煌めいた彩りは新しい春を運ぶ (♡チェケ♡)
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始まり

オリジナル設定がかなり入っております。
ご注意下さい。



高校二年生の春、バイトしている芸能事務所に学校の後輩が入ってきた。

名前は丸山彩《まるやまあや》。一つ下でピンクの髪がチャームポイント。少し緊張しやすいとこがあるが、容姿は別格。性格もよくアイドルとしてはかなりポイントが高いだろう。

俺は新人サポートの仕事をしており、丸山と学校で面識もあったので自然な流れで丸山のサポートに入ることになった。

「今日から2年間。君のサポートを担当させてもらう。一応社交辞令として自己紹介だ。花咲川学園2年生、黒峰煌成《くろみねこうせい》だ。分からないことがあったら俺に聞いてくれ。できる限りのことはする。よろしく頼む」

「は、はい!わたし、丸みゃま彩でしゅっ!あっ……」

凄いな。1回の自己紹介で2回噛んだぞ……。よくオーディション大丈夫だったな……。

なんて考えていると、丸山は真っ赤な顔して訂正してきた。

「すすすすみませんっ!ま・る・や・ま・あ・や・です!今日からよろしくお願いしましゅっ!…………」

もう笑いをこらえることができない……この子は、色々な意味で才能を秘めているのかもしれない……。

「わ、笑わないでください〜!!」

「すまない……ククッ。しかし丸山。君はどうしてアイドルになろうと?」

ふと気になり、丸山に尋ねてみると、少し懐かしそうな顔をして、丸山は語り始めた。

「私はね……!!」

顔を赤くしていたさっきまでとは違い、輝いた顔をして夢を語る彼女の顔を見て、俺はさっきの冗談混じりの考えを肯定していた。

きっと丸山は、他人に夢を見させることが出来る人間になれる。

「それでね、私も……」

「わかった。丸山」

まだまだ話し足りなさそうな丸山を制し、俺は目を閉じ、自分と丸山のこれからについて告げる。

「俺がお前をサポートできる期間は2年間だ。その間に仕事が来るとも限らないし、アイドルでいられるとも限らない。でも俺は、お前は誰よりも輝けるアイドルになれると信じている」

1度言葉を切り、丸山を見ると、さっきまでとも違う。キリッとした真剣な面持ちでこっちの目を見ている。

その目を見て、俺は微笑んで言葉を続ける。

「だから、お前も俺を信じて欲しい。必ず、俺がお前を立派なアイドルにしてみせる」

そう言葉にし、丸山に手を差し出した。

その差し出された手を握り、丸山も口を開く。

「うん!私からもよろしくお願いします!」

 

この時から、俺と丸山の2年間が、幕を開けた。

俺にとっても、彼女にとっても忘れられない、新しい春の始まりである。




初めて書いたのですが、やはり書くのは難しいものですね。
しかし、とても楽しいものでした。
もし読んでくださったのならば、亀投稿の私を是非とも見守ってください。m(_ _)m


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私だけの『個性』

レッスンを重ねていくうちに煌成にはある疑問が……。
丸山には、確実に足りないものがある…。
一体、彩は何故オーディションに受かったのか…?



※視点変更があります。
オリジナル設定が盛り沢山です。


ー某アイドル育成スタジオー

「1.2.3.4、5.6.7.8」

リズムをとりながら一心不乱にダンスを踊る丸山を見ながら煌成はずっと考えていた。

顔もよし。性格もアイドルとしてはよし。スタイルも悪くない丸山だが、明らかに足りないものがある。

それは、()()だ。丸山に圧倒的に足りてないもの。

しかしこれはオーディションの時に見られているはずだし、俺が上の人にあいつのことを説明された時に、「個性があって未来がある子だ」と言っていた。

だからこそこんな疑問を抱くはずがないのだが……。

「7.8……。よし。今日はここまでだ。丸山、上がっていいぞ」

考え事をしていると時間が進むのを早く感じるな……。もういい時間だし、家に帰ってから考えよう。

そう思い帰る支度を始めようとすると、丸山から声をかけられた。

「あ、あの……!」

「ん?どうした?」

「煌成くん…、何か悩み事があるんじゃないですか?」

「!!」

そこまで露骨だったか。これは不覚だ。

だがこれは同時にいい機会だろう。聞いてみよう。あの時(オーディション)のことを。

「丸山。お前、オーディションの時に何か派手なことをやったか?」

「え?派手なこと…?うーん、やってないと思いますよ?」

自覚はないか…。再現してもらえばわかりやすいか……?

「丸山。疲れているとこ悪いんだが、オーディションでやったことを再現して貰えないか?これも大切なことなんだ」

やはりサポートしていく立場として、丸山の中の個性は知っておかなくてはならないだろう。案の定、丸山は元気に返事していそいそと準備を始めた。

「じゃあ、質問のとこお願いしますね!」

「おう。任せておけ」

俺自身も他の人のオーディションをやったため、一応質問内容は覚えている。

「じゃあ丸山さん。あなたは何故アイドルになろうと?」

「はい。それは私はあるアイドルに……」

 

 

 

色々と聞き出せた。しかし再現でわかったことと言えば、丸山が噛みまくったことくらいだろう。なんならなんで受かったのか分からなくなってきてしまったレベルだ。

だが、このトーク下手を凌駕する()()がオーディションであったはずなんだ……。はず…だよな……。

他の審査員に心の中で問いかけつつ、俺と丸山は帰る支度をしていた。

「煌成くん。今日もありがとうございました!」

「おう。お疲れ。じゃあまた次の……」

「煌成くん?」

突然言葉を切った俺を丸山が不思議そうな顔をして見ている。

「丸山…お前の()()って……なんだと思う?」

やはり、気になってしまう。

俺はそこに、丸山彩というアイドル性が詰まっている、そんなことを思っているのだから…。

 

 

「私の…個性……?」

 

 

 

 

ー3日後・花咲側学園1ーB教室ー

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

4限目を終えるチャイムがなり、途端に周りが騒がしくなる。

くぅ〜。

どうやら、私のお腹も限界が近かったようだ…。

アイドルとして、恥ずかしい……。

そんなこと考えながら、お弁当を持ち、同じクラスの花音ちゃんの所へと向かう。

「花音ちゃ〜ん。お昼、食べよ〜」

「うん、彩ちゃん。私、もうお腹ペコペコだよ」

「私もだよ〜。そのせいで授業中、食べ物のことばっか考えてたよ〜」

「彩ちゃん、なんかソワソワしてたもんね」

「えぇ!?そんなソワソワしてた!?」

そんなぁ…。恥ずかしい…。

確かに授業にあまり集中していなかったが、それは別にお腹が空いていただけでは無い。

 

「お前の個性って……なんだと思う?」

 

煌成くんに言われた、あの一言。

それが未だに胸につっかえている。

「私の個性かぁ……」

なんて小さく呟くと、花音ちゃんに聞かれてしまった。

「個性?彩ちゃん、個性がどうしたの?」

「え?聞こえてた?」

「うん。私の個性かぁ…って。バッチリ」

思わず顔が赤くなる。

しかし、これは相談出来るいい機会かもしれない。

「今ちょっと悩んでることがあってさ……」

そう切り出し、オーディションの再現をしたことや、煌成くんに言われたことを花音ちゃんに話した。

 

「……でも私は自分の個性っていうのがよく分からなくて…。どうすればいいのかな?」

「うぅーん……」

軽く唸ってあと、花音ちゃんはゆっくりと話し始めた。

「彩ちゃんは可愛いし、面白いし、とってもいい子だと思うよ…!それに、明るいし、あ、あと趣味も沢山あるし…え、えーっとつまり…彩ちゃんは元々個性豊かなんじゃないかな…いやでも個性について聞かれるってことはそれじゃ…ふぇぇぇ……」

「……」

なんか、私が恥ずかしいだけな気がする。

しかし、こんなに他人にいい所というのを言って貰えると、なんだか勇気が出てくる気がする。

煌成くんに個性について聞かれた時、私は一瞬私とのレッスンでは個性を感じない、そう思われたんだろうと思っていた。

私の中身がカラッポとまでは言い過ぎかもしれないが、そんな感じのことではないか、と考えていた。

「ありがとう花音ちゃん。私、頑張るよ!」

しかし、花音ちゃんは未だにこんがらがっていた。

「ふ、ふぇぇぇ……」

「か、花音ちゃーん!?」

 

 

 

 

ー その頃2ーB教室ー

どこもかしこも昼休みで騒いでいる中、1人だけ机に突っ伏している青年がいた。

そう。黒峰煌成。

クラスの中でも面倒見のいい性格で人気者の彼だが、疲れている時は机に突っ伏す癖があるというのは周知の事実のため、誰も彼に近づかない。

……決して嫌われてはいない。むしろ好かれている。

「はぁ〜っ。はぁ……」

…溜め息しかでてこねぇ……。

まさか、こんだけ悩んどいて理由が()()はねぇだろ……。

 

 

 

ー時を遡ること、5時間前ー

学校前にスマホを見ると、上司から動画が送られてきていた。

それは丸山のオーディションが保存されているものであり、煌成が無理を言って送って貰ったものであった。

上司に感謝を込めてLINEを送り、煌成は真剣な気持ちで動画を再生させた……。

 

 

そして、今に至る。

「なんで…。()()はあいつにとって派手なことじゃないとでも言うのか……!?」

そこで煌成が目にした物は、正気を疑うものであった。

それは、再現の時に省いた、自己紹介の部分であった。

 

「じゃあ君、番号と名前を」

「1227番!まん丸お山に彩りを!丸山彩です!よろしくお願いします!」

 

衝撃だった。

本来元気をアピールするくらいしかない、名前の部分。別のことなんか言おうものなら即刻退場も有り得る。

そこでまさかの最大級の個性(とちり)が来るとは……。

そりゃあ個性のある子だったって言うよ!だってやべえ奴だもん!

偶然にも審査員が1番の古株で1番の決定権を持つ好奇心の塊の様な人だったからギリギリ通ったようなものだ。

謎は解けた。だがなんかスッキリしない。

次のレッスンの前に、しっかり問い詰めてやろう。

そう腹に決めた煌成であった……。

 

 

 

それから2日後のレッスンで、彩がこってり怒られたのは言うまでもないだろう……。




なんか…難しいなって……。
前回よりも大分長くしました。良ければコメント、評価をよろしくお願いします。
オチを考えるのはとても難しいですね…。私も彩のように日々精進。
頑張っていきますので応援していただけると嬉しいです。


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「夢」へと進む、新たな1歩

6月10日。煌成の元に一通のメールが届く。
それは、丸山彩にとって1つ目の挑戦。
絶対に成功させるー!気合十分。彩の挑戦が始まる。


※安定のオリジナル設定
丸山視点多めです。良ければ、どっちの視点を多くして欲しい!などという意見があればコメントで教えて下さると嬉しいです。


朝、家から学校に向かおうとすると事務所からメールが届いた。

メール?事務所からなんて珍しいな……。

そう思い内容を見ると、そこには驚きの内容が書かれていた。

「丸山……!!」

俺はいてもたってもいられず、学校に向かって駆け出した。

 

 

ー花咲川学園1ーB教室前廊下ー

「ふんふふんふふーん」

朝からアイスを食べるという禁忌を犯したお陰で機嫌がよい私は、鼻歌を歌いながら教室へと歩いていた。

すると、教室の前で震えている花音ちゃんがいた。

「ふぇぇぇ……」

「かっ花音ちゃん!?どうかしたの!?」

急いで駆け寄ると、花音ちゃんは教室の中を指さし、その中に()()いることを教えてくれた。

何?不審者?とにかく確かめてみないことには……。

覚悟を決め、教室を覗くとそこにいたのは…。

「おお!丸山!やっと来たか!」

今まで見たことがないようなハイテンションで教壇の前に立っていた、煌成くんだった。

「えっ、えっえっ、ええええ!?なんで煌成くん!?」

「丸山!ちょっとこい!」

……ハイテンション煌成くんは、聞く耳も持ってくれず、そのまま教室から連れ出された。

こんなテンションの煌成くん、見たことない…。

煌成くんと言えば、冷静で、周囲に気を使える優しい人だってひとつ上の先輩が言ってたのに…。

「フフ、フフフ……」

なんかニヤニヤしながら笑っている。

こんなの…こんなの煌成くんじゃなーい!

 

 

ー体育館裏ー

教室から拉致され、着いたのは体育館裏だった。

ふと、クラスの女の子が言ってたことを思い出す。

…確かうちの体育館裏って告白スポットじゃ……?

ってええ!?まさかそういうこと!?心の準備が…。

「さてと…丸山、大事な話があるんだ」

き、きたああああ!!この真剣な顔!絶対きた!……どうしようかな。

「丸山……」

「…はい」

…覚悟を決め、私は煌成くんと向かい合った。

「お前に、モデルの話が来た」

「私は…って、え?」

…いま、煌成くんなんて言ってた?

「いいか、お前が、モデルとして雑誌に載るんだ。これは大いなる1歩だぞ!」

「……」

…し、仕事の話かーーーーい!!!

 

 

 

ー1ーB教室3限目ー

モデル…私、雑誌に載るんだ……!

煌成くんに言われた話を聞いて、私はずっと顔がニヤけるのを止める

のに必死だった。

いや別にちょっと期待なんてしてませんし?なんとも思ってないですし?

でも可愛い服を着て雑誌に載るなんて、ずっと夢だった……!

事務所に入ってからの初仕事……必ず成功させなきゃ…!

必ず…!成功……!

……あれ?失敗したら…、もしかしてクビ!?

「イタタタ…。急にお腹が……」

き、緊張してきちゃった…!

 

…その頃煌成は、丸山の緊張など考えず、ひたすらニヤニヤしていたらしい……。

 

 

 

ー1ーB教室お昼休みー

チャイムがなり、お弁当を用意していると花音ちゃんが心配そうな顔して話しかけてきた。

「彩ちゃん、ずっとお腹痛そうな顔してたけど大丈夫?保健室行く?」

う、思いっきりバレてたか…。

「全然大丈夫!ちょっと色々あって緊張してただけだから…」

「うん。それならいいけど…。何か不安なこととかあったら、いつでも相談してね」

うう……花音ちゃん優しい…。

ほんとに花音ちゃんはいい子だ……見てるだけで癒される…。

私が事務所に受かったことを教えた人は少ない。やっぱりアイドルになった時にみんなに私から伝えて有名になるのではなく、突然知ってビックリして欲しい。そう思ったからである。

でも花音ちゃんには嬉しくて思わず言ってしまった…。

だからこそ、クビになったとか言っちゃったら、毎日心配してきそうだ……。

そんなことは、あっちゃだめだよ!

 

そう決意を強く固め、私はお弁当の唐揚げにかぶりついた。

 

 

 

ー2週間後 撮影スタジオー

モデルのことを丸山に伝えてから、2週間がたち、何回も重ねたレッスンにより丸山も大分いいポージングを保てるようになった。

今回のお題は、大人びた女子大生。

正直丸山とはかけ離れている気がするが、意外とハマっている。

大人びた服のおかげで、なんだか落ち着いた雰囲気が出ているのだろう。丸山も緊張しながらも頑張っている。

そして、今日が本番なわけだが……。

「おせえな、丸山…」

丸山が、トイレから帰ってこない……。

どうせ緊張しているのだろう。それは仕方の無いことだ。

幸いスタッフも、撮影自体はいつでもいいと言ってくれているので問題は無いが、さすがに遅い。もう20分近く経つ。

かと言って女子トイレに入るわけにもいかない。待つしかないのか。

特にやることも無くふらふらしていると、近くにいたスタッフが声をかけてきた。

「丸山さん、なかなか出てこないですね」

「そうですね。ご迷惑をおかけして、本当にすみません」

…丸山、後で説教だな。

そんなこと考えていると、スタッフから驚きの言葉が出てきた。

「まあ丸山ちゃんは、期待の星ですからね。いくらでも待てますよ!」

「き、期待の星?」

「ええ。みんな言ってますよ。期待の星だって」

…そうか。期待されてんだな、あいつも。

フッと微笑んで、スタッフにお礼をする。

「ありがとうございます。あいつはきっとこれから有名になると俺も信じています。良ければ、応援してやってください」

…俺に出来ることは、少ない。だけど、俺だってあいつを応援してやりたい。

絶対に、()()()みたいなことにはさせない。

そんなこと思いながらスタッフと話していると、やっと丸山が出てきた。

「お、お待たせしてすみましぇん!お願いしましゅ!」

……カミッカミだなあ、おい。

 

 

ー撮影開始直前ー

…うう、緊張する……。

トイレで「私は大丈夫」って何回も言ったし手のひらに人って書いて何回も飲み込んだけど、緊張する…。

でも…、私は……。

撮影スタンバイ前に煌成くんに言われたことが、私に勇気をくれた。

「いいか。お前が緊張しやすいのは知ってる。だけど、お前は大丈夫だ。お前は今日まで、物凄く練習を頑張った。これまでよりも、ずっと頑張った。だから、大丈夫だ。努力は、裏切らない」

そう言って頭の上に乗せられた手は、暖かかった。

私を、信じてくれている人がいる。

私は……大丈夫!

「それでは、始めまーす!」

 

 

「……オッケーでーす!お疲れ様でしたー!」

お…終わった……。

次の瞬間、どっと疲れが身体に襲いかかり、私はその場に座り込んだ。

「き…緊張したあ……!」

でも、震えもしなかったし、ほとんど全部1発OKだった。

なにより、楽しかった。

これが、私の新しい一歩……!

達成感に胸をいっぱいにしていると、煌成くんが歩いてきた。

「丸山、最高だったよ」

煌成くんはそう一言いい、私の頭に手を乗せてくれた。

 

 

…やはりその手は、暖かかった。

私は、踏み出せたんだ。




前より投稿の間隔が空いたのは、この物語の全体をまとめていました。そんなめちゃくちゃ長い……ってほどにはならないと思います。
それまでに私も彩のように1歩ずつ成長していきたいものですね……。
次は、定期テストのお話になる予定です。この世界線の彩の成績が楽しみですね……。

もしよろしければ、評価や感想。お気に入り登録などをしていただけると嬉しいです!
また、Twitterでチェケという名前で投稿の報告などを始めたので、良ければフォローお願いします。近々、Twitterで絵の投稿も考えております……。
これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。


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「努力」に彩られた奇跡

学生達にとって最大の壁ー!
定期テスト……
慌てふためく彩に煌成は爆弾発言!?
努力すれば……目標は…



※オリジナル設定もりもり
視点変更ありあり
煌成多めですかな
話の中での時間の流れが少し分かりづらいかもしれません。ご注意ください


6月後半……。

丸山の前に、1つの壁が立ち塞がった……。

 

 

 

ー花咲川学園2ーB教室朝のホームルームー

「えー、今日からテスト期間だ。えー、部活動も2週間停止。えー、みんなしっかり勉強するように」

…もうそんな時期か。

最近は色々と忙しかったし、テストのことなんてすっかり忘れてたな……。

まあ俺はなんとかなるだろう。

()()……な。

 

 

ー1ーB教室朝のホームルームー

「今日からテスト期間に入りますよー。皆さん頑張りましょうねー」

……えっ?

周囲がザワつく中、彩は1人固まっていた。

 

 

……勉強が、やばい!!!

 

ー1ーB教室昼休みー

いつも通り花音ちゃんと2人でご飯を食べていると、花音ちゃんがため息混じりに、

「もうテストかぁ…。今回の範囲、大丈夫かなぁ……」

と呟いた。

正直、私は大丈夫じゃない。

オーディションに受かったこと、モデルとして雑誌に載ったことなどが続き、まったく勉強に集中してなかった…。

で、でも…赤点さえ免れれば……。30点以上だっけ?

そんなこと考えていると、花音ちゃんから聞き覚えの無い話が出た。

「先生も意地悪だよね。平均点より下になった教科は水曜と金曜に補習だなんて……」

「えっ?」

嘘、私それ知らない。

「か、花音ちゃん?そんなこと言ってたっけ?」

「ふぇ?彩ちゃん、朝のホームルームの時に言ってたよ」

そう言ってニコッと微笑む花音ちゃんを見て、私は癒され

 

 

なーーーい!

まずい、まずい、まずい。

水曜と金曜は煌成くんのレッスンの日だ。

もし補習があるから出られませんなんて言ったら……。

頑張らなきゃ!!

 

こうして、彩の平均点越えへの猛勉強が始まるのであった……。

 

 

ー放課後ー

学校帰りに丸山がいたから、丁度いいと思い近くのカフェに寄ることにした。

理由はもちろん。テストについて話すためだ。

本人もそれを分かっているのだろう。さっきからこの世の終わりみたいな顔とやる気十分の顔が交互に出てきてちょっと面白いことになっている。

……これが未来のアイドル候補か。

「……テストについて、ですよね…」

この世の終わりの顔で丸山が切り出す。首を縦に振ると、もっと酷い顔になった。面白いなおい。

このまま芸人としてデビューさせてみるのもありかなとかくだらないこと考えていると、いきなり丸山が頭を下げた。

「ごめん煌成くん!私、もしかしたらテスト明けのレッスン行けないかもしれません!」

「知ってる」

「えっ?」

既に丸山の担任に確認済みだ。その事もあって話をしに来たのに、あの先生、丸山に伝えてくれていないようだ。

「お前の担任に聞いた。今から話すことは、他言するな」

そう釘をさし、俺はテスト期間の話を始めた。

「まず、お前は平均点より下でも補習には行かなくていい。その代わりにテスト期間は水曜と金曜以外は補習を受けてもらう。まあそれは仕方の無いことだな」

「じゃ、じゃあ…レッスンには行けるんだね!」

ようやくいつもの笑顔に戻った丸山だが、残念なことにそんな美味すぎる話はこの世界にない。

「ああ。赤点さえ取らなければな」

「…………」

「ちなみに俺はお前の普段の成績まで担任に確認しておいた。かなりまずいみたいだが、まあ赤点は無いだろ」

…まあ確認したというより、担任からもはや相談のような形で聞かされたのだが、これは黙っておこう。

「こ、煌成くん……」

「なんだ?」

「…私、勉強してくる!!」

そう言って席から勢いよく立ち上がり、そのまま店から出ていった。

「……店の中走るなよ…。ん、あいつプリント落としていきやがったな」

カバンからハラリと落ちたその紙を見ると、どうやら今日行われた数学の小テストのようだった。

「へえ…。どれどれ……50点中………2点?」

 

 

……どうやら、思っていたよりも事態は深刻らしい。

 

…てかあいつ、金払ってねえなおい。

深いため息をひとつ吐き、俺はカフェを後にした。

 

 

 

ーテスト前最後のレッスンー

「1、2、3、4。1、2、3、4!」

……どうしたものか。ここ最近の丸山は動きにキレがまるでない。

テストが近づいてるから緊張でもしてるのか?とにかく、これ以上は逆効果だな。

「丸山、今日はちょっとこれで終わりだ。帰る支度をしろ」

「えっ?は…はいっ」

俺が荷物をまとめ始めると、丸山もタオルで汗を拭きながら、いそいそと荷物を片付け始めた。

……明らかにフラフラしてんな。

「ちょっと丸山、こっち向け」

「え?どうしたの?」

そう言ってこっちを見た丸山の目元には、明らかに睡眠不足がわかるクマが出来ていた。

「お前な…。勉強が大変なのはわかるけど体調崩したら元も子もないぞ?」

そう諭すが、丸山は首を横に振った。

「ううん。私、今頑張らないとダメなの。自分で決めたの。だからやらせて欲しい…です」

無茶はさせられない。だが、気持ちは汲み取りたい。

そんなむず痒い気持ちにさらされながら、俺は仕方なく首を縦に振った。

「……無茶はすんなよ」

そう言って頭に手をのせると、丸山は嬉しそうな顔で頷いた。

「うんっ!」

……その元気は、勉強の時用にとっておいて欲しいものだな。

 

 

そして遂に、決戦の時

 

……眠い。

とっても眠い。けれど、その分勉強はみっちりした。

途中で諦めそうになったけど、なんとか諦めずに出来た。

……これも煌成くんのおかげかな。

 

私、頑張るよ!!

 

そして、地獄の2日間が始まった。

 

 

 

ー花咲川学園2ーB教室放課後ー

全てのテスト返却が終わり、クラス中がその話題で持ち切りになりながら騒いでる中、俺は丸山のことを考えていた。

あいつ、大丈夫だろうか。

心配なことが2つある。

1つはもちろん点数のこと。そしてもう1つはー。

「こ、煌成くん!」

「ま、丸山?」

帰り支度を済ませ、バッグをもって教室を出ると廊下に丸山が立っていた。

 

 

………その目には、涙が浮かんでいた。

 

 

時を遡り、1ーB教室6限目世界史テスト返却

 

……これが最後の返却。これまでの返されたテストは、ギリギリのもあったけど、赤点じゃあなかった。でも、この世界史は……。

1番最後にあったテストだったのだが、丸山はこのテストの最中に力尽きて()()()()()()のだ。

……神様、仏様、アレキサンドロス様!どうか…私に御加護を……!

答案が返されている中、目をつぶり祈っていると、

「……。丸山ー」

きた!

緊張にドキドキしながら、私は答案を受け取った。

その場でバッ!と見ると、点数を書く所には、赤い文字で2()8()と書かれていた。

 

……ごめん、煌成くん。私、ダメだったよ…。

 

少し出そうになった涙をぐっと堪え、席に戻ろうとすると、世界史の先生に呼び止められた。

「ああ、丸山。お前のテスト採点ミスの所直すの忘れちまってたな。すまんすまん。今直すわ」

「えっ?」

 

そう言い答案に先生は、1つの丸と31という数字を付け足した。

思わず、崩れ落ちそうになった。

……私は、成し遂げたよ………。

 

 

そして、今に戻る。

 

「……ギリギリすぎじゃないか?」

「うっ」

唸る丸山に、思ったことをぶつける。

「確かにレッスンで周りの奴らよりも忙しいだろうが、学校側が配慮してくれるのは事務所に入りたてだった今回だけの特例だぞ。次もこんな点数だったら間違いなく補習いきだな」

「か、返す言葉もございません……」

そう言い項垂れる丸山は、結構しょげているようだった。

 

「……まあ、今回は目標は達成できたしな。取り敢えず、お疲れ様」

そう言い、丸山の頭に手を乗せる。

「…しっかり休めよ」

「…うん」

 

 

…頬を赤らめて答える丸山は、まるで只の女子高校生のようだった。

 

 

 

……ちなみに俺は、10教科で合計967点でクラス2位だった。




テスト期間で夜中まで勉強する気持ちはわかりますけど、睡眠はしっかりとりましょうね。
高校生は教科が多いし、大変ですが高校生の皆さんは負けずに頑張って下さい。
この世界線の彩はまさかのお馬鹿ちゃんでした……。まあそこはご愛嬌ということで…。
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止まらない煌めき

事務所のお偉いさんに呼び出された煌成と彩……
煌成も聞かされていない「重大な話」とは?


彩、再び大きな1歩を踏み出すとき!

そして、煌成からまさかの話が……

※オリジナル設定山盛り
視点変更なんてあってないようなもの(読めばわかります)


ー某事務所待合室ー

俺と丸山は今、2人並んで座り、待合室でお偉いさんが来るのを待っている。

さっきから隣でそわそわしてる丸山は置いといて、何故こうなったかを振り返るとしよう。事の発端はあの時……

 

ー三日前レッスン中ー

目の前でダンスの練習をする丸山を止め、1度水分補給を入れる。

「うん。いい感じだな。ダンスのキレもリズムもいい」

最近の丸山の成長っぷりは凄まじいものがある。テストという鎖から解き放たれたからか、なんだか思い切ってやっている感じがする。

「でも煌成くん。ここのリズムが…」

「ああ、ここはだな……」

というふうにいつも通りレッスンをしていると、突然事務所のお偉いさん、山岸さんが入ってきた。

「頑張っているようだね、丸山くん。黒峰くん」

「はっ、はひぃっ。え、えっと……」

「ご無沙汰しています。山岸さん。急にどうしたのですか?」

とちっている丸山は置いといて、用件を尋ねる。

「ああ。ちょっと話があってね。次の日曜日、2時に事務所の待合室に来てくれるかな」

日曜日か…。特に何もないな。

「丸山は日曜日、大丈夫か?」

「えっ、う、うん!大丈夫です!」

「そうかそうか。じゃあ、よろしく頼むよ」

そう言い、山岸さんは部屋から出ていった。

ここですぐには話せないようなことなのだろう。心当たりは特にないが……。

 

……いい話だといいんだけどな。

 

 

そして、時は戻り今。あと2分ほどで山岸さんが来る予定だ。話の時間次第でこの後、夕飯の買い出しにでも行こうか。

俺がこの後の予定について考えていると、丸山に肩をつつかれた。

「ん?どうした丸山」

「イレ……」

「なんだ?聞こえんぞ」

「とっ、トイレ行きたい……」

 

……今!?

 

まずい、もう時間もない。

だが、話が長く、途中で万が一があるのも最悪だ。

とにかくすぐ行かせるしか……。

「いそいで行っ」

「待たせたね、2人とも。さあ、話を始めようか」

……最悪のタイミングだなあ、おい。

横をちらりと見ると、丸山は覚悟を決めたような顔をして俺に頷いてきた。

…頑張れよ、丸山。

 

「さて、話の内容なんだが、とってもいい話だぞ。丸山くん。君は次の雑誌で表紙として出てもらう。3ページほどだが、丸山くんのページになるわけだな」

 

まったく、トイレくらい行っとけよ、アイドルを目指すものとして…………え?丸山が表紙?

ちょっと突然過ぎて何言ってるかがよく分からない。急にどういうことだ?

「実はな、丸山くんの出た雑誌がものすごい勢いでで売れているんだよ。買った人達に聞いてみると、新人のピンク髪の子が可愛くて、真似したくなるからだそうだ。嬉しいことじゃないか」

「す、凄いな……」

思わず言葉が漏れ、丸山も喜んでいるだろうと横を見ると、プルプルと震えている丸山がいた。

…それは嬉しくて震えているんだよな。決してトイレを我慢して震えているんじゃないよな。

「ははは。震えるほど嬉しいか。まあ話はこんな簡単なものだが、丸山くんも新人なのにここまで頑張っとるということでな、打ち合わせとかでこれからここを使うこともあるだろうし、お試し程度でここに呼び出したんだ」

配慮はとてもありがたい。丸山にとってもいい経験になっただろう。

でもトイレ行かせてあげて。ほんとに。

「まあというわけでな。詳しいことは黒峰くんのとこにメールがいくだろう。何か質問はあるかな?」

「ありません!」

「ははは。いい返事だよ、丸山くん。君はやっぱり元気がいいね!そのキャラで……」

おいおい、丸山さん?顔が青ざめてますよ?

仕方が無いので、話をきらせてもらおう。

「今日は時間をとっていただきありがとうございます。取り敢えず僕も丸山と話し合いながら準備を進めていきますね。今日はありがとうございました」

そう手短に言い残し、丸山と部屋から出る。山岸さんは少し話したりなそうだったが、ここは勘弁してもらおう。

「ごめんね」

部屋を出るなり、丸山は一言言い残してトイレへと走っていった。

 

……()()が表紙か…。

 

丸山への期待と不安を混じらせながら、俺は取り敢えず説教だなと心に決めた。

……トイレくらい行っといてくれよ。ほんとに。

 

 

 

ー撮影日当日撮影スタジオー

丸山の付き添いでここのスタジオに来る回数も増えたな。最近は2週間に1回は撮影してるし、あいつのファンとかも出てくるのか…。

「はい彩ちゃーん、もう少し足曲げてー!」

「はい!」

もう随分慣れたようで、緊張もしてないみたいだ。

初めての表紙ってことで浮かれてないか心配だったが、集中力がそれを上回っているのだろう。完璧な仕上がりだ。

「はーい、OKでーす!」

いつもよりも早く終わったな。これも成長の証か。

丸山の出来に満足していると、スタッフが駆け寄ってきた。

「今回の雑誌は、もう来週にはすぐに店で売り出されると思うので、是非買ってあげてくださいね」

「はい。ありがとうございます。気が向いたら、買いますよ」

来週か。随分早いな。……買うのも、ありか。いやまてよ?どうせなら……

「煌成くーん!終わったよー!」

「おう。取り敢えず帰るか」

スタッフにお礼をいい、丸山とスタジオを出た。

俺と丸山の家からそのスタジオまでは2駅なので、比較的早く帰れる。

「ふぅ〜。結構緊張しちゃったよ〜。変じゃなかったですか?」

「ああ。良かったよ。成長してるな」

そう言い頭に手を乗せると、丸山はとても喜ぶ。まるで犬のようだ。

確かに最近の丸山は頑張っている。ここらでご褒美があってもいいだろう。

「なあ、丸山」

「なんですか?」

「お前、来週の日曜日は空いているか?」

「来週ですか?ちょっと今確認しますね」

そう言いスマホをいじっている丸山を見ながら、俺はさっきのスタッフの話を思い出す。すぐに売られることを、丸山は知らないだろう。

「あ、空いてますね。仕事なんかありましたっけ?」

「いや、仕事はない。ただ……」

「ただ?」

「最近頑張ってるしな。来週の日曜日、好きな物を奢ってやる。駅前に出来たでかいショッピングモールにでも行かないか?」

これが俺のしてやれるご褒美の限界だ。だが丸山は嫌がるかもな……。

全然反応しない丸山を見ると、顔を真っ赤に染めてワナワナ震えていた。

「どうした?トイレか?」

「違います!ただ……」

「ただ?」

「う、嬉しいだけです!絶対行きましょうね!」

「お、おう」

急に黙りこくったり、元気になったりよく分からんやつだな。

 

そこからは2人で談笑しながら、家へと帰っていった。

 

 

 

ー帰宅後丸山宅ー

家から帰るなり、私はベッドに飛び込んだ。

もう表紙の撮影なんて覚えてない。1番覚えているのは、帰り道の煌成くんからのお誘い……。

 

こ、こ、これって、デートのお誘い!?

 

 

そんな気は全くない煌成と、勘違いガールの彩の気持ちが、来週あんな事態を起こすことになるなんて、この時はまだ誰も知る由もなかった……。




そうです。次はデート回です。
私が1番書きたい話ですので、しっかりと書くため少し投稿に間隔が空いてしまうかもしれませんが、よろしければ心をウキウキさせてお待ちください。
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増していく煌めき

まさかの煌成からのお出かけのお誘い!
意識たっぷりの丸山と意識0の煌成!
2人はどうなってしまうのか!?




※オリジナル設定ドカ盛
視点変更彩多め なんならほぼ彩
彩の煌成に対する口調が、敬語とタメ口が混ざっていますが、これは煌成はタメ口で良いというのに対し敬語を使いたい彩が混乱してごちゃ混ぜにになってるイメージと捉えてください。


ーデート(?)前日午後9時丸山宅ー

 

「えーっと、この服だったら…これで……バッグはこれ…、いや、こっちの方がいいかな?」

私、丸山彩は今、今までで1番困っていることがある。

それは、明日煌成くんと出かける時に来ていく服だ。

「最近服買いに行ってないから、良いのが少ないよ〜!」

うう……気合い入れて服選ぼうと思ったのに、去年着てたやつとかしかない…今日買いに行っておけば良かった……。

 

ーその頃、煌成ベッドに横たわりスマホをいじり始めるー

 

「あ!この服だったら……。いや、でもそれだと下が…」

 

ー煌成、意識を手放すー

 

「……!この服だ!!!」

 

ー煌成、熟睡ー

 

彩が服を決めた時には、煌成は既に寝ていた……。

 

「ふぅ〜。やっといいのが決まったよ〜。よし、明日は頑張ろう!」

そう思い時計を見ると、もう11時になっていた。

「えぇ〜!?早く寝ないと〜!」

私は急いで服を片付け、歯磨きをしてベッドに横たわった。

目を閉じると、煌成くんの顔が浮かんでくる。

こんなに明日を楽しみにしたのはいつぶりだろうか。

そこで彩は、自分に1つの疑問を抱いた。

 

……なんで私は、こんなに楽しみにしているの?

なんて考えているうちに、彩は寝てしまった。

 

 

 

ー翌日丸山宅ー

7時に目が覚め、リビングに向かうともう朝ごはんが置いてあった。

キッチンにいるお母さんにおはようといい、パンを1口かじる。

今日は9時に駅前に集合。私の家からだと30分くらいかかるから8時20分には出ないと…。

「へへ……」

この後煌成くんと出かけるんだと思うと、思わずにやけてしまう。すると、お母さんに声をかけられた。

「彩、あんた今日友達と遊びに行くんでしょ?」

「え、うん。そうだよ」

「……デート?」

「ふぇぇっ!?ち、ちがうよっ!?」

突然何を言い出すのだこの人は。そんなわけ…ない、かな…?

少しずつ頬が赤くなってくのを感じながら、私は考える。

年頃の男女が2人でお出かけ…。これはもうデートと言ってもいいのではないか?ならば……!

「おっ…お母さん!」

「なあに?」

「お、お化粧して欲しいの!!」

 

ーお化粧中ー

煌成くんは、はっきり言ってイケメンだ。私のクラスにもファンがいるくらい。そんな人と2人で出かけるのだ。私もそれなりに可愛い格好でなくちゃ……。

なにより、ちょっと煌成くんに褒めて欲しかったりも……

ってコラ!私何考えてるの!?

なんて考えていると、お母さんの手が止まった。どうやら終わったみたいだ。時間もいい感じの時間になっている。

「じゃあ、頑張りなさいよ。ふふっ」

1人でにやけながら洗濯物を取り込みに行くお母さんに敬礼をし、私は荷物をまとめて家を出た。

「行ってきます」

 

なんだか、いつもと違う気分だな。

 

 

ー午前8時30分駅前ー

「いい感じの時間だな」

駅で買ったコーヒーを飲みながら煌成は1人ごちる。

少し早く集合場所に来たのには、理由がある。

本屋に、()()を取りに行かなければならないのだ。あらかじめ予約もしといたから、間違いなくあるはず。

 

本屋につくと、真っ先にファッション誌のコーナーへと向かう。

そしてそこにある1つの雑誌を手に取り、俺は思わず頬が緩んだ。

そこに置いてあるのは、彼女の()()()()

「……丸山」

……お前は、もうここまで来たんだよ。

そう心の中で呟き、俺は本を受け取った。

そして、もう1つの準備も、既に万端である。

 

 

 

ー午前9時駅前ー

フンフーンと鼻歌混じりに歩いていると、黒い服を着た煌成くんがいた。煌成くんはこっちに気づくと、小さく手を振ってくれた。

 

ドキッ

 

「え……?」

なんだろう。今、一瞬胸が痛くなった気がする。

突然のことにビックリしながらも、彩は煌成くんの元へと駆け足で向かっていった。

 

「お待たせ!待った?」

「いや、今きたとこだよ」

こ、ここ……恋人っぽいぃぃぃ!!!

なんだろ、この展開、少女漫画で見たことある気がする!!

え、煌成くん、もしかして狙ってきてるのかな!?え!?

「……丸山」

「へっ?ど、どしたの?」

「その服、よく似合ってるよ」

ええええええええっっ!!?これ、もう少女漫画だよ!私、少女漫画の世界に転生しちゃった!?

現実であることを確かめるために頬をつねるが、当然ただ痛いだけである。

「ど、どうした?」

明らかに煌成くんが困惑してる。そりゃそうだよね。…でも、ワガママ言うなら化粧にも触れて欲しかったり…

ダメダメ!

冷静さを取り戻してきた彩は、1番気になってることを聞く。

「それで煌成くん……今日は何をするんですか?」

「ああ…なんか美味いもんでも食べて適当に買い物でもしようと思ってな……。まあぶらぶらしたいってことだな。……嫌だったか?」

「いやいや!むしろ私もぶらぶらしたかったんで!」

休みの日に家で一人なんて悲しい。誘ってくれたのは本当に有難かった。

「じゃあ何か買いたいものとかあるか?」

「う〜ん……あ!私、服が見たいです!」

「そうか。じゃあ店向かうか」

そう言い歩き出した煌成くんの横に並び、私は思わずニヤつく。

 

す…すっごくデートっぽいぃぃぃ!!!

一人ニヤつく彩だが、悲しいことに煌成は全く違うことを考えていた。

 

 

……なるほど。彩の私服だとこういうファッションなのか。なら今度モデルの服のタイプを変えてみてもいいかもしれないな…。

「いい感じかもな……」

思わず撮影風景を思い描きニヤついてしまう。いけない。今日はプライベートなのだから……。

 

 

美男美女がニヤつきながら歩いている様はカップルに見えるのかもしれない。だが、この状況で間違いなく言えるのは意識しているのが彩だけだという悲しい事実であった。

 

ーショッピングモール内 服屋ー

「わぁ〜!オシャレなのがいっぱい〜!!」

久々の買い物にテンションが上がっていた私は、片っ端から服を見ていった。すると、薄いピンク色の可愛いワンピースがあり、思わず手に取る。

「か…可愛いっ!」

思わず大きめの声を出してしまい、恥ずかしくなってあたりをキョロキョロすると、なにやら服を漁っている煌成くんの姿が見えた。

「丸山ー。ちょっと来てくれー」

突然呼ばれ、煌成くんの元へと向かう。

「見てくれこれ。今お前が履いてるのと似合うんじゃないか?あとは…、このパーカーもありだと思うんだよな。それに…」

大量の服を抱えて煌成くんは熱弁し始める。

完全に仕事モードに入っているよ煌成くん……

 

しかし渡されたものは本当に可愛かったので、試着室を借りて着てみることになった。

 

「じゃーん!!どうかな!?このフリフリとっても可愛いよね!」

パシャッ

「わあ!これ少し大人っぽいけど私に似合うかな…?どう?煌成くん!?」

パシャパシャッ

「これはこの前撮影したやつと似てるね〜!どう…」

パシャ!

「ってなんでカメラ撮ってんの煌成くん!?」

もう…バッチリ仕事じゃん……

煌成くんはブツブツつぶやき始めるとやっと私が言ったことに反応してくれた。

「ああ、今度この写真を向こうの会社の人に送ってみようと思ってな…せっかくな…」

せっかく?なにがせっかくなんだろう?

「ほら……せっかく…可愛く化粧してるんだから…な?」

そう言い恥ずかしそうに顔を背ける煌成くん。

まさか、化粧に気づいてもらえることがこんなに幸せなことだとは…夢にも思ってなかった…!

 

昨日の夜、私は気づいてしまった。

私はもしかしたら、煌成くんに恋愛感情を持ち始めてしまっているのかもしれない。

学校ですれ違って挨拶をしてくれる時、学校から二人でレッスンに行く時、レッスンの時、レッスンの帰り道の時。

私はいつのまにか、煌成くんと居られる時間が大好きになってしまったのだろう。

 

でも……この恋は…叶ってはいけない恋だから…

 

「どうした丸山?そんなボーッとして。早く次の店に行こう」

ああっと、いけない。つい考え込んでしまった。

「はい!早く行きましょう!どこに行くんですか?」

「最近できたアクセショップなんだけどな…」

 

……私は今、肩を並べて歩いていられるこの時を大切にしよう。

 

 

 

沢山の店を周り、たくさんはしゃいで流石に疲れた私達は、そろそろ帰ろうと言う話になった。すると、

「あ、丸山。ちょっと本屋に寄っていいか?買いたいやつがあってな」

「あ、全然いいですよ!行きましょう!」

煌成くんはかなり頭がいいらしい。私も次のテストの時は勉強を教えてもらうことにしよっと。

本屋に着くと、なにやら周りから視線を感じた。

何だろうと思い、煌成くんに聞こうと顔を見ると、煌成くんは顔をニヤつかせていた。

なんだろう…?もっ、もしかして、カップルに見られてるとかかな!!?

さっき振り払った煩悩を再登場させ、私も顔がニヤつき始める。

するといきなり、煌成くんに手を繋がれた。

「わわっ!!きゅ、急にどぅるしたの!?」

うう…ベロがヒリヒリする〜。

すると煌成くんは驚きの発言をした。

「ちょっと目を閉じて、このままついてきて」

 

ええっ?きゅ、急に何!?もしかして何かのサプライズとか?それとも有名人とご対面!?な、何が起こっちゃうの〜!?

少し歩き、煌成くんが私の姿勢を横に変え、

「丸山、目開けていいぞ」

と言った。そして、私が目を開けると、そこにあったのは…

 

『話題の新ファッション!可愛さ満点のJKが着こなしをレクチャー☆ :表紙 丸山彩』

私の、表紙の雑誌だった。

一瞬、世界の時が止まったように辺りが静かになる。

「丸山。お前の努力の証だ」

そう言い煌成くんは、バッグから出した袋に入れられている私の雑誌を、私の手に握らせた。

私の…努力…!!

突然のサプライズにリアクションができずにいると、隣で雑誌を読んでた三人組の女子高生がヒソヒソ話し始めた。

「あれって、あの表紙の子じゃなーい?」

「うわっ!顔ちっちゃ!いいな〜!」

「憧れちゃうよね〜!あれ買ってく?」

そう言い、雑誌を一つ取りレジへと向かって行った。

 

…私の夢は、アイドルになることだ。それはすぐにはなれないことはわかっている。

勿論、モデルの仕事も楽しい。しかし、心のどこかでこれは私の夢ではない、と思っていたのもまた事実だった。

でも、私の歩んできた一歩一歩は間違いなく、夢へと続いているのだ。

 

ありがとう煌成くん…!きっと、このために誘ってくれたんだ…!

思わず煌成くんの手を握る。彼の右の耳元で囁く。

「ありがとう煌成くん…!大好き……!」

そういい煌成くんの胸に顔を埋める。煌成くんはその温かい手で私の背中をポンポン叩いてくれた。

 

本当にありがとう…。やっぱり私は……

 

あれ?私、さっき何言った?

 

「………キャーーーーーーーー!!!」

思わず叫んで、煌成くんを突き飛ばして店を出る。

わ、わ、わたひ…ひ…言っちゃった……!

その勢いのまま外まで出ようとすると、後ろから腕を掴まれた。

「つ…捕まえた……」

その手の持ち主は、ゼェゼェ言いながら私の腕をガッチリと掴んでいる。

「まったく…店の中でそんなデリカシーのないことをすんな……店にも…迷惑だろ…」

どうやら、煌成くんは店の人に謝ってから来たらしい。にしても早すぎる気もするが、本当に申し訳ないことをした。

「ご…ごめんなさい…」

「…ま、今日は許すさ。オフだしな。にしても丸山、一つ聞いていいか?」

「え?なにがですか?」

「お前さ、ありがとうの後、なんて言ったの?聞こえなくな…」

え?

突然の衝撃発言に、思わず体が固まる。

「聞こえ…なかったんですか?」

「ああ、なんて言ったんだ?」

 

お…思わずだとはいえ想いは伝わったと思ったのに…聞こえなかっただなんて…!

「ふん!煌成くんなんてもう知りません!勝手に考えといてください!」

「ちょっ!なんで怒ってんだ!?」

「知らないです!ふんだ!私もう帰りますから!……ふふっ」

「あ!今笑ったな!?怒ってないだろ!」

「怒ってますー!激おこですー!」

 

こんなくだらないやりとりも、私にとっては大切な時間なのだ。

やっぱり私は、煌成くんとの時間を大切にしていこう。そう胸に誓った。




たいっへん!お待たせしました!
なぜこんなにかかったのか、言い訳をさせて頂きますと、プライベートが忙しかったのと、私が恋人がいたことがなく一体デートとはどういったものなのかがわからないという始末でした!なのでデートの内容もそんなに濃くなく、本当に申し訳ないです。
しかし、私なりに彩の想いを書いてみたので、よければこれからも彩の恋路を見守っていてやってください!

ちなみに、煌成が聞こえなかった理由というのがいずれ明かされるでしょう…!

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煌めいた夏・夢の形 ー前編ー

いよいよ学生たちが待ちに待った夏休み!
みんなが学校から開放される中、煌成と彩は海へ!?
煌成と彩に新しいチャンスが……?




※オリジナル要素の大波
私は海に行ったことがないです。


ー花咲川学園 体育館ー

「えーっ、今日で学校は終わりですが、皆さんも学生ということでしっかりと勉学の面でも……」

壇上で校長が気持ちよさそうに話しているが、俺はそれどころではなかった。

 

……すっごく、眠い。

 

俺たちは今日が終業式なのだが、もはや毎度恒例のごとく校長の話が長い。俺たち2年3年でもキツいのに、これを初めて味わう1年の気持ちなんて考えたくもない。

ふと1年の方を見ると、コックリコックリと体を揺らしている丸山の姿が見える。

あいつ、寝ていやがる……

今日は午後から打ち合わせが入ってるから、叱ってやるとしよう……

 

自分が表紙となった雑誌が発売されてから、丸山の成長ぶりは凄まじかった。歌、ダンス共に上達していき、これならアイドルとして仕事を取れる日も近くなっているだろう。

だが、少し疲れているようにも感じる。

夏休みは少し休ませてやろうと考えていたが、上司から急に打ち合わせを入れられた。

上司からの打ち合わせってことは、どうせなにか面倒なことをやるのだろう……

そんなことを考えながら、俺はそっとまぶたを閉じた。

 

 

ー終業式後 2ーB教室ー

やっとホームルームが終わり、クラス全体が騒がしくなる。すると、クラスの女子から声をかけられた。

「ねえねえ黒峰くん!今日の午後クラスのみんなで遊びに行くんだけど、黒峰くんも来ない?」

「あー、ごめん。今日は用事があるから……」

折角の誘いだが、さすがに打ち合わせをすっぽかすわけにはいかない。するとクラスでよく話す村山がカバンから1つの雑誌を取り出した。

「そーいえば黒峰!この表紙の子可愛くね!?この子結構最近の子らしいんだけどお前見かけたりしない!?」

村山が手に持っていた雑誌は、丸山が表紙になっていた雑誌であった。

「へえ……。この子は見たことがないかな。人気でそうか?」

「そりゃあもう!俺のダチたちもみんな可愛いって言って大盛り上がりよ!」

「それは凄いな。お前が言うならあってるかもな」

「だろー!?」と叫ぶ村山や「村山の事は信じられないよー!」と茶化す女子たちをよそに、これはいいことを聞いたと心の中で村山に感謝する。

「じゃあ俺はもう行くから。みんなまたな」

そう言って教室をでて、俺は事務所へと足を進めた。

 

 

 

ー事務所待合室ー

学校から直行で事務所に向かったため、随分早くついてしまった。打ち合わせが始まる時間まではあと30分もある。

「……喉乾いたな」

ふと思い、自販機に買いに行く。すると、横の通路から上司たちの声が聞こえてきた。

「にしても、本当にいいのか?」

「ああ……。まあ、黒峰くんと丸山くんならいいだろう。2人とも大丈夫さ」

「そうか……。少し不安だがな…」

どうやら声の主は、この後打ち合わせをする人達のようだ。一体、俺達は何をやらされるんだ?

少し不安に思いながらも、俺は水を1本買って待合室へと戻った。

 

 

ー30分後ー

待合室で丸山と座っていると、山岸さんが入ってきた。なにやら真剣な表情の山岸さんに、俺は少し身構える。

「早速本題に入らせてもらおう」

……何を…言われるんだ……?

「黒峰くん。君は、旅行するなら山と海。どっち派だい?」

「……は?」

しまった。思わずタメ口が出てしまった。

……山と海?一体どういうことだ?

「あー。深くは考えなくていいよ。ただ、どっちがいいかって話だ」

「それなら……、海ですかね……」

すると山岸さんは満足そうな顔をして頷き、今度は丸山に顔を向けた。

「では丸山くん。君はどっちがいいと思う?」

「海です!」

即答だなオイ。

俺たちの返事を聞いた山岸さんはニヤリと笑い、俺たちに衝撃的なことを告げた。

「君たちにはこれから、2人で海へバカンスに行ってもらう」

「「……えぇぇぇぇぇぇっ!?」」

 

 

ー打ち合わせ後ー

実際はロケというような形というのを説明され承諾した俺達は帰路へとついていた。

しかし、雑誌でも大きく取り扱ってくれるようだし、俺も丸山も気合いは十分だ。

「にしても、急な話ですねー。私、今から親に言わないとですよー。煌成くんのご両親はすぐにOKだしちゃう系の家庭ですか?」

「あー、かもしれないな」

「えー?私怒られちゃいそうで怖いですよー!」

そういい空を見上げる丸山に、俺は1つ助言を告げる。

「親にはな。適度に自分の夢を伝えておくべきだと俺は思う。やっぱり親は子供のことを応援してくれる存在だからな。しっかりとビジョンが伝わっていれば親も協力してくれるはずだ」

「そういうものですかねぇ……。まあ、頑張ります!」

「おう」

俺と丸山の家はそう遠くない。しかし途中で分かれ道があるのでそこで別れる。

「じゃあ明日までに事務所に連絡しておけよ」

「はい!それではお疲れ様でした!」

「おう。お疲れ」

 

 

 

ー黒峰家ー

「母さん、父さん。今度こそ、成功させてみせるから。見ててくれよな」

 

俺はそう言い、父と母の遺影に手を合わせ、目を瞑った。

 

俺は、今度こそ(アイドル)を形にしてみせる。




かなり遅い投稿ペース……。プライベートが…。
という言い訳とともにシリアスな雰囲気を織り交ぜていっています。一応しっかりと内容は考えておりますので謎な展開とかにはならない予定です。煌成の夢が一体なんなのかは、是非予想してみてください。
少し短くなっておりますが、何話かに繋げていくので、是非とも楽しみに待っていてください。次回は彩の登場回数も増えます。

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煌めいた夏・夢の形 ー中編ー

海での仕事が決まった彩。しかし撮影班にアクシデントが!?
海に胸が踊る彩だが、なにか気になることがあるようで……?



※圧倒的オリジナル
私が行った最後の旅行は2駅先の漫画喫茶
視点変更あるはずだったんだけどなぁ……


雛咲海(ひなさきかい)

 

「煌成くーん!すごく楽しいよー!早くおいでよー!」

丸山の呼ぶ声がする。

見上げると灼熱の太陽。少し吹く風。青い空と青い海。

俺達は今誰よりも夏を体感してるのではないか。そう思う。

 

そもそも仕事で海に来てるはずの俺達が12時になっても遊んでるのには理由があった。

 

ー1時間前ー

2人で電車で海へと来ていた俺と丸山に、1つの電話が入った。

その内容は、交通事故に巻き込まれたから撮影班が遅れるというものだった。

しかし遅れるだけなのでそれまではゆっくりしててくれと言われたから、まだ特に気にしていなかった。

しかし、事はこれで収まらなかった。

 

ー30分前ー

2人で軽めに海を楽しんでいると、またもや電話がかかった。

その内容は、またもや事故が起きて今度は車が動かなくなってしまったということだった。

できるだけ急ぐが、少なくとも今日は撮影は無理だろうということだった。「今日は遊んでていいから」と言われたはいいものの、俺達はもう高校生で、海なんて特にすることもない。

そう思い丸山に事を伝えると、

「わわっ!じゃあ、遊びましょう!海で!」

と目を輝かせながら言ってきた。

…俺がおかしいのか?

 

 

……こうしてなんやかんやで、今に至る。

 

流石にこのままではまずいから、午後からはダンスレッスンをすることにしたが、レッスンをする場所もない。

そもそも今回は海での撮影とロケの様な形でのトークの練習のハズだったのに、撮影班がいないんじゃ何も出来ない。

「……どこか場所を探さなくちゃな」

とりあえず周辺を探ってみようと思い、丸山に声をかける。

「丸山。俺はこれからレッスンが出来そうな場所がないか探してくる。どこか遠くには行くなよ」

「ええっ!?私も行きますよ!」

「いや、折角の海なんだ。楽しんでいるといい」

「いやいや!流石に悪いですよ!……私も少し疲れましたし。気分転換に歩きたいです!」

…まあ別にいいか。折角の夏休みだし楽しませてやりたいが、本人が言うなら大丈夫だろう。

「わかった。じゃあとりあえず着替えてこい」

「はいっ!」

更衣室へとパタパタ走っていく丸山の後ろ姿を見ながら、俺は手に持っていたスマホでマップを開く。

「……お?これは……スタジオか。結構近いな……」

それに、スタジオなら()()()()

とりあえずの目的地も決まったし、事務所に連絡入れておくか……。

 

 

10分近く歩きスタジオで受付をしていると、1時間後からなら入れるということだった。

時間は1時近くなっており、まだ昼食も取っていなかったので近くにあるファミレスに入ることした。

 

ーファミレス内ー

「煌成くん。なににする?」

「海藻サラダとカルボナーラかな」

「カルボナーラいいですねぇ……。私はエビのサラダとミートソースパスタにしますね!」

そう言い丸山が注文をしてくれている間に俺は水を取りに行った。戻ると、丸山がなにか考えているようだ。

「どうした丸山?」

「あの……。1つ煌成くんに聞きたいことがあるんです」

「ん?どうした?」

「ちょっと気になったことなんですけど……。煌成くんの夢って、なんですか?」

「……!!」

なんとなく聞いたことなのだろう。

別に深い意味は無い。そんな丸山の言葉に俺は過剰に反応してしまった。

「ああいやっ。急に失礼でしたかっ!?ごめんなさいっ!」

急に顔がこわばってしまったのだろう。丸山が謝ってくる。

「ああ、ごめんな。ちょっとびっくりして」

「で、ですよね。急に言われたら困っちゃいますよね」

そう言って笑う丸山だが、少し残念そうな顔をしている。

「……俺の夢は、お前だよ」

「…えっ?」

「俺の今の夢は、お前を1人前のアイドルへと育てることだ。確かに今はモデルとかの活動ばかりだが、お前の夢はアイドルになることだよな?」

俺の問いかけに、丸山は即答する。

「はいっ!」

「これはまだ言うなって言われてたんだがな…。実はな。もう進んでいるんだよ」

「なにがですか?」

「…お前らのアイドルユニット結成に向けてのプロジェクトが、だよ」

丸山からすればかなり衝撃的だろう言葉を言ってしまったことを、俺は後悔した。

 

「えっ…?ええええええええええええええっ!!??」

 

店内中に、丸山の絶叫が響き渡ったからである。

 

 

店へしっかりと謝罪し、スタジオの時間になるので店を出た。

未だに丸山は顔を真っ赤にしている。まああれだけ注目されれば恥ずかしくもなるだろう。

「ていうか…煌成くん」

「ん?どうした?」

「私達のアイドルユニットのプロジェクトって、どういうことですか?」

「ああ。まだ細かいところは決まってないんだが、最近流行ってきてるバンドを組み合わせたアイドルバンドって形にするつもりらしいな。お前はボーカルだろうな」

「ふぇ…。そんな話が……」

「いつまでたっても(アイドル)の形が見えてこないのは厳しいだろうしな。上には内緒だぞ」

そう言うと丸山は元気よく頷いた。

 

ースタジオ内ー

「アイドルバンドになったらダンスよりも歌の練習が増えるだろうなぁ……。丁度いいし、ここで歌ってくか」

そう言い受付で借りたギターを手に取ると、丸山が驚いたような顔をしている。

「えっ!?煌成くん、ギターできるの!?」

「まあ多少だがな」

短く答えチューニングを始める。

「よし、終わったぞ」

そして歌い始めた丸山の姿が、俺には眩しかった。

少し見えた夢の形を必死になって追いかけている。

……こいつなら、もしかしたら()()()を超えることができるかもしれない。

俺は少し昔のことを思い返しながらギターをかき鳴らした。

 

 

ーレッスン後ー

「ぷはぁ〜!疲れた〜!!」

3時間くらいぶっ続けで歌ったのだろうか。もう喉が少し痛い。

「丸山、のど飴」

そう言い煌成くんが飴を渡してくれる。

「あっ。ありがとうございます!」

私たちは今宿泊予定のホテルへと向かっている。事務所が取ってくれたところなので結構いい所らしい。

高校生なのにこんな贅沢いいのだろうか……。少し罪悪感に襲われていると、ホテルについた。

「じゃあ丸山。明日は朝はゆっくりでいいからしっかり休めよ。これ鍵な」

そう言い煌成くんは自分の部屋へと向かっていく。

その背中は少し疲れているようだった。

 

 

ー部屋の中ー

……疲れた。

俺は部屋に入るなりそのままベッドに頭から突っ込んだ。

久しぶりのギターに少しテンションが上がってしまった。明日は筋肉痛かもな……。

 

…丸山とのセッションは、昔を思い出しているようで楽しかった。今度家でギターの練習しておくかな。

 

そんなことを思っていると、そのまま寝てしまった。

 

……まさか1人部屋が怖いという丸山からの電話で起こされるとは、夢にも思わなかったがな。




私はハーモニカが吹けます。逆になかなか珍しくないですか?(謎理論)彩の視点が少なすぎる……!!まあ私の創作力が無いせいですのでご了承ください。
私ホテルとか泊まったことないからよくわからないので、かなり想像に任せっきりな部分があります。
次回はお仕事です。トークの仕事……?つまり、カミカミ彩ちゃん回です。

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また、Twitterでチェケという名前で投稿の報告などを始めたので、良ければフォローお願いします。@DkojiUrcFxNgSL6で調べれば出ると思いますので、是非ともよろしくお願いします!
これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。


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煌めいた夏・夢の形ー後編ー

食レポ・撮影・練習といきなり忙しくなった彩。しかし彩の目は夢を見据えて希望に満ちていた!
しかし、何故か煌成は微妙な顔つきをしていてー?



※オリジナルオリジナル
夏休み?もう年明けだよ馬鹿野郎


「丸山、少し遅い!」

煌成と彩が止まったホテルから近くにあるスタジオでは、早朝から煌成の声が響いていた。

ようやく着いた撮影班たちに午後から撮影と聞かされたため午前を練習にすることにした2人は、普段よりも厳しい練習を行っていた。

 

「少し休憩にしようか。水分しっかりな」

そう丸山に言い、俺は手帳を開いてこれからの予定を確認する。

午前は早めに切り上げないと昼の食レポの練習がキツいかもな。午後は撮影だから疲労を残すわけにもいかないか。

「丸山、あと30分で終わりにするぞ」

「え!?まだ10時だよ?早くないですか?」

丸山は不思議そうな顔でそう言ってくるが、かいてる汗の量が普段よりすごい。

「……しっかり水飲んどけよ」

そう言い俺は撮影班の人達と午後の打ち合わせを始めた。

 

 

 

ー昼食ー

「えーっと…このかき氷は……フワフワ…サクッと……?えっと…甘くて……」

午前よりも凄い汗をかきながら唸る丸山を見て、俺は少し心配のしすぎだったのかと安心する。

どう考えてもあれは緊張している感じだ。…まあ初めてだしな。

今回の食レポはどの道紙にのるだけだから別に話すことはないが、練習にはなるだろうと俺から頼んだ仕事だ。

こんなに緊張するとは思ってなかったな…。これがテレビとかじゃなくて良かった……。

 

「ダメだな。俺は」

すっかり丸山がテレビに出るような前提で考えてしまっている。この世界は何が起こるかわからないのに。

 

案の定。事はすぐに起こった。

 

 

ー午後ー

「はーい、彩ちゃん。もう少し腕前かなー」

専属のカメラマンさんに指示を出されながら丸山はモデルの撮影をやっている。水着での撮影は7月くらいからあったからかすっかり慣れているようだ。

撮影は順調に進んでいた。そしてあと数枚撮れば終わり。

 

そこで、()は起きた。

 

丸山の様子が、おかしい。

明らかに顔色がおかしくなっている。

「……まずいな」

俺の判断は、遅すぎた。

「あ、あれ……?」

少しふらついたらあと、ゆっくりと丸山は砂浜に体を横たわらせた。

「丸山!!」

 

 

…丸山は病院に運ばれ、熱中症と診断された。

幸い軽いものだったため特になにもなかったが、俺からすればそれはとてつもない失態だった。

あいつのことをしっかりと見れてなかった。もしかしたらもっと重症になりえたかもしれない。

そう考えると、罪悪感は止まらない。

そんな事を考えながら家に帰っていると、ポケットが震えた。

「丸山から……?」

丸山からきたメールには、病室に来てくださいとだけ書かれていた。

 

…なにかあったのかもしれない。そう思った俺は来た道を走った。

 

 

ー病院ー

「失礼します」

丸山とプレートが掛けられた病室に入ると、そこには丸山と丸山の母親がいた。

「いつも彩がお世話になっています。丸山の母です」

「いえ、こちらこそ。黒峰です」

なんで母親が…?

考えられる可能性としては、「こんな管理のできてない所に娘を預けられますか!」や「今回の件についてどう責任をとるおつもりで?」とかだろうか。

 

少し冷や汗をかいてるのを感じていると、突然丸山の母親が頭を下げた。

「今回はうちの娘がご迷惑をかけてすみません」

 

あらやだ予想の斜め上をきたよ。

 

「そんなことはないです。むしろこっちが気づいてあげられなかったのが原因で……」

実際今回の事は俺が気づいていればなんとかできた。なのに気づけなかった俺に責任がある。

「いやいや…。自分の体くらい自分で管理できる年頃ですし、なによりこの子は昨日の夜私たちにすごいホテルと電話してきてあまり寝れなかったようで……」

「……え?」

「やばっ」

 

丸山。しっかり聞こえたぞ。

 

「丸山?説明してもらおうか」

「いやあ?なんのことだかさっぱりですよ?」

「丸山のお母さん。まるや…彩さんは、あまり寝てなかったのですか?」

「ええ。そりゃもうずっと電話してました」

「へぇ……」

ヒィッといい丸山はベッドにくるまるが。もう聞いてしまった。

……まあ、今回はな。

「ですが、今回は俺も怒れませんね」

「「えっ?」」

親子のシンクロにかまわず俺は続ける。

「確かに体調管理の一環として睡眠をしっかりとっていなかったというのはよくないですが、それ以前にこれは気づけたことです。……やはり、俺も少し浮かれてたのかもしれません」

予想外の展開に丸山は目を丸くしているが、まあ海ではしゃぎたくなる気持ちもわかるし、昨日はあんなホテルだしな。

 

「次やったら、怒るからな」

「はっ、はひぃぃ…」

 

顔を歪める丸山とそれを見て笑う母親。この親子はきっと仲良しなのだろう。

丁度いい。丸山の母親にも、この話はしておこう。

自分の娘の、夢の形なのだしな。

 

「実は、彩さんたちのアイドルユニットについてなのですが……」

 

 

 

夢というのは、まず見ることから始まる。

 

見れなければ、叶えようとも思えないだろう。

 

やはり、夢を見ることとはいいものであろう。

 

絶対に叶えよう。俺たちの夢を。




あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年ですが、変わらずのんびりやっていこうと思います。
次の煌成たちは、文化祭です。ここではまたひとつ進展があるようで?

Twitterでこころの話の一部分書いてしまったのですが、そのうち他のも書くかもしれませんね。まさかのシリアス系でした。
2020年も応援よろしくお願いします。


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煌めきすぎた光は彩りを加速させる

「文化祭」それは学生たちのための祭り。これに心躍らせているのは彩だけでなく煌成も!?
どうやら煌成には秘策があるようで……?




※あけましておめでとう今年もよろしく
視点変更久々
タイトルと内容が噛み合わない定期


ー2ーBー

「では今日から文化祭期間になるわけだけど……。みんな、分かってるよな?」

担任の言葉にクラス全員が頷く。そう。俺たち花咲川学園の生徒にとって文化祭とは、戦いなのである……!

 

ー1ーBー

「皆さんは何も知らないと思いますが、文化祭は祭りなどではないですよ」

突然の担任の言葉に私たちは首を傾げると、驚きの言葉が飛び出た。

「文化祭では街の人達にアンケートが配られます。そしてそのアンケートで1位になったクラスには、学校からのプレゼントがありますからね。頑張りましょう」

途端に騒がしくなるクラス。隣の席の花音ちゃんもワクワクした表情だ。

「プレゼントってなんですかー?」

1人の男子が先生に言うと、これまた驚きの発言が飛び出た。

「去年は購買の千円分の引換券だったかしらねぇ……」

 

……千円!!

地味なようで高校生にとっては普通にいい金額だ。特に購買のお菓子とかを沢山買えるのはでかい。

 

しかし、モデルに加えてアルバイトまでしている彩からすれば少し微妙なものであったのは事実だった。

 

 

ーレッスン休憩中ー

「そーいえば、聞きました?文化祭のプレゼント!」

「ああ…今年はなんだろうな」

高めのテンションで話しかけてみるも、煌成くんはあまり興味がないのか素っ気ない感じだった。

「煌成くんはあまりきにしてないの?」

「いや、全力で取りに行く。今年こそはとる」

 

……気合十分だった。

 

「これはうちのクラスのやつが聞いた話なんだがな」

煌成くんが真剣な顔で話し始める。

「今回のプレゼントは、去年よりもかなり豪華に変わってるらしい」

し、真剣な顔でそんな事言われても反応に困るよ…。

「で、でも私たちのクラスも負けないよ!煌成くん!」

しかし、煌成くんはこれまで見たこともないような不敵な笑みで言った。

「安心しろ。今回の俺らの勝ちは揺るがない」

 

 

そして私たちは、文化祭でありえない光景を見ることになる。

とても高校生の文化祭のレベルではない。それだけはハッキリしていた。

 

 

 

ー文化祭当日ー

学校につくと、パンフレットが配られた。

私はすぐに煌成くんのクラスを確認する。するとそこには「奇跡の復活!2ーBライブ!!!」と書かれていた。

 

…事務所の人に聞いたことがある。煌成くんは中学時代フューチャーなんとかフェスに中学生で初めて出演した化け物だって。

 

「…見てみたい……!」

 

自分のクラスのお化け屋敷の担当時間が終わり、私は花音ちゃんと2人で煌成くんの所へ行くことにした。

しかし、なかなか煌成くんのクラスに入ることができない。

なぜなら、クラスから溢れた人が廊下からも溢れ廊下が埋まってしまっているからである。

「ふぇぇぇ…彩ちゃん…すごい人混みだよぉ……」

「かっ花音ちゃーん!?流されないで〜!!」

人混みにどんどん流されていく花音ちゃんの手を掴み、一緒に流されていると何故かそのまま教室にはいれた。

「ら、ラッキー?なのかな?」

花音ちゃんがオドオドしながら話しかけてくるが、私はそれどころではなかった。

 

教室前方。ギターを掻き鳴らし歌っている煌成くんは、これまでよりもいっそう輝いて見えた。

「あの時より…すごい…」

夏休みに聞いていたギターよりも激しく、心を直接鷲掴みにされたような感覚になる。

横をちらりと見ると花音ちゃんもあっけにとられたような顔で煌成くんを見ている。

 

……こんなに凄かったなんて、思ってもなかった…!

 

 

 

ふと前を見ると、丸山が目に入った。

まっすぐな目でじーっとこっちを見つめている。

そういえば、あいつもいつかこうして歌う時がくるのか。

それならば、俺から一つプレゼントをくれてやろう。

 

歌っていた曲が終わり、次の曲へと移る。

「次は予定を変えて、この曲をやります」

横目で他のメンバーを見ると、こくりと頷いてくれた。

クラスで作った即席バンドなのに、高いレベルで合わせてくれ、オリジナルまでやらせてくれたこいつらには感謝しきれないな。

「聞いてください。【永煌】」

 

歌っている最中に、何度も丸山と目が合った。

まるで、ライブの時にファンと目が合った時のような気分だ。

 

少し昔に浸りながら、煌成は完璧に歌いきった。

この曲は、丸山にとっても大きな影響をもつ曲になることは、誰も思わなかっただろう。

 

 

私たちの文化祭は結果的に煌成くんたちのクラスと1年C組が同率で1位だった。

プレゼントは図書カード3000円分で、みんな喜んでいた。

なにやら煌成くんは苦々しそうな顔で「白鳥にやられた」って言ってたけどういう意味だったんだろう?

私たちのクラス?お化け役が全然怖くないってあまり良くなかったみたい……。

 

 

花音ちゃんがお化け役は、やっぱ失敗だったよなぁ……。




ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!!
年末年始の忙しさに頭やられてなんだか気が狂いそうです。それでも私は頑張ります(白目)
次回は、イチャイチャ回と見せかけてシリアス回と見せかけたイチャイチャ回になる予定です。

アンケートをそろそろ締め切ろうと思っています。このままだと千聖さんですかね……?

楽しく読んでいただけたら、よろしければ評価やコメントお願いします!
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!!


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煌めきの影は消えることのない過去ー前編ー

学校の創立記念で三連休!
レッスンの途中で煌成からのまさかのお誘い?
彩と煌成の二人旅!しかしそこで明かされる煌成の過去……



※オリジナル要素大盤振る舞い
前編後編の隙を生じぬ二段構え
話はどんどこシリアスへと……


頭の中で鳴り響くブレーキ音。クラクションの音。

耳元で叫ばれる苦痛の声。そして目からなにかが流れた感覚。

俺は朝から()()()の夢を見た。

「……最悪だ」

今年も、この日がやってきた。

朝から煌成は顔をしかめカレンダーを見る。

「元気かな……」

1人つぶやき事務所へと向かう背中は、いつもより小さいようだった。

 

 

ーレッスン場ー

「おはようございまーす!」

元気よく扉を開けるも、まだ煌成くんは来ていないようだった。

今日から3日間も時間がある。しばらくモデルの仕事はないからダンスの練習しっかりやっておかないと……。

気合を入れ、靴紐をギュッと結ぶと煌成くんが入ってきた。

「あ!おはよう煌成くん!」

「……。あ、おう。おはよう」

いつもだと笑いながら返してくれるのに、なんだか元気がないように見える。大丈夫かな……?

「煌成くん。体調悪かったりする?」

「そんなことないぞ。悪いのはお前の頭くらいだ」

「あー確かに……ってもー!急にいじらないでよー!」

うう…いつも通りの煌成くんだ…良くも悪くも。

 

最近煌成くんはやけに私をからかってくる。まあ楽しいからいいんだけど……

 

「じゃあ始めようか。まずはダンスからだ」

「はい!」

 

 

ー昼休憩ー

「だっはぁ〜!疲れた〜!」

思わず床に寝転ぶ。今日は一段とハードだった。

「まあ今日はキツめにやってるからなー。でももう少し……」

ブーッ、ブーッと煌成くんのポケットからバイブ音がなる。メールだろうか?

「すまない丸山。少し部屋の外に出てる」

そう言い煌成くんは部屋から出ていった。出ていく直前、険しい顔になっていたのを私は見逃していなかった。

 

 

「まったく…言われなくても大丈夫だっての……」

思わず愚痴が出てしまう。俺の元に届いたのは一通のメール。叔母からのなのだが、問題はその内容だ。

 

『そろそろ会いに行ってやれ』

 

そう短く書かれていたメールは、一年に一度この時期に届く。

事故で入院している姉に顔を見せにいけというのだ。

正直行きたくないのだが、行かないと叔母に説教される。行かざるを得ないだろう。

だが姉が入院しているのはかなり遠い。行くとなるとホテルをとらなければならない。

 

姉のお見舞いなんて、普通行くものだろう。だが、その入院する()()()()が俺である以上、やはり行きづらいものだ。

 

夢へと輝いていた姉の夢を壊してしまったのは、俺なのだから。

 

 

午後のレッスンが始まるが、俺はあまり集中出来ていなかった。

ずっと頭の中がお見舞いのことでいっぱいになっている。…去年もこんな感じだったな。

「煌成くん?どうかした?」

少し険しい顔になっていたのだろう。丸山が不安そうな顔で訪ねてくる。

「いや、なんでもない」

そう答えるも、やはりすぐに頭の中はお見舞いのことを考えてしまう。

すると、丸山はぐいっと顔をよせ、眉をひそめている。

「……どうした?いよいよ思考回路が停止したか?」

「うーん…なんかいつもよりも顔が疲れてる気がするなーって…」

丸山に悟られるレベルだったか…それはそれで嫌だな。

「なにか困ってることがあるなら、私でよければ相談乗りますよ?」

ドヤ顔でそう言ってくるが、丸山に話したところで……

 

いや、待てよ?

 

丸山の担当が決まった時に、姉にとあることを報告したら、「じゃあ次の時に担当してる可愛い子を連れてきなさい」って言われたことを思い出した。

……だが、正直俺は連れていきたくない。だけど丸山も最近キツいレッスンばかりで少しは遊びたいかもしれない。

最近はモデルに加えて歌とダンスのレッスンが前より格段に厳しくなった。理由は知っての通り丸山たちのアイドルユニットのためだ。

そのことは丸山も知ってるから努力を続けていたが、疲れているように見えるのは一緒だ。

 

「…丸山」

「はいっ!なんですか?」

「来週の土日、少し旅行しないか?」

まあ実際はお見舞いだが、丸山にとっては旅行なのだから変わらないだろう。そう考え言ったのだが、丸山は何故か沈黙している。

「どうした丸山。というかお前今すごい面白い表情してるぞ」

顔を赤くし目がくっきりとしているが、少し泳いでいて口をパクパクさせている。変顔路線でもやっていけそうだな。

「こっこここ煌成くん?」

「どうした」

「土日旅行ってことは…泊まり?」

「そうだな。1泊2日だな」

そう答えると、顔はさらに赤くなり耳もピクピクし始めた。

「い……」

「い?」

「いきましゅっ!あ…行きますっ!」

 

……なんだか久しぶりに噛んだのを聞いた気がする。

 

 

こうして俺と丸山の1泊2日の旅行が決まった。

 

 

ー翌日ー

「じゃあお母さん、行ってきます!」

朝の6時というかなり早めの朝だが私のテンションは上がりまくっている。

お母さんには同じ事務所の人と言ったら同じアイドル目指している子だと勘違いされた。だけど私は間違ったことは言ってないしそれが正解だとも答えてない。私は悪くない。

昨日お姉さんのお見舞いにも行かせて欲しいと言われたけれど、なにやらそのお姉さんにもあって欲しいらしい。

私も煌成くんのお姉さんには会ってみたい。学校ではイケメンだと先輩の学年だけでなく1年でも噂されているような人のお姉さんだ。きっとめちゃくちゃ可愛いんだろうなぁ……。

 

ーその頃の煌成ー

 

……俺はなんて馬鹿げたことを言ってしまったのだろう。

普通に考えて後輩と1泊2日なんてありえない事だ。俺も頭が悪くなってきたのか…?

それだけではない。丸山にとって姉は、まったくの無関係という訳では無い。それに、俺の過去のことを聞いたら丸山は俺のことを恨むかもしれない。

まあとりあえず姉の命令はクリア出来る。ホテル代も二人分だしてくれるらしい。電車代もだ。

 

…流石に稼ぎまくった()()()()()はレベルが違う。

 

丸山には、しっかりと説明しなければならない。

なにせ、あいつが憧れていたアイドルの正体が、実は俺の姉だったのだから。

 

 

 

ー花松駅ー

駅で私は煌成くんと合流し、電車に乗った。

聞くと3時間以上かかるらしく、中々の長旅になりそうだ。煌成くんも「最初の1時間は終点までだから寝る」と言って席を確保した瞬間目を閉じてしまった。

私も寝ておこっと。

 

ー1時間後ー

「お?もう着いたか。丸山も少しは寝れたか?」

「…えっ?ああ、うん。もうぐっすりだよ!」

…しまった。煌成くんの寝顔みてたら1時間たってた……。

だけど眠気もどっかいってしまっているので大丈夫。次の電車で少し寝ればいいし……

 

次に来た電車は、まさかの満員電車だった。

「人多すぎだな…これに2時間か……」

「えっ?これにずっとなの?」

「…そうなるな。頑張れ」

 

…キッツーい!!

 

電車に乗ると、すぐに出発した。私は扉の1番目手前の席の壁になってる所に寄りかかっている。煌成くんが誘導してくれたのだ。

それに加えてその前に煌成くんが立って人がこっちに来ないようにしてくれている。…紳士すぎるんじゃない?

煌成くんが色んな人にイケメンと言われるのは、至極当然なことのような気がしてきてしまった。

 

煌成くんのお陰で2時間もそこまでキツくもなく、私たちはやっと目的地に着いた。

 

「やっと着いたな…丸山、喉乾いたりしてないか?」

「えっ?だ、大丈夫だよ!」

やっぱりイケメンすぎる…ちょっと怖いくらいだよ……

 

今日はお姉さんのお見舞いに行く予定になっている。コンビニで軽めの軽食を買い、徒歩で10分くらいの病院を目指す。

「にしても、ここら辺の街もすごく綺麗だね!高いビルもいっぱいあるし…」

「ここら辺は最近どんどん発展していってるらしいからな。でもまだ俺たちの街の方が発展してるかもな」

などといった世間話でぶらぶら歩いているが、煌成くんの顔はどんどん暗くなってくる。

「丸山。お前に話しておかなくちゃいけないことがある」

突然真剣な顔で煌成くんは話し始める。それは、煌成くんとお姉さんの話だった。

 

「俺の姉の名前は、黒峰楓。元アイドルの白峰楓だ」

「……えっ?」

白峰楓。それは、私がアイドルを目指すきっかけとなった人。

どんな時でも笑顔を絶やさずに、ファンと一緒に楽しそうに歌い、踊る姿に私は胸を打たれた。

数年前に突然活動を停止してしまい、私も悲しくなったが、アイドルを目指していれば会えるかもしれないと思っていた。

なのに、病院にいる?煌成くんのお姉さん?頭の中がこんがらがってくる。

しかし、その後煌成くんは、もっと驚くことを言った。

 

 

「俺の姉、黒峰楓は、4年前に俺を庇って車にひかれ、下半身不随でアイドルを辞めた」

 

歪んだ顔で、煌成くんは語りだした。

 

黒峰楓(お前の夢)を終わらせたのは、この俺なんだ」

 

そして語りだした煌成くんの過去は、壮絶なものだった。

 

 

 

後編へ続く




こうして書いていると、これまで書いたものと設定で矛盾が生じてないかが不安になってきますね。シリアスな話は個人的に大好きです。
今回も読んで頂きありがとうございます。
前編後編の2つになっていますので、後編も楽しみにしていてください。

これまでとっていたアンケートの結果、次に書くのは千聖さんの話となりましたので、彩の話の中の時間軸が新年となったら書き始めようと思います(今は11月です)

それでは、次のお話で会いましょう


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煌めきの影は消えることのない過去ー後編ー

彩が憧れたアイドル、白峰楓は煌成の実の姉であることを知った彩!
そして、自分が楓を壊してしまったと告白する煌成。その口から語られる過去に彩は……




※オリジナル満載
過去の話がメインです
めちゃくちゃ長くなってしまってます


公園のベンチに腰をかけ、煌成くんは口を開いた。

「これは、俺が小学六年生の時の話だ」

 

 

ー8年前ー

「煌成ー!もう朝だぞー!」

朝からでかい声の姉に起こされベッドから起き上がる。

両親が既に他界している我が家では、朝ごはんは姉の担当。夜は姉がレッスンで遅いため俺が作っていた。

「そーいえば煌成、今日はお前もレッスンだっけ?」

「あー。まあフェスも近いからね」

俺は幼い頃からギターをやっていた。

一昨年死んでしまった母親に強く勧められて始めたギターだったが、やってみると楽しく、メキメキ上達していった。

若い頃は天才とまで呼ばれていたらしい母親の血を引いていた俺は、ちょっとした規模のライブに出たりライブハウスで練習したりとなかなか充実した日々を送っていた。

 

そんな俺は、とあるフェスの選考会に出ることになった。

 

【Worldfuturefes】

 

世界最大規模のフェスの選考会で、まさかの1位で抜けることが出来たのだ。

小学生をギターに置いてのフェス出場は音楽界でも初のことらしく、最初はテレビに出ないかなどと誘われたりもしたけど俺は全部断っていた。

なにせこれは俺の力ではなく、一緒にバンドを組んでくれたライブハウスで出会った仲間たちのお陰なのだからである。

高校生に、大学生もいるのに小学生の俺と組んでくれたことには、感謝してもしきれない。

 

「にしても煌成、今回のフェスは気合いが違うねー!もう目がグラグラっとしてるよ!」

もう大学生のハズの姉には、圧倒的に語彙力がなかった。

これなのに()()()()()()()()()()()と言われているのだから驚きだ。ずっとコンプレックスだったはずのおっちょこちょいな性格で噛みやすいのもチャームポイントへと変わっているらしい。

アイドルというのは恐ろしいものだ。

 

両親がいない以上、姉のアイドル活動が我が家を支えている。勿論両親が残してくれた金もあるが、それだってなにがあるかわからないから無駄使いは出来ない。

だからこそ、今回のフェスでは必ず結果を残さなければならない。

俺が今回のフェスに燃えている理由は、ただデカいフェスだからという訳ではなかった。

賞金が、とてつもなくいいのだ。

この賞金で、姉になにか好きなことをやらせてやりたい。……まあ金だけのためではないけれどな。

俺は意外と姉孝行なんだなと心の中で茶化しながら、俺は焦げて苦い食パンをかじった。

いい歳なんだし、流石に料理は上手くなってくれないとキツいな……

 

 

それから月日はたち、姉はどんどんアイドルとして売れていき、俺も師匠を唸らせるくらいにギターの腕が成長した。

そして、フェスの本番。勝負の日が来た。

 

 

 

ーWORLDFUTUREFES開催ー

 

会場に入ると、まだ開始3時間前なのに熱気に溢れていた。

辺りを見回せば有名なバンドばかり。海外バンドと日本で戦った日本バンドたちが観客席にずらりといる。

「今日はこの中でやるのか……」

「あっれー?緊張してんのー?珍しいねー?」

のんびり屋のベーシストが話しかけてくるが、聞こえないふりをする。正直に言えば心臓が飛び出そうだが、なんか素直に言いたくはない。

「…まあーわかるよー。緊張する気持ちも」

「……珍しいこともあるもんだな」

いつもどこか気を抜いてるような性格で、緊張してるとこなんて見たことがないのに。俺は少しビックリした。ベーシストは目を細めて続けた。

「だって、最後(かいさん)今日でだもんな。俺たちは」

「……!!」

 

俺たちは、このフェスが終わったら解散することが決まっている。

高校生組が大学受験に入るのに加えて、大学生組も就職に向けて勉強をしなければいけないらしく、解散することになった。

だからこそこのフェスは、絶対にとる。俺は気合いを入れ直した。

 

「おーい!そろそろ控え室行くぞー!」

ボーカルをやってるリーダーに言われ、俺は控え室へと行った。

 

 

ー出番前ー

「最終確認は済んだな。全員」

リーダーの言葉に俺たちは頷く。準備は万端だ。

「正直に言おう。俺は今緊張してる」

「「「「えっ?」」」」

4人の声が重なる。ベーシストもそうだが、それ以上にリーダーが緊張してるとこは見たことない。いつも準備万端で動じない。そんな人だと思っていた。だけど確かに声が少し震えてる。

やっぱり、今日で解散だし思うところはあるのか……

「でも今考えたんだが、緊張する必要なんてないよな」

「…どゆこと?」

ドラムがよく分からないといった表情で聞く。俺もよくわからない。

「だって、フェスって祭りだろ?お前ら祭りで緊張したことあんの?」

「「「「……」」」」

全員「なんだそりゃ」って感じの表情をしている。

だが、たまにトンチンカンなことを言うのもリーダーらしい。そう思った。

「次のバンド、お願いしまーす!」

係員が声をかける。

「じゃあ、行こうぜ」

そう言いリーダーが扉を開ける。

「さあ、最高の演奏を見せてやろう」

リーダーの声は、しっかりと芯の通った声だった。

 

 

 

 

「だけど、俺たちは表彰台に立てなかった」

そう言い煌成くんは1度水を口に含んだ。

 

ていうか、想像以上にすごい人生生きてきたんだなぁ……

小学生の時にはお母さんもお父さんもいなくてでもお母さんに勧めてもらったギターで世界のフェスに出てお姉さんはアイドルやってて……

 

なんというか、煌成くんが高校生とは思えないほど大人びてるのもわかる気がしてきた。

1人で勝手に納得してると、煌成くんが口を開いた。

 

「それから俺はー

 

 

ーWORLDFUTUREFESから1ヶ月ー

バンドが解散し、俺は中学生になった。

両親がいない上に親戚も近くにいなかったが、叔母がわざわざ来てくれて手続きとかもしてくれたらしい。

叔母は姉には会ったらしいが俺は会うことがなかったから、心の中で感謝しておくことにしよう。

中学校はみんないい人ばかりで、俺は両親がいないというのを隠すつもりはなかったしだからといって気を使って貰うつもりもなかったが、みんな気にしないで対等に接してくれた。

家計が少し厳しかったが、学校側の配慮と時々ギターをBGM用に弾くことを条件に姉の通っている事務所でアルバイトさせて貰えることになった。

俺は中学校とアルバイトでなかなか忙しかったけど、その分充実した生活を送っていた。

 

でも、事件は唐突に起きた。

 

事務所の人に、次の姉のラジオ収録の時に、フェスでやった曲を弾いて欲しい、と頼まれたのだ。

心臓がドクンと脈を打ったのがわかった。

俺はフェスが終わってからずっと、バンドでやった曲は避けてきた。

 

その理由は1つだった。

 

フェスで表彰台に立てなかったのは、()()()()が原因だったからだ。

たった少しのズレ。だけど、勝負を分けたのはそのズレだった。

フェスが終わった後静かに涙を流していたメンバーを見て、俺は思わずその場を去った。

トイレに行き、そこでずっと自分で自分を責めていた。

その後メンバーの元へと帰ったが、どんな会話をしたかが何故か思い出せない。

 

あのフェスでやったあの曲は、俺にとってとても大切な曲だった。だけど、俺にはもうあの曲をやる資格はない。そう思っていた。

 

……またあの曲をやるのか。

俺はその日から猛練習した。

学校も休んでずっとギターを弾いていた。

絶対にミスをしないため。絶対に成功させるため。

しかし、俺は弾けなかった。

 

ギターを構え、姉が喋り始めるが、指が動かない。体中が震えているのがわかった。

怖い。失敗してしまうのが怖い。また迷惑をかけてしまう。弾かないと、弾かないといけないのに……

 

俺は気づいたら、外に出て走り出していた。

どこを走っているのかもわからない。なんで走ってる?ここはどこだ?

グチャグチャになりそうな頭の中で考える。俺は一体何をしている?

 

すると、後ろから声がした。

 

「煌成ー!!!」

「!!」

後ろから走って追いかけて来ていたのは、楓だった。

俺は立ち止まった。そうだ、俺は楓のために、ギターを……

その瞬間、俺の視界に鉄の塊が移った。

「煌成!!!!」

次の瞬間俺の体は何かに包まれたような感覚になり、強い衝撃が体中を走った。

 

朦朧とする意識の中、俺の目に映ったのは血を浴びて赤く染っている楓の顔だった。

 

後から聞いた話だと、飲酒運転をした車に激突。俺は左足と右肩を骨折して、右の耳が上手く聞こえなくなった。姉は下半身不随で動けなくなり、病院生活となった。

 

「これが、俺と俺の姉にあった出来事だ」

 

そう締めくくり、煌成くんは1度深呼吸をした。

…壮絶なんてレベルじゃなかった。少なくとも私が思ってたよりずっとだ。

でも、煌成くんは何でこの話を私に……?

「こ、こうせ

「すまなかった。丸山」

煌成くんに聞こうとしたのを遮り、煌成くんは急に頭を下げた。

「な、なんで!?どうしたの急に?」

「俺は、お前の目標を奪ってしまったんだ。だけど、姉はお前に会いたいと言っていた。だけど会わせるにしてもこの話はしておかなくちゃいけないと思った」

「いやでも、奪ったっていっても悪いのは煌成くんじゃなくて飲酒運転した車でしょ?」

「だけど、そもそもは俺が原因だ。俺次第ではこんな事にはならなかったんだ」

煌成くんはそう言い唇を噛み締めた。

 

煌成くんがこのことを私に言うことを決心した時、どんな気持ちだったのだろうか。きっと、苦しかったんじゃないだろうか?

それでも私に話してくれた。そして私に謝ってきた。

それなら私も、それに応えなくちゃいけない。

 

「煌成くん。煌成くんって私の学年の女子にすごく人気なの知ってた?」

「え?」

私が出した話題に煌成くんはきょとんとする。それに構わず私は続ける。

「顔もイケメンだし、先生と手伝いとかもしてて性格もいいし勉強もできるしで完璧だーって言われてるんだよ」

「…俺は、完璧なんかじゃないよ」

「煌成くんが自分を責めてるのはわかるよ。それがずっと引きずるような大きな事だっていうのもわかる。でも、もういいんじゃないかな?」

「……!」

「だから…えっと、煌成くんも自分を…えっと……」

あれ?なんか言いたいことがよくわからなく…

 

 

……俺は、ずっと周りに助けられて生きてきた。

姉に支えられ、バンドメンバーに助けられて、叔母を頼って生きてきた。だからこそ、その人たちに恩返しをしなくちゃいけない、そう思っていた。

でも、俺は恩を仇で返すばかりで、自分がどうしようもないやつにしか思えなかった。

俺の思い出は、ロクなことがない。そう思ってた。

 

じゃあ、なんで俺はギターをやっている?

じゃあ、なんで俺は事務所で働いている?

じゃあ、なんで俺は今この場所にいれる?

 

バンドメンバーのお陰で音楽が好きになった。姉のお陰でギターのレッスンを続けられた。

バンドメンバーのお陰でギターが上手くなった。姉のお陰で事務所で楽しく過ごせた。

 

でも、最後はいつも失敗していた。

 

だけど、その度俺はなんて言われてきた?

 

バンドメンバーとの最後の会話が、突然頭に浮かんできた。

 

「これで全部終わりじゃなえよな」そう言い涙をふくキーボディスト

「お前のせいじゃない」そう言い背中に手を置いてくれたドラマー

「俺たちの音楽は、全部出てたなー」そう言い天井を見上げるベーシスト

「自分を責めるな。お前にはまだ未来があるだろう」そう言い頭に手を置いてくれたボーカリスト。

 

病院で楓は俺に言った。

 

「煌成が気に病む必要はないよ。むしろ何も気づけなかった私たちが悪いの。煌成は中学生なんだから、もっと周りに我儘を言っていいの!まだ『次』があるんだから、とっとと前を向きなさい!」

 

 

 

みんな俺を責めるどころか、『未来』があると言ってくれた。

それなのに俺は、ずっと後ろ向きだった。

俺は、過去に囚われてたのかもしれない。

 

「あー、ギター弾きてぇな」

ふと口から零れた言葉に、丸山はびっくりしたようで、「びひゃっ!?」と言った。びひゃってなんだ、びひゃって。

 

「こ、煌成くん、大丈夫?」

「んー、まあ。なんかスッキリしたよ」

「うん…良かった」

そう言い笑う丸山。こうして見ると、少し楓に似てるかもしれないな。

…楓?そう言えば今日って…

「……あ!お見舞い!時間忘れてた!!」

「え!?時間って決まってるの!?」

「いや楓に言われた時間が…やっばそろそろだ!走るぞ!!」

「あっ!ちょ、ちょっと~!待ってよ~!」

急いで走り始める丸山を見て、俺はその横につく。

 

昔のことがなかったことになるわけじゃない。俺は一生後悔するだろう。でも、俺が見ないといけないのは今なんだ。

そして俺が1人で突っ走ったって意味が無い。それじゃまた誰かに迷惑をかけるかもしれない。

だからこそ、俺は寄り添って生きていこうと思う。人の隣で。

 

……まあこんな恥ずかしいこと、誰にも言わないけどな。

 

 

fin




読んで頂きありがとうございます。

長くね?書きながらずっと思ってました。
今回は本当に分かりづらくなってないかが心配……語彙力と表現力がもっと欲しい…と悩まされております。
次回はやっとお見舞いです。そして泊まりからの観光までいっちゃいます!

それと、お気に入り登録して頂いた数が50までいきました!本当にありがとうございます!!

私も音楽やってればな…一応できる楽器はあります。ハーモニカです。
それでは次回またお会いしましょう。


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彩りは煌めきを変えるー前編ー

いよいよ楓とご対面!自分の憧れと会うことにガチガチな彩!
楓の口から語られるのは……
そして、最後…



※一応まだシリアス
オリジナル満載


「黒峰さんですね。お部屋の方は大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です」

煌成くんが受付で話している時、私はソファで考え事をしていた。

 

私、これから楓さんと会うんだ……!

ずっと夢見ていた人と会えるなんて、すごい奇跡だ。煌成くんに感謝しなくては。

 

「丸山、行くぞ」

「う、うんっ!」

話してみたいことだらけだけど、緊張してきたぁ……

 

ー病室ー

「入るぞ」

そう言い扉を開けると、聞きなれた声がとんできた。

「おっ、今日は新人ちゃんも一緒なんだね。私の願いを聞いてくれて嬉しいよ煌成」

そう言いベッドから上半身を起こす楓。線の細い体つきに小さい顔。整った体に目立つ、目の横のキズまでも変わらない。

「変わりなさそうで良かったよ。この前話した丸山彩だ。仲良くしてくれ」

「おっけーおっけー。よろしくね?彩ちゃん」

「はっ、はひぃ……」

見ると、丸山はガッチガチに緊張してるのがわかる。……最近はモデルの仕事でも緊張してけど、流石にこれは緊張するか。

 

とりあえず会話繋げよう、そう思っていたらケータイが鳴った。

「ん、事務所からだ。悪いが少し外す。軽く話しといてくれ」

そう言い残し俺は病院の出口へと向かった。

 

 

うっ、嘘でしょぉぉ!?

こ、煌成くん、私を残して1人で行っちゃうなんて…薄情者っ!!

な、なにを話せばいいんだろう…う、頭がこんがらがってきた……

 

私がオドオドしてると、突然楓さんが笑い始めた。

 

「あっはっはっはっは!彩ちゃん、聞いてたとおり緊張しやすいんだね!聞いたよ。私の事目標にしてくれてたんでしょ?」

「えっ?あ、はい!ずっと…目標にしてます」

とても明るい人だ。あの頃(アイドル)と変わらない。でも、もう楓さんの足は……

思い出してしまい、思わず下を向く。

なんて失礼なことを考えるんだ、私は……

「…煌成から、聞いたんでしょ?私の足のこととか、煌成に何があったかとか。全部」

「えっ?あ、はい。聞きました…」

すると楓さんは、急にお腹を抱えて笑い始めた。

「いや〜!ビックリしたよね〜!煌成追っかけてたら石につまずいてズッコケたらそこに車がドーン!だもん!あっはっはっはっは!!」

「……え?」

「しかも思わず煌成!!って叫んじゃったし!叫びたいのは煌成のほうだよね!!あっはっはっは!」

…唐突すぎて何が起きてるかがわからない。なんか煌成くんから聞いた話と少しズレてる感じがすごい。

気になってしまい、思わず質問する。

「あ、あの…。楓さんって、煌成くんを庇って車に轢かれたんじゃ…?」

「…えっ?」

「えっ?」

互いに顔を見合わせてキョトンとする。何を言ってるかわからないといった表情だ。

 

「いやー、私煌成が走り出して急に追っかけてたらその日のお昼ご飯飛び出そうでさー!ヤバってなってたら石に足引っ掛けちゃって。そのまま煌成にぶつかった瞬間横から車がドーン!だよ?」

「…えっ?」

「えっ?」

もう互いに顔を見合わせてキョトンとする。

えっ?という順番が変わっただけだ。

 

 

「ちょ、ちょっと整理させてください」

そう言い私はこめかみを抑える。えっと、まず煌成くんの話だと車に轢かれそうな煌成くんを庇って楓さんが車に当たってしまった。でも楓さんの話だと楓さんが転んで煌成くんにぶつかった所に車が来た。…あまり変わらなくない?

 

「えっと……」

今考えたことをそのまま話す。すると、楓さんは少し暗そうな顔をした。

「うん。あってるよ。ただ私の言い方が悪かったね。いや、煌成もかな」

「どういうことですか?」

「そもそも、いくら混乱してたとしても煌成が車に気づかないと思う?」

「……思わないです」

「でしょ?煌成はしっかり歩道だったし、あのままだったら煌成は普通に走り続けていた。あのままだったら、ね」

「そ、それって…」

「彩ちゃんもわかっちゃった?そ。私が転ばなかったら、あれはただ車が突っ込んだだけで終わってた」

そう言い息を吐く楓さんの顔には、暗い影がかかっていた。

このお見舞いの話をする前の、事務所の時の煌成くんのような表情だ。

「でも煌成は認めない」

そのキッパリとした声は、煌成くんのことを誰よりも理解してるというのがこっちに伝わってきた。

「煌成はいつも自分で責任を背負う。自分以外の皆が傷つかなければいいと思ってる。誰かのために努力して、誰かのために嘘をついて。誰かのために自分を殺してる」

そう語る楓さんの表情は、私に記憶に焼き付けろと言うかのような真剣な表情だった。こんな顔もできるんだ。

すると、急にフッと微笑んだ。

「だから、彩ちゃんは煌成と対等でいて欲しいな」

「えっ?」

「頼っていいよ。むしろどんどん頼って。でも、もし煌成が疲れていたら、そばにいてあげて欲しい。煌成はそれだけでも嬉しいと思うから。……だめ?」

ズッキュュューーーーン!!!!

あ、思わず仰け反りそうになった。こ、声だけなのに…顔は微笑みから変わらず、可愛い声だけでこの威力……グフッ

「いや〜!私もまだまだ現役だね〜!っていうか、彩ちゃん!もっと楽しい話題にしようよ!暗いってー!」

「えっ!?い、いやでもこの話題にしたのは楓さんで…」

「ガチャガチャ言わなーい!ほら、なんかないの!?あ!彩ちゃん好きな人いないの!?」

「そ、その話題だけは〜!」

 

 

一方その頃

 

「はい。あ、その件はもう書類にしてあると思います。ありました?はい。わかりました。ありがとうございます。はい。失礼します」

……想像以上に長引いたな。…にしても、丸山のやついい仕事貰えたな。クリスマス号でまた表紙か。気合い入れないと……

「……あ、丸山置きっぱなしじゃん」

しまった。丸山と楓を2人っきりにしてたの忘れてた。まあ大丈夫だと思うけど急いで戻るか。

 

 

コーヒーを片手に部屋に入ろうとすると、中から声が漏れてきた。

「え〜!早く教えてよ〜!好きな人なんてなかなか出来ないんだからー!青春だよ!?青春!」

何やってんだこいつら。まあ仲良くなってそうなのはいいんだが。

 

ってかアイドル候補なのに恋愛とは、丸山のやつちょっと浮かれてんのか…?

まあ高校生だもんな。多少仕方ないところはあるし……

 

そう言い中に入ろうとした煌成がそのまま扉を開けることは、叶わなかった。

 

「え〜!?彩ちゃん、煌成のこと好きなの〜!!?」

「ちょ、ちょっと!?楓さん!?こ、声!声でかいですって〜!!」

 

 

 

ドアノブを握ったまま固まった煌成が中に入れたのは、それから40分後のことだった。

 

 

 

後編、デート回へ続く




お待たせしました。どうも、インフルエンザB型です!というわけでインフルでした。熱はあまり上がらなかったんですが、手の痙攣が…
今回で煌成くんの暗い過去は終わり!こっからはイチャイチャしまくります!いよいよ意識ができてしまった煌成!彼は冷静でいられるのか!?次回はやっと観光です。

ちなみに、この小説でのシリアスな話はあと一つだけ!

もしかしたら、今日中に後編が出るかも…


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彩りは煌めきを変えるー後編ー

お見舞いが終わり、そのまま水族館へと向かう煌成と彩。でも、なんだか煌成の様子がおかしくて……?




※オリジナル要素注意
主が恋人いない歴=年齢なのでリアリティのなさに注意
細かい視点変更


お見舞いも無事(?)終わり私たちはここら辺では有名な水族館へと向かっていた。

でも、なんか煌成くんがやけにソワソワしてる気がする。

「煌成くん、どうかした?」

「…えっ?い、いやっ、なんでもない…」

顔が急に赤くなり、すぐにそっぽむいてしまう。必要最低限な会話しかしてくれない。

もしかして、体調が悪いとか?…不安だなぁ。

「煌成くん、もし体調悪いなら今日はもう休む?」

「えっ、いや、大丈夫だ。少し頭が回ってなかっただけだ。もう大丈夫。安心しろ」

そう言いいつもの顔に戻る煌成くん。んー、さっきまでのはなんだったんだろう。

 

 

……はーっ。やっばいな、くそ。

煌成は頭をフル回転させてあの事(丸山の好きな人)について考えていた。

まさか丸山が……俺のことが好きだったなんて…

今までも告白されたことは何度かあった。でもその度にスパッと断ればもうそれ以来関わることもなかったから気まずいこともなかった。だけど今回は話が違う。

もし、もしもの話だが。もし丸山から告白されたら俺はどうする?

俺がやらなければならないことは、丸山をアイドルにすることだ。アイドルに恋愛感情は必要ない。

結論。断る。

 

ここまで決まればもう何も気にする事はない。気持ちスッキリだ。

頭も整理できたし、とりあえずは大丈夫だろう。

すると、丸山が声をかけてきた。

「それにしても煌成くん。なんで急に水族館?」

「ん?ああ、ちょうど安く入れるって楓が教えてくれてな。だったら水族館でいいかな…って感じだったんだが、嫌だったか?」

「ううん!超楽しみ!ただちょっと意外だったから…」

「ん?意外か?」

「うん…」

「んー、そうなのか…」

そうか…意外なのか…。意外ってどういうことだ?

 

 

横で煌成くんが首を傾げて唸っている。私の意外という言葉に対してだろう。正直、今回も服屋巡って新しい服探しになるだろうって思ってたからすごくビックリしてる。

ま、まるでで、デートみたい!なんて思っちゃったりして…

思わず頬が緩む。思わず両手で抑えるが、それでも少しにやけてしまう。

 

 

 

考え事をしている青年と顔がにやけている少女が横に並んでるその様は、カップルに見えないこともなかった。

 

 

ー水族館ー

「お二人様ですかー?」

「はい。安くなると聞いたのですが、それはどういった…」

受付で煌成くんが対応してるのを後ろに立ちながら、私はずっと考えてた。

…この今現在でさえも、私は完璧に彼女にしか見えないのでは…?

少女漫画なんかでよくあるデートで水族館に入る時の光景!!まさかこんなことが現実で起こるなんて…いい子にしてて良かった…

そう思いニヤニヤしていると、衝撃の言葉が耳に入った。

「あ、はい!お安くなりますね。こちらの()()()()()()ですね

「「えっ?」」

そう言い私たちは顔を見合わせ、静かに頷いた。

「はい。カップル割りでお願いします」

耳を赤くしてそう答える煌成くんの後ろで私はずっと悶えていた。

 

神様……ありがとうございます……!!!

 

もしかしたら、私は今日死ぬのかもしれない。そんなレベルの幸せが訪れたことに私は感謝しよう。

 

「丸山、行くぞ」

「う、うんっ!」

うん!カップルっぽい!

 

 

魚について私は全然知らない。けれど煌成くんの豆知識やエスコートのおかげですごく楽しい。やっぱ博識なんだな、煌成くん。

 

実は水族館に行くことを決めてからずっと魚について調べてただけあって、煌成の用意は周到だった。

 

 

イルカショー、ペンギンの餌やり、色々なことを楽しんだ。

夢のような時間に私は時間が経つのも気づかず、ふと時計を見たら6時をすぎていた。

 

「そういえば、今日は楓さんがとってくれたホテルに泊まるんだっけ?」

「ああ。なかなかいいとこをとってくれたらしい。そろそろ行くか?」

「うん。だいたい回れたし。楽しかった〜」

「ははは。そりゃよかった」

すると、突然煌成くんのスマホに着信音が鳴った。

画面を見ると山岸さんからのメールだった。煌成くんの顔がひきつる。

 

内容は、明日の午前に急遽私の仕事が入ったから、できれば今日中に帰ってきておいて欲しい、とのことだった。

 

「そりゃねぇだろ山岸さん…オフって言ったじゃん…」

「そーだよー……言ってたじゃーん…」

肩を落とす私たちだが、これはもう仕方ない。大人しく帰ることにしよう。

「まあしょうがないかー。こればっかりはな…」

「うん。しょうがないね」

正直落ち込んじゃうな…せっかくまだ一緒に入れると思ったのに……

私が落胆していると、煌成くんはバッグから1つの紙袋を取り出した。

「あ、丸山。これ」

そう言い渡された紙袋を覗くと、そこに入っていたのはイルカのキーホルダーだった。

「えっ!?こ、煌成…これって…?」

「ああ、プレゼント。明日事務所の人達にも渡すけどお前は今日でいいかなって」

そう言い頬をかく煌成くん。正直めっちゃ嬉しい。わ、私も何か買っとけばよかった…!

 

いつかなにかプレゼントしよう、そうしよう。

 

 

こうして、色々ありながらも楽しかった一日が幕を閉じた。




読んで頂きありがとうございます。少し投稿が遅くなりました。今回はデート回だったのですが、「なんかデートの内容全然なくね?」そう思ったそこのあなた!その理由は、私がデートの経験がないからです!(><)
漫画などでまた勉強してくるので、是非応援してください……

次回はクリスマスの日のモデルのお仕事に加え、丸山お誕生日回となっております!シリアスはしばらくお休みですが、頑張ってイチャイチャさせるので、是非次回も読んでください!

それでは、次の投稿でまたお会いしましょう。


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煌めいた冬 一緒にいるのは君がいい

クリスマスの日、彩は久々の表紙撮影でスタジオに来ていた。気合を入れ撮影に取り組む彩だが煌成が年末で忙しくて彩のサポートに入れなくなってしまう。
いつもと違う事に心がザワつく彩だが、煌成はしっかり手を打っていて……?


※オリジナル設定もりもり
煌成要素ミドリムシ
ちょっと展開が分かりづらいかもしれません。頑張ってください。
今は2月になりました。寒いですね


ー撮影スタジオー

「うーん、彩ちゃん。もうちょっとこっちに目線送って!体開きすぎ!」

「は、はいっ!」

次々と出される指示をしっかりと整理し、ポーズをとっていく。でもなんだかいつもの撮影よりも集中できてる感じがしない…なんでだろう……

 

なんでだろうって言っても、理由はわかってるんだけどね…

そう思い、いつも煌成くんがいる場所をチラッと見る。新人サポートの仕事をしている煌成くんは今日別の仕事が入ってしまったらしい。

 

「うーん、ちょっと休憩しようか!今回の内容の本確認しといて!」

そう言いカメラマンさん達がスタジオから出ていく。ちょうど良かった。ちょっと集中力を戻さないといけない。

「こういう時、煌成くんならどうするんだろ…」

1人ごちり、横を見るがそこには誰もいない。今日が今年は最後の仕事だから煌成くんと次に会うのは年明けになる。

つまり、クリスマスの今日も2()7()()も煌成くんには会えないんだ。

 

うう…やっぱ寂しいよぅ……

 

しょげていると代理のアシスタント、福田さんが声をかけてきた。

「彩ちゃん、ちょっといいかな?」

「えっ?」

 

ー休憩後ー

「うーん!いいね!彩ちゃん、輝いてるよ!」

「はいっ!」

うん!頭はよく回るし体もキレッキレ!集中力だって全回復だ。

 

「うんっ!いいよ!彩ちゃん、最高だよ!」

今日も元気なカメラマンさんの言葉に反応する余裕まである。私は今、間違いなく絶好調だ!

煌成くん、私は大丈夫だよー!!!

 

 

心の中で叫んだ言葉は届いただろうか。ただ1つ事実なのはこの時煌成がくしゃみをしたという事だけである。

 

 

ー休憩中ー

「彩ちゃん、ちょっといいかな?」

「えっ?」

アシスタントの福田さんはいきなり核心をつく事を言ってきた。

「今日、煌成くんがいないから落ち込んでるでしょ」

「えっ?ええええっ!?え、いや、えっ?」

「も〜!バレバレだよ〜?ずっとソワソワしてるしいつも煌成くんが立ってる場所チラチラ見てるし。

「い、いや〜。そ、そんなことないですよ〜?」

咄嗟に誤魔化そうとするが福田さんは私の目をじっと見つめてさらに問いかける。

「さっきも、煌成くんなら…とか言ってたじゃーん」

「ふぇぇぇっ!?き、聞いてたんですかっ!?」

指で丸をつくる福田さん。や、やってしまった…まさか聞かれてるとは……

 

色んな意味でさらに落ち込んでいると、福田さんは紙袋とその中から手紙を取り出した。

 

「じゃじゃーん。これはなんでしょう?」

「……?」

急すぎてよく分からない。なんの手紙……?

 

「実はこれは、煌成くんから彩ちゃんへのメッセージでーす」

「…えっ?」

「やっぱ心配だったみたいだねー。煌成くんが「あいつがダメそうだったら渡してください」って言って昨日渡してきてさー。いい先輩を持ったねー」

そう言い渡された手紙をバッと広げる。そこに書いてあったのはいかにも煌成くんらしい文だった。

 

『丸山へ

久々の表紙の撮影なのについてやれず申し訳ない。1人での仕事は初めてだろうし緊張したりするかもしれない。俺もフォローしてやることはできない。

だからこそ、これまでやってきたことを思い出しながら頑張ってくれ。もうお前なら1人でもきっちり仕事をする事が出来るはずだ。俺は信じているぞ。

 

メリークリスマス 煌成』

 

「……グスッ」

思わず涙が出そう…私、涙腺緩すぎじゃない……?

「どう?元気出たー?」

「はい。もう大丈夫です」

冷静になれている。私は大丈夫。煌成くんだってそう言ってくれてるし、落ち着いてやっていこう!

 

「あ、あとこの紙袋は煌成くんからのクリスマスプレゼントだから、今日のお仕事頑張れたら渡すからねー」

「えっ?」

紙袋に目が釘付けになる。煌成くんからのクリスマスプレゼント……?ほ、欲しいっ!

 

よーっし!元気モリモリでやるぞー!!

 

 

 

ー撮影終了ー

「オッケー!お疲れ様ー!」

カメラマンからのオッケーサインと一緒に床に倒れ込む。つ、疲れたぁ……

「彩ちゃん、お疲れ様ー。これ、煌成くんからのクリスマスプレゼントねー。家に帰ってから開けるんだよー?」

「はいぃぃ…お疲れ様でしたぁ……」

クタクタだ…パパっと家に帰ることにしよう……

 

 

ー丸山宅ー

「ふっふっふ…この時がきた…」

ニヤニヤしながら紙袋に手を入れると中から出てきたのはさらに小さな紙袋だった。

「なんだろ、これ」

その紙袋を開けると、中から出てきたのはハンドクリームだった。しかもこれ、かなりいい値段するやつだ…こ、こんな良い物を貰っちゃっていいの……?

 

出てきた物の凄さに私がたじろいでいるとヒラリと紙が落ちた。

「ん?これは……?」

それは煌成くんからのもう1枚の手紙だった。

 

『冬は冷える。しっかりと対策しろよ。あとしっかり体調管理すること。インフルとかも流行ってくるし気をつけろよ』

 

こ、煌成くんらしい……。このハンドクリームもそういう事なのだろう。しっかり対策しなくちゃな。

 

でも結局、煌成くんから今年は()()を祝って貰えないっぽいなぁ……ちょっとだけ、寂しい

そう思い手紙を2つにたたむと、裏側にも文字があるのが見えた。

「……あ」

 

そこに書かれていたのは短い文章。

 

『少し早くて申し訳ない。丸山、誕生日おめでとう』

 

思わず頬が緩む。私は幸せ者だな。

 

煌成くん。来年もよろしくお願いします。




読んで頂きありがとうございます。皆さんは異性から手紙を貰ったことはありますか?私はないです。あけましておめでとう(!?)

次回からは新年です。ということで前から言ってあった通り千聖の話である「僕が出会った少女はガラスのような人でした」が始まります。2つ同時進行ということで投稿は遅くなってしまうと思いますが、できる限り早くできるよう頑張ります。
また、チェケという名前でTwitterをやっているのですがTwitterで投稿日の予告や他のキャラたちのこういう話だよ!みたいな短文をのっけたりらするので是非ともフォローして頂けるとありがたいです。

長くなってしまいましたが、次の投稿でお会いしましょう


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寂しげな冬 〜新しい春の予感〜

年も明け順調にレッスンを重ねていく彩。
残された時間は1年間。煌成と彩の思いは……




※オリジナル設定横綱(?)
消えた1月と2月


ー花咲川学園体育館ー

「卒業生、起立」

ガラッと椅子の音が響く静かな体育館。あまり関わりはないがその背中は来年の俺たちを示しているようだった。

3月9日の今日、3年生が卒業する。

 

そして来週から学校も無くなり、俺にも新しい仕事が入ることになっている。

ただのバイトのはずだったのに、こんな大役を任せてくれるのはとてもありがたい。俺にとっても、あいつ(丸山)にとっても。

 

そう。1月と2月でみっちりアイドル修行を終えた丸山へのプレゼント。

 

 

丸山たちのアイドルグループが、始まろうとしている。

 

 

ー卒業式後 レッスン場ー

「少し遅い。集中きれてるぞ」

「はいっ!」

今日は長めのダンスの練習だったが、少し早めに切り上げた方がいいかもしれない。最近かなり練習量増やしたし。

 

にしても、かなり上達している。

ダンスは元々の運動神経の良さもあっていい動きするし、歌もどんどん上手くなっている。まあ問題は1つだけだろうな。

 

そう、丸山最強の個性(とちり)……!!

 

大人数の前で歌う、喋るをしようとすると噛んだり頭が真っ白になるという恐ろしいもの。これを克服しないことにはなぁ…。

まあ数こなして慣れていくしかないか。今は目先のことを頑張ろう。

 

 

 

ー練習後 帰り道ー

帰り道、煌成くんに買い物に誘われた。

 

時間もそんな遅くないし普通に行きたかったから嬉しいな。

でも…まあ……わかってたよ…うん。

 

「いや…この服だと下はこれか。いや待てよ、こっちもありだな……」

案の定、お仕事関連でした。悲しい。

でもこうしているとなんかカップルみたいで楽しいのも確かだ。ふふふふ……おっと危ない。ニヤけそうになるのはダメ。バレちゃう。

 

結局何も買わずに店を出た私たちはそのままカフェに入った。何やら煌成くんが話したいことがあるらしい。

 

「それで煌成くん。話ってなに?」

「まあ時期が時期だしな。予想はついてるかもしれないが、ようやく。決まったよ」

……!!

普段察しがあまり良くない私でもわかる。事務所に入ってから1年。早いものだ。でも、やっと始まるんだ……

 

「お前たちのアイドルグループの、メンバーが決まった」

そう言い煌成くんが出した資料に視線を落とす。そこにはおおまかなプロフィールが書いてあった。

 

「まずギター。これはお前と同い歳だな。氷川日菜。なにやら周りからは天才って呼ばれてるらしい。性格も明るく、ちょっと個性が強そうなやつだけど面白いやつだと思う」

氷川日菜ちゃんは私も知ってる。すぐ近くの羽丘学園の子だ。なんでもすぐにできる天才っ子って花咲川でも有名な子だ。その子と一緒にやれるなんて楽しみ…!

「次にベース。いきなりの大物だな。白鷺千聖。お前と同じ学校だよな?ベースはまだ練習中だがそこそこ出来るようになってきてる。まあこいつに関して言うことはそんなないかな……ん?どうした、丸山」

「えっ、ええええええっ!?し、白鷺千聖ちゃんっ!?」

私の突然な大声に周りがじろりと見てくる。あわわっ、やっちゃった……

でもすごい。私はあまり喋ったことないけど、仲良くなりたいな。

「んでドラムは大和麻弥。1度会ったことがあると思うけどまあ…こいつは無理やり引き抜いた。本人めっちゃびっくりしてたけど、やるからには全力でやってくれるそうだ。よかったな」

麻弥ちゃんとは2月の時に1度会った。煌成くんとセッションしに来たって言って2人でずっと合わせてたのを覚えてる。ドラムもめっちゃ上手かったはず。

「んで最後は、キーボード若宮イヴ。1番説明する必要ないよな。最近よく会うし」

そう。イヴちゃんは私のモデル後輩。1月には私と2人で表紙に写った。仲良しだし、イヴちゃんがやってくれるのは嬉しいな。

 

「まあこの5人でやっていくわけだ。全員で集まるのは来週からになるな」

そう言うと煌成くんは急に顔を机に突っ伏した。

「ど、どうしたの?煌成くん?」

「いや〜、なんていうか。複雑だな、って思ってさ」

「え?」

 

「これは伝えてなかったが、俺があの事務所との契約は来年の今日までなんだ」

「えっ……?」

え、ということは煌成くんと一緒にいれるのも、あと1年だけってこと……?

 

「だから俺としてはお前たちの1年を成功させるってのが最後の仕事になるわけだ。そう考えると、楽しみな反面少し寂しいってのも…あるな」

「煌成くん……」

寂しいのは、私も…だよ。

言葉には出ないその思いを胸の中で繰り返していると、煌成くんが切り出した。

「しかもお前らみんな個性強いから絶対大変だし。絶対疲れるよな」

「ってえー!?それは酷くない!?」

寂しげな雰囲気から急にいつもの雰囲気に変わる。でも、煌成くんの目は真剣だ。

「だからこそ、お前ら一人一人の個性が合わさればきっと良いアイドルになる。それぞれの明るいパステルカラーを融合させる、そんなアイドルユニットに」

煌成くんの口から言われたその名は、これからの私の宝物になるだろう。そう直感した。

 

 

「俺は、パステルパレットと名をつけようと思う」

 

 

チラッとこっちを見る煌成くんに向けて私はサムズアップをする。

 

「大賛成!!!」

 

 

帰り道煌成くんと肩を並べながらずっと考えていた。

残された時間はたったの1年。

だからこそその1日1日を私は大切に生きていこう。

これから先、絶対に忘れないような幸せを刻んでいこう。

 

 

「あ、もう桜が咲いてる」

 

「もう春がくるんだな……」

 

 

 

 

私と煌成くんの、最後の春が訪れようとしている




閲覧者「1月と2月……どこいった?」
私「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

読んで頂きありがとうございます。1月と2月は死にました。
いよいよ残り1年です。次回からは一気にキャラが増えていくのでご注意下さい。
「僕が出会った少女はガラスのような人でした」は見て頂けたでしょうか?まだ見ていない方は是非とも読んでいただけると嬉しいです。

それでは次の投稿でお会いしましょう。良いバレンタインを。






爆ぜろリア充


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私達の始まり

やっと集まった新アイドルユニット、パステルパレット。とりあえず挨拶でも…と思ってた矢先始まったのは人生ゲーム!?

個性溢れる5人組を煌成は上手くまとめることができるのか……?



※オリジナル設定


ー事務所フリースペースー

「やったー!6だよ!えーっと…え!【万引きがバレて警察に逮捕、1回休み】えーっ!そんなぁ……」

「あっははは!彩ちゃんざんねーん!」

「彩さん、万引きはダメです!」

「イヴさん。ゲームの中ですよ、ゲームの中」

「彩ちゃん…お説教が必要かしら?」

 

5人の少女が盛り上がっている中、煌成は1人で頭を悩ませていた。

 

…どうして、こうなった……?

なぜ5人の女子高生+1人の男子高生で人生ゲームをやっているんだ……?

 

時は少しだけ遡る。

 

 

 

「というわけで、みんなに集まってもらった。自己紹介の必要はないと思うし、とりあえず今日はみんなでお喋りでもしていてくれ」

今日は初日だし、こいつらに仲良くなってもらうことが先決。まあみんな女子高生なわけだし大丈夫か。

 

しかしそんな俺の思いは、一瞬で打ち砕かれた。

氷川がピシッと手を挙げた。

「どうした氷川?」

「私ね、今日人生ゲーム持ってきたの!みんなでやろ!」

 

言うなり氷川は持ってきたカバンから折りたたみ式の人生ゲームを取り出した。

 

「えっ、日菜ちゃん人生ゲーム持ってきたの?楽しそう!」

「人生ゲームなんて久しぶりですね!楽しみです!」

「人生ゲーム…それはもう1つの人生…!ブシドーですね!」

「ちょっと日菜ちゃん、そんなもの持ってきていいの?…お説教が必要かしら?」

 

めちゃくちゃだ…。氷川、こいつは要注意だな。

 

「じゃあ5人で仲良くな。俺はちょっと散歩してくるから」

「「「「「え?」」」」」

逃げようとしたら、5人全員がこっちを見た。怖っ。

 

「煌成くんもやるんだよ!」

「煌成くんもやらないとダメだよー。みんなで仲良く、でしょ?」

「煌成さんもブシドーを歩みましょう!」

「みんなで仲良くやりましょうよ!煌成さん!」

「1人で勝手にどこか行こうとするなんて…、お説教が必要かしら?」

 

 

 

…散々だ。氷川、要注意。

短い回想を終えて現実に目を向けると、若宮が職業選択のマスに止まっていた。

「むむむ…ここのルーレットで何がでるかで私のブシドーが試されます…ブシドー!!」

グルッ!と勢いよく回ったルーレットは8で止まった。

 

「8…せ、戦国武将!これぞまさにブシドーですね!!」

「やったねイヴちゃん!」

そういいハイタッチする丸山と若宮を横目に眺めながら次の俺のターンのことを考える。

今のところ1番早いのは氷川。次に白鷺か。ビリは俺と丸山が近いな…。人生ゲームなんてやったことないし全然感覚がわからんけど、なんとかビリだけは避けたい……。

 

「はいっ、次は…」

「私…は1回休みだぁ…」

「なら俺か」

今は丸山の方が1マス前にいるが、これで5を出して2マス進むをゲットし、7マス…これが最善かな。

気合を入れて振られたサイコロはコロコロと転がり、氷川の足にぶつかって止まった。

 

「あー、1だね。煌成くん、1回休み」

「ぶふっ」

「なっ、ちょっとまて!今氷川の足に当たっただろ!ノーカンだノーカン!もう1回!」

「ダメでーす。はい、次麻弥ちゃんね」

「ハイッス」

 

ひ、ひでぇ…。てか丸山、笑いやがったなあいつ。

 

 

こうして人生ゲームは長々と続いていった。

 

 

「もういい時間だし、今日は終わるか」

もう外は夕陽が沈みそうになってる。結局5回近くゲームやったし、ちょっと疲れた。

「そうだねー。あ、今日の夜お姉ちゃんと遊ぼっと!」

「日菜ちゃん、夜更かしするつもり?…お説教が必要かしら?」

「そういえばイヴちゃん、次のモデルの撮影っていつ?」

「確か明後日だったと思います!」

「そういえば彩さんもイヴさんもモデルをやってるんでしたっけ?凄いですね、尊敬するっス」

 

5人も随分仲良くなったようだし、俺としては満足かな。

 

「今日は初回ってことでこういう感じだったが、次回からはしっかりとしたレッスンに切り替わるからそのつもりでくること。柔軟と筋トレ、楽器のトレーニングは各自家でもやっておくように。いいか?」

5人がこくりと頷く。

 

「それじゃあ、改めてだが今日からお前たちはれっきとしたアイドル。パステルパレットの1人だ。1年という短い間になるが、これからよろしくな」

 

 

 

5人とも個性強いし、今までで1番疲れるかもしれない。

でも、こんなにもキラキラしているヤツらを見れることなんてそうそうない。……楽しみだ。

 

俺にとっての最後の1年。

 

 

忘れられない春の始まりである。





【⠀お説教が必要かしら⠀】

これだけは、書きたかったんです…!しばらくはこんな感じでゆるふわっとした感じのお話です。
しかしこのシリーズも残すところ約9話になる予定。これからも頑張りますので、是非とも応援よろしくお願いします。
次回の投稿もお待ちしていてください!


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私たちの音 見えてくる煌めき

初めて5人でのレッスン!初めて合わせる5人の音は……




※オリジナル設定
視点変更あり


ーレッスン場ー

 

「失礼しまーす…お、まだ氷川だけか」

「うん、そーだよー。みんな遅いねー」

「花咲川は今日小テストの補習があるからな。丸山は遅いぞ」

 

今日はパステルパレットの初練習だ。一緒にダンスと楽器の練習の予定だが、丸山が補習で遅れる上に若宮もモデルの話し合いが少しだけあるから遅れるらしい。

 

「彩ちゃんって頭悪いのー?」

ダイレクトだな…まああいつを擁護することもないか。

「あいつ数学の小テスト50点中2点だぞ」

「えーっ!?ほんとにー!?あっはは!彩ちゃんおもしろーい!」

「そういうお前はどうなんだ?」

 

氷川は見た感じ遊びまくってるタイプだろう。前に丸山が天才だと言ってたが、こいつは勉強がおざなりになっていてもおかしくないだろう。

「えー?あたし?テストで100点以外とったことないよ!」

「……は?」

 

小テストで…だよな?

「まあ小テストなら俺もほとんど満点だしな。似たようなもんだ」

すると、氷川は首を横に振った。

「ううん、違うよ!普通の模試とかのやつ!大体100点ばっかかなー」

「……」

 

 

日菜が天才と言われている訳が、よーくわかった煌成であった。

 

 

 

ーレッスン中ー

 

「いい感じだけど少し遅れてるな。もう少し全体的に早くして」

「うーん…こんな感じ?」

「そうだ。いい感じ」

 

少し離れたところで日菜ちゃんと煌成くんがレッスンをしてるのを横目に見ながら、私は千聖ちゃんとストレッチをしている。

小テストで遅れてきちゃったから仕方ないけど、煌成くんにしっかり怒られたあと千聖ちゃんにも少し怒られた……

 

「そういえば千聖ちゃんって勉強得意?」

「うーん、まあ授業に出れない時がある分は家でやってるから苦手ではないわね」

「じゃ、じゃあさ!私に勉強教えてくれない?」

「え?嫌よ」

「えぇ!!?」

 

ふふっと笑い千聖ちゃんは言った。

「彩ちゃんはきっと努力出来る子だから、自分で頑張ってちょうだい」

そう言いふわっと立ち上がる千聖ちゃんに思わず見とれてしまった私はしばらくボケーっとしていた。

 

 

「それじゃあ初めての音合わせだ。やる曲自体は簡単だけど5人で合わせるとなると大変だからな。まずはしっかりと慣れること。繰り返しやるぞ」

「「「「「はーい!」」」」」

 

「じゃあいくぞ…1.2.123はいっ」

 

 

 

煌成は目を丸くし、固まっていた。

 

俺は数年新人を見てきて、どんな奴に対しても本気でやってきた。

それでも、最後だからかもしれないけど。これほどの輝きは見たことがない。そんな感覚が演奏が終わったあとも体を流れている。

 

「……すごい」

 

思わずでたその言葉を聞き、5人がワッと話し始める。

 

「ね、ねえ!いまのすごかかったゃよね!イヴちゃん!」

「ハイ!すごくカミカミでした!彩さん!」

「いやー…すごいっすね!日菜さん!」

「えー?凄いのは麻弥ちゃんもだよー!ね?千聖ちゃん?」

「ええ。やっぱり歴が長いだけあって流石だわ。」

 

 

「みんな。ちょっと聞いてくれ」

その一言で5人が話すのをやめ、こっちをむく。

「初めての合わせなのに正直めちゃくちゃ良かった。これを繰り返していけばきっといい曲になる。今度からはオリジナルもやるから忙しくなるけど、それぞれがしっかりと頑張って欲しい」

「オリジナルっスか?もう曲は決まってるんですか?」

 

大和の質問に俺はコクリと頷く。

 

「ああ。お前たちパステルパレットの初ライブは、オリジナル曲の【パスパレボリューション】だ」

 

「は…初ライブ!初オリジナル!すっごく楽しみだね!」

ウキウキした表情で言う丸山を無視し、続ける。

「初ライブの予定は7月の初めだ。つまり…わかるな?」

 

俺の言葉に丸山も除く4人が頷く。丸山はまるでわからないといった表情だ。

 

「6月の終わりの定期考査。これがしっかりと終えれば、初ライブだ」

 

 

「えぇえぇええええぇぇ〜!!!!!!???」

 

事務所では丸山の絶叫が響き、俺たちは初ライブに向けてのレッスンと勉強が始まった。

 

楽しみだ。初ライブ。




読んで頂きありがとうございます。なんかシリアスが消えると少し書きづらさを感じるこの頃…。コロナのこともあって暇な人も増えるでしょうし、じゃんじゃん投稿しようと思います。

ただいまアンケートの取り方をかえました。目次に入って頂き1話を読むと1番下にポピパのアンケートとなっております。2話はアフグロ。3話はパスパレ。4話はロゼリア。5話はハロハピとなってますので、是非ともアンケートに協力してください。

それでは、次の投稿でお会いしましょう


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努力の証。人はそれを「奇跡」と呼ぶ。

遂に来た定期考査!彩は初ライブをすることができるのか!?
彩は無事ライブをできるのか……!?



※オリジナル設定注意



「定期考査1週間前となりました。それぞれ状況をどうぞ」

パステルパレットの初ライブまで3週間なのに俺達がレッスンをしないで勉強会をしてるのにも理由がある。

 

というかまあ、理由というか丸山というか。

 

「あたしはよゆーだよ!」と氷川。

「私も大丈夫です!」と若宮。

「私も問題ないわ」と白鷺。

「自分も大丈夫ッス!」と大和。

「私も大丈夫だよ!」はいちょっとまった。

 

「丸山。嘘はつくな。後悔するぞ」

「そうだよ彩ちゃん!数学の小テスト2点の子が大丈夫なわけないじゃん!」

「ええっ!?なんで日菜ちゃん前の小テストの点数を!?」

 

おいおい氷川。去年のヤツ言ってもしかたが…前の小テスト?

 

「おい丸山」

「ヒイッ!」

「その小テストはいつのだ」

「きょ、きょね

「先週ですよ。黒峰さん」

 

白鷺により一瞬でバレる嘘。…仕方の無いやつだ。

 

「俺がマンツーで教えてやる。赤点とったらお前抜きで初ライブだ」

「ええーっ!ひどいっ!」

文句を言いつつもしっかり勉強の準備を始める丸山。

 

「でも彩ちゃん、1年の学年末考査は悪くなかったんでしょ?」

「あー、あの時は内容が得意だったからたまたま…」

丸山と白鷺が話しながら勉強してるのを見てると平和だと思う。

 

反対側では氷川が大和にひたすらに話しかけていた。

「ひ、日菜さん。自分勉強したいっす」

「えー?遊ぼうよー!」

「ダメです!心頭滅却して火で涼みましょう!」

「イヴさん…それ意味違います…」

 

てんやわんやだ。ただ3人は成績がいいし別に構わない。

白鷺は仕事が多いし学校に出れないこともしょっちゅうだからテストの点が伸びないのは仕方がない部分はある。

 

それでも丸山よりいいのは謎だが。

 

「…ん?丸山、しっかり解けてるぞ」

丸山のノートを見ると、ほとんどあっている。計算式もしっかりあってるし、普通に解けてるじゃないか。

 

「えっ?あー、た、たまたまかな!」

たまたま、ねぇ……

 

 

何か、隠してるなこいつ……

 

 

 

ーテスト返却日放課後ー

「さあ。全員テストを出してもらう」

5人ともいそいそとカバンからテストを出している中、丸山が話しかけてきた。

「ねえねえ、煌成くん。今回のテスト、私どうだったと思う?」

「あー、いい点とれたろ?復習よく頑張ったな」

「えへへ!そうでしょ!しっかりと授業の…復習を…ってえええええええっ!!?なんで知ってるの!?」

 

そんな驚くことでもないと思ったのだが…

 

「小テスト、悪かったのに前の勉強会では解けてたしな。復習はちゃんとしてたんだろうって思ってたし。なにより……」

「なにより?」

「顔に出てた。今回できたー!って」

「えっ…」

絶句する丸山と盛大に笑う氷川を眺めながら俺は一人一人の答案を確認していく。

 

「…よし。全員問題ないな。じゃあ早速だけど、レッスンやろうか!」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

 

初ライブまであと2週間。形にはしっかりとなってるし上手くもなっている。後は初めての本番で失敗しないかどうか…かな。

 

 

 

ー練習終了後ー

 

「黒峰さん。少しいいですか?」

「ん?どうした」

真剣な表情だな。一体何を…?

 

「正直に答えてください。今回の初ライブ、なぜ当て振りとかではないのですか?大体の事務所は初めては印象操作のために当て振りだと思うのですが…」

「あー、その話か。実はな…提案はされたんだよ。しかも社長に。当て振りにしろって」

「…何を言ったんですか?社長に」

 

「それは大人の事情だ。あいつらには関係ないって言っちゃったよ。ははは」

ん?白鷺が無言で睨んでくる。

「…馬鹿じゃないです!?社長にそんなとこ言うなんて!もし私たちが失敗したら…」

「大丈夫だよ」

「え?」

 

不安そうな顔をしてる白鷺の頭に手を乗せて続ける。

 

「俺はお前たちが努力してきたのを見てきた。でもお前らを例えるなら丸山のテストだ。学年末をあいつは()()()()だと言った。でもな、それはたまたまなんかじゃない。努力の証なんだよ」

「……」

無表情の白鷺の目を見ながら続ける。

 

「今回のライブが上手くいったらきっと『奇跡』って表現をするやつもいるだろう。特に丸山とかな。でも、違う。奇跡なんかじゃない。お前らが頑張ったからなんだ。なのに、当て振りだなんて、寂しいだろ?」

 

「…だとしても」

「ん?」

「無茶がすぎます!クビになったらどうするんですか!」

「そりゃあお前…その時はその時だろ」

「ん〜!もー!」

 

プイッとそっぽをむいて歩き始める白鷺。しかし振り返り、

「でも…ありがとう、ございます」

そう言い頭を下げ、帰り道へと進んでいった。

 

「…しっかり寝ろよ!」

 

…目の下にクマ作って勉強頑張ったやつに、中途半端なことさせたくねえもんな。丸山も白鷺も。

 

 

「俺も頑張るか!」

 

 

たとえ世間が彼女達の成功を奇跡と言おうと、自分だけはそれを『必然』と呼ぶ。そう心に決めた煌成だった。




読んで頂きありがとうございます。
テスト回はこれがラストです。ちなみに彩ちゃん今回の数学73点です。

次回は初ライブ!原作は地獄でしたね…。思い出したくもないです。ただこれは二次創作なので、私の思い描くパステルパレットの初ライブを是非とも読んでいただけると嬉しいです!

ただいまアンケートの取り方をかえました。目次に入って頂き1話を読むと1番下にポピパのアンケートとなっております。2話はアフグロ。3話はパスパレ。4話はロゼリア。5話はハロハピとなってますので、是非ともアンケートに協力してください。

それでは、次の投稿でお会いしましょう


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煌めくアイドルは笑顔で彩られている

いよいよパステルパレットの初ライブ!案の定緊張しまくりの彩は無事ライブを成功させることができるのか!?




※オリジナル設定注意
彩視点


「よーし。今日はもう終わりだ。ストレッチな」

煌成くんの声でみんなが一斉に息を吐く。今日はそこまで辛いレッスンじゃなかったけど、明日のことを思うと気が気じゃない。

 

そう。明日は私達の初ライブ。

 

楽しみだ…けど、今から緊張してる。

 

「そういえば彩ちゃん、明日なんだけど…」

「ふぇぇっ!?ど、どどうしたの千聖ちゃん!?」

「えっ?あ、いや明日はどうやって駅まで行くのかなって…」

「あ、ああ明日は歩いて駅まで行くよ!」

「そ、そう…」

 

うああああ。き、緊張が凄いよぉ…。

 

「そーいえばさー、麻弥ちゃん。ライブってどんな感じなの?」

「そーッスね…まあお客さんが近いので楽しいですね!盛り上がりますし……」

 

ええ…麻弥ちゃん凄いなぁ……。

 

「煌成さん!明日ってお弁当持ってっていいんですか!?」

「あ、それは持ってこなくてもいいぞ若宮。事務所から弁当が配られるから。でも食べたいものがあんなら自分でもってこい」

 

い、イヴちゃんも煌成くんも普通だなぁ…私だけ?

 

「あ、彩ちゃん。緊張してる?」

「えっ?そ、そんなこと…ある…よ」

 

思わず下を向いてしまう。千聖ちゃん達は緊張しないのだろうか。

 

「ふふっ。仲間ね」

「えっ?」

「私もずっと緊張してるのよ。失敗したらどうしよう、って感じに」

「へ、へえ…」

 

「でもね、彩ちゃん。少し考えてみて欲しいの」

「な、なにを?」

「私たちは、アイドル。アイドルは人を笑顔にできる人達よ。でも、そのアイドルが楽しくなさそうだったら見てる人達も楽しくないと思うの」

ニコッと笑って千聖ちゃんは言う。

「だから緊張しても、笑顔で私達はいるべきよ。楽しみましょう。初ライブ」

 

そう言い千聖ちゃんは私の手を握った。その手は微かに震えているのがわかる。

 

「…うん!頑張ろうね!千聖ちゃん!」

 

 

そう言い笑顔で話し始める彩を煌成は遠目に眺めていた。

 

 

 

 

ー初ライブ当日 朝ー

 

「よし!出発!」

気合いを入れ玄関からでる。昨日はちゃんと寝れて今日の調子はけっこういい。ただ緊張は……してる。手の震えが止まらない。

 

「…しっかりしなくちゃ。笑顔笑顔」

自分に喝を入れ、前を向くとそこには見覚えのある人物がいた。

 

「おはよう、丸山」

「こ、煌成くん?」

ど、どうしてここに?心の中で思うと読まれたかのように答えが返ってくる。

 

「どこぞのアイドルが緊張してトイレに籠らないかが心配でな。見に来たんだよ」

「も〜!ひどいよ煌成くん!それは1年くらい前のことでしょ!」

 

私だって成長してる…はず。

 

「…お前は成長してるよ。丸山」

また心を読まれた気がする。

「この1年。たった1年でお前は成長した。歌もダンスも上手くなって、人前で喋るのにも慣れてきた。モデルとしての人気も上がって表紙も増えた。お前は成長してるよ」

 

煌成くんに言われ、私はこの1年で頑張ってきたことを思い出す。…でも、やっぱり不安だ。手の震えは収まらない。

 

「でもたったの1年だ。まだまだひよこレベル」

「ってええ…その流れでそれはひどいよ、煌成くん…」

 

すると、煌成くんは私の震える手を握り、言った。

 

 

「だからまだ俺が一緒にいてやる。それなら安心だろ?」

 

 

ニカッと笑う煌成くんに胸がドキッと高鳴る。

 

実際煌成くんには数えきれないほど救われてきた。たくさんの迷惑をかけてきた。

でも、煌成くんはずっと一緒にいてくれた。何があっても。

 

「…煌成くんとなら、怖くにゃいよ。……あ」

「ぶふっ!」

 

…か、噛んじゃった……

 

「も〜!笑わないで!煌成くん!」

「あっははは!本番は噛むなよ?あははは!」

 

私達はそのまま手を繋いで駅まで向かった。

 

…本当に、怖くない。煌成くんと、パスパレの皆となら。

 

 

 

ーライブ会場ー

 

「本番5分前でーす」

 

スタッフさんの声で私達の間に沈黙が走る。いよいよだ。

すると、煌成くんが声をかけてきた。

 

「みんな、ちょっと聞いて貰っていいか」

みんなが煌成くんの方を見る。

 

「パステルパレットが全員集合してからたったの3ヶ月だ。前々から個人での準備はあったとはいえ、この短期間でよく頑張ってくれた。そして、今日はその努力の成果を見せつける時だ。俺から言いたいのはただ1つ」

 

煌成くんは両手を上げ、ハイタッチのポーズをとって言った。

 

「楽しんでこい!以上!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「パステルパレットさん、入ってくださーい!」

 

私達は1人ずつ煌成くんとハイタッチして会場に入っていく。

さあ、最高のステージにしよう。

 

 

 

「皆さん、初めまして!私達、パステルパレットです!私達は、バンドとアイドルを組み合わせた斬新なアイドルとして皆さんと頑張っていこうと思ってますので、これからよろしくお願いします!」

 

ワァァァァァァァァア!!

 

す、凄い歓声だ。思わずゴクリと唾をのむ。

でも、この人たちは私たちと一緒に楽しんでくれる人達。みんなで、楽しむんだ。

 

「まずは1曲目、聞いてください!『パスパレボリューション』!」

 

 

す、凄い…凄い!凄いよ!

私の声が。日菜ちゃんのギターが。千聖ちゃんのベースが。麻弥ちゃんのドラムが。イヴちゃんのキーボードが。そしてお客さんの声が!

 

皆の音が重なって、1つになって、どんどん楽しくなってくる。

 

私は歌いながら、少し泣きそうになった。

 

あぁ、やっぱり私。アイドルになって良かった。

いつまでもこの時が続けば、そう思いながら私は歌いきった。

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

みんなで手を振りながらステージの裏に移動する。呼ばれた名前や歓声がずっと頭の中でこだましている。

 

「あっ、煌成くん!終わったよ!」

ステージ裏の楽屋の中に入るとソファでコーヒーを飲んでる煌成くんがいた。

 

「いやー!すっごくたのし…かっ…わわっ」

近づくといきなり煌成くんは立ち上がり、私達5人の手を握った。

 

「お前ら…最高だった!丸山の歌も。氷川のギターテクニックも。白鷺の低音も。大和のリズムも。若宮の音色も。全部が最高だった。俺はきっと今日のこの瞬間を忘れない」

そう言い目元の涙を拭う煌成くんを見て、私も少し泣きそうになった。

 

「全部…煌成くんのおかげだよ。全部」

「そーだよ。煌成くんのおかげであたし達は集まったんだから」

「黒峰さんがいなかったらここまでのものはできてないですよ」

「黒峰さんの指導力の賜物です!」

「本当に、ありがとうございます!」

 

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

 

「…ありがとうな。みんな」

優しい声で呟く煌成くんは、すぐにいつもの顔に切り替わって言った。

 

「このライブでどれだけの反響がでるかはわからん。でもこれからもっと色んな人に見てもらうために、レッスン頑張ろうな」

「「「「「はい!」」」」」

 

すると煌成くんは私に言った。

 

「じゃあ丸山。円陣。1本締めてくれ」

「え、えええっ!?い、いきなりだよ!」

「頑張れ、できる」

 

む、無茶ぶりだよ…よ、よしっ!

「え、えーっと…これからも頑張っていこう!パスパレ〜ファイッ!」

 

「「「「「「おー!」」」」」」

 

 

 

私達は今日をきっと忘れない。なにがあっても。




読んで頂きありがとうございます。
初ライブ、無事に終わりました。原作では見てて辛い話だったのでせめてここでは笑顔になろうという魂胆です。
実はこの話のどこかに最後のシリアスの伏線があります。ぜひお考え下さい。
今投票して頂いてるアンケートでそれぞれのお話の内容をTwitterで少しだけ上げる予定でいます@DkojiUrcFxNgSL6で調べればでると思うので、良ければフォローお願いします。

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煌めく夏。彩る想いは君に届く。 ー前編ー

8月も順調に成長していくパステルパレットと煌成。6人はお祭りに行くことを決める。
でも、なんだか彩の様子が変で……?



※オリジナル設定注意
視点変更あり


8月。俺たちは夏休みの間ずっとレッスンに励んできた。

来る日も来る日もレッスンレッスン。毎日頑張ってきたおかげで全員がどんどんレベルアップしている。

 

初ライブが終わってから『アイドル』になったという自覚が強くなったためか、どんどんみんな輝いていっている。

 

 

だからこそ、ハプニングもあった。

 

 

ー8月2日ー

 

「ううっ…」

音合わせ中、突然若宮が倒れた。

 

「若宮!」

急いで駆け寄ると顔が青く、少し苦しそうだ。

「脱水症状か。白鷺、氷つくってきて!大和は水!丸山こっちきて手伝ってくれ!氷川は水沼さん呼んできて!」

 

矢継ぎ早に指示を出し、すぐに若宮の首筋や脇を冷やす。あまり重症ではないだろうけど心配だ。若宮のおでこに自分のおでこをあてる。

…問題はないな。

 

 

この後少し休んだら若宮は元気になった。夏はやはり怖い。

 

 

 

ー8月8日ー

 

「ふげえっ!」

ダンスのレッスン中に突然変な声と共に氷川が倒れた。なんだかデジャヴだが急いで駆け寄るとどうやら足を捻ったみたいだ。

 

「ちょっと靴下を脱いでみろ」

……腫れてきてんな。触った感じ折れてはないけどこりゃ痛そうだ。

 

「今から氷作ってくるからちょっと座ってろ。白鷺、練習続けといて」

「はい」

 

 

天才氷川も足くじくんだな…夏って怖い…怖い?

 

 

 

「明日は休みでーす」

練習が終わりストレッチをしてる時に煌成くんが言った。

「明日ですか?何かありましたっけ?」

 

千聖ちゃんの質問に煌成くんはニヤリと笑う。

 

「明日は…祭りだろ?」

 

ドヤ顔煌成くんの言葉に日菜ちゃんが反応する。

「あー!そういえば明日だったねー!楽しみー!」

「日本の伝統…。ブシドーです!」

 

そのまま盛り上がっているが、私は最近それどころじゃない。

…煌成くんと、全然話せていない。

 

最近ハプニングが多いから煌成くんも忙しいし他のみんなと仲良くなっていくのも嬉しい。でも、なんか複雑だ。スキンシップも増えてるし。……羨ましいとか思ってはないけど。

 

1年前はもっと私に構ってくれたのになー、なんてたまに考えてしまう。去年は一緒に海に行ったな……。

 

なんて思い出にふけっていると、煌成くんに声をかけられた。

 

「どうした丸山?珍しく難しい顔して」

「ふぇぇっ!?め、珍しくはないです!…少し考え事を」

「へぇ…明日は雪かな?」

「えっ!?煌成さん?明日は雪なんですか!?」

「違いますよイヴさん。珍しいことが起きそうってことっすよ」

「なるほど!ブシドーですね!」

 

…こういう会話の数も、昔はもっと多かった。

 

なんか私。面倒くさい女の子みたいになっちゃってるな…

「もー!煌成くんひどいよ!」

 

 

いつも通りを装うその顔の裏に、とても悲しい顔が隠れていることは彩自身も気づいていなかった。

 

些細な変化。自分でも気づかないような。それでも、煌成は気づいていた。

 

 

 

後編へ続く




読んで頂きありがとうございます。
今回は少し短く切らせて頂きました。皆さんはこれくらいの方がいいですか?それとも前回くらいがいいですか?良ければコメントで言っていただけると助かります。後編は遂に夏祭りへ!恋の急展開も待ったナシ!?…かもしれない、です。

今投票して頂いてるアンケートでそれぞれのお話の内容をTwitterで少しだけ上げる予定でいます@DkojiUrcFxNgSL6で調べればでると思うので、良ければフォローお願いします。

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煌めく夏。彩る想いは君に届く。 ー後編ー

祭りについたパスパレと煌成は途中ではぐれてしまった!千聖と2人きりになった彩。千聖は彩に聞きたかったことがあるようで……?


誰もが、普通である必要なんて、まるでない。

※オリジナル設定注意



「彩ちゃん。あなた、黒峰くんのことが好きでしょう?」

「えっ?」

 

千聖ちゃんからの突然の質問に驚く私は思わず後ろずさってしまった。

 

ガッ!

 

「きゃっ!」

後ろに歩いていた人に足をぶつけたのだろうか。慣れない下駄も相まって足をくじいてしまう。

 

「彩ちゃん!」

 

 

その後私は千聖ちゃんの手を握りながら2人木陰に腰を下ろしていた。

…どうしてこうなったのだろうか。

 

 

 

ー30分前ー

 

「祭だーっ!」

「ちょっと待て氷川っ!」

元気よく日菜ちゃんがかけ出すのを煌成くんが走って止めに行く。最近このくだりはよく見る気がする。

2人を見つめていると千聖ちゃんが(いぶか)しげな目で見てくる。

 

「ち、千聖ちゃんどうしたの?」

「……え?い、いやなんでもないわ」

 

そう言い微笑む千聖ちゃん。む…流石に女優さんの表情は崩れない。私もこんなふうに表情変えれたらモデルの時に役に立つかも!

コロコロ表情を変えていると日菜ちゃんに見られてしまった。

 

「あははー!彩ちゃん変な顔!どうしたのー!?」

「なんだ丸山。そんなにはしゃいでるのか」

「べ、別にはしゃちでるわけじゃないよっ!」

げ、帰ってきてたのか2人とも。慌ててごまかすが噛んでしまった。

もっと2人に笑われる。

 

「まあまあ。黒峰さんも日菜さんもそこまでにして。イヴさんがワクワクを抑えれなくなってきてるんでそろそろ行きましょう」

「はいっ!早く行きましょう!ブシドーです!」

 

ま、麻弥ちゃん……!!

 

 

 

祭りはすごい混み方で、とても6人で固まって動けるような様子ではなかった。

案の定、私達は2つに別れてしまった。煌成くんと日菜ちゃんと麻弥ちゃんとイヴちゃん。私と千聖ちゃんの2つに。

 

 

そしたら急に千聖ちゃんに煌成くんのことが好きなんでしょ?って聞かれて…ってほんとになんで!?

 

「きゅ、急にどうしたの?千聖ちゃん」

動揺を隠せないまま聞くと、千聖ちゃんはにこやかな顔で答えた。

「あんなの誰でもわかるわよ。バレバレだもの」

「ええっ!」

 

お、落ち着くんだ私。そもそもアイドルは恋愛禁止。こんなのがバレたらきっと千聖ちゃんも怒る。誤魔化さないと!

 

「そ、そんなことないよ!私は別に…好きなんかじゃ……」

 

じーっと見つめてくる千聖ちゃんの視線から逃げるように横を向き、口ごもる。私は…どうすれば……

 

「仮にもし。彩ちゃんが黒峰さんのことが好きだったとしたら」

千聖ちゃんは優しい目でこっちを見た。

「私は別に、アイドルだからダメ。なんて言わないわ。女の子だもの。恋くらいするわよ」

「ちっ、千聖ちゃぁぁんっ!」

 

思わず抱きつこうとするも、肩を掴まれて動けない。

 

「でも、これだけは約束。もし想いを伝えることがあったとして、黒峰さんにフラれたりしたら即座に諦めること。仕事に影響がでるわ。いい?」

「ふっ、フラれ……」

 

こ、煌成くんにフラれる…想像しただけで……苦しい…

暗い顔になってしまっていたのだろう。千聖ちゃんが慌てて言う。

「べ、別にフラれることが決まってるわけじゃないのよ!私は応援してるわ!」

「千聖ちゃぁんっ!」

 

今度はしっかり抱きつく。やっぱ千聖ちゃんはいい人だっ!

「そういえば彩ちゃん、足首は大丈夫?」

「うん!もう痛くないよ!」

 

2人で色々話していると、煌成くんたちが歩いてきた。

 

「おっ、丸山ー、白鷺ー」

「あっ!煌成くん!」

すぐに立ち上がり走って向かおうとした瞬間。ズリッと音がした。

「あっ」

次の瞬間、私は地面に寝っ転がっていた。

 

 

 

 

「うう……面目ない…です」

半ベソかきながら私は煌成くんの背中に背負われて家へと向かっている。落ち葉を踏んでツルッと滑った私は慣れない下駄ということもあり足首をグキッとやってしまった。

せっかく千聖ちゃんの時の足首の痛みが引いてきていたのに、今度は逆の足を捻るなんて……

 

「まったく…高校生にもなって恥ずかしいと思ってくださいよ丸山さん」

「ご、ごめんなさい……」

 

煌成くんにも申し訳ない…。足を捻ったけどまだ花火とかがあって帰りたくない私は煌成くんの背中ですごしていた。

申し訳ないとは思うけど、暖かいし私としては大満足な祭りだ。落ち葉に感謝しよう。

 

「女の子だもの。恋くらいするわよ」

 

急に千聖ちゃんが言ったことが頭に浮かんできた。

…私の恋は、叶ってもいい恋なのかな?

アイドルは恋愛禁止。そんなことは当たり前。……でも、好きになるのは仕方が無いの?

 

「アイドルは…恋できないの?」

「えっ?」

あっ、やばっ。

 

「……丸山」

「は、はいっ!」

煌成くんが立ち止まる。まずい、これは説教コース…?

 

「俺は、アイドルの恋は叶ってはいけないと思ってる」

…だよね。それが普通なんだよ。

「でも、俺がもしアイドルの立場だったら。そんなの関係なく好きな人には好きって言っちゃうかもな」

うんうん…え?

 

「えっ?な、なんで?アイドルは恋愛禁止が普通…でしょ?」

「確かにな。でも、それで納得できるようなものじゃないだろ?恋って」

まあ俺は告白とかしたことないけど、と言い笑う煌成くん。

 

 

…私は、煌成くんの事が好きだ。その想いは自分でもわかっている。でも、それを伝えたら関係は崩れてしまうだろう。私はアイドルでいられないかもしれない。

そう考えたら、私はこの気持ちは押し殺さなければいけない。そう思っていた。

 

………そんなの、納得できるわけない!!

 

 

「よし、丸山。家に着いたらから降ろすぞ」

そう言い煌成くんが座りこもうとする。伝えるなら…

 

「煌成くんっ!」

気づいたら私は彼の背中で声を上げていた。

 

「実は私、丸山彩は!煌成くんのことが!」

 

彼の右耳に向かって。それでも聞こえるような大きさの声で。精一杯。

 

 

 

「好きです!」

 

 

言った勢いで煌成くんの背中から転がり、家の中に走る。足の痛みさえ感じない。それくらい心臓がドキドキしていた。

そのまま玄関で座り込む。

 

「言った……言っちゃったよぅ…!!」

 

真っ赤になった顔は、伝えれた嬉しさと恥ずかしさに溢れていた。

 

 

 

 

 

その夜、煌成くんからメールがきた。

 

『夜分に申し訳ない。今日の告白について明日話したいことがある。明日、駅前のカフェに来てくれ。 黒峰 』

 




読んで頂きありがとうございます。ちょっと考え事が多く全然投稿できずにいました。遅くなってすみません。
遅くなってしまったことの反省というかただ自分がやりたいだけというかで、これから投稿ごとに投票の1番上の人からの話の初めの部分のみをTwitterに投稿します。頑張りますのでぜひ見てください。@DkojiUrcFxNgSL6で調べればでると思います。
次回は、煌成くんが男になる時です。頑張れ煌成!

コメント、評価、お気に入り登録などして頂けるとモチベーションが増します。Twitterのフォローもして頂けると嬉しいです。

それでは、次回の投稿でお会いしましょう!


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煌めく気持ち。俺達の想い。

もう夏も終わる頃。彩は煌成に呼び出される。そこにいる煌成はなんだか暗い表情で…



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視点変更あり


『夜分に申し訳ない。今日の告白について明日話したいことがある。明日、駅前のカフェに来てくれ。 黒峰 』

 

煌成くんに告白したその日の夜、煌成くんからメールがきた。改めて告白したという事実を思い出し顔が赤くなる。煌成くんの顔も見ずに家に入っちゃったからどんな顔してたのかわからない。

告白して清々した気持ちが少しだけある中、私はすごく怖がっている。

…後悔もしている。告白したことを。

 

「フラれたら…どうしよ…」

これからの活動の時に平常心でいられるかもわからない。モデルもアイドルも。そもそもアイドルは恋愛禁止だから煌成くんからしたら断るだろうし……

どんな時でも私達の()()を選んでくれる人だ。今回も正しい道を選ぶよね。そして、(アイドル)にとって正しい道は……

 

彩はそのまま寝落ちしてしまった。その枕元は少し湿っていた。

 

 

 

ー翌日ー

 

朝早めに起きて、メイクをする。思い出せば出かける時に初めてメイクしたのは煌成くんと出かける時だったかな。あの時は嬉しくてドキドキしてたけど…

 

今は、震えてる。怖いんだ。

自分で告白したくせに、と自分を叱咤(しった)するも、震えは止まらない。煌成くんと選んだ服に身を包み、家を出る。たとえどんな結果になろうと、私は受け止めなくちゃいけない。

 

 

 

ーカフェー

 

「丸山ー、こっちこっち」

店の中に入ると煌成くんに声をかけられる。もう来てたんだ。

席に座ると、気まずそうに煌成くんがコーヒーを飲む。私も下を向くと煌成くんが呟いた。

 

「…いきなりなんだけどさ。昨日のことについて、話がある」

「…はい」

すると煌成くんはソワソワした様子でこっちを見る。

「どうしたの?煌成くん」

煌成くんは少し顔を赤らめて

「……ここじゃ話しづらい。外に出よう」

そう言い立ち上がった。私も立ち上がり店を出る。そして歩き出した煌成くんの斜め後ろでついていった。

 

 

…めちゃくちゃ、動揺している。俺は。

丸山と2人で歩きながら頭を悩ます。今まではこんな感情になったことがないからだろう。頭が上手く働かない。

丸山と話すと心拍数が上がるのがわかる。顔が熱くなってきてなんだか変な気持ちになる。なんなんだこれ。

昨日丸山にされた告白。それからずっとこんな調子だ。こんなんじゃ冷静に話すことなんてできない。息を吸い込んで深呼吸する。丸山に不安に思わせてはいけない。平静を保て。

 

ちらっと丸山の方を見ると、この世の終わりのような顔をしていた。

えええ!?なんで?俺なんかしたか!?

平静なんて保ててない。丸山がなぜそんな顔をしてるのかもわからない。それと、なんかすごいモヤモヤする。そんな顔しないで欲しい、そう心から思っている。

……こんな感情、初めてだ。

 

無言で歩いていると、目的地についた。花咲川からそこそこ近めの公園で人があまり寄り付かない。なんでかは知らん。

そこのベンチに座り、いよいよ本題にはいる。

 

「…昨日、俺にしてくれたのは告白と受け取っていいんだよな?」

一応確かめるために聞くと、顔を真っ赤にしてコクコクと丸山が頷く。

「昨日、俺はとある人に相談したんだ。丸山に言われたことを」

ビックリしたような顔でこっちを見る丸山。誰に言ったかは後で言うとしよう。

「そしたらな、お前は相手のことをどう思ってるんだ?って聞かれてな。少し考えたんだ。俺にとって、丸山彩とはどんな存在かを」

覚悟を決め、俺は丸山を見る。

「俺にとって、お前は……」

 

 

 

 

 

 

「俺にとって、お前は……」

煌成くんの言葉に、私は目を瞑る。嫌だ、聞きたくない。そう思ったのだ。否定されてしまう。私は煌成くんにとってただの後輩なのだから。

 

「大事な、大事な奴だ」

「えっ?」

大事な…大事な奴って言われた?咄嗟の状況に頭が上手く働かない。

「どんくさくて、不器用で、ダンスも歌もまだまだで、すぐとちるし緊張を自分でなんとかすることもままならないようなどうしようもないやつだ」

 

み、耳が痛い。何一つ否定できないのが少し面白い。

 

「でも誰よりも一生懸命で、努力家で、いい笑顔で笑う。そんなアイドルだ」

 

……!

 

言葉が出ない。煌成くんが私のことをどう思ってくれているのかがひしひしと伝わってくる。

思わず涙が出そうになりぐっと堪える。

 

「でもお前は、アイドルだ。モデルでもアイドル志望でもない。パステルパレットのボーカルだ。俺が言いたいことはわかるか?」

「アイドルは…恋愛禁止」

掠れながらの私の言葉に煌成くんは頷く。わかってるよ、煌成くん。大丈夫。私は…諦め…れる……から…?

とめどなく溢れる涙で前が見えなくなる。嫌だ、ワガママなのはわかってる。

 

でも、好きになったんだ。

 

恋をしたんだ。

 

初めて。君に。

 

「嫌だ…っ!あぎらめだくないっ!!」

 

言葉にならない声が、喉から飛び出した。なんて声だ。アイドルなんて言えない。叫んだ勢いでそのまま煌成くんを抱きしめる。私は……煌成くんのことが…

 

「だから、言わせてもらう」

 

そう言った煌成くんはぐいっと私を持ち上げた。そのまま私は見下ろすような姿勢になり、煌成くんに見上げられる。

 

「俺は、お前のいい所もダメなところもひっくるめて全部が好きなんだ」

「えっ?」

真顔で上を見上げる煌成くんの顔は、覚悟を決めたような顔をしていた。

 

 

「だから…周りに隠しながらで良い。俺と付き合おう」

 

 

カァーっと顔を赤くし横をむく煌成くん。私を持ち上げている腕がピクピクと震え出す。

煌成くんが…私と…付き合おうって……。

煌成くんの腕をバッと振り払い、そのまま煌成くんに抱きつく。

 

 

 

「はい!!!」

 

 

 

その後私と煌成くんは2人でこれからについて話し合った。いくつかルールを作って周りにバレないように付き合うためだ。

 

学校やレッスンの時はこれまでと同じように過ごし、確実に2人っきりになった時のみ煌成くんにくっついていいとか、束縛はせずに自分の時間を大切にするとか、2人で出かける時は変装するとか。

 

障害の多い恋だけど、それを選んだのは私。でも私は煌成くんとならどんなことだってできると思ってるんだ。

 

家で思い出しながらニヤニヤしていると、煌成くんからメールがきた。

 

それを見て、更にニヤニヤが加速する。

 

 

 

『彩、今度の文化祭一緒に回ろう』

 

 

私にとって、新しい青春(はる)が始まる。




読んで頂きありがとうございます。ようやく投稿することができました。遅くなってすみません。
やっとこの話を書くことが出来て私もホッとしております。次回はこのまま文化祭へと突入します。このシリーズも残すところ6か7くらいとなりました。これからも応援よろしくお願いします。

ただいまアンケートの取り方をかえました。目次に入って頂き1話を読むと1番下にポピパのアンケートとなっております。2話はアフグロ。3話はパスパレ。4話はロゼリア。5話はハロハピとなってますので、是非ともアンケートに協力してください。

投稿ごとに投票の1番上の人からの話の初めの部分のみをTwitterに投稿します。頑張りますのでぜひ見てください。@DkojiUrcFxNgSL6で調べればでると思います。

それでは次回の投稿で会いましょう


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2人だけの煌めき

煌成にとって最後の文化祭は何やら忙しそうな予感!煌成は彩と2人でイチャイチャすることはできるのか?



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「それじゃあ私達のクラスは喫茶店をやるってことでいいですか?」

 

「はーーい」

 

委員長の言葉にみんなが頷く。今年の私達のクラスは喫茶店に決まった。

喫茶店かあ…私は料理もそんな得意じゃないし接客でもやろうかな…ファストフード店でのアルバイトの経験を生かす時かも。

 

「そいえば千聖ちゃん。3年生って出し物ないんだっけ?」

 

「ええ、そうよ。大学の受験があるからってことでなかったと思うけれど…黒峰くんも暇なんじゃないかしら?」

 

「ちょちょちょちょええっ!?べ、別に煌成くんのこと考えてたわけじゃないから!ふと思っただけだから!」

 

「ふーん。花音はどう思う?」

 

「彩ちゃん、嘘は良くないよ!」

 

「ふえぇぇぇぇぇぇええぇぇっ!!!」

 

 

私のクラスは千聖ちゃんと花音ちゃんが同じクラス。日菜ちゃんと麻弥ちゃんは羽丘だけどイヴちゃんは一個下だから同じ学校だ。

さっきはああ言ったけど、実際煌成くんのことばっか考えてて文化祭の話もあまり頭に入ってない。

 

「…楽しみだなぁ」

 

 

 

ー昼休みー

 

「それで、彩ちゃん。黒峰さんと文化祭回るにしてもイチャイチャしすぎないようにね。もうあなたがパステルパレットの丸山彩であることは知れ渡っているのだから」

 

「うん!頑張るよ!」

 

千聖ちゃんだけは私と煌成くんが付き合ってることを知っている。というのも煌成くんが「どうせ白鷺には隠せないだろうし、ならばこっちから言ってしまおう」と言ったからである。

正直怒られるのを覚悟して言ったけれど逆に頭を撫でられた。びっくりしたなぁ。

その上周りにバレないように協力までしてくれることに。千聖ちゃんにはいつかお礼をしないとなぁ。例えば…結婚式とかで……?キャッ。

 

「彩ちゃん?どうして真っ赤な顔してこっちを見つめてくるの?」

 

「ごごごごめん。いや別になんでもないから!」

 

おっとっと。顔に全部出ちゃうのもなんとかしないと人前ですぐにバレちゃう。頑張れ私。

 

「まあ、黒峰さんのことだから大丈夫だとは思うけど、絶対に人前でイチャイチャしちゃダメよ。肝に銘じなさい」

 

「は、はいっ!千聖ちゃんさんっ!」

 

ビシッと敬礼すると購買にパンを買いに行っていた花音ちゃんがちょうど帰ってきていた。

 

「ふぇ?イチャイチャってどうしたの?」

 

「「なんでもないです!」」

 

 

 

 

ー文化祭当日ー

 

煌成がクラスに登校すると、クラスメイトはみんな文化祭で盛り上がっていた。

 

「3年は暇人ばかりだな…」

 

目の前の光景を見て思わず呟く。確かに俺達3年生は大学受験がある。でも花咲川は推薦が豊富すぎてみんな推薦ばっかだ。試験受ける人なんて限られてる。

まあ、俺の進路はもう決まってるし…いつか言わないとだな。

 

そんな事を考えながら、俺は彩のクラスへと向かう。

 

…楽しもう。最後の文化祭を。

 

 

ー彩のクラスー

 

「いらっしゃいませー」

 

声をかけながら急いで注文をとり、伝え、運ぶ。ウェイトレスの仕事なんて初めてやったけど忙しくてびっくりした。

ちょっと疲れてきたし、交代してもらおうかな……。なんて考えは、次の瞬間消し飛んだ。

 

「あらいらっしゃい、黒峰さん」

 

「おう白鷺。繁盛してるみたいだな」

 

こ、ここ、煌成くんだ!!

おーい、おーいと手を振ると振り返してくれる。ふふ、ふふふふ。やばいよ、すごくにやけちゃう。

 

「彩ちゃん?」

 

「ごめんなさい」

 

ダメダメ。人前では…ふふふ。煌成くん来てくれた。嬉しいな。

千聖ちゃんがため息ついてるのが見える。あ、後で怒られそう…。

 

「丸山が思う1番美味しいやつを頼む」

 

席につくなり煌成くんが言う。一番美味しいやつ…なんだろな…。とりあえず頷いて注文を伝えに行こうとすると、煌成くんに引き止められる。

 

「どうしたの?」

 

「えっ、いや…あのだな…」

 

顔を赤くして煌成くんは下を向く。するとポッケからメモ帳とシャーペンを出してサラサラと文字を書いていく。

 

「これ」

 

そう言い渡された紙を見ると、そこには『似合ってる』と書いてあった。

あれ、顔が熱い。熱かな?煌成くんと私が2人して赤くなってると、千聖ちゃんに呼び出された。謝る覚悟はできてます。

 

しっかりお説教をされていると、食べ終わったようで煌成くんが店から出ていった。千聖ちゃんに向かってごめんのポーズをしている。

 

「…まったく黒峰さんも彩ちゃんも」

 

「た、大変ごめんなさいです」

 

「…やるなら2人きりの時になさい。見てるこっちも恥ずかしいのよ」

 

「ち、千聖ちゃん……!」

 

手を握ると怒った顔でギューッと握られる。でも千聖ちゃん、握力弱いから痛くないんだよね……。

 

 

 

 

1時間後、ようやく私も休憩だ。スマホを見ると煌成くんからメールがきてる。内容は

『第3階段前で待ってる』

だった。

 

「…ふふっ」

 

少しだけ笑みをこぼし、私は早歩きで廊下を歩き始める。

 

 

…早く会いたいな。

 

 

 

 

ー第3階段前ー

 

「お、来たか丸山…」

 

着くと、煌成くんが立ち上がり鍵をチャリチャリさせる。この鍵ってたしか……

 

「行こうぜ、屋上」

 

 

 

屋上に来るのは初めてだ。そもそも鍵は先生が持ってるから入れない。

 

「先生が貸してくれたんだよ。いつも頑張ってるからとか言い出してな。俺が頼んだわけじゃないぞ」

 

「そ、それってかなりすごい事だよね…」

 

煌成くんは先生からの信頼度も凄いらしい。聞いた話だと生徒会長もやって欲しいって頼まれてたらしいし。仕事があるからやらなかったらしいけど。

 

「でも、なんで屋上?教室まわらなくていいの?」

 

すると煌成くんはまた顔を赤くし、上を向いた。

 

「…だって、そしたらお前とくっつけないだろ」

 

そう言い煌成くんは手をさしだす。その手を握ると、ちょっと熱かった。

 

「…ふふ。煌成くん、緊張してるでしょ」

 

「は、はぁっ?してない。してないぞ」

 

首を振ってるけど手が少し震えてるのを感じる。いつも冷静な煌成くんの新しい一面が見えたみたいで嬉しいな。ま、まあ私も震えてるんだけどね。

 

「……教室なら、明日まわれるだろ。今日は、こうして2人でいたかった。…それじゃダメか?」

 

「…いいよ。二人で居たい」

 

壁によりかかり、手を繋いだまま座る。こんなちょっとした時間が、こんなにも愛おしい。

そのまま煌成くんの肩にもたれかかり、呟く。

 

「煌成くん、好きだよ」

 

「…俺もだよ。彩」

 

 

 

そのままずっと話してた私達は文化祭一日目が終わるまでずっと屋上にいた。おかげで大切な時間を過ごせたし、煌成くんは千聖ちゃんに私のクラスでのことで少し怒られて私は午後のシフトを忘れてたことで結構怒られた。

 

2日目も煌成くんと色んな教室をまわって楽しかった。付き合った時はきっと大変だろうと思ったけど、千聖ちゃんのフォローもあって楽しいことばっかりだ。

 

これからも煌成くんと大切な日々を過ごしていける。そんな思いを私は持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その幸せは突然終わりを告げることになる。




最後のシリアスへの突入です。次の話は前編後編に分ける予定ですが、もしかしたら前編中編後編の3つに分かれるかもしれません。できるだけ早く投稿したいです。

ただいまアンケートの取り方をかえました。目次に入って頂き1話を読むと1番下にポピパのアンケートとなっております。2話はアフグロ。3話はパスパレ。4話はロゼリア。5話はハロハピとなってますので、是非ともアンケートに協力してください。

投稿ごとに投票の1番上の人からの話の初めの部分のみをTwitterに投稿します。今回はりみりんです。誕生日おめでとう。Twitterは@DkojiUrcFxNgSL6で調べればでると思います。

それでは次回の投稿で会いましょう


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もう一度、煌めくために ー前編ー

いくつかの仕事をこなして少しずつ慣れてきたパステルパレットと煌成。煌成の奢りでご飯を食べに行くことになり……。



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「パステルパレットでしたー!」

 

ステージの上でポーズを決め、観客の歓声を聞きながら裏へと向かう。今日は私達パステルパレットのライブ。何回かあったライブはいつも挨拶とかで噛んじゃったりしてたけど、今日は完璧にできたはず。

 

「彩ちゃん、今日噛まなかったねー」

 

「そうでしたね。成長の証っすよ!」

 

「えー、なんかいつもと違って変な感じー」

 

「ひどいよ日菜ちゃん!」

 

控え室でみんなでお喋りしていると、煌成くんが入ってきた。なんでか目にハンカチをあててる。

 

「あら、どうしたんですか?黒峰さん」

 

扉の前でグズッと鼻をすすった後、煌成くんはいきなり私の肩を掴んだ。

 

「…丸山、成長したなぁ…!噛まないでMCできるなんて…自己紹介も……」

 

「ひ、ひどいよ煌成くんまで!みんないつも私をなんだと思ってるの!」

 

「噛み噛みアイドル」

 

「緊張系アイドルかしら」

 

「かっこいいアイドルですよ!ブシドーです!」

 

「うぁ〜ん、イヴちゃ〜ん!」

 

イヴちゃんに抱きつきながら考える。でも、確かにいつもより緊張しなかったな。これも練習のおかげだね!

 

「よし、今日は俺の奢りでどっかに食べに行くか!」

 

「えっ!?いいのー!?あたし焼肉食べたい!」

 

日菜ちゃんはやっ!い、今食べたいもの…。う〜ん…。

脳裏に浮かぶ焼肉たち…。うん、私も焼肉がいいな…。

 

「じゃあ食べに行くか。俺ちょっとタクシーよんでくる」

 

「じゃあお客さんがいなくなったら行きましょうか」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 

タクシーを2つ捕まえて俺達は焼肉屋を目指していた。2つあった車の1つに4人。もう1つに2人というなんとも言えないバランスで乗ってることに運転手聞かれたが俺と彩は笑って誤魔化す。

 

「そういえば煌成くん」

 

「どうした?」

 

「今日の私、見た?すごく良かったと思うんだけど!」

 

「さっきも言っただろ…。思い出しただけで涙がでて…グスッ」

 

「あっ!それは馬鹿にしてるでしょ!ひどい!」

 

「あははは!…でも本当に良かったよ。お疲れ様」

 

そう言い俺は彩の頭を撫でる。一応変装はしてるから大丈夫だと思うけど少し怖い。バレたらファンに殺されるのかな、俺。

 

「…俺が見てやれる回数ももうそんな多くないってのは、やっぱ寂しいな」

 

「……!」

 

彩の顔が曇るのが見える。やばい、やっちまったか?

 

「…でも、私はずっと見てもらえるくらい、有名になるよ。煌成くんが遠くに行っても聞こえるくらい、すっごいアイドルになってみせるからね!」

 

そう言い彩は俺の手をとる。……ああ。どこに行っても、俺はお前を……

 

「俺は」

 

「お客さん!危ない!!!」

 

運転手の切羽詰まった声にバッと窓を見た煌成の目に映ったのは、横転し突っ込んでくる車の姿だった。

 

「彩!!!!」

 

車がぶつかる刹那、煌成が思い返してたのは()()()()()()だった。

 

 

 

 

 

 

「ーーくん!ーーくん!!」

 

…誰かの声が聞こえる。誰かが俺の名前を呼んでいる。

 

朦朧とする意識の中、薄く開いた煌成の目に映ったのは泣きながら名前を呼ぶ彩の顔。

 

……ああ、無事だったのか。彩。

 

「……ぁ、や」

 

「ー成くん!煌成くん!!」

 

「…ぉまえが……無事で…よかっ」

 

 

 

 

 

意識を失った煌成はすぐ病院に運ばれ、集中治療室での手術により一命を取り留める。

 

とりあえず安堵するパスパレ達だが、問題はここで終わらなかった。

 

 

夕焼けに照らされる病室では毎日魂が抜けたように煌成の傍らで手を握る彩の姿。

 

 

 

 

煌成が眠り、早くも3週間が経とうとしている。

 

 

 

中編へ続く




読んで頂きありがとうございます。

中編と後編は一気に出すので、しばらくお待ちください。

これが、最後のシリアス回です。


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もう一度、煌めくために ー中編ー

交通事故に巻き込まれてしまった煌成が病院に運ばれてから3週間。傍らで涙を堪える彩の思いは……




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煌成くんが入院してから、3週間がたった。

 

学校に行く前に顔を出し、()()()()()()()事を確認。学校が終わってからはそのまま病院に行き煌成くんの横でその日あった事を話続ける。

それが私、丸山彩の1日となっていた。

 

 

「…今日ね、千聖ちゃんとお昼ご飯食べたんだよ。久しぶりに。同じクラスの花音ちゃんって子も一緒に食べたんだけど、花音ちゃんとおかずの交換したんだよ」

 

「帰り道に猫がいてね、撫でたら可愛い声で鳴いたんだよ。今度、一緒に触りに行こうね」

 

「あと1ヶ月でもう冬だね。去年くれた手紙とっても嬉しかったんだよ。まだ部屋に飾ってあるし。今年は一緒に過ごせるといいな」

 

 

 

…何を話しても届かないのは分かってる。何を言っても何も返って来ない事も。

 

 

「…ねえ煌成くん。今年の冬は、一緒に出かけようよ。どっか遠くにさ。楓さんのお見舞いの時みたいに、電車とかでさ」

 

未来の話をすれば、「それはいいな」なんて言って起きてくれるんじゃないか、なんて考えてる私がいる。そんなことに意味なんかないってのは分かってる。

いつか煌成くんが目を覚ますのを待ち続けるしかないというのも分かってる。そう簡単に目を覚ますわけじゃないっていうことも分かってる。

 

 

だからこそ、私はここ(となり)で待ち続ける。笑顔を作り、いつ煌成くんが目を覚ましてもいいように。

 

 

私は、待ち続ける。

 

 

 

 

ー翌日ー

 

「…ちゃん。彩ちゃん!」

 

「…えっ?」

 

誰かが呼んでる声が聞こえ、パッと目を開くと千聖ちゃんが困惑した顔で私を見つめていた。時計を見ると12時半。授業中に寝ちゃってたのかな…。

 

「彩ちゃん、今朝も?」

 

「……うん」

 

千聖ちゃんは毎日煌成くんに会いに行くことに最初は反対していた。朝早く夜遅くで移動する私の身体を気遣ってのことなのは分かっている。

 

「…黒峰さんに変わりは?」

 

「…特にはないよ」

 

千聖ちゃんも何回か一緒に煌成くんの所に行ってるけど最近は学校の後にドラマの撮影があるため来れていない。

…本当は、私も放課後は……

 

「彩ちゃん、いつまでパスパレの練習に出ないつもりでいるの?」

 

「!!!」

 

「あの日から3週間。まだ3週間しかたってないのにこんなことを言うのは酷かもしれないけれど、私達はアイドルとしての腕を落とす訳にはいかないのよ」

 

「…それは、わかってるけど」

 

「なら、今日遅れてでもいいから練習に行きましょ?私も今日は撮影ないから。一緒に行きましょう」

 

「…うん。ありがとう、千聖ちゃん」

 

あの日から千聖ちゃんには甘えてばかりだ。申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、今だけは。今だけは許して欲しいって心の中で思っちゃっている。

 

 

 

…私は、ワガママだ。

 

 

 

 

ーレッスン場ー

 

「あっ、彩ちゃん!久しぶりー!」

 

「久しぶり、日菜ちゃん!ごめんね、最近来なくて」

 

「仕方ないよ、あんな事があったらさ。あたしもなんか変な感じだし」

 

やっぱり、皆同じ気持ちなんだもんね…。私だけワガママ言ってられないし、頑張らないと!

 

「あら、もう居たのね」

 

「彩さん、久しぶりっス!」

 

「アヤさん!もう大丈夫なんですか?」

 

「うん!平気だから頑張ろうね!」

 

 

 

私は1人じゃない。たとえ煌成くんがいなくても。

 

…君が起きるまで、私も頑張るよ。煌成くん。

 

 

 

ー1週間後ー

 

「もう時間か。じゃあここまで。号令」

 

長かった数学が終わり、やっと放課後だ。ぐいっと背伸びすると後ろから声をかけられた。

 

「今日は黒峰さんのとこに行くの?」

 

「あ、千聖ちゃん。うん。今日はレッスンないからね」

 

あの日から煌成くんの所に行く回数を減らしてその分レッスンに打ち込んでいる。勿論煌成くんの所に行くのが嫌になったりしたわけじゃない。煌成くんが起きた時にとびきり成長して驚かせるためだ。

 

 

 

「ふふふんふふーん、ふんふんふんふんふんふーんふーん…キャッ」

 

びっくりした…。鼻歌歌いながら歩いてたら頭に冷たいものが…。

 

「あっ…雪だ……」

 

上を見上げると、薄暗い雲からパラパラと雪が降ってきていた。初雪かな。

 

「煌成くん、驚くだろうな。目を覚ましたら月が変わってるなんて。雪まで振っちゃって」

 

びっくりしてる煌成くんを想像したら少し笑えてきた。煌成くんが驚いていることなんて数回しか見たことない。

 

ふと私は、昔の事を思い出していた。

 

 

 

 

「…オーディションでそんなことしたら普通落ちるぞ!?まじでびっくりさせやがって!」

 

私が考えた【アイドルとしての挨拶】をやったら笑いながら怒られたんだっけ。あの時は私もちょっとびっくりしたなあ。

 

 

 

「…俺は眠いんだけど。小学生じゃねえんだから。……少し散歩するか」

 

一緒に海に行った後にホテルに泊まった時、一人部屋が思ったより怖くて煌成くんに電話したら散歩に誘ってくれたんだっけ。

 

この2回はちょっとびっくりしてた気がするな。…まあ私が驚かすようなことをしてただけなんだけどね。

 

 

……それと、今回。私を庇う瞬間の煌成くんの顔は今でもハッキリと思い出せる。驚きつつも、必死な顔。

 

もし目が覚めたら、今度は私が【嬉しいびっくり】をたくさん届けてあげたいな。

 

 

 

 

 

「煌成くん、クリスマスももうすぐだしどこかに行きたい…ね……?」

 

 

病室につき、扉を開けた私は手に持ってたバッグを床に落としてしまった。

 

 

 

だって、そこには……

 

 

 

 

後編へ続く




読んで頂きありがとうございます。
中編と後編を一斉に出すと言いましたね。あれは嘘です。ごめんなさい。
想像以上に中編書くのに手間取っちゃったので、後編はなるべく早くということでご勘弁ください。

次の話でこのストーリーのシリアスも終わり。次の投稿でお会いしましょう。



沢山の方にアンケートにご協力頂きありがとうございます。次の後編を書き終えた時点での集計で各バンドから1人づつ選抜させて頂き最終アンケートをとる予定でいます。


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もう一度、煌めくために ー後編ー

いつも通り煌成の病室を訪ねた彩、その目に映ったのは……




※オリジナル設定注意


「煌成くん、クリスマスももうすぐだしどこかに行きたい…ね……?」

 

私は持っていたバッグを落としてしまった。だって…そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃいいな。彩」

 

()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

「えっ…こ、煌成……く、君…?」

 

言葉が上手く出てこない。舌が回らない。身体が震えているのがわかる。目頭も熱くなってくる。

 

「……彩」

 

そう言い煌成くんは両手を広げる。私は一目散に走り出していた。

 

 

煌成くんが、目を覚ましてる。目を開いて、体を起こして。私を迎え入れようとしてくれている。

 

 

……やっと、起きてくれたね。煌成くん。

 

 

 

 

それから私は10分近く煌成くんの胸で泣き続けていた。

ナースさん達が途中から駆けつけてくれて私が抱きつきながら煌成くんの体調について調べていた。

 

…申し訳ないことをしたな。

 

 

 

 

 

 

「ってあれ!?もう12月!?」

 

色々事が落ち着いてから煌成くんが発した言葉だった。そりゃそうだよね。

 

「煌成くんずっと起きなくて心配だったんだから…。もうっ!」

 

そう言いまた煌成くんに抱きつく。…あったかい……。

すると煌成くんは想定外な発言をした。

 

「あー、想像以上に時間かかっちゃったからなー」

 

「何に?」

 

「作詞作曲に」

 

「…へ?」

 

え?今煌成くんなんて?

 

「作詞…作曲?」

 

煌成くんに確認すると、優しく微笑み頷いた。

 

「夢の中だってのは俺もわかってたんだけどな。そこで作詞作曲してたんだ。んでついさっき出来上がった」

 

「へぇ〜。……ってえええええええ!!??」

 

まさか、なかなか起きないと思ったら……夢の中で作詞作曲してたなんて!!??

 

 

 

 

ー1週間後ー

 

私達は事務所で早速煌成くんが作った曲を聞くことになった。

 

「それにしても黒峰さん。もう体は大丈夫なんですか?3日前退院したばかりなのに」

 

「ああ大丈夫。ずっと寝てただけだしな」

 

「いーなー!私もぐっすり寝たーい!」

 

「それは違いますよ日菜さん…」

 

皆もいつも通りに戻ってきて、いつもの楽しい日常が返ってきた。

 

 

 

「それじゃあ聞いてくれ。こんなことがあってからももう一度、キラキラしたアイドル生活を送るため。俺からのクリスマスプレゼントだ。」

 

 

 

「もう一度、ルミナス」

 

 

 

 

 

 

ー帰り道ー

 

煌成くんの曲を聴き、その後はすぐに解散となった。今日がクリスマスイヴだと言うのもあったけど煌成くんの体力が戻ってないってのもあった。

 

「ごめんな。まだ全快してなくて」

 

「全然いいんだよ。むしろもっと休んで欲しいくらいだし」

 

そう言うと煌成くんはなんだか切なそうな顔して言った。

 

「今日、歌った曲があるだろ?」

 

「え?うん。すっごくいい曲だったよ」

 

「実はな。その曲が、俺が見れる最後のライブなんだ」

 

「えっ?」

 

突然のことに思わず立ち止まってしまう。さ、最後……?

 

「で、でも煌成くんが担当を辞めたからって私達のライブを見には来てくれるよね?」

 

せめて、ライブででもいいから私達の成長とかを見て欲しい。あ、でも普通に会った時とかに見せれば……

 

「実はな。俺、県外の遠い大学に行くんだ」

 

「え……?」

 

え、県外…それも遠く……?え、どうして?

 

「言うのが遅くなったのは申し訳ないと思ってる。実は県外の大学で音楽を学ぶことになったんだ。作曲とかを中心に」

 

県外ってことは、ずっと会えないってこと……?

 

「……彩」

 

「…………えっ、あ、う、うん。どうしたの煌成くん」

 

びっくりしてるのがバレバレだろうけどなんとか平静を装ってみる。煌成くんが夢を追っかけるのは私も応援したい。

 

「今から、無茶かもしれないことを言うぞ」

 

「う、うん…」

 

ま、まさか一緒に来てくれ!とか…?

 

「パステルパレットとして、ライブでその姿を見せて欲しい。目指せ全国ツアーだ」

 

「へっ?」

 

煌成くんの目を見ると、あの懐かしい仕事モードだ。

 

「お前たちの成長した姿を見せて欲しい。ライブで!」

 

……。なんだか、こういうのも久しぶりだな。あ、そうだ。いいこと思いついちゃった。

 

「ねえねえ、煌成くん。明日はクリスマスだよね?」

 

「ん?そういえばそうだな。一気に時間が飛んでるからな……。それがどうしたんだ?」

 

ずっと、煌成くんにやりたいねって話しかけてた事があったんだった。その夢を、叶えさせて貰うとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

「私と、デートしよっ!!」




ルミナスとは、輝くという意味を持つ言葉です。
読んで頂きありがとうございます。最後のシリアスが終わりましたね。

次回からの話は本当にただのイチャイチャが始まります。それも煌成が卒業するまでの話。それまで皆さんお付き合い下さい。


最終アンケートを取ります。各バンドからの選抜なのですがさよひなで1つの作品となっておりますので把握お願いします。


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煌めく冬。隣で笑う君が好き。

やっときたクリスマス。2人っきりで電車に乗り込む2人は一体どこへ……?
煌成にとって高校最後の冬。煌成の目標は……!!



※オリジナル設定注意


ー12月24日ー

 

 

「ふわああ…。ね、眠い…」

 

隣で彩があくびをしている。俺たちは今電車に揺られながらとある場所を目指していた。

 

「すまないな、彩。こんな朝からの出発にしてしまって」

 

「ううん!全然大丈夫!実は昨日楽しみすぎてあまり寝付けなくて…」

 

「おいおい。気持ちはわかるけど体調崩さないようにな?今少し寝てていいぞ」

 

まあ俺もあまり寝てないんだけどな…。苦笑いしながら彩を見るともううつらうつらとし始めた。はやくね?

まあ今は朝の7時。しかも6時からの電車に乗ってもう1時間たってる。眠くなるのも当然か。

 

幸い電車に乗ってるのは俺たちとおばあちゃんとかだけだし、寝てても問題ないか。俺も少し寝ようか……っ!!

 

コツン。肩になにかが乗っかった感覚。目で横を見ると目の前に彩の顔があった。

 

「…んぐっ!!」

 

思わず声が漏れそうになる。普段あまりびっくりしない俺だけどびっくりした。てかあの事故の時よりびっくりした。

 

彩と過ごしてもうすぐ2年がたつ。初めて出会った時はただキラキラしてる奴って感じだったけど、メイクを覚え、アイドルになりさらに輝いた彩。

 

…可愛くなったな、こいつ。

 

爽やかな笑顔で横目に彩の寝顔を見つめている煌成だったが、その視線が彩の唇へと移った。

 

……!!!

 

色の薄いリップで塗られ光沢を放つ唇。顔が赤くなるのを感じる。

あ、そういえば俺たち恋人だったな…。

 

…てことは、いずれ俺たちも…キスとか……するのか…。

 

 

 

 

……いつか、いつかな。

 

 

 

そんなことを考えていたら電車は目的地についていた。

 

あ、寝れてねえ……。

 

 

 

 

 

「やっと着いたね!温泉旅館!!」

 

旅館の前でグイッと伸びをする。ぐっすり寝れたおかげで体が軽い気がする。

 

「とりあえずチェックインだな」

 

「うんっ!」

そう言い扉へと向かう煌成くんの横に並び、2人で歩く。

 

そもそもクリスマスに何故電車で温泉旅館へと来ているのか?それにはワケがあった。

 

 

 

ー約1週間前ー

 

彩とのクリスマスデートの場所に悩んでいた俺は山岸さんに呼び出された。

 

「突然どうしたんですか?山岸さん」

 

「おお煌成くん。実はな……」

 

山岸さんによると、家族で温泉旅館に行く予定だったけど娘さんが彼氏と出かけるからと断念することになったらしい。だからその無料チケットを俺にくれるとの事だ。

 

「煌成くん…。君は男友達とかと友情を紡いできてくれ……」

 

「……はい。ありがたく使わせてもらいます」

 

…彩とのクリスマスデートに。

心の中で深く深く謝罪をして俺は温泉旅館の無料チケットを手に入れた。

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜!部屋すっごく広いね!」

 

部屋は2人には広すぎるといったくらいに広かった。

 

「…まあ一応3人部屋の予定だった所だからな」

 

煌成くんが苦笑いしながらなにか呟いていたが聞き取れなかった。

 

…しかし、この状況で大切なことはただ一つだけ。

そう。私は今日煌成くん(彼氏)と2人で1つの部屋で過ごすのだ!私達は普段デートをあまりしない。まああの事故のことがあったってのもあるけどまずバレたら色々まずいからである。

実際今も変装してバレないようにしているし。…にしても、部屋が広いのは私にとってはあまり良くないなぁ…。

 

私が望んでいることは、隣で寝ること…!

 

流石に同じ布団とは言えない!そんなの恥ずかしくて死んじゃうかもだし。だからこそ、隣でお喋りしながら寝たい。

でも、部屋が結構広いから無理かもなぁ…。

 

肩を落としてへこむ彩と対象に、煌成はぱっぱと身支度を済ませていた。

 

「彩、もうすぐ行くぞ」

 

「あ、うん!」

 

私達は初日に遊園地に行き、一泊して帰る予定で来ている。つまり、クリスマスイヴの夜を煌成くんと過ごせるということ…!

 

 

 

私は冬が好きだ。クリスマスに加えて私の誕生日まである。そんな日を今年は好きな人と過ごせるなんて、こんな幸せな事はないと思う。

 

大切な1日にしたい。そう心に思い彩は煌成の後を追った。

 

 

 

 

「よし、行こ!煌成くん!」

 

「ああ。行こう」

 

 

2人で手を繋ぎ、私達は歩き出した。

 

 

煌成くんが遠くに行ってしまう前に、沢山の思い出を作るために。

 

 

 

 

遊園地デート編へ続く




読んでいただきありがとうございます。
今回は分けてクリスマス編とさせて頂いております。初めての遊園地デートに苦戦する彩と煌成の姿をお待ちください。

さて、今回の話でアンケートを締め切らせて頂こうと思います。これまで沢山の方にアンケートに参加していただきとても感謝しています。
最終アンケートの結果、今井リサの「陽だまりに照らされて」に決まりました。今もう1つ書いている千聖さんの話が終わった次に書く話の予定です。
また、千聖さんの話でリサの話を高校編にするか大学編にするかのアンケートをとろうと考えております。まあまずはこの彩の話がしっかり終わるまでお待ちください。

長文失礼しました。次回の投稿でお会いしましょう。


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煌めく冬。伸ばした手は君と。

煌成と彩は遊園地へ!しかしそこで煌成に待っていたのは…?

あと一歩がいつも踏み出せない煌成の恋愛事情に進展はあるのか!?



※オリジナル設定注意
視点変更あり
作者は遊園地に行ったことがないため、頑張って妄想しております。涙を流しながら見てください。


この俺、黒峰煌成は遊園地に来たことがなかった。

 

幼い頃からギターに没頭し、友人と遊びに行くこともなければそもそも両親はいない。姉もアイドル活動をしていたし遊園地でなくとも人と遊びに行くことがなかった。

 

だから今、恋人と遊園地に来ているなんて現実味がまるでなかった。

 

「煌成くーん!ジェットコースター乗ろ!」

 

そう、だから……

 

 

 

 

 

「ぬおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

「キャーッ!!」

 

 

まさか、俺が高所恐怖症だったなんて、知る由もなかったのである…

 

 

 

 

「煌成くん、大丈夫?」

 

「あ、ああ…。なんとか……」

 

あ、頭がクラクラするし心臓がひっくり返った様な気分だ…。うぇぇ…。

 

「あ、煌成くん!コーヒーカップあるよ!コーヒーカップ!」

 

目をキラキラさせてコーヒーカップを指さす彩。…まあ彩が楽しそうだしいっか…。

 

「煌成くん!思いっきり回すよ!!」

 

「おう、来いっ」

 

 

 

 

 

 

 

「おえええええええっ……」

 

「ご、ごめんね煌成くん…」

 

は、吐きそう…。あんなに回されるなんて…。

 

「だ、大丈夫?」

 

「む、無理…」

 

流石にキツかった俺は、彩に頼んで少しベンチで休ませてもらうことにした。

 

 

にしても、体力落ちてる気がするな…。まあずっと寝てたわけだし仕方ないけど、トレーニングしとかないとなぁ…。あ、てか大学に送る資料の場所どこだったっけ…?ぬ、ぬぬぬ……。

 

煌成が現実逃避を決め込んだタイミングで、ちょうど彩が煌成にイタズラを仕掛けようとしていた。

 

 

 

 

 

ーちょっと前ー

 

煌成くん、体重そうだったな…。でも楽しそうだったし、一緒に来れてよかった!今日宿でマッサージでもしてあげようかな。

 

自販機に飲み物を買いに来た彩は、煌成と自分の分を買って戻っている最中だった。

 

あ、煌成くんのいるベンチ見えた。意外と遠くてびっくりしたなぁ…ハッ!!

 

こ、これはイタズラのチャンスなのでは!?

 

ドラマとかでよく見る後ろから冷たい飲み物をピタってやるやつ!よし、これでいこう!!

 

意気揚々と煌成の元へ向かう彩。その手に握られていたのは缶コーヒーであった。

勿論今の季節は冬。今日も風が少し肌寒い気候である。

 

案の定……

 

 

 

「えいっ」

 

「どぅおわっちぃぃ!!!」

 

あったかいのボタンから出てきた缶コーヒー冷えた煌成の頬に当たりジュッという音を出した。

 

「あちちちち…彩、それは冷たい飲み物でやるものだから…」

 

「ご、ごめんね……フフッ」

 

「ん?どうした」

 

「い、いや…。どぅおわっちぃ!って…」

 

堪えきれずに笑う彩と頬を擦りながら愚痴る煌成は、観覧車へと足を進めていった。

 

 

 

ー観覧車ー

 

「観覧車はジェットコースターに比べりゃ怖くねえな…」

 

溜息をつきながら言う煌成を見て彩が笑う。

 

「煌成くん、そんなこと言っちゃって足が震えてるよ?怖いの?」

 

「い、いや別に…。ちょっと寒いだけだし」

 

そう言い手を擦る煌成を見て彩は目を輝かせ、隣にちょこんと座る。

 

「だったら、手を繋いでみません?ほら!」

 

そう言い煌成に手を差し出す彩。しかしそれから数秒後、顔を真っ赤にして下を向いてしまう。

 

「あ…あの…煌成くん?これは…」

 

や、やっちゃったかな…?うぅ、恥ずかしい…。

 

「彩」

 

煌成は、優しく彩の手に自分の手を重ねた。

 

「えっ、煌成くん…」

 

しかし彩が煌成の顔を見ようとしても、煌成は反対側を向いてしまう。

 

「煌成くん!こっち見てよー!」

 

「い、今だけは嫌だ…!」

 

「みーしーてー!!」

 

「絶対ダメだ!絶対!」

 

それから観覧車が地上に着くまで2人はずっと言い合いをしていた。

 

 

優しく重ねられた手は、手汗のせいで途中で終わったらしい。

 

 

 

 

 

「面白かったねー!煌成くん!」

 

「ああ…そうだな…」

 

め、めちゃくちゃ疲れた…。高い所は怖いし食べ物も飲み物も高いし。でもパレードやジェットコースター以外の乗り物は面白かったし、その証拠に気づいたら夜になっていた。

 

「にしても煌成くんが高所恐怖症だったのはね!」

 

嬉しそうな顔でニヤニヤする彩。ビンタでもしてやりたいという衝動を抑えてチョップする。

 

「お前だってお化け屋敷ダメダメだったろうが。俺は入りたかったんだけどな…!」

 

めちゃくちゃ怖いと噂のお化け屋敷があったのだ。お化け屋敷も行ったことが無かった俺は興味があったんだが彩は……

 

 

「絶対ムリ!あんなの人の乗り物じゃないもん!!」

 

そう半べそかきながら頑なに動かなかったので諦めることになった。

 

「あれだけはダメなんだよね…。てか去年の夏で私が怖いのダメってわかってるでしょ!」

 

「ああ、あのホテルのやつか。あれは笑ったよなぁ」

 

「笑わないで!今日は…煌成くんと同じ……あ」

 

「ん?………あ」

 

忘れてた。そういえば俺たち、今日同じ部屋じゃん…。

 

 

気まづい空気が続き、俺たちは旅館へと帰っていった……

 

 

 

 

館編へと続く




冬のデート作もあと一つだけです。羨ましいですね。私も恋人と旅行とかしてみたいです。
コロナウイルスで皆さんも大変だと思いますが、頑張っていきましょう。私は元気です。投稿は早くはなりません。

それでは次の投稿でお会いしましょう。


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煌めく冬。ずっと隣にいたい。

遊園地から帰ってきた煌成と彩。これから2人で同じ部屋で寝ることに緊張してる彩に対して煌成は何だか冷静で…?




※オリジナル設定注意
視点変更あり


「じゃあごゆっくりな」

 

「うん、煌成くんもね!」

 

そう言い私は女湯の暖簾をくぐり中に入る。

 

「わぁ……!」

 

中に入るとふわっとした温泉の匂いが漂っていた。

広い更衣室!コーヒー牛乳の自販機!沢山のドライヤーの音とかが私に「これが温泉やで」って囁いてるみたいだ。

 

近所の銭湯くらいしか行ったことのない彩にとって、本格的な温泉旅館というのは新鮮だった。

 

「す…すっごいなぁ……」

 

煌成に感謝しつつ、彩は初めての本格温泉を堪能……

 

 

なんてできる状況ではなかった。

 

こ、煌成くんと同じ部屋で寝たりするんだよね…。一夜を!煌成くんと!同じ部屋!

顔が赤くなるのは温泉の熱気にあてられたからだけじゃない。でもこんな状況で冷静になれって方がおかしい話だ。ど、どうしよう……。

 

で、でも煌成くんはいつも通りな感じだったし、私が意識すぎなのかな…?

 

とりあえず髪と体を5回ずつ洗った彩は肌をスベスベにする湯に体を沈めた。

 

 

 

「あっつ…」

 

その頃煌成は、サウナで自分と戦っていた。

 

「ぐぅ…もう時間か…?」

 

ある程度入ったらサウナを出て、水風呂に入る。それを2、3回繰り返して整ってから温泉を堪能するのがいつもの楽しみ方だ。

 

「あぁぁ〜。極楽極楽ぅ…」

 

温泉に浸かると日々の疲れが癒えるようだ。退院してからいくつかの整体に通いバキバキになっていた体をほぐしてもらっていた煌成にとって温泉は最高の治療場所だった。

 

「…どうすっかなぁ。今日の夜…」

 

整った頭で煌成は冷静に考える。

 

一応この旅行は彩とのデートというわけだが…だからといってどうにかしようとか思っているわけじゃない。普通に疲れを癒して欲しかったというのが1つ。あと1つはまあ…

 

「俺も変わっちまったなぁ…」

 

恋人になってからあの事故にあうまでは一緒に帰ったりするだけで楽しかったし、時折手を繋いだりするだけでも十分満たされるような感覚だったけど、あの事故で色々と変わった。

 

まず彩が2人きりの時にもっと甘えてくるようになった。手を繋ぐだけでなくバックハグとかもした。バックハグの度に彩の目から薄く涙が零れ落ちていることも知っている。

あの事故で俺がいなくなってしまうと思ったのだろう。彩のスキンシップはどんどん増していっていた。

 

そして俺も、満更じゃなかった。

 

自分でもビックリするくらい心臓がドキドキしていたし、顔も赤くなっていた。バックハグじゃなかったらしっかりバレていたと思う。

 

でも、俺は……

 

 

 

決意を決めたような顔で温泉に浸かっている煌成は、しばらく考え込んでいた。

 

それから20分後。のぼせてしまった煌成は近くにいたおっちゃん達に担がれ部屋に運ばれたのである。

 

 

 

 

 

「ん…あれ?」

 

うっすらと目を開けるとそこは知らない天井だった。

 

「ここは……?」

 

「あっ!煌成くん起きた!」

 

上から彩の声がする。ああ、そういえば俺たちは温泉旅行に来て…温泉に入って…。

 

「のぼせたのか…。まじか」

 

現状を理解し頭を整理できた1つの疑問を持った。

 

どうして彩の声が上から聞こえるんだ?

 

うっすらと開いていた目をパッチリと開くと、そこには彩の顔があった。

 

「煌成くん、大丈夫?水でも持ってこようか?」

 

そこで俺は、自分が今どこにいるのかを把握した。

 

 

あ、これ膝枕だ。

 

顔が一気に赤くなるのを感じる。慌てて飛び上がると彩もびっくりしたような表情でこっちを見ている。

 

「こ、煌成くん?大丈夫?」

 

「……ああ。もう大丈夫」

 

彩は少し不安そうな顔をしている。まあそれも無理もないのかもしれない。今回は100%俺のせいだけど。

 

でもまだ少し体が熱い。顔が熱いのは気の所為だろうけど体に熱がこもってる気がする。風にあたりたいな。

 

「少し、散歩しないか?」

 

そして俺たちは旅館の庭園を散歩することにした。

 

 

 

 

 

「ふぅ…。夜風が気持ちいいな」

 

「そうだねぇ…」

 

12月だけど温泉でポカポカになった体に風が気持ちいい。のぼせちゃった煌成くんにもよく効くかも。

 

でも…やっぱ…

 

「煌成く「不安に…させたよな」

 

「!!」

 

私が話そうとした言葉は煌成くんに遮られた。

 

「ごめんな。また不安にさせて」

 

そう言い煌成くんは両手で私の手を握った。

 

少し冷えた肌が熱を取り戻していく。煌成くんが私の気持ちを分かってくれているという事実に体の内側が温まっていく感覚がする。

 

「うん…今回はのぼせちゃっただけだけど…。やっぱり少しだけ……怖かった…」

 

煌成くんが目を閉じている間はずっとあの事故の事を思い出していた。

あの辛く、悲しかった時間を。

煌成くんが目を覚ました時に安心して流れた涙もあった。

 

「もう、不安にはさせないから」

 

そう言い私は、真正面から抱きしめられた。

 

「えっ!?えっ?」

 

「ごめんな。もう大丈夫だから」

 

そう言い頭を撫でられる。体と顔が熱くなっていく。目頭が特に熱い。

 

「もうっ…!煌成くんのバカっ……!!」

 

声を絞り出し煌成くんに抱きつく。煌成くんが不安にさせないといったのだ。私だって泣かない。不安にさせない。

 

「…ああ。一緒にバカ同士だな。俺たち」

 

「かっこ悪いよ!それ!」

 

2人で顔を合わせて笑う。そのまましばらく見つめ合い、互いにそっと顔を近づけた。

 

 

 

私がこの旅行を忘れることは無いと思う。クリスマスイヴにあったちょっとだけ早いクリスマスプレゼント。

 

いや、違うな。きっと煌成くんとの思い出を忘れることはない。だって、離れた唇はまだこんなに熱いのだから。

 

 

 

そうして部屋に戻った2人は手を繋いで隣に眠った。

 

 

 

 

夜ご飯の食べ忘れに気づいて彩が目を覚ました話は、あの2人だけの秘密なお話。

 

 

 

後日のクリスマスデートも無事に終わり、2人の旅行は終わった。




メリークリスマス!最近寒くなってきましたね。もう少しで今年も終わりです。頑張って過ごしましょう!

ごめんなさい。茶番が過ぎました。最近緊急事態宣言などととても大変な事が起きていますね。体調に気をつけて健康でいてくれる事を願います。
この物語も残すところ3つといったところでしょうか…。次のお話はバレンタインです。え?1月?何を言ってるですか。ないです。

それでは次回の投稿でお会いしましょう!


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煌めく日常。近づく別れ。

今年もバレンタインがやってきた。去年失敗してしまった彩は今年こそと意気込む!煌成は煌成で何か悩み事があるみたいで……?



※オリジナル設定注意
視点変更あり


「ね、眠い…」

 

眠気で頭が働かなくて学校に行く気にもなれないよ……。

 

2月14日の朝。リビングのソファで目を覚ました彩はなんとか体をおこして朝の支度を始めた。

 

ボーッとする頭は特に何も考えておらず、ただただ日常の行動を繰り返していた。

 

「いってきまぁす……」

 

外に出ると少し肌寒い風が吹く。眠気も少しだけ和らぎ彩はいつも通りに学校へと向かった。

 

 

 

 

「おはよぉ…」

 

な、なんかいつもよりも学校が遠く感じた…。ね、眠いよ…。

クラスの皆に挨拶をしてから彩は机にドサッと突っ伏した。

 

「あら彩ちゃん。随分眠そうね?」

 

「彩ちゃん昨日美味しいの作るって気合い入ってたもんね」

 

「あ、花音ちゃん。2人ともおはよ〜」

 

机で寝そうになっていると千聖ちゃんと花音ちゃんがきた。ていうか2人とも何の話を……?

 

「彩ちゃんはいつ黒峰くんに渡すの?」

 

「え?何を?」

 

「バレンタインチョコよ、バレンタイン」

 

え…?バレンタイン……?

 

「ああーーーーっ!!」

 

急いでカバンを開けるが、その中には教材しか入ってない。

 

「い、家に忘れた……」

 

そうだ…夜更かしして煌成くんにチョコを作ったんだった…!それで今日はこんなに眠かったんだ…。

 

「ど、どうしよ……」

 

そいえば今日のお昼ご飯煌成くんと食べる予定だった…それでその時に渡すって言ってたのに…。

 

「あ、あばば、あばばばばばば」

 

「あ、彩ちゃん!?」

 

「し、しっかりして!彩ちゃーん!」

 

テンパる彩とは対照的に、煌成は2つの考え事をしながら自習をしていた。

 

大学を決まった高校三年生は三学期授業は無いが、煌成は将来の夢のために学校に来ていた。

 

 

 

 

ー4限目ー

 

「ん?煌成今日は随分ご機嫌だな」

 

「ああ雅也。今日はバレンタインだからな」

 

「はあ…お前みたいにイケメンだったらバレンタインも楽しいだろうな…。羨ましい限りだぜ」

 

隣の席で自習に励む男、宮倉雅也は煌成とは昔からの仲で煌成の昔の事も全て知っている。いわゆる親友だ。

 

「でも雅也、お前彼女いるんじゃなかったか?」

 

「ああ…いるにはいるけどあいつ今海外留学の準備で忙しいからな。やっぱりあいつの夢は応援してやりたいからな」

 

「……へえ…」

 

少し俯いた後、煌成は口を開いた。

 

「なあ、雅也。やっぱり、好きな人が遠くに行くのは寂しいか?」

 

「…急にどうしたんだよ」

 

「いや、聞いてみたいだけだ」

 

少しじとっとこっちを見てきたが、何かを察したかのように雅也は前を向いて言った。

 

「寂しいよ。すっごくな。なんなら今でも寂しい。好きな人といられる時間程幸せな時間はねえからな」

 

「……そうだよな」

 

「……でもな、煌成。好きな人の夢ほど、応援したくなるものってないんだぜ」

 

「!!」

 

「お前は確か、音楽の先生になりたいんだっけか?」

 

「…ああ」

 

あいつら(パスパレ)と一緒にいてできた夢。俺は誰かと共に成長するような人生を送りたい」

 

「なら、お前のことを待っている奴もきっと待ってくれるさ。どこかのピンク髪の子がな」

 

「なっ!ま、雅也!それはお前っ……!」

 

慌てて雅也の口を抑えようとする煌成だが、雅也が慌てて扉を指さす。

 

「ほら、煌成!カノさんがお呼びだぜ!」

 

「えっ?」

 

バッと後ろに振り向くとそこにはちょこんと扉からこっちを覗く彩の姿があった。

 

「ほら、とっとと言ってやれよ。煌成」

 

そう言い背中をポンと押される。その手を振り払い俺は精一杯の皮肉を込めて

 

「ありがとよ!」

 

と言い、彩の元へと歩く。

 

俺の残りのわだかまりも無くなった。彩なら、きっと俺の夢を応援してくれる。

 

 

 

 

 

ー屋上ー

 

 

「チョコ…家に忘れちゃった……」

 

「…え?」

 

うう…か、顔を合わせられないよ……。

 

「あのね、頑張って夜遅くまで作ってね、綺麗に出来たから明日持ってこうとしたんだけど寝るのが遅かったから…朝、忘れちゃって……」

 

ちらっと煌成くんの方を見ると険しい顔をしてこっちを見ている。やっぱり、怒ってる…?

 

「彩」

 

そう言い私は煌成くんに抱き寄せられた。

 

「えっ?」

 

「…ありがとな。俺のために夜遅くまで作ってくれたんだろ?」

 

「で、でも…結局家に忘れちゃって…」

 

「全然大丈夫だ。俺が怒ることがあるとすれば夜更かししたことくらいだ。目の下にクマあるぞ」

 

「ええっ!?か、隠せて無かった…」

 

うう…色々と恥ずかしい…。あ、そういえば……

 

「煌成くんはまだ学校にいるの?」

 

「ああ、今日は自習で来てる。まあ、今日が最後だけどな」

 

「あ……」

 

「俺が次学校に来る時は、卒業式だな」

 

「…そっか。そうだよね……」

 

もう卒業なんだ。煌成くんは………。

 

「ほら、これ」

 

俯く私の前に差し出された煌成くんの手には、1つのリストバンドが握られていた。

 

「え?これは……?」

 

「俺はお前にホワイトデー返せないからな。このバレンタインで渡そうと思っていたんだ」

 

そう言い私の腕に付けられたリストバンドには、1つの言葉が書かれていた。

 

 

I want to be with you forever(永遠に君といたい)

 

 

「早すぎるかもしれないけど、いつか、いつか遠くの話かもしれないけど」

 

私の目をしっかりと見据えて煌成くんは言葉を紡ぐ。その言葉を一語一句1つも逃さないように私は耳を傾ける。

 

 

 

「また、俺とお前が一緒にいれるような時が来たら、その時は……」

 

 

 

いつか、私も煌成くんと2人で、永遠にいるために…………

 

 

 

 

「その時は、結婚しよう」

 

 

そう言い恥ずかしそうな目をそらす煌成くん。その顔を手でくいっとこっちに向け、私は煌成くんに顔を近づけた。

 

 

「私も、ずっと一緒がいい」

 

 

 

煌成くんが卒業したら、しばらくは寂しい。でも、ずっと離れ離れになる訳じゃない。

 

私は、煌成くんの夢を応援する。そして互いに頑張って、いつか……

 

 

 

この別れは、互いの夢の始まりなんだ。




読んでいただきありがとうございます。とっても更新が遅れてしまいました、すみません。
この話が終わって残りは2話となりました。次は煌成のいる状態だのパスパレラストライブです。もう残り2話なのかと少し驚いています。

なるべく早く残り2話を投稿するつもりでいるので、是非応援宜しくお願いします。


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私達は今を煌めいている。

3月8日。卒業式前日の日曜日、煌成最後の仕事の日がやってきた。
それぞれの夢の形を思い、6人は今日も夢を追いかける。



※オリジナル設定注意
視点変更あり


「おはよう、煌成くん」

 

「ん?ああ、珍しいな」

 

最後のライブへと向かう車に一番最初に来たのは彩だった。

 

「えへへ…なんか早く来ちゃった」

 

そう言い車に乗り込む彩。その横顔は少し暗い。

 

「今日は……絶対成功させようね」

 

「……ああ。頑張れよ」

 

それから俺達は何も言わずに他のメンバーを待ち続けた。

 

 

いよいよ、俺にとって最後のライブだ。見届けよう、最後まで。

 

 

 

 

 

今日で何度目かのワンマンライブ。いつもは緊張しかしてないけど、今日はなんか違う。絶対に成功させたい、その思いが体中にみなぎっている。

 

そしたら朝早く目が覚めちゃってすぐに支度して集合場所に向かってた。

 

「おはよう、煌成くん」

 

するとスマホを見てた煌成くんは驚いたような顔をしてこっちを見た。

 

「ん?ああ、珍しいな」

 

確かに私はいつもそんな早いタイプじゃない。いつもは緊張してるからかなぁ……。

 

「今日は……絶対成功させようね」

 

「……ああ。頑張れよ」

 

それから私達は何も言わずに他のメンバーを待ち続けた。

 

 

 

もう、何も言われなくたって大丈夫。君に頼りっきりの私じゃない。

 

自分の成長を感じて少しジーンとなりながら、パスパレが乗った車は会場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

ー控え室ー

 

「……時間になるかな」

 

煌成くんの言葉に空気がピシッとなる。やっと、始まる。私達のライブ……!

 

「…俺は、この1年間ずっとお前達を見てきた」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「確か最初は人生ゲームをやったな。なかなか面白かった。初ライブの時にはみんな今よりも緊張してたしな。祭りにも行ったか……」

 

これまでの沢山の思い出が頭に溢れてくる。

この1年間。いや、この2年間がどれだけ充実したものだったかなんて誰かに聞くまでもない。

 

「楽しかった。ありがとう」

 

「煌成くん…」

 

零れ落ちるその言葉は一体誰が言ったのか。私かもしれないし他の誰かかもしれない。

 

「俺は、お前達のステージを舞台袖でしか見た事がない。だから観客がどう思ってるのかなんて知らん。ただ、お前達は最高だ。誰がなんと言おうと最高のアイドルだ」

 

スタッフから時間ですと声が聞こえる。でも私達は煌成くんの方を見て動かなかった。

 

すると煌成くんはスッと両腕をあげた。

 

「……楽しんでこい。以上!!」

 

「「「「「はい!!!」」」」」

 

イヴちゃん、日菜ちゃん、麻弥ちゃん、千聖ちゃんの順でハイタッチしてステージに入っていく。

 

「……彩」

 

「ちゃんと、見ててよ。私の……」

 

煌成くんの手を思いっきりパチンと叩いてステージへと走る。

 

 

 

最っ高に輝いてる姿を!!!!

 

 

 

 

ーライブ終了後ー

 

「パステルパレットでしたー!!」

 

観客からの拍手を受け、控え室へと向かっていく私達。

 

「最っ高の出来だったわね、みんな!」

 

「ん〜!もうるるるるるんっ!って感じだよ!」

 

みんなで盛り上がりながら私達は控え室へと向かっていた。今回のライブは今までの中で最高に楽しかった!早く煌成くんに褒めて欲しいな……。

 

煌成くんも、このライブなら悔いもないかもしれないし……。

 

 

「煌成くん!ライブ終わった……よ……?」

 

扉を開けると、そこに煌成くんの姿はなかった。

 

代わりに机の上に置かれていたのは5枚の手紙。それぞれのイメージカラーの手紙が置いてあった。

 

「煌成くん……」

 

5枚の真ん中に置いてあるピンク色の手紙を手に取り、開く。

 

 

『彩へ』

 

この手紙を残した理由も、私にはなんとなくわかる。それはみんなも察しているようだった。

 

「……白鷺へ」

 

千聖ちゃんは、ぽつりぽつりと自分の手紙を読み始めた。

 

『お前は5人の中で1番経歴が長い。表情の作り方やバラエティーの対応の仕方だってわかっているだろう。他の4人と協力しながら最高のアイドルを目指して欲しい。あと、勉強を頑張るのはいいがテストの度に目の下にクマを作るのは良くない。定期的に勉強しろ。お前なら……子役からずっと頑張ってきたお前なら…グスッ。頑張れる…はずだ……。黒峰煌成』

 

一筋の涙が頬につたうその姿は、美しい女優にも負けていないようだった。

 

「…大和へ」

 

『お前には昔から世話になったな。お前とのセッションがしばらく出来ないというのは少し寂しいような気もする。楽器経験の長さじゃお前がパスパレの中でトップだ。周りの音に気を配りながらリードしてやってくれ。あともう少しファッションは気にしろ。この前パジャマで外に出てるの見たぞ。次見かけたらはっ倒すからな。……お前も、アイドルなんだ。沢山の人に可愛いって言われる…アイドルなんだから、自分に自信を…持てよ、っス…。黒峰煌成』

 

涙を拭い作った笑顔は、今までの笑顔よりも何倍も輝いた笑顔だった。

 

「…若宮へ」

 

『これからはお前も彩の分もモデルの面倒を見れなくなる。かと言って彩を頼りにしないでしっかりと担当の指示を聞くこと。これ本当に。お前は誰よりも真っ直ぐにアイドルに向き合っていた。これから苦労することがあってもお前は自分を見失うな。あと1つ謝りたいことがある。実はもう日本に忍者はいない。モデルにアイドルにとこれからも忙しいことはあるだろうがフィンランドから日本に来てアイドルを目指すような気持ちの強さはお前だけの武器だ。頑張れ。黒峰煌成」

 

ちょっと呆気に取られたような顔をした後に微笑んだ顔は、一緒にモデルをやっている私でさえドキッとするような笑顔だった。

 

「……氷川へ」

 

『新しい担当に迷惑をかけないように。絶対に。でもその自由な発想や運動神経の高さは天才のお前にしかできない。人と違うことは何にも替えられない最高のものだ。お前だけの武器を磨き続けろ。ギターのテクニックももう俺に追いつきそうだな。やめて。でもお前は人を笑顔にする才能がある。お前が笑顔になれば周りを笑顔にできるような才能が。お前だけの夢を周りに見せてやれ。お前だけのアイドルを見せてやれ。お前なら、お前にしかできないものは、きっと…ある。黒峰煌成』

 

すっごい微妙そうな顔をしていた日菜ちゃんが最後にクスッと笑った笑顔は、少しだけ悲しそうな笑顔だった。

 

「…………彩へ」

 

煌成くんは、私にどんな言葉を残してくれたのだろうか。

 

ヒラリと開いたそこの紙には、予想を遥かに超えた内容が書いてあった。

 

 

 

『卒業式の後、話がある』

 

 

 

窓から吹いてきた風は、少しだけ暖かかった。

 




次回、『煌めいた彩りは新しい春を運ぶ』最終話。


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最終話 煌めいた彩りは新しい春を運ぶ

別れの春が、やってきた。




※オリジナル設定注意
視点変更あり


「行ってきます」

 

この家にも長い間お世話になった。一人暮らしに変わってからもこの家は変わらず俺の居場所だった。

もう家具も何もなく、表札もない家を見ると少し寂しい。

 

「…行ってきます」

 

もう一度言い、煌成は学校へと歩き始めた。

 

 

 

3月9日。卒業式の日である。

 

 

 

ー花咲川学園ー

 

教室に入るとやはりというかなんというか騒がしかった。

 

「お、煌成。今日は少し遅かったな」

 

「ああ雅也。今日くらいはゆっくり歩こうと思ってな」

 

既に少し涙目の雅也を見てると俺も少し泣きそうになる。

 

「……長い間ありがとな」

 

そう言うとズズっと鼻をすすり照れくさそうに

 

「卒業式が終わってから言えや」

 

と笑った。それから俺達3年生は時間が来るまでずっと話していた。高校の3年間も、今日で終わり。みんなこの時がずっと終わらないかのように話して、笑っていた。

 

「…移動の時間だぞ」

 

ほとんど泣きそうになってる担任の声で、俺達は静かに廊下に並び始めた。

 

後輩達に見せる最後の姿だ。キチンと終わらせよう。

 

 

 

 

 

「卒業生、入場!」

 

体育館に響く拍手の音が大きくなる。この音を聞いている側って考えると卒業する気分になってくる。

 

「おっ…」

 

みんなわかりやすいな。すぐに見つかる。

 

微笑んでこっちを見てくる若宮、真面目な顔してこっちを見てくる白鷺。それと…………

 

「えっぐ、ひぐっ。ぐずっ……」

 

もうこっちまで聞こえるくらいの声で泣いてる、彩。

 

「卒業生、起立!」

 

ガタッ!と後ろから音が聞こえた。いつもの声も。まあ、彩だろう。

 

……変わらないな、いい意味で。

 

 

 

 

どんどん式の行事が進んでいく中で煌成はずっと物思いにふけっていた。

 

 

早いものだ、この3年間も。去年卒業式の話を彩とした気がするな。

少しだけ流れそうになる涙を抑え、煌成は目を閉じる。

 

同級生に、先生に、先輩に、後輩に。沢山の人に支えられてきたこの高校生活は、俺の一生の思い出だろう。

 

「卒業生、礼!」

 

 

今までありがとう。花咲川学園。

 

 

 

卒業式が終わった。

 

退場の時に目のあった煌成くんの顔は、優しい顔をしていた。

……私は涙でぐちゃぐちゃの顔を見られちゃったけど。

 

「煌成くん、まだかなぁ……」

 

昨日の夜煌成からメールで体育館裏に来て欲しいと言われてずっと待ってる彩は、少しだけ怒っていた。

 

「そりゃ煌成くんも友達とか多いだろうから積もる話もあるだろうけど……」

 

こんな時でも1番に会いたいと思うのはエゴなのかな?卒業式くらいはしょうがないかなぁ……。

 

「ヒャッ!」

 

「お待たせ、待った?」

 

後ろからほっぺに熱いものを当てられたと思ったら、カフェオレを持った煌成くんがそこには立ってた。

 

「座れるところ行こうか」

 

そう言い歩き出す煌成くんの後ろについて行く。

学校では迂闊に近づけない。周りにバレたら大変だからね。

 

 

 

 

ー特別教室ー

 

「あれ?鍵かかってるはずじゃ…?」

 

煌成くんに連れていかれたのは普段は鍵が入っていて誰も入れない特別教室だった。

不思議そうな目で煌成くんを見るとポッケからチャリーンと鍵を取り出した。

 

「先生が貸してくれた」

 

煌成くんへの信頼、絶大……!?

 

煌成くんとこの学校の教師にビックリしていると、煌成くんに真正面から抱きしめられた。

 

「え?煌成くん?だ、ダメだよ。ここは学校……」

 

煌成を止めようとする彩だが、煌成は抱きしめる力を更に強めた。

 

「……ずっと、こうしたかったんだ」

 

「…え?」

 

「学校の中でも、外でも。ずっと一緒に居たかった。ずっと同じ時を過ごしていたかった。何度同じ学年である事を望んだか。何度大学を変えようと思ったか……」

 

そう言う煌成の目から流れ落ちた涙は、見上げる彩の頬へと落ちた。

 

「本当はずっと、ずっとお前と一緒にいたかった…。本当に寂しかったのは、ずっと俺だったんだ…………」

 

泣いて呟く煌成とは裏腹に、彩は落ち着いていた。

 

「煌成くん」

 

「…ん」

 

力を抜き、彩の目を見る煌成。彩は軽く微笑み、

 

「甘えない!」

 

そう言い煌成の頬をビンタした。

 

「いっ……。え?」

 

状況が掴めない煌成に彩はまくしたてる。

 

「煌成くんの方が寂しかったって!?そんなわけないでしょ!私だってずっと寂しかったの!それに煌成くんが今日卒業したら私は1年間煌成くんの居ない学校を過ごさなきゃダメなんだよ!?それなのに……」

 

彩は煌成にタックルするように抱きつき、言葉を漏らした。

 

「ずっと一緒に居たかったなんて、言わないでよ……。ずっと一緒に居てよ……。互いに夢を叶えて、できる所まで行って、もう思い残すことはない!ってら言えるようになったら……」

 

 

「私とンッ!?」

 

 

煌成が瞬間的に彩の口を塞ぐ。そして焦ったように彩へと告げた。

 

 

 

「それは、俺に言わせて欲しい」

 

彩の目から涙が零れ落ちる。何滴も何滴も。卒業式の時よりもはるか多くの涙が。

 

「ずっと一緒に過ごそう」

 

「うん」

 

「毎日美味しいご飯を食べよう」

 

「うん…」

 

「休日は2人でどこかに出かけよう」

 

「……うん…」

 

「いつか、いつか…」

 

 

 

 

「結婚しよう」

 

 

「……うん……っ!!」

 

 

 

たとえ離れ離れになっても、俺達はきっとまた会える。

 

 

 

「あ、桜咲いてるね」

 

「ああ、綺麗だな」

 

 

 

 

別れだけど、これはそれぞれの夢への新たな始まり。

 

 

 

 

新しい、春の始まりだ。

 

 

 

 

 

おしまい




これまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。去年の11月から始めたこの「煌めいた彩りは新しい春を運ぶ」は今回で最終話とさせていただきます。
気軽な気持ちで始めた小説投稿でしたが色々な人に見てもらいここまで来ることができました。本当にありがとうございます。
最後のアンケートとして2人の未来の話を書くかどうかは皆さんに委ねたいと思いますので、良ければ参加してください。

これで彩の物語は終わりですが、今2話だけ書いてある千聖の「僕が出会った少女はガラスのような人でした」の投稿を再開しますので、良かったらそちらも見てくださると幸いです。しかしシリアスが多めとなっていますのでご注意ください。

最後に、これまで読んでくださり本当にありがとうございました!
これからも頑張りますので、是非応援よろしくお願いします。
(Twitterチェケって名前でやってますのでフォローしてくれたら嬉しいです)

それでは、またお会いしましょう。


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