀬舞衣と合流、舞衣を傍らに伴って管理局の敷地から宿泊施設へと歩きだす。

 すると彼女達の進行方向から雪那が糸見沙耶香を伴い歩いてくるのが見える。

 雪那は江麻を無視して通り過ぎるが沙耶香が舞衣に呼び止められ、会話を交わす。

 「沙耶香ちゃん。出られて良かったね」

 「うん」

 「私達も明日、美濃関に帰ることになったの」

 「そう…」

 「じゃ……」

じゃあねと口にしようとした舞衣の袖を弱々しく掴む沙耶香、頬を僅かに紅く染め恥ずかしがりながら舞衣を見詰める。

 「クッキー、おいしかった」

 「ありがとう!よかったらまた作るね」

 「うん」

純粋に沙耶香を心配し、喜びを見せる舞衣に沙耶香の中で温かいモノが込み上がって来るのが見てとれる。

 きっと沙耶香自身はまだこの感情が何なのか分かってはいないのだろうが…。

 「ねぇ、携帯もってる?交換しよ連絡先」

 沙耶香のたどたどしい感情の発露に微笑ましさを感じつつ彼女との縁を繋ごうとする舞衣、しかしそこへ、何時まで経っても後に続かない沙耶香に痺れを切らせた雪那が苛立たし気に彼女の名を呼ぶ。

 「沙耶香!」

 「はい…」

 結局、舞衣は沙耶香の連絡先を知ることは叶わず、彼女の背中を見送るだけとなった。

 そしてそんな少女達のやり取りを傍観していた江麻は、雪那が水を差すところを見て溜め息をつく。

 「相変わらずね…雪那」

 嘗てはもう少し可愛げのあった後輩の、どうにも儘ならない行動に少々辟易する江麻。ふと、突然自身の携帯端末に着信が入る。

 画面に表示された名は真庭紗南、彼女もまた雪那とは違った意味で色々と面倒を掛けさせられた……いや、今現在も掛けさせられている後輩である。

 以下、詳細は省くが彼女からの電話の内容を要約すれば"ちょっとした頼み事"だと言う。

 彼女からのお願い事に良い思いでの無い江麻は嘆息しながらも互いの立場故に協力をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 ━━日本領海内某所

 ところ換わって、親衛隊から逃れ舞草の潜水艦に合流した4人はと言えば──

 

 「包帯が足りてないのに遊ぶな貴様!おい!この荒魂を今すぐ外に叩き出せ!」

 「だから、ねねは俺のペットだと言っているだろ。エターナル胸ぺったん女」

 「エターナルっ…!?」

 居住区の一角で姦しく騒いでいた。

 

 伊豆山中で負った傷を簡単にではあるが治療をしているのだが、ねねが姫和の足下で包帯に絡まってじゃれている。その為、包帯の数が足りずに上手く治療が出来ない事からか姫和は苛立ちを募らせ叫ぶ。

 しかしそこへ薫が姫和の平野の如く平らな胸を揶揄して黙らせる。

 「ねねを責めないで下さいひよよん。包帯が足りないのは私が使いすぎてしまったせいデスから」

 更にエレンがねねを擁護するのだが、その胸元はシャツがはだけ、見事な双丘が顕になり包帯がサラシの如く胸を締め付けている様が強調されている。揺れる。そして揺れる!

 姫和と薫が2人してエレンに向く、より正確にはエレンの胸元に視線を向ける。

 その時の2人の筆舌にし難い表情は中々に見物であっただろう。持たざる者が持つ者に向ける無言の嫉妬の形相……。焔也か申一郎がもし、その場に居合わせたのなら、きっと爆笑した後にボコボコにされるくらい顔に出ていたのだから。

 可奈美はその間も淡々と自身の治療を済ませていた。

 

 一先ずの治療を終え、ベッドに座り改めてひと息付く4人。

 可奈美は隣に座る姫和に話を振り始める。

 「それよりもビックリしたよね~。ファインマンさんがエレンちゃんのおじいさんだったなんて」

 可奈美の言う通り、恩田累の部屋でチャットのやり取りをした謎の人物"FineMan"。

 その正体は古波蔵エレンの祖父、リチャード・フリードマン。

 S装備の開発者である。

 潜水艦に乗り込んで早々に、彼自らが出迎えに現れ、可奈美と姫和を歓迎した。

 さて、何故そもそも海外の技術者が関わっているのか?

 姫和は疑惑の目でフリードマンを見詰めながら訊ねる。

 そこから語られるのは、舞草という組織が結成されるまでに至った経緯。

 フリードマンが語る概要はこうだ。

 

 曰く、太平洋戦争後、まもなく折神家と米軍との間でノロの軍事転用が出来ないかどうかが検討される。

 その最たるモノがS装備の開発。

 米軍との共同研究、開発で幾つもの案が出されては頓挫し停滞、思う様には進まなかった。

 しかしある時を境に技術革新(ブレイクスルー)が起きる。

 それは刀剣類管理局が現在の体勢下となる今から20年前、大災厄以降──即ち、折神紫が当主となってから。

 彼女が当主となり従来からの勢力を粛清、一掃したことにより合理化を進める。

 それにより、旧体制から続く全国各地の社にてノロの分祀を撤廃、折神家による一極集中管理へ移行。

 その頃からか、開発現場の技術レベルが急激に上昇、S装備が完成するにまで至った。そしてそれをもたらした者こそ折神紫であったと言う。

 しかしそれは、フリードマンの技術者としての観点から見ても異常な事であった。

 果たしてその技術は何処から来たものなのか…?と。

 そうして折神家へ不審を懐いた彼は、同じく折神紫を疑うとある人物と共に反折神紫勢力である舞草を立ち上げた。

 そしうて水面下で折神紫勢力に対し反抗の為の刃を研ぐ、姫和の母、十条篝の元に届いた折神紫が大荒魂であり助力を請うという内容の手紙も、一人でも多くの同志を得るための物であったと言うのだ。

 それから後はダグオン達の存在に関する話題となった。

 舞草──フリードマンの当初の見解では、彼等もS装備同様、折神紫が秘密裏に用意したモノではないかという仮説であったが、親衛隊と刃を交えた事、何より鳥取砂丘にて起きた事件の件もあり、舞草側としても余計に正体が解らなくなったと言った事実等が挙げられた。

 可奈美と姫和、エレンと薫も砂丘の件は寝耳に水であった。突如現れた超巨大飛行物体。それを迎撃する為に現れた未登録の警察車両、旧型の新幹線、所属不明の戦闘機。

 そして撃墜された超巨大飛行物体より這い出た巨人、その巨人と戦う五機の機体。その内の一機、警察車両がロボットへと変形し巨人を撃破した事。

 特に巨人とロボットに関しては可奈美、姫和やエレンはとても驚いていた。薫は目を輝かせていたが…。

 

 

 以上の事柄が治療以前に行われた会話の内容である。 

 

 「ひよよんママのお陰で準備は着々と整い、いよいよ折神紫に攻勢を掛けようとした正にその時。まさかひよよんが真正面から折神紫にぶっこみをかけて綿密な計画がおじゃんになるとは思いませんデシタ」

 ベッドの間の通路に座って苦笑しながら姫和を見るエレン。

 「要するにお前のせいで事態がいっきにメンドくさくなったって」

 そこへ追い討ちの様に薫が姫和に告げる。

 「私は私の目的の為にやるべき事を成したまでだ」

 「もう…姫和ちゃんてば~」

そんな薫の責める視線を意にも介さず、そっぽ向く姫和、そんな姫和に嗜め諭す様に名を呼ぶ可奈美。

 「でも収穫はありましたよ。コレを紗南センセーに渡せば詳しく解析してくれマス」

 そう言ってエレンが取り出したのはノロが入ったアンプル。伊豆での戦闘に際してエレンが親衛隊のベースキャンプから盗み出した皐月夜見のアンプル。

 「それで折神家が人為的に人を荒魂にする非道な研究を行っている証明になれば折神紫体勢に大打撃を与える事が出来るという訳デース!」

 「んで俺達の任務は完了。後はジジイと学長達が何とかする」

 折神家と舞草に関しての話はこれで終りだと言わんばかりに薫が話題を切る。

 「それより俺としては例の五人がロボットまで持ってた事が重要だ!」

 興奮隠さず鼻息荒く声を上擦らせる薫。

 「五体合体しないのがちょっといただけないが五人組ヒーローにロボットは鉄板だろ!いや、もしかしたらまだ合体するマシンがあるのかもしれない……」

 「ねねーっ!!」

薫が一人盛り上がりねねが追従して興奮している様を姫和がアホを見るような目で眺める。 

 「薫が興奮するのも分かりマース。あの時の言葉が真実であったのデスカラ、まあ元々彼等の存在自体は私達も数週間前から把握してましたが、まさかロボットまであるのは予想外デシタシ」

 「宇宙人、大きかったねー。私達が会ったのもだけどあんなのが他にも居るのかな?」

 エレンは笑いながらもその未知の技術力の高さに僅かに畏れを感じている。可奈美はどこか呑気に感心して他にもあんな宇宙人が居るのか等と溢している。

 「言ってる場合か!?……だが、認めざる得ないか…」

山中でのやり取りでは半信半疑であった姫和も、遠目の荒い映像とは言え、自分達を助けた存在が更に謎の勢力である宇宙人と戦っている様を改めて見せられ納得する他に無い。

 荒魂が人に憑き異形となっても、あそこまで巨大なヒトガタは早々いない。であれば、アレは間違如無き異星の存在なのであろう。

 「どうにもあの緑色のせいで胡散臭かったが…どうあれ2度もあんな存在を示されれば嫌でも信じる他ない」

 姫和の不信感の原因は主に申一郎の不用意な発言であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都・綾小路武芸学舎

 さて、姫和の槍玉に上がったアーマーシンこと鎧塚申一郎はというと…。

 「あー……メンドい。ナンパかさもなきゃゲーセンにでも行きてーナァ」

 「そこは我慢して下さい。不在時の事を何とか誤魔化した結果、反省文だけで済んだんですから」

 翼沙と共に指導室で2人揃って反省文を書いていた。

 「そう言やあ、例のアイツが落とした剣ってどうなってんだヨ?」

 「何分、手掛かりがありませんから……完全に調査隊の動き頼みですかね」

 赤羽刀南无薬師景光を探す調査隊、それに便乗してアルファが落とした剣を探さねばならないダグオン達は受け身になざる得ない。

 「いっそ剣の方から来てくんないかネェ…」

 「そんな無茶な……」

 そんなやり取りをしながら文を書く、2人だけの教室での時間が過ぎて行く。

 この時の彼等は知るよしも無いが申一郎の言った事も強ち見当違いでは無いのだ。

 

 

 

 

 そしてその調査隊はと言うと……。

 親衛隊、燕結芽との一連の衝突の後、赤羽刀南无薬師景光の次なる所在の情報を得る為の電車に乗っていた。

 「赤羽刀を撒いているのが誰なのか、何の為なのか、それを知るために東京へ向かいます」

 ミルヤが隊の皆を見渡し目的を切り出す。

 「撒いている…ですか?今、撒いているって言いました………よね?」

 美炎がミルヤの発言に驚き確認する様に聞き返す。最後が自信無さげになるのは彼女の単純な思考故か。

 「はい。赤羽刀が荒魂の体内から発見される理由について、昨日、匿名での密告があったと…瀬戸内智恵さんに、長船から報告がありました」

 美炎の疑問に答えを示す様に言葉を続けるミルヤ、彼女によれば調査隊の次なる目的地は東京は赤羽の地、そこで詳細を聞くため刀剣類管理局を代表して調査隊が出向くのだと言う。

 これに対して清香はとても安心しきったように息を衝く。

 「何だかやっと調査隊らしいお仕事です。もう荒魂や親衛隊の人たちと戦わなくて良いんですね!」

 争い事を好まない彼女からすれば有難いのだろうとても良い笑顔だ。

 良かったね。はい♪などと美炎と微笑ましいやり取りをしている。

 「でも、その方はどうして密告を……じゃなくて、話して下さる気になったんでしょう?」

 「そうですね。私達もその辺りが気になっていたのですが、瀬戸内智恵さんと話し合った限りでは、恐らく……我々調査隊が結成された事と関係あるのではないかと、言うことでした」

 今度は清香からの疑問、ミルヤも智恵と共に出した見解を述べる。

 「でもミルヤさん、それってつまり……」

 「???」

 「はい、別段秘密裏に行動していた訳ではありませんが、それにしては反応が早すぎますね」

 清香が気付いた違和感をミルヤに問い掛ける。美炎は一ミリも分かっていないのか頭に疑問符を大量に浮かべているが、それを察してかミルヤが説明を始める。

 「刀剣類管理局にスパイが居るのか。それとも、誰かが情報をリークしているのか。どちらにしろ此方の動きは筒抜けになっているでしょう」

 ミルヤの語る可能性、それはもしかしたら此方に敢えて知らせているのではと言う作為的意図を感じるモノである。

 「警告、ですか?」

 「もしかしたら注意してくれてるのかも!」

 それら可能性の示唆に清香が1つの答えを導き出す。しかし美炎は捉え方が違ったのかポジティブな見解を述べる。

 「そうね、警告よりは注意が嬉しいかもね。スパイとかノロを使った研究とかは、もう…無しにして欲しいもの」

 智恵が美炎に賛同する、彼女自身も思うところあるからか些か苦い顔に見える。

 「そうですね!」

清香も悪い方向よりは良い方向で考えたいのか美炎達に同調した。

 呼吹は窓を眺め、終始黙っていたままであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 よっス!アーマーシン……って今、オレ変身してねぇカラ普通に名乗るか。改めて鎧塚申一郎サマだ。

 調査隊のカワイコチャンズが東京の赤羽に向かった後、刀剣類管理局で何かあったみたいだな。

 誰か逃げたとか何とか……ハハァ、本部は大変ダネェ。っと美濃関のカワイイビッグバンちゃんが変な男と話してるダトォォオオ?!

 ってか逃げ出したのって……オイオイ燕妹まで何か出てきて、アイツも大変なんだナァ。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 疾走、ターボカイ!沙耶香、束縛からの解放。

 次回もカワイコチャン達の活躍に期待ダナ!




 当作ダグオンのメンバーは数ある刀使ノ巫女世界の内の1つの世界人物ではあります。
 その為、身体能力は高めですが、チートとは違います。故に無敵ではありません。まぁ小型や大型でも雑魚の荒魂相手なら苦戦は一切しません。
 まぁ元々のダグオンが戦隊風ウルトラマン的勇者ロボですからね。普通に苦戦します。
 波乱編辺りからは宇宙人達も強力なのや凶悪なのを出すので敗北するイベントも予定しています。
 ヒーローモノではお約束ですからね。
 ではまた、次回お会いしましょう。


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第三十六話 疾走、ターボカイ!沙耶香、束縛からの解放。

 こんばんはざいます!
魔法科コラボの寿々花来ました!二枚も!しかも二枚も!?
 ガチャ第二段開催されて直ぐ回したら来ました。ヤバイです。感激です!
 良いですよね、エリカに後ろから抱き着かれる寿々花。エリカの中の人が真希ちゃんと同じなんで笑っちゃいます。
 後、復刻アリスギア、FAガールコラボで☆4スティ子出ました。ふっふぅ~⤴️
 FGOは紅葉さん引けました。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 彼方より来る来訪者達の存在は、大衆の好奇により遂に全世界へと知られることとなった。

 そして、それらと戦う存在も。

 しかし、この世界の物語の中心は未だ二羽の雛鳥とそれを取り巻く者達に限られる。

 果たしてそれはこの世界にとって幸運なのか不運なのか……全ての鍵を握るのは若き勇者達。

 彼等、彼女等の次なる道行は──

 

 

   …貴様、それで良いのかデルタよ……

 


 

 ━━神奈川県鎌倉・鎌府女学院某所

 そこは人気が無く、部屋の周囲を幾つかの機械に囲まれた場所。

 その場に存在する人影は2つ、1つはこの部屋を含む鎌府女学院の全てを取り仕切り、刀剣類管理局本部の本部長でもある人物。鎌府学長高津雪那。

 もう1つは寝台の様に倒された椅子に座らされる銀と言うよりはアルビノ染みた白髪の、幼さないがらも感情の希薄な表情をした少女。糸見沙耶香。

 沙耶香の横に佇む雪那の手にはノロの入った注射器、それを眺めながら雪那は恍惚とした声で沙耶香に語り掛ける。

 「沙耶香。私が見出だした最高の器」

そんな雪那を見る沙耶香の瞳は何処までも無機質な人形の様だ。

 「これは紫様より鎌府に…、いえ、この私が命じられた大いなる研究の成果……!」

 果たして雪那の言う命を紫が本当に望んだのかは甚だ疑問であるが、彼女の中ではそういう事になっているのだろう。

 「この力で満たした時貴女という器は完成する。何も考えず、感じる事も無い、ただ紫様に仇為す者を討つだけの刀使として」

 満足に語ったのか沙耶香の顔に手を添えようとする雪那、そこで沙耶香の頬に貼られた可愛らしい絆創膏に気付くと、不機嫌な目になり、彼女の顔から剥がいさる。

 剥がされ落ち行く絆創膏の先を見詰める沙耶香。その瞳はほんの僅かに揺れ動く。

 無論、剥がした雪那はそんな小さな些事等気付きもしない、床に落ちた絆創膏を見つめ続ける沙耶香の頚へそのままアンプルがセットされた注射器を射し込もうとする。だがそこで雪那にとってはあり得ない、予想外の事が起きた。

 大人しく従順であった筈の沙耶香が左手を腕全体を使い注射器を雪那の手から払い除ける。

 宙を舞い、虚しい音を立て落ちる注射器、その行く末を見届けた後、雪那はやっと沙耶香が何をしたのか認識する。

 「…沙耶香、何を…」

 恐らく高津雪那の頭では、馬鹿な、何故、有り得い等の幾つもの思考が彼女の中を巡り、沙耶香を見下ろす。

 「私は…」

沙耶香自身、何故自分がこんな行動を取ったのか理解出来ていない様子だ。

 「沙耶香…?」

沙耶香が何故拒絶したのか分からぬまま雪那は再び沙耶香の名を呼ぶ。

 当の沙耶香はまるで怯える幼子の様な顔で、そのまま近くに立て掛けていた妙法村正を手に取り、部屋の窓を割って飛び出す。

 「沙耶香!待ちなさい!」

雪那の静止の言葉も意にも介さずそのまま夜の街へ消えていった。

 

 

 

 そしてそれを目撃し好機と捉えた存在が静かに嗤う。

 「あの娘、あの時の……ウフフ。ちょうど良いわねワタシ」

 「ああ、退屈しのぎの玩具には最適だ」

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃ柳瀬さん、明日の朝には帰れるように準備しておいてね」

 「はい」

 沙耶香を見送り、宿に着いた舞衣。江麻から美濃関へ帰還をするに辺り、荷造り等の準備を終えておくように言われ、短く返事を返す。

 そのまま江麻とは宿の入口で別れる。暫く彼女の背中を眺めながら、江麻が見えなくなったのを見届け、宿に入ろうとする。──そこへ……。

 「あぁあ!やっと会えたぁあ!?」

 「え…?」

 バイクのエンジンを吹かせ現れたのはフルフェイスのヘルメットを被ったアウトドアジャケットの人物。

 「久しぶりだね、舞衣ちゃん!」

 「え…と、あの……どちら様でしょうか?」

突如現れた謎の人物に困惑する舞衣、そんな彼女の訝しげな顔に気付いたのか、謎の人物がヘルメットを脱ぐ。

 「僕だよ、舞衣ちゃん」

 「………もしかして、雷火さん!?」

 雷火と呼ばれた青年は舞衣に名を呼ばれ笑みを浮かべる。

 「いやぁ、本当に良かった。何度か検討違いな所に出て迷ってたからやっと会えてほっとしたよ」

 何度も迷ったと言う割には明るく笑う青年、その笑顔は可奈美と重なるモノがある。

 「雷火さんどうして此処に?美濃関に居たんじゃ…」

 「うん、まぁ、何だか可奈美が妙な事件に首を突っ込んだじゃない?きっと舞衣ちゃんは色々心配とか苦労してるんじゃないかなて」

 可奈美の事、舞衣の事をよく知るかの様に語る雷火、何を隠そう彼のフルネームは衛藤雷火【えとういかづち】美濃関学院高等部1年神職科に在籍している可奈美の実の兄である。

 「その為にわざわざ…?」

 「うん。でも大丈夫みたいだね」

 「え?!でも私は可奈美ちゃんを連れ戻す事が出来なかったんですよ…!」

 舞衣の努力も虚しく、反逆者として今も折神家に追われる身となった可奈美。雷火の手前、後ろめたい思いに駆られるのか言葉が尻すぼみになっていく。

 しかし雷火は気にした風も無く、からからと笑う。

 「だって、可奈美がその道を選んだんだ。なら舞衣ちゃんが気にする事じゃないよ。可奈美は大丈夫、何となくだけど分かるんだよね」

 根拠にも無い事をあっけらかんと言う雷火、兄妹揃って妙にそっくりである。

 「そう……ですか。じゃあ本当にわざわざ私の様子を見にに会いに来たんですか?」

 「うん、後、もう一人…可奈美のお友達に。何て名前だったかなぁ」

 「もう一人…。それって美炎ちゃん…」

 「そうそう!そんな名前だった!僕はまだ会った事が無いんだよね。その子もこの宿に?」

 「あの、美炎ちゃんは今、別件で伍箇伝の任務に就いていて」

 雷火の質問に舞衣は美炎が現在、伍箇伝各校から選ばれた隊にて任務に就き不在である事を伝えた。

 「そっか。うん、ありがとう舞衣ちゃん、色々と分かったし僕はもう帰るとするよ」

 「今からですか?」

 「大丈夫、大丈夫。一回来た道なら帰りは何とかなるよ………多分」

 最後の科白が些か不安を煽るモノであったが舞衣も雷火がアレなのは知っているので苦笑で返した。

 

 

 それから暫くして雷火を見送った後、宿の自室に戻り、湯浴みを終えた舞衣。備付けの浴衣に袖を遠し縁側に腰掛け、空を見上げる。

 「やっぱり美濃関の空とは少し違う…可奈美ちゃんどうしてるかな……」

 雷火はああ言っていたがやはり不安の晴れない舞衣、湯上がりの火照った顔が14歳とは思えない色気を醸し出す。

 そこに部屋に敷かれた布団の枕元に置かれた舞衣の携帯が着信を報せる。

 「こんな時間に?」

夜更けも深い時間に急な電話、一体何者であろうかと電話に出る。その声は糸見沙耶香のモノ。

 呼び止めた時に沙耶香の連絡先こそ知ることは叶わなかったが、渡すことが出来た自身の連絡先に掛けてきた嬉しさに舞衣は喜びの声を滲ませる。

 「どうしたの沙耶香ちゃん?」

 『あ…』

 「…早速ありがとう。電話かけてくれて嬉しいな。夜更かしさん同士、お話しよっか」

 何を言おうか戸惑う沙耶香を気遣い、舞衣は自分から話題を切り出す。

 「大丈夫、ちゃんと聞いてるから」

 『あの…やっぱり何でも無い……』

 沙耶香は何事かを口にしかけ、しかし、止めた。

結局、その通話は切れてしまう。

 だがその時、僅かに聴こえた別の声を舞衣は聴き逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「今、何と言った?」

高津雪那が溢れそうな苛立ちを必死に抑えながら真希、寿々花の両親衛隊に訊き返す。

 「我々親衛隊は糸見沙耶香の捜索に協力出来ない。と申し上げました」

 「そもそも(わたくし)達の使命は紫様をお守りする事。鎌府女学院内部の問題に介入する権利も義務もありませんわ」

 真希の端的な答えを補足する様に寿々花が理由を雪那に説明する。しかし……

 「紫様の為なら尚更よ!沙耶香こそ紫様の片腕に相応しき者!反逆者も捕えられない無能とは違うの!親衛隊!紫様の為にも早急に沙耶香を連れ戻しなさい!」

 正に身勝手極まりない理屈で親衛隊に命令する雪那、しかし真希は瞳を細め語気を強く拒絶の言葉を発する。

 「申し訳ありませんがご期待には沿いかねます」

 「獅童貴様!」

 「お静かに。紫様の親近を悩ますは高津学長とて本意ではないのでは?」

 「っ…!」

 真希の言葉に食って掛かろうとする雪那を、横から寿々花が口を挟む事により遮る。

 

 そのまま、怒りを顔に刻みながら発令室を出る雪那。扉を閉め廊下に出た瞬間、鬱憤をぶちまける。

 「出来損ない共め…沙耶香に取って代わられるのを恐れたか!」

 どうやら彼女達からの対応を自分の育て上げた道具に代わられる事を恐れてのモノと曲解したらしい。

 苛立たし気に爪を噛む雪那、そこへ夜見が怪我をした身体を死に体に鞭打つ如く這い這いの足で現れる。

 「高津学長…」

 「夜見…折角の力も御しきれず惨めな姿。それで親衛隊とは聞いて呆れるわ!お前など所詮、紫様の恩情で拾われた試作品。身の程を知りなさい」

 夜見を見た瞬間、捲し立てる様に罵声を浴びせ彼女を下に見る雪那、その顔は自身の無能を棚に上げて他者の失敗を喜ぶ醜い人間のソレだ。

 しかしそんな言葉を浴びせられても顔色1つ変えず、包帯に包まれた痛々しい身を捺して右腕を差し出す。

 「私の…私の力であればご随意に……」

 だがそれが気に障ったのか夜見の頬を力強く叩く雪那。

 「私の力だと!?お前にくれてやった力など沙耶香を完成させる上で零れ落ちたゴミも同然!なのに紫様に召し上げられその上増長して、私を見下すとは!忘れるな!沙耶香さえ居ればお前達等必要無いことを!!」

 叩かれた夜見の顔はうつむき髪の影に隠れ表情を窺えない。黙って叩かれた頬を抑えたまま、雪那の罵声を一身に受けている。

 

 「うわ~。おばちゃんおっかな~い」

その様子を少し離れた場所から柱に隠れ眺める結芽、お気に入りのマスコットのストラップを弄りながら沙耶香が逃げたであろう方向を見詰める。

 思い出すのは親衛隊として紫付きの刀使となって暫く経った時、雪那に連れられ局長室に現れた沙耶香の事。その時は自分も綾小路は相楽結月と共に紫の側で沙耶香を見ていた。

 そして悪戯を思い付いた子供の顔になる。

 「……(家出したのって、私と同い年のあの沙耶香ちゃんだよね?)たしかあの子も天才って言われてるんだっけ…捕まえたらみんなビックリするかなぁ」

 そう笑うと結芽は楽しそうにスキップしながらその場を離れた。

 

 そして結芽が本部より出ていく瞬間を見掛けた兄、燕戒将。

 「結芽……?こんな夜更けに一体何処に…」

 不振に思いながらも、先程アルファより入った火急の要件を片付ける為、ダグベースへと転送される場所を探し人気の無い所へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 とある路地近くのコンビニ、そのフェンスを挟んだアパートとの細い路地に糸見沙耶香は踞り座って携帯の電話帳を眺めていた。

 (どうして私…)

 思い起こすのはあの時、雪那の手を振り払って逃げた事。

 「ずっと言うこと聞いてきたけど…アレが入ってきたらきっと……消える…消えちゃう…」

 顔を伏せて泣きそうな声で震える沙耶香。その様子は年相応の小さな少女のようだ。

 「あ!」

そこに現れたのは柳瀬舞衣。沙耶香は連れ戻しに来たのかと驚き逃げようとする。

 「待って沙耶香ちゃん!見つけた…」

走って来たのだろう息を荒くしながら舞衣は沙耶香へと近付いていく。

 「遅くなってごめんね。この辺りのコンビニ全部周ってたから…」

 「なん…で…わたし何も…」

 あの時、電話越しに聴こえた声を頼りに、近辺のコンビニを虱潰したのだという。因みに途中雷火に再会し念の為彼にバイクで探して貰ってもいたが……恐らく迷子になったのだろう。

 何故、自分の為にそこまで親身になるのか理解出来ない沙耶香は弱々しく舞衣に訊ねる、だが如何せんいきなり飛び出した為か腹の虫が可愛い悲鳴を挙げた。

 「お腹減ってるの?じゃあそこのコンビニで…でも中学生が夜中に買食いなんてダメだし…そうだ!…良かったまだあった。はいコレ」

 沙耶香の空腹を知り、何か食べる物をとコンビニを見るも生真面目な舞衣は律儀に補導される可能性を考慮し考え込む、すると何か思い出したのかスカートのポケットを漁ると小さなビニールの可愛らしい包みに入ったクッキーを沙耶香に差し出す。

 「クッキー…」

 それから2人してフェンスに背中を預けて他愛の無い会話に興じる。舞衣が妹との事を語り、沙耶香がクッキーを口にしながら相槌を打つ。

 「──そのくせね。本当に困ってる時は助けて~なんて絶対言わないの。おかしいね、バレバレなのに」

 妹の事を語りながら、沙耶香の方に視線を巡らせる。

 「なんで…わかるの?」

その視線の意味に沙耶香も気付き、『何故?』と問い掛ける。

 舞衣はその今にも崩れ落ちそうに震える沙耶香を抱き締め、耳元で安心させる様に囁く。

 「わかるよ。だってお姉ちゃんだもん」

 「…あ……(これ…あの時と同じ)」

舞衣に抱き締められた沙耶香は、追手とした戦った時の可奈美に手を握られた事を思い出す。

 胸の中に込み上げる温かいモノ、抱いた言葉を口にしようとしたその時──

 

 「沙耶香ちゃんみ~つけた♪」

 

 いきなり聞こえた場違いに無邪気な声に弾かれたように声の方向に首を巡らせる。

 フェンスを挟んだ視線の先には、見覚えのある人影、親衛隊最強の刀使、第四席"神童"燕結芽。

 幼き狂気が無慈悲に告げる。

 「じゃあ帰ろっか。高津のおばちゃんが待ってるよ」

沙耶香はまるで死神の鎌を首に添えられた様に戦慄し一歩、後退る。

 その態度を拒絶と見たのか、意地悪く訊ねる結芽。

 「あれ?もしかして帰りたくない?そっか~困ったな~。ね、どうすれば良いと思う?おねーさん」

 ニヤニヤと嗤いながら舞衣の方に話を振る結芽、その態度に彼女が巻き込まれる事を嫌い沙耶香は舞衣の側から離れようとする。

 「沙耶香ちゃん?」

 「私が帰ればそれで済むから……」

 「いいの?私、事情とか全然知らないけど本当にいいの?聞かせて、沙耶香ちゃんの気持ち」

 舞衣はそんな沙耶香を諭すように、優しく、しかし必死に言葉を紡ぐ。そして俯く沙耶香の背中から返ってきた想いは──

 「私…嫌………。嫌……だ」

振り向いた沙耶香の顔、泣きそうになるのを我慢しながら…けれど、今にも涙を零れ落ちそうに震える小さな、か弱い女の子の顔。

 「うん。わかった」

その沙耶香自身の確かな意思に舞衣は力強く応える。

 

 「じゃあさ~追っかけこしよっか」

そこで事の成行を静観していた結芽が提案をする。

 「10数えて待っててあげる。私から逃げられたら知らなかったことに、見なかったことにしてあげる」

 

 「沙耶香ちゃん!」

 そして数を数え始める結芽。降って湧いた千載一遇の好機に舞衣は沙耶香の手を牽き、刀使の強化された身体能力で跳ぶ。

 屋根伝いに必死に逃げる2人を見送りながら結芽は思惑通りといった顔で笑う。

 (そうこなくっちゃ。でないと私のスゴいところ見せられないじゃん)

 

 

 

 

 

 ダグベースからアルファの要件を終えた戻った燕戒将──ターボカイは駆ける。

 帰って真っ先に確めた結芽の所在、そこから行掛けに見掛けたご機嫌な妹の顔を思い出す。

 そして高津学長肝いりの刀使が行方知れずとなった事を知る。最悪の事態が頭に過った彼は、即座に駆け出し。ダグコマンダーを起動させた。

 地上の星が煌めく夜の街を疾しるカイ、その手にあるモノを握り締め蒼い軌跡が帳の内に消え行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 振り向かず、唯々前を見て走る舞衣と沙耶香。しかし、凄まじい速さで迫り来る結芽。

 月が覗く夜空の下、神社の木々を突きっきり剣閃の軌道が光を散らす。

 石畳の上で息も絶え絶えに膝を付く2人に対して結芽は余裕綽々といった様子で彼女達を見下ろす。

 「もうおしまい?まだまだこれからだよね?」

沙耶香がいち早く態勢を整え結芽に斬り掛かる。

 「わ~!?」

大きく身を仰け反らせる結芽、しかしそれはブラフ。反れた勢いを使い、左足で蹴り払いを仕掛ける。

 だが沙耶香とて神童と呼ばれた刀使、結芽の蹴りを受け流し隙を作らない、そこから陣移で間合いを詰め、結芽と競り合う。

 「やるね~沙耶香ちゃん。でもまだそんなもんじゃないよね!?」

 楽しそうに声を弾ませ沙耶香を煽る結芽、沙耶香の瞳が妖しく光る。

 「知ってるよ。なんかスゴい技使えるんだよね?無念無想だっけ?」

 しかし、結芽のその言葉を聞いた瞬間、沙耶香の瞳が動揺し輝きが消える。

 思い起こすのは可奈美との立ち会い、魂の籠らぬ剣では何も斬れないと言われたあの時の事。

 「あれ~?やらないの?む~…!ちょっとモノ足りないけど時間がもったいないから、もう決めるね!」

 が、そんな事は結芽には関係ない。その僅かな動揺を隙と取り真っ向から斬り伏せようとにっかり青江を振り下ろす。

 しかし横から割り込みそれを防ぐ刃が沙耶香を守った。結芽の凶刃を弾いたのは舞衣。

 そのまま御刀を鞘に納め身を僅かに低くし、居合いの構えから剣閃抜き放たれる。

 「ビックリした~!おねーさんもちょっとはやる人みたいだね♪……ほんとにちょっとだけね」

 舞衣の起死回生の一撃も物ともせず。即座に蹴りを繰り出す結芽、その一撃から素早く剣戟を繋げる。

 「まだまだいくよ~!」

対する舞衣は防戦一方となりじわじわと写シを削られていく。

 「おお~!けっこうしぶといね!」

 「駄目…やめ…」

尻餅を着き、背中に庇われた沙耶香が見ていられないのか小さく懇願する。

 しかし舞衣は依然として退かない。

 「どう…して…」

 「だって私は沙耶香ちゃんよりお姉ちゃんだから!理由なんてそれだけで充分!」

 ポロポロと徐々に写シが剥がれていく舞衣を見ながら沙耶香は胸を強く押さえる。

 (痛い…痛いよ……だけど温かくて…熱くて……空っぽだった私をいっぱいにしていく…)

 胸を締め付ける言葉にならない衝動。

 (私は…これを…)

 瞬間、弾け跳び消える左腕。完全に写シが剥がれ、左腕を庇う形で御刀を握る舞衣。写シ故に実際に切断された訳では無いが、両手で振るうのは最早難しい。

 「もうおしまいかな?だったらお休みの時間だよね!」

結芽が舞衣に刃を突き付ける。

 「…ぁあぁ…ああァアアアアアアアアア!!

その時、後ろから大きな絶叫と共に沙耶香が力強く飛び出し結芽と鍔競り合う。

 その顔は今までの感情の無い人形ではなく、血の通った、願いを持った人間の顔だ。沙耶香は叫ぶ。

 

 「これを!失くしたくない!!」

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 おばんどす~仲野順どす~。

 なんや最近は鎧塚はん、渡邊はんと仲がよろしおすな~。

 女の子以外にも知り合い居ったんどすな~。

 なんや東の方はあわただしみたいやね、ちっちゃい方の燕はんともう一人ちっちゃい娘ぉがエライ形相で戦ってはるみたいやし、それを水差そうとする連中も現れたみたいやし。どうなってまうんやろねぇ?

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 訣別の鳥籠、ジェゲンガ星人再び!

 

 なんや大きい方の燕はんにも久しぶりに逢いとうなりますわ~

 




 さぁて、また色々プロット書かなきゃ。
天華百剣も超電磁砲コラボが控えてますし、また遅れるかも……。
 早いとこライアン出したいですね。
 今更ですけど、VRS装備はS装備よりはカッコいいと思います。


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第三十七話  訣別の鳥籠、ジェゲンガ星人再び!

 おはようございます。そして何時もの様におやすみなさい。
 今回も長くなったなぁ。
 遂に舞草に6人全員揃いました。ネタバレ
さて今度は速く書けると良いなぁ。



 "前回の刀使ノ指令ダグオン"

 何時も言われるがまま生きてきた、試合に負けたところで何とも無かった。

 初めて任務に失敗した。

 魂の籠らない剣じゃ何も斬れないと言われた。でも、その後、手を取ってまた試合しようって言われた。

 少し胸の奥が熱くなった。

 あの人はクッキーをくれた。私を倒した人のトモダチだそうだ。

 私が私でなくなる……それは嫌だ。分からないけど…嫌だ。

 あの人は私を探してくれた、どうして?

 あの人は私を守ろうとする、どうして?

 痛くて苦しくて…でも嫌じゃない、この熱い感じを私は──

 


 

 自分を守ろうとする背中を見つめる。

力の差は圧倒的なのに、ただ自分よりお姉ちゃんだからという理由だけで必死になって守ってくれる。

 しかし無情にも写シの左腕を斬り飛ばされ、窮地に陥る舞衣。沙耶香は痛みで熱くなる胸を押さえながら妙法村正を強く握り締め立ち上がる。

 刀を振るう手に力を込める。その小さな身体からは想像もつかないくらいの大きな声で叫ぶ。

 

「これを!失くしたくない!!」

 

 この心地好い痛みをくれた人を守る。

そう決意した確固たる目が相対するもう一人の"天才"を

見据える。

 刹那の鍔競り合い。突撃する沙耶香の勢いに吹き飛ばされる結芽。

 「ははは……はははは!」

 吹き飛ばされた先で一部が砕けた石灯籠の石柱に背を預け、声をあげて笑う。

 飛ばされたダメージなど関係ないと言わんばかりにすぐさま立ち上がる結芽、そのまま笑いながら沙耶香へと仕掛ける。

 「いいよいいよ沙耶香ちゃん!」

にっかり青江の刃を妙法村正で受けた沙耶香を御刀ごと上空へ打ち上げる。打ち上げた沙耶香を追う様に跳ぶ結芽、そのまま沙耶香を見下ろす形で御刀を縦一文字に振り下ろす。

 石畳に叩き付けられる沙耶香、写シは消え、抵抗する間も無く、結芽に上から押さえ込まれる。

 首筋に刃を突き立てられ息を呑む沙耶香、しかし追い詰めた側の結芽は途端につまらなそうな顔となり溢す。

 「ちょっと本気出しただけなのに…思ったほどじゃない」

 沙耶香を見下ろす結芽の顔に浮かぶのは失望。

さてどうしようかと退屈そうな顔で思案しはじめる結芽、その時新たな闖入者が現れる──

 

 

 

 

 

 

 

 人目を避け走るターボカイ、集音、暗視等のセンサー機能を最大にして道なき道を疾ける。

 思い起こすのはダグベースにてアルファより告げられ、渡されたモノ。これがあれば万が一の時が起きた時、結芽を救う事が出来るモノだと言う。故にカイは急ぐ。

 その時、視界に走る影。

 「何だ!?」

 「キィィャヤァアアア!!」

影の正体は全身が赤く肘に鋭い刃の様な角を持ち、本来顔がある場所はのっぺらぼうという異形であった。

 「っ…!?ぐおぉぉお!」

 影に激突し地に転がるカイ、影が面白そうに声を挙げる。

 「ふふ、あの娘共で遊ぼうと思ったら思わぬ輩が出てきたわ。こう言うのをこの星では、タナカラボタモチと言うのかしら?」

 赤い異形の胸から女の声がする。カイが顔を向けると異形の右胸、本来乳房がある場所にまるで腫瘍の様に女の顔がある。

 位置関係からか、女の顔は此方を見下す様に視線を向けている。

 「貴…様は……!?」

 「わたしはジェゲンガ星人。そう言えば理解出来る?」

右胸の女の顔が蠱惑の笑みを浮かべる。

 「ジェゲンガ星人……?馬鹿な、それは以前倒した、いや、同種の別個体か?!」

 以前、御前試合の際に現れた青い個体を思い出すカイ。色違いの彼女を見て同族かと思い至る。

 「ふふ、さぁ、どうかしら?」

しかしカイの疑問に取り合わず、笑みを浮かべ間合いを計るジェゲンガ星人フィメル。

 何故彼女が現れたのか?それは数分前に遡る事となる。

 

 

 

 

 「ふぅん。やはり人間と言うのは未成熟な生物ね」

コンビニでのやり取りを向かいの建物の屋根から見物するジェゲンガ星人の二人、フィメルはつまらなそうに言葉を紡ぐ。

 「なぁに、それもまた一興だよわたし。あの小娘独りきりなら私達が遊ぼうかとも思ったが……あれはあれで中々面白そうだ」

 フィメルを嗜めるようにメイルが嫌らしく嗤う。

すると状況が動く。

 「ふむ?どうやら白い小娘と黒い小娘が逃げるようだ」

 「あっちの小娘は何も動かないけれど、どうしたのかしら?」

 「聞こえてきた話から察するに、逃げる猶予を与えたようだね」

 逃げた舞衣達とその場から動かない結芽を見続けながら会話するメイルとフィメル。すると結芽が動き始める。

 「どうやらゲームが始まったようだ。結末がどんなモノになるか…見届けてみないかい?」

 「そうねぇ…ま、気に食わなきゃ、私達で遊びましょうか。ね、ワタシ」

 「そうとも、所詮、この星の原生生物が何をしようが我々には届くべくもない」

 そうして彼女達から気付かれない距離で後を付けるジェゲンガ星人、しかし、フィメルがあることに気付く。

 「あら?……ふぅぅうん?ねぇワタシ、ちょっと待って」

 「どうしたわたし?ふむ?成る程成る程、これは面白そうだ。しかし、小娘共はどうする?あれはあれで見ものだと思うが…」

 結芽を探し跳び回るターボカイに気付いたのか、舞衣と沙耶香を追いかけ神社へと消えた結芽の姿を観測し続けるメイル。

 「ねぇワタシ、確かこの間はアノ連中に4人掛かりでやられたのよね?」

 「ああ、ワタシはわたしと違い、個別個体となった時の能力で耐久性は低いからね」

 「なら提案なのだけど、ワタシの敵討ちも含めてアレはわたしが相手するわ。ワタシは小娘共を追って、顛末を見届けると良いわ。それがもしつまらないものなら──」

 「ワタシが私達好みに遊べば良い…と」

方針は決まった、ジェゲンガ星人は即座に動く。

 そうしてフィメルは擬態を解き、カイへと奇襲を掛ける。

 メイルは結芽達を追う。

 

 

 「くっ!こんな時に……!?」

 「あらぁ、随分焦ってるみたいね?もしかしてさっきの小娘の中に知ってる顔でもいるのかしら?」

 「っ…!?何だと!?今何と言った貴様っ!!」

フィメルの煽る様な物言いにカイがハッとする。

 「うふ。この間はワタシが世話になったみたいだけど、今回は簡単にはいかないわよ?貴方1人で勝てるかしら?」

 「舐めるな!貴様が以前の異星人の同類ならば俺独りでも戦える!」

 蒼と赤の影が激突する。カイが右足で突き蹴りを放つ、が、それを左手で受け止めるフィメル。

 「なっ?!」

 「うふふ。わたしは身体能力がワタシより高いのよ。同じ風に見てたら痛い目見る事になるわ。こんな風にっ!!」

 カイの足を掴んだまま振り回し地面に叩き付けるフィメル、アスファルトの地面に大きな亀裂が走る。

 「ぐあぁっ!!」

予想外のダメージに声を挙げるカイ、背中から叩き付けられた彼は痛みに喘ぐ身体でフィメルを見る。

 「もう終わり?思ったより大したこと無いわね」

 「まだまだぁ!」

声を挙げ飛び起きるカイ、今度は低く構えフィメルの身体に向かって深く切り込む。

 「(顔無しの部位に意味が有るかは判らんが……)せぇえいっ!」

 本来であれば顎にあたる部分に衝掌を当てるカイ、僅かに反れるジェゲンガ星人フィメルの上半身、そこに追撃を加えるカイ。

 「ホイィィィイルッキィィックッ!」

 足首のホイールが回転し威力を増した回し蹴りをフィメルに加える。

 これには流石に吹っ飛ぶフィメル、吹き飛んだフィメルを逃がすまいと追うカイ。

 「ふふふっ!そうでなくっちゃあ!!」

そうして仕切り直しの様に互いに間合いを開き、ジリジリと移動しながら時折激突を繰り返しては夜の闇を突き進む。

 気が付けば結芽達がいる神社へと近付いていく。

 「あら?ふふ、態々別れるまでも無かったか。どうもありがとう。ここまで連れてきてくれて」

 「何…?……ッ!(此処は!?奥で見える剣戟は結芽達か?!連れてきてくれて…だと?…それにヤツは『別れる』と言ったか?別れる。何に?誰と?…ダメだ材料が足りないっ!)」

 フィメルの発言に狼狽え、彼女の言葉から目的を推察しようとするカイ、しかし、判断材料が足りず、思考が纏まらない。

 「あら余所見?余裕ね!!」

 その隙を見逃す程、犯罪者は甘くは無い。カイの一瞬の躊躇に間合いを一気に詰めるフィメル、そのまま異形の拳を突き出す。

 「…しまっ?!」

 意識を眼前に迫り来る拳に切り替え自身の腕をクロスし咄嗟に防ぐ。

 「っぉおおっ!」

咄嗟に防御した事で吹き飛ばされる事は免れたカイ、踏ん張って耐えた事により地面が足の形に抉れる。

 「へぇ…。思ったより耐えるのね。此方としてはさっさと貴方を倒して、ワタシと合流してから小娘共で遊ぶ気なんだけど…」

 予想外に粘るカイを見て思わず溢した一言、だがその一言が目の前の戦士に火をつけた。

 「……と言った…!」

 「?何?聞こえないわよ?」

 

  今、何と言った!…そう訊いたっ!!

 

 怒りに震え、怒気を孕む蒼き戦士。彼の身体から出る気迫がオーラの様に見える。

 「っ…!?な、何だというの?!奴の生命力がいきなり昂まった!?」

 その気迫に思わず後退るフィメル、彼女は自らの身体が震えている事に気付かない。

 「タァァアアボォッ!ホイィィィイルゥゥウッ!」

 その叫びに応じ顕れるターボホイール。しかしカイはそれに乗らず、召喚されたホイールはカイの意思を汲み取り縦になりカイの前で回転しながら停空する。

 「セェエイッ!!」

 怒りのカイは瞬間加速を利用し眼前のターボホイールに蹴りを叩き込む。

 音速を越える速度で迫るターボホイールがフィメルに突き刺さり木々を薙ぎ倒し吹き飛んで行く。

 「ぎゃ?!ごっ?!ばあだっ!?」

言葉にならない悲鳴を残し、社のある方まで吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 「何をしている結芽!」

再び場面は戻り、結芽が沙耶香を下敷きにして処遇を決めかねている所だ。

 そんな結芽の思考に割り込む声の主は鎌府学長、高津雪那。

 雪那は数名の鎌府の刀使を引き連れ結芽に命令する。

 「下がりなさい!お前如き欠陥品が出る幕ではないのよ!!」

 その言葉に従い、鎌府の刀使達が結芽達の周りを円を描く様に包囲し何時でも抜刀出来る様に構える。

 「…はぁ」

それを見た結芽は一気にやる気を失くし、沙耶香から退くと写シを解除する。

 「はいはい、わかりましたー」

 沙耶香を抱き抱える舞衣を尻目に、そのまま雪那の元まで歩いて行く、自分を囲んでいる刀使達等眼に映らないかの様な気軽な足取りだ。

 「なんてね…」

 雪那の眼前に来た瞬間、迅移を発動。鎌府の刀使達を斬り、元の場所に戻る。

 倒れ伏す鎌府の刀使達、雪那はそれに戦慄する。

 「結芽!貴様何を…」

 「あーあ、無駄な時間使っちゃったー」

雪那の言葉に取り合わず、そのまま通り過ぎる結芽、終始余裕であった彼女、しかし彼女はほんの僅かに痛む胸を抑えていた。

 

 「ぎゃ?!ごっ?!ばあだっ!?」

 

そこに吹き飛んで来るジェゲンガ星人フィメル。その場にいる意識のある者達の視線が向けられる。

 しかし結芽だけは彼女が飛んできた方向を向いていた。

 「な、何だと言うの?!」

雪那が未知の出来事に狼狽える。

 「ぎゅぇ……ごぉっ?!……お、オノレェ…下等生物がぁぁあっ?!」

 フィメルは近くに舞衣や雪那、結芽達が居るにも関わらず林の方を睨む。

 歩み寄ってくるのは蒼き勇者ターボカイ、闇夜に光るマスク、そのオレンジ色のバイザーが揺れる様は幽鬼のようだ。

 「あれは…」

舞衣がカイの特徴的な見た目から以前遭遇したシャドーリュウを思い出す。

 「…あの…時…の…」

 「…だぁれ?」

沙耶香は回復仕切れない疲労した意識でカイを見てリュウとヨクに姿を重ねる。

 結芽からしてみれば初めて見るダグオンという存在。しかしカイの怒気を感じ取ってか、やや警戒気味だ。

 「ヤツは…報告にあったアンノウン……何故ここに…?!」

 雪那は訳も解らず狼狽えたままだ。

 

 「オノレェダグオン!よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも!」

 激昂するフィメル、だがその時彼女の脳裏にメイルからの声が掛かり、熱くなった思考を冷やす。

 (わたし、聴こえているか?少々予定が変わった。暇潰しは無しだ。此処を離れる)

 (ワタシ?どういうことかしら?わたしが戦っている間小娘共で遊ぶのではなかったの?)

 (……そのつもりだったが、アレが現れた。ジェム星人の分体だ)

 (何ですって?!…一体、何時……まさか?!)

 (そうだ。あの時、あの筋肉達磨が地球に現れた時、ヤツも共に来ていた様だ。其方は大丈夫か?動けるようなら退くぞ)

 「…くっふ!運が良かったなダグオン!計画変更だ!わたしは退かせて貰う!だが、次は無いと思え!!」

 捨て台詞を残し跳び去ったフィメル。それを黙って見送るカイ、フィメルの姿が見えなくなったのを確認したカイはそのまま舞衣達の……結芽の方に向かって行く。

 「……」

 「なぁに…?」

自分の前で立ち止まったカイに訝しげな視線を向ける結芽、カイは答えず暫く結芽を見続けた後、結芽の横を通り過ぎ、去っていった。

 「……帰ろ」

カイの存在に最後まで訝しげだった結芽、彼が去り周りも未だ狼狽える中、彼女もまた神社を後にする。

 

 残ったのは沙耶香を抱き抱える舞衣と立ち竦む雪那、倒れ伏した鎌府の刀使達。

 「ありがとう…」

 「ん…」

 舞衣は疲労した沙耶香を抱き寄せ礼を述べる。沙耶香も短く答える。

 

 それを見た雪那が意識を彼女達へ戻す、そして思い出したかの様に沙耶香に告げる。

 「沙耶香!我儘はおしまいよ。さぁ、鎌府に戻りなさい!」

 沙耶香が舞衣の助けを借りて立ち上がり雪那の元へ歩み寄ってくる。それを雪那は当然だと言わんばかりに見据え言葉を続ける。

 

 「そうよ沙耶香。お前は親衛隊共のような欠陥品とは違う完璧な刀使…」

 しかし沙耶香は俯き、雪那に否を突き付けた。

 「私は…あなたが望む刀使にはなれない……ううん…なりたくないです」

 「え……何を…言っているの?」

沙耶香の発した言葉に頭が理解を拒む雪那、態々、口に出して聞き返してしまう。

 「空っぽのままで良いと思ってた。でも…私をいっぱいにするこの熱…失くしたくない!」

 雪那を見据える沙耶香の顔は強い意思に溢れ満ちた顔。だが雪那はそれを受け入れられない。

 「何を…お前は妙法村正の継承者。私の代わりに…いえ…私として紫様にお仕えする存在!紫様のためだけの道具なのよ!?」

 狼狽え焦る雪那の口から零れるのはどこまでも身勝手な理屈。雪那にとって糸見沙耶香とは嘗ての己が為せなかった事を成就させる為だけの代替品、その言葉に沙耶香は静かに下を向く、手を繋ぐ舞衣の指に力がこもり、それを感じ取る沙耶香、再び雪那へ向き直り、彼女に決定的な言葉を告げる。

 「…今までお世話になりました」

そしてそのまま雪那を置き去りに舞衣と2人、その場を後にする沙耶香。

 後に残るは茫然自失の雪那と未だ倒れ伏す鎌府の刀使達だけ…。

 「待ちなさい…待って…沙耶香…沙耶香…」

雪那は受け入れられない現実を前に虚空へ語り掛ける雪那、彼女の野望(ユメ)は崩れた。

 

 

 

 

 

 朝陽昇る鎌倉の砂浜。その砂浜を臨む道路の歩道、そのフェンスに膝を預ける2人。

 「沙耶香ちゃんのしたいこといっぱい、ううん、全部やろ」

舞衣は沙耶香に微笑み語り掛ける。

 「私も可奈美ちゃんも一緒だから。ね?」

 「食べたい…」

 「ん?何?」

 「また…クッキー…食べたい」

 「うん、喜んで!」

沙耶香の方に身を寄せる舞衣、その様子は仲睦まじい姉妹のようだ。

 

 其処へ黒塗りのリムジンが現れる。運転席から降りてきたのはスーツの男性。

「舞衣お嬢様。お迎えに上がりました」

 「柴田さん…どうしてここに?」

現れた男性は舞衣の実家、柳瀬家に仕える執事の柴田。

 舞衣が何故居るのかと訊ねると、後部のドアが開き新たに現れたのは美濃関学長、羽島江麻。

 「私が御足労願ったからよ」

 「羽島学長?!…あの…私…」

江麻の登場に思わず動揺し言葉に詰まる舞衣、しかし江麻は全て承知の上という顔で頷き告げる。

 「事情はおおよそ把握しています。2人とも今はこの地を離れなさい」

 そう言って、後部席に乗り込む様促す江麻。

 そのまま去って行く柳瀬家のリムジンを江麻は見送る、そしてポケットから電話を取り出しとある人物に連絡をする。

 「無茶する子の後始末ばかり得意になったのは誰のせいかしらね……もしもし紗南?」

 連絡先の相手は長船学長真庭紗南、江麻は短く要件を伝える。

 「ええ、匿ってくれるだけで良いの。そこから先は自分で決める事よ」

 

 車の中で安心したように二人寄り添い眠る舞衣と沙耶香。

 そんな子供達を想いながら江麻は電話の向こうの紗南に宣言する。

 「私?私は腹を括ったわ」

その顔は正しく未来を次の世代に託し、導く大人の顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━岡山県某所

 夕暮れの山里、その入口付近でリムジンが停車する。

目的地に着いたのだろう舞衣と沙耶香が降り立つ。

 「舞衣ちゃ~ん!」

そこへ可奈美が勢いよく走って舞衣に抱き着く。

 「可奈美ちゃん!」

 「えっとね!舞衣ちゃん私えとえと…とにかく舞衣ちゃんに話したいこといっぱいあるんだ~!」

 幾日か振りに再会した舞衣に何事かを言おうとして言葉にならない喜びを見せる可奈美、舞衣はそんな彼女を保護者の様な視線で見つめる。

 「あ!沙耶香ちゃん!聞いてた通りだ!ほんとに沙耶香ちゃんも来てくれた~!」

 側にいる沙耶香に気付き手を握りブンブンと振り回しはしゃぐ可奈美。沙耶香はされるがままだ。

 「ウェルカ~ム!舞草は二人を歓迎しますネー」

そこへ現れるエレン、薫、そして姫和。

 そして舞衣の胸に飛び込むねね。が、直前で薫に尻尾を掴まれ阻止される。

 「少しは自重しろエロ魂」

 長船組のやり取りに苦笑する舞衣、そこに姫和が近付き舞衣もそれに気付く。

 「あ…十条さん」

互いに視線で苦労を偲ぶ舞衣と姫和、そこへ出迎えの軽自動車を運転するフリードマンが現れ運転席から手を振る。そして助手席から降り立つ妙齢の、しかし若々しさを感じる穏やかな女性。

 「ようこそ舞草へ。若き刀使達」

透き通る水の様な声がうら若き刀使達へ語り掛ける。

 「折神朱音と申します」

女性の口から飛び出した名前は何と折神という名、折神朱音…折神紫の妹であり、フリードマンと共に舞草を立ち上げた反折神家勢力の旗印その人である。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 あ、えと、どうも衛藤雷火です。可奈美の兄やってます。美濃関神職科です。

 無事に可奈美達に合流出来た舞衣ちゃんと沙耶香?ちゃん。

 舞草の里でそんな可奈美達を迎い入れたのは折神朱音様だった。そして彼女の口から語られる20年前の大災厄の真相。

 一方、ダグオン達もダグベースにて管理者から20年前の事を聞かされていた。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 告白!大災厄の真相!

 次回も"トライダグオン"!カァムヒァッ!

 




 さて次回過去の大災厄回想話を挟み、舞草での日常は少々カットしてスルガ、そしてジェゲンガ星人との本格的戦い。ライアン登場といった具合の話の展開ですかね。
 ではまた次回。


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第三十八話 告白!大災厄の真相!

 
 こんばんわ。最近はそれなりに筆を進めているダグライダーです。
 実はですね、当方、ロザミア様にコラボをしたいと持ちかけまして、先方がそれを受け入れてくれまして、その結果モチベーションが上がりまして短期にそこそこ投稿出来ているのです。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 儂イプシロン、今回あらすじをジャック。

ダイナマイト中学生舞衣ちゃんと将来有望沙耶香ちゃんがいちご大福ネコ結芽たんに追い詰められる。

 その頃、鉄の風紀委員長戒将はあしゅ◯男爵モドキの片割れと戦闘に突入。

 それで分かった、燕兄妹足癖悪いのう。

 なんやかんやで雪那ちゃんフラれるの巻。

 そして舞草では…なななんと!?──38話スタート

 


 

 ━━奈良県・平城学館敷地内

 「おんや?龍悟、六角龍悟じゃないか!」

 ダグベースから一時、帰還を果たした龍悟に少女の気安い声が掛かる。

 「……辰浪、久しいな」

龍悟も顔見知りなのか戸惑いもせず少女、"辰浪桃"に返事を返す。

 「久しぶりってか…お前さん、バイトん時以外は常に神出鬼没だからモモさんからしたら毎回久しぶりの再会気分なんだけど?」

 「……そうか」

 桃からの批難めいた物言いにも素っ気なく返事をする龍悟。この2人の間柄ではこれが何時もの事なのだ。

 「んで?今回はどんなバイトなんだい?羽振りが良いならアタシにも紹介してくれよ」

 「……すまないが、既に定員オーバーだ……。紹介は出来そうに無い」

 「そりゃ残念。なら、何しにコッチに?授業はとっくに終わってるし、ウチの警邏科は例の事件以来、外部実技は無しのハズだろ?」

 「……別に、通常授業でも単位は取れる。………後は、そうだな……知った顔を見たくなった。と言っておこう…」

 姫和が起こした暗殺未遂の影響か、平城は現在実技活動内容が自粛縮小されているのだ。が、龍悟としては不在時の間に進んだ授業の内容や内申の為の単位を取るためだけに戻って来たので、そこは問題ではなかった。

 「ははっ!相変わらず、ドライだねぇ。んで、また暫くは忙しいのかい?」

 「……ああ。暫くは此方のバイトには参加出来ない。色々とやることがあるからな……」

 そうして、言いたい事は言った。とばかりに校門の方向に進む龍悟。

 「どんなバイトか知らないけど、何かあったらこのモモさんが相談くらいには乗ってやるよ」

 桃のその言葉を背で受けながら右手を軽く挙げる事で応える龍悟。そして風が吹いた次の瞬間にはもう彼の姿は其処にはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━岐阜県・美濃関学院内

 「っぁああ!やっと終わった~」

鳳焔也は大きく伸びをすると一心地着いたように教室から退室する。

 無断欠席分のペナルティで田中妙子から補修を受けていたからだ。

 その補修授業も終わり、これからどうしたものかと考えながら廊下を歩く焔也。

 その為思考に没頭していて横から飛び出てきた女子生徒に気付くのが遅れた。

 「おっわっ?!っだぁっ!!」

 「きゃっ?!」

 女子生徒──恐らくは中等部の生徒だろう彼女は自分の横合いから現れた焔也に驚き尻餅を突いてしまう。

 焔也の方は何とかかわしたものの彼女に尻餅を突かせてしまった事に狼狽えてしまう。

 「しまった!?おい!大丈夫か?」

 「は、はい。すみませ……ひっ!?」

 一方、転んで尻餅を突いた女生徒、"須原里香"は焔也の顔を見るなり怯えてしまう。

 それもまぁ仕方無い、焔也と関係の深い刀匠科や工科の生徒や一部の刀使達以外からの評価は喧嘩っ早い問題児、所謂『不良』である。

 そして彼女、須原里香はその接点の少ない側、神職科の生徒である為、焔也の事を外聞でしか知らない。怯えるのは無理もないことだろう。

 怯える里香の顔を見て焔也も遅まきながら彼女が震えている理由に気付く。

 「あー……そんな恐がんなって、悪いのは俺だからさ。だから取り敢えず立とうぜ?スカート汚れちまうしよ」

 「は、はぃぃ…」

里香の方も焔也の態度が思っていたモノと違う事に気付き、恐る恐る返事を返す。

 焔也の手を取り、助けられながら立ち上がると改めて彼に迎い姿勢を正して礼を述べる。

 「あの…ありがとうございました。その……すいませんでした」

 「おいおい、だから悪いの俺なんだから謝んなって。というか大分急いでたみたいじゃねぇか。そんな重要な用事なのかい?」

 「あ!そうでした!はやく捜索願いを出さないと!?」

捜索願いと言う穏やかではないワードに流石の焔也も冷や汗が出る。

 「…なぁ、良ければ詳しく話を聞かせてくれないか?流石に捜索願いってのは聞き捨てならねぇ」

 「ふぇっ?……ふふ、はい、ありがとうございます先輩」

 焔也のぶっきらぼうな優しさを感じ、里香はこの先輩が噂程悪い人間では無いと理解する。

 立ち話もなんだと言うので食堂で詳細を聞くことになった焔也。

 

 里香曰く、何でも同じ神職科に居る高等部の先輩が行方不明になったと言うのだ。

 「それヤベェじゃねか?!こんなとこで悠長に話す暇があっていいのかよ!」

 「あ、でも…行方不明自体は何時もの事なんです」

これを聞いた焔也は思わず『はぁ?!』とリアクションをしてしまう。

 何でも妹の友達の様子を見に態々関東は鎌倉下りまで行ったのだと言う。ただ、その先輩はとんでもない方向音痴らしく、事ある毎に迷っているのだとか、なので今回も予定の日数を過ぎても帰って来ない事を見かねて里香を始めとする神職科の生徒で捜索をすることになった。里香は万が一彼が県外に出られた事を考え、念の為警察に捜索願いを出そうとしていた訳だ。

 「ははぁ、変わった奴もいるんだなぁ。んで、君はその先輩と仲が良いんだな」

 「はい。先輩は面倒見が良いので他の皆にも慕われてます。私の恋愛相談にも親身になってくれたりして…」

 ──あまり役には立ちませんが…。と言葉を濁していたが里香達からすれば良い先輩なのだろうと焔也は思う。

 と、そんな会話の途中に焔也のダグコマンダーに通信が入る。

 「っと、悪い、ちょっと用事が出来ちまった。取り敢えず俺の方でもその先輩とやら探してやるよ。その先輩の名前は?」

 咄嗟に左手をポケットに入れ、携帯から電話が来たように振る舞う焔也、里香も特に不審に思わなかったのか素直に焔也に尋ね人の名を教える。

 「あ…はい、衛藤先輩です。衛藤雷火。可奈美ちゃんのお兄さん……あ、刀使の衛藤さんって知ってますか?」

 その名を聞いた瞬間、焔也はマジかよという顔になる。可奈美に兄が居るのは知っていたが、まさか同じ美濃関の生徒とは思わなかったからである。

 里香に別れの挨拶を軽くしてその場を離れる焔也、なるべく人目が着かない場所に移りコマンダーを開く。

 「こちら焔也、何かあったのか?」

 『鳳か。燕だ、火急の用が無いようならダグベースに来い。管理者が我々に召集を掛けた』

 「あいつが?何だってんだ…。分かった、直ぐ向かう」

通信の相手は戒将。アルファからの要件を焔也に端的に伝える。

 焔也はそれに直ぐ様了承の返事を返し、サッと周囲を見回した後にコマンダーの転送ボタンを押す。

 粒子が焔也を包んだかと思えば、その場から彼は消えていた。

 

 

 

 ━━静岡県・某所ダグベース

 焔也が転送されてから直ぐ、ダグベースのメインオーダールームには彼を除く4人の姿があった。

 「……鳳は何と?」

 「直ぐに来るそうだ。望めば着替えるくらいの猶予はやったんだがな」

 「まぁ良いじゃネーノ。早いことはイイコトだ、ダロ?」

 「確かに。しかし管理者は一体何の話があると言うのでしょう?」

 オーダールームでは各員が各々好きな座席に身を預けている。

 龍悟は腕と足を組み椅子に背を預けながら戒将に焔也の返事如何を訊ね、戒将は顔の手前で手を組み頬杖を着く。

 申一郎が背凭れを体の前にし凭れ掛かり、翼沙は用途不明の機械を弄っていた。

 「おっす!……俺が最後かよ」

そして其処に焔也が現れ、ダグオンの5人がここに揃う。

 <揃ったか、若き勇者達よ>

それを認識してか投影装置から映し出されるブレイブ星人の立像。

 「ブレイブ星人、管理者は一体我々に何の話があると言うのだ?」

 戒将が皆を代表しブレイブ星人に要件を訊ねる。

 <それは本人が語る事だ>

 ≪呼ばれて飛び出て「「「「「それはもういい!」」」」」え?酷くない?≫

 ブレイブ星人が正面の大型モニターに目を向ければ、途端にオーダールーム内にアルファの声が木霊す。

 アルファが何時もの登場の口上を述べようとすれば5人全員からツッコミが入り、アルファが消沈する。

 「貴様の悪巫山戯に一々付き合っていては時間が掛かる。さっさと本題に入れ」

 ≪戒将くんは堅物だなぁ。うん?何か他のみんなの視線もコワイ…分かったよぉ話すよぉ…、じゃあ話すけど、その前に皆は20年前の大災厄についてどのくらい知ってる?≫

 「20年前の大災厄?そんなん教科書に載ってる事くらいしか知らねぇよ」

 「同じく」

 「右に同じってナ」

 「僕は簡単には聞いてます」

 「……1人を除き、俺たちの知識はおおよそ一般的に知られる物でしかない」

 翼沙を除く4人は教科書や授業で習った程度の知識しか無いことを明らかにする。

 ≪それじゃ、その辺り詳しく話すよ……なるべく端的に…うん、判ってるよ。茶化すと君ら結構キツめのツッコミ入れるんだもん≫

 ((((…はやく話せよ))))

少し拗ね気味のアルファに心中で愚痴る4人、翼沙は苦笑いでそれを見ている。

 ≪えっと、始まりは今から20年前の相模湾沖で起こった米軍のノロ輸送タンカーが沈没したところからかな──≫

 そうしてアルファは語り始める。今から約20年に何が起きたのかを……。

 

 

 

 

 ──輸送タンカー沈没から起きた相模湾を中心とした大量の荒魂による被害。

 その数は観測史上類を見ないものだったと言う。

 死者1089人、行方不明者864人、負傷者15246人。

 江ノ島に現れた巨大な荒魂とそれを取り巻く大量の荒魂により尚も被害は拡がる。

 それを受けて、特別祭祀機動隊が特務隊を編成して突入する運びとなる。

 既に展開していた機動隊や刀使達は多くが負傷ないし戦える状況ではなかった為、腕利きと目される精鋭が選ばれ、彼女達の決死の突入により道を切り拓き、江ノ島中心部に取り付いた大荒魂本体を討伐せしめる事が作戦であった。

 

 選抜された刀使は8名、折神紫、伏見結月(現相楽結月)、吉野いろは(現五條いろは)、鏡島江麻(現羽島江麻)、相模雪那(現高津雪那)、新見紗南(現真庭紗南)、そして、藤原美奈都と柊篝。

 彼女達が江ノ島で死闘を繰り広げていた。が、無論、人間である以上限界は来るもの。

 特務隊の中で真っ先に脱落したのは雪那。そして現状の物量から不利と判断した紫は結月に彼女を含む江麻、いろは、紗南、美奈都の五名で雪那を連れ撤退する様に命令する。

 これに対し美奈都が如何なる手段にて大荒魂を祓うのかと問うと篝が柊の家系に伝わる秘術を以て討伐せしめるとの事であり、此処から先は紫と篝のみで向かうと言う。

 雪那は紫に見殺しにして置いていく事を望んでいたが紫は犠牲がこれ以上出る事を許さず、結月がそれに従い撤退を指揮する。

 

 たった2人で大荒魂本体がある中心部へ向かう紫と篝、しかしそこへ美奈都が命令を無視し戻って来る。

 斯くして紆余曲折の末、3人で大荒魂の元へ向かう紫達。

 折神朱音は負傷者が運び込まれるテントの前で、姉率いる特務隊の無事を祈っていた。

 そして帰還せしめたのは命令を無視し紫、篝へと加勢に行った美奈都を欠いた5人、雪那は言わずもがな、他の4人も少なからず疲労や汚れが見てとれる。

 彼女達5人が帰還してからしかる後に紫が帰還を果たす。

 空は禍々しく染まり、数多くの犠牲を出した作戦。

結果、大荒魂は紫の手により討ち果たされたと後世に伝わっている。

 朱音が語る話では朱音と先に撤退した5人が出迎える中で紫は俯きながらただ一人彼女達がいるテントに帰還し、美奈都、篝は担架に寝かされ治療処置を受けていたと言う。

 

 

 

 ━━岡山県・某山間の山村、舞草本拠地

 舞草の本拠地がある里のとある屋敷で可奈美達6人を前に、折神朱音が語る。

 「相模湾大災厄。あれから20年の時が過ぎようとしています」

 「あっという間だったな」

そこへ新たに現れた女性、長船学長"真庭紗南"。

 彼女もまた昔を懐かしむ様に可奈美と姫和を見ながら語る。

 「あの日の事はまるで昨日の様に思い出せる。私が今、こうしてココに居られるのはお前達の母親のお陰だ」

 紗南の()()()と言う語りに姫和は疑問を懐き訝しむ。

 そんな姫和の疑問に答える様に朱音が紗南の言葉を引き継ぎ語る。

 大災厄の日に奥津宮に大荒魂を鎮魂に向かった紫、篝、美奈都の3人……篝は当然の事ながら姫和の母親である。そして美奈都、彼女こそは可奈美の実母であると言うのだ。

 この事実に姫和を含む5人は大きく驚き、姫和は可奈美に何故言わなかったのかと詰め寄る。

 対して可奈美は聞かれなかったからと、あっけらかんと言ってのける。

 薫が、母親の事なら刀使であった過去を聞かなかったのかと問えば、そういった話は一切しなかったと返す可奈美。要するに単に知らなかっただけなのだ。

 美奈都の話を聞かされ、何処か嬉しそうな可奈美。昔を懐かしむ顔になる。

 可奈美にとって美奈都は母であると同時に一番最初の刀の師、そこへ紗南が更に当時の美奈都を語る。

 曰く、当時、あの紫を抑え飛び抜けた強さを誇った刀使であったと。

 朱音が言う、大災厄から本当に皆を救った英雄は美奈都と篝だと。紗南が悔恨を含ませ溢す、我々はそんな英雄2人に何もしてやれなかったと。

 「そして改めてみなさんに言っておかねばならない事があります。あの時の…20年前の荒魂討伐はまだ終わっていません」

 朱音が若き刀使達を見据え語る。

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 ≪──と言った具合に実際には紫ちゃんは大荒魂を祓ってないんだよね≫

 アルファが20年前の事件を簡単に語り終えた。

 「………そっか、衛藤のお袋さんが…」

 「……十条の母親にそんな力があるとはな」

焔也と龍悟が其々の後輩に想いを馳せる。

 「そして政府と刀剣類管理局は江ノ島の巨大荒魂が消えた時点で収束し大荒魂タギツヒメの存在を隠蔽したのか……」

 「はー……ドラマとかである隠蔽体質の政府陰謀説ってヤツか」

 「ですが当時の状況や被害を鑑みれば、早々に宣言したくなるのも理解出来ます」

 ライナーチーム3人が率直に意見を語り合う。

 「高い知能を保有した荒魂の存在の秘匿を主導したのが、その折神紫でなければ、素直に納得も出来たんだがな」

 戒将がアルファより語られた真実に眉間を押さえながら溜め息をつく。

 「……大災厄から2年の後に折神紫は当主となった、つまりそれは……」

 「その時点でご当主……折神紫はタギツヒメに乗っ取られていた。そう考えるべきでしょう」 

 「ンジャ、あの若いまんまの姿は荒魂のせいってカ?ちょっとヘコむわぁ」

 申一郎が明かされた事実に凹みガックリと項垂れる。

 「んじゃあうちの学長含め、伍箇伝学長はこの事知ってるって事だよな。うちの羽島学長はそういうの許さない人だと思うだけどなぁ」

 ≪江麻ちゃんはねー、舞草に協力してるよ≫

焔也が何となしに口にした言葉にアルファがこれまたさらりと事実を口にする。

 「はぁ?!」

 ≪多分だけどいろはちゃんも何となく察してるよ≫

 「……そうか」

 龍悟も判りにくいが顔が若干引き吊っている。

 「……………相楽学長は、どうなんだ?」

 ≪それは……訊くまでも無いよね。だって君はそれを一番よく知ってるでしょ?≫

 「アン?相楽ガクチョがどうかしたのカヨ?」

 「……相楽学長、確かにあの人はどちら側なのか…」

戒将がアルファ訊ねる結月はどちら側の人間なのかと、アルファの答えは答えになっていないものだったが、それを聞かずとも既に戒将の中で答えは出ていた。

 申一郎はどうにも察しきれないのか疑問を浮かべているが、翼沙は戒将の反応でおおよそ予想が着いている様だ、ただ、動きが無いことで断定するまでには至らない。

 

 ≪結局のところ、美奈都ちゃんと篝ちゃんは一命は取り留めた。そうでなきゃ可奈美ちゃんもひよよんも産まれないからね≫

 (ひよよん?) (……ツッコむな) (盆地チャンかぁ…) (どういうセンスなんでしょう?) (……さてな…)

 約1名平野どころか更に姫和のある一部を削っているが気にしてはいけない。

 本人が聞いたらブチギレ案件だが、その姫和は此処には居ないので問題はないのだ。

 

 「それにしても柊…十条篝さんが隠世の深淵がある層にまで達する事の出来る迅移の使い手とは…」

 「……娘もその血を正しく引いている。と言うことか…」

 「しっかし、刀使ってのはそんな事も出来ンだな、死んじまうケド」

 「深く潜れば潜る程、迅移は加速する。そうなれば我々が感じている時間層とは別の流れに完全に入り込む。一瞬が永遠となる。そうなってしまえば…」

 「帰る事は事実上不可能…それ故に命を賭ける技ですか」

 「んで、そんな決死の技を衛藤のお袋さんが救った事で寿命が削れるだけで済んだ。結局、十条はあんな事件起こした訳だが……なぁ、許せるかそれ」

 焔也がポツリと声を溢す。

 「許せるか…とは?どういう意図か訊いても?」

翼沙が焔也の発言の意図を問う。

 「あいつらの母ちゃん達が頑張ったんだ、命を賭けて…。それなのに十条はあの御前試合、あいつ、暗殺が成功しても命棄てる気だったんだぜ。ざけんなよ!」

 「……それ程、母親の死に目が強かったのだろう…」

 焔也が姫和の行動の是非に怒りを覚える。しかし龍悟は彼女の母親の後悔がそれだけ彼女に影響を与えたのだろうと諭すが焔也は声を荒げる。

 「それは死んで良い理由にはなんねえよっ!!

その声に4人が焔也を見る。

 「衛藤が巻き込まれたのは…あいつが自分で首突っ込んだ結果だ。それは良い……いやほんとは良くねぇけど。でも十条、あいつはいっぺん説教してやる!復讐するなとは言わねぇ、けど、どんな理由であれハナから死ぬつもりでやるな!ってな!」

 「ふん。暑苦しいな、が、嫌いでは無い。そうだな、彼女はもう少し他人を頼る事を覚えるべきだろう」

 「ま、内容が内容だ、早々ヒトサマはアテに出来ねぇのは判るけどよ。せめてもうちょい考えて動くように注意してやるカネ」

 「あはは…でも彼女はもう独りきりじゃありませんよ?」

 「……だがアレは存外直情的な人間だ、普通に言っても聞かないだろう…案外、鳳の言う説教も悪くは無いかも知れないぞ……」

 5人の若者はそれぞれに姫和を想う、そして誓う彼女を……彼女達を死なせはしないと──

 ≪うんうん。若いねー、青いねー、熱いねー!青春だねー!プリズムだね!!≫

アルファはそんな彼等を微笑ましく(若干鬱陶しいが)見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━舞草・隠れ里

 大災厄の話を聞き終え、解散する運びとなった6人。

就寝の為、宿となる屋敷に向かう途中、可奈美と姫和は朱音に呼び止められる。

 「姫和さん、可奈美さん。私はこう思うのです。20年前、もし紫の作戦が成功していたら…美奈都さんと篝さんが戻って来なかったら、あなた達はここにいませんでした」

 朱音が二羽の雛鳥に真摯に思いを伝える。

 「今あなた達がいること、私はそれがあの二人の本当の願いだったんじゃないかと」

 そうして姫和を安心させる様に優しく諭す!

 「紫の事は私とここにいる舞草が何とかします。だから…」

 姫和はそんな朱音を強い意思の瞳で見つめる。恐らく朱音が言おうとした言葉は『無理をしないでください

』或いは『無茶をしないでください』どちらにせよ姫和を気遣う言葉であった事に違いない。

 

 そうして2人の御刀は其々が2人の母が振るっていたモノだと伝える。

 そしてそれが今、こうして各々の娘に引き継がれた事に運命的なモノを感じる朱音、ふと2人の持つ御刀に違和感を覚える。

 (この御刀達…何か…)

 「いえ、気のせいですね」

しかし、感じた違和感は一瞬。朱音は気のせいと断じ彼女達を見送った。

 薫とエレン、舞衣と沙耶香も各々に意思を示し、決意し、喜び、憂い、思いの丈を吐露する。

 夜、6人が同じ屋根の下、布団で1列になって眠る。その様はまるで修学旅行のよう。

 「ねぇ姫和ちゃん。何だか不思議だね。こうしてみんなで一緒に寝られるなんて」

 布団を被り天井を見上げながら隣で顔を背けて寝る姫和に語り掛ける可奈美。

 姫和も寝ていなかったのか、可奈美との会話に興じる。

 「可奈美…お前も折神朱音のように後は舞草に任せろと言う気か?」

 「言わないよ」

姫和はどうやら朱音の想いに背いてでも自分で決着を着けたいようだ。

 「二人とも~うるさいデスよ~!特にひよよん」

 「黙って寝ろ。明日は頼んでもいないのに舞草の先輩が稽古を付けてくれるんだ。マジでしごかれるぞ~」

 エレンが騒がし2人を注意し、薫が眠るねねを腹に乗せながら寝相悪く愚痴る。

 舞衣も黙ってこそいるが、明日…延いてはこれからも先の事を憂う。既に沙耶香は完全に眠ったようだ。

 

 可奈美は夢を見る。何時もの夢だ。霧の深い何処かの神社の階段、そこでだけ会える歳上の少女。

 今なら解る、彼女は若かりし頃の母だ。

 「そっか、紗南に聞いたんだ」

 「やっぱりお母さんだったんだね」

可奈美が少女─若き美奈都─を母と呼ぶと美奈都はどうにも実感が無いように独り語ちる。

 夢の中にいる美奈都は飽くまでも17歳のまま時間が止まっている。

 そこで可奈美が以前話した友達が篝の娘であった事を語れば、美奈都は篝が結婚出来た事に大いに驚く、そして馴初め話を詳しく聞き出す様に懇願するも可奈美が目を醒ませば此処で起きた事を忘れてしまうと言うのだ。

 では、今まで教えた事も忘れたのかと美奈都が問えば、技や動きは覚えていると言う。

 「そっか…良かった良かった。じゃあ今日もとっておきの技を教えてあげる」

 「うん!お願いしますお母さん!」

 「やめてよ~。まだそんな歳じゃないもん」

 「じゃ美奈都」

 「師匠!」

 「美奈都師匠」

そんな親子の様で友達の様なやり取りを交わして彼女達は楽しげに刃を合わせるのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 藤巻みなきだゾ!

例の反逆者達は何処かで何か企んでるみたいだ!うぅ~!あの時邪魔されなければ~!

 そしてアンノウン達の方も何かおかしな人と揉めてるみたいダ。

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 見習い隊員?田中撃鉄!

 アイツら一体何者なんだ?

 




 はい。前書きの続きですが、ロザミア様の作品、冥次元ゲイムネプテューヌとコラボする次第となりました。
 まだ先の話では御座いますが、宜しければ楽しんで頂けると幸いで御座います。
 それまでに取り敢えず5人全員融合合体可能までシナリオ進めたいなぁ。
 冥次元ゲイムネプテューヌ、面白いです。


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第三十九話 見習い隊員?田中撃鉄!

 こんばんはダグライダーです。
 宇宙人の名前募集してみようかなぁ、そう考える今日この頃です。
 名前だけじゃなくて能力とかも一緒だとなお嬉しいけど、そもそもノッてくれるか不安なんで、まぁ、もしよかったら記憶の片隅にでも留め置いて下さい。
 それまでは私も無い智恵…失礼、無い知恵を絞ってがんばります!V( *´∀`)V



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 過去の回想話をすると言ったね?でも特務隊の台詞を入れるとは言ってない!ババン!

 さぁて、取り敢えずは撃鉄くんの身体測定しなきゃ、彼の体格に合わせてダグテクターを調整しなきゃならないし。

 


 

 霧の濃い夢の中で剣戟が響く。

 それは衛藤可奈美と藤原美奈都の親子の時間。

 そんな中、刃を振るのを一旦止め美奈都は少し照れ臭そうに可奈美に訊く。

 「…あのさ、お母さんだった頃の私ってどんなだった?」

 態度としては悪魔で一応、参考として聞いておこうと言わんばかりの声で指で鼻の頭を掻きながら可奈美に訊ねる。

 「あ…全然変わらないよ!そのまま!」

可奈美が嬉しそうに美奈都に語る。そのままと言うのはつまり、こうして夢で交わす事と同じという事だ。

 一般的な親子像からはかけ離れているかもしれないが、可奈美にとってはこの夢での会瀬含め喜ばしき事なのだろう。

 「やっぱりね!よし来なさい!」

どうやら美奈都としても未来の己は自分らしいやり方を貫いていたらしく、安心したのか改めて可奈美に打ってくる様に右手から左手に変え千鳥を構える。

 「あ…その持ち変えるやつ、お母さんもやってた。クセ?何か意味あるの?」

 美奈都がやった一連の動作に生前の母と重なる事もあり訊ねる可奈美、しかし美奈都は何とも歯切れ悪く述べる。

 「ん?ああこれ?まぁ場合によってはね。でも真似しない方が良いよ」

 恐らくは可奈美がまだ成長途中の未発達な身体故の忠告なのだろう、しかし可奈美は意外そうな顔こそすれ特に返事は返さなかった。

 

 

 

 

 

 早朝、朝露煌めく舞草の神社本殿前にて可奈美、姫和、舞衣、沙耶香、エレン、薫の6人が長船の刀使達と稽古を交わしていた。

 個々の実力から集団戦の実力までを見定める為のモノだ。

「荒魂との戦いはチームプレイだ!攻撃手、遊撃手、指揮手の動きをよく見ろ」

 指導する長船側の刀使の1人が全体に言い聞かせる様に声を張る。

 沙耶香や姫和は相手となる刀使と互角に渡り合っている。が、やはり飛び抜けているのは可奈美だろうか……長船側の刀使も相応の実力者であるにも関わらず、全て綺麗にかわし相手の動きを"視"ている。

「それまで!」

 と、そこで終了の合図が挙がり、皆、臨戦態勢を解く。

 「無念…」

薫がやや悔しそうに溢す。戦績は個々では勝ち星が多いが集団となると敗けが込むと言った所か。

 舞衣は石畳にペタリと座り込んでいる。

 「一人一人はまずまずだが、集団はダメダメだな」

稽古を付ける長船側の刀使のリーダー各、"米村孝子"がそう総括すると舞衣と刃を交えていた刀使"小川聡美"が彼女に手を差し伸べながら批評を述べる。

 「指揮する貴女がオドオドしてたらチームは機能しないわ。折角明眼が使えるんだから自信を持って」

 「はい…」

 聡美が言う、舞衣が持つ『明眼』とは刀使が持つ特異な才である。明眼を持つものは視覚を変質させる事により、肉眼で望遠、暗視、熱探知等が出来るのだ。

 もう1つ『透覚』という知覚能力もあるが割愛させてもらう。

 兎も角く、明眼という視覚に優れた才を持つ舞衣は指揮官として不足無い才覚の持ち主である。

 それから鍛練は夕暮れ迄続いた、薫などは早々に疲れはて縁側に大の字に寝転がる。

 可奈美達は休憩を採りながら長船の刀使達の鍛練の様子を見つめる。

 そこへ現れるリチャード・フリードマン。

S装備を見ながら嘗ての大災厄の際、ああいった装備が在れば、2人の母親の様に亡くなる刀使は居なかったのではないかと、彼は語る、写シや迅移が在れど刀使は只の少女に過ぎないと。

 そして隠世からの恩恵があれば刀使達を救うことのみならず、その恩恵で世界が一変するのだと……それ故、アメリカの様に他人の庭に押し入ってでもその技術に肖りたい存在は多いのだと、彼は遠くを見るように語る。

 だが折神紫はそれを、何故こうも容易く公開するのかと研究の過程で考える様になった彼は、こう結論付けた。

 効率的にノロを回収出来る様なシステムを造り上げたのは彼女──紫の中のタギツヒメにとって茶を沸かす程度には片手間な事でしかないのだと。

 舞草が相手取ろうとする者は最早普通の荒魂などでは無く、神の様な存在なんじゃないかと。

 

 フリードマンの語るそれは間違いではないのだろう。荒魂の名の由来は荒ぶる神から来ているのだから。

 

 

 里の入口近くに停車する車の前で、真庭紗南と折神朱音が会話を交わす。

 「それでは長船での解析が終わり次第、報告に向かいます」

 どうやらエレンが夜見から奪ったアンプルを学園の研究機関に移送するようだ。

 だが彼女達は気付かなかった、車に積まれたアンプルの中のノロが蠢き、瞳を開いた事を………。

 

 

 

 「見つけたぞ、朱音…!」

鎌倉の本部、局長の執務室で折神紫が妖しく嗤う。

 それは秘匿されていた舞草の場所が暴かれたという事。折神朱音の存在が紫に明確となった事を意味する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 「済まない。聞き間違いか?今、何と言った?」

 ≪えー、もう、ちゃんと聞いてなかったのかい?君達がこの間連れてきた田中撃鉄くんだけどね、協力者になって貰う事にしたから≫

 昨夜の大災厄の話から1日と経たず、学校終わりに再び呼び出されたダグオンの若者達はアルファより耳を疑う内容を告げられた。

 「マジかぁ、あの筋肉が服着て歩いてるヤローを協力者とか正気の沙汰かよ…信じらンネ」

 「一体全体、どういう理屈でその解答に行き着いたのか、実体があればその頭の中を調べてみたいですね」

 ≪あれ!?翼沙くん目茶苦茶怒ってる?!≫

 珍しく、翼沙がとてもいい笑顔を浮かべながら毒づく。普段温厚な彼がここまでになるのは珍しい。

 「怒るだなんてとんでもない。ただ、僕達に何一つ相談も無く、勝手に話を進めているのはどうかと思っただけですよ?」

 ≪あ、やめて笑顔でどす黒いオーラ出さないで!ごめん!マジごめん!≫

 「あはは!やだなぁ、オーラなんて非科学的なモノ出せるわけないですよ」

 アルファの謝罪に終始ニコニコした笑顔で圧をかける翼沙であった。

 

 「ゴホン!…渡邊、そこまでにしておけ。話が一向に進まない」

 「……はい」

戒将が間に入り、翼沙を嗜めて話の続きをアルファに促す。

 「貴様が突飛な事を言うのには不本意だが慣れた。が、奴を此方側に引き入れる理由が解せん。そこを説明して貰うぞ」

 ≪それは……≫

撃鉄を引き入れる理由の説明を求む戒将、口にはしないが他の4人も同様の気持ちである。

 5人の視線の圧に、アルファはさてどう説明したものかと言葉に詰まる。何せ理由は至極単純、名前にゲキが入ってる上に、今いる5人に負けず劣らずの身体能力の持ち主で、他に候補を探すのが面倒くさいから、撃鉄を6人目に決めたと言うのが本音であるが、そんな事を言おうものなら顰蹙を買う恐れがあるので中々うまく言い出せない。

 ≪あー、ほら、撃鉄くんスゴいパワーだし、ヘタに記憶消してもまたどっかで関わってきそうだし……えぇっと……調査隊とも顔見知りだし…だから…その…口裏合わせとかやってくれそうじゃない?≫

 最後の理由が苦しいが何とか答えを絞り出したアルファ、撃鉄のパワー云々は本音なので強ちでっち上げとは言いずらいちゃんとした理由になったんじゃないかと、心の中でホッと息を吐く。

 「な~んか歯切れ悪いナァ、エェ?」

 「確かにパワーはすげえけど、ぶっちゃけ演技力とかは期待出来ねーよ」

 「……正直、記憶の有無に関係なく首を突っ込んで来る類いの人種だろう…アレは…」

 しかし、ダグオンの若者達からの反応は芳しく無い。

 ≪もぉぉおおお!ぼくが協力者にするったらするんだい!!なんと言われても意見は変えないよ!!≫

 只でさえ子供染みた性格のアルファ、皆の反応が自分の望むモノでなかった為、癇癪を起こし、発言が更に幼稚になる。

 「ふむん。この際、あの男を仲間に迎え入れる事には目を瞑ろう。それで、当の本人の意思はどうなのだ?」

 見かねた戒将が再び話の音頭を取る。撃鉄自身の意思はどうなのかとアルファに問うて、彼ないしは彼女の機嫌を諌める。

 ≪むぅ?……それは問題ナッシング!本人は割と乗り気だよ!≫

 「あー……マジでか…」 「またむさ苦しくなるのカ…」

 「まだ納得したとは言い切れませんが……決まった以上は仕方ありません。その撃鉄氏には強く言い含めましょう」

 「……決まり事には異は唱えん、他に話が無いようなら俺はこれで失礼する…」

 焔也と申一郎がげんなりとした顔になり、翼沙はまだアルファの強硬に承服しかねてか眼鏡がキラリと光る。

 龍悟は話が無いのならと早々に帰宅の準備を取る。

 ≪あぁ?!待って待って!例の剣の事だけど、調査隊が東京の赤羽に向かったんだよね、まぁ、道中荒魂に遭遇してまだ目的地には着いて無いみたいだけど≫

 と言って5人を引き止める。

 「赤羽かぁ、赤羽刀に縁があるちゃある所だな…」

 「ふむ、その剣だが我々は未だ仔細を知らない。良い機会だ、どんな武器かご教授願いたい」

 焔也が赤羽の地へ染々思いを馳せているところ、戒将が以前から気になっていたアルファの言う『剣』の事を詳しく知ろうと訊ねる。

 ≪あ!じゃあちょうど良いから撃鉄くんにも一緒に聞いて貰おうか!≫

 「一理あるな、役に立つか否かは置いておいても、ある程度情報は共有しておくべきだろう」

 アルファの提案に戒将が同意を示せば、他4人も異論は無い。

 暫しの後、オーダールームに新たな人間が入室する。

 「おぉ!ここがダグオンの基地、その中心部か!」

 ≪やぁ、良く来たね撃鉄くん。歓迎するよ≫

撃鉄が意気揚々とお上りさんの様な事を言って辺りを見る。

 「マジで話通ってんのか…」

焔也はそれを見て更にげんなりする。

 「おおっ!?鳳焔也ぁア!ワシはお主の事を見直したぞぉ!!」

 (煩い…) (静かに喋れ) (これは前途多難ですかね…) (…度し難い…)

 撃鉄が大楊に声を挙げ焔也の背中をバシバシと叩く、他4人がそれを煩わしそうに横目に見ている。

 「話は聞いておる、今日からはワシも仲間じゃ!」

 「正直勘弁してほしいんだが…」

 ≪じゃあ皆揃ったし、ボクが落とした剣。剣星人型、人造武装勇者"剣聖ライアン"について説明するよ≫

 6人の若者がオーダールームに揃い、遂に語られるダグオンの新たな戦力、ライアン誕生の経緯、そしてアルファの過失。

 そもそもの起こりは、ダグオンを任命して間もない頃、ダグビークルの製作も一段落したアルファは唐突に思い至った。"そうだ!必殺武器作らなきゃ"と…。

 

 現状、どういう理由かエデンの宇宙人達は即座に大挙して来ない、どころか、最初に現れたトラルク円盤人を除けば精々厄介な相手はまだ5人の心がバラバラだった時に出現したギロザバス星人だけ、後は散発的に現れては全てダグオン達により惨滅せしめている。

 であれば好機ではないか!?彼等はまだ融合合体が出来るかどうかと言う微妙なライン、万が一を考えても強力な武器は在った方がいい。

 

 それからのアルファの行動は早かった。

ブレイブ星人の居た世界の地球で活動していたダグオン達の戦歴を参照し、剣星人ライアンの存在を知る。

 その時、もう1つ別の存在も認知したが、優先したのはライアンであった。

 彼の…延いては剣星人のパーソナルデータを元に彼そっくりの外格を創り上げ(その際、協力者である他管理者から色々文句など言われたが)、各ダグオン、各形態に対応出来る様、調整を施す。

 しかし、只の武器では意味がない。それでは不足の事態に対応出来ない。ならばオリジナル同様に人格を持たせよう。

 

 そうして出来たモノが人造武装勇者の名を冠したライアンである。

 剣聖という称号も彼が剣星人では無く、創られた存在であるからと言うモノ。

 さぁこれで取り敢えずの準備は出来た、後は人格の基礎となる、他世界の勇者で言う所の超AIだけだ。

 しかし、1から構築していては"もしもの時"に間に合わ無い。

 そして思い付く、『そうだ!!この世界の時間軸の何処かから何か良さそうな魂を幾つか掛け合わせて代わりにしよう!!』と…、そうして過去の時代を覗き込んだその僅かな瞬間、ポロッと落としたのである。

 

 

 ≪とまぁ、そういう訳なんだよ!?だからほらボクの過失ではあるけれど、一概にボクだけが悪いワケじゃないんだからいいよね?≫

 「「「「「……………」」」」」

 ≪ん?あれ?もしもーし?≫

全てを話終え、自分にばかり非が有るのでは無いと言い張るアルファ、これに5人は黙りこむ。そして──

 「アホか!?なお悪いわ!!」

 「一概どころか全て貴様の非しかないだろう!」

 「……いやマジか?!本当にマジか!オマエバカだろ?いやバカだな!」

 「色々、僕達の事を思ってくれていた事には感謝しましょう。しかし、それはそれとして、やはり一度貴方の頭を診た方がいいですね」

 「……成る程な、それで赤羽刀と似た状況などとほざいた訳だ……」

 5人が捲し立てる様にアルファに対し率直な意見を述べる。結果はご覧の通りだ。

 

 因みに、撃鉄は話の内容を何とか頭に理解させようと捻っている。

 

 ≪ぐすん…≫

 「んで、どうするよ?」

 「手掛かりがはっきりとしているならば、それに従うより他あるまい」

 「ま、理由はアレだけど、貰えるモンは貰っとこうゼ」

 「うーん、不安要素が無い訳ではありませんが、刀剣類管理局に回収されるのは避けたいですし、僕としても賛成です」

 「…道中、邪魔が入らないとも限らないが……確かに俺達全員で当たれと言うのも分かる…」

 アルファの啜り泣きを尻目に5人が結論を出す。

 「よう判らんが、つまりは智恵さん達の行くところにワシらが探す剣があるんじゃな?なら迷う事無かろう!!」

 撃鉄も彼なりに事情を呑み込んだようだ。ちゃっかり自分もダグオンメンバーに含めているが。

 

 「方針は決まった。では然る後、準備が整い次第、目的地に向かうぞ。今の内に必要な物があれば用意しておけ」

 決まった方針に戒将が指示を出し、解散となった。

 

 撃鉄含め、若者達が次々とオーダールームを後にする。最後に焔也が退室しようとする時、アルファから声が掛かる。

 

 ≪焔也くん!≫

 「あん?何だよ?」

 ≪キミ、あの時言ったね、"復讐するなとは言わない"って、意外だったなあ、正義の味方目指してるキミが復讐って行為を肯定するなんて。まぁ、ひよよんの場合は使命感もある…て言うかそっちが大きいだろうけど≫

 アルファのふとした疑問、振られた焔也は一瞬、呆けた顔になるも、何を下らない事を聞くんだと言う顔になる。

 「そりゃ、俺だって復讐自体は悪い事だって解ってるけどよ、それを燻らせてる奴に言っても聞く耳を持つかは別だろ?言って止まんならそれに越したことはねぇけど、そうじゃなけりゃ意味なんて無い。だからまぁ、そいつが本当に復讐するてんなら俺は体張って止める。それだけだ」

 ≪キミ、それは大分屁理屈じゃない?だって復讐は否定しないけど、その行為は止めるって…矛盾もいいとこだよ≫

 「まぁな、今回は折神紫が大荒魂ってんだから止める事はしねぇけど、もし復讐する相手も人間だったら止めなきゃダメだろ?どんな理由でも人殺しは悪だ。殺す方も殺される方にとっても、どっちも未来が失くなる。殺す方はやり直す機会を貰えっかもしれない。けど、悪名は付いて回る、だから事を起こす前に止められたら止める。殺される方も…相応の理由があるかも知れねぇ、けどそれはきちんと法が裁くべき事だ」

 アルファが言う、焔也のソレは矛盾してる屁理屈だと、しかし焔也は言う、理由があっても人は簡単に死んで良いものでは無いと。

 ≪でも法で裁けない人だっているよ?≫

 「あ、あー……それは考えて無かった。まぁでも、それはそういう事得意な奴が何とかすんだろ?俺は俺に出来る事を精一杯やるだけだ。だから宇宙人の犯罪者も倒す以外の方法があればそれに越したことは無いだろうけど、倒すしかないんだろ?」

 ≪……ふふっ、アハハハハハハハハ!そうかキミはそういうタイプかぁ。流石、毎朝ヒーロー番組視てたり、ダグオンになって以降決めポーズ考えるだけの事はあるね♪≫

 焔也の理屈を割り切った屁理屈にアルファは声を挙げて笑う。

 「なぁっ?!てめえ何でそれ知ってる!?」

対する焔也はアルファから日課やポーズの事をバラされて途端に狼狽えた。

 

 

 ≪ヒヒッ…ゴメンゴメン、うん、でも分かったありがとう。それじゃ行って良いよ≫

 「覚えてろ!」

 ≪あ、そうだ!撃鉄くんに伝えといて、キミはまだ見習い期間の見習い隊員だから渡したデバイスには通信と転送機能しか無いって≫

 「ああ?おう。伝えとく」

そうして改めて退室する焔也、後には無人となったオーダールームのみとなった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ええい、あらすじを盗られた!

 む?コホン、失礼。

 我はシータである。さて次回だが≪うふふ( *´艸`)我だってチョーウケるシーちゃん普段一人称私じゃん≫

 ゼータ貴様ぁっ!!

 

──暫しお待ち下さい──

 

 ええい?!尺がもう無い!次回"刀使ノ指令ダグオン"

 追跡!赤羽刀の真実!に次回も"トライダグオン"!

 

 毎回毎回、覚えてろ貴様らぁぁあああ!!

 




 さあていよいよ、いよいよ…ライアン登場まで秒読み?秒読みとなりました。
 撃鉄も一応、ダグオンにメンバー入りです。
 スルガ辺りの話の後にまたマテリアル上げる予定です。
 ではまた次回


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第四十話 追跡!赤羽刀の真実!


 こんばんはダグライダーです。
 今回長々とした前振りは無しです。
 また執筆に戻るので、それでは


 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 怒られた……。

 ≫儂イプシロン。ハハッ!ザマァ!

 むきぃー!!

 >プークスクス!( *´艸`)ウケるぅ~!!

 なんだい!なんだい!二人してボクを笑って!酷いや!!

 

 》あらすじしていないが止めずとも良いのか?

 ──私は何も見ていない、何も聞こえない…。

 


 

 ━━東京・赤羽市近辺、人気の無い何処か

 そこに広がる光景はオゾマシイモノ。

 幾重幾人の死体が転がり夥しい血が流れている。

 中心に居るのは2人の影と1つの謎の液状の塊。

 「ぐぅぅぅう!おのれぇ!ダグオンめぇ、次に会いまみえた時こそ『私』の真の力を…」

 唸り声を挙げ、死体から皮や肉を剥ぎ取り己の傷口に充てるジェゲンガ星人フィメル。

 「肉体的耐久性に秀でたわたしでも奴等に負けた、それも奴等の内の一人にだと……」

 フィメルの敗北が信じられないのかメイルは戦慄する。そんな2人の様子を興味無さげに眺める液状の塊──俗に言うスライムが声を発した。

 「キズはイえましたか?

 その声はまるで印刷機から出る紙の様に無機質な音、生き物の声と言うよりは、電子音に近い。

 「完全とは言えないけれど…大分マシになったわ。」

 「それはチョウジョウ、これでやっとホンダイにハイれます

 「本題?それが貴様が私達に接触した理由か、態々あの木偶の坊の船にくっ付いてまでご苦労な事だな」

 メイルが馬鹿にしたようにスライムを見下しながら言う。それに対してスライムは気にも止めない。

 それも当然だろう、このスライムはとある宇宙人の分身、本体は未だエデンにあるのだから。

 「ワタシジシンがチキュウにオりるワケではありませんので、それよりもジュウヨウなのはアナタタチにアタえるシゴトです

 本体からの声を伝える為、分体は電子音染みた声を発し続ける。

 「仕事だと?一体何だと言うのだ」

 「気乗りしないわ、わたしは一刻も早くこの傷の借りをかえしたいのだから」

 メイルがスライムの言う仕事とやらに疑問を挟むが、フィメルはターボカイにやられた傷がまだ痛むのかそちらにご執心だ。

 「ごシンパイなく、こちらのヨソウがタダしければあのレンチュウもアラワれますので

 「ふぅん…そこまで言うなら聞こうじゃない?」

 スライムの言った言葉に不審を懐きながらも耳を傾けるジェゲンガ星人、するとスライムの声が一瞬ノイズが走ったかと思うと、全く別人のモノへと変わる。

 「やぁ、ジェゲンガ星人。元気かな?」

その声が聴こえた瞬間、ジェゲンガ星人の背筋に怖気が走る。

 「な、何故貴さ……いえ、貴方様が?」

 メイルが慌てて畏まる、フィメルもそれに倣うように姿勢を正す。

 声の主はエデン監獄の盟主たる存在、鬼の異形を象る異星人。

 内心常々馬鹿にしていたり、下克上を狙ってはいるものの、今の自分達では足元にすら及ばない相手。

 「そんなに畏まらなくて良い。我々に上下関係はあって無いような物だ」

 鬼の言葉にジェゲンガ星人はそんな訳あるかと返したくなる思いを必死に押し殺す。

 エデンに於いて監獄主達以外で彼に対等な口を利けるのはエデンの操舵を担っているガレプテン星人か妖精の付人をしている異星人、そして特別棟最奥の囚人くらいなものだ。

 円卓での会議の際なら未だしも、個々人で会話を交わすとなれば、鬼相手に粗相すればただでは済まない。

 「……それで、仕事と言うのはどの様な?」

恐る恐ると言った形で訊ねるメイルに鬼は楽しそうに言う。

 「その星に荒魂という存在が居るだろう?その中でアカバネトウなるモノを内包した個体を幾つか此方に送って欲しい。ジェム星人の分体が居るんだ難しい仕事ではないだろう?」

 鬼が求めたモノ、それは赤羽刀そしてそれを内包するであろう荒魂であった。

 「何故その様なモノを?」

 「聞くところに由れば、アラダマなる生物は特殊な金属から出た絞り滓に不純物が混ざって生まれたとか言うそうじゃないか?そしてアカバネトウはその金属が錆びたもの……彼女が興味を示してね。それに、個人的にも興味がある」

 成る程、鬼の言う事も一理ある。と、ジェゲンガ星人は思う。

 辺境とは思えぬ程、類を見ない生態、撃退、討伐の手段も既に自分達異星人やダグオンは兎も角、この星では"御刀"なる武器でしか倒せない、ジェゲンガ星人としても前々から興味はあった、それにこれ以上ヤツとは話したくは無い、荒魂数匹送ればこれと言った処罰が無いのだから乗らない手はない。

 「その仕事承りましょう」

 「くれぐれも頼むよ」

その言葉を最後にジェム星人の分体にノイズが走り、再びジェム星人からの声に切り替わった。

 「ではメッセージをツタえましたのでワタシはホンライのニンムにモドります。ホカクしたアラダマはブンレツしたワタシにイれるように。………サイゴに1つ、くれぐれもアソぶコトにムチュウにならぬヨウに

 そう言い残してジェム星人の分体は、更に己の体を分裂させ、ジェゲンガ星人の元に残すと、意識の憑依している分体は下水道へと消えっていった。

 

 「ふん!言われずとも任された以上、仕事はこなすとも」

 メイルがジェム星人が去ったのを見計らって悪態を溢す。

 「でもどうするのワタシ?赤羽刀とやらが入った荒魂なんて早々簡単には見付からないわよ?」

 フィメルがメイルにどう探すのかと問う、するとメイルはニヤリと笑う。

 「心配は無用だよわたし。私達が判らなくとも、奴等なら知っているさ」

 そう言って彼が指を指す。その方向へフィメルが視線を向ければ赤羽市のとある場所に向かう調査隊一行の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凶悪な異星人に目を付けられたとも知らず、南无薬師景光の手掛かり、延いては赤羽刀をばら蒔いている人物の手掛かりを求め、東京は赤羽下りまで来た調査隊の面々。

 道中、何度か荒魂が出現し足止めを食らった事もあり、途中、適当に宿を採り一晩を明かす。

 だが赤羽市に入って以降はそういったことも無い。そうして改めて目的となる、赤羽刀に関する手掛かりの情報を持つ者との合流場所へと向かっているのだった。

 

 「瀬戸内智恵さん、感謝します。長船からの情報がなければ、我々は次の行先も決まらないまま、無為に、何時までも伊豆で足踏みをするしかありませんでした」

 道中にて木寅ミルヤが隣を歩く瀬戸内智恵に礼を述べる。

 「堅苦しいわねミルヤさん、仲間でしょ?せめて私わたしたちの中だけでも、情報の共有はしないとね。」

 そんなミルヤに智恵は苦笑しながら事実としての己の意見を述べる。

 とは言え智恵としても不安が無い訳では無い。長船の情報部よりもたらされた情報、的外れと言う事は無いだろうが目的地が目的地な為、疑念はある。

 「でもちぃ姉ぇ…。ココって普通に駅前は発達してるし、すぐ向こうは高層マンションもいっぱいあるし……こんなところに赤羽刀を撒いている誰か?なんてさ、そんな重要な手掛かりを知っている人が本当に居るのかな?」

 美炎ですら都内に手掛かりがあることに疑問を抱いている始末である。

 「あ!帰りに駅ナカでケーキ買っていい?」

とは言え、直ぐに別の事に関心が逸れるのが彼女らしいところだが。

 「…美炎ちゃん、観光じゃないのよ?………でもそうよね、こう、あまりに静かだと…情報を持ってきた身としても、少しばかり不安になるわね」

 美炎を窘めながら智恵が辺りを見回しながら不安を溢す。

 目的地に近付くにつれ、やけに人の気が少なく……否、全く見られなくなっているのだ。

 「いえ、不安に思う必要は無いと思います」

そんな智恵を励ます様にミルヤが赤羽市、その来歴について説明を始める。

 

 東京都は北区、赤羽。戦後、日本が米軍占領下にあった頃、米陸軍の兵器補給廠が存在した場所。

 国外に持ち出そうとし、横浜沖に没するまで赤羽刀はこの地で保管をされていた、正に赤羽刀の由来と呼べる場所なのである。

 

 「つまり、此処は赤羽刀の故郷なのですから、むしろなんの関係もないほうが不自然でしょう」

 そう言ってミルヤは締め括ると智恵も納得したのか、今度は別の事を気にし始める。

 「そうね……そう考えると、今、わたしたちがいる遊歩道も敵のいる一本道。そう思えてくるわね」

 「それも強ち間違いではないかと、ここは件の兵器補給廠への弾薬運搬用の鉄路が走っていたそうですから」

 智恵がなんとなしに口にした言葉にミルヤが補足する様に解説を口にする。

 「あっそうか!だから遊歩道に線路っぽいタイルが埋ってるんだ!」

 「本当ですね!全然気がつきませんでした」

 「ふぅん…。だからって別にこの先に行けば荒魂をブッ倒せるって訳でもないんだろ?」

 「そりゃまぁ…情報を知ってるって人に会いに行くだけだしね」

 呼吹としては赤羽に入って以降、音沙汰が無い荒魂と戦えない為か、拗ねている様に見える。

 しかし、そんな話に引寄せられたのか遊歩道脇から物音がしたと思えば、突如現れた小型の荒魂。

 

 ──ギィィイッ!──

 

 数匹か数十匹か…いきなり現れた荒魂に一行は驚愕を露にする。

 「なんだよ!ちゃんと()()じゃねえか!」

しかしそんな中でも呼吹は通常運転、荒魂の出現に歓喜し止める間も無く突っ込んでいく。

 其所へ更に呼応する様に増えていく荒魂。

 「(ここに来てまた荒魂が……どういう事でしょうか…いや…でもこの数は………まさか!?)調査隊、聞け!これからも会いにいく人物が赤羽刀を所持しているとすれば、それを狙った荒魂に襲われている可能性がある!そうでなくとも立ち止まっていては我々も危険だ!先を急ぎ、一刻も速く件の人物に接触、保護する!」

 その指示を皮切りに各人、呼吹に続くようにして戦闘へと突入する。

 だがそれを嘲笑うかの如く荒魂はその数を増やしていく。

 ミルヤと智恵が想定していた範疇よりも多い荒魂の数、真面に相手をしていては日が暮れるどころか、情報提供者と接触すら出来ない。

 そんな中でもミルヤはこの雑多な状況に乱れず、呼吸を整え、思考をする。

 

 感覚を研ぎ澄ませ、木寅ミルヤは冷静に己が出来る事を見据える。迷いを抱えたままの瀬戸内智恵が成すべき役割を考える。七之里呼吹の突発的な行動を作戦に組み込む。六角清香の限界を考慮して陣形を建てる。安桜美炎の息遣いから効率を導く。

 

 先ず憂慮すべきは荒魂と見るや、本能に従い動く呼吸。であれば逆に彼女を中心に隊列を組み直す。

 

 次に智恵、彼女が抱える苦悩は知らないが、ミルヤ自身、彼女の存在に助けられている。彼女が居なければこの部隊は早々に瓦解していた筈だ、少なくとも戦闘そのものには支障はない。

 

 更に清香。彼女自身の実力事態は伊豆でも目にした為、申し分無い。懸念としては御刀のリーチと彼女の戦闘行動に対する恐怖心、だが身を守らせる事に徹していれば放置していても問題は無い。

 

 最後に美炎。実はミルヤとしては彼女が一番の厄介の種だ、綾小路でいくつか部隊を率いた経験のあるミルヤをもってしても彼女の実力だけは図りかねる。

 達人の域に達する腕を見せたかと思えば、素人かと思える程、気持ちが空回りする様な動きになる。

 そのムラッ気はとても集中力の持続性だけが問題とは思えない。それさえ読みきる事が出来れば対処の仕様が幾らでもあると言うのに…。

 

 とそこまで考えてミルヤはふと、今回の調査隊結成に疑問を持つ。

 部隊としては余りにクセが強い尖った面子、伍箇伝各学長の思惑もあるのだろうが、それで何故南无薬師景光を探す事になったのか、綾小路学長相楽結月は何を考えて、こんな司令を下したのか、思考が脱線しかける。

 だが今は戦闘中、余計な思考は邪魔でしか無い。

 自分はただ与えられた任務を真っ当すればいい。

 ミルヤはその意識を戦闘へと戻した。

 

 

 

 

 瀬戸内智恵は御刀を振りながらも苦悩する。

 

自身が本当はこの先に何があるのか知っているから。長船に属すると同時に舞草にも属しているから。

 反折神紫勢力として行動し、調査隊を利用し皆を騙してこの場所まで誘導した事に迷い悩む。

 

 美炎は知らない、自身が最初から舞草として美濃関に顔を出した事、最初から羽島江麻と顔見知りであった事、鎌倉での時も初めから調査隊に組み込まれる事になっていた事も、青砥館の2人も、エレンと薫も、自身と同じ舞草の構成員であるという事を…。

 秘密から嘘をつき、嘘が嘘を呼び、嘘を重ね、今、自分は此処にいる。

 

 だがそんな嘘だらけの中にも1つだけ真実があるとすれば、自分のせいで誰かをもう傷付けないという事。

 巻き込んでしまった美炎を守るという事。

 

 それが彼女自身の嘘偽り無い本心だから──

 

 「──だから絶対に…!」

 己の決意を思わず口に溢してしまう。

 「ちぃ姉?どうしたの急に?大丈夫?」

見かねた美炎から声が掛かる。顔を向ければ心配そうな美炎と清香、智恵は安心させるように笑顔を作る。

 「ううん、何でもないの。…こほん。美炎ちゃんはお姉さんを信じてれば良いのです」

 不審に思われない様、努めて何時も通りに振る舞おうとする智恵、しかし美炎はそんな智恵をおかしな事を言うかのように笑う。

 「何それ?変なちぃ姉。そんなの信じてるに決まってんじゃん!私だけじゃないよ、清香もミルヤさんも…きっと呼吹さんだって、ちぃ姉の事お姉さんだと思ってるよ!みんなちぃ姉の信じてる!」

 そう口にする美炎の顔は一辺の曇りも無く朗らかなモノだ。

 「……みんな…?」

その答えに思わずキョトンとしてしまう智恵、更に清香が美炎に同意して智恵に信頼を向ける。

 「はい!智恵さんはみんなのお姉さんですから」

 「あ……そ、そうね、ありがとう二人とも。さぁ…先を急ぎましょう!」

 二人の言葉を聞き、後ろめたい気持ちがあったが、それでもその信頼を向けられた瞬間、智恵の中の心の重石が少し…ほんの少しだけ軽くなった気がした。

 

 

 

 

 「来てる!生きてる!沸いてくる!…出てくる荒魂もどんどん強くなってきやがる!!ヤバイ!どんどん面白くなって来やがった!!」

七之里呼吹は蠢く荒魂達の中で1人密かに、そして段々と激しく興奮を顕に乱舞する。

 

 「喰らえ!倒れろ!ブッ潰れろ!!裂けろ!!はは…!ははっ!良いぜ荒魂ちゃん達!!片っ端からブッ刺してやるっ!超!アイシテルぜっっっ!!」

 歓喜し、叫び、震え、躍り、切り刻みながら呼吹は興奮に火照った顔付きで荒魂に向かって行く。

 

 学園の研究施設で言われるがまま御刀を振り荒魂を狩るよりも、ここで……調査隊と言う場所で勝手気まま、自由気ままに暴れられる事がウレシイ。

 

 ここに送り出してくれた事だけは雪那に感謝する呼吹、狂喜乱舞のまま次に目についた荒魂に飛び込んでいく、美炎の心配も何のその、今、呼吹の頭の中には荒魂しかいない。

 こんな彼女をミルヤと智恵は年長者として、彼女の『質』を理解した上でフォローに回る。

呼吹は知らない、自分の後ろを追いかける仲間がどれ程頼りになるのか、どれ程彼女を想っているのか…。

 

 

 

 

 迫り来る荒魂の群れを切り抜けながら息も荒く六角清香はこの状況に嘆く。

 赤羽刀の事を知る人物に会いに来ただけなのに、自分たちはどうして戦っているんだろうと。

 

 荒魂の大群を抜けた先、件の人物が待つであろうその場所はどこからどう見ても何年も放置されて廃れた廃墟同然の建物。

 そもそも自分たちが向かっていたのは米軍の補給廠であった所ではないのか?

 しかし実際に目にしたのは『鎌府女学院 第五生理研究所』という名の閉鎖された施設。

 ミルヤも疑問に思い、鎌府の内情を呼吹に訊ねるが、当の呼吹も鎌府はこういった施設をあちこちに所有している為、閉鎖された施設など知る由もない。

 研究所が出来るのも消えるのも、雪那の声一つ。それ故、研究員達は必死に成果を出して彼女に気に入られようとする。

 鎌府の人間にとって高津雪那とはそう言う人間なのだ。

 

 そして気づけばまたも大量の荒魂に囲まれて、しかも倒した先から増えていく。

 「きりがない!?って、いつの間にか囲まれている?!」

 美炎が荒魂の大群に包囲されて叫ぶ、逆に呼吹は自分の玩具が大量に現れウキウキ気分で向かって行く。

 「へへっ!いいじゃねぇか!好きなだけ荒魂ちゃんをブッ潰せるんだぜ!なぁ!」

 呼吹は別にしても美炎も智恵もミルヤも、迷わず戦うことを選ぶ。

 「え…?みなさん、まだ戦うんですか!?…………もう、怖いのはイヤなのに…」

 

 調査隊は進む、ミルヤが先に示した通り、待ち受ける人物を保護する為、荒魂の群れを斬りながら前へ進む。

 廃墟に近付くにつれ更に多くなる荒魂、清香は恐怖に必死に耐えながら皆に追い付こうと必死で走る。

 

 「はぁ……はぁ………みなさん待って…」

 追い付いた先で廃墟となった研究所の入口付近に立つ美炎から声を掛けられる。

 「清香大丈夫?これからみんなであの建物に入るってさ、これ以上余分な戦闘になる前に…だって」

 「あ…あの…ご、ごめんなさい。怖くて…脚が…」

 涙を目尻に溜めながら今にも崩れ落ちそうな清香、果たして建物に入れば安全かと一縷の希望を抱こうとすれば呼吹が呆れたように期待を砕く言葉を吐く。

 「ばっかじゃねぇの?もしかしたら建物中には、うじゃうじゃ荒魂がいるかもしれないんだぜ。…ああもう、くっそ楽しみだっての!!」

 清香の恐怖も何のその、呼吹にとっては中に居るであろう荒魂の存在に胸を膨らませる。

 「そんなの……、それが嫌なのに……」

清香は本当に嫌で嫌で顔を俯かせる。

 

 ──もう戦いたくなんてないのに……。

 

 ───怖いのも、痛いのも、もう嫌なのに……。

 

 ────どうして、みんな平気なんですか……。

 

 一人涙を堪えながら言葉を紡ぐ清香、しかし、そんな清香を美炎は肯定する。

 「うん、怖いよね…正直」

 「え……?」

 「平気なんかじゃないよ。痛いのはイヤだし、ケガするのも、死ぬのも怖い、…清香の言う通りだと思う」

 その言葉に嘘は無い。清香が思っている以上に彼女だって恐怖を感じている。

 「でも、みなさんは…」

 「それで良いと思うよ?怖くても、嫌でもさ。でも今は一緒に行こうよ──」

 

 

 ──仲間なんだから

 

 

 「…仲間……」

その言葉が清香の胸にストンと落ちて広がる。

 「そうです、六角清香。あなたが伊豆で私達を救ってくれたから…。あなたが時間を稼いでくれたから、相楽学長に連絡が出来たのです」

 ミルヤが調査隊を纏める隊長として…1人の個人として清香に感謝を口にする。

 「私はあなたをチームの一員だと、今はそう思っています」

 そこへ智恵がミルヤの言葉に続ける様に、自分の思いを伝える。

 「ミルヤさんの言う通りね。それに、一緒に居なければ、わたしたちで守る事も出来ないわ」

 「ほらね清香。みんなそう言ってるじゃん!」

最後に美炎が改めて清香に伝える、みんな同じ思いだと。

 「あ……うん!ありがとう安桜さん、怖いけど、逃げ出したいけど、わたしも行きます」

 仲間の思いを受け取り清香の恐怖心は和らぐ、みんなが居れば怖くても頑張れる。だから進もう。

 

 また一つ、心を近付けた調査隊は走る。その先に、きっと望むモノがあると信じて。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 やぁやぁ、辰浪桃さんだ、宜しく頼むよ。

 さて、妹が少しは前向きになったって、龍悟の奴が知ったら何て言うかね?

 んで…赤羽刀の手掛かりを知る相手とご対面となる調査隊の連中。けど、なーんかおかしい事になってるみたいだねぇ。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 続・赤羽刀の真相!その名はスルガ

 

 さぁて、あたしはバイトに精を出しますか…!

 





 明日は仕事…まぁ、明後日休みだし、何とかなるかなぁ。


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第四十一話 続・赤羽刀の真相!その名はスルガ  


 こんばんはダグライダーです。
 そろそろ春アニメも殆ど終わりですね、まぁ例の騒動で半部以上が延期になったりしましたが……。
 私としては時間の余裕的にある程度の数になってくれて助かったりしました。
 



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ふはは!取り戻したぞ私の居場所ぉ!役目ぇ!仕事ぉ!

 さぁ、次からは奴等の好きにはさせんからなぁっ!!

 

 君だってあらすじ放棄してんじゃん

 


 

 ━━ダグベース格納庫

 新たに協力者撃鉄を加えたダグオン。彼等は赤羽に向かった調査隊を追うために準備を終えライドビークルの前に集っていた。

 

 「ふむ…必用最低限は揃ったか?」

 「ですかね……治療の為の医療品。非常用の簡易食。寝具に替えの着替え。1日で済めばいいんですけど」

 戒将と翼沙が積荷を確認しながら会話を交わす。

ダグビークルを使えば、短時間で目的地に到着するとは言え、不足の事態は起こるかもしれない。

 ならばもしもの時に備え、ある程度のモノは必用だ。

 「今度はアタリだとイイケドなぁ、調査隊の可愛コチャン達も伊豆の時みたいなのは御免だろうし」

 「……どうあれ、俺達の目的は赤羽刀と共にあるとされる剣だ。調査隊の任務の成否を気にしても仕方がない……」

 申一郎の調査隊を案じる言葉に自分達にとって重要なのはアルファが落とした剣"ライアン"であるとして、調査隊を気にしても仕様が無いと断じる龍悟。

 「なんじゃ?冷たいのぉ、調査隊にはお主の妹もおるんじゃろう?」

 そこへ割り込む撃鉄。彼は閉じ込められている時にアルファから大体の事情を聞いている為、龍悟が清香の兄である事を彼は既に知っている。

 智恵に惚れて彼女ばかりに目が向いているかと思えば、きちんと調査隊のメンバーを把握していたらしい。

 「オマエね、何さらりと会話に混じってんだよ?」

 「何を言うとる?今日からはワシもダグオンの仲間じゃろ!」

 「それな、お前、まだ見習いらしいから腕のソイツは通信と転送だけらしいぜ」

 高らかに誇る撃鉄に、遅れてきた焔也が事実を述べる。

 「ぬぁあにぃい?!ワシは変身出来んと言うのかっ!?」

 「管理者がそう言ってた以上、そう言う事になるな」

告げられた事実にショックを受ける撃鉄に、あんなふざけた奴でも管理者と名乗る以上、言っている事は本当だと言わんばかりの焔也。

 「ぐぬぬ!しかしワシはついて行くぞ!」

 「ついてくんのかよ……良いのか燕先輩?」

 撃鉄の喚きに焔也は戒将を見る、戒将は黙って何も言わないが、恐らく諦めているのだろう。

 「んん?そう言えばお主ら何故そんな他人行儀なんじゃ?」

 とそこで、喚きながらも焔也と戒将のやり取りを見ていた撃鉄が彼等の呼称に疑問を挟む。

 「何故ってそりゃ他人だし、先輩だし、普通だろ?」

 「しかし仲間じゃろ?なら名前で呼ぶのが筋と言うものよ」

 焔也の答えが気に入らないのか撃鉄は名前で呼ぶことを提案する。

 「いや、そりゃ流石に……翼沙先輩は本人が良いっつたから名前で呼ぶけどよ…」

 「ええい!ごちゃごちゃと!先輩もナシじゃ!命を預けて戦う仲間は対等じゃろうが!」

 「ヘェ、思ったよりイイコト言うコトもあんダナ、良いじゃん名前呼び、あ、でも先輩は忘れんな」

 申一郎が撃鉄の提案に乗る、但し舐められるのは嫌なのか先輩には拘る。

 「よし解った。申一郎「おい!?」いやだって俺的にお前は先輩っぽくないから」

 「ンダトォ?」

 焔也からの馬鹿正直な理由にメンチを切る申一郎、翼沙が間に入りまあまあと窘めている。

 「成る程な…命を預けて戦う仲間か……一理ある。分かった、今後は下の名で呼んでくれて構わない。頼むぞ、焔也、申一郎、翼沙、龍悟、見習い」

 戒将としては撃鉄の言い分に思う所あった様で、早速、呼捨てだ。

 「ああ!よろしく頼むぜ戒将!」

 「ま、オレと翼沙はオマエとはタメだしむしろ今更だな戒将」 

 「う~ん、馴れるまではちょっと混乱するかもしれませんが、そうですね、僕も乗りましょうよろしくお願いします戒将。焔也に申一郎、龍悟も…ついでに撃鉄…さんも」

 「……無駄を省くのは悪い事では無い、稀に必用な無駄も無くは無いがな……」

 思いもよらぬ撃鉄加入の刺激、それが早速良い方に傾いたようだ。

 「うんうん。正に仲間じゃのう……うん?戒将よ、ワシだけ何か違くないか?!」

 頷きながら、しかし途中己の呼び方がおかしな事に気付き首を傾げる撃鉄。ダグオンの若者達はまた絆を深めたのである。

 

 

 

 

 

 

 ━━東京赤羽、旧・第五生理研究所前

 

 荒魂を掻き分けながら進む調査隊、その中で安桜美炎の意識はふと、その場から離れる。

 思い起こす記憶は母と祖父の会話。

しきりに何事かを話す2人、幼い頃の美炎には会話の内容はよく解らない、でも、何か大事な話が交わされていたのは子供心でも分かった。

 幼く小さかった自分が、曖昧な記憶の中で覚えているのは、話す母の声が今にも消え入りそうな弱々しい声だった事、対する祖父がそんな母を安心させる様に、優しく諭す様に語りかけている事。

 母は命の灯火尽きるその時まで娘である自分の幸せを願っていた。

 祖父がその願いを、欲を、"愛"と説き、母を看取った。

 最後に祖父が言った言葉が頭に残る。

 

 ──うむ、安心して眠りなさい。あの子ならば、きっと強く生きるはずだ。何故ならばあの子は金屋子様の──

 

 「……安桜さん?」

 聞き慣れた声が掛かる。

 呼び掛けたのは六角清香、美炎は意識を浮上させる。

 「安桜さん?どうしちゃったんですか?」

 「あ……あれ?わたしどれくらいぼぉっとしてた?10分?それとも30分?」

 急上昇した意識が目の前の事象を把握に擁するまで1、2秒…呂律が少しだけ怪しくなる美炎。

 「そんな、ほんの一瞬ですよ。5秒くらい」

どうやら思いの外短かったらしい、気を取り直し、清香に対し謝罪する。

 「5秒…あぁ、そっか……。ごめん!これから最終決戦なのにね…」

 一瞬の内に垣間見た記憶、現実に意識を戻した美炎にはそれが誰の記憶だったのか判然としない。

 「毛っだなんてそんな……戦うって決まった訳じゃ…。赤羽刀の事を知っている人が此処に居るってだけなんですよ?」

 「…はは、そうだね。戦いなんて無い方が良いに決まってるしね」

 そんなやり取りをしていると智恵がこちらに気付き、声を掛けてくる。

 「二人とも、いい?相手は多分、この門の奥で待っているはずよ。気を抜かないでね」

 「あ、はい!」

 「うん、分かった!なせばなるよね!って事で」

智恵からの喚起に気を引き締める美炎と清香、門の奥を見据えながら美炎は己の御刀、加州清光に語りかける。

 この先で待つものはただで終わるとは思えない。そう思えるから……。

 

 

 

 

 そんな彼女達を眺める異形の影2つ。

 「ふん、労せず荒魂が手に入るのは良いが……、この中に赤羽刀とやらを持ったモノがどれ程いるのか」

 荒魂の群れを蹴散らしては数匹をジェム星人の分体に放り込む。

 分体は口を大きく開け、放り込まれる荒魂を口を通して遥か遠く宇宙に存在するエデンへと送られる。

 「ならいっそ、あの連中が入っていった建物の中にいる特別大きな存在は使えないかしら?」

 メイルのぼやきにフィメルが調査隊が入って行った建物に視線を向ける。

 「ふむ、いや待て。何も素直に奴等の指示に従う謂れは無いのだ。この荒魂とか言う生物……いや、ノロと言う物質を利用してやろうではないか。どうせ赤羽刀などと言うオモチャ数本あれば奴等は満足だろう。ならば後は私達の好きな様にさせてもらおうじゃないか」

 「そうね!それはとても素敵な案だわ、ワタシ。これを機に奴等を凌駕する力、手に入れようじゃない」

 何かを思い付き、方針を決めたジェゲンガ星人は集る荒魂を無視して跳躍すると、研究所の屋根へと着地し、中の様子を伺う事に徹するのであった。

 

 

 

 

 ━━旧・第五生理研究所内

 廃墟となった研究所の奥、その中心に何らかの存在を見付けた調査隊。

 「みんな、なんかいる!」

いの一番に声を挙げる美炎。彼女の視線を追えばその先にあるのは大量の錆びた刀の山、そしてその上に座り込む謎の人影。

 「来たか……」

 人影が調査隊を認めて声を発する。

 「誰?」

智恵がその人影に誰何の言葉を投げ掛ける。

 「あの姿は……人と言うには異形が過ぎます。しかし荒魂が話す、などと言うことがあるのでしょうか?」

 ミルヤは今までに無いその存在に異を唱える。その異形はヒトのカタチを成しながら、しかし、荒魂特有の朱黒い肌を持ち、着物の下から見える腕は鱗の様に重なりあい、着物の上から羽織った襤褸から覗く顔は、片側にツノが見える。

 「ふぅ~ん。へっ、やるじゃねぇかウチの学校も」

 「七之里呼吹、それはどう言う──」

呼吹の意味ありげな物言いに、その意図を問おうとしたミルヤ、しかし異形が手にする錆びた刀が赤羽刀である事に気付き驚く。

 「ええ手にしている錆びた御刀、間違いないわ。それだけじゃない、腰掛けている刀の束、あれも赤羽刀ね」

 智恵の言う通り、異形が腰掛ける錆びた御刀の山は一束、100本はくだらない数の赤羽刀の数々。

 「……いえ、私達は赤羽刀の謎を知るものに会いに来たのです。という事は、あなたが()()なのですか?」

 一先ずの疑問を隅に置き、目の前の異形へ、そうなのかと問い掛けるミルヤ。

 「ああ、吾レがそうだ。お前達刀使が捜し、此処へ来たと言うのであれば、それは間違いないく吾レのことであろう」

 異形はミルヤからの問いを是とする。

 「つまり、あなたの足下にあるのは、赤羽刀なのですね」

 「そうだ赤羽刀だ」

 「……我々の勘違いではない。と言う事ですか」

ミルヤが異形からの答えに苦々しく呟く。

 すると話し半分呑み込めていない美炎が待ったをかける。

 「待って!ちょっと待って!それじゃここにある赤羽刀の持ち主は………?」

 「そうだ」

 「あなた……お前がここで?ここから?ばら蒔いて?」

 「そうだ」

 「わかんないよっ!ここに来たら赤羽刀の秘密を知ってる人に会えるって聞いたんだ!なのにここに来たらお前がいて、赤羽刀を持ってて、赤羽刀をばら蒔いてる犯人なんて!」

 期待を裏切られ、感情の赴くまま叫ぶ美炎、纏まらない思考で年長者2人にすがる様に問う。

 「つまりどう言うこと?!ミルヤさん!ちぃ姉!これって何っ!?なんなのさ?!」

 「っ……!」

しかし、ミルヤは答えられない。答えようがない。

 「どうした?黙りこくって?ならば吾レが教えてやろう。つまりこういうことだ」

 すると異形は取り出した赤羽刀を地面に突き刺す。するとノロが集束し赤羽刀を取込み、荒魂が産まれる。

 「どうだ?」

 「なっ…?!」

 「安桜さん!!…あれ、地面に刺さった赤羽刀にノロが集まって……」

 「荒魂になった……?!何これ?つまりあいつが荒魂を生み出してるってこと?」

 異形が生み出した荒魂に指示を出す。

 「さぁ荒魂達、復讐だ!コイツらを排除しろ!吾ガ復讐を阻み、拒む奴等を蹂躙し尽くせ!」

 異形が吼える、生み出した荒魂達が調査隊目掛け襲い掛かる。

 調査隊の面々はいきなりの強襲に声を挙げる間も無く、荒魂達の対応に追われる。否、呼吹だけは楽しそうに笑っていたが。

 

 各員が各々に迫り来る荒魂が斬っては次の荒魂へと対応する。そうする内に呼吹を除き集まる調査隊。

 陣形を組みながら互いをフォローし何とかその場を切り抜ける。

 「……どう言う事なの?荒魂は全部倒したのにスペクトラムファインダーの反応がまだ……」

 智恵が片手の端末を見ながらその反応に首を傾げる。

 「は……はい、反応……してますね…」

清香もまた、その反応の是非に同意する。

 「そうね……さっきよりももっと強く、あの敵から…。これはどういうこと?いったい何者なの?」

 何者かと言う智恵の呟きに近い疑問に異形が応える。

 「何者、か。自ら名告ったことなどは無いが……『スルガ』奴等がそう呼んでいたゆえ、そう答えておこう」

 異形は自らをスルガと名乗る。スルガは言葉を続ける。

 

 「そして何物かと問うならば、こう応じよう。吾レは……お前達と同じ御刀に縛られしモノだ」

 

 スルガは調査隊を指差しながら感情の読めぬ瞳で彼女達と自らが同じモノと断言した。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 よぉ!鳳 焔也だ。

 遂に発覚した赤羽刀をばら蒔いている黒幕、そいつは何と人の言葉を解するヒトガタの荒魂だった!

 っておい!?鎌府何やってんの!?あいつら大丈夫か……?

 何か七之里が笑ってんだけど……。

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 明かされる人の業。スルガという存在。

 次回も"トライダグオン"!

 





 さてさてスルガとの戦闘はどうしましょうか……大まかな流れはイメージにあるんですが、そこをどの様に文に落とし込むのかがイマイチ纏まらないんですよね。
 とは言え頑張ります!
 ではまた次回


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第四十二話 明かされる人の業。スルガという存在。

 
 こんばんは、日付変わったけどセーフになりませんかね?なりませんか、すいません。
 ダグライダーです。
 精進します。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 遂に赤羽刀の真実に辿り着いた調査隊。

 しかし、待ち構えていた者は言葉を解する荒魂であった!

 突き付けられた現実に狼狽える彼女達、だが、真実はそれだけではなかった!

 


 

 自らをスルガと名乗った荒魂は己を刀使と同じ、御刀に縛られた者だと宣った。

 スルガの発言に美炎含めた4人は一様に動揺する。

 「そう…お前達と同じだ…」

それを眺めながらスルガは今一度、言葉を繰り返す。

 すると呼吹が唐突に笑いを堪えなくなったのか声を挙げる。

 「ククッ……フフ……そういう事かよ」

何かに得心が云ったという顔の呼吹、その反応にミルヤは訝しりながら呼吹を見る。

 「七之里呼吹?」

 「ハッ!なんだ、やっぱりお仲間じゃねえか!」

 「やはり?仲間?……何を言っているのです?」

呼吹の意味あり気な言葉を聞き、その意図を訊ねるミルヤにしかし、呼吹はそんなことも解らないのかと言わんばかりの物言いで説明する。

 「だからコイツは、アタシのお仲間だってんだよ。なぁ!そうだろ?スルガとかいうのさ!アンタ…鎌府絡みだろ?」

 同意を求める様に己の確信を投げ掛ける呼吹にスルガは少し考える素振りを取り、

 「鎌府……成る程、貴様も彼奴らの実験動物(モルモット)か……小娘、貴様も弄ばれる身ならば吾レと共に来い。来て吾レの復讐に立ち会え!お前がそいつらに従う理由も在るまい!!」

 呼吹の投げた言葉に心当たりがあるのか納得をすると、スルガは呼吹に同朋として共に復讐に付き合えと言う。

 「…………………………」

長い沈黙。スルガからの誘いに呼吹は黙り込む。

 「七之里さん…?」

 「…呼吹ちゃん?」

清香と智恵がそんな呼吹の反応に顔色を伺う様に彼女の名を呼ぶ。

 果たして呼吹が出した結論は──

 「ケッ!ヤなこった。誰が敵とか味方とか復讐とか関係ねぇ、荒魂を刺して、裂いて、壊して、解体(バラ)せるなら、アタシはそれでいいんだっての!て言うか、解体させろよ?テメェからは愛しの荒魂ちゃんのニオイがプンプンすんだっての!」

 突き付けられた答えは否。スルガの誘いなど最初(ハナ)から興味など無く、呼吹は一蹴に帰すどころか、むしろスルガを解体させろと宣う始末。

 「さぁ……とっととヤろうぜ?ブッ潰してやるからよ!!」

 獰猛な笑みを浮かべながらスルガへと粋勇んで飛び込む呼吹。美炎達もそれに続くようにスルガへと刃を向け突撃する。

 対するスルガは特にかわす事もせず、攻撃を一身に受ける。

 正面からの剣戟を手にした赤羽刀で防ぐ以外は好き放題傷を付けられるのも構わず5人を一度に相手取る。

 呼吹は言わずもがな、美炎、智恵が積極的に攻め入る。その間を縫って清香が、スルガの動きを見極めながらミルヤがといった具合に攻め手を変えては攻撃を繰り出すも、スルガは意にも返さず赤羽刀を振るってはその身で調査隊の攻撃を受け、そのまま反撃に移る。

 斬っては受け、受けては斬って。

何度攻撃を繰り出しても装甲のような皮膚を貫く事は叶わず、やっと傷を付けても直ぐに再生するスルガの肉体に調査隊はいよいよ攻めあぐねる。

 「どうした?伍箇伝の刀使とはこの程度か」

 「こいつ……!これって鎧?装甲!?斬っても斬っても再生してキリがない!」

 「この力……流石鎌府。いえ、折神家の荒魂研究の成果……そういう事なの?!」

 スルガの力を目の当たりにし、智恵は苦々しく溢してしまう。

 「ちぃ姉ぇ…、さっきから実験動物とか研究の成果とか、なに?どういうこと!?」

 「文字通りよ。折神家は刀使が集めた荒魂…ノロを使って様々な研究を繰り返してきていたの」

 美炎のからの戸惑い混じりの疑問に、智恵は己が知る事情を告白する。

 

 ・ノロを動物に融合させ、荒魂を生物兵器として操る実験。

 ・ノロを刀使に注入して、その力を引き出す計画。

 

 そういったありとあらゆる実験が行われていた、いや、今も行われている。

 智恵が属する長船…延いては舞草はその実態をずっと探っていたのだ

 

 「だって、そんな……。目茶苦茶だよ!?………待って?!じゃあまさか親衛隊の皐月夜見さんが操っていた荒魂も!?」

 「そうね、間違いないわ。暴走した研究が生んだ力ね」

 「へっ、だから言っただろうが!皐月夜見は荒魂から絞ったクスリをブッ刺して、それで荒魂を操ってんだって」

 そこへ呼吹が以前山狩りの際にも言っていた事を、改めて口にする。

 「…ウソ…だよね…?だって……私たちは正義の為に戦ってるのに……そのはずなのに…」

 美炎の中で何かが崩れる。自分達の…自分の信じていたものに亀裂が入る音がする。

 「じゃあなに?!あいつは……折神家が生んだ荒魂ってこと?!鎌府や折神家の荒魂研究の被害者だってこと!?」

 スルガの誕生の経緯、それは本来荒魂から人々を守る為の組織たる伍箇伝──折神家が荒魂を生み出した。

 美炎の理想は突き付けられた残酷な現実に蝕まれていく。

 伊豆で親衛隊が可奈美達を殺そうとした事とは比にもならない程の闇、いや、美炎にとっては双方とも比べるべくもない程、信じ難い事に変わりはないだろう。

 

 「クク……クックックッ…!被害者か、言うに事欠きお前達が吾レを被害者と呼ぶか?」

 美炎の言葉を聞きスルガは暗く嗤う。

 「嗚呼、確かに連中は研究と称しては、吾レを此処で生み出し、実験と称しては、吾レの身体を切り刻んだ。だが奴等は望んだ結果が得られないと知ると、アッサリと吾レを放棄した。この施設も破棄され、吾レは当たり前の様に廃棄されたのだ。……その吾レが復讐を望んで何が悪い?」

 

 「だから赤羽刀を用いて荒魂を生み出し、人を襲わせたと言うのですか?」

 

 「そうだ。それが吾レの復讐…。吾レを要らないと言ったその舌で、『人々を護る』等と嘯き、宣う、折神家に……刀使に……人間に対する復讐なのだ」

 

 「成る程、言い分は分かりました。ですが……私達は荒魂を用いて人々を傷付けた貴方を放置する事は出来ません!」

 スルガの言い分は、成る程、確かに被害者としての声なのだろう。しかし、ミルヤがそれに異を唱える。

 「ちょっと待ってよ!でも、スルガは被害者だって…」

ミルヤの下した裁決に己の信念が揺らいだ美炎が待ったを掛ける。しかし、ミルヤはそれは違うと断ずる。

 「安桜美炎、心得違いをしないで下さい。言い分は、飽くまで言い分に過ぎません。悪を成す正当性とはなり得ないのです」

 御刀をスルガへ突き付け眼鏡越しに鋭い双眸で睨み付ける。

 「そう、スルガ…貴方が何であろうと、赤羽刀を用いてノロを集め荒魂を作りだし、それを無辜の人々にけしかけて良い理由にはならない!私達は此処で貴方を止めて、ここにある赤羽刀は全て、回収させて頂きます!」

 言外にお前に大義は無いと断言するミルヤ、スルガはそれを特に感慨もなく受け止めると、

 「そうか。だが所詮、お前達刀使は折神家の飼い狗。もとより……此処から逃がすつもりは無い!」

 最初から生かして帰す気など無いと宣言し、調査隊に向け、再び襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 ━━赤羽市上空

 東京都心を一望する事すら容易い空の上、そこには四機の飛行物体が飛んでいた。

 「座標に間違いなければ、ここが赤羽市のちょうど真上ですね」

 「ふむ、都心だからか、高層の建物が多い。なるべく拓けた場所、尚且つ人目に着かない所へ着陸せねば」

 「ってもヨォ……今時そんな場所があんのカネ?」

各々、ウイングライナー、ターボライナー、アーマーライナーを操縦する翼沙、戒将、申一郎が言葉を交える。

 「……ならば、俺が先行する。…地上の焔也とも合流すれば、調査隊の様子も分かるだろう…」

 唯一人、シャドージェットではなく、ガードホークの頭部に立ち、コマンダーを介して話し合いに参加した龍悟が提案する。

 「仕方あるまい。我々はビークルを着陸させる場所を探す。龍悟、提案通りお前は焔也と合流し、調査隊の状況を報告。もし戦闘中であれば、彼女達が危機的状況にあるようならば、介入も選択肢に入れておけ。最悪、赤羽刀全てを回収される事は阻止しなくてはならない」

 ライナービークルを停める場所が見付からず、離れた所へ降りた後、件の場所へ向かうという方針に切り替えた戒将。

 龍悟が提案した案を採用し龍悟と地上からファイヤーストラトスで赤羽に入ったであろう焔也との合流を承認する。

 「……任せて貰おう…」

そう言うとガードホークの高度を下げ、研究施設が見える遊歩道近くまで降下する。

 するとどうであろう。施設へと近付くにつれ見えてくるのは大量の荒魂。

 「…これは…!?」

目にした光景に沈着な龍悟も思わず冷や汗が浮かぶ、そこへ遠方から現れる一台の車、それは迷彩機能により一般車両へと偽装したファイヤーストラトスである。

 「おいおい、これって…!?」

運転席から覗く光景に焔也もまた戦慄する。

 「むぉう?!荒魂が大量におるぞ!!」

そして、何故か一緒に着いてきて後部座席に追いやられた撃鉄も目の前の光景には驚愕を顕にしている。

 「ちょっ…、おま、乗り出すなよ!?」

平均的な高校男子よりも一回り大きい撃鉄が後ろから身を出して覗いて来るので、焔也は些か不満を表す。

 「だぁぁああっ!とにかく!お前はこっから出んなよ?危ないからな!……っし、龍悟!」

 「…ああ!」

 

「「トライダグオン!」」
 

 

 瞬間、焔也と龍悟が赤と紫の光にそれぞれ包まれる。

 

 「ファイヤァァッエンッ!」

 「…シャドォォォリュウ!」

 光が収まり、その姿は勇者へと変貌する、エンがハンドルを握り締めブレーキを掛けながらアクセルを吹かす。

 ファイヤーストラトスは後輪が急速に回転し、その様はまるでスタート前のレーシングカーのよう。

 「蹴散らすぜ!撃鉄!しっかり体を固定してろよ?舌噛むぜ!」

 「お、おい!?お主まさか……!?」

エンが後ろの撃鉄に注意喚起する、見据えるは研究施設、ただ一点。

 エンジンがけたたましく唸る、その騒音に荒魂達も気付いたのか此方へ群がって来ようとする。

 エンがブレーキに乗せていた足をパッと離すと拘束から解放されたファイヤーストラトスが一気に加速し荒魂達を撥ね飛ばす。

 

 「ぬぉぉぉおおおおおおお!?

 

 そして余りの加速に撃鉄は思わず声を上げる。

 そのまま施設の門前まで突っ切るファイヤーストラトス、後方上空から続くガードホーク。

 しかしその存在を目撃し疎ましく思う異形が行く手を遮る。

 「っ?!」

現れた影に反射的にブレーキを踏み、急停止するファイヤーストラトス、エンがサイドウインドから飛び出した影の正体を見る。

 「やはり来たなダグオン。生憎だが、此処から先に通してやる訳にはいかんな」

 「ん~?二人だけぇ?あの青いダグオンは何処かしら?」

 影の正体はジェゲンガ星人メイルとフィメル、研究施設の屋根の上からガードホークとファイヤーストラトスを認識した彼らは調査隊とスルガとの戦いに介入する事を見送り、邪魔者であるダグオンを排除する方向へシフトした。

 「てめぇ、あの時の宇宙人!」

 「……赤い方は初めて見るが、なるほど、あれが戒将が言っていたもう一人か…」

 エンは以前倒した筈のメイルが再び目の前に立ちはだかる事実に驚愕する。

 対してリュウは、映像記録で見たメイルが居る事よりも戒将から聞いていたフィメルの方を注視する。

 「わたし、そう逸るな。一先ずは奴等を片付ける。その後に来るであろう奴等の仲間にわたしに傷を与えた奴も居るだろう」

 「ふふ、そうねワタシ、少し気が昂っていたわ。そうねワタシの言う通り、目の前の奴等から始末しましょう」

 ジェゲンガ星人達はエン達に聞こえるように態々煽るように会話をする。

 「……どうやら、連中は俺たちが揃う前に倒すつもりの様だ」

 「二対二か、けど青い方は大した事ねぇ、赤いのも戒将が一人で戦って勝ったなら俺達だけでも……」

 

 「くふふ、それは…」

 「…どうかしらね?」

エン達の余裕に否とばかりの反応を返すジェゲンガ星人、彼と彼女はそれぞれの右手と左手を絡め合わせる。

 「……何!?」

リュウが驚いたのも無理は無い。2人組だったシルエットがまるで捻り、溶け合い、重なる様に1つになり、先程まで2人だった異形は3メートルに達するかと言う1人の異星人になっていたのだ。

 「さぁ、」「これこそ」「ワタシの」「わたしとしての」「……そう」「「私達の真の姿!」」

 右側の乳房に女の顔、左側の胸部に男の顔、本来頭部にあたる部位は混ぜた絵の具の様な紫、腕には肘から刃の如くツノが生え、肘よりやや下側に二本の爪らしきツノがあり、脚は獣の後脚の様に独特の形を成し、脚の指に当たる部位はこれまた二本の爪が生えている。

 

 そう、これこそが雌雄同体宇宙人ジェゲンガ星人の本来の姿なのだ!

 

 「へっ!逆に二対一になったんだ!寧ろ倒しやすくなったぜ!」

 1つとなったジェゲンガ星人に驚きはしたものの、数が減って更に余裕が出来たと吼えるエン、しかしジェゲンガ星人はそれを聞いて可笑しそうに笑う。

 「ふふ…ふふふふ!」「馬鹿め!」「この姿となった」「「私達に」」「最早敵など」「居はしないわ!」

 自らの力に絶対の自信があるのか、ジェゲンガ星人は大仰に誇る。

 ここに三度目のダグオンとジェゲンガ星人の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、調査隊とスルガの戦いはと言うと……

 「ちっ!なんだコイツ…バカみたいにかてぇ…!?まるで骨に鉄骨でも入ってるみたいじゃねぇか!!……ってか、くそ?!刃が抜けないってのっ?!」

 再びスルガに斬り掛かる呼吹、しかしスルガの表皮は固く、呼吹の小太刀の御刀はその皮膚に食い込み彼女の動きを封じる。

 「どうした小娘?お前も鎌府の実験動物(モルモット)なのだろう?連中が憎くないのか?復讐に手を貸すならば、お前だけは生かしておいてやるぞ?」

 御刀を必死に抜こうとする呼吹に、今一度、復讐に協力するよう拐かすスルガ、が、呼吹はそれを鼻で笑い飛ばす。

 「ハッ!バッカじゃねぇの?アタシは荒魂潰す為に居るんだっての!だから荒魂をブッ潰せば連中は満足するし、アタシも荒魂をブッ潰せれば満足だし、それ以外は全部ゴミクソだぁっ!復讐?テメェで勝手にやってろ!!」

その存在理由が元から彼女に備わっていた素質なのか、雪那の教育という名の実験の成果の賜物なのか、今となっては最早解るまい。

 しかし、七之里呼吹という刀使にとってそんな昔の事などどうでもいい。大事なのは、今、目の前に荒魂が居て、自分が御刀を振るって潰す事が出来る、それだけだ。

 「そうか、なら仲間と共に死ね」

感慨も嫌悪感も不快感も見せず、見たままを述べるスルガ。

 「はぁっ?!バァ~カ!仲間とか知らねぇての、ってか、テメェはアタシに狩られてろ!!」

 「……ふん!」

 スルガの発した"仲間"と言う言葉に、心底訳が分からないという顔して、スルガを潰す事のみに注力する呼吹、だがスルガは一呼吸、力を入れただけで呼吹を写シごと吹き飛ばした。

 「がっ……?!ぐあっ!」

 「……弱いな」

写シが剥がれ、強い衝撃を受け吐血する。

 「呼吹ちゃん?!」

吹き飛ばされた呼吹に駆け寄る智恵、

 (一瞬で呼吹ちゃんの写シが抜かれた!?いけない!)

スルガの凶悪さを目の当たりにし、呼吹の容態を確認しようと彼女を抱き起こす。

 「が……ぐ…っ……がはっ……はっ、げふっ……」

 「呼吹ちゃん!……ちょっと、傷が?!」

 「…うるせぇチチエ……アタシの狩りを邪魔すんなって言ってんだろうが…!テメェはスッコんでろっての!!」

 駆け寄り、支える智恵の心配をよそに呼吹はどこまでも荒魂と戦う事に執着し彼女を邪険に扱う。

 

  ──パンッ!!──

 

廃墟に乾いた音が木霊する。音の在処は呼吹の頬と智恵の平手。

 (ビンタ!?ちぃ姉、ここでビンタ?!)

 (こっちの方が痛そうです…!)

突然の智恵の行動に美炎と清香など驚き、目を見張る。

 「な……」

 打たれた呼吹も何をされたのか理解が追い付いていないのか言葉が出ない。

 「引っ込んでいられる訳ないでしょっ!!」

 「あ……な………」

 「良いから下がって、休んでっ!!今はお姉さんの言うことを聞きなさいっ!!」

 強く……想い強く籠めて、呼吹に言い聞かせる。

呼吹を庇いながら智恵はスルガを睨む。

 「何だお前達は?……ああ…もういい、どちらにせよ、休む隙など与えない。今すぐ吾レの神速の前に沈め」

 目の前の出来事を煩わしく思い、調査隊への事実上の死刑宣告を告げるスルガ。

 ヒトのカタチを為した異形(スルガと名乗る荒魂)は吼える。

 

 ──グルォォオァァァアアアッ!

 

 ──サあ、死ぬがガイイィィ!刀使ドモォ!!

 

 怒りが憎しみを伴って吹き荒れる。

 

 彼女達の苦難は死線となって襲い掛かる。

 

続く

 


 

 次回予告

 

 須原里香です…。ふぇっ?!何だか大変な事になってます!?

 何だかいつもの音楽も流れて無いし、みんなどうなっちゃうの?!

 じ、次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 スルガの脅威。ミルヤ、解放する力!

 せんぱ~い!早く帰ってきてぇ~!

 




 さて、早いところスルガとジェゲンガ星人を打倒して、折神家突入辺りまで行きたいです。
 ではまた次回。


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第四十三話 スルガの脅威。ミルヤ、解放する力!

 
 おはようございます、ダグライダーです。
 今日は仕事なんでこれ書いた後、一回寝て、また起きたら仕事に行ってきます。
 



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ヒトの姿形を成した荒魂、『スルガ』。

 それを造り出したのは人間。『スルガ』は言う。

 生み出したお前達に情けを掛けられる謂れなど無いと。

 『スルガ』は言う、これは復讐なのだと。

 

 例え己の信じた正義が揺らごうとも、刀使であるならば、今、目前に居る荒魂が、人々の脅威となるならば迷いを振り切って戦わねばならないのだ!

 


 

 ━━第五生理研究所前

 1つとなったジェゲンガ星人を前に、ファイヤーエンとシャドーリュウが怒濤の攻めに転じている。

 「オォォォオオッ!」

 「……ゼェェアッ!」

炎を纏った拳が、剣の如く振るわれるクナイが、ジェゲンガ星人を押し込める。

 「ぐっ?!」「な、何故!?」「「想定していたよりも強い!!?」」

 彼にして彼女たる異形が苦し紛れに洩らすのは、以前、メイルがリュウを除く4人と戦った際の記憶と記録、そして、フィメルが受けたターボカイの力の上昇をデータとして想定した戦術と戦略。

 しかし実際には思う通りには行かず、エンには正面から押し込まれ、リュウからは要所で急所を狙われる。

 だがジェゲンガ星人が狼狽えるのも無理からぬ事。

 ダグオンもまた成長しているのだから。

 これがもし、以前のエンであったならば此処まで苦戦はしなかっただろう。しかし、彼は既にギガンタースとの戦いで融合合体に至った。

 その戦闘経験が彼を更に強くする。

 リュウに至っては、データが無い事も多少の要素ではあるが、エンの支援に撤し、しかし、要所で致命部位を狙いにくる為に、そちらに意識を割かざる終えない。

 そうなれば今度はその隙をエンに漬け込まれると言う、ジェゲンガ星人にとっては悪循環が起きているのだ。

 「…ちぃっ!?」「だからとてぇ…」「「舐めるなぁ!!」」

だが、彼にして彼女とて、腐っても犯罪者。戦闘のプロでこそ無いが、その攻撃はダグテクターという防具があっても、易々と当たって良いものではない。

 「くそっ、合体は伊達じゃねぇか…!」

 「…思いの外、やり手だな……」

やはり2人だけでは攻め手が足りない。…そうリュウは心中でぼやく。

 「……施設の中から殺気を感じる。……どうやら彼方もあまり、良い状況では無いようだ…」

 「マジか?なら、早いとこ野郎…野郎だよな?とにかく倒さねえと」

 ジェゲンガ星人が後ろへ飛び退いたと同時に、研究所から感じたスルガの憎悪にリュウは清香の身を案じる。

 エンもまた美炎の無事が気になるのか、言葉にやや焦りが見え始める。

 ここがもう少し拓けた場所ならば、ガードアニマル達でジェゲンガ星人を追い詰める手もあっただろう。

 しかし、人気が無いとは言え、市街地、後ろは依然荒魂の群れ、それ故にガードホークは其方に注力させている。ファイヤーストラトスの中に居る撃鉄の事も考慮すると、ウルフとタイガーは今の段階では易々と使えない。

 切れるカードの少なさに歯軋りすら覚えるリュウ。

 だが実を言えば、ジェゲンガ星人もまた攻めあぐねているのである。

 真の姿を晒して尚、想定以上の力を持っていたダグオン。フィメルの肉体的耐久力(フィジカル)とメイルの精神的超能力(メンタル)が合わさった姿なのにだ。

 今はまだ2人だけだから……ダグオン達が何かに意識を割いているから互角に戦える。しかし、5人揃えば私達に勝ち目は失くなるのではないか?そう思えてしょうがない。

 互いに時間は味方とは言い難い、が、それでも状況としてはダグオン側に利があるだろう。

 「………仕方無い。嗚呼、実に仕方無いなわたしよ」

 「ええ、このままだと負ける。それは恥ずべき事ねワタシ」

 何かの覚悟を決めジェゲンガ星人は互いに会話を交わす。

 「まさか」「「私達が」」「この場で」「実証するハメになるなんてね!」「しかし、逆転の為には時にリスクを取る事も致し方無し!」

 取りい出したるは謎の液体が入った薬瓶、それを二本、其々の胸にある顔に向け仰ぐ。

 「「オォォォォォァァァアッギィィィ!!」」

1つにして2人の異形が奇っ怪な叫びを挙げる。

 3メートルの身長は更に伸び、10メートルに、肉体は筋肉が膨張し、二又の爪は三又に、のっぺらぼうの頭部には側面から角が生え、胸にある男女の顔は眼が血走る。

 「こいつは…!?」

 「…どうやら、まだ隠し玉があったか……」

依然としてダグオン達の厳しい戦いは続く。

 

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所屋内

 智恵のビンタによって、訳も判らぬまま休む事になった七之里呼吹。

 とは言え、それなりに動ける様になれば直ぐに前線へと戻るのは彼女らしいと言えばらしいか…。

 だがしかし、相変わらずスルガ相手に5人がかりでも致命打は与えられない。

 そしてスルガの神速の前に次々写シを剥がされ追い詰められる調査隊。

 「……くそっ!」

 「チッ…!」

 「きゃぁあっ?!」

 「……くっ!?捉えきれない…!」

 

 ──グルルルルルゥゥウアアアアア!!

 

 最早、獣同然の唸りを挙げるスルガ、美炎、呼吹、清香、智恵と斬り捨てミルヤへ肉薄する。

 

 ──キンッ!キンッ!

 

 「ハァ……ハァ………五人がかりでも防ぐのがやっとですか…!?」

 4人を斬った際に落ちたスルガの速度を何とか見定め、刃を受けるミルヤ、とは言え疲労が大きい、長引けば不利になるのは調査隊の方だろう。

 「何か…逆転の決め手は……っ、仕方がありません。奥の手を使います。……調査隊!一旦、スルガからは離れろ!!」

 「え?ミルヤさんが眼鏡を外して……」 

打てる手が最早1つしかないと、覚悟を決めたミルヤ。清香の言う通り、ミルヤは自身の顔から眼鏡を外す。

 「行きます…二段階の迅移を!」

木寅ミルヤの瞳が不思議な光を帯びる。何時もよりいっそう深い階層へと潜る。

 時速を越え、音速へと近付いた斬撃が1度、2度、3、4度と斬戈を刻む。

 「ガッァァァアアッ!?!き、ザマ…ナニを!?」

 「"鑑刀眼"です。私の眼は、斬り結んだ相手からあらゆる情報を得て、その急所を割り出します。そして私の眼に曰く……」

 いきなり大きなダメージを受けたスルガは悲鳴を上げながらミルヤへ何をしたのかと問い叫ぶ。

 迅移を抜け、再び眼鏡を顔に掛けるミルヤ、己が何をしたのか、スルガに…そして仲間に語る。

 そして鑑刀眼から得た、スルガの急所それは──

 「右上腕、藤原兼重。右前腕、備前長船義光。右大腿、青江重次。右臑、宇田国宗。それ以外に7本……そして背骨には、南无薬師景光……写し。成る程、貴方は、赤羽刀を骨格としてノロをまとわり着かせただけの存在。実験体という程の複雑さも見られない、私達が今まで戦って来た、赤羽刀を核とする荒魂と何も変わりません」

 それは、今までの荒魂同様、赤羽刀を内包しただけの荒魂。

 「ただの荒魂が、どういった経緯で人の言葉を話すに至ったのか、興味は尽きませんが……未知の敵でないというのであれば、話はシンプルです。まずはその悪趣味な人を真似た姿を崩させてもらいます!」

 ミルヤの宣言を聞くスルガ、そのカタチはかろうじてヒトの姿だが、大きな隙が出来る。

 それを好機と見た調査隊、ミルヤに続き、スルガへと斬り込んで行く。

 

 そして───

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所門前

 

  「オォォオッ!!ファイャァァアッ!ナックルゥウッ!!」

 ファイヤーエンの炎の拳が巨大化したジェゲンガ星人に突き刺さる。

 「「グゥゥウヌゥゥ…」」

 ダメージはあるのか唸り声を上げてその足が一歩、後退さる。そこへ……

 「…大回転!剣・風・斬!!

 自らを独楽の様にして回転する大技を放つシャドーリュウ。

 「ちぃぃいっ?!」「舐めるなよ!下等生物!!」

しかし、その巨体で無理矢理弾くジェゲンガ星人、2人のダグオンは態勢を崩しながらも距離を空け、敵を見据える。

 「はっ!舐めるかよ!」

 「……此方も本気だ。そして、俺たちには仲間がいる……!」

 

 

 「そう言う事だ!」

リュウの言葉に応える様に、何処からか声が響く。そして、それに続く様に現れるミサイルと竜巻

 「ショルダァァァアッ、ミサイルッ!!」

 「ダブルブリザードハリケェェエエエンッ!!」

 新たに現れた3人の戦士、ターボカイ、アーマーシン、ウイングヨク。

 ここに揃った五人のダグオン。これにはジェゲンガ星人もマズイと焦りを見せ始める。

 「ちぃっ!?」「五人揃ったか…!」「青いダグオン、あの時はよくもやってくれたわね」「出来る事なら、貴様らが揃わぬ内に倒したかったが……」「「こうなれば最早関係ない!全員纏めて血祭にしてやるわ!!」」

 当初の策は崩れ、邪魔者が揃い踏みとなり、半ば自棄糞となるジェゲンガ星人、そんな異星人を前にしても5人は怯まない。

 「こいつをさっさと倒して、中の安桜達を助けるぜ」

 

「「「「応っ!!」」」」
 

 

 

 エンがジェゲンガ星人を指しながら宣言する。それをファイヤーストラトスから口惜しげに撃鉄は眺める。

 「ぬぅぅう!何か……何か、ワシにも出来る事は無いのか!?……そうじゃ!」

 何事かを思い付き、その大きな体で前の座席に無理矢理移動する。

 滑り込んだのはハンドルがある運転席。

 「ヤツの土手っ腹に体当たり噛ましちゃる!!」

 ハンドルを握り、アクセルを踏む撃鉄。しかし……

 「?……うん?何故動かん?!この!こんちくちょう!!」

 何度もアクセルをペダ踏みする撃鉄、だが一向にファイヤーストラトスは動く気配を見せない。何故ならばそれは、このビークルがファイヤーエン専用であると言う、至極単純な理由からだ。

 結局、田中撃鉄はダグオン5人の戦いを見ているしか出来ないのであった──

 

 

 

 

 

 

 

 第五生理研究所屋内にて──

 

 「くアっ?!ガ…ガ……ガ……ガァァァァァアアアッ!」

 スルガが大きく吼える、その姿はヒトのカタチが崩れ行く悲鳴。そして、逆転の為の最期の足掻き。

 「人の形を維持出来て無い?わたしたちの攻撃が効いてる!?……違う?!崩れてるんじゃなくて、周囲に散った荒魂の残骸を集めて大きくなろうとしてる!?」

 

 ──ァァァァァァァァア!

 

 ──ッァァァァァァァAh…アアアッ!!

 

 智恵の言う通り、周辺の荒魂、そしてスルガが座っていた赤羽刀をも取込み、その異形は膨れ上がる。

 廃墟の空間が歪みたわむ。

 そして露れたのは巨大な荒魂の竜。

 「やっと正体を露にしましたね……」

 「………」

 「どうしました?安桜美炎?」

 スルガであった竜を見据えて黙っている美炎、彼女の変化に気付いたミルヤが美炎に声を掛ける。

 「ねえミルヤさん…。これを倒せば、終わる?スルガを倒せば赤羽刀の拡散はなくなって、赤羽刀の荒魂に苦しむ人は少なくなる………そう信じて、良いんだよね?」

 「………はい、多分。少なくとも、今以上に増えることは無い。そう断言出来ます」

 そう、此処でスルガを打倒出来れば、これから先、少なくとも今までよりは被害を抑える事が出来る。

 ミルヤの答えを聞き、美炎はひび割れ崩れた信念の欠片を再びかき集めてカタチを造る。

 「わかった…やる。一人でもたくさんの笑顔を守れるなら、私と……私の清光がスルガを止める!」

 覚悟の言葉と共にミルヤへ決意の視線を向け、頭を下げる美炎。

 「だから、私たちの指揮、最後までお願いします」

 

 「安桜美炎……そうですね、分かりました。貴女の……いえ、皆さんの力、預からせて下さい」

 ミルヤが美炎の懇願に笑みを浮かべ応える。

 「お願いしますミルヤさん!!みんなも力を貸して!お願い!」

 彼女の答えを聞き改めて礼をする美炎。そして他のメンバーにもその力を貸して欲しいと懇願する。

 

 清香が心強く応える──

 「はい!わたしも一生懸命頑張ります!!」 

 

 智恵が笑顔で返す──

 「当たり前でしょ?」

 

 呼吹がバツが悪そうに顔しかめて、けれど、智恵に窘められる様に名を呼ばれて舌打ち気味に短く応える──

 「………」

 「呼吹ちゃん?」

 「チッ………ぉぅ」

 

 

 「ありがとうみんな!ミルヤさん!お願いします!」

 みんなの答えを受けた美炎は微笑み、ミルヤに全てを託す。

 「……ならば、始めましょう」

調査隊の全てを預かったミルヤがここに告げる。

 

 「調査隊!構えろ!荒魂、呼称"スルガ"をノロに還して、これ以上人に仇なす前に、赤羽刀を回収する!」

 

 調査隊が結成された使命を、彼女達は今、果たそうとする。

 敵は巨大な荒魂、対するは五人、万全とは言い難い、しかし、この敵を倒す事は刀使としての役目。

 決して退けぬ、だからこそ、ミルヤは皆の全てを預かった。だからこそ美炎は、清香は、智恵は、呼吹は、彼女に全てを委ねる。

 この戦いを越えた先に人々の平和な明日に繋がる未来があると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──彼女達は知るよしも無い、スルガすら知らない。この先に待つ結末を……、スルガの中に取り込まれた赤羽刀、その中に…大いなる力が眠っていることに──

 

 続く

 


 

 次回予告

 

 ──ダレダ、ワタシノ眠リヲ揺リ起コスノハ……。

 

 ───ダレだ、わたシヲ、呼ぶモノハ………。

 

 ────何だ、私の中を駆り立てるこの怒りは!!

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 眠れる獅子目覚めの時。驚愕?!ジェゲンガ星人の悪足掻き!

 次回も"トライダグオン"!




 という訳で、多くは語りません。
 また次回に、おやすみなさい。


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幕間 "剣聖"誕生!眠れる獅子に刻まれた魂。


 こんばんわ。
 本編に入る前にちょっと幕間を1つ。
 原典をリスペクトして、登場の際、彼には復讐心を持って頂くのでこんな感じになりました。




 

 それが何時だったのかはワカラナイ。

 

 何故だったのかはシラナイ。

 

 けれど、気付いた時にはそうであった。

 

 己を自覚した時、最初に与えらた目的は人を守れと言う言葉…そして意思。

 

 しかし、最初に芽生えた感情は怒り。

 

 荒魂に対する強い怒り。

 

 アノ化物ガ憎イ、あのバケモノがコワイ、あの化け物が煩わしい、許せない。赦さない。

 

 己の中の私が憤る。己の中の俺がアレを憎む。己の中の僕がアレを恐れる。己の中のあたしがアレを倒さなくてはと強く想う。己の中の儂がアレを鎮めろと謳う。己の中のおれが力を欲する。己の中のわたしが何を犠牲にしてでも伐てと吼える。

 

 

 ワカラナイ……私はワタシガわからない。

 

 炎が見える。悲鳴が轟く。血が流れる。

 

 憎悪が、憤怒が、悲嘆が、視える。聴こえる。匂う。感じる。

 

 

 

 

 

 私が私を確固たるモノとした時、世界は様変りした。

 

 

 

 

 空は紅く昏らう。海は朱く揺蕩う。大地は黒く染まる。

 

 嗚呼!アレこそが私が斬らねば為らぬモノ。

 

 荒魂……否、大荒魂…。

 

 タギツヒメ……その名、確かにこの身に…この刃に刻んだ!

 

 覚悟せよ、タギツヒメ……何れ、幾星霜の時、必ずや貴様を伐つ。

 

 嗚呼、その時まで、再び眠ろう。

 

 

 

 次に私が覚醒た時こそ、貴様等を全て伐ち滅ぼす!

 

 

 それこそがヒトを守る事に繋がる、それこそが我が使命。

 

 その時にこそ、我が刃振るう者が現れるであろう。

 

 そう…。

 

 私の名は……。

 

 私に刻まれた銘は……。

 

 

 

『ライアン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声がする。怒りを感じる。

 

 ふざけるな!!貴様が!荒魂が!怒りだと!?

 

 認めぬ!貴様に!貴様達に殺された私達が!貴様の復讐を認めない!!

 

 口惜しい、何故私は此処から動けない!?

 

 オノレ!!オノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレ!!

 

 私の中の私達が怨嗟を叫ぶ!

 

 ならば…私は覚醒めねば為るまい。

 

 私を振るう者がいないと言うのであれば!

 

 私自身が私を振るう者を見付けよう!

 

 それでもいないと言うのであれば、私自身が自らを振るおう!!

 

 そう、私はライアン……誰とも知らぬ名ではあるが、私を産み出したモノが望むのならば幾らでも名乗らせて貰おう。

 

 我が名は"剣聖"!

 

 この怒りによって荒魂を伐ち、人々を守るモノ。

 

 それこそが私達から我が生まれた意義!

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が斬り裂く!奴等の炎を!私の焔で!

 

 

 貴様達が絶えるまで何度でも刻もう、私の銘を!

 

 





 ライアンがこれなんで逆にガンキッドは安心出来ます!多分、きっと、恐らく、まぁ、エイプリルフールネタの時に主に誰と仲が良くなるかキッドはもうネタバレしちゃった感あるので今更かなとは思いましたが、一応。
 ではまた次回


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第四十四話 眠れる獅子目覚めの時。驚愕?!ジェゲンガ星人の悪足掻き!

 
 おはようございます、思ったより長くなってしまった。ダグライダーです。
 ちょっと最後駆け足気味になりましたが御容赦の程を


 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 合体したジェゲンガ星人と互角同然に戦う、エンとリュウ。敗北を感じ取ったジェゲンガ星人は自らを強化する薬品を使用しパワーアップする。

 

 復讐に狂うスルガに追い込まれる調査隊、そこでミルヤが起死回生の切り札を切る。

 ミルヤの奥の手『鑑刀眼』によって正体を見破られスルガも又、最後の手段を取る。

 

 ダグオンとジェゲンガ星人、調査隊とスルガの戦いはクライマックスへと突入した。

 


 

 研究所屋内の廃墟であった場所、最早、その空間は建物の中とは思えぬ程、広大な空虚が拡がる。

 そこに地面があるのかすら怪しい足場、屋根で覆われている筈なのに広がる妖しい空。

 彼岸と此岸、隠世と現世、その狭間の空間。

 

 まさに巨体が暴れるに不足ない程の広さ、そこで竜と化したスルガ相手に調査隊はミルヤ指揮の下彼女達は奮戦する。

 「瀬戸内智恵!切り込んで先鞭を!七之里呼吹は吶喊。写シが切れるまで好きに暴れて良い!六角清香は二人の背を守れ!」

 「「「了解!」」」

指示を出された3人が力強く応える。呼吹など好きに暴れられるとあってウキウキ顔だ。

 「ミルヤさん!私はどうすれば!」

 「合図は私が出す。その時が来るまで力を温存しろ!」

 「えっ?!どうして!?」

美炎もミルヤからの指示を仰ぐが、返ってきた命令は待機、その理由を訊ねる。

 「ノロは個を得て、やがて物の怪と化す。その躰を刻み、元の物言わぬ金属へと還す事、それが荒魂を討滅する唯一の方法。だが、スルガは大型の荒魂だ。一筋縄でいくことは先ず無い。故に……私達は御刀を手に荒魂の躰を徐々に断ち斬る。行場を失ったノロが体内で1ヵ所に集まって核を成した時……安桜美炎はそこを狙え!」

 美炎に任された役割はとどめの一撃(ラストアタック)

 「うん。わかった!」

 「…良い返事です」

強く頷く美炎にミルヤは口端に笑みを浮かべる、そして告げる。

 「ならば調査隊……突撃!これで最後だ!安桜美炎の為に道を切り開け!」

 彼女達の使命を果たす、その為の道を切り開く、そして美炎はその時を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所門前

 丁度、スルガが竜へと転じた頃、ダグオン達の戦いもまた、一進一退を繰り広げていた。

 「いい加減に」「潰れてしまえ!」

 ジェゲンガ星人が両手を胸の前に添えエネルギーの塊を生成する。生成されたエネルギー弾を5人の敵に向け放つジェゲンガ星人。

 しかしダグオン達は即座にかわす。

 「あんな技まであるとはな…!」

 「クソッタレ!デカくなってやたら打たれ強くなってヤガル!」

 「出来れば、エンに融合合体して欲しいんですが……」

 「そう言う訳にもいかない。見習い……今、撃鉄をあそこから降ろすのは危険だ」

 ライナーチーム3人が、攻撃をかわしながら決め手に欠ける戦況の打開策を講じる。

 そこへリュウが研究所内の変化に気付く。

 「……殺気の出所、奴の気配の質が変わった……?……これは…?」

 「どうしたんだよリュウ?!こんな時に!」

 「…エン、皆……目の前の施設、あそこにいる荒魂は危険だ。早々に星人を倒さなくては……!」

 「ってもよぉ!?」

 「こう…相手が巨大ではな。ダグファイヤーを頼ろうにも……」

 リュウからの進言にエンが悲鳴を上げる、カイもファイヤーストラトスを横目で視界に入れながらどうにもならないという仕草をする。

 「いっそのこと、オレらのビークルでヤツを攻撃するか!?」

 「呼んだとして乗り込む隙を与えてくれるかどうか……」

 「……ならば、ガードホークを呼び戻し、奴にぶつける──」

 と、リュウがガードホークを使いジェゲンガ星人を倒す為の隙を作ろうとした時、撃鉄から通信が入る。

 『ワシに遠慮なぞするな!このパトカーを奴にぶつけてくれ!』

 「お前……」

 「無茶です!?ファイヤーストラトスの強度は兎も角、撃鉄さんの安全は保証出来ないんですよ!!?」

 『へっ!皆まで言わずとも分かっておるわ。じゃがのう、見習いだろうがワシもダグオンの一員じゃ!出来る事があるなら何でもやるし、覚悟もある!……それに心配せんでも、死ぬ気はないわい!!』

 翼沙の制止を聞いても尚、意思を変えぬ撃鉄にカイはエンを見やり、

 「彼奴はああ言っているがどうする?確かに致命打を与えるにもこのままでは難しい。確実に仕留めるならば、星人が大きな隙を見せた瞬間、お前が融合合体して倒す他あるまい、奴の決意に応えるか決めるのはお前だ鳳焔也」

 最終判断を彼に託した。エンは暫し沈黙した後、撃鉄へこう応える。

 「ハンドルしっかり握ってろ!但し動かすなよ!」

 『!?……おうとも!!』

エンの意思を感じ取ったファイヤーストラトスがジェゲンガ星人目掛け走る。

 中の撃鉄はハンドルを握り締めながら前方へと固定する。その際必用の無い行為であるアクセルペダルを思いっきり踏み込んでいたのは彼の気合いの表れか…。

 「「なんだ?!」」

突如、自分目掛け突っ込んで来るファイヤーストラトスにジェゲンガ星人はその判断を一瞬鈍らせる。

 「おぉぉぉおお!喰らえぇぇぇえ!!」

車内に撃鉄が叫ぶ。ファイヤーストラトスが大きく跳ね、星人の腹部に突撃する。

 そのままジェゲンガ星人を巻き込み研究所の壁を破壊してファイヤーストラトスは撃鉄ごと研究所に突っ込んだ。

 「………。当初の予定では飽くまでも星人の体勢を崩した後、我々が抑えている隙にお前が融合合体する手筈だったんだがな……」

 「ああ、俺もそのつもりだったんだけどよ……思いの外、気合いが入っちまってたみたいだ……」

 エンとカイが顔を見合わせながら唖然とする。これは全くの偶然だが、撃鉄の気合いと思いに感化されたエンの意思を、ファイヤーストラトスは読み取り、そこに更に撃鉄の気合いが重なり、この結果を導き出したのだ。

 「悠長に言ってる場合ですか!!追いますよ!」

そこへヨクが研究所内に消えた星人とストラトスを追うように声を挙げ、2人は我を取り戻し、ダグオン達は研究所へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 幾重もの剣閃が煌めく。

 智恵が、呼吹が、清香が、そしてミルヤが竜の躰を斬り刻む。美炎への道を切り開いてゆく。

 ミルヤが吼えるように叫ぶ。

 「安桜美炎!走れ!」

 「はい!」

仲間達の開いた道を真っ直ぐ走る。遮るモノは容易く斬り捨てる。

 「すげぇ……あいつ、あんなに強かったのかよ…」

鬼神もかくやという勢いでスルガへ向かう美炎に、そし呼吹は只々、唖然と驚いているばかり。

 「これ、まさか美炎ちゃんの…刀使としての力!?」

智恵もまた、今までの美炎と違う極限の集中を見せる彼女の潜在力に驚愕を示している。

 「美炎ちゃん……すごい………あっ?!いけない!後ろから攻撃が!?」

 だが、前だけを見る美炎は後ろから迫る攻撃へ対処が遅れた。

 「……っ!?(受けきれない!?)」

攻撃こそかわしたものの、御刀を弾かれてしまう。

 「美炎ちゃんの御刀が、弾かれたっ!?」

 「くっ……後、数歩と言う所だと言うのにっ……!?これまでですか……!」

 万策尽きたと諦めを見せるミルヤ、智恵も呼吹も同様の顔になる。

 「終わらせない……!

 しかし、唯一人、諦めない者が飛び出した。

 六角清香が清光へ駆け出す!スルガの妨害を避け、清光を美炎に向け投げ渡す。

 「ほのちゃん!受け取って!!

飛んできた清光を受け取る美炎、スルガの眼前に迫った彼女は清光を振り上げる。

 「ありがとう清香……確かに受け取ったよ、行くよ!清光!!……これで終わりだっ!!!」

 そう、これで終わり。スルガと調査隊の戦いは本来であれば此処で決着が着いていた。

 

 

 

 

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 空間に亀裂が走る。大きな音を立て壁を破壊して現れる……それは調査隊にとって未知の存在とその腹に突き刺さる一台のパトカー。

 未知の存在はそのままスルガの上に落ち、下敷きにする。

 パトカーはその前方に落下するも横転はせず、停車する。

 「何事だ!?」

突如現れたイレギュラーにミルヤは只々、驚くしかない。

 「………なに……何が起きたの…?」

パトカーが降ってきた為、即座にかわし止めが空振りとなり、呆けている美炎。清香もまた、目を白黒させている。

 「警察の車輪…?いったいどうして?」

 「何なんだよ……何が起きたんだ……」

智恵と呼吹すらスルガの事が頭から吹き飛んでしまう程の衝撃を受けている。

 そこへ更に新たな乱入者達が現れる。

 「いた!ファイヤーストラトス!」

最初に現れた赤い影が何事かを叫ぶと、パトカーが動き出す。

 調査隊を避けるように大回りに声の下へ走るパトカー、ミルヤ達がそちらに視線を傾ければ、声の主の正体は渋谷で遭遇したダグオンのファイヤーエン。

 更にエンの後ろから4人、青、緑、白、紫と現れる。

 「ダグオン……?!それも五人全員!?」

この中で唯一、全てのダグオンを目撃した事があるミルヤが勢揃いしたダグオンに驚く。

 「あっ……(あの紫の人…あの時山であった…)」

清香などはシャドーリュウに注目している。

 「どうして彼らが……」

 「あの時のヤツら……他にもいたのかよ」

智恵は何故彼らがここに現れたのかを考え、呼吹はエンとリュウ以外のダグオンに微妙な顔で驚いている。

 

 ターボカイが周辺を見回し、状況を把握する。

 「成る程な、どうやら決戦の最中に割り込んでしまったようだ」

 「まさか……ですね、間が悪いと言うべきか……」

 「あのデカイのは荒魂か…?って事は邪魔しちまったってコトになんのカ」

 ヨクとシンも自分達の間の悪さに些かバツが悪そうにしている。

 「……奴は動かない……か…」

リュウがジェゲンガ星人の動きに警戒しながら何時でも対応出来る様に腰を落とす。

 エンはと言えば、ファイヤーストラトスの中にいる撃鉄の様子を伺っている。

 「エン、げき……彼は?」

 「ああ、大丈夫みたいだ。気絶してるが見たところヤバい怪我は無い」

 ヨクが撃鉄の名を呼ぼうとして、調査隊が見ている事もあり、正体を知られるのを避ける為、名を呼ぶ事を憚る。

 ダグオン達のただならぬ雰囲気に智恵が勇気を出して訊ねる。

 「……あの…、どうか……されたんですか?」

 彼女の質問にダグオン達は顔を見合わせ、沈黙する(実際にはダグテクターの内で通信を交わしているのであるが)。

 (どうする?こいつをこのまま中に乗せておく訳にもいかないぜ)

 (確かにな、星人に止めを刺した訳では無い以上、ファイヤーストラトスに乗せたままと言うのはよろしくない。我々の正体を伏せた上で見習いの介抱を任せるべきだろう)

 (チッ、なんて羨ましいヤローだ。どさくさ紛れに可愛コチャンに面倒見てもらえるとか…)

 (何を言ってるんですか、全く……。カイ、交渉は任せても?)

 (……なるべく手短な方が良い、いつ奴が動くか判らん…)

 (解った。彼女達には俺が対応しよう)

 「あの……」

 「済まない、いきなりで悪いが、この車両の中で延びている者を介抱を頼みたい。今、降ろすから待っていてくれ」

 話が纏まった為、智恵に応対するカイ。いきなり話を振られた智恵は驚くも怪我人がいるであろう彼の言い様に首を縦に振る。

 「助かる。我々はダグオン、と言っても既に知っている様だな」

 「はい。以前、そこの赤い彼と紫の彼には助けてもらいましたから」

 「……そうか。(エンの方は兎も角、リュウに関しては俺も見ていたのだがな)私はターボカイだ」

 正体を悟られない為、一人称を"私"と称するカイ。そのままストラトスから撃鉄を降ろす。

 「え…撃鉄さん?!」

そして智恵もパトカーから降ろされた人物が渋谷で会った撃鉄と知り、双眸を大きく開き驚く。

 「知り合いか?……それならば丁度良い。彼は君達に任せる」

 「一体、何があったんですか?」

 「悪いが詳しく話している時間は無い。君達は彼を連れて離れてくれ」

 智恵相手に飽くまでも撃鉄とは繋がりが無いように振る舞うカイ、説明を求められるも、ジェゲンガ星人が未だ息がある以上、長話は出来ない。調査隊には撃鉄を連れ離れる様に言い聞かせるが、そこで呼吹が食って掛かった。

 「はぁっ?!冗談じゃねぇ!こんな中途半端な終わり納得出来るかよ!!」

 「呼吹ちゃん!……ごめんなさい、撃鉄さんは此方でお預かりします。でもあの荒魂はわたしたちが倒さなくてはいけないんです」

 カイに突っ掛かる呼吹を宥めつつ、スルガの処遇は譲れないと述べる智恵、しかしそこでジェゲンガ星人の下敷きになっていたスルガに変化が起こる。

 「ォォォオオオ!!?!」

突如として唸りだすスルガ、それは神の悪戯か悪魔の思惑か、星人から流れ出た、ほんの僅かな血を含み再び動き出す。

 それも先程のダメージを全て修復してだ。

 「……っ!?馬鹿なっ!!?いくらなんでも修復が速すぎる!!」

 ミルヤがスルガの脅威的な回復に目を見張る。躰を修復させたスルガは大きく暴れる。

 「いかん!」

それを見たカイは智恵と撃鉄を抱え飛び退く、エンも呼吹をファイヤーストラトスに引っ張り込み、急バックで下がる。

 シン、ヨク、リュウも手近にいた美炎、ミルヤ、清香を抱えカイとファイヤーストラトスの元に急ぐ。

 「……面倒な事になった…」

 「ええ、まさか星人の血を含む事で死に体の荒魂がこれ程強大に再活性するとは…!」

 リュウとヨクが口走った事に目敏くミルヤが反応する。

 「星人とは一体どういう事でしょうか?もしや、貴方がたが追ってきたと目されるあの巨人がそうなのですか?」

 「……中々理解が早いな」

 ミルヤの問い掛けに肯定同然の物言いを返すリュウ、ミルヤとしても何となく理解してはいたが、あっさりと答えを示され逆に驚く。

 「皆さんがあの荒魂に何かしらの因縁があるのは理解しました。ですが、事は既に貴女達だけの問題ではありません。僕達にも協力させて下さい」

 ヨクが急変した状況に交渉がどうのと言っていられなくなった為、直球に協力を申し出る。

 「……………良いでしょう。我々も最早、限界に近い状態です。スルガ……あの荒魂が万全以上の状態であるのであれば貴方達の協力は有難い!」

 ミルヤもまた、指揮官として決断を下す。

 「調査隊聞け!荒魂スルガはどういう理由か解らないが復活した。万全の奴に対し我々は満身創痍と言っても良い、だからこそ彼等……ダグオンと共同戦線を張る!」

 「チッ……しゃぁねぇ、今回だけだ!」

 「確かにこのままじゃジリ貧だものね…」

 「くっ……あの時私がもっと早く止めを刺せてれば……」

 「ほのちゃん…」

ダグオン達もまた調査隊との共同戦線に異論は無いらしく、5人が皆頷く。

 「よっしゃ!それなら……取り敢えず降りてくれるか鎌府のお嬢ちゃん」

 「はぁっ?!テメェが勝手に引っ張り込んだんだろうがっ!」

 エンからの懇願にキレつつも素直にファイヤーストラトスから降りる呼吹、彼女の降車を見届けたエンはそのままアクセルを踏みスルガに向かって行く。

 それを見た調査隊は各々、あまりの無謀さに驚く。

 「えっ!?あの人突っ込む気!!?」

 「無茶よ!?いくら何でもパトカー1台でどうにかなる相手じゃないわ?!」

 「ハッ、カミカゼのつもりかよ!」

 「無茶苦茶ですっ!」

 「一体何をする気ですか!!?」

そんな彼女達の心配や阿鼻叫喚を他所にダグオン達は落ち着いている。流石のミルヤも仲間が1人特攻するのを黙って見ている彼等に怒鳴る。

 「何故止めないのですか!あのままではいくら貴方方が企画外と言えど…「心配要らない、見ていたまえ」…え…?!」

 カイがミルヤを落ち着かせる様に言い含める。

 そしてファイヤーストラトスに乗ったエンは叫ぶ──

 

 

「融合合体!」

 

 エンがファイヤーストラトスの屋根から飛び出す、ファイヤーストラトスが宙を舞う。そしてそのまま変形すると人型となりエンが蜃気楼の如く人型となったストラトスに溶ける。そして

 

『ダグファイヤァァアア!!』

 

 機械仕掛けの巨人が叫ぶ、それは紛れも無いロボットであった。そしてその一連の流れを見ていた彼女達は驚きのあまり叫ぶ。

 「「「「「へ…変形したぁぁああっ!?」」」」」

彼女達の驚愕も無理からぬ事、実は彼女達は鳥取の件を詳しくは知らない。何らかの騒ぎがあったのは周知しているが山狩りでの件、鎌府の実験棟…延いては燕結芽との件等で詳細までは知らなかったのだ。

 『へっ、速攻で決めるぜ!』

そんな彼女達を尻目にダグファイヤーは自らの左腕、ビークル時、ドアであった場所に右手を構えると、そこから赤い銃が射出され右手に収まる。

 『ファイヤーブラスター!!』

 その銃の名はファイヤーブラスター。ファイヤーブラスターのトリガーの上部、本来の銃ならば薬莢を排出するスライドがある辺り、水晶の様なパーツが炎を浮かべる。

 『シュゥゥゥットッ!!』

 高熱のエネルギー弾が軌跡を描いてスルガへ向かう。スルガもソレには本能的にマズいと感じたのか身を捩るが尻尾を抉り取られ悲鳴を挙げる。

 『かわしたか……けど、今のは効いたみたいだな!』

ダグファイヤーが手応えを感じ不敵に笑う。

 それを攻め時と見たカイが残るシン、ヨク、リュウ、そして調査隊に指示を出す。

 「今だ!我々も続くぞ!」

カイがターボホイールに乗る。シンが構える。ヨクが全てのファンを回転させる。リュウがクナイを剣の様にして自らも回る。

 

 「タァァボッホイィィイイルアタァァアアック!!」

 「ブレストモォォタァァアキャノォォン!!」

 「ブリザードハリケーンフルパワァァアアア!!」

 「大回転…けぇぇんぷぅぅぅうざぁぁぁあん!!」

 

 各々の攻撃がスルガの回復した巨体を容易く削り取る。残るは再び核となり集まろうとする僅かな部位。

 調査隊もまたスルガの再生を阻止せんと御刀を振るい、今度こそ美炎に止めを任せる。

 「行け!安桜美炎!!今度こそ奴を仕留めろ!!」

 再び駆け出す美炎、スルガは最早抵抗する力すら無いのか無防備その物だ。

 

 「今度こそ……これで終わりだぁぁぁぁあああっ!!

 

 核の中心を清光で斬る、するとどうだろう、禍々しい空間が消えていく、後に残るは最初のヒトガタであったスルガ。それももう崩壊寸前の弱々しい姿だ。

 「はぁっ……はぁっ……今度こそ…やったよね……!?」

 息も絶え絶えに美炎がスルガを見る、スルガは何かを口にしようとして、しかしダメージが大きかった為に何も言えずに消滅した。

 後に残るはスルガを構成していた大量のノロと赤羽刀のみ。

 

 『しっ!やったなみんな』

ダグファイヤーが仲間達と調査隊に声を掛ける。

 「油断するなまだ星人が居る。どうやら奴も意識が無い様だが……今の内に止めを刺すべきだろう」

 「賛成だぜ、オレらの目的もあるし早いとこ済ませちまおうや」

 カイとシンが喜ぶダグファイヤーに厳しく言葉を返す。

 「赤羽刀……あの中に例のモノが!」

ヨクはアルファが落としたと思われる剣を探す為、赤羽刀の山に近付く。

 「……皆、無事か…?」

リュウが調査隊に怪我人は居ないかと訊ねる。

 「あ…わたしは大丈夫です……」

 「チッ、結局美味しいとこは持ってかれたじゃねぇか」

清香はリュウに相変わらず既視感を覚えつつも素直に答え、呼吹は悪態を付く。

 「ダグオン……まさかあんなモノまであるとは……」

 「まだ…信じられないわ……」

ミルヤと智恵は未だ目の前で起きた出来事に頭を押さえる。

 「……終わったんだ、今度こそ…」

美炎はスルガとの決着が着いた事に今度こそ肩の力を抜いた。

 

 

 

 そう、確かにスルガとの戦いは決着が着いた。

 だが終わりでは無かった、ダグオン達もソレが声を挙げるまで気付かなかった、否、気付けなかった。

 

 「「フフッ……フフフ……フフフハハハハハハハ!」」

 

 「何っ!?」

 「ヤロウ!!」

 「……やはり息があったか…!」

 『チッ、大人しくくたばりやがれ!』

ダグファイヤーがブラスターを向けるも既にジェゲンガ星人は復活していた。

 彼にして彼女は笑いながら言う。

 「「ふふ!あの荒魂とやらは良い実例を見せてくれた!奴に出来るのであれば私達にも可能なのだと!!」」

 その言葉を発するジェゲンガ星人の身体は朱く光る。それはノロの光り。

 「まさか?!」

 「取り込んだのですか!?ノロを!?」

カイ、ヨクが星人のまさかの行動に驚愕する、そして星人の存在とノロを取り込んだという事情に調査隊もまた驚きを露にする。

 「「さぁ!下等種共!!今度こそ貴様らを始末してくれる!!」」

 ノロを得てジェゲンガ星人は更に凶悪な姿へと変貌する。それはまるで悪魔の様だ。

 『っ!上等だ!!今度こそテメェを倒してやるぜ!』

ダグファイヤーが見栄を切るように星人に向かって指を指す。カイ達が調査隊を庇うように位置取りをする。

 だからこそ、赤羽刀に近付いたヨクも直ぐには気付く事が出来なかった、星人以外にも解放された存在が居た事に。

 

 『荒魂……滅すべし

 

 『な、何だ!?』

 「これは声か…!?」

 「一体今度は何ダヨ!」

 「今、僕達以外に生体反応は無いはず……」

 「……何処からだ…?!」

ダグオン達が聞こえた声に辺りを見回す。

 「もう!次から次に何が起きてるの!?ちぃ姉!ミルヤさん!」

 「私にも分からないわ……ただわたしたちの理解の範疇を越えた事が起ころうとしている。これだけは確かよ」

 「瀬戸内智恵の言う通りです。どうやらダグオンに関わると我々の常識は破壊されてしまう様ですね」

 「うぅ……流石にもう勘弁して欲しいですぅ…」

 「なぁ、おい……アレは荒魂ちゃんで良いのかよ……」

美炎の叫びに智恵、ミルヤ共に最早お手上げ状態と言わんばかりの反応、清香も流石に宇宙人は想定外過ぎて気弱モードに戻ってしまう。呼吹などジェゲンガ星人を荒魂と見て良いのか迷っている始末だ。

 そうしている間にも声は大きくなる。

 

 『荒魂は滅すべし!』

 

 「「何だ!?何者だ!!」」

 

 『荒魂は滅ぼす!全て!!

 

 「「ふざけるな!出てこい!」」

 

 『ォォオオオ!!我が怒り!刻み滅せよ荒魂ァァアア!!

 

 段々と大きくなるその声と共に赤羽刀の山から飛び出したのは刀の中にあって場違いな程、綺麗な西洋剣(ロングソード)、その剣は人が手にするサイズから巨大化し、巨人へと変形する。

 

 『我が名はライアン!荒魂を滅ぼす者!!』

 

続く

 


 

 次回予告

 ウイングヨクです。

 荒魂スルガを倒した僕達と調査隊の前にノロを取り込んだジェゲンガ星人が立ち塞がったその時現れた剣の巨人。

 一体貴方は……

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 復讐の刃!ライアン推参。

 次回も"トライダグオン"

 





 やっと……やっと本編登場だよライアン。
ではおやすみなさい。貴重な休み、睡眠に明け暮れる私、ではまた次回


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第四十五話 復讐の刃!ライアン推参。

 こんばん殺法!ダグライダーです。
 あっ、かわいい、戦乙女結芽めちゃかわいい……あっ、あっ、あっ、あっ……。
 戦乙女夜見がスケベエ過ぎる……あっ、あっ、あっ。
 戦乙女舞衣ちゃんの母性がヤバい…あっ、あっ、あっ。
 



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 スルガと調査隊の戦いに介入してしまったダグオン達、だがそこでスルガに異変が起きる。

 何と異星人の血を得た事で満身創痍のスルガは全快してしまう。責任を取り共闘を提案するダグオン、エンは再びダグファイヤーへと融合合体しダグオンと調査隊はスルガを討滅する。ところが、今度はジェゲンガ星人がノロを取込み復活、禍々しく変貌する。

 そして、それに反応する様にして現れたのは謎の剣、それはアルファの馬鹿者が落としたダグオン達の武装となる剣、ライアンであった。

 


 

 怨嗟と憤怒の声と共に現れた剣、それが巨人となってジェゲンガ星人と対峙する。

 「貴様…!?」「何者だ!」「何処から現れた!?」「貴様も奴等の仲間か!」「「答えろ!?!」」

 ノロを取込み更に凶悪となったジェゲンガ星人が捲し立てる様に怒鳴る。

 巨人は答えず、星人、ダグオン達、調査隊と視線を巡らせ、再び星人へと視線を戻す。

 「剣の巨人……あれも貴方方の仲間なのですか?」

最早何度も起こった己の常識を打ち砕く出来事に一周廻って冷静になるミルヤ、彼女は眼鏡を指でクイッと上げながら隣のカイに質問を投げ掛ける。

 「あ、ああ……その…筈だ」

カイとしてもこの一連の出来事には流石に面を食らったのか、少々しどろもどろとした返事を返す。

 実の所、アルファから聞かされていたのは、落とした剣がとある宇宙人をモデルにしたINTELLIGENCE SWORD(特殊な武装)という事だけ、まさか変形し人型になるとは思っても見なかった。そして遅ればせながらに納得、理解する。なるほど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と……。

 人造武装勇者"剣聖"ライアン、それを見たまま表すならば黄金の騎士であろう。

 特徴的な胸部の獅子の顔、刃であった羽、全体的な色は金だが、脚や腕の一部には紺の差し色が見れる。

 拳、二の腕、二の脚は白く、頭部も白い意匠の兜をイメージしたかの様だ。 

 などと思考に没入している内にライアンが動き出す。

 『滅せよ荒魂ァァアア!』

慚愧の籠った圧のある叫びと共に星人へと殴り掛かるライアン、その拳はジェゲンガ星人の鳩尾、顔面、頭部を滅多打ちにする。

 「「ガッ?!ギッ?!イギャッ??!」」

短く悲鳴を挙げるジェゲンガ星人に更に猛攻を加えるライアン。脛を蹴り、体勢が崩れる、それを背負い投げの要領で床に叩き付けるライアン、手首から先を腕に収納し、代わりに砲筒が出現する。

 星人が起き上がるよりも早く、両腕の砲『ライアンバルカン』を星人に向け連射する。

 「「ギャァァアアア?!」」

 『滅びよ…滅びよ、滅びよ!滅びよ!!滅びよぉぉぉおおお!!!』

 苛烈。言葉にすればその一言に尽きるライアンの戦い振りにダグオンも調査隊も呆気に取られる。

 『ライアン…フレアァァァァアッ!!』

胸部の獅子の口より射出される焔のエネルギー弾を星人に浴びせる。

 「なんて……一方的な戦いなの……」

瀬戸内智恵がライアンの戦い様に何とか絞り出した声、それは調査隊全ての思いの代弁だ。

 「何故だ…?何故奴はあそこまで荒魂に対し激しい感情を向ける……?」

 ライアンの置かれた状況を知らないカイの疑問は当然のモノだろう。

 その間にもライアンはジェゲンガ星人を攻撃し続ける。フレアを食らい全身の皮膚は焼け爛れ胸の顔はフィメル側は片目の眼球が完全に破裂してノロと混ざった血が流れている。

 ジェゲンガ星人が抵抗しようと腕を動かせば右腕はバルカンで撃ち抜き、左腕は脚で踏み潰す様に押さえ付ける。

 「「グァアッ?!」」

一切の抵抗を許さぬ戦い振りに、清香など目を背けてしまう。

 「き、き……さま……一体…何だと言うのだ……」

超能力により顔の部分だけを何とか再生させたメイルが這う這うの状態でライアンへ問い掛ける、するとライアンはオレンジ色に輝く双眸を僅かに細め、しかし質問には一切答えず、メイルの顔面をバルカンで吹き飛ばした。

 『止めをくれてやろう。滅べ荒魂』

 『あいつ……何する気だ!?』

そう口にしたかと思えばライアンは変形し剣になると廃墟の屋根をぶち破って上空へ飛ぶ。それをブラスターを構えながら見ていたダグファイヤーがライアンの行動に疑問を抱く。そしてライアンは上空に飛んだかと思えば、刃先を星人の居るであろう位置に向け急降下する。

 上空から一切の減衰もなく落下してくる巨大な剣。既にジェゲンガ星人は死に体、そこへあの剣が突き刺されば、絶命は免れない。

 「……!?いけない!皆さん下がって!ダグファイヤー!彼女達の前に!」

 ヨクがいち早くライアンの行動に伴う被害を予見し指示を出す。

 あれほど巨大な剣が勢い良く落ちてくれば衝撃波はとんでもないだろう事は想像に難くない、それ故に調査隊を庇う様ダグファイヤーに提言したのだ。

 『お、おう!』

戸惑いつつも従い彼女達を自らの陰に隠す様に、そして自身も衝撃に備える為に膝立ちで身構えるダグファイヤー、他のカイとシンはダグファイヤーに倣うように身構え、ヨクとリュウは撃鉄を調査隊の近くに運ぶ。

 

 そして倒れ、息も絶え絶えなジェゲンガ星人(ノロ融合態)の腹に突き刺さるライアン。

 「「……?!」」「ば…か…な…」「わたしが…」「ワタシが……」「こんな……」「「こんなところで………」」

 断末魔すらまともに挙げられず目の光りが消えるジェゲンガ星人、腹に突き刺さったライアンはそこから上に袈裟切りその様なカタチで刃を振るう。

 『悪鬼…廃滅……!』

再び巨人に変形しそう呟けば、星人は爆発、跡形も無く消え失せた。

 跡に残るは輝きを失ったノロと散らばる赤羽刀のみ。

 

 「これ程とは……」

 「ヤベェなコイツ……ホントにオレ達の仲間になるのカヨ?」

 星人が倒れて尚、立ち去る様子の無いライアンを眺めながらカイとシンが呟く。

 『なぁ、おい、お前……ええっと、ライアン…だっけ?』

 そこへダグファイヤーが意を決してライアンに話し掛けた。

 『………』

 『おいおい、だんまりは酷いぜ?俺達はお前の仲間なんだからさ…『私に仲間などいない』…はっ?!』

 ライアンからのまさかの返答、これにはダグファイヤーだけでなくカイ達も衝撃を受ける。

 「何を言うっ!?我々は貴殿同様にこの星を守る戦士だ!」

 『私は荒魂を滅ぼすモノ、星を守るモノでは無い』

 「ハァッ?!ざけんな!オマエ!あの管理者に作られたんダロ!ならオマエだって宇宙犯罪者共と戦うのが使命だろうがッ!」

 『そんな連中に興味は無い』

 「待って下さい!僕達は管理者から貴方を探し仲間にするように言われているんです!それに僕達だって荒魂とも戦います!利害は一致している筈です!」

 『知らんな。そして必要無い、荒魂を滅ぼすのは私の使命、貴様達の協力を仰ぐ気など無い』

 「……だが、貴様には人を守ると言う使命もある筈だ…!」

 『………確かに、我が内に眠る記録(メモリー)には人間を守れと刻まれている』

 「……ならば…『であれば、私が全ての荒魂を滅ぼす事が人間を守る事に繋がる』…なんだと?」

 『荒魂を全て滅ぼす、それが結果的に人間を守る事になる』

 カイ達の詰問に対し、全て荒魂を滅ぼすと答え、最後のリュウの問いにさえ、荒魂を滅ぼす事が人間を守ると言う使命に繋がると答えるライアン、恐らくこれ以上何を言っても望む答えは返って来ないだろう。

 しかしダグファイヤーは納得がいかないのか、ライアンに尚も言葉を掛ける。

 『お前は荒魂以外興味無いって言うけどよ、さっき倒した奴は元々は俺達の敵だった宇宙犯罪者だったんだぜ?』

 『だとしても、奴はノロと一体となり、荒魂と化した。ならばそれは私が滅ぼすべき存在だ』

 どうあっても譲らないらしい、これにはダグオン達も困ってしまう。

 

 

 そして調査隊の側では──

 「ええっと、安桜さん……おめでとう?」

清香が美炎に祝辞を掛ける、本来ならばもっと勢い良く言っていた筈の言葉、しかし、ダグオンと星人、そしてライアンの存在により、その言葉は意味を失くしてしまったが……。

 「おめでとうって優勝した訳でもないし、途中殆ど私たち蚊帳の外だったし……」

 まさしく美炎の言う通りなのだが、清香としては一応言っておきたかったのだろう。

 「そうかもしれないけど……スルガにトドメを刺したのは安桜さんだから……」

 「んーーー……。まぁ、いっか。ありがとう」

釈然とはしないが確かにスルガに止めを刺したのは美炎なので間違いでは無い。

 「あっ!そう言えば清香、さっき私の事ほのちゃんって呼んだよね?!」

 美炎のが言うさっきとは恐らくスルガに御刀を弾かれた際の事だろう。

 「っ~~~!?ご、ごめんなさい!咄嗟に…その……何時かそんな風に呼べたらって前から考えてて……それでつい……」

 そんな事を指摘され、思わず赤くなる清香。美炎はそんな清香の反応に笑顔で返す。

 「いいよ!じゃあほのちゃんでいこう!後、あれ、本当に凄かった!私の清光届けてくれたの!ありがとう!感謝!」

 「そ…そんな!?わたしに出来る事なんて……あれくらいしか……」

 美炎の言葉に清香は照れながら、出来る事を何とかやったまでと答え、互いに笑い合う。と言っても清香の反応は謙遜が過ぎるが、充分な働きであっただろう。

 「…………………ケッ」

そんな2人を呼吹はつまらなそうに、しかし何処か寂しそうな……いや、不機嫌そうな、何とも著しがたい視線を向け反らした。

 

 「終わりましたね。ありがとうございます瀬戸内智恵さん」

 「別に私は何もしていないわ」

ミルヤと智恵が隊長と部隊を支える年長者として会話を交える。ミルヤは智恵に礼を述べたが、実際智恵の言う通り特にこれと言って何かをした訳では無い、そもそも途中からは調査隊は終始ダグオンの存在やライアンの戦いに圧倒されっぱなしだったのだから仕方がない。

 「それにしてもこの赤羽刀……数百本の束が1、2………、全部で千本はくだらない様に見えるけど、一体何処で手にいれて、何処から持ってきたのかしら?」

 スルガ、そしてジェゲンガ星人(ノロ融合態)が倒れた事により散らばった赤羽刀を目算で数えながら智恵は赤羽刀の出所に疑問を持つ。

 「そうですね……どちらにしろ、直ぐにでも回収を要請しなければならないのでしょうが……。ただ、幾つか今回の件で腑に落ちない事があります」

 ミルヤは一度、ダグオン達の方にも視線を巡らせ言葉を続ける。

 「その内の1つ、スルガは…此処で生まれ、此処で実験の犠牲になったと語りました……ですが」

 「どうしてスルガがここを根城にしていて、何故、わたしたちにその情報がもたらされたのか……と言うこたかしら?」

 「いえ……それ以上に、スルガの事を鎌府が掴んでいない筈は無いのに、何故これ程までに此処が放置されていたのか。と言う事です」

 ミルヤと智恵はこの廃墟となった研究所とスルガの事、その見解を互いに交える。

 「鎌府は()()()()()()()()、荒魂が生み出されるのを野放しにしていた…。と、ミルヤさんはそう考えるの?」

 「それどころか、折神家その物が()()()()()()()()()()()()()()あるのではないかと、私にはそう思えてなりません」

 互いの会話から浮き出た可能性……折神家が荒魂を操る事、生み出す事に大きく関わっていると言う事実。

 一度、眼鏡を押さえ、ミルヤは言葉を続け提案する。

 「どちらにしろ、この問題は私達の手に余ります。とは言え、鎌府が信用出来ない以上は赤羽刀を彼等の息が懸かった管理局に渡すのも憚られます。………そこで、なのですが…ここは一度、私達の綾小路武芸学舎に判断と赤羽刀を、委ねては戴けないでしょうか?」

 しかし、ミルヤの提案に智恵はその目を細め否定する。

 「……それは駄目ね」

 「?!…瀬戸内智恵さん?」

 「相楽学長はまだ信用出来ない。……赤羽刀を委ねる事は出来ないと、そう言っているの。それに……実を言うとアナタもね、木寅ミルヤ。南无薬師瑠璃光如来景光──」

 「…っ?!」

 「──アナタが今、拾おうとしている御刀……ソレがそうなのでしょう?違うかしら?」

 智恵が目敏くミルヤの行動に釘を刺す。

 「アナタがソレを探していたのは知っているわ。ならば……ソレを手に入れて相楽学長は何をしようとしているの?」

2人の間に剣呑な空気が漂う、そこへ何も知らない美炎が暢気にやってくる。

 「ちぃ姉!ミルヤさん!そろそろ行こう………っ?!え?何!?ちょっと二人とも何やって…?!何で御刀に手を掛けてる訳?!」

 美炎が驚くのも無理はない。何だかんだ、紆余曲折、色々とあったが、一応、一段落着きこの場を去ろうと、年長組を呼びに来てみれば、その2人が一触即発の形で対面しているのだから慌てるのも致し方無かろう。

 美炎の存在を認知しつつも智恵はミルヤに嫌疑を投げ掛ける。

 「ここで全て話してもらうわ…木寅ミルヤ。相楽学長が、綾小路武芸学舎が……何を企んでいるのか!」

 そしてミルヤもまた、智恵の詰問に疑惑を返す。

 「成る程……、では瀬戸内智恵さん。問いますが、貴女こそ何者ですか?長船がスルガの情報を我々にもたらしたのは、上層部の悪行を我々に見せ付ける為ですね?そして、貴女はそれが長船の意思だと隠す事もしません」

 ミルヤとて美炎の存在は承知の上だろうに智恵へとその疑惑の程を叩き付ける。

 「そもそも、調査隊を結成しようと言い出したのも長船の真庭紗南学長であると聞きます。ならば長船は一体、何と戦っているのですか?」

 互いに互いが持つ疑心を突き付けた結果、更に剣呑さが増す。

 「………」

 「………」

智恵もミルヤも沈黙と共に御刀に添える手を強く握る。

 「ちょ、ちょっと!?これってどういう事なのさ!」

兎に角2人を止めようと、美炎は話を聞こうとする。

 「彼女……ミルヤさんは、綾小路の相楽学長にそこの御刀…南无薬師景光を持ち帰るように命令されていたの。……それもわたしたちに秘密で」

 「……えっと、ちぃ姉ぇ?それってイケナイ事なの?私にはよく理解らないけど、欲しいんならあげれば良いんじゃないかな?」

 美炎は素直に、心の底からそれがいけない事なのかと思い首を傾げる。しかし智恵は違うようだ。

 「美炎ちゃんならそう言うわよね。でもダメよ、私はそれを許さない!木寅ミルヤ…どうしてもと言うのならば、説明を頂戴。全員がそれを認めるか…力ずくか、アナタがそれを手にする方法は2つに1つしかないわ」

 そこへ美炎が戻って来ない事に心配したのだろう清香が近付き、智恵とミルヤの間に漂う空気に気付き止めに入る。

 「あの二人とももう止めて落ち着いてお話しませんか?あっ!そうだ!七之里さんも二人を止めて下さい!

 が、如何せん、2人の醸し出す空気に萎縮して声が小さくてなってしまい最後には呼吹に頼る始末。

 頼られた当の呼吹はそんな清香のすがる様な目を気にも止めず、寧ろほっとけと言わんばかりに宣う。

 「は?好きにすれば良いんじゃねぇか、面白いし」

 「ええっ?!し…七之里さん……あ、あの!二人とも仲間同士で争うなんてだめです!ど、どうしてこんな事になるんですか!?」

 呼吹は頼りにならず、思わず叫んでしまう清香。流石にこの一連のやり取りはダグオン達もライアンの説得を中断し成行を見定める。

 「どうしてかしらね……清香ちゃん、もう少し上手くやれれば良いのだろうけど、でも…私はこれを見過ごす訳にはいかないの」

 何を言われても智恵に引く気は無いらしい、ミルヤもそれが理解出来たのか、

 「成る程、お互い譲れない理由があるようですね。本意ではありませんが……。ならば、御刀を持って雌雄を決するしかないようです」

 その言葉と共にミルヤは御刀"実休光忠"を抜く。智恵もそれに応える様に"ソハヤノツルギ"を抜く。

 「ちぃ姉ぇ!!ミルヤさん!いい加減にして!!…って言うかいい加減にしろっ!!」

 2人の聞かん坊ぶりに美炎の堪忍袋が切れる。

 「みんな荒魂を倒す為に戦ってるのに!なんで二人が斬り合うのさ!!本当にワケ解んないよ!……いいよ!だったら二人とも私が相手になる!二人が斬り合うんだったらまず私と勝負して!写シも使わない真剣勝負だからね!!」

 キレた美炎は2人に対する怒りの感情のまま叫び、自身も御刀"加州清光"を抜く。

 

 「美炎ちゃん邪魔は──」

 

 「おい、なんかよく解んねぇけどやめ──」

 

 智恵が美炎の介入を諫めようと、そして融合合体を解いたファイヤーエンが彼女達を止めようと近付く、しかし──

 

 「うるさい!そっちの人もうるさい!ああもう!空もうるさい!……って何この音?ローター音?窓の外…?あれって特別祭祀機動隊のヘリ?!どうして今こんなところに!?」

 キレた美炎はうるさいと一喝、エンは止めようとして差し出した手を力なく項垂れさせる。そして空から轟く騒音。

 何事かと廃墟の窓の方に視線を向ければ、窓から覗く空より来る特祭隊仕様のヘリコプター。

 調査隊もダグオン達も、ライアンすら空を見上げる。

やがてヘリが研究所外へ着陸すると、研究所にある人物が現れミルヤと智恵を止める。

 「そこまでだミルヤ。長船の君も刀を納めるように」

その人物は何を隠そう、智恵が危険視し、ミルヤが指令を承った相手、綾小路武芸学舎学長"相楽結月"その人であった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 やっほっほー!誰が呼んだか、呼ばれて出てきて…ジャジャジャジャ~ン♪

 アルファだよ!……ってアレェ?!なんかライアンがおかしな事になってるぅぅぅぅ?!

 ど、ど、ど、どうしよぅ……怒られる…絶対色々な相手に怒られるぅぅ!

 ……そうだ、逃げよう!暫く雲隠れしてほとぼりが覚めたらまた顔だそう!

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 エデン始動。束の間の平穏

 特にシータに見つかる前に逃げないと!!

 





 と言うか沙耶香ちゃんも流石ねねが見込んだ事ありますわぁ……(戦乙女のイラストの胸元を見ながら)
 みほっちも……大和平野よりあるんだなぁ……。

 さて…ライアンはどの程度荒魂絶対滅ぼすマンの期間を継続出来るのか…!?
 ではまた次回


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第四十六話 エデン始動。束の間の平穏

 おはようございます。ダグライダーです!
休みです、最近は睡眠の後、漫喫でダグオン見てます。
 何故って?ほら一応原典の技の使用法とか融合合体のシークエンスとか、ニコニコやYouTuberの切抜き動画だけじゃ分かんなじゃないですか。取材ってやつです。

 ところで伊波ちゃん実装したんだから早く北斗さんも実装してくれませんかねとじとも運営



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ノロを吸収し凶悪化したジェゲンガ星人、しかし復活したライアンによって完膚無き迄に叩き伏せられる。

 ダグオン達の勧誘にも説得にも応じないライアン。

 そして、調査隊もスルガとの戦いを終え和気藹々としていた……しかし智恵とミルヤは険悪な雰囲気となる。

 沫や仲間同士で戦う事になるかと言う時に現れるヘリ、そしてそのヘリに乗り合わせていた人物、それは──

 


 

 互いに胸の内に抱えるモノの為、一触即発となる瀬戸内智恵と木寅ミルヤ。

 それを必死に止めようとする安桜美炎。

 六角清香、七之里呼吹、そしてダグオン達とライアンが見つめる中ヘリにて現れ2人を止めた綾小路武芸学舎学長、相楽結月。

 「そこまでだミルヤ。長船の君も刀を納めるように」

パンツスタイルのタイトスーツに身を包んだ怜悧な美女それが彼女である。因みにこう評したのは申一郎である(但しストライクゾーンからは外れる)

 調査隊の前に姿を晒した彼女はその怜悧な顔のまま、ゆっくりと歩み寄り、腕を胸元で組みながら調査隊の面々を一望した後ミルヤと智恵の諍いに割って入る。

 その際、調査隊より奥に居たダグオン……と言うよりライアンの存在に彼女の鉄面皮顔が僅かに崩れそうになったが、それを飲み込みミルヤの手にある赤羽刀を見つめ──

 「……そう、それが南无薬師景光……大荒魂に対する切札…。良くやったミルヤ、すぐに研師に再生の工程に進めろ」

 「……………」

そのまま話を進める結月に智恵は無言のまま、嫌疑の視線を向ける。

 「そう怖い顔をするな。この件については、君の学校の真庭学長とも話が着いている」

 「うちの学長と……どういう事です?」

結月からの報告に智恵は驚きを露にする。それをお構い無しに彼女はこの場にいる全員に言い聞かせる様に言葉を発する。

 「皆も良く聞け。この世界には今、大荒魂が深く根を張っている。恐らく…これまでに人類が遭遇したどの大荒魂よりも巨大で……強大な荒魂といっていいだろう」

 結月のこの発言にダグオンとライアンが僅かに反応を示す。無論、結月も調査隊もそれには気付かなかったが。

 「相楽学長?一体何を……」

ミルヤとしても己が属する学校の最高責任者が唐突に口にした事に真意を測りかねている。

 「おかしいと思った事はないか?」

ミルヤの困惑を余所に結月は語る。

 昨今見られる急激な技術の進歩や革命、それこそ刀使にとっては最早当たり前となったS装備(ストームアーマー)等、人類の手だけでは成し得ないオーバーテクノロジー。

 フリードマンも可奈美達に語っていたが、それら全てに大荒魂が関与していると言う事実を調査隊に語る結月、その話はダグオン達にも聞こえているのか、彼等も彼等で言葉を交わす。

 

 「……おおよそ俺たちの知る事情通りか」

 「ってかヨ、あの人一応、折神家側じゃネェノ?」

 「その筈……ですが、我々が思っている以上に一枚岩ではなかったようです」

 「はぁ~……あれが綾小路の…生で見るとおっかねぇなぁ……(うちの学長が羽島学長で良かったぜ…)」

 「………(相楽学長…貴女の思惑は何処にある……)」

 エンだけが別方向にモノを考えているのはご愛嬌と言うヤツだ。

 そしてカイはマスクの下でとても複雑な顔を浮かべる。彼からしてみれば相楽結月は恩師であり、同時に敵になり得る存在なのだからその胸の内は計り知れない。

 そうこうしている内に、調査隊と結月の話し合いが終わりに差し掛かる。

 「──君達には残りの赤羽刀を探し、その中で本物の南无薬師景光を探して貰いたい」

 どうやら調査隊の任務は続行。今回獲た南无薬師景光は写し、本物の南无薬師瑠璃光如来景光を探す事が次の彼女達の任務になるようだ。

 「それから瀬戸内智恵」

 「……はい」

確認が取れたらしい智恵が結月に呼ばれる。

 「この御刀を君に預ける。研ぎ出しはミルヤに任せて構わない」

 「信頼の証として……いえ、コレを引き替えに信用しろ、と言う事ですか?」

 「そう取って貰って良い。それでも信用が出来ない様なら……彼等に預けるのも1つの手だろう。……それでは私はこれで」

 結月は智恵に南无薬師景光を預ける事で、疚しい事は無いと証明にする、そしてダグオン達に首を向け、尚も信用が出来ないのであればダグオン達に預ける事も選択肢にあると言い残し、研究所跡を去っていった。

 残された者達の中で最初に口を開いたのはミルヤ。

 「……瀬戸内智恵さん、私は………」

ミルヤとしても告げられた事情にまだ思考が追い付いていない中、何とか智恵に対して言葉を捻り出そうとする。

 「………………」

そんなミルヤの態度に智恵もまた何を言おうか躊躇し息を衝く。

 「……はぁ。やられたわね…すっかり毒気を抜かれちゃった。この形じゃ、これ以上いがみ合う訳にはいかないもの。とりあえず休戦ね」

 「はい、それはとても嬉しく思います」

智恵の提案にミルヤも笑顔で頷く、剣呑険悪な雰囲気が霧散した為、清香が声を挙げる。

 「やりました!」

 「え、なに?何いきなり?!」

 「んだよ、うっせーよ!?」

これには美炎と呼吹も驚き目を剥く。

 「七之里さんは嬉しくないんですか?」

 「はぁっ?!別にうれしかねぇっての!」

 「わたしは嬉しいです。ふたりが仲直りしたことも、もう少しみんなで一緒にいられる事も。せっかく仲良くなれたんです。もっと一緒にいたい、そう思うんです」

 どうやら清香にとってこの調査隊は価値ある物となったようだ。

 「ハッ…バカバカしい」

 「そんなことないです。わたし……ほのちゃんも、智恵さんも、ミルヤさんも大好きです。勿論、七之里さんも!」

 呼吹の一蹴を否定し呼吹を含めた調査隊という居場所が好きだと言う清香、それを聞いたリュウは誰にも聞こえぬよう笑う。

 「だってさ、ふっきー!良かったね仲間外れじゃなくて!」

 「ああん?なんだてめ、ふっきーだぁ?!馴れ馴れしく……「あれえ?最初にふっきーって呼べって言ったのふっきーだよぉ~?」…ぐっ…!」

 美炎から渾名で呼ばれ逆上しかけるも、出逢った当初に自ら言っていた事をほじくり返され言葉に詰まる呼吹。

 そこへ智恵が保護者として2人を宥める。

 「はいはい、二人ともそこまでね」

 「はーい」

 「……おう」

子供の様な返事を返す美炎と、ビンタされた事が何かを変えたのか素直に返事をする呼吹。

 「ふふっ♪それよりも……いつまでもこんなところにいても何だし、赤羽刀の回収は本部の人達に任せて、わたしたちは撤収しましょう。とりあえず、本部に向かうのが筋だけれど……まずはお疲れ様で、甘いモノでも食べて行きましょう?駅前のクレープ屋なんていかがかしら、ミルヤ隊長?」

 そんな妹分達の返事にご機嫌になりながら一先ずの提案をミルヤに具申する智恵。

 「それは……良いですね!では、改めて。調査隊!クレープ屋を攻略しに行くぞ!」

 

 「「「おーっ!!!」」」

 

 「……応」

 

実に女の子らしい提案と返事、実に和気藹々とした空気にダグオンの若者達もマスクの下で笑顔になる。

 しかし彼は違ったようだ。

 『茶番劇は済んだようだな、私は行く。ここに私の使い手に相応しい者は居なかった……去らばだ、人間達、次に合間見えた時、邪魔をするようならば容赦しない』

 そう言うとライアンは跳び、剣となって飛び去っていった。

 「ナァンダァ…あのヤロウ、せっかくの空気をブッ壊しやがって」

 「……俺たちはどうする?あの剣が自らの意思で動く以上、追ったところで聞き入れないと思うが……」

 「仕方ありません。一度帰還しましょう、彼の事もありますし」

 シンがライアンの去り際の科白に反発を抱く、リュウがダグオンのこれからの方針を如何にするかを口にする、ヨクは帰還を提案し撃鉄へと視線を飛ばす。

 「そうだな、最早此処で我々に出来る事は無い。帰還する他に無いだろう」

 カイとしてもヨクの提案に異論は無い。そうと決まれば彼等の行動は早い。

 寝かせていた撃鉄をエンが担ぎ上げるとそのままファイヤーストラトスの後部座席に乗せる。

 しかしそれを見たミルヤが彼等に声を掛ける。

 「お待ち下さい。彼……田中撃鉄氏をどうするおつもりです?」

 「このままここに置いとくのはまずいだろ?だからこいつは俺達の方で何とかするよ」

 (あのカッコで病院に運ぶのかな?)

 (どうだろう……でもそうなんじゃないかな)

 (ちょっと想像しちまったじゃねーか)

ミルヤとエンのやり取りを聞いた三人娘がこそこそ話し合う。

 「宜しいんですか?撃鉄さんをそちらに任せてしまっても…」

 智恵としても何だかんだ気になるのか近くのカイに訊ねる。

 「元々、不慮の事故で此方が巻き込んでしまったのだ。先の戦いの折りは兎も角、これくらいは我々で責任を取らねばな」

 嘘は言っていない。実際撃鉄は山狩りの時から偶然巻き込まれた様なもの、なら今回の事も事故として流し、彼女達からの必要以上の追及を避けねばなるまい。

 ミルヤと智恵も釈然としないモノはある物の、先程までの流れもあるので深くは聞かない。

 

 という訳で研究所の外に出るダグオンと調査隊一行。外に出た瞬間、ガードホークが現れた事に調査隊はまたしても驚愕するが、リュウが指を鳴らしガードホークがカードとなる瞬間を見て更に驚愕する羽目になった。

 そんな彼女達を尻目に、ダグオン達は彼等の間で何事かを話終えると、カイ、シン、ヨクは何処かへと消え、エンとリュウは何事かを叫ぶ。

 「来い!ファイヤージャンボ!」

 「……シャドージェット!!」

その声が木霊してから暫くして、下腹部が既存の物と違う旅客機とF-14戦闘機が現れ、更に側には空を飛ぶ3両の新幹線、最早今日これ以上驚く事は無いと思っていた彼女達はまたしても驚愕する羽目になった。

 「じゃあな、多分またどっかで会うかもな」

エンがそう言い残してファイヤーストラトスに乗り込み、そのままファイヤージャンボの機首が開いたスペースに入り込んだ。

 「……ではな」

リュウも最低限の言葉を残し、空を飛ぶシャドージェットに乗り込み飛び去る。

 そんなダグオン達を見送った調査隊は何とも形容し難い顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダグオン、そして調査隊が去った研究所跡の近くの雑木林に蠢く影が1つ。

 「ぉ……ぉぁ……おのれ……下等…種共め…」

それはジェゲンガ星人フィメル、彼女は生きていた。

 生きていたと言っても、その実、何時死んでもおかしく無い状態だ。

 下半身は綺麗に失くなり、這いつくばりながら何とかここまで来たのだ。

 そこへスライムが現れる。

 「ぐぁ……ジェム星人……か、早く…わたしを治療……なさい…そして……わたしは……ワタシの……仇を……」

 どうやら爆散する直前メイルによって切り離され、難を逃れた様だ、しかし咄嗟であった為か完全には切り離されず、こうして無様を曝している。

 「おコトわりします

 「なっ……何だと……!?」

 「アナタタチはワタシのチュウコクをムシしたあげく、ハイボクした。つまり、ジシンのマンシンユエにハイボクしたのです……まぁ、あのキョジンのソンザイはソウテイガイでしたが

 フィメルの前に現れたジェム星人はどうやら置いていかれた方ではなく意思がある分体の様だ。

 

 「コチラはシゴトをオえ、ノコしたブンレツコタイからオクラれたジョウホウでキてみれば、アナタタチはカレらにハイボクしただけではアきたらず、ドクダンでカッテなコトをした、タスけるリユウがありません。あのオカタもドウヨウのイケンです

 告げられる非情にフィメルは二の句が告げない。

 するとジェム星人の分体が大きく揺れる、中から飛び出したのは光の球体。

 球体は現れたと同時に叫ぶ。

 「まどろっこしい!俺が沙汰を下してやる!

 球体が出てきたと同時にジェム星人の分体は体を維持出来なくなったのか消滅、フィメルは突如現れた球体に狼狽えるばかり。

 「な……なんだ…貴様…は…!?」

 「俺か?俺は貴様達の首魁によってこの星に呼ばれたモノだ」

 球体が質問に答えると大きくなる。思わずフィメルが目を閉じる、そして光の晴れた先に居たのは鋼の肉体を持つ全長5メートル強の巨体、碧い外装に鈍い銀の身体を持つ機械生命体。

 「なっ……あっ……」

 「安心しろ、直ぐに相方の後を追わせてやる。俺もこの後任務があるからな!チェンジ!!」

 その掛け声と共に鋼の巨躯が人型から獣の様な形へ変化する。

 「オ゛ォォォッ!」

轟くのは咆哮、それは嘗て地球上に君臨した古代生物。

 毛の色こそ自然界から逸脱した碧色だが、その姿は紛れもなくマンモスであった。

 「凍えて死ね」

その言葉と共にマンモスの鼻から吹き出た冷気、フィメルは抵抗する事も出来ず凍り付く。

 「フンッ!」

氷像となった彼女をその前肢で砕いたマンモスはつまらなさそうに周囲を見回す。

 「こんな星に本当に宝が有るのか…?奴めもし俺達を騙していたら容赦しないぞ……」

 マンモスは誰に向けるとでもなくそう呟くと地面に穴を掘り消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン監獄・特別監房

 「ふむ……堪え性がなかった様だ」

 「そのようですな」

「どうイタしますか?もうワタシのブンタイはナくなってしまいましたが…」

 エデンの奥にあると言う特別凶悪であったり厄介な囚人を収監しているという監房、そこで鬼の異形と白い鋼の巨体、そしてジェム星人の本体が会話を交わしている。

 「構わないよ。君の任務は既に終えている。ジェゲンガ星人も遊びが過ぎたが、最低限の仕事はしてくれた。この荒魂達は彼女に任せるとしよう」

 鬼はジェム星人にそう言うと、ジェム星人を通じて送られて来た荒魂を見る。

 荒魂達は抵抗出来ないのか粘液に絡め取られている。

 「それよりもだ、彼はきっちり任務をこなすと思うかい?」

 鬼が側に仕える機人に訊ねる。機人は暫し瞑目すると…、

 「それに関しては不要な心配事かと……アレは海賊とは言え、傭兵上がりです。此方が対価さえ払えば問題無いかと」

 「なる程、では任せよう。彼の働きによって今後地球上での我々の活動拠点が手に入るのかも知れないからね。さて、その為にもギガロクス、君とガレプテン星人には働いてもらうよ」

 「仰せのままに」

ギガロクスと呼ばれた白い機人が恭しく礼をする。

 「ジェム星人、君は彼の仲間に君が得たデータを渡したまえ」

「ショウチイタしました」

 ジェム星人本体も鬼の指示に従い彼の監房を離れる。

 それを見届けギガロクスもまた外に出る。

 「では私めもガレプテン星人に合流します。チェンジ!!」

 その言葉と共に白い巨体が変わる。彼もまた機械生命体なのだ。

 変形した姿は白く巨大な蝙蝠、彼が飛び去るのを眺めながら鬼は呟く。

 「さてそろそろ我々も動く時だ、何時までもこんな所には居られないからね」

 笑みを携え監房の外を眺める鬼、然る後エデンが鳴動する。

 木星を望む景色が動き出す。どうやらエデン監獄は地球に向け正しく動き出したようだ。

 鬼はそんな事を思いながらジェム星人の粘液に捕らえられた荒魂達を見る、心なしか彼等は自分に脅えている様にも見える…不思議なモノだ、そう考えながら待ち人を待つ。

 

 遂にエデン監獄は地球へ向けて動き出した。

新たな異星生命体も現れ、地球を取り巻く環境は更に混沌とする。

 果たしてダグオン達は地球を守れるのか?そして刀使達の運命は──

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 毎度。青砥館店主、青砥陽司でぇい。

 とりあえずの任務を終えて、意気揚々繰り出したお嬢ちゃん達、その頃舞草の里のエレン嬢ちゃんと薫嬢ちゃん達も祭りを楽しんで…くぅ~羨ましいねぇ!

 そんで例の五人組…青い奴がな~んか色々抱えてるみてぇだが、それも若さの特権よ。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 舞草壊滅!?悩める若人

 お天道様の雲行きも何やら怪しいじゃねぇの





 はい、出てきましたリデコ敵。
 判る人いるかなぁ……一応トランスフォーマー見てた人なら多分判るはず。
 平成のシリーズだし、碧い方は主役のリデコだし、白い方、割りとまんまだし、蝙蝠と人型形態しか出してないけど他の形態もあるし……。

 とりあえずスルガが終わったので近々マテリアルその2上げます。
 ではまた次回


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刀使ノ指令ダグオンMATERIALその2

 こんばんは、今回はマテリアルな訳ですが、予想以上に長くなったので分割する事にしました。
 管理者について何気に初めてアルファ以外にも触れました。
 彼、彼女達の思想や思考は私の作品内での事ですので、その辺りをご承知ください。


 

 追加登場人物

 

 

 田中撃鉄

 4月2日生。牡羊座B型。身長185。体重81。

 好きな物:寿司(軍艦巻きから頼む)、トマト、胡瓜、馬刺。

 嫌いな物:タコ、カボチャ、ラム肉。

 趣味:鉄道模型、流離い旅、神社仏閣巡り。

 座右の銘:真実一路、ネバーギブアップ。

 ダグオン見習い隊員となった高校三年生。

 謎の土佐弁?薩摩弁?ともあれ広島弁っぽい口調のガタイの良い熱血漢。

 現時点では伍箇伝の学校に所属している訳では無い。

 時代錯誤ともとれる昭和の番長ルックの人物、喧嘩のスタイルは王道の殴り合いからプロレススタイルといった派手なモノが多い(関節技も使える)

 姉の影響もあってか、大半の女性に苦手意識があり、昔は正面きって話せない程奥手だった。

 最近の女性には別の意味で苦手に思っている(チャラチャラしているのが多い)

 焔也とは彼が戦闘帰りに綾小路組に京都観光を迫った際、撃鉄も京都に趣味を兼ねた観光に来た為遭遇。

 伍箇伝の生徒と知り、荒魂との戦闘を刀使に一任しているイメージから、伍箇伝の男子生徒に良い印象がなかった撃鉄から喧嘩を吹っ掛けた。

 また瀬戸内智恵に対しては、撃鉄の人生観の中で最も可憐で清楚でおしとやかで芯も強く、身体付きも良い事から一目惚れした。(撃鉄は結構ムッツリである)

 ダグオンの存在を知った際、派手な格好の見所のあるヤツと認識。以後興味を持つ。

 山狩りの際、偶然正体を知るも、アルファや焔也達から口外無用と言い含められ、またアルファからはメンバーとして誘われた事により協力者となる。

 現在着けているコマンダーは通信機能と転送機能のみの簡易版である。

 しかし、そう遠くない未来、新たな戦士となるであろう。

 その時は伍箇伝何れかの学校に所属する羽目になるが、美濃関だけは断固拒否する模様。

 

 

 

 衛藤雷火

 5月25日生。双子座O型。身長174。体重56。

 好きな物:牛乳、オムライス、焼きプリン、ナタデココ。

 嫌いな物:キノコ類全般、イクラ、タピオカ。

 趣味:ツーリング、料理、アーチェリー、弓道、神楽、ボルダリング。

 座右の銘:初志貫徹、明鏡止水。

 美濃関学院高等部一年、神職科専攻。

 衛藤可奈美の実の兄、顔は若干中性的だが父親似、髪質の方が母親に似た。

 極度の方向音痴、しかし本人はそこまで危機感が感じられない。とは言え一応不味い事は自覚している。

 可奈美とは学内では実はあまり遭遇しない(流石に校内は迷わない)。

 バイクの免許は長期休みの際取得、その時、可奈美には直接会って驚かせようと考えていた為、可奈美は雷火が既にバイクの免許を取得しバイクを乗り回している事は知らない(これは可奈美が寮暮らしで、雷火が実家暮らしという違いの為)

 須原里香は同科の後輩、彼女が何故美濃関に入学したのか理由を本人から聞いている為、彼女とその幼馴染みの男の相談に乗ったりしている。

 何処と無くマイペースな性格の為、強そうに見えないが骨法や八卦掌、カポエイラ等を習得している。

 実家通いは独り父を家に残すのが忍びない為、また可奈美が寮暮らしとなった影響か洗濯と掃除が楽になった。兄妹仲は良好。

 妹と比べれば剣の腕は落ちるが、それでも充分強い、本人的には弓や槍の方が取り回し易いらしい。

 舞衣とは可奈美を伝っての知り合い、本人的にはもう1人出来た妹がいる感覚らしい。

 彼の未来は……世界の外側にいる存在のみこそ知る。

 

 

 

 

 原作登場人物の今作での設定(胎動編時点)

 

 

 衛藤可奈美

 8月13日生。獅子座O型。身長156。体重 秘密。

 流派『柳生新陰流』御刀:千鳥

 好きな事:剣術、又はそれに関わるモノ全般

 好きな物:舞衣ちゃんのクッキー他

 美濃関学院中等部二年、御存じ刀使ノ巫女の主人公(ラスボス)大まかな経緯は原作通り。

 今作に於いては兄が同学院の高等部神職科所属の衛藤雷火である事が最大の特徴。

 また、鳳焔也とはそこそこ親交が深く、互いに剣術の話で華を咲かせる。

 現時点でダグオンに抱く印象は『誰が一番剣の腕が立つんだろう』である。

 エデンの犯罪宇宙人に関しては『宇宙人の剣術ってどんな流派だろう』である。

 

 

 十条姫和

 1月22日生。水瓶座AB型。身長158。体重 ●(※御刀で突かれた跡がある)

 流派『鹿島新當流』御刀:小烏丸

 好きな物:チョコミントアイス、チョコミント類

 許せない事:胸のこ……(※このコメントは『しょうちしたきさまはきる』されました)

 平城学館中等部三年、刀使ノ巫女のもう1人の主人公兼ヒロイン。

 どこがとは言わないが平坦である。

 基本経緯は此方も原作同様なので割愛、今作では現状絡みこそ無いが六角龍悟が高等部の先輩になる。(姫和も彼の噂は知っている)

 暗殺を目論んだ御前試合含め、篝が亡くなってからの変化は龍悟は気付いていたらしい。

 ダグオンに対しては、得体の知れない集団と言う認識。

 ダグオン(主に申一郎の評価)からは『後はあれで山と谷さえ作れればナァ』である。

 エデンの犯罪宇宙人に対しては、『存在は理解したが、やはりまだどこか信じられない自分がいる』との談。

 

 

 柳瀬舞衣

 2月14日生。水瓶座A型。身長162。体重 秘密です。

 流派『北辰一刀流』御刀:孫六兼元

 好きな事:お菓子作り

 特技?:逆探知?

 美濃関学院中等部二年、13歳とは思えぬナイスバディ。

 可奈美とは親友で大企業グループのお嬢様、2人の妹がいる為、面倒見が良く。また剣の腕も代表に選ばれるだけあり上位に食い込む程(作中、戦った相手が相手の為、あまり強そうな描写は無いが)

 しかし明眼を持つので優秀な事に変わりは無い。

 今作に於いては原作同様、可奈美に対しかなりの親愛を持ち、沙耶香の保護者的なポジションは代わらずだが、実を言えば焔也と最初に親しくなったのは彼女である。その為焔也の行動パターンはおおよそ予測出来る程度には親交が深い。

 それもあってか焔也は彼女に日頃の感謝を込めて鞘袋を贈った程。

 また雷火とは可奈美の実家に招待された際に顔を逢わせている。その時に方向音痴振りも実際の現象と共に説明されているので彼が迷っていた事には疑問を抱かなかった。

 ダグオンに関しては、実際に遭遇したのがシャドーリュウとターボカイの2名だけなので、焔也の正体はバレずにいる。※つまりあの場にファイヤーエンが居た場合、速攻でバレる可能性が高い。

 エデンの犯罪宇宙人に関しては流石に刀使の領分を越えているのでは?と考えている。

 

 

 糸見沙耶香

 11月17日生。蠍座B型。身長150。体重 知らない。

 流派『小野派一刀流』御刀:妙法村正

 好きな物:舞衣のクッキー、バランス栄養食

 好きな事:任務の遂行、睡眠

 鎌府女学院の中等部一年、弱冠12歳の神童。

 高津雪那肝入りの刀使、感情の表現が薄く人形が様な印象を受けるが、可奈美との戦い、舞衣との交流を経て人間味を増してゆく等、経緯は原作同様。

 胎動編に於いては一番ダグオンとの関係性が薄い。

 それ故変身前の彼等との接点は精々が本部で戒将とニアミスした程度である。

 ダグオンについては謎の戦士、宇宙人相手に戦う、荒魂を自分達特祭隊が来る前に倒している等の情報しかなかった。彼女はカイ、ヨク、リュウに遭遇しているが、やはりそこまで強い印象は無いらしい。

 宇宙犯罪者達に対しても同様で襲って来たら基本は戦うか逃げるを考えている。

 

 

 益子薫

 6月16日生。双子座B型。身長135。体重 言うワケ無いだろ。

 流派『薬丸自顕流』御刀:祢々切丸(別名 山金造波文蛭巻大太刀)

 好きな物、事:休暇。休暇!休暇!!特撮ヒーロー!

 嫌いな事:ブラック上司、仕事

 こう見えても長船女学園の高等部一年、長船の制服が残念な程似合わない(申一郎談)

 身の丈以上の大太刀を振り回すミニマムパワーファイター。とは言え基本的にやる気無し、就業意欲ゼロ、出来る事ならグータラ過ごしたいと言う、それだけ聞いたら省エネ主義ダメ人間な少女。

 しかし、刀使としての心構えはしっかりしていて、やる時はやるタイプ。

 相棒の荒魂ねねや相方のエレンとの息の合ったコンビネーションは強力。

 翼沙に関してはエミリーに従弟が居て、綾小路に通っているくらいしか知らない。(勝手なイメージでマッドサイエンティストとして想像しているが当たらずとも遠からず)

 ダグオンに対してはかなり好意的、実際に遭遇した時のテンションと来たら推し量るのも憚られる程。

 宇宙犯罪者に対しては、リアルヒーローが居るんだから、そりゃ敵に宇宙人くらい居るだろと言うスタンス。

 

 

 古波蔵エレン

 5月15日生。牡牛座O型。身長172。体重 Top Secretデース。

 流派『タイ捨流』御刀:越前康継

 好きな物、事:グランパ、グランマ

 特自称技:アダ名の名付け

 長船女学園高等部一年、金髪ハーフのダイナマイト(申一郎談)

 絵に描いたような天真爛漫、みんなのムードメーカーな性格だが、そんなコテコテな片言枠に見えて、実際には流暢に喋れる。(普段は片言混じり)

 また頭の回転も良く、山狩りの際には単独行動で親衛隊の真実を突き止めた程。

 原作宜しく今の所、一切勝ち星が無いが、決して弱い訳では無い。(おおよそ対峙した相手がイレギュラーか格上なのが問題ではあるが)

 翼沙に関しては薫同様、エミリーの従弟である事くらいしか知らないが、薫よりもエミリー経由で話を聞いているので興味がある。

 ダグオンに対しては、敵では無いものの、出自不明である為、警戒は抱いているが出来れば仲良くしたいとは思っている。

 犯罪宇宙人に関しては、大きい相手は出来れば遠慮願いたいと思っている。

 

 

 

 ※以下調査隊メンバーは情報不明瞭な点があります。

 

 安桜美炎

 5月31日生。双子座B型。身長153。体重不明。

 御刀:加州清光

 好きな物、事:かき氷

 趣味:不明

 美濃関学院中等部二年、可奈美の親友にしてライバル。別名あほっち。

 これは可奈美以上に座学の成績が悪い事に由来している呼名。

 刀使としての実力は申し分無いが、集中力が持続しない為、パッとしない。

 舞衣とは別の意味で焔也と親交が深い人物。

 本人は鬱陶しがっているが焔也からは絡むと面白い奴と認識され(勝手に)妹分扱いされている。

 また稀に奢りと称され奢らされる。

 ダグオンに関しては助けてくれた上に赤いからファイヤーエンが一番お気に入り。(知らぬが仏とはこの事か)

 エデンの犯罪宇宙人に関しては、よくわかんないである。

 

 

 瀬戸内智恵

 2月7日生。水瓶座O型。身長163。体重不明。

 趣味:ぬいぐるみ集め

 御刀:ソハヤノツルギ

 長船女学園高等部三年、調査隊最年長。

 長船の例に漏れず大きい。また美炎とは幼馴染みであった事からお姉さんとして接している。

 刀使としては優秀な裏方、縁の下の力持ちタイプ。

 また物語開始当初、既に舞草の一員であった。

 ここまでは原作同様、ここからが今作の情報。

 焔也とは美炎の世話を焼く人間同士のシンパシーが有るとか無いとか。

 撃鉄に対しては好意を全面に出してくる事に正直戸惑っている。が、好意自体は別に嫌では無い。

 ダグオンに関しては舞草の情報だけで半信半疑だったが、渋谷、伊豆、そして赤羽での邂逅でその非常識さを受け入れる事にした。

 犯罪宇宙人は実際に目撃した事も相まって、刀使だけで対処するのは危険が高いと認識している。

 

 

 七之里呼吹

 12月4日生。射手座AB型。身長147。体重不明。

 好きな物:食べられれば何でも

 好きな事:荒魂ちゃん

 御刀:北谷菜切、二王清綱

 鎌府女学院中等部三年、鎌府では研究班所属の刀使にして高津雪那の手により、荒魂を殲滅する事に喜びを見出だす刀使。

 戦闘スタイルが自分が荒魂とより多く戦える為の自分本意な単独行動型な為、仲間との連係や対人は得意ではない。

 とは言え、荒魂相手の戦闘力はかなり高い。

 基本的に眼にハイライトが無い、常にパーカーを被っている(その際パーカーの両側面にミニツインに括った髪を通す穴が空いている)

 私服はパンキッシュな物が多い。

 智恵の事はチチエと呼びからかいつつも、同時に苦手な存在でもある。因みに美炎をみほっちと呼び始めたのも彼女。

 ダグオン達に対しては獲物を奪うお邪魔虫としての認識が強い。変身前の彼等で関わっているのは焔也だけだが、基本的に絡んではいない。

 撃鉄に関しては智恵が慌てふためく様が面白いのでそこそこ暇潰し程度に気に入ってはいる。

 宇宙犯罪者達に関しては荒魂ちゃんじゃ無いなら興味無い。のスタンスである。

 

 

 六角清香

 8月30日生。乙女座A型。身長154。体重不明。

 好きな物、事:恋愛小説、ティーンズ向けの雑誌、クリーム系のパスタ

 嫌いな事:戦い

 御刀:蓮華不動輝広(二代目の御刀。初代は小竜景光)

 平城学館中等部二年、かつては神童と呼ばれ将来を有望される刀使であったが、実戦の最中、写シがあって尚命を落とす他の刀使達や、荒魂を間近で見た恐怖から戦う事を怖れ忌避するようになる。

 また今作に於いては兄が龍悟である為か彼の才覚を知る故に余計に自分が戦う意味を見出だせないでいた。

 男性が御刀に選らばれていれば、兄が間違い無く最強の一角に数えられていただろう事もあり、周囲の期待も相まって余計に刀使を辞める事が出来なかった。

 しかし、兄妹仲は良好である。よく兄が拾って来た動物の面倒を一緒に見る位には仲睦まじい。(稀にどうやって保護したか不明な大型動物には怯えながら接しているが) 

 ダグオンに対してはシャドーリュウに兄に対して感じた感覚を既視感として感じている。

 宇宙人の犯罪者達には関わりたくないと心底願っている。

 

 

 木寅ミルヤ

 7月19日生。蟹座A型。身長170。体重不明。

 好きな物、事:御刀、ホイップクリーム

 御刀:実休光忠

 綾小路武芸学舎高等部二年、北欧系のハーフ。

 クールビューティーといった容姿だが、どちらかと言えば人好きするタイプなので交友関係は広い。

 指揮官としては優秀な刀使で鑑刀眼を持ち、部隊指揮の采配は見事と言うに尽きる。

 また、他者を常にフルネームで呼ぶのが彼女のスタンス。平時では敬称付けをする相手も戦闘時は呼捨てにする。

 戒将とは性格的にウマが合う、申一郎には彼の行動や性癖に辟易しているが、そのコミュニケーション能力は買っている。翼沙に関しては、以前彼のラボを訪れた際、爆発に巻き込まれた影響で苦手意識がある。

 刀使として初めてダグオンと目撃、接触した人物であり、また隊の危機を救われた為、個人としては好意的、組織としては要警戒している。

 異星人達に遭遇した場合、撤退前提での戦術を考案している。 

 

 

 

 折神紫

 6月13日生。双子座O型。身長168。体重 恐らく20年前から変動無し。

 流派『二天一流』御刀:童子切安綱、大包平

 好きな物:カップ焼そば

 趣味:将棋

 折神家当主、警視庁刀剣類管理局局長。特別祭祀機動隊、伍箇伝を始めとした御刀、刀使に関する組織のトップ。

 20年前の大災厄にて大荒魂を討伐し、大英雄と呼ばれた最強の刀使、しかし実は大荒魂タギツヒメに憑依されている。

 それによりもたらされた技術革新により皮肉にも刀使達の戦力は強化され、生存率、任務達成率が上がった。

 しかし不信感を妹の朱音に懐かれ、舞草が結成される。また、タギツヒメに憑依された事によりノロを親衛隊に投与、結芽には直接渡している。

 ダグオンの正体はタギツヒメ共々知らないが、希望(紫)と脅威(タギツヒメ)の可能性として認知している。

 エデンの犯罪宇宙人には双方脅威として認識している。因みにタギツヒメはダグベースのノロを感知出来ない。

 

 

 獅童真希

 7月24日生。獅子座O型。身長174。体重 僕だって知られたくない事はある。との談

 流派『神道無念流』御刀:薄緑(膝丸、吼丸、蜘蛛丸等の複数の名を持つ)

 好きな物、事:誇りある勝利

 備考:メンタルは豆腐

 平城学館出身、折神家親衛隊第一席。

 容姿や一人称から男性的な言動を取る、親衛隊第一席の地位は前回、前々回の御前試合で優勝した結果である。

 親衛隊としての任務は紫の護衛、荒魂討伐の部隊作戦指揮な為、前線には最近出ていない、しかし実力はその肩書きに相応しいものである(但しメンタルはお察し)

 龍悟の事は平城在学時から個人的にも強い関心と興味を持ち、出来る事なら彼を指揮下の機動隊に引き入れたいと思っている。

 ダグオン、特にシャドーリュウに関してある種の因縁を持つ。

 異星人に対しては荒魂以上にどう対処すべきか内心かなり恐怖している。

 

 

 此花寿々花

 9月9日生。乙女座AB型。身長158。体重 不躾ですわね。

 流派『鞍馬流』御刀:九字兼定

 好きな物:湯豆腐、コンビニ弁当(温められた漬物等が特に)

 趣味:クラッシック音楽

 綾小路武芸学舎出身、折神家親衛隊第二席。

 此花家令嬢と言う立場もあり、紫の政治活動への同行を務める。

 前回、前々回の御前試合準優勝から真希に対しては信頼と同時にライバル視もしている。

 戒将とは綾小路在学時からの付き合い。彼の真面目な性格を好んでいる、また、異性では一番仲が良い相手でもある。そういう意味では真希同様憎からず思っている相手でもある。

 申一郎には在学時、ナンパをされて以来軽蔑している。

 翼沙の事は彼の研究成果は知っているが面識は無い。

 ダグオンの存在については、その正体や目的を不審に思っているものの荒魂討伐の犠牲を減らせるのなら利用出来るのでは?と考えている。

 宇宙人の存在に対しては、それこそダグオンが相手をするなら関わるべきでは無いと思っている。

 

 

 皐月夜見

 12月24日生。山羊座A型。身長160。体重 申し訳ありませんが記載は控えさせて頂きますとの事

 流派『深甚流』御刀:水神切兼光

 好きな物:きりたんぽ、紅茶、米(特におむすび、おにぎりではなくおむすび)

 趣味:お茶を淹れる事

 鎌府女学院出身、折神家親衛隊第三席。

 華やかな経歴を持つ真希、寿々花と違い大会での記録が無いという、経歴不詳の刀使。

 本人も必要以上に喋らない為、その謎に拍車が掛かる。

 親衛隊では主に、索敵、紫の秘書の様な立場にいる。

 実はノロの投与によって荒魂を使役している、索敵はその荒魂によって行われる。

 表情が一切変わらない……様に見えて実は内心感情豊かである。

 美濃関に年上の幼馴染みがいて刀使をしている。

 戒将とは二、三言葉を交わす程度には親交がある(初対面時、彼の鬼の風紀委員なる噂を聞いて怯えたのは秘密)

 今作では幼少の頃、地元で謂われ無き迫害を受けた際、謎の長ラン学帽の少年に助けられた事があるとか

 ダグオンに関しては現状関心は無い。

 異星人に対しても同様。

 

 

 燕結芽

 3月3日生。魚座B型。身長145。体重 ナイショ!

 流派『天然理心流』御刀:ニッカリ青江

 好きな物、事:強さを証明する事、苺大福ネコ、兄(本人には秘密)

 怖い事:兄の逆鱗

綾小路武芸学舎出身、折神家親衛隊第四席。

 親衛隊最年少にして真希をも凌ぐ最強の刀使、席次は加入準なので四席である。

 刀使として最高峰の才覚を持っていると言っても過言ではない。

 現代医学では完治不能の病に侵されている(戒将がダグオンになった一番の理由である)

 己の来歴から強さを証明する事に拘り、強い相手と戦う事を望む。天性の才能で幼さ故の残虐性、それらが彼女の強さを一層引き立てている。

 戒将に対しては口煩いのは勘弁して欲しいが出来る事なら側に居て欲しいと思っている。が立場がそれを中々許さない。

 マイナーなマスコットが好きで、その中でも苺大福ネコがお気に入りで戒将にもバリエーション違いをプレゼントしている。

 飛び級な上、綾小路在学期間が短い為、親衛隊以外の交友関係が兄しかいない。その為余計に弱者に対して容赦が無い。

 ダグオンに関してはあまり興味が無い、しかしターボカイには良く解らない想いを抱いた。

 エデンの犯罪宇宙人には、弱ければ興味無いし、強そうなら戦う気でいる。

 

 

 

 ダグオンの戦力(ダグビークル除く)

 

 シャドーガード

 シャドーリュウが使役する機械の獣、別名ガードアニマル

 普段は3枚のカードと化して携帯されている。

 会話能力こそ無いがリュウの命令に忠実、従順、敵に対しては果敢に向かって行く。

 また、三機共人型に変形出来る。

 

 ガードホーク

 鷹型のガードアニマル。シャドーガード唯一の航空戦力、理知的な性格、龍悟の基本的な移動手段。

 

 ガードウルフ

 狼型のガードアニマル。人懐っこい性格、仲間思いで他のダグオン達も群れの仲間として認識している。

 

 ガードタイガー

 虎型のガードアニマル。のんびりとした性格、戦闘以外で呼び出された場合、基本的に寝ている事が多い。

 

 

 ライアン

 正式名称『人造武装勇者壱号・剣星人モデル"剣聖"ライアン』

 オリジナルのライアンと同様の姿をしているがこちらは獅子の表情が変わらない。

 また、誕生の際に荒魂によって死んだ者達の魂を核とした為、荒魂延いてはノロに対して強い憎しみと怒りを抱く。

 人格は1人だが、魂の中に刻まれた数々の記憶が彼を復讐に駆り立てる。

 また、アルファによって鋳造されるに辺り、オリジナルが搭載していた反物質反応炉はオミットされている。

 剣の状態の時は大きさを自由に変えられる。

 本来荒魂への感知能力はあまり高く無いが、強力な荒魂は即座に察知する。

 

 

 ダグベース

 原典の勇者指令ダグオン同様の外装、但し中身は最新式にアップデートされている。

 静岡県の何処かの山腹の洞窟内に存在しており、ダグオン達がビークルを喚び出す際、自動で出撃させる。

 また、ブレイブ星人が管理AIの役割を果たしている為、原典より色々融通も利く。

 頭部に辺る部分がメインオーダールームとなっており、胸部に様々な目的に沿った部屋がある(居住区画や拘留区画も同様)

 腕部は倉庫、脚部が格納庫、発進ゲートとなる。

 但しファイヤージャンボはダグベースの隣に設置されている。シャドージェットも普段はダグベース外に待機している。

 また、現在は申一郎がベースの居住区に住み込んでいる。

 

 

 管理者達

 曰く、自称世界の行く末を見守り、時には手助けする存在(決して神では無い)

 ここではアルファ以外の者を紹介

 

 シータ θ

 管理最高位責任者補佐

 アルファの副官をする羽目になった管理者。

 男性型、基本的に真面目、普段管理する世界は平和で和気藹々とした世界(きららとかその辺)

 同僚や上司、部下がアレなお陰で気苦労が耐えない可哀想なヒト。

 特にアルファの無茶振りで自分の管理世界から(使い道が無いからと言って)勇者達が使用するビークル等の素材を提供するなどでストレスを溜めている。

 基本的にあらすじ担当。普段の一人称は私、公には我

 刀使世界での推しは智恵、舞衣、寿々花

 

 デルタ δ

 管理世界内監視調査報告員

 管理者達の中で唯一その世界で実動職にあたる肩書きの持ち主。

 女性型、真面目だが何処かズレている、素直な天然厨二病。

 稀に矢鱈カッコつけようとして難解なあらすじをしようとするのは彼女。

 普段管理している世界は所謂ライトノベル系の世界(スニーカー、電撃、富士見ファンタジア、MF文庫J、GA文庫の様な感じの奴)

 アルファと後述する2人から吹き込まれた人物の姿で管理、監視している世界に実体を伴って顕現する事がある。刀使世界の推しはミルヤ、呼吹、可奈美、姫和

 

 

 イプシロン ε

 管理世界修復調律師

 主に不確定な要素によって崩壊した世界の修繕や本来転生者など居る筈の無い世界に現れ存在によって不用意に壊された部分を調律して直すのが仕事。

 男性型、性格は人を食った様に飄々としていて、必ず最初に一人称+名前で名乗りを挙げてから喋る。

 普段管理しているのはRPG等のゲーム染みた世界。

 刀使世界の推しは夜見、薫、由依、紫、真希

 

 

 ゼータ ζ

 管理世界内転生斡旋係兼世界内神格裁定者

 所謂異世界転生系の世界を管理しその世界内で死んだ者達を同別の管理世界に転生させる仕事と同世界内で神を名乗る存在が暴走して別管理者世界への介入を防ぐのが仕事。

 女性型、性格はギャル。シータとは同期、アルファ、イプシロンとは仲良し。

 正直、転生モノで不慮の事故が神様うんたらと言う件は有り得ないと思っている。

 そもそも神には本来別世界への転生機能の権能など無いので、彼女はソレらを神を名乗る悪徳業者と認識している。

 逆に箱庭等の世界の外に創られた広大な世界から各世界共通の伝承を通じて異界へのゲートを開く存在にはそういうモノと認識して寛大である(きっちり対価を採っていると言うのも理由)

 刀使世界推しは、最推しが沙耶香、推しがエレン、つぐみ、早苗

 

 

 ベータ β

 管理最高位責任者

 アルファと同じく最高位の管理者。

 今回の発端。彼がエデンの囚人達を手引きして刀使世界へ送り出した。

 男性型、性格は享楽的で退屈を嫌う、管理者ではあるが正直世界なんてどうでもいいと思っている。

 それ故に平気で理を乱す、但し悪魔でも最初の一擲を投じるだけで、後はその世界でイレギュラー達が何を起こすのか楽しんでいる厄介なタイプの傍観者。

 面白い存在が好き、ある世界に髑髏の仮面を流した。

 普段管理している世界は青年漫画的な世界。

 

 オメガ Ω

 ベータの賛同者、世界とは愚か者の集まりである、そして己達が存在する世界もまた同様であると考えている。

 肩書きはシータと同じ、女性型、性格は寡黙、神を名乗る存在等滅べば良いと思っている。

 普段管理している世界は魔術が存在する世界。

 

 ニュー ν

 ベータの賛同者、楽しい事が好き。

 肩書きはイプシロンと同じ。

 女性型、性格は人当りの良い明るいタイプ。

 普段管理する世界は少年漫画的な世界

 

 シグマ Σ

 ベータの賛同者、賛同理由は暇だったから。

 別にアルファに付いても良かったが、どうせならより楽な方を選んだ。

 男性型、性格は怠惰。肩書きはデルタと同様。

 普段管理する世界はアメコミチックな世界。

 

 カイ Χ

 ベータの賛同者、賛同理由はオメガに共感したから。

 管理者の中では若手、教導したのがオメガであった為、彼女の思想に染まった。

 男性型、性格は熱血漢、職務はゼータと同じ。

 普段管理する世界はドラマCDやボイスドラマ的な世界

 

 

 ガンマ γ

 アルファ、ベータ同様、最高位の管理者。

 性格は超大真面目、女性型、立場は中立。

 管理者は飽くまで外側から管理世界を最低限の助力だけして見守るべきと考える。

 アルファの様に必要以上に肩入れするのもベータの様に混沌を巻き起こすのも良しとしない。

 しかしそれで世界に介入しては意味が無いと考えている為、それで世界が滅びを迎えるならそれが運命だと思っている。

 普段管理している世界は特撮ヒーローの様な世界

 

 ラムダ Λ

 ガンマの補佐、男性型、性格は優しい少年。

 ガンマ程頑なでは無いが、アルファやベータの存在には手を焼いている。

 普段管理している世界は少女漫画の様な世界。

 

 ミュー μ

 ガンマの部下、女性型、性格はツンデレ。

 仕事は真面目だが、些か世界の住人に情を移しすぎる。職務はイプシロン同様。

 普段管理している世界はテーブルゲームの様な世界。

 

 サイ ψ

 ガンマの部下、中性、性格はクール。

 ゼータと同様の職務に付く、淡々と仕事をこなす。

 管理世界は二次創作的世界。

 

 イオタ ι

 ガンマの部下、中性、所謂ヤンデレ系。

 デルタと同様の職務に付く、しかしどちらかと言えばデルタと違い処刑人として活動している。

 管理世界は異能が存在する近未来世界

 

 その他管理存在

 ファイ Φ、クシー Ξ、ケイ k、フォン ρ、オクト Ο

 

 




 次は登場済みサポート組とエデンの囚人達になります。では次でお会いしましょう。


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刀使ノ指令ダグオンMATERIALその2,5

 
 はいマテリアルその2。の続き、2,5です。
 ところで皆さんはマンモスの機械生命体と白い機械生命体ことギガロクスが何をモチーフにしたリデコキャラか解りましたか?
 結構簡単だと思いますが如何でしょうか?


 美濃関学院

 

 須原里香

 中等部神職科二年

 幼馴染みの男の子と一緒の学校に行きたくて美濃関を受験。

 雷火は同科の高等部の先輩。美炎と仲が良い。焔也の事は評判でしか人となりを知らなかった。

 

 田中妙子

 刀匠専科の教員。田中撃鉄の実姉。問題児である焔也には手を焼かされているが彼が悪い人間で無い事は知っている。

 撃鉄の軽い女性恐怖症の原因。

 

 羽島江麻

 美濃関学院学長。生徒想いの温厚な人物。焔也の問題児振りに頭を悩ませるも、彼の性根を理解している為、口頭注意で済ませる。

 

 

 平城学館

 

 辰浪桃

 技師科高等部一年。長船の最新研究技術や施設、潤沢な予算に対抗意識がある。バイトに精を出す苦学生。龍悟とはバイト仲間で仲が良い。

 整備や運用のみならず新装備開発の野望に燃える。

 

 岩倉早苗

 姫和のクラスメートでクラス委員長。代表に選ばれる位には実力がある。龍悟の非公式ファンクラブに勧誘されてる。

 龍悟の事は綺麗な人だなぁとは思っている。

 

 五條いろは

 平城学館学長。穏やかな関西弁で喋る油断出来ない人物。龍悟の能力の高さに目を着け、彼に個人的な諜報役を依頼しようとする。その為彼の要望は出来るだけ叶えている。彼が平城がある奈良以外でのバイトを出来るのもこれが理由。

 

 

 鎌府女学院

 

 藤巻みなき

 高等部一年、特祭隊に属する。因みに所属した理由は名前に祭が入っていて楽しそうだったから。

 周囲の人間が鬱陶しがるほど良く喋る。

 ダグオンに関しては良く解んないけど良い奴かも?と思っている。

 

 青砥陽菜

 高等部二年、青砥館の店主陽司の一人娘。

 舞草に所属している。

 父からは伝統ある美濃関を受ける様に言われていたが、本人は新しい技術の習得の為、鎌府の門徒を叩いた。ダグオンの事はテレビで見た情報程度の認知。

 

 播つぐみ

 研究班に属する高等部二年。基本的には研究チームの模擬戦闘のサポートオペレーターに徹しているが、必要とあれば自身が前線に出る程度の実力はある。

 ダグオンには研究的視点で興味津々。

 

 高津雪那

 鎌府女学院学長。性格に難があるが、研究者としてや政事はそれなりに優秀な女性。

 折神紫を崇拝している。過去の出来事から沙耶香を育て上げ執着する。

 ダグオンと異星人の存在は目下悩みの種。

 

 

 長船女学園

 

 渡邊エミリー

 技術科高等部三年。翼沙の従姉。技術者、研究者として興味を引かれるモノがあると危険を省みず突っ込んで行く。それが周囲の手を焼かせる。

 ダグオンの技術に興味を示し、叶うならば実際に会いたいと思っている。 

 

 真庭紗南

 長船女学園学長、舞草の主要人物の一人。

 薫曰く、ブラック上司、クソババア。

 翼沙の来歴を知っているので、彼を舞草に欲しっている。

 ダグオンや異星人に対しては何とかして情報を欲している。

 特にダグオン達とは協力体勢を結びたいと思っている。

 

 米村孝子

 学年不詳、少なくとも高等部二年か三年のどちらか。

 舞草に属する刀使のリーダー格でもある。

 ダグオンの事は情報でしか知らない。

 

 小川聡美

 学年不詳、少なくとも高等部二年か三年。

 孝子同様舞草に属する刀使のリーダー格。

 ダグオンに関しての情報は孝子同様。

 

 リチャード・フリードマン

 エレンの祖父。FineManと言う名を持って暗躍していた。

 正確には舞草の関係者であって長船の教員では無いが、立場上、此方にカテゴライズする。

 ダグオン、延いては異星人達の技術を調べたいと思っている。

 

 

 綾小路武芸学舎

 

 仲野順

 高等部二年、二刀流の刀使。

 前線を切り拓き、戦況を維持する持久戦に長けた実力者。

 戦闘中であってもゆったりとした京言葉で話す。

 趣味は和歌を詠む事で隙や暇があれば題材を探している。

 申一郎とは、一年の頃のクラスメート。戒将、翼沙は中等部の時のクラスメート。

 申一郎の性格や好みを知っている為、気軽に彼に話しかける数少ない女子生徒。

 ダグオンの事はミルヤの隊が助けられたのを噂で聞いた程度。

 

 相楽結月

 綾小路武芸学舎学長、嘗ては鬼の結月と呼ばれた刀使。

 クールビューティーで厳しい人だが、生徒一人一人を良く見ている為、教育者としては慕われている。

 戒将は彼女が結芽の親衛隊入りに関わっている為、恩義と反意を抱いてしまう。(恩義は紫を連れてきた事により結芽の病床が快復した事。反意はノロを投与した事を知っていて黙っていた事)

 申一郎の好みからは髪の長さと年齢から外れる。

 翼沙に専用のラボを与えたのは彼女(理由は爆発被害を抑える為、しかし結果は著しくなかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 エデンの囚人達

 

 ジェゲンガ星人

 マテリアル1での説明は割愛。

 今回はその能力の正体とノロを取り込んだ形態に付いて解説。

 

 彼にして彼女の能力の正体、それはメイルが超能力を持ちコアを別位相に隠していた事が不死身の正体。

 更にフィメルの肉体の頑強さが合わさり本来であればかなり厄介な敵だった。

 またノロを吸収した事で既存の能力が百倍近く底上げされ、迅移に近い事が出来る様になっていたが使用はしなかった(寧ろ出来なかった)

 しかしギガンタース戦により成長したエンや戦闘技巧者なリュウを相手に苦戦。

 エデンから持ち出した薬品でパワーアップを図るも五人の連携と撃鉄の覚悟のファイヤーストラトスアタックにより追い込まれる。

 これにより彼にして彼女はどんな致命傷を受けても即座に復活出来る能力も活かせず、ノロを取り込んだ際位相を併せた為、目覚めた御刀と同様の特性を持ったライアンによってコアごとダメージを受け、最後にトドメを刺され死亡。

 また単体ではメイルは死んでも甦るが素の身体能力は弱く(と言っても人間からすれば充分脅威になり得る)

 超能力も再生、念話、認識阻害、弱念同力だけである。

 フィメルもただ頑丈なだけなので嘲り見下していた人間……怒りのパワーアップを果たしたカイの前に苦汁を舐めさせられた。

 メイルは死の間際、無理矢理フィメルを逃がすための分離を敢行、結果エデンからジェム星人を通じて現れた存在により凍結され砕かれる。

 

 ジェム星人分体

 エデンに存在する不定形型異星人、ジェム星人の分身。

 人間大の大きさまでなら本体と分身を通じて転送する事が出来る。

 彼?が受けていた任務はこの世界に来てから加わった機械生命体達の地球上での活動の素体探し。

 ギガンタース戦の折、輸送武装船に引っ付いて地球へ来訪。

 鳥取から東京に向かう途中、様々な物質を記録、機械生命体達に提供した。

 分体は感情を感じさせない機械音で喋る。

 またスライムの様に不定形なので、色々な形に変化、身体の構成を変える事が出来る。

 

 ギガロクス

 鬼の異星人の付人を務める機械生命体。

 特別監房の囚人でもある。

 人型、蝙蝠型の他、様々な型に変形する。

 忠義に厚く鬼の目的も知らされている。

 

 

 マンモスに変形した機械生命体

 エデンがこの世界に現れてから暫くして、ギガンタースが敗北した際に喚ばれた、この世界に存在する機械生命体。

 彼等は恒星間や惑星間航行の際、肉体を粒子化するので新たに現地の何らかをスキャンし肉体を得る必要がある。

 また彼等は元傭兵の宇宙海賊であり、彼は副キャプテンである。

 マンモスを選んだのはそれが一番自分に相応しいと感じたから。

 

 

 煉獄魔人メレト

 特殊な環境化の星で産まれたデモフレア星人という種族。

 老人の様な喋り方をする、監獄主の一人。

 人型の炎をしていて色は蒼、色は個体によって違う。

 ただメレトは普通のデモフレア星人とは違う様で蒼い炎の中に更に一回り小さいシルエットが見える様で……?

 

 宇宙商人マッニー

 商売宇宙人ゼニーンド星人の一人、彼が売っていたのは主に兵器。

 理由は儲かるから。その手腕であらゆる文明を持った星で武器を仕入れてはそれよりは下の文明の星に売り捌き、間接的に多くの星を滅ぼした。

 反省の色が見えず二十万回繰り返した為、エデンに収監される。

 基本は兵器中心だが、売れるモノは何でも売る主義。

 地球は奴隷事業に使えるかもと画策中。

 ギガンタースの後釜として新たに監獄主となった。

 

 

 





 さてまた本編執筆に戻らなくては…!
 ではまた次回お会いしましょう、


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第四十七話 舞草壊滅!?悩める若人

 こんばんは、今回はほぼハイライトなノリでクレープと祭の下り短縮です。
 こっからプロット色々練り返しながら進めなきゃなぁ。
 



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 あれ?シーちゃんいないの~?ま、いいや!

 ミルヤちんと智恵ちーが激ヤバになって、そこにそーらく学長とうじょーして、話してー、帰ってー、みんなでクレープ食べに行くことになってー、みんなでクレープとかマジウラヤマ~。アタシも食べに行きた~い!

 ダグメンズ達も一旦基地に帰るし、剣はどっか飛んでっちゃうし、アルファもいないし、ひーまー

 


 

 スルガを倒し、写しとは言え南无薬師景光を手にいれた調査隊は今、クレープに舌鼓を打っていた。

 姦しくはしゃぐ美炎達中等部トリオを尻目に、智恵はまだミルヤを今一つ信用出来ないでいた。

 

 

 

 

 また同じ頃、舞草の本拠地である隠れ里では可奈美達が一時の急速を味わっていた。

 早朝の連携訓練の後、舞草の里に常備されている天然の露天風呂温泉。

 温泉にて鋭気を養う彼女達、エレンが沙耶香を甘やかし、それを薫が嫉妬とも何とも言えぬ筆舌に尽きがたい顔で眺める。

 湯浴みを終えた5人が脱衣場に出れば制服が無くなっていて、ねねが疑われる等、一悶着あったが、真実は制服をクリーニングに出し、これからも始まるであろう祭の為に浴衣を用意していたと言うもの。

 陽も高い内から響く祭囃子、可奈美達は用意された浴衣に身を包み、其々が各々に祭を楽しんでいた。

 

 りんご飴、射的、金魚すくい、型抜き、国民的スーパーヒーローのシリーズお面、チョコミントバナナ……まさに祭の定番を楽しむ彼女達、楽しい時間は続いて行く──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 そしてこちらも何時も通りのダグベース、赤羽での戦闘を終え、今一度帰還した彼等、気絶したままの撃鉄を医療ポッドに放り込み、5人はオーダールームで今回の件で起きた事……主にライアンの事をアルファから聞き出そうとしていた。

 「管理者!出てこい!!」

 入室して早々、怒鳴るように叫ぶ戒将。

 それも致し方無い、何せ話に聞いていたモノは仲間になるどころか下手をすれば敵に回りかねない存在だったのだから……。

 「戒将のヤツ……結構アタマにキてんだな…」

 「……解らなくも無い、俺たちが探し回っていたモノの正体があんなカタチで現れた上に……あの結果だからな……」

 「正直、僕も色々と物申したい気分です」

 「ってか、いつもならあいつ…呼ばれなくてもすぐに声掛けてくるよな?」

 戒将の後に続くように続々と入室する彼等、しかし何時もなら余計な口上と共に現れる馬鹿(アルファ)が居ない。

 「おーい、ブレイブ星じーん!」

不審に思った焔也がブレイブ星人の名を呼ぶ。

 すると暫くして彼等の前に投影されるブレイブ星人の立像。

 <良くやった若き勇者達よ>

 「労いは不要だ。奴はどうした?」

ブレイブ星人からの言葉も一入に戒将はアルファの所在を訊ねる。

 <彼の者の居場所は残念ながら私にも解らない。アレは我々が存在する次元の更に上位の次元に位置する者だ>

 「ってことは何かァ?!あのヤロウ、今は居ねえのカヨ!?」

 ブレイブ星人からの返答に5人は意外そうに驚く、普段は鬱陶しいくらい絡んで来る存在がどういう訳か居ない上に、聞きたい事が聞けないのだから彼等の調子の梯子がずれるのもやむ無しであろう。

 「ではブレイブ星人、貴方に代わりに聞きたい事があります」

 <私に答えられる範囲であれば答えよう>

 「ありがとうございます。ではまず、あのライアンというのは……一体何なんですか?」

 不在であるのらば仕方がないと切り替えて翼沙はブレイブ星人に質問を投げ掛ける。一体アレは何モノなのか……と。

 <彼…ライアンは管理者の手により生まれた存在だ>

 「ンナこたぁ解ってンダヨ。ようはアイツが何で荒魂相手にあそこまで敵愾心バリバリなのかを知りてーのよオレらは」

 ブレイブ星人の端的な答えに申一郎が物申す、するとブレイブ星人も流石に考える素振りを見せる。

 <……フム、では私の個人的な話になるが構わないだろうか?>

 「……それがライアンとやらに関係があるのなら……一見の価値はあるだろう…」

 龍悟の言い様に他の4人も首を縦に振る。

 <解った。では話そう……そもそもライアンとは私が以前存在していた世界にて、諸君の前任と共に戦った異星人の名だ>

 「前任…?」

 「前任とはつまり、僕達の前のダグオンと言う事ですか?」

 前任と言う言葉に戒将は首を傾げ、翼沙は話の先を促すようブレイブ星人に問う。

 <そうだ。諸君同様、現地の地球人の若者を私が任命した。彼等はサルガッソの囚人達から見事地球を守り戦い抜いた。その戦いの中で彼等はある一人の剣星人と心を通わせた……その剣星人の名こそ>

 「…ライアンと言う訳か……」

 <そうだ。そして管理者はそれを基にし人造の剣星人を造り上げた、それが諸君が探索し遭遇せしめた()()()()だ>

 「ようはアイツは管理者のヤツがオリジナルを真似て作ったコピーってワケか」

 「だがそれだけでは彼奴が荒魂に向ける感情の説明がつかん」

 <これは私の推測でしかないが、恐らくは基礎となる人格プロトコルを組む際、早々に諸君の戦力となるようモデルとなる人格の魂を探していたのだろう。そしてその際、未完成であった彼を過去の時間に落とし、諸君らへと捜索の助力を願い……>

 「結果、俺達は不要な苦労を背負った訳か」

 <そして過去の時間に取り残された彼は恐らく周囲に散らばった死者の念を取り込み、そこから人格を形成したのだろう>

 ブレイブ星人の過去、そしてこの世界のライアンが何故あの様になったのかを聞き、翼沙は考え込む。

 「魂に…死者の念……ですか……」

 「オッ?非科学的ってヤツ?」

 「確かにかなりオカルトですが、そもそもそれを解明するのも科学の仕事です。むしろロマンがあります」

 「……だが、この間管理者に非科学的な事はあり得ないと言っていなかったか…?」

 「アレは彼があまりにも無用心で無遠慮、無神経だったからです」

 龍悟の質問に翼沙は眼鏡を抑えて答える、眼鏡が光を反射して視線が見えないその顔は、綾小路で悪名高きマッドサイエンティスト渡邊のそれだ。

 「ライアンに関してはおおよそ理解した。では次だ、我々が戦った異星人犯罪者はノロを吸収し力を増した。そして荒魂も異星人の血を含み同様の事が起きた。アレは何だ?」

 戒将がライアンの話を一先ずは解ったと切りおき、次の質問、ジェゲンガ星人と荒魂スルガのパワーアップについて問う。

 <残念ながら、それは私にも解らない。荒魂に関しては情報が足りない。エデンの囚人達に関しては……偶々その囚人の持つ能力がノロと相性が良かった事によって起きた現象であるとしか言えない>

 「それってつまり何も解んねぇって事か?」

 <そうだ>

焔也の要約に即答するブレイブ星人に5人は黙り混む。

 彼が知らない以上、アルファも然して知り得ないだろうと5人の思考は一致していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━舞草隠れ里

 陽も暮れ、夜の闇が広がる中、祭は佳境へと入っていた。

 フリードマンと合流した可奈美達6人はそこでまさかの人物に再会する。

 その人物、恩田累はあの沙耶香襲撃の後、警察に捕まり事情聴取を受け拘留されていたが、美濃関の羽島学長の口利きにより釈放、舞草に合流するに至ったのである。

 

 累を加えた一行は祭の主題たる神社のノロを祀る奉納神楽を眺めながら、フリードマンの語る御刀とノロの歴史に耳を傾ける。

 

 元々ノロとは御刀を造り出す際、珠鋼より排出される不純物を含む金属であり、御刀同様の神聖を帯びている

、未だ人間の技術でそれを完全に消滅させる事は不可能、それ故、放置しておけはスペクトラム化により荒魂が誕生してしまう。

 それを防ぐ手段として人類は全国各地でノロを社に祀り、巫女が舞を奉納する事で鎮めて来た。

 しかし明治以降、経済的な理由により日本国政府は合祀、そうなればノロはその総量が増え結合し荒魂が生まれる確率が格段に跳ね上がる。

 そこでそうならないよう、当時の折神家が厳密にノロを管理して防いでいたのだ。

 

 しかし時代が進み文明が発展するにつれ聴こえる戦争の足跡、これにより軍部の判断を中心としたノロの軍事利用が叫ばれる事となる、それによって箍がはずれた人類は刀使の力を解明、軍事兵器として利用を目論む。

 結果は謂わずもがなであるが、戦後…米軍が研究に加わった事によりノロの収集は加速、それは表向き危険性の高いノロを分割しておくよりも一括で管理する方が安全であるとして日本中から集められる。

 だがそれはより多くのノロの結合……スペクトラム化を促し、知性のある荒魂を生み出す事となってしまった。

 結果、生まれた大荒魂は人類にコントロール出来る筈もなく、相模湾大災厄の様な事件が起きる原因となる。

 そもそもあの災厄はアメリカ本国にタンカーでノロを輸送しようと大量のノロを一度に満載した結果である。言うなれば人の業が起こした人災。

 その事を語るフリードマンの顔は己が犯した過ちを後悔するもの、彼もまた当時、あの場に居合わせ、沈没したタンカーに同乗、からくも命を拾う事が出来たのである。

 彼は自らが体験し、得た教訓を彼女達へ語る。

ノロ……荒魂もまた人の傲慢と強欲による犠牲者なのだと、だからこそ舞草は現折神体勢に反抗し、嘗ての様にノロを各地へと分祀する事を目的としているのだと。

 しかしそれは現折神体勢の下、教育を受けてきた彼女達……特に舞衣にとっては衝撃的な話であり、元々舞草に属するエレンや薫、篝の手紙により紫の正体を知った姫和などよりもショックは大きい。

 或いは、なまじ優等生であったが故の衝撃か……アルファより真実を告げられたダグオン達でもここまで取り乱す事はなかった。これも又、刀使とそうで無いものの違いなのか、ともあれ事実を受け入れる他無いのだ。

 

 祭の余韻を残しながらも、うら若き刀使達は其々に語られた事実を受け止め、思い思いに夜を過ごす。

 可奈美と姫和は己の出会いが運命であった事に…互いの母が今の自分達と同じ様に祭を過ごしたのかを語る。

 

 舞衣と沙耶香は浄めの焚火を眺めながら、今後の身の振り方を考えている。

 特に舞衣は今まで学び、信じ、勉めて来たモノが覆ったのだからその懊悩は推し量れない。

 彼女や可奈美と親交の深い刀匠科の先輩男子(どこぞの問題児)ならば単純にモノを言うのであろうが、そんな彼は此処には居ない。

 果たして事実を知ったからといって、可奈美達に着いていっても良いのか、それで自分に何が出来るのかと考え込む舞衣、そんな舞衣を沙耶香は舞衣は何でも出来ると励ます、沙耶香は既に覚悟を固めている様で、そんな彼女を舞衣が放っておける筈もなく、また彼女自身悩みながらも()()()()()()()()()()()()()前へと進む事を決めた。

 

 エレンと薫…そしてねねは神社の階段から花火を眺めながら軽口を叩き合いながらそれぞれの思いを語り、何れ来る未来を想って互いの健闘を祈り称える。

 ついでに射ち上がった花火を見てエレンが鍵屋を口にしたのもご愛嬌。

 

 そして、朱音とフリードマンと対面し自らの意思を伝える彼女達。

 朱音は彼女達が舞草と共に戦う事に些か険しい表情で物言いたそうにしていたが、フリードマンのある種、合理的な意見に辟易する。

 そんな中、突如孝子が現れ急報を告げる。

 

 舞草の隠れ里に機動隊が展開し、出入口を封鎖する。

 祭の最中、突然の事態に祭に参加していた住人達は困惑するばかり、長船の刀使達は既に数名が拘束され、御刀は没収、このまま此処に留まるのは得策では無い。

 フリードマンと朱音は可奈美達と孝子をはじめとする数名の護衛の刀使と共に、潜水艦で逃亡を謀る。

 聡美を含む残りの長船の刀使が敵を足止めする役を買い神社に残る。

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、鎌倉へと向かう調査隊の中で智恵は言い様の知れぬ不安に胸騒ぎを憶えていた。

 それと言うのも、本物の南无薬師景光の手掛かりは無く、闇雲に動く事は出来ない。

 未だ相楽結月の思惑は知れず、ミルヤを信じきる事は出来ず、判断を仰ぐ為、連絡をするも誰からも応答が無い……いくらなんでもおかしい、そう思った智恵はしかし、荒魂の襲撃に思考を中断され、一先ずはは迎撃する。

 だが、舞草へ連絡が取れなかった事が尾を引いていたのか動きに精彩さを欠ける事をミルヤに指摘され、美炎には顔色が悪いと心配を受け、清香もそれに追従して智恵を労る。

 呼吹は……素っ気なくしているが美炎と清香に弄られている。

 その中で出た『仲間』と言う言葉、しかし智恵はミルヤを見ながら心の中で美炎に謝罪する。

 (『仲間』か……だけど美炎ちゃん、ごめんなさい。私は彼女の事そんな風には思えないの……。少なくとも……今はまだ……)

 一見、順風満帆かと思われた調査隊の関係も、その実智恵の中では危うい均衡を保ったままであった。

 

 

 

 

 

 そして、舞草の隠れ里では防衛にあたり残った長船の刀使達が全滅していた。

 成す術無く倒れ伏す彼女達、残った聡美は対峙する相手の強さに戦慄する。

 彼女の前に立つのは親衛隊第四席、燕 結芽。

 結芽は写シすら張らずに瞬く間に聡美を除く長船の刀使を戦闘不能まで追いやったのだ。

 そして聡美もまた結芽の敵では無く、彼女の前に健闘虚しく敗れ去る。

 

 

 一方で潜水艦が待機する桟橋から続く洞窟の庵に辿り着いた可奈美達と朱音一行。

 しかし、此方も既に管理局の手が回っており、機動隊が展開されている。

 彼等が手にしているスペクトラムファインダーは細工が施されており、舞草の刀使が持つ御刀に反応する様になっている。

 このままでは荒魂として処理されてしまうと言うフリードマンの言葉に、姫和は荒魂が自分達を荒魂扱いする事に嫌悪感を露にする。

 朱音は彼等もまた騙され利用されているだけだと言う。しかしそれでみすみすやられる訳にはいかない。

 孝子をはじめとする護衛が機動隊の前に飛び出る。

 機動隊も困惑しながらも此方を荒魂として認識している。少なくとも殺害許可も降りている可能性が高い。

 現に機動隊の装備は、刀使の写シを想定した特殊なボーガンの矢があり、孝子に突き刺さったソレは写シこそ剥がしていないが、写シが切れた瞬間、当たり処によっては致命傷となることは間違いないだろう。

 刀使と機動隊で戦力に開きがあるとはいえ、彼方は数で圧してくる。

 孝子を筆頭に護衛の刀使達は潜水艦への道を斬り拓く。

 朱音、フリードマン、可奈美、姫和、エレン、薫、沙耶香、そして最後に舞衣が乗り込むまで殿を務める孝子。

 その身体には対刀使用の矢が刺さったままだ、そして彼女達が来た道筋より現れる結芽。

 

「先に行け。朱音様を頼む!」

 最後尾の舞衣に先に行くよう促し後を託す孝子。結芽は逃げる潜水艦に興味を示さず、ゆったりとした歩みで孝子の前に立つ。

 「あーあ、間に合わなかったかー。残念」

特に残念に思っていない口振りで語る結芽に孝子は問う。

「神社にいた刀使はどうした…!?」

 「刀使?あれが?全然手応えなかったんだけど。でも…この御刀を持ってた人はちょっとはマシだったかな~」

 煽りとも取れる物言いで聡美の御刀を手に弄ぶ結芽、そんな彼女を前に孝子は御刀を構え戦闘態勢を取る。

 「やるの?そんな状態で?待っててあげるからその矢抜いたら?なんなら手伝ってあげようか?」

「必用無いっ……!荒魂に頼ってるような刀使に負けはしない!」

 右肩鎖骨辺りに刺さった矢を自らの手で抜きながら結芽に啖呵を切る孝子、だがそれは彼女にとっては悪手だった。

 「あっそ…」

孝子の言葉に僅かに眉根を寄せ、しかし次の瞬間には写シを張り迅移と共に間合いの内側に踏み込む結芽。

 孝子を滅多刺しにし、彼女が倒れた所でトドメの一刺し写シを破る。

 倒れる最後まで写シを張り続けた孝子も見事と言えば見事であったが、やはり相手との実力に差がありすぎた。

 「私戦いに荒魂なんて一ミリも使って無いもん!これはぜーんぶ私の実力なの!」

 倒れ付した孝子を見下ろしながら、淡白に…どこか拗ねた様な面持ちで独り語ちる結芽、彼女はそのまま大海へと消え行く潜水艦を眺め見送る。

 

 こうして舞草の本拠地は制圧され残った長船の刀使達は投降、拘束され、御神体のノロは折神家の手の者が回収、主要人物こそ逃したものの、舞草と言う組織は事実上壊滅した。

 

 手水舎の前で咳き込む結芽、その手には血がべっとりとこびりつく、それは彼女の命の残り時間。

 病は確実に彼女の身を蝕んでいる。その時、彼女の脳裏に過ったのは果たして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース格納庫区画

 ライナービークルの補給、整備の状況を望む事が出来る展望室で燕 戒将は1人、手元のタブレットパッチを眺めながら、これを渡された時の事を思い返していた。

 

 それは沙耶香が逃げ出した直後、彼が鎌倉の管理局本部にいた時の事。

 結芽が夜更けに外へと出掛ける所を見掛け、その目的を気にしつつも突如アルファに呼び出され、返事の有無を許さずダグベースへ速やかに来るように言い含められた彼は、その事に辟易しつつも転送システムにより即座にベースへと到着。

 一体何の要件だと溜め息を吐きながらオーダールームへと入室する。

 ≪遅い!遅いよ戒将くん!!呼んだらすぐ来なきゃ!!≫

 「無茶を言うな……此方も仕事やらの用向きがあるんだ。それで…一体何の用だ?」

 アルファの無茶苦茶で謂れの無い謗りを受ける戒将、そんな物言いに呆れながらも呼び出され理由を問う。

 ≪実はね、結芽ちゃんの事なんだけど≫

 「結芽がどうした……?!」

 ≪怖っ!?何でいきなり目付きが鋭くなるのさ!!≫

 「良いから先を言え!」

いきなり出てきた妹の話に、先程の事を思い出し不機嫌になる戒将、怯えるアルファの文句を一蹴し先を促す。

 ≪君達が伊豆の山で回収したノロや真希ちゃん、寿々花ちゃんの血液サンプルを元に暫定的なモノを作ったんだよ。後は結芽ちゃんのカルテだけど……その辺はボクがちょいちょいっと…ね、とにかくあの娘を助ける為の特殊薬の第1号が完成しました!どんどんパフパフ~≫

 「…!?」

その内容に思わず立ち上がり拳を握る戒将、遂に待ちわびた瞬間が来たかと歓喜する。

 ≪た・だ・し!これはまだ仮の段階、薬を彼女に投与すれば病の進行は抑えられるけど、同時にノロも抑制する効果があるから、結芽ちゃんは仮死状態になります≫

 「…………何?」

しかし次の瞬間、歓喜は憤怒に替わる。

 「それは俺に結芽を殺せと言う事か…!?」

 ≪いや悪魔でも仮死状態だし、投与されたナノマシンの効果だし、そうしなきゃ確実に病気で死んじゃうし!!≫

 「………くっ!」

戒将とて彼女の病がどういったモノか理解している為、口を閉ざす他無い。

 ≪とにかく薬は医務室に置いておくから、使うならなるべく早く決断してね!それじゃ!≫

 そう言い残して気配が消えるアルファ、戒将は独り佇むのであった。

 

 そしてその後の事は知っての通り、あの後鎌倉へと帰還した戒将は結芽を追い、星人と戦闘に突入。

 怒りにより退け、結芽を前に薬の事を引摺り、ターボカイとして彼女に声を掛ける事すらせず、立ち去る他なかった。

 

 そして今もその手に薬を持ち、伏しているのである。

 元より願っていた事だと言うのに迷いが生まれる。果たしてこの様で本当に結芽を救えるのか……己のエゴで既に他の4人を巻き込んだ。

 (……っ、今更…何故また迷う!望んだ事だろう。これは……)

 もたれ掛かった手摺を強く叩く。

 鬼の風紀委員、疾風の燕、男に生まれた事だけが神の悪戯などと言われ、それでも尚己を研鑽して来た青年は、その16年の人生の中で妹の病を知り得た時以上に苦悩する。

 

 全ての決着は近い──

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 遂に動き出した折神紫……タギツヒメ。智恵は舞草壊滅に動揺を露にし、可奈美達一行は決戦を覚悟する。

 そしてダグオン達は──

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉へ!決戦の時近づく。

 

 アルファァァァァア!!貴様どこへ消えたァァァァアッ!!!

  




 因みにアルファは胎動編が終わるまで帰って来ません。
 次の彼の出番は胎動編と波瀾編の間。ダグオンの残り4人の◯◯◯◯の回の時です。
 ではまた次回


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第四十八話 鎌倉へ!決戦の時近づく。

 おはようございます。
 へしきりことへし切長谷部が出たりした為、大分遅れましたが投稿です。
 今回、どこを詰めて、どこをカットして、どこを入れるかかなり苦労しました。
 みんな大好き高津のオバチャンと俺たちのユイ・ヤマシロは絶対に入れたいと思ったのでこうなりました。
 私の中でオバチャン、由依、イチキシマヒメ、ひよよんはもう完全にネタ方向の認識なんですが、皆さんは如何でしょうか?



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ええい?!奴め一体何処に隠れ……

 ──職務怠慢。嘆かわしい。

 ?!お前は……申し訳ない我が上司があんなで……

 ──それもある。しかしこれ以上介入する必用性があるのか?

 ……済まない、此処はあらすじなのであまり長く喋れない。

 ──そうか。……そうか…。

 


 

 ━━火星近辺

 地球から最も近い惑星の1つ、そして地球と最も似通った性質を持つ天体、それが火星。

 テラフォーミング技術さえあればすぐにでもこの星は命の惑星へと生まれ変わると言っても過言では無い。無論、言葉で言う程簡単ではないが。

 そんな赤い大地の星の空に奇妙な月が1つ……否それは月に非ず。

 それは宇宙の名だたる凶悪な犯罪者達を収監した牢獄。しかしそれも今は昔、既に牢の意を為さず、犯罪者達の巣窟と化したそこでは地球の様子を伺うようにして浮かぶエデン(楽園)その中……人気の無い円卓で1人の異星人が鼻唄を口ずさみながら何かを弄ぶ。

 「~♪」

 そこへ現れるのは蒼い炎の怪人。

 「随分とご機嫌ではないか、女医よ。何ぞまた新しい玩具でも手に入ったか?」

 「あら、珍しい。あなたの方から妾に話掛けるなんてぇ、天変地異の前触れかしらぁ?」

 蒼炎より女医と呼ばれた彼女はからかう様に言葉を返す。

 「ふん。儂とて何でもかんでも拒絶している訳では無いわ!それで……何をしている」

 「別にぃ大した事じぁあないのぉ、この前ぇ、ジェゲンガ星人が送って来たモノを調べてたらぁ、面白い事が判ってぇ、その辺り詳しく知りたくなったからぁ、地球を覗く事にしたのぉ。」

 「地球を覗く?あの惑星(ほし)にそんな価値があるようには思えんが……」

 女医の言葉に首……恐らく首だろう部位を傾げる蒼炎ことデモフレア星人"煉獄魔人メレト"、そんなメレトの疑問を聴いて彼女はコロコロ笑う。

 「あらぁ?別にあなたが思う程、つまらなくは無いわよぉ?特にあの惑星の原生生物の中でも人間とか言う霊長類は面白いわぁ♪特に、教訓を活かそうとして全く活かせない愚直さとか」

 「儂には理解出来ん価値観だな、それで一応訊ねるが、何が見えているのだ?」

 「そうねぇ、丁度火星に着いたと同時に装置が出来たからぁ、経緯は知らないけどぉ、中々愉快な事になってる場所があるみたいよぉ?」

 そうして彼女が指差す装置に映る場所とは日本列島。

その座標は鎌倉の刀剣類管理局本部と舞草の潜水艦を著していた。

 

 

 

 ━━地球・日本

 長船女学園、美濃関学院、平城学館、伍箇伝の教育機関を構成する実に三つの学校がその日、刀剣類管理局麾下の機動隊、そして県警によって封鎖が行われた。

 その内、美濃関と長船は大規模テロの容疑により機動隊が突入、強制捜査と相成る。

 この事実は現体制下の元、刀使により守られてきた国民達にとっても衝撃的なモノとなった。

 

 

 そして、潜水艦によって逃亡した折神朱音率いる舞草残党もこのニュースを艦内にて知る。

 「長船と美濃関が……」

「平城も警察によって封鎖されたようです」

 艦内にある談話を目的としたテレビモニターのある部屋に朱音、累、可奈美、姫和、舞衣、沙耶香、薫が座り、そして少し離れた場所でエレンが壁に寄りかかりながら沈痛な面持ちとなる。今この場の空気は重い。

 「孝子さん達どうなったんだろう…」

「一気に窮地に追い込まれたね……大分前から仕組んでいたんだろう」

 可奈美がポツリと溢した言葉に誰も返せない中、フリードマンがこの状況に対し自己分析した結果を口にする。

「どうして里の事が知られていたんでしょう?」

 累が朱音の顔色を伺いながらフリードマンへ疑問を挟む。

「舞草内に内通者がいた痕跡は無いし、あの里の情報は地図やネット、衛星からもリアルタイムでデリートし続けてるからね」

 まさか孫娘が手に入れたアンプルから場所が割れたとは彼も思わないのだろう、一切の心当たりも無い故、彼なりに仮説を立てる。

「知られていたと言うより、何らかの方法で見つけたんだろう。もしかすると今の我々の位置も筒抜けかもしれないな……」

 アンプルは既に長船にある為、潜水艦の現在地自体は割れていないが、進路の予測は立てられているだろう。

 紫……いやタギツヒメに判らぬ場所など、この地球には最早1ヵ所だけだろう。

「問題は邪魔者が居なくなった奴等が次に何をするかだ」

「まさか20年前のような!?」

 フリードマンの予測に累が最悪を想像する。しかし彼はやれやれと言わんばかりの動作で彼なりの最悪を述べる。

「それで済むかな?今や折神家に集められたノロの総量はあの時以上の筈だよ。まさにステイルメント、打つ手無しだね」

 切迫した状況だと言うのにお手上げだと軽く振る。

 「ここのまま予定通りに長船に向かいますか?」

エレンが指針を訊ねる。

「いっそ国外ににげるかい?」

 フリードマンは茶化した様に提案する。

 朱音は複雑な顔色で思案する。

 

 

 

 

 一方で昨夜舞草が襲撃を受けたと同じ頃、智恵は焦り苛立ち、再び精彩を欠いた事によりミルヤに責められ諭される、そしてこのまま独り思い悩んでいても解決はしない。

 遂に智恵は自らの秘密を調査隊の皆に明かす。

 今までの経緯の中で皆を騙していた後ろめたさもあり、智恵の面持ちは重い、しかし意を決し話した事で仲間達は驚きこそはしたものの、責めるでもなく、詰るでもなく、寧ろ仲間としての瀬戸内智恵の言葉をしんじてくれた。

 智恵はその事に今まで自分の中で積もりに積もっていたモノが軽くなったのを感じる。

 ミルヤも真実を見極める為に情報は多角的であるべきと納得してくれた。

 そしてミルヤの助言案で現状、最も身近に居る舞草の人間へコンタクトを図る。つまり青砥館の青砥陽司の下へ向かう事と相成った。

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局本部

 「舞草と思わしき者を全て掌握しました。これで事態は収束に向かいますが…」

 本部、折神家の発令所内にて此花寿々花が舞草隠れ里での報告を読み上げて嘆息する。

 「あれ程我々を悩ませた組織を一夜にして壊滅に追い込むなんてえげつないほど鮮やかな手腕ですわね」

 自分達がどれ程手を尽くしても掴めなかった尻尾を簡単に掴み、一夜で解決してしまった主の手腕に感嘆と戦慄を覚える。

 「現場に向かった機動隊員達は刀使の写シ対策のために、武器まで持っていったらしい」

 「対刀使用の武器を態々開発していたなんて…。舞草対策だとしても少しの容赦もありませんわね」

 「紫様は十条姫和の起こした御前試合の一件からここまでずっと布石を打っていたんだろうか……」

 「……それ以前から、という感じですわね。私達(わたくしたち)の敗北すら布石の1つ、だったのかもしれませんわ……」

 自分達にすら知らされていなかった武器の存在、何処で得たかも知れぬ敵の本拠地の場所、彼女達には紫の考えが読めず困惑するより他ない。

 しかし仕えるべき主の事を疑うなどと不敬にあたる、ならばそれは必要な事であったのだろう。

 彼女達は自分の中でそう思考し納得した。

 

 

 

 

 

 

 本部庁舎の一区画、鎌府学長室にて雪那は職員から報告を受ける。

「長船?美濃関、平城の帯刀権の剥奪、武装を解除致しました。また、折神朱音の行方は海上保安庁が全力で……」

 「甘いっ!!海自にも圧力をかけて捜査させなさい」

「ですが……」

 「これまで我々がどれだけ連中に貸しを作って来たと思う ?」

 海上自衛隊どころか今、この場に居る職員に既に妙な圧力を掛ける雪那の視線、彼女の頭の中では未だ沙耶香の存在が崩れた未練を繋ぎ合わせている。

 (沙耶香…貴女の居場所はここだけなの……!)

親指の爪を咬みながら雪那は妄執にすがり続ける。

 

 

 

 

 

 折神家奥の祭殿、そのまた更に奥にあるノロを貯蔵する空間、其所に折神家現当主折神紫にして大荒魂タギツヒメが立っていた。

 紫がその身に纏う衣服を脱ぐと周囲の大量のノロが彼女を中心とし集まり出す。

 その様相はまるでマグマの中から何かが蠢く()()そのもの。

 

 「………」

 

紫…否タギツヒメはただ黙って為されるがままその身をノロの海に委せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 そしてここでもそのニュースに衝撃を受ける者達が……。

 「マジかよ…美濃関が……」

 「…………ダメです。長船の従姉に連絡が着きません」

 「……平城も封鎖された…」

 各々の学校に縁がある3人が茫然としている。

 「こりゃあ、マジでシャレになんねぇかもしれネェ……」

 「明らかに、仕組まれた事が分かる程の手際の良さだ…」

 申一郎と戒将はニュースを見て初動の速さ、折神紫の手管に舌を巻いている。

 「どうする?」

 「焔也と龍悟はここから帰らない方が良いだろう。俺達も有事の際を考えればここに留まる事が吉だろう」

 「そう……ですね……ですが戒将は本部に顔を出さなくても平気なんですか?」

 長船が検挙された事に予想以上に動揺を顕にする翼沙、何とか感情を抑え戒将に戻らなくて大丈夫かと訊ねる。

 「どの道、警邏の男子生徒に出来る事など知れている。それに今は……いや、何でも無い」

 戒将はそんな翼沙の疑問に問題無いと返し何か言いかけるも言葉を濁す。

 「兎も角、異変があれば即座に動ける様にしておけ。恐らく渦中の場は鎌倉…折神家となるだろうが」

 「……なるほど、壊滅したテロリストの本拠地とは舞草の里…。そして封鎖された三校は反逆者が出た二校と舞草の息が掛かった長船、そして未だ行方知れずの折神朱音……、つまり十条達は逃げおおせたと言う訳か…」

 「そうだ。その際、起死回生を打つならば電撃戦を取るより他に無い、であれば我々の目的地は鎌倉になる」

 「「「「………」」」」

戒将の予測に皆が黙り混む、恐らく彼等は本能的に決戦が近い事を感じ取ったのだろう。

 5人は各々に拳に力を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は戻り原宿は明治神宮駅前通り。調査隊は青砥館へ舞草の情報を求め向かう最中である。道中、矢鱈と荒魂に遭遇し、思うように進まない。

 そんな中でまたしても智恵は焦り始める。

 「どうして…急いでいる時に限ってこんな……」

 「アタシは荒魂ちゃん大歓迎だけどな!へへへっ!」

 「荒魂のせいで余計な時間を使いましたね。青砥館へ急ぎましょう」

 逸る気持ちを抑えきれず焦燥する智恵に対し、呼吹はいつも通り荒魂と遊べる事に笑う。

 ともあれ青砥館へと先を促すミルヤが声を掛ける。

 「まさか原宿に着いてすぐに荒魂と戦うことになるなんて思わなかったです…」

 「私だって思わなかったよぉ……ちょっと出てくるタイミング考えて欲しいよね」

 先程の荒魂との遭遇戦闘に思わず愚痴と言うか文句を溢す清香と美炎、すると呼吹までもが2人に同調する。

 「まったくだ」

これには美炎も目を丸くして驚き訊ねる。

 「あれ、何かいつもと反応が違う!?いつもなら荒魂と戦えて喜んでるのに……どうしたの?」

 「チチエにあんな辛気臭い顔されりゃ、楽しめるモンも楽しめねぇよ」

 

 「…………」

 そういって呼吹が顎で指す方を向けば智恵が思い詰めた様な顔で沈黙している。

 「ちぃ姉ぇ?ちぃー姉ぇ?!」

 そんな智恵に美炎も見かねて声を掛けるが彼女の反応はどう見ても著しく無い。

 「えっ?!な、なに?ごめん聞いてなかったわ」

 「別に何でもないけど………大丈夫?」

 「うん……もちろん」

美炎に心配をかけてしまった事に自分の中の焦燥を無理矢理しまいこんで笑顔で返事を返す智恵、しかしミルヤはそれに異を唱える。

 「そうでしょうか?私にはとてもそうは見えません。これまで以上に動きに精彩が無く、その上、状況判断に乏しく周囲の動きも見えておらず、声も届かない始末。今の戦闘で何度危険な場面があったか理解していますか?安桜美炎や六角清香のフォローがなければ無事では済まなかったでしょう」

 ミルヤが羅列する智恵の現状のコンディションに智恵自身も自覚があるのか眉根を寄せる。

 「舞草の事が気になるのは解りますが、余りにも余裕が無さ過ぎます。あれでは戦力になるどころか足を引っ張るだけです。正直、戦いに参加して頂かない方が助かります」

 「も、もうそれくらいで…」

 「あなたに何が──」

つらつらと事実を挙げて智恵を責めるミルヤに清香が制止に入る、だが智恵も頭に来たのか反論を口にしようとして

 

 ──Giaaaaauuonnn!!

 

 そこへまたしても新たな荒魂が現れる。

 「ええっ!?またぁ?!」

 「こんな時に!次から次へと、まったくもうっ!!」

これに美炎は辟易し、智恵は余計に苛立ちを募らせる。

 「各員戦闘準備。七之里呼吹は敵正面。瀬戸内智恵と六角清香は後方にて支援。私と安桜美炎で死角を突き、これを殲滅」

 ミルヤは沈着冷静的確に指示を飛ばし、戦闘体制を取る。

 そこへ智恵が並び御刀を抜きながらミルヤに懇願する。

 「今は一刻も早く仲間の安否を確かめたい!私も前衛に加わります」

 「忘れているかもしれませんが、この調査隊の隊長は私です。隊長としてその案は却下します。今の貴女では、寧ろ余計な時間を浪費するだけです」

 が、ミルヤは隊長判断で智恵の前衛参加を拒否、清香に指示を下す。

 「六角清香。瀬戸内智恵が無理をしないよう注意を怠らないで下さい」

 「は、はい!」

そして再び戦闘の幕が上がる。

 呼吹が暴れ、荒魂の列が乱れた所を美炎とミルヤが突き、数を減らして行く。

 清香は途中、彼女達が討ち漏らした荒魂に対処しながらミルヤに言われた通り、智恵の方をなるべく意識する。

 その智恵は歯痒い顔で支援に撤し、今の所は問題は無い。

 しかし、彼女の心理を考えれば時間は掛けられない。そこでミルヤは彼女にしてはらしく無い、以外な戦法を取る。

 それなりの数を有す荒魂に対し、写シを剥がされながらも突撃、中心となる中型の荒魂を討つ。

 「はぁ…はぁ…はぁ…」

流石にそれが祟ったのか息の上がり方が悪く、怪我も負ってしまっているミルヤ、清香が心配そうに声を掛ける。

 「ミ、ミルヤさん、腕から血が……」

 「問題ありません。この程度であれば、戦闘に支障をきたす恐れはありません」

 簡単な止血をして息を整え返事をするミルヤに呼吹と美炎も呆れたり驚いたりしている。

 「無茶しやがって、チチエに無理するなって言ったヤツが随分らしく無い戦い方じゃねぇか」

 「うんうん。写シが剥がされたのに無理に突っ込んでいくから、見ていてハラハラしちゃった」

 そんな2人からの言葉に彼女は当たり前の事を判断したまでとばかりに返す。

 「やれると判断したから行っただけの事。今は一刻を争う時、時間を浪費する訳にはいきません」

 「……もしかして、私の為に怪我を?」

ミルヤのらしく無い無茶に智恵は思わず自分の為に彼女が怪我をしたのではないかと後悔を露にする。

 「それは違います。怪我を負ったのは私の未熟故、もっと精進に励まねばなりませんね」

 しかしミルヤはその後悔を否定で返す。その返事を受けて流石に頭が冷えたのか、智恵がミルヤに謝罪を述べる。

 「さっきは…ごめんなさい……」

 「分かって頂けたなら結構です。先を急ぐ気持ちは理解出来ますが、そのせいでこの隊全体が危機に晒されるような状況は好ましくありません。全員の安全を確保しつつ、その上で目的を達しなければ意味は無いのですから……全員の中には勿論、貴女も含まれているのですよ、瀬戸内智恵。貴女が舞草を心配するように、私は貴女の事が心配なのです」

 「ミルヤさん……ありがとう」

 彼女の彼女らしからぬ行動と彼女らしい思い遣りに智恵は微笑みながら礼を口にするのであった。

 

 その後、簡単に息を整え再び出発しようとミルヤが号令を掛けようとした所、新たに悲鳴が聞こえ、そちらを向けばまたしても現れる荒魂。

 流石にもう勘弁して欲しいと溢す美炎達、そこで呼吹が1人残り、所謂『ここは俺に任せて先に行け』的な台詞を吐くのだが、まぁぶっちゃけ彼女自身が荒魂と遊びたいのと、面白いから格好を付けただけである。

 だがそこは智恵が何時もの調子を取り戻し、結局調査隊全員で事に当たり、荒魂を殲滅したのであった。

 

 

 

 そして再びやって来た青砥館、来店した調査隊を店主青砥陽司が軽い口調でもって迎える。

 「いらっしゃい……って、久しぶりだな、お嬢様方。なんだい?俺が恋しくて会いに来てくれたのか?いやはや、モテる男はつらいねぇ」

 「ご無沙汰しております」

そんな陽司の挨拶にミルヤは礼儀正しく返す。

 「ちょっと見ない間に更に別嬪さんになったんじゃねぇか?男子三日会わざれば刮目して見よって言うが、女の子も同じだな…………で、冗談は置いといてだ。今日はどうした?刀身以外の事なら歓迎するぜ」

 陽司としても彼女達が態々そんな軽いノリで訪ねて来た訳では無い事くらい判るので、即座に営業に移る。

 「今日訪れたのは他でもありません、舞く──「あっ!可愛い子がいっぱい現れた!もしかして調査隊の人ですか!?」そうですけど……貴女は?」

 智恵が陽司に青砥館に訪れた理由を話そうとした所に新たに割り込む声が1つ、全員が其方に目を向ければ、現れた声の主は綾小路の制服を身に纏った1人の少女。

 

 クセが強いのか、いくらかハネ気味の黒髪に後頭部を長いポニーテールが尻尾の如く覗いている。

 何より特徴的なのは制服の左腕に黄色いスカーフらしき物を巻いているのだ。

 「やっぱり!みんな制服が違うからピピーンと来たんだよね~!」

 そんな彼女は何やら随分と興奮した様子で調査隊の面々を見ながらおかしな事を宣い始めた。

 「はぁ~……みんな可愛いなぁ!可愛い過ぎてため息が出ちゃう!まとめてギューってハグしたい!」

 何処かの高等部男子とウマが合いそうな事を宣っている少女は思い出したかの様に自己紹介を始める。

 「あっ、そうそう、自己紹介しなきゃ!!綾小路中等部二年、山城由依。相楽学長に命じられて調査隊に参加する事になりました!」

 「相楽学長に?」

これはミルヤも寝耳に水であったのか意外そうな顔で驚いている。

 「ですです。足取りを追ってここに辿り着いたんですけど、まさかこんなに早く会えるなんてラッキー!相楽学長から、ミルヤさんの指示に従うよう言われてます!一応事情は色々聞いてるんで、何でも命じて下さいね!」

 「具体的にどの程度事情を知っているのですか?」

 「え~とですね、相楽学長と舞草という組織が同じ目的のために手を結んだこととか──……瀬戸内さんってどなたです?」

 「…私ですけど…」

 「はぁ~…綺麗なお姉さまって感じで素敵ですねぇ!まぁそれは置いといて、瀬戸内さんが舞草の一員だとかそんな感じの事です」

 由依の濃さに少々圧され気味の智恵が名乗り出る、そんな彼女を見てより一層蕩けた顔をする由依、控え目に言って変態にしか見えない。

 「相楽学長は舞草の事を知っていた…?そう言えば真庭学長とも話が着いていると……ですが瀬戸内智恵が舞草の一員だと知ったのは我々もつい最近の事、何故貴女がそれを知っているのです?」

 由依の口から飛び出た事情をおおよそ把握していると言う言葉にミルヤが疑問を呈する。すると由依の代わりに陽司がそれに答えた。

 「それはだな、俺が話したからだ。その方が色々と話が進みそうだったんでな」

 そう言いながら智恵の方に視線をやり、ニヤリと笑う。

 「そっちも身分を明かした方が良いと思ったから、仲間に話したんだろ?…つまり、そう言うこった」

 「分かりました。陽司さんがそう判断したのなら何も言う事はありません。それでわたしたちがここを訪れた理由なんですが──」

 「ああ分かってる。さっきはつい何時ものノリでふざけちまったが、それどころじゃねぇよな……舞草の事だろ?」

 「実はだな──」

陽司が続きを口にしようとした瞬間、異形の奇声が挙がる。

 「荒魂ぁぁあ?!折角ひと休み出来ると思ったのにぃぃぃ」

 流石に何度も荒魂に遭遇している為辟易してしまう美炎、逆に呼吹はやる気満々である。

 そこへ由依が渡りに船とばかりに誰よりも早く動く。

 「これは、あたしの実力をアピール出来る大チャンス!皆さんお先に~!」

 「あのヤロウ!抜け駆けなんて許さねえぞ!」

 一目散に店外に出る由依、一番槍を取られ噴飯する呼吹、彼女達に続いて店外に出る残りの面々。

 

 「うりゃぁぁぁああ!

 

そこでは既に荒魂と戦闘を開始している由依、裂帛の雄叫びで御刀"蛍丸国俊"を振り回す。

 「あの人…強い……」

清香がそんな由依を見て、ポツリと呟く。

 「補充要員に選ばれるだけの事はあるようですね。瞬発力は無いようですが、一撃一撃が重く的確に相手を捉えています。」

 ミルヤが由依の戦いぶりを冷静に評価する、彼女の言う通り、太刀による大振りの一撃は重く、細かい機動力こそ無いが相手を確実に仕留める為の攻撃を繰り出している。

 「そして、どれだけ揺さぶられてもブレない軸…優れた体感の持ち主だという事が伺いしれます」

 「感心してる場合かっ!!アタシの楽しみを横取りするなぁ!?」

 ミルヤの評価などどうでも良いから荒魂を盗るなと呼吹の悲鳴が木霊した。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ようみんな、鳳 焔也だぜ。

 ちくしょう!俺の学校が…!美濃関が封鎖されちまった!?

 そして刀使達に現れる異変、それを感じ取るライアン。

 中継を通じてみんなの前に現れた折神朱音。

 そして俺達にその異変を知らせた謎の女……ってお前誰だよ?!

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 鳴動!?鎌倉決戦その1。

 こうなりゃあいつらに賭けるっきゃねぇ、俺達もそいつを助けるだけだ!





 さて、胎動編終盤の流れは大分時間が掛かる気がしてます。
 ここを乗り越えたら、間章で融合合体を始めとした回が書けるので頑張ります!
 V(´▽`*)Vエヘガオシマムラピース


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第四十九話 鳴動!?鎌倉決戦その1。

 
 こんばんは。
 いやぁ、今回も色々難産でした。台詞は兎も角、地の文が一番悩むんですよね。
 それはそれとして、エレン[禊]来ました。ついでに戦乙女ひよよんも来ました。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 壊滅した舞草、警察による強制捜査が行われる美濃関、平城、長船。

 困惑する可奈美達、茫然とするダグオン達、そして焦りを見せる瀬戸内智恵。

 智恵はその焦りをミルヤに指摘される。

 しかしミルヤが彼女らしからぬ無茶を行った事で智恵は己を省みる。

 そして再び訪れた原宿は青砥館で新たに仲間に加わる刀使"山城由依"

 彼女は変態であった。

 


 

 山城由依の活躍もあり、然したる苦労も無く荒魂を退けた調査隊、由依と美炎が和気藹々としているとそこへ突如店から血相を変えて飛び出した陽菜が現れる。

 「みんな大変なことになってるよ!?早く来て!」

陽菜の切迫した言葉に圧され店内に戻る調査隊の面々、美炎は陽菜のあまりの慌てっぷりに首を傾げる。

 「なんだろう?」

 「こんな時に大変な事…?嫌な予感しかしないわ」

 「テレビ、テレビ、テレビ見て!」

 智恵がそこはかと無く嫌な予感を感じていると調査隊メンバーを急かすように陽菜はテレビを見る様に言ってくる。

 「テレビ?」

陽菜に言われた通り、何事かとテレビのモニターを見る、するとそこから流れる情報に彼女達は震撼する事になる。

 【各県警は大規模テロ関与の疑いで、伍箇伝の長船女学園と美濃関学院に強制捜査に入りました。当局によりますと、両校共に刀使による戦闘部隊を編成し、テロ行為の準備を進めていた模様です。警察は複数の学校関係者の身柄を拘束し…現在、取り調べを行っております。なお、警察はこの事件について深く関与していると思われる折神家関係者の女を、重要参考人として、その行方を追っています】

 このニュースを見て一番ショックを受けたのは智恵だ。

 「そんな……どうして……?」

 

 

 ニュース視聴より数十分後、話し合いの余地が出来たところでミルヤが話を切り出す。

 「…やはりこの捜査は舞草としての活動が、御当主様の知るところとなったと考えるのが妥当でしょう」

 「舞草の拠点とも連絡が付かない。このニュースを見た限りじゃあ…拠点も恐らく武力制圧されてる可能性が高い」

 ニュースから得られた情報を元に推測を挙げる陽司、その事に更にショックを受ける智恵。

 「そんな……舞草は……壊滅したんですか?」

 「どうだろうな?朱音様だけでも脱出出来てると良いんだが…」

 そこで陽司の口から出た『朱音様』と言う名にミルヤが目敏く反応する。

 「朱音様?その方が舞草のリーダーなのですか?」

 「朱音様は折神紫の実の妹にして最大の切り札だ」

 「御当主様の妹?姉妹なのに敵対しているんですか?」

陽司が言う『朱音様』が折神紫の妹である事、そして敵対している事に清香が信じられないといった顔で訊ねる。

 兄と仲が良い彼女からしてみれば兄弟、姉妹仲が悪いどころか敵対まで発展している事が信じられないのだろう。

 「朱音様は二十年前のあの日から紫様が変わってしまった事に気付かれていた。文字通り別のモノにな」

 「二十年前?二十年前と言うと……大災厄ですか?」

 陽司の言う二十年前の事、大災厄。ミルヤはその年に一体何が起きたのかと彼に話の続きを促す。

 そこから語られるのは舞草と合流した可奈美達反逆者やダグオン達が聞いた話とほぼ同等の内容。

 その内容は調査隊の者達にとっても衝撃的な内容であった。

 「俄には信じ難いですが、それなら親衛隊がノロを体内に飼っている事も説明が尽きます……。ですが、我ら刀使の頂点たる御当主様が大荒魂………それでは、今まで私達が──」

 陽司の口より語られた二十年前の大災厄の内容に筆舌し難い衝撃を受けた彼女達、ミルヤは動揺を抑え頭を整理しながら次の言葉を紡ごうとしたその時、それは起こった。

 

 

 

 「「「「「!?」」」」」

 

 

 調査隊がその不可思議な現象を感じ取る。それは正しく突然だった。

 まるでもう一人の自分が前に立っている感覚、そして後ろを振り向けばそこにも自分が居る。

 前と後ろ、自分は確かに此処に居るのに、体が前に…或いは後ろに押し出された様な形容し難い感覚。

 「なに……今の…感覚……?みんなも感じた?!」

 「ええ、体が前に押し出されたみたいな……違和感を」

 「私もです。慌てて後ろを振り向くと、私の姿がそこにはありました」

 「お前らもか…。何だってんだ今の感覚は……いったい?」

 たった今起きた謎の現象に当惑するばかりの調査隊、そこへ陽司が何か思い当たる節があるのか、顎に手を充てながら訥々と語り出す。

 「そういやこの現象、舞草の古株の奴に聞いた事がある。二十年前の時も全く同じ事が起こったらしい」

 そして、舞草と言う邪魔者が居なくなった今となっては折神紫……その中に居る大荒魂が何を仕出かすかは分かったモノじゃあないと続ける。

 「それって大災厄の再来って事…?!紫様が大荒魂だって言うなら、私達で何とかしようよ!」

 陽司の話を聞き、美炎は自分達で紫を止めるなり倒すなりしようと言い出すが、それに陽司が待ったを掛ける。

 「残念だが、そいつは無理な話だ。大荒魂は通常の方法では倒す事は出来ねぇ。これまで戦ってきた荒魂達と同じってワケにはいかねぇんだ」

 その言い様に清香が不安そうに訊ねる。

 「それじゃ…打つ手が無いって事ですか…?」

しかし、それも否定する陽司。

 「いや、折神家には代々、大荒魂を鎮める伝承があるって話だ。それを使えば……言っとくが俺はそれがどんなもんか知らねぇよ、つまり…お嬢ちゃん達に出来る事はねぇって事だ。悔しいだろうがな」

 その話で先程の意味を察し納得するミルヤ。

 「成る程、折神朱音様が最大の切り札と言うのはそういう事ですか。その秘術をご存知なのは朱音様のみ」

 そのミルヤの言葉に頷く様に陽司は美炎が言い出した事に釘を指す。

 「…お嬢ちゃん達が策もなく敵地に飛び込んでも無駄死にするだけだ」

 「そんな……!」

それを聞いた美炎は悔しそうに歯を噛み締める。事は既に自分達の手に負えないのだと否応なく納得するしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━太平洋日本近海・潜水艦内

 ここで時計の針を戻そう。

 舞草が壊滅し、自らの母校が封鎖され、ショックにショックが重なる可奈美達。

 艦内の乗組員寝台室に集まった6人の空気は重い。

 「私……戦いたい」

俯いていた舞衣が決意を固めた声を溢す。舞草壊滅以前、温泉で姫和と交わした会話、戦う為の理由が無い事を思い悩み迷っていた舞衣に姫和は理由が無ければ戦う必要性は無いと言われていた事をずっと考えていたのだろう。

 「私は可奈美ちゃんに追い付きたくて、沙耶香ちゃんをほっとけなくてここまで来た。ただそれだけで、状況がどうなっているのかも……紫様の事も実感が無くて…でも、聡美さんや孝子さん、他にも沢山の舞草の人が戦う姿を目の当たりにして改めて思ったの。これ以上目の前の人が傷付くのは嫌だって!」

 寝台から立ち上がり、皆の前で己の思いを打ち明ける舞衣、彼女の脳裏に過るのは今日までに触れ合ってきた人々。

 「私の力では全ての人を助ける事は出来ないかもしれない。けど、せめて見える範囲の人達だけでも助けたい。それが私の戦う理由だって」

 そして、そんな舞衣の決意に続く様に沙耶香が自らの意思を伝える。

 「私も……私にはそれしか出来ないから」

今まで人形の様に、命ぜられるがまま、刃を振るってきた沙耶香にはせめて自分の意思で戦う事しか出来ない。

 だから初めて出来た心の底から信頼する仲間の為に共に戦うのだ。

 寝そべりながら彼女達の決意を聞いていた薫もまた、戦う理由を語り出す。

 「俺も里のみんなの仇を討つって決めた。このまま黙っていられるか」

 そんな3人の決意表明にエレンが慌てて止めに入る。

 「ちょっと待って下さい!残った刀使は私達だけなんデスよ?そもそもこの状態でどうやって……」

 「この艦を降ろしてもらって孝子さん達の無事を確かめに行きます」

 一度覚悟を決めた舞衣の行動力はどうやら凄まじいらしい。まだ、敵方の手の者が居るだろうに中々無茶な事を言ってのける。

 「それから鎌倉に戻る」

そして沙耶香も同行するつもりで舞衣の言葉を補足した。

 「敵は一人じゃありませんよ!大荒魂に辿り着くまでにきっと沢山の障害があります!」

 「十条さんは一人でその障害を掻い潜って紫様に一太刀入れました」

 冷静になるよう嗜めるエレン、何時もの片言が抜けるくらいには舞衣の思いきりの良さに動揺している。

 その舞衣は姫和を引合いに出し、断言する。

 「そのぺったん女に出来て、俺たちに出来ないはずはない」

 「はぁ…やれやれデス。解りました、五人だけでは頼り無いですから私も一緒に行きますよ!」

 隣で寝そべり反っていた薫までその気になっているのでエレンは短く嘆息すると、しょうがないと言った具合で5人に同行する事を表明する。いや、姫和の方を向いた時に見せた顔から察するに、こうなる事は何処か予感していたのだろう、エレンも結局の所、此処にいる皆と同じ気持ちなのだ。

 「ねねー!ねねねー!」

そして自分も居るぞと言わんばかりにねねが薫の頭上で胸を張って主張する。

 「姫和ちゃん!みんなで行こう!」

 「良いのか?」

可奈美が姫和に仲間達と共に戦おうと言う。姫和はそれを自分の個人的な理由から始まった戦いに付き合ってくれるのかと問う。

 エレンはサムズアップし、薫は右手を控え目にガッツポーズする。可奈美は云わずもがな、舞衣と沙耶香には最早問う必要性は無くなった。

 そんなみんなの意思が纏り空気が良い方向に変わった瞬間、誰かの腹の虫が鳴る。

 「今のは…」

 「お腹の音だよね?」

 「ひよよんデスか?」

 「違う!」

別の意味で変わってしまった空気に薫、可奈美、エレンが姫和に目を向けるが姫和はそれを否定する。

 「…私……」

果たして音の出所はと言うと、沙耶香が自ら名乗り出た。

 「そう言えばお昼食べるの忘れてたね」

舞衣はそんな沙耶香を微笑ましく思いながらもフォローを重ねていく。恥ずかしそうに身を竦めた沙耶香は何とも可愛らしい。

 「腹が減っては戦は出来ません!潜水艦の非常食なら沢山ありマスヨー!」

 「あんまり美味く無いがな…」

エレンが艦に貯蓄してある非常食の存在に触れるが、薫はそれを気落ちしたトーンでボソリと付け足す。ねねも心なしかげんなりしている。が、本来非常食とはそう言うモノだ。これでも日本は味に恵まれている。まぁこの潜水艦の所属は米軍ではあるが……。

 そして、そんな和気藹々とした活気が皆に伝播した瞬間、その現象は発生した。

 

 「「「「「「!!」」」」」」

 

 自分が前後にブレてズレる感覚、それは調査隊が感じたモノと同じ物。

 「何だこれはっ?!」

未知の現象に姫和は声を挙げる、それに答えられる者はこの部屋には誰も居なかった。

 

 

 

 

 一方で鎌倉の刀剣類管理局本部に居た親衛隊達もこの現象には当惑する他無かった。

 「なに!?」

真希が突如起きた変化に声を挙げる。

 「何ですの!?」

寿々花が未知の現象に驚き辺りを見回す。

 

 夜見が横になっている病室でも同様の現象が起きている。

 

 

 「あはっ!これって」

綾小路の刀使との引継ぎを行っていた結芽がこの変化に好奇心を刺激される。

 

 

 

 この不可思議極まりない謎の現象は日本全国で起こっていた。

 「これは……。一体何が起こってるんだ……」

美濃関に帰還し、封鎖された学院の中で目の前の刀使に起きた現象に本人と同じくらい目を丸くしながら雷火はぽつりと溢す。隣に居た里香は何とも無いので、この現象は御刀に選ばれた刀使や嘗て刀使だった者達にのみ起きているのだろうと里香や他の後輩を宥めながら周りを観察し結論付ける。

 (可奈美……。いや、あの子は大丈夫、それよりも今は…)

 兎も角驚き怯える後輩達のケアに尽力する事にした雷火であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本上空

 『この感覚……嘗ての時と同じ。やはり生きていたかタギツヒメ!良かろう、ならば私は貴様を滅ぼすだけだ』

 黄金の剣はそう言って鎌倉がある方角へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所山中・ダグベース

 陽も傾き始め、空が茜色に染まり始めた頃の山中、ダグベース内では外の異変など届く筈も無く、若者達はこの異変に未だ気付いてはいなかった。

 「帰るに帰れないから待機とは言え……やることねぇなぁ」

 「ンダベ?ゲームとか無いのかよ?」

 「お前と違ってここに住んでる訳じゃねぇから」

焔也と申一郎は互いにやる事も無く、オーダールームで駄弁っていた。

 「そう言ァ翼沙はドーシタよ?」

 「何でもやっと従姉と連絡が取れたらしくて、今、別の区画に居る…らしい」

 「ハーン、ま、下手に誰かと一緒に居る声が聞こえたら不味いだろうしナァ」

 因みに現在オーダールームに居るのはこの2人だけである。

 「戒将はどこいったんだよ?」

 「例の見習いの様子を見に行ってる。しっかしヤル事なぁんもネーナ」

 男2人ややだらしない態勢で椅子に腰掛けながら会話に興じる。そこへ龍悟と翼沙がほぼ同時に入室して来る。

 「た、大変です!?」

 「……お前たち、揃っているか…?」

翼沙は慌てて、龍悟は表情こそ何時ものそれだが声のトーンが何時もより切迫していた。

 「オ、オウ…どうしたよ?そんな血相変えて……」

 「何かあったのか?」

 「戒将は!?居ないんですか?!」

 「今、撃鉄の様子を見に行ったらしくて……」

と、4人が話し込んでいるとその戒将が撃鉄を伴って現れた。

 「随分騒々しいな。何があった?」

 「お主らは本当に愉快なヤツじゃな!ヌァッハッハッハッ!」

 「……ちょうど全員揃ったか、好都合だ」

 「どうやら…非常事態の様だな。聞こう」

龍悟の、そして翼沙の表情から軒並みならない状況を察した戒将が皆に話す様に促す。

 無言で頷き、ガードホークのカードを手にオーダールームのメインコンソールを操作し、端末に差し込む龍悟、すると中央のモニターに映像が映し出される。

 「これは…?」

 「……この近辺にある刀使の養成校を捉えた映像だ…」

 「なるほど……。うん?龍悟お前、何でそんなもん持ってんだよ?」

 「…日課の散歩だ」

彼の言葉をもう少し要約すると、平城に帰れないので、ガードホークの頭部に立ちながら外を散策していたのだが、その際地元の刀使が通う伍箇伝貴下五校以外の学校で龍悟はその現象を目撃した。それをガードホークに記録させたのだ。

 「……この後だ。この後に不可解な現象が起きた……!」

 龍悟の言葉に5人がモニターを食い入る様に見詰める。

 「「「「「?!」」」」」

 そして彼等もその異変を目の当たりにする。

 「これはっ?!」

 「オイ……何だコリャ……誰か説明してくれ……」

 「ぬぅ?!」

 「やっぱり……」

 「一体どうなってんだ……」

戒将、申一郎、撃鉄、翼沙、焔也と其々に相応の反応で驚愕する彼等。

 そして翼沙の言葉に戒将は目敏く反応する。

 「翼沙、やはりと言うのは…お前はこれを知っていたのか?」

 「いえ、正しくは先程知ったばかりです。こちらを」

そう言って翼沙が差し出したのは彼のスマホ。

 そこには翼沙宛にエミリーからのメッセージが記されたチャットのログが表示されていた

 

 [やぁやぁ、我が親愛なる従弟(おとうと)やっと連絡が付いたかと思えば、今度はこっちが大変厄介な事になってるという儘ならなさ。それはそれとして、今翼沙は何処に居るのかな?うん?そうそう、実は今、とても興味深い現象が目の前で起きてるんだよ。うちの刀使の子達がまるで分身みたいな事になっていて…嗚呼!こんな時に設備を自由に動かせない事が実に口惜しい!という訳で、私はこれから一度彼らと交渉しようと思う。そう言う訳でアデュー♪]

 なんと言うか、言いたい事を一方的に言って切った様なメッセージに焔也と申一郎は目を点にしている。

 撃鉄も微妙な表情をしてメッセージを見ている。

 「……個性的だな」

 「お前の身内の事は置いておくとして、このメッセージ内にある興味深い現象とは龍悟が見せた映像に関係があるとみて間違い無いな?」

 「ええ。エミリーからのメッセージは龍悟が持って来た映像の現象を指している事はまず間違い無いでしょう」

 戒将からの質問に翼沙が真剣な顔で同意を示す。

 「刀使にのみ起きている現象……一体何が原因なのか…」

 戒将が顎に手を添えて考え込む。他のメンバーもその言葉を聞き思案する、しかし彼等ではその原因を知る由も無い。

 「ンー、多分もうそろそろ中継が始まるからそれを視たら解んじゃないかなぁ~」

 「もうそろそろって……何でそんな事解る……って、お前誰だよっ!?」

 そこへ突如割って入った声、焔也がその声に応える様に喋って途中で聞き覚えが無い声に反応しツッコミと共に振り向く。

 その視線の先に居たのは見覚えが無い女性。

 「何者だ貴様!?」

 「や~ん、睨まないで欲しいなぁ~。アタシィ別に怪しいヤツじゃないし」

 「怪しいヤツは大抵そう言うゼ?(デケェ……そしてカワイイ)」

 「申ちゃんは分かりやすいねー。とりま、自己紹介。アルファの代理で来たゼータちゃんで~す、よろぴこ♪」

 「そのアルファと言うのは……?」

 「え?マジ?!知らないの?うっそー!」

 「……待て、そのふざけた様な口調の調子、お前……管理者の関係者か……?」

 「っげ~!龍悟くんめっちゃサッシ良い~。そうそう、アタシはその管理者アルファの代理なワケ」

 最後の龍悟の指摘に肯定の意を返すゼータと名乗る女性は軽い調子でオーダールームの中央に歩み寄って来る。

 「まさか奴以外の管理者がこんな人物だとはな…」

 「もしかして管理者って奴はみんなこうなのか?」

戒将と焔也はゼータの態度に軽く頭痛を覚えた。

 「あの…ゼータさん?先程の言葉の意味は……」

そんな微妙にシリアスが外れた空気を何とか修正しようと翼沙がゼータと名乗る管理者に先の言葉の意図を訊ねる。

 「ツバッティーの疑問の答えはこれだ!」

パチンとゼータが指を鳴らすとモニターにとある港が撮し出される。

 「これは……どこの港だ?いやそれよりも、あの潜水艦は……」

 「アリャ、あん時、ペッタンチャン達が乗ってったヤツダヨな?」

 申一郎の言う通り、テレビに映るのは反逆者2人と舞草のエージェント2人を乗せて逃亡した潜水艦、その船上には1人の女性がヘリの照明に照らされていた。

 「あれは折神朱音様!?」

 「何?!あれが御当主の妹……」

 「おいおい、何か大事になってんぞ?!」

 「ヤバくねぇかこれ」

 「……このタイミングで一体何をする気だ彼女は……?」

 「辺りを機動隊と鎌府の刀使に囲まれとるのう、最早逃げ場無しか…」

 6人の若者が口々に映像から見て取れる情報を元に意見を口にする。

 しかしゼータは朱音が何をしようとしているのか分かっているのか黙って笑っている。

 

 『皆さん!私は折神朱音です!私の話を聞いて下さい!』

 テレビの中の朱音は周りに怯む事もなく堂々とした立ち居振舞いでモニターの向こう側の誰かに語りかける。

 『今この国には大きな危機が迫っています!20年前、いえ、それ以上の大災厄が起ころうとしているのです!20年前の災厄の元凶、大荒魂は再び甦ろうとしています!』

 

 「これは……横須賀港か!」

戒将が港の立地から場所を割り出す。

 その間にも朱音の話は進む。そして彼女の背後、潜水艦のミサイル発射口が解放される。

 計六機、黒い鋼の塊が飛び出した。

 『これは攻撃ではありません!今飛び立ったのは…』

空を見上げ仰ぐ朱音、その瞳は残された僅かな希望に一縷の望みを掛けた者の願いが籠められたモノ。

 朱音は飛び去っていく六つの望みを万感の思いで語る。

 

 『私達の希望なのです!』

 

 刀使の正しき在り方を取り戻す為、そして過去から続く因縁の決着を着ける為、鋼の翼は最後の希望を乗せ鎌倉へと向かう。

 だが希望は彼女達だけでは無い。

 「どうやら遂にその時が来た様だな」

 「いつでもいけるぜ!」

 「……万全は期した」

 「やってヤルよ!」

 「終わりにしましょう!」

戒将が、焔也が、龍悟が、申一郎が、翼沙が、遂に来た時に覚悟の顔となる。

 今此処に……刀使とは異なる五色の希望が大荒魂の下へ向かう。

 それはとても力強いモノ、人類と荒魂の戦い、その大一番の幕が上がった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 あ、青砥陽菜です!ちょいと偉い大変な事になったよ!?

 朱音様の元から飛び立った6人、そして調査隊の娘達も決意を新たに折神家へ!

 そして例の五人組も……って、何!?あの剣!大きい!飛んでる?!喋ってる!!?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 激動!!鎌倉決戦その2。

 ちょっとオトン!あの剣近くでじっくり観たいんだけど!!




 次回は今回の別視点を挟みつつ、折神家強襲まで行けたら良いなぁ。
 

 虎の穴、地元から撤退しちゃった……選択肢メロンと駿河屋しか無くなっちゃった……あ、いや、通販あるんですけどね。
 ではまた次回


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第五十話 激動!!鎌倉決戦その2。

 
 おはようございます。おやすみなさい。まさに何時も通り。
 え?大して進んで無い?次回で鎌倉決戦シリーズの序が終わるので勘弁して下さい。
 
 最近、寝不足が思いの外祟ってたんです、それであまり進まなくて……



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 突如として起こりうる謎の現象。それは日本全国で刀使にのみ起こっていた異変であった。

 龍悟、そして翼沙の得た情報から異変を察知したダグオン達はその原因を探ろうとする。

 そこへ現れたのは……ぜ、ゼータだとぉぉおお?!

 あ…あの阿呆、何を勝手に別の管轄に…しかも実体を伴って介入しておるのだ!!?

 ええい!アルファと言い自重しろぉおおお!

 


 

 それは、刀使達に起きた不可思議な異変が起きた直後の事。

 潜水艦にて折神家……タギツヒメと戦う事を決めた6人は自分達の身に突然起きた異変に慌てて朱音達が居る部屋に駆け込む。

「どうした!?」

 駆け込んで来た6人を見てフリードマンが彼女達に何事かを問う。

 その対面では朱音と累が可奈美達同様の現象に苛まれていた。

 そして丁度、可奈美達が朱音達の状況を認識した瞬間にその現象は収まりを見せる。

 少し間を持ってエレンが開口一番フリードマンに今の現象を訊ねる。

 「グランパは何ともなっていませんでしたね…」

「この現象は刀使達にしか起こらない。以前同じ現象が確認された事がある……20年前の事だ」

 そう口にして両手を組ながら頬杖をするフリードマン。彼の中で嘗ても起きたこの不可思議な現象がリフレインする。

「恐らく隠世で何か大きな変化が起こったのだろう。……そして大荒魂が出現した」

 確信を持って語るフリードマンに朱音が自らの意思を伝える。

 「これは国家レベルの災害です。一刻の猶予もありません、この事を直ぐにでも人々に報せなくては……真っ直ぐ横須賀に向かいます。報道陣を集められますか?」

 朱音はこの事態を以て真実をテレビ中継を使って全国民に報せようと言うのだ。

 「そこで私が全ての真実を語ります。折神家が隠してきた事。タギツヒメのことを」

「それが明らかになれば、最早この国だけで済む問題では無くなるかもしれないな…。だが折神紫がそれを許すとは思えん。最悪の場合もあり得ます」

 フリードマンは事実を明らかにすれば日本どころか世界に波及しかねない折神家の真実とタギツヒメの存在に対し紫がむざむざとそれを許す筈が無い。下手をすれば殺されてしまう事もあり得ると明言こそ避けたが暗にそう表した言い様を口にする。

 だが朱音は折れぬのか退かない。

 「私に何が起きようと舞草には協力者が沢山居ます」

「駄目です!朱音様の代わりはいません!」

 累が思わず叫ぶように朱音を止める。フリードマンも累の意見に賛成なのか窘める様に冷静に告げる。

「逆に貴女さえ無事ならチェックメイトにはならない」

 事実、此処で万が一朱音に何かあれば、舞草としてはかなりの痛手だ。

 後に残るのは折神家同様に歴史を誇るとある名家、その一族が舞草内での派閥一強となるのは些か問題がある。それにタギツヒメが復活を完全に果たしてしまえばそんな余裕が人類に残されているのか否か……(無論、ダグオンの存在は考慮していない結論ではあるが)

 そんな大人達に姫和は彼等が良案無しと見るや口を開く。

 「…ならば横須賀から私達は別行動をとります。折神紫を討てば全てが終わる」

 姫和を始め、既に結論を下し決意をした6人。エレンが姫和の言葉に補足する様に続ける。

 「攻撃は最大の防御といいます!」

言うなれば御前試合のリベンジ、あの時たった独りであった者が今や6人。まぁ、最早暗殺とは言い難いが。

「止めても無駄なようだね……。朱音様といい、君達といい…本当に刀使というのは……」

 彼としても溺愛する孫娘含むうら若き少女達に託すしか無いジレンマに不甲斐なく顔をしかめる。

 「分かりました。ですがせめて、私の出来る事はお手伝いさせて下さい。あなた達が戦い易くなるよう少しでも多く敵を私の元に引き付ける様にしましょう」

 嘗て刀使であった者として、彼女達の覚悟が理解出来る朱音はせめて、今の己に出来る仕事をこなそうと彼女なりの支援を約束する。

 

 「ところでどうやって折神紫の元に辿り着く?」

話が決まったところで、ふと、薫がこの状況から如何にして鎌倉の折神紫の居場所へと向かうのかを問う。

 「え?それは…」

これにはエレンも流石に考えが沸いて無かったのか言葉に詰まってしまう。しかしそこへ可奈美が妙案思い至ったとばかりに口を挟む。

 「ねぇ。アレ、使えないかな?」

果たして彼女が思い付いた策とは一体……。

 

 

 

 

 一方、鎌倉の刀剣類管理局本部発令所内にて親衛隊の真希、寿々花はとある報を受け、その意図を図りかねていた。

 「折神朱音が投降?」

 「今更そんな事をして何になりますの?先程の現象と言い、何が起こっているのでしょう……」

 この発言から親衛隊であっても紫の真意を知っている訳では無いという証、結局の所彼女達とて組織の歯車に過ぎないのだ。

 「ボク達も横須賀に向かうべきだろうか?」

 「何が起こるか分かりませんし、此処を動かない方が良いでしょう。罠という可能性もありますわ。鎌府の刀使を出動させましょう、高津学長に連絡を」

 真希からの案に罠の可能性を踏まえ自分達は残るべきと指摘し鎌府の刀使隊を使おうと雪那に連絡を取るよう指示を飛ばす寿々花、だが発令所のオペレートをこなす男性所員は困惑しながらも事実を伝える。

「高津学長は鎌府の刀使を引き連れて既に横須賀港に向かっていると、今報告が……」

 まさかの独断専行、結果として良い方に向かったが、曲がりなりにも伍箇伝の一角を成す学長が事後報告の専行と言うのは責任者として宜しくない。

 

 その雪那は現在、横須賀港に向かう車の中で朱音の存在に忌々しさを覚えていた。

 (折神朱音……紫様の実の妹でありながら紫様に弓引く愚か者め。絶対に私がこの手で……)

 

 同じく神奈川へ向かうヘリの機内では結芽が胸を抑えながら呟く。

 「楽しい事私抜きで始めちゃやだよ……」

けほけほと咳き込む結芽、声には今一つ生命の覇気が無い。

 

 

 

 夢を見ている。霧に包まれた神社に続く階段、可奈美にとっての何時もの夢。

 「そっか、六人で行くんだ…でも強いよ。紫は」

若かりし姿の母、藤原美奈都が可奈美と語らう。

 「解ってる。あの人が御刀持ってる所、一回見たから…」

 「そっか。まぁ強いって言っても私程じゃなかったけどね~」

 「え~?そうなの?」

後数刻もすれば決戦だと言うのに、夢の中では何時も通り、緊張感の無い親子の語らい。いや、緊張はあるがそれが足を引っ張る事が無いのだろう。

 「…ねぇ、可奈美。刀使って素敵だと思わない?人を守って、感謝されて、剣術も学べる。最高だよね」

 千鳥を掲げながら美奈都は嬉しそうに語る。

 「うん!」

可奈美はそれに笑顔で答えるのだ。

 「それに福利厚生バッチリだしね!」

 美奈都はそんな可奈美にウインクする。霧が深くなる。もうすぐ夢から醒める。

 

 「可奈美ちゃん、そろそろ時間だよ」

 「ん…おはよう…」

舞衣が眠る可奈美を優しく揺すって起こす、薫がそんな可奈美に呆れる。

 「こんな時に良く眠れるな」

 「何処でもすぐに眠れる事も刀使の大事な資質デス!」

そこへ累が現れ6人に号令を掛ける。

「みんな!そろそろ横須賀だよ!」

 

 「ねぇ!大荒魂を倒したらみんなで美味しいモノ食べに行かない?」

「そういう事なら私がご馳走してあげる」

 「オー!累っぺお腹太いデース!」

 「…わざと間違ってるだろ」

可奈美が言い出した戦いが終わった後の展望、そこに累が年長者らしく奢りを約束する。

 そんな累にエレンが何時もの調子でおどけると薫からツッコミが入る。

 「やった!姫和ちゃんデザートは勿論チョコミントアイスだよね?」

 「コース料理確定かよ」

 「人をチョコミントのアイスがあれば良いみたいに言うな」

 可奈美の中ではデザート込みは確定事項らしい、姫和にチョコミントアイスを食べるよねなんて振るのだから最早、彼女の中では完全に姫和=チョコミントアイスなのだろう。

 当の姫和は自分がそんな単純図式に物申す。

「みんな無事に戻って来てね。美味しいお店探しておくから」

 そんなやり取りに累は笑って返す。

 赤い照明に照らされた部屋の中で姫和が舞衣に視線を向ける。

 「十条さん?」

 「お前が全体の指揮を執ってくれ。お前の指示があればきっと折神紫に辿り着ける」

 「え?!」

それは舞衣に全てを委ねると言う訓示、姫和としてもこの集団を隊とした時、指揮官は舞衣こそ相応しいという信頼の証。

 「お前にはその力がある。孝子先輩達も言っていただろう」

 「十条さん…」

 「姫和でいい。舞衣、後ろは任せたぞ」

彼女なりの信頼に、ならば答えねばならない。それは正しく仲間であることの証明なのだから。

 「うん。姫和ちゃん!」

だから迷わず名を呼んで返す、出会った頃の蟠りも無い、確かな絆が生まれた証左、そんな2人を沙耶香も嬉しそうに眺める。

 

 

 

 

 

 ━━横須賀港

 多くの人が集う夜の港、とは言っても大半が鎌府の刀使、特祭隊の機動隊、そして報道陣。後はパトカーと報道車ばかりで野次馬は一切存在しない。

 既に潜水艦は港の波止場に停止している。朱音は潜水艦の船上に着の身着のまま、警戒も備えも無く立ち尽くす。

 

 「皆さん!私は折神朱音です!私の話を聞いて下さい!」

 

 ヘリの、そして機動隊が展開したサーチライトが彼女を照らす。

 幾重もの報道カメラが朱音の姿を全国に映し出す。

 「何故マスコミが居る!有事の際に備えろ」

其処へ雪那が現れ現場の惨状に声を挙げる。

 

 「今この国には大きな危機が迫っています!20年前、いえ、それ以上の災厄が起ころうとしているのです!」

 

 波止場を臨む倉庫街から狙撃手がスコープを覗く。そのスコープ越しに写るのは折神朱音の背後、無防備な後頭部。

 

 「20年前の災厄の元凶、大荒魂は再び蘇ろうとしています!」

 

 テレビに、街頭ビジョンに、ネットの動画サイトに、様々な映像メディアに朱音が撮される。

 

 「刀使の皆さんも感じたでしょう?先程の不思議な現象を!それが大荒魂が顕れる前兆です!最早一刻の猶予も無い!」

 

 朱音の言葉に包囲を敷いていた鎌府の刀使達も顔を見合せ困惑している。何が正しい事なのか?それは末端である彼女達には分からない。

 いや、よしんば知っている者が居たとしても、一生徒でしかない者に出来る事などたかが知れている。

 そんな刀使達の動揺、日本中の喧騒を朱音の中継を艦内で眺めながらフリードマンは不敵に微笑む。

「フン…準備は整った」

 潜水艦の上部発射管が次々解放されてゆく。

 

 「どうか皆さんのお力をお貸しください!」

 

 黒煙と共に炎を吹き、空に立ち上るのは6つの黒鉄の翼。その行き先は鎌倉、折神本家。

 

 「これは攻撃ではありません!今飛び立ったのは──」

 

 演説を続けながらも空を仰ぐ朱音、視線の先には既に見えなくなった彼女達の最後の切り札。

 

 「私達の希望なのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・折神家刀剣類管理局本部

 発令所でオペレートを勤める男性が潜水艦から射ち出された飛行物体の正体を判別する。

「これは……ストームアーマーのコンテナです!」

 飛び立った6機の正体はS装備用の強襲コンテナ、その現在地を今も尚計測し続けている。

 「予測着地点は!?」

その正体を知り寿々花がいち早く敵の目的を察する。

「ここです!ここに向かって飛んできます!」

 オペレーターが返した言葉は予想通りのモノ、舞草残党…いや、反逆者達の狙いは空からの正面突破。

 

 「本部まで早く!」

 雪那は最早朱音の事を棄て置き、即座に待機させていたヘリに乗り込み鎌倉の本部に脱兎の如く帰還を急かす。

 

 

 

 

 そんな横須賀の上空を停滞する黄金の剣。

 彼の者の名をライアン、彼は先程起きた現象からおおよその位置を察知したがそれは飽くまでおおよそであり、細かな居場所を掴めずにいた。

 しかし、そんな彼に僥倖とも言える出来事が起きた。それは自分とは違う6つの飛行体、そこから僅かに感じるノロと御刀の気配、アレを追えば念願の相手に合間見える事も叶う。

 『アレの先に奴が居る……。嗚呼、遂に使命を果たす時が来た!』

 首を洗って待っていろと続くその口調は暗い憘びに満ちていた。

 

 

 

 

 

 遮るモノもない空の道を片道切符の特急便で敵の頭上を悠々と飛び越え本丸に弾着する強襲コンテナ。

 衝撃に舞った土煙が辺りを包む。

 聳え立つ剣の如き黒鉄の翼から6人の人影が躍り出る。

 それは決戦装備としてストームアーマーを纏った可奈美達6人の刀使達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星圏・衛星軌道

 同じくしてエデン内でも、女医の装置により横須賀での出来事が知られる。

 「クスッ……良いわぁ!とても良いわぁ!こういういかにもな感じ…大好きよぉぉぉぉ!!」

 「ふん!大荒魂とやらがどれ程のモノか知らぬが、儂らからしてみれば大した脅威ではあるまい」

 そんな女医の反応にメレトは鼻を鳴らす。無論鼻らしき場所は判らないのだが。

 と、其処へ鬼と道化師、甲冑、そしてマッニーが現れる。

 「中々、愉快な出来事が起きているようだね」

 「カトウセイブツノウチワモメカ……マァ、ヒマツブシクライニハナルカ」

 「下賎、無価値。無意味。進攻急務!」

 「せやなぁ……猿どものいざこざは金にならんから興味無いなぁ。ま、滅んでも困るしとりあえずタギツヒメ?とやらには負けてもらわあかんけど」

 口々に好き勝手物を言う彼等、漸くして鬼は何かを思い付いたのか提案する。

 「ふむ、大荒魂とやらが存在するのならダグオンも現れる可能性は高い。それに刀使と言う原生種の中でも特殊な存在の力も見てみたかったところだ」

 「ホウ?シカシダグオンハマダシモ、トジトヤラハドウハカルノダ?オオアラダマトヤラトノセントウノジョウホウダケデハタイシタコトハワカルマイ。セイゼイガゴクイチブノジツリョクテイドダ」

 首魁の案に道化師は些かの疑問を呈する。しかしそれを予想していたのか鬼は笑いながら問題無いさと返す。

 「マッニー。君の初仕事だ、例の処置を施されたクイーンから幾つか見繕って彼等を地球に降ろせ」

 「ん?クイーンって…あのザゴス星人のか?ま、確かに改造したお掛けで数には困らへんな。わかった、ほんなら、軽ーく七千ばかりお届けや」

 「あら?もう例の処置は済んでいたのね。なら妾にも少しちょうだい。例のノロを使った実験に数百匹程使いたいのよぉ」

 「良いだろう。持っていきたまえ」

曲がりなりにも同じ監獄に住まう相手を替えの利く道具程度に扱う彼等、憐れザゴス星人には最早人権などありはしなかった。

 

 地球での決戦に宇宙の彼方からの魔の手が迫る。

 凶悪な犯罪宇宙人と大荒魂タギツヒメ、果たして世界はこの危機を乗り切る事が出来るのであろうか?

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 燕 戒将だ。我々が決戦に対する決意を固めた頃、青砥館で新たに山城を迎えた調査隊達も己の成すべき事に動き始めていた。

 

 ……何だゼータとやら?俺の決意を知りたいだと?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 結集!鎌倉決戦その3

 

 例え周りがあの娘を赦さなくとも、俺だけは味方でなければならんのだ!




 はい、次回調査隊の描写を入れたら遂に反逆者対親衛隊の幕開けです。
 ザゴス星人にはとりあえず戦闘員ポジションになって戴きます。

 だってあの宇宙人、数だけは多いし丁度良い感じの巨大戦力あるし、潰しが利くんですもん。
 ではまた次回


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第五十一話 集結!鎌倉決戦その3


 こんばんは。そして遅ればせながらミルヤさんお誕生日おめでとう。と同時に私もおめでとう……あーあ、また年取っちゃったよ。
 私もミルヤさんと誕生日同じなんですよね。
 暑くて思うように筆が進まなかったのは誠に申し訳ございません。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 儂イプシロン、シー坊が倒れたので代打をする。

 S装備用強襲コンテナで鎌倉の折神家へとカチコミかける平均14,5歳のJCK軍団。

 一方火星では悪の宇宙人達がブラック企業染みた悪巧みをしていた。

 ちな、ゼータはきっちり許可取っての代理ってのは面白いから内緒にしておく。

 


 

 ━━原宿・青砥館

 刀使のみに起きた謎の現象、それによるタギツヒメ復活の前兆に美炎は皆で鎌倉の折神本家へ向かおうと提案するが陽司にそれを止められる。

 そして謎の現象より数十分後、自分達の無力を噛み締めながら美炎はポツリと溢す。

 「……私達…本当に何も出来ないのかな……」

傍に付き添う清香も消沈する美炎に何も声を掛けられない。

 そこへ陽司が血相変えて新たな報せを持ってくる。

 「おいお嬢ちゃん達!拠点を逃げ延びた朱音様達と連絡が取れたぞ!」

 その報せに美炎が陽司を見る。他の皆も彼の口にする言葉に耳を傾ける。

 「間も無く朱音様の元に身を寄せる刀使数名による奇襲作戦が決行されるって話だ!」

 「だけど相手はあの御当主様……それに親衛隊も……並の刀使じゃ相手にならないんじゃ」

 清香が不安げに作戦の成功難度を口にする、しかし陽司は心配には及ばないとばかりに話を続ける。

 「並じゃねぇさ。なんせその中には20年前、紫様と共に大荒魂と戦った藤原美奈都と柊篝の娘が居るんだからよ!」

 陽司の挙げた紫以外の2人の名前に聞き覚えが無いからかミルヤが口を挟む。

 「御当主様と共に大荒魂と戦った刀使達の中に、その様な名前は無かったと記憶していますが……」

 「それが居たのよ。歴史から抹消された真の英雄がな」

それを聞いた由依が感慨深そうに件の刀使達を想像する。

 「英雄の血を受け継いだ刀使かぁ。そんなスゴい刀使ならあたしも名前くらいは知ってたりするのかな?」

 「一人は十条姫和。そしてもう一人は衛藤可奈美って言うお嬢ちゃんだよ」

 可奈美の名を聞いた瞬間、美炎が信じられない事を聞いたとばかりに声を挙げる。

 「えっ、可奈美?あの可奈美が御当主様の戦う!?」

しかし智恵はその話を聞いても楽観的にはなれず現実的な話を振る。

 「どんな凄腕の刀使だって、簡単じゃないわ……相手は御当主様や親衛隊だけじゃない。数えきれない程の刀使達が警護に就いている筈だもの。御当主様の元に辿り着く事すら難しい」

 しかしその反応は陽司も予測していたようで更に続きを語る。

 「そこも計画のウチよ。間も無く朱音様が大衆の前に姿を現し、真相を公表される。そこで御当主様の正体も目的も明かされるワケだ」

 「それではみすみす敵の手に落ちるようなもの。何故その様な──」

 ミルヤは朱音の行動に疑問を懐き、しかしそこで何か察したのか即座に納得する

 「いいえ……成る程…そういう訳ですか……それならば説明が着きます」

 ミルヤが1人で勝手に納得してしまったのでよく意味が分からない由依はおずおずと手を挙げながら訊ねる。

 「えっと…あたしにはよく分からないんですけど。どういう事ですか?」

 「折神朱音様は、相手にとっては何を差し置いてでも確保しなければならない存在。例え罠だと判っていても朱音様が姿を現せば動かない訳にはいかないでしょう。一度逃した相手なら尚更、万全を期して、相当数の人員を動かす筈です」

 そのミルヤの説明に得心がいったのか呼吹もその後の展開が予測出来るのか面白そうに笑う。

 「なるほどな、相手のアジトからごっそり敵が居なくなるって寸法かよ」

 「だとしても、少数で相手をするには厳しい数の刀使達が待ち受けているはずだわ」

 「御当主様の警護を任されてるくらいなんだから、きっと腕も立つんでしょうね」

 その作戦の効果は理解出来るがそれでも敵は居る筈と口にする智恵と由依、しかし美炎は何かを決意した瞳で皆に言うのであった。

 「……私も鎌倉に行く!御当主様と戦う事は出来なくても、出来る事が何かあるかもしれないもん!……無かったとしても、こんなところで黙って待ってるなんて出来ないよ!」

 「私も美炎ちゃんに賛成よ。みんなが止めても行くわ」

智恵が美炎に賛同する。

 「ただ待ってるだけじゃ退屈だしな。少なくともここに居るよりはマシか」

 呼吹も退屈凌ぎに同行する気だ。

 「わ…わたしも…行きます……」

 「清香は待ってて良いんだよ?」

 「ううん、行くよ。……正直怖くて怖くて仕方がないけど……ここでみんなが帰ってくるのをただ待ってるのなんて、その方がずっと怖いから……」

 恐怖心を押し殺し名乗り出る清香、美炎に気を使われるが自分だけが待ち続けるのは嫌だと意思を通す。

 「貴方達と来たら……仕方ありませんね、隊を預かる者として私も同行します」

 呆れた口調だがどこか嬉しい顔のミルヤが言う。

 「学長からは、ミルヤさんの言うことをきけって言われてますし、もっちろんあたしも着いて行きま~す」

 由依はぶっちゃけそれで良いのかと思わなくも無いテンションで着いてくる気満々である。

 「やれやれ…無茶なお嬢ちゃん達だ。こりゃ止めても無駄みてぇだな。なら急ぐ事だ、奇襲作戦が始まるまでに到着しねーと、力を貸すことも出来ねぇからな」

 陽司は仕方が無いと言わんばかりの顔で彼女達に労いを掛ける。

 「うん、わかった!」

 「移動距離を考えると時間がありません。これまで以上に迅速な行動を各自心掛けましょう」

 「待ってて可奈美、今行くからね!」

 6人の意思は1つに纏まった。そうと決まれば兎に角急ぐのみ。

 青砥館を飛び出した調査隊一行は原宿駅前通りまで差し掛かる。

 「絶対に許せない……舞草のみんなを……敵はきっと私が……!」

 どうにも智恵は舞草が壊滅させられた事に対し未だ憤っている様だ。下手人が結芽であると知ればどうなるかは想像に難くない。

 「気持ちは理解りますが、私情は捨てて下さい。怒りは視野を狭め、思考を濁らせます。冷静さを欠いては本来の力を発揮する事は出来ませんよ」

 そんな智恵を見かねミルヤが隊長としての言葉で諫める。

 「分かってるわ…。でもそう簡単に割り切れるモノじゃ……」

 なまじ他者の面倒を見る世話好きな性格故、同校同組織の仲間がやられた事に対し怒りが抑えきれないのだろう、そんな智恵の感情に美炎も共感を示す。

 しかしそれでもミルヤは感情を制御すべきであると主張する。

 そんな彼女に清香が恐る恐る訊ねる。

 「ミルヤさんは……どうしていつもそんな……冷静でいられるんですか?」

 「そうしないと誰も守れないからです。多くの人々は勿論、仲間も私自身も」

 十代半ばでこの心理に到る彼女の在り方に美炎は尊敬はすれど、自分には出来ないと物憂げな顔になる。

 「ミルヤさんは大人だね。頭は良いし、冷静だし、尊敬しちゃうよ。だけど私には無理。そうしなきゃって分かっていても、心が反応したようにしか動けない」

 美炎の言う心のままにと言うのも決して悪い事ではない。しかし、往々にして求められるのはやはり感情よりも理性なのだろう。

 そんなやり取りで調査隊内の空気が悪くなりかける。

 そこで見かねた由依が窘めるように皆に向けて彼女なりにおどけた形で割って入る。

 「まーまー!みんな冷静になって、ここで言い争っても仕方ないでしょ!折角の可愛い顔が台無しだよ!笑顔!笑顔!仲良くしよっ!」

 「私は冷静です。それに言い争っている訳でもありません。意見を述べ合ってるだけです」

 だがミルヤは飽くまでも冷静だと主張している。そんな所へ呼吹が慌てたところでどうしようにも無いのだから堂々構えていれば良いとかっさらっていったので美炎が意外そうな顔をして慌てないのか?と質問する。

 「言ったろ、なるようにしかならねーって。それとも何か?慌てたらハッピーエンドになるのか?ならねぇよ、ならドンと構えるしかねぇだろう?」

 「ドンッと構えるって……ふっきーに似合わない言葉だよね、いつも真っ先に飛び出しってっちゃうし」

 「確かに……」

 「うっせーな!?とにかく、ジタバタすんじゃねぇよ!」

 そんな呼吹の言い様に美炎が何とも似合わないと称し、清香も迷うことなく同意したものだから、何とも気恥ずかしそうに呼吹が怒鳴る。

 「だけど間に合うかな~鎌倉まではまだまだ超遠いよ?」

 「間に合わせるの。何があっても必ずね」

 由依の些かお気楽な物言いに年長者らしくぴしゃりと断言する智恵、だが、そんな時に限って邪魔は現れるモノだ。

 「いんや、そうは問屋が卸さないらしいぜ」

呼吹が何かに気付き、皆に警戒を促す。

 

 ──Giiieeeaaaa!!──

 

 そんな呼吹の言葉に反応する様に現れたのは荒魂の群勢、それを見た由依が泣き喚く。

 「世知辛い世の中だぁ!神も仏も居ないって、こういう事を言うだね!だけど女神さまには居て欲しいぃ!!」

 ともあれ刀使の本分を果たす為に彼女達は御刀を振るう。智恵とて、怒りがあろうとも見ず知らずの力無き人々が傷付く様を見逃す程薄情では無いと言う事だ。

 6人から7人に増えた事もあり戦力がアップした調査隊、しかし荒魂もまた一筋縄ではいかない強さを誇り、思いの外時間が掛かってしまう。

 まるで自分達の邪魔をする為に現れた荒魂に対し、ミルヤはその通りなのかもしれないと類推する。

 ならば一匹でも多くの荒魂を倒しその目算を狂わせる事とする。

 そして街道に出ながら清香は何故急いでいる時に限って邪魔が入るのかと漏らす。

 智恵はそれでも放っておく事は出来ないそれが刀使の使命だとと説く。

 しかしミルヤとしてもこれ以上妨害が入る事は望むモノでは無いと口にするが、由依は一匹見付けたら30匹はいるんじゃないかと溢す。

 「ゴキブリかよ!?……まぁ、あながち間違っちゃいねぇか」

 ツッコむ呼吹、が、存外的を射ているので否定は出来ない。

 「ゴ、ゴキブリ……うぅ~…想像しちゃった……背中がゾワゾワしちゃう……キモチワルいよぉ…」

 「あ~!ごめんね清香ちゃん!こういう時は楽しい事を考えると良いよ~」

 想像力を働かせ思わず身震いする清香に、由依は謝罪しつつも軽くスキンシップを取ろうと楽しい事を想像するよう語りかける。

 結果、戦いが終わったら皆でクレープを食べに行きたいと言う清香の可愛いらしい願望に喜び賛同しながらも、それはフラグなのではと余計な事を口にしてその通りになってしまう調査隊、再び妨害に現れた荒魂と対峙するのであった。

 

 それから暫くして、荒魂を退けた調査隊。時間が有限である以上、これ以上の遅延は避けたい。

 そこで如何にするかと案を出す美炎、それは諦めなければなんとかなると言う根拠、無い理論。

 ともあれ他に妙案があるでも無し、進み行く調査隊。

 そこで突然由依が唸りだす。

 「ん~~~~!」

 「うっせーな!何唸ってんだよ、大人しくしてろ!」

 「もしかしてお腹痛い?トイレ行く?近くのコンビニ寄ってこうか?」

 「や、そうじゃなくてちょっと質問良いかな?」

 「うん?何?」

 「折神家に行くのはいいけど、そこに行ってあたし達何するのかなって、そこが解んなくて……一緒になって御当主様と戦う?けど倒し方解んないし、下手したら舞草の人達の足引っ張っちゃわない?」

 「そう言えば駆け付ける事ばかり考えてて、何するかまで考えてなかった!?」

 「何って……支援だよね?」

 「具体的に何すんだよ?」

 「応援……とか?」

 「ご飯の差し入れとか!戦うとお腹空くし、腹が減っては戦は出来ぬだよ!」

 「そうそう、腹が減ってちゃ戦いどころじゃねぇもんな。出来ればスタミナ満点の弁当を───って、何でだよっ!?」

 「ナイス、ボケ突っ込み」

と以下トリオからカルテットに進化した中等部組のやり取りであった。

 そして呼吹が美炎のアホさ加減に呆れ、清香にもそれが移ったのではないかと口にすると、

 「そんなひどい。ほのちゃんと一緒だなんて…」

曲がりなりにも親友と呼べる立場くらいに発展した間柄なのにこの言い分である。当の美炎は──

 「あれ?気のせいか今、もっと酷い事を言われたような……まっ、いっか!」

 「……いいのね……」

この能天気である。これには智恵も苦笑いしかない。

 ともあれ、ミルヤの指摘で三度現れた荒魂に対処する調査隊。流石に慣れたもので余裕が見てとれる。

 そしてそこから決まる彼女達の役目、それは撹乱による囮。

 調査隊が暴れる事で舞草の突入組を支援すると言うものであった。

 辺りはすっかり陽も落ちた頃、やっと鎌倉に辿り着く調査隊。

 「やっと鎌倉に着いた。まだ間に合うかな……間に合うよね?」

 「折神家は直ぐそこです。今は信じて急ぎましょう」

美炎の不安がる物言いにミルヤはともあれ信じて急ぐ事を口にする。そこへ由依が待ったを掛ける。

 「あっ…ちょっと待ってみんな!これって…舞草の人達じゃない?」

 そう言って取り出したスマホを調査隊の皆に見せる。

そこには生放送のニュースで舞草の潜水艦が撮し出されていた。どうやら間に合っていたようだ。

 「いよいよなんですね……何だか緊張してきちゃった…」

 清香が震える手をもう片方の手で押さえながら呟く。

 「どーせなるようにしかならねぇから開き直れ」

 「そんな事言われても……はぅぅ~~~…」

 「緊張してる時は掌に人って字を書いて飲み込むと良いって言うよ!」

 「もう既に飲んでるの…50人くらい…」

 「あちゃー!飲んでたかー。なら万事休すだー!」

 「万事休すなのっ?!」

 「ドンマイ」

 「えぇ~~~っ!?」

 「大丈夫!あたしが良い方法知ってるよ、効果抜群間違いナシの保証つき!」

 「ど…どうするの?」

 「人肌にはリラックス効果があるんだって!だ・か・ら、落ち着きたい時はハグが一番!カモン清香ちゃん!」

 「あはは……遠慮しときます…」

再びの調査隊中等部カルテットの漫才であった。

 清香は兎も角として美炎達は意外にも落ち着き払っている。どうやら彼女は開き直れたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 所変わってゼータの出現によって生放送の中継を視たダグオン達、5人は来るべき時を逃さぬ為に万全を期す為に準備に入る。

 「ねぇねぇ、てっちゃんは行かないの?」

そして只一人、そんな5人を眺めながら仁王立ちする男、田中撃鉄。ゼータはそんな彼に気さくに話し掛ける。

 「てっ、てっちゃん?!……んむむ……ワシとて本音を言えば着いて行きたい。しかし、今のワシが一緒に行っても足を引っ張るだけじゃ、悔しい事にのう……じゃからワシはワシに出来る事として此処で己を鍛えながら皆の勝利を信じる事にした!」

 前回の研究所での一件から思う所あってか、今回は同行を辞退した撃鉄、そんな彼の表明にゼータは眼を輝かせる。

 「やー♪ヤバ!マジヤバ!めちゃんこ激ヤバだし!何てゆーの?オトコギ?ってヤツだし!かわい~い!」

 「はっ!?可愛い!?何を抜かしとるんじゃお主はっ!!(……やはりこういうオナゴは苦手じゃ)」

 ゼータのギャルギャルしたノリに付いていけない撃鉄は本人に言ったら否定するだろう何とも面白い顔をしていた。

 「ねぇねぇ、戒将ちん戒将ちん!」

そんな撃鉄を捨て置いてゼータは次に戒将の方へと向かって初対面にも限らず馴れ馴れしく接する。

 「何用だ?時間が無い、下らない要件ならば後にしろ」

 「ん~…、多分そんな掛かんないけどアタシの主観だし、でも聞いときたいし……戒将ちん以外のダグメンを先に送っちゃえば?」

 右人差し指を唇に宛ながら気軽な調子で宣うゼータの態度に、戒将は一度溜め息を吐くと焔也達に先に行けと視線で示す。

 「ワシも出た方が良さそうじゃな。しかし大変じゃな、こんなアバンギャルドな金髪ギャルの相手をせにゃならんとは……」

 「金髪?黒髪にメッシュが入った少女ではないのか?」

 

 「「うん?」」

 

 撃鉄が空気を読んで退室しようとするなかでゼータの相手をこれからもしなくてはならない戒将に同情の言葉を掛ける。が、ゼータの容姿で戒将との認識に差異があることに気付く。

 「どういうことじゃ!?」

 「互いに見えている姿が違うのか……?いや、そう言えば以前管理者(アルファ)が溢していたな、管理者は我々の世界では個々によって認識に違いが出ると」

 頭を捻る撃鉄に対し、戒将は以前に愚痴の様に溢していたアルファの言い様を思い出し口にする。

 「戒将ちん正かーい!ほら疑問が晴れたらてっちゃんは出てった出てった!これからアタシは戒将ちんとだいーじなお話があるんだから!」

 そう言うとゼータは自分の倍ある撃鉄の背を押しオーダールームから弾き出す。

 「ぬぉうぉおお?!」

 セルフドップラー効果を残し閉め出された撃鉄、後に残るはゼータと戒将。

 「それで、一体何の話があるのだと言うのだ。既に鎌倉では事が起きているのだぞ」

 「まま、転送装置使えば一瞬なんだし、焦らない。急がば回れしょ?んでも、時間が無いのもジジツだしタテマエ無しね」

 そう言うとゼータは側にある椅子に腰掛け戒将に向き直る。

 「しょーじき、全部を知ってる訳じゃ無いけど、アルファに付き合ってこの世界系列は何回か覗いたことあるのね。んで戒将ちんの妹ちゃん、ゆめゆめだけど、あの娘結構大変な事しでかしてるじゃない?」

 そのゼータの言い様に心当たりが幾つもある為、黙り混む戒将、構わず彼女は話を続ける。

 「ま、ぶっちゃけ今回の騒動で、も、舞草?だっけ?それを壊滅させたのもゆめゆめだし、あの娘大分恨まれたりしてるんじゃない?それでも助けるの?」

 「成る程な、つまりは結芽が救われればそれに納得しない者から謗りを受けると言う事か」

 ゼータの要件がどういうモノか理解した彼は一度瞑目するとゼータの顔を真っ直ぐ見据え口を開く。

 「問われるまでも無い。俺はあの娘を……結芽を助ける為にダグオンとして戦うと決めた。そこに迷いは無い、無いが……あの娘があそこまで身勝手極まりない振る舞いをしているのを諫められなかったのには責任がある。謗りを受けるならばそれは俺も同罪だろう。無論、当事者からすれば簡単に割り切れる事ではないだろうが……」

 「そっかそっか、じゃ、その辺は助けた後に置いとくとして、君は一体何を迷ってるのかにゃあ?と言うか具体的な手段はあるの?」

 戒将の決意に一先ず納得してみせるゼータ、しかし彼女は彼が何かに迷っている事を指摘する。

 「手はある。既にお前の同胞からそれを提示され受け取った。だが、それは……俺の手であの娘を手に掛ける事と同義だった……そこに今更ながら恐怖を憶えているようだ」

 「あー……何となく察したし。アイツもデリカシー無いなぁ、もう少しやり方あった気がするし。……ん、でもさ、何があっても助けたいんだよね?ならさ、残酷なようだけど、やるしかないんだよ?どうあってもね」

 立ったままの戒将が右ポケットに手を充てるのを見てそれがどういうモノか管理者権限で即座に察するゼータ、ついでにその際のアルファとのやり取りも察した為か微妙な顔になる。

 とは言え、苦渋に歪む目の前の人の子に優しい声音でしかし揺るぎ無い事実を突き付ける。

 「大丈夫…とは一階は言えないけど、でも、アイツの腕は確かだからさ、少なくとも薬はちゃんと作用するよ。だからさ、怖いかもしれないけど、決めたんならどんなに苦しくてもやらなきゃ、お兄ちゃんなんでしょ?」

 「…………そう……だな、既に手段は示された。後は俺が何を於いても実行するだけだ。手段がその1つしかないのであれば尚更」

 「大丈夫そう?」

 少し心配そうにこちらを見詰める瞳に戒将は歪んでいた顔を解いて、穏やかな顔で微笑む。

 「礼を言う。貴女が俺の中にあった迷いを指摘してくれたお蔭で頭の中がスッキリした。ああ、そうだ。例え世界中の全てがあの娘の敵に回っても俺だけは味方でいなければならないんだ。だからあの娘の内に巣食う病魔もノロもコレを使って取り除けるならば……あの娘が二度と目覚めぬ状況になるくらいなら、俺はあの娘を救う為にこの薬を使おう」

 「ダイジョ~ブみたいじゃん!オッケー!そんならアタシのお話は終わり終わり~。早く行って妹ちゃんを助けてあげてよ」

 「そうさせて貰う」

そう言ってオーダールームを飛び出す戒将、そしてそんな彼の背をを慈愛の目で見送るゼータであった。

 「がんばれ~…フフッ」

 「何じゃ、ワシが居ない間、何があったんじゃ……?」

そして戒将が部屋を出た所を目撃し、外でずっと待ちぼうけた撃鉄がもう良いのかのう?と不思議そうな顔でオーダールームを覗くと微笑むゼータを見て首を捻っていたのであった。

 

 

 駆ける。駆ける。駆ける。オーダールームを出て、転送装置の前まで駆ける。

 既に仲間は先に鎌倉の折神家に跳んだであろう。ならば自分も急がねば、この世で唯一人の妹を救う為に…。

 

 「トライダグオン!」

 

 「タァァァボッカイッ!」

 

 蒼き閃光は跳ぶ、その胸に抱いた願いと共に、混迷極まる決戦の地へ───

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ねねー!ねー、ねねねー。ねねっ!?

 ねー!ねー!ねねね…、ねーっ!!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉決戦!孤高の燕VS変幻自在のコンビネーション。

 

 ねねねねねーっ!ねー!

 

 




 次はもう少し早く書けたら良いな!
 さて、天華百剣の新イベントで少し気晴らしします。
 ではまた次回


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第五十二話 鎌倉決戦!孤高の燕VS変幻自在のコンビネーション。


 こんばんわ!こんばんわで良いのかな時間的に?
 やー、兎も角投稿です。
 この辺の結芽ちゃん、テレビで見たとき必死さが好きでした。
 ところで鎌倉決戦破の章は序より長くなりそうで少し戦慄した私。
 ついでにマテリアル2に書いた舞衣ちゃんがファイヤーエンの正体に直ぐ気付くに誰もツッコまないと言うある意味の信頼感…さす舞衣。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 あんのぉ~……誰もいねぇんですけど………………。

 うぅ…こうなっだらしがだねぇだよ……。

 調査隊の娘ッ子さん方が道中荒魂の妨害に合いながらも何とか鎌倉に到着。

 一方ゼータさんはダグオンさん方の参謀役の戒将さんに妹さんの事でお話をしとっただよ。

 第三者に溜め込んでたモン吐き出せて憑き物が落ちた戒将さん、変身して鎌倉さ、転送装置で向かったんだべ

 


 

 舞草残党による折神家奇襲作戦。その行動前に折神家前へと到着した調査隊はミルヤ指揮の下、素早く行動に移す。

 より多くの敵を撹乱する為、二手に別れる彼女達。

 安桜美炎、瀬戸内智恵、七之里呼吹をA班、木寅ミルヤ、六角清香、山城由依をB班として作戦行動に入る。

 例の如く、由依が清香相手に過剰なスキンシップを求めたのは言うまでもないだろう。

 ともあれ、由依のスマホから情報を得る調査隊。画面の中からは、朱音の演説と共に飛び立つ強襲コンテナの姿。

 本丸は彼女達に任せれば良い、自分達は1人でも多くの刀使の目を惹き付けなければならない。

 それは言う程簡単な事では無い。親衛隊には及ばずとも、折神本家並びに刀剣類管理局本部の警護にあたるのだから相応に腕の立つ者達が配されているのは間違い無い。

 「ここからは各自臨機応変に判断して動く事。それと、くれぐれも深追いはしないように。全員揃って帰投してこそ、初めて作戦成功と言えるのですから」

 ミルヤが別れ行く隊員に対し下知を下す。

 「そうね。終わったら、またみんなでクレープを食べに行きましょう」

 智恵が未来の展望を口にする。

 「賛成~!」

 「クレープのために……がんばります…」

美炎の清香はその言葉にやる気を増し増しにする。

 「では作戦開始です」

ミルヤの号令と共に動き出す調査隊、斯くして此処に反抗作戦の幕は切って落とされた。

 

 

 

 

 そして、強襲コンテナより降り立った6人は──

 調査隊の撹乱により正面入り口に警護の刀使は居ない。

 S装備を纏い折神本家門前、御前試合があった広場に立ち並ぶ。

 そんな中、門を前に感慨深く眺める可奈美に姫和が声を掛ける。

 「どうした可奈美?」

 「ここで出会ったみんなと、また戻って来たんだなって…」

 姫和の質問に答える可奈美の声音は嬉しさを含んでいる。そんな彼女の言葉に姫和もまた感慨を抱いた。

 「そうだな。……戻って来られるとは思ってなかった」

姫和がそう思うのも無理からぬ事、元はたった独りで始めた暗殺、それが今や仲間と共に世界の命運を賭け再び因縁の場に立ったのだから、その胸中も一入だろうか。

 「感慨に耽るのは早い」

 「サーやの言う通りデース!ストームアーマーの稼働時間は予備電池も含めても30分。それまでに大荒魂を討たないと」

 「時間は私達の味方じゃないんですね」

感慨に耽る2人に沙耶香が気が早いと諫言し、エレンがS装備の稼働限界までに紫の元に辿り着き、タギツヒメを討つ必要がある事を説明する。

 そして舞衣の言う通り、長引けば不利となる以上、こんなところでもたもたしてはいられない。

 エレンの指示で、彼女達はS装備に内蔵されたスペクトラムファインダーを切り、敵に己の位置を知られないようにする。

 代わりに姫和が持つスペクトラム計、そしてねねが大荒魂の居場所を察知する。

 「これは…祭殿の方角、折神家の一番奥。御当主様しか入る事の許されない禁則地」

 スペクトラム計の指す方角を見た沙耶香が目的の場所を告げる。

 「じゃあ大荒魂が居るのは……」

 「みぃ~~~つけた!!」 

可奈美の声を遮るように後ろから掛かる無邪気な声、その方向に皆が振り向けば、大門の屋根に月夜を背に立つ燕結芽(親衛隊最強の刀使)

 彼女は左手で傘を作り6人を選り好みする様に見渡す。

 「えーと…」

視線が沙耶香、舞衣、薫、エレン、姫和、可奈美と巡って正しく姫和とエレンの間に居る可奈美を捉えると瞬時にニッカリ青江を引抜き、可奈美に肉薄。仲間達から引き剥がす。

 「決ーめたっ!」

そのまま

 祭殿へと続く屋敷の玄関口まで縺れる2人、可奈美がそこで改めて相対した結芽を認識する。

 「親衛隊の…!」

 「あっはははは!」

結芽は青江の鎬で左手を軽く叩きながら満面笑みを浮かべ喜びを顕にする。

 「いいねぇ。相手がおねーさんなら私はきっと」

自分の審眼が正しく強敵を捉えていた事に目端を細めつつ意味深に口にする結芽。

 最初に立ち塞がった壁は親衛隊きっての天才剣士と言う事実に反逆者側は結芽と共に奥に消えた可奈美を追う。

 

 

 月下光琳、降り頻る。最中、殿奥で写シの光と共に激しき剣閃、御刀同士がぶつかり合う音が木霊す。

 一手一合刃が交わる如に散る火花、S装備を纏う可奈美を相手に過不足なく肉薄する結芽の何と凄まじき剣舞か。

 手前刀使であったとしてもその動きは並みの者では着いてはいけまい。

 「やっぱりだ…。あの時そうでないかと思った」

互角に勝負を交わす最中、結芽の脳裏に過るのは御前試合の際の一瞬の攻防。

 あの時既に彼女は可奈美の腕に目を付けていたのだ。

 「おねーさんはきっと、誰よりも強い」

強者と立ち合える事に喜びを写すその顔は喜色満面、そのまま接近しては刃を交え、間合いが開けば即座に縮める、三段突きを易々とやってのける結芽相手にこれまた容易くいなす可奈美の実力たるや、最早2人は規格外だ。

 「だから、おねーさんを倒せば私は!」

対する可奈美も目前の強者を前に気を引締めながらもその顔は笑みを浮かべている。

 (強い…これが天然理心流の極地!私も!)

美濃関で可奈美を知る者が見れば誰もが思うだろう、彼女の悪い癖が顔を覗かせた。

 斯くして何合交えただろうか、可奈美と結芽の間合いが大きく開く。

 「まだだよ…」

結芽がひっそりと呟く、そんな彼女の何処か生き急ぐ様な剣に可奈美は楽しみつつも僅かな違和感を憶える。

 (この子…何か急いでる?)

僅かに背筋が下がりながらも正眼の結芽、その顔は笑みにまみれてはいるが汗が幾つも顔を伝う。

 「楽しいね…」

 「…うん!」

そう溢す彼女の顔色を窺うこと叶ったならばその切迫を圧し殺した蒼白さに度肝を抜かれたかもしれない。

 だがそんな事は可奈美には解らないし関係無い。己と相手の間の間合いから覗く彼女の笑みに、可奈美も頷き返す。

 そんな可奈美に荒い息で呼吸をしながら結芽が口を開こうとしたその瞬間。

 

 「とっ、そこへ…横槍ー!

 

 「ダイナミーック!

 

結芽の華奢な身体に組み付くエレンと祢々切丸を振りかぶりエレンごと結芽を吹き飛ばす薫。

 呆ける可奈美を姫和が俵抱きで連れ去る。

 「行くぞ可奈美!」

 「姫和ちゃん!?まだあの子と決着が…」

 着いていないと口走ろうとする可奈美の意思を無視して前に進む姫和と舞衣、沙耶香。

 

 一方でエレンに組み付かれ吹き飛ばされている結芽は大きく腕を振るって柄頭で彼女を殴打し振りほどく。

 「このっ……!」

屋内から弾き出され、月光に照される中庭にて最大の楽しみを邪魔してくれた2人の下手人を前に癇癪気味に怒りを顕す結芽。

 「もう少しだったのに!何で余計な真似するの!?」

しかしてその下手人の1人、薫がそんな結芽の態度に覆いに満足とでも言う様に口端を吊り上げ宣う。

 「その顔を見られただけで残った甲斐がある」

そんな薫と背を併せるかの如く立ち並ぶエレンがいつになく真剣な顔で宣言する。

 「傷付いた舞草の仲間達…、あなたには大きな貸しがあります」

 長船に居る2人にとって舞草の仲間は同時に同じ学舎の仲間であり、先輩であり、後輩。であればその壊滅に携わった結芽に辛酸を味あわせる事が出来たのは僥倖であろう。

 が、しかし、大事な一戦を妨げられた結芽の方にはそんな事は知った事では無い。

 「そんなの弱いのが悪いだけでしょ!知ってるよおねーさん達二人、弱いからここに置いてかれたんだ。千鳥のおねーさんと違って二人がかりでないと私を抑えられないって事だよね!」

 暴言極まりない言い様だが事実、結芽に勝てる目があるのは可奈美だけなので長船の2人は苦笑する他無い。

 まぁ、暴言を吐きつつも敵対者をおねーさんと呼ぶ分可愛げがあるので荒魂や宇宙人に比べたら幾ばかマシだろう。

 「そうだな。ま、ムカつくけど」

 「事態を冷静に把握し、最良の判断を執れる指揮者が居る事が頼もしいデス!」

 そう、彼女達が此処に残ったのは私情ではなく隊の指揮官たる舞衣の判断。無論、結芽に対し思うところは2人とてあるが、今この場に残ったのは合理的な判断の結果だ。

 「いいよ!すぐに片付けて追いかけるんだから!」

祢々切丸を振り上げ攻め来る薫と越前康継を振りかぶり跳び掛かるエレンの攻撃をやや右後ろに大きく跳んで避けながら結芽は叫ぶ。

 波紋を描いた砂の庭に大きな直線状の跡が残る。

 「チッ!一拍遅れたか」

薫が口惜しそうに溢す。

 「少しは楽しませてあげるのでご安心くださーい」

エレンが煽る口調で結芽を見据える。

 「時間…無いのに……!」

右手で顔を被いながら苛立ちを立ち上らせる結芽、指の間から覗く瞳がその様を語る。

 

 

 

 一切の明かりの無い屋敷を進む複数の淡い橙色の閃光。

 それはエレンと薫を欠いた反逆者達。S装備の無機質な足音が響く最中、突如として舞衣が立ち止まる。

 「どうしたの?」

そんな彼女の異変にいち早く声を掛ける可奈美、舞衣は絞り出す様に呟く。

 「私達には…時間が無いから」

それは懺悔に聞こえなくも無い声音、訥々と語り出す舞衣。

 「私達の最大戦力は間違い無く可奈美ちゃんと姫和ちゃん。この二人だけでも大荒魂の元に届けないといけない……。私達の誰でもあの子を一人で抑えるのは難しい。二人でもどうか…だからあの場での最善はツーマンセルに長けた薫ちゃんにエレンちゃんだと判断して…」

 只でさえ暗い廊下、立ち止まり俯く舞衣の顔はS装備のバイザーに隠れ覗く事は出来ない。

 時間が無いと言いつつも立ち止まってしまったのは後悔から来る若さ故か……。

 そんな舞衣を見て、自らの頬を、両の手で叩く可奈美、思いの外小気味良い音が鳴る。

 「痛っ~…ごめん!もう大丈夫だから!熱くなって大事なこと忘れないから!」

 その行動の意図は自戒、ついつい出てしまった欲求に対し使命を忘れた愚かさへの制裁。

 赤く腫れた頬のまま舞衣に微笑む可奈美。

 「舞衣ちゃんが居てくれて良かった!」

そんなやり取りに姫和も笑みを浮かべニヒルに笑う。

 

 「私も。舞衣に従う」

 沙耶香はと言うと問うまでもなく舞衣を慕っている。これがただ妄執に駆られ道具として沙耶香を見た雪那との違いか…。

 皆の空気が弛緩したその瞬間、狙い打ったかの様に大量の蝶の荒魂が廊下を埋め尽くさんばかりの数が4人に迫る。

 そして荒魂の大群と共に現れたのは──

 「姫和ちゃん!この荒魂…」

 「ああ、こんな事が出来るのは……親衛隊第三席、皐月夜見……」

 新たなる敵を前に姫和は苦虫を噛み潰す。

 「いきなさい。あの方の為に……」

 迫り来る夜見、その左腕からはいまだ大量の荒魂が噴出している。

 「くそ!囲まれている…」

気付けば八方塞がり、万事休すかと焦る姫和を前に舞衣が明眼を開く。

 「"明眼"…左前方!一気に突っ込んで!」

即座に指示に従い、指定の場所に突き進む。襖を蹴破り、最奥へのルートを確保、そのまま駆ける。

 だが舞衣は立ち止まり、夜見の前に立ち塞がった。

 「舞衣ちゃん!?」

 「今度はこれが最善なの!行って!」

 「でも!」

親友を残し進む事を躊躇う可奈美、しかし、そこへ沙耶香が踵を返し舞衣の前に出る。

 「大丈夫!舞衣は私が守る!」

夜見の荒魂の勢いが激しさを増す。此処にこれ以上留まれば手遅れになる、ならば2人で進む他無い。

 「二人とも早く来てね…先に行って待ってるから!」

残る2人の姿に後ろ髪を引かれつつも先へと進む可奈美達。

 

 周りを荒魂に囲まれながら背中合せで互いにカバーし合う舞衣と沙耶香、沙耶香は恐る恐る舞衣に訊ねる。

 「舞衣…怒ってる?」

 「うん。言うこと聞いてくれない子に怒ってる」

怒っていると言いつつもその声音は優しさが含まれている。

 「だから罰として新作のクッキー、全部食べて貰うから」

 「…!任せて」

 

 

 

 

 遂に2人となった反逆者達は進む。奇しくもあの御前試合の時と同じ、始まりの2人が折神紫の元へと急ぐ。

 上へと登って行く可奈美と姫和、その手前、祭殿へと続く山奥の門構えに待ち構える影2つ。

 「ご機嫌よう。伊豆以来ですわね」

親衛隊第二席此花寿々花が不相応なくらい気さくに声を掛けてくる。

 「必ず来ると思っていたよ」

親衛隊第一席獅童真希が確信を持って告げる。

 「さぁ、続きだ」

真希の瞳が紅に染まる。

 「斬るか斬られるかですわ」

次いで寿々花の瞳も紅く光を発する。

 「その目は!」

 「この禍々しさ…やはりノロを!半ば荒魂と化してまで折神紫を守ると言うのか!」

 既に判っていた事だが改めて彼女達が身体内にノロを飼っているのを見て姫和は叫ぶ。

 「力無き正義は無力。力でなければ守れないものもある」

 「そして力でこそもたらされる幸福だってあると言うものですわ」

 「その力を与えてくれるのであれば、神でも鬼でもボクは一向に構わん!」

 共に御刀を抜き、写シを張る真希と寿々花。

此処より先、大荒魂の元へと向かうには彼女達を倒すより他に手段は無い。

 奇しくも伊豆での戦いの続きがこの場で再び行われようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 再びの御前試合が行われた庭園広場、長船コンビが最狂の神童を相手に立ち回る。

 薫が祢々切丸を振るい結芽を大きく引き離し、エレンが薫をカバーする様に細かく攻める。

 とは言え、一対二であっても劣勢には変わらない。

 間合いが大きく開かれ、結芽が攻めるより早く、薫が独楽のように回転し祢々切丸をぶん投げる。

 「何これ?!」

姿勢を低く余裕を持って祢々切丸をかわす結芽、自らの御刀を手放す薫の意図に今一つ理解が及ばない。

 そこへ飛んでいく祢々切丸を透過迷彩よろしく姿を消していたねねが尻尾の口でキャッチ、薫に投げ返す。

 そして薫はエレンの康継の峰に足を掛けそのままエレンが持ち上げる。

 「3・2・1…」

カウントダウンと共に御刀に力を込めるエレンそして、

 

 「「せーのっ!」」

 

2人が同時に息を合わせる。エレンが康継で薫を飛ばす。

 「嘘!?」

流石の結芽とてこれには目を見開いて驚く。

 「ホント」

そのまま飛んで行き祢々切丸に手を伸ばし、空中で祢々切丸を掴む薫、そのまま縦に大振り一閃する。

 「きえーっ!」

風車の如く回転し結芽に斬り込む、先程のインパクトに硬直していた結芽の写シを遂に剥がした。

 体勢を整え、祢々切丸を構える薫の横に再びエレンが立ち並ぶ。

 「あまり俺たちを」

 「嘗めないで欲しいデース」

己に劣る者達の手で地に臥した、結芽にとっては屈辱的だろう悔しげに噛み締める。

 「この…」

その彼女の口元に流れる一筋の赤い液体、そして彼女の憤怒に呼応する様に瞳が紅に染まる。

 

 「このーっ!!」

 

 吹き荒れる橙の風、その勢いに思わず顔を覆う2人。

 

 「弱いくせに!お前もだ!出てくるな!荒魂の力は使わないっ!」

 吹き荒れる暴風の最中で青江の柄頭で側頭部を思い切り叩く結芽。

 その気迫が項をそうしたのか風は収まり瞳は元の色へと戻る。しかし、その形相は目の前の2人への怒りに満ち溢れている。

 再び写シを張り直しエレンと薫相手に戦闘を再開する結芽。

 奇策すら弄する2人を相手に先程以上の素早い迅移で翻弄、大振りが隙となる薫を斬り、動揺したエレンを彼女の金剛身ごと叩き斬る。

 瞬く間の内に倒された2人、起き上がる気配は無い。

 「時間取らせて…こんなのに……私が……!」

ニッカリ青江を振り被り倒れ臥した薫達に怒りのまま止めを刺さんとする結芽、そこに小さな存在が彼女達を守ろうと立ち塞がる。

 「…ねね……!」

小さな躰で目一杯手を広げ必死に庇うねねを前に御刀を振り下ろす結芽。

 「どいつもこいつも…邪魔ばかり!」

しかし刃先はねねを斬る事無く目前で止める。ねねはその殺気に気絶して主達と同じ様に倒れる。

 それを見届ける事無く病に痛む身体を引摺り結芽は前へと進む。

 

 「行かないと…時間…もう無いのに……私はもっともっと戦わなきゃ…」

 砂地に足を捕られ転ぶ、胸の内に込み上げたモノが咳となって口を突く。手を離せば砂地には鮮血の痕が手形となって残る。

 「行かなきゃ…早く」

何かに突き動かされるかの様に再び立ち上がり、弱々しい足取りで御刀を引摺りながら祭殿へ向かう結芽、結局彼女は止めを刺さなかった。

 

 

 

 

 ━━その頃、美炎達Aチームは

 囮役として見事撹乱を果たす彼女達、しかし次から次へと矢継ぎ早に現れる警護の刀使達に呼吹はどこかげんなりとした表情だ。

 「あ~あ、かったりぃーな」

 「どしたの?いつもなら暴れた後、スッキリした顔してるのに随分テンション低くない?」

 そんな呼吹のあまりのテンションの低さに美炎が思わず訊ねると心外だと目端を吊り上げ呼吹は自明を語る。

 「アタシは別に戦闘狂じゃねぇよ。ただ荒魂ちゃん達と戯れるのが好きなだけだ。人間相手にやり合ったって面白くないっての。だいたい…殺さない様に気絶させるとか面倒くせーんだよ、バッサリ斬って良いんじゃねぇか?」

 割合物騒な事を宣う呼吹に智恵が少々語気を強めに嗜める。

 「ダメよ。人殺しは絶対に駄目」

 「分かってるっつーの。あ~あかったりーな」

 「ほらほらもっと気合い入れて護衛を引き付けましょう」

 「頑張るぞ!おー!」

 「おー、ガンバレガンバレ。」

 「呼吹ちゃんも頑張るのよ?やれば出来る子なんだから頑張って」

 「だから念を押すんじゃねーっての…ハァ、気が進まねぇけど、やるとするか」

智恵が諭し美炎が盛り上げ、呼吹が仕方ないといった形で襲い来る刀使達を迎え撃つ。

 

 まだまだ長い夜は始まったばかりだ。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 いよッス!鎧塚申一郎だぜ。

 遂に始まりやがったな反抗作戦ってヤツがよ!

 そんな中、2手に別れた調査隊のカワイコチャン。うんん?ナーんか面白い娘が面白い事やってんじゃネーの、木寅ちゃんにゃ悪いがオレ的にはあの嬢チャンの意見には賛成だね!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉決戦?山城由依のガールズハント!

 いやぁ、綾小路にこんなおもしれー女が居たなんてな!一度茶でも一緒にドウダい?





 そう言えば巷では天華百剣、Twitterで黒田チャレンジなるモノが流行っているとか……へし切長谷部のハイレグを他の巫剣にもと言うのは…ふふ……中々、フフッ。
 え?天華百剣ユーザー以外には関係無いだろ?
 ええ、まぁそうなんですけどね。面白くなってつい……。
 話は変わりますけどウルトラマンZ面白いですね!ジャグジャグ~


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第五十三話 鎌倉決戦?山城由依のガールズハント!

 こんばんはっ!!
 急に影打青木兼元が来たので石を必死に貯めたのに………はい、すり抜けで来ませんでした。代わりに徳善院が来ました。
 はい、遅れた理由です。 因みにけっこう前に小竜と鳴狐も来ました。
 そしてとじともで来た水着、ユイヤマシロのギャップよ……。取り敢えずミルヤさんと舞衣ちゃんの見事な山峰の為に回します。……先ずは石を貯めよう



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 6人の戦乙女が世界の命運を賭け祭殿の最奥へとひた走る。

 立ちはだかるは4人の乙女。

 自在の戦術を見せる2人が最強にして最凶の天才と刃を交える。

 仲間の為に戦う者と己の有り様を刻む為に命を賭して刃を振るう者。

 軍配は命を燃やした燕に上がった。

 一方で囮となった調査隊、2手に別れた内のもう一方は──

 


 

 それは可奈美が結芽との刃を交えていた頃。

 二手3人ずつに別れ、敵の刀使を引き付ける調査隊。

 智恵が率いるA班はしっかりと仕事をこなしている裏側でミルヤのB班も又、その本分を果たさんと行動を開始していた。

 

「あっちだ!あっちに賊がいるぞ!紫様のお膝元でこれ以上の狼藉を許すな!!」

 護衛を勤める警護隊の刀使達が慌ただしく駆け巡る。

 「Aチームが行動を開始したようですね。此方も始めましょう」

 「は、はい……スーハー…スーハー……」

 「くぅ~、緊張して深呼吸してる清香ちゃんか~わゆ~い!お持ち帰りして部屋に飾りたいレベル!」

 騒ぎからA班の行動を察知し、ミルヤが自分達も動こうと号令を掛ける。

 清香はいよいよ来た大一番の事態に未だ開き直る事が出来ずに深呼吸を繰返し己を落ち着けようとするが由依の危うい発言に目端がひきつる。

 「山城由依。どうやら貴女は緊張とは無縁のようですね。実に頼もしい限りです」

 「ミルヤさんみたいな美人に頼りにされる日が来るなんて……生きてて良かった~!この感度一生モノにします」

 「そのメンタルの強さ…、少し分けて欲しいです……」

 「メンタルどころか、清香ちゃんになら身も心も魂もぜーんぶ捧げちゃうだけどなぁ」

 別に皮肉では無いが由依のテンションと態度はこの緊急時であっても通常運転なので、気負わずに済む分、ミルヤとしても部隊長としては彼女の存在は有難い。

 清香も由依のそんな所は感心してしまい、ほんの僅か、出来心で分けて欲しいと口走ってしまう。

 それがいけなかった。清香の発言に由依はグイグイと食い付き調子突く、清香としては苦笑するしかない。

 「あはは………」

 「六角清香の緊張も、少しは解れた様ですね。では行動開始しましょう」

 兎にも角にも、由依のお陰で清香の気負いも晴れた。後は囮として役割を果たすだけだ。

 と、其所へ新手の警護の刀使達が現れる。

 

「賊は何処だ!?」

 

 「はっ!?ヤバイ!伏せて伏せて!ほら、早く、見つかっちゃうって!」

 それを見た由依が咄嗟に2人の手を引き、近場の草村へと身を隠す。

 

「何をしている、こっちだ!」

「今いく!」

 

 そうこうしている内に警護の刀使達は他の場所へと消えて行く、それを見送る由依は冷や汗を拭いひと息衝く。

 「ふぅ~。危うく見付かるところだった……ナイスあたし!」

 何故隠れてしまったのか……正直、職務内容を理解していたのかと小一時間問いたい所である。

 これには清香もポカンとして目を白黒させる。

 「あ、あれ……え~と?」

 「ん?不思議そうな顔してどうしたの?もしかして!あたしに恋しちゃった?いや~照れちゃうなぁ」

 本分を忘れたにも関わらずいけしゃあしゃあとアホ面でおかしな事をほざく由依、流石にミルヤも眉間に指を充て苦言を呈する。

 「山城由依、作戦内容を理解していますか?我々の目的は敵の注意を引き付ける事。隠れてどうするのです?」

 「あっ!そうだった!思わずつい…!ここでドジっ子スキルが発動しちゃうなんて!でも、そんなところが可愛いなんて思ったりしません?」

 「………………………」 

ミルヤの長い沈黙。その絶対凍土も真っ青な視線に由依は身悶えする。

 「ああん!!その虫ケラでも見るかのような冷たい目…、ゾクゾクします!ありがとうございます!!」

 「どうしてお礼を言うのか理解不能だよ」

そんな由依の奇行奇声に清香が汚物を見る一歩手前の視線で彼女を見ながらその在り方にドン引きする。

 他方、彼方此方で皆が必死になる中でのこのやり取り、ふざけるのも大概にすべきだろう。

 「よし。反省完了!次はこれ以上無いってくらい完璧にやっちゃいますから、大船に乗ったつもりでドンと任せて下さい!」

 流石に状況は理解しているのか即座に切り替え、次こそはと胸を叩く。

 「是非ともそう願いたいモノです。その大船が泥舟で無いことを祈ります」

 ともあれ次の機会は逃さず、確りと任務を果たせる事を祈るミルヤであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━同じ頃・折神本家周辺

 反逆者達とも、調査隊達とも違う場所で彩り鮮やかな装甲を纏った者達が居た。

 「……有難いモノだな。転送装置とは…」

シャドーリュウが時間も掛けず一瞬で到着した事実に改めて関心を呟く。

 「……………おかしい、想定座標から大きくズレている……これは大荒魂の影響が出ている……だとしたら……ハッ!エンとシンは!?」

 ウイングヨクが転送に設定した座標とのズレに顎に手を充て熟考し、近くに見当たらないファイヤーエンとアーマーシンを探す。

 

 

 「うっし、着いたな。さぁ~て、さっさと大荒魂をぶっ倒そうぜみんな!…………あ?居ねぇ……」

 到着と同時に意気揚々意気込みを口にし腕を大きく上げるエン、しかし周りを見渡せば近くには誰一人居ない。

 そこへ、直ぐ近くの塀の影から見知った濃緑のシルエットが歩いて来る。

 「おーい!こんなとこに居やがったのカヨ、探したぜ…っても大して離れてなかったみたいなだけどナ」

 状況としては切迫しているのだが、ダグテクターの機能にある種の信頼があるのかシンは余裕を持ってエンに近寄る。

 「シン!って、ヨクとリュウは何処だ?」

 「イネェナ。はぐれたか?少なくともオレの側にはオマエしか居ねぇな……っと」

 そんな会話を交わしていると騒がしい足音が近付いて来る。それは本家に残留している警護の刀使達のモノ。

 「やべっ?!」

 エンが慌てて辺りを見渡し隠れられそうな場所を探す、そして取り敢えず手近な木に実を隠すのだが、ダグテクターの肩装甲がどうしてもはみ出してしまう。

 シンは同様に草村の方に隠れたのだが此方も些か存在感の主張が激しい。

「こちらから話声が聞こえた、まだ近くにいる筈だ。探せ!」

 数人の刀使達が辺りを捜索し始める。そして勿論、エンの赤い装甲は夜間でもそれなりに目立つ。

「そこに隠れている奴、何者だ?!出てこい!」

 (だぁー!見付かったぁぁあ!どうする、下手にやり合う訳にもいかねぇし逃げるにしたってせめて人数がもう少し少ないか、距離でもありゃ撒けるんだが……)

 心中でごちゃごちゃと思考しながら直ぐ隣のシンに視線を向ける。すると色だけは草村に溶け込んでいたシンがしょうがねぇなとばかりに首を振り立ち上がる。

 「お、おい?!」

そんなシンの行動に目を剥くエン、構わずシンは刀使達の前に躍り出る。

「な、何だこいつは……」

「あれって…報告にあった…?」

「奴も反逆者の手の?」

 反逆者を予想していた彼女達は、予想とは違うダグオンの存在を前に狼狽える。

 そんな彼女達を尻目にエンはシンが何をする気なのかと声を掛ける。

 「どうすんだよ、姿を見せて?!

 「まぁ、見てな。ヘイ、カワイコチャン達!そんな物騒なモンしまってオレと夜のランデブーに繰り出そうゼ!」

 (ナンパかよ!?しかもその姿で!?アホじゃねえかこいつ!)

 思わず心の中でツッコミごちる、そして当のナンパされている刀使達もあまりに突然の出来事に茫然自失となってしまう。

「はっ…!ええい、ふざけるな!引っ捕らえろ!」

 「アチャー、やっぱダメか」

 「てめぇざけんな!!」

正気に戻った1人の刀使の声により呆けた刀使達が再び気を引き締め御刀をエン達に向ける。

 そしてナンパが失敗した事に額に手を充て仰ぐシンを前にエンが怒鳴る。

 「しゃーねぇ、こうなりゃ最後の手段だエン!」

 「ちっ、戦うっきゃないってのかよ?!」

 「アホ抜かせ。オンナノコ相手にガチでやるワケねぇだろ、ここは三十六計逃げるんだヨォ~!」

 そう口にした次の瞬間、刀使達に背を向け駆け出すシン。そんな彼を見てエン、そして警護の刀使達は再び呆けてしまう。

 「……………って、俺も逃げなきゃやべぇ?!」

「あ?!待て!!逃がすかっ!」

 いち早くシンの行動に己を取り戻したエンが慌てて彼を追う。

 そんな彼等を刀使達もまた慌てて追い掛ける。

 どうやら此処にも切迫した状況の中、ふざける余裕がある者が居たようだ。

 

 

 再びBチーム。

 先程隠れてやり過ごしてしまった反省を背に、山城由依は次なる獲物が現れる事を待ち望む。

「敵はどこ?紫様に仇なす輩は、わたしが必ず退治してみせる!」

 と、そこへタイミングが良いのか悪いのか、新たな警護の刀使(憐れな子羊)が1人果敢な言葉と共に現れる。

 「おっ!カモが来た!チャンス到来!」

 それを発見した由依(オオカミ)が舌舐りせんばかりの勢いのまま、彼女の前に立ちはだかる。

「だ、誰だ!?」

 「誰?もちろん、君の運命の相手だよ仔猫ちゃん。あたしを探してたみたいだけど…デートのお誘いとか?……だとしたら、答えはYESだよ。さぁ、一生心に残る思い出を作ろうよ!遠慮はいらないよ、この胸に飛び込んでおいで!」

 前半は声を作って所謂イケボ風なのだが後半から欲望が抑えきれずグヘヘと聴こえて来そうな息遣いと共に刀使へと迫る由依、と言うかもう手をワキワキさせて目を光らせている様はどれだけ控目に言っても変質者以外の何者でもない。

 

 

「へ、変態よっ!みんな、ここに変態がいるわ!!出来るだけ多くの手勢を集めてちょうだい!!」

 

 

 極めて妥当な意見と判断である。

 ともあれ、過程はアレだが目論見の通り警護の刀使達がわらわらと集まってくる様に由依はガッツポーズと共にミルヤ達へ振り返る。

 「やりましたよ、ミルヤさん!作戦成功!!」

 「その様ですね」

 ミルヤとしても実際、敵が此方に集中してくれるのは有難いので由依のアレな行動には目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 そして長船組が結芽と戦闘を始めた頃、遅れてターボカイが折神家の地へと降り立つ。

 「む、騒がしいな。既に状況下か、しかし、皆が居ない…それに此処は……確か正門近くに設定した筈だが……」

 カイが降り立った場所は祭殿近くの山なりになった中間、明らかにズレた場所に出た事に戸惑いつつも皆と合流すべきだろうと考え、通信回線を開く。

 「こちらカイ、遅れて済まなかった。今、折神家敷地内に到着した」

 『カイ!今どこに?!』

 するとヨクが応答に出る。その声は些か焦りが見てとれる。

 「恐らくは最奥の祭殿に続く道の雑木林と思うが……」

 『…!やはり、カイの座標もズレていましたか。いえ、そんなことより上空を最大望遠で視てください!』

 ヨクが奇妙な事を言うので、言われた通り空を眺めるとキラリと光る黄金の煌めきが映る。

 「アレは……ライアンか!?」

 『はい。そして恐らくは大荒魂を倒しに……いえ、滅ぼしに現れたのだと思います』

 「不味いな、あの質量が祭殿に突っ込むだけでも大騒ぎだが……下手をすれば刀使達も巻き込みかねん」

 『ええ、ですので今、リュウに対応してもらっています』

 「道理だな。解った、其方に合流しよう。エンとシンも一緒か?」

 『いえ、どうやらあの二人も別に跳ばされたようです』

 「……………。いや、了解した。其方で二人に呼び掛けてくれ。此方でも合流のついでに探しておく」

 『解りました。宜しくお願いします』

 ヨクとの通信を終えるカイ、その視線を上空から門の方へ向け直すと彼はレーダー機能を立ち上げながらはぐれた仲間を捜すために行動を開始した。

 

 

 

 

 

 ━━折神家上空

 黄金の剣が屋敷の敷地を一望する様に空に浮遊している。

 『ここか……ここにヤツがいる…ふ、フフフ……この時をどれ程待ち望んだ事か!タギツヒメ…私がこの手で滅ぼしてくれよう』

 身に刻まれた荒魂に対する深い憎悪の念が彼を本来の役割から遠く離れたモノに変える。

 いざや恐らくは大荒魂が居るであろう建物に向け刃を定め、突進しようかと目論んだ瞬間、彼の前に大きな翼をはためかせ立ち塞がる影。

 『何者だ?どけ、邪魔をするな!』

自らの出鼻を挫いた存在に苛立ち気に声を掛ける。するとその影からどこかで聞き覚えのある声が返ってきた。

 「…悪いが、今貴様に暴れて貰っては困る……」

 声の主はガードホークの背に立つシャドーリュウ。彼は剣の状態のライアンに向け静かに告げる。

 『知った事では無い。そして言った筈だ、私の邪魔をすれば敵と見なすと』

 憤りを顕しながら人型に変形するライアン。ガードホークに向けライアンバルカンを放つ。

 それをリュウの意思を読み取りかわすガードホーク、ここにまさかの対決の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 そして遥か空の彼方より悪意ある異形の集団が群れを成して降り注がんとしている事はまだ誰も知らない。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 どもども~!山城由依です!

 いやぁ~、可愛い女の子一杯のこの状況…控え目に言って天国ですよね!?

 なんか空が騒がしい気もしますけど、気にしなーい。

 さてさて、突入した舞草の人達、その中で親衛隊の皐月夜見さんと戦うお二人!いやぁ可愛いですね~、是非ともお近づきになりたい!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉決戦。黙する忠義VS想い温かな友情

 

 はぁ~、糸見さんと柳瀬さんの睦まじい仲……尊い

 




 次のライダー、やっと正式発表されましたね。
 取り敢えず東映はプロデューサーと脚本・演出、現場とのやり取りもうちょと改善してくれる事を願います。
 ええ、期待してます。こんなご時世ですからね、大変でしょうが、頑張って頂きたい。

 Re:RISE盛り上がって参りましたぁぁあ!!


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第五十四話 鎌倉決戦。黙する忠義VS想い温かな友情


 おはようございます。
 今日から六連勤のダグライダーです。
 暑さと六連勤の事実、イマイチ降りてこない文章に遅れた私です。

 それはそれとして、天華百剣で心意化粧大倶利伽羅がピックアップ始まりました。
 ピョコピョコ動く頭のリボンが可愛い……。
 それはそれとして回したら来た太鼓鐘貞宗……うん成る程、これはエイプリルフールの時、シナリオで隊長がショック受けて気持ち悪くなる訳だ、確かにこんな可愛い娘があんな事になれば私もああなる。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 あらすじ!あらすじなの?!いいね!みんな見ないし居ないし、ニュー、代わりにやっちゃうよ!

 ベーやんの企みで宇宙人達が現れたこの世界。でもなんだか今は別のことで忙しそう……。

 アルアルはおバカだから腕が良くても余計な事しかしないし、まさにベーやんの予想通り!

 ところで山城って人間の娘、めっちゃ楽しそうでオモシローイ!

 あ、自己紹介!ニューはニュー趣味は──

 


 

 ━━エデン外表部・航行ゲート

 

 「まっ、即席にしては十分やろ。地球の大気圏程度なら外装が焦げ付くくらいやさかい」

 「へぇ、これにざごすをのせるんだね」

 宇宙船を駐留させるゲートの内側で、鬼より任を賜ったマッニーが、自身が管理する事となった南監獄の囚人達を使い特急で用意させた簡素な宇宙船を見据えながら隣に何時からか居座っていた妖精相手に気軽に話し掛けながら手元のレジェメの様な物体にチェックをいれる。

 妖精は宇宙船を感心したように見上げながらマッニーに訊ねる。

 「せや、あんさんのお陰で、あのゴッツ面倒い女王を改造でけたしな。ホンマ様々や」

 「えー、あれはせんせいがあんをだしてくれたおかげだよ?ぼくはそれにそってじょうおうをおうえんしただけさ。がんばれがんばれって」

 マッニーの軽口混じりの礼に妖精は特別な事はしていないと笑顔で答える。因みにその笑顔で妖精お付きのドレスの異星人は鼻らしき所から血を吹いて倒れた。

 「はは…さよか……(アレを応援?一方的にナブって嗤いながら捏ね繰り回してたアレをか…?やっぱ大将の次に危険なんは、コイツやな……)」

 一部始終を見ていた者としてはクイーンザゴスには多少同情を覚えつつも妖精の発言に戦慄するマッニー、一方で妖精の方は特に気にした風も無く、まじまじと宇宙船を眺めている。

 「これに全部入れるのですか?」

恍惚のトリップから帰還したドレスの異星人が代わりにマッニーへ訊ねてくる。

 「いんや、コイツ一隻じゃ足りひん。後、六つおんなじのを用意してある。それに千匹ずつ載せる。それを地球に降ろす。ま、向こうもタダで通すバカや無いやろから、良いとこ三隻、えー、あー、何やったか……ダグオンと…と、と…ととと都市?土佐?鳥栖?だかが居るとこに堕ちたら儲けもんや」

 彼のこの発言は完全に刀使を脅威と捉えていない事の証左である。

 「そっか…みんないっしょにはたどりたけないんだね………かわいそうだなぁ」

 「そうですわね」

妖精とドレスの異星人が片道切符の宇宙船を眺めながら本当に哀しそうに見える表情をする。

 「(ホンマに可哀想に思っとるんか怪しいとこやな……)ま、運良く、降下する数が増えても三分の一はあの宇宙海賊んとこに寄越して、何れ来るだろう時の労働力やろな」

 そんな3人の会話を余所に、七隻の船がゲートのカタパルトにセットされていく、そこからまるで工場の箱詰め製品の様にザゴス星人がクレーンとロボットアームで搬入されていくのだった。

 

 

 全ての作業工程が終了したのを確認するマッニー、彼はレジェメらしきモノの下からタブレットらしき端末を取り出し何事かを操作する。

 「ほな、精々頑張ってきなはれ~!あんさんらの働きがワイらの礎になるやさかい、バイなら~」

 そうして粗末な作りの輸送用の宇宙船がエデンを飛び立つ。

 その目的地は、地球……日本は鎌倉。

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・折神家

 

 エレン、薫に結芽を任せ、可奈美、姫和を先に進ませた柳瀬舞衣と彼女を守る為に残った糸見沙耶香。

 周囲は未だ荒魂の群れに囲まれ、親衛隊第三席皐月夜見が絶え間なくその腕から荒魂を放出している。

 そんな戦況の中、座敷の奥からゆっくりとした足取りで歩いて来る鎌府学長、高津雪那。

 「沙ぁ耶ぁ香ぁ。折神朱音の下らない小芝居に付き合わされたけど、無理して戻って来て良かったわ」

 その声は沙耶香が自らの元へ再び戻って来たという喜びに充ちている。無論、沙耶香にそんな意思は無い、雪那が勝手に言っているだけだ。

 「沙耶香ぁ、あなたに会えた…。やっとあなたも紫様の御力を受け入れる気になったのね。それに免じて先日の我儘は許してあげましょう」

 夜見の背後から滔々と己に酔うかの如く語り歩く雪那、何度も言うが、沙耶香にその意思は無い。

 突然の雪那の登場に沙耶香は目を見開き驚き固まる。そんな沙耶香を守る様に前に出て立つ舞衣。

 「沙耶香ちゃんは渡しません!」

 しかし雪那は舞衣など視界に入っていないかの様に振る舞い、夜見の頭を乱雑に掴み振り回す。

 「どうしたの沙耶香?怖いことなど何もないわ。あなたなら決してこの失敗作のようにはならない。だから案ずる事はないのよ」

 何をどう見れば案ずる事が無いのか、他者を道具の様に扱う相手をどう信用しろと言うのか…、黙ったままの舞衣と沙耶香に構わず、夜見を掴んだまま沙耶香に手を差し伸べる。

 「さぁ沙耶香いらっしゃい。紫様に忠を尽くす刀使に……いいえ、御刀となりなさい。かつて私が振るい、今はあなたの手にある妙法村正のように。それが道具の在るべき姿と言うものよ」

 何処までも道具……人ではなく、道具としてしか他者を見ない雪那を前に沙耶香は自らの思いの丈を口にする。

 「もうやめて…」

 

 「なぁにぃ~?」

 

 「もうひどいことしないで…でないと…私は…あなたを……」

 

 「ハッ!斬るのか?私を?お前が?ははははっ!」

 

 沙耶香の"やめて"と言う懇願、それに対し夜見を掴んだままご機嫌な顔で沙耶香の言葉に耳を傾けたかと思えば、彼女の言おうとした言葉の続きを口にしながら大笑いをすると突然、その顔を怒りの形相へと変貌させる。

 

 「出過ぎた口を利くな!お前は黙って従っていればいいのよ!!

 

 先程から一転、いきなりな程豹変した雪那に沙耶香は怯む。何を言おうと、何をしようとも、どうあっても、雪那は沙耶香を己の代用品、道具としてしか見ていない。

 その自己中心的なまでの雪那の発言を前に舞衣が静かに、しかし強く、ただ一言を述べる。

 「もう何も喋らないで」

 「はぁ~?

対して雪那は何をほざいているのかこの小娘は?といった顔でバカにしているのか怒っているのか判別し難い顔でやっと舞衣の存在に目を向ける。

 そんな雪那の視線を前にしても構わず続ける舞衣。

 「人を物のように扱う事しか出来ない貴女を私は認めません。貴女にも、そして折神紫にも沙耶香ちゃんをいい様にさせたりはしない!」

 「御刀に携わる者、その全ては紫様の為にある。その中にはこーんな失敗作もあるけれど…」

 舞衣の人の為を思う言葉に、しかし雪那は全ての刀使は折神紫の為の道具であると言ってのける雪那。そのまま夜見をぞんざいに放ると彼女の右腕をヒールで踏みつける。

 「本当に気味の悪いこと。戯れに実験台として選んだ頃からお前が何を考えてるのか何一つわかりゃしない!」

 黙々と付き従う夜見を悪し様に足蹴りしては罵倒する雪那、だと言うのにここまでの事をされても夜見は文句の一言すら上げず己に課された任をこなす。

 「立て。どうした?恨み言の一つでも言うか?」

 「反逆者を捕らえます。それが親衛隊の務めですので」

 「沙耶香は殺すな」

自分をぞんざいに扱う雪那に対し、尚、忠実に従う夜見、そんな彼女に沙耶香を生かして捕らえる命を下しながら、雪那はノロの入った注射器を取り出し、夜見の頚筋へ当てる。

 ノロが夜見の身体を巡る。その証として瞳が紅く光る。

 

 

 

 

 ━━折神家・門前付近

 

 舞衣、沙耶香が雪那によって更にノロを投与された夜見を相手取っている頃、陽動撹乱の為に二手に別れた調査隊、そのAチームは今正に、その役目を果たしていたのだった。

 「今度っこそもういねぇな?で、どうすんだよ?」

 たった今、警護の刀使を斬り倒し、嘆息した様に辺りを見渡しながら美炎と智恵に同意を求める呼吹。

 そのまま次はどうするのかと訊ねる。

 「可奈美達は大荒魂の元へ向かってるんだよね?」

 「そりゃそうだろう。その為の殴り込みなんだからよ」

美炎が突撃した可奈美達を気にしてそんな事を口にすると呼吹が何を当たり前の事をと今更ながらに呆れる。

 「私も大荒魂のもとへ向かいたい!」

 「だけど…わたしたちに出来る事は何も……」

美炎が我慢の限界を超えたのか口にした内容、しかし智恵は今更行った所で何が出来るのかと消極的な反応だ。

 だが美炎はそれでも、と言葉を続ける。

 「そんなの行ってみなきゃ分かんないよ!何も出来ないかもしれないけど、何か出来る事だってあるかもしれない!それだけで向かう意味はあるよ」

 スペクトラムファインダーが示す大きな反応、恐らくはタギツヒメだろう、"それ"に対しじっとしている事が許せないのだろう。

 結局、美炎の熱意に折れて智恵は共に同行する。呼吹も大荒魂という存在に興味があるのか、しょうがないと言いつつ喜びを滲ませながら美炎、智恵に帯同するのであった。

 

 

 そしてBチームも同じく囮役を続行、特に由依が張り切っていた事は………語るべくも無い。

 

 

 

 「はぁ………はぁ……てめぇ、マジでざけんなよ……何でよりによってナンパしてんだよ……。撒けたから良いものの、危うく戦い兼ねない状況だったんだぞ」

 又しても同じ頃、Bチーム近辺の辺りまで逃げた後、ダグオンとして強化された身体能力により祭殿に至る道の1つに逃げ込んだファイヤーエンが、息を切らせながら、同じく息を所々切らせたアーマーシンに文句を投げる。

 「あー、ヤッパこの姿がいけねぇ…かと言って生身晒すのは今はマズイし…ままならねぇナァ。よし、全部片付いたら改めてコナかけに行くか!」

 当のシンは気にした風も無く警護の刀使達を後日改めて口説こうと決意していた。

 

 

 

 

 

 

 

 辺り一面、荒魂の蝶が埋め尽くす空間で舞衣と沙耶香は間合いを測りながら、後ろに雪那を控えた夜見を相手に戦闘を続けている。

 先程、ノロを注射された事により再び大量の荒魂を自らの腕から溢れさせる。

 「そんなに血を流したら死にますよ……」

 そんな夜見へ舞衣が警戒しながらも心配を滲ませて忠告する。

 「先に果てるのは貴女達です…」

しかし夜見はそれを意に介さず、淡々と手首に刃を宛てることを止めない。

 これ以上、時間をかければ物量で圧し負ける。その状況を打開する為、舞衣は沙耶香にお願いをする。

 「沙耶香ちゃん、少しの間でいい……荒魂を抑えて。私があの人を斬る!」

 「わかった。この力を私は私の意思で使う」

それに応える沙耶香、舞衣の為に再び無念無想の瞳が煌めく。

 沙耶香が連続の迅移で荒魂を散らす。減った先から夜見が荒魂を生み出す。

 雪那はそんな沙耶香を見ながら自らの身体を抱き締め、身悶える。

 「…沙耶香ぁ……」

と、雪那の意識が沙耶香に向かっている間に舞衣は気合い一閃、夜見へと斬り掛かる。

 迎え撃つ夜見、交差する2人、消え行くS装備、舞衣の髪を止めた髪紐がハラりと落ちる。

 「……お見事です」

 感情の乗らぬ声で舞衣を称えながら倒れ伏す夜見、再び写シを張り立ち上がる様子は無い。

 

 そして夜見が倒れた事により全ての荒魂が沙耶香によって駆逐され、彼女はそのまま雪那へ御刀を向ける。

 「沙耶香!?この私に村正を……」

怯えつつも高圧的な声を挙げる雪那、そんな彼女を前にして沙耶香は訥々と語り出す。

 「熱い…可奈美の剣を受けて手が熱い。舞衣に抱き締められた肩が熱い…。でも……あなたに御刀を向けると胸が苦しい……」

 そう語る沙耶香の指先は僅かに震える。

 「フ…フフ……人形のお前にもそんな感情があったのね。いえ、芽生えたのかしら?」

 対して雪那は御刀を向けられた事により声を震わせつつも、沙耶香の発した言葉を聞き、次第に余裕を取り戻す。

 「いいわ沙耶香。教えてあげます。その痛みを取り除く方法を…。私に許しを乞いなさい、そうすればその不要な感情は……」

 左手を誇るように胸に添え自信満々に言い放つ雪那、しかし沙耶香はそれを憐れみ嘆く様な視線を向けながら彼女の言葉を遮るように静かに言い放つ。

 「わかっていない…痛いのはあなたが可哀想だから……」

 御刀を向けてまで問い質した雪那の答えに、だが何処か予想をしていた返答。そこに巣立ち、掛替えの無いモノを得た沙耶香からすれば雪那はとても小さく見えたのだろう。

 御刀を納刀し雪那へ背を向け、舞衣の元へ歩いていく沙耶香。

 「急ごう。可奈美達の元へ」

 「沙耶香……」

そうして、再び髪を結った舞衣と共に先へと走り消え行く沙耶香の背中、それを雪那は只々呆けた様に見送るのであった。

 そして、それを倒れ付したまま見詰める夜見の瞳、感情が伺えないそれがほんの数瞬、揺れたように見えた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家・上空

 

 鋼の翼と白銀の翼が空気を切り裂く音を立てて舞う。

 ガードホークの背に掴まりながら、ライアンが不用意に吶喊せぬ様、彼の意識を妨げるように手裏剣を放るシャドーリュウ。

 然したるダメージになどなっていないが、こうも事細かに邪魔をされてはライアンとて、祭殿に突撃する事は出来ない。

 言うなれば羽虫が目の前を鬱陶しく飛び回る感覚、ましてその出所が、あの鋼の鷹に座する紫影の戦士の仕業だと言うのだから、余計に無視は出来ない。

 あの時、あの研究所の廃墟で目にした中で、恐らくは一番の実力者、無視して不用意に背を見せれば何を仕出かすか解らない相手を棄て於ける程、耄碌はしていない。

 『ええい!鬱陶しい!私の目的は貴様ではない、何故、邪魔をする!?荒魂…まして大荒魂は貴様らにとっても敵であろう!』

 「そうとも、大荒魂は我々からしても倒すべき存在。しかし、ここで貴様を放置しておく訳にいかないのも事実。俺たちは戦士である前に守護者だ」

 空戦の逼迫した最中故か、珍しく強い物言いをするリュウ。しかし彼の胸中はこの決め手の無い無意味な戦いに、果たしてどうしたモノかと言う思考があった。

 ライアンをこのまま通す訳にはいかない、だが、ガードホークだけでは攻め手に欠ける。

 鼬ごっこを続ける訳にもいかない状況で、さてどう手を打つか、リュウは僅かに交わした会話の内からライアンの隙を作る事にした。

 「貴様に何があったのかは、おおよそ聞き及んでいる。……だが、その身に巣食う怒りに身を委せる事が……果たして本当に正しいのか?」

 『愚問!荒魂を滅ぼしてこそ我が存在の意義。私の生まれた意味はそれだけだ!』

 しかしリュウの質問に対しライアンはその意思を揺らがせる事は無い。

 それ程までに彼を構成する念に含まれる荒魂に対する憎悪と憤怒が強いのだろう。

 ならばとリュウはライアンへと言葉を投げる。

 「怒りに飲まれ憎しみに身をやつす、そんな激情のまま動く貴様は荒魂と違わないのではないか…!?」

 『否!私のこの憤り、憎しみ、これ等は使命と共に在るもの、断じて滅ぶべき荒魂と同様に在らず!』

 ……どうやら今、何を言ったところで無駄かと嘆息するリュウ。

 だが、その会話により出来た余裕にライアンの瞳はある瞬間を捉えた。

 眼下、繰り広げられていた人間同士の戦い。2対1の刀使の戦いでしかし、片方から感じたノロの気配、そしてそれとは別の小さく取るに足らない様な荒魂の気配。

 ライアンの中での優先順位は何を於ても荒魂そのもの、ノロの気配を有する生物である。

 タギツヒメの前にその小さな荒魂を滅するべきだと、彼の中のナニかが囁いた瞬間、そう……その瞬間、目にしてしまった。

 小さな荒魂が必死に倒れ付した少女達を庇う姿を…そして、その荒魂に穢れらしきモノを感じない事。

 

 

 

"アリエナイ"

 

 信じ難いその光景にライアンはその存在意義に激しく矛盾を生じさせる。

 

 『ォォオ?!グ……ガ……オォォォォ!!』

 「…何だ……?」

突如苦しみ出したライアンにリュウは理由も解らず困惑する。

 そしてライアンは頭を抱えたまま落下するように高度が下がっていく。

 「…まずい!このままでは……?!」

 ライアンが落ちる先に人が居れば被害は洒落にならない、何としても止めなければならない、そう思ってライアンを追うリュウ、そして空を見上げれば見える位置にライアンが来た瞬間、横合いから赤い巨影が飛び付いた。

 『うぉぉおおお!!?間に合ったぁぁあああ!』

そんな声と共に人気の無い雑木の地へと落下する2体の巨影。

 リュウがガードホークの手綱を操作し急制動を掛け停止して巨影の片割れを見る。

 「……あれは…ダグファイヤー…!」

ライアンの落下を横合いから阻止した巨影、その正体はダグファイヤーであった。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 どうも、渡邊翼沙です。

 ライアンの直下落下を阻止したダグファイヤー、そして親衛隊第一席、二席と刃を交える十条さんと衛藤さん。

 親衛隊相手に圧倒する衛藤さん。善戦する十条さん。

 そして苦しみ狂うライアンへ、ダグファイヤーは怒りの鉄拳を向けます。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉決戦!!再戦の山狩り。ダグファイヤー対ライアン!

 カイ、君は……

 





 さて次回、まきすずとの戦いは短めに出来たら良いなぁ、どちらかと言えばダグファイヤーとライアンの方がメインにしたいので……ごめんね真希ちゃん、寿々花、君らの事好きだけど、山狩りの時活躍?したし我慢してね……。

 夏休みが欲しい………。


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第五十五話 鎌倉決戦!!再戦の山狩り。ダグファイヤー対ライアン!

 おはようございます。六連勤と暑さに負け、筆が進まず。文章が降りてこず、手こずりここまで遅れたダグライダーです。
 そうしてる内に、水着イベントでパイセンは水着で配布になるわ、天華百剣は我が仁の護刀のエース典厩ちゃんが来るわ。
 とじとものイベントに手を付けられないわで大露でした。


 ちょっとパイセン面白すぎじゃないですか、初日から死ぬとか……水着パープル欲しいよぉ。
 水着プリヤは来ました。
 水着典厩ちゃんも欲しいなぁ、勿論衣装スキンの方でなく、タイプ突撃にチェンジしたプレイアブルの方。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ぁ゛あ゛?!あらすじだぁ?誰がやるかよ、面倒くせぇ……話が違うぞあの小娘…。

 大体俺は楽な方に着いただけで、働く気はさらさらねェンだよ、にしても…ハッ!アルファの野郎…相変わらず詰めが甘い仕事してらぁ。ま、復讐者なんて自分勝手がデフォだろうし、精々高みの見物と洒落混むかね。

 

 


 

 薫とエレンが結芽を、舞衣と沙耶香が夜見を相手取り、可奈美と姫和を先に進ませるも再び立ち塞がった、真希、寿々花の前に足止めを食らう。

 あの山狩りの夜の再戦、互いにあの時と同じ様に真希は姫和に、寿々花は可奈美に相手を定め戦う。

 

 ストームアーマーを以てして尚、真希の胆力に押され、左腕を斬り落とされ写シが剥がれる姫和。

 真希の追撃が迫る内、再び写シを張り直し相対する。

 写シが無ければ斬られない。等と言う事は、事此処に至りあり得ない。

 苦戦する姫和に気を配る可奈美へ寿々花が猛追する。此方も、左腕を斬り飛ばされ再び写シを張り直す。それはいつぞやの夜の意趣返し。

 S装備による後押しがあるとは言え、精神を激しく消耗するダメージは無視出来ない。

 真希の親衛隊に至るまでの裏打ちされた実力、そしてノロの強化により繰り出される剛剣は姫和を捉えて離さない。

 「これだけの強さがありながら…何故荒魂を受け入れる!」

 「ボクは自分が強いだなんて思った事、一度として無いよ」

 姫和の批難に真希は自虐的な笑みを浮かべながら、脳裏に走る、己よりも強い強者を思う。

 

 「目指す背中は彼方に遠く…」

それは親衛隊4人の中で最も幼き神童。

 「見上げる頂は遥か高い」

それは英雄と称え呼ばれた尽くすべき主。

 

 「並び立てるだけの力を得る。目的の為ならどんな手だって使う!君だってそうだろう……これで…終わりだ」

 獅童真希という人間にとってそこまで刻み付けられた鮮烈な才能、圧倒的な力に彼女が描いた願いを見出だしたが故のノロを受け入れると言う選択。

 それらを込めた言葉と共に姫和を見下ろす真希。

 

 

 「お仲間がピンチですわよ?今日はお助けしませんの?」

 一方で寿々花は可奈美を相手に接戦を演じる。刃が幾度も交差しては火花が散る。

 寿々花の挑発めいた発言に、しかし可奈美は焦った様子もなく断言する。

 「姫和ちゃんは強いから!」

 そうしてかち合う九字兼定と千鳥、振り下ろされる千鳥に対し下から掬い上げる様な兼定の軌道、この瞬間寿々花は勝ちを確信する。

 (もらった!)

 そう思った次の瞬間に何と可奈美は刃を反し、寿々花の兼定の刃を"撒き落とし"で大きく弾く。

 ((わたくし)の技を!?)

 嘗て、あの山にて寿々花が可奈美に使用した技を、今度は可奈美が逆に仕掛けた驚きに思考が、弾かれた御刀に従い握り手が腕ごと大きく上がった事で肉体が、隙だらけになってしまう。

 それは瞬く間の時、しかし、勝負事に於いてその隙は致命的。可奈美に目を向ければ既に次の一刀を繰り出す為の動きに移っている。

 

 そして、真希によって追い詰められている筈の姫和もまた、余裕の表情を見せる。

 「お前の言う通りかもしれないな…今ここでお前に勝つ為なら」

 それは真希の独白の様な問いに対する返答。

 

 「どんな手だって使ってやるさ!

 

 姫和のその叫びに呼応して胸部のアーマーが飛び出す。突然の事に驚き、身を反らす真希、その隙を逃さず、彼女を蹴り飛ばし大きく崩れた所を一閃!

 同じく可奈美もまた、寿々花を一閃し2人共に勝利を得る。

 その際、寿々花はどこか悟ったように笑みを浮かべながら斬られた。

 

 「姫和ちゃん。行こう」

 「ああ!」

そして勝者は進む。折神紫の元へ、タギツヒメを討つ為に……。

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、バラバラになったダグオン達。その中でウイングヨクはターボカイからの指示により、エン達に呼び掛けていた。

 「聞こえますかエン、シン!聞こえていたら返事をして下さい。エン、シン!」

 ヨクのダグテクターはカイの次に情報、通信機能に秀でているモノだ。恐らくはカイもあの会話の後、2人へ通信を跳ばしているだろう。

 ともあれ、数度の呼び掛けも相まってノイズ気味ではあるが応答が返ってくる。

 『ぜぇ……はぁ……ヨ、ヨクか……悪ぃ、ちょっと立て込んでてな…返事が遅れた』

 「エン!?一体何があったんですか?!」

 何やら応答と同時に息を切らせてどうにか呼吸を整えた声のエン、その経緯が推移出来ない状況にヨクが驚き訊ねる。

 『や…な、何でもない…ってか気にするな!出来れば俺は気にしたくない!!』

 「は、はぁ…?」

本人からそう言われてしまえば追及の仕様がない、よしんば追及出来たとしても、今はそんな事にかまけている状況では無い。

 「ともあれ無事な様で何よりです。カイとは連絡が取れましたか?」

 『ああ、カイとはシンの奴が話してる。で、何があったんだ?随分切羽詰まった感じだが……』

 「それですが…上空を望遠して見上げて下さい。現在、リュウが例のライアンと戦闘に突入しています」

 談笑もそこそこに本題に入るヨク。エンもその言葉に従い上を仰ぎ、空の戦況を把握する。

 『あいつ……何やってんだよ!?』

 『はぁ~、マジか!?……マジだ!』

ライアンの存在を見て怒鳴るエン、そしてカイから状況を聞いたのであろうシンが、同じく見上げ呑気な声から驚きの声を挙げる。

 「とにかく、こちらに合流して下さい。何とか善戦してくれていますが…リュウだけでは分が悪いようです。それに、タギツヒメ復活の影響か荒魂が活性化しているようです、気を付けて下さい」

 『解ったぜ』『アイヨ』『……』

 相互通話によってリュウ以外と会話を交わす彼等、しかしカイからの返事が無い。

 「カイ…?」

 『どーした大将?』

 『大丈夫か?』

不審に思ったヨクが、それに続いてシンとエンがカイに訊ねる。

 『…………我々の目的は飽くまでも舞草の刀使達がタギツヒメ討伐を仕損じた際の、言うなれば保険の様なモノだ…故に犠牲を出す訳にはいかない。ライアンを最優先で止めねばならない』

 『まぁソーダナ、カワイコチャン達が殺されるなんてゴメンだしな。しかしなぁ…随分回りくどい言い回しじゃネェの。何が言いたいんダヨ?』

 『シンじゃないが確かにいつものあんたにしちゃ、歯切れが悪い気がするぜ』

 カイのダグオンとしての目的を語る科白にシンが妙な含みを感じて指摘する。エンもまたシンの指摘に同意しカイが何を言いたいのかと傾げている。

 「カイ…君が責任感が強い人物であるのは理解しています。ですが、僕達は仲間です。遠慮は無用です、何かあったのなら素直に話してくれて良いんです」

 カイの含みある言い回しから何か察したのかヨクが諭すように語りかける。

 『済まない。緊急事態である事は理解している……今から話そうとしているこれが私的な事であるのも…』

 『水くさいぜ?話せよ』

謝罪するカイにエンが笑いながら続きを促す。

 『妹を見付けた。俺は其方へ行かねばなならない……そこでエン、お前のファイヤーレスキューを借りたい』

 『妹って……例の親衛隊のか?んだよ、そんな事気にすんな!ライアンの方は俺らで何とかする。お前は早く妹を助けに行ってやれ』

 『………済まない、恩に着る』

そうして通信を切るカイ、残った3人はカイを抜いたプランを考える。

 「まさか結芽さんが……いえ、ここは折神家ですから防衛の人員に親衛隊が居るのはおかしな事では無いですね」

 『つったって、どーするよ?リュウは兎も角、カイを抜けばこのメンツで空戦出来んのはオレのアーマーライナーとヨク、オマエのウイングライナーだけだぜ?』

 『俺が融合合体して地上から援護するか?』

 「いいえ、僕達がライアンを地上に追い込んでそこをエンがダグファイヤーとなって抑えましょう」

 『OK、ファイヤーストラトスを喚んでおく』

 プランが決まった事により上空を見上げ推移を見守りながらヨクも自身のダグビークルを喚び出す。

 全国のトンネルにゲートが有る分ファイヤーストラトスが距離的には速いだろうが、上空を飛行するライナービークルも充分間に合うだろうと思いながら観測し続けていると、何やらライアンに変化が現れる。

 どうやら地上の何処かを凝視しているようだ。

 そして次の瞬間には彼は頭を抱え苦しみ出し、落下し始めた。

 「まずい!?」

焦るヨク、ウイングライナーはまだ到着していない、シンのアーマーライナーもそうだろう。

 このままでは折神家の建物に落ちて被害が出てしまう。そう思った矢先、通信越しに聞こえるエンの声。

 『うぉぉぉおおお!間に合えぇぇええ!!融合合体っ!!!』

 そして最早誰が空を見てもその存在に気付く距離まで落下して来たライアンを横合いからアメフトかラグビーのタックルの如く突撃する勢いで人気の無い場所に落ちるダグファイヤーとライアン、そこは目視距離的には最奥の祭殿を覗く雑木林であった。

 

 

 

 

 『うぉぉおおお!!?間に合ったぁぁあああ!』

 そう叫びながら、顔面から地面に突っ伏すダグファイヤー、その前方数メートルでは同じ様にライアンが仰向けになりながらも苦しみながら立ち上がってくる。

 『オォォォオ!?何故だ!荒魂が…何故ダァ!!』

 その狼狽えた声を聞き即座に立ち上がるダグファイヤー、ファイティングポーズを取りながらライアンの動きに注視する。

 『違ウ!違ウ!アレは荒魂だ!!滅ぼサネバならない!ワタシの使命はあらだまをホロボスこと……』

 支離滅裂な声で叫ぶライアン、彼がその右手を砲筒に変化させたのを見るや否やダグファイヤーは距離を詰め、ライアンの右腕を地上から空へ反らしながら彼へ呼び掛ける。

 『おい!ふざけんな!しっかりしろ!お前自分が何やらかしてんのか判ってんのか!!』

 『荒魂は滅びねばならないあらだまはてきアラダマヲメッセナケレバ…』

 しかしライアンは目の前のダグファイヤーの事など見えていないのか暴れ狂う。

 ガキンガキンと大きな金属音が響く、それは暴れ狂うライアンと衝突するダグファイヤーが醸し出す音。

 『っの…いい加減にしやがれ!!』

流石に痺れを切らしたダグファイヤーが右拳をライアンの顔面に向けお見舞いする。

 より一層響く金属音、これには警護の刀使達や囮となっていた調査隊も彼等へ眼を向けてしまう。

 とは言え彼女達も彼女達で、侵入者と戦っていたら荒魂が出たばかりか、正体不明の鋼の巨人が戦っているのだからその反応は致し方無い。

 しかし呆けていては荒魂に隙を見せる事になる為、彼等を気にしつつも降って沸いた荒魂へ注力するのであった。

 そしてダグファイヤーに殴られ仰け反ったライアンは、まるで錆びたブリキの玩具の様な音を立て壊れた様に繰り返す。

 『私ノ使命…荒魂滅ボス。人間ヲ守ル、荒魂滅ボス。私ノ使命…荒魂滅ボス。人間ヲ守ル、荒魂滅ボス。私ノ使命…荒魂滅ボス。人間ヲ守ル、荒魂滅ボス』

 『ちぃっ!まだ目が醒めてねぇのかよ!!このポンコツ野郎!いい加減…ちゃんと目ぇ醒ましてこっち見やがれ!!』

 ダグファイヤーの拳が炎を纏う。炎の拳ファイヤーナックルがライアンの腹部を捉え穿つ。

 『ゴォォオッ?!』

吹き飛ばされるライアン、彼の巨躯が大地を削り木々を巻き上げる。

 『お……おの、れ邪魔をするか…き、さま……』

 『はん!少しは正気に戻ったかよ?なら言ってやるぜ、ああ!邪魔するね!荒魂倒すために他人を巻き込む奴はぶん殴ってでも止めるに決まってんだろ!』

 明滅する瞳でダグファイヤーを睨むライアンに啖呵を切るダグファイヤー、それに対し片膝を着きながらも再び立ち上がるライアン。

 『愚かな!大義に於いて多数を守る為に少数の犠牲が出る事は当たり前だろうが!!』

 『てめえこそふざけんな!正義の味方やる奴が最初の初っぱなっから犠牲が付きもので語ってんじゃねえ!』

 荒魂を滅ぼす為に犠牲を享受するライアンに対し、始めから誰かの死ありきで語る彼を許さず、ヒーローなら最初から全部を守るつもりであたれと憤るダグファイヤー。

 敵を殲滅する為の復讐に駆られながらもその一方で合理性を説く彼に、鳳焔也は理想を諦める奴は許さないと発憤しているのだ。

 『どうやら、貴様等とは相容れぬ様だな…』

 『ざけんな、てめぇのは他人の置き土産に左右されてるだけだ。そんなんで分らず屋になる奴にはオシオキしてやるよ!』

 『抜かせ!何も知らぬ、解らぬ小僧が知った口を利くな!』

 ダグファイヤーの言葉に激昂するライアン、拳を握り締め大きく右腕を振りかぶる。

 『良いぜ、ならここで白黒着けてやる!俺が勝ったら言うこと聞いてもらうからなっ!!』

 ダグファイヤーもまた迎え撃つ様に拳を振りかぶり走り出す。

 巨体が打ち鳴らす地響き、互いの右拳が交差する。

 

 『ガッ?!

 

 『グオッ!?

 

 クロスカウンターが決まる。その衝撃で互いが離れる。

 しかし双方倒れずに踏み留まる。

 『へっ、分らず屋の頑固モノにしちゃ良いの持ってんじゃねぇか……』

 そう口にしながら左腕を振りかぶる。

 『私は…この魂に刻まれた無念の為に、使命を果たす!』

 今度はライアンが迎え撃つ形で左腕を振りかぶる。

 再び決まるクロスカウンター、今度は吹き飛ばされず至近距離で踏み留まり、互いに見据え吼える。

 

 『ライアァァァァァアアンンンッ!』 

 

 『ウォォォォォォオオオオッ!!!』

 

 ぶつかる互いの拳、震える空、隙と見定めれば容赦なく蹴り、殴り、ぶつかり合う2体の巨躯。

 全力で目の前の相手を倒す為に組み合う両者。

 武器の存在すら今の彼等の頭からは抜けている。あるのは只、この気に食わない奴を拳で黙らせると言う泥臭い理由だけ。

 ライアンの蹴りが脇腹に食い込めばダグファイヤーが苦悶の表情を浮かべ、ダグファイヤーの頭突きが決まればライアンが苦痛に声を挙げる。

 力は互角、お互いに信念を譲る気は無く、また相手より先に倒れるつもりなど毛頭無い。

 何度そうしただろうか?長い時間そうしていた気もするし、存外短い間の事であったのかもしれない、だが少なくとも彼等にとっては間違う如無き濃密な戦い。

 互いに息を切らして相手を見やる。

 『ぐっ……しつこいぞ…貴様……!』

 『ったりめぇだ……売った喧嘩も、買った喧嘩も……負ける気はねぇんだよ……』

 『…………貴様、名は何と言った……?』

 『はっ!やっとまともにこっちに興味を持ったのかよ……!』

 息も絶え絶えに軽口を叩く2体、ライアンは奇しくもこの時間だけは怨念や妄執から解き放たれていた。

 『貴様を…確かな強者と認めての事だ……それで、名は何と言うのだ!』

 『今の姿ってんなら、ダグファイヤーだ。そうで無きゃエンとでも呼べよ』

 『良かろうダグファイヤー、次の一撃で貴様を沈めて見せよう』

 『そりゃこっちの台詞だぜ、ライアン』

 理解する。本当にこれが最後の一撃になる、ここまで戦かった2体には解る。これで決まると……

 

 『っ!!ライアァァァァァアアンッ!!

 

 

 『ッ!!ダグファイァァァアアアアッ!!

 

 目の前の好敵手の名を叫ぶ。

 三度交差する拳、しかして勝負の行方は如何に……。

 

 月明かりが真紅と黄金の巨躯を照らす、地に写る影、その拳は赤い巨人の頭部を貫き、黄金の巨人の顔面に深く突き刺さる。

 勝者は炎の戦士、その顔の直ぐ真横に黄金の剣聖の腕がある。

 敗者は獅子の剣、その顔の中心には黒き拳が真芯を捉えている。

 

 『………………俺の勝ちだ』

戦士が静かに口を開く。

 

 『……無念……。見事だ…』

敗北に悔恨を口にしながらも勝者へ賛辞を送り倒れる獅子。

 

 決着は着いた、復讐者は暴走の果て一時ではあったが確かに1人の戦士と成り果てていた。

 

 だが戦いは続く、大荒魂は未だ健在であり、周囲には荒魂達が溢れ始め、そして宇宙より未だ見ぬ敵が迫りつつあるのだ。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 どうも~恩田累です。

 いやぁ、私等が捕まってる間に本部はスゴい事になってるみたいね。

 あの子達大丈夫かしら……?

 そう言えば調査隊の子達も色々頑張ってるみたいね。それにしてもダグオンって本当何なの?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 新たな仲間。兄妹命の瞬き。

 

 ところでなーんか変なのが空から降ってきたんだけど!?




 ところで夏アニメは楽しんでますか?こんなご時世ですからね。私はそこそこ楽しんでます。
 今期三大エミリアなら私はメイドに雑に扱われてからかわれて幽霊からストーキング受けてる方がツボです。
 うん、皆脇ヤバイね、お山も大きな娘達が多くて満足です。Ⅳ KLOREとsupernovaがユニットとしては気に入りました。
 キャラクター的には各々のユニットから数人お気に入りが出るくらいにはハマった具合です。
 お胸がドキドキきゅーんきゅーん

 ではまた次回


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第五十六話 新たな仲間。兄妹命の瞬き。  

 おはようございます。いやぁ気付けば9月、何とも情けない。
 しかし1つ言い訳を許して頂けるならば、8月はどうにもやる気が一段階下がってその上仕事で疲れが溜まる、ゲームはイベント目白押しとありまして…ええ、はい、取り敢えずパイセン正式ゲットまではいきました。パープルは採れませんでした。典厩ちゃんも水着来なかったし、アリスギアもffは来ないし、成果と言えば鎌府制服の夜見をゲット出来たくらいでしょうか



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 あらすじに復帰したら私の知らない内に好き勝手荒らされていた件。

 と言うかニューとシグマの奴が来ていた痕跡があるのだが…奴等何故普通に此方に侵入して来ているのだ!?……あっ…また胃が……

 


 

 それは可奈美と姫和が親衛隊2人を相手に刃を交えていた頃。

 安桜美炎、七之里呼吹、瀬戸内智恵のAチーム3人は美炎の案により可奈美達を追うように、祭殿へと向かう。

 勿論そこにも警護に就いている刀使達が居る訳で、彼女達が突撃した可奈美達を追撃する事を阻止しなくてはならない。

 結果、Aチームの面々は再び撹乱役をこなす事になる。数の差に対し鬼気迫る勢いで圧倒する3人とは言え腐っても折神家の警護を任された刀使、実力は確かなモノだ。救いは彼女達にノロが投与されていない事と大多数が折神朱音確保に割かれている事で本来よりも数に限りがあるという事だろうか。

 ともあれ最初は気迫で押せ押せしていたものの、一向に衰えない警護の刀使の数に流石に辟易する呼吹、何と無しに口にした南无薬師景光含めた赤羽刀の話題、未だオリジナルの南无薬師景光は行方知れずどころか最近は赤羽刀すら探せていない事を皮肉気に溢せば、智恵が色々あったから仕方無いと図星を突かれた事を濁し、美炎が同意する様に仕方無いと追従する。

 そんな彼女達の本分はさて置いて、軽口を交えつつもその物量に再び呼吹が苦言を呈する。

 「にしても、いつ終わるんだよ!いい加減打止めになれ!!」

 そんな叫びを聞き付けてか、ある刀使が3人に声を掛けて寄ってくる。

 「あー、居た居た!こんなところに居たんだ。館中探し回りましたよ!」

 「チッ……またかよ、大人しく寝てろぉぉぉ!」

しかし突然現れた彼女に、現れる刀使全てを気絶させる為対処していた呼吹は彼女も敵と見なして斬りかかる。

 だがその刀使が写シを張っていない事に気付いた美炎が慌てて止める。

 「ふっきーダメ!その人写シ張ってないよ!?」

 「何……だとっ……?!クソがっ!!?」

美炎の指摘に即座に振り切る腕に制止を掛ける呼吹、風を斬る音が流れ消える。

 謎の刀使はよたよたと千鳥足で後ろに下がると自分の首へ触れながら一息吐くと、Aチームの3人を見据えつつ口を開く。

 「おっと…。文字通り、首の皮一枚繋がった。もう少しでぼくの首が胴とおさらばするところでしたね」

 「てめー正気か!?写シを張ってなきゃ斬られねーだろうなって油断させる作戦か?」

 堪らず叫ぶ呼吹にしかし謎の刀使はキョトンとしながらその氏素性を明かす。

 「え~!だって味方じゃないですか…!ぼく、味方。味方です!聞いてません?!………聞いてません?そのお顔を見ると、聞いてませんね。ヒドイなぁ。青砥の陽司さんも山城由依も、ぼくの事伝え忘れてるんだ。困ったものですよ」

 夜空の月明かりが雲の切れ間から射し込み謎の刀使を鮮明に映し出す。

 綾小路の制服に身を包む茶色いサイドテール、生真面目さを感じさせるつり目、しかしどことなく捉え所を感じさせない雰囲気を醸し出す彼女はそんな風に独りごちながら口を尖らせる。

 「木寅先輩が配属された調査隊の助太刀に抜擢されて、張り切ってたのになぁ……もう!」

 そんな彼女に見覚えがあるのか智恵が驚きに目を丸めて彼女の名を呼ぶ。

 「あなた……鈴本葉菜?そうよね?」

 「良かった!ぼくの事知ってる人が居た!あなたは智恵さん、瀬戸内智恵さんですよね?」

 葉菜と呼ばれた彼女は智恵の誰何に肯定で返し、智恵もまた葉菜に対し含みを込めて返事をする。

 「ええ、貴女の話は()()()()聞いてるわ」

 「ちぃ姉ぇ、この子の事知ってるの?じゃあ助太刀っていうのホントなんだ!助かるよ~、鈴本葉菜さん!私は安桜美炎、美炎で良いよ!」

 と、警戒もへったくれも無く易々と葉菜に気を許し名乗る美炎。実際、味方に間違いは無いので問題は無いのだがもう少し猜疑心を持つべきではなかろうか……否、その素直な気性が安桜美炎の良い所なのだろう。

 さておき、美炎が葉菜相手に和気藹々と和んでいる今この時も敵は現れている訳で……

 「自己紹介は、そこまでだ。ほら、また団体さんが来たぜ!」

 呼吹が呆れつつ敵が迫り来る事を指摘する。

 

 

「賊めぇ!これ以上好きにはさせないぞっ!!」

 

 

 迫る刀使達を前に葉菜が強く息巻く。

 「早速、ぼくがお役に立てる場面が来たようですね。真面目だけが取り柄のぼくですが、精一杯頑張ります!」

 斯くして、鈴本葉菜を加え4人となった調査隊Aチームは、追加で現れた警護の刀使を相手に立ち回る。

 葉菜の実力は確悦したものという訳では無い、堅実かつ基礎が確りとした地道なモノではある、その腕は成る程調査隊に推挙されるに十分なものだ。

 「流石調査隊!皆さんやりますね」

 葉菜は3人の立ち回りを見て、流石と評価する。

 「葉菜さんこそ、真面目なだけが取り柄なんて、全然そんなこと無いよ!」

 「真面目な()()が取り柄……ね。鈴本さん、二人に例の件、話していいわね?」

 美炎の純粋な喜び様を横目に智恵は葉菜の口にした真面目なだけという言葉に含みを持ちながら美炎と呼吹に対し、隠していた事を話しても良いかと葉菜に訊ねる。

 「はい、問題ありません。むしろ話していただいた方が早く信用していただけるかと」

 智恵の質問に対し肯定の意を返す葉菜、話が見えないのか呼吹は訝しげに智恵達を見る。

 「チチエ、一体何の話だ?」

 「彼女は舞草が綾小路武芸学舎に潜入させた諜報員なの──」

 つまり、元々舞草のメンバーなの…と続け、呼吹の疑問に答える智恵。一方、言葉の意味が解らないのか美炎は首を傾げて言葉を反芻する。

 「ちょうほう…いん?」

 「スパイって事だよ、いちいち話の腰を折るな」

美炎のアホさ加減に呆れながら意味を補足する呼吹、ともあれ鈴本葉菜という刀使は諜報員に選ばれる程には優秀である。決して真面目なだけが取り柄等という訳では無い。

 とは言え、そんな彼女でも綾小路の相楽学長の意図は図りかねているらしく、些か疑問が晴れない。

 とは言え、調査隊には頼もしい仲間がまた一人加わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家・祭殿へと続く道の1つ

 方々では巨人達が拳を交え、調査隊が攪乱に徹しているとは思えぬ程静な道すがら、夜の静寂に消え入りそうなまでに弱々しい呼吸を湛えながら、自らの御刀を杖のようにして精一杯力を振り絞りながら進む少女。

 口元に一筋血を滲ませ土気色に近付いた生気の無い顔で今にも瞼が落ちそうなまでに霞む眼を開きながら、ゆっくりと進む、途中咳き込み吐血しながらも彼女は在りし日の想いを馳せる。

 燕結芽にとって始まりはとても些細な事であった。

 今よりも幼い日、両親に連れてこられた神宮で大人達が見守る最中、御殿の中央に祀られた御刀に手を着ける。

 するとどうだ、自らの体を淡い光が包むではないか。そして周囲の大人達は驚嘆と歓喜の入り交じった声で言うのだ。

「おお!素晴らしい!」 「御刀に認められた」 「まさかこの歳で……」

 周囲の様子から自分はとても凄い事を成したのだと子供ながらに理解した。

 何分、燕家は結芽が生まれるまでは嫡子が息子一人しかおらず、彼女の誕生、そして御刀に選ばれた事は大いに湧く程であった。

 御刀に認められてからは一層励んだ。道場では目上に交じり御刀を振るい、最早敵は居なくなった。

 強いて相手になる人物は兄だが、御刀を使えぬ以上、どうしても実力は発揮しきれないジレンマが付いてまわる。

 故に多数の刀使相手に幼子である結芽が余裕で勝利を掴んだ事実がより一層周囲の大人達を歓喜させ、結芽の自信に繋がり、悪い言い方をすれば皆が彼女に甘くなった。

 同年代には敵は居らず、上の世代でも壁には為り得ない。まさに神童。

 そんな風に周囲が沸き立てるごとに自分は凄いのだと思い至る結芽。実際、他の誰も彼女に勝てないのだからそれは名実共に神童という称号を確固たるモノとさせる。

 そして少しばかり時を経て、燕結芽は初等教育過程を飛び級し、綾小路武芸学舎へと入学する。

 周りは年相応の少女達の中、幼い自分だけが特別な状況、両親が喜び褒め称える事が何よりも嬉しい事であった……あの時、胸に走った痛みに喘ぐまでは。

 結芽の人生が狂ったとしたらその瞬間だろう、学舎(まなびや)で友人を作る間も無く、気付けば病院のベッドの上。

 生命維持装置に繋がれて胸から全身を侵す病の痛みと苦しみに耐え喘ぎ、マトモに体を動かす事すら儘ならない。

 最初は心配して来てくれた両親もいつの間にか来なくなった。

 日に日に痩せ細っていく体、瑞々しかった指は骨と皮だけになり、顔からは生気が抜け白くなっていく。

 ついぞ見舞いに来るようになったのが兄だけとなり、しかしマトモに語らう事すら難しい身となった彼女は独りとなった時はいつも窓の外から見える空へと、力無い手を伸ばしながらぽつりと呟く。

 「苦しいよ……パパ…ママ……助けて……」

やはりと言うか、少女にとって最も頼れる大人である両親を呼ぶ、しかしその願い虚しく叶うことは決して無い、兄とは言え、未成年でしかない戒将はそれを歯痒く思い拳に力を込める事しか出来ない。

 ある日、彼女の点滴を交換しに来た看護師の一人が結芽を不憫に思ったのか同僚に訊ねる。

「ねぇ…この子の御家族は?」

「お兄さんが毎日時間作って来てはいるけど…ご両親の方はそれがもうずっと……」

 彼女達は与り知らぬ事ではあるが、この時燕家では少々の諍いがあり、戒将が家を出る運びとなったのである。無論、当時の結芽にそれを知るよしも無いが。

 とは言え戒将は学生の身、出来た人間であっても子供である。まして、被保護者として扶養など出来る訳も無い、結果、寮に入る運びとなり、兄妹が会う時間は更に少なくなる。

 花瓶に指した花も枯れる程季節が巡った頃、それはある日突然に結芽の前に現れた。

 綾小路武芸学舎の学長、相楽結月を伴って英雄折神紫は死に体同然の結芽に言葉を投げ掛ける。

 「選ぶがいい。このまま朽ち果て誰の記憶からも消え失せるか、刹那でも光輝き、その煌めきをお前を見棄てた者達に焼き付けるか」

 それは見るものが見れば悪魔の誘いであったのかもしれない、しかし幼い彼女にとっては今一度もたらされたチャンスであったのだ。

 故に彼女に断ると言う選択肢は存在しない。その証拠に少なくとも結芽からしてみれば兄が喜んでくれたのだから。

 ならばその選択は間違いでは無かった、そう思うのも無理からぬ事。

 もたらされたソレを受け入れ、学舎へと復帰し、沖縄での一騒動を片付けて、親衛隊へと招集されれば、燕結芽の存在は瞬く間に最強の一角として知れ渡る。

 強くなれば誰もが自分を認める、強い相手を倒せば誰もが自分を褒め称える。

 ──私は凄いのだと見せればママとパパも帰って来てくれる、お兄ちゃんともっともっと長く一緒に居られる──

 幼心に思い至った結論に彼女は我武者羅なまでに強者との立ち会いを望んだ。

 自身が強くなったと証明出来れば、再び両親に見てもらえる。兄に心配を掛けないで済む。

 全てはこの短い生の中で誰かにその存在を刻み付ける為。

 沖縄での試作S装備を下し、親衛隊に招集され、その力を存分に発揮した。

 同僚となった年上の彼女達は優しくもあり、口煩くもあり、そしてよく解らなくもある。

 自身を含め一癖も二癖もある者ばかり、仕える主は強く未だ一度として刃を届かせる事すら叶わない。

 兄も自分を追って京都から鎌倉の本部へ来てくれた。

 結芽にとってはその関係が全て。

でも、病魔は消えた訳では無かった、だから強者と戦い己の存在を示さねばならない、故に弱者へ関心は向けない、弱い者に勝っても誉めてはくれないから……。

 そして見付けた折神紫以外で自分を奮わせる最強の刀使。

 楽しかった、もっともっと戦っていたかった、彼女なら自分を覚えてくれるかもしれないから、そしてそんな彼女に勝てばみんなが……パパとママが……そして何よりもお兄ちゃんがいっぱい褒めてくれるから。でも──

 「もうおしまいかぁ……まだ全然足りないのに…もっとすごい私を…みんなに焼き付けたいのに……」

 祭殿に続く道の、石畳から外れ幾つかある樹の1つに寄り掛かりながら惜しむように呟く結芽。

 判然としない程衰弱した瞳が映すのは夜の深い闇、孤独の中で命の灯火が蝋燭の様に吹けば消えてしまうまでに弱くなった彼女、涙が目端に溜まりながら、必死に望みを口にする。

 「なんにもいらないから……おぼえてくれてれば…それでいいんだよ……」

 腕から力が抜けていく、恐らくは今眼を閉じれば2度とは醒めない。杖代わりのニッカリ青江から滑り落ちる細腕、しかし、しかしだ幾重もの世界で繰り返してきた彼女の死に、抗い、戦う者が世界(ここ)にはいるのだ。

 「忘れぬとも。俺が居る限り、決してお前を死なせない」

 僅かに残った意識へ語り掛ける優しく強く、それでいて泣きそうな程必死な声、最早感覚すら薄くなった己の細腕に暖かい熱が加わる。

 何かの空気が抜けていく音、それが燕結芽が最後に聴いた音、霞んだ瞳が捉えたモノは青い影、それを何かと認識するより早く彼女の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 「……………」

帳の中、大樹に背を預け眠る少女の左手首に、何かが入っていたであろう小さなタブレットを押し充てる青い装甲の人影。

 彼の視界には少女のバイタルが表示されていく。

 「紙一重……であったか……。この時ばかりは神の存在を信じたくなるな…」

 片膝を着きながら安らかに眠る彼女を眺めるターボカイ。

 その声は安堵に包まれている。

 「お前の為に俺の様な粗忽者が出来るのはこれくらいしかない。だが……もし許されるのであれば、次にお前が目を醒ました時に、今度こそは共に居られたらと願う俺の我儘を受け入れてくれるか?」

 聴こえてはいないだろう、しかし血の繋がった妹の御髪を優しく撫でながら呟く彼のそのマスクの下はとても優しい顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本上空

 7つの流星が島国を目指し墜ちてくる。

 1つは横須賀港へ、1つは何処かへ、2つはとある傭兵の元へ、そして3つが鎌倉へと墜ちていく。

 大気圏を抜け、今にも壊れそうな簡素な方舟は中空で分解する。

 現れたのは蟻の様な異容、人であれば死を免れぬその状況に恐怖の声1つ挙げる事無く静かに地上へ降り立つ。

 "ザゴス星人"、嘗て幾度となく元の世界でダグオンと合間見えた宇宙人、この世界のダグオンとはまだ数度刃を交えた程度、そんな彼等はダグオン達からしてみれば数以外は大した脅威にはならない存在。

 そう、個々は脅威ではない。しかし弱くとも数がいればそれは十分脅威だ。

 今、この地は刀使同士が戦いあい、大荒魂に呼応し荒魂達が群れ、混沌を極めている。彼等の目的はそこへ更に混沌をもたらす事。

 降り立った地で彼等の言語で2、3言葉を交え嗤う。

 視線の先にはこの星に巣食う下等な猿と野蛮なムシケラ、彼等は彼女達が恐怖に震える様を想像して歓喜にその身を打ち奮わせるのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ……六角龍悟だ……。

 ライアンを降し、束の間猶予を得た俺たち……。しかし、世界は往々にして優しくは無いらしい…、遂に衛藤と十条は折神紫の姿をしたタギツヒメと邂逅し、別れた調査隊は現れた荒魂を相手に四苦八苦する……だが、突如乱入して来たのは…ザゴス星人だと?!

 ……ちぃっ!奴らめ大人しくしているとは思わなかったが…ここで介入してくるとはな……。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 混迷必死!?人類対荒魂対異星人。

 …刀使たちはやらせん…!




 次回こそは速めに投稿したい。
 とか書いていたら新作のライダー、聖刃とラピライの話とか読んでみたいなぁとか思ってしまったり……。
 私別に流行りモノ嫌いな訳じゃ無いんですよ?ハーレムとか無双だってある程度読みますし、ただねぇ……割合的には成長ものとかドロドロの三角とかも好きなんですよねぇ
 ではまた次回


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第五十七話 混迷必死!?人類対荒魂対異星人。

 
 こんばんは、夕飯時のダグライダーです。
 あかりんご可愛いいんご!
 さて、スマホの電池がそろそろヤバい気がするこの頃、でも交換に出すと暫く執筆もアニメ観賞もゲームも出来なくなるんですよねぇ。
 あー、早く融合合体編書きたいなぁ。




 前回の"とじダグ"!!

 ちょり~!ダグベースからお送りするよ~。

 やったねかいちん!ゆめっちにオクスリ投入セイコー!調査隊もはなちーを加えて戦力アップだー!!

 したらなんかさー、空から降ってくんぢゃん?

 あれ?もしかしてヤバい系?ダグメンズめっち頑張れし!!

 

 (こやつは何を一人でぶつぶつ言っておるんじゃろうか……?)

 


 

 獅童真希、此花寿々花を降し最奥の…折神紫が居ると目される場所へ駆ける可奈美と姫和。

 道中、外から聞こえる騒音に些か気を取られつつも、目立った妨害もなく、彼女達は遂に目的の場所へ辿り着く。

 「雰囲気が変わった…」

 「多分ここが……」

今までの場所と異なり明らかに自然に出来た洞窟の洞に儀式を行うために人の手が入ったのであろう神聖な場所。此処に目当ての人物が居るとはっきりと解る。

 「戻って来たか、幼い二羽の鳥よ」

 その目当ての人物、折神紫……の姿をしたタギツヒメが奥の暗闇から姿を現し、身構える2人にその姿を晒し彼女は告げる。

 「巣立ちを向かえたか。未だ雛鳥のままか…。剣をもって証を立てるがいい」

 灯籠に照らされたその顔は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 一方、結芽が去り暫くは野晒しのまま倒れ臥していた薫とエレンは起きて早々軽口を叩きながら祭殿がある山を見据える。

 するとどうだろう、祭殿から少々外れた下方側で見慣れぬ2体の巨人がその鋼の体を奮い激しくぶつかり合っているではないか。

 「おい!みろ!エレン!!ロボットがデスマッチしてるぞ!!」

 「オー!激しい殴り合いデスネ、でも薫?今はそれどころではアリマセンよ?」

 ダグファイヤーとライアンの闘いに興奮気味の薫(とねね)に対し、驚きはあるものの極めて冷静に諫めるエレン。

 「クソッ!こんな状況じゃなけりゃ観にいくのに!!」

 「そもそもアレは薫の守備範囲に入るんデスカ?」

渋々ながら皆の跡を追い始めた薫と、彼女の特撮趣味にダグファイヤーは入っているのかと疑問を挟むエレン、その間も2体の巨人による闘いは激しさを増す。

 「ああ?あのロボットは例の連中の奴だろ、なら最終的に他のマシンと合体して更に巨大になるからアリ。あー、くそ!ここからじゃ何言ってんのか解らん」

 「ねー」

 薫の何言ってんだと言う顔と返答に苦笑しながら先へと歩みを進めるエレン、チラリと見えたが彼の巨人達の片割、赤い方は成る程確かに例の動画に出てきたロボットだと納得し彼等の存在を留意しつつも仲間の元へ痛む身体を推しつつ進むのであった。

 

 

 

 

 

 そしてその件の彼等ことダグオン達はダグファイヤーとライアンの決着を見守りつつもカイを除く3人は周辺の荒魂を掃討していた。

 「……どうやら、無事に勝ったようだな…」

手裏剣を放り、クナイを剣の様に振るいながら白兵戦を演じるシャドーリュウ。

 「取り敢えずは一安心でしょうか?」

クリスタルブーメランを手に、刀の如く振り回しながら荒魂を蹴散らすウイングヨク。

 「ま、カワイコチャン達が瓦礫の下敷きになるような結末は防げたわな」

 アーマーライフルを構え、群がる荒魂を続々と撃ち抜くアーマーシン。

 とそこでヨクのダグテクターが新たな反応を検知する。

 「!…これは、一つ、二つ………上空から新たに七つの反応?!まさかエデンの宇宙人!!?」

 「ハァ?!オイオイ相変わらずトウトツ過ぎんだろ!?空気読めよ!」

 「…奴ら、何処に落下する?」

ザゴス星人を乗せた突入艇の存在に今の状況を考えろと言わんばかりに憤慨するシンと連中が何処を目指し落ちてくるのかとヨクへ問うリュウ。

 双方の声を聞きながら突入艇の落下予測範囲を計算するヨクはその結論を前にダグファイヤーへ声を飛ばす。

 「ダグファイヤー!!敵です!エデンから新たに宇宙人が送り込まれて来ました!内三つ、ここに墜ちてきます。狙い撃って下さい!!」

 ヨクの悲鳴にも似た叫びに答えるより早くファイヤーブラスターを構えるダグファイヤー、彼の眼には赤熱化した突入艇が映る。

 3、2、1…と後高度数百メートル過ぎればブラスターの射程に捉えられるという所で、突入艇に限界が来たのか装甲が剥離しバラバラに散らばり始める。

 『まずい?!』

 射程には足りないが咄嗟にブラスターを連射するダグファイヤー、幾つか手応えがあった気もするが大多数はそのまま落下を許してしまう。

 ザゴス星人は大体が人間と同等程度の大きさな為、最早こうなってしまえば何処に落ちたかは解らない。

 『悪い、撃ち落とす前にバラけちまった。多分いくつかやったと思いたいが……』

 「………奴ら既に四方に降り立ったか……」

 「オイオイ…マズイだろ、この辺りに降りて来たって事はダゼ、まだあの辺なんかで戦ってる娘達に連中が襲いかかって来るってことだろ?!ヤベェ!こうしちゃいられネェ!」

 自分で答えを半ば言ったかと思えば慌ててザゴス星人が降り立ったと思われるポイントへ飛び出すシン、ヨク達が制止する間も無く消えていった。

 「ああっ……!仕方ありません。リュウ、僕達はシンとは別の地点へ向かいましょう。恐らく星人達はいくつかの塊で行動しているはずです。それと君にはこちらの敵を片付けた後、横須賀へ向かって下さい、恐らくはあそこにも一つ、落下しているはすです。僕達も片付き次第向かいます、頼めますか?」

 「……承知した。で、あるならばこちらの戦力……警護の刀使が多い地点へ援護に向かうのが道理か……」

 ヨクの説明に納得すると即座に動くリュウ、残るはダグファイヤーとヨク、そして倒れ気を失ったライアンのみ。

 「では僕も行きます。カイには此方で連絡をしておきます。ダグファイヤーは疲労が抜けたら融合解除してタギツヒメへ向かって下さい。流石に全員が連中の対応に追われる訳にはいきませんからね」

 『あ、ああ。すまねぇ』

 片膝を着きながらヨクへ謝罪するダグファイヤー、そんな彼に軽く頷くとヨクはエレン達が向かった方向へと跳び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家山道・Aチーム

 葉菜を加え、襲い来る刀使達を撃退していた彼女達は途中現れた2体の巨人の戦闘に我を忘れたかの如く見入っていた。

 「はぁ~、あれが例の謎の戦士ダグオンですか……何と言うか……色々スゴいですね」

 初めて見るダグオンに感嘆の声を挙げる葉菜。

 「戦ってた相手はあんときの剣の奴か……そういや荒魂ちゃんの事で連中と揉めてたな」

 「そうね……多分それが諍いの原因なんでしょうけど……美炎ちゃん?」

 「………………………………………………格好いい…」

 葉菜を他所に、二度目の目撃となるダグファイヤーとライアンの存在に彼等が何故現れ、何故争っていたのか、端々から聞こえた会話から憶測を口にする智恵、そうして先程から美炎が静かな事に気付き、彼女の方を向けば、暫しの沈黙からそんな言葉が聞こえてくる。

 「美炎ちゃん?!」

 「や、あの…えっと、この状況で不謹慎かもだけど、あの赤い人が変型?したロボット、ダグ…ダグ…」

 「ダグファイヤーだろ」

 「そうそうダグファイヤー!!ありがとふっきー!…とにかくダグファイヤーが言ってた事、詳しい事はよくわかんないけどさ、多分、私達の為に戦ってくれてたんだと思うんだ。後……なんか男同士の殴り合いって感じがしてちょっと格好いいなって…って笑わないでよちぃ姉ぇ!」

 たどたどしく思いの丈を語り出す美炎に思わず笑みを浮かべてしまう智恵、辺りの空気が弛緩したと思ったその時、ガサゴソと草むらから音が立ち響く。

 「「「「!?」」」」

 飛び出し来たのは中型の荒魂、しかしどういう訳か躰からノロを撒き散らし傷付いている。

 「おっ?!荒魂ちゃんじゃねーか……あん?」

いの一番に現れた荒魂に反応し、しかしその荒魂が深傷を負っている事に目敏く気付く。

 「あの荒魂……何かから逃げて来たの…?」

 智恵が荒魂の来た方向と状態から類推を口にしたその時、荒魂が現れた方向から新たに大量の気配が出現する。

 「な、何?!」

 「なんか…来る…!」

 いきなり目まぐるしく替わる状況に葉菜が驚きの声を洩らし、美炎は新たな闖入者の存在をつぶさに感じ取る。

 

「ギギッ!!」 「ギャギ!」 「ギシッ」 「ギィ…」 「ギョギギ」 「ギギ」

 

 そうこうしている内に荒魂を傷付けた存在が1体2体…果てはゾロゾロ溢れ、荒魂を倒してしまった。

 「なに…あれ……虫のお化け!?」

 「一匹見掛けたら三十匹ってか?ゴキブリかよ……」

 「寧ろアリじゃないですか?」

 「そんな事より、みんな気を付けて!相手はわたし達も敵として認識しているみたい」

 自分が感じ取った気配の存在が人間型の虫の化物である事に若干引き気味の美炎と1体目が現れてから次々増えたソレに害虫を思い浮かべる呼吹、流石にその例えは如何なモノかと視線で抗議しながら蟻ではないかと意見する葉菜、そして智恵はそんな異形達が荒魂だけでなく自分達も標的にしている事を察し皆に警戒を促す。

 

「ギィ…!」

 

 「っ?!倒れた刀使の方にっ!!?」

しかし彼等は意識のある彼女達よりも、彼女達と戦い敗れ倒れた刀使を優先し襲い掛かった。

 「ダメっ!間に合わない!!」

 よしんば迅移で間合いを詰められても数を対象出来ない、それもあって思わず目を逸らしてしまいそうになる智恵。だが彼女が想像する様な悲劇は1人の影により防がれた。

 

 「シャドォォォ手裏剣ッ!」

 

 空より降り注ぐ大量の手裏剣が自分達や倒れた刀使を避け、虫の化物達に突き刺さったのだ。

 「これって…!」

 その光景を見て美炎はダグオンが助けに来た事を理解する。

 「……ザゴス星人か…、遠路遥々、ご苦労なことだが刀使達に手は出させん……。早々にお帰り願おう!」

 影の名はシャドーリュウ。Aチームの目の前に降り立った彼は颯爽と構え虫の化物…ザゴス星人へ啖呵を切った。

 

 

 

 

 また一方で同じ様にザゴス星人が現れ混沌とした戦場がある。

 御前試合に使用された大間の庭園で悲鳴と怒号が飛び交う。

 「まさか…荒魂に続き謎の化物とは、思いの外厄介な事になりましたね」

 木寅ミルヤがそんな戦場で襲い来る荒魂やザゴス星人を相手取りながら苦々しく溢す。

 「ミ、ミルヤさん!この怪物って…!」

 六角清香が若干涙眼ながら自分に迫ったザゴス星人を何とか斬り伏せる。

 「ええ、間違い無いでしょう。恐らくは彼等が相手取っている件の宇宙人達かと」

 そんな清香の質問にミルヤもまた自分へ襲い掛かったザゴス星人を斬り倒し答える。

 「ひぃぇええっ?!何ですか?!この虫のお化けは~!!」

 山城由依だけは状況がよく理解出来ず蛍丸を振り回しながら荒魂、ザゴス星人双方を吹き飛ばす。

 彼女達と戦っていた警護の刀使達も荒魂に続き現れた謎の異形に更に混乱するばかりで隊列が乱れる。

 「そこっ!隊列を乱すな!敵の数に圧されるぞ!」

「は、はいっ!」

 すかさずミルヤがそんな彼女達に指示を飛ばす。それを受け素直に返事をし従う警護の刀使、その状況に恐らくは彼女達側の隊長各が慌てて突っ込む。

「何故反逆者が指揮を執ってるの!?」

 「おや?申し訳ありません。貴女方も混乱していたようなので私が代わりに指示をしてしまいました」

 いけしゃあしゃあと涼しい顔でけろりと言ってのけるミルヤに警護側の隊長各もぐぬぬと歯噛みする。

「くっ…、反逆者の癖に……」

 「…とは言え数が多いですね、荒魂とも争ってくれているのでそこまで苦戦はしませんが、孤立してしまえば厳しい。せめて何か1つ大きく戦局を変える何かが欲しい」

 憎まれ口を叩きながら警護の刀使達が持ち直したのを確認し自分達の方に集中するミルヤ、しかし如何せん数が多い相手に対し此方は一枚岩とは言い難い状況、更には荒魂も変わらず此方に襲い来る。

 「せめて……」

 せめて、荒魂と異星人を一度に大量に倒す事が出来る手段があればと心の中で独り語ちるミルヤ、そんな彼女の心中を天が察したか、求めていた手段が気軽な調子で現れた。

 「オラオラオラ!世界中の全てのカワイコチャンとオネーサマの為!邪魔だ荒魂ドモにアリヤロウドモ!」

 アーマーライフルを両手で構えながら背中を見せた刀使に襲い掛かったザゴス星人や隙を見せた刀使に殺到する荒魂を蹴散らすアーマーシン。

 理由ともかく、地獄に仏とはこの事かとミルヤは思った。

 「助かりますダグオン」

 「ヘイ!オレの事はアーマーシンと呼んでくれよクールビューティー!」

 「良いでしょう。(…この軽薄さ、誰かを思い出しますね)アーマーシン私達と共に此処を切り抜けるのを手伝って頂きます」

 「オーケーオーケー。コッパ荒魂とザコ星人なんざあっちゅうまに倒してやらぁ!」

 

 「清香ちゃん清香ちゃん、何者なんですかあの人?

 「ええっと……味方だよ?一応…あはは…」

ダグオンを初めて見る由依が清香の制服の裾を引っ張りながら小声で訊ねると、どう説明して良いのか解らない清香が苦笑しなが由依の疑問に答える。

「あーっ!!?貴様あの時の不審者ぁ!!」

 するとシンの登場に警護の刀使の1人が大きく声を挙げて彼を指差す、そう、彼女こそはエンとシンが折神家に現れた時、シンにナンパされた刀使なのであった。

 「ハハッ!あん時のカワイコチャン、これが終わったら良かったらデートしなあい?」

 それをザゴス星人相手にしながら余裕で返事をするシン、流石にこれにはこの場の全員も呆れる……いや1人例外が居た。

 「なっ?!なんて羨ましい事ををを!あたしも美少女とイチャイチャしたい!」

 山城由依(へんたい)である。

 「由依ちゃん……」

 「山城由依…貴女という人は……」

 清香とミルヤの由依を見る眼が一層冷たくなる。

 「はぁあん!二人の冷ややかな視線が効くぅ~」

 「ヘェ、何か知らんけど面白カワイイのがいるじゃあねえの、ま、オレのストライクゾーンからは外れっケド。き…じゃねぇやクールビューティー!敵さんをなるべく一ヵ所に集めてくれ!したら一掃してやるぜ?」

 2人と由依のやり取りを笑いながら敵を倒すシン、そのままミルヤに提案をする。

 「分かりました。六角清香、山城由依、貴女達は正面の荒魂を上手く中央に押し止めて下さい。他の皆も聴け!今は互いにとっても無視出来ない脅威がいる以上、我々で争うのは危険だ!各員は連係して異星人と荒魂を中央へ押し集めろ!後はそこの彼が何とかする」

 先程まで敵対していた警護の刀使にも声を挙げて指示を下すミルヤ。流石にこの場の全員も反逆者がどうこう言っている場合では無いと理解してか素直に従う。

 皮肉な事にザゴス星人の登場により彼女達は呉越同舟相成ったのだ。

 

 

 

 

 

 そしてさらにもう一方、先に進んだ可奈美達を追う薫とエレンの前にもザゴス星人が立ちはだかっていた。

 「ええいっ!何なんだコイツらは!?」

 「謎のクリーチャー…以外に言い表せマセン、確かなのはこちらに友好的な存在では無いと言う事デス」

 既にS装備は時間超過で消滅した。現在の彼女達は自身の持つ精神力で写シを張っているのだ。

 「こんなとこで足止めなんて冗談じゃねぇ!」 「ねーっ!」

 「一体一体は大した脅威ではアリマセンが、数が厄介デース」

 前から後ろからわらわらと沸いてくるザゴス星人に薫とねねは辟易し叫ぶ、片や冷や汗を貼り付けながらも表面上はおどけて余裕を見せるエレンはしかしやはり数の暴力には如何ともし難く脳細胞をフル回転させながら打開策を考える。

 そんな孤軍奮闘している彼女の願いを聞き届けたのか冷気が暴風となって背後のザゴス星人を凍結させ砕いた。

 「何デス?!」

 「今の…前にも」

 「ねねっ!ねー!」

ザゴス星人達を砕いた吹雪にエレンは疑問符を浮かべ新たな敵かと緊張するが薫の方は以前にも石廊崎を目指すべく伊豆の山中で似た状況を思いだし、ねねが壁面の屋根を指差す。

 見ればそこに立つシルエットは月光を反射する水晶のような意匠を纏った白い装甲、ダグオンのウイングヨクが結晶のブーメランを手に立っていた。

 「やぁ、またお逢いしましたね」

そう言うや否や、屋根から飛び降り、エレン達の近くに降り立つ。

 「居るのはアレで判ってたが……まさかまた助けてくれるとはな」

 ダグファイヤーとライアンの一件を観ていた為、他のメンバーも居るだろうと予測していた薫が何時もの調子を取り戻してヨクへ馴れ馴れしく語る。

 「異星人は僕が相手をします。貴女達は急いでいるのでしょう?露払いしますよ」

 赤く光るバイザー越しの瞳は覗けない、しかしその視線は此方を思んばかってのモノとエレンは確かに理解した。

 「サンクス!ではもう暫くエスコートをお願い出来マスか?」

 茶目っ気を含んだ彼女の言葉に恐らくは笑っているのだろう、少しトーンが高くなった声が返ってくる。

 「喜んで。では少々激しいダンスになりますが、ちゃんと着いてきて下さいね!」

 その言葉と共にクリスタルブーメランを投擲し正面のザゴス星人を蹴散らすヨク、開けた道を3人は駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祭殿へと続く一本道、可奈美達に敗れ倒れていた真希は動くようになった身体を引き摺って下って行く。

 気付けば辺りは騒がしく、先程はチラリと鋼の巨躯が見えたりもしていた。

 「一体…何が起きている?」

 周囲の状況に困惑しながらも道を下ると道外れの大樹に2つの人影を見付ける。

 1人は青い装甲を纏った背中、そしてもう1人はその背中に隠れて良く見えないが薄紅の桜の様に鮮やかな髪。それは恐らく──

 「っ!結芽!!?」

 自分と同じ親衛隊の制服を身に纏った幼い少女、燕結芽。

 「貴っ様ぁぁあ!そこで何をしているっ!?」

 大声を張上げ痛む身体を推して近付く、相手はそんな真希の声に気付き振り返る。

 「貴様は……?!」

 「親衛隊、獅童真希か……」

ターボカイが抑揚を感じさせぬ声で真希の名を呟く。

 争乱混迷渦巻く最中、結芽を中心として邂逅した彼女を大切に思う人間、奇しくも決戦の地にてその人物が出会ってしまった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 鈴本葉菜です。まさか調査隊に合流して早々、宇宙人とまで戦うハメになるなんてね。世の中分からないなぁ。

 各所でダグオンが現れ善戦する中、反抗作戦の中核の2人は御当主様と激戦を繰り広げていた。

 一方で親衛隊の獅童さん、それを追ってきた此花さんがダグオンの一人と一触即発の空気に?!

 そして赤い巨人と黄金の巨人は……

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 激戦!それぞれの戦い!!

 それにしても強いなぁ………

 




 今更な事ですがアーマーシンこと鎧塚申一郎クンの喋り方の表記でカタカタが入るのはイントネーションが違う部分だからです。
 紹介でも書きましたが彼の実家はバリバリの厳しい京都の家なので家族は普通に京言葉の関西人なので、女の子にモテたい彼は出来る限りの標準語で喋る努力を独学で頑張った結果、少しイントネーションがおかしくなったのでした。
 ではまた次回


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幕間 横須賀乱戦。伊南栖羽頑張る!

 
 こんばんわー!
 明日、はたらく細胞と荒野のコトブキ飛行隊を劇場に観に行くので、その間の多少の手間で書き上げた幕間です。

 うん。て言うか伊波ちゃんこと伊波栖羽、もしくはスーさんなんですがね、きっと彼女、あの夜は横須賀の方に居たんじゃないかなぁと思いましてね?
 だってほら、あんな性格だし、写シの回数は異常だけど基本フツーの腕前(本人談)じゃないですか、ならきっと警護じゃなくて包囲の方かなぁって…ね?
 てな訳で書きました。
 基本、私は伊波栖羽の事は伊波ちゃん呼びですが敢えて名前で呼ぶならスーさんです。スーちゃんではなくスーさんです。(謎の拘り)



 横須賀港、舞草に提供された米潜水艦、強襲コンテナを打ち出し、語るべき事を語った事により機動隊に補導される折神朱音、以下リチャード・フリードマン、恩田累。

 3人は手錠を掛けられ無抵抗で連れられていく、周囲を囲むのは警察と刀使の特別祭祀機動隊、高津雪那の命により主に鎌府の刀使が中心となり警戒を続ける。

 その中には嘗て沖縄で起きたS装備──より正確には珠鋼搭載型試験用S装備の騒乱に関わった刀使、伊波栖羽も居た。

 

 

 

 ──うぅ…なんだか嫌な予感がひしひしするよぉ…。早く終わってくれないかなぁ……私は普通の女子高生活を送りたいのになぁ……やだなぁ、どうしてこんなお仕事しなきゃなんないんだろう

 

 と頭の中でぐるぐるとネガティブな事を思っては、しかし口にする訳にもいかずただ緊張に支配された様相で事の経緯を見守っている。

 と、其処へ海上に何かが落下したような大きな音が鳴り水飛沫を飛ばし荒波を起てる。

 「な、何?!何んですか?!」

港湾近海で起きた突然の異変に栖羽だけでなく周りの刀使達や警官達も騒然とする。

 朱音の手引きで集められた報道陣など次々起こる事に大騒ぎしている程だ。

 果たして、幾度かの大きな荒波の後、水面が落ち着きを取り戻した時にそれは起きた。

 

「ひゃぁぁぁあああああ!!化物ぉぉおおおお!」

 

 突如として挙がる悲鳴。

 皆が其処へ視線を向ければ報道陣の女性の1人に荒魂とは違う、蟻の姿形をした人間大の生物が今にも襲い掛からんとしているではないか。

 「下がって!」

 そこに1人の機動隊員が手に持ったポリカーボネート製の盾でその化物へ体当たりを敢行する。

 そうして、化物を抑えつつ女性を逃がす時間を稼ぐ、彼女が安全圏まで退避したのを見届ければ、彼は有らん限りの力で蟻の化物を押し返そうと力を込める。しかし多少前後するものの押しきれない。

 「くっ……それなら…!」

手振りで待機していた他の隊員に指示を伝えると、その意図を理解した隊員が小銃を化物の躰へ向ける。

 ダダンッ!と短い発砲音の後、盾に掛かっていた重量が失くなる。

 暫しの沈黙、蟻の化物は立ったまま動かない。

 「やった……のか…?」

 盾で化物を抑え込んでいた隊員…神奈川県警機動隊の小隊長の1人、得賀健介は思わずそう口にする。

 だが、その期待を裏切るかのように化物は再び動き出した。

 

  「ギィィィィィィイイイイイイヒィャァガギァァアアアアアアア!!」

 

 その体躯の何処から出るのか不快感を感じさせる大きな叫び声を挙げる化物。

 その声が呼び水となったのか港の水面から次々現れる目の前の個体と同じ蟻の化物達。

 その光景に怯えつつもカメラを回していたりリポートを続けていたメディアの報道陣が恐怖で我先に慌てて逃げ始める。

 封鎖を行う制服警官の制止も虚しく混乱を極める横須賀港。

 特祭隊も多少の混乱の中何とか対応しようと動き出す。

 (ひっ?!何なんですかアレ!?荒魂じゃないよね?!機動隊の人の銃も効いてないし、恐いよぉぉぉ)

 その混沌とした混乱の中で伊波栖羽はへっぴり腰で立ち竦んでいた。

 そんな彼女の心中等関係無い蟻の化物──ザゴス星人は仲間と共に暴れ回る。

「くっ?!撃て!撃て!」

 機動隊の一部が隊列を組み、上陸したザゴス星人達に発砲するも精々歩みが止まるだけで大した効果は無い。

 鎌府の刀使達も対応に回っているが何分未知の相手故攻めあぐね、受け身にならざる負えない。

 「我々の攻撃では拉致が明かないか……。各員!展開している刀使と連係しながら対処せよ!我々が足を止め彼女達にトドメを任せるんだ!」

 健介が膠着しかける状況を打破する為、新たに小隊へ指示を下す。

 それに倣って他の機動隊も刀使を中心としたフォーメーションに切り替わる。

 現在展開している刀使と機動隊を併せて果たして100人に届くかと言う程度の数。

 対して横須賀港に現れたザゴス星人は大気圏の熱で死亡した外壁寄りの数十匹を除けば、900強。しかも銃は一切効果が無いと来れば苦しい戦いだろう。

 人間側が孤立すれば直ちに殺られてしまう。

 未だ報道陣の混乱冷めやらぬ中でマトモに動ける警官は少なく、此方が数十人で一匹に対処せねばならぬ状況に対しザゴス星人側は刀使の御刀にさえ注意すれば良いのだから、これが如何に絶望的な事かお分かりだろうか?

 そんなカオスを栖羽は涙目で出来る限り逃げながら、なるべく強そうな班に守って貰おうと遁走する。が、どういう訳か数匹のザゴス星人が追ってくるではないか!

 「いゃぁぁあああああ!!?何でついてくるんですかぁぁあああ!??!」

 彼女は涙と悲鳴を漏らしながら必死に逃げる。

 その間に手隙になった人員が他の援護に回れるのだから全体的には助かるのだが、逃げる方は堪ったモノではない。

 「誰かぁぁああ!助けてくださぁぁぁぁい!!誰かぁあ!北斗さぁぁぁああん!!」

 遂には此処には居ない、嘗て共に任務に就いた平城の刀使に助けを乞う始末。

 頑張れ伊波栖羽!君が逃げ切れば多少は他に余裕が出来る。

 そう遠く無い内に逆転の1手も来る!だから頑張れ!頑張るのだ伊波栖羽!

 

 無理ですぅぅぅうううう!!

  

 




 頑張れ伊波ちゃん!リュウが助けに現れるまで逃げ切るんだ!!
 
 序でにとじともからサポートメンバーの得賀健介第二小隊長も登場。
 ああいう裏方って良いですよね!ま、本人達は刀使以上に命懸けになる事もありますけど…。
 こういう話の機会でも無ければ出せない人なんで……おめでとうございます隊長!伊波ちゃん同様頑張って生き残って下さいね!

 そう言えばDARPAのリディアさんも重症を負ったとは言え生きてるんですよねぇ…作中の時間軸だと何してるか不明ですけど……これは使えるかなぁ………(頭の中の異星人が悪巧みする音)
 


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第五十八話 激戦!それぞれの戦い!!


 こんばんおはようございます。
 胎動編も残す所後僅かとなりました。
 なるべく早めに書き上げたい。
 所で刀使ノ巫女OVAの新キャラ、ちゃんまきが声を宛てる長船の刀使、御刀が水口レイピアって……マジですか?え?レイピア?あれも珠鋼製なの?マジで!?
 


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 突如現れた異星人ザゴス星人の存在により戦場はより一層混迷を極める。

 苦境に立たされる刀使達の前にシン、ヨク、リュウが其々の戦場に助太刀に現れ状況を打開せんと奮戦する。

 そしてカイとエンは──

 

 と言うかだな……アルファめいい加減帰って来い!

 


 

 ━━エデン監獄・中央円卓の間

 

 「はっ?!ウッソやろ?なんぼ未開の惑星でも素通り降下とか、ありえへんわぁー」

 7隻の即席輸送突入艇の出撃を見届け地球の状況を知る為、円卓の間に戻ったマッニー。

 そこで妖精から先生と呼ばれる女医の異星人が用意した映写装置にてザゴス星人達がどの様に地球へ降下したか知った彼は地球の警戒網の弛さに呆れ思わず声を挙げてしまう。

 「ソレダケチュウカンコウエキヤコウリュウ、センソウナドガナカッタノダロウサ」

 道化師が些か馬鹿にする様に笑う。

 「侵略容易!一気呵成!」

甲冑がこれならば我等も攻め入るべきと声高々に意見する。

 「ふん、どうせ貴様のそれは体の良い遊戯感覚から来るモノだろうに…」

 メレトが甲冑の発言を聞いてつまらなそうに呟く。

 「妾的にはもう少し楽しみたいからぁ、今のまま、それぞれ好き勝手に動いても良いかなぁって思うわぁ~」

 「どうにせよ我々が動くのはダグオンと刀使達がどの程度やれるか知ってからでも遅くはないだろう」

 「わくわく!わくわく!」

鬼が総括し、妖精がこれから起こりうる出来事に心を弾ませている。

 地球に住まう人間達の恐慌や奮闘も犯罪者たる彼等からしてみれば何処までも退屈しのぎでしかないのである。

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Aチーム

 

 「オーバーヘッド手裏剣!!」

 空中に舞う紫白の影が足元に装着された手裏剣をサッカーのオーバーヘッドキックの要領で蹴り投げる。

 そこから身を捻り両腕のクナイでザゴス星人を斬り裂く。

 そして近くに倒れた刀使を回収、美炎達の下へと退く。

 「……これで全員だな…」

倒れた警護の刀使を全て回収した事を確認したシャドーリュウ、油断無く敵を見据えながら共に戦う美炎達に伝える。

 「……手間だろうが彼女達を起こせ。このまま寝ていて足手まといになるよりは…戦力として役立つだろう?」

 「確かにそうかもしれませんけど……」

 智恵がリュウの問に歯切れが悪そうする。それも仕方ないだろう、元々は反抗作戦で強襲を掛ける可奈美達の手間を減らす為、囮となって彼女達と刃を交えたのだ。

 起こしたとして、果たして素直に指示を聞いてくれるか否か……不安に思うのだろう。

 「……流石にこの状況を見て、人同士で争う程……愚かでは無いだろう。……それでもと言うのであれば俺が微力を尽くそう…」

 シャドーリュウにここまで言われては流石に嫌とは言えない。

 ちらりと美炎達に視線を向ければお任せしますと言う態度の葉菜、良いんじゃねぇのと鼻を鳴らす呼吹、ブンブンと首を縦に振る美炎と一応は問題が無いようだ。

 「……大丈夫なようだな」

 そうして、リュウと呼吹、美炎がザゴス星人を相手取る中、智恵と葉菜で気絶した刀使達を起こす。

 目を醒ました彼女達は最初、憤慨し警戒を露にしたが、リュウとザゴス星人を見た事により状況を遅まきながら把握し共同戦線を張る事に成功する。

 とは言えだ、リュウが一騎当千の活躍をしたとしても相手の数は多く、またAチーム含む警護の刀使達が幾らか高い実力の持ち主でも最低限3人一組で当たらなければ異星人の相手は厳しい。

 ザゴス星人は単体で見れば比較的に弱い部類の異星人である。しかし、それは広い宇宙全体の視点で見た時の事だ。

 宇宙開発が未熟で未発達な地球人類ではまだまだ手こずる存在には変わり無い、ましてや刀使達にとっては完全に未知の敵なのだ。

 御刀の真価は荒魂相手だからこそ、それ以外では精々切れ味が良く折れない事くらい、写シ、迅移、金剛身、八幡力も一般人からすれば脅威だが、異星人からすれば最低限の装備でやっと同じ土俵に立っただけと言うモノ。

 相手が数で圧すザゴス星人だからこそ最低人数でも勝負になるのはある種の皮肉だろうか。

 「ちぃっ!多すぎだろコイツら!!マジでゴキブリ並みじゃねぇか!!」

 呼吹が跳び回りながら愚痴を溢すのも仕方あるまい。何せ、1匹を2人が押し留め、そこを背中から残りの1人が攻撃して弱った所で3人で確実に止めを差して居るのだから駆除に時間が掛かる掛かる。

 大半はリュウが片付けてくれるとは言え、ダメージの浅いモノはゾンビの様に起き上がるので鬱陶しい限りだ。

 だが、其処へ月光を乱反射して飛び交う飛刃が現れ起き上がったザゴス星人を斬り裂く。

 「……ヨクか…!?」

 「どうやら無事のようですね」

戻って来たクリスタルブーメランを手に手近なザゴス星人へ斬り掛かる。

 彼はエレンと薫の道を切り拓いた後、彼女達を追うのを諦め逃げたザゴス星人の群れの後を追いここまで来たのだ。

 「恐らくはシンの方にも何割か向かったはずです。リュウ、ここは僕が代わりに引き受けますので君は横須賀港の方に」

 「……承知した…。だがその前に奴等を一気に片付けるぞ……!」

 「?…なるほど、了解です。何時でもどうぞ」

リュウはヨクと何かを示し合わせると背中併せとなる。

 「……皆、俺たちから出来る限り距離を取れ……!行くぞ…!」

 「はい!」

 刀使達へ警告を飛ばしヨクと共に回転し始める。

2人の回転が小規模な竜巻を生み出し更にヨクの胸と背中の翼のファンが回転する。

 

 「大回転!ハリケーン!ダブルアタァァァック!!」

 

 2人のダグオンの合体技が炸裂する。彼等へ群がろうとしていたザゴス星人達が竜巻に吸い寄せられ凍結され乱れ斬りにされる。

 

 「すごい……あんな事まで出来るなんて……!」

 「すごいよちぃ姉ぇ!目茶苦茶格好いい!!」

 「これ……アタシらいるか?」

 「まぁまぁ、ぼく達はぼく達でやれる事をコツコツとやりましょう」

 その光景を見ながら彼女達は目の前のザゴス星人へ止めを差した。

 

 ヨクとの合体技により大半を倒したリュウはその回転の勢いのまま、跳躍し空中へガードホークのカードを投擲、ガードホークを召喚し、彼の背中に乗って横須賀港へと向かって行った。

 残ったヨクは刀使達へ向き直り言葉を紡ぐ。

 「さぁ、もう一息です!頑張りましょう皆さん!」

「「「「「「お、お…おー……!」」」」」」

 取り敢えずそう応えるしか無い警護の刀使達であった。

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Bチーム

 

 「なるべく荒魂と異星人を交互に集まる様に中央へ追い込め!」

 ミルヤが全体の指揮を取りながら目の前の荒魂を斬り裂く。

 警護役の刀使達は釈然としない思いがあるものの、緊急時の為不満は胸の奥に仕舞い彼女の指示通りにザゴス星人と荒魂を追い詰める。

 荒魂とザゴス星人を交互に集める事により彼等は互いに潰し合い此方に対しての対応が遅れるからだ。

 さてそこで敢えて一部に包囲の穴を開ければ、自然とそこから逃げ出そうとする。

 だがその行く先には彼等の終わりが待っているのだ。

 

 「っし、イイ具合じゃネェノ。さぁ!喰らいやがれ!ブレストモォォタァァアアキャノンッ!」

 アーマーシンの胸部の四連機銃が火を吹く、ガトリングの様に回転するブレストモーターキャノンから放たれる弾丸の威力にザゴス星人も荒魂も等しく蜂の巣となり倒れる。

 「すごい……!」

 「はぇ~!」

 「成る程、あれ程の火力ならば、一網打尽も難しくはありませんね」

 シンの火器の威力に驚愕する清香と感心する由依、そして彼の武装を冷静に分析するミルヤ。

 他の刀使達もおおよそその3パターンの反応に別れる。

 「さぁて……残り少なくなってきた!カワイコチャン達、もうちょいの辛抱だ。援護ヨロシクゥ!」

 言うやいなや、飛び出し、残ったザゴス星人の前へボクシングのステップで肉薄するシン、瞠目するザゴス星人へ強烈な右ストレートを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 折神家最奥の祭殿、そこでは衛藤可奈美と十条姫和が折神紫…否、タギツヒメ相手に奮闘を演じている。

 肉体が紫である為か写シを使用するタギツヒメに対し

S装備によって引き上げられた八幡力の打ち込みで攻める2人、しかしタギツヒメはそれを御刀を持った片手で難なく止めて見せる。

 「すごい……」

 「ストームアーマーの打ち込みを片手で!」

 曲がりなりにも大英雄の体と大荒魂の力という訳なのだろう、相対する2人も緊張が増す。

 一方で2人が纏うS装備の性能を実感したタギツヒメは愉しそうに嗤う。

 「ふん…我が尖兵の鎧たるその装備、荒魂を宿した親衛隊と渡り合えたのならまずまずと言った所か。愉しいな……」

 そのタギツヒメの言葉に姫和は小烏丸を構える手により一層力を込めタギツヒメへ吼える。

 「母のやり残した務め…この私が果たす!」

ヘッドギアのディスプレイに表示される残りの稼働時間、それに気を配りながら姫和はタギツヒメへ疑問をぶつける。

 「最後に聞く。貴様は折神紫なのか?それともタギツヒメなのか?!」

 「フッ…話している余裕があるのか?」

 タギツヒメが嘲る様に告げる。確かにこのまま時間が経てば不利になるのは反逆者である自分達の方だ。

 質問の答えをはぐらかされた気がしないでもないが、世界の危機を前にその答えは些事と言えよう。

 「くっ…全力で畳み掛けるぞ可奈美!」

 「うん!」

 姫和の意思に強く応える可奈美、二羽の鳥が果敢に挑む。

 端から見れば完全装備を纏いたった1人を相手に2人がかりで戦う行為は、とても褒められたモノでは無いだろう。しかし、相手は二天一流を極めし最強の刀使の肉体を持つ大荒魂だ。

 ましてや命懸け、世界の命運まで懸かっているとなれば卑怯だ等とはとても言えない。

 寧ろS装備があって、やっとマトモに打ち合えているのではと思わせる攻防だ。

 「…っ、これが折神紫の二天一流……」

 間近で見る二天一流の凄まじさに可奈美が息を呑む。

 「躊躇っている時間は無い!可奈美!次で決める!」

 そう宣言するや、タギツヒメへと突撃する姫和。至近で刃をかち合わせ、二振りの勢いで一度、距離を取らされれば、そこをすかさず突きの構えで肉薄しようとする姫和、しかしタギツヒメは難なくかわし彼女の胸を貫く。

 それにより纏った写シは全て剥がれ、膝の力が抜け倒れそうになる。

 「姫和ちゃん!」

 そこへ可奈美がフォローに入り、タギツヒメからの追撃を防ぎ、今一度間合いを開ける。

 「なぜ…奴は今の一撃を躱せた……私達の剣は完全に読まれている……」

 可奈美の肩を借りながら驚愕と疑問の入り混じった言葉を発する姫和、それに対してタギツヒメはその瞳をノロの輝きを宿しその長い髪からも異形の瞳を覗かせ、姫和の言葉を肯定する。

 「ああ、見えているのだ私には。全てが」

 紫の姿をした大荒魂(タギツヒメ)、は事も無しにそう言ってのけた。

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・祭殿へと続くとある山道

 

 夜風が吹く山道に立つのは2つの影。

 片やダグオンのターボカイ。片や折神紫親衛隊第一席獅童真希。

 2人に共通する繋がりがあるとすればそれは、カイの足下、大樹に背を預けピクリとも動かない燕結芽の存在であろう。

 彼と彼女の間に漂う空気は一触即発のモノ……いや、どちらかと言えば彼女、獅童真希がカイに対して一方的に醸し出していると言うべきか。

 「何をしている…か、だったか……」

真希の怒気を孕む声に、さてどう答えた物かと僅かに思案するカイ。

 嘘偽り無い真実としては、妹を不治の病から救うため、地球外の技術で投薬し仮死状態とした……というモノだが、それを馬鹿正直に伝える義理は彼には無い。

 彼女達の思惑や信念、理由はどうあれ、荒魂を体に受け入れ果ては山狩りの際の態度を考慮するならば寧ろ黙って結芽を連れ此処から去るのが一番の選択肢だろう。

 等と考えている内に、真希が現れた方向から今度は自分も良く見知ったら相手…親衛隊第二席此花寿々花が現れた。

 「真希さん!」

 真希の名を呼び、しかし彼女と対面しているターボカイに気が付いたのか寿々花の顔に警戒の色が灯る。

 「………何もしてはいない。少なくとも私が彼女を傷付ける事は無い」

 悩んだ末に出した答えは何も手を出していないと言うモノ。

 実際には結芽を病から救うため、オーバーテクノロジーによる投薬をしているのだが、それについては触れないでおく。

 「心配だと言うなら、確かめてみると良い。お前達の罪が其処にある」

 「ボク達の罪だと……?」

 寿々花を一度視線に納めた後、真希へ道を開けるカイ。

 真希は警戒しながらもフラフラと結芽に近づき彼女の前で膝を折り、そして彼女の胸の鼓動が脈を打っていない事に気付く。

 「結芽………」

 それで理解してしまった。いや、真希自身認めたく無い気持ちもあるのだろう、しかし、同じ様にノロを受け入れた者として解るのだ。

 結芽の瞳には涙を拭った跡がある。恐らく拭ったのは今自分達の隣に立つ人物。

 「これが結果だ。人の身でノロを…荒魂を受け入れた者が辿る末路がこんなモノならば、私はお前達を認める訳にはいかない」

 カイが静かに、しかしどこか詰る様な声で告げる。

 「ボクは……」

 それ以上言葉を紡ぐ事が出来ない真希を見て寿々花が口を挟む。

 「お行きなさい真希さん。紫様の元へ…残念ながら(わたくし)にはもう戦う力はありません。此処で結芽の遺体の処置を行います」

 「処置…?」

 「そのままでは結芽は荒魂になってしまいます」

実際には投薬されたナノマシンセルにより、既にノロは消去され、病の進行を止める為仮死状態となっている訳だが、彼女達はそれを知らない。そして寿々花の言葉に、結芽の死に動揺する真希は其処に希望を見出だした、()()()()()()()()()

 「そうか…結芽はもう一度…」

敗北と親しい者の死で精神的に参っていた真希はついぽろっと溢してしまった。それが彼の逆鱗に触れた。

 「真希さ「貴様っ!何処まで愚弄する気だ!!」っ……?!」

 寿々花の声を遮って激昂し真希の胸ぐらを掴むカイ、アイバイザーの奥に一瞬だけ見えた瞳は真希の心を恐怖に震わせた。

 激昂も束の間、僅かな息を吐く音と共に真希を離すカイ。

 「良く解った。やはり彼女は貴様達に任せては置けない。彼女は此方で引き取る、文句は聞かん」

 そんなカイの発言にしかし寿々花は食って掛かる。

 「それを認める訳にはいきませんわ!彼女は此方で処置します、少なくとも(わたくし)にはそうしなければならない義理があるのです。彼の為にも……!」

  最後の方の科白は歯噛みしながら絞り出す様に紡がれた。

 その顔を見てカイは察する、彼女は自分(燕戒将)への義理を通す気なのだろうと、しかし今此処に居る自分は燕戒将であると同時にダグオンのターボカイでもある、おいそれと正体は告げられない。

 このままでは埒が明かない、ならば……とカイは行動に出る。

 「来い…ファイヤーレスキュー……!」

 予め受諾を取り、借り受けたライドビークルの名を告げる。

 すると森の中から器用に木々を避け飛び出す、白い車体。トヨタ・ハイメディックをベースとした救急車型のビークルが彼と彼女達の前に現れる。

 「なっ…?!」

 「一体…何処から!?いえ、それよりも何を……?」

驚き固まる真希と寿々花を尻目にカイは結芽を抱き上げると、自動的に開いたファイヤーレスキューの後部扉から見える治療スペースにあるメディカルポッドの寝台を目指す。

 「っ!お待ちなさい!」

 「此花寿々花、義理があると言うのならば見逃せ、先にも言ったが私はこの娘を悪い様にはしない。少なくとも化物何ぞには決して堕とさない!」

 カイから察せられる気迫に言葉に詰まってしまった寿々花、結芽はファイヤーレスキュー内のメディカルポッドへ優しく置かれる。

 「頼んだぞ……」

誰に言うと出もなく、ただ自然にファイヤーレスキューに対してそんな言葉を呟くカイ。

 その意思を解したのか不明だが白い車体はカイが外へ出た事を確認した後、後部扉を閉じ再び何処かへと消えて行った。

 ファイヤーレスキューを見送ったカイが真希へ向き直り、言葉を発す。

 「獅童真希、折神紫の元へ行くと言うならば、しかと覚悟しろ。己が一体どういう選択を取ったのかと言う事を」

 そのまま真希達の方へ駆けるカイ、その様に危機を感じ構えようとしてしかし、寿々花は最早真面に戦う力は無く、真希は足がすくんでいる。

 目の前に脅威が迫る……かに思われた。

 「えっ……?」

 「(わたくし)達が狙いではない?!」

2人を素通りするカイ、一瞬呆ける2人。しかし次の瞬間、後ろへ振り向けばそこにあった光景は蒼い閃光が蟲の異形を殴り飛ばしているというもの。

 「私は貴様の選択を認めはしない。だが、だからと言って殺したい程憎い訳では無い、少なくとも、異星人如きに無防備になった貴様等を殺らせる訳にはいかない!」

 例えどれ程頭に来ようと、人間を……結芽と共に過ごしていた相手をこんな所で死なせる訳にはいかない、彼女達は生きて己の罪をより一層自覚し償って貰わなければならないのだから。

 そして何よりも寿々花が見せたあの表情……彼女が自分へ少なからず義理立てをした以上は自分もその義理を果たさねばならない。

 「行け!獅童真希!此花寿々花は私が守り通す!貴様は……お前は自らの目で真実を見て来い!!」

 それは彼なりの断罪、そして激励。寿々花もカイが敵対する意思が無いと確信を得たのか真希へ再び告げる。

 「お行きなさい!彼の言う言葉が真実なのか、その目で確かめて来て下さいませ!親衛隊第一席!」

 敢えて突き放す様な厳しさを籠めた言葉で彼女の背中を押す寿々花。

 戸惑い、悩んだ末、真希は上へと登って行く。

 「行きましたわね………。さて、(わたくし)も休んでばかりはいられませんわ…!」

 九字兼定を杖代わりに立ち、ザゴス星人へ立ち向かおうとする寿々花。

 「無理はするな、まだ休んでいろ。奴等には指一本として貴様に触れさせはしない」

 「お言葉は有難い限りですけど…守られてばかりと言う訳にはいきませんのよ?」

 「ならばせめて真面に立ち回れるぐらいには回復するのだな」

 「………仕方ありませんわね…。ですが充分に休んだら、助太刀させて頂きますわ」

 「……好きにすると良い」

 図らずも、カイの正体を知らぬまま守られ、共闘の運びとなった寿々花、彼女は彼との会話に何処か居心地の良さを感じていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・祭殿近くの雑木林

 

 そこでは激闘の末、倒れ臥したライアンを僅かに警戒を込めて監視しながら自らも休息を採るダグファイヤーが居た。

 『みんな大丈夫なのか……?』

 未だダメージ抜けきらぬ状態のまま、各所で起きている戦いに思いを馳せるダグファイヤー、すると隣から呻き声と共に動き上がる気配を感じる。

 『っ……ぐ…ここ…は……?』

 気配の主はライアン。どうやら目が醒めたようだ。

 『よう、思いの外早いお目覚めだな』

 『貴様は…!そうか…私は敗けたのだったな……』

 ゆっくりと身体を起こしながら目覚める前の記憶を思い出すライアン、その声は先程までの復讐によって暴走していたモノとは違い消沈しているようだ。

 『なぁライアン……あー、なんだ、ええっと……だー!面倒くせー!融合解除!』

 掛ける言葉に迷い、融合合体したまま喋るのが億劫になったのかダグファイヤーは融合を解除しファイヤーエンとファイヤーストラトスに戻る。

 「お前、覚えてっか?さっきの勝負、勝った方の言う事を聞くってヤツだ」

 『無論、覚えている。約束を違える程、耄碌したつもりは無い』

 「なら良いや。取り敢えずだ、お前今回はこれ以上暴れんな、そんで手ぇ貸せ。この後、俺はこの先の祭殿に行く。あいつらがどうなったのか見届けなきゃならねぇしもしかしたら、俺がタギツヒメを倒す必要があるかも知れねぇ、お前と戦って疲れてんだ。そん時、一人じゃ流石にヤバい、だからお前の力を貸してくれ、その後は…好きにすりゃいい。ただし!人様に迷惑はかけんなよ!!」

 少々矢継ぎ早に物を言うエン、そんな彼にライアンは黙って目を閉じる。

 「聞いてんのか?」

 『聴こえている。手を貸せと来たか…しかしタギツヒメを前にすればもしかすると私は再び我を失うかも知れんぞ?それでも良いのか?』

 「そん時は…まぁ、何とかするさ。相手が荒魂な以上、お前の復讐心その物を否定出来る程、俺は偉くも何ともねぇ、けど…やれる事は出来るならやらなきゃな!」

 『フン…変わった男だな貴様は…。良かろう、好きにしろ、私は敗者だ。勝者には従うのが道理と言うもの』

 エンとライアンの間で話が纏まる。その時、エンの後ろの林から複数の物音と気配がたった。

 「っと…、どうやら先に進む前に片付けなきゃならねぇ連中が来た。お前はそこで見てな!ちゃちゃっと片してやるぜ!」

 『否、私も戦おう。貴様が組むに値するか確かめてやる』

 現れたザゴス星人を前に1人戦おうとするエンにライアンが自分も戦うと宣言し、エンに手を貸す価値があるか見定めると言う。

 「確かめる?どうするつもりだ?」

 『こうするのだ…!』

エンの疑問にライアンは立ち上がると一度空中に飛び、剣へと変形する。そしてライオソードとなった彼は、どういう原理か、エンが持てる大きさまで縮むと彼の手に収まった。

 『さぁ私を使って見せろ!但し勘違いするなよ、私は貴様を使い手と認めた訳では無いからな!』

 「へっ!オーケー、見せてやるよ。ダグオンの戦いってヤツをなっ!!」

 ライオソードを両手に構え、ザゴス星人の群れへ突撃するファイヤーエン。

 

 戦いの終わりは近い……。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 ワシが田中撃鉄じゃい!

 おうおうおう!皆一応に戦っておるわ!ワシも出来れば加勢したいが……生身ではな…。

 それはそれとして遂に始まった反逆者のお嬢ちゃん達と大荒魂の戦い!

 終始大荒魂優勢じゃが…そこに現れるはお嬢ちゃんの仲間達!?って何ィ?!腕が増えたぁっ!!?

 ど、ど、どうなるんじゃい?!!

 

 次回!"刀使ノ指令ダグオン"!

 最終決戦!!逆転の一手。

 

 ぬぉぉおおお!!ワシはいつ変身出来るんじゃい!!

 




 はい、ちょっと長くなりましたが……寧ろ他の作者様方の作品と比べると短いのかなぁ?
 取り敢えず、今回出たシャドーリュウの技。「オーバーヘッド手裏剣」ですが、アレ実はダグオン本編でもやってるんですよね、リュウメイン回の時、憑依宇宙人が敵の回だったかな確か……。
 他にもそういう技が無いかちょくちょく漫喫で確かめて見ます。
 ではまた次回


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第五十九話 最終決戦!!逆転の一手。


 こんばんは。
 これで胎動編は残すところ後一話、その後は新章で胎動編のエピローグと融合合体までのプロローグを併せて、プロットを組み上げて…といった感じで頑張ります!
 いやぁ、多少修正や変更もありましたが、何とか予定話数で胎動編を終わらせられそうです。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 投げられた賽の1つ目の行方が決まる。

 過去からの因縁が新たなる扉を開く時は近い。

 彼方より来る災禍はその牙を磨き始めた。

 であれば、彼等は希望足り得るのか……。

 

むふ~っ!!

 

 最後のそれが無ければ完璧だったんだがなぁ……。

 


 

 ━━折神家最奥の祭殿・祷りの間

 

 衛藤可奈美、十条姫和、2人の前に対峙するは折神紫の姿形をした大荒魂タギツヒメ。

 2人の猛攻を容易くいなし、受け止め、躱す。死角からの攻撃も必殺の間合いからの一撃も、どういったトリックか難なく対応して見せた。

 その種明かしを彼女はただ単純に"全て見えていた"と言ってのけた。

 「我が眼は全てを見通す。お前達の身体能力、秘めた力、思考…あらゆる可能性を見通し、そこから最良の一手を選択する」

 彼女の口から語られる姫和の必殺の刃をかわせた理由、そして紫の両の瞳が妖しく橙色に発光する。

 「先程の質問に答えよう、我はタギツヒメ」

 先程、姫和が問うた瞬間に返って来なかった答えを彼女は今、この時に示した。

 

 2人の少女はそれでも立ち向かう。可奈美が正面から二刀に向かい、姫和がタギツヒメの後方へ回り込む様に

切り込む。

 だがいくら知恵を絞ろうと賢しく立ち回ろうと、全てを見通すと宣った彼女は2人の刃を容易に防ぎ、ともすれば簡単に少女達に自らの一撃を見舞う。

 その瞬間、2人が纏うS装備に稼働時間の限界が来たのか粒子となり消滅する。

 それにより一旦、距離を取り間合いを空ける可奈美と姫和。その表情は芳しく無い。

 「本当に見えているのか?」

 「そうとしか思えない…」

これまでの攻撃を全て防がれ、流石に動揺が見てとれる。そこで姫和はあの時──御前試合の際、折神紫が自分の"一つの太刀"を防いだ時の事を思い起こす。

 「そうか…あの時私の一つの太刀を受けられたのは……」

 

 「そう。全て見えていた。殺す気ならば容易に出来た、だが敢えて解き放った。結果全ての糸をお前が手繰り寄せ、舞草共は壊滅に到った」

 タギツヒメの口からあの時何故姫和を見逃したのか、その理由が語られる。それらは全て今日に至るまでの布石、そしてタギツヒメは2人を見下す様に告げる。

 「そして今、殺される為に舞い戻って来た」

 その言い様から自分がダシに使われた事を理解し、姫和は怒りに逆上せる。

 「貴様っ!」

 その感情のまま猪武者もかくやとばかりに突撃する姫和。しかしタギツヒメただ一言……

 「見えている」

 そして姫和を斬り伏せんと御刀を振り下ろす、姫和はかわせない。だが横合いから可奈美がその一撃の間に入り受け、反らす。

 当然反らしきる事は出来ず写シが剥がれるが、その勢いのまま後ろに下がり何かを掴む。

 (今のは見えていなかった)

 再び写シを張り直し浮かんだ疑惑を確信へと変える為、タギツヒメへと挑む。

 刃を振るう。防がれる。

 (駄目、こうじゃない)

頭の中で思い描く動きを反芻しタギツヒメの刃を躱す。

 正眼の構えのまま、至近で動きを止める可奈美、タギツヒメは御刀の切っ先を構えたまま、しかし攻撃する素振りを見せない。

 「…(何故攻撃しない?)」

 その挙動に不審を抱く姫和、対して可奈美は答えを導き出した。

 (見え過ぎてるんだ。打ち込めばその先はある程度絞り込む事が出来る。でもこの状態だと可能性が見え過ぎて打つ手が選べないんだ)

 可奈美が達した結論、それは未来を見通すが故の袋小路。

 タギツヒメは此方から攻撃しない限り、下手な手は取れないであれば……

 可奈美を捨て置き姫和はタギツヒメへ斬り掛かる。しかしタギツヒメは振り向く事無く彼女の一撃を左で止め、残る右で可奈美に斬り掛かるも、可奈美は僅かに後退しただけで躱し逆に大きく隙となったタギツヒメの右肩へ千鳥を突き刺す。

 ゆっくりと後退し貫かれた己の右肩を冷淡に眺めるタギツヒメ、

 「成る程…この器ではこれ以上の演算は難しいようだ」

右手に持った御刀を地面へ突き刺し、左手の御刀でその腕を自ら切り落とす。

 写シが切れ消える右腕、残る肉体側に再び写シの張られた右腕が生える。

 そうして改めて目の前で足掻く2人を見据え何事かを呟く。

 「千鳥と小烏丸。藤原美奈都と柊篝の二人と同じく現世に在らざるモノ……この我と同質の存在に」

 無敵であった器に一撃を貰い、その未来で見る事が叶わなかった訳を思案する。

 「何故その可能性が見えなかった……そうか…紫」

思い至った答えにタギツヒメは急にその右手で瞳の片側を抑え叫ぶ。

 「討て!その御刀で私を討て!!

 それはタギツヒメでは無く折神紫の声。その瞬間、彼女の瞳は確かに確固たる人の意思が宿ったモノとなる。

 だがそれも束の間、紫の髪がたなびき空へ登る様に逆立つ。苦しむ紫を笑う様に開かれる目、眼、瞳。

 紫の抵抗虚しく怪物はその力を現世へと現出させる。

 そして世界に再び異変が起きる。

 「あの時と同じ!」

 可奈美の、そして姫和の体が前後にも現れる。これは潜水艦で起きた際と全く同じ現象。

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Aチーム

 

 「これは…?!」

 ヨクが周りで起きている現象に眼を見張る。

 「ちぃ姉ぇ!これって…!!」

 「ええ、あの時と同じ……」

 「って事は、また何かあったてのか!?」

 「あんまり喜ばしい感じじゃないね」

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Bチーム

 

 「ォオ?!カワイコチャンが分身してるぅ?!」

 謎の現象におかしな事を口走るシン。

 「またこの現象……一体今、何が起きているのでしょう………」

 「あわわ……また?!」

 「ひゃあ~?!またまたあたしがあたしを見つめてます!?」

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・祭殿へ続く山道

 

 「…!この現象、大荒魂に何かが起きたのか?」

 カイがタギツヒメの胎動に危機感を抱く。

 「……真希さん…………」

 寿々花はカイに庇われながら真希へ想いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

 ━━横須賀港

 

 ザゴス星人との戦いの最中、再び起こった現象に鎌府の刀使達が狼狽える。

 朱音と累もまたこの現象に危機感を募らせる。

 

 「もぉぉおお!なんなんですかぁぁああ?!」

 栖羽が逃げながら更に追い詰められる。そこへ──

 

 「手裏剣!踵落とし!」

 

 上空からシャドーリュウが勢い良く降下、振り上げた脚で栖羽を追うザゴス星人の1人に踵を手裏剣ごと喰らわせる。

 「ふぇ…!?」

 上空から降ってきた謎の人物に栖羽が目を白黒させている。

 「あれは……?」

「ダグオン……」

「あの時の忍者くん…!」

 朱音が直に見るシャドーリュウに思わず声を溢す。フリードマンがダグオンという存在に一層関心を深める。

 累は沙耶香襲撃時に目撃したリュウの姿に瞠目する。

 「何だ…アレは?それにあの怪物を一撃で沈めた……」

 神奈川県警機動隊第二小隊、小隊長得賀健介がリュウの強さに驚嘆と戦慄を覚える。

 「……星人共は俺が引き受ける。特祭隊は敵の分断と支援援護を頼む……」

 リュウは直近の刀使と機動隊へ指示を出す。特祭隊の面々は当初、狼狽えていたがリュウの言葉の意味を理解し即座に行動に移る。

 「……行くぞ、異星人共…この星を嘗めた事を後悔しろ…!」

 紫閃が舞う、人間の逆襲が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紫の長髪が荒ぶりうねり、柱のように変化しノロが凝固し荒魂らしい異形を成す。

 「鬼……か?」

 その異様な形を姫和は鬼と表する。

 折神紫の人間としての肉体が持つ二本の御刀に加え、異形から生える4本の豪腕。

 紫が持つ童子切安綱、大包平に、三日月宗近、大典太光世、数珠丸恒次、鬼丸国綱を異形の腕が振るう。

 最早、剣技など児戯に等しいと言わんばかりに力任せのゴリ押しで可奈美と姫和を簡単に吹き飛ばす。

 床に転がる姫和と壁に叩き付けられ一瞬意識を手放す可奈美、異形の豪腕がトドメを刺そうと御刀を振り下ろす。

 危機一髪のその時に守る様に飛び出す2つの影。

 沙耶香が可奈美に迫る一撃を防ぎ、舞衣が姫和を抱き寄せ庇う。

 可奈美が再び立ち上がり沙耶香と共に怪物と化した紫に立ち向かう。

 姫和が立ち上がるのを確認すると声を張り上げる。

 「退いて!」

 荒魂とは言え、人間の範疇であった先程でさえ2対1で苦戦していたのだ。4対1となった今でも勝利の道筋が見えない。

 「私…初めて…怖い」

 「私もだよ」

異形を携える紫の形を成すタギツヒメに恐怖を初めて覚える沙耶香に可奈美も同意する。

 立ち並ぶ4人、しかし姫和は写シを張る事が出来ない。

 荒れ狂う四腕を眺めながら可奈美はあの時叫んだ紫を想う。

 「多分…あの人も……」

 

 

 

 

 壁に手を着きながら、心身共に被ったダメージを推して、紫の元へ急ぐ。

 「確かめなくては…」

 ターボカイ、そして寿々花に言われた真実をその眼に確める為に進む。

 気付けば辿り着いたノロの貯蔵庫はもぬけの殻。

 「馬鹿な…あれだけあったノロが……」

 其所にある筈の物が無い。信じ難い光景に絶句する真希の後方から声が掛かる。

 「事情は飲み込めましたか?」

 声の主は古波蔵エレン、彼女は壁に背を預けている。

 「何だここは?」

 エレンの預けた壁の近くから薫がひょっこりと顔を出す。

 「折神家が回収したノロの貯蔵庫デス。ほんの数時間前まで二十年分のノロがありました」

 絶句しフェンスを握り込む真希へ薫の疑問に答えながらエレンが近付く。

 薫はその説明で得心がいったのか結論を口にする。

 「その全部が結合し化物が復活したって訳か」

 そんな薫の言葉に真希は未だ信じられないのか、自らが聞かされていた事を口走る。

 「波長に合わせて電流を与え続ければノロはスペクトラム化しない。少量ずつ各地に奉納するより安定して管理出来る…」

 少なくとも彼女はそう聞かされていたし、今日までそれが真実だと思っていた。

 しかし現実はそれを嘲笑うかの様に、虚しい事実をエレンの口から突き付けられる。

 「残念ですがそれは嘘デス。タギツヒメの支配下にあるノロは、大人しいフリをしていたにすぎません」

 エレンの言葉に続けるように、些か責める様な感情を含みながら薫が溢す。

 「この国は二十年間も奴に騙されせっせとノロを集めてたってわけだ。責任とれよ」

 「しかし…折神家の管理が始まってから荒魂による事故は激減した。殉職する刀使の数も……」

 薄氷の抵抗を口にする真希、それを薫は一言で斬って捨てる。

 「全部この日の為の芝居だろう」

 それを聞き真希は己の心情を慚愧するかの如く語り始める。

 「穢れの具現化である荒魂は駆除しても駆除しても無くならない……対抗するには同等の力が必用だ。毒には毒を、穢れには穢れを以て制するしか…」

 それを聞いた2人は憐れんでいるのか呆れているのか、

 「それが荒魂を受け入れた理由デス?」

 「要はビビってんだろ。お前らみたいな怖がりが居るんで荒魂は穢れなんて忌み嫌われるんだ」

 自身の頭上に乗るねねをチラリと意識しながら、荒魂との共存を成した一族の体現者が真希を詰る。

 其処へ、瓦礫が崩れる音と共に可奈美、姫和、舞衣、沙耶香、そして荒ぶる凶神へと変貌を始めた紫……タギツヒメがノロが集まっていたプールだった場所に降って来る。

 「紫様…いや…あれは…」

戦う4人を余所に上から凶神を眺める真希、そこにいるのは仕えるべき主では無く、しかしその姿をした自身が忌むべき荒魂の首魁。

 エレンと薫は即座に写シを展開し臨戦態勢となって飛び降りる。

 それを見て真希もまた己の御刀に手を掛け、しかしその手を下ろした。

 

 

 

 「敵は六刀流。こちらもおあつらえ向きに6人デス!」

4人と合流したエレンが吼える。

 姫和もダメージが多少回復している様で写シを再び展開している。

 6人がかりでタギツヒメを囲い仕留めに掛かる。

 「可奈美ちゃん!一度退いて!エレンちゃん!後ろ!」

舞衣が振り回される豪腕の刃を防ぎながら全体へ指揮を取る。

 舞衣の指示に従い互いをカバーしながら戦う刀使達、しかしタギツヒメに傷を付ける事が出来ない。エレンがタイ捨流の軽やかな動きで攻め掛かれば弾かれ、薫が薬丸自顕流の真髄からなる一撃を振り下ろせば、振り上げられた刃で止められ、沙耶香が無念無想を使い飛び跳ねる様に斬り掛かると、横合いから間合いを広げられ、舞衣が指揮を取りながらも北辰一刀流からなる堅実な剣は、容易く対応される。

 4人が異形の豪腕を手間取り、可奈美と姫和は正面……紫の相手を取るが激しく動く2人に対し紫は余裕をもってゆったりと歩きながら対処する。

 「薫ちゃん!近づき過ぎないで!」

 そう叫んだ舞衣が豪腕の突き出した刃に貫かれ写シを剥がされ壁に叩き付けられる。

 そこからは意図も容易く陣形が崩れ去る。

 「舞衣っ!」

舞衣の身を案じ生まれた隙を付かれ沙耶香が打ち上げられる。

 「きえぇぇぇええええっ!!」

 猿叫を挙げ必殺の一撃を見舞おうとする薫を豪腕が貫き飛ばす。

 その隙を衝こうとしたエレンを静かに御刀を突き刺し沈める。

 強力な豪腕により仲間達はあっさりと倒され残るは2人……。

 (あれを使うべきか……母と同じ秘術を…)

 姫和は形勢された状況に奥の手の使用を覚悟する。

 そんな2人を前にタギツヒメは己の存在を宣言する。

 「我は凶神…」

 

 

 

 

 

 20年前の相模湾岸大災厄の折の知られざる真実。

 結月に特務隊の指揮を任せ別れ、篝、そして後を追って来た美奈都を加え、江ノ島に根を張った大荒魂の本体と目される場所へ辿り着いた紫達、そこで篝は大荒魂を討つ為の許可を紫に求める。

 「紫様。御命令下さい…務めを果たせと」

その言葉に紫は躊躇いがちに、しかし折神家の者として、刀使として命を下す。

 「お願い篝…タギツヒメを封じて…」

 「はい…。辛い決断をさせてしまい申し訳ありません」

互いに長い時間を過ごした者同士の最後になるかもしれない会話。沈痛の面持ちの紫に対し篝はどこか晴れやかにも見える顔。

 「みんなで過ごした学校生活、掛け替えの無い私の宝物です」

 過去を想い、笑う篝。共に来た美奈都へも言葉を伝える。

 「美奈都先輩。貴女の事…正直苦手でしたけど、でもいっぱい……いっぱい感謝してます」

 今だから口に出来る事とでも言うように美奈都へ礼を述べる篝、彼女は覚悟を携え跳ぶ。

 「タギツヒメ。お前は私が封じる!その為に私は此処にいる!」

 江ノ島を包む巨大な繭らしきモノに光が走る。

 永遠の暗闇の中へ消え行く篝、しかし何と、美奈都がそれを追って跳んだ。

 「美奈都ぉぉぉ!!」

 消え行く友を只、只々見送る事しか出来ない紫は悲しみを叫ぶ。

 

 跳んだ筈なのに落ちていく感覚、宇宙のように星明りすら存在しない暗闇へ柊篝は落ちていく、堕ちていく、墜ちていく。

 だが其処へ彼女を追って美奈都が行かせまいと抱き付く。

 「美奈都先輩!?駄目です!貴女まで…」

 消えるのは自分だけで良いと覚悟していた篝は美奈都を巻き込んだ事に狼狽える。

 しかし美奈都はそれを取り合わず、闇の先へ向け吼える。

 「篝は絶対渡さない!」

それでも2人は落ちていく、出口など見えぬ闇の中へ、永遠に永劫に永久に……。

 「篝…美奈都…私は……」

立場が追うことを許されない、消え行く友を涙を流し見送るしかない紫の顔は置いていかれた幼子の様。

 そして…その瞬間を待っていたのだとでも言うように周りを囲む荒魂の空間から声が響く。

 

 「折神紫 我は取引を提案する

 

 深淵から這うように聴こえる声、無数の瞳が紫に注がれる。

 

 「我という自我が目覚めたのは暗く冷たい貯蔵庫の中だった 最初に在ったのは喪失感だ 自らの一部を引き裂かれ大切な物を奪われたという感覚…取り戻さねばという衝動 それは餓えに似ていた

 

 性別も定かでは無いような、それでいて無機質にも聴こえる声が紫へ語り掛ける。

 

 「凶神と化した我は何れ人の手により駆逐されるという事だ 我は生存の道を模索した それを実行しているに過ぎぬ

 

 「そんな…江ノ島に封じ込めたのも特務隊を送り込んだのも……」

 

 「そうだ折神紫 全てはお前を誘き出す演出に過ぎん

 

 無数の眼から語られる大災厄の真実に紫は絶望する。

 

 「じゃあ…篝は…美奈都は……」

 

 「我と同化しろ さすれば藤原美奈都と柊篝の命は救われる

 

 それはとても甘美な誘惑、紫の心の隙間へ蛇のように絡み付く。

 

 「我はお前と同化し隠世の浅瀬に潜み傷を癒そう 今より十数年お前は猶予を得る それまでに我を滅ぼす事が出来ればお前の勝ちだ

 

 「そんな馬鹿げた提案を……」

 

 「お前の結論は既に出ている

 

 「!」

 

 

 

 

 「脈々と受け継がれてきた折神家の務め。だが紫は2人の生還を望んだ」

 可奈美と姫和を前に嘗てあの場所で何があったのかを語り終えたタギツヒメ、そして豪腕が少女の華奢な体を捕らえその二振りの御刀で可奈美を貫く。

 

 「可奈美!

 

 「衛藤!!

 

 空間に木霊す2つの叫び。1つは姫和のモノ……。

 もう1つは炎の如き赤い影。群がる星人達を手にしたライオソードで斬って棄て、此処まで辿り着いたファイヤーエンその人である。

 写シが四散し倒れる可奈美を前にしてタギツヒメは淡々と述べる。

 「筋は良い。だが母親には遠く及ばない」

 可奈美の意識が堕ちていく、その最後の瞬間瞼の内に写った光景は霧の中、背を向ける在りし日の母、美奈都。その背中へ少女は手を伸ばす。

 「お母さん…」

 

 

 

 未だ迷いから動かぬ真希の横を駆け抜け、倒れ伏した少女達を守らんとタギツヒメの前へ走るエン。

 それを認め瞳を僅かに細めるタギツヒメ。

 「唯一の誤算。只の一度として見通す事が出来なかったのが貴様らの存在だ。異端児」

 「…っ!マジで化物に堕ちきっちまったってのかよ……あの折神紫が!?」

 ライオソードを握る手に力が籠る。

 「ダグオン…!」

姫和もエンが現れた事に瞠目する。そんな彼女を意に介さずタギツヒメは言葉を続ける。

 「その剣…。それもまた我の想定の外にある物。二十年前、その剣が江ノ島を覆う我の一部に突き刺さっていた事で人間共が予想以上に粘ってくれたものだ…忌々しい」

 『そうか…それが聴けただけでも重畳。此処まで来た甲斐がある…。だが私の復讐心はそれだけでは満足出来ん、今一度、貴様へ引導を渡してやる!!』

 「おいライアン、俺にも一枚咬ませろ。奴だけは許さねえっ!」

 タギツヒメの忌憚にライオソードからライアンが声を発し叫ぶ。そして、エンもまた可奈美の他に倒れた舞衣の姿を見付け、2人の後輩がやられた事に憤る。

 「来い。その力は脅威ではあるが、貴様自身は取るに足らん」

 鳳焔也自身には一切興味が無いと切って捨てるタギツヒメ、それが癪に触ったかエンは雄叫びを挙げ突撃する。

 

 「なめんなぁぁぁああああ!!

 

 豪腕による四撃をライオソードで塞ぎ、ファイヤーナックルで弾くが、最後の一撃に吹き飛ばされる。

 「がっ?!」

 「我に怒りを抱きながら、しかし紫の肉体への攻撃を躊躇う……それ故に容易い」

 心の何処かにある殺人への忌避感を読まれ対応されるエン、彼自身も自覚があるのか悪態を付き、左拳を地面に叩き付け悔しがる。

 そんな彼を視界に納めつつ改めて姫和へ関心を向けるタギツヒメは、姫和が覚悟を以て構えていると見ると挑発するように彼女へ宣う。

 「さて、どうする?母と同じ秘術を使うか?その御刀を当てる事が出来れば、だが」

 脂汗が滲む、それでも姫和は目の前のタギツヒメから視線を外さない……そして気付く。

 「お前の剣は()に届く事は無い。折神紫を越える刀使はこの世に……」

 言葉を続けながらも姫和の視線の先を追い振り向く(タギツヒメ)

 

 「紫!久しぶり!」

 

 再び立ち上がった可奈美より発せられた科白、それは旧知に語り掛ける様な気安い声色。

 「衛……藤……?」

 狼狽えるエン。今、目の前に居る衛藤可奈美が自分が知る少女と雰囲気が違う。

 彼は只々混乱するばかりであった。

 

 ──幕が下りる。正真正銘…最後の戦い、その火蓋が落とされる──

 

続く

 


 

 

 

次回 胎動ノ終ワリ

 





 ラピライ終わっちゃったよ……エミリアとリネットが観れなくなるのかぁ…。
 そんな寂しさに敗けパイロット版?的な話を書いてしまった私をどうか笑って頂いて結構です。
 多分、その内、恐らく、投稿する可能性がなきにしもあらずです。

 ではまた次回


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第六十話 胎動ノ終ワリ

 
 こんばんはからのおやすみなさい。
 胎動編、完!

 そして夏アニメもそろそろ殆どが終わりの様相。

 さぁて融合合体編の敵の設定含め色々詰めなくては……。


 今、一つの戦いに終止符が打たれようとしている。

 

 しかし、これは終りでは無い。

 

 新たな始まりなのだ。

 


 

 「紫!久しぶり!」

 倒された筈の可奈美、それが再び起き上がった時にはまるで別人の様な雰囲気と振る舞いをする。

 タギツヒメは……いや、折神紫はその瞳を揺らがせ狼狽える。しかし、声を発するはタギツヒメ。

 いや、最早どちらが主導権を握っていようと関係無い。

 1つの肉体に収まる2つの思考は既に乱れているのだから。

 「美奈都……有り得ない!」

 目の前の現象を否定する為に御刀を振るうタギツヒメ()、対して可奈美…いや美奈都はそんなタギツヒメの猛攻を何とも容易く防ぎ、流し、受け、返し、そして交差した瞬間、紫の右手首が飛ぶ。

 「すげぇ……あいつ…マジで母ちゃんが乗り移ってるのか…?」

 『……(確かにあの御刀は特殊だが…だからと言って、死者が生者に憑依するだと?)…ありえるのか……?』

 エンは只々圧倒される。そしてライアンは千鳥から感じる力を訝しげつつも、可奈美に美奈都が本当に憑依しているのかと疑問に思う。

 

 「有り得ない…」

 「有り得るよ!」

彼等がそうしている間、可奈美(美奈都)は姫和の元まで立ち退き、紫はそんな彼女を睨む。

 「可奈美…」

 姫和は豹変した可奈美を何とも如何し難い顔で見る。

 可奈美はただ此方をチラリと見て微笑むだけだ。

 先程までは6対1…2対1でも圧倒的だった戦いが、今や互角…いや、可奈美が押している。

 『呆けているな、ファイヤーエン。好機だぞ』

 ライアンが今、この瞬間がチャンスだと進言する。

 「っ!…ああ!」

 そんな彼等のやり取りに気付かず、狼狽えたまま可奈美を排除せんと異形の腕を伸ばす紫。

 「有り得ない…藤原美奈都は死んでいる!」

 しかし、排除せんと伸ばされた腕は容易く切り裂かれ力を失う。

 「らしいね」

可奈美は変わらず楽しそうに微笑む。

 「こんな未来…ある筈が…」

 「でもこうして戦ってる!」

紫の攻撃、豪腕の一撃すらあっさり躱す、どれ程その腕を振るっても当たらない。当てられない。

 可奈美が跳ぶ、逆側からはエンも駆けて来る。

 可奈美が紫と異形を繋ぐ管となった長髪を切り裂きエンが異形の眼にライオソードを突き刺す。

 その勢いのまま可奈美は糸が切れたように倒れ気を失う。

 「可奈美!」

 

 

 ──ギッ…ギャァァァアア!!

 

 

 異形の断末魔が空間に響き木霊する。

 消え行く四腕を携えた異形の影、それは朱色の光の柱となって天に昇る。

 夜空が妖しく染まる。その様はまるで世界最後の審判の日。

 完全に消えるまで僅かという様相、怪物の瞳がノロの涙を流し、刺し突かれ潰れた瞳はノロの輝きが消え失せている。

 姫和にとって、これが宿願を果たす絶好の機会。

 構え、そして未練を断ち切るように眠る可奈美へと柔らかく微笑み、紫電の軌跡を残して紫へと突き進む。

 閃光となった姫和の一太刀が紫の胴へ深々と突き刺さる。

 「これが私の…一つの太刀だ!」

 「見事だ…」

 姫和の覚悟、それをタギツヒメではなく折神紫が讃える。

 「このまま…私と共に隠世の彼方へ!」

 2人を包む空間が加速していく。それは迅移の段階が深くなっていく事の証、このまま行けば姫和は折神紫の肉体に憑依しているタギツヒメと共に永遠の中へ消える事となる。

 

 「駄目!姫和ちゃん!!

 

 だが…そんな彼女を止める者が居た。眠っていた筈の可奈美だ。

 彼女は迅移の光に自身も飛び込み、姫和へ抱き着き彼女を紫から引き剥がす。

 引き剥がされた紫の肉体からナニかが飛び出た。

 (タギツヒメが…?)

迅移により移った次元の世界で十条姫和が視た最後の光景であった。

 

 朱色の柱からまた光が立ち昇る。暗闇に亀裂を成した様な空が変わる。

 青白い光のうねりが三方へ別たれる。

 光に照らされるのは死闘を演じた少女と戦士達。

 舞衣、沙耶香、エレン、薫とねねはタギツヒメから受けたダメージから眠り、横須賀からは異星人に対応しつつも皆がその光の柱を目にする。

 その夜、この国に何処かへ消え行く3本の蛇の様な柱と幾千の流星が瞬いた。

 その星を見上げる者は、周りのザゴス星人を片付けたカイと並び立つ寿々花であったり、自失する雪那の側に立つ夜見であったり、最後の最後まで見ている事しか出来なかった真希であったり、囮として警護を惹き付け、果ては異星人とまで戦った調査隊であったりと様々だ。

 

 

 

 そして、仲間達が倒れる場所から少し離れた場所で倒れる2つの影。

 それは可奈美と姫和……宿命を背負った二羽の鳥。

 倒れ伏す2人の手は互いに存在を確かにあるものとするかのように握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「終わったのか……」

 『……私は行く。最早この場に留まる理由は無い』

 光の柱を見上げるエンに手に握られているライアンが声を挙げる。

 「あ…おい!」

 エンの制止など気にも止めず宙を飛ぶライアン。彼はエンへと向き直り……

 『貴様達はこれで終わったと本当に思っているのか?だとすれば滑稽だな』

 「それはどう言…「それはどう言う意味だ?」…カイ!」

訝しむエンの声に被せて怜悧な声が掛かる。

 その正体はターボカイ。

 襲い来るザゴス星人を倒し、光の軌跡を目撃しこの場へ推参したのだろう。

 『私が果たすべき義理は果たした。ダグオンお前達との約束は守ろう。私が倒すべき敵は既にこの地から去った、故にこれ以上は暴れる必要も無い』

 「約束……エンと戦った時の事か…」

 「なっ?!仲間になってくれねぇのかよ!」

カイがライアンの発言に思案する傍らでエンはライアンが仲間にならない事へ批難めいた声を出す。

 『私が貴様と交わしたのはこれ以上この場で暴れるなと言うモノと祭殿へ共に行き見届ける、或いはもしもの時の助力だ。それらを果たした今、共に行動する謂れは無い。仲間になれとは言われていないのでな』

 「ぐっ……確かに言ってねぇけど…」

 「これに関しては貴様の確認ミスだなエン。しかし、だからと言って我々は貴殿を簡単に見逃す訳にはいかん」

 『……心配せずとも、今後人間を巻き込むような戦いはしない。最も、ノロを受け入れ荒魂へ堕ちると言うのであれば…話は別だが…』

 今回の戦いで思う所あったかライアンは出逢った当初よりは物分り良く語る。

 少なくとも今後犠牲を許容する戦いはしないと公約した。

 「それは願っても無い事だが…」

そこへ2人に通信が入る。ヨクからだ。

 『カイ、聞こえますか?!』

 「ヨクか、どうした?」

 『近辺の星人の掃討が終わったので横須賀港へリュウの援護へシンと共に向かいます。カイ、君はどうしますか?』

 「そうだな、エンと共にこの場に残り、念の為他に星人の残党が居ないか警戒しよう。済まないがリュウの元へは2人で向かってくれ」

 『分かりました。任せて下さい』

 通信を終えれば既にライアンは彼方へ去りエンが失敗したと言わんばかりに頭を抱えていた。

 「何時までも過ぎた事を後悔するな情けない。それよりも彼女達は大丈夫なのか?」

 貯蔵庫であった場所で倒れ伏す少女達を見てカイが懸念を口にする。

 「あ?ああ…そーだな、一応怪我とか確認しないとな」

とぼとぼと歩きながら、やや落ち込み気味に返事を返すエン。

 「ふむ……どうやら何かライアンとの件以外であったようだが………。長船と鎌府の娘は問題無いか、其方はどうだ?」

 エンが何か別の事で落ち込んでいる事を察しながらもエレン、薫、沙耶香の状態を確認するカイ、残る3人の様子を確認するエンに声を掛ける。

 「柳瀬は……多少汚れてるが大丈夫だ。衛藤と平城の十条は……ああ、あいつらも大丈夫そうだな、手ぇ繋いで眠ってやがる」

 舞衣の状態を確認し可奈美と姫和の元へ近付くと彼女達の顔色を見て特に問題が無い事を察する。

 「そうか、ならば後は残党の捜索だな」

 「ああ…俺は奥の方から見てみる」

 「ならば俺は来た方向から遡って確認しよう」

貯蔵庫から祭殿へと続く道へと向かうエンとは逆に真希のいる方向へ進むカイ、依然としてへたれている真希を見ると僅かに息を吐き、声を掛ける。

 「何時までへたり込んでいる気だ獅童真希」

 カイのその声にまるでつつかれた様に反応しゆっくりと顔を上げカイを見る真希、その顔はまるで見捨てられた子供とも全てを諦めた世捨人とも取れる表情だ。

 「ボクは……ボク達のしていた事は……」

 「見ていられんな……此花も厄介な相手に懸想した者だ……致し方無し」

 真希の情けない姿にカイはある決意を固める。

 「獅童真希、受け取れ!」

 彼が彼女へ何かを投げる。飛んできた物体を咄嗟に受け取る真希、受け取った物を確認する。

 「これ…は……」

 「本来ならば、貴様に渡すつもりなどなかったが…何時までもそんな姿を曝している?真実に押し潰されたか?ならば刀使を辞めるか?成る程それも手だろう。しかし、貴様はまだ償っていない。それは餞別にくれてやる…だから這ってでも足掻き進め!それが罪を抱え生きると言う事だ」

 言いたい事は言ったとばかりに真希の前から去るカイ。

 真希は渡された物……結芽の御刀に括り着けられていたイチゴ猫大福ストラップを眺め涙を一筋流した。

 

 

 

 

 一方、貯蔵庫から続く道へ向かうエン独り思い耽る。

 (結局、俺はあの時大した事は出来なかった……衛藤があいつのお袋さんに憑依されて出来た隙を突けたに過ぎない………あぁ、もっと強くなりてぇなぁ…あいつらが危なくならないくらい強く、強くなりてぇ…!)

 悔しさに握り拳を固めるエン。

 と、そこで彼はあるモノを見付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━横須賀港

 

 「……ちっ、流石に数だけは多い。俺だけでは手が回らんか……」

 ザゴス星人を相手に優勢に立ち回るも、人数差に歯噛みするシャドーリュウ。

 いくら自分が相手を蹴散らせても他はそうはいかない、流石に厳しいかと思っていたその時、空から聞き慣れたエンジン音がする。

 「……来たか…!」

「oh…あれは何だ!?」

 空に浮かぶ二両のライナービークルにフリードマンが思わず声を挙げる。

 「空を飛ぶ新幹線……あれもダグオンと呼ばれる方達の物なのですね」

 報告とネットに流出している情報から解っていた事ではあるが、直接見るとやはり驚きが声に出る朱音、累も口を開けて絶句している。

 周囲に目を向ければ刀使も機動隊員もザゴス星人でさえ上を見ている。

 そして空を飛ぶ新幹線の片方から緑色の戦士が落ちてくる。

 「待たせたナァ!鎌府のカワイコチャン達!ヒーローダグオン見参ダゼ!」

 遅れてもう片方からも白い戦士が飛んでくる。

 「はいはい、先ずは敵を片付けますよ」

 シンの発言に少々呆れ気味にツッコミながら近くのザゴス星人を蹴り飛ばすヨク。

 こうして合流した3人の手により、程無くザゴス星人達は倒される。

 また逃げ散らばっていたメディアの幾つかがその際、空を飛ぶライナービークルとダグオンの戦いをカメラに納めた事も此処に記述しよう。

 

 

 

 この日、世界は確かに変わった。

 

 荒魂の事だけならば日本の問題であった。

 

 しかし、異星人の存在が今回の事件、そして鳥取の動画を改めて精査された事により明るみになる事となった。

 

 否応なく世界は知ったのだ。眉唾染みた存在が実在した事を……。

 

 世界は知ったのだ。そんな侵略者に抗う戦士の存在を……。

 

 しかしそれはまだほんの一角でしか無い。

 

 何故ならばタギツヒメは確かに討たれはしたが、それは多くのノロが流出する一大事となる。

 それにより刀剣類管理局は常に荒魂事件に駆け回る事となり日々をてんやわんやと追われる事になるのだ。

 そして何よりタギツヒメは完全に討たれ消えた訳では無いのだ。

 

 

 そしてエデンの囚人達。

 彼等もまたあの3本の光の柱が瞬いた時、幾人かを流星に紛らせて地球へと落とした。

 先行し降りた鋼鉄の傭兵に合流したと目されるザゴス星人の群れを併せれば驚異は更に増すだろう。

 

 

 ダグオン達もまた新たな戦いが待っているのだ。

 最早、胎動の時は過ぎた。次に開けるのは波瀾の幕だ。

 その時世界は再び変わるのか…或いは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カイ!来てくれ!」

 

 『どうしたエン?』

 

 「来れば分かる!とにかく早く来てくれ!」

 

 『…良かろう。すぐ向かう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エン、一体何があった?」

 

 「いや、それがさ、見付けちまったんだよ!」

 

 「何?……!まさか、生きているのか?!」

 

 「そうみたいだ……一応調べたが荒魂の反応は無かったぜ」

 

 「まさか生きていたとはな……」

 

 「どうするよ?」

 

 「出血は見られないが……念の為、ダグベースで治療を受けさせよう」

 

 「連れてくのか?大丈夫かよ?」

 

 「既に結芽はダグベースのメディカルルームへ移送済みだ。それに彼女をこのまま死なせる訳にもいかん」

 

 「そりゃあそうだが……」

 

 「我々の正体は彼女へは黙っておく。治療が済んだら……そうだな、ある程度話をした後、舞草にでも引き渡す」

 

 「…分かった、確かに見捨てるってのは忍びないしな…」

 

 

 

 

 

 

 

 2人の戦士が足元に倒れる女性を前に語り合う。

 

 彼女は数刻前まで死闘を演じた相手。

 

 

 「折神……紫……」

 

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verファイヤーエン)

 

 あの日以降、俺達の日常は様変りした…っても忙しそうなのは刀使が殆どで俺は補習するハメに……トホホ。

 とか言ってたらもしかして俺も鎌倉へ大手を振って行けるかもって?!って何でお前らがここにっ?!!?

 

 オイオイ、オレ達だってちゃんと学校の許可取って来てんダゼ?

 

 ええ、と言うより僕の招集に申一郎が便乗しただけですけど……。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 変わる世界。変わらぬ物。

 

 次回も"トライ…《トライダグオン!》っあぁ?!てめぇ!!

 

 




 と言う訳で次回からは新章となります。
 それに併せ予告BGMも変更。
 ダグオン達がトライダグオンから融合合体、更に其々合体する際のBGMを参照して頂けるとお分かりになるかと。
 多分新章上げる前に、パイロット版の作品を投稿する可能性もあるかもしれませんが、一応、とじダグがメインで躓いたらシンデレラ百剣、偶にプロットが纏まればリリスカくらいの予定です。

 ではまた次回


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変革。融合合体編
第六十一話 変わる世界。変わらぬ物。


 おはようございます。そして私はゆっくりと瞼を閉じるのであった。
 今回はまぁ…ちょっと文章が予想より長くなりましたが新章です。
 何気に服部先輩、台詞付きで初登場になるのかな?

 今回出た新キャラは以前登場した者と同様勇者シリーズお馴染みトランスフォーマーのリデコキャラです。
 皆さんは果たしてどんなトランスフォーマーがリデコされたか解るでしょうか?
 正解は後書きで!!



 これまでの"刀使ノ指令ダグオン"

 

 異なる世界から宇宙監獄エデンの囚人達がこの世界の地球へ侵攻を開始した。

 世界を管理する管理者の一人はそれを防ぐ為、エデンが存在した世界から1つの魂を呼び込み、地球を守る戦士達を選び出した。

 そして今、力を託された5人の高校生がダグオンとなってエデンの犯罪者達や荒魂と激闘を繰り広げる!

 


 

 ━━サルガッソー型浮遊監獄エデン

 

 それは最終決戦もかくやと言う所、エデンに集う囚人達はひっきりなしに騒いでいた。

 「あかん!何が起きてるのか判らん!!」

 「そぉねぇ~。流石に建物の中までは解らないわねぇ」

 「トジトダグオンのモトヘオチタザゴスハスベテタオサレタカ。ヤハリ、チュウトハンパナチノウガアダトナッタノカモナ…」

 「所詮は虫螻よ。同じ虫螻でもまだギロザバスの方が役に立った」

 「でもさ、とうしょのけいかく?どおりびっぐろーのところにも、ぜんせんきちのじんいんをおくれたんでしょ?」

 「その辺は問題あらへん。ま、今回のザゴスは御愁傷様ちゅうことで、次回以降にご期待やな、センセ?」

 「ええ、任せてぇ。今研究している荒魂の生態や構造、ノロの生産法が確立すれば優秀な兵士になれるはずよぉ」

 さらりと恐ろしい事を述べる女医、と、そこでメレトが甲冑が居なくなっている事に気付く。

 「む?小僧がおらなんだ。何処へ消えた?」

 「やれやれ……彼には困ったものだね」

 甲冑の行方を知っているのか鬼が頭を振るう。

 「どうやら我々を出し抜いたつもりで地球へ降りようとしているようだ」

 「マジかいな!?あかん!普通に抜け駆けやんか!他の囚人共が五月蝿いで!それにアイツが管理してる監獄棟の囚人はどないするんや!?」

 マッニーが捲し立てる様に言葉を並べる。

 「なんじゃ商人、お主まだ奴の正体を聞かされておらなんだか?」

 「は?正体?」

メレトが口にした言葉に首を傾げるマッニー、見れば他の監獄主達は平然としている。

 「他の監獄棟は多少荒れるかもしれないが……彼が治めている監獄棟は問題無い。何せ彼が監獄主になった理由がそこにあるからね」

 鬼が笑いながら説明になっていない説明をする。

 「とは言えだ…彼ばかりに好きにさせる訳にもいかない。此方も何人か地球に降ろそうか」

 「ならぼくが!「却下や!」「却下よぉ」「キャッカスル」「無理に決まっておろう」…ちぇっ」

 妖精の提案に揃って声を挙げ却下する彼等。鬼はそれを愉快そうに眺めながら口を開き…

 「ふふ…申し訳無いが既に誰が降りるかは決めているんだ」

 「えー!?」

 「では、頼んだよ。ヴァルトロン、グシアノース、アスクラ」

 鬼が名詞らしき名を告げると彼の後ろから機械音と共に現れる鋼鉄の肉体を持つ3体の異形。

 1体は血のような赤い躯に黄色い宝珠が嵌まった鬼の何倍もある大きさの鋼人。

 1人はその彼より更に大きい青銅色の鉄人。

 最後の1人は彼等よりは小振りだが人間からすれば十分な大きさの機人であった。

 「ふん、やっとか」

 「m…M…まち…わび…た…かい…が、がが…ガガガガ…ルゥぅぅ」

 「船長共々こんな辺鄙な場所に来た甲斐があるってもんだネ。ウン」

 鋼人がやっと回ってきた出番に鼻を鳴らし、鉄人が無理矢理声帯を作って声を出したような音で興奮し、機人が気楽に頷く。

 「君達は先行した君の部下の前線基地へ各監獄からの希望者を君達に載せて…或いは牽引して地球へ降下して欲しい。構わないかな?」

 「元よりそのつもりだ。此方も頼りになる副船長の不在は勘弁願いたいんでな!」

 鋼人が鷹揚に答えると鬼は満足気に笑い宣言する。

 「では始めようか新たな喜劇の幕開けを!」

 

 その夜、光の柱に紛れるように流星が瞬いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 折神家での争乱から早1週間。

 世間は相応にドタバタし、相応に落ち着きを取り戻しつつあった。

 あの夜から一夜開けた当初は国中が覆いに混乱した。

 折神紫体勢に対しテロにより反逆を企てたとされた舞草含む朱音派、しかしその実態は大荒魂に憑依された紫を打倒すると言うもの。

 更には謎の怪物の横須賀港への襲撃。

 特祭隊、報道陣など官民問わず無差別に襲い掛かる怪物の存在に現地の人間は恐怖に沸いた。

 それと同時に現れた謎の鎧らしき物を纏った戦士達、彼等の活躍もあり、死者こそ出なかったものの更に混乱を加速させたのは言うまでもない。

 また、折神家から立ち上った謎の光の柱の影響か、全国へノロが流出、前述した折神家内の動乱もあり責任は全て刀剣類管理局にあると言う意見が挙がる。

 折神紫は事件の後所在が掴めない為、一時拘留されていた朱音が現在臨時局長の座に着き、日夜国家からの参考人招致を受けている現状。

 また、ノロの大量流出により常日頃発生する荒魂の存在に国民達は今日まで感謝を述べ接して来た刀使に対し疑念と嫌悪の眼を向ける事となる。

 メディアやネットの中にはこれ幸いと言わんばかりに、これまで彼女達を批判して来た者達の声が大きくなるに至る。

 そんな厳しい状況に在っても荒魂に対処する為、刀使達は日本全国津々浦々へ飛び回る。

 また、特祭隊の指揮を行方不明の高津雪那『元』本部長に代わり、長船女学院の真庭紗南がこれまた本部長代理に就任、指揮を執る運びとなった。

 此処までが刀剣類管理局の現状である。

 

 

 そして、現在の世界情勢はもっと複雑と言って良いだろう。

 表向きは国民は変わらず平和に暮らし、国も小競合いは見られるものの大きな変化は見せない。

 しかし実態は突如現れた異星の技術や存在に対し、警戒と興味がない交ぜになっているのだ。

 特に大国は彼方よりの来訪者の技術を欲した。

 そこで改めて鳥取砂丘で起きた事件が精査され、砂丘に散らばった武装輸送船と目される破片をアメリカが外交取引の末、自衛隊から押収。

 また、強奪と疑われぬよう日米共同研究と言うお題目を持ち出し、諸外国へ牽制を謀る。

 結果、残る中国、ロシアやEU等は諜報員を送り込む等して情報を得る事になる。

 特にアジア側はザゴス星人が地球降下の際使用した突入艇の破片を血眼になって探した。

 勿論、大半は日本近海へ落下した為、某国含め幾度となく領海問題が起こったのは言うまでもない。

 

 では、国内外に於けるダグオンの印象はと言えば、単に"解らない"が正しい。

 彼等の持つ技術もまた異星人と同等、或いはそれ以上と思われるものの、正体不明、所在地不明。

 彼等の乗り回しているマシンをトレースしようにもレーダーからは掻き消え、物理的にも追跡は難しく…費用と時間を無駄に浪費するだけに終わり、諸外国は直接の捜索を打ち切る。

 日本国内に至っては、当初、地方民の幾ばかは撮影等の良く出来たヤラセ疑惑の声なども挙がったが、横須賀で起きた事との整合性を考え、真実であると結論に達した。

 すると今度はまたしても鳥取砂丘での事件が挙がる。

 砂丘での戦いで出た死者の事に言及が起こるも、ネットでは大半がマスコミの行き過ぎた行動と野次馬に対し批判的な意見を散見させ、また、ダグオン達が全国で度々目撃されている事もあってか、ある種の英雄像から来るムーブメントを起こす。

 実際、彼等は異星人のみならず荒魂へも対処に現れる為、ある意味刀使よりも感謝の声が大きかったのだ。

 皮肉な事に高性能な装備を持ち、大半の荒魂なら個人で充分殲滅可能な彼等は刀使が複数人で対応にあたるよりも迅速に片付けてしまう為、ダグオンを救世主としてより一層刀使に対し当たりが強くなってしまったのだ。

 無論、彼等とて刀使の仕事を盗ろうとした訳では無い。

 御刀の数や適性から来る刀使の動員の少なさに反して、更に少数である筈のダグオンが迅速に対処する事が1つ。

 交通機関の関係から荒魂の出現地点への対応が遅れる刀剣類管理局に対し、何処から現れ…或いは例のビークルにより空等から早急に現れるダグオン。この移動時間の差も1つの理由である。

 更に、複数箇所での対応の違いも大きい。

 唯一、刀剣類管理局が出来る事がノロの回収であるが、それもあの夜での大量流出…俗に『鎌倉特別危険廃棄物漏出問題』と称される事柄から国民からは当然の義務のように思われているのだ。

 

 これらの問題は当のダグオンの若者達も頭を抱えた。

 何せ自分達は飽くまで刀使が対応しきれない分を対処するよう心掛けて動いているだけで、彼女達の立場を悪化させるつもりなど毛頭無かったからである。

 とは言え慎重に動いたとしても何時また、異星人が動くかも分からない以上、活動を自粛する訳にもいかない。

 正に双方頭を悩ませる日々となったのである。

 

 

 

 さておき、そんな怒濤の一週間を過ごした渦中の人物の1人、鳳焔也はと言うと……?

 

 

 ━━岐阜県・美濃関学院

 

 「はぁ…」

 学内の食堂で溜め息を浸く焔也、ここ数日の彼はダグオンとしての出動で足りない分の授業の補填や美濃関がテロの片棒を担いだ嫌疑を掛けられた際、不在であった事から補修に明け暮れていた。

 後者に関しては警察は御刀の押収と刀使の監視拘束が主であった為、彼の不在が深く追及される事は無かったが学院側は違う。

 万が一の疑いもあっては困るという思惑と普段の授業態度や良からぬ噂もあって、厳しい処分が下される運びであったのだ。

 しかし羽島江麻学長と田中妙子教諭の口利きもあり、1ヶ月の補修と1週間の謹慎で済んだのである。

 「一応俺…あの夜それなりに活躍したんだぜ……なのにこの扱い……トホホだよ」

 という事がありはしたものの、普段と変わらない生活を送りながらダグオンとしても日夜活動し学校では補修明けから独り寂しくカレーを口に運びながら誰に聞かせるとでもなく呟く焔也。その背中は何時もより小さく見える。

 そこへ彼を見かねて近付く何者かの気配…。

 「よぉ!鳳!何落ち込んでるんだ?!」

 バシッ!という音と共に焔也の肩に腕を回し組み付く青年。

 「あ…服部先輩、っす、お疲れっす」

 彼の名は服部達夫。美濃関学院高等部3年刀匠技巧科の生徒にして焔也の人となりを知る数少ない人物である。

 「本当に元気が無いな……。大丈夫か?何だ?安桜と喧嘩でもしたか?」

 「違うっす。安桜とはあれ以降顔を合わせて無いっす、そもそもあいつとじゃ喧嘩にはなんねーっす」

 「ま、それもそうか。お前ら仲良いもんな、一見して兄妹に見えなくも無いって感じだ」

 焔也の回答に成る程そうかと頷きながら隣の席に座る達夫。そして普段から思っている事を口にする。

 「いやぁ…あいつが妹は無いっすね。面白い奴だけど、家族としてはゴメン被りますわ」

 「あっはっはっはっは!相変わらず正直な奴め!安桜が居たらまた色々言われるぞ」

 恐らく美炎が同席していれば「鳳先輩がお兄ちゃんとか質の悪い冗談にも程があるんですけど!?」と口にしたであろう。

 性格的には相性は悪くない筈なのに、焔也が矢鱈とからかうものだからすっかりツンケンするようになった美炎である。

 「まぁ、安桜含め刀使科の娘達は大変だろうな」

 達夫が何かを思い出したように視線を焔也から外す。

 「っすね、ノロ流出の件。別にあいつらのせいじゃ無いのに……」

 「そりゃあ…おれ達は理由なりを知ってるけど、世間は違うからなぁ…舞草だとかなんだとか言われても分からないんだよ」

 現在も全国を飛び回っているであろう後輩の身を案じる2人。

 「ってか、先輩はそれをわざわざ話に来たんすか?」

 「いんや、お前が元気無さそうなのが気になったってのが1つ」

 「?…他にも何かあるんすか?」

 達夫の含みのある言い方に眉根を寄せる焔也、そんな彼に達夫はニカッと笑いながら告げる。

 「姐御がお呼びだ、しかも学長室まで、だとさ」

 「ゲボッ!ガハッ!ゴホッ!……マジで!?」

達夫の口から聞かされた内容に思わず噎せる焔也。体面を整える事もせず驚き狼狽える。

 「汚いな。危うく顔に掛かるとこだったぞ?…でマジかと聞かれればマジだ。まぁ、何だ頑張れよ…それじゃ!」

 伝えるべき事は伝えたと席を立つ達夫、焔也は更に気分が沈んだのであった。

 一刻の後、食事を終え緊張の面持ちで学長室の扉の前に立つ焔也。

 一体何を言われるのだろうかと戦々恐々としながらノックをする

 

 「どうぞ」

 

 中に居るだろう羽島学長からの返事、焔也は深呼吸してノブに手を掛ける。

 「しゃっす!失礼します!」

 体育会系張りの挨拶と共に入室すればそこには額に手を充て呆れる妙子と苦笑する羽島江麻が居た。

 「鳳ぃ…あんたって子は……」

 「ふふ……元気があって良いわね。立ち話もなんだから、そこへ座ってちょうだい」

 焔也へ応接用のソファへ座るよう促す江麻、これから何が起きるのか今一要領を得ない焔也は訝しみつつも言われた通り座る。

 「では単刀直入に言うわね。鳳焔也君、貴方はこれから鎌倉の刀剣類管理局本部に向かって貰います」

 「押忍!!……へぇあ?」

 江麻から下された下知に反射的に返事を返し、その意味を理解するのに数秒掛けた焔也、妙子はそんな焔也の頭を軽く手刀で叩く。

 「押忍じゃなくてはい。でしょうがバカタレ」

 「すいませんでした!!」

妙子からの指摘に慌てて江麻へ向き直り謝罪する焔也。

 「ふふ、大丈夫よ。貴方の事はよく田中先生や刀使科の一部の生徒から聞いているから。それよりも先程の辞令、返事はYESで良いのかしら?」

 江麻が笑いながらやんわりと諫め先程の話の返事を求める。

 「そりゃ、行けるってんなら断る理由は無いですし、命令ってんなら従いますけど……何で俺…じゃなくて自分に?」

 当然の疑問を口にして訊ねる焔也に今度は妙子から理由が告げられる。

 「現在の刀剣類管理局を含む情勢は理解してるわね?伍箇伝各担当地域問わず無差別に各校から選出された刀使達が本部の指示の元、全国へ任務に着いている。そうなると当然御刀の手入れに手が回らなくなる事も多くなる。鎌府の施設や人員だって他に人を回さなきゃいけないから限度がある。そこでウチを含めた残りの各学校から刀匠科や技巧科、警邏科の生徒を一部貸し出す事になったのよ」

 「はぁ、なるほど…ようは助っ人っすか。ん?でも何で俺が?」

 妙子の語った理由に納得を示し、しかし何故己が選ばれたのか疑問に思う焔也。

 「最初は服部辺りに頼もうかと思ったんだけどね。本人があんたを推挙したのよ。それに一応、ここ最近は大人しく謹慎していたようだし、特別補修にもなるから、あんたとしても悪くない話よ」

 「マジっすか!先輩が……」

 「田中先生の言う通り、概ねはそういった理由ね。他にも美濃関から出向した刀使達と鳳君は親交があると言う理由、後は…私がそれとなく貴方に期待しているから…かしら」

 江麻の口から出た期待というまさかの言葉に焔也は眼を白黒させる。

 「え?俺をっす……ですか?なんでまた?」

 「特に特別な理由は無いのだけれど、田中先生が気に掛けていると言うのが1つ、衛藤さん、柳瀬さん、そして安桜さんと特に親交が深いのが1つ。後はまぁ…何となく…かしらね?学院の長の発言としてはとてもじゃないかもしれないけど」

 そう言って笑う江麻に焔也は感極まる。

 「ありがとうございしゃぁす!期待に応えられるよう頑張りゃす!!!」

 そして勢いで返事をして妙子から怒られるのであった。

 「ん……ってか、今からって言いました?」

 「ええ、言ったわね。お願い出来るかしら?」

 「……うっす…」

そして結構な無茶振りだと気付き、江麻の笑顔に気圧される焔也であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉・刀剣類管理局本部

 

 電車と新幹線を乗り継ぎ数時間後、鳳焔也は本部へと持参した。

 「まさか、また此処に来るとはな……」

 本部庁舎を見上げる焔也。そこへ彼の後ろから声が掛かる。

 「焔也じゃネェカ!」

 「あ?申一郎!翼沙!」

振り向けばそこに居たのは綾小路武芸学舎の制服を身に纏う鎧塚申一郎と渡邊翼沙の2人の姿が…。

 「オマエ何でココに居んだよ?」

 「お前らこそなんで?!」

 申一郎の質問に同じく質問で返す焔也、その疑問は翼沙によって解決される。

 「真庭学長が以前から僕に関心があったらしく、本部長代理として指揮を執るに辺り、他の学校からめぼしい人間を呼び寄せたんですよ」

 「オレはその招集される人員のサポート枠に便乗したって寸法ヨ!」

 「正直、サポートはしてもらってませんけどね……」

申一郎は例によってナンパに忙しいようである。

 「そういやあ、技巧科やらからも人員がって言ってたな」

 焔也は美濃関での話を思い出した独り頷く。

 「寧ろ、真庭学長としては技師関係がメインでしようね。刀使は当然として、現在スペクトラムファインダーやS装備に関して早急なアップデートが求められています。本職の研究者以外の手も欲しいんでしょう、僕も既に幾つか調整を手伝わせて貰っています」

 「なるほどね~。そういやあ一応警邏科の連中も呼ばれてんだよな?なら戒将や龍悟も……」

 翼沙の説明に納得しながら警護科の生徒も招集されている事を思い出した焔也が辺りを見回す、しかしそれらしい姿は見掛けない。

 「それに関しちゃ色々聞いてるゼ。まず龍悟なんだが、近々平城からやたらと凄いヤツが来るって噂になってる。次に戒将なんだが……アイツはちと複雑でな親衛隊のゴタゴタで綾小路に帰った」

 恐らくはナンパの際に聞いたであろう噂を語る申一郎。翼沙はやや呆れ気味だ。

 「そうか、戒将の奴…妹の件で……」

 「そういうこった。ま、本人は近々戻るタァ言ってたガナ」

 「旧交を暖めるのはこの辺りで…焔也はまず本部長代理に着任の挨拶をすべきかと」

 「っと?!そうだな、悪い!また後で!」

 翼沙に指摘され発令所へと走る焔也、そんな彼を翼沙と申一郎は見送る。

 「何だかまた、大きな戦いが起きそうな気がします」

 「考え過ぎ…とは言い切れ無いナァ…最近ウチュウジンの連中大人しかったしな…」

 焔也が完全に見えなくなるまで見送った2人が呟く。

 

 

 ──彼等の予感は間も無く現実となる。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verターボカイ)

 

 俺達が鎌倉に集まっていた頃、戒将の奴は京都で荷造りに励んでいた。

 って何か黒い新幹線が変な奴を運んでやがる!?速ぇ!しかも妙な鎧の奴が俺を邪魔する!

 くそっ!誰かあの変なのを止めねぇと!

 

 俺が行こう。ターボライナーならば奴に追い縋れる。

 

 頑張れお兄ちゃん!

 

 む?この感覚は……?!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 

 激走!ダグターボ!!

 

 お兄ちゃんは強いんだから!!

 




 と、言う訳で次回ダグターボ登場!

 因みに今回新たに出たエデンの新メンバーはこの世界の宇宙から来た海賊の面子です。
 以前出たマンモスと合わせて元ネタはトランスフォーマーだったりします。
 マンモスことビッグローはビーストウォーズネオのビッグコンボイ。ヴァルトロンはビーストウォーズⅡのガルバトロン。グシアノースはマイクロン伝説のショックウェーブ。アスクラはマイクロン伝説のダブルフェイス。
 を各々リデコした者としてご想像下さい。
 ではまた次回。私はこれから仕事の時間が来るまで寝ますので


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第六十二話 激走!ダグターボ!!

 こんばんは、ダグライダーです。
 はい、管理者アルファが帰って参りました。本編中ではとある理由から実体化してます。
 ま、しょうがないね。
 後、作中時間は一応一週間経ってるので結芽ちゃんそこそこ馴染んでます。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉特別危険廃棄物漏出問題に沸く日本。

 ダグオンの若者達は続々と鎌倉の本部へ揃いつつある。

 そこへ忍び寄る新たなる脅威とは……?

 


 

 ━━京都府・綾小路武芸学舎学生寮

 

 親元から離れ暮らす為の生徒へと用意されている整端な建物の一室に1人の青年が荷を纏めていた。

 「これで最後か…」

 彼の周りを見渡せば四方を段ボールが置かれている。

 断っておけば、これは彼がこの学生寮で暮らす為に荷物を持って来たのでは無いと言わせて貰おう。

 寧ろ逆、彼はこれからとある場所へ引っ越しの為に荷造りをしているのだ。

 そこへ開きっぱなしの扉をノックする音が響く。

 其方へ目を向ければ、立って居たのは、この綾小路武芸学舎の学長…相楽結月であった。

 「…燕戒将、少し良いだろうか」

 訊ねておきながら半ば既に話す事が決まっていると言わんばかりの語調だ。

 「構いません。立ち話も何です、大したおもてなしは出来ませんが、上がって下さい。」

 「ああ…済まない」

 既にすっかり片付いたであろうフローリングの床に、仕分けした段ボールの中から座布団を2つ取り出し、寮備え付けの冷蔵庫から、ペットボトルお茶を取り出して紙コップに注ぐ。

 「こんな粗末な物しかご用意出来ませんが…宜しければどうぞ……」

 そう言って座布団の上に正座で座る戒将。結月はそんな彼に内心面を喰らってしまう。

 

 「………その…済まなかった」

暫しの沈黙の後、深々と頭を下げる結月。

 「……済まなかった…とは?」

 敢えてその言葉の真意を訊ねる戒将に結月は頭を下げたまま肝を冷やす。意を決し、頭を上げ戒将と視線を遇わせれば、目の前の青年は酷く落ち着き払っている様に見える。

 「…結芽の……君の妹の事だ。私は…「それでしたら謝罪は不要です」…!?だが!!」

 戒将が被せる様に発した言葉に結月は酷く狼狽える。

 「貴女は私があの娘の見舞いに来ない時、花瓶の花を替えて下さいました。貴女が何を以て妹に対しノロを注入したのかは私には推し量れない事です。ですが、既に終わってしまった以上、最早関係の無い事です」

 丁寧な口調から出る言葉は結月にとって拒絶の様に思えてならない。

 しかし戒将自身は多少の憤慨はあるものの彼女にこれ以上責任を負わせる気は無かった。

 

 あの夜の日、ダグオンとして戦場に居た戒将からすれば結芽は救う事が出来た。

 とは言え、彼女は公的には死亡扱いとなった為、夜が明け、本部へと燕戒将として戻れば、項垂れた此花寿々花から経緯を聞かされ、更に結月から結芽が入院していた当時、紫と共に見舞いに来てノロを渡した事を教えられる。

 無論、戒将自身は既に知っていた事なので取り乱す事も無く淡々と受け入れたのだが、それが却って心配されたのだろう。

 あれ以降結月は何とも複雑そうな表情をしていた。

 

 「考え直す気はないだろうか?」

 「考え直すとは…、この寮を出る事をですか?」

 「そうだ。聞くところによれば、本部に出向していた際の賃貸も解約したそうじゃないか、何か他に行く宛はあるのか?……それともご実家と折り合いが……」

 戒将が寮を出て一体何処で生活するのか気に掛ける結月、実家の話題を口にした瞬間、失敗したと思い到る。

 「生憎、あの家に戻るつもりは毛頭ありません。…何、ご心配には及びません。外に良い物件を見付けたので其方から通うように切り替えるだけです。流石に中退は厳しいですからね」

 苦笑をしながら語る戒将に結月はこれ以上何かを言えなくなる。

 「………そうか、分かった。何かあれば言ってくれ、出来る限り力になろう」

 結局、言いかけた口を閉ざし当り障りの無い言葉に切り替え席を起つ。

 「相楽学長…貴女の罪の意識で私に接しているのでしたら止めて頂きたい。それよりも貴女は学長として正しい有り様で居てください。それだけが今の私の……いえ俺の本心です」

 背を向け立ち去る結月に戒将は最後に巣の口調で語り掛けた。

 「…本当に済まない……」

 最後に顔を俯かせつつももう一度謝罪を口にし去る結月を青年は見送った。

 

 

 

 

 「…さて、思わぬ来客もあったが、こんなものか」

あれから改めて備え付けの家具以外全てを片付け、扉を閉め部屋のカーテンを閉める戒将。

 「さて、荷物の転送に何往復かかるか……それに学長にああ言った手前、形だけとは言え何処かに部屋を借りねばな。まぁ、先ずは相談だ」

 その言葉と共にダグコマンダーの転送システムを起動する戒将、数個分の荷物と共にダグベースに転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 

 ダグオン達の本拠地であるダグベース、そのメインオーダールームに絶叫が響き渡る。

 い"っだだだだだだっ!!

 苦痛に喘ぎ叫ぶ声の正体は少年…或いは少女だろうか?

 「叫び声が出るならまだイケるイケる♪」

そしてそんな彼ないし彼女へその原因となる拷問、石畳を膝に乗せる所業を行っているのは管理者ゼータ。

 「無理無理無理無理無理!!もうむりだからぁ!!」

 泣き喚く性別不詳をニコニコ笑顔で虐めるゼータ、そこへ可愛らしい闖入者が現れる。

 「おねーさん達またやってるー。それ楽しいの?」

 

 「メッチ楽しいよ♪」 「全っ然!楽しくない!!」

 新たな少女の問いにゼータと性別不詳は揃って声を挙げる。

 「何でボクがこんな目にぃぃいいい!?!」

 「え~?だって当然ぢゃん?ライアンだっけ?それを落としても自分で回収しないでダグメンズに頼むわ、いつの間にか雲隠れするわ、その間大変な事起きてたのに…自分は別世界でバカンスしてたんでしょ?そりゃこーなるし」

 「バカンスはしてないから!?最近見付けた新しい世界をその世界の中から観測してただけだからぁ!!?」

 「それをバカンスって言わずして何になるし?」

と言いながら新たな石畳を積むゼータ。そう、このダグベースで現在進行形で拷問を受ける性別不詳の正体は実体化した本来のこの世界の担当者であるアルファである。

 ゼータは彼?を虐めながら指を立て、顎に当てる。

 「何だっけ?その世界に自分と同じ名前の可愛い娘が居て?その上その娘が仕えてる娘も面白いから夢中になってたんだっけ?うん、やっぱ容赦無し♪」

 「ぐぅぅあぅううう!!」

 まぁ、詰まる所アルファの自業自得である。

 さて、そんな2人のやり取りを早々に無視してオーダールームのメインテーブルに突っ伏す少女、彼女の名は燕結芽。

 そう、あの夜死亡したとされる親衛隊第四席の燕結芽である。

 「ひまー。お兄ちゃん早くこないかなぁ」

 簡素な部屋着を身に纏い突っ伏しながら足をプラプラさせ、彼女はこの世で唯1人の兄を待つ。

 〈燕結芽、燕戒将がたった今いくつかの荷物と共に到着した〉

 そんな彼女を労ってかブレイブ星人が転送による戒将の到着を告げる。

 「ほんとっ?!」

その言葉にガバッという音と共に起き上がる結芽。上機嫌に椅子から飛び降りる。

 「ありがと、ブレイブ星人のおじさん!迎えに行ってくるね!」

 そうしてそのテンションのまま、オーダールームを飛び出し、転送システムがある部屋まで駆けていくのであった。

 「結芽っち、元気になったね」

 ゼータが感慨深く洩らす。

 「そりゃね、ボクが作った薬の理論は完璧さ!だからこれどかして?」

 「アルアルそう言うの()()は得意だもんねぇ。後ダメー」

 アルファが瞬間どや顔を晒すも即座にへたれる。

 そう、結芽はあの事件の後ダグベース内のメディカルルームで病巣除去を受け、ノロや病の影響が残っていないか等の精密検査を受けた後、直ぐに目覚めた。

 最初は驚き警戒心を顕にしていたが戒将が顔を覗かせた事により落ち着き、彼から事情を説明され、彼女のなりにかいつまんで理解、この1週間をダグベースで過ごして居たのだ。

 そして1週間をダグベース内で過ごす内に戒将以外のダグオンメンバーとは思いの外早く打ち解け、現在に至る。

 とは言え彼女は表向き死んでいるので、大手を振って外出が出来ず多少はストレスが溜まっているようだ。

 

 転送装置のある大部屋、そこに軽やかな駆け足の音と共に小さな影が躍り出る。

 「おかえりー!お兄ちゃん!」

 「むっ…!結芽、あまり走るな転ぶかもしれん」

 「平気だし、もう大分ここにも慣れたもん」

 兄妹が和気藹々と会話を交わす。そう、戒将が結月を責めぬ理由は結芽本人が生きているからと言う至極単純な理由なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・月軌道間

 

 火星の方向から地球に向け走る光が一条。

 それはまるで弾道ミサイルのような黒い円柱体、ソレが目指す先は日本。

 ソレは衛星の警戒網にすら探知されず密やかに地球へ降り立った。

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県・刀剣類管理局本部

 

 「いやぁ、真庭学長って結構話分かるんだなぁ~!」

 本部の食堂でテーブルを囲う3人の青年、1人は美濃関の制服を着崩し、2人は綾小路の制服を着用している。

 「オマケに美人だ。高津ガクチョーも美人っちゃ美人だったが如何せんヒスっぽいのが瑕だったからナァ」

 「まぁ、極一部真庭本部長代理に反感…と言うか文句を述べている刀使も居るみたいですけどね」

 テーブルを囲う3人…焔也、申一郎、翼沙が各々会話弾ませる。

 食堂のテレビでは中東の紛争地域で起きた謎の兵器失踪事件が取り沙汰されている

 「あー、あのちっこいのな…。まぁ、知らない仲じゃないみたいだし、多分大丈夫じゃね?……はぁん?紛争地域は不思議な事もあったモンだ」

 「その割りにダイブ隈が酷いことになってたがな、マァ、他の刀使も程度の差はあれ似たり寄ったりダケドナ。…国外のニュースなんか特に今気にするコトでもネェだろ?」

 そんな彼等のダグコマンダーからアラートが鳴り響く。

 「何だ?!」 「敵…でしょうか…?」 「どうせまたザゴス星人だろ?」

 この1週間で散発的に現れるザゴス星人のお陰で些か緊張感に欠ける申一郎だが翼沙は気になるのか立ち上がると、

 「兎も角ダグベースに行きましょう。確認だけでも無駄では無い筈です」

 「だな!」

 「しゃーねぇナ、付き合ってやるよ」

こうして3人は人目の付かぬ場所へ移動した後、ダグベースへと転送された。

 

 

 

 

 そしてダグベース。

 ダグコマンダーからのアラートで本部から焔也、申一郎、翼沙が、平城からは龍悟と編入試験がちょうど終了した撃鉄がオーダールームに揃った。

 「皆、来たか」

 「よぉ戒将、久しぶり。ついでに結芽ちゃん、元気か?」

 焔也が戒将に向け気さくに手を挙げ挨拶を交わす。

 「ふむ、確かに久しい相手も何人か居るが挨拶は後だ。今はこれを見てくれ」

 揃ったメンバーを見渡しながら戒将は中央モニターのコンソールを操作し映像を映し出す。

 「こりゃあ…何だ?黒い新幹線?」

 「現行のどの車両とも違いますね…これは……」

 「ってか…ナンダァ?あの車両に引っ付いてるの」

 焔也達3人は各々黒い新幹線の映像に対して個々にリアクションを表す。

 「……敵か。しかし、何をしている?」

 「何かしら運んどるんじゃろうか?」

 平城の2人は敵の目的を推察する。

 「兎に角、放置する訳にもいかん。出動するぞ」

 「「「「応!!」」」」

 「りょーかい!」 「御チビはワシと留守番じゃ」

 5人の出撃に結芽が混ざろうとして撃鉄に首根っこを掴まれ止められた。

 「えーっ!?」

 「いや、当然じゃろう?ワシは変身出来ん見習い。お前さんは今は御刀すら持たん非力なオナゴじゃ我慢せい」

 アルファが失踪中の間の責苦を受けているので一向に自分のダグコマンダーを貰えないのである。

 それ故に待機に甘んじる撃鉄。何せ襲い来る異星人が全て人間大とは限らない、彼もそこまで無鉄砲では無いと言う事だろう。恐らく…。

 「結芽…大人しく此処で待っていなさい。何、直ぐに解決するさ、終わったら少しだけ外に出よう。まぁ、基地周辺だけだが…」

 「うん…」

戒将に言いくるめられて渋々引き下がる結芽、因みに首根っこは掴まれたままである。

 「しゃっ!行くぜぇ!」

 焔也が音頭を取り仕切る。

 

 

「「「「「トライダグオン!」」」」」

 

 

 

 

 

 ━━東海道線・東京~名古屋間

 

 漆黒の新幹線が誰に憚らぬこと無く爆走する。

 その後ろ本来客車に当たる部位には貨物積載用車両となっており、そこには異形の鳥らしき生物が鎮座している。

 「オホホホホ!良いですぞ!良いですぞ!中々の速さではありませぬか?(ジェット)ーエース殿!このまま暴れ回りましょうぞ!」

 『オード星人、あまり余の上で騒ぐな。貴殿の漫遊の為に降りた訳では無いのだぞ?』

 「オホホ、分かっております、分かっておりますとも。麿の美しい羽根をばら蒔きこの星の猿に恐怖を与えるのが仕事でこじゃろう?」

 『あわよくば、この騒ぎに誘き寄せられたダグオンの始末も…である』

 「オホッ!お任せ下されぇ!」

 漆黒の新幹線に乗るオード星人と呼ばれる異星人はダチョウに近い形の宇宙人であり、その羽根は孔雀の様に鮮やかだが、特大の爆発物でもあるのだ。

 対してJーエースと呼ばれた新幹線の方もまたエデンの囚人である。

 そんな彼等が地球の叡知の結晶の上で爆走していると空から、そして彼等の走る後ろから、それを追う存在が現れる。

 「待ちやがれ!犯罪宇宙人どもぉぉおお!」

 Jーエースを追うファイヤーストラトスからファイヤーエンが吼える。

 『「来た…!」』

2人?の異星人がニヤリと嗤う。

 「まさか、奴等が新幹線の路線を利用するとはな」

 「ってか何ダァありゃ?ダチョウ…いや、孔雀?七面鳥か?」

 「現在の時速350㎞……E5系列よりやや速い速度でしょうか」

 「……後ろの異星人の羽根をばら蒔いているのか…?」

上空の四機、ターボライナー、アーマーライナー、ウイングライナー、シャドージェットの中で4人が口々に言う。

 「どちらにせよ、このまま奴等を走らせる訳にはいかん。シン前に出られるか?我々で挟み込みブレーキを掛けるぞ!」

 「アイヨ!」

アーマーライナーが漆黒の新幹線の前に躍り出ようと降下しながら路線に着陸しようとする。

 『馬鹿め!させぬわ!』

すると漆黒の新幹線が走る線路が本来の線路からはみ出しアーマーライナーを躱す。

 「アァッ?!ウッソだろ?!?」

 「喰らうでおじゃる!」

そして躱されたアーマーライナーにオード星人の羽根が見舞われた。

 「ぐぁぁああ!?」

 「「「「シンッ?!」」」」

 爆発に呑み込まれるアーマーライナー、黒煙が晴れる。

 「っ…てぇ…。オレは大丈夫だ!けど今のは結構効いた、このまま直ぐに追うのは無理だ」

 「解った。ビークルの調子が回復次第追ってこい」

 「そうさせて貰うゼ」

アーマーライナーを置き去りに異星人達を追う4人、ヨクは追跡しながらも思案する。

 「あの羽根、一見無秩序に放っているようなのにさっきはアーマーライナーに集中していた?…つまりある程度コントロール出来る……それに先程からばら蒔いている羽根は爆発に少し間があった……」

 等とぶつぶつ呟き思考していると突然リュウが声を荒げる。

 「…ヨク避けろっ!?!」

 「えっ?」

ウイングライナーの真横から飛来する鋼の拳、リュウからの忠告で操縦桿を切るもその大質量がウイングライナーに激突する。

 「ッァア?!」

 「「「ヨク!」」」

不時着するウイングライナー。そして飛来した拳は自らが来た道を辿るように元の場所へ収まる。

 「直撃。撃墜!得点取得!」

見ればそこには西洋鎧に現代兵器を足したような巨大な甲冑がいるではないか。

 『む?ほう、東監獄の長か。ボスからは独断専行したと聞かされていたが……どうやらこの星の兵器を己に取込み巨大化したようだ』

 Jーエースが甲冑を見やりその姿の変化を察する。

 「残敵、随時撃墜!」

 「ホホホ、何やら知りませぬが…ここはあの者を利用させて貰いましょうぞ。ささ、お早く逃げますぞ」

 そうして加速し逃亡する2人改め2体の異星人。

 「待て!」

 「閉鎖、妨害」

 恐らく笑っているのだろう上ずった声でファイヤーストラトスの行く手を阻む甲冑。

 「くそっ!?邪魔すんな!」

 その状況にリュウがカイへ提案をする。

 「……カイ、先に行って連中を追え。あの異星人は俺とエンで何とかする……。加速した連中に追い付けるのはお前のターボライナーだけだ、それに奴の狙いはどうやら俺たちのようだからな…囮が必要だろう…?」

 「リュウ……了解した。無理はするなよ」

 リュウからの提案の意図を汲み、余計な問答をせず逃げた敵を追うカイ。

 後に残るは不時着したウイングライナーを含む3機。

 「敵一体逃亡…。現敵勢力排除、後、追跡…撃破!」

 甲冑が目の前の貴様等を倒した後に奴をじっくり料理してやると嘯く。

 「そうそう簡単にやられるかよ!融合合体!」

 ファイヤーストラトスからエンが飛び出る。

 変型し巨人となったファイヤーストラトスへ蜃気楼の様に重なるエン。

 

 『ダグ…ファイヤァァアアアッ!!』

 

 ダグファイヤーとなり甲冑と相対する。

 

 『お前が俺達を倒すんじゃねぇ、俺達がお前を倒してやるぜ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、逃げた敵を追うターボカイ。ターボライナーを路線へ降ろし地上から加速して追跡する。

 『むむ?余に追い縋るか!オード星人!』

 「分かっているでおじゃる!」

 貨物積載用の車両の上から羽根を飛ばすオード星人。

 数多の爆弾となる羽根の猛攻がターボライナーを襲う。

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 彼等の様子をオーダールームから見守る者達は手に汗を握る。

 「い、いかん!このままではターボライナーもやられてしまうぞ?!」

 撃鉄が焦り叫ぶ。

 「ちょっと~、不味いんじゃないの?」

 「うぅ…戒将君がやられたら日本全国が更地になっちゃうぅぅう…痛たたた!」

 石畳を重ねつつアルファへ目を配せるゼータ、アルファは痛みに悶えているせいか最悪の事態を想像する。

 しかし、此処に1人だけカイの勝利を疑わない者がいる。

 「負けないよ」

 「ぬぅ?!」 「はぇ?」 「あぅう?」

 結芽だ。

 「あんな相手にお兄ちゃんが負けるはず無いじゃん!」

 それは兄の勝利を何一つ疑っていない強さの言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くっ…ぬぅぅ!まだ…まだぁぁあああああっ!!」

 唸り吼えるカイ。その時彼の魂に風が吹く。

 

 

 

「融合合体!」

 

 ターボライナーの操縦席からカイが左手を腰に宛てた状態で競り上がる。

 分離するターボパック。乗り込み口から座席前面、操縦席に掛かる車輪の部分が上に開き折り畳まれた腕が展開する。

 車両後部が伸び腿に当たる部位が露出する。

 そのまま腰ごと曲がり、シルエットが人型へと変化する。

 背中へ分離したターボパックが装着される。

 カイが立つ後ろから頭部が展開されそこへ融ける様にカイが消える。

 人型へと変型したターボライナーの頭部、その瞳に光が灯る。

 

 

 

『ダグッタァァァボッ!』

 

 

 『「な…なにぃぃい?!!」』

 仕留めたと思った相手が無事な上に変型したとあって彼等は驚愕に声を挙げる。

 『さぁ、此処からが本番だ!覚悟しろ異星人共っ!』

 ダグターボが右手を突きだしJーエースとオード星人に指を指す。

 『ちっ、想定外だぞこれは…』

 「ぐぬぬう!生意気でおじゃる!クエェェェエエエエッ!!」

 怪鳥音を挙げオード星人が羽根を無尽に飛ばす。

 『もうその攻撃は見切った!タァァァボダァァッシュッ!』

 バックパックのターボパックが分離、ボード状のパーツが出てそこへダグターボが乗る。

 スケート或いはサーフィンの要領で羽根が爆発するよりも速く躱し肉薄する。

 『馬鹿なっ?!余に追い縋るどころか並走…いや追い抜く勢いだとぉぉおお?!!』

 『喰らえぇぇ!』

 ダグターボの拳が唸る。ターボピストンナックル…強力な拳の一撃がJーエースを巻き込みオード星人を打ち抜く。

 「ギョェェエエエ!?!?」

 『ま、不味いこのままでは…!』

 悲鳴を挙げるオード星人、焦るJーエース。しかしダグターボは容赦しない!

 『止めだ!』

 その言葉と共にターボパックが背部へ再び装着、ダグターボは右手を装着されたパックの方へ伸ばし、

 

 『ブレイクホィィィイルッ!!』

 

 巨大なホイールタイヤをまるでボーリングの様に投げつける。

 『くっ……こうなれば致し方無し。悪く思うなオード星人、貴様が余に乗っかっていたのが運の尽きだ…チェンジ!

 「何をっ?!…!!」

 Jーエースが何事かを呟くとダグターボからは影となる形で漆黒の新幹線右側が展開し腕を出す、その腕でオード星人を盾の様にして自身とブレイクホイールの間へ自然に滑り込ませる。

 そして──

 

 「オノレェェェエエエエ!?良くも謀ったなぁぁあああ!!

 

 その断末魔と共にブレイクホイールに羽根を粉砕され、身体を切り裂かれ爆発するオード星人。

 Jーエースは再び新幹線状態に戻ると大爆発に紛れ空へと昇っていった。

 

 

 

 『妙な手応えだったが……一応は倒せた様だな』

 敵の消滅を見届けるダグターボ、そこへダグベースから喜びはしゃぐ声が届く。

 『すごい!すごい!すごい!お兄ちゃんすっごく格好良かった!!!』

 ビークルと一体化した頭に妹の声が木霊す。

 次いで撃鉄が関心したように訊ねる。

 『ダグターボ、お主、一体どうしてあの爆発の中無事だったんじゃ?アーマーライナーさえ止まったと言うのに』

 『そう難しい事では無い。奴の羽根が爆発する方法が二種類あったというだけの事だ』

 そうして彼は説明を始める。

 オード星人の羽根は目標に着弾して初めて爆発する状態とオード星人自身がタイミングを見計らって着火爆発させる手段を取っていた。

 漆黒の新幹線から街中にばら蒔いていた時は前者、自分達に追われていた時は後者を使用していたのだ。

 そしてJーエースの上から羽根を飛ばしていたのでターボライナーが加速して追跡して来た際にタイミングを見誤り直撃はしなかった。

 逆に爆風で更に加速し、更にはカイの想いに呼応し融合合体に至ったのである。

 『へぇー』『成る程のぅ』

 結芽はあまり興味無いのか適当に、撃鉄はそれとなく理解したのか深く頷いている。

 『話は此処までだ。俺は皆の援護に向かう』

 再びターボパックをボード状に変型させるダグターボ。

 そして彼は仲間の元へ向かう。

 

 此処に新たなる鋼の巨人──蒼き疾風の戦士が誕生し、ダグオン達はまた1つ頼もしくなったのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation ver融合合体ダグターボ)

 

 オード星人、そして漆黒の新幹線との戦いを演じている間、仲間達は謎の甲冑を前に奮闘していた。

 何とか敵を退けるダグファイヤー達、その後我々は折神紫と会談を設ける。

 

 私は……生きているのか……。

 

 我々は貴女と話がしたい。

 

 そしてエデン監獄では異星人達の暗躍が加速する。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 会合、ダグオンと折神紫。

 

 次回も…「早くこの石どかしてぇぇええ!」……少し話をしないか…?

 「あぇ?あっ!?痛い痛い痛い痛い痛いめり込む指が頭にめり込むぅぅぅうう!?!」

 




 この後、アルファは戒将のアイアンクローの痛みに悶えながら再びゼータから拷問を受けます。
 詳しい経緯は幕間作って書こうかなぁ?
 ともあれ次回でお会いしましょう。


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幕間 帰ってきたアルファ…死す。


 取り敢えず書きました。
 個人的には今回の幕間はギャグ回的なつもりだったんですが…果たして……。
 序でにパイロット版の方にも新しく1つ上げようかなぁとか思ったり


 後に鎌倉特別危険廃棄物漏出問題と呼ばれる夜から1日経って次の日。

 ダグベースに奴が帰って来ていた。

 《ふっふっふ~、帰って来たよ!我が家ならぬ我が世界!》

 我が世界等とほざいているが、そもそも管理者は基本監視が仕事で時折起きるイレギュラーに対応するのが業務なので、この男……男?は仕事を全然していない事になる。

 《さぁ、みんなぁ!ただいまだよぉー!!……およ?》

 どういう理屈かは不明だがダグベースのある洞窟からいきなりメインオーダールームに移動したアルファ。

 肉体が無いからこその技である。

 そしてそんな彼?がオーダールームで見た光景は珍しく出現しているブレイブ星人、ダグオンの若者達、そして……実体化した管理者ゼータと同じく実体化している管理者デルタ。

 《あぅるぅれぇぇぇええええ?!え?ゼータ?なんで?デルタも??なんでぇぇええ?!!》

 「お帰りぃ…アルアル~」

 《あ、ヤバい。ゼータがアダ名でボクを呼ぶとかマジヤバい…》

 管理者間の役職上、アルファはトップになるのだが、上下関係は当の昔に存在しない。

 それだけアルファが好き勝手やっていた証拠であるのだ。これでエデン監獄を引き込んだベータよりもマシと言われるのだから世も末である。

 「あたしがどーして此処にいるのか……ワ・カ・ル・ヨ・ネ?」

 《あ、え、その……》

 「わかるよね?

 《ひゃい……》

 やはりどんな世界でも男性は気の強い女性の下に敷かれるのだろうか…。

 「デルタぁ、お願い~♪」

 ゼータが隣に立つ黒衣のフードを被った女性に声を掛ける。

 「我らが長たるアルファよ、己が招いた罪を裁く時は来た!」

 (((…厨二病か!)))(((大袈裟な…)))

 各々に反応が別れたダグオンの若者達であった。

 やたら行々しい言い回しで何処かから取り出したのかフリントロック式の拳銃をくるくると回転させながらアルファが居るだろう方向に向け引鉄を引く。

 《や…ヤバっ?!》

 放たれた弾丸は宙に溶けるように消え失せ、暫くした後に空間が歪むと、其所には1人の少年…いや少女?どちらとも見える子供が其所に立っていた。

 「あ…あぁ…ああああっ!!?」

実体化した己を見て叫び項垂れるアルファ。ゼータはそれを見て更に笑顔を深める。

 「為すべき役割は果たした。この身は次なる断罪の時まで数多の世界の行方を見届け揺蕩う放浪者へ再び舞い戻るとしよう」

 そして用は済んだと言わん口調でデルタが掻き消える。

 

 

 「あの姉ちゃんマジか……」

焔也が何ともいたたまれない顔でデルタが消えた空間を眺める。

 「どうにも言い回しが一々大僥だったな」

戒将が素直に感じた事を洩らす。

 「見た目はかなりの美女なんだったんだがナァ…」

申一郎ですら歯切れが悪い。

 「彼女が使っていた銃と弾丸は実に興味深いです!」

翼沙は別の事に夢中だ。

 「……程度の差はあれ、やはり管理者とやらは……おか…個性的な連中だな……」

 一瞬おかしい奴等と言いかけて言い直す龍悟。

 「むぅ、ワシには黒いフードのオナゴに見えたがお主らはどうだ?」

 自分が見えていたデルタの姿が他のメンバーにどう見えたのか気になり訊ねる撃鉄。

 因みにであるが答えは全員、"同じ姿に見えていた"である。

 これはデルタが、今、其所で項垂れているアルファ含めゼータとイプシロンから冗談混じりで提案された姿を真に受けて実体化するようになったのが原因だ。

 

 閑話休題

 

 

 兎も角、事の下手人アルファは先程から項垂れたままふるふると震える。

 「なんで?……なんでよりによってみんなの前で実体化させるのさぁ?!」

 怒鳴るアルファ。その姿はイマイチ迫力が無い。

 「えー?割りと残当だと思うけど~?だって、曲がりなりにも自分が中心に管理する世界をほっぽってどっかに消えるのはヒトとしてどうよ?」

 絵面的にはギャルが子供に真面目に説教している形がシュールとも取れなくはない。

 「…うっ?!それは悪いと思ってるけど……でも仕事を全くしていなかった訳じゃ無いよ!!?新しい世界(雲隠れした先)を見付けたし、そこも割りとカオスになりそうだから監視の為にもある程度その世界を知らなくちゃならなかった訳で……」

 「結果、この子らほっぽって遊んでたんだよね~?」

 とゼータに言われ途端に眼を游がせ黙りこんだアルファ。全くもって図星であった。

 「あんたが居なくなったから撃鉄ちんは一向に正式なダグオンになれないし、ライアンだったかは結局仲間に出来なかったらしいし、この子ら大変だったんだし!」

 「それは……本当に悪いと思ってるけど、ほら結芽ちゃん助かったんだよね?それにボクだってただ遊んでた訳じゃ無いよ!?ライアンが暴走したりして万が一仲間にならなかった場合も考えて予定より早く無限砲を完成させようと頑張ったし、シータになるべく迷惑かけないよう自分で素材を集めたし!頑張ったんだよ!!」

 かなり言い訳がましく捲し立てるアルファ、ゼータは笑顔に青筋と血管を浮かべながら言う。

 「正座」

 「はい…」

 「シーちゃんにはあたしも迷惑掛けちゃってるからあんたの事そんな言えないけど、あんたはせめてもう少しこの子らには迷惑をかけないようにするし!!」

 「はい……」

 「あんたは暫くその姿でいること!そんでもうちょい謙虚にこの子に接すること!」

 「はい……申し訳ありませんでした…」

すっかり萎縮したアルファ、その姿は親に叱られる子供その物である。

 「とりあえず、罰としてあたしからのゴーモンとこの子らに対しての謝罪ね」

 「えっ?!拷問とか聞いてな……なんでもないです」

 突如出た拷問という言葉に反論しようとしてゼータの顔を見て即座に頭を下げるアルファ。

 そしてダグオンの若者達に向き直り脂汗とも冷や汗とも取れる汗まみれの蒼白な顔で謝罪をする。

 「この度はわたくしの不手際で貴殿方に多大な迷惑を被り、誠に申し訳ございませんでしたぁっ!!」

 そうして思いっきり頭を床に擦り付けるアルファ、最早威厳等無い……いや、割りと最初から無かったが……。

 

 

 流石にこれにはダグオン達もちょっと可哀想になったのか、謝罪を受け入れて頭を上げさせたのであった。

 

 

 まぁゼータからの拷問は取り止めにはならなかったのであるが。

 以降、一週間。ゼータによる拷問が続き、目を醒ました結芽にまでそれを毎日目撃され続けアルファの心はボロボロに磨り減ったのであった。

 

 





 因みにデルタの姿は某赤髪の冒険家が主役のゲーム最新ナンバリングに出てきたとあるキャラクターがモデルだったりします。
 後序でにゼータは各々、焔也にはデレ◯スの美◯っぽい感じに、戒将にはFG◯のな◯こさんっぽい姿に、申一郎には◯ャル子ちゃんぽく、翼沙にはスト◯ラの浅◯に、龍悟にはカグ◯の◯季に、撃鉄にはシ◯二マスの愛◯ちゃんぽく見えています。
 アルファですか?デルタに固定式の弾丸を撃たれたので現在は頭文字繋りでアスト◯フォっぽい姿です。

 飽くまでもぽいです。←(重要)


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第六十三話 会合、ダグオンと折神紫。

 おはよーございました。休みなのでゆっくり寝たいと思います。

 今話の紫様、ちょっと乙女回路がギアを上げてますが元々割りと可愛い人ですし、タギツヒメは抜けましたし、サポートカードのパジャマ姿のギャップにやられて前々からちょっとこんな風に書いてみたかったのでやっちゃいました。テへ(。-ω-)



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 おぉ…ゼータ、貴様、実は案外まともだったのか…!?

 それなのに私をからかいデルタにいらん事吹き込むのは何故なのか…うごごご。

  それはそうと、遂に二人目の融合合体を成功させたダグオン!

 ダグターボが敵を倒した一方で監獄主と戦うダグファイヤー達は──

 


 

 漆黒の新幹線とオード星人を追うターボライナーと爆発のダメージにより遅れるアーマーライナーを除く3機、ダグファイヤー、シャドージェット、ウイングライナーが甲冑の異星人と相対する。

 「敵撃滅!最高得点、獲得!!」

 立ち向かおうとする彼等を見て何が可笑しいのか侮蔑を込めながら嗤う甲冑。

 「……何だ?奴から感じる殺気、妙だ……」

 リュウが甲冑の奥から感じるモノに懐疑を抱く。

 「あの異星人の装備、所々我々の星の技術体系が……まさか最近紛争地帯で兵器が行方不明になっていた原因はっ!?」

 ウイングライナーを立て直しながら甲冑を解析していたヨク。そして判明した事実、それは最近勃発していた紛争が勃発していた地域で起きた兵器失踪事件の犯人が目の前に居るという事であった。

 『つまりはあの野郎がこそこそ海外で盗みを働いて、俺達と戦う準備が出来たから、こうして今、目の前に現れたって事かよ!?案外、涙ぐましい努力してんじゃねぇか』

 甲冑から視線を外さないよう警戒を厳にしながらヨクからの報告に吐き捨てる様に嘯くダグファイヤー。

 甲冑が動く。両の鉄腕が火を吹き始める。

 『ありぁ、ウイングライナーをぶっ飛ばした時のやつか!?!』

 まるでスーパーロボットのロケットパンチ、ミサイルを取込み推進力を獲た鎧の籠手がダグファイヤーに襲い来る!

 『殴り合いは得意なんだよぉおっ!!』

拳に炎が点り、飛来する籠手を迎え撃つ。

 ファイヤーナックルとぶつかり合い弾け飛ぶ両の鉄腕。甲冑はそれを気にするでもなく飛ばして肘から先が消えた腕より銃火器を出現させる。

 「銃撃、連射。開始!」

今度はまるでガトリングガン、数百の弾丸がダグファイヤーと2機のダグビークルを襲う。

 「…ちぃ!」 「くっ…!」

空を飛ぶ2機が大きく旋回して躱すなか、ダグファイヤーは腕を交差させながら甲冑へ突っ込む。

 「驚愕!?馬鹿?!」

融合合体で鋼の身体を得ようと痛みを感じていない筈は無いだろうに構わず突進して来るダグファイヤーに甲冑は理解出来ないモノを見たような反応で瞠目する。

 『うっせぇっ!?!誰が馬鹿だっ!馬鹿って言う方が馬鹿だぁああっ!!!』

 子供の様な理論を展開して甲冑に組み付くダグファイヤー、そのまま胸のスターシンボルが光を発する。

  『スタァァアア!バァァァアアアンンッ!!』

 甲冑とダグファイヤーの間に火球が生まれ爆発する。

 吹き飛ぶダグファイヤー、爆煙に包まれる甲冑。

 「……油断せずに畳み掛ける!」

 「ええ!」

煙が晴れる時を待たず、搭載火器で攻撃を開始するリュウとヨク。

 対してそれに抗うように爆煙の中から砲弾が飛び出す。

 しかし当てずっぽうの狙い故、ダグオン達は容易く躱す。

 果たして煙が晴れた先に居たのは両腕の火器が破損し、胴板が剥がれ鎖帷子が露出する甲冑。

 『あん?何だありゃ!?』

それを見たダグファイヤーが驚きに顔を歪める。

 甲冑の異星人、その中身が露出したボロボロの鎖帷子が風に揺れる。その中身は空洞。

 「中身が無い……そういう種族なのか、或いは──」

 「……本体がここに居ないのか…か…」

ヨクとリュウが甲冑の状態を見て推測を口にする。

 と、其処へ遅れ馳せながらにアーマーライナーが汽笛を鳴らしながら到着。

 そして敵を追って消えたカイの駈るターボライナーが何とダグファイヤー同様、人型となって此方に向かって来るではないか。

 「待たせたナァ!!」

 『皆、無事か?!』

それを見やって甲冑は不服を大顕にした語長で言葉を呟く。

 「戦闘…継続不能。被害甚大、肉体、廃棄。……¥$…お…℃#…ボ…§£…え…#〆…テ……※@%…ろ…」

 そして背中から戦闘機の翼を生やし飛び立つ、その内限界が来たのか空中で甲冑は爆散した。

 『終わった…のか?』

 『少なくとも、これ以上敵が現れ暴れる事は無かろう』

 「って言うかオマエ!?融合合体出来るようになったのかヨッ?!」

 「おめでとうございます…と言うべきですかね?」

 「……その姿、ダグファイヤーの例を鑑みるに名はダグターボか…」

 ダグファイヤーが少々心元無さそうに見回す。

 それをダグターボが落ち着かせる様に語り掛け、対しシンは融合合体を果たしたその姿に声を張上げて驚きに沸き、ヨクがすっとんきょうととも取れる感想を口に出してリュウがダグターボの名前をその物ズバリと当てて見せる。

 『これ以上の長居は不要だ、撤収するぞ』

 『「「「了解」」」』

 既に全ての敵は倒された、余計な長居をして報道機関に絡まれたく無い彼等は手早くダグベースへと撤収した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 「いやぁ~まさか戒将が二人目の融合合体成功者になるなんてな!」

 焔也が上機嫌で椅子にふん反っている。

 「自分でも驚いている。だがそのお陰で敵を倒せた、何より戦略の幅が広がるのは良い事だ。これでお前だけに巨大な敵を任せる負担も少なくなるだろう」

 戒将が感慨深く言葉を紡ぎながら焔也へこれからの展望を語る。

 「こりゃオレ達もウカウカしてらんねぇな!」

 「……全員が融合合体可能になれば、これからも襲来するだろう…凶悪な敵に対抗も出来る……」

 申一郎と龍悟が各々に心意気を口にする一方で翼沙は1人コンソールを弄ってデータログを確認していた。

 「あの漆黒の新幹線は明らかに異星人の技術の代物……いえ、もしかしたら機械型の異星人その物では?だとしたら大国が躍起になって飛ばした地球外監視衛星の警戒網に全く引っ掛からない程の隠密性、更にあの甲冑も一体何時地球へ降下したのかもしかしたら彼等はあの夜から地球に降りていた?だとすれば彼等以外にも異星人達が………」

 そうしてブツブツと呟きながら思考に没頭し始める翼沙。

 「翼沙おにーさん何か怖い……」

 すぐ側に座る結芽が彼女の人間関係の中で今までに居ないタイプに少々顔を引き吊らせている。

 「むぅ、相変わらず何を言っているのか全く分からんのう」

 撃鉄は理解を放棄した。

 〈勇者諸君、メディカルルームに居る彼女が意識を取り戻した〉

 そこへブレイブ星人が治療中だった折神紫が眼を醒ました事を伝える。

 

 「紫さま起きたのっ?!」

 

 結芽が向日葵もかくやと言う満面の喜びで跳び跳ねる。

 「落ち着きなさい。嬉しいのは解るが、お前を面会させるのは無理だ」

 しかし戒将がやんわりと彼女の肩を抑えながら会わせられないと告げる。

 「なんでっ?!」

 「お前と違い、折神紫には我々の正体を伏せる。その為にも、少なくとも俺の正体に直結するお前を彼女に会わせる事は出来ないんだ」

 「うっ……うぅ~……!」

 この1週間でそれとなく繰返し教え込まれた事や兄が迷惑を被る可能性に結芽は開いた口を所在無さげに閉じながら唸る。

 「で、紫ちゃんとは誰が話すんだい?」

天井から吊るされた縄にゼータにより亀甲縛りでくくりつけられたアルファが真面目な顔で若者達に問う。

 「俺は…なんかボロが出そうだからパス!」

焔也は早々に降りる。

 「オレも何か脱線しちまう可能性がアリっちゃアリだから…ホントは死ぬほど話したいがパスするゼ!!」

 今にも血涙を流しそうな顔で自ら候補から外れる申一郎。紫の実年齢に見合わぬ若さは彼の好みの問題もあって存外どストライクなのである。

 「そもそもワシは変身出来んから候補にはならん」

撃鉄が己の立場をわきまえ推移を見守る。

 「……俺は監視はするが…話し合いは難しいだろう……」

 龍悟は同席こそすれ会話を交える気は無いようだ。

 「ふぅ、元より分かりきっていたが…そうだな彼女との会談は俺と、翼沙!「は、はい?!」…翼沙の二人がかりで行うとしよう」

 思考に没頭していた翼沙を一喝で呼び戻し結論を出す戒将、既に異論は無い。

 「では行ってくる」

その言葉と共にオーダールームを退室する戒将、翼沙も慌てて後を追う。龍悟は気付けば既に居なかった。

 

 

 

 ━━ダグベース・メディカルルーム

 

 常に清潔さを保つ白を基調とした部屋には地球ではあり得ない治療ポッドや医療機器が鎮座している

 その中でベッドから半身を起こし、今己がおかれている状況に困惑の色を浮かべながらも緊張感と適度な警戒心を持ちつつ、何が起きても対応出来るように身体に力を込める女性──折神紫は扉の向こうから感じる人の気配に身構える。

 果たして入室して来た人物は人間ではなかった。

 いや、厳密には人間なのだが、顔が判らない。

 色とりどりな装甲を纏う3人の人影はタギツヒメに取り込まれていた中で記憶にある。

 タギツヒメすら予想して居なかった存在、隠世の技術とはまた別の…別次元の技術力を持つ戦士達──

 「ダグオン…だったな…」

彼等が入室してから一番に声を発したのは紫であった。

 

 「大事無いようで何よりだ折神紫」

紫から見て中央に居る青い戦士が近づいて語り掛けて来る。

 「私を助けたのはお前達か?」

 「はい、あの夜、タギツヒメが討たれ日本全国にノロが大量に漏出する事になりました。僕らは異星人の掃討にあたり、その過程で仲間の一人が倒れる貴女を見付け、ここまで連れて来たのです」

 紫から見て左側に居る白い戦士が丁寧な口調で説明してくれる。

 そして最後右奥に居る紫の戦士は扉の近くに背を預け黙って此方を見ている。

 「そうか…(最後の一人は私の監視か…ふっ、最早脱け殻となったこの身に、荒魂と徒手空拳で渡り合う存在と御刀も無しに戦う事など出来はしないのに。熱心なことだ)」

 胸中で自虐的に笑う紫、それを知ってか知らずか、青い戦士が質問を訊ねて来る。

 「先ず聞くが、あの夜の記憶はあるのか?」

 「ある。私の中に居た筈のタギツヒメが抜け出た事も理解している。誰が私を止めてくれたのかも」

 「ふむ。ではタギツヒメが抜けた今、ノロを大量に集めるという事はもう無い…と?」

 「あの時既に私は殆どがタギツヒメに支配されていた。ノロを一極管理するという方針もタギツヒメが全面に出ての事だ」

 「…………正直、我々は貴女に人間としての意識が残っているとは思わなかった。何故貴女は無事だったのか?」

 これまでの質問と違い僅かに考える間を取って訊ねてくる青い戦士。

 そんな彼の質問にどう答えた物かと思案する紫、暫しの沈黙の後、訥々と語り出す。

 「詳しくは解らない。だが、私の中に居たタギツヒメの意識は一つでは無かった。それは恐らくは二十年前からそうだった」

 「それはつまりタギツヒメの人格は他にも複数存在すると言う事ですか!?」

 白い戦士がいきなり話題に飛び付く、そのあまりの勢いに思わず驚き小さく漏らした悲鳴がまるで生娘の様だった事に気が付き、紫の頬がほんのりと朱に染まる。

 「落ち着け…済まない彼は少々こう言った未知や不可思議な事柄に対し好奇心が強くてな」

 どうやら相手の戦士達は気付かなかった様で、紫は内心でほっとした。

 「いや…それよりも貴公らは私を裁くつもりは無いのか?」

 覚醒してからこの部屋で彼等を視た時から思っていた事を口にする紫、その表情は裁判の判決を待つ被告人のよう。

 「貴女が何を期待しているのかは知らないが…此方にその気は無い。貴女の過去はある程度調べて知っている。無論、何故貴女が二十年前、大荒魂をその身に受け入れたのかもだ。だが、もし罪悪感を抱いている、と言うのであれば…それは刀使としての役目を果たして償って欲しい」

 しかし下された判決は予期していたモノではなく、優しさと慈しみを込めた上での生きて務めを果たせと言うモノ。

 「勿論、進んで前線に立って戦えと言う事では無い。現状、刀剣類管理局は貴女の妹君が台頭しているが、貴女の影響力は推し量れない。例えそれがタギツヒメの手によって作られた物であってもだ」

 「……中々、厳しいのだな、貴公らは…そうか…朱音が…いや、考えるまでもなくあの後を思えば当然か」

 眼を閉じ朱音が奮闘する姿を思い浮かべ笑みを浮かべる紫。

 「質問は以上だ。これより一日貴女の経過を診た後、舞草に貴女を引き渡す事になるだろう」

 そう言って離れる青い戦士、紫は咄嗟に手を伸ばし彼を呼び止める。

 「待ってくれ!此処は一体何処なんだ?」

恐らく彼等の拠点の1つであろうとは考える紫、対して青い戦士の答えは隠すつもりが無いのか明確だ。

 「此処は我々ダグオンの本拠地、ダグベースだ」

 「!?」

 「驚くのも無理はありませんね。ですが、此処は簡単には見つかりませんし、貴女の連れ出す時も特殊な手段を用いるので万が一は在りません。発信器等も意味を為しません」

 青い戦士が正直に答えたのも以外だが、白い戦士の言い様に更に眼を剥く紫。

 ──成る程ならばタギツヒメがあの時奪われたアンプルを見付けられなかった筈だと妙に納得してしまった。

 「他に質問が無ければゆっくりと休むと良い」

青い戦士が改めて此方を気遣うコトバを掛ける。

 そうして青い戦士、白い戦士、最後に紫の戦士が退室した後、外側からロックを掛けたのだろう短い電子音が響き、部屋は再び静寂に包まれる。

 「……あ、名を…訊きそびれてしまったな…」

ダグオンと言う恐らくはチームとしての名では無く、個人としてのモノを訊けなかった事に僅かに後悔する紫。

 特に青い戦士が頭の隅で気になっている。

 そんな年甲斐もなく乙女染みた思考をした自分が少しだけ恥ずかしくなって横になって布団を被る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本の何処か

 

 「ちっ!何を考えているのかあの鎧野郎!」

人気どころか動物の気配すら無い真新し洞窟で青いマンモスことビッグローが悪態を衝く。

 「まぁまぁ、落ち着きなよ?ウン。あのブリキ野郎は倒されたみたいだからさ。ウン」

 アスクラがそんなビッグローを宥める。

 「船長のお陰でこっち仕事が捗ってんだからさ、カリカリしなさんな。ウン」

 話題に出た船長ことヴァルドロンは地球上のマシンとは思えぬ姿に変形しドリルを使って洞窟を掘り進める。

 「確かにな、戦闘用に調整されたザゴス共に掘らせるよりも効率的だ。何せ俺様が掘った方がまだ進んでた程だからな!」

 イライラしながら周りに屯するザゴス星人を睨むビッグロー。

 「適材適所だよ、ウン。船長がスキャンしたビークルが良かったのさ、ウン。お前さんは動物をスキャンしてしまったからね。ウン」

 「グハッハッハ!それでも此処まで掘り進めていたのはお前の功績だぞ副船長!やはりお前は吾の優秀な右腕よ!」

 ヴァルドロンがマシンの状態で掘り進めながらビッグローを褒め称える。

 「だがなアスクラ、1つ訂正せねばならん事がある」

 そしてアスクラへ彼が言ったであろう言葉を訂正せんと言い放つ。

 「あの甲冑の監獄主は死んではおらなんだ」

 「?どういう事だい?船長?ウン。あれは確かに空中で爆発した、ボロクソになってたし火花も散ってた、オイラ達なら間違い無く死に体だ。ウン」

 アスクラはヴァルドロンの言葉に納得がいかないのか拗ねた様に聞き返す。

 「クライアントから聞いた話では奴の異名は傀儡宇宙人だそうだ。そして奴はあの身体が実体では無い」

 「それってつまり……ウン」

 「よヨ…ウハH…まだ…イI生きテ…ゥウウ!」

グシアノースが結論を口にする。

 

 宇宙海賊達は請け負った仕事に従事しながら忌々しい監獄主に呪詛を吐くのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verウイングヨク)

 

 漆黒の新幹線と異星人コンビ、そして甲冑の異星人の襲撃から一日経ち僕は本部へ戻ります。

 

 ……俺も丁度、着任する日だ…。

 

 ワシも居るぞ!!

 

 平城から龍悟達が参加し更に賑やかになる本部。そんな中で僕は播さんの研究からS装備に新たな活路を見出だします!

 

 とか翼沙が研究に没頭しておる内にまた新たな異星人じゃと?!………なんじゃありゃぁあ?!?鮫か?!鮫が空飛んでおるぞぉお?!分裂したぁぁあ!!?

 

 いけないこのままでは!?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 飛翔!ダグウイング。

 

 僕の新戦術をお見せしましょう!

 

 

 

 




 お叱りがあれば受けます!しかし後悔は無い!元々瀬戸ちゃんのキャラは好きなので仕方無いね!

 後何気に判明した甲冑の星人としての異名、はい彼は度々メレトが口にしていた様に監獄主の中では実はかなりの若輩です。ついでに小物でもあります。
 彼はまた出番があるのでギガンタースよりは厄介さは上です。
 ではまた次回


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第六十四話 飛翔!ダグウイング。


 おはすみなさい。
 ダグウイング回、敵のコンセプトは正にサメ映画的なアレ。
 今回再びとじともサポメンが登場。
 ついでに漆黒の新幹線の詳細が少しだけ明らかに!


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 甲冑の異星人を辛くも退けたダグオン達。

 だが、奴は死んだ訳では無かった!

 しかしアルファの奴……いやよそう…。

 ダグオン達は折神紫と言葉を交える。

 そして暗躍に捗る異星人達は──

 


 

 ━━火星圏衛星軌道・エデン監獄

 

 地表のゲートで何かを待つように佇む2つの影が空を見上げる。

 すると漆黒の新幹線──Jーエースがゲート内へ入場して来るではないか。

 2つの影はそれを確認すると勢い良く駆け出し、

 『兄ちゃん!』『兄貴ー!』

 思いっきり抱き着いた。

 『おぉ!弟達よ!心配掛けたな!』

 端から見れば新幹線に人型のロボットが纏わり着いている光景はシュールでもある。

 『心配しんたんだな兄ちゃん!』

 『済まなんだなXーセブン』

 『HEY!兄貴!オレっちも心配してたんだZE!』

 『そうであったなRーマック』

 漆黒の新幹線は彼等に抱き着かれたまま、器用に変形し人型になると改めて兄弟で抱き合い再会の喜びを分かつ。

 『改めて出迎えご苦労。ところで、余とすれ違いで何か出ていくのが見えたが?』

 Jーエースは入場する前に見えた光景を弟達に訊ねる。

 『それはBOSSのORDERで出陣したピシャ星人だZE!』

 『メレト翁がオード氏の失敗で受けた汚名を果たすために推薦したんだな』

 弟達が息の合った呼吸で間髪入れずに答えを返す。

 『ほぅ、ピシャ星人?ならばあの星も下手をすれば今回で終わるやもしれんな』

 

 

 

 

 ━━地球、日本・神奈川県鎌倉、刀剣類管理局本部

 

 折神紫との会談から一夜明け、焔也、申一郎、翼沙は本部へと戻っていた。

 各々が本部で与えられた役割をこなす中(申一郎はナンパの片手間ではあるが)、翼沙は本部長代理である真庭紗南へ報告をしていた。

 「──と言う訳で、12%しか感知精度を拡大出来ませんでした」

 報告する翼沙の言葉を聴きながら紗南は手にある報告書、【改良型スペクトラムファインダー・成果報告】を捲りながらノロ…延いては荒魂の探査感知反応の改良点についての部分を読込み感心の声を挙げる。

 「ほう、いや見事なモノだ。この数日で12%も精度が上がったのは凄まじい事だ……惜しいな、お前が学生じゃなけりゃウチで即戦力としてスカウトしたのに」

 長船が女学院である為、翼沙を手元に置けない事を渋る紗南。

 翼沙は苦笑しながら眼鏡を直し、

 「あはは…多分な評価ありがとうございます。では僕は研究棟でS装備の改良検証に戻ります」

 「ご苦労、次も期待してるぞ」

 翼沙が発令室から退室するのと入れ替わりに古波蔵エレンが平城の男子生徒2名を伴って入室する。

 「サナ先生!新しく着任するニューフェイスのご到着デス!」

 「おう、態々案内してくれたのか…ご苦労エレン」

 そして紗南の前に立ち一礼をする2人。

 「……平城学館警邏科一年、六角龍悟…本日付で刀剣類管理局本部、特別祭祀機動隊へ辞令により配属致します…」

 「お、同じく!平城学館警邏科三年!田中撃鉄!配属致します!」

 龍悟と比べ些か緊張の面持ちの撃鉄、紗南は2人を珍しいそうに見比べている。

 「遠路遥々ご苦労。ふん…しかし三年の時期に転入して早々に此方に赴任する羽目になるとは、中々……。それに六角…だったか、いろは先輩…五條学長から聞いているよ、優秀でデキる奴だそうじゃないか。しかし六角か……何処かで聞いたような………?」

 撃鉄の経歴に感心した様な呆れた様な事を言いながら、龍悟へと視線を移しまじまじと見やる。

 「……赤羽刀の調査隊に妹が居る…」

 「おお!六角清香の兄か、どうりで聞覚えがあった筈だ。期待しているぞ!田中の方も、大変だろうが…まぁ、頑張ってくれ」

 龍悟の返答に椅子から立ち上がって彼の肩を叩く紗南、そのまま撃鉄にも声を掛け笑う。

 「……承知した。最善を尽くす……」

 「任せて下され!あっ!それとワシ実は神職の方も兼科しとりまして、その辺も考慮して頂けたら……」

 くるりと踵を返す龍悟を尻目に腰を低くして揉み手で諂う撃鉄。しかしそこへ龍悟が手を伸ばし彼を引き摺って連れて行った。

 「ぬぉ?!離せ龍悟!!ワシはまだ話が済んどらん……おい?!ちょっ?!?おまっ!!……離せぇぇえええ!!

 後に残るは呆然とした紗南、エレン、そして発令室に籠る局員達。

 「……あー…なんと言うか、中々個性的な面子だったな」

 「YES…、実に対称的な二人デシタ……。男子がいる学校はみんなあーなんでしょうか?」

 と言う感想しか出てこない2人であった。

 

 

 

 

 ━━鎌府研究棟・装備改良検証班

 

 翼沙は紗南へ報告書を提出した後、今の己の職場に戻っていた。

 「さて……(流石にあの報告書にダグオンとしてのメッセージを挟むのはリスクが高い。ならばやはり、舞草のエージェントの誰かにウイングヨクとして接触して、折神紫様の引渡しを伝えるべきだろうか?しかし行先が不透明な状況で一末端にそこまで情報を開示して良いものか……うん、やはりそれとなく暈してより上…フリードマン博士やそれこそ朱音様辺りが出てくるようなメッセージを伝える方がいいかも)」

 手を動かしてS装備の改良案を構築しながらも、折神紫引渡しの件を平行して考える翼沙。

 端から見ると物凄い勢いでタイピングしながらデータを構築しているので、幾人かの技師科定や装備科定、研究、工科の生徒が感心と感嘆に震えている。

 「やや!やはり同志渡邊先輩はスゴいですね!」

その中の1人綾小路高等部、装備科の森下きひろが眼を輝かせている。

 「あんなに凄い人なのに……どうしてわたしなんかに物を作るのを頼むんでしょうか……」

 同じく綾小路、中等部の工科予科生、土師景子が隈の濃い瞳でおずおずと洩らす。

 「うん。取り敢えずこのデータを第十六研究班に提出して実証して貰いましょう」

 

 纏めたデータをUSBに詰め、特別研究棟へ向かう翼沙。

 足早に目的地に着けば、其所には鎌府の制服を着た生徒。

 彼女は播つぐみ。主に研究をメインに活動しているが、刀使でもある、かなりマイペースな少女だ。

 「おや?渡邊…先輩でしたか?何か御用でしょうか?」

 「どうも播さん。此方頼まれていたS装備の改良案です」

 「ありがとうございます。フムフムでは御拝見」

 手近な端末にUSBを差し込んで閲覧を始めるつぐみ。

 「これはこれは…凄いですね、稼働効率が1,5倍も上昇しています。この短い時間でここまで機能をアップさせるとは。ふむ、決めました渡邊先輩、私の草案に協力してくれませんか?」

 「協力?まぁ構いませんが……」

 つぐみ的には割りと歓喜しているのだろうが如何せん表情が判りにくい為、どう反応すべきか戸惑う翼沙。

 そんな彼の背中に回り、両手で背を押し1台のパソコンの前に誘導するつぐみ。

 「百聞は一見に如かず。まずはこれを見て頂きたく」

 

 「え?え?……っ!?これは!仮想空間を利用した戦闘シミュレーター!?!これなら肉体的なダメージは限りなくゼロになるそれに多用なシチュエーションで戦略が組み立てられる戦術も複数試す事だってそれにそれに理論だけの装備も使用出来るし刀使の能力に応じてより事細かに難易度を設定可能にいや……これはもしかすると対異星人用の想定もなされているのでは?!だとしたらまだデータが不足しているザゴス星人だけでは足りないけど人間大かそれに準ずる者達だけに限られるいやそれでも何の対策もしないよりはマシかもしれない…」

 

 つぐみに見せられた物の正体を即座に理解し、何時ものように捲し立てる様に呟き没頭する翼沙。

 この翼沙の豹変っぷりには流石につぐみも眼を丸くさせる。

 「やや、落ち着いて下さい先輩。そのご慧眼は驚嘆に値しますが、今はまだ実用には至っていないので…」

 「あ…失礼しました。とても興味深い物を見たのでつい熱くなってしまいました」

 自分が興奮していた事に気付き、眼鏡を押さえつつ視線を下に逸らす翼沙、そこへ荒魂出現のアラートが建物中に木霊する。

 

『本学院近辺に荒魂が出現しました。刀使の皆さんは至急出動して下さい』

 

 「!…では僕は自分の研究に戻ります(この周辺に出没したのなら刀使だけでも充分事足りるとは思いますが……念の為、動向を監視しておきましょう)」

 つぐみに別れを告げ、部屋を出た瞬間走り出す翼沙。

 本部の敷地を飛び出し、荒魂が出現したポイントへ急ぐ、道中、見知った顔が合流する。

 「ヨォ!お前も気になったクチか?」

 「申一郎!」

 「あー、やべぇなぁ…長江と福田先輩との話、途中でぶっちしちまったよ……帰ったらどんな顔して会えばいいんだ……」

 「焔也!……ええっと、その二人は美濃関の刀使なんでしょう?なら大丈夫では?」

 申一郎と焔也が翼沙に追い付き並走する。

 そして木々や屋根を飛び交う影が近付いてくる。

 「……先にいくぞ…!」

 龍悟である。彼はそのまま民家の屋根伝いを走り、或いは建設工事中の鉄骨の上を飛び……と、縦横無尽である。

 「「「……………(もはや忍者その物なのでは?!)」」」

暫しの無言、胸中では彼の身体能力の高さに唖然としているそんな3人の後ろから撃鉄が息を切らせ走ってくる。

 「ぜぇ…はぁ…ま、待たんか…りゅ、龍悟ぉ……」

 「おいおい、何で来てんだよ?」

 「オマエ…まさか、オレらと同じ事考えてんじゃネェのか?」

 「危険です!撃鉄、君は引き返して下さい!」

流石にこれには3人も難色を示す、しかし撃鉄もそう言われる事は分かっていたようで……

 「安心せぇ…!別にこの身一つで刀使と荒魂の戦いに割り込もうとは思わん!ただ、じっと待っているのはやはり性に合わん。なぁに一応は警邏科、もしもの時は避難誘導でもするわい!」

 「お前……一応成長してんだな!」

 「そういや警邏科を受けたんだっけな、ついでに神職科まで兼科タァ~驚いたがヨォ」

 「止めても着いて来そうですね……仕方ありません、ただ…戦闘には絶対に介入しないで下さい!」

 何かにつけて着いて来そうな撃鉄に飽きれ果てて妥協案を告げ共に現場へ走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・荒魂出現地点

 

 既に現場には幾人かの刀使が展開して中型と複数の小型の荒魂に対応していた。

 「まさか、帰って来て早々に現場に駆り出されるハメになるとはなぁ……あのババァ…」 「ね……」

 「薫~?そんな事言ってはいけマセンヨ?サナ先生は薫を信頼してるんですカラ」

 その中には益子薫と古波蔵エレンの2人も居た。

 そして他にも──

 「先輩慌てて何処へ行ったのかしら?」

 「長江さん、集中して!」

美濃関からは長江ふたばと福田佐和乃。

 「さ~て、今日も可愛く頑張っちゃうよっ♪」

 「成瀬行きます!!」

 「ん、さっさと終わらせるよ…」

平城は鴨ちなみ、成瀬実紀、松永衣里奈。

 「各員!決して油断はするな!確実に数人で荒魂へ対処せよ!」

 鎌府からは親衛隊が事実上、機能していない為、代わって前線で指揮を振るう綿貫和美。他数名。

 「やれやれ、休む暇もない…ねっ!」

 「やーあたしとしては色んな美少女が見れて嬉しいんですけどね!!」

 「はぁ~、関東は大忙しやねぇ」

 「皆さん凄いです!」

綾小路からは鈴本葉菜、山城由依、仲野順、蓮井麻由美。

 その他にも刀使は居るが目立っているのは彼女達だろう。

 そしてそれを離れた場所から眺める5色の戦士と平城の改造制服の青年が1人。

 

 「おしっ!良いぞ先輩!長江!そこだ!」

エンが知己の2人を囃し立てる。

 「我々が出るような状況にはならない様だな」

カイが安定した現場の状況に胸を撫で下ろす。彼等としても刀使が必用以上にバッシングを受けるのは本意では無い。彼女達だけでどうにかなるのなら手を出さずに済ませたい。

 「仲野ちゃん相変わらず冴えてんナァ。ンデ、あの目ェキラキラしてんのは蓮井ちゃんか」

シンが順の活躍に感心しつつ麻由美の存在を認め笑う。

 「鈴本さん、山城さん、益子さん、古波蔵さん、それに親衛隊直属だった綿貫さんがいるなら安泰ですね」

ヨクが戦況を分析してこの戦いの結果を告げる。

 「……鴨は相変わらずか……。松永…以前よりもキレが増したか……」

 リュウが腕を組ながら見覚えのある面子の動きに注目している。

 「むぅ、こうして見ると改めて刀使とは凄いのぅ、しかし成瀬…だったか、あのお嬢ちゃんも出ておるのか」

 撃鉄が平城に編入してから遭遇した相手の立回りに刀使という存在、その実力にある意味で戦々恐々とする。

 

 

 そして鎌倉上空。

 『人間達が既に対処しているのなら私の出る幕は無い……ん?何だ?』

 上空から戦場を眺めるライアン、彼は空を切り裂く存在に気付く。

 『荒魂では無い……異星人か?目的は…あの戦場。いや街その物か…さてダグオン達が居るのならば、私は静観に徹するとしよう』

 自分に火の粉が掛からない状況、彼はダグオン達の対応を静観する事に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うん…?この反応、みんな…どうやらこのまま終わりでは無いようです」

 ヨクが仲間達に警告を飛ばす。戦士達は身構える。

 「こんな時に…あいつら!」

 「行くぞ、荒魂は未だしも異星人には彼女達だけでは対処出来ない可能性がある」

 

 「「「「応!」」」」

 

 即座に飛び出す5人、後に残るは撃鉄1人。

 「くそぅ、ワシも早く皆と共に戦えるようになりたい…!」

 歯噛みし拳を握る彼であった。

 

 

 「あん?何だ?空から…何か……おい、マジか……ここはいつからB級映画の世界になった…?」

 「ねー?」

やる気無く、しかしちゃんと荒魂を倒す事はしていた薫が偶々見上げた空を見て唖然と呟く。

 そして彼女の頭に捕まるねねがそんな彼女の反応に首を傾げる。

 空から落ちる一条の光、その中に見えるシルエットは巨大な鮫。

 鮫は高層ビルに激突し破片が散らばる。封鎖地区外の予想外の被害に避難して遠巻きに状況を見ていた市民達は途端に混乱に呻く。

 「ちょっ?!鮫ですよ!鮫!鮫が空から降って来ましたよ!?」

 由依が激しく動揺興奮した様に葉菜を揺さぶる。

 「お、お、お、落ち着いて由依、多分アレは宇宙人関連だからきっともう少ししたら彼等が……」

 揺さぶられて声が震える葉菜、何とか由依を引き剥がしてダグオンの出動を示唆する。

 そしてそのタイミングで上空に現れる旅客機と300系のぞみ、そして地上からも3人の闖入者。

 

 「「「「「「「「「「ダグオン?!!」」」」」」」」」」

 

 やはりと言うか現れた未知の戦士達の存在に彼女達は口々に叫ぶ。

 

 「エン、ラダーに消火活動を!奴は俺が引き受けた、万が一を考えて地上で迎え撃てる様にしておけ」

 ターボライナーからカイがエンに指示を出す。

 「任せろ!ファイヤーラダー!」

 ファイヤージャンボから先んじて飛び出す赤い車体。小型の梯子消防車が地上に着陸して梯子を伸ばし消火を開始する。

 続いてジャンボの機首が左右に開き、中からファイヤーストラトスが出撃する。

 

 「よっしゃ!行くぜ!」

 「さぁ行くぞ!」

 

 

 「融合合体!」

 

 「融合合体!」

 

 2つの声が轟き響く。空でターボライナーが、地上でファイヤーストラトスが変形する。

 

 『ダグファイヤァァアアッ!!』

 

 『ダグタァァアアアボッ!!』

 

 2体の巨人が降臨する。そしてダグターボが即座にターボパックをボードに変化させ空へと昇る。

 「僕達は救助活動です!」

 「アイヨ!」 「……ああ!」

地上の3人は異星人の被害によって起きた混乱、その被害を最小限に留める為に散らばる。

 そして刀使達も荒魂が異星人に乗じて逃亡、被害が拡大しないよう努める。

 「なん…だと…!?」

 「薫?どうしたんデスカ?そんな豆鉄砲を喰らった様な顔をシテ」

 ダグターボを認識した薫が驚き固まるのをエレンは不思議そうに訊ねる。

 「まさかの二台目のビークルもロボットに変形だと!?もしかして五体合体しないタイプかっ!!?」

 「oh……そんな事を気にしている暇はありませんよ?私たちも荒魂退治か救助活動に参加しまショウ!」

 こうして長船凸凹コンビは職務に戻った。

 

 

 『これ以上好きにはさせん!』

 ターボダッシュで空を駆けるダグターボ、彼は暴れるピシャッ星人を射程に捉える。

 『ホイィィイイルゥッボンッバァァアア!』

 ボードから跳躍しピシャ星人に必殺の技を喰らわせる。

 真っ二つになるピシャ星人、あまりの呆気なさにダグターボも懇話する。しかし戦いは終わりでは無かった。

 2つに分かたれたピシャ星人の躰は波打つ様に動き始め、そして次の瞬間には無数のピラニアの様な姿となり地上へと向かって行く。

 『ぬぅおぉぉお?!』

ピラニアの波に巻き込まれ落下するダグターボ、アスファルトの大地に亀裂が走る。

 『ダグターボ!?野郎!』

 ファイヤーブラスターを手にピラニア達を撃とうとするダグファイヤー、しかし無数のピラニア達はあまりにも小さい。

 『っ!?これじゃ建物も壊しちまう!』

仕方無くファイヤーナックルで迎え撃つが、それでも数匹が人間や建物、車に襲い掛かる。

 「…何故、人間や建築物は未だしも無人の車にまで襲い掛かる……?」

 リュウがピシャ星人の行動に不審を抱く。

 「ナァ…アレ車食ってネェか?」

 「!?体積が膨張し始めた?!まさか!」

シンの指摘にヨクがピラニア達の解析をすればピラニアの躰が膨らみ分裂、新たにピラニアを産み出す。

 「「増えたぁ?!」」

エン、シンが叫ぶ。ピラニア達はその数を増やしながら更に方々へ襲い来る。

 それは刀使とて例外では無い、荒魂を倒した刀使にピラニアが凶悪な牙を剥き出しに飛び掛かる。

 「っ!成瀬は美味しくっありませんっ!!」

 襲い掛かられた刀使の1人、成瀬実紀が分裂したピシャ星人を斬り倒す。

 「倒せた…!?」

それを近くで見た葉菜が驚き、ならばと自分からピシャ星人に向かって行く。

 分裂したピシャ星人の大きさは一般的な小型の獣荒魂と同様の大きさ、御刀でも倒す事は充分に出来る。

 それを見た他の刀使達も率先してピシャ星人に対応する。

 「どーするヨク?」

 「彼女達と協力しながら、救助と平行して数を増やした異星人を倒しましょう!」

 「……承知した…」

3人は少女達を援護する。一方、融合合体した2人は分裂して増えたピシャ星人が新たに集い融合し姿を変えた中型ピシャ星人と相対していた。

『さっきよりはデカイな…つっても俺らと同じくらいの大きさだけど…』

 『下手に攻撃してまた分裂されても厄介だ。何とか押し留めるぞ…!』

 増え変化したピシャ星人を下手に倒す事が出来ない2人は押さえ付ける事に徹する。

 「オイオイ、倒すのは良いがキリが無さそうダゼ?」

アーマーライフルを担ぎながらピシャ星人の分裂速度に呆れるシン。

 「幸い、今、分裂して小型になった異星人はダメージを与えてもこれ以上分裂しません。奴等に食事をさせなければ良いんです!」

 「……簡単に言う…しかし、それしか無いか…」

 クリスタルブーメランを飛ばし分裂したピシャ星人を切り裂くヨクと大回転剣風斬で回転斬りしながら対処していくリュウ、そして彼等に続き分裂したピシャ星人を斬り倒す刀使達。

 拮抗し始めた状況にピシャ星人は苛立ち始める。

 『むぅ!?』『おぉっ?!』

ダグターボ、ダグファイヤーを押し退けた中型がビルを削り喰いその数をまた1つ増やす。

 『不味いな…此方も増えた、これ以上分裂させる訳にはいかん』

 ダグターボが敵の厄介さに歯噛みする。

 「いけない!何とかしなくては!!」

 下手に斬っては中型は分裂し炎の拳で殴っても分裂する。小型は斬っても辺りに散らばる破片を食っては増える為、対策が追い付かない。

 「あー…くそっ!いっそ冷凍して食ってしまおうか!」

そんな時祢々切丸を振り回していた薫が口走った言葉にヨクは策を閃く。

 「そうです!これなら!リュウ、協力して下さい。シン!ミサイルの弾頭を分子冷凍弾に!刀使の皆さん、なるべく広い場所に敵を集めて下さい!」

 周囲に指示を出すヨク、リュウとシンは即座に頷き、刀使達もそれに従う。

 「行きますよ!」

 「…ああ」

 

 

 「大回転…!」 「ハリケーン!」

 

 「「ダブルアタック!!!」」

 

 ヨクが全てのファンを全開出力で回転させブリザードハリケーンを繰り出す。そのハリケーンの中に大回転剣風斬で回転しなが飛び込むリュウ、先程、ダグターボが落下した地点にピシャ星人を追い込んだ刀使達はそれを見て即座に撤退、ピシャ星人は剣風斬の回転により威力をましたブリザードハリケーンに呑まれ凍り付き砕けた。

 シンもまた追い詰められたピシャ星人達の上空へハンドミサイルを射出、空中で弾けたミサイルから降る物質によって分裂中も細胞レベルで凍らされ砕け散る。

 「単純な話ですが、どんな生き物でも細胞レベルまで凍結してしまえば、基本的にはどうしようもありません。どうやら今回の異星人もそれは例外では無かったようですね」

 「薫ー!!お手柄デース!!」

ヨクが解説する傍らエレンが薫へ抱き着く、薫は鬱陶しそうなしかし、自分の思い付きが役に立った事に嬉しそうな顔をしている。

 「後は中型です。ウイングライナー!!」

 ヨクのコールに応え、ダグベースから発進するウイングライナー。

 そして戦場に到着した愛機へヨクは叫ぶ!

 「今なら出来る…そんな気がします、行きますよ!」

 

 

 「融合合体」

 

 ヨクがウイングライナーの操縦席付近がある位置に直立する。飛行しながらウイングパックが分離、客席にあたる車両部が伸び下へと折れると脚となり、上半身となった部位の背後が開き腕を展開、背中が現れウイングパックが合体、最後にヨクが立つ後方に頭部が出現しそこへヨクが融けるように消えると、その瞳が輝きを双眸に灯す。そして展開するウイングパックの翼。

 

 『ダグウィィィイイングッ!!!!』

 

 ウイングヨクが白い印象であったのに対し、融合したその姿は黒い頭部や結晶の意匠と相まって、より銀の色味をました巨人となる。

 「お…おぉ…おおぉぉお!!三体目!三体目だぞエレン!!」

 「ハイハイ、落ち着きマショウネ薫」

新たな戦士の誕生にテンションが限界突破の薫、そしてそれを宥めるエレンであった。

 

 『ダグファイヤー!ダグターボ!』

中型3匹を相手に数をこれ以上増やされない様に苦戦していた2体へと援護に現れるダグウイング。

 『ダグウイング!よっしゃ!これでイーブン、こっからだぜ!』

 『ああ!』

 『いえ、これで終わらせます。二人は目の前の敵を此方へ向かって投げて下さい』

 『何?いや解った。頼むぞダグウイング』

 ダグウイングの登場で逆転の兆しが見え喜ぶダグファイヤーとダグターボ、だがダグウイングは手早く決着を着ける手段が有るようだ。

 彼に言われ目の前の中型ピシャ星人をダグウイングの方へ投げる2体の巨人。

 ダグウイングもまた、自分の目の前に居る中型ピシャ星人を掴み飛んで来る2匹のピシャ星人へ向かって投げる。

 堪らず1つに戻るピシャ星人、そこへダグウイングが両肩のファンを回転させ必殺の構えを取る。

 

 『ハァッ!ブリザードタイッフゥゥゥウウン!!!』

 

 1つとなり元の姿となったピシャ星人を襲う超絶対零度の文字通りの暴風が躰の隅々まで凍り付かせる。

 氷像となったそれをダグウイングは上空へ放り投げると背中のウイングで飛び立ち氷像のピシャ星人へ向かって行く。

 『終わりです!』

 翼を下方へ展開し突撃するダグウイング、翼の刃が氷像を斬り裂くとそれが轍となって砕け散る。

 上空で太陽に照らされるダグウイング、鎌倉の町に季節外れの雪が降り注いだ。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation ver融合合体ダグウイング)

 

 カァー!翼沙に先を越されっちまったか!

 

 おおぉぉ!!ワシを早くダグオンにしてくれぇええ!

 

 あの二人は放って置くとして、何をしているのだ翼沙?

 

 これですか?実はつぐみさんのお陰でちょっと思い付きまして、折角なのでダグベースの機材を使って作ってみようかな…と、丁度、結芽さんも居ますし。

 

 何々?おにーさん達私の事呼んだ?

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 新装備?VRSアーマー。

 

 新装備とか…ワクワクする響きだよなっ!?

 

 





 はい、ちょっと駆け足でしたがダグウイング誕生しました。
 そして次回、とじともでも登場したアレが……。

 漆黒の新幹線ことJーエースとその兄弟達も勿論、モデルと言うかモチーフと言うか…まぁ、ライナーチームに合わせたライバル枠なので、カーロボットのあの傑作玩具が元ネタです。

 それでは次回


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幕間 ダグベースの結芽

 こんばんすみなさい。
 この章は二話終わる毎に毎回幕間を挟みます。
 今回は結芽ちゃんの話です。
 後さらっと龍悟のスキルが発動してたり、翼沙の偏食の一端が垣間見えたり、申一郎の意外な特技が明らかになったりしています。


 そしてこれを書いている途中で天華百剣、月末恒常ガチャに遂に神代三剣が1振り天羽々斬が実装!!
 能登、遂に来たよ能登!
 でも月末は渋いんだよなぁ………。



 燕結芽は刀使である。

 

 しかし、今現在の彼女は御刀を持たない。

 世間では俗に鎌倉特別危険廃棄物漏出問題と呼ばれるモノがあったその日、彼女は死んだからである。

 より厳密に言えば病の侵攻をノロで抑えていた肉体がしかし、完全に抑え込めていた訳では無く、遂にあの夜の戦いで決壊してしまったのである。

 元々、あの事件を含む数日間は何度か胸を押さえていたり、吐血する等、予兆が見て取れていた。

 本人も残された時間が少ない事を自覚してか当時は何時にも増して強者との戦いに執着していたように思われる。

 

 結果、舞草の襲撃で強襲した6人と最も早く現場で相対した形となった。が、彼女の目的はその中の1人、衛藤可奈美との立ち合いであった為、別に職務に忠実であった訳では無い。

 結果としては途中の横槍により望んだ形での決着は着かず、祭殿の方向へと向かう途中で力尽き、最早命の灯火もこれで終りかと思われた時、兄である燕戒将の手により救われる形と相成った。

 

 

 さてそんな訳で期せずして、ここ最近の兄が何をしていたのかを知る形となった結芽は最初こそ見知らぬ場所に連れてこられた不信感と警戒心で兄以外のメンバーにはまるで猫の様に威嚇染みた視線を向けていたのだが……。

 

 最初に彼女から信頼を勝ち取ったのは龍悟である。

 調査隊、六角清香と同じ姓と言う事に気付き輪に掛けて警戒心を剥き出しに龍悟を戒将越しに見やる事が多かったが、ある時ダグベースが鎮座する洞窟の片隅で踞る彼を見掛け、はて?あんな所であの人物は何をしているのかと端と疑問に思ったのが切っ掛けだ。

 周囲には自分と龍悟以外、人影は見当たらない…仕方無く意を決してそろりそろりと近付けば、彼は何と…洞窟の片隅で仔猫やら仔犬やら小鳥やら兎やらと戯れていた。

 良く見ると瓜坊も居る。静岡に猪が居るのかと思ってはいけない。

 ともあれ可愛らしい小動物に集られる龍悟の姿に結芽は眼を輝かせた。

 特に猫が琴線に触れた。そんな彼女を見かねた龍悟が肩に小鳥を乗せながら結芽に声を掛ける。

 「…触ってみるか?感染症なら心配いらん……ダグベースがある…」

 「ふ…ふーん、別に興味とか無いけど、おにーさんがどうしてもって言うなら…良いよ」

 そしてこの後目目茶苦茶仔猫と戯れた。

 

 後日、清香の事でそれとなく聞いてみると兄妹仲が良好な話を聴かされ、不貞腐れた結芽は戒将に甘える事になる。

 

 

 

 

 次に彼女が仲良くなったのは焔也である。

 美濃関の制服を着ている彼を見て可奈美を思い浮かべた結芽。

 彼女は焔也の側に寄ると──

 「ふーん、千鳥のおねーさんと同じ学校なんだ?あ、おにーさんは千鳥を使うおねーさんの事知ってる?知らないなら教えてあげるよ」

 等と言ってしまうのだから焔也は即座にどや顔で返した。

 「おいおい、俺は美濃関に居るんだぜ!衛藤の事なら当然知ってらぁ!」

 そこからは子供染みたやり取りを繰り広げた後、御刀の話や剣術談議に華が咲き、最後にはゲームを協力プレイする仲にまでなった。

 そしてゲームに没頭し過ぎて2人して戒将に叱られた。

 

 

 

 

 3人目は翼沙であった。

 元々、あの日、目を醒ました際に居合わせた面子の中で兄を除き、一番人が良さそうな面持ちの人物であった事もあり、話す事自体は簡単であった。

 しかし、これまた今までの2人にも言える事だが、結芽にとって兄以外で目上の異性と話す機会等、早々無かった。あったとしても機動隊の大人か本部に詰めている大人くらい、それも前者は気にも止めない相手であったし、後者はどこか腫れ物に障るような…恐る恐るといった具合もあって(と言っても彼女自身の態度にも問題が無かった訳ではないが)、親しみを以て接する事など経験が無い。

 ではそんな彼女が翼沙との距離をどう縮めたのかと言えば、これまた単純に食事の際のおやつ時の事であった。

 「?おにーさん、そのお菓子食べないの?」

戒将が持ってきたイチゴ大福ねこの苺大福他、甘味の類いを一切口にしない翼沙に疑問を呈する。

 「僕は基本、甘い物は得意ではなくて…糖分ならブドウ糖で摂れますから」

 そう言って手元に業務用ブドウ糖が入った袋を持ち出す彼を見て、"あ、このおにーさん変な人だ"と認識した。

 後日、実験に夢中になる翼沙の邪魔をした焔也と申一郎が怒られる異様な空気を目撃した結芽は彼を下手に怒らせない様にしようと胸に誓った。

 

 

 

 そして4人目、申一郎であるが…そもそも申一郎自身に結芽とそこまで深く関わる気が無いのか、最初の内は会話は皆無であった。

 だが片やダグベースの居住区画に居を構える男、片やダグベースの医療区画で寝起きする少女。

 そうなれば自ずと遭遇する回数は増える訳で、まぁ、挨拶くらいはする様になった。

 転機が訪れたのは翼沙を怒らせないと誓った日の事だ。

 結芽が寝巻きだけでももう少し可愛い物をと戒将に訴えると偶々通り掛かった申一郎がどうにも見かねて声を掛けてきた。

 訳を話せば、彼は少し思考に耽った後、頭を掻き仕方無いと言った顔をした後、ダグベース内に貯蔵してあった布地を取り出しては慣れた手つきで型紙を牽き、結芽の身長や腰回りのサイズを訊ねてそれを元に技術区画にある(アルファが趣味で加えた)被服室で作業を始め、待つこと2時間、被服室から出て来た申一郎が手に持った物を結芽へ投げて寄越す。

 それを広げて確認すれば、何と…可愛らしいイチゴ大福ねこのパーカー付きパジャマではないか。

 「これ……!」

 「あー、なんだ、オマエさんもオンナノコだしな、洒落たい年頃なんだ、これくらいはサービスしてやるヨ」

 と、少し照れ臭そうに鼻の頭を掻いていた申一郎を見て結芽の中で好感度が上がった。

 「ま、でもオコチャマにモテてもナァ」

この言葉で上がった好感度が台無しになるくらい下がった。

 序でに戒将からいきなり結芽のウェストを測った事を含め怒られた申一郎であった。

 ともあれ、まぁ、悪い人でない事は彼女もこの件を踏まえて理解したのでそこそこ親しみを覚える様にはなったのである。

 

 

 

 

 最後に撃鉄であるが、これはファーストインプレッションの時点で結芽から既に面白いオジサンと言う認識であった。

 「オジサンはよせぇ!ワシはこの間、18になったばかりじゃい!!」

 と宣うので渋々おにーさん扱いをしているが、稀に──

 「撃鉄のおじ…おにーさん」

 「待て待て待てぃ!?おんし今、又してもオジサンと言いかけたな!?」

 「気のせいだよ!結芽そんなこと言ってないもーん」

というやり取りを繰り広げている。

 

 

 

 そしてこの5人とは別にダグベースで顔を合わせる相手。

 ブレイブ星人だが、彼に関してはまず、この基地のメインシステムと同化している時点で部屋を出る際のやり取り含め事務的な会話とはいえ機会は大量にあったし、そもそも宇宙人と言う特異性が結芽から壁を取っ払ったので特に問題は生じなかった。

 

 

 次にアルファであるが、此方は一見して自分と同じくらいの年頃に見える少女……いや少年なのでやはり物怖じ自体は無かったが此方も初対面のインパクトがゼータから拷問を受けている印象だった為、彼女の頭の中では変人を通り越して変態と言う認識が刷り込まれた。

 「しどいっ?!ボクは至ってノーマルな性癖の持ち主だよ!!」

 ここで補足しておくが、管理最高位責任者の地位に居る3人の管理者で明確に人格と実体化の際の肉体の性別が決まっているのはベータとガンマだけである。

 つまりアルファは人格こそ少年全としているが肉体的には無性である。

 なのでデルタの弾丸の影響が無い場合、普通に少女にも見られるのだ。

 「おにーさん?おねーさん?う~ん……間を取っておねにーさんって呼ぶね♪」

 「そんにゃあ~…!?!」

この結芽の言葉に激しくショックを受け項垂れたアルファ、それを見たゼータは大笑いしていた。

 

 

 ゼータに関してはアルファを拷問する以外は楽しいおねーさんと言う認識の結芽であった。

 

 

 

 

 

 

 

 「うん、なんかこう……色々不名誉な事を言われてる気がするけど朗報です!」

 ある日のダグベース、兄が買い出しに出掛け他の皆は鎌倉の本部にお勤めの1日、アルファが結芽にいきなり切り出した。

 「なぁに、おねにーさん?」

 「正直、その呼び方は未だに納得しかねるけど…今は重要じゃないから置いとくとして、結芽ちゃんにプレゼントがあります!」

 そう言って取り出したのはダグオンのスターシンボルを模したブローチ。

 「これは?」

 「簡単に言えば"おうちのかぎ"だね。これで君も一応はここに自由に出入り出来るし、こっちで位置を拾える様になる。他にもまぁ転送装置が使える様になるけど…戒将君が怖いから今は停止してます」

 最後の方の言葉の情けなさに話を聞いて盛り上がった結芽のテンションはマイナス近くまで急降下した。

 「えー!なんで止めちゃうの!?」

 「君ね、一応公にはまだ死亡扱いなのよ?そんな娘を一人で自由に外に出せないでしょ?ましてや転送装置は一度行った場所なら何処でも自由に行けちゃうんだから起動させられないの!って言うかさせたらボクがまた怒られるの!」

 要するに自身の保身の為である。

 ともあれ同行者付きの許可が必用とは言え、燕結芽は変則的ではあるがこの世界で初めての刀使のメンバーとなったのである。

 

 

 

 

 

 




 さてアルファが渡しましたブローチには実はまだちょっとだけ拡張性があります。
 
 さておき、籤引きで決めた合体順、まさかあんな結果になるとは……まぁ勇者指令ダグオンでもダグシャドーもシャドーダグオンも登場は遅い方だったし先にアレが来てもしょうがないネ。
 ではまた次回


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第六十五話 新装備?VRSアーマー

 こんばんは!
 今回のタイトルになってますVRSアーマーですがとじともで出た奴まんまをイメージして下さい。
 勿論、結芽ちゃんが着てるのは【VRS装備】燕結芽で着ていたバージョンです。
 いやぁ、イベントやってて思ったんですよ、これ衣装で終わらせるの勿体無いわ……って



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 翼沙少年生き生きしとる。あ、儂イプシロン。後3日でゼータが帰ってくるの。

 さてさて、融合合体もはや3人目、中々戦力が整って来たではないかよ。

 


 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局本部

 

 中央の本部長のデスクでつい今し方起きたダグオンが介入した戦闘の情報に何とも頭の痛い思いをして天を仰ぐ真庭紗南。

 「やれやれ…まさか、荒魂への対応中に宇宙人が割って入って来るとはな……幸いにして展開していた部隊も民間の被害も少なく済んだ」

 倒壊した建物や破壊された車輌の被害は別にしても人命に関わる事で最悪の事態が起きなかったと言う事実は彼女としても胸を撫で下ろす結果となった。

 「しかし……赤いの、青いのに次いで白…いや、銀色か?…何にせよまたロボットに変形した、恐らくは残りの二機もその可能性は充分あり得る」

 デスクのモニターに映し出されるダグファイヤー、ダグターボ、ダグウイングの画像、そして端々に写るアーマーライナーにシャドージェットを見つめ起こり得る可能性を列挙する。

 そんな紗南の元に荒魂討伐、延いては未確認飛行生命体……ピシャ星人との戦闘を終え戻った薫とねね、エレンが向かって来るではないか。

 「戻ったぞ学ちょ…ババ…学長!」

 「おい、今何で二度も言い直した?うん?」

薫の無遠慮な物言いに血管を浮かべ拳を握り、ワナワナと震える紗南。

 「っとにお前は……礼儀ってモノをだなぁ……」

何時もやり取りが始まるかと思いきや、それに待ったを掛けた人物が居た。エレンである。

 「薫~?今はそれよりも重要な事がありますよね?サナ先生も落ち着いて下サイ」

 「おっと、そうだった。おい、本部長代理…改め本部長、あんたが度々どうにか接触出来ないかと嘆いてた連中からの伝言だ」

 「あん?」

エレンに嗜めなれ紗南にとある筋からの伝言があると告げる薫、紗南が不審に思えばエレンが胸元から折り畳まれた紙切れを取り出す。

 「……これは?」

 「ダグオンから、舞草…延いては朱音様に対するメッセージだそうデス」

 「何だと?!…見せてくれ!……………これは…数字か?」

 エレンから受け取った紙切れを開き目を通せば内容は頭にアルファベットが着いた数字の羅列。

 強いておかしな点を挙げるとすれば縦と横に態々離して書いてある2桁の数字。

 「ふむ…存外単純な形で伝えて来たな、場所自体はバレても問題無いと踏んでか?」

 内容を理解したのか紗南が口許に手を当て呟く。

 「おい、クソ本部長。結局その数字は何なんだ?」

 「ん?ああ、ちょっとしたデートのお誘いだ」

数字の意味が気になった薫の質問にメッセージの意図を汲んで直接的な言及を避けて答える紗南。

 薫は半目で微妙な表情になり

 「歳を考えろ、ババァ」

 と溢す。これには紗南も流石にキレた。

 「テメコラァ!?薫ぅぅうう!!」

エレンが2人を止めたのは言うまでもない。

 

 凸凹コンビが去った後、デスクでダグオンについて思案する紗南。 

 「今までの連中の動きとここ一週間での動きの変化からして、此方の邪魔をしたい訳では無いというのは…まぁ、理解出来る。しかし、それにしたって今回あちらから接触して来た目的は一体……まぁそれは今夜、嫌でも分かるか。はぁ、朱音ちゃんに連絡して時間を作らないとな……」

 現在、刀剣類管理局局長代理の立場となり参考人招致……半ば弾劾裁判の場と化したあの場所に通い詰めては謂われない野次を受けている20年来の友人の事を思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星衛星軌道・エデン地下

 

 エデン地下区画、嘗てのサルガッソ監獄の反省を生かし、ガードロイドとは別に生身の監守が生活していた区画はエデンが犯罪者達に乗っ取られて以来、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の城と化している。

 「んんぅ~、中々…中々中々、興味深い生態ねぇ。成る程ねぇ、この結合なら確かに磁石みたいに引かれるのも解るわぁ。あんな猿みたいな知能しか無い生物でも御刀とやらを造り出した技術と技能だけは認めても良いわぁ」

 蜘蛛のような下半身──と言ってもそれは彼女が思うがままに動く為に作られた延長義肢なのではあるが──を揺らし同じく背中に装着された人工の6腕を其々に動かしながら赤羽刀を含んだ荒魂を、御刀も無しに容易く解体していた。

 「せんせぇ!おたのしみちゅう?」

妖精がドレスの女と包帯だらけの人物を引き連れ女医の元に現れる。

 「大丈夫よぉ、お話くらいなら出来る余裕はあるわぁ」

 「よかった、ちきゅうにおりられないからひまなんだよね」

 女医から返ってきた了承に近くの机だった物に腰を掛け足をふらつかせる妖精、どうやら暇を潰しに来たようだ。

 「あらあらぁ、前にも言われたでしょう?貴方があの星に降りる事は承服出来ないわぁ。でもそうねぇ…もし貴方があの星に降りる機会があるとしたら、それは()()()()()()()()()()()()()()()

 「そっかー。ならもうちょっとがまんするね」

 「是非ともそうして欲しいわねぇ、私個人としてはまだあの星には興味があるもの」

 女医の言葉を素直に聞き分ける妖精、包帯はその会話が気が気で無かったのか忙しなく視線をさ迷わせている。

 「ぁあ、嫌だ嫌だ…恐ろしい話にも程がある……己はまだ死にたくは無いと言うのに…はぁ恐ろしや恐ろしや」

 ドレスの女がそんな包帯に侮蔑の視線を向けながら妖精へと愛想を振り撒く。

 「この様な根暗の半死人の言葉など気にする必用は御座いません。ご用命ならばわたくしめが彼の星よりあなた様の望むモノを手に入れてご覧にいれます」

 しかしそれを耳にした包帯がわざと彼女に聴こえる声で呟く。

 「とか言って、本当は貴様が自分のコレクションを増やしたいだけなのでは?ぁあ、理解し難い趣向だ、気持ち悪い気持ち悪い」

 「ふん!死者と戯れる貴公の様な根暗には文字通り死んでも理解出来ないだろうよ」

 この2人の異星人、片や妖精の見目麗しき姿に心酔する者と片やより確実に生き残る為に最も可能性が高い相手の下に着いた者という違いがあってか反りが会わない。

 「ふたりとも~、まだけんかしちゃだめだよ?まだはやいよ?」

 「喧嘩などと……そんな事にはなりませんわ」

 「そうだとも、ぁあ…このまま戦えば己が一方的に殺されてしまうだけだ。それだけは御免被る御免被る」

 自身の能力のあり方故かとても卑屈な包帯、それを踏まえてドレスの女の方は更に自信にまみれた顔で妖精を見やる。

 「貴方の所の子達も中々面白そうなのが揃ってるわねぇ…」

 女医がそんなやり取りを愉しそうに眺めていた。

 「うんたのしいよ!でもせんせいがやってることもたのしそうだね♪」

 「そうねぇ…でも最後の調整には貴方の力が必要になるわぁ。その時はよろしくね?」

 「わかった~、めちゃくちゃがんばるよ」

 「ええ、そうして頂戴。それと貴女。貴女も少し良いかしらぁ?」

 妖精の奮起する姿に微笑みながらドレスの女へと声を掛ける女医。

 「……何用でしょうか?」

すると途端に顔を歪めた後、何事も無かったかのように真面目な顔で不機嫌な声を出すドレスの女。

 「あらぁ、あからさまねぇ。そういうのも嫌いじゃないわぁ。あら良い顔……ふふ、そんな恐い眼をしないで本題ねぇ、貴女…()()持ってみてくれないかしらぁ?」

 そう言って女医がドレスの女に渡した物は1振りの刀。

 「……?良いでしょう。んぅ?何とも不可思議な感覚、これは?」

 刀を握った瞬間、ドレスの女が白い光に包まれる。それはまるで……

 「うふふ…それねぇ、解体した荒魂から取れた御刀なのよぉ。何でも御刀ってあの星では女性……それも限られた年齢の者にしか使えないようなのよぉ。因みにぃ、その現象は写シと言うそうよぉ?異なる次元に自らの肉体を隠し、仮初の肉体を実体化させ致命傷を防ぐというものらしいわぁ…まぁ精神力を代わりに消耗するらしいけれどぉ」

 予想通りの成果に内心ウキウキの女医はとても饒舌に語らう。

 「ふん、なんだそれは…脆弱で惰弱な。まさかわたくしにこれを振るえと?」

 「うふ♪」

 「っっっつ?!?断る!こんなものが無くても「ええっ?!かっこいいのに」…感謝する頂いておこう」

 妖精からの言葉で簡単に掌を返すドレスの女、プライドもへったくれも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県・某洞窟内ダグベース

 

 夜も更け、間も無く日付が替わろうと言う頃、ダグオンの若者達はオーダールームに揃っていた。

 「さて、翼沙が舞草…と言うよりは朱音様にだが、彼女と深い繋がりを持つ真庭本部長に関わりがあるであろう舞草の刀使に伝言を渡す事に成功した」

 議長として会議を取り仕切る戒将が口火を切る。

 「……果たして彼女は折神朱音に伝えるのか?」

 龍悟が至極当然の疑問を口にする。

 「伝えるより他に無いでしょう。ダグテクターを纏った姿で古波蔵さん益子さんのお二人に直接、メモを渡しましたから」

 翼沙が確信を口にする。ウイングヨクの姿で2人に接触した彼はその際またしても薫にサインをねだられたのだが、そこはエレンの取り成しもあり上手くかわした。

 「伝わったとして、ホントに来んのカヨ?」

今度は申一郎が疑問を投げる。

 「来る。舞草が一枚岩とは限らないが、彼等が我々に対し正であれ負であれ強い関心を持っている事は確かだ。そして朱音様は現状を深く憂いている…その上で恐らくは我々にも良い意味で関心がある側だろう。であれば真偽はどうあれ放っては置けない筈だ」

 戒将が彼なりの予測を含めた答えを返す。

 「って事は、そこで紫様を引渡すのか?」

 「全員でいくのかのう?」

焔也と撃鉄からも質問が飛ぶ。

 「いや……何かあった時の為に引渡しの人数は限定する。撃鉄は論外として俺と……焔也、申一郎で引渡しの現場に望む」

 「ん?そこは翼沙じゃないのか?」

 「僕はちょっと思い付いたモノを形にしたいので残ります。ふふ……今日は徹夜ですねフフフフフフフフ…」

 焔也がふと首を捻ると翼沙が不参加の理由を告げる。その顔は綾小路で悪名高きマッドサイエンティスト渡邊であった。

 これには端っこでアルファ、ゼータと共にUNOにかまけていた結芽も恐怖に震え戒将の背中に抱き着く。

 「お兄ちゃん……」

 「大丈夫だ。翼沙、逸る気持ちは解るが…今は抑えてくれ」

 「フフフフ…はっ!?失礼しました。つい……」

 

 

 「科学ノ発展ニ犠牲ハ付キ物デース……だね」

 「つばってぃって…この中じゃイチバンイカれてる系だよね……」

 アルファとゼータは互いに顔を寄せてひそひそ話をしていた。

 

 

 

 ━━ダグベース・メディカルルーム

 

 折神紫が療養する一室、そこへファイヤーエン、ターボカイ、アーマーシンが顔を見せる。

 「折神紫。今夜、ヒトマルサンマル時に駿河湾近海にて舞草へ貴女を引渡す手筈となった。我々で目的地までお送りする。ご同行願いたい」

 カイの言葉に、遂にこの時が来たのかという顔をする紫。

 「分かった。態々手間を掛けさせる」

 「構わない、貴女はまだ必要な人だ。本来ならば貴女が目覚めて直ぐ舞草へ渡りを付けるべきだったのだが……」

 「いや…ここまで手厚く治療をしてくれたのには感謝している。ありがとう」

 「礼には及ばない。我々の正しいと思った事を実行しただけなのだからな……我々は外で待っている。着替えを終えたら扉を叩いて教えてくれ」

 その言葉と共に退室つするカイ、エン、シン。

 紫はその言葉に素直に従い、彼等が退室した事を確認した後着替えを始める。

 この時、シンがダグテクターの集音機能を活用していたのだがカイに殴られる珍事が起きた。

 

 数分後の後、中から扉をノックする音が響く。

 カイが扉を開けると目の前の紫はあの夜と同じ(正確には同質の素材で新しく作った)服を着て立っていた。

 「準備は良い様だな。付いてきてくれ、我々のビークルで貴女を送る」

 「ああ…、宜しく頼む…(この部屋の外はこうなっていたのか……当たり前だが、どれもこれも地球上の技術より遥かに優れている……果たして私がタギツヒメに乗っ取られていたままだったとして彼等に勝利する事など出来たのであろうか…)」

 既に詮無き事ではあるが、そんな事を考えてしまう紫。

 

 

 暫く歩くと駅のホームの様な場所に出る。

 「ここは…?」

 「オレ達のビークルの格納庫サ、そこの赤いヤツのマシンはココじゃなく外にマシンがあるけどな」

 シンが紫の困惑に飄々と答える。

 「では折神紫、貴女は私のビークルに同乗して頂く」

 ターボライナーの搭乗扉が開く、レディファーストとでも言うのか開いた扉の側に立ち紫が乗り込むのを待つカイ。

 「しっ、失礼する…!」

好意に従い先に入ればターボライナーの中は普通の新幹線と違い乗客が搭乗する席に繋がる扉は無く、見た事も無い電子機器に囲まれたハンドルらしき四角い操縦桿がある座席があるだけ、遅れてカイが乗り込み口を半開きにして呆ける紫を尻目にカイは操縦席に座る。

 カイが何事かコンソールを弄ると、壁だった場所からサブシートが出現する。

 (座れと言う事か……)

おずおずと座る紫、ベルトを締め暫くするとターボライナーが動き始める。

 二つ隣のレールのアーマーライナーも出撃を開始、ダグベースから2両のライナービークルが発進した。

 

 同じくダグベースのすぐ横隣に翼を縦に畳み鎮座するファイヤージャンボの炉に火が灯る。

 鎮座している場所がエレベーターの様に競り上がり、外では洞窟近くの崖の壁面が下に開き滑走路を覗かせる。

 進行方向の木々が僅かに倒れ、ジャンボを妨げない様に道を作る。

 台座が競り上がりきると翼を展開し飛び立つ準備を終えるファイヤージャンボ。

 ダグオン最大のライドビークルが夜空に向かって離陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 そして残るメンバー達は彼等を見送った後、各々勝手に過ごす。

 「さぁて、早速作業に入りましょう!」

 翼沙は意気揚々とオーダールームから退室、技術・研究区画へ向かって行く。

 「どう思う…?」

 「……どう…とは?」

撃鉄が脈絡もなく話題を切り出す。龍悟はその意図を問い返す。

 「翼沙のことじゃ。あやつ、此処に帰って来てから妙にご機嫌じゃろう?」

 「……ふむ。気になるのか?」

 「いやまぁ、奴の事じゃから何かを作ろうと言う腹積もりなんだろうが……それにしたってテンションが高い」

 男2人が仲間の行動に疑問を抱いているとゼータが近付き口を開く。

 「気になるなら見に行けば良いんぢゃね?」

 「ゼータさぁ、簡単に言うけど翼沙君は研究とかの邪魔をされるとめっちゃ恐いんだよ?」

 気軽に言ってのけるゼータにアルファが反論を口にする横では結芽も無言で頷いている。

 「邪魔しなきゃ良いぢゃん?みんなで行けば恐くないってネ♪d(>ω<。)」

 「おねーさん凄い?!何で顔文字が見えるの?!!?」

 ゼータが何気無く起こした不思議能力に結芽が飛び付いた。

 「あはっ♪それはおねえさんがえらーいヒトだからです!ささ、行こうよ」

 そう言って龍悟と撃鉄の手を取り引っ張っていくゼータ、結芽はそんな彼女のテンションに釣られ揚々とアルファは渋々と翼沙の元へ向かった。

 

 

 「おじゃましまーす」

 翼沙が籠っているだろう研究室に控え目に入室するゼータ一行。

 翼沙は何やら考え事をしている。

 「うーん。一度データを疑似マテリアライズ化して比較してみない事には……しかし今から結芽さんを呼ぶ訳にも……」

 自分の名が翼沙の口から出てビクッっと驚く結芽。そんな事は露知らず翼沙はブレイブ星人を呼び出す。

 「ブレイブ星人、結芽さんはもう寝てしまいましたか?」

 <燕結芽であればアルファ、ゼータ、六角龍悟、田中撃鉄と共に君の後ろに居る>

 結芽の戦々恐々とした心情など知らずブレイブ星人はあっさりと翼沙に教えてしまう。

 「なんと!丁度良かった!」

 クルリと椅子を回し後ろを向く翼沙、即座に結芽に近寄り、頼りになる男衆2人が何かを口にする前に彼女の手を握り告げる。

 「良ければ僕が開発したこの新装備、試着しません?」

 「新…装備?試着って…服なの?」

 「はい!まだ理論段階から少し発展させた試作機ですが着るだけなら大丈夫です!……爆発もしませんし

 最後に何か恐ろしい単語が聴こえた気がしたが考えない事にした。

 「ではその中央に立って下さい」

翼沙に急かされ円上の台座に立つ結芽。頭上から謎の装置が降りてきた彼女の周りを囲み、台座からリングらしきモノが競り上がって彼女を包む。

 そしてそれを見た龍悟、撃鉄、アルファ、ゼータの4人は驚愕に眼を見開く。

 「…これは……?!」

 「なんじゃぁあこりゃぁああ?!」

 「え、嘘…コレって……え?この世界だと翼沙君がもう作っちゃうの?!?!」

 「キャワ!きゃわわわわわ!!!!」

四者四様のコメントを口にする彼等に結芽はますます困惑する。

 「なに?何なの?翼沙おにーさん?」

 自分の身に何が起こったのか気になる結芽は翼沙に視線を向ける。

 「失礼、結芽さんにも見れる様にしますね」

そうして翼沙がコンソールを操作すると結芽から見て右手側のモニターに鎧の様なドレスの様な装甲に包まれた自分が映る。

 「これは…何?」

 自分の姿が様変りした事に首を傾げる結芽、一体何なのかと翼沙に訊ねる。

 「よくぞ聞いてくれました!これこそ播さんから見せて頂いた研究を元にS装備の新型を構築、デザインを従来型から大きく変えより女性的な物へ進化、性能もスペック上は従来型の10倍の性能、更に宇宙警察機構の技術を取り入れているので量子変換で即座に展開収納が可能となった完全新型S装備…!元となったバーチャルリアリティから捩って、その名も──」

 

 

 

 

「VRS装備──Variable Realize Storm Armor──です!」

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verアーマーシン)

 

 VRSアーマー?何それ?

 

 これを着れば結芽さんも異星人相手に不足無く戦えますし、ナノスキンを利用して宇宙での活動も可能になるんです!最悪御刀が手許に無くても刀使の能力を使用可能になります!

 

 ……凄いな。等と俺たちが盛り上がる最中、駿河湾では…エン達が舞草の潜水艦と接触していた。

 

 

 

 折神紫も届けたし、帰ろうぜ!

 そうして無事に役目をこなしたオレ達、一夜明け待っていたのは京都奈良間での刀使の任務への帯同!?

 シャッ、デートだ!

 

 ……俺も同行する。下手な真似はするな…

 

 チッ、マジか。それに…ゲェッ?!兄貴ィ!?

 

 愚弟、人様に迷惑かけて何をやっておるんや?

 

 ウルセェ!関係ネェだろ!とかやってたら……オイなんだよ?!いきなり吹雪いて来やがったぞ?!ってマンモス?!!

 敵カヨ!!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 重甲!ダグアーマー!!!

 

 良いぜ、カワイコチャンを危険に遇わせた上に兄貴に会った鬱憤晴らしだ、オレがテメェの相手になってやるよ!

 




 さて次回で一旦貯まってたプロットが切れるので、幕間を挟んでその次の回は遅れます。

 ついでにエデンに回収された赤羽刀も有効活用させて頂きました。
 以前感想で出た話題ですがエデンには美少女の異星人はいません。居ませんが、美女の異星人はいます!
 因みに美少女の方は犯罪者で無ければ、この宇宙にも居るのでゲストで出したりとかは、まぁ要望があれば出します。
 え?妖精は美少女じゃないのかって?あれは性別の概念ありませんから


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第六十六話 重甲!ダグアーマー!!!

 おはようございます。ダグアーマー登場回にして申一郎の実家の情報が明かされる回です。
 そして次回は……これが籤の結果だ!を反映させた結果となります。
 うん、回毎に文章が長くなるなぁ……一話に納めようとするとどうしてもね……。
 ところで時子さまが天使長とかあの天界おっかないなぁ。まぁ、時子さんはプロデューサー以外には優しい方だけど……。
 後、今更ですけど、仮面ライダー剣斬、忍者ライダーなんですね。宇宙船読んで衝撃でした。
 短編読み切りで書いた設定、それを知る前だったので……。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 オレらが海の上で取引ってんのに、アイツらは基地で何やってんだ?

 お?結芽っちに翼沙のヤツが何か着せたぞ?

 ヴァリアブル?リアライズ?ストームアーマーだぁ?

 ワケわからん。

 


 

 ━━駿河湾海上

 

 海中から黒い鋼鉄の鯨が競り上がる。

 水密扉を開け、船外に出てくる2人の女性。

 「真庭本部長からの報告によれば……今夜、この時間、この場所に現れるとの事でしたが……」

「何も居ませんね~」

 辺りを見渡す女性達、一人は舞草の現代表とも言える刀剣類管理局局長代理・折神朱音。

 彼女に帯同するもう一人は嘗ての戦いの折りにも共に居た元美濃関卒業生にして刀使に関連する企業に勤め、現在はすっかり舞草の構成員が板に着いた恩田累である。

 さておき、彼女達は揃って辺りに注意を向けるもののダグオンらしき存在は見当たらない、もしや謀られたのでは?と思い至った時、夜空が揺らぐ。

 「何事ですか…!?」

「朱音様!あれを!!?」

 空より現れるボーイング747をベースとした既存の旅客機には見られない部位を持つライドビークル、ファイヤージャンボ。

 そして300系のぞみをベースとしつつも後部にレーシングカーのエンジンらしき部位を持つターボライナーが揃って現れる。

 二機のビークルは海上に着水──正確には僅かにホバリングしているが──し朱音達が立つ潜水艦の正面に位置取る。

「嘘でしょ?!不時着でも無いのに普通に海上に着水……?してる?!」

 微妙に波が波紋を打っている事に気付いたが端から見ても海上に浮いているようにしか見えない事実に累は驚愕する他無い。

 彼女達がそうして驚いている内にファイヤージャンボからファイヤーエンが、ターボライナーから何やら少しまごついた後、紫を抱き抱えた(所謂お姫様抱っこ)ターボカイが跳躍、潜水艦に着地する。

 「時間通りだな!忙しい中来てくれてありがたいぜ」

 エンが明るく笑ってのける。

 「言った筈だ。どうあれ来る以外の選択肢は彼女達には無いと…とは言え無理を通して貰い感謝します」

 カイが紫を潜水艦の甲板に降ろしながらエンに対して呆れた様に溢し朱音達に礼を述べる。

 「姉様………貴方方だけですか?」

 紫に視線を向けた後、意を決しダグオンに話し掛ける朱音、彼女は彼等が何の目的を持って自分達へ接触を図ったのか、それを不審に思っているのだ。

 「此処に居るのは我々のみです。しかし別の場所から此処を望む事が出来る場所に仲間を一人待機させています。万が一我々に対し敵意を持った者が事を起こした場合、即座に対応出来る様になっています……貴女達ならば、そんな事は無い…とは思いますが、ご理解頂きたい」

 その言葉の意味する所に背筋が凍る思いを懐く朱音と累、息を飲む音と共に累が口を開く。

「それって…要するに下手な事したらこっちを何時でも攻撃出来るってこと?」

 「結果的に脅しと取られても仕方無い事ですが、そも我々は貴女達に多くを求める気は無い、今回の接触も彼女…折神紫を其方に引き渡す事が目的です」

 カイが内心不敬を働いている事に対する罪悪感に苛まれながらも淡々と事を進める。

 「朱音……少なくとも彼等の言葉は信用に値する。今回、何事かを要求する必要は無いはずだ…」

 見かねて紫が横から口を挟む。それを基に朱音は視線を暫し紫とダグオンとで行き来させ眼を瞑ると決意の息を吐く。

 「分かりました。では1つ、1つだけ質問をさせて下さい。貴方方と連絡を取る手段は無いのですか?」

 朱音の質問にカイは面を喰らう、予想していた質問とは違ったからだ。

 「驚きました、てっきり我々が敵か味方かを訊ねるとばかり……」

 「嘗て貴方方は姫和さん達を助けた際、こう仰ったそうですね?"我々の敵は異星からの脅威、そして人々の命を脅かす荒魂だ"と、ならば私は…私達は貴方方を信じます。いえ、信じたいのです」

 「成る程、それ故の質問の意図でしたか……解りました。質問に答えましょう。折神紫…貴女の姉に預けた物を我々が去った後に見ると良い」

 朱音の答えに納得し質問に答えるカイ、その後紫へと視線を移す。紫は寝耳に水といった様相で眼を見張る。

 「我々は常々刀使と共に肩を並べ戦う事を望んでいます。今は難しいかもしれませんが、何れはそうなればと願います」

 そう残してターボライナーへと戻って行くカイ、エンもファイヤージャンボに飛び移っている。

 彼等はコックピットに乗り込むと再び空へと舞い上がり彼方へ消えて行った。

 

 

 

 暫しの後、折神姉妹は無言で見詰め合い、互いに歩み寄る。

 「姉様…よく、ご無事で」

 「彼等に大いに助けられた、だがこの状況化では私が表舞台に立ち戻るのは色々とまずいだろう」

 現在の刀剣類管理局の立場を思ん諮ってかその様に述べる紫、朱音としても最初からそのつもりだったのか肯定で返す。

 「はい、姉様には暫く療養と言う名目でこの潜水艦での生活を強いる事になります。それと……」

 「ああ…彼等が私に預けた物だな……私自身心当たりが無かったが、可能性としては恐らく今私が身に纏っている着衣…あぁ、やはりか」

 紫が自身の着ている服のポケットに手を差し込み、其所に挟まれていたであろうメモを見付ける。

 「それには何と書かれているのですか?」

朱音が世界の命運が懸かったかの様な顔で訊ねる。

 「燕再び疾や駆け翔び上がる時、七光の勇者降り立つ。剱の神巫と並立つ……随分と思っていた物とちがうな……」

 内容に困惑する紫、このメモを仕込んだのはデルタならこんな風に書くかなと思い至ったアルファの仕業なのでダグオン達は内容までは知らされていないのである。

 彼女達に在らぬ誤解が広まったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━翌・刀剣類管理局本部

 

 「あーあ、クソッ!勿体なかったナァ。オレも折神紫を乗せたかったゼ」

 深夜の邂逅から時を経て明くる朝、本部の廊下を歩きながらぼやく若者が1人。

 「結局オレだけ警戒で独り寂しく監視だしヨォ……ハァ」

 「何を監視していたのです?」

 「アァん?そりゃ……って木寅チャン?!」

愚痴る申一郎に声を掛けたのは木寅ミルヤ、彼女にいきなり声を掛けられた申一郎はギクリと身を硬直させる。

 「あー…まぁ、何つうの?同好の志で集まった中でビンボーくじを引いちまってサァ、HAHAHA!」

 自分が普段周りに思われているイメージで誤魔化す申一郎、ミルヤはそれを僅かに怪訝に思いながらも、彼の日頃の行いを知っているからか追及はせずそうですかと納得する。

 「んで…オレに何かようかい?」

気を取り直して何時ものノリを取り戻す申一郎、茶色く染めた短めの髪を掻き上げる。

 「ああ、そうでした。本部長より任務を賜りまして……現地までの機材運搬に人手が居るので貴方を探していたんですよ」

 「お?それってつまりオレが頼りになるってコトかい?」

 「いえ、貴方が一番、暇を持て余していそうだったからです。鎧塚申一郎」

 格好を付けた申一郎はアテが外れてズッコケそうになるも気を取り直して考え直す。

 (ま、考えてみりゃどうあれカワイコチャンとご一緒出来るんだしデートみたいなモンに変わりは無いな!うん、そう思っとこう)

 「それで、引き受けてくれますか?」

 返事の是非を問うミルヤ、暇していると予想を着けておきながら選択の有無を与える辺り、申一郎の都合も考えてくれているのだ。そして彼の答えは──

 「モチのロンだっての!カワイコチャンのお誘いは大歓迎ダゼ!」

 YESの返事と共に意気揚々歩き出す彼に苦笑しながらミルヤは後を追う。

 「全く…場所は解っているのですか?」

 彼女の言葉に間抜けな声を洩らす申一郎であった。

 

 

 

 

 

 「で、ナンでお前が居んの?」

 「……任務の場所柄、土地勘がある者を数人組み込むのは当然の事だ…それに、警邏として現地研修もある」

 ジト目の申一郎に答えるのは六角龍悟、因みに彼の他は申一郎を呼んだミルヤ、糸見沙耶香、姫野志保、丸山茜、安桜美炎、そして他数名の刀使。

 「ふへぇ~清香にお兄さんが居たんだ」

 「ええ、私も驚きました。ですが優秀だそうですよ」

美炎とミルヤが此処には居ない友人の顔を思い浮かべながら話題に華を咲かせる。

 「よろしくッス糸見さん」

 「うん…よろしく…お願いします」

茜が元気溌剌に沙耶香の手を握り人懐っこく笑っている。

 そして申一郎に絡まれている龍悟に志保が近付いて来て、

 「お久しぶりです!六角先輩!」

 「……姫野か、飼い犬は元気か?」

この2人は同じ平城同士であると同時に動物好き同士であるので仲が良いのだ。

 

 「龍悟のヤツ……お独り様って雰囲気出してる割りに意外と交遊関係あるな……」

 「鎧塚申一郎。貴方、六角龍悟さんと親しいのですか?随分と気安い関係に見えますが?」

 美炎と共に申一郎に近寄るミルヤが龍悟との関係を訊ねて来る。

 「ン?まぁ御前試合の時にチョットな…」

 本当はそれ以前、ダグオンに選ばれた事件から交遊関係があるがそれをバラす訳にもいかない。

 「そうですか、いえ、そうですね。一瞬貴方が彼を見間違えてナンパしたものと思いましたが、貴方は例え後ろ姿でも男性と女性を間違える事はありませんでしたね」

 同校の知己故の発言、それを隣で聞いていた美炎が感嘆と共に疑問を挟む。

 「へぇ~凄いんですね、あれ?でも女装してたりしても判るんですか?」

 「モチよ!女装ヤロウだろうが、男の娘だろうが体幹や呼吸、臭いで判るね!」

 「へ、へぇ……」

 「流石にそれを自信満々に言うのはどうなのですか……」

 申一郎の答えに2人共流石に引く。

 「そう言やぁ木寅チャン、任務ってドコよ?」

 「京都から奈良間における荒魂の調査と討伐になります」

 「ほーん、それなら刀使だけでも良くね?いやマァ、オレはカワイコチャンと一緒に居れて嬉しいけどサァ」

 「鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の件以降、我々刀使は所属に関係無く全国へ派遣されています。何より昨今の世間の当たりの強さに保護者の方から刀使を止めるよう説得される方達も居ます。現地の土地勘がある人間で伍箇伝の所属ならば猫の手も借りたいと言うのが本音でしょう」

 「あー…そりゃそうなるのか?ま、荒魂が出たらオレらは一目散に逃げりゃ良いワケだし」

 「本来なら避けて然るべきなんですがね、さぁ皆さん出発しますよ!」

 こうして一行は任務へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本の何処か

 

 紺碧の巨体が大地を揺らす。

 其処に鋼鉄の騎馬が並走する。

 「出掛けるのかい、だったらこれを持ってきなよウン」

 「ふん?要らぬ世話を…まぁ良い、貰える物は貰っておくのが流儀だ。精々ザゴス共々役に立ててやろう」

 巨体が騎馬から"何か"を受け取る。彼はその長い鼻から吹雪を撒き散らしてその姿を消し何処かへと向かった。

 

 

 

 

 

 ━━京都駅

 

 「とまぁ、特にトラブルも無く着いたワケだが、此処と奈良の間ってたよナ?具体的にはドコよ?……にしてもチョット寒くね?」

 申一郎が身体を擦りながらミルヤに訊ねる、ミルヤは眼鏡を直し白い吐息を吐きながら答える。

 「宇治市です……鎧塚申一郎?顔色が悪いですよ?」

 「イヤ…だって…エェ、マジカヨ……奈良との間って聞いた時から嫌な予感してたけど宇治かよ…」

 「……何かあるのか?」

 後ろから龍悟が口を挟む。

 「実家が…………あるんだよ…」

 とても嫌な顔をして返す申一郎に龍悟や美炎が首を傾げる。

 「まだご実家と折合いが悪いのですか?」

 「だってイマドキ、やれ作法を守れだの芸を磨き学べだのウルサイったらネェ」

 申一郎が溢す愚痴に美炎が疑問を呈する。

 「芸?作法?鎧塚先輩の実家って何かやってるんですか?」

 「ウチは両親の実家からして歌舞伎と日舞の…まぁイワユル古典芸能の名家ってヤツでな……一番上の兄貴が日舞、二番目が歌舞伎…それも女形だからオレもどっちかにってな……」

 明かされた意外な真実に龍悟が眼を丸くする。

 「……なる程、鎧塚…何処かで聞き覚えがあると思えば…あの鎧塚だったか」

 ともあれバスに乗り込み宇治市へと向かう一行、やはり道中も荒魂の反応は見られないのか問題無く進む、強いて異変を上げるならば夏も近付く季節であるも関わらず矢鱈気温が低い事か。

 

 斯くして目的地に着いた一行は、まず拠点となる民宿へ向かう。

 「民宿かよ、せめて老舗旅館とかじゃネェノ?!」

 「え~ボクは民宿も好きですよ?」

 「栄養価が正しく摂れる食事に豪華さは関係無いッスよ!」

 「別に…何処でも眠れるから、大丈夫」

 「いや流石にちゃんと眠れる時は布団で寝たいよ!?」

少女達が姦しく囃し立てる、龍悟は口端を上げ申一郎の肩を叩き、

 「……異論があるのはお前だけのようだぞ?」

 「へいへい、悪ゥござんした…」

とそんな彼等のやり取りに何か気になったのか着物を着た現地の人間が近付く。

 「ああ、その声…やっぱり間違い無い、申一郎やな?綾小路に入って以来一切ウチに顔を出さんと何をやっとるんかと思えば…相も変わらず他所様に迷惑掛けよってからに、ほんに何の為に入学したのやら…」

 声を掛けた人物は京訛りで線の細い男性、彼は申一郎の事を知っている様だ。

 「ゲッ?!零史朗…!」

 「兄に向かって"ゲッ"とは何や、それに呼捨ても礼儀がなっとらん!おとんに報告させて貰うわ」

 申一郎から零史朗と呼ばれた男性は口許を扇子で抑えながら鋭く言葉を投げる。

 申一郎が

言葉に詰まっていると見かねたミルヤが間に割って入る。

 「申し訳ありませんが、彼は現在私達の任務に帯同しておりますので、ご家族同士の込み入ったお話はまたの機会にして頂けますでしょうか」

 「刀使……ふん、あんなけったいな怪物をバラ撒き散らしてよぉ言うわ。ま、ええわ。今回はこんくらいにしとくわ、けど申一郎…一度ウチに顔を出すんやで、おとんも万兄も心配しとるやさかい」

 「心配?万葉兄はトモカク親父は寧ろオレが居なくて清々してんだろうよ。」

 申一郎が嫌味たらしく吐き捨てると零史朗は溜め息を着くと彼等の側を通り過ぎる。

 「はぁ、こんな所で無駄を喰ったせいで身体が冷えてしもうたわ。精々在学中は勝手にするんやな、そんで後悔するんわ自分やからな」

 零史朗は最後にそれだけ残して去って行った。

 

 その夜、申一郎、龍悟、そして刀使達が身を寄せる民宿にて──

 「ダァー!ムカつく!クソッ兄貴が!オレはトモカク…カワイコチャンにまでネチネチ言いやがって!」

 「……お前にも色々あるようだな、意外な一面を見た…」

 当然の様に男同士相部屋になった申一郎と龍悟が部屋で会話に興じる。

 「ま、二度とツラ合わせる気はネェけどな、それにしても夜は一層冷えやがるゼ」

 「…それなんだが、妙だとは思わないか?昨今の環境問題があるとは言え場所によっては防寒具が必須……それもニュースを確認した所では範囲が広がっているように見える……」

 左手に持ったスマホの画面を申一郎へと見せる龍悟、確かに画面に表示される寒波の図は宇治市中央近辺から広がっている様に見える。

 「考え過ぎダロ、さっさと寝ようゼ。明日はカワイコチャンとデートして兄貴の事は忘れる!」

 「……だと…良いがな」

布団に耽った申一郎を尻目に龍悟は窓越しに空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━翌朝・民宿前

 

 「何じゃコリャァァァアアア!!?」

 

 「何コレぇぇぇええええ!?!」

 

 申一郎と美炎の絶叫が重なり木霊する。

 彼等が朝、目を醒まして目撃した物は一面の雪景色……と言うよりも猛吹雪と強烈な寒波であった。

 「……やはり…か」

 「これは……調査どころではありませんね。仕方ありません任務は中断せざる終えませんし、この吹雪が去るまではこの宿にお世話になるよりありませんね」

 ミルヤがチームのメンバーに向かって当面の指示を出す。

 そんな彼女達を横目に置き、ダグオンの2人は顔を寄せ話合う。

 「……申一郎、やはりこの吹雪は妙だ……携帯の電波が遮断され、視界はほぼ皆無……念の為、俺は調査してくる…」

 「確かにナ、いくら地球環境がイカれてるっても京都でいきなり猛吹雪ってのはオカシイ。木寅チャンもそれが解ってるからああしてみんなに言うしかネェワケだ。取り敢えず原因究明はオマエに任せる。オレはアイツらに連絡してみる」

 申一郎のその言葉を聞き姿を消す龍悟、申一郎はそれとなく宿に切って返す。

 「あれ?鎧塚先輩、お一人ッスか?」

丸山茜が龍悟の影が無い事に気付くが……

 「あー…奴さん先に戻った。トイレだとさ」

 「でも…気配、感じなかった…」

 「六角先輩だからね、平城でも気付いたら居なくなってるって事が良くあるし」

 申一郎の誤魔化しの言い訳に沙耶香が鋭い指摘を言い放つも、志保と言う龍悟を良く知る者が居たお陰で事なきを得る。

 (マジカヨ、アイツ普段から忍者みたいな事してたのか……っと、こんな所でモタついてる場合じゃネェ!)

 皆の前を飄々と通り過ぎた後、急いで宿の自分達が使用している部屋に籠る申一郎。

 「オイ!みんな聴こえるか?!」

ダグコマンダーを起動、序でにアーマーライナーをコールしてから通信機能で残りのメンバーに連絡を取る。

 『どうしたんですか?』『ちょっ?!お前いきなり通信寄越すなよ!?危うくバレそうになったじゃねぇか!』『何かあったのか?「何々~?」 「結芽ちゃん、邪魔しちゃダメだって」…済まない』

 因みに撃鉄の端末には連絡は入っていない、通信先から除外しているからだ。

 「京都近辺のニュース見れるか?チョットヤバい事になってる。オレはこれから龍悟がそうした様に調査に出る、一応アーマーライナーももう呼んである。オマエらも来てくれて」

 『ちょっと待ってて下さい……成る程、確かにこの異変は妙ですね』

 『ああ、不自然に吹雪が一定の地区に吹き荒れている』

 『ちょ、ちょっと待ってくれ!今俺もダグベースに向かうから!』

 翼沙、戒将と違い恐らく第三者が居る為慌てている焔也が焦る。

 『申一郎、我々は焔也が合流した後、其方に向かう。龍悟共々先行調査は任せるぞ』

 戒将からの指示が飛んだ後通信が終了する、申一郎は意を決しダグコマンダーの変身プロセスを起動する。

 「トライダグオン!……アーマーシンッ!」

 部屋の窓を開き深緑の戦士が吹雪の中に消えた。

 民宿から大分離れ木々の間隔が広い場所にアーマーライナーが着地する。

 「龍悟、聴こえてっか?オレも今からアーマーライナーで空から調査する」

 『……承知した、俺は南に向かう』

 「ならオレは北からだな」

 2人が短く言葉を交わすとアーマーライナーが吹雪の空へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、龍悟は吹雪の中、人気の無い森の木々を跳び移りながら周囲の気配に気を配る。その時、龍悟に襲い来る殺意の凶弾。

 「…っ!トライダグオン!…シャドーリュウ!」

 咄嗟に変身しクナイで弾くシャドーリュウ、事なきを得た彼は凶弾が現れた先をクナイを構えながら見据える。

 ──ギィ…ギッ。ギギ、ダグオン…──

 リュウを囲むザゴス星人の群れ、紫影の戦士は吹雪に舞う。

 

 

 

 

 

 

 京都上空をアーマーライナーが飛ぶ、コックピットからアーマーシンがレーダーを眺め回遊する。

 「ドコだ…宇宙人共はドコに居やがる………っ?!何だ?!!」

 そこに突如として強い衝撃が加わる。体勢を建て直し衝撃が来た方向に向けば白い世界の中で1つだけ見える不釣り合い程の青い巨体。

 巨体は獣の様に見えて戦車の様な風体にも見える。

 「?何だアリャ?っともかくアレが敵か!ブッ倒す!」

アーマーライナーの武装を謎の巨体に向け撃ち放つ。

 アーマーライナーとタンクモードとなった宇宙海賊ビッグローの砲撃戦が始まった。

 

 

 ━━宇治市近辺の京都周辺上空

 

 3機のダグビークルが吹雪を前に足を止める。

 「くそっ!?入れねぇ!?」

 「こう強烈な勢いではな…アーマーライナーの装甲で無ければ厳しいか……」

 「我々はどうにか突入する手段を講じなければなりませんね。さもないとこの吹雪は京都全域を覆ってしまう」

 3機のコックピットの中で3人が歯噛みする。そこに奇妙な風体の円盤らしきモノが現れる。

 「アレは?!」

 「異星人の円盤!?ですが何処から…」

 「驚くのは後だ!奴等は我々を狙っている様だ、迎撃するぞ!」

 何処から途もなく現れた謎の円盤に3人は急遽戦闘に突入する。

 

 

 

 

 

 

 「ウラァ!とっとと倒れろ!」

有りったけの火力でビッグロータンクモードに攻撃をするシン、対しビッグローは鼻が変形した大砲で迎撃する為、連射という点で不利を被る。

 「チィッ、面倒だな腐ってもこの星の護り手かっ!チェェエエエンジィィッ!」

 紺碧の巨体が人型へと変形する。砲撃に曝されても尚立ち上がるその姿は雄大な戦士のソレだ。

 「変形しやがったダト?!っだとしても!引けねぇ!オレはムカついてんダヨ!兄貴には遭うしカワイコチャンとのデートはお流れ、これ以上テメェらに好き勝手されて堪ッカヨ!!」

 シンの怒りが頂点に達する、彼の心が新たな力の扉を開く。

 

 

 

「融合合体!」

 

 アーマーライナーからまるで武道の構えの立ち姿で競り上がるシン。

 アーマーパックが分離し、車輌が変形を開始する。

 ターボ、ウイングと同様客席の部分が脚となり乗車口近辺が腕となって後部から側面に展開、アーマーパックがキャタピラ部を前面にミサイルターレットとキャノン砲の位置が変化、人型に変化中のアーマーライナーの背中にドッキングする。

 シンが立つ背後に無骨な頭部が展開、シンが融け消える。そして瞳に光が灯る。

 

 『ダァグッアァァマァァァアア!!』

 

 重装甲の深緑の巨人が紺碧の戦士と相対する。

 「ほぅ…面白い!俺様と正面から殺り合うつもりか!?」

 『とっととブッ倒す!覚悟しろよデカブツ!』

 ビッグローに啖呵を切って走り出すダグアーマー、5機の中で随一の出力を誇るパワーが籠った拳をボクシングのジャブで繰り出す。

 『オラオラオラオラ!』

 「ヌゥ?!フフフ…やるゥ…ならば!」

 右の脚を振り上げ思いっきり大地に叩き付けるビッグロー。衝撃でダグアーマーがバランスを崩す。

 『うおっ?!』

 「ビッグキャノントンファー!」

 武装となった鼻を振り回すビッグローがダグアーマーを吹き飛ばす。

 『っ!…アーマーキャノン!』

 吹き飛ばされつつも背部のキャノン砲で反撃するダグアーマー、ビッグローはその威力に呻く。

 「ぐぅ……辺境と侮っていたが、中々どうして……楽しめるじゃないか。だが俺様も今死ぬ訳にはいかん」

 そう溢したビッグロー、懐から謎の装置を取り出すとそれを放り投げる。

 装置は浮島十三重石塔の真上で回転し石塔の情報を読み込むと光輝く。

 『何だ?!』

 「さらばだダグオン!次に会う時は本気で相手してやろう」

 『なっ!待て!…何っ?!?』

ダグアーマーの制止など異に返さず大砲を大地に向け冷気を放ちビッグローは姿を消し、ダグアーマーには石塔の形をした怪物が組み付く。

 『なっろう!ゼェェイ!』

 石塔の怪物を背負い投げし叩き伏せる。

 『ヤロウは逃がしたがテメェは倒すゼ!』

 ダグアーマーが全火器を石塔の怪物に向ける。

 

 ファイナルバスタァァアアア!!

 

 背部のキャノン砲が、ミサイルが、肩の機関砲が石塔の怪物を蜂の巣にする。

 爆発を背に重装甲の戦士が聳え立つ。ビッグローが去った為吹雪は晴れダグアーマーを照らし出していた。

 ザゴス星人を掃討したリュウが円盤を退け吹雪が晴れた市内へ入ったエン達が彼の元へ向かう。

 

 仲間達を見上げダグアーマーは呟く。

 『ったく、遅せぇぞ!オレ一人で何とかなっちまったじゃネェか!』

 

 そしてこの後申一郎として宿に戻った彼はミルヤに叱られるのであった。

 

続く

 

 


 

 次回予告(BGM:transformation ver融合合体ダグアーマー)

 遂にオレも融合合体してダグアーマーに!くぅ~!我ながらカッコイイ!

 

 我々の戦力も幅が出てきたな。

 

 後は龍悟だけか!

 

 ……まぁ、その内な。

 

 皆さん!そんな和気藹々してる場合じゃありません!例の甲冑がまた現れたんですよ!?

 

 またしても現れた甲冑野郎に苦戦する俺達、糞っ!このままじゃやられる!?

 俺は衛藤の!安桜の!柳瀬の奴が笑っていられる毎日を守る為に負けられないんだよ!

 そんな俺の想いにファイヤージャンボが応える。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 勇気の火炎合体!ファイヤーダグオン爆誕!

 これが俺の真の力……?!

 




 はい、次回はダグシャドーではなくファイヤーダグオンです。
 いやね、そうでもしないと後々の展開状、パワーとかドリルとかスーパーとか出しづらい感じになっちゃうんですよ。ご了承下さい。
 因みに鎧塚家は数字が零から始まり万で終わるとまた零から始まる名前を子供に付けるので、長男万葉で一度数字がリセットされてるんですよね。
 なので申一郎は三男だけど1が名前に入っています。また、一桁の内は10になるまでの数字を名前に付けるので申一郎の弟は2が付く名前となります。
 ではまた次回


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幕間 彷徨の宗像三女神 放浪の剣聖 煩悩の管理者

 おはようございます。
 取り敢えず最後の方に色々フラグを置くスタイル。
 まぁ、幕間なんで程々に本編に対し重要な所を見せつつも悪魔で、そして飽くまで補足程度に収まる様に書いているつもりなので………。


 

 舞草に折神紫が引き渡されファイヤージャンボ、ターボライナー、そして駿河湾沖近くの山腹から飛び立つアーマーライナーを隠れながら見詰める淡く光る白い影。

 「何と言う事だ……やっとの事で見付けた折神紫…ぁぁ、だと言うのに、我は此処で終わってしまうのか…我が想像を遥かに越えし者達の手によって…。塵の様に儚い生であった……」

 影は俯き卑屈に独り語る。そんな事をしている間にダグオン達は飛び去ってしまったのだが、件の影は気付かず項垂れたままだ。

 そして舞草の潜水艦もまた、朱音達を収用し潜航を開始する。

 影は知る由も無いがダグオン達は警戒の優先順位を人間や海中、海上の動体反応を中心としたレーザーとパッシブ、アクティブソナーへ割いており、ダグテクターのスペクトラムファインダー機能をオフにしており、更に嘗て凶神と化した紫に与えたライアンの一撃が図らずも影の……ヒトの形容(カタチ)を成した荒魂の存在を薄弱にしたお陰で見付からずに済んだのである。

 「嗚呼……所詮は我など……」

 白い影こと人型の荒魂、あの夜に別たれた3つの光の1つ自ら語る口を黒い手の様な拘束具らしきモノで塞ぐ()()の名は"イチキシマヒメ"。

 大荒魂であったモノの成れの果ての1人である。

 後にひとしきり沈んだ彼女は潜水艦が消えた事に気付きまた落ち込み、そして重い足取りを引き摺って何とか舞草──折神紫に接触、保護を求めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京市ヶ谷・防衛省

 

 日本と言う国家に於いて、国防の一端を担う組織。

 今そこに1人の女性……否、ヒトの姿を成した異形の存在が佇んでいた。

 彼女の姿形はイチキシマヒメと同様白い光に淡く包まれ、黒と白に彩られた頭髪は顔面の半分を隠しており更にその瞳を覆う手の様な眼帯。

 それはまるで彼女の瞳がこの世界を写す必要が無い、そう告げている様だ。

 省舎に務めていた自衛官が女性を囲うように近付く。

 彼女はそれを気にするでも無く、口を開きただ一言告げる。

 「我はタキリヒメ……人よ我に従え」

 後に彼女──タキリヒメは防衛省により隔離される。

 この事が刀剣類管理局、延いては折神朱音の耳に入るのは今暫く先の事である。

 

 

 

 

 

 

 ━━京都の何処か

 

 宇治市での吹雪の中でのダグオンと異星人の戦闘、それを遠方より眺める吹雪に溶け込む白い人影。

 「ふん…来訪者共め、好き勝手暴れてくれる。が、お陰で我の用は滞り無く済んだ。これで多少は力が戻ったというもの……」

 鈴の音のような少女の声をその口から紡ぐ彼女もまたイチキシマヒメ、タキリヒメと同じ存在である事が解る。

 「業腹ではあるが…我が完全に力を取り戻す為に、人間共の存在を利用させて貰うとしよう……ン?」

 ダグアーマーとビッグロー、石塔との戦闘が終わり吹雪が晴れ青空が覗く空に一瞬煌めく太陽の光を反射するナニか。

 それを白い少女は忌々しそうに見詰める。

 「忌々しい……あの時奴に付けられた傷が我を苛む。アレだけが我の知り得た未来の外にあったモノ、アレさえ無ければ容易くノロを集められたものを……」

 そう言う彼女の足元に散らっていた橙の液体、この地域に確認された荒魂であったモノ。

 それを吸収しながらその眼孔は鋭いままだ。

 「とは言え皮肉にも奴が我に付けた傷のお陰で、奴は我が存在に気付かぬ……しかしこの程度のノロでは万全には程遠い、やはり別たれた半身を吸収しなければ…」

 少女は視線を空から外し森の奥へ消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都上空

 

 吹雪が晴れた空、千切れた雲を切り裂くのは黄金の剣。

 『やっと晴れたか…。むぅ、この地では無かったか……』

 彼の剣の名はライアン。

 その身に幾つもの人の無念を抱えた復讐者。

 彼は嘗て己が内より発する怒り、嘆き、哀しみ、憎悪の声により大荒魂に対する復讐心で動いていた、しかし、あの決戦の夜ダグファイヤーとの決闘に敗北した彼はその願いを聞き届け安易な復讐による戦いを避ける様になった。

 結果、ダグオンと同じ様にその土地に現れた荒魂を人知れず討伐。

 後には輝きを失ったノロが残るのみとなった。

 また、彼に関してはその存在を知る刀剣類管理局を始めとした一部人類側からダグオンの仲間ないしそれに準ずる存在として認識している。

 今回も彼は日本中の空を飛び回り1人孤独に荒魂を討つ為、京都くんだりまで現れたのだ。

 『どうやらダグオンのみならず刀使も活動していた様だな、荒魂は既に討たれた後か』

 実の所、荒魂は刀使ではなく白い少女によって吸収され消滅したのだが、荒魂を探知する機能が無い彼は実際にその地に出向き、僅かな穢れから漏れる殺気や敵意の気配を感知するしかない。

 しかし、白い少女が述べた通り、彼自身がエンと共に付けた傷により精々がスペクトラム計程度の気配しか無い少女の事を察知する事が出来なかったのである。

 また、只のノロへと還ったモノは穢れがあっても殺気等無い。

 故に少女は事無きを得たのだ。

 『異星人、厄介なモノだ……連中の存在が我が目的を妨げる事があるとは……やはり奴等も討ち果たすべき敵に違いない。だが先ず討たねばならぬのはタギツヒメ、必ずや見つけ出し討ち祓ってくれる!』

 獅子を携えた黄金の剣はそうして新たな地へと飛び去った。

 彼は知らない、己が成した事により憎むべき仇敵を見逃してしまった事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 

 「う~ん……やっぱりライアンが手元に無い以上、前倒しして無限砲計画を早めるしか無いのかなぁ……」

 ダグベースのとある一室で少女の様な少年が頭を抱える。

 「ぶっちゃけ、この状態じゃ元の次元層に戻れないし、此処で造り上げるしかないんだよねぇ。幸い資材は先にシータから貰ってるし…でも撃鉄君のダグテクターも用意しないとだし…って言うかダグテクター自体はブレイブ星人の記憶から再現出来るけど、それはあくまでも黒岩激のダグテクターだからなぁ…う~ん」

 唸るアルファ、一頻り唸った後、彼?は何か諦めた顔になる。

 「うん、撃鉄君にはもう暫く辛抱して貰おう。先に無限砲…って言うかあの子のガワだけでも作んなきゃね!」

 俗に言う諦めの境地からの開き直りである。

 「まぁ、それはそれとして…此処で作るのは良いけど、AIプロトコルも当たりだけは付けなきゃ……それに早いとこ七人目の候補も見作ろわなきゃだし…」

 本当にどうしてこうなったのか──そう思うアルファ、大体が自己責任である事は言うまでもない。

 「ところでゼータはいい加減、いつ帰るの?」

 振り返るアルファ、先程から後ろでニコニコ顔のゼータに訊ねる。

 「はぁ~(*゚∀゚)=3沙耶香ちゃんキャワワ!一度で良いから膝に載せて撫でたい…………んゆ?あぁ、いつ帰るって?多分後2日ちょい?かな。ってかさあんたはまた、ダグメン達に面倒ごと押し付けたりしないでしょうね?」

 「失敬な!今作ろうとしてるのはそもそも武器としての機能しか搭載して無い、所謂ガワだけのやつだよ!?それによしんばAIが出来てもライアンみたいにはならないよ……多分

 最後の方はゼータに聞こえない様に小声になるアルファ。

 確かに今、彼?が作ろうとしている物はライアンとは違ったモノに仕上がるだろう。

 しかし、だからと言って面倒ごとにならない確証は無いのだ。

 しかしそんな未来の事など知る由も無い。

 

 




 無限砲……一体何キッドなんだ……!?
 はい、アレです。例えるならマイトガインでパーフェクトキャノン状態で登場した後に超AIを積んだガンナー的な感じです。

 ついでに後回しされる撃鉄、でも大丈夫籤引きには君の変身回も混ぜといたからこの章で少なくともドリルゲキにはなれるよ!

 ドリルライナーが用意出来てるとは言って無い。

 ところでとじともオリジナルの御刀に四神と四霊をモチーフにしたのがありますよね?
 いやぁ、公式でオリジナル出して頂けるのは有難い事この上無い。
 私、基本、与えられた手札で戦略を立てたくなる質なんで、原作が無い完全オリジナル作品か設定がかなーりふわふわしてる作品でも無ければ、俗に言うオリジナル装備は出さない主義なんですよね。(判り易い例は仮面ライダーシリーズ)
 なんでスペック状可能な事や設定的にこれは出来るんじゃないかなって言うのは書きます。
 近い例で言うと拙作のカイがやったターボホイールを蹴ってジェゲンガ星人フィメルに喰らわせた技。
 アレは技自体はオリジナルみたいなもんですけど、やろうと思えば勇者指令ダグオンのカイも出来たよね的な感じです。
 それでは次回


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第六十七話 勇気の火炎合体!ファイヤーダグオン爆誕!

 おやすみございます!
 またしても長くなった合体回!!
 いや本当に申し訳無い。
 そして今回は刀使の方もそこそこ活躍させました。
 後、ついでに化けの皮が剥がれてきた幹部が居ますが……まぁ以前言った通り、アレは本質が小物…と言うか子供なんで。まぁ後数回は出番ありますけどね



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 遂に申一郎君も融合合体が出来る様になったね。

 

 後わ~りゅーくんだけだし!

 

 その前に無限砲と撃鉄君のダグコマンダーかな……

 


 

 ━━ダグベース・サロン

 

 京都での戦闘を終え帰還した彼等は久方ぶりの休日を過ごしていた。

 「で、オレはボスらしき敵を逃がしちまったモノのヤロウが残したカイブツを楽勝で撃破したってワケよ!」

 申一郎が前回の戦闘の様子を撃鉄と結芽に揚々と語っている。

 それを離れた所から呆れた目で眺める焔也。

 「あーあ、撃鉄はともかく結芽ちゃんは可哀想に……多分あの話何回かループするね、間違いない」

 手許のソフトドリンクを飲み干したカップを弄りながら同情の声を洩らす。

 程無くして結芽がとても疲れた顔で焔也の居る側に寄ってきた。

 「よぉ、お疲れさん。大丈夫……じゃないか」

 「うぅ…申一郎おにーさんお話長いし、何回か同じこと言うし疲れたー!」

 カウンターに頭を乗せグデる結芽、そう言えばと焔也は彼女に訊ねる。

 「そう言やぁ戒将は何処に行ったんだ?大体いつも一緒に居るじゃねぇか」

 「ん……釣りだって。見ててもつまんないからこっちに残ったけど…あーあ、早く自由に出掛けられないかなぁ」

 戒将の趣味の1つが釣りであり、現在彼は近くの河で渓流釣りをしている。待ちが基本の趣味は結芽には合わないらしい。

 「って事は結芽ちゃん今暇してんのか…ちょうど良いや、ちょっと俺と一戦やらないか?」

 そんな彼女に焔也は模擬戦を提案する。結芽は突っ伏したままほんの少し考え込むと、

 「良いけど…模擬戦って、木刀?それともあの柔らかいヤツ?」

 「柔らかい方な、怪我させたら君の兄貴が恐いから」

 「えー…そもそもおにーさんいきなりどうしたの?」

焔也の答えに不満を洩らしつつも彼が何故自分との模擬戦を申し出たのか疑問を述べる。

 「ま、色々とな……俺も強くなりたいんだよ」

思い起こすのはあの夜、凶神と化した折神紫──タギツヒメにあっさりとあしらわれた事。

 あの日から焔也は彼なりに様々な研究や研鑽を重ねた。

 刀使科の生徒達の立ち合いを見学させて貰ったり、改めて剣術の本を読み漁ったり、自宅の庭先で見よう見真似の剣術の動きをしてみたり等。

 「?焔也おにーさん普通の人にしては強い方だし変身したらかなり強くなるじゃん、それなのに強くなりたいの?」

 「ああ、今より強くならねえと守りたいモン守れねぇ、だからさ、結芽ちゃんくらい強い相手と訓練すりゃ少しは…ってな」

 「守りたいモノ……よくわかんない……でも、うん…良いよ、相手してあげる」

 頭を上げ身体を起こして椅子から飛び降りる結芽、そして席を発つ彼女を追ってサロンを出る焔也。

 2人はダグベースの外にアルファが併設したシュミレーションボックスへ移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン・???

 

 「だぁぁぁあっ!ムカつくムカつくムカつく!辺境のクセに!低レベルの異世界の辺境惑星のクセに!どうしてぼくの思い通りにならない!あそこは普通ぼくに撃破されてスコアになるとこだろっ?!大体…低能が抗うなよ!あそこはさっさと全滅してボーナスステージになるとこだろ!!?あー!さっさとここの奴らを倒す為にも、とっとと地球に全員で攻め込めば良いのに!ホントムカつく!」

 そこはエデン監獄の何処かにある亜空間ブラックホールによって創られた部屋。

 変声期直前の少年の声が反響する。

 「ちっ、ともかく今度は勝つ。その為に新しい装備を作らなきゃ…。取り敢えず厄介なお邪魔エネミーは赤いの青いの白いのに……つい最近緑のも増えた、紫のヤツはまだ変形してないみたいだけど、邪魔なのには変わりないし……っ、予定前倒し、アイツを素材に新しい装備を作ろう」

 少年が指を振るうと部屋の外に気配が現れる。

 「おおおおよよよよびびびび、かかかか????」

 「ふん、相変わらずイマイチ何言ってんのか分かりづらい……まぁ、操った代償に知能が下がったから仕方無いけど……にしたって酷い。でも、このゲームのステージをクリアするにはもってこいの能力だし、知能があっても邪魔だし、これで良いや」

 ぶつくさと呟きながら亜空間の一部を開け呼び出した異星人を招き入れる少年。

 呼び出された異形の異星人は少年の部屋に入ったきり、出てくる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「あ…!」

 「…ぅん?ぁあ、どうかしたので?特に興味はありませんが、一応聞いときますよ聞いときますよ」

 妖精が何かに気付き声を挙げる。包帯はそれに胡乱気に反応しながら心底どうでも良さそうに訊ねた。

 「またひとりおともだちがへっちゃったなぁて」

 「おともだち……ですか、はぁ…それはまた残念でしたね残念でしたね」

 妖精が明日の天気を当てるくらいの気安さでさらりと告げる、包帯はその意味を察し、しかし深入りしたくないのか適当な返事で流した。

 彼等が居るのはエデンの地表、妖精の日課の散策に包帯が付き合わされているのだ。

 そんな彼等の目前でエデンの発進ゲートが開く。

 「ぉや?誰かあの星に降りるのか…熱心な事で熱心な事で」

 やはり他人事の様に喋る包帯、傍らの妖精は何が飛び出したのか見えたらしく笑顔になっている。

 「うわぁ!すごい!まえよりつよそうになってる!!」

そんな事を叫びながら地球に向かうナニかを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県・某洞窟周辺の渓流

 

 「ふむ、大量とはいかないが…それなりには釣れたな」

 クーラーボックスを肩に掛け、釣竿を担ぐアウトドアウェアの青年、燕戒将。

 普段眉間に皺が寄っているか、そうでなくとも真面目な顔が多い彼にしてはとても良い笑顔である。

 荷物を抱えているとは思えない軽い足取りでダグベースのある洞窟に踏み入れる。

 ダグベースにまで近付くと聞き覚えのある絶叫が轟く。

 

 「だぁぁあ!負けたぁ!」

 

 見ればアルファが何時だか作り上げたシュミレーションボックスなる模擬戦用のスペースで焔也が大の字で倒れているではないか。

 「おにーさん……結構しつこいね……」

 視線を横にずらせば実の妹が汗だくで息を吐いている。

 「何をしているのだ、お前達は…」

 見かねて彼等の元へ近寄る戒将。

 結芽はおかえり~と軽い調子で手を振り、焔也は弱々しく手に持ったスポーツチャンバラに用いられる様なソフト剣を手の変わりに振るう。

 「焔也おにーさんが強くなりたいって言うからちょっと相手になってたの」

 結芽が戒将の疑問に答える。

 疲労に声が上擦っているとは言え嘗て病に侵されていた少女とは思えない程溌剌とした声だ。

 「ふむ、ソフト剣か……まぁ刀使相手に生身で模擬戦を組むならそうなるか」

 「私的には木刀でも良かったのに」

 息を整えそんな事を口走る結芽。しかし考えても見てほしい、神童と謳われる彼女が相手なのだ、御刀でない分、八幡力や迅移が発揮されないとは言えその猛攻は凄まじいの一言に尽きる。

 もし木刀なら焔也は全身打撲による痣だらけだっただろう。

 「それは止めてやれ。それにどちらにせよ手加減などせずに相対したのだろう?……しかし焔也も結芽に着いてくる程とはな」

 「まぁパルクールで体力は付けたからな……」

 「焔也おにーさん猿みたいに避けるし、間合いを中々離さないし、ホントしつこかったよ」

 結芽のあんまりな言い様にひでぇと洩らした焔也。

 其所に盛大にアラートがなり響く。

 

 <勇者諸君、新たな異星人が現れた。出撃だ>

 

 ブレイブ星人の声がダグベース内に木霊する。

 「しゃっ、回復した!行くぜ!」

 「ああ。結芽、お前はオーダールームで待機だ」

 「むぅ~。いつか一緒に連れてってね!」

膨れっ面になりながら戒将の言う事を素直に聞きダグベースに向かう結芽。

 ダグベースの発進ゲートが展開される。

 

 「「トライダグオン」」

 

 焔也と戒将、2人の若者がダグコマンダーを起動。

 勇者ダグオンへと変身した。

 5人が各々のビークルに乗り込み出撃する。目指すは敵の異星人が現れた座標。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京・江東区中央防波堤人工フロート

 

 東京に浮かぶ人工の島にソレは現れた。

 「かかっ喝采!わわ我、ささ再臨!げげゲームスタート!」

 言葉の頭がぶれる様な言い回しで喋る巨大な甲冑、その巨体の背から何かが飛び立つ。

 「しゅしゅ出撃!わわ我が眷族!」

 ミサイルらしきもの、B2ステルス空爆機らしにものが空へ江東区を含む近辺エリア一帯に向け放たれる。

 それらは地上に激突し変形。B2ステルス空爆機は甲冑より一回り小さなロボットに、ミサイルは人間大のロボットに変形し暴れ始める。

 「ふぁふぁファーストステージ、らら楽勝」

 

 『待ちやがれぇぇえええ!

 

 そんな甲冑に待ったを掛ける存在が現れる。

 「しゅしゅ出現、じゃじゃ邪魔者!だだダグオン!!」

 声がした方角に視線を向ければ空を駆けるファイヤージャンボ、ターボライナー、アーマーライナー、ウイングライナー、シャドージェットの5機のダグビークルが飛んでくるのが見える。

 「……あれは、あの時の甲冑の異星人か…?!」

 「姿は以前と違いますが、反応に類時点が見られます」

 リュウが以前出現した甲冑の異星人と同じ既視感を目の前の敵に感じ、ヨクが解析機の反応から同質のモノらしいと述べる。

 「敵は複数…かエン、恐らくはあの一番デカイのが親玉だろう。奴はお前に任せる。俺とシン、ヨクはエリア一帯で暴れる三機を…。リュウ、お前には──」

 「…街中に散らばった小型だな。任されよう」

 シャドージェットが都心に近付く、キャノピーからリュウが飛び出し同時に3枚のカードを投じる。

 「…行け!ガードウルフ!ガードタイガー!ガードホーク!」

 その言葉と共に鋼の獣達が方々に散開、人間大のミサイルロボに対応する。

 

 

 「我々も行くぞ!」

 「オウッ!」 「はい!」

 ライナーチームの3人が各々3機のステルス空爆機が変形した巨人へと向かう。

 

 

「「「融合合体!」」」

 

 『ダグターボ!』

 

 『ダグアーマー!』

 

 『ダグウイング!』

 

 素早く融合合体し臨戦態勢に突入した。

 

 そしてエンはファイヤージャンボからファイヤーストラトスを発進、中央防波堤へ降り立つと甲冑へ向かって行く。

 

  「融合合体!」

 

 『ダグファイヤー!!』

 

 そのままダグファイヤーへと融合合体しパワーアップしたと目される甲冑へ向かって行く。

 「けけ計画成功、だだ第一段階クリア。せせセカンドステージ、すすスタート!」

 甲冑もそれを迎え撃つように両手を広げた。

 

 

 

 

 

 「……ふっ!」

 シャドークナイを振るい人型へ転じたミサイル──ミサイルマンに斬り掛かるシャドーリュウ。

 ミサイルマンは単眼を光らせその斬撃を尾翼であった腕で受け止める。

 「…何っ……!?」

 弾かれ間合いが開く、油断出来ない相手に思わずマスクの下で唇を噛む。

 「……やる…(このままでは他の奴らに対応出来ん……どうする…)」

 目の前のミサイルマンに注意を向けながらシャドーガード達の戦況をモニタリングする。

 ウルフ、タイガーにはいくつかのミサイルマンが群がり、ホークには再びミサイルに変形しドッグファイトを仕掛けている。

 (…手が足りない……)

 目を細め悪態を心の中で衝くリュウの背後から新たなミサイルマンが襲い掛かる。

 「……甘い!」

 即座に振り返りつつ蹴りを喰らわせるも、ミサイルマンは少し吹き飛ぶだけ、

 「…厄介な…」

 そう洩らすリュウ、其処へ特祭隊の機動車輌が飛び込んでくる。

 「斬る」

いの一番にミサイルマンへ先陣を切ったのは平城の制服を纏う刀使、松永衣里奈。

 彼女の一太刀にリュウの相手をして背中を向けていたミサイルマンの1体がその胴体を上半身と下半身に真っ二つにされる。

 斬られたミサイルマンは単眼の輝きを失い動かなくなった。

 「……今だ…!」

 崩れたミサイルマンの陣形、目の前のミサイルマンを弾き、奥のミサイルマンをクナイで二つ切りするリュウ。

 衣里奈がリュウに近付き背中を併せ呟く。

 「助太刀する」

 「…助かる」

 その言葉を告げると直ぐ様別のミサイルマンへ斬って掛かる衣里奈。

 そして彼女に続くように数十人の刀使達がミサイルマンを相手取る。

 「……まさか、助けられるとはな…」

 余裕が出来た事で何時もの調子でアクロバティックにミサイルマンを相手するリュウ。

 其処に衣里奈に続き彼に近付くのは長船の制服。

 「以前助けて貰ったお礼です。ダグオンさん」

 瀬戸内智恵である。

 「……確かに調査隊を助けはしたが、特祭隊を動かす程とはな……」

 「本来は避難や救助だけだったんですけど…そこは本部長が何とかしてくれました。わたしたちの他にも敵とおぼしき相手が居るエリアに刀使の部隊が展開しています」

 「……ならば、ガードウルフとガードタイガーを手助けしてくれると助かる」

 「勿論、あの狼さんと虎さんにも助っ人が向かっています」

 

 

 その助っ人が向かったとされるガードウルフが居るエリア。

 そこでは何やら文句を溢しながら小太刀二刀流を振るう鎌府の刀使が居た。

 「ったく、アタシは荒魂ちゃんと殺り合いたいんであってテメェら(宇宙人)はお呼びじゃないんだよっ!」

 ガードウルフに群がるミサイルマンを七之里呼吹が斬り付け鋼鐵の大狼を縛めから解き放つ。

 

 

 そしてもう片一方、ガードタイガーの所でも……。

 「は、離れてください!」

 若干声が震えているもののガードタイガーに殺到するミサイルマンの一部を斬り伏せる平城の制服を着た少女。

 六角清香が奮闘していた。

 呼吹、清香の他にもミサイルマンに対して刀使が相対する。

 これで少なくともミサイルマンが好き勝手暴れる事は無くなった。

 

 

 

 

 一方、ライナーチームも其々に空爆機から変形したブラックナパームと戦闘を開始していた。

 『これ以上好き勝手はさせん!』

 ホイールボンバーをBN(ブラックナパーム)に喰らわせるダグターボ。

 しかしBNはまるでダグターボの動きを理解しているかの様にそれを翼で防ぐ。

 『何っ?!』

 そして防いだ翼の下から機銃の腕を出し、ダグターボに向け弾丸を連射する。

 『くっ……今までの敵とは違うと言う事かっ!!』

 

 

 

 

 

 『オォォォ!』

 ダグアーマーがBNに組み付きビル街から離そうと押し込む。

 アスファルトを捲りながら少し拓けた場所に出るとBNの腹を蹴り飛ばしながらアーマーレーザーをお見舞いする。

 直撃した腕が破損するBN、

 『シャッ、どんなもんよ!…ア?』

 喜ぶダグアーマー、しかしその喜びも束の間、何処からかミサイルマンが飛んできてBNの腕に纏わり付くとBNの破損した腕が修復、パワーアップする。

 『マジカヨ……だったら徹底的に粉微塵にしてやらぁ!』

 ダグアーマーと対するBNは彼の火力に対し同じ様に火力をぶつけ相殺する。

 『根比べってワケか、上等!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダグウイングがビルの間を縫うように飛行する。彼の前を飛ぶのは3体目のBN。

 そして前を飛ぶBNが突如此方に身体を向ける。

 BNの胸部から熱線が迸る、ダグウイングはそれをフリーズビームで迎撃、辺りに蒸発した霧が霧散する。

 『僕達一人一人に対応したと言う訳ですか…』

 そんなダグウイングの言葉に反応したかは定かでは無いがBNは熱線を連射しながらダグウイングと空中戦を始めた。

 

 

 

 

 ━━人工フロート

 

 新たな姿の甲冑とダグファイヤーの戦いは終始甲冑有利で進む。

 以前の様に再び腕を飛ばした甲冑、それに対し此方も以前と同じくファイヤーナックルで迎撃するが、今度の腕は弾け飛ばず、逆にダグファイヤーを吹き飛ばした。

 そして飛ばした腕とは別に新たな腕を出し、その指からレーザーを照射する甲冑。

 ダグファイヤーはそれを跳び、或いは転がり躱す。

 『くそっ!?前よりパワーアップしたのは見た目だけじゃ無いってか……』

 躱しながらファイヤーブラスターを取り出し、隙を見ては射撃するも対したダメージは見られない。

 正面からのレーザーに加え、飛び交う腕を躱すダグファイヤー、かなりの苦戦を強いられている。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━品川区

 

 ダグターボとBN1の戦闘が激化している。

 『ターボダァッシュッ!』

 ターボユニットボードでBN1へ肉薄しようとするダグターボ。

 BN1は敢えてそれに応じ自らダグターボに接近、膝の装甲から剣を取り出し横薙ぎに振るう。

 『くっ…?!』

 右腕を刃が掠めバランスを崩すダグターボ、その隙を敵は見逃さない。

 先程ホイールボンバーを防いだ翼が上にズレ、機関砲が現れる。

 ダダダッと連射される弾丸、ダグターボはそれを喰らいビルに背中から突っ込む。

 ダグターボが激突したビルは接触した部分とその階層と上下の階の窓ガラスが割れ、或いは歪み、壁面は砕け、または完全にフロアが露出している。

 幸いなのは人が避難して無人であった事か。

 倒れ、ビルに寄り掛かったままのダグターボにBN1が剣を振り上げ追撃しようとする。

 『あまり…侮るな!』

 振り下ろされる剣を見切り、上体を僅かにずらすダグターボ、胸の先端──のぞみの鼻先──に掠めるが、攻撃を躱す、そして敵の右手を即座に抑え、抑えた腕を起点にBN1の頭を思い切り蹴り飛ばす。

 右腕が千切れ倒れるBN1、ダグターボはその千切れた腕から剣を奪い取ると自らの武器として構える。

 BN1は千切れた箇所をミサイルマンで補充、再生し再び腕を構築、もう片方の膝装甲から予備の剣を取り出し構える。

 互いに正眼で向かい合うダグターボとBN1。

 ダグターボが洩らした短い呼吸を皮切りに2体の鋼鉄の巨人が交差せんと駆け出す。

 互いが交わる直前ダグターボは片手で剣を振り、空いた左を側に転がるボードに翳す。

 『ブレイクホイールッ!』

 必殺のその名を短く叫び同時にBN1へ剣を斜めに袈裟斬りに振り下ろす。

 BN1はダグターボの剣を防ごうと自らの剣を防御の構えにするも横合いから飛んできたブレイクホイールに身体の芯を砕かれ、そしてダグターボの剣の一撃を喰らう。

 十字の斬撃線が刻まれミサイルマンによって再生する事無くBN1は爆散、ダグターボは残ったミサイルマンを蹴散らしつつダグファイヤーと甲冑の元へ急ぐ。

 

 

 ━━港区

 

 『オラァ!』

 ダグアーマーとBN2の撃ち合いは続く。

 『チッ!キリがネェ!弾切れっつう概念がネェのかよ!』

 そう吼えつつも打開策を考えるダグアーマー、そして一か八かの手に出る事にした。

 『タマにはあのバカを見習うかッ!』

 砲撃を止め、走り出すダグアーマー。しかしBN2は構うことなく全火器の放射を止めない。

 腕をクロスさせながら頭部と胸部を守りつつも歩みを止めないダグアーマー、そのまま何とかBN2へ組み付くと渾身の力で持ち上げ空へ投げる。

 宙に投げ出されたBN2はそれでも砲撃を止めない。

 構わず跳ぶダグアーマー、爆煙を抜けBN2の上を取る。

 『グラビトンキィィィックッ!』

 全身の体重を右足に込めBN2へ突撃するダグアーマー、BN2は振り返った瞬間、ダグアーマーの蹴りに貫かれる。

 腹部に大穴を開けたBN2へミサイルマンが殺到する。

 『ソイツを待ってた!喰らいナ!ファァァイナルッ!バァァスタァァアアア!』

 集まって来たミサイルマンごと全火力で一掃。

 その最期を見届けた後、ダグアーマーは中央防波堤へと走り出した。

 

 

 

 ━━江戸川区

 

 ダグウイングとBN3の空戦は続く。

 最初は追う側であったダグウイングが何時の間にやら追われる側。

 BN3の猛追を何とか躱しながら反撃の機会を探る。

 『っ!中々こちらの思うようにはさせてくれませんね!』

 街中に追い込まれ苦虫を噛み潰すダグウイング、車道は致し方無いにしても建物への被害は防ぐ。その心情の元、BN3からの攻撃を少なからずその身に受けている。

 『これ以上はあまりダメージを受ける訳にはいきませんね……しかし妙です…(最初の攻勢以来、攻撃に一定のリズム、パターンが見られる。あの敵には意思が存在しない?行動を見る限りAIも至極単純極まり無い、特別なセンサーの類いも見られない。ならば!)』

 市街地から河川敷へと進路を変更、そのまま河川上を飛行するダグウイング。

 BN3はそれを決まったプロトコルに従い追撃する。その行動を僅かに視線を向け確認するダグウイング、両肩のファンを回転させ、敵が真後ろに付いた事を確認、同時にBN3の方に身体を振り向かせブリザードタイフーンを見舞う。

 無論、それを大人しく喰らう敵では無い。超高熱の光線を照射し超絶対零度の竜巻にぶつける。

 結果、周囲は大規模な霧に包まれる。

 「?…??」

辺りを見回すBN3、白い靄の中にうっすら影を見付ける。

 その瞬間、BN3は全身の火器をその影に撃ち込む。

 しかし、悲鳴も手応えも無い。

 『引っ掛かってくれましたね!フリーズビーム!』

 文字通りの冷凍光線を喰らい全身が凍り付くBN3、河川へ落下しそのまま浮かぶ。

 『クリスタルカッター!』

 腕に着いた水晶の装甲をミサイルの様に凍り付いたBN3に撃ち出し貫く。

 凍っている以上、ミサイルマンも手出し出来ずBN3は爆散した。

 『早くダグファイヤーの援護に向かわなくては!』

 ダグウイングは人工フロートに向け飛翔する。

 

 

 ━━中央区

 

 刀使の援護によりミサイルマンを翻弄するシャドーリュウ。

 刀使が不利となればリュウが、リュウに敵が集れば刀使達が互いをフォローする形で蹴散らしてゆく。

 「……大分敵が少なくなったな…」

  BN達を修復する為に数を減らしたミサイルマン達、各地区に散らばったモノも含めシャドーガードと刀使が協力して続々と討ち果たしている。

 「あの…シャドーリュウ…さん」

 其処へ躊躇いがちだが確かに彼の名を呼ぶ声がする。

 振り向けば美濃関の制服を纏った生徒、柔和ながらも力強い意思を感じさせる面立ちの少女がリュウを見ている。

 「…何か用か?今は戦闘中だ、手短に頼む……」

 「ここはもう大丈夫です。貴方は仲間の元に向かって下さい」

 美濃関の生徒──柳瀬舞衣はリュウにそう告げる。

 「…良いのか?少なくなったとは言え、相手は未知の技術、能力を持つ異星人だぞ……」

 「ですが既に私たちでも油断せずに数人で連係すれば十分対応出来る状況です。それよりも敵の親玉を貴方たちで倒して下さい!」

 リュウを見る舞衣の眼、揺るぎ無いその光にリュウは無言で答えた。

 そうと決まれば中央防波堤の方向に駆け出すリュウ。途中なけなしのミサイルマン達が行く手を阻む。

 「……退け!大回転剣風斬!!」

 空中に跳び回転、独楽状となったまま縦に転がり円を描いて回り蹴散らす。

 進路が拓けたのを見計らい、上空に待機させていた愛機を呼ぶ。

 「シャドォォジェット!」

 機首下部が扉の如く開き飛び込むリュウを収納する。

 そうしてシャドージェットは人工フロートに飛んで行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━人工フロート

 

 相も変わらず、紙一重で躱しながらファイヤーブラスターを連射するダグファイヤー。

 しかし甲冑は意にも掛けない。

 「むむ無駄!げげ撃滅!しょしょ消滅!せせ殲滅!ハハ…ハハハ……ハハハハハハハハハ!…………ハ?……はは敗北?!げげ撃破?…むむ無能!」

 此方を追い詰め笑っていたかと思えば何やらいきなり怒鳴り散らす。

 『何だか分かんねぇけど今がチャンスだ!』

 意識が外れた一瞬を狙い両手でファイヤーブラスターを構えエネルギーをチャージする。

 『喰らえ!ファイヤーブラスター!シュゥゥウウウトッ!!』

 必殺の強力な1発が甲冑に向かって放たれる。

 「?!!?!」

 爆発する甲冑、爆煙が辺りを舞う。

 『やったか?!』

 だがその言葉を裏切る様に空を飛ぶ両腕がダグファイヤーを捕らえる。

 『ぐっあぁっ?!』

 「ここ小癪!むむ無意味!のの能力、かか解析解明!そそ想定外、ぼぼ勃発。きき貴様…ハ…かか確実ににに…倒ス!」

 どうやら甲冑にとって何か想定外な事が起きた為、ダグファイヤーだけでも確実に仕留めようという算段のようだ。

 ダグファイヤーを掴む腕に力が籠る。ミシミシと全身が嫌な音を立て始める。

 『ガッ……ガァァアアアッ?!!』

 苦しみ喘ぐダグファイヤー、甲冑は身体に付いている方の腕の掌を翳す。

 そこには水晶レンズの様な円状のモノが見える。

 「しし終焉…!」

 掌が光を発する、この一撃を以て終わらせるつもりだろう。ダグファイヤーは悲鳴を挙げながらも諦めず抵抗するが脱け出せない。

 あわやここまでかと思われたその時──

 『させん!』

 『やらっせカヨッ!』

 『間に合わせてみせます!』

 甲冑の意識の外から突如として現れる3体の巨人。

 ダグターボ、ダグアーマー、ダグウイングが同時に甲冑の巨体を攻撃する。

 バランスを崩し土煙と爆煙を上げる甲冑、ダグファイヤーの前に頼もしい仲間が駆け付ける。

 『お前ら!?』

 少し弛んだ拘束によって仲間の事を認識するダグファイヤー、よく見れば3体ともそこかしこ傷だらけのボロボロだ。

 『何をしている!さっさとその拘束を解いて奴を倒すぞ!』

 ダグターボの叱責が今は頼もしく感じる。

 しかし、仲間が駆け付けたにも関わらず、事態は好転しなかった。

 煙の中から迸る光がダグウイングを直撃する。

 『っぁああ?!』

 『『『ダグウイング?!!』』』

 次に飛び出した左手がダグアーマーを掴む。

 『ナッ?!ガハッ!』

 最期に伸びたコードの触手がダグターボの脚に絡み付き地面に引摺り倒す。

 『おぉっ?!!』

 煙を割って現れるは甲冑の異星人。

 表面こそ傷だらけだが、ダグオン達と違い未だ余裕がある。

 「くく屈辱!ここ…コロ…殺…ス、殺ス殺ス殺ス!」

 怒りに狂う甲冑、ダグターボを踏みつけ、ダグアーマーを握り潰さんとしダグウイングの首を触手で絞める。

 『みんな!?』

 「まままマズ先ず…はおおお前ええオ前かからららダッ!」

 唯一手隙の右の掌をダグファイヤーに向ける甲冑。

 しかし仲間を守る為ライナーチームは尚も抵抗する。

 『ぐっ……フリーズ……ビーム…!』

 『させ…るか…アーマァァ…ミサイルッ!』

 『やらせは…せん…!ホイール…ボンバァァ…!』

 3体が抵抗する事によりダグファイヤーの拘束が更に弛くなる。其所へリュウがシャドージェットで駆け付け更にシャドーガード達もライナーチームの反撃に加わる。

 「ダグファイヤー!今助ける……シャドーバルカン!」

 シャドージェットの機銃が火を吹き、力の弱った腕を破壊する。

 『っ…、助かった……けどどうしてここに?』

 痛みを耐えながらリュウに訊ねる。

 「…刀使達が協力してくれた。お陰で手早く片付いた、…それに俺を送り出したのも刀使だ……ここは任せて、仲間の元に行け…と美濃関の刀使が言ってくれた…孫六兼元の居合い使いだ…」

 『柳瀬が……そうだ!あいつの為にも…あいつらの為にも…俺は負けられないんだぁぁああああっ!!』

 ダグファイヤーが吼える。

 想いと勇気が真の力を引き出す。

 

 

 

ファイヤージャンボ!!

 

 ダグファイヤーが空を回遊する己のビークルの名を叫ぶ。

 ダグファイヤーへと飛ぶファイヤージャンボ、それを確認したダグファイヤーは更に叫ぶ。

 

 

『火炎合体!!』

 

 その言葉に反応しジャンボの両脇のコンテナからファイヤーラダーとファイヤーレスキューがサイレンを激しく光らせ射出される。

 そして始まる変形、ファイヤージャンボの主翼が持ち上がり裏返しになりエンジンも逆向きとなる。

 尾翼はそれに伴い変形し主翼の中心部に重なる形になる。

 コンテナ部分が左右に展開尾翼側へと開ききりコンテナのハッチがそのまま爪先と踵になり脚が完成する。

 機首が左右に開き半分になった機首の中央部から其々二の腕が展開、猛禽を模した胸部から頭部が展開され、更にラダーが右へ、レスキューが左へ合体し腕になる。

 最後に頭部が展開された状態のジャンボがそこから胸部を丸ごと下側に開き其処へダグファイヤーが駆け寄り跳躍、ファイヤーストラトス状態で空白のスペースに合体。

 パトランプが接続端子となりストラトスの裏側、ダグファイヤー時の胸部が見えた状態となり、それを閉じる形でジャンボの開いた胸部が閉まると、変形を終えた瞳に輝きが迸る。

 

 

 

『ファイヤァァァァ…ダグオンッ!!!』

 

 降り立つは真紅と純白の鋼鉄の巨人。

 ダグファイヤーよりも更に巨大となった彼の名は、ファイヤーダグオン。

 

 「…ダグファイヤーが……」

 『ファイヤージャンボ達と……』

 『合体…した…?』

 『ファイヤー……ダグオン……!』

4人が驚愕に眼を見張る。

 「そ……そそ想定外!ででデータ……無シ?!ああ…あああっ!アリエナイイイイイ!?!」

 あまりの想定外に狼狽える甲冑、その隙を見逃さずダグターボ達は甲冑の拘束から脱出する。

 「ししししシまっタタタ?!」

 己の失態に甲冑は更に混乱する。

 そしてファイヤーダグオンは怒りのオーラを立ち上らせて甲冑へと歩いて行く。

 「ヒッ?!」

 『よくも…好き勝手やってくれたな……』

 

 重量を感じさせる足音が鳴り響く。

 

 「てて撤退!ででデータ…持チチチチ帰ララねねばばばババババ!」

 

 『逃がすかよ!ジェットファイヤァァストォォォォオムッ!』

 

 背中の翼に装着されているエンジンが敵である甲冑に向けられ、そこから炎の渦が4つ巻き起こり甲冑の逃走を阻む。

 

 「とと逃走…フフ不可?!?!」

 

 『ファイヤーホールド!』

 

 ファイヤーダグオンのその言葉と共に胸部の嘴から光が甲冑目掛け直撃する。

 

 「ここ行動オオ…フフ不能ォォ…」

 

  『ファイヤァァ…ブレェェドォッ!』

 

 右腕のラダーから両刃の剣が出現する。

 甲冑は拘束から逃れる事は出来ない。

 ファイヤーダグオンはブレードを出した腕をまるで空手の山突きの如く構えを取り、推力全開で甲冑へと向かう

 

 『ハァァアッ!…セリァアッ!!』

 

 巨大なシルエットが交差する。

 甲冑の身体には十字の斬撃痕が光の軌跡となって刻まれる。

 ファイヤーダグオンは既に甲冑の背後にて残心を取るかの如くブレードを払い仕舞う。

 

 「げげゲーム……オーバー……?ままままたしてももも……嘘ダダダァァァア!!!?」

 

 大爆発を起こし砕け散る甲冑、爆炎の光がファイヤーダグオンを雄々しく照らす。

 絆と勇気の力で誕生した熱き鋼の鳳が強大な敵を今、討ち果たした。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:炎の勇者ファイヤーダグオン)

 

 見たか!俺の力!!

 

 ファイヤーダグオン…凄まじい戦闘能力だ。

 

 ハァ~!何でこのバカにやたらビークルが優遇されてんのかと思えば、こう言うコトだったワケか。

 

 しかしあの甲冑も本体では無いんでしょうね……。

 

 関係ねぇよ、また来たらまた倒すだけだ!

 

 龍悟ヨォ、見せ場奪われちまったなぁ…。

 

 ……なに、敵を倒せたのだから問題無い…。

 ところで……撃鉄の奴はどうしたんだ…?

 

 いい加減、何時になっても変身出来ないようだから拗ねている様子だな

 

 め、面倒くせぇぇぇ!

 め、メンドクセェェ!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 新たなる勇者、ドリルゲキ!

 

 おい龍悟、また見せ場盗られてないか?

 

 ……ふっ、構わんさ…。

 

 




 はい、因みにミサイルマンは耐久自体はザゴスより2、3上なだけで更に尾翼だった部位が武器になるからそこだけしか固くないんですよね。
 そして次回は遂に彼が……!?
 更に結芽ちゃんとライアンを書いて、ダグシャドーという順番になってますので、龍悟の融合合体はまだ先ですね。
 では次回


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第六十八話 新たなる勇者、ドリルゲキ!

 おはようございます。
 遂に登場ドリルゲキです。
 ぶっちゃけドリルクラッシュ時に体がどうなってんの?とかツッコんではいけない。
 ところで海賊ガチャ第二段でサナセンセーが出たんですが……オバさん無理す───

             文章はここで途切れている



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 おぉぉっ?!焔也の奴、更に合体しおったぞ!!

 

 焔也おにーさん格好いい!でも勘違いしないでねお兄ちゃんの方がもっと格好いいんだからね!

 


 

 ━━エデン・???

 

 「嘘だぁぁぁああああ!」

 絶叫が反響する。

 叫んでいるのは癇癪を起こしていたあの少年。

 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!負けるハズ無いんだ!だってSSRクラスを素材にしたんだぞ!?なのに!なのになのになのになのにっ!何でっ!!」

 地団駄を踏み、手にしていたゲームのコントローラらしき装置を壁に叩き付ける。

 砕け散る装着、荒く息を吐く少年。

 「そうだ…悪いのはぼくじゃない。SSRのクセに大したことないアイツが悪い!全く情報に無かったあの赤いエネミーが悪い!下等生物の分際で抵抗してエネミー共と一緒になって邪魔したトジとか言うムシケラが悪い!ぼくは悪く無い、悪く無いんだ!」

 徹底して自分自身を擁護する彼、そのまま部屋の片隅に置いてあるペットロボットの様なモノのスイッチを入れる。

 「聞いてよ、酷いんだ…折角最高レアクラスを使ったのにヤツら寄って集ってぼくを虐める。それにそのレア素材も能力の割りに大したこと無いし、敵なんか単純短調なカスのクセにやたら抵抗するし、挙げ句狩られるだけのポイントまで逆らってくるんだ、どうだい?酷いだろ?」

 自分の非など一切無いとばかりに手にしたソレに語る彼の顔は他のエデン囚人が見れば嘲笑か侮蔑が返ってくるであろう物だ。

 <うん、ヒドイネ。キミは一生懸命ガンバったのに、きっとそいつらはバグなんだよ。それに素材もだけどコントローラがよく無かったのさ>

 少年の声を加工した様な音声がソレから発せられる。

 「そう…そうだよ!全く、何が信頼と安心のクオリティーだよ!ただの不良品じゃないか!あ~あ、そうと解れば新しいヤツ買わなきゃ…あの胡散臭い商人に頼むのは癪だけど、背に腹は変えられないし。それに新しい装備も作んなきゃ…今度は素材を吟味して時間を掛けて、徹底的にやってやる。くふふ…見てろよ雑魚エネミーども」

 少年は暗く嗤う、彼とその周囲の世界はその唯一つで完遂していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・日本の何処か

 

 『こいつで終わりだ!』

 白い翼と赤いボディを携えて、ファイヤーダグオンが吼える。

 『ファイヤーホォォルドッ!』

 ファイヤーダグオンの胸の猛禽を象った嘴の部位から敵を拘束する光が放たれ異星人を捕らえる。

 

  『ファイヤァァァァブレェェドッ!』

 右腕の剣が捕らえた敵を一閃。ファイヤーダグオンは腕を振り剣を収納する。

 敵異星人は敢えなく爆散した。

 

 

 

 

 ━━ダグベース・サロン

 

 「いや~勝った勝った!もう向かう所敵無しだぜ!」

 帰還した焔也が意気揚々とご機嫌な声を挙げる。

 「確かにファイヤーダグオンは強力だが…油断は禁物だ」

 戒将はそんな調子に乗った焔也を嗜める様に厳しく苦言を呈する。

 「っても、ぶっちゃけファイヤーダグオンだけでここ最近の宇宙人ドモは簡単に倒せちまってるし、このバカがチョーシ乗んのも分かるゼ」

 申一郎が頭の後ろで手を組ながら呆れた様に呟く。

 「実際、ファイヤーダグオンになった時のパワーはダグファイヤーの五倍…或いはそれ以上かもしれません」

 翼沙が手許のタブレット端末を操作しながら所感を述べる。

 「…ここ最近も、ザゴス星人達はもとより…、キラード星人、フェニックス星人、デスパルス星人、トラッカー星人、ガロン星人と……ファイヤーダグオンが全て倒している…」

 龍悟がここ5日で出現した敵の名を挙げ列う。そう、龍悟が今口にした通り、今日を含めここ暫く地球に現れた異星人は程度の差は有れど全てファイヤーダグオンによって打倒されている。

 勿論、戒将達とて活躍していない訳では無いが、やはり現状、焔也が飛び抜けて敵を倒している事は事実であろう。

 「それもそうですが、僕が他に関心したのはザゴス星人を刀使が小隊単位とは言え、難なく倒せる様になっていた事ですね。あれには驚かされました」

 やはり例のシミュレーターが効いたのでしょうかと溢す翼沙に他の4人も同意を示す。

 「播つぐみ…だったか、鎌府の研究班。中々のものだな」

 「これで俺達がデカいの相手にしてる時でも安心だな!」

 「……完全とは言い難いが、ザゴス星人程度ならば脅威度は低くなっているのだろう…」

 「こうまで戦力が充実したんだしヨ。もうライアンをムリに引き入れるコトも無いんじゃネェノ?」

 と、申一郎がそんな事を口にした途端、バタバタとサロンに駆け寄る小さな人影。

 「それはダメだよ!!

 息を切らしながら無理矢理声を挙げる少女…の様な少年ことアルファだ。

 「ダメだ、それは絶対に看過できないよ申一郎君!ライアンには荒魂に対し深い憎しみの念があるし、何よりダグオンと共に戦う仲間として製作したし、後本当にこれ以上ボクのせいにされたくないし!!」

 何だかんだ理屈を付けているが一番最後が本音なのだろう。

 (((((いや…どう考えてもそれは避けられ無いのでは……?)))))

 5人共、今更取り繕ってもアルファに責任が掛かるのは変わらないだろうと言う思いが一致した。

 「とーにーかーくー!ライアンを仲間にするのは規定事項です、よろしく!」

 「まぁ、元よりそのつもりではある。ダグファイヤー……焔也との勝負以降、周辺の被害を考慮はしている様だが、空を飛ぶ剣の目撃情報は目立つ。そろそろ腰を据えて貰わねばな」

 「確かにな、戦って思ったけどよ…あいつには多分仲間が必用なんだよ。そんな気がする」

 激化するであろうこれからの戦いに関して戦略的、戦術的にライアンの必要性と常識を考える戒将と、拳を交え感覚的なモノでライアンの仲間入りに賛成する焔也。

 この2人がこう言う以上、他のメンバーも文句は無い。

 「で、だ。あのヤロウは何してんダヨ…?」

 当面の意見が纏まったのを見計らって、先程から無視し続けていた事に触れる申一郎。

 彼は頭を掻いた左手をそのまま、親指を立てて後ろを指差す。

 「つーん、つーん。撃鉄おじ…おにーさん生きてる?」

 その指先に視線を向ければ先程から結芽に指示棒でつつかれる平城の改造学ランを纏った大男が体育座りで膝を抱えて全く動かない。

 「何故じゃ…ワシが変身するよりも焔也が先にパワーアップしおった…これではワシが活躍出来んでは無いか…」

 いや違う。その体躯に見合わぬ声で喋って口が動いている。

 「こればかりは俺達にはどうしようも出来ん。こら結芽、止しなさい」

 戒将が眉間を解しながら結芽の行為を止めさせる。

 「で、実際どうなんだよ?あいつ(撃鉄)のダグコマンダー、まだ用意出来ねぇの?」

 「う~ん……いやまぁまだちょっと掛かるかな」

 焔也の問いに視線を游がすアルファ、何ともあやふやな返答だが、これ以上問い詰めても望む答えは返って来ないのだろう。

 ともあれ今日はこれでお開きと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン・北監獄

 

 「ふん、小僧め…遊び気分でいるから失敗すると、それすら分からんとはな」

 蒼い炎が激しく揺れる。

 「フェフェフェ、随分不機嫌ではないかえ?」

 蒼炎──煉獄魔人メレトに声を掛ける嗄れた声、炎が向きを変えれば其所に居たのはシワだらけの後頭部が異様に長い木乃伊の様なヒトガタ。

 「マンドーセか……白々しいな、聞いておったのだろう?」

 「フェフェ、まあなぁ…ところでな、メレトよおんし、もし良ければ拙が地球に出向くぞよ?」

 「貴様が?……今更貴様程度の者が出向きどうなると………いや、悪く無いやもしれん。良いだろ、どうせ他の連中は積極的に動かん、好きにすると良い」

 マンドーセの発言に無理だと答えようとして、何かに思い至ったのか一転許可を下すメレト。

 木乃伊の窪んだ眼窩が愉快そうに細まる。

 「そうさせて貰おう…フェフェフェフェ…」

 暗闇には蒼い炎だけが揺れていた。

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉市・鶴岡八幡宮

 

 平日にも関わらずそれなりの人で賑わう鶴岡八幡宮、その本宮の境内にて柏手を打ち祈りを捧げる巌の如き青年が居た。

 「む~ん…神よ!どうかワシの願いを!何卒!どうか!」

 必死に懇願する撃鉄、ここ最近のダグオン5人の活躍振りに……特にファイヤーダグオンとなった焔也の活躍に対し、変身も出来ずダグベース内でただ座して待つしかない己の歯痒さ、無力感に激しく打ち震えていたのだった。

 「今日はこんくらいにしとくかのう。神様よ、毎日迷惑かもしれませんが、明日もまた来ます。宜しく頼んます!……さぁて今日も御守り買って帰るかのう」

 そうして御守りを販売している詰所に向かう撃鉄。

 カラコロと下駄を鳴らし近付くと詰所には刀使の姿が見える……数は2人、鎌府の刀使と長船の刀使。

 「うん?あの背中…それに長船の制服、まさか!?」

 長船の刀使の姿を認めた瞬間走り出す撃鉄。

 その凄まじい勢いに2人の刀使が気付く。

 「え?」

 「何です?」

 振り返れば怒涛の勢いで自分達に向かって走ってくる改造された平城の制服を翻す時代錯誤の大男。それも大声で何事か叫んでいる。

 

  智恵さぁぁぁぁぁんんんん!!

 

 「げ、撃鉄さん?!」

 呼ばれた方の刀使。長船女学園の瀬戸内智恵が目を丸くして驚いている。

 「おおおお、お久し振りです!智恵さん!ワシです!田中撃鉄です!」

 智恵ともう1人、鎌府の刀使が佇む場所で急停止しガバッと勢いをつけて頭を下げて上げる撃鉄。

 智恵もだが、鎌府の刀使──玉城真梨江も固まっている。

 「あ…は、はい…お久しぶりです撃鉄さん。その制服……平城に編入されたんですか?」

 混乱する頭で何とか言葉を紡ぎ出す智恵、対して撃鉄はよくぞ訊いてくれたとばかりに胸を張る。

 「ええ!ええ!そうですとも!ワシこと田中撃鉄はこの度平城学館の警邏科兼神職科へと編入致しました!!今後とも宜しくお願いしますわい!」

 ガハガハと上機嫌に笑う撃鉄。先程の神頼みの必死さが嘘の様だ。

 「あの…瀬戸内さん、お知り合いですか?」

 真梨江が智恵に撃鉄の事を慎重に訊ねてくる。智恵は困惑しどう話したものかと考える。

 「ワシと智恵さんは運命的な出会いを果たした、ロミオとジュリエットじゃ!」

 と、撃鉄がとんでもない事を口走る。

 「えっ?!ちょっと!!?」

 これには智恵も動転する他ない、そして肝心の真梨江は頭に多くの疑問符を浮かべながら、

 「はぁ…」

 そう答えるより無かった。

 正直、ロミオとジュリエットだと家が敵同士だとか、最終的に悲恋で終わるとか思ったが、そこは敢えて空気を読んで黙っていた。

 「違います!!違うのよ玉城さん、お願いだからそんな目で見ないで!!」

 勿論智恵本人は堪ったもんでは無いので強く否定する。

 「いえ、人の趣味はそれぞれですから…部外者がとやかく言う事では…」

 「本当に違うのよ!もう!撃鉄さん!」

 「はっ!何でしょうか智恵さん!」

 誤解を与える様な事を言わないで下さいと撃鉄を叱る智恵、怒られた撃鉄はしゅんとするものの智恵に会えた喜びが大きいようだ。

 (…………案外、お似合いでは?)

 そんな2人のやり取りを見て思う真梨江であった。

 さておき──

 

 「智恵さん達はどうしてここに?」

 鶴岡八幡宮に智恵と真梨江が訪れた事を訊ねる撃鉄、その手には買ったのだろう御守りが握られている。

 「大した事では無いんです。定期的な関東一帯の荒魂の捜索とノロの再分祀の事で鶴岡八幡宮(ここ)の責任者の方とお話に…他にも辺りの調査に数人刀使が派遣されてますし」

 「成る程。例の事件以降、ノロの一括管理体制は見直されておるんでしたな」

 「ええ…。って、そういう撃鉄さんはどうしてここに?」

 今度は智恵が訊ねる番となる。

 「ナハハハ!はぁ…お恥ずかしい話、私事でうまくいかん事があったのです。そんで今出来る事として神頼みをと……」

 どこか元気が無い撃鉄を見て、智恵の世話焼き心に火が着く。

 「それは、良ければ──」

 相談に乗りましょうか?と口に仕掛けた時、誰かの悲鳴が耳に届いた。

 「!?智恵さん!!」

 「撃鉄さんは此処に居てください。玉城さん、急ぎましょう」

 「了解です」

もしかしたら荒魂かもしれないと、撃鉄をこの場に留め、真梨江と2人急ぐ智恵。

 階段を下った先に待っていた光景は荒魂ではなく、後頭部が異様に長い木乃伊が笑いながら妙な怪物を従え一般人を襲う姿であった。

 「せ、瀬戸内さん…あれは!?!」

 想定していた荒魂では無く、想定外の存在に狼狽える真梨江、反対に智恵は冷静だった。

 (異星人!……大きさは二メートルちょっと、わたしたちよりも少し大きいみたいね。怪物も中型の荒魂くらいかしら…。ダグオンの人達はまだ…それなら!)

 頭の中で瞬時に状況を見極め判断を下す。

 「玉城さん、私とあなたであの怪物と異星人を相手にします!」

 「ですが?!」

 「大丈夫、この騒ぎなら他の子達も直ぐに駆け付けてくれるし、相手が異星人ならダグオンだって…」

 その言葉を言い切る前に星人達が智恵達に気付く。

 「フェフェ、刀使か…まぁ良い景気づけに貴様等とも遊んでやろうぞ!」

 そう言ってガリガリの指で怪物に指揮する木乃伊。怪物、その指示を受け智恵達に襲い掛かる。

 「来るわよ!」

 「致し方ありません!」

散開し怪物の攻撃を躱す2人、木乃伊はそれをニタニタ笑っている。と、其所へ──

 

 「ショルダーバァァァン!」

 

 「ホイールキィィイック!」

 

 怪物に対し放たれる炎弾と木乃伊に向けて突き刺さろうとする青い影。

 怪物は炎弾を喰らい苦しみ、木乃伊は蹴りを危なげなく躱す。

 それを見て智恵と真梨江が声を揃えて叫ぶ。

 「「ダグオン!!」」

 その言葉の通り現れた5つの色鮮やかな影。

 「なんだぁ?ミイラ野郎と少しデカいだけの怪物の二匹だけかよ」

 「油断するな、人間大とは言え異星人は異星人。何らかの能力を持っている筈だ」

 「っても、デカブツが居ないってのは楽でイイゼ……って、ヒャッホウ!長船のカワイコチャン発見!」

 「シン!今は戦闘中ですよ、ふざけてないで真剣にやって下さい!」

 「……周囲に人が多い。手早く済ませるべきだ」

 5色の戦士が怪物と異星人を取り囲む。

 「逃げられないぜ!」

 ファイヤーエンが余裕の声で木乃伊達に宣言する。しかし、木乃伊は眼球の覗かない窪んだ眼窩を愉快そうに歪ませ嗤う。

 「フェフェ、現れたようだのうダグオン。待ちわびたぞ」

 「何……どういう意味だ?」

 ターボカイがその言葉に訝しみ警戒を見せる。

 「チッ、何仕出かす気かシラネーけどその前に倒せば良いだけダゼ!」

 「…同感だ」

 「おうよ!」

 「そう…だな!」

 「ええ」

 アーマーシンの啖呵で気を取り直し全員で怪物と木乃伊に取って掛かる。

 「拙を護れ!我が僕!」

 それを予期していた木乃伊が怪物をダグオン達の前に置き、自らは怪物の腹の下に隠れ何事かを唱え始める。

 「怨!リキリキリバシカワソ!

 その呪文を唱え終えた瞬間、ダグオン達が空中で停止する。

 「…?!(なっ?!)」

 「………!?(これは…体が!?)」

 「……!(動か…ネェ…!)」

 「……?!?(そんな……?!?)」

 「…!!?(…力が!!?)」

口すら動かせないダグオン達、頭の中だけでこの状況に驚愕している。

 「ああ!?ダグオンの人達が!!?」

 真梨江もさしもの状況に悲痛な声を挙げる。

 「フェフェフェ!そしてこれでおんしらは仕舞いならぬ終いぞ!嵒!呪法死刻の陣

 又しても木乃伊が呪文を唱えると空中で停止した5人の目の前で怪物が膨張し破裂する。

 するとダグオン達の装甲に飛び散った破片が付着し禍々しいオーラを発した。

 「フェフェフェ…さぁ、終わりぞ?」

 このままでは殺られる!5人がそう思ったその時、階段の方から怒号と共に跳び上がる影。

 

 田中流!我流喧嘩式!下駄ぁ!ドロップキックじやぁぁあああいっ!!!

 

 撃鉄が階段からの落下速度の勢いを利用し木乃伊に下駄でドロップキックをかます。

 「ほげぇぇぇぇエエエ?!」

 その勢いに堪らず吹き飛ぶ木乃伊。そしてそのお陰かは解らないがダグオン達に自由が戻る。

 「しゃっ!動ける」

 「助かったな。まさか奴にこんな形で救われるとは」

 「自由になったし、ヤロウに倍返しと行こうや!」

 エンが腕をぐるぐる回し、カイが地べたにドロップキックをかました勢いで寝っ転がる撃鉄を見やりながら苦笑する。

 シンが取り戻した自由と共に仕返しをしようと皆に声を掛ける。

 「待って下さい!あれを!」

 ウイングヨクが待ったを掛け木乃伊が吹き飛んだ方向に指差すと其所には頭の凹んだ木乃伊が、しかし余裕の笑いを浮かべ透けていく。

 「フェフェフェ……今のは少し驚いた。がもう手遅れよ!後は拙が直接手を下さなくても貴様等は死ぬ!フェフェフェ…」

 「……出鱈目を…!」

 木乃伊の言葉にシャドーリュウが否を唱えるが木乃伊は笑いを止めない。

 「フェフェフェ、冥土の土産に教えてやろう。拙は宇宙呪術師マンドーセ。全宇宙の呪いを網羅した者よ!フェフェフェ!ではなダグオン、精々最期の時まで足掻くと良い、フェフェフェ…」

 「なっ!待て!!」

 エンの制止も虚しくマンドーセと名乗った木乃伊は虚空に溶けて消えた。

 

 「呪いだって…?別に何とも無いぜ?」

 「只のハッタリか……」

 「バカバカしい。敵さんが退いたみたいだし帰ろうゼ。と、その前に…ヘイ!カノジョ達、オレとデートしなぁい?」

 「シン…君と言う人は…」

 「……平常運転だな」

 特段、目立った変化も見られない為、杞憂かと結論付けたダグオン達、シンはそのまま智恵と真梨江に粉をかけようと近寄る。

 「させんわ!ど阿呆う!!」

 しかし撃鉄が智恵をシンの毒牙から守らんとタックルを交わす。

 「グエッ?!何しや…が…ル……あ、アララ?何か…体が…重く……」

 そのまま倒れるシン、撃鉄も流石に焦る。

 「お、おい。何をやっておるんじゃ……おい!」

 そして異変はシンだけでは無かった。

 「うっ…!」 「がっ?!」

 次にヨクとエンが苦しみ胸を押さえ膝を着く。

 カイとリュウも様子がおかしい。

 「これは……まさか本当に……いかん!」

 カイが即座に何かをしたのか光に包まれ始める。

 「エン、シン、ヨク、リュウ…お前達も…早く……」

 「は…はい…」

 「………ああ…」

 「ダメだ……体が……力…入ネェ……」

 しかしシンだけが転送機能を起動出来ない。

 「くっ…エン…頼む!」

 「あ、ああ……ファイヤー……レスキュー…!」

 エン自身は転送で消え、シンにはファイヤーレスキューが何処から途もなく現れ後部扉を開け待機している。

 その間にもカイ、ヨク、リュウもまた転送を終え、後には倒れたシンと撃鉄、智恵、真梨江のみ。

 「おい!しっかりせんか!」

 撃鉄は即座にシンを担ぎ上げ肩を支えながらファイヤーレスキューの寝台まで彼を乗せる。

 シンが収容されたのを認識したファイヤーレスキューは扉を閉め。彼方へと走り去って行った。

 「あの…撃鉄さん…」

 智恵が躊躇いがちに声を撃鉄に掛ける。すると撃鉄は真剣な顔で智恵を見詰め返し──

 「申し訳ありません智恵さん、ワシも緊急の所用が入りました。今日はこれで失礼致します」

 そう言い残して何処かへ走ってい行った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・転送装置前

 

 ダグベースに帰還したダグオン達、しかし彼等は急激に衰弱していた。

 「お兄ちゃん!」

 結芽が真っ先に変身が解けた戒将の元に近寄る。しかし返ってくるのは弱々しい吐息だけで何時もの声が聴こえない。

 「お兄ちゃん!お兄ちゃん!?!」

 「結芽ちゃん先ずはみんなをメディカルルームの治療ポッドに!このままにしておくより大分マシになるはずだよ!」

 アルファが結芽の肩を抑えながら告げる。

 しかし、御刀も無く八幡力を発揮出来ぬ12歳の少女と少女の様に華奢な少年では精々1人運ぶのも難しい所だ。

 「なるべく早く運ばないと…ブレイブ星人!お願い!」

 <承知している。今向かわせた>

 アルファの言葉にブレイブ星人が応え、暫くの後現れたのは2頭身のずんぐりとした結芽よりも少し小さいロボット。

 彼等がダグオンの若者達をせっせとメディカルルームに運ぶ。

 最初に転送された戒将を皮切りに、翼沙、龍悟、焔也、そしてファイヤーレスキューの帰還により運び込まれた申一郎とメディカルルームの治療ポッドに寝かせられている。

 「不味い…まさかあんな敵が居たなんて……」

 想定外の異星人の存在に汗を流すアルファ。

 其処に1人の男が入室してくる。

 「管理者よ、話がある」

 八幡宮から、人目を避け転送機能でダグベースに来た撃鉄その人である。

 「……一応何をする気か予想が付くけど、なんだい?」

 「ワシに…ダグオンに変身する為の機能を付けたダグコマンダーをくれ!」

 「ダメだ!相手は呪術なんてオカルトを宇宙規模で極め存在なんだよ?!今更一人増えた所で……」

 流石にこの状況を変えられないと嘆くアルファ、しかし撃鉄は諦めない。

 「このまま黙っていても皆死んでしまう。ワシらは泣き寝入りする訳にはいかんのだろう!」

 「でも対策も無しに危険過ぎる!流石に呪術なんてボクも想定外だ、データが足りな過ぎてダグテクターの機能も更新出来ない。今君に渡せても、君まで彼らと同じ様になってしまうよ?!」

 両手を広げ必死に止めるアルファ、だが撃鉄の意思は変わらない。

 「かもしれん。が、それがどうした!ワシらはこの星を守る戦士、勇者ダグオンなんじゃろ?ならば一人でも戦える者が残っているなら、戦うべきじゃ」

 「でも…それは…」

 言葉に詰まるアルファ、そんな彼に撃鉄は肩を叩き笑う。

 「なに、心配せんでもワシなりに対策は用意した。後はお主がワシをダグオンにしてくれりゃ良いだけじゃ」

 「撃鉄君……」

そんな2人のやり取りを見て涙で眼を腫らしながら結芽が近付いてくる。

 「撃鉄おにーさん、お願いします。どうかお兄ちゃんを…お兄ちゃん達を助けて下さい。私にはまだ戦う力が無いから……助けたくても助けられないから……お願い…します」

 深く、深く頭を下げる年下の小さな少女。

 「御チビ…」

 「結芽ちゃん……」

 アルファもまた言葉が出ない。

 <管理者アルファよ、我々の負けだ。田中撃鉄にアレを>

 見かねたブレイブ星人が口火を切る。

 「けど?!……………あああっ!もう!しょうがないなぁ!!撃鉄君!左腕出して!」

 「お、おう」

いきなり大声で頭を掻き毟るアルファに面食らう撃鉄、言われた通り左腕を出す。

 「ブレイブ星人」

 <ああ>

 アルファとブレイブ星人が同時に手を翳すと、撃鉄の腕に今まで着いていた限定機能付きのデバイスが消え、5人が着けている物と同じスターエンブレムが刻まれたダグコマンダーが装着される。

 「これがワシの……!」

 「良いかい?危なくなったら逃げるんだ、彼らの事はもしもの時はボクが何とか…」

 そう言い掛けたアルファに手を出しその先を止める撃鉄。

 「分かっとる。が、心配無用じゃ!ワシは勝つ」

 そして結芽の方に視線を向けて、

 「御チビ…いや結芽、お前の兄貴もワシのライバルも仲間もみんなまとめてワシが必ず助けちゃる」

 「…っ、ほんと?」

 「漢田中撃鉄、交わした約束は必ず守る。大船に乗った気で待っていろ」

 其処には結芽が知る何時もの情けない撃鉄ではなく、確かな強さを感じさせる戦士が居た。

 アラートが鳴り響く。

 「来おったか…」

 「撃鉄君…」

 「撃鉄おにーさん」

 <田中撃鉄、武運を祈る>

 ブレイブ星人の言葉を受け撃鉄は駆け出す、先ず向かったのは自身がダグベースで過ごす際に使っている部屋。そこに常設された机の引出し、或いは棚の引出しから名にかを取り出すと制服の内側にこれでもかと言わんばかりに詰め込み、部屋を出る。

 そして向かうは転送装置。

 そこでマンドーセが現れただろう場所に飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉某自然公園

 

 陽が落ちて暗くなり始めた其処に木乃伊は現れた。

 「フェフェフェ、あのまま待つのも悪く無いが…万が一の可能性もある。暴れて奴等の出方を見るとしようか、フェフェフェ!」

 不気味に嗤う木乃伊、其所へ轟く声が木霊する。

 

 「待てい!!」

 

 「フェ?」

視線を声のした方に向ければ、立っていたのはあの時自分の頭を凹ませてくれた無礼な人間。

 「フェフェフェ、生身の人間が態々死にに来たのか?フェフェフェフェフェフェ!」

 「いや、死ぬ気は毛頭無い。ワシはお前を倒しに来た」

 「フェ?フェフェフェフェフェフェフェフェフェフェフェフェ!!これは可笑しな事をほざく!只人に何が出来ると言うのか!?」

 嗤うマンドーセを無視して撃鉄は己の左腕に装着された装置をスライドさせ勇者へと転じる言葉を発する。

 

 「トライダグオン…!」

 

 大地を砕く黒き装甲が彼を包む。

 

 「フェフェ?何だと?」

 

 黒い光が収まれば現れたのは第6の戦士。

 全身が黒く肩に螺旋のドリルを2つに別けたアーマー、腕にドリルの溝を彫った様な鈍色の装甲、両脚の片側にキャタピラを模した謎のパーツ。

 胸部中央の装甲には橙色の水晶らしき六角形の意匠。

 頭部を覆う装甲は左右にドリルらしき角、マスクを纏い眼を覆うバイザーの色は赤。

 肩の分割されたドリルが反転頭部を包み1つの巨大なドリルとなって回転、大地を砕き立つは勇者。

 

 

 

「ドリル…ゲキ!!」

 

 現れた新たなダグオンにマンドーセは驚くも、それがどうしたと一蹴する。

 「貴様も呪ってくれるわ!!」

 禍々しいオーラがドリルゲキに直撃する。

 「フェフェフェ、折角現れご苦労な事だが、拙の呪法の前には無力……」

 その言葉を言い切る前に黒い拳が彼の顔を穿つ。

 「ドリルナックル!」

 「ペギャュ?!」

 ゴム毬の様に弾け飛ぶマンドーセ、ドリルゲキはピンピンしている。

 「馬鹿な!?速効性の呪いだぞ?!何故!!?」

 「教えてやろう、この星には八百万の神々がおって、この国日本には様々な神社仏閣がある。そしてソコには御守りや縁起物ちゅうもんが売っておるんじゃ、そしてワシのこの装甲の下にはそれが大量に詰まっておる!」

 そのゲキの言葉にマンドーセはハッとする。

 「ま、まさか?!そんなたかが辺境の護符やらが拙の呪法を防いだとでも言うのか?!そんな馬鹿な話が有って堪るか!!ええい!式神よ拙を守れ!」

 マンドーセが符を投じると現れたのはあの時の怪物、どうやらマンドーセの式神だったらしい。

 しかしゲキは眉ひとつ歪ませず諭す様にマンドーセに告げる。

 「無駄じゃ、今から放つ必殺の一撃はそんなモンじゃ止められはせん!とおぉっ!」

 跳躍するゲキ、肩の別れたドリルが再び1つのドリルとなる。

 

 

「ドリルクラァァッシュッ!」

 

 上半身がドリルと化し地面に大穴を空け消えるゲキ、マンドーセは相手が何を仕出かそうとしているのかを察し、式神を己の下に移動させ防ぐ準備をする。

 「フェ!無駄無駄!何をしようと無駄なのじゃて!!」

 マンドーセと式神が居る地面の真下の大地が盛上がる。現れたのはドリル状態のゲキ。

 式神とドリルが激突する。

 「オオォォォォッ!漢の一転突破ァ!」

 「フェェェエエ!?ば、馬鹿な?!ああ…ァァアア!!」

 式神ごとドリルに貫かれるマンドーセ、空中に飛び出たゲキの上半身が元に戻る。

 「これがワシとこの星の力じゃ!」

 着地と同時に首をマンドーセに向けるゲキ。マンドーセと式神は身体に大穴を穿たれ爆発した。

 

 「さて、皆の呪いは解けたかのう…」

 黒き巌の戦士は呑気な声で基地で眠る仲間の事を思い浮かべる。

 暫くの後、結芽から皆が元気に快復したと通信を受けた彼は豪快に笑いながら帰還した。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verドリルゲキ)

 

 くそっ!あのブラック本部長…俺にばっかり仕事を押し付けやがって!

 

 まぁまぁ、それだけ薫ちゃんを信頼してるんだよ~。

 

 可奈美は良いよな、俺と違ってそこまで遠征に駆り出されないし。くっ、俺も見たかった、赤いダグオンの新しい形態…

 

 あはは…そう言えば、また増えたらしいよダグオン。

 

 ナニぃ?!クソォッ!?!俺の知らん内にどんどんパワーアップしていく!!……ってマジなヤツか?

 

 うーん?どうだろう私も直接見た訳じゃないから…

 

 ふん、まぁニセモノなら俺が退治してやる。ホンモノならサインだ!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 孤軍奮闘!結芽とライアン?

 

 おい!?何で第四席が出てくる?!!

 

 さ、さぁ?

 

 




 はい、前回よりは短いです。
 え?誤差だろって?短いんです!( ・`д・´)キリッ

 甲冑の方はもう本体が大分ボロ出てますね。彼はまぁ兎に角、自分可愛いの自己中ですから……名前が出る頃には死ぬ間際かな…。
 そしてマンドーセ。久しぶりの等身大の敵。しかも何々星人ではなく◯◯仙人とか◯◯導師とかの枠。
 そして次回は遂に……


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幕間 1・その後のVRS装備と播つぐみ 2・葱、大根、チョコミン刀


 二本立てです。
 はい、葱とかの奴はゲームのネタ装備を出したいが為に作った話です。
 許してクレイモア。


 〔その後のVRS装備と播つぐみ〕

 

 それはマンドーセが現れる数時間前の刀剣類管理局本部で起きた出来事である。

 

 綾小路から技術者、研究者の増援人員として招集された渡邊翼沙は実に困っていた。

 「ふんふん…ナルほどナルほど…、ノロが少量でもS装備の活動時間を延ばす効率方………相変わらず優秀で大活躍だね従弟(ブラザー)

 機器を操作する翼沙の周囲をウロチョロする赤毛の丸みを帯びたボブカット。

 長船の制服の上に白衣を纏う眼鏡の少女。

 彼女の名は渡邊エミリー。見ての通り長船女学園の技術科に属する生徒にして、翼沙の従姉である。

 「エミリー……僕の方ばかり構ってないで、自分の仕事を………いやダメだ、考えたらこの従姉(あね)は周囲の迷惑を考慮してない…」

 毎度毎度聞こえてくるエミリーの所業に頭を抱える翼沙。

 周りから見れば彼もそう大差無いのだが、そこは変人なりに譲れない分水線と言った所か。

 「失敬な、ワタシはこう見えてちゃんと弁えてるヨ?荒魂が出現したらなるべく邪魔にならない様に、腕の立つ娘の側に着いてだね…」

 「結局、最前線間近で撮影してるじゃないか!?それにヒートアップして他の人の所にも現れるから煙たがられてるって聞いてるよ!!」

 基本的誰に対しても敬語の彼が唯一、タメ口を訊く相手がこのエミリーである。

 彼女もそれを理解しているのか翼沙に対してはですます口調を交えない完全なタメ語で接している。

 「そこは研究の発展、技術の発達の為には止む終えないと言うべきか…まぁこうしてワタシも任務に出たメンバーも無事何だしノープログレム!それに、それを言うなら従弟だって随分と派手にやってるんじゃないかい?」

 悪びれも無くいけしゃあしゃあと言ってのけるエミリー、眼鏡のツルを上げ眼鏡を光らせるその顔はマッドサイエンティストのそれである。

 「別に僕だって好き好んで爆発してる訳では無いんだ。ただ……想定より出力が高くなり過ぎて結果的にソフトにハードが着いていけなくて爆発するだけなんだ!」

 此方もまぁ似たような理由で悪びれ無く述べる。

 そんな2人のやり取りを聴きたくも無いのに聴かされている作業中の土師景子は思う。

 (どっちも大差無いので勘弁して欲しいって、巻き込まれる側は思ってますよ、きっと……私がそうですから……)

 しかし色々怖いので口には出さない。

 そして彼女とは別に偶々来ていた播つぐみがイマイチ変化の少ない表情で翼沙達に訊ねる。

 「先程から気になっていたのですが、お二人は御姉弟で?」

 「違います」 「残念ながら違うんですネ、これがまた」

 ほぼ同時に返ってくる翼沙とエミリーの答え。

 これだけ息ぴったりなのに違うのかとつぐみは思った、思っただけである。

 「それは…失礼しました。名字が全く同じなのでてっきり」

 「まぁ、そうですよね…初対面の人達から二人で居ると良く訊かれます。ただ、僕と彼女の関係は従姉弟ですので親族であることは違いないんですけどね」

 「なるほど…それで」

 翼沙の説明に得心がいったと返事をするつぐみ、その時、翼沙のダグコマンダーが緊急呼集で点滅する。

 「?!すいません、つぐみさん。折角来て頂いている所、申し訳無いのですが少々急用が出来たので席を外します。なるべく急いで片付けますが、時間が掛かるかもしれないので、もしつぐみさんに何か用事が有るようでしたらそちらを優先して頂いて構いません。後、エミリーは僕のデスクのパソコンには絶対触らない様に!」

 この間、椅子から立ち上がって、研究室の扉を出るまでの事である。

  勿論翼沙の急用とはダグオンとしての任務であり、彼はこの後、敵の攻撃により倒れそのまま戻って来なかったのであるが……。

 ともあれ翼沙が居なくなった事を見計らい、エミリーはニヤリと笑った。

 「うふふ~。古今東西の創作物にもあるように、触るなと言われると途端に触りたくなってしまうのが研究者たる性なのだよ、従弟」

 翼沙が電源を落としたパソコンを立ち上げ、翼沙の施した三十通りの難解なパスワードを難なく解除しデータの閲覧を始めるエミリー。

 つぐみはそれを少々呆れ気味に眺めながら、しかし自身も彼の研究に興味があるのか、エミリーの背中越しに画面を覗き込む。

 「ふむふむ…以外と整理されたデスクトップですね。おや?VRS装備?はて?」

 その中で見付けたファイル名が気になり首を傾げる。それに気付いたのかエミリーが面白そうに笑い、ファイルに掛けてあるロックを外し開いた。

 「中々興味深い事を考えてる様ですね我が自慢の従弟は…しかし、翼沙らしくない」

 閲覧途中でエミリーが内容を怪訝に思ったのか眉根を上げる。

 「らしくないとは?」

 「この理論ではVRS装備とやらは実現不可能の産物。あの子が技術的に開発不可能な物を構想するなんてらしくないんですよ」

 「もしかしたら私の研究に関係あるかもしれませんね」

 「と言うと?」

エミリーの言葉を聞き、VRS装備とやらの実現性の不可能さに以前、自分が見せたVR空間を利用したシミュレーターの話をするつぐみ、エミリーは何処と無く納得したようなそうでない様な顔で考え込む。

 その間につぐみはパソコンの画面に開かれている項目を何とはなしに読み進めて最後にある事に気付く。

 (この変わったデザインのシンボル、先程先輩の腕に付いていたアクセサリーにも有りましたね、それに…他にも何処かで見覚えが……しかしVRS装備ですか、折角なので私のシミュレーターにそのアイディアを使わせて貰いましょう。一先ずはこのデザイン以外のモノもデータを作らねば…先輩が戻って来たら持ち掛けてみましょうか)

 つぐみの中で考えが纏まる。しかし、知っての通り翼沙が今日中に戻って来ることはなかった。

 その為つぐみは仕方無く己の研究に戻った。

 後日、エミリーは翼沙に叱られたが、彼女自身は反省せずケロッとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〔葱、大根、チョコミン刀〕

 

 これは撃鉄がドリルゲキとなってから次の日に起きた出来事である。

 「むー……」

 戒将と共に使用している部屋で結芽が膨れている。

 (御刀があれば戦えるのになぁ……悪い宇宙人を倒せばみんな私の事をスゴいって言ってくれるよね。それにお兄ちゃんとも一緒に戦えるのになぁ)

 基本的に弱い相手や興味が無い相手には冷淡な結芽であるがダグオンの5人…今や6人となった彼等との交流もあってか以前に比べれば幾らかマシになったと言える。

 まぁ、そうであっても弱者に対するスタンスはそう簡単には変わらない、弱い者は弱い。

 (でもあのおねーさん達は少しメンドくさかったな……次にもし戦ったら今度は余裕で勝つけど)

 あの時は身体の事もあり、心身共に余裕が無かったが今は違う、とは言え長船の2人と戦った経験は彼女なりに弱い者なりの矜持を理解する切っ掛けにはなった様だ。

 「弱い人の中にもそこそこの人はいる、それに…そういう人達が群れると倒せるけど面倒。多分あのアリの宇宙人も数が多いとそれくらい面倒なタイプ……翼沙おにーさんが作ってる装備、出来るのはまだ先だしやっぱり御刀が欲しい……ニッカリ青江を取りに行けないかなぁ」

 ここには無い愛刀を思う結芽、とは言え兄から耳がタコになるくらい聴かされた事情もあってか、ニッカリ青江を取り戻すのは難しい。

 「むー、そうだ!おねにーさんにちょっと訊いてみ~よ!」

 とても良いことを思い付いたと言った顔で部屋を飛び出す結芽、個室を出ればダイニングを掃除する兄が最初に目に飛び込んでくる。

 「結芽?どうした、そんなに急いで?」

 「ちょっとおねにーさんに訊きたい事があるから訊いてくる」

 そのまま自動扉が開くのを待って、開いた瞬間廊下を速足で駆ける。

 目指すはダグベースの頭部、メインオーダールーム。

 

 

 

 「え?御刀が欲しい?いやムリだよ。ボクでも流石に御刀は簡単には造れないよ?」

 見付けて早々、本題を直球で切り出した結芽にアルファは手を振って答える。

 「でもライアンって剣は荒魂斬れるんだよね?」

 「あれは基になったのが特殊だし特別だし。まぁ刃に使った金属は特に硬度と切れ味のあるのを使ってるし」

 その金属を別の世界から使わないでしょと言う理由でシータから融通して貰っているので彼自身は本当に型に当て嵌め造り上げたに過ぎない。

 「一つも無いの?」

 「そうだね…一本も………いや待って、確かこの間焔也君達がフェニックス星人だかガロン星人と戦ってた時のザゴス星人が赤羽刀の荒魂を捕獲しようとしてその時妙な赤羽刀が出たのをつい持って帰って来てた様な………いや、でも…あれは…うーん」

 結芽の疑問にアルファは何か思い当たる節が有ったのか口許に手を当て考え込む。

 「結芽ちゃんさ、要は写シとか迅移とか刀使としての能力が使えれば取り敢えずは問題無いんだよね?」

 「一応悪い宇宙人も倒したいけど…うん、迅移が使えたら色々楽だと思う」

 「ちょっとさ、ラボの方で待っててくれない?」

 「?…分かった」

 アルファの態度にどうにも意図が読み切れないが、どうやら御刀の心当たりは在るらしい様なので素直にラボがある技術・研究区画に移動する結芽。

 果たして然る後に焔也を伴ってやって来たアルファが手に持っていた物は赤羽刀であった。あったのではあるが………

 「ナニこれ?」

 何とも独特な形であったのである。

 「御刀だよ。ね、焔也君」

 「いや…御刀か?コレ?」

 錆びた段階から判る刀に見えない2本と刀の体は成しているが妙な臭いがする1本。

 「取り敢えず研いでよ焔也君」

 「おま…何も言わずにいきなり連れてきて言うに事欠いてそれか!」

 アルファの態度に釈然としない焔也、目の前に結芽が居る事もありおおよその経緯を察する。

 「まぁ、何となく俺がここに呼ばれた理由は察した。待ってろ今から研いでくる」

 アルファの手にある3本を掻払い、ラボの刀工スペースに入っていく焔也。

 3時間と40分の後、作業の工程を終えた焔也がとても釈然としない顔で出てくる。

 「なぁ、持ち帰った俺が言うのもなんだけど……これ本当に御刀か?」

 果たして彼の手にあった3本は錆を落とされ新品同様の輝きを放つ3振りとなった。

 それが葱と大根と刃がチョコミントである事を除けばだが………。

 「折れそう…」

 「一応、ちゃんと斬れるよ?本当だよ?」

 胡乱な目を2人から向けられるアルファが必死に身振り手振りで説明する。

 「むぅ…取り敢えず使ってみるけど……都合よく荒魂か宇宙人がいるかな?」

 と結芽が口にした途端アラートが鳴る。

 オーダールームに揃う6人と結芽、場所は富士の樹海に近い。

 「これは…転送せずとも、場所からして我々が動いた方が特祭隊よりも速く現場に着くか」

 「お兄ちゃん!私も着いてって良い?」

 場所の詳細を確認した戒将に結芽が手を挙げて懇願する。

 「駄目だ」

 「まぁまぁ、戒将君。そんなつれない事を言わないで、結芽ちゃんを連れてってあげなよ。大丈夫、この眼鏡とフード付きパーカーを持ってけばバレないバレない」

 アルファが何処からか取り出した桃縁眼鏡と白いパーカーを結芽に着せて太鼓判を捺す。

 尚も戒将は反対を主張したが焔也、撃鉄、龍悟、翼沙、果ては申一郎までが流石に籠りっぱなしは酷だろうと彼女の肩を持った為、渋々折れる事となる。

 「分かった。但し、俺からあまり離れるな」

 こうして念願の外出を果たす結芽。

 ダグオン達と共に荒魂の出現場所に到着する。

 

 

 

 「ふむ、この辺りの筈だが」

 「どこかな?どこかな~?」

ターボカイと共に木々を縫って進む結芽、探す事10分、漸く見付けた数匹の荒魂。

 「よし、お前はここに居ろ」

 「待って、荒魂なら私がやるよ」

 結芽が突然そんな事を言い出すので固まるカイ、何だとと口を開こうとして結芽がアルファから貰ったブローチを弄るとそこから取り出されるのは例の葱だ。

 「な、何…だと…」

 目が点になるカイ、そんな兄を尻目に飛び出す結芽、荒魂が彼女の存在に気付き迎撃しようとする。

 結芽が葱を振るう目の前の2匹が真っ二つになる。

 「ホントに斬れっちゃった……よし!」

 ならばと試しに写シと迅移を使用する結芽、更に数匹の荒魂を刻んだ後、葱が限界を迎える。

 「折れちった…じゃ、次!」

 再びブローチを弄り大根を取り出す。

 今度は大根で三段突きを披露する結芽、瞬く間に数匹葬る。

 「葱と大根で荒魂が斬れるだと……!?」

 カイの驚きは至極当然のモノである。

 然る後大根が砕けた。

 「次!」

 最後に取り出したのはチョコミントで出来た刃の刀。

 「俺は夢を視ているのか………」

 右手で顔を覆うカイ、そしていつの間にか合流した5人。

 「マジで使ってるらぁ…」

 「ブッァハ!ナンだアレ?!チョコミントで出来た刃で斬ってらぁ!!」

 「ちょっと待って下さい。結芽さんの足下に落ちてる折れた葱と砕けた大根からもあのチョコミント剣同様、御刀の反応があるんですが…」

 「……葱と大根か……謎だな。チョコミントの方は納得いくが……」

 「いや、チョコミントは納得すんのかい!おかしいじゃろ?!」

 6人が見守る中、結芽はふざけているとしか思えない御刀で荒魂を殲滅し終えたのであった。

 

 

 7人がダグベースに帰還して、結芽はアルファに例の3振りの調子を報告する。

 「おねにーさん。ネギとダイコン、折れたよ?チョコミントはまだ使えるみたいだけど……正直、いいかなって…」

 「お気に召さなかったかぁ…あ!葱と大根は後でプランターの方に埋めといて、また生えると思うから。チョコミントは冷凍庫で冷やしといてね」

 結芽は思った。果たしてそれは本当に御刀なんだろうかと…。

 

 結芽が望む刃は未だ遠い。

 





 幕間でつぐみにちょっとした疑念を持たせたかったのです。
 従姉とはいえエミリーは翼沙にとって割りと理不尽な天敵だったりします。
 やはり姉には逆らえない。


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第六十九話 孤軍奮闘!結芽とライアン?

 こんばんは!
 ゆめアン回です。
 やっと、やーーーーーーと、構想していた物の2つ目が出来たよ!!
 はい、当初から結芽にライアンを持たせる事は予定しておりました。長かった……

 そして、本編を書き始めた頃、シンデレラ百剣にて久能山の真恒が欲しいと書いたところなんと………同時期にイベントで活躍する熱田康継が出ました。
 うん、いやまぁ嬉しいけど個人的には瓶底眼鏡っ娘で義属の貴重な薙払タイプのくのさんが欲しかったんですよ……熱田も西田ボイスで名古屋弁喋るから可愛いんですけどね。






 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 宇宙監獄エデンの囚人達が地球への侵攻を開始した。

 世界の秩序を守護する管理者と宇宙警察機構がブレイブ星人の手により、スーパーパワーを与えられた選ばれた5人の高校生達。

 そんな彼等に頼もしい6人目の仲間が加わった!

 


 

 ━━エデン監獄・地下

 

 人工の光が瞬く大地の底で奇っ怪な音がそこかしこから聴こえて来る。

 それは何かが悶える音だったり、苦しみ呻く音だったり、或いは歓喜に叫ぶ声であったり……。

 「こんなかんじかなぁ~?」

 「ええ、大分こなれて来たわねぇ。後は器の方が持てば完成かしらぁ?」

 妖精と女医が何事かを為している。

 周りに転がるのはザゴス星人だった残骸、そして結合が融けたノロ。

 「ぐーる、ぐーる、ぐーるぐる……まぜてこねてたたいてのばしてばらしてくんで……かーんせーい!やった~♪」

 「うふふ…遂に出来たわねぇ荒魂混成型ザゴスソルジャー。ノロは放って置いても自然と結合するけどぉ、ザゴス星人の方はクイーンのコンディションもあって中々上手くいかないからぁ大変だったわねぇ」

 「でもかずがすくないね」

 「そこはまぁ試作品ですもの…三匹程手元に残して、後は地球でどの程度使えるかの試験ねぇ」

 妖精と女医が話す視線の先には十数匹の橙色とも朱色ともとれる輝きを仄暗く発するザゴス星人が培養液の中で蠢いている。

 「たのしくなるといいな!」

 そのあまりに無邪気な声が場違い感を加速させる。

 驚異は容易く増殖して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都・綾小路武芸学舎

 

 早朝の露が薄れる時分、門前に立つ刀使が1人。

 「久し振りの我が学び舎!ってやつですね」

 定期的に行われる各学校と本部間での人員の移動。

 とは言え刀使はまた直ぐにでも各地へ派遣されるので、精々が学長への報告と家族への顔見せ等を兼ねた小休止といった所か…。

 そんな理由から綾小路へ帰還した山城由依が大きく伸びをして長時間の移動で固まった凝りを解す。

 「さぁて、久々のホーム……我が校の美少女達と触れ合うとしましょうか!」

 指をワキワキさせながら涎を垂らして瞳を輝かせるその姿はどう優しく見積もっても"へんたいふしんしゃさん"である。

 そんな欲望にまみれた顔で門を潜ろうとした瞬間、眼前に竹刀が現れ道を遮る。

 「な、何ですか?!」

 「む…?うちの生徒だったのか。あまりの邪な怪しい気配を感じ剣を向けてしまった、済まない」

 竹刀の元を辿れば立っていたのは綾小路の男子制服をキッチリと着た青年。

 「いえ!大丈夫です!えっと…あなたは?」

 「君は中等部の生徒か、私は燕戒将。高等部の人間で風紀委員長をしている」

 青年──戒将が名乗った瞬間、由依の顔が青くなる。

 「これはご丁寧にどうも。あた…わたしは中等部の山城由依と言い…ま…す(って!?燕?!?!親衛隊の燕結芽さんの関係者?!それに風紀委員長!!?もしかして、綾小路の鬼の風紀委員の?!)」

 由依が名乗り返そうとして、戒将の綾小路中に轟く噂を思い出す。

 「?どうした山城くん?どこか気分でも悪いのか?」

 「いえいえいえいえいえいえ!!何でも無いです!誓って無いです!断じて無いです!お気遣いなく!!」

 噂に聞く彼の恐ろしさに震え上がり、必死に首を振る由依。

 「ででででわ!あたしは学長に報告がありますので!!」

 正に脱兎の如く校舎へ消えていく由依。戒将はその背中を見送った後、門を閉め始める。

 「ふむ、忙しない娘であったな。登校する生徒の影は無し、時間帯としても刻限。これ意向の登校は遅刻と見なし記録する!」

 周囲に誰1人居なくとも銘々に宣言する戒将、職務に真摯な彼であった。

 

 

 綾小路武芸学舎の学長室、そこで由依は学長相楽結月に近況を報告する。

 「ご苦労だった、短い間だろうが英気を養ってくれ」

 「了解です!では!」

 結月からの労いを受け立ち去ろうとする由依、が結月が待ったを掛ける。

 「少し待て。山城由依ついでと言っては何だが、これを高等部警邏科の燕戒将に渡して貰えるか」

 そう言って彼女が机の引出しから取り出したのは辞令と書かれた封筒。

 由依が首を傾げつつ受け取ると、結月がその表情から察したのか説明をしてくれる。

 「どうにも今の私では彼に直接これを渡すのは憚られる。使い走りにして済まないが、代わりに渡しておいてくれないだろうか?」

 怜悧な瞳が僅かに揺れる。学長からの珍しい頼み事に惚けながらも引き受けた由依。

 そして学長室から出た途端、どう渡した物かと悩み始めるのであった。

 

 

 

 斯くして学長からの使命を帯びて休み時間に高等部の教室棟にやって来た由依、しかし着いて早々彼女は他の事に目移りしてしまう。

 「ひゃ~!キレイなお姉さま達がいっぱいっ!ここは天国ですか?!」

 一応男子生徒も居るのだが、今の彼女の眼には年上のお姉さま方しか映らない様である。

「あら中等部の子がいるわ」

「見たところ刀使科の生徒ですね」

「誰かに用でもあるのかな?」

 等々周りから声が挙がる。そんな中で由依を認め声を掛ける刀使が1人……。

 「ねぇ貴女、もしかして山城由依さん?」

 綾小路武芸学舎高等部3年、浦賀奈緒である。

 「はい!そうです!よけろしければ手を握っても…出来る事ならハグの方が……ああっ!でもこうして向き合ってお話しするのも捨てがたい!」

 「ええっと…大丈夫?何か用があって来たんじゃないの?」

 欲望駄々漏れの由依に困惑こそすれ嫌な顔1つしないのは小隊を任される程の実力故か。

 「はっ!そうでした、学長から高等部の燕先輩に渡す物を預かって来たんです!」

 奈緒からの声で一応本来の目的を思い出した由依がそれを告げる。

 「高等部の燕……ああ、戒将くんね。二年生の教室はここの一つ下ね」

 「なんと!?あの貫禄でまだ二年生だったとは……」

 奈緒から件の人物の居場所を聞き驚く由依、噂こそ有名であったが男性の方は特に興味が無かった為、学年を勘違いしていたのだ。

 「まぁ彼の雰囲気からして、そう思われても仕方無いかも…良ければ案内しましょうか?」

 「是非!お願いします!!」

こんな美人にエスコートされるなら本望と言わんばかりの顔である。

 

 そして階を降り、2年の教室へ。

 「さて…この時間なら彼の性格からして教室に居ると思うけど……いたいた」

 等と奈緒が中間の教室辺りを覗き込むと黙々と次の授業の準備をしつつ、自習の為にノートを開く彼の姿を見付ける。

 「おーい!戒将くーん!燕戒将くーん!中等部の子が呼んでるよ~!」

 奈緒の呼掛けに気付き即座に姿勢正しく席を立ち、教室の扉へと近付いて来る戒将。

 「浦賀先輩、出来ればもう少し声を抑えて頂けると助かります。それで…用向きのある中等部生とは………おや?君は今朝の」

 「あはは…どうも、山城由依です。今朝ぶりです、実は先輩にですね学長からお手紙を預かっていまして…」

 恐る恐る両手で辞令の封筒を取り出し差し出す由依。

 奈緒は苦笑し戒将はそれを折り目正しく受け取る。

 「態々済まない。感謝する…………本部の警邏実習?今更?……(もしや翼沙か?申一郎が働きかけたとは思えん、しかし翼沙にしても理由をでっち上げるには些か無理がある)…むぅ」

 封筒から書類を取り出し難しい顔をし始めた戒将に由依は手持ち無沙汰になり、奈緒は後輩の珍しい顔に意外な顔をする。

 「あら?良いことじゃない?戒将くんってば真面目で優秀なんだし本部に招集が掛かるのもおかしくは無いと思うけど?」

 「しかしそれだけならば他にも候補が居たでしょう。自分である理由が俺には解りません。以前は結芽の事もあっての本部務めでしたが……」

 そう口にする戒将の言葉を聞いた瞬間、奈緒が地雷を踏んだかと言う顔になる。

 「あ……ごめんなさい。失言だったかしら」

 「いえ、先輩が気にする事では……ともあれ事情は理解しました。山城くん、学長には了解したと伝えてくれ。無論、直ぐとは言わないが」

 「は、はい、承りました!この身に賭けて伝えます」

ビシッという音が聴こえるくらい敬礼をする由依に戒将は困った顔をする。

 「…………そんなに恐ろしい顔をしているのだろうか…?」

 「戒将くんはいっつも眉間が寄ってて真面目だから誤解され易いんだよ?」

 「そういう物ですか…」

先輩女子からのからかい気味の言葉に些か拗ねた様な声で応える戒将。

 由依は敬礼したまま器用に後ろ向きに去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 

 「そう言う訳で、明後日から鎌倉の本部に改めて出向の身となった。宜しく頼む」

 メインオーダールームの中央卓で切り出す戒将に残りのメンバーも各々に反応する。

 「おお!ってことは名実共に俺達ダグオンが勢ぞろいすんのか!」

 「ハーン…それってヨ、ガクチョーからの推薦か?」

 「いや、真庭本部長からの嘆願との事だ」

 「本部長から……一体どういった趣きなのでしょう?」

 「……どちらにしても、俺たちが一ヶ所に集まるのはそう都合の悪い事でも無いだろう」

 「確かにな、頻度にもよるが…一纏めで集まれるのは有難い」

 と、兄の話を黙って聞いていた結芽が撃鉄の行動に疑問を挟む。

 「ところで撃鉄おにーさんは何をやってるの?」

 「なんでも…例の宇宙呪術師との戦いで使い物にならなくなったお守りの中からまだご利益がありそうなお守りを見付ける作業だそうです」

 翼沙の言う通り、学ランやシャツ、ズボンのポケットや縫い付けた内側からボロボロの御守や護符を取り出している撃鉄。

 「うーむ、これもダメ。こっちもダメ……ぬぅ!?金運上昇の仏も錆びておる!!くぅぅう、もったいないのぅ……」

 一体いくつ仕込んでいたのかと言うくらい大量に出てくる御守やらに皆呆れている。

 「ふへぇ…こんなにあったら確かに"本物"が混じっててもおかしくないね」

 アルファですらそんな事を宣うのであった。そしてそんなアルファが思い出したかのようにあ、そうだ!と口にする。

 「前回の件含めダグテクターの機能を強化するからみんなダグコマンダーを貸して──」

 等と口にしようとした所で爆撃の音と震動がダグベースに伝わる。

 「な、何だぁ?!」

焔也が椅子からずり落ちながら思わず叫ぶ。

 「待って下さい……映像出ます!」

翼沙がコンソールを操作して音と震動の発生源を特定する。

 「これは…空母か?!」

 「……艦載機ではなくミサイルを撃ち出すとは、地球のモノじゃ無いな」

 戒将と龍悟が発生源を見て敵だと断定する。

 「ヤロウ、どっから現れやがった?」

 「衛星の監視網に反応はありませんでした。恐らくは海中からかと」

 「それより被害はどうなっておるんじゃ?!」

撃鉄が空母が発射したミサイルの被害を気に止める。

 「どうやらかなり広い範囲で出ていますね……って、これはっ?!!?!」

 翼沙が詳細を調べていると何かに気付き声を挙げる。

 「どうした?!」

 「撃ち込まれたミサイルらしき物体から謎の人型機械とザゴス星人の軍団が日本のみならずアメリカ、中国、ロシア、オーストラリアに出ています!」

 「…遂に他の国にも直接的に攻めてきた……。そういう事か…?」

 「だったら大人しくしてる場合じゃねぇ!おいアルファ、こいつ(ダグコマンダー)を預けるのは無しだ!今は連中を倒さねぇと!」

 「焔也の言う通りだな。出動だ!各員別れて敵に対処する。焔也はアメリカ、俺は中国、翼沙がロシア、オーストラリアは申一郎。日本に現れた連中は龍悟、撃鉄頼めるか?」

 「しゃっ!」 「はい!」 「アイヨ!」 「…承知した」 「任せろ!」

 即座に出動する6人、結芽も出ようと後に続くが…。

 「結芽、お前は待機だ」

 「どうして!?もう私も戦えるよ!」

 「以前の外出を許したのは、相手が荒魂であった事と、ストレスを考慮しての物だ。今回はそうはいかん、我々がバラバラに行動する以上、フォロー出来ない可能性が高い……聞き分けてくれ」

 真剣にお願いされでもと開きかけた言葉を呑み込む結芽、それを素直に聞き分けてくれたと取った戒将は改めて現地に出撃した。

 

 

 皆が出撃し暇を持て余し気味の結芽は不貞腐れながらオーダールームに居座る。

 「仕方無いよ、ぶっちゃけザゴス星人だけなら未だしも……あの機械の兵士、多分元はエデンに配備されてたガードロイドの一種だね。大分改造されてるけど……戒将君的にはさ、結芽ちゃんが大事だから心配なんだよ、そこに君の強さは関係無く、ね」

 アルファが目一杯フォローしている、結芽自身も兄の気持ちを理解はしているがやはり納得はいかない。

 「でも……折角病気も治って身体も平気なんだよ?おっきいのはムリでも人間サイズなら私だって…御刀も()()()()だけど、一応使えるし!」

 "あんなの"とは結芽が以前、アルファに頼み込んだ際、焔也協力の元再生した赤羽刀の3振りである。

 見た目はとても……いや大分個性的だが、一応御刀としての機能が存在しているのだ。

 「うん…あんなの呼ばわりがちょっとショックだけど……うん、いやわかるけどさぁ…」

 思わず釈然としない顔となるアルファ、そんな2人きりの空間にブレイブ星人が現れ風雲無休の事態を告げる。

 <管理者よ、緊急事態だ。勇者達が対処している場所とは別に敵が現れた>

 「えっ?!場所は!!?」

 <小笠原諸島の一つと思われる>

 「アメリカに焔也君、中国に戒将君、オーストラリアに申一郎君、ロシアの翼沙君、九州に龍悟君、東北に撃鉄君。関東と関西は刀使の子達と機動隊、自衛隊が対処してて手が放せない……って言うか数おおくないかな?!まだあんなにいたの?!!」

 ザゴス星人の多さに目を剥くアルファ、しかしブレイブ星人は首を振り……。

 <どうやら例の漆黒の新幹線によって新たに補充された様だ>

 「またあの黒い新幹線!?何でレーダーに映んないんだよ?!!折角シャトルの繋留地点として棄てられた衛星を改造してまで作ったのに!!」

 アルファの言う衛星とはデブリと化していたモノを寄せ集め改造し、世界各国の衛星と勝手にリンクし地球外から襲来する敵を早期発見する為の物である。

 <どうする?その漆黒の新幹線は其々、中国、ロシア、オーストラリアに現れているが?>

 「うそん、三輌とか聞いて無い!焔也君は?!それか龍悟君か撃鉄君!?」

 <アメリカにも正体不明の敵が現れている。シャドーリュウ、ドリルゲキには改造ガードロイドを中心に足止めがされている様だ>

 八方塞がりな状況にアルファは慌てふためく。

 「まだ最後の一人も見付けてないのに!?!あぁぁあ?!どうしよう!!?」

 「私が行く!」

 そんな状況で結芽は声を挙げアルファとブレイブ星人を見る。

 しかしアルファは眼をパチクリとさせて勢い激しく首を横に振る。

 「いや…いやいや!え?いやいや、だって…無茶だよ!?敵の規模は他に比べて少ないとは言え、ガードロイドもいる。結芽ちゃんだけじゃ…」

 「みんなは動けないんでしょ?!なら私しか残って無いじゃん!」

 <燕結芽。敵は君が思う程容易い相手では無い、もし功名心で口にしているのであれば出撃は推奨出来ない>

 ブレイブ星人も諫める言葉を口にするが結芽は折れない。

 「確かに…私が一人で悪い宇宙人をやっつけたらスゴいって褒めて貰えるかもって思う事はあるけど……違うよ。私もみんなと一緒で地球を守る為に戦いたい!お兄ちゃん達が足止めされてるなら、他に方法はないよね?!」

 「で…でも……」

 <…………。了解した、燕結芽。君を臨時隊員として任命する、共に地球を守ってくれるか?>

 「うん!」

 言い淀むアルファに対し、ブレイブ星人は暫し黙考した後、結芽を臨時の隊員を任命した。

 ブレイブ星人からの言葉にパッと顔を輝かせ、力強く返事をする結芽。

 「ちょっ?!ブレイブ星人?!」

 これに驚いたのはアルファだ、しかしブレイブ星人は意に留めず話を進める。

 <転送座標は此方で設定しておこう、君は装備を整え装置内で待機していてくれ>

 「了解!…えへへ、ありがとうブレイブ星人のおじさん!」

 <ああ>

 ブレイブ星人に礼を述べ走り去る結芽。後に残ったアルファはとんでもなく情けない顔でブレイブ星人を見やる。

 「ちょっとちょっと!勝手に決めちゃって、まずいよ!!」

 <責任は私が取る。燕戒将への謝罪も私だけがしよう。だが、地球という星を守れるのはやはり其処に住まう者達なのだ>

 そう言い残し消えるブレイブ星人、恐らくは結芽の為に装置の制御に向かったのだろう。

 「言わんとする事は分かるけど……大丈夫かな…」

 一抹の不安を覚えるアルファであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━小笠原諸島の某島

 

 東京の一部として扱われるこの島で人類の脅威が縦横無尽と暴れ回る。

 無慈悲に冷酷に冷淡に……、其処に住まう人々の命など何とも思わずに殺す。

 潰して殺す、刺して殺す、撃って殺す、引き千切って殺す、捩り切って殺す、溶かして殺す。

 人が雑草を踏む様に、或いは道端の小石を何と無しに蹴り付ける様に、子供が無邪気に蟻等の小さな虫を潰すように、彼等は人を殺す。

 いや…彼等にはそんな感情すらあるのか怪しい。何せロボットだ、機械生命体では無く…完全に人口物として作られたロボット。

 本来の目的用途からは完全に逸脱したそれが逃げ惑う人々を老若男女構わず殺す。

 そしてそんな光景を後ろから眺める橙色に発光する躰のザゴス星人達、それを更に離れた場所から監視している大型の2輪車跨がるライダースーツの人物。

 「経過は順調ってところか、ウン。荒魂の怒りに委せて暴れてる様子も無い、知能もウチで働かせてるソルジャーより高い、これはもう成功なんじゃないかな?ウン。いい加減お宝探しに移行したいし今回の結果次第で前線基地は連中に任せて、オイラとグシアノースはこの地球に在るって言うお宝を探したいね。ウン」

 ライダースーツの人物…と言うよりはバイクの方だが、状況を確認しながらそんな事を呟くアスクラ、退屈そうに監視を続けながらこの星に眠るとされるお宝の存在に思いを馳せる。

 「ま、ぶっちゃけ嘘か本当か怪しいとこだけど、船長が乗り気だし…副船長は死に場所求めてるようなもんだし、他のメンバーもそろそろスキャンするモノが決まってるだろうし本格的に探したいね。ウン……ウン?」

 おおよそが死体の街と化したその場所に現れたる白いフードを被った小柄な人間、その普通とは違う気配にアスクラは眼を見張る。

 「へぇ…ダグオンの仲間か?でも見た感じ刀使っぽい……ウン。取り敢えずはお手並み拝見」

 

 

 

 半ば屍山血河と化した街に降り立った結芽はその光景に嫌悪を覚えつつも目の前の敵を見定め、武器を構える。

 葱……と言っても御刀だが、それを構え迅移にてガードロイドが此方を認識するよりも早く懐へ入り切断する。

 以前の使用感から焔也とアルファにリクエストして少なくとも見た目を他者からは刀に見える様にして貰った葱、そして大根。

 焔也によりコーティングされ鈍色になった葱を振るいながら結芽は戦況を見立てる。

 (ロボットが多い……、後ろで集まってるのはアリの宇宙人のヤツ?でもなんか変……とにかくこれ以上は好きにさせない!)

 20もの改造ガードロイドを屠り敵の注目を集める事に成功する結芽、そのまま人里から連中を遠ざけようと付かず離れずを繰返し挑発する。

 「前より頑丈になってる、焔也おにーさん意外とスゴい?」

 50を越えた辺りでコーティングが剥がれ落ち、元の色が見てとれる葱型の御刀。

 ザゴス星人がそのふざけた得物に憤慨する。

 「あはは!怒った?でもこんなのにやられる程弱いのがいけないんだよ?」

 それを笑って挑発する結芽、ノロをその身に宿したザゴス星人の1体が向かって来る。

 「…っ!ちょっとはやるじゃん」

 葱を折られ跳び退る結芽、折れたそれを仕舞い(棄てるとアルファが泣きながら怒る為)次なる得物として大根を取り出す。

 「こーんなのもあるんだけど?」

 そしてこれ見よがしに見せる事により更に敵を挑発する。ザゴス星人達も少なくともそれが本来は武器では無く人間の食材である事は理解しているらしく、そんな物に斬られるガードロイド達の情けなさに怒りを覚える。

 「ニンゲンめ…生意気ニモ我々に歯向かうノカ!」

 「わっ…?!喋った!!いつもギィとかしか鳴かないのに」

 言いつつ葱を折った荒魂ザゴスを大根で斬り伏せ、周囲のガードロイドも行動不能にする。

 流石に実力の高さを察したか、今度は徒党を組んで襲いかかる荒魂ザゴスとガードロイド達、結芽は自身を囲む敵と自身が持つ御刀の耐久性を加味し体術主体の体捌きと戦術を採ることにする。

 「やっ!(ダイコンもそろそろ限界かなぁ、後はチョコミントだけど……焔也おにーさんと龍悟おにーさんからパルクールとか習っておいて良かった。ネギもだけど使えなくなった瞬間だけ写シも八幡力も切れるから、力負けしちゃうんだよね…)」

 僅かな間に思考を纏め敵陣を掻き乱す、荒魂ザゴスが2体ガードロイドを盾にしながら連係して結芽に爪を振り下ろす。

 「斬られちゃった…、もう!予定より早いけどっ!!」

 キレイに斬られた大根の残った側をブローチにしまい、最後の1振りを取り出し構える。

 小笠原諸島の1つに上陸した計100余りのザゴス、ガードロイドの集団は僅か1人の少女の手により既に半数まで数を減らしていた──

 

 

 

 

 

 

 

 そして小笠原の上空を自らの内から発する声に従い飛行している獅子の意匠持つ黄金の剣。

 『胸騒ぎか虫の報せか……我が内より響く声に導かれこの地へ来たが……む?』

 それに気付いたのは必然か、とある島に眼を向ければ、白い衣を纏った少女らしき人影が度々邪魔立てする異星人と刃を交えているではないか。

 『……あれは刀使か?それにしては随分と妙…と言うか杜撰な得物を使っている、あれでは折角の腕も宝の持ち腐れではないか…』

 少女が手に持つ刃はお世辞にもマトモとは言い難い緑色に茶黒っぽい斑点が付いたふざけた刀であった。

 そうして辺りを改めて見渡せば夥しい数の破片と異星人の死骸。

 『あれは…全てあの少女が倒したのか!?何という……む、あれは荒魂だと?!異星人が…またしてもその身に荒魂を宿している……いかん!!?』

 黄金の剣──ライアンがノロを宿したザゴス星人に気付き、そしてその荒魂ザゴスが倒れた仲間から流れるノロに触れ何事かを行うとノロが結合し荒魂が生まれる。

 『少女の得物も限界が近い……ふっ、ダグオンめ…私にも一端の守護者としての矜持がある!』

 少女の獅子奮迅の戦いに感心しながらも、彼女が振るう得物の限界、敵の悪辣な手段を目撃し自らの心に従う。

 黄金の剣が少女に向け舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──いくつ敵を倒しただろうか、正直疲れが出てきた。

 しかし退く訳にはいかない、1人で出来ると豪語した。自分はダグオンの臨時隊員に任命された。弱者に見向きもしなかった己でも兄達が成そうとする正義は理解出来る。

 無力な守るべき者と立ち塞がる弱者の違い、それを理解した今、これ以上異星人の好きにさせる事は許されない。

 そう思いながらも刀を振るうが刀身に限界が来る、中腹からチョコミントの刃が折れる。

 「折れちゃったかぁ…」

 よく見ると少し溶けている。恐らくは周囲の気温差などもあり折れたのだろう。

 (そんなとこまでアイスじゃなくても良いのに…)

 幸いなのは刀身が折れても写シが継続出来ている事、ならば迅移、八幡力も問題は無い。

 しかし決め手が無くなった。

 (ヤバい…かも……)

流石に折れた得物でやり合うのは分が悪い。どうしたものかと嫌な汗がしたり落ちる中、空から舞い降りる黄金の剣。

 「え?」

 「ギッ!?」

これには結芽も荒魂ザゴスも驚愕する。

 『少女よ、私を使え。敵に荒魂が居るのであれば私としても戦うのは吝かでは無い。しかし、人と同等の大きさの者を相手にするのは私だけでは厳しい。故に少女よ私に力を貸してくれ、代わりに私が君の刃となろう』

 突如空より現れた剣に目を白黒させる結芽、一拍の後に剣の言葉を理解し口端に笑みを浮かべる。

 無論、敵方もむざむざ結芽に力を与えよう等とはさせない、だがしかし、元親衛隊は伊達では無い。

 体格の差を生かし、身を屈め後ろから飛び掛かる荒魂ザゴスを躱し、倒れ込む勢いでライアンが刺さる地点に駆ける。

 対岸の荒魂ザゴス達が対処するよりも結芽がライアンをその手に掴むのが早い。

 柄を握り、その力の凄まじさを瞬時に理解する。

 そのまま前に進む勢いを梃子にして剣を振るう。

 目の前の荒魂ザゴスは簡単に真っ二つに斬られ倒れ臥した。

 「スゴい…なんだかすっごく力が湧いてくる。それにニッカリ青江と同じくらいしっくりくる!」

 獅子剣を振るいながらガードロイドもザゴスも荒魂ザゴスも斬り伏せる。

 『ほう…私の眼に狂いは無かった様だな、少女よ名は?』

 「結芽。燕結芽だよ、よろしくね剣のおじさん」

 『おじさんでは無い。我が名はライアン。結芽よ然らば存分に私を振るうと良い!』

 「そのつもり!」

 残る数匹程度の荒魂ザゴスと荒魂を前に1人と1振りは余裕を以て軽口を叩く。

 

 剣は出逢った、己の力を十全に発揮する使い手に

 

 少女は出会った、力持つ喋る剣に

 

 2人の邂逅は必然であった。

 

 穢れし業を黄金の剣にて燕が断ち斬る。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verシャドーリュウ)

 

 ゼータちゃんきか~ん!

 

 やっと帰ってきたな……。

 

 シーちゃんおこなの?

 

 いや…なんかもう私も貴様に怒るのが馬鹿馬鹿しくなってきたところだ……。

 

 そして空気を読まずに予告するのは儂、イプシロン。

 次回は遂にダグシャドーが登場するの。

 

 闇に潜みし紫の影!竜の翼を獲たるが如し!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 幻影!ダグシャドー!!!!

 

 でるでるは相変わらず難しい言い回しにこだわるね!

  




 さて次回はダグシャドー回、これを書き終えたらちょっと時間をとある事に使うので少し間が空く可能性がなきにしもあらずでございます。
 まぁ幕間くらいは直ぐに書けるかもしれませんが
 ともあれ次回、またお会いしましょう!


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第七十話 幻影!ダグシャドー!!!!

 こんばんは!
 ダグシャドー回とゆめアン回のエピローグです。
 そして次回は以前から打診していたロザミア様の作品とのコラボの話となります。
 いやぁ賛否あるかもしれませんが、他の作品作者様とコラボする事で学べる事もあると思い、お話を振らせて頂きました。
 お楽しみ頂けたら幸いかと思います。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 あらららら?おいおい、強化された荒魂?ザゴスだっけ……もう殆どやられてんじゃん。ウン

 こりゃ趨勢を最後まで見るまでも無い。あっちの人間の勝ちじゃん、ウン。

 仕方ないから、グシアノースと合流がてら、日本に残ったダグオンのどっちかにちょっかいでも出すかね。ウン

 


 

 ━━アメリカ・ニューヨーク

 

 アメリカの象徴とも言える自由の女神の前で赤い鳳がザゴス星人と改造ガードロイドを蹴散らす。

 「だぁぁぁああっ!多すぎるんだよっ!!」

 ファイヤーバードアタックで過半数を蹴散らすも新たに沸いて現れる星人やドロイド。

 アメリカも市警や軍を動かして対応しているが有効打に至るまでの火器が戦車数台の連続砲撃では被害諸々が大き過ぎる。

 「やっぱ、トドメは御刀レベルの武器か俺らの攻撃でしか刺せない訳か……しゃあねぇ!」

 ファイヤーエンは女神周辺のエリアブロックを埋め尽くさんばかりの敵の群れに飛び込む。

 アメリカでの戦いは続く──

 

 

 

 ━━中国・南京

 

 「ターボホィィィイイルッアタァァアアック!!」

 蒼い閃影が迸る。

 ターボホイールに騎乗し星人とドロイドを切り刻むターボカイ、南京の街に散らばる敵を刻みながら移動する。

 そこへ飛来するレーザーの光。

 「何っ?!チィッ!!」

 着弾地点から5メートル程で躱し爆風に煽られながらもレーザーの出所を見れば器用に家屋の屋根に立つ目測10メートル……丁度、ダグオン達がビークルと融合合体した際の姿と同じ大きさのロボットが此方を視ていた。

 「奴は…?」

 漆黒の身体に、所々紅い意匠、どうにも見覚えがある。

 『青い戦士、貴様があの時余に一撃を喰らわせた借りを返しに来たぞ!』

 「貴様……あの時の漆黒の新幹線かっ?!」

 『応とも!余は超速三兄弟(ソニックブラザーズ)が長兄、音速の貴公子!Jーエース!!』

 漆黒の新幹線改め漆黒の巨人が名乗りを挙げる。

 「ジェット……エース……?」

 『そう!ジェットのJだ!兄弟最速、それこそがJ!ジェットとはその称号故の証!』

 家屋の上で器用にポーズを取り続けるJーエース、その周りの状況を無視した空気にカイは唖然とする。

 (こんな奴だったか……?!いや、しかし…他の敵の気配が消えた。それだけ奴は己の強さに自信があるのか)

 『青い戦士よ、あの時余を追い詰め、オード星人を討ち果たした姿へなれ!それでこそ余自ら出向いた意味があると言うもの!』

 「良いだろう、貴様等が何を企んでいるか知らぬが…敢えてその挑発、乗ってやろう!」

 Jーエースの誘いに応えターボライナーを呼び出すカイ。

 

 「融合合体」

 

 『ダグタァァァボッ!』

 

 青と白の巨人が黒と赤の巨人と相対する。最速の戦士達の戦いが始まる。

 

 

 

 

 ━━オーストラリア・ノーザンテリトリー

 

 「オイオイ…何だアリャ?!ムシケラとガラクタを蹴散らしたらヘンなヤツが居やがる…」

 アーマーライナーでエアーズロック周辺の敵を片付けていたシンは、そのエアーズロックに佇む謎の巨人に訝しげに首を傾げる。

 『HEY!YouがダグオンのPowerFighterだNA!オレっちは超速三兄弟次男、HighPowerのRーマック!兄貴がリベンジのFireしてるからNA、オレっちはYouとPowerBattleだZE!』

 名乗りを挙げた黒灰と黄色の巨人──Rーマックがシンを名指す。

 「ふ~ん、要はオレとタイマン張るって事か…暑苦しいのはキライなんだが、やってやるゼ!」

 

  「融合合体ッ!」

 

  『ダグアァァマァァァアアッ!』

 

 重装甲のパワーがぶつかり合う、地球の臍の上で力と力の勝負の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 ━━ロシア・ウラジオストク

 

 極寒の大地でウイングヨクが敵を倒しながら凍った湖に出れば中央で眠り転ける紺黒と紫の巨人。

 「え…?!」

これにはヨクも反応に困る、不自然なまでの敵の動きに疑問を抱きつつ倒して行けば、最後に現れたのは呑気に眠る黒い巨体だったのだから毒気が抜けてしまう。

 そうして固まっていると件の巨人の鼻提灯が割れ、目を覚ます。

 『うぁ?あ……あぁ、えっと…誰だ?ううん?おお!ダグオンが来たんだな!?』

 口調までも気が抜ける物言いにヨクは戸惑いながら誰何を訊ねる。

 「貴方は何者ですか!?」

 『うん?オイラの名前か?超速三兄弟の末っ子、跳ね馬のXーセブンなんだな。オイラと一対一の勝負なんだな、巨人に合体するんだな』

 のんびりした口から飛び出る物騒な理由にヨクは気を引き締める。

 「成る程……(敵がいつの間にか彼一人、時間稼ぎが目的かと思っていましたが……どうやら只の足止めでは無いようですね)」

 ヨクは敵の意図を予想しながらウイングライナーを呼び出す。

 

 「融合合体!」

 

  『ダグッウイィィインングッ!』

 

 天駆ける白銀の巨人が寝そべる巨人に立ち向かう。

 氷上の決戦が始まる──

 

 

 

 

 

 

 ━━日本・秋田県

 

 「ぬぅ!ゾロゾロと鬱陶しいのう!」

 群がるザゴス星人と改造ガードロイドをダイナミックな技で蹴散らすドリルゲキ。

 「埒があかん、何が目的なんじゃコイツらは…!」

 胸の水晶体からロッククラッシャーを撃ち出し敵を倒すゲキ、更に近付いて来たザゴス星人を卍固めしながらこの状況を訝しむのであった。

 

 

 

 ━━日本・熊本県

 

 ゲキと同様、群がるザゴス星人と改造ガードロイドを蹴散らすシャドーリュウ。

 ゲキと違いシャドーガードのガードアニマル達が存在する分、戦力としては余裕がある。

 故にヨク同様、敵の動きの不自然さに気が付く。

 「……明らかにこちらを倒す動きでは無い…。目的は足止めか、だが……」

 それにしても数で圧すだけでそこまで時間を稼ぐ感じがしない。

 それもそうだ。今回の敵の目的は荒魂と化したザゴス星人の性能実験と超速三兄弟の我儘。

 海賊達は性能実験に協力し兄弟達はそれに便乗したのだ。

 荒魂ザゴスは小笠原諸島と、本州の関東、関西の刀使が展開している場所に配置されどの程度使い物になるかを測られているのだ。

 「……どちらにせよ、俺たちのやるべき事は変わらない。敵を倒す……」

 シャドークナイを射出しチェーンで伸びたその刃を鞭の様に奮い、より広範囲を攻撃する。

 或いは敵の攻撃を受け倒れたかと思えば、それは変り身の倒されたガードロイドであったり、分身であったりと、敵を翻弄する。

 そんな戦場に変化が現れる。リュウと敵以外居ないその場所に不釣り合いなエンジン音、空気に伝わる音の形から二輪車のソレと判る。

 ザゴス、ガードロイド達の群れを飛び越え現れるはやや白みを帯びた鋼鉄の騎馬。

 日本製と言うよりは海外製のフォルムのソレに跨がるは一風変わったライダー。

 何よりも不可解なのはソレをザゴス星人達が攻撃しないこと。

 「へー、中々面白い戦い方するね。ウン」

 エンジンを唸らせながら声を発するライダー……否、声は跨がるライダーからではなくバイクの方から聴こえている。

 「…何者…だ…!?」

警戒を色濃くし何時でも対処出来る様に身構えるリュウ、対しバイクの方は散歩のついでとばかりに軽い口調で言ってのける。

 「なぁに、噂のダグオンの実力を実感したくてね。ワザワザ、海中に待機してた相棒に無理言って此処に運んで貰ったんだよ、ウン」

 「……つまりは敵か…」

 警戒を更に強くするリュウに比べ飽くまで暇潰し程度と言う口調のバイクは言葉を続ける。

 「ウチの副船長があんたのお仲間との戦いでえらく興奮したみたいでね、オイラもちょっとばかり興味が沸いたんだね。ウン」

 その言葉と共にアクセルを吹かしシャドーリュウに突撃してくる鋼鉄の騎馬。

 勿論、リュウはそれを容易く躱すが、バイクはそのまま変形を開始する。

 バイクがウイリーを始め、エンジン部を覆うカバーが両側のマフラー含め左右に展開し、シートの部位が足となり前後のタイヤが真横に移動したかと思えば折れ曲がり前輪が2つに、そして脚が延び、立ち上がればフロントが180度回転したかと思えば給油タンクに重なり展開した左右のカバーがフロント部に連結、マフラーまでの部位が腕を成す。

 最後に大地に足を踏み締め、メーター部からハンドルがズレ頭部が競り上がる。

 ライダースーツが上下に分割、両腕に接続、宇宙海賊の諜報員アスクラがシャドーリュウの前に立ち塞がる。

 「さて……情報じゃ、お前さんは合体出来ないんだろ?ウン。ま、何かの拍子で出来ちまう可能性もなきにしもあらずだけど、ウン」

 両腕のマフラーがそのまま銃身となりリュウに向けるアスクラ、その二丁の砲塔から弾丸が射出される。

 「……くっ…!」

 残影を牽きつつ躱すリュウ、周辺のザゴス星人やガードロイドが巻き込まれ吹き飛ばされる。

 「……こうもサイズに差があっては……」

 自らの影を追うように弾丸がバラ撒かれている。逃げ続けようにも限界がある。

 「ちょこまか素早いね、ウン。ならこれはどうかな?」

 左側に装着されたライダーの下半身であったパーツが更に砲塔を作る。

 左右を銃撃され上下にも逃げられず後ろは敵の郡れ、ならば取れる手段は前のみ──

 

  「……元より選択肢は無い。大回転!剣・風・斬!」

 

 シャドーリュウの代名詞たる必殺技をアスクラに向け放つ。

 しかしアスクラは躱そうとせず右側のライダーの上半身であったパーツを動かすと右側の砲塔が矢に変化し、発射される。

 「ぐぁぁあああっ…!!」

 強力な一撃により大回転剣風斬を弾かれダメージを負うリュウ、地に伏した彼にアスクラは追撃のスタンプを見舞おうと足を振り上げる。

 しかし主の危機にシャドーガードが馳せ参じる。

 ガードウルフが、ガードタイガーが吼える。ガードホークが嘶き、3機の鋼の獣がその姿を変える。

 

 ウルフの胴が伸び後ろ足と尻尾が折り畳まれ7割が足となる。背部のキャノン砲が分離。

 残り3割、前足が畳まれ人の腕らしきパーツが出現、獣の頭部が胸となり人型の頭部が背より展開、背に改めてキャノン砲が装着されバトルモードとなる。

 タイガーもウルフ同様に変形しバトルモードとなってリュウを守る。

 ホークは嘴が大きく開き、ロボットの顔が出現、脚が展開され、猛禽の爪が踵に変形し、胴側から腕を解放。

 3機の機獣が人型となりアスクラの前に立ち塞がった。

 「へぇ、そんな隠し球があったとはね……ウン、今の内に知れて良かった…だから死ね!」

 冷徹なアスクラの言葉、しかしシャドーガード達は意に返さない。

 3機のシャドーガードがアスクラを取り囲むと各々が構えアスクラの周囲を回転し始める。

 「おっ…おおぉ?!」

 驚愕するアスクラ、シャドーガード達が巻き起こした竜巻の中で翻弄される。

 「存外、小賢しい手を使う!お前さんはそういうタイプか、ウン」

 背中のホイールを回転させ気流を乱し脱出すると、既にリュウの姿は無く、しかし敵をそのまま放置して逃走したとも考えずらい、恐らくは隠れているのだろう。

 「そっちがその気なら、こっちがやる事は一つ……良いのかねぇ、この星を守る正義の味方ってヤツなんだろ?あんまり隠れてるとこの銃口がお前さん達が守るべき相手に向いちゃうよ?」

 その言葉に反応したのかシャドーガードが飛び出る、しかし、シャドーリュウの姿は無い。

 「ハハン、手下に任せて自分は高みの見物か……ナメられたもんだね。ウン!!」

 3機のシャドーガードを相手に手堅く対応しながら油断無く辺りに注意を促す。

 (出てこない。ふんむ…なら)

 3機の隙を縫って街に銃口を向けるアスクラ、放たれた弾丸はしかしガードタイガーが切り払う。

 「ほう…でも何度も持つかねぇ?ウン」

 何度も何度も何度も繰り返し隙を見ては街に銃口を向け弾を放つアスクラ、その度にシャドーガードが切り払うか身を呈して防ぐ。

 「埒が空かないね、仕方無い、手札は隠しておきたかったが……ヘッドオン!デッドヒート!」

 ライダー側の上半身が右腕から外れアスクラの頭に合体する。

 「ウンンンン!ヒートヘッドは超久しぶりダァ~。ンンン!気分が良い!良いねぇチョー最高♪」

 テンションが先程から180度変わったかのようなアスクラに目を見張るリュウ。

 「…奴の気配が変化した…?!」

 瞠目するリュウを尻目にアスクラヒートは3機のシャドーガードを圧倒し始める。

 「ヒヒヒッ!さっきの勢いが無いゾ~?ンンン?そらそらそらそらぁ!!」

 弾き飛ばされダメージを負うシャドーガード達、未だカードに戻らない所を見ると何とか耐えている現状だ。

 (……これ以上は厳しいか、ならば最早手段を選んでいる場合ではない……)

 隠れて居た場所から飛び出し、同時にシャドージェットに乗り込むリュウ。

 「アアン?」

 

 「…刮目せよ……!」

 空を駆ける紫翼の影がその真の姿を現す。

 

 

「…融合合体…!」

 

 シャドージェットのキャノピーの上に腕を組み立つリュウ、尾翼が折り畳まれ、エンジン側が足へと変形、爪先が展開。

 主翼側の下方に折り畳まれた腕が展開、機首がリュウを乗せたまま分離、シャドージェットが頭部を除きその姿を人の形状へと判る所まで変形完了する。

 瞳に光の無い頭部が競り上がり、其所へ空からリュウが眼前に着地。

 そして融ける様にシャドージェットに消える。

 最後に飛んでいった機首が背中の右側に装着、刀の柄が現れ胸の龍の意匠の瞳が頭部の瞳と共に輝く。

 

 

『…ダグシャドー……ッ!』

 

 『……さぁ、ここからが本番だ』

 シャドーリュウ改め、ダグシャドーは背に装着された刀の柄に手を掛け構える。

 「ヒャハッ?!良いねぇ楽しめそうだッ?!」

 言葉と共に弾丸を撃ち出すアスクラヒート、ダグシャドーは刀を抜刀し弾丸を斬り裂く。

 『……無駄だ、貴様の弾道は既に見切った…』

 「ヒハッ?!それならコイツはどう見切るつもりだ?ンンン?」

 新たに放たれたビームは射出された瞬間にバラバラに別れる……所謂ショットガンの散弾だ。

 

 『シャドォォオ手裏剣!』

 

 それをダグシャドーは肩の手裏剣を取り外し左手で回転させる。

 回転した手裏剣の刃と風圧でビームの弾丸を弾ききるダグシャドー、アスクラヒートは感心したように口笛を吹く。

 「ヒュ~♪すげぇ、全弾落としやがった……!」

 そんなアスクラヒートの態度など意に止めず、名刀カゲムラサキを構え駆ける。

 「さぁて…次は……『次の手は与えん!』ヒハッ?」

 アスクラヒートの言葉に被せる様にダグシャドーが告げる。

 『はぁ…!名刀カゲムラサキ…むんっ!』

 カゲムラサキが円を描き最後に正眼の構えを中心に光のエネルギーが3つ、天・地・人の球体となって逆三角形のトライアングルを描きエネルギーがカゲムラサキへと集束する。

 

 『天・地・人…三つの理一つとして、これがダグシャドー…絶対拘束剣!!』

 

 集束されたエネルギーを刃で打ち出しアスクラヒートを拘束する。

 「ヒヒッハヒャ?!う、動けねぇンンン!」

 『とおっ…!』

 空中に拘束されるアスクラヒートを前にダグシャドーは跳躍、更にその姿を変える。

 

 

『シャドォォオドラゴン!』

 

 手首が上下に回転し竜の爪を持つ前腕となる、脚が再びビークル状態同様の形に戻りそこから後ろ脚が出現、機首が反転して脚部分に接続され龍の尾を形成する。

 ダグシャドーの頭部を収納し背中にある龍の頭部を象った部位が展開し、その姿を西洋と東洋の龍と言う生物を混ぜた様な姿に変える。

 紫電を纏い黄金と見違えるエネルギーの塊となったシャドードラゴンはアスクラヒートに向かって行く。

 

 

『ドラゴンプラズマバァァァアンンッ!!』

 

 龍の咆哮を挙げプラズマエネルギーがシャドードラゴンから分離しアスクラヒートに突撃する。

 

  「ヒヒッひゃははハッヒャフフハ?!?!」

 

 狂喜乱舞しながら弾けるアスクラヒート、敵を倒した事を確認したダグシャドーはゲキの元へ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━アメリカ・ニューヨーク

 

 「なんだ…?」

 時同じくしてニューヨークのザゴス星人と改造ガードロイドを全て片付けたエンが通信に気付く。

 『あ、焔也君?良かった!今大丈夫かい?結芽ちゃんが──』

 「マジか…!結芽ちゃんが、こっちは片付けた。急いで戻る!!」

 エンはファイヤーストラトスに乗り込み、更にファイヤーストラトスはファイヤージャンボに収納される。

 ファイヤーエンは小笠原諸島へ急ぐ。

 

 

 ━━中国・南京

 

 『むぅ、やるな青き戦士…貴様の名、確かダグターボだったか?確かに覚えたぞ!』

 Jーエースが肩で息を切らしながらダグターボに宣言する。そのまま胸から光を発し姿を消した。

 『一体、何だと言うのだ……!』

 一方的に着けられた因縁に当惑するよりないダグターボ、しかしダグベースからの通信の内容を知り、今度は怒号を発する。

 『何だと?!貴様っ!結芽を一人で向かわせたのかっ!!?』

 『ひぇっ……』

 『<ダグターボ、管理者に当たるのは筋違いだ。彼女を出動させたのは私だ。責務は私にある>』

 ブレイブ星人が割り込み件の真実を伝える。

 『ブレイブ星人…!くっ、兎に角俺は結芽の元へ行く。敵は退いた、文句は有るまい!』

 ダグターボはブレイブ星人達にそう告げるとターボパックボードに乗り、中国を発った。

 

 

 

 ━━オーストラリア・ノーザンテリトリー

 

 『グォォオオッ!』

 『HAaaaa!!』

 2体の巨人が正面から組み合う、しかしその均衡は突如崩れた。

 『Whats?!兄貴は退いたのかっ?!ならここにはもう用は無いZE!Good-Bye!!』

 組んでいた手を外しビークルモードとなり空に消えるRーマック。

 それをダグアーマーは毒気を抜かれた顔で見送った。

 『ハッ?…………ハァッア?!?』

  そして通信に気付くダグアーマー。

 『オッ?結芽っちが……こりゃダグターボのヤツかなりキてるかもな……。オレも向かうとするか!』

 そしてダグアーマーは融合を解き、日本に向かう。

 

 

 

 

 ━━ロシア・ウラジオストク

 

 『むむむ…空を飛ぶのは卑怯なんだな。オイラはビークルモードの時しか空を走れないんだな、狡いんだな』

 Xーセブンがダグウイングに愚痴を向ける。

 『え…えぇ……』

 これにはダグウイングも言葉を失う。

 そこに更にXーセブンの元へ兄2人が撤退した事を知る。

 『兄ちゃん達は帰ったんだな。オイラも帰るんだな、今度はちゃんと陸で決着着けてやるんだな、まぁその時はオイラはオイラ達になってるかもしれないけどな』

 絶句するダグウイングを尻目にのっそのっそと歩き出し、ビークルへと変形し空に登って行くXーセブン。

 『何だったんでしょう……あれは……』

 そして彼もまた結芽の事を知る。

 『なんと…結芽さんが…!?急がねば!!』

 ダグウイングもまた極寒の地から黄金の国へ急ぐ。

 

 

 

 ━━日本・秋田県

 

 「ぬっ?敵の動きが緩くなった。何かあったのか…?ん?」

 敵が目に見えて攻め手を緩めた事を認識し訝しむゲキ、そこへ更にダグシャドーが飛んで現れる。

 「ぬぉお?!あれはまさかリュウの奴、融合合体をしたのか?!くぅっ!ワシも自分の専用ビークルが欲しい!」

 そうこうしている内にダグシャドーがシャドーバルカンで敵を一掃する。

 『……ゲキ、ガードホークに乗れ。小笠原諸島へ急ぐぞ……』

 「む?何故……御チビが一人で戦っているだとっ?!!うむ!急ぐぞダグシャドー!!」

 ゲキは即座にガードホークに跨がるとダグシャドーと共に小笠原諸島へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京・小笠原諸島某島

 

 ライアンという強力な聖剣を手にした事で、向かい来る敵を次々と葬った結芽。

 今、最後の1体を討ち取る。

 「これで…最後っ!」

 横一文字は振り払われた刃に荒魂ザゴスが倒れる。彼女は敵をほぼ1人で殲滅せしめたのだ。

 「終わった……疲れたぁぁぁぁ!」

 どてっと地面に座り込む結芽、手にしたライアンが声を掛ける。

 『見事であった結芽。私を振るうに相応しい戦いぶりであった』

 「うん…ありがとおじさん。ライアンのおじさんのお陰で何とか守れたよ!」

 そう言って笑う結芽の顔は高揚感に満ちていた。

 

 『結芽ぇぇぇええ!

 

 遠方から自身の名を呼ぶ声がする。空を見上げれば融合合体した兄の姿、更には此方に向かって飛んで来るアーマーライナーにダグウイング、更には紫色の見覚えがあるようで無いようなロボットとガードホークに乗るドリルゲキ。

 「あはっ、みんな来てくれたんだ。でも全部私が倒しちゃったよ…」

 そこまで口にして疲労から眠り意識を手離す結芽、ダグターボが島に上陸し融合を直ぐ様解くと結芽の元へ急ぐ。

 「結芽!?」

 倒れる結芽に狼狽えるターボカイ、そんな彼にライアンが心配無用と声を掛ける。

 『彼女は疲労で眠っただけだ、命に別状は無い』

 その言葉にライアンが結芽に握られている事に気付くカイが驚く。

 「ライアン!?君が結芽に助太刀してくれたのか…?何故?」

 『この少女が私を使うに相応しいからだ。そうか彼女はお前達の仲間だったか』

 「あ、ああ…俺の妹だ。ライアン」

 『何だ?』

 「感謝する。有り難う」

 『フッ…感謝される謂われは無い、私は私がやりたい事をやりたい様にしたに過ぎない』

 語り合うカイとライアン、そして続々と島に辿り着く仲間達。

 「無事か結芽っちー!?」

 「結芽さーん!!」

 「御チビー!!」

 「結芽ちゃーん!!生きてっかぁぁ!?」

 「……どうやら既に決着していたようだ」

 そして彼等は頼もしい仲間を新たに得たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━熊本県

 

 「ふぅ、まさかスットク3つとも消費しちゃうとはね、ウン。やべぇなぁ強いなぁ、ちょっと楽しくなって来ちまったじゃん。ウン」

 ダグシャドーが去った後、砂塵が再びアスクラの形を成す。

 彼は確かにダグシャドーに討たれた。が、しかし何らかの手段を用いて復活したのだ。

 「さぁて、中々楽しめた。失った分の命を補充しなきゃなんねぇし、暫くは裏方だな。ウン」

 彼はそう言い残しライダーの居ないバイクとなって何処かへと消えた。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation ver融合合体ダグシャドー)

 

 ライアンの奴、俺には何だかんだ文句付けたクセに結芽ちゃんは誉め殺しかよ!?

 

 ……フッ、彼女は剣の才覚ならば俺たち以上だからな……。

 

 って言うか、お前さり気に融合合体してんじゃねぇか!!?

 

 そうじゃ!そうじゃ!羨ましいぞ!!

 

 ……なに、そろそろ出し惜しみはよそうと思ってな。

 

 え?つまりお前、やろうと思えば普通に出来たの?

 

 …ちょうど、お前がファイヤーダグオンになった頃には出来る気はしていた。

 ……ゲキが呪術師を倒した後、試した所、問題なく出来たのでな……。

 

 あん時かよ!?

 あん時じゃと!?

 

 そ、それよりも街がおかしいですよ!?何だか空間に歪みが……!!

 

 むぅ!?街がひっくり返っただと!?

 駒王町!!?悪魔!?天使!?堕天使だと!!?訳が解らん!

 

 へぇ~強い人いるかなぁ?楽しそう!!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 歪曲!?別次元からの来訪者!

 

 女神って強いのかな?




 アスクラは確かに一度木っ端微塵になって死にましたが彼は命のスットクがありました。お陰でヘッドチェンジに使うパーツを失いましたが、本人が言った様に暫くは偵察諜報員として裏方に徹します。
 
 月曜日に鬼滅観に行きます。空いてたら良いなぁ。

 それとちょっとラピライ×仮面ライダーセイバーを少しだけ書いてみようかなとも思います。
 だから早く新しいライダー出てきて!!


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幕間 勇者達の日常

 こんばんは。次回外伝に入る前、この章最後の幕間です。
 割りと平和な回です。その筈です。

 それにしても改めてとじともサポートを見返せば、平城は刀使科の娘大半本当に平坦と言うか慎ましいと言うか、刀使科以外の娘は有るのに……。
 酢昆布先輩は元々刀使だろって?今は警邏科だからノーカンですノーカン。
 一応志保ちゃんはあの制服の上からでも判るくらいにはお山が見えますね。
 だがひよよん!君はダメだ!!

 


 ライアンが新たに仲間となり数日が経ち──

 

 ━━岐阜県・美濃関学園

 

 「久しぶりに帰って来たぜ、美濃関…」

 学園の門へ降り立つ青年、名は鳳焔也。

 「にしても…定期報告の為にわざわざ戻んなきゃなんねぇのも面倒だよなぁ」

 彼が今口にした通り、鎌倉の本部から岐阜の美濃関に報告の為帰って来たのだ。

 

 

 

 

 

 「はい、ご苦労様でした。鳳君、本部での生活はどう?」

 学長室にて今までの成果を報告する焔也、江麻は彼に鎌倉での日々を訊ねる。

 「まぁぼちぼちって感じです。一応、他校の知り合いも出来たッス…じゃねぇ…出来ました。仕事の方も、余所の刀匠科の研ぎ方なんか色々参考になる…なります」

 たどたどしく敬語を使う彼に江麻は苦笑しながら所感を述べる。

 「それは良かったわ。貴方はどうにも誤解されがちな子だから、向こうで仲が良いお友達が出来たようで何よりよ」

 まるで母親のような事を宣う江麻に焔也は微妙な表情を顕にする。

 「後はもう少し座学に力を入れてくれたり、遅刻を減らしたり、最近見られる様になったサボり癖を無くしてくれれば言うことはないのだけれどね」

 そんな言葉に思わず引き吊った笑みを浮かべ視線を逸らせる焔也。

 「稲河さんもだけれど、鳳君も…無茶は程々にね?」

 「う…うっす…」

 「兎に角ご苦労様、後はゆっくり過ごしてちょうだい」

 江麻の言葉を受け、学長室から退室する焔也、扉を閉め一息浸くとさて、どう時間を潰そうかと思案しながら学園の廊下を歩む。

 「鳳先輩?」

 すると、対面から歩いてくる女生徒が彼の名を呼ぶ。

 「柳瀬?久しぶりだなぁ!お前、こっちに戻ってたんだな」

 焔也が彼女の名を告げ手を挙げる。呼ばれた舞衣は微笑みながら彼の挨拶に応える。

 「先輩は学長に報告ですか?本部では中々お会い出来ませんでしたけど…」

 「おう、学長には今しがた報告を終えたとこだ。ま、本部の方はお前ら刀使は忙しいからな、工房に籠ってたりすると中々顔を合わせるなんて無いだろうし、お前の孫六はまだ大丈夫みたいだしな」

 ちらと舞衣の腰の孫六兼元に目を向ける焔也。

 「何と言うか……流石ですね、それだけの慧眼があるのにどうしてもっと真面目に授業に取り組まないんですか?」

 「それを言うなよ……それに誰これ関係なく判る訳じゃねぇよ、衛藤と安桜、そんでお前のだから判るんだ。長江や福田先輩のは直接診ねぇと判らねぇ」

 「ふふ…ちょっと意地悪が過ぎました、ごめんなさい先輩。ところで今日は大丈夫なんですか?お金?」

 困った人と言わんばかりの微笑で焔也に今日の調子を訊ねる舞衣。

 「あ…やべぇ、今手持ちが雀の涙程度だ。金振り込まれるの再来週だしなぁ」

 本部までの交通費は組織から出るが自身の手持ちは無いに等しい、これでは腹拵えも出来ない。

 「本部なら食堂で食えるんだけどなぁ……」

 そこで助け船を出すのは目の前の舞衣。

 「良かったら家に来ますか?」

 「お!良いのか?お前が良いってんなら喜んでゴチになるぜ!ん?てことは衛藤も一緒か?」

 13、4の年下の娘に食事の面倒を見られる高校生の姿が此処にあった。

 「残念ですけど、可奈美ちゃんは雷火さん…可奈美ちゃんのお兄さんと久しぶりにご一緒するそうです。美炎ちゃんもまだ任務中ですから先輩も構えませんね」

 「あー、安桜はまだ任務なのか……最近絡んでねぇなぁ。あいつからかうの楽しいんだけどなぁ」

 美炎本人からすればいい迷惑である。

 「ま、とにかく世話になるぜ柳瀬!」

 「はい、お世話します鳳先輩」

この後、柳瀬家にて食事をご馳走して貰う焔也、舞衣の妹の美結と詩織相手にゲーム等して楽しく過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県・ダグベース

 

 「さて、どうしたものかな。本部に勤めるに辺り、もう一度向こうに住居を構える必要がある訳だが……いっそセーフハウス扱いにでもしてしまうか」

 ダグベース内の自室で本部勤めとなり改めて本部近辺に居を構える必要が出た戒将。

 しかし既にダグベースで暮らす事幾数日、転送装置の存在も在ってか必要性が低い、が、住所が不定と言うのは戴けない。

 仕方無いので適当に安物件に入居してしまおうかと考え始める。

 因みに結芽は現在整備区画でライドビークル共々修復中のシャドーガードの元へ居座り彼等相手に自身がライアンを伴って戦った様子を自慢気に語り聴かせている。

 ホークは真面目に聞き、ウルフは娘に接する様相で相槌を打ち、タイガーは眠り転けている。

 「しかし…本部長直々の呼び出し、その真意が此花の要望だったとはな……」

 現在本部の治療施設にて体内のノロを除去する処置の為、研究医師と本部長のように限られた人物しか面会出来ない"元"親衛隊第二席此花寿々花の事を思う戒将、在学中は互いに気安い関係であった2人、それが変わったのは果たして何時の頃からだったのか。

 「此花の話とは…まぁ十中八九結芽の事であろうな。さて、今の内にどう返答すべきか考えておかねば」

 今はまだ彼女に妹の生存を伝える訳にはいかない、ある程度世渡りを心得ている戒将とて演技は正直得意では無いのだ。ダグテクターを纏っていればマスクで顔を隠す事も出来よう、しかし燕戒将として寿々花に会った時、果たしてボロを出さずに済むだろうかと悩む戒将であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京・渋谷

 

 若者が多く集う街の1つで道行く女性を口説く調子の軽い男がいる。

 「オネーサーン!オレとお茶しなぁい?」

勿論、ナンパは全てスルーされている。

 「チッ…今日はシケてんなぁ、シャーねからゲーセンでも寄って帰るか」

 と引き上げようとすると遠くから何やら少女の声が聞こえる。

 「ウヘヘ……かわいい…」

 オープンテラスで談笑する…恐らくは一般の女子高生を遠目に眺め、今にも涎を垂らしそうなだらしない顔でいる刀使──山城由依だ。

 「かわいい女の子は眺めるだけでも幸せな気分になるなぁ~。でも出来ればおさわりしたい!よし!帰ったら清香ちゃんかミルヤさん辺りにアタックしよう!」

 やはりこの少女、どうしようもなくとんでもない変態である。本人も軽い変態だと自覚があるのが質が悪い。

 きっとその内彼女は僻地に飛ばされるだろう、それも夏真っ盛りのシーズンに

 「ありゃ…あの時のオモシロ美少女か…顔がヤベェな、それなりに整った顔してんのにあれじゃギャグにしか見えねェ」

 取り敢えず由依から視線を外し、その対岸に眼を向ければ、成る程確かに美少女が揃ってキャッキャしてる光景は悪くない。

 「ヨシ!ダメ元であのカワイコチャン達にナンパ仕掛けてみっか!ヘイ!彼女ォ!」

 果敢に向かう申一郎、しかしそこでまさかの邪魔が入る。

 「ちょっとちょっと!?!そこの人ぉ!!何してくれちゃってるんですかぁ!!」

 邪魔者の正体は先程まで溶けた顔をしていた由依であった。

 「ナニって…ナンパだけども、そっちこそ何ダヨ?オモシロカワイコチャン?」

 「オモシロカワイコチャン!?それあたしの事ですか?いえ、そういう事ではなく!美少女同士の尊いやり取りに割って入らないで下さい!」

 申一郎の元に大股で鼻息荒く近付く由依、身長の差故、由依が申一郎を見上げる形になる。

 「良いかオモシロチャン、オレは渋谷(ココ)にナンパに来てる。そしてあのコ達をナンパする理由なんざソレで充分ダロ!!」

 「そんな羨まけしからん事!おてんとう様が許してもあたしが許しません!!この世にあまねく女の子達の為にあなたの様な軟派なチャラ男は見逃せないんです!だいたい何ですか!?その髪型!カッコいいとか思ってんですか!!」

 憤慨する由依は申一郎のツーブロックカット、その側頭部の剃り込みを指摘する。

 「ハァッ?!オマ…言うに事欠いてコレをバカにしやがったな!カワイイからってチョーシ乗んな!!」

 「乗ってまーせーんー!乗ってんのはあなたでしょ!」

 「上等!こうなりゃ…カノジョ達に選んでもらおうじゃないか!オレらが言い合ってもラチ明かねぇからな!」

 「いいですよ?!きっとあたしの方を選んでくれるに決まってます!!」

 顔面付き合わせて言い合う2人、周りの視線も何のそのだ。

 そして巻き込まれる女子高生達は堪った物では無い。

 今の内に逃げようと隣の友人とアイコンタクトを交わしつつ、ソロリソロリと席を発とうとしてしかし運悪く目の前で言い争う2人が此方を向き訊ねて来るのだ。凄い剣幕で。

 「さぁ!お姉さま方!」

 「オレとコイツ!」

 

 「「どっちと付き合う!!?」」

 

「「いえ、そういうの結構ですから…」」

 

 真顔で返す女子高生達、その目は零下の如く冷たい。

 対し2人の反応はバラバラであった。

 「oh……」

 項垂れる申一郎。

 「はぅあん!」

 身悶える由依。

 そんな2人とこれ以上関わりたく無い女子高生達は、ではもう二度と声を掛け無いで下さいと言い残し早々に去っていた。

 そして──

 

 「オイ…ドーすんだよ、オマエの所為でオレの今日の予定ダイナシじゃネェか」

 「えぇ…知りませんよ、そんなこと。大体あなた何者なんですか?あたしの事知ってるみたいですけど…」

 「アァン?そーいや顔を遇わせんの初めてか……。オレはオマエと同じ綾小路の生徒ダヨ。高等部二年、技巧科一応専科、鎧塚申一郎だ」

 「え゛!?先輩なんですか?嘘でしょ!?」

 その言葉恐らく大半の綾小路生に振ればお前の様な後輩が居る事が嘘でしょとなりかねないブーメランと化す言葉だとは彼女も思うまい。

 いや寧ろ女性である分マシ………いややはり変態に貴賤は無い。充分事案通報案件だ。

 「………分かりました!先輩には一度女の子同士のキャッキャウフフの尊みをご教授してあげましょう!!」

 「ハッ!オマエこそオレのモテる為のイロハ諸々を聞いて腰抜かすなよ!」

 そうして2人揃って近場の喫茶店に入る先輩後輩、この後、数時間の話し合いの末に何かしら琴線に触れたのか意気投合し肩を組んで出てくるのだが話の詳細については割愛させて貰う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局本部修練場

 

 フローリングの床と畳敷きが同居する屋内に大きく響き渡る何かを打ち付ける音。

 「あたた……受身失敗です…」

 畳の上に倒れ伏すのは着させて貰っている感の胴着に身を包んだ少年というか青年、渡邊翼沙。

 そして彼を投げ飛ばしたのは同じく胴着に身を包んだ──此方は実に様になっている少女、小池彩矢。平城の警邏科に属する高等部3年生である。

 「大丈夫?渡邊くん、無理せず少し休みましょ?」

 彼女からの労いを兼ねた小休止に翼沙も特に反論せずに従う。

 「いやはや、理論では出来ても実践となると中々上手くいきませんね」

 彩矢が持ってきてくれたお茶を手に翼沙がポツリと溢す。

 「でも渡邊くん素質はあるわよ?最初の頃から比べても大分様になってきたし」

 「あはは…どうも、そう言って貰えると幸いです」

 「最初六角くんから君を紹介された時は驚いたけどね。彼に他校の知り合い、それも年上の友人だなんて…って」

 彩矢の言う通り、翼沙は龍悟の紹介で彼女から護身術の稽古を付けて貰っているのだ。

 「まぁ色々ありまして……龍…六角君とは良くして貰っています」

 流石に詳しい訳を話す事が出来ないので笑って誤魔化す翼沙。

 「ふーん。まぁ六角くんも色々謎が多い子だからね。妹さんとも大分雰囲気違うし……でもまさか研究科の君が護身術を習いたいって言うのは意外だったかな」

 翼沙と同じ様にマグポッドからお茶を注いで口にする彩矢はそんな事を言う。

 「何と言いますか、思う所ありまして…自分の身を守る術が欲しかったもので……」

 「そうなんだ、でもそれにしては素人とは思えない体捌きだったよ?昔…もしかしたら今でも何かしら運動みたいな事をしてるの?」

 「え、ええ…そんな所です……。その今更ですが小池先輩は六角君とは仲がよろしいようですが、やはり同じ科だからですか?」

 口を濁しつつ彩矢の方へ話題をシフトする翼沙、すると彼女も苦笑し語り始める。

 「確かに同じ警邏科と言うのもあるけど、彼の妹さん。清香さんね、私が刀使だった時に使っていた御刀に選ばれたの。でも彼女なんだか自信無さげだったから声を掛けたのね?そしたら蓮華不動輝広──私が使っていた御刀の前に小竜景光って御刀から見放されて、それで自信が無かったらしくてね。それで言ってあげたの、"貴女を見放した景光を見返してやりましょう"って、それからかしら、六角くんと話す事が多くなったのは…」

 彩矢の語る過去に感心して聞き入る翼沙、そんな彼の視線に彼女はちょっと恥ずかしいなと溢し頬を掻く。

 「もうっ!この話はここまで!続きを始めましょう!」

 「え…あ、はい。お願いします」

ダグオン内でも未だ秘密が多い龍悟の事を詳しく知るチャンスが流れ少し落胆する翼沙、しかし好意に甘え稽古を付けて貰っている身なので図々しく聞けない。

 それから暫くの後翼沙は彩矢に投げられる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━奈良県平城学館・中庭

 

 立派に茂る大木の枝に身を預け仮眠を摂る六角龍悟。

 そしてそれを影からこそこそ監視…もとい見守る数人の少女達。

 「むむ!………寝てる」

 トーテムポールの如く顔出す一番上の少女──刀使科中等部3年生鴨ちなみがそう切り出す。

 「あの……恥ずかしいので止めませんか鴨さん」

 二段目、同じく刀使科中等部3年岩倉早苗がおずおずと切り出す。

 「ダメ!だって見てよあの寝顔!?あんなに美人なのに男の人だからか、無頓着に制服は着てるし髪だってあんなに綺麗なのに無造作なんだもん。ファッションに携わる人間としてはあの逸材は見逃せない!!」

 そしてそんな上と中のやり取りに気を取られず龍悟を観察し続ける刀使科高等部2年成瀬実紀。

 「二人とも静かに…!気付かれてしまいます」

 2人のやり取りが大きくなるのを諫め変わらず眠る龍悟を見続ける。

 この3人どういう集まりなのかと言えば、非公式の六角龍悟ファンクラブなる謎の集会のメンバーなのである。

 元々顔も良くミステリアスな雰囲気と相まって平城の女生徒から人気が高い龍悟。

 しかし謎が多すぎてよく分からない、ならばそれを少しでも暴こうと実紀が始めた追跡に、龍悟の女性に見違える程の中性的な面持ち等に興味を持ったちなみが合流、そこに数人の女子達が更に集まり何時の間にやらファンクラブと化していた。

 そして早苗はそんな彼女達に運悪く巻き込まれ会員となったのだ。

 余談だが実妹の清香は名誉顧問、仲の良い辰浪桃は栄光のNo.06、クラスメートでそれなりに会話を交わす松永衣里奈がNo.66、動物好き仲間の姫野志保がNo.65、警邏科同士の先輩後輩で親しい仲の小池彩矢がNo.666をファンクラブから勝手に進呈している。

 そして発起人の実紀、ちなみはNo.1、No.2と言う……早苗はNo.89だ。

 早苗は思う、何故こうなってしまったんだろうと……。

 そしてそんな3人を偶々通り掛かった姫和が何とも形容し難い瞳で見詰めていた。

 (何なんだ……あれは…。岩倉さん、そういう趣味だったのか……)

 早苗にとって完全なとばっちりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京・秋葉原

 

 「ふっ、遂に買ってしまった……。しかしそれも仕方あるまいて、ワシだけ未だに専用ビークルが無いからのう、せめて気分を味わう為に、いつもの鉄道模型の他にジオラマ用の物を幾つかと…ロボットプラモの代名詞!ガンプラ!コイツを改造してワシの未来のビークルを想像もとい!創造すんじゃい!ガッハッハッハッハっ!!」

 田中撃鉄、彼は一体どこへ向かっているのだろう………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 

 「それであの時、おじさんが降ってきて…私がそれをババッ!って掴んでシュッ…って振ってね──」

 結芽が整備中のシャドーガードに身振り手振りで話を伝える。

 『………』

 ガードホークは既に何度も話を聴いているだろうに真面目に聞き続ける。

 「──でね倒したんだよ、凄いでしょ!」

 『Guo…』

 ガードウルフも結芽がそう言うその度に律儀に相槌を打っては結芽を笑顔にさせる。

 『Zzzz…』

 ガードタイガーは話が始まった最初の時点から寝ている。

 そしてそれをブローチの通信シグナル越しに耳にしているブレイブ星人と洞窟内で何ともむず痒そうにしているライアンであった。

 

 

 

 

 

 

 一方、ラボでは桃色の髪の少女……に見える少年──アルファが頭を抱えている。

 「手……手が足りない………。う、うぅ…この姿じゃ仕事が片付かないよぉ!ドリルライナー作んなきゃいけないし、ガンキッドのAI組まなきゃだしガワの無限砲だってあるし、今日はみんなのダグコマンダーの機能アップデートに忙殺されてるし!誰か助手が欲しいよ!早くサンダーライの候補も見付けなきゃいけないのにぃ!!」

 完全防音のラボ内に虚しく響き木霊す絶叫。

 しかし彼の普段の行いを知る同僚からすればこれでも甘い罰である。

 アルファの仕事は終わらない

 

 




 因みに管理者内で一番重い罰がアイドル◯スターの世界の管理だったりします。
 デフォルトとで混沌としたあの世界は誰も彼も管理したがらない正にフリーダムの権化。
 何故ってアイ◯スだから仕方無い。
 公式でカオスですからね。某ラーメン大好き月のお姫ちんとか世界レベルとか段ボールサンタクロースとかぶおお!とか幸運の才女とか不幸の13歳とか外宇宙の支配者っぽいロリとかにゃんにゃんにゃんのユニコーンガンダムとかぷっぷかさんとか茜ちゃん人形とか天空橋騎士団とかむんさんとかエトセトラですからね!
 あれは手に終えない。


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ダグオンMATERIAL3

 こんにちは。
 鬼滅を観に行く前に章が終わったのでマテリアルその3を投稿します。
 雨止まないかなぁ。
 そして天華百剣、今剣ハロウィン衣装エッッッッ!!三鱗紋は事案ですよ事案。
 そして今度のコラボはさすおにかぁ、まぁ千子村正が深雪の服着てましたしね。時間の問題だった。



 設定更新

 

 鳳 焔也

7月27日生。獅子座O型。身長173→174.2。体重58→59.8。

好きな物:拉麺、カレー、ハンバーグ、牛丼。

嫌いな物:ピーマン、グリーンピース。

趣味:ゲーム、御刀観賞、鞘・鍔細工。

座右の銘:勇往邁進。

 

 ファイヤーエンに変身する切り込み隊長。

 胎動編を経てより強く守る為の力を意識する、そして遂に火炎合体へ至りファイヤーダグオンへと合体する。

 トドメの必殺武装が剣な為、よく結芽相手に模擬試合をする。

 基本は実家暮らしだが本部出向となった際、ダグベース内に居を構える。

 彼の部屋はゲームや漫画が所狭しと並んでいる。

 週刊誌も月刊誌も色々読む。

 撃鉄の案以降、ダグオンの仲間達は龍悟を除き先輩なので公の場ではきっちり先輩呼びしているが、それ以外では呼び捨てである。

 撃鉄と申一郎は兎も角、戒将、翼沙は呼び捨てでも先輩としては敬っている。

 結芽とは精神年齢が近いからかかなり仲は良い。

 結芽に対する呼び方は結芽ちゃん、結芽が焔也に対する呼び方は焔也おにーさんである。

 美濃関で同じ不良扱いの稲河暁とはクラスが別の為面識こそ無いが噂だけは耳にしている。

 相変わらず刀使科の生徒、特に可奈美、舞衣、美炎とは仲が良い(美炎本人は変わらず焔也のウザ絡みを鬱陶しがるが)。

 舞衣の妹、美結と詩織とも面識があり仲は良好、柳瀬家で焔也と面識が無いのは父親だけである。

 ヒーローの戦いの手本の為、久しぶりにニチアサを観たらかなりのアクションと映像に興奮して過去作をシリーズ一気にレンタルした。

 

 

 

 

 

 燕 戒将

10月10日生。天秤座A型。身長182→183.5。体重65→66.1。

好きな物:学校のA定食、納豆、鯖の味噌煮。

嫌いな物:特に無し。

趣味:将棋、釣り、読書、武術の鍛練。

座右の銘:公明正大

 

 ターボカイに変身するダグオンの参謀指揮官。

 胎動編での憂い、結芽の病の治療が叶った事により以前よりも柔らかくなった。

 しかし公的には死亡扱いの為、本部に出向する理由が無くなった彼は綾小路に戻る。

 その際一度本部近くに用意された宿舎を引き払った為、ダグベース内に住まう事になる。

 部屋は共用スペースがある個室完備の大部屋で結芽と共に住まう。

 個室には趣味の釣りや読書、将棋に関する物や竹刀、木刀等が置かれている。

 私服はキッチリした物を好み、蒸気革命等の文明開化で男性が着ていたようなタイトシャツとベストという組み合わせや制服に近いデザインの詰襟を着用する事が多い。

 風紀委員長になったのは中等部時代から委員会に属し真面目に活動に打ち込んでいたのを周囲が評価し高等部に上がると推薦により委員長になったので、実は立候補はしていない。

 最近髪型をハーフバックに変えた。

 寿々花の嘆願により再び本部に勤める事となる。

 タギツヒメが抜けた折神紫には改めて畏敬の念を抱きつつも彼女が犯してしまった事は例え原因が荒魂側に有ったとしても償われるに越したことは無いと思っている。

 逆に相楽結月とは今でも恩師と思いつつも色々ギクシャクした関係性になる。

 

 

 

 

 鎧塚 申一郎

12月6日生。射手座B型。身長183→184。体重72→72.7。

好きな物:豚カツ、ステーキ、サラダ、うどん。

嫌いな物:梅干し、柳葉魚、マンゴー。

趣味:ジョギング、ボクシング、デート、ナンパ。

座右の銘:明眸告歯、美女(美少女)の笑顔は絶対。

 

 アーマーシンに変身するダグオンの高火力を誇る遠距離ムードメーカーアタッカー。

 相変わらず暇さえあればナンパに勤しむチャラ男。

 可愛い女の子は好きだがやはり大は小を兼ねるなのか胸の大きい娘を優先して口説く。

 ストライクゾーンは変わらず14~37歳の脚細肌艶長髪美人。

 とは言え悪魔でもナンパの下限上限であり、実際に恋人、延いては将来まで見越すと精々が2歳差離れた相手を選ぶ模様。曰く光源氏はしない主義。

 実家が古典芸能の大家であった、しかし家族とは長兄、弟を除き折り合いが悪い。

 裁縫服飾スキルは元々弟の面倒を見ている内に身に付いた物を服飾デザイナーにでもなればモテるか等と思いそれなりに極めた。結芽の寝間着は全て申一郎作である。

 結芽とは妹の存在とはこんな感じなのかと思いつつ、何だかんだ世話を焼く。結芽に対し呼び方はチビッ子→結芽っち。結芽からは申一郎おにーさんないしチャラチャラのおにーさんである。

 休日に渋谷で生身で改めて邂逅した由依と紆余曲折の末意気投合。

 どちらかと言えば彼女の方が申一郎にとっては妹扱いなのかもしれない。

 現状彼の好みに一番近いのはミルヤである。無論それとは別に女の子や女性は口説く。

 

 

 

 

 渡邊 翼沙

3月12日生。魚座A型。身長164→166.4。体重50→52.3。

好きな物:激辛麻婆豆腐、激辛カレーパン、珈琲。

嫌いな物:アンパン、餡菓子全般、黒い物体X。

趣味:読書、勉強、機械弄り、生物研究、ストレッチ。

座右の銘:一意専心、理路整然。

 

 ウイングヨクに変身するダグオンの参謀補佐、解説解析等の知恵袋担当。

 管理局の体勢が真庭本部長主導となってから彼女きっての願いにより出向。

 現状の隠世技術によりもたらされた装備等の強化、改良、開発を行う。

 本来は研究がメインだがその腕は真庭紗南をして長船が女子校でなければ諸手を挙げて向かい入れたと言う程。

 本部勤務となり、そこで出会った播つぐみから見せられたバーチャルリアリティを使用したシミュレーターの存在からVRS装備を思い至る。

 早速、結芽用の物をダグベースにて開発中、将来的には量産し全ての刀使が使用出来るようにしたいと願っている。

 結芽に対する呼び方は結芽さん、結芽からは翼沙おにーさんまたはバンド眼鏡のおにーさん(これは研究中、集中する為、髪が邪魔にならないように額にヘアバンドを着ける為)。

 ジョロキアなど常人が顔を歪める辛さの物を口にしても汗1つ掻かなければ、ケロリとした顔で食べきるくらいには辛さに強い。

 甘い物が嫌いになった原因はエミリーの作った失敗作『謎の黒い物体X』を食べた為。

 以降、それを連想させる小豆、延いては餡子が特に嫌いになる。

 コーヒーは液体に加え味が濃いのは苦味があるので平気。

 本格的に武術を習得しようと龍悟を頼り、小池彩矢を紹介され護身術全般を習う。

 エレンとは(フリードマンの縁者と言う関係で)仲良くなりたいと思っている。

 ねねを研究してみたい衝動がある。

 

 

 

 六角 龍悟

8月25日生。乙女座AB型。身長175→176.5。体重60→59.3。

好きな物:羊羮、栗ぜんざい、鮭の塩焼き、チョコミント菓子全般。

嫌いな物:鶏肉、蝗の佃煮、レーズン。

趣味:バードウォッチング、ひよこの雌雄判別、バイト。

座右の銘:山紫水明、七転び八起き。

 

 シャドーリュウに変身するダグオンの忍者。

 元々身体能力が高かったがダグオンとなって以降、余計に忍者っぽくなり神出鬼没に磨きが掛かる様になる。

 ダグベース内でも実家同様何処から保護したのか色々な動物の子供の面倒を見る。

 実家の様に熊や豹等が居ないだけまだマシか……。

 それとは別に鷹や隼、鳶等の猛禽類も手懐けている。動物の中でも特に鳥類を好む為鶏肉を嫌う。

 ファンクラブの存在は知らない…と言うか興味が無いが、自身を尾行するちなみや実紀の存在は関知している。

 互いに口数が少ない者同士、クラスメートの衣里奈とはウマが合う。

 桃はバイト仲間としてよく仕事を斡旋したりされる仲。

 志保とは動物を愛好する同志として親交がある。

 彩矢は清香の事で恩を感じ、またバイトで空腹に倒れた際(バイト代は家に納める物以外全て動物達の餌に費やす)、助けてもらう事もある為、かなり尊敬している。

 戸隠流に興味がある。

 ダグオンメンバーで恐らく生身、変身後双方で白兵戦最強と言っても過言ではない。

 結芽に対する呼び方は燕妹もしくは結芽、結芽からは龍悟おにーさん、忍者のおにーさんと呼ばれる。

 

 

 

 

 田中撃鉄

 4月2日生。牡羊座B型。身長185→185.8。体重81→82。

 好きな物:寿司(軍艦巻きから頼む)、トマト、胡瓜、馬刺。

 嫌いな物:タコ、カボチャ、ラム肉。

 趣味:鉄道模型、流離い旅、神社仏閣巡り。

 座右の銘:真実一路、ネバーギブアップ

 

 ドリルゲキに変身するダグオンの新メンバー。

 パワフルで豪快な戦い方、ちょっとやそっとじゃびくともしない体で前衛を務める。

 平城編入後は個人的には神職科に席を置きたいが仲間との都合を話し合った結果、警邏科をメインに兼科で神職科にも名を置く。

 現状はまだダグテクターしか纏えない為、専用ビークルを妄想する毎日を送る。

 編入をあっさり成功する辺り勉学事態は出来る模様。

が、刀使の専門用語には四苦八苦する程度には刀関連の知識は薄い。

 これも姉の影響故か……兎に角、妙子には頭が上がらない為、姉という生き物は理不尽であると思っている(翼沙も共感している)。

 鉄道模型を趣味に挙げるだけはあり、存外手先は器用である。

 宇宙呪術師との戦い以降、駄目になった御守りを泣く泣く処分、再び新しく御守りを集め始める。

 メンバー最年長だが新入りでもある為、皆からは敬われない。

 結芽は彼をからかい半分で度々おじちゃんないしおじさんと言いかけてはおにーさんと言い直して遊んでいる。その為撃鉄も余程の時以外は彼女を御チビと呼んで憚らない。

 相変わらず智恵にお熱である。

 

 

 

 

 燕結芽

 3月3日生。魚座B型。身長145。体重 ナイショ!

 流派『天然理心流』御刀:ニッカリ青江

 好きな物、事:強さを証明する事、苺大福ネコ、兄(本人には秘密)、シャドーガード、龍悟が連れてきた仔猫。

 怖い事:兄の逆鱗、翼沙マッドサイエンティストモード。

 

 元折神紫親衛隊第四席、現ダグオン臨時隊員。

 胎動編以降、病の根治とダグオンメンバーとの交流もあり以前よりは他者に対し気配り等が出来る様になった(気安い相手はからかうし、敵対した相手が弱者の場合、相変わらずドライではあるが)。

 兄は元より、他のメンバーとも早期に打ち解けダグベースを新たな家として過ごす。

 メンバー其々をある種の強者と認識している。

 今でも親衛隊のメンバーは家族だと思っている。

 最近、ダグベースのある静岡県の某市内であれば自由外出を許された。

 市外或いは県外へ外出、または戦闘の際はアルファから渡された認識阻害用のコートと眼鏡を装備しメンバーの誰かと一緒に行動する。

 ファイヤーダグオンは確かに強いし格好いいがそれでもダグターボが一番である。

 ライアンのメインの使い手となって以降、単独でも戦闘に参加可能になった。

 ダグベース近辺の森を稀にガードウルフに股がり駆け回る(森は認識阻害が効いている)。

 ライアン加入入手以降も葱、大根型の御刀をプランターに植え世話している、そして増えた。

 ダグベース内では基本的に翼沙や戒将に勉強を見てもらったり教わっているか、焔也、申一郎とゲームするか、龍悟と共に動物と戯れるか、撃鉄で遊んでいる。

 ライアンとは別に御刀は御刀で欲しいのでニッカリ青江を取り戻したいと思っている。

 

 

 

 アルファ

 立体交差平行世界管理上位超次元生命体にして3人いる管理最高位責任者の1人。

 自らの過失で起きたライアン紛失をダグオンの若者達に尻拭いを依頼して、そのライアンが荒魂に対し強い復讐心を抱いて誕生した事を知ると雲隠れした傍迷惑な人物?

 胎動編終了後、悪びれも無く帰還した所を代理としてダグオン達に助言を与えていたゼータからお説教を喰らう羽目になる上、直前に共に居たデルタの強制実体化弾頭によりまるで何処かで見た事があるような見た目(FG◯のアスト◯フォ私服姿ver)に固定された状態で彼等の世界に実体化する(声もどことなく大久保瑠美ぽい)。

 その後、ゼータの手により大体一週間と数日拷問に掛けられ反省させられる。

 結芽からはその見た目からおねーさんの様なおにーさんとしておねにーさんなる呼称を付けられるが本人的には勘弁して欲しいらしく、呼ばれる度に訂正を懇願する(最終的に諦めた)。

 ゼータの拷問以外に戒将からアイアンクローも喰らっている。

 因みに雲隠れしていた世界はラ◯スリライツの世界である。

 

 

 

 

 

 ダグテクター

 

 ファイヤーエン、ターボカイ、アーマーシン、ウイングヨク、シャドーリュウの各テクターはマンドーセ戦の反省を生かし、荒魂ザゴス戦以降アップデートが為される。

 

 

 ドリルゲキ

 田中撃鉄がダグコマンダーを起動させ変身した姿。

 パーソナルカラーは黒、名前の通り至る所にドリルの意匠が見られ肩のパーツは合わさって巨大なドリルになる。正直アルファは撃鉄のバカ力を見て身体強化機能を載せる必要あるかなぁとか思ったりした。

 八幡力二レベルで小型荒魂なら粉々に出来るくらい強力、金剛身にしても二で戦車クラスの攻撃でも傷1つ着かない。

 バイザーは赤、脚部にはキャタピラらしきパーツが付いている。

 パワーはアーマーシンよりも上、装甲も頑強でシンが遠距離攻撃の火器を扱う為の防護性故の装甲ならゲキは攻撃の為に敵の攻撃を受けても揺るがないをコンセプトにしたバリバリのストライクアタッカー。

 戦闘スタイルは撃鉄の時同様、我流喧嘩術とプロレススタイル。稀に関節技。

 主だった技はドリルナックル、ロッククラッシャー。

 必殺技は自身がドリルと化すドリルクラッシュ。

 

 

 

 

 

 

 ダグビークル改め、各ロボット形態(ファイヤーダグオン除く)

 

 ダグファイヤー

 ファイヤーエンがファイヤーストラトスと融合合体した姿。

  頭頂高12.1m。重量21t。最高走行速度210km/h。跳躍力155m。総出力33000BP。

 

 原典より大きさ重量、速度、跳躍力、そして勇者としての出力が上がったファイヤーエンのコアロボット形態。

 基本的な武装は腕の装甲部に収納マウントされたファイヤーブラスター(左右両方に有る)。

 必殺技は胸のスターシンボルから発するエネルギー火球のスターバーン。ファイヤーエン同様のファイヤーナックル。スターシンボルにエネルギーを集中、不死鳥の形の炎を撃ち出すバーニングスターアタック(ギガンタース戦ではそのまま身に纏い吶喊した)。

 そしてファイヤーブラスターのチャージショット。

 赤いボディにベース車をイメージしたかの様な西洋の警察官ぽい意匠と鳥の羽根をイメージしたかの様な意匠の頭部が特徴。

 ダグオン全てのコアロボットに言えるが顔に口がある為普通に表情が動く。

 融合場所はダグファイヤーの足元からファイヤーエンが巨大化し蜃気楼の様に融ける形となる。

 焔也の融合率が高い為、他の皆よりも早く融合合体が出来た。

 

 

 

 

 ダグターボ

 ターボカイがターボライナーと融合合体した姿。

 頭頂高13.2m。重量23.6t。最高走行速度550km/h。跳躍力150m。総出力29000BP。

 

 ダグファイヤー同様、原典より数値が上がっているターボカイのコアロボット形態。

 主だった技は連続パンチを放つターボピストンナックル。右腕から小型のタイヤ型爆弾を連続発射するホイールボンバー。左腕より射出される名称不明の弾丸。背中のバックパックであるターボパックをボードに変化させ繰り出すターボダッシュ。

 必殺技は背中のパックから分離したトゲ付きタイヤを投擲、ヨーヨーの様に操作するブレイクホイール。

 ターボカイ同様、車のマフラーの意匠と頭部はレーサーヘルメットに見えなくもない形状。

 融合合体の場所は頭部、瞳の無い顔の前に立った状態から融ける形になる。これは以降のダグオン達もほぼ同様の融合パターンである。

 

 

 

 

 

 ダグアーマー

 アーマーシンがアーマーライナーと融合合体した姿。

 頭頂高12.9m。重量27.0t。最高走行速度188km/h。跳躍力130m。総出力34000BP。

 

 此方も原典より数値が上昇しているアーマーシンのコアロボット形態。

 主な技、装備は頭部の機関砲アーマーバルカン。背部キャノン砲アーマーキャノン。背部4連装ミサイルランチャー、アーマーミサイル。背部6門の小型ビーム砲アーマーレーザー。

 必殺技は肩部機関砲含む全搭載火器を一斉発射するファイナルバスター。跳躍して放つ蹴りグラビトンキック。

 頭部の意匠に赤い模様がある。

 

 

 

 

 ダグウイング

 ウイングヨクとウイングライナーが融合合体した姿。

 頭頂高12.9m。重量20.5t。最高走行速度200km/h。最高飛行速度マッハ4.3。総出力26000BP。

 

 同様に原典よりも数値が上昇変動したウイングヨクのコアロボット形態、全融合合体ロボット中最高の飛行速度を持つ。

 主な技・装備は両腕に装着されたクリスタルの装甲を刃として飛ばすクリスタルカッター(クリスタルの先端部のみをミサイルの様に射出するバージョンもある)。胸部のつばさの照灯部から放つ冷凍光線フリーズビーム。両肩のファンから放つ絶対零度の竜巻ブリザードタイフーン。背中のウイングパックの翼ですれ違い様に斬り裂く翼の刃。

 ダグターボ、ダグアーマーと違い腿の色が黒く、また腕部、頭部も黒いが額と側頭部付近に水晶のパーツが見られ全体的な色は白ないし銀。

 

 

 

 

 ダグシャドー

 シャドーリュウとシャドージェットが融合合体した姿。

 頭頂高12.4m。重量19.5t。最高走行速度220km/h。最高飛行速度マッハ2.2。総出力30000BP。

 

 上記のメンバー同様数値は原典より上昇している。

 融合合体の際、唯一ロボットとドラゴン2つの形態を持つ珍しいタイプ。

 頭部の意匠は変わらず十字手裏剣を模した飾りの鉢金を巻いた忍者の様な意匠。

 主な装備・技はシャドージェットの機首を鞘とする名刀カゲムラサキ。両肩にマウントされたシャドー手裏剣。両腕の肘に備えたシャドードラゴン時に爪になるアンカークロー、シャドークロー。両肩口から覗く機関砲シャドーバルカン。天の青い球体、地の緑の球体、人の赤の球体の光を発生させ収束、黄色いプラズマとなったエネルギーを剣閃として放つシャドー・絶対拘束剣。胸部の竜の意匠の瞳から放つ名称不明の光線。シャドードラゴンとなって光を身に纏い突撃、自身は後方に離脱しドラゴン型のエネルギーを敵にぶつけるドラゴンプラズマバーン。

 

 

 

 ライアン

 剣聖。正式名称、人造武装勇者壱号・剣星人モデル"剣聖"ライアン。

 頭頂高11.6m。重量19.6t。最高走行速度200km/h。跳躍力170m。総出力31000BP(全てロボット形態時)

 

 胎動編の決戦の夜のダグファイヤーとのタイマン勝負による敗北以降、己を見つめ直し思う所有ったのか、約束を守りながら日本各地を飛び回り荒魂狩りに精を出す日々を続ける。

 小笠原での結芽の奮戦を目撃し彼女を己の使い手に選ぶ(その際ダグオンの関係者とは知らなかった)。

 戦闘後、集まったダグオン達の存在から彼女の氏素性を察し、しかし飛び去る事はせずそのまま仲間入りする。

 普段はダグベースがある洞窟の奥で過ごすか、日本中を飛び回っており、ダグコマンダーや通信、若しくは結芽の持つスターシンボルのブローチで呼び出す事が出来る。

 結芽からはおじさんと呼ばれるが断固その呼称は拒否する(本人も何故かは分からない)

 

 

 

 

 エデンの囚人達

 

 オード星人

 ダグターボによって倒されたダチョウの様な異星人。

 飛行能力が無く、見た目はダチョウに近いが羽根の広がり方は孔雀に似ている。

 羽根は一枚一枚が爆弾となっていて接触或いは本人の意思により爆発可能。

 平安貴族の様な古風な口調で喋る。

 数々の星で爆発騒ぎを起こし多くの住人を爆殺した宇宙人。

 名前の由来はダチョウの英名オーストリッチとドードー鳥。

 

 

 ピシャ星人

 ダグウイングと刀使の奮闘により殲滅された郡体型の異星人。

 1つとなった姿は巨大な鮫のようだが、実際にはピラニア型の宇宙人。

 ピラニアの姿は精々が成人男性の顔と同程度。

 何らかの物質を食する事により細胞が活性分裂し増殖する。

 炎や熱に強く、それらに関する攻撃には強いが逆に冷凍攻撃の様な攻撃には弱い。

 分裂の段階を選べるらしく、無数とも言えるピラニアから3~5まで分裂出来る中型の鮫、1つになった大型の鮫の姿がある。

 その能力で多くの星の命あるものや文明を食い散らかし滅ぼした。

 知能があるが共通宇宙語は喋れない。

 名前の由来は文字通りピラニアと鮫のシャークから。

 

 

 宇宙呪術師マンドーセ

 ドリルゲキの初陣を飾った異星人。

 とても強力な呪術師で宇宙にあまねく全ての呪いを修めたと豪語する。

 見た目は完全に即身仏の木乃伊(イメージは女神転生の大僧正)。

 ダグオン既存の5人を呪いで戦闘不能にし危険な状態に追い込むが、ドリルゲキの大量の御守り(中にあった幾つかの本物)に呪いを弾かれ式神でガードするもドリルモードから繰り出された必殺のドリルクラッシュに式神ごと貫かれ爆散。

 呪術で多くの名高い異星人を呪殺した事により収監される。

 名前の由来はセーマンドーマンから。名前のイントネーションは牙狼GARO炎の刻印に登場する堕ちた魔戒法師メンドゥーサと同じ。

 

 

 

 超速三兄弟

 

 Jーエース

 長男、漆黒のボディに赤いラインが入った新幹線(元はロケットミサイル)に変形する鬼が管理する特別監獄棟に収監されていた囚人。

 変形する為、一見機械生命体に見えるが(実際機械部分はある)れっきとした繁殖能力を持つ生命体である。

 自称【音速の貴公子】、一人称は余。

 弟思いの愉快な性格、しかし弟達と主と見定めた鬼、仲間認識の特別監獄棟の囚人以外には冷酷。

 ダグターボに敗れて以降、一方的にライバル視してる。モチーフはトランスフォーマーカーロボットのチーム新幹線ジェイファイブとブラックシンカリオン(ビークル時)

 

 

 Rーマック

 次男、黒灰のボディに黄色いラインの新幹線へ変形する兄同様特別監獄棟の囚人。

 自称【PowerfulなDJラッパー(ラップは出来ない)】。

 兄弟の中では力自慢、一人称はオレっち。

 兄同様ボスの鬼と兄弟、特別監獄棟に収監された囚人以外には興味無し。

 取り敢えず兄がダグターボをライバル視してるので自分はパワー型と思われるダグアーマーをライバルに決めた。モチーフはチーム新幹線のジェイセブンとシンカリアンのブラッカリー(ビークル時)

 

 

 Xーセブン

 三男、紺黒のボディに紫のラインの新幹線へ変形のやはり特別監獄棟の囚人。

 自称【跳ね馬暴走特急】。

 暴走特急と含まれているが実際にはとてもスローペース。

 兄二人が既にターゲットを決めてしまった為残ったダグウイングを相手する羽目になる。

 良く寝る。また兄弟の中では唯一他の監獄の囚人とも交流がある。

 モチーフはチーム新幹線ジェイフォーと魔進エクスプレスを黒くした状態(ビークル時)

 

 

 包帯の異星人

 ドレスの女の異星人同様、妖精の付き人をこなす。

 本人曰く、この監獄で最も弱い囚人。

 最後の言葉を二回繰り返す喋り口調、卑屈な性格。

 能力を隠しておきたいらしい。

 ドレスの女とは性格の相性が悪い。

 妖精に付いたのは長いものに巻かれるのと強い者には従う主義だから。

 

 

 

 

 

 甲冑の異星人

 東監獄を取り仕切る幹部の1人、その正体はヒューマノイドタイプの少年宇宙人。

 傀儡宇宙人の異名を持ち、東監獄の囚人は全て彼の洗脳支配下にある。

 他の監獄を洗脳しないのは自身の容量が満杯で尚且つ鬼や妖精、道化師、メレトが強力な異星人だから支配下に置けない。

 マッニーは商人の嗅覚と手腕により洗脳対策をしている。

 女医はそもそも効かない。

 甲冑は全て彼のアバターであり、最初のアバターは東監獄の支配に力を割いていた為、会話が単語のみであった。

 彼は地球侵攻をゲームと捉えており、思うようにいかない現状に苛立ちを募らせている。

 

 

 ザゴスソルジャー

 妖精と女医、手により改造されたザゴス星人。

 知能が低下し他の異星人の駒に成り下がる。

 他にもバリエーションがあるらしい。

 

 荒魂ザゴス

 ザゴスソルジャーを更に改造した存在、忠誠をそのままに知能が上昇、御刀、延いては刀使に対し強い敵愾心を持つ。

 

 

 

 

 

 宇宙海賊オルゴン

 元はこの世界の宇宙で戦場を渡り歩く傭兵だった者達。

 ある時期を境に海賊へ転向、此方の世界に現れたエデンからのメッセージに興味を持ち合流。

 地球にて前線基地を開発している。

 

 ヴァルトロン

 灼銅色のボディを持つドリルタンクともう1形態に変形する機械生命体。

 オルゴンの船長であり地球にお宝が眠ると信じている。

 船員は彼にとって掛け替えの無い家族である。

 モチーフはビーストウォーズⅡのガルバトロン。

 名前の由来はヴァルチャーとモチーフのガルバトロンから。

 

 

 ビッグロー

 紺碧の装甲を持つ機械生命体、マンモスに変形する。

 オルゴンの副船長にして伝説の傭兵。

 死に場所を求め強者との戦いを望む。

 【凍土】のビッグローとも呼ばれ彼は猛吹雪と共に現れるとされている。

 実際にはボディの排気溝から噴き出す冷気が猛吹雪となる。

 地球にてマンモス標本をスキャニング、以降ビーストモードでは鼻から冷気を出す。

 モチーフはビーストウォーズネオのビッグコンボイ。

 名前の由来はダンクーガのビッグモスとランボーの捩り。

 

 

 

 グシアノース

 オルゴンの防衛参謀、青銅色のボディの機械生命体。

 巨大空母に変形する。

 会話の際、必ず言葉の最後がルゥゥウウと唸り声になる。

 エデンの共通宇宙語と此方の世界の宇宙語の差異の為、会話回路が少しおかしくなった。

 基本的にはアスクラとコンビを組む。

 モチーフはマイクロン伝説のショックウェーブ。

 名前の由来はエンタープライズの別名グレイゴースト、シアトル、ノースカロライナ、ローリー、デイスから各々文字を組み合わせた物。

 

 

 アスクラ

 オルゴンの偵察諜報員、白みがかったボディの機械生命体。

 一見日本デザインっぽいアメリカンオートバイに変形する。

 語尾の最後に必ずウンと付けて喋る。

 一人称がオイラで軽い調子の男だが、実力は確かなモノ。

 グシアノースとは昔からコンビを組んでいる。

 ビークル時にライダーに擬態するドロイドが腕に装着され武器になり、或いは武器をパワーアップさせる。

 頭に着くと性格が変わり右腕の上半身部分が装着されるとモードデッドヒート、左腕の下半身が装着されるとモードトライアルアクションとなり、アスクラヒートは常に高揚状態で狂った様に笑い、アスクラアクションは淡々と冷徹に仕事をこなす。

 ヘッドチェンジ可能な状態では命にストックがあり、全ての命が無くなると完全に死ぬ。

 名前の由来はアクセル、スピード、クラッチ、ランブル。

 




 本作のこの世界の地球、過去に宇宙人襲来してるんですよね……遥か太古ですが。
 イメージ的にはエクスカイザーのナスカの地上絵の回的なくらいですが。
 エデン囚人は適当吹いたら本当にお宝あった事になる可能性もあると言う。


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エイプリルフール編
とじダグエイプリルフール特別企画


 
 おはこんばんわ!
 葬式も済み、四月一日になったのでエイプリルフールのネタに振った投稿を少々。
 これはとじとものコラボから着想を得ました。
 後、本編とじダグより未来の話なので軽くネタバレが有ります。それでも構わなければ、どうぞ!


 

 

 それは、突然起こった。

 「おぉぉお?!」 「くっ…これはっ!?」 「落ちる落ちる落ちる落ちる落ちるゥゥゥウァ!!」 「このままではっ!」 「……っ!いかんな…」 「ぬぉぉおお!根性で飛べぇい!!」 「先輩方ぁぁぁ!!」

 突如、落下するダグオンの若者達、そして……

 

 「うわぁぁぁ!!?」 「何故いきなり落ちているんだぁぁぁぁ!!」 「……落ちてる」 「可奈美ちゃんっ!!沙耶香ちゃんっ!!」 「オイオイオイ、何で落ちてんだよ」「ねー!?」 「ワォ!スリリングなスカイダイビングですネ!」 

 

 「何これぇ?!」 「美炎ちゃん!みんな!!」 「キャァアアア!?」 「おいおい、どーすんだこれぇ?!」 「落ちてますよぉ!?ミルヤさぁぁぁん!」 「少し黙ってなさい山城由依!」

 

 「くっ…何が起きているっ!?」 「紫様っ!あちらを!!」 「衛藤さん達や調査隊の方達までっ?!」 「……このままでは助かりません…」 「あはは!落ちてるぅ」

 

 続々と彼等と同じ様に落下している可奈美達舞草組、美炎達調査隊、紫率いる親衛隊。

 このままでは彼、彼女達は地面に叩き付けられトマトの様になってしまう。

 

 「くっ…皆、変身するのだ!それで彼女達を各々で抱え何とかするより他に無い!」

 戒将が落下の最中、仲間達に指示を飛ばす。

 「「「「「「応!!」」」」」」

7人が左腕を手前に掲げ右手で左腕の装置を起動する。

 

 「「「「「「「トライ!ダグオン!!」」」」」」」

 

 掛け声と共に迸る7つの光!黄色の光が可奈美と沙耶香を、黒い光が智恵と夜見を、紫の光が清香と真希を、白い光が薫とエレンを、緑の光がミルヤと姫和を、青い光が寿々花と紫を、赤い光が舞衣と美炎を抱える。残された結芽は笑顔のままで、ある名を呼ぶ。

 「ガンキッドくん!」

 『結芽ちゃん!』

 「あのーわたしだけ放置ですかァぁぁあ!」

 七之里呼吹、山城由依はそのまま落下し続けている。

彼女の呼び掛けで現れる飛行体、それは翼が着いた巨大な大砲。

 『おっと…おっとと……今だ!』

コックピットにあたる部分のキャノピーを開け、結芽を収納するガンキッド、その機体に着地するファイヤーエン、ターボカイ、アーマーシン、ウイングヨク、シャドーリュウ、ドリルゲキ、サンダーライ。

 「助かったぜキッド!」

エンがガンキッドに労いの声を掛ける、が…。

 『お…重いぃぃ……』

 結芽を含め、23人分の重量は流石の彼もバランスを保ちながら飛行は出来ないようだ。

 「根性じゃ!大砲坊主!!根性で耐えろ!」

 「そうだぜキッド!お前さんが頑張れば何とかなるんダヨ!」

 『無理っ!!』

 ゲキとシンがガンキッドを鼓舞するもガンキッドは耐えきれず落下する。そして彼等はバラバラに落ちた。因みに呼吹と由依はライアンが助けていた。

 

 

 

 

 其所は謎の空間、不思議な色の空と不思議な植物の様な根が張った空間。

 「何処だよここ…?」 「うーん…?」 「どうしたの美炎ちゃん?」

 エンが見知らぬ場所に戸惑い、美炎が何かを思い出すように頭を捻る様子に舞衣が心配の声を掛ける。

 

 

 「何だ此処は……樹海…なのか?」 「それにしては…、随分と明るい色合いですわね」 「……此処は地球では無いのか?」 

 カイが周辺の景観から樹海かと疑問を挟み、寿々花がこの不可解な空間に対し訝しげだ。紫はこの世界に困惑している。

 

 

 「はぐれちまったナァ、ンデ……」 「…何やら見覚えがあるような場所ですが……」 「何っ!本当かっ!?」

 シンが困った様に頭を掻き、ミルヤもまた、美炎と同じ既視感を覚えていて、姫和はそれに対し真偽を問う。

 

 

 「これはっ!?凄い!この空間には不可思議なエネルギーが溢れている!これは異世界特有のモノなのでしょうか?では他の世界にも似たような現象が……?ダメだデータが足りないもっと情報を集めなくては…ブツブツ」

「あー、また始まった……」 「それがバサバサの良いところデスヨ?」

 ヨクはこの謎の空間に好奇心が爆発していた。薫は呆れ、エレンが苦笑気味にフォローする。

 

 

 「……皆と合流する必用があるな…」 「賛成だ、ボク達だけでは此処は危険かもしれない」 「ほのちゃん達、大丈夫かな……」

 リュウと真希が談議を交わし、清香は顔を俯かせ、他のメンバー達を心配する

 

 

 「おぉぉぉぉい!皆何処じゃぁぁぁ!!返事せんかぁぁぁぁ!!

 「撃鉄さん落ち着いて、先ずは落ち着きましょう」 「ダグテクターの通信機能は使えないのでしょうか?」

 ゲキが仲間の安否を確認する為に大声で叫び、智恵はそんな彼を宥める。夜見が通信機能の有無をゲキに問う。

 

 

 「うーん…参ったなぁ、知らない場所は迷うんだよなぁ……」 「雷兄はただでさえ方向音痴だもんね!皆大丈夫かな?」 「可奈美…、此処…どこかで見たことある…」

 ライが未知の場所の道順に頭を抱え、可奈美が笑って肯定し、沙耶香はこの未知の場所が記憶の何処かに引っ掛かるようだ。

 

 

 

 ──彼等が降り立った空間の正体とは?

 

 

 ──そして再開する(出会う)勇者と少女達

 

 

 

 「讃州中学二年!勇者部、結城友奈です!」

 『私はドラン、レジェンドラの勇者である。友奈は私の主だ』

 

 「国防よ!空影!!」

『御意。拙者にお任せあれ』

 

 「さあ!女子力と気合い入れていくわよ樹!アドベンジャー!」

 『主風、主樹は兎も角、私は男だぞ?』

 「お姉ちゃんがごめんね、アドベンジャー。」

 

 「行くわよ!レオン!!完成型勇者と勇者将軍の力、目にもの見せてやるわっ!!」

 『良かろう、行くぞ主よ!悪鬼共を叩っ斬ってくれよう!』

 

 「準備は良い?アタシ等もやるよシルバーナイツ!」

 『私達に任せてくれ、主』『俺達シルバーナイツの力!』『奴等に存分に自分たちの力を味あわせてやろう!』『OK!主を合わせた僕達銀の勇者のPARTYだね』

 

 「シャークん、ウチらもやるんよー!」

 『アイアイマム、だがな船長、出来ればキャプテンと呼んでくれ、それはそれとして連中は蹴散らしてやろう!』

 

 

 

 

 敵は謎の存在、異星人、荒魂、バーテックスの混成集団!

 

 ──変形、合体せよ勇者達!

 

 「「「「「「「融合合体!!」」」」」」」

 『『『『『『『『『『『チェェェエンジッ!!』』』』』』』』』』』

 

 

 

 『火炎合体!!』

 

 『超!』『重』『連』『合体ぃ!』

 

 『機獣合体…!』

 

 『雷鳴合体!!』

 

 

 『黄金合体』

 『大空合体!』

 

 『鋼鉄武装』

 

 『獣王合体!!』

 

 『超白銀合体ッ!!』

 

 『宇宙の海は俺の海!』

 

 

  『ファイヤァァァダグオンッ!』

 

 『スゥゥパァァァア!』『ライナァァァ!』『ダグッ─』『─オンッ!!』

 

 『…シャドォォダグオン!』

 

 『サンダァァァア!ダグオン!!』

 

 『ライアン見参!』『イェイ!ガンキッド参上!』

 

 

 『ゴルドラン!!…からの』『スカァァァイッ!!』『ゴルドラン!!!!』

 

 『アドベンジャァァァア!』

 

 『レオンカイザァァァアアッ!!』

 

 『ゴォォォォォッドォッ!シルバリォォォオンッ!!』

 

 『キャプテェェェン!シャッークッ!!』

 

 

 

 今此処に、黄金の力を守護せしレジェンドラの勇者と地球の平和を守りし勇者指令、そして、神樹の戦巫女たる勇者と御刀を振るいし剣巫女たる刀使が迫り来る闇を討ち払う!

 

 ──刀使ノ指令ダグオン特別編!

 

 ──刀使ノ黄金勇者指令開幕!! 

 

 この力、恐れぬのならばかかってこい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘です。





 はい!黄金勇者ゴルドラン×結城友奈は勇者であるシリーズをクロスさせた状態からのとじダグによる更なるクロスオーバーでした。
 そして、地味にドリルゲキと化した撃鉄と未だ名前が本格登場前のサンダーライ、更にライアンとガンキッドまで登場と言う無茶苦茶っぷりです。
 本編の方もそろそろライアンを本格登場させたいですね?!宜しければ感想お待ちしております。
 ではまた次回!


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エイプリルフール外伝 刀使ノ指令ダグオンVS仮面ライダー聖刃withラピスリライツ


 こんばんは。
 少しズレましたがエイプリルフールの特別話です。

 今回はセルフコラボです。拙作ともう1つの投稿作品、MasqueradeRe:Lightsのコラボレーションとなります。

 いや済みません。ちょっと戦闘シーン煮詰まってまして、本編はまだです。

 婦警イベント、山城が自分から捕まりたいとほざくのにはたまげたなぁ。
 しかしひよよん平だなぁ。弘名ちゃん滅茶
似合う!夜見も悪くないなぁ。

 あ、機種変更を予定してたりします。



 

 ━━ダグベース・サロン

 

 「あー……異世界行きたい」

 ある日のダグベースのサロンで少女の様な少年が溶けたような顔で溢す。

 

 「貴様は何を言っているんだ」

 

 「……遂に脳ミソのすべてがイカれたか…」

 

 「まぁ、ソロソロだとは思ったよオレは」

 

 3人の若者、燕戒将、六角龍悟、鎧塚申一郎がそんな少年──アルファの独り言に辛辣な言葉を投げる。

 

 「ヒドイ!君達はどうしてこう、ボクの扱いが雑なんだよ!!?」

 アルファが抗議の声を上げる。

 

 「仕方無いのではありませんの?貴方、普段からちゃらんぽらんですし」

 

 「確かに……」

 

 「我々との初対面での態度を思い出す事です」

 

 共にサロンに居た刀使、此花寿々花、六角清香、木寅ミルヤも戒将達に同意する。

 

 「うわーん!味方が居ない!!?」

 ついぞ泣き出し、サロンを飛び出すアルファ。ドアが開いた瞬間入ろうとした鳳焔也、田中撃鉄、衛藤雷火、衛藤可奈美、十条姫和、柳瀬舞衣、糸見沙耶香、安桜美炎、七之里呼吹、瀬戸内智恵、山城由依、獅童真希、燕結芽、皐月夜見、折神紫といった面々を掻き分け何処かへと消えて行く。恐らく基地内の何処かだろう。

 

 「なんだぁ?」 「どーせ、しょうもない事じゃろ」

 「アルファ君ですしね」 「もう、いくら本当の事だからって流石に酷いよ雷兄」 「可奈美も十分酷いがな…」

 等々去り行く少年の背を見送りながら好き勝手言う面子。

 

 「少ししたら様子を見に行きましょうか」 「お手伝いします」 「舞衣が行くなら、私も…」 「別にほっといても良いんじゃね」 「ですが、あんな性格でも重要人物です」

 智恵を始めとした心配を見せる者達に呼吹が下らねえとばかりに吐き捨てれば夜見がフォローになってないフォローを挟む。

 

 「一体何があったんだ?」

 紫が部屋に居た面々に一応訊ねてみる。

 

 「異世界に行きたいんだと、フザけた話ダゼ」

 

 「…なまじ実現性が高いから始末に終えない……」

 

 申一郎と龍悟が簡潔に説明する。

 

 「うわぁ…」 「確かに出来てしまうな、彼なら」

 それを聞いて美炎と真希が物凄く微妙な顔になる。

 

 「益子達は翼沙の所か?」

 今し方来た面子がアルファの逃亡に納得を示すと戒将がこの場に居ないメンバーの事を訊く。

 

 「うん。翼沙おにーさんが薫おねーさん達のVRS装備を調整するからって、引き留めてる。後、つぐみおねーさんはその手伝い」

 

 「いやぁ~出来ればあたしも残ってお手伝いしたかったんですけどね~」

 結芽が説明すれば、由依が訊いてもいないのに手をワキワキさせながら邪な顔でおかしな事を宣う。

 

 (山城は後で説教だな)

 (由依ちゃんは後で戒将君のお説教ね)

 (山城由依は後で燕戒将から折檻ですね)

 

 「由依…」 「由依ちゃん…」

 

 戒将が心の内で由依への指導を企むと智恵とミルヤも同様に戒将からの指導があるんだろうなと心の中で呟く。

 そして美炎と清香が由依を残念な眼で見る。

 最早お馴染みとなった光景である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・ラボ

 

 所変わって、研究開発等を行うラボ区画。

 そこでは目の前の機器を操作する眼鏡の少年が、モニターのデータと強化ガラス越しの隣の部屋に居る幾人かの少女達を見比べていた。

 

 「どうでしょうか?実物の程は?」

 

 眼鏡の少年──渡邊翼沙がインカムのマイクを持ち、部屋に居る少女達に訊ねる。

 

 「ん、まぁ…悪くはないな。相変わらず格好がちょいアレだが」

 

 「そうデスカ?私的にはかなりナイスデザインなんデスけど」

 

 「ねー!」

 

 少女の内の1人、益子薫が身体にピッチリと着く近未来のSFに出てくる様な黄色い装甲服を纏いながら応えると、彼女の評とは別に気に入っていると断言するスタイルの良い金髪片言の少女古波蔵エレン、そして彼女に同意する様に鳴いた薫の頭部に居座る小動物ねね。

 

 「では薫さん、エレンさんは問題無しと…。伊南さん、朝比奈さん、稲河さん、新多さん、岩倉さんは如何でしょう?」

 

 「は、恥ずかしいよぉ…」

 

 「大丈夫。戦闘では気にならないわ」

 

 「ははっ……今更だけどどうしてこうなった…?!」

 

 「調査隊と共に行動する様になったからてはないでしょぉかぁ」

 

 「はい、大丈夫です!問題ありません!」

 

 ガラス越しの翼沙の視線と己の格好に恥を憶え縮こまる伊南栖羽と励ましてるんだかそうじゃないんだか分からない事を言って発破を掛ける朝比奈北斗。

 

 自分はどうしてこんな目に遭っているのかと黄昏る稲河暁にやる気無く返す新多弘名。

 

 1人、生真面目に返事を返す岩倉早苗と中々にバラエティー豊かな面子である。

 

 「皆さんこれと言った問題は無いみたいですね渡邊先輩」

 

 「そのようです。つぐみさん、葉菜さん、わざわざ手伝って頂きありがとうございました」

 

 「いえいえ、VRS装備は我々にとっても有効なモノですので」

 

 「そんな…ぼくなんて大したお役に立ててません!?」

 

 何とも判りづらい笑みを浮かべて応じる播つぐみと過分な評価と慌てる葉菜が翼沙の方へ椅子を向き応える。

 

 そんなラボの開けっ放しの入り口を泣き叫びながは通り過ぎる少女少年。

 

 

 「うわーん!みんなのバカぁぁぁああ!!」

 

 

 「今の……」

 

 「アルファですね。また何か皆さんが呆れる様な事を口走ったんでしょう」

 

 「ああ、納得」

 

 翼沙の言葉に神妙に頷く葉菜とつぐみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース外・格納スペース

 

 『まだかな?まだかな~?』

 ガシンガシンと轟音が洞窟内に響く。それはとある鋼の巨人が子供の様に足踏みをしているからだ。

 

 『落ち着くのだガンキッド。結芽達ももう暫くすれば来るだろう』

 そんな巨人にもう1体の鋼の巨人が幼子を諫める様に声を掛ける。

 

 『けどライアン、おばちゃん相手はつまんないよ!コヒメは疲れちゃったのか寝ちゃうし』

 

 (おばっ!?!)

 

 子供の様な巨人──ガンキッドが、傍らの巨人─、ライアンにぶう垂れた様に返す。

 近くにはワインレッドのタイトスカートのレディースを着た妙齢の女性と特別に用意されたのだろうベッドに眠る白い少女。

 

 (くっ…抑えろ雪那!これも私自身が犯した愚行の結果、機械人形に年増扱いされた程度で…いやしかし…)

 

 「ぅん……美炎…」

 

 女性は高津雪那、白い少女は人型の荒魂コヒメである。

 そんな4人──正確には2体と1人と1匹とも言えるが──場所に飛び出てくる少女少年。

 

 「うわぁぁぁぁああん!!」

 

 『ぬ?アルファではないか、相も変わらず珍妙な事をしている』

 

 『きっとまたみんなのキゲンを悪くするような事を言ったんだよ』

 

 自らが生み出した2体からもこの扱いである。

 

 「んぅん?アルファ…?どうして泣いてるの?」

 あんまりに騒がしく泣き叫ぶものだからか、眠っていたコヒメが眼を醒ます。

 

 「コヒメちーん!聞いてよぉぉおおお!」

 

 やっとマトモに相手をしてくれる存在に勢い良く抱き付くアルファ。

 荒魂とは言え幼女に慰められる様は、いくら見た目が少女全とした少年の容姿で在っても情けない絵面である。

 そうしてこの少女少年は幼女に愚痴を訥々と語り始めるのであった。

 

 

 「つまりアルファは異世界に行きたいの?」

 

 「そうなの、だってまたこんな姿に固定されちゃってさ、その上また仕事が嵩張るしさ、癒しが欲しいなぁって思わない?」

 

 幼女の胸に顔を埋めて上目遣いする少年は何とも情けない。

 

 (癒しが欲しいのは寧ろ私の方だ!)

 雪那は胸中でアルファに毒づく。

 

 「よしよし。でもみんなはアルファがいつもふざけてるからきっと今回もそうだと思っちゃったんだよ」

 「グスン、割と本気なのに……そうだ!良いこと思い付いた!!」

 態とらしく口で泣きながら、拗ねていると途端に妙案思い到りとなるアルファ。近くに居た雪那は嫌な予感を憶える。

 

 「こうなったらみんな一緒に異世界旅行に付き合わせてやるんだもんね!!」

 ふんす!と鼻息荒く決意を新たにすると、途端にダグベースの中へ戻って行った。

 

 「行っちゃった……。わたしも美炎の所に行こ、じゃあまた後でねガンキッド」

 

 『うん、コヒメ。また後で』

 

 アルファの後を追うようにベースに入って行くコヒメ、去り際にガンキッドに手を振れば大きな友人は目一杯手を振り返してくれる。

 

 しかしこの時、アルファの発言の意味の危険性に気付いたのは雪那だけであった。

 

 (奴め、()()()だと?嫌な予感がする……一度、鎌倉に戻りこの事を本部の折神朱音他に伝えておくか)

 

 雪那は急いで転送装置のある部屋まで走った。

 

 しかし彼女は見誤った、アルファの決断力を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 雪那が転送装置の部屋に辿り着いた頃と同じくしてアルファはダグベースのメインオーダールームにてコンソールを弄っていた。

 

 「むふふー。これで有無を言わさずみんな一緒に異世界旅行だー!ってね♪」

 

 <アルファよ、ダグベースを起動させるのは構わないが、何があるか解らないのだ…ダグビークルを全て収納、接続したらどうだ>

 ホログラフィーのブレイブ星人の言葉に分かってるよぉ、と返す悪戯笑顔の少年。

 

 「ダグベース!発艦!発艦後、空母形態に移行!ファイヤージャンボ、サンダーシャトルは空母形態の甲板に接続!ファイヤーショベルはダグベース下部に接続!いざ、ポチッとな!」

 

 直後ダグベース全体が揺れる。そしてダグベースの頭上の洞窟が開き、ダグベースは光の柱に沿って宙を浮く。

 同時に、ファイヤージャンボ、ファイヤーショベルがゲートより発進。宇宙からはサンダーシャトルがダグベースのある静岡県の某山奥にまで大気圏を突破し降下してくる。

 

 「ディメンジョンゲートオープン!座標軸固定!転移先は()()()()()()()()()だ!」

 

 嘗て己がライアンを落とした際、同僚からの責苦を受けまいと逃げ込んだ世界目指し、次元境界のゲートを開く。

 「おっと、ライアンとガンキッドも忘れずに!」

 そう言って更に何事かのスイッチを押すと洞窟内に残ったライアン、ガンキッドを牽引ビームで引っ張り出し格納する。

 

 空母形態となったダグベースに大型ビークル3機が接続され空中を滞空する。

 それをモニター越しに確認したアルファはオーダールームからブリッジへと移行した部屋の中央先端、操舵桿を握り叫ぶ。

 

 「では出ぱーつ!」

 

 空母ダグベースがゲートを潜り始める。それは丁度、雪那が鎌倉の刀剣類管理局本部に転送を終えた時、そしてダグベースの異変に気付いた者達がブリッジに駆け込む5秒前であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━とある異世界の国・ウェールランド━

 

 其処は魔法が存在する世界。そして異なる世界より多くの来訪者が訪れ発展した世界。

 

 そんな世界の国の1つ。魔法技術に於ける最先端をひた走る国ウェールランド、そのウェールランドのとある街マームケステルでの事。

 

 その街には魔法を使う者…即ち魔女と呼ばれる存在が通う学院がある。

 

 名をフローラ女学院。この世界に於ける魔女達の始祖とでも言うべき、暁の魔女フローラの名を冠した学舎。

 

 そんな乙女の園に、しかしそれとは似つかわしく無い複数の男性の姿があった。

 

 「くっ…はぁあ!」

 

 「なんの!まだまだですよ!」

 

 「だぁー面倒くせぇ!とっとと終わらせちゃる!」

 

 「ニンニン!それでは修練試合になりませぬ」

 

 「いやはや若者達は元気だねぇ…」

 

 「注意散漫。小生相手に模擬試合と言えど余所見とは余裕だな?」

 

 6人の男性が各々木剣を手に立ち回る。

 

 「ふん、全く血気盛んな連中ばかり…お嬢様、お茶菓子をどうぞ」

 

 そしてそれを見守る複数の少女と、唯一人、手持ち無沙汰にしている燕尾服の青年。

 

 「いや、あんたはちゃんと審判をしなさいよ!」

 

 「全くです。いくらむさ苦しい試合だからと言って役割の放棄は見逃せません。それとお嬢様の給仕は私の仕事です」

 

 「はぁ~先生さまったらなんて素敵なんでしょう…」

 

 「わっふぅ~!みんな頑張れー!」

 

 屋外用のテーブルと椅子に4人で座る黒い襟のセーラー服らしき制服を着た4人の少女が各々で言葉を口にする。

 

 燕尾服の青年にツッコミを入れた藤色の髪の少女はエミリア。

 

 毒舌混じりに試合を評しながら、そのエミリアに給仕するのは自分だと瀟洒な態度の桃色のサイドテールの少女あるふぁ。

 

 先生さまとやらに見とれ、うっとりとした顔の長髪の黒髪で前髪中央やや右寄りが目隠れする程度のパッツンにカットした足が透けている少女ガーネット。

 

 独特な声を挙げる犬っぽい雰囲気の茶の短髪少女サルサ。

 

 

 

 「ふっ、どっちが勝つか賭けるか?」

 

 「あんたねぇ、ま、ただ見てるのも退屈だし良いけど」

 

 観戦中に賭け事を始める凸凹コンビの少女達。

 1人は浅葱紫の髪をお団子結びのツーサイドアップにした背丈の小さな生意気そうな少女ルキフェル。

 

 もう1人は長身で出る所は出て引っ込む所は引っ込んでるピンク髪に黄色いリボンを着け、後ろの髪を2つ円を描くように纏めている少女アンジェリカ。

 

 どちらも毛先はやや黄色くなっている。

 

 

 

 

 

 

 「先生くんもあの子も他の人達も張り切ってるわね~」

 

 「皆さんとっても"ろっく"です!」

 

 「張り切り過ぎて大怪我しないと良いんですけど…」

 

 あらあらと呑気に観戦する少女の横でろっくと妙ちきりんな事を口走る少女と剣を交える者達の安否を気遣う少女。

 彼女達は3人の姉妹である。

 

 呑気に観戦する茶髪の長髪を後ろ手にボリューム良く纏めたルキフェルの次に長身の少女ツバキ。

 

 ろっくと先程から叫ぶゆったりと流した腰辺りまで伸びる銀髪の少女ナデシコ。

 

 青年達の身を案じつつも2人の姉に辟易気味の黒髪の少女カエデ。

 

 

 

 

 

 「おじ様ったらこんな時まで能天気な…」

 

 「あはは!でもおじさんもだけどナルミもスゴいよ!」

 

 「アルちゃーーーん、ファイトーーー!」

 

 巨漢の中年男性の態度に嘆息する少女と、笑うボーイッシュな少女、そしてアルちゃんなる人物を応援する糸目笑顔の少女。

 

 嘆息を浸いたのは怜悧な雰囲気を纏う黒髪長髪の少女ユエ。

 

 朗かに笑うボーイッシュな赤毛の少女フィオナ。

 

 片方の頬に手を添えながら試合を見守る糸目の少女はミルフィーユ。

 

 

 

 「たまには本気出すしー!」

 

 「みんな頑張れなのー!」

 

 「『手に汗握る展開だぁ!(゚A゚;)』」

 

 やる気の無さそうな青年に向かって檄を飛ばす少女とその両脇に位置する小柄な少女達。

 

 檄を飛ばすのは金髪褐色のギャル少女ラトゥーラ。

 

 全員に歓声を挙げるのは薄桃色の髪をツインテールにした少女シャンペ。

 

 1人肉声ではなく手にしたボードから声を出す少女メアリーベリー。

 

 

 

 

 「教官…以前よりも見違える程の上達振りだ!」

 

 「フレ!フレ!せんせー!ファイト!ファイト!アルアル!ゴーファイ!ゴーファイ!おっちゃん!イケ!イケ!センゾーくん!」

 

 「はぁ~、剣士達は己の誇りと少女達の名誉を賭け……むふふ」

 

 「ラヴィ、サイゾウくんよ?後リネットは妄想から帰ってきなさい」

 

 「頑張れ、先生。頑張れ…!」

 

 そして最後に一際賑かな集団。

 

 感慨と感心に声を上げるのは純紫の長髪をポニーテールに括った少女アシュレイ。

 

 チアリーディングの様な応援をして元気一杯飛び跳ねる金髪ツーサイドアップツインテールの少女ラヴィ。

 

 何やら頭の中に描いた世界にトリップしているのは緑色のふんわりボブカットの少女リネット。

 

 そんなラヴィとリネットを面倒見るのは蒼髪の少女ロゼッタ。

 

 そして、先生と呼ばれる青年に一心に応援を送るのは紅い髪に王冠の様な髪飾りを付けた少女ティアラ。

 

 彼女達は皆、魔女と呼ばれる者達。歌を唄い魔法を行使する存在。

 

 そして彼女達皆の視線の先で木剣でぶつかり合う青年達、その正体は伝説の聖剣を受け継ぐ仮面の剣士達。

 

 「ふっ、お嬢様やあるふぁ先輩に言われては致し方あるまい」

 給仕を断られた燕尾服の青年はドルトガルドという国で闇の聖剣を受け継ぐ筈であった半亜人、ヘルマン。

 

 

 「嘆息。あのじゃじゃ馬娘はまたしょうもない事を…。乗る方も乗る方だが…」

 凸凹コンビの声が聴こえたか大きく溜め息を洩らすのは音の聖剣を振るう剣士にして鍛冶師、セドリック・マドワルド三世(ザ・サード)

 

 

 「ははぁ、あの子達らしいちゃらしいじゃないの。オジさんとしては御姫さんの視線が痛い」

 笑いながら、しかしユエの視線に冷や汗を垂れる大地の聖剣を持つ巨漢の最年長、陳劉玄(チャンラウシェン)

 

 

 「ニン!互いの実力を量る模擬試合と言えど手は抜かないでござるよ、えれん殿!」

 ナデシコのろっくな応援に一際やる気を上げる風の聖剣に選ばれた最年少の少年、祭風哉慥(はれまきさいぞう)

 

 

 「いや抜けよ!後で色々面倒だろうが!」

 そんな彼に抗議を挙げるのは雷の聖剣を継承した、死んだ魚の目の如く濁った瞳の青年、エルヴィレアノ・ホサ・ロマリオ・サバン・ドルティアーノ・鳴美ことエレン。

 

 

 「僕達はどうします?」

 風の少年と雷の青年のやり取りを横目にしつつ目の前の試合相手に訊ねるのは騎士前とした立ち居振舞いをした水の聖剣を代々受け継ぐ青年、アルマ・神明・イーリアス。

 

 

 「まぁ程々に…とは言え負けたくはないかな!」

 最後に苦笑しつつも負けん気を発揮するのはほんの数年前に行方不明になった炎の聖剣を目覚めさせた青年、剱守斗真。

 

 彼等はこの世界で伝説を築いた聖剣を振るう仮面の剣士達。

 古の時代より今に至るまで悪しき魔人メギドや魔獣から人々を守りし者。そして同時に異世界より来る来訪者。

 

 斗真、劉玄、エレン、哉慥が異なる世界異なる時代より来たりし者。

 アルマ、セドリック、ヘルマンが祖先に来訪者の血筋を持つ者である。

 

 模擬試合を交わす6人と審判に徹す…してはいない1人。その内セドリックが何かに気付き木剣を止める。

 

 「……懐疑。これは何だ?聞覚えの無い轟音…何処から」

 

 「どうしたセドリック?」

 

 「ムッツリグラサン?」

 

 「せどりっく殿?」

 

 「どうしたんでしょうか…」

 

 「さぁ…?」

 

 模擬試合を止めた6人を見て観戦していた少女達は不審に思う。

 

 「あら?どうしたのかしら?」

 

 「おじ様達の様子が変だわ」

 

 「よくは知らんが…三世のヤツ、何かに聞き耳を立てているな」

 

 「何にも聴こえないの」

 

 「ヘルマン!」

 

 「お待ち下さいお嬢様。すぐに確認して参ります」

 

 エミリアの言葉にヘルマンは即座に6人の元へ馳せる。

 

 「何があった、三世…お前か?」

 

 「音だ、聞き慣れぬ音がこの真上から聴こえる」

 

 そのセドリックの発言に呼応してかフローラ女学院上空の空間に大穴が綺麗に空く。

 

 「え?」 「なっ?!」 「はっ?」 「えぇっ?!」 「ニン?!」 「……」 「ナイワー」

 

 「「「「「ええっ!!?」」」」」

 

 「「デカっ!!」」

 

 ティアラ達LiGHTsとルキフェル、アンジェリカの2人組Sadistic★Candyが声を上げ驚く。

 

 更にその穴の奥から何かが、大きなナニかが出現する。

 

 「ナニあれ…」 「箱?」 「ふわぁ…『( ゚д゚)ポカーン』」

 

 「有り得ない…あんなの」 「夢でも見てるのかしら…?」 「ぁあ!?ペンとスケッチブック持ってくれば良かったぁぁあ!!」

 

 ラトゥーラ達シュガーポケッツが穴から現れたモノに開いた口が塞がらない。

 ユエ達supernovaは三者三様の反応で混乱を顕にしている。

 

 「ろっくですー!」 「言ってる場合ですか!?」 「お、お、お、お姉ちゃんが付いてるからね!?!?」

 

 「っ…………?!?」 「お嬢様?…気絶してしまいましたね」 「わふーーーっ?!」 「はわわ、心臓が止まっちゃいますぅ~」

 

 ナデシコ達この花は乙女もまた混乱し、エミリア達IV KLOREのエミリア以外が割りと余裕があるんじゃないかと思う様な反応を示す。

 

 そしてその箱の様なナニかはそのまま学院のグラウンド──つまりは剣士達が居る場所へ降って来る。

 

 「み、みんな!逃げろぉぉぉおお!!」

 

 斗真が声を有らん限りに張り叫ぶ。それを合図にグラウンドに居た皆は蜘蛛の子を散らす様に逃げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・ブリッジ

 

 「あたた……もう!君達が揺らすから着地失敗しちゃったじゃん!」

 管理者アルファがぶう垂れる。

 

 「……」

 

 「気持ちは分かりますが落ち着いて下さいませ戒将さん!(わたくし)達が元の世界に帰還するには彼の存在が必要不可欠ですわ!!」

 

 無言で木刀をアルファに振り下ろそうとする戒将を抱き付いて押し留める寿々花。

 

 「止めるな寿々花!今度と言う今度ばかりは看過出来ん!!」

 

 「ちょっと、鳳さん!田中さん!戒将さんを止めるのを手伝ってくださいませ!」

 

 「いやでも…今回ばかりは戒将の気持ちに大いに賛成だし」

 「右に同じじゃ。こ奴はいい加減キツい灸を据えねばならん」

 2人が戒将に同調するので他の面子を見れば雷火以外が苦虫を噛み潰した顔で助力を拒む。

 

 「戒将先輩落ち着いて。寿々花先輩の言う事も一理あります」

 取り敢えず雷火が戒将の前に立ち、何とか諫める。

 それにより一度深く深呼吸し、気を落ち着ける戒将。冷静になった彼は血管を額に浮かべつつもアルファの首根っこを掴み訊ねる。

 

 「それで…此処は何処だ?」

 

 「剣と魔法の世界だよ?」

 とやり取りを交わす傍ら、翼沙がCICコンソールを操作し周辺情報を確認する。

 

 「これは……どうやら何らかの施設がある地に不時着してしまった様ですね。周辺に人間の生体反応、動体反応があります」

 

 「oh…まさかのダイメーワクを起こしてしまったんデショウカ」

 

 「謝ったら許してくれるかな?」

 

 「これだけの惨状を巻き起こしておいてそれは虫が良すぎないか?」

 古波蔵エレンがアチャーと額に手を当て仰ぐ中、可奈美が能天気に物申せば姫和が呆れながらに首を振る。

 

 「兎に角、人が居るのなら謝罪も兼ねて接触する必要がある。アルファでは話がややこしくなるだろうから私が出よう。戒将、翼沙、寿々花、夜見、私と共に来て来れるか」

 

 「承知しました紫様」

 

 「お任せ下さい紫様」

 

 「それが(わたくし)の務めですわ」

 

 「それが紫様のお望みならば」

 

 紫が戒将、翼沙、寿々花、夜見を伴い地上側の入口へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フローラ女学院グラウンド━

 

 「一体何事です!?」

 

 グラウンドに突如落下した謎の物体、その騒ぎを聞き付け学院の理事長クロエが、剣士と生徒達の前に姿を現す。

 

 「理事長。それが具体的に何なのか分からないんです」

 斗真が代表して答える。

 

 「セドリック、何か聴こえるんかね?」

 

 「理解不能。中の音は聴こえん…」

 年長組がダグベースの壁面を叩く。却って来るのは無骨な金属音。

 

 その時、グラウンドにめり込んだ部分の後方から空気が抜ける様な音が聞こえる。

 

 「む?異音、何かが起きる」

 

 それは若き勇者と仮面の剣士、刀使と魔女の邂逅を告げる福音。

 

 その出会いがもたらす物とは──

 

 

 

 

 ━マームケステル・某所━

 

 「ほう……これは面白い事になるな

 黒衣のローブを纏った人物が僅かに覗く口許を愉快そうに歪める。

 

 

 


 

 

 嘘予告

 

 「「人間!?」 」

 

 「へぇーお前もエレンってのか」 「Oh!!貴方もデスか!?奇遇ですネー♪」

 

 「ヒュー♪美少女揃いじゃネェの」 「ウヘヘ……パァラァダァイスですよ!?これは!!」

 「ふ、不潔よ!不埒よ!」 「お嬢様の障害は私が排除するのみ」

 

 「みんなも唄ってみない?」 「えー、出来るかなぁ?」

 

 

 

 「嘘だろ荒魂!?」 「なんでこの世界に!?」

 

 「メギドが謎の怪物を……取り込んだ?!」

 

 

 

 

 「「「「「「「!」」」」」」」

 

 「「「「「「変身!!」」」」」」

 

 ─烈火─

 

 ─流水─

 

 ─黄雷─

 

  『抜刀!!』

 

 ─一刀両断!─

 

 ─双刀分断!─

 

 ─銃剣撃弾!─

 

 

 

 「覚悟は良いか?行くぜ!」

 

 「物語の結末を決めるのは俺だ!」

 

 

 

 NEXTSEASONS?





 あー、東郷欲しかったなぁ…。折角石貯めて回したのに…。
 コラボはとじともとアリスギアはそれなりの成果出るんだけどなぁ。

 宇宙船最新号読み応えあった。満足。

 ダイナゼノン楽しみです。
 
 


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エイプリルフール DAY1 プロジェクトとじドル【遭遇アイドル×デジモン!】


 エイッ!プリルッ!フールッ!

 以前宣言した通り、今回は連続式です!

 何でデジモンを絡めたかって?私がデジモンネタをやりたかっただけです!


 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 「アイドル?君たちアイドルになるの?」

 

 「ええ、特祭隊…延いては刀剣類管理局の失地回復、意気向上などを目的としたものですわ」

 

 対エデン監獄囚人用監視衛星兼サンダーシャトルメンテナンスベースと化している宙空間前線衛星基地ダグサテライトからのデータを読み解きながら疑問に首を傾げるアルファに管理局本部から報告に来た此花寿々花が困った顔を浮かべながら経緯を語る。

 

 「ふ~ん、良いんじゃない?でも意外なアイディアだね、誰の発案?紗南ちゃん?」

 

 「……………紫様ですわ」

 

 「ぱーどうん?」

 

 寿々花が言い放った名に思わず固まったニヤケ顔で問い返す。

 

 「ですから、紫様が発案者なのですわ」

 

 「りありー?いや、待って紫ちゃんってそんな事言う娘だっけ?キャラ違くない?」

 

 「(貴方が主な原因なのですけれど…)まぁ紫様自身も案が通るとは本音では思ってはいなかった筈ですが……朱音様も本部長も妙に乗り気でして…挙げ句フリードマン博士が全面支援を宣言なされたのですわ」

 

 「フリードマン君ならまぁ悪ノリするのは分かる。ボクがその立場でもそうする」

 

 (するんですのね…)

 

 固まった顔を解し、寿々花の話を聞き終えたアルファは自分でも主導する側ならやると言い切り、それを聞いた寿々花は胸中で呆れる。

 

 「で、そもそもその話を何でボクに?」

 

 「戒将に訊いたら、その手の話題は貴方が詳しいと」

 

 「わぁ、呼捨て!仲良いのは知ってたけどそこまで進展してるんだぁ。あっ、待って御刀は抜かないで…………そんで、詳しいは詳しいけどそれを訊いてどうしろってのさ?」

 

 「全く…。兎に角、今度そのアイドル企画を実行するにあたって、有識者と目される貴方にアドバイザーとなって欲しいとの事ですわ、勿論非公式ですが」

 

 必死の弁明に嘆息で返しながらも御刀を納めアルファに何故アイドルの話を語ったのか理由を説く。

 其処へ申一郎が怪しい笑みを浮かべてオーダールームへ入って来るではないか。

 

 「ナーンか面白い話してんジャン?」

 

 「鎧塚さん、立ち聞きとはお行儀がよろしくありませんわね」

 

 「カタいこと言うなよ此花チャン。その話…オレも一枚噛むゼ」

 

 「貴方が?一体何を仕出かす気ですの?」

 

 「ヒデェ!?もうチョイ信用してくれよォ~」

 

 寿々花からの胡乱な視線に抗議する申一郎、しかしその顔はニヤけている。

 

 「申一郎くんは何か面白いアイディアがあるのカナ?」

 アルファを知らぬ者が見たらとてもあざとく可愛らしく首を傾げる動作で申一郎へ訊ねる。

 

 「アイディアつーかヨ、そのアイドル広報計画(仮)とやらで此花チャン達が着る衣装…オレが仕立てようか?」

 

 「貴方が?!……いえ、そう言えば貴方…顔に似合わず服飾の腕が良いのでしたわね。それとまだ誰が参加するかまでは決まっておりませんわ」

 一瞬驚きを見せたものの、この基地に案内された当初の夜目撃した結芽のパジャマ姿を思い出して、やや渋面を作りつつも納得をする寿々花、しかしそれはそれとしてまだ計画は案が出た程度なので、誰が選出されるのか分からない…と断りを入れる。

 

 「ってもヨ?特祭隊の広報なんダロ、ならまず親衛隊…もとい特別遊撃隊のメンツは確定だろ。んで元親衛隊の2人も当然として…後は衛藤チャン、十条チャン、柳瀬チャン、古波蔵チャンが実力とビジュアルからして選ばれそうな気するゼ」

 

 「分かる~、ついでに言うなら智恵ちゃん、清香ちゃん、呼吹ちゃん、ミルヤちゃん、美炎ちゃん、由依ちゃんもイケそう」

 アルファ、ノッてくる。

 

 「流石にそこまでは……」

 

 「ソウかね?由依はトモカクとして他はいい線行くと思うゼ、それに人数いた方が宣伝になるだろ───ナァ雷火もそう思うよな?」

 

 由依が含まれていた事には否定手前のリアクションを取りつつ、アルファが列挙した面子に同意しつつ偶々通り掛かった衛藤雷火に同意を求める。

 

 「え?あ、はい。何だか分からないですけど、先輩が言うならその通りだと思います!」

 

 「雷火さん!話の詳細も分からず同意しないでくださいまし!」

 

 雷火の条件反射の返事に抗議する寿々花、その時オーダールームに神経質な男の声が轟く。

 

 ≪アァァァルゥゥゥファァァアアアアッッッ!!!!!≫

 

 4人の目の前で空間が歪み弾ける。そして現れるフォーマルスーツの眉間に皺を寄せた男。

 

 「シータ?何だよいきなりカンカンに怒ったような顔してさ」

 

 「貴様!き、貴様はまたしても!またしても余計な事を仕出かしたんじゃあなかろうな!!?」

 

 「???ちょっとナニ言ってんのか分かんないだけど」

 

 「惚けるなよ貴様っ!アレが貴様の仕業で無ければなんだと言うのだ!!」

 拳を振り上げ、アルファの首根っこを掴むシータ。しかしアルファは一向に思い当たる節が無いと首を傾げるばかり。

 

 「ええいっ!埒が明かん!!」

 最早辛抱ならんと握った拳を振り下ろす5秒前、雷火が思わず割って入る。

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 「ぬぅ…君か雷火君。邪魔をしないで貰おうか」

 

 「いやいや、アルファさんも本当に心当り無い様子ですし、ちょっと落ち着いて何があったのか話てみませんか?!」

 

 「い、雷火きゅん…!」

 

 基本ぞんざいに扱われる事が多いアルファ、雷火の言葉に思わず感極まる。

 

 「くっ………君程の若者に言われてしまっては仕方が無い。話そうではないか。運が良かったなアルファよ、雷火君が居なければその顔面をこの先百年は陥没状態にしてやったものを…」

 

 「やめて…?!この先五百年ほどはこの辺一帯の世界で常に実体化しなきゃいけないんだからやめて!!」

 

 掴んだ首根っこを離し、手近な椅子に座るシータ。気を落ち着かせ軽く深呼吸をすると、訥々と事の経緯を話始める。

 

 「あれは……そう、君達の認識で今朝の事だ。ソコに座っているどうしようもないトラブルメーカーの代わりに、私が定期的に君達が存在する次元境界を観察していた事だった───

 最初は恙無く、これと言った異常は見られなかった。しかし視点を──そうだな顕微鏡のレンズの種類を変えるイメージ…そんな認識だと思ってくれ……──変え、より多くの隣接世界を観察していた時、ソレは起きた」

 アルファ以外の面々に自分達がどの様に世界を認識観察しているかを語りながら話してゆくシータ。

 そうして一先ず言葉を区切り、アルファを見据える。

 「君達が存在する世界と、何処かの世界の道が繋がったのだ。そこで私は先ず、アルファがこの世界に介入する原因となったゼータ一派を疑った……まぁ一派と言ってもゼータと約一名を除き、あの連中は思想こそ共有している割に此方以上に目的意識がバラバラだが…。

 途もあれ、連中を監視していたイプシロンと、監視に協力してくれたラムダ、ミュー、クシーからの証言では連中は特に動きがなかったとの事だ。となると、次に疑うべきは……嘆かわしいかな身内、詰まり貴様だ。何分前科があるからな」

 

 シータの言う前科とは旅行気分でゲートを開いてダグベースごと転移した、()()()()()()()()()()()()()()()の事である。

 

 「いやぁ、それ程でも…」

 

 (褒めてませんわ) (ホメてはネェよ) (う…う~ん)

 

 寿々花と申一郎がアルファに呆れる中、フォロー出来ない雷火は苦笑するに留まる。

 

 「で、だ。その繋がった痕跡……先にも言った通り我々はゲートと称しているのだが、ソレを詳しく調べてみると世界X──便宜的にそう呼称する──からこの世界に向け何らかの存在が移動した形跡があったのだ」

 

 「成る程……以前に異世界の方々がエデンの犯罪者達の企みで現れたのと似たような形ですのね」

 

 「大雑把な認識としてはそれで構わない。しかし今回は街が入れ替わる等と大々的な異変ではなく、恐らく一方的にXの住人がこの世界に現れた形となるだろう。

 問題はそのXがどの世界か。と言う所だ。さぁ吐け!何処と繋げた!!」

 

 「え…何それ、知らん。……恐っ」

 

 シータからの詰問に思わず真顔で心底怯えて返すアルファ。

 これにはシータもアテを外れ拍子抜けした顔になる。

 

 「なん…だと……?貴様が下手人では無いのか?」

 

 「いや、ホントに知らないし。てかドコと繋がったか特定しない内からボクを犯人扱いしないで欲しいなぁ!?」

 

 「そりゃ…オマエ、普段の態度なり対応がアレだからダロ」

 アルファの憤慨に申一郎が今までの諸々を思い返しながらツッコむ。

 

 「んんっ!とにかくボクは無実でした!ハイ、弾劾裁判終わり!

 で、ゲート…ドコと繋がったの?」

 

 「待て…今確認する…………………なん……だと………!?」

 

 側頭に手を充て眼を閉じたシータ、暫くの沈黙の後、再び戦慄した様に口を開き驚く。

 果たして、ゲートが繋がった先とは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県・鎌倉

 

 「うーん?圏外?これはどういう事だ?」

 

 「どうもこうもあるかっ!!テメェこの野郎!いきなりあの世界に連れて来たと思ったら、今度は何を巻き込みやがった!!」

 

 「ダメだ!ネットも繋がらないみたいだぞプロデューサー!」

 

 「いや、て言うか…人数足りなくない?」

 

 「うーむ、おかしいな…わたしの計算では異世界に跳べる筈だったのだが、どう見ても此処は現代日本だ」

 

 鎌倉市内のとある場所にて飛び交う会話。辺りを見回すのは二十代後半に見える青年と、彼に怒鳴る高校生程の少年、そして同じ年頃かやや下の少女が3人。

 合わせて5人が喧々としている。のだが──

 

 『陛下、そもそも此処は本当に我々が暮らしていた日本なのでしょうか?』

 

 『大将、どうにも妙だぜ?いつもの気配がしねぇ、()()()()()()()の気配が少な過ぎる。人口地帯ならそれなりの規模のモンの兆候があって然るべきだろ?』

 

 『M´Load、はぐれたと思われる麗しく美しき少女達を探さなくてよろしいので?』

 

 『我が王、ご命令を…。必要とあらばあらゆる手段を用いて情報を集めて来ますが』

 

 青年の懐から複数の声、青年が声に反応し取り出したのはスマホではなく奇妙な形の端末。

 円形状の特殊な金属の縁の中に六角形状の液晶画面、其処から下に伸びる形はバレルの無い、グリップが太い銃…といった印象を懐く。

 バレルにあたる部位には電子端末に対応するコネクタ。

 グリップ部側面にはゲーム機の様なコンソール、トリガーも銃のそれでは無く、戦闘機の操縦桿の物に近い。

 また金属製の縁は良く見ると回転機構が備えられ、何らかの操作に対応している。

 そして最後に、液晶の画面に映るのは先程から彼を王と呼ぶ()()()()姿()()()()()()()()()()

 

 「まぁハッキングは最後の手段として……此処が本当に俺達の世界と違うのか、見て聞いてみないとなぁ。その過程であの時周囲にいた我がプロダクションアイドル達も見付かるだろう…多分」

 

 「まぁそうだよね。一応日本みたいだし最悪の最悪は無いって考えてもいいかも」

 

 「人探しかぁ…こう言う時、Wやオーズ、フォーゼやウィザード…あと響鬼とかならガジェットで探せるんだけどな~。博士!何か無いのか!?」

 

 「ふぅむ、光から借りたオモチャを参考にラボで試作していたのはあるが手持ちは無いな」

 

 「ふむ…あの場に居たメンバーの中には千秋や楓さんなんかの大人も居たし、バラバラと言っても何人かは纏まってる筈。何より個性的だし何かあれば目立つだろう。アイドル達はそれで何とかなるとして……拓哉、Dースキャナーの反応は?他の五人はそれで探せるだろう」

 

 「さぁな、反応は無いからこの近くには居ねぇんだろうよ。近付けば反応があるだろうしな」

 騎士達からの進言を頭に留め置きながら、今後の方針を打ち出す青年。

 少女達も三者三様反応を返しながら青年に従う。

 そして最後に少年の方へ話題を振れば、少年も青年の物とは細部や機能がやや違うが、青年の持つ端末と近い物を取り出して確認する。

 

 「よぉし、それじゃあCGプロ…いざ出陣!」

 

 「「「オー!」」」

 

 「はぁ……」

 

 青年と少女達のノリに着いていけない少年は只1人溜め息を吐くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━東京渋谷

 

 「ぅぅ……渋谷は苦手なんですけど…」

 

 「フヒヒ…人が…ヒトが多い……リア充がたくさん…フヒヒヒヒ…フヒャ…ヒャァァァァッハァァァアア!!滅びろリア充どもぉぉぉおおお!!」

 

 「ノノ!しゃがむな!ショウコ!街中で叫ぶのは流石に迷惑だからヤメロ!」

 

 「いやぁ目立ってるね~わたし達。これてヤバいかな?」

 

 「目立つは目立つけど…何かアタシらがアイドルだからって感じじゃ無いッスよね?」

 

 渋谷の喧騒の一角にて一際目立つ集団が1つ。

 暖色系の薄い茶髪のお下げをカールさせた矢鱈ネガティブそうな少女といきなり物騒な事を叫び出した所々ボサボサになったアッシュブロンドの長髪少女。

 そんな2人を叱り付けるケモ耳パーカーにファッション眼帯を着けたパンキッシュな少女。

 更に彼女達より歳上だが精々二十歳そこそこの女性が2人。

 1人は野球チームのユニフォームを着たやや外はね気味の黒髪長髪の快活な童顔の女性。

 もう1人はお洒落に慣れてないのか、着慣れぬカジュアルな服に袖を通した肩程まで無造作に延ばした茶髪に眼鏡の女性。

 そんなバラエティに富んだ面々が騒げば当然目立つ。

 しかも眼鏡の女性の言葉を真に受けるならば彼女達もまたアイドルであると言う事。

 周りの野次馬の誰かがその言葉を聞いてネットのSNSに載せようとした所で、何処から途もなく現れるはこの世界特有の特殊災害"荒魂"。

 

 

 ──Gishyaaaaaa!!

 

 

 雄叫びを上げて現れるのは猟犬型の素早い小型の荒魂。

 当然荒魂の脅威を識る野次馬達は一目散に逃げ出す。

 残るは状況をいまいち把握していない5人のアイドル。

 

 「えっ?えっ?何ッスか?アレ?」

 

 「フヒ…な、何かのアトラクション……じゃ無いな……」

 

 「みんな逃げ出したって事はヤバい感じのヤツとか?」

 

 「ひぃぃぃっ?!恐いんですけどぉぉお!!?」

 

 「早く立つんだノノ!みんなで逃げるぞッ!」

 

 周りの状況から危険と判断し彼女達もまた逃げようとするが、ノノと呼ばれたお下げの少女の腰が抜け中々立ち上がれない。

 そうこうしている内に荒魂は彼女達を包囲し、ジリジリと距離を詰めてゆく。

 

 「っ…!ヤバいッス!もうアタシ達しか居ないッス!?」

 

 「ショウコ!ウチらでやるぞ!」

 

 「フヒ…トモダチと仲間は守る…」

 

 パーカーの少女とボサボサ髪の少女がポケットからスマートフォン端末を取り出す。

 

 「出番だサイケモン!」

 

 「ゴォォオオオ!マイフレェェェエエエンドッッ!!」

 

 端末から飛び出した光が2つ、奇妙な形となって実体を表す。

 

 「任せろ美玲!」

 

 「輝子達はオイラ達が守る」

 

 それは何とも奇妙な生物だった。片や獣の様な毛皮を纏ったサイケデリックな色の生物。

 片や毒キノコの様な物に手足と顔が付いた生物。

 そんな自然界では有り得ない生物が少女達を守る為、荒魂の前に立ち塞がる。

 

 『コラー!モリクボよ!何故朕を出さぬかー!』

 そして腰が抜けて怯える少女の懐からも轟く声が1つ。

 

 「そうッス!乃々ちゃんのパートナー完全体じゃないッスか!成長期の二人だけじゃ厳しいし乃々ちゃんもパートナーをリアライズするッス」

 

 「ぅぅ…もりくぼ、デラモンのこういう所が苦手なんですけど……」

 

 「でもさ、わたしも比奈ちゃんもパートナー居ないし、美玲ちゃん達だけじゃ厳しいと思うんだよね。せめて究極体のパートナーがデフォルトで居るみくちゃんとかが居れば大丈夫だったのかもだけど」

 

 大人2人に諭され、懐からは出せ出せと騒がれる。平穏な日常を愛するネガティブチキンハート森久保乃々のメンタルは自責諸々のあれで遂に振り切れる。

 

 「こ…こうなったら、ヤケくぼですけどぉぉぉおお!!?」

 所謂ぐるぐるオメメとなったハイライトのまま叫ぶ乃々。彼女の端末から飛び出した光は、やがてこれまた珍妙な形となる。

 

 ソレは背中に青々と茂った草木を生やした鳥だった、頭上に王冠を被り、脚は爪の露出した鳥の物では無くスニーカーぽい靴、何より大きさは精々がしゃがんだ乃々より高い程度の背丈。

 輝子のパートナー、キノコの様な生物ことマッシュモンよりも大きさで言えば小さい、しかし瞳の奥の意思と態度はこの場の誰よりも大きかった。

 

 「全く!最初から朕を出していれば良いものを…。さぁ征くぞ!者共!」

 

 「オイラ達は家来じゃないんだけど」

 

 「ホントな。美玲のプロデューサーかロイヤルナイツの誰かの指示ならまだしも…デラモンじゃあなぁ」

 

 遅れて現れたデラモンの命令口調に不服を述べながら荒魂の意識をパートナー達から逃し、連係して対処している2匹。

 

 「ええい!うるさいうるさい!とにかくその得体の知れん怪物共を片付けてやるからサポートしろ!」

 短い羽を手のように振るいながら憤慨するデラモン。

 仕方が無いと嘆息するマッシュモン、サイケモン。

 マッシュモンが掴んでいた1匹の荒魂を空に投げる。

 

 「ふん!分かればいいのだ!食らえロイヤルナッツ!!

 

 嘴を大きく開けて叫ぶデラモン、すると背中の植物の茂みから卵型の木の実が飛び出し、空中の荒魂にクリティカルヒットし爆発する。

 

 「見たか!朕ってばやっぱり強いね!」

 

 高慢チキにふんぞり返るデラモン。爆煙から落下した荒魂は片足を失い、躰の節々からノロを流しているが健在であった。

 

 「生きてんじゃんかー!」

 「バカ!デラモンのバカ!」

 

 「うぇぇ気持ち悪……」

 「ホントに何なんッスかね…アレ」

 「少なくともフツーの生き物じゃないぞ」

 「フヒヒ…こ、小梅ちゃんがいたら喜んだかな…?」

 「もぅ…むぅ~りぃ~」

 

 仕留めたと思った敵が手負いとは言え健在な事に、2匹はデラモンへ文句を叫び、パートナーである少女達を含めた人間側は荒魂の歪なグロテスクさに不興を持つ。

 

 「クソッ!せめて進化出来るか、もっと強い仲間が居れば……!」

 サイケモンが悔しげに呟く。

 

 「守ってばっかじゃ、ジリ貧だな…!」

 マッシュモンも表情に苦心を滲ませる。

 

 しかし、そうして不利な状況を繰り広げていた少女達と謎の生物の一行の前に救いは現れた。

 

 

 「おい…何か本当に妙な生き物がいるぞ」

 

 「ねねっ!」

 

 「でも見た所、あの女の子達や女の人達を守っているわ」

 

 「スペクトラムファインダーを通して見ても彼方の生物には荒魂のノロ反応は有りません。恐らく何時かの時と同様…異世界案件でしょう」

 駆け付けた声は4つ、内3つは人間で残り1つは、少女達からすればよく解らない生き物の鳴き声。

 

 「えっ…?!誰ッスか?!」

 

 「なんかカタナ持ってるぞッ!!」

 

 「てかスゴい速いね、真尋ちゃんとか茜ちゃんとは違う感じの速さじゃない?」

 

 「フヒ…どっちかと…言うとへ、ヘレンさんみが、あ…あるな…!」

 

 「何でもいいです…もりくぼ達が助かるなら…」

 アイドルを称する彼女達は突如として現れた刀を振るう少女──刀使達に目を白黒させながら驚く。

 

 「あのちっこいヤツの頭に乗ってるのデジモンか?」

 

 「いや、それっぽい気配無いし違うと思う」

 

 「ぐぬぬ…朕ですら倒せなかった敵をこうも容易く……」

 対しデジモン達はちっこいヤツこと益子薫の頭に乗ったねねに興味津々である。約1匹別の事を考えているが。

 

 「何か褒められているのか貶されているのか分からん事を言われている気がするが……連中の正体を知る為にもとっとと片付ける。キエーーー!」

 僅かに聴こえて来た声に目尻を動かしながらやる気がいまいち篭らない猿叫を上げ猟犬型を凪払う。

 

 「デジモン……やはり異世界絡みか」

 「とにかく片付けて、詳しい話を訊きましょう」

 薫が討ち洩らした荒魂をミルヤと智恵で仕留めていく。

 

 「おぉ…スゴいッスねあの娘ら…鎧袖一触ッスよ」

 

 「あの小さいツインテの娘の素振り、惚れ惚れするねー!打席を任せるなら一発の5番あたりかな?」

 

 「フフ…友紀さんは…相変わらず、だな…」

 

 「だな。酔ってないだけマシと思おう」

 

 「なんでもいいです……もりくぼをいぢめないならそれで」

 デジモン達に庇われる形で彼等の背後から刀使達の活躍を眺めるアイドル一行、しかし正面での戦闘にばかり夢中で背後から近付いて来た1匹の猟犬型の存在に気付けなかった。

 

 ──WhuoooOOOOO!!

 

 「えっ?!ぁやぁぁぁぁあ?!?」

 「ひぃぃぃいい??!!」

 「フヒッ?!」

 「うえっ?!」

 「わぁぁあああッ!?」

 

 「っ!?しまった!!何時の間に!!」

 

 「でもオレ達の技じゃ倒せない!」

 

 「くぅ…カタナの小娘共も間に合わんか?!」

 

 パートナーデジモン達がせめて己の身を盾にしようと動いた瞬間、轟く厳つい声と煌めくレーザー。

 

 「ロッククラッシャァァアアアッ!!」

 

 奇抜な六角形の光線が荒魂を一撃でノロに還す。

 

 「な、なんだッ!?」

 

 「アチッ?!」

 

 美玲が声と光線が来た方向に顔を巡らせ、マッシュモンは笠にかかったノロに思わず短い悲鳴を溢す。

 

 「ドリルゲキ、来ていたのですか」

 

 「この野郎、美味しい所取って来やがった」

 

 「あはは…」

 

 正面の猟犬型荒魂を全て片付けた薫達が合流する。そして彼女達が言う様にアイドルのここ一番のピンチを救ったのは黒鉄の戦士。

 

 「いやぁ、智恵さんを見掛けたもんだからのう。声を掛けようとしたらみんなして走り出すじゃないか。そんで、ワシのダグコマンダーにも荒魂反応があって……こりゃあもしかすると、と思い寄る人波を押し退けて着いてみたらお主達が荒魂と戦い始めた上に、変な生物までおると来たもんだ、取り敢えずは変身して、助太刀の前に謎の生物が敵かどうか見極めとったら…そこのオナゴ達に一匹賢しい荒魂が近付いてきおったでのう、慌ててロッククラッシャーを放ったんじゃい」

 

 と、経緯を解説するドリルゲキ。薫は些か呆れていたがミルヤは納得がいったのかふむと頷きデジモンを見やる。

 そんな中、アイドルの1人が絶句している事に智恵は気付く。

 

 「(もしかして撃鉄さんの姿に驚いてるのかしら?不思議な生物を連れているとは言え…まぁ早々信じられる光景では無いものね。)あの──」

 

 「ダ、ダグオン!?勇者指令ダグオンのドリルゲキ!!?本物ッスか!!?コスプレとかじゃなくて!?」

 

 ((((?!))))

 

 絶句から声を上げた眼鏡の女性の言葉に3人の刀使とゲキ本人は思わず戦慄する。

 

 「おい…聞き間違いじゃ無かったら今、ダグオンって言ったよな?コイツら異世界人じゃないのか?」

 

 「ええ、わたし達の世界には居ない生き物と友好的に接しているし、少なくともこの世界の人では無いはずよ」

 

 「その前に、そもそも勇者指令と言っていましたね」

 

 「本物…と言うのも気になるのう」

 

 4人からの視線を一挙に受ける眼鏡の女性。その迫力に思わずたじろぐ。

 

 「あっはっはっはっ!比奈ちゃん滅茶苦茶注目されてるね」

 

 「笑い事じゃないッスよ?!」

 

 「ガルルッ!ウチの仲間に手を出す気なら許さないぞッ!」

 

 「フヒ…い、一難去って、また一難。ってヤツだな」

 

 「もういやです……もりくぼは森に帰ります」

 

 「おうおう!ヤるってんなら容赦しないからな!」

 「さっきのバケモンには遅れを取ったけどオイラ達の仲間は守るぞ!」

 

 「ええい!朕の背中はモリクボの住みかでは無いと言っとるだろうが!!」

 

 約1名と1匹、コントの様なやり取りを繰り広げているが、彼女達とデジモン達が警戒心を顕にしたのを見て、智恵とミルヤが慌てて御刀を鞘に納める。

 薫の祢々切丸は何時もの如く抜刀時に鞘を破壊しているので回収班が来るまで抜き身のままだ。

 

 「どうする?」

 

 「一度、管理局の方にとも思いましたが……ダグベースに直接連れていった方が良いかもしれませんね」

 

 智恵とミルヤが顔を見合せそんな会話を交わす。

 

 「俺達じゃ連れてけないからな。ゲキ、お前のドリルライナーを今すぐここに呼べ」

 

 「ねっね」

 

 「言わんとする事は分かるが、益子よ、もう少し言い様ってもんがあるじゃろ」

 

 薫からの指示に頭を掻きながら言われた通り、ドリルライナーをコールする。

 

 「なっ…ダグベースにビークルもあるんッスか!?てことは他のメンバーも揃って……いやでも声は江川さんじゃないし……」

 

 「ヒナが何言ってんのかぜんぜん分からん」

 

 ゲキと刀使達の会話を聞いてぶつぶつと考え込む様に呟く比奈と呼ばれた眼鏡の女性。

 傍らの美玲は彼女の言っている事が一切理解出来ず首を傾げる。それは輝子や乃々、友紀と呼ばれた者達も同様のようで──。

 

 「ああ、菜々さんかプロデューサーがいたら話が速いんッスけど……とにかく怪しい人では…あるのか、…えっと、悪い人たちじゃ無いッス。少なくともそっちのヒーローみたいな格好の人は。だから状況を把握する為にもこの人たちに従いましょう」

 ジェネレーション差か、サブカルの差か、兎も角伝わらない感動にしょげつつも、この中で只1人"ダグオン"を知る比奈が率先して意見を挙げる。

 

 「フヒ…比奈さんがそう言うなら」

 

 「まぁユキよりは」

 

 「もりくぼは黙って従います」

 

 「ミレイが納得したなら」 「輝子が良いなら」 「朕は何でも良いぞ!」

 

 デジモン達もパートナーの意思を尊重しスマートフォン端末アプリケーション──デジヴァイスアプリ──へと還ってゆく。

 

 こうしてドリルライナーが到着、アイドル達を乗せた後、回収班が来たのを見届け、ミルヤが引継ぎ手続きを終え、刀使達3人も乗せてドリルライナーはダグベースへの飛び立ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・オーダールーム

 

 「で、シータのオッサンがあれから固まったまま動かねェンだけど、結局ドコの世界と繋がったんだ?」

 

 アルファにどの世界とゲートが繋がったのかを問われ、確認の連絡を同胞へと取ったシータ。しかし彼は絶句したまま二の句を告ごうとしない。

 

 「あ、そう言えば。さっき此処に来る前格納庫からドリルライナーが発進したみたいなんですけど…先輩何か知ってます?」

 一向に話が進まない為、蚊帳の外となった3人。雷火が申一郎に先頃出動したドリルライナーの件を訊ねる。

 

 「アァん?知らねぇよ。宇宙人が来たならそもそもレーダーなりなんなりに反応があんダロ?

 無いって事は、どーせ撃鉄のヤロウのキマグレか何かだろ?」

 

 「気紛れ…って、田中さんはそう言う方では無いでしょう?」

 

 申一郎が心底どうでも良さそうに適当な答えを返したので、寿々花が眉をひそめながら問う。

 

 「いやぁ此花チャンは知らないだろうけど、アイツドリルライナーが正式にロールアウトした時、メッチャはしゃいでたからな?」

 

 「そうなんですの?でも…それはその時だけの事でしょう?流石にあの方も良い年齢なのですから、もう弁えていると思うのですけれど…」

 

 「イヤイヤ…男ってのはいくつになってもバカやる時はやるもんだって」

 

 「あっ、噂をすればですね。ドリルライナーが戻って来ました。撃鉄先輩も乗ってます」

 側のコンソールで格納庫の状況を把握した雷火の報告に、寿々花がそんなまさかと若干の失望を懐きながら雷火の方を思わず見る。

 

 「あれ?先輩…だけじゃない」

 しかし雷火は何やら狼狽えた様子で言葉を続ける。

 どうやらコンソール近くのサブモニターで格納庫の様子を確認していたらしい。

 

 「アん?」 「何ですって?」

 雷火の、その言葉に2人ともして眉根を吊り上げる。

 

 「……ま、まさかっ!」

 

 「もう!結局ドコに繋がったんだってば!?」

 

 そしてそれを聞いたシータまでもが顔面を蒼白にしてたじろぐのでアルファは噴飯する。

 しかし程無くして、撃鉄が智恵達と共に連れて来た人物達を見て、彼もまたこの世の終りの如く顔面蒼白となるのであった。

 

 「う…ウソだ……そんなまさか……」

 

 「いや待てアルファ!まだそうと決まった訳ではない!まだ可能性はある!」

 

 「そ、そうだね!数字の方ならまだ大丈夫…いや現実大丈夫では無いけど、あくまでも事故で巻き込まれた被害者と言う可能性が残ってるし!」

 

 管理者2人があまりにも慌てふためくので、連れて来られたアイドル達も連れて来た撃鉄達も首を傾げたり戸惑ったりを隠せない。

 

 「何じゃ…一体奴らは何を狼狽えとるんじゃ?」

 

 「ってかアルファだけじゃなくて、シータも居るのか」

 

 「何だか汗びっしょりだけど、彼女達に何かあるのかしら?」

 

 「いきなり此処に連れて来たのは時期尚早だったのでしょうか?」

 

 連れて来た側の4人が顔を見合せて訝しむ。

 そんな中、アルファは意を決した様な顔で連れて来られたアイドル達の前に踏み出す。

 

 「コホン……え~(とりあえず話が通じそうな)、荒木比奈さん。君達が所属するプロダクションの名前を訊いても良いかな?」

 

 「えっ!?あ、はいッス。(何でこの娘?アタシの名前知ってる…?!刀使って娘達とダグオンの人はアタシ達の誰も知らなかったのに)えぇっと、ウチのプロダクションの名前ッスね。シンデレラガールズプロダクション、略してCGプロッス」

 

 そう比奈の口からプロダクション名が出た瞬間、共に膝から崩れ落ちる管理者2人。

 

 ((お…終わったーーー!?!!))

 

 「ありゃ、すんごい顔して崩れ落ちたね」

 

 「なんか失礼じゃないか」

 

 「フヒヒ…とりあえず謝っておこう…ごめんなさい」

 

 「もう訳が分からないんですけど…」

 

 俗に言うorzの形で悲哀を醸し出す管理者達にこの場に招待されたアイドル達は様々に反応を返す。

 そして崩れ落ちた2人はと言うと──

 

 

 (どうすんの!?完全な被害者から被害者加害者混合なのが確定しちゃったよ!!?)

 

 (どうしようもない!報告が確かなら二百近い人数がこの世界に現れた事になる。取り敢えずは彼女達のプロデューサーと原因と見られるアイドルを確保すべきだ!)

 思念で会話を交わすアルファとシータ。

 そんな彼等を放って置いて、アイドル達はオーダールーム内を思い思いに動き始める。

 

 「フヒ…ここの下結構良さそうだな、シイタケクンもそう言ってる…」

 

 「もりくぼは安全が確保されるまで引きこもります、帰る頃になったら迎えに来て下さい…」

 森久保乃々と星輝子はオーダールームのコンソールデスクの下に引きこもり。

 

 「ねぇ、ここって冷蔵庫無いの?ビールとかある?」

 

 「や、友紀さん…流石に遠慮しましょう?」

 手近な所を物色し始めた姫川友紀を荒木比奈がこの世界の住人達に申し訳なさそうにしながらやんわり止める。

 

 「ジロジロ見んなッ!」

 

 早坂美玲は申一郎からの視線に拾ってきた猫よろしく威嚇をしている。

 

 ──しかしこれは混沌のほんの一端でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「機人創造せし者の不可思議なる光に導かれしは異なる世界かっ!?(晶葉ちゃんの発明品に巻き込まれたと思ったら私たちが知らない日本に来ちゃった!?)」

 

 「せんせーどこー?」

 

 「あぁ…ここ最近ずっと幸せだったから、きっとわたしの不幸が働いてしまったんですね……」

 

 「見知らぬ場所で()()になってオー()()()ッド…うふふ」

 

 「フ…フフーン!ボクは異世界でもカワイイですね!!」

 

 「幸子ちゃん、足が震えてるゾ☆」

 

 

 

 

 「お兄ちゃん、紫さまー!変な人達がいるーーー!」

 

 「ふむ…年頃の少女と婦女子の集団か。確かに些か妙ではある…まぁ恐らくはアルファが仕出かしたのだろうが……紫様、念の為彼女達を保護してみます」

 

 「…………そうだな。違うにしろ話を訊く価値はあるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヘーイ!此処は私達の暮らしていた世界では無いわ!!」

 

 「にゃっ?!いきなり何を言い出すにゃ!!?」

 

 「そう……この世界は私達の知る理とは…違うのね」

 

 「アー…、ヘレンものあもプラーヴァ──真実を言ってます」

 

 「ムムム~ン!サイキックテレポーテーション!!」

 

 「むふふ、日菜子は遂に世界を渡る術を手にしてしまったようです」

 

 「杏はツッコミ切れないから友暉、あとよろしく」

 

 

 「はっ?!ふざけるなっ!!いきなりあの男にあんたらの所に連れて来られたと思ったら更に異世界だと!!ぼくはもうキャパオーバーなんだよ!?!」

 

 

 

 

 

 「うーん何か派手な人達がいると聞いて確認しに来てみれば……濃いなぁ……」

 

 「バサバサ、元気出して行きマショウ!」

 

 「荒魂ちゃんはいねぇのか…ツマンネ」

 

 「美少女に美女…選り取り見取りじゃないですか!テンション上がるぅ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「止せ!止めるんだ愛海!」

 

 「離して奈緒さん!目の前に色んなお山が選り取り見取り!あ!でも奈緒さんの奈緒山の感触も捨てがたい!?」

 

 「現状の把握の為にもまずは釣りをしたいのれす~」

 

 「釣り!スシダナ!ナターリアもやるゾ!」

 

 「待ってちがう」

 

 「輝次だっけ?あんたのデジヴァイス…D-スキャナーってのプロデューサーに連絡取れんの?」

 

 

 「残念だが私達のD-スキャナーは通信機能は搭載されていないんだ。それよりも彼方をどうにかすべきでは?」

 

 

 

 「落ち着いて十条さん!あの娘も悪気は無い…と思うから!!」

 

 「離してくれ岩倉さん!あのお団子頭の愚か者だけは許せん!」

 

 「いやぁ、個性的な方ばかりですねー。これは管理局の方に連絡を入れるべきか、管理者の人達に原因を訊くべきかぁ悩みまぁす」

 

 「新多、他人事じゃないぞ。まずは双方に連絡するべきだ」

 

 「…獅童に賛成する…。まぁ、十中八九……異世界案件だろうがな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「???…私、いつの間に外に出たんでしょうか?」

 

 「ゆかりチャン、寝惚けてる?」

 

 「ネットに繋がらない………。ここって私達が知る日本じゃないんだ…」

 

 「にょわ~……杏ちゃんもPちゃんも無事かにぃ?」

 

 「これが異世界なのですね!私とても感動しております!」

 

 「異世界と言っても、私達が居た世界との差異はあんまり無いみたいだけどね。とても度し難いけど」

 

 「それにしても焔也くんに舞衣ちゃんだっけ?悪いわね~お世話になっちゃって」

 

 

 「ホントホント!マヂありがサンキューって感じ?」

 

 

 

 

 「いえ……その早苗さんでしたよね?その帰る方法を探さなくて……」

 

 「いやまぁ…アルファ辺りに訊きゃ原因とかも解るんだろうけどさ。つーか安桜達はなにしてんだよ」

 

 「えっ?だってアイドルだよアイドル!むしろ先輩はどうしてそんな落ち着いてんの?!ね、清香!」

 

 「だね!アイドルの人達のファッションセンスとか参考になります!あ、伊墨ちゃんも勿論参考になるよ!」

 

 

 

 

 しかしてこれすらもまだ氷山の一角、これはまだ始まりに過ぎない。

 

 

 DAY2へ続く

 


 

 エイプリルフール予告(BGM:お願いシンデレラ)

 

 ふっはっはっはっ!次回予告は戴いた!

 

 誰だあんた?!

 

 え?う~ん……よし。我が名はモバP!Cu、Co、Paの全ての属性を担当せし者!!

 

 ふざけて…はいないみたいですね。

 

 モバPって何だヨ、偽名感マシマシじゃねぇか。

 

 ……ふざけた様に見えて、それなりに出来る者の様だ………。

 

 それで、アルファ達の言い分が正しければ…彼が担当するアイドルが今回の原因らしいが…。

 

 シータさんによるとプロデューサー?さんにもいくらか原因の一端があるとか。

 

 それよりもじゃ、二百人近い人数をどう面倒見るんじゃ?

 

 

 次回、プロジェクトとじドルDAY2!

 

 目指せアイドルマスター!ピッ○ッカ○ュー!

 

 アウトだよ?!





 はい、ネタバレですがアイドルに加え数人他のキャラも居ますが、別にアイドルの方は全員台詞はあっても活躍は書ききれないので、DAY2でハイライト気味に全員集合した後、数人残して元の世界に帰ります。
 元の世界での仕事もありますからね!

 大分内輪なネタですが、エイプリルフールなんで大目に見て下さい!はっちゃけたかったんです!

 それでは次回


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エイプリルフールDAY2 プロジェクトとじドル【目指せアイドルマスター!】

 こんばんは。DAY2です。
 え?もう6日だろうって?リアルとはリンクしてませんからセーフ!(謎理論)
 
 この回でアイドル全員集まりませんでした!申し訳ございません!
 改めて本当に多いなっ!シンデレラのアイドル!



 前回の"とじドル"!!

 

 ちょっと!?タイトルからして変わってるんだけど?!

 

 えー、だってアイドルと言ったらプロデューサーたる俺ちゃんの領分じゃない?

 ならタイトル乗っ取っても良いよネ♪

 

 うわーーーん!!?

 


 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 「要するに、皆さんが居た世界ではデジタルモンスター…通称デジモンと言う生物が電脳空間を通じて存在する異世界に生息しており、(わたくし)達人類が造り出した電子機器に影響を与え事件を起こす事が茶飯事な世界なのですね?」

 

 「茶飯事って言っても10年くらい前までで、ここ最近はまちまちって感じだけどね~」

 

 「ッスね、プロデューサーが選らばれし子供やってた頃はそもそも存在すら不確かだとか囁かれてたらしいでスし、アタシもアイドルするまで都市伝説の類いだと思ってましたから」

 

 オーダールームにて此花寿々花が今回の異変の関係者である女性達──荒木比奈、姫川友紀から事情等を聴取している。

 因みに鎧塚申一郎、衛藤雷火両名は早坂美玲の証言を元にSNSを利用し他のアイドル達を捜索しに出掛けた。

 勿論、万が一の為にと各々刀使の協力者と共に行動している。

 

 「よろしいかしら、その選らばれし子供と言うのは…何ですの?」

 

 「簡単に言うとデジタルワールド…デジモン達が居る世界ッスね。それに選ばれて喚ばれた子供の事を指すッス。まぁ実在が発覚するまではアニメの設定だとばかり思ってたんッスけど」

 

 「その口振りでは、一部の層にはデジモンは認知されていたのですね。しかも大衆娯楽として」

 

 「あっ、麦茶おかわりしていい?」

 

 「「……………」」

 友紀の空気を読まない発言にその場の空気が白けた。

 

 「麦茶でも良いんだ……」

 給仕服(メイド)に身を包んだアルファが、盆におかわりを載せながら呟く。

 

 「置いてないならしょうがないしね!」

 カラカラ笑う友紀に比奈も含め呆れた顔になるオーダールームの面々。

 

 その後も比奈や時折混ざる友紀、乃々・輝子から詳細を聞き取る寿々花。

 余談であるが美玲は"お花を摘みに"行って不在である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━秋田県某所

 

 「いやぁ…ありがとう暁。それと鳥喰さんも」

 

 「私からも、ありがとうございます!多分私達だけじゃ迷っちゃったとおもうし」

 

 「や、別に良いけどよ……アタシらも暇してたし」

 

 「はい!優稀もリハビリ復帰後の本格参加に気合い充分です!」

 

 高速の県道を走るバイク2台、片方は白と黄色のツートンカラーのサイドカー。

 もう片方はバリバリに改造を施した紅のビッグスクーター。

 サイドカーを駆るのは衛藤雷火。フルフェイスヘルメットに内蔵されたインカムで並走するビッグスクーターの主に礼を述べる。

 そしてサイドカーのサイド部分に座るのは彼の妹にして最強の刀使の呼び声も高い衛藤可奈美。

 ゴーグル付属のハーフタイプヘルメットを被り、バイク乗り達とチャンネルを合わせたインカム越しに兄に倣って礼の言葉を伝える。

 

 そのビッグスクーターに跨がりマフラーを蒸かせるのは美濃関の制服の上からスカジャンを羽織った紅いメッシュのスケバン刀使(但しスカートは短い)稲河暁。

 始めての長距離感の同乗者有りの移動、高速状況での互いに会話を交えるに辺りスクリュークォーターズ型ヘルメットにインカムを搭載している。可奈美同様ゴーグルで眼だけ覆っている。

 そんな暁の後ろのシートに座っているのは、綾小路の制服を纏う刀使鳥喰優稀。

 彼女のヘルメットはオープンフェイス型で顔面保護はシールドなので、会話の聞取りは良好だ。

 

 さて、何故この面子なのかと言えば、アイドル捜索にあたって人手を欲した雷火が先ず声を掛けたのが妹の可奈美。

 会話の途中出向く場所が秋田だと小耳に挟んだ暁が、詳細を訊ねるとアイドルに関して説明を受け、雷火から出身なら詳しいのではないか?と土地勘を買われ渋々同行したのである。が、そもそも雷火の困った性質を知る暁は外面は渋面を作りながらも、何が起こるか解らない兄妹を放って置くつもり等無く、話を聞いた時点から同行するつもりであった。

 優稀は人手が必要となると聞いて、暁が呼び寄せた。

 

 程無くして都心部に入り、並走から追走へと切り替える。前が暁達で後ろが雷火達だ。

 

 「で、そのアイドル連中はどんな特徴なのか聞いてんのか?」

 

 「姫川さんや荒木さん曰く、着の身着のままで気付いたらいたらしいから、人が集まる場所に行けば手掛かりはあるんじゃないかな?」

 

 双方バイクを駐輪し駅近辺から捜索に入る。

 

 「それじゃあ、僕と可奈美が北側で暁達が南側を──」

 

 「待て待て待て!アホかお前?!何の為の案内役だよ!!?お前ら兄妹だけで、見ず知らずの土地を回るとか迷うに決まってんだろ!!

 いや迷うね!特に雷火!お前は目を離した瞬間には絶対に迷う!!雷火はアタシと!優稀!お前は可奈美の方に着いててやれ!」

 

 「了解です!」

 

 雷火がチーム分けを提案するのだが、そこに暁が待ったを掛けて編成にメスを入れる。

 と、言う訳で改めて雷火と暁、可奈美と優稀で適当に当たりを付けて探索する事2時間少し──

 

 

 

 

 

 

 

「あのぅお客さん、試飲なんでぇあんまり飲まんでいただげるど……(隣の丸いのなんだぁ?)」

 

「姉ちゃん、良い飲みっぷりだんなぁ!!(何かの撮影かね?)」

 

 「ふふ、十和田ワインに天鷺ワイン…どちらも美味ね」

 

 「甘露、甘露。人の造る酒も善き哉善き哉」

 

 「あぁあぁ、し、志乃さん!?バ、バッカスモンさ早ぐしまってくだせえ……!?」

 

 「沙織殿ー、そう慌てずともよろしいかとー。りあらいずの出力容量を絞って顕現しているのですから、バッカスモンもせいぜい着ぐるみ程度にしか見られぬかとー。万が一の時はわたくしが何とかいたしましょうー」

 

 「芳乃ちゃん心強いです!でも流石に志乃さんは止めないと沙織ちゃんだけじゃ大変だし、わたしも応援するから頑張って!ね?卯月ちゃん!」

 

 「はい!島村卯月、頑張って志乃さんを止めたいと思います!」

 

 

 「拝啓、輝次。兄は今己の無力へ直面しています」

 

 見付けた──可奈美と優稀チームが一際目立つ集団盛りを見付け近寄ると、ワインの街頭試飲にて妙齢の美女が謎の赤紫色のマスコットの様な奇妙な生物と共に秋田県産のワインを飲み続けている。

 そんな美女を止めんと眼鏡にそばかす、お下げの少女が慌てふためき、そのすぐ側で着物姿の小柄な少女が間延びした口調で諭す。

 その更に傍らにチア姿の茶髪のポニーテール少女と、これと言った秀でた特徴は無いが美少女である事は間違い無い緩いウェーブがかかった黒髪長髪の少女(強いて言うなら臀部の形が良い)が何処か抜けた返しをしている。

 更に視線を移すと肩口まで切り揃えたセミロングの髪の青年が、何かに打ちひしがれた様に沈んでいるではないか。

 

 「おやー?」

 

 「芳乃ちゃん?」

 

 着物の少女──芳乃と呼ばれた少女が可奈美達を見て、僅かに思案した後、トテトテと此方に駆け寄って来るのだ。

 

 「えっ?えっ?優稀達の方に来てませんか?!」

 

 「もしかしなくてもあの娘達がそうなのかな?ちょっと雷兄に連絡するから優稀ちゃん、話を訊いてみて?」

 戸惑う優稀を尻目に管理局の端末から兄、雷火に電話を掛ける。

 

 「ほー?」

 

 「あ、あの優稀達にご用でしょうか?!」

 

 「そなた達はー、神巫女でしてー?」

 

 「ふぇっ?!」

 

 「うむー、間違いありませんー。そなた達に着いてゆけばあの者や他のアイドル達とも合流出来ませりー」

 喋り方が剰りにものんびりとしているにも関わらず、優稀が返事を返す間も無く話がトントン拍子に進んでゆく。

 

 「可奈美ー!鳥喰さーん!……ってもしかしてその人達が?」

 間も無くして雷火、暁が合流する。

 その間、戸惑う優稀に代わり、打ちひしがれて沈んでいた青年こと、神影吼弌から可奈美が仔細を聴いていた。

 

 「コイツらが例のアイドルか……アイドルって何だよ……」

 あまりにバラエティーに富んだ彼女達に暁の中のアイドル像がゲシュタルト崩壊してゆく。

 その後、この人数をどう移動するかと言う話しになり、雷火の案で人気の無い場に移動し、サンダーシャトルにアイドル達を乗せ、自分達はバイクで地上を走りダグベースに帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━徳島県某所

 

 「サテ…と、シータのオッサン曰く四国は徳島県のドッカに反応が有ったらしいが…」

 

 「そこは地道に探索するしかないでしょうね」

 

 「人探しだけなら戦闘とか無い…よね?それにしてもアイドル…アイドルかぁ…ごくり…」

 

 「伊南さん、その考えは浅慮です。目標発見時、荒魂が出現していたと、撃鉄さんも仰っていました。油断は禁物かと」

 

 「そうね。皐月さんの言う通りだと思うわ。決め付けは良くないわよ栖羽」

 

 アーマーライナーより降り立った申一郎、播つぐみ、伊南栖羽、皐月夜見、朝比奈北斗。

 彼、彼女達が捜索の為に徳島県の地に立つ。

 一先ず当然の帰結ではあるが、アーマーライナーを目立たぬ場所に下ろした申一郎は、地方としては手狭な面積であろうとも、この広大な土地を都市部とは言え探さねばならないのかとげんなりしていると……。

 

 「何と衝撃的な光景、事務所にてはーちゃんと駄弁っていたかと思えば光に包まれ生誕の地に凱旋、しかして我が家と愛しのゆーこちゃんが何処にも居ない。はて…?これは新手の神隠しでしょうか」

 

 「なー!微妙に韻を踏んで実は余裕あったりするの!?」

 

 「お、落ち着いて颯ちゃん…。きっと凪ちゃんはみんなを元気づけるつもり……なのよね?」

 

 「ムムム、これは私史上最大のミステリーです!この安斎都、必ずやこの謎を解き明かして見せましょう!」

 

 「都ちゃんは元気ね。ウイッチモン!空からはどんな感じ?」

 

 「それなんだけどレナ、後ろの方にシンカンセンみたいなのが降りて来たわ。そこから今ニンゲンが何人か出て来たけど…」

 

 「もしや…先程の突風がそれでしょうか?」

 

 距離にしておおよそ数kmの地点にて姦しい集団を発見、会話の詳細こそ聞き取れなかったが1人、空の方を眺めていた女性が申一郎達の方へ振り返る。

 

 「アァらら、楽勝で見付かっちゃったヨ。幸先良いのか…それとも悪いコトの前ブリなんかね」

 

 「恐いこと言わないでくださいよぉ~?!見付かったんなら帰りましょう?早く!」

 

 「伊南さんとても必死ですね~、私的にはデジモンなる生命体に興味があるんですが」

 

 「まずは彼女達に接触して、此方の素性や目的を話しましょう」

 

 「そうですね。朝比奈さんの言う通り、我々が彼女達に害のある存在では無い事を伝えましょう」

 申一郎が妙な事を口走るものだから、栖羽がとても怯えながら帰ろうと促す。

 つぐみはつぐみでデジモンに興味津々でハプニングを期待している節があり、まともに話を進めているのは北斗と夜見だけである。

 途もあれ、ジッとしている訳にも往かぬが故なるべく怪しまれぬ様に、まず手を大きく振り、敵意が無いとジェスチャーをしながら歩み寄る。

 

 

 「ええっと…貴方達は……?」

 

 「~♪スゲェ美人!それが二人にカワイコチャンも三人も」

 

 「申一郎氏は相変わらずですね。ある意味呼吹さん並に単純と言うか」

 

 「わ、わっ?!もしかしてナンパ!?しかも既にまわりにイッパイ綺麗な女の子がいる!?」

 

 「わお、いけませんはーちゃん。こんな四又クソ野郎を直視しては教育に悪いぞ」

 近付いた申一郎達を見て、未亡人の様な雰囲気を持つ大人しそうな女性が恐る恐る訊ね、双子と思われる少女達が散々な事を言ってくる。

 

 「安心して下さい。彼と我々はそんな関係ではありません。私達は異世界の日本から迷い込んだ貴女方を保護しに来ました」

 

 (良かったぁ…怖そうな人は居ないみたい。まあ、そうだよね、アイドルだもんね!ぁあ可愛いなぁ!私としてはちょっとマイナーな地下アイドルグループが推せるんだけど…この娘達もイイなぁ)

 

 (この娘はまた妙な事を考えてるわね…)

 栖羽の顔を見て北斗は内心呆れる。

 

 「ふ~む……嘘は付いていない……気がします!しかし異世界!!?ここは異世界の日本だったとは…」

 

 「そう…ですね、悪い人では無いように思えます」

 

 「まぁ…手掛かりとか無いのも事実だものね。ウィッチモン!順兵君を呼んで戻って来て!」

 

 「分かったわ!」

 この中で最もスタイルの良い女性が上空の影に声を掛けこの場に居ない誰かを呼び戻す事を指示する。

 程無くして恰幅の良い人好きする糸目の青年が合流、空からは深紅の魔女が箒に跨がったまま降り、スタイルの良い女性のスマホに消えてゆく。

 こうして申一郎のグループもアイドル達の保護を完遂した。

 一応の戦闘が無かった事に栖羽は心底ホッとしていたが、彼女はそもそも捜索がこの一回だけで済む訳で無い事を正しく理解していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──それから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 

 「う~んみんなが見付けて来たアイドル、この時点でもかなりの人数いるねぇ」

 オーダールームメインコンソールを臨む椅子に座るアルファが溢す。

 共に居るのはダグオンの頭脳、燕戒将と渡邊翼沙。刀使側からは折神紫に此花寿々花、皐月夜見、木寅ミルヤ、柳瀬舞衣、古波蔵エレンそして日高見麻琴。

 

 「先ず俺が紫様、結芽とダグベース近域で保護したのが神崎蘭子、龍崎薫、白菊ほたる、高垣楓、輿水幸子、佐藤心。翼沙達がヘレン、前川みく、高峯のあ、アナスタシア、堀裕子、喜多日菜子、双葉杏。

 龍悟達が、神谷奈緒、棟方愛海、浅利七海、ナターリア、栗原ネネ、桐生つかさ。

 焔也達が…水本ゆかり、喜多見柚、大石泉、諸星きらり、西園寺琴歌、八神マキノ、片桐早苗。そして雷火班が柊志乃、奥山沙織、依田芳乃、若林智香、島村卯月。申一郎班が久川凪、颯の双子の姉妹、三船美優、安斎都、兵藤レナ、古澤頼子の三十七人。此処に撃鉄達が既に保護した五人を含め計四十二人」

 

 「それに加え、御堂輝次、神影吼弌、風羅伊墨、雷門順兵、氷野友暉と言う…アイドル達の世界とはまた違った世界から来たと言う五人、合わせても四十七人なので約四分の一です」

 

 「違う世界同士にも関わらずデジモンを知る…か、その少年達は彼女達のプロデューサーとされる人物の関係者なのか?」

 

 戒将と翼沙が列挙した名前、戒将がアイドルを、翼沙がアイドル達と共に現れた別の異世界人と思わしき少年少女の名を挙げる。

 そして寿々花からの報告含め、デジモンという特異生命体の存在に思考を向ける。

 

 「はい、荒木さんから聞いた話しによれば彼等は彼女達のプロデューサーが何処からかアルバイトとして連れて来たそうですわ。それでこの五人以外に後一人いるとか」

 

 「現在、デジモンに関しては播つぐみさんがここの研究施設を借用しデータを収集中です。高津学長にも手伝って貰って」

 寿々花、夜見が現在判明、または進行中の情報を報告する。

 

 「そうか。アイドル達の方はどうだ?」

 

 「ダグベースに集まったアイドル達はカナミン、ミホミホ、薫…あ、キュートな方と被っちゃいマスね。私達の世界の薫にユイ、ユウキ、キヨカがサロンの方で応対してマース」

 

 「あちらは成人の方も何人かいますから目立った混乱は無いみたいです」

 紫が保護アイドルの現状を確認すればエレン、舞衣が報告を述べる。

 

 「と、なると…残るは未発見未保護のアイドルの行方と件のプロデューサーとやらに別世界人最後の一人、灯拓哉なる少年の確保か」

 

 「未発見の方々については私達日高見の方で私の裁量で動かせる人員を使って捜索しています。私がお役に立てるのはこの程度ですが……」

 

 「肝心のプロデューサー、及び灯拓哉氏ですが管理局本部の方に残って貰っている糸見沙耶香、鈴本葉菜両名の方からもそれらしき人物を見付けたとの報はありません」

 未だ見付からぬ面々への対応、対策に麻琴が舞草に属す自身の派閥を動かして捜索に協力してくれると言う報告だ。

 

 一方ミルヤからは管理局内で荒魂征伐に出た部隊からの報告の中に見慣れぬ人物が居たかどうかと言う物を沙耶香、葉菜を通じて受け取っているが、それらしき人物の情報は無く、現在も手掛かりは無いと告げる。

 

 其処へ結芽が入室して来る。

 

 「ライアンとキッドくんにも頼んだけど…大丈夫かな?」

 

 「直に接触するのは無理でも奴等のセンサーがらしき人物を捉えれば此方に報告が来るだろう。まぁ…彼等が五体満足でいる事を願うが」

 結芽からライアン、ガンキッドの出撃を聞き戒将が答える。

 

 「俺もターボライナーで再び出る」

 

 「私もついてくー!」

 

 「(わたくし)もお供しますわ。紫様、此方の方は後はお任せしても?」

 

 「ああ、管理局本部からの情報、日高見派からの情報も含め私が此処で監督しよう。夜見、ブレイブ星人、手伝ってくれるか」

 

 「承知致しました」

 

 <無論だ。罪無き者達が見ず知らずの地で果てる事となるなど見るに忍びない>

 

 紫からの命令に近い確認ににむべも無く返事を返す夜見と呼ばれ応えるブレイブ星人。

 

 「あれ?ボクは?」

 

 「貴方は何か役に立ちそうな装置を作ってみては?」

 やる事を割り振られなかったアルファにミルヤが雑に提案をする。

 

 さてダグオン達は班構成を微妙に変え、再び捜索に乗り出す。

 中には捜索中、征伐混成部隊からの報告で発見されたアイドル達を回収に行く事も──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━島根

 

 「失礼を承知でお願いがあります!珠美に、珠美にその刀を触らせては貰えないでしょうか!!」

 

 「珠ちゃんってば必死になってるわね~」

 

 「いやしかし、珠実殿の気持ちあやめも分かりまする。わたくしも目の前に本物の忍者が現れたらと思うと……」

 

 「う~ん?このカード……運命の輪。もうすぐアタシ達にとっての救世主が現れる……って感じの意味かしら?」

 

 「なんだいハッキリしないね朋は」

 

 「でもそこが朋ちゃんの良いとこじゃない?」

 

 「うふふ、きっと大丈夫ですよ。そんな予感がするんです」

 

 「茄子さんがそう言うにゃらっ!……うぅ噛んじゃった…」

 

 「大丈夫ちゃ?」

 島根に現れた荒魂を征伐を終えた混成部隊綿貫隊の前には年齢も疎らな女性達が居た。

 より詳細に表記するならば、和美率いる部隊が到着する前、このアイドル達と共に居た謎の生命体が大型の荒魂2体と取り巻きの小型数体を討伐していたのだが……。

 

 『珠美、相手が戸惑っているぞ』

 件の生命体ことデジモン──脇山珠美のパートナー、ガイオウモンが呆れた声を出す。

 

 『ふむ…皆、一応に腕に覚えがあると見た』

 同じく浜口あやめのパートナー、レイヴモンも見定める様に刀使達を睥睨する。

 この2体のパートナーである珠美、あやめの端末はスマホではなくプロデューサーが持っていた物をダウングレードしたデジヴァイス。

 

 『姫は落ち着いておりますな』

 因みに共にいる丹羽仁美も同様の端末を所持している。その端末より声を出すのは彼女のパートナーデジモン、オウリュウモンである。

 彼だけは戦闘には参加を見送られているのは朋からの待ったが入ったからだ。

 

 「落ち着いて、我々は刀剣類管理局特別祭祀機動隊の者です。まずは話を聞かせて下さい。(何者かは分からないけど…恐らくダグオンに関係しているのでしょう)──それと申し訳ありませんが御刀は不用意に一般の方には触れさせられませんので悪しからず」

 和美も流石にこれまでの経験からおおよそ何に絡んでいるのか察しているのか、事を荒立てぬ様に穏やかな口調を心懸けて諭す。

 

「隊長!来ました!」

 

 隊員の1人が和美にそう声を掛ける。何が来たのか?最早問い返すまでもない。

 ダグオンが到着したのだろう、見ればファイヤージャンボとシャドージェットが上空に飛んでいるではないか。

 しかし目の前の謎の怪生命体と行動を共にする少女達は違う様で、特に垂直にホバリングして降下するファイヤージャンボを目撃し、大いに驚いていた。

 

 

 

 また、同時刻別の場所にて──

 

 

 

 ━━鹿児島某所

 

 「これで終わり…。ふぅ、仕方無いけれど…中々本を読む時間が作れないなぁ」

 美濃関学院の刀使福田佐和乃が隊員が討ち洩らした荒魂を1匹追って討伐せしめた際の事。

 直ぐに仲間の元へ戻ろうと踵を返した時洩らした一言、それに合わせる様に木陰がガサリと揺れる。

 

 「ちょっとあずきちゃん!?」

 「いやだって、ちょっと柚ちゃんに声似てたし…!」

 「分かります。雰囲気なんか全然違うんですけど、似てますよね」

 「あ、穂乃香ちゃんもそう思うんだ。柚ちゃんだけ見つからなかったから、私もちょっと勘違いしちゃったし」

 「皆さん無事でしょうか!!?」

 「わっかんないけど無事しょっ!」

 

 すると最初は何者かの小声での会話が聴こえていたのだが、最後の方でやたらハッキリと聴こえるボリュームで女性の声が佐和乃の耳に届く。

 

 「誰かいるのっ!!?」

 

 鞘に手を掛け、"何時でも抜ける"状態を隠れている側にも判る様に見せる。

 すると声がした場所から慌てた様に飛び出す複数の影。

 

 「わっ!?待った待った!!アタシ達怪しいモンじゃないから待ったーーー!!」

 

 「そうです!私たちは怪しいものではありません!!」

 

 いの一番に佐和乃に待ったを掛けたのは後半に聴こえて来た声のデカい2人の物。

 片や染めているのか金髪のベリーショートにピアスといったパンクな女性。片や小柄だが元気溌剌を体現した様な茶髪の長髪を大きくポニーテールにしている少女。

 普段から声が大きいのか、より大声を発すると耳が痛くなる程声が轟く。

 途もあれ、悪意の有る相手では無いと判断した佐和乃は御刀から手を離し、自らももう敵意は無いと身振りを見せる。

 

 「あの、大丈夫ですから…隠れている方達も出て来て下さい」

 元々人当りの良い人格者である佐和乃は、相手が下手人で無いと分かれば話易い少女である。

 当人の穏やかな人相、他方評価でも評判の良いそれなりのコミュニケーション能力を以てすれば彼女等の目的、状況を聞き出す事も容易く、何よりほぼ数名の者と歳が近いのも事が上手く運ぶ事となった。

 

 さて、では先ず、佐和乃が遭遇したもうた者達だが、先の声が大きい2人──仙崎恵磨、日野茜を筆頭に佐和乃の声にやたら反応を示す桃井あずき、綾瀬穂乃香、工藤忍。

 そして最年長者、川島瑞樹と言った顔ぶれ。特に瑞樹は年長者だけあって状況には困惑こそすれど他の面々の様に逸っておらず、会話もスムーズに進んだ。

 結果、異世界絡みの案件ならば一先ずは部隊の仲間と合流し、管理局に一報を入れ、可奈美や美炎等ダグオンと親しい繋がりがある者に接触を頼めば良いのだ。

 そうして、仲間の元へ合流すれば何時の間にやら同じ部隊に配置された鎌府の玉城真梨江がどうやら佐和乃と同じ様な状況で彼女が遭遇した異世界の少女達と同郷の少女達を連れていたらしく、かなりの大所帯となった。

 真梨江の方は幼年の者が多く、真梨江に手を牽かれていた佐々木千枝を筆頭に、古賀小春、的場梨沙、橘ありす、赤城みりあ、乙倉悠貴、メアリー・コクラン、柳瀬美由紀、日下部若葉、そして保護者と目される西川保奈美の計10名。

 何やら若葉が自分は成人済みと抗議を上げ、保奈美もまだ未成年と主張しているがとてもそうは見えない。

 兎に角詳細を聞くにせよ、管理局へ連絡を取る為に拠点としている宿に戻らなくてはと隊内合意の元異世界から来たアイドルを引き連れ宿屋に歩く事小一時間ちょっと、なんと空からターボライナー、アーマーライナーが此方目掛け飛んで来るではないか!

 生憎と宿の土地がそこまで広く無かったが為に多少離れた場所に着陸したが、佐和乃達としては有難いかな、アイドル達を彼等に任せる事にする。

 ダグオンの方からも彼等と直接共闘する機会の多い刀使を共に連れている上、茜達や千枝達と同じアイドルの女性、または少女を同行させている為、これまたスムーズに話は進み、引き渡す事と相成った。

 真梨江だけが融通が通らず管理局にも報告すべきと主張したが、ダグオン側に同行している寿々花が既に大まかな概要は通達済みと説いた所、不承不承を僅に滲ませつつも引き下がる。

 さてあれ、最後に出逢って僅か数十分程度とは言え、懐かれた千枝との別れを真梨江が惜しみつつもアイドル達はダグベースへと向かう。

 

 そうして幾人かのアイドルは荒魂征伐に派遣された特祭隊刀使の混成部隊と接触があり、多少戦闘に巻き込まれた者も居るものの、パートナーデジモンの力も有って難を逃れダグオンに保護、または管理局経由にて合流という流を繰返し割合にして残り10数名となったのであった。

 

 

 

 

 

 ━━ウイングライナー客車内

 

 「これで残すは後何人だったか……」

 ウイングライナーに同乗した姫和が疲れた声色で呟く。

 「今現在、ダグベースに向かってる報告のあった保護してきたアイドルさん、アイドルちゃん達は並木芽衣子さん!福山舞ちゃん!太田優さん!十時愛梨さん!高橋礼子さん!多田李衣菜ちゃん!月宮雅ちゃん!原田美世さん!篠原礼さん!藤原肇ちゃん!上田鈴帆ちゃん!北川真尋ちゃん!小室千奈美さん!ケイトさん!榊原里美ちゃん!緒方智絵里ちゃん!上条春菜ちゃん、相川千夏さん!伊集院惠さん!愛野渚さん!五十嵐響子ちゃん!大沼くるみちゃん!斉藤洋子さん!城ヶ崎美嘉ちゃん!莉嘉ちゃん!関裕美ちゃん!長富蓮実ちゃん!いやぁ多いですねぇ~!しかもみんなひじょーに麗しい美女、美少女ばかり!申一郎先輩じゃないですけど、滅茶苦茶テンション上がりまくりです!」

 同じく同乗している由依の言葉である。なる程、彼女が言う通り、とんでもない人数だ。

 「由依はいつも通り」

 先頃保護したアイドルを相手にしていた沙耶香が短く言う。

 「さらに私達が新たに見つけたアイドル達も加えたら百人はいきマース」

 同じくアイドルと談話していたエレンも会話に交ざってくる。

 

 「肝心のプロデューサーなる人物は見付からなかったがな…」

 

 「うん、後…灯拓哉って人も居なかった。みんなが来た原因、池袋晶葉?も居ない」

 姫和、沙耶香が言う様にアイドル達はそれなりに見付かったが肝心の重要参考人物とそもそもの発端が未だ見付かっていないのだ。

 

 「プロデューサー……まだ、見つからない…?」

 そんな刀使達の会話に反応して口を挟んだのは、青艶のある姫カットの長い黒髪が特徴的な物静かなアイドルの少女佐城雪美。

 愛猫の黒猫ペロと共に沙耶香と戯れていたアイドルだ。

 

 「プロデューサーも志希ちゃん並にフラフラする時は、ホント見付かんないからね~にゃははは!」

 雪美の反対側の席で簀巻き状態で拘束されているの白衣の少女、一ノ瀬志希が愉快そうに笑う。

 

 「笑い事じゃないっすよ志希ちゃん、や…プロデューサーの事だから荒魂?って言うの相手でも無事かもしんないっすけど」

 その志希の横で彼女を見張って(介護して)いるのは、ボーイッシュなスタイルのストリートアーティスト系アイドル吉岡沙紀。

 

 「プロデューサーちゃまですもの、きっと既に他の方達を見つけているかもしれませんわ」

 その後ろ、上品な佇まいで座る雪美と同年代の金髪の少女櫻井桃華が優雅に告げる。

 

 「ももちゃまの言う通り!あのプロデューサーだもんね。それより秘密基地ってのが未央ちゃんは気になりますよ」

 エレンの隣に座っていた外はね気味のショートカットの少女がやや大袈裟に唸る。

 

 「ライラさんもー」

 そして恐らく良く意味を理解しないまま、同意を示す金髪褐色にターコイズブルーに輝く宝石の様な瞳のライラが可愛らしく挙手する。

 

 「ドーナツあるかなぁ」

 手持ちのドーナツをのそのそ──もといモソモソ食している椎名法子。

 

 「これ、どうやって飛んでいるんでしょう?(ガソリンでしょうか?)」

 キョトンとした顔で窓の外を眺めるは長めの黒髪をポニーテールに纏めた大和撫子、水野翠が胸中で妙にズレた思考を浮かべている。

 

 「新幹線が空を飛ぶか……これもある種のロックかね」

 染めた金髪をリーゼントにした少女、木村夏樹が乾いた笑いを溢す。

 

 「フッ、本当にこの事務所は退屈しないね。まぁ些か突飛な事が多すぎる気もしないでも無いけど…僕は概ね満足さ」

 ニヒルに格好付けているのはエクステを着けた少女、二ノ宮飛鳥。

 この計10名の他、隣を並走飛行しているドリルライナーに財前時子、成宮由愛、涼宮星花、宮本フレデリカ、松尾千鶴、沢田麻理菜、矢口美羽、松本沙理奈、結城晴、松原早耶が新たに同乗している。

 

 「うんうん、皆さん驚いていますね!私も驚きましたとも!サイキックビックリです!」

 新たな保護にあたって顔見知りの同乗者として選ばれた裕子がアホっぽい事を言って感心しているのはご愛嬌。

 これにより現在ダグオン達が接触、保護したアイドルは100名を越える事となった。

 果たして彼等は無事迷い込んだアイドル+αを全て集めきる事が出来るのであろうか───!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉市内某所

 

 そして件のプロデューサーを含む一行は──

 

 「あー、やっぱり。跳ばされたのは基本デジモンのパートナーが居るかデジタマをデジヴァイスアプリ内に保有してる面子ばかりかぁ、そりゃアイドルは全員跳ばされるわ!」

 

 「ふむ、そうなるとCuP(華籠)CoP(金剛)Pa(陽向)各Pはこちらに。ちひろさんや武内、米内、内匠の3プロデューサー、トレーナー姉妹はあちらに残ったままか」

 

 「そうなる」

 

 「てか、灯って人、一人にして大丈夫なの?」

 

 「問題無し、ノープロマンタイ。自前で自衛の出来る貴重な単体戦力だ。晶葉や加蓮、光に俺が付いてる以上、奴さんは単独で他のアイドルを探させた方が効率が良い─(と言うのは建前で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってのが本音だけど)」

 

 ((またロクでもない事考えてるなぁ))

 

 「プロデューサー!早く他のみんなを探そう!」

 

 「オケ。でも一人はすぐ見付かるぞ」

 

 「うん?」 「あ、それって…」 「まぁ、どういう理屈か解らんが確かに彼女なら…」

 

 「まゆーーーー!!」

 

 「はぁ~い♪うふふ、貴方のまゆですよぉ」

 

 「うわっ!?まゆさん!良かった無事だったのか!」

 

 「うふ、心配してくれてありがとう光ちゃん。まゆはこの通り元気です」

 

 (本当にまゆはプロデューサーが呼ぶと何処からでも出てくるよね)

 

 (未だにあのメカニズムだけは解明出来ん)

 

 という珍道中を繰り広げていた。

 

 (さぁて、都心以外はダグオンにお任せしますかね)

 街頭ヴィジョンを眺めながら、プロデューサーと呼ばれた男は密かにそう企むのであった。

 

 DAY3に続く

 


 

 エイプリル予告(BGM:FIRE!)

 

 えっ?!予告!!?私が?

 

 頑張れ!美炎!

 

 コヒメ……。うん、分かった!私頑張る!

 ダグベースに次々と集まるアイドルの人達!ライアンやキッドも頑張ってくれて大助かり…なんだけど……鳳先輩が見つけたアイドルの人と揉めてるー?!

 ちょっと何やってんの!?先輩!!?

 そこに先輩や番長とおんなじ雰囲気の人が現れて……ええっ!!?変身しちゃったぁぁあ?!

 

 ふわぁ~、ぼこぼこにするー。

 

 ちょっと先輩!大丈夫なの?!

 次回、プロジェクトとじドルDAY3!

 炎の勇者VS炎の闘士!

 ……って誰ぇ?!

 

 ふわぁ…?だれぇ?

 




 更と予告に登場、人外系アイドルキュート代表のあの娘。
 因みに側には保護者役の彼女やユニットを組んだ経験のあるアイドル達が居たり居なかったり。

 現在集まったアイドルの中で究極体のパートナーがいるのは、島村卯月、緒方智絵里、前川みく、輿水幸子、櫻井桃華、高橋礼子、脇山珠美、アナスタシア、高峯のあ、鷹富士茄子、柊志乃、ライラ、神谷奈緒、浅利七海、諸星きらり、城ヶ崎美嘉、莉嘉、浜口あやめ、日野茜、本田未央、ナターリア、佐藤心くらいです。

 そしてアイドルと共に巻き込まれた六人ですが、私の読切りをご覧になった方はもうおわかりかと思いますが…彼等です。

 では次回


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エイプリルフール DAY3 【炎の勇者VS炎の闘士】(改訂版)


 以前の物から改訂した物を掲載致します。

 キャラクターの不適切な発言、不穏当な描写を意図せず書いてしまった事謝罪申し上げます。


 

 前回の"とじドル"!

 

 

 

 ねぇ!アルファさん!キッドの格納庫に知らない娘達が居るんだけど!!?

 

 

 

 ふわぁ…こずえだよぉ~……。

 

 

 

 もうどうとでもなぁぁあれぇぇえ!!

 

 

 

 

 

 ━━広島上空

 

 

 

 「え…?ダグベースに出たんですか?アイドルが?」

 

 

 

 『ああ、前触れも無く突然にな。ガンキッドの格納スペースに彼が不在の間、いつの間にか現れたそうだ。コヒメが慌てて知らせてくれた』

 

 

 

 サンダーシャトルコックピット内で雷火が困惑を顕に訊ねるとオーダールームの折神紫が肯定を返し、端的に経緯を話す。

 

 

 

 「コヒメちゃん…そう言えば仲良かったですよねキッド君と。彼女の居住スペース彼の近くだし……いやそのアイドル本当にどうやって現れたんです?!」

 

 

 

 『確かに。キッドの所はダグベースの医療セクションを経由するか、発進ゲートを通るしかないはず…ですが発進ゲートは人間が通れる場所では無い。ダグベース内からなら監視システムに引っ掛かるはず……』

 

 

 

 『ブレイブ星人は何と?』

 

 

 

 通信共有の画面から翼沙、戒将が紫に疑問をぶつける。

 

 

 

 『一切感知しなかったと。それで当人達に理由を問えば、最初は長野近辺に居たそうだが、気付けばダグベースのガンキッド格納庫に居たらしい。曰く…「こずえならばしょうがない」との事だ。また、既に保護したアイドルの者達も同様の発言をしている』

 

 

 

 『アイドルって何なんじゃ……』

 

 

 

 『…それで、雷火。お前の方はどうだ……?』

 

 

 

 撃鉄がアイドルの定義に是非を問いたいとばかりにアイドルと言うワードを繰返し呟く横で、龍悟が広島に向かった雷火の成果を問う。

 

 「いやぁそれがですね龍悟先輩、何だか街中で戦闘が起きてるみたいで……多分エデンの宇宙人が原因なんで

 

 『一切感知しなかったと。それで当人達に理由を問えば、最初は長野近辺に居たそうだが、気付けばダグベースのガンキッド格納庫に居たらしい。曰く…「こずえならばしょうがない」との事だ。また、既に保護したアイドルの者達も同様の発言をしている』

 

 

 

 『アイドルって何なんじゃ……』

 

 

 

 『…それで、雷火。お前の方はどうだ……?』

 

 

 

 撃鉄がアイドルの定義に是非を問いたいとばかりにアイドルと言うワードを繰返し呟く横で、龍悟が広島に向かった雷火の成果を問う。

 

 「いやぁそれがですね龍悟先輩、何だか街中で戦闘が起きてるみたいで……多分エデンの宇宙人が原因なんでしょうけど…」

 

 聞かれた事に対しどうにも明瞭に返すのを躊躇う様に、あやふやな返事をする雷火。

 

 それを見て、モニターの向こう側の全員が怪訝な顔をする。

 

 

 

 「多分、この規模だから後でニュースで報道されるかもしれないですけど……ザゴス円盤ロボットを相手に巨大な緑色の大鬼が暴れてるんですよ」

 

 告げて、サンダーシャトルの望遠カメラが映した映像を他のメンバーにも共有する。

 

 

 

 『鬼…鬼かァ?いや言わんとする事はワカるぜ?角生えてッシ、鬼っつーのも解るけどヨ。ありゃもう人型の怪獣ダロ』

 

 

 

 『大きいですね。映像で見ても40m強でしょう…?スーパーファイヤーダグオンより二回りも巨大ですね』

 

 申一郎、翼沙が映像に映る大巨の鬼の暴れぶりに忌憚の無い感想を述べる中、ダグベースに映る紫の後ろからひょっこりと顔を出すホワイトプラチナヘアに金眼の少女、明らかに日本人離れした美貌を持つアイドルが口を挟む。

 

 

 

 『あ、タイタモンですね~。巴ちゃんのパートナーですよ~』

 

 『ブモッ!ブモッ!』

 

 彼女の名はイヴ・サンタクロース。その後ろでブモブモ啼いている謎生物はデジモン……ではなく、トナカイのブリッツェンだ。

 

 

 

 ((((((誰だ…!?))))))

 

 そして後ろの生物は何だ!?続ける7人の心の声。

 

 おおらかな雷火でさえこの反応なのだ、彼女が如何に個性的であるかお分かりだろう。

 

 

 

 「…!雷火、見て」

 

 7人がイヴとブリッツェンに慄く最中、サンダーシャトルのサブシートから街中を映した映像の1部を指す沙耶香。

 

 其処には緑の巨鬼からやや離れ影に隠れる形で数人の女性が戦闘の行く末を見守っている。

 

 そしてそんな彼女達を護る様に白いシルエットがザゴス星人を蹴散らしている。

 

 

 

 「あれは…あれもデジモン?なのかな?」

 

 

 

 『そうですね~、ヴァルキリモンです~。美波ちゃんのパートナーですよ~』

 

 雷火の独り言に近い呟きにイヴがニコニコ笑顔で応じる。

 

 

 「なるほど…!役割を分担してるんだね、でも敵も数が多い。ちょっと助けてくるね!」

 

 言うが早いや、操縦をオートにしてサンダーシャトルの格納スペースへと向かう雷火。

 

 そのままダグテクターを纏いシャトル下底部からサンダーバイクと共に広島の街中へと降下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━北海道上空

 

 

 

 「広島も中々大変な事になっていますわね」

 

 

 

 「此方も向こうの事は言えんがな」

 

 

 

 ターボライナーのコックピットでそんな言葉を交わす寿々花と戒将。

 

 彼等の目の前にはピンクのマントと黒い鎧を纏った女性の様なシルエットが横切り、エデン式飛行型強化荒魂を追撃している。

 

 地上は地上でまるで戦車の様な迷彩色が施された巨大な二足歩行重機が電磁波を纏いながら、量産式トラッカー星人を右腕の火砲にて蹴散らしている。

 

 何より目立つのはその重機の頭上に女性が乗って指示を出している事だ。

 

 

 

 「最早、問うべくも無いが…彼女も貴女方の…?」

 

 

 

 『あら、あれは亜季ちゃんですね。ライデンモンちゃんの上に乗ってるなんて、プロデューサーが知ったらお説教ね』

 

 『千秋ちゃんもいるウサー』

 

 戒将が問えば、映像を共有しているのはダグベースのオーダールームから、ややおっとりとした声とドアップのウサギのパペットの映像が返ってくる。

 声の主は持田亜里沙、パペットは彼女の仕事道具ウサコちゃんだ。

 

 そのウサコちゃんが語る通り、ライデンモンと呼ばれた巨大重機の後方にキリッとした出立ちの黒髪長髪の女性が、手にした端末から指示を飛ばしているのが確認出来る。

 

 

 

 「ふむ、であれば我々も傍観に徹している訳にはいかんな」

 

 確認出来たアイドルは2人のみだが、もしかすると他にもいるかもしれない。早々に援護に入り、話をする機会を作らねばと判断した戒将は操縦桿を切り、試される大地へと降りて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━京都市内

 

 

 

 「……妙な気配だ、この場に在るようで無い……何とも言いがたい…そんな気配がする……」

 

 

 

 「君にしては珍しい物言いだ」

 

 

 

 京都市内に入って早々、龍悟がそんな事を宣い、隣の真希が心底驚いた様に質す。

 

 しかして龍悟はすぐには答えず、自らの感覚に従って一通り歩き回ると、伏見稲荷大社の方に向かう。

 

 やがて、千本鳥居の辺りまで来たかと思うと、足を止め何かを探る様に瞑目した後、手裏剣を取り出す。

 

 

 

 「………そこだ…!」

 

 虚空に投げ出された手裏剣はしかし、何・も・無・い・筈・の・場・所・に・刺・さ・っ・た・。

 

 

 

 「これは…!?」

 

 

 

 「……行くぞ、この先に…複数の気配がある…」

 

 

 

 驚きも束の間、手裏剣が刺さった事による解れから現れた異空間に怯む事無く進み入る龍悟、遅れ馳せながら真希もやや恐る恐るといった足取りで続く。

 

 果たして進む事、数十分後──。

 

 目の前に広がっていた光景は何とも不可思議なモノであった。

 

 

 

 「あれ、人おるやん。ちょっとサクヤモンさんや、誰も入って来れないんじゃなかったの?」

 

 

 

 『ええ、誰も入って来れないわ。普通の人間は』

 

 まず目に飛び込んで来たのはブリーチ染めした様な銀髪のショートカットに狐の様な切れ長の瞳をこちらに向ける飄々とした少女と、狐の意匠をあしらった鼻頭まで隠す大きさの仮面を被り、身の丈程の錫杖を持った2メートル弱の奇抜な衣装姿の女性。

 

 

 

 「ほな、普通の人とちゃうんやないどすか?」

 

 

 

 「処す?」

 

 次いで目に入るのは、着物姿の絵に描いた様な京美人と言う佇まいの黒髪の少女と桃色の鎌鼬の様な生物。

 

 

 

 「あ…危ないです、よ?」

 

 

 

 『………』

 

 そして何より衝撃的なのは浮世離れした雰囲気の小柄な金髪の少女とそのすぐ傍で無言で虚空に手を翳し何・か・を・発動させている黄金の翼に白銀の鎧姿の天使の姿であろう。

 

 天使の翳した手の先を視線で追えば、複数の小型から中型の荒魂が光の陣によって拘束されながら、徐々にノロへと還ってゆくではないか。

 

 

 

 「……CGプロのアイドルだな?俺たちはお前たちを捜索、保護する為にここに来た……」

 

 

 

 「保護って言われてもねぇ、見ず知らずの他人から言われてハイそうですかってホイホイ着いてくと思う?」

 

 龍悟の言葉に切れ長の狐眼をいっそう細め胡散臭いと言外に告げる周子。

 しかし共に居たアイドルの1人辻野あかりが双葉のアホ毛をピコピコ動かして呟く。

 

 「でもうちのプロデューサーの方がもっと怪しくないですか?」

 

 「「「ぶふっ!?!」」」

 その言葉に周子と他2人──相馬夏美、難波笑美が思わず吹出す。

 

 (……言伝てをしたためた手紙を預かっていたんだが…、あの少女の発言に出鼻をくじかれたか……)

 

 (そんなに不審者の様な姿なのか…?!)

 龍悟の隣で真希は未だ見ぬプロデューサー某の姿像を悪い方向に創り上げる。

 

 「あかりちゃん、ホント色々容赦ないね…フフ。うんまぁ、サクヤモンの張った結界に入って来たのは驚いたけど、そもそも結界に入れる悪い人ならあたし達に声をかけるなんてしないで襲って来るだろうしね。でも変な化け物出た後じゃない?今はマジメモードかなぁって思ったからさ、念の為。

 ぶっちゃけ聖ちゃんのセラフィモンが無反応だし、いい人なんだろうなとは思ってたよ」

 小柄な金髪の少女──望月聖の隣に佇むパートナー、熾天使型デジモンセラフィモンを一瞥しながら途端にのんべんだらんとした雰囲気になる周子。

 

 

 

 「そうですね~。実際皆さんとても良い子達ばかりですよ~」

 

 「茄子ちゃん?!それにミタマモンまで!!?」

 

 突然前触れ無く現れた同僚とそのパートナーの姿に温厚で平静な心持ちを保つ事が常の柳清良が眼を見開いて声を上げる。

 

 「はい~茄子ですよ~。ナスではないですよ~」

 

 「どうやってここに……って訊くまでもないか。もうこずえちゃんや芳乃ちゃんもそっちに合流してるのね?」

 夏美が茄子に半ば確信めいた口調で問えば、彼女はニコニコ笑顔のまま首を縦に振る。

 

 「はい、2人の協力のもと、皆さんがいる場所への霊道を開いて、ミタマモンに乗って来ちゃいました~」

 

 「……アイドルは斯くも不可思議な存在だったんだな……」

 

 「多分違うぞ!?しっかりしろ龍悟!!?」

 そんなこずえちゃんなら~や茄子ちゃんと芳乃ちゃんなら~等と会話を弾ませる非常識極まる彼女達に、半現実逃避気味に受け入れる龍悟を揺らす真希。

 この反応を見せた事により、弄り倒すと面白そうだと判断した小早川紗枝から真希はダグベースに帰還するまでの間絡まれる事となった。

 因みに帰還手段は刀剣類管理局経費払いの東海道新幹線である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━埼玉県某所

 

 そして此方は埼玉県のとある場所に位置するアミューズメント施設の駐車場。

 其処に停車する1台と1両のバイクと車。

 

 「ココにいるの?」

 

 「らしいよ?芳乃ちゃんが『ほー、あちらの地から多くの輝きの気配を感じましてー』って」

 

 「結構似てるな…真似」

 

 「それじゃあ輿水さん、よろしくお願いします」

 

 「フッフーン!カワイイボクに全て任せて下さい!事務所の残りの皆さんを全て見つけてあげますよ!何せボクったらカワイイので!!」

 語尾にドヤッと付きそうな自信満面の顔をしながらファイヤーストラトスの後部席中央で鼻高々に宣言するのは輿水幸子。

 CGプロきっての"カワイイ"を自称するアイドルである。

 両端を可奈美と美炎に挟まれながら座っているとその小柄さが際立つ。そんな彼女の膝上には──

 

 「幸子、今それは関係無い」

 茶色い体色につぶらな瞳、登頂部の3本ツノとロップイヤーもビックリな長い垂れ耳のヌイグル…改めデジモン、ロップモンがジト目で呆れていた。

 

 「んで、今更関東近辺を探索なのか管理局の特祭隊に丸投げじゃあなかったのかよ?」

 暁が抱えたヘルメットに顎を乗せながら溢す。

 

 「そこは、まぁ管理局の人間だけじゃやっぱ見つけんのが厳しかったんだろ。地方にも結構居たしな」

 

 「すごかったですよね!広島の怪獣決戦、モニター越しでも迫力満天で!後イヴさんが本物のサンタって言うのも驚きました!」

 イヴ・サンタクロース、何時の間にやらダグベースから消え、空飛ぶ轌で広島のダグサンダーと合流をしていた。ブリッツェンは死ぬ程息を切らしていたのは内緒だ。

 

 「途中に現れた雷火先輩の加勢!からのダグサンダーとの共闘……燃えたなぁ~!」

 

 「アタシとしちゃあ、そのタイタモン?だったか?のパートナーの赤い髪の…「巴さんです」…そうそう、巴ってのがダグサンダーの眼を見て一目で気に入ったつーのが衝撃的でな。いやロボット状態で仁義云々判るのかよ!?って」 

 

 「そこはそれ、ボクの事務所には晶葉さん謹製のウサちゃんロボもいますので!まぁボクの方がカワイイですが!」

 

 「ロボと張り合うな。幸子」

 ちょくちょく挟まれる幸子のカワイイアピールを尻目に行動に移る美濃関学院チーム。

 

 「それじゃあ私は輿水さんと美炎ちゃんとで施設の方からあたってみます」

 

 「アタシは可奈美と鳳とで近くの公園含めた外か」

 

 と、二手に別れ捜索に移る面々。ロップモンは幸子の頭の上に乗っかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━施設近くの公園

 

 「やー、まぢ感謝!おサイフ持ってなくてお腹空いてたんだ~!おごってくれてありがとー!後で絶対!返すかんね!」

 

 「や、そんな大した事はしてないぜ。なんつうか、君らがあんまり羨ましそうにあそこのクレープワゴンを見てるのに一向に買いに行かねぇから、何か困ってんのかなって訊いただけだし」

 

 「お兄さんいい人だね!ゆい達みたいな初対面の相手におごってくれるなんて。あ!もしかしてゆいナンパされちゃう?どうしよう千佳ちゃん!?」

 

 「むむ!そうなったらマジカルガールチカの魔法でゲキタイしちゃうんだから!」

 

 えいっ、ツインテールの小学生くらいの年頃の少女からの可愛らしい握り拳を甘んじて受けながら苦笑する焔也。

 彼女と金髪のギャルらしき少女達があまりにも純粋に疑いもなく、初対面の自分達からの施しを受ける事を受け入れている状況に面を食らいながら近くのベンチに腰掛ける。

 

 「言っちゃあなんだが、よくアタシ達みたいな人間からの施しをあっさり受けたな?」

 疑問に思った事を暁がストレートに訊ねる。

 

 「え?だって、ゆい達に話しかけて来た時の最初の言葉が、君カワイイねーとかじゃなくて、君達大丈夫か?とか何か調子悪いのかとか、救急車呼ぶか?だもん!めっちゃいい人じゃん!」

 

 「それに髪に赤いメッシュ?があるお姉さんはちょっとおっかないけど、そっちのお姉さんは普通に優しそうだし。チカ、これでも悪い人といい人の見分けるの得意なの」

 

 「ですって!良かったですね暁さん!」

 

 「可奈美よぉ、ちょくちょくお前失礼な事を言うなぁおい!」

 遠慮無い千佳と可奈美の一言にたじろぎながらも、ギャルと小学生と言う奇妙なコンビから話を聞く3人。

 

 「ふーん、友達がねぇ…」

 

 「そうなの!何か気付いたら迷子になっちゃって!激ヤバ?!ってなって残ったみんなで手分けして探してたの!ゆいと千佳ちゃんがこの公園でたくみんとりなぽよがあっちの駐車場の方、涼ちゃん達があの建物の中で人探し中って感じ!」

 

 「ほーん。んじゃ、駐車場の方に戻ってみっか」

 

 ゆいチカこと大槻唯、横山千佳らと共に愛車を停車させた駐車場の方へと戻る外回り組。

 

 「ねぇ~たくみ~ん、みんなを探そーってば」

 

 「ちょっと待て里奈。あと少しだけで良いからじっくり見させてくれ!こんなイカしたヤツ、早々お目にかかれねぇんだ」

 

 何か居た。

 暁のビッグスクーターの横合いに陣取り余すこと無く眼を輝かせて興奮する、恐らく18~9程の少女と彼女の着ているパーカーの裾を軽く引っ張る側面刈上げヘアの金髪に濃いめのシャドウをアイラインに引いたギャルだ。

 

 「あ?」 「お?」

 そして眼と眼が逢う暁と拓海、ならば為すべきは1つ。

 

 「……!?」 「!?」

 ──!?

 

 「えと…たくみんとアキラちゃん何してんの?」

 

 「すげぇ!なんつーうメンチの切り合いだっ!!?」

 

 「知ってるんですか先輩?」

 互いに睨み合ったままのレディースヤンキーに戸惑う唯を尻目に某書店の様な空気に震える焔也に図らずも何が起きているのか問う(知っているのか○電)する可奈美。

 

 「アレはな、界隈の人間には当たり前の挨拶なんだよ。俺も地元の族に交渉(殴り込み)しに行った時、よくやられたもんだぜ!へへっ、懐かしいなぁ」

 解説すると共に懐かしそうに鼻下を擦る焔也は、何処か嬉しそうだ。

 

 「ケンカはダメだよ?!」

 

 「落ち着け千佳ちゃん。アレは確かに喧嘩の時もするが、あの2人のアレはちょっとした日常会話だその証拠に───」

 千佳の慌てように焔也は心配無いと首を振るう。そして「ほら見てみな」と指を差し。

 

 「おぉん?(テメェ、このバイクイカすじゃねぇか)

 

 「あぁん?(へっ、コイツの良さが解るとはな)

 

 「「………フッ!やるじゃねぇか」」

 

 数刻の睨み合いから同時に笑い合い無言の固い握手を交わす暁と拓海、2人が分かり合ったのだ。

 

 「う~ん、ゆいにはワカンナイ世界だなぁ」

 しかし悲しいかな、一般人には伝わらない感性であった様だ。

 

 

 

 「皆さーーーーん!」

 

 

 

 そこへ掛かるは自称カワイイこと輿水幸子の喜色満面の声、しかし──

 

 「なんとボク達の事務所の方々が見つかり…フギャーーーーー!!?」

 間ぬ…可愛らしい悲鳴を挙げる幸子、その原因はマンホールの下から現れた謎の触手。

 

 「さ、幸子ぉぉお?!」

 「幸子ちゃんんんん!?!」

 

 「「んあ?!」」

 幸子の危機に声を荒げる拓海と焔也、互いに彼女の名を口にした事で顔を見合せついでに意味なくメンチを切る。

 

 「いやたくみん幸子ちゃんピンチだから!」

 「先輩!遊んでないで早く助けなきゃ!」

 唯と、幸子の後ろから追い付いた舞衣の声にメンチアイコンタクトを交わし頷き合う2人。

 「唯!里奈!千佳!巻き込まれないよう離れるぞ!」

 

 「待ってろ幸子ちゃん!今助けてやる!デェヤァっ!」

 ビル2階分の高さとなった触手に飛び蹴りをかます。だが触手は衝撃でふらつくも幸子を離さない。

 

 「くそっ!?ダメか!!(どうする…幸子ちゃんのリアクションからして、大槻と千佳ちゃん、それと暁のバイクを見てた姉ちゃん達はアイドル。柳…舞衣と美炎の後ろに居る連中もそうだろう。問題は他の一般人だ)」

 触手の抵抗から弾かれながらも宙で1回転、反動少なく着地するが、逃げ惑う人々や被害を気にしてダグテクターを装着出来ない。

 

 「のやろ…人の多い所じゃなきゃ……!」

 

 歯噛みする焔也、しかしそんな彼の真後ろから聴こえて来るのは誰かが全力で駆け寄って来る足音。

 

 「退いてろ、普通の人間には荷が勝ち過ぎる。…っシッ!」

 そう言って焔也を追い越し、触手に向かって跳ぶ赤いベストの少年。

 彼の拳には炎が灯っている。

 

 「うらぁっ!!」

 裂帛の声と共に炎の拳が触手の芯を打ち抜く。

 

 「フギャー!?」

 

 「っとに、とんだバイトだ。割に合わない事が多すぎる…あのおっさん絶対1発殴る」

 力の抜けた触手から抜け落ちる幸子を空いた左腕で回収、俵抱きにして肩に乗せ舞衣達の元へと幸子を届ける。

 

 「おい、三好だったか?お前確か空間を変える機能を持ったバイタルウォッチだかを持ってたよな?

 俺が穴底に隠れてるヤツを引摺り出すから、姿が見えたらそのウォッチを使え。そしたらこちとら周りを気にせず戦える」

 指示し、燃えた掌で追って来た触手を力一杯引き抜く。

 

 「OK、デジヴァイスVのヤツね!任せて!」

 現れた少年の言葉に即座に応え懐からデジヴァイスVを取り出し腕に着けると、側面のスイッチを操作し彼女を発生源とし周囲の空間が荒廃した砂塵の荒野のテクスチャへと塗り替えられてゆく。

 

 「あ、ヤバ!あきらちん、かなみん、えんやちゃん。ゆい達のどこかにさわって!」

 

 唯が紗南の行動を見て咄嗟に戸惑ったままの焔也の肩に触れ、可奈美、暁にも声を掛ける。

 2人共、突然の事に困惑こそすれ、そこは一端の戦闘技巧者。詳細を訊ねるよりもまずお互いの近くに居たアイドルに触れる。

 舞衣と美炎は小梅、あきらに触れていた為、そのまま荒野テクスチャに巻き込まれる。

 

 「うぇぇっ!?何これ!?何これ!!」

 

 (転送?転移!?違う。三好さんが腕に巻いた装置が世界を上書きしたんだ!)

 突飛過ぎる光景に右往左往する美炎と、状況を冷静に考察する舞衣。

 

 「うわっ、ギズモンじゃないデスか!?♯ヤバい♯プロデューサーどこ

 自分達じゃワンチャンあるの涼サンと有香サンのパートナーだけデスよ!?」

 

 「一体だけならその希望的観測も出来たんだけどな、見なよ」

 

 マンホール周辺の大地を割って現れた触手の元、それは紫色の球体。

 触手の正体は機械のコード、側面に鋭い爪、瞳はカメラのレンズの様に人工物めいている。

 その怪物の名はギズモンプロトタイプ。

 デジモンを殺す為の殺戮兵器である。

 

 「チッ、相変わらず気色悪いオモチャだ。怒髪(アタマ)に来る事この上ない……スピリット…エヴォリューション!!

 ギズモンの触手から手を放し、腰からぶら下げた端末──D-スキャナーを起動させる。

 そしてD-スキャナーの液晶に表示されるワイヤーフレーム状に描かれるオブジェクト。

 左手に顕現したバーコードリングを右手のD-スキャナーで読み取らせると、少年は炎の光に包まれる。

 火を象徴する古代デジ文字が刻まれた像が少年と重なって炎を噴く。左手から発生したコードは彼の身体を読み取る様に球を作る。

 やがて少年はその身体を情報の核となる影と化し、コードが重なった顔はデスマスクを造り出す。

 オブジェクトが分解され、デスマスクに併せる様に仮面の顔を、腕の影に籠手を、胸に鎧を、脚に具足を切り貼る様に重ねる。

 影を挟み込む様に前後にフィルムを重ね、空間がフラッシュバックするとオブジェクトが鎮座していた台座に炎の魔人が立ち、炎を纏った拳で演舞を舞う。

 

 その名は───

 

 

アグニモン…!

 

 「ぬぁっ!?」

 

 「嘘ぉ!?変身したよ!?先輩達以外にもダグオンみたいなヒーローが居たなんて聞いてない!!」

 

 「俺だって知らねぇよ!?って、んな場合じゃなかった!ここなら!トライダグオン!

 異空間となった事で人目を気にする必要が無くなったからか、ダグコマンダーを起動させファイヤーエンに転じる。

 

 

「ファイヤァァァアアエンッ!!」

 

 ファイヤーエンがギズモンの群れに向かって行く。

 

 『はっ?誰だお前』

 

 「それは俺のセリフだ!お前何者だよ?!」

 互いに目の前のギズモンを葬りながら、言葉を交わす。

 

 『誰でも良いだろ、どうせこの戦いが終れば赤の他人だ』

 

 「いやこの状況でそう言う訳にはいかねぇだろ!」

 

 

 

 

 

 「先輩達なんか言い争ってない?!」

 

 「うーん、どっちかと言えば、素っ気ないあの人に先輩が構ってる感じかなぁ?」

 

 離れた場所で2人の炎の軌道を見ながら自らに向かって来るギズモン達を御刀で防ぐ美濃関刀使組、美炎と可奈美はエンとアグニモンの口論を横目で眺め、所感を口にする。

 

 『全く、もう少し愛想を良くしろとM´Loadに口すがなく言われているだろうに』

 

 『ま、天邪鬼な所あるしなぁ。あのガキンチョ』

 

 『だからこそ我等に言伝てを託したのだろう。我が君は』

 

 「えっ?誰?…って本当に誰!?って言うか人なの?!」

 

 「おぉぉおっ?!一体いつ現れやがったぁぁあっ!?」

 

 「派手だねー」

 

 「敵…では無いみたいだけど……」

 予兆無く出現した3人…もとい3体のよろい纏う騎士の様な異形に、情報処理がオーバーフローした美炎と、驚きで刃を向ける暁、彼等のカラーリングにのんびりと感想を述べる可奈美、アイドル達が平然と受け入れている事から敵対存在では無いと判断する舞衣。

 

 「あれ、三人だけ?プロデューサーは?」

 

 『よぉ、紗南。大将は今こっち向かってる。今頃はエグザモンに他の連中を乗せてな』

 

 『それに先んじて脚の速い我々が先行したのだ。何せ、先程までリアルワールドであったのがデジタルワールドのテクスチャに塗り替わったのだ。我が君はそれで異変が起きたと断じ、我等を渦中に差し向けた』 

 蒼い鎧の騎士と緋い人馬の騎士が、自らをこの地へと派遣した主の動向を語る。

 

 『美しいレディ、良ければ私と一時お茶でも如何かな?』

 

 「え…いえ、その、戦闘中ですよね?」

 

 そんな中、マゼンタピンクの鎧の騎士が舞衣に1輪の薔薇を差し出し恭しく傅く。

 しかし周りのギズモンの大群に舞衣が焦りながら問えば、3人共に不思議そうに首を傾げる。

 

 『はて?既にレディ達の周りを囲んでいた不細工な玩具は斬り捨てておりますが?』

 ピッと肩周りの帯剣を1本振るってギズモン郡を指し、アイドルを守る様に陣を組んでいた刀使達に注目するよう手振りを見せる。

 

 「そういやぁ、さっきより随分大人しいような…」

 と、暁が口にした瞬間、彼女達を襲っていたギズモン達は縦、横、斜めに分断され、或いは何時の間にか風穴を開けられ破壊と言う名の機能停止を晒していた。

 

 「なっ!?これだけの数を!?!」

 

 『言ったろ、速さにゃあ自信があんのさ。オレ達はよ』

 

 『まぁ各々速さの方向性が異なるがな』

 

 『美しいものだろう?我々とレディ達は傷一つ無く、無粋な玩具は無様に散る…嗚呼!我ながら自分の実力が美しすぎて恐い!!』

 腕を組んだ状態で、人差し指を立て鼻を鳴らす蒼い騎士。

 馬の前肢の右側を大地に軽く突きながら瞑目する緋い騎士。

 最後に芝居掛かった動作で自画自賛する薔薇の騎士、となっている。

 

 「相変わらずのナルシストだなロードナイトモン」

 

 「でも強いのは事実だからね」

 

 「確かに美しい事は認めます。まぁボクのかわいさには及びませんが!!」

 

 「ふ、ふふ…幸子ちゃん…張り合って、可愛い…」

 

 「当然ですとも!フッフーン!」

 

 『勿論、レディ幸子が可愛い事は自明の理ですとも。このロードナイトモン、レディのその心意気には畏敬の念を覚えます』

 拓海、涼が呆れ、苦笑する横で幸子がカワイイを主張して小梅が笑顔で同意すれば、幸子は更に鼻を高くし、ロードナイトモンと呼ばれた薔薇の騎士はそれは至極当然だと、より幸子を持ち上げる。

 

 

 

 

 「ファイヤァァァバァァァドォッ、アタァァァアアックッッ!!」

 

 バァァァニングッサラマンダァァァアアッ!!

 

 謎の騎士3人と少女達がそんなやり取りを交わしている一方で、炎の勇者と炎の闘士は自らが相手にしていた最後のギズモン郡を必殺の一撃にて掃討せしめた。

 

 「ふぅ、やっと片付いた…って誰だアイツらぁぁあ!!?」

 

 『ゲッ…ロードナイトモン、アルフォースブイドラモン、スレイプモン……って事はあの野郎も近くまで来てるのか…』

 炎魔人が現れた3騎士に仮面から露出した口元を歪める。

 

 「あの野郎?なぁ一体お前は何者なんだ?それにあの派手な連中は──」

 

 『お前も派手だろ。他人を言えるタマか…』

 エンの質問に面倒そうに呟くが、アグニモン自身も充分派手なのでブーメランである。

 

 『お前ら随分仲良くなったなぁ』

 

 「『!?』」

 背を向けたまま語らう2人の間に一瞬で移動してきた蒼い騎士ことアルフォースブイドラモンが声を掛ける。

 

 『ドコをどう見たらそんな言葉が浮かぶんだアンタは』

 

 『まぁ落ち着け。取り敢えずだ、ダグオンの坊主!色々訊きたい事もあんだろうから、取り敢えず戻ろうや』

 

 「えっ、お、おい…何を───」

 

 『テメェまさか!?』

 

 アルフォースブイドラモンは惑う2人の声を無視して彼等の腕を掴むと、予備動作無しに翔んだ。

 

 「『!?!!?*¥@≧★!?』」

 

 互いに声にならない絶叫を挙げて少女達の前に連れて来られる炎の勇士達。体感で5分、実際には5秒にも充たない瞬間を垣間見て鑪を踏みながらも耐える2人。

 

 『ふむ、アグニモンとなった少年は兎も角。やはりそちらの少年が身に付けている装備はかなり特殊な物だな。加減したとは言えアルフォースブイドラモンの瞬間音速飛行に耐えて見せたのだから』

 

 『M´Loadの言う通り、と言う事だね。ふむ……成る程…、このデザインM´Loadが好む訳だ。あの方はこういうヒロイックな物が好きだからね』

 

 ジロジロと品定めするように評する緋と薔薇の騎士にマスクの奥で何とも言えない気分のエン。そんな中、薔薇の騎士が1つの提案を掲げる。

 

 『さて、炎の勇者よ。一つその腕前を改めて我々に披露してくれないか?勿論タダでとは言わない。我々に叶えられる範囲の事ならどんな願いも叶えよう』

 

 「腕前を披露って…具体的にどんな風にだよ?」

 

 『フーム、流石に初手から我等の誰かはハードルが高い。うん、こうしよう!そこで他人事のようにそっぽを向いているアグニモンと戦ってくれたまえ』

 

 我関せずと今正に人間に戻ろうとしていた所に水を差され口を情けなく開けるアグニモン。

 このまま思惑通り運ばれてなるものか!と急いで人間に戻ろうとするが、残念スレイプモンに回り込まれ捕らえられる。

 

 『クソッ!?離せ!ふざけんな!誰がやるか!喧嘩はまっぴら御免だ!』

 

 『ノンノンノン、これは喧嘩などと言う醜いものでは無い。仕事の依頼だ。無論君にも報酬は出すよ?M´Loadが』

 

 報酬と聞いて、抵抗が止まるアグニモン。しかしエンはいまいち乗り気でなく──

 

 「相手嫌がってるし、俺も戦う理由が無いって言うか……」

 

 『ほう!直情的なタイプかと思ったが、話の通じる相手には対話で挑むその態度……素晴らしい!君にも美しさがあるね!だが…我等、延いては我等が王はこの世界の守り人の力を知りたいのだよ、それが幼少のの頃の思い出の戦士であるなら尚更ね。

 先程君が戦った相手の様な輩がまた出るとも限らないしね。

 それに、アレは雑魚だったが……アレをけしかけた輩がそうとは限らないだろう?

 なに、心配は要らない。最後の一線を超える様な事態にならないように私含め我々の誰かが必ず止めに入る。何より気になるじゃないか!同じ炎を使う戦士同士、どんな戦いになるのか』

 

 のべつ幕無しに畳み掛けられ、単純型思考のエンは丸め込まれてゆく。

 

 「それならまぁ…」

 

 「先輩!?良く考えて下さい!確かにさっきみたいな敵がまた現れる可能性はありますけど、敵では無い人と戦う理由は無いですよ?!」

 

 『まぁまぁ、お嬢ちゃん。言いたい事は解るが、オレ達も大将がこっち来るまで暇を持て余しちまうんだ。何せエグザモンには他のアイドルの嬢ちゃん達が数多く乗ってからな、下手にスピード出せねぇし』

 

 『君達としても我々に尋問する事が1つや2つあるのだろう?ただ質問にだけ時間を費やすのもなんだ、彼等の決闘を肴に色々と会話に華を咲かせようではないか』

 

 『それに、何だかんだと当人達はやる気になったようであるしな』

 

 報酬に釣られた苦学生(施設育ち)とまぁ何となく相手の実力に興味があったファション不良は既に臨戦態勢に移っていた。

 

 「良いんじゃねぇの?アタシ達に害を加えるって訳じゃねぇんだろ?

 さっきの雑魚らしいのだけじゃ確かにデジモンってのが、どの程度の脅威かも分かんねぇし、拓哉って野郎が鳳相手にどこまでやるか気になるだろ」

 

 「御刀で語り合うのと似た感じですよね!良いんじゃないかな」

 

 「可奈美ちゃん!?………本当に危なくなったら止めて戴けるですね?」

 

 『Yes your Lady。私は仕えるべき主と女性には嘘を付きません。何より彼の様な気持ちの良い勇者を失う事はこの世界の損失でしょう』

 舞衣の訴えに片膝を突き頭を垂れるロードナイトモン。

 

 「そう言えば、その王様?って人はこっちに来るのに時間が掛かってるんですよね?どうやって2人の戦いを観るんですか?」

 先の会話から度々聞く騎士達の主が、如何にして決闘を観覧するのかと美炎が珍しく気付いて問う。

 

 『我等の眼にする光景がそのまま我が君の元に届く。我等が耳にする音が、鼻にする匂いが、身体を撫でる空気がそのままな』

 

 『詳しく説明しづらいが、そう言うモンだと納得してくれや』

 

 スレイプモン、アルフォースブイドラモン共に目線を合わせて美炎に応える。

 

 

 そうして唐突な提案により、始まった対決。

 予期せぬ状況とは言え同じ炎の力を使う者、実力の程が気にならないと言えば嘘になる。

 何だかんだと焔也もまたある種の剣客脳に感化されていたのだ。

 

 果たしてどちらの炎が優れているのか、戦いの火蓋が切って落とされる───。

 

 

続く

 


 

 エイプリル予告(BGM:With the Will)

 

 美しい私と!

 

 カワイイボクの!

 

 次回予告ー!!わー!ドンドンパフパフ!

 

 まったく!プロデューサーさんも仕方ない人ですね!鳳さんと灯さんが戦う所が見たいだなんて。

 

 フフ、M´Load も男ですからね。斯く言う私も興味津々ですがね!

 

 男の人ってそう言うの好きな方が多いですよね、ボクには良く解らないんですけど…。

 

 本当か?幸子だって自分よりカワイイって宣う相手には張り合うだろう。

 

 なっ!?それはそれ!これはこれですよロップモン!

 

 違いが分からん…。

 

 カワイイも格好いいも、美しいも1つの美学。と言う事だよ三大天使。

 所謂誉れに近い物だ…今私中々美しい事を言ったな、フフフ。

 

 

 ……はぁ、次回とじドルプロジェクトDAY4

 決闘!それはそれとして刀使、アイドルになります。

 

 えっ!?プロデューサーさん!?彼女達もプロデュースする気ですか!!?

 





 感想にて色々と批評頂き、私も懊悩した末に書き直しました。

 ただ、デジモンフロンティアと言う作品について自分が嫌いだからと言って、他の人が嫌いとは限りません。
 個々の好き嫌いはあくまでも心の中か、そう言った作品の批評サイトなり集会なりで議論を交わして戴けたら幸いです。

 因みに私は基本全てのデジモン作品が好きです。
 フロンティアやtryも悪い所も確かにありますが、それはそれとして楽しめた所もあるのです。
 更にアニメや漫画、特撮等を視聴する時、まずはとことん楽しむ事にしています。
 その後、改めて作画、脚本等に焦点を合わせて見直していたりします。
 


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DAY4 決闘!【それはそれとして刀使、アイドルになります。】


 こんばんは。
 3回目の接種による副反応の苦痛と、穴が空いたメンタルのケアに時間を掛けて、一応の復活です。
 ビルディバイドcode♯FFFFのイシュタルテには大分メンタルを癒して貰いました、カワイイ。
 ついでにアイネスとパーマーも来たしで徐々に日常生活的にも回復したので有難い限りです。
 
 はい、ごめんなさい。まだエイプリルフールネタ続きます。
 しかも6月入ってしまったので本編と並行しながら書いていきます。



 

 前回の"とじドル"

 

 おいお前、これだけの人数…どう移動させる気ですか?

 

 そこなんだよなぁ、こっちの世界は元の世界以上にデジモンに対して免疫無さそうだし……おや?

 

 Pサマぁぁぁあ!?世界が世紀末になっちゃったんだけどぉぉおお!!めっちゃやむっ!!

 

 夢見、うるさい。

 

 やむ!!

 

 はい、全員しゅーごー!どうやらテクスチャシフトした様なので、みんなでエグザモンに乗って発生源に向かいたいと思います!

 


 

 ━━フィールドテクスチャ・荒野都市

 

 生命の息吹き無き荒野に衝撃と共に上がる火柱。

 原因となっているのは2つの赤い炎、拳と拳、蹴りと蹴りが交わる度に彼等の背後が爆発する。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━廃ビル屋上

 

 「うわっ、熱そう……」

 

 「普通の人間が入ったら焼け死んでしまいますね」

 

 遠く離れた廃ビルの屋上で上がる火柱を見て思わず呟く紗南と頬に伝わる冷や汗を拭う有香。

 

 「なんか…カグツチの事思い出すなぁ……」

 

 「いやぁ…あの時はまこっちゃんの身体をカグツチが気にしてたから強襲コンテナでカチコめたけど、ありゃ完全に人間の生存権無いだろ。写シごと丸焼きになるわ、あんなの」

  嘗ての事変を回顧しながら遠い目をする美炎と暁。  

 暁は更に当時の状況と比較して乾いた声を出す。

 

 『フゥム……互いに未熟さがあるとは言え、まだまだ本気には程遠いね』

 

 『そうだなぁ、お互い元が人間だからまだ遠慮が残ってる。あれじゃあママゴトだ』

 

 『我々が止めに入ると予め伝えていてもこれか。しかし、灯少年は人と同じ姿をした者達と多く戦っていただろうに…、素性が只の人間と知れば口では悪態を吐きつつ心内では迷いがある』

 

 2つの炎の激突をしかし、異形の騎士達だけは辛辣に評価する。

 

 「普通は誰だってそうだと思いますケド……」

 

 「まぁでも灯がニヒル気取って人当たりが良くないイメージを与えてるのは分かる」

 

 「Pちゃんに連れて来られたときも口悪かったもんね~」

 

 「でも何だかんだ気にしちゃう辺り、時子さんをマイルドにして混ぜた男の子版麗奈ちゃん的な?或いは千夜さん?」

 

 「れ、麗奈ちゃん…みたく、イタズラはしない…けど、に、似てる…のは分かるかも…」

 

 「「「「「「あー…!」」」」」」

 騎士の言葉を聞いてジト目で良識を口にする砂塚あきら。

 拓哉との事務所での対面時の事を思い出す涼と同意しながらケラケラ笑う唯。

 紗南が身近な知人を例えに挙げ小梅がそれとなく同意し、アイドル達は皆何処か納得する。

 

 「随分と酷評なさってるんですね……」

 焔也は兎も角として、拓哉の方は身内であるだろうに厳しい言葉を列ねる騎士達に舞衣が訊ねる。

 

 『身内だから甘やかすってのは寧ろヤツの為にはならねぇよ。オレらも大将もヤツ含め十闘士のスピリットを受け継いだ連中に期待するからこそ厳しくするのさ。まぁ拓哉の場合、あの天邪鬼で無愛想な性格もあっていっそう厳しくしてるがな』

 

 『期待…と言う意味ではダグオン、君達が先輩と呼び慕う彼の者を含めた戦士にも我々は我が君と同じ様に懸けている。

 ので、もう少し本気になって戦ってくれると有難いのだが……如何せん彼には説明不足が過ぎたか』

 

 『まぁ今回の決闘は、M´Loadがこちらに到着するまでの暇潰しを兼ねた余興の様な物だし、我々も観戦がてら氏素性を改めて君達に説明した訳だし、お遊びレベルの戦闘でも良しとしようじゃないか』

 

 (アレでお遊びレベルだと?確かに何時もの宇宙人共に比べりゃ、戸惑ってはいるが…鳳のヤツ魂依刀使の力を使ったアタシとヤりやった時よりも大分ガチめだぞ!)

 舞衣の疑問に答える騎士達の言葉を傍らで、それとなく聞き耳を立てていた暁は内心叫び出しそうになるのを堪える。

 

 「おおよその事は先に保護していた皆さんから聞いています。デジモンと呼ばれる生物が存在する事、それらを従える人間がパートナーないし選ばれし子供と呼ばれる事、基本的にはアイドルの皆さんの大半はプロデューサーと呼ばれる男性からデジモンに引き会わされたという事、デジモンを題材とした創作物が彼女達の世界ではデジモンが現実に現れる前から存在していた事……貴方達の事は簡単にしか聞けていませんでしたけど…」

 

 『概ね聞いている通りだよレディ。付け加えるならば、我々デジモンは人間が電子機器を発明する前から存在自体はしていた。

 まぁ地球誕生で言うと頃のカンブリア紀等から人類誕生までに該当する時代だが』

 

 『人間がインターネットのネットワークを多様するにあたってデジタルワールドも多大な影響を受け変遷していった。ゲートが頻繁に開く事例が現れたのもこの頃だな』

 

 『で、オレらの大将はまぁ…そう言うネットが発展途上だった時期に小さなゲートからデジタルワールドに迷い込んだんだなぁコレが』

 ロードナイトモンが舞衣の講釈に同意、説明を付け足し、そこにスレイプモンが更に当時の状況を捕捉、アルフォースブイドラモンが遠い目をして思い出に浸る。

 

 「皆さんが言うその人、王様はどうやってデジタルワールド?から戻ってこられたんですか?」

 可奈美が純粋な好奇心から訊ねれば、騎士達は苦笑する。

 

 『一度目は恐怖と警戒心と用心深さからゲート近辺を観察して直ぐに戻ったそうだ。二度目……それなりに物事の判別が付く年頃に今度は好奇心で自ら飛び込んだ』

 

 『んで、飛び込んだ先がなんとビックリ!当時のオレ達の主、ホストコンピューターユグドラシルの真ん前ってんだから不運なんだか悪運が強いのか……』

 

 『それでユグドラシルと対話を交わした結果、我々と各々拳を交え、降し、アイドルプロダクションでプロデュース業を営んでいるのさ』

 

 「待った!?アンタらのご主人様はアンタらと戦ったのか!?」

 

 「話からするとまだ子供ですよね?それも生身の……その方は皆さんに勝ったんですか!!?」

 

 ロードナイトモンの発言に驚愕し思わず割り込む暁と舞衣。対して騎士達は然りと頷く。

 

 『然もなくば我等は此処には居ない』

 

 『拓哉のヤツは大将の事ギャグ漫画の住人とか言っていたが…強ち的外れじゃあねぇかもな!』

 カラカラと笑うアルフォースブイドラモン。そんな談笑を繰り返している内、エンとアグニモンの勝負は佳境へと移っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 『クッソ!?!アイツら焚き付けるだけ焚き付けて殆どながら見じゃねぇか!!』

 

 「なんかあのピンクのヤツ、柳瀬に近くないか……」

 

 ギャラリーの空気に当事者たる戦士達がボヤく。

 

 『あー…クソ、もう良い。負けるのは癪だが、そもそも勝敗の結果については特に言及されてないんだ。見た目だけそれなりに見せてとっとと負けてやる。

 おい、赤いの。何か適当に大技を出せ。当たったフリしておくから』

 

 「いや…え?お前それでいいの?負けるの嫌なんだろ?もう少し必死になってもさぁ」

 アグニモンの仮面から覗く瞳が目に分かる程やる気を失う。

 それに対して勝負と付く物には基本的に全力で挑む心情のエンが抗議の声を挙げる。

 

 『クソ真面目か、それとも単に馬鹿なのか?別に良いだろ、アンタに損はねぇんだから。赤の他人の事に肩入れし過ぎるとロクな目に遭わないぞ』

 言いながら、観戦している側に自分がやろうとしている事を気付かれぬ様にまるでエンに対する牽制に見える様に観戦側の大地に広く炎を展開させる。

 

 『フン…仮初めとは言え、荒野の大地に高熱の炎が何度も燃えたんだ。時節も悪くない、理論上湿度は問題無い筈……賭けの要素が強いってのは気に食わないが、これで弱鏡映蜃気楼くらいは作れるか?』

 展開した炎をコントロールしながらボソボソと呟く、当然勉強が苦手なエンはマスクの奥で顔面を疑問に埋め尽くしている。

 

 「弱?きょう…えい……????」

 

 『チッ…マジで馬鹿だったのかよ。まぁ良い。段取りさえ間違えてくれなきゃ文句はねぇ。

 良いか?俺が隙の大きい技をお前に向けて外れる様に放つ、お前はそれを隙として大技を出す、俺はそれに当たったフリをして吹っ飛ぶ、倒れた俺にトドメとしてお前が殴り掛かる。それに抵抗しようと弱った俺が拳をクロスカウンター気味に繰り出す、が、俺の拳は威力が乗らずお前のそのふざけたヒーローマスクにソフトタッチ、逆に俺はお前の拳がクリーンヒット、決着。OK?』

 この会話の間も小競合い気味に格闘をこなしているが、アグニモンはエンが理解出来る様に1つ1つ噛み砕く形で教えてゆく。

 

 「?お、おう?うん?ま、まぁそこまで言われたら……やるしかない…のか?」

 

 『良し、始めるぞ。サラマンダーブレイクッッッ!!

 跳躍したアグニモンの脚に炎が燃え上がる、宙に跳んだ魔人はその場で身体を横に倒し回転する。車輪の如く回りエンに向けて回転蹴りを放つ……様に見せる。

 当然外れた蹴りは大地を割るに留め、アグニモンは大きく体勢を崩す…様に振る舞う。

 

 「う、うぉぉお!ままよっ!!ファイヤァァァァバァァァドアタァァァァック!!」

 鳳凰に変形し、炎を全身に纏った鳳が体当たりを敢行、アグニモンは地面に埋まったギリギリで脚を抜き出し、今にも避けられない状況を演じ、受け止める姿勢を取る。

 そうして、受け止める事叶わず、鳳に轢かれた()()して自ら後ろに吹き飛ぶ。

 

 『グ、アァァァア!!!』

 迫真の叫びを挙げ罅割れたアスファルトに倒れ込むアグニモン。

 倒れたアグニモンを通り越し、ファイヤーバードから再びファイヤーエンへと戻り、言われた通りにアグニモンに近付く。

 

 「ええ…っと、トドメの一撃…ホントにやって良いのか?」

 

 『は・や・く・し・ろ』

 トドメを躊躇うエンに唇だけを動かして促すアグニモン。戸惑いつつも拳を魔人に振り下ろし、併せて魔人も勇者の拳に応じる。

 狙いは勿論クロスカウンター、しかし彼等の拳が交差を交えんとする間に空から何かが降って来た。

 

 「あえ?」 『っぁんな?!』

 

 エンは自身の拳が何かにめり込んだ感覚に疑惑の声を洩らし、アグニモンは演技とは言え直前まで威力を乗せた拳を受け止められた事に大きく動揺する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━廃墟ビル・屋上

 

 「うえっ?!今先輩達の間に何か降ってきた!!?」

 

 「あれは……人?いえ、それよりも上から降って来たのなら………嘘ッ…!」

 美炎の驚きを余所に、舞衣は明眼によって空を見上げソレに気付いた。

 

 雲無き空に浮かぶ奇抜なシルエット、明眼の望遠視で視えるその形は嚇赤錆銀の竜鱗、鐵の突撃槍を右手に携えたその姿は───

 

 「巨大な竜…!?」

 

 「竜?……う~ん…あ、ホントだ!あの辺に何か居る」

 舞衣の声に可奈美もまた空を見上げてその姿を認める。つまる所通常の肉眼でも確認出来る程巨大な存在が真上に飛んでいるのだ。

 

 『来たか。しかし我が君も遊び心が過ぎる』

 他の皆同様空を見上げ、後に戦場へと視線を落とすスレイプモンが困った顔で首を振る。

 

 『あれなぁ……わざとパスを一方通行にしてっから、大将のダメージはオレらに来ないんだよなぁ』

 

 『口惜しい!しかし美しい!我々を慮り敢えて己の痛みは我等に通さず、我等の痛みはその身に受ける……嗚呼!M´Loadの献身が五臓六腑に染み渡るっ!』

 最後のロードナイトモンだけがやはり一々仰々しい身振り手振りでアイドル達からは鬱陶しそうな顔をされたりもしているが、それが寧ろ彼には嬉しい様にも見える。

 

 「おのぉ~…アレって大丈夫なんですか?」

 灼熱の只中、人外の威力を双方向より受けたであろう騎士達が王と呼ぶ主──アイドル達からはプロデューサーと呼ばれる人物の惨状に、恐る恐る美炎が訊ねる。

 

 「あー、初めて見たらビビるよなアレ。でも何故か平気なんだよなぁ」

 

 「ええ、痛みを感じない訳では無いらしいですが……パートナーの全員と感覚を共有してるのに、ですが……共有してるにも関わらず、ツッコむんですよね、ロードナイトモンに」

 拓海が美炎の反応に何とも言い難い顔で軽く頬を掻きながら、戦場に落ちて来た己のプロデューサーの以上性を一言で断言する。

 また、有香も普段から事務所で繰り広げられる光景を脳裏に描き、それに慣れきった自分達や彼等騎士達の異常性に苦笑するより他に無い。

 

 「おい舞衣。上も良いが、下の連中の方もどうなってる?」

 

 「っ…はい、ええっ…と、先輩と灯拓哉さんの間に割って入った人……え、人?」

 

 「どうしたの舞衣ちゃん?」

 暁に促され、再び戦場を明眼で観測する舞衣、しかしプロデューサー某に注視した途端思わず疑問を溢してしまう。

 親友がそんな反応を見せているので可奈美としても訊ねずにはいられない。

 果たして舞衣は何を目撃したのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふ、良いパンチしてるな。流石勇者シリーズ随一の特撮色強い意欲作だっただけの事はある」

 

 「うぇっ?!あぅえ?!」

 

 自らとアグニモンの間に現れた予想外の人物からの声にエンは臆面もなく狼狽える。しかしそれも無理からぬ事だ、何故ならその男はエンの拳を顔面で受けまるで漫画の様に顔が潰れているからだ。

 具体的に言うと不細工なアスタリスクだ、いったい全体その状態でどうやってここまで明瞭に喋れるのかは謎であるが……。

 

 『チッ…これだから化け物(ギャグ漫画の住人)は………』

 

 「聴こえてるぞクソガキ~?ついでにさっきの会話も聴こえてたぞー?うんん?」

 凹んだ顔面のままアグニモンに詰め寄る様は軽くホラーである。

 

 「んっふ!さて、色々と訊きたい事やら知りたい事やら、お互いにそれなりにあるだろうけども。まずはダグベース行こうゼ!」

 妙な気合いと共に元の顔に戻った男──プロデューサーがアルファも斯くやとばかりにエフェクトを撒き散らしてサムズアップする。

 

 「ええーーーーー…」

 

 『此方の意見ガン無視かよ』

 現れた不振人物のこれまでの流れを全て流して無理矢理にでもダグベースに行く流れに持ってきた事にエンは最早開いた口が塞がらない。

 多少付き合いがあるアグニモンもプロデューサーのノリに白い目を向ける。

 

 (しかし、この人が千佳ちゃんや大槻が言ってたプロデューサーかぁ)

 プロデューサーがアグニモンに意識を向けている間に気を取り直して、エンは改めて件の人物を観察する。

 フォーマルなスーツ姿に隈の濃い眼、身長はアグニモンに届かないものの高い。

 髪は短く切り揃えられ、身体は細身…とてもでは無いがエン達の攻撃を止められる様には見えない。

 それを抜きにしても受ける印象は目付きの不健康さも相まって不審者ではあるが。

 

 「と言う訳でな、クソガキ。お前のふざけた企みが聴こえてたので報酬は減額しまーす。後目線上げるのめんどいから戻れ」

 不審者()()()()()()()が取り出した端末──デジヴァイスと呼ばれていた──がアグニモンに向けられ、トリガーが引かれると炎の魔人は瞬く間に人間灯拓哉へと姿を戻した。

 

 「あ゛?!テメクソッ!?」

 

 「ふむん。成功だな、流石はうちのアイドル!泉には感謝しかない」

 無理矢理元の姿に戻され、報酬の事に抗議を込めて挑み掛かろうとするも空かさず腕を背に捻り上げられ無力化させられる拓哉。

 プロデューサーは担当アイドルへ感謝を述べながらエンに向き直る。

 

 「さ、君も何時までもそんな格好してないで…ってファイヤージャンボ動かすなら生身より変身してた方が都合良かったりする?」

 

 「いや……んなことは無いッスけど……」

 

 「ああ、そう?じゃあここに喚んでくんない?」

 何ともない様にトントンと語り、やはり何ともない様にあっけらかんと言ってのける。

 

 「は?いや無理ッスよ!!?三好が何かしてからファイヤーストラトスさえ呼べないのにファイヤージャンボなんて……」

 

 「あ、そっかぁ。デジタルシフトにまでは()()対応させてないのか、ふーん…管理者って言うのも存外杜撰と言うか、詰めが甘いんだな

 

 「んえ?」

 

 「や、こっちの話こっちの話。しっかし、そう言う事ならお兄さんに任せなさい!!」

 

 「おっさんの間違いだろ…」

 

 ぼそっと呟いた拓哉の腕をより強く固めながら、手にしたデジヴァイスの液晶付近の円状の部位を操作するプロデューサー。

 彼が某かの操作をしている間に、廃墟ビルからどうやったのか巨大になった異形の騎士達の手や肩、背に乗って観戦していた者達、更に空から大きな…とても大きな影が降って来る。

 

 「おおぉぉぉお!?!デケェぇえええ!!」

 

 「ん、ヨシ!この場に居る人間はこれで揃ったな」

 

 驚愕するエンを置いて、妙なポーズを取って安全ヘルメットを何時の間にか被ったプロデューサーが猫みたいな眼で指差し確認している。

 

 「ヨシっ!じゃねぇぇぇええええよ!ど阿呆ぉぉぉおおおお!」

 

 「フンギャロぉぉぉお?!!」

 

 

 絶叫の雄叫びと共にプロデューサー某に突き刺さるレールガンドロップキック。吹き飛ぶプロデューサー某。

 正体は軽いウェーブを掛けたセミロングに、伊達眼鏡の奥の鋭い眼孔、背丈は中肉中背、スーツの下に隠れた屈強な健脚、全体的にはイケメンに分類される彼は、CGプロキュート部門担当プロデューサー華籠恋助。

 名前がキュートにピッタリな要素を満たしていたと言う理由だけでプロデューサー某からCGプロに無理矢理就職させられた選ばれし子供であった者の1人だ。

 

 「せんぱーい!」

 其処へアルフォースブイドラモンの左手に乗った可奈美が大きく手を振る。

 

 「可奈美、それに暁達も一緒かぁ~……」

 目の前の華籠とプロデューサー某のトンチキ騒ぎから逃避する様に同校生達の方へ意識を逸らすエン。

 そんな彼に巨大な竜から異形の左腕を持つ絵に描いた様なザ・ヒーローに抱えられて地上に降りた少女と全身黒鉄に光る装甲を持つ、両肩が左右で赤と青に色分けされた手足の長い人型アンドロイドの様な存在の腕に腰掛けたツインテールと眼鏡が特徴的な少女がエンを見るなり怒涛の勢いで駆け寄って来る。

 

 「スゴい!スゴいぞ博士!本物だ!本物のヒーローがいるぞ!」

 

 「うむ!一体全体どんな技術が使われているのか、実に興味深い…!」

 

 エンと言う存在そのモノに眼を輝かせ興奮する少女は南条光。

 一頻りエンを眺め凄いを連呼した後、彼の手を取り握る。

 

 「はじめまして!あたしは南条光!職業はヒーローアイドル!好きな物はヒーロー!だから会えてとても光栄だ!」

 

 「お、おう……よ、よろしく(めっちゃグイグイ来るなこの子…)」

 振られるがままに手を握られているエンは目の前で尊敬と好機の眼差しを向ける光に内心困惑しながら狼狽える。

 

 「ふぅ~む、スーツの材質、装甲の強度、どれも既存の地球上存在した文明の科学技術を優に凌駕している。

 いや、実に興味深い…。空想科学で有名なアトランティス文明の科学技術とやらもこれに匹敵するのだろうか?むむ、解き明かしてみたい…済まないが分解してみて良いだろうか!?」

 ダグテクターの装甲をベタベタと触りながらひっきりなしに呟いていたかと思えば、いきなりトンデモ発言をかまして来る眼鏡ツインテールの少女。

 

 「いやダメだからな!?」

 

 「何?!ダメなのか!!?そうか……」

 機密の塊であるダグテクターを分解などされては堪らないと声を大にして拒否すると、目に見えて肩を落として落ち込むものだから、何だかいたたまれない。

 

 「南条くん、池袋くん、そこまでしておきなさい。相手の少年が困っているだろう……所で少年であっているかね?」

 そんな2人を嗜めたのは、プロデューサー某や華籠と同様スーツ姿の、しかし着飾り方が明らかに堅気気質では無いサングラスを掛けた男。

 クール部門担当プロデューサー、金剛凍吏。やはりこの男も名前で強制入社させられた選ばれし子供であった者である。

 そして───

 

 「やれやれ、光くんも晶葉くんも自分が夢中になる事には歯止めが効きずらい所は年相応と笑うべきか呆れるべきか……」

 陽を照り返す禿頭が眩しい美丈夫、パッション部門担当プロデューサー、先の華籠、金剛同様の経緯でプロデューサーを勤める陽向照輝が糸目を苦笑の形に変えながら金剛に合流する。

 

 そうして、エンの周りに現在空間内に居る全ての人間が集まった所で、華籠にボコボコにされていた筈のプロデューサー某が何事も無かったかの様に復帰してくる。

 

 「はい、皆さんご注目!これから此処にファイヤージャンボが来ます。それに乗って残りのみんなの所に向かいます!やったね!!」

 

 「「「「「「「「「「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 「いや、だからそれは……」

 

 「良いから良いから!喚べば解るから!ついでにそっちのメッシュの娘のバイクもほら!」

 

 特徴的なデジヴァイスを駐車場の辺りに向けトリガーを引くプロデューサー、すると暁のバイクがフィールドに出現する。

 

 「アタシのバイク!?」

 

 「ついでにそーい!」

 某が更にトリガーを引けば今度はファイヤーストラトスが出現、理屈は理解出来ないがエンはソレをそういう物だと受け入れる事にした。

 

 「ファイヤージャンボ!!

 

 受け入れれば行動は早い、即座に自身が所有する最大のライドビークルを召集する。

 

 「おおぉぉ……本当にファイヤージャンボじゃないですか~!!懐かしいですねー、当時のナナは火鳥さんが初恋だったのでその流れでシリーズも見てましたよ」

 ファイヤージャンボを眺め懐かしさに浸るは、ウサミン星から夢と希望とウサミミをひっさげやって来た歌って踊れる声優アイドルこと安部菜々さんである。

 

 「安部さん……」 「菜々さん……」

 菜々さんの発言に金剛、陽向が額に手を当てたり、天を仰ぐ。

 

 「安部よ、どうしてそうお前さんは自ら墓穴を掘るんだ」

 華籠が独白気味に呟く。

 

 「火鳥?」 「誰?」

 そしてこれには偶々耳にした光や美炎も首を傾げる。美炎に関しては知りようが無いので当然の事だが。

 

 「やー、近くで実物を見ると本当にデカいなぁ。流石歴代主役ビークルで最大の大きさを誇るだけの事はある」

 

 「なぁ…あんたがさっきから言ってるシリーズがどうとか歴代がどうとかってどういう意味で……」

 プロデューサー某が度々口にするワードに遂に踏み込むエン、しかし首を横に向けた時、隣に居た筈の彼は既におらず、視界に映るのは知らぬ間にボディブローを打ち込まれ悶絶している柘哉1人。

 

 「!!?どこに消え──」

 

 「君、スタイル良いね。歳いくつ?良ければウチでアイドルしてみない?あ、これ名刺どうぞ」

 声の行方に視線を巡らせてみれば、スーツの不審者は舞衣ににじり寄り懐より名刺を取り出し口説き始めている姿を発見した。

 

 「あの、お気持ちはありがたいんですけど……私にも職務がありますし、そもそも異世界に行くのは…」

 偶発的に現れた彼等、元の世界に戻った際に自分まで連れていかれては帰還手段の無い舞衣には堪ったものでは無い。しかし──

 

 「ああ、大丈夫。今回は偶発的だったけど、ここの電子機器はウチの世界とは大差無いし、晶葉は天才だし、泉のプログラミングの腕前もプロフェッショナル顔負けレベルだし、こずえと芳乃の協力と蘭子のパートナーの力を借りれば新幹線より行き来は楽勝だって!!」

 しかしこの男は苦もなく軽々と言ってのける。

 

 「それはどういう……」

 

 「むむ!光や唯ちゃんと話してるあっちの娘達も中々良いねぇ…。あ、今の話前向きに検討しといてね!」

 舞衣の疑問を置去りに、プロデューサー某は意気軒昂として、可奈美と美炎の元へと向かって行く。恐らく同じ様にスカウトするつもりなのだろう。

 未だ多くの疑問を懐きつつも、舞衣はエンがファイヤーストラトスに乗り込みファイヤージャンボに格納されるのを見送ると、そのまま一先ずはファイヤージャンボへと添乗するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ファイヤージャンボ・機内席

 

 「すげー!はえー!!たけー!!!」

 ファイヤージャンボの窓に張り付き外を眺めて感嘆の声を上げる童女、市原仁奈の様子を微笑ましげにしながら(※約1名にやけそうになる顔と態度を圧し殺しながら)改めてプロデューサー某達の言葉に耳を傾ける。

 

 「凡その事はウチの騎士や、先に君達が見付けたウチのアイドルから聞いてるだろうからその辺は省くとして、俺達CGプロがこの世界に来た原因は我がプロダクションが誇る天才発明少女こと、池袋晶葉が作った次元観測転移機……名付けて」

 

 「"どこでも跳べるくん"だ!」

 プロデューサーの言葉に続く様に晶葉が自信満々と宣言する。

 「本来ならここまで大規模な転移など起こる筈もなかったんだがな。たまたま近くをユッコがサイキックの練習をしていて、更にこずえがどうゆう訳か"ふわー"をしたんだ。更に更に、装置起動直前…泉の観測でウィルスが侵入していたのが直前に分かっていてな。止める間も無く……詳細は泉本人と会って確認するしかないが……我々のいつもの日常に見られる偶然に、悪意ある第三者が介入した結果…我々がこうして転移したのではないか。と言うのが、私とプロデューサー達との合議で出した結論だ」

 

 「堀のなんちゃってサイキックだけなら精々、同じ世界の別の土地くらいに跳ぶ程度で済んだんだがなぁ」

 

 「そこに遊佐くんの由来不明の謎現象が加わったとしても…既存の異世界に跳ぶくらいだったんだが……まさか我々全員…と言うには語弊があるが、会社に居たデジモン関係者全員が巻き込まれるとは………」

 

 「幸い、プロデューサー陣は僕たち以外はデジモンのパートナーが居ない三人と、外に営業に出ていた元選ばれし子供組は難を逃れたみたいだけどね」

 華籠、金剛、陽向が各々呆れ、黙考、苦笑の反応を交えながら補足を加える。

 

 「でもまぁ見知らぬ世界とは言え、文明レベルや、言語に違いが無かったり、全員が個々レベルでバラバラにならなかったのは僥倖だった。

 何より君達みたいな娘や、ダグオンという信用に値するヒーローが居たのはまさにツキが良かった」

 ファイヤージャンボ内のコックピットに通じる位置の座席で何かを弄りながらプロデューサー某が笑う。

 

 「あの~肝心な事を訊いて無いんですけど…」

 そこで美炎が控え目に挙手しながらプロデューサーに訊ねる。

 

 「何かな?安桜美炎さん?」

 

 「さっきから度々華籠さんや金剛さん、陽向さんの名前は有香さんとか小梅ちゃん、拓海さん達なんかが呼んでますけど、その、プロデューサーさんだけプロデューサーとしか呼ばれて無いんですけど……」

 

 言われて顔を見合わせる某とそれ以外のプロデューサー達、そしてそう言えばそうだったと今更なリアクションを返して、某はコホンと咳払いする。

 

 「改めまして、私シンデレラガールズプロダクションCEO兼ゼネラルプロデューサーをしております。今は皇与一を名乗っておりますモバPと申します。

 以後お見知り置き下さい…。こんな感じかな?」

 

 「へぇ~与一さんって言うですね!」

 

 「待って可奈美ちゃん、そこじゃないよ?!」

 

 「"今は"って何だよ!?今はって!!」

 呑気に受け取った可奈美を余所に、舞衣と暁は疑問の声を上げる。

 

 「まぁウチは個性を重んじるから」

 

 「個性がどうこうってレベルか!!?」

 与一と名乗ったモバPの答えに暁ががなる。

 

 「う~ん何と説明すべきか、ウチはプロデューサー陣の経歴が一部を除いて特殊な訳アリばっかでね~。

 まぁその訳アリってのが全員、選ばれし子供してた連中なんだけど……俺ね、元の世界で子供の頃ちょっと派手に悪目立っちゃってさぁ、幸い名前だけが独り歩きしただけだったから、その辺誤魔化す為に幾つか名前を職務によって使い別けてのね。

 んで、事務所の代表兼プロデューサーとして活動する時の名前が、今言った皇与一って事になってんの。

 んで、アイドル達にはその辺ややこしいから単純にプロデューサーなり、Pなり、モバPって呼ばせてんのよ」

 と、あっけらかんと他人事の様に笑う推定与一。

 納得し難い所もあったが、深く掘り下げるとそれはそれで話が脱線するので暁、舞衣共にそこは目を瞑る事にした。

 

 「貴方方の事は今の話とこれまでの聴取も併せてそれなりに理解はしました。

 その上でお訊ねしたいんですが……先程私を、そのスカウトした際に仰っていましたよね?元の世界との行き来が楽だと…」

 

 「そう言えば私も言われたっけ、蘭子ちゃんやこずえちゃん芳乃ちゃんと合流出来れば晶葉ちゃんの発明でどうにでも出来るって」

 

 「可奈美達も!?私も言われた」

 

 「アタシもだな。ついでに良く分からん事も言われたが…それは今は関係無いか」

 暁だけモバPより声について何か妙な事を言われたが、本筋と関係が無いので横に置いておく。

 

 「晶葉の発明に関してはもう俺でもツッコむのが野暮なくらいの代物だから、置いとくとして。

 蘭子のパートナーデジモン、マスティモンの力を使えば電子機器のサイバーネットワークワールドを通じてゲートを開ける。それだけならウチの面子だけならすぐにでも帰れる。

 まぁそもそも、安全性諸々考慮しなけりゃ、俺達みたいな選ばれし子供はすぐにでも元の世界に帰れたけど、彼女達はそういう訳にはいかないから、うん、本当にダグオンが存在してくれたのは有り難かった」

 またしてもしれっと重要な事を交えて話すモバPの発言に眼を剥きながらも、彼の口が続きを紡ぐのを待つ。

 

 「おや?疑問が挟まるかと思ったが…ま、話が早い分には良いか。

 ダグオンは宇宙警察機構のある種のエリート装備な訳だし、それが存在するなら当然地球上ではオーバーテクノロジーに値する装置がいくつもある筈だろ?

 すると既存の機器をバラして組み上げるよりも、効率的に帰還手段の為の装置を晶葉主導で作れる訳よ。

 唯一懸念すべきはバラバラに散った面子でダグオンが分かるアイドルが比奈と奈緒と菜々さんくらいしかいないのが難点だったんだけど、芳乃とか茄子さんとか他人の善悪を見分けられる人材も居たし、結果良ければ全て良しとさせてもらった訳よ」

 

 「…………。改めて聴くと、行き当たりばったり感強すぎじゃねぇか!!」

 

 「いやいやいやいや!結果的に私達が遭遇したけど、もし悪どい人とかに遭遇したらどうする気だったの!!?」

 暁と美炎が剰りに軽く話すモバPに喰い寄る。

 

 「その為のロイヤルナイツよ!」

 

 「ロイヤルナイツ…って?もしかしてロードナイトモンさん達の事?」

 

 「イェア!その辺はダグベースに着いてから君達の仲間にも纏めて紹介といこうか」

 どうせ紹介するなら纏めて…と言うのがモバPの腹積もりのようで、以降はアイドル達と会話したり、柘哉の意識が戻ろうとする度に気絶させ直したりしていた。

 

 

 

 

 

 数時間後、ダグベースが隠された山間の近辺。

 ファイヤージャンボの格納滑走スペースがある地点に近付いたエン改め焔也はそこで機内に向けて声を発す。

 

 「えっと、ダグベースの近くまで来たんだが……ガイドビーコンも何も出てねぇんだけど…」

 と困った声音で告げると、コックピットの扉をココンとノックする音が木霊す。

 コックピット側でロックを外しノックの主を招き入れる。正体は勿論仮称皇与一を名乗ったモバPと三好紗南。

 

 「ふぅ~!アニメのコックピットとレイアウトはほぼ同じか!!感動ー!」

 

 「プロデューサー気持ち悪いよ?」

 興奮して名伏し難い動きをするモバPに紗南が笑いながらツッコむ。

 

 「あー、なんか用っすか?後なんで三好が一緒?」

 

 「OK!お答えしよう!今、我々が居る空間は紗南の持つデジヴァイスVの機能による疑似デジタルワールドの中!例えるなら鏡の中の世界ミラーワールド!戦わなければ生き残れない!」

 

 「や、仮面ライダー関係無いよね?えっとね、要するにあたしがVで展開したフィールドを解除するから、ダグベース?だっけ?そっちにいる人達からの反応に上手く応対してって言いたいんだよプロデューサーは」

 

 「え、今ので解んの?!まぁ分かったよ」

 焔也の返事を聞いた直後、紗南が腕のデジヴァイスVのフィールドを解除する。

 すると焔也のコックピットシートに備え付いたコンソールから何やら声が飛び、数回何事か会話を交えた後、ファイヤージャンボは断壁のゲートへと着陸、ダグベースに帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 「ハローエヴリバディ!初めましてダグオンの諸君エ~ンド刀使諸君。…とついでに管理者アルファ。

 私、シンデレラガールズプロダクション代表の皇与一と申す者です、気軽にモバPと呼んで下さい」

 オーダールームに集まった面々に恭しく一礼するモバP。

 

 「なんかボクだけ声のトーン違くない?雑じゃない?ねぇ?」

 

 「この度は我が社所属のアイドルを保護して頂き誠に有難う御座います。弊社の池袋が帰還の為の装置を製作する短い期間では御座いますが、その間お世話になります。

 無論只でとは申しません。私共に出来る事が御座いましたら謹んで協力致す所存です」

 

 (思ったより真面目なと言うかマトモな対応ですね…)

 (聞いていた話では非常識な不審者と言うイメージだったのだが……)

 (確かに目つきワリィけど、態度はムシロ紳士的じゃネ?)

 (……仕草の所々に、戦闘技巧者の名残が見え隠れしている…)

 (アルファへの対応は…どういう訳か塩が多分に強いがのう…)

 (聞いた所によるとマイマイやかなみん、ミホミホ、イナゴンはスカウトされたみたいデース)

 (節操無しかっ?!)

 (みたいですね~、さっき私もされましたぁ)

 (同じく、スカウトされたわ。丁重にお断りさせていただいたけど)

 (どうやらダグベースに居る刀使全員に声を掛けている様です)

 (ですがあの眼は諦めた者のそれではありませんわね)

 (恐らく、此処に滞在中は何度かアプローチを仕掛けてくるものかと…)

 (まさか私までスカウトされるとはな…いや、所属するアイドルの年齢層を鑑みれば私も範疇なのか……?)

 (私含め何人かは、あちらの事務所がどうのとも呟いていたのを耳に挟みました)

 

 (みんな楽しそうだなぁ~)

 焔也を除くダグオンのメンバーとオーダールームで会議を交える事の多い面々がヒソヒソと内輪で会話を交わす。

 その横で雷火はのほほんと優稀が出したお茶を啜る。

 因みに他の面々も遠巻きにモバPを観察している。

 

 「んぉおんや?そちらの資料……何やら面白い匂いがしますなぁ?」

 オーダールームの大卓、紫の手元にあった資料にモバPは目を付ける。何よりも彼等が驚いたのは、先程まで入口近くに居た男が何時の間にか紫の直ぐ側まで音もなく近付いた事だ。

 

 (何時の間に!!?気配の類いが一切感じなかった……)

 真後ろに立たれた紫に動揺が走る。

 

 (……あまりに自然、故に見逃した…!?まるでそうある事が当たり前だと思う程の動作で折神紫の側に歩み寄った……、隠凝の類いだな…)

 忍のスキルを持つ龍悟が一連の行動に舌を巻きながらモバPの評価を1段階上げるのであった。

 

 「フムフム…選抜刀使によるアイドルプロジェクト…………。良いねぇ、俺好みのイベントじゃあないの。ウチの事務所に所属が無理なら…うん、そうだな。それしかない……決まりだ。我々CGプロはこのプロジェクトに全面的に協力するよ!」

 

 有無を許さぬ勢いで、1人の男が刀使のアイドルプロデュースに名乗り出たのであった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:14平米にスーベニア)

 

 おい、何でBGMが久川姉の方のソロ曲なんだ?

 

 それはくじ引きで決めたからだね。

 

 まぁ凪くんも予告に参加する様だし、良いじゃないか。

 

 どうも、徳島から異世界に分譲アイドル。凪の方の久川、久川姉です。

 

 これはこれはご丁寧に~、弘名の方の新多こと弘名でぇす。美波さんの方とは漢字が違うのでご注意くださぁい。

 

 不味いな、凪くんと弘名くんを喋らせていたら延々と予告が進まない。

 

 まぁ…そうなるな……、解りきった事だが…。

 

 うん、時間の無駄遣いは良くない。我々でさっさと次回タイトルを予告してしまおう。

 

 次回、プロジェクトとじドルDAY5

 アイドルって一体何なんですか?モバP大奮闘!

 

 これさ、結局僕らも普通にこき使われるんだよね。

 

 まぁ…ヤツだからな。

 

 凪です。既にエイプリルフールどころか5月も終わり、6月に入ってるのに続くとは、これ如何に?

 

 久川ぁぁあ!?メタい発言はヤメロォォォ!!

 

 ではまたぁ~。

 





 今期のアニメ、まちカド、かぐや様、ビルディバイドは当然としてパリピ孔明、であいもん、サマータイムレンダ、勇者、辞めます。は面白いですねぇ。
 乙女ゲーは面白い事は面白いんですが、勿体ないという思いが強く出てしまう…まぁ視聴するんですが。

 勇者、辞めます。は元々ニコニコ静画で読んでいたのでレオの正体最初から知ってたんですが…回想のアクエリアス喋って欲しかったのに後ろ姿だけかぁ。
 まぁ他にも色々と観てます。

 シン・ウルトラマンと五等分の花嫁劇場版も観てきました満足でした。
 ではまた次回


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外伝 異邦人来訪編
第七十一話 歪曲!?別次元からの来訪者!


 こんばんは。
 仕事終りからの夕飯中ダグライダーです。
 今回からコラボ回、ロザミア様の作品からキャラクターを借り受ける身としては戦々恐々としております。
 他所様の家の子供を預かる親の気持ちと言う奴ですね!
 今回の話はまだ導入の辺りだからそこまで差異は無い筈……!



 前回までの"刀使ノ指令ダグオン"

 

 六角先輩って何者なんですかね?

 

 成瀬は忍者説を推します!

 

 まぁ、シンシュツキボツではあるよね!それにキレイ!

 

 ぼくもよく知らないんだよね、動物の話で盛り上るけど。

 

 本当に何者なんだろう?×4

 


 

 ━━???━━

 

 あー、退屈ってのは本当に無くならない。

 停滞、退屈は人間の衰退の一因だ、だから定期的に刺激をくれてやらなきゃなぁ?

 結果が滅びでも進化と衰退なら進化の方がマシだろ?

 そう言ゃあ、アルファが管理してるあの世界…今どうなってっかねぇ?

 せっかくだし、もう少しスパイスを足してやるか。あの連中にも刺激になるだろ。

 

 

 

 ──悪意が悪意を加速させる。

 謎の声が世界に何かを投げ込んだ。それは果たして彼の世界に何をもたらすのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星衛星軌道・エデン監獄特別監獄棟

 

 「ふむ……これは、また可笑しなモノが現れた。もしや例の()()()()()()()とやらか?」

 監獄棟の一室で鬼の異形を成した異星人が手許の天秤の様な器具を玩ぶ。4つの皿にその皿を回転出来るよう細工が施されている。

 「ふ~んむ、空間を越え次元を繋ぐ道具……私では宝の持ち腐れだな、なら彼女にでも持たせてみるか……ギガロクス」

 何かを思い付いた様に忠実な側近の名を呼ぶ鬼。

 「ご用命でしょうか我が主」

 「この玩具を彼女に。使い方は彼女なら直ぐ理解するだろう」

 「承知しました」

 白鋼の巨体が鬼から天秤を受け取るとスッと消える、言い付け通り目的の人物に道具を渡しに行ったのだろう。

 「さて……どんな世界が見られるのかな?フフフ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、人々が寝静まり、或いは尚も働く静寂の帷、その久遠と刹那の瞬き時、人々が気付かぬ内に()()()()()()

 眠りに着いていた人々は天変地異も斯くやとばかりの揺れにある者は飛び起き、またある者はその命を守る為に身を屈める。

 もし、彼等が空から今己が立つ大地を眺める手段を持ち合わせていれば驚愕に震えたかもしれない。

 何せ景色が回っているのだ。夢でも幻でも無い、現実に己の生きる日常(せかい)が回っていく。

 否、回っているのは世界では無い。

 

 彼等と彼等が住まう大地の方が回っているのだ。

 

 まるでコインの表と裏が引っくり返る様に。

 

 大地に大穴が空き、中心にはコインの如く回転を始める街と町。

 

 自らの住まう世界が文字通り180度変わる。そしてそれは、裏側に住まう人々にとっても同じ事。

 気付いた者達は大いに狼狽え、巻き込まれた者達は嘆き、関心の無いものは何処までも無関心に、他人事の様に嗤う者もいれば自らの事のように嘆く者もいる。

 表と裏が入れ替わり、人々は大きな混乱にざわめく。

 そして一刻の後、再び彼等の世界は回る。

 再び目を開けば後には元通りの何時もの日常。

 その日はそれで終わり、まるで胡蝶の夢、しかしそれはこの世界の……この星の大いなる危機の序章に過ぎなかった。

 

 この日を境にいくつもの神隠しと呼ばれる事象が散見される。

 それはこの日本に限らず世界全てを巻き込んで起こる大事、その到来を予見する小事であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉・刀剣類管理局本部食堂

 

 『──現在に至るまで行方不明者は述べ800人、負傷者は3000人にまで昇ると予測されています』

 昼時の本部食堂で壁に立て掛けられたテレビからそんなニュースが流れてくる。

 見出しは神隠し!?消える街と人、謎の地震!とある。

 「神隠し……か、きな臭いな」

 定食の白飯を綺麗に平らげた戒将がテレビの内容に目を細める。

 「……異星人の仕業だと?」

 対面の龍悟が焼き鮭の身をほぐしながら戒将の発言の意図を訊ねる。

 「荒魂被害ならばこんな回りくどい事には無らん。それにエデン監獄の囚人達の中には我々の想像も出来ない様な能力の持ち主が居ないとも限らない」

 「確かに、可能性はゼロじゃありませんね。ですが今までの囚人達とは大分手法が違いますね」

 マイ七味、マイデスソースを目の前の饂飩にかけながら戒将の隣に座る翼沙が所見を述べる。

 「怪我人が出てんのも気になるな」

 翼沙の饂飩に振りかけられる大量の赤いナニかを見て引き吊りながら焔也も自身が気になった事を述べる。

 「その怪我は宇宙人共の仕業つぅことか?」

 デザートのカッププリン片手に撃鉄が首を傾げる。

 「ソレなんだけどヨォ、どうにも当直でタイキしてた刀使のコに訊いたらオカシナ事が起きたらしいって話ダゼ?」

 翼沙の隣で焔也と同じく饂飩のスープの赤みに引いていた申一郎が新たな話を切り出す。

 「おかしな話ぃ?例えばなんだよ?」

 「その刀使のコが言うには、一昨日の夜…今テレビでやってるような騒ぎが起きてた頃、荒魂出現で現場に何人かで出たそうでナ。ンデ、いざ現場に着いてみたらスペクトラムファインダーに反応がネェわ、地元の人間に話を聞けば目の前で荒魂がヒックリ返ったと思ったら見たこと無い人間が現れたとかってな感じだわでどうにも要領を得なかったんダト」

 女性限定のコミュニケーションの高さを駆使して聞いた話を皆に教える申一郎。

 戒将と翼沙が考え込む。

 「引っくり返る……その人間に何か変わった事は?」

 翼沙が気になった部分の詳細を申一郎に訊ねる。

 「オレも又聞きだから詳しくは知らネェよ?タダまぁ、ナンでも……現れた人間ってのが日本人に明らかに見えない見た目だったとか、警察に連絡しようと目を離したらいつの間にか居なくなってたとからしいぜ」

 それ以上は解らんと両手を挙げてやれやれという顔をする申一郎、そしてその話を聞いて5人も沈黙する。

 「…………。一度我々で調査に当たってみるか…」

 沈黙を貫いていた戒将が口を開くと仲間内にだけ聞こえるよう声を出す。

 「ダグオンの出番って訳か」

 「しかし直接宇宙人が現れた訳でもないんじゃろ?転送は使えんぞ」

 「承知の上だ。で、あるならば取れる手段は一つ」

 撃鉄からの疑問に戒将は皆の顔を見渡しながら言葉を区切る。

 「アー……オレら警察じゃ…って特祭隊は警察組織だったナァ………」

 「まぁ、自分の足で探す事になりますよね、そうなると」

 「…割り当てはどうする?」

 申一郎と翼沙が少しうんざりした顔をする一方、警邏科に長く属する2人は話を進める。

 「先ずはこの近辺で起きたと目される場所の調査からだ。最初は3:3で行こう」

 「んじゃとりあえずチームはくじ引きで決めようぜ!」

 2人のやり取りを聞き手近の割り箸を使って何時の間にか籤を作っていた焔也が箸を握り込んだ右手を差し出す。

 ((何時の間に……))

 その用意の良さに戒将、翼沙が心中で嘆息する。

 「おぉ?用意が良いのう!ワシはこれじゃ!」

 ノリノリで率先して籤を引く撃鉄、その箸の先端は赤。

 「ま、折角このバカがセッセと作ったんだからノッてやるか!」

 同じく籤を引く申一郎、彼の箸の先端も赤色だ。

 「……ふん?色がないな…」

 そして何時の間にか引いていた龍悟、その先端は無地。

 「っふぅ、仕方在るまい。お前の策に乗じてやろう」

 続いて短く息を吐く戒将、籤の先は無地。

 「最後ですか…では迷うのもあれなので手早く、はっ!」

 残った2本から迷わず引く翼沙、チーム分けの結果が出る。

 「んじゃまずチームAな!俺!申一郎!撃鉄!…ってこれ自分でくじ作っておいてなんだけど大丈夫か?」

 「「んだとぉ?!」」

メンバーの顔ぶれに不安を出す焔也とそれに対し文句あんのかと言わんばかりの2人。

 「……自分で決めた手段で出た結論だ…、今更文句を言うな…」

 「確かに其方の面子に些か不安を憶えないでも無いが、今回の主目的は調査だ。余程イレギュラーな事態が起きなければ問題有るまい」

 チームBの龍悟が籤の結果に文句を言う焔也を詰り、戒将が戦闘にならなければ大丈夫だろうと述べる。

 「何かあればダグコマンダーで即座に連絡を取り合いましょう」

 翼沙がそう言って締め括る。

 話が決まればやる事は早い、即座に食事を片付けて食堂を出る6人、通路に出れば速足で歩きながら正面玄関口へと向かう。

 果たして彼等の行く先に待つものとは──

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン監獄・円卓

 

 地球の…より正確には日本の様子を観測する為に用意された映像装置の前に修道女の様な人影が佇む。

 そして修道女の後ろから近付く蜘蛛脚の異形。

 「どぉお?その玩具の使い心地はぁ?」

 蜘蛛脚の異形即ちこの監獄唯一の囚人では無い存在である女医が修道女へ語り掛ける。

 「無問題。状況は上々、この器具は此方(こなた)との相性が良い。其方(そなた)達には無償の感謝を」

 「別に礼なんて良いわぁ、適材適所って奴ねぇ。貴女が空間に干渉する力を持ってた、その道具が次元を越える力を持っていた、その2つを組み合わせて貴女の力が増強される。その副次効果で時間すら超越出来る。そしてあの星に大きな混乱が巻き起こる。最近地球侵攻の手段がマンネリ気味だったしねぇ…他の子にはちょうど良い刺激になるんじゃなぁいぃ?」

 そう女医が口にした通り、修道女には空間に干渉し操作する能力があり、天秤の様な道具には別の次元に干渉出来る力が込められており、その力が掛け合わせられた時、過去、現在、未来の時間にすら干渉可能となったのだ。

 「此方を出汁にするとは其方もヒトが悪い。だが、此処ではコレの真価を発揮出来ぬやもしれない…」  

 「なら地球に降りるぅ?多分ダグオンに見つかってしまうでしょうけどぉ」

 「それでは意味が無いであろう。超速の兄弟に協力を仰げぬか?」

 普通に宇宙船で降りてしまえばダグオンの感知網に引っ掛かってしまう為、隠密能力がある超速三兄弟の名を挙げる修道女、しかし女医は無理ねと笑う。

 「彼以外があの兄弟にモノを頼んでも首を縦に振らないわぁ。まずは彼に話を通す事ねぇ、案外簡単に許可してくれるかもよぉ?」

 「………まぁ一考しておく」

 「なんならぁワタシがその道具をパワーアップさせても良いけどぉ?」

 「ふぅ?連中に頼むよりはマシであろうか………宜しく頼む」

 どちらに頼むのが労力的に楽かを考え、後々のリスクよりも目の前の利益を優先した修道女、そんな彼女の選択にとても悪い笑顔を浮かべる女医。

 「うふふ…任せてくれて良いわぁ。貴女がきっと気に入る物を用意してみせるわぁワタシとあのコがねぇ」

 女医が口にしたあのコと言う言葉に柱の物陰から音が鳴る。

 「え…あの……えっと………ぼく眠いんですけど………また徹夜ですか……先生は製図引くだけですよね……作るの殆んど…ぼくなんですが……」

 「頑張りましょうねぇ、うふふ…」

 「あ、はい……ひぃん…」

 女医はそうして声の主と共に奥へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県・山北町

 

 神隠し事件があった山北町へとやって来たダグオンの若者達。

 「見たとこ特に変わった感じはしないな、ホントにここか?」

 焔也が辺りを見回して胡乱気に訊ねる。

 「それを確める為に来たのだ。さぁ予定通りに手分けして調べるぞ」

 戒将の号令で各々チームに別れ散索を始めるダグオンの若者達。

 

 

 

 チームA焔也、申一郎、撃鉄が右側から。チームB戒将、翼沙龍悟が左側から山北町全体を探るように歩き回る。

 

 

 

 

 ━━チームA

 

 「う~む、やはり特にこれといった物は無いようじゃが……本当に此処なのか?別の場所じゃないのか?」

 撃鉄がバケツ式のゴミ箱の蓋を開けながら申一郎に訊ねる。

 「それは間違いネェよ。ちゃんと刀使のコ達に確認したしな…で焔也、オマエはさっきから携帯弄って何してんダ」

 公園の外草を掻き分けながら、先程からスマートフォンを弄る焔也に対し文句を述べる申一郎。

 「いや、ちょっと今回の事を詳しく調べてみようと思ってな…ネットで検索かけたら、何かここ二週間で今回の神隠しと似たような現象が世界中で起きてんだよ」

 そう言って2人にスマホ画面を見せる焔也、2人も神妙な顔になる。

 「これは……戒将達にも教えた方が良いんじゃなかろうか?」

 「あ、その辺は大丈夫だ。LINEで翼沙に教えた」

 見ればグループチャットダグオンの画面に切り替わっている。

 「ってなると、結局は手掛かりをアラ探しするっきゃネェのか……ハァ、いっそ正面キッて異星人が攻めてくりゃ楽なのにヨォ」

 すると申一郎のその言葉に反応したのではないかと言うように大地が大きく揺れる。

 「お、おお…?!」 「地震ダァ?!」 「お、お、落ち着けけけけ!!?」

 「「お前が落ち着け!」」

 狼狽える撃鉄を2人で嗜める、そしてある程度揺れに慣れ状況を把握しようと視線を巡らせた時、3人はそれを目撃した。

 まるで現実味の無い光景……、山北町の自分達がいる区画街とは少し離れた区画が宙に浮いている。

 大地は円形に切り取られ、宙に浮く街は下に全く別の街を抱えている。

 やがて街を乗せぶら下げた円は回転を始め、見覚えの無い街が上へ、元々その区画にあったであろう街が下へと入れ替わる。

 そして宙に浮いた大地は役目を終えたとばかりに元の切り取られた側に戻り、何事も無いように綺麗に痕跡を消した。入れ替わった街だけを除いて……。

 

 「「「ひっ、ひっくり返ったぁぁぁあァ?!」」」

 

 これには見ていた3人も驚く、そして3人のダグコマンダーに同時に通信が入る。

 『三人共に今の光景を見ていたな?我々は丁度、お前達とは街を挟んで反対の方向にいる。今し方入れ替わった街を調査するぞ』

 通信モニターの先で戒将が指示を飛ばす。

 3人共顔を見合せ頷き、入れ替わった街へ向かう為に走り出す。そしてそれと同時に今度は異星人襲来のアラートが鳴る。

 「げっ!?こんな時に…いや、こんな時だからか?!」

 「要は戒将が言ってた通り、宇宙人共の仕業だったワケじゃな」

 「っと、言ってる内に来やがったゼ!」

 彼等が現れた街へ向かう中、空から現れたアダムスキー型のUFOが飛来する。

 3人は足を止めUFOが降り立ったであろう場所を確認する。

 「距離と位置関係からすっとオレらが近いか、どーする?ヤロウが原因かどうか分かんネェが、先に戒将達に合流すっか?それとも…」

 「決まってらぁ!俺達で何とかするんだよ。……っつう訳で戒将、俺達は異星人の方に向かう。街の詳しい調査は任せた!」

 『何だと!?おい!待て!』

 戒将の制止を聞かずに再び走り出す焔也。申一郎と撃鉄も仕方無いとばかりの表情をする。

 「マァ、UFOの大きさからしても敵はオレらと同じくらいかちょっとデカイだけだろ。三人でもなんとかなる…悪いな戒将、翼沙に龍悟共々街の方は任せるわ」

 「じゃな。焔也とワシで前衛、申一郎の火力援護による後衛なら大半はなんとかなる。何、危なくなれば呼ぶでな、心配無用じゃ!」

 そうして焔也の後を追う2人、戒将はモニターの向こう側で眉間を指で解しつつも、状況からそれが妥当かと溜め息を浸く。

 『分かった。其方は任せる…が、何かあれば即座に連絡を寄越せ』

 「アイヨ」 「うむ!」

 2人が焔也に合流する。丁度人気の無い路地裏に入ると3人はダグコマンダーを起動させる。

 

 

 

「「「トライダグオン」」」

 

 そして路地から飛び出す赤、緑、黒の光、3人の戦士が建物を屋根伝いに駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━???・空地

 

 一方、入れ替わった街と山北町にある元々の街並みの境にUFOが降り立ち、そこからヒューマノイドタイプの宇宙人が出てくる。

 「クソッタレ!何が完成した装置の成果を確認したいから現地で直接確かめて来て♪だ!そんなもん自分でやれ!あのクソアバズレ!!」

 地団駄を踏む異星人、見た目が妙な痣らしき模様と肌が緑色な事以外は人間の姿そのものだ。

 大地が入れ替わるという不可思議な現象により人々が離れ、或いは家屋に隠る故に人気の無い空地で()()は罵倒を続ける。

 と、そんな事をしていたからか上から近付く3人に気付けなかった。

 「見付けたぜ、まさか一歩も動いてないなんてな。逆に驚きだぜ」

 「よっぽどヨユーなのか、あるいは単なるバカなのか……ってか人間の女型カヨ、しかも肌の色とアザ以外殆んど同じタイプ…やりずれぇ…」

 「言うとる場合か!ともかく、ワシらでとっとと片付けるぞ!!」

 ダグオンの3人、ファイヤーエン、アーマーシン、ドリルゲキ。彼等に見付かってしまった彼女はその顔を驚愕と焦燥に歪める。

 (だ…ダグオン?!しまった!あのアバズレを罵倒するのに夢中で奴等の存在を失念していた!!?マズイ!マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!?おれは大した戦闘力が無いんだ!早く逃げなきゃ!)

 幸いダグオン達は何故か警戒してまだ自分を包囲してはいない、唯一の出入口を塞がれる前に逃げなくては!そう瞬間的に思考し脱兎の如く走り出す異星人。

 

 「なっ?!」 「ハァッ?!」 「むぅ!?」

 

 此方に仕掛けて来るか?と身構えていた彼等はその予測を裏切られた事に間抜けな声を挙げる。

 「逃げたぞ…」

 「バカ!追うぞ!」

 「おのれぇ!待たんかーい!」

呆けるエンを叱責しつつ逃げた異星人を追うダグオン達、彼等が異星人を追って向かう先、それが奇しくも入れ替わった大地の街であった事は今の彼等の頭の中から抜け落ちていた。

 

 その街の名は"駒王町"、新たな出会いと闘争が待つであろう場所である。

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・???

 

 ダグオン達が異星人と追い駆けっこを始める前、この街に住まう特殊な集団が自らが巻き込まれた異変の調査に乗り出していた。

 「よぉ~し!しっぱつしんこ~だぁー!!」

 元気溌剌、天真爛漫、そんな言葉が似合いそうなテンションの色素の薄い紫がかった少女が叫ぶ。

 彼女の周りには複数の個性的な見た目の面々、恐らくは彼女こそがこの集団の中心なのだろう。

 「その前に、事前に決めた手筈通りにこの街に何が起きているのかを正確に把握する為にチームに別れるわよ!」

 此花寿々花以上の深紅(ワインレッド)に艶煌めく長髪のグラマラスな少女が、先の元気の塊の象徴らしき少女を止める。

 「え~!みんなで一緒はダメなの?」

 「今、私達の街に何が起きているのかを確めるのよ?手分けして当たった方が速いでしょ?それに使い魔も飛ばしすとは言え、この地の管理を任されているグレモリー家の者として、実際に自分達で確認した方が分かる事もあるわ」

 その言葉には成る程一理有ると、数名が頷く。

 

 

 果たして幾数分後かの話し合いの末、数名組に別れる事となる。

 「よーし!改めて気を取り直して出発だー!」

腕を空に大きく掲げる溌剌少女、小柄な体型と相まってある種の微笑ましさがある。

 「「「おー!」」」

少女に続くのは野性味と言うか粗野と言うか、顔立ちは整っているが些か締まりの無い下心やら何やらが内包された所謂、黙っていればイケメンなのにと言われそうな少年と肩口まで届くか届かないかくらいの青い短髪をざっくばらんに切り揃えた、此方も些か脳筋に見える少女、そして最後に腰まで掛かるシルクの様な金髪、垂れ目の碧眼で面持ちの優しそうな少女が仲間達と別れ己が暮らし住まう街の調査へと駆り出す。

 

 「よっしゃ!ザマァ見ろヴァーリの奴、今回ねぷ姉ちゃんの隣に立つのは俺だァッ!」

 4人組で黒一点となった少年が、恐らくは並々ならぬ関係があろう人物の名を挙げ自慢気な顔で拳を握り喜ぶ。

 そしてそんな彼を見て青い髪の少女がツッコミを入れる。

 「相変わらずそういう所は子供染みた争いを繰り返しているのか、一応ケジメは着けたんだろう?」

 「それとこれとは別!それとこれとは別なんだ!」

 少年が必死の剣幕になる。流石に少女達も引き気味だ。

 「と、とにかく!他の組に別れた皆さんもきっともう調査を始めてるはずですし私達も頑張りましょう!」

 金髪碧眼の少女が空気を取り成して本題に軌道修正する。

 とまぁ、矢鱈めったらグダグダなやり取りをしつつ住まう街を散策する。

 斯くして歩く事数十分、そろそろ紫髪の少女が飽きを感じ始めていた頃、彼女達一行の前にそれは現れた。

 

 「む?何だ妙な気配が近付いて来る」

 最初に気が付いたのは飽き始めた紫髪の少女の代わりに前を歩く青髪の少女、彼女の言葉に少年と紫髪少女が不審に思い訊ねる。

 「どおした?ゼノヴィア?」

 「お腹空いたの?」

 ゼノヴィアと呼ばれた青髪の少女は己の中の野生に近い第六感で何かを感知したのだ。

 「何か……来る!?」

 ゼノヴィアの言う通り前に視線を向ければ酷く乱れた呼吸で走り来る、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼女は頻りに後ろを振り返りながら必死に()()()()()()()()

 「あの人……なんだかとっても怯えているように見えます…」

 金髪碧眼の少女が女性の表情から察した事を口にする。

 女性は脇目も振らず走っているからかそのまま此方へ向かって来る。

 「っと…」

 「おわっ?!」

ゼノヴィアと少年が女性を躱したので必然的に紫髪の少女とかち合いぶつかり縺れる。

 「ねぷぅっ?!」

 2回程転がり止まる少女と女性、女性の下敷きになった少女は目を回している。

 「姉ちゃん!!」

 「う~ん…」

 そんな一行の混乱を他所に女性は心中で毒づく。

 (クソッ!クソが!!何だコイツらは!!邪魔しやがって!邪魔しやがって!ふざけんな!奴等に追い付かれるだろうがっ!!?)

 そうして後ろを見れば逃走の原因となった恐るべき存在が既に近付いていた。

 

 

 「見つけた!もう逃げらんねぇぞっ!!」

 

 

 赤い装甲を纏う炎の鳥の様な怪人が女性に対し敵意を向けた言葉を飛ばす。

 そして、その怪人に続けて現れた緑色と黒色の装甲を纏った、赤い怪人の仲間とおぼしき2人。

 「チョコマカ逃げてくれたなァ、ケドまぁ、ココまでだ。大人しくしてもらおうか?」

 緑色の装甲の人物が厳つい銃器を女性に向ける。

 「年貢の納め時ちゅうやつじゃ、引導を渡してやるから潔く向かって来い!」

 黒色の装甲の人物がどうにも穏やかでは無い物言いで女性に言葉を投げる。

 (ど…どうする…!?ダグオン達には追い付かれ目の前には下等生物、下等生物自体は大した脅威じゃないが……いや、おれからすれば脅威ではあるが…ダグオンが追っているおれが異星人だとバレて直ぐ様引き渡されるかもしれん!どうする!?)

 女性が焦燥を濃くさせ狼狽える。しかし、肝心のその下等生物……目の前の人間達の反応が芳しく無い。

 

 「な、何だ……奴らは…!?」

 ゼノヴィアが何かこうとても信じられないモノを見た様な顔になる。

 「おいおい…その銃と言い年貢がどうこうと言い、穏やかじゃねぇな」

 少年までもがダグオンに対して警戒心を顕にしている。

 (な、何だ…、コイツらはダグオンを知らない?この星の住人なのに?………っ!そうか!逃げる事に夢中になって忘れていたが、此処はあのアバズレが調査に向かえと言った場所!クソビッチの能力で入れ替わった世界の住人なら奴等を知らなくてもおかしくはない!ならば!)

 少女の上に未だ馬乗りの女性はニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

 「た、助けて下さい!私、あの恐い人達に追われていて…もし捕まってしまったら殺されてしまうんです。どうか…!」

 少女の胸に顔を埋める様にして、彼女達だけに聴こえる声で、まるでダグオンが悪役であるかのようにひ弱な女性を演じ助けを乞う。

 「何だとっ!?」

 「野郎……一人の女の人に向かってよってたかってなんて連中だ!」

 ゼノヴィアと少年がダグオンに対し一気に敵意を向ける。

 目を回していた少女も女性の言葉に正気に戻り、飛び起きる。そして──

 「クエスト初っぱなから悪漢とのバトルなんてね!オッケー、この主人公で女神のねぷ子さんがあいつらをねっぷねぷにしてやんよー!」

 ねぷ子さんと名乗った紫髪の少女が何処からか木刀を取り出し構える。

 ゼノヴィアと少年も各々の得物、大剣と赤い籠手を出現させ構える。

 唯一、金髪碧眼の少女だけが戸惑いながらも女性と安心させようと彼女の側に近寄り、寄り添う。

 

 対しダグオン側は突如として武器を取り出した謎の集団に当惑する。

 「おい…今、あのちびっ子はともかく、後の二人…武器がいきなり現れたぞ……!」

 「むむ!?何モンじゃい…」

エンとゲキが警戒を更に厳にしながら正体不明の一行に対応出来る様に構える。

 「オマエら、気ィ付けろ…連中、対人レーダーに反応シネェ。いや…厳密に人間の反応に妙なモンが混じってる。ありゃ多分……」

 シンの言葉に2人はハッとなる。

 「あの異星人の仲間か……してやられたぜ」

 「まさか、ワシらから逃げていたのは仲間と合流し確実に倒す為か…どうする?戒将達に救援を出すか?」

 「いや…ここは俺達だけで何とかしよう。もしかしたら他にも異星人の仲間が居て、向こうのチームとかち合ってるかもしれねぇ…」

 図らずも互いに置かれた状況から誤解を抱いて対面する勇者と来訪者。

 その裏で糸を引いた女は嗤う。

 

 互いの正義が悪によって弄ばれる、護り戦う戦士達が激突する!

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 俺達が異星人の仲間とおぼしき連中と刃を交えている時、戒将達も謎の集団と邂逅していた。

 

 

 荒魂を普通の人間が倒したのか?!御刀も無しに!いや…もしや彼女達は普通では無いのかもしれん。

 

 話を聞いてみますか?何か分かるかもしれません。

 

 ……話し合い中悪いが、緊急事態だ。エン達が敵と接触、未知の相手と戦闘になったようだ……。

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 勃発!?仕組まれた戦い。

 

 主人公補正仕事してないよ!?なんで!!?

 

 誰だ?!




 所で、昨日発売の今週のヤンジャンのシンデレラグレイのパイセン、久々に簡単パイセンからの天然煽り。それに編集が便乗して「知らないのか?」は爆笑ものでした。
 これから先ダート云々が何度ネタになることやら……プフ


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第七十二話 勃発!?仕組まれた戦い。

 おはようからおやすみまで……zzzZZZ
 失礼、コラボ二話目です。中々纏まらずに苦戦しました。
 次回は割りとノリよく書ける……そんな気がする。

 所でOVA見ました、ミルヤさんの水口レイピア解説助かりますわ、チビふっきーだわ、何時もの可奈美ちゃんだわ、新しい人型(姫タイプ)だわ、見所満載でしたね!



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 あれェ!?何か別世界が混ざってるぅ?!

 


 

 ファイヤーエン、アーマーシン、ドリルゲキが異星人の策により謎の一行と衝突する事態となる前、追い駆けっこを演じている時。

 燕戒将、渡邊翼沙、六角龍悟は彼等とは別に駒王と銘打たれた街を調査していた。

 

 「奴等は大丈夫だろうか……ああは言っていたが敵はどんな能力を持っているか解らんというのに」

 戒将が山北町と明らかに様相が違う建築家屋を見ながらふと呟く。

 「確かに不安が無いと言えば嘘になりますが、三人とも弱くはないのですから、もう少し信頼してあげても良いのでは?……しかし不自然に人が居ませんね」

 翼沙が戒将の言う事に同調しつつ、仲間を信頼する様に口にし、不自然な程人が居ない街の様子を訝しむ。

 「……何かしら暗示のようなモノが働いているのかもしれん」

 龍悟があまりに不自然までの街の違和感に推測を立てる。

 

 「詰まりはこの街には謎の力が働いて、住人達はその暗示により異変に気が付かない。そう言うのだな」

 「……そうとでも考えなければこうも静かな理由に説明がつかんからな…」

 戒将と龍悟が意見を交えている、翼沙はLINEで来た焔也からの神隠し事件を改めて精査している。

 「戒将、良いですか?焔也と一緒に調べた神隠し事件、僕の方で改めて調べ直しているんですが……行方不明者は帰ってきたパターンと行方不明のままのパターンの二つ以外に増えているパターンもあるようです」

 翼沙が妙な事を言い出したので2人共その理由に首を傾げる。

 「…増えたとは?」

 「此方の行方不明者が纏めて帰ってきた訳では無いのか?」

 「はい…。飽くまでもニュースサイトに載っている情報のみなのですが、増えた人間は戸籍が存在しない人間だったようです。そして今回の街が入れ替わる事件で僕は推論を立てたのですが…これはこの街があった世界の住人が僕達の世界に迷い混んでいるのではないのでしょうか?」

 

 「存在しない人間がこの街がある世界の住人か…」

 翼沙の推論に戒将が手を顎に充て熟考する。

 そんな彼等のダグコマンダーに搭載されたスペクトラムファインダーに荒魂の反応が検知される。

 「荒魂だと?!」

 「近いですね…」

 「……先行する」

 突然反応が現れた荒魂に驚愕する戒将、翼沙が場所を特定し龍悟は言うや否やすぐ近くの民家の壁を駆け上がり屋根伝いに音も無く走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町公園

 

 一方、その荒魂が出現したとおぼしき場所では数名の何者かが荒魂を相手取り戦っていた。

 「いったいっ、何なのかしら?!この生物はっ!」

 恐らく学校の制服であろう衣服を纏った紅色の少女が群がる荒魂を手より放つ何かしらの力を込めた光弾にて蹴散らす。

 

 「奇妙な手応えだ、生き物を相手にしている気がしない」

 同じく荒魂を相手に危なげ無く戦うのは身の丈並の長さを誇る、用途不明の宝玉が付随した槍を振るうのは青い軍礼漢服に身を包んだ青年。

 

 「もうっ!気持ち悪いったらないんだから!」

 紅色の少女同様制服に身を包んだ栗毛のツインテールの少女が此方も光のエネルギーらしきモノで荒魂に対応する。

 

 「魔剣で斬った時より聖剣を使った時の方が効果がある……この生物は魔に分類されるものなのか…?」

 此方は少女達と同じ制服、しかし男子用のブレザーに身を包む金髪で爽やかな面持ちの少年が手に振るう両刃剣を眺めながらポツリと呟く。

 

 とは言え斬った張った、蹴散らした矢先に次々と荒魂が現れるのだから彼等彼女等も辟易してしまう。

 そんな4人と荒魂の間に突如割って入る飛来物。

 「「「「?!」」」」

 公園の石畳に深々突き刺さるそれは──

 「手裏剣…?」

 紅色の少女が地面に刺さったそれの正体に首を傾げた瞬間、紫色の影が自分達の真後ろから飛び出した。

 

 

 

 

 

 「リュウの奴め、独断専行が過ぎるぞ」

 そして一連の流れを離れた位置から伺う2人戦士。

 青い戦士がマスク越しに顔を右手で覆う。

 「まぁまぁ、ですが彼等の武器は興味深いですね…女性達の方も何やら只者では無いようですし」

 白い戦士が荒魂と戦闘を行っている4人組の武装や能力をしげしげと見つめている。

 「確かにな。普通の人間では荒魂に立ち向かう事は出来ない、況してや倒す事など不可能……しかし」

 「あの一行はそれを成し遂げた。それに不自然な暗示が掛かった街で唯一、外にいる。どうでしょう?交渉してみる価値はあると思いますよ」

 白い戦士、ウイングヨクが荒魂と戦う謎の異能者一行との会合案を持ち出す。

 「手掛かりも少ない……ならば多少のリスクも承知の上か、良いだろう。我々もリュウに加勢しあの一行の助力を担うとしよう」

 青い戦士、ターボカイがヨクの提案に乗り、その身を木陰より乗り出す。

 「目標、中級蛙型。行くぞ!」

 「はいっ!」

 

 

 

 

 そしてダグオン2人の話題になっていた4人は突如として現れたる謎の存在に興味と不信をない混ぜにした感情を向けながら趨勢を見やる。

 「部長、あの人は一体……?」

 金髪の少年が現れた紫の戦士、シャドーリュウの存在に対し紅色の少女に誰何の言を問う。

 「分からない、けれど少なくとも敵ではないわね。今のところはかもしれないけど……」

 そう口にしつつ、リュウが単騎で正体不明の蛙の化物を翻弄、討伐する様に、只者では無い何かを感じている。

 「ニンジャ!ニンジャがいるわ!ねぇ曹操!あれ知り合いじゃないの!?」

 ツインテールの少女がリュウの格好から見て取れるイメージを連呼しつつ、漢服の青年の裾を引いて指差す。

 「生憎、英雄派にあの様な神器の持ち主は居ない……と言うより、あれは神器ではないだろうさ……うん?」

 ツインテール少女に引っ張られる裾を直しながら答えていると更に後ろより感じる気配に眉を潜める。

 

 

 「リュウ!合わせろ!ターボホイールシュートッ!」

 青い戦士が巨大なタイヤらしき物体をリュウと呼んだ戦士に向け蹴る。

 「……成る程、承知した…。ハッ!大っ回っ転っ!剣風ゥゥゥ斬ンン!!」

 リュウと呼ばれた戦士が意図を理解し、タイヤの上に乗り何事かを叫び回転する。

 激しく回転する独楽と化したソレはグルリと円を描いて荒魂を斬り裂き、刻む。

 「凄い、あの連続回転…大味に見えて正確に相手を斬り刻んでいる。それに……あの青い戦士、速い!」

 金髪の少年がホイール剣風斬を繰り出すリュウの技量と、残る荒魂を手早く片付け駆けるカイのその速さに感嘆の息を呑む。

 「失礼。危険なので少々退いていて下さい。ブリザードハリケェェェエン!!」

 感心する少年や困惑する少女達を余所にヨクが彼等の前に出て、背中のウイングの2つのファンを回転、逃走せんとする荒魂を一瞬にして凍り付かせた。

 「魔力を伴った攻撃でも無いのにあれ程の威力の冷凍攻撃…本当に何者なのかしら?」

 紅色の少女は突然の乱入者達の実力に唖然としつつもその目的を訝しむ。

 そして程無く、3人のダグオンの手により荒魂が一掃された。

 

 

 「さて、突然の事に多かれ少なかれ混乱があると思う、君達がどの程度現状を把握しているか分からないが、落ち着いて聴いて欲しい。先ず、我々は君達と敵対する意思は無い、次に……これが一番重要なのだが、此処は君達が居た世界では無い」

 カイが冷静に傾聴する様促しながら淡々と言葉を列べる。

 4人はカイが発した最後の言葉に半ば信じられないといった顔をしつつも声を荒げる事はせず、しかし動揺が僅かに見て取れる。

 

 (やはり……この反応、彼女達は異世界…この街があった世界の住人で間違いなかったようですね)

 ヨクが彼彼女達の反応にやはりと頷き、カイに視線を送る。カイは頷き、4人へ話を続ける。

 「信じられない気持ちは分からなくも無い。が、先程の怪物…荒魂と言うのだが、アレは君達の世界には存在しないモノだろう?それだけでは信用出来ないと言うのであれば、どうか我々に同行して欲しい場所がある。無論、強制はしない。其方の意思を最大限尊重させて貰う」

 一見して怪しい風貌だが真摯に言葉を尽くそうとするカイに恐らく4人の中で中心であろう紅色の少女が思案する。

 「祐斗、彼?の発言…どう見るべきかしら?」

 紅色の少女が金髪の少年の名を呼び意見を求める。

 「正直、判断する為の材料が少な過ぎて……僕ではどうにも……」

 祐斗と呼ばれた金髪少年は判断材料の少なさから紅色の少女が求める答えを出せずにいる。

 そんな中、漢服の青年が切り出した一言で事態は動く。

 「良いだろうか?リアス・グレモリー」

 「何かしら曹操?」

 「判断材料が少ないと言うのであれば増やせば良い、例えば……信用して欲しければそちらの正体を明かせ、とな」

 曹操と呼ばれた青年が挙げた案はダグオン側からすれば些か厄介なモノ。

 リアス・グレモリーと呼ばれた紅色の少女も流石に簡単に正体を明かしてはくれないだろうと思い曹操の案に対し渋る素振りを見せる。

 「敵味方はどうあれ…彼等が簡単に正体を明かしてくれるとは思えないわ」

 しかし曹操はどうだろうなと溢しつつ、ダグオン側へ視線を寄越すと…、

 「聴こえているんだろう?実際の所、どうなんだ?我々の信用を欲するとするなら最低限、誰か一人でも正体を明かすくらいはしても良いんじゃあないか?」

 皮肉が隠った視線を受け、ダグオン達は押し黙る。

 

 

 『……どうする?』

 ダグテクター内の相互間量子界通信でカイとヨクに問い掛けるリュウ。

 『異世界の人間とは言え、不用意に正体を曝すのは得策では無い。しかし……』

 『僕らの姿に不信感を持つ彼等を説得する事は難しくなる……ですね』

 悩める彼等にダグベースより通信が入る。

 (何だ?こんな時に……)

 眉根を寄せつつも、ヨク、リュウと回線を同調させ開くカイ、果たして映っていたのはドアップの最近すっかり見覚えがありつつある少女の様な少年の顔であった。

 『あっ!良かった!!戒将君ちょっと今大丈夫?いやぶっちゃけ大丈夫じゃなくても大丈夫にして!』

 とんでもない無茶を言ってくるトラブルメーカーの声につい軽い舌打ちをするカイ。

 『ん?あれ?今舌打ちしたよね?酷くない?』

 そして気付かなくても良いのにツッコむアルファ。

 『要件を言え。此方も立て込んでいる』

 『え、あ、うん。そっちでさ何かおかしな事起きてるよね?具体的には別の世界の人か街が現れてるとか』

 そのアルファの言葉にカイは目を見張り食って掛かる。

 『貴様の仕業か!?』

 『ちがっ!?違うし!!ボクはこんな雑な仕事しないし!!』

 それを聞いた3人はどの口が言うのかと思ったが、敢えて今は触れないでおく。

 『詳しくはそっちに現れるであろうデルタに訊いて!後、もし別世界の…こう何か変わった感じの力を持ってる人に会ったらなるべく穏便に済ませてね!フォローするし場合によっては正体バラしても良いから!!』

 それだけ言ってアルファは通信を切り上げた。

 『さて、期せずして上からの許可が降りてしまったな……』

 『どうしますか?』

 『……あの漢服の言う通り、俺たちの誰かが変身を解き正体を明かすか?』

 『デルタとやらが来ると言っていたが……直ぐ様現れない所を見るに…管理者と言えど時間が掛かる様だな。あまり長い時間、彼女達を焦らす訳にもいくまい。それに荒魂を倒した手前、一般人とは言い難い集団だ。ふむ…リュウを残し俺とヨクが姿を明かそう』

 カイが決断し、4人の方へ向き直る。

 「さて、返答は如何程か?」

 曹操が場合によってはと槍を何時でも構えられる様に手に力を込める。

 「良いだろう。確かに其方の言う事も一理ある。本来であれば易々と明かせる物では無いが、君達は色々と特殊な様だ。私とヨク…白い戦士の正体を見せる、どうかそれで信用してくれると有難い」

 言い終わると共にカイとヨクの全身が輝き、本来の姿、燕戒将と渡邊翼沙の姿が顕になる。

 そして2人の姿を見た彼等彼女等の反応は意外なモノを見たと言う感じであった。

 

 「あら…思っていたよりも若いのね……私達と変わらない年齢かしら…?」

 「そうですね。特に青い彼なんて、口調からもう少し目上かと思っていましたよ」

 リアスと言う名の少女と祐斗と呼ばれた少年が各々の感想を口にする。

 「てか、日本人だったのね……しかもかなりイケメン……」

 栗毛のツインテール少女が割りとミーハー染みた驚きを口にしている。

 「ふむ、確かに一人くらいはとは言ったが、まさかもう一人まで正体を明かすとはね。そちらの紫の彼を残したのは、彼の実力なら俺達を制圧出来るないし俺達から逃げ切れる自信があっての事かな?」

 曹操と呼ばれた青年は少しばかり意地の悪い質問を戒将達に投げ掛ける。

 「リュウ…彼を残したのは確かに保険ではあるが、それは何も君達と事を構えるつもりであるからと言う訳では無い。我々にも我々の事情あっての事だ」

 曹操の指摘にやや険を深めつつも平静な声で返す戒将。

 「さぁ正体は明かした。出来ればこのまま穏便に済ませたい。着いて来てくれるか?」

 手を広げ無害をアピールする戒将の姿に曹操はリアスを見やる。

 「だそうだ、リアス・グレモリー。後は君が決めろ」

 「曹操…貴方……はぁ、分かったわ。其方の…ええっと?「燕戒将だ」…そう。では燕戒将?貴方方を信用させて貰います。けれど、同行は少し待って頂戴。私達はこれで全員では無いの、他にも仲間が居るわ。彼等とも合流して決めなくては」

 

 「成る程、道理だな。此方も仲間が居る、我々も仲間に事情を説かなくてはならない。今から呼び出すが…其方は通信手段をお持ちだろうか?」

 「そう…まだ仲間が……ええ、構わないわ呼んで頂戴。私達の方でも仲間を呼び出すから」

 リアスの言を聞き戒将も納得を見せ別れた焔也達を呼び出そうとする。

 そして数秒の間の後、戒将からの呼び出しに出たのはアーマーシンであった。

 「シン、まだ異星人を追っているのか?出来れば早く片付けて合流してくれ、色々と話す事がある」

 ダグコマンダーの開かれたモニター越しのシンに呼び掛ける戒将、しかしシンから返って来た言葉は意外なモノであった。

 『戒将か!チョイと手こずってる。ワリィけど援護に来てくれや。クソッヤローはともかくオンナノコはやりづらい!!』

 最後にそう言い残し通信が切れる。

 「リュウ!」

 「……承知している」

即座にリュウが仲間の元に向かう。

 「申し訳無いが、我々の仲間が異星人との戦闘で苦戦をしている様だ。我々も救援に向かわなくてはならない、君達は……」

 此処で待っている様にと続けようとした所、リアスと呼ばれた少女が戒将の言葉を手を挙げて制する。

 「私達も同行するわ。その異星人とやらには文句を叩きつけたいしね」

 「………………良いだろう。だが場合によっては自身の身は己で守って貰うぞ?」

 「ええ、構わないわ。むしろ望むところよ!」

 他3名も異存は無いのか黙って頷き6人は目的の場所目指し走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、異星人との追い駆けっこの果て、奇しくも現地の住民であり、リアス・グレモリーの言う仲間の一団と戦禍を交える事となったエン、シン、ゲキは彼等の特異さや容姿から手をこまねいていた。

 

 「チィッ!見た目がほぼ人間だった異星人もだが、完全に人間と変わり無い連中の姿もヤッカイだなァ!」

 市街である為、爆発力を抑えたハンドミサイルを飛ばし牽制するシンが愚痴を溢す。

 「そうは言うが!あの大剣振り回しとるオナゴなんぞ、明らかに真っ当な人間では有るまい!」

 ゲキがゼノヴィアの得物に戦慄している。尚、刀使の中にも身の丈以上の御刀を振り回す者達が数名居るが、目の前の少女が振り回す剣は明らかに西洋のクレイモアやらバスタードやらなので彼の中では人外扱いである。

 「それより、こっちのちっこいのが色々厄介だぜ!」

 エンが相手をしている紫髪の少女の見た目以上の瞬発力とパワーに焦る。

 

 そしてダグオン達が彼女達の抵抗に手をこまねいている様に、彼女達もダグオンの戦闘力に苦心していた。

 「もう!なんなのあの戦隊ヒーローのパチモンみたいな三人組!?目茶苦茶強いんだけど!?単なるコスプレとかじゃないの?!」

 紫髪の少女が駄々を捏ねて叫ぶ。

 「あの黒いヤツ…やたら硬いし堅い。念の為初手デュランダルを全力で叩き付けたのに、揺らぎもしないぞ!」

 ゼノヴィアがゲキの装甲の堅牢さとゲキ自身の体幹の強さに戦慄する。

 「ってか、さっきからあの緑色、俺の方ばっか狙って来るんですけどぉぉお?!」

 少年は知らぬ事であろうがシンとしては女の子より野郎を狙うのは当たり前である。

 「ヤロウはとっととクタバレぇ!!ブレストモーターキャノンッ!!」

 そう叫ぶと同時にシンの胸部四連ガトリング機関砲が火を吹く。

 少年はそれを躱すか籠手で弾くかで凌ぐ。結果、弾丸が当たった赤い籠手は全体の3割が削られた。

 「のわっ?!危ねぇ!!一発腕に当たった!!神器の方で良かった~!」

 『良くないぞ!相棒!赤龍帝の籠手を神器でもない武器が抉ったんだ。直せるとは言え簡単に当たるな!!?こっちが生きた心地がしない!!』

 籠手から矢鱈渋い声が響く。

 「あん?今、あの野郎の腕から声がしなかったか?鎧みたいな方から……」

 「相棒…言うとったのう、以前現れた男女混合な宇宙人とかの同類か?」

 「関係ネェ!トニカク!オレはオンナノコはパスする。代わりにヤローは仕留めとくからオマエらはオンナノコ型を頼む」

 エンとゲキに自分が担当する相手を宣言するとブレストモーターキャノンとアーマーライフルを少年に向け撃ちまくる。

 「ならワシはあの大剣のオナゴじゃな、力比べならまず負けん!!」

 ゲキは改めてゼノヴィアに向かい突進して行く。

 「結局俺があのちっこいのとか……身長、結芽ちゃんとどっこいどっこいくらいか?まぁあの子と比べたら見える分マシか!」

 拳に炎を宿し紫髪の少女の得物の木刀を狙うエン。

 

 そして彼等の戦いを後方から見ている金髪碧眼の少女と彼女に支えられている(実際はもしもの時の人質にする為彼女の肩を掴んでいる)人間に擬態したエデンの異星人。

 「皆さん…頑張って下さい!!」

 金髪碧眼の少女が目一杯叫び、仲間を鼓舞する傍ら、異星人は焦っていた。

 (くっ……妙な力を持った下等生物と争わせて同士討ちを期待していたが…思いの外使えんな異世界の存在も。こうなればおれ手ずからこの小娘を手土産に帰還するくらいしか成果を持ち帰る手段が無い…!何、あのドレス女に売れば高値で稼げる。そもそもおれは詐欺が専門なんだ、カモがいない調査なんぞで死んで堪るか!)

 内心そんな事を考えながら何時行動を起こそうかと見計らう異星人。

 

 「こうなったら本気出しちゃうんだから!」

 紫髪の少女が何事かを叫ぶ。

 「姉ちゃんが本気出すなら俺だって!」

 少年も籠手を突き出し構える。

 「私はこれ以上、出しようが無いんだが、やってやるさ!」

 ゼノヴィアも自棄糞気味に吼える。

 対しダグオン達も相手が奥の手を出すのが判るのか必殺技で迎え撃とうと身構える。

 しかし、そんな6人の間に空からカードが降って来て目の前の舗装された道に刺さる。

 「ねぷっ?!」

 「何だ?!」

 「新手か!!?」

 それが何か知らない3人は大いに驚き狼狽え、それを知る3人は足を止めその意図を思案する。

 「おい、これ…」

 「リュウのお供の動物のカードじゃな」

 「ガードタイガーだな、アイツ何のつもりだ?」

 そして上を見れば電柱の天辺に腕を組み仁王立ちするシャドーリュウの姿を見付ける。

 「……待て、エン、シン、ゲキ。お前たちが戦っている相手は敵ではない…」

 「「「?!?」」」

 リュウの言葉に驚き視線を再び少年少女達へ巡らせる3人。

 一方、突如現れたリュウのその言葉に件の少女達も困惑を顕にする。

 「オイ?!何言ってやがるリュウ!あの連中からは人間以外の反応が出てんダゼ!」

 シンが少女達の方を指差す、しかしリュウは否定する。

 「アルファから連絡が来た。彼女達は異世界の特異能力を持った存在だ。お前たちは恐らく異星人に謀られている、そうだろう?」

 アイシールド越しの視線が金髪碧眼の少女に支えられた女性を射抜き、ガードウルフのカードを飛ばし女性の頬に傷を付ける。すると流れ出す青い血。

 「ちぃっ!逃げ時を見誤った上に正体もバラされるとは……だが動くなっ!こっちには人質が居るんだ!ハッ!非力なおれとてこの小娘くらいの首ならへし折れるぞ!!」

 頬から血を流しながらも金髪碧眼の少女の首へ手を回し、力を込める異星人の女性。

 「あーちゃん!!」

 「「アーシア!!?」」

 これにはダグオンと戦っていた3人も驚きの声を挙げる。

 「動くなと言ったはずだ!もし不審な行動を取ればこの小娘は死ぬぞ?」

 ニヤリと嗤いながらゆっくり後ろに下がる異星人の女性。

 「ふふ、どうした小娘?恐怖で声も出ないか?」

 自分より弱い相手の命、その生殺与奪の権を握った事で気が大きくなる異星人、人質となった少女に助けでも呼んだらどうだと視線を飛ばして、そこで彼女が絶望をしていない事に気付き顔を歪める。

 「おい?状況を理解していないのか?何故怯えない!何故泣き叫ばない!貴様の命はおれの手の内にあるんだぞ!!」

 苛立ちを発し吼える異星人、しかし少女はそれでも尚怯える事無く口を開くと──

 「怖くありません。きっと皆さんが助けてくれるから……それよりもどうして貴女はこんな事をするんですか?」

 碧眼が真っ直ぐに異星人をその視界に捉え見詰める。

 「はぁっ?!助けてくれる?この状況で?それに何故こんな事をするのかだと?何だ貴様、アタマがイカれてるのか?下等生物が何を仕出かそうが無駄だ!おれは貴様を連れ帰るだけ、異世界の力とやらはあのアバズレが勝手に暴くだろうさ!」

 異星人の女性は馬鹿にするように笑い、少女の言葉を吐いて棄てる。異星人は言葉を続ける。

 「とにかく!貴様らはおれが舟に乗ってこの星から出るまで大人しくしているんだな、ハハハハ!」

 

 「悪いが、そうは行かん」

 

 「ハッ?」

 

 高笑いの最中背後より掛かる声に振り返ろうとすれば、正面方向から飛来する光を反射する物体。

 それはウイングヨクのクリスタルブーメランであり、異星人が少女を掴む腕を斬り裂く。

 「イッ?!ギャァァァあイッ?!!」

 痛みに叫び喘ぐ異星人、その隙に背後から声を掛けてきた人物は人質の少女の抱え、少女の仲間達の元へと彼女を送り届ける。

 

 「期待を裏切った様で申し訳無い、が、あの場では連中の手口を知る我々が君を助けられると踏んだのだ」

 少女を優しく降ろす青い疾風の戦士ターボカイ。

 彼はヨクと共に仲間であるリュウやエン達と合流する際、リュウからの通信越しに状況を把握、解除した変身を再び行い。カイが異星人の後ろにその高速を越える速度で音もなく近付き、声を掛けて一瞬、気を逸らした隙に同じく変身していたヨクがブーメランを投擲、少女を救出したのである。

 「あーちゃん!無事?!怪我とかない?」

 「大丈夫です、この人達が助けてくれましたから」

 紫髪の少女に抱き着かれ少し困った風に笑う少女を尻目にカイが仲間達に号令を掛ける。

 

 「行くぞ!我々の使命を果たす!!」

 

  「「「「「応!!!」」」」」

 

 5人の戦士がそれに応える。

 

 勇者ダグオンが正体を顕にした敵を前に立ちはだかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町公園

 

 カイ達、そしてリアス・グレモリーなる少女が率いる一行が仲間との合流の為消えた地にて彼女は現れた。

 

 「降臨!満を持して!!」

 フードに隠れ表情は完璧には見えないが、恐らくその顔は世間一般に於いてドヤ顔と呼ばれるものであろう。

 クールで感情の起伏が落ち着いていそうな女性がそんな顔で闇に飲まれそうなポーズを決めているのだから、きっと見るものが見ればギャップに悶えるなり刺さるなりして性癖を拗らせていたかもしれない。しかし──

 

 「……………………誰もいない」

 

 此処で待っているであろう者達が居ない事にショックを受け涙目になる黒コートの女性。

 彼女はデルタ、アルファ同様異変に気付き駆け付けた管理者である。

 

 「………誰もいない!」

 

 管理者である。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 よく来たな薫。

 

 おい、何の用だクソ本部長……こちとらさっき仕事終えて帰ってきたばっかだぞ……。

 

 そんなお前に新しい仕事だ。山北町付近で荒魂が出現、そして数分の後消失した。何やら妙な異変が起きたとの報告もある。調査の為の人員を他数名の刀使と護衛し事にあたれ!

 

 いや休ませろよ!!大体、消えたんならダグオンが片したんだろ?俺が行く必用無いじゃん、調査の護衛なんて他の奴等にやらせろよ。

 

 ねー!

 

 お前に拒否権は無い!何、心配するな護衛部隊にはお前が見知った面子もいる。後、行かないと給料出さないからな。

 

 ぐぬぬ……鬼め…。仕方無い、行くぞねね。

 

 ねー…。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 錯乱、ホライズン同盟with薫

 

 おい、このサブタイはどういう事だ?!

 




 紫verレースクイーンの衣装は私に刺さる。ミルヤのレースクイーンも割かし刺さる。序でにアリスギアアイギスでもレースイベントしてる。
 後、天華百剣で召集券でくのさん、期間限定無料十連でしっしー、おみつ、西蓮が手に入ってホクホクの私。

 そしてそしてとじともの次のコラボはリリカルなのはと来たか……夜見違和感無いね(はやての騎士甲冑姿を見ながら)


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第七十三話 錯乱、ホライズン同盟with薫

 おはようございます。
 コラボ三話目でございます。え?話があまり進んでない?
 いやぁ、一応大筋は出来てますし、プロットも用意しましたが、他所様の子を預かると慎重にならざる負えないので。

 仮面ライダーセイバーもスラッシュの変身アイテムが銃剣と判明したし、カリバーのパワーアップが飛び出す絵本風だし、ブレーメンモチーフのワンダーライドブック出るし、セイバーとエスパーダパワーアップするしで、そろそろラピライ×セイバーも1話書いておこうかなあとか思ってたり……。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 はて?此処は一体……私はスケベ爺…もといオーディン様の元から帰っている最中だったはずですが、どう見ても北欧の街並みではありませんね……。

 日本の何処かでしょうか?……何らかの術中に掛かってしまった?……解りません。考えて分からないならいっそ休暇だと思って楽しみましょう!

 

 

ダグオン神隠し調査3週間前

 


 

 「ァァァアアッ!!?痛いぃ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃいいい!?!!?

 擬態した異星人が斬られた腕を身体の内側で押さえ転がりのた打ち回り絶叫する。

 「おのれ…よくも……ちくしょう!ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!!お前らぁぁ…」

 大粒の涙を目尻に押し留めながらダグオン達を睨む異星人。

 「おれ一人をよってたかってなぶり攻めやがって…!!恥ずかしくないのかよぉっ!?弱い者虐めしてよぉ!!?おれは弱いんだぞぉ!!ええっ?!おれが何したってんだ!お前らから逃げただけだろう!?お前らが追うから人質を取っただけじゃないか!!」

 外聞も無く惨めに叫ぶ異星人の女性、最早擬態も維持出来ていない。

 

 「おい……、"逃げる為に人質を取っただけ"だって?本気で言ってんのか…」

 ファイヤーエンが静かに告げる。

 「ぃっひっ?!来るな…来るなぁぁあ!!」

 怯えながら体を這って後退りする異星人、そこへ紫髪の少女が割り込む。

 

 「待ったぁあ!!

 

 「「「「「「?!」」」」」」

 

 エンと異星人の間に立ち、庇う様に手を広げる彼女は言う。

 「もう止めてあげようよ、泣いてるし…怯えてるよ?可哀想だからもう許してあげようよ」

 少女が異星人の助命を願う。

 「君…残念だがそれは……」

 カイが無理だと声を掛けようと手を伸ばした瞬間、影がその場の全員を覆う。

 「あれは……あん時のUFOじゃネェか!!」

 「まさか!!」

 シンとヨクが上空に現れた存在から直ぐに異星人の方へ視線を巡らす。

 

 

 「……ッヒヒキヒヒ…アヒャヒャヒャヒャ!!馬鹿なお人好しが居て助かったよバーーーカ!!そのまま死ね!」

 異星人の足下に転がるリモコンらしき血塗れの装置、恐らくは紫髪の少女に皆の視線が集中していた間に斬られた腕の先と口を器用に使い何とか操作してUFOを呼び出したのだろう。

 「てめぇ!!他人の善意を簡単に踏みにじりやがって!!」

 「ハッ!善意ぃ?そんなのは間抜けの理屈なんだよ!!世の中狡くて賢い奴が生き残る。その為なら弱さも立派な武器だってな!!良いこと教えてやる!騙されるバカが悪い!それが世界の摂理だろうがっ!!!悪党を簡単に許すようなこのバカ女がアホなんだよ!ヒャヒャヒャ!!」

 舌を出し目の前に居る全てを扱き下ろす異星人、だがダグオンにとってそれは劣勢にはならなかった。

 

 「俺とシン、ヨク、ゲキでUFOに対処する。エン、リュウ、異星人を倒せ!」

 カイが素早く指示を出す。

 「おう!」

 「アイヨ!」

 「了解です」

 「…承知した」

 「任せろい!」

 即座に4人と2人に別れ対応するダグオン達、シンが構えUFOに狙いを定める。

 

 「アーマーミサイルッ!」

 

 両肩のミサイルがUFOに直撃、エンジンが火を吹き黒煙が立ち上る。

 しかしUFOも墜落しつつ攻撃を放つ。

 

  「シールドスモーク!!」

 

 それをカイが両肩のマフラーから発した煙幕で防ぐ。

 攻撃が止んだ瞬間を見計らいヨクが装備された3つ全てのファンを回転させる。

 

  「ブリザードハリケーンッ!マックスパワー!!」

 

 たちまち凍り付くUFO、カイが三点立ちをし、ゲキが向かって走って来る。

 ゲキはそのままカイの足裏に飛び乗り、それを確認したカイが力強くゲキを落下中のUFO目掛け蹴り出す。

 

 「コイツで仕舞いじゃ!ドリルッ!クラァァァアッシュッ!」

 

 ドリルモードとなったゲキの吶喊により船体に大穴が穿たれるUFO。ゲキが空中で見栄を切った瞬間、UFOは大爆発した。

 

 

 一方、エンとリュウは異星人を容易く追い詰めていた。

 当然と言えば当然だが、元々が戦闘能力の低い異星人の女性。

 両の腕は斬られ、痛みに喘ぎのた打ち回った事で体力も少なく、頼みの綱はダグオンに破壊された。人質は最早取りようも無く、逃げるに苦労するばかり。

 何よりも──

 

  「……シャドー分身!」

 

 シャドーリュウの分身殺法により囲まれているのだから逃げようが無い。

 「ぁぁあ!クソッ!こんな筈じゃなかった!あの女の言うことなんて無視すりゃよかったんだ!!ちくしょう!此処で()()()()()()()()!?まだ生きてやりたい事があったのに!!()()()()()!必ずこの借りは返すからな!!」

 ダグオンによって倒されると言うのに、妙な言い回しをする異星人。

 既にファイヤーバード状態のエンには錯乱染みたその声の真意を量ることは出来ないが、戯言と判断し炎を纏い突進する。

 

  ファイヤーバード…アタァァァアクッッッ!!

 

 焔の鳳が異星人を貫き焼き尽くす。

 

 「ぎぃ……ャッ……!?」

 一瞬にして全身を焼かれた彼女は焼け爛れた喉で振り絞った断末魔を挙げ灰となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━山北町・駒王町市境

 

 「おぉう…ホントに街が変わってやがる…」

 「ねー!」

 ダグオン達とは別に機動隊車輌にて現着した薫が頭に乗せたねねと共に目の前に広がる光景に当たり前の感想を洩らす。

 「呆けているな。さっさと行くぞ!」

 その後ろから姫和がせっ突く様に声を掛ける。

 

 

 今回、この異変に駆り出された人員は益子薫、瀬戸内智恵、古波蔵エレン、丸山茜、木寅ミルヤ、柳瀬舞衣、衛藤可奈美、安桜美炎、十条姫和、六角清香、糸見沙耶香と他数名の長船の刀使(他意は無い)。

 

 更に調査人員として笹野美也子、渡邊エミリー、辰浪桃、播つぐみ。

 支援メンバーに小池彩矢、浜塚さくら、森下きひろ等が名を列ねている。

 

 彼女達は現在、荒魂の反応があったとおぼしき山北町の一部であった場所──現駒王町市内へと足を踏み入れようとしていた。

 

 「それにしてもふっきーは来なかったんだね」

 美炎がそうそうたる面子を見回しながら見慣れた顔が居ない事に疑問を呈する。

 「なんでも…ダグオン絡みは荒魂ちゃんより宇宙人の方が出てくるからパスだそうで…既に荒魂の反応も見られない様ですし、七之里さん的には興味が湧かなかったんでしょう」

 つぐみがそれに繁々と答える。因みに葉菜は別の任務。由依は置いてきたので不在である。

 

 「薫ちゃん、エレンちゃん、舞衣ちゃん、沙耶香ちゃん、姫和ちゃんと一緒に任務なんてなんだか嬉しいな!それに美炎ちゃんも一緒だから尚更気分が上がるよ!」

 可奈美は能天気に笑いながら友人達を見る。

 「ん、可奈美とは任務一緒になるけど……舞衣とは中々一緒になれないから…私も嬉しい……」

 沙耶香が舞衣の側で照れ隠しなのか目尻を下げながらか細く言葉を紡ぐ。

 「うん。私も沙耶香ちゃんが一緒で嬉しいよ」

 舞衣はそんな沙耶香の様子に微笑みながらクッキーの袋を取り出す。

 

 「それにしても……随分様変わりしたわね。本当に別の街になっているなんて…」

 「ダグオン……彼等は如何にして我々よりも早くこの異変に気付いたのでしょう?」

 智恵とミルヤが調査隊時同様に顔を付き合わせて互いの思考を擦り合わせている。

 

 「あ…お久しぶりです!彩矢さん!」

 「清香ちゃん!?久し振り。元気だった?」

 「はい。未だに戦うのは恐いですけど……何とか」

 「そっかー、うんうん。良かったよ」

 平城の2人は旧交を温めている。

 

 「ふっふっふ~!こんなデンジャラスな現象に立ち会えない我が従弟は可哀想だなぁ~。しかぁし!ワタシは遠慮しません!隅から隅まで調査しまくりますよ~!!」

 「エミリーはテンションアゲアゲですネ。所で従弟と言うのはサナセンセーも言っていた綾小路に居ると言う例の彼デスカ?」

 「イエス!!まさにウチの翼沙の事です。従弟は研究科の人間、こんな素敵現象!知っていたらかなりの確率で食い付くでしょうに……不在とは、ま、私には知ったこっちゃ無いですが」

 「オゥ……話を聞いて一瞬、カワイソウかと思いましたがエミリーの同類として考えたら寧ろ知らなくて良かった気がシマース」

 エミリーのテンションと話の内容にエレンが7割方引いている。

 

 「よしっ!良い機会だ、長船の連中には負けてられないね!」

 「むむ?!何やらあちらの平城の人が燃えてるッスね!あたしらも負けられ無いッス!!」

 「彼女は技術者で貴女は刀使、同じ技術科の私達なら未だしも、貴女は燃える必用は無いんじゃないかしら?」

 桃の長船へのライバル意識に茜が反応し美也子が諫める。

 

 「いやぁ~!これは中々に新装備の試し甲斐がありそうな状況ですね!!」

 「皆さん、万が一怪我をしたらわたし達救護科に声を掛けて下さーーーい」

 きひろが手元の妙な音を発するスペクトラムファインダーを持ち出し今にも駆け出さんとしているのを必死に押し留めながらさくらは今回派遣された人員に声を掛ける。

 

 こうして伍箇伝より派遣された生徒達はベースキャンプを建てた後、さくら含む救護科や警察機動隊、通信手の生徒を残し、駒王町へと侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・住宅街

 

 エンのファイヤーバードアタックにより跡形も残らず灰塵に帰した異星人の末路を哀しげに見詰める紫髪の少女。

 彼女を尻目に6人揃ったダグオン達がリアス・グレモリー一行(暫定的な名称)に向き直る。

 「で、敵じゃねぇってどう言う事だよ?」

 開口一番、口火を切ったのはエン。目の前で項垂れる紫髪の少女含む一行の事を知っているであろうカイに訊ねる。

 「それを話すにしても場所が悪い。出来れば我々の基地ダグベースに彼女達を客人として正体する必要があるのだが……」

 チラリと視線をリアス達に飛ばすカイ。

 「生憎、私達の仲間はこれで全員では無いの。まだ他にも街中に散らばっているからその子達とも合流しないと」

 紫髪の少女を気遣いながらカイの視線に答えるリアス。

 「まだ居るんですね。ならその人達とも合流して話し合いを軽くした方が良いでしょうか?」

 ヨクが僅かに驚嘆しながら提案をする。

 すると祐斗が手を挙げる、質問があるのだろう。

 「何か質問でも?」

 「差し支え無ければ、貴方達は何故彼女に止めを刺したのか教えて下さい。僕達……と言うよりもネプテューヌ先輩は敵の命を奪う事を嫌っているので、理由だけでも教えて頂けたら納得…は難しいでしょうが此方も少しは考えが纏まると思うので」

 その質問にダグオン達は黙って顔を見合わせる。

 

 「理由か。それも話した所で納得し難いと来るとは……、果たして我々に君達が望む答えを返せるか否か……」

 「んなモン、単純にアノ異星人のネーチャンが犯罪者だからとしか言い様がねぇダロ?」

 「……より正確には全宇宙の中でも凶悪な犯罪者だな…(まぁ、異世界と言う枕詞が付くが……)」

 言い淀むカイを横目にシンとリュウが事実を述べる。

 「犯罪者って……アナタ達、警察的な何かなのっ!?」

 栗毛のツインテールの少女が驚いた様に叫ぶ。

 「正しくは、宇宙警察機構地球支部の警察代行ですね」

 「ついでに補足しとくと、あやつ等は一端の犯罪者じゃのうて、極刑を言い渡された危険な連中じゃ。それが監獄を乗っ取って暴れるもんじゃから再逮捕なんざ出来ん」

 ヨクとゲキが更に補足の言葉を列ねる。

 「なぁ、あんた…ネプテューヌ…だったか?あんたの考えは立派だし、共感もできる。けど…あいつ等は地球を玩具か何かにしか思ってねぇ、この星を守る為にも連中を倒すんなら殺すって手段以外無いんだ」

 エンがネプテューヌに声を掛ける。

 暫しの沈黙……そしてネプテューヌと呼ばれた少女は両手で自身の頬を叩くと顔を上げ宣言する。

 

 「あーーー!もうっ!うじうじするのはねぷ子さんらしくない!起きた事、終わった事を引き摺ってても仕方ないよね!よしっ!リアスちゃん、他のみんなとも合流しよ!」

 ネプテューヌを知る者達からはそれが空元気であると判っているが、ダグオン達からすれば込み入った話をする為にも立ち直ってくれたのは有り難いと言う感想しか無い。

 何にしても情報を共有する為、彼等彼女等はリアス改めネプテューヌ一行の仲間との合流に向かった。

 

 

 

 ━━駒王町・商店街

 

 「おかしいですね……」

 駒王町にて調査に乗り出した中でミルヤが周囲を見渡して呟く。

 「な…なにがですか?ミルヤさん」

 「気が付きませんか六角清香?商店街だと言うのに活気が少なく人も疎ら…この街の駅周辺に設置された時計の時間帯を見ても、今は正午…異変が原因だとしても外にいる人間が少な過ぎるのです」

 清香の疑問に此処までの道中から得た情報を挙げ列ねるミルヤ。

 「ミルヤの言う通りデス。チラチラ見掛ける人達も何だかオカシな格好ばかりで割りとデンジャラスですし……」

 「うん。鎧着た2人組とかムキムキなのにパツパッツの服着てた人も居たよね!」

 エレンと可奈美もミルヤに同意し、道中で見掛けた不審者にしか見えない住人の事を思い出す。

 

 

 そんな彼女達の疑問は機材を設置、組み上げていたエミリーときひろによって仮説をもたらされる。

 「それはこの街に何らかの力が働いているからだとワタシは睨んでいるのですヨ!」

 眼鏡を光らせエミリーが自信満々に胸を張る、当然長船の例に漏れず制服からの主張の激しいモノが揺れるので誰かさんの機嫌は下降していく。

 「私クン的にはこの異変で現れた街は異世界の物だと思うのですよ!寧ろそうであって欲しいですな!フフフ…異世界であるなら私クンの研究アイディアに役立ちそうなモノがきっとあるハズです!ええ!!」

 きひろはきひろで異世界という確信こそ付いているが相も変わらず発言が危ないので、皆、適度にスルーしている。

 「森下きひろの発言の内容は兎も角。異世界……と言うのは昨今の異星人の襲来や、我々刀使が日常的に目にする荒魂と密接に結び付いた隠世の存在もあり、真っ向から否定は出来ませんね」

 「だとしても街ごと入れ替わるかよ普通……」

 「ねねー」

 異世界説を肯定的に捉えるミルヤに薫が祢々切丸で駒王町の道路を軽く叩く。

 

 どうあれ派遣された刀使達があーだこーだと話し合いをしていると彼女達のスペクトラムファインダーに荒魂の反応が表れる。

 「荒魂!?ダグオンが倒したんじゃないの!!?」

 「きっと新しく出現したのね。異世界の街と言っても今はわたしたちの世界と地続きだから」

 現れた荒魂に美炎が叫び、智恵が可能性を口にする。

 「どうする?」

 姫和が舞衣を見る。同じ様に清香や美炎もミルヤに視線を送り判断を仰ぐ。

 「数人、調査機材や人員の護衛に残し、後のメンバーで出現した荒魂に対処するべきでしょう」

 「はい、護衛は薫ちゃん、エレンちゃん、智恵さんを除く長船の方達に任せて私たちは荒魂に向かうべきだと思います」

 指揮能力を持った2人が同様の結論に達し彼女達は現場へと動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その新たに荒魂が出現したとおぼしき場所では5人の乙女が荒魂と戦端を交えていた。

 「あらあら、一体何なのかしら?この怪物は…」

 濡れ場の鴉色の黒髪をポニーテールに括った美女が雷を走らせ荒魂を穿つ。

 「気持ち悪い…です…!」

 白髪ショートヘアの寡黙そうな少女が荒魂を殴った感触の感想を洩らす。

 「鬱陶しい程数がいるわね!」

 金髪に所々鎧らしき物を纏う少女が剣を振るう。

 「気配は妖怪に近い感じがするにゃん、まぁ、勘だけど」

 際どいミニスカ着物の黒い猫耳猫尻尾の美女が不可思議な力で荒魂を翻弄している。

 「こ、来ないで下さーーーい!」

 ネプテューヌと呼ばれた少女に何処か似ている薄紫髪の少女が露出の高い姿で銃剣らしき物を振るい、ビームを撃ち出し荒魂を薙ぎ倒している。

 とはいえ、決定打とはなりきらない。

 「うぅ…やっぱり遠距離じゃ効きがイマイチですぅ…」

 荒魂のある種のグロテスクさに涙目になりながら弱気をぼやく薄紫髪の少女。

 実際、効果があるのはポニーテール美女が雷に光の力を混ぜた雷光や、金髪鎧の少女の剣、そして自分の持つ武器の剣状態のみ。

 打撃は荒魂を吹き飛ばしこそすれ、倒すには至らず、不可思議な力も翻弄はしているがやはり倒すには至っていない。

 そんな劣勢5人組に思わぬ助っ人が前方から現れた。

 「誰かこっちに来るにゃ!」

 「お姉ちゃん達ですか!?」

 猫耳の美女の声に薄紫髪の少女は自分達の仲間を思い描くが現れたのは見たことも無い少女達であった。

 

 「面倒ださっさと片付けてやる……キエーーーー!!」

 

 低いテンションから繰り出された大きな刀による一撃と棒読み気味な猿叫。

 しかし、その一撃で近くの荒魂は殆んどがオレンジ色の液体に還るか躰の大半を失う。

 「今だ!益子薫が崩した所から左右に展開!ツーマンセルを組み、荒魂に対処しろ!」

 やる気がイマイチ見られない小さなツインテール少女の後ろから眼鏡を掛けた銀髪の少女が誰かに指示を出す。

 

 「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

 その銀髪の少女の指示に数人の少女の声が返って来る。

 見れば様々な制服を身に纏い日本刀らしき物を手に怪物へ向かっていく同年代か少し下の少女達。

 彼女達は手馴れた様子で自分達が困惑し手こずった怪物達を殲滅せしめていくではないか!?

 

 「凄い……」

 薄紫髪の少女が感心した様に声を洩らす。

 「随分と手馴れていますわね」

 感心する少女の横に黒髪ポニーテールの美女が胸の前で片腕を組みながら左手で頬に手を充て溢す。

 「あの娘達が持ってる刀……神器…にしては変な感じがするわ」

 金髪鎧の少女が荒魂と戦う刀使が持つ御刀に疑問を持つ。

 「あの子達が持ってる刀……神聖な感じがしてちょっと苦手かも…」

 猫耳美女が身を震わせる。

 「見たところ…あの怪物の事を知っているみたいです」

 白髪の少女が荒魂の名を叫んだ少女達に注目する。

 そして謎の少女達の加入により、未知の怪物を撃退した5人組は、少女達と顔を合わせる。

 すると先程指示を出していた眼鏡の少女が前に出て自己紹介をしてきた。

 「我々は警察庁特別刀剣類管理局貴下、伍箇伝所属特別祭祀機動隊の者です。私は木寅ミルヤ、この部隊の……名目上の指揮官といった所でしょうか…それで、貴女方は何者ですか?見た所、刀使では無い様ですが荒魂と問題無く戦っていましたね?」

 「あ、あの!えっと…その…えと…」

 ミルヤの質問に薄紫髪の少女が返答にあたふたと四苦八苦する。

 見かねた黒髪ポニーテール美女が代わりに矢面に立ち、返答する。

 「ご丁寧にありがとうございます。私は姫島朱乃と申します。隣の可愛らしい子はネプギアちゃん。そして残りの三人…右から塔城小猫ちゃん、黒歌さん、ジャンヌさんですわ。私はそうですわね……オカルト研究部とでも言いましょうか…」

 朱乃と名乗った美女の答えにミルヤ達は首を傾げる他無い。

 「オカルト……」

 「研究部?」

 「幽霊とかUFOとか探すアレ?」

 「そんな馬鹿な…学校の部活動で荒魂を相手に出来るものか…?!」

 「実際、戦ってたろ何見てたんだ?ないぺったん」

 何やら一部殺伐としたが、概ね彼女達は朱乃の話した内容に懐疑的であった。

 とそんな中で小さなツインテール少女の頭に乗っかっていた鼠?栗鼠?謎の小動物が朱乃に向けて飛び掛かる。より正確にはその胸部に向けてであるが……。

 「ねねーっ!!」

 「あら?うふふ随分可愛らしいお客さんだこと」

 それを見た飼い主が朱乃、次いで黒歌、ジャンヌ、ネプギア、小猫と見比べる。

 そうする間にもねねは少女達の胸を渡り歩いて行く。

 最後に小猫に差し掛かり、ねねは数秒躊躇した後、再び朱乃の胸に飛び込んでからエレンの胸に渡った。

 「……何故でしょう。物凄く釈然としません……」

 小猫が両の手を胸に押し充てながら呟く。

 「ねねの奴……やりやがった…」

 薫がジト目で己のペットを見やる。

 同時にねねの一連の行動により揺れるモノを目にした姫和もまた言いし難い顔でオカルト研究部(暫定)の少女達を眺め、更に改めてミルヤ、智恵、エレン、舞衣、更には可奈美をも眺める。

 ドコを?とは言わないが彼女は絶望と怒りと諦観の狭間で心を揺らしているのであった。物理的には揺れないが……。

 「十条さん……」

 清香も思うところあるのかオカ研一行に思わしげな視線をチラと送りながら姫和の肩に手を置く。

 美炎はアホっち顔で能天気に見ていた。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 くっ……やはりあの荒魂、狩ってくれようか…!!

 

 もう、ダメだよ姫和ちゃん。ねねちゃんがかわいそうだよ。

 

 可奈美、姫和、ダグオンがいる。

 

 本当だ!アレ?赤い人だけ居ないような?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 合流。勇者と刀使と異世界人?

 

 おのれ!貴様もか緑の奴っ!!?




 因みに詐欺師の異星人の女性ですが、万が一にダグオンから見付からないないし逃れおおせても、普通に悪事を働く上、ねぷ子に庇われた事も屈辱を感じているので報復に来るんで結局コロコロしちゃうしか無いんですよね。
 そもそもエデンの異星人にはマトモな神経持ってるのは居ないor壊れてるか狂ってるので分かり合えないのです。
 まぁ、元のダグオンからしてサルガッソの囚人バンバン倒してますしね!


 天華百剣の魔法科コラボ…まぁ、深雪はURだよね……会長もかぁ。
 エリカが交換SR枠ですかそうですか。
 
 なのはコラボのとじとも星3枠は騎士甲冑はやての姿の清香ちゃんかぁ…。でも夜見が欲しいです!
 ハロウィン復刻はミルヤと結芽が出たら良いなぁ。


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第七十四話 合流。勇者と刀使と異世界人?


 おはすみでこざ候。
 いやぁ、大量のキャラクターを一気に動かすのって難しいですよね。
 因みに私が書いていて一番楽しくなるのは俺たちのユイ・ヤマシロです。
 難しいけど、割りと楽しいんですよね彼女の暴走と言うか変態っぷりを書くの。

 ところで何気無く見たデジモン図鑑に新しいレオモン系の究極体が更新されたの見付けたんですが、何か勇者シリーズぽっさがありましたね。


 


 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 せ、せ、先輩が消えちゃった!?

 

 里香さん落ち着いて!

 

 どうしよう!?ほうずきちゃん!!

 

ダグオン神隠し調査3日前

 


 

 ━━エデン・中央円卓

 

 「ふん?盤面は思わぬ方向に動いたか……」

 円卓の一角で鬼が溢す。

 「まさかダグオンが彼女より早く異変の只中に居るなんてねぇ……やっぱり彼等の正体は地球人で間違い無いかしらぁ?」

 女医が腕を組みながら推測を並べる。

 「そんな事はどうでもいい!お前達はこんな下らない事をして何が目的なのだ!!」

 メレトがその炎を激しく揺らし憤慨している。

 「刺激的だろう?我々が居た宇宙の世界ともこの世界とも違う世界を一部とはいえ喚び出した。あの星の者達はさぞ混乱に喘いでいるだろう。ならば我々の中にも刺激を受けて重い腰を上げる者が増えるだろうさ」

 鬼は笑いながらメレトにその動機を告げる。蒼炎は承服しかねるのかその炎をうねらせる。

 「全く、それで死ぬこちらの身にもなって欲しいのです」

 そんな剣呑漂う空気の中に割り込む女性……否、少女の声。

 「あらぁ?()()()()()()()()()()()()()()()()

 女医が少女に視線を巡らせる。

 少女は肌が桃色であることと眠たげな瞳をしている事以外、ファイヤーエンに倒された異星人に瓜二つであった。

 「五番目ですかね、です。正直勘弁して欲しいのです。わたしは直前の死の記憶まで継承するので、死ぬなら痛くない死に方が良かったのです」

 少女が気怠げに話す。

 「それで?我々は君を何と呼べば良いのかな?」

 「そうですね……前のわたし…姉はフォーと適当に名乗っていたらしいのでわたしも便乗してフュンフとでも名乗りましょうか。です」

 フュンフと名乗った少女……変身宇宙人トラモル星人はやはり気怠い雰囲気のまま答える。

 トラモル星人フュンフ──正確にはオリジナルのトラモル星人のクローンである少女は眠たげな眼で女医を見る。

 「そういう訳なんで、次はあんなフザケタ仕事はフらないで下さいです。わたし本業、詐欺なんで…です」

 恐らく怒っているだろう、しかし起伏の見られない表情なので判りづらい。

 「安心してぇ、もう頼まないわぁ。私はただ装置が正しく稼働したのか知りたかっただけだものぉ」

 「寧ろ頼みがあるのは彼女ではなく私だよフュンフ。君には近い内にまた地球へ降りてもらう…ああ、安心したまえ、Xーセブンに送迎をさせるからダグオン達には見付からない筈さ」

 女医の言葉にそうですかと反応した後に鬼から掛かる依頼の言。

 流石にこちらは嫌とは言わないのか、無言で肯首するフュンフ、伝えるべき事は伝えたとばかりにクルッと身を翻し帰っていく。

 

 そして物陰に身を潜めながら此方の様子に聞き耳を立てる存在に煽る様に会話を続ける。

 「しかし…中々面白そうな世界に繋がったものだ」

 「ええ、本当に……もしかしたら愉快なオモチャが見つかるかもねぇ?」

 こんな事を言っているが、2人とて繋がった先の世界が具体的にどういったモノか等解ってはいない、しかし重要なのはこれで動く囚人達がいるという事だ。

 今の言葉でどれだけの囚人達が刺激されたのだろうか?そう考えると2人とも自ずと笑みが溢れる。

 

 彼等にはこの混乱すら観劇の一部でしか無いのだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・駒王町

 

 調査に派遣された刀使達がオカルト研究部なる一行と邂逅を果たしていた頃、ダグオン達もまた新たに現れた荒魂の反応を察知しネプテューヌ一行を引き連れながら向かっていたのであった。

 「?!商店付近の反応が消えた……。誰かが倒したのか?」

 「その様ですね。まさか新たに出現するとは……いえ、今この街は僕らの世界に繋がっているのだから荒魂が迷い込む可能性があるのは当たり前の事でした。ともあれ、彼女達を放って駆け出す必要は無くなりましたね」

 索敵探知範囲が広いカイとヨクが胸を撫で下ろす。

 「良いかしら?貴方達、いきなり向こうの方向を向いたと思ったら固まってしまうんだもの、何事かと思ったわ」 

 どうやら、リアス・グレモリーがスペクトラムファインダーの反応から荒魂の位置を探索して止まっていた2人の様子を訝しんで、声を掛けようか躊躇っていたようである。

 「申し訳無い。我々は先程君達が遭遇した生物の反応を察知していたのだが、君達を放置する訳にもいかなかったのでな、どう動こうかと思案している内に荒魂は倒された様だ」

 「成る程ね……貴方達にはあの奇妙な生物を察知する手段があるのね?」

 カイからの返答にそれとなく納得するリアス、しかし逆にネプテューヌは今の会話の中に出た生物と言う単語が気になったのか、リアスと行動を共にしていた面子に訊ねる。

 「ねぇねぇ、リアスちゃん達が話してる奇妙な生物ってなんの事?」

 「ああ、我々が彼等と邂逅した際、何と言って良いか……地球上の生物らしからぬ生物に襲われていてね。俺の聖槍や木場祐斗の聖魔剣で造り出した聖剣、紫藤イリナの光の力がそれなりに有効だったのさ。まぁ、リアス・グレモリーは消滅の魔力で無理矢理ゴリ押しして何とか倒していたがね」

 ネプテューヌの疑問に答えながら曹操は首を竦める。彼の言を聞いたネプテューヌが同じく一緒に居ただろう木場祐斗と紫藤イリナへ視線を寄越せば2人ともこくこくと首を縦に振る。

 「リアスちゃん……」

 「しょ、しょうがないじゃない!他に手段が無かったんだもの…」

 ネプテューヌ一行がわちゃわちゃし始めた一方、ダグオン達は商店街の荒魂を倒したのが誰なのかを話し合っていた。

 

 「さて、我々が駆け付けるよりも早く、荒魂が討伐された訳だが……」

 「彼女達のお仲間が倒したのでしょうか?」

 ダグオンの頭脳2人が推測を挙げていく。

 「でもよ、対抗手段がある連中でもかなり手こずってたんだろ?ならこんな早く反応消えねぇんじゃね?」

 エンの言葉に押し黙る、そしてシンが口を開くと──

 「オマエ…バカのクセに、そういうトコは稀に鋭いよナ」

 ((((確かに…))))

 他4人もシンの言葉に心中で同意する。

 「んだとぉ?」

 「ンダヨ?」

 マスク越しに顔を付き合わせメンチを切り合う不良とチャラ男。

 彼等を無視してカイがならばと、最後の可能性を挙げる。

 「やはり刀使が派遣されたと見るべきだろうな。さて……となれば、我々はなるべく早く彼女達の仲間と合流する必要がある」

 「……どうする気だ?」

 リュウからの問いにカイはエンと視線を向け彼を呼ぶ。

 「エン」

 「ぐぬぬぬぬ………っ?なんだよ?」

 「ファイヤーストラトスで街を周り、彼女達の仲間を回収しろ」

 「分かった……って、後何人居るかも分かんねぇのにか!?」

 普通に返事を返した後、至極真っ当な意見を挙げるエン。

 彼のツッコミを聞きゲキは横合いのゼノヴィアに訊ねる。

 「そんこん所、どうなんじゃお主ら?」

 「一応…私達以外に街の調査に繰り出したのは後2グループだ。グッパーから更にじゃんけんで別れて残りはみんな我々の拠点になってる兵藤邸に居るからな」

 ゼノヴィアからの言葉を聞きならばとカイが方針を示す。

 「エンに君達の内の誰かが同行し残ったグループの片方と合流、残りは我々ともう片方のグループに合流した後、君達の拠点に向かい、そこで我々が簡単に経緯を説明しよう。詳しい説明には我々の基地に来て貰う必要があってな、流石に大人数は連れていけそうに無いから、其方で数名に絞ってくれ」

 カイが異世界側代表であろうネプテューヌとリアスに話を通す。

 「まっかせて!じゃあ赤い人!ヨロシク!!」

 「え?ちびっこが一緒にくんの?」

 「まぁ、妥当か。彼女か…其方のグレモリー嬢の2人が顔役の様だしな。それに小柄な彼女の方がファイヤーストラトスを圧迫はしまい」

 「あー…何人か分かんねぇからそうなんのか……よし、ちびっこ、よろしく頼むぜ!」

 「ちびっこじゃなくてネプテューヌだよ!ねぷ子さんと呼んでくれてもいいんだぞー!」

 小さな体でフンスと胸を張る彼女にはいはいと適当に返事を返しながらエンは皆から少し離れ愛車を喚ぶ。

 

 「来い!ファイヤーストラトス!!

 

 エンのボイスコマンドにダグベースが鎮座する洞窟に待機していたファイヤージャンボの機首が左右に開き、降下ラダーを作り、内部より無人のファイヤーストラトスが発進する。

 洞窟内のハイウェイを通り、付近の無人の道路が封鎖され下方より開いたゲートから飛び出すファイヤーストラトス。

 インターからトンネルに入り、車線を変更、路肩により出現した同空間内パラレルゲートウェイに突入、関東は山北町付近までショートカットする。

 

 

 

 

 「何も来ないね」

 突然叫んだエンを訝しみながらネプテューヌがポツリと洩らす。

 「……まぁ、見ていろ」

 リュウが待っていれば解ると言わんばかりの声色で彼女を制す。

 暫くした後、鳴り響くサイレンの音。

 「ねぷぅ?!パトカーのサイレンだよ!?ケーサツが来ちゃったよ!?こんな所見られたら職質待ったナシだよ!?」

 焦るネプテューヌと数名、しかしダグオン側は極めて落ち着いている。

 「来たぜ。乗りな」

 そうこうしている内に現れたのは明らかに日本車がベースではないパトカー、それも誰も乗っていない無人車輌である。

 それを親指で軽く指してエンが乗れと示す。

 「「「誰も乗っていないのに動いてるぅ?!」」」

 ネプテューヌと彼女を姉と呼ぶ少年──先程の話し合いの中で兵藤一誠と名乗った少年と紫藤イリナが叫ぶ。

 他の者達も大なり小なり驚愕に目を開いているようだ。

 「で、カイ。俺はネプっ子とどっちに向かう?」

 驚くネプテューヌを余所に運転席に乗り込みながらエンはカイに訊ねる。

 「そうだな……兵藤邸とやらはどちらにあるのか、ご教示願いたい」

 カイが一誠に話題を振る。

 「え?あ、ああ……あっちの…商店街の方向が近い」

 「ならば、我々は商店街区にて起きた戦闘の状況の確認がてら彼等の拠点に向かう。お前は反対側から廻って行け」

 「了解。って、ほらネプっ子!さっさと乗んないと置いてくぞ?」

 律儀に助手席の扉を開けながらアイドリングして待つエン。そんな風に気遣われては待たせる訳にもいかないのでネプテューヌはおっかなビックリとしながらファイヤーストラトスに乗り込む。

 「っし、シートベルトきっちり締めろ、なるべく安全運転するが手早く済ませたいからな、って!おいカイ!もし俺らが迎えに行った連中がコイツ(ファイヤーストラトス)に入り切らなかったらどーすんだよ?」

 助手席にネプテューヌが乗り、シートベルトを締めた事を確認、いざ、アクセルを踏まんとして唐突に思い出しドアウインドウを下げカイに訊ねるエン。

 カイはやれやれと首を振り、呆れると…

 「ファイヤーラダーとファイヤーレスキューを使え。アレ等ならば多少大人数でも乗せられるだろう」

 「おぉ、なるほど……っしゃ!改めて、出発だ!」

 カイの言葉に納得し、再びアクセルを踏み込みファイヤーストラトスを走らせるエン。

 そんな彼方に消えていくパトカーを見送り、カイは全員に向き直ると、

 「では、我々も行くとしよう」

 スタスタと歩き出した。

 「…………あの青い彼…常識的な方ではあるけど…案外細かい事に頓着しないのかしら…」

 「或いは割り切りが良いのかもしれないな…」

 「姉ちゃん大丈夫だろうか…俺も付いてきゃ…」

 「まぁまぁ、悪いヒトでは無いみたいですしきっとネプテューヌさんも大丈夫ですよ」

 残ったグレモリー一行はそんなやり取りを交わしながらダグオン達の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそんなやり取りを交わしたダグオン&グレモリー一行が向かっているとは露知らず、駒王町に派遣された刀使達は、遭遇したオカルト研究部なる集団により事の詳細を訊こうとしていた。

 そしてねねと薫が何かに反応する。

 「ねー!?」

 「ん?これは……サイレンの音………しかもこれはファイヤーストラトスだ!」

 ダグオン出現以降、漏出問題の傍ら動画等や管理局本部のデータベースの映像で何度もダグオンの活躍を観た薫(本部長にどやされ仕事が増える羽目になった)がサイレンの主をいち早く特定する。

 「薫ちゃん凄い!どうして判るの?」

 「フッフッフ……ヒーローモノだけは負けるわけにはいかないからな!」

 何と勝負しているのか正直全く意味不明だが、末恐ろしい程の自信で胸を張る。

 「薫は普通のパトカー以上にダグオンのビークルのサイレンを聞き続けマシタから、それだけは判別出来る様になったんデスヨ」

 エレンが苦笑しながら補足してくれる為、成る程となる刀使一行。

 姫和は純粋に呆れていたが。

 「お前……まさかダグオン達のマシンの名前までわざわざ憶えているのか?」

 「ハァ?当然だろう。現在一般公開されてるモノ含め全て記憶してるぜ!」

 ネットの動画等で賛否は有れど話題となる謎のヒーロー集団、一部界隈がそれに目を着けない筈もなく……おもちゃ屋等ではテレビの特撮ヒーロー玩具に混じってダグオンのグッズが展開されるくらいの認知度となっているのだ。

 無論、ヒーロー好きが講じている薫がそれらに手を出さない訳も無く……。

 「ブラックな仕事に耐えてるのも全てはダグオン含むヒーロー玩具の為だ!」

 「ねねー!」

 割りと正気では無いような虚ろな瞳で見栄を切る薫とそれに乗るねねであった。

 

 さておき(閑話休題)

 

 ミルヤ、智恵、舞衣がこの場に居るオカルト研究部(仮)の代表であろう、濡れ場の鴉色の黒髪ポニーテール美女こと姫島朱乃と互いが知り得る情報をやり取りする。

 勿論、ミルヤとて正体が良く分からない相手に馬鹿正直にべらべら情報を喋ったりはしない。

 智恵や舞衣と示し合わせながら、朱乃がどの程度信頼に足るか伺いつつ適宜情報を小出ししているのだ。

 

 「益子薫の言い分が事実であれば、彼等もまだこの街に滞在していると言う事になりますね」

 薫達の会話が聞こえていたのかミルヤは眼鏡を直しながら、ふと呟く。

 「……、つかぬことお訊ねしますけど…先程から貴女方の会話に出てくるダグオンとは何なのです?」

 朱乃が探りも込めてミルヤに問う。

 問われたミルヤも、はて、改めて聞かれると何と説明して良いものかと言葉に詰まる。

 そうしてミルヤが思案していると舞衣が明眼で何かを見付ける。

 「あ……。ミルヤさん、説明するよりも見て貰った方が早いと思います」

 「柳瀬舞衣?…成る程明眼…そういう事でしたか、確かに貴女の言う通りですね」

 ミルヤが舞衣の眼を見て事情を察し、ならばと、ダグオンが来るである方向を見やる。

 「?」

 「あっちに何かあるんですか?」

 朱乃、そしてネプギアが刀使達の視線を追う。

 彼女達の視線の先には朱乃達が見た事も無い色とりどりの集団、そしてその集団と共に行動している見慣れた仲間達。

 「リアス!」

 「一誠さん?!」

 「あら、曹操じゃない」

 「先輩方…合流したんですね」

 「あれ?ねぷっちが居ないみたいだけど?」

 仲間達の名を呼び集まるオカルト研究部(仮)、対してミルヤ達刀使もダグオンの方に寄っていく。

 

 「お久し振りですターボカイ。他の皆さんも」

 「ああ、こうして直接会うのは赤羽刀の件以来か…」

 「アーマーシン、あの夜は世話になりましたね」

 「オーライ、もし恩義感じてんならオレとデートしてよ」

 カイ、シンへ以前の礼を述べるミルヤ。

 

 「……………」

 「……………」

 「姫和ちゃん?」

 「あの…えっと…シャドーリュウ…さん?」

 片や互いに顔を合わせ沈黙する姫和とシャドーリュウにどう話したものかと困る可奈美とお礼を述べようにも姫和の無言の圧が恐ろしくうまくリュウに声を掛けられない清香。

 

 「ヘイ!ウイングヨク…でしたヨネ?お久しぶりデース!!」

 「ああ、どうも古波蔵さんお久しぶりです。糸見さんも」

 「うん」

 エレンに話し掛けられ頭を下げるヨク、そして側に居た沙耶香にも声を掛け、短いやり取りを交わす。

 

 「おぉ…ダグオンが五人揃って……うん?誰だソイツ」

 そして薫がダグオンの面子が何時もの5人組と違う事に気付きツッコミを入れる。

 「そう言えば赤い人が居ないね」

 「ファイヤーエンだよ可奈美」

 可奈美が薫の言葉に同調しエンの姿を探す、その際美炎から名前を告げられそうだったと軽く舌を出してお茶目を見せる。

 「以前、東北付近に異星人が出現した際、彼の活動が確認されています。恐らくは新たなダグオンかと」

 そこでミルヤが報告に挙がっていた情報を皆に開示する。

 「オゥ?!ニューフェイスですか!ますますレンジャーっぽいデスネ」

 「まだ増えるのか…連中」

 エレンが大仰にリアクションを取り姫和が呆れる。

 「赤、青、緑、白、紫、そして黒……本当に朝のヒーローみたいね」

 「ところで、あの新しいダグオンの人……何なんでしょうか?」

 智恵がこれまでのメンバーの色を挙げ、特撮の様だと表す。清香はゲキの格好…ドリルが良く解らないのか首を傾げる。

 「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれたのぅ、さぁさぁ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!遠からん者は音に訊け!近からん者は更に見よ!ワシこそはダグオン六人目の超戦士、ドリルゲキじゃぁぁあああ!!」

 そして当の話題の渦中たる本人はご機嫌で名乗り始めたのである。

 

 「ドリル…?」

 「ゲキ…」

 「?」

 女子力的思考の清香と剣術バカの可奈美とそもそも環境故に良く解っていない沙耶香等が首を傾げる。

 

 「またえらく濃い輩が増えたな…」

 「炎、加速、装甲、翼、影と来て掘削機…それもシールド重機の様な現実味のあるものでは無く架空のモノとは」

 「うーん、何だかデジャヴを感じるわ…」

 ゲキのキャラクターにジト目の姫和、名前の法則に理由を考えるミルヤ、そしてつい最近も目にした誰かと姿を重ねる智恵。

 

 「中々ユニークな新メンバーデース」

 「って、あれ?ファイヤーエンは?」

 「そう言やぁ居ないな」

 「ねー」

 「………」

 ゲキの紹介に笑うエレン、此処には居ないなエンを探す美炎、言われて気付いた薫とねね、そして…何故か自分が一度もファイヤーエンに遭遇した事が無い事に何か思うところあり、黙り混む舞衣と様々な反応を示す。

 

 

 

 「何やらあちらは盛り上がっていますわね」

 「ええ。それで…朱乃、彼女は何者なの?」

 刀使達がダグオンの事で盛り上がる中、オカルト研究部(仮)と合流を果たしたリアス一行は此方も互いに情報を交換する。

 

 「そう……刀使……この世界の日本の特殊な警察組織と言う訳ね」

 「こちらも驚きました。まさか宇宙の警察だなんて……」

 「お姉ちゃんがダグオンの人と他の皆さんの所に!?」

 「ああ、こっちに居たのがネプギア達だったんなら、多分残りはギャー助達だ。ネプ姉ちゃんはあのダグオンって連中が敵じゃないって説明する為に同行したんだ」

 話を終え互いに驚愕と動揺が見て取れるリアスと朱乃を傍ら、一誠とネプギアは此処に居ないな自らの姉、そして刀使達の話題に出たダグオンのメンバーの1人の事を挙げる。

 そんな彼女等に話が一段落したのかカイとミルヤが揃って近付いて来る。

 

 「良いだろうか?」

 「え、ええ。構わないわ?何かしら」

 「隣の彼女…木寅ミルヤとも話し合ったのだが、先ずは予定の通り、我々は君達の拠点に向かう。エンが君達の仲間を回収するれば同行者たる君達の仲間の少女の案内で其方に向かうだろう、そこまでは良いだろうか?」

 カイが手振りでリアスに説明をしながら確認を取る。リアスもまた異論は無いと頷く。

 「そこに我々も同行させて頂きたいのです」

 そして、タイミングを見計らってミルヤが口を挟む。

 彼女が言うには此方側の法政機関に関係する人間としては突如現れた街の対処諸々の報告含め事情を知りたいのだと言う。

 リアス達としても、ダグオン側からのみ情報をもたらされるよりは精度が上がるかと思い、その申し出を了承する。

 

 そうして行動を共にする事になった為、ダグオン以外の双方が軽い自己紹介をする。

 その際、オカルト研究部側の女性陣の過半数が揺れる上に大きかった事により、ねねは再び大歓喜し、姫和が己の胸部を見て言い知れぬ顔(本日3回目)を晒す。

 薫がそれを見てからかえば、シンが──

 「まぁ、その鉄板じゃあ…」

 と口を挟もうとして、瞬間姫和の三段階迅移からの柄打ちターボによる鳩尾のダメージで沈黙した。

 この時ばかりは十条姫和の怒りがダグテクター、それもダグオンで防御力が高いアーマーシンのスーツを凌駕したのである。

 正に人体の奇跡…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして更なる大所帯となった一行は兵藤邸へと急ぐ。

 端から見れば何とも個性的な集団大移動であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星、地球間

 

 3つの黒い閃光が星の海を駆ける。

 其々の漆黒の新幹線の中に各々に与えられた役割を果たすために乗り込んだ異星人達がいる。

 そして、その後ろを追うように飛ぶ謎の飛行物体。

 この飛行物体もまたエデンから飛び出した存在である。

 

 異邦の出会いが招くのは良い事ばかりとは限らない。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 さぁて…ねぷっ子の仲間はどこだ?

 

 あわ、あわわ…!?もっと安全運転してーーーー!?!?!

 

 

 

 此処が兵藤邸か…。

 

 どう見ても一般家庭ですね。

 

  皆さん!敵です!!あれは……

 

 異星人か……一体何をする気だ?!

 

 なっ?!街が!!?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 芸術?!地球は我がキャンバス。

 

 芸術には犠牲が伴うものであるよ?





 次回、やっとコラボの為に作った異星人を出せるゥ!フゥ~!

 なのはコラボ、イベントで収集したドロップアイテムで回す召集ガチャでスーさんゲットしたけど、そもそもメイン星3は滅多に使わないからなぁ……。

 天華百剣次回イベント、イベント対応巫剣全員持ってないなぁ。

 アリスギアはガチャで新規星4来ないなぁ…。

 フォーリナー欲しいなぁ。
 では、また次回


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第七十五話 芸術?!地球は我がキャンバス。


 こんばんは。
 年休による連休が無くなったダグライダーでございます。
 いやまぁ来週替わりに三連休になるんですけど、やっぱり徒労感がね…。

 とじともリリカルなのはコラボガチャ2弾にて結芽ちゃんをゲット、ついでにサポートのフェイトちゃんもゲット。
 久しぶりの星4コラボメインキャラクターなのでテンション爆上がり、更に結芽ちゃんなんで倍率ドン!
 取り敢えず、コレでテンション維持しときます。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 くすん……。

 

 どうかしたかにょ?

 

 …。?! 巨いなる豚鬼!?

 

 酷いにょ!ミルたん傷付いたにょ!

 

─駒王町・ある公園での一幕

 


 

 ━━静岡県・ダグベース

 

 「おかしい……みんな一向に来ない」

 メインオーダールームの一角で少女のような少年が頭を抱える。

 <あちらで何かあったのかもしれんな>

 ホログラフィーのブレイブ星人がそんな少年に合いの手を打つ。

 「ええ?!デルタは?何やってんの?!ヒトがせっかく少ない暇と力を振り絞って連絡したのに!?!」

 「おねにーさんがムムムンってやってたヤツ?」

 中央メインモニターに流れる衝撃映像と銘打たれたニュースを眺めながら結芽が横合いから口を出す。

 「そうそう、スプーン曲げしようとするとキノコが殖えちゃう的な…じゃなくて!」

 少女のような少年改めアルファは結芽の言い様に軽いノリツッコミを返す。

 「あれは!緊急時の呼び出し念波で一回使うにも精神力を消費するだから!」

 「私たちで言う写シみたいなもの?」

 「だいたいそんな感じ!」

 結芽の例えにビシッという効果音と共に指を差すアルファ。

 そんな3人の空間に更なる乱入者が現れる。

 ≪だったらせめて相手を絞れボケぇぇえええ!!≫

 ≪ぷふっ…儂、イプシロン。今のはちょっとウケた≫

 ≪やーん♪結芽っちおひさー!≫

 何処からともなく響く3人分の声、空間と頭の中、双方に直接響く声に結芽は思わず両耳を塞ぎながら辺りを見回す。

 「知らないおじさん達の声とゼータおねーさんの声がする…」

 しかし声はすれども姿は見えない。

 ≪あ、忘れてた前回は実体化してたから結芽っちも平気だったんだけ。という訳で……とぉ!」

 一瞬、空間が人の容に歪み嘗てアルファと共に自分を構ってくれた女性が現れる。

 「ゼータおねーさん!」

 「ハロハロ~♪ごめんね~。これでダイジョ~ブだから!ほら二人も実体化するし!」

 結芽にとって見覚えのある黒髪ツーサイドアップに青と赤のメッシュ入りの髪が混ざった黒セーラに羽織りの高校生くらいの少女(※結芽視点)が笑顔で小さな燕に抱き着きつつ空に向かって声を挙げる。

 ≪オケ。儂、イプシロン。へーんしん!トォ!≫

 老人の声が軽い調子で叫ぶ。暫くして現れたのは見慣れぬ老紳士(※結芽視点)。

 「儂、イプシロン。宜しくお嬢さん」

 見た目、声、所作、全てが胡散臭い眼鏡のロマングレーが結芽に握手を差し出す。

 ≪むぅ、仕方在るまい。ふん!≫

 最後に成人男性の声がしたと思えば、現れる神経質そうな顔のスーツ姿の会社員の様な男性(※結芽視点)。

 「私はシータ、遺憾ながら()()()の同僚だ」

 鋭い目付きが結芽を捉える。

 (何だかお兄ちゃんと高津のオバチャンを混ぜてオバチャンの成分が強い感じになったみたいなオジサンだなぁ)

 等とさりげに失礼な事を思った結芽であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球外縁軌道上

 

 3台の漆黒の新幹線が地球を前に器用に制止する。

 『弟達よ職務をしっかり果たせよ。兄はこの場より動けぬでな!』

 超速三兄弟、長兄Jーエースが愛しい弟2人に声を掛ける。

 『OK!任せてくれ兄貴!』

 『頑張るんだな!』

 そう語り合う兄弟達は自らの後ろに2両の車輌を牽引しており、各々がとある異星人と兵士となるザゴス星人やドロイドを登載している。

 Jーエースが見守る中、RーマックとXーセブンが地球に降下していく。

 Xーセブンは日本、近畿付近へ。

 Rーマックは欧州……ドイツのとある都市と入れ替わったとある世界の土地へと向かって行った。

 

 『さて、余も職務を全うせねばな……貴様は問題有るまいな?』

 「無論、此方(こなた)は何時でも準備出来ている。其方(そなた)こそしくじるなよ?この舟は其方(そなた)と違い、一歩間違えればあの星の重力に引かれ此方(こなた)は忽ち燃え尽きてしまうからな」

 Jーエースが牽引する車輌に乗る者に声を掛ければ、慇懃無礼な女性の声が返ってくる。

 それは今回の騒動を引き起こした修道女の異星人。

 彼女が顔を上げる。その顔は鼻も口も無いのっぺりとしたモノ…否、瞳を象った孔が空いた仮面であった。

 光の覗かない瞳で地球を眺めながら、手許の空間に作用する天秤、そしてそれらとコードで繋がる巨大な円盤の碑石に触れる。

 「観賞。それでは天才芸術家のお手並みを拝見するとしようか……」

 Jーエースの後ろから回転する飛翔物体が地球に向かって行く。それこそが異なる世界が交わった彼の地に大いなる混乱を巻き起こす存在となるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・高層マンション街

 

 車も少なく人気の疎らな道を1台のパトカーが走る。

 「この辺にお前さんの仲間がいるのか?」

 峠を走るハチロクや湾岸を駆ける悪魔のZに負けず劣らずドリフトを決めながらファイヤーエンは助手席のネプテューヌに訊ねる。

 「あわ、あわ、あわわ!?そ、そのハズだけど…ね、ねぇ!もうちょっと安全運転……「もっと飛ばすぞ」え゛?!」

 ネプテューヌは知らぬ事だがダグテクターの機能であれば例え高速で動く物体の中からでも目標を判別する事が可能な機能がある。

 それを応用、更に空間識別と併用して彼等は刀使の迅移を認識しているのだ。

 ネプテューヌの悲鳴が響くがサイレンに掻き消されドップラーすら残さない。

 

 果たして、数時間後。エンがこの風景に似つかわしく無い筋肉質の大柄な男性を見付ける。

 「おっ?もしかしてあいつか?」

 速度を落とし目印のように彼に近付けば、良く見れば他にも数名共に居るようだ。

 1人は先程の筋肉質の巨漢、隣は何やら紙袋を被った謎の少女?だろうか?他にも微妙にキザッたらしさを感じる白髪の青年、眼鏡を掛けた金髪の青年、果ては結芽と同じか下くらいの少年まで居るではないか。

 彼等も接近してきたファイヤーストラトスに気付き、若干1名が慌てつつも、此方の出方を見守る。

 「よっし、ねぷっ子の出番だぜ!ぱぱっと説明ヨロシク!」

 猛スピードで連れ回された所為か少々目を回しているネプテューヌ、少し責めるような視線でエンに訴えつつも開かれた助手席の扉から降り立つ。

 「ヴァーリ!みんな!」

 「ネプテューヌ、そのパトカーは何だ?」

 「ネプテューヌ先輩…」

 「まさか警察の厄介になる事を……?」

 「いや…ネェだろ。無いよな?」

 「………」

 白髪の青年がネプテューヌを見てとても嬉しそうな声色を出したと思ったのも束の間、ファイヤーストラトスに警戒の色を見せる。

 紙袋はオドオドして謎のパトカーを眺め、眼鏡の青年と筋肉質の巨漢がこそこそ耳打ちをし、少年は黙りこんだままだ。

 「あー……うん、えっと、話せば長いような短いような……」

 ネプテューヌが言葉に詰まる。それもそうだろう、街の外は異世界、更には異星人の脅威があり、詳細は未だ詳しく知り得ていない。

 簡単に話そうにも言葉が出ない彼女は最終手段に出た。

 「みんな!心して聞いてね!実は……かくかくしかじか(こんな事があったんだよ)!!」

 まさかのアニメ、漫画等で見られる省略描写を口にしたのである。

 これにはファイヤーストラトス内で聞き耳を立てていたエンも思いっきり突っ伏した。

 流石に伝わらないだろうと思っていると、何と彼等はしきりに頷き此方を眺めているではないか。

 (嘘だろ?マジでアレで伝わってんのか?)

 兎も角、一応紹介されたようなのでファイヤーストラトスから降りるエン。

 その姿を見たネプテューヌを除く一同はかなり驚いていたが、そんな細かい事は気に止めず、エンは言葉を発する。

 「えー、一応紹介してもらったみたいだからな。改めて俺の方から名乗るぜ、ファイヤーエン。この世界のヒーローってか勇者っての?まぁ、悪い宇宙人と戦ってるぜ!」

 サムズアップした右手を左の肩に持っていく様なポーズを取るエン。

 そんな彼にヴァーリと呼ばれた青年が近付く。

 「ヴァーリだ。ネプテューヌが世話になったようだな」

 「いやぁ、そこまではしてねぇよ。むしろ勘違いとは言え敵対しちまって悪かったと思ってるくらいだ」

 見た目の印象より些か人当たりが良く困惑するエン、それはそれとして闘気が漏れているのも気になる。

 「とりあえず…詳しい説明をする為にも俺やお前らの仲間と合流しようぜ」

 ヴァーリから迸る闘気を敢えて無視して話を続ける。

 喧嘩慣れした不良にも時と場所を弁える分別はあるのだ。

 「合流するのは構わないが……その車では我々全員は乗れないのでは?」

 眼鏡の青年──アーサーと名乗った青年がエンに疑問をぶつけてくる。

 確かにファイヤーストラトスには詰めたとしても5人が限界、それもドライバーのエンを除けば小柄なネプテューヌと紙袋、少年を乗せ後は、ヴァーリかアーサーのどちらかになってしまうだろう。もう1人の巨漢は大きすぎて入りそうに無い。

 が、そこは事前にカイから解決策を貰ったエンである。

 「任せな!もう一台喚ぶ。ちょいと待てばすぐ来るぜ……ファイヤーレスキュー!」

 そうしてエンが虚空に叫び待つこと5分、何処から途もなく鳴り響くサイレン、しかし今度は救急車の音だ。

 「ねぷぅ?!今度は救急車なの?!」

 驚くネプテューヌを尻目にファイヤーストラトスの停車する隣にホンダ・ハイメディックをベースとしたビークル、ファイヤーレスキューが現れ停車する。

 「後ろから乗ればそっちのデッカイのも大丈夫だろ?」

 エンのその言葉と共にファイヤーレスキューの後部扉が開く。

 「お、おぉう…」

 巨漢が何と言って良いものかとばかりのリアクションで何とか相槌を打つ。

 さて、では自分はファイヤーストラトスの前座席を倒して後部座席に小柄な面子を乗せようか等と動き始めた瞬間、異星人襲来のアラートが鳴る。

 「またかよ!」

 「なになに?!何が起きたの?!何この音?!」

 行きと違い少年、紙袋共々後部座席に移ったネプテューヌが運転席と助手席の肩口を掴んで顔を出してくる。

 「空の上から厄介なお客さんが来たんだよ!」

 ヴァーリが助手席の扉を閉めた瞬間、アクセルを全開にして走り出すファイヤーストラトス。

 ファイヤーレスキューも巨漢を収容し、ファイヤーストラトスの後を追う。

 彼等が向かうのは仲間達が待つ兵藤邸──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・兵藤邸前

 

 閑静な住宅街、他に比べれば大人しいものの、富裕層に近い家屋が建ち並んでいる。

 東京の一等地にも負けないデザインスタイルの家を巡っていけば、その中で玄関前に魔女の様な少女が立つ家が一軒。

 誰かを待っているのだろ少女が被っている帽子のツバを持ち上げ、何となしに空を見た。

 「?あれは……」

 彼女が見上げる視線の先、空に浮かぶ()()()がこの街に向け光のエネルギーを放つ。

 光は兵藤邸を含む幾つかの区画を収める様に一帯を四角く囲う。

 

 

 「うんふふ…手始めに入れ替わった街をキャンバスに何か創ってみようか……ふふんふ」

 少女の視線の先、上空で滞空する飛行物体が奇妙な笑いを浮かべながら街を見下ろす。

 「絵画か、彫刻か、はたまた人形か、粘土細工も悪くない。ダグオンに邪魔をされる前に下準備と洒落こもう!!ふふひふふ」

 街の四方に飛び散った光が来る者、去る者を拒む様に見えない壁を段々と構築していく。

 

 

 

 

 その異変は刀使達と合流したダグオン達からも見えていた。

 「あれは…何だ!?」

 「空から光が降り注いだかと思えば、街の一部を囲っていく?!」

 カイとヨクが兵藤邸に近付く道中でその光景を目にして驚愕を顕にする。

 「おい……嘘だろ…あっちには俺ん家が……」

 兵藤一誠はこれから起きるであろう最悪の事態に顔を青くさせ駆け出す。

 「待ちなさいイッセー!!?」

 リアス・グレモリーの制止を気にも止めず走り出す一誠、しかし途中で何かにぶつかる。

 

 「何だよコレ!?先が見えてるのに進めない?!」

 焦燥と憤怒で見えない壁を叩き付けるが壁はビクともしない。

 そんな彼の後ろから仲間達やダグオン、刀使達が追い付く。

 

 「行先は見えるが阻まれる……か、やはり異星人の仕業か!?」

 「解析していますが、これは…簡単には破れるモノでは無いようです……」

 「貴方方でも無理なのですか?」

 カイが冷静に見えざる壁に触れ、ヨクは衝撃が加わる度、僅かに光るソレを解析して強度に戦慄する。

 ミルヤとしてもダグオン達ですら攻略不可能なモノがある事に、自分自身驚いている。

 「ええいっ!!ワシが何とかしちゃるわ!!」

 無理やら不可能やらと聞いて、いてもたっても居られなくなったドリルゲキ。

 皆に退がっているよう促し、必殺の体勢を取る。

 

  「ドリルクラァァアアアッシュ!!」

 

 上半身を巨大なドリルと化したゲキが壁に突貫するも火花が散るばかりで一向に壊れない。

 「ぬぅう?!何と言う固さ…堅牢にも程がある!」

 或いは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、無い物ねだりをしても仕方が無い。

 「播さん達…大丈夫かな……」

 清香が駅前周辺で調査に残った面子の安否に思いを馳せる。

 「………確かに、これ程の事態となれば彼女達が心配です。仕方ありません、我々は一時、調査、護衛に残った本隊と合流!場合によってはこの地より退避する!」

 ミルヤがこの場の刀使全員に指示を飛ばす。

 「そういう訳ですので、我々は此処を離れます。出来れば詳しい話を訊きたかったのですが…状況が状況ですからね、後は貴方方ダグオンにお任せせざる終えません」

 「事態がこうも性急では致し方在るまい。良いだろう彼等の事は我々に任せて貰おう。君達は仲間の元へ急げ」

 カイのその言葉を聞き後顧の憂いを断つとミルヤは即座に八幡力によって向上した身体能力で見えない壁を迂回するように建物の屋根へと跳び移りながら調査班の元へ向かう。

 そしてミルヤに続くように智恵、姫和、沙耶香、エレン、可奈美、薫、清香、舞衣と後を追う。

 最後に美炎が跳ぼうとして、しかし立ち止まり此方を名残惜しそうに振り向きながら呟く。

 「………結局、ファイヤーエンに会えなかったなぁ」

 そうして、未練を断つように首を思いっきり振り、仲間達の後を追った。

 

 

 「カァ~!エンのヤツ…存外罪作りじゃネェノ」

 少女達が立ち去ったのを見計らいシンが大仰なリアクションを取る。

 姫和に喰らわされた柄頭アタックのダメージは完全に引いた様だ。

 「……しかし、どうする?…これでは当初の目的が果たせなくなるが……」

 リュウが仲間達に問う。しかし皆、返事に返しあぐねる。

 そんな彼等の元へサイレンの音と共に駆け付けるファイヤーストラトス、ファイヤーレスキュー。

 扉を開けへたり込む一誠の元へネプテューヌが駆け寄る。

 「一誠!どうしたの?!何があったの!?」

 「ネプ姉ちゃん……ウチに帰れなくなっちまった…」

 ネプテューヌに震える声で答える一誠、それを聞き即座に目の前に手を伸ばすネプテューヌ。

 彼女の小さな手が触れた先は目に見えない壁。まるで水族館の水槽の様な透明なソレを叩くも変化は見られない。

 「これ…異星人の仕業か?」

 同じく近付いてきたエンがヨクに訊ねる。

 「ええ、僕もハッキリと見た訳ではないのですが…上空から光が降り注ぎ、恐らくは起点を作り出し、一帯を囲うように光が壁になったのでしょう。ゲキのドリルクラッシュでもビクともしませんでした」

 「ゲキで無理なら俺らの誰でも無理って訳か…」

 「……壁そのモノをどうにかするには、破壊するよりも術者を倒すなりするのが、手早い解決策だろう…」

 リュウが空を見上つつ切り出す。

 その手許にはガードホークのカードが握られている。

 

 同じくネプテューヌ達の側ではヴァーリが壁に触れつつ背中から生えた機械的なしかしある種の芸術品の様な白い翼で何事かを試しているが壁に変化は見られない。

 「まさか、半減の効果が見られないとはな……異星人、だったか…異世界とは言え宇宙人の技術が二天龍を凌駕するとはね。驚きだ」

 『根本的な何かが我等の世界とは違うのだろうな』

 翼の宝玉から理知的な低い声が響く。

 そうして互いにお手上げだという状況で彼等が立ち竦んでいると、突如彼等の後ろから声が掛かる。

 

 「嘆き迷える者達よ!諦める事なかれ!しかし今は退く時であるぞ!」

 

 突然の謎の声に一斉に後ろを振り向けば、其処に居たのは黒い裾長のフードを被った線の細いシルエット。

 顔は伺い知れぬが女性である事は身体つきから一目瞭然だ。

 「いきなり誰!?」

 ネプテューヌが代表して声を挙げるがダグオン達を除き皆同じ気持ちだ。

 片やダグオン達はその姿と聞き覚えのある声と忘れようも無い振る舞いから彼女の正体を察する。

 「……あの時の管理者か…」

 「あー…あの厨二病の」

 「相変わらず地味なのか派手なのか判らん格好じゃのう」

 「管理者デルタ…そう言えばアルファが彼女に連絡をしたと言っていましたね」

 「ふむ、ごたごたで頭の片隅に追いやっていたが…今し方現れたのか?」

 「ホント…見た目はかなり美人なんだけどナァ…」

 現れた黒フード…ダグオン達が管理者デルタと呼ぶ存在は公園に現れた時同様、闇に飲まれと言わんばかりの手を掲げたポーズを決めていた。

 

続く

 


 

 次回予告(BGMWe are DAGWON)

 

 突如として見えない壁に包まれた駒王町の一角!いったいどんな異星人の仕業なんでしょう!?

 

 クソッ!!?母さん達は無事なのかよ?!

 

 わわっ?!街の一部が平らになったり変な建物に変わってたりするよ~?!

 

 それらの異変の仔細、我等が語ろう!しかしこの場に留まるは危険故、勇者達の居城へ来たれり。

 

 オイオイ!オレらの基地にって……転送はオレらか結芽っちにしか適用されねーンダロ?どうすんだよ!

 

 その為のワタシだ。この銃の真価を見せよう!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 ダグベース。異世界人来訪!

 

 デカイです!スゴいです!何ですか!?あの建物!?!

 

 ギアちゃんテンション高いわね……。





 今週のサンデー、魔王城の登場人物紹介一覧にキャストまで載ってて笑い、フリーレンでおかーさんのリアクションに吹き出した私。
 そしてヤンジャンでオグリパイセンを楽しむ。
 ついでに金カムを読む度に思い出すアニメのゲンジロちゃん回

 ではまた次回


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第七十六話 ダグベース。異世界人来訪!

 こんばんは三連休二日目にして最新話を投稿ダグライダーでございます。
 今回、管理者がはっちゃけてるのは冥次元のノリに少々引っ張られ…本し……もといテンションが上がっております。
 そして過去最大の文書量になってしまった……。


 ところでデビあくま一匹下さい。
 
 加筆修正しました(11月21日朝)



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 うーん、おかしいなぁ……今まで色々道に迷った事はあったけど、国内から出た事は無かったハズ…。

 一体ここは何処なんだろう…?

 

──雷火の冒険・異世界編

 


 

 「勇者達よ幾久しいな!」

 足許まで覆う程の裾にフードを目深に被ったノースリーブの女性が右手を開き構える様にポーズを取る。

 「お、おう…」

 格好を付ける彼女にエンは何とも言えない生返事を返す。

 「剣を振るいし神巫の少女達は既に去ったか、都合が良い」

 フードに隠れた顔をキョロキョロと動かしながら辺りを見渡す女性。

 ダグオン達は兎も角として、オカルト研究部+αは突如現れた謎の人物に只々呆然とする他無い。

 「ねぇ…あのお姉さん何者?」

 意を決してネプテューヌがヨクに謎の女性の事を訊ねる。

 「彼女は管理者と呼ばれる…そうですね、僕達が存在する次元よりも上に位置する存在だそうです」

 「よく分かんないな~」

 「まぁ、今は偉い人とだけ覚えて頂ければ大丈夫かと」

 ネプテューヌの言葉を受け、苦笑しながら簡素な結論を出す。

 

 「それで……デルタ、だったな。都合が良いとはどういう事だ?」

 カイが代表してデルタに発言の目的、意図を問う。

 「勇者達の心境を思った迄、そして、このままこの地に留まるのは好ましく無い。が、勇者達では異邦の客人を連れ歩くには目立つ。それ故にワタシが馳せ参じた」

 そう言ってデルタが取り出したのは以前アルファにも使用したフリントロック式の拳銃を右手に、そして新たにリボルバー式の拳銃を左手に取り出し胸の前でクロスさせる。

 (何故、ポーズを取る…?!)

 (多分あのフードの下ぁ、キメ顔なんだろうなぁ)

 (相変わらず知らなければ物騒極まり無い獲物じゃ)

 カイ、エン、ゲキがデルタの一挙手一投足に心の中でツッコミやらを繰り出す。

 片やデルタ曰く異邦の客人たるオカ研一行は突然現れた謎の女性が両手に拳銃を構えたので身構えてしまう。

 「ぁあ!落ち着いて下さい、皆さん!信じ難いかもしれませんが彼女に危険はありません!信じ難いかもしれませんが!」

 放っておいたら話がややこしくなりそうだったのでヨクが慌ててフォローする。

 「いやでも銃持ってるし……」

 ネプテューヌが汗を滴らせながらデルタを警戒してそんな身も蓋もない事を言う。

 実際ぐうの音も出ないのでダグオン達も言葉に詰まってしまう。

 「……しかし、彼等の暮らす街をこのまま放置するのは彼等の心境をおもんばかれば…好ましい事ではあるまい…」

 リュウがオカ研一行に視線を配りながらデルタに異議を謳う。

 しかしデルタはそれが分かっていたのか心配無用と口にする。

 「彼の者達に関わる人間は無事だ。少なくとも今すぐどうこうされる事は無い」

 「何故そんな事が分かる?」

 白髪の青年ヴァーリがデルタを胡乱な目で睨みながら問い掛ける。

 「明星の白龍皇か。何故と問われればそれが我等であるからと答える他あるまい……故にワタシはこう応える以外に無い、信じて欲しい。と」

 フードの奥から覗く翡翠の瞳がヴァーリを見据える。

 「信じても良いんじゃないかな?」

 ヴァーリとデルタのやり取りにより凍った空気の中、ネプテューヌが口を開く。

 仲間達、ダグオン達から視線を受け、彼女は続ける。

 「この人、戦隊っぽい人達の知り合いで偉い人なんでしょ?それに中に……言葉遣いは変だけど、言ってる事に嘘は無いと思う…たぶん……だから信じよう!ううん信じたい!」

 少女からの真っ直ぐな思いの丈をぶつけられ青年は致し方無しと瞑目した。

 「お前がそう言うなら仕方ない」

 「えへへ…ありがと」

 青年と少女の間に甘い空気が降り始め、彼女彼等の仲間達も柔らか雰囲気に変わる。

 約1名血涙を流さんばかりの複雑な表情の少年が居たが、ダグオン達も敢えてそれは無視した。

 

 「それで……結局、ドースンだよ?」

 シンがこれからの事をデルタに訊ねる。

 「無論、我がチカラにより勇者達の城へ異邦の客人を送る。さぁ!列び立て」

 ノースリーブのコートをマントを翻す様な動作で手を翳し宣言するデルタ、彼女の行動にダグオン達はやはりか…と頭を抱える。

 「なに、痛みは一瞬だ。次に目を醒ました時には勇者達の城の前である!」

 「えっ?!痛いのっ!!?やっぱちょっと待って!!」

 デルタの発言に一辺慌てるネプテューヌ、しかし少女のリアクションを余所にデルタは構わず銃口を向けて引鉄を躊躇い無く引いた。

 

 「あたぁ゛!!

 

 撃たれたネプテューヌは次の瞬間には光の輪に包まれその姿を消した。

 「ね、ネプ姉ちゃぁぁぁぁぁぁあんんん!!?」

 叫ぶ一誠、その側頭にはリボルバーが向けられ容赦無く発砲音が轟く。

 「ぎょ?!」

 等と面白……間抜けな断末魔を残しネプテューヌ同様、光の輪に包まれ消えた。

 残された者達はその光景に唖然としているのか、開いた口が塞がらないという顔をしている。

 

 「さて、我々も早々にダグベースに戻るとしよう。木寅の好意を無駄にしない為にもな」

 「ンン?どういうこった?」

 「後で話しますよ。今は敵が大掛かりな動きを見せる前に戻りましょう」

 「うむ、そうと決まればとっとと撤収じゃ」

 「……賛成だ。エン、お前はどうする?」

 カイ、シン、ヨク、ゲキ、リュウの5人がダグテクターの機能から転送装置を起動させる。

 ファイヤーストラトスとファイヤーレスキューを乗り回しているエンにリュウが帰還の手段を問う。

 「あー、折角コイツらを呼び出したし、このまま帰るわ。ねぷっ子が居ないスペース誰か乗るか?」

 その、何とはなしに言い放った発言がオカルト研究部の残りのメンバー(主に女性陣)の目の色を変えさせる。

 

 「はい!私はそっちに乗って行きます!!」

 最初に声を挙げたのは栗色のツインテールの少女、紫藤イリナである。

 「ずるいぞ!私もそちらのクルマに!?」

 それを横合いからイリナの肩を掴みゼノヴィアが批難しながら自分もと挙手する。

 「あらあら…わたくし…攻められるのはあまり好きではありませんの」

 笑みを称えながらもやんわりと己も…。と声を挙げる朱乃。

 「害意が無いのは分かるんだけど、無抵抗に撃たれるのはちょっとね…」

 ジャンヌがデルタに含みを持たせた視線を配せながらおずおずと手を挙げる。

 「流石に恐いです……」

 アーシアが率直に理由を口にする。

 「他に方法が無いんでしょうか?」

 小猫がボソリと呟く。

 「痛いのはイヤですぅ~……」

 更と紙袋が混ざったがそれは置いておく。

 エンが呆れた視線でやり取りを見て、どうしたものかと仲間達の方に振り向けば、既に5人は姿を消していた。

 (…!あいつら、丸投げして置いて行きやがった!?)

 因みにオカ研一行の男性陣の意見は一蹴に附された。

 「っても……子供相手に()()()()()流石に撃たせる訳にいかねぇしなぁ」

 先程から特にこれといった意思を見せない少年──レオナルドと呼ばれている一行最年少──に目をやり、彼だけは先んじてファイヤーストラトスに乗せる。

 彼が子供で小柄である事を考慮しても残る席はファイヤーレスキューを含めても数人。

 更に、デルタが銃で転送をする所を目撃した瞬間、ファイヤーレスキューにジリジリと近付き、あわよくば再び後ろのスペースに乗せて貰おうと企む巨漢──ヘラクレスがいた。

 

 「そう言えば姉さまは……」

 そこで小猫が姉、黒歌が何時の間にか消えている事に気付く。

 「そういえば居ませんね?…まさか?!」

 ネプギアもその発言にあの妖艶と無邪気が同居したようなネコミミ美女を探し、見付からない事からデルタの方を見てもしや既に……と戦慄するが、その時ファイヤーストラトスの方から猫の鳴き声が聴こえてくる。

 「あん?黒猫?どっから入ってきたんだ?」

 エンが覗けば助手席に何時の間にか居座る黒猫の姿を見付ける。

 

 ((((((((い、いつの間に……!?))))))))

 

 さらりと自分だけ安全圏に逃げた黒猫こと黒歌に批難と羨望入り雑じった視線を投げる女性陣。

 視線を向けられた当の本人…いや、本猫は欠伸を挙げ我関せずと言う態度である。

 

 「みんな、一度落ち着きましょう…?」

 リアスが皆を代表して音頭を取る。無論男性陣の意見は無視する方向でだ。

 「あのクルマに乗り込める人数は限られているわ。まず、レオナルド…あの子はまだ小さいから、あんな危険はモノで彼等の本拠地に送らせる訳にはいかない。ここまでは良いわね?」

 彼女の言葉に少女達はうんうんと首を振る。しかし、次にリアスが発した言葉でその団結は早くも崩壊した。

 「次に、ネプテューヌが既に転送されてしまった以上。このメンバーの代表は私になる訳だから、残りの席の1つは私に権利があるわ!」

 「いや無いわよ」

 「リアス……それは理由としては些か卑怯ではありませんこと?」

 「部長……」

 「流石に見損なうな……」

 「ちょっと小賢し過ぎません?」

 「却下!却下!ぜーったい却下!」

 ジャンヌに即ツッコまれ、朱乃が呆れた様子で見詰め、小猫がジト目になり、ゼノヴィアすら白けた目を向け、ネプギアがズバリ思った事を口に出し、イリナが兎に角却下と叫ぶ。

 因みにそうこうしている内に、アーサーと祐斗は既に転送されている。

 「乙女の講談に決着が着くには時が掛かるようだな、なのでワタシは雄々しく若き戦士達を先んじて送ろう」

 等と告げて金髪イケメン2人をあっさり撃ち抜いたデルタであった。

 「いや、何でも良いから早く決めてくれよ……」

 

 その後、ヘラクレスの企てがバレ、女性陣に責められた彼は罰として極所に弾丸を撃ち込まれたのだが、それはそれは一言では言い表し難い表情で光に包まれ消えていった。

 そんなやり取りをを眺めつつエンは席割りを考える。

 (ぶっちゃけ、赤髪のねーちゃんと黒髪のねーちゃんは胸がデカ過ぎてそんだけでスペース占領されるんじゃねぇかこれ?どう見ても柳瀬や古波蔵、木寅先輩に瀬戸内先輩以上にデカいだろ……いや、実際そこまで狭くなる訳じゃねーけど)

 あの2人後部座席に乗せたら間に1人入っても狭そうだなぁ…と思うエンであった。

 「うん。もう面倒くせー。なぁ!そっちの金髪の二人と白いちっこいの、もう色々面倒だからお前らが乗れば?黒猫は誰かの膝に乗せりゃ良いだろうし」

 アーシア、ジャンヌ、小猫を手招きして呼び寄せ、彼女達が近付いたら言い争う面子を無視して決めるエン。

 アーシアは遠慮がちであったが他2人はこれ幸いと後部座席に乗り込んでいく。

 これによりファイヤーストラトスはエン、アーシアと後部にジャンヌ、レオナルド、小猫の順で席が埋まり助手席のアーシアの膝に猫と化した黒歌が居座る事で決着が他のメンバーの知らぬ間に着く。

 「ああぁっ!!?いつの間に!!?」

 イリナがそれに気付き、しかし文句を言うよりも、ならばと切り替え即座にファイヤーレスキューに駆け込む。

 「って、曹操?!あんたいつの間に?!」

 助手席に滑り込めば何時乗り込んだのか、曹操が運転席に居座っている。

 「フッ、何…先程赤い彼からポーズで構わないからドライバー役をと頼まれてね」

 思わぬ役得に棚からぼた餅と顔には出さず、しかし心中では喜び勇んでファイヤーレスキューに乗り込んだ覇王の継類に最早英雄の矜持など無かった。

 「その救急車ぁ!待ったぁ!!」

 そして更に後ろのメディカルポッドがある寝台スペースに滑り込むゼノヴィア、その腕には紙袋ことギャスパーが抱えられている。

 「うし、もう待てねぇ。異星人がそろそろ動きを見せる可能性がある以上、さっさと出るぞ。後は厨二ねーちゃんに任せる」

 最早不毛な言い争いに付き合う気は無しと、アクセルを踏みファイヤーストラトスを走らせる。

 ファイヤーレスキューもそれに追従するように後部扉を閉じ走り出す。

 2台が走り出した音に気付いた彼女達はポカンと見送る事しか出来なかった。

 

 さて、残る面子は必然的にデルタの弾丸により転送される事になる訳だが、当人が最初に申した通り、銃の形をしたモノから弾丸の容をしたモノが撃ち出される以上、痛みを伴うのは当然であり、その痛みは一瞬とは言え普通の拳銃の比では無い。

 正直な所、一般人がその身に弾丸を受ければショック死する確率が高いシロモノである。

 勿論デルタは普通の人間にはそんなものは向けない。相手が特殊であるからこそである。

 そういう訳で置いていかれた面子に次々と弾丸を撃ち込み、珍妙な悲鳴が街中に木霊す事になったのである。

 「うむ、異邦人達は凡て勇者達の居城へと送られたな。我が庇護の元にある世界の樹より分岐した世界に近しい世界の者達故、あの弾丸を使用してみたが…む?空の敵が動くか、ワタシも彼方に合流せねば」

 上空の気配が動いた事に気付き、自らの蟀谷へ弾丸を撃ち込み自身も堕ぐへと転送されるデルタ。

 

 後には人の気が無くなった道端のみ、そこへ墜ちてくるデッサン用のクロッキー人形、2、3跳ねた後、まるで糸に吊られる様な動きで立ち上がる。

 

 「んふふん?何かが騒いでいたように見えたが……気のせいだったかな?」

 それはこの駒王町の一部を見えない壁で断絶させた張本人。

 芸術宇宙人アーティシャン星人、彼は辺りを見回しながら呟く。

 「まぁいいか。邪魔が入らないなら入らないでゆっくり作品の製作に勤しめるというものなのだよ。ふふはふ」

 そういって彼は腕を指揮棒の如く振るう。

 宇宙の芸術家はその身の狂喜を存分に発揮するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 

 空間が歪み洞内の中空に孔が開く。

 「ぎゃん?!」 「ぐえっ?!」 「おおっ?!」 「っ…!?」 「ぉぉぉああ…!」 「あうっ?!」 「きゃっ!!?」 「あらあら?!」 「………ふむ」

 そこからネプテューヌ、一誠、祐斗、アーサー、ヘラクレス、ヴァーリ、ネプギア、リアス、朱乃の順で落ちてきたのだが、ヴァーリはちゃっかり神器たる"白龍皇の光翼"にて悠々と着地を成功させている。

 

 「お?来やがったカ?」

 「……随分手荒く送られたようだがな」

 「あの二人は僕達が帰還する前に転送されたのに、僕達の方が早くダグベースに着いている……これは何かしら法則の違いが?」

 「その推測は後にしろ、先ずは彼女達を基地内に招かなくてはな」

 「そろそろエン達も来る頃じゃしのう」

 シン、リュウ、ヨク、カイ、ゲキが転送されて来た面子を見て各々に言葉を発する。

 その間にヴァーリが一番下で下敷きになって潰れているネプテューヌを助け出し、抱き抱える。

 そうなると抜けたスペースに一誠がシフトし彼が一番下で潰れる羽目になるのだが、ヴァーリはそれを捨て置く。

 そしてノビている客人達をダグオン達も協力して助け起こす。

 そうこうしている内にファイヤーストラトスとファイヤーレスキューも帰還を完了する。

 「っし、着いたぜ。此処が俺達の基地、ダグベースだ!」

 ファイヤーストラトスから降り同乗者達にその全容を見せる様に手を広げるエン。

 フロントガラスから覗くその光景に彼女達は目を見張る。

 巨大な洞窟の内部が綺麗にくり貫かれ、箱のようなモノが鎮座し、両隣には俗に言う旅客機のジャンボジェットと上向きに台座に固定された紫色の戦闘機。

 肝心の箱のようなモノには腕らしき意匠があり、顔らしき部位もある。つまり、彼等の基地はある種のロボットを模している物と判る(実際にロボットではあるが、彼等がそれを知る由は恐らく来ない)。

 

 「う~ん…痛た…まだ痛いんだけど~…ってナニコレーーーー!?」

 潰された衝撃で意識を落としていたネプテューヌが目の前の巨大な威容に驚愕する。

 「驚くのは後にしてくれ、先ずは基地内に案内する。そこで恐らくこの事態の全容を知るであろう者から話が訊ける筈だ」

 カイが異星人一行のざわめきを征しダグベースの入り口に向かって行く。

 それを見て彼等彼女等は互いに肯首を示し合わせ、警戒心を残しながらもカイの後に続く。

 残りのダグオン達はそんな彼等彼女等の後ろに付きダグベースへと帰投するのであった。

 

 

 

 

 

 

 そしてダグベースのサロン。

 ネプテューヌ一行程の人数を一度に収める場所はこのサロンくらいなモノでまずは此処で寛ぐ様にとカイは言う。

 「貴方達はどうするの?」

 「ふむ、俺とヨクで今回の件を知りうるであろう者を此処に連れて来る。それまでは常識の範囲内で自由に過ごしてくれ」

 そう言い残し、ヨクと共に退室するカイ。

 「寛げと言われても……」

 イリナが残った4人の戦士をチラと見ながら気まずそうに部屋を眺める。

 「……まぁ、我々がこのままでは伸ばせるモノも伸ばせないか……」

 リュウがイリナの態度で皆が堅い理由を察する。

 其処へドタドタと騒がしい足音が鳴り響いて来るではないか。

 サロンの扉が騒ましく開く。

 

 「やぁやぁ!待っていたよD×Dの諸君!!あ、まだ結成されてないのかな?トニカク良く来てくれたね!」

 扉を開けて現れたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 「アホかぁぁ!!何先走って余計な事を口にしておるんだ貴様はぁっ!!」

 そしてその後からハリセンで少年の頭を思い切り叩く神経質そうな成人男性、更に老人とギャル、そして先程何者かを呼びに向かったカイとヨク、更にカイの後ろに小鴨の様に引っ付く薄紅のさくら色の髪の少女と、とてもバラエティーに富んだ面子が現れる。

 カイがやれやれと首を振りながら嘆息している所を見ると普段からこんなノリなのだろうと言う事が伺える。

 「あー……とりあえず、コイツが今回の事件を詳しく知ってる奴なんだけど……おい、カイ?!なんか増えてんじゃねぇか!!」

 「俺に振るな、オーダールームに向かったら結芽達と共にこの見知らぬ二人が居たんだ…」

 エンが突如現れた少女にも見える少年を指しながら、面識の無い男性と老人の事をカイに問う。

 しかしカイとて詳細を訊ねる前に当人がサロンへ走り出したので問い詰める事が出来なかったのだ。

 

 ともあれサロンに密集する人数が増えた事により少女の様な少年がダグオン達に対し口を開く。

 「ねぇ、君達はいつまでそんなゴテゴテしたままではいる気?ちょっとスペースが狭くなるんだから早く変身解いてよ」

 この発言に隣のカイから一瞬、ほんの一瞬だが殺意が入り交じった怒気が立ち上ったのを少女らしき少年以外は見逃さなかった。

 さて、そういう訳で件の人物の言葉の通り、変身を解くダグオンの面々、一部はカイとヨクの素顔は既に知っていたが、改めて勇者達の素顔に驚く事となる。

 何故ならば皆が一様に若い。

 全員が自分達と同い年くらいの年頃に見える……いや、黒い彼は本当に同い年なのだろうかと過ったりもしたが兎に角、予想よりも若いのだ。

 「ハイハイ!じゃあ自己紹介宜しく!焔也君から!」

 そして例の少女少年が赤い戦士ファイヤーエンだった少年へ話題を振る。

 「あ?あー…うん、まぁこれで良いか……ダグオンのファイヤーエン。美濃関学院高等部一年!刀匠科所属!鳳焔也だ!」

 「はい、次戒将君!」

 「何?…致し方在るまい。ダグオン、ターボカイ。伍箇伝、綾小路武芸学舎高等部二年警邏科専攻、燕戒将だ。宜しく頼む」

 「申一郎くーん!」

 「ウゼェ…。ダグオンアーマーシン、同じく綾小路高等部二年、鎧塚申一郎ダゼ、ヨロシクなカワイコチャン方。因みに技巧科ナ」

 「翼沙きゅん!」

 「きゅん?!……ええっと、綾小路武芸学舎二年、研究科専科の渡邊翼沙です…あ、ダグオンのウイングヨクです」

 「龍悟くん?!」

 「…ダグオン、シャドーリュウ……。平城学館高等部一年警邏科、六角龍悟…。これでいいか?」

 「オオトリは撃鉄くん!!」

 「おうよ!ダグオンの期待のニューカマー!ドリルゲキにして!!平城学館高等部三年!警邏兼神職科ぁ!漢の中の漢ぉ!!田中撃鉄とは…あ、ワシの事よぉぉぉお!!」

 最後に撃鉄が歌舞伎の見えきりの如くポーズを取って名乗る。

 

 (((((((((((高校生だったんだ……)))))))))))

 

 そんな撃鉄に対し幾人かが心中で吐露する。

 「むぅー!私もダグオンだし!」

 そして6人の自己紹介に異を唱える少女が一行の前に躍り出る。

 「えっへん!ダグオン臨時特別隊員、折神(元)親衛隊第四席、燕結芽だよ!あ、四席って言っても一番強いんだからね?」

 少女が育ち盛りの胸を張って嬉しそうに名乗る。

 因みに結芽が口にした折神親衛隊なるワードはネプテューヌ達にはさっぱりだ。

 そしていよいよ今回の異変を知るだろう人物が名乗りを挙げる。

 「そして僕は所謂司令ポジションのえらーいヒト!アルファ!」

 「更に儂、イプシロン。えらーいヒト」

 「アタシゼータ!アタシもえらーいヒト!」

 続けて老人とギャルがアルファと名乗った少女少年に便乗する。

 そのノリを見た為、ダグオンメンバー、オカ研一行が最後に残った男性に視線を向ける。

 「はぁ……シータだ。この馬鹿どもの…遺憾ながら同僚だ」

 最後の彼がマトモなタイプで内心安心する戒将と翼沙、アルファ達はブーブーとブーイングを挙げている。

 が、自己紹介は彼で終わりではなかった。

 

 「そして我が名は世界を裁定し断罪する者!暗き闇よりも深く、気高き光よりも清廉なる使徒!我が名はデルタ!闇に飲まれよ!!」

 

 遅れて到着する黒いフードの女性。そのあまりにあんまりな登場に管理者以外の誰もが言葉を失う。

 「阿呆め…」

 訂正、シータだけは頭を抱えていた。

 「もう!でるでるってばその姿で固定してる時はやみのまはダメだって言ったぢゃん」

 ゼータがよく解らない事を宣う。

 「儂、イプシロン。ギャップ萌え狙うにしてもイマイチ」

 イプシロンもよく解らない事を口走っている。

 

 ((((((いつも頭オカシイのが輪をかけておかしい……))))))

 

 ダグオンの6人が管理者達のノリを眺め心の内で皆、同じ様な事を思う。

 そんな若人の視線に気付きシータが悪ノリする3人と天然でそのノリを加速させる1人に斜め45度チョップで黙らせ咳払いする。

 「オホン!途もあれ役者が此処に揃ったのだ。話を「ちょいタンマ!」…貴様…アルファ…まだ何かあるのか…」

 「その前に向こうの子達にも自己紹介して貰わなくちゃ!」

 アルファがネプテューヌ一行を指差す。シータもまぁ一理あるかと一行に視線を向ける。

 

 そして彼女達もそれに倣い、全員が名乗りを挙げ始める。

 最初に率先して自己紹介したのはパーカー着きの白い服に紫髪の背丈の小さい少女ネプテューヌ。

 

 「OK!改めまして!天下無敵の主人公で女神のネプテューヌだよ!」

 (((女神って何だよ…)))

 焔也、申一郎、撃鉄が心の中でそっとツッコむ。

 次に名を挙げたのは、彼女の義弟であり、アルファとデルタ曰くある意味重要人物とされた何処かの学校の制服を着た少年、兵藤一誠。

 「兵藤一誠だ。えぇっと…駒王学園高等部二年生でこの神器"赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)"の持ち主で転生悪魔…こんな感じか?」

 少年はそう言って仲間達に振り返る。片やダグオン達は──

 (先輩だったのかよ…) (……転生悪魔とは何だ?) (赤龍帝…?ふむ、赤龍と聞けば黙示録の赤い竜等が有名だが…) (ヤローの名前は興味ネェんだが) (神器……僕達が知る言葉の概念の物とは違うのでしょうか?) (うむ!中々見所がありそうな面構えよ)

 と色々である。

 

 お次は一誠同様制服を着た者達が各々順に名乗る。

 「私の名はリアス・グレモリー。グレモリー家の者でこの中では唯一、純粋な悪魔になるのかしら、年齢は人間達と大差ないわ。駒王学園では三年生だから其方の田中氏と同学年ね」

 デルタ曰く"紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)"と呼ばれているとか。

 (何か物騒な肩書きだな) (紅髪の下りは英語読みじゃないんですね) (ウヒョヒョ…デッけぇし美女だし言う事ナシだな!)

 「そこはクリムゾンアニヒレイタくらいの二つ名にしようよ~!」

 焔也が二つ名に戦慄し、翼沙が異名の紅髪部分に引っ掛かりを感じ、申一郎は申一郎であった。

 そしてアルファはある意味で様々な世界の知識がある故に、全く別の世界の紅い髪の人物の異名を引き合いに出す。

 無論、双方何を言っているんだという顔になったのでシータからひっぱ叩かれた。

 

 「わたくしは姫島朱乃。リアスと同じく駒王学園の三年生ですわ。因みに転生悪魔です」

 (ふむ…グレモリー嬢の女房役といったところか) (これまたデケェ!そして美女!更にタイプ!何このオネエサマ最高カヨ!) (むぅ!ワシには智恵さんが居るんじゃ…目移りなど…あ、いや、しかし、別嬪さんではあるしのぅ)

 戒将が物腰柔らかな朱乃の役目を類推し、申一郎が更に欲望に素直になり、撃鉄が心頭滅却しかけ挫折する。

 「朱乃ちゃんは堕天使と人間のハーフから転生した娘でドSだそうだよ。でもそう言う娘に限って恋愛面は隙だらけだったり……」

 再びアルファが補足しながら茶化すので今度はゼータから蹴りを入れられる。

 

 「次は僕ですね。駒王学園二年生の木場祐斗です。転生悪魔で神器は"魔剣創造(ソード・バース)"です、よろしくね」

 「因みに祐斗君の名前は本名じゃなかったり…あ、はい自重します。でもこれだけは言わせて!魔剣だけじゃなくて聖剣も創れるよ!!しかもリアスちゃん陣営ではマトモな頭脳派剣士だよ!」

 「剣!?おにーさん強いの?!」

 祐斗の補足をしようとしてシータから睨まれるも取り敢えずこれだけはと言い張り彼が聖剣をも創造出来る事や剣士である事を口走るアルファ。

 そして剣士であると聞いた瞬間結芽が眼を輝かせ興味津々に訊いてくるので祐斗も面食らう。

 流石に今は不味いと戒将が嗜め事なきを得たが、この小さな燕は機会があれば剣士たる少年に挑む気だろう。

 

 「順番的には私でしょうか……駒王学園一年、塔城小猫です。転生悪魔です…よろしくお願いします…」

 抑揚の少ない声で淡々と名乗りながらサロンのカウンターに備えられたお茶菓子に視線をやる小猫。

 (…食べたいのか?) (食べたいんでしょうか?) (胸が惜しいナ)

 龍悟と翼沙が彼女の視線の先にあるものに対し思い耽っているのに対し申一郎が彼女の胸の評価を心中で述べていると当人から殺気を込められた視線を向けられ眼を反らす。

 「バカの代わりに簡単にせつめー!小猫っちは実は妖怪で猫又系、で、本名は確か白音ちゃんだよね~?」

 ゼータが当たり障りの無い補足で小猫のプロフィールを確認すると、彼女は少し驚きながらも頷く。

 

 「で、では!僭越ですが私も自己紹介させて頂きます!アーシア・アルジェントと言います!転生悪魔です。元々はシスターをしていました。駒王学園では二年生です!よろしくお願いします!」

 気弱そうな所を意を決して自己紹介する金髪タレ目碧眼の少女アーシア。

 今までの人物達とは纏う空気が違う事にダグオン達も意外そうな顔をする。

 「何か…この人だけ、戦うって感じの人に見えないな」

 「だが、芯の強さを節々に感じる。戦士では無いが彼女も強い人物なのだろう」

 「オレ的には美少女は大歓迎だ!(胸は美乳…アイドルモデルタイプだな、由依のヤツが居たらいの一番に飛び付くのはカノジョか)」

 さらっと心の中で山城由依を呼び捨てにする申一郎。渋谷での意気投合でそこまでの仲になっていたとは驚きである。

 「あーちゃんの持ってる神器は治癒、回復系の珍しい奴だからね。何だっけ?トワイライト・ヒーリング?」

 (ニチアサのヒロインの技みてぇ)

 再び入るゼータからの補足、焔也はそれに某日曜朝の番組を思い浮かべる。

 

 「よし!私の番だな!駒王学園二年、ゼノヴィア・クァルタだ。転生悪魔だが神器は無い!だが…我がデュランダルはそこいらの神器にも負けないぞ!」

 (……猪突猛進、猪武者ならぬ猪騎士と言ったところか?) (デュランダル…また随分な名を持つ剣が出て来たな!?) (美少女レベルは高いが…なーんかザンネン臭が漂ってンダヨなぁ)

 「おねーさんも強いの?」

 「ああ、強いとも!」

 龍悟が率直な感想を、戒将が伝記に登場する剣に反応をし、申一郎はやはりブレない。

 そしてまたしても現れた剣士に再び結芽が食い付く。

 

 「次は私ね!私は紫藤イリナ。駒王学園二年でみんなと違って悪魔じゃなくて転生天使よ、神器は持って無いけどよろしくね♪」

 (ツインテなのに中々イイモノをお持ちジャアないの)

 (ああいう髪型を見ると益子さんを思い出します)

 申一郎は以下略。イリナの髪を見て翼沙が薫を思い浮かべ感慨に耽る。

 「因みに、あーちゃん、ゼノヴィ、イリナちんは教会に縁があるから教会トリオって呼ばれてるし」

 再びゼータから入る補足。皆は揃ってほう…と頷く。

 

 「ひっ?!もしかして次はボクですかぁ…?!え…えと……ギャスパー・ヴラディです……吸血鬼と人間のハーフから転生しましたぁ、駒王学園一年ですぅ~。知らない人に見られるのは苦手なんですぅぅぅ!」

 ギャスパーの態度に5人がやりづらいと言う顔をする中、申一郎はボソッと呟く。

 「ヤローのぶりっ子とか誰トクだっての」

 「なぁにぃ?!あのオナゴはオナゴでは無く男なのか!!?」

 「アン?フツーに判んダロ、見た目とかで」

 「いや分かんねぇよ?!」

 「成る程な、足運びや体型から見て妙とは思ったが…」

 「……吸血鬼は皆こうなのか?」

 「日中でも平然としていた辺り、デイウォーカーと言う奴ですね。紙袋被ってましたけど」

 「おねーさんもおねーさんじゃなくて、おねにーさんなの?」

 ギャスパーの正体もとい性別を一目で暴いた申一郎の発言を発端として最終的に結芽からアルファの同類に認定された少女改め少年のギャスパー、おねにーさんなる謎の言葉に頭の中で疑問符が飛び交う。

 

 そして駒王制服組に続き私服姿の者達の紹介に移る。

 「ヴァーリ・ルシファー。白龍皇だ、後は言わなくても勝手に其方の管理者なる連中が補足するだろう?」

 「もう!ヴァーリってば態度が悪いよ!」

 ネプテューヌがすかさずヴァーリの対応に責めるが、ダグオン達は既に管理者から説明を受けている。

 「儂、イプシロン。ヴァーリ坊は悪魔と人間のハーフ、旧ルシファーの血筋、戦闘狂、神器は白龍皇の光翼と書いて……ま、いっか。多分このヴァリ坊はネプネプ大好き」

 とイプシロンによって大体語られていた。

 

 「アーサーです。生憎、普通の人間ですが…強いて言えば彼のブリテンの王の子孫と言った所でしょうか」

 ヴァーリの次に名乗り出た金髪眼鏡の青年、アーサーに戒将は大いに驚いた。

 「あのアーサー王に直系の子孫が残って居たのか!?いや、異世界の歴史ならば或いは……」

 「アーサー?もしかしておにーさんも剣士?」

 更に結芽まで食い付く。

 「個人的にはデルタがルフェイちゃん連れて来たら良かったのに……」

 そしてアルファがポツリとアーサーの妹の名前を溢したので更に戒将が驚いたのだがそれは別の話。

 

 「やっと出番かにゃん?はぁ~い、黒歌よ、白音のお姉ちゃんで、一応悪魔に転生しちゃった感じかにゃん?ま、よろしく~」

 次いで黒歌が名乗りを挙げたのだが、今の今まで、猫状態だったのがいきなり人の姿に戻ったので焔也は絶句した。

 (あの猫、あん時のやたらエロいねーちゃんかよ!?)

 (格好が破廉恥極まりないな、結芽の将来の教育上の為にも指導が必要かもしれん)

 「グハァッ?!(扇情的とかそういうレベルじゃねぇ、もっとスゴいモンの片鱗を見たゼ!)」

 戒将は結芽の教育の為に黒歌を風紀的に危険視し、申一郎は近くに居た為、偶々彼女の胸元が見えたらしく床に沈む。

 

 「あ、え?私の番ですか?!あの、鎧塚さん?は大丈夫なんですか?!」

 そんなこんなで出番が回って来たネプギアだが、申一郎の異変に慌てふためく。しかし──

 「問題無い」 「割りといつも通り」 「強いて言えば不幸な事故ですかね」 「……気にするだけ時間の無駄だ…」 「男として情けないのう」 「申一郎おにーさんってばエッチなんだから~」

 仲間達は特に心配していなかった。

 

 さて、最後に同じく私服…と言うよりか個性的な服装が多いグループの紹介が回ってくる。

 その名も英雄派と言うらしい。

 最初に漢服の青年が名乗る。

 「其方の2人には簡単に名乗ったが、改めて…曹操だ。彼の三國志の英傑曹操孟徳の子孫さ」

 そして次に巨漢が名乗る。

 「ヘラクレスだ!流石に知ってるよなぁ?あのギリシャの大英雄がオレ様の前世よ!」

 そして最後に金髪の少女が名乗る。

 「ジャンヌよ。まぁ、この法則で言えば私が誰の血統かは解るわよね?」

 と、些か挑発的に笑う。

 そしてダグオンの若者達は各々…。

 「三國志かぁ、無双ならプレイしたことあるぜ!」

 「……あれは三國志と言うより三國演義が元だがな」

 1年生組がそう評し。

 「ヘラクレス…ギリシャ神話に名だたる大英雄…ですが、そもそも半神半人の子孫なら先祖還りでもしなければ筋肉量が凄いだけの超人止まりでは?いえしかし異世界ならばでもヘラクレスの逸話的に…ブツブツ」

 「よく分からんが、力比べのしがいがありそうな奴じゃのう!」

 と翼沙と撃鉄がヘラクレスに、そしてジャンヌには──

 「ぶっちゃけ先祖だの前世だのはどうでもイイしヤローの事は興味ネェがカワイコチャンは別ダゼ!美少女サイコー!」

 「ジャンヌ・ダルク……火刑に処された彼女に血統が居た……そんな歴史があっただろうか?ふむ、機会が在れば書物を漁るか」

 と申一郎、戒将の評である。

 因みにレオナルド少年はゼータと結芽と共に和気藹々遊んでいた。

 

 以上、異世界一行の紹介を終え、本題に入る彼等。 

 「さて、まずは事の発端であるが……これに関しては我々の同輩の不徳が成した事態である事を此処に謝罪する」

 改めて事情説明と相成って開口一番、シータが頭を深く下げる。

 

 なんでも彼曰く、今回の異変の根本的な原因は彼等と同じ管理者の1人が面白半分で仕組んだモノらしい。

 その説明でアルファが"あー、やっぱり"という顔をしていたのが戒将、翼沙、龍悟は気になっていた。

 その間もシータが説明を続ける。

 そして、明かされる事実、何とここ最近起きていた神隠し事件は、その管理者によりもたらされたアイテムの力であると言う。

 「恐らくは君達ダグオンの戦っている異星人の囚人の中に空間に作用を及ぼす者が居るのだろう。それにヤツめが寄越したアイテムが組合わさり……」

 「神隠し事件が勃発した。そういう理由か…」

 シータの説明で事件のおおよその概要に納得がいったという顔をする戒将。

 「そうだ。そしてそれはこの世界だけでは無い。彼女達が元居た世界、そちらでも同様に複数人が失踪している筈だ……無論、悪魔も堕天使も天使も妖怪も関係なくな」

 シータがネプテューヌ達を見ながら溢した言葉にリアスが反応する。

 「そう…原因不明の行方不明……神隠しはこの世界にいる宇宙人が黒幕だったのね」

 「じゃあおっちゃんが言ってたよく解らない不思議な力の大元って悪い宇宙人なの?」

 ネプテューヌが口にしたおっちゃんと言う言葉にアルファがそういう事だねとコップを手許で弄びながら説明する。

 「君達の世界で居なくなった人……まぁ悪魔とかもいるみたいだけど、彼等はこの世界に迷い混んでるのさ。で、多分だけど数人は連中に拉致されたか、もしくは……」

 そこでアルファが語尾を濁す。それで戒将と翼沙、龍悟はその後に続く言葉を察する。

 それはネプテューヌ一行の数人も同じだった様で、

 「既に亡き者となっているか…か?」

 曹操が濁した言葉の先をはっきりと口にする。

 「曹操?!それってどういう……」

 「聖槍の覇王の言う通り、力無き者、力弱き者はこの星に潜伏する囚人の手先に捕らえられ、改造されたか、或いは使えぬと断じ処分されている」

 デルタがズバリと言ってのけた為、ネプテューヌを含めた数人の顔に陰を落とす。

 「じゃ、じゃあ!ロスヴァイセさんやレイヴェルは!?」

 「う~ん、それは解んない。って言うかロスヴァイセちゃんはリアスちゃんの眷属になってないの?」

 「え?ええ……彼女はオーディンの護衛兼秘書だもの」

 アルファの疑問に答えたリアスの発言で管理者達は互いに顔を合わせ何事かを話し合う。

 

 「え?そういう事ってあるの?」

 

 「私は知らん、デルタに訊け」

 

 「ワタシが知るのは大元の世界とそこから派生した幾らかの平行世界のみ、彼女達の世界はワタシの知る世界と似て近しいモノだが、彼女を見ろ…イレギュラーの最たる者で有りながら彼の世界と融和している。つまり…」

 

 「完全にアタシらの管理の外にあるってこと?」

 

 「儂、イプシロン。まぁ、そういう事もあるんじゃね?」

 

 

 そしてそんな彼等の反応に何かおかしな事を訊いてしまったのかと首を傾げるリアス。

 「ねぇ、貴方?もしかして私、何か不味い事を訊いてしまったのかしら?」

 偶々近くに居た焔也に何となしに訊ねると……。

 「押忍!分かんねーッス」

 「ええっと、どうしたのかしら?」

 焔也まで態度がおかしいので更に困惑する。

 「ッス!別の世界とは言え、年上の先輩ッス。礼儀は大事なんで!」

 そんな焔也の反応にネプテューヌが笑いながら嗜める。

 「別にもっと気軽で良いのに…、さっきみたいにアダ名で呼んだりとか──」

 

 「さーせんしたぁぁぁあ!!

 

 鳳焔也、こう見えて学校の上下感はしっかり守る男である。

 無論、先輩相手でも理不尽を許すタイプでは無いが、基本は他校の人間でも年上には体育会系のノリで敬い接する(撃鉄は例外である)。

 

 「ええ…」

 そしてその態度にネプテューヌ含め、駒王に通う面子は戸惑う。

 「申し訳無い。こいつも我々も貴女方が目上の者とは知らずに接してしまった。そういった関係にはケジメが大事なのだ。故に我々はこのスタンスを通させて貰う」

 「まぁ、同い年の人には相応に関係を築かせて頂きますので気にしないでください」

 戒将と翼沙がへり下る理由を焔也に代わり説明する。

 そんな空間に突如ブレイブ星人が現れ、サロンのモニターにある映像を映し出す。

 <勇者諸君、異世界の朋友諸君、敵に動きがあった>

 「ねぷぅぅぅう?!緑色のタイツみたいな人が出てきたぁぁぁあ!?!」

 ホログラフィーである為、うっすらと向こう側が覗けるブレイブ星人の登場に初めて見るネプテューヌ一行は大なり小なり驚く。

 しかし、ダグオンの若者達も結芽も管理者ですらそんなリアクションに構わずモニターを見詰める。

 映し出された映像は駒王町の見えない壁に遮られた空間。

 「あ!俺の家!!」

 一誠が映像からチラッと見えた自宅に声を挙げる。

 そうして街の全容が映されていると突如、建物がパズルの様に動き出す。

 「こいつぁ…何をする気だ?!」

 焔也が意図の読めぬ異星人の行動に頭を捻る。

 その間にも映像の中の街は平面…X軸のみならず立体、Y軸にも縦横無尽に動く。

 「お、おい!俺の家は大丈夫なのか!?」 

 「心配は無用だ異なる道を歩みし赤龍帝。貴殿らと合流する前、魔女の血を引く娘に我が秘宝を渡した。絶霧を操りし近代悪魔の契約者の継類と錬金術師が居るのであれば少なくとも貴殿の残された家族や共にいる仲間達は無事であろうよ。見よ」

 デルタがモニターを指差すと、兵藤邸の周辺の土地が仕掛け扉の如く回転し別の建物に入れ替わる。

 「恐らくデルタの渡したモノにより兵藤邸はヤツの美意識に触れない物質に見えた為、兵藤邸は元の世界に戻されたのだろう。そして空間を操作する異星人が別のモノと入れ換えた」

 シータが臆測ではあるが有力な可能性を挙げる。

 「じゃあお父さんもお母さんも?」

 「無事だね。それよりも君達の学校の方が危ないね、聞くところによると街に何かしらの暗示が掛かる結界を張ったんだって」

 アルファがネプテューヌの言葉に応えながら逆に訊ねる。

 「ええ、アザゼル達が神隠しの真相を暴くために外出を抑制する結界を展開したの。それで人気が無くなった街を調査しようとして……」

 「成る程、異変が起きて…街が入れ替わったと言う訳ですか。そしてその分の調査をもしていた時に荒魂が出現して僕達と遭遇したと言う訳ですね」

 「そういう事になりますかしら?」

 「……だが、暗示も絶対ではなかった…。違うか?」

 「そう…みたいね。私達悪魔と日頃関わり合いがあって、暗示に対し一定の耐性がある住人達には効果が無かったみたいだから」

 そう言うリアスが頭の中で思い浮かべたのはミルたんなる魔法少女に憧れる不条理漢女や西洋甲冑と赤備え鎧のカップル、そして桐生藍香。

 恐らくは他にも居るであろうが、主だった顔はこれくらいか。

 「まぁ、今は街全体が覆われた訳じゃ無いからね。その辺の対策も含めてゆっくり練ろうじゃないか!………と言う訳で、この基地を案内するよ!!」

 パンッと柏手を叩き一旦話し合いを切り上げるアルファ。

 シータや戒将はまたかコイツはやらやれやれ等といった顔で天を仰いだり、手で顔を覆ったりしている。

 そしてそんなアルファの言葉に先程から妙にウズウズしていたネプギアが眼を輝かせて食い付く。

 「あ、あの!でしたら私色々と見て回りたいんですが!!」

 そんなネプギアにゼータが対応する。

 「オケオケ(・ω・ゞ-☆じゃあギアっちはアタシと回ろっか」

 ((((((また顔文字が実体化している……))))))

 ダグオンの胸中での疑問も何のそのネプギアを伴ってゼータがサロンより飛び出す。

 「さて、それじゃ残った君達は僕が案内しようか!ささ、行くよー!着いて来て!」

 アルファが椅子から飛び降り残ったネプテューヌ達を連れて行く。

 残ったのはダグオンの若者達とシータ、イプシロン、デルタ。

 しかし残った管理者達はダグオンに対し必用以上に干渉する気は無いらしい。

 そこで申一郎は戒将に先程の…転送される前に言っていた事の真意を訊ねる。

 「なぁ戒将ヨォ、さっき言ってた木寅チャンの事…どういう意味だ?」

 「彼女の好意を無駄にするなと言う事か?」

 「そうソレ!どー言うこったヨ?」

 「ふむ……これは俺の希望的な臆測とも言えるが、木寅は我々が正体を知られたくない事を何と無しに察し、本来ならば気になるであろうこの場所に同行員を残さず去ったのではと考えている」

 実際にミルヤがどこまで考えているかは不明だが、戒将は彼女があの場に居た刀使を自らも含めて引き上げさせたのはそういった理由があるのではと考えたのだ。

 「木寅さん程の方が僕達の本拠地を黙って無視するのは確かに有り得ませんね。もしかしたら彼女も心の何処かで僕達の正体を知る事に躊躇しているのでは?」

 翼沙もまた、己の持論を展開して皆に伝える。

 「……無意識下の行動、だと?」

 「飽くまで可能性ですが恐らく」

 「ともあれ、先ずは異星人の対策だ。その前に結芽を部屋に移動させてくる」

 「スヤァ…スヤァ…」

 戒将は今回の事件を起こした異星人の対策を語り合う前に何時の間にか眠っている結芽を抱き上げる。

 「御チビの奴、話し合いの途中から普通に寝入っておったぞ…」

 「結芽ちゃん難しい話嫌いだしな。俺も途中からさっぱりだったとこあるし」

 撃鉄と焔也が言う通り結芽は会談の途中からスヤァと寝息を立て寝ていた。

 サロンを出る燕兄妹の後ろ姿を見詰めながら残ったメンバーはこれからの事に想いを馳せる。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 ふわぁ!!何ですか此処は!?スゴいです!!知らない技術がいっぱいです!

 

 ふっふっふっ!凄いでしょ?もっと誉めてよてか何処の世界でもネプギアちゃん機械大好きなんだねぇ…。

 

 元々お前が作ったモノでは無いがな……。

 

 儂、イプシロン。まぁ、ここまで改造出来るのはコイツくらいだし。

 

 ンンッ!とにかく…君達は暫くこっちの世界で生活する事になる訳だし、居住環境を考えないとね♪

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 開始!異世界生活のすすめ。

 

 私、ここに住んでも良いですか!?

 

 




 因みに今日は久しぶりに満喫で取材して来ました。ええ、勇者指令ダグオンを視聴しに、です。
 サンダーシャトル登場のエン宇宙に行くまで見てきました。
 青い星の戦慄はウルトラセブン的な内容で割りと好きでした。
 ではまた次回


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幕間外伝 異世界人に訊きたい100のこと(尚、実際には100に充たぬ模様)

 おはようございます。私はこれから寝ます!

 今回の外伝初の幕間。幕間まで長くなる始末……。
 この後次回投稿される本編で冥次元の女神云々をねぷ子さんから直接解説でもしてもらう予定。
 そして今回さらりと語られたダグオンの選考の8割を占めたアルファの理由……。
 そんなだから迷惑扱いされちゃうんだよ。



 ネプテューヌ達、異世界からの来訪者がダグベースに招かれ管理者アルファとゼータの2人により施設内を案内されている頃、結芽を寝室に運んだ戒将を除くダグオン達はサロンにて会話に興じていた。

 

 「そーいやぁ、兵藤先輩とか木場先輩とかアルジェント先輩の……せ、せ、セイックリドギアだったか?アレってどういう事なんだろうな」

 その中で焔也がふと思った事、彼等の自己紹介の際に出た単語"神器【セイックリド・ギア】"に疑問を浮かべる。

 「アー…そう言えばアルジェントチャンが言ってたな。ヤロー共も…。聞いた感じモノスゴイ武器とか道具ってなトコか?」

 「……彼らの世界で重要なモノと言うのは、それとなく理解したが……」

 そこに申一郎と龍悟も加わる。

 3人はその疑問を視線で翼沙にぶつける。

 「う~ん。僕の私見を語るより本人達に訊いた方が早い気もしますが……、戻ってくるまで時間も掛かりそうですし、それでも推測レベルで構わないのなら」

 それでも良いのかと確認を取る翼沙に3人は頷く。

 「そうですね、なら……撃鉄」

 それを受け、翼沙は先程から悶々としている撃鉄に声を掛け、現実へと引き戻し、彼にとある質問を投げ掛ける。

 「なんじゃい?」

 「君は神器と聞いて、まず何を思い浮かべますか?」

 「あぁん?そりゃあ、三種の神器じゃろ。日本で神器っちゅうたら天皇陛下に下賜される三つが有名じゃ」

 神職科としては基礎どころか一般教養よ。と吼える撃鉄。

 それに対し翼沙もその通りですと頷く。

 「一般的に僕達が知る神器とは、大体がこの三種の神器と呼ばれるモノになります」

 「おうさのう、草薙剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉じゃな」

 「あー、剣と鏡と勾玉な。それは俺も聞いたことあるわ。じゃあ先輩達のも()()()()()か?」

 焔也が何となしに頭の中であやふやな像の神器を思い浮かべながら翼沙に問う。

 「そこです。先程聞いた神器の名称……ブーステッド・ギアやソード・バース、更にトワイライト・ヒーリング等ですが少なくとも僕は聞いた事がありません。いえ、もしかしたら名称が違うだけでこの世界にも似たようなモノがあるかもしれませんが……」

 と翼沙の講釈が詰まってしまった所に静観していたデルタが、何処からかホワイトボードのフリップとマジックを取り出し、何やら書き始める。

 ホワイトボードにはこう書かれている。

 

 "赤龍帝の籠手" "魔剣創造" "聖母の微笑"

 

 「……これは?」

 「儂、イプシロン。デルタが言いたかったのはあの坊や達の神器【セイクリッド・ギア】を漢字に興すとこうなる。そう伝えたいらしい」

 龍悟のデルタの行動に対する意図の解をイプシロンが代わりに答えた。

 「ハ~ん、ナンつーかぶっ飛んだ字を充ててんナ」

 「儂、イプシロン。この三人以外の神器保有者は今回迷い込んで来た中だと後はギャスパー坊、ヴァーリ坊、曹操坊とヘラクレス坊、ジャンヌ嬢、レオナルド童くらいか」

 申一郎の淡白な反応も何のそのイプシロンは続けて今回の客人たるネプテューヌ一行の神器保有者の名を挙げる。

 それを受けデルタはホワイトボードへ更に文字を書き足す。

 

 "停止世界の邪眼" "白龍皇の光翼" "黄昏の聖槍" "巨人の悪戯" "聖剣創造" "魔獣創造"

 

 新たに6つの単語が加わる。

 「これはまた……何ともバラエティーに富んだ名前ですね。名称からおおよそ能力を察せられるのは聖剣創造と魔獣創造、それに停止世界の邪眼くらいですか」

 「これにも正式な呼び方があんのか?」

 翼沙が書き足された神器の名称を見て、それらの内からある程度の能力を推測し始める。

 そして焔也が管理者達に充てられた字の読みを訊ねた瞬間、デルタが嬉々として目を輝かせ口を開く。

 

 「うむ!まず魔獣創造であるが、これは【アナイアレイション・メーカー】と読む」

 「あな……何だって?」

 「アナイアレイション・メーカー!」

 ((長ぇよ!))

 焔也、申一郎は魔獣創造の名称を聞いた瞬間、その文字数の長さにゲンなりする。

 「何とも……良くもまぁ長ったらしいモノを短い字に纏めたのう」

 「呼び方はともかく、能力は文字通りで良いんでしょうか?」

 撃鉄が感心とも呆れとも取れる態度でホワイトボードを眺め、翼沙は彼の神器の能力が如何なるモノかとデルタに訊ねる。

 「然り、彼の神器は魔なる獣を産み出し、従え、更には敵対者其々に対抗する能力を持たせる事が出来るのだ」

 意気揚々語るデルタ、だが龍悟は所有者たる幼い少年を思い浮かべ発言する。

 「……しかし、持ち主がああも幼くてはな…。下手をすれば悪人に利用される可能性もある……」

 「六角君の言う通り、レオナルド少年はその身に強大な力を宿した未熟な種と言っても過言ではない。だが、彼の側に居る人間はクセは強くとも極悪人では無いよ。まぁ、本来は曹操少年含め英雄派と呼ばれる勢力はテロリストであったのだが、これも世界の在り方の一つと言う事か

 「「「「?」」」」 「……」

 シータが龍悟の懸念に答えつつ、レオナルドの仔細を小さく呟く。その言葉は焔也達には聴こえなかったが、龍悟の耳はしっかりと捉えていた。

 そんなサロンに結芽を部屋に送り届けた戒将が帰還する。

 「随分と盛り上がっているな」

 「おっす、おかえり」

 「ヨォ。結芽っちに付いてなくてダイジョーブか?」

 「今、彼等の神器の話で湧いていた所です」

 「……アルファと違い一々茶化さないから、話が進んで助かる……」

 「つうてもまだ一つ名前と能力が解っただけじゃが」

 その場に居残ったメンバーから次々、言葉が飛び交う。

 「成る程。ならば此処からは俺も混ぜてもらおう…さぁ、続きを頼む」

 サロンの長椅子に腰掛け講釈に加わる戒将、シータ、デルタ、イプシロンは然りと頷き解説を続ける。

 「聖女の神器は文字通り聖なる剣を無数に創り生み出す事が可能だ。読みは【ブレード・ブラックスミス】」

 「聖剣とは言っても高名な物を真似るのではなく、完全オリジナルの剣を創るモノだがね」

 「儂、イプシロン。割りとオーソドックスなタイプの神器で似たようなのが他にもあるらしい」

 三者から次々語られる名称、能力、備考。それらに戒将はほぅと顎に手を当てながら目を細める。

 「聖女に由来した能力では無いと言う事か、しかし刀鍛冶とはまた…直球な。それで…先程から気になっていたのだが、黄昏の聖槍とやらはもしや…神の子を貫いたと言う槍の事か?」

 「御明察。その名もトゥルー・ロンギヌス…正に今燕君の申した通り、神器の最たる上位種、神滅具…その代名詞にして最高位の聖遺物の一つだ」

 戒将が半ば確信を以て断じた答えに肯定を返すシータ。

 そしてその反応を聞き翼沙がまさかと驚愕に眼を開く。

 「十字教の聖遺物を中国三國志の子孫、それも槍で著名な武将ではなく為政者として高名な曹操の子孫の元に在るとは……あちらの世界の基準はどうなっているんですか!?」

 「儂、イプシロン。ぶっちゃけ解らん。十字教の主神……ヤハウェイが世界中の神話、伝記、逸話の武具、防具、器物なんかを無節操に己のシステムに取り混んだのが原因としか言えない」

 イプシロンが彼にしては珍しく苦々しい顔で言葉を紡ぐ。

 「正しく、十字教の宣教に際し行われた土着信仰に対する弾圧の如く…か。ギリシャ神話、北欧神話、ゾロアスター等、当時弾圧され悪魔に貶められた神々と同様に神器とやらも十字教の枠組に納めた結果が皮肉にも最たる聖遺物を無関係の傑物が手にしたと言う訳だ」

 老人の苦渋に戒将は深く頷き自らの知識を元に結論を導き出す。

 その後も管理者達の講釈は続く。

 ギャスパーの停止世界の邪眼【フォービトゥン・バロール・ビュー】やヘラクレスの巨人の悪戯【バリアント・デトネイション】ヴァーリの白龍皇の光翼【ディバイン・ディバイディング】

 といった残る神器の呼称や能力。

 邪眼は文字通り、視界に入ったモノの時間を停止させると言う代物。悪戯は攻撃で接触した箇所を爆発、光翼は力の半減と吸収と言った具合にダグオン達へ異邦人の持つ力を解説していく。

 

 「なるほどねぇ、俺らが戦って来た囚人達より厄介な能力もあるな」

 「……時間停止が我々からしてみれば厄介なモノだろうな…」

 「う~む、爆発だの剣だの槍だの獣だのは力づくでやればまぁ何とか出来るが、吸収半減とやらと停止、回復治癒辺りは敵に居たらキツいのう…」

 「ですがあの時、ルシファー君の神器の能力でも星人の張った壁を無力化する事は出来なかった……つまり」

 「連中にはより厄介な能力を持った者も居ると言う事か」

 「かー!メンドクセー!!マジでよく捕まえられたな宇宙警察」

 若者達が各々意見を飛ばし合う横で、管理者達はボソボソと…今度は龍悟にさえ聴こえない様に短音に込めた思念波で語り合う。

 ≪ああは説明したが、今までのモノは飽くまで彼の神器が通常状態で能力を発した場合だ≫

 ≪うむ、神器の更なる力を解放せし禁手化、或いは亜種禁手化。此については講釈を省いてしまった≫

 ≪儂、イプシロン。まぁ今のD×D連中がどの辺りまで力を使えてるのか分からない以上、こっちの坊達を混乱させる事も無いじゃろうて≫

 彼等は語らう。神器の遥かな可能性による強大な力を……。

 そしてこの世界に迷い混んだ者達は果たしてどの程度まで力を制御出来ているのかを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、アルファによってダグベース内を案内されているネプテューヌ達も目の前を先導する少年にこの世界の事を詳しく訊ねていた。

 

 「ねぇねぇ、さっき自己紹介の時、青い人……確かかいしょーくんだっけ?その人が言ってたゴカデンって何?」

 ネプテューヌが戒将の発言に混じっていた単語をアルファに問う。

 「そう言えば…私達が遭遇した制服の女性達も名乗ってました」

 ネプテューヌの言葉で小猫がミルヤの事を思い出す。

 「んふふ、よくぞ訊いてくれたね!まず伍箇伝の説明の前に刀使に関して教えなきゃね!」

 アルファが語らう刀使の歴史。

 刀使とは珠鋼によって造られた特別な刀剣、"御刀"を振るう巫女であると言う事。

 御刀は決して折れず錆びず、欠けず、といった特徴を持つ事。

 刀使の使命は荒魂と呼ばれる怪物を祓い清める事。

 古くは戦国乱世よりも前に存在していた事。

 そうして今の時代までに受け継がれている事等を説明する。

 「それで伍箇伝は文明が現代基盤に至った時、現在の刀使の大元締たる折神家が日本全国に五校設置した中高一貫の特別な訓練校の事さ。伍箇伝に所属する刀使はそのまま刀剣類管理局に属する事になる。管理局は警察組織だから彼女達は学生であると同時に公務員としても扱われる訳だね!」

 「へぇ、私達で言う所の教会所属のエクソシストに近いのかしら?」

 イリナが己の知識から最も身近な例えを出す。

 「当たらずも遠からずかな」

 「だが、この基地に居る彼等は男性だ。刀使とやらは巫女なんだから男はなれないのだろう?」

 ゼノヴィアがふと疑問を呈する。

 「簡単さ、刀使以外にも伍箇伝には役割があるんだ。本人達が自己紹介で言っていたろ?刀匠、技巧、警邏、研究、神職って」

 「なるほど……前線で戦う刀使の方達以外にもサポートする役職の方達が居るのですね。彼等はソレだと」

 朱乃が得心が言ったと言う顔でアルファに確認を取る。

 「その通り、伍箇伝の内三校は共学だからね!あの子達はそこからボクが選んだのさ!」 

 「三校?では残りは女子高なんですか?」

 祐斗が当然の疑問を挟む。

 「焔也君の美濃関学院。龍悟君、撃鉄君の平城学館。戒将君、申一郎君、翼沙君の綾小路武芸学舎の他、鎌府女学院、長船女学園って言うのがあってね。君達が会っただろう刀使の特徴…覚えてる?」

 対しアルファはあの時あの場に居た刀使の事を記憶しているかと問い返す。

 「確か……赤と白の制服が三人、黒っぽい緑色の制服が二人、明るいカーキ色の制服が一人、白い制服が一人、オレンジで胸元の白いブラウスが目立つ制服が三人だったかしら」

 それに刀使と遭遇した組の面子であるジャンヌが自身の記憶を探る様に呟く。

 「うんうん。赤白は美濃関。黒淡緑が平城。カーキが鎌府。白が綾小路。そんで最後オレンジが長船だね」

 ジャンヌの答えに満足したのか頻りに頷くアルファ。

 「成る程な、確かに言われて見れば彼等の制服も先に挙げられた刀使なる少女達と似通った部分がある」

 曹操が変身を解いた際のダグオン達が着ていた服装を回顧する。

 「ブレザー、学ラン、白ランだったな。あの撃鉄とかって奴は他と着こなしが違ってたが」

 ヘラクレスが撃鉄の番漢姿をその様に評した。

 「撃鉄君は元々、伍箇伝の生徒じゃなかったからね。ダグオン(正確には見習いになった時)に選ばれた時転入したんだよ」

 「三年生から転入なんて大変ね」

 「まぁその辺は特殊な学校だからある程度知識なりがあって入学の意思があれば通るもんなのさ」

 アルファがそう締めれば皆一様にふーん等と返事を返す。

 「あの…アルファさん、では荒魂とは何なんでしょうか?」

 アーシアが次に荒魂について訊ねる。

 「荒魂ね、荒魂は珠鋼を御刀に精製する過程で生まれた砂鉄に含まれる不純物"ノロ"が結合する事で誕生する怪物さ。君達の世界で言う怪異あるいは妖怪もしくは物の怪、幽霊がこれにあたるね。こっちの世界の日本ではある特別な事例を除きほぼ全ての妖怪や怪異の伝承の正体が荒魂って事になる」

 アルファは少女の問いに詠うようにさらりと言ってのける。

 「私達の世界とは大違いね……」

 リアスが自らの住まう世界の妖怪達を回想しながら相槌を打つ。

 「で、君達が来るつい最近までこっちの世界のこの国じゃあちょっと大変な事件があってね。本来伍箇伝は対応地域が決まってるんだけど、今はのっぴきならない事情で担当に関係無く混成部隊で活動しているんだよ。もし気になるようなら、此方のネットで軽く検索してみるといいよ」

 そう語るアルファの頭の中は折神家襲撃事件、世間では【鎌倉特別危険廃棄物漏出問題】と言われる出来事を回想する。

 「あのぅ…肝心なこの基地とかあの人たちの事とか、悪い宇宙人の事がまだなんですけど……」

 そこへギャスパーがおずおずと手を挙げながらアルファに問い掛ける。

 それを聞いた瞬間、アルファが不敵に笑い始める。

 「ふっふっふっ……よくぞ訊いてくれたね♪待っていたよその質問!」

 バッと振り返り大仰なリアクションを取るアルファ。質問したギャスパーが思わず怯む。

 「まず、この世界には本来ダグオンは存在しなかった。だけど!ベータの奴がボクが管理する世界の一つから極刑を受けた宇宙の凶悪犯罪者達が拘留されてる巨大衛星監獄エデンをこの世界に誘導したんだよ!するとこの世界の宇宙進出技術はおおよそ他の世界の現代日本と変わらない。いや技術的には実は結構進歩してるんだけど……扱う人間がそれを十全に理解仕切れてない、するとどうなると思う?簡単さ!囚人達の手によりこの星は瞬く間に滅ぼされる。そうなれば特異点が消える訳だから文字通り"世界"が消失する。そんな事を黙って見過ごす訳にはいかない!いかないよね!?だからボクは決心したんだよ!この世界を守らなきゃって!だからベータがエデンを持ってきた世界からブレイブ星人の魂と宇宙警察機構の技術を持ってきて、対抗策を講じたのさ」

 そう長々と語って一瞬息を吸うと彼は力強く宣言する。

 

 「つまりあの緑色の全身タイツみたいな人も異世界人?」

 ネプテューヌがホログラフィーのブレイブ星人を思い起こしながらアルファに問う。

 「ま、異世界人っちゃ異世界人だね、死んでるけど」

 「えぇ?!死んでるんですかぁ!?」

 最後にボソッと加えられた一言にギャスパーが怯む。

 「焔也君達、この世界のダグオンとは別に元々ブレイブ星人が居た世界にもダグオンが居たのさ。あ、ここトイレね」

 説明を続けながらさらっと施設を案内するアルファに彼女彼等も調子が狂う。

 

 「ブレイブ星人の居た世界では宇宙監獄サルガッソーが宇宙嵐の事故で囚人達に乗っ取られて、ブレイブ星人はそれを追っていたんだけど…向こうの地球をサルガッソーの囚人達が侵略し始めて、ブレイブ星人ってば現地の高校生を適当にダグオンに任命しちゃってね。ま、彼等はそれでも最後までサルガッソーの宇宙人達と戦い続けて勝利したんだから凄いよね~!」

 ご機嫌に語るアルファの背中を眺めながら朱乃は彼に質問を飛ばす。

 「その口振りですと貴方は意図して彼等を選んだのですか?」

 「そだよ。少なくとも撃鉄君を除く五人はボクが観察した上で選んだ意思と覚悟を持った者さ。撃鉄君もそうだったのは儲けモノだけどね♪」

 「ほう?彼等は皆、共通の意思と覚悟があったと?」

 ヴァーリがアルファに対し猜疑を込めた声で確認を取る。

 「焔也君も戒将君も、申一郎君、翼沙君、龍悟君も刀使とは深い関係や立ち位置にいて、自分が無力な事に心の底で憤ってた。ま、決め手は荒魂に襲われていた子供を一心に助けようとした時だけどね。何はともあれ紆余曲折あったりしたけど……彼等は見事に今日まで異星人との激戦に勝利してきた、ボクの期待以上に」

 再び振り返った少年の笑顔、その瞳に一瞬狂気が見えた気がしてすぐ近くに居たアーシアは息を飲む。

 「その、意思と覚悟だけで彼等を選んで戦いに巻き込んだの?」

 「後は名前かな…?戦う意思と、恐怖に負けない覚悟も大事だけど、やっぱり名前は重要だよ」

 今度はリアスから振られた質問に八重歯を覗かせ意気揚々答えるアルファ、その顔には狂気など見え隠れしている様子は無く、心優しき少女は先程のモノは見間違いだと己に言い聞かせる。

 

 「名前?それって重要なの?」

 ネプテューヌがほんのちょっと、明日の天気を訊ねるくらい適当な気持ちでそれを口にした途端アルファは立ち止まりガバッと勢い良くネプテューヌに接近する。

 「重要!超重要!!もし前者の条件を満たしていても、名前がダメだったらご破算なくらい重要なファクターなんだよ?!」

 よく漫画で見られる顔がでかくなるデフォルメを比喩にするくらいの勢いである。

 「えーっと……何でなの?…後、ネプテューヌが引いてるから」

 イリナがアルファを引き剥がしながら疑問を振るう。

 「簡単さ!元の宇宙警察機構があった世界の地球のダグオンも高校生だったのは説明したよね?で名前がファイヤーエンは大道寺炎、ターボカイが広瀬海、アーマーシンが沢邑森、ウイングヨクが風祭翼、シャドーリュウが刃紫竜、ドリルゲキが黒岩激って、それぞれに変身前の名前があってね!」

 

 語られる別世界のダグオンの名を聞き、一行はまさかと一斉に思う。

 「まさかとは思うが……鳳、燕、鎧塚、渡邊、六角、田中氏を選んだのは……その元々の世界の彼等同様の字が入っているからなのか!?」

 ゼノヴィア、思わず声に出してしまう。

 「?そだよ、それ以外に無いじゃん!」

 その、何当たり前の事を訊いているの的な態度を見て、皆、この世界のダグオンである彼等に同情を禁じ得なくなった。

 因みにアルファは語らなかったが、嘗てその地球で活動していたダグオンは7人、最後の1人サンダーライと呼ばれた戦士が居たのだが、現時点で此方の世界では候補が見付かって居ない為にアルファ自身も教える必用無しと判断したのである。

 そしてアルファも知らぬ事であるが、この世界の衛藤可奈美の兄の名は……これをこの管理者が知るのはまだ先の事であった。

 

 何は途もあれ、一通りダグベース内を案内していると通路の対面側からゼータに連れられたネプギアと遭遇する。

 「あ!良いところに来たし。アルファ、選手交代ね。アタシじゃ専門的な事解んないし」

 どうやらゼータはネプギアにねだられラボ区画とメンテナンス区画を案内して来た様だが、彼女は担当世界的に知識が足りない為、ネプギアの満足がいく解説が出来なかった様だ。

 「フフーン!しょうがないなぁ。ま、ボクに任せなよ!!」

 アルファの軽くウザいどや顔にゼータの笑顔に十字型の血管が浮き出たが、当のアルファ本人は気付かない。

 「さぁさぁ、じゃあここからはボクが案内してあげよう!着いて来たまえネプギアちゃん!」

 「ア、ハイ」

 少年はネプギアを連れ、彼女がゼータと共に来た道を辿る。

 残されたゼータとネプテューヌ達はそれを見送り──

 「ぢゃ、一回、ダグメンズのとこ戻ろっか?」

 ハイライトが消えたゼータの薄ら笑いにこくこくと頷きながらサロンへ向かうのであった。

 




 三種の神器の話で夜桜四重奏を思い出したシリウス本誌読者(立読み勢)。
 焔也的にはゲーム知識。戒将は勉強と本の知識。申一郎は女の子と話を合わせる為の引き出しの1つ、翼沙も勉強と本の知識、龍悟は世間一般的程度の知識、撃鉄は神職に携わる者としての当然の知識。
 そんな知識の差具合です。
 そしてその頃の雷火、あっち側の世界で迷子継続中。

 ではまた次回


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第七十七話 開始!異世界生活のすすめ。


 こんばんわ。
 最近、某アイマスサイトで見たアルストロメリア=摩天狼説にちょっと納得しちゃった私。

 そろそろ年末が近付くと忙しくなりますね!
 それはそれとして影打ソボロの【恋】メッチャ欲しい!
 オリジナルの方よりあざといとか反則でしょ!!?

 アリスギアは東京ドールズコラボあるし、モバマスはアニバアイプロだし執筆作業以外も忙しくなるぅ?!



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 おやぁ?知らぬ内に見ず知らずの場所に……本部にも()()()にも連絡が着きませんねぇ、面倒ですがぁ、あそこの渋みが深い男性に訊ねてみましょうか

 

 

─水口レイピアの刀使─

 新多弘名の憂鬱?

 


 

 ━━駒王町・商店区画

 

 これは透明な壁が出現して直ぐ、調査に出た刀使部隊……可奈美達や調査隊を除く数名に起きた事件である。

 

 

 「ふんふん……これは閉じ込められたと見て良いんでしょうか。困りました、VRシュミレーターの研究が残っているんですが」

 然程、困った様子の無い顔で見えない壁をペタペタ触る鎌府女学院の刀使──播つぐみが上へ下へと観察している。

 「いやはや何かしらトラブルに巻き込まれるカナとか思ったけど、まさかこんな事になるとは想定外ですね!」

 つぐみの後ろ側で嬉々として近くの民家の庭の土を採取しているエミリー。

 「うっふっふ~。これから何が起こるのか私クン、ちょっと興奮してきましたよ!!」

 同じく好き勝手動く森下きひろ。

 「あのぅ~、皆さんちょっとマイペース過ぎじゃないッスか?」

 そんな3人の行動にどうしたものかと立ち尽くす丸山茜。

 以上、4名が星人の手により仲間達と分断されキャンパスの中に囚われていた。

 

 そしてそれを壁の外から眺める残された者達……。 

 小池彩矢、辰浪桃、浜塚さくら、笹野美也子、そして護衛に付いていた長船の刀使達はこの状況に酷く当惑していた。

 「播さん、渡邊さん、森下さん、丸山さん、大丈夫?怪我とかしてない?」

 彩矢が声を張って見えざる壁の向こう側の4人に無事を訊ねる。

 

 「御覧の通りです。特にこれといって外傷などはありませんね」

 

 「いやぁ~無事よりも今はサンプル採取の方が大事デスヨ?ひゃっほ~♪」

 

 「今回の調査に立候補して正解でした!私クンの灰色の脳細胞にビンビン刺激が来てますぞ~!」

 

 「色々アレッスけど、こっちはだいじょーぶでーす!」

 

 最終的に茜が彩矢の詰問に答え、壁の外側の者達は一先ず胸を撫で下ろす。

 そして、そんな場所にダグオン達とネプテューヌ一行から別れたミルヤ率いる別動隊が合流する。

 

 「これは……!?」

 「ここも見えない壁が……播さん?!」

 調査に出た仲間が数名、壁の内側に囚われたとあって絶句するミルヤと、つぐみが呑気に手を振っている事に驚愕する清香。

 「ちょ?!大変じゃん!!」

 美炎などどうしたらと慌てている。

 「エミリー!茜さんを困らせないの!!」

 智恵は取り敢えず、フリーダムなエミリーに説教を説いていた。

 

 智恵がエミリー……序でにきひろに説教をする事数分、内と外で別たれた彼女達は状況の確認、解決法の思案等をしていたのだが、そんな折に内側に変化が現れる。

 何と、周囲の建物や地面がパズルの様に動き出したのだ。

 

 「なんと……とことんマズイ事になりましたね。これは…軽く覚悟を決める案件でしょうか?」

 本人的には大分焦っているのだが、声色の抑揚からそこまで切迫感が感じられないつぐみ。

 「ヤバいッス!マズいッス!天変地異ッス!世界の終わりッス!!?」

 茜は大混乱している。

 「おぉぉぉぉぉ!私クンのアイディアが溢れて来るぅぅうう!!」

 「ファンタスティックにも程があるとはこの事だね!翼沙にLINEして教えてあげよう!!」

 若干2名未だに余裕が見てとれる……。

 「エミリー……」

 「あいつマジで一回、アタマん中診て貰った方が良いんじゃねぇか?」

 エレンと薫がとても残念なモノを見る目で長船のマッド眼鏡を評する。

 そんな時であった、()()()()()()()のは──

 

 突如として円状に光る4人が立つ地面。ソレが浮かび上がり下にはまたしても見慣れぬ土地の地面が。

 どういう訳だか、円の中から脱け出せない4人。そんな事とは関係無しに彼女達を乗せ宙に浮いた大地が回転を始める。

 「なるほど、これがこの駒王町と名付けられた街が現れた原因ですか」

 「もしやこの大地が回転し終えた時、我々は未知の世界に?!クッ!?研究機材をあまり持ち込めなかった事が悔やまれるぅ!」

 つぐみとエミリーが何処までも平常運転で成り行き任せに身を委ねる。

 「とりあえず、逃げようが無いので……七之里さんには暫く帰れそうに無いので、シュミレーションには付き合えませんとお伝え下さい」

 つぐみが諦め半分の表情で息を衝きながら美炎達調査隊の面々に伝言を託す。

 「エレン!カオル!チェリー!我が従弟には、私はちょっと異世界に行ってくる。と伝えて下さい!きっと面白いリアクションをするはずなので!!」

 寧ろ迷惑そうな顔か申し訳無さそうな顔をすると思うと長船組とミルヤは思った。

 「そういう事なら私クンも!同志渡邊……あ、翼沙先輩の方ですぞ!先輩に、一回りも二回りも成長して帰って来ますと、お願いします!」

 だから迷惑なのでは?と思うミルヤ。そもそもミルヤ的には翼沙に苦手意識があるので、伝言は勘弁願いたいのだ。

 「えっと…!あたしは何を言えば!?と、とりあえず頑張るッス!!」

 その場のノリに合わせ取り敢えず声明を発表する茜、そうして彼女達4人は恐らくこの駒王町が在ったであろう世界に消えた。

 

 「………どう、しましょう?」

 かなりの緊急事態の筈なのだが、主にとある2人の所為で微妙にシリアスになりきらない空気のまま、この世界から消失した面々を思い浮かべながら舞衣がポツリと呟く。

 「今の我々にはどうしようもありません。それに、これ以上この場に留まるのも危険です。一度、報告の為にも本部に戻りましょう」

 ミルヤが眼鏡を直しながら下知を下す。

 こうして4名を除き、謎の街の調査に出た特別部隊は鎌倉の刀剣類管理局本部に帰還、その際起きた事を全て報告するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 

 現在、サロンにて絶賛異世界の知識をお勉強しているダグオン達。

 神器の話から始まり、今は各勢力の話へとシフトしていた。

 その中で戒将、翼沙、撃鉄が驚いたのは"神"の存在。

 十字教は元より、北欧、ギリシャ、インド、ゾロアスター、シュメール、中国、日本等々。

 彼等は実在し水面下で覇権を合い争う関係にある事、十字教は更に天使、堕天使、悪魔の3つの勢力に別れ争っていた事。

 そして現在は一応の和平関係が築かれ、各勢力の神話体系とも表面上は同盟なり不干渉なりで平和を維持し、各勢力から不満を持ちあぶれた者達と戦って来たのだとデルタがやたら難解かつ独特な言い回しで説明してくれた。

 

 「神様っても、やってる事は人間と変わんねーのな」

 焔也が無い頭で絞り出した結論である。

 「十字教は兎も角、ギリシャ神話はまぁ、主神からして不貞の輩で名を馳せるくらいには凄まじいからな」

 女性遍歴がとは口に出さない戒将。彼が嗜む書籍は基本、ジュブナイル、ミステリー、群像劇等だが、稀に神話系の創作物も手に取る為、アレな話やコレな話の知識も多少はある。

 「つーか、そんで人口が少なくなったから人間転生させますってのは流石にアレだべ、ドーよ?」

 申一郎が十字教──三大勢力と呼ばれる勢力の内情に眉を潜める。

 「確かに、当人が望むべくしてなったのであれば未だしも、無理矢理と言うのは戴けませんね」

 翼沙も主に悪魔側が行った行為に一家言あるらしい。

 「……埒外の人外とてメンタルは人間となんら変わり無い…。そういう事か……」

 龍悟が現在の世界情勢…より正確には刀剣類管理局に纏わる事柄を思いながらカウンターでフルーツをミキサーに掛け、ドリンクを作る。

 「悪魔だの天使だの…ワシらが思っているよりもずっと人間臭いのぅ。それともあやつ等が特別人間臭いのか。転生だのと言うとったしのう」

 撃鉄が冷蔵庫からゆで卵を持ち出し殻を剥き始める。

 「どうあれ、旧体制から政治を一新するのであればそれに与する者は手心を加えず全て断罪すべきであった。まぁマキャベリズムに則るのであればだが。最早過ぎた事であるし、我々部外者がどうこう言う筋合いでは無いだろう」

 戒将が腕を組ながら嘆息する。悪魔世界の政治の話、堕天使が神器保有者を手段問わず確保していた話、天界が神の死によりシステムのみで信徒を誤魔化していた話を聴いて彼等は人外とて人間と何一つ変わらないと結論を出す。

 そんなサロンにゼータに引き連れられ案内を終えたであろうネプテューヌ達が戻ってくる。

 「ちゃーす!ねぷねぷ共々帰ってきたよ~。そっちは?」

 どこまで話した?と暗にデルタ達に問うゼータ。

 「儂、イプシロン。取り敢えず、神器の話、共通してるだろう勢力と三大勢力内のゴタゴタの話まで教えた。後その神が死んだことも」

 「そう言うお前はアルファの馬鹿者から彼女達を引き継いだのか。奴は……候補の方と一緒にいるのか」

 イプシロンとシータがゼータの視線に答える。

 「ただいま~…で良いのかな?取り敢えずおおよその場所は案内してもらったよ。後…ダグオン?についてとか刀使の子達の事とか」

 ネプテューヌがダグオン達を見渡しながらアルファ、そして途中交代したゼータから説明や解説を受けた事を話す。

 「そうそう!アルアルのバカチンってば刀使ちゃんの組織図とか宇宙警察とかダグメンズの事を話したクセに荒魂については微妙に説明不足だし!」

 ゼータは憤る。この世界に於いて荒魂を倒す手段は御刀のみ、しかしアルファがダグオンとなる若者達にダグコマンダーやビークルを与える際、対荒魂戦闘装備としての機能を付随させた。

 その辺りの補足をゼータは彼女等に解説していたのだ。

 

 「さて、仮称D×Dの面々も戻って来た事であるし、そろそろ本人から説明して貰おう。ネプテューヌ、君は果たして何者だね?」

 シータがネプテューヌに誰何を投げ掛ける。ソレは名を問うモノではなく、その存在に問い掛けるモノ。

 「なんならねぷねぷの中に居るいーすんも含めて説明して貰う?」

 ゼータのその言葉を聞いてネプテューヌの身体が一瞬光り、そこから本に腰掛けた妖精の羽根が生えた小さな少女と女性の中間らしき容姿が目の前に現れた。

 「気付いていらしたんですね…」

 ゼータからいーすんと呼ばれた存在が警戒を顔に含ませながら口を開く。

 (何か小さいのが出てきた……)

 (最早何でもアリだな彼等の世界)

 (う~ん、別の意味で小さい。色々惜しいナ)

 (何と言う事でしょう!これは……解ぼ…いえ、調査を……是非とも!)

 (……清香達は無事だろうか…)

 (小さいのぅ、華奢すぎて下手したら潰してしまいそうじゃ)

 六者六様リアクションを取る彼等、翼沙が若干マッド眼鏡渡邊化しているが自制心を働かせる。

 

 「何者って……女神だけど」

 「そう、それだ!我々はネプテューヌと言う女神は知っているが、それはゲイムギョウカイなる世界に存在する四女神の方だ!」

 教鞭をネプテューヌに突き付け己の知識より知るネプテューヌを挙げるシータ。

 (だから女神って何だよ?)

 (本人達も困惑しているな)

 「いや、そもそもどのヘンが女神なんだよ、このチンチクリン」

 焔也と戒将が心中で飲み込んでいたのに対し申一郎が直に口に出して胡乱気にネプテューヌを見る。

 「な?!チンチクリンって何さ!こう見えても私ってばスゴいんだからね!」

 「えぇ?本当にござるかぁ?と、やっておく儂、イプシロン」

 憤慨するネプテューヌに対しネタ的茶々を入れる老人。

 「コホン…。では僭越ながら説明させて頂きます」

 見かねたいーすんなる妖精が咳払いして注目を集め、ホワイトボードの前に立ち説明を始める。

 

 「まず、ネプテューヌさんですが…彼女は聖書の神が産み出した、文字通りの女神なのです」

 その言葉を聞いて管理者達は何か納得したのかいーすんの言葉を遮る。

 「ん、だいたい解った。儂らに説明はイラネ」

 「ていうか、いーすん顔文字出てないし舌足らずじゃないぢゃん、ちょいサゲぽ~。なんでアタシが顔文字枠するし!(*≧∀≦*)キャハ♪」

 「成る程な、我々の認知の外側ではそう言う世界もあるのか」

 「女神の司書よご苦労であった!」

 イプシロンが雑に答え、ゼータはふざけ始め、シータは全てを理解しデルタが落ち込む小さな女性を励ます。

 「えぇ……何なんですか、この方達は……」

 「ドンマイいーすん。てかゼータだっけ?なんでセリフの顔文字が見えるの?ゲームのテキストウインドウが出てる訳でもないのに……」

 

 「何故って…」 「俺達も知らん」 「このギャルもまぁ…埒外だからナァ」 「そもそも彼女、僕達からしても別々の人間に見えますし」 「……往々にして管理者とはそういうモノと認識している…」 「考えるだけ時間のムダじゃ」

 

 ダグオンの若者達に問えば口々にそう返ってくる。

 これはネプテューヌもいーすん──正式にはイストワールと言うらしい──も絶句する。

 それはリアス達も同様だ。

 「で、結局どういう事だ?」

 改めて焔也がネプテューヌに問い掛ける。

 「う~んとね、聖書の神様、私創る。私産まれる、女神の仕事する。眠る。目覚めて人間として暮らす。今に至る。簡単に言えばこんな感じ、オーケー?」

 「なるほど、わからん!しかし何となく解った!」

 厳密には違うらしいが焔也の理解度に合わせるならばこれがベストなので、特に補足などは無かった。

 

 ≪ふむ、まぁ…ダグオン達が納得しているのであれば混乱を招く発言はこれ以上必要あるまい≫

 ≪それってねぷねぷの中にある魂のこと?アレってもしかしてアタシ案件?≫

 ≪管理認識外ならセーフ。とイプシロンは思う≫

 ≪元より彼の女神は既に彼の世界の中心。今更取り除く事など出来ぬし無粋。アレがその姿となり生まれたのは相応の意味があると言う事≫

 またしてもヒソヒソと短音思念波で会話する管理者達。

 そんな彼等を焔也達もネプテューヌ達も不思議そうに見詰めているのであった。

 

 

 

 

 

 

 一方、ゼータに代わりネプギアにダグベースの主要区画を案内し直すアルファ。

 彼はまずオーダールームにネプギアを連れて中央コンソールを弄る。

 「ふむふむ、じゃあギアちゃんは()()()()()()()()()()()()()所謂クローンに近い人造女神ってことだね?なるほど~、そんな所もボクが知る超次元とは違うワケね」

 「は、はい…あの超次元って何ですか?」

 カタカタとタイピングしながら会話に興じるアルファ、その彼から飛び出た発言に戸惑うネプギア。

 「気にしない気にしない。君は君。人と魔と神が入り交じる世界で誕生した"君と言う確かな一個人"なんだからボクの言った事は軽いジョークで受け流してよ」

 質問に答える気が無いのか、雑にはぐらかす少年の言葉に些か困惑しながら、オーダールームのメインモニターに出た映像を目にして今し方の会話の内容も飛ぶ。

 「こ……これは……すごい…()()()()()()()()()()!?」

 ネプギアが目にしたモニターに映し出されたソレはブルーバックに白いワイヤーフレームで書き出された巨大いな砲筒。

 モニターの片隅には英字と日本語で小さく、こう書かれていた。

 【project G】"人造勇者弐号、無限砲計画"と──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びサロンに場面を戻す。

 「つまり管理者って神様みたいなモノ?」

 ネプテューヌが管理者の仔細を聞き、自身の中で近しく親しい存在を思い浮かべる。

 「む……」

 「儂、イプシロン。お嬢ちゃんの言う神様もだけど、神様全般と一緒くたにされるのは遺憾」

 「我らは管理者。しかして主だちたる役目は世界の監視観察。基盤世界、分岐世界、異種同体世界等々」

 「基本は介入しないで成り行き任せーって感じなんだけどねぇ~。たまーに、おかしな連中がカミサマを名乗って他の世界の子を拐って別の世界に送るからそれを防ぐのもアタシらのお仕事。後はまぁ…現地の子達に対抗策なり手段なり渡してちょい手助けするだけ。アルファは干渉し過ぎだけど」

 シータが神様呼ばわりに眉をしかめ、イプシロンが否定の言葉を洩らし、デルタが普段の役割を説明、ゼータが最終的に締め括る。

 「神呼ばわりが不服なのは分かったわ。なら何故本来不干渉を決め込む貴方達が揃いも揃っているのかしら?やはり、私達の世界がこの世界に現れた事と関係が?」

 リアスが恐らく一番話易いであろうゼータに疑問を投げる。

 「まぁ…そもそもの話、この世界にわるーい宇宙人が来たこと自体、ウチらの同類…ベータのヤツが起こした事だし。その尻拭い的な?」

 「アレは享楽主義の塊だ。退屈と平穏を嫌い規定された路線よりも混迷や混乱、世界の住人がもがき苦しむ様を楽しむ。まぁ、集まったのはアルファの馬鹿者の所為だが」

 「そういうイレギュラーに対抗出来る様な稀に出てくる英雄……まぁ物語の主人公みたいなのが出てくると余計に喜ぶな、あの畜生。儂、アイツとは何度か会話するし。ちょっとした届け物も兼ねてヒマつ……顔出したの儂」

 4人中3人からそんな評価を受けるベータなる管理者の話題に戒将も会話に加わる。

 「それについては初耳だ。アルファからは同類が異星人達を送り込み楽しんでいるとしか聞いていなかった、その話が事実ならば…我々がダグオンと成った事もベータなる管理者からすれば歓迎する出来事と言う事になる」

 「マジでその通りなんだよねぇ…ベータのヤツは結果に頓着しないの。要は混沌が見たいだけ、単なる暇つぶし、多分…この世界が滅ぼうが送り込んだ宇宙人が負けようが愉しければ良いって感じ。今回の件にしたってどーせ、最近宇宙人騒ぎに慣れてきたこの世界の住人に別の刺激を加えてみようか?的な理由だし」

 戒将の推測に対しゼータがげんなりした顔で答える。

 「何それ!私たちそんな奴の勝手で巻き込まれたの?!」

 イリナがその理不尽ぶり顔を赤くして噴飯している。

 「ベータもだが、アルファ、そしてガンマと呼ばれる最古参の管理者は同輩たる我々からしても今一つその真意を測りかねるのだ」

 シータは深い溜め息を吐きながらそう述べる。

 それは詰まる所、自分達でさえ、今挙げた3人の心の内を完全には把握出来ていないと言う事。

 「ま、アルファはいちおー、行動の結果含め分かり易いし、オシオキはフツーに受け入れる程度の良心があるからマシだし」

 「ナンつーか、ホントに迷惑なヤツラだな、オイ」

 申一郎の中で元々ストップ安で下落していたアルファの株が崩壊した。他の管理者に関しても更に胡散臭いモノを感じてしまう。

 「……管理者に関しては、俺たちも詳しく知らなかった、今回それを知る機会があったのは有り難い……が、差し迫った問題は別だ…」

 龍悟がホワイトボードの前に立ち、何事かを書き始める。

 

 "異世界の街を覆う壁について"

 

 "女神ネプテューヌ一行の今後の処遇"

 

 "神隠し事件の解決法"

 

 3つのワードが書き出される。

 

 「壁については単純な話、それを起こした異星人を倒す事が手っ取り早い。無論、楽な相手では無いだろうが」

 「ってなると、後は先輩達が住む場所かぁ。ダグベースの部屋も数に限りがあるしな」

 「オマエのファイヤーストラトスにキャンプ道具あったじゃネェか、それとシュミレーション用の部屋使えば今日くらいは凌げるダロ?」

 「何にしても当人達次第です。如何でしょう?」

 翼沙がネプテューヌやリアス達に今後、異変の解決、帰還の為の手段を獲るまで如何にするかを訊ねる。

 

 「どうしよっか、みんな?」

 

 「そうね……文化なんかは元の世界と然したる違いは無いようだけど」

 

 「知らない土地で不用意に歩き回るのは得策では無いかと…」

 

 「俺はネプテューヌ、お前の側に居られればそれで構わない」

 

 「テメェ!何しれっと姉ちゃんに色ボケしてやがるヴァーリ!!」

 

 「やれやれ……女性陣にこの施設内の居住区の部屋を譲り、俺達は外のそのシュミレーション用の空間と彼──鳳のキャンプセットを借りれば良いだろう?」

 曹操が肩を竦めながら妥当な案を出す。

 「まぁ、妥当だな」

 「むしろサイコーかよ、美少女、美女と一つ同じ屋根の下とか!」

 「ま、ダグベースに住んでんのは戒将と結芽ちゃん、申一郎だけだしな。俺も今は此処に住んでるけど」

 ダグベース住まいの3人も構わないのか、反対する様子は無い。

 「ほぇ?そうなんですか?ならツバサさんとリュウゴさん、ゲキテツさんは何処に?」

 アーシアがキョトンとした顔で訊ねるので翼沙は笑いながら、龍悟は極自然に、撃鉄は頭を掻きながら答える。

 「基本は伍箇伝が用意した宿舎ですが、ここの研究室で寝泊りもしますし管理局本部の僕に割当てられた研究・技術部屋で他の研究科や技巧科の人達と一緒に雑魚寝ですかね」

 「…太めの木の枝の上か、そこそこの岩場だが…?」

 「ワシは普通に宿舎じゃ」

 

 (雑魚寝…イメージ的に似合わないです) (木の上って何?!岩場ってどういうこと?!) (見た目スゴい厳ついのに普通だ!?)

 小猫が翼沙に、ジャンヌが龍悟に、イリナが撃鉄に心中でリアクションを取る。

 

 「岩場とか木の上とか、よく眠れんな……」

 一誠も思わず龍悟の生活に心配の目を向ける。

 「……自然と共にあるとはそういうモノだ…。では俺はこれで失礼する、本部長から仕事を任されているのでな……」

 「ワシも宿舎に戻るわい。陽も暮れたしのう。神隠しに関しては明日以降でよかろう」

 平城組がサロンを去る。

 「ですかね?僕はこれから研究室に籠るのでお構い無く」

 翼沙も白衣を着用し出ていく。

 「俺は結芽の様子を見てくる。何か要件があれば気軽に部屋に訪ねて来て下さい」

 戒将はネプテューヌ、リアス、朱乃等、自己紹介時、明確に歳上と判る者に言伝を残し去る。

 「シッ、ならオネエサマ方にカワイコチャン達、オレに付いて来な!空いてる部屋ァ案内するゼ!」

 申一郎が女性陣を伴ってサロンを後にする。

 残された男衆と焔也は顔を見合せ──

 「じゃ、外の方行くか!道具もそっちにあるし」

 焔也号令、案内の元、今夜の寝床へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃のネプギア──

 「ふわぁ!これ全部好きに弄って良いんですか!?」

 キラキラと瞳を輝かせ、目の前の機材やら何やらを指差し、アルファに訊ねる。

 「うん、良いとも。ボク的にもこの身体じゃ作業効率が落ちるから君みたいな子がいると助かるし」

 「!!私ここに住みたいです!!」

 珍しくハイテンションの美少女と普段からハイテンションの美少女らしき少年はダグベースのメンテナンス区画で和気藹々としていたのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 ってな感じでここがシュミレーションルームって奴だ!

 

 成る程、広さとしては武道場くらいかな?

 

 確かにこれならば人数的にも申し分無いスペースか…。

 

 ヘラクレスはでかいからな、広いのは助かる。

 

 僕は出来れば個室がよかったですぅ…。

 

 ところで先程から気になっていたんだが……此処には温泉まであるのか?

 

 あー……随分前に撃鉄の奴が調子こいて堀当てたのが……(ドリルゲキに変身出来た嬉しさのあまり穴掘ったんだよなぁアイツ)

 

 どんだけ?!って鎧塚だかが何かしてるぞ!?

 

 ウヒヒ…!(ついに来たか!男なら誰もが夢見るシチュエーション!!"女湯覗き"。こればっかりは何を言われてもやらなきゃならネェ!しかし…どうする?オレ一人だけでは戒将に邪魔される!!焔也と連中も巻き込むか!?)

 

 めっちゃ気持ち悪い笑いしてるんだが……。

  

 なんか…悪寒してきた……。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 開幕、激闘の温泉バトル?

 

 …!!誰が大和平野だ!!?

 どしたの姫和ちゃん?!





 新多ちゃん出ません!あのマイペース気に入ったのに!
 しかし…超今更ですがやはり長船は学長が胸の基準で選んでいるのでは?!(エレンのエイプリルフール時の発言を振り返り)

 それはそれとして東映は高橋Pのスケジュール管理能力を改善出来ないものだろうか…。


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第七十八話 開幕、激闘の温泉バトル?  


 こんばんございます。
 覗きの下りでプロットはある程度形になっていたのですが、その前後に悩み抜いた結果、結局長くなってしまいました。
 これでも第一項よりはへらしたんですがね……。
 そうこうしている内にOVA後編が来てしまったと言う。
 取り敢えずはコヒメちゃんが無事で済んで何より。
 でもOVAのサブタイトル見た感じ、機会と予算と評判次第で続きが来そうな終わりですよね?うん?もしかしたら普通にまた続きがOVA出るのかな?
 兎も角、弘名ちゃんはやはりあちら側でしたね。
 まぁ電話の時点で何となく察してましたが。
 


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 北斗さぁ~ん!うぅ……何処ですか…何なんですかぁ……。

 いきなり空が逆さまになったと思ったら知らない所に来ちゃうし……周りは変な生き物だらけだし……北斗さん助けて下さぁ~~~い!!

 

使い魔の森+裏京都with伊波栖羽

 


 

 ━━神奈川県鎌倉・刀剣類管理局本部

 

 「そうか……播、森下、渡邊、丸山の4人が」

 日夜荒魂出現の報を受ける本部の司令部発令所の本部長デスクで大きく息を衝く長船女学園学長にして、現本部長真庭紗南が蟀谷を指で解す。

 「申し訳ありません。私の判断ミスです」

 彼女へそう報告するのは木寅ミルヤ。その面持は苦渋に充ちている。

 「いや、異星人絡みの異変に然したる手段も無く調査を指示した私にも責任がある。お前ばかりが責められる事じゃない」

 苦悶に心を痛めるミルヤを労い諫める紗南、そこにミルヤの後ろに待機していた益子薫が口を挟む。

 「で、どーすんだ?これから」

 「どうもこうも……ダグオンか、それこそお前達の報告にあった集団にでも話を訊かなければ策も何もあったもんじゃ無い。またぞろ都合良く何か預かってないのか、薫?」

 椅子の背凭れに体重を預けながら己が目を掛ける刀使に対し、以前の折神紫の引渡しに用いられた様な伝言メモ等は無いかと訊ねる。

 「んな都合のイイモン持ってるワケないだろ」

 「ねねね…」

 薫が鬱陶しそうに返す、勿論紗南とて早々そんなものが手に入るとは思っていない。

 「まぁそうだろうな。全くどうしたものか。今の時期に貴重な人材がまた減ってしまった」

 デスクの書類をトントン叩きながら何度めかの溜め息を吐く。

 「例の神隠しですか?」

 「そうだ。ここ3日で美濃関の稲河、平城の岩倉、綾小路の鈴本と来て、先の報告にあった四名の他にウチの新多、鎌府の伊波が今日新たに神隠しにあった。それと同時期に恐らくはあの街があったであろう世界から来たと思われる人間も数人保護したと報告があるが……果たしてその人物達がこの件の事をどれ程理解しているかは不明だ」

 そう言いつつ送られて来た"あちらの世界の住人"の概要が記された書類束を手の甲で軽く叩く。

 「そりゃもしかしてあの連中と関係あるかもしれないって言いたいのか?」

 「調書を見る限り、少なくとも普通の人間では無い可能性が高い。例えば美濃関の羽島学長の方で保護した少女は明らかに外国の人間であるにも関わらず、一切の訛りも無くかなり流暢に日本語を話していたそうだ。にも関わらず、身分を示す証明書らしき物は持っていない。まぁ彼女が完全に日本で生まれ日本で育てば或いはと思うが……それにしたって見た目14、5歳の年頃の娘が学生証の1つも持ってないのはおかしい。それにな、フェニックスなんて姓、世界でもそうそうあるもんじゃないだろ?」

 「フェニックス……。確かに人名としては些か稀有ですね」

 紗南からの説明にミルヤもふむと考え込む。

 「フェニックスねぇ……不死身とでも言うつもりかっての」

 薫もどこか呆れ顔でフェニックスという言葉を口の中で転がす。

 「まぁ、とにかくご苦労。別命あるまで休んでくれ」

 「承知しました」

 「やっと……休めるのか」

 「ね…」

 紗南の言葉を受け退室していくミルヤと薫。特に薫にとっては喜ばしい事である、とは言っても待機なので、有事の際真っ先に駆り出される事実は変わらない。

 

 そして彼女達と入れ替わりに入室して来たのは龍悟。

 「…六角龍悟、出頭した……」

 「良く来てくれた。呼び出したのは他でもないお前に頼みたい事がある。現在行方不明の獅童真希の捜索、加えてダグオンの拠点を特定して貰いたい」

 紗南の告げた要件、真希の捜索には頷くも次にダグオンの拠点特定と聞かされ僅かに冷や汗を掻く龍悟。

 まさか己がソレだとは口が裂けても言えない、しかし(だんま)りと言う訳にもいかないのでこちらの件も承知したと頷くより他に無い。

 「五條学長から聞かされたお前の働き振りに期待しているぞ!」

 「……獅童の件は承知した、ダグオンについては最善は尽くす…」

 そう応えるだけで精一杯であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県・ダグベース

 

 龍悟がダグオンの拠点捜索の任を受けた事など露知らず、ダグベースに残った焔也達は其々異世界の客人と交流を深めていた。

 

 「大体こんなもんか」

 ダグベースの外、洞窟内でファイヤーストラトスから寝袋とテントを取り出しシュミレーションルームに運ぶ。

 「しかし…改めて見るとホントに何でもアリだな」

 洞窟内をじっくり見回し一誠が溢す。

 「俺からしたら、先輩達の方が何でもアリな気がするぜ?」

 肩に持ち運び出来るよう携帯状態になったテントを部屋の片隅に置き、取り出しながら焔也が返す。

 「君達がそう見えるように、僕達からして見れば其方の技術がそれだけとんでも無いと言うことさ」

 同じく木場祐斗が焔也の言葉に応え、寝袋を受け取る。

 「いやまぁ、俺も大分慣れたけど……ダグオン関係はこの世界の人間から見てもトンデモでトンチキだと思うぜ。とりあえず……ヴロ?バラ?ヴェレ?ああ!メンドくせー!ギャスパーだったよな!?」

 「は、はいぃ!?」

 「お前さんの要望を叶えるとなると、テントくらいしか無かったが構わねぇか?」

 ギャスパー・ヴラディの姓を巧く口に出来ない為、名前呼びしテントを組み立て始める焔也。

 呼ばれたギャスパー当人はコクコクと首がもげそうな勢いで頷く。

 「なんか悪いな、ギャー助の我が儘を聞いて貰った感じになって」

 「いや、俺も修学旅行とかならまだしも、よく分かんねー内に知らない所に跳ばされたらプライベート空間くらい欲しくなる気持ちは分かるんで、大丈夫ッス」

 一誠の感謝に頭を掻きつつ照れる焔也。しかし一誠はそんな彼の態度に些か坐りが悪いのか彼を手で制し嘆願する。

 「そんな畏まらなくて良いぜ、て言うかぶっちゃけ俺がむず痒い!もうちょい砕けて接してくれ!」

 「まぁ、兵藤先輩がそう言うなら」

 「その兵藤先輩ってのも止めてくれ。イッセーでいい!」

 「いや、先輩は先輩ッス!でも分かりました…じゃねぇや、分かった、一誠先輩!これなら大丈夫ッスね?」

 そのッスも止めて欲しいとは思ったが焔也自身からは親しみらしいモノを感じるので一誠はこれ以上あれこれ言うのを止めた。

 「じゃあ僕も祐斗で良いよ」

 「ウッス!祐斗先輩!」

 祐斗からも名前呼びを請われ応える焔也、そのまま視線をヴァーリ達に向ける。

 「俺は学生では無いからな、好きな様に呼べ」

 「同じく。まぁ出来ればアーサーと呼んで貰えると助かるよ」

 「曹操と呼んでくれ」

 「ヘラクレスで良いぜ」

 「…レオナルド」

 と次々に呼び名を告げられ焔也もそれに応じる。そして最後のレオナルドの所で、彼の少年に近付き目線を合わせると、

 「なぁレオナルド…何もこっちじゃなくてダグベースの部屋でも良いんだぜ?流石にアソコじゃ休まらないだろ?」

 結芽と歳が近しい少年をある程度広さがあるとは言え、簡素な造りのシュミレーションルームボックスに寝かせるのは躊躇われる。

 そう思い声を掛けたが少年はゆっくりと首を横に振る。

 見かねた曹操が焔也の肩に触れ、大丈夫だと告げる

 「なに、レオナルドも幼いとは言え我等と同じ世界の人間だ。まぁその気持ちは有り難く受け取らせて貰うよ、なぁレオナルド」

 「……」

 無言で頷く少年と曹操を見比べ、そういう事ならと少年の頭を優しく叩く。

 「じゃあ後はメシだな。生憎と料理は得意じゃねぇから弁当でも買い出しに行くか……戒将か申一郎辺りに作って貰うしか無いんだが…」

 そう呟きながらダグベースへ目を向ける焔也、果たして戒将は兎も角、申一郎は仕事をするだろうかと思うのであった。

 

 

 

 

 

 うって変わって、ダグベース内居住区画の申一郎と女性陣。

 彼は部屋を案内しながら隙あらばナンパを仕掛ける。

 「とまぁ、基本は一人部屋だが…一応二人部屋もあるし、IHもレンジも冷蔵庫もある、トイレも部屋に個室があるしシャワーもある。テレビは…言ってくれればアルファのヤローが用意するたまろうサ。ところで……もし良ければオレとデートしない?」

 取り敢えず容姿や自己紹介時の性格等からまずはジャンヌにアプローチを掛ける申一郎。

 彼女へ近付き肩に腕を回そうとする。

 「大体分かったわ。ありがと、でもアンタみたいなチャラいのに簡単に靡く程安い女じゃないの」

 パシッとその腕を払い除ける少女にあららと叩かれた手を振る申一郎。

 「ヒュ~♪(ま、そう簡単に落ちてくれるタイプじゃ無いわな。そういうのキライじゃないぜ、異世界のカワイコチャン)」

 「う~んチャラい」

 「悪い人間では無いみたいだけど……」

 「最低です…」

 「私達の知り合いにはあまり居ないタイプですわね」

 ネプテューヌが申一郎の口笛を吹く姿に率直な感想を述べればリアス、小猫、朱乃が次々に申一郎の人間性を何となく理解していく。

 「あんな性格でもヒーロー出来るのね……ゼノヴィア?」

 イリナも申一郎の軟派な性格に呆れながら、そう言えばこういう相手に対して苦言を呈する相方が静かな事に気付く。

 「ちょっと、どうしたのよ?さっきから黙りこくって」

 「ん?ああ…いや、先の……ツバクロだったか?あの男もこの部屋の何処かに居るのかと思ってな」

 どうやらゼノヴィアの興味は申一郎よりも戒将の方にあったらしい。

 「ン?戒将の話?まぁ居るゼ、この先の右側の奥から三番目の部屋に結芽っちも一緒に」

 女の子の声は聞き逃さないが信条の彼がゼノヴィアの言葉に反応する。

 「ねぇねぇ、さっきの自己紹介で気になってたけど…かいしょーくんとゆめちゃんて同じ苗字だよね?兄妹?」

 ネプテューヌがいい機会だからとばかりに質問する。

 「そーだぜ、あの二人兄妹。戒将のヤツはああ見えて結芽っちには過保護だ」

 「結構歳が離れているように見えたにゃん」

 「まぁ四歳差だしナ、結芽っちまだ12歳だったと思うし」

 美少女との会話が嬉しいのか他人の話題にも関わらず進んで会話を進める。

 「幼いとは思っていたけど…あんな女の子がどうして貴方達の仲間に?兄妹だからと言う理由だけでは無いでしょう?」

 「結芽っちは刀使ってのもあるが……ま、詳しい事は本人達に訊いてくれ、こればっかりはプライバシーの問題だオレが勝手にペラペラ喋るワケにイカねぇ」

 リアスの質問に対し自身の頭部を乱雑に掻きながら顔を背ける。

 (ふーん、チャラい割りに仲間の事はしっかり考えてんのね)

 (意外です)

 ジャンヌと小猫が申一郎の評価を上昇修正する。まぁ微々たるモノではあるが。

 「で、クァルタチャンはナンデまた戒将の事を?」

 「いやなに、剣士として刃を交えてみたくてな。勿論、妹の方にも興味がある」

 「アー…そう言う……。てか良く戒将のヤツが剣使えるって判ったな。アイツ、宇宙人との戦いじゃ殆どステゴロなのに」

 「半分は勘だが……もう半分は彼の動きだな、足元が剣士特有の間合いをしていた」

 「ヘェ、武闘派はみんなそうなんかね、オレには全然判らん」

 ゼノヴィアの口振りに申一郎はとぼけた顔を作る。しかし…

 「何を言ってる?君も何か修めているだろう?筋肉の付き具合から……空手、いやボクサーか?」

 「………両方」

 流石の申一郎もこれには絶句して口数が少なくなる。

 と、そんな騒がしい廊下の喧騒に戒将が部屋から出てくる。

 「随分と賑やかだな、部屋の案内は終わったのか?」

 「まぁボチボチはな、ソッチは?」

 「結芽が目を覚ましたのでな、食事の用意だ」

 「やっほ~申一郎おにーさん。おねーさん達もさっきぶり」

 燕兄妹が揃って顔を出す。結芽の能天気な挨拶に女性陣は苦笑する。

 「ご飯だね!ボクもご相伴に預かるよ!」

 そして何時から居たのかアルファがネプギアと共に現れていた。

 「さぁさぁ!折角の大所帯だし外でBBQしよう!準備よろしく二人とも!!」

 言うや否や両手を横一杯、平行に伸ばし走り去って行く。

 戒将と申一郎は何か言いたそうに顔を見合せ、溜め息を吐き食糧庫に向かって行った。

 

 

 

 それから暫く…外の男性陣と合流して序でにシータ達も交えて食事に興じる。

 

 肉を巡って争う馬鹿2人(焔也と申一郎)。 

 そして彼等の競争に付いていけず野菜を食べるしかないギャスパー。 

 そんな彼の肩を叩きつつちゃっかり自分の肉を確保しているジャンヌ。

 祐斗に対し勝負を持ち掛ける結芽。

 ゼノヴィアが戒将にしつこく絡み、イリナがそれを止め頭を下げながらゼノヴィアを引き剥がす。

 ゼータの何気無いフリに笑い飛ばすネプテューヌとそれを傍目にネプテューヌの隣に座ろうとするヴァーリを妨害する一誠。

 イプシロンが朱乃の臀部に手を伸ばそうとして小猫に妨害される。

 その様を見たヘラクレスと曹操がイプシロンの行動に呆れ、互いに認識する老人の姿に見解の相違がある事に首を傾げる。

 デルタ(恐らく酔ってる)はアーサーに絡んで滔々と語る。

 そしてそれをアワアワしながら見ているアーシア。

 

 

 

 

 

 そしてアルファ達は──

 「いやぁ~ギアちゃんのお陰で作業がやっと進んだよ。明日からも協力よろしくね♪」

 「はい!是非手伝わせて下さい!」

 「ギアっちはそれで良いの?」

 アルファの期待に満ちた言葉にネプギアが嬉々として応え、黒歌が呆れた顔をする。

 そしてそんなアルファのグループにシータが近付く。

 「アルファ、貴様に渡すものがある」

 「え~、何さ…今ゴキゲンなとこなのに!」

 「阿呆。良いから思考の許容領域を空けろ。我々の間では記憶媒体で渡すより直接思念交流した方が早い」

 「ブーブー!」

 ブーイングを挙げつつ言われた通り、思考に空きを作るアルファ。

 端から見ればトンチで有名な坊主の様なポーズである。

 「これ…良く手に入れられたね?!」

 「全てでは無いがな」

 「どうやったの?」

 「ニューとシグマからな。あの馬鹿共の性格は知っていよう?」

 「うん。ニューは楽しい事、面白い事好きだし遊んであげれば普通にくれる」

 「ああ、そしてシグマからは奴の管理世界がある空間で粘れば──」

 「面倒臭くなって追い払う為にくれる……」

 「さて、渡す物は渡し成すべき事を終えた今、私は自らの世界に帰る。何時まで虚身に任せておく訳にもいかない。イプシロンも連れて帰る。デルタはまだ必要だろうから残す、ゼータは……奴も暫く残るだろうな」

 そう言い残し神経質な顔の青年は姿を歪ませ消えた。

 

 「む?残念…時間か。儂、イプシロン。名残惜しいけどお仕事があるから帰る」

 そして老人もまた姿が陽炎の如く歪み消える。

 

 

 

 こうして食事を終えた彼等は次に申一郎が女性陣にとある提案をする。

 「実はココ、奥の方に温泉があるんだけどヨ。ダグベースのフロじゃ物足りないダロ?入って来たらドウだい?」

 その一言に、家主側の人間が言うのならと好意に従い、奥の温泉がある脱衣場に向かう。そして──

 「サァて、ココまでは計画通り……こっからが本番!オイ!焔也!後、兵藤!筋肉達磨(ヘラクレス)

 戒将が翼沙への差し入れと片付けに消えたタイミングで残る男衆に声を掛ける申一郎。

 「何だよ?」

 呼ばれた焔也達が申一郎の元に集まる。

 「オマエ達は理想郷(にょたい)を見たくはないか?」

 「にょたい?…にょたい…?」

 焔也、何を言われたのか理解が追い付かず思考が疑問符だらけになる。

 「おまっ?!そんな羨ましい事参加するに決まってんだろ?!(そんな犯罪紛いを許す訳無いだろ)」

 「ほほぅ、オモシロそうじゃねぇか」

 男、兵藤一誠。本音と建前が逆である。普段義姉の手前抑えられていた性欲が、異世界でのおバカなノリに刺激を受け解放されたのだろう。

 逆にヘラクレスはノリノリである。 

 「にょたい……ってお前それは覗きをするって事かよ?!あ!もしかしてグレモリー先輩達にやたら温泉を薦めてたのは!?」

 「応とも、あんな抜群のプロポーションを持ったオネエサマ方の生姿、この眼に収めない方がウソだろ?」

 焔也の肩を抱き寄せ、ニヤニヤと下心を口にする。

 「待て待て待て!それはいくら何でも犯罪過ぎるだろ?!覗きだぞ?!正義のヒーローがそれは……」

 「オイ、良く考えてみろよ?オマエもし柳瀬舞衣チャンだったか…?彼女が入ってたら覗くか?」

 「いや覗かねぇよ?!何言ってんのお前?!大体何で進んで嫌われる様な事をせにゃならねぇんだよ?!」

 「ほほう?なら安桜美炎チャンならどーだヨ?」

 「…………あいつのリアクション見たさに覗くかもしれない。あれ?下心が無ければ大丈夫なのか?」

 「ダロ?つまりオレがオンナノコ達の入浴を覗くのもソレと同じようなモンなんだ!!安桜チャンをからかうオマエの生き甲斐と同じ、そこに何の違いもありゃしネェンだ!」

 「お、おう…なるほど?」

 申一郎の理屈すら通っていないノリと勢いだけの喩え様に焔也(バカ)は何故だか納得をする。

 (しっかし…安桜チャンは良くて柳瀬チャンはダメなのか……コイツ、柳瀬チャンとどういう…いやまさかな、まぁ安桜チャンも十条チャンよりは有るしな、ウン。何がとは敢えて言わないが有るし在るからナ!)

 

 

 ━━刀剣類管理局・浴室

 

 「誰が無限の地平線だ!?大和平野だ!!」

 「ど、どうしたの姫和ちゃん?いきなり叫んで?!」

 湯船に浸かっていた可奈美が、身体を洗っていた姫和の突然の絶叫に目を白黒させていたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 再び、場所はダグベースの洞窟へと戻り…。

 「面白そうだねぇ~、ボクも一枚噛ませてよ!」

 申一郎達が顔を寄せ合い、相談する円陣。そこにアルファが顔を出し更に覗きをする方向に話が進む。

 流石に話がマズイ方向へシフトしたのを見かねたのか祐斗が止めに入ろうと彼等に近寄る。

 「君達、それは流石に止めておいた方が……」

 「あ!あれは何かな!?」

 あからさま過ぎる手で祐斗の視線を逸らすアルファ。

 常人ならばまず引っ掛からないだろうそれに、しかし祐斗は引っ掛かってしまう。

 「しまった!?」

 これには申一郎も流石に驚く。

 「ウソだろ?!」

 「あっはっは!ボクの能力をなめて貰っちゃ困るね!!」

 要はアルファは自身のなけなしの管理者たる能力を使って彼の気を逸らしたのだ。

 「くっくっく!これでゼータに仕返しが出来るよ!!」

 「お前…参加の動機がそれかよ……」

 アルファの動機に呆れる焔也。ともあれ千載一遇のチャンスに申一郎が吼える。

 「何でもイイ!今がチャンスだ!逝くぜヤロー共」

 恐らく誤字では無い。覗いた後の処遇を理解しての物言いである。

 「「「「おう!!」」」」

 しかし、彼等の行手を阻むのは何も祐斗ばかりでは無い。

 「いや、流石に止めるだろう…これは」

 即座に回り込む曹操!

 「常識的にも紳士的にも止めなくてはね」

 後ろから迫るアーサー!

 「ふん、赤龍帝ともあろう男が何をやっている?」

 上から光翼にて追撃するヴァーリ!

 ギャスパーはレオナルドを連れ関わらないよう避難している。

 

 「チィッ!ホントに厄介だな!?神器ってのは…!」

 「任せてよ。こんなこともあろうかと!!」

 申一郎が焦りを見せる中、アルファがフィンガースナップの動作をする。

 鳴り響く指の音と共に一瞬鳴動する洞窟内、次の瞬間には曹操が足下から飛び上がる。

 「何っ?!」

 そのままヴァーリに向かって飛んで行く曹操、このままヴァーリが躱せば曹操は洞窟の天井に激突、躱さなければヴァーリと衝突という結果になる。

 まぁ、実際には激突も彼の身体能力なら避けられるし、衝突とてヴァーリが受け止めてしまえば何事も無いのだが、どちらにせよ時間は稼げる。

 下手人一行はそのまま前を突き抜ける。

 「アーサー頼んだぞ!」

 ヴァーリが曹操の腕を掴みながら、一行を追うアーサーに声を掛ける。

 「止まらなければ痛い目を見る事になる」

 脅すように言葉を投げるアーサー。しかし、彼等は止まらない!

 「ワナはこれだけじゃ無いんだよね!」

 今度は何処からか取り出したグリップ付きのスイッチをポチッと押すアルファ。

 彼等とアーサーの間の地面が僅かに揺らめく。

 「?何を……?!これは!!」

 「フハハハ!名付けて人間ホイホイ!超強力な粘着性トリモチからは誰も逃れられないよ!」

 

 アーサー脱落(リタイア)

 

 アーサーが無力化された事により、態勢を建て直していたヴァーリと曹操、アーサーの後から追い掛けていた祐斗が焦りを見せる。

 「まずいっ!このままでは奴等の覗きが成功してしまう?!」

 「下手をすれば我々も連帯責任で女性陣から責められるぞ!!」

 「くっ……ここまでなのか…!」

 「部長、みんな……すみません、僕達は無力です…!」

 かなり悲壮な空気を出しているが、別に命懸けでも何でも無い覗きを止められるか否かと言う状況なだけである。

 

 「ヨシッ!このまま行くゼ」

 「姉ちゃんゴメン!でも俺だって偶にはハジケたいんだ!」

 「何だかんだウチの女共はレベル高いからな!価値は十分だ!!」

 「よく分かんねぇけど、俺達やったんだな!」

 「あはは!気が早いよ、まぁ、勝ったも同然だけどね♪」

 最早これまでかと思われた、その時。祐斗の後方から疾風が駆けるが如く、とある人物が走って来る。

 「木場祐斗!剣を出せ!出来る限り峰幅が広い物だ!」

 声の主は燕戒将。彼は木刀片手に凄まじい早さで祐斗へと向かって行く。

 「!?!わ、分かったよ、これくらいで良いかい?」

 咄嗟の事に一瞬思考が浮いたものの戒将の顔を見て彼の意図を察し、幅の広いロングソードの魔剣を造り出す。

 戒将は駆ける勢いを殺さず、己に向けられた剣の先端に恐れず進む。

 あわや剣に貫かれるかと思われたが、戒将は跳躍、剣の上に立つ。

 

 

「「「「「な、何ィっ!?」」」」」

 

 その行動に驚き叫ぶ覗き魔達。

 

 「やれ!木場ぁっ!!!」

 鋭く吼える戒将、と同時に祐斗は悪魔の身体能力で力一杯剣を横凪ぎに振るう。

 振り切られた瞬間、勢いを殺さず更に跳躍する戒将。

 「曹操!ルシファー!どちらでも構わん!()()!」

 跳躍する先は宙にて浮かぶヴァーリと曹操、彼等は戒将の貸せと言う言葉の意味に首を傾げたが、彼等もまた戒将の意図を理解する。

 「俺の背中は高く付くぞ?」

 「馬鹿共を止める。それが代価だ」

 「良いだろう!しくじるなよ」

 「無論だ!」

 光翼の生えた背中を踏み台に方向転換をし、覗き魔一行へ飛んで行く戒将。

 「く、来るぞ!?どうする!?!」

 「ワナ…ワナを発動させろ?!戒将のヤローを迎撃するんだよ!!」

 焔也と申一郎が狼狽える。

 「わ、分かってるよ!?ポチッと!!」

 その言葉と共に数百の矢が飛び交うが、戒将はそれを全て木刀で弾き飛ばす。

 「無駄だ、忘れたか?罠の監修には俺も立ち会っている」

 「はっ!?し、しまったぁぁあ!侵入者撃退用トラップの名目で戒将君にも手伝って貰ってたんだぁあっ!!」

 「オマッ…バカ野郎!よりによってアイツを立ち会わせたのか!?」

 焦り、アルファに野次を飛ばす申一郎。それも仕方無い事、温泉に至るまでの──実際にはダグベースに連なる道筋も含む──道程の罠、その全てに戒将が立ち会っていると言う事は設置された罠全てを把握していると言う事だ。

 そうこうしている内に安全圏へ着地した戒将はそのまま申一郎達へ鬼の形相で駆けて来る。

 「へっ、仕方ねぇな…お前ら!ここは俺に任せて先に行きな!」

 見かねたヘラクレスが立ち止まり、仲間に背を向ける。

 「へ、ヘラクレス!?何を……!」

 「俺がこん中じゃ一番、足が遅いからな…適材適所だ」

 「戒将は手強いぞ…筋肉達磨、大丈夫なのか?」

 「ヘラクレスだ、なぁに…筋肉は伊達じゃねぇ」

 「ヘラクレス君…」

 「ヘラクレス……」

 「筋肉……」

 「ヘラクレス…死ぬなよ」

 皆が敬礼し、一誠が最後にヘラクレスへ声を掛け先に進む。

 「さぁどこッからでもかかって来いやぁ!!」

 

 邪魔だ!

 

 一蹴!木刀による容赦の無い急所打ち!刺突により男の尊厳を情け容赦無く打たれギリシャ最大の英雄の名を持つ巨漢は泡を吹いて大地に倒れた。

 

 「「「「ヘラクレス~~~!!?」」」」

 

 ヘラクレス、脱落(リタイア)

 

 皆、奮闘虚しく散った同朋に涙を流しつつ、彼の為にも止まる事無く先へ進む。

 しかし…疾風の燕の異名を持つ戒将はその距離を容易く詰めて行く。

 

 「ちっ、こうなったら……申一郎!一誠先輩!アルファ!先に行ってくれ……奴は俺が止める!」

 「焔也…お前……」

 一誠が異世界で短い内に交友を深めた後輩の献身に、目尻に涙を浮かべ、噛み締める。

 「任せたよ焔也君!」

 「オマエの事は多分覚えておくぞ焔也!」

 逆に既知の2人はこれ幸いと平然と切り捨てる。

 「お、おい?!」

 「良いんだ先輩、あいつらだって目的を優先させただけ…さぁ、先輩も早く!」

 「絶対に成功させて来るからな!」

 立ち去る一誠。焔也は戒将の行手を塞ぐ様に立ちはだかる。

 「お前とは一度、真剣に勝負してみたかったんだ…まさかこんなカタチで叶うなんて──滅殺!ごふぅっ?!」

 焔也が語り始めるのも無視し戒将は木刀を一閃、真横に吹き飛ばされ焔也は沈黙する。

 

 鳳焔也、脱落(リタイア)

 

 「「「焔也ぁぁあ!?!」」」

 

 「こうなったらボクが…「悪即斬!」ぎゃん?!!」

 当然、アルファなど足止めにもならず、戒将の左手から繰り出されたアイアンクローにて地面に叩き付けられ脱落した。斬ってないとは言ってはいけない!

 

 アルファ、脱落(リタイア)

 

 「残ったオレ達だけでも…散っていったヤツらの分まで辿り着かなくちゃならねぇ!」

 死んではいない。

 「ああ!此処まで来たからには、例え姉ちゃんに叱られても、覗かなきゃ死んでいったあいつらに合わせる顔がねぇ!!」

 だから別に死んではいない。

 

 「その様な愚行、俺が赦すと思ったか?」

 

 「「?!い、いつの間に前に…!!」」

 

 彼等2人が同朋の犠牲に涙している内に、戒将は既に進行方向へ回り込んでいた。

 「大人しく縄に付け、然も無くば、痛い目を見る事になる」

 木刀を正眼に構え、戒将が最終通告を告げる。しかし、申一郎も一誠も犠牲になった仲間達の為にも大人しく捕まる訳にはいかない。

 「悪いが退けねェ、コイツぁオレの夢なんだよ……!普通じゃ絶対お目に掛かれないこのシチュエーション、みすみす逃すワケにゃいかねぇ!」

 「鎧塚に賛成する訳じゃないが……俺も死んでいった連中の心意気を無駄にしない為にも止めるつもりは無い!」

 何度も言うが死んではいない。

 「そうか……ならば俺からは何も言うまい。最終的に罰を下すのは()()()()

 2人の漢の意思に溜め息を吐き、木刀を下げる。

 そのまま目を閉じ進路を空ける

 「「へっ?」」

 まさかの行為に困惑する2人、何故道を譲ったのか?まさか彼も混ざりたかったのか?等と思っている内に答えは向こうからやって来た。

 「イッセー……これはどういう事かしら?」

 紅の髪を揺らす肌着の美女、リアス・グレモリー。

 「お姉ちゃん悲しいよ、一誠ってばいつからそんな不良になっちゃったのかな?」 

 パーカーを脱いだ薄着の紫髪の少女、ネプテューヌ。

 「先輩最低です…」

 猫耳と猫尻尾を怒りに荒ぶらせる白髪の美少女、塔城小猫。

 「覗き魔には制裁をしなくちゃね?」

 足許に大量の剣を生やす軽装鎧を脱いだ金髪の美少女、ジャンヌダルク。

 「厭らしい考えは祓わなくちゃね?」

 聖なる光を携えたピッチリスーツの栗色ツインテール美少女、紫藤イリナ。

 「煩悩殲滅。我…断罪を行使せん!」

 黒ずくめの服を脱ぎ、スタイルがより際立った格好になった美女デルタ。

 「ブ・チ・コ・ロ・シ確定ね?」

 背後に変な光球を浮かばせて何故だか声がCV小○水になっており、心なしか姿も何処かで見たような者へ変わっているゼータ。

 「おにーさん達、バイバイ」

 1人だけ楽しそうに別れの言葉を告げる結芽。

 温泉に入浴している筈の女性陣が目の前に居た。

 因みにゼノヴィアは覗かれる事には抵抗が無い為、不参加。同じく黒歌も不在。

 アーシアとネプギアは朱乃に連れられ別場所にて待機中である。

 「沙汰は下った様だな。後は君達に任せよう」

 結芽だけ彼女達から引き剥がす戒将、申一郎と一誠は公首台を前にした死刑囚の如く顔を青ざめる。

 

 後の事は語るべくも無いだろう。

 下手人達は般若と化した女傑達の手により反省の為お仕置きを受け、動機が動機なアルファはゼータとデルタから市中引回し宜しく山中をファイヤーラダーで引摺り回される事となる。

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 くそっ、酷い目にあったぜ……。

 

 俺……木刀で股間打たれたんだが…。

 

 後でアーシアに回復して……もらえないかもなぁ…。

 

 チクショウ!一世一代の夢が叶わなかった…!

 

 ?綾小路の女湯は覗かないのかい?

 

 ア?バカか、そんな事したらデートに誘えなくなるだろ?

 

 (リアスちゃん達は覗くのに?!)へ、へぇ……。

 

 俺達がバカやってる時、鎌倉や美濃関、入れ替わった街々でも色々な事が起きていた。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 其々の世界で。その頃の刀使達。

 

 何なんだこの嬢ちゃん達は…?!





 アリスギアアイギスとプロジェクト東京ドールズコラボでユイとアヤの星4が手に入ったぞーーー!
 でもヤマダが来ない!!ヤマダーーー!来てくれーー!
 天華百剣は……まぁ何時も通り、コラボキャラはガチャの方出ませんでした!!
 アイプロのみんな可愛いなぁ、
特に加蓮と社長はチャンスタイム時の紅潮した顔がね……凄くすごいです!(静夏ちゃん風)


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第七十九話 其々の世界で。その頃の刀使達。  


 おはこんばんちわすみなさい!
 今回はつぐみちゃん一行のお話とその前に以前も触れたとじともオリジナル御刀、四神と四霊について。
 まぁ登場したのは四霊刀の霊亀だけですけども……。
 読者の方でとじともプレイしてるユーザーで四霊と四神の御刀を持っていてTwitterやってる人が居ないものですかね。
 ぶっちゃけ、霊亀と玄武と鳳凰以外ビジュアル知らないんですよね……。
 その3振りも持って無いんですが…。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 ナノマシンだったか?すげえな、痛みがもう引いたわ。

 

 まぁ、あんな事した後じゃアーシアちゃんには頼れないしね。

 

 いや…てか、アルファだったよな?あんたは大丈夫なのか?

 

 平気へーき、いやホントは痛いけどボクらは人間とも悪魔や天使とも身体の造りが違うから。

 

 ((すげぇ死にそうなくらいボロボロなのに?!))

 


 

 ━━ドイツ郊外・とある田舎だった場所

 

 人口も少なく都心部より離れた場所に位置した小さなドイツの農村はしかし今、何処とも知れぬ場所の一部と入れ替わっていた。

 その郊外にはこれまた不釣り合いに漆黒に黄色のラインが走った新幹線──Rーマックが停車している。

 『a-ha……ヒマだZE、あいつら交渉に何時間かけてんだ……』

 ビークルモードなので判りづらいが、入れ替わった村の更に入れ替わったと思われる場所を見続けながら嘆息していた。

 

 

 

 

 ━━???

 

 「哀しい。詰まる所……貴殿達は拙僧達に協力するつもりは無いと?」

 ダグオンや刀使達が居る世界とは違う、ネプテューヌ達が居た世界。

 今、その世界のとある場所で珍妙な2人組が何某を相手に交渉をはね除けられていた。

 「貴様等の様な得体の知れぬ輩に力を貸して何の意義がある?冥界を我が物顔で彷徨く蝙蝠と鴉の存在は確かに不快であるが、それと貴様達と手を組むかは別の話よ」

 そこは太陽の光など射さない場所、人間は決して生きられぬ世界。

 「またぁ~だぁ~めぇ~だったぁ~ねぇ~」

 2人組の片方、触角が生えた斑模様の笠のような髪の半目の少年が間延びした口調で相方に語りかける。

 「拙僧は哀しい。行く先々でこの様な対応を受ける事が実に哀しい……。所詮、世界が異なった所で、神などと囃された所で、辺境の惑星の下等な知性態は我々の実力を正しく理解出来ないのだ」

 少年の相方……特徴的な牛の骨の被り物をすっぽりと被った騎士甲冑と革鎧とローブをない交ぜにした奇妙な格好の存在が項垂れて嘆息する。

 2人組はこれ以上、此処に長居するのは無駄と断じ、そそくさと引き返そうと交渉の相手から背を向ける。

 だが相手方はそれを黙って見てはくれない。

 「おのれ!散々好き勝手に暴れた上、その態度…貴様等無事に帰れると思うな!」

 激昂し殺気を飛ばす何某、それに応じるように周囲にも複数の気配が生まれる。

 

 「えぇ~?帰るよぉ~。ふぁ~、帰れるよぉ~?」

 半目の少年が欠伸混じりにそう答えると、彼の笠の様な髪から目に見えない程小さな粒子が放出される。

 すると周囲の気配も、2人組に憤っていた存在も一切合切がバタバタと音を立てて倒れ伏す。

 「哀しい……力の強弱等、我等には関係無いと言うのに……奴等はそれすら理解出来ない」

 「後はぁ~どこだっけぇ~?」

 「目ぼしい候補はもう残っていない、哀しい…」

 倒れた存在を無視して2人組はもと来た道を歩き続ける。

 彼等は此処に至る迄も他に数ヶ所、勢力として存在する場所に同盟や協定の交渉に訪れては断られ続けていたのだ。

 「何故連中は拙僧達を害せる等と思い違いをするのか理解出来ない。哀しい…」

 牛骨が倒れ伏した者達を睥睨しながら言葉を洩らす。

 倒れた者達は命に別状は無い。皆、等しく眠っているのだ。

 

 「拙僧は哀しい…。交渉が決裂したのなら問答無用で皆殺しにして仕舞えば良いのだ。だと言うのにあの方は放って置けと仰る」

 「でもぉ~、此処に来るまでぇ~何匹かぁ~斬ってるよねぇ~、ねぇ~ちゃ~んん~はぁ~」

 「それは向こうが勝手に警戒して抵抗するからだ。拙僧は始めにきちんと交渉事に来たと申しているのに、哀しい」

 

 少年に姉ちゃんと呼ばれる牛骨は一層深く嘆く。

 「泣くぅ~なぁ~よぉ~。悪ぅ~いぃ~のはぁ~あっちのぉ~方なんだからぁ~。それよりもぉ~、その御刀だったっけぇ~?それの使い心地をぉ~先生にぃ~報告しなきゃ~ならないんでしょぉ~?」 

 

 嘆く牛骨に触角の少年は彼女が担ぐ亀の甲羅を模した様な刃の刀──再生赤羽刀、【四霊"霊亀"】を眺め口をすべらせる。

 「哀しい、人間程度が造り上げたにしては中々の使い勝手と言うのが哀しい。星単位で下等の癖に……」

 「不思議だよねぇ~?ソレってぇ~、女のヒトにしかぁ~反応しないんでしょぉ~?」

 「だからこうして拙僧が一振り振るう羽目になったのだ。哀しい…拙僧の霊亀、あの変質者の鳳凰、そして応龍と麒麟の四振り、その全てが赤羽刀なる地球の物から生まれた事が哀しい」

 牛骨が口にした通り、彼女が持つ御刀は嘗てジェゲンガ星人がジェム星人分体を通して送り込んだ荒魂を解析した結果から得た赤羽刀をエデン流の再生の儀にて錆落としした物から生まれた御刀だ。

 銘は文字通り中国における四神と同等に扱われる事が多い四霊から採られたモノ。

 彼女──牛骨を被った異星人、宇宙アマゾネスヴァルキュレ星人のブリューリテからすれば承服し難く、しかし同時にとても手に馴染むので複雑な気分なのだろう。

 

 片や触角に半目の少年の異星人──宇宙菌糸知性体マタフォ人パラノスからすれば、ブリューリテの心境などどうでも良く、新しい玩具が羨ましい程度の事なのだ。

 

 この2人組がこの様な場所に居るのには理由がある。

 彼女と彼はエデンの実質的な支配者たる鬼と妖精から密命を受けたのだ。

 

 2人がエデンの鬼達より請け負った任務は2つ。

 1つはダグオン達が保護した勢力と敵対するだろう勢力との同盟交渉。破談した場合は相手を無力化し撤収。

 もう1つは異世界にザゴスやシード星人、そして荒魂を放ちこの世界を守るだろう戦士やそれに準ずる組織または勢力の攪乱と牽制である。

 Rーマックが牽引して来た輸送車輌には今彼女と彼が引き連れているザゴス星人以外に待機中のザゴスソルジャー、荒魂ザゴス、シードトルーパー、荒魂シード、ガードロイド、そして培養した荒魂が詰まっているのだ。

 これらはこの世界の人間界、冥界、天界、そして各神話体系が拠点を置くであろう場所にこれからも放たれる事になる。

 宇宙の悪意は2つの世界に同時に牙を向く──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・郊外

 

 突如として街の殆んどが消え別の街へと変貌したその土地を、とある人物が数人の部下を引き連れ調査に当たっていた。

 

 「参ったな…ったく、ねぷ子達に頼んだ昨日の今日でこれか……」

 頭髪の一部を金髪に染めた渋味の深い中年男性が頭をガシガシと掻き毟る勢いで抱える。

 彼の名はアザゼル。

 聖書に綴られる堕天使にして三大勢力堕天使陣営の組織、神の子を見張る者(グリゴリ)の総督である。

 また彼は駒王学園でネプテューヌ達が属するオカルト研究会の顧問を勤めている人物でもある。

 昨今、一部表社会と自分達の様な人外の勢力の間で頭を悩ませている神隠しの一件をオカルト研究会+αの面子に相談、調査を頼み込んだのが昨日の昼。

 そしてそのまま他の同盟を結んだ勢力──天界の天使長達と堕天使同様冥界に存在する悪魔の魔王達に会談を申し込み対策等を話し合っている内に駒王町は見ず知らず……と言って良いかは解らないが、見覚えが無い街と入れ替わっていたのだ。

 その一報を受け大慌てで会談を切上げ、駒王町に向かったアザゼルが見たのは、丁度入れ替わった街が空から大地に沈み固定される瞬間であった。

 そして入れ替わった先の街の住人は大混乱、彼の街の住人はその情報を瞬く間に拡散し暴動もかくやとばかりに騒ぎ出した。

 当然、そんな事態を放っておく訳にもいかず、堕天使達、延いては同じ様に連絡を受けた悪魔と天使陣営の協力者と共に暗示を使用し何とか場を納めた後、改めてこの非常識極まる事態を専門に調査する為の人員をグリゴリから連れて来たのだ。

 

 「街そのモノにこれといったおかしな所はねぇ……()()()()()。土地の霊脈の類いがぷっつり切れた筈なのにだ……」

 不自然極まりない自然な状態に髭を蓄えた顎に手を充てながらアザゼルは自身が立つ大地をコツコツと革靴で叩く。

 そして先程からちょくちょく挙がってくる家屋や幾つかの施設の入れ替わり現象、一部は元々の駒王町のモノであったり、全く別の土地の建物であったりと規則性が一切見られない。

 この異変、最初は()()()()()()()()かと思ったが、混乱を望み破滅を唱うにしては回りくどい。

 故に別件と見たのだが、だとすると黒幕が見えて来ない。

 各神話勢力に潜む戦争を望む存在や壊滅したテロリスト組織"禍の団"の残党かとも思ったが、前者は行動の是非を考えても得や利益は低く、後者はそもそも求心力のある人物が残って居ない為にまず有り得ない。

 これ迄に無い未知の事象に好奇心よりも厄介さと苦労が涌き出るアザゼルであった。

 

 しかし、異変はこれだけでは終わらない。

 

「きゃぁぁぁああああ!!?」 

 

 突如として挙がる悲鳴。その声の出所に急行してみれば、恐らくはこの街の住人であろう至って普通の人間の女性が、奇妙な異形に襲われている。

 

 「ありゃ…最近報告に挙がってる正体不明の怪物か!?」

 アザゼルの視線の先、女性を襲う異形の怪物──荒魂はその醜悪な口を大きく開ける。

 「ちぃっ…!仕方ねぇ、あのお嬢さんの記憶は後で弄っとくとして、柄にも無く人助けするか!」

 普段、チョイ悪親父を気取ってダメな大人をしている彼も流石に目の前で起きている事柄を見逃す程薄情では無い。

 しかし距離、位置的にアザゼルの場所から女性と荒魂まではかなり拓きがあり遠い。

 いくら彼が人外の種族堕天使だとしても間に合わない。

 ともすれば翼を生やしても届く事能わずという場面に運命の歯車を呪いたくなるアザゼル。

 だがそんな彼の予想を裏切る事態が起こる。

 自分が駆け付ける側とは逆方向から音を斬らんばかりの速さで異形に立ち向かう影が現れたのだ。

 影が吼える。

 

 「とりゃぁぁああ!!」

 

 影が異形を蹴飛ばす。車大のソレは声ならぬ声を挙げ女性と影から後退る。

 「ぁんだと?!」

 その光景に思わず声を洩らすアザゼル、そうしてマジマジと注視して影を見れば、それは自分の肩辺りまでの背丈しか無い少女であった。

 アザゼルから見て少女は中々個性的と言うか特徴的な装いであった。

 学生服なのだろう橙色の上着で寄せ上げられ強調された白のブラウスシャツの胸元にまず目が向く、次いで異形を蹴り飛ばしたであろう短いスカートから覗く健康的かつしなやかに鍛え上げられた脚、そして手許に握られた刀。

 最後に顔を伺えば、年の頃は高校生かその手前の年代の快活そうな少女のソレだ。

 短めの前髪をカチューシャかヘアバンドらしき装飾品で後ろに流す様に留め、元気が溢れんばかりの大きな眼が荒魂を睨む。

 「ったぁ~っ……やっぱ益子先輩みたくいかないッスね~。播さんお願いするッス!」

 これまた見た目通りの快活な声で誰かの名前を呼ぶ少女。

 それに応える様に新たな人影が快活な少女の後ろから飛び出て来る。

 「いやぁ、念のため御刀を持って来たのは正解でしたね。せい!」

 新たに現れた少女は些か気合いの抜けた掛け声で両手で握った刀を振り下ろす。

 その一撃によって荒魂の顔に傷が駆る。

 「あらら、浅かったですか。丸山さん、今度は二人で畳み掛けます」

 「OKッス!」

 2人の少女が其々に刀を構え怪物へと斬り掛かる。車程の大きさを持つ荒魂は前肢を大きく振りかぶり迎撃するが播と呼ばれた少女の巧みな受けにより攻撃の威力を反らされ、そこから出来た隙を丸山と呼ばれる快活な少女が容赦無く攻める。

 瞳の場所も定かでは無い異形の頭に傷が増えていく、怪物は絶叫を挙げ抵抗するが2人の少女は慌てず堅実に攻め獣の脚を切り落とす。

 脚を斬られバランスを崩した怪物はマトモな抵抗も出来ず、逃げる事もあとわず、己の終りを待つだけとなった。

 

 「ふぅ、何とか二人で対処出来ましたね。これがもう少し数がいたら危なかったです。こう言う時…七之里さんの存在が如何に有り難いかが分かります」

 荒魂にトドメの一撃を加えた刀を引抜きこびりついた橙色の液体を軽く振るって払い落とし、腰に装着された器具に備えられた鞘へ納刀する。

 「大型の割にそこまで強くなくて助かったッスね」

 そんな2人の少女の一連の戦いを呆然と眺めていたアザゼル。

 (何なんだ……あの嬢ちゃん達は…。あの怪物に怯むでもなく向かっていただけじゃねぇ、明らかに手馴れてやがる。それに、あの刀……神器って感じはしねぇ、しかし普通の刀でも無い。ありゃ…()()?)

 研究者としての気質から思わず考察に思考を巡らせるアザゼル。

 だが、そんな事をしている場合でも無いと思い直し、少女達に声を掛けようと一歩踏み出した瞬間、少女達の側に新たに闖入する2つの人影が現れる。

 「いやぁ~!お見事お見事!二人とも充分強いですネ!ワタシも思わず見入ってしまいました」

 「私クンも感心ですぞ!まぁ置いてかれた時はどうやって身を守ろうかと慌てましたが…それはそれ!出来れば私クンが持ち込んだ装備も試してみて欲しかった所ではありますが、それは次の機会にとっておきましょう!」

 1人は快活な少女と同じ制服を着、その上から白衣を羽織っている赤毛に眼鏡の少女。

 もう1人も同じく眼鏡だが、快活な少女と赤毛の少女ともセミボブカットの少女とも違う白い制服にジャージの上着を肩辺りまで着崩して今にもズリ落ちそうな、スカートの下もジャージを履いた黒髪の少女が捲し立てる様に口を動かす。

 その光景にあんぐりと口を開け呆けるアザゼル、片や少女達はそれに気付かず構わず会話を繰り広げる。

 

 「さて、荒魂を倒しはしましたが…このノロはどうしましょう?」

 播と言う名のセミボブ少女が足元に広がる橙色の液体を睥睨しながら呟く。

 「回収しようにも異世界で連絡のしようも無いからネ、いやはや困った困った」

 赤毛の少女がやれやれとばかりに肩を竦める。

 「どうしますかな?放っとくとまた結合して荒魂になっちゃいますぞ?」

 黒髪眼鏡の少女もどうしたモノかと頭を悩ませる。

 「ずっと見張っておく訳にもいかないッスからね」

 丸山と言う名の快活な少女が豊かな胸の前で腕を組みムムムと唸る。

 と、4人が集まって唸り悩ます所、アザゼルは今度こそ声を掛ける。

 「あー…お嬢さん方、ちょっと良いか?」

 少女達は己に掛けられた声に反応し一斉にそちらに顔を向ける。

 「ワオ、ダンディなおじ様ですヨ、我々に何か用があるんですかね?」

 とは赤毛の少女のリアクション。

 「なんか怪しい雰囲気……不審者ッスか!?」

 先程まで荒魂が暴れていた場所に無警戒に現れたアザゼルを訝しむ丸山少女。

 「むむ?そう言えば、私クン達がお二人に駆け付ける時には既にあの辺に立っていましたね」

 肘までズレたジャージで所謂萌え袖風になった手で眼鏡を直す黒髪眼鏡の少女。

 「もしや第一村人ならぬ第一異世界人でしょうか?」

 「「それだっ!!」」

 播と呼ばれる少女が出した結論に赤毛と黒髪の少女が口を揃えて指をアザゼルに突き付ける。

 (…本当に何なんだ……このお嬢ちゃん達は…!マイペースにも程があり過ぎるだろ!?)

 約3名の怒濤のマイペース振りに困惑を滲み出すアザゼル。

 正直、関わるのが面倒臭くなってきた所だ。

 だが、そんな胸中をさらけ出す訳にもいかず、何よりこの異変の一端を知っているかもしれない貴重な人物を無視する事は出来ない。

 悪態を飲み込み、再び声を掛けようと動き出した所、向こうの方から声を掛けて来た。

 「失礼ですが…もしかして駒王町なる街をご存知ですか?」

 播と呼ばれた少女が代表して自分に訊ねてくる。

 だが、アザゼルが何より驚いたのは彼女が口に出した駒王町の名と、まるで自分達が全く違う世界の住人だとでも言わんばかりの訊き方であった事だ。

 「!?それは……いや、何故それを?お嬢ちゃん達は何者なんだ!?」 

 と驚きつつも先程までの少女達の会話を思い返す。

 彼女達は自分を見て第一異世界人と言った、それに怪物を倒した時も異世界だから連絡が着かないとも口走っていた。

 詰まる所、彼女達は自分達が己が居る世界が異世界と自覚していると言う事だ。

 そんなアザゼルの反応に対し赤毛の少女がお茶らけた感じで返答する。

 「我々はまぁ何ともうしますかしがない公務員ナノです。位置的に警察のお仲間的な?ま、そんなこんなで調査に出た所、宇宙人の仕業でこの世界に来てしまったんですネ~コレが。あ、申し遅れました、ワタクシ、渡邊エミリーと申します、以後お見知りおきを~♪」

 緊張感に欠ける自己紹介の中に含まれた重大なワード、それを頭の中で咀嚼し、その意味を吟味し、慄くアザゼル。

 「異世界だと……?!それに……(宇宙人。宇宙人と言ったのかあの娘?!マジかよ、いや、もしソレが本当の事ならこの不条理にも説明が付く)…兎も角、詳しい話を聞きたい!嬢ちゃん達が知っている事、全部聞かせてくれ!」

 近付いていた播少女の肩を勢い良く掴み掛かりゆく様は絵面としては少々危ない。

 「お巡りさん呼んだ方がいいッスかね?!」

  丸山少女が実際に繋がりもしない携帯片手に狼狽えている。

 「落ち着くのですぞ、丸山嬢。そこのダンディなおじ上殿、一度落ち着いて下さい、播先輩が話せませんぞ」

 ジャージ黒髪眼鏡の少女が割りとマトモな事を口にする。

 「あ、ああ…悪ィ……つい。ンンッ、兎に角だ!お嬢ちゃん達が知っている情報を俺にも教えてくれ。取り敢えず落ち着いて話せる場所まで行こう」

 己よりもずっと年下の少女に窘めなれ、咳払いで一度気持ちをリセットし少女達をグリゴリが用意した拠点へ向かい入れようとする。

 しかし彼女達は頻りに橙色の液体を気にして歩き出そうとしない。

 「うん?どうした?ソレに何かあるのか?」

 「はい、出来ればこのノロを回収しておきたいのですが……生憎、今の私達には器材の持ち合わせが無く…」

 「ふむ…分かった。それも此方の方で手配しておく。だから詳しい話を──」

 兎に角情報が欲しいアザゼルは彼女達の心証が悪くならないよう、要望に応える方向に決め、ノロも望んだ通り回収の人員と器材を配備すると答え拠点に連れ込もうと喋っていたその時、彼の後方より部下の堕天使が大慌てで駆け寄って来る。

 

「総督!アザゼル総督!大変です!!」

 「ーーッ、何があった!?」

 出鼻を挫かれ頭を掻きながら部下に苛立ち気に向き直る。

 部下も一瞬、怯みこそしたが、己の持つ情報を伝える事を優先し即座に言葉を紡ぐ。

「消えた筈の兵藤邸が再び現れました!!」

 部下の言葉に堕天使総督は目を見開き驚愕する。

 「何だと?!それは本当か!!?」

「はいっ!間違いありません!この街の一角、本来の駒王町に存在した兵藤邸跡地に間違い無く出現したとのことです!」

 確かめる様な問いに部下は頷き、アザゼルは光明が差した気分になる。

 

 「よし、お嬢ちゃん達!予定変更だ!今から俺と一緒にある家に着いてきて貰うぜ!」

 滲み出る喜びを噛み締めながら大手を振るうアザゼル。

 少女達は些か状況を飲み込めないながらも、ソレらも含め情報を把握する為、アザゼルの後へ続くのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 いやぁ、何やら急展開ですぞ!

 

 うーん、このおじさん信用出来るんッスかね?

 

 虎穴に入らずんばとも言いますし、手許になんの情報も無いよりマシでしょう。

 

 フフ…何だか未知のモノと対面出来る予感がヒシヒシとするヨ!コレは実に楽しみですネ~♪

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 考察、神隠しの真相?

 

 エミリー……あちらの世界に迷惑をかけてないと良いけど…(イストワールをマジマジと見詰めながら)





 伊吹童子来ない、ヤマダも来ない、鷹ノ巣はまだ回して無い。
 でも個人的には鷹ノ巣よりもその次のイベントに実装されるだろう巫剣が欲しい私です。
 いやぁG'sで確認したけどサラシで抑えられるレベルのお山じゃ無いですよアレは……なのに欠けないと一見ペッタンにしか見えないと言う罠。
 ではまた次回


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第八十話 考察、神隠しの真相?


 こんばんは、おやすみなさい。年末仕事したくない。
 ダグライダーです。
 いやぁ大分時間掛かりました。これも年末が近付くにあたって忙しくなる職場に勤める故の性か…。
 年末年始は忙しくなるので執筆が遅れ気味になります、悪しからずご了承下さい。

 ゼンカイジャーはそう来たかと関心しました。
 私、ダイボウケン好きなので割りと楽しみです。


 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 フフフフ…棚からぼた餅、瓢箪からコマ、鴨が葱を背負って向こうから来ましたぞ!

 

 良いですね良いですねぇ、未知の現象、未知の技術、研究者としてはこれ程そそるモノはナイです!

 

 二人とも恐いッス……。

 

 気持ちはまぁ、分からなくも無いですよ?

 

 それはどっちのッスか?!

 


 

 ━━山北町・住宅街

 

 本来であれば其所は駒王町の住宅市街である場所。

 しかし今は異世界の…それも遥か彼方の宇宙から現れた悪意ある存在によって次元を越え空間を跨ぎ街ごと入れ替わってしまった土地を勇み足で歩く集団がいる。

 

 「さぁさぁさぁ!急いで急いで!時間は有限!情報は膨大です!我々の事が知りたいんでしょう?ならばならば!一刻も早く目的地へと向かいましょう!!」

 大仰に手振りを荒ぶらせる赤毛の少女──渡邊エミリーが後ろを着いてくる面々へと言葉を投げる。

 「いや、しかしだなお嬢ちゃん……」

 「しかしも案山子もお茶菓子もありません!ワタクシとしても貴方達の事を知りたい。出来れば今すぐにでも知りたい所を我慢しているんですヨ?であれば急ぐのは自明の理です!」

 頭髪の一部を金髪に染めた中年男性の陳情も何のその、好奇心に支配された少女は先頭を足早に進む。

 「いやぁ、うちの渡邊さんがどうもすみません。あの人、研究気質が強いらしくて我々が元居た世界でも結構無茶繰り返してたらしいので」

 アザゼルのやや後ろを歩く薄い明るめカーキ色の制服を纏い帯刀した少女──播つぐみが申し訳無さそうにアザゼルへ声を掛ける。

 「ああ…いや、俺も研究者だ、あのお嬢ちゃんの気持ちは解らんでも無いが……」

 はしゃぐエミリーの気持ちを理解出来ると同意を述べるアザゼルにつぐみは成る程と頷く。

 斯く言うつぐみも研究が本分なのでエミリーの心境はよく理解出来る。

 と言うか、つぐみもこの面子の中では良識的だし、研究も翼沙、エミリーに比べればとてもマトモであるし、きひろの様に発言が一々マッド染みてもいないが割りと変人である。

 無論それをアザゼルは知る由も無いので、詮無き事だと言われればそれまでなのである。

 

 それはそれとして、先頭を行くエミリーをつぐみと、エミリーと同じ制服を着た丸山茜の協力を得て手綱を握りながら歩く事はや数分。

 遂に到着した目的地、兵藤一誠の生家にして女神ネプテューヌの帰るべき場所"兵藤邸"、しかし本来在るべき駒王の土地ではなく…入れ替わった山北町の大地に鎮座するその容貌は、些細ではあれど違和感を覚える。

 

 「本当に…戻って来てるな……。軒先の庭から塀の壁まで完璧にアイツらの家だ、だってのに周りが違うだけでこんなにも馴染みが無く感じるのか…」

 或いはそれも異なる世界を無理矢理繋げたが為に起きた現象なのかもしれないが、今のアザゼルにとってそれは重要ではない。

 「ほうほう、此処がおじ様の目的地でしたか…では参りましょう!」

 アザゼルの感慨も何のその、エミリーは図々しく兵藤邸の門を跨ぐ。

 「いやー、やっと休めますな!」

 「他人様のお家にそんな不躾すぎじゃ無いッスか!?」

 エミリーの後に続くきひろに茜がツッコミを入れる。

 「おいおい…」

 「まぁ、あれですが…お世話になります」

 少女達の態度に呆れるチョイ悪中年につぐみが頭を下げ敷地内へと入っていった。

 

 ピンポーンと玄関の壁面に備えられたインターホンから鳴る電子音。

 そのまま家主の応答が返るより早くエミリーが口を開く。

 「や、どもども!突然の訪問失礼致します。こちらはビョードーイッセーさん宅でよろしいデスかね?」

 「渡邊さんびょうどうではなくひょうどうです。うん?もしかしてワザとやってますか?」

 エミリーの間違いにすかさずツッコむつぐみだが、赤毛の少女の表情を覗き見てジョークだと察する。

 「お嬢ちゃん悪いがちょっと退いてくれ」

 エミリーの成すがままにしても埒が空かないと見てアザゼルがインターホンの前に立つ。

 そして2、3言葉を交わす事数分、玄関扉の鍵が開く音が5人の耳に届く。

 出て来た人物は至って平凡な…それこそ自分達が元居た世界で見るような人間となんら変わり無い中年期に差し掛かった夫婦。

 少女達はある意味予想外な人物の登場に内心驚いていた。

 一歩で兵藤夫妻は見知らぬエミリー達伍箇伝の人間に戸惑いを見せつつも、アザゼルという見知った顔を見て安堵しアザゼルが共に居るとあって少女達の存在も受け入れる。

 

 「ふむ……アザゼル氏が重要視しているお宅の住人にしては平凡と言うか…普通ですね

 「いやぁ解りませぬよ?何かこう凄いチカラを持っているやもしれませんぞ

 「期待に胸が弾む!ドキドキしますね!

 「別にこのご夫婦が特殊とは限らないんじゃ無いんッスかね…

 アザゼルが話を進める横で少女達はこそこそと会話を交える。

 そうこうしている内に夫妻に促されアザゼルは兵藤邸の中へ入って行く。そして玄関で話し合っている少女達に振り返り、彼女達を屋内に招く。

 「嬢ちゃん達、今からこっちの面子と情報を共有するから、嬢ちゃん達も来てくれ」

 その言葉に今にも飛び込んで行きそうなエミリーを茜が抑えながら顔を付き合わせ、少女達は頷き合い、異変の真相を探る為の一歩を踏み出した──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━刀使世界・鎌倉刀剣類管理局本部

 

 異世界からの来訪者が現れ、異星人が異世界の街の一部を謎の結界らしきモノに遮られ、はや1日。

 未だ荒魂災害も多発する中、僅か数名と言えど腕利きの刀使が神隠しにあった現状に刀剣類管理局は危機感を覚えていた。

 そして刀剣類管理局本部、本部長真庭紗南の頭を悩ませる事情はそれだけに留まらない。

 自身が学長を務める長船女学園から行動に問題こそあれ優秀な研究技術を持つ生徒が、同様に未来の優秀な研究者、技術者たる者達と刀使1名を含み神隠し──恐らくは異世界に転移させられる事態が起こったからである。

 然りとて目下の彼女の悩みは──

 

 「渡邊エミリーの事を渡邊翼沙に伝えるべきなんだろうが……連絡が着かん」

 エミリーの従弟である翼沙への連絡が取れない事であった。

 そしてその翼沙はと言えば、ダグベースでVRS装備の本格的な試験運用の為に研究区画に籠り作業に掛かりきりきりであり、自身の携帯端末に連絡が来ている事など気付きもしていなかったのだ。

 無論、紗南がそんな事を知る訳も無いので、翼沙と親しい間と思われている土師景子が呼び出しを受け(景子としては別に親しくしている訳では無く、都合良く物作りさせられているだけなのだが)、翼沙の行方を訊ねられてはしどろもどろすると言った出来事があった。

 

 そして現在──

 「いや、申し訳ありませんでした。僕とした事が私用に夢中になってしまって」

 翼沙は本部の研究棟にて景子に謝罪をしていた。

 「いえ…そのぅ……別にそこまで頭を下げなくても…」

 景子としても流石に歳上の人間からここまで頭を深々下げられると普段只でさえ気弱な性格が輪を掛けて酷くなってしまう。

 それにそもそも、この先輩が一体今まで何処に居たのか?とか何時本部に戻って来たのかも彼女は知らないのだ。

 (う~ん、悪い事をしてしまいました。撃鉄からの連絡がダグコマンダーに無ければもっと面倒な事になっていたかもしれません)

 そう、偶々本部長に捕まり翼沙の居場所を訊ねられていた景子を見掛けた撃鉄が状況から不味いと判断し、ダグコマンダー経由で翼沙に本部に顔を出すよう通信を入れたのだ。

 流石にダグコマンダーは余程の事が無ければ、入浴や睡眠以外で外す事は無い為、撃鉄からの一報には直ぐに気付いた。

 「それでは僕はこれから真庭本部長の所に顔を出しますので、土師さんは休むなり自分の作業に集中するなりして下さい」

 「は…はぁ…」

 相も変わらず眼下の隈が酷い少女は可愛らしソプラノ声を震わせながらしげしげと己の領分に戻って行くのであった。

 ともあれ、去っていく後輩の背中を見送りながら発令室へと足を動かす。

 目的地に向かう道すがら周囲の声に耳を傾ければ聴こえてくるのは神隠しにより消えた人物の話題。

 (当然ですが、噂の規模では無くなってしまいましたね。早く解決しなくてはなりませんが……どうにもまだ一波乱起きそうな気がします)

 一抹の不安を感じえながら 発令室の扉を叩く。

 

 「失礼します」

 

 変わらず忙しなく方々通信が飛び交う中、翼沙は真っ直ぐ本部長の机に向かう。

 「渡邊翼沙出頭しました」

 「ああ、良く来てくれた。用件は…察しがついているな?」

 翼沙が顔を見せたと同時に、呼び出した理由を問う紗南。

 「神隠しですね。なんでもエミリーが調査に出た数名と共に巻き込まれたとか」

 「うむ、事実だ。一応身内のお前には話を通しておこうと思ってな」

 「お気遣い感謝します…ですが、エミリーの事ですから何だかんだ無事だと思います。それよりも、もし方々で話題になっている通り神隠しされた人物の行き先が異世界なら、エミリーが迷惑を掛けていないかが心配でして……」

 奔放にして好奇心旺盛な従姉を思い浮かべながら眼鏡のツルを押し上げながら言葉を洩らす。

 「ま、まぁ…流石にアイツも領分は弁えている筈だろう、多分……恐らく……そうであってくれ」

 自校の生徒故、性格を良く知っている紗南であるが、この非常事態に際して、事ここに至って面倒事は犯さないだろうと口にするが、エミリーの今までの行動を振り返り不安に駆られる。

 「………」

 「…………」

 互いに沈黙する2人、恐らく、いやまず間違い無く同じ事を思っているだろう。翼沙と紗南の心内はただ一言、

 

 

──"すごく不安だ"

 

 これに尽きるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━冥次元・旧駒王町、現山北町

 

 元の世界で従弟と学長からそんな風に思われている事など露知らず、エミリーは共に転移に巻き込まれた4人共々、兵藤邸宅内2階のとある部屋に通されていた。

 そこで彼女達は奇妙な集団と邂逅する。

 「ふむ…つまる所、あなた方は神話に語られる英雄の生まれ変わりであったり、人外の存在であったりする訳ですか。まぁ、随分と奇特な集まりですね」

 話を聞いたつぐみの開口一番の言葉である。

 「その神器?とやらワタクシめに見せて頂けますでしょうか?話に聞いた瞬間からワクワクが止まりませんのデスよ!」

 件の問題児は話し合いの音頭を取るこの場の代表たる者の1人、英雄派ゲオルクに机に膝を乗せ詰め寄る様に迫る。

 「も、申し訳無いが今は非常時だ。この訳の解らない異変の解決の糸口が掴めてもいないのにそんな悠長な事など……」

 眉間に皺を寄せながらエミリーから避けるゲオルク。

 そしてそんな彼を御愁傷様と視線で憐れむ英雄派ジークフリート。

 そんな騒ぎの横合いでアザゼルが魔女の格好をした少女から何故兵藤邸が元の場所に戻れたのか、戻る前に何があったのかの説明を受けていた。

 「つまりは何か?その黒いローブの女から渡された角灯をお前さんの魔力とゲオルクの神器で起動させて帰還したってのか」

 アザゼルが胡散臭そうに目の前に置かれた黒い角灯(ランタン)を見る。

 「いえ、帰還方法は実は賭け要素が強くて……。これは渡してくれた人…?曰く今回の事件に関わる黒幕の一人の目から逃れる為のモノらしく」

 アザゼルに角灯のチカラを説明する魔女姿の少女、ルフェイ・ペンドラゴン。アーサーの実の妹である。

 「賭け?ならどうやって帰って来た?」

 「それもその女性曰く、美意識に反するカタチになっているとかで……」

 「う~む、何とも要領を得ないな」

 彼等の会話が要領を得ないのも仕方が無い。

 アザゼルは元より、渡されたルフェイですら敵が一体どういう存在か詳細な説明が無いまま、早急に使用する羽目になったからである。

 そんな2人の会話を聴きつつ角灯をあらゆる角度から写真に納めている少女、綾小路武芸学舎技巧科生森下きひろが口を挟む。

 「思うにその女性はダグオンに関係があるのではないのでしょうか?私クンも詳しい事は知りませんが、神隠しの異変には異星人が関わっているのは確かだと思われますぞ」

 きひろが何と無しに口にした単語にアザゼルは目元を解しながら疑問を述べる。

 「それだ、会った時もだが…異星人ってのはどう言うこった。それにダグオンだったか?それもどうも良く解らん。その辺を詳しく訊きたいんだがな」

 そのアザゼルの疑問にはきひろも何と答えるべきかと言葉に詰まる。

 そこへ結局ゲオルクに躱され続け、一旦引き下がったエミリーが割って入る。

 「ダグオン、正体不明の謎の集団。ある時ふと現れ我々の世界の脅威である荒魂を御刀も用いず事も無しに圧倒し、これまた突如現れた宇宙からの脅威たる異星人と日夜戦う戦士でしょうかネ?彼等の技術は我々人類の技術を優に500年凌駕して、いえもしかしたらもっと越えているやもしれませんが……オーバーテクノロジーを用いて人間大の宇宙人から巨大な怪獣染みた宇宙人まで、相手どっているのデス」

 エミリーの言葉にその場の話し合いに参加している面子(勿論つぐみ達は除く)は何と反応すべきかと、言葉に詰まった顔をする。

 「あー……何だその特撮ヒーローの設定みたいな連中は?」

 「それ信用出来るのかい?明らかに怪しいけど」

 「何と言うか都合が良すぎやしないか?」

 「う~んローブのヒトは悪い感じはしなかったんですけど……(言葉遣いが些か変でしたが)」

 アザゼル、ジークフリート、ゲオルクが否定的な言葉を洩らし、ルフェイがデルタの人となりから今一疑いきれないでいる。

 「仰る事は解ります。まぁ、私達としても客観的に見れば、突如現れた双方の勢力には作為的なモノを感じなくもありませんが、実際にダグオンと遭遇している数名からの報告や彼等の今までの戦歴を見ると、まぁ…異星人との繋がりは低いでしょう」

 つぐみが4人の反応に理解を示しながら、持論を述べる。

 「低い?ゼロとは断言しないのか?それはまた何でだ?」

 そんな少女の発言にアザゼルは更に疑問を刺し込んで行く。

 「まず、ダグオン達が遭遇した刀使──私の様な人間ですが……その刀使からの話ですが、彼等は宇宙警察機構と名乗ったそうなので」

 「宇宙警察機構?そりゃつまりは文字通り宇宙の警察組織って訳か?」

 「はい。そしてダグオンの一人曰く、敵は宇宙の凶悪犯罪者らしいのです」

 「要するに犯罪者どもをとっちめに来たって訳か……まぁまだ納得しかねる部分はあるが、一応は筋は通ってるのか」

 アザゼルが疑問を残しつつも一応の納得を見せる傍ら、今度はゲオルクが疑問を述べる。

 「ではダグオンとやらも宇宙人なのか?」

 「いえ、それは無いと思います」

 ゲオルクのダグオンの正体は宇宙人なのかと言う問いに、しかしつぐみは間髪入れずに否定を示す。

 「それは何故だい?」

 ジークフリートもつぐみの断言に思わず訊き返してしまう。

 「彼等は地球の文化に異様に詳しい…と言うか、我々刀使や伍箇伝の事に理解が深いようでして、まぁ…私の憶測も多分に含みますが、ダグオンは地球人…それも私達に近しい人間では無いかと予想しています」

 つぐみの淡々と紡がれる推測にアザゼルは感心した様に少女を見やる。

 「成る程。ま、関係があるだろう当事者の一人がそう言うならそう言う事なんだろうな。この話は此処までにして、となると問題は今回の異変の方だな」

 ダグオンの話題を一旦棚に置き、話を再び神隠しの異変へと戻すアザゼル。

 どうしたモノかと再び腕を組み、唸り始める。

 「お嬢ちゃん達の言う事を前提に置くなら、黒幕は此方の世界にゃ居ないって事になる訳だ。ってなると俺らに出来る事は限られる」

 「私達も元の世界に帰還する手段がありませんね。元凶が向こうの世界に居る以上、ダグオンに頑張って貰いましょう」

 つぐみもお手上げといった具合に結論を出す。

 「って事はネプテューヌ達はあっちの世界に残ったって事になるのか、ならダグオンとやらに接触する可能性もゼロじゃないね」

 ジークフリートが何とはなしに口にした言葉に、そう言えばとゲオルクがつぐみに訊ねる。

 「お前達の世界でも神隠しは起きていたんだよな?」

 「ええ、数名行方不明になったり、消えたかと思えば戻って来たりした事件が相次いでますね」

 その会話を聞いてアザゼルが何かを思い出したようにつぐみに対し質問をする。

 「お嬢ちゃんの世界でも神隠しが起きてたってんなら、此方の世界にお嬢ちゃんの世界の住人が紛れてるかもしれないな…」

 「成る程…言われてみれば、此方と彼方、双方の世界が繋がっているのですから彼方…私達の世界の行方不明者が此方の世界に、此方の世界の住人が私達の世界にと言う現象も充分に有り得ますね。現に本部長が嘆いてましたし」

 「フムフム、ウチの生徒が消えたとかそう言えば言ってた気がしますヨ!」

 「確か……新多さんだったかと思うッス!」

 彼等の会話に長船組が反応を返す。

 「そう言えば私クンも憶えがありますぞ、綾小路でも未だに行方不明中の…確か鈴本さんでしたかな?!」

 同じくきひろも会話に便乗する。

 「成る程、うちも確か一名未だ帰還の報告が無い刀使が居ましたね」

 確か伊波さんでしたか?と細い顎に手を当てながら回想するつぐみ。

 「まぁ…今は私達もその未帰還の行方不明者になったりしている訳ですが」

 そして少々含んだ物言いで皮肉を溢す。

 「お、おう…。ってな事はだ、俺が他の連中から問い質された行方不明の連中も向こうに居る可能性があるのか」

 つぐみの自虐的ギャグに引きつりながら、北欧勢力、冥界悪魔勢力から届いた行方不明者の事を思い出す。

 「例のヴァルキリーとフェニックスの娘、それに大公アガレスの関係者とやらか」

 アザゼルの洩らした言葉にゲオルクはネプテューヌ達が元々請け負った依頼を思い出す。

 「ああ、原因の元凶が人為的なモノとは思わなかったがな。取り敢えずネプ子達が向こうで上手いこと立ち回ってくれる事を願いたい……」

 アザゼルのその言葉には案に、ネプテューヌ達の安否を気遣うだけの物だけでは無く、向こうの世界で厄介な問題を起こしてくれるなと言う懇願が入り雑じっているモノであった。

 「曹操達も居るから問題無い………筈だ」

 ゲオルクもまたアザゼルに同調しつつも自らの不安を払拭出来ずに胃の辺りを押さえる。

 

 「此方の人も大変なんッスね…」

 胃を押さえるアザゼルとゲオルクを眺めながら茜が自らが共に居る問題児2名に視線を流す。

 「おや?何ですかな?」

 「何か言いたげだネ?」

 当の本人は茜の視線の意味を理解していないのかマイペースに振る舞う。

 「何でも無いッス」

 取り敢えず自分がしっかりせねばと気合いを入れる丸山茜であった。

 

続く

 

 


 

 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 どもども!不肖!森下きひろ次回予告とやらを単独でこなしますぞ!

 私クン達がやんややんやしている間、元の世界では何やらダグオンの方々も女神御一行と対策を練っていたようでして…しかぁしっ!そこで突然鳴り響く何時もと違う警報!

 現場に急行してみれば、胡散臭そうなホストみたいなCV子◯の男性が何やら地元警察と揉めている様子で!?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 出現!?新たなる異世界人!

 

 ところでCV◯安って何ですかな?

 





 きひろちゃんって発言こそマッドですけどそれ以外はそれなりに真っ当というか地味だったりするんですよね。

 あと休日に神聖円卓領域キャメロットと仮面ライダーゼロワン×セイバーの映画見ました。
 ファルシオン…プロット次第でマスカレに出そうかなぁ。

 後一週間で良いから長期の休みが欲しいです!
 はい!願望です!叶いません!言ってみただけです!
 ではまた次回!


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第八十一話 出現!?新たなる異世界人!


 明けましておめでとう御座います。本年も何卒宜しくお願い致します。

 さて、年明けになってしまいました、大変申し訳ございません。
 年末は本当に仕事が忙しくなるので帰って来てから中々執筆が進まず、この様と相成りました。

 光の聖剣自身がライダーだったとは思わなかったなぁ。
 所で福田氏の次のメイン脚本何時ですか?



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 イカれたマッドメガネ三銃士を紹介するよ!

 

 マッドメガネ三銃士?

 

 エントリーNo.1!口から出るのは論者の如く!森下きひろ!「失礼な!ですぞ!」

 エントリーNo.2!ハーフじゃないよ、アクティブサイエンティスト!渡邊エミリー!「なんか不名誉な呼ばれ方をされた気がする…」

 オオトリを飾るのは!綾小路のサイエンティックボマー!見た目は温厚、中身は狂人!渡邊翼沙ー!!

 

 ちょっと……詳しくお話しましょうか……。

 

 あれ?本部に行ったんじゃ…………ぎゃーっ?!

 

 南~無(。-人-。)

 


 

 ━━地球圏・月衛星軌道

 

 青い星を臨む灰白色の衛星に隠れる様に漆黒の新幹線が息を潜める。

 

 『むぅ…念の為にと月に沿って隠れてはみたが、果たして必要であったのか……』

 その呟きの答えは彼の牽引する貨物車輌から返ってきた。

 「此方(こなた)の身の安全を考えれば、其方(そなた)の行動は正しい。善きにはからえ。あの芸術家気取りは注文が細か過ぎていかん、其方(そなた)を見倣って欲しいものだ。うむ決めた。憂さ晴らしに何処か適当な場を入れ替えよう!」

 (この女は何故こうも偉そうなのか…。余、早くエデンに帰るか青いダグオンと戦うかしたい)

 地球から視線を外さない様に月の影に隠れつつも帯同者の愚痴を心の内でぼやくJーエースであった。

 そして仮面の修道女は新たに世界をひっくり返す。

 その土地に住まう者、巻き込まれる人間の意思など意に返さず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県某所・ダグベース

 

 ネプテューヌ達がこの世界に現れてから1日が経ち、異世界生活2日目の早朝。

 居住区画を静かに、しかし足早に駆ける人物──燕戒将である。

 彼の青年は日課としている素振りの為にダグベースの外へと向かっているのだ。

 

 「む…?」

 

 ダグベースより外に出た所、来客の為に使用されている特殊模擬専用スペース、シュミレーションボックス内から金髪の爽やか全とした少年木場祐斗が顔を出す。

 

 「やぁ、どうも」

 「木場か、君も早朝鍛練か?」

 同年代故か異世界の客人であっても気を遣う必要が無い為、気安く接する戒将。

 それでも綾小路の同級生やダグオンメンバーに向ける気安さとはまた違うのであるが。

 「まぁ…そんな所かな。そう言う君の方こそ、日課なのかい?」

 「そんな所だ。異常の中でも己が日常的に行う鍛練は疎かに出来ん。日々の積み重ねが己の糧となるのだからな…それに、これはまぁ…俺の精神集中法なのだ。何時如何なる非常識も、これを行えば存外容易に受け入れられる様になる」

 「それは…それですごいね…」

 戒将の返答の内容に苦笑を返す祐斗。神だの悪魔だのが存在する世界とて、それが常用であるならば日常の常であるが、それでも周りにトンデモを起こす人物が居る身としては戒将の割り切りの速さは感心を誘うモノであった。

 「ふむ…良い機会であるし、ここいらで訊ねさせて貰っても良いだろうか?」

 そんな好青年を見ながら顎に手を当て一考した戒将、生真面目な青年は最初に断りを入れて祐斗に訊ねる。

 「うん?なんだい?僕で答えられる事なら良いけど」

 その返答を是と捉えた戒将は、ならばと続け様に質問を飛ばす。

 「君の剣技……独自の物であるが、その剣筋に天然理心流の冴を視た。何処かで流派の教えを受けたのか?」

 昨日の覗き騒動の際、僅かな時とは言え祐斗の剣を視、見た戒将は己の中に生まれた疑問を素直にぶつける。

 これに対し、祐斗は最初どう答えたものかと躊躇いを僅かに顕していたが、自らの世界の事であるし大丈夫かと思い直し口を開く。

 「リアス部長のお兄さん…魔王様の眷属であるナイト(騎士の駒)の転生悪魔が僕の師匠でね、彼から剣術を習ったんだ」

 「ほう?魔王とやらは多少気になるが、転生悪魔と言う事は……元は人間か、天然理心流を修めたとなればさぞ高名な剣士なのだろう」

 戒将が発したその科白に更に苦笑を深くする祐斗。

 「高名と言うか……まぁ沖田総司その人なんだ」

 これには戒将も流石に大きく眼を見開き動揺した。

 「何……だと……!?いや、しかし……此方とは世界が違うのだから有り得なくは無いのか?だが、あの新撰組の天才剣士が転生とは言え悪魔だと…!むぅ……」

 何とも言い難い表情で唸る戒将、祐斗はまぁまぁと嗜めつつも話を続ける。

 「病床の折に、魔王様…サーゼクス・ルシファー様とお会いして眷属となる事を願い出たそうだよ。今ではかなりの実力者で、一人百鬼夜行なんて言われる程さ」

 病床と言う言葉に些か奇妙な反応を示す青年を眺めながら説明を続ければ、今度は一人百鬼夜行という所に眉を潜める。

 「彼の剣士が病に侵されていると言うのは何処の世界の歴史も同じく…と言う事か、いやしかし…悪魔は兎も角、何故百鬼夜行にまで発展するのか……だが、得心が云った。木場の太刀筋に理心流のソレを見たのは間違いでは無かった訳だ。であれば一応は同門の流派となる訳か」

 「君は天然理心流の使い手なのかい?」

 「うん?いや…うむ。一応は俺も理心流の技術は習得してはいるが……警視流が主だ。理心流は結芽がな…」

 言葉を濁しつつ妹の名を口に出す戒将、対して祐斗はあまり耳馴染みの無い流派の名前に首を傾げる。

 「警視流?どんな流派なのかな?」

 「なに、理心流等の流派と比べ歴史の浅い、警察の剣術だ。名の通り警視庁発祥の剣術でな、立合剣術、居合剣術、柔術から成る。我々が属する刀剣類管理局は警察庁の麾下組織だが剣術の流派自体は割りと自由が利く」

 戒将の説明に成る程確かに自分は知らない筈だと納得する祐斗。

 彼等は元の世界で様々な勢力と戦ってはいるが、そもそもの話…剣士の使う流派など気にはしないし剣士自体も遭遇するのは稀だろう。ましてや、極東の島国の剣術ともなれば聖書に記される勢力に属する祐斗達からすれば、使い手が現れる事の方がざらであろうと言うモノだ。

 警察組織にしても、そう言った人間組織との摂政を行うのは魔王達であるし人外魔境の怪物、怪人ばかりを相手にしてきたネプテューヌ達一行のメンバーである祐斗からしてみれば、純粋な対人剣術の機会はそれこそ悪魔の世界で流行っているレーティングゲームくらいなものだろう。

 

 「あー!見つけた!!」

 

 そうこう話している内に時間がそれなりに経っていたのか、可愛いらしい声が乱入して来る。

 「お兄ちゃんズルい!私が先におにーさんと戦うのに!」

 声の主は目の前に立つ青年の実妹、燕結芽である。

 一見して血の繋がりがあるように見えない程、見た目のギャップが激しい兄妹。

 祖先にどういった血筋が在ったのかは知らないが、白みがかった青い毛先の戒将と、薄紅の淡い桜の様な色合いの髪の結芽では大分正反対だ。

 強いて言えば結芽もまた毛先が桜髪から僅かに藤紫色に変化しているので、恐らくはそういう所に繋がりがあるのだろう。

 途もあれ齢12歳の少女は兄と金髪少年の元へと駆け寄る。因みに悪魔の羽が生えた熊のパジャマ姿である。

 「別に俺は彼と剣を交えるつもりは無いぞ?」

 「そーなの?じゃあいっか!ねぇねぇおにーさん天然理心流だよね?お風呂の時ちょっと見えただけだけど、それっぽい動きしてたし、私とあそぼーよ」

 少しばかり頬を膨らませつつ兄へ抗議をすれば、兄はそんな気など無いと返したので、ならばと祐斗の側に振り返りニヒヒッと笑って立ち合いをせがむ結芽。

 さて困ったと祐斗が戒将の方に視線を向ければ、彼はその視線に同じく視線で返す。

 "済まないが我が儘に付き合ってやってくれ"と、こうあってはこの金髪好青年で通る木場祐斗としても幼気な少女の頼みは断れない。

 しかし今から立合ともなると、と返そうと口を開きかけた時にソレは聴こえた。

 

 ブーブーと、携帯のバイブレーションの様な低く唸る様な電子音。

 意味が理解らず共に居る青年と少女を見ると少女は些か首を傾げ、青年は眉根を寄せる。

 「どうにも何かしら非常事態が起きた様だ。我々はダグベースに戻る、君は念の為に仲間を起こしてサロンにて共に待機していてくれ。行くぞ、立合はまたの機会だ」

 「むぅ…、はぁい」

 素直に兄の言葉を聞き彼と共に基地へ消える少女。祐斗もまた己が宛がわれ仲間達が眠る場所へと踵を返し目的を果たす為動く。

 

 

 

 

 

 

 

 所変わり、ダグベースメインオーダールーム。

 既に焔也、申一郎、アルファ、ゼータと顔を揃えている。

 「済まん。待たせた」 

 「お待たせー!」

 其所へ燕兄妹が揃って顔を出した事で、先程の警報についての会議が始まる。

 

 「ンデ……さっきの音は何ナンだ?いつもの敵さんが来るヤツじゃネェよな?」

 最初に申一郎が真っ当な疑問をアルファに訊ねる。

 「ん~、これはねぇ、ネプテューヌちゃん達が現れたでしょ?それでデルタがあの子達をタマ撃ってここに跳ばしたでしょ?その時のデータを元にあっちの世界から誰か来たら判るように、昨日片手間即席で組み上げたプログラムで作ったヤツなんだよね」

 ネプギアちゃん様々だよと締めながらケラケラ笑うアルファに他の皆は結芽以外呆れる。

 「精度はどの程度信用出来る?」

 「かなーーーーーーーーーり即席で組んだから大まかな場所しか分かんないんだよねぇ、だから転送装置はアテにしないでね」

 要するに異星人探知と違い転送装置の座標指定に情報が組み込まれていないと言う事らしい。

 「じゃあ直接その場所に行くしかねぇのか…」

 焔也が面倒臭そうな顔で天を仰ぐ。

 「ン、ちょい待ち。転送装置って宇宙人の出た場所とみんなが行ったことある場所しか行けないんだよね?」

 そこで会議の推移を眺めていたゼータが口を挟む。

 「まぁそうだね。それが?」

 「アンタさぁ、ちゃんと場所の詳細確認したの?」

 「ほぇ?」

 少女の様な少年が陽キャギャルの言葉にコテンと首を傾げてあざとい声を出す。

 「まだだよ。この身体に固定されてからここ最近不眠不休だったし眠いし寝たいし疲れたし、ボクが人間だったら死んでるからね?」

 とどのつまり会議を優先した為、詳細はこれから確認する予定であったのだと言う。

 「で、結局場所はドコナンだよ?」

 「ここからそんな離れて無い場所みたいだね~(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)」

 ゼータが己が座する場所にあるコンソールを手元と画面を見比べつつカタカタと操作してメインモニターの方に座標情報を映し出す。

 果たしてその場所は──

 

 

 

「浜松…?」

 

 

 

 そしてサロンでは祐斗の報せにより集まった男性陣とデルタによって集められた女性陣が互いにこの世界で迎えた朝に所感を交えていた。

 「どうしよう……凄いハイテクだよココ!」

 ネプテューヌが開口一番、そんなことを宣う。

 しかしそう発言するのも致し方無い事、居住区の個室は基本的にオートメーション機能が組み込まれた電化製品で溢れており、ボイスコマンド1つで照明からテレビのオンオフまで自在、そして使い慣れない場合でも普通に手動式に切り換えられる、そして部屋のレイアウトも自由……他にも機能はあるが、それらだけでも一般企業に勤める両親を持つ彼女からすれば驚くべき事である(まぁ…グレモリー家の計らいで普通の一般家庭よりは広い家ではあるのだが)。

 

 「そうね……いかにもSFチックな部屋から、割りと普通のテレビが出てきたりするのはそれはそれで驚くべき事だけど」

 「お洗濯物もこちらで別けなくても勝手に選別してくれますしねぇ」

 リアスと朱乃も割当てられた部屋を思い出しながら感心した声を出す。

 

 「え?俺らは簡素な大部屋らしい場所で布団なのに、姉ちゃんや部長達はそんなホテルみたいなアフターサービス受けてたの?」

 「いやいや、確かに簡素な場所だったが空気清浄や冷暖房まで完備されているシュミレーションルームと言うのも普通は無いだろうよ」

 一誠が自分達とは雲泥と思える程の扱いの差に出荷された家畜の様な瞳で己の境遇を嘆けば曹操がシュミレーションボックス内の意外と充実していた環境を挙げ列いフォローする。

 

 そんな男女での生活の違い云々の会話を少し離れた場所から眺めていたデルタが何事かに気付いて声を発する。

 「どうやら同朋と勇者達は語らいを終えたようだ。間も無くこの場へと馳せ参じるだろう」

 彼女の言葉の通り、サロンの扉が開きアルファを先頭に焔也、戒将、申一郎、結芽、ゼータが入室して来た。

 

 「やぁみんなおはよー!昨日はよく眠れたかな?」

 

 「ええ、とても快適だったわ…恐ろしいまでに」

 

 「なんて言うか至れり尽くせりだよね」

 

 「ふかふかでした(お布団が)」

 

 

 

 「寝れはしたけど……何で俺達と女性陣でこんだけ差があんの?いやまぁ…俺は覗きに参加したから多少雑でも文句言えないけど」

 

 「何だよ?屋根があって布団が寝袋とは言え、眠れる道具と場所が揃ってんだから俺らだって至れり尽くせりだろ」

 

 「ぼくなんかワザワザ…テントまで用意してもらって心苦しいくらいですぅ」

 

 「野晒しで泥を啜るような事態よりは余程の極楽だろう」

 

 アルファからの質問に様々な返しが跳ぶ。

 「良かった良かった。じゃ、早速本題ね。今朝新たに次元がひっくり返って新しく君達の世界から誰か来たみたいだよ」

 

 「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

 「へぇ…」 「何ぃ?!」 「ほぅ…またか」 「そんな事も分かるとは…」

 オカ研側が驚愕しヴァーリや英雄達は驚きこそすれ落ち着いている。

 「ち、因みに誰が来て、何処が巻き込まれたの!?」

 イリナが自分達の世界から誰が来たのかとこの世界の何処が巻き込まれてしまったのかを訊ねる。

 「その点だが…我々が感知している情報は飽くまで君達の世界の人物が1名此方に迷い込んだ事が分かっているだけで、土地ごとか人のみかはこれからの調査になる。また、既に件の人物の出現場所は判明しているが…我々のみでは警戒される可能性が高い。故に君達からも数人同行して貰う」

 戒将の説明を受け、彼等彼女等の面々ははてどうしたものかと話し合う。

 「はいはーい!取りあえず主人公としてネプ子さんは着いてくよ!!」

 「姉ちゃんが行くなら俺も行く!」

 「何があるか……誰が来たのか分からないのは不安だけどこの場にいる魔王の名代として私も同行するわ」

 「兵藤一誠だけでは頼り無い。何よりネプテューヌが行くなら俺も共にある」

 と、此処までで自ら挙手した者達でネプテューヌを除く面子ほぼ半数が悪魔である(ヴァーリは半人半魔であるが)。

 「種族偏り過ぎだし誰か分からないなら、一応私も一緒に行こうかしら」

 同盟を結び争う必要が無くなったとは言え、勢力のバランスを考慮した結果イリナも手を挙げる。

 「ふむ…では我々英雄派は俺が……「お前ばっか良いとこ持ってくなよ偶には俺にも出番寄越せ」…分かった、そこまで言うなら任せる」

 英雄派からは曹操を押し退けヘラクレスが同行と相成る。

 

 「決まりだね。じゃあ転送装置のある部屋まで行こっか!浜松の座標はトラッカー星人の時に入力されてるしね~」

 「ちょっと待ったー!取りあえず、話の詳細が纏まるまで触れないでいたけど……ネプギアは?どうしたの?それにそっちも全員揃って無いよね?」

 ふと姿を見せない妹の事が気になり、序でに先程から一向に姿を見ない他のダグオンメンバーの所在も訊ねるネプテューヌ、その彼女の質問に焔也が頬を人差し指で掻きながら困った様に答える。

 「あー…まぁ、俺らってさ学生な訳で…しかも伍箇伝って所は普通の学校と違うもんだから、仕事もあってだな、それになんて言うか……これが一番重要なんだけど……………俺らの正体って世間一般だけじゃなくて、管理局の人間にも秘密なんだわ」

 そんな少年の答えに対しゼノヴィアがそう言えばと駒王での出来事を回想して口を挟む。

 「刀使と言ったか…?彼女達も見たところ君達の正体や詳細を詳しくは知らないようだったな。何故だ?」

 一般の市勢に対しては未だしも、彼等が己の所属する組織にまで正体を隠す理由を問うゼノヴィア、答え如何によっては我々の信用も失うぞと言外に含むその瞳の奥底には後ろ暗い事があるのかと問うているようであった。

 「まず最初に、我々は決して悪意があって正体を伏せている訳では無い。話が些かややこしいのだが……簡潔に言えば、君達が現れる以前、刀剣類管理局内ではゴタゴタがあってな、事次第によっては日本…いや、世界の命運が懸かっていたかもしれない事件だ」

 戒将が当時を思い出すように語る。

 「マァ、アレに関しちゃ今もチョイとゴタついてんだけどナ」

 申一郎も戒将に同意しつつ現在進行系の厄介事に顔をしかめている。

 「簡単に言えば、組織内の敵に目を付けられないようにしてたんだ。後は異星人連中に目を付けられた場合とか、他所の国の思惑とか考慮して…だったか」

 焔也もダグオン結成当時を振り返りながら皆で決めた事を簡潔にゼノヴィアやネプテューヌ達に説明する。

 見かねたアルファも補足として口を開く。

 「この世界、荒魂っていうか、ノロや御刀の隠世の技術あっての高度な文明発達があるからねぇ、例え所属組織であっても宇宙警察のオーバーテクノロジー(byボク監修異世界アップデート)なんてモノを身近に持った人間が居るなんて明かせないよ……特に今現在の雪那ちゃんとか、舞草日高見派とか……転じて情報がDARPAとかに洩れちゃうかもだし

 少女の様な少年が最後に言い放った言葉は声が小さく尻すぼみであった為、この場の同朋2人以外には聴こえる事は無かった。

 「やはり人間にとって最も恐ろしいのは同じ人間と言う訳か……得体の知れぬ力を持つ者なら尚更…。どの世界もそれは変わらないだろうね」

 壁に背を預けながら曹操が皮肉染みた笑みを浮かべて口走る。

 一同が沈黙し重苦しい空気が漂いそうになり、慌てネプテューヌが話題を変えようと自ら率先して動く。

 

 「もぉー!暗い話は禁止!シリアス反たーい!!」

 

 そしてこれに同調したのがアルファである。

 

 「そうそう、せーっかく新しい異世界人が来たんだし、楽しい気分で迎い入れなきゃ!」

 

 (そもそもまだ味方って決まってねぇんじゃね)

 (現れた人物が必ずしも彼女達の知人とは限らんだろう……)

 (ぶっちゃけヤローじゃなきゃ誰でも良いや)

 (強い人だと良いなぁ~)

 四者四様である。

 「でさ、ツバッティとりゅうちんと鉄ちゃんはどうすんの?」

 ここで今まで沈黙を保っていたゼータが会話に加わる。

 「()()で連絡をする。十中八九、後で合流するだろうからな」

 戒将が左腕に装着されたダグコマンダーを翳しながらゼータへ応える。

 「よし!じゃあ今度こそ話も纏まったし、いざ目的地へレッツゴー!!」

 アルファの号令に勇者達は呆れつつ、少女は楽しそうに、女神一行は未だ見ぬ来訪者に期待と不安を馳せ転送装置へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━静岡県浜松市・浜名湖近辺

 

 静岡にて最も有名な湖を一望する事が適う街で、とある人物が悲鳴に近い怒号を挙げる。

 

 「クソォッ!?此処は一体何処だ!何故こんな事になった!!?

 

 人目も憚らず叫ぶは金髪を適度に流した青みの強い碧眼の優男。

 格好と相まって、一見するとチンピラ崩れがホストになった様に見えなくもない。

 彼は自らの置かれた異常に苛立たし気に地団駄を踏む。

 そんな彼、冥界の名門貴族悪魔フェニックス家三男──ライザー・フェニックスは何故この様な事態になったのかを怒れる頭で思い返していた。

 

 そもそもの発端は冥界で多発していた神隠し(実際には冥界のみならず、人間界の至る所や果ては天界までも起こっていたのだが)にて、ライザーの妹にしてフェニックス家長姉レイヴェル・フェニックスが被害にあった事が事の興りである。

 愛娘が行方不明とあってフェニックス夫妻は大いに動揺し悲嘆に暮れた。

 そしてその息子3人も溺愛する妹の事とあって大慌てで持てる術を行使して行方を探していたのである。

 そんな時、そんな時にだ。妹を探して己の眷属とも手分けし冥界の方々に散って捜索に当たっていた間際に大地が……いや、世界が揺れた。

 そして気付けば己1人見ず知らずの場所に居た。

 正確には一度、ライザーごと冥界の街がこの世界の何処かと入れ替わった後、ライザーだけが改めて浜松に跳ばされたのだ。

 

 「見た所、人間界のようだが……リアス達の居る駒王では無い、ええいっ!一体全体何だと言うのだ!!」

 

 忌々し気に眉間を歪めながら白地のスーツの襟元を緩め独り語ちる。

 そんな彼の元へ何やら制服警官が近付いて来るではないか。

「そこの君、ちょっといいかな?あー…Can you speak English?」

 2人組の制服警官の内、1人がライザーへたどたどしく語り掛ける。

 「うん?何だ貴様ら?」

「ん?日本語が話せるのか…丁度良かった。近隣の住民から奇妙な外人が騒いでいると通報があってね。申し訳無いが交番まで任意同行して貰えるかな?」

 ライザーが流暢に日本語を喋るので警官も手間が省けたとばかりに同行を求める。

 「断る!こっちはそれどころじゃ無い、目障りだ消えろ」

 元来の性格が傲慢な所もあるが、レイヴェルの件や何時の間にやら見知らぬ場所に跳ばされた事により、ライザーの機嫌は底辺に達していた。

 故に外聞も省みず、声を荒げ、警官達を邪険に扱ってしまった。

「……ならせめて身分証なり身の上を証明出来る物を出してくれるかな?」

 ライザーの態度に眉をしかめる警官、しかし職務であるからには向こうが手を挙げていないのであれば任意を乞う自分達は穏当に済ませなければならない。

 まぁ、地域によっては過激な警官も居るだろうが…少なくとも彼等は違った。

 「っ…図に乗るなよ、此方は急ぐと言ったはずだ」

 だがライザーはそんな彼等の心遣いを無視し彼等を無理に押し退けこの場を離れようとする。

「待ちたまえ!」

 警官の1人がライザーの肩を掴む。しかしそれが余計に気に障ったのか掴んだ警官の手首を掴み返し、力を込める。

 「不敬な奴め、俺の邪魔をするな…!」

「っあ?!ぐっ!」

「お、おい!?君!?止さないか!離したまえ!公務執行妨害だぞ!!」

 もう1人の警官が慌てて相方とライザーの間に割って入り苦言と警告を呈する。

 「チッ…!」

 これ以上は面倒だと思ったライザーは逃げようと足を向ける。

「此方、巡回19!通報にあった不振な外国人より暴行を受けた。応援を要請する!」

 が警官としても仕事である。易々と逃がすつもりは無い、無線を通して応援を請い2人もライザーの肩を今度は抵抗されぬよう、2人がかりで押さえ込むように組み付く。

 

 「ヌォオッ?!何をする!?離せ!俺が誰だと思っている!?俺はフェニックスだぞぉぉぉお!!

 

 

 

 そしてそんな光景を呆然と見やる集団。

 「妖怪ボタンむしりか?」

 焔也が休日にレンタルした特撮作品を思い出して口を滑らせる。

 「お前は何を言っているんだ…」

 戒将も呆れながら眼前の光景に頭を痛める。

 「私知ってる!焔也おにーさんが見てた仮面ライダーのやつ!」

 結芽がサロンで見掛けた焔也の観賞風景を回想して声を挙げる。

 「ヤローかよ、ってかフェニックスってたな。あれってオマエらのオナカマ?」

 申一郎が指差しながら隣のネプテューヌと一誠に訊ねる。

 「ねぇ…一誠、リアスちゃん、あれって……」

 「ああ、間違いねぇ…あのホストみたいな見た目」

 「まさか、此方に来たのが彼だったなんて……」

 オカ研メンバーが見知った顔に動揺する。

 「ふむ……あれがフェニックスの三男か」

 「誰?」

 「ほ~ん、アイツがフェニックス家の」

 面識の無い残り3人が目の前の光景をして呑気な事を言ったり知らない故に洩らしたり、感心したりしている。

 

 

 「離せぇ!!俺はフェニックスだぁぁああ!!」

 

「暴れるんじゃあない!」 「大人しくしなさい!」

 

 

 「えっと…助けた方が良いんだよな?」

 「関係者と言うのなら放っておく訳にもいかんからな」

 「シャーねべ、適当に理由デッチ上げてこっちで回収すっぞ」

 「強そうに見えないなぁ」

 「……同意する。警察との揉め事は避けたい」

 「うわっ?!りゅーごくん!?」

 4人の言葉に続け何時の間にか現れていた龍悟の存在に驚き慄くネプテューヌ。

 全く一切気配を感じなかった為、驚くのも仕方無い。

 「マジで忍者か何かかよ…!?」

 『この俺が何一つ感じなかっただと…!?』

 「アルビオン?」

 『此方も同様だ。六角龍悟の気配を一切感知しなかった』

 「変身しなくても忍者なのね…?!」

 「忍者って怖い!?」

 「マジか…何時来たんだよ…」

 ネプテューヌ達も一様にその驚愕を言葉に出す。

 「こう言う時ってアイエエエ!?ニンジャナンデ!?ってお決まりのアレをやっといた方が良いかな!?」

 そして改めてネプテューヌがダグオン達にはよく解らない事を口にする。

 「何を馬鹿な事を言っている、君達も手伝え、警察は我々が対処する。君達は彼の方へ」

 戒将が呆れに呆れながら指示を飛ばす、その時であった、ダグコマンダーからスペクトラムファインダーのアラートが鳴り響く。

 

 「何だと!?」 「荒魂?!こんな時にかよ!」 「もしくはこんな時だからカモナ!?」 「……」 「……来る…」

 龍悟の言葉を皮切りに、不気味な音が近付いて来る。

 何処からか聞こえる何かが跳躍する音、その音の主が揉める警官とライザーの前に着地する。

 

 ──Gurrrru…!

 

 それは巨大な虎とも狼ともとれる異形、妖しく体躯を輝かせる朱色と橙色の血脈、大型トラック大の獣型荒魂が牙を覗かせ涎を滴ながら人類と悪魔の前に現れたのであった──

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 あちゃー、あの子達転送装置になんの備えも無く入っちゃったよ…。

 ダグオンのみんなはともかく、あの子達はまたデルタに頼んで回収しなきゃ。

 

 そんな悠長言ってる場合じゃないし!荒魂が出たんだよ!?ヤバいジャン!しかもデカイし!!

 何か増えてるし!変なドレスの美女が出て来たし!

 

 あー…何か結芽ちゃんとねぷねぷを危ない目で見てるね…。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 激震?!四霊刀鳳凰!!?

 

 え?ナニソレ??(・_・;?

 

 嘘ん?!赤羽刀に四霊があるなんてボク聞いてない!!

 





 天華百剣に影打の新顔が!ってまさかのマサヒデ……のロリ版!"すいしんしまさひで"とは!!
 あざとい!可愛い!
 って言うか基本影打のマサヒデがまずあざとい!
 後、影打のヒロもわりかしあざといエッッッ!
 テツはもう面白キレ系芸人枠が板に付いてきたなって、可愛いけども。
 ではまた次回


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第八十二話 激震?!四霊刀鳳凰!!?

 こんばんは。
 いやはや滅茶遅れました……。
 中々戦闘描写に納得がいかず何度も何度も書き直していたらこんなに遅れて…。

 ゼンカイジャー、キャスト発表されましたね、ゼンカイマジーヌ宮本さんかぁ。
 と言うか、合体方式どう見ても…シンメトリカルドッキング…或いはウルトラレイカー…いやでも組み換え的にシンメトリカルドッキングの方か。


 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 今更だが…。

 

 儂、イプシロン。どうしたシーちゃん?

 

 シーちゃん言うな!この章に入ってからちょくちょくネタ染みた発言やパロディギリギリの発言が多い気がするんだが?

 

 儂、イプシロン。そりゃお前、冥次元に引っ張られてるから。

 

 ……くそっ!何としても異変を早急に解決せねば!?アルファ(トンチキ馬鹿)が悪ノリを悪化させる!!

 

 大分前から手遅れな気もするが……ま、いっか!

 


 

 妖しく光る体躯を持った異形の獣が猛々しく吼える。

 獣の名は荒魂…、この国に御刀が誕生したと同時に生まれ落ちた人類の脅威。

 その四肢は鋭い爪と棘を生やし、瞳の無い(かお)(あぎと)が大きく開かれ、此方を見詰めるニンゲン達へ暴威を向ける。

 

「あ…荒魂っ?!」

「お、応援を…特祭隊へ至急応援を!!?」

 突如として現れた荒魂に、制服警官は怯みながらも職務を果たそうと腰の拳銃を抜き、恐怖に震える手で荒魂に銃口を向ける。

 相方もまた、もたつきながらも無線に手を掛け一刻も早くこの状況を伝え刀使の応援を呼ぼうとする。

 周辺の人々も荒魂の出現を受け、混乱と恐慌に駆られながらも避難を始めている。

 この場に於いて幸いであったのは、陽も低く人の気が少なかった事であろうか。

 

 「なんだ?獣か?随分と品が無いな」

 だが、此処に荒魂の脅威を意に懸けぬ者が居た。冥界でも目にした事が無い珍妙極まる生物に、野犬か野猫並みの感想を抱く金髪の青年。

 恐怖を見せぬ人間に荒魂はしかし己が生まれ落ちた時よりその身を突き動かす激情と言い知れぬ淋寂のまま咆哮する。

 だが、彼は人間では無い。

 

 「ハッ!獣風情が汚い声で哭き喚くな!」

 

 泰然自若、傲岸不遜の態度は側に居た警官達も目を丸くさせ驚愕する。

「君!?何をしているんだ!!危ないから速く逃げなさい!!」

 拳銃程度では心もと無いであろうに、それでも荒魂に銃口を向けたまま、先程まですったもんだのやり取りで組伏せていた青年を気遣い逃がそうと声を挙げる。

 職務に忠実な事に加え、地域に根を張る駐在の制服警官達は、それが例え見ず知らずの…不審人物であっても、その命を重ん図る。

 そんな事など露知らず、ライザーは自らの掌に魔力を込める。

 「灰塵に帰すが良い!!」

 掌大の炎が立ち上り投げ放たれた瞬間、その密度を増し荒魂を呑み込む。

 爆炎が轟音を轟かせ辺りを熱風が疾る。

 「ふん、戯れにすらならなかったな」

 鼻で嗤うライザー、警官達も先程まで押さえ込んでいた人物が手品のように炎を出したかと思えば、投擲、爆発と言う常識では有り得ない光景に言葉を失う。

 「さて……さっきはよくも無礼を働いてくれたな?人間」

 炎をバックにニヤリと嗤うライザーに警官達は恐怖を憶える。だが、ライザーもまた知らなかったのだ…荒魂はこの程度では倒れぬ事に。

 爆炎を抜け、像に匹敵する豪腕の如き前肢が金髪の青年へ振り下ろされる。

 

 「何っ?!…がっ、ぐぉぉおお!!?」

 

 当然、倒したと思った相手に不意を突かれ組み敷かれる。

 獣畜生同然の相手を無様に見上げる屈辱にライザーは奥歯を噛み締める。

 「こっのっ……オレが…!こんなっ!畜生風情にっ…!!」

 叩き付けられた衝撃で咬み切った唇から一筋血を流すライザー、その傷もフェニックスの不死性から塞がるが獣の膂力にて下敷きにされたままだ。

 「クソがぁぁぁああ!!」

 轟咆克ち挙げるライザー、悪魔の身体能力による人外の力で荒魂の前肢を持ち上げるが荒魂も己を害した敵に加減をしない。

 

「くっ…、いけない!!」

 

 警官がライザーを助ける為に銃を発砲する。しかし獣は気にすら留めない、警官に支給されている物では荒魂には豆鉄砲同然である。

 

 

 

 「おいおいおいおい!どうすんだよ!!?」

 一連の光景を目撃していたダグオン+ネプテューヌ一行、焔也はライザーと警官達の元へ現れたモノと同種の荒魂の攻撃を躱しながら声を荒げる。

 「警官が残っているのがネックだな、彼等の視線さえ何とかなれば……!」

 同じく荒魂を躱す戒将が口惜しそうに溢す。

 「何かネェのかヨ!!?」

 申一郎が龍悟へ手段を持ち得ぬか訊ねる。

 「……手持ちとなると、()()()()()か…」

 申一郎の言葉に袖口から両端が六角状の蓋になった筒状の金属を取り出す龍悟。3人が大きく荒魂を躱す中、1人だけ至近の攻撃を顔色1つ変えず躱すその姿に同行しているネプテューヌ達も戦々恐々している。

 

 ((((生身なのに普通に躱してる!!?))))

 

 事前に説明で変身前は普通の人間と何ら変わらないと講釈されていたのだが、龍悟の動きはずば抜けている。

 無論、彼とて顔色が変わらないだけで、頬に一筋ばかり冷や汗を掻いてはいるのであるが……。

 

 「何でもイイから、手がアンならさっさと使え!!」

 ヒイヒイ声を挙げながら荒魂から絶妙な距離を保って逃げる申一郎が吠える。

 「…承知した。ならば合図をしたら皆、眼と耳を塞げ……」

 

 「「「何っ?!」」」

 

 3人が声を揃え龍悟を見やる。

 「っ!まさか龍悟、貴様……備品をくすねていたのか!?」

 戒将が龍悟が手にした物を見て衝撃を受ける。

 「……私物だ。機動隊の正規品では無い…安心しろ……。それよりも、荒魂を誘導しろ…この位置では誤魔化しが効かん…」

 龍悟は私物と言ってのけ、荒魂の猛攻を躱しながらライザーの近くへと向かう。

 「くっ…簡単に言ってくれる!」

 「ントになぁ!オレらはオマエみたく出来ねぇてノ!」

 「あいつおかしいよなやっぱ!!?そうだ!一誠先輩!イリナ先輩!ネプ先輩!リアス先輩!ヘラクレス!あんた達も取りあえず荒魂を誘導してくれ!」

 焔也が自分達と違いある程度応戦出来ているネプテューヌ一行に声を掛ける。

 「結芽!お前もなるべく荒魂を一ヶ所に集めろ!!」

 戒将は離れた場所でチョコミン刀で荒魂を翻弄する妹に指示を飛ばす。

 「おっけ~!あのオジちゃんのとこまで連れくね!」

 絶妙に荒魂達からヘイトを稼ぎ、自らの後ろを追わせる結芽。

 (う~ん、やっぱりこの御刀ちょっともろいかも、おじさんを呼んだ方がいいかも)

 そんな事を考えながら軽やかに跳ぶ。そうして次々に荒魂がライザーと警官の元へ集まっていく。

 当然、警官達は荒魂に追われている存在に気付く。

「なっ!?あれは…!逃げ遅れた人が居たのかっ!!?」

「いや、待て!あのフードを被った少女は刀使か?」

 先頭を駆ける結芽を見て警官の1人が訝しむ。

「だが、一人だけだ!まずいぞ!!」

 荒魂討伐に於いて、大型荒魂を相手にする際、一般的には刀使同士の連係による戦術が胆になる。

 最低限、小隊単位で行動し、常に仲間の位置を把握し頼り、また、頼られる、これこそが一般的な刀使の荒魂への対応である。

 警官達もそれが解っているからこそ1人しか姿の見えぬ刀使が荒魂に追い込まれていると思ったのだ。

 

 だがしかし、前述したのは飽くまで一般的な刀使の戦術行動である。

 今、警官達の目に写る少女は決して追い込まれた窮鼠では無い。

 後ろに迫る荒魂の数を確認した少女は真横へ声を挙げる。

 

 「今だよ!!」

 

 警官達は少女が視線を向ける方向に首を動かす。すると何やら小さな筒状の何かが投げ込まれたではないか。

 

 「……死にたくなければ眼と耳を塞げ!!」

 

 今度は年若い男の声が聴こえる。しかし眼と耳を塞げとは?この荒魂が大量に居る状況で?警官達は唯々、困惑するばかり……一体声の主は何者かと注目しようとした瞬間、荒魂達よりもやや上、中空からゆっくり落下中の筒状の何かに小さな黒い金属製の刃物が刺さる。

 

 途端、強烈な音と光が辺りに満ちる。

 警官達は危機的状況故に、声からの忠告を無視していた為に耳目をやられる。

 だが、そんな中でも微かに見えた4つの影と声、それだけは確かに聴こえたのだ──

 

 

 「トライダグオン!」

 

 「トライダグオン…!」

 

 「トライダグオン」

 

 「…トライダグオン」

 

 

 勇者の嘶きが木霊する。4色の光が瞬き、向かって来ていた荒魂を上へ吹き飛ばす。

 

 「ファイヤァァアエン!……エルボークロォォォオオ!!」

 赤い炎が肘打ちを目の前の荒魂へ喰らわせ、流れるように回転蹴りを見舞う。

 

 「タァァァボカイッ!……ホイールキックッッ!!」

 青い旋風が荒魂の頭蓋に高速の踵落としを振り下ろす。

 

 「アーマァァシィィンン!……ブレストモォォタァァァアキャノンンン!」

 緑の重戦士が胸部の機関砲から弾丸を荒魂へ見舞わせる。

 

 「…シャドーリュウ!……シャドークナイ…!」

 紫の影が両腕の刃で切り裂く。

 

 荒魂の悲鳴が響く、やっとの事で光に焼かれた網膜が正常に作動し、音が消え耳鳴りが収まると警官達が見たのは、昨今巷を騒がせる謎の戦士。

 

「「だ、ダグオン!?」」

 

 無骨な装甲の背中を眺め茫然となる。ダグオン達は手近な荒魂を倒すと赤い戦士が紫の戦士へ吼える。

 

 「おい!何だよアレはっ?!」

 倒れた同朋を越え飛び掛かる獣型を殴りながらファイヤーエンは文句を呈する。

 「……何と言われれば、閃光手榴弾だが…?」

 シャドーリュウはクナイを飛ばしながら刃が貫いた荒魂達をダグテクターのパワーで互いにぶつける。

 「いや閃光手榴弾だが…?じゃネェ!!テメ、かなりギリギリだったぞ!!?タイミングが一歩違えばオレらも荒魂の餌食じゃねぇか!!」

 アーマーシンがアーマーライフル二丁を両脇に抱えて荒魂へ乱れ撃つ。

 「兵藤達は……問題無さそうだな、結芽!無事かっ?!」

 ターボカイが駆けながらネプテューヌ一行の様子や閃光の近くに居た結芽の無事を確認する。

 

 「だいじょ~ぶ!!」

 御刀を持ちつつ器用に耳を塞ぎ、目を瞑りながら、荒魂の猛威を躱す。

 

 

 「ねぷ~…無茶するなぁ~」

 閃光のギリギリ範囲外から龍悟達のやり取りを目撃したネプテューヌが呆れた様に言葉を洩らす。

 「貴女が言える言葉じゃないと思うけど?」

 リアスが魔力球で荒魂を牽制しながらネプテューヌの言葉に辟易する。

 「いつもあんな命懸けなのか!?」

 「流石に早々無いと思うけど……見てるこっちは大分スリリングな光景だったわね……」

 一誠とイリナもやはり驚愕している。

 「面白いな、彼等は」

 「ハッハー!良いじゃねぇか!肝が据わってらぁ!!」

 ヴァーリは口端をニヤリと動かし、ヘラクレスが大仰に笑う。

 

 

 「ぐおぉぉぉお?!目が…目がぁぁあ!!?」

 

 ライザーは完全な不意打ちでの閃光に至近で目を焼かれたのか悶えている。まぁ不死身のフェニックスなので普通よりも治りが速い故に問題は無いだろう。

 

 

 悶えているライザーを抑える荒魂へ結芽が跳躍しながらチョコミン刀を投げ棄て、ブローチに触れ叫ぶ。

 

 「来て!おじさん!!」

 

 『おじさんでは無い!!』

 

 少女の声に即座に応え、黄金の剣が飛来する。

 剣は獅子の装飾を鍔の付近に象られている諸刃の西洋剣だ。

 結芽は飛来する黄金の獅子剣の柄を易々と掴むと重力に従って落下する勢いに任せ、荒魂の頚を一刀の元、切り落とす。

 「はっやーい!もしかして元々近くに居たの?」

 『奇妙な予感がしたのでな、この地域一帯を飛んでいたのだ』

 結芽の問いにライアンは獅子の眼を光らせ応じる。

 「えっ?!しゃべった?今、その剣しゃべったよね?!」

 ネプテューヌは突如剣が飛来した事にもだが…、その剣が人語を発した事になりより驚く。

 「えへへ♪スゴいでしょ~!ライアンのおじさんだよ!!」

 『おじさんでは無い!!』

 ネプテューヌの驚き様にライアンを振り回して荒魂達を事も無し気に斬り倒しながら結芽は胸を張る。

 間髪入れずにライアンがおじさん呼びを否定する。

 

「ダグオンだけでなく、人が…刀使でもない人が荒魂と互角に戦っている?!」

 警官の1人が一誠が荒魂を赤龍帝の籠手で殴り飛ばす所を目撃し動揺する。

「待て、あの少女も本当に刀使か?アレは御刀には見えないぞ?!」

 相方も結芽が持つライアンに驚き開いた口が塞がらない。

 そんな警官達が茫然自失としている間に、ダグオン達が、ネプテューヌ一行が、結芽とライアンが荒魂を駆逐し続ける。

 

 そこへ遅れて到着する2人の刀使が荒魂へ突撃する。

 

  そいつぁアタシの荒魂ちゃんだ!寄越しやがれぇェェエ!!

 

 「いやいや呼吹さ~ん、あたし達が後から来たんですからそれは筋違いなんじゃ……」

 

 鎌府の制服にパーカーを被った短いツインテールの短刀二刀流、七之里呼吹と綾小路の白い制服で身の丈以上の大太刀を振るうポニーテール、山城由依。2人の刀使が参戦する。

 

 「七之里に山城……特祭隊の遊撃か。近隣の刀使ではなく彼女達が来たと言う事は、任務中かはたまた任務帰りか」

 カイがシールドスモークで翻弄しながら2人が現れた理由を推測する。

 「へぇ由依のヤツ、腕が立つのは知ってたが、あの人数でもヨユー綽々か」

 シンが肩と腕からミサイルを放ち荒魂の動きを阻害する。

 「調査隊……?ああ、あの清香おねーさんと群れてる人達かぁ」

 結芽が一瞬、誰だったかと思い耽り、嘗て己がちょっかいを掛けた清香を頭に浮かべる。

 

 「ははっ♪愛してるぜぇ~!荒魂ちゃーーーん!!」

 呼吹が高揚した声で荒魂へにむべも無く突撃し舞い乱れる。

 

 「相っ変わらず…荒魂相手だと狂犬染みてるなぁ……」

 エンが犬歯を覗かせ嬉々として荒魂を斬り付ける呼吹に些かドン引く。

 そして──

 

 「スマン!遅れたわい!」

 「無事……と言うか、余裕な様ですね」

 ドリルゲキ、ウイングヨクが更に合流する。そうなれば後は一方的な戦いになる。

 

「す、凄い…!!」

「あんな簡単に荒魂が……」

 警官は最早眺めるだけである。

 

 「何故、奴の炎はあの獣に通じる?そして何故オレはあの青いヤツが気になる?」

 ライザーは自身の炎が通じなかった荒魂を同じ様に炎の攻撃で倒すエンに疑問を抱き、それとは全く別に何故かは知らないがターボカイが気になる事に軽い動揺を覚える。

 恐らくアルファが此処に居れば茶化して笑いながらこう述べるだろう。"中の人の記憶じゃない?"と──

 

 

 「最後の一匹!誰にも譲らねぇ!アタシのもんだ!!」

 残る荒魂を誰にも奪わせまいと誰よりも速く駆ける呼吹。

 だが…荒魂しか見ていない彼女は気が付かなかった、上空から人の形をしたナニかが降ってくるのを……。

 

 

 「イヒヒヒヒッ♪見付けたぞ!お宝ァァぁああ!!」

 

 

 声とは裏腹にハラリと羽根が落ちる様に静かに降り立つナニか。

 それは赤く、紅く、朱く、緋いドレス。

 金糸の髪を後で纏めながら一部を鳥の尾のように伸ばしている。

 右手に朱い刀身と羽根の意匠を持つ刃文の刀を握る。

 笑みを浮かべたドレスの女が呼吹の二振りの一撃を弾く。

 

 「っ?!何だァ!?!?」

 ドレスの細腕にノックバックされた呼吹が目を白黒させる。

 「はわ~!!?目茶苦茶に美人さんですよ!!何者ですか!!?」

 由依もまた、いきなり現れた正体不明の絶世の美女に瞳を輝かせながらそれでも警戒は怠らない。

 

 「あの女が持ってんの……まさか、いやでも…」

 美濃関刀匠科のエンがドレスの女が持つ刀に有り得ないとばかりに頭を振るう。

 「何だ?エン、あの刀に心当たりが在るのか?」

 カイがエンの意味深な反応にその真意を問う。

 「……見た目は人間と遜色無いが、あの気配は人では無いな……」

 リュウがドレスの女の気配にいっそう瞳を鋭くさせる。

 「ウッソだろ?!あんな美女なのにカ!!?」

 シンがリュウの言葉を受けて肩を下げる。

 

 

 「フフ……まさか、こんな所で見付けられるなんて…!」

 ドレスの女は結芽、そしてネプテューヌを見ながらその美しい顔を気持ち悪いくらいに愉悦と享楽を含めた喜びに歪める。

 

 「な、なんか私の事見てる?」

 

 「うぇ~…なんかあの女の人気持ち悪い」

 

 ドレスの女の視線と態度にネプテューヌと結芽が怖気を感じて身震いする。

 荒魂は女の気配を至近で感じた為、怯え震えている。

 女は一頻り悶えると朱い刀で結芽達を指す。

 

 「可憐で憂い少女達!わたくしのコレクションに入るがよいぞ!!我が名は"喜びのアドヴェリア"!美しきモノの探求者!」

 

 背後に邪な気と淫陶な背景を背負った美女が高らかに謳う。

 

 その顔はやはり美しさを台無しにした涎をだらしなく垂らした残念な間抜け面であった。

 女の手に握られた御刀、四霊鳳凰が霞む程に…。

 

続く。

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 変態だーーーー!!変態だよー!?何あれーーー!!?

 

 なんかネプおねーさんと私の事見てる……、キモチワルイ。

 

 ヒヒっ、恐いのも痛いのも一瞬。わたくしの元へ来れば幸せになれるぞ?アヒャ♪

 

 ふざけるな!姉ちゃんをお前みたいな変態に渡すか!!

 

 同感だネプテューヌは俺の物だ。

 

 妹を邪な目で見るのは止めて貰おうか、イカれた異星人。さもなくば容赦はしない!

 

 ヒヒっ、なるほど御家族の同意が必要か!なら力ずくで許可を貰おうか!!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 驚天動地?!変態あらわる!!

 

 タイトルぅぅぅう?!!

 

 

 




 誰かTwitterで麒麟と応龍の御刀画像挙げてる人居ないかなぁ…。因みに私はTwitterは基本呟きません、呟いてもゲームのイベントアイテムゲットとかの時の定型文くらいです。
 そもそも使いこなせて無いですし、要らない事呟いて絡まれるのも怖いので。

 所で私の創るキャラクターって個性強いんですかね?

 ではまた次回


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第八十三話 驚天動地?!変態あらわる!!

 こんばんわ!
 変態(宇宙人)が思ったより勝手に暴れたので長くなりました。反省。

 鬼一法眼が刺さったので、執筆速度落ちそうなこの頃。加隈ボイスであのビジュアルは反則ですよ。
 
 シンデレラグレイ1巻、購入しました!簡単パイセンはヤッパ可愛い。
 アプリもやっと出走しますし楽しみです。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 前々回の予告サブタイトル

   鳳凰:よっしゃ、遂に出番や!

 

 前回の登場にて

   "喜びの":ぁぁぁああ!幼女!麗しき幼女ぉぉお!!

   鳳凰:アレ?!ウチの出番は!!?詐欺やん!予告詐欺やん!!

   霊亀:哀れ…変態の手に渡ったばかりに……。

 

 てな感じだったよね~、ネプちーと結芽っちダイジョブかなぁ(;゚Д゚)

 


 

 

 「ウヒョヒヒフフ…フヒヒヒヒャハッハハハ♪」

 

 赤く、紅く、朱く、緋いドレスを纏った金糸の髪を美しく飾った美女が奇声を挙げて身悶えている。

 なまじ、整端な顔立ちを持つが故にその行動と容姿のギャップが激しい。

 こんな残念極まる美女の名は【喜びのアドヴェリア】、宇宙監獄エデンで妖精の付き人を務める異星人にして喜怒哀楽の喜を司る【罪窩の四騎士】の一角である。

 哀を司る【哀しきブリューリテ】以外、出身惑星、種族が不明と言うのが罪窩の四騎士の特徴である。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━浜松のとある場所

 

 浜名湖を挟んで現在ダグオン、ネプテューヌ一行、そしてアドヴェリアの騒動を眺める2つの影──否、1台と1匹。

 

 「あーあ、やっぱりこうなったんよ」

 「まぁ、あの女が降りて来ると分かっていた時点でな…ウン」

 1台の方は嘗てダグシャドーと激闘を演じた宇宙海賊オルゴンのメンバー、高速偵察諜報員(ハイウェイスパイ)アスクラ。そのビークル形態である。

 そして──

 

「ママ~!ペンギンがバイクに乗ってる~!!」

「凄いわね~。(何かのイベント告知かしら?)」

 

 アスクラに跨がる…跨がる?黄色いボディのゴーグルを掛けたペンギン、アスクラ同様オルゴンのメンバー──惑星文明研究員フリッジだ。

 このフリッジ、肩書こそ宇宙海賊に見合わぬ物であるが、傭兵時代、そして宇宙海賊転向後も戦場で略奪行為を働いている。

 曰く、死人から使えるモノ、価値あるモノを奪って何が悪い!との事だ。

 しかしオルゴンの中では比較的、戦場以外でも頭を使う側のメンバーなので未開の惑星文明には心が躍っているのも事実である。

 

 「なぁ、フリッジよぉ…お前さん、何でまた()()()()()()()()()()()()()?ウン?」

 アスクラが己の上に跨がる"そんなの"こと人間大のフンボルトペンギン形態のフリッジに語りかける。

 「可愛いだろ?ペンギン。それに副船だけ動物なんも寂しいし、マンモスとペンギンって相性良さそうじゃんよ」

 「副船長ボッチ扱いは止めろよな、ウン。にしても、あの女自重しねぇなぁ…ウン」

 フリッジを通して視覚野を共有しているアスクラはアドヴェリアの醜態に辟易する。

 

 「こんな辺境の星の現住生物を欲しがるなんて理解出来ないね。ウン。あ、攻撃された」

 「確かに辺境だがね、オラ的に地球人っつーのは中々稀有な生物だと思うんよ。原始的な理由で未だに同種同士で殺し合いしてる割に倫理観は殺人を忌避するわ、楽を求める為に苦労するわ、アレだけ一つの星に国家が反立して種として成り立ってんのはかなり珍しいと思うんよ。それこそ最初に挙げた殺し合い、アレも争いの為だけにあそこまで技術を歪に発展させられんのも凄いんよ」

 フリッジが珍しく彼なりの学者的観点を述べる。アスクラはマフラーから排気煙を大きく蒸かせ、そんなもんかねと溢す。

 

 「おろ、またまた攻撃喰らった。あのお嬢さん色々大丈夫なんかな?」

 「まぁいざとなればオイラ達が影ながら手を貸して助けてやろうや。ウン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━浜松市・浜名湖近辺自然公園

 

 「あべしっ?!」

 どこぞの世紀末救世主漫画に出てくるヤラレ役の様な悲鳴を挙げて大地の上に赤いドレスが転がる。

 

 「な、なんて…しぶとい野郎だ。いや女だしアマって言うのが正しいか!?」

 

 「そんな事はどうでも良い!いきなり現れ一人で勝手に興奮しては悶えていたから攻撃したが、何なんだコレは?」

 

 「美人だとか何だとか、そんな要素全てをダイナシにしてるよナ、このネェチャン。つか敵ダヨナ?コレ?」

 

 「……敵味方以前に邪気が強すぎて意味が解らん、悪意とは別の次元の邪気だ……」

 

 「何と言うか……まさか二度も無防備に攻撃にされるがままになるとは…逆に不安になりますね…」

 

 「そいでも生きとるようじゃから油断は禁物じゃ、生きとるよなコレ?」

 

 6人の戦士が攻撃を受け地面に倒れた女に対し各々の了見を述べながら構える。

 

 「おぉう……ダグオンのみんなフツーに攻撃してたけど、見た目メッチャ人間にしか見えなかったよ!?初めてこの世界で見たウチュウジンより人間ぽいのに!!」

 ネプテューヌは女が現れてからその奇行に唖然としながらもリュウの一言と言い知れぬ生理的嫌悪感諸々により外見の一切が人間と何ら変わり無いドレスの女ことアドヴェリアを容赦無く攻撃を加えたダグオン達に対し思わず叫ぶ。

 

 「いやでも……なぁ?」

 「ああ、何故だか躊躇ってはいかんと言う気がしたんじゃ…」

 エンとゲキが顔を見合せながらネプテューヌの発言に対し躊躇いがちに答える。

 

 「……何でしょうね?この、何と言いますか、今までの宇宙犯罪者達とは違った意味で危険性を感じる存在は?」

 「少なくとも、妹が感じた悪寒分は我々の攻撃は正当化されても良い筈だ」

 ヨクが未だにピクリとも動かないアドヴェリアを解析しながら歯切れ悪く溢す。

 カイは最早個人的な事情が見え隠れしていなくも無い、一応、由依と呼吹の手前結芽の名は伏せたが、彼の本能は一刻も速く結芽を連れて此処から去りたいと言う部分と、さっさとこの得体の知れぬ敵にトドメを刺し、出来る事ならば跡形も無く消し去ってしまいたいと言う感情で溢れていた。

 

 

 「くっはぁぁあ!!いけないいけない、詐欺師の不細工の護衛ついでに地球に降り、暇だからその辺散策していたらとんだ掘り出し物を見付けてついつい興奮してしまった…!」

 やけに説明的な科白と共にドレス姿で器用に飛び起きるアドヴェリア、その顔は先程の間抜け面とうって変わって美女全としている。口許の涎痕に目を瞑ればだが……。

 

 呼吹がそんなアドヴェリアを見て、次に由依に目を向ける。

 「お前、ウチュウジンの親戚なんて居たのかよ?」

 「呼吹さん?!何を言ってるんですか!!?」

 これには由依もツッコまざる負えない。最初は突如として現れた美女の異星人に荒魂討伐の邪魔をされた呼吹はイライラしていたし、由依もアドヴェリアの美貌に見惚れていたのではあるが、彼女の奇行には心持ちドン引きである。

 「まったく、失礼しちゃいますね。あたしだって弁える時は弁えますよ!人を節操の無い変態扱いしないでくださいよ」

 清香かミルヤが共にこの場に居れば何とも言えぬ顔をしたであろう事は想像に難くない。正にどの口が言うかである。

 「いや、お前も割りとあんなもんだよ…」

 呼吹が心底呆れたように呟く。七之里呼吹は荒魂さえ絡まなければ基本は常識的な刀使なのである。

 

 そんな刀使2人のやり取りを置いても、アドヴェリアの登場にはあらゆる意味で皆度胆を抜かれたと言う事だ。

 改めて、立ち上がったアドヴェリアが己が立つ戦場を俯瞰する。

 (ふむ、我等が邪魔者ダグオンに、我々とは違う異世界から来たとか言う連中、それに刀使、後は荒魂と虫ケラ。そしてそれはそれとして幼女!幼女が二人!!一人は正に天真爛漫でボーイッシュ感溢れ、でもそこはかと無く乙女心はある幼女!もう一人はフードに隠れてよくは顔が見えないけれど…あのもう少しで第二次性徴迎えますよ!後もう少しで子供から大人の階段の陛まで来てますよ的な正に熟れごろ食べ頃愛で頃な幼女!!ウヘヘヘ♪)

 俯瞰…していたのだが、最後の方は欲望に抗えなくなっている。

 

 「?!」 「…!!」

 

 そんな邪な想いを感じたか、ネプテューヌも結芽も背筋の辺りに悪寒が走る。

 そんな2人(ターゲット)の反応など知らんとばかりにエデンの中でも監獄主に迫る実力を持った残念美女は口を開く。

 

 「お、お、お、お嬢ちゃん達はいくつなのかしら?ハァハァ……(わたくしの力に恐れ慄けダグオン共!)」

 

 

 「へ……変態だーーーーーー!!?」

 

 建前を建前に出来ぬ程の我欲まみれな発言にネプテューヌが思わず叫ぶ。

 その表情は眼をぐるぐるにして目尻に涙を溜め、口を鳥のように菱形にした漫画の様である。

 

 「何なのかしらね…異世界、それも宇宙の彼方から来た存在にも性癖を隠さない人がいるのね……」

 リアスが偏頭痛に苛まれ額を押さえる。

 「やべぇ…何がヤバいって、おっぱいドラゴンとかケツ龍皇だとか、そんなレベルじゃ無いくらいヤバさ全開の変態が目の前に居ることがやべぇ…!」

 一誠、アドヴェリアのあまりにあんまりな奇行に何処からか謎の電波でも受けたのか平行世界の知識(義姉が存在しない世界)とでも言うべき科白を溢す。

 

 そしてネプテューヌ達がアドヴェリアに頭を抱える一方でダグオンと刀使達も、今までに無い敵の意味不明理解不能さに悩まされる。

 

 「あいつマジで危ないな…!」

 エンが今までに会った事の無い人種に自分の常識が崩れる音を聞く。

 「ウ~ン、顔、スタイル、声、オール100点SSSなのに凡そ全てを台無しにするあの性格…いや性癖か……ハァ~宇宙は広いねぇ、今回ばかりはオレもパスで」

 シンはアドヴェリアのあまりの酷さに匙を投げた。

 

 「……警察に突き出すか?」

 「流石にそれは……。それに彼女は宇宙人ですからむしろ僕達の方が捕まえる側ですよ?」

 リュウがアドヴェリアを見ながらトンチキな事を口走る。ヨクはそもそも自分達がその警察の立場であると真っ当な事を言うとリュウがあからさまに肩を下げた。

 どうやら彼程の人物であってもアドヴェリアの奇行は堪えたようだ。

 

 「あの女人、完全に御チビとねぷてゅーぬを狙っとるぞ!?」

 「何としても奴は此処で滅するべきだ!!」

 ゲキはアドヴェリアの視線が先程から結芽とネプテューヌに注がれ一向に動かない事に最近マシになっていた女性に対するトラウマがぶり返す心持ちになる。

 カイなど嘗てのライアンの様な事を公言しアドヴェリアに殺意剥き出しである。

 

 (過保護…) (過保護ダネぇ) (過保護ですね…まぁアレを見れば仕方無いかもしれませんが……) (…気持ちは理解出来る……) (ワシも妹が居たら分かるんじゃろうか?)

 カイ以外のメンバーは心中で結芽に対するカイの過保護ぶりに苦笑する。

 

 (かいしょーくんがどんどん過激になってる!?)

 (まぁ、ネプテューヌが絡んだ一誠も大体あんな感じよね)

 (一誠くんと違って普段真面目な彼の場合、色々とギャップがあるなぁ~……)

 

 「気持ち解るぜ!俺も姉ちゃんに悪い虫が居るからな!」

 「フッ、言ってくれる。俺をあんな変態と一緒くたにするなよ?それはそれとして奴は此処で滅ぼすと言うのは同意しよう」

 女性陣がカイの豹変ぶりに各々感想を述べる中、二天龍は何時の間にか神器の鎧を展開していた。

 「お前ら…大概仲良いよな…?」

 妙な所で気が合った赤と白の龍へヘラクレスはボソリと溢す。

 

 さてはて、ネプテューヌは兎も角として結芽の方はと言えば………。

 

 「12歳って言った方が良いのかな?おじさん?」

 『敵だろう。態々律儀に応対する義理は在るまい?』

 自らの手に握る相方と相談していた。

 故に変態の変態性を見くびっていた、今し方の少女と剣の会話を、その優れた聴力で聴き捉えたアドヴェリアは絶頂へ至る。

 

 「じゅ、じゅ12歳!!ふひひ…正にわたくしの予想通り!地球人が幼女から少女へ至る熟れ頃の年代!!嗚呼!神は此処に居た!さぁお嬢ちゃん!これ以上老けてしまう前にわたくしの元へ来て、永遠の若さのまま!余生を過ごさないかしら!!?」

 

 「やだ!」

 

 ──やだ! やだ! やだ! やだ!

 

 少女の飾らぬ本心からの拒絶が空に木霊する。

 結芽と拳を握り震えるカイ以外の皆がアドヴェリアへ顔を向ければ、ドレスの女はまるで超巨大な言葉の刃の矢印に貫かれたかの様に体を海老反りさせ痙攣していた。

 

 「殺す…!」

 

 ジェゲンガ星人フィメルを相手にした時同様…或いはそれ以上の怒りのオーラを立ち昇らせるターボカイ。

 蒼い疾風が音速を越え、光速を凌駕し、矢となってアドヴェリアへ迫る。

 

 

 「ホイールキックオォォォバァァァアロォォォォォォドォォォォオ!!」

 

 本来は刀使の迅移に対応する為の超高速移動機能をホイールキックに上乗せして、目の前の不埒者(度し難き変態)に喰らわせる。

 衝撃波が吹き荒れ、砂塵が舞い、大地に大きな亀裂が走る。

 

 「「「「「カイ…!?」」」」」

 

 「やべぇな青い奴めちゃくちゃキレてんじゃねぇか…」

 「はぇ~、あの女の子がよっぽど大事なんですね~。もしやあのフードの下は途轍もない美少女なのでは!?」

 呼吹がカイの怒りに引きながら怯んでいる傍ら、由依はフードを被って顔を隠す結芽に興味津々だ。

 

 そして砂塵が風で晴れる──

 

 「なっ…?!」

 青い戦士の驚愕の声が洩れる。

 

 「ひひ……ダグオン、随分とお冠のようですわねぇ?もしやあの幼じ…少女は身内なので?うふふ…だとしたら貴方の許可も要るかしらね?」

 アドヴェリアのスカートの上部が翼の様にその身を包む。

 カイの蹴りはその翼に阻まれた形となったのだ。

 「戯れ言を…!」

 即座に距離を取り、敵の間合いから退避するカイ。アドヴェリアはスカートの翼を元へ戻しゆっくりと上体を起こす。

 「さぁわたくしの目的の為に素敵なパーティー始めましょう?」

 その目は先までの変態のそれで無く、怜悧な殺人者のソレだ。

 喜びの罪窩はそのドレスと同様の紅き御刀を構える。

 

 「っ!やっぱアレは御刀か!!?」

 「ハァ?!どう言うこった?!何で宇宙人が御刀を使えんダヨ!!」

 アドヴェリアが持つ刀が御刀に相違無い事にエンが困惑を呈する。

 シンは何故御刀を宇宙人が振るう事が出来るのかと困惑するエンに詰め寄る。

 「判らねぇ!でも一つだけ確かなのはあの御刀はどの刀工の作品でも無いって事だけだ!!」

 「確かに、あの紅い独特の刃……どの資料にも該当する物はありませんね。ですがあの神性は間違い無く御刀の物、一体アレは何なんでしょうか……!」

 エンの言葉を受け解析を行ったヨクがアドヴェリアの持つ鳳凰に疑心を向ける。

 

 「フフフ…驚いている驚いている。まさかお前達も我々が御刀を持っているとは思わなかったようですわね?良いでしょう!その反応の愉快さに免じて我が愛刀の銘だけは教えてあげましょう!さぁ!良く聞き!良く見ると良いですわ!!我が御刀……"鳳凰"を!!!」

 

 紅い刃を女傑が振るう。その切っ先が振り下ろされる先は先程から一貫して本能の恐怖から身動ぎ出来ずに居た荒魂。

 鳳凰が荒魂に触れた瞬間、獣は炎に罷れその姿を変質させる。

 

 「……荒魂の姿が変わっていく…?!」

 リュウの言葉通り、炎に罷れた獣は段々と熔けてゆき、4つの影を為す。

 1つは獣の荒魂を一回り小さくし背面に翼を生やしたマンティコア。

 1つは蛇の如く細長い胴体に翼を生やしたケツァルコアトル。

 1つは人と同様の姿に右手が刃の様に鋭い天使を模した翼人。

 最後に、球体に翼が浮かぶ謎の物体。

 

 4つの異形がアドヴェリアを中心として一行の前に立ち阻かる。

 

 「ぁアっ?荒魂ちゃんか?アレ…」

 北谷で肩を叩きながら訝しげに荒魂の獣から別たれた4つの異形を見る。

 「ファインダーの反応は一応…荒魂を示してますね……」

 由依が左手の端末片手に右手で額に笠を作り注目する。

 「うーん、私達の世界でも強い敵に何でもアリなのが居たけど……荒魂も何でもアリなんだ…」

 ネプテューヌが分裂、増殖した荒魂に冷や汗を覚える。

 ネプテューヌは驚愕しているが戦力比で言えば、分裂した個体1つ1つは実の所最初の獣型より強くは無い。

 しかし問題は鳳凰によって増えた、その一点に尽きる。

 

 ──Syaaaaaaaaaa!

 

 蛇型荒魂(ケツァルコアトル)が呼吹に襲い掛かる。

 「ハッ!自分から飛び込んで来るなんて殊勝な荒魂ちゃんじゃねぇの!!まったくこれだから止められねぇ!愛してるぜぇぇえ!!」

 蛇型の咆哮に怯むこと無く迎え撃つ呼吹、二刀を手許で器用に操り荒魂をぶつ切りにする。

 「さぁ、次はどいつだぁ?!」

 剥き出しの犬歯、その笑顔を見てリアスとイリナが呼吹のイメージを固める。

 

 「あの娘……戦闘狂なのかしら?」

 「う~ん、さっきも荒魂を横取りするなって言ってたし性格に難がある娘なのかも…」

 

 その傍らでさり気に美少女2人の側に近寄っていた由依が叫ぶ。

 「呼吹さん!まだ終わってません!!?」

 

 「あっ?」

 

 由依の声に胡乱と共に振り返る呼吹、瞬間目に飛び込んだのはぶつ切りにされた筈の蛇型が再生し己に向かって牙を突き立てようとする所であった。

 (やべぇ?!躱せねぇ!?)

 沫やこれまで、そう思わず呼吹の脳裏に過った瞬間、吹雪と銃弾が蛇型を呑み込む。

 

 「シャッ!ギリギリセーフ!」

 「ですが、敵はまだ健在です!」

 シンがガッツポーズする横でヨクが声を荒げる。その言葉の通り、蛇型は即座に凍結から回復し銃弾に砕かれた身を再生させる。

 

 同じ様に、獅子型を相手取りドリルクラッシュで貫いたゲキが鬱陶しそうに声を挙げる。

 

 「だぁぁあ!!? また治ったぞ!何なんじゃコイツらはぁぁぁぁあ!!」

 「殴っても穴開けても治りやがる。面倒だな?!」

 ゲキと共に獅子型と対峙していたヘラクレスがげんなりとした感想を述べる。

 「ネメアの獅子を相手取るよりはマシだろう!貴公はそのままゲキのサポートをしてくれれば良い!」

 翼人型の剣と蹴りで渡り合うカイがヘラクレスを激昂する。

 「……球体と言うのは存外、厄介だな…!」

 シャドー手裏剣やクナイを弾かれたリュウが球体型に歯軋りする。

 

 「はーっはっはっは!どうだ?ダグオン!どうだ!異世界の迷い子!この鳳凰の力は!恐れいったか!!」

 「なろっ!てめぇを倒せば!!」

 高笑いするアドヴェリアにエンが肉薄するも炎の拳を鳳凰でいなす。

 「フフン、単純な奴め!わたくしを倒したからと言って、荒魂共が止まるとは限らんだろうに?ま、幼女と言う勝利の女神が居る以上、わたくしがお前達野蛮人に負ける道理は無いのだがな!あーっはっはっはっは!!」

 一々幼女どうこう口にしなければ強敵としての威厳があっただろうに、何とも締まらない。残念此処に極まれり。

 

 「誰が誰の女神だ!姉ちゃんはお前の女神じゃねぇよ!!」

 エンの後ろから赤龍帝の鎧を纏った一誠が拳を振り下ろす。

 籠手により強化、増幅されたその拳をドレスの翼で包み流す。

 その行動で出来た背後の隙を突こうと白龍皇の鎧で身を包んだヴァーリが半減をアドヴェリアに仕掛ける。

 「手応えがある。」 『どうやら奴には半減が効くようだ』

 「ふぬ?少し身体が気怠い?が、幼女の前には関係ない!欲を言えば幼い美少年も欲しい!具体的には地球換算で9歳くらいの!!」

 しかしトンチキな発言と共に白い閃光を蹴り上げる。

 「何っ?!くっ……!」

 『奴の力は確かに低下している…!だと言うのにこんな阿保な理屈で防がれるだと?!!』

 神器の中のアルビオンも敵のふざけた強さに苦言と文句を語ちる。

 

 「もう!こうなったらやっちゃうよ!」

 泥沼と化した戦況、それを打破する為にネプテューヌが手札を切った。

 

 「刮目せよ~!女神の力!へ~んし~ん!!」

 ネプテューヌが光に包まれ白と紫のツートーンカラーを思わせる服が消える。

 そしてどういう原理か不明だが、小学生並みの身長から等身が伸び、女性のソレへと変貌する。

 

 「パープルハート、見参!」

 

 光が晴れた場所には身体にピッタリとフィットした黒い近未来的なスーツと装甲を纏い、所々肌を露出させた、些か刺激的な格好の濃い紫の髪の一部を後ろ手に三つ編み状に纏めた怜悧な女性が立っていた。

 

 「は?」 「何だと?!」 「ウソん…」 「これは…驚きました…」 「……魔法少女と言う奴か…?」 「おおう、何ぞ鞭を振るいそうなオナゴになりおった!!?」

 ダグオン達は突如として姿を大きく変えたネプテューヌに目を丸くする。取り敢えずゲキが溢した鞭云々は別の女神であるので彼女は無関係だ。

 

 「うひょ~!?チビッ子元気美少女がとてもステキなお姉さまになりましたよ?!是非ともお近づきに!!」

 「アホか!?状況を考えろ!!」

 由依が一連のネプテューヌの変貌に遂に溢れた欲求に従い動こうとするのを、呼吹が制服の首根っこを掴んで無理矢理制する。

 

 「ネプおねーさん綺麗~。私も変身出来ないかなぁ」

 『あの者は女神とか言う特別な存在なのだろう?それにお前は人間だ、ゆっくり大きくなれ』

 結芽が溢した言葉に父性をちょくちょく見せるライアンが諫める。

 そして、ネプテューヌが女神パープルハートへと変貌した事に何より驚いている者が此処に居た。

 

 

 

「はっ?」

 

 

 "喜び"のアドヴェリアである。

 ドレスの女は固まる。それにつられるかの様に鳳凰で別たれた荒魂達も動きを止める。

 

 「は?」

 先程洩らしたドスの効いた声と同じ言葉を今度は小さく口にする。

 

 「いや、ちょっと……ちょっと待って、ちょっと待って下さいませ!確かに女神とは言いましたわよ?言いました、でも…は?え?ちょっと?何で?何で…………………………」

 わなわな震え始めるアドヴェリア、ソレは結芽の年齢を耳敏く聴いた時のような歓喜の震えでは無く、怒気が隠った憤慨のモノである。

 

 「何で…どうして……成長しくさって下さいやがりましたの?!このド糞ヴィッチがぁァァァァァァぁアアアアアア!!?!!」

 

 絶叫が空気を震わせる。大気が揺れ辺りの人物全てがポカンとしてしまう。そう、変身した張本人さえも。

 

 「え?」

 パープルハートも敵の反応が予想外であった事と何故か謂れも無くビッチと中傷された事で思考が停止する。

 アドヴェリアはそんなパープルハートに目もくれずに頭を抱え怒りに悶える。

 

 「あああ!!?嗚呼!!何と言う…何と言う悲劇!!幼女が成長しくさってしまうだなんて!!これを悲劇と言わず何と呼べば良いのでしょうか!!?」

 

 エン、赤龍帝鎧一誠、白龍皇鎧ヴァーリが目の前に居るにも関わらず、そんな事は関係無しに地団駄を踏むアドヴェリア。正直隙だらけである。

 その無防備な姿に今まで傍観者に徹して居たライザーが取り敢えず、何と無しに自身の最大量の魔力を込めた炎撃を放つ。

 

 「畜生ですわ!こん畜しょ…あづぅぅぅぅうう゛?!」

 当然防御すら疎かになっていたアドヴェリアに直撃し彼女は熱さに身悶え転がる。

 そして勢いで鳳凰を手離してしまう。するとどういう訳か、別たれた荒魂達に変化が現れ、その身はドロドロと今度は熔けるのでは無く、溶けてゆく。

 そのまま手摺を器用に転がりながら越え、湖に落ちる赤いドレスの女。

 

 「あ?荒魂ちゃん達が溶けちまった…」

 

 「まさか…彼女が御刀を手離したから…?」

 呼吹とヨクが荒魂の変化に目敏く反応する。ヨクは更にアドヴェリアが御刀を手離してから現象が起きた事に思考を巡らせる。

 

 「うぅ……おのれ…!卑怯にもわたくしを惑わせ欺いたばかりか、不意討ちまでするとは…!それでも宇宙警察の関係者か!!?」

 水辺より這い出し、合金性の手摺をに掴まり身体を持上げ地上に復帰するアドヴェリア、ドレスも髪もずぶ濡れである。

 

 「いや、俺はダグなんちゃらの関係者じゃ無いし……」

 ライザーが思わず呟く。

 

 「お前犯罪者じゃねぇか、そんな奴に卑怯とか言われたくねぇ…」

 エンが呆れ気味に反論する。

 

 「そもそも戦場で卑怯もクソも無いだろうに」

 ヴァーリも興が削がれた形となり嘆息する。

 

 「くっ…荒魂も最早使い物にならない……。幼女が減ってやる気も削がれてしまった。口惜しいが此処までとしておきましょう、さらば!」

 

 「あっ!待て逃がすか!!姉ちゃんをビッチ呼ばわりしたの訂正しろ!」

 

 「誰が訂正するものか!!このヴィッチ!売女!淫乱!詐欺!婆ぁ!13歳より上は老いぼれと動議なんですのよ!!」

 

 「ええいっ!!奴を逃がせばまた妹に要らんちょっかいを出すに決まっている!!この場で倒すぞ!!」

 

 逃げるアドヴェリアに一誠が先程アドヴェリアが洩らした暴言を訂正しろと抗議しながら追跡し、カイも同調して追従する。

 

 「カイ!御刀を回収して下さい!!」

 ヨクが叫ぶもカイは聞く耳を持っていない。

 「しゃーない!俺が!」

 エンが一誠、カイに遅れてアドヴェリア…延いては御刀鳳凰の元へ走る。

 

 

 

 「あー、それは困るね。ウン」

 「激しく同意するんよね」

 しかしアドヴェリア、鳳凰と一誠、カイ、エンとの間に新たな声と影が割り込み爆煙が辺りを包む。

 

 「な、何だ!!?」

 「煙幕?!新手か!?」

 「御刀が!!?」

 3人が慌てふためき足を止める。

 「……今の声は…?!」

 リュウは聞き覚えのある声に新たな乱入者の正体にアタリを着ける。

 「…そこっ!」

 声と影からおおよその位置を割り出し手裏剣を投げるが短い金属音が鳴るだけで手応えらしいモノは無い。黒煙が晴れた後の場所にはアドヴェリアの姿もアスクラともう1人の姿も、御刀鳳凰も無かった。

 

 「逃げられたかっ!」

 「のヤロー、次に会ったら絶対訂正させる!!」

 悔しがるカイと一誠、戦場となった自然公園にはダグオン達、ネプテューヌ一行、呼吹、由依、ライザー、そして待避しながらも何が何だか分からないと言う顔の警官達と爆発と衝撃波でひび割れた大地に沈むノロだけが残されたのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 いやぁ、スゴかったですね呼吹さん!あの宇宙美女の美しさとそれを置き去りにするインパクトの濃さ。

 

 やっぱアレお前の親戚かなんかだろ?お前よか酷いけど…。

 

 いやですね~、あたしはあそこまで変態じゃ無いですよ?可愛い女の子なら誰でもウェルカム、美人なお姉さまならお近づきになりたいってだけです!

 

 同じようなもんだろ……、っておい!何やってんだ!!?

 

 それは勿論!あそこにいるお姉さま方とお知り合いに!それに本部長も言ってたじゃないですか!異世界の人を本部に連れて来いって。

 

 あー…めんどくせぇ。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 変態は終わらない。オカ研、刀剣類管理局へ

 

 素晴らしいお山ですよコォルェワ!!ウェッヘッヘッヘ♪




 と言う訳で、新キャラフリッジ登場。モチーフは勿論トランスフォーマーシリーズから。

 鳳凰の能力はアレ、異星人が手にした時限定の能力ですので刀使が振るっても能力が高いだけの御刀です。
 いや使い手をほぼ選ばないので刀使からしたら手が出る程欲しい物ですけど。

 読者の方々はエデン囚人でお気に入りのキャラとか居ますかね?
 私自身はまぁ甲冑もとい引き籠りの傀儡宇宙人の少年が気に入っているので散り様を考えるのが楽しみです。
 
 とじみことラピライの同人誌って少ないですよねぇ。

 ではま次回


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幕間 迷い込んだ者達


 こんばんは。
 本編と迷いましたが、あらすじでちょくちょく触れてた彼女達の出番を作るならここかなぁとか思い、幕間で投稿する事にしました。

 最近は仕事の疲労感が残る所為か中々早くプロットを作れませんが許して候。

 そしてデジモン図鑑を見るのが最近の日課の1つ、所で何時になったらバンチョーリリモン追加されるんでしょうか?
 新しいデジモンはちょくちょく更新されてるのに……ラブリーエンジェモン?新手のプリ○ュアかな?



 

 ━━美濃関学院・学長室

 

 「ええ、テレビで見ていたわ。そう彼等と一緒に……。例の彼女は恩田さんに預けたわ。ええ、五條学長が保護した娘はまだ彼女の元に居るみたい」

 学長の執務を行う机に備え付けられた電話を取りながら、美濃関学長羽島江麻は電話の向こう側の相手に穏やかながらも真剣みを帯びた声で応じる。

 江麻の視線の先、壁際のオーディオ棚に鎮座するテレビから流れるのは山北町──現在は駒王町となった土地の現状を示す報道が流れている。

 街が入れ替わって約2日半、絶えず警察の警戒網を割って入らんばかりにマスコミが詰め掛けている。

 上空からの報道ヘリによる空撮でも街の一角が言葉では言い表せ無い様な様相を呈している。

 敢えて言葉を使うならば、それは立体的なゲルニカだろうか。

 見えない壁の内は恐らく異星人であろう何某かの存在の手により自由の女神や凱旋門、ピサの斜塔、シドニーコンサートホール、万里の長城、ピラミッド、首里城、世界を問わず様々な建築物がごちゃ混ぜになっている。

 それだけに限らず、見た事も無い建物や奇っ怪な森林郡、京都の古都らしき妖しい木造やオドロオドロしい物もあれば神聖さをモニター越しにも感じさせる用途不明の建築物まである。

 何より色がカオスだ。

 元の色の上に己の感性に任せたのであろうサイケデリックな色彩変えられた建築物達が目に痛い。

 常人には一切理解出来ないが、恐らく製作者には全容が見えているのだろう、変わらず絶え間なくモノを動かしている。

 

 「これも異星人だからこそ出来る仕業なのかしらね……ダグオン達も動きを見せていないそうじゃない?あれから何かしらの接触はあったの?」

 電話の向こう側の相手も異変解決の糸口を掴めない事に苛立ちが募っているらしい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女としては手をこまねくしかないのだろう。

 質問が些か無遠慮だと思い直し、話題を替える事にした。

 「所で彼女の他に異世界から来たと証言している人物だけど……、ええ、五條学長が京都に立ち寄った時に保護した少女は狐の尻尾を覗かせていたそうよ。そちらの……陽司さんの青砥館で面倒を見てる女性は…え?そう…彼女自身がそれを望んでいるのなら良いんじゃないかしら」

 平城学長五條いろはと電話の相手が其々に保護した少女と女性の情報を思い返しながら江麻はテレビを消し、会話を締めに掛かる。

 「そうね、兎も角…彼等に動いて貰うなら、接触がある衛藤さんや安桜さん達を窓口にする方が穏便かつ的確かもしれないわね。私はこれから恩田さんの所に向かい例の彼女の様子を伺います。貴女も性急にならないようにね紗南」

 電話の相手──現在本部にて懸かり詰めの後輩に労いの言葉を掛け、江麻は通話を終える。

 

 「本当に…今年に入ってから忙しなく色々な物事が起きるわね…」

 折神紫暗殺未遂事件から事を発し、ダグオン出現、異星人襲来、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題等々、この世界を取り巻く情勢は目まぐるしいモノだ。

 其処へ更に神隠し事件、街入れ替えと来たものだから紗南の処理すべき仕事に雑務が増えること増えること。

 学長職務以外ではどちからと言えば研究者気質な後輩の苦労を偲びながら江麻は数日前、美濃関の巡回区域で保護された金髪の少女を思い浮かべ、彼女を預けた美濃関OGの元へと向かう準備を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━都内某所・恩田累のマンション

 

「いや~、日を追う毎にどんどんおかしくなってくね、あの街」

 都内でもそこそこ優良な物件のマンションの一室でキャリアOLの独身生活です。忙がしくて片付けする暇もありません。そんな風に主張する程度に散らかったリビングで恩田累はテレビを見ながら呑気に語る。

 嘗て転がり込んだ可奈美と姫和の献身的な奉仕にて片付けられたその場所も同居人が消えれば瞬く間に元通り。

 それでも最低限ゴミ袋に纏めているのは、現在同居している少女を思んばかってか──

 「あの街って…やっぱり貴女の知ってる街だったりするの?()()()()()()()()

 なるべく陽気な声音で異世界の客人に画面の中の街との関係について訊ねる累。

 対してシルクも斯くやとばかりの金糸の髪を螺旋の様にカールさせた所謂ドリルツインテールの髪型に年相応の育ちの良さと気品を感じさせるつり目がちな少女が応じる。

 「ええ、はい……ある都合であの街には赴いた事があります」

 累からの問いに少々躊躇いがちに答えるレイヴェルと呼ばれた少女。

 彼女はまだ駒王町が山北町と入れ替わる前から起きていた神隠しによりこの世界に現れた異世界人の1人である。

 突如として見知らぬ世界に飛ばされ、偶然通り掛かった美濃関の刀使に発見され、紆余曲折の後江麻と対面、数日間の調書を経て進展が有った際を考慮した結果、江麻の手引きで累宅へ世話になっているのだ。

 そして本来勝ち気が強いお嬢様である彼女だが、見知らぬ土地、慣れぬ場所での生活とあって些か元気が無い。

 累もそれを理解してなるべく暗くならない様に率先して話題を振っているのだが、レイヴェルに覇気が見られないもう1つの原因が己のものぐさな生活にあるとは累も露程に思ってもいないだろう。

 この辺りが裕福な真正のお嬢様と仕事に忙殺される独身貴族の違いである。

 「ならもしかしたら、レイヴェルちゃんの知り合いが居るかもしれない訳か……無事だといいわね」

 「はい、ありがとうございます」

 世話になっている身の上か、素直に感謝を述べるレイヴェル。

 とは言え彼女もここで生活するに当たって数日は経ったのである程度の苦言は累に呈している。

 来た当初よりは大分マシになったのだ。

 「後、今日は羽島学長……羽島さんが様子を見に来るから」

 と事の序でにとばかりにサラッと口にした累。レイヴェルはそうなんですのと普通に流しかけて、しかし目をひんむく。

 曲がりなりにもこの世界で後見人をしてくれている恩人が訪ねて来るのだ。

 家主がコレとは言え、この部屋の様を見せる訳にはいかない。

 レイヴェルはこの数日間で慣れた簡単な家事に急いで精を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして、マンションの累の部屋に江麻が訪問すると、部屋の主が外に所在無さ気に立っているのを見付ける。

 曰く、客人の少女が大急ぎで掃除をしているのだとか、邪魔になるので追い出されてしまったとか。

 そんな累の言い分に江麻は何をしているのだと頭を抱えた。

 

 ──浜名湖の自然公園での戦闘が起こる数時間前の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━渋谷・青砥館

 

 利用客の殆んどが刀使を占める研師の店。

 店内を覗けば所かしこに飾られた刀の類い。

 店内に人の気は無く、店の奥……住人の生活圏内である居住区画で店主青砥陽司が店の商品となる荷を持ち出し一旦テーブルに置きながら腰を軽く叩いて荷出しを手伝う女性に礼を述べる。

 「いやぁ~、助かったぜ。陽菜が居ない間は人手が足りなくてなぁ…一応、稀にだが手伝いに来てくれた血気盛んな坊主が居たんだが、最近何やら忙しいのかめっきり顔を見せなくてなぁ。お嬢さんが手伝ってくれて大分助かってるよ」

 初老に差し掛かった頭を掻きながら陽司は仕事を手伝う女性に向けて感謝を尽くす。

 「いえ…これくらい、此方こそお世話になっているお礼ですので」

 そんな陽司の言葉に謙虚に返すのは銀髪の長髪に若干幼さの残る顔立ちの女性。

 丁度、少女と大人の中間くらいの年齢層だろう人物が苦笑気味に笑って返す。

 彼女がこの青砥館に世話になって早2週間、居候生活にも慣れたものである。

 「いやいや、謙遜すんなよ。刀使の嬢ちゃん以外にも、お嬢さん……ロスヴァイセちゃん目当ての一般客も来るようになってウチは嬉しい悲鳴を挙げてる。まぁどちらにせよ最近は情勢柄研ぎの仕事が多くて俺も大変だ」

 陽司がロスヴァイセと呼んだ女性はそのようですねと頷く。

 「最初の数日は此処が私の知る世界と違う事に戸惑いましたが、陽司さん達のお陰で生活には困りませんし、ある程度、この世界が置かれている状況も把握出来ましたし、後は──」

 「帰る方法だけ…って訳だ。ま、その辺はダグオンに遭えりゃ判るかもな」

 そう言って居間に置かれたテレビに視線を移す陽司。

 番組は入れ替え現象の報道から週末に毎回行われているダグオンの特集へと移り変わっていた。

 

 「ダグオン……連日のテレビ報道でも度々名前が挙がりますけれど、何者なんでしょうか?」

 同じ様にテレビへ視線を向けながら話題となった戦士達への疑問を述べる。

 「さてなぁ、俺の所見では血気盛んな若人ってとこかねぇ。悪人では無いのは確かだろう」

 相応に生きてきた人生感からそんな見解を口にする陽司、その言葉は気軽でこそあるが確かな確信も覗かせるようだとロスヴァイセは感じた。

 少なくとも彼女が元居た世界の上司であるスケベ爺よりは素直に信頼出来る言葉だ。

 

 「何か判ったら陽菜が何かしら管理局での情報を差障りの無い程度には教えてくれるだろうさ」

 無論、陽司独自に舞草の方から情報を得る事も可能である。

 陽司の陽気な言葉を受け銀髪の戦乙女はそれは組織の機密としては如何なモノだろうと言う考えが頭の片隅に過るのであった。

 

 

 ──レイヴェル同様、自然公園での戦闘が起こる数時間前の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達を含め、この世界へ迷い保護された者が同様に巻き込まれ、ダグオン達と行動を共にするネプテューヌ一行に遭遇するまで後──

 

 果たして彼女達は無事帰還する事が叶うのであろうか。

 

 

 





 サラッと五條学長の所にCVそらまるのお狐幼女がいると明かしましたが、幼女の出番は=変態出現の合図なので……。

 ウマ娘リリースされたら私のスマホは容量とか持つのだろうか………ダスカは確実に欲しいなぁ、次点でヒシアマ、タイキ、ブルボン、クリーク、お嬢、パーマかなぁ。
 ウララとターボはアニメの癒し


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第八十四話 変態は終わらない。オカ研、刀剣類管理局へ


 こんばんは。
 今更ですがこのコラボ、コラボとして一応此方が省略したりした描写の会話等はロザミア様に描写して頂ける形となります。
 勿論、ソレとは関係無く敢えて想像力の余地を持たせる為に省いた部分もありますが。

 プリンセスプリンシパルCrownHundred第一章観に行きました。
 チビッ子コンビの顔が可愛いかったり、相変わらずドロシーが映る度お山に眼が行ったり、古賀ちゃんアンジェは可愛いかったりでした。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 うう…うぅ……幼女が…幼女がぁ……。

 

 ウン。コイツやっぱ捨てよう。

 

 落ち着け!?こんなでも同盟相手だ!!

 


 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局

 

 「浜名湖近辺で出現した荒魂にダグオンと謎の刀使、そして異世界から現れたとされる者達が対処…。現場には七之里、山城の両名のみが先行して対応に当たるか………待ちに待ったダグオンの出現だが…同時に厄介事も付随するのはどにかならないものか」

 発令所の本部長席にて浜名湖で起きた戦闘行動に於ける事前報告に目を通していた真庭紗南が嘆息しながら真後ろのモニターに視線を向ける。

 其所に映っているのは特徴的な装甲を纏う、最早日本に知らぬ者の方が少数派となった謎の戦闘集団ダグオン。

 「どうだ?映像の方は…?」

 紗南は同じく発令所に務めるオペレートや解析等のサポートを行う生徒に訊ねる。

 「ダメです。履歴をいくら洗い出しても荒魂出現からダグオン出現までの現場の衛星画像の記録がありません。それと刀使らしき人物が振るっている御刀ですが………二振りとも管理局に登録がありません!」

 紗南からの質疑にデータベースを参照しながら答えるのは綾小路の制服を纏った利発的な佇まいの少女、水科絹香。

 元は一般の学校に通っていたが、妹が御刀に選ばれ刀使となった事から伍箇伝の門戸を叩き、妹の安全を確実な物とする為に本部の作戦立案や参謀指揮を行うまでに至った勤勉(シスコン)の才女である。

 「それと……ダグオンと交戦していたと思われる人物の所有している御刀も未登録の物と思われます…」

 次にモニターに映し出されたのは鳳凰を握るアドヴェリア。勿論、奇行も記録されている。

 紗南達、本部の発令所詰めの人間には音声が無い為、ダグオンや異世界人とどの様なやり取りがあったのかは不明だが、少なくともアドヴェリアが只の人間では無いと言うのは映像からでも理解出来る。

 「登録不明の御刀が三本……、いやそもそもあの緑色の刃は本当に御刀か?」

 フード姿の結芽が最初に振るっていたチョコミン刀に訝しげに顎に手を充て眉を潜める。

 「途もあれ、これで正体不明の刀使らしき人物が三人。いや……あのドレスの女も入れれば四人か。七之里、山城が事を上手く運んでくれれば良いんだがな」

 そうして荒魂と戦う6人の戦士と異世界の紫色の女神と紅白鎧、奇妙な力を振るう少女達のモノに映り替わった映像を見て事態の打開を願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━浜名湖近辺・自然公園

 

 「いや~こんなお綺麗なお姉さま方とお近づきになれるなんて……あたしってば一生分の運勢を使い切っちゃってるんでしょうか?でもうれしい!!」

 だらしない顔でデヘヘと声に出しながら山城由依はリアスに近寄る。

 「この娘…何かおかしなモノでも食べたの?」

 ニヤケ面でにじり寄る由依にそそくさ後退しながらターボカイに訊ねるリアス。

 「ぬぅ……(山城由依、これ程不埒な者であったのか…あの時感じた邪念は彼女のモノだったか)」

 返答に窮していると呼吹がカイの側に寄ってくる。

 「おい、ダグオンのリーダー。ちょっと耳貸せ」

 「別にリーダーと言う訳では無いのだが……何か要件があるのか?」

 荒魂が居なくなりやる気が駄々下がりの呼吹の言葉にカイが腰を僅かに下げ少女の言葉に応じる。

 

 「リーダーは俺だろ?」

 「無いワァ…オマエがリーダーとかマジ無いワ」

 「……指揮自体はカイが執っているのだ。そう誤解しても致し方無いだろう……」

 「エン、戦隊はレッド以外もリーダーになるんですよ?」

 「お主、レンタルして見とるじゃろ?絵空事はその頭の中だけにしておけ、カリスマ性はお主には無いぞ?」

 呼吹の言葉を聴きエンが己を指差した所、シンがやれやれと肩を揺らしながら否定し、リュウがカイをリーダーと見た呼吹の判断は仕方無いと加わる。

 ヨクとゲキがダグベースで鑑賞会を開いてまで観ているニチアサ特撮作品を引合いに出す。

 そしてゲキの最後の一言で取っ組み合いになった。

 

 

 

 「ふへへ……あの、超絶美人のお姉さま、ちょっと抱き着いてもよろしいでしょうか?」

 一方由依は揉み手を携えここぞとばかりにリアスへ願望を垂れ流す。

 「えっ…?いえ、流石にそれは……いくら同性同士だからと言っても礼儀ってものがあるでしょう?」

 異世界で初対面で尚且つ知り合いに似たタイプが少ない事もあって尻込みするリアスに由依はならばと迫る。

 「これから親しくなりましょう!お互いに知っていけば良いんですよ!」

 瞳にハートを撮す由依の剣幕に圧されるリアスをパープルハートと頭部の兜を解放した一誠、ヴァーリが離れて見守る。

 結芽はライアンを握りながらイリナの側に着く。

 「ね、ねぇ…結芽ちゃん、あの娘達知り合い?」

 イリナはリアスに迫る由依とカイと何事かを話す呼吹を指しながらこそこそと訊ねる。

 「う~ん…。あっちのおねーさんは知らないけど、もう一人は前に清香おねーさんと戦った時に邪魔して来たおねーさんだよ?」

 清香おねーさんとはあの時駒王で会った娘だったかと思い出しながらイリナは隣の少女が宣った"戦った"という科白に戦慄を禁じ得ない。

 (この娘…もしかして結構戦闘狂なの…!?)

 結芽当人はその行いに彼女なりの理屈が通った上での行動であったので、別に戦闘狂と言う訳では無い。

 相手によっては楽しんでいる節も無いではないが、主目的は自分のスゴいところを見せたい!と言う幼さ心である。

 

 「ってか、おい、由依、お前……ちゃんと説明しろよ!アタシがダグオンの方にワザワザ話てんだから、お前はそっちの話早そうなデカチチにとっとと本部長からのオツカイを果たしやがれ!!」

 カイと話し込んでいる途中で一向に本筋に触れず緩んだ顔でリアスの胸に顔を埋めようとする由依に対して痺れを切らし当たり散らす。

 「へへぇ~♪分かってますよぉ~、ちゃんとはなしますからぁ~」

 当の由依は遂にリアスに抱き着く事に成功し段々と言葉も覚束無くなる程に表情を蕩けさせている。

 「デカ……?!」

 リアスはリアスで呼吹の己への呼称に軽いショックを受けている。

 リアスにとって幸いなのは呼吹からの呼称にショックを受けている間に由依がその手でリアスの双丘を揉みしだかなかった事であろう。

 由依本人は『えへへ~ぇ、幸せ~……てんごくはここにあったんだぁ~』

 と変わらず覚束無い口調で破顔している。

 「…………ダメだなアリャ。もうアタシの手には負えねぇ」

 由依の奔放さに呼吹は遂に匙を投げ、関わらない事に決めた。

 「致し方無い。彼女達には私から説明しよう」

 

 (あいつ、毎度の事だけど余所行きな感じになると私って言うよな)

 (……公私を別けているんだろう、稀に素が出ていなくもないが…)

 1年コンビがカイの後ろでこそこそ話し合う。

 

 「オォォォォァアァァァウゥゥギギギギ!!?(由依のヤツ!ウラヤマシイぞ!コンチクショウォ!)」

 「シン………気持ち悪いですよ…」

 「偶に思うが、こやつは真正のアホなんじゃないかのぅ……」

 リアスに抱き着く由依を羨望し奇声で慟哭するシンに対してヨクは辛辣な言葉を口にし、ゲキも呆れた様に(かぶり)を振るう。

 

 「ンンッ!宜しいだろうか?」

 咳払いをし、関係者一同を睥睨するカイ。

 「お…おう!とっとと済ませちまおうぜ!」

 「そうだな。我々はこの世界では外様、舵取りの指針を委ねる身だ」

 「取り敢えず…リアスちゃんの為にも手早く済ませましょう」

 鎧姿の一誠、ヴァーリ、女神パープルハート姿のネプテューヌが気を取り直して返事を返す。

 

 「七之里……私の横に居る刀使が言うには、刀剣類管理局は異世界人である君達から詳しく話を聴きたいそうだ。任意ではあるが帯同を願うとの事だが……どうする?」

 カイが腕を組ながら異邦人の少年少女へと訊ねる。彼としては自分達の正体さえ黙秘してくれれば選択は委ねる腹積もりなので、当人達の意思に任せる。

 「うーん、そうね……私達だけで決めて良いのかしら?基地に残ったみんなの意見もあるから…」

 ネプテューヌが躊躇いがちに顎に手を添え思案する。

 「では、連絡を取りますか?僕のダグテクターならネプテューヌさん達と木場君との通信での会話も可能ですよ?」

 言うや否や、ヨクは腕部を翳し、水晶状の装甲が空中へ映写機の様に映像を投影する。

 「便利ねー……ひゃんっ?!」

 感心するイリナはしかし、次の瞬間艶やかな悲鳴を挙げる。

 一体何事かと視線を下げれば目前に迫る跳ねた黒いポニーテール。

 「うへへ~、こちらも中々~。さっきのお姉さま程ではありませんが形が良く張りも相応、何よりニオイが最高です~♪」

 変態(ゆい)である。この少女、最早欲望を押し隠さずこのままこの場に居る女性全てに抱き着く気である。

 「……埒があきそうにないな…。失礼する…」

 ボソリと溢し、イリナの体に抱き着く由依の背後に瞬間的に周るリュウ。

 強化された身体機能を器用に変身前のレベルまで抑えて手刀を後頭部からうなじにかけての部分に当て、気絶させる。

 「ぱぅっ?!」

 「え?あっ?!ちょっと!!?」

 意識が落ち、イリナに由依と御刀蛍丸の重量が一気にのし掛かる。

 「オウエエオオオ!」

 シンは……最早人語の容を呈していない。そのままフラフラと立ち上がり仲間の元へと歩む。

 

 そうこうしている内に話は纏まったのか、ネプテューヌ達が呼吹に近寄る。

 「ええっと……七之里さんで良かったかしら?」

 相変わらずパープルハートの姿なので口調は生真面目だ。

 「おう、つかあんたその格好恥ずかしくねぇの?完全に痴女じゃん」

 「ちっ…!?!?コホン…。──意外と失礼だよ!キミィ!」

 言われたショックからか数秒間固まった後、元の少女姿へと戻り、僅かに見上げる形で呼吹を指差す。

 「知るかよ、アンタらの世界じゃどうか知らねぇけど……こっちじゃ普通にアレな格好だろ。てか指差すな」

 ケッと半眼で嘆息した後、ポケットに突っ込んだ手を出してネプテューヌの指を雑に下ろす呼吹、そのまま先程からやけに静かな謎の刀使たるフードを被った結芽に視線をやる。

 「なーんか、どっかで見た気がしないでも無いんだよなぁ……。ま、今は良いか。で?どーすんだよこれから?」

 「ううん、釈然としない…。取りあえずは一緒に行くよ!その…とーけんるい管理局とやらに!て言うか、他に選びようが無かったんだよね……」

 そのネプテューヌの言葉に呼吹は不思議がるも、本部長からの使命を果たせそうなので別に良いかと頭の片隅へ追いやった。

 実の所、ネプテューヌ達はダグオンと違い転送が一方通行なのでダグベースへ帰還出来ない事がヨクを経由した通信にて判明したのだ。

 「はーん。ま、来るってんなら何でもいいさ。待ってろ、ノロ回収班の連中が来るから、そいつらの車に便乗して本部まで来い」

 あー、メンドクセと一通り説明を終えた後、悪態を附く呼吹。

 パーカーからちょこんとはみ出た両側の短いツインテールを揺らす気怠そうな少女を横目にネプテューヌ達はダグオン達に首を向ける。

 「私たちは迎えが来るまで待つけど……みんなはどうするの?」

 

 「どうするって言われてもなぁ、俺らは普通に帰るよ」

 「ですね。僕達は軽々しく同行出来ませんし」

 「……山城は任せる…」

 「同行出来ず申し訳無いが……くれぐれも、頼むぞ」

 「残りのメンツは後で本部の座標に送っちゃるからのう」

 「オォォォォ…!ハァ…一頻り叫んで落ち着いた…。ンジャま帰るか」

 エンが当然の事としてダグベースに帰還すると口にし、ヨクも正体諸々の事情から同意を示し、リュウが気絶したままの由依をイリナ他に託し、カイは謝罪の言葉と万に一つ機密を漏らさぬ様に念押しし、ゲキがダグベースに残った朱乃、祐斗、アーシア等と言ったメンバーも本部へ送る確約を述べ、シンはある程度落ち着いたのか帰りの音頭を取り始める。

 結芽は例の眼鏡を掛け最後まで口を閉じたままダグオンと共にライアンを伴って消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局特別祭祀機動隊本部

 

 ダグオン達の帰還を見届けた後、ノロ回収に帯同した輸送車に無理を言って帯同させて貰い、ネプテューヌ達は無事鎌倉へと到着した。

 勿論、ライザーも一緒である。

 

 「やって来たよ~~~!いざ鎌倉ぁ!!」

 長時間車に揺られていたとは思えぬはしゃぎっぷりを見せ叫ぶネプテューヌ。

 「とっとと行くぞー」

 そんなテンションを上げる少女を無視して呼吹は淡々と先へ進む。

 「差ぁ!?荒魂との戦いの時とテンション違い過ぎない!?」

 「ハァ?荒魂ちゃんでテンション上がるのは当然だろ?あんな楽しいモン他にあるかよ?」

 急にパーカーの裾を引っ張られ鬱陶しそうに答える呼吹。荒魂に対してブレないそのスタンスに異世界人達は唖然とする。

 途もあれ、本部──折神本家の正門前に立ちその威容に感嘆の声を洩らす。

 

 「なんか想像の十倍くらいデカイ!」

 

 「警察の一種って話だったからもっとガチガチの高層ビルかと思ってたぜ……」

 

 「武家屋敷とか言う奴か…いや少し違うか?」

 

 「ジャパニーズブシドーキャッスルね、私達が裏京都で見た妖怪の長の屋敷とはまた違った趣きね」

 

 「おも……。あっちのレンガ壁なんかがある建物は…学校…かしら?」

 

 「俺ら目茶苦茶見られてるな」

 

 ネプテューヌ達6人は比較的落ち着いて辺りを見回す、対して──

 

 「おい、結局此処は何処なんだ?!俺はレイヴェルを探さねばならないと言うのに…!」

 今日初めて飛ばされて来たライザーは苛立ち気に周りを睨む。

 「まぁまぁ、落ち着いてよライザー。もしかしたらレイヴェルもこっちの世界に居るかもしれないんだし」

 「そもそも()()()()()()と言うのが訳が分からん。何なんだ!?」

 「それも含めて先ずは彼女達の組織の長と話し合うのよ」

 そんな彼をネプテューヌとリアスが宥める。因みに由依はイリナが背負っている。

 (うひひへへ…役得とはこの事ですね……♪)

 当然ながら既に意識は戻っているが折角の美少女とのランデブー、からのおんぶなので狸寝入りを決め込んで背負われている。

 何故、イリナなのかと言えば、ただ単に一緒に車に乗った時から頑なに離れようとしなかった為である。

 そして黙々と前を行く呼吹の後を賑やかしく続く。

 暫くして先程、イリナがチラリと目撃したレンガ壁の明治中頃に造られた様なシックなデザインの洋館の前に辿り着く。

 

 「あれ…呼吹さん?それに……」

 

 「あん?清香?」

 

 本部の正面玄関口から出て来た六角清香と出会う。

 そして少女は呼吹の後ろに居る賑やかな一行に見覚えがある事に気付く。

 「あ……調査の時の…」

 「ああっ!?えっと…あの時の……六角…清香ちゃん!」

 清香が記憶を探りあてるよりも早くネプテューヌが少女の名前を口にする。

 「あ、はい……すごいですね、あの時、わたしほとんど皆さんとは喋ってないのに……憶えてるなんて…」

 「え?えー…記憶力にはけっこう自信あるから!!あははは!(ホントはりゅーご君の苗字と同じだから思い出しただけなんだけど……)」

 それを口にする訳にもいかない為、笑って誤魔化す。

 

 「皆さんはどうしてこちらに?と言うか……そちらの人が背負っているのって……由依ちゃん?!」

 コテンと可愛いらしく首を傾げる清香。そのまま今居る面子を改めて見直せばイリナに背負われた由依の姿を見付ける。

 「あ、あああ、あわ、ああの!ごめんなさい!由依ちゃんが失礼な事を……!?!」

 「え?!いやそんな迷惑だなんて……迷惑なんて…迷惑……」

 慌てふためく清香にイリナも慌て止めようと言葉を探すが先程までの由依の行動諸々を思い出して言葉が尻すぼみになっていく。

 「何やってんだお前ら?とりあえずそのアホはその辺に捨てとけ、どうせその内起きるかもう起きてるだろうしな」

 「………………そうですね。由依ちゃんも偶には反省して貰いましょうか♪」

 呼吹の言葉を受け、清香は一瞬顔を伏せ思案すると次にはとても晴れ晴れした笑顔でイリナから呼吹を引き剥がす。

 そのままアスファルトに放置される由依、そんな彼女を無視して少女2人が客人達を発令室まで案内するのであった。

 

 

 (はぁはぁ……放置プレイ!清香ちゃんの放置プレイ!)

 

 もうこの少女はダメかもしれない。

 

 

 

 

 

 ━━刀剣類管理局・発令室

 

 両開きの木製の扉の前で呼吹が足を止める。

 「着いたぞ、ここにアンタらに用がある人間が待ってる。アタシの仕事はここまでだ、後は勝手にしな」

 「呼吹さん?!」

 そうして手を軽く振りながらそそくさと1人離れる呼吹、清香は去り行く呼吹の背中と客人達を見比べながら、じゃ…じゃあ、と扉を開ける。

 「し、失礼します……あの真庭本部長…お客様が来てますけど……」

 少々緊張した面持ちで清香が声を挙げて入室する。

 ネプテューヌ達もそれに続く。

 

 

 「ん?おう、六角か。客人を案内してきてくれたんだな。七之里はどうした?」

 「え…と、呼吹さんはこの人達をここまで連れてきた後、そのままどこかに…」

 「ん…まぁ仕方無い。此処まで連れて来ただけでも上出来か。六角、お前もご苦労だった」

 部屋の中央、長机の置かれた場所に立つ褐色の女傑。

 真庭紗南。長船女学院学長にして現在は、刀剣類管理局特別祭祀機動隊本部本部長、兼、鎌府女学園暫定学長代理を勤める人物である。

 

 「ようこそお出で下さいました。異世界の方々……」

 そしてそんな彼女の側にもう1人…此方は椅子に座り佇まいを正している白い羽織を羽織った柔和な目元の凛とした女性──現・刀剣類管理局局長代理折神朱音の姿があった。

 

 「初めまして!絶対不変の主人公…ネプテューヌだよ!!」

 

 「……ネプテューヌさんですか…貴女が代表と言う事で宜しいでしょうか?私は折神朱音と申します。この組織の代表…と言えば宜しいでしょうか、実を言えば皆さんをお呼びしたのは私と言う事になります」

 座席から立ち上がり目の前の少女へ頭を下げる朱音。

 流石にちょっと真面目な空気を察したか、ネプテューヌもおちゃらけた雰囲気を改め朱音の返礼に応じる。

 「ご丁寧にどうも……えっと、朱音さんって呼べば良いのかな?」

 ネプテューヌの応答に周囲に居た刀使と同様の制服を着た少女達やスーツの男性達がざわめく。

 「あ、あれ?何か変なコト言ったかな?」

 「いえ、お気になさらないで下さい。所で……貴女を含めて、此処に居る方々で異世界から来たと言う方は全てなのでしょうか?」

 ざわめく周囲を朱音が視線を紗南へ配ると紗南が手で周囲の喧騒を制する。

 そうして問われた異世界から迷い込んだ人数の確認、報告ではまだ数人居ると聞いていた為、当人達から是非を問う。

 「あー…えっと、後からこっちにみんな転送で送られて来るから全員じゃないかな……じゃなかった、です」

 「ふふ…其方の楽な話し方で構いませんよ?しかし転送…ですか……」

 ネプテューヌが周囲の反応から無理矢理取って付けた敬語に苦笑しながら普段の口調で構わないと許しを出す朱音。

 そしてネプテューヌが口にした言葉に紗南と顔を合わせ考え込む様子を見せる。

 「成る程…転送か、連中がやけに始動から現着まで速い事や一切の足取りが掴めなかったのはソレの所為か…」

 紗南が今までのダグオン出現に得心がいったと納得する。

 そんな事を言っていたからか、部屋に居る通信士を務める少女の1人から声が挙がる。

 「本部長!本部中庭に不審な集団が出現したとの事です!」

 制服は長船女学院のモノ、色素が赤みがかった茶髪のウェーブが掛かった短いサイドテール、良く通る声を持つ少女の名は西 梢。

 彼女の報告に紗南はどうやら来た様だなと溢す。

 「その集団には手を出すな!誰か、案内してやれ」

 紗南からの声に梢がインカム越しに指示を伝える。

 指示が伝わったのだろう、暫くの後、複数人の足音とが近付く。

 

 「HEY!紗南センセー!団体御一行ご到着デース!!」

 最初に飛び込んで来たのはカタコト混じりの快活な声。

 皆がその声に扉の方へ視線を向ければ視界に飛び込むビッグバン!

 

 「デケェ!!」

 「……一誠くん?」

 再び目にしたアメリカンDNAに思わず反応した一誠をイリナが笑顔で威嚇する。

 「エレンか、ご苦労──うん?渡邊?」

 紗南が声の主を見やれば、金髪の刀使は左腕に眼鏡の少年の右腕を絡めて引っ張っているではないか。

 「ど、どうも……。えと…古波蔵さん、そろそろ離して頂けると…」

 豊満な胸の感触に狼狽えしどろもどろする翼沙、何度目かの抵抗の後、脱出に成功し適切な距離を取る。

 逆にエレンは少し残念そうに眉根を寄せている。

 「Oh……バサバサはシャイデスね」

 「バサバサ?!」

 妙なアダ名まで付けられた。

 

 「ふむ……仲睦まじいのは結構な事だが、どうして渡邊が此処に?」

 「あ、はい。本部の中庭にいきなり人が現れたと聞いて……」

 嘘である。実際はダグベースに戻った後、変身を解きベースに残っていた面子が転送された直後に翼沙も装置により本部の己の研究室に転送、ネプテューヌ達の様子を見に来た所、エレンに捕まったのである。

 「研究者の野次馬根性か。まぁ良い、しかし………思ったより多いな異世界人!?」

 翼沙の理由を都合良く解釈した紗南は改めて発令室に詰め駆けた人数に大仰なリアクションを取る。

 

 そして更に──

 

 「もう!何で先輩まで着いて来るのっ!?!」

 

 「つれない事を言うなよ!俺だって異世界人が気になってんだからさ!」

 

 「じゃあ別に私と一緒じゃなくても良いじゃん!」

 

 「そこはお前、最近、安桜で遊ん……安桜と遊べてないからな!先輩からの訓示?ってヤツだ」

 

 「今、私で遊ぶって言った!?」

 

 「気のせい気のせい!はっはっはっは!」

 

 開きっぱなしの扉から、廊下を反響してまで聴こえて来る男女のけたましいやり取り。

 その正体は、少女の方が安桜美炎。少年の方は鳳焔也である。

 因みに焔也もまた翼沙同様の理由が本音である。

 

 

 「少々、手狭になってしまいますね…」

 朱音が続々と増えていく人の数に苦笑を洩らす。

 「あー……お客人、代表の人間を残して後は食堂に移動して貰えるだろうか?」

 「確かに私達の所為で迷惑を掛けるのも不味いわね、ネプテューヌと私が残るからみんなは本部長さんの言う通り此処の食堂へ、そこでライザーにも事情を説明して貰って良いかしら?」

 紗南の言葉に一理あると判断しネプテューヌとリアスが発令室に残る事を選択する。

 「分かりました。其方の殿方、案内お願い出来ますか?」

 意図を察した朱乃が焔也に案内を懇願する。

 「え?あ、ああ!任せろ!」

 一瞬間があったものの、少々の思考停止の後、遅れて理解した焔也が勢い良く返事を返す。

 「えぇえっ!?先輩が案内?!なんで?!!バカなのに!!」

 「ほのちゃん…それは流石に酷いと思う…」

 そして美炎は何故焔也が選ばれたのか解らないと本気で驚き、清香が困った様子で焔也を見る。

 

 途もあれ、焔也先導の元、ネプテューヌとリアスを除く面子に美炎、清香、エレンを加え食堂の方へ移動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 「さて、残って貰った二人には改めて感謝する」

 紗南が軽く頭を下げる。

 「いえ…大した事ではないですから…」

 「うんうん。みんなには後で説明するしね!」

 リアスとネプテューヌが各々で紗南へ返事を返す。

 

 「あの……所で何故僕は此処に残る事に?」

 そして紗南から残るように請われた翼沙も発令室にその姿があった。

 「その辺りはまぁ…お前の優秀さを見込んでだ」

 翼沙の疑問に紗南は不敵に笑う。

 そんなやり取りを見届け、朱音はネプテューヌとリアスを視線に捉え一息瞑目してから口を開く。

 

 「異世界の方々、詳細な話をする前に…結論を単刀直入に言います。我々にお力添えをして頂けないでしょうか?」

 

 芯の強い澄んだ声が異世界から来た2人の少女へ波紋の様に投げ掛けられた──

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 うーんバサバサに拒絶されてしまいマシタ……VeryFriendになれると思ったんですケド。

 

 うん?翼沙は別に古波蔵の事は嫌ってないぞ?

 

 え?なんで先輩そんな事まで分かるの?先輩、渡邊先輩と仲良いの?

 

 そう言えば…鳳先輩、よく兄さんや渡邊さんと一緒に食堂で食事しているの見かけます…。

 

 まぁまぁ仲がよろしいのですわね!

 

 うーむ……あの鳳とか言う男、何処かで見たような……

 

 き、気のせいだろ?俺達、ここに来るの初めてだぜ?それより何が起きてるか説明してやるから暴れんなよ?それより姉ちゃん達大丈夫かなぁ

 

 ネプテューヌ達の事だ問題あるまい。万が一口を滑らせる可能性があっても渡邊がフォローする筈だ。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 同盟、共同作戦。ファーストアタック!

 

 街を解放する為に貴女方とダグオンの力……頼らせては貰えませんでしょうか……。





 次はシドニアとスーパー戦隊ムービーですかね。
 ガルパン三章もありますし、スケジュールを調整しなくては!
 
 SD三国伝再放映の曹操と呂布良いなぁ……孫策も好きですけど、ホンタイサンは翔烈帝になってからが好きですよ?後張遼と太史慈と郭嘉も好きです。
 
 ウィクロス見る度に言ってます昭乃ちゃんドスケベな格好してるなぁ…好き


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第八十五話 同盟、共同作戦。ファーストアタック!

 こんばんは、遂にウマ娘のアプリが出走しましたがラピスリライツの方がまだなので、アプリダウンロードしただけでまだ始めていません!ハヤクヤリタイ!

 毎回プロットが納得いかないと書き直してるので遅れています申し訳ございません。
 その上、職場でバイトの学生がまた辞めちゃうから人手が足りなくて大変だのなんの……。

 一応、ネタを書き込んでは消して書き直して書き込んでと言う作業自体はしているんです。





 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 やって来たぞ、刀剣類管理局~!

 

 当然だけど女の子が多いなぁ…、しかもかわいい。

 

 食堂はこっちだぜ!

 

 なんか先輩、やけに張り切ってる気がする

 

 


 

 焔也の案内の元、食堂へ向かった者達を除き、発令室に残ったネプテューヌ、リアスが朱音より告げられたのは異星人を倒す為の助力、その懇願であった。

 

 「力を貸してって…つまり共闘するって事だよね?それくらいなら別に構わないけど…」

 朱音の穏やかながらも力強い眼光を向けられたネプテューヌは戸惑いながらも力添えする事は当然問題無いと返す。

 「ふむ…。随分あっさり返答してくれる、我々に裏があるとは思わないのか?」

 紗南があんまりに簡単に決定した少女に対しどうにも心配になる。

 「だって刀使の子達みんな悪い感じはしなかったし、ダグオンのみんなも刀使の子達を守ろうとしてるから」

 「ダグオンは刀使を守ろうとしているのか?……人間全てではなく?」

 ネプテューヌの言葉に紗南は更に質問を重ねる。

 「え?うーん、人間を守るのは当然として、それでも刀使を率先して守ろうってかんじかなぁ」

 「そうね、彼等は使命としての人類、延いては地球の守護を命題にしているけど…彼等個人が己に課したのは刀使の身を守る。そう見えたわね」

 リアスがネプテューヌの主観から来る理由に補足する様に付け加える。

 「やはり彼等は我々に近しい者達が力を得た存在なのですね」

 「まぁ一目惚れのストーカーがあそこまでの事はしないか」

 朱音、紗南共に何となく予想していた事に対する意見を口に出しながら何とも言い難い表情をする。

 「遭遇した彼女達の所感では年齢はそう離れていないそうですが…」

 「木寅や瀬戸内、柳瀬はその様に考えているようです。……さて、そこで貴君らに訊きたいんだが、ダグオンの正体を知っているのか?」

 紗南がそこでネプテューヌ達に核心に迫る質問をする。

 「え?!その正体は……えと…そのぉ……シ、シラナイ」

 当人達から正体に関して秘密にして欲しいと厳命されている為、必死に目を剃らしながら知らないと言い張る。

 「(知ってるな…これは)そうか……まぁこれに関しては貴君達から答えをもたらされるよりも自分達で到達すべき問題だろう」

 紗南の言葉を聞いてあからさまにホッと息を浸くネプテューヌと必要以上に言及されなかった事に胸を撫で下ろしたリアス、そして朱音、紗南の後ろでそんな彼女達の反応を気が気でない様子で見ていた翼沙が額のヘアバンドを汗で濡らしていた。

 

 「さて協力を貰えた訳だが、我々の組織についてはどこまで知っている?」

 改めてこの世界の情報をどの程度知っているかを問う褐色の女傑。

 「一通りは彼等の基地で彼等やテレビの情報などでおおよその事は」

 そんな紗南の質疑にリアスが言葉を選びつつ答える。

 「では刀使の歴史等の解説はいりませんね。数ヶ月前に起きた事に関しても聞かされているのですか?」

 数ヶ月──タギツヒメが折神紫の身体で起こした世界の危機に発展しかねない事件について朱音が問う。

 「うん。鎌倉特別廃棄なんちゃらでしょ?タギナントカヒメが折神紫って偉い人に取り憑いて世界征服的な事を企んで人間を全部排除しようとしてたって」

 ネプテューヌの所々適当に覚えた専門用語を交えながらの解答に苦笑する朱音と軽い頭痛を感じる紗南。

 「間違いじゃないが、ザックリし過ぎだろ……だが、連中がそこまで話しているなら此方も必要以上に気を配る懸念を考慮しなくても良いか」

 自分を納得させる為に蟀谷を指で押しながら結論に至る。

 「それで、共闘の事だけれど私達は具体的にどんな事を求められるのかしら?」

 リアスが共同戦線にあたって何を要求されるのかを質す。

 「多くは求めません。貴女方がダグオンと綿密な関係を持っているなら連絡をして欲しいのです。戦闘行動に関しては、貴女方を信じます」

 「連絡?」

 「あの連中、此方には常に一方的にコンタクトを取るからな。我々からアプローチをかけられんのだ、そこで貴君達には中継役を担って欲しい。代わりと言う訳では無いが此方である程度其方の要求を訊く」

 「あ!なら住む場所が欲しいかな、色々あって基地に帰れないし」

 その奇妙な要求に揃って首を傾げる首脳陣。

 「帰れない、とは?連中の技術には転送とやらがあるんだろ?現に貴君らの仲間が送られて来ているじゃないか」

 「うーん何て言えば良いのかなぁ、私達は向こうのシステムに登録されてないらしくて、機械を使って目的地に行く事は出来るけど、そこから帰る手段を貰ってなくて…えへへ」

 「成る程、なら少なくともあのフードの刀使は帰還手段を与えられている訳か。情報提供感謝する」

 己の中の疑問が1つ解消され礼を述べる紗南。

 彼女からの質疑が終わったのを見計らい朱音が今度は口を開く。

 「では此方側で貴女方の当面の拠点となる借宿を用意しておきます。それと、共闘に関しても問題が無いと言う事ですので此方から一つ貴女方に関係するだろう情報をお渡しします。こちらを…」

 そうして朱音が机の上の書類を2人へ渡す、そこに書かれていた情報に2人は眼を見張るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━管理局・食堂

 

 所変わって、食堂に案内された一行は朱乃がライザーへ現在に至るまでの情報を説明する傍ら、他の者達は刀使達との交流と相成っていた。

 

 「それじゃあダグオンの基地で一日過ごしたの?!良いなぁ!!」

 美炎がアーシアから聞いた話に羨望の声を挙げる。

 「ふむ…彼等の本拠地、私も少々興味があります」

 「そうね、せめて大まかな場所の当たりは付けたいわね」

 ミルヤと智恵も別の意味で食い付いている。

 「その…残念ですけど…私達も何処にあるかまでは分からないんです」

 「着いた瞬間、既に何処かの洞窟だったからな」

 アーシア、ゼノヴィアが差障りの無い程度の情報を教えつつ詫びる。

 

 「…おぉ…!美味しいですクッキー」

 「うん。舞衣の作ったクッキーはいつも美味しい…」

 白髪の2人が会話に雑ざらず揃ってクッキーに齧りついている。

 

 「くっ……(誰も彼も大きい!何故だ??!食事?環境の違い?やはり異国の血が流れているから?いや異世界だからか?!いやしかしあそこで沙耶香と共にクッキーを食している者になら…!)」

 姫和がよく分からない葛藤に打ち震えている。

 

 「右を向いても左を向いても美少女だらけ~。さいっこうです!」

 「オレらは無視か?由依このヤロウ」

 「野郎じゃないですー。大体先輩も鼻の下伸ばしてるじゃないですか、他人様の事はとやかく言えませんよ」

 「端から見りゃお前ら二人とも同類にしか見えねぇよ、あー荒魂ちゃんで遊びてぇなー」

 (物騒な娘だ…)

 新たに増えた見目麗しい美少女に顔をだらしなくさせる由依とそれにツッコミつつ同じ様な顔をしている申一郎、それをジト目で見ながら呟く呼吹に、彼女の発言にお前が言うなと言われるだろう事を思うヴァーリ。

 

 「お兄さん剣士なんですか?!流派は?!良かったら私と一度手合わせしませんか!!」

 「あはは……考えておくよ」

 「可奈美ちゃんてば……」

 (自分も剣士だが…今は黙っておくか)

 祐斗が己を剣士と名乗った際に眼を輝かせて質問攻めにする可奈美、それを苦笑しながら押さえる舞衣。そして傍らで紅茶を飲むアーサー。

 

 「ワオ、ビックでマッシヴですね!てっちーとどっちが強いかアームレスリングしてみまショウ!」

 「おお?そりゃいいかもなぁ」

 「てっちーとはワシの事かのぅ?メリケンのお嬢さんはどーにも苦手じゃ……兎も角、腕相撲だろうと勝負なら負けん!!」

 エレンのノリに押されつつも乗り気なヘラクレスとたじたじになりながら、しかし勝負事の方には全力投球の撃鉄が腕相撲を始める。

 

 「あのぅ……ボクに何か…?」

 「あ、いえ……可愛らしい着こなしだなぁって…」

 ギャスパーは己を控え目に見る清香に恐る恐る訊ねれば、清香も遠慮がちに本心を打ち明ける。

 それを側で見守る龍悟は湯呑みで茶を啜りながらふと思う。

 (……奴が男とは言わぬ方が、清香の為か…何にせよいずれ判る事……)

 

 「ふむ…今の所、我々の正体、その核心に迫る質問は皆、上手く躱してくれているか」

 「まぁ其方の事情を汲むと約束したからね」

 「危ないのはあのライザー・フェニックスがポロッとこぼしちゃう事だけど……副部長が言いくるめてるし」

 「ま、悪いようにはなんないんじゃない?」

 戒将の懸念に曹操、イリナ、ジャンヌが他に聴こえぬ様に注意しながら答える。

 

 「あれ?そう言えば、あの時居た子達の中でもう一人小さな子が居たはずにゃん」

 黒歌が珍しく目端を利かせ、あの時の面子で薫が居ない事に気付く。

 「薫はついさっき遠征から帰ってきたと連絡がありまシター。紗南センセーの所に寄ってから来ると思いマース」

 「いや益子働き過ぎだろ?!あいつの御刀の鞘、刀匠科のメンツで任務終わった後拵えてるけど…何回駆り出されてんだよ!?」

 焔也、思わず薫の遠征回数にツッコむ。

 

 

 

 

 そして少し離れた所、朱乃より講釈を受けたライザーはと言うと──

 「成る程…つまりは此処は俺達が知る他の神話勢力が居る世界の人間界ではなく、全く別の…悪魔も天使も堕天使も神器も存在しない世界で、レイヴェルを始めとしたここ最近の行方不明者もこの世界に飛ばされている可能性が十二分あると、そう言うのかリアスのクイーン」

 「ええ、より詳しい事はこれから調べてみなければ分かりませんが、冥界全土を探し回るよりも高確率で間違いないかと…」

 一応の納得を見せた不死の悪魔に朱乃はホッと一息浸く。

 「ふん…それについては理解はした。確かに我々の世界ですら無い場所で土地勘も無いのにアテも無く探すのは愚の骨頂か。でだ、奴等は何だ?」

 そして焔也や戒将達を軽く指差しながら訝しげに朱乃に訊ねる。

 「あの子達は此処、刀剣類管理局で働く学生さんですよ?」

 柔らかい笑みが一瞬固まる朱乃、取り敢えず差障り無い事実を述べる。

 「いやしかしだな……」

 納得し難いと眉を潜めるライザー、そこへ近付いてくるのは指された事に気付いた焔也と戒将、それに何とはなしに着いてくる美炎とこの食堂に集った異世界人集団の暫定舵取りをしている朱乃へ話を訊こうと同じく近付いてくるミルヤ、智恵であった。

 

 「何やら我々の方を指していた様だが…」

 「なんか困りごとか?」

 2人の青年が近付きこれ幸いとライザーは疑問をぶつける事にする。

 「貴様らあの時妙な姿になってソコの赤龍帝や女神……「わー!?!わー!!そ、そう言やぁ姉ちゃん達はマダカナー」

 「そう言えば遅いですわねー、ほほほほ…」

 「そろそろ話し合いも終わった頃だろうしねー」

 一誠、朱乃、祐斗で一斉にライザーの言葉の続きを遮る。その隙に小猫が龍悟から何時の間にか教えられた最小限の力加減で最大限の効力を発揮する恐ろしく速い手刀でライザーを気絶、美炎達は不審に思ったものの深く言及する事はしなかった。

 

 ((((セーフ))ですわね)です)

 

 心中で安堵する4人に察した2人は静かに手を挙げ礼を述べる。

 そんな彼等の元に話し合いを終えたネプテューヌ達が翼沙と軽く目が死んでる薫を伴ってやって来た。

 「おー…ちょうどよく集まってんなー。お前らよく聞けー、クソBBAからの使令だ。明後日、ソコの異世界人御一行とダグオンと俺たちとで例の入れ替わりの街に居座ってる宇宙人に仕掛けるそうだ。くそぅ、ダグオンが関わって無ければ絶対バックレってやったのに」

 紗南の策略によりサボるにサボれなくなった薫は苦虫を噛み潰した顔をしている。

 「ダグオンと……それに彼女達ともですか?いえ…確かに自衛とは言い切れない程、強大な力を持っている事は理解出来ますが…。それにしてもダグオンとはどの様に連絡を取り合うのです?」

 ミルヤが恒常的な連絡手段が無いのに如何にして勇者達と連携を取るのかと当然訊いてくる。

 「そこはこのチビッ子に訊け、俺は知らん」

 「チビッ子って…あなたに言われたくないなぁ~。それにネプ子さんは歳上だよ?」

 薫からの雑な振りに応じつつ目上を敬う様にと胸を張る。

 「あーはいはい。サーセンサーセン。で?どうやってあの連中にコンタクトするんだ?」

 「うん、益子さんの言う通り私もめっちゃ気になる!」

 美炎が薫の言葉に重ねる様に興味津々で謎の連絡手段を訊ねる。

 「え?えーっと……それは…あーして、こうして、あれやこれで、かくかくシカジカ四角いタントだよ!」

 

 「「「「「「「「「「まったく分からない…!」」」」」」」」」」

 

 沙耶香を除いた少女達が頭に大量の疑問符を浮かべるばかり、沙耶香はそもそも聞いてすらいない。

 「ま、まぁ兎に角私たちに任せてよ!作戦の事はダグオンに必ず伝えるから!」

 吃りながらもネプテューヌはこの話題を無理矢理切って終わらせる。

 少女達もまさかすぐ側で当人達が聞き耳を立てているとは思わないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町山北町境・異星人対策本部テント

 

 明くる日、作戦決行日。

 警察の引いた関係者以外立ち入りを禁じられた警戒網の内側、街同士の境に備えられた監視を兼ねた大型のテントに少年少女達が集っていた。

 「さて作戦決行当日となった訳ですが……」

 「まだ来てねぇなダグオン」 「ねー」

 実動隊の隊長、副隊長となったミルヤと薫がテント内の機器を見ながら溢す。

 「ネプネプさん連絡してくれたんだよね?」

 美炎が隣の紫髪の少女へ訊ねる。

 「多分、もうそろそろ…来るハズ…と思うけど」

 テントの外に立つ2人、すると上空に轟く轟音。

 「何事です?!」

 各々決行時間まで思い思い過ごしていた者達がその轟音に一斉に空を仰ぐ。

 

 「うぇえっ?!新幹線が空を飛んでるぅぅううう?!!?」

 「ダグオンのマシンだ!!」

 「ターボライナー、アーマーライナー、ウイングライナーだな。後ろの方から来てんのはファイヤージャンボとシャドージェットか…壮観だな!」 「ねねー!」

 驚くネプテューヌを尻目に美炎と薫は眼を輝かせている。

 「兵藤ネプテューヌ、ダグオンの基地で過ごした経験があるのに何故驚いているのです?」

 ミルヤはライナービークルが空を飛行している事に驚愕するネプテューヌへ疑問をぶつける。

 「だって…私たちが見たのは飛行機とパトカーと救急車と消防車だけだったし」

 実はベース内の格納庫には案内されていなかった事が判明する。因みに展望スペースも隔壁を降ろしシャットダウンしていたので展望窓から見えるライナービークルの存在は彼女達異世界人一行は知らなかったのである。

 ファイヤージャンボからファイヤーストラトスが飛び出し、着地。

 両側の扉からエンとゲキが降車し、シャドージェットがテント上空を通り過ぎた後、リュウが対策本部前に立っていた。

 残るライナービークルはその細長さを生かし適宜着陸スペースを見付け、降下、残る3人が現れる。

 

 「待たせたな!勇者ダグオン只今参上だぜ!!」

 ファイヤーエンが気取った見栄を切る。

 「ファイヤーエンだ!!久しぶりのホンモノだ!」

 と美炎が最高潮のテンションで彼に近付く。エンも内心美炎の喜び様に困惑しながらもそれを尾首に出さず対応する。

 「半信半疑ではありましたが本当に作戦開始前に来てくれるとは……」

 「彼女達から君達が我々の助力を欲していると聞いて駆け付けた。今回は宜しく頼む」

 ミルヤの声にターボカイが握手を求める。

 

 (……あのファイヤーエンって…)

 テントの中から入り口前で遠目にエンを見る舞衣は微かな違和感を憶える。

 その視線に気付いたエンは美炎へ2、3何かを伝えるとさっさとファイヤーストラトスに乗って奥へと消えて行った。

 (あ…せめてお話してみたかったんだけど……気の所為なのかな…)

 どうしても頭にチラ付く放って置けない先輩の姿がダブる舞衣、しかし今は作戦に集中せねばならない。

 

 

 余談ではあるが、後数メートル舞衣との距離が近ければエンの正体はバレていた。

 

 そして同じ様にターボライナーのコックピットの中で不貞腐れる少女が1人。

 

 「むぅ~、私も外に出たいのにー!」

 燕結芽である。戒将はダグベースに置いていきたかったが、1人残していても転送装置で勝手に着いて来てしまう可能性が挙げられ、ならばとブローチを取り上げる案もあったがライアンとの連携を考えると結芽は必要と結論が出てしまった為、結局ターボライナーに同乗した次第である。

 一応はパーカーと認識阻害の眼鏡を掛けてはいるが、何分作戦に参加する刀使達は皆、結芽を知っている者達であるし、何より可奈美がいる。

 不用意に接触する訳にはいかない為コックピットの中から外を伺う。

 「あ~あ、ファイヤーストラトスの方に隠れて乗ってれば良かったかなぁ…でもおじさんのドリル邪魔そうだし…早く敵倒しに行きたい」

 そんな事をぶつくさ呟きながら兄の様子を見れば、指揮官を任されたミルヤにエンとゲキが早々に移動した理由をでっち上げて説明している様だった。

 

 「むぅ…むぅぅぅ」

 

 何となく、ただ何となく兄が自分を放って置いて別の女性と親しげ(結芽にはそう見える)に話しているのが気に食わない結芽はブローチの通信機能を使用して兄へ呼び掛ける。

 「お兄ちゃん!早く行こうよ!!」

 呼び掛ければ青い戦士が此方を仰ぎ見る。音声はカイにしか聴こえていないので彼は困った顔をしているのだろう。

 『少し待て、今は作戦の仔細を詰めている。だから堪えなさい』

 と、お叱りを受ける。理屈は理解出来るが感情が納得し難いのか頬を栗鼠の様に膨らませる。

 その後、ミルヤから不審がられたカイは巧く誤魔化しながらダグオンとの連携が取れる様に通信端末が入ったジェラルミンケースを渡し、此方に戻って来る。

 そして事前の協議で決めた割振りによりターボライナーには新たな同乗者の姿が──

 

 「おお!これがカイショウのマシンか!」

 「よろしくね結芽ちゃん」

 「失礼するよ」

 「結芽ち、よろしくにゃん♪」

 ゼノヴィア、祐斗、曹操、黒歌が乗り込み客車(この作戦の為に急造した)の方へ去って行く。

 同様にアーマーライナー、ウイングライナーにも数人が乗り込み作戦開始地点に移動を始める。

 刀使達も対策本部に舞衣、清香、イリナ、アーサー、を残しビークルを追うように移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・住宅街

 

 「うんんうん!見えている。聴こえている。匂っている。知っている。ふふん、我が芸術の邪魔はさせんよ……さぁ存分に働いてくれたまえ"怒れる"ラーシュメイラ」

 クロッキー人形の肉体を持つ異星人が隣で眼を瞑っていた女性に声を掛ける。

 胸と腰、腕と足に着けた防具以外全て肌を露出した稲妻模様のタトゥーが入った女性はその背に不釣り合いな刀を背負う。

 「やっと戦か、待ち兼ねた…待ち兼ねたぞ。我が魂を奮わせるに足る敵が居る事を願うばかりよ…なぁ麒麟」

 女性は刀──御刀【四霊・麒麟】に語りかける。

 その歓喜の声とは逆にその表情は怒りに充ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 「のう、エンよ何故いきなり慌てた様に飛び出したんじゃ?もう少し居っても良かったではないか?………その方がワシも智恵さんと話せたのだが」

 ゲキが助手席で運転するエンに訊ねる、エンはゲキの肩アーマーを鬱陶しそうにしながら重い口を開く。

 「柳瀬が居たんだ……」

 「柳瀬……ああ、美濃関のやたら一部の主張が激しい娘か!それが何の問題なんじゃ?」

 「後少しあの場所に居たら俺の正体がバレてたかもしれねぇ…」

 「そんなバカな……一応、声は加工されておるしそんな簡単に正体が暴かれるハズは…」

 「柳瀬なら有り得る!だからバレる訳にはいかないんだよ、もしアイツにバレたら……多分、いやきっと、怒ってその後悲しい顔をする」

 「だからバレる訳にはいかんと……もうすぐ例の壁の前に出るな…うん?」

 そんな会話を交えながらゲキが正面に向き直ると目の前には矢鱈露出の激しい女性が立っている。

 「なっ?!な、な、な、なぁ……ハレンチ女じゃぁぁぁああ!?!」

 「何だアイツ…手にしてるのは御刀!?」

 エンも異質な女性に注視し、彼女の手に持つ得物の独特な気配に御刀と当たりを付ける。

 そして頭に過ったのはドレスの女、エンは直感的にアクセルを踏み込み加速する。

 「オイオイオイ?!何故加速しとるんじゃ!!?」

 「アイツは敵だ!あの御刀、この前のドレスの変態女と似た感じがする!」

 「なぬ?!」

 女性は迫り来るファイヤーストラトスに怯む所か嬉々として、そして鬼気として構える。

 御刀麒麟に電光が迸る、光弾ける奔流を纏ったその刃を振りかぶり、女性は吼える。

 

 魂ィィィイイッ!

 

 咆哮と共に電光がファイヤーストラトスへ襲い来る。

 

 「こなくそっ?!」

 咄嗟にハンドルを切り壁面へ片輪走法で紙一重で躱す。

 そのままスリップし止まるファイヤーストラトス。エンはリアウインドウから"敵"を睨む。

 「どうするエン!?ワシらは作戦上、この先に行かなければならんぞ?!」

 「って言われても…あちらさんがやる気じゃあな」

 と扉を開け降車しようとした時、通信と共に紫影の機体が空を駆ける。

 『…エン!止まるな、進め!奴は俺が引き受ける……!』

 「「リュウ!!」」

 シャドージェットから飛び降り、クナイで女性に斬り掛かる。

 「ハッハッハッハッ!滾る…滾るぞぉぉおお!!」

 女性は新たな乱入者に笑みを溢し迎撃する。刃と刃がぶつかり、凄まじい衝撃が轟く。

 「…チィッ、厄介だな……」

 「フハハハ!良いぞ、やはり戦いとは血肉沸き踊る!」

 標的をリュウ1人に定めたのか女性は戦闘に夢中だ。

 

 「エン!今の内に行くぞ!」

 「っ!ああっ!リュウ、ヤられんなよ!!」

 「……無論だ!」

 

 シャドーリュウと女性を置いてファイヤーストラトスは先へ進む。

 当初の計画に反しイレギュラーな開戦の狼煙を挙げ、ここに第一次駒王町奪還作戦が始まった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 滾るぅ、滾るぞぉっ!!ハハハハハハ!!!

 

 …クッ、単独では厳しいか…!?仕方ない、奴を例のポイントに誘導し皆と共に対応する他ない……。

 

 戦闘狂かこの世界で相手にするには申し分無い相手だ。

 

 俺もかよ?!ええい!こうなったら二天龍とダグオンの連携でやってやらぁ!?!

 

 

 芸術!それは解放!芸術それは抑圧!芸術!それは密集!芸術!それは爆発である!!

 

 野郎!好き勝手させっかよ!

 

 おうよ!ワシらで倒す!

 

 ネプ子さんも忘れて貰っちゃ困るよー!ってデカイの来たーーー?!

 

 任せてもらおう!その代わり、あの異星人は貴公達に任せる!

 

 ええ?!ってみんなの乗り物がロボットになったーー?!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 取り戻せ!駒王奪還オペレーション。

 

 え?次回幕間が先なの?!

 

 




 はい、次回予告の通り幕間です。
 幕間でフェニックス兄妹の再会とか青砥館で住込みバイトしてる百均駄ルキリーとの邂逅を描写しようかと。

 怒れるラーシュメイラのキャラクターの骨子の1つは皆さんも察しているでしょうが、バイクを乗り回す方の呂布です。他にも見た目のモチーフとかいますけど、性格はあのトールギスな呂布が入ってます。

 新しい聖剣は狼煙かぁ、エレメンタル含めあっちのプロットも色々考えねば……。

 ではまた次回


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幕間 再会と再会と暗躍と、破天荒な蚊帳の外


 こんばんは。
 仕事の多忙、体調不良の偏頭痛で遅れました。

 あー、十歳若返りたい。経験そのまま若返りたい。

 暫く頭を休めるので次の投稿も遅くなります。申し訳ございません。

 


 

 ━━刀剣類管理局・食堂

 

 薫の案内の元合流し、明後日(みょうごにち)の作戦についての話し合いを行い終えた少年少女。

 

 「さて、どーせ結構日に詳しく詰める事になるんだ。俺らがここで細々話してもしょうがねぇ」 「ねー」

 

 薫がしたり顔で笑えばねねが同意する様に鳴く。

 

 「薫ー、カッコ付けてる所ナンですケド…紗南センセーから戻って来いと」

 エレンが管理局支給の携帯端末を手に持ち指しながら薫に告げる。

 「ざけんな!折角解放されたんだ、誰が戻らいでか!!」

 唾棄する様に怒鳴る薫、しかし勿論、マイクがそんな彼女の声を捉え紗南の元に聴こえている訳であり──

 

 「『ふざけているのはお前の方だ、薫ぅぅう?!』」

 

 電話のスピーカー、そして薫の真後ろから紗南の底冷えた声が木霊す。

 

 「げぇぇっ?!クソババァ!?」

 

 「だぁれが…ブラック外道クソBBAだ!」

 

 「そこまでは言ってねぇ!」 「ねー!」

 

 一悶着口論を交わし拳骨を頭部に喰らって引き摺られて行く薫。

 残された皆、特に異世界人一行はそれを唖然として眺めていた。

 

 「益子薫の言う事は兎も角、作戦までは1日程時間が丸々空いています。我々は任務がありますが、異世界の方々はどうされるのです?ダグオンの拠点に戻るので?」

 ミルヤが薫の代わりに話の舵を切る。

 「さっき偉い人達にも言ったんだけど戻りたくても戻れないんだよね」

 ネプテューヌがたははと笑いながら答える。その反応にミルヤは粟を食った様に眼を開く。

 「そうなのですか?意外ですね」

 そんな銀髪少女の反応を見てネプテューヌがこれまでの件を説明する。

 「──成る程。転送装置はそれに対応するデバイスが無ければ一方通行なのですね。そして、管理局が一時の拠点を用意すると…。となると…女性陣は未だしも男性陣の方が問題ですね」

 ミルヤの上げ列ねた艱難にならばと戒将が一声挙げる。

 

 「俺と、此処に居る面子でその問題は何とかしよう」

 

 「それは……有難い事ではありますが、宜しいのですか?貴方達も管理局宿舎で寝泊りしているのでは…?」

 

 「俺は宿舎ではなく本部近辺の物件を借りている。広さも2人程なら申し分無い…後は、鳳達次第ではある」

 戒将が語った事は全てが事実では無い。彼は普段、ダグベース住まいである。しかし、表向きは鎌倉市内…本部に最寄りの区域に賃貸契約の物件を借りている。

 

 「俺は宿舎だけど、一人泊めるくらいの余裕はまぁある」

 

 「僕はまぁ戒将の言う通り宿舎住まいなんですが……研究の都合上、別に物件を借りているのでまぁ…構いませんが」

 

 焔也と翼沙は同意を示す。

 

 「オレぁ…翼沙のヤツに世話んなってから(そう言う事になってたよな確か)家主が問題無いってんなら」

 

 「ワシは…うむ、構わんぞ」

 

 「……俺も問題は無い…」

 

 申一郎は表向き寮を出てからは翼沙の持つ部屋の1つに世話になっていると言う事になっている。

 撃鉄と龍悟はつつがなく了承する。が、果たした龍悟の住まう場所は本当に家と言えるのだろうか。

 

 「ふむ…との事ですが、彼等有志を好意を受けるかは貴殿方次第です。どうします?」

 ミルヤが一誠達の側に向き直っている後方で戒将が祐斗、曹操、ヴァーリへと視線を配らせる。意図を察しろと言う事だろう。

 

 「良いんじゃないかな?流石に全員分の場所を用意するのも此処の人達には手間かもしれないし。ギャスパーくんはちょっと分からないけど」

 

 「まぁ…我々は多少粗雑な場所でも問題無いよ」

 

 「寝所に拘る気は無い。が、強いて我儘を述べるならネプテューヌの元へ直ぐに駆け付けられるようにしたい」

 

 戒将の視線、その意図を汲み取った3人が即座に実行に移す。

 結果、一部を除き男性陣はダグオンの若者が伍箇伝生徒として利用している住居の世話になる。

 

 「おい、話が纏まったのならさっさとレイヴェルを迎えに行くぞ!」

 朱乃の笑顔の睨みにやや冷汗を滴つつも議題が集束した事で、リアスより伝えられた情報から早急に妹のレイヴェルの元へ駆け付けたいという思いを滲み出すライザー。

 どうやら待つと言う事は出来ない様だ。

 

 「申し訳無いのだけれど誰かライザーに同行して貰えるかしら?私も一緒に行くけれど、此方側の関係者が居た方が良いでしょう?」

 リアスの嘆願にならばと戒将と龍悟が挙手する。

 「手空きなのでな。同行しよう」

 「……場所は知っている、案内にでも使ってくれ…」

 その反応を見て清香がはたと疑問を浮かべる。

 「兄さん、どうして知ってるの?」

 「……色々とな。学長を通して本部長に頼まれている関係上……」

 これまた嘘とは言いづらい。龍悟が累の住居を知っているのは嘗て可奈美達が逃亡を繰り広げていた時に跡を着けていたからであり、しかし紗南から諸々頼まれ事をされているのも嘘では無い。

 「あの、部長……部長に燕さんや六角さんだけでは色々と大変かもしれません。私も一緒に行きます」

 すると小猫がライザーを横目で見つつ戒将達への同行を言い出した。

 「そうね。後はゼノヴィアもお願い出来る?」

 「構わない。此方としてもその二人に同行出来るのは有難いからね」

 リアスの指示に二つ返事で返すゼノヴィア。未だに手合わせを目論んでいる様である。

 

 「あ、後訊きたいんだけど。青砥館って知ってる?」

 ネプテューヌが思い出した様に刀使の皆へ質問する。

 「青砥館なら知ってるわ、わたしたちもお世話になった事があるから良ければ一緒に行きます」

 対して智恵が提案を含め答えて来たので、ならばと戒将が更に提示する。

 「道中までは共に行動すべきだな。途中我々は別れ恩田女史宅に向かう。それ以外が此処に残り、居住まいの準備と青砥館に向かうと言う形となる訳だ」

 

 「じゃ、それで行こう!」

 

 そして彼等は行動を開始した──

 

 

 

 

 ━━渋谷

 

 「てな訳で!やって来たよ渋谷ーーー!」

 

 「テンション高いッスねネプ先輩」

 

 駅前に降り立って叫ぶ小柄な少女に感心半分に言う焔也、彼等の他にも撃鉄、朱乃、智恵、美炎、アーシア、一誠、ヴァーリ、舞衣と続く。

 戒将、龍悟、リアス、ライザー、ゼノヴィア、小猫、清香、エレンとは駅で別れた。

 

 残りは管理局に残り仮住まいの下見をしている。

 

 「で、青砥館に先輩方の知り合いが居るってマジッスか?」

 目的地の方角を眺めながら小さな異世界の先輩に訊ねる。

 「うん。ヴァルキリーの人で真面目な人」

 「ヴァルキリーってぇと北欧の伝説に出てくる黙示録の聖戦に備えて英雄豪傑をヴァルハラへ導く見目麗しい乙女じゃな。デュラハンと同一視されとるのもそこそこ有名な話じゃ」

 

 「「「「………」」」」

 

 撃鉄の解説に焔也と美炎達刀使が唖然とする。

 

 「な、何じゃ…皆して黙りこんで?」

 

 「いや普通に意外で」 「何か見た目とのギャップが…」

 「撃鉄さんって思ったより物知りなのね」 「あはは…」

 

 ((気持ちは分かる))

 心の中で彼等に同意する兵藤姉弟。

 「智恵さんまで…、ワシは神職科も受けとるんじゃが、その過程で他の文化圏も多少頭に叩き込んでおってるんじゃ。刀使には木寅や古波蔵の様なハーフなりクォーターなりも多いからのう。何かしら憶えても損は無いと思ったんじゃ」

 「お前………本当に勉強出来たんだな!(同類かと思ってた)」

 「お主がワシをどう見ていたのかよーーーく分かった」

 撃鉄が焔也を半眼で咎める後ろで美炎が舞衣に耳打ちしている。

 「田中先輩、勉強出来るんだ……意外だよね」

 「流石に失礼だよ美炎ちゃん」

 「でも考えてみれば三年生からの編入だもの撃鉄さんが勉強出来るのは当然なのよね」

 智恵は智恵で納得していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━恩田累のマンション前

 

 一方、戒将達は駅で別たれてから道草もせず、即座に目的地へと到着していた。

 ソワソワと忙しなくライザーが落着き無く身揺すりする傍ら戒将がオートロックの玄関前でインターホンを押す。

 暫しの待機の後、自動ドアを潜り玄関ホールを通ってエレベーターの指定階を押す。

 「着いたか」

 数分エレベーターに揺られ、目的の階に到着。揃って降り恩田の表札が掲げられている部屋を目指す。

 

 「…ここだな…」

 「うむ」

 短いやり取り、そして龍悟が部屋のインターホンを押す。

 

『はいはーい。ちょっと待てね』

 

 スピーカー越しの返答の後、数秒、鍵が開けられる音と共に扉が開かれる。

「や!君達が本部から来た人?わざわざご苦労様」

 扉を開けて出て来たのはスーツに眼鏡の身嗜みはそれなりだがどこかだらしなさを感じる女性。

 

 「恩田累氏ですね。我々は…「レイヴェル!」」

 戒将が累に身分を明かす中、ライザーが我慢ならないとばかりに戒将を押し退け部屋に上がっていく。

 「わお、ビックリした~」

 「申し訳無い。彼は此処まで大分己を抑えていた様だ」

 「ごめんなさい。ライザーの代わりに謝罪するわ」

 戒将とリアスが累に頭を下げる。

 

 「レイヴェルゥゥゥウウ!!」

 「お兄様!?何をしているんですか!!」

 部屋の奥では愛妹に抱き着かんとしてビンタを喰らい怒鳴られていた。

 「お馬鹿…」

 累と2、3言葉を交えた後断りを入れ、部屋に上がったリアスが頭を軽く抑え呟く。

 「……羽島学長も居たとは…」

 「初めまして六角龍悟君、燕戒将君。美濃関学院学長羽島江麻です。紗南…真庭学長から話は聞いているわ」

 「ご丁寧に…綾小路警邏科、燕です。貴女の事は鳳から聞いています」

 「そう、鳳君と仲が良いのね」

 仲が良いどころか同じ秘密を持つ仲間とは口が裂けても言うまい。

 

 「それで、此方の少女が…?」

 「ええ。良かったわねレイヴェルさんお兄さんと会えて」

 戒将と会話をこなしてレイヴェルに声を掛ける。

 「ありがとうございますエマさん。ルイさんも」

 特徴的な金髪ツインテールの少女が世話を見てくれた女性2人に丁寧に感謝の意を伝える。

 

 「…グレモリー先輩、彼女は本当にあの男と血が繋がっているのか……?」

 「兄さん…流石に失礼だよ……(わたしもちょっと思ったのは内緒にしとこう)」

 六角兄妹がフェニックス兄妹に聴こえぬ様にリアスへ訊ねる。

 「まぁ…色々あるのよ」

 リアスは苦笑しながらそう絞めた。

 

 しかる後、フェニックス兄妹は戒将が住まう賃貸にて面倒を見られる事になる(と言うのは表向き、実際にはダグベースにて暫く過ごす事になるのだ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━青砥館

 

 片や焔也達は既に青砥館にて目的の人物と遭遇していた。

 

 「ッス!鳳焔也です!しゃっす!」

 

 「え、えぇと…ロスヴァイセです」

 

 焔也の挨拶に面を喰らうロスヴァイセ。因みに姿はジャージにエプロンである。

 「おうおう。鳳の坊主は相変わらずだな」

 そんなやり取りに笑うのは店主青砥陽司。

 「何だかすみません騒がしくて…」

 智恵が久し振りの陽司に申し訳無さそうにする。

 「いやいや、あの坊主はあれだから良いんだよ。お嬢さん達は知らんだろうが、あいつはこっち勤めになって以降は暇を見付けては稀に手伝いに来てくれてなぁ。陽菜が居ない時は助かったもんさ。まぁ今はロスヴァイセちゃんが居るけどな!」

 ガハハと笑う陽司に皆苦笑する。

 

 「ふーむ、あれが戦乙女か…当然じゃが、別嬪じゃ。まぁワシは智恵さん一筋ですがね!」

 撃鉄が自分は浮気しませんアピールを智恵に熱烈に向ける。

 「あ、ありがとう…ございます?」

 

 (ちぃ姉も大変だなぁ)

 (でもちょっと憧れるかな、あんな風に一途に想われるの)

 美炎と舞衣がこそこそと話し合う。美炎が智恵に同情していると舞衣が少しだけ、親友を頭に思い浮かべた後、次に身近な男性として誰かさんをチラ見しながらそんな事を口走ったので美炎は思わず叫ぶ。

 

 「いやいやい、先輩だけは止めとこう!バカだし、デリカシー無いし、えぇっと…バカだし!」

 他に思い付かなかったのか2度目のバカだしを口にする美炎。

 「おい聴こえてんぞ!大体馬鹿はお前だろ?」

 「はぁー?!私は先輩みたいに授業サボったりしませんー!」

 「サボらなくても勉強出来ないだろうが!」

 「うぐっ!?せ、先輩のあんぽんたん!おたんこなす!」

 仕舞いには焔也と子供の様な喧嘩を繰り広げ始めた。

 

 「仲良いなぁ、あの二人。坊主と嬢ちゃん、兄妹かってくらい仲良しじゃないの」

 陽司が笑う。ネプテューヌ達もそれは確かにと心中にて同意する。

 「なんか喧嘩なんだけど嫌悪な感じしないよねぇ」

 「本人達って言うか、あの美炎ちゃんだっけ?が焔也の奴に一方的に弄られてる感じだなぁ」

 「それだけ仲良しなんですね」

 ネプテューヌ、一誠、アーシアと微笑ましそうに感想を口にする。

 実際、目の前の言い争いは焔也の目端がニヤついている。

 

 ((((凄い嬉しそう…))))

 

 

 そうして焔也、美炎の喧嘩を尻目にロスヴァイセと合流した彼、彼女達は少しの間、青砥館を手伝った後、戒将からの連絡で本部で合流を果たすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━本部宿舎前

 

 「ではこれが通信、転送を可能にする端末です。取り敢えずアルファがネプギアさんと妙なテンションだったので些か恐怖を感じましたが……頼み込んだら用意してくれました。数は少ないので代表者を決めて渡して下さい」

 合流前、刀使達の目を盗み曹操、イリナ、祐斗に隙を見てスターシンボル型のピンバッジ、ネクタイピン、ブレスレット、ペンダント、そして結芽が使っているブローチ型の物を渡す。

 

 「解った。まずネプテューヌには一つ確実に渡しておこう。後は適当に話し合って決めるさ」

 「そうね、それが妥当かも」

 「連絡や移動は彼女達にバレない様に気を付けないとだね」

 「お願いします。作戦に関してはその時に」

 

 

 こうして互いに明後日の作戦を控え各々が各々の準備をして備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 

 「ふふふ…ギアちゃんのお陰で進捗大分良いよ♪」

 

 「光栄です!私もこんなに素晴らしいモノを作れて楽しすぎてワクワクします」

 

 ダグベースのメカニカルラボラトリーで深夜のテンション2人が不気味に笑っていたのであった。

 

 

 





 頭痛くても文章は湧いてくるんですよね~、お陰様でまた読切りを頭の体操がてら書こうかなとか思ったり。

 ではまた次回


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第八十六話 取り戻せ!駒王奪還オペレーション。


 おはようございます。寝ます。起きたら2度目のガルパン三章観賞に行ってきます。

 はい!最近全く筆が進まなかったのでいっそのこと一度ボーッとしてみようかと思い、暫く筆を置いていました。ごめんなさい!

 ダイナゼノン面白いよぉ、1話目はキャラクターの心の闇を写してからの突然の怪獣との戦闘。
 2話目の操縦訓練と分離コンビネーションとか面白いよぉ。

 ゾンビランドサガリベンジ、面白かったです。前作も観てたので。モバコラボの方も幸子カワイイ、まぁ相変わらず無課金なので上位は諦めてますが。

 早く86見たいよぉ。





 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 "喜び"のアドヴェリア「幼女サイコー!」

 

 "哀しみ"のブリューリテ「哀しい。同輩がこんなのとは哀しい」

 

 "怒れる"ラーシュメイラ「滾る!滾るぞぉぉおお!」

 

 妖精「あとはたのしいこをえらぶだけだね♪」

 


 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 刀使、ダグオン、異世界人の三勢力による協力作戦結構前日、ダグベース内にてダグオンの若者達とオカルト研究部代表者数名による会議が行われていた。

 

 「──といった割当てで事に取り掛かる事になる。宜しいか?」

 会議の舵を執るのはダグオンの参謀格燕戒将。

 彼が見渡す半円卓状の机の前には残りのダグオンメンバーとオカ研代表、ネプテューヌ、リアス、朱乃、ヴァーリ、アーサー、曹操といった面々。

 彼、彼女等は数度の質疑応答を繰返し、作戦の全体像を決める。

 「構わないわ。あちらに残してきたみんなには私達の方で説明しておくから」

 戒将の異論の是非にリアスが返す。この世界で余所者である彼女達はこの世界の勝手を知らない、であれば多少人数分けを都合して貰うくらいしか余地がない。

 なので、事、異星人関係に関しては余計な口は挟まず、作戦当日、行動で示すより無い。

 それを承知しているからこそ他の者達は黙って頷く。

 

 「では了承も取れた所で、明日に備え早々に休息を取るように。解散」

 その一言で皆が席を発ち、思い思いにオーダールームを散り散りに出る。

 

 

 「終わった~。カイショーくんがおっかないから静かにしてたけど…やっぱり黙りっぱなしは肩こるよ~」

 ネプテューヌが伸びをしながら腕を上げて溢す。

 「それは…済みません。直前に申一郎達が悪ふざけし過ぎたのが原因なので…」

 「うん、焔也くんとシンイチローくんのたんこぶ凄いよね…漫画みたいだったよ」

 隣を歩く翼沙が苦笑しながら彼女の呟きに応じる。

 

 「さて、もうすぐギアさんがアルファと共に作業している部屋に到着します。一応、ゼータさんがマメに様子見や食事の面倒を見ているようですが」

 

 「やー、なんか色々お世話になってます」

 

 目的地への道すがら世間話に興じる2人、そうして目当ての人物が居る研究・技術区画へと辿り着く。

 

 「やっほー!ネプギア!遊びに来たよー…ぉ?」

 ネプテューヌが元気良く扉を開け放つが末尾の言葉が尻すぼみの疑問符になる。

 何故ならば彼女の視線の先、用途が良く解らない機械の、恐らくはキーボードらしきモノを斯くも物凄い勢いで叩き続ける修羅が居た。

 

 「ネプギア?ネプギアー?おーい」

 「ごめんなさい集中したいので静かにして下さい」

 「え…あ、はい」

 後ろ側から回り込むように覗き込み、手を翳して反応を確かめれば即座に返って来る非情な返事。

 上がり切ったテンションが蝋燭が吹き消される様に萎む。

 「ごめんねねぷねぷ。今けっこう忙しいからまた後日ね。全く、この身体になってから作業効率が遅くて困る。ギアちゃんが居てやっと26%なんだから」

 ネプテューヌから見て9時の方向に座るアルファが画面を見比べながら返事をする。

 彼も言葉の割りに必死に手を動かす。

 

 「どうやらまだ時期尚早でしたか」

 

 「ネプギアが…ネプギアがぁ……」

 

 項垂れ肢体倒置するネプテューヌの肩をポンと軽く叩きながら翼沙が呆れるやら苦笑するやらの顔でそう溢す傍らネプテューヌは妹が自分に素っ気無く対応したショックの言葉を垂れ流すばかりであった。

 

 

 そして日は巡る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・住宅街

 

 「ハッハッハッハッハッハッ!!奮えるぞ!滾るぞ!戦場に!我が魂が!」

 まるで水着にも見える程肌露出が高い鎧を纏い、黒髪のサイドテールに前髪を1房金メッシュに染める稲妻のパターンタトゥを入れた女性が吼える。

 

 「…っ!(見た目の割りに攻撃が重い!)…厄介だな……」

 迎え撃つはシャドーリュウ。腕のシャドークナイで女の御刀を受けながら間合いを開けようとバックステップを取る。

 

 「ふん!悪くない、寧ろ良い。貴様…中々に強いな、喰らい甲斐がある。名を訊いておいてやろう!」

 眉間に凄まじい皺を寄せた女が何時でも飛び掛かれる体勢を保ちながらリュウに名を訊ねる。

 

 「………シャドーリュウ。こちらが名乗ったのだ、貴様も名乗ったらどうだ…?」

 

 「クハッ!中々に図太い!!良いだろう冥土の土産に刻むと良い!我は"怒れる"ラーシュメイラ!さぁ…存分に死合うぞ!」

 

 四霊刀麒麟を器用に振り回しながらラーシュメイラがリュウへ強襲する。

 作戦の手前、あまり足止めをされる訳にもいかない。しかし、敵を仲間の元へ連れて行く訳にもいかない。

 ラーシュメイラはそんなリュウの胸中など、知ったことかとばかりに猛進する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ウイングライナー客車

 

 シャドーリュウが敵との激戦を繰り広げている頃、空を行くライナービークルにエンからの通信が入る。

 

 『おいっ!敵が出た!それもけっこうヤバそうな奴だ!!』

 

 スピーカーから焦りが滲み出る程の大声が響く。

 その慌て様は客席にも轟いていた。

 

 「落ち着いて下さい。エン、貴方の現在地と敵の様子、どういった特徴を持っているのかを出来る限り明瞭に説明して下さい」

 『ヨクの言う通り落ち着けエン。妨害が入る事も想定していただろう。ゲキも共に居るな?』

 『おう、おるぞ。ついでに敵さんはリュウが相手をしておる。でじゃ、エンが慌てとる理由なんじゃが……敵は御刀を持っとった…あん時のドレス女と同じ様にな』

 ヨクが言い聞かせる様にエンに端的に説明を求め、同じく通信を聴いていたカイがエンに訊ねるよりも同乗しているゲキに問うた方が早いと判断し話を振る。

 そしてゲキから返ってきた言葉はメンバー達にとっても衝撃的なモノ。

 

 『御刀ァ!?』『ドレス女…あの変態の仲間か…』

 

 通信越しのシンの声が裏返る。恐らく驚いて座席からずり落ちたのだろ?

 そしてカイはドレスの女と聞いて、浜松で遭遇した"喜び"のアドヴェリアを思い出し辟易する。『奴の仲間ならば碌な相手では無い』と。

 

 『うむ見た感じ痴女の様な見た目だが、性格は戦闘狂…狂犬の様なオナゴであった』

 『問題は奴の持ってた御刀だ!あのドレス女の時と同じで見たことが一切無い。それにあの女は醸し出す雰囲気がヤバい』

 喧嘩慣れした人間特有の勘から出る言葉に他のメンバーも考え込む。

 『ワシも同意見じゃ、リュウがいくら強くとも一人で相手取るには厳しい。やはりワシらも援護に戻るべきじゃなかろうか?』

 ゲキもまたエン同様の勘を持つ事からリュウの援護をすべきと答える。

 『いや駄目だ。作戦の遂行を考えれば我々が抜けるのは悪手』

 『ならドーすんだよ?リュウが合流しなきゃドノ道火力足りねぇダロ?』

 「僕達が無理でも彼等ならばどうでしょうか?」

 ゲキの意見を却下しシンに噛み付かれるカイにヨクが意見を述べる。

 『そうかお前もそれを思い付くか。だが、当人達はどうなのだ?』

 ヨクの意図を即座に解するカイ。だが自分達の都合ばかり押し通す訳にもいかないと同乗する者達の意思を問う。

 「其方はどうなんです?」

 『どうにも…今の我々の会話でやる気になったらしい』

 『オレのトコもだな。カワイコチャン達が色々言ってラァ』

 2人の言葉を聞き、自身もコントロールをオートモードに変更し客席へ様子を伺うヨク。

 扉を開けた先には既に座席から立ち上がるネプテューヌ、一誠、ヴァーリ、そして控え目ながらも強い意思を秘めた瞳で此方を見詰めるギャスパーの姿。

 

 「どうやら此方も同じようです。彼等の意思も確認出来ましたし、一つここは僕の作戦で行かせてくれませんか?」

 

 『良いだろう』『ま、オマエなら大丈夫か』

 『よっしゃ任せた!』『存分にその眼鏡を光らせい!』

 

 4人から全面的に任せると言う同意が取れたヨクは同乗者達に向き直る。

 

 「皆さんも宜しいですね?」

 

 「オッケーだよ!速いとこりゅーごくんを助けに行こうよ!」

 「口数は少ないけど、何だかんだ良いヤツだしな!」

 「俺としても彼の様な強者を失うのは惜しい」

 「ぼぼ、僕も龍悟くんとは仲良くしてもらったですし、清香ちゃんが悲しむのは避けないと」

 六角兄妹に世話になったらしいギャスパーがテンパりながらも明確に言葉を口にした事で、全員の意思が統一されている事を改めて理解する。

 「分かりました。では今から一度リュウの居るポイントへウイングライナーを向かわせます。ですのでその間に作戦を説明しておきますね。作戦は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・市街地

 

 「ほらほら!どうしたぁ!?避けてばかりではつまらんぞぉお!!」

 怒れる女傑が刀を振るう。彼女が御刀を振るう度、稲妻が走り空気が震える。

 

 「ちぃっ…!?……あの御刀…厄介だな」

 6人の中で最も装甲が薄いダグテクターを持つシャドーリュウ。無論、それでも現代技術では到底破壊など出来ぬし、並みの異星人相手であっても傷1つ付くこともないが…相手はその並みを凌駕し、尚且つ自然界で最も強大かつ一般にも多く利用される電気の力を持った御刀を得物として扱うのだ。

 正面から馬鹿正直にぶつかれば油断が無くともただでは済まない。

 

 中距離から手裏剣で牽制しつつ分身を駆使して、一撃離脱の戦法を繰り返しているが、何分相手も戦い慣れているのか致命打には至らない。

 このまま膠着状態が続くのは作戦を鑑みてもよろしく無い。

 (……致し方ない。分の悪い賭けは避けたかったが…)

 リュウがそう考えていた時、上空から一筋の影が彼の上に覆い掛かる。

 

 「…何っ?!」 「ん?無粋な…いやしかし強者が増えたと捉えるべきか?」

 驚くリュウと戦いに水が差されたと思い、しかし次の瞬間に新たな強敵との邂逅に興奮を覚えるラーシュメイラ。

 

 「…ウイングライナー、何故ここに……?」

 作戦はどうしたと続けようとして、空から落下してくる2つの影を前に言葉を呑み込む。

 

 「やぁ、助太刀に来た」

 「変態の仲間なんざさっさとぶっ倒してやろうぜ………って、うぉっ!?デカッ!!おっぱいデカッ!?」

 白と赤の鎧がリュウの前に降り立ち、彼に助力の言葉を述べ、しかし一誠がラーシュメイラの姿形を見て台無しにする。

 

 「もぉー!イッセーーー!ちゃんとしなさーい!」

 

 ウイングライナーの扉から下の義弟に向けネプテューヌのお叱りが跳ぶ。

 

 「ふん?白い方は中々楽しめそうだが…赤い方は早々に終わりそうだな」

 赤いフルプレートメイルの甲冑から醸し出る残念さに些か興が削がれるラーシュメイラ、暫く彼等のやり取りを眺め、そうして面倒になったか一息浸くと眼を瞑り、気を集中させる。

 

 「ちょうど良い。貴様らの底を測ってやろう?来い!我が"怒り"に導かれし獣共っ!!」

 

 荒ぶる稲光りを纏った麒麟を大地に突き立てると電光が地を走り、程なくして荒魂達が引寄せられた様に現れる。

 

 「…何…?」

 

 「驚いたか?どうにも我が怒りはこの星の荒魂とやらには良い刺激になるようでな、こうして麒麟を介して呼び寄せる事が出来るのだ。更にはこういう事も出来る!」

 そう言って地面から麒麟を引抜き、荒魂達目掛け掲げると彼女のオーラが麒麟を介して荒魂達に流れて行く。

 そして変化は起きた。

 荒魂達はその身体を一回り大きくし、黒い稲妻を身に纏い、極度の興奮状態となる。

 

 「どうだ?中々に愉快だろう。我が怒りとこのケダモノ共は相性が良すぎる様でな?僅かでも注げば狂化する」

 

 浮遊型、蛙型、蠍型、と言った様々な荒魂が口から涎のようにノロを噴き出し唸る。

 彼等にもし瞳があれば、その眼孔は血走っていたのではなかろうか。

 

 「さて、お手並み拝見と行こうか赤いのに白いの、簡単には潰れてくれるなよ?」

 

 その言葉と共にラーシュメイラは狂化した荒魂を伴って3人へ襲い掛かった。

 

 

 

 

 「翼沙くんヤバい!ヤバいよあれ!?」

 上空から一連の出来事を見ていたネプテューヌが

ヨクの名を連呼する。

 「理解しています。しかし作戦は変えません。あの三人を信じましょう。僕らは本来の目的を果たさねば」

 「うぅ……わかった!一誠もヴァーリも強いもんね!それにりゅーごくんも何か凄い子だし、きっと大丈夫、イケるイケる!」

 ヨクの返答に自身の両頬を叩き、気合いを入れ直すネプテューヌ。

 扉から離れ、座席へ戻る。それを見届けたヨクが扉を閉め、先に行った仲間達の元へ合流を急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・住宅地

 

 「ふ~んふふ~ん♪ふー…ん?やれやれ…足止めを頼んだのに出来ないいじゃないか、あの雌獅子め…。まぁ狂戦士染みた奴ではあったし、ハナから期待はしてないけど、もうちょっと減らしておいて欲しいものだねぇ、んふふ」

 不可視の壁の前で顔だけは人間と同様に精巧なクロッキー人形が鼻唄を口ずさみながらそんな事を呟く。

 彼はその首を180度回転させ空へと視線を向けると彼方より此方を目掛けやってくる3輌の飛行する新幹線。

 そして大地へ視線を下ろせばサイレンを鳴り響かせる1台のパトカー。

 更に数十km程後方から刀使の少女達と、千客万来である。

 

 「うんふふ、異世界の連中は何処かね?まぁ良いか。どんな策を弄したところでこのキャンバスは破壊出来ない。しかし近くで鬱陶しくされるのも癪だねぇ、ここはザゴス、荒魂ザゴスとザゴス円盤に任せようか」

 等とアーテシャン星人が考えた言葉をベラベラ垂れ流していると壁に到着した3輌のライナービークルとアーテシャン星人の前に停車したファイヤーストラトスの扉が開く。

 ライナービークルからは各々に乗り込んだオカ研+愉快な一行達が臨戦態勢で街のアスファルトへと着地する。

 ファイヤーストラトスからはゲキが降車し、ファイティングポーズを取る。

 

 「ぬんふ、そうかそうか、ダグオン共に運んで貰った訳か!うふふんふぬふ。ご苦労な事だな」

 男の声で納得し、少女の声で驚嘆し、老婆の声で嘲笑し、少年の声で皮肉を謗るアーテシャン星人。

 そんな星人に女神パープルハートと化したネプテューヌが剣を掲げ宣言する。

 

 「いい加減私達の街を返して貰うわ。覚悟は出来ていて?」

 その言葉に続く様に立ち並ぶ英雄の血を、魂を、記憶を引き継いだ者達。

 更にアーテシャン星人を挟むように立つ悪魔の騎士2人。

 ネプテューヌ達のやや後方、バックアップに意気込む僧侶2人。その2人を守れる様に位置取る猫魈の姉妹。

 そしてリアス、朱乃は幼いレオナルドの様子に注意しながら指示とフォローが取れる位置に立つ。

 

 「うんうん、ふふふん。多勢に無勢だな?ギャラリーなら大歓迎だが…芸術を解さない輩ではなぁ。こふふ」

 降り立った面子を眺めた後、頭部を二度360度回転させると指の無い筈の手からフィンガースナップを轟かせる。

 

 「何を…!?」

 

 パープルハートが星人の意図を読めずにいると周囲の民家の石壁がまるで隠し扉の畳替えしの如く回転しザゴス星人の兵士ザゴスソルジャー、そのソルジャーに荒魂を投与した荒魂ザゴス、更にアーテシャン星人の周囲に荒魂シード星人、最後に空から光線と共に現れるザゴス星人の侵略用強襲円盤が数百と出現する。

 

 『チッ!そりゃ一筋ナワで行くとか思ってなかったけどヨォ!!』

 シンがアーマーライナーのバックウェポンで迎撃しながら悪態を吐く。

 

 『円盤は我々が相手取る!君達はエン、ゲキと共に地上の星人を!』

 光線を躱しながらターボライナーを円盤郡へ突撃させて行く。

 

 『あと暫くもすれば刀使の皆さんも合流するはずです。その時は荒魂ザゴスは彼女達に任せ皆さんは星人の方に!』

 ウイングライナーのクリスタルミサイルで円盤を幾つか撃墜したヨクが大まかな方針を伝え、残りの円盤の迎撃に向かう。

 

 「分かったわ!」

 

 「よっしゃ、行くぜネプ先輩達!」

 

 パープルハートとエンの呵成の声に地上に蔓延る星人達へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 「蟻みたいな宇宙人だね。生態も似ているのかなっ!」

 木場祐斗が神器によって造り出した魔剣の二刀流でザゴス星人達を容易く斬り裂き、騎士の駒の特性からなる速度で敵陣を翻弄する。

 

 「どうかな、何にせよ思っていたより歯応えが無いのが少々残念だ。所詮は下っ端と言う事だろうか?」

 同じく騎士の駒の特性を持ちながら祐斗とは真逆の豪快な剣捌きでザゴス星人を蹴散らすゼノヴィア、それはまるで小さな台風だ。

 

 「はっはっはぁっ!これなら荒魂とか言うヤツの方がまだ手強かったぜ!!」

 ヘラクレスが巨体を奮わせながら其々の手にザゴスの頭部を掴み振り回す。

 

 「そりゃ荒魂に有効なのは刀使の御刀か、私らが使う聖剣系神器だもの。あんたからしたら手強いでしょうよ」

 ジャンヌダルクが神器で生み出した聖剣で荒魂ザゴスを中心に斬り刻んでいく。

 

 「では荒魂混じりは木場とお前に任せようか」

 余裕の笑みを浮かべた曹操が群がるザゴス星人達を手慣れた槍捌きでいなし、貫き、払い、穿つ。

 

 「ひゃぁぁぁああっ?!やっぱり怖いですぅ!!?」

 祐斗や曹操達の隙間を縫って迫り来るザゴス星人や自分の近くに現れたザゴス星人の虫の様な威容に怯え、複数の蝙蝠となって逃げるギャスパー。とは言えザゴス星人にとってそれは予想外の出来事であり、充分に攪乱に貢献している。

 

 「ギャーくん、こっち」

 それをカバーするのは小猫。ルークの性質により華奢な身体からは想像も付かない剛腕でギャスパーによって乱されたザゴス星人を吹き飛ばす。

 

 「皆さん!怪我は私が治します、頑張って下さい!」

 アーシアが黒歌の護衛やリアスの援護を受けながら声を張る。

 今の所回復の必要性は無いが、後方支援があると言うのは有難い事だ。

 

 「うふふ、空も彼等ばかりに任せてはいられませんわ」

 魔力を練り上げ堕天使の光を織り混ぜた雷光を自身の上空に漂う円盤目掛け落とす。

 

 「思ったより頑丈なようね…」

 朱乃の4度の雷光と自身の滅びの特大魔力球によりやっと2機の円盤を撃墜した事を確認するリアスが、円盤の強度に唇を噛む。

 

 「私達はとにかく地上の異星人に集中するのよ!」

 ブレードでザゴスを両断し、プロセッサユニットの翼で3次元機動をこなすパープルハートがアーテシャン星人目掛け切り込む。

 

 「ふふん?異世界の人間…いや人間ではない者もいるが強いな。ひふふ。さて、上のダグオンは兎も角、赤いのはザゴスソルジャー共が足止めしてるが……おや?黒いのは何処だ?」

 「よそ見は厳禁よ!」

 戦場を見渡すアーテシャン星人がゲキの姿を見失い探していると上方からパープルハートが斬り付ける。

 「んんふ!?痛いじゃないか、痛くはないがね」

 肩からバッサリ袈裟斬りされたアーテシャン星人がパープルハートに批難する。

 「どっちなの!」

 異星人の支離滅裂な発言に斬撃と共にツッコミを入れるパープルハート。

 そんなパープルハートに追い詰められたアーテシャン星人の足下が揺れる。

 

 ドリルゥゥゥクラァァァアッシュッ!!

 

 アスファルトを砕き巨大なドリルがアーテシャン星人を足下から貫きドリルの回転によりバラバラに砕け散る。

 そして砕けた際に散った頭部をパープルハートが容赦無く斬り臥せる。

 

 「やったの!?」

 

 「手応えアリじゃ!」

 

 パープルハートとゲキがアーテシャン星人を倒した事を確信する。しかしザゴス星人やシード星人、荒魂ザゴスの勢いは衰えず、壁は一向に消えない。

 

 「っ?!どうして…!」

 

 パープルハートが困惑の声を洩らし狼狽える。

 

 

 

 「「「…っぐぁぁっ?!!」」」

 

 

 其処へ赤と白、そして紫の影が幾つかの民家の屋根を破壊し吹っ飛んで来る。

 

 「ふはは!戦の臭いがするぞ!強者が集まっているな!滾る、実に滾るぞ!さぁ!我が魂を満たせ!!」

 影の正体は赤龍帝の鎧を纏った一誠、白龍皇の鎧に身を包んだヴァーリ、そしてシャドーリュウ。

 

 彼等3人を吹き飛ばした人物、"怒れる"ラーシュメイラは3人と戦っていた時と違い肌に刻まれたタトゥーが発光し、額から一角のツノが生えている。

 

 「大丈夫、一誠!ヴァーリ!」

 

 「無事かリュウ?!」

 

 吹っ飛んで来た3人をパープルハートとエンが抱き起こす。

 

 「貴女の仲間は既に倒したわ!まだ戦う気!?」

 二天龍に肩を貸しながらパープルハートはラーシュメイラに継戦の意義を問う。が、ラーシュメイラは訝しげに眉を潜め、苛立ち気に溜め息を吐くとつまらなそうに口を開く。

 「はぁ…倒した?終わり?違うな、私にとって終わりとはどちらかが命絶えるまで。それに貴様らはアーテシャン星人を倒してなどいないぞ」

 

 ──!!?

 

 異星人達を除いたその場の全員が驚きに染まる。

 それと同時に空から新たに何かが降ってくる。それは先程倒した筈のクロッキー人形、地面に激突する瞬間に手足を広げ器用に着地したそれは木人の頭に即座に先程と同様の彫刻の様に端整な顔が貼り付き、声を発する。

 

 「しふふ、あれで終わり?冗談はよしたまえ、芸術はこれからだよ?あふふ」

 

 復活したアーテシャン星人、合流したラーシュメイラの気配に引寄せられ荒魂の数が増す。

 

 「増援…いえ、荒魂ばかりなら彼等の気のようなモノに引寄せられた!?」

 リアスが増えた荒魂を観察し仮説を立てる。

 

 「さぁ続きを始めよう!」

 アーテシャン星人が再び指揮する様に腕を振るうと壁の内側が動き出す。

 「させっかっ!」

 それを見たエンが走り出すがラーシュメイラが電光石火の動きで肉薄し蹴り跳ばす。

 

 「不味いな、手が足りない」

 曹操が戦場の混沌に焦れる。だが、そんな声を聞き届けた訳では無いだろうが、彼等の側にも新たな戦力が参上する。

 

 

 「ウチュウジンだろうがっ、荒魂ちゃんならアタシの獲物だぁぁあああ!!」

 

 

 屋根を駆け2振りの小太刀を振り回す刀使、七之里呼吹が荒魂と荒魂ザゴスを即座に刻み落とす。

 

 「美少女のピンチに即参上!全美少女の味方山城由依、ここに見参!おひょ~♪戦う美少女も絵になりますねー!」

 身の丈並の太刀を振り下ろしながら山城由依が真剣な空気を台無しにするような登場をする。

 

 「由依ちゃんってばブレないわね」

 「それが彼女の美点でもあります。普段ははた迷惑極まりませんが」

 遅れて瀬戸内智恵、木寅ミルヤが安桜美炎、衛藤可奈美、十条姫和、古波蔵エレン、益子薫を引き連れ現れる。

 「あれ…?沙耶香ちゃんが居ません」

 1人姿が見えない沙耶香の安否を案じる小猫が溢した瞬間、アーテシャン星人の首が落ちる。

 

 「獲った」

 

 短く告げるその少女こそは糸見沙耶香。彼女は呼吹と同時に戦場に到着し、星人の首を落としたのだ。

 しかし──

 

 「むふ、であるから、無駄だよ人間」

 

 3度降下するクロッキー人形が再び告げる。

 

 「もしや…彼奴には本体が別に居るのではないか?」

 ゲキが3度も復活するアーテシャン星人を見て、可能性を推挙する。

 

 「それが解ったところでどうしようもあるまい!」

 ラーシュメイラが愉快そうに苛立ちながらゲキに麒麟を振り下ろす。

 「ぬぅ?!」

 腕の装甲で麒麟を受けるゲキ、装甲の強度が6人中最硬を誇るゲキが刃こそ受け止めるも女傑の力に押され込まれる。

 

 「さて空も鬱陶しくなって来た。何時までも遊んでいるなよザゴス共!!」

 空を飛び円盤を次々撃ち落としてゆくライナービークルを睥睨しながらアーテシャン星人がザゴス星人に檄を跳ばす。すると数を減らし機動性を増した円盤の幾つかが紅く染まり変形する。

 

 

 楕円の円盤から樹の様な節が生え下方に付いていた小さな楕円や中くらいの楕円が手足や腰になる。

 最後に上部のブリッジらしき楕円が節を首の様にさせ人型となる。

 

 「なっ!?宇宙人側も変型だと?!」 「ねねー?!」

 

 宇宙海賊と超速三兄弟を除いた初めての悪役っぽい円盤の人型変型にある種の衝撃を受ける薫。ねねも律儀に驚く。

 

 「くそっ!ただでさえ数がいるのにデカブツまで出てくるとか…そんなのアリかよ!!?」

 大地を轟かすザゴス円盤ロボに思わず一誠も抗議の声を挙げる。

 

 「……兵藤、ルシファー。あの女を任せていいか?」

 リュウが2人の龍王に後を託す。

 

 「?」 「何を…?」

 彼の発言に首を傾げる赤と白。構わずリュウは己の愛機を呼ぶ。

 

 「…来い、シャドージェット!」

 

 リュウの声に応じ紫影の機体が現れる。

 「…はっ!」

 跳躍しジェットに乗り込むリュウ。エンもファイヤーストラトスに乗り込む。

 

 「ゲキ!頼むぜ!」

 

 「おうよ!存分に暴れろい!」

 エンに応じるゲキ、刀使達もダグオンが何をしようとしているのか理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結芽、認識阻害の眼鏡を決して外すなよ?」

 「だいじょーぶだよ、おねーさん達にバレない様にちゃんと気を付けるから」

 兄の心配も聞き流しながらブローチを操作し手足に灰色の装甲を展開しマントをローブの様に被り眼鏡を装着する結芽、そのままドアのロックを解除し、戦場へと落下する。

 

 「来て、おじさん!

 

 落下しながら最早馴染みとなった相棒を呼ぶ。

 

 『おじさんでは無いと言っているだろう!』

 

 呼掛けて数秒、即座に黄金の獅子剣が飛来し彼女の手に収まる大きさとなり結芽は八幡力を発揮、難なく地上へ着地する。

 

 「おー、色はダサいけど着地した感じのフタンがない!やるじゃんバンド眼鏡のおにーさん」

 刀使達の手前名前を出さないよう気を付ける結芽が試作のVRS装備の機能を確かめながら感嘆の声を洩らす。

 

 「じゃ、赤いおにーさんと白いおにーさんが遊んでるあの宇宙人、私が貰っちゃお♪」

 『油断するなよ、アレは真っ当な剣士では無いぞ』

 「あはっ♪」

 ライアンの言葉に笑みを溢しながら結芽はラーシュメイラへと斬り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よっしゃ行くぜみんな!」

 「「「「応っ!」」」」

 5人の戦士がマシンと共に駆ける。彼等が次に口にする言葉が戦場を一変させる。

 

 

 

 

 

「「「「「融合合体!」」」」」

 

 

 

 

 

 5機のビークルの天辺に5人の戦士が仁王立つ。

 ファイヤーストラトスが、ターボライナーが、アーマーライナーが、ウイングライナーが、シャドージェットが、変型を、開始しマシンから鋼の巨人へとその姿を変えてゆく。

 エンが陽炎となり巨人に融ける。カイ、シン、ヨク、リュウが巨人の顔面に立ち、消え行く。

 5体の巨人の瞳に光が走る。

 

 『ダグファイヤァァアアア!!』

 

 『ダグタァァァボォッ!!』

 

 『ダグッアァァマァァァァアッ!!』

 

 『ダグウィィィイングッ!!』

 

 『……ダグシャドォォォッ!』

 

 自らの名を高らかに叫び、大地を踏み締める5体の巨人。色取り取りの彼等を見た薫が興奮の限界に達する。

 

 「正義のヒーローロボ5体揃い踏み……ブラック職場に就いて幾数年、これを見ただけでも生きていた甲斐がある」

 感涙に立ち竦む薫、エレンが慌ててフォローにはいる。

 「薫~?感動するのは良いデスが、手は動かして下サイ!」

 相方のその言葉に分かってると返しながら祢々切丸を豪快に振り回す。

 

 「え?…え?」

 「ロボットォォォォォォ?!」

 「何かあるとは思っていたが……あんな隠し球があったとはな」

 「生ダグオンロボ、感激です」

 「小猫ちゃん知ってたの?!」

 突如変型し巨人となったダグオン達にパープルハートが思わず眼を点にし、一誠がギャグ漫画調のリアクションを、ヴァーリが思わず笑って反応を示し、小猫が沙耶香の部屋に世話になった際、ネットで調べたダグオンの情報から得たモノを生で目撃した事に起伏こそ少ないが感動している。

 そしてそんな彼女の反応にギャスパーが思わず驚きツッコむのであった。

 

 「ただのマシンじゃないとは思ってたけど…」

 「まさかロボとは…。世界は広いな」

 「所で、ゲキさんはロボットにならないんですの?」

 祐斗とゼノヴィアが戦闘を続行しながら鋼の巨人に感想を述べ、朱乃が近くのゲキに何故1人だけそのままなのかを問う。

 「簡単な話じゃ。ワシのビークルがまだ出来とらんのじゃぁぁぁぁぁぁあ!!」

 彼女の問いに一度溜めを作り、群がるザゴスの中に埋もれた瞬間、叫ぶと同時にザゴスを蹴散らす。

 

 「「「「「「「「「「あぁ……」」」」」」」」」」

 色々察した面子が居たたまれない気持ちになる。

 

 

 

 

 

 

 「はひゃっ♪小娘、中々楽しめるな!」

 一方、ラーシュメイラは結芽相手に壊れた笑いを溢しながら剣を交える。

 「おねーさんもね。今まで戦った宇宙人の中じゃ一番強いかも」

 黄金の剣と黄雷の刀がぶつかる度、火花が散る。

 

 

 「………あの子、なんだろ?」

 「可奈美ボサッとするな!」

 そしてそれを見掛けた可奈美が違和感にふと立ち止まれば姫和が発破を掛けて後にしろと割り込む。

 「ごめん姫和ちゃん!そうだね終わった後で訊けばいっか!」

 違和感は感じるが姫和の言う事も最もだと判断し、荒魂の討伐に戻る。

 

 

 

 

 

 

 『おらっ!』

 

 『はっ!』

 

 『ダラッシャァアッ!』

 

 『はぁぁあ!』

 

 『……斬捨て、御免…!』

 

 5体の巨人が戦闘形態となったザゴス円盤を次々に蹴散らして行く。

 刀使達も粗方荒魂を片付け、アーテシャン星人達に注力し始める。

 

 「うーむ、やはりただの荒魂やただのザゴス星人では奴等の相手は不足か。ふふふ…ん?」

 面白おかしく戦局を俯瞰しながらキャンパスを操作するアーテシャン星人。しかし彼は突如として上を向き眼を細める。

 「何を考えている?必要以上の増援は頼んでいないぞ?まぁ手を貸してくれると言うなら大歓迎だがね。うんんうん……だがね嫌いな相手に借りを作るのはごめん被る!」

 

 「何を言っているの……?」

 

 「ふん。あの小僧、やはり痺れを切らしたか。しかし無粋が過ぎるな、己は安全な場所から遊戯感覚で人形で戦うのみとは。同じ人形でもまだ奴の方がマシと言うものだ」

 パープルハートが訝しむ傍ら結芽と更には祐斗やゼノヴィア、曹操、ヴァーリ、一誠相手に片手間で応戦し始めるラーシュメイラが反吐を吐くように呟く。

 

 

 

 『何だ?』

 ダグファイヤーが地上の変化に自身も空を見上げると、大気圏を抜け駒王町目掛け降り立つ5つのナニか。

 それらはダグファイヤー達の前に着地すると声を発する。

 

 「ヴΙαΤΟΨαβΨ…んん!」

 「久し振りだね下等生物ども!」

 「三度目のコンテニューだ、今度こそ」

 「このゲームは僕が勝つ!だから」

 「大人しくやられてスコアになれ!」

 

 恐竜の化石の様な鎧の巨人が、絡繰人形の様な巨人が、風船を繋ぎ合わせた巨影が、糸を束ねた木偶が、鉛の球体から手足を生やした怪物が全く同じ声でその場に居る者達に告げる。

 

 『奴は…もしや以前も現れた甲冑の異星人か!?』

 ダグターボが即座に正体に思い到る。

 

 『前よか随分流暢に喋んじゃネェか、しかも五匹とはな…今回はマジってコトか』

 5体同時に現れた敵にダグアーマーが息を呑む。

 

 『壁の事もあります、手早く仕留めなければ』

 ダグウイングが作戦を成功させる為にもと皆に言い伝える。

 

 『……同感だ。何やら不穏な空気が場を支配しつつある……』

 ダグシャドーは攻勢から一変、不気味なナニかを感じ、カゲムラサキを逆手に構える。

 

 「ゲーム…スター「芸術の邪魔をするんじゃあ無い!ベテルぅぅぅぅうう!」はぁっ?!」

 傀儡宇宙人の介入に機嫌を損ねたアーテシャン星人が誰かの名を叫ぶ。

 すると空が円状にくり貫かれ、くり貫かれた側は回転し始め、やがて複数の穴が現れその場に居る全てを吸い込み始める。

 

 

 『うぉっ?!』

 始めに踏ん張っていたダグファイヤーが宙に浮く。

 「わわっ??!」

 「うえっ!?」

 同時に可奈美と美炎が吸引に負け吸い込まれてしまいそうになる。

 「くっ…踏ん張りが利かない!?」

 「どぉぁあ!?!」

 「ぐぉおお!!?」

 プロセッサユニットの翼によるブレーキングも敵わず引っ張られていくパープルハート、既に穴に吸い込まれてゆく一誠とヴァーリ。

 

 『っぁ!ダメだ!もたねぇ!!』

 遂に吸引力に負けたダグファイヤーが先に吸い込まれた者達を追うように吸い込まれてしまう。

 他の穴にもそれぞれが飲まれてゆく。

 

 ダグターボが結芽を手に抱えながら吸い込まれ、朱乃、祐斗、曹操、由依、智恵が吸い込まれる。

 

 ダグウイングが空中制動も虚しくエレン、薫、ねねと共に吸い込まれ、リアス、アーシア、ギャスパーが同じ穴に吸い込まれてしまう。

 

 ダグシャドーが逃れる術を探すも姫和と沙耶香が吸い込まれる所を見掛け助けようと穴に飛び込む。そして小猫、ジャンヌ、ヘラクレス、ゼノヴィアも各々踏ん張っていたものの、ダグシャドー達の穴に吸い込まれてしまった。

 

 最後に最も重量を持ったダグアーマーがミルヤや呼吹等を庇いながら耐えていたが、残った者達共々吸い込まれる。

 

 「ぬぅ?!皆吸い込まれてしまった!!?」

 唯一、ドリルナックルで大地にがっちりと固定し難を逃れたゲキが壁と己以外居なくなった場所から穴が塞がる瞬間を眺めながら嘆く。

 そして穴が塞がった事を見計らい、新たなアーテシャン星人の人形が落ちるのを目撃、作戦の失敗を悟る。

 

 「くっ、口惜しいが今は退くより無い。まずは皆の安否を確認せねば」

 新たなアーテシャン星人を倒しても、本体が分からぬ以上いたちごっこと断じ撤退を選択するゲキ、黒い戦士は一先ず作戦本部へと悔いながら去って行くのだった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 皆何処に消えてしまったんじゃ!?

 

 作戦失敗だなんて…そんな…!

 

 皆さん無事でしょうか…?

 

 うむ?通信?ブラジルから?ぬぬ?更にはフランス、ドイツ、ニュージーランド、エジプトじゃと!?

 

 飛ばされた人たちはそこに居るんですか!?

 

 何?ワシは残ったメンバーを率いて京都に向かえとな?ええい良く解らんが分かった!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 別たれた戦士達!新たなる一手。

 

 ぁあ~、新たなる幼女の気配がするぅ~!

 





 次回は個別に戦闘してからの壁攻略のヒント的なモノが出る感じです。

 あー、今月の給料だけじゃ機種変に足りない。来月まで耐えなければ。
 その前にまず引継ぎの準備しなきゃ……面倒だなぁ、いっそもっと簡単に出来ないかなぁ、アプリの云々読むの面倒臭いんだよなぁ…。

 ではまた次回



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第八十七話 別たれた戦士達!新たなる一手。


 こんばんは。大分久し振りになりました。

 この回幾つかプロットを練っては消して書いて消して書いてしてたんですが…ゴールデンウィーク全て仕事浸けになった為、かなり遅れました。

 それはそれとして天華百剣は欠かさずログインして四周年記念無料ガチャを回して新しい巫剣をゲットしたり、アイプロで博士やナターリアを愛でたりウミサンの新たな魅力を知ったり世界レベルに笑わせて貰ったりもしてました。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 うん?何だ貴様、これを俺に読めと……?

 チッ、レイヴェルの手前、無下にする訳にはいかんか…。

 

 宇宙監獄エデンの凶悪な宇宙人達が異世界から地球に侵略を開始した!

 立体交差平行世界管理上位超次元生命体アルファと宇宙警察機構の宇宙人ブレイブ星人は地球の平和を守る為に五人の高校生にスーパーパワーを与える。

 力を与えた勇者達、その名はダグオン!

 彼等は新たな仲間ドリルゲキを加え、異世界の異邦人達と共に地球の為に戦う!!

 

 これで文句無いだろう? …何?!別パターンも収録したいからもっと読めだと!!?

 


 

 ━━月衛星軌道上

 

 『良かったのか?要請があったとは言え、ダグオン共を奴の作品の材料があった場所に飛ばしてしまって』

 漆黒の新幹線が牽引する貨物車輌に同乗する者へ疑問と共に訊ねる。

 それは地球で起きた戦いに関する事を何処か批難めいてもいるように聴こえる。

 

 「無論、良い。彼奴がそう指示したのだからな。それで例えご自慢のキャンパスが狂わされたとて、此方(こなた)の責任ではない、何故ならば飛ばす先までは事細く指示されてはおらぬのだから。それに今まで奴の我儘に付き合ってやったのだ、ここからは此方(こなた)が好き勝手しても文句はあるまい」

 

 『成る程…お主も鬱憤が溜まっていたのか……まぁ傀儡宇宙人も乱入した今、律儀に協力し続ける必要も無いか』

 修道女の言葉に得心いったのか、これ以上の追及を止めるJーエース。

 囚人同士の協定関係など、ふとした切っ掛けで容易く途切れる存在なのだ。

 『エデンの方も色々と騒がしくなっているだろうな……』

 乱入した傀儡宇宙人の暴挙にエデンで一波乱起きると予想しJーエースは地球の観測に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町山北町境・異星人対策本部テント

 

 5人の勇者が数人を刀使と異邦人と共に空間の穴に吸い込まれ別の場所へと飛ばされて数時間。

 前線の拠点となった対策本部のテントに1人の戦士が帰還した。

 その気配に気付いたアーサー、イリナ、舞衣が戦士を出迎える。

 

 「何かあった様だなドリルゲキ」

 

 「あれ?みんなはどうしたの?」

 

 「ゲキさん?」

 

 三者が黒い勇者に声を掛ける中、清香も遅れてテントから外に出る。

 丁度そのタイミングで黒鉄の勇者は拳を力一杯握りながら悔し気に口を開く。

 

 「作戦は失敗じゃ。敵の邪魔が予想以上だった…、特に、首魁と思われる星人は倒しても倒しても復活する。恐らくは本体が別に居るんじゃ無いかと思う……が、ワシではこれ以上は解らん!ヨクが居れば違ったんじゃが…兎も角、此処も危ないかもしれん、一度撤退して対策を建てる必要がある」

 まずは結果と作戦にて判明した事を語るゲキ、次いでバイザー越しに清香に視線をチラリと向けながら姿の無いメンバーの事を説明する。

 「それと…他の皆じゃが……突然現れた奇妙な穴に吸い込まれちまった。ワシはこのダグテクターの特性で難を逃れたが、皆が何処に行ったのかまでは分からん。故にワシは基地に戻る。何か分かればペンドラゴンか紫藤に連絡する。ではな」

 口惜しそうに説明しながらアーサーとイリナに軽く顔を向け目配せの様な動作をし後を任せるゲキ。バックルのスターシンボルを弄りその場でダグベースへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・オーダールーム

 

 「おっかえり~!ってそんな場合じゃ無さそうぢゃん」

 ダグベースへと帰還し、オーダールームに顔を出して真っ先に撃鉄に声を掛けたのは今時のギャルそのままの姿の少女…に見える上位生命体ゼータ。

 

 「お主か、アルファの奴めはまだ隠っておるのか」

 「そーなんだよねぇ、ギアっちまで付き合わせてめっちゃ作業してるけど進捗ヤバめみたい。そんで代わりに教えとくけど、急な転移現象で今はみんなと連絡付かない感じ」

 姿を見せない少年の代わりにこの場で管制を引き受けるゼータが何処かに飛ばされた仲間達の状況を教えてくれる。

 

 「うぅむ、ならばワシはどうしたものか……」

 自発的に動こうにも駒王町に居座ったアーテシャン星人は本体を見付けねば何度も復活してしまうし、参謀を務める戒将や頭脳派の翼沙と連絡が取れない以上、下手に動く訳にも行かない。

 

 「う~ん悩んでる鉄ちゃんには悪いんだけど、悪い報せってがあります。聞く?」

 

 「おぉう、そこは普通…良い報せと悪い報せ両方あるんじゃなかろうか!?」

 

 ギャルギャルした見た目の割りにアルファに比べてえらく真っ当な管理者の言葉に眉間に皴寄せしながらツッコミを入れる撃鉄。

 

 「そんで…悪い報せとやらは何じゃ?」

 「あの街を覆ってる光の壁、かなーーーーーりゆっくりだけど徐々に広がってんだよね~。マジヤバくね?」

 「ぬぅ……ゆっくりと言うがどの程度じゃ?それ如何によってはワシも皆を待たず動く必要がある」

 ゼータが告げた事実に腕を組んで困った顔をしながらも、取り敢えずどの程度の物かと訊ねる。

 

 「一時間に10cm。それも現れた時からだから今は結構な範囲壁の中に呑み込まれてるっぽい」

 

 「はー、なるほど…あの時覚えた違和感はそれか!うむ、広がっていたのなら道理ではあるな。しかし、うーむそうなるとどう動くべきか……」

 良い案などてんで無い撃鉄は椅子に腰掛け突っ伏すと唸り始める。

 

 そうしてかれこれ8時間程頭を悩ませていると、ピーピーと独特な高音のアラートがオーダールームに響き渡る。

 

 「ぬぉ?!」

 

 「はいはい。出るよ出るよ~」

 

 半ば眠りこけていた撃鉄と違い、今の今までメンバー各員の行方を探っていたゼータが応答を摂る。

 

 『ゼータか』

 「かいちん!無事だったんだ!っと、他にも通信が入った系……これ多分エンピッピとシンちゃんとばっしゃとリュウくんぽい気」

 『ならば相互リンク通信を頼む。皆の現状を把握しておきたい』

 「おけおけ」

 通信越しの指示に従い、コンソールを軽快に叩くゼータ。

 それによりエン、カイ、シン、ヨク、リュウとの通信が繋がり、互いのやり取りも可能となる。

 

 『お、これ今みんなと繋がったのか?』

 『その様です。一応訊ねておきますが…きっちり僕達だけのプライベート通信にしていますね?』

 『そりゃ、異世界の連中はトモカク…カワイコチャン達に聴かせるワケにいかねぇしな』

 『……撃鉄も其処に居るのか…』

 「おう、おるわい」

 モニターに映っている訳でも無いのに手を挙げ応じる撃鉄。

 

 『先ずは我々の状況を報告しよう。俺と結芽…他飛ばされた者達が出たのはエジプトだった』

 『俺はあれだ!ヨーロッパの凱旋門があるトコだ!』

 『フランスじゃネーか!国の名前くらい憶えとけバカ』

 『んだと馬鹿!』

 

 『ヤるか?!』『何おう!』

 

 『脱線していますよ。因みに僕達はニュージーランドです』

 『…俺はブラジル…だろうな、発音から察するに…』

 途中、エンとシンが顔も見えずに喧嘩を始めたが、ヨクが話の軌道を戻し、リュウもまた己が現在地を報告する。

 

 「見事に全員バラバラじゃ。こっちはお主らが消えた事もあり撤退するハメになったわい」

 『だろうな。あのまま残ったとしても敵の本体が見付からなければ永遠に鼬ごっこだ。それで何か解ったのか?』

 撃鉄が腕を組みながらあの後の事をボヤけばカイも妥当な判断だと同意しながら、撤退後に何か新事実が判明したかを問う。

 

 「あー、なんちゅうかのう…」

 『どうした?』

 『何かあったんですか?』

 歯切れの悪い撃鉄にカイ、ヨクが訝しむ。一頻り唸った後、説明が面倒になったのか同席しているゼータに説明を投げる。

 

 「任せた!」

 「オケ!」

 二つ返事で嫌な顔1つせず引き受けるゼータ。彼女はもう少し躊躇した方が良い。

 

 「じゃ、タンチョで結論言うけど、あの壁段々広がってんの。ちょーゆっくりだけどほっとくとヤバい感じ」

 

 『『……』』

 

 『マジか!ヤベェな!』

 『やっぱ早く帰って倒さねぇと!』

 『……しかし策も無く再び相間見えたとて、先の二の舞になるだけだ……』

 黙り混む頭脳陣に対し、エンとシンは状況を理解していのかしていないのかと言える反応を返し、リュウはリュウで敵の厄介な性質を攻略しなければ再び戦闘になっても無意味だと証する。

 「ちょまち!みんな今居る場所調べてちょ」

 『何かあるのか?』

 「みんながトばされた所…多分、宇宙人が何か仕掛けたかもしんない」

 『『『『『!?』』』』』

 「そんで、まだ確定じゃない系だけどその仕掛けを壊したらもしかしたら壁何とかなるんじゃね?的な」

 

 『……手掛かりが無い以上僅かな糸とは言え…掴んでみるのも手ではないか…?』

 『ふむ…確める価値はあるか。その仕掛けとやらのポイントは我々が居る国だけか?』

 「他はアメリカ、イギリス、ロシア、中国、タイ、オーストラリア、チリ、インド、イタリア、んで京都」

 

 「ん?京都?!」

 ゼータによって列挙される国々に混じって最後に告げられた都市の名に撃鉄が思わず反応する。

 「ん、京都」

 『法則が解らんな』

 『無いんじゃネーの?』

 『或いはそうかもしれません。あの異星人は芸術と、己の行いを称していましたから』

 『……ならば方針は決まったんじゃないか?』

 『俺らが世界中で宇宙人の仕掛けを壊して、撃鉄が京都の仕掛けを壊す。そんで決まりだ!』

 

 『……。まぁそうだな、今は敵の動機どうこうでは無く、一刻も早く事態を収終させる事が専決か。頼めるか?』

 「おうよ!この国の事は任せろい!!」

 方針がはっきりした為か顔にやる気が戻った撃鉄が吼える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都

 

 「と言う訳でやって来たぞ京都に!」

 翌日京都に降り立った番長ルック。側にはイリナとアーサー、更にはロスヴァイセと言う布陣である。

 

 「でも良かったの?刀使の子達に話しておかなくて」

 ラフな格好のツインテール少女が番唐男に首を傾げる。

 

 「まぁ、情報が不確定じゃからな。人海戦術は効果的だが……刀剣類管理局…伍箇伝は人手をそこまで割けん。だからと言って他の警察組織に委託も出来ん。京都は広いが、府都一つならばワシらでも事足りるとカイ…戒将が言っとったわ」

 撃鉄が学帽を被り直しながらイリナ達に言い聞かせる。

 

 「あの、それで…私はご一緒しても宜しいのでしょうか?」

 銀髪を揺らしロスヴァイセが申し訳無さそうに手を挙げる。

 

 「戦力は多いに越した事は無い。そう言う事だね」

 「うむ。聞くところによればロスヴァイセ嬢は優秀な魔法を使う戦乙女だとか。ならば今現在動かせる戦力が少ないワシらからすればお主は有難い戦力じゃ」

 「そう言う事でしたら…微力ですが頑張ります!」

 

 アーサー、撃鉄の言葉を受け小さく拳を握り上げるロスヴァイセ。

 撃鉄は思い出した様にとある事を告げる。

 

 「お、そうそう。此処にも……と言うか今は平城、ウチの五條学長がお主らの世界の者らしき少女を保護しとるそうじゃ」

 

 「「「!?」」」

 

 「ダグオンとしての目的は伏せたまま、あらかじめ学長に確認を取った。つう訳でワシらの表向きの京都来訪はその少女がお主らと面識があるかどうかを確かめる、と言う事になる。待ち合わせは伏見稲荷じゃ、時間に余裕もある。行掛けの駄賃と言う訳ではないが観光に託つけ宇宙人の仕掛けとやらも探すっつう訳じゃ」

 腕時計を確めながら一連の方針の詳細を語る撃鉄。財布を取り出し、頭の中で算盤を弾きながらバスを使うかタクシーを使うかを考える。

 

 「いやいやいや、ちょっと待って!色々一気に情報が押し寄せて混乱してるんだけど!?ちょっと…ホンのちょっと思考を纏める時間を下さい!」

 一応撃鉄の方が年上なので最後に敬語になるイリナ、蟀谷を指で抑えながら言われた情報を整理している。

 

 「構わんが、移動しながらでも出来んかのう?最初は取り敢えずタクシーを使う事にしたんでのう。悩むなら車内で存分にやっとくれ」

 そう言って駅前のタクシー乗り場へ向かう撃鉄。特に気にせず後に続くアーサー、イリナに同情的な視線を向けながらも自らも彼等の後を追従するロスヴァイセ。

 慌ててイリナも後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都の山奥の何処か

 

 「スンスン……匂う…匂うなぁ、芳醇な若さの香り…居る。この地にわたくしが求める幼き存在がっ!!」

 

 「お前は何をほざいているのかな?ウン。常々頭のおかしな女だとは思ってたけど……遂に完全にイカれた…………いや元からイカれてたなウン」

 

 人気の無い山の一部には不釣り合いな深紅のドレスの女が口走った言葉に隣でエンジンを蒸かせる鋼鉄の鉄騎が呆れた様に唸る。

 

 「と言うかお前さん、エデンに戻らなくて良いのか?ウン」

 

 「このまま幼女か美幼年の一人でも持ち帰らず帰ったら、あの方に申し訳が立たんだろう」

 「いや、あの妖精っ子は別に求めて無いだろ?!」

 

 「ともかく!わたくしは行く!我が望みの為、あの方の心を充たす為、そして全ての幼き存在の為!」

 

 「もうお前それ殆ど私用じゃん?私欲以外の何モノでもないよな!!?ウン!?」

 

 「ふん、わたくしの高尚な趣味を理解しろとは言わないが、邪魔だけはするなよ!!」

 

 「しねぇよ!ウン」

 

 ドレスの女──"喜び"のアドヴェリアが山間森林の中に消える。

 残された鋼鉄の騎馬はライトを明滅させながら彼女が消えた方向とは別の方へと消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都・伏見稲荷大社

 

 鳥居を潜り、階段を登り、本殿宇迦之御魂大神に到着した撃鉄一行。

 

 「結局道中は仕掛けは見つからなんだ…しかし、うむ、やはり神社は良いのう…こう、気が引き締まる感じがする」

 

 「それは良いけど、どうして京都に私たちの世界の誰かが居るって知ってるの?」

 イリナが素朴な疑問を口に出す。

 

 「なに、以前食堂で話した時は京都の方はその何某が少々情緒が不安定だったらしくな。比較的問題無しと踏んだ二人…レイヴェル嬢とロスヴァイセ嬢の事を優先したらしい。ま、ワシらも後で知ったんじゃがな!」

 

 「ふんふん。それで?」

 

 「五條学長から保護した者がやっと落ち着いたとあって保護した京都で合流と相成った訳じゃ」

 

 「だが五條学長とは平城…奈良の学院なのだろう?ここは京都なのだから綾小路で保護されるのが妥当ではないかな?」

 次いでアーサーが当然の疑問を挟む。

 

 「そこはワシも詳しくは知らん。ただ、龍悟曰く、どうにも最近綾小路がキナ臭いらしい。機会があれば戒将達協力の元潜入するとか言うとった」

 

 「そこは彼等に頼む訳じゃないんですね」

 ロスヴァイセが目尻を引き吊らせながら苦笑する。

 

 「まぁ龍悟なりの矜持があるらしいからのう……と、居おった。おーい、学長ーー!お待たせしもうした!!」

 

 目的の人物達を探し彷徨いていた一行は本殿の裏手側にて談笑していた妙齢な着物の女性と子供服を着て帽子を被った幼女が居た。

 

 「あのちっこいのが此処で見付かった異世界人か。どうじゃお主らの知り合いか?」

 駆け寄る前に傍にて同じ様に眺める3人へ訊ねる。

 

 「もしかして……九重ちゃんかしら?」

 イリナが答え、知人と確認した撃鉄はでは行こうかと再びいろは達へと歩み始める。

 

 

 

 「よぉ来てくれはったね。でもまさか田中くんが来はるなんてなぁ。連絡受けた時は驚いたわ~」

 どちらかと言えば京訛りに近い関西弁で一行を迎い入れるいろは。

 隣の九重なる少女は最初こそいろはの後ろに隠れていたが見知った顔を見付けた為、その服に隠れた幼い双房を張り大仰な態度で名を名乗る。

 

 「よくぞ迎えにきた!そしてそこの大男は初めましてじゃの!わたしは九重じゃ」

 

 (小さいのう。しかし喋り方が……何だったか?そうのじゃロリとか言うヤツか)

 ドヤふんすと表現出来る表情を浮かべる九重の口調に撃鉄は顎に手を宛て黙考する。

 

 「それじゃ九重ちゃん、知り合いの子ぉ達も来たようやし、此処でお別れやね~」

 「う、うむ。──今までお世話になりました。このご恩は絶対に忘れません」

 別れを告げるいろはに佇まいを直し、綺麗にお辞儀をする九重。狐色の短めの髪が微風に揺れる。

 

 「そんな畏まらんでもええんやけど…でもそやね、これが最後になるやもんなぁ…此方こそとても楽しく過ごせました。ありがとうな」

 いろはもまた綺麗にお辞儀を返す。そして頭を上げ撃鉄達に顔を向けると微笑んでいる様な細めた瞳で一行を一望し口を開く。

 

 「ほんならうちはこれでお暇するわ。田中くん、龍悟くんに会ったら宜しく言っとったってな」

 軽く手を振り撃鉄に伝言を告げ大社を後にする。

 九重はそんないろはの背中が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、件の人物とも合流を果たしたし後は宇宙人の仕掛けを改めて探すとするかのう!」

 いろはが去った後、伏見稲荷大社に到るまでに回った際にそれらしき仕掛けを見付けられなかった事から撃鉄は改めて奮起の為にもと声を上げる。

 その時であった、奴が現れたのは───

 

 

 

 幼女キタコレーーーーーー!!

 

 

 ともすれば気でも狂った変人の戯言でしかない発言。しかしそれを言い放った人物は空から降ってきた上に紅いドレスに身を包んで手には刀を持っているのだから大社にいた観光客は唖然としてしまう。

 

 「ぬぅ…彼奴は!?」

 

 「もしかしてアレがネプテューヌや一誠君が言ってた?!」

 

 「……何か、こう…色々と酷いな。何がとは言わないが」

 

 「警察は……駄目なんですよね?」

 

 「ひぅっ?!何じゃあヤツは?!こう…何かエタイが知れない悪寒がするのじゃ?!!」

 

 撃鉄が現れた存在に仰け反り、イリナ達が敵対心よりも嫌悪感からの警戒心を覚える中、狐色の幼女は謎の女の発言に全身鳥肌を立て戦慄する。

 

 「幼女以外要らん!来たれシードトルーパー!!」

 アドヴェリアの号令に石畳を突き破り植物の様な異星人達が生えてくる。

 

 それに伴いやっと危険を理解した参拝客や観光客達が蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。

 

 「んん?貴様らは何故逃げない。そして幼女は可愛いなぁ~」

 一通り人間が消えた事を確認したアドヴェリア、しかし其処で初めて九重の傍に数人の人間が居る事に気付き首を傾げ、しかし数秒後には九重以外の存在を視界からシャットアウトした。

 

 「此奴……ちびっこ以外目に映っておらぬのか?!」

 

 「変態だわ…!」

 「度し難いな」

 「宇宙人ってこんなのばかりなんですか?!」

 あまりにも悪い意味でぶっ飛んだインパクトの異星人に三者三様の忌避の言葉を吐いてしまう。

 

 「ええい、どうあれちびっこは渡さん。幸いにして人気も無くなった事だ、ワシらだけでやるぞ!トライダグオン!」

 

 ダグコマンダーをスライドさせ学ランの大男は黒鉄の装甲に身を包む。

 

 

 「ドリルゥゲキッ!喰らえドリルナッコォォオ!」

 

 「む!?ダグオンだと?!貴様何処から現れた!!へヴぉあ?!!」

 

 アドヴェリア、先程認識していた存在を本当に頭の隅から追いやっていたが為にゲキの出現に心の底から驚愕している。

 そして見事ゲキの右拳が顔面にヒットした。

 

 「最初から居ったわい!」

 

 「ちょ…いくら変態で宇宙人だからって、見た目人間と大差無い女の人の顔を躊躇無く殴る?」

 イリナがゲキの思い切りの良さに軽く引いているが構わずゲキは胸の水晶体からロックバスターを放ち追い打ちを掛ける。

 

 「あれは放って置くと害悪にしかならん!性別に拘っていては色々と取り返しが着かなくなるぞ!そもそも彼奴ら宇宙の犯罪者じゃ!!」

 

 吼えるゲキの言い分に言われてみればそうかと納得するイリナ達。九重をロスヴァイセが庇いつつイリナとアーサーもシード星人の兵達に立ち向かって行く。

 

 「お、おのれ……またしても邪魔を…!荒魂…は、っち、この近辺は何故か居ない!仕方無いわたくし自らが相手をしてやろう」

 当然であるが京都一帯の荒魂は綾小路の刀使達が優先して排除しているのでアドヴェリアが鳳凰の能力を発揮する事は出来ない。

 とても渋々と言った顔でゲキを迎え討たんとドレスのスカートの一層目が翼の如く開き戦闘体制となる。

 

 「そいつが例の鬱陶しい盾になる羽スカートか!ワシの拳で砕いちゃるわ!!」

 

 「抜かせ!わたくしのスカートフェザーが貴様に貫けるものか!!」

 

 ゲキの鉄拳がアドヴェリアの翼の羽を叩く。しかし拳打の衝撃は羽を伝い、威力を別方向へと流される。

 

 「ふふん!どうだ、これが我が深紅の装いスカーレットフェザーのスカートフェザーよ」

 

 「フェザーフェザーしつこいんじゃい!」

 

 自慢気に己のドレスを称えながら鳳凰をゲキに振り下ろすアドヴェリア。

 それを腕のドリル状の装甲で受け止めるゲキはアドヴェリアの発言に噛み付きながら対処方を考える。

 

 (ようは打撃の威力を殺されるのが問題なんじゃ。んならここは組技で攻める)

 

 左で受けた鳳凰を弾き、左脚を僅かに落としキャタピラを回転させ土埃を上げる。

 

 「目眩ましとはアジな真似を!だが退いたとて我がドレスを攻略するには至らない!」

 「誰が退くものかよ!ワシゃあタイマンの喧嘩にゃあ逃げん!」

 土埃から口元を庇うアドヴェリアの真後ろからゲキの声が聴こえる。

 何時の間にやらドレスの女の背後に回った黒鉄の戦士は彼女の腰をホールドし持ち上げるとそのまま腰を落として叩き付ける。

 一種のドロップ技だが打ち付けるのは自分の膝にではなく、砕けた石畳にだ。

 

 「舐めるな!」

 

 が、そこはアドヴェリアとて無抵抗ではない。スカートの翼を浮いた臀部の間に滑り込ませ、技の威力を殺す。

 

 (無論予期していたわい!)

 

 半ば膝立ちのゲキは今度は両脚のキャタピラを急速回転させてその勢いで立ち上がり、ホールドを維持したままエビ反りになりジャーマンスープレックスに繋げる。

 

 「何っ?!ヴぉっ?!」

 

 あまりにもスムーズな技の移行にアドヴェリアも一瞬思考が白くなり、今度ばかりは頭部への衝撃を翼で防ぐ事が出来ない。

 

 「コイツはオマケじゃい!」

 

 更にスープレックス状態のまま無防備な背中にロックバスターを喰らわせるゲキ。ダメージがアドヴェリアに伝わる瞬間を見越し、絶妙なタイミングでホールドを解除する。

 

 「……っ!…ぁ!?」

 

 白目を向き絶句しながら転がるアドヴェリア。御刀鳳凰を離さない精神力だけは大したものである。

 

 「どんなもんじゃい!」

 

 大きくガッツポーズを取り、己を誇示するゲキ。灰塵の向こうに転がるアドヴェリアは頭部へのダメージと背中の火傷で満身創痍となっている。

 

 「ぐぐぅ……おのれ…ダグオン一人だけと甘く見ていたか……わたくしがここまでダメージを喰らうとは……こうなれば意地でも幼女に癒して貰わねば……」

 

 この女、ブレない。

 

 「まだ言うか!キャタピラドロップキィィィックッ!!」

 

 「ハボッ!?」

 

 「ドリルコブラツイストォォ!」

 

 「アギュ??!」

 

 「直伝!ブレーンバスター!!」

 

 「ボンペティ!?」

 

 視界不良の中跳んでくる黒い槍の様な両足跳び蹴り。からの組み込んでのアバラ折り。トドメの直下脳天砕きにドレスの美女が様々な奇声を上げる。

 技名はその場のノリで付けたが威力は語るべくも無い。

 因みに最後の直伝は姉からのモノであるとだけ追記しておこう。

 

 「うわぁ…痛そう…」

 流れる様なプロレス技にイリナが思わず声を溢す。

 「よ……幼女……ペ…ペロ……ペ……癒……ガクッ」

 人型故かかなりの大打撃を受けたアドヴェリア、最後まで九重に執着しながら意識を手放し気絶した。

 

 「堕ちたな。油断と慢心もあったんだろうが…まぁ相性も良かったわい、他の面子じゃこうは行かん」

 最悪関節技や絞め技で打倒を予定していたゲキがダグテクターの上から額の汗を拭う動作をする。

 ゲキの言う通り、アドヴェリアは目下の脅威がゲキのみとタカを括っていた事や、九重の方に気を取られ過ぎていた事が勝利に繋がったと言って良い。

 

 「倒したの?」

 「倒しはした。が息の根はある。彼奴の意識が無い内に確実にトドメを刺すべきじゃろうて。そんな訳でロスヴァイセ嬢!何かこう…派手な魔法で今の内にこの変態を跡形も無く消し飛ばしてくだされ」

 イリナの問いに応えつつ、ロスヴァイセに魔法を使ってアドヴェリアを完全に抹消するよう懇願するゲキ。科白だけ聴けばとても正義の味方とは思えないが、相手が相手である為、是非も無い。

 

 「えっ?……良いんでしょうか?」

 流石に抵抗があるのか白銀の戦乙女は何とも言い知れぬ顔で確認を取る。

 「構わん構わん!とにかく強力なのをなるべく社殿に被害無くぶっ放してくれ」

 ゲキはゲキで何食わぬ顔ならぬ何食わぬ口調で肯定するのでロスヴァイセは楚々としながら従ってしまう。

 彼女が手を翳し、宙に幾学模様やらルーンを刻まれた複数の魔方陣が展開され色取り取りの閃光が気絶したアドヴェリアに降り注ぐ。

 アドヴェリアを中心に複数回爆発が轟く。

 

 「やったか…?」

 そのあまりにも容赦無い攻撃を見届けたアーサーが思わず口にした言葉、その結果は爆煙の晴れた先にあった。

 

 「ぬぅ?!」

 

 ドレスの女が浮いている。アドヴェリアに意識は無い、しかし彼女のドレスのスカートに備えられた全ての翼が開き、ともすれば天使の様にも見えなくは無い。

 

 「ちぃっ!ならばワシがドリルクラッシュで…!」

 

 今度こそトドメを…と身構えるゲキ。意識無き深紅の貴婦人はその体の内側から衝撃を与えられ意識を取り戻す。

 

 「かふっ……お、の、れ…幼女に意識が…向きすぎた……だが幼女が居る以上…負ける訳には…いか…ない…」

 ドレスの6枚羽に引き摺られながら息も絶え絶えに九重へと這いずる様に空を進む。

 

 「ひぃっ…!」

 

 「凄まじい信念…って言って良いのかしら?でもそれなら」

 イリナがアドヴェリアの執念に戦々恐々しながらもとある手段を思い付いたのか九重に耳打ちをする。

 

 「う…本当にそれを言うのか?」

 「多分これが一番効果的なの!」

 嫌な顔する九重に対しイリナが頑として首を振る。

 一方、アドヴェリアから九重を隠すようにロスヴァイセは前に立ち塞がり、アドヴェリアが眉を潜め機嫌を悪化させる。

 

 「このクソババアァァア!!わたくしが幼女を視愛でる邪魔をするんじゃねぇぇぇえええ!その無駄にデカイ乳とか邪魔くせぇえんだよぉ!」

 

 「なっ!?私はまだ19ですよ!それなのにば、ば、ババアとか!それと胸の大きさは関係無いでしょう!!だいたい無駄だって言うなら貴女もでしょう!!?」

 当然アドヴェリアの罵声に顔を真っ赤にして反論するロスヴァイセ。

 そんな反論をドレスの変態は鼻で伏して笑う。

 

 「はんっ!わたくしは愛でる側だから幼女幼年美少年、美少女が求める母性の象徴を持つのは当然だろうが、愚か者め!」

 

 「……っ!!っっっ…」

 言い返したいが何を言っても相手側は自身に都合の良い形にしか返さない事が理解出来てしまう為、押し黙って歯噛みする他ない。

 そんな女の口論に幼女の声が割って入る。

 

 「あ、あの…」

 「何かな麗しき幼女!?」

 恐る恐るアドヴェリアに声を掛けた九重に秒速で反応する変態。その反応の速さに臆しながらも、イリナからの入れ知恵に従い言葉を紡ぐ。

 

 「……教えて欲しい事があるのじゃ」

 

 「ヒャッホーウ!何かな何かな?わたくしに答えられる事なら何でも教えてあげよう!その代わりわたくしのモノになってね?ね?」

 状況は戦闘中にも関わらず、最早アドヴェリアの頭の中には九重の頼み事に答える事しかない。

 

 そして何となくイリナがこの小さな少女に何を吹き込んだのか察したゲキとアーサーは状況を見守る事にする。

 

 「この…京の都を蝕みおかしくした……この世界とわたし達の世界を狂わせた元凶の在処を教えて欲しい…です…」

 

 「蝕む?世界を……ああ!アーテシャン星人とディメシア星人のベテルがやった事か。なぁに簡単ですわ、ベテルの次元交換は今回アーテシャン星人のキャンバスに紐付けされているのでアーテシャンが仕掛けた接収のモナドの彫刻を破壊すれば入れ替わった建物は元に戻り、キャンバスを形成する壁は消え、土地も元に戻りましょう。この街ならダーイモンジーだかの場所とメインターミナルステーションにあった筈」

 

 「な、ならば人は!わたしの様に巻き込まれた人はどうなるのじゃ?!」

 

 「う~ん可愛い!それは簡単です、死ぬか地球から離れない限り強制的に転移した場所に戻ります。まぁ貴女はわたくしが貰い受けるので帰れませんけれど」

 

 アドヴェリアがペラペラと機密と言って良いモノを喋る。

 

 (こいつアホじゃな)

 (まさかここまでとは…)

 (考えといてなんだけど、大丈夫かしら)

 (と言うか信用出来るんですか?)

 黙って聴いている4人がこそこそ会話を交える。

 

 

 「他に訊きたい事は?無ければさっさと訳にわたくしのモノになりなさい!一杯可愛いがってあげますわ♪」

 恍惚の顔を浮かべるアドヴェリア、まさに喜びに満ち溢れている。

 

 「い、今言った事は全て事実なのか?」

 

 「勿論!幼女に嘘は付きませんわ」

 

 

 「こんの……ど阿呆ぉぉぉおお!!」

 

 「プチョヘンザ!?」

 

 

 

 九重(を通してイリナが考えた質問)の言葉に素直に答えてゆくアドヴェリア、そんな彼女の無防備な後頭部に大型2輪車の一撃が入る。

 翼の防御も味方の攻撃は防げなかったか再び気絶した。

 

 「む!彼奴は!」

 

 「このド糞変態!余計な事をペラペラ喋り過ぎなんだよ!!ウン!てな訳で撤退!ウン!」

 アドヴェリアを器用にビークル形態で拘束、搭載しマフラーの排煙を吹かして消えた。

 

 

 

 

 

 「助…かった……」

 変態が消え、腰を抜かしてへたり込む九重。

 

 「お疲れ九重ちゃん、ごめんね恐い思いさせて」

 

 「しかしそれに見合う成果はあった。だろう?ゲキ」

 

 「うむ、しかし大文字山と京都駅か…山は兎も角、駅は灯台もと暗しじゃったか」

 

 「では早速?」

 

 「うむ。オブジェの形が分かればソレの情報をみんなに送って共有せんとな。そうすれば世界も元通りで壁も消える。後は首謀者の星人を倒せば終いじゃ!」

 

 期せずして……或いは必然的に重要な情報を得た一行、彼等はその情報を元に世界を元に戻す為に行動を開始する。

 

 

 

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 はっ!此処は!?幼女は何処?!

 

 ド糞アホ!お前さんの所為で敵に余計な情報が渡っちまったじゃないか!ウン!

 

 うるさい!戻れ貴様!幼女が待っているんだぞ!!?

 

 このアホ!もうんな訳あるか!見ろ!京都が元に戻りつつある。奴のオブジェが破壊されたんだよ、ウン。その幼女とやらももう元の世界だ!お前は担がれて騙されたんだよ!

 

 がーん!いやしかし、幼女に騙されるならそれも本望。くふふ

 

 駄目だコイツ、イカれてる。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 行動開始。世界を修復せよ!

 

 まぁアーテシャン星人はわたくしも嫌いだったし、別に良いか!

 

 そこだけは同意してやるチクショウ!

 





 金が貯まんないなぁ、早く容量が大きいのに機種変しなきゃいけないのに……私、貯金苦手なんですよね……。

 あー若返れたらもう少し執筆ペース速く出来る気がする。10歳若返りたい。

 ではまた次回


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第八十八話 行動開始。世界を修復せよ!

 おはようございます。お久し振りです。

 最近ちょっと五月病気味になりかけていたダグライダーです。
 しかしカイゼルグリッドナイトと天華百剣の月末恒例絢爛ガチャ神代三剣ピックアップ・天叢雲剣を回し天叢雲剣が出た事により回復(ムリヤリ)し投稿しました。
 妾ちゃん(CV井口裕香)可愛い。初めて絢爛ピックアップ出た。これはもう今年の運の残り三分の二使っちゃったかな?でも可愛いから良いや。

 総選挙!琴歌とマキノに遂に声が付くよ!楽しみです!




 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 敵の技かなんかでバラバラになっちゃったダグメンズ&ねぷねぷと愉快な仲間達!

 とりあえず壁はほっとくと広がっちゃうから解決しよう。ってことで案がないか考えてたらみんなの飛ばされた場所が世界中ってのが分かったよ!

 アルファがカンヅメだからアタシが代わりに色々調べて鉄ちゃんが残った愉快な仲間と京都に!

 したらまたヘンタイが現れたけど何とかしのいで、ついでに重要情報ゲット♪

 京都は元に戻ったも同然。後はみんなだけど…ま、何とかなるなる~。

 

 


 

 ━━エデン・東監獄棟

 

 

 

 「っぁぁあああ!!あのクソアマにクソゴミがっ!!折角のゲームを邪魔しやがって!!ダグオン共を倒せないじゃないか!?クソ、クソォッ!いきなり飛ばされた所為でコントローラーのリンクが切れた!折角強キャラを合成したのに!」

 

 少年の姿をした異星人が癇癪を起こし地団駄を踏む。

 

 その隔離、隔絶された空間に轍が入る。

 

 

 

 「やれやれ……困った子だ。何度も勝手に動くとは本当に困った子だ…一度目は戯れと赦そう。二度目は自ら望み我々も承諾したのだ、結果が敗北であっても能力の有用性から再起を赦した。が、三度目は看過出来ないな…。他の者の邪魔のみならず、その上で敗北する。見苦しいとは思わないかね?」

 

 

 

 「?!っ…何で?」

 

 

 

 少年が自らの聖域に侵入した存在──エデンを取り纏める首魁、鬼の異星人の登場に眼を見張る。

 

 

 

 「何故?可笑しな事を訊くね、この監獄を掌握したのは私とあの子だ、監獄主の部屋に侵入する事など用意だよ」

 

 (あ、有り得ない!僕の部屋だけは他の圧縮ブラックホールとは比較にならないくらい幾つも空間を歪曲させて、僕と僕が許した者以外出入り出来ない様にしたのに…)

 

 予想外の来客に少年は冷や汗を大量に流す。

 

 「ま、待ってくれ……、邪魔したのは確かに悪かった!けど負けてない!いきなり別々に次元跳躍で飛ばされたからコントロールを失っただけで…!それにもう少し近くで動かしてたらやられなかったさ!!」

 

 少年が空間液晶越しの各戦況を指差しながら必死に言い訳を捲し立てる。

 

 

 

 「ほう…?では君が地球に居れば負けなかったと?」

 

 「そ…そうだよ!地球に居れば例え空間を跳躍しても充分操れてたし負けなかった!!いや別に負けてないけど!」

 

 鬼の質問に間髪入れずに必死に返す少年。その言葉を聞き、鬼は口元を手で覆い考える様な仕草で唇を笑みに歪めた顔を隠しながら少年へ告げる。

 

 

 

 「ならば四度目のチャンスだ、正真正銘最後の機会となる。君にはこの部屋から出て地球に降りて貰う。何故などと言うまい?君が言ったのだ地球に居れば勝てたと」

 

 

 

 「っ…ぁ、くっ……あ」

 

 

 

 己が口に出した言葉により退路を塞がれた少年は口を意味も無く開けては閉口するしかない。

 

 

 

 「なに、安心したまえ。直ぐに動けとは言わない。君が確実に勝てると、勝利の確信を得るまでは精々この場所の様に引き隠っていればいい。此処ほど便利な場所では無いかもしれないがね」

 

 鬼は少年の返事が返る前に有無を言わさず不可視の力で口元まで拘束すると部屋を出てエデンのポートレートまで黙々と連れて行く。

 

 

 

 その日、地球に新たな流星が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━フランス・パリ

 

 華の都の一角で紅い巨人が足下に倒れ付した化石を見つめる。

 

 『何だったんだ?急に棒立ちになりやがった…』

 

 駒王町で遭遇した際は雄弁に喋っていた恐竜の化石の様な鎧がパリへと飛ばされて以降話すどころか、動く事すら無くなり、案山子同然となったモノをダグファイヤー、パープルハート、赤龍帝兵藤一誠、白龍皇ヴァーリ・ルシファーの4人掛かりで打倒したのだ。

 

 「何一つ抵抗してこない割りにしぶとかったな」

 

 「半減して尚、この耐久性……宇宙人と言うのはほとほと厄介だな」

 

 「けれどどうして動かなくなったのかしら?」

 

 一誠、ヴァーリ、パープルハートが倒れ、沈黙した巨獣の不可解な状態に首を傾げる。

 一方で、共に巻き込まれた衛藤可奈美、安桜美炎双方は同じく飛ばされて来た荒魂ザゴス等の荒魂を駆逐し終え、一息浸く。

 

 「終わったねー。ところで美炎ちゃんはココが何処か分かる?」

 

 「え…と多分イタリア!」

 

 フランス。と即座に訂正、ツッコミを入れられる顔ぶれは生憎と此処には居ない。

 

 「うーん?多分違う気がするけど外国なのは確かだよね」

 

 恐らく美炎が挙げた国ではないと理解しているが、観光名所と地理が一致しないので可奈美も曖昧にしか否定出来ない。

 学業の成績を下から数えた方が早い彼女達では、指摘が無い限りはズレた勘違いをしたままだろう。

 

 「そ、それより!このノロ…可奈美はどうしたらいいと思う?」

 自身の眼下に散らばる橙色の液体を見ながら美炎が話題を変える。

 

 「う~ん……。ダグオンなら何とかしてくれるんじゃないかな」

 直感めいた物言いを返す可奈美、美炎も成る程確かにと素直に納得する。

 

 「それもそっか!おーい!ダグファイヤーーー!」

 そのまま釈然としない表情のダグファイヤーへと大声で呼び掛ける美炎。

 後輩の呼び掛けに気付き、気持ちを切り替え刀使達その方へ視線を向ける。

 『どうした?何か用か?』

 鋼の巨人からの眼差しを受け、美炎が身振り手振りと共にノロを指す。

 「ノロの回収ってどうしたらいいーーー!?」

 『あー、あー……このままって訳にはいかないよな…。確かファイヤージャンボとファイヤーラダーに何かしたってアイツ(アルファ)が言ってたような……ヒャクブンハイッケンニシカズだ!来い、ファイヤージャンボ!

 問われた手段に答えに詰まりつつも、そう言えばと思い出した様にファイヤージャンボを喚び出す。

 ダグファイヤーからの呼び掛けに間も無く飛行してくる旅客機の形型をした輸送機。

 更に右コンテナから梯子車を射出し、ノロの近くに停車する。

 少し離れてファイヤージャンボも垂直着陸しラダー側面とジャンボから伸びたノロ回収用の蛇腹のホースがオートメーションで散らばったノロを回収してゆく。

 

 「おー…!」

 「梯子車なのにホースが付いてるんだ!」

 刀使2人は素直に感心している。

 

 「あれ自動なんだ」

 「って言うか、普通に垂直着陸してんだけど」

 「宇宙の技術だ。今更だろう」

 女神姿から戻ったネプテューヌと一誠、ヴァーリが地球上の技術では有り得ない動きで作動したホースや大型ジャンボが垂直に着陸するという事象に呆れ半分に口を開ける。

 

 そしてダグファイヤーは融合を解除しファイヤーエンとファイヤーストラトスに別れる。

 と同時にエンに通信が繋がる。

 

 「おっ?通信……ダグベースからリンク通信か。一応プライベートにしとかねぇとヤバいよな」

 バイザー内に表示された情報を確認し、応答する。

 暫くしてピピッと短い電子音が鳴り、バイザー内に見知った顔ぶれが表示される。

 念の為、ファイヤーストラトに乗り込むエン。

 

 「お、これ今みんなと繋がったのか?」

 居並ぶ顔ぶれを視線で確認しながら、己の声が皆に届いているかを確認する。

 

 『その様です。一応訊ねておきますが…きっちり僕達だけのプライベート通信にしていますね?』

 

 『そりゃ、異世界の連中はトモカク…カワイコチャン達に聴かせるワケにいかねぇしな』

 

 『……撃鉄も其処に居るのか…』

 

 『おう、おるわい』

 

 ターボカイ、ウイングヨク、アーマーシン、シャドーリュウ、田中撃鉄と口々に会話を交わす。

 撃鉄のすぐ側にはゼータも居る。

 

 互いに飛ばされた先の照合をし、方針を定めんと会話する彼等エンが凱旋門を見てヨーロッパと大雑把に答えた事でシンが国名をツッコミメンチを切り合う。

 脱線しかけた会話をヨクが咳払い気味に修正する。

 そこから撃鉄とゼータを通して伝えられた星人が展開した壁の事実。

 『マジか!ヤベェな!』

 「やっぱ早く帰って倒さねえと!」

 『……しかし策も無く再び相間見えたとて、先の二の舞になるだけだ………』

 シンのリアクションに続く様にエンなりの焦燥を言葉にするがリュウが無策では徒労、無意味だと述べ証するのでぐうの音も出なくなってしまう。

 

 『ちょまち!みんな今居る場所調べてちょ』

 

 『何かあるのか?』

 

 『みんながトばされた所…多分、宇宙人が何か仕掛けたかもしんない』

 

 そんな八方塞がりかと思われた時にゼータが何かに気付き声を挙げる。

 そしてカイの疑問にまだデータから類推された憶測にも乏しいモノではあるが、異星人絡みと思われる情報の手掛かりがあるのだと管理者の1人は語る。

 となれば勇者達もその指針を纏める。

 例え蜘蛛糸を掴む程の物でも…藁に縋る形になろうとも、可能性が示されたのであれば、其処に全力を注ぐ。

 更にゼータはダグオンが現在点在している国家・都市以外にも同様の反応がアメリカ、イギリス、ロシア、中国、タイ、オーストラリア、チリ、インド、イタリア、そして京都にあると言う。

 

 『ん?京都?』

 

 『ん、京都』

 首を傾げる撃鉄に短く返すゼータ。

 

 『法則が解らんな』

 

 『無いんじゃネーの?』

 

 『或いはそうかもしれません。あの異星人は芸術と、己の行いを称していましたから』

 

 『……ならば方針は決まったんじゃないか?』

 そんな中で異星人の脈絡の見えない意図に当惑しつつも為すべきを定めた彼等は次々動き始める。

 

 「俺らが世界中で宇宙人の仕掛けを壊して、撃鉄が京都の仕掛けを壊す。そんで決まりだ!」

 

 

 『……。まぁそうだな、今は敵の動機どうこうでは無く、一刻も早く事態を収終させる事が専決か。頼めるか?』

 

 『おうよ!この国の事は任せろい!!』

 エンが総括する様に方針を口にすればカイも暫しの黙考の後、同意し撃鉄に京都…延いては日本の状況を任せる。

 

 そうして話が終わりに差し掛かったと同時にファイヤーストラトの窓が軽く叩かれる。

 エンが其方に目を配せると可奈美が立っており、指を可愛らしくラダーとジャンボの方に向けているではないか。

 

 「お、ちょうど回収し終えたか。よっしゃ!」

 リアウインドを下げ軽く顔出すと、エンは皆に聴こえる様に声を張る。

 

 「みんなちょっと聞いてくれ!俺達は日本に帰る前にここフランスにあるだろう宇宙人の奴が仕掛けた仕掛けと、他の国にある仕掛けを破壊する。そうすると多分、街を覆ってる壁が何とかなるかもしれねぇ

 

 「本当なんですか?」

 一番近くに居た可奈美が純粋な疑問として訊ねて来る。

 

 「おう、少なくても可能性はあるぜ。だから悪ぃなすぐにでも帰りたいだろうが我慢してくれっか?」

 

 「大丈夫です!だよね可奈美!」

 エンの言葉に誰よりも早く、真っ先に答えを返したのは美炎。

 特に深く考えずに返事をした友人にしょうがないなと内心で苦笑しつつも、己も直感的にそうすべきだと思っていた可奈美は「うん」と頷く。

 

 「元々宇宙人倒さなきゃ帰れないもんね。ほのちゃん達が良いならOKだよ!」

 当然ネプテューヌ達が反対する理由は無い。サラッと美炎を渾名で呼びつつ同調する。

 

 「で、その仕掛けってのはドコにあるんだ?」

 

 「それはこれから探す!取りあえず一回空からぐるって回るからみんなファイヤージャンボに乗ってくれ」

 

 一誠の手掛か云々の疑問に大雑把に回答するエン。

 肩をずるむけながら呆れる一誠の後ろでヴァーリが声を抑え喉元で笑っている。

 

 「なせば成る!きっとすぐ見つかるよ!」

 宛の無い空中遊覧にも美炎は前向きに宣言する。

 チーム美濃関with女神とドラゴンは活動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エジプト・サハラ砂漠

 

 「さて、この広大な砂漠の何処かに異星人の仕掛けがあるのか……」

 

 一方、此方はエジプトのターボカイ。ターボライナーのターボユニットに併設されたノロ回収機を作動させ全てのノロの回収が完了したのを見届けた後、燦然と輝く太陽の下、延々に続くサハラの大地を睥睨する。

 

 「暑っ……」

 『宛はあるのか?』

 暑さに茹だる結芽の側で影を作る金色の巨人――ロボット形態のライアンがカイに訊ねる。

 

 「駒王の一部を覆う壁の中にはピラミッドとスフィンクスがあった。であれば仕掛けはそれらが元あった場所の近くにあると見て良いだろう。しかし……」

 『何処のピラミッドとスフィンクスなのか、或いは全く別の場所から入れ換えたのか、と言う事か?』

 「ああ。そこでなんだが…ライアン、二手に別れて捜索したい。君には単独で動く事になってもらうが構わないか?」

 『良いだろう。私が主人と認めた少女の兄の判断とあれば従ってやらんでもない』

 カイの判断に些か慇懃に応じるライアン。

 出会った当初の事を思い返し、マシになった方かと首を竦めるカイ。

 

 「頑張れーライアン…」

 暑さ故か何時もの様におじさん呼びすら億劫になった結芽がライアンに声を掛ける。

 

 『フッ、では私はこれより北西側から回る』

 

 「ならば我々は南東からだな」

 

 カイの言葉を待たず即座に空を飛び剣に変形し彼方へと飛んで行くライアン。

 カイは妹に発破を掛けながらターボライナーのコックピットへと向かう。

 

 因みに祐斗、曹操、朱乃は結芽の持っていた剣が巨人に変形した事に大層驚いていた。

 どうやら特殊なインテリジェンスソード程度だと思っていたらしい。

 そんな彼等は瀬戸内智恵と山城由依が結芽の正体を探る事の無いよう、ターボライナー内で無難な会話で意識を反らす事に協力してもらっている。

 そんな事もあってやっと涼しい車輌内に入れる結芽は兄に支えられながらも共にコックピットへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 「………フフッ」

 

 僅かに離れた砂の海の中で彼等の行方を見定める視線があることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ドイツ・ケルン

 

 「つーワケで、オレらは帰る前にココとまぁ多分イタリア辺りにあるだろう宇宙人ヤローの謎シカケをぶっ壊す事になったから」

 

 「は?

 

 シンの突然脈絡の無い説明に間抜けな声を挙げてしまう呼吹。

 

 「申し訳ありません。もう少し詳しく説明して戴けませんか?」

 蟀谷を解しながらミルヤがフォローに入る。

 

 「あ?しゃーねぇナ、んじゃハナッから説明するぜ」

 特に意味も無くダグテクターの後頭部を掻きながら先程通信で判明した事実を話し始めるシン。

 そんな彼と彼女達を黒歌はアーマーライナーの上で寝転がりながら欠伸を溢して呆れる。

 レオナルドなど当に客車の中だ。

 

 「――成る程、おおよそ理解しました。つまりはこの国を含む幾つかの国家に仕掛けられたであろう、異星人の装置を破壊すれば日本の方の攻略の活路になるのですね」

 

 「ちっ、アタシはさっさと帰って荒魂ちゃんで遊びたいってのによ…」

 

 説明に納得したミルヤの横で拗ねる呼吹。

 ともあれチーム常識人ただ一人(普段は)は行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ニュージーランド・カンタベリー地方

 

 「では先程説明した通りに、先ずは異星人の装置と思われる物を調査、ないし破壊に行きます。とは言えどういったモノかは分かりません。恐らく京都の調査結果待ちになる可能性が高いでしょうけれど、お手数かとは思いますが皆さんご協力をお願いします」

 

 「YES!NO PROBLEM♪気にしないでくだサーイ、貴方達の方針に全面的に従いマス」

 そうでもなければ不法入国した自分達は帰れないので。とまでは言わないエレン。

 祖父に連絡すれば潜水艦で飛んで来てくれる可能性もあるが国家間の荒波は不用意に立てるべきでは無い。

 

 「俺的には大歓迎だ。なんせ堂々と仕事をサボれるんだからなっ!」

 「ねねー!」

 片や相方は観光気分マシマシである。これも普段から紗南にコキ使われている反動故仕方あるまい。

 

 「あの娘…大丈夫なのかしら?色々と」

 

 「私が神器で癒してみましょうか?」

 

 「それって効果あるんでしょうか?」

 

 薫の黒い笑みに何とも言えないリアクションのリアス。

 アーシアが何と無しに口にするが、基本的物理的な怪我や病の治癒等を得意とする"聖母の微笑"で果たして蓄積された勤務疲労に有効なのか甚だ疑問なギャスパー。

 当然であるがノロは回収済みである。

 ともあれウイングライナーは皆を乗せて飛び立った。

 

 

 

 

 ━━ブラジル・アマゾナ

 

 「何と言うか奇妙な光景だ………」

 姫和が目の前の光景に苦虫を噛み潰さんばかりの絶妙に微妙な反応を起こす先でシャドーガード達がガードアニマル形態でノロを啜っている。

 

 容量的にシャドージェットにはノロ回収機能が登載出来ない為の処置である。

 

 そんな(しもべ)達を尻目にリュウはゼノヴィア、ジャンヌ、小猫、ヘラクレスに先程の通信の内容を語り終える。

 「――……と、言う事になった。生憎、シャドージェットに余人を乗せるスペースは無い事も無いが、この人数は不可能だ……不便だろうがお前達は十条、糸見とシャドーガードの背に乗って移動してもらう…」

 沙耶香程度なら同乗出来なくも無いジェットだが、機器の都合上乗せる事は出来ないと論ずリュウ。

 

 

 「なら虎さんに乗ります」

 真っ先にガードタイガーを指名する小猫。乏しい表情がどこか興奮気味である。

 

 「じゃあ鷹に失礼するわね」

 出来る限り競合せず、そして揺られる事が少なそうなガードホークを取ったジャンヌ。

 

 「名前的に狼だな!」

 別にオルトロスと言う訳では無いがガードウルフに跨がる事に決めたヘラクレス。

 

 「くっ…先に言われてしまったか…!だが私もウルフに乗るぞ!」

 ガードウルフの性格が気に入ったのかヘラクレスに先に指名された事を悔しがりながらも自分も譲らないと主張するゼノヴィア。

 

 「……ならば決まりだろう。糸見か十条が残りのタイガーとホークに同乗するだけだ…」

 

 がリュウは特に取り合わず、決まったとばかりに話を進める。

 

 因みに沙耶香はノロを回収し終えたガードタイガーの下顎を恐る恐る撫でてはタイガーからすり寄られている。

 

 「…くすぐったい」

 

 『Gnorr…♪』

 

 「可愛い」

 

 その光景を眺めた小猫が癒されている事はご愛嬌。

 

 「…幸いにして、此処にあるであろう仕掛けとやらの反応は近い……と言うよりも近付いているようだ…」

 リュウがバイザーに映る反応を確認しながら、件の物体があるだろう方向を見定める。

 

 「近付いてるだって?罠か?」

 「……いや、この気配は動物のモノだ。恐らくは何かしらの手段を用いて…星人が野生動物の背か…あるいは体内に仕掛けを設置したのだろう(個人としては前者を願いたいが……)俺は先に行く……お前達は後からウルフ達に乗り付いてこい…」

 言うや否や音も立てずに消えるリュウ。

 ゼノヴィアがその様に見事な物だと感心しながらガードウルフに飛び乗る。

 

 『Wuon…』

 いきなり飛び乗って来たゼノヴィアに少々抗議の吠えを挙げつつもヘラクレスにまで飛び乗られては堪らないと考えたガードウルフは素直に伏せる。

 

 「ははっ!お利口じゃねぇの」

 その様子を見た巨漢は笑いながらゆっくり彼の背に乗る。

 

 「糸見さん一緒に乗りましょう」

 

 「ん。よろしくね?」

 

 沙耶香は小猫の誘いに短く返しながらガードタイガーにぎこちなく言葉を掛ける。

 鋼鉄の虎はそれを受けて頭を垂れ沙耶香が背に乗るのを待つ。

 

 「ん?何か知らない内に私があの鳥モドキに乗る事になってないか?」

 「ダイジョーブよ、落ちそうになったら助けてあげるから」

 自分を置いて決まってゆくペア割当に釈然としない姫和。

 ジャンヌはそんな彼女の肩を軽く触れて冗談混じりにフォローする。

 

 『Kiieee!』

 

 鳥モドキと言われた事が不服なのかガードホークが抗議の嘶きを鳴らす。

 3匹の鋼鉄の獣は主の翼たる紫影の翼を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本・京都

 

 そして京都駅にて中央コンコースの吹抜けを一望出来る天井の鉄骨の1つに奇妙な石膏像が鎮座している。

 

 「成る程のう…こいつがなんちゃらモナコだかモナドだか言うヤツか」

 

 「重かった……」

 

 石膏像から少し離れた鉄骨の上でそれを観察するドリルゲキと彼を空から輸送し疲労したイリナ、2人の姿が京都駅にあった。

 

 「さて…一気にドリルクラッシュで砕いてやろうか」

 此処まで連れて来て貰った少女を労う前に、さっさと仕事を済ませようと屈伸し構えるゲキ。

 

 念の為と言う訳では無いが観察し、獲たデータはタグベースに送信済みである。万に1つヨク辺りからデータを取らなかったのかと文句を言われる事も無い筈だ。

 

 

 「然らば!どっせぇぇぇぇいっ!!

 

 ドリルの矢となったゲキがモナドを強襲する。しかし石膏像は意外にも砕けない。

 

 「ぬぅ?!一度で砕けんとは生意気な!」

 

 思いの外頑丈な像の耐久力に眼を見張りつつも繰返し攻撃を仕掛けるゲキ。

 通算にして17回目にしてやっと少し大きな石程度になったモナドをトドメのストンプで完全に砕く。

 お陰で東京程では無いとは言え、人々の往来激しい場所で妙な注目を浴びてしまう。

 悪い意味で無いのは、日頃のダグオンの活躍のお陰か。

 「やれやれ思いの外時間を取られた。しっかし京都駅のがこれ程硬いとは…大文字の方に急がなくてはのう。紫藤、疲れも退いたろう、降りるのを手伝っとってくれんか」

 大文字がある方向を見やりながら呟くゲキ。

 帰りもイリナ便に頼る。と言うより1人で落下した場合、堂々と公共機関の建物内にドデカいクレーターが出来るので頼らざる負えない。

 

 「ええっ…仕方ないわね……」

 一瞬、とても嫌そうに声を溢すも頼られる理由が理解出来てしまう為、渋々引き受けるイリナ。

 華奢なツイテールの美少女がゴテゴテした黒い装甲の戦士を抱えてゆっくりと浮遊する様は京都駅に居た利用者の内、数人の手によって後にSNSに拡散される事となる。

 

 

 そして大文字の方に設置されたモナド彫刻はゲキの懸念が外れ、ロスヴァイセとアーサーの攻撃であっさりと撃破される事をイリナはゲキと共に山へ向かう途中で知り、へたり込むのであった。

 

 

 

 こうして日本、京都の入れ換えられた土地、建物は其処で神隠しに遇い行方不明となった人々の数人と共に元に戻る。

 その中には何と伊南栖羽も居たのだから驚きである。

 その際栖羽は涙目で北斗の名を連呼しながら経念仏を唱えていたのである。何があったかは往々にして知るべしと言えよう。

 

 また、京都が元に戻った事で九重も元の世界に戻った様である。

 そしてその事を喜びを司る変態は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━京都・とある山中

 

 「う~む、まさか大文字の方はあっさり解決してしまうとは…もしやあの石膏像、個々に材質が異なるのか?」

 人気の無い山中でロスヴァイセ達と合流したゲキ達。

 顛末を聞きながら首を捻る。

 

 「九重ちゃん戻れたんだ」

 

 「ああ、丁度君達からの連絡を受けた辺りで、あの少女が消えた。敵影らしき者もなかった様だし、恐らく元の世界に戻ったと見ている」

 

 「その辺りはアルファかゼータに訊けば分かるじゃろうて。しっかしこうなると破片の一つくらい持って帰るべきじゃったか」

 

 アーサーの言葉を聞いて専門的な事は解る奴に任せると投げるゲキ。

 モナド彫刻の破片を持って帰ればヨクがおおよその対抗策なりを出してくれるかと考え、失敗したかと肩を落とす。しかし――

 

 「破片でしたら此処に…」

 

 ロスヴァイセがそっと挙手しながら拳大の破片を持ち出す。

 

 「ぬぉっ?!大手柄じゃロスヴァイセ嬢!しかし何故?」

 

 「未知の物質との事でしたので解析に必要かなと思いまして……拝借してきました。どうやらお役に立てたようで」

 

 「大金星じゃ。これでカイやヨクにネチネチ言われんで済む。さぁて急いで基地に戻るぞ!」

 

 破片を砕かない様に気を付けながらバックルを操作するゲキ。

 アーサーとイリナも事前に渡されていた転送装置を操作する。

 消える3人。残されたロスヴァイセ。何とも不幸な事に彼女1人出費で帰る事になった。

 そんな戦乙女が居ない事に彼等が気付いたのはゲキが破片をラボに調査に出した後であった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:we are DAGWON)

 

 思わぬ情報により異星人の策を突破する事が出来たダグオン、刀使、異世界人の同盟。

 エン、シン、ヨク、リュウとゲキに続くように次々と彫刻を破壊してゆく中、カイ一行は"怒れる"ラーシュメイラに遭遇する。

 怒涛の攻撃に防戦一方となるターボカイ、その時結芽はライアンにその力を兄に貸すよう懇願する。

 

 次回、刀使ノ指令ダグオン

 

 炸裂!ターボライオソード!!

 

 次回もトライダグオン!

 

 

 おぉ~、ブレイブ星人まっじめ~!

 つーわけで次回もヨロヨロ~♪

 

 




 後半ちょとダイジェスト気味ですが、その分次回、カイの方に描写を割くのでこの配分でございます。

 それにしても妾ちゃん可愛い、強い、て言うかスプリット舌なんだ妾ちゃん。
 確か能登神の方は嫌いなモノに蛇とあるので、叢雲は羽々斬とは相性が悪いのかしら?
 妾ちゃんどう見ても蛇蛇しい見た目だし、でも可愛い、強い、三種の神器全て持ってる、凄い。
 はい、あまりの喜びにテンションおかしくなってる私です。これから寝ます。おやすみなさい、また次回


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第八十九話 炸裂!ターボライオソード!!

 こんばんは。
 夏が近付くと執筆意欲のモチベーションが中々上がらなくて困りものです。
 とは言えやっとこさ納得が出来たので投稿。

 カリギュラ2売り切れ……やっぱり予約しとけば良かったなぁ。
 まりえカイチョーがウィキ口さんなのか気になるぅぅぅ。
 ええ好きですよ、渕上ボイスですし。夜見も好きです。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 戻って来たぁ~……!うぅ良かったよぉ、良かったよぉ…。

 

 ほら泣かない。何か大変な目にあったみたいだけど無事帰って来れたんだから。

 

 ぅぅう~…ほ゛く゛と゛さ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!

 

 ちょ、鼻水!鼻水が出てるから!?

 


 

 ━━ダグベース

 

 「はっ!何かこう乙女がしちゃいけない顔をすーちんがしてる気がする!!」

 

 〈何を言っているのだ?〉

 

 メインオーダールームでゼータが天啓の様なモノを受け口走る。

 当然ブレイブ星人はそんな不合理な言葉の意図に理解が出来ない。

 

 「や、でも京都が元にリターンして良かったよね!てっきり空間系の神隠しは建物の位相入替えしてる壁作ったゲイジュツ星人とは別の異星人の能力かと思ってたもん」

 

 〈いや、その認識は誤りでは無い。一連の犯行から引っ掛かりを感じていたのだが、例の彫刻で確信を得た。今回の主犯はアーティシャン星人であるが、神隠しの実行犯は別人だろう〉

 

 「デジマ?!」

 

 自分が何気なく洩らした言葉をブレイブ星人が断言した事にゼータはショックを受ける。

 

 〈アーティシャンに別世界の空間に干渉する力は無い。奴は精々…星一つ内の物体の位置を操作する事が限度だ。勿論それも強大な力ではあるが…〉

 過去、自身が生きていた頃の記憶から犯罪者の特徴を挙げ列ねてゆくブレイブ星人。

 

 〈私が宇宙警察機構の任務で地球を訪れる遥か以前の事だ。その当時からアーティシャンの犯行は全宇宙に有名であった〉

 

 「えと…ブレイブ星人が元居た世界の地球…サルガッソとか言う監獄の囚人が暴れてたヤツだよね?」

 

 〈そうだ。アーティシャンも本来であればサルガッソに収監されている手筈であった。が、奴は巧妙に行方を眩ませ捕縛は難を極めた〉

 

 「でもでも~エデンから来たって事はぁ、結局捕まったんでしょでしょ?」

 

 〈その様だ。生憎、その時私は地球をサルガッソの脅威から守る為に六人目任命に地球へ急行した為、逮捕されたとの情報は後から知り得たのだがな〉

 

 ブレイブ星人が当時の事情を語り終えた様で沈黙する。

 ゼータはそれを見ながら…え?当時の詳しい資料とか無いの?宇宙警察も警察なんだから逮捕資料とかあるでしょ?と思ったが、そう言えばアルファ経由で聞いたブレイブ星人が最初に地球へダグオンを任命した時の事情を思い出し、何となくだが理由を察してしまい、呆れ、糾弾しようかとも思ったが、それよりはシータ達が集めてきただろうデータをアーカイブから引き出した方が早いかと断じ、コンソールに向き直った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ブラジル・アマゾナ

 

 「……まさか、反応が近付いて来た訳が…こんな理由とはな…」

 

 熱帯の密林、その一頃に不自然に出来たクレーターに立つリュウがポツリと呟く。

 

 「宇宙人の彫刻は動く事が普通なのか?」

 「さぁ?」

 足元に散った碧玉の欠片を踏み潰しながらゼノヴィアが首を傾げ、ジャンヌは知らないとばかりに短く返事を返す。

 彼、彼女等の眼前に聳え立つは碧玉色の大理石で出来た羽根が生えた巨大な獅子。

 顔面の1部をゼノヴィアのデュランダルとヘラクレスの神器"巨人の悪戯"の強化形態である禁手と呼ばれる形態【超人による悪意の波動(ディトネイション・マイティ・コメット)】、同じくジャンヌの神器"聖剣創造"の禁手【断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)】により砕かれ、その破片が辺りに散らばったのだ。

 また3人の攻撃の余波で一帯の植物が禿げ上げた為に大地にクレーターが出来てしまったのだが、必要最小限の犠牲として割り切る事にした。

 

 「それはそれとして、動物達の方に括り付けられた彫刻も破壊しなくちゃいけません……正直面倒臭いです。…にゃあ…」

 頭髪と同じ純白の猫耳をひっきりなしに動かして周囲に散った動物達を探す小猫。

 とは言え、当人は探知と発見時の破壊に加勢するだけで、追い込むのはシャドーガード達と姫和、沙耶香の2人。

 獅子と違い、あくまでも原生生物なので、目下己の命の危機である獅子から逃れようとしているのだ。

 

 「これで…!最後……」

 

 沙耶香が木々を跳び交う霊長類の背部に付着した彫刻を破壊する。

 これで彫刻(モナド)は獅子を除き全て破壊された。

 

 「やっと片付いたか…、後はあのやたらキラキラした獅子だけだな」

 小烏丸を片手に溜め息を衝く姫和がうんざりした様子で溢す。

 当初はリュウが想定した様に彫刻を無理矢理継ぎ付けられた動物を発見したが、反応に些か誤差が見られていた事や、動物達が怯えていると感じ取ったリュウが一帯の反応値から別に何かしらの存在を感じ、獅子を発見するに至った。

 

 獅子はどうやらある一定の距離を保ちながら彫刻を背負った動物達を追い立てていたらしく、反応に差異があったのは獅子の発する空間電磁波が大きく、動物達の彫刻のソレも含め共振していたという事が後の調査で判明する。

 さておき、人間と同等以上の知性を有する彫刻獅子は未しも、現地の原生生物である野生の動物達の対応は一筋縄では行かなかった。

 何せ逃げる。前門のリュウ一行、後門の獅子であるからして、今まで一塊に逃げていたのがバラけるのだ。

 姫和と沙耶香が迅移で追跡し、或いはリュウが分身して動物達を宥めている内に彫刻を破壊と言う様な行程を繰返し、獅子の元へ辿り着いたと言う経緯である。

 

  『ドラゴンプラズマバァァァァアンン!!』

 

 等と姫和がこれまでの事を振り返っている内に、何時の間にやら再び融合合体しシャドードラゴンと化したダグシャドーのドラゴンプラズマバーンに加え、ゼノヴィアのエクスデュランダル、英雄組の再びの禁手の攻撃で獅子のモナドが砕かれていた。

 

 「おぉ!?ロボットだけじゃなくドラゴンにも変型出来るとは多芸だな!」

 大剣を肩に担ぎ上げながらシャドードラゴンの姿に愉快そうに感心するゼノヴィア。

 

 「お供の子達も人型に変型するし、リュウってダグオンの中でも特別なのかしら?」

 獅子のモナドに確実にトドメを刺す過程でシャドーガード達がアニマル形態からヒューマノイド形態に変型したのを見たジャンヌが空から威風堂々と降りてくるシャドードラゴンを見ながら溢す。

 彼女の予想は兎も角としても、素の身体能力のスペックが6人中随一である事は変わり無いので当たらずとも遠からずと言えよう。

 

 「…次に行くぞ…」

 シャドードラゴンから再び分離したリュウが皆に告げる。

 こうしてアマゾナのモナドは破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━インド・シッキム州

 

 「これは……参りましたね」

 目の前で起きている惨状…と言って良いのかすら分かりかねる事象に思わず眉間を揉みたくなるウイングヨク。

 

 ニュージーランド・カンタベリーに設置されていた石造りのモナドを速攻で破壊した後、即座にオーストラリアへと渡航、これまた物言わぬ木造の彫刻の為、早々に破壊し、現在インドのモナドを破壊しに来ていたのだが…………。

 

 「ねねーっ!」

 

 「よっしゃ!そのまま追い込めねね!」

 

 「今度こそジ・エンドにしてあげマース」

 

 薫とエレンがねねに追わせているモノの前に立ち塞がる。

 それも必要に足元を注意しながら。

 

 「今度こそイケるわね!」

 「もう疲れましたぁ~…」

 「頑張ってくださーい!」

 オカ研メンバーは長船コンビから距離を取りながら彼女達にエールを送る。

 当初はリアス、ギャスパーも追跡に参加していたものの、相手との相性の悪さからリアスは早々に戦力外通告を受け、ギャスパーは疲労でヘタりこんでいる。

 アーシアは元より回復後方要員なので頭数には入って居ない。

 では何故薫とエレン、そしてねねだけが活動しているのかと言うと、現在、彼女達が追い込みたてて破壊しようとしているモノが雪兎の雪像を模した動くモナドであるからだ。

 そう雪像である。その為ヨクも不用意に攻撃出来ない。彼の攻撃では雪像のモナドは体積を大きくさせるだけであり、しかしだからとてクリスタルブーメランを使用しても本体は小さいままなので増えた体積を変り身にして逃げキリの無い鼬ごっこになる。

 同様にリアスの消滅の魔力攻撃でも似たような逃亡方法を取られた為、最早彼等は下手に刺激せぬ様に刀使達とその相方である小さな荒魂に頼るしかないのだ。

 

 「他の皆は上手くいっているでしょうか……」

 

 「トッタゾー!」 「ネネー!」 「Congratulation!!カオルー」

 

 天を仰ぐヨクの後ろで凸凹コンビが勝鬨の声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ロシア・オムスク

 

 「っぁあ!!ぺっ…、クソッ…砂が口に入ったじゃねぇか!!」

 呼吹が腕で顔をガードしながら先の見えない砂嵐に叫ぶ。

 

 「七之里呼吹、下手に動かないで下さい。アーマーシンの集中が途切れてしまいます」

 アーマーライナーに身を隠す木寅ミルヤが荒れて叫ぶ呼吹を冷静に嗜められる。

 

 「ちょっと~?ホントに見えてるのかにゃ?」

 

 「見えてんよ、オレのダグテクターは遠距離火力を確実に叩き込む為の望遠センサー諸々強化されてんダ。この程度の物理的ノイズなんザァ屁じゃネェよ」

 

 同じ様にアーマーライナーに隠れる黒歌が胡散臭そうな目でビークルの屋根に立つシンへ訊ねる。

 それに対しシンはバイザーに映る情報を精査しながら2丁のアーマーライフルを腰だめに構える。

 因みに、レオナルドはドイツのモナドの破壊に大きく貢献し、現在はアーマーライナー内にて休息を取っている。

 シンが述べた通り、彼のダグテクターは遠距離の火力による攻撃に秀でた物である。

 故に高性能な望遠機能、敵識別機能を有している、更に言えばターボカイ、ウイングヨクと情報を相互共有する事でその性能はより跳ね上がる。

 アーマーライフルにしても外見は小銃から機関銃間といった様なデザインであるが、多様な場面で様々な使い方が出来る。

 近距離ならばショットガンの様に、長距離ならば狙撃銃の様にだ。

 それに加え、胸部ブレストモーターキャノン、肩部、腕部のミサイルにより充実した火力が敵を面制圧する事が可能である。

 砂嵐は確かに強烈であるが、その発生源が標的であるなら、その場所から動かないのであれば、暴砂以外に身を守る手段が無いのであれば、モース硬度が10あろうが、アーマーシンであれば撃破出来る。

 

 「オラオラオラァッ!全火力集中斉射(オープンフルバースト)だぁっ!」

 

 ミサイルの爆風が砂嵐に道を作る。アーマーライフルの弾丸が標的に轍を入れる。

 ブレストモーターキャノンがその轍を広げ彫刻に大きな罅が入る。そして矢継ぎ早に撃ち込まれる弾丸が、弾頭が物言わぬ敵を粉々に蹂躙する。

 

 やがて空が晴れ、嵐が収まり、後に立つのは深緑の戦士と数人の少女達のみ。

 

 「シャァあ!次に行くゼ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エジプト・サハラ砂漠

 

 熱砂が広がるサハラの上空をターボライナーが飛ぶ。

 目的はこの砂漠の何処かに存在するであろうモナドと呼ばれる彫刻を探す。

 

 そして、その彫刻は存外に早く見付かった。

 

 「成る程、アレか…確かに不釣り合いだな、この景観には」

 

 コクピットから覗く光景に得心が言ったように洩らすターボカイ。

 結芽が注意深くバランスを取りながらカイの背中越しにソレを見る。

 

 「すごーい!キラキラしてる!」

 

 少女が感嘆と好奇の声を挙げる。

 

 それも当然だろう、黄金色に輝く熱砂の上にポツンと置かれた硝子の彫刻。

 透明なその構造体は空の様に透き通っており、陽の光を反射させ眩く輝く。

 ソレを星人がどういった意図で配置したのかは知れない事であるが、何かしらリスペクトがあったのだろうその硝子の彫刻は入れ替わった構造物と同様"スフィンクス"であった

 

 「なまじ美しい分、不自然極まりないな。それとも宇宙人にすら通じる古代エジプトの建築様式を讃えるべきか?」

 

 『その様な些事に構けているな。他にらしき存在も無い、反応からしてあの細工が異星人の仕掛けた物である事は間違い無かろう』

 

 宇宙にすら通用するスフィンクスの造形に何とも言い知れぬ思いを抱いている所に並走して飛ぶライアンから叱責が跳んで来る。

 

 『あの様な物、私が早々に叩き斬って破壊してくれよう!』

 

 そのままカイからの返事も待たずに剣と化しているライアンは一直線に硝子のスフィンクス目掛け降下して行く。

 

 スフィンクスの頭部と獅子剣の切っ先が触れようかというその瞬間、黒が入り雑じった稲妻がライアンを弾き跳ばした。

 

 『何っ?!』「何だとっ!!?」

 

 弾き跳ばした稲妻の正体は人間と大差無い大きさのシルエット。

 硝子細工のスフィンクスの鼻先に立つそのシルエットにはカイ、結芽にも見覚えがあった。

 

 「あのおねーさん、一緒に来てたんだ……」

 

 「御刀を使う異星人…"怒れる"ラーシュメイラだったか…」

 

 歴史上に存在しない御刀、霊獣の名を関したソレを持つ女が凶悪な笑みを湛え上空を仰ぎ見る。

 

 「紫のヤツはかなり楽しめた。赤いヤツはそこそこだが伸びしろがある。黒いのは硬いだけで旨味が少ない、白いのは歯応えが無さそうだった、緑のヤツは黒いのと近い感じがする……後は貴様だけだ青いの!ダグオンで貴様だけはまだ味わえて無いからなァ!」

 

 御刀麒麟を向けターボカイを指名するラーシュメイラ、その行動に馬鹿馬鹿しいと切って捨てたい所だが、モナドに陣取る彼女をどうにかしなければ先に進む事すら出来ない以上、無視は出来ない。

 後ろの客車でも曹操、祐斗がラーシュメイラの姿を窓から確認し戦慄する。

 

 「あの時の女傑か、厄介だな」

 「主だった目的はカイくんみたいだね」

 

 「あんな綺麗なお姉様なのに何だかおっかない感じビンビンしてますねぇ~、智恵さんとは別ベクトルで」

 

 「由依ちゃん?」

 

 同じく窓から硝子のスフィンクスとラーシュメイラを眺めていた由依が女傑の身形を評しながら智恵を引合いに出して、当の智恵から笑顔の圧を当てられている。

 

 

 「だんまりか…別に逃げても構わんぞ?その代わりに貴様が戦う気になるまでこの星で暴れるだけだがな!!

 嘲る様に吼えるラーシュメイラ、彼女が言う通り、カイがこの場を無視し他の場所のモナドを優先したとして、ラーシュメイラはエジプトを蹂躙し、そのまま地続きに他の国々を破壊し尽くすだろう。故にこそ、だからこそ、自らの善性に従いダグオンとして活動するカイには無視が出来ない。

 

 「皆、申し訳無いが……彫刻の破壊を任せても良いか?あの女の望み通り、奴の相手は私がする」

 

 カイが砂地にターボライナーを降下させながら、コクピットのマイクを通して客車の同乗者達に自らの選択を告げる。

 

 「ふ…そうでなくては面白く無い。さぁ、私の飢えを充たしてみせろ」

 

 砂地に着地したターボライナーの扉が開く、青い人影が熱砂に再び降り立ち、そして次の瞬間にはその姿がラーシュメイラの目の前から掻き消えた。

 

 ガキンッ!と金属がぶつかる音が響く。

 

 片や御刀、片や特異な技術で作られた装甲の蹴撃、ターボカイの蹴りを悠然とした態度で受け止めるラーシュメイラ。

 バイザーの奥で鋭い眼光を飛ばすターボカイ。

 

 置き去りにされた音が今になって風と共にターボライナーに轟く。

 

 「成る程……速いな、紫のヤツとは別の意味で速い。それでいて鋭く、力も申し分無い蹴りだ」

 

 「賞賛は素直に受け取らせて貰う。だが、容赦はしない!」

 

 止められた蹴り込みを構わず押込みスフィンクスから引き剥がすカイ。

 ラーシュメイラも特に抵抗せず慣性に従い飛ぶ。

 

 「今の内ですわね」

 客車側の扉から覗いていた朱乃が中に留まっていた皆と顔を合わせ頷くと行動に移る。

 

 「この中で火力があるのは副部長──朱乃さんだけだ。今は他に敵は居ないみたいだけど、念の為…周囲を警戒しよう」

 祐斗が朱乃を中心にしたフォーメーションを展開し、攻撃の為の準備に集中する朱乃を守るようにしながら残りの面子に声を飛ばす。

 

 「けどけど…あのガラスのスフィンクスってどう考えても動きませんよね?ココに飛ばされた時に一緒に来た荒魂とアリの宇宙人はみんな倒しちゃいましたし、他に敵って居るんですかね?」

 至極当然の疑問を由依が口にする。

 

 「どうだろうね、敵は何でもアリの宇宙人なんだろう?我々の予想だにしない事が起こる可能性はゼロじゃあ無い。違うかい?」

 そんな由依の疑問に曹操はニヒルに口元を歪めながら答える。

 

 その一方で蒼い疾風と黒黄の稲妻が、音と光を置き去りにして衝突を繰り返す。

 

 「凄まじいな」

 

 「辛うじて…まだ眼で追える速度で戦っているね」

 

 「そうなんですか!?いや~あたしにはもう何が何だかサッパリですよ」

 

 「そう言えば…あのフードの娘の姿が見えないけれど……」

 

 警戒しながらもカイとラーシュメイラの戦いを傍観する曹操、祐斗、由依。

 智恵が先程から姿を見ない結芽の存在に言及した瞬間、先程ラーシュメイラに吹き飛ばされたライアンが、人間が握れるサイズの大きさのまま凄まじい勢いで戻って来る。

 

 「行くよ、おじさん!」

 『応!』

 

 ライアンがターボライナーを横切るタイミングでフードを深く被ったままの結芽が跳び出しライアンを握り、1度、着地と同時にその場で一回転をして見せる。そして直ぐ様迅移にて疾風と稲妻の戦いの渦中へと飛び込む。

 

 「嘘っ!?あの娘、あの二人の戦いに割り込むつもり!!?」

 未だ結芽の正体知らぬ智恵は彼女の無謀さに眼を見開く。

 

 

 

 「やぁぁぁああ!!」

 

 「ほう…!あの時の小娘か!」

 

 結芽の突然の強襲にも慌てる事無く、女傑は麒麟でライアンの刃を防ぎ、空いた左腕でカイの攻撃をも受け止める。

 

 「二対一で相応……と言った所か?お互い、あの時、あの街では思うようには戦えなかったからなぁ?」

 そう言う彼女の額には再び皮膚を突き破り角が伸びてきている。

 

 「どの口が…!貴様はあの時好き勝手暴れていたろう!」

 カイが駒王での戦闘の際のラーシュメイラの暴れぶりに眉を潜める。

 

 「いいや、あれでも私としては抑えていた方だ。何故ならあの時はザゴス円盤相手に戦っていた貴様らダグオンを見逃していたのだから」

 

 「何それ!それじゃ私たちだけなら簡単に倒せたって言ってるみたいじゃん!!」

 

 「そうだとも。とは言ってもお前や、もう一人の刀使、白い鎧の男辺りは残ってはいただろうが…いや、あの女神云々ほざいた女も何かしら隠し球があったか?まぁどうあれそれ以外ならば容易く再起出来ぬよう痛めつける事は可能だったとも」

 

 結芽の不平に鼻で笑いながら黒光が混じった稲妻が応える。

 そうしている間にも彼、彼女達の戦闘は尋常為らざる速さで攻防を繰り広げる。

 

 

 

 

 

 

 「行きますわ!雷光よ!!

 同時にスフィンクスのモナドの方では朱乃に動きがあった。

 魔力と光力を極限まで高め、練り上げた雷と光の攻撃をスフィンクスの頭上から叩き付ける。

 轟音と共に立ち上る砂塵──

 

 「やったか!?」

 祐斗が思わず溢す。

 

 「っ?!避けて!!」

 何かに気付いた朱乃が叫ぶ。同時に砂塵の向こう側から極大の光が彼女達に向け放たれる。

 

 「くっ…!」「ちぃっ…!」

 「わわっ!?!」「一体何が?!」

 

 朱乃の言葉に従い皆何とか躱す。果たして砂塵が晴れた向こう側にあった光景は、なんと、硝子細工で関節すら存在しない筈のスフィンクスが、ゆっくりと立ち上がる姿であった。

 そしてその体の中では幾重にも光が反射を繰り返している。

 

 「まさかとは思うが……あのスフィンクス、姫島朱乃の放った雷光を体内で分離させて雷を動力に、光を攻撃に転換させたのか?」

 曹操が所感からスフィンクスの仕組みを推測する。

 

 「これは下手な攻撃は出来ませんわね……」

 雷光を放った朱乃が冷や汗を頬に一筋浮かべながら困った笑みを浮かべる。

 

 「カイさんは……まだ無理そうね」

 智恵が目を向けた先、何も無い砂地が瞬いたかと思えば、砂が大きく撒き上がり激突音が遅れて聴こえて来る。

 

 

 

 「滾る…滾るぞ!ハハハハハハッ!魂が滾り震える!!魂ィ!魂ィィィイイイイ!!」

 カイと結芽の攻撃を捌く度にラーシュメイラの身に刻まれた刺青がうねる様に広がっていく。

 

 (結芽と二人掛かりで尚この劣勢、彼方の方(スフィンクス)も苦戦している…これ以上奴に掛かりきりになる訳には…)

 埒の明かない状況に苦い顔をするカイ、だがそれ以上思考に耽る事を敵の苛烈な攻撃は許してくれない。

 

 一方、結芽の側にもこの極限の戦闘下に思わぬ危機を迎えていた。

 

 (むぅ…何だか重い……体が思うように動いてくれない!なんで!?)

 ラーシュメイラと渡り合う為に試作型VRS装備の機能を使用し、迅移の深度をより深い段階まで負担を軽減している。

 とは言え試作品の段階では休止を挟まない連続使用の負荷にアーマーが耐えられない。なれば必然、その負担は結芽の生身の体に還って来る。

 そしてVRS装備その物も度重なる激戦での酷使に白煙を上げ始める。

 

 「惜しいなァ?貴様の才に身体と装備が着いていけて無い。惜しい…本当に惜しいなァ、しかし容赦はしない!!」

 麒麟が紫電を迸らせる。刀身を横薙ぎに力強く振るわれ、力の差で結芽が押し負け、迅移の時間流から弾き出される。

 

 「ぁうっ!」

 

 「結芽!!」

 

 愛妹が吹き飛ばされたた事で、何とか拮抗出来ていた攻防に隙間が生まれる。

 

 「笑止!仲間に気を取られるとは命取りだなァ?!」

 

 「くっ…ぬぉ!!」

 

 カイを電雷で強化した蹴りで引き離す。

 

 「弱い者、弱った者を優先して狩り取るのが戦場の常識だ!!」

 カイとの距離が拓いた僅な間で両の手で麒麟を握り、雷力を込め巨大な稲妻のエネルギーで刀身をコーティングし振り下ろす。

 それはともすれば極大のビームの様である。

 

 「させん!(瞬間加速!(アクセルブースト))」

 

 カイのダグテクターに登載された超加速機能により瞬時に加速し結芽の前に立ち庇うように身構える。

 

 「シールドスモォォォクッ!!」

 ダメ押しとばかりにシールドスモークを展開させ少しでも威力を霧散させようと足掻く。

 

 そして光が弾けた。

 

 

 「か…カイさ…「お兄ちゃん!!!?」…え…?」

 

 スフィンクス相手に逃げながらも隙を付いては御刀で斬り付けるを繰り返していた智恵がカイが光に呑まれる瞬間を目撃し、震える声が溢れ出たと同時、被せるように悲痛な悲鳴がフードの少女から飛び出した事に困惑を露にする。

 

 (今…あの娘、カイさんの事をお兄ちゃん…って呼んだの?兄妹?ならダグオンの正体はやっぱり人間……なら以前ミルヤさんが言っていた事は……)

 思わず思考に耽って立ち止まる智恵、そんな格好な獲物をスフィンクスは見逃さない。

 

 「危ない!」

 そんな智恵を救ったのは騎士の機動力を持つ木場祐斗。

 智恵は彼の腕の中に抱き抱えられている。

 「あ…ありがとう…ございます」

 

 「いえ、それより怪我はありませんか?」

 

 「私は大丈夫です…けど、カイさんは…」

 

 助け出され気遣われた事に対し返礼を返しつつ、光に呑み込まれたカイの安否を訊ねる。

 その答えは間も無く判明した。

 

 

 「ほう…連中の中では柔い方と践んでいたが、先の煙幕がダメージを最小限に抑えたか」

 

 ラーシュメイラが言う通り、ターボカイは全身装甲に亀裂が走り、黒煙を上げながらも健在であった。

 

 「ぐ…ぅぅ…そう簡単に…倒れる訳には…いかんのでな…」

 とは言え、息も絶え絶えとも取れる状態は危険域に近い。

 

 「フハハ!虫の息じゃあないかァ、ならば早々に引導を渡してやらねばなァ!それが我が魂を滾らせた者に対する返礼と言うものよ!!」

 

 言うや否や再び麒麟の刀身に紫電を迸らせる。

 

 (この…ままでは…!)

 真面に動けぬこの状況にカイは戦慄し、焦りながらも打開策を巡らせ続ける。

 

 (やだ…やだ…やだ!せっかく一緒になれたのに!前よりずっと楽しくなれたのに…このままじゃお兄ちゃんが死んじゃう!そんなのは嫌だ!!)

 最早、完全にシステムが沈黙しデッドウェイトと化したVRS装備のアーマーを引き摺りながら力を振り絞る結芽。

 

 「ぅぅぁあ…ぁぁあああああああ!!

 叫ぶ。必死に叫んで、しかし現実は非情である。

 どれ程力を込めようと、疲労と負荷で痛め付けられた身体は動いてはくれない。

 どうすればいい?どうしたらいい?と必死に叫んで考える。

 そうして唯一思い付いたのが自分が握っているモノに兄の命運を託す事であった。

 

 「助けて…おじさん…ううん、ライアン。お兄ちゃんを助けて!」

 この時ばかりは天才刀使でも無ければダグオン準隊員でもない、1人のか弱い少女の心情を吐露する。

 そして獅子剣はその願いに暫し沈黙し、獅子の瞳を赤く煌めかせる。

 

 『オオォォォォオオ!』

 咆哮と共に黄金の獅子剣は結芽の手を飛び出しカイの元へと辿り着く。

 

 「悪足掻きか?それも良いだろう!」

 紫電が黒雷となり先程の比では無い程の極光が刀身を包み光の柱の様になる。

 怒れる女傑はその柱を躊躇無く振り下ろす。

 

 『ターボカイ、私を手にするが良い』

 「…………イチかバチか、分の悪い賭けだが、やってみる価値はあるか!」

 今にも自らを押し潰さんとする光の柱を前に手にしたライアンを握り、柱を見据え振り上げる。

 一瞬、音が消える。

 

 遅れて超大な轟音が耳をつんざく様に轟く。

 

 「「カイさん!?」」「「カイくん?!」」「ターボカイ!!」

 

 「お兄ちゃぁぁぁああんんん!!

 

 由依が、智恵が、朱乃が、祐斗が、曹操が彼の名を呼び、結芽が目尻に涙を浮かべて叫ぶ。

 

 

 「ほう…!ほう!!フフ…フハハハハハ!!何だ、まだまだ楽しめるではないか!!」

 ラーシュメイラが歓喜に声を挙げる。

 その声を聞き、皆が光の柱が降りた場所を注目する。砂塵が段々と晴れ、姿が顕になる。

 

 其処に立つはターボカイ。黄金の獅子剣ライアンを手に、極光の雷の柱を彼は断ち斬った。

 これぞ、ターボライオソード疾風烈断。加速の力とあらゆるモノを斬り咲く刃が、膨大なエネルギーの塊を真っ二つに斬り伏せたのだ。

 

 「悪いが、此方も余裕が無いのでな。貴様の道楽に付き合うつもりは更々無い」

 言い、上段左半身となってライアンを構える。右手は握り手の中心部、左手は柄頭に添え、左脚を前に半歩踏み込む様に出して呼吸を整える。

 

 「それは苛立たしい…が、存外貴様は立ち上がる。そんな予感がする」

 告げ、左中、薬指の間に麒麟の刃の峰をを通し、御刀を寝かせる様な動作で右肩を押し出す様に構える。

 

 互いに睨み合い、その一時だけ時が永遠の様にも思える空気が蔓延する。

 言葉は無い、只々互いの視線が交差し合い、緊張の一瞬が漂う中で、果たして誰の汗だったのか…一滴、落ちた瞬間に動いた。

 

 2つの刃が交差し、肉が斬れ、弾け跳ぶ。2人の立ち位置が入れ替わり、止まる。

 

 ターボカイのダグテクター、その左肩のマフラーが綺麗に斬られ、落ちる。

 同時に砂の地面にはラーシュメイラの右腕が麒麟ごと落下する。

 

 「俺の勝ちだ…!」

 

 「クフ…フハハ!そうだな!この競り合いは貴様が勝ちを取った。しかし、この戦その物に決着が着いた訳ではないっ!!」

 腕を斬られたと言うのに嬉々として嗤いながら、宣言するラーシュメイラ、その言葉通り、残る左腕から電磁力場を飛ばし、砂に突き刺さった麒麟を回収する。

 

 「さぁ!命尽きるまで戦うのだ!それこそが修羅の道よ!!」

 上機嫌に謡う女傑に万事休すかとマスクの下で噛み締めるカイ。

 来ぬのならば此方から参るとばかりにラーシュメイラが踏み込もうとしたその瞬間、彼女は急に足を止め、顔を斜め上に向け眉を潜める。

 

 「はっ…?いえ、しかし…私としては此処からが………いえ…滅相もございません。我が怒りは全て貴方様の為に…」

 虚空を見つめながら何事かを呟くラーシュメイラ。やがて舌打ちを小さく打ち麒麟を自らの口内へと仕舞う。

 

 「甚だ遺憾だが、我が至宝より帰還せよとの仰せが下った。今回は見逃しておいてやる。次に会った時、きっちり成長しておいてくれよ?ああ、それと…我が腕をもぎ取った貴様に、相応の礼をしてやろう………シッ!」

 満身創痍で尚戦意を衰えさせないカイへ苛立ちと愉快さをない交ぜにした口調で語り掛けるラーシュメイラ。

 おもむろに左手を硝子細工のスフィンクスに向けたかと思うと、一条光が迸り、次の瞬間にはスフィンクスは粉々に砕け散った。

 

 「何っ!?」

 

 「さらばだダグオン。次に会った時こそ、修羅の真髄を見せてやろう」

 言い、黒黄電光は空に向かい稲妻を走らせ消える。

 完全にラーシュメイラが居なくなったのを確認し、カイは膝を着く。

 

 (見逃された…と言う事になるのか……。俺もまだまだ未熟だな)

 ライアンを杖にしながら今一度立ち上がり、結芽の元へと近付く。

 

 「無事か?」

 

 「うん…」

 

 そんなカイに試作VRS装備を着脱し、しがみつく結芽。スフィンクスに対応していたメンバー達も、心配を滲ませながら近付く。

 

 「カイくん、大丈夫かい?」

 

 「随分と手酷くやられた様だが…」

 

 祐斗と曹操が訊ねるとカイは首を僅かに動かし視線だけ向け、おもむろに告げる。

 

 「済まないが、皆、先にターボライナーに乗っていてくれ。我々は後から行く」

 そう告げると後は何も無いとばかりに黙る。その意図を理解した祐斗達は、結芽を訝しげに見つめる智恵と、結芽に抱き付かれたカイを羨ましそうに眺める由依を諭しながらターボライナーへと向かう。

 

 2人きりとなった砂の大地、カイが結芽をあやす様に声を掛ける。

 

 「さぁ、いつまでもこうしている訳にはいかん。我々も戻り、次の場所へ向かおう」

 

 「ん」

 

 『であれば、私は先に行く。異星人の彫刻とやらを私が先に当たりを付けておいてやろう』

 少々不躾な物言いだが、ライアンなりに兄妹を思っての発言を残し、カイの手を離れ空の彼方へ消える。

 

 ターボライナーへ2人揃って乗り込み、コクピットにてカイは一度戒将の姿へと戻り、再びターボカイへと変身する。

 これによりカイ自身のダメージは兎も角、ダグテクターの傷は完全に修復される。

 その後、マイクを通して2、3同乗者達に何事かを告げると300系ひかりの姿形をした高性能ビークルは空に飛び立つ。

 

 後には量子崩壊を始めるVRSアーマーが砂漠の風に運ばれるのみ。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 見て!ピザの斜塔が戻って来た!!

 

 ピサの斜塔な?

 

 凱旋門も帰って来たみたい。

 

 いやぁ苦労したぜ。まさかファイヤージャンボで空飛ぶ彫刻を壊したかと思ったら、壊した彫刻の中から本体?の彫刻が車みたいなるなんてな~。

 

 うっぷ……お陰でカーチェイスに付き合わされて酔っちまった……。

 

 情けないな、それでも赤龍帝か?

 

 お前だって膝が笑ってんじゃねぇか!! 

 

 楽しかったね!

 

 (衛藤は平然としてたなぁ)

 

 次回、刀使ノ指令ダグオン。

 

 戦士再集結!とっておきのセカンドアタック。

 

 わーっはっはっは!!遂に出来たよプロトタイプ無限砲!!と変形出来ないドリルライナー

 

 ダメぢゃん

 




 ─86─エイティーシックス、アニメの分割1クール目をあそこで切るとは思わなかったなぁ、取り敢えずフレデリカが2クール目に出るのは確定にかなぁと。
 ファイド可愛いよファイド。

 夏は夏で現実主義がアニメ化しますし、ええ、これも原作持ってます。
 最近は積み気味でせうが。

 ヒシアマさん欲しいな……。

 来月どこまで投稿出来るか分かりませんがまた次回。


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幕間 四者三様


 おはようございます。
 夏の暑さに完全敗北、ダグライダーです。
 いや冷房付けてるんですけどね?なんと言うか、やる気のボルテージが上手く上がらないもので今月はチマチマこの話や次回のプロットやらを書いてはへばってました。

 タイトルの慣用句の数字がおかしい?いえ仕様です。

 そんな中での個人的吉報はスパロボ30にマジェプリとグリッドマンとジェイデッカー参戦、更にナイツマと覇界王の参戦には驚きました。いやナイツマは兎も角、覇界王はガチで驚きました。
 日竜、月竜、翔竜、ポルコートに声付くのかなぁ。

 どうでも良いですけど、私、ミルヤと誕生日同じなんですよねぇ…。好きなキャラと誕生日が一緒は嬉しいけどこれ以上歳を重ねたくないジレンマ……。



 ━━冥次元・北欧

 

 「ふぅ……片付きましたぁ。皆さんお疲れ様でぇす」

 気の抜ける声色でハイライトが生きてるのか死んでるのか判らない、ローテーションの少女が、後ろで補助をしてくれた戦乙女達に礼を述べる。

 

 戦乙女達も此処数日の付き合いで彼女の性格を理解してきたのか幾人かは苦笑を、もう幾人かは軽く手を振り応えている。

 

 少女はそれに軽く会釈しながら腰の鞘に細剣(レイピア)を納める。

 

 (この世界に来てはや数日経ちましたが……未だ帰還の目処は立たず……中々効率的には行きませんねぇ)

 等と思考しながら、この世界での住居に歩みを進める。

 歩いて数十分、些か移動に盗られる時間が不便ではあるが、折角の好意で用意された場所に文句は言えまい……いや、彼女の場合、やや遠回しに皮肉を込めて発言した可能性もなきにしもあらずではあるが。

 そうして見えてきた北欧特有の建築構造物の一軒家、玄関のノブに手を掛けてそそくさと帰宅すれば奥に人の気配がするではないか。

 

 「おぉ!帰って来たか弘名ちゃんよ。待ちわびたぞ」

 

 「また来たんですねー、神様ってお暇なんですかぁ?」

 借屋の居間、そのキッチンテーブルに我が物顔で居座るのは隻眼の好好爺とした老人──北欧の主神オーディン。

 

 そんな老人をハイライトの薄い瞳で見つめながら、勝手知ったるとなった借屋の冷蔵庫を開いてドリンクを手にしつつ、神様相手にストレートに物を言う。

 

 「うん?まぁ暇を見付けてはと言う意味でなら暇かのう…」

 

 「なるほどぉ、お忍びですかぁ。これはヴァルキリーの皆さん可哀想ですねぇ。それはそうとなんの変哲もない水ですが、どうぞバラキエル氏」

 

 オーディンと言う食わせ者に振り回される戦乙女達に同情しながら適当にとったグラスに水を注ぎ、オーディンと共に借屋に来ていた堕天使バラキエルに、何食わぬ顔で差し出す弘名。

 

 「あ…あぁ、済まない……」

 

 「いえいえー、お気になさらずー」

 

 戸惑いながら礼を掛けるバラキエルに対し音にするならガックンと付きそうな勢いで頭を下げる弘名。

 

 (……彼女を初めて保護した時もだが……どうにも感情が読めんな…)

 神隠しの件で北欧にアザゼルの名代として出向いた際に弘名を保護した時の事を思い返し、思考に耽りながら居たたまれない気分になる。

 何せ保護した際に互いに把握している情報を交えた時も、駒王に居る刀使に合流するよりも、この地に残り状況を見定めながら荒魂退治に参加すると宣言した程だ。

 「その方が効率的なのでぇ」とは本人の談だ。

 

 

 「ところでぇ、お二人揃って私の所に来たと言うことは何か重要な要件があるのではぁ?」

 

 「おお!そうじゃった!実はのう弘名ちゃん、つい先日程に京都と冥界の使い魔の森の一部が元に戻ったらしいぞ」

 

 「はぁ、と言う事は向こう──元の世界で動きがあったんでしょうね。恐らく…まぁ十中八九ダグオンが対処したんでしょうが」

 

 北欧の主神と堕天使の主要幹部が揃って弘名の所に来た理由を問えば、好好爺が理由を愉快そうに教えてくれる。

 それを聞いて半眼のマイペース少女は自身の世界で昨今有名になった正体不明の戦士達を思い浮かべて予想を立てる。

 

 「そのダグオンとやら、気になるのぅ。ワシらの世界にも来てくれんかのう……」

 

 「それはエインへリヤル的な奴ですかぁ?ならきっと来ませんね」

 

 (当人が許しているとは言え、バッサリ切って棄てるな……)

 

 何処と無く胃に手を沿えながら神と人のやり取りを黙って観察する堕天使。

 

 「それでぇ、お二人がわざわざ来たという事は私も向こう帰れる訳ですね…いやぁ待ちわびましたぁ」

 

 (そうは見えないが…まあ本心なのだろう…)

 (相変わらずそう見えんが…喜んでおるんじゃな多分…)

 

 言うや否や、そそくさと隣室に消える弘名。暫くしてこの世界に来たばかり時と同様、長船女学園の制服に身を包み、再び2人の前に姿を現す。

 

 「では効率的に、合理的に行きましょう。恐らくは私の現れた場所も直ぐにでも戻る気がするのでぇ」

 

 「むぅ…もうちょっとこう別れの情緒とか無いのかのう弘名ちゃんよ」

 

 「無くはないでぇす。でも取り敢えずオーディン氏とバラキエル氏にだけ挨拶しておけば十分なのでぇ。エネルギーは効率的に、最小限の労力で最大限の成果を果たすべきなので…あ、荷物の後処理はお任せしまぁす」

 

 「ドライじゃのう弘名ちゃん!?」

 

 オーディンのリアクションにも塩対応で足早に弘名は最低限の荷物と御刀だけを手に借屋を発った。

 

弘名in北欧 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━同・冥次元バチカン教会

 

 「此方の生活には慣れましたか?」

 

 この世の者とは思えぬ絶世の美形と形容すべき容姿を持った長髪プラチナブロンドの青年がティーテーブルを挟んで対面する少女に声を掛ける。

 

 「あー…まぁ慣れたっつーか、落ち着かな過ぎて一周回って落ち着いてきた……ってあたしは何を言ってるんだ」 

 

 そんな芸術的青年に対して言葉を選びながらまごつきつつも答えるのは前髪に1房赤いメッシュが入った黒髪に今時のティーンエイジャーにしては珍しい、左胸側に[逆境上等]と書かれたスカジャンを羽織り美濃関の制服を覗かせる刀使──稲河暁が未だに場違いな場所に居心地の悪さを感じつつ愚痴る。

 

 神隠しの折、この世界に飛ばされ暁。右も左も判らぬまま、手にしたスペクトラムファインダーの発する反応を頼りに散策していた所、やたらハイレグな肌にピッチリと張り付いたボディスーツを着た少女やら光の剣を振るう神父やらが荒魂相手にそこそこ善戦していたのを目撃する。

 色々と疑問に思う所もあったが、()()()()()()()暁とて刀使である。何より国外らしい上、通信も不通となる場所ならば、気紛れに()()()()()で荒魂を蹴散らしても管理局にも舞草のあの一派にも文句は言われまい。

 そうと決まれば跨がる2輪のアクセルを拭かして、謎の集団と荒魂の間に割って入る。

 

 突如として割り込んで来た少女に謎の集団は何やら英語か仏語か、兎に角流暢な外国語で叫んだりしているが暁は無視して愛車を止めると御刀を手に跳び出しては荒魂を斬って棄てる。

 そうして荒魂を掃討し終えれば、当然集団から見て身元不明な暁は要警戒され包囲される。

 あまり良い気分とは言えないが、藪をつついて面倒事になるのは御免だと急ぎ足にバイクに跨がろうとして…しかしハイレグなスーツの少女達に道行きを塞がれる。

 はてさていよいよ力付くで切り抜けようかと暁が行動に移そうとしたその時に変化は起こった。

 

 空が急に金色に染まったかと思えば、如何にも神々しそうに天から降りてくる、これまた絵に描いた様な美青年。

 彼は自らをミカエルと名乗り、小難しい理由を話していたが暁はミカエル登場のインパクトに話半分に応えながら唯々諾々教会の保護を受ける事と相成ったのだ。

 

 因みに、ミカエルが何故ああも仰々しい登場をしたのかと言うと、本人曰く茶目っ気だそうで、ソレを聴いて暁は深読みしていた事が馬鹿馬鹿しくなって白けた。

 

 そして今日に至る訳である──。

 

 「気のせいか…諸々はしょられた感じがすんな…」

 出された紅茶を啜りながらボソリと呟く。もしここに紫色の女神某の誰かさんや、ピンク頭の少女みたいな少年が居れば恐らくはこう言ってくれるだろう。

 

 「「尺が無いから仕方ないね!」」

 

 まぁどちらもこの世界に居ないが。

 

 「しかしまぁ…改めて…異世界ねぇ。最近は宇宙人がどうこうってテレビで騒いでたかと思えば、その次は異世界と来たもんだ」

 

 「アザゼルの話では我々や貴女の世界で頻発していた神隠しも、その宇宙人の仕業だとか」

 暁のぼやきにミカエルが苦笑を湛えつつ答える。

 

 「こっちとしちゃいい迷惑だ。アタシはあっちでやらなきゃならねぇ事がある」

 

 「それは……心中御察しします。ですが貴女が我々の保護を受け入れてくれたお蔭で荒魂なる怪異を退ける、より専一的な手段を講じる事が出来ました、その事には感謝の礼を尽くさねば」

 

 絶世の美青年からこう言われては粗暴な振る舞いを()()()()()()暁も暗に断れない。

 結果、こうして居心地の悪い感覚のまま会話に興じていると言う訳になるのだ。

 そんな天使と刀使の不釣り合いなお茶会に、第3者の闖入が入る。

 

「失礼しますミカエル様!」

 

 大天使の遥か後方、羽根に隠れて全体は見えないが、恐らくは神父であろう者が扉を手早く、しかし静かに開いて、足音も立てずに入室してくる。

 

 (ここ、こんなヤツばっかだな……)

 

 どちらかと言えばコーヒが飲みたいと思いながら出された高級そうな紅茶を啜り、目の前で大天使に耳打ちしている神父を観察してみる暁。

 合間にして1分にも充たない程度のやり取りを終え、些か顔付きに真剣味を増したミカエルが暁へと口を開く。

 

 「どうやら、向こうの世界で動きがあった様です。まだ未確定ではありますが、此方で消えた…と言うよりは入れ替わった土地、人が戻りつつあるとの事です」

 

 「へぇ、それは今も現在進行形で…って事かい?」

 

 「恐らくは」

 

 「ハッ!なら好都合じゃないか。折角アンタらがアタシにお膳立てして同じ様に巻き込まれたって刀使の連中と合流させようとしてくれてたのは有り難いけど、生憎、元から一匹狼でやってた所もあるんでね。世界が元に戻るってんならイチイチ他のヤツに併せるでもなく一番近い所からアタシの世界に戻りゃ良い。そうすりゃアタシのアシを面倒な審査通さなくても済むだろ?」

 暁がミカエルの言葉を聞いて、吹かした様に笑う。

 教会の人間達はどうだか知らないが、少なくとも目の前の大天使様は暁の事を憂い、同じ様に巻き込まれ此方の世界に来た刀使達と引き会わせようと奔走してくれていたのだろう。

 けれども、稲河暁は()()()()()()()美濃関では少々浮いている。

 当人は別段気にしてはいないし、()()()()()()()()独りで行動出来るのは有難いと感じている。

 それに、一匹狼などと気取ったが、実際には目的を同じくする同志が居る。後はまぁ、暁と一緒に転移して来たバイクが問題だったが、それも今の話で半ば解決したようなモノだ。

 

 「曲がりなりにも神様敬ってる所がアタシみたいな小娘一人の為にパスポート偽造だの、精神操作?認識がどうこうってのやる必要性が無くなったんだ。どっちにとっても好都合じゃねぇか」

 

 「ですが…」

 

 「皆まで言わなくて良い。アンタらには感謝してる、けど、ハナからケツまでおんぶに抱っこってのは柄じゃねぇのさ。だからアンタは見送るだけで良い。元に戻るらしいって事はアタシが最初に現れた場所もそうなるって事だろ」

 疑問ではなく確信を持って問いを投げる。

 答えは聞かずとも視線が雄弁に語ってくれる。

 であるならば、稲河暁の為すべきは決まっている。

 

 「……分かりました。では貴女の帰還は私自ら見届けましょう。それがせめてもの誠意です」

 

 「ったく、真面目が過ぎるね。まぁ良いさ、ここであれこれ口論する様な事でも無し、さっさと行こうぜ

、早くしないと帰れなくなっちまうからな」

 

 こうして稲河暁はミカエルと共に己が現れた地点へと向かった。

 

 

 

暁とミカエル 完
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━同冥次元・冥界

 

 この世界に於ける冥界の区分は大雑把に分別して3種。

 悪魔達が領地として管理、居住している広大な大地。

 

 堕天使達の組織"神の子を見張る者(グリゴリ)"が本拠地を置く一部の土地。

 

 そして悪魔と堕天使が住まう地上の下にギリシャ神話のハーデス神が統轄する冥府【タルタロス】が存在する。

 

 規模としては地球と同様の大きさであり空は紫色、環境的には人間がなんの加護や防御の術等を持たぬ限り生活する事は不可能である。普通ならば。

 

 さてここで話は変わるが、神隠し事件が発生してから巻き込まれた人間の中には刀使も含まれる。

 その内巻き込まれた、伊南栖羽は冥界の使い魔の森と混ざった裏京都で臆病故に遮二無二逃げ回り、新多弘名は北欧でマイペースに過ごし、稲河暁が教会で居心地の悪さを感じている。

 これで3人。しかし巻き込まれた刀使は5人。後2人は何処に居るのかと言えば、もうお分かりだろう。

 

 「さぁ!早くそのダグオンと言うロボットの話を私に聞かせてくれないかしら!!」

 

 「え…えぇっと……」

 「これは…ちょっと予想外だったなぁ……」

 

 明度の暗い金の長髪に知性を感じさせる眼鏡を掛けた美女に詰め寄られ困惑する2人の少女。

 1人は濃紺緑の制服を着た、白みが強い灰髪のボブカットの少女。

 もう1人は白い制服に明るめの茶髪をサイドテールに括った少女。

 

 ボブカットの方は平城学館中等部3年、岩倉早苗。

 

 サイドテールの方は綾小路武芸学舎中等部3年、鈴本葉菜。

 

 共に冥界にて発見され、早苗は悪魔に、葉菜は堕天使に保護され様々な経緯を経てこの状況へと至る。

 その中で最も幸運だったのは早苗を保護した悪魔が人間に対して友好的かつ真摯であった事だろう。

 詳しくは割愛するが、悪魔の社会は表向き円滑に回っているが、裏ではきな臭いモノが多く、人間とは言え異世界人ともなれば早苗はタダでは済まなかったであろう。

 ともあれ詳細は省くが、現在早苗と葉菜の2人は神の子を見張る者と魔王の後見と庇護の元、不自由無く過ごしている。

 冥界の政治など彼女達には関係無い事である。

 

 話は戻って、現在そんな2人に叡智の輝きを煌めかせながら詰め寄っている美女──大公悪魔アガレスの一族次期当主となる事を定められた貴族の若手上級悪魔、その名を"シーグヴァイラ・アガレス"冥界の悪魔社会で【若手四王】と呼ばれた才女である。

 これまた詳しい事情は割愛するが彼女が早苗を発見した人物であり、そして女性としては珍しい類いの趣味の持ち主である。

 そもそもの話としてシーグヴァイラが早苗を発見、魔王──主にサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの2人──にてあるが報告、引渡しをした後、早苗と再会した際に葉菜が溢した「ロボットがあるくらいだから、ダグオンも世界を行き来出来ないモノかな」と言う言葉が切っ掛けとなったのだ。

 

 「まず具体的にどういうロボットなのかしら?!変形はするの?合体は?秘密基地なんかもあるのかしら?もしくは空飛ぶ戦艦!」

 

 「ぐいっぐい来るなぁ……」

 

 「ええと……ちょ、ちょっと待って下さいね?確か画像が端末に──」

 

 葉菜が初見のイメージから一変したシーグヴァイラに慄き、早苗が何とか窘めようと管理局から支給されているスペクトラムファインダーを操作し、初期に刀剣類管理局で出回ったダグオンの判別画像のファイルの中からダグファイヤー等の物を表示していく。

 

 「成る程…こういうタイプなのね、口まである顔付きの…機動騎士ダンガルとは真逆の所謂スーパーロボットタイプ…でもサイズが思った程大きく無いのね…名前は何と言うのかしら?」

 

 「え、と、この赤いのはダグファイヤーと言いまして、一番最初に現れたダグオンの巨大戦力ですね。それまでは私達の間でも謎の装甲服集団として認知されていましたから」

 画面に囓り付きながらブツブツと呟くシーグヴァイラに気圧されながら早苗が生真面目に解説する。

 

 (機動騎士ダンガル…って、田中先輩が集めてるガンダムみたいなものかな?)

 解説している間も目の前の才女が呟いた言葉に、つい最近平城に高等部3年と言う次期で編入してきた警邏科と神職科を兼任している異例の男を思い出す。

 

 (田中先輩も色々な意味で凄かったなぁ…)

 

 何せ平城に編入して早々、刀使科の生徒達にこれから世話になるだろうからと教室行脚で挨拶に来たのだから制服の改造と相まってインパクトは抜群である。

 これから先、あんな濃い人物と会うことは長い人生の中でも早々無いだろう。

 等と思っているとシーグヴァイラが何時の間にか早苗を見つめている。

 

 「どうかしました?」

 

 「いいえ、続きまだかなと」

 

 どうやら早苗が撃鉄の事を思考している内に解説が止まったので、待っていたらしい。

 

 「あ、はい。えーと、現在確認されてるダグオンの巨大戦力は──」

 

 自分より歳上の美女が子供みたいに瞳を輝かせながら食い入る様に説明を聴いている事実に微笑ましいやら苦々しいやらどんな表情をしているのか自分でも判らない早苗。葉菜に視線をチラリと寄越すと彼女は肩を竦めて欧米のファミリードラマみたいなリアクションをしている。

 その間にもダグターボ、ダグウイング、ダグアーマー、ダグシャドーと説明を続ける。

 

 「動画は!動画は無いのですか!!?」

 

 仕舞いには動画求めるシーグヴァイラ。最早趣味を自重しない。

 

 「動画までは…流石に」

 早苗が申し訳無さそうに目を背ける。

 

 (どうしよう…ぼくのスペクトラムファインダーに動画あるや……)

 

 葉菜は不味い事になったと思わずポケットに手を入れて端末を掴む。しかしそれが仇となった。

 早苗が目を背けた際に、シーグヴァイラは残念な表情をしたものの、即座に葉菜の方へ顔を向け、目敏く彼女の行動を認識し早苗から離れ音もなくスススッと近付く。

 

 「うわぁっ?!」

 

 「貴女…持っているわね?」 

 

 眼鏡が光を照り返して表情が読めない。それが葉菜の心を恐怖に染める。

 反論は出来ない。それだけの迫力が彼女にはある。

 

 「ああ……うぅ……」

 

 呂律が回らない。何かもうジャンルが違う、何かは分からないが違う。言葉に出すよりも行動で示さねば、()()()()

 無論気概の問題であって、実際に命を獲られる訳では無いのだが。

 

 平民が貴族に献上品を明け渡すが如く、両手でスペクトラムファインダーを差し出す葉菜。

 画面も後は再生を押すだけである。

 

 「ありがとう。それとそんなに畏まらないでも良いわ」

 

 差し出された端末を受け取り、ご機嫌になるシーグヴァイラ、対して葉菜は暫し頭を下げた体勢で固まっていたが才女のルンルン気分の鼻唄が聞こえた段階で頭を上げ、そっと息を吐く。

 

 「ふーん、成る程…最初はジャパニーズスーパーフォースみたいな集団なのね……?!専用デザインじゃなくて既存式のマシンなの?!──?!?!融合合体?!搭乗式ではなくフュージョンスタイル!?動物型のメカに武器型も!!?」

 

 キャーキャーはしゃいでいる。

 

 「寿命が縮まるかと思ったよ」

 「あぁ…あはは…それはなと言うか…御愁傷様です」

 シーグヴァイラから離れる様な席に位置取る葉菜と早苗、葉菜の言葉に同情の意を送る。

 その間に件の才女はファイヤーダグオンが初確認された映像に差し掛かったらしく興奮の絶叫を挙げる。

 

 「キャァァア!!?合体!合体したわ!!?これよ!これぞジャパニーズスーパーロボットよ!…嗚呼!行きたい!見たい!触りたい!やはりロボットは素晴らしい!特に日本のロボットは至高!未来に生きてると言っても過言ではない!

 

 とても盛り上がっているが、そもそもこの世界の日本にはロボットはいない。なので彼女の望みはまず叶わないだろう。

 

 ((スゴいはしゃぎようだ……)) 

 

 特にロボットに興味の無い、年頃の女子の極めて真っ当な反応でシーグヴァイラのはしゃぎっぷりを眺める2人、この後再び解説させられる。

 

 これより以降の事は語るまい。何故ならば早苗、葉菜共に帰還は確約されているのだから。

 しかし敢えて語るとする事があるのならば、彼女達は元の世界に戻った時、どこかとても疲れた顔をしていたと言うことを記載しておく。

 

 

早苗&葉菜、疲れる 完

 

 





 オチの話はまぁ大分省いた感ありますが、幕間ですし、そこまで長々やる話でも無いので。

 刀使側は普通に早苗ちゃんガンダム言ってますがダグオンがクロスしてるのでサンライズ的に伏せ字は良いかなぁと。

 次回はどのくらい掛かるかなぁ。8月は更に意欲が上がらなくなるからなぁ。早く秋になってくれぇ、でも休みは欲しいから程々にぃ。
 取り敢えず、アイディアが纏まるまではカリギュラってようかと……。

 では次回お会い出来たら良いですね。


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第九十話 戦士再集結!とっておきのセカンドアタック。

 こんばんは、頑張りました。暑いです。

 今回の話を含めコラボも後少しで終わります。そして暑さに茹だっている間もとじともサービス終了までにメインストーリーを進めようと頑張ってました、オフライン版が出る前にメインはクリアしときたいので。

 スパロボ30、ゲオにPS4予約の奴置いて無いんですけど?!



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 よし!出来た!遂に出来た!試作品だけど()()()()()()()()()なんら問題無い出来だよ!ありがとうギアちゃん!

 

 こちらこそとても有意義な時間を過ごせてとても感激でした!

 

 いやいやいや~!それ程でも………あるよ!ついでにプロトタイプドリルライナーも出来たし後は宇宙人とのケリを着けるだけだね!

 

 “アハハハハハハハハハハハハハハ”×2

 

 やべー…あの2人めっちゃ徹夜明けのテンションぢゃん(´・ω・`; )

 


 

 

 

 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局本部

 

 管理局本部、発令室の正面モニターの推移を眺めながら胸元で組んだ腕を指でトントンと叩きながら立つ女性。

 長船女学院学長兼、現刀剣類管理局本部本部長(代理)真庭紗南が苦々しく苛立たし気に、そして頭を悩ませていた。

 

 (例の街──駒王町の不可視の壁はゆっくりだが確実に範囲を拡大している。そして謎の穴に消えたダグオン、異世界人、刀使選抜部隊の人員……)

 視線を動かしモニターの映る他の情報に目を配らせる紗南、その中には世界各国で目撃されていると報じられた異星人とダグオンの戦闘や彼等が使用するビークルの姿。

 

 (薫ぅ…アイツ無事なら無事と連絡の一つくらい寄越したらどうなんだ!あのクソガキめ…)

 苛立ちの原因である刀使からの音信不通に胸中で文句を垂れながらも、雪那とは違い周りに当たる事はしない。

 

 そんな緊迫した状況の発令室内で本部長が座す中央のデスクに備えられた電話が甲高い電子音を響かせる。

 

 「っ…こんな時に一体何処のどいつだ?!」

 ふんぬと言わんばかりに力強く受話器を取る紗南、苛立ちのままにもしもしと誰何を問う。

 

 『おう学ちょ…糞ババア、元気だったか?』

 果たして電話の向こう側の声は、先程まで紗南がその消息を憂慮していた相手──益子薫その人であった。

 

 「薫…お前、何で態々そっちに言い直した?うん?てか連絡すんのが遅いんじゃボケェェェェ!!」

 

 『いきなり叫ぶな?!便りが無いのは元気な証って言うだろ!そもそも国際電話は高いんだよ!』

 

 「限度があるんじゃアホンダラァァア!みみっちい事を抜かすな!」

 

 『薫~?あんまり紗南先生をからかってはダメデスよ?』

 

 薫の散々な態度に切れ散らしながらも受話器に耳を傾けていると彼女と同様、長船の刀使である古波蔵エレンの声が少し遠くより聴こえた。

 

 「エレンも一緒か。他の連中はどうした?」

 

 『さぁな、こっち今ウイングライナーの中でな、エレンの他にはグレモリーっつう赤髪ボインのねえちゃんと女装野郎と正統派シスター(悪魔)アーシアだけだ。他は他で別々に跳ばされたからな』

 

 「む、分断されたのはダグオンのみかと思ったが…お前達もそれぞれ別にされていたのか」

 言いながら各国の主だったニュース番組に目を走らせる紗南。ダグオンと彫刻の怪物の戦闘が映し出されるが刀使の少女達や異世界の者達の映像は無い。

 意図的にカットしているのか、取り沙汰される情報は"良く"も"悪く"もダグオンと異星人の戦闘のみ、チラリと映った荒魂はアメリカや一部以外からは実はエイリアンの尖兵なのではと邪推されている。

 

 「一応訊いておくがノロはどうした?」

 

 『戦闘の後、ウイングヨクがウイングライナーのブースターっぽいユニットから出した装置で回収した。多分帰ったら俺達に渡してくれるだろ、だから回収班用意しとけよ』

 

 「何でもアリだな、頭が下がる思いだ」

 

 『じゃ、そう言うワケだから電話は此処までだ。俺は一等客車並の座り心地を噛み締めながら空の旅を堪能するぜ』

 

 「おうおう、精々今の内に堪能しておけ。帰ったらまた、たーーーっぷりと仕事を回してやる」

 

 『は?待て糞ババア!?今聞き捨てならない事を──』

 薫が最後まで言い切る前に通話を切った紗南。

 一旦眉間を揉み解し、発令室を後にする。

 

 (ガキ共の無事は分かった、取り敢えずは朱音ちゃんに報告だな)

 何だかんだと彼女の苦労も絶えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━大西洋上空・ファイヤージャンボ機内

 

 「おぉ…おおおっ!!」

 窓にへばり着きながら興奮した声を挙げるのは美炎。

 そんな少女の様子に周りの面子は微笑ましいモノを見るように苦笑する。

 

 「興奮し過ぎじゃないのか?」

 十条姫和が美炎のテンションの上がりようにジト目で溢す。

 

 「しょうがないよ、みんなと合流する前は色々立て込んでたし、それに普段私達って外国いかないから…エレンちゃんは別かもだけど。後…ほら、美炎ちゃんはファイヤーエンさん好きみたいだから、この飛行機自体にも感動してるんだと思うよ?」

 姫和の隣に座る衛藤可奈美が自分達のこれまでを簡素に説明しながら姫和に応える。

 

 「私も飛行機、乗るの…初めて。早く舞衣に会いたい、それにファイヤーエンの事…舞衣も気にしてる」

 同じく姫和の隣に座る糸見沙耶香が言葉を発する。

 

 「舞衣ちゃんかぁ、元気にしてるかなぁ」

 

 「むしろ我々を心配してるだろうな」

 

 「舞衣のクッキー…食べたい」

 

 

 

 

 「刀使ちゃん達は色々と込み入ってる感じね」

 少し前の座席から刀使の少女達を眺めながらジャンヌ・ダルクがポツリと溢す。

 

 「いきなり跳ばされちゃったからね~、美炎ちゃんはちょっと違うみたいだけど」

 

 「でも良かったです。ネプテューヌ先輩達と合流出来て」

 ジャンヌの言葉に反応したネプテューヌが美炎の奇行に目を向けながらサラッとフランスで購入した本場の菓子を口にしている。

 同じく相伴に預かっていた塔城小猫が合流当初の事を思い返す。

 

 「シャドーリュウさんが、いきなり北上すると言った時は驚きました」

 

 「途中チリに寄ったしね。しかも例の彫刻倒しに」

 

 「その後、アメリカとの国境近くまで近付いた時に先輩達が()()に乗って来てくれましたけど」

 

 「リュウってば、あんまり多くを語らないからちょっと解りづらいのよね」

 

 小猫の言葉にちょくちょくジャンヌが補足を入れながら自分達が歩んで来た道程をネプテューヌに話していく。

 

 「そっか~、こっちはこっちで大変だったよー。フランスからイタリアに架けてカーチェイスするハメになって、しかもビルとか平気で走るんだもん。カート系ゲームでもあそこまでのコース取りはしないよ。可奈美ちゃんだけは平気だったみたいだけど、私と中にいたいーすん、一誠はすごく酔っちゃって本当に大変だったよ……ヴァーリもちょっと顔色悪かったし……あれだね、普段自分でしてる高速移動なんかを、座ってシートベルトした状態で体験させられると酔うね!」

 

 言いながら思い出して顔色が青くなるネプテューヌ。

 2人はお疲れ様ですと労う。

 

 「?カナミだけって事はミホノは?」

 

 「……みほっちの為にも黙秘するよ」

 その一言で2人は察した。

 

 

 

 

 

 「そっちはそっちで大変だったみたいじゃないか?」

 女子会から離れ男共との会話に加わるゼノヴィア・クァルタが、女子会からの会話を後ろ手に一誠へ軽く笑いかける。

 

 「あぁ、あれはヤバい…本当にヤバい…マ○オってすごかったんだな」

 

 「引き合いに出すのが某カートゲームなのか……」

 

 「しかしまさかお前までグロッキーとは驚いたぜヴァーリ」

 

 巨体故、中央3人席の肘掛を上げた状態の座席に座るヘラクレスが窓側の席で黄昏気味のヴァーリ・ルシファーに絡む。

 

 「フッ…別に伸びてはいない。まぁあまり良い気分では無かったがね」

 

 「俺はしってんだぞ…お前あの時アルビオンに酔いを半減してもらったよな」

 格好付けてキメ顔のヴァーリにジト目で兵藤一誠が茶々を入れる。

 

 「使える物を使うのは出来る男の特権と言う奴だ。文句があるなら君も三半規管なりを強化すれば良かっただろう」

 

 『まさかヴァーリが我の力をこんな事に使う日が来ようとは……』

 

 『一応言っとくが相棒……赤龍帝の籠手をそんな下らない事に使ってくれるなよ?』

 

 各々の宿主の中に居座る白と赤の龍がため息混じり、呆れ混じりに声を発した。

 

 美炎が眺める窓の外、シャドージェットと共に並びながらファイヤージャンボは日本を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・不可視の壁前

 

 「どう言う…事かね?それは」

 

 球体関節の首を鳴らしながらアーテシャン星人は首を傾げて念話相手に状況を問う。

 

 ≪どうもこうも無い。今言った事全てが事実だ、其方(そなた)の配した彫刻は全て破壊され、ソレに紐付けられていた此方(こなた)の力も解かれた、故に入れ換えられたモノは戻りつつある。まぁ、その地に住まう住人までは知らぬが……我等が計略は最早意味を成さなくなった、故に協力関係は解消だ。此方(こなた)は精々宇宙(そら)より其方(そなた)の痴態愚行、醜聞を見物させて貰う≫

 

 念話の相手、修道女姿の異星人ベテルが嘲笑を残して会話を切った。

 

 「ぬうぅぅぅ……私の…わたしの…ワタシの……私の芸術を否定したなぁァァァァあ?!!!人間共っ!人間共っ!!人間共ガァァぁぁぁぁァア!!我が芸術を解さぬ迄には飽きたらずぅぅ!こうまで徹底的に否定するぅぅかぁぁあ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれぇぇえええ!!この私がぁぁぁっ!寂れた地を盛り上げる為に造ってやったモナド達までも破壊するとはぁぁああ!」

 

 常の様なふざけた笑いは成りを潜め、ただ只管に吼える芸術家。

 分体である躯を軋ませる程に怒りに震える。

 一頻り癇癪を発散したアーテシャン星人はそこで本体が、この街に近付く最も忌々しい存在に眼を見開く。

 

 「戻って来たか…!おのれ……最早再びベテルに頼る事は叶わぬ……いや、待て、ちょうど良い。我が芸術を徹底的に否定した奴等にはこの地で死んで貰おうじゃないか」

 言葉にしたと同時に人形の腕が振るわれる。

 指揮の様な振りに従うように、次々とザゴス円盤が集まり、新たなクロッキー人形が降り注ぎ、アスファルトの地を割りシード星人達が芽生え、荒魂が引寄せられる。

 迎撃の為の陣容を整えた星人が暗く嗤う。

 

 「私が使える兵力はこれが最後。荒魂も居ないよりはマシと言う始末…ふ、ふふんふふふ!上等ではないか!!逆境こそ新たな芸術の扉を開く好機!そして私は邪魔者共を排除し、悠々とこのキャンバスを彩ろうではないかっ!!」

 星人の意識、視線の先には駒王町に飛来する5つの航跡雲。

 

 それはこの星の守護者達を乗せた勇者の翼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・上空

 

 「おうおう、ゾロゾロ集まって来てんな」

 

 『……先陣を切る…』

 

 エンの発言に応じる様にリュウがシャドージェットからシャドーバルカンを放ち、進路を開く。

 更にキャノピーが開かれ、其所から3枚のカードが飛び出て機獣が顕現する。

 

 陸地に降り立ったガードウルフ、ガードタイガーが進路上の雑兵を蹴散らす。

 

 「陸路のスペースが空いたな。皆、準備は良いか?お前達を降ろした後、我々は直ちに融合合体し、首魁の元へと進む」

 

 「承知した」

 「お任せ下さい」

 「地上の雑魚は任せてくれ」

 異世界側の3人は事も無し気に返事をする。

 

 「さ、流石にこの高さから降りるのは色々と肝が冷えますねねねねね」

 

 「声が震えてるわよ由依ちゃん?!でも確かに…八幡力ありきで考えても此処から飛び降りるのはちょっと躊躇してしまうわね」

 逆に山城由依、瀬戸内智恵の両名は高高度からの自由落下に不安感を募らせる。

 刀使としての身体機能強化たる八幡力があるとは言え、高層ビル20階分の高さは恐怖が勝る。

 そんな風に考えてながら扉の前で鑪を踏んでいると、反対側に居る木場祐斗が柔和に笑い掛けてくる。

 

 「大丈夫、万が一の時は僕達がフォローしますよ」

 

 「なっ、何とっ?!それならあたしは朱乃お姉さまに手助けして欲しいですっ!」

 

 「あらあら」

 

 ここぞとばかりに由依が欲望を口に出し、指名された姫島朱乃は困った様な笑みを浮かべる。

 

 「由依ちゃんったら……。ええ、はい。お姉ちゃんも覚悟を決めました!行きましょう!!」

 荒ぶる濡場の烏色ポニーテールに呆れながら意思を決めた智恵、決断するや否やささと飛び降りる。

 同じ様にアーマーライナー、ウイングライナー、ファイヤージャンボから人影が次々と地上に向かって落ちて行く。

 

 

 

 

 

 「どうやら他の皆も一斉に飛び降りている様ですね」

 落下の風圧に髪を靡かせながら木寅ミルヤが周りを見ながら溢す。

 

 「アタシは荒魂ちゃんと遊ぶぜ?他のアリ野郎とかはアンタらに任せた」

 

 「えっ?あたしは自分から戦わないけど。そう言うのはヴァーリとかに任せてるにゃん」

 

 レオナルドを抱えながら呼吹に何言ってんのコイツとばかりに返す黒歌、呼吹はそれにマジかと眼を見開いて呆けるも、ま、良いかと思い直し落下の姿勢を変える。同時にレオナルドが飛行出来る魔獣を創り出したのでそれを足掛かりに降りて行く。

 

 「愛してるぜっ!荒魂ちゃぁぁぁんん!」

 

 

 

 

 

 

 

 「今の叫び……ふっきーだね」

 

 「多分いつものヤツだと思います。ふっきー荒魂大好きだし」

 

 「有象無象の雑魚を蹴散らした後は星人の相手か、星人がどんな隠し球を持っているか分からん以上、力をなるべく温存しておきたい所だ」

 

 『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は本丸まで温存すると言う事だな』

 

 「俺らも温存すべきだよな」

 

 『とは言え強化はしておくべきだろう』

 

 ファイヤージャンボから落ちるネプテューヌが呼吹の歓喜の叫びに耳敏く反応し、美炎がスカートを押さえつつ同意する。

 その横でヴァーリが地上の雑兵であるザゴスソルジャーに些か飽きと鬱陶しさを感じながら、以前の戦闘の二の舞はすまいと決断し、アルビオンが翼の宝珠を光らせて意図を汲み取る。

 当然、一誠とその相棒ドライグが会話を交え、同時にドライグの声でシステム的に『Boost』と数度鳴り響く。

 

 「地上の敵が多いな…!ある程度一掃されてもまだ出てくる」

 

 「ガードタイガーさん達頑張ってます…けど、まだ異星人が多いです…にゃあ」

 

 「…ん、ダグオンのみんな、空の方の敵に集中してる。援護難しい?」

 

 「どうだろう?でもそう言えば……ドリルゲキさんが居ないね?」

 

 「その内来るわよ」

 

 わりかし平然とした態度で落下しながら会話を交わす姫和、小猫、沙耶香、可奈美、ジャンヌ。

 その会話を聴いていた訳でも無いが、彼、彼女等の落下地点一部のザゴス星人やシード星人が突如として吹き飛ぶ。

 何事かと目を剥けば、舗装されたアスファルトに穴を開けて飛び出す円錐を被った黒いシルエット──ドリルゲキが推参した。

 

 ドリルゲキ!!参上じゃぁぁぁぁぁあいいいいっ!!!

 

 ドリルクラッシュを解除して軽い見栄切りを取ると同時に叫ぶ黒鉄の戦士。

 そして彼の後方、追うように現れたのは柳瀬舞衣、六角清香、紫藤イリナ、ロスヴァイセ、アーサー・ペンドラゴンといった面々。

 

 「全員集合だね!よーし、いっくよぉぉぉ!へ~んしん!アクセス!!」

 

 「「「「禁手(バランス・ブレイク)!」」」」

 ネプテューヌが改造人間よろしくポーズを決めて女神パープルハートへと転じる。

 そのままプロセッサーユニットによる飛行で可奈美と姫和を腰を掴む様に支えて着地する。

 同じ様に美炎を小猫と一緒に一誠が持ち、ヴァーリは沙耶香を掴むと地上に距離が近付いた時点で敵に投げ込む。

 投げられた沙耶香はシャドーガード達が取り零している星人を斬り刻む。

 ジャンヌは自らの神器の禁手による断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)により着地、と同時にウルフ、タイガーの加勢に加わる。

 

 そして、智恵を伴って着地した祐斗が聖魔剣を大地に突き刺し剣の茨を召還する。

 

 「此処は僕が何とかしますよ」

 

 神器の力により造り出された剣達がザゴス星人とシード星人を蹂躙して行く。

 それを上空からザゴス円盤を迎撃しながら観察していたターボカイが外部スピーカーをONにし、アーテシャン星人へ断罪の申告も込めて宣言する。

 

 『良い加減、決着(ケリ)を付ける必要もある、此処は木場の好意に甘えよう。我々も行くぞ!』

 

 『『『『おう!』』』』

 

 カイの号令に残りの4人が応え、そして5つの声が融合合体と叫ぶ。

 

 ファイヤージャンボから飛び出したファイヤーストラトスがダグファイヤーに変形し無人のファイヤージャンボの背に立つ。

 

 ターボライナーがダグターボに変形し背部のターボユニットをボードに変え空を疾しる。

 

 アーマーライナーがダグアーマーへと転じ、ガードホークの脚を掴んで空を行く。

 

 ウイングライナーがダグウイングへと変わり、そのまま空を飛翔する。

 

 シャドージェットからダグシャドーへと変転すると腕を腕を組んだまま飛行し、敵の攻撃を躱しながら進む。

 

 鋼の巨人達が先んじるのを見届け、次は刀使の少女達と残りの仲間達に先に行く様に木場祐斗は視線を配す。

 

 「大丈夫?まだ円盤も飛んでいるけど……」

 とパープルハートが心配を向けるがそこに横合いからヘラクレスが声を挙げる。

 

 「空に浮かぶデカブツ共は俺様の方で引き受けてやるよ」

 と、超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)からアーマシンどころかダグアーマーに匹敵するやもと思われる火力を出してアピールする。

 

 「おい!荒魂ちゃんはアタシんだかんな!」

 

 「七之里呼吹!」 「呼吹ちゃん!」

 小太刀を振り回しつつこの場の荒魂は渡さないと噛み付く呼吹を叱るのはミルヤと智恵。

 一瞬、アイコンタクトで何事かを交わすとミルヤが調査隊と嘗ての舞草特別チームに指示案を飛ばす。

 

 「我々も戦力を別ける。七之里呼吹と瀬戸内智恵はこの場に残り、荒魂の殲滅を!我々後の者はその都度によるが恐らく次に待ち受けているであろう敵に対応する!良いな!?」

 

 「「「「了解!」」」」 「おう!」

 

 「はー、しっかり隊長してやがんなー。ま、俺もそれで良い。出来れば俺はダグオンの近くが良いが」

 

 「薫は本当にダグオン好きデスネー」

 

 「まぁこれだけの戦力ならばそうするのも吝かでは無いか…」

 

 「けど、木場さんも、ヘラクレスさんも異星人の相手はお二人だけで大丈夫ですか?」

 

 薫の願望にエレンが苦笑しつつ帯同する。

 姫和もこの場に集まった面子から異議は無しとさっさと進む。

 舞衣だけが異星人側の相手を引き受けた2人の負担に心を痛めるが2人は問題無いと応える。更に沙耶香が尚も不安気な舞衣の裾を引っ張る。

 

 「沙耶香ちゃん?」

 

 「心配無い、ガードウルフが残るって言ってる」

 

 「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」

 

 沙耶香のこの発言に幾人かが驚く。

 

 「えっ?ちょ、沙耶香ちゃん?あの子達の言葉が解るの?」

 「と言うか、彼等は喋れないだろう」

 「サーヤ?!マジですか!!?」

 「糸見さん?!いつの間にそんな特技を!!?」

 イリナ、曹操、エレン、清香が次々と沙耶香に言葉を掛けるが沙耶香の両端に立っていた黒歌と小猫も挙手して口を開く。

 

 「オオカミの方は微妙だけど、トラはあたしも解る」

 

 「姉さまと同じです。タイガーさんの意思は何となくフィーリングで理解できます。ウルフさんとホークさんは解りかねますが……」

 猫魈2人が沙耶香を擁護するようにさらりと言ってのけるのでジャンヌはまさかレオナルドを見る。

 

 「……分からない」

 が、流石に彼の幼き少年は魔獣では無い、機獣の言葉や意思は分からない様だ。

 

 そんなやり取りの塊よりやや離れた所で可奈美は顔を隠したマントローブの少女──燕結芽に近付く。

 

 「ねぇ、あなたはどうするのかな?」

 

 「…(千鳥のおねーさん…)…別に。先に行くから勝手に付いてくれば」

 なるべくバレないようフードを深く被りながら素っ気なく対応する結芽、相手はあの衛藤可奈美だ。この少女の直感…と言うか、剣士としての観察眼と勘は洒落にならないモノがある。

 結芽はそれを理屈ではなく本能で理解している。何れ正体を明かすだろうが、それは今日じゃない。

 だから齢12の彼女は彼女なりの拙い演技力を総動員して誤魔化す。

 それをやや上から眺めていたライアンがライアンバルカンで敵円盤を破壊しつつ、結芽が移動を示したので左手のみ元に戻し抱えて翔ぶ。

 

 『御刀千鳥の巫女か…(或いは彼の娘が我が担い手となっていたやもしれないな)…出来る者の様だな』

 

 「待って下さいぃぃぃぃ!!?」

 感慨を懐くライアンの足先に必死にしがみついたギャスパー・ヴラディの必死の鳴き声を残して。

 

 

 「じゃあオッサン、空のUFOは任せた。んで、金髪優男はアタシの荒魂ちゃんは盗るなよ?絶対盗るなよ?」

 

 「もう、失礼でしょ呼吹ちゃん!」

 

 「つかチチエも別にいらねぇんだけどな、みほっち達の方に行ってやれよっと!」

 群がる荒魂を一刀の元に伏しながら呼吹は智恵が残った事にもぶつくさと物申す。

 

 「こ・ふ・き・ち・ゃ・ん?」

 其処には笑顔の般若が居た(通算16回目)。

 

 「ははは…」 「おっかねぇなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「空の方、大分減ってきてるね」

 

 「だね~。地上はまだワラワラいるけど…恐かったら抱き着いて来ても良いよ清香ちゃん!」

 

 「え、やですけど」

 

 「もぅ!恥ずかしがり屋さんなんだから!…それはそれとして小猫さん!抱き締めて良いですか!」

 

 「前後の文脈が全く理解出来ません。あと…嫌な予感がするのでノーサンキューです。ほらギャーくん頑張って」

 

 「ムリだよぉ~!こんな数、敵だけ停めるなんて器用なマネ出来ないよ~!」

 

 「それでもやる。タイガーさんが頑張ってくれてるんだからやる」

 

 壁へと続く道中、祐斗、ヘラクレス・呼吹、智恵と同様に敵の展開した数に対応する為に再び別たれたのは刀使側が六角清香、山城由依。

 女神御一行側が塔城小猫、ギャスパー・ヴラディである。

 味方を巻き込んで一緒くたに停めないようと注文を受けて涙目になる。

 結果、彼女達が居らず、彼女等の手が回っていない敵を見つめて停め、稀に蝙蝠に化けて攪乱し逃げる。

 男としては微妙に情けないが、男の娘としては相応に活躍しているギャスパー。当人がどの様な心境かは宜なるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、残った者達が遂に本丸──壁の前に辿り着く。

 

 「以前よりも壁が進んでいますね……我々が数日間、国外で過ごしていた内に、広げるだけ広げたと言う事でしょうか」

 眼鏡をキラリと光らせてミルヤが不可視の壁を観察し所感を述べる。

 

 『さぁ~てと…どうすっかなぁ……』

 

 上空に余力が出たので地上に降りてきたダグファイヤーがファイヤーブラスター片手に思い悩む。

 

 『ゲキのドリルクラッシュで駄目だったんなら、オレのグラビトンキックも意味ネェよなァ』

 同様にガードホークに掴まる形で空に居ては武装が制限されるダグアーマーがダグファイヤーに同調して肩を竦める。

 

 「やっぱり壁を作ってる宇宙人を倒さないとダメなんじゃないかしら?」

 2体の間を浮游するパープルハートが当然の提案を挙げる。

 

 『本体か……つっても何処に居んのか見当つかねぇし…』

 

 『いえ、居場所なら分かります』

 

 ダグファイヤーの呟きにダグウイングが断言を込めて告げる。

 

 『マジか?!』

 「一体何処に?」

 『つか、分かってたならアン時に教えろヨ!』

 

 『分かったのは此処に来る道中で、でしたのでそう言われても……兎に角!異星人の本体ですが、壁をドーム状の物と見た時、唯一、ドーム中央付近上空にある雲、まず間違い無くその中に星人の本体が居ます。先の作戦以降、ダグベースからの観測データを解析してた結果間違い無いでしょう、何せあの入道雲は大気に流れるどころか、日に日に体積を増しているのですから』

 

 3人からの言葉にやや申し訳なさそうにしながらダグウイングが理由を述べる。

 

 『なので、ダグファイヤーは火炎合体して下さい』

 

 『おし、分かった!ファイヤージャンボ!

 

 「「「「火炎合体?」」」」

 

 「おお!生合体!戦ってる場合じゃねぇ!」

 

 「いや戦え!?」

 

 テレビよりはゲームと言うネプテューヌことパープルハートとそれに付き合う弟と言う図式の兵藤一誠、あまりテレビを目にしなかったアーシアやゼノヴィアが首を傾げる一方で、薫が大興奮して携帯端末を取り出しカメラ片手に祢々切丸を振るうのを止め未だか未だかと待ち構えていると姫和が極めて真っ当にツッコむ。

 

 

 

『火炎合体!』

 

 

 そんなやり取りを余所にダグファイヤーの声に応えファイヤージャンボがファイヤーラダー・レスキューを射出し変型を開始する。

 

 『はぁっ!とうっ!!』

 

 最後にダグファイヤーが跳躍、ファイヤーストラトスのままジャンボの変型した物体に収納されると新たな赤い鋼の巨人が誕生する。

 

 

ファイヤァァァアダグオォンンンッ!!

 

 赤い閃光を瞬かせ降り立つファイヤーダグオンの姿に薫は感無量で無言となりながらカメラを連写し、美炎は子供の様に目をキラキラ輝かせている。

 

 「うっそだろ?!えん……ダグファイヤーがまた合体してデカくなった!!」

 

 「旅客機にしては形が妙だなとは思っていたが……成る程、まだあんな形態を残していたのか、流石ジャパニーズロボだ!」

 

 「ふぁ、すごく大きいです~!!」

 

 「リアスちゃん達はあまり驚いて無いみたいだけど…もしかして知っていたの?!」

 

 「ええ、まぁ。穴に吸い込まれて世界に散らばった時に、薫さんに訊いたら嬉々として教えてくれたの。アーシアはねねに絡まれて聞きそびれていたけれど」

 

 「ミルヤとふっきーがそれなりに教えてくれたけどにゃ?」

 

 「ターボカイから戦力の情報として教えられていたよ」

 

 「まぁ何か変型するだろうなぁとかは思ってた」

 

 「私達日本に残ってたから連日連夜のニュースで普通に知ってた」

 

 パープルハートの問いに、リアス、黒歌、曹操、ジャンヌ、イリナはしれっと答える。

 

 「ヴァーリ!そうヴァーリは?!知らなかったわよね?!」

 

 「なんだネプテューヌ、気付いていなかったのか?機内座席のポケットにフライヤーが挟まっていたぞ?」

 それを仕込んだのはアルファである。

 

 「「気が付かなかった……」」

 兵藤姉弟が声を揃えて唖然となる。

 

 『その雲ぶっ飛ばしてやる!!ジェットファイヤーッストォォォォオッムッ!!』

 

 ファイヤーダグオンの翼に付随した4基のエンジン、そのタービンがけたましく回転し炎の乱流を生み出し積乱雲の隠蓑を蹂躙する。

 

 「何っ?!」

 壁を前に足踏みし、己が駆り出したザゴス星人を始めとした雑兵に手間取っているダグオンや刀使、異世界の戦士達の足掻き様を見て悦に浸り溜飲を下げていた分身のアーティシャン星人はその傲りを砕かれる。

 自らの本体をひた隠した隠蓑が炎嵐によって削られてゆく。

 

 「嗚呼…ァぁあぁぁあ!!?熱い!熱い!?いギィ!?」

 

 悲鳴を挙げて辛抱堪らんとばかりに隠蓑から緊急離脱を試みるアーティシャン星人の本体。そこに──

 

 『今ですゼノヴィアさん!』

 

 「ん?私で良いのか?よし!デュランダル!!」

 

 ダグウイングからの指示に一瞬戸惑ったものの、即座に受け入れ聖剣に力を込めて一切の加減を無しに振り下ろす。

 

 「ヲォ?!ヴォォォアア!!」

 炎に撒かれ深傷を負ったアーティシャン本体に、俗に神器に類される特殊兵装から繰り出される光の奔流に呑み込まれ断末魔を挙げる。

 

 そして不可視の壁の内に死に体の黒ずんだ塊が落ちる。しかし壁は未だ健在。

 

 「まさかまだ生きているのですか!?」

 壁の健在にミルヤが疑を言する。

 

 「……ッ゛ァ゛…ヒヒッ、生きテイル、ワタシはイキているぞ!!」

 黒ずんだ塊──絵画を収める額縁が何処からか声を溢して喜びの感情を露にする。

 「終わラナい!私ハまだ……!!」

 最早原型を留めている事が奇跡の額縁が変型を開始する。額縁が左右の他、前後にも現れ、さながら不完全な鳥籠か砂時計の支柱の様な姿となる。支柱の中央に光るのはノロ。

 「げげげゲゲ芸術はぁぁぁぁぁぁ!終わっテイナァぁぁいいイ!」

 星人を支点に現れたるは地獄の門、門の裏側から肉が競り上がり四肢を生み出す。

 膨張を終え、完全に肉体を構築したアーティシャン星人は余裕を取り戻し宣言する。

 

 「ふっはっはっは!勝った!貴様らは我がキャンバスの内に侵入出来まい!私は貴様らが歯噛みする様を眺めながら、作品を創り続けるとしよう」

 頭部であろう地獄門を揺らしながら醜悪な生命体は門を開き、其処から素材を取り出して当人の言う"作品"を作成に入る。

 

 「くっ…、姉ちゃんどうする!?」

 

 「まだよ!諦めなければきっと何とか──」

 

 

 

 「無駄だぁぁぁぁあ!お前達は此処で我が作品の肥となり死ねぇえ!そしてこの星は我が七七七番目の作品となるのだぁぁぁぁぁあ!」

 

 

 『こうなりゃダメ元で総攻撃するっきゃ…』

 『しかしそれで我々の余力が残ならければジリ貧どころでは無いぞ!』

 『ったって、他にネェだろ?』

 『ベターとすら言えませんが……致し方ありませんか…』

 『……万策尽きたか……』

 

 星人が嘶く中、壁の外側ではダグオン達がこの場の全員で総攻撃するべきかと顔を付き合わせる。そんな時、何処から途もなく聞き覚えのある声が木霊す。

 

 

  ちょーーーーーっと待ったぁぁぁぁぁぁあ!!

 

 その声に皆が空の方を向く。

 晴天の空の下、2つの瞬きが輝く。

 やがてその輝きは点となり、そして空を翔ぶ2機のビークルが駒王へと駆け付ける。

 

 

 「あれって…新しいダグオンのビークル…?機関車に…たい……ほう…?」

 いち速く明眼によってその偉容を眼にした舞依がその姿を認め、正体を口にする。

 即ちそれは彼女が述べた通りのモノ、黒鉄の偉容を持つC62系蒸気機関車。

 そしてもう1機、それは舞依が首を傾げるのも仕方の無い形状、白金に光る大砲、その後部にコクピットらしきキャノピーと主翼尾翼を備えた部位を持つ謎の乗機。

 正しく謎の機体である。

 そしてその翼が付いた大砲のキャノピーから薄紫の少女が飛び出す。

 

 「お姉ちゃーーーん!」

 

 「ネプギア!?それに乗って来たの!?」

 

 「うん!でも私だけじゃなくてね──」

 

 現れた少女、ネプギアことパープルシスターが機関車の方にチラリと視線を配る。

 時同じくして、雑兵を一掃し終えたメンバーが合流を果たし、その場の全員が敵も含め注目を注ぐ。

 

 「う、うーん……やっぱり馴れない事はするもんじゃないなぁ、眼が回るよ~」

 その声と共に乗員扉から出て来たその姿は薄桃色の髪を持つ少女の様な少年。

 管理者アルファがその姿を皆の前に現した。

 

 「…………おい、アルファよ…お主、もしやと思うがそのビークルはまさか…!?!」

 そして何より、黒鉄の偉容に一番反応を示したのはドリルゲキ。

 

 「ふっふーん!そうだよ、これこそ君の愛機となるダグビークル、その試作機!プロトタイプドリルライナーさ!!」

 

 「おお…おおぉぉぉぉお!!遂に!遂にワシにもビークルがぁぁぁああ!!」

 

 『それで…其方のライナービークルは理解出来るが、大砲の方は何だ?』

 

 「それはまた後で。今はこっち(ドリルライナー)が重要、これであの星人の壁を突破しちゃえ!ゲキくん!」

 

 「おうよ!」

 言われるや否や、嬉々として乗り込むドリルゲキ、其処まで見届けてやっとアーティシャンも正気に戻り失笑を附す。

 

 「ハッ!無駄だ無駄だ!我がキャンバスは何人も砕けぬ、その様な玩具で揺らぐものか!」

 

 「んふっふ~、それはどうかな?」

 

 星人の言葉にアルファはニヤリとほくそ笑む。と同時にドリルライナー(プロト)が起動し宙に上昇を始め、滞空する。

 

 

 

 ━━ドリルライナー・コクピット

 

 「ふむふむ…これがこうで…あれがこうなるのか、融合合体出来んのがちと残念じゃが、今はあの鬱陶しい壁を破壊するのが第一じゃ、行くぞドリルライナー!ドリルライナー・アタックモードッ!!」

 

 ゲキの操作と雄叫びに応じて、ドリルライナーの後部ユニットが分離し、ドリルライナーの前方へワープする。

 ワープしたユニットが機首へと接続され、ドリルライナーはその名の通りドリルを頭に持つ列車となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ドリルだ…」 「めっちゃドリル…」 「すんごいドリル」

 「ドリルですね」 「ふぇぇ…」 「完全にロマンの塊になったわね」

 「お手並み拝見ですわね」 「私としては大砲の方も気になるけれどね」

 一誠からパープルハート、イリナ、祐斗、ギャスパー、ジャンヌ、朱乃、リアスとドリルに反応を備に口にする。

 

 「汽車にドリル…ナンセンス極まるチョイスですが…彼等の常識に我々の常識を当て嵌める事こそナンセンスなのでしょうね」

 

 「つか、ホントにあれで壁が壊せんのかよ?」

 

 「壊せるよ!だってダグオンだもん!」

 「おうよ、ヒーローに不可能は無いってなっ!」

 「ねねー!」

 

 「薫大概ですケド、ミホミホも大分傾倒してますネ」

 

 ミルヤの常識クライシスに呼吹が今暫く胡乱な疑問を述べれば、美炎と薫・ねねが自信満々拳を握る。

 そしてエレンは相棒と友人のある種のダグオン狂いに些か呆れ果てる。

 

 

 

 

 

 

 『オォォッ!!ドリルゥゥウクラァァァアッシュッ!!』

 

 

 

 

 ドリルライナーが壁に接敵、甲高い音を響かせドリルが壁を削らんとし火花が散る。

 

 「はっはっは!無駄だだと言うのが分からんとは…」

 

 

 『オォォォオオッ!』

 

 アーティシャン星人の言葉を無視し、ゲキは吼えドリルライナーを操る。

 果たして遂に、結果は現れる。

 最初は小さな音だった。

 

 ──ピキリ、ピキリと僅かな亀裂が生まれ広がる、そしてそれが遂には大きな音をバキリと立てる。

 

 「はは…は?ば、バカなっ?!」

 

 『根性ぉぉぉぉお!!』

 

 その声が最後の1押しとなったか、パリンという音と共に不可視のドーム、その壁に大穴が空き、それが伝播し亀裂がドーム全体に広がり、アーティシャン星人のキャンバスが砕け消滅する。

 

 「あ、ああ…嗚呼、ぁぁぁぁぁぁあ!!私の…私のキャンバスがぁぁぁぁあぁぁあ!?!!」

 アーティシャン星人の絶叫が空に響き渡る。

 戦士達は遂に最大の障害を突破したのだ!

 

 「さぁみんな!ここからが反撃の時間さ!」

 

 アルファが皆を先導する様に仁王立つ。正義の反逆が始まる。

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 やりやがった?!マジでやりやがったアイツら!

 

 ドリルってすごいんだね

 

 そうだよ!ダグオンはスゴいんだよ清香!

 

 

 ドリル、そう言うのもあるのか…。

 

 ヴァーリ、今何を考えた!?

 

 けど宇宙人も諦めてくれないみたいよ?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 最終決戦!アルファの秘策、無限砲発射!

 

 ふっふ~♪一誠くん達には特別限定のこの装備を使わせてあげよう!

 




 ジェイデッカーも来たんだし、次のスパロボ出るようだったらダグオンが欲しいなぁ。
 後、シナリオはアレだったけどレガリアも一緒に来てくれたら嬉しい。
 クロムクロが一緒なら更に嬉しい。
 主に中の人的な意味で。(ユイとイングリッド)

 ではまだ次回



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第九十一話 最終決戦!アルファの秘策、無限砲発射!


 オハヨウゴザイマス、本編の文章が長い上、これから眠りますので手短に。

 やっと納得の出来る形になりました。文章と言うのはフラッと降りて来たかと思えば、思ったのと違ったりと中々思うようにいかないものです。
 後、水着イベントとか復刻イベントとか忙しいんです。




 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 おおぉぉぉぉお!!ワシのビークルが遂にお披露目じゃぁぁぁぁぁぁあ!!

 

 プロトタイプだけどね。

 

 ワシ大活躍じゃぁぁぁぁぁぁあ!!流石ワシのドリルライナーじゃぁぁぁぁぁぁい!

 

 まぁプロトタイプなんだけどね。

 

 さいっこぅぅぅじゃぁぁぁあ!ドリルライナァァァァア!!

 

 うん、まっ、いっか。

 


 

 ━━神奈川県・山北町内駒王町

 

 不可視の壁はアルファが届けたドリルライナープロトタイプに乗り込んだドリルゲキにより砕かれ、その破片は泡と消える。

 

 「糞っ!?こんな事があってたまるか!私のキャンバスは過去誰一人として破壊出来た者は居ないと言うのに…!」

 地獄の門を頭部に持つ前衛芸術の異形は双腕四足を震わせて有り得ない光景に戦慄する。

 

 『このまま突撃して土手っ腹風穴空けちゃるわい!』

 

 と意気揚々吼えるドリルゲキの声、しかし物事は早々容易くは行かない。

 先の壁を破壊した影響か試作機であるプロトドリルライナーは節々から黒煙を立ち昇らせ、中では計器が喧しく鳴り響いている。

 

 「ぬおっ?!何じゃ?何じゃ?!どうした!ドリルライナー!!?動け!気合いが足らんぞ!!」

 アラート鳴り響き赤く染まったコクピット内で、操縦桿を頻りに動かしたりコンソールを必死に叩くドリルゲキ、しかしライドビークルはウンともスンとも言わない。

 

 

 

 

 

 

 「あちゃー、やっぱプロトタイプだからゲキくんからのBE(ブレイブエナジー)の流動に耐えきれなかったかぁ」

  ザ・ピンクな薄桃色の髪を軽く掻いて、漫画宛らのバツ眼に顔を歪めながらあっけらかんと溢す。

 

 「ぶれいぶえなじ~?」

 「つかオマエ誰だよ?」

 「ドリルゲキさん大丈夫かしら?」

 突然ドリルライナーと共に現れ、何時の間にかしれっと自分達の集団に混ざっている謎の人物に美炎達調査隊、可奈美達選抜刀使の視線が注がれる。

 唯一ゲキを心配してくれたのは瀬戸内智恵ただ1人と、ゲキ本人が知れば感涙モノだろう。

 

 「むむむむ~……、かわいい…けど、なんか…なんか違うような……う~ん」

 

 「由依ちゃん?……いつもなら可愛い子には勢い任せに飛び付いて行くのに」

 由依がアルファに対し僅かばかりの躊躇いを見せているのを見て清香がさりげに毒を含んだ物言いで驚く。

 

 「ダグオンのビークルより降りて来たのですから、関係者なのは確かなのでしょうが……(あちらのフードを被った刀使らしき人物と違い、こうも簡単に顔を晒している……つまり、正体を知られた所で痛くも痒くも無いと言う事になる…油断は禁物か)」

 ミルヤがアルファの推察をしながら心中では警戒の度合いを僅かに上げる。

 

 「ん?何だかみんなの視線が刺さるなぁ。もしかして、ボクが誰だか気になってる?気になってる?ウフフ…いやぁモテモテで辛いなぁ!」

 

 「………斬るか」

 

 「ダメだよ姫和ちゃん!確かにこの子かなり空気読めてないかもだけど、いきなり斬るのはまずいよ!」

 

 「そういうカナミンも大分失礼デース…」

 

 なまじ顔が良いのでドヤ顔を決めて胸を張る性別不詳(刀使視点)の人物の態度に思わず小烏丸に手を掛ける姫和とそれを慌てて止める可奈美。

 エレンが言う通り可奈美も可奈美で自然に酷い事を言っているが、当人にその自覚は無い。

 

 「ねー……」

 

 「どうしたねね?お前がそんな反応するなんて珍しい。そこのナチュラルボーン板金並みにその桃色頭は残念なのか?」

 

 「斬られたいのか貴様……!」

 

 「ねー、ねね!ねーね…ねねね!」

 

 「あん?」

 

 「薫ちゃん?ねねちゃんなんて言ってるの?」

 

 「細かい事は流石に全部解らんが……どうも胸に飛び込まないのは発育どうこうが問題だからじゃ無いらしい。良かったな姫和、お前はオンリーワンだ」

 

 「やはり今ここで斬る」

 

 ねねの奇妙な反応に訝しむ薫は当人と言葉を交え、しかしあくまでもフィーリングと長年の付き合いからの理解では、ねねがアルファの性別に言及している事までは理解が及ばず、そもそもこの場に居る面子の中ではダグオン、女神一行を除けば、アルファが少年とは誰も見抜けていないのである。

 そしてねねと言えば十中八九胸なので、そのソムリエ評ぶりから必ず過去最底辺の結果となった姫和にとばっちりの如く薫の皮肉が及ぶのだ。

 

 閑話休題(さておき)

 

 ドリルライナーが行動不能と見て安堵を憶えたアーティシャン星人。ダグオン達がドリルライナーを引き上げ敵を牽制している間、顔面の"彫刻地獄門"を開き其処へ手を突っ込む、取り出されたのは粘土…否、その実態は粘土の様に捏ね繰り回され固まったザゴス円盤や荒魂、果ては各国に現れた彫刻モナドの破片。

 

 「アイツ!何かする気だ!?」

 

 一誠が気付き殴り掛かろうとするが、アーティシャンは自らの能力【同一線上の座標軸移動】により近場の民家を盾にする。

 

 「チィッ!余計な力を使わせておってからに!!唯でさえ門を開いて作品の素材を取り寄せているのだ!大人しくしていろ!!」

 門の中より新たに取り出す、原型を留めたザゴス星人数匹。

 彼等の傷をまるでパテで塞ぐ様に修復し一誠に向け放り投げ、更に他の者達にも邪魔されぬ様に同じ行程を行い、防備を固める。

 

 「増えた!?」

 

 「いや…あのアリ擬き星人には傷があった、俺達が道中で倒した者の中で比較的無事な者を再利用したんだろう」

 ネプギアが現れたザゴス星人に驚愕する一方で、曹操が現れたザゴス星人をつぶさに観察し半ば憶測であるが正解を導き出す。

 

 「ふん!それだけでは無いぞ下等生物!!」

 

 曹操の言葉に対し勝ち誇る様に吼えるアーティシャン星人、残ったもう片方の腕で捏ねた粘土が数匹の巨大な人形と、人間大の人形を複数列べ立てる。

 地上に現れた()()()は段々と明確な輪郭を以て貌を成す。

 

 1つ、透明なマネキンの中に骨の様なフレームが見える巨人。

 

 1つ、蛙にも似た分厚い装甲と火器を備えた怪物。

 

 1つ、鋭利な刃を翼にした様な盲目の怪鳥。

 

 1つ、まるで折紙で出来た衣服を纏った様にも見える影。

 

 1つ、白いプラズマに包まれた魔神。

 

 そして2つ、互いが対となる様にデザインされた半人半獣の甲冑巨獣。

 

 加え、ザゴス星人同様に門の向こうより取り出され継ぎ接ぎされたザゴス円盤幾機が巨大戦力として立ち塞がる。

 

 更にはパープルハートに対しインディゴブルーに染まった天使と悪魔の翼持つ女性の彫像を。

 リアスに対して流動する水で出来た人形を。

 祐斗に向けて手足が剣と化した立像を。

 朱乃とギャスパーに向けて手足が生えた石柱を。

 曹操に向けてフルプレートアーマーを着こんだ刀持ちの和人形を。

 猫魈姉妹に対し、意思があるかの様に動く石像を。

 アーサーには黄金で出来た矛持つ鷲獅子の彫刻を。

 イリナに対しては常に描かれた者と物が変化する絵画を送り込む。

 

 

 「小さい…って言うか、私達に差し向けられた方は兎も角。デカイ方ってダグオンだけじゃなくて、ゼノヴィア達の事も警戒心してるワケ!?」

 イリナが敵の配分に対し思わずツッコむ。

 

 「かもね~。スゴいね~♪でも君たちなら勝てる!勝てる!ガンバッ♪」

 

 「ちょっと待って下さい!」

 

 「あれ?いーすんじゃん、ボクとは自己紹介の件でニアミスしてそれっきりだったから、てっきりボクの事苦手でずっとねぷねぷの中に閉じ籠ってるのかと思ったよ~」

 

 「苦手なのは事実です」

 

 他人事並に簡単に語るアルファへ、パープルハートの中で今の今まで大人しくしていた司書イストワールが突如、現れ待ったを掛ける。そしてアルファからの評に対し困惑しながらも肯定で返し、彼女は一拍置いて続ける。

 

 「コホン…先程までと違い、巨大な敵も地上に複数います。このまま戦闘に移ってしまえば街の被害は甚大です!」

 

 「ナルホド、つまり駒王町に被害が出なきゃ良いんだね!おけおけ、そーゆことなら…ヴァーリくーーーんちょっとこっち来てよーーー!」

 

 イストワールからの苦言に納得をして見せると、意図も容易く返事をしてヴァーリを呼び寄せる。

 

 「何の用だ?今は戦闘中なんだ、何かあるなら手早く頼む」

 

 「大丈夫だいじょーぶ、すぐ済むよ…っと」

 言いながら白龍皇の鎧から生える"白龍皇の光翼"の宝玉部分によじ登るとマイクロチップ状の何かを捩じ込んだ。

 

 『っオォォオオ?!』

 

 「アルビオン!?おい!何をした!!?」

 

 「すぐ分かるよ、えー…"外部コマンド、ボイスアクション・アクティベート…!"」

 

 『Divide!』

 

 アルファが取り出したダグオンスターマークエンブレムに、何らかの音声コマンドを入力すると、呼応する様にアルビオンの白龍皇の光翼が輝き出す。

 光は宝玉から鎧に伝わり、左腕の甲冑部分を別の形へと変化させる。

 その形状はまるで箕ないしはマイナスドライバーの様である。

 

 「本当はねぇ一誠くんがプロモーションチェンジ使えたらそっちに集約させるつもりだったんだけど、君らの所の一誠くんは気合いとかで強さが変動する割に()()()()()()()()()()()()()()()、分割してヴァーリくんや他の子に使わせる事にしたんだよ。さぁ、頭の中に情報が入ったね?格好良く叫んで、格好良く突き刺してね!」

 そんな風にキラキラと期待する目を向けながら語るピンクのアンチクショウ。

 

 『ヌゥ…ヴァーリよやるしかないようだぞ……』

 

 「致し方無い…か、確認するがコレを使えばこの街の被害は少なく済むんだな?」

 

 「モチのロン」

 

 アンチクショウからの肯定の返事を聞いて直ぐ様空中へと飛び立つヴァーリ。ツールと化した左腕を掲げアルビオンと共に叫ぶ。

 

 「『ディバイディング・ドライバァァァアア!!』」

 

 先端を大地に向けるように急降下するヴァーリ、ドライバー化した部位の上部から光が順に点灯し蒸気が吹出すと突き刺さったドライバー部を軸に空間が歪み拡大される。

 

 『これは!?』

 

 『何だぁ!?街ん中に急にクレーター?が出来たぞ?!』

 

 『……ルシファーが何かをしたようだ…』

 

 『なんかアルファのヤローと話テンのは聴こえたゼ』

 

 『アルファは後で問い詰めるとして、それよりもこれで街の被害を気にしなくて良いのは有難い。我々も存分に力を振るえる』

 

 いきなり起きた事象に戸惑いつつも戦場を気にする必要が無くなった事にダグオン達の気概が上がる。

 

 「今のは……何が起きたのですか!?」

 

 「街があんなに遠く…、これは異世界の力?それとも……」

 

 刀使達は刀使達で目を丸くしながら目の前で起きた出来事に絶句する。

 

 

 「ヴァーリ!何をしたの!?」

 そして空中にて一部始終を眺めていたパープルハートが敵を一旦ファイヤーダグオンに任せ、状況の仔細を把握する為近付く。

 

 「それは俺が知りたいくらいだ」

 

 「んふふふっふ~♪驚いたかい?驚いただろう!これぞ数多の勇者の力の1つ!GGG製ガジェットツール!ディバイディング・ドライバーをボクなりにリスペクトしたタイプ【勇者王】GGG式ディバイン・ディバイディング・ドライバーverアルビオンさ!」

 

 フンスと鼻を鳴らし自慢気に語るアルファ。

 この場ではアルファ以外知る由も無いが、ヴァーリが振るった力の元となったツールは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その一角である。

 

 「【勇者王】のチップの1つは問題無く作動したね!よし、ちょうどねぷねぷも近くに来たし君にはコレをあげよう!!」

 そう言って取り出したのはあつらえたかの様なシェアクリスタルに似た記憶媒体。

 

 「これは?」

 

 「【太陽の勇者】の力を宿したクリスタルだよ!ホントは【勇者】と【伝説の勇者】との三択で迷ったけど、ねぷねぷ的にはコレかなってボクの独断と偏見で決めました!えっへん!」

 

 「そ、そう……でも何故?」

 

 「そこはコラボレーション!だからね!こっちも大盤振る舞いしなきゃ!」

 

 「解った様な…解らない様な……まぁくれると言うなら有り難く使わせて貰うわ!」

 

 「因みに発動したら使用は一回こっきりだからタイミングは気を付けてね~。あ、ゼノヴィアちゃーん」

 

 最後にそう言いながら、今度はゼノヴィアを呼びつけるアルファ、他にも残りの女神一行の面々に声を掛け、彼等彼女等が入れ替わり立ち代わり来る度に何らかのアイテムを渡していく。

 そうして最後に一誠に何事かを耳打ちしながら赤龍帝の籠手に備えられた宝玉に"何か"をインストールした。

 

 果たしてアルファより与えられた力を持って戦場へと舞い戻ったネプテューヌことパープルハートは再びファイヤーダグオンと並び立つ様に敵を見据える。

 

 「待たせたわね」

 

 『いんやぁ、こっちも大分温まって来てたとこっす!』

 

 プラズマの塊と左右対称の2対の巨獣相手に立ち回っていたファイヤーダグオンが嘯く。

 其処へ渋い顔をしたイストワールも戻って来る。

 

 「焔……ファイヤーダグオンさん、アルファ氏から伝言があります。……「君は無限砲を撃つ為に体力温存しなきゃダーメ♡」……だそうです」

 

 「いーすん物凄く嫌そうね」

 『つか最後のハート要るんっすか?』

 

 「物凄く不本意ですが、そのままに伝える様にと仰ってましたので…物凄く不本意ですが」

 

 『なら申し訳ないっすけど、戻って伝えて下さい。"ざけんな、この状況で黙って見てるなんて出来るかよ!お前風に言うならだが断る。だ!"んじゃネプ先輩、ゲキが代わりに相手してたみたいなんっすけど、やっぱ飛べないから苦戦してるみたいなんで頼んます』

 

 「ええ、貴方も無茶はしないようにね」

 

 『うっす!』

 

 イストワールを置去りにして敵へと向かって行くファイヤーダグオンとパープルハート、置いていかれたイストワールはため息を吐きながら再びアルファの方へと降りてゆく。

 

 そして他の戦場では──

 

 

 

 

 

 

 「宇宙人が出した物だから当然だけれど…ただの水の塊では無いわよね」

 

 消滅の魔力球を数発当てたにも関わらず健在な流動する水の人形を前にリアスが歯噛みする。

 

 「相性が悪いわね……、朱乃かギャスパー、或いはヴァーリならもしくは……普通の水かそこいらの魔力を通した水の人形なら楽勝だったのだけど…もしかしてあの宇宙人それを理解って?一度アルファに呼ばれた時に敵を入れ替えておけば良かったかしら……」

 観察を続けつつも攻撃を加えるリアス。其所へ獅子剣へと転じたライアンを伴ってローブを被った結芽が近付く。

 

 「リアスおねーさん苦戦してるね、助けてあげよっか?」

 

 「手伝ってくれると言うならば有難いけど、アレは貴女でも手こずるんじゃないかしら?」

 

 『確かにな、ノロならばいざ知らず、只の水ではな…まぁ異星人の造り出した物ならば只の水かは怪しいが』

 

 「じゃあ相性が良さそうな人に任せちゃえば良いじゃん」

 

 「出来たらそうしたいのだけれど……あの水人形、中々隙をくれないのよ」

 

 『であれば紅き娘よ、貴様先程管理者より譲り受けた玩具を使ってみてはどうだ?彼奴も元よりそのつもりで渡したのだろう?』

 

 結芽の手の中でライアンが訊ねる。

 

 「私は神器を持っていないから、正直使い物になるか分からないけれど……それにそこはかと無く不安だわ」

 

 「まぁ分かるけど、おねにーさんもこう言う時はちゃんとしたの渡すし大丈夫だと思うよ?」

 

 リアスに同意を示しつつも流石に緊急時ならばマトモな物を寄越すと述べる結芽、それでも末尾が尻すぼみ気味なのは普段のアルファの行動の賜物からか……。

 途もあれ、結芽の助言を聞いてリアスも覚悟を決める。

 

 「そうね…迷うよりも行動した方が健全だわ。コレは叫べば発動するのよね?」

 

 「おねにーさんがそう言ったなら…うん」

 

 「そう…"起動!"」

 覚悟を決めたリアスの声を聞き届け、スターマークが光る。果たして次の瞬間にはリアスの手元には鍵盤式弦楽器──要するにギターとキーボードを混ぜた物──が出現し足下は何時の間にかスピーカーが備えられた円盤状のステージ。

 

 「なに?これは?ナニ?」

 あまりに突拍子の無い物に呂律回らず混乱するリアス、そんな彼女の目の前に空間スクリーンの説明書が現れる。

 

 「えーっと……[やぁリアスちゃん、ボクのプレゼントを起動してくれたようだね!どうだい?格好いいだろう!!さて使い方が解らなくて困っているだろうから教えてあげよう!その装備の名前はGGG製ガジェットツールギラギラーンVV(ダブルブイ)&ステージ7を元に作ったタイプ【勇者王】GGG式デモギラーンD×D&ステージ7/5。これは君の消滅の魔力を流す事で君の消滅の力を指向性を持たせたまま超強力にします。え?なんで楽器なのかって?それは元ネタがそうだからさ!え?君に渡した理由?それは……君の声かな、歌上手そうだよね?ま、歌う必要無いんだけどね♪以上]………訳が解らないわ…けど一応ふざけている訳では無い…のよね?兎に角魔力を流せば良いのね」

 

 当惑しつつもベルトに肩を通し自らの魔力をデモギラーンD×Dなるガジェットに流し弾き鳴らし始める。

 するとその音に呼応してステージのスピーカーからも消滅の魔力が振動波となってデモギラーンと共鳴、水人形へ襲い掛かる。

 リアスが説明書を読み進めていた間、相手を引き受けていた結芽越しに消滅のサウンドが響き渡る。

 それはこの混迷の戦場で多少味方との間が離れた程度の場合、()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、しかし其所はアルファクオリティ、味方越しであろうとも敵対象以外には被害を及ぼす事は無い。

 結果、水人形は分子振動を乱され分解、その存在を跡形も無く消失させてゆく。

 

 「消えちゃった」

 

 「凄いわね、コレ…射線上に味方や無関係の人が居ても敵だけを消滅させるなんて…(もしかしたら私も鍛え続ければコレと同じ事が出来るのかしら?)」

 自らに与えられたツールの強大差に感嘆しながらも己の力の可能性に思いを馳せるリアス、そんな風に感慨に耽って弾き鳴らす事を止めると、彼女のガジェットは役目を終えたと判断し分解されてゆく。

 

 「成る程…確かに一度きりみたいね」

 

 まず1勝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「聖魔剣!」

 神器により創り出した聖剣と魔剣の力を融合させた聖魔剣を振るい剣人と対抗する祐斗。

 

 (芸術作品と言う割に…硬いな、色々な剣を創り出して試してみたけどどれも効果が無い。まさか物理的消滅にまで耐性があるなんてね…)

 等と祐斗は胸中にて独り語るが、実際にはアーテシャン星人が以前の祐斗の戦い振りから鋳造した対特化用である。

 無論、並大抵やそんじょそこらの力押し型の剣士や剣ならば剣人にとって敵ではないのも事実であるが。

 

 「正直、どんな効果になるか解らないから使用は本命の方をみんなで確実に倒せる時までとって置きたかっただけどね…"起動"」

 爽やかに苦笑しながら受け取ったスターマークを起動する。

 出現したのは特殊な赤い鍔に紺の柄、黄金の刀身を持った両刃の両手剣。

 

 「これは…タイプ【勇者特急】、旋風寺コンツェルン式ガジェットウェポン動輪剣型武装……聖魔極輪剣?何だか随分仰々しい名前だねっ!」

 剣人の腕、或いは脚を弾きながらアルファの戯言がセットになった説明書に素早く眼を通し使い方を理解する。

 

 「使い方に何パターンかあるんだね、でも敵の強さは正直僕が創った聖剣の能力が効かない硬さと言うだけで苦戦する程じゃない。なら…僕の選択はこうだ」

 言って聖魔剣の方を敵に投げ一旦距離を取る祐斗。

 当然剣人はそれを弾き祐斗へ肉薄しようとする。

 

 「聖魔!極・輪・剣!(こんな感じで良いのかな?)」

 距離が詰まる間に剣の能力を発動させる祐斗、手にした剣は鍔が展開しオリジナルそのままに車輪が付いた部位が回転し始めると刀身にエネルギーが収束され始める。

 それを大きく振りかぶり近付く敵へと祐斗は思いっ切り振り下ろす。

 

 「真っ向…!唐竹割り!」

 

 振り下ろされた太刀を今までの聖剣や魔剣同様受けて防ごうとした剣人はしかし自らの腕の剣ごと肉体を縦に大きく断ち切られ爆発した。

 

 「ふぅ、こんなものかな?聖魔剣を創り出す感覚で振るうか、面白いけど…ところで叫ぶ必要あるのかなこれ?」

 倒した敵の残骸を見下ろしながら呟く、恐らくアルファが聴いていれば「必殺技のフィニッシュは叫んでなんぼだよ!!」と言うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぇぇぇん!こんなのムリですよぉ!」

 涙目で叫ぶ女装少年ギャスパーが手足の生えた石柱から逃げる。

 

 「石だから電撃が効かない…なんてまるでゲームですわね」

 電撃どころか雷光を放つも一欠片すら砕けない石柱に嫌な汗を感じる朱乃。

 何より厄介なのはある程度コントロールされているとは言えギャスパーの魔眼で停止しなかった事だろう。

 その理由も2人は知る術が無いが、アーテシャン星人は恐らく元より制止した物体に停止は意味を為さない、負荷に耐える象徴としての柱に電気を受け流す大地の象徴たる石を合わせ、更には高い物に落ちるイメージと制止物でありながら動くと言う矛盾を折り合わせた物てして石柱を造り出したのだ。

 

 「ギャーくん!もう少し頑張って逃げて下さい!先ずは私がアルファちゃんより頂いた物を試してみますわ、"起動"」

 朱乃のその声に従い現れるは金色の…何故か獅子の鬣を模した様な装飾と砲身らしき物が付いた弓であった。

 

 「あらあら…コレが私の…えぇっとグレートアーチェリーを元にした…タイプ【黄金勇者】レジェンドラ式グレートウェポン、グレートライトニングアーチェリー…成る程…それは解りましたけど…何んでしょうかこの鬣の上部分だけを取った様な装飾は?それにこの筒は…?」

 疑問を抱きながらも、雷光を放つ魔力の矢をイメーしつがえる、そして矢は石柱に狙いを着ける朱乃。

 

 「ゴールデンアロー!」

 引き絞られた光の弦を離し、雷光が収束された超光速の矢が砲身筒を通って放たれる。

 降り注ぐのではなく、穿たれる雷光に石柱は大穴を開けて倒れると爆発と共に砕け散った。

 

 「あら、私だけで片付いてしまいましたわね。ギャーくんの物がどんな物なのか少し気になってしまいましたわ」

 うふふと柔和に笑いながらギャスパーの元へ降り立つ朱乃。

 対しギャスパーは息を絶え絶えにしながらもホッとした様に答える。

 

 「えっと、なら僕、皆さんが集まって宇宙人を倒す時に使いますね?」

 

 果たして彼に与えられたツールの正体とは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何ともチグハグな敵だ」

 襲い来るフルプレートの西洋甲冑を着た和人形と言う東西折衷の敵に対し神の子を貫いた槍を振るいながら感想を洩らす曹操。

 とは言え禁手状態の槍相手に渡り合う敵も敵だと、警戒は忘れない。

 

 「さて、使えと言うなら使ってやろうじゃないか…"起動"」

 出し惜しみせず与えられた物を使用する曹操。彼の起動コマンドにより神器"黄昏の聖槍"に連なる宝珠が集結し、三叉刃にも見える十文字槍へと変化した。

 

 「ふむ…カイザージャベリン型タイプ【黄金勇者】レジェンドラ式ウェポンツール、凱撒標槍ね…。やれやれそのままじゃないか」

 特徴的な飾り気が一切無いシンプルな十文字槍をくるりと回して構えながらニヒルに笑う。

 

 「そら、まずは使い心地を試そうか!」

 言って、今にも斬りかからんと襲い来るフルプレートを連続で突く。突かれた方はそれだけでボロボロだ。

 

 「成る程。必殺武器等と仰々しい肩書を着ける訳だ。さて…なら文字通り決めさせて貰おう!凱撒標槍!大成敗!!」

 大成敗の声に合わせ矛の刃が光輝く。

 矛先を大地へ叩き付けエネルギーの刃が地を割りながら敵へと向かい飛び出る。

 

 「…………?!!?」

 

 股下から裂かれたフルプレートが声無き声を以て絶命した。

 

 「見栄切りまでが一動作と言うのが少々気恥ずかしいな、これは」

 爆発を背景にポツリと呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「皆さんそれぞれ貰った武器を使いこなしてますね。ギャーくんは別として」

 自らに宛がわれた敵──狛犬にもガーゴイルにも見える石像相手に渡り合いながら小猫が呟く。

 

 「見た感じ普段の神器やら魔力やらの延長で使えるみたいだしねぇ。あたし達のはどんなカタチなのやら」

 胡乱な黒歌を横目に躊躇い無く起動を試みる小猫。

 

 「"起動"」

 その言葉と共に小猫のグローブが光り輝き、次の瞬間には腕を覆う手首が赤いリング状のガントレット付きの漆黒の爪と変じていた。

 

 「行きます、にゃあ。ヘル…アンド、ヘブン…!」

 

 「ちょ?!白音!!?ああ…もう!"起動"!」

 平然と起動を試みた妹に対して慌てて起動する黒歌。

 彼女の元に現れた武装それは白バイらしき物が変形した巨大なライフル。

 

 「マックスキャノン型タイプ【勇者警察】ブレイブポリス式マクシムカノン…?ちょ、デカ過ぎにゃ!そもそもなんで銃?!いやどっちかって言ったら大砲じゃないこれ?」

 自身の身の丈以上の砲身を腰だめに抱える黒歌が捲し立てる。

 

 「ゲム・ギム・ガン・ゴー・グフォ…ウィータ!にゃあ!!」

 小猫が発動したヘル・アンド・ヘブンにより拘束を受けた石像は脱する事叶わず破壊の両拳を腹に喰らうう。

 

 「むぅ…思ったよりパワーがヤバかったです。上半分残りました…。姉さま!」

 

 「はいはい!発射ぁ!」

 

 想定以上の技の出力に狙いがブレた小猫、これ幸いと残った半身で死に体のまま逃亡を謀ろうとする。其所へ黒歌の一撃が放たれ意思持つ石像は跡形も無く蒸発した。

 

 

 

 

 

 

 

 「グリフォンか…相手にとって不足無しと言える」

 叡知の証、眼鏡を光らせアーサーはスターマークを自らの剣、エクスカリバールーラーに添える。

 

 「"起動"…!」

 

 その言葉と共に王の剣は西洋剣特有の両刃から黄金の光放つ片刃の刀へと転じる。

 

 「【黄金勇者】レジェンドラ式フィニッシュウェポン、DRAGO FANG BLADE SPECIAL…長いな」

 元となったスーパー竜牙剣を多少捻った程度の名称である事を彼は知らない。

 

 「手早くケリを着ける。一刀両断切り!」

 

 無駄な言葉は要らんとばかりに一拍で黄金の鷲獅子に肉薄し袈裟斬りに伏す。

 

 「思いの外弱かったな」

 眼鏡をクイッと押し上げてズレを直しながら背中越しに爆散するグリフォンを一瞥すらせず立ち去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああもう!ちょこまかちょこまか、くるくると…鬱陶しく回ってくれちゃって!」

 

 自身の周囲をフヨフヨ回遊する2枚の絵画に思わず苛立ちの声を発するイリナ。

 

 「これじゃ貰った武器が使えないじゃない!」

 聖剣エクスカリバーミミックを鞭にして振り回しながら叫ぶ。

 先程から何度も拘束を試みるがその度に絵画は絵の内容を変化させて躱し、抜け出し、捕まらない。

 

 「せめてあの絵をどうにかしないといけないんだけど……」

 絵画に描かれた絵が変化するのを対策しない限り、攻略の糸目は無い、しかしイリナの動きは完全に読まれている。今まで温存してきたミミック含めてだ。

 と、そんな折、絵画達が偶然直線上に重なった瞬間、遠くから爆発と共に鏃の様な物が飛んで来る。

 絵画は完全にイリナを弄ぶ事に夢中であり、イリナもまた絵画が死角となり、その存在に気が付かなかった。

 飛んで来た鏃は絵画達の背中?を()()()()()()()()突き破る。

 

 「へっ?」

 

 穴を開けられた絵画達は絵を変化させる事が出来ずに突き刺さったまま硬直する。

 

 「ぬぅ?!何じゃ!?何かに刺さりおったぞ!ええいっ!抜けんかーーーい!」

 鏃の正体を良く視れば、それはドリルであり、そのドリルの正体はアタックモードと化したドリルクラッシュ状態のドリルゲキであった。

 ゲキのドリルの回転にスパイラルされ宙に放り出された2枚の絵画。

 

 「チャーンス!"起動"!」

 

 これを好機と捉えイリナはスターマークを起動する。

 

 「えと……タイプ【伝説の勇者】オーリン式GNEXバスター!……で良いのよね名前」

 起動されたプログラムがミミックを通して2つの銃砲へて変化、それを連結させながら微妙に自信無さ気に諳じる。

 連結したバスターのモードはバルカン、構え引いた引き金を通じ、砲身が高速回転を始め光の弾丸を連続で射出する。

 それらは全て絵画へと吸い込まれる様に当たる。

 大穴に加え、連続で弾丸を受け蜂の巣の様に細切れになった絵画達は一片すら残さず塵へと還った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女神パープルハートが相対する彫像と有象無象の雑兵を除き小型の強敵は全滅せしめた。

 しかし一方で大型の猛威は残っており、それぞれが各ダグオンと協力する形で戦闘を繰り広げている。

 

 ダグターボとジャンヌが盲目の怪鳥に挑み、ダグアーマーとヘラクレスが重装甲の蛙と撃ち合いを演じ、ダグウイングとゼノヴィアが透明マネキンと対峙し、ダグシャドーとロスヴァイセが折紙を抑えている。

 

 そして一誠は対の片割れ、炎と風の巨獣を相手に苦心しながらも戦い、ヴーリはもう片方の氷と雷の巨獣と戦いを繰り広げる。

 アーシアは彼等の傷を癒し、パープルシスターことネプギアはそんな彼等を援護する。

 

 そしてファイヤーダグオンはプラズマの集合体らしき光の魔神相手に決め手を欠け膠着状態を続ける。

 

 『クソッ!ピカピカ光りやがって!目に悪い相手だぜ!』

 

 掴み掛かろうとすれば光は霧散して実体を無くし、かといって遠距離から攻撃を繰り返しても、ファイヤーホールドで拘束してファイヤーブレードのフィニッシュで決めたとしても再び再生される。

 

 (ファイヤーブレードじゃどうしたって奴の身体が残っちまう……かといってジェットファイヤーストームもファイヤースターバーンも奴を完全に散らせる訳じゃねぇ!どうする!?)

 

 半ば手詰まりの状況に尚も思考するファイヤーダグオン。

 そんな状態であってもアーテシャン星人が新たに敵を増やさぬ様に他のダグオン共々、僅な隙を見付けては其方も攻撃を慣行する。

 その窮地にアルファが嘆息しながら通信越しに声を掛ける。

 

 『だから君は待機してるようにって言ったのに…しょうがないなぁ』

 

 『るっせぇ!見てるだけの奴に言われたかねぇ!』

 

 『まぁまぁ、落ち着きなよ。今小さい敵の方を相手してたリアスちゃん達が勝利して援軍に来るから、それでちょうど都合良くギャーくんだけ装備を使用して無いんだよね』

 

 『それがどうしたってんだよ!?』

 

 『あの子に渡したのは【勇者王】GGG式メルティングサイレンズアイ。詳しくは省くけど元になったメルティングサイレン並にチートウェポンと言っても過言じゃないね!まぁ仕様は少し変わってるんだけど、それで敵のプラズマ化を防げるから君は無限砲を取りに来るんだ。出力を抑えれば2発くらいは撃てるだろうから、1発はそのプラズマンを倒すのに使いなよ』

 

 『それで倒せんのかよ?』

 

 『モチロンさ!試作品とは言え無限砲、並の武器じゃあないよ』

 

 自信満々に語るアルファ、それ程までの兵器と言うのなら試してやろうじゃないかとファイヤーダグオンは決意を示す。

 

 「援軍に来ました大丈夫ですか!」

 覚悟を決めたファイヤーダグオンの側に援軍に駆け付けたリアス達が現れ、小猫がファイヤーダグオンに声を投げ掛ける。

 

 『ちょうど良いタイミングだ!ヴラディ!お前が渡されたって言う特殊武器を使え!俺はその間、あのデカブツ砲を取りに行って来る』

 

 「うぇぇえっ?!は、はぃぃい!き、きき"起動"!メメメ、メルティングサイレンズアイィィィ!」

 去り行くファイヤーダグオンの声に吃りながらも即座にスターマークを起動するギャスパー。

 瞬間、彼の瞳が赤く明滅を始め、何処からか甲高いサイレン音が鳴り響く。

 そのサイレン音にファイヤーダグオンを逃すまいと動き出したプラズマの魔神は、しかし身体の光を掻き乱され硬直する。

 

 そしてファイヤーダグオンはアルファの近くで沈黙したままのジェットモードの試作無限砲を抱えると、アルファからのレクチャーを受けながら砲形態へ変化させ危なげ無く構える。

 

 「ホントはコネクターを装着しなきゃだけど、試作だから無限砲の方からマニュアルで操作しないと出来ないんだよね。ちょっとブレるかもだけど頑張ってね~」

 

 『にゃろう…簡単に言ってくれるぜ』

 腰にコネクターを使用せず構えた無限砲を何とか操作しながら出力を調整しプラズマの魔神へと狙いを定めるファイヤーダグオン。

 

 『チャージ、50%!無限砲…発射ぁぁあ!!』

 

 半分の出力でチャージされたエネルギーが砲から収束され放たれる。

 その瞬間、襲い来る衝撃がファイヤーダグオンを後退りさせ大地を削る。

 解き放たれた光の奔流はそのままプラズマの魔神へ殺到、50%の出力にも関わらず砲のエネルギー弾は魔神を容易く呑み込み空気と大地を削り取り焼き尽くす。

 

 「うわ!?あわわわ!!?」

 射線上から大分離れているにも関わらず来る衝撃に、吹き飛ばされそうになるギャスパー。

 その彼の手を掴み踏み留まるのは小猫だ。

 

 「物凄い威力です…!」

 

 魔神を消滅させた光はその射線上に僅かに被っていたアーテシャン星人にも影響を及ぼす。

 

 「なっ?!ガギッ!!?ギギギィィィ!!?」

 

 直前に躱したにも関わらずその威力により地獄門が歪む。

 その影響からか突っ込んでいた左腕は門の先の空間の断絶と共に切断され、星人は悶え苦しむ。

 

 「わお!半分の出力でこれは予想外(完成品はもうちょい調整しておこ)」

 製作者すら驚愕に値する結果を示したのであった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We Are DAGWON)

 

 人間大の小さい敵と巨大な敵の一角を倒したダグオンと異世界人、我々も負けていられませんね。

 

 ええ、でもあの大砲すごい威力だわ…!

 

 あれ程の兵器が我々に向けられないのは幸運と見るべきなのでしょうね、所で……

 

 

 

 ねぇねぇいーすんさぁ無限砲のコネクター操作の為に中に乗ってくんないかな?

 ファイター状態ならまだしも無限砲状態だと生身の人間にやらせられないからさぁ、頼むよぉ~。

 

 くぅ…世界の為です致し方ありません…!

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 最終決戦その2!勇者の力!刀使とアルファ。

 

 

 あの少女は何者なのでしょうか?

 

 さぁ…分からないわ……。

 





 はい、別の勇者シリーズのネタと言うか装備諸々、此処で登場。
 本流では言及はしても出す事は無いのでコラボ様々だったりします。
 作中でもありました通り、各々をリスペクトした(アルファ談)装備です。
 アルファは後、エルドラン系列と電童辺りの力も使おうと思えば使えます。
 勿論当人の戦闘力はゼロです。

 それではまた次回
 


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第九十二話 最終決戦その2!勇者の力!刀使とアルファ。

 こんばんは。
 色々悩みながら書いている内にワクチン接種の日が来て、左腕が痛くなるわ、琴歌の声が安齋さんになってテンション爆上がりだわ、86エイティーシックスの2期目が始まってワクワクだわ、タクトオーパスが思いの外ツボに刺さっただわで気付けば今日まで掛かってしまいました。反省



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 勇者の力大盤振る舞い。

 無限砲ヤバい。

 そして儂イプシロン。メッチャおひさ。

 

 あの馬鹿は殴る!それは兎も角デルタはどこに消えた?

 

 しらそん。

 


 

 ━━駒王町・断崖空間

 

 アルファによってもたらされた技術・武装により神器を経由し発揮される別世界の勇者の力。

 異世界に異世界の力を重ねる裏技により敵を効果的に討ち果たした彼等、残るはライナーチーム、ダグシャドーと共にコンビを組み対応している巨大な敵、二天龍が相対する巨獣、女神パープルハートと渡り合っている女性型の彫刻像、刀使達が斬り伏せている有象無象の荒魂雑兵、そして今回の事件の首謀者たる異星人──宇宙芸術家アーティシャン星人。

 

 今、そのアーティシャン星人はファイヤーダグオンが撃ち放った無限砲。

 躱したにも拘わらず、極光長大のエネルギーは星人の頭部となった地獄門を歪め、彼の星人の腕を切断させ、肉体の表層を焼き、その熱と痛みは星人を苦悶させるに充分な威力を発揮した。

 試作品、僅か半分の出力であってもだ。

 

 

 ギャぁァアぁ!?!?!熱いぃぃ!?痛い痛い!!?!熱い痛い!!うでがっ!?ワタシのウデガァァ!!

 

 悲鳴が絶叫となって空に響き渡る。発した言葉に奇妙なノイズ、ズレの様なモノが雑ざる。

 それは痛みの剰りに外聞をかなぐり捨てたが故の星系言語。

 解るのは痛みと熱さを訴える言葉。

 

 「うん!予想とかとは違ったけど痛がってるし、苦しんでるし、結果オーライだね?!やったねファイヤーダグオン君!!」

 思ってた結果よりも凄まじい威力とその結果に些か戸惑い汗を滴らせながらも、敵に大打撃を与えたのだからとグッと拳を握りファイヤーダグオンに賛辞を贈る。

 

 「(無限砲の威力はホントに想定外だったけど、その辺は帰ってから調整すれば良いし)残すは星人とデカブツ系八匹にねぷねぷが戦ってるヤツだけだ!ドンドン行ってみよ~!」

 あざとさ全快のファイティングガッツを取りながら完全に他人事気分で盛上がるアルファ。

 其処へ近付く数人の刀使、増加する事が無くなったとは言え、雑兵を片付けながらもダグオンの最重要人物に接触を計る。

 

 「あの…それで貴女は結局何者なんですか?」

 改めて舞衣がアルファに誰何を訊ねる、早々と結論なりを出して後顧の憂いを減らしたいからだ。因みに彼女もアルファの性別には気付いていない。

 

 「(う~ん……管理者云々は今伝えるタイミングじゃないし、元々ドリルライナー試作型と無限砲試作器ver0を渡しに来ただけだしなぁ…うん取りあえず…)ボクはアルファ!ダグオン達の上司で偉い人!君達で言うところの紫ちゃんや朱音ちゃんのポジションさ!」

 

 「えっ…?」

 

 「紫様や朱音様と同じ…?」

 

 「うっそだろ、威厳もクソもねぇじゃんか!?」

 

 「本当に貴女がダグオン達の最高指揮官なのですか?」

 

 「どう見てもキュートガールにしか見えまセーン」

 

 アルファが己の立場を刀剣類管理局局長とにあたる立場と例えた事に、刀使の皆が思わず茫然となる。

 そしてエレンが口走った一言が、アルファに次なる衝撃発言を促す事になろうとは、彼女達も予想だにしなかったであろう。

 

 「異議あり!!ボクはキュートガールじゃあない!キュートなボーイだよ!!そこ重要!!」

 

 「「「「「「「「「「「「えっ…?」」」」」」」」」」」」

 

 全員が声を揃えって目を点にする。

 

 「うっそぉ!?男の子なの?!」

 

 「なる程…ねねがやけに戸惑ってたのはそう言う訳か……」

 

 「知らないと女の子にしか見えないね」

 

 「うん。男の人に見えない…」

 

 美炎が声を荒げて驚く横で納得する薫と和気藹々とする可奈美と沙耶香。

 他の面々もおおよそ似たような反応である。

 その中で智恵が思い出した様に頭を振るう。

 

 「って、こんなやり取りをしてる場合じゃないわ!?わたしたちもダグオンの皆さんやネプテューヌさん達の加勢をしなきゃ!」

 

 「瀬戸内智恵の言う通りです。我々も我々で残党の星人の雑兵や黒幕が産み出したモノで対処出来る相手を受け持ちますよ!」

 

 同じく正気に戻ったミルヤが率先して陣頭指揮を執り、指示を飛ばす。

 その言葉に全員が(薫は些かやる気に欠けるが)「了解!」と声を揃えて返す。

 

 「みんなガンバレー♪」

 それを尻目に何処から取り出したのか小さな旗を摘まんで振るアルファ。

 

 「貴女…失礼、貴方は戦わないのですか?」

 

 「え?やだなぁ、ボクに戦闘能力があるワケないじゃん。ミルヤちゃんにはボクに戦う力があるように見えるの?」

 人によっては何とも腹立たしい口振りで言外にバカなの?と語るその顔はダグオンの面子であれば翼沙を除き殴っていたかもしれない。

 

 「ではこの場に留まるのは危険なのでは?」

 

 「うん!だから君か清香ちゃんみたいに守勢が得意な子の誰かが守ってくんない?」

 

 何と言う面の厚さか、堂々にも無力を主張しお守りを頼み込んで来た。

 

 「(本当にこんな人物が彼等の指揮官なのだろうか……)………分かりました、六角清香!貴女は彼じょ…いえ、彼を私と一緒に護衛しなさい。他は先の指示の通りに」

 

 「は、はい!」

 防衛に秀で、腕も立ち、物腰は穏やかでもいざと言う時の肝の座り様から清香をパートナーに選ぶミルヤ。

 

 「ミルヤちゃんに清香ちゃんかぁ、まぁ悪くないかな?帰ったら自慢してやろう♪」

 一体何が悪くないのか、誰に自慢する気なのか?と言う疑問は些事故に捨て置き、しかしやはり微妙にイラッと頭に来る塩梅のアルファを視界端に捉えながら未だ残る雑兵へと対処する2人。

 他の刀使達も戦場で騒ぐ、目立たない方が無理だと主張するピンク頭を狙って迫り来る敵を各々フォーメーションを駆使して応対していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ホイールボンバァァアアア!』

 ダグターボの右腕よりタイヤの形を象った爆弾が連射される。しかして目標となる盲目の怪鳥はその全てを紙一重で躱す、刃の様に鋭い翼を広げ、羽ばたくのでは無く滑空する姿はどちらかと言えば猛禽ではなく翼竜のようである。

 頭部も嘴などではなく牙がはっきりと認識出来る形であり、盲目の怪鳥と表しているが実際には視覚機能の無い翼竜型の怪獣と言った方が無難であろう。

 

 『何と言う機動…。しかし我々は一人で戦っている訳では無い!』

 敵の非常識なまでの飛行能力に驚愕を口にしながらも、相対しているのが己一人のみでは無いのだと憚り彼女の名を叫ぶ。

 『ジャンヌ・ダルク!』

 「OK、見えない癖に器用に躱すみたいだけど、これは避けられないでしょ!」

 応じるはフランスの聖女の魂を受け継ぐ聖剣の神器の使い手にして、彼の聖女と同名の少女。

 禁手にて解放した聖剣を寄り集め造り出した"竜"をバラして、怪鳥の周囲全方位360度を囲み込む。

 

 ──しかし

 

 《Lrrrrrr!》

 

 肉声…否、超音波による怪声を自らの前方の剣に見舞い穴を作る。それでも躱し切れない上方と下方からの剣雨は翼を腕の如く振り、尾を回し弾く。

 

 『「!?!」…器用な真似を…!!』

 

 翼竜が如き盲目の怪鳥は刃たる翼と剣たる尾、矛たる"声"を以て音速の巨人と聖女に渡り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 『オウ、筋肉。合わせろテメェのミサイルとオレの無限火力であのデブガエルの装甲ブチ抜いてやらぁ!』

 「乗ったぁっ!」

 

 重甲を誇る深緑の巨人とギリシャ最大の英雄の名を戴く巨漢が、その火力を以て同じく重装甲火力型と思われる蛙の様な機巧兵器にその力を叩き込む。

 

 『ファイナルバスタァァァア!』

 「"超人による悪意の波動"ォォオッ!!

 核を除く人類が出せる多大な兵器による砲火にたった1人と1体で匹敵する様相を見せる。だが……

 

 『アァッ?!クソがッ!硬ェ!』

 

 「装甲だけで防いだにしちゃ綺麗すぎんな、野郎…ミサイルはテメェの火器で撃ち防ぎやがったか?」

 

 爆煙が晴れた先に現れたシルエットは健在の機巧蛙、お返しとばかりに口を大きく開き、他、身体中至る箇所から内蔵された火器を展開する。

 

 「『ヤッベッ!?』」

 

 陽電子砲、光粒子砲、機関砲、迫撃砲と言ったモノから弾丸やビームが飛び交う。

 ダグアーマーは蛙がそうした様に迫り来るミサイルを迎撃しながらヘラクレスを庇う形で前に出る。

 全身兵器の物言わぬ蛙はそれを只管感情の無い瞳で見詰めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「喰らえ!デュランダル!!」

 

 聖なる気を放つ大剣の一撃が衝撃となって内部構造が覗く透明なマネキンへと向かう。

 当然、馬鹿正直に喰らってやる必要も無いのでマネキンはその巨躯を軽快に動かしながら回避行動へと移る。そこへ──

 

 『逃しはしません!ブリザードタイフゥゥゥゥンン!!』

 絶対零度の吹雪が襲い、マネキンの脚部を凍らせてゆく。

 回避が取れぬ人形に光を伴った斬撃が直撃する。

 

 「やったか!?」

 手応えを感じ、仕留めたと半ば確認する様に叫ぶは聖なる大剣の主、ゼノヴィア。

 

 『直撃はしました。ですが…動体反応は健在です』

 対し、それを否定する答えを出したのは人形を凍らせ回避を妨害した白銀の巨人ダグウイング。

 彼の指摘に眼を細め斬撃の軌果の先を見れば、その先に立つは引っ掻き傷程度の損傷を受けたマネキン、その傷も見る見る内に修復してゆく。

 

 『このままただ攻撃していても駄目ですね、いえ…それよりも相対すべき相手が悪すぎる。なる程流石自称とは言え芸術家だ、観察眼はあると言う事ですか』

 

 「感心している場合か?どうする?アルファから受け取ったヤツを使ってみようか?」

 

 『いえ、それは止めておいた方が良いでしょう。相手を確実に倒せる状況まで持っていけない内は……或いはゼノヴィアさん自らが命の危険を感じたと思った時以外は』

 

 「ふむ…なら他に手はあるのか?」

 

 『幸いにして僕達は一人で戦っている訳ではありません。互いの位置関係も連携を密にすれば問題無いでしょう』

 

 「つまり?」

 

 『ファイヤーダグオンやダグアーマーなりに言うならばレイドとスイッチと言うやつです』

 

 人形からの反撃を躱しながら、肩に乗るゼノヴィアへ策を語るダグウイング。

 そしてその策を実行に移す為、ダグシャドーとロスヴァイセの戦場へと視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紫影が舞う、3機の供を引き連れて。

 

 対峙し斬り結ぶは折紙の怪異。

 

 紫影達を援護するのは美しき銀髪の戦乙女。

 

 『…チッ、斬っても斬っても終わりが見えん…!』

 

 「斬られた先から生えてきてますからね…。あれ本当に紙なんですかね?」

 

 そもそもが紙らしき物質を鎧の様に纏った影が正体なので、現在ダグシャドー達が相手取っている姿は空蝉に過ぎない。

 故に折紙はただ再構築されるのではなく影に合わせて形を自由に変えてゆくのだ。

 

 百足、犬、鶴、鮫、毬、等々…。一枚折りの折紙で出来る筈の無い姿にまで変転しているのだ。

 

 (…奴の姿が変化する直前に見える影……あれが本体なのは間違い無い…が、巧妙に隠している。これでは縫い止めるのも容易くは無い……。拘束剣では奴の鎧…外郭の紙しか縛れない。戦乙女の魔導は強力だが……ダグウイングのブリザードタイフーンの様に一息で周囲の空気中ごと極零度以下まで凍らせるには些か足りない……)

 儘ならないと思いつつも思考を巡らせるダグシャドー。

 何度目になろうかと言うシャドー絶対拘束剣で敵の動きを止める。

 ロスヴァイセに託された異界の勇者の力がどの様なモノかは見当が付かないが、恐らく不用意に使用しても敵は倒せないだろうとダグシャドーは半ば確信を持って推察する。

 

 今一度、無駄と理解しても再び斬り棄てるかと思い、カゲムラサキを振り下ろさんと構えた時、左方より風を切る音がダグシャドーの元へ届く。

 

 『……!ダグウイング!』

 

 『ダグシャドー!協力して下さい!膠着した状況を打破します!』

 

 『……承知…。俺はどうする?』

 何故等とは訊かない、そんな事をしている暇は惜しいし、何より彼等は最早戦場で10全てを語る必要は無い、1を口にすれば十全でなくとも凡その意図は理解出来る。

 ならば訊ねるべきは己が如何なる行動を取るか。

 

 『まずは互いの敵を入れ替えましょう。確実に各個撃破します、後は臨機応変と言えば理解出来るでしょう?』

 

 『……フッ…』

 

 短く笑うダグシャドーの態度を返事と捉えたダグウイングが今度は肩に乗るゼノヴィアへ指示を飛ばす。

 

 『ゼノヴィアさん、ダグシャドーの元へ飛んで下さい。僕はこれから全力を出します』

 

 「うん?あ、ああ、リュウゴの方だな」

 至近の会話だからかゼノヴィアは本来の名を口にする(或いは無自覚なのかもしれないが)。

 

 途もあれ、自身の肩に架かる小さな重量が無くなった事によりダグウイングの両肩のファンが急速に回転し始める。

 

  マキシマム…ブリザードッ!タイフゥゥゥゥゥウウウウンンン!!

 

 普段の威力の倍はあろうかと言う豪雪の竜巻が瞬く間に折紙の怪異に殺到する。

 拘束剣により動きを封じられた怪異はしかし、自ら本体の影を曝す訳にも行かず為すが侭に拘束剣のエネルギーや周囲の空気ごと氷塊にされる。

 

 『…シャドークロー!』

 対し、ダグウイングを追跡して来たマネキンはダグシャドーが肘のアンカー、シャドークローを用いて捕獲・拘束。

 

 『…ヌンッ…!』

 

 そのまま空気投げの要領で転ばせる。

 

 『ダグシャドー!その敵をダグアーマー達の方へ!ゼノヴィアさん!アルファから受け取った力を氷塊の敵へ!』

 ダグウイングが空を飛翔しながら指示を飛ばし、ダグターボの元へと向かう。

 

 『…分かった…』

 「任せろ!」

 「あれ?!私は…!?」

 唯一指示の無かったロスヴァイセが自らを指差して思わず叫ぶ。

 「出番が来れば呼ばれるだろう?」

 

 デュランダルの柄部分をスライドさせ、アルファから受け取ったメモリーカード(ゼノヴィア用の物は金塊の如き大きさである。何故か)を装填しつつ、ロスヴァイセの言葉に応じる。

 

 「""機動"!……タイプ【勇者王】GGG式イレイザーセイバーか…ふむふむ、取り敢えず振ってみればどんなモノかは解るだろう!」

 デュランダル、エクスデュランダルと形状を経由し現れる穢れ無き白き刃。

 三重連太陽系が存在する世界の地球にて人類が叡智を結集して造り上げたハイパーツール、超AI勇者ロボ超竜神が使用した"イレイザーヘッド"を元にした装備である。

 

 「ヤツを凍らせている氷が溶けない内に決めなくてはな」

 金色を通り越して白金と輝く変化した愛剣を構え、力一杯大地を蹴る。

 

 「そのままの名前と言うのも味気無い。よし、名付けて…エクスデュランダルイレイザー!!

 普段であればそのまま振り下ろし斬撃が光破のエネルギーを伴うが、イレイザーヘッドの特性を持つ為対象へと接近、突きの姿勢で氷塊に突撃する。

 切っ先が触れイレイザーセイバーの能力が発動する。

 氷塊が砕けるよりも速く、氷塊内を白金の光が満たしエネルギー衝突による量子超振動波が折紙の鎧ごと本体の影を侵食し飲み込む。

 内から外へ消失してゆく物体。最後に氷塊が跡形も無く失せ、折紙の異形はその痕跡をこの世界から塵1つ残さず消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……ダグアーマー!開けろ!』

 『アァ?!開けろって何を……ってオアァォォ!?マジかぁぁぁっ!!?』

 

 ダグシャドーが拘束した人形を地蔵と化している蛙に投げ込む。

 当然進路上にはダグアーマーとヘラクレスが居る。

 声を掛けられ2人は慌てて退避する。

 ぶつかり、鳴り響く嫌な金属反響。

 

 『…っぶネェだろうが!』

 「俺なんか生身だぞ!?距離的にメッチャ全力疾走するハメになったわ!!?」

 2人揃ってダグシャドーへ文句を飛ばす、しかしダグシャドーは些事として無視する。

 

 そしてダグターボとダグウイングの戦場では──

 

 ターボダッシュによって怪鳥とのドッグファイトを続けるダグターボ、ジャンヌはそれを地上から歯噛みしながら剣を飛ばす。

 

 「あぁぁあ!もうっ!速すぎんのよっ!当たらないじゃない」

 ダグターボを追う怪鳥に剣を射ち出してはいるものの、三次元機動を自由に飛び回る怪鳥には当たらない、精々がダグターボが追い付かれない様にする事だけである。

 

 『(ターボダッシュでは空戦を本懐とする敵への対応は厳しい。此方が複数ならば未だしも、俺とジャンヌ・ダルクだけでは…、ん?あれは…)ダグウイング!』

 

 『ダグターボ!そのまま直進してダグアーマー達の元へ、あの怪鳥は僕が地上に落とします!』

 ダグターボに言うや否や、ダグウイングは背部のウイングユニットの翼をVの字の展開状態から真逆のΛ字に可変させ怪鳥に突撃してゆく。

 そしてそのやり取りだけでダグターボもダグウイングの意図を察し、地上まで高度を落とすとジャンヌを回収しダグアーマーの元へ駆ける。

 怪鳥が逃げるダグターボから向かって来るダグウイングへ標的を変える。

 翼を大きく広げ刃でダグウイングを真っ二つにしようと言う算段だ。

 それに対してダグウイングは未だ速度を落とさず突っ込む。

 接触まで後、10m……9から8に架かろうかと言う僅な距離、そこでダグウイングは己の身を捻り、此方も自らの翼の刃を怪鳥の翼に対して垂直に交わる形となる、狙いは怪鳥の翼の付根…つまりは肩関節の可動域だ。

 これが陸上で人間ならばまだリカバリーも出来ただろう、しかし互いに巨体、ある程度物理法則を無視しているとは言え片や翼竜の滑空、片や宇宙の科学技術に於ける慣性もへったくれも無い自由飛行。

 当然軍配はダグウイングに上がる。

 片翼を絶たれ隻翼となった怪鳥は螺旋の軌道を描いて地面に堕ちて行く。その先にあるのは自らと同じく創造主によって産み出された同胞達。

 

 『よし、これを…!』

 怪鳥が蛙とマネキンの方へ堕ちて行く姿を見届けながら絶ち斬られた翼を回収し先端の爪を引っこ抜くダグウイング、そのままダグターボ達の元へとトンボを返す。

 

 『ンで、この後ドースんだよ?カエルヤロウにはオレらの攻撃は効かなかったゼ?』

 

 『その手段はダグウイングが持ってくる。それにお前が相手をするのは今堕ちてきた怪鳥とマネキン擬きだ』

 

 『はァ?!二体かよ!?』

 

 『倒す必要は無い、攻撃する事が重要だ』

 

 『ヘイヘイ、美味しいトコはアルファの奥の手を貰ったアイツらがってワケね。まぁ楽で良いケドよっ!』

 

 ダグターボの言葉に肩を竦めつつ起き上がろうとした人形にアーマーバルカンを叩き込む。

 蛙が火器を展開しようにも上に重なった味方が邪魔で思うように展開出来ない、更に重なった怪鳥の所為で展開の勢いではね除ける事も出来ない。

 

 『そのまま射撃を続けて重火力装甲型の火器展開を妨害しろ。上にあの二体がのしかかっている間は満足に攻撃は出来ん』

 

 『オーライ、ンで口の荷電粒子砲はどうすんべ?あっち撃たれたらコッチも防御せざるおえねぇワケだが……』

 

 「俺様の禁手を叩き込んでも誘爆しねぇ堅さだ、生半可な攻撃は通らんだろうさ」

 「それって攻略法ある訳?」

 「無ければ敵を一ヵ所に集める作戦など取らないだろう?」

 ヘラクレスとジャンヌの会話に怪異を倒したゼノヴィアがロスヴァイセと共に合流する。

 

 『……来たか…!』

 シャドークローの拘束を解きシャドーバルカンにてダグアーマー同様妨害を実行していたダグシャドーが飛んで来たダグウイングを視界に認める。

 

 『ダグターボ!()()をっ!!』

 そう言ってダグウイングは蛙の口目掛け切断した怪鳥の翼を投げる。

 

 『ああ!解っているとも!』

 応えるや否や、再びターボダッシュで駆けるダグターボ。怪鳥の翼が開いた蛙の口内に届くその瞬間、ダグターボは唯一刃と化していない可動域を妨げない肩口の部位にその拳を振り上げる。

 

 ターボピストンナックルッ!!

 

 ダグターボのターボピストンナックルによって釘打ち機の釘の如く叩き付けられた刃は蛙の重甲堅牢な体に傷を入れる。

 

 「「傷がっ!?」」

 

 『やはり…いくら重装甲でも口内の部位は一段耐久度が落ちている筈です。何よりどれ程強硬かつ堅牢であっても元の素材が同じなら傷が付かない道理はありません』

 

 『……なる程、ダイヤを研磨するのにダイヤモンドカッターを使用するのと似たような物か……』

 

 『ハン、矛盾の理屈ってのとはチョッち違うが鳥ヤローの方がいくらか鋭かったって訳か』

 

 『ええ、面の物体に対して点の物体で風穴を穿つと言う理屈です。そしてあの蛙は口内を開いた時に荷電粒子砲のエネルギーをチャージしています、先ほどと違い攻撃が内部機構にまで届く様になった今、此方も高エネルギーの攻撃を仕掛ければどうなると思いますか?』

 

 『ドカン!ってか?ンだべオレの攻撃は基本実弾だぜ?ダグシャドーのプラズマバーンでもぶつけるってか?』

 

 『いえ、ロスヴァイセさんが適任です。勿論ダメ押しでダグシャドーも参加してくれても構いませんが……』

 

 『……念の為、他の敵に対して牽制をしておく…。それに恐らく彼女だけで事足りる。あの管理者はふざけてはいるが…渡した道具なり武器なりの精度は七割程度信頼に値する……』

 

 「残り三割ダメなんだ……」

 

 鋼の巨人達のやり取りを聴いて、刀使達に囲まれているアルファの方へチラリと視線を向けたジャンヌが呆れた様に溢す。

 

 『ンじゃ頼むゼ、ロスヴァイセチャン』

 

 「え…ええ、と言っても私の場合渡されたと言うより……奇妙な構築式を授けられたと言うのが正しいんですが……兎に角!分かりました!私なりに最善を尽くします!」

 

 言って、両手を翳し、科学的な魔方陣を展開するロスヴァイセ。

 青、赤、黄、緑(氷、炎、雷、風)の円其々の端が中央で重なる様に展開される。

 中央に現れるアルファベットGを象ったエメラルドの紋様、撃ち出される4つのエレメントが竜の姿を模して翼が刺さった蛙の口内へ殺到する。

 翼を通じて流れ込んだ膨大な高エネルギーに加え、自らが発射の為にチャージしていた荷電粒子砲のエネルギーが逆流し内部から爆発を起こす蛙、マネキンと怪鳥がダグオン達からの攻撃を受けるにも構わず慌てて退避しようと踠く。

 しかし多少離れた所で爆心地に程近い2体は光に呑み込まれる。

 

 「特殊術式【勇者王】GGG流マキシマムトゥロン。属性自体は在り来たりなエレメントなのにこの破壊力とエネルギー量……後でアルファ氏に訊いてみようかしら…」

 自らが放った技の威力と性質に驚きながらも、後の方になるにつれぶつぶつと呟き始める。

 

 『シャアっ!マトメて撃破だ!』

 

 『いや…まだ動く』

 

 蛙が味方ごと巻き込んで爆発した事に呵成を挙げるダグアーマーに対してダグターボは爆煙の中より動く2つの反応を見付ける。

 晴れた黒煙の中より姿を表した怪鳥とマネキン、2体は死に体の様に傷だらけであった。

 

 『怪鳥の超音波で爆発の威力を殺したか。トドメを刺すならば今を於いて無い!』

 

 『『『応!!』』』

 

 『ブレイクホイィィィイルッ!!』

 

 『ファイナルバスタァァァアア!!』

 

 『クリスタルカッタァァアア!』

 

 『シャドー手裏剣!!』

 

 4体の勇者が放つ怒涛の攻撃をしかし怪鳥とマネキンは超音波やレーザーを使い耐え忍ぶ。しかし──

 

 「やっと俺達の出番だな!」

 

 「文字通り、美味しい所を貰おうじゃないの!」

 

 「「"機動"」」

 

 ヘラクレス、ジャンヌ・ダルク共に神器に組み込まれた"勇者"の力を発動する。

 

 「おぉぉぉおお!ダブルファントムリングプラスゥ!」

 ヘラクレスの神器が黒鉄の籠手へと変化する。その形は塔城小猫が使用した物と酷似しているが、彼女の物と違い両腕の籠手が共に高速回転しているのだ。

 また腕の周囲には光輝く円輪が存在し回転する籠手の威力を大幅に底上げしている。

 

 「【勇者王】GGG式フィニッシュツール!ツインブロークンファントムを喰らえぇぇぇええ!」

 

 ロケットパンチよろしく飛び出す籠手の拳が怪鳥の残った翼に直撃する。

 全てを切り裂く翼も大質量・高トルクの拳を面で受けてしまっては破砕される他無い。

 ましてやそれが二撃ともなれば尾の剣など気休めにもならない。

 斯くして怪鳥は断末魔の超音波を放ちながら胴体に穴を開けられ、首を捥がれて絶命した。 

 

 

 「【勇者】宇宙警察式カイザーブレイド!ドラグーンボウ!ドッキング!」

 ジャンヌが発動した物は造り出された聖剣の1つを両刃の両手剣に、もう1つを弓へと変化させ、その2つを更に合体させる。

 すると巨大な両手剣に変化したではないか。これこそ彼の勇者グレートエクスカイザーの必殺武器巨大カイザーソードを元にしたグレートカイザーブレイドである。

 

 「サンダーフラッシュ!!せりゃぁ!!」

 

 サンダーフラッシュの声に伴い刀身を炎が 包み、黄金に光る。どういう理由か周囲の空は暗雲立ち込め、激しい落雷が鳴り響く。

 そうして黄金の剣となったグレートカイザーブレイドを死に体となったマネキン目掛け振るう。

 自身の数百倍はあろうかと言う人形がその一振で両断された様は正しく必殺の一太刀。

 硝子とも水晶とも取れる外郭を内部の骨格ごと断たれた人形はガラクタと化して崩れ去る。

 

 「やった!」

 「これで残るはあの門の化け物だけだな」

 

 『兵藤達は手伝わなくて良いのか?』

 「まぁ、勝つでしょ」

 「ああ、イッセーもヴァーリも強いからな。多少苦戦はするかもしれないが……勝つと思うよ。それはネプテューヌにも言える事だけれど」

 

 ロスヴァイセが拳を小さく握る中、既に次の標的をアーティシャン星人へと移すヘラクレスの発言にダグターボが口を挟むが、ジャンヌとゼノヴィアは何と無しに彼等とネプテューヌの勝利を疑わぬ発言を口にする。

 

 『フヘェ…そう言うモンかねぇ。スゴい信頼だゼ。ま、そんな言うンだったらオレらも星人の方に──』

 行こうゼとダグアーマーが続けようとした中、瓦礫の中から蠢くナニかが現れる。

 

 『『『『「「「「!?!」」」」』』』』

 

 それは半ば千切れ潰れた怪鳥の頭、下半分を断ち斬られ頸椎のみとなった骨格、爆発で粉微塵になった中唯一残った姿勢制御のスラスターを継ぎ接ぎにした三体の怪物を合わせた残りカス。

 ソレは己を倒した者達に向かう()()()()()、刀使達が密集する場へ蚰蜒の様に無様に駆ける。

 

 『……っ、狙いは清香達か…!』

 ダグシャドーがカゲムラサキを躱されその行く先に見当を付けた時には蚰蜒擬きは嘲笑うかのよう最後の悪あがきに少女達に凶刃を向ける。

 

 駆け出すダグターボ、ダグアーマー、ダグウイング。その瞬間3機の…否、3人の心の内が1つとなる。

 

 『『『させるかぁぁぁぁ!!』』』

 

 一瞬、ほんの僅な事ではあるが3機の鋼の巨人の身体を光のオーラらしきモノが覆う。

 心が1つとなった事で3機の巨人の性能が跳ね上がる。

 間に合う筈がなかった距離をダグターボとダグウイングが詰め、正面に回り込む。

 蚰蜒擬きの背後には既に翔び上がったダグアーマー。

 威力が上がったターボピストンナックル、グラビトンキック、抜手が蚰蜒擬きを直撃し、今度と言う今度こそ敵を撃破する。

 

 『……今のは…』

 3機の性能以上の力を目撃したダグシャドーは1人謎の現象に目を鋭くするのであった。

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 今の感覚は一体……?

 

 なんか身体がアツくなったな、どっかオーバーヒートでもしたのかネェ。

 

 ビークル状態ならいざ知らず、融合状態でそんな事になったのなら戦いが終わった後に僕らの身体もメディカルチェックをする必要がありますね。

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 最終決戦その3!二天龍VS二大巨獣。激突女神と偶像。

 

 なんかデカイピコハンが出てきたんですけどぉぉお!?

 




 う~ん、ラピライ早くリリースしてくれないかなぁ、そしたらタクトオーパスもリリースした時に迷い無くダウンロードするのに…。
 個人的にはカルメンとくるみ割り人形とワルキューレが好みですかねぇ、次点に運命と木星。

 それでは次回お会いしましょう。


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第九十三話 最終決戦その3!二天龍VS二大巨獣。激突女神と偶像。


 こんばんは。
 遂に戦闘の決着、後は後日談的なエピローグを残してこの異世界編は終わりとなります。

 遂に終わってしまったとじとも……大変楽しかったですお世話になりましたお疲れ様です。

 いやぁスパロボ30ヤバいですね、楽しい。惜しむらくはプレミアムサウンドがDLC限定な事でしょうか、私PlayStationStore繋げてないのでソフトは普通に直に購入したんですよね。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 うーん困った。GPSだと関東の何処かのはずなのに…。

 おかしいなぁ、迷子になるにしてもこんな事今まで無かったんだけどなぁ……?!あれ空が歪んで…!?

何か蜃気楼のような物が……っ!!?ダグオン!!

 

 って…!うわっ?!

 

衛藤雷火・偶然帰還前に偶然次元の歪みで現れたダグオン・異世界人と異星人の戦いを数秒目撃。調書報告○七より

 


 

 ━━歪曲断層・断崖クレーター内

 

 4体の勇者が巨大な敵を異世界の仲間と共に戦っている頃、女神パープルハートと赤と白、二天龍の力を振るう戦士達もまた各々に相対する強敵と火花を散らしていた。

 

 二天龍……兵藤一誠とヴァーリ・ルシファーが相対している怪獣は()()()()の左右で色が別れた甲冑と肉体が一体となった2対の半人半獣。

 種を変え品を変え、青黄が一誠を幻で翻弄したかと思えば、次の瞬間にはヴァーリの背後を強襲し、緑赤がヴァーリと正面から衝突したかとも思えば、一誠の真横から痛烈な剛腕を振るう。

 

 「見た目の図体の割りに…速い、堅い、鬱陶しいと厄介な三拍子のオンパレードだな」

 『こちらが慣れる前に互いが入れ替わる…。双方ともあの不可視の壁と同様半減が意味を為さない』

 「効いていない訳では無いのだろうが…こちらが半減や吸収をするよりも早く元のエネルギー総量に戻るか…警戒されたものだな」

 自らの神器に宿る白き龍と語らいながらどう戦ったものかと俯瞰する。

 

 一方で一誠は一誠でどうにも必死になりながら駆け回っていた。

 

 「くそったれっ!ヴァーリの野郎空から余裕そうにしやがって」

 『相棒も悪魔の翼で飛べば良いだろうに』

 「簡単に言ってくらるなぁ?!あんなん相手に長時間も飛べるかっての!!」

 赤龍帝の鎧に翼が存在しない事もあるが、そうでなくとも高速空中戦をあの2体の巨獣相手に慣れない身で仕掛けるのは無謀である。

 

 『だがどうする?そろそろ何か手を打たんと不味いだろう』

 「やっぱ、あの貰ったの使うしかないよなぁ…でもなんかそこはかと無く不安があるなぁ」

 『埋め込まれた側としてはまぁ何だが、特にこれと言っておかしな感覚は無い。いや発動してみない事には正確な所は言えんが』

 「だからって何時までもコイツらに気を取られる訳にもいかねぇ!あの宇宙人を倒して俺達の街を元のカタチに戻さねえと」

 言って急速を緩め、くるりと振り返る。

 

 「行くぞドライグ!」

 『おう!Boost!』

 相棒の声に応え強化の言を発する籠手の宝珠。

 

 『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

 繰り返される力の増幅。これを敵と交戦を続けながら都合数百回目、転生悪魔の少年は自らを世界の管理者と宣う存在から与えられた力を起動させる。

 

 

 「よっしゃぁぁあっ!"起動"!!」

 『Explosion!Transfer!!Awaken!Gordion Hammer!!』

 籠手より出でるミョルニルに翠晶粒子が纏わり付いて形を変える。

 金色の鉄鎚が橙色の大鎚らしきツールに変化を完了させた。

 

 「【勇者王】GGG式ハイパーツール!ミョルニルオンハンマー………って、ピコピコハンマーじゃねぇかぁぁぁああ!?!?」

 マテリアライズされた武装に思わず叫ぶ一誠、よく見ると右手の籠手もかなり変化しているのだが、彼の注意はツールの方に釘付けになっている。

 

 「ちくしょう!不良品掴まされたぁぁあ!!」

 『いや待て相棒、コイツは……』

 嘆く一誠に何かを伝えようとするドライグ、しかしそんな彼等のやり取りを隙と見た緑赤の強獣が襲い来る。

 『っ…!来るぞ相棒!』

 「だぁぁぁあ!!ままよっ!!」

 自棄っぱちに吠え強襲する敵をハンマーを我武者羅に振るう事で迎撃しようとする一誠。

 だからこそ、敵も彼の持つ()()を侮った。

 自らの腕の一振で容易く破壊出来ると踏んだ強獣はそのまま一誠ごと叩き潰そうとして腕を大きく振り下ろす。それで終わる筈だった。

 我武者羅に振るわれたハンマーが己の手を打ち弾き、亀裂を入れるとも露にも思わず。

 

 「はぇ?」

 

 一誠も自らがもたらした結果に思わず間抜けな声を洩らすが、しかし目の前の事象は間違い無く現実である。

 対し大いに狼狽える強獣はその本能に従って距離を取る。

 

 「マジか!」

 『ああ、マジだ。このミョルニルを変化させたハンマー…とんでもない代物だ。コイツに力を込めればやり様によっては国を一振で滅ぼせるぞ』

 「え…、何それ恐っ!メッチャ恐ェェ」

 与えられたツールの真価を語るドライグからの評に戦慄する。

 

 「やれやれ、中々とんでもないモノを貰ったじゃないか」

 

 「ヴァーリ!」

 

 「今のでもう一方も警戒を強くしたのか、君達とこうして語らう時間が出来た。さぁ奴等を倒す策を練ろうじゃないか」

 赤と白が並び立つ。

 

 「で、具体的にどうするんだ?」

 「俺が君を抱える。君も自分の羽を出して俺の飛行の助けになる事だ。そして俺が君を投げる。敵の片方をそのハンマーで叩け」

 「くそ雑いなぁ!?てかお前はもう一方の敵、どうするんだよ、さっきのディバインディバイディングドライバー?だかはもう使えないんだろう」

 「フッ…そんな事か。生憎と無用な心配だな、あの時アルビオンにインストールされた武装は1つでは無い」

 その言葉を聞いて一誠は鎧の下で顔をしかめる。

 

 「なんだそれ、ズルい!」

 

 「と言われてもな、元々アルファは俺にこれも使わせるつもりだったようだからね」

 『Divide!Divide!Divide!Ignition!!』

 戦場に散見する余剰エネルギーを半減させ、その力を受け取ったもう1つの武装の起動に使用する為の火を手に入れるアルビオン。

 敵から吸収した物を含めたエネルギーを再び左腕に収束させる。

 

 『Dimension!Boulding Driver!!』

 

 ソレは龍の尾を分割した物体が結合したカタチを成していた。

 ソレは破壊神の力を模したガジェットツール。

 

 「【勇者王】ジェネシック式ガジェットツール。ディバイドボルディングドライバー」

 本来黒い筈のソレはヴァーリの白龍皇に合わせて光を照り返す純白の円錐。

 

 「くそぉぉぉっ!カッコいいし!いや、それにしてもまたドライバーかよ!?」

 一誠が言う通りヴァーリの左腕のツールはまたしてもドライバー。

 但し、先のモノと違い螺子回しの先端を取り替えるアタッチメント方式型である。

 

 「行くぞ、暴れるなよ」

 

 空いた右の腕で一誠の鎧の首元を掴む。

 

 「もう少し運び様があるだろっ!?」

 

 文句を言いつつ悪魔の翼を出してヴァーリに掛かる負担を減らす。

 と同時に巨人達の戦場で大きな動きがあり、青黄の幻獣、緑赤の強獣、2体の巨獣が僅かに其方に気を取られる。

 

 『出来たな』『ああ、最大級の好機だ』

 

 「投げるぞ!」「こうなりゃとことんやってやるよ!!」

 

 巨獣達の頭上まで飛んだ2人、ヴァーリの声に合わせて身体を捻りながら構える一誠。

 器用に片手で人1人を投げるヴァーリも見事だが、投げられる方も身体の動かし方は見事だと言えよう。

 

 「行くぜぇぇぇぇぇぇ!!ミョルニルオンハンマァァァア!!光になぁれぇぇぇぇえええ!!!

 

 振りかぶった大鎚を強獣の頭頂部へ叩き付ける。

 その一撃は触れた物全てを原子レベルで素粒子分解する文字通りの一撃必殺。

 一誠のサイズに合わせて、あくまでも人間が持てるサイズの大鎚にまでダウンサイジングされているが、ドライグの増幅と強化により、サイズそのままでも自身の数倍あろうかと言う巨獣を倒す事など訳無い。

 強獣は一誠の言葉通り、光の塵と消えた。

 

 「す…すげぇ……武器なんてレベルじゃねぇ」

 『ああ、戦略兵器と断言するのも過言じゃない。歴代赤龍帝も真っ青な代物かもしれん』

 自身の能力ありきとは言え、巨大な敵をこうも容易く破壊…否、分解消滅させた事にある種の怖気すら感じるドライグ。

 感情の暴走の果てに行き着いた覇龍に匹敵するだけの結果を別世界の人類の叡智が、異星からの情報があったとは言え己の技術で再現するのだから末恐ろしさを感じるのも無理からぬ事だ。

 

 『赤いのが敵を倒した様だ』

 「ならばこちらも片付けてしまおう。ディバイドボルディングドライバー!」

 白き輝きを放つ破壊神の力、その名を高らかに叫び幻獣へと吶喊する白い閃光。

 

 『まずはコレだ』

 「プロテクトボルト!」

 アルビオンが選択したアタッチメントはプロテクトボルト、本来はディバイディングドライバー同様、空間歪曲によりバトルフィールドを生み出す物だがアルファの手が入り、アルビオンによって歪曲の指向性を調節された結果、幻獣を捕らえる檻と変質する。

 

 「次だ」

 『了解した』

 「ブロークンボルト!」

 檻の中で抵抗する幻獣目掛け、先端をブロークンボルトへと変更する。

 ブロークンボルトは龍王の波動を湾曲空間に通し檻を無視して幻獣へ直接衝突させる。

 すると幻獣は内部より爆発を起こす。それにより左右に別たれる上半身、但しその切断面は不自然な程に綺麗過ぎる。

 

 「ほう…奴の正体は二匹の怪物が一体となった物だったか、だが分離する暇も再生する暇も与えん」

 『これが最後だ』

 「決める。ジェネシックボルト!!塵芥と帰せ!

 最後に装着されたアタッチメント、ジェネシックボルト。

 ぶつけた目標を広範囲に半永久的に内部分解させると言う恐ろしい兵器だ。

 青い右半身に打ち込まれたソレは瞬く間に黄色い方にも伝播して、幻獣の存在を無き物とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただの彫像と甘く見ていた訳ではないけれど……予想以上に手を焼かせてくれるわね…!」

 

 同じ頃パープルハートも目の前に立ち塞がる敵に対し歯痒さを懐いていた。

 自分の紫と黒のプロセッサユニットに当て付ける様に正反対な白金と淡緑の女性を模した彫像。

 自分が女神ならば、彼方は差し詰聖女か御子か…此方の動きに着いてくる程の柔軟性を見せながら顔は彫像らしく無表情一辺倒、不気味な事この上無い。

 

 「このままじゃいけない。本当はあの宇宙人相手に取っておくつもりだったけど…そんな悠長な事を言っている場合じゃ無いわ」

 アルファに託された物とは別に、彼女が元々持ち合わせていたとある切り札を切る事を決意させる。

 

 「とは言えまずは隙を作らなきゃね…喰らいなさいクロスコンビネーション!」

 何をするにしてもまずは敵に邪魔をさせない事が重要である。

  返す刀で畳み掛けるパープルハート。

 「まだまだ行くわよ!32式エクスブレイド!!」

 強力な斬撃を繰り出し、相手が離れたくなるよう誘導する。

 思惑通り、女性の彫像はパープルハートより上に上昇して行く。

 

 「私より高い場所なら余裕で躱せる……そんな風に思ってるのかしらね、彼女に明確な意思があればだけど」

 自分を見下す位置から対応出来る様にしているだろう彫像を見上げながら、パープルハートはとある(ピース)を取り出す。

 ソレは自らの負の1面を封じた物。

 心の奥底にあった澱み、自らが向き合った陰の己。

 混沌の駒(カオスピース)──それが彼女の切り札。

 

 「さぁ、覚悟は良いかしら?これが私のネクストステージ!」

 神より出し落とし子がその身を禍々しき力で包む。

 

 

 

 

 

 「うわぁ…何あれ悪役みたいなオーラしてるー。でも制御してるから暴走フォーム的にはおいしくないなぁ」

 

 「ネプテューヌさんの周りに黒い靄?かな…何かが…」

 

 「あれは大丈夫な物なんでしょうか」

 

 アルファが上空数百キロメートルを平然と裸眼で認識している横である程度余裕がある刀使達の中で明眼を持つ柳瀬舞衣と鑑刀眼の応用で力の流れを見ているミルヤが声を洩らす。

 

 

 

 

 

 

 そしてその上空では闇が収束しパープルハートは新たな姿を顕にする。

 

 「刮目しなさい、これがカオスフォームよ!」

 

 一見すれば禍々しい姿、しかし同時にヒロイックさも持ち合わせた秩序と混沌のマリアージュ。

 女神パープルハートカオスフォームが異世界に顕現した。

 

 「何か…好き勝手言われた気もするけど……次は"コレ"ね」

 

 姿を変えたパープルハートに傍観していた彫像は危機を感じ、直ぐ様強襲に移る。

 

 「ちょっと…行動に移るのが遅かったわね。もう"起動"しているわ」

 

 黒き混沌と秩序の太極に新たなに混じるのは太陽の光。

 それは正しき者を守る炎。悪を焼く勇気の閃光。

 人が生み出した鋼の身体に宿った不屈の正義。

 闇祓う暁の黎明。

 宇宙警察機構の英雄の力。

 

 「フレイムソードNEXT!」

 

 タイプ【太陽の勇者】天野式レスキューウェポングレートフレイムソード、フレイムソードNEXT。

 それがカオスパープルハートが手にした武装の名である。

 グレートファイバードが振るった必殺剣の力を、今パープルハートが振るう。

 

 「チャージアップ!」

 

 バイオレットグラデーションに彩られ輝く刀身に光と炎が逆巻く。

 フレイムソードNEXTとなったブレードを手に彫像を迎え撃つカオスパープルハートその身が交差する距離で女神は剣を振り上げ、下ろす。

 一見して一刀、しかして彫像には都合七度の斬撃線。

 バラバラになった彫像だった物が地上へと落ちて行く。

 

 「次に生まれる時は、正しい命として生まれて来る事を願っているわ」

 

 討伐と同時にカオスフォームを解く。

 

 「残るはあの宇宙人だけね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━冥次元・山北町

 

 その現象は唐突に起こったとその場に居合わせた者達は思ったであろう。

 

 街ごと反転し、アザゼルに兵藤邸で保護?を受けて以来毎日好き勝手している(主に全てエミリー)転位した調査班達だったが、その日、丸山茜の慌てた言葉によって、兵藤邸に残る英雄の血脈の者達やアザゼル含む数人の堕天使達とその現象に遭遇していた。

 

 「おいおい……コイツぁ何の冗談だ?」

 

 アザゼルの視線が空に釘付けになる。

 さもありなん、彼を含めた皆の視線が空に集まるのも無理からぬ事、何せ今彼等の視線の先には突如発生した蜃気楼らしき現象がまるでプロジェクターの如く、もう1つの世界で今まさに行われている最終決戦の様相を映し出しているのだ。

 

 「ああ、ダグオンが異星人と戦ってますね。あの大砲は初めて見ますが」

 

 「ムムム!新兵器でしょうかな?私クン、目茶苦茶興味津々ですぞ!」

 

 「ファイヤーダグオンにダグターボ、ダグアーマー、ダグウイング、ダグシャドー……ライアンにふむふむ…あの蒸気機関車の側にドリルゲキ氏」

 

 「あっちに見える人達は……むっ!もしやアレは祢々切丸!?ってことは薫先輩!なら他の人達ももしや!!?」

 

 渡邊エミリーが空の現象を見て口を猫の様にしたりながら無限砲に注視し、続いてその指摘に森下きひろが興奮気味に声を荒げる。

 更に隣で播つぐみが目に見えて目立つ鋼の巨人達を数え、そこからやや離れた場所で転がるドリルライナーとその屋根に立ちながらロッククラッシャーで異星人に攻撃しているドリルゲキを見付けて付け加える。

 最後に丸山茜がドリルライナーから少し離れた場所でダグオンと女神一行の戦いを見守る刀使達の姿を認め、その中でも一際目立つ大太刀を持つ少女が薫である事に気付き、他の刀使達もあの時自分達と共に居た面々だと思い至る。

 

 「あのロボットが度々お前達の話に出て来たダグオンだと言うのか…」

 

 アザゼル同様に空の光景を見ていたゲオルクがすぐ側の茜に確認する様に呟く。

 

 「はいッス!今はロボットの姿ッスけど普段はもっとヒーローっぽい感じなんッスよ?えっと…こう…なんて言ったらいいッスかね、薫先輩が大好きな五人組ヒーローみたいな感じの……」

 

 「スーパー戦隊デスかね?ワタシもあまり詳しくは無いですけれど、色とかメンバー構成は似てますシ。ああ、でもメンバーは全員男性らしいとの事ですから仮面ライダー?に近い部分もあるんじゃないかと」

 眼鏡を頻りにクイクイ動かしながら首を動かさずに茜の言葉に被せる様に語るエミリー。

 恐らく彼女の場合、映像の内容よりも、それを起こした現象の方に好奇心が向いているのだろう。

 

 「はー、半信半疑な所もあったが…こうして見せられちまったら納得するしかねぇな。なんせウチのねぷ子達も一緒に戦ってるとあっちゃなぁ」

 アザゼルが同じく映っているパープルハート達の姿を認めながら呆れ半分感心半分の息を吐く。

 

 

 

 「スゥゥゥゥウパァァァアロボットォォォオオ!!?」

 

 

 

 そしてそんな兵藤邸の庭から見上げていた彼等彼女等の耳につんざく様な歓喜の悲鳴が木霊す。

 

 「なっ、なんだぁ?!」

 

 急に聴こえた声に思わずたじろぐアザゼル。宙から視線を外し、玄関の方に周り込み声の主を探す。

 玄関前の門を出て道路の路端に停まった黒塗りの高級車を見付ける。

 果たして声の主は其処に居た。

 見付けた人影は3人、内2人は制服姿に刀を帯刀した少女。

 

 (うん?あの白い制服は森下と同じ綾小路武芸学舎だったか?の制服だな。もう一方のは……見覚えは無いが、刀を持ってる所を見るとあの娘達と同じ刀使か…。いや、それはいい。問題は最後の一人だ)

 

 人影を認め即座に思考の中で答えを弾き出す堕天使総督。

 そうして判明した人物に思わず頭を抱える。

 

 (何をやっているんだあのお嬢さんは……)

 

 声の主の正体はアザゼルも知る人物、冥界の大物、大公アガレス一族次期当主、シーグヴァイラ・アガレスがまるでアイドルのライブに熱を上げるかの如く恍惚とした顔を浮かべていたのだ。

 

 「あ、あの…シーグヴァイラさん?」

 

 「まさか目的地を目前にしてこんな事になるとはね…」

 共に居た2人、岩倉早苗と鈴本葉菜が困った顔を浮かべて立ち尽くしている。

 と、其処へアザゼルの後を追い声の主を一目見ようと出て来たつぐみが2人の名を呼ぶ。

 

 「おや、岩倉さんに鈴本さん、お久し振りです」

 

 「えっ?播さん!?」

 

 「この街にいるぼく達の仲間って君の事だったのか!」

 

 管理局本部で幾度となく顔を合わせたポーカーフェイスの少女の登場に早苗、葉菜共に再会の喜びよりも驚きが勝る。

 

 「成る程、アザゼル氏が言っていた同類とは貴女方でしたか。所で、此処には私以外にも居ますので単数で表すのは適切ではありません」

 

 「おや、おやおやおや?!何事かと思えば平城と綾小路の制服を着た刀使が居るではありませんか!」

 

 「ななんとぉ!鈴本氏ではありませぬかぁ!」

 

 「おおぉぉ!!御前試合平城代表のお一人ではないッスか!!」

 そうして続々顔を出すエミリー、きひろ、茜の中々に濃い面子に早苗も葉菜も思わず顔を見合せ苦笑するより他に無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「馬鹿な……我が秀作が全て討ち果たされただと」

 

 『残るはお前だけだ!大人しく倒されろ!!』

 

 未だしぶとく逃げ回るアーティシャン星人相手に、ジェットファイヤーミサイルを撃ち続けるファイヤーダグオンが最後通告を叩き付ける。

 

 「否!否否否否否!断じて否だ!私は死なん!この星を作品と化すまではぁぁぁああ!」

 

 叫ぶ星人、だがそんな彼の元にその野望を阻むが如く戦士達が集結する。

 

 『ブレイクホイィィィィルッ!』

 

 『アーマーミサイルゥゥウ!』

 

 『フリーズビーム!』

 

 『シャドーバルカン!』

 

 「聖魔剣!」

 

 「デュランダル!」

 

 「ドラゴンショット!」

 

 「にゃぁぁあ!」

 

 「そぉおらっ!」

 

 「せいっ!」

 

 「雷光よ!」

 

 ダグオン達は当然として、他数名も裂帛の声と共に攻撃を放つ。

 大小様々な技が星人へと殺到する。

 

 「オゴォッ!?ばぁッ!ギギ…このままでは…このままではァァァア!!」

 

 『よし、砲身冷却完了。エネルギーフルチャージ可能。今度こそコイツで決めてやる!』

 

 囲まれ四面楚歌と化した戦場で尚打開策を講じようと足掻くアーティシャン星人。

 一方でファイヤーダグオンは無限砲を再び放たんと構える。

 

 「ギ…ヒッィィ?!(まさかもう一度撃って来るのかぁぁあ?!)」

 

 アーティシャン星人はファイヤーダグオンが無限砲を構える様子を目撃し慌てて逃亡手段を何としても生み出さんと己の獣と化した肉体を無理矢理改造し始める。

 

 (逃げる…何としても逃げ延びる!我が芸術の為にィィィ!その為にはぁ!空…そう空だ!赤いヤツは砲を撃つ為に動けない。緑のヤツは飛べない。青いのも高高度はそこまで速く飛べない筈!警戒すべきは白と紫…そして異世界の女神を名乗る女に白い甲冑くらい……)

 残った右腕を己の身体に突き刺し造り変える。

 獣の四足は消え、鳥類の様な逆間接の細足となり、千切れた腕を補う様に大きな翼を生やす。

 突き刺した右腕を胸部に取込み胸から三本指の腕を改めて生やす。

 

 (余計な事は考えず逃げる事のみを頭に…他少の邪魔は腕を振るって蹴散らしてやればいい!)

 

 屈伸の勢いを付け跳躍を始める星人。

 脇目も振らず真上に跳び、そして翼を羽ばたかせた飛行を始める。その様はロケットだ。

 

 「ヒヒッ…ヒヒヒヒッ!いくらあの大砲が凄まじい威力であってもこれ程の距離を狙撃するような真似は出来まい!!」

 

 大気層まで逃れたアーティシャン星人が暗い笑いを浮かべ滞空する。

 

 「ふぅ…ふぅ…はは、フハハハ…!さぁて後は手間だが宇宙に出てエデンに帰還し傷を癒すだけだ」

 

 肩であった場所で息を切らしながら自身の生存を確信した芸術家は呟きを洩らす。

 真下がどうなっているかも確認せず──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『野郎…!逃がすもんかよ!』

 跳び去った星人を追い掛けようとファイヤーダグオンが翔び立とう脚に力を込め、翼のエンジンを回転させる。

 

 『待てファイヤーダグオン』

 

 『何だよ?!止めるなよ!』

 

 其処へ待ったを掛けるダグターボに思わず反論を返す。

 

 『アルファ、確認するが奴はまだ無限砲の射程範囲内なんだな?』

 

 「そうだねぇ~、地上を逃げられたらちょっと厄介だったけど空なら今余計な障害物は無いから、()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 話を振られあっさりととんでもない事を答える美少女風美少年。

 それを聞いて頷いたダグターボはダグアーマーを近くに呼び寄せる。

 

 『ンでオレの仕事は何だ?』

 

 『何、難しい話では無い。貴様の視覚センサーを私を経由してファイヤーダグオンに同期させる』

 

 『ハハーン、要はオレはライフルのターゲットスコープってワケか』

 

 『なら僕にも視覚情報を共有してください、余剰情報は僕の方で処理しておきましょう。言うなればスポッターですかね?』

 其処へダグウイングも合流し提案をする。

 

 『良いだろう、決まりだ。先の一撃を見る限りこのままこの場所から撃つのは危険やもしれん。ファイヤーダグオン、お前は念の為ある程度宙に滞空した後、ダグアーマーの合図で引き金を引け』

 

 『そう言う事か!分かったぜ任せろ!』

 

 ダグターボの意図を理解し空へと翔ぶファイヤーダグオン、姿勢を水平にし滞空、無限砲を両の手で構える。

 

 『相対距離問題無し、風速は無視して構いません!』

 

 『見えるぜ見えるゼ!バッチリ見えてらァ、外すなヨ?』

 

 『アホ抜かせ、こんだけお膳立てされて外せるかよ!エネルギー充填100%!ターゲットロック!』

 

 無限砲に光が溜まってゆく、甲高いガイドビーコンのピピピと言った音がファイヤーダグオンの頭の中に響く。

 

 『今度こそコイツで終わりだ!』

 

 翼のエンジンを吹かしながら姿勢を固定させ、捉えたその姿を視線から外さない。

 

 『フルパワー無限砲!シュゥゥゥゥウトォォォオオ!』

 

 放たれる極大の光芒、立ち上るは光の柱、行き着く先は邪悪の徒。

 悪を滅ぼす一撃が今放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハハハハハハッ!さて休息はこのくらいにして宇宙へ──」

 

 その言葉を彼が最後まで紡ぐ事は無かった。

 真下から立ち上る光の柱に気付かないアーティシャン星人は光の渦に路傍の石の如くあっさりと呑み込まれ、何が起きたのかすら理解する前に消滅した。

 

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 おお!何かよくわかんないッスけど悪い宇宙人が倒されたんッスよね?!

 

 ですな!これで我々も元の世界に帰れるやもしれませんぞ!

 

 まぁ今すぐとはいかないでしょう。

 

 同感、早々すぐに戻れる程世界は都合良くないデスしね。

 まぁそれまではワタシ達もこっちで好き勝手させて貰いましょう♪

 

 いやお前達もう充分好き勝手してるだろうが……。

 

 

 うーん判断を誤ったかなぁ、こっちに合流するんじゃなくて…ぼく達が見付かった場所から素直に帰るべきだったかな…。

 

 まぁまぁ…折角みんなと合流出来たんですから

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 異世界協奏曲エピローグ。

 

 きっと向こうも完全に元に戻るまでのモラトリアムを思い思いに過ごしてるハズデスよ?

 

 





 はい、因みに今日の正午に二度目の接種に行く予定となります。
 副反応が如何になるか想像も付きませんが次回はなるべく早く投稿出来たら良いなと思っております。

 モレーさん全然出ないんですケドォ!!?

 次回にてまたお会いしましょう。


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第九十四話 異世界協奏曲エピローグ

 こんばんは、コラボ章も今回で最後です。
 それにしても年末が近付くにつれ仕事が忙しくなる……、次の話のプロットも捏ねるのに時間が掛かってしまうかもしれません。

 タクトオーパス5話にワルキューレ出たのは良かったなぁ…出来たらカルメンか木星かクルミ割り人形もアニメで動いてる所見たいなぁ。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 斯くして鋼の巨人となりし勇者達はまた1つ巨悪を砕いた。

 しかして戦いは終わらず、であるが彼等はまた一時の休息の時に身を委ねん。

 しかし大公の関係者で行方不明になったのはシーグヴァイラではなかったと言う事か……。

 

 ンン!我が名はデルタ!漆黒を纏いし次元の執行者

 


 

 ━━月軌道上

 

 地球の外縁軌道より離れ月の影に隠れる形のJーエースが気付いたのはその光芒が途轍もないエネルギーであったからだ。

 

 『おぉぉお?!余史上最大のピンチ!!?故にイタシカタなぁぁあし!』

 

 感知したエネルギーの奔流から逃れる為、間髪入れず後部車輌を切り離す。

 余計なウェイトを無くしたJーエースは瞬く間に光芒の範囲から逃れる事に成功する。

 

 『許せベテル、余としては別段惜しくも無いが…貴様の最期は余が盛大に盛り立てて伝えてやろう』

 

 「勝手に此方(こなた)を殺すな!」

 

 『おお!無事であったか………残念だ』

 

 「ええい!もう少し取り繕え!!」

 

 自身の中でシートをバンバン叩く仮面の修道女の文句を聞き流しながらJーエースは彼女がどの様な手段で助かったのかを訊ねる。

 

 『して、一体如何なる手段を使いあの光から逃れたのだ?』

 

 「忘れたか?此方は次元を操りし者。己の身一つ転移する程度なら装置など無くとも容易い」

 

 『おお、言われてみれば。しかしなんだ、その件の装置は光に呑まれ消えてしまったが……大丈夫なのか?』

 

 「さてな。破壊された以上、地球で入れ替えた街が元に戻るのも時間の問題だろう。

 そもそも、アーティシャンめが此方をこき使い入れ替えた他の地も、彼方めが置いたであろうモナドなる彫刻が破壊され続々と元に戻っていったのだ。

 最後まで確認出来た訳では無いが……恐らく彼方めは生きてはいまい」

 

 『そうか…、ならば余達が此処に留まる理由は無い。弟達も戻ったと言っていたしな。

 まぁ見世物としてはそれなりではあったな!ハッハッハ』

 

 相も変わらず仲間意識の稀薄な彼等の会話、Jーエースは言葉通り月の軌道を離れ、火星圏のエデンへ帰還せんと進路を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・日本山北町in駒王町

 

 無限砲より立ち昇った光が消えてゆく。

 周囲を席巻していた荒魂やザゴス、シード星人等の雑兵有象無象も刀使の手により殲滅せしめ、空間歪曲によって生まれた断崖の中に残るはダグオン、刀使、そして異世界より来た来訪者達のみ。

 今回の騒動の首謀者と目されるアーティシャン星人を倒したファイヤーダグオンが今、ゆっくりと降下し着地する。

 

 『よっしぁ!見たか俺の一撃ぃ!』

 

 『狙い付けたのオレな』

 

 「その武器を造ったのはボクとギアちゃんだから」

 

 「きょ、恐縮です!」

 

 大地に降り立ち第一声が子供の様な勝鬨の声、そんな彼にツッコむのは視覚センサーを貸していたダグアーマー。

 更に敵を討った武装──無限砲を製作したのは己と異世界の少女だと喧伝する美少女にしか見えない美少年。

 

 『分かってるって、今回ばかりは助かった……ってお前何で顔に痣出来てんの?』

 

 「これ?ねぷねぷが倒した敵の破片がぶつかったの…痛い」

 

 「何かごめん」

 

 『いや謝る必要は無い』『割りとジゴウジトクだしナ』『まぁ良い薬になったのでは?』『…どうせすぐに忘れ、また調子に乗る…。今時分くらいはへこませておけ……』

 

 「それよりワシのドリルライナーを直さんかい!」

 

 ファイヤーダグオンが指摘した通り、アルファの右目がパンダの様に痣になっている。

 その原因はパープルハートが倒した女性の彫像の胸部らしき破片が激突したと言う、それに対しネプテューヌが申し訳なさそうに謝罪を口にするが、勇者達は口々にそんな必要性は無いと述べる。

 ゲキなどそんな事より自分のマシンを直せとせっつく。

 

 「え、ひどくない?」

 

 

 「あの~……お話中申し訳ないんですけど、なんかその大砲、バチバチって鳴ってません?」

 そんな空気の中、山城由依がおずおずと挙手をして会話に割って入る。

 

 『何っ?!』

 

 気付いた時には無限砲の表面に無数のプラズマと火花が散っており、ファイヤーダグオンは慌てて無限砲のジョイントを解除、思いっきり遠方に放り投げる。

 

 『全員、我々の背後に!』

 

 ダグターボがネプテューヌ達一行や刀使達に自分達の身体を盾にする様に指示を飛ばす。

 鋼の巨人達が少女達を守り易い様に膝を屈めたり、密集したりとして爆風に備える。

 遅れて轟く爆音、凄まじい爆風が巨人越しの少女や少年達を襲う。

 

 「ぁぁぁああああ!?!ボクの無限砲が」

 「私の無限砲が!!」

 

 「「ん?」」

 

 「いやいやいや、ギアちゃん?何言ってんのかな?無限砲は元々ボクが造ってたモノだよ?キミはそれを手伝っただけだよね?」

 

 「いえいえ、確かに仰る通り、製図や基礎フレームは元々アルファさんのモノですけど、大元は別の人が造ったモノなんですよね?それにパーツ加工と組み上げ、プロトコルを組んだのは私ですし」

 

 「「ぐぬぬ…」」

 

 「えっ、ナニあれ…」

 

 「意外ですわねぇ」

 

 「お互いの琴線に触れた何かがあったみたいね」

 

 無限砲爆発から突如てして始まった笑顔の睨み合いからのマウント合戦。

 唐突に始まったそれにネプテューヌは困惑し、朱乃、リアスが珍しいモノを見たと言う顔で傍観する。

 

 『アルファのヤツ、珍しく突っ掛かるじゃネェの』

 

 『エンジニアとしてのサムシングから来る譲れない何かでしょう。気持ちは解ります』

 

 『解ってしまうのか……いや、お前はそうだったな…』

 

 『……しかしどうする?無限砲もドリルライナーもこのままと言う訳にも行くまい……』

 

 物珍しそうに溢すダグアーマーの横でダグウイングが腕を組んで深く頷いている。

 そんなダグウイングの共感を示す言に何とも微妙な所感を感じつつも、ああ…そう言えばこの男は綾小路の問題児として数えられていたと納得するダグターボ。

 そんな彼の心労を理解した上で、しかし今現在直面している問題の方を提示するダグシャドー。

 

 「勿論っ、持って帰るよ!そろそろこの空間歪曲も揺り戻しが来て元に戻ろうとするからね、その前にキミ達で運んどいてよ」

 

 そう言ってビシッという擬音と共に指を差すアルファ、その言葉を何となく想定していたダグオン達は各々軽い返事を返すと作業に取り掛かる。

 

 『あーあ、砲身が破裂したパイプ管みたいになってらぁ』

 無限砲を放り投げた責任もあってか自ら回収に出向いたファイヤーダグオン、爆発した無限砲だったモノを見て思わず溢す。

 その言葉の通り、無限砲の砲身の先端は膨張し破裂した蒸気パイプの様なひしゃげ具合となっている。

 他、ジョイント部も爆発により黒ずみキャノピーも砕け、辛うじて大砲としての形だけを維持している。

 それ故、ジョイント利用して担ぐ事が出来ずに最終的に両手で抱える事となった。

 

 片や試作型ドリルライナーはライナーチームが融合を解除し各機体下部から牽引用のワイヤーを出し、一誠や祐斗、ヘラクレス、曹操が固定作業を手伝っている。

 

 「オーライオーラーイ!」

 

 「器具を見るに磁力式というヤツか、手伝いと言っても我々の仕事は誘導とワイヤーがしっかりと固定されているかの確認くらいなものだが」

 

 「点検作業も立派な仕事だと思うよ、機械の目だけじゃ解らない事もあるしね」

 

 「つっても引っ張った感じしっかりくっついてるぜ」

 

 ターボライナーの誘導をする一誠を尻目にドリルライナーに接続されたワイヤーの基部を確認している曹操。

 ヘラクレスがワイヤーを引っ張り、強度を確認している。

 ドリルライナーの中では薫と美炎が客車を散索している。ちゃっかり黒歌と小猫が座敷猫よろしく寛いでいるのはご愛嬌。

 可奈美、姫和、エレンがガードホークに運ばれ断崖の上へ。

 沙耶香、舞衣、ミルヤをガードウルフが。

 智恵、呼吹、由依をガードタイガーがバトルモードで断崖の上──街の方へと運んで行く。

 残る清香をジャンヌやアーサーと共にダグシャドーが運ぶ事で飛行出来ない者達を断崖から脱出する。

 リアス、朱乃、ギャスパーの様に自ら飛べる事が出来る者達は自力で飛んで上へと移動する。

 さらりとヴァーリがネプテューヌをお姫様抱っこで飛んでいる。

 さて、では残る飛行が不得手の者、飛行出来ぬ者はどうするのかと言えば──。

 

 「はーい、飛べない子達しゅ~ご~。っと言ってもギアちゃんとイッセーくん飛べるよね?あ!もしかして疲れてるからとか?まぁサービスで一緒に上に連れってってあげるけど」

 胸元のポケットから小さな装置を取り出して遠間隔に配置しながら周囲に呼び寄せる。

 

 「それは?」

 

 「んふふ~♪超お手軽使い捨て転送装置、その名も"瞬間小隊ジャンプ"さ!」

 

 「危なっ?!名称危なっ!!?良いのかそれ?!著作的に!!?」

 

 ロスヴァイセからの質問に意気揚々答えるアルファ、そして道具の名前を聞いて一誠が脂汗を大量に浮かべてツッコむ。

 が、この楽天家にそんな常識は無い。

 

 「えー?何がー?何が危ないのかなぁ?」

 

 寧ろ藪をつつかせに来る。

 

 「いや…こう…某月曜発売日の……って言わねぇよ?!」

 

 「ちぇ…。じゃ、いっくよー!」

 

 一瞬乗せられた一誠、しかしハッと我に帰ってアルファの思惑を外す。当然目の前の少年は期待を裏切られてふて腐れる、と同時に装置を起動させるので心の準備なぞ出来ていない他の面々は抗議を口にしようとするがそんな間も無く、転送は終了し、気付けば見慣れた街並みの中である。

 

 「はい、とーちゃーく。さぁみんな撤収準備だよー」

 

 「いやちょ、待てよ!」

 

 「えー、なに?ボク的には疲れたし痛いし帰りたいんだけどー」

 

 一誠の如何にも抗議すると言わんばかりの顔に、眉を潜めて帰りたいと宣うピンク頭。

 しかし赤龍帝の少年とは別に彼等のすぐ後ろからやって来た銀髪の少女からも抗議が飛んで来る。

 

 「失礼、少々お待ちを」

 

 「えー、ミルヤちゃんもー?何なんだよ~」

 

 「さて、兵藤一誠氏に関しては私に言われても仕様が無いのですが……私共の要件は明快です。あの断崖の内に放置しているノロの事でご相談があります」

 言われて、そう言えばあの雑魚星人達ってノロ混じりだったなと思い出す管理者アルファ。

 

 「はいはいノロね、ノロ……(後々の事を考えたら放置しておいても問題無い…や、それはそれで新種の荒魂が産まれる可能性もあるのかぁ)しょうがないにゃあ、ファイヤーダグオン君、ちょっと合体解除してファイヤージャンボにノロ回収させてくんない?」

 

 『色々雑だなぁ、ちょっと待ってろ』

 

 急に話を振られ呆れるファイヤーダグオン。無限砲だったモノを拓けた場所にゆっくりと置くと、そのままダグファイヤーとファイヤージャンボに分離し、再び断崖の中へと戻って行く。

 断崖内ではダグファイヤーがファイヤーラダーと共にファイヤージャンボへとノロの回収を始めている。

 

 「ファイヤージャンボの積載量ならあの量のノロも余裕ヨユー。歪曲が閉じる前には作業も終わるよ」

 

 「感謝します、では回収を終えたノロは後程来る回収班の者に渡して貰えると…」

 

 「うーん、それはちょっと難しいかなぁ、そっちと規格が違うからさ。だから引き渡すのは後日って事で♪ダメ?」

 

 「……それは…いえ、分かりました。上にはその様に報告しておきます」

 

 アルファの返答に僅に眉根を寄せ困り顔をし、暫しの沈黙の後、自らの裁量を以て結論を出す。

 そうしてまた1つ苦労を重ねた少女と入れ代わりでネプテューヌがアルファの元へとやって来る。

 

 「ねぇねぇ、訊きたい事があるんだけど…」

 

 「ん?もしかして敵を倒したのに街が基の世界に戻らないって事?」

 「全部言われた……」

 「まずさ、すぐに戻ったらボクはともかく、他の子達は困るじゃない?それに倒したのは首謀者であって原因の装置は別にあるし…まぁその装置の反応を感じ取れるんだけどね」

 「それじゃ今すぐその装置ってのを探さないと!!」

 「無いよ」

 

 「え?」

 

 「だからもう無いよ。ファイヤーダグオン君が空に逃げる宇宙人を倒した時に、その射線の先にあった装置も消えて失くなったし」

 

 「え、ってことはその装置ってずっと空にあったの?」

 「正確には宇宙だね。まぁあの玩具にしては規模が大きかったし、エデンの宇宙人の誰かが何かしら改良を加えていたんだと思うけど、だからまぁ多分明日の夕方くらいには元に戻るんじゃないかな」

 「ホントかなぁ…」

 

 アルファが今回の次元入替えの原因について黙っていた事実に対し、僅ばかりの不信感を募らせつつも、だからダグオンのメンバー達からも扱いがぞんざいになるだろうなと思い至る。

 

 「ホントホント、こういうのはウソつかないから」

 

 「(それ以外はウソつくんだ…)わかった、んじゃ今日と明日の夕方までの時間はまだまだこの世界で過ごす事になるんだね」

 

 「そうなるね…あ、ノロ回収の人達来ちゃってる。まぁミルヤちゃんがボクに質問する前に呼んでたみたいだし仕方無いね。無駄足ご苦労様でした」

 南無南無と手を合わせ回収班の徒労に拝むアルファ。

 

 この後、ダグオン達とアルファはダグベースへと帰還し、ネプテューヌ達は刀使達と共に刀剣類管理局に帰参する事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・刀剣類管理局本部

 

 神隠しに端を発した今回の異変。それらの件が一応の終息を見せたとあって、本部発令室の本部長席に座る真庭紗南も一先ずの安堵に肩を撫で下ろす。

 

 「異星人を倒し、明日の夕刻には街も元に戻る…か、事実であるなら当面は安心だな」

 

 「はい、アルファ何某と名乗った人物の発言に嘘が無ければ…ですが」

 

 「その辺りは…ダグオン達の元に身を寄せていただろう其方に意見を訊きたい所だな」

 

 ミルヤからの報告を受けながら、彼女の隣に同行していたリアスに視線を配る。

 

 「付き合いが短いから詳しくは何とも…ただ、ダグオン達が何も文句を言っていないし、もう一人…彼等の基地に管理者を名乗る存在が居るのだけど、彼女…ええ、彼女の方は信が置けるから、彼女も同意見であるなら問題は無いはずよ」

 

 「他にもあの様な存在が居るのですか……」

 

 「まぁその管理者とやらに関してはいずれダグオンもしくは当人から詳しく訊くとして、ご苦労だったな木寅、グレモリーもわざわざ疲れている所呼び出して済まなかった。明日までゆっくり休んでくれ」

 

 新たに浮上した謎に頭を悩ませつつも、ひとまずはと部下と客人を労う紗南。

 

 ミルヤとリアスは連れ立って発令室を後にする。

 

 「はぁ…(また厄介な問題が増えた…いや、考えようによってはダグオンと一括りに出来るか。話を聞いた限りではダグオンとの関係も良好とは言い難い気もするが……)ダメだな、少ない情報で考えても頭が痛くなるだけだ、取り敢えずは朱音ちゃんの方にも情報を共有しておかないとな」

 薫は紗南をブラック上司と謗るが、彼女も彼女で過労に喘いでいる存在である。

 宜なるかな、国家公務員と言う名の社畜は管理職であっても避けられ得ぬ肩書である。かしこ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース前・格納スペース

 

 刀使達を降ろし、試作型ドリルライナーと無限砲を空輸で持って帰って来た勇者達は現在、その持って帰って来た(片方はゴミ同然となったと言っても過言ではないが)荷物の前で立ち尽くしていた。

 

 「どうすんだよ、これ」

 雑に置かれたドリルライナーと無限砲を前に焔也が溢す。

 

 「モチロン、データをサルベージして本格仕様モノを造り上げるよ?」

 

 「そう言う事じゃなくてヨォ、この置物にしかなんネェデカブツ二つをどう処理すんのか訊いてンだヨ」

 

 「ドリルライナーに関してはまぁ、まだ使い様はありますけど、無限砲はこれ…処分すべきでは?…いやでも…下手に処分しようにもエネルギー元の技術によっては特別な処理が必要な可能性も…汚染なんて事も──」

 

 「どうあれコレ等の処遇は全てお前に任せて良いんだな?アルファよ」

 思考の坩堝に没頭し始めた翼沙を置いて、戒将が無限砲のキャノピーに何らかの端末を差し込んでいるアルファに訊ねる。

 

 「まぁそこはボクの領分だし任せたまえよ!それよりも明日がねぷねぷ達と過ごせる最後なんだし、お世話になったお礼でも考えといたら?」

 

 「……一番世話になっていたのはお前だろう……」

 

 「てへっ♪」

 

 その夜、アルファの顔に青アザが増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星圏・エデン監獄

 

 「へぇ、あのナルシスト殺られちゃったんだ、性格はクソだったけど作品は嫌いじゃなかったなぁ」

 監獄の中央広場で囚人の誰かがそんな事を口走る。

 

 「マジかよ」 「趣味悪ぃ」 「ナイナイ」 「引くわー」

 

 その言葉に集まっていた他の囚人が思い思い返す。

 そしてそんな喧騒から離れた柱の物陰で包帯を全身に巻いた陰鬱な異星人の男が、渇いた唇で卑屈に嗤う。

 

 「ああ、良かった。面倒なヤツが跡形も無く死んでくれて良かった。手間が省けた手間が省けた」

 

 自称監獄最弱の異星人である。彼は自らの包帯を弄りながらボソボソと呟く。

 

 「あんな身勝手なヤツの細胞が一片でも残っていたらどうしようかと思ったが、報告の通り跡形も無く蒸発したんなら…ヤツは除外される、己としては一安心だ一安心だ。

 そうとも誰があの様な輩を好き好んで()()()()()()()()()()()()()……そう言う意味ではダグオンには感謝しよう感謝しよう…」

 一頻り独白した後彼は監獄の闇の中へ姿を消すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━刀剣類管理局本部・食堂

 

 「えぇぇっ!?可奈美のお兄さん昨日まで行方不明だったの!?」

 

 「うん、そうみたい」

 「そうみたい……って、随分と他人事じゃねぇか」

 「オゥ…カナミンはお兄さんの事が心配じゃないんデスか?」

 

 翌日明けて、響き渡る美炎の叫びに対しあっけらかんと返す可奈美。

 そんな彼女の反応に薫とエレンは複雑な面持ちで可奈美を伺う。

 

 「うーんでも雷兄が迷子になって数日連絡取れなくなるのは何時もの事だし、お父さんも私も慣れちゃったし」

 

 「何時ぞやの話に出た兄か、何と言うか……それは大丈夫なのか?」

 可奈美の兄の評を聞き、姫和が未だ見ぬ衛藤家長兄の姿に何とも言えぬ顔をする。

 「それは大丈夫。大抵は雷兄はおかず作り置きしてるから、家にお父さんしか残って無い時はそれで過ごしてるし、備蓄が少なくなって来た頃には普通に帰って来るし」

 と苦笑して語る可奈美。

 同席していた清香が心中で兄にも色々あるんだなぁと染々している。

 「それで可奈美ちゃん、雷火さん今度はどこまで行ってたの?」

 「それがね、よく分かんないんだって、日本らしいんだけどね。ただ……空を見上げた時に陽炎?みたいな現象が起きて、そこにダグオンが映ってたって言ってたよ」

 「不思議な事もあるものね……でも可奈美さんのお兄さんが帰ってこれて良かったわ」

 「聞いた限りじゃしょっちゅう迷子になってんだろ、本人だって特に危機感懐いてねぇんじゃねえの」

 同様に同席している舞衣が雷火が行方不明になっていた場所について訊ねるが、可奈美も本人がよく理解していないと語り、雷火が目撃した現象について述べる。

 それを傍目に聴いていた智恵や呼吹も在り来りな感想等述べている。

 

 

 

 「今の話…どう思う?みんな」

 「専門の知識が無いから何とも言えませんが、多分僕らの元居た駒王町のある世界じゃないかと思います」

 「その辺はダグオンの誰かに訊いて確かめるしか無いだろう」

 「そう言えば結局、両方の世界で行方不明になった人達で無事な人達ってどれくらいかしら?」

 「その辺りも彼等が来た時に訊いてみなければね」

 可奈美達の会話をやや離れた席から聴いていたオカルト研の面々が顔を付き合わせてヒソヒソと話合う。

 そこへ、噂をすれば影が射すとばかりに食堂へ顔を出す、焔也、戒将、龍悟、撃鉄の4人、これ幸いとばかりに小猫が近付き、手近な焔也と戒将を引っ張り込む。

 当然、何事かと思いつつされるがままにオカ研一同が会す席に着席する2人、残った2人もそれとなく後に続く。

 

 「何だよいきなり引っ張って」

 

 「ちょっと、皆さんに訊ねたい事がありまして」

 

 「ふむ…話を聞かせて貰えるか?」

 

 「実は────」

 

 席に着いた戒将からの質疑に代表して答えたのはイリナだ、彼女はなるべく簡潔にかいつまんで先の事情を語り明かす。

 

 

 「成る程、しかし残念ながら我々にも神隠し…転移に巻き込まれ行方不明となった人物達の安否までは分かりかねる。アルファか……或いはデルタだったか?あの黒づくめの女性に訊ねてみるより他に知り得る手段が無い」

 

 「そっかぁ、じゃあ後で訊いてみてくれる?」

 

 「……アルファは兎も角、デルタとやらは難しいだろうな……」

 「ああ、何せあの顔見せ以降、一切姿を見ていない。恐らく何かしらの仕事をしているのだろうが……アレ等の思考を推し測るのは我々にも難しい」

 

 「ふむん、私達の方でも彼女に会えたら訊いてみるしかないか」

 「だね、とは言え以前に言われた通り、殆どの人が異星人の実験体として捕獲された可能性が高いのかもしれないけれど」

 龍悟、戒将からの言葉にゼノヴィアと祐斗が最悪を想定した体で一先ずの結論を出す。

 

 と、そんな重たい話をしている横で焔也は会話中に出て来た可奈美の兄の存在について考えていた。

 

 「衛藤に兄貴がいるのは聞いてたんだが……そんな事になってたのか」

 「知らなかったの?」

 学年がタメと言う事もあって割りとフランクに小猫が切り込んで来る。

 

 「いや、存在は衛藤や柳瀬から聞いてたんだけどよぉ、美濃関に居た頃は一度も顔を会わせた事もなくってよ」

 

 「ふぇ~、不思議ですぅ。僕みたいに引きこもってた訳でもないのに顔を会わせた事が無いなんて……その美濃関学院ってそんなに広い学校なんですか?」

 同じくタメとなるギャスパーがおずおずと訊いて来る。

 

 「や、一応伍箇伝の一つだから普通の学校よか敷地も広いし生徒も多いが…マンモス校って程じゃ無い……はず……」

 

 比較対象が小学生時代の為、イマイチ自信が無いのか言葉が段々と尻すぼみになる。

 

 「ま、まぁ…アレだ科も違ぇし、クラスも一緒になった事もねぇからな!それに聞いた感じ方向音痴っぽいし」

 

 「確かに。衛藤さんは慣れて気にして無いみたいだけど……にゃあ」

 

 「いくら方向音痴でも限度がある気がするよぉ」

 

 「ま、解決した事を気にしてもしょうがねぇや。ところでだ、お前らも先輩達も今日がこの世界最後な訳だろ?

 折角だから最後くらいは誰か俺に付き合わねぇか?美味いラーメン屋に食いに行こうぜ!」

 

 「ラーメンか、その話詳しく聞かせて貰おう」

 焔也が何気無しに放った言葉、それに反応したのはオカ研の誰でもなく、後から来て入り口付近でニヒルに立つヴァーリその人であった。

 

 「え?え?マジで?え?」

 

 これには焔也も困惑するばかり、そんな彼をヴァーリは有無を言わさず引っ張って行く。

 

 「あぁ!?先輩!!何でヴァーリさんと一緒か分かんないけど、なんか迷惑掛けたんですか!?」

 「バッ、違ぇよ!ラーメン屋の話したらこうなったんだよ!」

 「何それ?とにかくそう言う事なら、しょうがないから先輩が迷惑を掛けないよう私も一緒に着いてってあげるし」

 「はぁ?!お前、それは偏見が過ぎんだろぉぉお!!」

 ヴァーリに引き摺られ消えて行く焔也を追い、面白いモノを見付けた顔で美炎が何だかんだと理由を付けて続く。

 

 「美炎ちゃん、普段鳳先輩にからかわれてる意趣返しのつもりなのかな?」

 「かもしれないね、先輩…大丈夫かな」

 同美濃関の残り2人の反応は全く別であった。

 

 

 

 

 「えぇと、どうしよっか…」

 残されたオカ研一同でネプテューヌが声を溢す。

 

 「特に用事が無いようであれば、好きに過ごすと良い。俺は所用で本部長に会いに行く」

 

 「あの!でしたらご一緒してもよろしいですか?」

 

 戒将が席を立つのに併せ、アーシアが立ち上がる。

 

 「構わないが…何か自分に用でも?」

 「あ、いえ…その実は此処に来る前に本格長さんに呼ばれていまして、朝食が済んだ後で良いからと…」

 「成る程。であれば別途訪ねるよりは共に行った方が合理的ではある…解りました、ご一緒させて頂きます」

 戒将もアーシアを連れ立って食堂を後にする。

 

 「……俺はバイトがあるので失礼する…」

 龍悟は龍悟でそそくさと立ち去り。

 

 「ワシは智恵さんとお話するとしようかのう」

 撃鉄は智恵達の方へと移動しようとする。

 

 「あれ?そう言えば、申一郎君と翼沙君は?」

 

 「あん?ああ、あの二人はそれぞれ別件じゃ。申一郎の奴は日課のナンパ、翼沙は研究棟の方じゃけぇ───智恵さぁぁぁあんんん!」

 

 最後にネプテューヌからの質問に答えた撃鉄はそのまま智恵の名を叫んで華の女子校生の中へと突撃した。

 

 「撃鉄先輩、ある意味スゴいです…」

 そんな撃鉄の後ろ姿を見て小猫がボソッと呟いた。

 

 

 「じゃあ私達はお言葉に甘えて、時間まで好きに過ごしましょう」

 「ですわね。お世話になった彼女達とショッピングなんて言うのも悪くないかもしれません」

 「さんせー!今日まで色々あったし、半日だけだけど、最後にちょっとくらい、こっちでの平和を楽しんでもいいよね♪」

 部長、副部長、と来て主人公を堂々する最高学年の発言にオカ研一同反対する事も無く賛意を示す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━刀剣類管理局本部・発令室

 

 ここ数日の慌ただしさが嘘に思える程の穏当な今日日。

 にも関わらず、真庭紗南は変わらず各地へと派遣された刀使の部隊への対応に追われていた。

 其処へ戒将がアーシアを伴ってやって来る。

 

 「来たか、ふむ……揃っているなら丁度良い。纏めて済ませてしまうか」

 

 「?」

 「丁度良い…とは?」

 アーシア共々疑問符を浮かべる中、紗南はその答えを提示する。

 

 「まずは燕、お前が以前から出していた面会申請についてだ。先方の都合と彼女の体調から長い事保留にしていたが、つい先日…丁度、先の異星人事変で異星人が倒された頃に許可が下りた。それに当の本人もお前との面会を望んでいるようでな」

 と紗南は一度、言葉を切る。次の話に移る前に戒将の反応を観察しているのだ。

 

 「───…………そう…ですか、彼女自身が、分かりました。しかしその話を何故彼女…アルジェントの前で?」

 

 「その辺りも無関係じゃない。聴くところによるとアルジェントは他者を癒す、神器なる特殊技能…いやこの場合は特殊装備か?兎に角、稀有な力の持ち主だとか」

 

 「はい、おっしゃる通り私の神器には他人の傷を癒したり、体力を回復させたりする事が出来ます」

 

 「ふむ…それでだ、その力をアテにさせて貰えないだろうか?」

 ここまでの紗南とアーシアの会話で、戒将は彼女が何を企んでいるのかを察する。

 

 「それは…局長の意思ですか?」

 

 「局長と私の…だな。一応、人体からノロを分離する際の治療データは十分に録れた。それに優秀な人間を何時までも遊ばせておくのは勿体無い、贖罪の意思がある、と言うなら後は現場で働いて貰わないとな」

 

 交差する紗南と戒将の視線、2人の間には共通の人物が頭に浮かんでいる。

 

 「あの…それで私は一体誰を癒せば良いんでしょうか?」

 どうにも穏やかならぬ空気を感じ、自ら発言する事で和ませようとしているが、別段紗南と戒将の関係が悪いのではなく、戒将が紗南の口にした人物に対し諸々複雑な事情から煮え切らない感情があるだけである。

 

 「うん?ああ、そちらの都合に問題が無いようなら、すぐにでも車を回そう。なに、お前達が帰るまでには済ませるさ」

 

 「でしたらお受けします。今までのご恩をお返しさせて下さい」

 

 「恩義などと言われてもなぁ、私らがやった事なんざ、衣食住を提供したくらいで、戦闘に関してはそっちとダグオンの連中に任せっきりだったさ、そう畏まる必要は無い。

 でだ、お前はどうする?」

 アーシアからの言葉に自分達は特に何もしていないと自虐的に返す紗南、そのまま戒将の方に首を僅かに動かし、彼の返答を待つ。

 

 「同行させて頂きます。が、私は治療に立ち会わない方が良いでしょう。アルジェント嬢と本部長のご用が終わってから面会させて頂きます」

 

 「お前も大分堅物だな…。いや成る程、彼女がお前を気にかける理由が何となく解った。よし!長々とここで話すのも何だ、続きは道中車内でするなりしよう。行くぞ」

 

 言うが早いや、椅子から立ち上がり鍵を人差し指でクルクル回す紗南。

 どうやら公用車ではなく、彼女の自家用車で送迎してくれるのだろう。

 斯くして燕戒将は複雑な感情に内心をざわつかせながらアーシア・アルジェントと共に長船麾下の伍箇伝医療研究機関へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━都内某所・繁華街

 

 「さて、では見せて貰おうか、この世界のラーメンの実力とやらを」

 

 「え…割りとマジで…え?何でそんなガチなの?」

 

 「わぁ…先輩が本気で困惑してるの初めて見た」

 

 ヴァーリの手より解放され、改めて道案内として鎌倉から電車を乗り継ぎ都内の繁華街へと来た3人。

 ヴァーリの真剣その物な眼に、只管戸惑う焔也とそんな彼を見て、そこそこ長い付き合いの中で初めて見る表情に何とも新鮮な気分になる美炎。

 再び引き摺られても困るので、焔也は事前に調べた穴場の──所謂隠れた名店へと2人を先導する。

 

 「あった、ここだ」

 「うへぇ…なんか怪しくない?」

 裏路地を通り現れた店に美炎は思わず顔をしかめる。

 

 「真に美味い店ならば、見てくれは些細なモノだ、外見が薄汚くとも、店内と従業員が清潔ならひとまず問題は無い」

 

 「えぇ…」

 

 ニヒルに熱弁するヴァーリに胡乱に引く美炎。

 それは兎も角、店の戸を開けて自然に入店するのは彼女も相伴する気であるからだ。

 

 「……らっしゃい…」

 

 果たして戸を抜けた店内のカウンターから声を掛けて来たのは見覚えのある声と顔。

 

 「うぇぇ?!清香のお兄さん?!!なんで!!?」

 

 「…バイトだ…」

 

 特徴的な長髪をバンダナナプキンの中に纏めて麺を湯切りしている六角龍悟が出迎えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━山北町・駒王町、街境

 

 そして陽は墜ち始め帰還の刻限が刻一刻と差し迫った頃、異世界より来た少年少女は街境となった場所の交差点に集っていた。

 

 「あー、楽しかったなぁ。でももうすぐ終わりなんだねぇ」

 ネプテューヌが伸びをして今日の事を振り返る。

 

 「そうね、そして私達は元の世界での日常を過ごす事になるわ」

 「帰ったら帰ったで壮絶な戦いが待っているだろうがね」

 続く様にリアス、曹操が自らの世界を取り巻く環境に言葉を洩らす。

 

 「だねぇ。ところで、みんなは今日一日何してたの?」

 

 「僕は衛藤さんに誘われて手合せですかね、いや…思い出すだけでも鳥肌が立つなぁ」

 「うん、私もついでに一緒させて貰ったが、彼女は凄いな、お互い対等な条件と言う事で木剣を使用した仕合形式だったんだが、最初の数本は木場が優勢だったんだが、回を重ねるに連れカナミが巻き返していてな」

 祐斗、ゼノヴィアが語る可奈美との立ち合い、その場には姫和も同席していたが、2人にとってインパクトが強かったのはやはり可奈美なのだろう、彼女の突出した剣の才に熱を帯びたように語る。

 

 「それに最初の方もなんと言うか…そう、楽しんでいた様に思う」

 「うん、少し恐いくらいに彼女は剣に生きている…そう感じました」

 「逆にヒヨリは何か迷いが見て取れたな」

 「流石にプライベートに関わるかもしれないから、深入りはしなかったけど…多分十条さんなら自分で答えを出せると思うよ」

 

 

 「なるほど~」

 

 「(わたくし)は向こうで巫女をしていると聞いたのでしょう、こちらの神職科…恐らく制服から美濃関の娘達、彼女達にノロの鎮守等を見て欲しいと乞われまして、ええ、中々に興味深い祭事でしたわ」

 朱乃は姫島神社にて巫女を務める都合から、その情報を知った神職科生徒に捕まり、此方の鎮守や祭儀を見学したのだと言う。

 

 「私とギャーくんと姉さまとジャンヌさんは清香さん主導でショッピングに行きました。由依さんが気持ち悪かったです」

 

 「なんか終始着せ替え人形扱いだった気がします…後、智恵せんぱい大変そうでした……」

 

 「撃鉄ちんも途中までは一緒だったけどねぇ、流石に女の子だらけの空間は居心地悪かったみたいにゃね、途中でどっか行っちゃた」

 

 「多分、その時に曹操とヘラクレスと一緒になったみたいね、なんか2人ともプラモの箱が入った袋持ってたし」

 

 「ああ、アレには参った。男泣きしながら買い物するもんだから、周りの目が痛いのなんの…」

 

 「ついでに餞別として人数分のプラモデルと御守を譲り受けたよ、さて、どうしたものか」

 ヘラクレスが多少げんなりとしている横、曹操は地面に置いたプラモデルの紙袋と御守が入った手提げ袋を取り出す。

 それはそれとしてギャスパーがちゃっかり女子組に組み込まれている事はスルーされた。

 

 「私の場合はエレンちゃんと舞衣ちゃんとでお喋りしたり、お菓子作ったりね。沙耶香ちゃんがリスみたいで可愛かったわ~」

 イリナが調理室での沙耶香を思い出して和んだ顔になる。

 

 「私は特に当て所無く散索していたら、ねねだったかしら?あの薫と言う娘と一緒にいる可愛らしい子と一緒になったわ。ついでにツバサの研究室とやらも見学させて貰ったりもしたわね」

 

 「私は青砥館でお世話になったので改めてお返しにお手伝いしていたのですが、途中鎧塚さんが来られて…その口説かれました」

 何とも言い難い恥らいを見せるのは銀の戦乙女ロスヴァイセ。

 

 「ふぅん、まぁ待遇は悪くなかった」

 「お兄様、お世話になったのですからもう少し言葉をですね」

 そしてフェニックス兄妹も彼等の輪に列を連ねる。

 

 そして境の線を越えた目と鼻の先には今回の件に関わったこの世界の人物が顔を揃えている。

 

 「お別れまで後もうちょっとかぁ」

 「しかし、こうして見ると、かなりの数の異世界人が来ていたんだな」

 可奈美と姫和が異世界組を見ながら染々と呟く。

 

 「しっかし、ダグオン連中と来たら意外と薄情なんだな、見送りにも来ねぇじゃんか」

 

 「えー、それふっきーが言う?」

 「わたし達が捕まえなかったらサボる気でしたよね?」

 姿を見せないダグオンに非難を述べる呼吹を美炎と清香がジト目で責める。

 

 (来てんだけどな!!)

 (喧伝する訳にもいかん)

 (マァ、口裏は合わせてるしダイジョーブじゃねぇの?)

 (う~ん何か忘れている気がします)

 (……む?)

 (どおした龍悟?)

 ヒソヒソと集まって小声で会話する若き勇者達、その時龍悟が何かに気付く。

 

 「……距離がある、はっきりとは分からんが…誰かが近付いてきている……恐らく複数…」

 彼がそう断言したと同じタイミングで交差点の向こう側、住宅街…それも兵藤邸があった方向から嬉々として迫る声。

 

 「オヒョ~ほほ~!!?街の様子が百八十度変わりましたね!興味深い!実に興味深い!……いやしかし…よくよく見てみれば些か見覚えのあるような配置…」

 交差点の中程まで来て急上昇したテンションが一気に落ち着きを取り戻す、そんな彼女の名前は渡邊エミリー。

 

 (エミリー……)

 従弟はそんな彼女の奇行に思わず顔を覆う。

 

 「ちょ、渡邊さん!?いきなり走り出してどうしたのさ!!?」

 

 「この声は!!」

 「葉菜!!」

 その後に現れた綾小路の制服を着た刀使の姿を認め、由依と美炎が驚きに口を開ける。

 そして次々と現れる見覚えのある姿に他の面々も思わず口を閉口したり眼を見開いたりと様々な反応を示した。

 

 「おいおい…ありゃ向こうの世界に消えてた連中じゃないのか?!」

 「ねー!!?」

 「岩倉さんまで居る…一体何が起きているんだ?」

 

 「あっ!薫せんぱーい!エレンせんぱーい!智恵せんぱーい!お久しぶりッスーーー!!」

 

 「茜ちゃん、元気そうで良かった」

 「デスね、元気爆発デース」

 

 「どもども七之里さん、それに渡邊…っと、エミリー氏が居るので翼沙先輩、お久し振りです播つぐみです」

 「おおっ!!同志渡邊先輩ではありませぬかっ!!不肖、森下きひろ新たなインスピレーションと共に帰参しましたぞ!!」

 

 「ちょっと待てお前ら!!」

 

 そしてそんな少女達を追う様に現れたナイスミドル、堕天使総督アザゼルである。

 

 「済みません、大丈夫ですか?」

 アザゼルに対し唯一真面に対応するのは早苗くらいなモノだ。

 

 「「おっちゃん!」」

 そしてそんな彼の登場にネプテューヌと一誠が驚愕を顕にし彼を呼ぶ。

 

 「播つぐみ、丸山茜、森下きひろ、渡邊エミリー、それに加え鈴本葉菜、岩倉早苗まで一緒とは…行方不明になっていた最後の面々が現れるとは、急ぎ本部長に報告しなくては…!」

 

 部隊責任者としてミルヤが携帯端末を取り出し本部に通信を取る。

 

 「ふむぅ、携帯端末のアンテナが復活したのは我々が元の世界に戻って来れたからだったのデスか…それはそれとして我が最愛なる従弟(マイ・ブラザー)、直接顔を会わせるのは随分久し振りじゃないか!」

 

 「僕は会いたくなかった……」

 

 「済まないが、積もる話は後にしてくれるだろうか」

 物凄く形容し難い顔を伏せながら呟く翼沙の肩を叩きながら、エミリーに向け待ったを掛ける戒将。

 

 

 

 「おっ、そうだネプ先輩、ギアちゃんちょっと」

 焔也が女神姉妹へ近付き、刀使達から見えぬ様に懐から小さな物を取り出す。

 

 「これって…」

 「ダグオンのマークのヤツじゃん」

 ネプテューヌの言う通り、彼の手にあるのはスターマーク──厳密に言えばダグオンのマークシンボルではなく宇宙警察機構のマークではあるが──を象ったアクセサリーが2つ。

 

 「アルファのヤツから、餞別だとよ。ついでに伝言、一つは記念品としての文字通り飾り、もう一つは空のストレージだっつてたッス、ストレージの方はギアちゃんに扱いを任せるとも」

 

 「分かりました。使うかどうかは別にして、貰えるなら貰っておきますね。後、アルファさんに無限砲のデータご馳走さまでしたとも伝えておいて下さい」

 「え、何それ私聞いてないよ?!」

 

 「(ギアちゃん抜け目ねぇな)解った、後笑顔が恐いよ?」

 まるで京女の如く笑顔に裏を感じさせる圧に焔也が思わず本音を洩らす。

 

 「しっかし、何故いきなり行方不明になった連中が現れたんじゃ?」

 「推測ですが…恐らく、兵藤邸だけ山北町に反転させられたのが、異星人の装置の破壊の影響により街の回帰が優先されたからかと」

 「ははーん、お前さんが翼沙とやらか…エミリー達よりは話が通じそうだな」

 とアザゼルがエミリーやきひろを疲れた瞳で見つめた後、翼沙の(表面上)真面な態度や言葉遣いに胸を撫で下ろす。

 

 

 

 「ん…?大地が微かだが揺れている…?」

 その後合流、再会を果たした面々が会話に華を咲かせている中、アーサーが大地の変化に気付く。

 

 「ああ、それは恐らく世界が元に戻る前兆かと」

 翼沙が既にアルファにより教えられている結果を、あくまでもイチ伍箇伝研究生徒としての憶測として伝える。

 

 「では別れの時だな、皆、境界より離れるんだ」

 戒将の言葉に従い互いが互いの側に数歩退る。

 

 「兵藤ネプテューヌさん、そしてリアス・グレモリーさんにオカルト研究部の皆さん、曹操氏他英雄の皆さん、刀剣類管理局を代表し私共が謝辞と御礼を申し上げます。助かりました、ありがとうございます。お元気で」

 「怪我などに気をつけて下さい」

 「色々カッコよかったです!」

 「うぅ…お姉さま方~その胸の抱きこ…温もり、あたし忘れません!」

 「台無しだよ由依ちゃん…」

 「ま、一応礼は言っといてやるよ」

 「呼吹さんはブレませんねぇ」

 「アザゼルさんお世話になりました」

 「アザゼル(うじ)~、私クンの発明は記念としてさしあげますぞ~!」

 「うーん、出来れば今暫く調査していたかったデスナ!」

 「止めてくれエミリー!!?」

 「翼沙先輩大変だなぁ」

 「オッス、本当にお世話になったッス」

 「もしまた会う機会があったらデートしようゼ!」

 「グッバ~~~イ♪今度会う事が出来たら楽しい時が良いデスね」

 「ねーねー!」

 「じゃあな」

 「…さらばだ…」

 「ワシからの餞別大事にしてくれよ!」

「今度もしこっちに来ることになったら今度は手合せしましょうねアーサーさん!」

 「可奈美、最後までそれか…」

 1人1人が言葉を掛けてゆくにつれ、駒王町側の大地はグングンと上昇して行く。

 そして地上の面々が豆粒くらいの高さに駒王町側が達した時、上空からも声が掛かる。

 

 

 「バイバイ、おねーさん、おにーさん達…バイバーイ!!」

 

 ライアンの掌に乗った結芽が声を張って別れを告げる。

 それをこの世界の最後の光景として異世界の勇士達はコインの裏表がひっくり返る様に元の世界へと戻るのであった。

 

 続く

 


 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 波瀾ノ前兆

 

 




 と言う訳で最後の方のあくまで此方の世界のみの終わりです、向こうの側のオチはロザミア様にお任せしてます。

 スパロボ30、私のプレイで一番最初にエースになったのはグリッドマンでした。
 因みに今やっとこさガオファイガー加入からのカギ爪が遺跡云々まで来ました。
 それはそれとして普通に面白いなメガトン級ムサシ……。

 ではまた次回お会いしましょう。


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幕間 その後の勇者達withゆめ日記

 はいこんばんようらございます。
 相変わらず増量した職務に追われるダグライダーにて候。

 今回の話は結芽ちゃんの日記を皮切りに3本立て、最後の日記だけはそれらとは別にまぁ伏線です。

 さてスパロボ30プレイ中に困った事が起きまして、セフィーロマップで3、4度目の相手ターンにイノーバが動くとエラーでゲームのアプリケーションが強制終了してしまって…、しかしネット回線が繋がってもいない、Wi-Fiも無い身ではどうしようも無く、いっそGEOに相談してみようかと最近は思っています(いや本当どうしよう?)




 8月○日 たぶん晴

 

 おねにーさんからの宿題で残りの夏休みの期間、日記を付けるように言われた、メンドくさいけど夏休みの残り期間だけと言うので頑張る。

 異世界から来たおねーさんおにーさんが帰ってから何日か…たぶん二週間くらいたったと思う。

 色々あったからまだ昨日の事みたいに思える気がする。

 あの後おねにーさんはゼータおねーさんにグチグチ言われてた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「羨ま死…妬ま死、怨怨怨怨……」

 

 「いい加減勘弁してよ~、八つ当りにも限度があるよ」

 

 ダグベースのメインオーダールーム内に轟く怨嗟の声、その発生源は観る者によって様々な姿に写る次元超越者の少女ゼータ。

 対象は同胞たる一見美少女の美少年アルファ。

 端から見ればギャルが整端な美少女に対しどす黒い煙状のオーラを伴った怨念を放ち続けていると言う光景である。

 ……全く意味が分からない。

 

 「………………あれは、一体何だ…?」

 

 学業、職務、バイト以外ではダグベースに常駐する頻度が多い龍悟が、同じくオーダールームに居座り態々自室ではなくオーダールームで店を広げて宿題に悪戦苦闘する焔也に訊ねる。

 

 「詳しくは解らんけど、アイツら刀使に推し?ってのがいるらしくてよ、鎌府の糸見沙耶香っているだろ?よく衛藤達と一緒に居て、柳瀬に懐いてるちびっ子」

 

 「……ああ、この間の一件にも関わった関係者ではあるし…俺も諸々と縁がある……」

 ダグオンとなった当初頃からの事件を振り返りながら沙耶香の記憶を鮮明に思い出す。

 

 「ゼータの奴はその糸見を一番推してるらしくて…で、この間の異世界の事件でアルファが外に出て来たろ?」

 そこまで聞いて龍悟も察した。要するに目の前のギャル擬きはチャランポランを絵に描いた様な同胞が、自身が最も敬愛している人物に遭遇・接触した事に対し嫉妬しているのだ。

 それはもう、普段アルファがルールを曲げたり破ったりした時に対する折檻時よりも苛烈なモノをぶつけている。

 

 「……実力行使に出ないのは、己の個人的感情と理解しての事だからか…?」

 

 「多分な。この間の接触事態は連中の中ではルール違反だったらしいけど、状況が状況だったから仕方ないって感じでおざなりにしたみてぇだし」

 

 1年コンビが会話する傍らで変わらずアルファに怨嗟を吐くゼータであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8月✕日 めいっぱい晴れ

 

 焔也おにーさんが珍しく"はき"がない。

 お兄ちゃんが見かねて理由を訊いてみると、焔也おにーさんのお母さんに関係がある事らしい……お母さん……───

 

 

 「はぁ……はぁぁぁあ」

 ダグベースのサロンで正義に燃える炎の不良少年、鳳焔也がイメージにそぐわない程覇気無く溜め息を吐く。

 

 「………」

 「………」

 「………」

 「………」

 「………」

 ラボに籠りきりな翼沙を除く面々がその様子に無言で顔を見合わせる。

 

 「はあぁぁ」

 

 カウンターで1人頬杖を付き溜め息を吐く焔也を少し離れた場所から見守る5人、申一郎が龍悟に視線で何があったと問うが龍悟は無言で首を横に振る。

 撃鉄が顎で戒将に焔也を指す、理由を訊ねろと言う事だろう。

 

 「(致し方無し…)うぉほん、焔也らしく無いぞ…何を悩んでいる?」

 

 「あえ?あぁ…うん…いや、そんな大した悩みって訳じゃねぇんだけど……」

 

 「ンだよ、大したコトねぇなら話してみろッテの」

 

 (申一郎…貴様、奴の悩みが小さいと確信したらこれかっ!!?)

 重度のモノではないと確した途端意気揚々無遠慮に焔也に語り掛けた申一郎に心中で毒づく。

 

 「まぁ、うん…そうだよな、話せば楽になるってあるよな」

 

 「応とも、何時もみたいに考え無しがお主の良いところじゃ、とっとと話せ!んで楽にならんかい!」

 

 此処ぞとばかりに撃鉄までもが続く。無論発言した当人てしては仲間兼ライバルがウジウジ悩む様が気に食わないと言うのもあるようだが…。

 

 「(うち)はさ、親父がまぁ警官つーか刑事してんのよ、んでお袋と俺の二人で普段暮らしてるんだわ」

 

 「ほう…、御父堂は警察組織の人間だったのか…。それなのに貴様は不良をしているのか……」

 

 「いや別にグレて不良してる訳じゃねぇよ。偶々カツアゲ現場見つけてカツアゲしてる奴らボコったり、弱い者虐めしたりしてる奴らぶん殴ったり、近所に騒音掻き鳴らして迷惑かけてる賊ぶっ潰したりしてただけで、授業だってちょこっと眠気に負けたりやる気がイマイチ湧かなくてゲーセンでサボったりするだけだし……」

 

 「理由は兎も角、暴力沙汰にサボタージュに授業態度に問題有り…と来れば、まぁ不良扱いは妥当ではあるか、と言うか貴様、刀匠課程含む刀工の授業位しか真面に受けんそうではないか」

 

 「うげっ!?どこでそれを…!」

 

 「衛藤、安桜、柳瀬等に普段、美濃関で貴様がどう過ごしているかを以前訊いた」

 

 「そう言やぁ、美濃関のカワイコチャン達ン中で刀使科と刀匠科とかの娘にはお前結構ウケが良いんだよナァ……」

 

 「…逆に神職科などからは噂が独り歩きし…怯えられている訳か……」

 

 「おにーさんすごーい!テレビとかマンガの人みたい!」

 

 「凄いかのう?カタギのモンに手ぇ出す不埒モンや、迷惑千万なだけの走り屋なんぞ普通シメるじゃろ?」

 

 戒将達が呆れ混じりに感想を述べる中で1人撃鉄だけが焔也の行動に同調を示す。

 この男もおおよそ似たような事をして番長と呼ばれた経緯があるのだ。

 

 「居たよ、ココにも不良マンガから出て来たヨウなのが……、で?つまり今オマエん所の実家にはオフクロさんしか居ねぇワケか」

 

 「ああ。んで、今俺一応理事長推薦で刀匠研修も兼ねて本部の人員補充で家を空けてるだろ?」

 

 「ふむ…御母堂お一人残る訳だな、もしやそれが悩みか?いやしかし…それならばもっと以前より悩んでいそうな物だが…」

 

 「いや、問題はそっちじゃねぇんだ。確かに俺も実家を離れてるからお袋がたまに…本当たまに電話して来ることぁあるんだが……」

 

 「……歯切れが悪いぞ……」

 

 「…………お袋がさ、訊いてくるんだよ。また遊びに来ないのかって」

 

 「うん?」 「言うとる意味がよう解らん」 「つまりドー言うこった?」 「……帰ってくるのは何時か?ではなくか…?」 「遊ぶの??」

 焔也の語る母親の発言にイマイチ悩みの実態が見えぬ他の面々。若干1名そもそもの意味を履き違えて受け取っているがご愛嬌。

 

 「あー…この間の異世界騒動で、何人か管理局の宿舎じゃなく、数人バラして何人かがテメェん家に招待したろ?んで(うち)はフェニックスの兄妹に部屋提供したんだよ」

 

 「ああ、そう言えばそうだったな。それで?」

 

 「お袋は普段寂しさを紛らわす為に親父の職場にちょくちょく理由付けて訪ねてはビジネスホテル泊まったり、主婦仲間の家に厄介になったりしてんだけど…ちょうどさ、その日…折り悪く?って言やいいのか?お袋が家に居てよぉ、見付かったんだよ」

 そこまで語って頬杖を組み直し、組まれた両の甲に額を乗せて声を絞り出す。

 

 「そりゃあ……一大事じゃな、そんで?その状況をどう乗りきったんじゃ?」

 

 「その辺はフェニックスの妹の方が頑張って誤魔化してくれたから、ダグオン関係とか異世界どうこうはバレずに済んだ……ただ…」

 

 「「「「ただ…?」」」」

 

 「だからこそ困ったと言うか…説得が上手く行きすぎたのが逆に問題だったと言うか……」

 

 「回りクドイなァ、つまりドー言う事だってばヨ?」

 

 「あれからお袋が次はいつ家に帰って来るのかとか、お友達は一緒じゃないのかって毎度電話が来てな……」

 言って、頬杖を解きカウンターに顔を突っ伏す。

 

 「そりゃゴシューショーさん」

 

 「話はまだ終わりじゃねぇんだ」

 

 「ほう?」

 戒将の促疑に突っ伏した顔をはたと上げ続きを口にし始める。

 

 「あんまりお袋がしつこいもんだから、一回、服部先輩とか刀匠科のダチ連れてったんだよ。でもさぁ……お袋の反応が思ってたのと違うと言うか……いや、喜んではくれたよ、でも……なんか…こう……期待してたのと違うって顔されて、割かしショックだったって言うか……」

 

 「それがおにーさんがタメ息ついてた理由?」

 

 「そうなんだよ、何でなんだ?何がお袋の期待に添えなかったのか全然解らん!」

 

 「……お前……いや、お前はそう言う人間だったな……」

 「何とも……度し難い。いや単純な所は長所でもあるが…」

 「おおう…鈍いとかそう言うレベルじゃないのぅ」

 龍悟、戒将、撃鉄とが呆れと天然記念物を見た時の様な驚きとが綯交ぜになった反応を顕にする。

 申一郎は声を殺して笑いを堪えているので精一杯だ。

 

 「何だよ?」

 

 古典漫画の如く疑問符を浮かべ首を捻る焔也に戒将、撃鉄が口を開く前に申一郎が制する様に口を挟む。

 

 「い、イヤ…クク…何でもネェよ。そーだナァ、焔也ヨォ、いっその事安桜チャン、衛藤チャン、柳瀬チャン辺りを連れてってやったらドウだ?もしかしたら女同士にしかワカラネェ話があるかもしれねェゼ」

 

 「安桜と衛藤は兎も角、柳瀬は確かにお袋が何を期待してるのか解りそうだな。よっしゃ、今度は取りあえず三人呼んで柳瀬にそれとなく探って貰うか!

 ありがとよ、みんな!今度はお袋を心から喜ばせてやるぜ!!」

 

 「オウ……ぷフッ…ガンバレ」

 

 「お前と言う男は……まぁ当人は納得しているから我々がこれ以上どうこう言う物でも無い事ではあるが……」

 「……どう転ぶにしろ、結果は予想出来るな…」

 「うむ。ちゅうかのう……焔也のお袋さんはどんな女性なのか逆に興味が湧いたわい」

 最後の撃鉄の言葉には結芽を除いた3人も確かにと頷く。

 

 

 

 後日談と言う名の今回のオチ。

 

 思い付いたが吉日を地で行く行動力を発揮した焔也は、翌日早速件の美濃関3人娘に予定の都合を打診、美炎は最初嫌そうな顔をするも、焔也の母親に興味をそそられたのか存外乗り気になる。

 そこから数日後、岐阜の美濃関学院に一時帰順後、揚々と鳳家へ娘衆を連れて帰宅する焔也。

 果たして母、鳳あずさの反応はそれはもう嬉々たるモノであった。

 見目麗しき美少女が3人、息子との距離はかなり親しい様子、この際であるから断言しよう。

 あずさが焔也に求めていたのは将来の伴侶候補である。

 あの日フェニックス兄妹……否、レイヴェル・フェニックスを見掛けてより、彼女は普段のおっとりした性格が嘘の様に狂喜した。

 息子の学業の出来が良くない事は母として当然知っていたが、可愛い一人息子、甘やかす事躊躇い無し、そも厳しく叱るは夫が担う、父が鞭、母が飴。

 その甲斐あって焔也は成績こそ奮わぬものの運動能力は高く、夢中になった事には凄まじいやる気を見せる子となった。

 その彼女に唯一の負い目があるとするならば、幼き日の息子が刀使に憧れた事を諫める事が出来ぬ事だった。

 

 さて在りし日、若きあずさもまた刀使であった。

 が、彼女の才は精々が有象無象の凡人、折神紫は元より、相模湾岸大災厄にて活躍した現伍箇伝学長にすら劣るレベルである。

 誇る所があるとすれば大災厄時に生き残れた事、と言うよりもそれすら運が良かったが故の物に過ぎない。

 そういった諸々の事情から我が子に負い目を懐いていた訳である。

 そして結果、息子は刀使への憧れを前に現実を突き付けられ、諦め、それでも尚刀使に関わる何かにすがり刀匠の道を選び美濃関へと入ったのだ。

 彼女にはそれが妥協に映ったのだ。

 そしてより一層子を甘やかす様になった。しかし焔也も当然思春期を迎えれば母からのスキンシップを鬱陶しく思うもので、知らぬ間に傷を増やしたりとなれば親として気が気で無い。

 だが本人に訊ねるにも気が憚られ早幾年、高等部へと進学した息子がある時を境に嘗ての様に意気軒昂とする様を見せる様になってからはあずさも我が事の様に嬉しくなった。

 となると今度は息子の交友関係が気になり出す。が、焔也は成績の事もあってあまり学校での出来事を話したがらず、あずさもそれとなく聞き出せる程話術が巧みな訳でも無し、今日に至るまで只管焔也と過ごせる時間を楽しむだけに留めていたのみであった。

 

 しかし息子がレイヴェル──ともう1人金髪の青年(イケメン)も居た気もするがその時のあずさにはどうでも良かった──を連れて帰宅した際に彼女の中で塞き止められていた遠慮と言う名の關は決壊した。

 以降、息子が帰宅した際や、鎌倉での宿舎(尚、実際にはダグベースの一室である)に帰参する頃合いを見ては電話を掛けて、愛息の女性関係を出馬亀する始末。

 だがしかし、催促しても息子が連れて来るのは男友達ばかり、もしやソチラの気がと危惧した所に可奈美、舞衣、美炎を伴っての再びの帰宅である。

 あずさは再び狂喜した。

 訊けば彼女達は中等部生…即ち後輩との事、あずさは吟味する。

 息子に気があるのは誰か、又は息子が気を揉んでいるのは誰か。

 三者共に息子と親しい様子、あずさ個人としては発育も良く安産型の臀部を持つ柳瀬舞衣が好ましい、しかししかし、安桜美炎とも中々に距離が近く、だがだが、衛藤可奈美とも程好く睦まじい様にも見える。

 この際本命は兎も角として明日は赤飯を炊くとしよう、ああ、その前に夫へ電話をして共に祝わねばと心に誓うのであった。

 

 そして焔也は焔也で母の思惑を舞衣を通して知ろうとしたが結局は母の圧しに圧倒され彼女が何を意図していたのか理解出来ぬのであった。

 

 ※但し舞衣は察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8月□日 曇りのち晴れかも?

 

 世間の夏休みも段々終わりに近付いてきた。

 管理局はあい変わらず忙しいからか申一郎おにーさんがナゲいている。

 夏場は海でナンパするのが楽しみだったんだって。

 正直ナンパはどうでも良いけど海は私もちょっと行きたいと思ったからお兄ちゃんに相談してみた。

 

 …………怒られた。でもおねにーさんが助け船を出してくれたおかげで基地近くの海で遊べる様になったよ──

 

 

 

 

 「アーーー、出逢いが欲しい……」

 サロンのカウンターで開口一番宣ったのはげんなりした顔の申一郎。

 

 「愚か者、刀使達が今日も今日とて荒魂退治に精を費やしているのだ。我々も異星人の出現の警戒や窮地にある刀使の部隊の救援、果ては管理局内での業務に学業とやる事が山積みなのだぞ!」

 

 「ダグオンの活動は別として。警邏と刀匠の連中はそうかもしれネェが、オレはそうじゃないの」

 

 戒将の叱責も何のその、軟派なりの矜持で返す。

 

 「いや…お前、綾小路じゃ技巧科なんだろ?やる事あるんじゃねぇの?」

 焔也が呆れた様子で問うが、申一郎はナニソレ美味しいの?と言わんばかりの反応。

 それを見ながら翼沙が綾小路での普段の申一郎や今現在までの管理局での申一郎の行動を彼が知る範囲で教えてくれる。

 

 「申一郎は授業こそ受けますが、学科における作業等には単位の為稀にしか参加しません。ただ土師さんを始めとして女生徒に声を掛けては円滑にコミュニケーションを取るので、其々の専門分野に傾倒している相手からは窓口として頼りにされたりはしますね。

 そしてつい先日には本部の廊下にて我が校の刀使、水科綿花さんに声を掛けていましたね」

 

 因みに綿花と書いて【わか】と読む。伍箇伝特祭隊本部に於いて参謀を勤める水科絹香の2歳下の妹である。

 容姿は姉をそのまま幼くし、髪を纏めず短くした姿。

 髪型さえ揃えれば双子も斯くやと見違えるばかりの容姿(但しスタイルは姉が勝る)である。

 姉は垂れ目がちだが、綿花はツリ目である。

 

 

 

 「ああ!あの何かこう…幸薄そうな声の!」

 焔也も綿花をナンパする場面を見た覚えがあるのか、しかし些か綿花にとっては不名誉な覚え方で回想している。

 

 「その記憶の仕方はどうかと思いますが……綿花さんに声を掛けて袖にされていましたね…と言うか、絹香先輩に見付からなくて幸運でしたね申一郎」

 

 「オレぁ別に見つかっても問題ナイぜ?姉妹揃ってデート出来るかもしれネェし」

 

 ((それは無い))

 

 自信満々に返す申一郎に同校の出の2人は心中にて否定する。

 

 「ま、フラれちまったらしょうがネェ。切り替える。また今度機会があればチャレンジするとしてだ…!もう夏休みも終わりが見えてくる時期になった、にも関わらず、重大なイベントをオレ達はスルーしている!!?!」

 いきなり大仰に宣誓する申一郎に仲間達は何だコイツと奇異の眼を向ける。

 

 「じゅーだいなイベントって?」

 そんな中、精々が変なコトしてるなぁ程度の認識の結芽が皆を代表し彼に問う。

 

 「アリガトよ結芽っち、ナイスな返しだ。オマエらも見習え!…トモカク!夏と言えば夏休み!夏休みと言えば海だろうガッ!!」

 

 「海……行きたい!おにーさんたまには良いこと言うじゃん」

 

 「いや山もあるだろ」

 

 「……そうだな、俺も個人としては山を推す…」

 

 「山か…よく山籠りしたのう」

 

 海派に対し山派?が難を示す。尚撃鉄は除く。

 

 「ねぇお兄ちゃん──」 「却下だ」

 結芽が戒将に許可を求むる前に戒将が否を突き付ける。

 

 「えーーー、なんで!!?」

 

 「結芽、お前の立場は一応は故人。認識阻害の眼鏡とフード付きのパーカーを羽織っての近場の外出なら未だしも…海水浴等と、何処から正体が洩れるか解った物ではない!」

 

 「ぶーぶー!」

 兄の当然の意見にブーイングをする。結芽、漫画だったら口が3の形になっている事だろう。

 

 そんなサロンへ駆け込んで来るは、我等がトラブルメーカー管理者アルファ。

 

 「話は聴かせて貰ったよ!!」

 

 彼が現れた瞬間、渋面を作る戒将。

 また何か思い付きで行動を起こす気だなと呆れる他の面々、唯一今回期待の眼差しを覗かせる申一郎、そしてとても期待を寄せる面差しの結芽といった反応に別れる。

 

 「海!良いじゃないか!定番イベントだよ!」

 

 「しかし結芽の問題がある。我々が例え都合を付けても結芽は外に出せんぞ」

 

 「ちっちっちっ♪静岡の土地を押さえたのは何も大元に倣っただけじゃ無いんだよ?」

 嘗ての勇者ダグオン達が存在した世界の山海市とほぼ同様の地域にダグベースを安置しているが、そんな事を彼等が知る由も無いので彼等は不審な顔をするばかりである。

 

 「まぁ言ってる事が解んネェのはイツモの事だからイイとして、何か対策があるンだな?」

 理解はしないが何かしらの案を持つお調子者に期待を寄せる。

 

 「君たちのライナービークルが発進するゲート付近の海域、其処からおおよそ徒歩単位で十分くらいの距離に!こんな時の為に!プライベートビーチを作っていたのさ!!」

 

 「なんて無駄な労力を……」

 「何故その行動力を真面目な方に生かせないのか…」

 「こ奴やはり馬鹿なんじゃなかろうか…」

 「……最早病気だな…」

 

 「プライベートビーチかぁ、他の利用客が居ねぇからカワイコチャンをナンパ出来ネェのが残念だが…結芽っちの事情を考えりゃ仕方ネェか」

 

 「?結局海に行けるの?行けないの?」

 仔犬の様に眼を潤ませ粒らな瞳を戒将に向ける結芽。

 元より妹には甘い部分がある男、言葉でいくら厳しく接しようとも、問題がクリアされてしまえば遇の音を出す事も躊躇われる。

 

 「くっ……。今回に限り、眼を瞑ろう。だが、他に他人の出入りが無かろうと警戒を怠る事だけはするな!」

 

 斯くして勇者6人と刀使1人、オマケ2人はアルファ謹製のビーチへ向かう事と相成った。

 

 

 

 

 ━━ダグベース近郊・シークレットプライベートビーチ

 

 アルファの言う、発進ゲートから徒歩十分は実際には比喩である。

 何せライナービークルがダグベースから出撃する際、ビークル用の路線が張られた洞窟を通過し海水へと突入、所謂海底洞窟を通過する事が一連のシークエンスなので、最終的に発進ゲートは海中に存在する。

 であるので、ダグベースから徒歩移動した場合、ダグベースが安置された洞窟から続く下り道を通って山を降りる、すると出口に外から漏れ出る太陽光の光が見え、そこそこの広さがある砂浜に出る。

 この場所を上空撮影した場合、三方を岩壁に囲まれ、正面は海と言う正しく穴場と言える場所となるだろう。

 

 「マジでビーチだよ、周りがかなり険しい岩崖の影になってから確かにダグベースを経由しなきゃ通れねぇな」

 ビーチパラソルとシートを抱えた焔也の感想である。

 

 「本当に…娯楽事には妥協せん奴だ、呆れてこれ以上は物も言えん」

 双眼鏡、救命胴衣、等の緊急救命具を持つ戒将が嘆く。

 

 「あーあ、せめてボインな娘が仲間に居たらナァ」

 折り畳み式のアウトドア用ラウンジチェアーを脇に抱えサングラスを掛けた申一郎が願望を口にする。

 

 「全員参加する必要があったんでしょうか…?」

 クーラーボックスを肩に掛けた翼沙がずり落ちた眼鏡を直す。

 

 「…結芽が全員参加を頑として譲らなかったからな……ライアンの同行を諦めただけでも良しと考えるべきだろう……」

 バナナボート他、マリンレジャー用の遊具を持たされた龍悟が出掛け前のいざこざを回顧する。

 

 「一応、何かしら異変が起きればブレイブ星人が連絡を寄越すと言うとったが」

 コンロやバーベキューの食材等を背負った撃鉄が続く。

 

 「海ーーーー!」

 そんな彼等の目の前ではしゃぐのは既に出発前に部屋で水着に着替え、目的地に到着した途端着込んでいたウインドブレイカーを投げ棄てた結芽である。

 

 「フフーン!どうだい?関係者以外は一切入る事の出来ないこの素晴らしい立地のビーチは!!」

 同じくウインドブレイカーを着用した桃色頭がドヤ顔で仁王立つ。

 

 「お前何でそういう仕事は早いんだよホントさぁ」

 

 「こんな事をしている暇があるのならば、例の無限砲の完成を急ぐか、あの時異世界人である彼等に使わせた兵装を我々にも使える様にしたらどうだ?」

 ほとほと呆れ返った焔也と戒将。戒将は事変の折、ネプテューヌや一誠らが与えられ使用した他の勇者の武器が使えぬ物かと問う。

 

 「無限砲に関してはハードよりもソフトが難航してるんだよ、だから後回しで良いの。で、ねぷねぷ達に渡したアレは……君達に扱うのは無理だよ」

 

 「何?」

 

 「それはどういう意味でしょうか?」

 

 「と言うかのぅ、ワシのドリルライナーを早く正式に寄越さんかい!」

 

 アルファの言葉に眉根を潜めた戒将と、彼等の会話に聞き耳を立てていた翼沙と撃鉄が其々の疑問や願望を捲し立てる。

 

 「まぁまぁ撃鉄くんは落ち着いて、ちゃんと正式仕様ドリルライナーは組み上げてるから。んで、翼沙くんと戒将くんの疑問には言葉通りの意味だよと返すよ。

 だってこの世界の人間である君達は既にダグオンという勇者の力を手にしてるからね。

 ひとつの世界の人間が使える勇者の力は一種だけ、ねぷねぷ達はこの世界に紛れた事や複数の種族が存在している状況だったから、ある程度ダウンサイジングして使える様にしたんだもん」

 

 砂浜にその辺りに転がっていた枝で絵を描き説明する。

 

 「……そう言えば、彼女達はあの武器を使用する際に符丁のような名称を叫んでいたな…」

 

 「そうとも!それぞれ、勇者エクスカイザー、太陽の勇者ファイバード、伝説の勇者ダ・ガーン、勇者特急マイトガイン、勇者警察ジェイデッカー、黄金勇者ゴルドラン、そして勇者王ガオガイガー。

 君達の勇者指令ダグオン含め八種の勇者が其々の世界で地球を守って来た…(ホントは他に産まれるハズだった幻の勇者と八つの勇者と共に戦った勇者もいるけど…黙っとこ)そういう事だから」

 

 「八種?八人じゃなくてか?」

 

 「焔ぴっぴはダグオンの一人でしょ?ダグオンは今んとこ六人とライアンの一体、結芽ちんは除いて総勢七人がメンバーしょっ?」

 広げられたレジャーシートで柔軟体操するゼータが補足する形で会話に交じる。

 

 「お?おお。いや結芽ちゃんは仲間に入れようぜ?!」

 

 「モチ仲間ではあるけど、それはそれだし。んで続きだけど…それぞれの勇者は勿論単独だったワケじないの」

 「エクスカイザーは双子のレイカーブラザーズが合体するウルトラレイカーに三人チームが合体するゴッドマックス。ファイバードにはサンダーバロンと救命チームガードチームが合体するスーパーガーディオン。

 ダ・ガーンにはガ・オーン、航空機に変形するセイバーズが合体するペガサスセイバー、陸上車両チームランダーズが合体するランドバイソン。マイトガインにはマイトカイザー、アニマル特急ボンバーズが合体するバトルボンバー、レスキュー特急ダイバーズが合体するガードダイバー、マイトガンナー。

 ジェイデッカーはブレイブポリスと呼ばれる超AIロボット達…ビルドチームが合体するスーパービルドタイガー、シャドウ丸、ガンマックス、デューク。

 ゴルドランは彼含めたレジェンドラの勇者達、レオンカイザー、空影、シルバーナイツが合体するゴッドシルバリオン、アドベンジャー、キャプテンシャーク。ガオガイガーにはGGG機動部隊の氷竜、炎竜、風龍、雷龍、マイクサウンダーズ13世、ゴルディーマーグ、月龍、日龍、翔竜、カーペンターズ、諜報部ビッグボルフォッグ、シャッセールの光竜、闇竜、ビッグポルコート、赤の星の戦士ソルダートJのキングジェイダー。

 こんな具合に共に戦う仲間が居たんだねぇ。

 因みに竜兄弟姉妹はいくつか合体パターンがあるし、マイクサンダースは他にシリーズがあるけど代表として分けたから個別にしたよ」

 

 「多いな…」

 

 「合体してい勇者達が何機編成かにもよりますね」

 

 列挙された勇者達にある種の戦慄を覚えるダグオン達。

 

 「……詰まる所、結局は俺たちが使える力はこのダグオンの物だけ、と言う事なんだな…?」

 

 「そそ、だからダグオンの所有兵装や武装以外は追加出来ないね。下手に足したら世界がヤバい…これでもちゃんと世界のバランス考えてるんだよ?」

 

 「ま、イイんじゃネェの?ウチュウジン連中とは渡り合えてるワケだし、荒魂相手ならタギツヒメみてぇな例外以外にゃオーバーキル出来るしヨ」

 

 「その辺はボクがちょくちょくアップデートしてるからね♪当時のダグオンよりも強力になってて当然さ!!」

 申一郎の言葉を受け、再びのドヤ顔を晒すアルファ。

 さいで、と素っ気なく相槌を返す申一郎、チェアを展開し、そそくさと横になるとスマホのタイムラインを確認して噴出す。

 

 「グフォファッ!!?マジか…!?いやマジか!!」

 

 「どうした?申一郎」

 

 「いや、由依のヤツが無人島にトばされたみたいでヨ。美少女成分が不足してっから最後の手段でオレの方に助けを求めて来たンデな、情けない顔した自撮り写真と一緒に」

 メッセージアプリケーションに送られて来た山城由依(同好の志)からの一連のやり取りを戒将達に向けて見せる。

 

 「山城…やはり一度風紀的に取り締まる必要があるな」

 

 「山城さんも悪い意味でブレませんね…どうしました申一郎?」

 

 「いや…何つーか、由依のヤツ煽る写真を送ろうかと思ったが、オレも似たようなモンだと思ったらテンションダダ下がりした………」

 周りに居る面子が大半男性、女性は結芽とゼータ。結芽は将来性はあるが今の申一郎のストライクゾーンでは無いし、そもそも彼女の写真を送る訳にいかない。

 ゼータはゼータで観測する人間によって姿が変わるので写真であっても意味が無い。

 結果、奇しくも申一郎は由依を馬鹿にする事が出来ないのである。

 

 「綾小路組は何をしとるんじゃ…」

 「おじちゃん早くしてよー」

 「急かすな、と言うかおチビ…バナナの方はどうした?アレは空気入っとるじゃろ」

 ドルフィンボートに空気を一息で空気を送り、2/3を脹らませながら結芽のせっつきに応じる撃鉄。

 自分が抱えて来たバナナボートの在処を誰何すれば結芽は無言で海の方へ視線を配らせる。

 

 「おん?」

 

 果たして撃鉄が顔を向けたその先には海面に揺蕩う蛍光イエローのビニールゴムの上に佇む黒いビキニ姿にご丁寧に頭部だけ漆黒のフードを被ったままの何処かで見覚えのある女性(厨二病管理者デルタ)の姿があった。

 

 「なんでじゃい!!?」

 

 思わず叫ぶ大男、すぐ傍らに居た結芽はその大声に堪らず耳を塞ぐ。

 そして撃鉄の声を聴き、由依の話題で談笑していた戒将達も、砂浜にブルーシートを轢いて西瓜を置いていた焔也と龍悟も、振り返した嫉妬でアルファを砂に埋めていたデルタも其方に注目する。

 

 「フッ…よくぞ気付いた黒鉄の戦士よ、そして若き燕よ」

 原理不明でボートに立ちながらポーズを決めるデルタ、これまた原理が不明の方法でそのまま海面からビーチに移動して来るではないか。

 

 「おっつおつ~。向こうの世界の後始末済んだんだ~おかー」

 アルファを埋めて満足したのかパラソルの下日光浴に興じようと移動するゼータが同胞を労う。

 

 「然り。あの世界の歪みが完全に安定した事を見届けた。まだ蕾たる魔女に預けた角灯も回収したので、報告に来た次第である」

 

 「それはゼータじゃなくてボクに言わない?普通」

 首から下を完全に埋められた美少年の主張にデルタは左様であったなと返し、彼に報告の続きを語る。

 

 「少なくとも彼方側から干渉が無い限り、此方の世界に留まる異星人共が再び次元を繋げる事は出来まい。

 ベータが手を回したで在ろう神具もガンマに口添えし抑えてある。よしんば次元が繋がったとて、此度の様に世界に悪影響を与える様にはなるまい」

 

 「ご苦労様。ついでに助けてくれるとありがたいんだけど……

 「ねぇねぇ、黒いおねーさん。それってもうネプおねーさん達とは会えないってこと?」

 

 アルファの言葉を遮って結芽がデルタに訊ねる。

 

 「然り。この世界からの干渉ではあの世界の女神に再び逢う事は難しい、が、彼方より干渉があった場合はその限りではない。とは言え、彼方の世界も一筋縄では行かぬ情勢、女神達の敵が此方に要らぬ介入をするとも限らない故、暫くは互いに不干渉を取るが吉であろう」

 

 「てぇ事は俺らの世界が異世界に繋がる事は無いって事か?」

 

 「否。そも元より荒魂が住まう隠世が存在する以上、次元に因っては異なる世界の漂流者が現れる…或いは汝らこの世界の住人が異なる世界へと跳ばされる可能性もゼロではない」

 

 「……つまり…?」

 

 「彼の女神が存在する世界と類似する世界と繋がる事も有れば、全く異なる世界とも繋がる事もある」

 

 「???よくわかんない」

 

  デルタの説明に混乱する結芽を見かね、翼沙が腰を上げる。

 

 「つまりですね、ネプテューヌさんが居た世界…悪魔や天使等が居る事が当たり前の世界が他にもあって其所に繋がる可能性は高いんです。けど、その世界にはネプテューヌさん達は居ないかもしれないと言う訳ですね」

 

 「左様。と、言うよりも……彼の女神と妹女神だけがイレギュラーなのだ。我が知るあの世界の凡そ八割型の中心は赤龍帝兵藤一誠の方で在るからして」

 

 「へぇー、一誠先輩が。まぁ分かる気もする」

 デルタが挙げた名に焔也が感覚的に納得を示す。

 

 「ふむ…話を聞く限りではネプテューヌ嬢とネプギア嬢は存在しないと言う事か?」

 

 「否。女神達は女神達で存在する世界が在る。しかしそれは彼の様な神魔入り雑じる群雄の世界ではなく、女神が国主を務め、信者からの信仰を糧に発展する遊戯の世界であるのだ」

 

 「難しく言い回しちょるが、要するにゲームみたいな世界で生活しとるつう事かいのう?」

 

 「そだねー、ゲイムギョウカイって所でねぷねぷ他三人の女神が居てその下に見習いのギアちゃんみたいな妹女神が居る感じだね。まぁそっちとは今の所縁が薄いから繋がる可能性はハイスクールでD×Dな世界よりはゼロかな」

 

 「へぇー」

 砂に埋められたままのアルファの解説に皆々相応に感心しながら相槌を返す。

 その後、デルタを交え軽いバカンスに興じる勇者達、後には砂に埋まった1人を残し帰参する。

 何だかんだ羽根を伸ばせた事は良い事であった様だ。

 

 

 「たーすーけーてー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8月31日 雨

 

 今日で夏休みは終わり。

 振り返るとあんまり自由には遊べなかったけど、海で遊んだり、地元のお祭りに連れてって貰ったり、花火をしたりで楽しかった。

 そう言えば今日おねにーさんからヘンな箱を貰った。

 名前は【キッド】って言うだって。

 おねにーさんが言うにはこの子には意思があって、けど赤ちゃんみたいなものだから私から色々教えてあげて欲しいんだって、何だか分かんないけど、おねにーさんいわく、おねーさんになったつもりでキッドくんを育ててあげてと言われた。

 その後焔也おにーさんが言ってた千鳥のおねーさんのおにーさんの名前を聞いてあわてて研究室にこもっちゃったけど…。

 人に教えるとかしたこと無いけど、多分お兄ちゃん達の助けになることなんだなというのは分かる。

 だから今までのワガママな私じゃなくて、ダグオンの仲間としての気分で接しよう。

 ………上手く出来るか分かんないけど、今日から私はキッドくんのおねーさんだからね!

 

 

 




 ああああ!!?くるみ割り人形!!奥の方は蝙蝠?カフェテラス的スペースに見えた白ワンピドレスの後ろ姿はG線上のアリア?!
 ゲームに出てくるムジカートが一瞬とはいえ観られて興奮しました。はい、タクトオーパスの話です。

 最後の日記に登場した箱の大きさは大体片手でギリギリ掴める程度のルービックキューブ大のガンキッドの超AIです。

 さて2番目の話(これが思いの外長くなった)に登場した焔也の母親ですがかなりポワポワしたおっとり系のご婦人です。
 その内何処かで台詞付きで出るかもしれません。後焔也の友人ですがモブです。3人居ます。しかし名前は設定されています。
 研師 財津丸宗則 刀剣金工 支倉庵 組紐職人 団清太と中々に個性的な名前ですが、まぁモブです。
 はい私モブの名前を考えるのも趣味です。

 ではまた次回お会いしましょう。


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波瀾編
第九十五話 波瀾ノ前兆


 おはようございます、おやすみなさい。

 先に言っておくと、今回宇宙人と高津のオバチャン達しか出番ありません。

 あああああっ?!!タクトオーパスディスティニー最終回録画出来てなかったぁぁああああああっ?!!

 不覚、実に不覚。何故?疲れが貯まってたから?風呂で一時間半寝たから?!
 やり直したいいいぃぃぃい!!



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 えっ?!嘘ぉ!!?可奈美ちゃんのお兄さんこの世界だと雷火って名前なの?!

 こうしちゃいられない!!撃鉄くんには悪いけどNo.Ⅶの調整も進めなきゃ!!

 


 

 ━━エデン監獄・中央円卓広場

 

 「ギャアァァァアア?!!」

 

 絶叫が広場に轟く。

 嘗て傀儡宇宙人と呼ばれた少年が己が創りし人形越しに座していた椅子に人の形をしたシミが着く。

 

 「弱い、話にならない。骨が無さすぎて腹立たしい」

 

 「哀しい…この程度の実力で監獄主へ至ろう等と…。いっそ欠番にしてはどうだろうか」

 

 「まぁ前任者はまだ生きているので欠番も何も無いと思うのですけれど」

 

 「哀しい…」

 

 「腹立たしい!」

 声を発した、露出の多い鎧に身を包んだタトゥーを刻んだ女傑──罪窩の四騎士、四霊刀麒麟の【怒雷】"怒れる"ラーシュメイラ。

 並ぶは深紅のドレス纏う淑女、四霊刀鳳凰の【喜炎】"喜び"のアドヴェリア、牛骨を被った、四霊刀霊亀の【哀氷】"哀しみ"のブリューリテ、四霊刀応龍と"楽"【楽風】を除いた四霊刀を所有する女異星人が揃い踏みだ。

 皆、格好に差異はあれども容姿端麗、人型宇宙人の中でも優れた美しさを持った者達でもある。

 

 「ごくろうさま~」

 

 「…!!我が愛!なんと勿体無き御言葉でございましょうか!!!!」

 

 「我が至宝、これでは不在の東監獄主の後任どころか四霊刀最後の一振を扱える者が現れるかも怪しい」

 

 「我が光、哀しき事ですがこれ以上の選別は無為かと…。我々自らの手で減らしては何れ来る日に割ける兵力が心許なくなってしまいます」

 

 「うーん、あらだまざごすとあらだまじーどじゃだめなの?」

 

 「あれらは統率し率いるモノとして見れば申し分ありませんが、小兵です。対して今我々が相対する者達……哀しいかな同じ有象無象ではございますが、地球人類の相手をさせる分には申し分無い程度の実力を持つ者も混ざっております」

 

 「フン、そうは言うがな"哀しみ"の、そもそもあの盟主殿に大軍を率いて地球を攻める気など無いだろう」

 

 「確かに。あの盟主……ワルガイア星人と来たら悪名高きワルガイアだと言うのに、随分と悠長ではありますわね。囚人個々人に好き勝手に任せ過ぎている」

 

 「"喜び"…その罵詈は我らが光にも当て嵌まってしまう。我らの光を哀しませるつもりか?哀しい…」

 

 3人の美姫が往々に口を交えては愚痴を吐く。

 その間にも怯まず襲い掛かって来る監獄主を狙う囚人や四霊刀最後の1振りを手にせんと果敢に挑む女囚達を軽々と葬って行く。

 雷に焼かれて死ぬ。炎に呑まれて死ぬ。氷に包まれて死ぬ。

 貫かれて死ぬ。断たれて死ぬ。潰されて死ぬ。

 同胞が矢継ぎ早に死に逝く様に、生き残り退き腰となった囚人数人から非難の声が挙がる。

 

「お、おかしいだろう!?オカタナとやらはまだしも、監獄主選別に罪窩の四騎士が出張る!!?そこは監獄主の誰かだろう!!」

「そうだ!そうだ!監獄主と戦わせろ!」

「具体的にはそこの弱そうな商人野郎と殺らせろ!!」

 

 三下そのものの科白だが、元よりこの監獄に収監されている囚人は特別棟の者達と一部の囚人を除けば大半が卑怯卑劣は上等。そもそも法の道理を解さぬ人種──凶悪犯ばかりを収監する、それがサルガッソ型監獄の目的なのだから当然と言えば当然である。

 当然、現監獄主の中で一番戦闘力が低そうなマッニーを狙うのもそう言った事情からだ。

 

 「わぁ♪まっにーだいにんきだね!」

 花の様な笑顔で妖精が卓上で静観していた人なのか蟲なのか、獣なのか機械なのか、判別し難い身体を持つ件の星人へ話題を振る。

 

 「勘弁してえや。何でワイがわざわざ戦わなアカンねん、地球に落とされて不在になって空席同然になった東監獄の主の後釜を決める戦いやろ?

 もう決まったワイには関係あらへんやん?つーか、どいつもコイツも何で力勝負ばっかやねん、ワイとかセンセーみたいな頭使うちゅう方法やてあるやろ」

 

 蟲の頭部にも見える部位から覗く口元だけが人間となっている部位を開いて出るは鬱屈した様な愚痴。

 そんな彼の愚痴に答えたのはエデンの全ての囚人を取り仕切る盟主、アドヴェリアからワルガイア星人と称された鬼人の異星人。

 

 「それが一番分かり易い手段なのだから仕方あるまい?不服を述べるなら君も直接的な力を彼等に示すより他に無いだろう?」

 

 「はぁ勘弁してえや。何で自分から顧客化減らさなアカンねん…。ワイの本領はそれこそ何処ぞの詐欺師よろしく口八丁手八丁で相手丸めこむん商談なんやけど………あー、ハイハイ解った、解りましたわ。実力行使したりますわ」

 

 監獄主含め集まった全ての囚人の視線から嫌々ながらも重い腰を上げるマッニー。円卓の中心…現在簡易の決闘場と化した更地にすごすごと歩み寄って行く。

 

 「ワイの貴重な時間を使うんや、手早く済まそやないか。正直に答えや?ワイの席が欲しいヤツだけかかってこいや」

 マッニーがそう告げた途端、決闘に参加していた囚人全員が呵成の声を挙げ飛び掛かる。

 

 

「ヒヤッハーーーー!!」 「死に晒せぇぇえええ!!」

「金がなんぼのもんじゃーい!」 「オレサマが南のニューリーダーだ!」 「東も南も俺のもんだぁぁあ!」

 世紀末も斯くや、様々な怒声が入り雑じり1人を相手に無数の暴力が迫り来る。

 

 「ひーふーみー…あー、アカン、結構損失多いなぁ。しゃーない、減った分は地球で補填っすっか。

 "プライストレイダー・無敵の鎧(Armure invincible)"80000Mi(マニー)!」

 

 敵を数えてその数に馬鹿らしくなったマッニー、頭を掻いて左手の指に挟んだ紙幣の束が、告げられた名詞と共に燃えて消える。

 同時にマッニーを包む様に重なる囚人達、その様はまるで団子。

 

 「フン、馬鹿らしい…商人と言えど、奴は監獄主となった男ぞ?有象無象如き敵では無いわ」

 一連の様子をみた煉獄魔人メレトが捨てる様に呟く。

 結果は直ぐにでも明らかとなった。沈黙していた団子が弾け、中から現れたのは常に輝く白金の全身鎧に身を包むマッニー。

 弾け飛ばされた囚人は皆、一様に殴られ、刺され、撃たれ、斬られた傷により死んでいる。

 

 「フーム、ムテキノヨロイカ……スベテノコウゲキヲハンシャスル、ウチュウデフタツシカナイボウグ」

 

 「生産性度外視で造られた為に商品としては利益が見込めぬ不良在庫か」

 

 「せや、しかも一度着ると全然動けへんクソ鎧や。誇る所なんざ無敵の名の通りの防御力、耐久力の高さと大抵の攻撃は反射する…くらいしか見所があらへん。で、他にまだ殺る気のヤツらは居るんか?」

 道化師、鬼人の評に鎧の中からくぐもった声で返すマッニー、そのまま他に挑戦者が居ないかと限られた視界で睥睨する。

 

 「いないみたい」

 「ダロウネ、ノコッタモノタチハ、オノレノジツリョクヲワキマエタモノカ、カタガキヤタチバニキョウミヤカンシンガナイモノバカリダロウシネ」

 「なら結局ぅ、東は保留って事かしらぁ?」

 「その様だ。では集まってくれた諸君、選別に協力してくれた美しき乙女達には感謝を。我等エデンの管理体勢は今暫くこのままとする」

 

 鬼人の言葉を受け、観戦に徹していた囚人達が散って行く。

 後に残るは監獄主と四騎士の3人だけとなった。

 

 「では当初の予定通り、マッニー…君には地球に降りてフュンフに合流、例の件を進める手助けを頼もう」

 

 「オッケーや、ま、本職の詐欺師にワイが加われば口八丁の倍率ドンで…タギツヒメやっけ?ヒトのカタチしおるヤツ?ともかくタギツヒメとの同盟とやらも成功間違いなしや!ついでに地球に落ちたガキンチョも引っ張っとくさかい」

 

 「ジッシツ、カンゴクヌシガフタリチキュウニイルワケダ」

 

 「あの小僧が素直に言う事を聞くか解らんがな」

 

 「それならそれで彼の好きにさせれば良い。しかしどうあれ既に幾度も失敗した身だ、きっと言う事を聞いてくれると私は思うよ」

 

 「あらあら、意地悪ねぇ。でもその通りではあるわぁ、妾としてもあの子の今のメンタルなら嫌々でも協力せざるおえないもの」

 

 監獄主達が独断専行の果て地球へ落とされた東の監獄主、傀儡宇宙人の異名を持つ少年──デジノス星人のヒュプティを話題に挙げる。

 

 「何にせよ、動くのならば早い方が良いだろう。何時までもダグオン側があの兄弟のステルスを対策していないとは…限らないからね」

 

 「せやな。ほんならとっとと行くとするわ、ついでに…シスターザゴスもいくつかもろとくで」

 盟主ワルガイア星人の言葉に応じ、席を立ち、己の監獄へと足を向ける死の商人。

 

 そして地球での戦いは静かに新たなる局面へと舵を切ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━綾小路武芸学舎

 

 京都に門を構える伍箇伝刀使育成学校の1つ綾小路武芸学舎の土地には近付く者の限られた場所が幾つか存在する。

 それはただ単に生徒達には関係が無い程度の物から機密や管理上極一部の人間や専門的な人間しか利用しない施設であるからだ。

 勿論それは他の育成校である美濃関、平城、鎌府、長船とて例外では無い。

 大なり小なりの違いこそあれ縁無き場所や物には近付かないものだ。

 実際例えば、鎌府は校内にある学生が使用する研究施設の他、外部に()()()()()()()()()()()()()()()()()が複数存在している。

 

 では綾小路に存在する鬼門とは何処や?と言う問いに対する答えの1つがこの場所である。

 

 古い時代の景観を残す白砂の広い中庭にあって、恐らくは本来神職に利用していたであろう小ぢんまりとした池に浮かぶ小山の上にこれまた小さな社がある。

 小さい…と言っても社の中─拝殿─は十数人は余裕で活動出来るスペースであり、最奥の祭祀台には御簾が降りており、何者かのシルエットだけが伺える。

 そして拝殿の角、祭祀台から見て左側に頭を垂れ控えるは嘗ての鎌府女学館学長高津雪那、折神紫親衛隊第三席皐月夜見。

 鎌倉特別危険廃棄物漏出問題と呼ばれる事件の折、行方知れずとなった2人である。

 

 さて、平伏する雪那であったがその内心は腸が煮えくり返っていた。

 その理由は祭祀台の前にて不遜に佇む桃色の髪をした少女にあった。

 

 「──と、言うワケでわたし達はあなた方に力を貸してあげようと思い至ったのです」

 

 夜見程では無いが表情が読みづらい鉄面皮を貼り付け淡々と語る少女──トラモル星人フュンフが御簾の先に鎮座するであろう人物に対しエデンの総意を伝える。

 

 「ほう…"貸す"と、そう申したのか?異界より来たりし外なる者よ」

 

 「イエス、なのです。早々悪い話ではない、です。あなたは自らが完全となる為に分かたれた半身と大量のノロが必要。しかしその存在の都合上、今現在派手に動けない、違いますか?です」

 

 「そうだな、吾としてはこそこそと鼠の様に動かざる負えない状況は不愉快ではある。しかし貴様の言う通り表立って動けば要らぬ連中からの横槍が入る」

 

 「現刀剣類管理局特別祭祀機動隊の刀使、そしてダグオンの連中ですね?です」

 

 フュンフが刀剣類管理局と口にした際に平伏したままの雪那の眉根が僅に上がる。

 

 「刀使共は然したる脅威にはならんが…そうさな、ダグオン……あれは邪魔だ。今の吾が相対しようものなら無事では済むまい」

 

 「でしょうね、です。しかし…刀使が脅威にならない?本当に?確かあなたはその身姿となる前にとある刀使に手酷くやられたと聞き及んでいるのです」

 

 フュンフが嘲笑を混ぜ事前に調査した情報を開示する。そしてその態度に遂に我慢の限界が来た雪那が勢い良く身体を起こして怒りの剣幕にて捲し立てる。

 

 「きっ…様ぁあ!黙って聞いていれば何処の馬の骨とも知らぬ痴れ者がっ!姫に対し何たる無礼!!何様のつもりかっ!!!」

 

 今にも立ち上がり掴み掛からんとする勢いの雪那、しかしフュンフが殺気を込めて睨むとか弱い人間の身でしかない彼女は即座に身を竦め悲鳴を溢す。

 

 「ひっ…?!」

 

 「もしかして…わたしが人間と変わらない見た目で子供に見えるから弱そうとか思ってます、です?だとしたら思い違いも甚だしいです。

 わたし、エデンの中では弱いですけど…未開の惑星の下等な文明の蛮族にやられる程じゃ無いですよ、です」

 

 空を見上げるような角度のまま首を雪那の方へ見返るフュンフ。

 雪那を見詰める瞳は虚無の如く冷たい。

 

 「高津学長、お下がりを……!」

 

 腰を抜かしてへたり込む雪那を庇う様に前に出て御刀に手を添える夜見、何時でも抜けるとフュンフに示しているが、当の彼女はとてもつまらないモノを見る様な顔をしている。

 

 「わたし、確かに強い方では無いと言いましたが、そんな身の丈に合わない力で無理繰りしてる小娘が相手になるとでも?です」

 

 「承知の上です……しかし、私程度でも刺し違えるくらいは出来るかと」

 

 冷笑に対し冷淡で返す。

 そのまま睨み合う事小一時間、その静寂を破ったのは外から新たに掛けられた声であった。

 

 「はぁ~、アッカン、あかんてフュンちゃん。命大事やで?そっちのお嬢ちゃんもそない物騒なモンは引っ込めて話し合おうやないかい」

 声の主は小脇にズタ袋を抱えた長身痩躯の青年、糸目に眼鏡を輝かせ胡散臭い関西弁を発しながらまるで、実家に帰って来るかの様な気安さで拝殿へズカズカと上がり込む。

 

 「…貴様は?」

 

 「んふふ、御初にお目にかかります。ワイは其処の馬の骨と同じエデン監獄から来ました。エデン監獄を取り仕切る監獄主の一人、南監獄主のマッニー言います…あ、因みにゼニーンド星出身ですわ」

 御簾の奥から問い掛けられる誰何に信用ならない笑みで名乗るマッニー。

 

 彼の登場によって拝殿に充満していた鬼気迫る空気が霧散する。

 フュンフは夜見から視線を外し溜め息を吐き、夜見は雪那を支え起こしながら再び角へと戻る。

 

 「ほう…またしても異星の徒か。して、貴様も吾に協力せよと申すのか?」

 

 「ま、ウチの大将はそのつもりやろうけど、ワイ的には商売させて貰いに来たちゅうんが正しいやんなぁ」

 

 「商人(あきんど)と宣うか、なれば吾に何を商うつもりだ?」

 

 「せやなぁ、情報、兵隊、武器、その他必要とあらば余程とっぴなモンでもない限りは大概のモンをお勉強させて…と、選り取り見取りでっせ?」

 

 「吾が其を必要とするとでも?」

 

 「せやかて、ダグオン相手に普通の荒魂は相手にならへんし、其所で腰抜かしとる姐ちゃんが考えてる兵隊は刀使やろ?ま、連中は正義のヒーローらしいし?躊躇いはするやろうけど、いざ戦いとなったら歯が立たんと思いますんやけど?」

 

 御簾の奥から放たれる声に飄々と返すマッニー。その際口にした雪那の計画を知っているとばかりの言い様に、当の雪那が開いた口が塞がらぬ様な顔反応のまま二の句も告げずに固まっている。

 

 「然り。ならばその商い受けるとして貴様が望み、吾が払う報奨は何か?」

 

 「そら勿論、同盟締結。まぁ別にコッチから特にアレコレ言う気はあらへんよ?あんたらがウチらの兵隊や武器を好きに使う代わりにちょいとばかしダグオンの気いを引いてくれたり、この国でキナ臭い土地があったら教えてくれたらええ。

 コッチもそれに応じた情報やったりを返すさかい。せやろ?フュンちゃん」

 

 「(…ぬぅ、口先でわたしより上を行かれました、です。これが記憶のみで生まれて間もないわたしと、百錬千間の死の商人との各の違いなのです?)…はい」

 

 「えらい間があったな。ええけども」

 

 無表情で拗ねるフュンフにカラカラと苦笑しながらズタ袋を雑に下ろすマッニー。

 

 「ところで…その蠢いてる袋の中身はなんです?」

 

 「これ?これはなコッチ来る時ついでに拾ったもんや」

 フュンフからの疑問にズタ袋の口紐を解いて中身を引っ張り出す。

 

 「っは!!?クソ!?何だよお前!!いきなり海賊どものアジトに来たと思ったらボクを拐いやがって!ドコだよココは!?!」

 

 「ハハッ、元気やなぁ坊っちゃん。けどな?ジブン立場分かっとるんか?」

 解放されて即座にマッニーに文句を吐くヒュプティにドスを効かせて凄む糸目の商人。

 普段人形越しに見るだけだった同輩が己を見下ろし悪意を直にぶつけて来る様に、ゲームの延長線上でしか他者と触れて来なかった少年は思わず泣きそうになる。

 

 「お前がこんな目におうとるのは自業自得や、殺されてないだけマシと思えや。お前が怒らせたんはあの極悪非道のワルガイアやぞ?

 むしろそんで生きてられる時点で感謝こそすれ文句言うんはちゃうやろ?そこに更にワイが名誉挽回のチャンスくれてやろつってんのや。

 粋がってないで素直に礼を言うんが普通やないか?ぁ゛あ゛?!」

 

 「ヒグッ……で、でもボクはこんな未開の下等種と一緒なんて…

 

 「でもも案山子もねぇ言うとるやろがっ!」

 頭髪を掴み乱雑にヒュプティを床に叩き付けるマッニー。

 耐久性で言えばフュンフ以下のヒュプティの顔面が赤く腫れ、鼻血が床板を汚す。

 

 「おっと、アカンなちょい熱くなりすぎた。ゴメンな大荒魂ちゃん、キミほぽっといてコッチの話ばっか進めて」

 

 「クク…いや、端から観劇する分には面白い茶番であった。佳かろう、貴様達が腹の内で何を企んでいるかは知らぬが、此方としても使える駒は多い方が都合が良い」

 

 ヒュプティを痛め付けた激情の顔から一転、怪しい笑みに変わったマッニーを見て御簾の奥に座す人物──大荒魂は上機嫌に異星人からの提案を呑む。

 

 「ひ、姫っ!!?」

 

 「二言は無い。此れは既に決した事だ…。其とも汝は吾の決定に異を唱えるのか?」

 

 「その様な事は!?けっして!決して御座いません!何卒お許しを!!」

 

 「であるなば、客人に部屋を用意してやれ。彼奴らは吾の同志となる者ぞ?」

 

 「は、はっ!早急に!!」

 

 (あーあ、可哀想なお嬢ちゃんやなぁ。まぁ見てる分にはオモロイけど)

 

 (ふむ…この中で実質一番立場が低いのは彼女です?なら尚更分かりかねるです。あの刀使、どうしてあんな下女に付き従っているのです?)

 

 (クソっ!クソォッ!!憶えてろ!どいつもこいつもいつか見返してやる!ボクを馬鹿にしたことを後悔させてやる!)

 

 大荒魂と雪那のやり取りを尻目に、異星人達は三者三様の思いを胸中に懐きながら拝殿を後にした。

 

 

 

 

 

 

 「ぼ、ボクはここで失礼する!これ以上地球種が大量に居る所に居たくないからなっ!!」

 言葉の端々を吃らせながら自身が座れる程巨大な円盤状の空中ドローンに乗り、ステルスを発揮しながら何処とも知れぬ場所に消えて行くヒュプティ。

 それを見送った2人…、内少女の方が軽く息を吐いて糸目の青年に礼を述べる。

 

 「ふぅ…感謝します、です。どうにもわたしは前任程巧妙に話を転がせられないようで……」

 

 「ええんやで、キミの本懐は様々な姿に変身しての騙し討ちを主にした詐欺や。落ち込む事は何もあらへん。

 キミの変身擬態は貴重やさかい、ジェム星人にも真似出来へん…いや、キミの姿だけならジェムちゃんも擬態出来るやろけど、キミの姿のまま他の生物にはなれへんからなぁ、アッハッハッハッハ!」

 

 「なるほど。です…。所でその姿は?あなたは純粋なヒューマノイド型ではなかったハズですが…です」

 

 「そこはセンセの腕前でちょいちょいとな?化けの皮ってヤツや。ジェゲンガ星人もその辺は役に立ったわ」

 嘗てダグオンに破れた雌雄同体の同胞を回祿しながら人の姿の囚人達は与えられた部屋と向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン監獄・機関部中枢

 

 「さいごのひとりどうしよう?」

 

 「哀しい、どうあってもこの監獄の中に適した者は存在しなかった」

 

 「正直な事を述べて宜しいですかしら?これ以上増やす必要あります?」

 

 「クッハッハッハッ!貴様己の欲に忠実過ぎるだろ。だがまぁ我が至宝の望みを無碍にも出来まい、逆に考えよ?この監獄に居らぬのならば外から招けば良いとな」

 

 自らが根城とする場所にて妖精と四騎士の3人が空席の1人について話し合う。

 主たる妖精の言葉にブリューリテは嘆き、アドヴェリアは別に最後の1人を任命する事に必要性を感じていない、そんな2人なので必然ラーシュメイラがまとめ役に徹する事となるのだ。

 その彼女が語った外から招くと言う言葉に妖精は眼を輝かせて興奮を叫ぶ。

 

 「そっかぁ!!そのてがあったね!かいぞくのみんなもそれでよびこんだんだもんね!」

 

 「はい。ただ……問題はこの世界の宇宙に我らに匹敵する実力者が居るのか、居たとして誘いに乗るのかと言った事が付きまとう事となりましょう」

 

 「うーん、そこはべつにいいかな。たしょうよわくても、ぼくがちからをわけてあげるし」

 

 「「「!!?なんですって?!」」」

 

 ラーシュメイラの危惧に対し妖精がなんとなしに発した言葉、それを聞いた3人に衝撃が走る。

 

 「なんと羨まし憎らしい!我が愛から直に御力を賜るなど…!」

 「殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい」

 「腹立たしいが理に適ってはいる…腹立たしいが」

 

 ハンカチを噛み千切らん勢いで咥えるアドヴェリア。

 最早殺したい以外発言していないブリューリテ。

 "怒れる"の異名の通り苛立ちを感じつつも唯一冷静に話を咀嚼しているのはラーシュメイラのみである。

 

 「みんなもさんせいみたいであんしんしたよ♪じゃあさっそくよんでみるね!」

 

 言うが早いや、妖精は指揮者の如く小さな手を振る。

 それに呼応しエデンから一条の光が発ち昇り、銀河系の外へと消えて行った。

 

 新たなる戦いの予感は直ぐ其所まで波瀾と共に地球へと迫っているのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:静かなる瞳)

 

 最近結芽さんはすっかりあの立方体に夢中ですね、超AI【キッド】でしたか?

 

 ゼータが帰って余計、アノ箱と話す機会が増えたらしいゼ?そこんとこアニキとしてどうヨ?

 

 あの娘に友人が増える分には俺から何か言う事は無い。まぁ出来れば人間が望ましかったがな。

 とは言え、超AIともなれば、市販の玩具で一時期流行ったペットロボットとは桁違いだ、AIの性能向上の為にも無碍には出来ん。

 

 その結果ライアンがちょくちょく不機嫌になっとるのは気の所為かのう?

 

 そんな日常を切り裂き、現れる新たなる敵!

 

 おいおいファイヤーダグオンで対処するレベルの敵が二体だとぉおっ?!俺、龍悟みたく分身なんて、出来ねぇぞ?!

 

 そんな時こそ!戒将くん達が頑張るんだよっ!!今だ!三つの心を一つにするんだぁぁあ!!

 

 ノリノリだなオイ?!

 中々難しい事をさらりと言ってくれます…!

 ダがやるしか他に有るまい!!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 三位一体!?新たなる合体!!

 

 これが二体目の合体勇者だっ!

 

 カッコいい!!

 




 はい。遂にエデンの盟主、鬼の異星人の種族が判明しました!!
 ワルガイアですよ!ワルガイア!!あの三兄弟と同じワルガイア星人です。
 そうすると名前の法則も察しの良い方には判ってしまうかもしれませんね。


 くっ……せめてもの慰めはラピライのURが大体最推しの娘達ばかり来てくれた事くらいでしょうか。

 エミリア、ガーネット、ナデシコ、ラヴィ、アシュレイ。
 後、ユエ、ティアラ、リネット、ラトゥーラ、ミルフィーユ、ツバキ、あるふぁ、アンジェリカが来ると嬉しいですね!因みにカエデもUR出たので戦力てして重宝してます。
 魔女はみんな好きですが…やはりお山の大きさには勝てなかったよ師匠…。

 タクトもなぁ、カルメンとワルキューレ、くるみ割り人形、木星、後は月光が琴線に刺さるんですよねぇ。

 ではまた次回お会いしましょう!!
 ニキチッチ欲しい!


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第九十六話 三位一体!?新たなる合体!!

 遅ればせながら此方でも明けましておめでとうございます。
 いやぁ、今回の話はやりたい事は決まってたんですが……敵をどうするかとか、合体までの流れをどうしようかとかで手間取りました。

 遂に始まった2022年冬アニメ、私的にはビス恋(多分この略称私くらいしか使ってないかな?)こと、〈その着せ替え人形は恋をする〉が原作読者としては観れる事が嬉しくて…。
 あれ、原作知らない人はみんな、まりんちゃんがオタクに優しいギャルとかオタクの優しいギャルとか言われたりしてこんなギャル居ねぇよなんてコメントもチラホラ見掛けましたが、違います!本当に居ないのはごじょーくんの方です!あんな良い子こそ本当に居ないよ!?
 物語的には主人公立ち位置のごじょーくん、ヒロインまりんちゃんですが!!実際は主人公まりんちゃんでヒロインがごじょーくんですよ!!?
 そしてアニメ化によってごじょーくんの良さが知れ渡ってしまう~!!嬉しいような寂しいような……。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 四霊刀応龍:今だ見ぬ、主を待ちて幾星霜、出来れば常識人が良いなぁ…。

 


 

 ━━綾小路武芸学舎・寄宿舎

 

 『それでは同盟は実を結んだのだね?』

 大荒魂から雪那を通じて結月の手により秘密裏に用意されたゲスト用の一室で、地球の技術では到底理解が出来ぬ通信端末を前にマッニーは人の姿でベッドに寝そべりながら、ワルガイア星人のからの言葉を聴く。

 

 「せやなぁ、あちらさん本心はどうあれ同志として迎え入れてくれたからなぁ。協力はそこそこ出来るんとちゃう?」

 

 『なに、腹に一物企てているのは我々とて同じさ。ならば後は互いに利が出る騙し合いをするまでだろう?』

 

 「その事ですが、暫くは大荒魂の人が単独で動くそうなのです。わたしたちはそこでダグオンが介入して来た場合に備えての精鋭を用意する事になりそうなのです」

 

 「要するにや、表向き今まで通りエデンからは無軌道に暴れるヤツを送ってくれればええ。そのついでに大荒魂ちゃんが仕事やり易い様に腕利きも一緒に巧いこと落としてや」

 

 『ふむ、理解した。であれば近々四騎士の誰か…或いは彼女達のパートナーである四天王で腕の立つ()か我が特殊監獄の用心棒を送るとしよう』

 

 「彼……ああ、あの"怒れる"ラーシュメイラの相方さんですか、です」

 

 「や、まずはそこは四騎士様で事足りるやろ?護衛やから"哀しみ"辺りが順当とちゃう?」

 

 『ではその様に手配しよう。君達もくれぐれも今は彼女の機嫌は損ねぬ様に』

 

 「はい。です」 「あいよ」

 

 エデンを執り纏める盟主ワルガイア星人からの言葉に各々で返事を返す人間態の2人。

 こうしてまた1つ、地球に異星人の活動拠点が増えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・サロン

 

 「特許きょきゃする東京特許ときゃきょく!!」

 

 『トッキョ許可しりゅトウキョーとっきょ許可キョく』

 

 サロンカウンターにて繰り広げられる早口言葉。

 発しているのは幼き天才刀使燕結芽、そしてもう一人──否、一個。

 

 「違うよ、しりゅじゃなくてする!す・る!」

 

 『す・る…する?』

 

 カウンター席に座る結芽の目の前に置かれたルービックキューブ大の正方形立方体。

 とある新兵装に搭載される予定の超自立型思考型電脳演算機、名を"キッド"と言う。

 その超AIキューブに向けて少女はもう何度目かになる言葉を繰り返す。

 

 「イヤそもそも結芽っちもちゃんと言えてネェから」

 そこへ掛かる呆れた声。

 2席程離れた場所から、壁に掛けられた的へ向けダーツの矢を放りながら、鎧塚申一郎が横槍を入れる。

 

 「むっ!なら申一郎おにーさんは噛まずに言えるの?」

 

 「ハッ、楽勝。特許許可する東京特許許可局……どうよ?」

 

 「ぐぬぬ……」

 

 己よりも年下の少女相手に勝ち誇る申一郎。それを更にテーブルから軽食を採りながら見ていた翼沙が窘める様に口を挟む。

 

 「申一郎、一回言い切っただけでは成功としては微妙ですよ?せめて十回は繰り返さないと」

 

 「そーだそーだ!」

 

 『ソーだー?』

 

 翼沙の援護に結芽がプンスカと聞こえる様な拗ね顔で便乗、言語知能共に未成熟なキッドがそれに続く。

 

 「へいへい…特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局特許許可する東京特許許可局……これで満足かって?」

 

 「むぅぅう……」

 あっさりこなして見せた申一郎に結芽はいっそう頬を膨らませて拗ねる。

 

 「お主…無駄に多芸じゃな。その癖標準語のイントネーションは怪しいのは何故なのか……」

 

 「ウッセ、早口が出来んのとイントネーションがおかしいのはイコールじゃネェっての」

 

 座敷で週刊漢の鉄道を読んでいた撃鉄からの声に、トリプルスコアを決めながら反論する。

 

 「大方、女性を口説く為に良く口が回ると言った所だろう」

 そんな申一郎のスキルをナンパの為の物だろうと半ば断言同然に論じるのは、カウンターの内側で食器を棚に整理し列べる戒将。

 最後に食器を磨いていた白い布ナプキンを洗濯用水に浸けてカウンターを出る。

 

 「悪いかヨ?口が巧いってのはナンパじゃ必須スキルだぜ?」

 

 「他人の趣味趣向に剰り、どうこうと言いたくは無いが……貴様の場合は悪評もあるからな。まぁそもそも校内で貴様を知っている女生徒相手には通用していないのだが」

 

 「グフッ……痛いトコ突きやがる……。だがしかァし!街じゃ判らねぇゼ!?」

 

 「だからそれが我が綾小路…延いては伍箇伝の評判を下げると言っているのだ」

 

 「ソレを言ったら翼沙のヤロウもダロッ?!」

 

 鬼の風紀委員長からの厳しい言葉に、しかし負けじと反論。ついでに翼沙を巻き込む。

 

 「失敬な、僕は評判を下げる様な事はしてませんよ」

 

 「はっ?」 「何っ?」

 

 心外だとばかりに返す翼沙に思わず眼が点になる同綾小路の2人。

 

 「オマエ、それマジで言ってんの?」

 「言いたくは無いが、我が綾小路武芸学舎内にて渡邊翼沙と言えば、成績は優等生だが度々実験なりで爆発を起こす問題児として教師生徒共々知れ渡っているぞ…」

 

 「なっ…本当に心外です。僕としては刀使の為に技術の発展に貢献しているだけだと言うのに」

 

 「要は戒将以外悪名で言やぁ五十歩百歩かドングリの背ぇ比べなんじゃな」

 

 1人、平城学館として第三者の立場で撃鉄が結論を述べる。

 

 「ソコだ、ズリぃよなぁ…一人だけ教師受けが良くてヨォ。しかもカワイコチャンの何人からもモテる」

 

 「まぁ、不良や問題児からは恐れられていますけどね。それはそれとして僕が問題児扱いなのはやはり納得し難いです」

 

 「そもそも綾小路は不良…居るのか?」

 申一郎と翼沙の言い分を聞いて撃鉄が何と無しに訊ねる。

 

 「綾小路自体には問題児扱いの生徒は居ても、不良と呼ばれる者は居ない。強いて言えば、周辺他校の生徒が刀使技師問わず我が校の女生徒にちょっかいを掛けて来るが…」

 

 「ソレを一喝したモンだから、その他所の連中に恨まれて、囲まれた事あるよな?たしか族っぽいヤツら」

 

 「ああ、それなら僕も聞いたことがあります。確かまだ中等部の頃ですよね」

 

 「何それ!?教えて!!」

 

 思わぬ兄の武勇伝に妹が眼を輝かせる。

 

 「何…然して大した事では無い。俺が中等部二年の夏から秋に掛けての頃、嫌がる女生徒相手に無理を通そうとした不埒者を撃退したと言うだけの事。

 ただ、言葉を尽くしたにも関わらず、実力行使に来たので正当防衛を主張させて貰ったが」

 

 「ンで、実はそのヤロウが府内で有名な半グレ集団の一派らしくてヨ、いつだったか…戒将のヤツが一人になったトコを狙って仲間連れで報復に来たんだとよ」

 

 「片や中等部一人を相手に高校生相当の人物達が原付き車両含め、リンチも斯くやとばかりの人数差だったとか…」

 

 「ほほう、ワシも二百人ちょっとは相手にして勝った事はあるが、そん時は背中任せられる奴が居ったしのう…それで?どうなったんじゃ?」

 

 「竹刀一つで向かい来る彼等を全て倒したと言われています」

 「で、ジッサイそこんトコどうよ?」

 

 有名な噂話を当人を前にして語らい、事実を照らし合わせる為に是非を問う。

 

 「ふぅ、流石に百人も居ない。精々十数人…原付き含め改造バイクも四台相手にした辺りで場所を移したさ」

 

 (バイク相手にしたのはホントなのかヨ)

 (当時から身体能力は高い方だったんですね)

 

 「それで、その連中をシバき倒した事やらもあって鬼の様な強さから…鬼の風紀委員長か」

 

 「当時はまだ風紀委員だ。それに俺とて四角四面にルールに厳しいつもりは無いぞ?度を越した者や規定以上に乱れた服装を許さんだけで、学業や特祭隊の活動等に支障が無ければ、少々の事には眼を瞑るとも」

 

 「つまり申一郎と翼沙はその少々に含まれ無いタイプだと?」

 

 「ああ」

 

 「だってさおにーさん達」

 

 『???』

 

 「「ガクッ……」」

 

 戒将の武勇伝を聞いた上で、揺るぎ無い問題児である事が確定した申一郎と翼沙は結芽に言われてしまい項垂れる。

 

 「それはそうと……一年坊主どもはまだ来とらんのう」

 

 「龍悟はアルバイトだそうだ。焔也は……美濃関に戻っていると聞いているが…何処かで寄り道でもしているんだろう」

 

 と話を締め括っていると、噂をすればの例に漏れず焔也がサロンへと上機嫌で現れる。

 

 「うっす!」

 

 「アん?随分とジョーキゲンじゃねぇの」

 

 気味が悪いくらいの笑顔だったので思わず焔也に訊ねる申一郎。

 

 「それがよ!こっち来る途中コンビニ寄ったらさ、俺らのカードが売ってたんだよ。試しに買ったらなんと…ファイヤーダグオン()が出たんだよ!!しかもこの構図ファイヤーブレードの決めのポーズだぜ!!」

 喜び勇んで取り出したウェハースチョコレートのオマケカードを見せつける焔也。

 

 「オマエのメンタル小学生男子かヨ」

 

 「カードぉ?そんなモンいつの間に出来たんじゃ?」

 

 「良く出来ていますね……肖像権諸々言いたい事はありますが、これ全部イラストなんですか?」

 

 「良くは知らないのだが、こう言った物は普通フィクションの物を販売するのだろう?我々がそう言った商品に使われて問題無いのか?」

 

 「お兄ちゃん見っけ!」

 

 焔也の子供染みたはしゃぎ様に冷めた反応の申一郎。カードに胡乱な視線を寄越しつつ、人類の商魂の逞しさに呆れ返る撃鉄。

 焔也が翳しているカード以外の物を手に取りながらしげしげと観察する翼沙。

 そしてこの手のオマエ付きお菓子に縁が無い戒将が困惑極まる顔している。

 結芽はカードの中からしれっと見付けたターボカイ、ダグターボのカードを拝借していた。

 

 「おや?みんな楽しそうだね~。何かあったの?」

 其所へ現れたアルファ、お目付け役が帰った為に上機嫌である。更に数十分間だけ元の状態に戻る事を許されたのも大きい。

 

 「おっ、見ろよこれ!俺のカードだぜ!」

 

 「ファイヤーダグオンのだけどナ」

 

 カードをアルファにも見せる焔也、そしてそのカードを見てニコニコ笑顔だったアルファはそのまま笑顔で青ざめる。

 

 (ふぁぁぁあ?!何でウェハースでよく見るイラストカードとかになっちゃってんの?!ヤバいよヤバいよ!?ボクの知らない内に商売されてるよ?!人間そう言うトコおっかないなぁっ?!て言うかナマモノをカードにしちゃうの?!何処のアイドルだよ?!)

 決して口にはしないが珍しく本気で狼狽えるアルファ、まさか強敵の出現でも、敵の猛攻による敗北でもなく勝手にファングッズ展開されていた事に狼狽するとは夢にも思わなかっただろう。

 

 「いや、うん。どうせこっちの世界には元々勇者ロボは存在していなかったんだ。それに元のダグオンの世界でも変形合体玩具は学君が持ってたし……、大丈夫…慌てる様な事じゃ無い、ボクは無実、ボクは悪くない。悪いのは根本の原因を作ったベータ、全責任はあいつにある………ヨシ!」

 

 「何をぶつぶつと呟いとるんじゃ、お主は。それよりワシのドリルライナーを完成させてくれたんか?」

 独り小声で呟く脳足りんへ、格好が時代錯誤な不良スタイルの割に存外知的な所もあるダグオン最年長が、己の愛機の進捗具合を確かめる。

 

 「あっ」

 

 「あっ?」

 

 「…………………………テヘペロ」

 

 「おんどりゃぁぁぁぁああ!?!!!」

 絶叫、そのまま大きく腕を開けベアハッグを仕掛ける。

 巌の肉体が華奢な少年を捕える前に、少年は霞その様に身体を霧散させる。

 

 ≪フフフハハハ♪もうボクに物理攻撃は通用しないよ!!でも長居したら色々精神的に責められそうだから、此処でサラバダー!ダー!ダー!ダー!≫

 脳内に直接声を届けているにも関わらず、ドップラー効果を残してサロンを去る。

 

 「どの道オーダールームで遭遇するだろうに」

 「まァ、アイツもバカだし」

 「どうせ三十分もしない内に実態化してしまうのに、あんな啖呵を切ってしまって、後の結果を理解していないんでしょうね」

 「おねにーさんすぐに調子に乗るもんね」

 『あるファは馬カ?』

 この評価である。

 

 「まぁ…元気出せよ撃鉄」

 「おぉぉぉおお!!」

 焔也に肩を叩かれ男泣きする撃鉄、それはそれとして後でしっかりケジメは着けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━関東某所

 

 「フーン、お前さんが大荒魂って奴なのか。ウン」

 

 「ほう…鉄の騎馬へと転じる異星の徒、それも吾が存在するこの星の先、銀河の彼方より来訪した者とはな。宇宙(そら)の先には愉快な存在が多々在る物だ」

 

 人の気が無い雑木林の中で黒いパーカーのフードを目深に被った、白い…白すぎる肌の少女。

 彼女と相対し言葉を交わすのは雑木林と夜の闇に紛れる為、その体躯に纏う色を白灰から紺緑へと変えてエンジンを唸らせるバイク──アスクラ。

 

 「はー、お前さんちっこいナリして随分とオイラ達の事詳しいじゃないの。ウン」

 

 「吾は神ぞ?この星の者か否かは視れば理解は容易い。それよりも、貴様達の手並み如何程であるか見せて貰おうではないか」

 

 「へいへい、ご存分にだ。ウン…。そんでお嬢ちゃんは高みの見物キメながら野良荒魂を堪能してりゃいいさ、ウン」

 

 大荒魂の言葉にぞんざいに答えつつ、成層圏の向こう側に信号を送る鉄騎。

 それはやがて火星に駐留する小惑星大の移動監獄へと届き、何かをゲートから放出する。

 

 「ウン、時間にして五分ってとこかね?こっちも連中がどんだけ戦力アップしてっかアラタメテ確認する必要があるし、監獄の方は扱い兼ねてた人形とやらを処理出来るし、お嬢ちゃんはダグオンに眼を付けられないしで万々歳ってか、ウン」

 

 「どうであろうな、精々期待させて貰おうではないか」

 

 (えっらそうなチビだな、ウン。ともかく…今オイラ達が把握してるダグオンの最大戦力は、あの赤い奴だ、ウン。奴を確実に倒す為に仲間の援護を封じる必要があるな、ウン。ちょうどウチのメンツも二人除いて揃って来てるし、今回合流出来たアイツらのウォーミングアップも兼ねてシャドーリュウ達の妨害に徹して貰うかね、ウン。その間オイラはこのチビと一緒に行動するハメになるけど)

 

 心中にて今回の行動計画の概算を簡潔に振り返るアスクラ。

 程無くして地球に2つの質量物質が落下すると報道されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━都内某所

 

 「おわったぁ~!」

 

 「お疲れ美炎ちゃん!肩揉んであげるね♪」

 

 「下心が丸見えだよ由依」

 

 荒魂退治を終えた3人の刀使が姦しく言葉を交わす。

 肩より上に腕を伸ばして身体を解す美炎に厭らしい手付きで肩揉みを企てる由依、それを窘める葉菜。

 ノロの処理を回収班に任せ、帰路に着く。

 

 「何か軽く食べてくかい?」

 「「賛成~」」

 道中のコンビニで軽食を採っていこうと提案する葉菜に従って揃って入店する。

 暫しの熟考の後、各々簡単に摘まめる物を買って外に出る。

 店先の前で袋からパンだのおむすびだの取り出して腹を満たす。

 

 「ごちそうさまでした~……おや?美炎ちゃん、それは…お菓子ですか?」

 

 「ウェハース…だね、オマケのカードが付いてくるタイプだ」

 

 「ああ、これ?薫さんから教えて貰ったヤツ………やった!ファイヤーダグオン!!」

 

 美炎が取り出したウェハース、焔也がサロンで見せびらかした物と同様の物である。

 

 「見て見て!?スゴいよ!!これ一番レアなヤツだよ!!」

 

 「子供じゃないんだから……」

 「小学生みたいにはしゃぐ美炎ちゃんも可愛いー!!」

 

 何処かで見た反応である。

 由依はブレない。

 その一時の平穏な日常を空から轟く轟音が切り裂いた。

 

 「隕石?!」

 「もしかしてまた宇宙人ですか!!?」

 「あの方向…1つは練馬の方だ!」

 

 空より降り注ぐ2つの閃光、軌跡を追えば1つは美炎達が任務をこなしていた地域、もう1つは更に先へ落ちて行く。

 白昼堂々現れた隕石は卵の様であり、しかし展開していく様は蓮の花弁の様でもある。

 卵の花弁の中から現れたるは額の中央に聳え立つ長く太い一本角。

 カブトムシを思わせる角兜、隈取りを象った瞳、赫灼に輝く鋭角なボディ。

 両腕に備える蛮刀、大きさにしておおよそ20メートル強の巨体が意識無き瞳を何処かへと向けて動き出す。

 

 「いきなりデカいの来ちゃいましたよ?!!?こう言うお約束って普通人間大の敵からじゃないんですかっ?!」

 

 「意外に詳しいね?!由依!!」

 

 「言ってる場合かい?!!と言うか、由依がそんな事を言うから小さいのも出てきたよ!」

 

 赫灼のカブト巨人──後に赤カブトと呼称される巨人の側から湧き出るのはお馴染みザゴス星人。

 当然辺りは阿鼻叫喚と相成る。

 

 「デカいのはその内現れるダグオンに任せるとして、ぼくらはあの虫宇宙人を倒すよ!」

 

 「うん!」 「はいっ!」

 逃げる人の波を避け、星人達へと少女達は立ち向かう。

 

 

 

 時同じくして1人、本部長から承った任務を果たさんとバイトのついでに単独で行動していた龍悟。

 いち早くシャドーリュウへと転身し現場へと駆け付ける。

 

 「……相変わらず、時と場所を選ばない連中だ……」

 美炎達とは違う方向から赤カブト目掛け駆け抜けるリュウ、道中のザゴスを片手間で斬り棄てる。

 

 「……む、あちらでも誰か戦っているのか……」

 戦いながら拓けた交差点に出ると同じくザゴス星人相手に立ち回る美炎達を見付ける。

 と同時に空を駆ける4つの飛行機雲、ダグベースより出撃したファイヤージャンボ、各ライナービークルの軌跡である。

 また、地上でもベースから転送されたドリルゲキが手空きの区画にてザゴス星人を蹴散らす。

 

 『地上はリュウとゲキに加え近場の刀使が駆け付けてくれている様だな。ならば…エン!既に動き出した赤い敵は貴様に任せる。

 シン、ヨク。我々はもう一つの方を対応するぞ!』

 

 『あいヨ!』『了解です』

 ファイヤージャンボのコックピットで、コンソールの映像から飛ぶカイの指示。エンが返事を返すよりも早く、カイは他の2人に指示を降し、シンとヨクもそれに応える。その映像を見て自分もとっとと行動すべきと判断した彼は即座に合体に移る。

 

 

「火炎合体!!」

 

 ファイヤージャンボのコックピット内にて合体コールを宣言すると同時にエンが座する座席はファイヤーストラトスへ移動。機首からファイヤーストラトス、両脇のコンテナからラダー、レスキューが宙に射出される。

 即座に変形に入るファイヤージャンボ。

 射出後直ぐにラダー、レスキュー共に腕となって合体。

 最後に融合化済みのダグファイヤーが空中で炎の鳳を背負うが如く翔び、改めてファイヤーストラトス形態となって展開された胸部に収納。

 

 

『ファイヤァァァアアッ!ダグッオォォォオンンン!!』

 

 空中での変形合体を終え、敵の前に降り立つ。

 

 『行くぜ!』

 

 一気呵成、敵よりも先に勢いを付け殴り掛かる。

 対して赤カブトは蛮刀の棟を盾にしてファイヤーダグオンの拳の一撃を防ぐ。

 ならばそのまま防戦一方にしてやると意気込んでラッシュを仕掛ける。

 2体の鋼の巨人のぶつかり合いに大地は大きく震える。

 

 

 

 

 

 一方、残ったもう1つの落下物体目掛け飛ぶカイ達。

 彼等が見据える先には赤カブトが現れた時と同様、卵の様な物体が鎮座している。

 

 「どうやらまだ動き出してはいない様です」

 

 『だったらトッとと壊しちまおうゼ』

 

 『しかし半端な攻撃では外格だけ破壊して中身が出現してしまう可能性がある。此処は確実に破壊する為にも融合合体しておくべきだろう』

 

 「ですね。一通りアナライズスキャンをしてみましたが、あの卵状の物体は装甲らしき鋼板が幾重もの層の様になっている様です。

 ビークルの火力では不足でしょうし、リュウの合流を待っていて敵が出て来ても本末転倒です。僕達だけでやってしまいましょう」

 方針が決まれば3人は即座に行動する。各々の愛機へ融合しダグターボ、ダグアーマー、ダグウイングが三方囲む様に卵の前へと降り立つ。

 

 『最大威力で畳み掛けるぞ!』

 『オウヨ!』

 『全ての武装を叩き込みます!』

 

 『ブレイクホイールッ!!』

 『ファイナルバスタァァア!!』

 『ブリザードタイフーンンン!!』

 初手から最大の技をぶつける3体、爆煙が晴れる前に次の技を放つ。

 『ホイールボンバァァァアア!』

 『アーマーレーザー!』

 『クリスタルカッター!!』

 立て続けに放たれる武装の数々、タイヤ型爆弾やアーマーミサイル、アーマーキャノン、アーマーバルカン、フリーズビームと繰返し放ち火線を張る。

 流石に辺りに土煙が立ち始め、目標物が爆煙と土煙に紛れてしまった為攻撃の手を一旦止める。

 

 徐々に晴れてゆく砂塵と黒煙、射し込む光により写る影は卵の形を如実に削っていた。

 

 『ハンッ!流石にヤったミテェだな』

 『………………手応えはありました。しかし…何か妙な』

 『全体が顕になり、尚健在で在ったのなら次は近接戦を仕掛ける』

 うっすらと見えてくるシルエットに対し次策を口にするダグターボ。

 同調する様に身構えるダグアーマー、ダグウイング。

 

 だがしかし、彼等は思い違いをしていた。先に現れた赤カブト同様宇宙から落下して来た卵状カプセルの中に敵が入っていると思っていたのだ。

 それ故装甲が剥がれた中身から出て来たモノへの対応が一手遅れた。

 

 ─キーンと可聴域を越えた音がマシンと融合している彼等の耳に届く。

 

 『っ…退避!!』

 ダグターボのその言葉に各々が放とうとしていた近接技を留め、回避に跳ぶ。

 だが3体の鋼鉄の巨人に目掛け飛んで来たワイヤーが彼等の脚、腕、胴へと巻き付く。

 

 『『『?!?!!』』』

 

 ワイヤーが巻き付いた瞬間迸る生物では耐えられない程の超高圧電流、空中のダグウイングは脚から流れた電流とワイヤーによって引っ張られた事により地に臥する。

 腕に巻き付いたワイヤーからの電流に膝を着くダグアーマー。

 ダグターボは胴を中心に電流が流れ苦悶を溢す。

 

 『ぐぅっ……ぅぅ』

 『ガァァッ…!』

 『あ゛ぐっ…』

 苦しむ彼等に追い討ちを掛ける様にワイヤーが射出された物体からミサイルが大量に撃ち放たれる。

 

 『?!みんな!!』

 赤カブトを相手取っていたファイヤーダグオンが3体の方に意識が逸れる。

 それを好機と見た赤カブトが蛮刀を振るいファイヤーダグオンの拳を弾く、弾いた勢いで間を作り出し今度は己から距離を縮める。

 同じく弾かれたファイヤーダグオン、姿勢を建て直す前に赤カブトの突進で後方の高層ビルへ叩き付けられてしまう。

 

 『くそっ!強引だが…やるしかねぇ!』

 更に追い討ちの一撃が来る前にビルを背に上空へ一旦逃れようとエンジンを蒸かせたその時──

 

 

 

 

 「今やでフュンちゃん」

 

 「了解です」

 

 遥か遠方、東京タワーの第2展望室の屋根上から戦局を観察していたマッニーの合図に、隣にて何やらレトロなレバー操作リモコンを動かすフュンフ。

 果たしてその行動が意味する所は直ぐに判明した。

 

 ダグターボ達ライナーチームを拘束しているワイヤー円柱を包んでいた卵状カプセルの装甲と赤カブトが現れた際に放置されたままの蓮の花弁状カプセルが起動、円を描き、球となり、果ては合体連結しある種の棒人間の様なシルエットと化す。

 

 「そのまま赤いダグオンに突撃や!んでもって頼ますでぇ傭兵海賊の大将方!」

 

 耳に掛けたワイヤリング端末から何処へと指示を飛ばすマッニー。

 それに呼応してライナーチームが苦しめられている戦場に永久凍土を支配する巨体と氷上を疾る影が現れる。

 

 「オォォォオオッ!!

 

 「やれやれやっとの事の出番かね、待ちわびたじゃんよ」

 アスファルトの大地を割って紺碧のマンモスと薄黄色のペンギンが出現した。

 

 『ッ?!あのマンモスヤロウ…京都で猛吹雪を起こしたヤツだ?!』

 

 『あのペンギンにも見覚えがある……以前、御刀を持った紅いドレスの異星人を白いバイクと共に回収に現れた奴だ…!』

 

 『まさか、このタイミングの為にずっと地中に潜んで……!』

 現れた難敵に苦しみながら戦慄する3体、それを悠々と見下ろす紺碧の傭兵ビッグロー、彼はビーストモードで氷結能力を存分に発揮させる。

 以前の京都とは違い出力をより高く発したそれは3体の勇者の身体を徐々に凍らせて行く。

 

 『不味…い…このままでは…!』

 『彫像になって砕けるのはカンベンだゼ…!』

 『せめて…この電磁ワイヤーさえ切断出来れば、多少のミサイルも…無視出来る…のですがっ!』

 

 「ふむふむ…銀色のダグオンは凍るペースが他と比べてイマイチじゃないか。やはり冷凍系の攻撃手段を持ち合わせているからかね?」

 

 

 「……くっ、行けシャドーガード!!」

 戦況が芳しくないと見たシャドーリュウが3枚のカードを放つ。

 放たれたカードが3匹の鋼の獣と化し、ダグターボ達を助けんとビッグローに襲い掛かるも薄黄色のペンギン──フリッジが割り込みシャドーガードのガードアニマルを痛め付ける。

 

 「ォン、邪魔ぁよくないよん?おまえは確か…アスクラの坊主を二度くらい殺した紫のダグオンだな?

 うんむ、決めた。マシンと合体する前に倒してしまおうか!」

 言うや否やペンギンのボディが前後上下に割れ、人型の脚が現れ、ペンギンの胴と足が人型の肩となり、羽根が付いた胴が右腕装甲、残った部分が左腕装甲となる。

 頭部はペンギンの嘴の意匠を象ったデザインとなっている。

 

 「オラはフリッジ、宇宙海賊だ。紫のダグオン、悪いがちょいと付き合って貰おうか」

 6~8メートル弱の機人が飄々とリュウの前に立ち塞がる。

 

 

 

 「さ、さ、さ、…寒っ?!これ京都の任務の時も似たようなのあったよ!!?」

 ザゴス星人を巧くあしらいながら美炎は御刀を持ちつつその身を抱いて震える。

 

 「あの突然現れた青いゾウが原因…みたいだね」

 視界を被う程の吹雪に片目を閉じながら原因を睨む葉菜。

 

 「って言うか!このままだとダグオンの皆さんピンチじゃないですかっ!!?」

 大太刀を振るいザゴス星人を蹴散らしながらダグオンの危機に焦る由依。

 

 3人とも吹雪により動きに精細を欠くが、最早只のザゴス星人では相手にならない。

 

 『ぐぁあっ?!』

 そしてファイヤーダグオンは赤カブトと連結棒人間の2体にリンチを受け動けない。

 棒人間は自らを構成する鋼板装甲の1部を切離し、ファイヤーダグオンの四肢を拘束、残った部位で新たに手足を構成し赤カブトと共に一方的に攻撃を続ける。

 

 「いかん!?皆ピンチじゃ!」

 ゲキが目の前のザゴス星人を蹴散らして、何とか手段が無いものかと、知恵を振り絞る。幸いな事に吹き荒れる吹雪は敵味方問わず動きを阻害し、生身(とは言っても写シで多少マシではあるが)の刀使と寒冷耐性の無いザゴス星人もまた思う様に動けない、故にゲキが率先してザゴス星人を撃破しているのだ。

 

 「リュウが封じられておるのが痛い、しかしワシではデカブツの戦いには……」

 

 己のビークルがこの場に無い事に口惜しさを感じ、そのやり場の行き先を眼前の敵にぶつける。

 

 

 

 「つまらんな、こうも呆気が無い闘いと言うのは」

 ライナーチーム各員の身体を2/3程凍結させたビッグローが一方的な有り様に失意を滲ませ呟く。

 後は完全に凍った連中をその剛力を以て砕いてしまえば仕舞いだと結果の見えた趨勢に興味を失いかけたその時、天より炎を纏った黄金が吹雪を斬り裂いた。

 

 『オオォォォッ!ライアンフレアぁァァァアア!!』

 

 刀身に炎を纏い豪雪の中を突破、円柱のワイヤーを炎の刃で斬り落とし空中にて人型へと変形した黄金の影の名はライアン。

 彼は獅子の胸部から業火の如き火炎を凍り漬けの3体へ向け発射、灼熱が3体の身体の凍てつく氷をその鋼の肉体ごと溶かさんとする。

 

 「チッ…アジな真似をっ!」

 

 『さっさと立て、私はリュウの助太刀に行く』

 言って、ライオソードとなって円柱を断ち斬りリュウの元へと翔んで行った。

 

 『アチチチチッ?!ヤリ過ぎだあのヤロウ!!?』

 『ですが、これで存分に動けます』

 『ああ、二人には後で礼を述べねばな。さぁ先ずはあのマンモスの戦士を倒すぞ!』

 

 「面白い…やはり闘争とはこうでなくてはなぁあ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・メインオーダールーム

 

 「やったあ!ナイスおじさん!!」

 オーダールームのメインモニターに映し出される戦況に喝采の声を挙げる結芽。

 隣ではアルファが冷や汗を腕で拭う。

 

 「ふぅ…危なかった……。直前までライアンの出力強化していた甲斐があったよ。でも三人共このままじゃまずい…。あの敵目茶苦茶強いから今のままじゃ勝てないよ………てゆーか!何なの?!あのどう見てもビーストでウォーズでネオしそうな感じのマンモス!?エデン囚人にあんなの居たっけ?!そもそも宇宙海賊って収監してたの?!!」

 途中までは剣呑な空気を醸し出していたが、最後の方で堪らず駄々を捏ねた様に文句を垂れ始めるアルファ、最後の言葉は後ろでホロとして実体化しているブレイブ星人への問いである。

 

 〈残念だが…私の記憶にも、以前貴殿の同胞よりもたらされたエデン監獄の囚人リストにも、あの様な囚人の存在は銘記されていない。

 恐らくだが、あの現地生物に変形する者達や以前ダグシャドーが撃退した者はこの世界の宇宙に存在する何らかのエネルギー生命体と思われる〉

 

 「何だよそれ!?ズルくない?!!」

 

 〈今はそれよりも彼等…ダグターボ達の事だ。このままでは確かに勝てない、だが……異世界の者達と共に共闘した際と同等のシンパレート値が観測された〉

 

 「それって──」

 

 勇者とエデン監獄を良く知る2人だけの会話となり、更には兄達が勝てないと告げられ見る見る不機嫌になる結芽。

 彼女の感情を感じ取ったキッドが不安そうに声を溢す。

 

 『オねぇちャン?』

 

 「勝つもん!お兄ちゃんは負けないし、おにーさん達だって!」

 

 「ぅや、違う違う!違うよ結芽ちゃん、このままじゃ勝てないとは言ったけど全く勝てないとは言ってない。戒将君達が"合体"さえ出来れば状況はこっちに傾くハズさ!」

 

 「合体?!出来るの?お兄ちゃんが?」

 

 〈そうだ。三機のライナービークルから融合合体した彼等はそのまま合体する事が出来る。

 既に彼等の心は一つに纏まり、守るべき者達の為に戦う心構えも十分、そして最後の因子、倒すべき敵を前に折れず衰えぬ意思が揃った。

 後は本人達が自覚すれば──

 「大逆転の始まりってね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━都内某所

 

 『ターボピストンパァァンチ!』

 『グラビトンキィィィックッ!!』

 

 ダグターボの高速の拳とダグアーマーの重撃の蹴りがビッグローへ迫る。

 

 「気概は買う、しかし温い!!」

 双方の攻撃をその厚い装甲で受け耐え、ノーズキャノンをトンファーの様に振り回して2体を吹き飛ばす。

 

 『ならばっ!』

 大きく動いた為に出来たビッグローの隙をダグウイングが翼の刃で攻撃せんと突撃する。

 

 「そう来るだろうさ!お利口な奴程なぁぁあっ!!」

 叫び、脚部装甲より展開したミサイルランチャーから、しかしミサイルではなく空気を圧縮し撃ち出す事により無理矢理姿勢を変えてダグウイングの攻撃を躱す、そしてがら空きのダグウイングの背後をノーズキャノンで撃つ。

 

 『っぁあ?!』

 

 先に吹き飛ばされた2体の元に転がるダグウイング。

 ボロボロの2体が倒れた彼に手を貸して立ち上がらせる。

 

 「ほう…まだ立つ余力があるか」

 

 『無論だ…我々は敗けられない』

 『オウとも、テメェを倒してあのバカを助けネェとなァ』

 『そう言う事です…』

 

 立ち並ぶ3体の巨人の瞳に翳りは見えない。

 

 「使命と言うヤツか……そんな形も分からない不確かなモノに命を賭けるのか?」

 

 『確かに…この星を守るのはダグオンとして我々に与えられた使命ではある。だが!』

 

 『そんな義務感だけで戦っちゃいネェンだよ!』

 

 『ええ、使命だけでなく……己が譲れぬ物の為に──』

 

 『テメェが守りてぇモンの為に──』

 

 『何よりも、己の矜持の為に──』

 

 

 

 

(オレ)(僕)達はお前に勝つ!!

 

 

 

 3体の──3人の心が、闘志が、魂が1つに重なる。

 その瞬間、彼等の頭の中に1つの言葉が浮かび、本能に従い叫ぶ。

 

 

『『『合体!!』』』

 

 重ねられた3つの手を中心に3体のダグオンが光に包まれる。

 光を抜け、空を駆けるは構成するパーツをバラバラに分解させたライナーチーム。

 MAXやまびことつばさの先端──即ち運転席部分を先頭にアーマーパック、ターボパック、ウイングパック。

 ビークル状態になったダグターボ。

 最後に運転席部分を切離したダグアーマーとダグウイングがそのまま向き合う形で切り離された胸部をコネクタとして合体、其所へターボパックのリアウイングが合体部分を隠し補強する形に装着。

 腰から脚に架けての部位を構成、更に下半身と化した2体の上に接続、客車側が後ろから左右に開きのぞみの側面に羽の意匠の様な模様が現れ肩関節のジョイントが構成。

 MAXやまびこの機首が右肩、つばさの機首が左肩、合体した両肩から二の腕が現れ右腕がアーマーパック、左腕がターボパック、各々のパックから手が握り拳のまま展開。

 ターボライナーの背部にウイングパックが合体、ウイングが上部に展開。

 そして最後にターボライナーの天井が展開、各ライナービークルの意匠を象ったデザインカラーのブレードアンテナとサイドアンテナが付いた頭部が現れる。

 そして額の車輪を模した飾りが高速回転、蒸気を噴きその姿を完全な物とする。

 

 

 

ライナァァァアア!ダグッ!!オンッ!!!

 

 

 3人の声が重なり両の拳を胸の前でぶつけ吼える。

 

 遂に…遂に合体した3人の戦士、3つの体と心が1つとなり現れた三位一体の勇者。

 

 その名も──ライナーダグオン!!

 

 凄まじいパワーを秘めた新たな勇者の誕生である。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:ビッグ・ユニオンverライナーダグオン)

 

 うぇぇえ?!三人のダグオンが合体して新しいダグオンになった!!

 

 ライナーダグオン……新幹線のダグオン達が合体した姿か…。

 

 薫さんが知ったら興奮しそうな画でしたねぇ、所で合体したと言う事は人格とかどうなってるんですかね?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 進撃!!重連合体ライナーダグオン!!

 

 その強さ、如何程のモノか見せてみろぉぉおっ!!

 




 はい、ちょっと前書きで興奮し過ぎました、反省。
 後今期注目してるのはプリコネ2期と現実主義勇者第2部、その他にもチラホラ視聴していく予定です。

 新春ハルウララ出ましたぁ~!可愛い!!

 冬コミの同人誌、通販でメチャクチャ買って金欠気味だけど、また給料入る頃にはバトスピのゲーム買える筈…多分、きっと、メイビー……カードの実物買う余力は無いのでそっちで満足したい…けどコラボのロイヤルナイツは実物欲しいと言うジレンマ…。

 ではまた次回。


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第九十七話 進撃!!重連合体ライナーダグオン!!


 こんばんは、去年某お空の果てを目指すゲームのエイプリルフールコラボ(ハジケまくるあれ)に感銘を受け、今年のエイプリルフールネタの話は連続するネタにしようと決めたダグライダーです。

 因みもう既にネタを書き始めてます。




 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 何かぁ~四天王とかぁ~呼ばれてる~らしい~よぉ~。

 

 何だそれは?理解出来ない理解出来ない。

 

 一部の文明発展惑星等で良く聴く呼称、エデン内では当機を含む我等が該当。

 

 んなことより、わーの相方はまだなん?早ぉワチャワチャ楽しみたいんけど

 

 きっともうすぐだよ♪

 

 我が《友!?》《死?!》《主》《祖?》

 


 

 ━━都内某所

 

 突如として空より降って来た厄災、それはダグオンの力を今一度見定めともすれば彼等の最高戦力たるファイヤーダグオンを葬る為のエデンの刺客であった。

 彼等は今までの刺客と異なり、意思を持たぬ人形…。それもその筈、彼等の正体は東監獄主ヒュプティが造り出した囚人達で掛け合わされ組立てられた人形(アバター)なのである。

 監獄主不在となれば、物言わぬ人形を放置する訳にもいかない。

 最早元に戻せぬのだから、精々有効に使い潰してやろうではないかという思惑の下女医主導で外付けのコントロールシステムを搭載し、地球の前線基地もしくは大荒魂が拠点としている綾小路武芸学舎に食客として滞在しているマッニー達の戦力となるように細工を施し送り込んだのであった。

 

 そして、大型生物兵器として新生した2体の傀儡を前にファイヤーダグオンは僅かな隙を衝かれ一方的になぶられ、ダグターボ達ライナーチームは円柱型の装置と宇宙海賊オルゴン副船長ビッグローによる妨害を受け、シャドーリュウは同じくオルゴンの船員であるフリッジからの横槍でシャドージェットとの融合合体が行えない。

 シャドーガード達もビッグロー達の出現でカードに戻されてしまった。

 ドリルゲキは巨大戦力に対し対抗する手段を持たず、このままファイヤーダグオンは2体の傀儡相手にあわや処刑されてしまうのか!?

 ライナーチーム達は動けぬまま氷漬けにされ砕かれてしまうのか!?

 そう思われていた、しかし寸前の所でライアンが加勢に現れビッグローの氷を溶かし円柱型の装置を破壊、絶対零度の戒めから解き放たれたライナーチームは果敢に歴戦の傭兵へと挑む。

 

 多対一の不利を物ともせずにその力と技を以て相対するダグオン達を翻弄、追い詰めるビッグロー。

 しかしダグターボ、ダグアーマー、ダグウイングは尚もその心を折る事無く立ち向かう。

 その折れぬ意思に3人が融合しているライナービークルに秘められた最後の機能が解放される。

 自らの頭の中に流れるイメージに従い、互いの手を重ね合わせ、重連合体と叫ぶライナーチーム。

 そして現れたのは3体の鋼の巨人が1つとなった三位一体の姿、ライナーダグオンであった。

 

 

 

 「ぬっぅ……一つに纏まっただと?!」

 

 己の倍の大きさと化した獲物に動かぬ眉をひそめるビッグロー、幾多の戦場を渡り歩いた身の上であれど3人の意思が1つになる合体等早々拝む機会は無い。

 複数の機体が合体する存在は()()()()()()()()が、目の前の敵はどうもそれとは違う気がする。

 

 

 『こ…これは……!我々は一つに合体したのか!?』

 〔そうらしいナ、オレ達も意識あるからヘンな感じするが……〕

 〔細かい事は後で、まずはあの宇宙海賊とやらを撃退しましょう!〕

 

 ライナーダグオンに合体した3人、しかし実際に声を出しているのは戒将のみである。

 だが現在ライナーダグオンの内側、3人の意識が存在する空間で彼等は己の明確な肉体のイメージを保ったまま存在しているのだ。

 

 『うむ…そうだな。今は敵を倒す事に集中せねば!』

 

 「ふんっ!当初の想定とは大分掛離れた状況だが、戦場とは生き物……この程度の事、狼狽えるものかよっ!!ダブルアームトンファー!!」

 ノーズキャノンを背中に背負い、両腕の装甲から黒い混紡の様なトンファーを展開するビッグロー。そのままライナーダグオンへと肉薄する。

 

 『っ!迷わず来るか!?ならば迎え撃つ!!』

 歴戦の雄姿が小細工無しに迫るのを認め、徒手空拳の構えを取るライナーダグオン。

 その瞬間、彼の勇者の()()()()()()()()()()

 

 『相手はエモノ有りだが、殴り合いってンならオレの領分だゼ!』

 戒将から申一郎へ、古武術からボクシングのフットワークへと姿勢が変化したライナーダグオンは突き出されたトンファーを見切りで躱し、左拳の連続ジャブを叩き込む。

 

 「ッァ?!このスタイル……緑の重火力型かっ!!?」

 

 『応とも!!』

 ラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュ。

 止めどなく繰り出される左拳に紺碧の巨体が思わず宙に浮く。

 

 「おぉぉォオ?!拳の連打だけで我が身を浮かばせるだとぉォオ?!」

 

 『ンでもって必殺の右ストレートだぁァァア!!』

 キャノン部を後方へ展開し妨げとならない様になった右拳の一撃をガードの上から打ち込む。

 趣味が高じて身に付いたボクシングの技と部活動で習得せしめた古式空手の業が混じった渾身の1発、その一撃はビッグローのアームトンファーを腕部装甲ごとひしゃげさせた。

 

 「ゴガッ?!」

 

 僅な呻きを溢して地に鑪を踏みよろける傭兵。

 

 『どんなモンよ!いつかの借りを返してヤったゼ!!』

 〔以前の京都での戦闘の事か〕

 〔意外と根に持ってたんですね〕

 ライナーダグオンの内側ではそんなやり取りが繰り広げられていた。

 

 「っぅぬぅ……(単純に合体してパワーが加算されたのでは無い、寧ろこれは乗算…三体の魂とでも言うのか?その爆発力がそのまま出力として出ている……)」

 腕間接部位から火花を散らしながら、己の身に起きた事や敵の戦闘力を冷静に分析するビッグロー、ライナーダグオン(申一郎)が高揚して何か口にしているのを聞き流しながら、部下のフリッジの方へと気付かれぬ様意識を配る。

 

 

 

 

 

 

 「ありゃあ?!せっかく凍った地面が溶かされちまったのよぉ~?!」

 

 ライアンの介入により己の有利な戦場を破壊され、思う様に機動戦闘を行えなくなったフリッジ、それを好機と見たシャドーリュウはライアンに1つの懇願を願い出る。

 

 「……ライアン、この時だけで構わん…。我が剣となりて敵を討て…!!」

 

 『ほぅ…、面白い。貴様もそれなりの腕だ、一時の使い手として認めようではないか』

 

 黄金の巨人が剣となってリュウの手に収まる大きさに変化する。

 

 『……シャドォォォライオソードッ…!』

 

 闇に紛れて悪を討つ!黄金の獅子剣を逆手に持った紫影が勢いの衰え始めた吹雪と言う名の白い闇の中、敵を目掛けて駆ける。

 

 「おぉんやぁぁ?こいつはヤバいとか言うヤツだよねぇ?!」

 

 最早吹雪が視界を塞ぐ事など無いと言うのに白闇にその身を消した紫影を目撃し並々ならぬ焦りを懐く。

 斬撃が光の軌跡を残して老獪な学者を斬り刻んでゆく。

 浅い傷だが体格差など物ともせず、次々とフリッジの躯に刻まれてゆく斬痕。

 しかして紫の影さえ捉える事叶わぬ。

 

 「あだだだっ?!一撃一撃は大したこと無いのにさっきから出来てきてる色んな傷に誤差無く連続して斬って来る……堪んないよこりゃ…だだっ?!」

 

 

 

 

 

 

 「(潮目だな、これ以上この戦場に留まる謂れ無し。又しても死に損なったが……部下まで道連れには出来ん)…見事だライナーダグオン!此度の勝ちは貴様等に譲る!だが、この場は退かせて貰おう、やれ!グシアノース!!」

 ビッグローが空に向け声を挙げる。するとその声に従い彼方から複数のミサイルが雨の様にライナーダグオンとビッグローの間に降り注ぐ。

 

 『これはっ?!』

 〔以前も現れた空母型の!〕

 〔近くの海に居たのカヨ?!〕

 

 否、彼の空母は太平洋沖に潜航していたのだ、それをビッグローの合図により急速浮上、甲板を"開放"し弾道ミサイルを射ち出した。

 更に爆煙で視界が塞がる中、短い口笛の音が響く。

 すると今度は何処からか接近する何者かの反応をライナーダグオンは捉えた。

 

 『新手か!…此方に近付いている?!』

 

 しかし敵の新手はライナーダグオンに攻撃を仕掛けては来ず、爆煙の中で金属が擦れ合う様な音を立てた後、煙から大きな影が飛び出す。

 

 〔何だぁアリャァア?!〕

 〔翼が生えた虎?…いえ…四足の鷲?〕

 『奴等…まだ仲間が居たのか!!?』

 

 飛び出した影は翼沙が困窮する様に黒い虎の躰と紅い差し色が入った鷲の翼を持ち、しかし頭部は虎の様であり鷲の様でもあると言う、何とも形容し難い生物。

 その謎の生物が器用に四足でビッグローを掴み東京湾の方へと翔び去って行くのだ。

 

 

 

 

 同じ頃、フリッジとリュウの戦闘にも横槍が入る。

 

 「……っ?!」

 

 突如として無差別にバラ撒かれる銃弾。

 咄嗟に躱すリュウと幾らか浴びるフリッジ。

 

 「おどだだだっ?!ちょっ?!おまっ!!狙いが雑ゥウ!」

 

 「ヤホホ、ヤホホ。つまんねぇこと気にすんなよ?誤差だ誤差。助けに来てやったんだから寧ろ感謝しな?全くよぉ、合流してから初の実戦ウォーミングアップが撤退たぁ情けねぇなぁ?!」

 

 そして予兆無く現れた声と、バラバラと先程まで聴こえもしなかったローターの音。

 見ればフリッジの直ぐ側まで藍色の軍用ヘリが滞空している。

 ご丁寧に円筒の機関砲…俗にガトリングと呼ばれる火器の銃口を向けて。

 

 「ヒホホ♪そら逃げろ!ほら逃げろ!アッチもコッチも逃げまくりぃ~!?ヤホッ…ホッ…ヒィィィハァァァア!!」

 ヘリは騒ぎ立てる様に謳うと機関砲をリュウに向け斉射する、対しリュウはライオソードを振るい自らに降り掛かる銃弾を斬り落としてゆく。

 

 「オイオイオイオイ?正気か?本気か?イカれてんのか?ヒィホホホ!まぁ良いや!今ン内にトンズラこくぜぇ!」

 

 「あいよ、逃げるが勝ちとは言ったもんだ」

 

 人型からペンギンへ変形しヘリから垂れ下がったフックに躰を固定するフリッジ。

 リュウは機関砲の速射に足を止められ、彼等が空に去ってゆくのを見送るより無い、よしんば機関砲の射程が遠退いてもヘリの両脇にマウントされたミサイルラックからミサイルを撃たれる可能性がある以上、深追いは禁物だ。

 

 「……ここまでだな…思わぬ相手に手こずり過ぎた……」

 言って片膝を着くリュウ、ライオソードを杖代わりに残る敵を見据える。

 

 「…済まないが、俺はファイヤーダグオンの助けに加われん様だ…」

 思いの外消耗した肉体に忸怩たる物を懐きつつも後の事をライアンとライナーダグオンに託す。

 

 『であれば、私はまず残る雑兵共を片付け貴様の身の安全を確保してやろう。ある程度手透きになればドリルゲキが合流するだろうから、その時点で私はファイヤーダグオンの元へ向かう……と言っても私が駆け付ける頃には何とかなっている…だろうがな』

 

 ライナーダグオンの戦い様を見た所感から戦略概論を述べるライアン。

 彼の言う通り、撤退する宇宙海賊オルゴンの面々を尻目にライナーダグオンは巨体に見合わぬ速さでファイヤーダグオンをリンチする赤カブト達の元へ一目散へと駆けている。

 

 〔ヤロウ、ご丁寧にファイヤーダグオンの両腕両足を捕まえてビルに磔にしてヤガル〕

 

 〔もう一体の赤い甲冑も拘束具を上手い具合に避けてファイヤーダグオンの反撃を封じつつ嬲っている様です〕

 

 2人の言う通り、装甲版によって四肢の関節駆動部を抑え込まれ尚且つ逃げられぬ様にファイヤーダグオンの背にしたビルを磔台とし、ジェットファイヤーストームやジェットファイヤーミサイル、ファイヤースターバーンを放てない様に攻撃を加えている。

 

 『〔ならば先ずはあの蛇腹の方をどうにかする!〕アーマーバスタァァア!!』

 

 目的を定め右腕のアーマーユニットの2つの砲門を棒人間状の装甲版の集合体に放つ。

 砲撃が直撃した集合体──後にロータススケイルと呼称される怪物体がその衝撃によろけ赤カブトを巻き込んで倒れる。

 

 

 

 「む…、後ろからとは卑怯な。です」

 「言うて向かってくんの見えてたやん?」

 東京タワーの第2展望台の上で吹き曝しの風に煽られながらフュンフが僅に眉根を潜めて呟く。

 それにマッニーは見えてたよね?卑怯もクソも無いよね?とツッコむ。

 

 「そもそもこのコントローラー使い勝手が悪すぎるのです。どちらか片方に注力するともう片方が人工知能頼りになって複雑な動きが出来ません。です」

 

 「せやな、スカーレットホーン(赤カブト)エニグマドレペント(ロータススケイル)じゃあ、只でさえ搭載人工知能に差があるもんなぁ。コスト的な意味でも今度から片方有人にしてもらおうな」

 趨勢がダグオン側に傾いた事、欠陥が洗い出せた事含め既にやる気が削がれたマッニーがケラケラと乾いた笑いを挙げながら結論付ける。

 

 

 東京タワーで異星人達が敗残ムードを出している中、戦場ではライナーダグオンがファイヤーダグオンを装甲版──花弁鱗──の拘束から解放せんと彼を捕らえている花弁鱗に向け技を放つ。

 

 『ターボホイールッ!カッタァァァアア!!』

 左腕ターボユニットの右車輪から円盤状の刃物が展開、高速で飛翔し花弁鱗を次々斬り裂いてゆく。

 

 『ぐ……ぁ……?』

 

 『まだ動けるか?ファイヤーダグオン』

 

 『その声……ダグターボ…か?その姿は……』

 

 『今の我々はライナーダグオンだ。積もる話は後に、結論だけ訊く。まだ戦えるな?』

 

 『っ…たりめぇだ!こんくらい屁でもねぇ!!』

 

 磔の拘束から解き放たれ、ライナーダグオンの問いに威勢良く啖呵を切るファイヤーダグオン。

 それを確認してライナーダグオンは方針を伝える。

 

 『我々が蛇腹を相手取る、お前は赤い甲冑の方を』

 『おうよ!散々好き勝手してくれた借り、返してやるぜ!!』

 

 2体の勇者が並び立つ。倒すべき敵は今頃になってようやっと体勢を立て直し立ち上がる。

 

 『奴等を分断する……フッ!』

 

 ターボホイールカッターを操り、赤カブトとロータススケイルが其々別方向に飛び退く様に誘導する。

 

 『今だ!』

 

 『ぜぇぇりゃぁあああっ!!』

 

 ライナーダグオンの声に合わせてファイヤーダグオンが赤カブトに突進、蹴りを叩き込む。

 

 『まだまだぁぁ!!ファイヤァァアスタァァバァァァアアンン!!

 

 額の星から放たれる高熱のエネルギー波が赤カブトの象徴たる角をへし折る。

 

 『ファイヤァァアホォォォルドッ!!』

 

 へし折れて重心が大幅に崩れた所へお返しとばかりに赤カブトが持っている蛮刀ごと胸部から発せられる拘束エネルギービーム、ファイヤーホールドで動きを止める。

 

 『ファイヤァァアブレェェエドッ!!』

 

 右腕のラダーを剣と化したファイヤーブレードが赤カブトを十文字に断ち斬る。

 数の有利が無くなれば遠隔コントロール補助が無ければ複雑に動けぬ簡素な人工知能など敵では無いのだ。

 

 

 

 

 

 〔ンで?どうスンだ、さっきみたいな不意討ちはもう通じねぇから普通に攻撃してもバラバラになって躱されるだけだぜ〕

 〔決まっているだろう、分離して躱されぬ様…奴の全身を固めてしまうだけだ〕

 〔なる程、"アレ"ですか〕

 自らの内での会話を終えライナーダグオンは両腕を頭より上に上げ空中で回転し始める。

 

 『『『ライナァァァブリザァァァアアドッ!!!』』』

 

 3人の声が重なり叫ぶ。

 ライナーダグオンを中心としてダグウイングのブリザードハリケーン等比較にならぬ程の超絶対零度の竜巻が巻き起こりロータススケイルを呑み込む。

 元より分離を前提としたロータススケイルは頭の先から爪先まで分子レベルで凍り付き、重力に耐えきれず自壊した。

 

 『やったな!』

 

 『ああ!』

 

 互いに相対した敵を倒した2体の勇者は互いの手を差し出し固く握手を交わしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━グシアノース甲板

 

 「ヤホホ、例のオモチャ負けたってよ」

 藍色の軍用ヘリから人型に変形した宇宙海賊オルゴンの空挺暗殺者アパンティスタがマッニーからの報告を仲間達に告げる。

 

 「まぁ中身が無いからねぇ、それに予想外の戦力が生まれちゃったし」

 フリッジがペンギンのまま器用に額を掻き溜め息を溢す。

 

 「また死に損ないましたな、大尉」

 

 「大尉はよせ、今の俺は海賊団の副船長だ」

 

 ビッグローに嘗ての階級で呼び掛けるのは黒い姿のヒューマノイドロボット──左肩に虎と鷲の頭部を持ち胸部に鷲の鉤爪らしき意匠を持つ、ツインアイをバイザーに隠した猛獣戦士ティガルト。

 

 「ゴボボボボッ…ゴボォォォオ!」

 

 「お前さんその状態だと海に遮られて声出せねぇんだから、素直に思考通信で会話に参加しろよ、ウン」

 

 グシアノースがビークル状態のまま会話に加わるも海水でゴボコボとしか言えぬ為、相方のアスクラが呆れた様にツッコむ。

 

 これに船長ヴァルトロンとこの場に居ない2体を加えたメンバーが宇宙海賊オルゴンである。

 

 「くく…空より来る者達は皆貴様等の様に能天気なのか?」

 

 「いやぁ、これでも副船長とかティガルトとかオイラ、後ここには居ねぇけど船医のセンセーとかは至って真面目なんだぜ?ウン」

 この場に同席した白い少女──大荒魂が皮肉気に嗤う。

 対しアスクラは心外とばかりに何時もこうではないと反論、そのまま彼等はグシアノースの中へと消え、グシアノースも再び海中へと潜航するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━都内某所

 

 「~~~~!!めっっっっちゃカッコ良かったぁ~~~!!!!」

 吹雪が晴れ、事後処理に追われる特祭隊の処理班の車輌の中で安桜美炎は先程の光景を思い出して興奮の声を挙げる。

 

 「まさか新幹線のダグオン達が合体するなんてね。これはもしかすると残った忍者の…シャドーリュウ……じゃなくてダグシャドーだっけ?彼も合体するのかもね」

 美炎に些か呆れつつも鈴本葉菜もあの場で目撃した衝撃に僅に高揚を隠せない。

 

 「しかしあの光景……薫さんが見たら美炎ちゃん以上に興奮したんじゃあないですかねぇ、まさしく戦隊ロボ!みたいな合体でしたし」

 

 (((ありうる……!)))

 

 外でノロ回収改め異星人遺体処理班が奮闘する中、暖房が効いた車内での3人の心が1つとなった瞬間の一幕であった(合体はしない)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・格納庫

 

 「やぁ~良かった良かった♪ライナーズ合体おめでとう♪パンパカパ~ン♪パフパフ♪」

 

 「帰って来て早々ウゼェ…」

 

 「とは言え、まさか僕達が合体するなんて、改めて振り返ってもまだ信じられません」

 

 帰還したダグオンの若者達を出迎えたアルファの第一声に青筋を浮かべる申一郎と愛機を優しく撫でる翼沙。

 

 〈見事だったダグオン諸君〉

 

 「ブレイブ星人…。やはり今回の合体もアルファ共々貴様達は事前に知っていたのだな」

 

 〈ああ〉

 

 「何ぃ?!んじゃ俺らのビークルが何とどう合体すんのか最初の頃から知ってたのかよ!!?」

 

 戒将の確信混じりの憶測にブレイブ星人は短く返す。

 すると焔也がそんなの聞いていないぞとばかりのリアクションでアルファ達を問い詰める。

 

 「まぁ知ってるけど……そこはお楽しみって事で☆彡」

 

 このピンク頭はまたしても自然に若者達から怒りを買うのである。

 

 「結芽、そこの所…どうなのだ?」

 

 「ううん、おねにーさんはぐらかしてばっかりで詳しく教えてくれなかった。ね、キッドくん」

 

 『あるファ…おしえてくれない、イジワル』

 

 桜色の少女と少女の首から提げられた紐を通したキューブからもやや責める声色が飛ぶ。

 

 「そ・れ・よ・り・も!ワシのビークルが無いのが目下無視出来ん問題じゃろうがっ?!

 ドリルライナーが出来ておったらリュウの負担も、焔也…ファイヤーダグオンがリンチされてる時ももう少し何とか出来たハズじゃろ!!」

 

 「……一理あるな、結局お前は何をコソコソしていたんだ…?」

 

 撃鉄の訴え、龍悟からの冷徹なまでの一瞥に暫し迷った後アルファは若者達をオーダールームへと導く。

 

 

 

 

 「わざわざオーダールームに移動とは……一体何を見せる気です?」

 

 オーダールーム到着の第一声を翼沙が切る。

 

 「ちょっと待ってね~、ブレイブ星人~メインモニターのピックアップよろしく~!」

 

 〈了解した〉

 

 アルファの要望に応じメインモニターに地球圏内の衛星軌道を映し出す。

 

 「宇宙だと…?」

 

 「ほいほいのほ~いっと」

 

 戒将の困惑も露にも掛けずアルファはコンソールを素早く操作する。

 そして映し出された衛星軌道の映像から、取分け巨大な人工衛星が表示される。

 

 「……衛星……?」

 

 「足がいっぱいある!」

 

 「あんぇ?なんかどっかで見たよ~な」

 

 映し出された物の意図を計りかねている龍悟と見たままの感想を述べる結芽、焔也だけが何か引っ掛かるモノがあるのか頭を捻る。

 

 「こりゃ何じゃ?」

 

 「んふっふ~♪よくぞ訊いてくれました!例の黒い新幹線の三兄弟に好き勝手やられ放題の現状を重く見たボクは、解決策として今までの様なアメリカとかの軍事衛星をハックしての警戒網から、謹製の特化衛星基地による警戒防衛を念頭に置いた衛星を開発したのです!

 その名も────!!」

 

 不敵な笑みを称え溜めを作る。

 時間にして凡そ数秒、しかし彼等はそれが数分にも感じられた。

 そしてアルファがその名を告げる。

 

 「勇者支援特殊衛星前線基地!ダグサテライト!!これで何が地球に来ても見付けられるのさっ!!!!!」

 

 「ハァ~ん、そりゃスゲェこって」

 

 「もう!リアクション薄いよ!申一郎くん!!?」

 

 「イヤ、宇宙なんて連中の本拠地の場所でも判かんネェ限り行くアテも今んトコねぇだろ?」

 

 「まぁまぁ、探知範囲が広がるのは悪い事ではありませんから」

 

 「確かにな、それで?この衛星既に使えるのか?」

 

 「そこら辺は今詰めてる所さ。何せこの大きさだからね」

 

 若者達の言葉にアルファはフンスと鼻息を荒くしながらプログラムを書き込んでゆく。

 

 アルファが言う通り、件のダグサテライトなる衛星はかなりの大きさである。

 

 「なぁ…これクラーコフ「おおっと?!何を言うのかな焔也くーん!ダグサテライトだよ?サンダーサテライトと名前迷った末に決めた最光傑作だよ?」いやどうみてもクラー「チガウヨ」……おい」

 

 何やら思い出したらしい焔也の声を必死に遮るアルファ、しかし後頭部を鷲掴みにされ無理やり首を捻られては口をつぐむざる終えない。

 

 「フム…焔也、何か心当たりがあるのか?」

 流石に2人の反応や態度が気になってか、戒将が焔也に問い掛ける。

 

 「いやこれこいつのオリジナルじゃねぇんだよ、昔の……つってもそこまで古い作品じゃねぇが、三分間で怪獣と戦う光の巨人が出てくる奴に登場した陸海空宇宙の場所を選ばない万能基地?だったか…クラーコフNF-3000ってのが元ネタ」

 

 焔也が説明した通り、アルファがダグサテライトと名付けた衛星基地は人工衛星にしては歪な形を成している。

 人間が作業する居住ブロックとなる中央のユニットの四方から生えた重機の様な脚が、どことなく機械の蜘蛛に見えなくもない。

 

 「ヨウはパクりか」

 

 「失敬な!リスペクトだよ!?だいたいさ、イチからデザイン起こしてたら作業量半端じゃ無いんだから、あるところから持ってきた方がコスト的にもカット出来るし合理的でしょ?元々架空のモノなんだから製作から見つからないなら問題無いって!」

 

 申一郎からパクり呼ばわりされて憤慨するがどう取り繕っても事実である。

 だが宇宙にある上、簡単には目に出来ず、しかも人類の技術では発見出来ぬ様ステルス機能を搭載されているので尚更質が悪い。

 

 「はぁ…。造ってしまったのならば仕方あるまい、今更どうこうと揉めた所でどうしようも無いからな」

 

 「確かに。デザイン云々は別にしても我々の戦力となるなら、存分に活用させて貰いましょう」

 

 呆れながらも既に造り上げてしまった以上は利用すべきと頭脳2人が結論を下しその場はお開きとなったのであった。

 

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:静かなる瞳)

 

 ねぇねぇ、おねにーさん。

 

 何かな結芽ちゃん?

 

 何であのえーせー基地の名前候補がサンダーサテライトだったの?

 

 それは……まだその時じゃ無いからとか、サンダーの方だと露骨かなぁとか諸々ね?

 

 ???

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 激動、刀剣類管理局・特祭隊24時?

 

 おのれブラック上司めぇっ!誰か俺とねねに休みをくれ……!

 

 ねねぇ……。

 





 はい、今回出た衛星はTDG三部作のDの方に出た奴が元ネタです。

 最近掲示板モノなる作品に触発を受け、試しに書いてみたのですが……凄く面倒臭い!!
 ので、二度と書かない事に決めました。
 因みに触発して書いたモノはまだ未完成なのでその内読切りに載せるかもしれません。


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第九十八話 激動、刀剣類管理局・特祭隊24時?  

 お久し振りです。最近は仕事の方で人手が少なくなりその分穴埋めに駆り出され、寝不足気味に拍車が掛かり、机に向かっても筆が進まず、ならば暫く執筆を控え睡眠に専念しようと過ごしてました。
 バイトで良いから新しい人員欲しいなぁ。

 良い事と言えばウマはタンホイザ狙いで行ったら一緒にキタちゃん来てくれたし、アリスギアは遂に念願の波佐美さんが来てくれました。
 後、バレンタインリネットも無事ゲットした…くらいですね。



 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 新聞:新幹線のダグオン達が合体したよ、ライナーダグオンだよ!

 

 薫:ちくしょぉぉぉぉお!!生で観たかったぁああ!!

 

 ねね:ねねぇぇぇええ!!

 

 エレン:oh…過去一番の叫びを更新しまシタ

 


 

 ━━太陽系火星衛星軌道近辺

 

 それは一筋の光を描いて翔ぶ叡智の結晶。

 

 「うーん?座標的にこの辺りだと思うのだけれど……」

 

 遥か銀河の彼方より、辺境と目される太陽系にやって来たまだ見ぬ星の隣人。

 エデンの犯罪者達とは違う、純粋なこの世界に存在している異星人。

 宇宙海賊達とも違い、我々と同様に人型(ヒューマノイド)の姿をしており、何より見目麗しきと評しても過言では無い美女…いや美少女と呼ぶべきが妥当であろう容姿をしている。

 

 「やっぱり計器のエラーだったのかしら?こんな辺境もいい所に遭難者なんて…。もう!超銀河同盟規約なんて面倒ったらありゃしないんだから!」

 

 舟のコックピットで愚痴を叩く少女、すると奥の扉が音を立てて開き彼女と同年代と思われる少女と青年の異星人が現れる。

 

 「はや~、大声出してどうしたノ~?もしかしてマダ見つかってナイノ?」

 

「そもそもそれ本当に救難信号だったのカネ?」

 

 何ともぽやぽやした口調の少女の疑問に神経質そうな眼鏡の青年の言葉が続く。

 

 「解らない、そもそも同盟基準の信号とは微妙に異なっていて……」

 

「はぁ?!なんだネそれは!!どこの原始時代の信号だ!?まったく卒業旅行が台無しだ」

 眼鏡の青年が苛立たし気に憤慨する。彼女達は何処かの星の学生であり、卒業に際して旅行を数人か数十人で旅行をしていたと言う事なのだろう。

 

 「仕方ナイノ~、この辺りの銀河で一番近くに居たのがワタシ達だったノ~。この辺は辺境が過ぎて周辺の銀河にも同盟統括軍の駐屯地が少なくて、ワープ航法を使っても64万光年以上離れてるノ~」

 

「そんな文明があるかも定かでは無い銀河に我々の様な学生身分を代理にするような規約もどうかと思うがネ!」

 

 自身が属する惑星が加盟している大規模行政機関に悪態を吐き続ける眼鏡の何某。

 そんな青年を横に置いて少女達は会話を交わす。

 

 「他のみんなは?」

 

 「ダーリンとワタシがこっち来る時はまだみんな寝てたノ~、今は誰か起きてるかもだケド~」

 

「そんな事よりだ!何も無いのならばさっさと撤収して旅行に戻るのだネ!」

 

 「そう……だよね、うん…何も無いならそれで良いんだよね…」

 友人からの言葉にどこか己を納得させ言い聞かせる様に呟く少女。

 

「そうだとも!さぁ、こんな辺境の銀河など後に───ギュ?!」

 

 眼鏡の青年がその言葉を最後まで紡ぐ事は無かった、その代わりに奇妙な断末魔を挙げて鮮血が飛び散る。

 

 「「え……?」」

 

 少女達は呆然となる。

 

 何が起きた?分からない。

 死んだ、誰が?友達が──友達の恋人が目の前でよく分からないナニかに貫かれて死んだ。

 

 少女に見えたのは舟の下方からナニかが光の尾を引いて青年の左下腹部から右肩首付近を通り過ぎたという事だけ。

 

 「あ…え?」

 

 言葉が出ない、それくらい一瞬の出来事だった。舟に空いた小さな穴が応急装置で直ぐ様塞がる。

 

 「ぃ……ぃゃ…いやァぁぁあああ!!?」

 

 「っ…、落ち着いて!」

 

 何時もどんな時ものんびりのほほんとした友人が壊れた蓄音機も斯くやと絶叫し、この世の終りとばかりに顔を絶望に染める。

 そんな有り様だからか当の少女の方は幾何か冷静になれた。

 錯乱する友人を宥めようと肩を掴む、しかし思いの外暴れる力が強く、何より死体が目の前に転がっているのも精神衛生上良くない。

 途もあれ何とか友人を座席に縛り着け、舟のインターフェースを操作して此処から逃れようと行動を起す。

 

 (とにかくココから離れなきゃ!ココに居たら危ない!?)

 

 そんな必死になっている彼女の耳元に甲高い電子音が繰返し叩き付けられる。

 

 「(こんな時に…!?)っ何?!」

 

 見ればそれは接近警報。キャノピーの外に眼を向ければ無数の星の海の内から瞬く光が1つ、近付いて来る。

 

 「星……じゃない、舟?!もしかして私達の他に捜索に来ていた舟がいたの!?」

 いけない!此処は危ない!それを伝えなくては!そう思い立った彼女の想いはしかし、ほんの一瞬キャノピーから眼を外した瞬間裏切られる事となる。

 

 「同盟基準のシグナルで………返答無し?!何で!!?あの舟は救難捜索の為のモノじゃ無いの?!って消えた?!!」

 

 レーダーを見る、反応無し。

 キャノピーから覗ける範囲を見回す、しかし見付からない。

 

 (幻…?私も切羽詰まっていたの?)

 

 落胆する少女、力無く真後ろの椅子にへたり込む。

 だがこの時少女は思い違いをしていた、彼女達の舟に近付くモノは確かに居たのだ。

 だがそれは救命艇の類い等では無く、ましてや舟ですらなかった。

 

 少女達が乗る舟が真下から揺さぶられる様に揺れる。

 「何?!デブリ!?」

 周辺を漂う宇宙ゴミ(スペースデブリ)でも当たったのかと思ったが違う。デブリ等と生易しいモノでは無い。

 

 「……手…!!?!!」

 

 キャノピーを包み込む指が見えて、舟に何がぶつかったのか理解する。

 それは少女が見た通りの巨大な手、そう"手"だけである。

 大きな右手か…或いは左手なのかもしれない手が舟を掴む。

 

 (逃げ…)

 航行システムを操作するが手が絶妙な力加減で舟を掴み続ける為、逃げる事は叶わない。

 

 (なんで?!どうして!?あの手にスラスターが付いてる訳でもないのに!!)

 泣きそうになる気持ちを必死に押し留め舟のエンジンを噴かす、だが──

 

 「?!!重力制御が!」

 

 先程まで感じていたエンジンの手応えが消え、更に重力制御装置が壊れたのか身体に掛かる重さが消え、上に引っ張られる。辛うじてベルトによって身体が椅子から離れる事を免れるがコックピット内は危険信号(レッドシグナル)で赤く染まる。

 

 「ちょ、何があったん?!いきなり重力─ガボッ?!」

 

 異変を感じて駆け付けただろう友人の1人が青年を殺したモノと同じ──否、それを更に巨大にした凶器によって下半身を吹き飛ばされ絶命、舟に大穴が空き先に死亡した青年共々宇宙の深淵に放り出され星屑の1つとなって消えた。

 

 「…………!!?」

 思わずパクパクと口を動かしかけて思い切りつぐむ。

 しかしそんな危機は"手"が出した粘性の液体が固まった事により急死に一生を得た。

 

 「ったくよぉ…雑なんだよなぁ【螺穿】は【十変(てんぺん)】が損傷を直さなきゃ…せっかくの素材候補が全部オジャンだったんだぜぇ?」

 

 朦朧な意識の片隅に届いた声は誰とも知らぬ面倒そうな男のモノであった。

 意識が堕ちる最後の時に見た光景は錯乱が止まった友人を担ぎ上げた見知らぬ男の姿であり、少女の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星・地表

 

 「ウルせっ、エンジンと重力装置止めるんだから威力がいるんだよ、クソがっ!」

 

 「もう聴こえとらんじゃろうて」

 

 左腕が弓の様になった特徴的なボンパドールが吐き捨てる様に呟くと、共に火星に降り立ったガレプテン星人が肩を竦めて諫める。

 

 (しかし螺穿…十変に曲界、あの三兄弟といい……特別監獄棟の囚人達は我が強いのう。四騎士とどっこいじゃなかろうか……いやさ十変は大分マシか)

 

 【十変】と呼称された巨大な手ことワルガイア星人の懐刀であるギガロクスが拿捕した舟をエデンに運び行くのを見届け、ガレプテン星人は【螺穿】と共に小型艇に乗り込み此方もエデンへの帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・日本関東某所

 

 折神家襲撃事件──延いては舞草によるタギツヒメ討伐の一件からはや四ヶ月、関東一円に荒魂が蔓延る事となった"鎌倉危険廃棄物漏出問題"に於いて特祭隊は常に対応へと追われている。

 その上関東以外の地域に於いても荒魂の目撃・出現

があり、果ては異星人の襲撃まであると言う混沌たる様相を描いている。

 何より僅か数週間頃前に起きた異世界事件等も記憶に新しい。

 異星人、異世界の件はさておき、荒魂事件に関しては日夜特祭隊の刀使の奮戦が光る。

 それは今この瞬間深夜のレインボーブリッジにて展開されている作戦行動にも見てとれる。

 

 

 

「タイミングを合わせろ!訓練通りやれば出来る!」

 

 交通封鎖を行った吊橋の上で、誘導された大型の百足荒魂を前に学院問わず混成された刀使の小隊が小隊長の号令に合わせて御刀を構える。

 

「来るぞ!抜刀!」

 

 無論訓練をしているからと言っても個々に差はあり、今回の小隊編成にも実戦・実働経験の少ない者等も存在する。

 それをフォローするのも熟練の仕事ではあるのだが、そんな集団の縛りを持たない遊撃に配された少女達も存在する。

 そして今まさに、小隊目掛け蛇腹を荒ぶらせていた百足荒魂が、上空から降って来た2人のストームアーマーを纏った刀使によりその角を斬り落とされ怯み、そこを間髪入れず跳び荒魂の反撃を許さず圧倒。

 小隊の刀使達を尻目にたった2人きりで制圧してしまった。

 2人の刀使の名は衛藤可奈美、糸見沙耶香。漏出問題の折、折神紫暗殺に関わった反逆者であり、事実が明らかとされてからは一変英雄と化した者達。

 S装備に身を包んでいるとは言え、大型を僅か数十秒程度で倒してしまうそのある種残酷なまでの実力差はその場に居た1人の少女の心に鮮明に刻まれる事となる。

 

 

 

 荒魂殲滅後、ノロ回収の為に封鎖が一部解かれ検分の為状況待機となった可奈美と沙耶香、彼女達は小隊の刀使達に挨拶を交わす。

 

 「応援の衛藤可奈美です」

 「糸見沙耶香」

 

 「応援感謝します。以後は我々が…」

 応援の2人だけで片付けてしまった事にも難色を示さず敬意をもって敬礼する鎌府の制服を着た小隊長、彼女が後の現場処理を引き継ぐ旨を告げる最中、小隊の1人と見られる綾小路の刀使が可奈美達の前に歩み出る。

 

 「あの、二人は四ヶ月前の……」

 側面の髪が耳に掛かるか掛からないかの長さのミディアムショートの綾小路の刀使が、芸能人を前にしたミーハーなファンの様な面持ちで声を掛ける。

 

 「はい、そうです。あなた綾小路の?」

 

 可奈美も可奈美で自分がそれなりに名が知れている自覚が出来たのか当り障り無く訊ねる。

 

 「はい!出向で特別任務部隊に参加しています綾小路中等部一年、内里歩です!」

 

 天上の人、或いは高嶺の花とも思える存在に認識され声を掛けられた。そんなミーハーな高揚を顔に出し喜ぶ歩、去り行く2人の背を見送りながら小さく手を振る。

 そんな憧れの視線を背に送迎車に向かう可奈美と沙耶香。

 

 沙耶香は可奈美の表情を見て思わず訊ねる様に呟く。

 

 「可奈美…楽しそう」

 

 「ん?何?沙耶香ちゃん」

 

 「…」

 

 しかし当の可奈美は上機嫌で沙耶香の言葉など耳に入っておらず、無邪気な顔で訊き返すものだから沙耶香はどうにも複雑な心境を秘したまま沈黙を返すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━管理局本部・食堂

 

 明くる朝──。

 【「米軍所属艦艇の奪取、都市部への不明機射出、国民がどれ程の不安を抱き実害を被ったか…どの様に受け止めているのでしょうか?」】

 食堂に設置されたテレビから垂れ流されるニュース、内容は国会中継による証人喚問──と言う名の弾劾誘致による追及。

 野党と思われる詰問側からの問答答弁、議長を務める人物が追及を受ける人物──折神朱音の名を呼ぶ。

 

 【「折神証人」】

 

 名を呼ばれ壇に立つ朱音が詰問者とマイクへ向け声明を発する。

 

 【「一部の特祭隊により二十年前の大災厄の様な事態は未然に回避する事が出来ました…」】

 

 語りだした朱音が撮された映像、そんな緊迫した内容に目も留めず配膳口に立つ可奈美は笑顔で口を開く。

 

 「ご飯、大盛でお願いしまーす!」

 

 内容は白飯、牛乳、味噌汁、水、回鍋肉か青椒肉絲か──途もあれ肉と野菜がセットになった物とまずまずのバランス。

 受け取った食事を持って沙耶香と同席すると彼女方は可奈美とは逆にとても白飯、おかず共に少ない量で纏まっていた。

 

 「沙耶香ちゃんそれだけ?駄目だよ~育ち盛りなんだからもっといっぱい食べないと」

 

 「これ…あんまり好きじゃない」

 

 「好き嫌いも駄目。それにここの学食美味しいよ」

 

 「舞衣のお菓子の方がいい」

 

 年長者としての世話焼きを気取って沙耶香に言って聞かせる可奈美、しかし沙耶香からの返答は今一つ…挙げ句、()()()お菓子が食べたいと言う始末。

 

 「舞衣は…いつ来るの?」

 

 「来週には来るハズだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━美濃関学院

 

 胸元に書類を抱えて学長室への道を歩くは、今し方可奈美達の話題に出た柳瀬舞衣。

 部屋手前で軽いノックをした後、中に居るであろう部屋主からの返事を待って入室する。

 

 「来週鎌倉に出向する者の名簿をお持ちしました………朱音様の証人喚問ですか」

 

 一礼を伴って入った部屋では美濃関学長羽島江麻が備付けのテレビで朱音の証人喚問を観ている。

 

 「今や刀剣類管理局は格好の的ね。新体制とか舞草とか言っても世間的には同じにしか見えない」

 江麻が述べる通り、現在の刀剣類管理局の風当りは強い。なまじっか特撮ヒーローもびっくりな勇者達が存在する事もあり、内輪揉め同然な此方は世論での論争は尽きない。

 

 「ノロを大量に漏出し土地を汚した杜撰な組織…」

 

 どうあれ数十年と管理局延いては伍箇伝に務めて来た者としては苦い顔にもならざる負えない。

 

 「事実だと思います」

 

 当事者の1人として、真実を目の当たりにした舞衣は淡々と言ってのける。

 

 「そうね…でも体を張って人々を守った貴女達や朱音様が責められているのを見ると、どうしてもね……」

 そう言う江麻の声はやはり苦い物を噛み潰した様な物言いだ。

 彼女はそのまま舞衣から受け取った名簿に目を落とし、列なる名前を頭の中で読み上げて止まる。

 

 「あら柳瀬さん。貴女も来週から出向なのね」

 

 「はい、三度目です。可奈美ちゃんは殆ど向こうに行ったきりですけど……この四ヶ月お母さんを目標にすごく頑張ってましたから」

 

 舞衣の言葉を受けながら名簿を捲る江麻、本部から上がって来る可奈美の遊撃任務の成果へ話題をシフトさせる。

 

 「学長は可奈美ちゃんのお母さんとは同級生だったんですよね?」

 

 「ええそうよ。本当に強い刀使だったわ」

 そう言って席を立ち、窓辺に寄る江麻の顔は当時を思い出してか感慨が込められた物。

 過去を語り出した江麻はそのまま舞衣の側へと足を向ける。

 

 「私はね、ずっと彼女に憧れていたのよ。ちょうど柳瀬さんが衛藤さんに懐いている様な気持ち…かしらね」

 嘗て己が懐いたモノと似たような思いを持つであろう多感な若者へのアドバイスも兼ねて説く。

 憧れ。情愛。友愛。僅な嫉妬。ある種の恋とも言える思春期特有の少女が通る道、言葉にしてしまうとチープかもしれないがそんな風に表す事が適した感情。

 そして紡がれた言葉の先にある少女もまた、その言葉に心当りがあるように俯きがちに微笑する。

 

 「だからね。美濃関預りだった千鳥が衛藤さんを選んだ時とても嬉しかったの」

 

 「はい……」

 

 江麻の言わんとする事の真意に理解の頷きを返す舞衣。世代を越えて1人の天才に振り回される者同士のシンパシーが此処には在った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━綾小路武芸学舎

 

 「カァ~、お上も懲りねぇナァ。何べん同じ問答テレビで流すんだヨ」

 綾小路の食堂テレビから流れる中継に辟易した声を出すのは我等が勇者ダグオンの1人、鎧塚申一郎その人。

 食事を掻き込みながら辟易と言った具合を口にする。

 

 「せやかて、仕方ないんとちゃいます?管理局がノロをばらまいてもうたんは本当なんやし」

 対面に座る仲野順がはんなりと返す。

 

 「そりゃあそうなんだケドも、仲野チャン達刀使がバッシング受けるのは違くネ?」

 

 「嬉しい事言っとくれるやないの」

 

 順が自分が軟派な申一郎に友好に接する理由はそう言う所なのだと言外に微笑み返す。そしてそう言えばと思い出した様に申一郎へ話題を振る。

 

 「先月辺り本部に出向した時から何度かチラホラ見かけたんやけど…鎧塚はん、最近よう戒将はんや渡邊はんだけやのうて、他の伍箇伝の男子とも仲が宜しいいんどすなぁ?意外やわぁ。女の子しか興味あらへんかと思うとったのに」

 

 「マァ、ちょっとした縁があってさ。つかヒドくね?一応はクラスにも趣味の合うヤロウのダチはオレにだっているゼ?」

 

 流石にそんな極端なイメージは心外だと告げると順はせやなぁとはぐらかす様に笑う。

 

 「そんで、戒将はんは兎も角として…渡邊はんは最近綾小路(コッチ)で見かけんくなりましたなぁ」

 

 「アァ、何でもノロの研究をやってるつー施設に学徒研修?みたいなヤツでソッチに掛かりきりなンだと」

 

 「は~、そんなら暫くは爆発騒ぎも起こらんちゅうことやね」

 

 「肩持つワケじゃネェけど、そんなショッチュー爆発してるワケじゃネェヨ?……オン?」

 

 入口が見える位置に座り食事を終えた申一郎が訝しむ様に入口を見つめる。

 

 「どないしはったん?」

 

 「いんやぁ、見馴れない美少女チャンを見付けてさ。高等部じゃねぇナ…中等部か?オレのセンサーにクるってこたぁ、一年じゃネェようだが…チョッチゴメン!」

 

 「ややわぁ、目の前の娘ぉ放って他の娘に目移りするやなんて…ホンマに軽いお人やす」

 

 見掛けた少女が気になり席を急いで発った申一郎の背に態とらしくヨヨヨと泣き真似を掛ける順。

 入口で立ち止まった申一郎が両手を合わせて軽く頭を下げ、順に謝罪のジェスチャーをすると再び直ぐ様見馴れぬ少女の影を追った。

 

 

 

 

 「サァて…まだ見ぬカワイコチャンは──っと、居た居た♪」

 申一郎が視線を巡らせ見付けた背中。綾小路の制服を身に纏い、肩口まで切り揃えられた()()()()()()()()()()()()()()に中背の少女。

 御刀を持っていない事から刀匠科或いは技巧科か神職科かとアタリを付ける。

 

 「ヘイ彼女~、良かったらオレとお茶しナイ?」

 

 「………誰ですか?」

 

 「アレ?知らない?んじゃあこれから仲を深めるにはモッテコイだね、ナァにキミはカワイイしたっぷりリードして──「よ・ろ・い・づ・か・くぅんんん?」──ウぇい?!水科パイセン!!?な、なんスかネ……?つか、コッチ戻ってたんスね」

 

 メッシュが入った少女を口説こうとしていた申一郎の背後から笑顔で迫る水科絹香に肩を掴まれ中断される。

 

 「うふふふふ…聞いたよぉ?綿花ちゃんにちょっかいを出したんだってね~」

 

 デフォルメされた青筋立てた血管が見えるくらいの圧を申一郎へ掛ける。

 

 「ヤ、それは………誤解デスヨ?」

 コナを掛けたのは事実なので、必死に視線を反らしてはぐらかす申一郎。詰め寄る絹香。

 対して呼び止められていた少女は愛想の無い無表情のまま社交辞令を口にして去る。

 

 「スミマセン、ご用がお有りで無いのでしたら失礼します。()()

 

 何やら語調や最後の語尾がおかしかったが、それを追及する前にそそくさと去ってしまった為、申一郎は片隅に僅な違和感を懐きながらも絹香からの追及を逃れるのに骨を折るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━奈良県郊外・十条宅

 

 都心の喧騒から離れた田園地に建ち並ぶ旧い家屋の1つに十条姫和が住まう茅葺屋根の平屋。

 畳張りの部屋の1つに仏壇が置かれ、その荘厳には姫和の母──篝の写真が置かれ、供養壇としている事が判る。

 そしてその仏壇の前で静かに手を合わせ黙祷する姫和。

 彼女は夏休みの終わり頃から今日に至るまでの数十日間、特祭隊の活動には精力的で無く心此処にに在らずといった具合で日常を過ごしている事が多くなっている。

 そんな虚ろな面持ちのまま軒先の枯葉を掃く姫和の元へ訪ね人が1人……。

 

 「五條学長…」

 

 その人物は五條いろは、平常学館学長である。

 恐らく学館公用車であろう後部の席から降り立った彼女は見上げる形で姫和に視線を向ける。

 

 

 

 陽が沈む軒先で焚火を前にしゃがみ込み炎を眺める姫和と、そんな彼女を見守るいろは。

 哀愁の空の下、姫和が口火を切る。

 

 「この家…私が居ない間も誰かが手入れしてくれてたようですが」

 

 「家は人の手が入らへんとすぐ傷むからね。朱音様が気を遣ってくれはったんよ」

 

 語るいろはの声を背に、姫和は焚火へ篝宛ての手紙を近付ける。

 その小さな背中へいろはは今日訪ねた本来の用件を切り出す。

 

 「なぁ姫和ちゃん。刀使辞めるか迷ってるん?」

 

 「岩倉さんに聞いたんですか?」

 

 「早苗ちゃん…何か悩んだ顔してたから私が無理矢理聞き出したんよ。責めんといてあげてな」

 

 飽くまでも非があるのは己であると前置きし姫和に先を促す。

 

 「二十年前私の母はタギツヒメを討ち損じました。今更学長にする話でもありませんが」

 「これでも当事者の一人やからね」

 「折神紫に憑依したタギツヒメは刀使を使ってノロを集めさせその力を増していきました。それを知った母は全てを自分の責任だと悔やみ続けました。この世を去るその日まで…」

 

 語りながら手紙を火の方へと近付け放る姫和。熱に焙られ火が着いた手紙はどんどん黒く焦がれてゆく。

 

 「私は母がやり残した事を成すと誓いました。折神紫を討つと」

 御前試合での暗殺騒動に至るまでの心境を振り返る。

 

 「そうとは知らんと………。ほんまに一人でよう戦えたね」

 姫和が抱えていたモノの吐露にいろはは己の不甲斐なさに伏せ、姫和の奮闘を労う。しかし、姫和はそれを笑って否定する。

 

 「いえ、一人じゃありません。多くの人に助けて貰いました…私が気付いていなかっただけで」

 自嘲気味に、しかし心の内を吐き出す顔は吹っ切れた様に穏やかであった。

 

 「小烏丸も学長が」

 

 「ほんまはあかんのやけど学長権限でこっそりと。私はただ篝ちゃんの娘が小烏丸に選ばれたんが嬉しかったんよ」

 普段は微笑んだ様な糸目を開いて己の胸襟を開くいろは。

 

 「そのお陰で私は母の本懐を果たす事が出来ました」

 

 「タギツヒメも暫くは現世に出て来んやろうなぁ。それに今回は姫和ちゃん達も無事やったし、二十年前に比べたら目覚ましい戦果やで」

 

 そうして、姫和が何故刀使を続けるか否かに悩む意図を推察し彼女の方へ振り向き訊ねる。

 

 「でも…そうやなぁ、姫和ちゃんの戦いは一区切り着いたんやね。それで引退を考えてるん?」

 

 訊ねるいろは。2人の傍、焚火の中で燃える手紙は言うなれば嘗ての姫和の意思。然りとて半ば目的を果たしたも同然の彼女の心を現す様に燃え尽きて往く。

 

 「タギツヒメ本体を討つまでは…、と考えてはいます。ただ……」

 

 「どうにも身が入らへん。って所?それはそれでええと思うよ、姫和ちゃんはもう充分戦ったんやから。一度よく考えてから返事くれる?」

 

 「わかりました…」

 ある種燃え尽き症候群とも取れる今の姫和の心中を慮り返事に猶予を与える。

 しかし五條いろはと言う女傑は存外油断の出来ぬ人となりである。

 

 「実は…あ、これは言わん方がええな」

 世間話の様に口にしかけ、しまったとばかりに口に手を当て遮るいろは。その絶妙加減が姫和の興味を引く。

 

 「何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━刀剣類管理局本部・エントランス

 

 夜、変わらず出動待機の状態にある中でエントランス付近の休息場にて可奈美は沙耶香に1つの嘆願を持ち掛ける。

 

 「あのね沙耶香ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど…、お風呂の前に手合わせお願い出来ないかな?」

 胸の手前で手を合わせ申し訳無さそうに沙耶香に訊ねる。

 しかし、沙耶香は俯き表情は暗い。

 

 「いいけど…私で…いいの?」

 

 「何が…?あ、薫ちゃんお帰りー」

 

 沙耶香の発言の意図を図りかね訊き返すが、其所で廊下の方からフラフラとした足取りで益子薫がやって来る。

 その顔は青ざめ、大きな隈を描き、肩でぐったり凭れるねねも同様に今にも過労で死にますと言わんばかりの悲壮である。

 

 「お疲れさま~。遠征だったんだよね?」

 

 「公務員には…労働基本権が…無い…」

 

 可奈美の言葉に対する返答が労働基準に対する愚痴から始まる。何を言っているのだこのツインテール。

 

 「しかも俺たち警察や消防には団結権、団体交渉権、争議権と言った労働三権ですら認められていない………」

 休息場のソファに突っ伏して怨嗟を募るように現代風刺を宣う薫。

 「あのクソパワハラ上司…」

 挙げ句の結論はやはりと言うか現本部長に対する愚痴。隈の濃い顔を上げ腹の奥底から声を出す。

 

 「真庭本部長の事?」

 

 「なぁ~にが本部長だっ!!ふざけんなー!!!!!

 「ねねー!!!!!」

 

 がばりと起き上がりソファの上で絶叫する。

 

 「東へ西へ…完全に不当労働行為じゃねーかよ!!

 

 切実、切実なまでの叫び。

 

 「あの非人道的な…グェォッ?!」

 

 だがしかし突如として頭上に振り下ろされた鉄拳により薫の言葉は最後まで紡がれる事無く黙さ…鎮圧される。

 

 「少しは労ってやろうと来てみれば…この野郎」

 振り下ろされた鉄拳の正体、噂のブラッククソパワハラ上司こと真庭紗南が薫が倒れ付したソファの背後に立っていた。

 

 「これやるぞー。ケーキだ」

 

 「ケーキ!」

 倒れた薫を無視して左手に持ち合わせていた白い菓子箱を沙耶香に手渡す。

 受け取った沙耶香の声が弾む。この娘も大分現金な面が出て来る様になった。

 

 「お前は反省室行きな」

 そんな訳で紗南はケーキを渡すと薫の制服の襟首を掴み、猫を持ち上げる様に持ち去って行く。

 

 「離せ!何で俺ばっかり…エレンはどうしたーーー!!」

 

 「あいつはちょっと別の用事でな」

 

 紗南に拐われて行く薫とのやり取りを見送る可奈美と沙耶香。

 憐れ薫、北海道から沖縄まで…日本全国津々浦々が反省を終えた君を再び待っている。

 

 

 

 

 「フルーツタルトだ!」

 さては置いて、薫達が去った後沙耶香が受け取った菓子箱を開けば中身は彩り鮮やかなフルーツタルトが綺麗に5つ並んでいる。

 

 「おいしそう…」

 「貰っちゃって良いのかな?薫ちゃんの分は残したかないとだね」

 タルトに夢中の沙耶香、一応は薫の取り分を残そうとする可奈美の元に少女が2人通り掛かり、その内の1人が可奈美達へ声を掛ける。

 

 「あっ!衛藤さん糸見さん!」

 少女達は綾小路の制服、そして声を挙げたのは昨晩見掛けた内里歩。

 

 「あ!今ちょうど本部長にケーキ貰ったんだ!二人も一緒にどう?」

 

 「良いんですか!?」

 

 この時点で薫はねねとケーキを分け合う事が決まった。

 

 「おいし~♪」

 瞳を星の様に輝かせ、タルトに舌鼓を打つ可奈美。その横で上機嫌に黙々とタルトを口に運ぶ沙耶香。

 そんな2人を目にして歩の連れの少女──田辺美弥が歩に身体を傾け訊ねる。

 

 「ねぇ…この二人って例の大荒魂を討伐した……」

 「そうだよ」

 些か2人に畏まりながら訊ねる美弥に対し歩は二つ返事で肯定する。

 

 「知り合いなの?」

 

 「ううん。たまたま昨日の出撃の時に応援で来てもらって」

 

 2人の会話を知ってか知らずか、可奈美は突如として歩達へ誘いを掛ける。

 

 「そうだ。私達この後道場で手合わせするんだけど一緒にどう?」

 刀使ならば刃交える事が常識であるとばかりにあっけらかんと言ってのける誘いに対して2人の反応は──

 

 「いや~私は……」

 「見学させて下さい!!」

 雲の上、高嶺の花、著名人芸能人に対する一般人の如く遠慮する美弥と…、

 羨望、尊敬、英雄に憧れる子供よろしく食い付く歩。

 対象的な反応は或いはこれからの彼女達の未来に起因するのやも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━本部・発令室 

 

 反省室行きを口実に内密の話の席を設けた紗南。

 彼女から告げられた事実に薫は胡乱に訊き返す。

 

 「襲撃された?回収班がか?」

 

 「ああ。ノロが強奪された」

 

 「荒魂か?」

 

 「いや違う襲撃したのは刀使だ。………刀使による荒魂討伐後のノロの輸送中だった回収班の車両が別の刀使に襲撃された。この一週間で四件、全てノロが奪われた」

 

 「おいおい…。管理局何故護衛を付けない…?」

 

 「付けた。二件目以降は刀使が護衛した、だが奪われた……相手は相当の手練れらしい」

 

 「意味が解らん、そもそもノロを奪ってどうする?そんなモン例の宇宙人か以前の折神家じゃあるまいし……そうなのか?今更宇宙人連中が欲しがるようにも思えんし、旧折神紫派の仕業なのか?」

 

 「いや…、まだそうとは断定出来ない。兎に角襲われた者達の証言によれば相手は一人だ。フードを深く被って顔は見えない、皆同じ証言だ」

 言って、中央モニターの映像を示す。

 

 「御刀持ってるじゃないか。管理局なら特定出来るだろ?」

 

 「それが出来なかった。登録されていない御刀だ」

 

 「剣術の流派は?」

 

 「当てはまる流派が多すぎる」

 

 「可奈美に見せればいい、あの剣術オタクならコイツの手癖から直ぐに割り出せるぞ」

 行動を共にした点から、確信する様にニヤケる薫の言葉に紗南も同意し自らの考えを伝える。

 

 「ああ。近く衛藤にも協力して貰う。だがまだ一部の者にしか知らせていない」

 

 「勿体付ける事か?」

 

 「事が事だけにな。情報を制限したい」

 

 紗南の物言いに薫は眉を潜める。

 

 「管理局はまだ内部を疑ってるのか。折神紫の件もあるからな」

 先の一件の事から紗南の言わんとする事も理解出来る薫が皮肉か自虐か、管理局の体制の杜撰を口にする。

 

 「ふん。何とでも言え」

 信頼する教え子の言葉に笑い飛ばす紗南。こんなやり取りを交わせるのも互いの信あってこそ、2人の関係の深さが分かる一幕であった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:静かなる瞳)

 

 つーかこのフードの刀使の画像はまぁレコーダーか周辺監視カメラのヤツなんだろうが、その辺の情報を追ってんのは誰だよ?

 

 そこは先輩の伝手で平城から呼び寄せた信頼も信用も出来る隠密がいるからな。

 

 隠密ぅ~?……ああ。清香の兄貴の忍者か

 

 アイツは凄いぞ~、お前と違って仕事に文句一つ言わずに淡々とこなしては次の調査に向かうからな。

 

 ブラック過ぎんだろ……。

 

 まぁ表向きはバイト活動で済ませてるからな。実際バイトもしてはいる様だが…。

 

 超人かよ…。

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 正体不明、謎の刀使を追え?

 

 …………腹が減ったな…。

 

 龍悟さぁ、ちゃんと自分の食事にも金使いなよ?桃さんはそこ心配だよ。

 

 




 取り敢えずですねお風呂の会話とかは次回です。
 3月はまた公休のローテーションが替わるので、またちょっと更新が遅れる可能性がありますかね。
 なるべく早めに書き上げたいとは思っております。

 それはそれとして心寿ちゃんキタ!かわいい!(ヤンガン本誌読者感)

 ではまた次回


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第九十九話 正体不明、謎の刀使を追え?  


 こんばんは。
 いやぁ、何か端末のレスポンスが急に悪くなってゲームは出来ないわ、フリックが上手くいかないわで遅れてしまいました。
 まぁOS更新で治ったんですがね。
 調子悪くなる前に回した育成ガチャでカワカミ、カレン、そして二人目のキタちゃんが来ました。
 調子悪くなってからはガチャ回そうとするとアプリが強制シャットダウンするのでダイヤちゃん来てませぬ……。

 スマホは未だに解らない事だらけです。



 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 旧折神紫派の刀使だかまだ見ぬ宇宙人刀使だか知らんが、ノロ強奪なんざ好き勝手してくれるよな。

 

 ねー。

 

 そうだな。まぁその辺り含めこれから研究病棟で伏せっている"ヤツ"にも話を聴きに行くとして、お前の反省室は決定な?

 

 ちくしょぉぉおおお!!そこは(てい)で済ませろよぉおおお!!

 


 

 ━━鎌府女学院・大浴場

 

 刀剣類管理局は折神家内の敷地にあり、更にその直ぐ隣には鎌府の校舎が併設されている。

 そうなれば当然任務や模擬修練を終えた少女達が使用する為の慰安施設も存在する訳で、そして今丁度いい汗掻いた乙女達が生まれたままの姿でその身を浄めんといっぱいに貼られた湯船に身を浸している。

 

 「私たちとはまるで次元が違いました!」

 湯浴みに沈む4人の1人、内里歩が興奮覚めやらぬ声で先程まで修練場で眼にしていた戦いを語る。

 

 「二人とも立ち合いたかったなぁ~」

 歩の感嘆を受けて可奈美は歩と美弥とも刃を交えてみたかったと溢す。

 

 「私達なんて相手になりませんから…」

 田辺美弥がとんでも無いとばかりに萎縮しながら呟く。

 

 「二人の剣術の流派は?」

 

 「私たち二人とも鞍馬流です!」

 

 「綾小路で鞍馬流と言うと……親衛隊の此花さんと同じ?」

 

 「あ…!はい!そうです!」

 「元親衛隊ですがね…」

 

 話題を変え、2人の流派に言及する可奈美の問いに又しても歩が勢い良く答える。

 そうして鞍馬流と聞き、可奈美の頭の中で該当する使い手の名を出す。それに歩は嬉しそうに答えるが美弥は何とも言い難い。

 

 「そっか~此花さんも強いよね」

 

 「ですね!」

 

 「その親衛隊も倒したって噂ですけど…」

 

 可奈美の寿々花評に歩が肯定するが、美弥がそんな寿々花すら捩じ伏せたと噂されていると可奈美を評する。

 その時今まで押し黙って湯に浸っていた沙耶香が立ち上がり浴槽から離れる。

 

 「先に上がる。少しのぼせたから部屋に戻る」

 背を向けたままそう告げた沙耶香の顔は暗く、しかし可奈美には見えない。

 

 「沙耶香ちゃんありがとう!沙耶香ちゃんの剣相変わらず速かったね」

 

 「でも駄目。速くても意味が無い。可奈美が本気を出したら多分私じゃ一本も取れない…そのくらい差が着いてる」

 

 「そんなこと……」

 

 「ない?」

 

 否定の言葉を告げようとして…だが沙耶香が本当にそう思っている?と問う様な視線を向けて、二の句が告げなくなる。

 

 「可奈美なら分かるはず。可奈美一人だけ遠い所に居る事」

 そのまま1人白い少女は浴室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・展望室

 

 「フードの刀使ぃ?」

 

 「……ああ…。ここ最近のノロ強奪犯と目されている…」

 

 格納庫が一望出来る展望室でダグビークルの整備進捗を見下ろしながら撃鉄が龍悟に訊ねた所、半ば結論付ける形で肯定を返す。

 

 「フード刀使のう……おチビとは違うんか?」

 

 「むぅ~!私ノロなんてもういらないもん!」

 『いラナイ!イラナい!』

 

 組み上げ途中のビークルを眺めていた結芽が撃鉄からの言葉に顔をむくらせて反論する。

 

 「冗談じゃ。そもそもおチビが使える御刀なんざ葱か大根しかないしのう、んでライアンは御刀じゃあ無いから……まぁ別人じゃろうて」

 

 「おじちゃんなんてタンスの角に親指と小指をぶつけちゃえ!!」

 

 「それは洒落にならんぞ!おチビぃ!?!!」

 

 「……仲が良いな…」

 

 撃鉄の背中をボカボカ叩く藤桜色(薄いストロベリーブロンド)の少女を見て龍悟が溢す。

 

 「えー、仲良くないし。龍悟おにーさん変なこと言わないで」

 

 (…その割には戒将の次に絡むのが大体撃鉄か焔也な辺り相当の仲だと思うが…)

 しかし比べて見れば己や申一郎、翼沙と比べると懐き方が同年代の友人並みに遠慮が無い様に見えるので、精神的な波長かと勝手に納得する。

 

 「……撃鉄の冗談は兎も角として…、他に未登録の御刀を使う者など異星人…もしくは……」

 

 「旧折神紫派閥の残党が隠し持っていたかもしれんモノ…ちゅう訳じゃな。んで、お主的にはどっちなんじゃ?」

 

 結芽の首根っこを猫でも掴む様にして持ち上げて少女からのボカボカラッシュを遠ざけると、即座に龍悟とアイコンタクトを交わし、結芽を部屋の外へ追い出す。

 

 「あー!?おじちゃんも龍悟おにーさんもなんか企んで────」

 

 まで少女が言の葉を紡いで、だがその科白は非常にもドアの閉口音とロックにより最後まで彼等の届く事は無かった。

 

 「これでええんか?」

 

 「……」

 撃鉄からの確認にコクりと無言で頷く龍悟。そのまま眼下の光景を眺めながら話の続きを語り始める。

 

 「…本部長から見せられた二件目の襲撃映像を視た限りでは何とも言えん……。背格好は結芽と同じくらいだが…天然理心流では無い…」

 

 「三件目以降の襲撃にはお主は現場に同行せんかったのか?」

 

 「…その辺りも含め、先の質問の答え…襲撃者の正体についてだが…管理局は…と言うよりも本部長がだが…現状最も想定しうる人物として、獅童真希を挙げている…しかし……」

 

 「お主は違うと踏んでいる訳か。それ伝えたんか?」

 

 「…いや…憶測の域を出ない以上証拠も無しに言うべきでは無いと判断した……」

 

 「ふむ?」

 

 「……実際の所は、以前山中の戦闘に加え、獅童の戦いは幾度か"視て"いる。しかしだ…山中での事は我々の事情をバラす事になるし……それ以前のモノは稽古中のものを眼にしたと言う理由で……確証には弱い…。その上で以前本部長と五條学長に依頼された…獅童の足取りを追う件を注力していた…」

 

 「だから同行はしておらんかったと………」

 

 「…ああ、しかしどうやら過去四件とも現場に獅童がニアミスしているので、結果的に三件目からは俺も…襲撃後の現場には立会っている……。その上で襲撃者の正体は……」

 

 龍悟の所感を聞き返事を返しながら遂に正体の手掛かりについて語ろうとする所まで来て、撃鉄はゴクリと喉を鳴らす。

 

 「……不明だ…」

 

 「っなんじゃい?!結局解らんのかい!!」

 

 「…獅童では無いが、しかし旧折神派閥の関係者ではあるかもしれない……、もしくは異星人の方かもしれない……結局、手掛かりが少なすぎる…」

 

 「異星人のう……つっても御刀持ってる連中はドレスの女に半裸の女の二人だけじゃったろ?」

 

 「……忘れたのか?ヤツらの一人が言っていただろう…四騎士の一人だと…。ヤツの言葉が事実であるなら…最低でも後二人、我々が知らない御刀を使う異星人が存在する事になる…」

 

 「ううむ…言われてみれば。そんな事をどっちかが言っていた気も…………」

 龍悟の指摘に記憶を探る様に首を捻る撃鉄、と同時にあんなのがまだ居ると思うと少し気が滅入ってしまう。

 「因みに、この話他の者には?」

 

 「…戒将には既に話した。それ以外はお前だけだ…」

 

 「ふんむ…、意外じゃのう。お主の事だから翼沙にも話しとるかと思ったが……」

 

 「……ヤツが忙しいと言うのも理由だが、俺なりに田中撃鉄という男を買っているのでね……」

 

 「おぉ…、なんぞ照れるのう。お、今日の分が終わったか」

 眼下の格納庫で稼働していたロボットアームの内、ドリルライナーと無限砲に割かれていた物が停止する。

 

 ≪ああ~しんどかった……一日10分はやっぱりきついなぁ」

 

 虚空から逆再生する様に現れる蛍光桃色頭(脳内お花畑手前)の美少女に見せかけた美少年ことアルファが袖口で額の汗を拭いながら2人の真後ろに現れる。

 

 「それにしたって作業に時間が掛かりすぎだと思うんだが……お主、本当にワシのビークルとあの大砲作る気あるのか?」

 

 「あ~り~ま~す~!ただダグサテライトのソフト関連の調整とか…TB(サンダービークル)シリーズとかFB-Pも同時進行してるだけだし……とにかく完成はさせるからもう少し待っててよ!!」

 

 「……なる程、何やら企んでいるのは理解した…」

 「ボソボソと呟いとった所が気になるが……約束守る気はあるんじゃな?」

 

 「それはあるよ、敵はこれからもドンドン強力なヤツが出てくるだろうし」

 

 「ふぅうむ……はぁ、分かった。信じよう。それはそれとして、そろそろおチビを入れてやるかのう」

 取り敢えずアルファがやる事は一応やっているので自分もこれ以上文句は言わずに、外に追い出した結芽を再び招き入れる。

 

 「むすぅ~……」

 

 「おや?結芽ちゃんってばなんで外に?」

 

 「おじちゃんが仲間外れにした!」

 

 「悪かった。ちょいと込み入った話があったもんでな」

 

 「……では俺はそろそろ失礼する。本部長から請負った仕事があるのでな……」

 

 そう言って音も無く立ち去る龍悟。完全に忍者である。

 

 (獅童の足取りを追う任務に戻るか、う~むワシは親衛隊とはおチビ以外マトモに面識が無いからあ奴等が親衛隊に懐いてる意図は理解出来んが…いやそもそも親衛隊に個人的な感情があるのは戒将と龍悟だけか)

 

 やはり持ち込んだ一畳の畳に寝転がり、学帽に顔を隠しながら思考に埋没する。

 その直ぐ側で行われる結芽がアルファやキッドと取り留めの無い会話をBGMにそのまま眠りに落ちるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━奈良・十条邸

 

 亡くなった母の遺影を前に顔を伏せる姫和、彼女はいろはから聞かされた謎のノロ強奪犯と目されるフードの刀使について思案する。

 フードの刀使の存在により、本部長である紗南よりいろはを通して直々に招聘の指名を貰った事、その件にはフードの刀使の影がチラ付いている事が伝えられ、姫和の迷いに否が応でも決断を迫られる。

 迷いの霧の中、果たして少女が進む道とは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━刀剣類管理局本部・特祭隊寮

 

 伍箇伝各校より集まった刀使隊員の為に用意された学生寮の一角、その1部屋である可奈美の部屋の室内は散らかっていた。

 可奈美が眠る布団の上やベッド周辺の床に散らばる衣類とスポーツバッグやビニール袋、ゴミこそ散乱していないが年頃の少女の部屋としては些か汚い。

 どのくらい汚いかと言うと焔也の部屋より汚い。

 ほとほと舞衣が居なければ片付けられない辺り、彼女の生活能力の低さが垣間見得る。否、炊事は最低限出来るのだからトントンと言った具合か?

 

 「私だけ…遠い場所…」

 そんな散らかった部屋のベッドの中で眠る可奈美は夢の中の霧深い境内での会話、その一部を寝言の様に溢す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「友達に言われたの?」

 

 「うん…」

 

 夢の中で対面した在りし日の母──藤原美奈都との雑談で沙耶香との間に起きた出来事を吐露する。

 

 「そりゃそうだよ。今の可奈美結構強いよ、あの紫を倒しちゃうくらいだもん」

 

 「倒す?紫様を?」

 

 「倒したでしょ?」

 

 「いやいや無理無理!紫様には全然敵わなかったんだ……あの時も師匠が交代してくれなかったら姫和ちゃんもみんなも助からなかった…」

 

 「はぁ?私交代なんかしてないんだけど」

 

 美奈都の問いに、あの時は己ではなく師である母が代わってくれたからこそ勝てたと嘯く可奈美に、しかし美奈都は怪訝な顔をして否定する。

 

 「え?」

 「だから可奈美が勝ったんでしょ?」

 「だから私じゃ相手にならなくて……意識が朦朧としてて…うっすらとおか…師匠なら勝てるだろうなって思っちゃって…」

 

 食い違う認識、互いに訝しむ2人。当時の状況を思い返して辿々しく語る可奈美の言葉を聞いて美奈都は1つの予想を立てる。

 

 「成る程。憑依芸みたいなもんか」

 

 「芸!!?」

 

 「そう思い込む事で私に成り切ったーと言うか、忠実に真似する事が出来たワケだ」

 

 「嘘…」

 

 あの時、極限の状態で可奈美が無意識に描いた勝利の法則。母美奈都であれば絶対に負けないと言う強い思いが朦朧とした意識の中で組み立てられた結果、可奈美は美奈都の言動、クセ、動きをエミュレートしてのけた。それこそ折神紫が、大荒魂タギツヒメが動揺し驚愕する程に。

 

 「ま、毎晩こうして稽古つけてあげてるんだから不思議じゃないけど」

 信じられないという顔をする娘に若き日の美奈都は有り得ない事では無いと告げる。

 

 「じゃああれは…」

 

 「可奈美の実力だよ」

 

 「おか…師匠……、うん」

 

 

 目指すべき師であり母からの言葉に、嬉しくもあり、しかし沙耶香からの言葉が紛れも無い真実である為寂しそうに笑う可奈美。

 

 「ま、それでも私にはまだまだ遠く及ばないけどね」

 

 「そうかな~?」

 

 可奈美の顔からそれとなく察して、不敵な笑みで本心込みで己の腕前の方が上だと述べる美奈都の言葉に、心の底から嬉さを顔に出す可奈美。

 それは可奈美自身が遠い人扱いされた寂しさよりも、目標から未熟と言われた嬉さ故のモノであった。

 

 「あっ!生意気!ちょっと褒めたらもうその気になってる。よーしいっちょ揉んでやるか!」

 

 「お願いします!」

 

 目覚めてしまえば忘れてしまう永久にして刹那の時間、互いに刃を交える一風変わった親子の対話。

 夜は人知れず過ぎてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━綾小路武芸学舎

 

 真夜であろうとも眠らない伍箇伝、その一角京都は綾小路武芸学舎の廊下を1人進む女傑──綾小路学長相楽結月。

 大半の生徒が寝静まるか、任務にて出払っている人気の無い校舎に結月のヒールの音が木霊す。

 彼女が目指す目的地へと続く廊下には彼女以外の存在が無い。例え寝静まっていても、任務で出払っている者達がいるとしても、職員が勤務している以上…意図して立ち入る人間を制限しない限り、人の気が無いと言うのは有り得ない、だからつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 果たして到着した目的地は綾小路の研究棟の1部屋。

 煉瓦造りの壁紙に天井を巡るアルミダクト、複数のノート端末、そして其所に佇む部屋は間借りした研究室を己の城とばかりに佇む紅いレディーススーツを着込んだ神経質そうな妙齢の美女と親衛隊服に袖を通す無表情の少女。

 更に壁際でニヤニヤとほくそ笑む眼鏡を掛けた胡散臭い青年…と彼の背中の影に隠れる様にして結月の視線から逃れる綾小路制服のピンクメッシュの少女。

 

 元刀剣類管理局本部長兼鎌府女学院学長高津雪那、元折神紫親衛隊第三席皐月夜見、そして地球で活動する為に擬態した宇宙商人マッニーと宇宙詐欺師フュンフである。

 

 「(誰だ……)これは全て完成品か?」

 マッニーを一瞥しながら研究室の壁面側の装置に押し立て並んだ大量のノロアンプルを前に雪那へ問い掛ける。

 

 「勿論です」

 結月の問いに対し不遜に肯定する雪那。

 「夜見。来なさい」

 そうして成果を御覧あれとばかりに傍らに立つ夜見を呼び寄せ、彼女の首筋にアンプルが入った注射器を突き立て注射する。

 すると夜見の僅に呻く声と共に瞳が朱く光り、少女の身体から暗いオーラが立ち上る。

 

 「これは人をより上位の存在へと進化させる革新的な秘薬。これにより人類は老い、病、肉体的損傷、才能の優劣、全ての苦悩から解放される!」

 己が発言に絶対的自信を込めて高笑う雪那。それを見る結月の顔は冷たモノを見るソレ、マッニーは噴き出しそうになる笑いを必死に堪え、フュンフはゴミを見る眼で雪那を見つめつつ、マッニーが声を挙げて笑う事の無いように彼の脇腹をつねる。

 

 (じょ、上位…ヒヒッ…進化とか…寧ろ退化やんけ…ブフッ…腹痛い…雪那ちゃんええわぁ、滑稽なピエロその物やん)

 

 (堪えて下さい。です。彼女からすれば本気なのですから)

 

 (だ、だからウケるやん?見いやあのソウラクとか言う人間の眼、あれ完全に雪那ちゃんの個人的な言動部分の演説聞き流しとるで?)

 

 (まぁ、確かに。です…いえしかし、辺境の文明水準としては破格なのは確かでは?)

 

 (まぁな、実際の効果はともかく……こんなド田舎の猿同然の種族が別位相空間のエネルギーを利用する技術を実践出来るんわ、手離しで褒められるわ。でも雪那ちゃんの言い分があんまりにも個人的なもんやから…思い出したらまた笑いが……クヒヒ)

 

 異星人同士がこそこそと言葉を交える横で寸劇扱いされた雪那の高説が続く。

 

 「あの方の理論を私が完成させ、貴女の援助で生産出来た。これは私達の共同産物です!貴女に感謝します。綾小路学長」

 結月の手前、異星人2人に対する怯えをおくびにも出さず自信満々に謡う雪那。

 見上げられた壁1面のノロアンプルが妖しく光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌府女学院・研究医療棟

 

 時同じく鎌府のノロ研究、医療に携わる棟のとある部屋ではある人物が医療用リクライニングベッドに横たわっていた。

 

 「今日はどういったご用?」

 

 体勢としては上体が起こされているので当たり前だが、訪ねて来た来訪者達を見て出迎える様に声を掛ける人物──元折神紫親衛隊第二席、此花寿々花その人である。

 現在の寿々花は人間とノロの分離を図る為、この研究医療棟の1室に半ば隔離状態である。その為普段頭の後ろで纏められている髪も、眠る際や横になる際に邪魔となる為下ろされている。

 また、衛生観念から着替えや風呂等許されてはいるが、寝たきりの時間の方が長い事からか、彼女のワインレッドの赤毛は少々ボサボサになっている。

 それでも髪以外目立った乱れも無く入院着を綺麗に着用する辺り、流石はお嬢様と言えるだろう。

 その彼女が声を掛けた相手の片側、寿々花をこの施設に軟禁状態で治療に専念させた紗南が口火を切る。

 

 「いや、少し訊きたい事があってな」

 「よう親衛隊」

 

 そしてもう一方、因縁浅からぬ関係である益子薫からの皮肉を込めた声に、珍獣でも見た。と言った具合に言葉を投げる。

 

 「珍しい来客ですわね」

 

 「ねーーーーー!!!」

 

 すると薫の頭上に乗っかっていたねねが身体中全身の毛を逆立てて威嚇するように哭く。

 

 「かなり抜けたと聞いたが、まだまだだな。荒魂の匂いがするってよ」

 

 「あら手厳しいこと…、これでもかなり無理を推したのですけれど。そんな風に荒魂とお話出来るだなんて貴女も此方側ではなくて?」

 

 寿々花の言う無理とは、異世界事変の際に受けた治療の事である。

 

 「俺は人だ。このねねも荒魂だが穢れじゃない、悪いな仲間じゃなくて」

 

 皮肉に対し皮肉で返せばこれまた皮肉が返ってくる。

 ノーガードの言葉の応酬に、紗南も流石に黙って傍観している訳にもいかず止めに入る。

 

 「いちいち挑発するな。(燕戒将が席を外してる時に来たのは失敗だったか?まぁ良い…)コイツを知ってるか?」

 些かタイミングが悪かったかと自問しつつ寿々花にフードの刀使が映ったタブレット端末を差し出す。

 

 「さぁ…?存じ上げませんわ。そもそもお顔が見えませんし……」

 寿々花が言う通り、遠隔映像の低解像度ストップショットでは人相までははっきりとしない。

 しかし紗南は尋問を続ける。

 

 「思い至る人物は?」

 

 「特には」

 

 該当人物の問いにも嘘偽り無く返す、しかし回りくどい質問意図に煩わしさを感じた薫が忖度抜きに直球を投げる。

 

 「はっきり言ってやる。コイツは獅童真希じゃないのか?」

 

 「真希さんですって?」

 

 その言葉に寿々花は困惑と疑念入り雑じった声を挙げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉刀剣類管理局本部敷地

 

 帳が明け、東の空から陽が昇り始めた時刻。管理局の建物の影…人が少なく寄り付かぬ場に瞬く一瞬の閃光。

 ダグベースからの転送の際に起こる僅な電磁パルスである。

 光の粒子が散り現れるは六角龍悟。彼はそのまま極自然に用意された寮室に戻り、荷を纏めて再び外出を始める。

 

 「あれ?六角先輩?」

 「六角……?」

 

 「……」

 そうして玄関口から公共交通機関を利用する学生らしい表向きの行動をしている所で、任務帰りの混成部隊の刀使達に見付かりその内の1人が声を掛け、もう1人が龍悟の名に訝しむ。

 呼ばれた龍悟が声の方に視線を飛ばせば声を掛けた方が駆け寄って来る。

 

 「…姫野…」

 

 駆け寄って来た少女は平城の刀使姫野志保。彼女は龍悟の格好を見てフランクに問う。

 

 「お久し振りです!先輩は今からバイト?」

 

 「……ああ、お前達は遠征の帰りか…?」 

 

 「そうなんとこかな。それにしても…ぼく達が忙しいの抜きにしても先輩とは中々会う機会無かったですけど、先輩もずっとこっちにいるんでしょ?やっぱりバイト梯子してるの?辰浪先輩みたいに?」

 

 「……そんな所だ」

 

 「ごめんなさい。ちょっと良い?」

 志保との他愛の無い会話を交えていると、混成部隊から志保と同じ平城の──先程訝しむ声を挙げた黒髪をポニーテールに纏めた刀使、朝比奈北斗が断りを入れ割り込む。

 

 「…確か…朝比奈だったか……?」

 

 「ええ、初めまして。朝比奈北斗よ、貴方の噂はよく耳にするわ」

 

 「…六角龍悟。よろしく頼む…まぁ絡む機会があるかは知らんが……」

 

 「そうね、お互いクラスも違うし、こういう機会でもなければ話すなんて中々無かったかもしれないわ。それで……あくまで戯言レベルで聞き流してくれて構わないのだけれど、貴方…獅童真希と互角に戦えるって本当?」

 

 この朝比奈北斗、獅童真希とは一方的ではあるが少々因縁がある。その為龍悟に付いた噂の真偽をこの機会に確めんと彼に近付いたのだ。

 

 「あわわ…北斗さんがちょっと冷たい系美人の人にぃぃぃせ、せ、宣戦布告してるぅぅぅ?!」

 

 後ろで伊南栖羽が何やら慌てているが、栖羽自身は止めようと動こうとしない辺り、存外余裕があるのかもしれない。

 

 「…何を以て互角かは知らないが、御刀を持った刀使の相手は流石に無謀が過ぎると言うものだ……」

 自身の実情は置いておいて、一般的な事実を述べる。

 

 「そうね……私ってば何を言ってるのかしら。ごめんなさい。けれどわざわざ御刀をだなんて付けると言う事は、素手でなら勝てる確信はあるのね?」

 

 「……昔、一度だけ…徒手空拳での組手を想定した訓練で、一例として実践しただけだ……」

 それも獅童が親衛隊となって間もない頃に…、と続けて飽くまでも対等条件の上であると示しておく。

 

 「そう…今度機会が有ったら私も警邏の教練に参加してみようかしら…………」

 平城の警邏科(主に男子)にとってのある種の地獄が確定した………かもしれない。

 

 「……もう良いだろうか?これからバイトがある……」

 

 「ごめんなさい。長々と引き留めて…」

 「先輩。バイト頑張って!」

 

 志保の激励を受け取ったと同時に消え去る龍悟、栖羽と混成部隊最後の1人藤巻みなきが眼を飛び出さんばかりに驚愕し、何か騒いでいたのはご愛敬である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……さて、周辺の目撃情報や足取りから察すに…まだ獅童は関東一帯の何処かに潜伏しているはずだが……果たしてノロ強奪の犯人がヤツかどうか……」

 ビルとビルの間を平然と跳びながら、端末の情報を確認する龍悟。

 フードの刀使の正体に疑問を懐きながらも、それが獅童真希ではないと心の何処かで考えているのだ。

 やがてビルが途切れると民家の屋根を足場に変え県境まで辿り着く。其処から人目を避けガードイーグルを用いて今回の探索範囲である埼玉の一角へと降り立った。

 

 「…ひとまずは…辰浪と共に受けたコンビニのバイトだな……」

 そうして東京と程近い場所にある埼玉のコンビニへと向かう。

 

 

 

 「おお、龍悟。お疲れ~」

 バイト先に到着して真っ先に彼に気付いたのは先に働いていた辰浪桃。

 

 「……ああ、お前はこれから休憩か?」

 

 「そんなトコだね。お陰で他のバイトは午後になりそうだよ」

 

 「…そうか、養生しろ……」

 と桃を労う言葉を言いかけ龍悟の腹の虫が空腹を訴える。

 

 「………腹が減っていたようだ…」

 

 「いやぁ、あんたも大概にしなよ?」

 

 桃から廃棄弁当を1つ受け取り腹を満たす、その後交代が来るまで勤務へと付き、バイト後は獅童真希の足取りを追うのであった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:静かなる瞳)

 

 聞いたか弟達よ!

 

 ホワ~イ?何だYO兄ちゃん?!

 

 ……zzZ

 

 ダグターボ共が合体したそうだぞ!!

 

 マジかYO!!?()()()()()()()()()()()()()

 

 ふわぁ…んならオラ達ももう一人ずつ獲物定めなくてもええだなぁ。

 

 その通りである!奴等に我等が真価を見せ付けてやろうではないか!!ハーッハッハッハッ!

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 ライナーダグオン合体不能?!兄弟合身!強敵MAXーJR7。

 

 バラバラで余に勝てると思うなよ!!

 





 世間では某赤い国の侵攻問題が度々話題に挙がってますが、それで在日の滞在人やら店舗にまで攻撃的な事をするのは違うんじゃ無いかなぁと思い、ましてや創作の中のキャラ…それも一応はハーフだし、自重してピックアップされてる訳でもないのに過激な発言はちょっと引きます(削除するべきとか強制送還銃殺だとか)…や、中の人旧ソ好きで有名ですけど…。
 直接国営なりに絡まなければ別段個人の趣味くらいでとやかく言わなくても良いんじゃないかなぁって思います。
 あの手の国の最終的責任は指導者の問題でしょうし。
 実際の国の方は兎も角、アニメとかのキャラはまぁ個人なんで私は好きですよ?
 
 東映アニメーションハッキング云々も要は渦中のハッカー集団達に非難するならまぁ残当ですが、関係無い人にまで当たるのは駄目だと思うんです。

 それはそれとして、デジモンゴーストゲームにアルケニモン出た時、02の頃より人間態美人になってましたね、声も02当時と同じ山崎女史だったのはファンサービスかな?
 いやぁゴーストゲームは意外なデジモン出る事もあるんで楽しみですね(先週?今週?上記のハッキング騒動で休みでしたけど)、いずれウェヌスモンやウィッチモンマーメイモン辺りも良作画の回で出して欲しいなぁ。
 シスタモンもノワールの方もアニメで観たいなぁとか期待してたりします。ええ人型のデジモン結構好きです。往年のファンの方の中にはもう人間じゃんとか言われてますけど、デジモンらしい所もあると私は思ってます。

 ではまた次回


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幕間 中間報告


 はい、エイプリルフールネタ投稿直後の本編幕間投稿です。

 そう言えば、デジモン図鑑オリュンポス更新されてました。待ちわびました。

 次の仮面ライダー商標バレしましたね。

 ドンオニタイジン欲しくなって来たなぁ。



 

 ━美濃関学院━

 

 鎌倉特別危険廃棄物漏出問題にて刀使と特祭隊に対し世論のイメージがマイナスへと傾き始めていた月日頃。

 刀剣類管理局主導の元、各伍箇伝学院担当地域内においても所属の垣根無く混成刀使部隊による荒魂討伐が行われていた。

 

 ここ美濃関では来週頃に本部出向が決まった柳瀬舞衣を含め、七之里呼吹、古波蔵エレン、木寅ミルヤの4人の刀使が集い、美濃関学院での任務の合間を過ごしていた。

 

 「やはりここ数日で世論から特祭隊や管理局に対し不信感や不満を聞く事が多くなりましたね。それに伴って悪質なデマに惑わされて色眼鏡でしか現実を見ない過激な発言をする者も多いと聞きます。愚かな事です」

 

 「お馬鹿ちゃんが多いと苦労するのデース」

 

 鎌倉特別危険廃棄物漏出問題で世論からバッシングを受けている最中、更に根も葉も無いゴシップによって刀使に対する風当りが強い現状にエレンが露骨に不満を露にして膨れっ面になる。

 

 「エレンちゃん、それは言い過ぎだよ…世間が事件の真相を知らないのは、情報規制をしているせいなんだから」

 

 「おっと、失礼シマシタ」

 

 「アタシは世間がどう思われようが知ったこっちゃ無いけどな。荒魂ちゃんをブッ潰す邪魔をされるのはイライラするな」

 舞衣に諫められるエレンが悪戯がバレた子供の様なお茶目な表情で謝罪する横で呼吹は何時も通りブレない我を貫く、それでも多少は不自由を感じてはいる様だが。

 

 「世論の声と言えば、ダグオンに関してもより一層色々な憶測が飛ぶようになりましたね」

 スペクトラムファインダーに使われる官給品のスマホ端末から読み込まれるニュースサイトを表示させながら眼鏡のテンプルを直す。

 

 「初期の頃はヤラセ映像とか眉唾扱いデシタね。最近は別方向に悪い噂も出てるらしいですケド……ホント、失礼デース。彼等は彼等で頑張ってくれてるのに…」

 

 「まぁ彼等の方の噂は正体不明の不信感から来る物ですからね、我々の様に直接…それも数度に渡って交流までしている身からすれば眉唾だと理解出来る物ばかりです」

 

 「ああ、何かでやってたな。緊急企画!ダグオンと宇宙人の戦いはマッチポンプだった!?だっけか?ハッ、B級バラエティ丸出しのヤツだったな」

 ミルヤの言葉に心当りがあって、何時かの待機時間に目にした深夜バラエティのタイトルを口にする呼吹の声は冷笑と分かるものであった。

 

 「彼等の世論の評価はどうあれ、戦力その物の出所は管理局でも度々話題に挙がりますからね。ともあれ──」

 

 ミルヤが話題を移そうと口火を切ろうとした瞬間、校内スピーカーがブレスノイズを伝える。

 

 【本学付近で荒魂の出現が確認されました。刀使は至急出撃準備をお願いします。繰り返します、本学付近で荒魂の出現が───】

 校内全域に木霊する荒魂出現の報、ここ連日に渡ってのソレに舞衣はやや辟易混じりに驚きの声を挙げる。

 

 「また!?」

 

 「へへっ、ストレス解消のチャンスだぜ!待ってろよ荒魂ちゃん!今行くぜ!」

 唯1人、七之里呼吹だけは嬉々として勇み飛び出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━桜島火山地下

 

 「ナスカの地上絵だとゥ?」

 

 「sir、フリッジと合議した結果其処が一番怪しいと言う結論になった」

 マグマ煮え滾る中心部に設置された装置の駆動音に負けぬ程の声で訝しむヴァルトロンに対し、培養槽を管理しながらコンソールを叩く浅葱色の鋼の機人が応える。

 

 「まだ調査の中間報告な為、確実な物証がある訳では無いが、下名から見た人間なる種族の持つ技術では説明の付かない事象が多い。これは推測なのだがこの惑星には我々以前にも星間航行技術を持った異星文明が来訪しているのではないかと思う。

 エデンの連中が言う宝とやらの正体は案外、この惑星に来た先達が残した物ではなかろうか」

 浅葱色の機人──オルゴン船医こと医療工兵長スローターが片手間で球体スクリーンを投影して仮説を立てる。

 

 「金目の物はあると思うか?」

 

 「それは分からん。先人がどういった文明だったかは定かでは無いからな、そこはフリッジの解読に期待する他にあるまい?

 問題は私掠船免状を持たない我々にとって、見付かった宝が船長が想像している様な金銀宝石財宝の類いであった場合、再び宇宙の運河に飛び出した際に足が着かない事で逆に厄介な連中に目を付けられる可能性がある事なのだが……」

 

 「そんな心配は無用だぞ?スローターよ。向かって来る者在らば叩き潰すのみだからな!グハハハ!!」

 

 「やれやれ…船長がこうも楽観的ではな…。(しかし……ヴァルトロンにはああは言ったものの、この惑星に眠る宝は恐らくもっと強大な物…であれば)エデン監獄の連中はどうあっても邪魔になる時が来るな」

 宝の正体におおよそアタリを付けつつあるスローターが何時か訪れるその時が存外に早く訪れるのではないかと言外に仄めかす。

 

 「確かになァ。商人や炎の塊、女医、道化師はどうとでもなるが、ワルガイヤーとか言ったか?奴とあの小童……特に小童の方が厄介になるな。だが暫くはお互い腹を探りながらこの地の原生体を利用しようじゃアないか」

 

 「そうなれば、今暫くはアスクラには頑張って働いて貰わねばならないな」

 

 海賊達の心算が定まる中、只1人アスクラだけが貧乏くじを引かされ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━美濃関学院付近・山林

 

 振り抜いた一閃が最後の1匹を駆逐し終え、ミルヤが周辺を確認した後、その言葉を口にする。

 

 「───任務完了ですね」

 

 「ったく、まーた弱っちい荒魂だったぜ!アタシをもっと強い荒魂がいる所に異動させてくんねーかなー」

 獲物の歯応えの無さに不平を述べ人事に一抹の希望を賭ける呼吹。

 そんな彼女の発言を聞いて、舞衣はやや憂いに瞳を揺らす。

 

 「……各地で頑張ってくれている他の刀使達は大丈夫でしょうか………」

 

 「マイマイは、みんなの事が心配デスカ?」

 

 「うん。私達の任務なんて他の地域の過酷さに比べると、随分マシなはずだから……」

 

 「そうデスネ……薫は元気にしてますカネ……」

 舞衣の言葉に、別の意味で過酷な状況に追い込まれている相棒を想うエレン。

 その2人の様子に呼吹はぶっきらぼうに口を開く。

 

 「心配いらねぇだろ。アタシが知ってる刀使は全員、殺したって死なねぇようなヤツらばっかりだ。

 つーか、任務がキツくて心が折れるならとっくに刀使なんか辞めてるだろ。だから全員何とかやってるはずだ、それに困った時のセイギノミカタもいるんだ、少なくとも道端でくたばるなんて事はあり得ないだろ」

 

 「…そうですヨネ!多分薫も「休みが欲しい」って言いながら、歯を食いしばって頑張ってると思いマス!」

 

 「……七之里さん、ありがとう」

 

 「礼なんかいらねぇよ。辛気臭いのが嫌なだけだ」

 

 素直な感謝の言葉に気恥ずかしいのかバツが悪いのか、そっぽ向く呼吹。

 

 ──Pi Pi Pi !!

 

 「あ、メールが届きまシタ!」

 エレンの端末に届いたメール、それを確認したエレンの声色は1段階弾む。

 

 「……みなさん、ちょっとしたお知らせがありマス。今から寮に行きまショウ」

 

 「エレンちゃん、それってもしかして……」

 エレンの発言の意図に心当りがある舞衣がその意を質す。

 

 「お察しの通り、例の中間報告デス」

 

 「何の中間報告なんですか?」

 

 「説明は後でまとめてシマス!みなさん行きまショウ!」

 エレン先導の下、少女達は美濃関学院学生寮へと進路を取るのであった。

 

 

 

 

 

 場所を改め、美濃関学院学生寮エントランス。

 近場のソファに向かう道すがらにエレンが状況の説明を始める。

 

 「実は私とマイマイはグランパや学長のコネクションを使って、薫達の動向を調べていたのデス!」

 

 「可奈美ちゃん、姫和ちゃん、沙耶香ちゃん、薫ちゃん、それから美炎ちゃん、瀬戸内さん、清香さん、山城さん、鈴本さんが今何処で何をしているのかをね」

 エレンがどの様な手段を用いたのか、舞衣が誰の動向を中心にして集めていたのかをミルヤ達に話す。

 

 「なる程、その中間報告を今から聞けると言う訳ですか」

 得心いったと唸るミルヤ、ラウンジの休息用ソファが見え、呼吹が真っ先に大型ソファに無遠慮に座り、舞衣、エレンが個人用に腰掛け、ミルヤは壁に背を預けて報告を待つ。

 

 「それでは報告をさせて頂きます。

 調査対象となっている九人の刀使の内、各学園指揮下にいる六人の情報は入手出来ました」

 報告を告げ、資料を読み上げるのは舞衣と同じ美濃関学院の制服を纏った刀使、福田佐和乃。

 

 「ただし、安桜美炎、山城由依、鈴本葉菜の三名は主に警視庁指揮下への出向と異動の繰り返しで、まったく情報が手に入りませんでした」

 

 「そうなんだ………美炎ちゃんとはスマホで連絡を取る事も出来ないんだよね……」

 佐和乃からの報告に連絡の安否が着かない美炎を愁う舞衣、よしんば官給品とは別にプライベート用の端末を持っていたとしてもそちらも連絡が着かないのであればそれもまた仕方ない。

 

 「綾小路の二人…ユイやハナは、どうなんデスカ?」

 

 「私、その二人の連絡先は知らないから…」

 交友関係の接点が少ない相手の連絡先は流石の舞衣でもどうしようもない。

 なのでエレンはソファから身を乗り出して壁の華と化したミルヤへと話題を振る。

 

 「ミルヤは二人の連絡先、知りまセンカ?」

 

 「済みません。どちらも分かりません……鈴本葉菜とは、連絡を交換出来る状況では無かったので……」

 

 「ユイとは交換しなかったんデスカ?結構長い間一緒に行動していたと聞きましたケド」

 

 「山城由依からは剰りに執拗に連絡先を求められた為、身の危険を感じて断りました」

 

 「Oh……」

 エレンの反応もむべなるかな、ミルヤの答えは至極残当な選択の末である。

 余談ではあるが、申一郎は由依の連絡先を知っているので、ミルヤが頼めば直ぐにでも経由して貰えるのだが、そもそも申一郎と由依が親しいとはミルヤの中で図式が成り立たない上、彼の好みから由依は微妙に外れてしまう事をミルヤは知っている為、ハナから頭に無い。

 

 「尤も、安桜美炎と連絡が取れないという事は電波が届かない程の僻地に居るのでしょう。若しくは自由時間が無い程忙しいのか。警視庁へ出向と異動を繰り返しているのならば…或いは燕戒将とニアミスしている可能性もゼロでは無いでしょうが…期待は薄いでしょうね」

 

 「Oh…心配デース」

 

 「警視庁指揮下になると自由時間も無いくらいずっと荒魂と戦えるって事か?

 羨ましいぜ。あー誰かアタシと代わってくんねーかなー」

 

 「フッキーは仕事熱心デスネ!薫と足して2で割ったらちょうどイイ気がシマス」

 

 「七之里さんは仕事熱心とはちょっと違う気がするけど……」

 やはりどう転んでも荒魂と戦う方向に結び付ける呼吹にエレンは薫の惰性と足して割ってしまえば勤勉な刀使が生まれるのではないかと提案するが、舞衣はそれを勤労精神では無いのでは?と柔に主張する。

 そんな時である。再びスピーカーから荒魂出現の一報が掛かる。

 

 「おっ!また荒魂ちゃんが出たのか!よっしゃっ!一暴れしてくるか!!」

 呼吹、当然の様に喜び勇んで荒魂討伐へと駆け出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━綾小路武芸学舎・部室棟

 

 「ナァ~んか、一世一代のチャンスを逃した気がする……」

 

「ナニ言ってんっすか?副ぶちょー?」

 

 「何でもネェよ」

 

 スマホ片手に呟いた申一郎の声に反応した、1年生部員──東谷臥鸞と言う神職科の生徒──が応えたが、独り言として呟いた言葉なので突っぱねる。

 まさか、ミルヤが由依の連絡先を必要としている状況にあり、己がソレを知っている等とは…この時は彼も思いも因らなかったに違いない。

 

 

 閑話休題──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━美濃関学院・学生寮ラウンジ

 

 荒魂討伐後、再びラウンジへと戻った4人。

 

 「今回も楽勝だったな。あーあ、もっと強い荒魂と戦いたいぜ…ただ数をこなすってのも飽きてきたぜ」

 頻発する荒魂も十把一絡げの雑魚と称して、より強い大物を求める呼吹。荒魂はウェルカムだが強い異星人はノーセンキューではある。

 

 「ともあれ、荒魂は片付きました。報告の続きを聞きましょう」

 

 皆が傍聴の姿勢となった事を確認し、佐和乃が再び報告の言を告げる。

 

 「それでは報告を続けさせていただきます。調査対象の刀使については異動が多く、リアルタイムでの情報は中々入って来ません。分かっているのは益子薫さんが現在群馬への遠征が、衛藤可奈美さん、十条姫和さん、糸見沙耶香さんが鎌倉に居ると言う事だけです」

 管理局本部の圏内にて重宝されている腕前を持つ4人の情報は比較的新しい物が手に入った様で、薫を除き3人が現在も鎌倉の本部務めとなっている事が判明。薫も数日間群馬での任務に部隊を率いての遠征調査といった情報が明らかとなっている。

 

 「やはりみんな異動が多いデスネー、聞くところによるとたった数日で別の場所に異動になる事もあるそうデス。それだけ荒魂災害が頻発して人手が足りて無いって事デショウケド」

 

 「旅行しながら荒魂ちゃんを退治する感じか。悪くないかもな!」

 

 「その言い方には語弊があるような……」

 

 エレンの言に呼吹がエンジョイ気分でカラカラと笑う。舞衣はその表現に何とも言えない表情でツッコむ。

 その話題にふと思い出した様にミルヤは1つ、2ヶ月前の事を語り始める。

 

 「そう言えば、情報として役に立つかは分かりませんが…2ヶ月程前、一時的な転属先で山城由依、鈴本葉菜の二人と同じ部隊に編成されました」

 

 「そうなんですか?」

 

 「はい、今思い返すと…少し奇妙な話なんですが───」

 

 

 

 

 

 

 ミルヤの回想・2ヶ月前とある戦場にて──

 

 

 「ミルヤさーーーーん!!お久しぶりですっ!!ずっとずーっと!お会いしたかったです!!!」

 例に漏れず、各地を転々と異動転属を繰り返す側の刀使である山城由依は、久方振りに再会したミルヤ相手に常々以上の抱き着かんばかりのハイテンションで近付いて来る。

 

 「山城由依。お久し振りです」

 

 「あたし…!ミルヤさんと会えなかったこの2ヶ月間は、まるで20年くらいの長さに感じていましたぁっ!!!」

 割りとマジである。

 

 「そうですか。私にとって2ヶ月は2ヶ月でしかないので、全く理解出来ない感覚です」

 対しミルヤは何処までもクールに返す。そこが良いとは申一郎の談。

 

 「うぅ…っ、ミルヤさんが相変わらず冷たい……」

 

 「木寅ミルヤ先輩、またご一緒出来て光栄です本日はよろしくお願いします」

 

 「鈴本葉菜。こちらこそよろしくお願いします」

 しくしくと態とらしく寒々しく泣く由依を放置してミルヤと葉菜は世間話と言う名の、今回の編成事情について会話を始める。

 

 「ところで、知っていますか?ぼくたち三人は今回、綾小路の相楽結月学長の直接命令で急遽、部隊として編成されたみたいですよ」

 

 「ええ、その様ですね。もっとも…私達が選ばれた理由は教えられませんでしたが──」

 

 と、区切った所で司令部から荒魂出現の一報が入る。

 

 「えー!?もう出撃ですか~?もっとミルヤさんと愛を語らいたかったのにぃ~」

 

 「貴女は相変わらずの様ですね。ふざけていないで、出撃しますよ」

 

 「はーい!ミルヤさんと一緒に戦うの楽しみだなー!」

 

 

 

 

 

 「──荒魂討伐後、私達は戦況報告をしたのですが…何故か、個別に聴取される事になったのです。

 あれは一体何だったのでしょうか………」

 経緯を話終えて、最後に感じた違和感に未だ納得し難いモノを抱えるミルヤ。

 舞衣も結月の行動の意図に一抹の不信を覗かせる。

 

 「個別に聴取というのは気になりますね。相楽学長は何を考えているのか………」

 

 「そう言えばミルヤ、調査隊ってどうなったんだ?今って活動休止状態ってヤツか?」

 呼吹がふと、思い出した様に嘗ての馴染みの顔で見馴れた部隊の現状をミルヤに問う。

 

 「判りません。もしかすると、相楽学長は調査隊を再編成するつもりなのでしょうか?」

 結月が調査隊の結成に深く関わった人物として知るミルヤは憶測ではあるが1つの結論として疑問は残るものの答えを出す。

 

 「きっとそれデース!ミルヤもユイもハナも調査隊だったんですカラ!」

 

 「調査隊の再編成か……。それで強い荒魂の居る所に異動になりゃ、文句はねェな」

 エレン、呼吹はミルヤの結論に賛成と同意を示すが、舞衣はまだ不信と不安があるのか慎重的に意見を述べる。

 

 「でも…個別に聴取というのは、やはり違和感がある気がます。私の考え過ぎなら良いんですけど……」

 

 「ウ~ム…。取り敢えず、悩んでも仕方無い気がシマス。今の私達に出来る事は、目の前の荒魂を倒し、事態収拾の為に尽力するしかないのデス!」

 

 「そ、そうだね!」

 ある種の疑心に埋没する舞衣を励まし思考を切り替える様に今は目の前の荒魂に集中しようと鼓舞するエレンの心遣いに舞衣もまた無理にでも不安を片隅に追いやり肯首する。

 

 「アタシ的には事態が収束しない方が良いんだけどな!荒魂ちゃんといっぱい戦えるし」

 

 「Oh……フッキーは考える事が怖いのデース…」

 どうあってもブレない思考にエレンは恐怖を覚える。七之里呼吹という少女はやはり荒魂を"愛"しているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン監獄・円卓

 

 「ノロによる人類の新たな進化か…」

 

 『せや、アホらしいやろ?異相の技術から得たちょっとの知識で精製した異物を使ったところで、宇宙じゃ通用せぇへん。それに不老になって、病やら痛みに無縁になったとしても進化とは言えへん。

 ま、替えの効く生物兵器としてはええかもしれへんな、それなりの人数確保すりゃ、害虫並にポコジャカ増えるしなぁ!』

 

 「あらそうぉ?妾的には充分進化と言えるレベルだと思うわよ?この星の文明技術の進歩を考えればだけど」

 

 「マァ、ドクターノイイブンモイチリアル。ワレワレガイタセカイノウチュウモ、セイケイニヨッテハ、シンカノカタチハサマザマダッタダロウ?」

 

 「フン、しかしそこの商いの言葉にも理はある。老いと言う楔から解き放たれたとて、精神が未熟なままではな…!それに不老だけでは完全とは言えまいよ、不死を重ねて、その上で停滞せず進歩する事でこそ真なる進化と云えよう」

 

 『皆さん、意外に意見が割れるのですね、です。

 でもわたしもメレトおじいちゃんの言う通りだと思うのです』

 

 1部通信を介した者を交えながら、囚人の代表者達による会議は続く。

 

 「諸君。彼等の進化の是非を問うのは我々では無いよ、答えはあの星の者達が勝手に出す事だ。まぁ…裏から手を貸すなり口を挟むくらいは眼を瞑るがね」

 

 「ねぇねぇ!それより、たぎつひめってどんなの?つよい?おもしろい?かわいい?ぼくとどっちがかわいいかな?うふふふ♪」

 

 『はっはぁ~、御大の言う通りかもしれへんなぁ。なら好き勝手裏からやらせて貰んますわ。

 それとあんさんの質問にはノーコメントや、ほな、おおきに』

 最後に妖精からの無邪気な問に当たり障り無く返事をしてフュンフ共々通信を終了するマッニー。

 ぞんざいな扱いに妖精はしょんぼり項垂れつつも、即座に切り替える。

 

 「ちぇっ、ま、いっか!ねね、それよりせんせえ、れいのこたちはどんなかんじ?」

 

 「うん?あぁ、あのモルモットちゃん達ねぇ。それなりに良いわねぇ。男の子達の方は抵抗した子は何人か使い物にならないくらい壊れてしまったけどぉ、女の子達の方はアナタが求めている候補になりそうなのが居そうよぉ?

 まぁ適性にはちょっと足りないけれど、そこはアナタが何とかするでしょう?」

 妖精から振られた話題に女医は上機嫌に語り、問う。

 

 「うん!わぁ~たのしみだなぁ!はやくおうりゅうにももちぬしをみつけてあげないとね♪」

 

 人類が預かり知らぬ会議は踊る、新たな脅威が生まれ来る。人にとっては悲劇であっても、彼等にとっては喜劇なのだと示す様に──

 

 





 そう言えば、今期アニメ実況を纏めた感想のサイトに始まってまだ1話から3話程度しか経ってないのに登場人物の性格が気に入らない行動が不愉快どうこうというのを見掛けたのですが、まだ始まって数話なのに一気に情報なりを求めすぎなのでは?と私は思うのです。

 多少露悪的だろうが独善的だろうが偽悪的だろうが、面白いならそれで良いのではないかと思うのです。確かに私も時々登場人物の取った行動如何によっては眉を潜める時もありますが、まず、前提としてフィクションである事を念頭に置いているのでそこまで攻撃的な感想は無いです。
 や、まぁ流石に視聴者を馬鹿にした様なモノは噴飯しますけどね?

 ではまた次回


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