書記ちゃんの恋 (おたふみ)
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書記ちゃんの恋

八×沙和子ルートの声にお答えして。


「せんぱ~い」

「んだよ」

「暇ですか?暇ですよね?生徒会手伝ってください」

特別棟へ続く廊下で生徒会長・一色に捕まった。

「今から部活だよ」

「結衣先輩に連絡して、OKもらってます」

「外堀埋めやがって…。わかったよ」

生徒会室には、本牧・藤沢・稲村と他の役員も揃っていた。

「んで、何をすればいい?」

「この書類なんですけど…」

恙無く生徒会の業務を行い、その日は終了した。

 

翌日の奉仕部。扉を開けるのは、一色だった。

「先輩!大変です!助けてください!」

「嫌だ!帰れ!」

「そんなこと言わないでくださいよ!」

「ヒッキー、話だけでも聞いてあげたら」

「一色さん、どうしたのかしら?」

「副会長がインフルエンザで休んでまして…」

「ほぇ~。大変だ」

「仕方ないわね。うちの備品を貸すわ」

「備品かよ…。ほれ、一色行くぞ」

生徒会室では、藤沢と稲村が仕事をしていた。

「比企谷先輩、すいません」

「藤沢、気にするな。ずうずうしく頼んでくるヤツがいるだけだ」

「可愛い後輩がお願いしてるんですよ!」

「はいはい、あざといあざとい」

「あざとくないです!」

「おい、稲村。大丈夫か?」

「ふぇ、だ、大丈夫…じゃ…ない…でふ」

「一色」

「はい。庶務君、帰っていいよ」

「す、すいません、会長…」

 

「さてと、本格的にヤバいな」

「そうですね」

「比企谷先輩、すいません」

「藤沢は気にするな」

「え~!私は~?」

「一色は、もっと俺を敬え」

「敬ってますよ~」

「あざといのいらないから、作業進めるぞ」

「先輩、扱いが雑です~」

 

その日は、作業の目処が立つところまでで解散になる。

「明日は直接生徒会室に来るようにする」

「先輩、お願いしますね」

「比企谷先輩、お願いします」

「あいよ」

 

翌日、状況は悪化する。

「う~す。あれ?藤沢だけか?」

「それが…」

「どうした?」

「稲村君もインフルエンザでして、会長もインフルエンザになってしまったみたいで…」

「それは…。よし、俺と藤沢で出来るとこまでやろうか」

「はい。よろしくお願いします」

 

終始無言のまま作業は進み、最終下校時間の少し前…。

 

「よし。あとは一色の決済だけだな」

「はい、ありがとうございました」

「いや、藤沢ががんばっただけだ」

「そ、そんな…」

「よし、帰るか」

「あの、比企谷先輩…」

「ん?」

「少し、お話しいいですか?」

「あぁ、かまわんが」

「あの…、比企谷先輩はお付き合いしてる人は居るんですか?」

「男女交際的なやつか?」

「はい」

「ふっ。ボッチをなめるなよ。居る訳ないだろ」

「でも、雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩は…」

「あの二人か?ないない。俺の一方的な憧れだ」

「生徒会長は…」

「あれは、世話の焼ける後輩だな…。なんで、そんなことを聞くんだ?」

「それは…」

「ふざけて聞いてる…って訳でもなさそうだな」

「はい…」

「訳を聞こうか?」

「比企谷先輩って、悪い噂とかありましたけど、私は嘘だって思っています」

「根拠は?」

「私も少し文化祭のお手伝いをしました。その時、真面目に仕事をしてました。それに、生徒会の仕事もやってくれました」

「まぁ、噂を信じてないっていうのは嬉しいな」

「はい…。それに…」

「それに?」

「私、比企谷先輩のこと、好きですから…」

「へ?」

「ですから…」

「待て待て待て。なんのドッキリだ?一色あたり隠れてるのか?」

「生徒会室は、私と先輩の二人っきりです」

「録音してて、明日になったら『嘘でした』とか」

「私がそんなに不真面目に見えますか?」

「すまん」

「いえ、大丈夫です」

「俺は、恋愛に少しトラウマがあってな…」

「そうなんですね。でも、私は本気です」

「雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩や一色会長みたいに可愛くないけど…」

「藤沢は充分可愛いだろ」

「え?」

「心配すんな。藤沢は可愛いよ。…て、何を言ってるんだ俺は…」

「あ、ありがとうございます」

「まぁ、あれだ。藤沢がふざけて言ってる訳じゃないのはわかった」

「はい」

「だが、今すぐ返事は出来ない」

「…はい」

「これは、俺からのお願いなんだが…」

「なんでしょうか?」

「俺と友達になってくれないか?」

「え?」

「俺は藤沢のことはよく知らない。藤沢だって、俺のことをそんなに知ってるわけではないだろ?」

「はい」

「だから、友達から始めてみないか?」

「はい、比企谷先輩がよろしければ」

「じゃあ、よろしくな」

「はい」

「じゃ、じゃあ、友達として、途中まで送らせてくれ」

「はい」

 

数日間後

奉仕部

「せんぱ~い」

「いろはちゃん、やっはろー」

「一色さん、インフルエンザは大丈夫なのかしら?」

「ただの風邪でした。先輩は?」

「生徒会に行くって言ってたよ」

「え?まだ何もお願いしてないのに…」

「比企谷君、逃げたわね」

「ゆきのん、いろはちゃん、追いかけよう」

「はい。まだ遠くへは行ってないはずです」

 

生徒会室

「なあ、藤沢」

「なんですか?」

「近いんですけど…」

「今日は誰も来てないから、いいじゃないですか」

「一色は?」

「サッカー部じゃないですか」

「本牧と稲村は?」

「まだ休みです」

「なんか、大胆になってない?」

「こうしないと、他の人に勝てないので」

「いや、まだ俺達は友達だろ?」

「イヤなんですか?」

「イヤじゃないです、はい」

「じゃあ、いいですよね」

「一色が来るまでだぞ」

「はい」

 

 

 




―――――――――――――――

八幡がチョロくて、すいません。


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続・書記ちゃんの恋

ご希望にお答えして


日曜日

 

「小町~、出掛けてくる~」

 

「どこ行くの?メイト?ゲマズ?」

 

「おい妹!…本屋だよ。昼飯はいらねぇからな」

 

「は~い」

 

駅前

「お待たせしました」

「いや、時間通りだよ。俺が早かっただけだ」

~回想~

 

数日前

生徒会室

「先輩、今日もありがとうございました」

 

「あいよ」

 

「では、私はサッカー部へ行きます」

 

「あざとい敬礼はいらん。はよ行け」

 

「あざとくないです」

 

「じゃあ、先輩、書記ちゃん、お疲れ様でした」

 

「おう、お疲れ」

 

「お疲れ様でした」

 

「さて、俺も奉仕部に戻るかな」

 

「比企谷先輩」

 

「なんだ、藤沢」

 

「日曜日はお暇ですか?」

 

「日曜日はあれだ、ほら、これが…」

 

「お忙しそうですね…」

 

「暇です。録り貯めたアニメ観てゲームして読書です」

 

「あ、あの、一緒に本屋さんに行きませんか?」

 

「俺と?」

 

「はい。…ダメ…ですか?」

 

(そんな目で見るなよ)

 

「いいぞ。…その…友達だからな」

 

「ありがとうございます」

 

(すげぇ、いい笑顔)

 

「…可愛いな」

 

「え?」

 

「あ!いや!なんでもない!」

 

「…///」

 

~現在~

 

「んで、藤沢はどんな本が見たいんだ?」

 

「えっと…、比企谷先輩が読んでる本です…」

 

「へ?」

 

「どんな本を読んでいらっしゃるんですか?」

 

「最近はラノベが多いが、基本は乱読だな。なんでも読むからな」

 

「では、いろいろ教えてください」

 

「はいよ」

 

本屋

 

「最近は、このあたりが主流かな」

 

「どんな感じなんですか?」

 

「異世界転生モノ」

 

「う~ん」

 

「こっちは完結してるけど、高校生の話だ」

 

「どんな感じなんですか?」

 

「同人ゲームを作ると言いながら、ラブコメになる」

 

「じゃあ、これにします」

 

「それなら、俺が貸してやるよ」

 

「いいんですか?」

 

「読んで面白かったら、買って自分のモノしろ」

 

「では、そうしますね」

 

「あれ~?藤沢ちゃんだ」

 

「あ!モブ子ちゃん」

 

「今日は一人?」

 

「ううん、今日は…あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「さっきまで居たのに…」

 

「友達と来てるんだね。じゃあ、またね」

 

「うん、またね」

 

「行ったか?」

 

「比企谷先輩、どこ行ってたんですか?」

 

「ちょっとな」

 

「…悪評のこととか気にしてるんですか?」

 

「まあな。俺みたいなヤツと居ると藤沢の株が…」

 

「私は気にしません」

 

「え?」

 

「そんなことには負けません」

 

「藤沢、お前…」

 

「だから、ちゃんと『友達』してください」

 

「わかったよ」

 

翌日

藤沢の教室

「沙和ちゃん、おはよ」

 

「おはよう、モブ美ちゃん」

 

「昨日、男の人と本屋さんに居なかった?」

 

「うん、本を選んでもらってたんだ」

 

「結構、イケメンだったと思うけど、彼氏?」

 

「ち、違うよ!まだ友達…」

 

「『まだ』ってことは…」

 

「お互いのことを知ろうって…」

 

「やるねぇ沙和ちゃん。見たことない人だったけど、この学校の人?」

 

「内緒♪」

 

そのころ、2ーFでは…

 

「ヘックション!」

 

「八幡、大丈夫?」

 

「誰か俺の噂をしてるのか?悪評か?」

 

「また、そんなこと言って…」

 

 

 

 




―――――――――――――――


ちょっと近づいた二人でした。


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書記ちゃんの回想

初めて比企谷先輩を見かけたのは、文化祭実行委員会だった。

生徒会に興味があった私は実行委員ではなく生徒会側の手伝いとして参加した。

相模さんって人が委員長になったんだけど、イマイチな感じが否めなかった。

 

数日後、外部の人(雪ノ下先輩のお姉さん?)が来て、相模先輩と話をしたら、『クラスにも参加して楽しむ』ってことになったら、文実の参加者が激減した。そんな中でも比企谷先輩は真面目に仕事をしていた。

 

スローガン決めの会議の時、比企谷先輩は面白いスローガンを提案した。

 

『人~よく見たら片方楽してる文化祭』

 

雪ノ下先輩が顔を隠して笑っていた。私も心の中で、その通りだと思った。ことなかれで進む会議の中で、あんなことが言える比企谷先輩が凄いと思った。そう思うようになったら、目で比企谷先輩を追うようになっていた。

文実では雪ノ下先輩や遊びに来た由比ヶ浜先輩、そして女子人気No.1の葉山先輩と話をしている。私も比企谷先輩と話をしてみたいと思っていた。

 

文化祭は無事に始まり、順調に進んでいた。最後のステージまでは…。

私は生徒会の手伝いで舞台袖に居た。文実の人達が焦りはじめている。どうやら委員長が行方不明らしい。葉山先輩や雪ノ下先輩が時間を稼ぎ、比企谷先輩が探しに行った。

 

しかし、委員長を連れて戻ったのは葉山先輩だった…。しかも委員長は泣いていてボロボロだった。

 

話によると、比企谷先輩が委員長に暴言を言って泣かせたらしい。泣かされたのは可哀想だとは思うけど、泣かされる原因を作ったのは委員長自身だ。

文化祭のあと、一方的に比企谷先輩が悪いことになっていた。しかも『ヒキタニ』って…。間違えてるし。

 

校内で比企谷先輩を見かけるのはなかなか無い。見かけると雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩と話をしている。あの二人の先輩が普通に話をしているということは、委員長を泣かせたのは、何か理由があってのことだろう。文実でのスローガン決めやエンディングセレモニーのドタバタを知っている私はそう思った。

そう思いはじめたら、校内で比企谷先輩を見かけると嬉しくなるようになった。

 

 

体育祭での比企谷先輩は面白かった。棒倒しに参加していた比企谷先輩は、ゆっくり敵陣へ歩いていった。

ハチマキの上から包帯巻いて敵に紛れるとか、発想が凄いと感じた。

 

そして、生徒会役員選挙…。

私は前々から城廻先輩に役員をやりたいと話していた。さすがに一年生で会長に立候補する訳もないので、書記に立候補することにした。そんな中、一年生で会長に立候補した人が居た。一色いろはさん…。1-Cの女子で男子から人気がある娘だ。女子からは…、不人気だ。

一色さんは知らないうちに立候補させられていて生徒会長をやる気はなかった。城廻先輩が一色さんの対処に追われ大変そうだったのを覚えている。

 

しばらくすると、一色さんが生徒会長をやることになったのだ。正直、驚いた。でも、比企谷先輩が動いていたことを知ると、何故だか納得が出来た。

 

新生徒会が活動を始めた頃、一色さんから、比企谷先輩の話を聞いた…。二人っきりで図書館で作業したりしたとか言ってた。その時は一色さんが羨ましくて、胸がチクチクした。

 

一色生徒会長は、比企谷先輩に生徒会の仕事を手伝わせる為に生徒会室によく連れてきた。比企谷先輩と顔をあわせるとドキドキした。今でもドキドキするけど…。

 

この前、思いきって告白した。結果は、友達止まり。でも大きな前進だ。時々、一緒に帰ったり、買い物にも行った。生徒会室に二人っきりの時は隣にくっついて座る。我ながら大胆だと思うけど、真っ赤になって恥ずかしそうにしているのが、失礼ながら可愛く思えてしまう。

 

今日も生徒会の手伝いに来てくれる予定だ。今日はがんばって手を握ってみようかな。

 

 

 

 

 



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書記ちゃんの涙

ここ数日、比企谷先輩が生徒会に来ない。

会長に聞いたら、仕事が一段落したから、頼んでないとのこと。少し寂しい…。

距離が縮まったと思ってたのに。

校内でも見かけることが少なくなった。以前、比企谷先輩が言っていた得意の『ステルスヒッキー』なのだろうか。

 

今日も比企谷先輩に会えなかった…。そんなことを考えながら一日の授業を終えて机でため息をつくとクラスメイトに声をかけられた。

「沙和子どうしたの?」

「なんでもないよ」

「また、あの先輩に話しかけられたの?」

「え?」

「ほら、え~と、ヒキタニとかいう先輩。文化祭で実行委員長泣かせたって」

嫌な予感がする…。

「この前、言ってやったのよ。『沙和子が迷惑するから話しかけるな』って。あんな悪い噂がある…」

やっぱりだ…。それで先輩は…。

「なんでそんなこと言ったの?」

「え?沙和子?」

「比企谷先輩は、そんな人じゃない!」

自分でも驚くぐらいの大きな声が出ていた。

「比企谷先輩は、自分のことより周りを大事にして、不器用だけど優しくて…友達付き合いがヘタで…」

自然と涙が出てくるのがわかる。

「さ、沙和子…」

「私は、そんな比企谷先輩が大好きなの!なんで私の大好きな人にそんなこと言うの!」

気がついたら、走り出していた。後ろでクラスメイトの声がしたけど、どうでもよかった。

 

気がついたら、奉仕部の前に居た。中から話し声が聞こえる。

 

「比企谷君、生徒会の手伝いはいいのかしら?」

「ん?ああ、大丈夫だ」

「じゃあ、こっちに居られるね」

比企谷先輩、雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩だ。

「先輩、嘘ついちゃダメですよ」

会長の声もする。

「いいんだよ」

「良くないですよ。生徒会に来ないのは、書記ちゃんのクラスメイトに言われたからですよね」

「どういうことかしら?比企谷君」

「一色、余計なこと言うなよ」

「ヒッキー?」

「…藤沢のクラスメイトにだな、藤沢に近づくなって言われたんだよ」

「だから、生徒会にも来ないし、移動教室も気をつけてるんですよね?」

「比企谷君らしいやり方ね」

「ほっとけ。それに、俺と藤沢じゃ住む世界が違う」

そんなことない…。そんなことない…。

 

「そんなことないです!」

奉仕部の扉を開けて、大きな声を出していた。

「藤沢…。聞いてたのか…」

次の瞬間には比企谷先輩の胸に飛び込んでいた。

「私、悪い噂とかに負けません。だから、だから、私から離れないでください」

思い切り比企谷先輩の胸で泣いていた。

頭を撫でる優しい感触が…。

「悪かったな、藤沢。だからもう泣くな」

「先輩も悪い噂に負けないでください」

「わかったよ」

いつまでも、比企谷先輩に撫でていて欲しい…。

 

「比企谷君?」

「ヒッキー?」

「先輩?」

「いつまで、抱き合っているつもりなのかしら?」

「うわっ!すまん、藤沢」

「い、いえ。大丈夫…というか、嬉しかったというか…」

比企谷先輩の顔が真っ赤だ。私もだろうか…。

 

「二人はどういう関係なのかしら?」

「え?いや、と、友達?」

「ヒッキー!私とヒッキーって友達だよね?私も撫で撫でしてくれるの?」

「いや、時と場合によってだな…」

「比企谷君、貴方は私に友達になろうと言ったわよね?」

「断られたけどな」

「いいわ。なってあげるから、私も撫でなさい」

「なんで上から目線なの?」

「せんぱ~い、私も…」

「あざといから却下」

「扱いがヒドイです~」

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

「先輩…」

「そうだ、藤沢。本屋行く約束してたな。行こう。今すぐ行こう」

「え?」

「じゃあな」

 

奉仕部の方々が色々言っているのが聞こえたが比企谷先輩が私の手を引いて、連れ出してくれた。

 

この手、離したくないな。



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書記ちゃんの周りの変化

はぁ、今日も学校かぁ。

働きたくないでゴザル。

と、思いながらも足は教室へ…。なんかすげぇ視線を感じるなぁ…。気のせいだろ、どうせ俺なんか誰も見てないだろうしな。

 

教室でイヤホンで『Roselia』の曲を聞きながら机に伏せていると、戸塚がやってきた。

「おはよう、八幡」

「おはよう、戸塚」

はぁ戸塚、可愛いなぁ…。

「どうしたの?そんなにジッと見て」

「なぁ、戸塚は異国のお姫様なんてことはないよな?」

「何言ってるの。僕、男の子だよ」

「そうだよな」

「それより、八幡!昨日は生徒会の書記の娘と手を繋いで帰ったんだって?」

見られてたのは、そのせいかぁぁぁ。

「ん?いや、気のせいじゃ…」

「ヒッキー…、おはよう…」

由比ヶ浜が挨拶してきた。

「由比ヶ浜、やっはろーはどうし…」

由比ヶ浜の目のハイライトが消えてる…。どこかのメインヒロインみたい…。

「放課後、部室でゆっくり…お話ししようね…」

怖い怖い、あと恐い。

「なぁ、戸塚。なんか由比ヶ浜、怒ってないか?」

「さぁ、知らない。先生来たから、またね」

戸塚に冷たくあしらわれて、落ち込んでたら、あっという間に昼休み。

ベストプレイスに向かおうと思ったら、一年生の女子に止められた。この前、藤沢に近づくなって言ってたヤツだ。

人の少ない階段に移動。昨日のこと言われるのかなぁ。面倒くせぇなぁ。

「比企谷先輩…」

「あ~、昨日は…」

「この前は、すいませんでした!」

「え?」

何、この深いお辞儀…。

「比企谷先輩に、あんなこと言ってしまって…。比企谷先輩は沙和子の気持ち知ってるんですよね?」

「あ、いや、それは…」

「比企谷先輩も沙和子のこと、真剣に考えてくださいね」

「あ、え、おう…。わかった」

照れ臭いなぁ…。

「まぁ、あれだ、お前も気にするなよ」

「…」

「ん?どうした?」

「い、いえ…。ありがとう…ございます」

「じゃあ、俺は昼飯に行くから」

なんだったんだ?赤い顔して。熱でもあるのかな?

 

午後の授業も恙無く終わり、部室へ…、部室行きたくねぇなぁ…。

「ヒッキー…」

「由比ヶ浜…」

「部活…行くよ…」

由比ヶ浜のハイライトが仕事してない…。

「あ、いや、ほら、あれが、これだから…」

「行くよ…」

「い、行くから、襟をひっぱるなよ」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

今日は朝から私の周りが騒がしい。理由はわかっている。

「ねぇ、藤沢さん!昨日、一緒に帰ってた人って彼氏?」

「沙和ちゃんの彼氏って格好いいね。なんていう人?」

「沙和子ちゃん、昨日のイケメン紹介してよ!」

あれ?思ったのと違う方向でも賑やかになってる。

「沙和子、凄いことになってるね」

先輩にヒドイこと言ったモブ美が声をかけてきた。昨日、あんな感じで別れちゃったから、少し気まずい。

「沙和子、ごめんね」

「え?」

「私、沙和子が好きな人にヒドイこと言っちゃって」

「う、ううん。わかってくれればいいの」

お陰で比企谷先輩に頭を撫でてもらえた…、とは言えないけど。

「私、昼休みに謝ってくるよ」

「うん、優しい先輩だから許してくれるよ」

午前の授業が終わり、モブ美が謝りに行くと教室を出ていった。一緒に行こうかと言ったら一人で大丈夫と言っていたので、教室で待つことにする。

モブ美が赤い顔をして帰ってきた。

「おかえり。許してくれたでしょ?」

「うん…」

モブ美の様子がおかしい…。

「どうしたの?」

「なんか、格好良かった…」

「え?」

「『気にするな』って、言ってくれたんだけど、その時の顔が…」

そのまま赤い顔してうつむいてしまった。

そうだよ、モブ美。比企谷先輩は格好いいんだよ。でも、誰にも譲らない…。生徒会長にも、雪ノ下先輩にも、由比ヶ浜先輩にも…。

でも、比企谷先輩が有名になってモテるのは嬉しいけど、ちょっと複雑だなぁ…。

 

午後の授業も終わり、生徒会がないので、どうしようか思案していると、生徒会長からLINEが来た。

 

【昨日の件でお話しがあります。奉仕部へ来てください。先輩は確保しました。】

 

ど、どうしよう…。とりあえず、奉仕部に向かうことにした。

 



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書記ちゃん、イジワルをする

呼び出されたからには仕方ない。しかも、比企谷先輩を人質にされては行かない訳がない。

部室の扉の前に立ち、深呼吸をしてからノックをする。中から雪ノ下先輩の『どうぞ』と言う声。

『失礼します』と言って中に入ると、雪ノ下先輩が椅子に座り、比企谷先輩がその前で正座させられている。

しかも、何故か二人の顔がほのかに赤いのは気のせいだろうか…。

 

「比企谷君、人と話す時は目を見るものよ」

「いや、しかしだな…」

 

うつむいていた比企谷先輩が顔を上げると、僅かに雪ノ下先輩の口角が上がり、足を組み換える。すると、比企谷先輩が下を向く。

「比企谷君、下を向いてはダメよ」

「だから…」

比企谷先輩が顔を上げると、また雪ノ下先輩が足を組み換える。比企谷先輩が下を向く…。

 

「ヒッキー、ちゃんと話してよ!」

「そうですよ、先輩!」

 

あれ?この二人、気がついてない?

 

「雪ノ下先輩、足を組み換えるとスカートの中、見えますよ」

「!!」

雪ノ下先輩が視線を反らす。

「ヒッキー!マジキモイ!」

「先輩~!」

二人は気がついてないけど…。

「雪ノ下先輩、わざとやってませんでしたか?」

「なっ!わ、私が比企谷君に、す、スカートの中を見せるなんて…、や、やるわけが…」

「ゆ、ゆきのん、ズルイ!わ、私だって…やっぱ無理!!」

由比ヶ浜先輩、スカートの裾持って、何を言ってるんですか?

 

…一色会長、背中向けて、スカートの中を確認しないでください。

 

わ、私は…、うん、大丈夫。今日は可愛いのにしてきた…。はず…。

 

じゃなくて!!

「と、とりあえず、比企谷先輩、立ってください」

「藤沢、すまん」

比企谷先輩に手を貸す。

「うわっ!」

「きゃっ!」

足が痺れていたのだろうか、バランスを崩して転んでしまった。手を貸していたので引きずられるカタチで比企谷先輩の上に倒れてしまった。

「痛ってぇ。藤沢、すまん。大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

 

こ、この体勢は…。モブ子ちゃんが読んでた雑誌に載ってた、き、き、き、騎乗位…。今日は可愛いの着けてるはずだし、比企谷先輩になら…って、違う!!雪ノ下先輩のアピールを見てから思考がおかした方向行ってる!!

 

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

「先輩…」

「いや、違う。これは事故だ!な、藤沢?」

「は、はい」

 

何とか、その場はしのぎ、やっと椅子に座ることが出来た。

 

「比企谷君、藤沢さん。昨日のことを説明してもらおうかしら」

「まぁ、藤沢の友達に『近づくな』って言われて、斜め下な方法で解決しようとしたのは知ってるよな」

「うん」

「そうですね」

「そうね。でも、その方法はやめなさい」

「善処します」

それ、やらない人の回答ですよ、比企谷先輩。

「それを友人から聞いた私が比企谷先輩にやめさせる為に、奉仕部に来たんです」

「以上。終わり」

「それで、終われると思うのかしら?」

「ですよね…」

「頭を撫でたのと、手を繋いで帰ったことの説明は?」

「あれは、お兄ちゃんスキルだ。手を繋いだのは、逃げる為だ!」

「何故、逃げる必要があったのかしら?ヤマシイことがなければ、逃げなくていいはずよ」

「だって、お前ら恐いんだもん…」

 

比企谷先輩、言い訳がヘタ過ぎ…。ここは私が助け船を…。

 

「あの…質問なんですが…」

「なに?書記ちゃん?」

「み、みなさんは、比企谷先輩のことをどう思ってるんですか?」

「なっ!」

「ふぇっ!」

「へっ!」

何この反応…。

「そ、それは、あの…、私のことを知ってくれて、今は比企谷君のことも少しずつ知ってきて…」

「ヒッキーは、サブレを助けてくれて、ひねくれてるけど優しくて…」

「先輩は、頼りになるというか、甘えてしまって…」

うわぁ、思った以上に比企谷先輩のこと好き過ぎ…。私も頑張らなきゃ!

「わ、私は…、あの、その…比企谷先輩のことを…」

やっぱり、みんなの前で言うなんて恥ずかしい!!

 

「ねぇ、俺帰っていい?」

「「「「ダメ!!」」」」

 

みんなでモジモジしたまま時間切れになり、最終的に5人でドーナツ屋さんへ行くことになりました。比企谷先輩のオゴリで。

 

「なんで、こうなるんだ…」

「比企谷先輩が、はっきりしないからですよ」

 

ちょっと、イジワルしようかな…。比企谷先輩に耳打ちをする。

 

「雪ノ下先輩、何色だったんですか?」

「なっ!み、み、見てないぞ!」

「嘘です。あの角度は見えますよ。何色だったんですか?」

「し、白…でした…」

「ふ~ん、私はピンクですよ」

「えっ!あっ!なっ!」

焦った比企谷先輩って、なんか可愛い。

あんまり、イジワルすると可哀想だから、お詫びに…。

「今度は二人でドーナツ食べましょうね」

ウインクしたら、比企谷先輩は真っ赤になりました。あざとかったかな?一色会長には敵わないけど。

 

 



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書記ちゃんのデートイベント・前編

週末の奉仕部内。

メンバー三人と生徒会長・一色いろは、書記・藤沢沙和子の五人が居る。

 

四人の女子はお互いを牽制している状態。男子一人は、そんなことは気にしてないのか、紅茶をすすりながら、文庫本を読んでいる。

 

そんな中、一人の女子が動いた。

「ねぇ、ヒッキー」

「ん?」

「今度の土日は何をするの?」

四人が比企谷八幡の答えに耳を傾ける。

「土曜は部屋で勉強かな。日曜は本をあさりに千葉あたりへ行って…、あと新しいラーメン屋があるらしいから、寄ろうかと思ってる」

「ふ~ん」

「聞いておいて、興味無しかよ」

そんなことはない。女子四人はどうやって他の三人を出し抜くか思考を巡らせているのだ。

誰も次の一手を出さないまま、下校の時間となった。

 

時間は経過し、土曜の夜。

比企谷八幡の携帯が鳴る。

「もしもし」

『比企谷先輩ですか?』

「おう、どうした。藤沢」

『明日、本屋さんへ行くんですよね?』

「そのつもりだが」

『私もご一緒してもいいですか?』

「まぁ、かまわんぞ」

『ありがとうございます』

「千葉まで行くから、駅に11時でいいか?」

『はい、わかりました』

「じゃあ、明日な」

『はい、おやすみなさい』

「おやすみ」

 

日曜日の朝、比企谷八幡はニチアサを楽しんだ後に支度を始めた。すると、呼鈴が鳴った。

「小町~、お兄ちゃん着替え中だから出てくれ~」

「は~い。どちら様ですか…。これはこれは…、ちょっと待ってくださいね」

兄を部屋に呼び行く小町。

「お兄ちゃん、結衣さんが迎えに来たよ」

「ふぁ?なんで由比ヶ浜が?」

「約束してたんじゃないの?」

「してねぇよ。兎に角、ちょっと待ってもらってくれ」

「は~い」

急いで着替えて玄関に来る八幡。

「ヒッキー、やっはろー!」

「おはようさん。どうした、由比ヶ浜。なんか約束してたか?」

「してないよ。本屋さん、私も一緒に行く」

「え?なんで?」

「ん?なんとなく?」

「なんだそりゃ…」

「何かマズイことでもあるの?」

「いや、そうじゃないんだが…」

「じゃあ、いいじゃん」

「わかったよ…」

小町に見送られ、駅に向かう二人。途中で見知った顔に出くわす。

「あれ~、ゆきのんだ」

「あら、由比ヶ浜さんにモテ谷君」

「誰がいつモテたよ」

「貴方達、どこへ行くのかしら?」

「俺がでかけようとしたら、襲撃されたんだよ」

「ヒッキーの買い物についていくんだ」

「貴方、たしか書店に行くと言ってたわよね?」

「あぁ、そうだが」

「私も行こうと思っていたから、ご一緒させていただくわ」

「雪ノ下も来るのかよ…」

「何かヤマシイことでもあるのかしら?」

「ねぇよ」

平静を装う女子二人だが、心の中は…。

『なんで、ゆきのんが一緒なのかな』

『由比ヶ浜さん、自宅まで行くとは…』

 

駅に着くと、昨晩電話で約束していた藤沢沙和子と…。

 

「先輩、遅い!」

「すまん、藤沢」

「いえ、私は大丈夫なんですが…」

「なんで、無視するんですか!」

「なんで一色が居るんだよ…」

「先輩が千葉方面へラーメンを食べに行くなら、おごっ…ご一緒しようかと」

「なんか言いかけたよな?」

「てへっ♪」

「あざとい」

「あざとくないです!」

「つーか、まともにアポ取ったのは、藤沢だけかよ」

「だって、ヒッキー逃げようとするじゃん」

「私は比企谷君の連絡先をしらないわ」

「待ち伏せして、会えたらサプライズじゃないですか」

「お前らな…。好きにしてくれ…」

 

波乱(?)のデートイベント開幕!



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書記ちゃんのデートイベント・後編

「はぁ…。とりあえず、先に昼飯だ」

ダルそうに、八幡がきりだす。

「どんなラーメンですかぁ?」

いろはが聞いてきたが…

「バッカ、女子四人連れてラーメン屋行けるか。サイゼだよ」

「ヒッキーらしいね…」

「貴方ってひとは…」

「まぁ、先輩ですから…」

散々な言い方の三人に対して

「私、サイゼリア好きです」

沙和子だけが違った答えをした。

「休日とか、サイゼリヤで本読んでたりしますから」

「藤沢!」

八幡は藤沢沙和子の手をとり

「そうかそうか。藤沢、今度サイゼで一緒に本読もうな」

「え、えっと…、嬉しいですけど…。比企谷先輩…」

「おわっ!すまん」

赤面する二人を睨む三人…

「比企谷君」

「ヒッキー」

「先輩」

「と、とりあえず、サイゼ行くぞ」

逃げるように、サイゼリヤに向かう。

食事をしながら、由比ヶ浜が話しかける。

「ヒッキーは、デートでもサイゼリヤなの?」

「ん?たぶんな。デートしたことないから知らんけど」

「えぇ。もっとオシャレな店行こうよ」

「そうね。折角のデートなのだから」

「だからって、ラーメン屋さんもダメですよ、私以外は」

デートにサイゼリヤを否定する三人に対して藤沢は

「え?ダメなんですか?」

「書記ちゃんはデートにサイゼリヤでいいの?」

「はい。まだ高校生ですから、肩肘はって、格好つけなくても。それに、好きな人と一緒なら…」

「藤沢、お前はいいヤツだな」

ムクれる三人とテレる藤沢。

 

昼食を済ませ、書店へ。

ファッション雑誌の前でキャイキャイいう由比ヶ浜と一色。

「ヒッキー、こういう服とかどう?」

「俺にファッションを聞くな」

「先輩、ネルシャツをズボンにインですか?」

「そこまでヒドクない」

ハードカバーの新刊を物色する雪ノ下。

「なんか面白そうなのあるか?」

「この本なんてどうかしら?」

「どれどれ」

「帯の煽りに対して、中身が薄いわよ」

「やめてあげてください」

ラノベコーナーを物色する八幡…。

「ヒッキー、またラノベ?」

「いいだろ、別に」

「先輩、こういうハーレムをお望みですか?」

「違ぇよ」

「まぁ、比企谷君らしいわね。妄想の中でモテたいなんて」

「ほっとけ」

藤沢が一冊のラノベを持って来た。

「比企谷先輩、これ読みました?」

「『恋するメトロノーム』か!いいよな」

「はいっ♪」

「…」

「…」

「…」

「お前ら、どうかしたか?」

「書記ちゃん…、ラノベ読むの?」

「多少…。女性が読んでも面白い作品とかもありますよ」

「そ、そう、それは興味深いわね」

「ふ、ふ~ん、私も読んでみようかな」

「由比ヶ浜は…、無理かな」

「ら、ラノベくらい読むモン!」

「本屋で騒ぐな」

 

各々、本を買い帰り道

「頼むから、突撃とか偶然を装うとか待ち伏せとかはやめてくれよ」

「うぅ、わかった」

「わ、私は偶々…」

「は~い」

 

駅前で解散となり、家路につく。

 

家に着き、自室で横になる八幡。するとメールが…

 

【From;藤沢沙和子

 

比企谷先輩、今日はありがとうございました。またオススメの本を教えてください。

 

また、二人で本屋さんへ行きたいです。

 

おやすみなさい】

 

メールを読んで、一人で悶える八幡でした。

 

 

 

 

 

 

 



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書記ちゃんと女子達の思惑

【雪ノ下雪乃

 

生徒会・書記、藤沢沙和子。盲点だったわ、彼女が比企谷君の魅力に気がつくなんて。

しかも、大人しそうな見た目とは裏腹に以外と積極的だし、比企谷君と趣味があうし…。しかも、年下で比企谷君の庇護欲を駆り立てる…。

 

 

比企谷君もヒドイわ。部室では由比ヶ浜さんの胸と私の足を見てるクセに…。

この前なんかは、藤沢さんの頭を撫でて…。私もしてほしいわ…。

 

もしかして、比企谷君は眼鏡女子が好きなのかしら。私にもブルーライトカット眼鏡を選んだぐらいだから…。

 

これから、どうすればいいかしら…。

とりあえず、比企谷君への暴言を減らすところから始めてましょう。…、眼鏡もかけめみましょう…】

 

【由比ヶ浜結衣

 

まさか藤沢ちゃんが、ヒッキー狙いだとは…。しかも、らのべ?とかも詳しそうだし…。私、本読むと眠くなっちゃうからなぁ。

どうしよう…。普段は私の胸とかゆきのんの絶対領域?とかよく見てるクセに…。ヒッキーって、眼鏡属性?なのかな?だったら、姫菜とかも好みなのかな?

 

う~ん、どうしよう…。

 

もうちょっと胸をアピールしてみようかな。眼鏡は…いいかな】

 

 

【一色いろは

 

まさか、書記ちゃんが…。副会長狙いだとばっかり思ってたのに。先輩を生徒会室に連れて来るのもマズイなぁ。

先輩と話も合いそうだし、年下という奉仕部のお二人にはないアドバンテージも一緒…。

書記ちゃんは何気ないところが可愛いかったりしますから、油断出来ませんね。

 

私ももっと可愛いアピールしないと。】

 

【藤沢沙和子

 

比企谷先輩も『恋するメトロノーム』読んでたんだ。今度ゆっくり話したいな。比企谷先輩が教えてくれたラノベ面白かったし…。他にも色々読んでるみたいだから、色々教えて欲しいな。今度、ラノベ原作の映画誘ってみようかな。でも、ラノベ原作の映画って、悲惨な結果になってるのもあるからな選択間違えないようにしないと。

あっ!先輩が見てるアニメの時間だ。これ見ると寝るのが遅くなっちゃうけど、先輩とお話し出来るから、頑張らなくちゃ!】

 

 

オマケ

【比企谷八幡

 

なんなんだよ、アイツらは。藤沢はちゃんと連絡してくれたのに…。連絡寄越したら逃げると思ってるんですかね。まぁ、藤沢の先約があったから逃げるんですけどね。しかし、アイツらは俺のこと好きなのかね?いや、からかって楽しんでるだけだな、きっと。

藤沢は、俺に気持ちを伝えてくれた。ちゃんと考えなきゃなぁ…。藤沢の私服可愛かったなぁ…。藤沢なら、あの映画とか一緒に観に行ってくれるかな?…キモイな俺。

おっ!アニメ始まる時間だ。ここからは俺のターンだ。なんてな…】



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書記ちゃんのお宅訪問

「比企谷先輩、DVD準備出来ましたよ」

「さんきゅ。コーヒーに砂糖とミルクは?」

「じゃあ、ひとつづつお願いします」

「はいよ。再生してていいぞ。本編始まるまでには行くから」

「わかりました」

 

どうしてこうなった…。どうして俺ん家で藤沢とDVD観賞会になったんだ…。

 

数日前…。小町が生徒会に興味があるって生徒会室に連れていったのが間違いだったのか…。

 

~~~~~~~~~~~

 

「う~す」

「こんにちは~」

「こんにちは、比企谷先輩と…」

「藤沢だけか…。まぁ、いいか。こいつは…」

「初めまして、妹の比企谷小町です。愚兄がいつもお世話になっています」

「俺のセリフとった上に愚兄ってヒドクないですか」

「生徒会・書記の藤沢沙和子です。比企谷先輩にはお世話になりっぱなしで…」

「ほほう…。アナタが藤沢さんでしたか…。なるほど…」

「おい小町。あんまりジロジロ見るなよ、失礼だろ」

「いやいや、お兄ちゃん。ジロジロ見る価値がある可愛いひとだよ」

「そ、そんな…可愛いだなんて…」

「その恥じらう感じもいい!ね、お兄ちゃん?」

「え?いや、あの…、そ、そう…だな…」

「ふ~ん…。なるほどね」

「あっ!そ、そういえば、この前貸したラノベどうだった?」

「あ、はい。すごく面白かったです」

「あれアニメ化されてるぞ」

「それは観てみたいです」

「それなら、ウチにDVDがあるから、今度貸…」

「ウチに観に来てください」

「小町ちゃん、何を言ってるのかな?」

「はぁぁぁぁぁぁ、これだからゴミぃちゃんは…」

「いい、お兄ちゃん。お兄ちゃんがアニメのDVDを持ち歩くのは構わないけど、藤沢さんが持ってたら、藤沢さんまでオタクだと思われるでしょ。お兄ちゃんはいいとして…」

「俺はいいのかよ…」

「それで、どうですか?藤沢さん」

「わ、私は…伺ってもいいんですが…」

「あ~、藤沢が嫌じゃなければ来るか?」

「では、お邪魔させていただきます」

「それでは藤沢さん。小町と連絡先を交換しましょう」

 

~~~~~~~~~~~~~

それで、藤沢が我が家に来ているのだが…。

小町は急用と言って出掛けてしまったし…。

「ほい、コーヒー」

「ありがとうございます。あのこれ、お茶請けに…」

ん?キレイにラッピングされた袋。

「あの、クッキーです。お嫌いですか?」

なに、その上目遣い!可愛い!

「いや、す、好きだぞ」

「良かった…」

「ほ、ほら、始まるぞ」

「はい」

 

DVDを観はじめてしばらく経つが、なんか近くないですか、藤沢さん?段々近づいて来てる気がするんですが?這いよってきてませんか?這いよれ沙和子ちゃん。何それ、超可愛いんですけど。

 

あ、手が触れた。小指で触ってくるとか可愛い過ぎる。手を握ったら嫌がられるかな?手汗大丈夫かな?

え?藤沢が…手を握ってきた…。

すげぇ見つめられてる…。キレイな瞳だなぁ…。なんで目を閉じるんですか?こ、これはもしかして…。

お父さんお母さん、八幡は大人の階段を登ります…。

 

「ただいま~」

 

登れませんでした。

 



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書記ちゃんの思い返しと新たな決意

何故、私はあんな恥ずかしいことを…。うがぁ~、死にたい死にたいよぉ。明日学校行きたくないよぉ。バカじゃないのバカじゃないのバァカバァカ…。

 

死にたい…。

 

勢い余って比企谷先輩とキ、キスしようと…。うわぁ、今思い返しても恥ずかしい。

 

小町ちゃんが帰って来て未遂に終わったけど…。あのまま小町ちゃんが帰ってこなかったら、きっと…。

 

うう…。だって比企谷先輩の横顔がカッコ良かったからいけないんだ。そうだ、私は悪くない。うん。

 

そのあと、小町ちゃんが是非夕御飯もというので、一緒に作ることにしたけど、比企谷先輩が溺愛するのもわかるぐらい出来た妹さんだ。快活だし料理は上手いし気が利くし…。

料理をしながら色々と話をしたけど「兄のことを理解してくれて嬉しい」と言っていた。それと「愚兄ですが、末永くよろしくお願いします」とも言われてしまった。それは小町ちゃんが義妹になるということ…。違う違う!話が飛躍し過ぎてる。飛躍し過ぎて鳥人間コンテスト優勝出来ちゃうよ。

 

それにしても、小町ちゃんの料理は美味しかった。私も頑張らないと。比企谷先輩がトマトが苦手という新情報も仕入れたし。

 

帰りは、比企谷先輩が照れながら「駅まで送る」とか言ってくれて、道中は会話はあまりなかっかけど、別れ間際に「藤沢が嫌じゃなかったら、また観にこいよ」とか…。嫌な訳ないじゃないですか!絶対に行きますよ。心の中ではガッツポーズしながら、冷静に「また、お邪魔させてください」って、ちゃんと言えた。

 

はぁ、また二人きりになったら、どうしよう…。次こそキスしちゃうのかな…。きゃ~!!

 

それよりも問題が…。

 

明日、比企谷先輩の顔みたら、どんな顔すればいいんだろう…。段々、自分がダメになってる気がする。比企谷先輩のせいだ。会長じゃないけど、責任を取ってもらわないと。

 

そうだ!お弁当とか作ってみようかな。…どこでお昼食べているんだろう?いきなり教室行くのはハードル高いし、ステルスモードの比企谷先輩探すのは大変だし…、かといって、生徒会長や奉仕部のお二人には聞けないし…。直接聞いてみようかなぁ。小町ちゃんなら教えてくれるかな?あとでメールしてみよう。ついでに、好きな食べ物も聞いてみよう。

 

よし!方向性が決まったら、ちょっと元気出てきた!明日の朝、下駄箱で待ち伏せしてみよう。比企谷先輩、ビックリしてキョドりそうだけど、そこは可愛いところだからな。

 

明日が楽しみになってきた。




―――――――――――――――――


更新が遅くなって、すいません。
文字数が足りなくて、四苦八苦でした。


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書記ちゃんのお弁当作戦

比企谷先輩がお昼に居る場所は小町ちゃんに聞いた。とりあえず今日は一緒にご飯を食べて、それとなく『良かったら、お弁当作ってきます』の流れに…。

シュミレーションは頭の中で沢山してきた。

よし!突撃!パンツァー、フォー!

…私もかなり比企谷先輩に染まってきたなぁ…。

 

「ひ、ひきぎゃや先輩!」

しまった!いきなり噛んだ!

 

「んあ、藤沢?どうした、こんなところに」

 

「比企谷先輩の姿が見えたんで、一緒にご飯を…」

 

「お、俺と?」

 

「はい!」

 

「まぁ、いいか」

 

よし!第一関門突破!

 

「ここ、いい場所ですね。陽当たりもいいし、風も気持ちいい」

 

「だろ?何より、戸塚が見れる」

 

戸塚?ああ、戸塚先輩。中性的で男女問わず人気の先輩。

ん?どこかから『トツハチ、キター!』って聞こえた気がする…。気のせいかな?

 

「戸塚、いいよな」

え?比企谷先輩、そっちなの?

 

「戸塚は本当は女なんじゃないかと思うよ」

 

「ま、まあ、可愛いですよね」

 

どうやら、違うみたい。良かったぁ。

 

「藤沢の弁当、よく出来てるな。自分で作ってるのか?」

 

「はい」

 

「卵焼きなんか、特にうまそうだ」

 

来た!

 

「た、食べてみますか?」

 

「いや、悪いから…」

 

「ぜひ、食べてください」

 

「お、おう…」

 

ふう、危なかった。

ん?これって『あ~ん』のチャンス?が、がんはれ、私!

 

「でも、どうやって受け取ればいいかな?」

 

「ひ、比企谷先輩。あ、あ~ん」

 

「い、いや、さすがにそれは…」

 

もうひと押し!

 

「先輩、早くしてください」

 

「お、おう。あむ」

 

や、やった!

 

「ど、どうですか?」

 

「俺好みの味付けだ。旨いよ」

 

「ありがとうございますっ!」

小町ちゃんに聞いた味付けで作って良かった。ありがとう小町ちゃん♪

 

「せ、先輩はパンなんですね」

 

「まぁな。小町に弁当作ってもらうのも悪いしな」

 

来た!

 

「あ、あの…。良かったら、私がお弁当作りましょうか?」

 

「い、いや、悪いからいいよ」

 

「一つ作るのも、二つ作るのも手間は変わらないんで」

 

「で、でもだな…」

 

「ぜひ作らせてください!」

 

「藤沢って、そんなに押し強かったか?」

 

「あっ、…ごめんなさい」

 

やり過ぎたかな…。

 

「まぁ明日、その…、なんだ…頼んでもいいか?」

 

「え?」

 

先輩、そっぽ向いてるけど、耳が真っ赤だ。

 

「はいっ!明日から早起きして、一生懸命作ります!」

 

「いや、そこまでしなくても…」

 

「いえ、比企谷先輩には美味しいお弁当を食べてほしいので」

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

また一歩、比企谷先輩に近づけた気がする♪

 

 




―――――――――――――――――

自分で書きなかが思うんですが、爆発して欲しいですね(笑)


疲れがピークの時にR18を書いたので、18歳以上で、お暇な方は読んでみてください。


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書記ちゃん、改造され改造する

お待たせしました。


駅前

 

うう…。どうしよう。この格好、変じゃないかな。恥ずかしいよぅ。

 

もう比企谷先輩居るし…。もう行くしかない!

 

「ひ、比企谷先輩!」

 

「え?あ?誰?って、藤沢か?」

 

「はい…」

 

やっぱり似合ってないんだぁ。

 

「いや、なんかいつもと雰囲気違って可愛いから…。あ、いや、普段が可愛いくない訳じゃなくてだな…。何言ってるんだ。すまん、忘れてくれ」

 

「え?あ、ありがとうございます」

 

数日前

 

「比企谷先輩とデート!!」

 

「声が大きいよ、モブ美ちゃん。デートっていうか、映画観てご飯食べて本屋さん行って…」

 

「それデートだよ。うらやましいなぁ」

 

「そう?えへへ」

 

「ところでさ、デートの格好っていつもの感じなの?」

 

「そうだよ」

 

「ダメだよ!」

 

「だから、声が大きいって」

 

「放課後って空いてる?」

 

「空いてるけど…」

 

「服買いに行くよ」

 

「え?そんなにお金持ってないよ」

 

「じゃあ、家行っていい?コーディネートする」

 

「だ、大丈夫だよ」

 

「ダメだよ!ライバルはあの雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩と生徒会長だよ!全力を尽くさないと!」

 

「う、うん…」

 

現在

 

コンタクトだから、視界が違うし…。

 

「め、眼鏡じゃないのも雰囲気違っていいな」

 

「は、はい」

 

髪型も違うし…。

 

「女の子って髪型で印象変わるな。い、いいと思う」

 

「は、はい」

 

ミニスカートにニーハイって、狙い過ぎだよ。

 

「藤沢みたいな娘がミニスカって新鮮だな」

 

「は、はい」

 

恥ずかしい!!

 

「じゃ、じゃあ行くか」

 

ええい!女は度胸だ!

 

「あの、手を繋いでも」

 

「お、おう」

 

嬉しい!けど、恥ずかしい!

 

あれ?向こうにモブ美とモブ子が…。何ニヤニヤしてるのよ!

 

「ん?行かないのか?」

 

「い、行きます」

 

月曜日覚えてなさいよ。

 

「しかし、藤沢がアニメ映画をチョイスするとはな」

 

「はい、原作もTVも面白かったので」

 

何がいいって、主人公が売れっ子ラノベ作家でもエロ同人作家でもなく巨乳の後輩でもなく幼なじみいとこでもなく、普通の娘がメインヒロインなのがいい。冴えないヒロインまである。

なんか比企谷先輩が伝染ってきた気がする…。

 

「ポップコーンとかいるか?」

 

「飲み物だけで」

 

「はいよ…。やっぱりMAXコーヒーはないのか…」

 

映画を観終わり、昼食。映画館の入り口付近で『め○みは俺の嫁』と言ってた人が数人居た。確かに可愛かった。私も比企谷先輩もメインヒロインになるんだ!

 

「どうした?」

 

「なんでもないです。ハッピーエンドで良かったです」

 

「変なアレンジもなかったからな。ミュージカルになったり原作に居ないキャラがいなくて良かった」

 

「思い当たる作品はありますけど…」

 

「この後どうする?」

 

「えっと、モールに行きませんか?」

 

「はいよ」

 

比企谷先輩とモールの中をブラブラ。もちろん、手を繋いで。幸せ…。

 

「比企谷先輩、眼鏡屋さん寄ってもいいですか?」

 

「おう、いいぞ」

 

今は眼鏡もオシャレだからな。比企谷先輩って眼鏡かけたらどうなるのかな?

 

「比企谷先輩、これかけてみてください」

 

「ん?ああ」

 

何これ!すごく格好いい!

 

「やっぱ変だよな」

 

「違います!凄く似合ってます!」

 

「お、おう。ありがとな」

 

「それ、買いましょう!」

 

「いや、でもだな…」

 

「それかけて歩きましょう」

 

「お、おう…」

 

ちょっと強引だったかな?でも格好いい!すれ違う女の子が見てるのがわかる。

 

「な、なぁ、変な目で見られてないか?」

 

「大丈夫ですよ」

 

どんなに見たって比企谷先輩はわたさないんだから。

 

腕組んでみようかな…。えいっ!

 

「うわっ!って、藤沢」

 

「ダメ…ですか?」

 

「だ、ダメじゃないでふ」

 

やった!また少し比企谷先輩に近づけた。

 

 

おまけ

 

「たで~ま」

 

「お帰り、お兄ちゃん?」

 

「何故、疑問系。遂に小町にも認識されなくなったか…」

 

「あ~、その答え方はお兄ちゃんだ。どうしたの?その眼鏡」

 

「藤沢が似合うって言ってたから買ってみた」

 

「なるほど。お兄ちゃんを藤沢さんの色に染める。なかなかやりますな」

 

「よくわからんが、メシにしようぜ」

 

「は~い。お兄ちゃんがイケメンになって小町は嬉しいよ。あ、今の小町的にポイント高い♪」

 

「メシが旨かったら、さらに高いぞ」

 



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書記ちゃんのデート騒動

「昨日はお楽しみでしたな」

 

モブ美が話しかけてきた。

 

「見てたわね」

 

「最初だけね」

 

「でも、好評だったでしょ?」

 

「う、うん」

 

モブ美のコーデが好評だったから、あまり文句は言えない…。

 

「ねぇねぇ、藤沢さん!」

 

あまり話をしたことがないクラスメイトが声をかけてきた。

 

「何かな?」

 

「昨日、一緒に歩いてた眼鏡のイケメンって彼氏?」

 

「ま、まだ彼氏じゃないよ!」

 

「でも、腕組んで仲良さそうだったじゃん。隠さなくてもいいのに。じゃあね」

 

「あ、あの…」

 

行っちゃった…。

 

「ほほう、眼鏡のイケメンと?」

 

こっちも面倒臭い。

 

「その辺りkwsk」

 

眼鏡屋さんで眼鏡をかけてもらったら似合っていたのでそのまま行動したと説明。

 

「ふむ。で、腕を組んでいたとは?」

 

「そ、それは…。比企谷先輩が見られてたから、主張したくって…」

 

「やりますなぁ」

 

もう!ニヤニヤしないでよ!

 

~~~~~~~~~~~~

その頃、比企谷八幡のクラスでも…

 

「ヒキタニく~んヒキタニく~ん!」

 

「んだよ、戸部。話しかけるなよ。海老名さんの噴水見たいのかよ」

 

「いや、だってさ、昨日モールでチョ~可愛い女の子と手を繋いで歩いてたべ」

 

「な、なんのことでしゅか?」

 

「いや、マジでヒキタニ君やるわ~」

 

「あ、あれだ、そう!妹だ!」

 

「ヒキタニ君の妹って、千葉村で見たことあるけど、違ったべ」

 

「うっ!戸部のクセに…」

 

「ヒッキー…」

 

「ゆ、由比ヶ浜…」

 

「部活の時、ゆっくり話そうか…」

 

「い、いやぁ、今日は…」

 

「逃がさないからね…」

 

「結衣ちゃん、超怖ぇ」

 

「戸部、死んだら、お前のセイだからな」

 

~~~~~~~~~~~

 

会長から奉仕部に来るように言われたけど…。

 

ノックをして…。雪ノ下先輩の声で返事が。

 

「失礼します…」

 

何、この状況。

比企谷先輩が正座されられてて、三人が椅子に座ってる。しかも、あからさまに脚を組み換えてるし…。雪ノ下先輩が前にやってたやつだ。

 

「あの~、わざとやってますよね?」

 

三人とも顔真っ赤だし…。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「ヒッキーがモールで女の子と手を繋いで歩いてたって」

 

あ~、それ私です。

 

「どうやって、脅したのかしら?」

 

どちらかというと、私から誘いました。

 

「私とのデートは断ったのに」

 

会長、断られたんですね。

 

「だから、俺とアニメ映画を観てくれる奇特な娘なんだって」

 

「それで手を繋いでいるのとは別問題よ」

 

「そうだよ!」

 

比企谷先輩が誤魔化そうとしてこじれてる感じだ。

 

「そういえば、書記ちゃんは眼鏡イケメンとデートしてたって?噂聞いたよ、腕組んでたって」

 

あっ、比企谷先輩が気まずそうな顔してる。

 

この状況は私のセイでもある。

でも、先輩方や生徒会長のやり方は好きなれない。自分から動くことをしないのに、なんで…。

それに、比企谷先輩はきっと三人の気持ちに気がついている。だけど三人が傷つくのを恐れて動けなくなっている。比企谷先輩は優しいから…。

 

比企谷先輩、女の子は失恋で強くなったりするんですよ。

 

あっ、こっち見た。

私、比企谷先輩の少し困ったような笑顔大好きです。

 

今から少し困らせてしまうかもしれないですが、私は覚悟を決めました。

 

 

「あの、お話があります!」

 

 



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書記ちゃんの恋・完結編?

覚悟は決まった!

フレーフレー私!!

 

「皆さんは、比企谷先輩の恋路を邪魔したいんですか?」

 

「「「!!!」」」

 

やっぱりなぁ…。

 

「そんなに、比企谷先輩のことが好きなんですか?」

 

「わ、私はこの男か脅迫とかで女の子を連れ回してるのではないかと…」

 

「比企谷先輩が今までそんなことしてたんですか?」

 

「し、してないわ…」

 

雪ノ下先輩、意外と脆い。

 

「だって、女の子可哀想じゃん。ヒッキーだよ、キモイじゃん」

 

「比企谷先輩がキモイ?失礼じゃないですか。同じ部活の仲間じゃないんですか」

 

「うう、そうだけど…」

 

うん、由比ヶ浜先輩。語彙力つけましょう。進学大丈夫かな?

 

「先輩は私からの誘いを断ったんだよ」

 

「会長よりその娘の方が好きなら、そっちを優先させて普通ですよ」

 

「先輩には、責任取ってもらう約束が…」

 

会長、比企谷先輩は充分に責任果たしてますよ。

 

「比企谷先輩」

 

「お、おう」

 

「明日、その彼女を連れてきてください」

 

「いや、しかしだな…」

 

比企谷先輩、私は覚悟を決めましたよ。

 

「私も会長が言う『眼鏡イケメン』の彼氏を連れてきます」

 

みんなキョトンとしてる。今がチャンス!!

 

「と、言うわけで、明日の打ち合わせをしたいので、比企谷先輩連れて行きますね。では、また明日!」

 

「お、おい藤沢…」

 

比企谷先輩の手をひいて、このまま脱出!

 

 

ここまで来れば…。

 

「藤沢、どうしたんだよ」

 

「比企谷先輩!!」

 

あ、抱きついちゃった。

 

「ごめんなさい。比企谷先輩があんなことされてるのが嫌で…」

 

「藤沢、泣いてるのか?」

 

あれ?涙が…。

 

「大好きな人があんなことされてるのが我慢出来なくて…。私…私…」

 

もう止まれない…。

 

「比企谷先輩、大好きです」

 

「!!!」

 

キス…しちゃった…。

 

「藤沢、今なにを…」

 

「私、もう我慢出来ません。もう一回言います。比企谷先輩、私と付き合ってください」

 

い、言っちゃった。

 

「あ~、その、なんだ。俺も藤沢と居て楽しかった…。だから、その…、こちらこそ、お願いします」

 

え?嘘!比企谷先輩、顔が真っ赤だ。

 

「お、おい、藤沢。なんでまた泣いてるんだよ」

 

あれ?

 

「違うんです。嬉しくて…」

 

「そ、そっか」

 

「はい。これからもよろしくお願いします、八幡さん」

 

「はい?」

 

「付き合うんですから、名前で呼びたくて」

 

「お、おう…。照れるな」

 

「だから、八幡さんも名前で呼んでください」

 

「よろしくな。さ、沙和子」

 

「はい、八幡さん」

 

やった!比企谷先輩…、八幡さんとお付き合い出来る♪

 

「んで、どうしたもんかなぁ」

 

浮かれてて大事なこと忘れてた。

 

「それなら私に考えがあります」

 

「どうすんだ?」

 

「明日、家に迎えに行きますので待っててください」

 

「?まあ、わかった」

 

「今日はもう帰りましょう」

 

追いかけて来ないとは思いますが、念のため。

 

 

~~~~~~~~~~~~

【翌朝】

 

「~♪」

 

「ご機嫌なところ申し訳ないが、藤沢…」

 

「沙和子…」

 

「へ?」

 

「沙和子って呼んでくれなきゃ返事しません」

 

「なぁ、沙和子」

 

「はい、なんですか八幡さん♪」

 

「腕を組んで登校とか恥ずかしいんですけど…」

 

「私は気にしてませんよ」

 

「あと眼鏡必要?髪型もセットされたし…」

 

「はい、私の彼氏は眼鏡イケメンですから」

 

「うぐっ!それにふじ…沙和子もコンタクトで髪型違うし…」

 

「似合ってますか?」

 

「あ、うん、すげぇ可愛いです」

 

「じゃあ、問題ないです♪」

 

今朝、比企谷家にお邪魔して、八幡さんの髪型をセットして、この前買った眼鏡をかけてもらってる。

 

私も出かけた時と同じでコンタクトで髪型も変えている。小町ちゃん、驚いてたな。…写真を何枚か撮られたけど。

 

今は八幡さんの腕をとって登校中。

凄く見られてるけど、私の彼氏だからね。

 

「沙和子、おはよう。朝から見せつけてくれますな」

 

「おはよう、モブ美。色々あってね」

 

「比企谷先輩、沙和子こと大事にしてあげてくださいね」

 

「お、おう」

 

「じゃあ、私先に行くね」

 

「じゃあ、教室で」

 

モブ美には感謝だな。

 

校門を入ったところで平塚先生に止められた。

 

「貴様ら、私の前で腕を組んで登校とはいい度胸…、比企谷と藤沢か?」

 

「うっす」

 

「おはようございます、平塚先生」

 

「君たちは…」

 

「はい、付き合ってます。ね、八幡さん」

「お、おう」

 

「な…、そうか…。ハメを外さないようにな…」

 

平塚先生が肩をおとしながら去っていった。『結婚したい』って呟いてたけど…。平塚先生、頑張って!八幡さんはあげないけど。

 

昇降口に着くと、生徒会長と奉仕部のお二人がお出迎えです。予想はしてましたけど。

 

「おはようございます」

 

「お、おはよう…」

 

「比企谷君、これはどういうことなのかしら?」

 

「そうだよ、ヒッキー!」

 

「先輩!」

 

「こ、これはだな…あの…その…」

 

八幡さん、シドロモドロじゃないですか。さすがのクオリティ…。

ここは、彼女である私の出番!

 

「この前の休みに、八幡さんと一緒に居たのは私で、私と一緒に居た眼鏡イケメンは八幡さんです」

 

「え?『八幡さん』って…。比企谷君と藤沢さんは…」

 

「まあ、そうだな。世間一般でいうところの恋人だな」

 

「ね、八幡さん♪」

 

「う…そ…、ヒッキーが…」

 

「書記ちゃん、嘘だよね」

 

「ひ、比企谷君…」

 

「詳しい話は放課後だ。ほら、授業始まるぞ」

 

放心状態の三人を余所に靴を履き替える。

あっ、そうだ。

 

「八幡さん、昼休みは教室で待っててくださいね」

 

「?。わかった」

 

教室に着いたら大騒ぎ。『あのイケメンは誰?』とか『彼氏、格好いい』とか。

モブ美、ニヤニヤしないで。

 

昼休み。八幡さんの教室へ。

あっ、あそこだ。

 

「八幡さん♪」

 

「おう」

 

「お弁当作ってきたので、食べに行きましょう」

 

「お、おう、わかった」

 

由比ヶ浜先輩が遠くを見てる。

金髪の人と眼鏡の人が声かけてるけど、反応がない…。ただの屍のようだ。

 

八幡さんとお昼を食べて、昼休みを戸塚さんを眺めながら過ごした。

 

放課後。

さあ、もうひと頑張りだ。

 

奉仕部の扉を開けると、もう先輩方と生徒会長は居た。だけど、八幡さんが居ない。

 

「あれ?八幡さんは?」

 

「ヒッキーは平塚先生に呼び出されてたよ」

 

「それより!書記ちゃん!どういうこと!」

 

「藤沢さん、説明してもらえるかしら?」

 

「説明もなにも、私が告白して八幡さんが受けてくれて、付き合ってる。それだけです」

 

「でも、彼はそういった告白は騙されてると思ったりして簡単に受けないはずよ」

 

「はい。ですから、友達になって、一緒に出掛けたり、お昼を一緒に食べたりして仲良くなりました。元々、趣味が近いのも有利でしたかね」

 

「で、でも、ヒッキーは…」

 

「それで、この前の休みから昨日の騒動です。改めて、昨日告白したら、受けてくれたんです」

 

「そ、そんな…先輩は…」

 

「悪い、遅くなった」

 

あ、八幡さん来た♪

 

「いやぁ、平塚先生が根掘り葉掘り聞いてきて…。どうしたんだ?」

 

「今日は終わりにしましょう」

 

「下校時間までにはまだあるだろ」

 

「今日は気分が乗らないわ。由比ヶ浜さん、一色さんもいいわね」

 

「私も帰りたい…かな」

 

「私もです…」

 

「わかった」

 

たぶん、ショックなんだろうな…。でも、これはハッキリさせないといけないこと。私は八幡さんにちゃんと告白した。そして受け入れてもらった。だから…。

 

「ふじ…沙和子?」

 

「は、はい!」

 

「みんな帰ったぞ」

 

「…はい」

 

「あ~、俺が言うのもなんだが…」

 

「はい」

 

「俺は沙和子を選んだ。沙和子が気に病むな」

 

「八幡さんこそ」

 

「よし!帰るか」

 

「帰りは手を繋いで帰りましょう♪」

 

あの三人が八幡さんのことが好きなのはわかっていた。

これは逃げれないことだった…。逃げてはいけないことだった。

でも、辛いなぁ…。目の当たりにしちゃうと。

 

「沙和子?どうした?」

 

「八幡さん、胸をお借りしてもいいですか?」

 

「おう」

 

八幡さん、暖かいな。

 

「泣いてるのか?」

 

「はい…。八幡さんの彼女になるってことは、あの三人から奪うことです。それは、わかってました。でも…、辛い…です」

 

「それもわかる。でもな、それでもだ。俺は沙和子を選んだ。アイツらだって、いつの日かわかってくれるさ」

 

「はい…」

 

また八幡さんの前で泣いてしまった。

 

「沙和子は優しいな」

 

「そんなことないです」

 

「恋敵の為に泣けるなんて」

 

「そんなこと言われたら、また涙が…」

 

「今は泣いとけ」

 

「はい」

 

いっぱい泣いてしまった。

 

翌日も八幡さんと登校。

今日は普通に戻しました。

多少、まだ喧騒は残りましたが、授業を終えて放課後…。

 

「八幡さん、奉仕部行くんですか?」

 

「どうなるかわからんが、行ってみる」

 

「わ、私も…」

 

「沙和子は待っててくれ」

 

「でも…」

 

あっ、頭を撫でられてる…。

 

「心配すんな。これで壊れる関係だとは思ってない」

 

…幸せ。八幡さん、撫でるの上手すぎ。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「私は図書室で待ってます」

 

「何かあったら、連絡する」

 

八幡さんを見送り図書室へ。心配だなぁ…。

 

ん?メール?

『助けてくれ』

すぐに行かなきゃ!!

 

「八幡さん!!」

 

「た、助けて…」

 

何、この距離感…。

 

「頼むから、離れてくれ」

 

「嫌よ」

 

「だってヒッキーとくっつきたいんだモン」

 

「どちらか席を譲ってくださいよ」

 

八幡さんの両脇に先輩方、後ろに生徒会長…。ハーレム?

 

じゃなくて!

 

「皆さん、八幡さんから離れてください!」

 

「た、助かった…」

 

「どうして、こうなってんですか?」

 

「ここに来たら、三人に告白されてだ…」

 

「断られたわ。でも、所詮は高校生の恋愛。いつ心変わりしてもいいようにアピールよ」

 

雪ノ下先輩、付き合い始めたばかりなのに、そんなこと言わないでください。

 

「姫菜がNTR?も需要あるから、頑張れって」

 

たぶん、あの赤眼鏡の先輩ですね、入れ知恵したのは。

 

「先輩には、責任取ってもらわないと」

 

もう十二分に責任果たしてますよね。

「とにかく!八幡さんは渡しません!八幡さんもデレデレしないでください!」

 

「おう」

 

「八幡さんが取られないように、私もここに居ます」

 

「藤沢、そこまでしなくても…」

 

「ちゃんと『沙和子』って呼んでください」

 

「私のことも『雪乃』と呼びなさい」

 

「ヒッキー!私も!」

 

「先輩!」

 

「ダメです!!」

 

あ~!『お前ら全員めんどくさい』って言いたい!

 

「八幡さん、行きますよ」

 

「行くって…」

 

「戦略的撤退です!」

 

八幡さんの手を握り廊下へ走り出す。

 

八幡さんに会うまでは、地味で本を読むことしか楽しみがなかった私が、こんなに賑やかな毎日を過ごすなんて。恋愛ってすごいな。

 

「八幡さん」

 

「なんだ?」

 

「私、今とっても楽しいです」

 

「この状況でそれを言える沙和子ってすげぇな」

 

「私、八幡さんのこと好きになって良かったです」

 

「お、おう」

 

「八幡さん、大好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 




――――――――――――――――


一応、完結です。

アフターストーリーが思いついたら書きます。

お付き合い、ありがとうございました。


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書記ちゃん、怒る

八幡さんとの交際を三人にしてから数日後、今日も一緒に登校。毎日が薔薇色…。

 

「アンタ、生徒会の書記だっけ?ヒキタニと付き合ってるの?趣味悪いね」

 

知ってる…。元・文化祭実行委員長の相模先輩。

 

「ヒキタニって誰ですか?」

 

クラスメイトの名前を間違って覚えてるの?それとも、わざと?

 

「そこの陰キャだよ」

 

「クラスメイトの名前もまともに覚えてないんですか?『ヒキガヤ』って読むんですよ。進学校の総武に通っていて読めないんですか?それともワザとですか?ワザとならイジメですよね?」

 

相模先輩が苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「おい沙和子、そのへんで…」

 

八幡さんもお人好し過ぎますよ。

 

「どうせヒキタニと付き合ってるんだから、アンタだって陰キャでどうしよもない人間なんでしょ」

 

言うに事欠いて…。

 

「おい、相模!」

 

えっ?今の声…。八幡さん?

 

「俺のことは目を瞑る」

 

八幡さんが相模先輩を睨んでる…。怖い。

 

「沙和子のことを悪く言うな。何も知らないクセに」

 

「だって…」

 

「『だって』じゃねぇ。ここじゃ人目がある、放課後に奉仕部に来い。そこで聞いてやる」

 

「嫌だよ。アウェイじゃん」

 

「だったら、友達二人も連れてこい。それともなにか?自分は悪くないと思いながら逃げるのか?」

 

「わ、わかった。行ってやる」

 

相模先輩が去って行った…。怖くて八幡さんの顔が見れない。

 

ん?頭撫でられてる。

 

「ありがとな沙和子。俺の為に怒ってくれて」

 

え?す、凄い笑顔…。格好いい…。

はわわわわわわ。

 

「すいません、八幡さんのこと悪く言われたから」

 

ど、どうしよう。八幡さんと目が合わせられない。たぶん私の顔真っ赤だ。

 

「ま、放課後に決着つけるさ。教室行くわ、またな」

 

「は、はい」

 

八幡さんが行って、やっと顔があげられる。

ん?何人か女子がぽ~っとしてる。

 

教室に入ると、『藤沢さんの彼氏格好いい』とか、『沙和子ちゃんの彼氏とお話ししたい』とか…。八幡さんのギャップ萌えにやられた人が数名。

 

昼休み、八幡さんのクラスに行くと、教室を覗く同学年の女子達…。

『あの人だよ。格好いい』とか『生徒会の娘が羨ましい』とか聞こえる。…行きずらい。

こんなことで八幡さんを待たせてはいけない。意を決して…。

 

「八幡さん、お待たせしました」

 

「おう」

 

「では、行きましょう」

 

由比ヶ浜先輩が、ガルルルとか言ってる。

赤眼鏡の先輩、『ハヤ×ハチが』って泣かないでください。なんですか?八幡先輩で変な妄想しないでください。

相模先輩はっと…、こちらを睨んでますね。おぉ怖い。

 

お弁当を食べてる最中に八幡さんが申し訳なさそうな顔をしている。

 

「どうしたんですか?」

 

「…相模とのイザコザに沙和子を巻き込んでしまって、すまないなぁと…」

 

「何を言ってるんですか。私が自分から首を突っ込んだんですよ」

 

「それでもなぁ…」

 

「放課後、決着をつけるんですよね?」

 

「それでいいじゃないですか」

 

「ありがとな」

 

放課後、相模先輩をギャフンと言わせないと!



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書記ちゃん、論破する

さぁ、放課後。

 

部室には、雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩、会長に、…私の八幡さん♪

…言ってみたかっただけです。爆発させないでください。

 

「悪いな、こんなことに部室使わせてもらって」

 

「私も無関係ではないから、かまわないわ」

 

「ヒッキー、私たちを頼ってくれて嬉しいよ」

 

「私は何があったのか知りたいです」

 

一人興味本位がいました。

 

しばらくして、相模先輩と…、相模先輩の友達かな?文実の時に見たことある人が二人と…。何故か葉山先輩。

 

「なんで葉山が来たんだよ」

 

「いやぁ、相模さんにどうしてもって言われて」

 

「だって、葉山君は屋上に居たじゃん」

 

「まずは、相模。沙和子…。藤沢に謝れ」

 

「なんで謝らなきゃいけないの!」

 

「俺と付き合ってるってだけで否定したからだ」

 

「だって…」

 

「相模さん、それはいけないな。謝ろうか」

 

「う、うん。ごめんなさい」

 

葉山先輩に言われたから謝るんですか。

 

「沙和子もいいか?」

 

「はい」

 

八幡さんがそれでいいなら。

 

「それでだ、お前は一つ勘違いをしている」

 

「な、なによ」

 

「朝のあの場で相模を沙和子…藤沢が論破したら、お前はどうなる?」

 

相模先輩が驚いた顔をする。でも、すぐに戻った。

 

「論破なんてされないもん」

 

「はぁぁぁ。そうか」

 

相模先輩はわかってない。

 

「八幡さんにお聞きします」

 

「ん?」

 

「相模先輩を罵詈雑言で泣かせたのは本当ですか?」

 

「間違いない」

 

「ほ、ほら…。だからウチは…」

 

「相模先輩にお聞きします。何故、屋上に居たんですか?」

 

「そ、それは…」

 

「順を追って話すと、文実委員長が行方不明になり、葉山先輩達と雪ノ下先輩達が時間稼ぎをした。先に終わった葉山先輩が屋上で八幡さんと相模先輩を見つけた。八幡さんが相模先輩を泣かせた。葉山先輩が相模先輩をステージに連れてきた。間違いないですか?」

 

みなさん、頷く。よろしい。

 

「相模先輩、良かったですね。格好いい葉山先輩に気にかけてもらって悲劇のヒロインになれて」

 

「な、何がいいたいのよ」

 

まだわかってない。

 

「相模先輩はそのまま戻ったら、ただ進行を遅延させたダメ委員長なんですよ。私だって屋上に居たら文句のひとつもいいますよ」

 

「うっ!そ、それは…」

 

やっとわかったみたい…。それと

 

「葉山先輩!そんなことも説明出来ないんですか?」

 

「や、そ、それは…」

 

「沙和子、そのへんにしとけ」

 

むぅ、言い足りない。

 

「わかったか?朝の人が多い下駄箱前だったら、どうなったことか…」

 

俯く相模先輩。

 

「まぁ、過ぎたことだから、俺にはどうでもいいんたがな。ウワサもほぼ消えてるし」

 

八幡さんは甘いなぁ。

 

「相模さん、比企谷君がもう言及しないと言ってるのだから。ただ、もう高校三年生なのだから、もう少し大人の対応をしましょう」

 

「さがみんも、もうヒッキーのこと悪く言わないでね」

 

「まぁ、なんだ、高校生活もあと少しだから、楽しくやろうぜ」

 

うぅ、八幡さんのキラースマイル!ほら、相模先輩一行が赤くなってますよ。

 

「わ、わかった。比企谷、ごめんなさい」

 

「おう。もう気にするな」

 

八幡さんは罪作りです。雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩も八幡さんの笑顔にやられてるじゃないですか。

会長…『絶対、振り向かせる』とか小声で言わないでください。

 

「じゃあ、ウチらは帰るね」

 

「おう」

 

「そうだ!比企谷が海老名さんに告白したってウワサは…」

 

あのウワサ…。どうなんだろう。聞きたい。

 

「うっ!相模、人の色恋に口出しすると痛い目を見るぞ」

 

「そ、そうだね。じゃあね」

 

「じゃあ、俺も行くよ」

 

なんか葉山先輩の顔、引きつってる。

 

「ふぅ。付き合わせて悪かったな」

 

「いいえ、大丈夫よ。紅茶、淹れるわね」

 

「せんぱ~い、そのウワサ聞いたことあるんですけど、どうなんですか?」

 

会長ナイス!

 

あれ?なんか奉仕部の方々の顔が曇りましたね…。

 

「まぁ、あれだ。一色も人の色恋に口出しすると大変だからやめておけ」

 

「そ、そうよ、一色さん」

 

「う、うん、そうだよいろはちゃん」

 

気になる…。私以外に告白したなんて…。

 

私!気になります!

 

…あ、また八幡さんの影響が

 



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書記ちゃんと海老名さん

今日も昼休みに八幡さんを呼びに行く。

…なんで、八幡さんと相模先輩達が話をしてるんですかね?

 

「八幡さん、お待たせしました」

 

「あ、おう。じゃあな相模」

 

「またね」

 

相模先輩、手のひら返しも甚だしい…。由比ヶ浜先輩は唸ってるし。

 

八幡さんが告白した人って、このクラスなのか?

ん?赤眼鏡の人と目があったけど…。あの人『腐女子』っぽいんだよなぁ。まさか、あの人じゃ…。

 

「どうした?行かないのか?」

 

「あ、行きます」

 

 

 

放課後。今日は書類仕事をするために生徒会室に向かっている。早く終わらせて八幡さんに会いたいな。

 

「はろはろ~」

 

ん?八幡さんと同じクラスの赤眼鏡の人だ。

 

「こんにちは」

 

「ヒキタニ君の彼女だよね?」

 

まだこの呼び方。

 

「ヒキタニって誰ですか?」

 

「あぁ、ごめんごめん。このアダ名定着してて。比企谷君の彼女だよね?」

 

「そうですけど」

 

「私、海老名姫菜っていうんだ」

 

この人が…。

 

「藤沢さんだっけ?ちょっとお話しいいかな?」

 

「私も聞きたいことがあったので」

 

「それは好都合」

 

人気のないベンチまで移動。な、殴られたりしないよね?

 

「はい。紅茶でよかったかな?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

八幡さんなら、間違いなくMAXコーヒーなんだろうな。

 

「MAXコーヒーの方が良かったかな?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

読まれてる。

 

「私と比企谷君のウワサは聞いたことある?」

 

「はい」

 

「実はね、私の為にやってくれたんだ」

 

「え?」

 

「私、戸部っち…。同じグループの男の子に告白されそうだったの。それでね、私は誰とも付き合うつもりがなかったから、告白を受けたくなかったんだ」

 

「でも、それならそう言えば…」

 

「それだとグループの雰囲気悪くなっちゃうでしょ。だから、比企谷君にお願いしたんだ。そしたら、告白される直前に割って入って嘘の告白をしてくれた」

 

だから、『告白を邪魔した』とか『横取りした』とか言われてたんだ。

 

「お陰で『誰とも付き合うつもりはない』って、間接的だけど戸部っちに伝えられたんだ」

 

「それって、ヒドクないですか?そのグループって、八幡さんの犠牲の上に成り立っているんですよね?」

 

「そうだね、ヒドイグループだよ。グループの一人にも相談したんだけど、結局はなにもしてくれなかったし…。比企谷君は何も言わないんだ。私を責めてくれない…」

 

海老名先輩、なんか悲しそう。

 

「私と比企谷君て似てるのかもね。私も元々はネクラな腐女子だから。一人でも平気だったのにな、耐性なくなっちゃった」

 

わかるなぁ。

 

「もうダメかな。せっかく比企谷君が守ってくれたんだけど…。また告白されそうなんだ」

 

「海老名先輩、烏滸がましいですが、ちゃんとぶつかってください。それで壊れるグループならそれまでです」

 

「そうするよ」

 

「え?いいんですか?」

 

「藤沢さんは比企谷君と真正面からぶつかったから、付き合っているんでしょ?」

 

「えぇ、まあ」

 

「そうじゃなきゃ、難攻不落の比企谷君は落ちないよ」

 

なんか恥ずかしい。

 

「次はちゃんと言うんだ。『好きな人がいる』って。『お友達でいよう』って」

 

へぇ、好きな人がいるんだ。

 

「八幡さんが何も言わないなら、私が言うことはありません。ただ、好きな人への告白も頑張ってくださいね」

 

「そうだね。頑張って『比企谷君、好きです』って言うよ」

 

え?え!えぇ~~~~~!!!

 

「え、海老名先輩…」

 

「うん、そうだよ。でも、やめないよ。好きな気持ちは止まらない。藤沢さんもわかるよね?」

 

「いや、それはわかりますけど、彼氏に告白するって宣言されても『どうぞ』とはさすがに言えないです」

 

「フラレるのはわかってる。比企谷君、藤沢さんにベタぼれだもん」

 

そ、そういわれると…。

 

「それと一緒にもう一回、ありがとうって伝える。どちらかというと、こっちが本命かな」

 

「そういうことなら」

 

「間違ってNTRしちゃったら、ごめんね」

 

「絶対に離しません!」

 

「ふふふっ」

「あははっ」

 

海老名先輩は、いい顔で帰っていった。

 

八幡さんは、あちこちでフラグを立ててるんですね。困ったラノベ主人公です。

 

あっ!もうこんな時間!

…今日は生徒会はいいかな。

 

 

~~~~~~~~

生徒会室では…。

 

「書記ちゃん、遅い!!今日作業するって聞いたから待ってるのに!」

 



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書記ちゃんのDVD鑑賞会

「DVD準備できました」

 

「すぐ行くから、再生していいぞ」

 

「いいんですか?」

 

「大丈夫だ。『EM○TION』とか『Anipl○x』とか出るから本編までには行ける」

 

「わかりました」

 

今日は八幡さんとアニメ鑑賞会。ご両親は仕事、小町ちゃんは『あとは若いお二人で。あ、今の小町的にポイント高い♪』と言いながら出かけて行った…。

 

手を繋いだり、腕を組んだり、…キスも…えへへ。でも、ひとつ屋根の下で二人きりは…、ドキドキする。

 

「お待たせ。ほい、コーヒー」

 

「ありがとうございます」

 

今日はテレビシリーズの劇場版だ。

 

うん、誰も不幸にならなくてよかった。途中、心配になったけど。

 

「なんか『ご都合主義ここに極まれり』って感じだな」

 

「もう!ハッピーエンドでいいじゃないですか」

 

「先輩が主人公かばって車にひかれた時は、ヤバかったけどな」

 

「確かにそうですね」

 

「俺も一歩間違えてたらそうだったのかな…」

 

「八幡さん、事故にあったことがあるんですか?」

 

「あぁ、沙和子は知らないのか」

 

入学式の事故、奉仕部の方々との出会いを初めて聞いた。

 

「そんなことが…」

 

「まぁ、今はどうでもいいんだけどな」

 

「八幡さん…。ちょっとそこに座ってください」

 

「え?座ってるけど…」

 

「八幡さん、自己犠牲も大概にしてくださいね」

 

「いや、あれはそんなんじゃなくてだな、体が勝手に反応したというか、脊髄反射的にだな…」

 

「それでもです!私は八幡さんが傷ついたら嫌です」

 

「お、おう…」

 

「八幡さんが傷ついたら、私だって心が痛いです。…きっと雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩だって」

 

「そう…だな…」

 

「それに、修学旅行の話、海老名先輩に聞きました」

 

「うぐっ!」

 

「決して誉められる方法ではなかったと思います」

 

「でも!」

 

気がついたら、八幡さんに抱きついていた。

 

「先輩は出来る限りの精一杯をしました」

 

「沙和子…」

 

「今は私がいます。私を頼ってください」

 

「しかしだな…」

 

「頼ってもらえないもの、傷つくんですよ」

 

八幡さんは頭を軽くかいた後、抱きしめてくれました。

 

「わかった、極力頼るようにするよ」

 

「約束ですよ」

 

「おう」

 

「約束の意味も込めて、八幡さんからキスしてください」

 

…何を言ってるんだ、私!調子に乗りすぎだよ!

 

「じゃ、じゃあ…」

 

「…はい」

 

我ながら大胆だったとは思うけど、結果オーライかな。

 

「ただいま~♪」

 

小町ちゃんが帰ってきた。危なかった~。

 

「プリン買ってきたよ」

 

「小町、でかした」

 

「お兄ちゃん達は何観てたの?」

 

「江ノ島のあたりが舞台のヤツだ」

 

「あれね。手紙の話のヤツは?」

 

「今からだけど一緒に観るか?」

 

「えぇ、邪魔しちゃ悪いよ」

 

「小町ちゃん、一緒に観ようよ」

 

「ほら、沙和子も言ってるし」

 

「じゃあ、お茶淹れるね」

「頼む」

 

「ん?お兄ちゃん、藤沢さんのこと名前で呼ばなかった?」

 

「い、いいだろ別に。か、か、彼女なんだから」

 

「お兄ちゃん、藤沢さん、あとで詳しく」

 

夕食の時間まで、小町ちゃんに根掘り葉掘り聞かれました。

 

…恥ずかしい。

 



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書記ちゃん VS 葉山隼人・前編

今日は生徒会の仕事をしてから、奉仕部へ。この前、すっぽかしたら会長に怒られた。反省です。

 

あれは…。八幡さんと葉山先輩?どこへ行くんだろう。海老名先輩なら鼻血を噴き出す場面なんだろうけど…。

後をつけてみよう。

 

屋上に到着。

 

「たの…、と…の告白を…れ」

 

ん?告白?

 

「ことわ…、なんで…いけない…」

 

八幡さんは断った?

 

「なぜ…は…じゃないか」

 

葉山先輩が食い下がってる。

 

「俺に…が…だろ」

 

「ちか…でも…やって…ぞ」

 

力ずく?マズイ!誰かに止めてもらわないと…。

 

えっと、LINEで会長に…『屋上至急来てください』と。

 

「お前は…が…いいのか」

 

「そうじゃ…」

 

白熱してる!会長、早く来て!

 

あっ!足音!

 

「書記ちゃん!」

 

「藤沢さん!」

 

「サワちゃん!」

 

会長!…、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩。あっ!四人のLINEグループにメッセージしちゃった。

 

「しぃ~!今、八幡さんと葉山先輩が話をしてるんですが、雲行きが怪しくて…」

 

言い終わる前に雪ノ下先輩が扉を開けてしまった。

 

「何をやっているのかしら?」

 

「げっ!雪ノ下」

 

「やあ、雪ノ下さん」

 

葉山先輩の仮面のような笑顔…。気持ち悪い。

 

「何をやっているかと聞いているのよ?」

 

「そ、それはだな…」

 

「男同士の話だよ。じゃあ比企谷、考えておいてくれ」

 

葉山先輩が逃げちゃう。

 

「待ってください」

 

「何かな?」

 

「相談なら、奉仕部の部室でしたらどうですか?」

 

「お、おい、沙和子…」

 

「いや、大したことじゃないんだよ…」

 

「だったら、部室で出来ますよね?」

 

「藤沢さんの言うとおりだわ。葉山君、どうなの?」

 

「…」

 

「そう、黙りなのね。もう結構よ、比企谷君に聞くわ」

 

「げっ!俺かよ!」

 

「ま、待ってくれ。わかった話すよ」

 

葉山先輩が観念して奉仕部へ。

道すがら、八幡さんに釘を刺しておく。

 

「八幡さん」

 

「ん?」

 

「一人で相談にのったらダメですよ」

 

「いや、あのだな…」

 

「八幡さんは、押しに弱いし、変に優しいところがあるから心配なんですよ」

 

「うぐっ!すまん」

 

「自分が傷ついて解決しようとするし」

 

「返す言葉もごさいません」

 

奉仕部に着き、長机を挟んで5対1の構図で座る。

 

葉山先輩は俯いてるし、八幡さんは我関せずみたいな顔してるし…。とにかく、雪ノ下先輩が怖い。

 

「それで?葉山君は比企谷君と何を話していたのかしら?」

 

「そ、それは…」

 

なんか言いづらいのかな?

 

「早くしてくれないかしら」

 

雪ノ下先輩、怖い怖い。あと怖い。

 

「…戸部の告白を止めて…ほしい…」

 

あぁ海老名先輩が言った通りだ。

 

「前は成功させてほしい。そして、今回は止めてほしいと…。随分と自分勝手ね」

 

ん?

 

「隼人君は戸部っちを応援してたんじゃないの?それで前に依頼に来たんじゃないの?」

 

あれ?

 

「姫菜は誰とも付き合うつもりがないとわかっているのに、もう一度告白してもフラレるだろ。そうするとグループの雰囲気が…」

 

え?依頼したのって…

 

「すいません。依頼したのって海老名先輩じゃないんですか?」

 

「いいえ。戸部君と葉山君が海老名さんへの告白を成功させてほしいと依頼に来たのよ」

 

おかしい…。

 

「じゃあ、なんで海老名先輩は八幡さんに対して『私の為にやってくれた』なんて言ったんでしょうか?てっきり、海老名先輩から依頼があったのかと…」

「え?」

「え?」

 

雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が驚いてる。八幡さんは目を手で覆ってるし、葉山先輩は顔色が悪くなってる気が…。

 

「藤沢さん、それはどこで聞いたのかしら?」

 

「先日、海老名先輩から聞きました」

 

「比企谷君…」

 

「はひっ!」

 

雪ノ下先輩、さらに怖くなったよぅ。

 

「どういうことかしら?」

 

「それはアレがコレで…」

 

八幡さん、誤魔化すの下手過ぎです。

 

「ここまで来たら、誤魔化せないわよ」

 

「あ~、わかったよ。戸部と葉山が来た後に海老名さんが来ただろ?その時だよ」

 

「でも、姫菜はいつも通りだったけど…」

 

「まあな。俺も謎解きが出来たのは直前だ。『戸部の告白を止めてほしい』なんてな」

 

「そんな…」

 

「じゃあ、ヒッキーは…」

 

「ふたつ…。いや、三つか…。相反する依頼があったんだよ」

 

「それで先輩は『嘘告白』をしたんですね?」

 

「そういうことだ」

 

雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が呆然としてる。会長はなるほどといった顔。

 

「比企谷君」

「ヒッキー」

 

「ん?」

 

「その…、ごめんなさい」

「ごめんなさい」

 

雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が八幡さんに謝ってる…。

 

「もう終わったことだ。気にするな」

 

八幡さんは優しいな。

 

「それに、あんなやり方しか出来なかった俺も悪い」

 

「でも…」

 

「でももストもねぇよ。俺が気にしてないんだから、お前らも気にするな」

 

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

 

うん、良い光景だ。

でも、なにか引っかかる…。

 

「あの~、葉山先輩」

 

「何かな?」

 

ステキデスヨ~、ヒキツッタエガオ。

 

「もしかして、海老名先輩からも相談されてました?」

 

あっ、固まった。



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書記ちゃん VS 葉山隼人・後編

「藤沢さん、どうしてそう思うのかしら?」

 

「これも海老名先輩が言っていたんですけど、グループの一人に相談したけどダメだったって」

 

「どうなの?葉山君」

 

「…」

 

「また黙りなのね」

 

「優美子に相談してた様子はないし、大岡君と大和君に話すとも思えないし…」

 

「そうなんですか?葉山先輩」

 

「お、俺には出来なかった…」

 

こ、この人は…。八幡さんが何も言わないのをいいことに…。

 

「お、おい、沙和子…」

 

気がついたら、立ち上がっていた。

 

「葉山先輩、八幡さんが『嘘告白』をしたのが噂になってるのは知ってますよね?」

 

「あ、ああ」

 

「貴方たちのグループの為にそうなっているんですよ。何とも思わないんですか!」

 

「よせ、沙和子!」

 

「で、でも…」

 

うう…、言い足りない。

 

「なぁ、葉山。お前はどうしたいんだ?」

 

「俺はみんな仲良く…」

 

「また俺が犠牲になればいいのか?」

 

「そ、そんなことは…」

 

「俺に個人的に相談してきた時点でダウトだ」

 

「だったらどうすれば…」

 

「知るかよ。お前が考えろ」

 

「そんな無責任な」

 

「責任転嫁してるお前が言うな」

 

「葉山先輩は八幡さんを陥れたいんですか?」

 

「そんなつもりは…」

 

「実際、そうなってるじゃないですか!」

 

「沙和子、落ち着け」

 

「…はい」

 

「葉山、自浄出来ないグループなら、それまでだ。諦めるんだな」

 

「そんな…」

 

あれ?雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩の周りに怒りのオーラが見える…。

 

「無責任は貴方よ、葉山君」

 

雪ノ下先輩が…。それでは、暗黒面に堕ちてしまいます。

 

「どっちにもいい顔しようとするから、こうなるのよ。所詮、貴方は昔から変わっていなかったのよ」

 

「隼人君、なんでそう言ってくれなかったの!言ってくれたら、もっと別の方法も考えられたかもしれないんだよ!」

 

由比ヶ浜先輩まで…。

 

 

「そのへんにしといてやれ」

 

 

「まだよ」

 

え?雪ノ下先輩?

 

「葉山君、貴方が…貴方が…こんな依頼しなければ!」

 

「お、おい、雪ノ下」

 

雪ノ下先輩が葉山先輩の胸ぐらを掴んだ!ヤバイ!ヤバイ!

 

「私は比企谷君と付き合えたかもしれないのよ!!どうしてくれるのよ!」

 

雪ノ下先輩が壊れた!

 

「そうだよ隼人君!!」

 

由比ヶ浜先輩も参戦!

 

葉山先輩がぐわんぐわん揺すられてる!

 

「沙和子!一色!二人を止めてくれ!」

 

「は、はい!」

 

 

~~~~~~~~~~

 

「ごめんなさい、取り乱してしまって」

 

「ごめんね」

 

「まったくだよ」

 

やっと、落ち着いてくれました。

 

「葉山先輩」

 

「なんだい?」

 

「人を好きになる気持ちは止められるものじゃありません。中途半端に介入するとこうなります。海老名先輩と戸部先輩とちゃんと話をしてください」

 

「隼人君、あと優美子にも相談しようよ」

 

「あぁ、そうするよ」

 

「こんなんでいいか?海老名さん」

 

え?海老名さんなんて…。

 

扉が開いた…。海老名先輩!

 

「はろはろ~。さすが比企谷君」

 

「ボッチの観察力を侮るなよ。…ん?『比企谷君』?」

 

「まぁまぁ、気にしないの」

 

「戸部も居るんだろ?」

 

「ちい~す」

 

「私はね、比企谷君をはじめ、みんなに謝ろうと思ってね」

 

「海老名さんは気にしなくていいわ。悪いのはこの葉虫くんよ」

 

は、葉虫…。

 

「あはは。私達はもう大丈夫よ。ね、ヒッキー」

 

「まあな」

 

「ヒキタニく~ん、雪ノ下さん、結衣ちゃん、ごめんな」

 

「『ヒキガヤ』です!」

 

「すいません」

 

「こっちこそ、すまなかったな。戸部も気にするな」

 

「それと、比企谷君の彼女怖いな」コソコソ

 

「俺もそう思う」コソコソ

 

「コソコソ話さない!」

 

「はい!」

「はい!」

 

「それと、もう1つあるんだよ」

 

戸部先輩が海老名先輩に向き直った。

 

「海老名さん、好きです。付き合ってください」

 

えっ!ここで戸部先輩が!

 

「ごめんなさい。私、好きな人がいるから」

 

「そっか~」

 

「でも、戸部っちとは友達でいたいな」

 

「おう!今はそれでいいべ。いつか振り向かせてやんよ」

 

戸部先輩、海老名先輩、ちゃんと言えてよかった。

 

海老名先輩が私に目配せを…。

はっ!今なの!

 

「比企谷八幡君」

 

「へ?俺?」

 

「好きです。付き合ってください」

 

みんなキョトンとしてる。それはそうですよね。

 

「あ、いや、海老名さんが俺のことを好きになる理由がわからん」

 

「前にも言ったけど、比企谷君となら上手く付き合えそう。それに、あんなことされたら、嫌でも気になるよ」

 

「まぁそのなんだ。気持ちは嬉しいが、俺には付き合ってるひとがいるから…。その…、すまない」

 

「うん、わかってたよ。ね、藤沢ちゃん」

 

「はい。絶対にNTRはさせませんよ」

 

「だとよ葉山。あとはお前だけだ」

 

「お、俺は…」

 

八幡さんがドアに向かって歩きだした。

 

「三浦、こいつらの話を聞いてやってくれ」

 

ドアを開けると八幡さん達と同じクラスの金髪の人が…。

 

「あ、あーしは…」

 

俯いて、今にも泣きそう。

 

「雪ノ下、すまんが部室をこいつらに貸してやってくれないか?」

 

「仕方ないわね。一色さんもいいわね?」

 

「はい、了解です」

 

「由比ヶ浜、頼むぞ」

 

「任せて」

 

「海老名先輩…」

 

「大丈夫よ、藤沢ちゃん」

 

この後、どんな話になるかはわからないけど、由比ヶ浜先輩と海老名先輩を見る限り大丈夫そうだ。

 

それにしても…。

 

「八幡さん、色々抱え込み過ぎです」

 

「うぐっ!すまん」



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書記ちゃん VS 葉山隼人 その後

通称『葉山グループ』の騒動の翌日、八幡さんと登校している。

 

「八幡さん…」

 

「ん?」

 

「…大丈夫だったんでしょうか?」

 

「アイツらか?」

 

「…はい」

 

「大丈夫なんじゃねぇの。知らんけど、たぶん」

 

「それじゃあ…」

 

「まぁ、少なくとも沙和子が気にすることじゃねぇよ」

 

そう言って、八幡さんは頭を撫でてくれる。はぅ~、アカンやつやぁ~。

 

軽く昇天しかけながら下駄箱に着くと…。

 

「ヒキオ!」

 

斬新なアダ名!八幡さん、ビクッてなりすぎ。

 

「三浦か、急に声かけるなよ」

 

「あ、あのこれ…」

 

三浦先輩から差し出されたのはMAXコーヒー。

 

「貰ういわれが無いんだが…」

 

「あーし達のグループが迷惑かけたから、そのお詫びと昨日のお礼」

 

「いや、三浦は知らなかったんだから仕方ねぇだろ」

 

「それでも…」

 

「八幡さん、受け取ってあげてください。ね、三浦先輩」

 

「あ、うん」

 

「わかった、三浦からのお詫びとお礼は受け取ったよ」

 

そう言って八幡さんはMAXコーヒーを受け取った。

 

「藤沢だっけ?アンタもありがと」

 

「いえ、私はなにも…」

 

そう言って三浦先輩は立ち去る。格好いい…。

 

角を曲がる前に、こちらに向き直った。

 

「結衣には悪いけど、アンタ達お似合いだよ」

 

ふ、不意討ち…。そ、そそそそそそんな…、お似合いなんて…。

 

 

「沙和子、顔が赤いぞ…」

 

「そういう八幡さんだって…」

 

「行くか」

 

「はい」

 

授業が終わり、奉仕部へ向かう。由比ヶ浜先輩から昨日の報告があるとのこと。

 

奉仕部へ向かう途中、八幡さんと葉山先輩が話をしているところに遭遇した。また、何かよからぬことを…。

 

ん?八幡さんが葉山先輩からMAXコーヒーを受け取ってる。葉山先輩のイケメンスマイルに嫌そうな顔の八幡さん。

 

あっ!こっちに気がついた。

 

「やぁ、藤沢さん。君にも迷惑かけたね」

 

「いえ…」

 

「じゃあ、比企谷。俺はこれで」

 

「じゃあな」

 

葉山先輩を見送った後。

 

「八幡さん、大丈夫でしたか?変なこと言われなかったですか?」

 

「ん?あぁ、修学旅行の件、すまなかったってさ」

 

「それだけですか?」

 

「あと…、まぁこれは…」

 

「なんですか?言ってください」

 

「いや、その…な、三浦と同じこと言われた…」

 

そ、それは、私と八幡さんはお似合いと…。

 

「顔が赤いぞ」

 

「八幡さんもです」

 

「…部室行くか」

 

「…はい」

 

部室に着くと、由比ヶ浜先輩が平謝り。雪ノ下先輩も海老名さんの遠回しの依頼を見抜けなかったことや、その後の対応を謝っていた。

 

「で、何この大量のマッカンは?」

 

「これは私達からのお詫びの印よ」

 

「ヒッキー好きでしょ?」

 

「でも、いっぺんに飲んではダメよ。比企谷君の体調管理は私がしてあげるから」

 

雪ノ下先輩、何をモジモジしながら言ってるんですか?

 

「そうだよ。私も見てあげるからね」

 

由比ヶ浜先輩も乗らないでください。

 

「い、いや、大丈夫だからね」

 

「そうです。八幡さんの体調管理は私がしますから」

 

雪ノ下先輩、小声で『あの葉虫のせいで』とか言わないでください、怖いです。

由比ヶ浜先輩も『ヒッキーにお弁当を』とかやめてください。

あと会長、『私にもまだチャンスが』とか言ってないで二人を止めてください。

 

とりあえず、一件落着ですかね。

 

でも、また八幡さんを狙うひとが増えてしまいました。

 

そんなことを考えていたら、八幡さんが小声で私に…。

 

「沙和子、何を難しい顔してるんだ?可愛い顔が台無しだぞ」

 

う~!八幡さん、不意討ちは卑怯です!

 

 

 

 

 




―――――――――――――――――


書記ちゃんファンの方々、お待たせして、すいませんでした。


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終・書記ちゃんの恋

今日は図書館で八幡さんと勉強会。

 

「八幡さん、ここ教えてください」

 

「ん?ここはな…」

 

隣同士で勉強とか、嬉しすぎる!

しばらくして八幡さんが体を伸ばして。

 

「少し休憩しようか」

 

「そうですね」

 

お茶を飲みながら、大学の話になる。

 

「私、八幡さんと同じことを大学に行きたいです」

 

「う~ん、気持ちは嬉しいが、それじゃあダメだ。俺は沙和子の夢や目標の妨げになりたくない」

 

「そう…ですよね…」

 

八幡さんなら、そう言うと思っていたけど、少し寂しい。

 

「八幡さんは、将来はどうしたいんですか?」

 

「ん?専業主夫…」

 

ガクッ!

 

「と、思っていたんだけどな。なってみたい職業があるんだ」

 

「教えてもらってもいいですか?」

 

「笑うなよ」

 

「笑いません」

 

「俺…、教師になってみたいんだ」

 

「理由を聞いてもいいですか?」

 

「誰にも言うなよ」

 

「はい」

 

「実は、平塚先生に憧れていたんだ。美人だし格好いいし趣味も近いし」

 

「そ、それは異性としてですか?」

 

「今思えば、それもあるかもな」

 

むぅ!私というものがありながら!

 

「怒るなよ。今は沙和子一筋だから」

 

「じゃあ、許します」

 

「話を戻すぞ。異性として見ていたのと同時に、俺みたいな捻れたヤツを気にかけて導いてくれて…。そんな大人になりたいと思っていたのが、いつの日か教師になりたいって思うように変わっていてな。だから、大学は教育学部があるところだな」

 

「じゃあ私、やっぱり八幡さんと同じ大学に行きます!私も先生になりたいんです」

 

嬉しい。八幡さんと同じ目標なんて。

 

「なんか、嬉しいな。沙和子が同じ目標だったなんて」

 

八幡さんも同じように感じてくれていたんだ。

 

「よし、同じ目標に向かって、頑張るか」

 

「はい!」

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

時は流れ、八幡さんが卒業する日がやってきてしまった。

 

「八幡さん、卒業おめでとうございます」

 

「ありがとな。沙和子のお陰で良い高校生活になったよ」

 

「八幡さ~ん、やっぱり卒業しないでくださ~い」

 

思わず本音がでてしまった。

 

「そんなこと言うなよ。それにこんなに涙を流して。可愛い顔が台無しだ」

 

「可愛くなくていいから、八幡さんと離れたくないです」

 

「何を言ってるんだ。別れる訳じゃないんだから」

 

「そうですけど…」

 

八幡さんが頭を撫でてくれる。

 

「いっぱいメールしてくれますか?」

 

「もちろん」

 

「いっぱい電話してくれますか?」

 

「あぁ」

 

「いっぱいデートしてくれますか?」

 

「その為に、バイトするよ」

 

「浮気しませんか?」

 

「沙和子一筋だ。沙和子は可愛いから、俺の方が心配まである」

 

「じゃあ、じゃあ…」

 

何か言おうとしたら、八幡さんが抱き締めてくれた。

 

「沙和子、先に大学で待ってるからな」

 

「…はい!」

 

 

~~~~~~~~~~~

 

八幡さんは大学へ、私は三年生になった。

約束通り、メールも電話もデートもいっぱいした。

…奉仕部のお二人と交流がまだあるのは、要注意ですが…。

 

 

 

八幡さんと同じ大学に合格し、私の卒業式の日になった。

 

生徒会やクラスで別れを惜しんでいると、なにやら騒がしい。クラスメイトに聞いてみよう。

 

「どうかしたの?」

 

「あのね、凄いイケメンが校門で花束持って立ってるんだって。誰かの彼氏かな?」

 

…まさか。

 

校門に行くと、見慣れた人が緊張しながら花束を持って立っていた。

 

「沙和子、卒業おめで…んん!」

 

思わず抱きついてキスをしてしまった。

 

校舎の方から黄色い声が凄かった。

 

「沙和子、ビックリするだろ」

 

「嬉しくて、つい…」

 

「まぁ、いいか。もう帰れるのか?」

 

「はい」

 

「んじゃ、行くか」

 

「お父さんとお母さんが、八幡さんが来るの待ってますよ」

 

「マジか。まだ緊張するんだよな」

 

そんな話をしながら、母校をあとにする。

 

 

私の青春ラブコメ、間違ってないよね。

 

 








最後、駆け足になってしまいましたが、これで完結です。ありがとうございました。


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