東方式奏伝 -賢者の友- (与那嶺幻夜)
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プロローグ:消失

お久しぶりでございます。与那嶺です。


 「現実」それは「神」「妖」実在があるのかわからないものを否定した世界。人間が世界の中心となり様々な技術が発達し力無き空想上の生物が生きていけなくなった世界けれども現実で生きる者たちもいた。

 

「外の世界」某所

 

時期は3月中旬頃といったところだろうか、寒くて過ごし辛い冬が開けてようやく暖かくなり始めた。桜が咲くにはまだ少し早く蕾のままできれいに咲くのはまだ先だ。個人的にはこのまま咲いてほしくないけどね。けどそんなこと言ったって仕方がない咲くものは咲くのだ。

 

 

 

 

「眠い..今何時だ?」

 

スマホを充電器から切り離して時刻を確認する、示された時間は12時だった。一昨日の夜に寝から丸一日眠っていたのか。それなのにまだ眠たい、身体全身が鉛みたいに重くてまた瞳を閉じる。目を瞑れば多少は怠さがマシになるからだ。仕事も3年前に辞めて自堕落な生活を送っている。仕事をやめた理由は今も思い出したくない。てかもう覚えていない。

 

机の上には大量のアルコールの空の瓶や缶が所狭しに並べられており、彼が全部飲んだことを物語っている。その机の上には一つの写真立てがあり、彼含めた8人の者達が笑顔で写っている。酒を飲んで眠る空虚な生活を続けて、荒みに荒んだ心はかつての彼の面影など残っていない。こんな生活を続けて彼が生きてこられたのは妖怪だからというところにあった。しかし、心は人間に近くて脆かった。親友を失った苦痛は彼の心の奥に入り込みかれを蝕んでいき今に至る。

 

「紅姫...私は」

 

再び眠りに落ちた..

 

 

 

 

 

 

 

「まだ眠っていたのね。」

その言葉で彼は目を覚ます。聞き覚えのある声だ、懐かしい今は疎遠の友人の声、もう会えないと思っていた人物の声だった。だけど俺は幻聴と決めつけて殻に籠もるように、自分を閉ざすように眠った。

 

「また寝てしまったわ...起きることを拒否するみたいに眠ってる。ねぇ、月神どうしてそこまでして貴方は目覚めないの?」

 

夢を見た、過去の楽しかった頃の記憶。

夢を見た、親友との温かい記憶。

夢を見た、この先起こるであろう物語

それは、終わり、始まり、そして閉じる。

 

「始まり」で、私は何を見る?

「終わり」で、私は何願う?

「閉じる」で、どう果てる?

諦めと絶望は際限が無かった。心の奥深くに突き刺さって、根を広げる。

先も後ろも色の褪せた記憶が広がる、どうか私を殺してはくれないだろうか。

 

そうして、絶望の中目を覚ました。頭が割れるように痛い。体がひどく気怠い。

 

「おはよう月神。目覚めはどうかしら?」

 

「最悪だよ、悪い夢でも見てるみたいだ。八雲紫」

 

彼女は不満げな表情を作り、私の両頬に雪のような白い両手で包む。壊れ物を扱うように、大切な愛玩を愛でるように私の頬を包む。

そして、胴体に手を伸ばして私を抱きしめる。

「あの時貴方を私の物にしてしまえば、きっとこうはならなかったのでしょうね。..今更遅いとは私も思うわ。でも壊れた貴方を私はね迎えに来た。」

 

これは甘い毒だ、迎えに来たということは幻想郷が私を受け入れるということ。それだけは私が壊れる前から避けたかったことだ。私の存在そのものが大きな争いを産む火種になって、幻想郷を滅ぼしてしまうかも知れない。それなのに....紫はなんで迎えに来た。

 

「あ〜あどうしてこうなってしまうのかなぁ。」

考えることに疲れたよ。幻想郷が滅ぶ原因になっても俺が知ったことじゃない。だからこの甘い毒を受け入れよう、どうせ行っても近いうちに死ぬんだそこまで迷惑は掛からんだろう。

 

「いいよ、幻想郷にでもなんでも連れて行け。」

『幻想郷にでもなんでも連れて行け。』

確かに月神はそう言った。言葉の中に諦めを含んだ言い方だった。でも、それ以上に私は月神と居れることが嬉しくて何も知ろうとしなかった。彼の絶望の根源を諦めの意味を。

 

かくして彼は誰にも認識されずに表舞台を降りた。それが幸運かはたまは不幸か、誰にもわからない。だってだれも知らないのだから。

ただ間違いなく言えることは僕の墓場は幻想郷だったってこと、それだけはもう決まっているかな。




また、ぼちぼち投稿再開していきます。


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