僕のヒーローアカデミア~蒼を継ぐ者~ (常磐戦兎)
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序章
─ 雄英入学前 ─


初投稿です、宜しく御願いします<(_ _)>


 ヒーロー。それは個性と呼ばれる特殊能力を使い、人々を救う者の総称。個性は人の数だけ存在し、それを悪用する者も少なかれ居る。

 

 そして、又新たに一人、個性を持って生まれた一人の少女が居た。これは、彼女を取り巻く個性と「蒼」を巡る物語───

 

 

 

 

 ヒーローという職業が定着した世界に於いて、ヒーロー志望の少年少女達の登竜門となりうるのが、数々の偉大なるヒーローを輩出してきた雄英高校のヒーロー科だ。但し、長年に渡る人気や入学試験があまりにも難しいのか、偏差値は79という超がつく程の難関である。

 

「本当に、ここにするのか?」

 

「……はい。その為に今まで頑張って来たんです。」

 

「まぁ、お前をずっと見てきた俺が納得出来る程、確かにお前は頑張った。だがな、それでも無理だ。雄英高校にはサポート科や普通科といった他の道もある、決断を下すのは早い。もう少し考えてこい」

 

「でも、私は…絶対にここに、雄英高校のヒーロー科に行くんです!」

 

 とある中学校の進路相談にて、教師と言い争っているのは金髪と白髪が入り交じった少女。そこいらに居る不良のように染めている、という訳ではなく本人の地毛だ。

 それにはとある原因があるが、本人は気づいていない。せいぜい外国人と間違えられる不便なもの、としか思っていないのだ。

 

「……私の姉さんや兄さんのようなヒーローになる夢、捨てようにも捨てられないんです。止めても私は、絶対に行きます、雄英高校に」

 

「あのなぁ……いや、分かった。そこまで言うなら俺は引き止めない。頑張ってこい、シエル」

 

「……! ありがとう、ございます…!」

 

 シエルと呼ばれた少女は担任に頭を下げ、日が暮れて夕焼けが差し込む学校を足早に下校。自宅に向けて自転車を漕ぎ出した。

 

 教室に一人残されたシエルの担任は懐から一枚の写真を出して眺める。そこに写っているのは金髪のガンマン風の服装の女性と赤いジャケット姿の白髪の男性。

 昔はぽっと出のヒーローだったが今や知らない人など殆ど居ないプロヒーローの二人、「ノエル=ヴァーミリオン」と「ラグナ=ザ=ブラッドエッジ」だ。知名度で言えば正義の象徴とされるオールマイトよりは遥かに劣るものの、数々の難事件を解決したというのも相まってその名は徐々に広まっていった。当然、シエルが通う中学校でさえ、その名を知らない人は居ない。

 

「……血は争えない、という事か。全く、なんとかヒーローから遠ざけようとしたんだが、上手く行かなかった。すまない、二人とも」

 

 それだけ呟き、シエルの担任は写真を懐に仕舞う。首に提げている名札には、カグラ=ムツキと、書かれていた…

 

 

 

 

 木椰子区の一角にヒーローの事務所があった。名を加具土命(カグツチ)という。シエルはそこに辿り着くと誰にも怪しまれないように、そこの関係者しか知る人が居ない裏口から入った。中に入れば、そこはなんら変わりない住宅。玄関で靴を脱いで上がれば、部屋の奥から顔を出した人が一人。

 

「あ、おかえり。シエル」

 

「うん。ただいま、姉さん」

 

 シエルを出迎えた人こそ、プロヒーローの一人であり蒼の少女という異名を持つノエル=ヴァーミリオンその人だ。

 

「今日は遅かったね、シエル。何かあったの?」

 

「どうしても進路を変えないのかーって、担任言われて。放課後に話してただけ。何を言われても変えるつもりは一切無い、って言ってきたよ」

 

「……本当に、雄英に行くつもりなの?」

 

「うん。私が無個性だとしても、姉さんや兄さんのように立派なヒーローになりたいからね」

 

「ラグナさ…ううん、兄さんには話した?」

 

「もうとっくに話した。でも、「ヒーローは危険すぎる仕事だ、シエル。幾ら兄弟だろうが、俺達の妹であるお前までこっちの道に来る必要はねぇんだよ」って、こっぴどく言われたよ」

 

「…まぁ、兄さんは兄さんなりに心配してるって事、分かってあげて? 私もだけど、兄さんにとってもシエルはたった一人の妹…なんだから、ね」

 

「……分かってるよ、姉さん。でも、もう決めたんだ。絶対、雄英高校に行く」

 

「…分かった。シエル、貴女の道だもん。私達が口出す必要は無いよね。でも、後悔の無いように。ね?」

 

「…………うん」

 

 この決意が元となったのかどうかは不明だが、シエルの運命の歯車は噛み合わさり、未だ見えない大きな夢へと回り始めた。

 果たして、プロヒーローの妹であるシエルはどのような運命へと辿り着くのか。それはまだ、誰にも分からない。




導入クッソ下手くそなのは許してください…()
こんなのでも読んでくださると嬉しいです。では次回又、お会いしましょう…


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─ 入学前のトレーニング ─

BLAZBLUEもヒロアカも今絶賛見返し中です…
キャラの口調がブレる時がありますがそこはこっそり教えてくださると助かります(´・ω・`)


 木椰子区のヒーロー事務所、加具土命(カグツチ)の地下。普段は所属ヒーロー達のトレーニングルームとして使われる空間では事務所の看板でもあるプロヒーローの一人、死神の異名を持つラグナ=ザ=ブラッドエッジとその妹であるシエルの特訓が繰り広げられていた。

 ラグナの"個性"は右手に擬態している魔導書を起動させる事によりその力をより増す発動型の"個性"。名をブラッドカイン。攻撃や防御時に闇が相手を襲い、敵の体力を奪いつつ自分は回復していくという(ヴィラン)にとっては喉から手が出る程欲しい"個性"だ。

 対するシエルはというと、ブラッドカインを発動したラグナの攻撃を受け流して躱し、尋常ではない体制からの蹴りや投げ技を放っていた。それも"無個性"の筈、なのにだ。

 

「おら、息が上がってきてるぞシエル! お前、基礎トレサボってたな?」

 

「サボってない…って! というか寧ろ増やしたよ、ノエル姉さんに頼んで、ねっ!」

 

 ラグナの右腕が闇に包まれ、異形と化す。シエルはそこから繰り出される一撃を華麗に躱し、一撃を叩き込んですぐさま距離を取った。

 だが、それは簡単に防がれていた。それを見たシエルは壁を蹴って一気に距離を詰める。その動きに既視感を覚えたラグナはシエルに問いをぶつけた。

 

「んのっ…いつの間にこんなの出来るようになったんだよ、シエル!」

 

「兄さんや姉さんの動きをただ見てる、って訳じゃないんだよ。私だって成長するんだから…!」

 

「ったくよぉ、俺の妹が一番の強敵かも、な!」

 

 シエルの姉であるノエル=ヴァーミリオンは自分の"個性"と体格を活かした遠近両用の戦法をとる。シエルはそこからヒントを得て自らの戦法として昇華させていたのだ。

 組手という名の特訓を始めて小一時間経った後、休憩という事でノエルが二人に飲み物を持ってきていた。ラグナは個性の力も相まって息が上がってはいなかったが、シエルは肩で息をするくらい疲れていた為に少し横になっていた。

 

「お疲れ様、兄さん。シエルはどう?」

 

「流石、俺達兄弟の妹ってとこだな。日を追う事に動きが洗練されてやがる。こりゃあ、うかうかしてたら追い抜かれるかもな…なんて、まだまだ負ける訳ねぇけどよ」

 

「ふふっ、シエルが私に自主練のメニューを増やしてって言ってきた時は内心心配してたんだけど…心配しなくても良かったって事ね」

 

「そういうこった。さて、仕事だからそろそろ行くわ。シエルの事、頼んだぞ。ノエル」

 

「勿論。気をつけてね、兄さん」

 

 右手をひらひらさせ、特徴的な形状をした白い大剣を腰に提げたラグナは加具土命の地下を後にする。残されたノエルは寝息を立てているシエルを部屋へと運び、ベッドへ寝かせた。金と白が入り交じった髪を撫でながら、ノエルは過去の自分とシエルを重ねる。

 

「……」

 

 何かを言おうとしたが、軽く首を振って後で話そうと心で呟いたノエルはシエルを残してとある準備に取り掛かった。その準備はまだノエルにしか分からない。

 だが、この時はシエルはおろかノエルやラグナにも分からない内にある変化がシエルにあった。通常、無個性として生まれた子供には無個性のまま、一生を終える事になる。無個性から急に個性が出る、といった事は基本的に無い。だがしかし、例外というのはいつどこで発生するのかは誰にも分からないものなのだ。

 

 翌日。兄によるトレーニングの疲れでぐっすりと眠っていたシエルは目覚ましが鳴る前に飛び起き、身支度を整えていた時に自分にある変化がある事に気づいた。

 碧眼だった自分の眼の片方、右眼が紅く染まっていたのだ。それは、ラグナと同じ眼になったという事。それだけならなんらおかしくはないだろう。然し、シエルに限ってはそれだけで済む問題では無かった。

 いつもの制服に慌てて着替え、転げ落ちるかのように階段を降りていったシエルはノエルに顔を合わせる。妹のいつもと違う様子に戸惑いを見せたノエルは、シエルの右眼を見て直ぐに理解する。

 

「シエル、その眼…まさか、とは思うけど」

 

「…うん。多分だから確証は無いけど、兄さんの力に似てる。でも、気づいたのは起きてからだし、本当に使えるか分からないのもあるし、ヒーロー免許が無いと個性の無断使用は罰則になるんだよね?」

 

「その通り。でも、まずは兄さんに報告しなきゃね」

 

「そうだけど、まだ帰って来てないんだ…?」

 

「兄さん、今度の仕事は少し遠出になる、って言ってたから。遅くても夜には帰ってくると思うよ」

 

「分かった。じゃあ、行ってきます」

 

「気をつけてね、シエル」

 

 姉に見送られながら、シエルは学校へと向かっていった。その背中を小さくなるまで見た後、ノエルは携帯を取り出して誰かに連絡を取る。それが済んだ後、自らも仕事に向かっていった。

 

 一方のシエルはと言うと、右眼を見られないように眼帯をして登校していた。いつもの自分とは違う為なのかは不明だが、シエルは女の子であり、オシャレに気を遣う年頃だ。見た目を気にするのは当然だろう。

 当然ながら眼帯をしたシエルを見たクラスメイトからは心配され、担任であるカグラ=ムツキからも何があったのか、と心配された。それに対してシエルは大丈夫、とだけ言うだけに留めておく。変に口を滑らせてはろくなことにならない事はよく知っていた為だ。

 

 然し、シエルの運命の歯車は既に回り始めている。この先はシエル自身が切り開いていく事だろう。




……オールマイト、どのタイミングで出そう…()
次辺りに出そうかな…?

それは兎も角、見てくださりありがとうございます。
では又次回、お会い出来たら嬉しいです。
(感想諸々、お気軽に書いてくださいね)


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─ オールマイトと個性の覚醒 ─

そういや主人公の苗字どうしよ(´・ω・`)
一応、BLAZBLUEキャラの妹って設定だから後ろになんか付けようかな…?

それではどうぞm(*_ _)m


 それから数日が経ち、あの日を境に覚醒したと思われた力は、いつどのタイミングで発現するのかという事すら分からないままであった。

 ノエルの上司であり、ヒーローにして科学者、そして猫又のココノエ博士の手による綿密な検査でもわからずじまいであった為にお手上げ状態である。

 

「……本当に、兄さんや姉さんみたいな力を使えるようになってるのかな…?」

 

 そう呟き、(ヴィラン)に巻き込まれる事もなく、帰宅した。一方、シエルと同じく無個性として生まれた一人の男の子も又、運命を大きく変える出来事に直面する。

 そんな事も知らずに着替えを済ませていたシエルはノエルに呼ばれ、リビングに来るようにと言われた。何があったんだろうと疑問に思いつつもノエルの元へ。

 

「何? なんかあったの、姉さん」

 

「うん、取り敢えずコレ見てくれる?」

 

 そう言い、ノエルはテレビを付けた。丁度、ニュースを放送していたようだ。ニュースキャスターと思われる人物がたった今入ってきた緊急速報を早口で喋っている。発生時刻を見る限りでは丁度シエルが帰宅中の時刻とほぼ同じだった為、ノエルはシエルが事件に巻き込まれたのではないのか、もしくはこの事件を目撃したのではないのか、と思った為、シエルを呼んだのだ。

 

「……これが、どうしたの? 姉さん」

 

「シエル、この事件を目撃してない? ないのなら、私もこの場所に行かなきゃならないけど…」

 

「目撃は…してないよ。こんな事件があったなんて今見て知ったもん」

 

「…そう。なら、行かなきゃ。兄さんはまだ帰って来ないし、私が行かないと」

 

 そう言い、ノエルは支度を始める。対するシエルはというと、久しぶりに見る姉の仕事モードに少しだけ惚けてしまうも直ぐに我に返り、身支度を始めた。

 だが、テレビのあるワンシーンが視界に入ったシエルはノエルより先に飛び出した。そのシーンとは、(ヴィラン)に何者かが捕まえられていたシーンだ。

 

「シエル!?」

 

 ノエルが名前を呼んで引き止めようとするも、当の本人は既に自転車で事件現場に向かっていた後だった。慌てて後を追う事に。

 

 

 

 

 加具土命からそう遠くない駅。そこが事件現場だった。事件現場に辿り着いたシエルは、人混みがある場所へと走る。直ぐに見つかるも、そこからは怒号と悲鳴が入り交じった声が聞こえてきた。

 どうやら人質を盾に金銭を要求しているらしい。テレビ局のスタッフ達が生放送中の為、その要求は今頃全てのお茶の間に届いているだろう。

 

「おらぁ! さっさと寄越せやぁ!」

 

 犯人は相当興奮している。それを止めるには力ずくが一番手っ取り早いが、向こうにはシエルと同年代の、赤髪の少女が涙目で此方を向き、助けて、と懇願しているように見えた。

 それを目にしたシエルは眼帯を取り、紅く輝く右眼を顕にしながら、人混みを突っ切って犯人に体当たりする。突然の出来事に犯人は人質である少女を手放し、その隙にシエルは少女を抱えて距離を取った。

 

「大丈夫…!?」

 

「んの…餓鬼がよくもやりやがったなぁ?!」

 

「しまっ…!」

 

 人質の分身軽になった犯人は乱入者であるシエルに向けて飛びかかる。対するシエルは先程救ったばかりの少女を抱えたまま。咄嗟に動ける筈も無かった。

 このままじゃ私含めてこの子も危ない。そう思った時だ。突如高らかに声が辺りに響く。何事か、と思った矢先、犯人は何者かに吹き飛ばされた。新たに視界に入るその人物は……

 

「もう大丈夫だ。何故ならば!!! 私が来た!!!」

 

 今や誰もが知る、No.1プロヒーロー。そして平和の象徴でもあるオールマイトだった。

 

「貴方は……」

 

「自らの危険を顧みず犯人に突っ込むその勇気は褒めよう。だが、勇気と無謀は違うぞ?」

 

「……すみません」

 

「さぁ、ここは私に任せたまえ」

 

 オールマイトがそう言い、犯人はオールマイトの手によりあっという間に取り押さえられる。犯人が連行され、赤髪の少女を親の元に届け、元気に去っていくのを見送っていると、女ガンマン風の仕事服(但し露出は多い)に着替え、走って追いかけてきたノエルの姿が見えた。

 

「シエル…! 無事だった…!?」

 

「う、うん。オールマイトの、おかげで…」

 

「そ、そっか…。良かった、貴女に何も無くて…。妹を助けていただき、ありがとうございます、オールマイト」

 

「何、ヒーローとは弱き者を守る為に日々戦っているからね。この位当然の事だよ、蒼の少女。いや…ノエル君、だったかな?」

 

「……あ、私の事、ご存知でした…?」

 

「勿論だとも。君のお兄さんである死神、ラグナ君とも何度か仕事を共にした事があるからね。それと、ラグナ君とは何度か飲みに行ったんだが、彼は酔うとすぐに妹の話になる。いやはや、ラグナ君の妹達に対する愛情は凄い。思わず、砂糖を口から吐きそうになる程だった…」

 

 それを聞かされた時、シエルとノエルは二人揃って顔が真っ赤になる。それもそうだ、身内の恥ずかしい一面をよりによってオールマイトが知っているのだ。それは恥ずかしくもなるというもの。

 暫く話し、オールマイトが去り、そろそろ帰らないといけない時間になった頃。今まで何ともなかった筈なのに急に右眼が熱くなる。それと同時に色々な情報が頭の中に流れ込み、耐えきれなくなったシエルはその場に蹲る。

 

「……シエル?」

 

「姉さん…頭、痛い……」

 

 それだけを言い、シエルはその場に倒れてしまう。最後に聞こえたのは、自分を心配する愛する姉の声だけだった。

 

 

 

 

 シエルが気絶したのと同時刻。木椰子区の裏にある、裏木椰子区。そこは法律など関係ない、個性を持て余す者が集まっている、文字通りの無法地帯。そこには、とある男が居た。

 今時珍しい、黄色で黒の蛇の模様が入ったパーカーを羽織った男。パーカーの中にはスーツらしき服装を着ており、如何にも、といった感じである。

 

「この感覚は……遂に覚醒したか…。この日をどれだけ待ち望んだか、楽しみで仕方なかったぜぇ…? なぁ、ラグナくぅん? って、彼奴はここには居なかったか。まぁいいわ、お前の愛してやまない家族、"もう一度奪って壊してやるよ"。それまで楽しみにしてなぁ…!!」

 

 甲高い笑い声を上げながら、謎の男は裏木椰子区を闊歩していった……

 

 

 

 

 

 翌日。シエルは気絶したまま起きなかった。ココノエの検査で分かったのは、何らかのきっかけでシエルの力が完全に覚醒した事。ただ、その力があまりにも大きすぎて上手くコントロール出来ず、力の逆流が起き、その反動で気を失ったままになっているという事だった。

 

「博士、シエルは…大丈夫、なんですよね?」

 

「……今はこいつの回復を祈ってやれ、ノエル。それと、あのバカにも伝えてやれ。お前の妹は無事だとな」

 

「…はい。勿論です」

 

「然し…この個性の発現の仕方……考えられるのは、アレしかない、か…」

 

 シエルのデータを見つめながら仕事モードに入ったココノエを眺めていた時。扉が乱暴に開けられ、入ってきた人物に対してココノエはため息をつき、仕事モードから一転、いつもの顰め面に戻った。

 

「……おい、私の研究室の扉は静かに開けろと何度言ったら分かるんだ。死神」

 

「ったくよぉ…ヒーロー名だとしてもその呼び名は辞めろよ、長い付き合いだろ。ココノエ。シエルがいきなり倒れたってノエルから連絡があってよ、今日入ってた仕事終えてすぐに急いで来たに決まってるだろうが」

 

「…はぁ、以前のお前とは段違いだな。安心しろ、シエルは気絶こそしているが命に別状はない。直に目を覚ます」

 

「……そうか…。それだけ聞けりゃいいわ」

 

 それを聞いたラグナはその場にどっかりと座る。肩の荷が降りたのだろう。肩で息をしている辺り、相当急いで来た事が伺える。

 そんなラグナを支えるかのようにノエルが傍に寄り添う姿を見たココノエは「まるで兄弟だな、いや…血は繋がってるからその表現は間違いか」と呟き、再びシエルの検査に取り掛かる。

 

 それから数日が過ぎ、シエルは目を覚ます。身体の影響は何も無いと診断が出され、ノエルとラグナもホッとしたようだ。

 当の本人であるシエルはあの日を境に何があったのかは記憶が朧気で、それでも無理に思い出そうとすると酷い頭痛がするようになっていた。その為、それだけは思い出さなくていい、とココノエの手によりその記憶だけ封印を施される。又も倒れたら二人が心配するのは目に見えているからだ。

 

「……とにかく、だ。シエル。どうせカグラの奴に真正面から絶対ヒーローになるんだって言ったんだろうが、雄英に行くなら無茶はするな。私と、そこの二人を心配させたくないならな」

 

「…はい。でも、特訓ならいいですよね? これだけは、兄さんと決めた日課ですから」

 

「本来なら駄目と言いたい所だが…まぁ、そのくらいならいいだろう。ラグナ、程々にしてやれよ」

 

「わーってるつーの。言われなくてもノエルが見てるんだからな。それと、大切な妹を無下に扱ったりしねぇよ」

 

 それを聞いたココノエは相変わらずだな、といった表情を浮かべ、ノエルとシエルも又、本当なのかな、といった感じで苦笑いを浮かべていた。

 だが、この時はシエルは勿論ラグナ達もまだ知らない。シエルの個性の覚醒により、歴史上稀に見るであろう史上最大の悪が動き出したという事を。

 

 

 

 そして、シエルを取り巻く物語は大きく動き出す。




力の覚醒のさせ方雑か…!
ま、まぁいいか…。次はお待ちかね、雄英高校入学試験です。そこからは、主人公視点で進める事になります。

それでは今回も閲覧していただき、ありがとうございます。では又次回、お会いしましょう…


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一章
─ 雄英高校入学試験 ─


さて、今回でシエルの個性の詳細が分かります。
まぁ…序章でちょこっと触れたんで(´・ω・`)

それではどうぞ


 雄英高校。ヒーローに憧れる人なら絶対に入学したい高校。かくいう私もその一人であり、担任の先生の制止も振り切ってここに来た。

 プロヒーローの兄さんや姉さんの妹が無個性、という事で小さい頃から迫害を受けてたけど、それももうおしまい。今の私には個性がある。それも果てしなく大きなもの。でも、姉さんの上司であるココノエ博士にこう念を押された。

 

『お前の個性は強い。だが、明らかにお前自身の耐えられる負荷を超え過ぎている。故に私がリミッターを施しておく。間違っても、そのリミッターが壊れる程の力を使うな。いいな?』

 

 今、私の頭には小型の丸い装置が二つ着いている。はたから見たら変わったアクセサリーに見えるだろう。だけど、これがリミッターなのだ。解放し過ぎると警告音が鳴り、最悪の場合は電流が流れる仕組みになっている。幾ら身を守る為とは言え、電流は流石にやりすぎだと私は思ってるけど、自分が命を落とす事になるよりはマシだろう。

 それに、兄さんや姉さんを特訓に付き合わせて、自分が今出せる力の範囲を見極めた。時折暴発するけどそれも範囲内。それだけ頑張って来た、という事である。

 

「……よし!」

 

 意気揚々に、私は雄英高校の門をくぐる。周りを見れば色々な制服を来た人達が居る。見た目も大きく変わるのも又、個性が織り成すものらしい。実際、怪物地味た見た目の女の子や男の子も居る。でも、見た目で判断するのは失礼。皆、私と同じ人なのだ。

 

 会場に入り、プロヒーローの一人であるプレゼント・マイクによる試験の説明が始まった。長すぎて殆ど頭に入ってこなかったけど、概要としては15分の試験時間の中で四種類の仮想敵を倒してポイントを稼ぐというもの。但し、その中には0ポイントも含まれている。それはあまりにも巨大だから一目見れば分かるようになっているようだ。それともう一つ注意事項として、ヒーローを志す者として受験を受ける以上、ヒーローらしからぬ行動は取るなというもの。当然と言えば当然だ。

 

 一通りの説明が終わり、皆それぞれの試験会場へと向かっていく。ぞろぞろと人が捌けていく中、私も慌てて実技試験会場へと向かう。

 会場に辿り着いた時、その大きさに思わず「凄い…」と口から出てしまった。なんと、街がまるまる一つそこに収まっているのだ。こんな大規模なものを幾つも所有している雄英高校はどういう風に資金提供を受けているんだろう、と考えていた時。

 

『はーいスターート!!』

 

 プレゼント・マイクの掛け声により、実技試験が始まった。唐突に始まった為少し出遅れたものの、躊躇う事なく門をくぐり、迷いなく走る。

 

《目標捕捉! ムッコロス!》

 

「早速来た…!」

 

 胸辺りに「1」と書かれたロボットが私目掛けて襲い来る。その腕から繰り出される一撃を躱し、自分の右腕を闇で覆う。

 

「…闇に喰われろ!」

 

 異形の腕でロボットを掴み、自身の影から噴き出す闇で瞬時に破壊する。その後も何体かわらわらと出てくる為、今度は影で作った大剣(モデルは兄さん愛用の大剣)でなぎ払い、群がる敵を一掃した。

 

「……うん。ちゃんと使えてる。流石兄さんのスパルタ特訓だな…。ヘトヘトになるまで付き合わせたのは私だけど」

 

 8~9体くらい倒した所で、ここら辺の敵は倒しきったのか、もう仮想敵が出る気配は無かった。更なる敵を探しに、私は奥へと走っていく。

 

 

~モニタールームにて~

 

 

「……彼女、凄いね!」

 

「シエル、と言ったか。フルネームは不明だが、聞くところによれば木椰子区のヒーロー事務所加具土命の看板ヒーロー、ラグナ=ザ=ブラッドエッジとノエル=ヴァーミリオンの妹らしいな」

 

「なるほど。あの力は兄譲りの力か?」

 

「じゃあ、そろそろ0ポイント…出してもいいんじゃない?」

 

「ん、そいつを出すのは少し早い気もするが…」

 

「このくらいが丁度いい時間の筈さ。さぁ、行くよ!」

 

 ネズミ顔の男(果たして人と見ていいのかどうか)が手元にある赤いボタンを押す。それと同時に、会場全体が大きく揺れ始めた。

 

 

~試験会場~

 

 

 いい頃合い、と思ったその時。突如会場全体が大きく揺れ始めた。地震とかではない事を察すると、人為的に引き起こされた揺れだろう。

 

「……なんだろ」

 

 思わず辺りを見回すと、揺れにザワついた他の受験者達が空に向けて騒いでいた。

 

「な、なんだよアレ……!?」

 

「あれが、0ポイント?」

 

「いやデカすぎだろ!? とにかく逃げろ、潰されるぞ!!」

 

 蜘蛛の子を散らすかのように続々としっぽを巻いて逃げる受験者達。だけど、私は見逃さなかった。0ポイントが現れる際に近くのビルを押し倒したのだが、ビルが倒れていく方向には、瓦礫に当たったのだろうか怪我をして蹲る人の姿が見えたからだ。

 

「お、おいそこの女! 何やってんだ、逃げるぞ!」

 

「ん? 嗚呼、私はいいよ。貴方達だけでも逃げて」

 

「「はぁあ!?」」

 

「彼処に人が居るから、あの人を助けてあのデカブツも倒す。そうすれば皆助かって万々歳。でしょ?」

 

「何言ってんだ、さっさと───「大丈夫だから。このままじゃ貴方達、潰されるよ?」……っ!」

 

 私を強引に引き止めてた受験者を後ろに下がらせ、影を利用したアシスト+脚力ブーストで倒れていた人を抱き起こして一旦その場から離れる。

 

「あ、ありがとう…」

 

「ううん、御礼はいいよ。私はシエル、シエル=ヴァーミリオン。貴女は?」

 

「私は麗日お茶子、宜しくね、シエルちゃん」

 

 軽い自己紹介を済ませた所で(そもそも生死の境目でする事じゃないのは嫌でも分かる)私はお茶子を抱えて安全な所まで避難させる。

 その後で、此方に向かってくる0ポイントを見据える。どっからどう見てもタフな奴にしか見えないが、所詮は仮想敵。壊したとしても何も文句は言われまい。

 

「お茶子ちゃんはここで待ってて。私はあのデカブツ倒して戻るから」

 

「…え、う、うん。気をつけて、ね?」

 

「もち!」

 

 サムズアップをした後、私は0ポイントに向けて走り出す。私を敵として認識したのか、0ポイントは如何にも化物らしい声を上げて襲い来る。街への被害云々を考え、最適な方法を探し出した私はそれを即座に実行へ移す。

 

「力だけじゃ勝てないって所、見せてあげるよ…」

 

 力を引き出し、影で形作った二丁拳銃(モデルは勿論姉さん愛用の拳銃)で影の弾丸を放ち、駆動部へ正確に撃ち込む。

 動きが鈍った所で影の大剣を作り、一息に飛ぶ。その時に大剣を大鎌に変形させ、黒い刃を露出させた。

 

「……あるのは無、だけ」

 

 影の刃で何度も斬り付け、トドメに貫く。中心に大きな風穴を作った0ポイントは崩れるように倒れ込む。その際生じる衝撃波で街が被害を被る事が無いよう、剣圧で抑制する。それにより、完全に鎮圧出来た。

 

「さて、試験の続きをしなきゃな」

 

『終〜了〜!!!』

 

 と思った所でプレゼント・マイクによる試験終了の合図が流れる。

 

「…あ。終わっちゃった」

 

「シエルちゃん、凄いね! あのデカブツ倒しちゃうんだもん!」

 

「い、いやぁ…それほど、でも?」

 

「でも、試験終わっちゃったね」

 

「うん。あのデカブツに気を取られた感が半端ないな…。流石0ポイント」

 

「あ、帰る前に連絡先交換しておこう?」

 

「ん、ありがとう」

 

 15分はあっという間、だった。最初は出だしが良かったものの、途中で出てきた0ポイントに残り時間を全て使い、合計で20くらいしか稼げていないかも、と気がつくのは帰ってからだった。

 

 

~雄英高校会議室~

 

 

「さて、大方決まった所で残りの合格者を決めるんだけど。皆、異議は無いね?」

 

「ある訳無いでしょう。彼女のとった行動は正しくヒーローだ」

 

「然し、一日で0ポイントが二体破壊されるとはな。並大抵の個性では破壊出来ないようにしていたんだが…。これは予算会議、荒れるぞ」

 

「まぁまぁ、その話は後にするとして、シエル君には救助ポイント60、緑谷出久には60点を付与するよ。これで残りの合格者は決定! この二人の成長が楽しみだね」

 

 そう言い、ネズミ顔の男が二人の書類に「合格」の判子を押す。こうして、残りの合格者であるシエルと緑谷出久、二人の合格が決まった。

 

 

~シエル宅~

 

 

 雄英高校入学試験から数日が経った頃。一通の手紙が届いた。姉さんが私に手紙を手渡す。

 

「あれ? 手紙にしては……軽いけど。コレ、本当に雄英高校からだよね…?」

 

「早く開けてみてよ、シエル」

 

「分かってるよ、姉さん」

 

 思い切って封を開け、逆さにすると平べったい機械が転がり出てくる。用途が不明な機械に対し、二人して首を傾げていると、夜勤明けなんだろうか、欠伸をしながら兄さんがやってきた。

 

「……んぁ? 何してんだ、お前ら」

 

「あ、兄さん。雄英からの手紙が来ててさ、中身がこれだったんだけど…」

 

「あ? んだこりゃ。まぁ、適当にいじくりゃいいだろ?」

 

 兄さんが機械を弄りまわすと、何か押された音が聞こえる。その瞬間、その機械から映像が投影された。

 

『私が投影された!!』

 

「えっ、あ、オールマイト!?」

 

『やぁ、久しぶりと言えばいいかね? ノエル君とラグナ君。まさか君達の妹が雄英を受験していたとはね! 驚きだよ!』

 

「……なぁ、ノエル。なんで、オールマイトが投影されてんだ?」

 

「わ、私に聞かないでよ。兄さん…」

 

『おっと、時間も無いので巻きで説明させてもらうよ! 筆記試験も申し分無し、実技試験も優秀な成績を収めた! 勿論、文句なしの合格さ!』

 

「……えっ、つ、つまり…?」

 

『雄英高校教員一同、君が来るのを楽しみにしているよ! では! また学校でね!』

 

 その言葉を最後に、投影されたオールマイトの姿は消える。私達兄弟は何があったのか理解するのに時間を要したが、直ぐに我に返る。

 オールマイト直々に私の雄英高校合格を報せに来たのだ、間違いないんだろう。思わず喜びの雄叫びを上げる程に嬉しさを隠しきれなかった。

 

「夢、じゃないんだよね…?」

 

「バーカ。あのオールマイトが嘘を言う訳ねぇだろ? 良かったじゃねぇか、シエル。頑張れよ?」

 

「流石、私と兄さんの妹だね…。よし、今日はお祝いしようか? ねぇ、兄さん?」

 

「…ん、嗚呼。そうだな。今日はシエルの合格祝いだ、なんでも好きなもん食わせてやるよ」

 

 こうして、私の雄英高校合格が決定した。あの後直ぐに担任の先生にも伝え、よく頑張ったな、と褒められた。あの時知り合ったお茶子ちゃんも合格通知が来たらしく、電話でその事を互いに伝えて喜びあった。

 

 でも、この時はまだ知らない。裏では、大きな陰謀が渦を巻いているという事を。そしてそれは、何れこの世界全部を巻き込む大事件になる事を。




あ、何故仮想敵の台詞がブッ〇すじゃなくてムッコロスなのかはお察しくださると嬉しいです。

それでは、今回もお読みいただきありがとうございます。私の小説をお気に入りに登録してくれている方には多大なる感謝を。それでは(・ω・)ノシ


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