ありふれていない世界最強メイド (ぬくぬく布団)
しおりを挟む

ありふれていない世界最強メイドの設定+作者のやらかし 読んでも読まなくても大丈夫だ問題無い  2020/09/01更新

布団「小ネタと作者のやらかしと設定です・・・ハズカシイ///」
深月「説明はしておかなければ読者の皆様方が疑問に思われておいでですよ」
布団「言わなきゃ駄目・・・?」
深月「ではこれらが設定と作者さんのやらかしです。そして皆様に注意を申し上げます」
布団「すまねぇ・・・あ、いえ・・・本当にごめんなさい」
深月「初期投稿からの読者様は「あぁそう言う事だったのね」と呟く筈でしょう。では皆様、ごゆるりとどうぞ」









――――――追申―――――――

読者様の希望によりステータスを記載致しました(※ステータスプレートでの奴ではありません)










神楽深月(かぐらみづき)

輪廻転生で前世の記憶を持っており、今世は女、前世は男という主役。今は完全無欠の超メイドで全ての仕事をこなすオールワークスを超える唯一無二の存在となり主である高坂皐月の絶対なる忠犬。もしも主に死を向ける敵勢が居たら処分する事に躊躇いは無い

幼少期には両親から酷く扱われ、そのストレスからリストカット。しかし皐月によって命を助けられ両親との絶縁も手助けして貰った事に恩義が出来た。明るい性格の皐月の姿を見て自身の全てを捧げたいと思いメイドとしての修行を行い、やり過ぎだと思う程の経験を積む事となる。最年少で優秀なメイドとして完成された深月は軍人よりも強く、その噂を聞いたセレブ層達から雇用の手紙が沢山届くも却下し皐月の元へと仕える

たったの6年、されど6年――――――最初は矯正とメイドとしての仕事の全てを二年で完了、戦闘訓練一年、未開の地の地獄のサバイバルを二年、残るは知識と教養を一年。因みに地獄のサバイバルとは未開、未知の生物が存在する人工島で着の身着のままで放り出されると言うヤバイの一言である。深月本人も「よく生き残れましたね私・・・」と呟く程

約六年ぶりに再会した皐月に絶対忠誠を誓い時偶愛が暴走してしまうのはご愛嬌

今作のオリ主兼ハジメハーレムのサブヒロイン

 

ステータス

 

(魔物肉による変化前)

 

身長165cm 体重53kg Dカップ

 

トップ:85

 

アンダー:68

 

ウエスト:61

 

ヒップ:85

 

 

(魔物肉による変化後)※現在も成長中

 

身長170→170→172cm 体重58→59→60kg D→E→Hカップ

 

トップ:90→94→96

 

アンダー:71→71→70

 

ウエスト:64→64→65

 

ヒップ:88→90→92

 

 

 

 

 

 

 

 

高坂皐月(こうさかさつき)

神楽深月の主人でお金持ちのお嬢様。秀才と呼ばれる程の頭脳に常識的な人とは誰とでも接する人でとても人気が高い。しかし告白する勇気を持つ者は誰一人とて居ないのは何故か?深月からのプレッシャーが凄まじいからである

今作のハジメのメインヒロイン

 

ステータス

 

(魔物肉による変化前)

 

身長155cm 体重48kg Cカップ

 

トップ:77

 

アンダー:62

 

ウエスト:55

 

ヒップ:78

 

 

(魔物肉による変化後)※現在も成長中

 

身長160→163→164cm 体重50→52→53kg D→E→Eカップ

 

トップ:82→85→86

 

アンダー:64→63→64

 

ウエスト:52→53→52

 

ヒップ:80→83→84

 

 

 

 

 

 

 

 

南雲ハジメ(なぐもはじめ)

オタクで座右の銘は"趣味の合間に人生"。中学の時本屋で物色中にサブカルに興味を持った皐月と出会い一緒に遊んだりする程仲が良い間柄で嫉妬の視線が原作よりも増大している。ハジメの両親は皐月が遊びに来る事を快く思っており、尚且つ温かい目で二人を見守っている・・・ぶっちゃけた話し「お前達付き合っちゃいなよ」と言う事だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書く前のオリキャラ設定としてメイドの名前は深月では無く、冥と言う名前にしていた!しかし布団は重大な事に気が付いたのだった!!

 

布団「今日の金曜ロードショー何じゃろな」

家族「大泥棒だってよ」

布団「ジ〇リじゃないんかーい」

家族「ジ〇リかー懐かしいな」

布団「紅〇豚にとなりの〇トロ・・・」キュピーン!

家族「懐かしいよなぁ」

布団(ヤベェ・・・名前がもろ被りしていやがる・・・変えなきゃ!)

 

そして少し書き貯めをしていた小説の名前を変更中・・・

布団「消さなきゃ消さなきゃ・・・修正修正・・・・・」

こんな感じでいろいろとやっちゃった感満載だったのである

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編(何かの記念話)
メイドの秘話









△▽△▽WARNING△▽△▽











この物語は(嘘ではないけど)ネタなので、それでも見る方はご注意をお願いします。嫌な方はブラウザバックをして下さい












準備は―――――――OK?













皆さんこんにちわ。私の名前は深月と申します・・・あれ?かなり前に自己紹介をしたような気がするのですが・・・まぁ、今はそんな事どうでもいいですね。苦節二年・・・メイドのなんたるかを、徹底的に叩き込まれましたよ!ちっ、あの執事長め。ピコピコハンマーで容赦無く叩きやがっ

 

ピコンッ!ピコンッ!ピコンッ!

 

内心でどの様に思っているのかも把握しているのですか。・・・ですが!私は絶対に貴方を超える!いえ、超えてみせます!!そうと決まれば、さっそく行動に移りましょう!

 

深月は大きな音を立てずに、早足で移動。そして、皐月の父―――――高坂 薫(こうさか かおる)が常日頃居る仕事部屋の前に到着。ノックして、返事を待ってから入室。室内には、薫と皐月の母―――――高坂 癒理(こうさか ゆり)の二人がイチャイチャしながら仕事をしていた

 

「旦那様、奥様、失礼致します」

 

「ん?深月か。どうしたんだ?・・・今日、仕事はお休みの筈だからお義父さんと呼んでも構わないんだよ?」

 

「そうよ深月ちゃん!オフの日だからお義母さんと呼びましょう?いえ、呼んで!」

 

子供に甘く、過保護な二人。だが、今回は仕事のお話なのでそうは呼べない

 

「実はお願いがあるのです」

 

「お願い!?深月がお願いか!」

 

「・・・嫌な予感が」

 

「私を―――――私をアメリカの軍隊に入隊をさせて下さい」

 

「「    」」

 

二人はあまりにもぶっ飛んだ深月のお願いにシロメとなって呆然とした。勿論、賛成する筈も無く駄目だと拒否するが

 

「私はお嬢様に全てを捧げると誓ったのです!執事長に勝てない様ではお嬢様を御護りする事も出来ません!お願いします!私は強くなりたいのです!だから・・・だから、どうかお願いします!」

 

土下座して必死にお願いする深月。二人は、深月がどれだけ本気なのかは目を見て分かっていたが・・・土下座までして頼み込む姿にタジタジとなっていた。必死にお願いを続ける深月に折れた二人は、ある条件を付けた

 

「・・・一年。それ以上は駄目だ」

 

「薫!?」

 

「深月の目を見て分かるだろう?あれは決意した目だよ。放っておけば単身で乗り込む可能性があるよ」

 

「深月ちゃんは子供で、未だ八歳なのよ!?」

 

「癒理が反対するのは当然だよ。私だって大反対だけど・・・単身で乗り込ませるよりも、知人にお願いして仮入隊させる方が幾分もマシだよ」

 

「・・・深月ちゃん。本気なの?日本じゃ駄目なの?」

 

「子供だからという理由で中途半端な訓練では駄目なのです。強くなりたい・・・強くなって、お嬢様を御護りしたいのです!」

 

ジッと癒理の目を見る深月。子供の真剣な眼差しに、最終防衛線の彼女も遂に折れて許可を出す。但し、これも条件付きだ

 

「薫が一年と言っていたけど、知人が駄目だと判断したら切り上げて戻ってこさせるわ。良い?これは絶対よ!」

 

「絶対に一年で強くなって戻って来ます」

 

こうして深月のアメリカ軍の入隊が決まった。・・・いや、入隊というよりも経験を積むと言った方が良いだろう。だが、二人は予想していなかった。深月がこれをきっかけとして、チート級の力を付ける事に・・・

深月は二人の了承を得て、薫の知人の伝手を使ってアメリカへと出立。――――――メイド服を着たまま

すれ違う人達からは、「メイド・・・だと!?」「リアルメイド・・・しかも幼女がコスプレ」「可愛い。お持ち帰りしたい」「一人?おじさんが色々と案内しようかな?」等と、注目の的だった。しばらく約束の場所で待っていると、軍服を着たおじさんがSP?を連れて近づき、日本語で話しかけてきた

 

「君が薫の言っていた神楽深月かな?」

 

「はい!私は神楽深月本人です!」

 

ゴツイ体格のおじさんに、内心緊張する深月

 

「ハッハッハ!そんなに緊張をしなくても大丈夫だよ。子供は大人に甘えても良いのだからね」

 

「は、はぁ・・・。わわわ!?」

 

おじさんが頭をいきなり撫でてビックリする深月

 

「さて、着いて来たまえ。これから君は―――――――本物に近い戦場を経験するのだから」

 

「!――――頑張ります!」

 

「良い元気だ。その元気が何時まで続くのか期待しているよ」

 

車へと案内されて基地へと移動する深月。彼等は訓練初日から度肝を抜かれる事になるのはもう少し後の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いか貴様ら!今日から新しい仲間の追加だ!」

 

「マジっすか~、絶対に着いて来れないって。隊長もそう思うでしょ?」

 

「・・・本音を言うと絶対に着いて来れない!だが!これは"元帥"直々の命令だ!しかも、元帥自らが後程視察に来る!心して掛かるように!」

 

部隊に配属している人達は全員が呆然となったが、直ぐに真剣な眼差しに変わって隊長の話の続きを聞く

 

「時間も押しているので、早速紹介しよう。・・・では、入って来てくれ」

 

全員が入り口に注目する中、入って来たのは子供。しかも、物凄く幼い・・・妻子持ちの者からの反応は、「小学生辺りの年齢か?」と呟いている

 

「神楽深月と申します。本日からよろしくお願いします」

 

「・・・と、いう訳だ。新しい仲間として協力しろよ?」

 

『はあああああああああああああああああああ!?』

 

誰だって驚くだろう。深月が入ってきただけで、親と別れが寂しい子供かと思っていたのだ。予想を遥か斜め上に行く事実だった

 

「おいどういう事だ隊長!こんなガキが俺達の訓練に着いて来れる訳ないだろ!」

 

「ガキはママのおっぱいでも吸ってな!」

 

「待て待て!逆に考えるんだ。子供を助ける光景を元帥が見るかもしれないと」

 

『それだ!』

 

「因みに、元帥の視察は何時かは分からん。では、早速訓練に入るぞ」

 

「分かりました」

 

スタタターと手早く行動する深月。部隊員はその姿に和みながらテキパキと移動をして、グラウンドに整列した

 

「では、腕立て、腹筋、スクワットを各500回、20kmランニングだ。出来た者から次に移っていけ!」

 

『殺す気か!』

 

この舞台の教官は超鬼畜で有名なのだ。部隊員を吐かせるのが趣味だというイカれ野郎である。渋々メニューをこなす隊員達

 

「くそっ!あのイカレ野郎くたばらねぇかな?」

 

「悪い趣味だから毛根が逝ってるんだろ?」

 

「だから結婚できないんだよ」

 

「お前等ー!連帯責任として各三つを200回追加だ!」

 

『ふざけんなああああああああああ!』

 

ヒィヒィ言いながら筋トレをする隊員達を見ながら、愉悦に浸っている教官だった。周りをじっくりと見ながら歩いては上げ足を取って追加をしている。そして、ある一角に目を付けた。それは深月の場所だった。この時、隊員達は「可哀想に・・・何かあったらフォローしておこう」と思っていた。だが、予想を上回る出来事が教官の目の前で起きていた

 

「ば・・・バカな!?この子供は化け物か!」

 

隊員達が一斉に深月の方を向くと、逆立ちをして腕立てをしている姿が映った

 

『うそん・・・』

 

「417・・・418・・・419・・・420・・・」

 

黙々と腕立てをして、数はもう既に400を突破していた。何故ここまで深月の腕力が強いのか・・・それは全て執事長のせいであった。自分の体重よりも重い物を持たせて一時間それを耐えろという鬼畜内容だった。今でもクリアした事が無いこれに比べたら遥かにマシである。少しでも負担を付ける為に逆立ちで腕立てをしているのだ

深月はこの調子で腕立て、腹筋、スクワットをこなしてランニングに移っていた。駅伝選手並の速度を保ったまま走り、部隊員がスクワットに取り掛かろうとしたところで終了

 

「幼女コワイ」

 

「筋肉は何処にあるんだ!」

 

「あれ?戦闘訓練ヤバくね?」

 

深月は再び筋トレを開始、二セット目に突入した。他の隊員も「幼女に負けてたまるか!」と意気込んでいつも以上の力を出してスクワットを終わらせてランニングに突入。もう半分で終わるといった所で、深月がランニングに突入。だんだんと追い付き、追い抜かれてプライドが粉々に打ち砕かれた隊員達だった

筋トレも終わり、休憩を挟んでからの戦闘訓練。深月と対峙する相手は・・・隊長で、全員が黙祷して祈りを心の中で捧げた。だが、予想外な事に深月の戦闘訓練は素人のそれに変わりがなかった。ポンポンと投げ飛ばされる深月。深月は、未体験の訓練に対してアドバイスをしっかりと聞いて部隊員の信頼を勝ち取っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年後――――――――――――――

 

「皆さん、大変長らくお世話になりました!」

 

『深月ちゃんが抜ける。むさくるしい男だけの部隊なんて嫌だぁ!!』

 

深月は一年の訓練を終えて日本へと帰る為の挨拶回りをしていたのだ。部隊の仲間とはとても仲良くなっており、深月に色々と助けたり、助けられたり等の出来事があった。男まみれの部隊に桃色が一点―――――女の子が居るので隊員達のテンションは爆上がりで、どんな危険な任務でもこなせる様になったのだった。戦場での雄叫びは凄まじいの一言で、「深月ちゃんの膝枕あああああ!」「俺は耳かきだあああああ!」「頭ナデナデしたいんじゃああああ!」「一緒にお買い物!」「テメェ等は俺達の敵だぁ!特に深月ちゃんの敵だぁああ!」「深月ちゃんの攻撃を援護しろ!」『了解したぁ!』―――――と、同じアメリカ人でも「あの部隊の人間達と一緒にしないでくれ」と声を大にして叫びたい程だった

 

「日本は基本的に安全だとは思うが、体には気を付けるんだぞ?」

 

「はい。元帥さんもお体には気を付けて下さい」

 

元帥との別れの挨拶も済ませて飛行機に乗って日本へと帰還した深月。アメリカで一年、とても濃い生活を送った深月は、元帥に頼んで薫と癒理に内緒で銃器の扱いと戦場を経験したのであった

日本に無事帰還した深月は、薫と癒理に報告に行こうとしたのだが執事長に捕まってあれやこれやと流されて無人島に連れて行かれた。待っていたのは、深月の人生の中で最も思い出したくないとされるサバイバルであった。最初はサバイバル程度は余裕だと執事長に宣言。だが、執事長から伝えられた言葉は深月をもっとやる気にさせる悪魔の一言であった

 

「私は一年を保たずにこのサバイバルをリタイアしました。私を超えるのであれば、分かりますね?お二人には私から説明いたしますので、何ら心配する事はありません」

 

「ならば、二年間生き抜きましょう!絶対に貴方を超えてみせます!!」

 

執事長を乗せたボートは去り、深月はサバイバルを開始したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャアギャアギャア

 

聞いた事の無い鳥の鳴き声をBGMにして、水源の確保と拠点の制作する事にした深月。何事も計画性が大事である

 

「ふぅ。サバイバルとはいえ、ナイフを持たせてくれた事だけは感謝ですね。あの執事長を超えてみせる!私はやってみせます!!」

 

だが深月は重要な事を忘れていた。"あの執事長"が一年も保たずにリタイアする理由を―――――その答えは直ぐに見付ける事が出来た。いや・・・見付かったと言った方が正しい

 

ガサガサッ

 

「野生動物?今晩のご飯にはもってこいで・・・・・す・・・・・ね」

 

深月の目の前に居た動物?は大きい牙を持った虎の様な生物。だが、頭が二つある時点でおかしいのだ。ヒクヒクと頬が吊り上がり、目と目を合わせ無い様にゆっくりと退避しようとしたが、虎?の方が早く動いた。大口を開けて深月に飛び掛かり、反射的に避けた深月。噛みつかれた木の幹はバキバキと音を立てて倒れた。逃げる事も出来ない

 

ここで倒さないと駄目だ!

 

深月はナイフを構えて虎?を見据える。相手も深月を警戒しているのか、さっきとは違って中々襲い掛からないので睨み合いが続く。痺れを切らした虎?は深月に飛び掛かって攻撃するが、深月は真正面から進んで虎?の腕の振り降ろしを回避。そして、流れる様に刃を目玉に向かって全体重を乗せて脳まで突き刺した

 

「やああああああああ!」

 

ブシュッ

 

噴き出る血。虎?が叫び声を上げて少しして、動かなくなった。深月は油断せずに、大きい石を持って執拗に頭部を叩き付けて完全に絶命させて一息付いた

 

「うわぁ、メイド服が血まみれに・・・早く洗わないと汚れが落ちませんね。それに、これも血抜きをしないと美味しく食べる事も出来ませんし」

 

急いで水源を探し、小さな川を発見。メイド服を川に漬けて、仕留めた虎?を引きずって川の中に落として血を抜き出していく。これで簡易的な血抜きは出来るが、まだまだほど遠い。皮を傷つけない様に解体して、ブロック毎に解体。そのまま水にさらして完全に血抜きを行った

 

「早く火も確保したいです・・・ですが、この大自然の中で火を焚くのは危険ですね。・・・穴を掘って住居を作りましょう!」

 

近場にあった硬い山を太い木の枝で掘って掘って掘りまくる。万が一大型の獣が入って来ても危ないので屈んでは入れる程度の大きさにした。只々穴を掘った拠点だが、無いよりはマシ。ちゃんと空気穴を作る事も忘れない

大まかに掘り終わると、日が陰ってきた。急ぎ川まで戻り、服と肉を回収して竹に似たそれを切って水を入れて持ち帰る。後は火おこし。枯れて倒れた竹があったので、擦って擦って着火。枯れ木を放り込んで火を焚いて虎?の肉を枝に刺して焼いていった

 

「モッキュモッキュ。・・・塩が欲しいです」

 

血抜きを行った事で獣臭さは減ってはいるが、それでも臭い。こうしてサバイバル初日は終了したのだった

それからは―――――拠点を拡張したり、器を作ったり、塩を作ったり、探索をしたり、獲物をしとめたり、調教したりと野生児並みの生活を続けた

 

サバイバル開始から半年、現代機器のありがたさを痛感しました。それは・・・毒キノコを食べてしまい、のたうち回ったからです。インターネットや本で調べる事も出来ないので実食するしかなかったから

サバイバル開始から一年、一人が寂しい。そうだ!この島で最初に出会った虎?を調教して飼いならそうというぶっ飛んだ思考に至りまして・・・見事、調教完了!

サバイバル開始から一年半、遂に島の生物の頂点になった。大抵の生物は、深月を見るなり逃げだして行った。襲われる事は殆ど無くなったが、食料が逃げていくという超悪循環の前に死にかけた

サバイバル開始から二年、執事長が船に乗って迎えに来た。ペットの虎擬き・・・二つ頭のサーベルタイガーと言えば良いでしょう。執事長にけしかけた私は悪くは無いです。悪くないと言ったら悪くないのですよ――――執事長

ペットとお別れをして日本へと戻った私は、知識の詰め込みを行った。だが、サバイバルに比べたら余裕ですよ!サクサクと覚える私を見てドン引きする屋敷の皆さん?あれもこれも執事長がいけないのです。いけないのですよ

 

深月の執事長が悪い宣言で、皆が執事長を責め立てたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解放者の拠点―――――オルクス深層

 

「と、いう訳です。私が迷宮の魔物を見ても驚かないのはこの経験があったからです!」

 

「「「    」」」

 

「どうかされましたか?」

 

「「知らない・・・そんな島があるなんて知らない・・・」」

 

「・・・深月はどんな環境でも適応する人外」

 

夕食を食べながら、深月の過去が気になったハジメ達にメイドになるまでの過程を話したのだ

 

「地球に帰還したら、ペットを紹介しましょう。大丈夫です。私が傍に居れば襲う事はしませんので」

 

「執事長には襲い掛かったのに?」

 

「全ては執事長がいけなかったのです。いいですね?」

 

「えっ?」

 

「全ては執事長がいけなかった。い・い・で・す・ね・?」

 

「「「あっ・・・はい」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「今日が4月1日だと気が付いて速攻で書き上げた話です」
深月「物凄く端折っていますね」
布団「・・・細けぇ事は良いんだよ!」
深月「サバイバルは本当に死ぬかと思いました・・・」





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ
お嬢様のメイド・・・それは私です


布団「やぁ。布団が新たなる小説を出すんだよ!だが忘れないで欲しい。この作品は息抜きと勢いだけで書いているから書留はほとんど無いんだ!最初のクロスオーバーが書き終わるまでは其処まで頻繁に投稿は出来ないから悪しからず!では楽しんでくれたまえ!」


~深月side~

 

皆様輪廻転生をご存知でしょうか?私事神楽深月(かぐらみづき)はそれを果たした者です。とは言いますが二次小説等にある神様転生とは違います。私は神様にも会っていないし特典?と言うのも無いですからね・・・しかし私は前世についてはっきりと覚えているのですが此処で大問題だったのです。それは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前世は男性、今世は女性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俗に言う性転換ですね。最初こそ戸惑いが有りましたが今では順応して女性としてしっかりと生きています

 

「深月ー紅茶が飲みたいから淹れてー!」

 

「畏まりましたお嬢様」

 

少々お待ちください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お待たせして申し訳御座いませんでした。さて、話は戻りまして前世と今世の違いについて説明と行きたかったのですがこれについては特に変わりはありません。死んでから産まれた年月が一緒、つまり異世界等と言うファンタジックでは無く現代社会なのです。では何故にメイドの真似事をしているんだと突っ込みを入れている読者様に説明致します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は本物のメイドで御座います

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘ではありませんよ?秋葉原等で見られるコスプレメイドとは違うのです。私がメイドになる切っ掛けはお嬢様との出会いから遡る事になります。私の両親は屑でした――――えぇ、物の見事に屑でした!大事な事なので二回言いました。いきなり仕事がクビになったと覚えています・・・お酒に溺れる様に逃げて依存症となり、当時四歳だった私に暴力を振るっていたのです。そのせいで男口調の俺と言う言葉を使い鬱憤を晴らすが如く八つ当たり、親からまた暴力と言った負の連鎖でした

約二年続いた暴力に先に根を上げたのは私でした・・・私はどうしてこんな不当に扱われるのか―――――何故?何故?何故?疑問ばかりが頭を巡りたどり着いた答えは死。痛いのは嫌だ、もう楽になりたいと言う思考だけとなりナイフでリストカットした。目の前が暗くなり意識を失ったが目が覚めると知らない天井だった。曰く、お嬢様が何かあると言って入っていった先の路地裏で私を見付けたとの事でした

当然私は当たり散らし、『何故放って置いてくれなかったのか、何も知らないくせに』等と言いお嬢様からの平手打ちを貰った。泣きながら「そんなこと言っちゃ駄目!」と泣きながら説教され、その場に居たお嬢様のご両親からも説教されたのは今の私にとって黒歴史でしょう。説教が終わった後は私の現状を説明し色々やって解決。両親とは絶縁し完全に無関係となり新しい今の名前を持って自由の身となりました

完全に一人立ち出来るまで支援をする話が上がっていましたが私はそれを拒否、そして地獄から救い上げてくれたお嬢様に恩返しをする為お仕えする事を必死に説得。そして出された条件――――それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のありとあらゆる物。人生から血肉、髪の毛一本までお嬢様に捧げるという事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無論私は迷い無く了承して、この身の全てをお嬢様に捧げることを誓いました。しかし、問題は山積みで当時の私は男口調で喧嘩っ早い性格だったので、それらを矯正する為徹底的に指導され間違えればピコピコハンマーで叩かれ叱られを繰り返し直す事が出来ました。指導してくれた家の使用人の方達には頭が上がりません

パーラー・キッチン・スカラリー・ナーサリー・チェンバー・ハウス・スティルルーム・ランドリー・レディース―――――それぞれの役職全てを叩き込み、最後の仕上げは戦闘訓練にサバイバル。これに関してはやらずとも良いと旦那様達は仰っていましたが私はお嬢様を護る為に必要だと説明し数年の時を経て12歳で遂に獲得し、最年少でオールワークスを超えた唯一無二の存在となりました

上流階級・・・セレブの方達ですね。極々一部の方達には私のメイドとしての資質、軍人にも匹敵する戦闘能力、暗殺者も怖じ気づく等と噂されたりしました。私に此処までの才能が有った事にビックリしています。正直今でもそう思っていますが努力を怠らなければ天才は天災になり得ると思っています。お嬢様と約7年ぶりに再会した私は心の中で歓喜していました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢様は天使に成られていたのです!愛くるしかった目は宝石のように輝いておりお肌もすべすべで!etc――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またしても申し訳御座いません。つい、お嬢様の事を語ってしまいました。でも仕方がありませんよね?綺麗ですから。再会を果たした私にお嬢様は飛びついて喜んでくれました―――――――これだけでも昇天物ですね♪・・・・・お嬢様は誰にもあげませんよ?お嬢様の心はお嬢様の物、そして時には律する事も私の役目・・・その時には心を鬼にしてと思っていましたが、噂に聞く所によると秀才、誰とでも等しく接するという大天使そのものでした。私はふと思いお嬢様に尋ねました"何故あの時私を助けてくれた"のかと

曰く何か有るというだけでは無く運命的な物を感じたからだそうです。流石お嬢様、私が此処までの潜在能力を兼ね備えていると言う事を直感で理解してくれたのですね!それは、正に運命の出会い!必然的にお嬢様と私は出会ったと言う事ですね!!←深月は暴走中

お嬢様を護る為、中学からは同じ学校に入り色々とサポートに回りました。何故サポートに回ったのかですか?学生とは、自らが何かをする為の施設です。今の状態で何もかも私がしてしまいますと何も出来ず、発想も不十分になるかもしれない・・・とお嬢様の未来の道が絶たれてしまうからというものです。まぁその心配も無くお嬢様自身から学生は学生の本分を忘れずにの範囲でと言われましたので将来はとてもしっかりとした主となるでしょう。とても楽しみです♪

しかし、その学生生活の中でも最も忌避したい汚物が居ます。えぇ・・・天之河光輝というど腐れ野郎です!「お嬢様に近づくなこの下郎!」と声を大にして言いたいと思う程の極端なご都合主義者です。貴様がお嬢様に話し掛ける事によって嫉妬した周りからお嬢様に虐めを敢行しようとする輩がいましたよ・・・えぇ居ました。もう過去形ですから―――――――私自らがOHANASHIして遠くの方へと消えて頂きました。お嬢様の害と成る全ては私が排除致します。因みにお嬢様自身も鬱陶しく思っているらしく放課後になると愚痴を漏らす程・・・・・これは何とかしなければと思い早速行動、信頼できる生徒に一旦お嬢様を預けど腐れ野郎とその取り巻きの女子達と男子達に警告しました

 

「貴方の様なご都合解釈主義者と傍観している幼馴染みの方達はお嬢様の教育に悪いので近づかないで下さい」

 

ど腐れ野郎は何か喚いていましたが無視、幼馴染みの女性が後でフォローしてきましたが忠告を少々入れてあの手この手でお嬢様に近づけない様工作をし無事見事に任務を達成致しました。まぁこの後お嬢様に程々にと怒られてしまいました・・・くっ!何て情けない!お嬢様に怒られてしまうなんて・・・まだまだ精進あるのみです!!

その様な流れを幾つも経験、実行、そして中学二年のある日お嬢様の運命の出会いがありました。立ち寄った書店にて小説を探そうとするお嬢様・・・所謂オタク達が愛する小説に興味がお有りとの事で赴きました。其処で目にしたのは同じコーナーにてどれを買うか迷っている男子学生を発見。何を思ったのかお嬢様は、いきなりその男子学生に話し掛けどれが良いのかどれがお勧めなのかと尋ね一冊の小説を購入。今思えばこれが運命の出会いその二というやつですね

 

その一は私の物ですので駄目ですよ?その二で我慢して下さい

 

そして小説を読んだお嬢様は物の見事にどハマり、あれから定期的にあの書店へと通う様になりました。そしてお勧めしてくれた男子学生と楽しそうにお話しておりあの様な新鮮な笑顔を持って笑っている姿を始めて見ました・・・あの男子学生侮れない!!お話も終わり新たなお勧めの小説を手に入れたお嬢様は何と男子学生と連絡先を交換していました。因みにあの男子学生の顔はお嬢様の美しさの余り赤くなっているご様子でした。あの男子学生は南雲ハジメと言う男子中学生で歳はお嬢様と同じ中学二年、ご両親はゲーム会社社長と漫画家。・・・こう見ればあの南雲ハジメさんがオタクとなる運命は確定していたのですね

そして、月日は経ち中学を卒業し高校へと入学したお嬢様は、秀才ですので偏差値の高い高校へと進学するのだろうと思っていたのですが違っていました。平凡な高校――――――お嬢様ならもっと上の高校へと進学出来ると説得しましたが無意味に終わり原因を探す私と旦那様達。そして私はある一つの原因に気が付き皆様に説明すると・・・旦那様の目がこれまでに無い程無機質な物に・・・一方の奥様達女性陣はというと「あの子にも春が来たのね~。何時紹介してくれるのかしら~」等と言う方向に発展。旦那様は「娘は何処の馬の骨とも分からん平凡な男には渡さん!」と言い奥様に平手打ちをされ正座にてお説教をされていました。奥様は何時になっても怖いです

それとなく私がお嬢様に理由を聞くと、南雲ハジメさんと同じ高校が良いと仰られました。理由はもっと楽しく同じ趣味の人とお話したいというありふれた理由ですが、私はお嬢様と毎日話している為理由は分かっている。いつも楽しそうに彼の事を話しているのでご自身の初恋に気が付いていないのでしょう。・・・とても微笑ましいが何時如何なる時にライバルが現れるかもしれないので早く自覚して欲しいです。そして旦那様には申し訳御座いません。私はお嬢様の幸せの為ならばそれをサポートします。・・・・・まぁぶっちゃけて言えば彼とお嬢様をくっ付けるつもりですのでご容赦して下さい

高校の受験も終わり羽根を伸ばしながらの最後の中学生生活を送る中、お嬢様がお出かけをするとの事。しかも内緒というハラハラ物です。とは言え私はお嬢様のメイド!どの様な事があろうとその責務は変らない。落ち着きながらお嬢様へと付いて行く。休日もあって仕事服であるメイド服は周囲の視線が集まりかなり目立つ

 

まぁお嬢様の方が私よりも美しくて目立ちますがね!

 

歩いて行き足を止めたその場所には普通の一軒家。ごく普通のありふれた家、そして躊躇いなくお嬢様は呼び鈴を鳴らし相手方に自分の名前を告げると直ぐに玄関が空き南雲ハジメさんが出てくると固まった。その視線の先は私で何か変な所でも有るのかと自分の服を確認するが問題は無く疑問が尽ず・・・お嬢様は「あぁ」と呟き彼に答える

 

「彼女は神楽深月。私の専属のメイド―――――ビックリした?生のメイドさんだよハジメ♪」

 

少しの間が空きハッと気付いた彼は「兎に角狭い家だけどどうぞ」と言いお嬢様と私は上がらせて貰うと――――待っていたのは暴走気味の彼のご両親だった

「メイドさん!?しかもモノホン!!」「我が世のネタがキターーーーー!」等と私に関する事だらけである。「えっと神楽さん僕の親が色々とごめんね?」ととても礼儀正しい謝罪、「私は気にしていないのでお構いなく」と伝えるとホッとしているご様子。恐らくご両親の暴走で落ち着きを取り戻したのであろう・・・それからはお嬢様と彼との二人だけの空間を作り私は台所を拝借、皆様の紅茶をご用意し配膳―――――私に関してはご両親方と出会いからのお話等、有意義な時を過ごすことが出来ました。因みに彼とお嬢様が何時くっ付くのかが楽しみなご様子でした。これはもうカウントダウン待ったなしと言う事ですね♪「頑張って下さいお嬢様」と心の中で応援しました。楽しい時はあっという間に過ぎ門限に間に合う様お嬢様に呼び掛け切り上げさせる。残念そうな顔を見ると心が痛くなりましたが仕方が無い事でした。ですがこれを切っ掛けとして何度もお邪魔をさせて頂いたので進展はあったと言っても過言では無いでしょう。彼の様な男性は奥手ですのでグイグイと押して行かなければ落とせないのです

そして高校の合格発表ではお嬢様を含み私も余裕での合格、美しさも含みダントツなお嬢様に新入生の挨拶を頼みに来た教師達に快く二つ返事をし始業式の新入生代表挨拶となりました。

 

これはビデオカメラを持参してお嬢様の記録コレクションに入れなくては!

 

あっという間に過ぎ去る日々、そして始まる高校生活に心が踊っているお嬢様。彼を見つけて名前を呼びながら近付き趣味の事について色々とお話をしているご様子。因みに私はメイド服での登校となっているので注目度は二番目でしょう←お前が一番目立っているよ!

義務教育は中学までなので高校からはお金の力と何故私がメイドなのかを説明し学校の方からは文句を言わせず特殊措置として認可して頂きました。入学式を含め始業式も私の姿に驚愕する人達が多いですね・・・メイド服がそんなに変なのでしょうか?因みにお屋敷にて着衣しているメイド服よりも露出は少ないタイプです。(※お屋敷での着衣しているタイプはアズールレーンのベルファストを想像して下さい)

肩口も胸元も開いてなくスカートはそれなりに長いので素肌が覗くという事は無く黒を基調とした服に黒いタイツ、白いエプロンという学校の黒い制服に近い基調としているので問題は有りません。無論お嬢様と同じクラスになる為にOHANASHIもしました

お嬢様のクラスには、何と南雲ハジメさんが居るではありませんか!お嬢様は近付き一緒にお話をしておりとても楽しそうでした。しかし容姿端麗、新入生代表挨拶もした事で知名度がある事で彼に嫉妬の視線が降り注ぐのは必然となり絡まれたりしており注意しようとしましたが、彼の大丈夫だからという気持ち含んだ視線の為何もせずにいました。一方のお嬢様は、彼が絡まれている事自体ご存じではありません。そんな感じであっという間に一年は過ぎ私達は二年生へとなりましたが、ここでも邪魔する厄介な奴――――――ど腐れ野郎と同じクラスとなりまたしてもご都合解釈でお嬢様を含め彼も迷惑していました。この一年またど腐れ野郎の被害が続くと思うと気が滅入ります―――――――そう思っていました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの出来事が起こるまでは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「これを書こうとした切っ掛けはメイドの目線からという物が無かったのがいけないんだよ!メイドって良いよね♪私もご奉仕してもらいたいんだ~!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドでも毒を吐くときはありますよ?

布団「ど、どういう事だこれは!いきなりお気に入りが61件だと!?」
深月「それは皆さんが私のお嬢様の愛を見たいと言う事でしょうか」
布団「此処はR-15ですよ?」
深月「大丈夫です。事故に見せかけて犯るのです」
布団「字が隠せていない!」
深月「冗談ですよ・・・心の奥底では致したいと思っていますが」
布団「取り敢えず我慢してね?」
深月「私はお嬢様のメイド、誘われない限りは大丈夫ですよ」
布団「うん・・・まぁ・・・はい」
深月「では始まります。皆様どうぞ宜しくお願い致します」




読者様の誤字報告有り難う御座います




~ハジメside~

 

憂鬱だ・・・また始まる。嫌な学校が・・・・・

 

月曜日、学校へと行っている学生ならば理解できるだろう。めんどくさい登校、勉強、付き合い等々それは人それぞれだろう。しかしながら南雲ハジメと言う少年はそれ以上に嫌な事がある。それは――――――

 

「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

檜山を始めとした四人組からのいじめである。アニメやラノベが大好きなだけだと此処まで酷くはないだろう・・・しかしいじめとなる原因そのものはハジメの行動には無く

 

「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

その答えの一つは彼女である

彼女の名前は白崎香織、学校の三大女神の一角の一人である。いつも微笑の絶えず非常に面倒見がよく責任感も強い為、学年を問わずよく頼られている。これだけで分かるだろう?成績が平凡、授業では居眠りとしている為に不真面目生徒と思われている彼に快く思わない者、彼女を好いている男共からの嫉妬が原因なのだ

 

「あ、ああ、おはよう白崎さん・・・」

 

ホント何故彼女は僕に付き纏うのだろう・・・不思議で堪らないよ

 

ハジメはどうにかしてこの状況を脱したいと思っていると

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

お馴染み組の三人が声を掛けてきた。ハジメは心の内で「ナイスッ!」とグットポーズを取っていた

最初に挨拶をしてきたのが八重樫雫。白崎の親友でポニテ女子のお姉さま系の女性で、しっかりとしておりオカン気質

次はキラキラネームこと天之河光輝。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能と正に勇者タイプの男

そして最後は坂上龍太郎。天之河と親友であり努力、熱血、根性が大好きで細かい事は気にしないタイプの脳筋野郎

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

ハジメは"趣味の合間に人生"を座右の銘としている為直す気は全くと言って良い程無い

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか?いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

と、このように勇者天之河は何時ものご都合思考にて注意するが南雲自身何を言っても意味無いだろうと諦めている。そもそもハジメの両親がゲームクリエイターと漫画家でバイトをする程の将来設計が出来ているのである。クラスの中でも早い段階で此処までの将来設計が出来ているのは凄い所だろう

そしてハジメが妬まれているもう一つの原因とは

 

「やっほーハジメ君!( ^ω^ )おっはよ~♪」

 

彼女の名前は高坂皐月。お金持ちのご令嬢であり常識的な人とは誰にでも分け隔てなく接する三大女神の一人だ。しかし、南雲にとって彼女とはとても仲が良いのである。前話でも説明していたが、高坂は南雲を切っ掛けにオタクの仲間入りを果たしたからだ

 

「ねぇねぇハジメ君、先週借りたこのラノベが予想を遥かに越えて面白かったよ!今度は直に借りに行っても良い?」

 

先程までオタクのハジメをいじめていた四人組は何も言わない。いや、何も言えないのだ―――――彼女のファンは多く信者も・・・そして何よりも怖いのは彼女の側に居るメイド

 

「皆様おはよう御座います。そして南雲さんもお元気そうで何よりです」

 

神楽深月――――高坂皐月の忠犬、オーバーキラー、超人メイド等と噂が絶えない女性だ

 

 

 

~深月side~

 

不愉快な塵芥共はお嬢様が入室してから一気に何も言わなくなりましたね。まぁ当然でしょう・・・お嬢様のファンクラブ達に知られれば矛を向けられると自覚している事でしょうから。まぁ例えファンクラブの方達が見逃したとしてもこの私は見逃すという事は絶対にありませんし、生きている事を後悔させる程OHANASHIをいたします

 

「皐月に深月も、眠そうにして真面目に話を聞こうとしない南雲と話すなんて香織と同様優しいな」

 

「私とお嬢様の名前を何時呼んで良いと言いましたか?お嬢様の許可を得ずに呼ぶ事は不敬ですよ」

 

「中学の頃から一緒だし、それに今もクラスメイト―――――名前で呼ぶのは当たり前だろう?」

 

本当にご都合解釈のど腐れ野郎は腹立たしい・・・お嬢様!早く私にこれを排除する様に申しつけ下さい!秒殺で終わらせますから!!

 

不愉快そうに天之河に視線をやり一言

 

「中学からって私はハジメ君と中学から一緒に遊んでいるから問題無いでしょ?そもそも遊んだ事が無い貴方にどうこう言われる筋合いは無いと思うのだけれど?」

 

「光輝君?私は私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

殺気と嫉妬が入り交じった視線を浴びるハジメはビクッと肩を震わせた。檜山達四人は良からぬ事を企んでいるご様子

 

「え?・・・ああ、本当に香織や皐月は優しいな」

 

またしてもご都合解釈。これによって人生を狂わされた人は居るんじゃないかと思うばかりです・・・親はどの様に教育を成されたのでしょうか。その顔を見てお説教をしてみたいものですね

 

ハジメもハジメで厄介極まりないなぁ・・・と心の中で思いこの空気から逃れたいが為、教室の窓から青空を眺めた

 

「ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど・・・」

 

雫は人間関係の心情等を理解しているのでこっそりとハジメに謝罪をする。まぁハジメは「仕方が無いよ」と完全に諦めて苦笑いを浮かべるばかりだ

 

「お嬢様そろそろお席に・・・もうすぐチャイムが鳴ってしまいます」

 

「ありがとう深月。それじゃあハジメ君、また後でね?」

 

皐月は深月に手で制し席に座る様促し着席。そうすると丁度チャイムが鳴り教室に教師が入り午前の授業が開始される。ハジメは直ぐに寝始め、皐月はその姿をこっそりとカメラで保存、深月は皐月の様子を脳内に録音するかの如く見続ける。この光景は教師も見慣れた物で放置し時間は過ぎ去っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ジメ君―ハ―メ君?もうお昼だよ?昨日はそんなに忙しかったの?」

 

ゆさゆさと肩を揺する皐月、そして目が覚めるハジメ

 

「高坂さんおはよう。うん・・・昨日は母さんのアシで夜遅くまで手伝っていたからね」

 

「あぁ~成る程ね」と納得した皐月は十秒でチャージできる定番のそれをハジメから奪い取り深月へと渡す

 

「今日という今日こそは!何が何でもしっかりとしたご飯を食べさせるからね!深月!ハジメ君を捕まえて!!」

 

ハジメはハッとするがもう遅い

 

「では失礼致します南雲さん。少々強めに拘束をさせて頂きますのでご了承下さい」

 

後ろから羽織い締めをする深月。ハジメは逃れようと体を動かそうにも動かせずにいる・・・ハジメはただ逃げたいが為に拘束を逃れようとしているのでは無い。背中に当たる柔らかい物――――――深月のたわわなそれから逃げ様としているのだ。まぁ男子は嫉妬し女子はその男子達を極寒の視線で見る

 

「ではプスッとします」

 

「ちょ!?」

 

瞬間手足だけ自由が効かなくなり動きを完全に止められてしまったハジメ、深月は極細の針にてプスッと麻痺をさせただけである←普通は有り得ないし出来ません

 

「さぁこれで一緒に食べれるね?大丈夫!深月に食べさせるから何も問題は無いよ?」

 

本物のメイドによる「あーん」は特大の羞恥である。それを意図もたやすく実行する皐月・・・恐ろしい子である!

 

「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」

 

追い打ちを掛ける様にハジメの心は悲鳴を上げる

 

どうして構うの!?高坂さんじゃなくて何で貴女が構うの!?と言葉が飛び出そうになるが、我慢――――――――そして

 

「あ~、誘ってくれてありがとう白崎さん。僕は高坂さん達と食べる予定だから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

「てめぇ何してんだごらぁ!」と言わんばかりにギラギラとした視線がハジメに突き刺さる。皐月はニコニコしているが内心「どっか行けこいつ!」と思っているだろう。深月は「はぁ~」とため息を付き、この現状を嘆いている

 

「なら皆で食べようよ!」

 

まさかの爆弾発言に周囲がピシリッと固まった。「止めろ馬鹿!」と言いたげな皐月・・・深月は咄嗟に主の肩を抑え冷静さを取り戻させるとさらなる燃料が近づいてくる

 

「香織、皐月、深月。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

ハジメはギギギッと錆び付いたブリキ人形の様に声のした方向へ向くと、ご都合解釈大好き君が居た。香織についてはナイス~!で、皐月に関しては関わるなぁ!と思いつつ苦笑いをしているが

 

「え?なんで光輝くんのゆ―――――――」

 

「南雲さんここの空気が汚染されたので外で食べませんか?」

 

「深月の言う通りだね!ハジメ君!外に移動して一緒に食べよう?」

 

うぉおおおおおおおい!?どないしてくれるんだこの空気!!とハジメは深月に視線で訴えかけるが強制的に連れて行くと言わんばかりの強烈なお返しにため息が出る

 

(もういっそ、高坂さん達二人を除いて異世界召喚とかされないかな?どう見てもあの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。・・・でも正直異世界のメイドさんと神楽さんのメイドの力量差を見てみたいと思っている僕がいる・・・・・)

 

と思っていると、ハジメの目の前―――――天之河の足元に純白に光り輝く円環と幾多の紋様の輝きが現れ凍り付いた。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気付くが全員が金縛りにでもあったかの様に出現した魔方陣に視線が奪われる。深月は「お嬢様!」と主の皐月の手を掴み外へ出ようとするが、徐々に輝く速さが加速し教室全体を覆い尽くさんばかりに拡大、悲鳴を上げる生徒達に教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆!教室から出て!」と叫んだと同時に光が全員を飲み込んだ

 

 




評価、感想等お気軽にどうぞ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

召喚とオルクス迷宮
異世界召喚ですか・・・そちらのメイドは名ばかりの物ですね


布団「ダニィ!?お気に入りが115件だとお!?」
深月「それもこれも全てお嬢様の輝きがあってこその物です」
布団「主役はメイドさんなんだけどなぁ・・・」
深月「ではお嬢様の回を増やせば良いのです」
布団「うぐぅ・・・む、難しいけどやってみよう。(必ずやるとは言っていないけど)」
深月「駄目ですよ?唯でさえ誤字報告を心優しき読者様方から報告されているのですから努力して書いて下さいね?」
布団「ゲハァッ!」トケツッ

深月「では作者様は放置しましょう。では、ごゆるりとどうぞ」








~皐月side~

 

教室に魔方陣の様な物が浮かび上がり、光が爆発した後目の前に見えるは見た事も無い作りをした建物、いや・・・違うわね。古代から中世のヨーロッパの神殿に近しい造りとなっている事から転移もしくは異世界召喚・・・ラノベの異世界転移物が流行っている流れとよく似ているこの現状はとても良くない。周りには教室に居たクラス全員がこの場所へ立っている。・・・恐らく転移の指定があの教室内だけの者と言う事なのかな?お弁当とかの物がこちらに無いから・・・きっと・・・ね

 

皐月は自身の手を掴んでいるメイドの深月に視線を向けると、彼女の手には学校の鞄が握られている。この事から身につけている――――もしくは触れているという条件でこちらに来たのだろうと予測が容易に出来た

 

とにかく様子を見ないとどうする事も出来無いし、取り敢えずは静観しようかな?ハジメも何も言わず周囲を観察しているから恐らくこの後の展開を予想している筈。そして恐らくこの召喚は、私達を兵士としての召喚もしくは生け贄・・・

 

目の前に居る集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏った七十代くらいの老人が進み出て来た。全員がこの人物こそこの集団のトップなのだろうと感じた

 

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様――――――歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた

 

 

 

~深月side~

 

咄嗟に鞄を回収出来た事に安堵した私です。この中にはお嬢様の私服を数着、私の屋敷でのメイド服が入っている為、着たきり雀という最悪な事態は避ける事に成功ですね。しかし、この場所は大聖堂に似ている・・・となれば此処は神官等が居る場所という可能性が高いと言う事。―――――――そしてお嬢様が現在読まれている異世界転移という小説と似た感じですね

お嬢様と南雲さんは、周囲を観察そして最悪の想定を元に動く事になるでしょう。そして、あの豪華な衣装を纏った老人は覇気がありますが、それだけの人物。・・・色々言いたい所ですがまずは話でも聞きましょうか。何事も情報が一番大切ですので

 

深月は、これからの事について設計を立てて行こうと情報を聞き出す為に、注意深くイシュタルの言動を気付かれない様に自然体で観察する事にした

場所は移りテーブルが並べられている大広間へと全員が集められた。メイドの深月以外が着席、そして絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入って来た。生のメイドさんに全員の目が向くが驚きは無い・・・そもそも学内で皐月に付き従う生のメイドさんをほぼ毎日見ているので殆どが慣れていた。まぁそれでも美女・美少女メイドである為、男子達は凝視している。しかし、それを見た女子達の視線は氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだがそれはお約束

ハジメの側にもメイドさんが飲み物を給仕するが凝視はせず、ただただ軽い会釈をもって感謝するが・・・背筋に悪寒を感じさせる程の視線が突き刺さり、そちらを見ると何故か満面の笑みを浮かべた白崎がジッと見ていた。ハジメは無視を決める事にした。そんな中良い表情をしなかった人物が一人―――――深月である。そして誰もが予想していなかった言葉が発せられ

 

「本当に貴方達はメイドなのですか?大方美女を宛てがい印象を良くしようとしたのでしょう。・・・しかし問題は其処ではありません。この飲み物は全くもってなっていません!お嬢様が飲まれる分はこの私自ら用意致しましょう!さあ厨房へと案内しなさい!!」

 

全員がぽかーんと口を開けて呆けている。その間に早足を持って厨房へと消えて行く深月、皐月は小さく微笑みを浮かべていた。そして数分後にカートにカップ、ポット、茶葉を乗せて帰って来たのだが、彼女の後ろを付いてくるメイド達はズーンと沈み込んでいた。そしてここでも天之河の思い込みは激しく憤る

 

「深月!彼女達に何をしたんだ!いきなり違う世界に来たからといって他人に当たり散らすなんてしてはいけない!」

 

皐月が「はぁー」とため息を吐き、深月は天之河を無視して皐月の元へ行き紅茶を慣れた手つきで入れ終わり差し出し終えた後、ご都合君い言い放つ

 

「彼女達はメイドとしての心構えが全くもってなっていません。メイドとは主に尽くす事、そして与えられた役割に全力を注ぐ事。基本すら出来ていないこの半端者達に私がお説教をし、手本となる仕事を示しただけの事――――大方私と自身の差にショックを受けているだけでしょう。・・・全くもって嘆かわしい。一度この私自らが指導して差し上げた方が有益とも言えますね」

 

天之河は何かを言おうとするが馴染みの雫に首根っこを掴まれて元の場所へと着席した。ゴホンッと咳を一つ付きイシュタルは説明を開始する

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

ふむふむ成る程。・・・魔人族が強くその使役する魔物もまた強い。人間族のパワーバランスが負けている為にこの勇者召喚を行ったと言う事ですか

 

更に簡単に言っちゃうと――――――「魔人族強すぎ!人間族滅んでしまいそうだから異世界から兵士呼べば良いじゃん」という事

 

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にしてこの世界を創られた至上の神。エヒト様は悟られたのでしょう――――――このままでは人間族は滅ぶと。そしてそれを回避する為にあなた方を喚ばれこの世界より例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という救いを送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

これは不味いですね・・・エヒトと名を出した瞬間周囲の目は狂信者のそれと同じ類の目その物。そして何よりこの言い方では一方的に魔人族が悪であるという事

 

深月の読みは正しく、エヒトを信者とする者達は狂信者のそれだった。人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒で度々降りる神託を聞いた者は、例外なく聖教教会の高位の地位に付くとの事と、神の意思を疑いなく嬉々として従うこの世界の歪さが酷い。しかし此処で突然立ち上がり猛然と抗議する人物――――――愛子先生だ

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようって事でしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっとご家族も心配している筈です!貴方達のしている事はただの誘拐ですよ!」

 

通称――――愛ちゃん

 

この様な理不尽な行為を否定し、イシュタルに食って掛かる物の告げられる言葉に凍り付く

 

「お気持ちはお察しします。しかし・・・あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

「ふ、不可能って・・・ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

混乱しているだろう。しかし希望はへし折られる

 

「先程言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな・・・」

 

ぺたんとその場に崩れ落ちる様に座り込む愛子先生、そして周囲もその理不尽さに腹を立てる

 

「嘘だろ?帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ!何でも良いから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

 

「なんで・・・なんで・・・なんで・・・」

 

「どうしてこんな事になるのよ・・・嫌だよぉ・・・・・」

 

殆どの生徒がパニック、ハジメも外見は冷静を装っていても内心は焦っていた。それでも、予想していた幾つかのパターンの中でも最悪の物では無かったので他の生徒達よりは平静さを取り戻していた。皐月もハジメ同様落ち着きを取り戻し静観、この先に待ち受ける何かに用心するかの如く見ていた

未だにパニックが収まらない中、天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩き、その音にビクッとなり注目する生徒達――――皆から目を向けられるのを確認して提案をする

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。・・・俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺には出来無い。それに、人間を救うために召喚されたのなら救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。・・・イシュタルさん、どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね?此処に来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えて良いでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

そう宣言した天之河。無駄に光るし、カリスマ性を持っている為、絶望していた生徒達は冷静さを取り戻しやる気になっている。女子の方は熱っぽい視線を向けているが、まぁイケメンは爆ぜろと言いたい

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ?」

 

「龍太郎・・・」

 

「今の所、それしかないわよね。気に食わないけど・・・私もやるわ」

 

「雫・・・」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織・・・」

 

何をやっているのやら・・・あのど腐れ野郎は遂にやってはいけない所までやらかしてしまいましたね。無駄にカリスマ性を持っているからややこしい。・・・あぁ周囲も皆賛同して行きます――――――――お嬢様と南雲さんは何も言わずに黙って聞いていますね。今は恐らくこれが正しいのでしょう。愛子先生は否定していますね・・・こんな中でも否定を貫くとは教師の鏡ですよ貴女は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが夢であればそう言いますが、これは現実。その様な甘い考えは何時の日か大きな後悔を持って貴女自身に帰って来ますよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静観していた深月だが此処に来て厄介な矛先がこちらへと向く

 

「皐月も深月も俺達と一緒に戦おう!」

 

あぁこれは駄目だ。もう我慢が出来無いと手を上げそうになるが一旦冷静になろうと深呼吸すると、ツカツカとお嬢様がど腐れ野郎に近いて行く

 

「やっぱり皐月も戦ってくれるんだよな!よし!皆で地球に帰―――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢様の平手打ちがど腐れ野郎の頬へとシュートッ!!何が起きたか分からなさそうに呆然とお嬢様を見るあれは見物ですね!お嬢様流石でございます!!

おっと、こうして見ていてはいけませんね。このハンカチを水に濡らしお嬢様の綺麗な手を拭いて冷やさなければ。・・・そういえば、この世界は魔法を使えるのでしょうか?あそこにいるメイドに聞いて濡らせる魔法が無いか聞いてみましょう

 

 

 

OHANASHI中―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、これで濡れハンカチが出来たのでお嬢様の元へと急がねば!待ってて下さいお嬢様~♪私が今すぐお嬢様のお手々を冷やします!!

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

うわぁ・・・高坂さんがあそこまで怒っているの初めて見ちゃったけどもの凄く怖い。取り敢えず黙って様子を見よう。・・・そうする事しか僕には出来無いよ

 

「な、何をするんだ皐月!?」

 

「黙りなさい。そして私の名前を勝手に呼ばないで下さる?深月から散々警告したのにも関わらずに直す気配が無いとは最低ですね」

 

皐月の天之河を見る目は道ばたの小石程度の評価となった

 

「貴方のその言葉には重みの無い薄っぺらな物。正義という言葉を知った子供と同義で、その果てに何が待っているか何が起こるかを理解していない。そして、取り巻きの貴方達三人も理由無く私達に話し掛けないで下さい。直そうともしないその無責任と何時か何時かという先送りする事はもううんざりです。そして私はこの戦争には参加しませんので悪しからず」

 

そう言い放ち天之河君達が何を言っても無視を決め込み先生の元へと歩き、神楽さんも合流し濡れハンカチかな?それを高坂さんの手に巻き付けている。そっか・・・張った手も怪我をするから冷やしているんだ。流石本物のメイドさん・・・この世界のメイドさんよりも凄いって事が良く分かるね

だけど色々と観察して思った事、高坂さんが天之河君に反対した時のイシュタルが向ける目が敵対者とかそういった嫌悪感を出していた。・・・多分神楽さんも気付いてか先生の側に移動させ側を離れない様にして周囲を注意深く観察している

 

ハジメはこの事からイシュタルを要注意人物の一人に上げ警戒をしながらこの世界でどうやって生きていこうか考え始める

 

 




布団「どやぁっ!お嬢様視点出せたぜ!」
深月「全くもってなっていませんね!もっと半分近く埋める形で書きなさい!お嬢様のご偉功をもっと知らしめないといけませんのに!」
布団「主人公sideは多用出来るんだけどなぁ・・・」
深月「ちぃっ!今すぐ書き貯めている分を全て放出しなさい!さぁ出すのです!」
布団「書き貯めって何ですか?」
深月「せめてお嬢様の強さを表す所まで!早く次話を寄越しなさい!」
布団「頑張るんだよ?・・・・・それと読者さんはこの後書き見ているけど大丈夫?」
深月「・・・ゴホン、大変お見苦しい所をお見せ致し申し訳御座いません。ですが皆さんも気になりますよね?ですよね!」
布団「必死にアピールやめれ」
深月「さて、冗談は程々にしましょう」
布団「感想、評価バッチ来い!」
深月「でも作者さんのメンタルは豆腐より柔らかく脆いでしょう?」
布団「自分でもかなり気にしている事実を言わないで・・・」グスン
深月「少し弄りすぎてしまいましたね。私は作者ではありませんが生暖かい目を持って待っていて下さいね?誤字報告等ありましたら宜しくお願い致します」






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ステータス?メイドの私は既に決まっています

深月「作者さん・・・無理していませんよね?フリじゃありませんよ?」
布団「大丈夫だ、この回は設定をある程度決めていたから」
深月「もう一つのクロスオーバー小説は大丈夫なのですか?」
布団「ダイジョウブダヨーモンダイナイヨー・・・」
深月「反省していませんね!其処に正座しなさい!」


説教中・・・



深月「全く・・・作者の無計画さにはほとほと呆れてしまいますね」
布団「 」チーン
深月「それはそうと、読者の皆様の感想有り難うございます。作者の誤字報告もありましたのでとても助かっています」
布団「グフゥ」グサグサッ!
深月「では次のお話です。ではごゆるりとどうぞ」












~深月side~

 

お嬢様の口からハッキリとど腐れ野郎とその取り巻き三人組に理由無く関わらないでと口にされたので、これからはかなり心身的に楽になりますね。ハッキリと戦闘参加を決意した以上、戦いについて学ばなくてはいけない事から正直に言いまして期待なんてこれっぽっちもありません。幾ら潜在能力があるからと言ってもそれを扱う人間の力量が伴っていないとどうする事も出来無いのです

狂信者について行くと柵に囲まれた円形の大きな白い台座が鎮座しており、大聖堂で見たのと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座にお嬢様を抱え乗ると、その台座には巨大な魔法陣が刻まれていました。すると狂信者が呪文を唱え

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――"天道"」

 

終わったと同時に足元の魔法陣が燦然と輝き出し、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出して地上へ向けて斜めにおりていきます

因みに私達が居た場所は聖教教会は【神山】の頂上で召喚された様です。しかもその高さは凄まじく、雲海が見える程高い場所でした。普通は息苦しかったり寒かったりとするのですがおそらく魔法で生活環境を整えているのでしょう。そうして雲海抜け地上が見えた大きな町―――――ではなく国が見える。巨大な城と放射状に広がる城下町は主要都市と言えば良いでしょうか・・・台座は王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようですね

演出としてこの様な光景を見せられればこの街は魔人族に滅ぼされ、瓦礫の山となるでしょう。それを防ぐ為には「あなた方の力が必要なのです!」等と言っている様な物ですね。現にど腐れ野郎はその様に感じているでしょう・・・正義とは人それぞれですが、現実を理解していないこの者達に忠告しても遅いでしょうね

 

徐々に近づいていく地表、そして外の景色を静観しながら深月は皐月の忠犬として、害ある物をどう払うか考えている内に到着。そして一同は王宮の玉座へと案内されて行く

王宮は教会に負けないくらいの内装で、道中に騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違い、その一人一人の目が期待と畏敬の籠った視線であり何者であるか予想が出来ていたのだろう。ハジメは居心地が悪そうに最後尾を歩く。まぁこの中でこの様な視線を向けられていないのは深月ただ一人。メイド服を着ているから仕方が無いのである

そして巨大な両開きの扉の前に到着すると、両サイドに立っていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げて扉を開け放つ。イシュタルは悠々と、天之河達の様な一部例外を除いては恐る恐るといった感じで潜って行くが深月だけが兵士に呼び止められるが、皐月の一言でギョッとして謝罪し一同の元へと合流する

扉をくぐった先には真っ直ぐ延びたレッドカーペット、その奥の中央に豪奢な玉座があり、その手前で立ち上がり待っている初老の男性がいた

 

成る程、本来は王であるあの男性が立ち上がり待っていたとなる所を見るとこの狂信者は国王よりも地位が高いという事が確定致しました。お嬢様も南雲さんも気が付いた様で何よりです。周囲を見るにあの方は王妃、その息子の王子と娘の王女辺りでしょうか?

 

またもや深月の予想は正しく、国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリア、王子はランデル、王女はリリアーナという。その他にも騎士団や宰相等の高い地位の者達が紹介されて行き、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能する。見た目は洋食のそれに近い物だったが、超メイドこと深月は厨房へと赴いて使われている食材、調理方法を見て学び自分の物とした。深月は皐月の為となるならば知らない知識を学ぶ事を当たり前とし、見ただけで覚えるという規格外な才能を持っているのだ

王宮では勇者達の衣食住が保証されており、訓練における教官等も現役の中から選ばれている。いずれ戦いに赴く為の親睦を兼ねてと言う事もある。晩餐が終わり各自に一室と割り振られる部屋に鎮座する天蓋付きのベッド―――――庶民の彼等からすると戸惑いがあるのだが皐月に関しては慣れたベッドの光景だった。ちなみに深月は一室を拒否、皐月の専属メイドと言う事で一緒の部屋で寝ているのである。そして皐月から一緒に寝ようという無茶ぶり命令により現在一緒に寝ている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢様!お嬢様!お嬢様!お嬢様の匂いがああああああああ!クンカクンカスーハースーハー・・・・・フゥ。つい、お嬢様の愛が爆発してしまいました。お見苦しい所をお見せして申し訳御座いませんでした

 

こうして怒濤の一日が終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日から戦闘訓練と座学が始まるにあたって、銀色のプレートが全員分渡され騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた

 

「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる物だ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

皐月は表裏と確認するがただの銀板ではないのではないかと不思議そうに思っているが内心ワクワク、深月は皐月のステータスについての心配をしていた

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう?そこで一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らすとそれだけで所持者が登録される。ステータスオープンと言えば表に自分のステータスが表示される筈だ。原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな?神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現出来無い強力な力を持った魔法の道具の代物の事だ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな・・・複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及している物としては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが・・・これは一般市民にも流通している。身分証になるからな」

 

各生徒達はステータスプレートへと血を魔方陣へと擦り付けると淡い光が灯る。周りの様子を確認した皐月もやってみる

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:1

天職:錬成師

筋力:5

体力:5

耐性:5

敏捷:5

魔力:5

魔耐:5

技能:錬成 直感 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「・・・・・ナァニコレ」

 

自分の数値の低さに絶望している皐月に追い打ちを掛けるかの如くメルドはこう続けた

 

「全員見れたか?説明するぞ、まず最初にレベルがあるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がり、上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

「ゴフッ!」

 

「お、お嬢様!?」

 

自分の血を擦りつけようとした深月だったが、OTL状態となった皐月を支えるのが優先な為中断する

 

「げ、現実が私を殺しに来てる・・・・・ゴホッ!」

 

更なる追い打ちを掛けるメルド

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させる事も出来る。魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなるのだがそこまで詳しい事は分かっていない。魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。そしてお前等用に装備を後で選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

「グペェ!?」

 

まだまだ追加攻撃は止まらない

 

「次に天職ってのがあるだろう?それは言うなれば才能で末尾にある技能と連動している。その天職の領分においては無類の才能を発揮するし、天職持ちは少ないぞ!戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、代物によっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが・・・百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくない物も結構ある。生産職は持っている奴が多い」

 

まだ俺のバトルフェイズは終了していないぜ!

 

「後は・・・各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

「  」チーン

 

現実は非情なり、ステータスが低い者なぞ誰も見向きもしない筈だ・・・というか間違いなくそうする。成長の伸び代が無いと言っている様な物―――――――そして追い打ちの中で一番酷い追い打ちに遭う

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性 全属性耐性 物理耐性 複合魔法 剣術 剛力 縮地 先読 高速魔力回復 気配感知 魔力感知 限界突破 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

皐月が否定した天之河のステータスがチートの権化であった

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か・・・技能も普通は二つ三つなんだがな~、規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは・・・」

 

因みに団長はレベルは62でステータスはおよそ300前後、という伸び代によっては速攻で追い抜かれてしまう程の物だった。色々と見込みのある者達が居てメルド団長はホクホク顔であったが皐月よりも前に「ん?」と言う声が漏れ「見間違いか?」等と言う始末そしてステータスプレートに異常が無いか調べ、何も無いと分かると

 

「ああーその・・・なんだ。錬成師というのは言ってみれば鍛治職の事だ。鍛冶する時に便利だとか・・・」

 

ハジメの天職は錬成師と歯切れ悪く説明するメルド団長に私は少し疑問が残りました。何故あそこまで歯切れが悪いのか?と、後方で戦線を維持する為には錬成師は重要なポジション・・・そこで一つの可能性が思いついたのです。南雲さんはお嬢様の様にステータスが低いのでは無いかという結論に至りました。そして彼を目の敵にしている塵芥共が調子に乗り出します。正直言って不愉快です――――――お嬢様にも同じ様な事をしたのであれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてお嬢様の命令で南雲さんを助けろと言われたのならば助けましょう

 

深月は待機、行く末を見つめる

 

「おいおい、南雲ってもしかして非戦系か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

「・・・いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「南雲~?お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

檜山の取り巻き三人もはやし立て、強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動に不愉快な視線が突き刺さるも全く気付かずに居る。檜山はハジメから奪い取る様にステータスプレートをひったくり、ステータスの内容を見て爆笑。斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。そしてクラスの一部の人達も失笑する

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ!完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」

 

とハジメを馬鹿にしている最中――――――

 

「あー・・・えっとだな・・・分かっていると思うが、錬成師は・・・その・・・・すまん」

 

しんと静かになった取り巻きとクラスメイト達、何故か?それは皐月のステータスプレートを見たメルドの発した言葉だったからだ

 

「ハジメ君、同じ錬成師として一緒に頑張ろうね♪」

 

「そういえば高坂さんのステータスはどんな感じ?やっぱり僕よりも高いよね?」

 

にやりと悪い笑みを浮かべる檜山含む取り巻き男子達だがその全てを裏切る

 

「えっとね?私のステータスってハジメ君の半分の5なの」

 

更に空気が固まった事に気付くハジメ、そんな中フォローをしようとする愛子が近付き二人にステータスプレートを見せ―――――――

 

「南雲君、高坂さん、気にすることはありませんよ!先生だって非戦系?とかいう天職ですしステータスだってほとんど平均ですからね!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

畑山愛子 25歳 女 レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理 土壌回復 範囲耕作 成長促進 品種改良 植物系鑑定 肥料生成 混在育成 自動収穫 発酵操作 範囲温度調整 農場結界 豊穣天雨 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

死んだ魚の様な目をするハジメと皐月

 

「あれっ・・・どうしたんですか!?南雲君!高坂さん!」

 

愛子は二人に止めと言わんばかりの一撃を放つ

 

効果は抜群だ!

 

死んだ目をしながら逃避する様に標的を切り替える為、ハジメは未だにステータスプレートに何もしていない深月へと標的を切り替える

 

「そう言えば神楽さんのステータスってどうなのかな?様子を見てたけど、高坂さんに付きっきりで確認していなかった筈だけど・・・」

 

「あぁ・・・そう言えばそうね。深月のステータスってどんな感じ?」

 

この時全員が思っただろう。学校では運動能力抜群、男子すらをも上回るそれを考慮するならば、二人目の勇者だろうと思っていた

 

「では確認致します」

 

小指に針を少し刺して血を一滴、表示されたステータスは

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:1

天職:メイド

筋力:250

体力:400

耐性:250

敏捷:350

魔力:400

魔耐:250

技能:生活魔法 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 ■■制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 家事 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 直感 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

( ゚д゚)ポカーン

( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)エッ!?ショウゴウナニソレ!?

 

最早誰もが呆然としていた

 

「・・・ハッ!?いかんいかん余りにも凄まじく呆然としていた!」

 

そして小悪党四人含めクラスの全員は笑う事を許されない。もしも笑ったが最後、物理的なOHANASHIが待っている為である

 

「ふむ・・・もう少し欲を言えば耐性系統が高い方が良いですね」

 

ちょっと待てえええええええい!と突っ込みを入れたい程チートである。天職がメイドってそれ違う!―――――しかも勇者よりステータスが高いという何とも言えないやっちゃった感が否めない

 

「流石~♪やっぱり深月は最強ね!私も鼻が高くて嬉しいわ!!」

 

るんるん気分の皐月はニコニコしておりとても良い気分だったのだが

 

「深月にそれだけの力が有るんだ!俺達と一緒に魔人族を倒そう!」

 

昨日の今日でこれである。絶対零度の視線を天之河へと向ける皐月はこう告げる――――――――

 

「ねぇ深月?あのご都合解釈者に本当の戦いというのを経験させて あ・げ・な・さ・い」

 

今までに無い底冷えした声に全員が驚愕する中、深月はただ一言―――――――

 

「了解致しましたお嬢様」

 

「徹底的に心という心をへし折って上げなさい」

 

「かしこまりました」

 

こうして前代未聞、勇者Vsメイドの戦いが幕を上げる

 

 

 

 

 

 

 




布団「良い感じにバグレベルにしちゃったんだぜ!」テヘペロ
深月「やりすぎでしょうに・・・」
布団「全てのお仕事をこなして戦闘までも出来るメイドなんて居ないんだぁ!」
深月「それはお嬢様の為です!」
布団「職業はビックリだろう?」
深月「いえそれは全く」
布団「なん・・・だと・・・・・!?」
深月「お嬢様のメイドとは私ですので」
布団「本当に狂化されてないんだよねぇ・・・?」
深月「お嬢様ニウムが足りませんので補充してきます」
布団「あ、はい・・・どうぞ」
深月「感想や評価はお気軽に          お嬢様~♪」
布団「ではこの辺で終わりましょう次話までさようなら~」




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは手加減して差し上げます

布団「たったの4話の投稿でUA9000越えにお気に入りが293件だとぉ!?どどど、どうなっていやがる!?」
深月「どんどんと伸びていますね」
布団「ぷ、プレッシャーに押しつぶされそうだ・・・」
深月「私は問題無いです」
布団「そ、それじゃあハジマルンダヨー」ガクブル
深月「では皆様、ごゆるりとどうぞ」




~深月side~

 

さて、お嬢様からの命令は徹底的に心をへし折り勝利せよとの事。ど腐れ野郎がこの戦いについてどう思っているか知りませんが私は全力で命令を遂行し他者がお嬢様への虐めが出来無い程の恐怖を植え付けて差し上げましょう

 

この世界へと持ってきた鞄の中には何も着替えだけが入っている訳では無い。ちゃんとした武器・・・暗器が入れられているので戦いは十全にそして万全の状態なのだ。訓練場の広場へと行くと木刀を手にしている天之河が居り、深月はこの試合の審判として自薦したメルド団長にチラリと視線をやるとそれに了承したかの様に頷いた

 

「ではこれより勇者達の試合を開始する。双方問題は無いか?」

 

「問題ありません!何時でもいけます」

 

「私としては問題だらけです。真剣も持たず何故この場に立っているのか不思議でなりません」

 

「しかし、メイドはその軽装で大丈夫なのか?胸元や腕が露出しているのだが・・・」

 

現在、深月の服装は屋敷でのメイド服――――――言うなれば実戦用のメイド服である為何も問題は無い

 

「このメイド服こそ、この私の本来の動きに対応出来る服です。そもそもの問題として私が勇者(笑)の攻撃が一つでも当たるとお思いですか?」

 

「・・・そうだな。余計な事を言ってしまった様だな」

 

メルドは深月の歩く姿だけでその実力を確信していた。自分と戦った際このメイドに勝つ事が出来るのであろうかという心配がある中で天之河との対戦、本当の実力を見るのには持って来いのタイミングであったのだ

 

「光輝これを使え。それは聖剣で自身を強化したりと装備するだけで良いことずくめの物だ―――――教会も王も皆がお前にこれを使わせる予定だから丁度良いだろう」

 

天之河の手に聖剣が渡り今まで以上の力が沸く自身に驚きを隠せないでいたがそれも束の間、聖剣を深月へと向け告げる

 

「もしもこの勝負で俺が勝ったら皐月と深月は皆と協力し魔人族を倒す事を約束するんだ」

 

「また勝手に名前を・・・まぁ、お嬢様から了解も得ましたし良いでしょう。もし私に勝つ事が出来ればお嬢様と一緒に協力を致しましょう」

 

その言葉にニコリと笑みをこぼす天之河だが深月の本題は此処からである

 

「もし私が勝てば貴方は一生、お嬢様と私の名前を呼ばず、邪魔せずの不干渉を命じます」

 

「な!?何でそんな事を言うんだ!!」

 

「何故?そもそも私達の行く末を貴方が決める道理はありません。それを試合で勝利したからと言って協力させるというのは人生の縛りですよ?ならば貴方が負けた場合の不干渉は何も不思議では無いでしょう?試合に自分だけが得をする条件を押しつけて損をする条件は許さない――――――どちらが理不尽であるか一目瞭然でしょう?」

 

「・・・分かったその条件を飲む。だけど勝ったら!ちゃんと皆と協力する事を約束するんだ!」

 

「私に勝てたら、受け入れましょう」

 

条件は決まりお互いに相対

 

「それではこのコインが落ちたら戦闘開始だ」

 

そしてコインを上へと弾き回転しながら落ちてゆき―――――――チンッとコインが落下した音を合図に天之河が走り出し、深月の懐へ飛び込み一閃するが紙一重で躱される

 

「これで一回」

 

二撃三撃と続けざまに振るうも全て紙一重で躱して行く深月

 

「四回、七回、そしてこれで十回です」

 

段々と増えて行く回数に疑問を感じつつある天之河、自身が聖剣を振るう回数につれそのカウントは進み今では三十まで数えられていた。深月は大きく後退する様に跳躍、天之河と距離を取りため息を吐く

 

「三十回・・・これが何を指し示しているかご存じですか?」

 

天之河は深月の言葉を無視し攻撃を続ける為追撃を行う

一方この戦いの様子を見ていたギャラリーの中で気付いたのはごく少数、メルド団長や騎士団の軍人、八重樫、皐月の三人だけであった

 

「はぁ!?幾ら何でも強すぎるじゃない!何なの彼女は!メイドでしょう!?」

 

「ちょ、ちょっと雫ちゃん落ち着いて!?」

 

気が動転している八重樫を白崎がどうどうと落ち着ける中、メルドは冷や汗を掻いていた

 

(ただ者じゃないと確信はしていたがこれ程までなのか!?両者には隔絶とした技術の差がありすぎる。・・・もしも俺が彼女と相対する事になれば確実に殺されてしまうだろう。そろそろ彼女が反撃に出ると思うがどの様に攻め立てるか・・・彼女の主であるあのお嬢さんに心を徹底的に折れと言っていたがどの様にするつもりだ?)

 

興味深そうに深月を観察するメルド。天之河が攻撃を続けていて深月は回避するだけの光景に素人達は天之河が優勢だと考えていた

 

「どうだ!俺は皆を守れるだけの力を持っている!回避ばかりで手一杯で言葉だけなのは深月の方じゃないのか?」

 

「掠りもしない攻撃を続けて未だ理解出来ませんか・・・では次はこちらから攻めさせて頂きましょう。何の変化も無いただの棒振りに長々と付き合うつもりもありませんので――――――では行きますよ?」

 

振り下ろしに被せる様に横一閃にナイフを素早く滑らせた深月、先読にて咄嗟にナイフを避けようと体をずらした天之河だがそれは悪手であった。ナイフへと視線を逸らされたと同時に聖剣を持っていた手は手首を捻る様に関節を外され聖剣がこぼれ落ちる。痛み無く手首の関節を外された天之河は驚愕するが、この隙を見逃さず腹部へとペタッと手の平を当て寸剄に近いオリジナル打撃を打ち込む

 

「ガハアッ!?」

 

深月を中心に広がる衝撃の波紋は、天之河を数十メートル吹き飛ばし口から吐血する程の強烈な一撃だった。地面へと膝を突き、誰がどう見ても天之河の敗北だと疑わなかった――――――しかし深月の攻撃はそれだけでは留まらず顎の骨が砕けたりしない程度の絶妙な力でもって蹴り上る。強制的に天之河を立たせた後、鉄震靠擬きを打ち込み更に吹き飛ばし更なる追加攻撃をしようとしたが天之河は失神していた為に戦闘続行不能――――――

 

「この程度の動きにも付いて来れず、あまつさえ気絶するとは・・・もっと手心を加えた方が宜しかったですね。これでは徹底的に心をへし折る事も出来ませんし・・・お嬢様に怒られませんよね?」

 

こうして一方的な試合は幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神楽さんちょっと良いかしら?」

 

試合が終わったその日の夜、ハジメとの二人きりの空間を作った皐月に自由時間を言い渡され深月は鍛錬をしていた。その最中に八重樫が声を掛けてきたのだ

 

「何用ですか?勇者様方にはお嬢様から干渉をするなとのご指摘があったと存じておりますが」

 

「それは光輝だけでしょう。私達三人に関しては干渉するなと言われていないし私は理由があって話しかけているだけ・・・それよりも今日の試合だけれど、あのカウントは光輝を殺した回数で間違い無い?」

 

「あらごめんあそばせ――――――という冗談は無しにしてお答えしましょう。八重樫さんの言う通りあのカウントは私があのど腐れ野郎を実際に殺せた回数です。まぁ最も最大限の手加減をしてもあの回数だという事ですので」

 

八重樫は最後に深月に何故強さを求めたのかを質問する

 

「何故神楽さんはそこまでして強さを求めたの?」

 

「全てはお嬢様の為、私の全て血肉や髪の毛一本に至るまでこの身を捧げて護ると誓いましたので」

 

「そう・・・神楽さんはとても強いのね・・・・・」

 

「八重樫さんもお強いでしょう?あのど腐れ野郎と比べれば」

 

「嫌味を混ぜないでくれるかしら?それとど腐れ野郎って・・・光輝は一応幼馴染み何だけど?」

 

「ど腐れ野郎で十分でしょう?貴女もあれを取り巻く女性達に色々とされていたのではありませんか?」

 

ビクッと図星を付かれたの様な反応をする八重樫、その様子を見る深月はクスクスと笑っている

 

「まさかカマを掛けただけで此処までの反応を頂けるとは予想していませんでした」

 

「それが本性?だとしたらとんでもなく意地汚いメイドね」

 

クスクスと小さく笑みを浮かべる深月にギロリと睨む八重樫だがそれは無意味、恐怖も何も感じない。怯ませる事も出来無い程度の睨みだからだ

 

「あれもこれも全てが私の本性ですよ?この様に、遊び心満載の駆け引きも出来無ければお嬢様は守れませんから。それではお休みなさいませ」

 

足音を立てずその場から音も立てず去って行く深月に八重樫はため息を吐く

 

「どうやって現代社会であれ程の絶対なる忠誠心を持つ者が現れるっていうのよ。・・・恐らく彼女は経験しているのでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人殺し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて!お嬢様は南雲さんと何か進展があったでしょうか♪何時二人がくっ付くのか楽しみで仕方がありません!

 

深月が妄想に耽りながらハジメに宛がわれた一室前に到着、それと同時に扉が開き皐月が出てくる

 

「お嬢様そろそろお時間です。お部屋に戻りましょう」

 

「ふふ、深月はいっつも私の事を思ってくれてるからとても助かっているわ」

 

こうして二日目の夜が終わり、本格的な訓練が開始されるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから二週間が経ちました。南雲さんは自身が戦闘に役立たないと理解したその瞬間にサポートの為の訓練、知識の詰め込みを行っていますね・・・何故私が知っているかですか?お嬢様の益となる情報は新鮮な物程良いからです。お嬢様もお嬢様で一緒に知識の詰め込み、お互いが駆け足で二人三脚をしている光景は微笑ましいですね・・・ここは一つお嬢様方に頼み事でもしてみましょうか?きっとお二人の共同作業で作られる筈ですので更なる効果が期待できそうです!有言実行!速攻です!!早速頼みに行きましょう♪

 

深月は勉強をしている二人に近付き頼み事をする

 

「お嬢様、南雲さん。お勉強も宜しいですが煮詰めすぎるのも効率が悪くなる恐れも御座いますので少し休憩されては如何でしょう?そして図々しくもお願いが御座います」

 

「そうだね・・・偶には休憩を入れないと効率良く学習なんて無理だよね」

 

「それじゃあ少しだけ休もうハジメ君。深月も私達に何かお願い事があるみたいだから」

 

「それで?神楽さんは僕達にお願いがあるって言ってたけど・・・それはどいう事?」

 

「実は折り入ってお願いが御座います。私は暗器を主体で戦うのですがどうしても大きい得物、刀に似た得物が欲しいのですが錬成にて作る事は出来ませんか?」

 

二人は深月のお願いに色々と考え案を出して行く

 

「刀か・・・素材があれば似た形の物が創れるかもしれない」

 

「資料館や博物館で本物の刀を見て触った事があるよ私!形もしっかりと印象強く覚えているから枠組みを作るぐらいなら大丈夫!」

 

「なら僕はネットやテレビで得た知識を元に刀身を創ってみるよ!」

 

創作意欲が降って沸いたのか、あれをこうしたら―――――これをどうしたら等とポンポンと出てくる。オタクのハジメと皐月はこの手の話題が大好きなのだ

 

「それじゃあ僕は鉱石を使えるかどうか聞いてくるよ!」

 

「いえ、お嬢様の事も含めると一人一人では無く三人纏めての方が手早く済みます。幸いにもメルド団長のスケジュールを前もってお聞きしていましたので何処に居るかは把握しております」

 

「それじゃあ三人で行こう!」

 

早速図書館から出てメルド団長がいる場所へと向かっていると丁度仕事が終わったのか対面から本人がやって来た

 

「メルド団長、今大丈夫ですか?」

 

「ん?坊主にお嬢さんとメイドじゃないか?一体どうしたんだ三人で俺に何か用事か?」

 

「私の武器を作って頂く様お願いをしたのです」

 

「それに私達の錬成の練習にもなるからね?」

 

「もしも刃が欠けて使い物にならなくなった場合に素材があれば元通りに直せるかもしれないから練習をしたいという事なのです」

 

感極まったのか、メルドは泣いていた

 

「坊主やお嬢さんの意気込みは心に響いた!任せろ!俺が今すぐ許可を貰ってくるから此処で待ってろ!」

 

走って何処かへと行ったメルド。恐らく重鎮達に許可を貰いに行ったのだろうと容易に推測できる

 

「簡単にお願い出来ちゃったね」

 

「あの方はしっかりとした人ですから、やる気に満ちた南雲さんのお顔に思う所があったのでしょう」

 

「そうだね~今のハジメは、とっても生き生きしてて自分の様に喜ばしいよ!」

 

「ちょ・・・恥ずかしいよ。と、取り敢えず僕はトイレに行きたくなったからちょっと待っててね。直ぐ戻ってくるから」

 

皐月と深月に一言残しトイレへと急ぐハジメ――――――

二人から少し離れた場所になると横から唐突に衝撃を受けて転んでしまった。其処に居たのは檜山が率いる小悪党四人組でハジメにちょっかいを掛け始めてきた

 

「よぉ、南雲。なにしてんの?そんなに急いで何処行こうってんだよ?無能は無能らしく地ベタに這いつくばってろよ」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ!いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「訓練もせずに毎日図書館に通うとか小学生かよ!マジ笑えるわ~、ヒヒヒ」

 

「なぁ大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから俺らで稽古つけてやんね?」

 

最悪だ――――――とハジメは感じた。ここ最近は皐月達と一緒に居た為に絡まれていなかったがこのタイミングで絡んでくるとは気が緩みすぎていた

 

「あぁ?おいおい信治、お前マジ優し過ぎじゃね?まぁ俺も優しいし?稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

 

「おおいいじゃん。俺ら超優しいじゃん!無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

皐月達からは見えないが其処を通るクラスメイト達は見て見ぬふりをする為どうしようも出来無い

 

「僕は今からとても大事な仕事が入っているから、放っておいてくれていいからさ」

 

やんわりと断りを入れるハジメだが

 

「はぁ?俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの?マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

そう言ってハジメの脇腹を蹴り上げる檜山。痛みに顔をしかめながら呻くが振るわれる暴力にだんだんと躊躇いを覚えなくなって来ている。檜山はハジメを人気の無い場所へと連れ込み突き飛ばす

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

「ぐぁ!?」

 

背中を強打

 

「ほら、なに寝てんだよ?焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――――火球」

 

火属性魔法による攻撃を転がる事で危機を脱したが

 

「ここに風撃を望む――――風球」

 

続く風魔法は避けれずに腹部へと直撃、吹き飛ばされ胃液を吐き出しながら蹲る

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ~、マジやる気あんの?」

 

南雲を容赦なく蹴り続ける檜山、ハジメはずっと続く四人の虐めを耐える耐える耐える――――――痛みによる苦痛を漏らしゲラゲラと笑う四人が更なる追撃をせんとハジメに攻撃しようとした時

 

「ねぇ?ハジメ君に何をしているのかな?」

 

サアーっと青ざめた顔を声がした場所へ向けると其処には笑っているが全く笑みが含まれていない目を浮かべた皐月の姿であった

 

「ねぇ?何してたの?誰がどう見ても虐めをしているとしか見えないよね?」

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど・・・俺達は南雲の特訓に付き合ってただけで」

 

「何やってるの!?」

 

その声と共に駆け付けてくる女の子は檜山達が惚れている白崎だったからだ。そして白崎だけでなく、天之河、坂上、八重樫とオールスターが勢揃いである。檜山達はハジメにしていた行為は特訓だと言い張り弁明をしているが

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれを見てもまだそう言い切れますか?」

 

最凶最悪の最終兵器が登場―――――――その声と同時に深月の進路上のクラスメイト達がザッとモーゼの様に道を空ける。最早どこぞの覇王と呼んでも過言では無い。深月がその手に持つ物それはス〇ホ、本来であれば充電が切れている筈なのだがソーラータイプの充電器を持っていた為動いているのだ。そしてそれから流される映像と音声にどんどんと顔色を悪くする四人

 

「特訓ねぇ・・・それにしては随分と一方的みたいだけど?」

 

「いや、それは・・・」

 

「言い訳はいい。いくら南雲が戦闘に向かないからって同じクラスの仲間だ。二度とこういうことはするべきじゃない」

 

「くっだらねぇことする暇があるなら、自分を鍛えろっての」

 

その間に深月は南雲の手を握り暖かな光が灯る

 

「神楽さん・・・これは一体?」

 

「大丈夫ですよ南雲さん。これは私の技能の一つ気力操作。文字化けで見えなかったと思いますがこれはそれです―――――この気力とは、現代で言う所の気功術の一つです。細胞の活性化を促進させ、自然治癒能力を向上させる事です」

 

あっという間にハジメの傷は癒え肌のつやも良くなる程回復した

 

「今回は私の気を送る事で直ぐに癒えましたが、本来はもっとゆっくりなのですよ?過度な期待は危険ですのでご注意を」

 

「あ、ありがとう神楽さん。本当に助かったよ」

 

「南雲君はいつもあんな事されていたの?それならいっその事・・・私が

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから!大丈夫だからホント気にしないで!」

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう?聞けば、訓練の無い時は図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてる。南雲も、もう少し真面目になった方が良い。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

あわあわとするハジメに天之河が水を差し空気が重くなっていく中パンッ!と手が鳴らされそちらを向くと皐月が無機質な表情を持って深月に命令を下す

 

「ねぇ深月?虐めをしている奴らを見ていると思う事が一つだけあるのだけど何か分かる?」

 

「ではご命令をお嬢様。私は躊躇いも無くその命令を実行致します」

 

「虐めをするのならそれ相応の報いが返ってくるのよ?撃って良いのは撃たれる覚悟のある者だけ――――――と言う事でハジメが受けた傷を全てあの四人に与えなさい」

 

「な――――ま、待っ―――――――――――」

 

天之河の声よりも先に鈍い音が鳴り響く。深月が四人の懐へ一瞬で入り込み脇腹へ殴り四人は苦痛により蹲るが手袋に刻み込まれた魔方陣から風属性魔法を放ち上へと撃ち上げ、空中へと飛び上がり四人の背に向けて回し蹴りを叩き込んだ。ドチャッという音を立て地面へと落下し、それを追撃しようとしたが

 

「深月、そこでストップ。これ以上は死ぬかもしれないから終わりよ。そしてそこの塵芥四人、もしもハジメ君に何かしたら殺すからそのつもりでね?――――――――さてと!ハジメ君、一緒に武器を作りに行こう!」

 

ハジメの手を掴み強制的に連れて行く皐月、白崎は無機質な目で睨付けるも鼻で笑われる始末。その後メルドから許可を貰ったハジメ達は失敗に失敗を重ねたが遂に深月の武器、日本刀擬きを完成させた

 

 

そしてメルドから発表された実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へと遠征が決まった

 

 

 

 

 




布団「ゆ、勇者(笑)は大変な事を・・・」
深月「所詮は口先だけの甘ったれど腐れ野郎です」
布団「お、おうソウデスネ・・・」
深月「南雲さんとお嬢様が"二人で"作り上げる武器、とても楽しみです」
皐月「任せて!」
布団「此処は後書きの場所やで?」
深月「それは今更だと言う事です」
布団「か、感想マッテルンダヨ?」
深月「何時までびくびくしているのですか!待っている読者様も居るのですからもっとシャキッとして下さい!」
布団「ひょ、評価もお気軽にどうぞ・・・です?」
深月「チキンハートな作者ですね・・・だからメンタルが豆腐より脆いのですよ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

頑張って下さいお嬢様!メイドはお二人を応援致します

布団「・・・」
深月「どうかされましたか?」
布団「釣りに行ったけど何も釣れなかったので投稿するの」
深月「その様な時も御座いますよ」
布団「読者の皆よ作者にモチベを分けてくれぇー!!」
深月「では皆様、ごゆるりとどうぞ」




~ハジメside~

 

メルド団長からオルクス大迷宮への実戦訓練を兼ねての遠征が言い渡された僕達は迷宮に近い冒険者達の宿場町の【ホルアド】に到着、何でも王国直営の新兵訓練用の宿屋があるらしく其処に泊まる予定だ

宿屋に到着し室内を見ると王宮と比べると質素な作りのベッドだけど僕にとってはごくごく普通の作りに落ち着く。本来は二人部屋なのだが僕だけ一人部屋でとても気が楽だ。・・・べ、別に寂しくなんてないんだから!

今回の訓練では二十階層までの予定だそうで、その辺りまでなら僕でもサポーターとして役立てる範囲内との事だ。メルド団長本当に申し訳無い・・・

 

心の中でメルドに謝罪し、予習を行おうと借りてきた迷宮の魔物図鑑を読もうとしたが辞めた。地球で皐月とゲームを一緒に長々と遊んでいた際、深月から「やり過ぎては明日に響きますよ?」と言う注意を受けていた事を思い出していた。明日は低層とはいえ命の危険のある迷宮、注意力を損なわない様にする為寝る事にしたのだ

しかし、ハジメが寝ようとした時に扉がノックされ、深夜の唐突なる訪問にびっくりした

 

「南雲くん起きてる?白崎です。ちょっと良いかな?」

 

一瞬硬直したハジメだが、女性を待たせるのもいけないので慌てて扉を開けると―――――純白のネグリジェにカーディガンを羽織った白崎が立っていた

 

「・・・なんでやねん」

 

「え?」

 

余りにも想定外で、驚愕な光景につい関西弁で突っ込みをを入れるハジメにキョトンと白崎。ハジメは気を取り直してなるべく白崎を見ない様用件を聞く

 

「えっと、どうしたのかな?何か連絡事項でも?」

 

「ううん。その、少し南雲くんと話したくて・・・やっぱり迷惑だったかな?」

 

「・・・どうぞ」

 

小心者のハジメは断る事が出来ず扉を開いて部屋の中へと招き入れる。何の警戒も無しに部屋へと入って来る白崎にハジメは「警戒心無さすぎだろ!」と密かに思いつつ部屋に置かれているテーブルセットに座らせた

それに続く様にノックされる扉に「今度は誰だ!」と思いながら扉を開くと見知った顔―――――皐月が居たのだ。冷や汗を掻き顔を青くするハジメに気付き笑顔を浮かべながら質問をしていく様子は蛇に睨まれた蛙の様だ

 

「何故顔を青くしてるのかなハジメ君?中に見られたらいけない"者"が居るのかな?」

 

高坂さんは何でそんなに勘が鋭いの!?明らかに確信してるじゃないか!どどど、どうやって乗り切れば―――

 

と思考を加速させ最適解を導き出そうとしたが、ここで天然がやらかす

 

「南雲くんどうしたの?誰か来たの?」

 

ピシリと空気が死んだのを確信した。修羅場になると思っていたハジメ、当然白崎の目は無機質な物へと変わったが皐月の方は変わらず自然体だ。ほっ―――と息を吐くハジメに皐月は追い討ちを掛ける

 

「私も部屋に入れてくれるかしらハジメ君?錬成師同士で明日の事と深月について二人で話したいのだけれど・・・あぁ先に天然ビッチとお話しても大丈夫よ?」

 

「だ、誰が天然ビッチなの!?」

 

ヒェエエと心の中であわあわしているが此方にヘイトが向かない様黙りとしている

 

「ハジメ君の―――いえ、男性の部屋にその様な格好で入室する時点でそう思われても不思議では無いと言う事よ?」

 

自身の格好を再び見直した白崎は沈黙した後、顔が一気に茹で蛸状態となりモジモジとしている。皐月は興味を無くし部屋の外へと出た

気まずい空気を絶ち切る為、ハジメは白崎に尋ねる

 

「えっと・・・白崎さんは僕と何を話したくて此処に?もしかしなくても明日の事についてなのかな?」

 

ハジメの質問に頷き険しい表情で告げる

 

「明日の迷宮だけど・・・南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得するから。だから!お願い!」

 

「えっと・・・確かに僕は足手まといとだは思うし、流石にここまで来て待っているっていうのは認められないと思うんだけど」

 

いきなりの事でハジメは誤解をしたが、白崎は慌てて弁明して深呼吸して自分を落ち着かせてから切り出す

 

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。夢を見てて南雲くんが声を掛けても全然気がついてくれなくて・・・走っても全然追いつけず、最後は消えてしまうの・・・・・」

 

「・・・そっか」

 

とても現実味を帯びている夢、しかし夢だからと言って待機が許可される程この世界は甘くない。例え許されたとしても批難の嵐があり、ハジメが居場所を失うのは目に見えているだろう。それ故にハジメの選択肢は行く意外の選択はあり得ない

 

「夢は夢だよ白崎さん。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員も居るし、僕と高坂さん以外クラス全員チートじゃないか。敵が可哀想に見える程だと思うよ?実際僕は弱い所を沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」

 

「で、でも・・・」

 

中々引こうとしない白崎にハジメはこう付け加える

 

「いざって時には高坂さんの側にいて神楽さんに守ってもらえる様にお願いをするよ」

 

まぁもしも駄目って言われたら高坂さんに泣き付けば何とか行けるかもしれないからね・・・

 

何やら白崎が小声でブツブツと呟いているがハジメには聞こえず

 

「ハジメ君お話はそろそろ終わったかしら?こちらの用事も早く済ませたいのだけれど」

 

丁度良く話を切り上げようとしたハジメに皐月から声が掛かる

 

「あ、うん分かったよ。白崎さんも態々僕を心配してくれてありがとう」

 

「何で其処で神楽さんの名前が出るの?私は治癒専門だし、怪我をしても直ぐに治せるのにどうして南雲くんは神楽さんに頼るの!?」

 

「え、え~っと・・・白崎さん大丈夫?何処か具合でも悪いなら直ぐに休んだら良いと思うよ?」

 

ハッ!?と我に返った白崎は慌てて平静を取り戻し「大丈夫大丈夫!」と返事をする

 

「そっか、それならよかった。白崎さんは治癒師で戦線補助には欠かせない人だから今日はもう部屋に戻って寝た方が良いよ。僕も高坂さんと早めに話を切り上げて明日に備えないとね」

 

「う、うん・・・それじゃあ南雲くんおやすみなさい」

 

「おやすみなさい白崎さん」

 

白崎は扉を開け皐月と入れ違う形で外に出て自分の部屋へと戻る。その背中を無言で見つめる者が居り、その者の表情が醜く歪んでいた事は殆どの者が知らない

皐月が南雲の部屋へと入る。因みにこの時の皐月の服装は普通の服装で、ネグリジェの様な思春期の男子に目の毒の様な物で無く長袖と膝下部分まで隠された服装だ

 

「ハジメ君に提案が有るの。深月の武器を追加で作ろうと思っていてね?ツインダガー系の武器デザインでアイデアが欲しいの。何か良さげな形有る?」

 

ハジメは何故深月にもう一つの武器が必要なのかと問うと

 

「深月はね?器用なのよ。初めて触る武器であろうと問題なく扱える・・・でもそれだと一番の長所である技量を十全に使えないし本人も暗器系の武器を主に使用しているって言っていたでしょう?実際問題よく素振りしたりするのにそのタイプを使っているのよ」

 

「えっ、それ本当!?」

 

「それに理由はもう一つ有るのよ?迷宮が洞窟タイプだと片手剣や刀みたいに中途半端に長いと取り回しが難しくなるし、短刀系なら事故も無いでしょう?最も深月がそんな失敗するとは思えないけれど」

 

「確かにそうだよね・・・二次創作系に出てくる完璧超人メイドが形を持ったと言っても過言じゃないからね」

 

ハッキリ申しまして神楽さんの仕事内容を聞いた時に休みが無いじゃん!って突っ込んだ事があったな~。しかも答えが全てはお嬢様の為にっていうね・・・忠誠心がとんでもない程高かったのは今でも思っているよ。どうしてそれ程までの忠誠心が有るのか聞いても教えてくれなかったし・・・まあ仕方がないね

それにしてもツインダガーか・・・某デスゲームの黒の剣士のは片手剣二本だから邪魔になりそうだし、某正義の味方の中華剣の方が良さそうだね。技量が高いと言う事は手癖が悪いとも捉える事が出来るし・・・よっし、そうしよう!!

 

「コンセプトは決まったよ。高坂さんは知っているかどうか分からないけど某正義の味方が使っていた中華の夫婦剣にしようと思うんだ」

 

「中華剣・・・直剣と違い刀身が曲がっているから深月の技量なら受け流しも出来るかもしれないからピッタリかも。ハジメ君、一緒に夫婦剣を作ろう!きっと喜んで使ってくれるわ!!」

 

夫婦剣作ったらあの刀擬き使ってくれるのかなぁ・・・

 

「それに深月ならあの刀も必ず使ってくれるわ!」

 

・・・本当に高坂さんは僕の考えた事が分かっているんじゃなかろうかと思うよ。何でピンポイントで思っている事をフォロー出来るか不思議で不思議で堪らないんだけど

 

その疑問を忘れようと集中して夫婦剣のデザインと形を説明、皐月が何処からか持ってきていた鉱石を使用しハジメが錬成。それに続く様皐月も錬成にて整えおおよその形を作り其処から二人で力を合わせて一つ一つを凝縮する様に錬成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「やったー♪」」( ´∀`)人(´∀` )

 

黒と白の双剣が完成し、二人は息を吐き出しハイタッチをする。あくまでも小さな声で、周りの迷惑にならない程度でだ

 

「いやぁ~見事に綺麗に仕上がって良かったよ!それもこれも高坂さんが居てくれたからだし僕一人だけだと此処までの完成度は出来なかったよ」

 

「それを言うならこっちも。ハジメ君が居なければこの夫婦剣を作る事も出来なかったわ!」

 

互いが誉め、そして謙遜する――――こう言う所だけ似た者同士で微笑ましい

 

「ハジメ君・・・明日はいよいよ大迷宮に入るけどこれだけは約束して。錬成師は一人じゃない―――――私も居るから何かをする時は二人一緒だよ?」

 

「うぇい!?ちょっと高坂さんそれはフラグだよ!建てないで!?ホントお願い!!」

 

皐月はしっかりとしていて秀才なのだが、ハジメの前となるとボロボロとメッキが剥がれる。某運命のうっかり娘よりかはマシな部類だろうが、別のベクトルから見ればそれと同等かそれ以上だろう・・・まぁメッキが剥がれると言うよりも本当の素顔と言った方が良いのだろう。ハジメもそれに気付いている為、余りツッコミは入れたりしない

 

「フラグ?―――――――あ・・・・・」

 

「ま、まぁフラグは建てたとしても折る事も出来るから問題無いよ!」

 

「ごめんね・・・・・」

 

ヤメテ!?そのショボンとした姿を神楽さんに見られたら僕何されるか分からないから!?と、取り敢えずフォローして部屋に帰さないと・・・もうそろそろ寝ないと明日に響きそうだよ・・・・・

 

皐月に出来うる限りのフォローを入れ送り届けるハジメ。「おやすみ」と言い来た道を早足で引き返して行き自室にたどり着いたと同時に眠気が一気に襲って来た。そのまま真っ直ぐにベットへダイブ―――――――ものの数秒で眠りへとついた

 

 

 

 

 

~深月side~

 

お嬢様は南雲さんとうまくやっているでしょうか?・・・しかしながら暇ですね。お嬢様から南雲さんの部屋へ近づくなとのご命令もされましたので尚更でし、今し方お部屋の掃除等も全て終わらせましたしどうしましょうか?

あぁ良い事を思いつきました!技能の再確認を行いましょう。これなら時間も潰せますし、派生技能だったでしょうか・・・それも手に入る可能性も有りますしね

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:5

天職:メイド

筋力:500

体力:700

耐性:400

敏捷:650

魔力:800

魔耐:400

技能:生活魔法 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 ■■制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 節約術 交渉術 戦術顧問(メイド限定) 直感 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

当初よりもレベルやステータスは向上している物の技能に至っては何も習得出来ていません・・・

↑ステータス向上は化け物級ですよ!

兎に角努力ですね・・・生活魔法に関してはお掃除です。正直私自身がやった方が早くて良いと思っていたので最初の確認だけしか使っていませんでしたね―――――これが成長し便利だと言って頼ってしまうと・・・こう・・・・・負けた気分になってしまいますし。私の技術が魔法に負けるのは許せないのです!

 

深月は嫌々ながらも生活魔法の清潔を発動、しかしながら床の汚れが少し落ちる程度だった

 

何なんですかこの生活魔法は!最初に確認した時もそうでしたが、汚れを落とすだけだとは何とも言えない使いにくさですね。汚れを落とすだけ・・・いっその事現代の清掃機器が出現し魔力で動かせれば時間も短縮できお嬢様の為にもっと尽くすことが出来るのですが

 

絶対に有り得ない事を思いつつ清潔――――すると床の超細かい埃まで一カ所に固まるかの様に集まる光景に唖然、まるでダ〇ソンの様な強力な吸引力で埃を集めた様だ。余りにも驚愕して深月の思考はストップ・・・直ぐに再起動した後

 

「はい?・・・・・何ですかこれ」

 

今起きた光景を有り得ないと思いつつもう一度清潔―――――先程と同じ様に埃を集める

 

「いやいやいや・・・確かに私は掃除機が使えたら今以上に埃は取れると思っていましたが、えっ?生活魔法とは本来こういう代物なのですか!?」←違います

 

ここで深月は慌ててステータスプレートを確認し

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:5

天職:メイド

筋力:500

体力:700

耐性:400

敏捷:650

魔力:800

魔耐:400

技能:生活魔法[+精密清潔][+想像操作] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 節約術 交渉術 戦術顧問[+メイド] 直感 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「えぇー・・・」

 

最早有り得ないと言わんばかりに頭を痛める深月。恐らく追加された派生技能の精密清潔と想像操作でこの様な現象が起きたのだろうと予測、精密清潔は恐らく超高性能掃除機の吸引力がこれとなったのだろう。最近の掃除機の力は凄まじい物だからね!さて続いて想像操作、これも掃除機の機構を完全に理解していた為の物だろうと予測される

 

掃除機をイメージしてこれ程とは凄まじい・・・洗濯機等も試したいですが流石に無理ですね。もしも脱水まで出来たとしても乾燥出来るかも怪しい。今日はこれまで―――――――と思いましたがこれだけは確認しておきましょうか

 

イメージするは頭皮と髪質――――――シャンプーやリンス、トリートメントによるさらさらの髪という馬鹿げた物。だが侮るなかれ、女性にとって髪は命と言う人も居るので重大案件、異世界にはその様な物は無いのでもしかしたらこの魔法でどうにか出来るのでは?と自身の髪で挑戦して呆気なく成功。これで皐月に褒めて貰えるとルンルン気分で反復練習して気が付いてしまった。深月は生活魔法の虜になってしまったと言う事に!ショックで落ち込む深月曰く

 

「生活魔法の誘惑に勝てませんでした・・・」

 

と真っ白になりかけていた所で皐月が帰って来て深月を励まし制作した夫婦剣をプレゼントして事なきを得た

因みに派生技能で全体清潔・清潔鑑定と言った清潔に関しての技能が増え想像操作は清潔操作へと進化した

 

 

 

 

 

 

 




布団「燃えろ作者の魂!」
深月「お嬢様が居なければ燃え尽きる所でした・・・」
布団「魔法には勝てなかったよ」
深月「お嬢様が第一ですので仕方が無いのです」
布団「時短になるからどうしてもね?」
深月「ファンタジーの力とは凄まじい物でした」
布団「もうそろそろ読者とのお別れですね」
深月「感想や評価はお気軽にどうそ宜しく御願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドはお嬢様と離ればなれになりました

深月「凄まじい伸びですね」
布団「何故こんなに伸びたんだ?」
深月「まぁ良いではありませんか。お気に入り件数が500を突破しましたよ!」
布団「もうすぐあっちのよりも多くなりそう・・・」
深月「UAもそろそろ20,000突破しそうですね」
布団「お気に入り500件突破記念とか書いた方が良いのかな?」
深月「本編が終わってからIFの物語を書けば宜しいのでは?」
布団「R―18は流石に厳しい・・・作者の文才が無いからね・・・」
深月「そこは読者様のご要望と言う形で良いのではないでしょうか?」
布団「せ、せやな」
深月「長々と喋るのも悪いと思いますので切り上げますね?では皆様、ごゆるりとどうぞ」


~深月side~

 

迷宮の入り口前まで来た私ですが想像していた雰囲気とは違っていました。立派な入場口があり職員の方がチェックをする中々に厳重な物ですね・・・周囲には露店等もある事から迷宮都市と言っても過言では無いでしょう

 

深月は少し目を向ける程度だが皐月は物珍しさにキョロキョロとしている

 

お嬢様は周りが気になるご様子ですね・・・おや?メルド団長様が立ち止まられましたか。恐らく注意点等の再確認を行うつもりでしょうか、ならばこの隙に露店の食べ物を買っておきましょうか

 

メルド団長のあつーいお言葉が言い渡されている最中に深月は気配を周囲に溶け込ませ露店へと行き数分も待たずに買い終え合流、あつーいお言葉は丁度終わった所であった

 

「お嬢様、こちらは先程露店に出されていた串焼きです」

 

「流石深月!ありがとう♪」

 

「メルド団長に見つかったら怒られるんじゃ・・・」

 

「問題有りません。気配を溶け込ませて買いに行きましたのでバレていませんよ?―――――南雲さんの分もありますがどうですか?」

 

「・・・いただきます」

 

深月達は一番の最後列なので前の人が気付く事は無い。後ろにも騎士は居るのだが深月が渡した串焼きを食べた事で口止め料を払った事となっているので問題になったりはしないのだ。迷宮へと入って行く一同、中は真っ暗では無く、緑光石という特殊な鉱物が光る事で松明等の明かりが無くともある程度視認する事が出来ている

 

「よし、光輝達が前に出て他は下がれ!交代で前に出てもらうから準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいがたいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

しばらく歩いていると隊列が止まりメルドの声が響いた。異世界に来て初めて魔物との戦闘だが、危なげなく纏めて葬り去った

 

「よくやった!次はお前等にもやってもらうから気を緩めるなよ!」

 

着々と進む中ハジメ、皐月、深月の三人は殆ど魔物を倒す事が出来ていない。倒そうにもこちらに到達する前に倒されている為仕方が無いのである。まぁその分錬成によるサポートで魔物の動きを阻害したり止めたりとしている

 

(これじゃあ完全に寄生型プレイヤーだよね・・・はぁ~)

 

錬成の練度が少しずつ上昇していると感じられるのだが欲を言えばもっと上がって欲しいのだ。ハジメと同じ様に皐月もため息を吐きショボンとしている。時々白崎から視線を向けられるハジメ、昨日見た夢の所為か普段よりも多く見られている。そしてハジメは朝から不気味な視線をずっと感じており、今も尚感じる・・・周りを見ると霧散しまた見られ、霧散、見られ、霧散と言った感じなのだ。そうこうしている内に二十階層へとたどり着いた

 

「擬態しているから周りをよ~く注意しておけ!」

 

すると前方の壁が突如変化したそれは擬態能力を持ったゴリラの魔物であった

 

「あれはロックマウントだ!あの腕は豪腕だから注意しろ!」

 

注意と同時にロックマウントは巨大な咆哮を上げ全体を硬直させる

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

その隙を見て傍らにあった岩を砲丸投げの様に後衛組へと投げつけた。迎撃をしようと魔法を発動しようとすると岩が変化、それもロックマウントだったのだ。ロックマウントがロックマウントを投げつけてきたと言う事、しかもその姿が某大泥棒ダイブと笑顔というのも合わさり「ヒィ!」とと思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断する後衛組

「いっただっきま~す」と聞こえそうな勢いで飛んでくるロックマウントと後衛組の間に割り込む一人、メイドの深月である

 

「この汚物が。お嬢様のお目が汚れるので即刻消え去りなさい」

 

後衛組から深月の胸へと標的を変えて飛んでくるロックマウントと交差、深月は無傷で服にも触れる事も許さず首を刀擬きで切断。クルクルと飛んで落ちて来るそれを更に切断し、細切れと化した

余りにも早い抜刀にて切った刃には血糊はほとんど付着していない。それでも汚いと思ったのかポケットから布を取り出し全体を拭き納刀、桁が違うその攻撃速度は凄まじい光景だった。そして後衛組の綺麗所たちが襲われそうになった様子を見てキレる若者、ご都合思想大好き勇者天之河である

 

「貴様・・・よくも香織達を・・・許さない!」

 

怒りを露わにした天之河に呼応する様に聖剣も輝き

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――――"天翔閃"!」

 

「あっ、こら!馬鹿者!!」

 

メルドの声を無視して大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした瞬間、強烈な光を纏っていた聖剣から斬撃が放たれた。それはロックマウントを両断し奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。破壊し尽くした後「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで白崎達へ振り返った天之河にメルドは笑顔で拳骨を入れる

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が!気持ちは分かるがこんな狭い所でそんな大技使ってここが崩落でもしたらどうするつもりだ!」

 

「うっ」とバツが悪そうに謝罪する天之河、それをフォローするように慰めを入れるお馴染み組

 

あぁ汚い。切るのでは無く蹴り飛ばすべきでしたね。しかもあのど腐れ野郎は向こう見ずですね。近くに居たら何かしらありそうで怖くて堪りません。しかし迷宮とは不思議です・・・少しだけ調べてみましょう

 

「お嬢様、私はこの迷宮の壁を調べてみたいので少しだけ離れます」

 

「目に見える場所には居るよね?」

 

「勿論です。少し後ろの壁で見張りを兼ねた調べ物ですから」

 

「はいは~い了解。大丈夫だと思うけど気を付けてね?」

 

深月はメルドに一言入れ隊列から少し離れ後方の迷宮の壁を観察する

 

見れば見る程不思議ですね・・・どうして光っているのでしょうか?恐らく壁に含まれる何らかの物質の性質による物だと思いますが現時点では不明ですね。それに多少持ち帰っても怒られないでしょうし、色々と実験してみるのも有りですね。あそこに転がっている石が丁度良さげなので持って帰りましょうか

 

側にあった石を拾おうとしゃがみ―――――――

 

「団長!トラップです!」

 

「「ッ!?」」

 

突如として光る部屋、そして部屋の外に出ていた深月。もうお分かりだろう・・・深月を残して他の全員は姿を消してしまったのだ

 

「お、お嬢様・・・・・」

 

自身の主も転移のトラップに巻き込まれたと判断した深月は直ぐ様行動、異変があった部屋の中へと入り見渡すと鉱石が上の方から覗いていた。これに仕込まれたトラップに巻き込まれたと判断し、その鉱石へと触るが何も起こらず思わず舌打ちを鳴らす深月

 

「冷静になりなさい深月。・・・お嬢様が読んでいた小説の展開としては下層へと飛ばされたりした筈・・・それならトラップという仮説も成り立ちますね」

 

覚悟を決めた深月は全速力で走り集中力を極限にまで高め下層へと降りて行く。道中に出てくる魔物は刀擬きで首を切り落とし放置、先へ先へと急ぐ深月、運命の分岐まであと少し

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:7

天職:メイド

筋力:530

体力:750

耐性:440

敏捷:700

魔力:850

魔耐:440

技能:技能:生活魔法[+精密清潔][+清潔操作][+全体清潔][+清潔鑑定] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 家事 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 直感 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

光が収まると私達は全員十メートル程の幅がありそうな橋の上に居た。だけど緑石や手すりもないこの場所は不味い。下は真っ暗闇の奈落、端の両奧に見えるは階段。奧は下層へ後ろは上層へと繋がっている事が直ぐに理解出来た

 

「お前達、直ぐに立ち上がってあの階段の場所まで行け!」

 

しかし後ろには大量の魔物が出現し行く手を阻んでおり撤退は叶わず、そして通路側からは大きな魔物が出現しメルドは呻く様に呟いた

 

「まさか・・・ベヒモスなのか・・・・・」

 

そして放たれる大きな咆哮を合図にメルドは正気を取り戻し矢継ぎ早に指示をだしてゆく

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

「待って下さいメルドさん!俺達もやります!あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう!」

 

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら今のお前達では無理だ!ヤツは六十五階層の魔物―――かつて、"最強"と言わしめた冒険者が束になっても歯が立たなかった化け物だ!私はお前達を死なせるわけにはいかない!さっさと行け!」

 

メルドの指示に従わない天之河、どうにか撤退させようと再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず―――――"聖絶"!!」」」

 

強力な守りの障壁がベヒモスの突進を防ぐが衝撃は凄まじく石橋が揺れる程の強烈な代物だ。そして道を塞ぐ様に出現している魔物、トラウムソルジャーは今までの魔物よりも一線を画す戦闘能力を持っており生徒達はパニック、騎士団員のアランが落ち着かせようとするも誰の耳にも届いていない

生徒の一人、園部が後ろから突き飛ばされ転倒し呻きを上げ真正面へと視線を移す。そこにはトラウムソルジャーが剣を振りかざしており

 

(あ・・・私死んだ)

 

頭部へと振り下ろされるそれにどうする事も出来ずに直撃する瞬間、地面が隆起し剣はずれて地面を叩きつける

 

「え・・・あ・・・」

 

呆気に取られる中地面の隆起は止まらず、滑り台の様に変化し奈落へと落ちて行く

 

「早く前へ!冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

「ハジメ君!反対側もそれなりに落としたわ!」

 

「あ、ありがとう!」

 

その一言を残し園部は駆け出して行く。ハジメと皐月は魔力回復薬を飲みながら次々と錬成、トラウムソルジャーの足下を崩し、固定し、出っ張らせたり等の動きを阻害する様に立ち回り状況を冷静に分析して行く

 

「なんとかしないと・・・必要なのは・・・強力なリーダーで高火力の人・・・」

 

「正直言って頼りたくは無いけどどうする事も出来無いとなると一人しか居ないわよね」

 

「だね・・・天之河君!」

 

ハジメと皐月は天之河達が居る前線へと走り出す。一方の前線はと言うと――――ベヒモスの猛攻は続いており、障壁には幾つものヒビが入っている状態だった

 

「ええいくそ!もうもたんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いて行くわけにはいきません!絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時に我儘を言うな!」

 

メルドは苦虫を噛み潰したような表情になりながらも刻々と悪くなって行くこの状況をどうにかするべく思考を続けるがどれも無理だった。全てはベテランの騎士や冒険者達でないと対処出来無い物だったのだ

 

「光輝!団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

八重樫は状況判断がしっかりと出来ているのだ。天之河を諌めようと腕を掴み後退させようとしているが

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まった事じゃねぇだろ?付き合うぜ光輝!」

 

「龍太郎・・・ありがとな」

 

「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿共!」

 

「雫ちゃん・・・」

 

脳筋馬鹿の言葉に更にやる気を見せる天之河に舌打ち。そんなやり取りをしていると後ろから

 

「天之河くん!」

 

ハジメと皐月が到着

 

「なっ、南雲!?それに皐月!?」

 

「どうして二人が此処に!?」

 

「早く撤退を!皆の所に君がいないと誰が引っ張っていくんだ!」

 

「いきなりなんだ?それより、なんでこんな所にいるんだ!此処は君がいていい場所じゃないし俺達に任せて南雲や皐月は非戦闘職だろ!?」

 

「貴方がメルド団長の指示に従わずに後方へ来ないから皆がパニックになっているんでしょ!」

 

「一撃で切り抜け皆の恐怖を吹き飛ばす力が必要なんだ!それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

「ああ、わかった。直ぐに行く!メルド団長!すいませ――」

 

「下がれぇー!」

 

遂に障壁が砕け散り突破を許してしまう

 

「くそっ!神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!神の慈悲よ!この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――――"神威"!」

 

土煙が立ち込めるがお構いなしに聖剣の極光を走らせ光が辺りを満たし白く塗り潰し、激震する橋に大きく亀裂が入っていく。しかしベヒモスの体は無傷、天之河達に追撃をせんと角に魔力を溜めようとした瞬間足下の地面が陥没し下半身が地面へと埋まる

 

「坊主にお嬢さん・・・・・やれるんだな?」

 

「「やります・・・絶対に保たせてみせます」」

 

「そうか・・・後で助ける。だからその間は頼んだぞ!」

 

「「はい!」」

 

メルドはハジメと皐月にベヒモスを任せ全員を後方へと連れ下がる

 

「待って下さい二人がまだっ!」

 

「坊主達の作戦だ!ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する!もちろん坊主達がある程度離脱してからだ!魔法で足止めしている間に帰還したら上階に撤退だ!」

 

「なら私も残ります!」

 

「ダメだ!撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

 

「でも!」

 

食い下がる白崎にメルドは一喝

 

「あいつらの思いを無駄にする気か!」

 

「ッ!?」

 

後方へと下がる前衛組、ハジメと皐月は蟻地獄の様にベヒモスを下へ下へと沈み込ませる様に錬成。ベヒモスも上へ上へと登る様に足掻いているので一向に沈まず浮かずの状態を保っている。錬成し続けるハジメは内心で一人ではここまで上手く出来なかっただろうと思っていた。隣をチラリと見れば自分よりも低いステータスの皐月が苦しそうな顔をしつつも手伝ってくれており、「自分も頑張らなくては」と限界以上の力を発揮出来ているのだった

 

「ハジメ君、苦しくない?」

 

「大丈夫!僕よりもステータスの低い高坂さんも頑張っているんだから僕はもっと頑張らないと神楽さんに怒られちゃうよ!」

 

やっぱりハジメ君は凄い・・・私は一杯一杯なのにステータス以上の力を行使しているようにも見えちゃうよ

 

皐月は後方はどうなっているだろうと気になり始めていると閃光が光ったり激音が響いたりする回数が減っており、ようやく退路の確保が出来た辺りだった

 

「皆、待って!南雲くんと高坂さんを助けなきゃ!二人であの怪物を抑えてるの!」

 

「何だよあれ、何してんだ?」

 

「下半身が埋もれてる?」

 

「そうだ!坊主とお嬢さんがあの化け物を抑えているから撤退出来たんだ!前衛組!ソルジャー共を寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!もうすぐ二人の魔力が尽きる。アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

直ぐに逃げたいとする生徒達に激を入れ準備をさせる中、檜山は昨日の光景を見て嫉妬から憎悪の感情を溢れさせていた。檜山は白崎に好意を抱いており昨日の・・・ネグリジェ姿でハジメの部屋へと入って行く姿を見ていたのだ。その時の事を思い出した檜山はベヒモスを抑えるハジメを見て、今も祈るようにハジメを案じる白崎を視界に捉えほの暗い笑みを浮かべた

その頃ハジメはタイミングを見計らっていた。隣に居る皐月の具合は目に見えて分かる程疲れており顔色も悪くなっている状態だ。「早くしてくれ」と内心で焦りつつもベヒモスを逃がさない様錬成を続けていた時、ピシッと石橋に数十の亀裂が入った。それを見て全力の錬成、陥没した足下にベヒモスは一瞬行動が出来無くなりハジメは隣の皐月を背負い全力で走り出す

 

「今だ!後衛組魔法を放てえー!」

 

あらゆる属性魔法がベヒモスへと殺到、次々と着弾しベヒモスの足止めをしており一瞬気が緩んだハジメ。だが放たれる魔法の一つ、火球がクイッと軌道を曲げハジメへと誘導されたのだ

 

(なんで!?)

 

途中で止まろうとして直撃を避ける事に成功をしたが、着弾の衝撃波をモロに浴び来た道を引き返すように吹き飛んだハジメ。無論背負っていた皐月も同様でベヒモスの近くまで吹き飛んだ。三半規管が揺れ上手く立ち上がれないでいるハジメだが、皐月は吹き飛んだ衝撃なのか何処かにぶつかった為に気絶しておりピクリとも動かない。体に鞭を打ち皐月の側まで近付き腕を肩へと回しその場を離れようとするが亀裂の入った石橋が崩れ始めた

 

「グウァアアア!?」

 

ベヒモスも爪を使い必死に足掻くが崩落に巻き込まれ奈落へと消えて行きハジメ達の足下も崩れ底なしの闇へと落ちて行く

 

(もう・・・駄目だ・・・・・)

 

落ちて行く中ハジメは皐月を一人にさせない様、抱き寄せ小さくなっていく光をずっと見続けた

 

 

 

 

 




布団「メイドさんは今回不注意ですね」
深月「お嬢様ああああああああ!」
布団「ではこれからも頑張って書いて行くぞ!」
深月「・・・感想や評価も宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お嬢様が居ない・・・ならばメイドも追うまでです!

布団「あれれ~おかしいぞぉ?たったの三日でお気に入り件数伸びすぎていませんか?」
深月「まぁ良いではありませんか。その分皆様がお待ちしているの筈ですよ」
布団「ゲームするよりも、小説書くのが有意義・・・なのかな?」
深月「では頑張って執筆なさって下さい。文字数も見やすい程度でお願いしますね?」
布団「おまりにも長いと疲れちゃうの」
深月「投稿間隔も長くなってしまいますからね」
布団「取り敢えず出している小説は完結させる!」
深月「逃亡しないで下さいね?」
布団「出来れば一週間に一話か二話のペースで頑張る」
深月「作者さんには並列しながら頑張って貰いましょう。そして読者の皆様方、誤字報告とても感謝しております。それでは皆様、ごゆるりとどうぞ」


~深月side~

 

お嬢様達が罠に掛かり、何処かへと転移されてしまいました。私は先へ先へと急ぎ下の階層へと降りて行きます。どうして道行きが分かるですか?騎士団の方達から、マッピングされた地図を複写させて頂き手持ちに持っているからですよ。備えあれば憂い無しとは正にこの事ですね・・・最短距離で行けますから時間のロスも少ないですしね?「罠とか有るだろ!」と言いたげな画面前の貴方達に言いましょう。この程度の罠なぞメイドには通用しません!実戦訓練の地獄に比べれば全てが生ぬるいです!全て目で見て反応出来ますので問題無いのです!←それはあんただけだ!!

走って走って、一気に四十階層まで来れたのは良かったのですが、これから先のマッピングは無し。頼れるのは己の経験のみ。焦りもありますが、一度ここで深呼吸をして集中力を更に高めましょう。風の通り道を見つけ、反響する音を頼りに下層へと降りて行き、もうそろそろ五十五階層。少しづつではありますが極小さな音――――――悲鳴と轟音が聞こえてきましたね。お嬢様の所まで後少しですね!

 

深月は更に走る足に力を込め速度を上げ下層へと降りて行く。とうとう六十五階層へと到達。その光景は白崎を羽交い締めしている天之河と八重樫、目や口を手で覆うクラスメイト、メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情を浮かべている物だった

深月は直ぐに周囲に皐月が居ないかを確認するが、居ないという最悪の状況だった。この面々の中で居ないのはハジメと皐月の二名、そしてこの暗い雰囲気、更には崩壊した石橋――――答えを導き出すには簡単すぎていた

 

「離して!南雲くんの所に行かないと!約束したのに!私がぁ、私が守るって!離してぇ!」

 

「香織っ、ダメよ!香織!」

 

「香織!君まで死ぬ気か!南雲はもう無理だ!落ち着くんだ!このままじゃ体が壊れてしまう!」

 

あのど腐れ野郎は他人の気持ちを理解しようともしませんね。・・・白崎さんについてもどうでもいいですね。私の大切な者はお嬢様だけですし・・・まぁ、南雲さんも大切ですよ?お嬢様の大切なご友人(今現在は)ですので。しかしあのど腐れ野郎は言葉をもっと選ぶべきですね。それでは余計に悪化するというのに・・・皆さん私が気配を消しているから気付かないのでしょうがこれは酷すぎますね

 

「無理って何!?南雲くんは死んでない!きっと助けを求めてる!」

 

案の定これだ―――――天之河の白崎を気遣っての言葉は一番言ってはいけないものだった

すると、メルド団長がツカツカと歩み寄り問答無用で白崎に手刀を落とした。一瞬痙攣し、そのまま意識を落としぐったりとする体を抱きかかえ天之河がメルドを睨むも八重樫に制される

 

「すいません。ありがとうございます」

 

「礼など止めてくれ。もう一人も死なせるわけにはいかない。全力で迷宮を離脱する間は彼女を頼む」

 

「言われるまでもなく」

 

「私達が止められないから団長が止めてくれたのよ。分かるでしょ?今は時間がないの。香織の叫びが皆の心にもダメージを与えてしまう前に、何より香織が壊れる前に止める必要があった。・・・ほら、あんたが道を切り開くのよ。全員が脱出するまで。・・・南雲君も言っていたでしょう?」

 

「そうだな、早く出よう」

 

目の前でクラスメイトが二人死にクラスメイト達の精神は多大なダメージが刻まれ誰もが茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺めて中には「もう嫌だ!」と言って座り込んでしまう者も居た。天之河はカリスマ性を発揮させ声を張り上げる

 

「皆!今は、生き残ることだけ考えるんだ!撤退するぞ!」

 

ノロノロと動き出すクラスメイトの中に一人だけ悪どい笑みを浮かべている者を深月は見逃さなかった。気配遮断をしたまま近付き首根っこを掴まえた

 

「グエッ!?」

 

『!?』

 

皆が振り向いた先には、冷徹なる目で見下ろすメイドの深月がいた

 

「な!?みづぅおばぁ!?」

 

案の定、深月の事を名前で呼ぼうとした天之河は殴られる

 

「て、転移に巻き込まれなかった筈じゃ!?」

 

「えぇ、巻き込まれませんでしたよ?お嬢様を追って最短距離を走って来ました。周囲の状況から察するに、大体は理解出来ました。しかし、どうしてお嬢様が居ないのでしょうか?貴方達はこんな骨如きに手を焼いていたと?」

 

この場に居なかった者の身勝手な物言いにクラス一同が怒り出す

 

「手を焼いていただと?巫山戯るな!俺達は精一杯やったんだ!」

 

「神楽さんは、この場所に居なかったから私達の気持ちなんて何も分からないのよ!」

 

「そうだそうだ!一人だけ安全な所にいやがって!」

 

「何様のつもりよ!」

 

ギャアギャアと喚くクラスメイト達を黙らせる様にナイフを投擲。ガンッと地面にヒビが入る程の威力に全員が押し黙った

 

「あれはこの骨達が転移で出ている魔方陣だったので先に潰しました。さて、何があったのかちゃんと説明して下さいね?」

 

笑ってはいるものの怒気を発している深月に皆恐れた。そんな中でもご都合解釈勇者は口を開く

 

「それよりもまず檜山を離すんだ!何故彼を掴んでいるんだ!」

 

クラスメイトや騎士団全員がそれを思っていた

 

「何故?まぁ、説明をする前にある程度の状況予想ですね。恐らく貴方達は、転移した後何かと戦っていたのでしょう。ですが、それはどうでも良い事です。私が一番聞きたかった事は、何故この塵芥は笑っているのかですよ?普通は絶望なり恐怖の表情が見える筈なのですが余りにも違う。・・・恐らく南雲さんが死んで万々歳と喜んでいるのでしょう?」

 

「ち、違う!俺じゃねえ!」

 

「俺じゃない?それは何かしら事故があって、それを"引き起こした者"が使う言葉ですよ?」

 

どんどんと顔を青ざめさせて行く檜山、それを敬遠するように見つめるクラスメイト達

 

「そんな事を言うんじゃない!あれは事故だ!確かに魔法が南雲に当たったからとしても、わざとやったというのは有り得ない!」

 

深月は天之河の言い分にため息、ヤレヤレと頭に手を当てて呆れ果てていた

 

「・・・分かりました。えぇもう結構です――――――あなた方とはこれ以上付き合う気も失せました。フレンドリーファイアをする者達と一緒に居るのも嫌ですので、丁度良いですね」

 

「丁度良い・・・だって?」

 

「何をするつもり?」

 

「・・・まさか!?」

 

クラスメイト達は全くもって理解していない中、メルドや騎士団の者達は理解した。この後の深月が取る行動を

 

「お嬢様と南雲さんを追わせて頂きます。最短距離で―――――ですがね?」

 

崩れた石橋へと躊躇無く進んで行く深月、この行動で周囲も何をするか理解出来たのだろう。全員が制止の声を上げるが無視―――――そして

 

「では皆さんお達者で。それと塵芥の処分は任せますよ?もし何もしなかったのであれば、周囲が止めようと私自ら殺して差し上げますので」

 

最後の宣告を告げ、躊躇いなくその身を奈落へと投げ出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

肌に刺さるほのかな暖かさに目を覚ますハジメ

 

「うっ・・・痛っ~、此処は・・・僕は確か・・・」

 

「ハジメ君!良かった・・・良かったよ~!」

 

濡れているにも関わらず目を覚ましたハジメに抱きつく皐月

 

「ちょっ!高坂さムグッ!?」

 

ふらつく頭だが、柔らかな物によって包み込まれ混乱するハジメ

 

「目を覚まさないから心配で心配で!」

 

「わ、分かったから一旦離れて!?」

 

皐月を一旦離して、自身に何があったのかを思い出すハジメ

 

「・・・そっか。僕達は橋が崩れて・・・落ちたんだ」

 

だんだんと頭が回り始め理解する。ハジメと皐月が助かったのは幸運の賜物だ

 

「よく思い出せないけど、とにかく、助かったんだな・・・ハックシュン!さ、寒い・・・」

 

「ちょっとまってて。魔力も大分回復してきたから暖を作るから―――――求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、"火種"」

 

魔方陣を描き詠唱、皐月の拳大の炎で二人は暖を取りこれからの事について話し合う

 

「どうしようか・・・」

 

「どうするって言っても上に登るしか無いと思う・・・」

 

「かなり落ちたけど・・・帰れるのかな・・・」

 

二人の胸の中に不安が募り心が折れそうになるのをグッと我慢、何よりも違うのは一人では無く二人だと言う事だろう

 

「やるしかない。どうにかして地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

「そう・・・だよね。うん!頑張ろうハジメ君!」

 

数十分程経てば服も乾き二人は出発する事にした

長い時間歩いていると、巨大な四辻の分かれ道に辿り付いた二人。岩陰に身を潜め何処へ行こうかと考え、奥の方で何かが動いたと気づきそっと息を潜める。そこから様子を伺うと白い毛玉がピョンピョンと跳ねている。見た目はまんま兎なのだが中型犬に匹敵する大きさ、活後ろ足が異様に発達した姿。そして何よりも目に付いたのは赤黒い線がまるで血管のように体を走り、ドクンドクンと脈動していたのだ。明らかにヤバそうな魔物なので二人はジェスチャーで兎に見つかりにくい通路へと入ろうとタイミングを見計らっているとスッと背を伸ばし耳を忙しなく動かし周囲を警戒し始めた

ギクリと動きを止め様子を更に伺っていると、白い毛並みの狼のような魔物がウサギ目掛けて岩陰から飛び出したのだ。ハジメも皐月も兎が狼の魔物に食われると思っていたが予想の斜め上を行く物だった。兎は空中へとジャンプ、そしてそこから繰り出される蹴りにて狼の首をへし折り、そのまま頭を粉砕、そして極め付けは空中を踏みしめて勢いを付けての蹴りにて倒した

 

(・・・嘘だと言ってよママン)

 

(あんなの兎じゃない!伝説の超兎でしょ!?)

 

二人して一旦下がろうとした瞬間

 

カラン

 

ハジメが小石を蹴ってしまったのだ。そして兎と目が合い見つめ合っていると皐月がハジメの左手を掴み一気に駆け出す

 

「走ってハジメ君!」

 

そして爆音、先程までハジメが立っていた場所に兎の蹴りが直撃していたのだ。衝撃は凄まじく、爆発があったかの様な代物で小石などが飛んで来たがそんなのはお構いなしに追撃が来る。とっさに、ハジメが錬成にて壁を作り防御したのだが、壁を突き破ったその足が皐月の右腕に直撃

 

「―――ッ!?」

 

声にならない悲鳴を上げてハジメ諸共に吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。ゆっくりと近づいてくる兎にずり下がる事で距離を取る事しか出来ず、片足を大きく振りかぶった兎

 

(・・・ここで、終わりなのかな・・・)

 

(ごめん深月。私死んだ―――――――)

 

だが何時まで経ってもその衝撃は来ない。恐る恐る目を開き兎を見ると震えていたのだ

 

(な、何?何を震えて・・・これじゃまるで怯えているみたいな・・・)

 

(震えて?ッ!兎以上の捕食者が此処に居るって事!?)

 

それはハジメ達が逃げようとしていた右の通路から出て来た白い毛皮を纏い長い爪を持つ魔物だった。その爪熊がいつの間にか接近しており、蹴りウサギとハジメを睥睨していたと言う事だ。

 

「・・・グルルル」

 

突然爪熊が唸りだす事で自体は急変。兎は脱兎の如く逃げ出したが、それよりも素早い動きにて爪を一閃ずるりと体がずれ絶命した。ハジメと皐月も逃げようと立ち上がり走るが、風が唸る音がして衝撃――――二人は吹き飛ばされ違和感を覚える。先程までしっかりと繋いでいた手の感覚が無かった――――そして爪熊が咀嚼している物体。それは二人の腕、理解したと同時に押し寄せる痛み

 

「「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」」

 

絶叫する二人。ハジメは左肘から先を皐月は右肩から先を、手を繋いでいた所をまとめてやられたのだ。原因は何か――――それは爪熊の固有魔法、あの三本の爪は風の刃を纏っており最大三十センチ先まで伸長して対象を切断できるのだ

ハジメは痛みに動けずその場で蹲っているが皐月は痛みを堪えながら後ろ側の壁に錬成を行使

 

「れ"ん"せ"い"!」

 

人が屈んで入れる大きさを作り出した後、左手でハジメの右手をひっ掴み奧へ奧へと錬成を行使する。しかし、回数は少なく途中で意識を失い動けるのはハジメだけとなった。爪熊は獲物が逃げた穴を削り外へと出そうと壁を削る

 

「う、うわあああああああああああ!」

 

ハジメは恐怖しながらも口で皐月の首元の服を噛みしめ奧へ、奧へと錬成をして行く

 

「ふ"ぇんせぇ!ふ"ぇんせぇ!ふ"ぇんせぇ!ふ"ぇんせぇ!」

 

力が続く限り前へ前へと進み遂に壁が変化し無くなった―――――――魔力が尽きたのだ。そこからは意識が朦朧とし真っ暗闇へと落ちて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

「最短ルートとはいえ選択を早まったかもしれませんね・・・」

 

深月はハジメ達よりも上層で川から上がり濡れた服を乾かし考えていた。流れる川は、この先も続いており下へと落ちて行き滝の様で、更に下へと流れ続いていた

 

お嬢様と南雲さんは何処まで流されたのでしょうか・・・此処は落下地点の場所に近いですが、最悪の場合は下へと落ちているという事でしょう。しかし確証も無いまま下へと降りてしまうと駄目ですからね

 

思考に耽っている深月の後ろから轟音、岩を押しのける様に出て来たそれはベヒモスだった。落下してから瓦礫が上に積もり自由が出来なかったのだ。しかしその瓦礫全てを除けた事により動ける様になった。周りを見渡し目に付いた深月に八つ当たりをしようと殺気を込めた目を向けてしまった

 

「迷宮の魔物というのは此処まで勘が鈍い物なのでしょうか?能ある鷹は爪を隠す。それは生き物であれば当然の事だと思っていたのですがそれすら理解出来無いとは嘆かわしいですね・・・」

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

咆哮と同時に突進、そして腕を振り上げて叩きつけた。ベヒモスは、反応もせず唯見ている事しか出来ないでいた人間を潰したとお―――――

 

「潰したとお思いですか?そして、さようならです」

 

振り下ろした手の上に潰したと思っていた人間が傷付く事無く立っていたのだ。驚愕し一瞬固まったと同時に視界が180度反転、回る景色の最後に見た物は自身の首から上が無い体だった

神速の一閃により首が跳ね飛ばされたベヒモスはぐらりと傾き倒れ、深月は血糊が付いていないか確認するとほんの少しだけ付いており、尚且つ刃が少しだけ欠けていたのだ

 

「最低ですね私は・・・お嬢様達が丹精込めて作って頂いたこの刃を欠けさせるとはまだまだ未熟です」

 

普通は刀その物が折れても不思議では無いと突っ込みたいが、それは深月だから仕方が無いとしておこう。血糊を川の水で落とし一閃、それだけでほぼ全ての水気は飛び僅かに湿っている程度―――――血糊が付いたままよりも遙かにマシな部類だ

 

「とにかく、この階層の全てを調べて下へと降りて行きましょう!長い道のりですが頑張るのです私!お嬢様なら機転を活かして生き残っている筈です!いえ絶対そうです!!」

 

近くの洞窟の道へと入っていく深月、襲う魔物は全て切り捨て一つ一つの道を調べて何も無ければ下層へ―――――と無限に続く様なそれを皐月が見つかるまで辿って行く。しかし深月も生きている人間である。飲み水は川の水からと大丈夫ではあるが、食べ物は無く、日に日に増して行く飢餓感が襲い来る中それを我慢し探索を続けていきとうとう出会った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメと皐月の腕を奪い去った爪熊に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして見たくなくても目に入るそれ――――――――下層へと続く広間に居る魔物の足下にある布切れ。それは皐月の服の一部で、極限状態の深月の冷静さを崩壊させるには十分過ぎる物だった

 

 

 

 

 

 

 

「きっ―――――――――貴様あああああああああああ!!」

 

目に殺意を孕ませた深月は、爪熊へと襲い掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「死の宣告をしましたね・・・」
深月「勿論です」
布団「どうなるのかねぇ~」
深月「私個人としては、殺りたいのですが」
布団「あの場で殺らなかったのは?」
深月「今は未だ情報が不足していますから。あの場で殺って異端認定されてしまえば後々の行動に響くかと」
布団「成る程!」
深月「そろそろ後書きからもお別れですね」
布団「頑張って書いて行くんだよ!そして沢山上がる誤字報告は、とても有り難いです」
深月「感想、評価。どうぞ宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お嬢様と南雲さんの回ですメイドは出ません。空気を読みますので

布団「これから忙しくなるので投稿をしておきます」
深月「この話では私は登場致しません。悪しからず」
布団「投稿間隔が少し長くなるのは申し訳ないです・・・」
深月「・・・ゲームではありませんよね?」
布団「仕事だからね?忙しくなると言われちゃったよ!」
深月「毎日少しずつ書いていけば何とかなりますよ」
布団「そして誤字報告有り難う御座います。とても助かります」
深月「では読者の皆様方寒さに気を付けて、ごゆるりとどうぞ」




~ハジメside~

 

ハジメの頬に定期的に当たる水が頬を通り口の中へと入って行く感触に意識が徐々にではあるが回復、その事を不思議に思いつつゆっくりと目を開く

 

(生きてる?・・・助かったの?)

 

疑問に思いつつ上体を起こそうとするとガンッと天井に頭をぶつけ、自身に何が起きたのかどうなったのかを少しづつ鮮明に思い出して来た。奈落へ落ち兎の攻撃に吹き飛ばされ爪熊に出会い、そして攻撃をされた・・・そして腕を食われた事を

そして理解したと同時に襲い来る幻肢痛に腕を押さえて有る事実に気が付く。切断された箇所は肉が盛り上がり傷を防いでいたのだ。しばし呆然としているとある事実に気が付いた

 

「そ、そうだ高坂さん!高坂さんも腕を切られたんだ!」

 

慌てて探し自身の横に居りそっちの方にも水滴が滴り口の中へと入っており傷が塞がっていた。この事からハジメはこの水が何処から流れ出ているのかを辿り錬成、すると青白く発光する鉱石から出ていたのだ。しばし見惚れていたが皐月の事を思い出し鉱石の周辺を広く錬成、そして四苦八苦しながらその場へと引きずる形で移動させた

そして錬成していた時に気が付いた点、この水を飲むと魔力が回復し傷も治ると言う事だ。ハジメはこの鉱石についてふと思い出した―――――――皐月と一緒に知識を蓄える為に図書館へ行き文献の中に伝説上の鉱石"神結晶"という遺失物扱いされた鉱石だと言う事。その神結晶から流れ出た水は"神水"、正に自身の欠損を除く傷を癒やしたこれは紛れもなく神水であると確信した瞬間だった

だがしかしこの神水や神結晶があるからと言って何が出来ると言うのだろうか。外は爪熊の様な自身を餌としか見ていない捕食者が集う迷宮、そして助けが来ないこの状況にハジメの心は完全に折れていたのだ

 

「誰か・・・助けてよ・・・・・」

 

小さな呟きと共に襲い来る睡魔の誘惑に勝てずその場で寝るハジメ。この言葉は誰にも届かない・・・皐月も気を失っているからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから一日が経過、ハジメは殆ど動かず丸まっており絶望していると

 

「うっ・・・ここは・・・何処?」

 

皐月が起きた事に気が付いたハジメ

 

「高坂さん気が付いた?」

 

「え・・・あぁ・・・・・ハジメ君。あれからどうなったか分かる?私はあの熊に腕をやられてからあんまり分からないのだけれど」

 

爪熊からの攻撃で激痛が走る中、必死に死にたくないという思いから壁を錬成し、ハジメを引っ張った皐月のお陰で助かった様なものだ。その事実にハジメは心が痛い気持ちで一杯だった。何よりも目に見えている其れ―――――自身が左腕の肘から先が切られたという点に対し皐月は利き手の右肩から切られているからだ

 

「あれから僕は高坂さんを引っ張って錬成してどんどん奧へと進んでいったんだ・・・そして偶然見つけたこの光る鉱石――――――――文献にあった神結晶で、その流れ出た水で僕たちの傷が塞がったんだと思う」

 

「・・・そう。これからどうしよう」

 

現実を直視している皐月はこの迷宮において自分達が生態ピラミッドの中でどの位置づけがされているのかは十分過ぎる程理解していた。故にハジメ同様心が折れていたのだ

 

「私達死んじゃうのかな・・・」

 

「・・・・・」

 

否定する事が出来無いハジメは沈黙、そして皐月の側で抱きしめる様に横になる。その様子で皐月も理解したのであった。ハジメもまた自分と同じ様に理解し絶望している事に

二人はそのまま眠りに付き起きては神水を飲みと繰り返すだけとなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数日後、あれからどれ程の時間抱きしめ合っているのか理解出来無い二人は心の中で思っていた

 

(どうして僕(私)がこんな目に?)

 

飢餓感と幻肢痛が襲い来るそれを紛らわすかの様に神水を口にし苦痛の微睡みと覚醒を繰り返し―――――繰り返し――――そしてハジメと皐月は神水を飲むのを止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうこの苦痛を終わらせたい・・・・・だけど死にたくない。まだ生きたい

 

 

 

 

 

 

 

 

ただそれだけだった。更に数日が過ぎ頭の中には疑問ばかりが押し寄せていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なぜ苦しまなければいけない・・・僕(私)達が何をした・・・)

 

(何故こんな目に遭っている・・・何が原因だ・・・)

 

(神は理不尽に誘拐した・・・)

 

(クラスメイトは裏切った・・・)

 

(ウサギは見下した・・・)

 

(アイツは腕を喰べた・・・)

 

(何故僕(私)だけで無く彼女(彼)まで巻き込まれた・・・)

 

二人の思考がドロドロと真っ黒に塗りつぶして行く。無意識に敵を探し求める中でも飢餓感と幻肢痛は治まらず、思考を暗い感情へと導いて行く

 

(どうして誰も助けてくれない・・・)

 

(誰も助けてくれないならどうすればいい?)

 

(この苦痛を消すにはどうすればいい?)

 

更に数日が経ち憎しみや怒りといった感情は無くなっていた。黒く染まった感情を持っても何も期待出来無いし収まる事も無い

 

(俺(私)は何を望んでる?)

 

(俺(私)は"生"を望んでる。)

 

(それを邪魔するのは誰だ?)

 

(邪魔するのは敵だ)

 

(敵とはなんだ?)

 

(俺(私)の邪魔をするもの、理不尽を強いる全て)

 

(では俺(私)は何をすべきだ?)

 

(俺は、俺は・・・)

 

(私の道は・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数日が経過―――――

ハジメの心の中にはただ生きる事だけ。憤怒も憎悪も理不尽もクラスメイトの裏切りも魔物の敵意も今は居ない守ると口にした物も全てどうでも良い。ただ側に居る不出来だった自分を守ってくれた皐月以外は眼中に無い。ただ単に皐月と一緒に生き残ると言う事

皐月の心の中も殆ど一緒で、生き残る以外は殆どどうでも良い。自分の側に居るハジメと一緒に生き残りたいと言う事。二人は確固たる意思を持った時気が付いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月(ハジメ)が好きだと言う事に。そして更に記憶を思い出していくと、何故深月が二人だけの空間を作り出していたのか―――――深月は皐月の幸せだけを思い行動していた事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くははははははは。あっははははははははは!」

 

「ふふっ、ハジメ笑いすぎ」

 

「いや、すまんすまん。そして気が付いた事があったんだよ。俺は何で今の今まで気が付かなかったんだよって今更ながらに思ったんだよ」

 

「それなら私もよ。気が付かなかった―――――こんな事になるまで気が付かなかった」

 

「それじゃあ俺が考えている事分かるよな?」

 

「分かるに決まっているでしょ?」

 

「なら"いっせーの"で言うか?」

 

「違うでしょ?それは私から言うのが理想でしょ?」

 

「男からすれば理想だな」

 

皐月は一呼吸置いてハジメに告げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、高坂皐月は貴方を心の底から愛しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてハジメの答えも決まっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は高坂皐月、お前を心の底から愛している。何処までも俺と一緒に付き合ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。これから永遠にお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして二人は晴れて恋人・・・・・いや、結婚前提としたお付き合いを誓い合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃあいっちょやるか皐月」

 

「勿論よハジメ」

 

「「錬成の特訓の開始だ(ね)」」

 

「そして」

 

「邪魔する奴は」

 

「「殺す!殺して喰らってやる!」」

 

こうして奈落の底で無能と呼ばれた者達は変貌した瞬間であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから幾度も錬成の訓練をし、速度、範囲、正確性、を求め、成果は有り有りと目に見えて分かる程にまでとなった。慎重に慎重を重ねゆっくりと気配を出来るだけ殺しながら二尾狼の後を追跡して行くと四頭の群れを作っていたので、ハンドサインにて一匹一匹確実に壁の中へ閉じ込め引きずり込む作戦に出た

結果は上々、一匹また一匹と消えて行く仲間に疑問を覚え壁を背に警戒していたが仇となったのだ

 

「グルゥア!?」

 

後ろの壁が下半身を飲み込む様に蠢き、固まり、ゆっくりゆっくりと拘束したまま引きずり込む事態に悲鳴を上げる二尾狼。見事に成功したのであった

 

「さぁて、生きてっかな?まぁ、俺達の錬成に直接の殺傷力はほとんどないからな。石の棘を突き出したくらいじゃ威力も速度も足りなくてここの魔物は死にそうにないし」

 

「そうよね。現に錬成で巨大な棘を錬成して刺しても傷なんて無かったし普通じゃ無理ね」

 

「窒息でもしてくれりゃあいいが・・・俺達が待てないなぁ」

 

呻き二人を睨付ける二尾狼だが全く身動きが取れず拘束されている為、怯えもせず淡々とどうやって殺そうか思考中

 

「よし決めた掘削するか!」

 

「良いわねそれ!遠くから安全に捻り込む様に殺せるから安心ね!」

 

ニヤリと笑うハジメと皐月の目は完全に捕食者のそれで、右腕を壁に押し当て錬成を行使。明確なイメージを持って少しずつ加工していくと、螺旋状の細い槍の様な代物が出来上がった。更に、加工した部品を取り付け槍の手元にはハンドルのが取り付けられた

 

「さ~て掘削、掘削~!」

 

二尾狼達に向かってハジメはその槍を突き立てるも硬い毛皮と皮膚の感触がして槍の先端を弾く

 

「やっぱり刺さんないよな。だが、想定済みだ」

 

皐月はハジメの作った掘削槍を興味深そうに観察、ハジメは上機嫌に槍についているハンドルをぐるぐると回し、それに合わせて先端の螺旋が回転を始めた。これは硬い皮膚を突き破るために考えたドリルで、体重を掛けながらハンドルを回して行くと少しずつ先端が二尾狼の皮膚にめり込み始めた

 

「グルァアアー!?」

 

「痛てぇか?謝罪はしねぇぞ?俺と皐月が生きる為だ。お前らも俺らを喰うだろう?お互い様さ」

 

そう言いながら、更に体重を掛けドリルを回転させる。二尾狼が必死に暴れるが、周りを隙間一つなく埋められている為不可能。そして遂に、ズブリとドリルが二尾狼の硬い皮膚を突き破り体内を容赦なくグリグリと破壊して行き断末魔の絶叫を上げた。しばらくするとビクッビクッと痙攣しパタリと動かなくなった

 

「よし、取り敢えず飯確保」

 

「お腹空いたわねハジメ?」

 

「そうだな。取り敢えず残りの三匹も殺しておくか」

 

嬉しそうに嗤いながら、残り三頭にも止めを刺し、全ての二尾狼を殺し終えたら錬成で二尾狼達の死骸を取り出して二人で毛皮を不器用ながらも剥がし、飢餓感に突き動かされる様に喰らい始めた

 

「あが、ぐぅう、まじぃなクソッ!」

 

「うぇええ、不味すぎるよぉ。こういう時に深月が居たら美味しくしてくれそうなんだけどなぁ・・・」

 

愚痴を吐きつつも咀嚼する二人。悪態を付きたくなるのも当然の物で、えぐみのある硬い筋ばかりの肉と言えば理解出来るだろう。二人しておよそ二週間ぶりの食事に胃がビックリしてキリキリと悲鳴を上げるが何のその、生きる為に次から次へと飲み込んでいく。その姿は完全に野生児その物だ。神水を飲み水として食べ続ける二人に突如異変が襲いかかる

 

「あ?――――ッ!?アガァ!!!」

 

「ハジ――――ッ!?ウギッ!!」

 

突如全身を激しい痛みが襲って来たのだ。まるで体の内側から侵食されている様なおぞましい感覚・・・その痛みは時間が経てば経つほど激しくなる

 

「ぐぅあああっ。な、何がっ――――ぐぅううっ!」

 

「いっ、ぎぃいいいいいい!」

 

耐え難い痛みと自分を侵食していく何かに襲われ地面をのたうち回る。幻肢痛など吹き飛ぶような遥かに激しい痛みだ。ハジメと皐月はは震える手で懐から錬成にて作り上げた石製の試験管型容器を取り出すと、端を噛み砕き中身の神水を飲み干すと効果を発揮し痛みが引いていく―――――――がしばらくすると再び激痛が襲う

 

「な、なんで!じんずいがぎがあああ効がな"いの"!?」

 

「ひぃぐがぁぁ!!なんで・・・治らなぁ、あがぁぁ!」

 

二人からドクンッ、ドクンッと体全体が脈打ち至る所からミシッ、メキッという鈍い音が聞こえ始める。体の筋繊維、骨格が悲鳴を上げて破壊、そして神水の効果で治り、またしても襲い来る激痛。二人は絶叫を上げながらのたうち回り地獄を味わい続け、ひたすらに耐える

すると体に変化が現れた。日本人特有の黒髪は真っ白となり、筋肉や骨格が徐々に太く体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出て来たのだ。幾何も続くその苦痛を耐え続け痛みが来なくなった所でようやく地面へグッタリと大の字で寝転んだ

ハジメは筋肉質な体となり以前よりも背が高くなっていた。皐月の方ももの凄い変貌を遂げ、筋肉は目に見えて浮かんではいないが密度が高く、そしてそれの基礎となる骨の密度も上がっているのだ。そしてハジメ同様以前よりも背が高くなっており、胸は大きく、ウエストは引き締まりと女性が羨む体型と変貌したのだ

 

「・・・そういや、魔物って喰っちゃダメだったか・・・アホか俺は・・・」

 

「・・・でもしょうが無いでしょ?食べなきゃ死ぬんだからこうなったのは必然、ハジメが悪い訳じゃ無いわ」

 

「しっかし俺の体どうなったんだ?何か妙な感覚があるし・・・」

 

「私も同じく、変な感覚があるわ」

 

体の変化だけでなく二人は体内にも違和感を覚えていた。温かい様な冷たい様な?どちらとも言える奇妙な感覚で、意識を集中してみると腕に薄らと赤黒い線が浮かび上る

 

「うわぁ、き、気持ち悪いな。なんか魔物にでもなった気分だ。・・・洒落になんねぇな」

 

「こ、こういう時はステータスプレートを見るのが一番よね?」

 

存在その物を忘れていたステータスプレート。二人して入れていたであろうポケットを探ると無くしてはいなかったようで一安心、そしてこの異常について何か表示されていないか確認する為覗くと

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

天職:錬成師

筋力:100

体力:300

耐性:100

敏捷:200

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成 魔力操作 胃酸強化 纏雷 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:7

天職:錬成師

筋力:80

体力:250

耐性:80

敏捷:180

魔力:280

魔耐:280

技能:錬成 魔力操作 胃酸強化 纏雷 直感 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「「・・・なんでやねん」」

 

二人して驚愕のあまり思わず関西弁でツッコミを入れる。それはそうだろう。ステータスは軒並み上昇、派生技能が三つ追加しかも未だにレベルが一桁台であるからだ

 

「「魔力操作?」」

 

二人は互いを見合い、魔物肉を食べてから感じる奇妙な感覚は魔力なのでは?と推測し、集中して"魔力操作"とやらを試みる。すると赤黒い線が再び薄らと浮かび上がり掌に集中させると、ぎこちないながらも奇妙な感覚・・・もとい魔力が移動を始めた

 

「おっ、おっ、おぉ~?」

 

何とも言えない感覚に戸惑いを覚え、錬成を試みるとあっさりと地面が盛り上がる

 

「マジかよ。詠唱要らずってことか?魔力の直接操作はできないのが原則の筈だが例外は魔物・・・やっぱり魔物の肉食ったせいでその特性を手に入れちまったのか?」

 

「見て見てハジメ!これ凄い!私、某忍者の千鳥を再現出来たわ!」

 

冷静に分析していたハジメが皐月の声に反応しそちらへ目を向けるとバチバチと左手に雷を纏わせて構えている皐月の姿だった

 

「・・・もしかしなくても魔物の固有魔法はイメージが大事って事か?」

 

「多分そうかも。左手で"纏雷"を使用したら静電気みたいにバチバチっと纏わせたらいけるかな~?ってイメージしたら出来ちゃった♪」

 

「成る程なぁ。んじゃあ最後の"胃酸強化"ってのは大体予想が付くんだが・・・」

 

「それしかないと思うわ」

 

二人は再び二尾狼から肉を剥ぎ取り纏雷を使い肉を焼くと悪臭が酷くこれを耐え、こんがりと焼き上げた肉を食べる―――――――

十分程経過しても先程の様な激痛は襲ってこず、次々と肉を焼いて食べる。量を食べても激痛が襲ってこないので理解する二人

 

「胃酸強化なぁ・・・便利だな」

 

「お肉は美味しくないけど、飢餓に苦しむ事が無い分マシね」

 

二人は二尾狼達を食べ尽くした後に一度拠点へと戻り一日は終了、翌日からは錬成や纏雷と言った他の技能鍛錬を行っていると派生技能が備わったのだ

 

"鉱物系鑑定"

王都の王国直属の鍛冶師達の中でも上位の者しか持っていない技能で、この技能を持つ者は鉱物に触れてさえいれば簡易の詠唱と魔法陣だけであらゆる鉱物を解析出来るとても便利な代物なのだ。潜在的な技能ではなく長年錬成を使い続け熟達した者が取得する特殊な派生技能である

それから二人は迷宮内の鉱石を探す為彷徨い調べて行くと、切り札―――打開策となる代物を見付ける事に成功したのだ。その名は"燃焼石"と"タウル鉱石"と言う二つの鉱石で、燃焼石は現代知識で言う所の火薬に近しい物で、一方のタウル鉱石は衝撃と熱に強く冷気に脆い鉱石だ

これらと皐月が見たと言う実物の拳銃を元に錬成を何度も試行錯誤、失敗に失敗を重ねて遂に完成したのだ

 

「・・・これなら、あの化け物も・・・脱出だって・・・やれる!やってみせる!」

 

「私もお荷物にならない程度だけど頑張るわ!」

 

「皐月は無茶してくれるなよ・・・俺と違って肩から切られてんだから体重バランスが悪いだろ?利き手でもないしよ」

 

「それは練習と実戦を持って克服するに決まっているでしょ」

 

「・・・それもそうだな――――――俺の背中は任せたぞ皐月」

 

「私の背中も任せるわハジメ」

 

ハジメと皐月が持つ其れは大型のリボルバー式拳銃、名はドンナー。魔物を食べてから成長したステータスのお陰で力等に関しては問題無く、罠などの知識、経験も学ぶ事が出来たのだ。因みに水の上を歩いていた蹴りウサギを纏雷で感電させた後ドンナーで撃ち殺したりと検証と実戦も兼ねる事も出来たのである。そして二人のステータスはというと

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12

天職:錬成師

筋力:200

体力:300

耐性:200

敏捷:400

魔力:350

魔耐:350

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:12

天職:錬成師

筋力:180

体力:270

耐性:180

敏捷:350

魔力:350

魔耐:400

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 直感 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

皐月は殆どがハジメのステータスと同じ位で、魔耐の数値と技能の数だけが上である。天歩は蹴りウサギを食べて得た技能で、何回も地面とキスをしつつも自分の物と出来たのだ

二人は現在の装備を確認、不備等もチェック、無し―――――――

 

「よし、遂に来たぜこの時がよ!」

 

「うふふふ、待っててね爪熊さん♪」

 

「「今度は逆に俺(私)が喰らってやる(わ)!」」

 

途中で遭遇した二尾狼はドンナーにてヘッドショット、頭部を粉砕し奧へと進んで行く。すると響くうなり声と金属音に二人は不思議に思った

 

「あぁん?このうなり声は爪熊の野郎って分かるが金属音ってのが分からねぇ。クラスメイトの連中がチートの集まりだろうとここまで深部へと潜る事なんて不可能なんだが・・・」

 

「それよりも今はこの現状の様子を見なきゃいけないでしょ?可能性としては魔人族って線も否めないし」

 

「あぁそうだった。魔人族っていう奴らが居たんだったな。すっかり忘れてたぜ」

 

「私はあそこの岩陰から様子を見るわ。ハジメは対面をお願いね?いざとなれば挟み撃ちの形で殺せば良いし」

 

「だな。・・・ここで別れるぞ」

 

「気を付けてね」

 

「どっちがだよ。皐月の方こそ気を付けろよ」

 

二人はこの迷宮の階層を庭の様に把握しているので二手に分かれ敵対したならば確実に仕留める為に分けれて岩陰に待機。そしてゆっくりと様子を伺う様に様子を見ると二人は驚愕した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのトラップから離れ離れとなったメイド―――――――深月が爪熊と戦っていたからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「エンダアアアアアアア!」
深月「ようやくお嬢様と南雲さんがお付き合いに!私はとても喜ばしいです!」
布団「あの二人は、もう付き合っちゃいなよ。レベルの仲良しさんでしたからなぁ」
深月「作者さん」
布団「何でしょう?」
深月「無理をしてはいけませんよ?」
布団「だ、大丈夫な筈・・・」
深月「体調管理も本人次第ですので、私がどうこう言える事ではありませんが」
布団「頑張って執筆するさ」
深月「ではこの辺りで終わりに致しましょう」
布団「読者の皆!体調管理に気を付けてね!」
深月「感想、評価等もお気軽にどうぞ。それと、寒暖差に気を付けて下さいね?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは死力を尽くします

布団「さみぃ!」
深月「冷え込んできましたね」
布団「執筆速度が落ちそう。ってか、確実に落ちてる」
深月「頑張って書いて下さいね?」
布団「今年一杯までにオルクス迷宮攻略(執筆)したいなー」
深月「ゲーム等は程々にして下さいね?」
布団「・・・はい」
深月「読者様も待って下さっているので始めましょう」
布団「刮目s―――――――」
深月「作者は放置して始めましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」







~深月side~

 

時間は少し巻き戻り――――――

 

「きっ―――――――――貴様あああああああああああ!!」

 

皐月の衣服の一部の残骸を見て激怒。そして殺意を孕ませた目を持って爪熊へと一直線に駆け出した

 

「グゥウ!?」

 

死角からいきなり躍り出た深月は懐近くまで一気に近付き刀を一閃。しかしここまでの道中で沢山の魔物を切り続けてきた為に切れ味は落ち、表面を薄く切る程度で精一杯だった

 

「ちぃ!硬い!!」

 

振り下ろされる爪熊の一撃を紙一重で回避しようとしたが言いしれぬ悪寒を感じ横っ飛びに回避、すると先程まで立っていた地面に切り傷が付けられていた

 

「斬撃を飛ばす固有能力ですか・・・なら直線上に入らなければ良いだけの事です!」

 

縦に振り下ろされる腕には横飛びで回避、横に振り出される腕は攻撃の出だしの所で腕を斜めに切り流し、そしてその切り返しで爪熊を傷付ける。だが無情にも幾度にも渡り酷使してきた刀は遂に根元から折れてしまったのだ

爪熊は厄介な刃が無くなった事で揚々と攻撃に転じるが、深月は手に持っていた柄を爪熊の口へとピンポイントで投擲、運良く中に入ったそれは隙を生じさせるには十分だった。怯んでいる内に距離を取り太股部分に張り付ける様に装着していた夫婦剣を構えて一呼吸入れる。爪熊も口の中から柄を吐き出し終え、更なる怒りを含んだ目で深月を睨付けている

普通の人間であればこの睨みだけで足が竦んで動けないのだが、数多なる地獄のサバイバル(生死問わず)を生き抜いてきた深月にとっては動物も魔物も変わりない。魔物はちょっと特殊能力を持った動物程度に思っている位

 

「せいっ!はぁっ!」

 

「グゥウウウ!」

 

先程までとは違い切って流す事は出来無いが、超接近戦にて振るわれる二刀の刃は踊る様に舞ながら爪熊の体を傷付けて行く。ボロボロとなった刀とは違い新品同然の夫婦剣の切れ味は良いのだが、切断には至らない

そして何よりも深月とて人間・・・あの日からずっと何も食べておらず、水だけ飲む生活だった。だが階層全てを探索して下層へと潜る行為は、想像以上の体力と精神力を削っており、不調が何時襲い掛かってくるかも分からない為にずっと張り詰める様な警戒をしていたのだ。何時決壊しても不思議では無いそれは最悪のタイミングで襲い掛かる

 

「ッ――――――!ゴボッゴホッ!」

 

耐え難い痛み、胃から沸き上がる熱を持った其れは大量の血

吐血により一瞬の間だけ視界を一瞬寸断させる。タイミングは最悪、回復した視線の先には振り下ろされて行く腕

 

「クッ!?―――――――――――――――いっづあ"あ"あ"あ"あああああ!!」

 

振り下ろされた腕を回避したまでは良かった。だが回避に手一杯になった深月は爪熊の突き出される腕が腹部に直撃、爪に貫かれる形で被弾したのだ。そのまま地面へと押さえつける様にされた状態は正に絶体絶命、顔に食らいつかんと前目に迫る頭部。だが未だ手に持っていた片方の剣を爪熊の片目へ突き刺す

 

「グゥアアアアアア!?」

 

切り潰された激痛により深月の上から離れ目を押さえている。深月も引き抜かれた爪から血が大量に出ているが、その痛みを堪え肉薄、もう一方の目に向かってもう片方の剣を"下から抉る"様に刺し貫く。体の構造的に其れは脳へ一直線の攻撃なのだが、目を刺し貫くが骨を貫通するには至らなかった。横へと振るわれた腕に当たり壁際へと弾き飛ばされた深月

 

「・・・申し訳御座いませんお嬢様」

 

擦れる様に呟いた一言、薄れ行く目で見た光景は頭部が粉砕された熊の最後だった。そして其処で完全に意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ヤバイ・・・私のメイドが強すぎる件について

 

皐月がハジメをチラッと見るとそちらも驚愕している様子で呆然としていた。自身が見ただけで恐慌状態に陥った爪熊と相対して攻め込んでいるという光景だったからだ

ハンドサインと言うよりもジェスチャーに近いだろう。皐月とハジメはテンパった感じでワタワタと表現していた。ハジメの心の内と皐月の心の内は殆ど同じ感じで

 

(おいおい嘘だろ・・・神楽の奴?あんな近距離で攻撃を回避したり切り流したりしてんのかよ!俺が初めて出会った時は恐怖で怯えて動けなかった位ヤバイ奴だぞ!?)

 

(深月が凄いって分かってはいたけどまさか此処までとは思っていなかったわ。あの爪熊に接近戦で挑むなんて怖くないの!?)

 

二人で作った刀で切り結んでいた深月に驚愕していた二人、互いに見合いどうするかをハンドサインで決めようとした瞬間だった。キィンッというかん高い音が聞こえ深月の方へと目を向けると手に持っていた刀が根元から折れた音で、援護をしようと思ったのだが深月はその隙も与える事無く柄を爪熊の口の中へと投げ込んだのだ

 

(嘘やん・・・)

 

(曲芸か何かですか?)

 

あの攻防の中の一瞬でその様な判断をし行動した光景に更に驚く二人、そして再び見合い

 

(幾らあいつでもこれ程までの芸当は出来無いと思わないか?)

 

(正直そう思うわ。私の深月がいくら優秀だからと言ってこれ程出来るなんて思いもしなかったわ)

 

(俺が思うに迷宮の幻影を作り出す、もしくは象った敵だとしたらどう思う?)

 

(可能性としては有り。だけど・・・)

 

(どうした?)

 

(あれは深月本人だと私の勘が囁いているのよ)

 

(だがもうちょっと様子を――――――)

 

「いっづあ"あ"あ"あ"あああああ!!」

 

絶叫が聞こえ目を向けると腹部を爪で貫かれ押し倒された深月の状態だった

 

(ヤッベェ!)

 

(ッ!)

 

ドンナーを構えようとするもそれよりも先に届かんとする牙だが、深月の片手剣は目を突き刺す事でその危機を脱したのだ

 

(ハジメごめんね・・・)

 

(皐月のお願いじゃ仕方がねえか。俺が撃つから神水持って行けよ)

 

壁際へと飛ばされた深月、ハジメは両目を潰された爪熊の頭部に向け発砲、頭部を粉砕させたのを確認して皐月は走って行き気絶した状態ではあるがなんとか一つを飲ませ、もう一つを傷へと掛ける事で傷は無くなった

ハジメは爪熊が本能に絶命したかを確認し終えた後、皐月の側まで爪熊を引きずりながら移動した

 

「どうだ皐月?」

 

「やっぱり深月よ。私の勘がそう囁いているわ」

 

「皐月の勘は伊達じゃないから間違い無いだろうな。だが分かっているよな?」

 

「分かっているわ。"敵なら殺す"でしょ?まぁ深月なら私に付いて来るから大丈夫よ」

 

「このままは危険だし錬成で拠点を作るとするか」

 

「お願い」

 

ハジメは壁を錬成、大きく空洞状に作ったその中に入る。勿論倒した爪熊もだ

リベンジする事は叶わなかったが、「まぁいいや」と言う事で気にせず肉を剥ぎ取り纏雷で焼いて食べたのであった。こうして新しい技能も手に入れたハジメと皐月は深月が目を覚ますまで拠点で待機する事とした

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:17

天職:錬成師

筋力:300

体力:400

耐性:300

敏捷:450

魔力:400

魔耐:400

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 風爪 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:17

天職:錬成師

筋力:250

体力:350

耐性:250

敏捷:430

魔力:450

魔耐:450

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 風爪 直感 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

夢・・・と言うより走馬燈みたいな物ですね

お嬢様と出会い、教養を身に付け――――訓練―――修行――――サバイバル・・・本当に色んな事がありました。異世界へ拉致されても頑張るお嬢様、そして離ればなれになった。必死に探したけれど、見つからない見つからない見つからない。痕跡を見つけたと思えば其れは血が大量に付着したお嬢様の服の一部。爪が発達した熊と戦い・・・・・戦い?どうなったのでしょうか・・・確か最後はトドメの突きが失敗して腕ではじき飛ばされてからが分かりません

しかしこの匂い・・・悪臭に混じった匂い。微量ながらもこの濃厚な匂いは・・・良く知る男性と―――――――――

 

「お嬢様!!」

 

カッと目を見開きガバッと体を起こした深月、そして横に目を向けると白髪の男女二人。そして気が付き女性の方へと抱き付く

 

「お嬢様お嬢様お嬢様!申し訳御座いません申し訳御座いません!この深月が側を離れなければあんな塵芥共の蛮行を行わせる事など無かったと言うのに!申し訳御座いません!!」

 

深月が涙を流しながら皐月に謝った

 

「え~っと深月?大丈夫だからね?私生きてるから」

 

「ですが・・・ですが!お嬢様の利き腕が無いのは私が至らなかった為で御座います!申し訳御座いません!だから捨てないで!捨てないで下さい!」

 

余りの変りぶりにアワアワと焦る皐月

 

「あー・・・まぁ何だ?皐月は神楽を見捨てるなんてしないと思うし有り得ないぞ」

 

「南雲さんは私とお嬢様の出会いを知らないから楽観的に捉えられているのです!私の人生はお嬢様の幸せの為に全てを捧げているのです!ましてや利き腕が無くなると言う最悪が!お嬢様を守ると誓った私を不出来に思い捨てられる可能性が少しでも有るのです!!」

 

「えっとね深月?私は捨てないし手放すつもりも無いからね?だから・・・えっと、落ち着いて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土下座で謝る深月を諫める事数十回、ようやく落ち着きを取り戻したら起きてからの出来事を思い出し赤面しているのである

 

「た、大変お見苦しい所をお見せして申し訳御座いませんでした・・・先程までのは忘れて下さい」

 

深月の意外な一面を知ったハジメは笑っていた

 

「神楽は皐月一筋なんだな。ハッハッハッハ!なら俺達の敵って事は有り得ないだろうな」

 

「何を仰いますか南雲さん、私がお嬢様の敵となる?そうなってしまえば私は自らの首を吊りますよ」

 

「そうか・・・俺の名前を呼ぶのはハジメで良いぞ」

 

「ではハジメさんとお呼び致します」

 

「敬語は無しでお願いしたいんだが・・・・」

 

「私はメイドですのでそれだけは譲れません。では私の事も神楽ではなく深月とお呼び下さいハジメさん?」

 

「そ、そうか・・・分かった深月」

 

深月の絶対譲れない信念に強制的に納得させられたハジメ。典型的な女性に尻を敷かれる男性の姿だ

 

「それにしてもハジメさんとお嬢様の雰囲気がどことなく変っていますが何か有ったのでしょうか?あぁ髪の色とかではありませんよ?こう・・・距離感的な感じです」

 

迷宮に入る以前と比べ二人の雰囲気が変っている事にいち早く気が付いた深月、それは正にその通りである

 

「深月、私からせつ――――――」

 

「いや此処は俺から言うのが良いだろう。まぁ何だ・・・俺と皐月は将来を誓い合った仲となった。結婚前提のお付き合いって奴だな」

 

「と、言う訳で祝福してくれるわよね深月?」

 

「ふむ」と納得し素直に祝福する深月

 

「おめでとう御座いますお嬢様、ハジメさん―――――――いえ、結婚前提のお付き合いと言う事はハジメさんを旦那様とお呼びしたら宜しいのでしょうか」

 

「お願いだから止めてくれ!俺の事はハジメで固定してくれ・・・本当に頼む」

 

「まぁ今は良いでしょう。ですがお嬢様とご結婚されたら必然的にそう呼びますので悪しからず」

 

「あ、はい」

 

こうしてハジメの将来は旦那様呼びが確定したのであった

 

 

 

 

 

 

深月はハジメと皐月が奈落へと落ちてからの経緯を聞いて暗い顔をしていたが、「過ぎた事」と言う事で無理矢理納得させステータスの事も説明した

 

「成る程・・・魔物の肉は有毒ですが、この神水が有れば大丈夫だと言う事なのですね」

 

「そうそう。不味いけど技能が手に入るのは捨てがたいからな」ニヤニヤ

 

「深月も食べなさい。私に尽くしてくれるんでしょ?」ニヤニヤ

 

「では食べましょう。食べてお嬢様に害成す者全てを排除致しましょう」

 

神水を片手に爪熊の肉を食べた深月、因みにハジメと皐月は激痛については話していないのだ。「お前も道連れだ!」と言いたげな笑みを浮かべながら勧めたのだ

もっきゅもっきゅと今までの空腹を埋める様に食べ進めて行き、訪れる痛み

 

「っ!?い、痛いですね・・・神水を飲んでおきましょう」

 

少し顔を歪めた程度の深月に対し二人は「何故だぁ!?」と内心呟いたのであった

 

「筋肉断裂、復活の繰り返し・・・超復活ですね。まぁこの程度ならば地獄のサバイバルで体験済みですし今更感が否めないです。しかしこの骨格を作り替えようとする痛みは凄まじく、立つ事が出来ません」

 

「地獄のサバイバルってそんなにヤバかったの?」と言いたげにドン引きする二人を置いて深月の体からゴキッ、メキッ等の鈍い音が時偶聞こえるがやがて聞こえなくなる。それを確認した深月は立ち上がり体の隅々をチェック

 

「骨格が歪んだり等の事はありませんね。・・・問題としては少々背が高くなった事と少し引き締まったウエストですね。服は紐で縛れば大丈夫なのですが、背丈に関しては少々慣れなければ戦闘に支障が出る恐れが有りますね」

 

パパッと一通りの動きと体型をチェックし終えた深月、しかし二人の視線はそっちでは無く頭部・・・髪であった。魔物を食べた事により白く変色した二人とは違い、深月の髪は白に近い銀色―――――アニメやゲームに登場する様なメイドとなってしまっていた

 

「「何故に白銀・・・」」

 

その呟きから深月は自身の髪をチェックし変っている事に疑問を覚えたが支障をきたしている訳でも無いので気にせず、ハジメと皐月を見て一言

 

「時に、お嬢様にハジメさんはちゃんと水浴びしていましたか?」

 

「あーそういや錬成の鍛錬ばっかりやってて忘れてたわ。ってかやらなくても生きていけるし」

 

「私達は弱かったからそんな余裕が無かったのよ。と言っても浴びなくてももういいやって思っているわ」

 

「・・・・・」ゴゴゴゴゴッ

 

「「ヒィッ!?」」

 

「お・ふ・た・り・と・も?服を脱いで私に預けて下さい」

 

「ちょ!?服脱いだら俺と皐月は全裸になるんだが!?」

 

「ぬ・い・で・く・だ・さ・い」

 

「いy―――――――――」

 

「ハ・ジ・メ・さ・ん?」

 

「・・・ワカリマシタ」

 

深月の圧によりスゴスゴと引き下がるしか出来無かったハジメだが、流石に女性の前で全裸になるのは抵抗があり迷っていた。しかし深月によって強制的に衣服を脱がされてしまった。因みに皐月は深月に頼み脱がせて貰っていたのである

二人の衣服を持ち生活魔法の派生技能、清潔操作と全体清潔を同時に行使――――――思い浮かべるは洗濯機、布に付着した小さな汚れが剥がれ落ちるイメージを持って血濡れ、土汚れをどんどんと落として行く。そして綺麗な状態、正に新品同然とも言えるまで汚れを落とす事に成功

 

「では続いて洗髪です。お二人共こちらに来て下さい」

 

清潔操作、全体清潔、精密清潔を行使、傷だらけでごわごわしていたハジメと皐月の髪はサラサラと滑らかさを取り戻したのだ

 

「なぁ深月、体に生活魔法はやらないのか?」

 

「此処に濡れタオルが御座いますよ?」

 

「え・・・いや・・・深月がやった方が早――――――」

 

「あ・り・ま・す・よ・?」

 

「ハイ・・・」

 

深月は皐月の体全てをフキフキ、ハジメは自分の体をゴシゴシと洗うが背中と右手は拭けず「これでいいか」と思ったが持っていたタオルを深月に奪われ、綺麗な状態となったそれで背中をフキフキとされておおよそ清潔となり服を着終えた二人は何気にグッタリとしていた

 

「深月を怒らせるとヤバイな」

 

「私達を思っての事だけど怖かったわ・・・」

 

「あの無言の圧力を加えた決定に逆らえねぇ」

 

「ねえハジメ。深月の武器どうする?」

 

「あぁー、タウル鉱石で硬い武器を作っておくか。何なら拳銃を持たせてみるか?」

 

「私達の出番が無くなるわよ」

 

「剣だけにしておくか・・・」

 

二人はタウル鉱石を使用し黒い刀を生成

ハジメ命名:黒刀【霧斬(むざん)】 深月が使う事で無残にも細かく斬り殺され黒く変色した刀

―――という設定付けた名前だ。一方深月は名前は気にせず、唯即戦力となる武器が出来ただけでご満悦

そして二人で作った夫婦剣も新しく一新

皐月命名:黒双剣【対極(ついきょく)】 ハジメと皐月が作ったのは以前使用していた夫婦剣、それはそれなりに頑丈さをコンセプトに作っていたので、タウル鉱石で覆う形で新しく作られた。深月に渡すと「ふむ」と呟き一つを投擲、するとブーメランの様に戻るそれを危なげなくキャッチして「これは戦闘の幅が広がりますね」との事だった。ハジメは「何処ぞの正義の味方かよ・・・」と呟いたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!もうちょい錬成速度を上げねぇと足下掬われちまいそうだな!」

 

「反動は大丈夫だとしてもまだ精度が足らないわ」ドパンッ

 

武器制作が終わった後も錬成の鍛錬をするハジメと射撃訓練を行っている皐月。そして屠られて行く魔物達はドンマイとしか言えないだろうが、それは襲ってきた為なのでそうとも言えないのだ

 

「しっかし油断している訳じゃ無いんだが、拠点からあまり離れるなって過保護すぎるんじゃねえか?」

 

「トラップの時に対処出来無かったのを未だ引きずっているみたいよ」

 

深月は準備しているのだ。ハジメが提案したそれは危険極まりない物だったがそれに賛成、下層へと続く迷宮の最下層まで行くと言う物だった。何故か?ハジメと皐月は「教会は危険だからこのまま離脱」という考えで、深月に至っては「教会は何時爆発しても可笑しくない程危険な爆弾、そしてエヒト神はそれ以上の危険性が有る」と述べ、一同の考えは「迷宮潜って魔物肉食べて強化しまくっちゃえ!」と言う事

明日から潜るとは言えそのまま何もせずでは無く「己の研磨を如何なる時も絶やさない事が最も大事」だと深月の言い分はとても重要だと理解している二人はそれぞれの気になる、不十分な部分を徹底的に反復練習して向上させて行く。そんな集中した訓練を終え拠点に戻るとムワッと溢れ出る良い匂いに、二人の腹の虫が大きな音を立てる。滴る涎を気にせず匂いの原因となる一点は、深月が調理している魔物肉の物であった

 

「ちょっ!?深月!おまっ!?それ魔物肉じゃねぇのか!?」

 

「悪臭じゃなくて良い匂い・・・ジュルリ―――――――ハッ!?」

 

「お帰りなさいませ、お嬢様にハジメさん。調理はもうすぐ終わりますので今しばらくお待ち下さい」

 

何故?と疑問に思いながら何度も喉を鳴らし待ち続ける二人。そして出されたそれは赤黒い液体がたっぷり掛かったステーキだった。見た目はグロテスクで魔物肉を焼いた上に血を掛けた様なそれは、普通の常人であれば食欲が無くなるだろう。しかしこの場で腹を空かせている二人は、生の魔物肉を喰らったことがあるのでその様な事は全く気にならないのである

 

「二つの尻尾を持つ狼のステーキです。筋切り等の下処理も済ませていますのでどうぞご堪能下さい」

 

「うぐ・・・匂いは良いんだが」

 

「食べるとあの言い知れぬえぐみがあるのよね・・・」

 

深月が完璧超メイドだとしても調味料の無いこの場でえぐみ等を取れるとは思っていない二人は一口サイズに切られたブロックを頬張り―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うまあああああああああああああああい」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素直な感想有り難う御座います♪」

 

「この淡泊な味わい!脂は多く乗っていないが、噛んだ瞬間に溢れ出る肉汁!」

 

「所々硬く、そして柔らかくの飽きさせない食感!」

 

「「正しく食べ物だ!」」

 

モリモリと食べ進める二人は皿の上のステーキが直ぐに無くなりハッと我に返ると、もっと味わって食べるべきだったと言わんばかりに絶望としているが

 

「まだ沢山有りますので焦らなくてもお肉は逃げませんよ?」

 

「「おかわりー♪」」

 

深月の一言で完全復活して、おかわりの肉をモリモリと食べて行く最中にハジメは疑問に思った

 

「そういや魔物肉が何故此処まで美味しくなるのかが不思議で堪らないんだが・・・」

 

「そうよね・・・深月何かやった?」

 

「そうですね・・・生活魔法の清潔で血抜き等の下処理が出来ると把握出来ましたので、味見をしながら少々このえぐみが消えたら良いな~と思いつつ清潔を使ってみたのです」

 

「「なんでやねん!」」

 

ツッコミを入れつつ理由を考えるハジメはある一つを思い出す

 

「ちょっと深月のステータスプレートを見せてくれ」

 

「困った時のステータスプレートね。何かしらの良い原因が見つかると良いのだけど・・・」

 

「私も迷宮に入ってから一度も見ていませんね」

 

深月はポケットに仕舞っていたステータスプレートを取り出して二人に見せると――――

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:33

天職:メイド

筋力:1500

体力:2500

耐性:1500

敏捷:2500

魔力:2000

魔耐:1500

技能:生活魔法[+完全清潔][+清潔操作][+清潔鑑定] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷 天歩[+空力] 風爪 魔力操作 胃酸強化 直感 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なぁにこれ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精密清潔と全体清潔は無くなり完全清潔へと統合、そして家事の技能から派生で熟成短縮・魔力濾過・魔力濾過吸引と三つが新たに追加、最初の熟成短縮は分かるのだが残りの二つが意味HU☆ME☆I☆である

 

「魔力濾過?・・・それに魔力濾過吸引?どういう技能だ?」

 

「魔力濾過って事は有害を無害にさせるって事かしら?魔物肉が有害魔力を保有して食べれない事を前提にしたら理屈は通るわね・・・」

 

「最後の魔力濾過吸引だが・・・濾過した行き場の無い魔力を自分の魔力へと変換していると仮定しよう。料理して清潔とかやっていた時に疲労感は無かったのか?」

 

「そう言えば妙に力が沸き上がる感じでした・・・となると、ハジメさんの予測が正しいという事でしょうか?」

 

「手から他人の魔力を吸収して自分の物に出来たとしたらとんでもないスキルよね」

 

試しに皐月は纏雷を指先に使用し、深月は掌を近くに持って行き魔力濾過吸収を発動すると微々たる量ではあるが吸収されていった

 

「流石に超ぶっ壊れ性能では無かったか」

 

「流石の深月でもぶっ壊れでは無かったと言う事ね」

 

皐月の悪気無い一言に深月は一瞬だけムッとしたが直ぐに隠しある実験を試してみる事に

 

「ハジメさん、もう一度纏雷をお願いします。少し試したい事が御座いますので」

 

「お、おう。別に良いが無茶はするなよ?」

 

「大丈夫です」

 

先程皐月がした事をハジメが同じ様に使用、そこから深月は完全清潔と清潔操作と魔力濾過吸収の三つを行使した

 

イメージは掃除機と同じ様に掌に纏雷の魔力を集めて、完全清潔により私に対して有害な部分を消し去った綺麗な魔力を全身に纏わせる!

 

ハジメの指先の纏雷は深月の掌に集められ一瞬で綺麗な魔力となり、そのまま全ての魔力が深月の身体中に行き渡る

 

「やりましたよお嬢様!」

 

「「なんでやねん・・・」」

 

こうして深月は相手の魔術攻撃を無効化して自身の物へとする技を編みだし、その理不尽さを目の当たりにした二人。こうして最強戦力が更に強化されたのだった

 

 

 

 

 




布団「何故、熊にやられたのかって?」
深月「私も人間ですよ?」
布団「半月近く絶食+気が抜けない状態。後は分かるね?」
深月「ストレスマッハという奴ですね!」
布団「ステータスはチートなのにね♪」
深月「ですが良いのです!私は遂にお嬢様と合流する事が出来たのですから!」
布団「そして胃袋を掴んでいくぅ!」
深月「三大欲求の一つを確保しておかなければなりませんからね」
布団「おっと、そろそろ時間ですね」
深月「ですね。読者の皆様方、感想、評価等お気軽に宜しくお願いします」
布団「そして誤字脱字報告に日々感謝しています!」
深月「今回も見直ししましたよね?」
布団「十回やった。けど作者は良く見落としちゃうから赦して・・・」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは居ません。クラスメイトsideですから

布団「クラスメイト達はどうしているかな?」
深月「ではそちらへ目を向けてみましょう」
布団「話しは変って、誤字報告有り難う御座います」
深月「作者さんは国語の成績が低かったと記憶していますが?」
布団「・・・ではどうぞ!」
深月「逃げては駄目ですよ?しっかりとお話ししましょう。それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」


爪熊の討伐より遡る―――――

ハジメと皐月の二人が落ち、そして深月も二人を追う様に落ちた。特に深月の存在が大きかったのだろう・・・ステータスは勇者天之河よりも高いし、戦闘能力も抜きんでていたからだ。強い敵と遭遇すれば深月が何とかしてくれるだろうと心の底で思っていた事は崩されたから・・・

何よりもクラス全体の空気が悪い理由とは檜山の事についてだった。ハジメと皐月が奈落へと落ちたきっかけとなり、深月も居なくなるという問題を作った張本人だから―――――檜山は直ぐに孤立、殆どのクラスメイトが彼を憎むような視線を向けている

 

「何でだ・・・俺は間違ってない・・・白崎を、白崎を正気に戻す為だ。俺は悪くない俺は悪くないんだ・・・」

 

心の中の悪魔の囁きを実行したが深月の前でボロを出し今、こうなっている現状を否定する様に自分が正しいと思い込ませている。そんな彼にもう一人の悪魔が囁く

 

「いや~流石だね。異世界最初の殺人がクラスメイト、中々やるね?」

 

「だ、誰だ!?」

 

振り返った先には同じクラスメイトの一人

 

「それよりもさ~人殺しさん?今どんな気持ち?恋敵をどさくさに紛れて殺すのってどんな気持ち?」

 

クスクスと笑いながら檜山を見るそれは、まるで喜劇でも見たように楽しそうな表情を浮かべている。クラスメイトが死んだ事に何とも思っていない瞳、当初は他のクラスメイト達と同様に、ひどく疲れた表情でショックを受けていたはずなのにその影は微塵もなかった

 

「・・・それがお前の本性なのか?」

 

「本性?そんな大層なものじゃないよ。誰だって・・・特に女性は猫の一匹や二匹被っているのが普通だよ。そんな事よりさ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白崎香織、欲しくない?

 

「ッ!? な、何を言って・・・」

 

暗い考えを一瞬で吹き飛ばすには十分で、驚愕に目を見開いて凝視する檜山。そんな様子をニヤニヤと見下ろし、その人物は誘惑の言葉を投げ続ける

 

「僕に従うなら・・・いずれ彼女が手に入るよ。本当はこの手の話は南雲にしようと思っていたのだけど・・・君が殺しちゃうから。まぁ、彼より君の方が適任だとは思うし結果オーライかな?」

 

例えこのクラスメイトがハジメにこの話しを提案しようとも拒否されるのは目に見えて分かるが本人は気が付いていない

 

「・・・何が目的なんだ。お前は何がしたいんだ!」

 

「簡単だよ。僕の手足となって動いてくれればそれで良いんだよ。理由は、欲しいモノがあるとだけ言っておくよ。それで返答は?」

 

あくまで小バカにした態度を崩さないその人物に苛立ちを覚えるが、あまりの変貌ぶりに恐怖を強く感じた檜山はそれを振り払う様に釣り針へと付けられた餌へと食いついた

 

「・・・従う」

 

「アハハハハハ、それはよかった!まぁ、仲良くやろうよ人殺しさん?アハハハハハ♪」

 

楽しそうに笑いながら踵を返し歩き去っていくその人物の後ろ姿を見ながら、檜山は「そうだ・・・白崎が手に入れば周りなんてどうでも良い・・・」と小さく呟いた

そして自分がどうすれば孤立しないかを必死に模索、うまく立ち回らねば・・・自分の居場所を確保しなければ――――今更立ち止まれないし、あの人物に従えば、消えたと思った可能性の白崎を自分の物にできるという可能性すらあるのだ

 

「ヒヒ、だ、大丈夫だ。上手くいく。俺は間違ってない・・・」

 

こうして暗く、闇の存在は徐々に広がり、大きくなりつつある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイリヒ王国王宮内の召喚者達に与えられた部屋の一室で、八重樫は暗く沈んだ表情で未だに眠る親友の白崎を見つめていた。あの迷宮の出来事からもう既に五日・・・その間にあった出来事を思うと寝てくれていた方が良かったのか、起きていた方が良かったのかは分からない

一同が王国へと帰還しメルド達は出来事の詳細を報告、迷宮で死んだのは勇者ではなくお荷物扱いされていた二人、ハジメと皐月の両名だった事を知ると誰もが安堵していたのだ。錬成師でステータスが一般人という事から戦力低下はしていないと判断したのだった

 

『しかし落ちたのが"無能"の二人と、それに付き従うメイドだけで良かった』

 

『そうですな。大きな戦力低下もせずに済んだのが幸いだ』

 

吐き捨てられるそれらは八重樫にとって不愉快そのもの。だが此処は命の価値が低い異世界、弱肉強食の世界なのだ。・・・彼等を罵倒される事で手を出そうと我慢していると、天之河が激しく抗議した事で国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断したのか、ハジメを罵った人物達は処分を受けたらしい

逆に天之河は無能達にも心を砕く優しい勇者であると噂が広まり、結局天之河の株が上がっただけで、ハジメと皐月は勇者の手を煩わせただけの無能であるという評価は覆らなかった。天之河がその事を全くもって理解していないのはお約束

あの時、自分達を救ったのは紛れもなく勇者も歯が立たなかった化け物をたった二人で食い止め続けたハジメと皐月だというのに。そんな彼を死に追いやったのは檜山――――深月の言を信じるならばそうだろう。だが天之河は檜山の犯した罪を許してしまった

 

「檜山の攻撃が南雲に当たってしまったのは事実だ。だけどそれはワザとじゃ無い。皆だってそうだろう?必死になって生き残る為に放つ魔法を他人に向ける余裕は無い」

 

持ち前のカリスマで徐々に周囲を納得させて行き、遂には檜山が皆の前で謝罪する事でこの出来事は葬られる事になったのだ。しかし八重樫だけはそれを否定して「牢屋に入れておけ」と言い張るが天之河がそれを却下

 

「皆で力を合わせなければこの世界の人達を救う事は出来無い!あの攻撃はワザとじゃ無かったんだ。それを許して過去を乗り越えなきゃ死んだ南雲も報われない!」

 

等と言い出す始末。――――――故に、諦めたのだ。本当に何故こうなったのかと苛立ちが募る。その現実を受け入れたく無く、殆どの時間を白崎が目を覚ますまで見続けるといった形になったのだ

 

「あなたが知ったら・・・怒るのでしょうね?」

 

あの日から一度も目を覚ましていない白崎の手を取ってそう呟く八重樫。白崎の様子を見た医者からは精神的なショックが大きく心を守る為に、深い眠りに付いているのではないか?との事。詰まるところ、時が経てば自然と目を覚ますと言っているのだ

八重樫は白崎の手を握り「どうかこれ以上、私の優しい親友を傷つけないで下さい」と祈っていると不意に、握り締めた香織の手がピクッと動いた

 

「!?香織!聞こえる!?香織!」

 

「・・・雫ちゃん?」

 

ゆっくりと開かれ、しばらくボーと焦点の合わない瞳で周囲を見渡していたのだが、やがて頭が活動を始めたのか見下ろす雫に焦点を合わた

 

「ええそうよ。私よ。香織、体はどう?違和感はない?」

 

「う、うん。平気だよ。ちょっと怠いけど・・・寝てたからだろうし・・・」

 

「そうね、もう五日も眠っていたのだもの・・・怠くもなるわ」

 

「五日?・・・それで南雲くんは・・・・・南雲くんは!?」

 

徐々に覚醒しその時の事を思い出して行った白崎は八重樫に問い詰める

 

「ッ・・・それは」

 

八重樫の言葉が詰まる。そして思い出す記憶が現実の物だと悟るが白崎自身到底受け入れる事は出来無い

 

「・・・嘘だよ、ね。そうでしょ?雫ちゃん。私が気絶した後、南雲くんも助かったんだよね?ね、ね?そうでしょ?此処はお城の部屋だし皆で帰ってきたんだよね?南雲くんは・・・訓練かな?訓練所にいるよね?うん・・・私、ちょっと行ってくるね。南雲くんにお礼言わないとだから、離して?雫ちゃん」

 

「・・・香織。分かっているでしょう?・・・此処に彼は居ないわ」

 

「やめて・・・」

 

「香織の覚えている通りよ」

 

「やめてよ・・・」

 

「彼等は・・・」

 

「嫌!やめてよ・・・やめてったら!」

 

「香織!彼等は橋の崩落に巻き込まれて落ちたのよ!」

 

「違う!死んでなんか無い!絶対、そんな事無い!」

 

「落ち着きなさい香織!何も私は死んだとは言っていないでしょう!殆どの人達は死亡扱いをしているけれど、私はそう思わないわ・・・実は香織を気絶させた後で神楽さんが来たのよ。分かる?たった一人で――――あの短時間で来たのよ?そして彼女は二人を追う様に飛び降りたの」

 

「それだったら何で雫ちゃんは私を止めたの?」

 

「決まっているでしょ。私は親友の貴女を死なせたくなかったからよ」

 

白崎をゆっくりと落ち着かせようと抱きしめ背中を擦る

 

「私達は弱い。それに比べ神楽さんは私達より倍・・・いえ、何十倍も強いわ」

 

「そう・・・なの?」

 

「そんな彼女が二人を追いかけて行ったのだから合流している可能性は高い筈よ」

 

先程まで震えていた白崎も落ち着きを取り戻したのかそれは治まり、ゆっくり・・・ゆっくりと現実を受け入れて行く

 

「・・・雫ちゃん。南雲くんは此処には居ないんだね・・・」

 

「そうよ」

 

「あの時、南雲くん達に魔法を当てたのは・・・誰なの?」

 

八重樫は白崎がどういった行動に出るのか容易に想像が付いた。しかしそれを実行させる訳にはいかない

 

「知っているわ。だけど報復行為をしては駄目よ」

 

「何で?」

 

「魔法を当てた人・・・檜山を光輝が許しちゃったのよ。私は「地球に帰るまで牢屋に入れておけ」と、何度も何度も提案したけれど全て却下されたわ。勇者の光輝が否定したら周囲の人達もそれに賛同、本当に何でこうなったのでしょうね・・・」

 

「そうなんだ」

 

「もしも彼等が生きていたら、檜山は死ぬわ。神楽さんは"処分しなければ殺す"と宣告したのよ。一瞬だけ目を合わせたけど、あれは間違い無く地球で人殺しを経験している筈よ」

 

「そっか・・・それだったら神楽さんに任せようかな」

 

問題ばかり押し寄せてくるそれに疲れ果てている八重樫、世界が考えを否定していると思う程立ち回れない白崎。この二人はしばらくの間沈黙してこれからの指針を決める

 

「雫ちゃん、私は信じないよ。南雲くん達は生きてる。死んだなんて信じない」

 

「そうね・・・」

 

「あそこに落ちて生きていると思う方がおかしいって。でもね、確認した訳じゃないし可能性は一パーセントより低いけど、確認していないならゼロじゃない。私はあんな状況でも皆を守れるくらい強くなって南雲くんの事を確かめる・・・雫ちゃん」

 

「なぁに?」

 

「私に力を貸してください」

 

今の白崎は絶望による狂気等の危険な目をしておらず、唯真っ直ぐに、自身の答えを探し納得するまで諦めないという力強い意思が宿っていた。こうなった白崎はテコでも動かないず、家族も手を焼く頑固者になるのだ

そしてこれは確実に幼馴染である天之河や坂上も含めて殆どの人間が白崎の考えを正そうとするだろう。だからこそ八重樫の答えは決まっていた

 

「もちろんいいわよ。香織が納得するまでとことん付き合うわ」

 

「雫ちゃん!」

 

白崎は八重樫に抱きつき「ありがとう!」と何度も礼をいう。「礼なんて不要よ、親友でしょ?」と、どこまでも男前な雫――――現代のサムライガールの称号は伊達ではない

その時、不意に扉が開かれ二人が姿を見せ

 

「雫! 香織はめざ・・・め・・・・・」

 

「おう、香織はどう・・・だ・・・・・」

 

「す、すまん!」

 

「じゃ、邪魔したな!」

 

天之河と坂上だったが、二人は硬直し直ぐに部屋を出て行った。そんな二人を見て、香織もキョトンとしているが、聡い雫はその原因に気付いた。二人の其れは激しく百合百合しい光景で、雫は深々と溜息を吐き、未だ事態が飲み込めずキョトンとしている香織を尻目に声を張り上げ二人を追いかけた

 

「さっさと戻ってきなさい!この大馬鹿者共!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八重樫に追いかけられ説教をされた後、天之河と坂上は訓練場へと再びやって来ていた。ハジメと皐月を見殺しに、そして続く様に後を追った深月もまた死んだと誰もが思っている

 

「光輝、俺達は弱いな」

 

「あぁ・・・死んだ南雲の為にも俺達は強くならなくちゃいけない。この世界の人達を救って皆で地球に帰ろう」

 

「それじゃあもっと訓練やるか!」

 

「あぁそうだな!」

 

誰もがこの光景とやり取りを見て頑張ろうと思った。しかし違和感には誰も気が付かない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之河の中で死んだとされているのがハジメだけという事に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「お説教はおぼろ豆腐メンタルに響くぜ」
深月「少し揺らしただけで崩れてしまう心とは・・・」
布団「だがモチベーション上げていくぞぉ!」
深月「では次話も宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドはお二人と共に着々と降りて行きます

布団「今回は連投だよ」
深月「想定よりも早く仕事が終わったのですか?」
布団「目先の奴だけです。細々とした仕事は放置してます」
深月「ちゃんとやりましょうね?」
布団「イ、イエッサー」
深月「読者様達も、お体に気を付けて下さいね?」
布団「作者は風邪引いたかも」
深月「・・・一週間以上開けますか?」
布団「読者様の為に無理しない程度で頑張る・・・」
深月「それでは始まります。ごゆるりとどうぞ」


~皐月side~

 

私とハジメは真っ暗闇の中を、ゆっくりと警戒しながら歩いている。深月はどうしたのかって?先に進んじゃっていますがそれが何か?

 

「やっぱり深月の事が心配か?」

 

「違うわ。私達の様に明かりも無く先に進んでいる事にビックリしているだけよ」

 

「俺達が無理言って先行させたからなぁ」

 

そう。私とハジメは深月に、"余程の事が無い限りは手を出すな""先行して次の階層前で待っていろ"と、二つ命令したの。この迷宮は何か有ると私の勘がそう言っているし、クリアしたら特典とか有りそうじゃない?恐らく寄生プレイは駄目、パーティーとしての共同クリアなら成功って所だと思う。それだとしたら、深月の無双で私達にその特典が貰えない可能性が高くなっちゃうからね

 

「しっかし、本当に真っ暗だな。深月の奴どうやって進んだんだ?」

 

「この即席ランプが無いと先は見えないっていうのに・・・」

 

緑光石を光源とした即席ランプをぶら下げて、ハジメと皐月は周囲を警戒しながら進んで行く。すると遠くではあるが、チラッと光が反射した。二人は最大限の警戒をしてその場で待機していると、灰色のトカゲが姿を現したのだ。ギョロッとした金色の瞳を二人に向けた途端、その目が一瞬光り異変は直ぐに分かった。二人の体が端の方からパキパキと石に変化し始めたのだ

 

「チィッ!」

 

「石化っ!?」

 

二人は直ぐに岩陰に隠れて、石化を止める為に神水を飲む。すると、石化の進行が止まり、石状態となっていた部分の体は元通りに

 

「厄介ではあるが」

 

「射線に入らなければ問題無いわ!」

 

二人は縮地で、二手に別れる様に飛び退く事で金目トカゲの隙を一瞬だけ生じさせる事に成功。そのままの流れで、手に持ったドンナー二丁が火を噴く。挟撃される形で飛来する弾丸、トカゲは知覚する事を許されずに頭部を粉砕され、壁に銃痕を付けた

 

「バジリスクか何かかよ」

 

「このトカゲの肉を食べておかないといけないわね」

 

全ての素材を剥ぎ取る暇も無いこの現状。素早くトカゲの肉を少しだけ剥ぎ取って飲み込んだ。ステータスは後でも確認出来るので、二人は早足でこの階層を調べて行く。勿論、道中に出てくる魔物は全てヘッドショットにて殺し、魔物肉は手に入れている。暗闇の性で体感時間は明るい所よりも長く感じ、無理をせずに一旦休憩を入れる。深月が居ない中での食事、唯焼いて終わるだけのそれは酷い物だ

 

「・・・やっぱり深月を先行させるんじゃなかった!」

 

「美味しいご飯が食べたい・・・だけど食べなきゃ」

 

何も考えない様にしていても、食べるだけで思い出してしまうのだ。深月が作る料理のありがたさを・・・

 

「バジリスク擬き?のトカゲ肉は食べたとして、残りの奴らからはどんな技能をくれるか楽しみだ!」

 

「フクロウと足が六本ある猫よね?」

 

焼けていく肉を見ながら、道中で倒した魔物の姿を思い出していく二人。丁度良く肉も良い感じに焼けたので食べると

 

「ぐっ!」

 

「いたたたたた!痛い痛い!」

 

体に痛みが襲い掛かって来たので、神水を飲み二人はそのまま食べ進めて行く。初めて食べた時の痛さに比べればどうという事は無い。耐えられる程度の痛さなのだ

だが、この痛みが有ると捉えるならば体が強くなっているという事だ。爪熊よりも高いステータスを持っているというのは確定、バジリスク擬きを食べた時に痛みが生じなかったのは、"石化の能力に特化している為ステータスの高さは低い"と仮定すれば辻褄は合う

全てを食べ終えた二人は、ステータスプレートを確認する事にした

 

「それじゃあ、どんな感じに仕上がっているのか楽しみだ」

 

「石化の魔眼とか手に入ったり~♪」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:23

天職:錬成師

筋力:450

体力:550

耐性:350

敏捷:550

魔力:500

魔耐:500

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 風爪 夜目 気配感知 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:22

天職:錬成師

筋力:400

体力:500

耐性:300

敏捷:500

魔力:550

魔耐:550

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 風爪 夜目 直感 気配感知 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「夜目・・・魔物肉を食べてから周囲が見やすくなったのはそれのせいか?」

 

「魔眼じゃなくて耐性かー、仕方が無いと言ったら仕方が無いわね。それよりも、気配感知は嬉しいわね」

 

「だな。準備の有無で状況は一変するし、戦いならば尚更だ」

 

技能の把握も終えた二人は消耗品の錬成をしていく。弾丸一つ錬成するだけでも時間が掛かるが、深月からの忠告で予め大量の弾丸の錬成にて熟練度を高めていた。ハジメは一発辺り約10分、皐月は約15分まで短縮する事に成功したのだ。最初は三~四十分だったのに比べれば凄まじい成果だ。何故短縮できたのか?二人の錬成を観察、実物の弾丸制作を体験した事を参考に色々とアドバイスをした為だ

 

「深月のアドバイスが無ければかなり時間が必要だったんだろうな」

 

「何時、何処で弾丸制作を体験したかは突っ込まないけどね」

 

このアドバイスを聞いていた時には「あれ?深月って、私達が小学校に通っている間で体験したのよね?」と思い口に出そうとしたが、「深月だから何でも有りよね」と割り切る事にした

粗方の補充を終えた二人は再度出発。夜目と気配感知によって今までよりも段違いの速さを持って、下層へと繋がる階段の場所へ辿り着くと階段の中で深月が待機していた

 

「お嬢様、ハジメさん、お疲れ様です」

 

深月の体を見る二人。服には汚れは無く、体にも傷等は付いていないのだ

 

「深月・・・ここに辿り付くまでに魔物と戦ったか?」

 

「気配感知でやり過ごしたりしてない?神水で傷を治したりとかは?」

 

いくら深月が強かろうとも、「傷一つ無くは無理だろう」とタカを括っていた二人だが現実は無情だ

 

「大丈夫です。此処に来るまでにトカゲと猫にフクロウ、"ライオン"と"カマキリ"の形をした魔物はサクッと殺しましたので。一応『お二人と出会っていない魔物も居るのではないか?』と思い、全魔物の肉を剥ぎ取っていますのでご安心下さい」

 

「「ライオンにカマキリ?何それ・・・」」

 

「口から空気砲を連続で撃ち出すライオンと、不思議な歩法を使うカマキリです」

 

深月はステータスプレートを二人に見せた

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:38

天職:メイド

筋力:1600

体力:2600

耐性:1600

敏捷:2600

魔力:2100

魔耐:1600

技能:生活魔法[+完全清潔][+清潔操作][+清潔鑑定] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知 魔力感知 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷 天歩[+空力] 幻歩[+幻影][+認識移動] 風爪 夜目 魔力操作 胃酸強化 直感 石化耐性 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 心眼 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「よし、分かった。参考にならない深月はもういい」

 

「私達が食べて、基礎がどれだけか試すだけでいいわね」

 

「お嬢様達の為に頑張ったのですよ!?酷いではありませんか!」

 

いつも通りのぶっ壊れである。たった二~三日で派生技能を開花させた深月に対してハジメと皐月は、もう何も考えない事にしようとしたのだが、深月のステータスが殆ど上昇していない事に気が付くハジメ

 

「ん?ちょっと待て。深月の技能については何も突っ込まないが・・・ステータスの上昇率が悪いのはどうしてだ」

 

「あ、ホントね。技能に目を奪われていたけれど、ステータスをしっかりと見ていなかったわ」

 

幾ら考えても分からない

よって、深月のステータス確認についてはもっと落ち着ける場所で考察する事とした。二人は深月が調理した魔物肉を食べたが、此処である一つの問題点が浮上。それは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深月が調理した魔物肉を食べても技能が獲得出来ない事だった

理由は単純明快で、深月が調理する過程に原因があったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔力濾過

文字通り、有害を無害にするという魔物肉の調理には欠かせない技能。有害と認識されている魔力が、技能取得に繋がっていると考えられる。拠点を作り、二人は調理前のライオンとカマキリの魔物肉を一口大に切り、そのまま焼いて食べて技能を得たが、気分は消沈している

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:26

天職:錬成師

筋力:550

体力:600

耐性:450

敏捷:700

魔力:600

魔耐:600

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 幻歩 風爪 衝撃波 夜目 気配感知 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:25

天職:錬成師

筋力:500

体力:550

耐性:400

敏捷:700

魔力:650

魔耐:650

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 幻歩 風爪 衝撃波 夜目 直感 気配感知 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

派生技能までは獲得出来無かったが、しっかりと技能その物は獲得出来た。これからの成長次第で派生技能が生まれる筈なので、取り敢えずは一安心だろう

消沈している二人を癒やすのはたった一つだけ

 

「お嬢様、ハジメさん。料理が出来ました」

 

今回はドロドロとしたコンソメの様な薄黄色いスープにボイルした肉を裂いて入れた料理だった。無論、味の方も問題無く

 

「「うまあああああああああああああああい」」

 

バクバクと食べ進める二人を微笑ましく見つつ自分の分を確保、おかわりを要求する二人。錬成にて作られた大きな鍋に一杯あったスープは八割近く無くなった。※残った余りも含めてしっかりと深月が全部食べたので何も問題はありません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

とても心配でした。お嬢様とハジメさんのお二人からの命令は、『自分の力で迷宮をクリアする』との事でした。説得しても駄目で、全てを却下されてしまいました。それならばと思い先行する許可を頂こうかと提案すれば、すんなりと通りました。まだまだつめが甘いですねお二人共♪

真っ暗闇の迷宮を進んで行くと、猫やフクロウ、トカゲ、ライオン、カマキリ等の特徴を持った魔物達に出会いました。猫とフクロウは、夫婦剣を投擲して頭部にサックリと刺さって即殺、もの凄く呆気ない・・・と思ったのも束の間で、横から来る嫌な予感を感じたので後退。私が先程まで立っていた地面は砲弾が直撃したかの様なクレーターが出来たのです。すかさず飛来してきた場所へ一直線へと走り、気配感知と魔力感知にて敵から飛来してくる魔力弾を黒刀にて切り落として自身の直感を信じて抜刀。暗闇の中ではありましたが、長年の経験から敵は首を絶たれて即死と判断しました

此処で一度体勢を整えようとしたのですが、背後から悪寒を感じて足下に転がっていたフクロウを咄嗟に肉壁としたのです。一瞬だけ閃光が弾けたかと思うと肉壁としていたフクロウが石になり始め、剣を引き抜きフクロウを掴み上げて光源へと突進。少しした所で気配の有る場所へ向けて上へと投擲し、私は姿勢を低くして真っ直ぐ滑り込んでトカゲの頭部へ剣を突き刺しました。ですがまだまだ終わらず、こちらへとジグザグに走りながら向かって来た最後の敵――――カマキリですね。回収した夫婦剣を左右に投擲、黒刀で切り上げる事で鎌部分の攻撃を弾きました。後は皆様のご想像通りです。横と真後ろから飛来する夫婦剣により頭部を切断、そして串刺しという流れで殲滅を完了しました

そのまま各魔物肉を少しだけ剥ぎ取って、飲み込んで技能を獲得。ステータスを確認した後は、風の通り道を見つけて真っ直ぐに下層へと向かったのです。魔物は全てズリズリと引きずる形で持って行きましたが、その間は全く攻撃をされませんでした。討伐して引きずっている魔物の中にボス的な存在が居たのでしょうね。ちゃんと野生の勘が働いた様で何よりです♪

何事も面倒事が起こる事無く無事に階段へと辿り付いた私は、素材を剥ぎ取って食べれる部分を確保して待つ事およそ一日。無事にお二人が階段前へと到着して私はとても安心しましたよ・・・

 

深月の濃すぎる戦いよりも幾分もマシな二人だった。深月と一緒に行動しなかった事により、不味いご飯での意気消沈は戦闘にも少なからず響いた。なので次の階層からは一緒に同行をする事となった

 

「深月の料理が無いと攻略ペースが段違いなんだ・・・」

 

「食は偉大。迷宮内では深月の料理が無いともう駄目・・・」

 

「私にとっては大変喜ばしい事ですね♪次の階層からは、一緒に同行させて貰いますが宜しいですか?」

 

「「お願い。本当にお願いします。不味い魔物肉は嫌なんです!」」

 

(よしっ!これでお嬢様達と別攻略しなくて済みます!流石私です!胃袋を掴めば勝利確定です!!)

 

外見はニコニコと笑っているだけだが、内心ではとても喜んでおり、コロンビアポーズをしている程である

拠点で料理も食べ終え、仮眠を取った三人は次の階層へと降りて行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うそん」

 

「火気厳禁じゃない・・・」

 

「このタール状の泥は可燃性なのですね」

 

ハジメと皐月が周囲を鉱物系感知で調べ、気になった鉱石が問題の原因だった

 

フラム鉱石

艶のある黒い鉱石で、熱を加えると融解しタール状になる。融解温度は摂氏50度程で、タール状のときに摂氏100度で発火する。その熱は摂氏3000度に達し、燃焼時間はタール量による

タール状の粘つく泥沼を避けるながら、空力を使って所々出ている岩場を足場にする他無い。レールガンと纏雷が使えないという縛りプレイに頬を引きつらせる二人

 

「お二人共、この場は私にお任せ下さい」

 

ハジメと皐月は深月を前衛にローラー探索をしようとするが

 

「この道が下層に繋がる最短ルートですね」

 

「「は?」」

 

深月の探索能力を知らない二人からすれば、当然の反応と言えるだろう。※深月は空気の通り道から下層へと繋がる最短ルートを割り出す事を二人に教えていません

 

「どうかされましたか?」

 

「何で最短がこっちだって分かるんだ?」

 

「こちらの道から空気が強く通っているからですが」

 

「「俺(私)達の苦労は一体何だったんだ・・・」」

 

お膝を付きズーンとする二人はOTL状態となっていたが、「早く地球に帰る為だから・・・」と言いつつ、ゆっくりと復活して攻略を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!」

 

タールの海からサメが気配も無く深月へと強襲したが、神速の抜刀にて唐竹割りの真っ二つにされた

 

「ねぇ、ハジメ・・・あのサメって」

 

「・・・気配って無かったよな」

 

「ふぅ。お二人共、このサメは気配を持たずに攻撃して来るのでお気を付け下さい」

 

「・・・一応聞くが、どうやって分かった」

 

「水(タール)を切る音が聞こえて、そちらを見るとサメが目の前に飛び込んで来たので・・・つい唐竹割りしてしまいました♪」

 

「反応早すぎだろ」

 

テキパキとサメを解体して行く深月。清潔と濾過を使ってキレイキレイされたサメを刺身で食べた三人は、ステータスも向上し技能も獲得した

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:27

天職:錬成師

筋力:600

体力:650

耐性:500

敏捷:750

魔力:650

魔耐:650

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 幻歩 風爪 衝撃波 夜目 気配感知 気配遮断 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:26

天職:錬成師

筋力:550

体力:600

耐性:450

敏捷:750

魔力:700

魔耐:700

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地] 幻歩 風爪 衝撃波 夜目 直感 気配感知 気配遮断 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「気配遮断か」

 

「予想通りね」

 

「では私のステータスを――――――」

 

「「深月のはもっと落ち着いた時で良い!」」

 

「・・・はい」

 

二人に却下されショボンとする深月

タールザメから得た気配遮断を活かして最短距離で下層へと進む三人。火気厳禁の階層から抜けてからの攻略は苦難の連続であった。※この苦難は深月が手を出さなかった場合の戦闘に限る

毒を吐き出すカエルと麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾の二体は、特にヤバイの一言に尽きた。カエルと戦い、粘つく毒液に直撃した二人を待っていたのは激痛。それも初めて魔物肉を食べた時に近い痛みだった。その光景を見た深月がカエルを瞬殺して、二人に神水を飲ませなかったらお陀仏だったかもしれなかっただろう。この経験から奥歯に神水を仕込んだ三人。薄く出来た石の容器は、歯で噛み砕ける程度の物だ。その後に戦った蛾は、この保険のお陰で倒す事が出来た。因みに深月は、少し動きが鈍くなる程度で問題無く殺戮していたのだ。深月はステータスの差が大きいからだろうと言っていた←それだけではありません。地獄のサバイバルにてある程度の毒物耐性を持っていた事とステータスの恩恵からです

さらに下層へと降りて行くと、分裂するムカデと戦った。数が多くリロードが追いつかなかず、二人は風爪や衝撃波に慣れない蹴り技で襲い掛かるそれらを必死になって撃破したのだった。深月に向かっていったムカデ達は、黒刀の名前の設定通り攻撃を赦されず無残にも細切れにされていた

次に出会ったのはトレント擬きで、二人が目の色を変えて殺戮した魔物である。何故か?それは頭部にある果実が原因―――――――その実に毒は無かった。だが問題は味だった・・・・・滅茶苦茶美味しかったのだ!甘く瑞々しいその赤い果物は、例えるならスイカ。目の色を変えて蹂躙して確保――――深月も料理の幅が広がり、簡易的なデザートを作って美味しさの余り叫んだのはお約束

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:50

天職:錬成師

筋力:900

体力:1050

耐性:920

敏捷:1200

魔力:850

魔耐:850

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+拡散] 夜目 遠見 気配感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:50

天職:錬成師

筋力:880

体力:1000

耐性:900

敏捷:1200

魔力:920

魔耐:920

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+拡散] 夜目 遠見 直感 気配感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

現在三人は、技能の熟練度を高めている最中だ

今居る場所は五十階層。どうして練度を高めているのか、明らかにこの階層は何かが違うと分かるからだ。脇道の突き当りにある空けた場所に高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ

明らかにヤバイと感じるも、扉を開けない選択肢は無い。もしかしたら、迷宮から出れるかもしれないからだ。だから手前で練度を高め、弾丸等の補充をしているのだ

 

「さながらパンドラの箱だな。・・・さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

 

「私は嫌な感じがするわ。・・・でも、迷宮攻略のキーワードかもしれないから無視する訳にもいかないわ」

 

「罠があるのは間違い無いでしょう」

 

「俺は、生き延びて故郷に帰る。日本に、家に・・・帰る!邪魔するものは敵だ!敵は・・・殺す!」

 

「私だってそうよ。無事日本に帰って、両親にハジメを紹介するんだから!」

 

「えっ・・・そっち」

 

皐月の願望は、この三人だけでも良いから日本に帰る事。そしてハジメと結婚するという事だけだ

二人は扉を細かく調査、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのが分かるが、魔法陣の式を全く読み取れない。王国の図書館で知識をそれなりに詰め込んだのだが、それでも全く分からないのだ

 

「相当、古いって事か?」

 

「古いから文献が無いっておかしくない?」

 

二人は疑問に思いつつ調べて行く。深月はその様子から一つの仮説を立てた

 

古いから文献が無いというのはおかしすぎます。可能性として一番高いのは、この魔方陣を描いた人物だけが知り得る物。そして重要なのは、この扉を守る様に壁に埋もれている魔物。恐らくこれは門番で何かを封印している筈・・・何かから守る為、何かから隠す為なら納得がいきます。しかし、何から守るのかが理解出来ませんね。魔人族から?いえ・・・有り得なくも無いですが、可能性としてはいまひとつですね

此処は反逆者と呼ばれる者達が作り上げた迷宮で神と敵対する者達。敵対するならば情報を渡さない様に隠匿するのが常。神、狂信者、反逆者、神が狂信者を作り上げて反逆者を作り上げた?反逆者は神と敵対?・・・待って下さい。反逆者は人間の筈ですよね?神を信じるこの世界の人間達が反逆する可能性は限りなく低い。神が何かしらの悪行、人間に不利な事をしようとした。それに抗った果てに反逆者となった。それならば全てに辻褄が合います。神―――――エヒトは人間の敵という事でしょうか・・・

とは言え、全てが憶測となるので判断が難しすぎます。確信に至った時にお二人にお話ししましょう

 

「ふぅ」と一息入れたと同時にバチイッと音が響き、ハジメの手から煙が噴き上がる。悪態を吐きつつ、神水を飲む事で回復

 

――――オォォオオオオオオ!!

 

その直後、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡り、声の主が姿を現した

 

「まぁ、ベタと言えばベタだな」

 

「お約束すぎて呆れちゃうわ」

 

壁を壊しつつ出てくる二体の魔物は、肌が暗緑色の一つ目巨人サイクロプスだ。手には巨大な大剣を持っており、三人を睨付け―――――――――

 

ドパンッ!

ドパンッ!

 

「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ」

 

「登場シーンを待つ程、甘くは無いわよ」

 

無情にも二体のサイクロプスは、ハジメと皐月に撃たれて頭部は粉砕。意気揚々?と出たのにも関わらず、あっという間にやられた姿は悲しいものだ。深月の方も容赦無く、頭部を粉砕され死亡したサイクロプス達の心臓部に黒刀を突き刺していたのだ

 

「この巨体が再び動くと面倒ですので」

 

是非も無い。サイクロプス達を解体して魔石を取り出したハジメと皐月は、窪みがあった場所へ魔石を持って行きはめ込む。パキャンという何かが割れるような音が響き、魔力によって周囲の壁が発光し始めた。発光も収まり、警戒しながら扉を開いたハジメと皐月

深月はどうしているか?清潔にて血抜き作業中。勿論、二人に注意を向けているので作業効率は通常よりも遅い

ハジメと皐月は中に入る為、扉が閉まらない様に固定に取り掛かっていると

 

「・・・だれ?」

 

弱々しい少女の声が聞こえ。ビクリッとしてハジメと皐月は慌てて部屋の中央を凝視する。すると、部屋の中央部に置かれた巨大な立方体の石から発せられたのだ。その石から生えるそれがユラユラと動き出し、差し込んだ光がその正体を照らす

 

「人・・・なのか?」

 

「人・・・?じゃないわね貴女」

 

手は石に拘束され、上半身だけを立方体の外に出ていた。長い金髪、その隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗き、年の頃は十二~三歳位だろう。大分やつれているが、それでも美しい容姿をしていることが良く分かる

流石に予想外だったハジメと皐月は硬直し、少女も二人をジッと見つめていた。ゆっくり深呼吸した二人は、決然とした表情で告げた

 

「「すみません。間違えました」」

 

 

 

 

 




深月「お嬢様とハジメさんの無茶に心配で心配で・・・」
布団「強くならないと駄目だから」
深月「私が無双をすれば良いのです!」
布団「お嬢様自身が力を欲しているから無理だよ」
深月「あぁ・・・心配です。大丈夫でしょうか・・・・・」
布団「ここでどうこうしても仕方が無いよ」
深月「諦めも肝心という事ですね・・・そうしましょう」
布団「そろそろお別れの時間だね」
深月「感想、評価。どうぞ宜しくお願い致します」
布団「迷宮終わった辺りでアンケートするから宜しくね?」
深月「えっ?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな仲間とメイドの意味不明技能(今更感

布団「正月に向け準備をしている作者です」
深月「お正月ですか?普通はクリスマスなので――――」
布団「リア充は爆発してしまえばいいんだあああああ!」
深月「作者もリア充しているではありませんか。妄想の中で」
布団「  ゲハァッ!」
深月「目標通り、お正月までに迷宮編が終わるのでしょうか・・・」
布団「ゲームほっぽりだして書いてるんです。赦して頂戴」
深月「R-18書きませんか?」
布団「作者の文才見てるでしょ?そんな高度なもの書けませんよメイドさん」
深月「私とお嬢様の〇〇〇(ピー)を書いても良いのですよ?」
布団「そんなもしも話しは無いですよ」
深月「チッ」
布団「舌打ちしないで!?」
深月「ゴホン。前書きもこの辺りに致しましょう。それでは始まります。ごゆるりとどうぞ」




―追伸―
読者様のメッセージから一文を修正いたしました





~皐月side~

 

「「すみません、間違えました」」

 

「ま、待って!・・・お願い!助けて!」

 

「嫌です」

 

「拒否します」

 

私とハジメは、触らぬ神に祟りなしという事でさっさとこの場を離れようとしたよ?すると懇願してこちらの情に訴えかけてくるとは。・・・だがしかし!私達にとってはどうでもいいのよ。さっさとドアを閉めよう!ハジメもそうしてるし♪

 

「ど、どうして・・・何でもする・・・だから・・・」

 

「何でもするですって?―――――――だけど断るわ!」

 

「皐月と同意見だな。あのな?こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されている様な奴を解放するわけないだろう?絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし・・・脱出には役立ちそうもない。という訳でさようなら」

 

ハジメの言は正論だ。以前の二人ならば助けていただろう。・・・だが、この迷宮の地下深くに封印された存在は、厄ネタ以外に他ならない。損得勘定で損の割合が大きいとの事だ。よって無慈悲にも扉は徐々に閉められて行く

 

「ちがう!ケホッ・・私、悪くない!・・・待って!私・・・裏切られただけ!

 

閉められて行く扉は止まり、僅かに隙間が空いている程度だった。それでも未だ開いている。十秒、二十秒と過ぎ、やがて扉は再び開いた。そこには、苦虫を大量に噛み潰した表情のハジメと皐月が扉を全開にして立っていた

 

「裏切られたと言ったな?だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

 

「封印するというなら、それ相応の理由がある筈よ。それをさっさと話しなさい」

 

二人が戻ってきた事に呆然とする少女。沈黙が続くので皐月はハジメを連れて踵を返す。少女は再起動した様に慌てふためき、封印された理由を語り始めた

 

「私、先祖返りの吸血鬼ですごい力持ってる。だから国の皆のために頑張った。でも・・家臣の皆がお前はもう必要無いって・・・おじ様が、これからは自分が王だって・・・私はそれでもよかった。でも、私にすごい力あるから危険だって・・・殺せないから封印するって言ってた。それで、ここに・・・」

 

「貴方は、どっかの国の王族?」

 

「・・・(コクコク)」

 

「殺せないってなんだ?」

 

「勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

 

「・・・そ、そいつは凄まじいな。・・・すごい力ってそれか?」

 

「これもだけど・・・魔力、直接操れる。陣もいらない」

 

へぇ、魔法適正が無い私とハジメでもこの子が反則級って理解出来たわ。魔方陣を書く暇も与えず、バカスカと撃てるから勝負にならない。・・・そしてほぼ不死属性というのが大きいし、深月並みのチート属性ね

 

「たすけて・・・」

 

ポツリと女の子が懇願し、ハジメが一人で悩む。皐月はハジメと少女の二人をジッと眺め

 

「・・・良いわ。助けてあげる」

 

皐月の意外な提案にちょっとだけ驚いているハジメ

 

「ハジメ、確かに損が大きいかもしれないわ。でも、連れて行かないと思うと・・・こう・・・ぞわぞわするのよ」

 

「・・・いつもの勘か?」

 

「だと・・・思うわ」

 

ハジメは「はぁ~」とため息を吐き頭をガシガシと掻き、立方体に手を置いた。それを察して皐月も手を置く

これから何をするのか、その意味に気が付いた少女は大きく目を見開く。二人は錬成を使い形を変えて行く。魔力の通りは悪いが、二人で支え合う様に錬成しているので負担は少ない。それでも膨大な魔力をつぎ込んで行く二人

今まで以上に使う膨大な魔力に脂汗を流し始め、徐々に徐々にと少女の手足を拘束する枷を解き―――――――少女を立方体から出す事に成功した。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、一般の人から見れば、神秘性を感じさせるほど美しいと思う筈だ。二人は座り込み襲い来る激しい倦怠感に神水を使い魔力を回復しようとすると、弱々しく力のない手が震えながら二人の手を握った

 

「・・・ありがとう」

 

小さいが、はっきりと少女は告げた

その言葉を贈られた時の心情をどう表現すればいいのか、二人には分からなかった。しかし、それは悪い気はしなかった。むしろ心が温かくなり、少女のこれまでの事を聞いていると

 

「お嬢様、ハジメさん。下処理は済みました。そして初めまして名も知れぬ方」

 

深月はつい今し方下処理を済ませて、二人に合流したのだ。そして三人共が名前について聞いていなかった事に気が付き互いに自己紹介をする

 

「そういや自己紹介が未だだったな。俺の名前は南雲ハジメだ」

 

「私は高坂皐月。ハジメと結婚前提のお付き合いをしているわ」

 

「私は神楽深月と申します。お嬢様の専属メイドです」

 

少女は三人の名前を何度も呟き、大事なものを内に刻み込んだ。そして少女は三人にお願いをする

 

「・・・名前、付けて」

 

「は?付けるって何だ?まさか忘れたとか?」

 

「あ、・・・あぁ~そういう事ね。」

 

私の時と同じですね――――――ハジメさん。この方は新しい自分に生まれ変りたいという事ですよ」

 

「成る程な。以前の自分を捨てて新しい自分となるか。強制的な俺の時とは違って、自分からって所が唯一の違いだな」

 

「そうだな・・・"ユエ"なんてどうだ?ネーミングセンス無いから気に入らないなら別のを考えるが」

 

「ユエ?」

 

「ユエって言うのは、私達の故郷だと"月"を意味するの」

 

「最初この部屋に入った時に、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな・・・どうだ?」

 

女の子が瞬きし、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせていた

 

「・・・んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「おう、取り敢えずだ・・・」

 

「?」

 

「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあ悪いし、何より皐月の以外の裸は極力見たくないからな」

 

「・・・」

 

ハジメは自身の外套を脱ぎユエへと渡す。ユエ本人は自身を見下ろし一瞬で真っ赤になると、ハジメの外套をギュッと抱き寄せ上目遣いでポツリと呟いた

 

「ハジメのエッチ」

 

「だ~から。皐月の裸以外は極力見たくねえって言ってるだろ」

 

「でも見た事は事実」

 

「それは不可抗力よ」

 

「でも見ら―――――」

 

「ふ・か・こ・う・り・ょ・く。イイネ?」

 

「は、はい・・・」

 

皐月の圧に後退るユエは、強制的に納得させられてしまった

 

「互いの紹介も終わりましたね。それでは皆様、壁際へと移動して下さい」

 

「「「え?・・・あ、はい」」」

 

取り敢えず移動する三人―――――深月は黒刀を抜き待機した事でハジメと皐月は神水を急ぎ飲む、と同時に天井が崩壊。落ちてきた二体の魔物は、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針があり、サソリに似た魔物であると判断した

魔物から伝わる強者の気配に深月を除く三人は額から汗が流れるが、二人はドンナーで片方のサソリを撃つと

 

ガガィン!

 

「「なぁ!?」」

 

驚愕、サソリの甲殻はドンナーの攻撃が効かなかったのだ。ヘイトは前に居た深月ではなく、後方の三人に切り替わった。サソリの尻尾から噴射された紫色の液体を避ける為、ハジメはユエを背負い、皐月はドンナーで本体を撃ちながら縮地でその場を離れる。着弾した紫の液体は音を立てて瞬く間に床を溶かしていった

 

「溶けているって事は・・・溶解液!?」

 

「皐月にヘイトが向いてるぞ!」

 

「分かってる―――――わ!」

 

皐月へと向けられていた尻尾は突如膨らみ、凄まじい速度で細長い針を撃ち出してきたのだ。驚きつつも直感を駆使して、ドンナーと風爪で防ぎきった。ハジメは皐月をサポートする様にサソリの背後から手榴弾を投げ、それを確認した皐月はドンナーを撃ちつつ後退。そして爆発する手榴弾から泥の様な物が飛び散りサソリに付着した

焼夷手榴弾に似た代物で、タールの階層で手に入れたフラム鉱石を利用して、摂氏三千度の付着する炎を撒き散らすそれに、サソリは大暴れする。その間に皐月とハジメはリロードを行う

サソリは大層怒っており、ハジメにヘイトを向けて突進。巨大な弾丸と思わせる程早く、硬いそれは壁にぶつかり階層を大きく揺らし二人を攻撃させる隙を生じた。それに合わせ二人は攻撃しようとドンナーを構えた瞬間

 

「キィィィィィイイ!!」

 

サソリが巨大な咆哮上げた事により、全身を悪寒が駆け巡った二人は飛び退こうとしたが遅かった。絶叫に近い咆哮が響き渡ると同時に、地面が膨らんで円錐状の棘がハジメへと突き出された

 

「クソッタレ!」

 

「危ないじゃない!私のハジメになにするのよ!」

 

ハジメは空中で無数の棘を全て捌ききる事は出来無い。横から皐月のドンナーが火を噴き、棘を粉砕する事で難を乗り切れたがそれは囮。本命は皐月の方で、尻尾がそちらへと向いている。皐月は、ハジメの方へと突き出されている棘を迎撃しており気が付いていなかった

 

「皐月避けろ!」

 

「何っやば―――――――」

 

もう少しで噴射されるそれ。しかし噴射される事無く、歪み落ちた

 

「お嬢様を殺せるとお思いですか?ですがそれは叶えられません。何故なら、この場には私が居ますので」

 

チンッと音を立て納刀。何故離れた場所に居る深月がそう言ったのか――――――答えは斬撃を飛ばしたからである

 

「ギィィィィィイイイイイイイイ!?」

 

噴射される寸前の物は全てサソリの背中部分に落ちた。溶解液にて少しばかり溶けた甲殻は脆く、針が突き刺さる

冷や汗を掻いた皐月と、無事だった事に安堵するハジメ。二人は思い出したかの様に深月が対処していたもう一体の方へ目を向けると―――――――ダルマにされていた

 

「もう一体は無力化も出来ましたので、残るは貴方だけですね」

 

ゆっくりと歩きながら近づく深月に向けて、サソリは四本のハサミを同時に切りつける様に繰り出した。地面に激突した爪は、床を砕き土煙を立ち上らせ視界全てを包み込む。だがここでサソリは自身の違和感に気が付き、ハサミを目の前へと戻すと一つが切断されていた。そして遅れて到達したであろう痛みに後退ろうと――――――

 

「所詮はサソリ。ハサミが邪魔なら減らせば何も問題はありませんよね?」

 

深月の声が響くと同時に、二本のハサミも切断された

サソリは恐怖した。いち早くこの場から離脱する為に反転する間も無くそのまま後退しようとしたが、一歩踏み出した足に地面を踏みしめる感覚は無く転倒した。直後に残されたハサミが切断された。見えない恐怖に足をばたばたと上下して暴れるも―――――――一つ、一つ、また一つと感覚が無くなって行き、同胞と同じダルマと化した

 

「「「     」」」

 

この一方的な蹂躙の光景には、三人共が口を大きく開けて呆然とする。深月は「ふぅ・・・」と一息入れており、いち早く回復したのはハジメだった

 

「ハッ!?深月が規格外なのは分かっていたんだが・・・どうやって馬鹿硬い甲殻を切ったんだ」

 

「そ、そうよね!私達のドンナーでも少ししか怯まなかったあのサソリをどうやって!?」

 

「(コクコク)」

 

矢継ぎ早に深月へと問うハジメと皐月、二人と同じ様に首を立てに振るユエ

 

「答えは食事の時で宜しいですか?このサソリ擬きも下処理しておきたいので」

 

「「はい。待っています」」

 

「!?」

 

二人の変わり身の早さに驚くユエ。そんな三人を余所にテキパキと血抜きの下処理を行う深月。気配感知にて魔物が居ないのを確認し、サイクロプスの時よりも早く処理を済ませたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

おや、私の出番ですか?もう少しお嬢様sideを書いて欲しい所でしたが致し方がありませんね

部屋の前へと置いていたサイクロプスのお肉を中に入れて・・・私の最大のお仕事、ご飯の時間です!悪い事を言ってしまうと、お二人の料理は唯々焼くだけですので・・・皆様の予想通りお察しです。血抜きをするか否かで味が激変してしまいますからね。一度舐めてみましたが、そのままではとても使えた物ではありませんでしたし・・・

そういえば食事について説明していませんでしたね!実はあれらの料理はほぼ魔物だけの物です。以前説明したドロドロの薄黄色いスープですが、あれはトカゲの目玉を丸々使ったスープなのですよ?目玉は栄養たっぷりですからね

では、今回も気合いを入れて美味しく作りましょう!――――――ふと気が付いたのですが、吸血鬼のユエさんの食事はどうしましょうか。・・・ふむふむ、食べる事は出来ると。でも魔物肉は食べたくは無いと。・・・私が調理した物なら大丈夫ですよ?毒となる部分は清潔にて取り除いていますので

さて、了承も得ましたので今日も頑張ります!

 

サソリとサイクロプスの素材を使い調理して行く深月。ハジメ達三人は、消耗品を補充しながらお互いのことを話し合い、それを聞き拾う深月

 

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

 

「・・・マナー違反」

 

「ハジメ。女性に対して年齢と体重はマナー違反よ?」

 

皐月とユエがジト目でハジメを睨付ける。どの世界においても女性のタブーは決まっているのだ

 

しかし吸血鬼ですか。三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていた筈ですから興味があるのは分かりますよ?

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

 

「私が特別。"再生"で歳もとらない・・・」

 

そして細かく語られて行くユエの生い立ち

 

ユエさんの話では、先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角とされ王位に就いた・・・ですか。そして魔法の才能はピカイチで、全属性適応かつ強大な魔法もほぼノータイムで撃てて、不死身。叔父から"化け物"扱いされて、殺しきれないからこの地下に封印。そして自動再生は魔力に依存していて、魔力が無くなれば殺す事も出来ると。・・・最悪の場合は、敵に回るという事でしょうか。その際は魔力が尽きるまで殺し尽くせば問題無いだけですので私次第ですね

しかしながら全てを鵜呑みには出来ませんね。封印される理由としては良いかもしれませんが、海にドボンする方が確実です。死んだら死んだで魚の餌にもなりますし。・・・そうしなかったのは切羽詰まった事態、ユエさんの体に価値が有ると誰かが思ったのでしょうね。大切だからと隔離をしたとしても何処からか噂が広まる。ですが"化け物"として処理すれば周囲も殺したと思うでしょう

ここで殺すのが良いと思うのですが、お嬢様の提案なので私はそれに従うまでです。お嬢様の幸せこそが、私の全てですから―――――――――――と、こんな暗い事は思わずにしっかりと料理しなければ!

 

最悪の考えが深月の頭を埋め尽くすが、それを振り払い調理へと戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

「大変お待たせ致しました」

 

深月が運んで来た料理は、ハンバーグにサラダチキンを裂いた様な肉―――――恐らく、ハンバーグがサイクロプスで、サラダチキンみたいなのがサソリ擬きね

 

「今回はこれでお食べ下さい。お嬢様とユエさんはこちらのフォークを」

 

深月がハジメに手渡してきたそれは、とても馴染み深い物

 

「これって・・・箸か?」

 

「深月は錬成使えないよね?」

 

「これはトレントから採取した木材を使用した手作りです。長さと太さ共にお二人に合っていると思います。使い心地は如何ですか?本当は食器等も作りたかったのですが、持ち運びには困りますので。お箸は私のポケットに入れたら大丈夫です♪」

 

「あ、あぁ。・・・有り難く使わせてもらう」

 

まぁ、私は利き手じゃないから持てないんだけどね・・・

 

「ん、美味しい」

 

「私以外の者が魔物肉を調理する事は出来ませんのでご注意して下さいね?」

 

「わかった」

 

ユエも深月の料理が気に入ったのは上々ね。では私もハンバーグを一口

 

「美味しい・・・美味しいよぉ。私の体、深月の料理が無いと生きていけないようにされちゃった」

 

「焼いただけの魔物肉が苦痛以外の何物でもないな」

 

「お嬢様達の胃袋を掴むのもメイドの勤めで御座います」

 

「深月の料理は美味しい。だけど血を飲みたい・・・ハジメ・・・良い?」

 

おぉっとユエ?私に許可無く頂こうとするのは駄目よ!

 

「血を飲んで全快するなら良―――――」

 

「ではこちらをどうぞ」

 

ハジメが返事をする前に、深月が横から試験管の容器を差し出したわね。展開から分かるけど、あれって深月の血が入ったやつね。流石深月――――――流深ね♪

 

「・・・ん」コクコク

 

少しだけ間を空けた返事を返すユエに、皐月は確信を持った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつはハジメにホの字だと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深月もそれに気付いており、起こるであろう展開を予想して試験管の容器に二本だけストックを作ったのだ。そして今し方一本使用したので、残り一本となったのだ

 

「ユエ。貴女が吸血鬼で、血を吸う方が良いと理解しているわ。だけどね?ハジメの血を吸う時は非常事態で、近場に私や深月が居ない時だけよ。それだけは守ってね?」

 

「ん。分かった」

 

皐月の約束に了承するユエ。そんな中、ふと疑問に思っていたハジメはユエに尋ねた

 

「俺達の世界―――――ラノベ知識でいう所の吸血鬼は、血の味について色々と言っていたんだがユエもそうなのか?」

 

「深月の血は美味しい。濃厚だけどさっぱりした味わいだった」

 

「・・・俺の血も飲んでみるか?」

 

「良いの?」

 

「あぁ良―――――」

 

「私の血で我慢してね?」

 

「皐月?俺は別にだいzy――――――」

 

「イイネ?」

 

「「はい・・・」」

 

皐月の指を噛んでチウチウと血を吸うユエ

 

「皐月の血は熟成された味だった」

 

「そんじゃあ俺の血だな。・・・大丈夫だって皐月、安心しろよ。なにも直接って訳じゃ無え――――ちゃんと深月と同じ様に試験管に入れたやつを飲ませるだけだからよ」

 

「まぁそれなら良いわ」

 

「・・・ハジメの血も皐月と似た味で、一番美味しかったのは深月だった」

 

「「ステータスがトンデモだからなぁ~」」

 

「酷くありませんか!?お嬢様のお力と成るべく修行したのですよ!」

 

解せぬと言いたげにムッとした表情にジト目で睨む深月

 

「まぁユエについてはここら辺りで良いとして、深月はどうやってあのサソリを切ったんだ?甲殻はもの凄く硬い鉱石で出来た物だったんだぞ?」

 

シュタル鉱石

サソリの甲殻は鉱石で出来ており、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な代物だった

切断されたハサミを調べると、鉱石鑑定が出来たので硬い原因は理解出来たのだ。それと同時に、深月が切断した事実が疑問だった

 

「簡単です。関節部を切断しただけですから」

 

「流石深月・・・さす深ね」

 

「あの素早い攻撃を見切って切断とかマジかよ」

 

「規格外・・・」

 

「いずれ皆さんも出来る筈です!」

 

深月がどうやってサソリをダルマにしたのかようやく理解出来たわ。硬い装甲の可動部は僅かな隙間か、柔らかくないと動かす事も出来無いし・・・切断したのは深月だからという事にしておきましょう

 

メイドに常識は当てはまらない。もしかしたら、地球に居た時点で人間という枠組みから外されていたとしても不思議では無いだろう

 

「さてと、ここの部屋は魔物が出てこないからステータスを確認しましょう」

 

「深月の化け具合を見るのにも丁度良いしな」

 

「・・・深月はこの中で最強?」

 

「強くなければ守る事すら出来ませんからね」

 

ハジメ、皐月、深月の三人はステータスを確認すると

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:56

天職:錬成師

筋力:1300

体力:1500

耐性:1100

敏捷:1500

魔力:980

魔耐:980

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+拡散] 夜目 遠見 気配感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 金剛 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:56

天職:錬成師

筋力:1150

体力:1350

耐性:1100

敏捷:1500

魔力:1050

魔耐:1050

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+拡散] 夜目 遠見 直感 気配感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 金剛 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:65

天職:メイド

筋力:3400

体力:4300

耐性:2600

敏捷:4600

魔力:3000

魔耐:2600

技能:生活魔法[+完全清潔][+清潔操作][+清潔鑑定] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地[+無音加速] 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷 天歩[+空力][+豪脚] 幻歩[+幻影][+認識移動] 風爪 夜目 遠見 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮] 胃酸強化 直感 状態異常完全無効 金剛 威圧 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 心眼[+見極め][+観察眼] 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 忠誠補正 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

深月のステータスを見た三人はため息を吐く

 

「これはあれだ・・・参考にならないやつだ」

 

「ステータスの上昇率おかしいよ・・・」

 

「 (唖然)」

 

ちゃっかりと新たに追加されている技能に派生技能といったオンパレード、耐性は進化して状態異常無効となっている

 

「まぁ~た意味分からん技能が・・・」

 

「忠誠補正ってぇ・・・」

 

「・・・忠誠心の底上げ?」

 

「「上限の深月に限ってそれは無い」」

 

四人共考えるが、何一つ思い浮かばなかった

実はこの忠誠補助というのはレベルアップ時のステータス上昇のプラス補正が掛かる技能だ。だがこれには制限が有る。側に居る忠誠対象を守る事でこの補正の恩恵があるのだ。何故最初に存在しなかったのか―――――忠誠心により限界以上のステータス上昇が数回と普通の上昇が数回あったので、この技能を獲得出来たのだ

効果もご覧の通り――――――深月一人で倒した際のステータス上昇値が目に見える程の物では無い。トカゲ達の居た階層で倒した時の事を思い出してくれれば分かるだろう

 

「分からないのは仕方が無い。追々分かるかもしれないからその時まで放置だ」

 

「結論、深月に常識はあてはまらない。以上!」

 

「・・深月強い」

 

ハジメ達に新たな仲間、ホの字のユエが加わった。ハジメの修羅場が不可避となった

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさんがどんどんと強くなっていきますねぇ」
深月「そうですか?」
布団「ま、まぁ仕方が無いとしよう。・・・うん、そうしよう」
深月「作者さん」
布団「はい?」
深月「私にクリスマスプレゼントはありますか?」
布団「お嬢様が〇られそうなので無しです」
深月「ではお嬢様へのクリスマスプレゼントはどうでしょう。内容はメイド――――――」
布団「却下」
深月「酷くないですか?」
布団「初めてはハジメ君でしょうに。"はじめ"だけに」
深月「さて皆さんこの様な後書きは終わりましょう」
布団「えっ、無視?」
深月「感想、評価。どうぞ宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドたる者、主のピンチを救うのです

布団「さぁ、クリスマスプレゼントだ」
深月「作者さんは如何様に過ごされるご予定ですか?」
布団「通院だぁ・・・」
深月「それはまたお気の毒ですね」
布団「湿ったい話しは止めだああああ!リア充爆発してしまえ!」
深月「そこは・・・祝福してあげましょう」
布団「エンダアアアアアアアア!」
深月「では、読者様。お体に気を付けて、ごゆるりとどうぞ」


~ハジメside~

 

「だぁー、ちくしょぉおおー!」

 

「しつこい!ウザい!どんな物量作戦よ!!」

 

「・・・ハジメ、皐月、ファイト・・・」

 

「「ユエは気楽すぎ!」」

 

俺達は草むらを掻き分けながら必死に逃げている。何故かって?

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

数え切れない程の魔物達に追いかけられているからだよ。クソッタレ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数時間前に遡る――――――

ハジメ達が攻略を再開し、序盤はユエの魔法による殲滅で楽々と攻略できたのだ。しかし、この階層は一味違っていたのだ。ティラノサウルスに似た爬虫類が、頭に花を生やした状態で襲いかかって来た。最初はユエの魔法、"緋槍"により体を溶かして絶命させた

次々と襲い掛かる魔物達の共通点、頭に花を生やしているという事だった。いち早くそれに気付いた皐月は、ドンナーで花だけを撃ち抜いて散らす。一瞬だけ痙攣をした魔物はハジメ達を襲わず、憎らしげに散った花をこれでもかという程踏みつけていたのだ。そして、容赦なくドンナーを撃って頭部を粉砕し終えたハジメ達は仮説を立てた

 

「もしかしなくても、こいつらって操られていたのか?」

 

「だとしたら脅威ね。私達が大量破壊兵器を持っていないこの現状だと数の暴力が天敵ね」

 

「ユエの魔法も限度が有るからな」

 

「私は大丈夫」

 

「そうじゃねえよ。もしも、この規模の軍団を何度も差し向けられたら直ぐにガス欠になるだろうが」

 

「これは逃げ一択ね」

 

「そういや深月は大丈夫か?」

 

ハジメが周囲を見たが深月は居らず、どうやらはぐれてしまった?

 

「は!?深月の奴が居ねえぞ!」

 

「うぇっ!?もしかしてはぐれた!?」

 

「深月ピンチ?」

 

ユエの一言に皆が考え――――――

 

「「「深月がピンチになるとか想像つかない・・・」」」

 

どうにかして合流するだろうと判断し、先を急ぐ事にした

そして時は戻り、沢山の魔物達から追いかけ回されるハジメ達である

 

「何処までも何処までも追いかけてきやがる!」

 

「一体何時まで逃げれば良いのよ!」

 

「頑張れ頑張れ」

 

「「そんな事言われんでも分かるわ!」」

 

どんどん増える恐竜擬き達から必死に逃げ回る三人。そして狭まり始める通路の先は壁

 

「クソッ!先が行き止まりじゃねえか!!」

 

「ユエをこっちに投げて。ハジメが先行して穴を開けて!」

 

「了解!」

 

返事と同時に上へとユエを放り上げるハジメ。一瞬だけギョッと目を見開いたユエを皐月は背負う形でキャッチ。そのままスピードを落とさずに駆け抜けて行く

 

「皐月そのまま駆け抜けろ!」

 

先行して壁に穴を開けたハジメはドンナーで追いかけてくる魔物を狙撃する。そして皐月達が穴を通り抜けたのと同時に錬成で穴を塞ぎ壁を作る。壁は分厚く錬成したので壊れる事が無いか確認し、ドッと疲れが押し寄せため息を吐く

 

「ハァ、ハァ。これで一安心だな」

 

「そうね・・・」

 

「ハジメ。皐月。お疲れ様」

 

「「自分で走れよ!」」

 

「・・・無慈悲」

 

ユエは、シュンと落ち込むがそんな事知ったことじゃない二人。全力疾走で逃走していたので仕方が無いだろう。一息入れつつハジメはこの先をどうするかを考える

 

本当にどうしたもんか。皐月の言う通り物量作戦こそ俺達の天敵だからなぁ・・・こりゃあ本格的に範囲制圧武器を作らないとヤバイかもな。そして俺の仮説が正しいとすれば何処かに植物系の魔物が居る筈だ

 

「やっぱり大元を叩かないと駄目かしらね」

 

「だな」

 

「探す?」

 

「下層へと続く階段が有ればそっちを優先する。だが、道中に原因があればそれを叩き潰す!」

 

「じゃあ、原点に振り返ってのローラー作戦という事ね。深月が居れば楽なのに・・・」

 

「それを言うなよ皐月。・・・余計に滅入る」

 

三人は魔物に見つからない様に岩陰に隠れてやり過ごしながら攻略する。そして徐々に広がる通路は、一段と広い場所へと繋がっていた。察した三人は警戒を上げてゆっくりとその場へと進んで行く

 

「こりゃあ階段前に陣取っていると判断しても良いな」

 

「環境変化にも注意しないといけないわね。・・・不可思議な現象一つにも細心の注意をしないとね」

 

「分かった」

 

「だな。・・・出るぞ」

 

広がった場所へ出た三人に待っていた洗礼。全方位から緑色のピンポン玉?の様な代物が無数に降り注ぐ。ハジメと皐月とユエは背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃する

ハジメと皐月は前方の玉を錬成で作った壁で防ぎ、頭上から落ちてくる物は衝撃波にて弾き飛ばす。そして、玉は脆く、壁にぶつかっただけでも割れる程度だった。ユエの方も問題なく、速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃している

 

「ユエ、恐らく本体の攻撃だ。何処に居るか分かるか?」

 

「・・・」

 

「ユエどうし―――――――散開ッ!」

 

皐月は、いち早く反応してユエから飛び退く。ハジメも一瞬だけ戸惑ったが、ユエが自身に手を向けようとしており瞬時に理解して飛び退く。それと同時にハジメの立っていた場所が抉れる

 

「ハジメ・・・皐月・・・逃げて!」

 

二人に容赦無く襲い掛かる風の刃。そしてユエの頭には真っ赤な薔薇が咲いていた

 

「クソッ、さっきの緑玉か!?」

 

「原因は玉その物じゃなくて中に入っていた何かって事ね」

 

「・・・うぅ」

 

「どうしてあの恐竜擬きがあの花を踏んでいたのか理解したわ」

 

「本人の意識を残したまま操り人形とか碌な奴じゃねえな!」

 

二人で花を散らそうとドンナーで狙いを定めても激しく動く事で狙いが定まらず、下手をすれば頭部を撃ち抜きかねないのだ。近づこうとすれば、ユエは自身の手を頭に向ける。二人が近付こうとすれば容赦なく人質を殺すというメッセージだ

 

「・・・やってくれるじゃねぇか!」

 

「人質を取られるのがどれ程厄介なのかが理解出来るわね!」

 

攻めあぐねる二人を察したのか、奥の縦割れの暗がりから現れる者。アルラウネやドリアード等という人間の女と植物が融合したような魔物は、ハジメ達の前に現れた正しくそれだった

見た目は人間の女性なのだが、内面の醜さが溢れているかのように醜悪な顔をしていた。無数のツルが触手のようにウネウネと動き実に気味が悪く、ニタニタと笑っている

エセアルラウネに銃口を向けようとすると、ユエを盾に射線を妨害する

 

「・・・ごめんなさい」

 

「ちぃっ!」

 

「嬲り殺しにしようって魂胆って事かしら!」

 

苛立ちを募らせる二人を見て、更にニタニタを三日月の様な笑みを浮かべるエセアルラウネ。ひっくり返す事の出来無い現状だが、何事も例外は存在する

 

「それでは、プスッといきますよ?」

 

「「「えっ?」」」

 

ユエの頭の薔薇が落ちると同時にエセアルラウネも倒れ伏した。その背後に居た人物は皆が知るメイド―――――深月であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

いや・・・あのー、本当に申し訳御座いません。またしてもお嬢様とはぐれてしまいましたメイドです・・・

実はあの恐竜擬き達を倒していたら置いて行かれてしまったのです。・・・ちゃんと一匹残らず倒したのですよ?最初は群れが来ようともしっかりと倒されていたので全部討伐するのかと思っていたのです。お嬢様達は敵対する魔物達は殲滅していたので今回もそうだと思ったのですが、先入観とはいけませんね。殲滅し終えた後に後ろを振り返ると誰も居なかったのです

私は直ぐにお嬢様達の足跡を追って、全速力で追いかけたのです!勿論、当然の選択ですよ!追いかけている途中に出会う恐竜擬き達は全部首ちょんぱです♪追いかけて行く先にはハジメさんとお嬢様の声が聞こえましたので安堵したのですが、それがフラグでした。錬成でハジメさんが穴を開けて塞いでしまったのです。泣いて良いですか?ちょっと腹が立ちましたので八つ当たりとして袋のネズミでは無く恐竜擬き達を殺してしまった私は悪くないです―――――――多分

 

実はハジメ達を追っていた恐竜擬き達は花が生えておらず、生物の本能で深月から逃亡していたのだ。きっと恐竜擬き達は、この様な感じで逃げていたのだろう

擬き1「すんごく強い奴が近づいているぅ!?」

擬き2「逃げろおおおおお!」

擬き3「前方に何か居る!」

1・2「「無視して走れ!」」

――――――と。そして、ハジメによって穴は作られて歓喜した恐竜擬き達。直ぐに閉じられてしまった為に絶望。そして蹂躙されてしまったという事だ

 

話しを戻しましょう。私は八つ当たりを終えた後、違う道からお嬢様達を追いかけて走りました。途中で遭遇した蜘蛛さんは申し訳御座いませんでした。通り過ぎで足を一本拝借したのです。切断したのかですか?面倒だったので足を掴んでもいじゃいました♪

走りながら足の肉を一口・・・・・あまりにも不味かったので捨ててしまいましたよ。技能は恐らく糸か何かだろうと思い、指先から『糸よ出ろ』と念じたら出ました。これは良いですね!とても便利です♪

進む道の先から感じる気配は、お嬢様達の物でした。しかし何やら機嫌が宜しくない感じでしたので気配を溶け込ませて音を立てずに伺うと、薔薇の花を生やしたユエさんが居るではありませんか。側に居る魔物で理解出来ましたので、そのまま気配を溶け込ませた状態でスススッと近付いてプスッと針を一刺し。そして、すかさず夫婦剣の片方でユエさんに生えている薔薇の根っこ部分を一閃して完了です。針は特注ですよ?シュタル鉱石製の針は頑丈ですね♪後は直感に従い首筋をプスリとして麻痺させました。魔物だろうとも、人型ですから何となく分かるのですよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処を弄れば何処が壊れるという事が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして話は合流に戻りまして、私は何があったのか説明をし終えたのです

 

「・・・て事はあれか?俺達が追われていたと思っていた恐竜擬き達は深月から逃げてたって事か?」

 

「ハジメさんが穴を閉じてからは必死に私から逃げようともがいていたので・・・恐らくですが」

 

「そして道中の魔物を切って捨てて、合流を優先にして―――――――これと」

 

「直感に従ってプスッと致しました♪」

 

「私を操ってハジメと皐月を攻撃させた恨みはこの程度じゃない・・・」

 

ユエは現在進行形で、エセアルラウネの四肢を風の刃で切り落として徐々に焼き殺している

 

((ユエの恨みが尋常じゃない))

 

「駄目ですよユエさん。そのエセアルラウネは面倒な能力を持っているのでサクッと殺らないといけません!また操られたりしたらどうするのですか!」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「トドメは私が行います。耐性が無いユエさんは危険ですので―――――――――お嬢様とハジメさんが心を痛められたのにも関わらず、楽に死ねる幸せを噛みしめなさい

 

頭と心臓部に剣を突き刺し、首を切断した後に体を両断する深月。その様子を見ていた三人は

 

(((深月を怒らせちゃ駄目!絶対!!)))

 

この四人の中で一番腹を立てていたのは深月なのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

エセアルラウネの事件からどれだけ日が進んだのかな。こんな迷宮に籠っていたら経過日数なんて分からないわ。深月に聞いても分からないって言ってたし・・・閉鎖空間ってヤバイわね、本当に洒落にならないわ

あの教訓から私達は、深月とはぐれない様に下層へと降りて行ったわ。だってね?ローラー探索よりも遙かに楽なの!分かってくれるわよね?というより分かりなさい。――――――ゴホン。話しを戻して、遂に辿り付いた100層。どうして分かるのかですって?深月が教えてくれたのよ。表と裏では、魔物の強さが違いすぎるって言っていたからよ。正直言って終わりが見えてきたと感じたわ。だって、この先から強者の圧と言ったら良いのかしら?それがヒシヒシと伝わって来るのよ。という事で、私達は補給作業中なのよ

 

「三人共・・・いつもより慎重」

 

「うん?ああ、次で百層だからな。もしかしたら何かあるかもしれないと思ってな。一般に認識されている上の迷宮も百層だと言われていたから・・・まぁ念のためだ」

 

「違うわよハジメ。この先からは、ヒシヒシと威圧が感じられるからボス的な何かが居るのは間違い無いわ」

 

「お嬢様の言う通りです。今まで出会った魔物達よりも強大な力が感じられます」

 

「マジか」

 

「「マジよ(です)」」

 

ハジメは、いつも以上に張り詰めている深月を見て理解した。予想よりも強大な敵を予想し、倍近い弾薬を生成する事にした。因みに三人のステータスはこうなっている

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:80

天職:錬成師

筋力:2000

体力:2450

耐性:1800

敏捷:2750

魔力:1900

魔耐:1900

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 夜目 遠見 気配感知 魔力感知 熱源感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 金剛 威圧 念話 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:80

天職:錬成師

筋力:1950

体力:2350

耐性:1800

敏捷:2750

魔力:2100

魔耐:2100

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 夜目 遠見 直感 気配感知 魔力感知 熱源感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 金剛 威圧 念話 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:85

天職:メイド

筋力:5500

体力:6000

耐性:4300

敏捷:6500

魔力:5000

魔耐:5400

技能:生活魔法[+完全清潔][+清潔操作][+清潔鑑定] 熱量操作 気配遮断 高速思考 精神統一 身体強化 縮地[+無音加速] 硬化 気力制御 魔力制御 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 熱源感知[+特定感知] 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷 天歩[+空力][+豪脚] 幻歩[+幻影][+認識移動] 風爪 夜目 遠見 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮] 魔力糸[+伸縮自在][+硬度変更][+粘度変更] 胃酸強化 直感 状態異常完全無効 金剛 威圧 念話 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 心眼[+見極め][+観察眼] 極致[+剣裁][+拳闘][+体術] 限界突破 忠誠補正 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

深月の派生技能に関しては触れないでおこう

ステータスの上昇は目に見えて分かる通りである。しかしながら、新しい技能に関しては殆ど増えなくなっていたのだ。恐らく、レベルが上昇するにつれて技能が身につきにくくなっている仮説を立てた

十分な補給と休息を終えた一同は、下層へと続く階段を降りて行く。最初に目に映った広い空間は、無数の強大な柱に支えられた場所だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。制作者の美意識がこれでもかと盛り込まれている様な代物だった

見惚れていたが、ハッと我に返り周囲を警戒するハジメ達三人。深月はヒシヒシと感じる言い知れぬ圧に冷や汗を流していた。奧へ進むと、全長十メートルはある巨大な両開きの扉があった

 

「・・・これはまた凄いな。もしかして・・・」

 

「反逆者の住処だったのかしら?」

 

いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくともハジメの本能が警鐘を鳴らしていた。この先はマズイと

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

「・・・んっ!」

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

三人は一歩踏みだした所で変化が起きた。扉とハジメ達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。ハジメ達は忘れもしない魔方陣、転移のそれと同じだった。だが、その大きさは歴然で、眼前の魔法陣は三十メートル程の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている

 

「おいおい、なんだこの大きさは?マジでラスボスかよ。皐月と深月の勘は当たってたか」

 

「・・・大丈夫・・・私達なら負けない」

 

「それじゃあ開幕ブッパしましょうか」

 

皐月に慈悲は無い。対物ライフルのシュラーゲンを上部へと構え、ハジメとユエもそれに続き構える。魔方陣がより一層輝き、光が収まると――――――体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラが其処にいた

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

叫びを上げたヒュドラに一瞬動きが止まったハジメとユエ。その隙を見逃さず、赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き――――――

 

「はいはい、邪魔だから取り敢えず一つは死んでね」

 

ドガンッ!!

 

口を開き、何かをしようとした頭は粉砕されていた

 

「ッ―――助かったぜ皐月!」

 

「皐月ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

取り敢えず一つ!と内心ガッツポーズをした三人だった。しかし、白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫ぶと同時に、赤い紋様の入った頭は逆再生されたかの様に巻き戻り開いた口から火炎放射を放ってきたので散開する事で回避する

 

「回復持ちかよ!」

 

「はぁ!?ちょっと嘘でしょ!」

 

「・・・回復ずるい」

 

三人は柱を背にしながら念話で突破口を探る

 

(何よりも最初に白い奴から倒さない事にはどうする事も出来ねぇな)

 

(回復持ちが居るなら、盾役も居る筈よ!まずは盾役を見つけないと!)

 

(今度は俺が白に攻撃する)

 

(了解!ユエは普通の魔法で牽制、もしくは違う頭を潰して!)

 

(んっ!)

 

(深月は斬撃を飛ばしながら援護を――――――)

 

深月なら敵の攻撃を回避しながら傷を付けれるだろうと判断していたハジメ達だったが、一向に深月からの返事が返ってこない事に疑問に思い後ろのを見ると

 

(((嘘やん・・・)))

 

一人の人影と戦っており、深月が防戦一方状態だったのだ

 

(深月の返事が返ってこないって事は余裕が無いって事よ。このヒュドラ擬きは私達で倒す他無いわ!)

 

(だな。俺達が早く終わらせて深月の援護に入るぞ!)

 

正体不明と戦う深月の援護をする為に三人でヒュドラ擬きと戦う事となった

 

 

 

 

 

 




布団「最後の敵はヒュドラ擬きだけだと思った?残念!メイドさんに瞬殺される未来しか見えないのです!現在、メイドさんは手一杯なので後書きには出てこないのは仕方が無いよね!」
深月「と思っていましたか?」
布団「ナニィ!?」
深月「この後書きは時間が止まっているので誰でも参加出来るのですよ」
布団「もう滅茶苦茶だぁ!」
深月「もうすぐお正月です。作者さんなりのお年玉を期待しても宜しいですか?」
布団「またしてもか!そんなにお嬢様とイチャイチャを書いて欲しいのか!」
深月「頑張っている私のご褒美を―――――と」
布団「アンケートでもすれば良いと思うよ・・・」
深月「では早速実行に移しましょう!」
布団「内容はこちらで決めさせて頂きます」
深月「では、その様に――――――感想、評価。どうぞ宜しくお願い致します。投票もお願いしますね!」
布団「最後の堤防は読者だけなんだ・・・頼むぞぉおお!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは死闘を繰り広げます

布団「投稿だよー」
深月「今回も大分空きましたが・・・何かされていましたか?」
布団「リアルではお正月用のお飾りとお餅様を作っていました。そして素材の採取です」
深月「お餅ですか・・・食べ過ぎると太ってしまいますね」
布団「あんこ餅、すや餅!」
深月「お鍋に入れて食べるのも有りですね♪」
布団「ま、未だ・・・冷凍庫にすや餅ががががが」
深月「頑張って消費しましょう!」
布団「さて、前書きも此処までにして始めましょう!そして誤字報告はとても有り難いです!」
深月「それでは読者の皆様、ごゆるりとどうぞ」




~深月side~

 

転移魔方陣が前方に出現し、巨大な蛇が姿を現した事で戦闘を開始したお嬢様達。それに続いて私も参加しようとしたのですが、背後から重圧を感じ取り振り向くとドス黒いモヤに覆い尽くされた者がこちらを見ていたのです。その瞬間、私は駆け出し胸元へ一閃―――――――それは苦も無く防がれてしまいました。それと同時に体全体に鳴り響く警報に反応して地面にしゃがむと、頭上ぎりぎりを大剣が通り過ぎて髪の毛を少しばかり切られてしまいました

体勢が整っていない私の顎へつま先が襲い掛かって来ますが、バク転にて受け流して、その勢いで相手を蹴り上げましたが防がれてしまいました。この数手の手合いだけで理解しましたよ・・・この方は、私が今まで出会って来たどれよりも強者であると

 

深月は自身の技能をフル活用して相手に肉薄、剣術と体術を織り交ぜて相手の考えを纏まらせない連撃を繰り出す事で均衡を保つ。しかし、ステータスは相手が勝っているのだろう。大剣の攻撃を受け止めようとした深月は、直感に従い受け流す。それだけで深月の足下が少し陥没してしまったのだ

 

(受け流しただけでこれですか!?同程度の体格だというのにこれ程・・・ステータスは私よりも上を想定して動かなければいけませんね)

 

黒いモヤに覆われた人は、徐々に深月の動きの最適解を導きだし順応し始めた

 

(ッ!動きに隙が無くなり始めましたか・・・予想していたとは言え早すぎます。ですが未だです。もう少しの間だけでもこの均衡を保たねば!)

 

しかし、この均衡は呆気なく崩れてしまった。破壊力の凄まじい大剣の攻撃を幾度となく受け流していた夫婦剣は、持ち手の根元部分が砕けてしまったのだ。前方へと体重を乗せていた為に、少しだけ前屈みになる深月。この大きな隙を見逃す敵でも無く、がら空きの腹部へ強烈な蹴りを叩きつけられて柱の所まで吹き飛ばされてしまう

 

「ガハッ!」

 

衝撃を吸収する事も出来ず、打ち付けられた体に鞭を入れながら黒刀を抜き追撃の大剣の攻撃をギリギリの所で受け流す。横薙ぎの一閃を入れて壁際から脱出する深月。しかし、一度体勢が崩れて防御に回ってしまったが最後。相手は大剣を暴風の如く振り回しており、受け流して防ぐしか出来無い現状は最悪の一言に尽きる

 

(馬力が違いすぎます!単純な力にこれ程までの早さで振り回されると技術もへったくれもありません!唯一の救いは私しか狙っていないという点です。もしもお嬢様達の方へ向かってしまえば最後です)

 

内心で舌打ちをしつつ、一撃一撃を受け流す深月は少しずつ冷静さを取り戻し始める

 

(大丈夫、黒刀にヒビも入っていません。次の横薙ぎを切り上げ、返す刀で切りつけて仕切り直しです)

 

叩きつける様な攻撃を左へと受け流すと、回転しながら右側から大剣が襲い来る。全て深月の予測通りのシナリオだ

 

(これを切り上げて仕切り直しにしましょうか!)

 

剣先を大剣の下に滑り込ませ、流そうとした――――――――その瞬間に大剣が一瞬だけ輝き姿をかき消したのだ

 

「しまっ!?」

 

腕は振るわれ続け、剣先の下側に来た所で再び武器が現れる

大剣が現れると踏んでいた深月は黒刀を手放し、襲い来るであろう刃を飛び越えようとしていたが、現れた武器は円錐の槍だった。裏をかかれた深月の懐に横薙ぎの槍が直撃、柱を通り越して壁へと吹き飛ばされ完全に体勢が崩れてしまい起き上がる事すら出来無い。そして深月の心臓部へと槍を突き出して突撃する敵

 

「「「避けろ(て)深月!!」」」

 

丁度、ヒュドラを倒し終えたハジメ達の声が聞こえるとほぼ同時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

「食らえや白頭!」

 

「緋槍!」

 

白い紋様の頭を狙い撃つハジメとユエ。しかし、黄色い紋様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させ、淡く黄色に輝きハジメのレールガンもユエの緋槍も受け止めてしまった。だが、予想の範囲内だった

 

「黄色が盾役だ皐月!」

 

「取り敢えず怯みなさい!」

 

焼夷手榴弾を黄色の頭に投げ付ける。瞬間ダメージでは無く、持続的なダメージなら効果が有ると予測していた皐月の予想は正しく、所々が焼け焦げていた

 

「クルゥアン!」

 

すかさず白頭が黄頭を回復させるが。焼夷手榴弾の粘つきのあるタールの一部が白頭に付着し、苦痛に悲鳴を上げながら悶える。このチャンスを活かそうとハジメは念話で皐月とユエに合図を送ろうとした瞬間、ユエの絶叫が響き渡った

 

「いやぁああああ!!!」

 

「!?ユエ!」

 

「私がユエに行くわ!ヘイト取って!」

 

「ユエを頼んだ!」

 

縮地にてユエに近づこうとする皐月を狙おうとする赤頭と緑頭はハジメの援護射撃で撃ち落とされる。未だ絶叫を上げるユエに、歯噛みしながら一体何がと考える皐月は未だに攻撃で動いていない黒い文様の頭の事を思い出す

 

(そういう事ね・・・ハジメ!ユエは黒頭から何かしらのバッドステータスを付与されているわ!)

 

(任せろ!)

 

皐月はユエを抱えて柱の陰へと連れて行き、ハジメは黒頭を撃ち落とす。ハジメが黒頭を撃ち落としたと同時にユエの虚ろだった瞳に光が宿り始めた

 

「ユエ!しっかりしなさいユエ!」

 

「・・・皐月?」

 

「大丈夫?何をされたか理解出来る?」

 

「・・・よかった・・・見捨てられたと・・・また暗闇に一人で」

 

「はいはい。私達はユエを見捨てないから安心してね?」

 

ユエ曰く――――突然、強烈な不安感に襲われ気がつけばハジメ達に見捨てられて再び封印される光景が広がっていたという。そして、何も考えられなくなり恐怖に縛られて動けなくなったと

 

(皐月まだか!?そろそろキツいぞ!)

 

(ユエはもう大丈夫よ。ハジメが黒頭を撃ち落としたと同時に元に戻ったわ。恐らくだけど、恐慌状態に陥らせる最低の黒頭よ)

 

(ホントにバランス良すぎだろ。くそったれ!)

 

敵の厄介さに悪態を付くハジメと皐月。ユエはユエで不安な瞳を皐月に向けている

 

「行くわよユエ。ハジメを助けないと」

 

「・・・私」

 

皐月の裾を離すまいとギュッと掴んでいる。皐月は「ハァ」とため息を吐き、ユエの視線まで低くなってムニュっと頬をつまむ

 

「いい?ユエはもう私達の家族同然よ。そんな大切な存在を私達が蔑ろにするとでも本当に思っているの?約束したでしょ?私達の故郷に一緒に帰るって」

 

「んっ!」

 

「よしよし!それじゃあ一緒にハジメの援護をするわ。シュラーゲンを使うから援護は任せるわよ」

 

二人は一気に柱の陰を飛び出し、ハジメの援護に出る

 

「緋槍!砲皇!凍雨!」

 

矢継ぎ早に放たれる魔法が一斉にヒュドラを襲う。隙を狙われ死に体となった赤頭、青頭、緑頭の前に黄頭が出ようとするが、白頭の方をハジメが狙っていると黒頭が気付き恐慌魔法を放つ。ハジメの胸中に不安が湧き上がり、奈落に来たばかりの頃の苦痛と飢餓感が蘇ってくるが

 

「それがどうした!」

 

ハジメは皐月と耐えきり、一緒に乗り越えた過去。今更あの日々を味わった所で皐月が側に居る時点でどうという事は無く、黒頭をドンナーで撃ち落とす。次なる獲物はお前だと言わんばかりに白頭へと狙いを付けると黄色頭が射線に飛び込む

 

「おいおい。いつから白頭を狙っているのが俺だけだと思った?――――――――皐月今だ!」

 

「忘れてもらっちゃ困るわよ!」

 

声のした方を見るがもう遅い

 

狙い撃つ!

 

ドガンッ!!

 

発射の光景は正しく極太のレーザー兵器。ぎりぎり射線上に入った黄色頭は硬化でも使っていただろうが、シュラーゲンの前では無意味。易々と貫通して奧の白頭諸共吹き飛ばした。後に残ったのは、頭部が綺麗さっぱり消滅しドロッと融解したように白熱化する断面が見える二つの頭だった

 

「天灼!」

 

三つの頭の周囲に六つの放電する雷球が取り囲む様に空中を漂う。次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばして繋がり、その中央に巨大な雷球を作り出した

 

ズガガガガガガガガガッ!!

 

十秒以上続いた最上級魔法に為すすべもなく、三つの頭は断末魔の悲鳴を上げながら遂に消し炭となった。ハジメとユエは皐月に向けてサムズアップした。二人はュドラの僅かに残った胴体部分の残骸に背を向けユエの下へ行こうと歩みだそうとしたが、皐月はシュラーゲンの次弾を装填音と声に身構えた

 

「ラスボスが復活するのはお約束でしょ!」

 

「「ッ!」」

 

音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり、ハジメとユエを睥睨していた。思わず硬直する二人に向けて予備動作無しの極光が襲い掛かる

 

「やらせないわよ!」

 

先程と同じ様な極太レーザーが放たれる筈が、それは引き絞られた様に細いレーザーだった。しかし、ヒュドラの放った極光にひけを取らない位の威力だったが徐々に押され始めていた。ハジメはユエを抱きかかえ皐月の側へと駆け寄る。目に見て分かる程、魔力がゴリゴリと減っている皐月の様子にハジメは神水を飲み

 

ユエ、俺の血を吸え!

 

「んっ!」

 

ハジメを吸血し急速に魔力を回復させるユエ。ハジメは皐月の隣に立ち同じ様にシュラーゲンを構えて、皐月の様な細いレーザーをイメージ

 

「ユエの雷魔法を俺達のシュラーゲンに送ってくれ!」

 

「わかった!」

 

三人の協力攻撃。そして追加で放たれるハジメのレーザーは皐月のと交わる様に合わさり、ヒュドラの極光を押し返して貫通。ヒュドラの胴体に直撃したそれは熱量が凄まじく、頭と地面を融解させて全てを消し去った。二人のシュラーゲンは長時間のレーザーによって銃身が完全に融解してしまい使い物にならない状態となった

 

「やっ・・・たのか?」

 

「・・・やっとおわり?」

 

「つ・・・疲れた・・・」

 

どっと疲れが襲い立ち上がる事すら出来無い三人。だがもう一つの問題が残っている事を思い出す

 

「―――――――――未だだ!未だ深月の奴が残っている筈だ!」

 

私はハジメの一言で後ろを振り向くと、槍の横薙ぎによって壁際へと吹き飛ばされた深月だった。そして深月を追いかける様に突進する敵の動きがスローモーションの様に見えるも体は動かない

 

「「「避けろ(て)深月!!」」」

 

皆も体が動かず声だけが出るだけで、槍の切っ先が深月の胸へと突き立てられ―――――――――

 

ドォオオオオン!

 

敵が突進する衝撃波にて土煙が舞い上がり何も見えなくった

 

「み・・・づき・・・・・。うそよね?」

 

最悪の光景が頭を過ぎる。体勢が完全に崩れ、完全に無防備となったあの状態から生き残れないと理解していても分かりたくないと必死にその考えを否定する。徐々に晴れる土煙の先に見えたのは―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後少しで深月の胸に刺さる状態で固まっている敵の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

お嬢様の悲痛の声が聞こえます。申し訳御座いません・・・こうする他無かったのです

 

「深月生きてるよね?生きてるよね!?」

 

「生きていますよ、お嬢様。ですが、危険ですので近づかないで下さい」

 

ギリギリと敵が震えており、全く身動きが取れない状態だった。端から見れば敵が一時停止しているのでは無いか?と思う状態なのだ

答え合わせをしよう。何故この敵が動けないのか――――――それは深月の技能の一つ、魔力糸である。魔力によって作り出される糸は派生技能の伸縮自在、硬度変更、粘度変更という三つが存在し、これで受け止めたからである。普通に受け止めるだけでは不可能なのは皆まで言わなくとも分かる通りだ

 

私からも説明致しましょう。先ずは硬度変更と粘度変更にて戦いながら地面へと接着、上から踏んでも引っ付かない様に這わせて待機させておきます。そしてトドメの柱を通り越しての壁際へ飛ばされこの行為は柱へ幾重もの魔力糸を張り巡らせて地面へ垂らしておく為です。そして突進して柱の間を通る手前で伸縮自在と硬度変更と粘度変更を使用して、限界まで縮めて、硬くして、粘着力を高めた代物ですよ。蓑虫の糸に近い頑強さを持つ糸ですよ?しかも魔力糸なので透明なので目に見えない太さを作り出せるのです!

魔力感知で分かるのでは無いかと言いたい其処の皆様に説明しましょう。ヒュドラ擬きやお嬢様達のバカスカ撃たれる魔力の前に微々たるそれが感知できると思いますか?微々たる物よりも、大きい物に反応するのが常ですよ。要するに、お嬢様達の攻撃を隠れ蓑とさせて頂きました。私自身も体術に乗せて衝撃波も使用していたのでカモフラージュは完璧です。魔力の残滓は残りますので♪

 

「何時までも絡めておくの訳にもいきません。・・・もう終わらせましょう」

 

相手の首に掛かっている糸を極細のノコギリ状にして締め上げる深月。細かな刃が肉を切り裂いて首を切断した後、拘束を保ったまま地面へと落ちていた黒刀を拾い上げて心臓部へ一突きする事で絶命させた。張り詰めていた状況も無くなり、今まで我慢していた痛み等の本流が一気に押し寄せて吐き出される

 

「ゲホッ、ゴホゴホッ!」

 

口から吐血した深月は、奥歯に仕込んだ神水の容器を噛み砕き飲み込む事で傷を全回復させた。と同時に泣きながら胸へ飛び込んでくる皐月を危なげなく受け止める

 

「うわあああああああん。みち"ゅきぃいいいいいいいい!し"ん"た"か"と"お"も"った"のよ"おおおおおお!」

 

「あの敵は私が今まで出会ってきた中でも最も強敵でした。もしも、魔力糸が感知されていれば死んでいましたよ」

 

「まぁ・・・取り敢えずお疲れさん」

 

「・・・深月お疲れ」

 

皆が深月を心配していた。そして一同が思う事はたった一つ

 

「正直言うと、深月が戦っていた敵は何者だったんだ?」

 

「うん・・・・・私達が戦ったヒュドラよりも強いと感じたのだけれど」

 

「・・・もしも戦っていたら負ける」

 

深月も同意見だった。明らかにこの迷宮には不釣り合いの強さを持った敵だった。何故?どうして?この疑問ばかりが尽きない

 

「・・・一つだけ心辺りがあります」

 

「「「あるの!?」」」

 

「ですがこれはあくまでも予想です」

 

「予想でも聞くしかねえだろ」

 

「深月の予想って当たっていそうなんだよねぇ」

 

「・・・休憩を兼ねての説明」

 

床にへたり込む四人。流石の深月も限界突破を使用したまま戦っていたので限界だったのだ

 

「私の予想では、この世界の神。エヒトとは人類――――――いえ、この世界に住まう全ての者達の敵ではないかという事です。王国に居たイシュタル達の教会関係者は狂信者達はご理解されていると思うので省かせて頂きます。迷宮を作り出した者達は反逆者として扱われていますが、此処で一番の疑問点

何故彼等は反逆をしたのかという事です。普通に生活していたのならば有り得ない行動となります。ですが、もしも彼等がエヒトがとんでもない行為をしていたと知ったとしたらどうでしょうか。例えば、この世界を壊す等如何ですか?もしも全人類がそれを知ってしまえば大混乱となって歴史に残ります。ですが、王国等の図書ではその様な資料は無く、知っていると言う点は潰えます。もしも、反逆者達の様な迷宮を作ったとされる力を持った人達だけが知っていたとすれば?

彼等が神と戦い敗北、神の手から逃れる為に迷宮を作ったとしたら?神が事実を知る彼等を"悪"だと信者に知らしめれば悪逆と捉えられてしまうのは間違い無いでしょう。私が先程相手をしていた存在・・・恐らくは神に仕える戦士の劣化コピーだと踏んでいます」

 

語られる深月の予想にハジメ達は納得する

 

「確かに・・・そう考えれば辻褄が合うな」

 

「迷宮って神に対抗する試練って事?」

 

「・・・神が敵?」

 

沈黙する一同

 

「とはいえ、これは私の予想・・・もしかしたらこの迷宮を攻略すれば答えが分かるかもしれません」

 

「そうか!真実を書き記している可能性もあるって事よね!」

 

「んじゃあ、回復したらあの扉を潜るで良いか?」

 

「・・・賛成」

 

神水を飲み、回復し終えた一同は奧へと開いた扉を潜ると広大な空間に住み心地の良さそうな住居があった

 

「なんじゃこりゃあ・・・」

 

「地上じゃ・・・無いよね?」

 

「・・・反逆者の住処」

 

「成る程・・・迷宮を作り出して雲隠れしたという事は、拠点等が有っても不思議では無いという事ですか」

 

皐月が地上と錯覚した理由とは、目に入ったのが太陽だったからだ。ここは地下迷宮であり本物ではないと分かっていても頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じない為、思わず"太陽"と称したのである

川や畑も有り、何処から水を引っ張っているのか気になる所ではあるが気にせず奥へと進んでゆくと、一つの住居が建っていた。室内はつい最近まで人が住んでいたのでは無いか?と思わせる程綺麗な物だった。リビング、台所、トイレ、果てには風呂も存在していた

 

「まんま、風呂だな。こりゃいいや。何ヶ月ぶりの風呂だか」

 

「深月、後で一緒に入りましょ。ユエも私達と一緒よ?

 

「うっ・・・わかった」

 

二階では書斎や工房らしき部屋が有ったが、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった為、仕方なく諦めて探索を続ける。三階の奥の部屋の奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見た事もないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた

 

「綺麗な魔方陣ですね」

 

「しかも見た事がねぇな」

 

「警戒は怠らない様にね?」

 

「んっ」

 

それよりも注目すべきなのは、豪奢な椅子に座った人影である。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか

 

「何かあるとしたらこの魔方陣しかないよなぁ・・・。まぁ、地上への道を調べるには、この部屋がカギなんだろうしな。俺の錬成も受け付けない書庫と工房の封印・・・調べるしかないだろう。三人は待って―――――」

 

「駄目よハジメ。深月、ハジメと一緒に入って」

 

「かしこまりました。では行きましょう、ハジメさん」

 

グイッと手を引っ張られて魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。光が収まり、黒衣の青年が立っていた

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

物語は加速する―――――――

 

 

 

 

 




布団「いやぁ~。今回はメイドさんも大変でしたね」
深月「全くです!作者さんは私に無茶振りをさせすぎです!」
布団「でも勝ったでしょ?」
深月「偶々ですよ」
布団「運も実力の内と言いますので」
深月「そうですね。・・・・・それは兎も角、投票の方はどうなりましたか!私とお嬢様のイチャイチャは」
布団「うん。・・・まぁ、需要はある」
深月「ですよねですよね!さぁ書きましょう!お嬢様×私のお話しを!!」
布団「アンケートの結果。ご主人様プレイに決定しました!」
深月「やりまし―――――――」
布団「尚、主人公×メイドの絡みなのです!」
深月「t・・・今、何と仰いました?」
布団「しょうが無いなぁ。ハジメ×深月が一番の需要だよ♪」
深月「そ、そんな・・・お嬢様との絡み合いが・・・・・私の願いが・・・・・」
布団「さぁ~生まれて初めての試みだけど頑張るぞぉ!」
深月「  」マッシロ
布団「感想、評価宜しくなのです~。感想はモチベーション上げ上げにも繋がるんだよおおお!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは神の思惑に気付きました

布団「くっそ!遅れちゃった!!」
深月「予定では前日でしたのにね?」
布団「忙しかったんや!これでストックも無くなったんや!」
深月「そ、そんな!?」
布団「三が日を過ぎても忙しいいいいいい!」
深月「早く執筆しましょう!読者の皆様も心待ちにしている筈ですよ!」
布団「唸れ!俺のダブルフィンガー!」
深月「それでは読者の皆様、ごゆるりとどうぞ」


~深月side~

 

ある程度予想はしていましたが・・・まさか映像を映し出す魔法が存在するとは少し予想外です

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

私の予想通りですね。お嬢様達も少しだけ驚いているご様子ですね・・・私をじっと見ないで下さい。お前は「超能力者か!」と言いたげにするのは止めて頂きたいです

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか・・・メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

語られる事実は、狂った神とその子孫達の戦いの物語であった。それぞれの種族が崇める神は同じで、神託による争いの日々。そんな無益な争いが何百年と続き、終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、"解放者"と呼ばれた集団だった。彼らには共通する繋がりがあり、全員が神代から続く神々の直系の子孫であったという事だ。解放者のリーダーである一人が偶然にも神々の真意を知ってしまい理解したのだ。人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたという事に

後は深月の予想通りで、神に逆らおうとした解放者達は神によって意識操作された人々から反逆者という悪として扱われてしまった。解放者は守るべき人々と敵対する訳にもいかず、徐々に仲間が討たれてしまい、最後まで残ったのは中心の七人だけだった。そして彼等は何時の日か来たる真の解放者達へ試練を残し、自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願った

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかは分からない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。・・・君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑むと同時に記録映像はスっと消えた。そして魔方陣の上に立っているハジメと深月の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる

 

「ハジメ、深月・・・大丈夫?何処か変な所は無い?」

 

「ああ、平気だ・・・にしても、深月の予想がほぼ合っていたな」

 

「・・・どうするの?」

 

ユエはこれからどうするのかと尋ねるが

 

「うん?別にどうもしないぞ?元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないし。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。それだけだ」

 

「そうそう。私達はこの世界を救いたいとは思っていないし、一番の目的は故郷に帰るだからね」

 

「私の居場所はここ・・・他は知らない」

 

ハジメ達はこの世界の事はこの世界の者達がどうにかしろと結論を出した。ユエは二人の手をギュッと握る。そもそも信じていた者達に裏切られて、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だった現実を救い出してくれた三人の隣こそがユエにとっての全てである

 

「ユエも私達の家族同然だもんね?」

 

「そうだぞ。俺達は一緒に帰るんだ」

 

「・・・ありがとう」

 

とても良い雰囲気なのだが、一人だけ深刻そうに考えている深月

 

(神々が人を駒として遊ぶですか。・・・この手合いの者は、他者の絶望を楽しむ最低最悪の性格でしょう。種族間の戦争に愉悦を求め、どちらかが滅んだとしたら?盤面は一色となる筈。・・・・・魔人族よりも人族の絶望の顔を見るのが一番の愉悦となるならば矛先がこちらへと向かうでしょう。ボードゲームはどちらかが勝利すれば元通に――――――――)

 

「深月どうした?」

 

「複雑そうな顔をしているけど、何か予想をしているの?」

 

「・・・名探偵深月」

 

最悪のシナリオ。それを思い浮かべると大変な事実を、深月は告げるかどうか迷っていた

 

「言いなさい深月。予想だとしても可能性は捨てきれないかもしれないでしょ?」

 

「思い悩むなら俺達にもぶちまけろよ」

 

「・・・私達は家族同然」

 

「有り難う御座います。私の予想を全てお話ししましょう」

 

そして深月は自身が思い付く最悪のシナリオを語り始める

 

「解放者のリーダーの言が正しいのであれば、エヒトはこの世界を一つの遊戯盤としているのでしょう。お嬢様、ハジメさん。戦争のボードゲームと言われたら何を思い浮かべますか?」

 

「戦争のボードゲームなら、将棋かチェスだろ」

 

「私も同意見。一番例えやすいならチェスしか思いつかないわ」

 

「・・・しょうぎ?ちぇす?」

 

「今度教えるからね?」

 

「んっ!」

 

「チェスで話を進めましょう。敵の駒を全て取り終えたならどうされますか?」

 

「何って・・・もう一度盤面を整えるだろ。って・・・おい、まさか」

 

「神と人の対戦。正しく人VS神(ラグナロク)ね」

 

「・・・この世界はじきに滅びる?」

 

三人も思い至った。冷静に考えれば子供でも分かる程単純な思考

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝ったなら元に戻して遊び直そうと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間制限の有るこの現状に冷や汗を流し始めるハジメと、深月の予想を聞いて自身の考えを組み立てる皐月に対して更なる爆弾を深月は投下する

 

「遊戯盤を直すのは神であろうと直ぐには出来無い筈です。そして私達の居た故郷の地球――――――そこに干渉出来る存在ならば」

 

「やっぱりそうなるわよね・・・」

 

「どういう事だ!?」

 

「よく聞いてハジメ。盤面を直すには時間が掛かるのは常よ。もしも、用意されている盤面が隣に置かれていたならばどうする?」

 

「おい待て。・・・エヒトの次なる標的は地球って事か?」

 

「その通りで御座います」

 

「地球に帰るにはエヒトが必ず邪魔をしてくるって事かクソッタレ!」

 

ハジメもようやく理解した。最悪のシナリオは可能性の高いそれだったからだ

 

「神は敵、確定ね。"神を殺す"―――――か」

 

すると、またしても光り輝く魔方陣。だが、今回は誰も上に乗っていないので一同は臨戦態勢を取ると、再び同じ様に映像が映し出された。だが内容は違う物だった

 

「この映像も同じく質問には答えられない事を許して欲しい。この映像はある言葉を鍵として映し出される物なのだ。"神を殺す"の一言を告げた者にだけ教えよう。この迷宮の百層には神の先兵を出来る限り模倣したゴーレムが居る。特殊な技能を付与出来無かったのは仕方が無いが、ステータスその物はオリジナルと遜色無い。神と敵対するならば、これに打ち勝たねばどうする事も出来無いだろう。実際に私達解放者の殆どが、先兵に倒されてしまったのだ。このゴーレムは一定以上のステータスを持っていないと襲う仕様となっている為、挑戦するのであれば気を付けるんだ」

 

そして映像は消える。これで合点がいった一同

 

「深月が戦っていたあれは先兵の模倣体か。・・・深月やべーわ」

 

「技能が再現出来なかったとはいえ倒しちゃったからね」

 

「・・・さすがMEIDO」

 

「最後のは字が違いますよ!?」

 

こうして私達の謎は解け、お嬢様とユエさんが魔方陣の上に立ちました

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オル―――――etc」

 

同じ映像が流れるのですね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

うぅ・・・頭がズキズキする。でもこれで私も神代魔法を覚えたわ!ユエも覚えたけど、適性が無いのか痛みは無いらしい

 

「大丈夫か皐月?」

 

「この痛みって適正有無で痛みがあるって事よね。もしかして深月も適正無かった感じなのかしら」

 

「いえ、痛みは有りましたので適性は有ると思います」

 

うそん・・・これって錬成師にとって有り難い魔法だけど、メイドの深月に適性ってどこら辺に有るっていうのよ

 

「メイドの深月に生成魔法の適性有りって・・・何処に有るんだ?」

 

「魔力糸ですね。透明なそれを物質化させる事が出来ます」

 

「もしかしてそれだけ?」

 

「裁縫には欠かせませんよ?」

 

「あ、うん。裁縫には欠かせないよね・・・」

 

私達の服はボロボロで、所々穴あきなので・・・まぁ、うん。便利ね!その一言だけで良いわ!

 

皐月は流深で納得し、新たなる力にワクワクしながら何を創ろうかと考える事にした

 

「これならアーティファクトを創る事が出来るな」

 

「・・・アーティファクト作り放題?」

 

「おう。―――――それよりもあの死体を片付けるか」

 

「畑の肥料にしましょうか」

 

「・・・土に還る」

 

三人の慈悲は無く、風もないのにオスカーの骸がカタリと項垂れた

 

「駄目ですよ。しっかりと弔いましょう。壺を創って下さい――――――良いですね?」

 

深月に胃袋を制圧されている三人は逆らう事は出来無い為、そこそこ大きい壺を創り、焼いた骨を入れて簡易的なお墓を作った深月。因みに、オスカーが装着していた装飾品は全て剥ぎ取られている。何事も有効活用するのはお約束である

 

装飾品の一部、十字に円が重った文様が刻まれた指輪が開かずの間の鍵となっていたわ。書斎の一部をパクったのは言うまでも無いわね。色々と探索していると、ハジメがゴーレムを見つけてじっと見ていたわ。しかも、そのゴーレムはメイド服を装着している

 

「ハジメはメイドフェチなの?コスプレした方が嬉しい?」

 

「ち、違う!?誤解だ皐月!何故ゴーレムがメイド服を着ていたのか気になっただけだ!」

 

「・・・ご奉仕?」

 

「・・・そういえば、ハジメさんと初めて出会った際にジッと見つめられていましたね」

 

「余計な事を言うな深月!この場が更にややこしくなるだろ!!」

 

ハジメがメイドフェチと確信したわ!

トータスで出会ったメイドには興味が無さそうだった?いつも極上のメイドを目にしているからそう思わなかったのでしょうね!

 

結局、ハジメのメイドフェチ疑惑は晴れなかった

燃料を投下した本人の深月はというと、お風呂の準備をし終え、食事の下準備へと取り掛かっていた

 

「皆様、お風呂のご用意が出来ました。どちらから先に入られますか?」

 

「ハジメが先には行って良いわよ」

 

「良いのか?」

 

「大丈夫。私はユエのストッパーとして待機するだけだけよ」

 

だってユエを放置したら絶対に風呂場へと突入するだろうし。・・・私は未だ認めません!

 

「助かる。ユエを頼む」

 

「任せて~。・・・・・さぁユエ?一緒にあっちでお話しましょう?」

 

「ハ、ハジメ助けて!」

 

皐月によって、がっしりと体を固定されて奧へと連行されていくユエを見送るハジメ。合掌した後直ぐに脱衣室へと直行したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

「あぁ~、極楽だ。異世界に来てお風呂に入れるとか思ってもみなかったぜ」

 

幾度となく襲い掛かった試練により精神はゴリゴリと削れていった。しかし、それは皐月と深月とユエの三人が居たからであって一人では完全に潰れていただろう

 

もしも、この奈落に落ちたのが俺だけだったら・・・完全に心を壊していたかもな。それこそ、人間性を捨て去った獣になっていただろうな。俺が生きていたのも皐月のお陰に近いからな。爪熊の時に壁に穴を開けて俺を引き込んでいなかったら終わっていただろうしな

 

目を閉じて過去を振り返れば、全てを鮮明に思い出せる程の濃密な出来事だったからだ。何度も死にかける度に神水を飲んで回復を繰り返し、少しづつ力を付ける日々は常人が経験する事は無いだろう

すると、ヒタヒタと歩く音が聞こえた。完全に油断していたハジメは「何故!?」と疑問が頭の中を埋め尽くす。ゆっくりと隣に入って来た人物は皐月であった

 

「き、気持ちいいわね」

 

「お、おう。――――――――ところで、何故に皐月は入って来たんだ。ユエはどうして」

 

「ユエは深月に拘束されているわよ」

 

「あぁ成る程。・・・南無三」

 

深月がどの様にユエを拘束されたのか大体予想が付いぜ。恐らく、針でプスッとして動けなくしたんだろう・・・あれから逃れるのは不可能に近いからな

 

しばし沈黙が続き、ジャバジャバとお湯が注がれる音だけがその時間を支配する。ハジメは冷静になり、覚悟を決めた。右手を皐月の肩に乗せて、引き寄せる。突然のハジメの行動にアワアワと驚く皐月だが、そんな事は関係無いと言わんばかりだった

 

「皐月」

 

「ひゃい!?」

 

「愛している」

 

「わ、私も・・・愛しているわ」

 

皐月は奥手のハジメに自身から迫るの事が殆どだが、今回はハジメから皐月に迫っている突然の状況に頭が付いて行けていない。普段よりも男らしさ全快の行動に顔を真っ赤に染めてキスをされた。しかもディープな大人のキスを

最初はやられるだけだった皐月は、落ち着きを取り戻して一旦顔を離す。体勢を整え、ハジメの真正面へと移動して再びキス。甘く、甘く、とろける様なそれは、二人の歯止めを無くし、長時間お互いを貪る様に求める。時間も忘れ、余計な音すらも遮断する様に求め続ける二人だったが

 

(お嬢様、ハジメさん。お風呂場でイチャイチャするのは構いませんが、そろそろ食事の時間です。のぼせる可能性もあるので、焦らずに出て来て下さい。因みにユエさんは、こちらで"協力"して頂き"清潔"をさせて頂きました)

 

((あ、これはOHANASHIで実験に付き合わされた奴だ))

 

心の中でユエに黙祷を捧げる二人。こうして深月は新しく、清潔の派生技能を取得したのである

お風呂から出ると下着と寝間着が籠に折り畳まれて入っており、その側にはお盆の上に二つのコップに水が入っていた

 

「どこまでも用意周到な深月だな」

 

「この寝間着はどうやって作ったのよ」

 

様々な疑問を抱きつつ着替えて髪を乾かす。二人はリビングへ入ると、盛り付けされた皿を机へと運ぶユエの姿があった。二人と目が合うと頬を膨らませ、明らかに怒っていますと言わんばかりに不機嫌だった

 

「・・・ハジメ、皐月・・・遅い」

 

「い、いやー。スマン」

 

「ゴメンねユエ」

 

素直に謝る二人。深月の実け―――――もとい、検証に付き合わされたユエの心労は普通では無いだろうと理解していたからだ

 

「んっ。・・・深月怖い」

 

「あははは・・・」と苦笑いを浮かべながら三人は椅子へ腰掛ける。目の前にはサラダやスープが有り、深月は料理場から皿をバランス良く乗せて運び各自の目の前へと置く

 

「こちらはヒュドラ擬きを使用したステーキです。因みにこれらを食べる前にこの焼いただけのお肉を先に食べて下さいね?ステータスが上昇しますので」

 

一口大に焼かれ、ソースをかけただけの状態でちょこんと鎮座する肉をため息を吐きながら食べて神水を飲む二人。強くなれるとはいえ、痛みが襲う美味しくない肉を食べるのは嫌だからだ。不味い肉も食べ終わり、良い匂いを出すヒュドラ肉を食べる三人。そしてお約束の

 

「「「うまあああああああああああああああい」」」

 

読者もお気付きだろう。吸血鬼であるユエが混じっている事に

魔力を速急に回復させるには吸血が一番手っ取り早い。しかし、食事に至っては深月の料理で胃をしっかりと掴まれてしまったのだ。血を飲むよりも美味しい料理達。食事がハジメの血か深月の料理どちらかを選べと迫られれば、深月の料理と選んでしまう程にまで開発されてしまったのだ。深月曰く「これもメイドとして当然の勤めです」との事

 

「ヒュドラ肉うまっ!今までの魔物肉でダントツに旨い!」

 

「筋っぽいかな~って思っていたけど、全然違うわ!溢れ出る肉汁は甘くて濃厚なのに胃もたれしない程さっぱりしている!」

 

「・・・うまうま。・・・幸せ」

 

「野菜も食べましょうね?今までお肉ばかりで栄養が偏っていますので」

 

「「「分かった」」」

 

バランス良く食べて、三人の健康管理もお手の物。食生活に限らず、日常生活には深月が欠かせなくなる一同である

 

 

 

 




布団「ヒャッハー!迷宮編の終了だー!」
深月「・・・私はこれからR―18でのお仕事ですか」
布団「仕方が無いよね。自分から言い出したアンケートなんだからさ!」
深月「うぐぅっ!」
布団「さぁさぁ、頑張って書くぞぉ!」
深月「こんな筈では・・・」
布団「次回のアンケートはもうすぐだよ!皆大好きモンスターテイマーの処遇だよ!」
深月「感想、評価宜しくお願い致します・・・」


―追記―
R-18は2020/01/04に投稿します。投稿時間は本編と お・な・じ・♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウサギとライセン大峡谷
メイドのチートが加速する


布団「投稿だよ~」
深月「お正月も過ぎ忙しくなりますね」
布団「それはそうと、意味深回の方は凄いですねぇ」
深月「その話を今、此処でするのですか?」
布団「・・・止めておこう」
深月「それで良いのです。深く掘り返さなければ何もしませんよ」
布団「さ、さあ。前書きもここまでにして本編へ行きましょう!」
深月「読者の皆様方、誤字報告有り難う御座います。それでは、ごゆるりとどうぞ」


~皐月side~

 

うぅ~・・・勝てない。ハジメとの初夜を経験した後、数回やっても全然勝てないわ。寧ろ初めてよりも上手になってて、弱点部分ばかり攻められてしまいノックアウト。一人では保たないと判断した私は、ハジメに好意を抱いているユエを参加させたわ。もうね、ハーレムばっち来いって事よ!一人だと身が保たないわよ!因みに、私とユエの二人は返り討ちに遭っちゃいました。ハジメの理性が飛ぶと勝てないわ・・・

ハーレム有りと堂々と宣言した私だけど、ユエにはある条件を飲む事でOKとしたわ。正妻は私―――――これは確定で、ユエ自身も納得していたわ。だけど次の条件では渋っていたわ。それは、第二婦人は深月だという事よ!え?本人の許可はどうしたのか?私が決めたから問題無いわ!余談だけど、深月もハジメとやったからね?18歳以上で気になる人はそちらを覗いてね?一番の予想外だったのは、ハジメが深月をノックアウトさせた事ね。ステータスが格段に上の深月を倒すとは・・・私達はとんでもないモンスターを覚醒させたのかもしれないわ

そんな生活をする事おおよそ二ヶ月。これからの行動予定の指針の決まった私達は、修行、休息、補給等々をして着々と準備を進めているのよ

 

四人の生活は修行によるステータス向上――――――熟練度上げ等と兵器開発だ。自身の手でアーティファクトを創り出せるハジメと皐月は、次々と地球産の物を創り上げたのだ

 

「お嬢様、腕の調子は如何ですか?」

 

「・・・ハジメ、気持ちいい?」

 

「「ん~、気持ちいいぞ~(わ)」」

 

ハジメの左腕の義手と皐月の右腕の義手はアーティファクトであり、身体に馴染ませる為にマッサージを行っているのだ。ハジメは二の腕が存在するので、纏う感じでの一品だ。しかし、皐月に関しては肩から全ての義手である。創る際に最も複雑だったのは言うまでも無い。ここで役立ったのは、某錬金術師の義手である

切断面を鉱石で塗り潰す様に纏わせて疑似関節を作る際に痛みが生じる。疑似神経の接合の為に一定部分の肉を抉らなくては駄目だったからだ。深月の針刺しで疑似麻酔を施すが、それは気休め程度で痛みは有ったのだ。処置をするハジメも皐月の痛がる姿に心を痛めながら作業をして、製作することに成功したのであった。因みに、義手のギミックはハジメよりも上回る程搭載されている

この二ヶ月で装備は以前とは比べ物にならないほど充実しており、ユエを除く三人のステータスは現在こうなっている

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:14050

体力:15000

耐性:13000

敏捷:16050

魔力:14050

魔耐:14050

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 夜目 遠見 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 熱源感知[+特定感知] 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 恐慌耐性 全属性耐性 先読 金剛 威圧 念話 追跡 高速魔力回復 魔力変換[+体力][+治癒力] 限界突破 生成魔法 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

高坂皐月 17歳 女 レベル:???

天職:錬成師

筋力:12050

体力:14500

耐性:12500

敏捷:16050

魔力:15000

魔耐:15000

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成] 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光] 幻歩[+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 夜目 遠見 直感 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 熱源感知[+特定感知] 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 恐慌耐性 全属性耐性 先読 金剛 威圧 念話 追跡 高速魔力回復 魔力変換[+体力][+治癒力] 限界突破 生成魔法 言語理解

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:???

天職:メイド

筋力:28000

体力:30000

耐性:31000

敏捷:35000

魔力:26050

魔耐:26050

技能:生活魔法[+完全清潔][+清潔操作][+清潔鑑定] 熱量操作[+蒸発][+乾燥][+瞬間放熱] 超高速思考 精神統一[+明鏡止水] 身体強化 魔気力制御[+放射][+圧縮][+遠隔操作][+複合][+憑依] 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 熱源感知[+特定感知] 気配遮断[+透化][+断絶] 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約 裁縫 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光][+無音加速] 幻歩[+幻影][+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列]  夜目 遠見 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] 魔力糸[+伸縮自在][+硬度変更][+粘度変更][+着色][+物質化] 胃酸強化 超直感[+瞬間反射][+未来予測] 状態異常完全無効 金剛[+超硬化] 威圧 念話 追跡[+敵影補足][+識別] 超高速体力回復 超高速魔力回復 魔力変換[+体力][+治癒力] 心眼[+見極め][+観察眼] 極致[+武神] 限界突破 生成魔法 忠誠補正 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

最早、レベルに至っては表記されない状態だ。深月に関してはもう言うまでも無いだろう

因みに、勇者である天之河光輝の限界は全ステータス1500位だ。限界突破の技能で更に三倍に上昇させる事が出来るが、それを含めてもハジメと皐月とのステータスには約三倍の開きがある。だが、魔物の技能を吸収した事により技の引き出しが圧倒的に多く、限界突破もあるので実質五~六倍の開きがあると言っても良いだろう。深月に関しては限界突破をしなくても、戦闘の経験、即時状況判断、幅広い戦闘方法により十倍以上の開きがあるのだ。そもそも、神の先兵の劣化コピーとの戦闘時、ステータスの差が三~四倍あったのにも関わらず倒す事が出来ている。この時点で不利的状況下での引き出しが圧倒的に多く、訓練とはいえハジメと皐月とユエの三人相手に勝利しているのである。この時の三人の感想は「単調な動きにさせられる」「避けた先に攻撃が来る」「・・・魔法を叩き切るのは反則」という具合なまでのぶっ壊れなのだ

 

まぁ深月に関しては言うまでも無いわね。特に派生技能が目に見えて増えてるのは理由は恐らく神の先兵のコピーと戦った際に覚醒したんだろうなぁ。後は私生活で色々と多様しているというのも含まれるわね。魔力糸を生成魔法で物質化してたら派生技能として開花しちゃうし・・・多分"節約"が関わっているんだろうなぁ

 

深月が魔力糸を物質化する際には生成魔法も行使しなければならない。二重に魔力を消費しなければいけないのだが、節約にて魔力消費量を軽減させながら沢山衣服を創っていたから派生した技能なのだ。蒸発、乾燥、瞬間放熱は家具、甘味を作る際に熱量操作を試行錯誤した賜物だ。武神に関しては武器だけでなく無手で三人を相手していた時に派生して、今なら無手で表オルクス迷宮の魔物ならば全て倒せる程だ

 

深月の武神は最早チートを通り越していると思うわ。だってね?三人の同時攻撃が当たると思った瞬間に動きが明らかに違ったのよ!訓練中に覚醒した深月相手に私達は分も持たなかったわ

んんっ!話を変えるわ。新装備に"宝物庫"という便利道具を手に入れた私達。これはオスカーが保管していた指輪のアーティファクトで、勇者の道具袋みたいな物だったわ。かなりの容量があって、半径一メートル以内なら任意の場所に出す事が出来る超便利アイテムなの。遠距離武器を必要としている私達にとって相性が良くて、弾丸の保管庫ね。これは一つしか無かったのでハジメが付けているわ。私の側には深月を置く事でいざという時に対処が出来るわ。ハジメは宝物庫から弾倉を出して空中リロードを習得、私も一応出来る様にしておいたわ。何事も備えあれば憂い無しとはこの事ね

お次は、魔力駆動二輪と四輪―――――簡単に言えば魔力を燃料として動くバイクと車よ。バイクに関しては三台、車は二台。車に関しては某エイリアン対策部みたいにギミックが搭載された代物よ。バイクに関しては深月専用の物が一台創られたわ。これだけは超特注で、某ソルジャーバイクみたいに刀剣類を積み込んだのよ

武器に関しては、対物ライフルのシュラーゲンが復活。耐久性を上げながら持ち運び便利の一品となり、私の愛用武器となったわ。ドンナーはどうしたのかですって?深月にホルスターを創って貰って其処に装着しているわよ。そしてドンナーの対となるシュラークも開発して装備しているわ。恐竜擬き達の一件から手数と面制圧系の武器の二種類

メツェライ・・・分かりやすく言うとミニガンね。そして連射可能なロケット&ミサイルランチャーのオルカンを開発。これで大量の魔物相手には遅れは取らないわ!

ここで残念なお知らせが一つ、実は私の目が見えなくなったのよ。欠損では無い限り癒やす神水を飲んでも直らなかったのよ。義手を創る際に神経が傷付き死んだと判断したわ。まぁ、ハジメが代わりとなる義眼を作ってくれたから気にならないけどね?生成魔法を使い、神結晶に、"魔力感知""先読"を付与することで通常とは異なる特殊な視界を得る事ができる魔眼なの。魔法の核となる部分が見えて其処を撃ち抜くと魔法を消す事に成功してはしゃいじゃったのは言うまでも無いわ・・・某型月の魔眼と似た事が出来たから仕方がないわよ。ハジメも気になったのか、魔眼の効果を付与した眼帯を開発して装着。これで二人お揃いね♪と嬉しかったが、深月が指さす鏡の方を見ると正しく中二病患者の姿にハジメが絶望して膝から崩れ落ち四つん這い状態になり丸一日寝込んじゃったのよ。格好いいと思うんだけど・・・何がいけなかったのかしら?

 

中二病患者のハジメを慰め、夜戦する事で持ち直させる事に成功した皐月。ダメージは余りにも大きいと思ったが、優しく慰める事でハジメも理性を暴走させる事無くとても良い夜戦となったのだった

完全回復したハジメは、神結晶の膨大な魔力を内包するという特性を利用して錬成でネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーに加工。それを皐月とユエに贈った

 

「・・・プロポーズ?」

 

「・・・それで魔力枯渇を防げるだろ?今度はきっとユエを守ってくれるだろうと思ってな」

 

「大丈夫よユエ。私はハーレムばっち来いだから。それに、婚約指輪は故郷に帰ってから作ってくれる筈よ」

 

「・・・なら大丈夫!」

 

「ふふふ、――――――大好きよ。ハジメ」

 

「ありがとう・・・大好き」

 

「・・・おう」

 

それから十日後。遂に四人は地上へと出る為、三階の魔法陣を起動させる

 

「俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているという事はないだろう」

 

「兵器等のアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きいわ」

 

「ん・・・」

 

「神は敵と仮定してこれからは干渉されない立ち回りをしなければなりませんね」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更・・・」

 

「「俺(私)達が互いを守る。それで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越える」」

 

「んっ!」

 

「いざという時は私に頼って下さいね?」

 

「「「深月は最終兵器だから」」」

 

光が四人を包み込み魔方陣の上には誰も居なくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

光が晴れた先に見える景色は洞窟だった。ハジメは地上だと信じ込んでいたのか、もの凄く落ち込んでいたのだった

 

「何落ち込んでいるのよハジメ。隠し通路が見つかる所にあれば意味無いでしょ」

 

「皐月の言う通り・・・秘密の通路・・・隠すのが普通」

 

「あ、ああ、そうか。確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

 

いつになく浮かれていた事に恥じるハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直し、緑光石の輝きも無い真っ暗な洞窟を道なりに進む事にした。途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。一応警戒していたのだが、拍子抜けする程何事も無く洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光を求めて止まなかった三人は顔を見合わせニッと笑い駆け出そうとするが

 

「三人共、浮かれてはいけませんよ。この先が魔物が大量に居る場所可能性も捨てきれません」

 

ピタッと止まり、深呼吸して落ち着きを取り戻す三人。改めて、警戒をしながらゆっくりと歩を進めて行くと風を感じた。奈落の様な淀みのある物では無く、清涼で新鮮な風にハジメ達は、"空気が旨い"という感覚をこの時ほど実感した事はなかった。そして待望の地上へ出た

それは地上の人間にとって地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡。【ライセン大峡谷】と

 

「・・・戻ってきたんだな・・・」

 

「やっと・・・やっと戻って来た!」

 

「・・・んっ」

 

「よっしゃぁああーー!!戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

「地上よ、私は帰ってきたぁあーー!」

 

「んっーー!!」

 

念願の地上、懐かしき匂いと光に三人共歓喜する。とても良い笑顔だった

 

『グギャアアアアアアアアアアア!?』

 

そして響き渡る絶叫。咄嗟に身構えるが、それは深月が周りに居た魔物を蹂躙している光景だった

 

「ま、そうなるな」

 

「深月に見つかったが最後ね」

 

「・・・南無」

 

三人共が魔物に対して心の中で合掌。数分も満たない時間で殲滅し終えて合流した深月

 

「全く、嬉しいのは分かりますが大声を出されては魔物が集まってしまいますよ?先程の手応えから奈落の魔物達よりも弱いと確信致しましたが、此処では魔力が分解されてしまうので注意して下さい」

 

「「「はい・・・」」」

 

軽くお説教をされた三人はこの場所について色々と調べていた。ハジメは魔物の素材を剥ぎ取り回収、皐月とユエは魔法に関してだ

 

「ユエどんな感じ?」

 

「・・・分解される。・・・十倍位の力を入れないと駄目」

 

「効率悪いわね。この場所だとユエは温存して私とハジメで魔物を殲滅するわ」

 

「うっ・・・でも」

 

「適材適所、群れならいざ知らず。多くても五~六匹程度余裕よ」

 

ユエが渋々といった感じで引き下がる。せっかく地上に出たのに、最初の戦いで戦力外とは納得し難いのだろうか頬を膨らませて拗ねている

 

「さて、この絶壁を登ろうと思えば登れるだろうが・・・どうする?ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

「そうね。峡谷抜けて砂漠横断とか嫌だし、樹海側なら町にも近そうだし」

 

「・・・確かに」

 

方針は決まり、ハジメは宝物庫から魔力駆動二輪を取り出した。ハジメの後ろはユエ、深月の後ろに皐月と魔力駆動二輪に跨がる。ユエがハジメに引っ付くが本妻の余裕もある皐月は気にしないのである。魔力駆動二輪を走らせていると魔物が襲ってくるが、深月が投擲する魔力糸が結ばれた刀剣が頭部に突き刺さり絶命。それを回収、また投げるという行為だけで殲滅して行く。ハジメと皐月も襲い来る魔物を蹴散らしている

しばらくすると、遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえた。中々の威圧で、少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見た恐竜擬きに似ているが頭が二つあり、真に注目すべきは双頭ティラノの足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だ

 

「・・・何だあれ?」

 

「・・・あれって兎人族よね?」

 

「何でこんな所に?兎人族って谷底が住処なのか?」

 

「普通は森じゃないかしら?」

 

「じゃあ、あれか?犯罪者として落とされたとか?処刑の方法としてあったよな?」

 

「・・・悪ウサギ?」

 

「それ以外となると、奴隷と言った所でしょうか?帝国は亜人種を奴隷としているとお聞きしていますので」

 

「そうなのか?」

 

「そう言えば弱肉強食国家って書いてあったわね」

 

赤の他人である以上、単純に面倒だし興味が無く面倒事の匂いしか無いのでとっとと立ち去ろうとしたら

 

「だずげでぐだざ~い!ひっーー、死んじゃう!死んじゃうよぉ!だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けて来たのだ。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。心優しき人達であれば助けるのであろうが

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

 

「・・・迷惑」

 

「どうしますか?」

 

「立ち去る。以上」

 

助ける気は皆無。ウサミミ少女の必死の叫びは無慈悲にも届かない。さっさと立ち去ろうと余所に向くと

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い!おねがいですぅ~!!」

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

「あ"ぁ"?」

 

ハジメ達に殺意と共に咆哮を上げたが最後。その殺気に反応して

 

ドパンッ!!

 

二本のウサミミの間を一条の閃光が通り抜けた。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの口内を突き破り後頭部を粉砕し貫通した。力を失った片方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った

 

「きゃぁああああー!た、助けてくださ~い!」

 

衝撃でウサミミ少女は再び吹き飛び、狙いすましたようにハジメの下へ飛んで行くが一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた

 

「えぇー!?」

 

驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。双頭ティラノが絶命している片方の頭を、何と自分で喰い千切りバランス悪目な普通のティラノになっ―――――

 

「うっさいわよ」

 

ドパンッ!!

 

皐月にもう一つの頭を撃ち抜かれて絶命したのだった

 

「おい、こら。存在がギャグみたいなウサミミ。助けてやったんだからとっとと消えろ」

 

「えっ?――――――し、死んでます・・・そんなダイヘドアが一撃なんて・・・」

 

とっとと去ろうとするハジメ達に気が付きハジメにしがみつくが、ハジメは脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろす

 

「へぶぅ!!」

 

呻き声を上げて、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。それを冷たく一瞥した後、ハジメ達は再び何事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。しかし、物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!」と再びハジメの腰にしがみつくウサミミ少女

 

「先程は助けて頂きありがとうございました!私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです!取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

四人は奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった

 

 

 

 




深月「・・・」
布団「( ´゚д゚`)アチャー。お嬢様がやっちゃった」
深月「し、仕方ありません!お嬢様ですのでセーフです!」
布団「なら、蒸し返してもオッケーって事だよね!」
深月「本気で仰っているのでしょうか?」ゴゴゴッ
布団「あ、はい・・・すいませんでした」
深月「まぁ許して差し上げます。ですが!アンケートを出して下さいね?」
布団「よっしゃ任せろ!」タタタッターン
深月「これならば、お嬢様とイチャイチャできる可能性が」
布団(神は言っている。それは定めでは無いと!)
深月「それでは、読者の皆様!アンケートを宜しく御願い致します!」
布団「感想、評価宜しくです~。あ、非ログインユーザーからでも感想を書ける様に設定し直しておきます」
深月「フフフッ!皆様、お待ちしておりますよ!」
布団(暴走を止めるのも作者の使命ですねぇ)



ー追記ー

布団「反映出来ていなかったです。申し訳無い( ・ω・)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは怒りました

布団「次話投稿だ!」
深月「今回のお話に関して注意です」
布団「容赦無く、帝国の兵士さんが無残に殲滅させられてしまいます!」
深月「当然ですね」
布団「苦手な方は・・・どうしよう・・・・・」
深月「お話の最後の方に書かれてありますのでご注意下さい」
布団「そ、そうだね!フォント変えてるから注意してね!」
深月「続きまして、誤字報告や修正有り難う御座います」
布団「すまねぇ・・・ホントすまねぇ・・・・・」
深月「作者さんの国語力は貧弱で、誤字も多いのでいけませんね」
布団「グハッ!(吐血」
深月「前書きも終わりましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」


~深月side~

 

どうしましょうか・・・このウサミミ少女が言っている家族を助けた分のメリットが思い付きませんね。

 

「お願いです家族も助けて下さい!」

 

ユエさんに蹴られながらも離す事は無いですか。余程大切なのでしょう―――――――ですが、それは些末事。私達の指針の邪魔にしかなりません。おや、ハジメさんが近づいて・・・「アババババババババババアバババ!?」纏雷で痺れさせましたね

 

「全く、非常識なウザウサギだ。三人共、行くぞ?」

 

「ん・・・」

 

「・・・」

 

ハジメは何事も無かったかの様にバイクに魔力を注ぎ発進させようとしたが

 

「に、にがじませんよ~」

 

再び立ち上がって、ハジメにしがみ付くシアにドン引きする三人

 

「お、お前、ゾンビみたいな奴だな。それなりの威力出したんだが・・・何で動けるんだよ?つーか、ちょっと怖ぇんだけど・・・」

 

「兎人族って皆がこれだけの耐久力を持っているの?」

 

「・・・不気味」

 

「うぅ~何ですか!その物言いは!さっきから、肘鉄とか足蹴とか、ちょっと酷すぎると思います!断固抗議しますよ!お詫びに家族を助けて下さい!」

 

怒りつつも、さらりと要求を突きつけるシア。ハジメは離すまで引きずり倒すという事も考えたのだが、もしも離さずにしがみついたままの状況を思う。血まみれになりながらも自身の足にしがみつくウサミミ少女・・・ホラー直行物である。仕方無く、経緯を聞こうとするハジメよりも先に深月が口を開く

 

「メリットは何を提示出来るのですか?」

 

「えっ?」

 

「貴方達を助けて私達に何かしらのメリットは有るのかという事です。等価交換は理解出来ますよね?」

 

「・・・わ、私を好きにして良いです!それなら問題は無いですよね!」

 

「お前みたいな残念ウサギを誰が欲しがるかよ。皐月みたいな見目麗しいお嬢様な彼女を持っている俺からすれば、お前はそこら辺りに落ちている石ころと同価値なんだよ」

 

「なっ!?石ころって酷くないですか!?」

 

「お前が皐月に勝っている部分って何だ?ハッキリ言って俺h―――――――」

 

「勝っている部分は目の前に有るじゃないですか!其処に居るメイドさんは兎も角、そこのお二人よりも私の胸は大きいですし。・・・・・そこの金髪の人に至ってはペッタンコじゃないですか!」

 

"ペッタンコじゃないですか!""ペッタンコじゃないですか!""ペッタンコじゃないですか!"

 

峡谷に命知らずのウサミミ少女の声が木霊する。ハジメの後ろに乗っていたユエは固まり、ゆっくりと地に足を下ろして近づいて行く。ハジメは天を仰ぎ、無言の合掌。皐月は親指で首を切るジェスチャーをユエに送る。深月はどうでも良いと思っているので様子を見ている

 

「・・・お祈りは済ませた?」 

 

「・・・謝ったら許してくれたりは」

 

「・・・許すと思う?」 

 

「死にたくない!死にたくなぁい!」

 

「"風帝"」

 

「アッーーーー!!」

 

ユエの魔法によって生み出された竜巻はシアを飲み込み、錐揉みしながら天へと昇らせて行く。悲鳴が木霊しながら、ピッタリ十秒後にグシャッ!という鈍い音を立てて四人の目の前に墜落した。犬〇家のあの人の様に頭部を地面に埋もれさせビクンッビクンッと痙攣しているその姿は、神秘的な容姿とは相反する途轍もなく残念な少女である

「いい仕事した!」と言う様に、掻いてもいない汗を拭うフリをするとハジメの下へ戻り、二輪に腰掛けるハジメを下からジッと見上げた

 

「・・・ハジメは皐月みたいにおっきい方が好き?」

 

「・・・胸は人それぞれだ。おっきかろうが、小さかろうが、それは些細な事だ。相手が誰か、それが一番重要だ」

 

「・・・皐月の方がおっきい」

 

自身の胸をペタペタと触り、表情が暗いままのユエ

 

「胸でハジメの好き嫌いが変る訳無いでしょ。ハジメは、私の胸が小さくなったとしても今までと変らないわよね?」

 

「当然だ。俺が皐月とユエを嫌う筈が無いだろう」

 

「だから、あんまり気にしないの!そもそも、ユエは吸血鬼なんだから魔法を開発して大人の身体を創れば万事解決でしょ。吸血鬼じゃないと出来無い事だってあるわよ」

 

「・・・・・ん」

 

何とかユエを持ち直させた二人はため息を吐く

 

「おや、あれを直撃しても未だ立ち上がるのですか」

 

「「「え・・・?」」」

 

三人は犬〇家状態だった場所へ視線を戻す。それは、痙攣していたシアの両手がガッと地面を掴んで、ぷるぷると震えながら懸命に頭を引き抜こうとしている姿だった

 

「アイツ動いてるぞ・・・本気でゾンビみたいな奴だな。頑丈とかそう言うレベルを超えている気がするんだが」

 

「えぇい!兎人族は化け物か!?」

 

「・・・ん」

 

ズボッと頭を引き抜き、シアが泥だらけの顔を抜き出した。涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明な事を言いながらハジメ達の下へ這い寄って来る

 

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに・・・」

 

「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ?尋常じゃないぞ・・・何者なんだ?」

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は―――――カクカクシカジカで」

 

「分からねぇから。ってか何でこっち側のネタを色々と知っているのかが不思議なんだが」

 

シアの説明を要約すると―――――

兎人族・・・ハウリアと呼ばれる者達の中から、異常な女の子が生まれた。基本的に濃紺の髪をしているハウリアだが、その子の髪は青みがかった白髪。亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操り、とある固有魔法まで使えたのだ。当時の一族は大混乱で、必ず迫害対象なってしまう。しかし、ハウリアは百数十人全員を一つの家族と称する種族なので、ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった

故に、ハウリア族は女の子を隠しながら十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった為、ハウリア族は追放処分となってしまった。それからは、魔物、帝国兵から逃げる日々を送り、大多数のハウリアが帝国兵に捕まってしまったとさ

とても不運な者達だ。そう感じたハジメ達

 

「・・・気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

最初の残念な感じを見せず、悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、ユエやハジメと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのだろう。話を聞き終ったハジメと皐月は特に表情を変えることもなく端的に答えた

 

「「断る(わ)」」

 

端的な言葉が静寂をもたらし、何を言われたのか分からないといった表情のシアは、ポカンと口を開けた間抜けな姿で二人をマジマジと見つめた。そして、話は終わったと魔力駆動二輪に跨ろうとしてようやく我を取り戻し、抗議する

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!何故です!今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ!安心しろ!!俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ!流石の私もコロっといっちゃうところですよ!何、いきなり美少女との出会いをフイにしているのですか!って、あっ、無視して行こうとしないで下さい!逃しませんよぉ!」

 

再びハジメの足にしがみつくシア。ハジメは足を振って離そうとするが、離れる気配の無いシアに対してため息を吐きながら睨付ける。そんな中、深月はふとある一点を思い付く

 

「ハウリアは樹海の中で迷う事無く進む事は出来ますか?」

 

「ふぇ・・・?」

 

「どうなのですか?」

 

「で、出来ます!樹海の案内なら大丈夫です」

 

「ちょっと待て深月。厄ネタ他ならないそいつらを助けたら俺達のデメリットが大きすぎるだろ」

 

「・・・厄ネタ要らない」

 

「確かに亜人族以外の者は樹海で迷うと言われているわ。いざとなれば、森の木を切れば問題は何も・・・・・。いや、ちょっと待って。やっぱり助けましょうハジメ」

 

いきなりの助ける提案をする皐月にハジメは気付く

 

「・・・いつもの勘か?」

 

「えぇ。何故か分からないけど、ハウリアが気になって仕方が無いわ」

 

「・・・?・・・?」

 

「皐月の勘がそう言うのなら仕方がないな」

 

「その前に一つだけお聞きしたい事があります。貴女は先程"見えていなかった"と仰いましたがそれは未来予測の技能を持っていると判断しても宜しいですか?」

 

「えっ・・・何で"未来視"の事を?」

 

「成る程、持っている事を教えて頂き有り難う御座いました」

 

「えっ・・・知っているんじゃ?」

 

深月が問いかける誘導尋問に見事に引っ掛かるシアを見て皐月は心底残念そうに見つめる

 

「うわぁ・・・正真正銘の残念ウサギじゃない」

 

「馬鹿正直に言うか普通?」

 

「・・・残念ウサギだからしょうが無い」

 

「「それもそうだな(ね)」」

 

「酷すぎませんか!?」

 

「おい、喜べ残念ウサギ。お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」

 

台詞は完全にヤクザのそれである。しかし、それでも、峡谷において強力な魔物を片手間に屠れる強者が生存を約束したことに変わらない。シアは飛び上がらんばかりに喜んだ

 

「あ、ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」

 

ぐしぐしと嬉し泣きするシアは、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる

 

「あ、あの、宜しくお願いします!そ、それで貴方達の事は何と呼べば・・・」

 

「ん?そう言えば名乗ってなかったか・・・俺はハジメ。南雲ハジメだ」

 

「私は高坂皐月。ハジメと将来を誓い合った正妻よ」

 

「・・・ユエ。ハジメと将来を誓い合った側室」

 

「私は神楽深月。お嬢様専属のメイドで御座います」

 

「ハジメさんと皐月さんと深月さんとユエちゃんですね」

 

「・・・さんを付けろ。残念ウサギ」

 

「ユエさんは吸血鬼で貴女よりも年上ですよ」

 

「ふぇ!?」

 

シアはユエを外見から判断して年下だと思っていたのだが、深月の説明を聞いて土下座する勢いで謝罪した。しかし、ユエはシアが気に食わない。敢えて何も言わないハジメ達は何処がどういう理由でそうなのか分かっている

そんな状態をスルーしてハジメはシアに後ろに乗るように指示を出し、訳も言わせずに乗らせた。シアは振り落とされない様にユエに捕まるが、凶器を押しつけられている現状に苛立って、ハジメの前へと移動。シアは「え? 何で?」と何も分かっていない様子で、いそいそと前方にズレるとハジメの腰にしがみついた。ハジメは特に反応することもなく魔力駆動二輪に魔力を注ぎ込む

 

「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが・・・この乗り物?何なのでしょう?それに、ハジメさんもユエさん魔法使いましたよね?ここでは使えないはずなのに・・・」

 

「あ~、それは道中でな」

 

そう言いながらハジメは魔力駆動二輪を一気に加速させ出発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

深月の後ろに乗っている皐月は自身の勘が良く当たる事は理解している。だが、今回は厄ネタばかりのそれに多少なりとも疑問に思っている。悪路を走り、カーブを曲がったり坂を跳ねたりとしている最中で深月に問いかける

 

「深月なら樹海の案内出来るかしら?」

 

「普通であれば大丈夫です。しかしここは異世界―――――――恐らく、樹海も反逆者達の生み出した物だと推測します。それを前提に考えれば、何かしらの制約が有ると思われます。例えば、亜人族との協力で迷宮に辿り付く等如何ですか?恐らく、お嬢様の勘はこれ以上の何かが有ると感じて反応したのだと私は考えます」

 

「そう。・・・なら、恩はタップリと売っておかなきゃ行けないわね!」

 

「命を助けられた者というのは、助けた者に依存する可能性があります。そこだけを改善させなければ返ってくることもありませんのでご注意を」

 

「戦闘訓練させるしか無いわよね・・・」

 

しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、ワイバーン?が二つの人影を襲おうとしているわね

 

(ハジメ、私が攻撃するから)

 

(分かったが・・・シュラーゲンだと過剰攻撃だと思うぞ)

 

(深月専用バイクの瞬間到達速度を調べるのも兼ねてよ。流石にシュラーゲンは使わないわよ)

 

ハジメと念話を終えた皐月は深月に全速力を出すように指示。それに了承した深月は一気に魔力を流し込み加速させる。まるで流星の如き――――――――バンピーな路面を利用してバイク毎ワイバーン擬きに突進し、すれ違い様に一体の頭部をドンナーで粉砕。残りの五体を皐月はバイクから飛び退きワイバーン擬きの群れの中心へ飛び込むと、コマの様に素早く回転しながらドンナーとシュラークで発砲

 

ドパパパパパンッ!!

 

乾いた炸裂音を立てて全てのワイバーン擬きの頭部を粉砕し終えた後、先に地上へと降り立ったバイクの後部座席へ着地した

 

「な、何が・・・」

 

「あのハイベリアが・・・一瞬で全滅?」

 

一体何が起こったのか理解出来ていないハウリア達

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

ハジメは後部座席に立って手をブンブンと振るシアをうっとうしく感じていた。凶器を頭の上に乗せられているので、重たいのなんの。いい加減、我慢の限界に来たハジメはシアの服を力強く掴んだ

 

「えっ?ハジメさん?何をするつもりですか?もう敵は居ないですよね!?」

 

「いい加減俺の頭の上から、その脂肪をどけやがれやあああああ!」

 

「いやぁあああーー!!」

 

高ーく放り投げられたシアの落下点は、ハウリア達の目の前。墜落して、またしても犬〇家の様な姿を晒してしまう残念ウサギであった。ハジメ達がハウリア達の側まで近づくと、丁度地面から頭を抜いたシアだった

 

「ぶはぁっ!うぅ~、私の扱いがあんまりですぅ。待遇の改善を要求しますぅ~。私もユエさんみたいに大事にされたいですよぉ~」

 

シアを投擲する事で更にボロボロとなった服は、正に申し訳程度の代物だった。ハジメは鬱陶しいと感じながらも、宝物庫から予備のコートを出してシアの頭に被せる。シアはキョトンとするが、コートと分かった瞬間ニヤッと笑いながらコートを着込む

 

「も、もう!ハジメさんったら素直じゃないですねぇ~、ユエさんとお揃いだなんて・・・お、俺の女アピールですかぁ?ダメですよぉ~、私、そんな軽い女じゃないですから、もっと、こう段階を踏んで『ドパンッ!』きゅん!?」

 

シアを撃ったのは皐月で、目が笑っていない様子を見たハジメとユエは小さな悲鳴を漏らした。絶対に怒らせてはいけない人――――――皐月と深月の二人だ。皐月が怒るのは珍しいと言う程、器が大きい。深月は一番怒らせてはならないのは言うまでも無いだろう

シアの妄想にイラッとした皐月だったのだ。何故か?シアはハジメの本妻がユエであると思っているからだ。一応自己紹介した時に説明はしていたのだが、等の本人は忘れ去っていたのだろう。それが皐月を怒らせるのに十分な物だった

 

「ねぇウサギさん。ハジメの正妻は誰か理解しているのかしら?」

 

「ユ、ユエさんです『ドパンッ!!』ぶぎゃあ!?」

 

「自己紹介の時に説明した筈なんだけどなぁ~。もう忘れたのかしら?」

 

「ヒィッ!?す、すすすスミマセンでしたあ!!」

 

「だから、残念ウサギって呼ばれるのよ。次に巫山戯た事を言うのであればその耳を引きちぎるわよ?」

 

「言いません!もう言いません!本妻は皐月さんと心に刻み込みますのでゆるしてくだざいいいいいい!」

 

皐月は気が済んだのか、ハジメの側に行き腕に引っ付いた。それだけで、不機嫌だと言うのが目に見えて分かる

シアは「ホッ」とため息を吐くが、怒っているのはもう一人居る。ポンッとシアの肩に手が乗せられた。振り返った先に居たのは、ニコニコと笑っている深月だが背後に死神が佇んでいると錯覚させる程で

 

「お嬢様が次回は耳を引きちぎると仰っていましたが、本当に次回はありませんよ?もしも次回があるなら、私が貴女をダルマにして貴族にでも売って差し上げます」

 

「ピィッ!?」

 

想像しなくてもヤバイと十分理解出来る。シアは、深月に向けられた威圧に悲鳴をもらした

シアを放置してハジメ達三人は助けたハウリア達の側まで行き、現状報告の確認をする

 

「俺達はこの残念ウサギのお願いを聞いてお前達を助けた。報酬はお前達の命―――――――それに伴い、樹海の案内という事になっている」

 

「私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとは・・・父として、族長として深く感謝致します」

 

「まぁ、礼は受け取っておくわ。だけど、樹海の案内と引き換えという事を忘れないで?それより、随分あっさり信用するけど、亜人は人間族にはいい感情を持っていないと聞いているけれど?」

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから・・・」

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ハジメさんは、女の子に対して容赦ないし、対価が無いと動かないし、人を平気で囮にするような酷い人ですけど、約束を利用したり、希望を踏み躙る様な外道じゃないです!ちゃんと私達を守ってくれますよ!」

 

「はっはっは、そうかそうか。つまり照れ屋な人なんだな。それなら安心だ」

 

イラッとしてドンナーに手を伸ばそうとするハジメだが、違う方面からも援護が飛んでくる

 

「ハジメの内心は苛ついているけれど、感謝されて悪い気分じゃないって思っているから大丈夫よ」

 

「・・・ん、ハジメは照れ屋」

 

「皐月!?ユエ!?」

 

早く切り上げたいと感じているハジメだが、皐月とユエがハウリア達と話し始めている。もう打つ手は無いと感じられたが

 

「皆様方。世間話も宜しいですが、集団での行動は魔物を引き寄せると同義ですので早く移動をお勧め致します」

 

「あぁ、そうね深月。こんな話しは何時でも出来るわね」

 

「・・・ん。早く移動しないと」

 

(助かった・・・)

 

二人の尻に敷かれているハジメは、心の中で深月に感謝をする

 

(いえいえ、ハジメさんが困っているご様子でしたので当たり障りの無い提案をしただけですので大丈夫ですよ)

 

(!?)

 

考えている事はお見通しと言う深月である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

大人数での移動は魔物にとって好機に近しいですが全ては無駄に終わりました。私はお嬢様達と離れて、先に魔物狩りを行っています。本能で分からない魔物ばかりでため息しか出ませんね

 

一人の深月は格好の餌だと勘違いした魔物達が襲い掛かるが、全て無意味に終わった。周囲に張り巡らされた魔力糸の粘着によって、身動きを取れなくなった後に首を絶ち斬られているからだ。まるで、蜘蛛の巣に自ら飛び込んで行く虫の様な光景にため息も吐きたくなる。単純な作業を一通り終えた後、気配を溶け込ませて帝国兵達の居る場所へと到着して待機する。そうすると、階段を上りきったハジメ達の姿を確認。案の定帝国兵に絡まれていたので気配を溶け込ませたまま帝国兵達の背後に移動し終え、話の内容を聞き取る

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ!隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ?こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

弱肉強食の国家はゲスですね。精神が腐りきっています。弱いとはいえ、万が一にも逃げられてしまえばもっと面倒な事になります。網を張っておきm―――――――

 

「ん?おっほぉ~♪あの白髪の女、すっげぇ美人じゃねえか!おい坊主、そいつを寄越したらお前と男の兎人族は見逃してやるぞ?」

 

「ちょっ!?一番の上玉じゃないっすか!小隊長、ずるいですよぉ~」

 

「お前らにも味見させてやるから一番は我慢しろよ?」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長!話がわかる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつらは今何と言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、帝国兵の後ろから途方も無い殺気を放つ深月。突如現れた殺気に気付いた兵士達は後ろに振り向いて、深月を視界に入れた。そしてそれだけで兵士達の命運は決まった。ハジメ達も今までに無い殺気に身構えたが、それが深月からの物であると知り武器を納める。ハウリア達は恐怖からガクガクと震えている

 

「メイド・・・だと?」

 

「何でこんな所にメイドがいるんだ?」

 

最早深月に帝国兵の言葉は届かない。何故なら、下品で愚かしい物言いをしたのだから

 

お嬢様を犯す?その様な下劣な事を発する者は死あるのみです

 

「あ"ぁ"!?この人数を見て物を言ってんのかメイド!」

 

「いや、お前も上玉だな。なんだったら良い所に案内してやろうか?」

 

それは良いですね。案内してあげましょう

 

「それじゃあ早速あんな―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄へと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深月の言葉と同時に一人の帝国兵の首がゴトリと落下。一瞬の沈黙は吹き出る血と共に破れ、帝国兵達は武器を構えようと動こうとしたが

 

「な!?う、動かねぇだと!?」

 

「一体何が起こってるんだ!?」

 

「動かねぇ!動かねぇよぉ!!」

 

帝国兵達は深月の魔力糸によって絡まれて身動きできない状態となっていた。その様子を見ていたハジメと皐月とユエの三人は合掌をする。最早どうなるかは目に見えて分かるからだ

 

何故こうなったか分かりますか?分かる訳ありませんよね?貴方達は品性の無い獣ですから

 

深月が一歩一歩歩み寄るにつれて、一人、また一人と帝国兵の首が落ちて行く

 

「ひぃっ!?た、助けて!助けてくげぇ!?」

 

「死にたくない!死にたくなぎゅ!?」

 

「おい!お前ら、見ていないで助げぎゅ!?」

 

深月が小隊長と呼ばれた者の側に辿り付くと生き残っているのは唯一人となった

 

「捕まえていたハウリア達はどうされましたか」

 

「た、助けてくれたら話す!だから命だけは取らないでくれ!!」

 

「良いですよ?話してくれれば私はこの拘束を解き解放しましょう」

 

「多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから・・・」

 

そう言い終えた小隊長の拘束は解け、それを理解したと同時に脇目も振らずに走り出す。だが、地面へと転けたと同時に両足に襲い来る激痛に悲鳴を上げた。何故か?両足の膝から下が切断されていたからだ

 

「や、約束が違うだろ!?助けるって言っていたじゃないか!!」

 

「おや?私は拘束を解くとだけしか言っていませんよ?それに―――――――――お嬢様に対して暴言を吐いた貴方達を見逃す筈が無いでしょう

 

四肢を切断され、地を這うダルマと化した帝国兵にトドメの言葉を投げつける

 

「捕らえた兎人族の一部を殺したのです。殺って良いのは殺られる覚悟のある人だけですよ」

 

トドメの首を切断し終えた深月は「ふぅ」と一息入れ、何事も無かったかの様にハジメ達へと近づく

 

「全く、お嬢様と事を致して良いのはハジメさんだけです!」

 

プンプンと怒っている深月。皐月達は「まぁまぁ」と言いながら宥めて落ち着きを取り戻させて行く。しかし、恐怖から深月に対して負の感情を露わにしているハウリア達にユエが一言

 

「・・・守られているだけのあなた達がそんな目を深月に向けるのはお門違い」

 

事実を言われてハウリア達はバツ悪そうな表情をしている

 

「ふむ、深月殿、申し訳ない。貴女に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな・・・少々、驚いただけなのだ」

 

「いえいえ気にしていませんよ。兎人族は温厚と前知識が御座いますので、争い事を嫌う事は理解しております」

 

深月は気にしていませんと手を振る。ハジメ達は無傷の馬車や馬のところへ行き、魔力駆動二輪を馬車に連結させて一行は樹海へと進路をとった。これで半日程掛かりそうな道のりを大幅に短縮する事に成功したのであった

因みに、帝国兵達の死体は谷底に落として血溜まりは深月の清潔にて掃除されたのである

 

 

 

 

 

 

 




布団「ふ、復活するんだよ~」
深月「豆腐メンタルでよく復活出来ましたね」
布団「まだだ、まだ終わらんよ!」
深月「赤い〇星ネタは要りません」
布団「・・・・・そ、そんな事よりもアンケートだぁ!」
深月「っ!そうです!すっかり忘れる所でしたよ!何故私関連のアンケートじゃないのですか!?」
布団「何時からイチャイチャアンケートと錯覚していた?」
深月「巫山戯ないで下さい!」
布団「前回の後書きをよ~く思い出して下さい?作者が、何時、イチャイチャアンケートをすると宣言している?してないよね?」
深月「 」
布団「是非も無いよね!」
深月「乙女心を弄ばないで下さい!」
布団「それはあっちに置いておいて、接戦していますねぇ」
深月「置かれるのですか。・・・はい、そうですね。見事に別れています」
布団「ヒャッハー!メイドさんが増えるかも?」
深月「作者さんの暴走も放置しておきましょう。・・・感想、評価、お気軽に宜しくお願いします」
布団「テンション上げて行くぜー!」
深月「と、この様に感想が来るとテンションが上がる謎の作者さんです。アンケート期間は――――――次話投稿と同時に締め切りとの事です。ご注意下さい」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドの料理は全てが美味しい訳では無い

布団「お待ちどぅ!」
深月「今回は早いですね?どうかされたのですか?」
布団「ちょっと忙しくなるかもだから早めの投稿だよ!」
深月「不定期投稿ですね」
布団「不定期じゃ無いよ!?一週間に一話位のペースだよ!?」
深月「なら、私とお嬢様のイチャイチャアンケートを早くして下さい」
布団「まだ駄目だぁ!」
深月「ならば作者さんのキーボードを占拠します!」
布団「布団から占拠だと?笑わせる!PCを布団の隣に置けば不可能だああああ!」
深月「・・・まぁ、冗談はこの辺りに致しましょう」
布団「(・ω・)セヤナ」
深月「度々寄せられる誤字報告にとても感謝しています。有り難う御座います」
布団「誤字脱字の多い作者さんなんです(。・ω・。)ユルシテ」
深月「この様な茶番もお仕舞いにして次へ行きましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」


~ハジメside~

 

俺は変わったな。深月の手で帝国兵全てが蹂躙された時に何も感じなかった。ただ、目の前で人が死んでいる光景はその程度としか感じられなかった。オルクスでの出来事は、俺にとてつもない変化をもたらしたのだと改めて実感させられた

 

「ハジメ。気が付いた?」

 

「あぁ、皐月もそうだろう?」

 

「えぇ。・・・価値観がもの凄く変化したと言えば良いのかしら。多分だと思うけど、人を殺しても何も感じないと思うわ」

 

「だな」

 

オルクス迷宮で変ったと自覚があったが、ここまでの変化しているとは思ってもいなかった二人。深月による殺戮を目の前にしても、「人が死んだ」唯それだけしか感じなかったのだ。変る以前のハジメ達であれば確実に吐いていただろう

 

「まぁ、この世界は弱肉強食だ。弱い奴は死ぬ―――――それだけだ」

 

「そうね。少なくとも、こっちの世界ではそれが常識。人を殺したとしても後悔なんてしないわよ」

 

「弱かった事を恨め―――――ってな」

 

「でも、無関係の人を巻き込みたくないわ」

 

俺達はオルクス迷宮で価値観がガラリと一変したが、それはあくまでも殺意を向けてきた相手に対してだ。全くの無関係な奴らまで殺すのは狂人の類・・・獣と同じだ

因みに、人殺しを躊躇わないかどうかの確認と人間相手にドンナーで撃つと周囲被害がどうなるのかを確認したかったのが一番の本音だけどな。まぁ、人殺しを直に見ても何も感じなかったから躊躇いなく撃てるがな

 

心配そうにハジメと皐月を見るユエの視線に気付く

 

「・・・二人共・・・大丈夫?」

 

「大丈夫よ。以前と価値観が変った事に驚いただけよ」

 

「人殺しとは無縁の世界で生きてたからな。帝国兵の殺戮を見ても何も感じなかったから自分が殺してもどうも思わねえよ」

 

「・・・そう」

 

少しだけ沈黙して重い空気となるが、残念な人物は何時だって居る

 

「あの、あの!ハジメさん達の事、教えてくれませんか?」

 

「俺達の事は説明しただろう?」

 

「いえ、能力とかそういうことではなくて、何故、奈落?という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、お二人自身の事が知りたいです」

 

「一応聞いておくが、どうするつもりだ?」

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。・・・私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で・・・もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが・・・それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして・・・だから、私―――――」

 

「あぁ、同族みたいで嬉しいって事ね。浮いた存在で、周りに迷惑を掛けた~、という事でしょう?」

 

「うぅ・・・そうです。皐月さんの言う通りですぅ」

 

「別に話しても良いぞ。特段隠す事でも無いからな」

 

ハジメ達が召喚までに体験した経緯とユエがどうして封印されていたのか、全てを語り始めた結果――――――

 

「うぇ、ぐすっ・・・ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんも皐月さんもユエさんもがわいぞうでぶぎゃぁ!?あ、はい・・・深月さんも含みますです。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて・・・うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

深月は強いので可哀想では無いと判断してシアだが、深月が後ろを振り向かずに投擲した小石を顔面に直撃して付け加える事で追撃は来なかった。だが、滂沱の涙を流して濡れた顔をハジメの外套で拭うのは如何な物かと。・・・しばらくメソメソしていたシアだが、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言

 

「ハジメさん!皐月さん!深月さん!ユエさん!私、決めました!四人の旅に同行していきます!これからは、このシア・ハウリアが陰に日向に皆様を助けて差し上げます!遠慮なんて必要ありませんよ。私達は五人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

 

「「えっ・・・要らない」」

 

「・・・邪魔」

 

「残念な結果ですね」

 

「酷すぎますぅ!」

 

「現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ?完全に足手纏いだろうが」

 

「・・・さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている・・・厚皮ウサギ」

 

「な、何て冷たい目で見るんですか・・・心にヒビが入りそう・・・というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ」

 

「旅の仲間が欲しいだけでしょ。寂しがり屋の兎じゃあるまいし・・・」

 

「そもそも、俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。恐らく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない」

 

無情な宣告を告げてしばらくすると、一行はハルツィナ樹海と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい

 

「それでは、ハジメ殿、皐月殿、深月殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。皆様を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

ハジメ達はこのハルツィナ樹海そのものが迷宮ではないか?と考えていたのだが、冷静になって考えれば違う事に気が付いた。もしそうであるならば、奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人達が住める場所ではなくなってしまうからだ。そしてオルクス迷宮と同様に、真の入り口が有るのではないか?もしそうであるなら、カムから聞いた"大樹"が怪しいと踏んだ

カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた

 

「ハジメ殿、出来る限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

「ああ、承知している。俺達もある程度なら、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

「深月みたいに気配を隠す事は出来無いけどね?」

 

「・・・ん。・・・深月は暗殺者」

 

「もう何もツッコミませんよ」

 

ハジメと皐月は気配遮断スキルを、ユエは奈落で培った方法で気配を薄く、深月は何時も通り溶け込ませた

 

「ッ!?これは、また・・・ハジメ殿、皐月殿、出来ればユエ殿くらいにしてもらえますかな?そして深月殿は何処に?」

 

「ん?・・・こんなもんか?」

 

「完全では無くって事ね」

 

「いつもの癖で溶け込ませてしまい申し訳御座いません」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

 

身体スペックが低い代わりに聴力等の索敵関連に秀でているが、ハジメや皐月のレベルは達人級。深月に関しては、影が薄いクラスメイトの遠藤よりも上である。カムは、人間族でありながら自分達の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑い。隣では、何故かユエが自慢げに胸を張っている。シアは、どこか複雑そうだった。ハジメの言う実力差を改めて示されたせいだろう

 

「それでは、行きましょうか」

 

カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

ふむ、森に入って直ぐに濃い霧が発生し視界を塞ぎましたね。カムさんの足取りを見るに、迷いは全くありませんか。・・・これは亜人族限定の何か・・・渡り鳥の様な方位磁針を搭載しているといった所ですね。これは視界を頼りにせず、音の反響から場所を特定した方が早そうです。おや、魔物ですか・・・今回はハジメさんが動かれますか。ならば私は緊急時以外は特に動かない様に致しましょう

 

順調に進んでいたが、カム達が立ち止まり周囲を警戒し始めた。深月は三人の様子を観察していると気が付いていおり、ハジメが左手を素早く水平に振る。微かに、パシュという射出音が連続で響き―――――

 

「「「キィイイイ!?」」」

 

三つの何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえた。そして、慌てたように霧をかき分けて、腕を四本生やした体長六十センチ程の猿が三匹踊り掛かるも

 

「"風刃"」

 

魔法名と共に風の刃が高速で飛び出し、空中にある猿を何の抵抗も許さずに上下に分断する。その猿は悲鳴も上げられずにドシャと音を立てて地に落ちた。残り二匹は別れて別々の獲物として襲うが、再びハジメが左腕を振う事で二体の魔物の頭部に十センチ程の針が無数に突き刺り絶命させた

因みに、これはハジメの義手に仕込まれたギミックの一つ―――――ニードルガンである。ドンナー・シュラークの威力には全く及ばず、射程が十メートル程しか無いものの、静音性に優れ、針の種類・・・状態異常系の切り替えも出来る超便利な暗器の一種である

 

「あ、ありがとうございます、ハジメさん」

 

「お兄ちゃん、ありがと!」

 

ハジメは気にするなと手をひらひらと振り、カムを促して先へと急がせる。その後もちょくちょく現れる魔物もハジメと皐月とユエの三人で静かに片付ける。その様子をしっかりと観察する深月

 

やはりこの辺り一帯の魔物は、オルクス迷宮の魔物よりも弱いですね。迷宮にも難易度があるのでしょうか?次の迷宮を攻略しなければ何も分かりませんね。・・・あちらから獣の匂いがしますね。しかも複数。亜人種の可能性が大。と、なれば此処は静観する他無いですね

 

深月が複数の気配を感じ取った少し後、今までにない無数の気配に囲まれてハジメ達は歩みを止める。数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。ガサガサと草を掻き分けて出て来た者達

 

「お前達・・・何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。しかも周囲に数十人配置しており、殺気を滾らせながら包囲している

 

包囲されていますね。・・・お嬢様とハジメさんがどの様に行動するのかしっかりと見させて頂きます。そして、度が過ぎたならば注意するだけです。ですが、念には念を入れて行動に移りましょう

 

深月は誰にも気付かれない様に気配を溶け込ませて目の前に居る虎の亜人の後ろに立つ

 

「あ、あの私達は・・・」

 

「白い髪の兎人族だと?・・・貴様ら・・・報告のあったハウリア族か・・亜人族の面汚し共め!長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは!反逆罪だ!もはや弁明など聞く必要もない!全員この場で処刑する!総員かッ!?」

 

ドパンッ!!

 

攻撃の命令を出そうとした直後にハジメのドンナーが火を噴き、一条の閃光が虎の亜人の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばした。今まで体験した事の無い出来事に硬直し、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメと皐月を前にして足が後退った

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。それに、周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺達のキルゾーンだ」

 

「な、なっ・・・詠唱がっ・・・」

 

詠唱の声も無く攻撃された事実に驚愕を露わにする者達。不意に皐月は木の上へとドンナーの銃口を向けた。その先に居るのは隠れた亜人族、虎の亜人の腹心の部下がいる場所だった

 

「殺るというのなら容赦はしない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな・・・ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ」

 

(冗談だろ!こんな、こんなものが人間だというのか!まるっきり化物じゃないか!)

 

威圧感の他にハジメと皐月が殺意を放ち始める。あまりに濃厚なそれを真正面から叩きつけられている虎の亜人は冷や汗を大量に流しながら、ヘタをすれば恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込む。だがここで、制止の声が掛かる

 

「お嬢様、ハジメさん。これ以上この方達に威圧と殺意を向けるのを止めて下さい。迂闊に話す事が出来無くなっている状態です」

 

虎の亜人の背後から聞こえた声に、この場に居た亜人族全員が驚愕した。背後から声が聞こえた等の本人はゆっくりと後ろに振り向き、深月の姿を視認して身体を震わせながら大量の冷や汗を流している

 

(・・・あり得ない。一体何時から其処に居た!隠密に特化した者であろうと匂いで分かる!だが、この人間はいきなり其処に現れた!何をどうすればそれ程までに極まる!?)

 

殺気を発していない深月だが、虎の亜人は本能で理解した。飛び掛かれば細切れにされて死ぬと錯覚させる程だ。深月が手をパンッと叩くとビクッと身体を震わせたが、何も起こらない。ただ目の前に立っており、頭を下げた

 

「驚かせて申し訳御座いません。私達は樹海の深部、大樹の下へ行く為にこのハウリア達に道案内を報酬に命を助けました。貴方方に迷惑を掛けるつもりは無かったのですが、改めて謝罪致します」

 

「あ、あぁ・・・そうか。しかし、大樹の下へ・・・だと?何の為に?」

 

今まで見てきた人間に比べると謙虚で、誠実な者だと認識した虎の亜人。てっきり亜人を奴隷にするため等という自分達を害する目的なのかと思っていたら、神聖視はされているものの大して重要視はされていない"大樹"が目的と言われ若干困惑する。"大樹"は、亜人達にしてみれば樹海の名所のような場所に過ぎないのだ

 

「私達四人―――――あちらに居る白髪の男性と女性の二人と、金髪の女性と最後に私。七大迷宮の攻略を目指して旅をしております。本当の大迷宮への入口は大樹だと想定して動いております」

 

「本当の迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進む事も帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

 

「それはおかしいわ」

 

「あぁ、この樹海にいる魔物達は酷く弱いからだ」

 

「弱い?」

 

「そうよ。大迷宮の魔物は、どいつもこいつも化物揃いだったの。少なくともオルクス大迷宮の奈落はそうだったのよ」

 

「大迷宮というのは、"解放者"達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ?それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

 

「・・・」

 

虎の亜人は深月の謝罪から冷静さを取り戻しており、ハジメと皐月の言っている事を冷静に聞いている。普段ならば戯れ言と言って切り捨てているが、今まで出会った人間よりも違う事から真面目に考えている。この場で追い返そうものなら、この人間達は自分達を排除する可能性が少なからず有る。目的を果たさせれば無意味に命を散らす事も無いだろうと理解

ささと目的を果たして立ち去って貰いたいが、自分の一存で野放しにするわけにも行かない。この問題は完全に手に余ると判断し、リーダーであろうハジメでは無く、一番異質である深月に提案した

 

「・・・お前達が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

その言葉に、動揺する気配に気付く深月。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すということが異例だからだろうと直ぐに理解出来た

 

「周りが動揺しておりますが、本当に宜しいのですか?」

 

「一警備隊長の私如きが独断で下していい判断では無い。だが、本国に指示を仰ぐ。お前達の話も、長老方なら知っている方もがおられるかもしれない。お前達に、本当に含む所が無いというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

深月はハジメと皐月をチラリと一目見て頷く

 

「さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」

 

「無論だ。ザム!聞こえていたな!長老方に余さず伝えろ!」

 

「了解!」

 

ハジメと皐月はドンナーをホルスターに納めて待機する。深月は虎の亜人の背後から皐月の側に移動、戦闘態勢を解かれた状態を好機と判断した亜人が居たが、それは止められる

 

「奴らに攻撃はするな!こちらが何もしなければ向こうも何もしない!・・・もしも攻撃したら俺達は全滅すると思え!」

 

「俺達は向かってくる敵には一切容赦しないからよ~く理解しろよ?」

 

「・・・お前達が強いのは理解している。そして、一番異質な強さを持っているのはそこの銀髪の女だろう。確実にお前達二人よりも強いと断言出来る」

 

「お褒め頂き有り難う御座います」

 

「褒めていない。恐怖しているだけだ」

 

「深月は私達三人が束になっても勝てないからね?」

 

皐月の強調された言葉に呆然とする亜人達。待っている時間は退屈で、皐月がハジメとイチャついてとても甘~い空気になっている。ユエが少しだけ不機嫌になるが、皐月に招かれて一緒にイチャつき始めた。シアも「私もかまってください~」と良いながら突撃するが深月の容赦無い捕縛技術によって拘束、正座させて足の上に何時準備したのか分からない石板を積み重ねられていた

 

「ハジメさんに甘えて良いのは、お嬢様とユエさんだけですよ。貴女は万年発情兎ですか?」

 

「ち、ちがいますぅ~!構って欲しいだけです!お二人だけずるいじゃ無いですか!・・・・・ちょっと待って下さい深月さん。その巨大な石板を乗せるつもりなんですか!?乗せたら足が死んじゃいます!た、助けて下さい皐月さん!」

 

「ギルティ―――――やっちゃいなさい深月。発情兎にはお灸が必要よ」

 

「では遠慮無く乗せましょう」

 

「や、止め―――――――にぎゃあああああああああ!!」

 

周囲の亜人達は呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめていると、何かが近づいている気配がした。場に緊張が漂うも、深月によって追加された石板によって悲鳴を上げるシアの声が全てを台無しにさせていると、霧の奥から数人の新しい亜人族――――森人族(エルフ)が居たのだ

 

(は、ハジメ!エルフ!エルフが居る!!生エルフ!!)

 

(落ち着け皐月。エルフを見て感動するのは良いが、今はそれどころじゃないだろ)

 

(・・・皐月・・・落ち着く)

 

(・・・はい。落ち着きました)

 

様子を見ていたハジメと深月は、彼が亜人達の中心に立っていた事から"長老"と呼ばれる存在であると推測した

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね?名は何という?」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

 

ハジメの言葉遣いに憤りを見せるも、それを片手で制止させて彼も名乗り返す

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが・・・その前に聞かせてもらいたい。"解放者"とは何処で知った?」

 

「うん?オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」

 

「ふむ、奈落の底か・・・聞いたことがないがな・・・証明出来るか?」

 

「証明か・・・俺自身の強さじゃ駄目だからなぁ」

 

咄嗟に何も思い付かないハジメだが、皐月が素材やオルクスが身に着けていた指輪をと提案。ハジメはポンと手を叩き、"宝物庫"から地上の魔物では有り得ない質を誇る魔石をいくつか取り出して指輪と一緒に渡す

 

「こ、これは・・・こんな純度の魔石、見た事がないぞ・・・」

 

アルフレリックは少々驚いていたが、隣に居た虎の亜人は驚愕の余り声が漏れ出ていた

 

「なるほど・・・確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが・・・よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

前例に無い結論に、虎の亜人を筆頭に異を唱えて猛反対する亜人族。先程言った通り前例が無いのだ。今までフェアベルゲンに人間族が招かれた事など無かったのだから

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥めが、今度はハジメ達の方が抗議の声を上げた

 

「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ? 俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

 

「私達はさっさと迷宮を攻略したいのよ」

 

「いや、お前達。それは無理だ」

 

「なんだと?」

 

「え?」

 

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。・・・亜人族なら誰でも知っているはずだが・・・」

 

「何?」

 

「・・・なるほどねぇ~」

 

アルフレリックを初めとし、ハジメと皐月の二人がカムの方へと視線を向ける。そのカム本人はというと、「あっ」と声を漏らした。今まで気付かなかったのだろう・・・深月は空気を読んで準備を開始する

ハジメはというと、額に青筋を浮かべながらジト目で見る

 

「カム?」

 

「あっ、いや、その何といいますか・・・ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか・・・私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか・・・」

 

「忘れてたと言いたいのね?」

 

「ええい、シア、それにお前達も!なぜ、途中で教えてくれなかったのだ!お前達も周期のことは知っているだろ!」

 

「なっ、父様、逆ギレですかっ!私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って・・・つまり、父様が悪いですぅ!」

 

「そうですよ、僕たちも、あれ?おかしいな?とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって・・・」

 

「族長、何かやたら張り切ってたから・・・」

 

責任の擦り付けが始まった

 

「お、お前達!それでも家族か!これは、あれだ、そう!連帯責任だ!連帯責任!ハジメ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」

 

「あっ、汚い!お父様汚いですよぉ!一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

 

「族長!私達まで巻き込まないで下さい!」

 

「バカモン!道中の、ハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう!一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ!」

 

「あんた、それでも族長ですか!」

 

兎人族の情の深さは随一といわれているが、見ていられない・・・段々とハジメと皐月の苛立ちが増していく。そして、ハジメと皐月は一言呟く

 

「・・・ユエ」

 

「・・・深月」

 

「ん」

 

「土に埋める準備は出来ていますよ?」

 

ハジメの言葉に一歩前に出たユエがスっと右手を掲げ、皐月の錬成で掘られた穴の側に深月が居る。それに気がついたハウリア達の表情が引き攣る

 

「まっ、待ってください、深月さんユエさん!やるなら父様だけを!」

 

「はっはっは、何時までも皆一緒だ!」

 

「何が一緒だぁ!」

 

「深月殿、ユエ殿、族長だけにして下さい!」

 

「僕は悪くない、僕は悪くない、悪いのは族長なんだ!」

 

ギャアギャアと喚くハウリア達に薄く笑い、ユエは静かに呟く

 

「"嵐帝"」

 

『――――アッーーーー!!!』

 

天高く舞い上がるウサミミ達の声が、樹海に彼等の悲鳴が木霊する。同胞が攻撃を受けたはずなのに、アルフレリックを含む周囲の亜人達の表情に敵意は無かった。むしろ、呆れた表情で天を仰いでいる。彼等の表情が、何より雄弁にハウリア族の残念さを示していた

高ーく舞い上がり、皐月が掘った穴の中へと墜落。一人一人首だけが出る様に深月が支えて地面を埋める。全員の処理が完成した今、最大級のお仕置きが彼等を待っていた。深月が手に持っているのは、見るからにヤバそうな麻婆豆腐擬き。赤を通り越した真っ赤・・・マグマの様なそれは周囲に居た鼻の良い亜人達を全員ノックアウトさせていたのだ

 

「麻婆・・・うっ頭が・・・」

 

「食べるのは嫌だけど・・・この残念ウサギ達にはお似合いよ」

 

「・・・あれは毒物」

 

因みに三人はオルクスの拠点にて一口だけ食べた事があった。・・・いや、食べさせられたと言っても過言では無い。深月が美味しい美味しいと何事も無く食べていたので、興味を持った三人が一口食べてぶっ倒れてしまったのだった。毒耐性を貫いて襲い掛かる刺激だった為、深月が作る麻婆系は食べない事を決意したのであった

まぁ、そんな代物を手に持っているのだ。最早言うまでも無いだろう

 

「さぁ口を開けて下さい。大丈夫です。美味しいですよ?」

 

安心させる為に深月が一口食べて何事も無いと見せる。それに安心したカムは、先陣を切って深月が差し出すスプーンに乗せられた麻婆を一口―――――――――

 

「ッーーーーーーー!?」

 

「吐き出しては駄目ですよ?食材に感謝を込めて食べるのです。飲み込めないというのであれば手助けを致しましょう!」

 

カムの口を手で塞ぎ、顔を上に上げて鼻を塞いで強制的に飲み込ませた。そこからは、ガクガクガクと身体を震わせ「ゴアーーー!」や「グエエエーーーー!」等の奇声を発して、燃え尽きたかの様に沈黙する。少しの間の沈黙から回復して奇声を発して沈黙を繰り返す

 

「では、お次はシアさんですよ。口を開けて下さい。メイドのあ~んは希少価値がありますよ?」

 

「い、嫌です!死にたくない!死にたくなぶるえああーーーーーーー!!」

 

機械の様にせっせとハウリア達の口へ麻婆を放り込んで行く深月。全員に食べさせた後はお決まりの

 

「皆さんも食べますか?美味しいですよ?」

 

『要らんわっ!!』

 

「・・・そうですか。残念です・・・」

 

残っていた分は全て深月のお腹の中へと処理されました。こうして、ハウリア達の制裁は成されたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「あれ?メイドさんが食べている物体Xって・・・」
深月「有名処の飲食店料理を食べている時に出会った衝撃の一品です」
布団「・・・お店の名前は?」
深月「そこまでは覚えていないのですが――――」
布団(思い過ごしか)ホッ
深月「店内ポスターにて"泰山の麻婆神父直伝"と書かれていたのは印象に残っています」
布団「あっ・・・」
深月「神父が何故麻婆を伝えているのか理解出来ませんでしたが、食べてみれば別の景色が見えたのです!」
布団(違う景色でも地獄しか見えなさそうなんですけど・・・)
深月「辛いだけでは無いのです!もう一口、もう一口――――と欲求を沸かせるあの旨さを未だ再現出来ていないのです!!あ、作者さんも一口如何ですか?」
布団「ニゲルンダァ」
深月「逃がしませんよ!」
布団「フザケルナ!フザケルナ!バカヤロオオオオオオオ!  ヴェアアアアアアアアアアアアア!」
深月「どうですか?美味しいですよね?」
布団「  」チーン
深月「ゴホン。・・・感想、評価どうぞ宜しくお願い致します。投票の方は・・・・・よしっ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは進化し続ける

布団「誤字報告ありがとうなんですうううううう!」
深月「忙しい中頑張りましたね」
布団「作者のモチベは感想で出来ているんです!」
深月「おふざけもこの辺にしてパパッといっちゃいましょう」
布団「いつの間にかお気に入りが1000超えていた事に驚きを隠せない作者でした。そして読者の皆様!麻婆神父は宝石爺によってやって来た伝道者なんだ!」
深月「作者さんも麻婆を食べましょう?」
布団「そんな物を食べたら作者が失踪しちゃう」ガクブル
深月「モッキュモッキュ。では、処理も済みましたので行きましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」





~皐月side~

 

残念ウサギ共を制裁し終えた私達は、亜人達とフェアベルゲンへと歩いていると、霧が少しだけ晴れた一本の道が有って其処を辿っているわ。まるで霧のトンネル・・・道の端に誘導灯のように青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められてるわね。何かの境界線の様な物なのかしら?

私とハジメが結晶に注目している事に気が付いたのかアルフレリックが解説を買って出てくれた

 

「あれは、フェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落も、この水晶で囲んでいる。まぁ、魔物の方は"比較的"という程度だが」

 

「なるほど。そりゃあ、四六時中霧の中じゃあ気も滅入るだろうしな。住んでる場所くらい霧は晴らしたいよな」

 

「ふ~ん。・・・街の中は霧に覆われていないって事ね」

 

話しをしながら歩いていると、巨大な門が佇んでいた。太い樹と樹が絡み合ってアーチを作っており、其処に木製の十メートルはある両開きの扉が鎮座していた。天然の防壁は高さが最低でも三十メートルはあり、亜人の"国"というに相応しい威容を感じれた。門番の亜人族に合図を送り、重たそうな扉がギギギッと音を立てながらゆっくりと開いて行く。この間に突き刺さる様な視線は恐らく亜人族達だろう。前例の無い人間族の訪問は何かしらの一悶着を呼ぶのだが、それを察して長老自らが出て来たのであろう

門を潜ると、そこは別世界の様だった。巨大な樹が乱立しており、その樹の中を住居としているのだろうか――――ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人規模で渡れるであろう極太の樹の枝が絡み合い空中回廊を形成し、樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路まで存在していた。ハジメと皐月とユエの三人はその美しい街並みに見蕩れて、深月は生活風景を観察していると、ゴホンッと咳払いが聞こえた。どうやら、気がつかない内に立ち止まっていたらしくアルフレリックが正気に戻してくれたようだ

 

「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

「ああ、こんな綺麗な街を見たのは始めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だな」

 

「まるでお伽噺に出て来そうな光景・・・」

 

「ん・・・綺麗」

 

「私としては、亜人族の方々がどの様に生活しているのかを拝見したいですね」

 

ありのままの称賛。そこまで褒められるとは思っていなかったのか少し驚いた様子の亜人達。・・・やはり故郷を褒められたのが嬉しいのか、皆、ふんっとそっぽを向きながらもケモミミや尻尾を勢いよくふりふりしている。ハジメ達は好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を向けられながら、アルフレリックが用意した場所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

「・・・なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か・・・」

 

四人はアルフレリックと向き合い、オルクス迷宮で知った事を話していた。その他にも、迷宮を創り上げた解放者や神代魔法、故郷に帰る方法等諸々だ。アルフレリックから教えられた事は少なかったが、重要な点と言う事は間違い無いだろう。フェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟――――それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった

ハルツィナ樹海の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、迷宮攻略者の脅威を踏まえての口伝だった事が分かった。そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ

 

「解放者ハルツィナは心優しいわね。普通そういう事は伝えないと思うのに」

 

「本当にそうだな。だが、残虐な奴等には意味無いだろうがな」

 

「その様な者は目を見ずとも、雰囲気だけで分かるものだ」

 

「・・・気配が独特」

 

「ですが、問題が幾つか有りますね。口伝の中に含まれる"気に入った者"―――――恐らくこれが鍵でしょう。お嬢様の勘はこれに反応したのではないでしょうか?」

 

「そうよねぇ・・・やっぱりそうなるよねぇ・・・・・」

 

「あー。・・・迷宮に関してなのか?」

 

「予測ですが、ハルツィナ大迷宮を攻略する際に亜人族が必要かと・・・」

 

「マジかよ」

 

「確定ではありません。ですが、可能性は大きいかと思われます」

 

迷宮攻略の鍵は亜人族の可能性が出て来た事を知ったハジメは落ち込むが、皐月の一言でそれは吹き飛ぶ

 

「こうなったら最終手段よ。深月が徹底的に亜人族の一人を鍛えたら問題が全て解決するわ!」

 

「おっ、そうだな。生け贄を一人連れて行けば良いのか」

 

「・・・深月と特訓は地獄」

 

「アルフレリックさん。特訓してみますか?」

 

「い、いいや・・・遠慮させて頂く。歳には勝てんのでな。恐らく何処かが駄目になってしまう」

 

「話を変えまして―――――後程、亜人族の方々の生活風景を見せて頂けませんか?」

 

「私と一緒に行動してくれるのであれば構わないが・・・宜しいかな?」

 

「では、その様に」

 

ハジメとアルフレリックが今後の予定を確認し合おうと話し出そうとした時、階下が騒がしくなった。階下にはシア達ハウリア達が待機しているので、何かしらのトラブルが起きたのだろう。ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、同時に立ち上がって下へ降りて行くと、様々な亜人族達が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまるシアをカムが必死に庇っており、シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。ハジメ達に気が付いた熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言した

 

「アルフレリック・・・貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど・・・返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

「何が口伝だ!そんなもの眉唾物ではないか!フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

 

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 

「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか!敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

この亜人族の長老の方々は口伝を守らないのですか?もしや、アルフレリックさんの様な厳守派が珍しいのでしょうか?この流れから察するに強硬手段に出ますね。ハジメさんの前に出ておきましょう

 

誰にも悟られずに気配を溶け込ませて移動、そして案の定深月の予感は的中しており

 

「・・・ならば、今、この場で試してやろう!」

 

いきり立った熊の亜人が突如、ハジメに向かって突進した。余りにも突然の出来事に周りも、アルフレリックも反応が出来無かった。だが、熊の拳はハジメに直撃する事は叶わなかった。深月がいきなりハジメの目の前に居たことに驚愕した亜人族だが、熊の亜人はそんなもの知った事か!といわんばかりに、豪腕を振り抜いた

 

「力尽くでどうにか出来るとでもお思いですか?」

 

深月も動く。豪腕を受け止める為に左の掌で受け止めると同時に、右手を相手の胸部手前に突き出すと――――――相手がトラックに衝突したかの様に大きく吹き飛んだのだ。これには皆が唖然とした。壁を突き破る程の勢いで吹き飛んだ熊の亜人はそのまま下へと落下、様子を見るからにそれ程の怪我では無いのは間違いないだろう

 

「因みに、私からは攻撃していませんよ?」

 

「嘘だ!」と叫びたい一同だが、感覚の優れている亜人族は深月が攻撃していない事実は知っている。だが、何故熊の亜人が吹き飛ばされたのかが理解出来無いのだ。右手は胸部に当たらない程度で止めていた事を見ていた・・・だが、何かに飛ばされたのは事実だからだ

 

「答えは――――――攻撃の衝撃を相手にお返ししたからです」

 

『は?』

 

「私はオルクス迷宮での苦戦から学んだのです。受け流せないのであれば、返せばいいと!」

 

『いや、その発想がおかしい』

 

全くもってその通りである。深月の行ったことについて説明しよう!

左手で相手の攻撃を受け止めた時に生まれた衝撃を右手に流したのだ!人間の身体に限らず、生き物の身体は殆どが水分で出来ている。衝撃を気で包みこんで水の中を移動させて放出・・・深月といえど無理なのだが、この世界に転移した時に魔力の存在に注目を置いたのだ。「気だけで駄目なら魔力も使おう!」――――――気は身体の循環に充てて、魔力は衝撃を包む膜としたのだ。結果はご覧の通り。魔力で包み込んだ衝撃を、気の循環で放出したい場所へ素早く持って行きポイしちゃった!である

 

「万〇の杖じゃねぇぞ・・・」

 

「知識無しで此処まで出来るってぇ・・・」

 

「・・・もしかして魔法も対象?」

 

「魔法も試してみましたが、無理でしたよ?」

 

「・・・なら問題な――――」

 

「ですが、取り込んで纏う事は出来ました」

 

『  』呆然

 

「あっ、何時もの事なので気にしちゃ駄目よ?」

 

『何時もの事なのか!?』

 

いつも通り、意味不明な技術をいつの間にか体得しているのである。もう、「深月だから」という事で割り切った方が色々と楽なのだ

 

「で?お前らは俺の敵か?」

 

ハジメの威圧が全体に広がり、その言葉に頷く者は誰一人居ない

深月が熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックが執り成す事で威圧は解かれ戦闘・・・では無く、蹂躙劇を回避する事が出来たのは亜人族達にとって幸いだっただろう。熊の亜人は胸部を複雑骨折と足首の脱臼だけだった。深月は、吹き飛ばす際に魔力糸を片足に巻き付けていたからだ。もしも、地面に落下となればこれだけでは済まなかっただろう

現在、当代の長老衆がハジメと向かい合って座っていた。ハジメの傍らには皐月と深月とユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ?俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが・・・亜人族(・・・)としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう?あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

「こちらの仲間を倒しておいて、第一声がそれか・・・それで友好的になれるとでも?」

 

「え?何言ってるの?先に攻撃して来たあの熊さんを深月が返り討ちにしただけ。再起不能になって無いだけマシでしょ?ハジメが処理していたら、あれ以上の怪我になっていたのよ?」

 

「き、貴様!ジンはな!ジンは、いつも国の事を思って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは!しかし!」

 

「勘違いするなよ?俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。深月は俺を護る為の正当防衛だ。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ?なら、そこの所、長老のあんたが履き違えるなよ?」

 

「深月の攻撃というよりも、自分の攻撃が自身に返ってきただけよ。それをとやかく言われるのは間違いよ。話し合いの場で攻撃するなら普通寸止めするわよ?」

 

頭ではハジメと皐月の言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、二人はお人好しではない

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

長老衆は互いを視線でやり取りした後ハジメ達に代表としてアルフレリックが伝える

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さん達と敵対はしないというのが総意だ・・・可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。・・・しかし・・・」

 

「絶対じゃない・・・か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな・・・」

 

「それで?」

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「「えぇ・・・」」

 

ハジメと皐月はいかにも面倒くさそうな表情を浮かべる

 

「殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

「そうだ。お前さん達の実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちは分かるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のない物だ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

「・・・まぁ、私は別に良いわ。但し!再起不能になっても文句は言わせ無いわよ?私達は奈落で培った経験は、"敵対者は殺す"という事よ。四六時中狙われ続ける日々を送っていたから、"つい"殺っちゃっても文句は聞か無いわ」

 

しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

「いや、ハウリア達に道案内を任せているから要らねぇよ」

 

「そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

虎人族の言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ

 

「長老様方!どうか、どうか一族だけはご寛恕を!どうか!」

 

「シア!止めなさい!皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが?どうする?運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

こちらの要求を飲めと言外に伝えてくる虎人族。他の長老衆も異論は無いようだが、ハジメ達は特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せる事も無く、何でもない様に軽く返した

 

「お前、アホだろ?」

 

「な、なんだと!」

 

「そこのハウリア達は私達の物なのよ。彼等と契約した内容は、"大樹の元まで案内する事""その間は守る"という事なの」

 

「俺達は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。こいつらを奪うって事は、結局、俺達の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが」

 

ハジメは泣き崩れているシアの頭に手を乗せた。深月はほんの少しだけ皐月の雰囲気が悪くなった事を把握した

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら・・・覚悟を決めろ」

 

「ハジメさん・・・」

 

はぁ・・・ハジメさん。女誑しを此処でも発揮しますか。シアさんの心拍が僅かに上昇、そして落ち着きを取り戻しましたか・・・惚れましたねこのウサギは。まぁ、全てはお嬢様方が決める事ですので私は口を出しませんよ?但し、"口を出さない"だけです。今の立ち位置は、ハジメさんを狙うウサギですから

 

「本気かね?」

 

「当然だ」

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「何故、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

 

「・・・約束か。それならもう果たしたと考えても良いのではないか?峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう?なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう」

 

「問題大有りだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ・・・」

 

ハジメは一度、言葉を切って三人を見て、目が合うと僅かに微笑む。それに苦笑いしながら肩を竦めたハジメはアルフレリックに向き合い告げた

 

「格好悪いし、筋が通らねえだろ?」

 

ハジメ達に引く気がないと悟り、アルフレリックが深々と溜息を吐く。他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した

 

「ならば、お前さんの奴隷という事にでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰って来なかった者、奴隷として捕まった事が確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬ様に死亡と見なして後追いを禁じているのだ。・・・既に死亡と見なしたものを処刑は出来まい」

 

「アルフレリック!それでは!」

 

「ゼル。分かっているだろう。この少年達が引かない事も、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対する事になる。その場合、どれだけの犠牲が出るか・・・長老の一人として、その様な危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん!力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが・・・」

 

色々と面倒事が多いのですね・・・仕方がありません。妥協案を出しましょう

 

「口伝に従うのであればシアさんを見逃す程度気にしなくても宜しいでしょうに・・・」

 

「何?」

 

深月は魔力操作で纏雷を使い、指先にスパークを発生させる。長老衆は、その異様に目を見開いた。そして、詠唱も魔法陣も無く魔法を発動した事に驚愕を表にする

 

「私達四人は直接魔力操作を行う事が出来ますし、固有魔法も有しております。口伝では"それがどのような者であれ敵対するな"と申された筈です。掟に従うのであれば私達も含めてですので、そこに一人加わるだけです。落とし処としては十分だと思いませんか?」

 

長老衆は、顔を見合わせヒソヒソと話し始めた。そして、結論が出たのか、代表してアルフレリックが・・・それはもう深々と溜息を吐きながら長老会議の決定を告げる

 

「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする・・・以上だ。何かあるか?」

 

「いや、何度も言うが俺達は大樹に行ければ良いんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「・・・そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが・・・」

 

「気にしないでくれ。全部譲れない事とは言え、俺達の方こそ相当無茶言ってる自覚は有るんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難い位だよ」

 

ハジメは立ち上がり、呆けているハウリア達を促してこの場をさっさと離れて行く。少しばかりボーッとしていたハウリア達も気が付いたのか、ハジメの後を追う様に小走りで付いて行った。アルフレリックを含め、他の長老達は渋く、疲れた様な表情だ

最後にその場を離れようとした深月は、長老達に一言だけ忠告する

 

「本当に手を出さないで下さいね?ハジメさんがあの様に宣言されたのであれば、"死"を覚悟して下さい。私からの忠告はこれだけです」

 

ハウリア達の後ろにから付いて行く深月の背を見て、長老達は再び大きいため息を吐いた

 

念には念を入れて忠告しましたが、反応から察するに何人かは仕掛けて来そうですね。この数日の間でハウリア達の価値観を変えなければ、全滅するでしょうね

 

背中から伝わる不快感や憎悪の視線に、ため息を吐く深月。勿論、ハジメ達三人もこの視線に気付いている

フェアベルゲンから離れ、ハジメがさり気なく盗ん・・・貰ってきたフェアドレン水晶を使って、簡易的な拠点を作り一息ついているハウリア達にハジメは

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けて貰おうと思う」

 

切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた

 

この方達は本当に現状を理解出来ていないのですね・・・

 

ハジメの牙がハウリア達に襲い掛かるまで後少し――――――

 

 

 

 




布団「アンケートの時間だ!」
深月「私の願いが叶うのですね」ヤッター♪
布団「R-18アンケートだ☆」
深月「私の勝利は確定ですね♪」
布団「ま、まぁ・・・予想以上にって言うか・・・・・続きを所望されたというか」
深月「赤バーですからね。・・・何故に人気があったのでしょうか?」
布団「ありふれR―18が物の見事に少ないからじゃない?」
深月「あぁ成る程。・・・・・と、それは置いておきましょう」
布団「そ、そうだった!作者は頑張って書いていくよ!」
深月「感想、評価宜しくお願い致します。アンケートも宜しくお願い致します!」
布団(メイドさんの予想通りとはいかないけどねぇ~)
深月「何か仰いましたか?」
布団「イイエケフィアデス」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは観察するつもりです

布団「投稿だよー」
深月「全く!意味深回を二つも投稿するなんて何を考えているんですか!」
布団「筆が進んでしまったんだっ!」
深月「お気に入り件数が1400を超えていますよ作者さん!」
布団「(゚Д゚)エッ・・・イツノマニ」
深月「これは記念回を書きましょうと私に言っている様な物ですよ!」
布団「えぇ・・・。ま、まぁ?1500に行けばだけどぉ?期待しないでね♪」
深月「へぇ・・・・・そう言えば、アンケートの結果を言っていませんよね?」
布団「原作通りになったのさ・・・」
深月「作者さんの本音はどちらですか?」
布団「ケモナーメイドだったよ!」
深月「ザマァ無いですね!私とお嬢様のイチャイチャ回を出さなかったツケが回ってきたと思って下さい!」
布団「あ、あれはっ!読者達のアンケート結果なんだよぉ!」
深月「これもですよね?」
布団「ウワァアアアアアアアアアアアアアン!」
深月「作者さんはまた放置しまして、読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」










~皐月side~

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

ハジメの言葉を理解出来無かったのか、ハウリア達はポカンとした表情を浮かべている

 

「え、えっと・・・ハジメさん。戦闘訓練というのは・・・」

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ?ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

「な、何故、そのような事を・・・」

 

うわぁ・・・この残念ウサギ達は全然理解していないわ。危機感を感じていないなんて本当に頭大丈夫かしら?

 

「何故?何故と聞いたか?残念ウサギ」

 

「あぅ、まだ名前で呼んでもらえない・・・」

 

「いいか、俺がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前等は考えているのか?」

 

ハジメの言葉にハウリア族達が互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振っているわね。・・・不安から逃げる様に頭の隅へと追いやったのね。まぁ、温厚な種族って知ってたからこうなる事は予測済みね。・・・でも、現実逃避ばかりしていたら何も変らないし、変えられない。

 

「まぁ、考えていないだろうな。考えた所で答えなど無いしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れる事しか出来ない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」

 

『・・・』

 

ハジメのド正論の言葉に、ハウリア達は暗い表情で俯く

 

「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護も無い。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙って来る。このままではどちらにしろ全滅は必定だ・・・それでいいのか?弱さを理由に淘汰される事を許容するか?幸運にも拾った命を無駄に散らすか?どうなんだ?」

 

「そんなものいいわけがない」

 

「そうだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなれば良い。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すれば良い」

 

「・・・ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族の様な強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません・・・とても、そのような・・・」

 

兎人族は弱いという常識が彼等を支配している。どうやっても勝てないと思い込んでいるのだ

 

「はぁ・・・見てられないわね。良い?私達だって最初からこんなに強かったわけじゃ無いのよ?」

 

「俺達二人はかつての仲間から"無能"と呼ばれていたぞ?」

 

「え?」

 

「"無能"って言ったのよ"無能"って。ステータスも技能も平凡極まりない一般人で私はハジメよりも弱かったわ。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達からは"無能""深月無しでは何も出来ない"と呼ばれていたのよ。実際、その通りだったし・・・」

 

皐月の告白にハウリア族は例外なく驚愕する。ライセン大峡谷の凶悪な魔物を苦もなく一蹴したハジメと皐月の二人が"無能"で"最弱"など誰が信じられるというのか

 

「因みに私も最初から強かったわけではありませんよ?子供の時から死に物狂いで獲得した強さですから」

 

「「深月はこの世界に来てからはチートだろ(でしょ)」」

 

「酷いですよお嬢様、ハジメさん!八歳の時に戦闘訓練、九歳からは未知の生物たちが蔓延る人工島に着の身着のままで放り出された結果なのですよ!?」

 

「「それで生きていた深月がおかしいんだよ(のよ)」」

 

「・・・深月は化け物」

 

「私はメイドです!」

 

「・・・ん"んっ!ま、まぁこの様に、最初は誰しもが弱いという事は変わりないわ。深月を除いて。追い込みに追い込んだ結果が私達―――――死に物狂いでやれば大抵の事は出来る筈よ」

 

「皐月の言う通りだ。奈落の底に落ちて俺達は強くなる為に行動した。出来るか出来ないか何て頭に無かった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てを賭けて戦った。・・・気がつけばこの有様さ」

 

ハジメ達から淡々と語られる内容は壮絶、その内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。ハウリア達よりも低スペックな一般人ステータスで、ライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。追い込みに追い込んだ結果、最弱であろうとも、生き残る為に強者へと挑む精神の異様さにハウリア達は戦慄した。もしも、自分達なら―――――と想像すると、絶望して諦め諦観と共に死を受け入れただろう

 

「お前達の状況は、かつての俺達と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭無いからな。残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合って過ごせばいいさ」

 

自分達の視線の先には真っ暗闇の場所へと入り込む様な物だ。ハジメ達の様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難である。黙り込み顔を見合わせるハウリア族だが、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった

 

「やります。私に戦い方を教えてください!もう、弱いままは嫌です!」

 

一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因で、何も出来ずに唯朽ち果てるのはゴメンだ――――そんな運命は嫌だと、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。シアの覚悟は決まった。優しい心を持ったシアの様子を唖然として見ていたカム達ハウリア達は、また一人、また一人と、地面から立ち上がった。男だけで無く、女子供も含めた全てのハウリア達が立ち上がってカムが代表として一歩前へ進み出た

 

「ハジメ殿・・・宜しく頼みます」

 

言葉は少なく小さいが、言葉には確かに意志が宿っていた

 

「分かった。覚悟しろよ?あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出した奴を優しく諭してやるなんて事はしないからな。おまけに期間は僅か十日だ・・・死に物狂いになれ。待っているのは生か死の二択なんだから」

 

「どれ程の覚悟か見させて貰うわよ」

 

ハジメと皐月はハウリア達に錬成の練習用に作った装備を彼等に渡して、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた"合理的な動き"を叩き込みながら、実戦を積ませれば大丈夫だと思っていたのだ。奇襲と集団戦―――――ハウリア達の強みを活かした索敵能力と隠密能力ならばと

だが、現実はそう上手くはいかない。訓練開始から二日目。ハジメと皐月の額には青筋が幾つも浮き出ており、ヒクヒクと頬を痙攣させている。何故か?

魔物の一体に、ハジメ特製の小太刀が突き刺さり絶命させる。それまでは良いのだが・・・

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!それでも私はやるしかないのぉ!」

 

瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか・・・当然の結果だな・・・」

 

「族長!そんな事言わないで下さい!罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです!いつか裁かれるとき来るとしても、それは今じゃない!立って下さい!族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達・・・そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)の為にも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

これにはもう、ハジメも皐月もイライラが爆発した

 

「だぁーーー!やかましいわ、ボケッ!魔物一体殺すたびに、一々大げさなんだよ!何なの?ホント何なんですか?その三文芝居!何でドラマチックな感じになってんの?黙って殺れよ!即殺しろよ!魔物に向かって"彼"とか言うな!キモイわ!」

 

「敵は即殺しなさいよ!何?何なの!?そんなに他者の命が大切なの!?自分の命と相手の命とどちらが大切か位分かりなさいよ!しかも相手は魔物でしょ!害獣でしょ!」

 

ハジメと皐月の怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても・・・」とか「だっていくら魔物でも可哀想で・・・」とかブツブツと呟くハウリア達。二人の額に青筋が更に増える。二人の様子を心配したのだろうか、ハイベリアに喰われそうになっていたところを間一髪皐月に助けられた男の子が近づく。しかし、進み出た少年はハジメに何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた

 

「?どうした?」

 

「刃物でも落ちてたの?」

 

だが、心配は無意味だった

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって・・・良かった。気がつかなかったら、潰しちゃう所だったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

 

「お、お花さん?」

 

「  」(絶句

 

「うん!ハジメ兄ちゃん、皐月姉ちゃん!僕、お花さんが大好きなんだ!この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さない様にするのが大変なんだ~」

 

ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている中、ハジメがポツリと囁く様な声で質問をする

 

「・・・時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは・・・その"お花さん"とやらが原因か?」

 

時偶、妙なタイミングで歩幅や立ち位置を変えたりとしていたハウリア達。二人は次の動作の為の行動だと思っていたのだ

 

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

 

「はは、そうだよな?」

 

「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まない様に避けますがね」

 

その言葉と同時に二人の表情が抜け落ちた。ハジメはゆら~りゆら~りと揺れ始めながらゆっくり少年のもとに歩み寄ってニッコリと笑う。少年もニッコリと笑みを返した。そしてハジメは、笑顔のまま眼前の花を踏み潰した。踏んだ後もグリグリと踏みにじる

 

「お、お花さぁーん!」

 

「は、ハジメど『ドパンッ!』ッ!?」

 

カムが仰け反る様に吹き飛び、少しの間だけ宙を舞った。そして、ポトリと落ちる非致死性のゴム弾――――皐月は、気絶して白目を向いて倒れるカムに近寄り、今度はその腹を目掛けてゴム弾を撃ち込む

 

ドパンッ!

 

「はうぅ!」

 

ウサミミおっさんが地面にへたり込んでいるシュールな光景を無視してハジメは宣言した

 

「貴様らは薄汚い"ピッー"共だ。この先、"ピッー"されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ!今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ!貴様ら全員"ピッー"してやる!分かったら、さっさと魔物を狩りに行け!この"ピッー"共が!」

 

ハジメに合わせる様に皐月は、ハウリア達に向けて発砲を開始。ハジメも懐からドンナーを取り出す

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

蜘蛛の子を散らす様に森へと逃げて行くハウリア達を追いかける皐月。足元で震える少年は、ハジメに必死で縋り付く

 

「ハジメ兄ちゃん!一体どうしたの!?何でこんな事するの!?」

 

ハジメは周囲に咲いている花に発砲して、全てを散らして行く

 

「何だよぉ~、何すんだよぉ~、止めろよぉハジメ兄ちゃん!」

 

「黙れ、クソガキ。いいか? お前が無駄口を叩く度に周囲の花を散らしていく。花に気を遣っても、花を愛でても散らしてく。何もしなくても散らしていく。嫌なら、一体でも多くの魔物を殺してこい!」

 

再び花を撃ち抜いてくハジメ。少年は「うわ~ん」と泣きながら樹海へと消えて行き、それ以降、樹海の中に"ピッー"なる単語と、笑いと、悲鳴が入り交じった声が鳴り響く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

お嬢様達の方からは色んな声が聞こえてきますね。ズガンッ!ドギャッ! 悲鳴と笑いや・・・"ピー"用語・・・ガキッバキッバキッ! ハー〇マン方式で心を一から鍛え直すつもりですか。ドグシャア! 因みに、私は今ユエさんとシアさんの戦いの様子を見ています

 

「でぇやぁああ!!」

 

「・・・"緋槍"」

 

砲弾に見立てた大木は燃やされてじり貧状態ですね。

 

「まだです!」

 

「ッ!"城炎"」

 

今までと同じ攻撃パターンに変化を入れて意表を突く。それに見事に引っ掛かったユエさん・・・後程二人纏めて相手取りましょうか

 

ユエは背後から深月の視線を浴びながら戦っているが、ちょっとした油断を見せれば背筋に悪寒が感じられる。とてもやりにくいし、緊張するのだ

丸太を蹴って粉砕した事で、散弾と化した攻撃を炎の壁で防がれシアの攻撃はユエには届かなかった。しかし

 

「もらいましたぁ!」

 

「ッ!」

 

気配を断って背後に移動したシアの手には、超重量級の大槌が握られており、豪風を伴って振り下ろされた

 

「"風壁"」

 

砕かれた大地の破片や風圧を風の壁で防ぎ、攻撃直後の隙を見逃さずに追撃を掛ける

 

「"凍柩"」

 

「ふぇ!ちょっ、まっ!」

 

シアが待ったを掛けるが、問答無用に発動された魔法は頭だけを残して全身氷付けにされたのだった

 

「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

 

「・・・私の勝ち」

 

「うぅ~、そんな~、って、それ!ユエさんの頬っぺ!キズです!キズ!私の攻撃当たってますよ!あはは~、やりましたぁ!私の勝ちですぅ!」

 

「・・・傷なんて無い」

 

「んなっ!?卑怯ですよ!確かに傷が・・・いや、今は無いですけどぉ!確かにあったでしょう!誤魔化すなんて酷いですよぉ!ていうか、いい加減魔法解いて下さいよぉ~。さっきから寒くて寒くな・・・あれっ、何か眠くなってきたような・・・」

 

「ユエさんの負けで、シアさんの勝利です」

 

全身氷付けのままで言われてもちっとも嬉しく無いのだが、深月の熱量操作であっという間に氷は溶かされて元通りとなった

 

「ユエさん。私、勝ちました」

 

「・・・・・ん」

 

「約束しましたよね?」

 

「・・・・・ん」

 

「もし、十日以内に一度でも勝てたら・・・ハジメさんとユエさんの旅に連れて行ってくれるって。そうですよね?」

 

「・・・・・ん」

 

「少なくとも、ハジメさんに頼むとき味方してくれるんですよね?」

 

「・・・・・・・今日のごはん何だっけ?」

 

「ちょっとぉ!何いきなり誤魔化してるんですかぁ!しかも、誤魔化し方が微妙ですよ!ユエさん、ハジメさんの血さえあればいいじゃないですか!何、ごはん気にしているんですか!ちゃんと味方して下さいよぉ!ユエさんが味方なら、七割方OK貰えるんですからぁ!」

 

シアはユエと約束していた。それは、シアがユエに何かしらの一撃を加えればハジメ達の旅に同行の説得をするという事

 

「・・・はぁ。わかった。約束は守る・・・」

 

「ホントですか!?やっぱり、や~めたぁとかなしですよぉ!ちゃんと援護して下さいよ!」

 

「・・・・・ん」

 

「何だか、その異様に長い間が気になりますが……ホント、お願いしますよ?」

 

「・・・しつこい」

 

渋々ではあるが、シアに勝ちを認めるユエ。シアは大層喜んでおり、ユエはハァとため息を吐いた所で肩に手が乗せられた。これから起こる事を全て察してのため息なのは言うまでも無い

 

「それでは、シアさんには訓練を含めユエさんとペアになって私と模擬戦をしましょう」

 

「え?」

 

「・・・シア。・・・本気でやる」

 

「えっ?えっ??」

 

「・・・早く。・・・二人で深月と戦う!」

 

「では、参ります」

 

「ひ、ひえぇえええええええーーーーー!こ、こうなったらやってやりすよおおーーー!」

 

無手での戦闘を開始する深月に対して、シアは大槌で迎撃してユエは魔法で狙撃。圧倒的な力を持っているシアは直撃は避けるだろうと想定していたのだろう。だが、思い出していただきたい。熊の亜人を吹き飛ばしたあのカウンターを

大槌を片手を突き出して受け止めようとする深月を見て、チャンスと思っていたのだろう

 

「ユエさん今ですぅうう!」

 

「・・・シア駄目!」

 

だが遅い。深月が大槌に触れた瞬間、深月の足下の地面が粉々に砕け散り、周囲に砕けた破片が飛び散る。ユエは防御では無く、シアの視界を確保する形での攻撃をする

 

「"緋槍"」

 

シアの目の前を通り過ぎる形で放たれ、視界を奪っていた土煙や破片は無くなった。深月は緋槍を数歩下がる形で避けており、シアから見れば絶好の距離に居るのだ。欲が冷静さを奪い去り一旦離れる事をせずに、攻撃へと移行してしまった

 

「うりゃあああーーーですーーーー!!」

 

「これでシアさんは脱落です」

 

大槌の側面を叩いて軌道をほんの少しだけずらし、目に指を突き入れる様に攻撃する。当然、シアは驚いて目を瞑りながら仰け反りながら避ける。動きがそれ以上取れなくなった隙を突いて顎先を掠める様に拳を当てて軽い脳震盪に陥らせる。僅かな思考の鈍りがトドメとなり、顎下を掴んで地面に叩きつけたのだ。先程の軽い物とは違って強烈な揺さぶりの緩急は、シアの意識を完全に断つには十分過ぎる一撃だった

 

「・・・・・見逃しては?」

 

「ユエさんも最低限の近接戦闘―――――護身を出来る様にしましょうね?」

 

ドンッ!と鳴り響く大地の割れる音と同時にユエの目の前に移動した深月。ユエは「ヒィッ!」と小さな悲鳴を上げた後、顎に僅かな衝撃を感じた瞬間に目の前が真っ暗になり意識を手放したのだった

 

「ふむ、一応私の姿を捉える事は出来たので収穫は有りですね。拠点での修行は何が起きたかすら分からない状態でしたが、確実に成長しておりますので少し安心です。二人を回収して、お嬢様達と合流致しましょう」

 

深月は倒れ伏したユエとシアを俵を担ぐ様に持ち上げ、悲鳴が聞こえる場所へと歩を進めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

ユエとシアを担いだ深月がハジメ達の元へと到着した時、ハジメと皐月はイチャイチャしていた。三人の気配に気が付いた二人は、ユエとシアの現状を見つつ率直な感想を述べた

 

「何でユエとシアが気絶してるんだ?」

 

「ユエがシアと戦ったとしても気絶する様な事は無いと思ったのだけれど・・・」

 

「試合はシアさんが勝ちました。ユエさんがワンパターンの攻撃を作業の様に対処している際に少し・・・」

 

「あぁ、攻撃方法を変えてビックリした所に一撃入っちゃった感じね」

 

「その後、ユエさんとシアさんと私の二対一で戦いました」

 

うわぁ・・・って事は、ユエ達は深月の攻撃で意識を無くしたって事か

 

ハジメと皐月は心の中で二人に合掌を送り、ユエとシアの戦いについて詳しく話しを深月から聞く。深月の観察から、シアの魔法適性はハジメ達と変わりが無い。しかし、身体強化系に特化しているとの事で

 

「恐らく最大値でハジメさんの五割~六割辺りだと思って頂ければ分かりやすいかと。そして、鍛錬次第で伸びると思われます」

 

「マジか・・・」

 

「十分、化け物レベルって事ね」

 

すると、先程まで気を失っていた二人が徐々に目を覚まし始めた

 

「・・・め、メイドが襲って・・・ウッ頭が・・・」

 

「うぅん。此処は一体何処ですか?」

 

ユエの反応は仕方が無いとしか言い様が無い。オルクスでの戦闘訓練で、何度も襲われていればトラウマとなるだろう。シアは徐々に意識が回復し、大分ハッキリとした所で耳をピンッと伸ばして一世一代の頼み事をする

 

「ハジメさん皐月さん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

 

「断る」

 

「まさかの即答!?」

 

考える間も無く拒否されるとは思っていなかったのか、驚愕の面持ちで目を見開いた

 

「ひ、酷いですよ、ハジメさん。こんなに真剣に頼み込んでいるのに、それをあっさり・・・」

 

「いや、こんなにって言われても知らんがな。大体、カム達どうすんだよ? まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

 

「ち、違いますよ!今のは私だけの話です!父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど・・・その・・・」

 

「その?なんだ?」

 

「その・・・私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって・・・」

 

「はぁ?何で付いて来たいんだ?今なら一族の迷惑にもならないだろ?それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

 

「で、ですからぁ、それは、そのぉ・・・」

 

皐月は察し、ハジメの袖を引っ張りボソボソと答えを告げる。それの少し後で

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!」

 

「・・・へぇ。・・・で?」

 

「ふぇ?」

 

「ふぇ?じゃねーよ!今までの流れで惚れるとかあり得ねーだろ!!」

 

実は皐月もユエも気付いていない。何処で惚れる場所があったのかは

 

「いえ・・・ハジメさん?あそこまで口説いておきながら気が付かないのですか?もしもそうであれば、とてつもない女誑しですよ」

 

「な・・・んだ・・・と・・・?」

 

「長老会議の時に言ってましたよね?」

 

皐月とユエはやり取りを思い出して、「あぁ・・・あの時か」と呟いた

 

「さ、皐月!俺はそんなフラグを建てた発言してないよな!?」

 

「・・・ごめん。これは擁護出来無いわ」

 

「・・・女誑し」

 

「俺はそんなフラグを言った覚えは無いぞ!?」

 

「いえ・・・『俺から、こいつらを奪おうってんなら・・・覚悟を決めろ』と言いましたよね?」

 

「あ、あぁ・・・そう言ったが?」

 

「それまでは、『俺達』と仰っていたのですが・・・シアさんを庇う様に言われたのがいけなかったと・・・・・」

 

ハジメは冷静に状況を考えて思い出して行く。そして、自分が逆の立場・・・はあり得ないとしても、似たような状況化でその発言をしたならば・・・

 

「俺って無自覚の女誑しだったのか・・・」

 

自身が何をやったのかようやく気が付いた様だ。皐月とユエは、ジト目でハジメを睨付けている

 

「そうですよ!そうですよ~!ハジメさんが私を護る様に壁となって立ち塞がった時は心が温かくなったのです~♪」

 

「俺は皐月とユエ以外どうでもいい!」

 

「大丈夫です!私のダイナマイトボディにてハジメさんを陥落させて正妻を勝ち取りますから~♪そうすると・・・いやんいやん♪」

 

体をくねくねとしながら妄想に耽るシア。だが、忘れないで下さい――――――正妻は皐月に決まっているのだ。そんな事を許さないのは三人である

 

「おい、残念ウサギのシア。正妻は私だけど、奪うというのなら連れて行かないわよ」ゴゴゴッ

 

「・・・皐月が正妻。・・・これは絶対」ゴゴゴッ

 

「ウサギさんにはお灸が必要ですね?」ゴゴゴゴゴッ

 

「ヒィッ!?」

 

今まで感じた事の無い威圧に悲鳴を上げるハジメと、自分の発言が、如何に愚かで無粋だったのかを改めて理解したシア

 

「で、でも!ユエさんは側室ポジで良いんですか!?納得しているんですか!?満足なんですか!?」

 

「・・・私は三人に助けられた。・・・それでもハジメが愛してくれるなら満足」

 

「み、深月さ―――――」

 

「お嬢様はハジメさんのご両親公認の仲ですよ?」

 

「・・・皐月さん」

 

「なぁに?」

 

「・・・・・許してくれたりは」

 

「愚かしい発言をした雌を調教しないとでも?」

 

「・・・ニ、ニゲルンデスゥ」

 

全力の身体強化で逃走を図るシアだが、皐月の錬成の方が早く、躓かせて首根っこを掴まれ二人に連行される形で森の奥へと姿を消した。少ししてから悲鳴が鳴り響いたのは言うまでも無いだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぁ深月」

 

「何でしょうか、ハジメさん」

 

「俺はどうなると思う?」

 

「精のつく料理をお嬢様とユエさんに作る予定です」

 

「俺の分は?」

 

「ありませんよ?」

 

ハジメに救いは無い

 

「ちくしょおおおおおおお!やってやるよおおおおおおおお!」

 

ハジメは皐月とユエとの夜戦が決定したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「ハウリア達生きてるの?」
深月「分かりません。お嬢様達の加減によるのでは?」
布団「ま、まぁそれはどうでもいいや!メイドさんとの訓練で吸血鬼さんが成長しているけど・・・」
深月「魔法無効化を所持した近接特化の魔物が現れたら危ないでしょう?」
布団「生存確率を上げている最中?」
深月「そうですね。目が徐々に慣れ始めているので、もう少し早くしても良いでしょう」
布団「頑張って・・・作者はこれしか言えない。それでは、今回はこの辺りで!」
深月「感想、評価宜しくお願い致します」
布団「毎回上がる誤字報告にとても助かっています(・ω・)b」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは大樹の元に到着です

布団「投稿しまする」
深月「UAが100,000を超えましたよ!イベントシーンを書いて下さい!」
布団「例えば?」
深月「お嬢様と私のイベントですよ!」
布団「それは以前書いたから別のでお願い」
深月「なっ!?」
布団「それよりも、前書きはこの辺りにしましょうや」
深月「・・・コホン。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」






~皐月side~

 

ふぅ、こんな所ね。この残念ウサギは、正妻の座を奪おうと発言したから当然の結果よ

 

「ヒッグッ、うっく・・・皐月さんがもの凄く怖かったですう・・・」

 

「・・・皐月が怒るのは当然」

 

ちょうk――――――もとい、シアに説教をし終えた皐月

 

「さてと、本題の旅に連れて行く事だけど・・・ユエを傷付ける程度には力があるから、妥協して許可してあげるわ」

 

「ほ、ホントですか!」

 

シアの正妻発言で有耶無耶になっていた事を掘り返す皐月。同行を拒否したのはハジメだけであって皐月は妥協しており、ユエに一撃入れたらシアを連れて行く事は何も問題は無いと思っていたからだ。シアはハジメをユエ以上に甘い皐月が説得してくれると宣言した事に喜んだ。拒否される可能性は限りなく低くなったからである

 

「本当よ。ハジメを説得してあげると言ったわ。但し!貴女には首輪を付けさせて貰うわよ」

 

「つ、付けます!付けますから、絶対にハジメさんを説得して連れて行って下さい!」

 

何故シアに首輪なのか―――――――シアは兎人族の中でもとりわけ珍しい容姿をしている為、街へ入ったら狙われる可能性が特大なのだ。それを、少しでも回避する為の首輪という訳だ

 

「ほら、さっさと立ってハジメの元に帰るわよ」

 

「うへへ、うふふふ~」

 

「・・・キモイ」

 

同行の説得をしてもらえると言うよりも、ほぼ確定した説得にクネクネと体を捩らせているシアの姿を見てユエの率直な感想が口から出る

 

「・・・ちょっ、キモイって何ですか!キモイって!嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ。何せ、皐月さんに甘々なハジメさんですよ?それを、皐月さん自らが説得してくれるんですよ!」

 

「・・・でも確定では無い」

 

「絶対に確定ですよ!」

 

シアとユエのやり取りを無視して皐月はハジメの元へと帰ると・・・・・

 

「聞け!ハウリア族諸君!勇猛果敢な戦士諸君!今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する!お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!最高の戦士だ!私怨に駆られ状況判断も出来ない"ピッー"な熊共にそれを教えてやれ!奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん!唯の"ピッー"野郎どもだ!奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ!生誕の証だ!ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

 

「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

 

「答えろ!諸君!最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「お前達の特技は何だ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「敵はどうする!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「そうだ!殺せ!お前達にはそれが出来る!自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

 

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

 

「いい気迫だ!ハウリア族諸君!俺からの命令は唯一つ!サーチ&デストロイ!行け!!」

 

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」

 

ハジメの号令に凄まじい気迫を以て返し、霧の中へ消えていくハウリア族達だった。これにはユエとシアがビックリしていた

 

「さ、皐月さん?み、皆さんの口調と雰囲気がもの凄く変っているんですが?」

 

「・・・誰?」

 

「ハウリア達よ?」

 

「父様達が別人になっちゃいました~!うわぁ~ん」

 

ショックの余り泣きべそを掻くシアは、踵を返し樹海の中に消えていこうとする。しかし、霧に紛れる寸前で小さな影とぶつかり「はうぅ」と情けない声を上げながら尻餅をついた。小さな影は転倒せずに持ちこたえ、倒れたシアに向けて手を差し出した

 

「あっ、ありがとうございます」

 

「いや、気にしないでくれ、シアの姐御。男として当然のことをしたまでさ」

 

「あ、姐御?・・・・・も、もしかしてパルくんなんですか!?待って下さい!ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ?君まで行かなくても・・・お姉ちゃんとここで待っていませんか?ね?そうしましょ?」

 

「姐御、あんまり古傷を抉らねぇでくだせぇ。俺は既に過去を捨てた身。花を愛でるような軟弱な心は、もう持ち合わせちゃいません」

 

ちなみに、パル少年は今年十一歳

 

「ふ、古傷?過去を捨てた?えっと、よくわかりませんが、もうお花は好きじゃなくなったんですか?」

 

「ええ、過去と一緒に捨てちまいましたよ、そんな気持ちは」

 

「そんな、あんなに大好きだったのに・・・」

 

「ふっ、若さゆえの過ちってやつでさぁ」

 

「それより姐御」

 

「な、何ですか?」

 

"シアお姉ちゃん!シアお姉ちゃん!"と慕って、時々お花を摘んで来たりもしてくれた少年の変わり様に、意識が自然と現実逃避を始めそうになるシア。パル少年の呼び掛けに辛うじて返答する。しかし、それは更なる追撃の合図でしかなかった

 

「俺は過去と一緒に前の軟弱な名前も捨てました。今はバルトフェルドです。"必滅のバルトフェルド"これからはそう呼んでくだせぇ」

 

 

「誰!?バルトフェルドってどっから出てきたのです!?ていうか必滅ってなに!?」

 

「おっと、すいやせん。仲間が待ってるのでもう行きます。では!」

 

「あ、こらっ!何が"ではっ!"ですか!まだ、話は終わって、って早っ!?待って!待ってくださいぃ~」

 

自分以外のハウリア達の変貌にがっくりと項垂れ、再びシクシクと泣き始めたシアは正に実に哀れを誘う姿だった

 

「・・・流石ハジメと皐月、人には出来ないことを平然とやってのける」

 

「いや、だから何でそのネタ知ってるんだよ・・・」

 

「・・・闇系魔法も使わず、洗脳・・・すごい」

 

「・・・正直、ちょっとやり過ぎたとは思ってるわ。けどね?」

 

「「反省も後悔も無い(わ)!」」

 

すすり泣くシアは、この二人に訓練させたのが間違いだったと後悔した。そして思った―――――完璧超人メイドの深月ならもっと上手く出来たのではないかと

 

「どうじで訓練は深月ざんじゃながっだんでずがあああああ!」

 

素晴らしい率直な感想。だが、深月が訓練をしなかった理由があるのだ・・・

 

「深月が訓練だと?」

 

「寧ろ私達の方が優しい部類の訓練よ」

 

「・・・深月は恐ろしい」

 

「下手すると・・・ハウリア達が潰れる可能性が大きかったからな」

 

「極限を超えた極限を引き出すだけですよ?」

 

深月の一言であぁ、これは駄目だと改めて感じたシアであった。皐月は何故ハウリア達が再び森の中へと姿を消したのか不思議だった

 

「でもおかしいわね。訓練は終わる時間だった筈だけど・・・?」

 

皐月達がハジメの元へ帰って来た時に命令が下されていたのだ。一体全体何があったのか分からない状態だった

 

「あぁ、そう言えば皐月達に説明していなかったな。実はな?完全武装した熊人族の集団が大樹へのルートを防ぐ様に待機しているとの報告があったんだ」

 

「そこで、ハウリアの方達がどうにかするとハジメさんに提案したのです」

 

「あぁ・・・成る程ね」

 

「ちょっ!?熊人族って冗談ですよね!?もの凄く強いんですよ!」

 

「大丈夫って言ってたから大丈夫じゃないか?」

 

「取り敢えず様子を見に行くか」

 

シアは駆けて、ハジメ達は歩いてハウリア達の所へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

私達がハウリア達の向かった先へと追いかけると、熊人族の死体が至る所にありました。そして、目先には大槌を持ったシアさんがハウリアの方達を説得しています。一方、ハジメさんとお嬢様は「やっちまった。殺人衝動の事を考えていなかった」と呟かれています。まぁ、仕方が無いと割り切って行動しましょう

 

ドパンッ!

 

「ぐわっ!?」

 

「なにドサクサに紛れて逃げ出そうとしてんだ?話が終わるまで正座でもしとけ」

 

此処はハジメさんとお嬢様に任せて大丈夫ですね。私はハウリアの方々にお説教でもしておきましょうか―――――お説教という名の躾をですがね?

 

ハジメ達が熊人族と交渉をしている最中にハウリア達の前まで移動して気配を現せた深月に、ギョッと目を剥くハウリア。ハジメが「貸し一つ」と熊人族に伝言したと同時に、魔力糸を全てのハウリア達の周りに配置して待機する。ハジメは俯いたまま、ゆらりゆらりと近づく。笑顔だが、目が笑っていない。シアは気が付いたのか、冷や汗をダクダクと流している。カムは、恐る恐るハジメに声を掛ける事に・・・

 

「ボ、ボス?」

 

「うん、ホントにな?今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった」

 

「い、いえ、そのような・・・我々が未熟で・・・」

 

「いやいや、いいんだよ?俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに・・・随分な反応だな?いや、わかってる。日頃の態度がそうさせたのだと・・・しかし、しかしだ・・・このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ・・・わかるだろ?」

 

「い、いえ。我らにはちょっと・・・」

 

ガクガクと体を震わせ始めるハウリア達・・・ハジメが完全に怒っている事に気が付いたのだ。ハジメが見渡すように端から端へと目を這わせて―――――

 

「今ですぅ!」

 

シアが一瞬の隙をついて踵を返し逃亡を図った。傍にいた男のハウリアを盾にすることも忘れない。だが、現実は無慈悲だ。深月が魔力糸を予め展開していた為、シアは蜘蛛の巣に掛かった獲物となった。そして、ハジメは動けなくなったシアに対して容赦なく引き金を引いた。―――――――お尻に向けて

 

「はきゅん!」

 

あまりの痛みに体をビクンッビクンッと痙攣させている。ハウリア達は一斉に逃げだそうとするが、全員がシアと同じ様に魔力糸に捕縛されてしまった

 

「ヒィッ!?ぼ、ボス!止めて下さい!」

 

「ぼ、ボス・・・その振り上げた手をどうするつもりですか・・・・・?」

 

「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」

 

一人一人に近づいて拳骨して行き、ハジメが近づくハウリアは涙を流しながら必死に懇願するが、その全てが無意味であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在ハジメ達は、カム達を先頭にして大樹の元へと向かっている。全員が真面目に索敵しており、表情は真剣だ。しかし、頭に大きなたんこぶを付けているので締まりの無い微妙な姿である

 

「うぅ~、まだヒリヒリしますぅ~」

 

「そんな目で見るなよ、鬱陶しい」

 

「鬱陶しいって、あんまりですよぉ。女の子のお尻を銃撃するなんて非常識にも程がありますよ」

 

「そういうお前こそ、逃げる際に隣にいたヤツを盾にするとか・・・人の事言えないだろう」

 

「うっ、ユエさんの教育の賜物です・・・」

 

「・・・シアはワシが育てた」

 

「では、ユエさんとシアさんは、後ほど私と二度目の組み手をしましょう」

 

「「え"っ・・・」」

 

「無論、ハジメさんとお嬢様も含めますよ?」

 

「「オワタ・・・」」

 

ドンヨリとした悲壮感を漂わせる四人

それからも、雑談をしながら歩く事おおよそ十五分。一行は遂に、大樹の元まで辿り着き一言

 

「・・・なんだこりゃ」

 

「・・・枯れてる」

 

驚きと疑問のといった感じだった。深月もユエも予想が外れていた感じで微妙に驚いていた。大樹は、フェアベルゲンみたいに木々のスケールが大きいバージョンを想像していた。だが、実際の大樹は・・・見事に枯れていたのだ

 

「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちる事はない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが・・・」

 

四人の疑問の表情を見てカムからの解説が入る。それを聞きつつ、ハジメ達は大樹の根元まで歩み寄るとアルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた

 

「これは・・・オルクスの扉の・・・」

 

「・・・ん、同じ文様」

 

「指輪と同じ紋様・・・此処が入り口で間違いなさそうね」

 

四人は何の変化も起こらない大樹に疑問に思いつつ、カム達に何か知らないかを聞くが答えは「分からない」との事。皐月は、ユエと一緒に石版の方を調べて気になる場所を見つけた。注目していたのは石板の裏側、文様に対応する様に小さな窪みが開いていた

 

「これって・・・オルクスが身につけていた指輪が嵌めれるんじゃないかしら?」

 

「ハジメ・・・来て」

 

「何か見つけたか?」

 

皐月が見つけた窪みについて聞いたハジメは、指輪をそこへ嵌めてみる。すると、石板が淡く輝きだしたのだ。何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まって来た。しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、文字が浮き上がった

 

"四つの証"

"再生の力"

"紡がれた絆の道標"

"全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう"

 

「・・・どういう意味だ」

 

「この迷宮を攻略する際に必要な鍵という事?」

 

「四つの証は迷宮攻略って分かるが・・・再生の力と紡がれた絆の道標ってのは」

 

「恐らくですが、後者の絆の道標は亜人族との協力でしょう。前者の再生の力は神代魔法の再生を司る力かと思われます」

 

目の前の枯れている樹を再生する必要があるのでは?と推測するハジメ。皐月も深月もユエも、そうかもと納得顔をする。つまり―――――

 

「はぁ~、ちくしょう。今すぐ攻略は無理ってことか・・・面倒くさいが他の迷宮から当たるしかないな・・・」

 

「ん・・・」

 

「シアは連れて行く予定だから・・・一つの条件は達成されたも同然ね」

 

「・・・この残念ウサギをか?」

 

「名前!?私の名前はシアですう!ちゃんと名前を呼んで下さいよ~」

 

シアの事は放置して皐月はハジメに提案していく

 

「連れて行く事にメリットの方が大きいからよ。もしも、他の迷宮も此処と同じ様に制限が有ると思うとね?ユエに一撃入れる事が出来たシアなら問題は無いと判断したのよ」

 

「・・・俺達は他の迷宮に関しても知らないからな」

 

皐月の提案を飲む事にしたハジメ。シアに家族との別れの挨拶を済ませておけとチラリと見て、そういう意図が含まれているのをシアは正確に読み取った

 

「とうさ「ボス!お話があります!」・・・あれぇ、父様?今は私のターンでは・・・」

 

ビシッと直立不動の姿勢を取ったカム

 

「あ~、何だ?」

 

「ボス、我々もボスのお供に付いていかせて下さい!」

 

「えっ!父様達もハジメさんに付いて行くんですか!?」

 

「我々はもはやハウリアであってハウリアでなし!ボスの部下であります!是非、お供に!これは一族の総意であります!」

 

「ちょっと、父様!私、そんなの聞いてませんよ!ていうか、これで許可されちゃったら私の苦労は何だったのかと・・・」

 

「ぶっちゃけ、シアが羨ましいであります!」

 

「ぶっちゃけちゃった!ぶっちゃけちゃいましたよ!ホント、この十日間の間に何があったんですかっ!」

 

ハジメと皐月は「はぁっ」とため息を吐いて一言

 

「「却下」」

 

「何故です!?」

 

「足手纏いだからに決まってるでしょ!」

 

「しかしっ!」

 

「調子に乗るな。俺の旅についてこようなんて百八十日くらい早いわ!」

 

「具体的!?」

 

必死に食い下がろうとするカム達にどうするか考えるハジメと皐月。拒否しても、無理矢理着いてきそうな雰囲気もあるので落とし処を考えるも思い付かない。皐月は深月に目配せして助けを求め、深月は頷く

 

「今の貴方方では足手纏いでしかありません。ですが、私達は再びこの大樹の元へ帰ってきますので、それまでにハジメさん達の部下として使える様に努力しなさい。そうすれば一考はして下さる筈です」

 

「・・・本当ですか?」

 

「あ~・・・使える様だったら部下として考えなくもない」

 

「・・・そのお言葉に偽りはありませんか?」

 

「ないない」

 

「嘘だったら、人間族の町の中心でボスの名前を連呼しつつ、新興宗教の教祖のごとく祭り上げますからな?」

 

「お、お前等、タチ悪いな・・・」

 

「そりゃ、ボスの部下を自負してますから」

 

頬を引きつらせるハジメ。皐月とユエがぽんぽんと慰めるようにハジメの腕を叩く。ハジメは溜息を吐きながら、次に樹海に戻った時が面倒そうだと天を仰ぐのだった

 

「では頑張って下さい。使えると判断しましたら―――――私が更なる訓練を付けて差し上げましょう

 

「お前達!やるぞ!!」

 

「「「「「「「「「「やるぞおおおおおおお!」」」」」」」」」」

 

「ぐすっ、誰も見向きもしてくれない・・・旅立ちの日なのに・・・」

 

傍でシアが地面にのの字を書いていじけているが誰も気にしていない悲しい現実だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海の境界でカム達の見送りを受けたハジメ、皐月、深月、ユエ、シアは再び魔力駆動二輪に乗り込んで平原を疾走していた。位置取りは前回とは違って、ハジメ、皐月――――ユエ、深月、シアの順番である。納得がいかないと頬を膨らませるシアだが、其処は深月クオリティーで黙らせる。ユエは文句も無い

ハジメと相席の初めてを譲ってくれた皐月の優しさと、正妻でありながらの器の広さから納得しているからである。シアはもう少しだけお淑やかになって、皐月に認めてもらえる様に頑張れば良いものをと思いつつそれは教えない。深月の肩越しからシアが質問する

 

「深月さん。そう言えば聞いていませんでしたが目的地は何処ですか?」

 

「シアさんには教えていませんでしたね」

 

「・・・私は知っている」

 

「わ、私だって仲間なんですから、そういう事は教えて下さいよ!コミュニケーションは大事ですよ!」

 

「・・・もう少し考える努力をしろ」

 

「次の目的地はライセン大峡谷です」

 

「ライセン大峡谷?」

 

「ライセンでも大迷宮があると噂されています。シュネー雪原は魔人族の領土ですので面倒事は避けたいのです。グリューエン大火山を目指す方が良いと思われますが、どうせなら西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら途中で迷宮が見つければお得でしょう?」

 

「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか・・・」

 

思わず、頬が引き攣るシア。ライセン大峡谷は地獄にして処刑場というのが一般的な認識で、つい最近では、一族が全滅しかけた場所でもあるので内心動揺する

 

「ライセン大峡谷は魔力を霧散させる場所から処刑場と名が付けられたそうです。ユエさんには天敵も良い所ですが、シアさんは身体強化に特化しているので影響無く動けるでしょう」

 

「・・・師として情けない」

 

「うぅ~、面目ないですぅ。と、ところで、今日は野営ですか?それともこのまま、近場の村か町に行きますか?」

 

「予定としては、食料や調味料関係を揃えたいと思っております。今後の為にも素材を換金してお金を手に入れる必要が有りますので町に行きます。前に見た地図が合っているのであれば、この方角の先に町があります」

 

深月は町での料理も気になるし、調味料と普通の食材を使った料理をしたいという点もあったのだ

 

「はぁ~そうですか・・・良かったです。ハジメさん達の事だから、ライセン大峡谷でも魔物の肉をバリボリ食べて満足しちゃうんじゃないかと思ってまして・・・ユエさんは三人の血があれば問題ありませんし・・・どうやって私用の食料を調達してもらえるように説得するか考えていたんですよぉ~、杞憂でよかったです」

 

「オルクス迷宮に居た時は食料が殆ど無かったからですよ。好き好んで魔物の肉を食べる事は致しません。何より、オルクス産の魔物よりも弱い魔物の肉を食べても技能が増える可能性は限りなく低いですから」

 

数時間程走り、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。ハジメと皐月の頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時の様な、"戻って来た"という気持ちが湧き出したからだ。ユエもどこかワクワクした様子。きっと、ハジメ達と同じ気持ちなのだろう

 

「そう言えば・・・この首輪、取ってくれませんか?何故か、自分では外せないのですが・・・」

 

「当たり前です。その首輪はお嬢様の特注ですよ?貴女は奴隷として入場させた方が厄介事も無いのですから」

 

「奴隷!?私って奴隷扱いなんですか!?ひどいですう~!」

 

「うるさい残念ウサギ」

 

「うわ~ん!深月さんもユエさんもひどいですう~!」

 

だが、シアはこの首輪の有無でどうなるかを改めて理解するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「何か書いて下さい~!お嬢様とのイベントシーンを所望します!!」
布団「今は忙しいんや」
深月「型月ゲームをやっているではありませんか!」
布団「最低限は確保しておかないとね?未だ終わってないのよ」
深月「書いてくれるという事で間違い無いのですね!」
布団「読者の希望が募ればだけど」
深月「アンケートを出しましょう!」
布団「いや、アンケートはしばらくお休みします」
深月「・・・えっ?」
布団「ある程度話しを進めてからアンケートをするつもりよ」
深月「いや・・・えっと・・・イベントシーンは?」
布団「お気に入り1000件到達で何かやった?」
深月「R-18を投稿したじゃないですか!」
布団「無理難題を押しつけてくれる・・・」
深月「イベントシーンは書いて下さいよ!」
布団「モチベーションが上がったら執筆するわ~」
深月「約束ですよ!―――――約束ですよ!」
布団「あぁうん。後書きもこの辺りにしましょうよ」
深月「・・・感想、評価お気軽にどうぞですよ~」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドはお手伝いをします

布団「投稿しまっす!」
深月「早く話しを進めましょう!」
布団「息抜きぐらいさせてくれー」
深月「息抜きついでのお話を書かれても良いのですよ?」
布団「最近寒いから執筆のモチベが上がらないんじゃ・・・」
深月「頑張って下さい!」
布団「ありふれを執筆されている人達に負けないようにか・・・」
深月「そうですよ!」
布団「・・・がんばるかぁ」
深月「前書きもこの辺りに致しまして、読者の皆様方ごゆるりとどうぞ」






布団「誤字報告とっても有り難いです」







~ハジメside~

 

ハジメ達一行は町からある程度離れた所で、魔力駆動二輪を宝物庫にしまって徒歩で門の前までたどり着いた。どの町でも門番は居るだろう。門の脇にある詰め所と思われる小屋から武装した男が出て来たのだが、装備は革鎧に長剣・・・冒険者風である

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 

ハジメ達・・・ステータスプレートを所持している三人が提示する。気のない声で相槌を打ちながら門番の男が三人のステータスプレートをチェックする。皐月と深月は普通に見ていたが、ハジメのステータスプレートを確認すると目を瞬かせた。ちょっと遠くにかざしてみたり、自分の目を揉みほぐしたりしている。その門番の様子をみて、ハジメは「あっ、ヤベ、隠蔽すんの忘れてた」と内心冷や汗を流した

 

(ちょっとハジメ!隠蔽してないの!?何やってるのよ!)

 

(わ、悪い!ステータスが化け物染みている事をすっかり忘れてた!だ、大丈夫だ。言い訳を思い付いたから!)

 

ハジメは咄嗟に誤魔化すため、嘘八百を並べ立てる

 

「ちょっと前に、魔物に襲われてな・・・俺の女を護ったその時に壊れたみたいなんだよ」

 

ハジメは皐月とユエの肩に手を当てて抱き寄せる

 

「こ、壊れた?いや、しかし・・・」

 

「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ?まるで俺が化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?」

 

「はは、いや、見えないよ。表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな・・・そっちの二人は・・・」

 

「さっき言った魔物の襲撃のせいでな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は・・・分かるだろ?」

 

言葉だけで門番は納得したのか、「成る程・・・」と頷いてステータスプレートをハジメに返す

 

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。そっちのメイドは付き人って分かるが・・・白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?あんたって金持ちなんだな」

 

チラチラと四人を見て羨望と嫉妬の入り交じった表情の門番。ハジメは肩をすくめるだけで何も答えなかった

 

「まぁいい。通っていいぞ」

 

「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」

 

「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

 

「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

門番から有益の情報を手に入れたハジメ達は門をくぐり町へと入って行く。町中に入れば賑やかで、オルクス近郊の町程では無いものの露店も出ており活気に溢れていた。ハジメ達は楽しげに目元を和らげているが、シアはプルプルと震えていた

 

「はぁ・・・その様子だと自覚が無いようね」

 

「だって!奴隷ですよ!?私は仲間じゃないんですか!?」

 

「もう少し自分の容姿を考えてものを言いなさいよ。兎人族にしては珍しい髪の色に、スタイルが良い・・・首輪を付けて無かったら、引っ切りなしに人攫いに遭っているわよ。それでも良いなら外してあげるわ――――――但し、自分一人でどうにかする事が条件よ」

 

「・・・・・わーい。首輪うれしいですぅ」

 

軽く想像して思い至ったのだろう。棒読みだが、納得した様だ

 

「つまりだ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前を守っているんだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからな、お前は」

 

「・・・はい」

 

ショボンとするシアのウサミミは垂れ落ちる

 

「・・・有象無象の評価なんてどうでもいい」

 

「ユエさん?」

 

「・・・大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。・・・違う?」

 

「・・・・・そう、そうですね。そうですよね」

 

「・・・ん、不本意だけど・・・シアは私が認めた相手・・・小さい事気にしちゃダメ」

 

「・・・ユエさん・・・えへへ。ありがとうございますぅ」

 

「・・・皐月と深月は未だ認めていないだろうけど」

 

「えぇ・・・。あの二人に認めて貰える様にってどうすれば良いんですかぁ~」

 

「・・・それは自分で考える」

 

「そ、そんな~」

 

若干涙目になりつつも、負けない気持ちで「やってやりますよ~!」と意気込みを入れる姿は好印象だろう。但し、調子に乗り過ぎない事が前提だ

メインストリートを歩いていると、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。看板の確認も済んだハジメ達は扉を開いて中に踏み込んだ。ハジメと皐月の二人は、荒くれ者が集う場所のイメージを持っていた。しかし、中へ入ってみると全体は清潔に保たれており、正面入り口はカウンター、左手側は飲食店となっていた

中に居た冒険者達は当然の様にハジメ達に注目しており、特に女性陣四人に視線が集まっている。テンプレよろしく絡んできたりする者は居らず、皆が理性を働かせて観察するだけに留まらせているのだ。ハジメ達は真っ直ぐカウンターの方へと進むと、大変魅力的な・・・笑顔を浮かべたマダムがいた

ハジメと皐月は内心でオバチャンと思っており、二人の内心を知ってか知らずか、オバチャンはニコニコと人好きのする笑みでハジメ達を迎えようとし――――――――

 

ゴスゴスッ

 

二人の頭に深月のチョップが叩き落とされた

 

「お二人共が何を思っているかは大体予想出来ましたが、あまり失礼な事を考えるのは宜しくありませんよ?もう少し柔らかくしましょうね?」

 

「「はい・・・。もうオバチャンなんて二度と思いません」」

 

「おや、立派なメイドさんだねぇ。普通は仕えている者に手を上げる事は出来無い筈だけど」

 

「お嬢様達の考えを正すのもメイドの勤めで御座います。―――――マダム」

 

「主の考えを正す―――――ね。良い言葉じゃないか。で?今回は何用かしら?」

 

「あ、ああ・・・素材の買取をお願いしたい」

 

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「買取にステータスプレートの提示が必要なの?」

 

「ん?お嬢さんの方はいざ知らず、坊やは冒険者じゃ無かったのかい?確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

「成る程・・・メリットがあるのか」

 

オバ・・・マダムは何も知らないハジメ達に、冒険者になった際のメリットを説明していく。宿や店では一~二割―――――高ランクになれば、移動馬車を利用する料金が無料になったり等々

 

「と、いう事ね。どうする?登録しておくかい?登録には千ルタ必要だよ」

 

「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

「可愛い子が居るのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 

ハジメは、有り難く厚意を受け取っておくことにした。今度こそ、完全に隠蔽したステータスプレートを差し出す。ユエとシアの分はまた機会があればという事にしておいた。隠蔽する事が出来無いユエ達となると、初日早々から目立ってしまう。それを避ける為の一時で的な措置をした

戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに"冒険者"と表記され、更にその横に青色の点が付いている。青色の点は、冒険者ランク―――――上がるにつれて色が変るのだ。因みに、戦闘系天職を持たない者で上がれる限界は黒だ。辛うじてではあるが四桁に入れるので、天職なしで黒に上がった者は拍手喝采を受けるらしい。天職ありで金に上がった者より称賛を受けるというのであるから、いかに冒険者達が色を気にしているかが分かるだろう

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪ところ見せないようにね」

 

「ああ、そうするよ。それで、買取はここでいいのか?」

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

ハジメは、事前に宝物庫から取り出していた素材をバッグに入れていたので、そちらから素材を取り出す。品目は、魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石だ。カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする

 

「と、とんでもないものを持ってきたね。これは・・・・・樹海の魔物だね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「樹海の魔物ってやっぱり珍しかったのね」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」

 

マダムはチラリとシアを見る。おそらく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測したのだろう。樹海の素材を出しても、シアのおかげで不審にまでは思われなかったようだ。しばらくして、マダムは全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は四十八万七千ルタ。結構な額だった

 

「これでいいかい?中央ならもう少し高くなるだろうけどね」

 

「いや、この額で構わない」

 

ハジメはバッグに入れる様にしながら宝物庫へ貨幣を収納して、門番の男から聞いた事を尋ねた

 

「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが・・・」

 

「ああ、ちょっと待っといで・・・ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

一枚の地図がハジメに手渡されて、皐月も釣られる様に覗き込む。中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来で、これが無料・・・ちょっと信じられない位だ

 

「これが無料?本当に良いの?十分お金を取れる位精巧なレベルなのだけど・・・」

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

「そうか。まぁ、助かるよ」

 

「良いってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいい所に泊りなよ。治安が悪い訳じゃあないけど、その三人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね。メイドに関しては正直言わせてもらうと、黒に近い位の腕があるだろうね」

 

「これはこれは、ご謙遜を」

 

「誤魔化さなくても私には分かるよ。人を見る目は誰よりも優れているって自負があるからね」

 

ハジメ達を見ていた冒険者達はポカンとしながら開いた口が塞がらない。所々で「マジか・・・」「オバチャンがいきなり認めるってぇ・・・」「超メイド・・・ご奉仕されたい!」とザワついたりしている

 

ハジメ達は苦笑いしながら入口に向かって踵を返した。四人も頭をマダムに下げてハジメに追従し、最後に出た深月が深く一礼してパタンッと小さな音で扉を閉めた

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね・・・」

 

マダムは小さく呟き、紙を取り出して何かを書き出したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

あの冒険者ギルドに居たマダムの観察眼は素晴らしいですね。腕が立つ冒険者にも悟られない程度に誤魔化しを入れた歩き方と姿勢だったのですが・・・そこに違和感を持たれて確信されたのでしょうね。かなり名が知られている方なのでしょう

 

ハジメ達は地図というよりガイドブックと称すべきそれを見て決めたのは"マサカの宿"という宿屋だ。料理が美味く防犯もしっかりしており、何より風呂に入れるという。最後が決め手だった。料金は割高だが、金はあるので問題ない。何が"まさか"なのか気になったというのもあるが・・・。一階が食堂で、複数の人間が食事をとっていた。ハジメ達が入ると、お約束の様に女性陣に視線が集まるが、無視してカウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた

 

「いらっしゃいませー、ようこそ"マサカの宿"へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

テキパキと宿泊手続きを済ませる女の子から告げられ、マダムの名前を初めて知った。ハジメは何処か遠い目をしている・・・あのマダムの名前がキャサリンだった事が何となくショックだったらしい

 

「あの~お客様?」

 

「あ、ああ、済まない。一泊でいい。食事付きで、あと風呂も頼む」

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

女の子が時間帯表を見る。ハジメとしては、男女別でゆっくりと入りたいと思っているので二時間必要の旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれたが、日本人たるハジメ達としては譲れない

 

「え、え~と、それでお部屋はどうされますか?二人部屋と三人部屋が空いてますが・・・」

 

好奇心含む目でハジメ達を見る女の子。お年頃な彼女は気になっているし、周囲に居るお客もソワソワしている

 

「ん~・・・二人部屋を三つd――――――」

 

「何を迷っているのよ。二人部屋一つに、三人部屋一つよ」

 

「え、えっと・・・誰がどの部屋に入るかを・・・」

 

周囲の客は、ナイスッ!と言わんばかりに興味津々なのだ。誰を選ぶのかが知りたいのである

 

「・・・二人部屋はハジメと皐月。・・・三人部屋は私と深月とシア」

 

成る程、他の三人は旅の仲間なのかと納得した様にウンウンと顔を縦にふる客達だが―――――

 

「ユエのそれはやっぱり無しにして。ハジメと私とユエが三人部屋で、深月とシアが二人部屋ね。異論は認めないわ」

 

周囲の男性客は絶望した。リアルハーレムを築いているハジメが羨ましいと思ったのだ

 

「ちょっ、何でですか!私だけ仲間はずれとか嫌ですよぉ!後で突撃しますからぁ!」

 

嫉妬はもう一段階強くなる

 

「深月は、この残念ウサギが入って来れない様に簀巻にしておいて」

 

「了解致しました」

 

「うえっ!?じょ、冗談ですよね・・・皐月さん、冗談ですよね!?」

 

「ほら店員さん。さっさと書いて鍵を渡して」

 

「あっ、は、はいっ!直ぐに渡します!」

 

鍵を取り出す女の子を待つ皐月は呟く

 

「残念ウサギが居ると・・・邪魔でしかないのよね。うるさそうだし」

 

「・・・ん。・・・皐月と私がハジメを気持ち良くする」

 

「わ、私は諦めません!突撃してハジメさんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」

 

静寂が舞い降りた。誰一人、言葉を発することなく、物音一つ立てない。今や、宿の全員がハジメ達に注目、もとい凝視していた。厨房の奥からは、女の子の両親と思しき女性と男性まで出てきて「あらあら、まあまあ」「若いっていいね」と言った感じで注目している

 

「冗談もそこら辺にしないと怒るわよ?」

 

「うっ、ま、負けません!今日こそ皐月さんを倒して正ヒロインの座を奪ってみせますぅ!」

 

「・・・師匠より強い皐月と戦う事すら出来無い事を教えてあげる」

 

「下克上ですぅ!」

 

ヒートアップする三人の首に深月の手刀が叩きつけられてゴトゴトゴトッと地面に倒れされ、周りはより一層静かになった。深月の素早すぎる手刀は殆ど見えなかったから・・・

 

「さぁ、ハジメさん。小一時間程眠る程度に加減しておきましたので早く部屋に運びましょう」

 

「あ、ああ・・・そうだな。他の客の迷惑になるからな」

 

ハジメは皐月をお姫様だっこして、深月はユエとシアを俵担ぎして部屋へと連れて行く。それを見送る客達は、皆こう思った―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのメイドを怒らせたらヤバイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢様達の対処が雑ですか?平行線を辿るので両成敗です。手荒な事は避けたかったのですが、公共の場であの様な事を何度もされてはいけませんからお灸を据えさせて頂きました。ハジメさんの部屋にユエさんを入れて、シアさんは後ほど簀巻に致しましょう。お嬢様方の夜の営みの邪魔立てする悪い輩は間引かねばいけませんので!

ハジメさんは少しばかり眠りに就かれるとの事なので、私は私で宿の夫妻と等価交換で色々と致します。色々って何だ―――――ですか?市民が口にする食事内容を把握するのと、手伝いの代わりとして一通りの作り方を覚えるだけです。そうすれば、食材が有れば皆様に提供できますので。それではお休み下さい

ハジメさんもベッドにダイブして直ぐお眠りになりましたので、行動開始しましょう!お嬢様達の為に美味しい料理を沢山覚えます!

 

その後―――――深月は一階に戻って夫妻と交渉して、二つ返事で許可を貰った。深月からは調理風景を見学、夫妻からは接客業務を今日だけ手伝ってくれればという内容だった。一通りの接客の仕方と、マナーの悪いお客の対処を確認・・・接客は変らないが、マナーの悪いお客相手は実力行使で大丈夫だそうで――――――"後にも先にも本日限り!メイドさんの接客※夕食まで"という大きな看板を立てて仕事を手伝う事に

そこそこ居たお客は、メイドさんの接客をして貰いたいという欲求から追加注文を―――――――新しく入って来たお客さんは、本物のメイドが居る事に驚愕しつつご飯を食べる。"超絶美人メイドがマサカの宿で接客している"という噂は一気に町中に広まった。しかも、この日限り・・・殆どの男性が仕事を怒濤の勢いで終わらせて向かい、店から出た時には至福の笑顔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噂が流れている時の男性達の反応はこんな感じだった・・・

 

「おい!メイドがマサカの宿で接客しているってよ!」

 

『メイド服を着ているだけだろ』

 

「本当だって!」

 

『うっそだ~』

 

「お~い!噂のマサカの宿のメイドさんの噂本当だったぜ!この目で見てきたし、体験してきたぜ!!生メイド最高~♪」

 

「・・・まじ?」

 

「・・・嘘じゃ無いよな?」

 

「何でも宿泊客の付き人で、調理風景を見させる代わりに手伝っている言ってたぞ?」

 

「あーーーーー思い出した!!今日、冒険者ギルドにメイド連れの奴等が入っていったのを見たぞ!」

 

「・・・キャサリンさんの地図のおすすめ宿がマサカの宿だったよな?」

 

『・・・・・』

 

男達の心の中は何時だって―――――モワンモワン

 

『行ってらっしゃいませご主人様』

 

『何かご用ですか?』

 

『ご、ご主人様・・・いけませんっ!』

 

と、ありもしない妄想をし終えた男達の顔はだらしなかったが・・・直ぐにハッと正常に戻った後、仕事をそっちのけでマサカの宿に直行しようとウズウズしていた

 

「あぁ~、あのメイドさんは凄かったなぁ~。・・・仕事をキチッとこなす姿は癒やされた。――――――そういや、仕事そっちのけで来ていた馬鹿には接客していなかったのは笑っちまったぜ!文句を言おうとしたら物理的に外に追い出されてたからな~!」

 

「おらぁ下っ端!さっさと手を動かせ!早く仕事を終わらせるんだよ!!」

 

「あっあっあっ!増えろ俺の腕!何で二本しかないんだよっ!これじゃあ終わらねぇよおおおおお!!」

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!―――――ッフ、解体は終わった。今行くぞおおおおおおお!!」ダッシュッ

 

ある者は部下と共に癒やしを分かち合う為に、ある者は一人という現実に絶望しながら希望にすがる為に、ある者は覚醒した動きで終わらせる。男達は努力して仕事を終わらせて向かい、心優しき男は手を差し伸べ協力して生のメイド接客を受ける事が出来たのだった。因みに、最後の男性は身綺麗にしていなかった為に追い返されて接客されなかったという悲しい結末だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が接客を始めてから一気にお客さんが増えましたね。沢山料理の注文が出され大変そうで―――――また新しいお客様ですね。現在満席となっていますので、時間を改めるか列に並んでお待ち下さい――――――そうです。他人に迷惑を掛けないようにして下さいね?でないと、私は接客致しません

これで万事解決です!皆さん御行儀良くお話ししながら列に並んで良い事ですね。あぁ、高ランク冒険者だからと言って割り込みをしてきた者には接客拒否させて頂きます。ん?接客するのは当然と言いたいのでしょうが、私は"マナーの悪いお客様"を接客したくありません

 

高ランク冒険者と自称する男が深月の腕を掴もうとするも、紙一重で躱され深月に腕を捻り上げられる。深月は手刀を首元に落として気絶させて、首に看板を垂れ下げて店前に放置。その看板には「私は他のお客様に迷惑を掛けてメイドに倒された高ランク冒険者(自称:笑)です」と書かれていたのだ。店前に並ぶ客は、それをしっかりと理解してマナーを守る

ハジメ達が起きて、食事をしに一階へと降りればもの凄いお客の数に驚愕していた。殆どの客は男性だが、殆どが行儀良く最低限のマナーを守って食事をしている。厳い奴もしっかりと守っているのだ・・・

男性達の視線は1カ所に集まっており、先を辿れば料理をしている深月。余りにも手が回らない為、深月も一通りの手順を見て学んでヘルプに入っているのだ。出来た料理を深月が持って行くと、モーゼの様に男達が下がって行く・・・・・深月が運んだ料理を食べる男は涙を流しながら「うめぇ・・・うめぇよぉ・・・・・」と嗚咽を鳴らしながら食べているのだ――――――最早カオスとしか言い様が無い

深月の接客時間も終了し、ハジメ達に合流して次の日の予定を立てながら夕食を摂った。お風呂は男女別で入り、シアは深月の当て身で気絶して簀巻にされて回収された。夜は約束通り夜戦―――――ハジメと皐月とユエで激しくしたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「ちょっとやり過ぎてしまいましたね」
布団「せやな」
深月「お嬢様も暴走しなければ手荒な事はしないのですが・・・」
布団「あきらめろん。今は未だ」
深月「そうですね。ゆっくりと観ていきましょう」
布団「あ、アンケート出すわ」
深月「お嬢様回ですか?」
布団「クラスメイトsideです」
深月「要らないですね」
布団「ま、まぁ・・・一応ね」
深月「それでは、感想、評価宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは服を手に入れます

布団「よし、投稿だ!」
深月「作者さん、作者さん。お気づきですか?」
布団「なんだぁ?」
深月「お気に入り1500件ですよ?何か番外編なる物を書いて下さい。あっ、お嬢様とのイチャイチャでも構いませんよ?」
布団「メイドぇ・・・」
深月「さぁ!さぁさぁさぁ!書きましょう!」
布団「うぎぎぎぎぎ!ま、まぁ待て。待つんだ。こうしよう!読者様に決めて貰おうと!」
深月「振りですよね?」
布団「振りじゃねーよ!」
深月「と、作者さんとのやり取りも終わらせましょう」
布団「はい」
深月「誤字報告をされている読者様、本当に有り難う御座います。お待ちかねの本編へと参りましょう。ごゆるりとどうぞ」







~皐月side~

 

うぅ・・・私達は今回もハジメに敗北した

あ、私達は今洋服を買いに町を歩いているわ。深月のチートで修理されたとはいえ、予備を購入しておかないと駄目よね♪シアの服を一新するのがメインだけれど

 

「・・・服か。俺はどれが良いとか分からないんだが」

 

「私達が試着するからハジメの感想が聞きたいのよ」

 

「・・・ハジメに褒めて貰える。・・・ポッ♪」

 

「女性は男性に褒められるのが嬉しいのですぅ~」

 

ハジメはそういった所が疎いので苦手なのだ。どうにかして別行動をと思っているが、皐月に腕を掴まれているので抜け出す事が出来無いのだ。そんなハジメの心情を察している皐月は、どうにかして服選びに集中させようかと考えていると一つだけ有効手がある事に気が付いた

 

「ねぇ、ハジメ。そんなに服選びが嫌なの?」

 

「いや・・・嫌って訳じゃ無い。ただ・・・こういった事自体初めてだからセンスがな」

 

「じゃあ――――――メイド服を数着買うのはどう?」

 

一瞬だけハジメがピクリと反応。見事、興味を引く事に成功した皐月は更に誘惑する

 

「ハジメが望むなら―――――――あっち(意味深)で着てあげるわよ?」

 

「ぐっ・・・だ、だけどなぁ」

 

「へぇ~、それなら諦めるわ。――――――深月の新しいメイド服をハジメに選ばせようかと思っていたのになぁ

 

最後の一言がトドメだった。オルクス同様、メイド好きーなハジメにとって深月は正に理想のメイドその物。地球に居た時から「こんなメイド服似合うだろうなぁ~」と妄想する位興味があった。目の前に垂らされた餌の付いた針――――――無論、飛びつかない訳が無い

 

「仕方が無い。行こう」

 

「無理しなくても良いわよ?」

 

「これから先も同じ事があるだろう?なら今回は練習を踏まえて―――――だ」

 

「・・・・・そう。なら行きましょう?」

 

計画通り!

 

某自称新世界の神の様に、誰にも見え無い様に悪どい笑みを作る皐月だった。言い忘れていたが、現在深月は食料や調味料等の買い出しを命令されているのでこの場には居ない

キャサリンさんの地図には、どの様な服が置いてあり、何処がお勧めかがしっかりと記載されている。四人は、普段着も置いている冒険者向けのお店へと向かった。その店は、流石はキャサリンさんがオススメするだけあって、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった――――――だが

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♡可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~。た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♡」

 

 

 

 

 

 

 

化け物が居た。身長が二メートル越え――――――――全身の筋肉という天然の鎧を装備し、濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に筋肉ピクピクと動き、巨体とは思えない程クネクネと体を動かしている。全員が硬直して、目の前に居る化け物に恐怖を抱く

 

「あらあらぁ~ん?どうしちゃったの貴方達?可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?そこに居るのは彼氏かしら~ん。どう?お姉さんと・あ・そ・ぶ・?」

 

処理が追いつかない為、皐月の口からつい本音が零れてしまった

 

「ば、化け―――――」

 

「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」

 

「ご、ごごごごごごめんなさいッ!」

 

反射的に謝って、ハジメを盾にして隠れる皐月。何時もの威厳も何も無い・・・。店主に正直に謝った事で再び笑顔?を取り戻し接客に勤しむ

 

「いいのよ~ん。それでぇ?今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

ハジメはフリーズしている。対応できるのは三人だけだが、シアはヘタリと座り込んでいるので戦力外。ユエは未だに現実に追いついていない。皐月は恐る恐るながらも説明する

 

「え、えっと・・・。そこにヘタリ込んでいるシアの服を見繕って頂きたい・・・です。・・・お願いします」

 

「あらそうなの~ん?それじゃあ、任せてぇ~ん」

 

シアを担いでお店の奥へと入って行く。その時の、三人を見つめるシアの目は、まるで食肉用に売られていく豚さんの様だった

奧へ消えてから数分足らずで出て来たシア。店長のクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をしたことに気がつき、着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いだった。思考を停止していたハジメもその頃には戻っており、ビクつきながらも全員でお礼を言って店を離れて高級服を取り扱うお店へと向かった

 

「いや~、最初はどうなる事かと思いましたけど、意外に良い人でしたね。店長さん。」

 

「ん・・・人は見た目によらない」

 

「ですね~」

 

「・・・皐月大丈夫?」

 

「ハジメさんも大丈夫ですか~?」

 

未だに気分が優れない二人を心配するユエとシア。一瞬で削られた精神が回復するまで時間が掛かったが、どうにか受け答え出来るまで回復したハジメと皐月。ありのままの感想は唯一言

 

「「正直・・・怖かった」」

 

ああいう手合いは、ファンタジー世界の作り物だけだろう―――――現実にはあり得ないと決めつけていた価値観が崩れ去ったのだ。まぁ・・・直ぐに受け入れる事の出来無い衝撃だったのだから仕方が無い。しかし、悪夢は終わらない。ハジメと皐月は深月にメイド服を買う為に高級店の方に訪れ、目的の物があったのは良かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃ~い♡今日は、何を・お・さ・が・し・かしら~ん♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二の筋肉モリモリ店主が居た――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラッと立ち眩む皐月を咄嗟に支えるハジメ。自分だって頭が痛くなる光景だが、欲望の方が強いので耐えるしか無いのだ。クリスタベルの一件から同じ過ちは犯さない様、言葉に気を付けながら説明した。何故此処で深月のメイド服を新しく購入するのか―――――――ユエには申し訳無いのだが、胸の辺りがキツくなってきているとの事だった。理由は読者達のご想像にお任せしよう

ハジメは、学校で着用していた深月のメイド服を手本に少しだけ?改造する事にしたのだ。二の腕を露出させていた部分を隠すだけだが、露出部が一つとなる事でより際立つと思ったからだ。後は実行するのみ。転移の際に着ていた露出の無い黒を基調としたメイド服を一部露出する様に改造する感じだ。(※アズールレーンのフォーミダブルの服を想像して下さい)

一からのオーダーメイドなので、時間は約三日必要との事。予定は明日辺りで出発しようかと考えていたが、新作のメイド服を楽しみにしているハジメは滞在日数を変更する事を決意した

注文も終わって皐月達と市居を回ろうとしたハジメだったが、目先に食料などの消耗品を購入している深月の姿を発見した

 

「皐月、悪いが食料を買っている深月の方に合流する。俺も居た方がこれからの予定と相談しながら出来るからな。だから、三人は自由に行動してくれ」

 

「えっ、ちょっとハジ――――」

 

ハジメは早足で深月の元へ行き、置いて行かれた皐月達。ハジメからすれば三人で自由行動をして、ゆっくりしてもらおうと配慮したのだ。だが、今回は逆効果である。メイド服に情熱を注ぐ様にオーダーメイドした後だからだ・・・

 

「・・・ハジメは深月と一緒が良い?」

 

「むぅ~!深月さんが大変そうなのは分かりますが、私達を置いて行くなんて酷くありませんか?」

 

「本音で言うと、ハジメと一緒に散策したかったのだけど仕方が無いわね。多分、私達をゆっくりとさせたかったのだとと思うわ」

 

「・・・今回は裏目に出た」

 

「割り切ってゆっくりしましょう」

 

「ん!」

 

「えぇ~・・・私はハジメさんと一緒に行動したいですぅ~」

 

「・・・シアはこっち。・・・拒否は認めない」

 

「話す事もあるんだからこっちに来なさい!」

 

「ハジメさんの正妻争いですか?それなら負けませんよ!私の胸はパーティーの中で一番ですから!!」

 

フンスッと胸を張るシア。確かに、皐月と深月とユエの三人よりも大きい―――――――だが、頭の方が残念すぎて何とも言えない。持たざる者に対しての禁句を言ってしまったシアの末路は決まっている。ユエはシアを殴る―――――――しかし、胸の脂肪の前には無力だった。たわわなそれに弾かれてしまったから

 

「ムッフッフッフ♪効かないですぅ~」

 

腹立たしいユエに変って皐月の右手のアイアンクローがシアの頭部を捕まえ、ギリギリと徐々に締め上げていく

 

「い"っ!いだだだだだ!?痛いです!痛いですよ皐月さん!?は、はなしてぇ~」

 

「一々煽る言動はしない。――――――いい加減に学びなさい」

 

解放されたシアは涙目になりながらユエに謝罪。自分の代わりに皐月が締め上げたのに満足したので許し、三人は散策を再開した

薬屋、道具屋等の小さな消耗品を店を転々と回る。皐月は義手に眼帯としているが、三人共が見目麗しい為―――――気付けば数十人の男共に囲まれていた。一瞬拉致か何かだと思っていたユエとシアだが、男達を良く見ると服が統一されていない。皐月は「テンプレかぁ~。面倒くさいだけね」と小さく呟いていた。そんな男達の内、一人が前に進み出た

 

「皐月ちゃんとユエちゃんとシアちゃんで名前あってるよな?」

 

「?・・・合ってる」

 

ユエの返事を聞いて、男共は頷いて覚悟を決めた目で三人の前に進み出た

 

「「「「「「皐月ちゃん!俺を執事にしてください!!」」」」」」

 

「「「「「「皐月ちゃん!俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「シアちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」」

 

見目麗しい三人は兎に角目立っていた。ハジメとの仲が非常に近しいのは理解しているが、それでも諦めきれない為の告白。皐月に関しては、執事希望は恐らく深月とお近づきになりたいからだろう・・・。で、告白を受けた三人は興味を失ったので無視する事にした

 

「さっさと次の道具屋に行くわよ」

 

「・・・シア、道具屋はこっち」

 

「あ、はい。次の一軒で全部揃うといいですね」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!返事は!?返事を聞かせてく『『『断る(ります)』』』・・・ぐぅ・・・」

 

完全に玉砕・・・尚且つ興味の一欠片も無い事を知り四つん這いに崩れ落ちる男達。しかし、諦めの悪いお馬鹿な男は何時の世も存在する

 

「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

皐月に向かって某大泥棒ダイブで飛び込む男。目は血走っており、男の中の妄想では皐月が組み伏せられているのだろう。皐月は殴ろうとするが、それよりも先にユエが一言呟いた

 

「"凍柩"」

 

「ふぉおおお!?」

 

首から上だけを残して身体中を凍らされた男は、驚愕しながら重力に引かれて落下した。周囲は、ユエが無詠唱で魔法を行使した事にざわついていたが「事前に詠唱していた」「魔法陣を服の下にでも隠している」等の解釈をしているのでとても助かった

 

(ユエ、無詠唱は駄目でしょ。今回は都合良く解釈してくれているから良いけど、無詠唱について知識を持っている人にバレたら目を付けられるわよ)

 

(・・・次から気を付ける。・・・これどうする?)

 

(犠牲になって貰いましょう)

 

(ん!)

 

皐月との念話を終えたユエは、男を包む氷を少しずつ溶かす。男は解放してもらえると思ったのか、表情を緩めて熱っぽい瞳でユエを見つめる

 

「ゆ、ユエちゃん。いきなりすまねぇ!だが、俺は皐月ちゃん事が・・・」

 

「・・・皐月はハジメの正妻。・・・・・だから見せしめ」

 

「ひょ?」

 

溶かされていた氷の部分は男のシンボル。丸出しで動けないこの状況を理解して、男は徐々に顔を青ざめて行く

 

「あ、あの、ユエちゃん?どうして、その、そんな・・・股間の部分だけ・・・・・嘘だよね?嘘だと言って!?」

 

「・・・狙い撃つ」

 

その一言と同時に、風の礫が連続で男の股間に叩き込まれた

 

「ッアーーーーーーーーー!」

 

男の悲鳴が昼前の街路に響き渡る。某配管工がコインを手に入れる様な効果音がピッタリだろう。執拗に狙い撃ちされる男の股間に、周囲の男達―――――――言い寄ってきた男達だけで無く、関係無い野次馬や露店の店主も内股になりながら股間を手で覆い隠した

風の礫は、一撃で男の意識を飛ばさずに徐々にダメージを積み重ねる様な攻撃で、永遠に続くだろうと思われた。ユエは人差し指の先をフッと吹き払い、置き土産に言葉を残した。

 

「・・・漢女になるがいい」

 

「・・・てい」

 

皐月はその辺りに落ちていた小さな石ころを親指で弾き、地面に跳弾させて攻撃。ズドムッ!と真下からの衝撃は、風の礫よりも強烈で、男の意識を完全に飛ばすには十分なものだった

 

『ヒィッ!?』

 

皐月の容赦の無いトドメを目の当たりにして身体中をガクガクと震わせる男達。三人は畏怖の視線を向けてくる男達の視線を無視して買い物の続きに向かった。道中、女の子達が「皐月お姉様・・・」「ユエお姉様・・・」とか呟いて熱い視線を向けていた気がするがそれも無視して買い物に向かった

 

この日、一人の男が死に、第三のクリスタベル・・・後のマリアベルちゃんが生まれた。そしてユエには"股間スマッシャー"皐月には"死神の一撃"という二つ名が付き、後に冒険者ギルドを通して王都にまで名が轟き、男性冒険者を震え上がらせるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

「助かりましたハジメさん。宝物庫のお陰で食料品を大量に購入出来ました」

 

「まぁな。荷物持ちはそれなりに居た方が良いだろう」

 

ハジメは深月と合流して一緒に食料を中心とした補給を行っていた。旅の人数が増えたので消費も多いので、それなりに時間が掛かってしまうのだ。深月が聞いていた予定は、明日にはこの町を発つとの事だった。だが、ハジメが滞在日数の延長した事で余裕を持って補給を行えるのだ

しかも、所々で発揮する深月の交渉術は凄まじいの一言・・・男性女性と関わりなく、少量の割引が行われているのだ。塵も積もれば山となる――――――正にそれだった。想定以上の食料を購入出来た事にハジメは「マジか・・・交渉スキル半端じゃねぇ」と零す程。だが、誰でもこれ程の成果が出る訳では無い。地球に居た頃から行ってきた割引交渉術の経験が活きているから―――――普通の人がした所で、成功するのは一割未満だ。正に深月専用の技能である

ハジメと深月の二人は、三人よりも早く宿へ帰って戦闘関連の消耗品の補充と手入れを開始した。ハジメは弾丸の補充、深月は夫婦剣と刀の手入れと服の修正等だ。ハジメは小休止を入れて深月の方を見ると、魔力糸を操作して色んな形を作り出していた

 

・・・魔力糸ってホント深月にピッタリな技能だな

 

じーっと自身を見ているハジメに気付いている深月

 

「あの・・・ハジメさんは私に何か御用ですか?」

 

「いやな、魔力糸って便利そうだな~って思って見てたんだよ」

 

「確かに便利です。・・・ですが、使いこなす事は未だ出来ていません」

 

驚愕して呆然となるハジメだった

 

・・・は?あそこまで罠を仕掛けたりして絡め取っているのにか?あの神の先兵擬きの攻撃も受けきったのに使いこなせていないのは有り得ないだろ

 

「ハジメさん。有り得ないなんて事は有り得ませんよ」

 

「俺の思考を読むなよ」

 

「顔に出ていましたよ」

 

「俺ってそんなに顔に出やすいのか?」

 

「いいえ。・・・将来を踏まえてハジメさんが何を考えているのかを予測したまでです。主が二人に増えますので、しっかりと把握しなければいけません」

 

「主の考えを把握する事もメイドの勤めです―――――ってか?」

 

「そうですよ?」

 

ノータイムで返すって事はその位本気って事かよ。ホント二次元のパーフェクトメイドが現代に現れたって疑いたくもなるぜ

 

ハジメは内心で新しく出来るメイド服にワクワクしていると、ドアが開き町を散策していた皐月達三人が帰って来た

 

「ただいま~」

 

「おう、お帰り。町中が騒がしそうだったが、何かあったか?」

 

「何も無かったわよ」

 

「・・・問題ない」

 

「あ~、うん、そうですね。問題ないですよ」

 

皐月達は町中でナンパに遭った事は言わない。制裁も済んだので気分がさっぱりしているから・・・

 

「さて、シアにプレゼントだ」

 

「ほんとですか!わ~いやりましたぁ~♪」

 

「ほれ」

 

そう言ってハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を渡した。銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている

 

「重っ!?」

 

シアは咄嗟に身体強化の出力を上げてたたら踏まずに済んだ

 

「これ武器ですよね?ハジメさんからのプレゼントは?」

 

「?武器をプレゼントしただろ?」

 

「あっ・・・・・はい。ソウデスヨネー」

 

皐月やユエに付けられている装飾品を貰えると勘違いしていたシアはガックリした

 

「武器はこの先必要だろ?」

 

「それよりも・・・もの凄く重たいんですけど」

 

「そりゃあな、お前用の新しい大槌だからな。重いほうがいいだろう」

 

「へっ・・・?これが大槌ですか?」

 

今シアが持っている武器・・・円柱部分は、槌に見えなくもないが、それにしては取っ手が短くアンバランスだ

 

「ああ、その状態は待機状態だ。取り敢えず魔力流してみろ」

 

「えっと、こうですか?―――――ッ!?」

 

シアは言われた通りに槌モドキに魔力を流すと、カシュン!カシュン!という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった

この大槌型アーティファクト:ドリュッケン(ハジメ命名)は、幾つかのギミックを搭載したシア用の武器だ。魔力を特定の場所に流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりする

 

「今の俺にはこれ位が限界だが、腕が上がれば随時改良していくつもりだ。これから何があるか分からないからな。ユエのシゴキを受けたとは言え、たったの十日。まだまだ危なっかしいが、その武器はお前の力を最大限生かせるように考えて作ったんだ。使いこなしてくれよ?仲間になった以上勝手に死んだらぶっ殺すからな?」

 

「ハジメさん・・・ふふ、言ってることめちゃくちゃですよぉ~。大丈夫です。まだまだ、強くなって、どこまでも付いて行きますからね!」

 

こうして一日、また一日とゆっくりと休養した五人

そして待ちに待った日(※ハジメにとって)・・・宿のチェックアウトを済ませ、メイド服を受け取りに行く。皐月は少し嫌そうにしていたが、深月の主として行かないという選択肢は無い

第二のクリスタベルの待つ服屋の前へと到着した一同は入店――――――

 

「いらっしゃ~い♡あら~!ご注文の品は完成しているわよ~♡ささっ、メイドの貴女はこっちに来て~♡」

 

「えっ?私ですか?」

 

「そうだぞ」

 

「メイド服は私の仕事服です!脱ぎませんよ!?」

 

「だ、大丈夫よ深月。新しいメイド服を注文したから!ほら、気分一新も良いでしょ!!」

 

「・・・そうですね。この服一着だけですので助かりますが・・・お金の方は大丈夫なのでしょうか?」

 

「気にするな。服が一着しか無いのは困るだろ?」

 

「分かりました。それでは店主さん、お願い致します」

 

「こっちよ~♡貴女程の綺麗な子ならピッタリよ~♡」

 

店主と共に奧へと入っていった深月を見て四人の思った事はただ一つ

 

「「「「何故平気なんだ(なの)(なんですか~)!?」」」」

 

深月は並大抵の事では動揺しない。こういう人も存在するだろうと、個人の感性まで否定する事は無い。但し、限度は有る。天之河の様な現実も見ないご都合解釈が良い例だろう

数分経った後、奧から店主が先に出て来た。何故最初に店主!?と思った四人

 

「最初はあの子が出てくると思ったのかしら~ん?これには理由があるのよ~ん♡」

 

「どういう事だ?」

 

「う・し・ろ・よ~ん♡野次馬が暴走しない様にするのも~わ・た・し・の仕事よ~♡      ね?」

 

店主が後ろの野次馬達にニッコリと微笑むと、顔を青くしてザザザッと後退った。恐らく、過去に何かしら遭ったのだろうと容易に想像出来る

 

「さぁ、主役の登場よ~ん♡」

 

店主が横にずれて奧から現れた深月。黒い生地に包まれた肌だが、胸元と肩部分だけが露出している。隠しているようで隠していない神秘にハジメは心の中でコロンビアポーズをしていた。そして、この世界に転移して二番目に嬉しかった。自分の考えたデザインの服を来た超メイド―――――歓喜以外の表現は無い。因みに、一番は皐月と将来結婚前提でお付き合い出来る事である

深月を除いた女性陣三人も、深月の変わり様にビックリしていた。服が変るだけで此処まで違うのか!?と声を大にして叫びたい位だから

 

「流石深月・・・メイド服一つで此処まで変るなんてね―――――――私が着たとしても、それは所詮コスプレって事ね・・・チクショウッ!!」

 

「・・・深月の胸が大きくなっている・・・だと!?」

 

「ま、未だです!胸の大きさなら私が勝っていますぅ!」

 

「・・・生活面では何一つ勝っていない」

 

「グハアッ!?」

 

何もしていないのに一人一人に深刻な傷を付けて行く深月は、主の皐月の前に立ってゆっくりと回転して後ろ姿も見せる

 

「店主さんに聞きました。一からオーダーメイドされたとの事ですが・・・如何ですか?」

 

「俺がデザインしたメイド服だ。多少二次元から引用する所もあったが、もの凄く似合っているぞ!」

 

「え、えぇ・・・とっても綺麗よ」

 

「・・・綺麗だけど・・・深月ばかりズルイ」

 

「生活スキル・・・フヘッ・・・深月しゃんに勝てるわけないじゃないですかぁ~」

 

ハジメはとっても喜んでおり、皐月とユエは褒めるよりも悲しみが大きく、シアはユエの一言で落ち込んでいる。そして野次馬の男共の反応は予想通りだった

 

「「「うひょ~!あのメイドにご奉仕されたい!」」」

 

「「「ご主人様と呼んで欲しい!」」」

 

一方、そんな馬鹿な男達を見て呆れ果てている女性陣達。当然の結果である

 

「私の主はお嬢様ですのでお断り致します」

 

口に出していた欲望を拒否されて膝から崩れ落ちる男達。そして、今回は馬鹿な男は誰一人居ない。この場に居る男性陣の殆どが深月の強さを知っている・・・宿で返り討ちに遭った男の末路が悲惨だからだ

自称高ランク冒険者(笑)は自信喪失により女性から離れられ、解体屋の男は女性達からの利用客が減ってしまった。何かしらの損失(※女性関連)がある為、手を出す猛者は誰一人この町には居ない

 

「さてと、深月の服も新しくなったから旅の続きに行くぞ」

 

こうして五人は門を出てライセン大峡谷へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「アンケートしましょう?」
布団「最近アンケート多いと思う自分が居る」
深月「作者さんの優柔不断がいけないのですよ」
布団「はい・・・そうです。スイマセン」
深月「内容はどうします?」
布団「書くか書かないかの二択にしましょう!」
深月「本当に宜しいのですか?」
布団「幅広く決めれるから大丈夫だ問題無い」
深月「特大のフラグを建てましたね」
布団「そいじゃあいっきまーす」
深月「あぁ、行ってしまいました。読者の皆様方、評価、感想等お気軽に宜しくお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは居ません。クラスメイトsideですから 2

布団「アンケート結果からクラスメイトsideの第二弾!」
深月「お嬢様方は出ませんので悪しからず」
布団「記念話をどうしようかと迷い中」
深月「無難にしましょう。私とお嬢様のイチャイチャという事で!」
布団「はいはいはーい。まだアンケート終了していないから却下!それに、意味深でやったでしょう!?」
深月「ぬぐぐぐぐ!」
布団「あ、誤字報告有り難う御座いましたー」
深月「ン"ン"ッ! 読者の皆様もお待ちになられていますので前書きもこの辺りにして始めましょう」
布団「ごゆるりとどうぞ」
深月「私のセリフですよ!?」







これは、ハジメ達がサソリ擬きを倒した日まで遡る――――――

 

天之河率いる勇者パーティー達は、再びオルクス迷宮へやって来ていた。だが、人数は少ない。勇者パーティーは当然として、小悪党の塵芥共、それに永山重吾という大柄の柔道部の男子生徒を率いた男女五人のメンバーだけ。何故か?理由は明白――――――ハジメと皐月の死。そして、勇者よりも高スペックの深月が後を追ったからだ。"死"というものを身近に実感した事で、まともに戦闘する事すら出来無くなったのだ

この事態に教会関係者はいい顔をせず、全員に復帰を促した。しかし、これに待ったを掛けた人物が居たのだ。教師の畑山先生だ。食糧問題を解決する程のチート生産職の彼女との関係を悪化させてしまえば大きな損失に繋がる為、教会は畑山先生の抗議を受け入れた。結果、上記に上げた者達だけが訓練の継続と、オルクス迷宮に挑む事となったのだ

迷宮攻略から六日目・・・階層は六十層付近で、立ち往生をしていたのだ。理由は、何時かの悪夢を思い出しているからである。彼等の目の前には何時かの物とは異なるが、同じ様な断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖に掛かった吊り橋を進まなければならないのだが、やはり思い出してしまうのだろう。特に白崎は顕著で、真っ暗闇の奈落をジッと見つめたまま動かなかった

 

「香織・・・」

 

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

 

「そう・・・無理しないでね?私に遠慮する事なんて無いんだから」

 

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

 

今の白崎には絶望に染まった瞳は感じられない。それどころか、日に日にギラギラとしているのだ。これは白崎が目を覚まして数日後の事だった。八重樫と一緒に話していた時に、ニュ〇タイプの如く何かを感じ取ったのか・・・「先を越されたっ!」等と意味不明な事を漏らしていた。(※この時ハジメが皐月に告白したのである)奈落でハジメとイチャつく皐月を敏感に感じ取っていたのだろう。八重樫曰く、「般若が見えた」との事

洞察力に優れた八重樫は白崎が本心で大丈夫だと言っているのだと分かった

 

(やっぱり、香織は強いわね)

 

絶望的な状況でも納得がいくまで諦めずに進む白崎に、八重樫は誇らしい気持ちで一杯だった。だが、そんな事も気にせずに空気をぶち壊していくのが勇者(笑)クオリティー。天之河視点からは、白崎がハジメの死を思い苦しんでいると決めつけて早速行動

 

「香織・・・君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲もそれを望んでる」

 

「ちょっと、光輝・・・」

 

「雫は黙っていてくれ!例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。・・・香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

「はぁ~、何時もの暴走ね・・・香織・・・」

 

「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。・・・えっと、光輝くんも言いたい事は分かったから大丈夫だよ」

 

「そうか、分かってくれたか!」

 

そこまでは良かった・・・そう。そこまでは・・・

 

「落ちた皐月と深月を一刻も早く助けないといけないからな!」

 

その言葉を聞いた瞬間に白崎の表情は能面の様になり、八重樫は怒りで表情を歪ませた

 

「・・・光輝あんたねぇ!」

 

ついに手を出しそうになったが、白崎が八重樫を止めた

 

「放っておこうよ雫ちゃん。光輝くん・・・ううん。"天之河"くんはもう手遅れだから」

 

「ッ!そ、そうね。兎に角、私達は私達の出来る事をしましょう」

 

先程までは大丈夫だと思っていたが、それは見当違いだった。少しだけ歪んでいると感じた。だが、実際は日に日に歪んでいるのだ。もしも、ハジメが死んでいたら確実に狂っていただろう。それこそ、死を振り撒く敵みたいになるだろう

 

「早く南雲くんに会いたいなぁ」

 

誰にも聞こえない一言を零して、迷宮を進んでいく一行。そして、特に問題も起きず遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた

 

「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるか分からんからな!」

 

メルドの声が響く。天之河達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れてしばらく進む。少し進めば大きな広間に出て、何となく嫌な予感がする一同。その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に赤黒く脈動する魔法陣が浮かび上がったのだ。それは、とても見覚えのある魔法陣だった

 

「ま、まさか・・・アイツなのか!?」

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

天之河と坂上は驚愕を露わに叫ぶ。しかし、険しいながらも冷静なメルドが応える

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」

 

念には念を押して退路を確保するメルド率いる騎士団。だが、天之河は不満そうに言葉を返す

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ!もう負けはしない!必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

メルドはやれやれと肩を竦めるが、今の天之河達の実力なら大丈夫だろうと不敵な笑みを浮かべている。そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた

 

「グゥガァアアア!!!」

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む

今、過去を乗り越える戦いが幕を上げた

 

「万翔羽ばたき 天へと至れ"天翔閃"!」

 

前回の戦いでは、天翔閃の上位版である神威を以てしてもかすり傷一つ付ける事が出来無かった。しかし、今回は違った

 

「グゥルガァアア!?」

 

悲鳴を上げ地面を削りながら後退するベヒモスの胸にはくっきりと斜めの剣線が走り、赤黒い血を滴らせていたのだ。自分の攻撃が通じる――――――その事実は周囲の士気を更に上昇させる

 

「いける!俺達は確実に強くなってる!永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から!後衛は魔法準備!上級を頼む!」

 

「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな?総員、光輝の指揮で行くぞ!」

 

天之河の指示の元、ベヒモスを包囲する

 

「グルゥアアア!!」

 

「させるかっ!」

 

「行かせん!」

 

ベヒモスは後衛組を行かせんと攻撃するも、坂上と永山がベヒモスに組み付いて"剛力"を使って突進を防ぐ

 

「ガァアア!!」

 

「らぁあああ!!」

 

「おぉおおお!!」

 

完全に動きを止められないながらも、勢いを削ぐ事は出来る。その隙を他のメンバーは逃さずに攻撃を加える

 

「全てを切り裂く至上の一閃"絶断"!」

 

八重樫の抜刀術がベヒモスの角に直撃するが、切断までには至らなかった

 

「ぐっ、相変わらず堅い!」

 

「任せろ!粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ"豪撃"!」

 

メルドの追撃が叩き込まれ、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた

 

「ガァアアアア!?」

 

角を切り落とされた衝撃にベヒモスは力に任せて暴れて、八重樫、坂上、永山、メルドの四人を吹き飛ばす

 

「優しき光は全てを抱く "光輪"!」

 

本来は衝撃に息を詰まらせ地面に叩きつける所だが、白崎の行使した防御魔法が四人を光の輪が無数に合わさって出来た網が優しく包み込んで衝撃を殺した。そして、間髪を入れずに回復魔法も行使する

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを "回天"」

 

"天恵"の上位版である回復魔法。遠隔の、複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ

天之河は、未だに暴れ回るベヒモスに真っ直ぐに詠唱しながら突進。先程入れた傷口に切っ先を差し込んで、最後のトリガーを引いた

 

「"光爆"!」

 

聖剣に蓄えられた膨大な魔力が、差し込まれた傷口からベヒモスへと流れ込み大爆発を起こした。傷口を抉られ大量の出血をしながら、技後硬直中の僅かな隙を逃さずベヒモスが鋭い爪を天之河に振い吹き飛ばす。攻撃自体はアーティファクトの聖鎧が弾くが、衝撃が内部に通る為に激しく咳き込む

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を "焦天"」

 

すかさず、白崎の回復魔法が掛けられて直ぐに治まった

ベヒモスは、咆哮と跳躍による衝撃波で他のメンバー達を吹き飛ばし、折れた角にもお構いなく赤熱化させていく

 

「・・・角が折れても出来るのね。あれが来るわよ!」

 

八重樫の警告と同時に襲い掛かるベヒモス。皆は一度経験している為、一誠に身構える。だが、想定よりも違っていた点、跳躍距離だった。前衛を飛び越えて、一気に後衛組へと襲い掛かったからだ。前衛組が焦りの表情を見せる中、後衛組の一人――――谷口が詠唱を中止して前に躍り出る

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず "聖絶"!!」

 

ベヒモスの必殺の一撃を受け止める事に成功したが、完全詠唱の"聖絶"では無い為にひび割れ始めていた

 

「ぅううう!負けるもんかぁー!」

 

障壁越しに睨付けられる殺意を大量に含んだ眼光。全身を襲う恐怖と不安に、掲げた両手が震えるが、弱気を払って必死に叫ぶが限界はもうそこだ。「破られる」と心の内で叫ぼうとした瞬間

 

「天恵よ 神秘をここに "譲天"」

 

谷口の体を光が包み、"聖絶"に注がれる魔力量が跳ね上がった

 

「これなら!カオリン愛してる!」

 

一気に本来の四節分の魔力が流れ込むと同時に完璧な"聖絶"を張り直す。パシンッと乾いた音を響かせ障壁のヒビが一瞬で修復された。ベヒモスは突破出来無い苛立ちを術者を睨むが、谷口も気丈に睨み返し一歩も引かない。徐々にベヒモスの角の赤熱化が効果を失い始めた。突進の勢いも無くなると同時に谷口の"聖絶"も消失した

 

「後衛は後退しろ!」

 

天之河の指示に後衛組が下がり、前衛組がヒット&アウェイでベヒモスを翻弄し続け、遂に待ちに待った後衛の詠唱が完了する

 

「下がって!」

 

中村の合図と共に、天之河達は渾身の一撃をベヒモスに放ちつつ、その反動も利用して一気に距離をとった。その直後に、炎系上級攻撃魔法のトリガーが引かれた

 

「「「「「"炎天"」」」」」

 

術者五人による上級魔法。超高温の炎が球体となり、太陽の様に周囲一帯を焼き尽くす。ベヒモスの直上に創られた"炎天"は一瞬で直径八メートルに膨らみ、直後、ベヒモスへと落下した。絶大な熱量にベヒモスの外殻は融解して断末魔を上げる

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 

いつか聞いたあの絶叫だ。鼓膜が破れそうなほどのその叫びは少しずつ細くなり、やがて、その叫びすら燃やし尽くされたかのように消えていった。黒ずんだ壁と床―――――そして、ベヒモスの物と思しき僅かな残骸だけが残った

 

「か、勝ったのか?」

 

「勝ったんだろ・・・」

 

「勝っちまったよ・・・」

 

「マジか?」

 

「マジで?」

 

「そうだ!俺達の勝ちだ!」

 

キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる天之河。その声にようやく勝利を実感したのか、一斉に歓声が沸きあがった。男子連中は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。メルド団長達も感慨深そうだ

白崎だけはボーッとベヒモスが居た場所を眺めており、八重樫が声を掛ける

 

「香織?どうしたの?」

 

「えっ、ああ、雫ちゃん。・・・ううん、何でもないの。ただ、ここまで来たんだなってちょっと思っただけ」

 

「そうね。私達は確実に強くなってるわ」

 

「うん・・・雫ちゃん、もっと先へ行けば南雲くんも・・・」

 

「それを確かめに行くんでしょ?そのために頑張っているんじゃない」

 

「えへへ、そうだね」

 

ハジメを探せるという安堵と、もしも死んでいたらと思う不安を実感したのだ。答えが出てしまう恐怖に、つい弱気がでたのだろう。八重樫は白崎の手を力強く握る。その力強さに白崎も弱気を払ったのか、笑みを見せる中――――天之河達が集まってきた

 

「二人共、無事か?香織、最高の治癒魔法だったよ。香織がいれば何も怖くないな!」

 

「ええ、大丈夫よ。光輝は・・・まぁ、大丈夫よね」

 

「うん、平気だよ、天之河くん。皆の役に立ててよかったよ」

 

「これで、南雲も浮かばれるな。"自分を突き落とした魔物"を自分が守ったクラスメイトが討伐したんだから」

 

「「・・・」」

 

もう言葉も出ないというよりも諦めている。天之河の脳内フィルターの前にはベヒモスの攻撃がハジメを落としたと認識させているのだ。犯人である檜山は謝罪したからわざとじゃ無いという謎の思考。訳が分からない。よって、白崎と八重樫は犯人の檜山の処遇を許した天之河を諦めている

微妙な空気が漂う中、クラス一の元気っ子が飛び込んできた

 

「カッオリ~ン!」

 

「ふわっ!?」

 

「えへへ、カオリン超愛してるよ~!カオリンが援護してくれなかったらペッシャンコになってるところだよ~」

 

「も、もう、鈴ちゃんったら。ってどこ触ってるの!」

 

「げへへ、ここがええのんか?ここがええんやっへぶぅ!?」

 

変態親父の如く白崎の体をまさぐる谷口の頭に、八重樫の手刀が炸裂

 

「いい加減にしなさい。誰が鈴のものなのよ・・・香織は私のよ?」

 

「雫ちゃん!?」

 

「ふっ、そうはさせないよ~、カオリンとピーでピーなことするのは鈴なんだよ!」

 

「鈴ちゃん!?一体何する気なの!?」

 

白崎と八重樫と谷口を挟んでのジャレ合いに、いつしか微妙な空気は払拭されていた

これより先は完全に未知の領域。天之河達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に日は流れ――――――

ハジメ達がヒュドラ擬きと神の先兵のデッドコピーを倒した辺りまで進む。勇者一行は迷宮攻略を一時中断して王国へと戻っていた。理由は、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという

歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実は、帝国側の者達からしても是非会ってみたいとの事だそうだ。王宮に戻る中、馬車の中で一通りの説明を受けた勇者一行

馬車が王宮へと到着し、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来る。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒ――――思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気で駆け寄ってくる

 

「香織!よく帰った!待ちわびたぞ!」

 

これだけでお分かりだろう・・・ランデル王子は白崎に惚れているのだ。実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は香織に猛アプローチを掛けていた。白崎は、相手が十歳辺りの男の子という事もあり、弟の様な感じを抱いているのである

 

「ランデル殿下。お久しぶりです」

 

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに・・・」

 

「お気づかい下さりありがとうございます。ですが、私なら大丈夫ですよ? 自分で望んでやっていることですから」

 

「いや、香織に戦いは似合わない。そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」

 

「安全な仕事ですか?」

 

「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ?その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ」

 

「侍女ですか?いえ、すみません。私は治癒師ですから・・・」

 

「な、なら医療院に入ればいい。迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだろう?」

 

これだけのやり取りだけで分かるだろう。白崎と離ればなれになりたくないとランデル王子は思っているが、鈍感な白崎には全く伝わらない

 

「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。心配して下さりありがとうございます」

 

「うぅ」

 

そこに空気の読めない勇者(笑)の天之河が乱入

 

「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」

 

天之河の善意100%は、恋に盲目なランデル王子からしたら「俺の女に手を出すんじゃねぇ!」的に聞こえるのだった

 

「香織を危険な場所に行かせることに何とも思っていないお前が何を言う!絶対に負けぬぞ!香織は余といる方がいいに決まっているのだからな!」

 

「え~と・・・」

 

「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう?光輝さんにもご迷惑ですよ」

 

「あ、姉上!?・・・し、しかし」

 

「しかしではありません。皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて・・・相手のことを考えていないのは誰ですか?」

 

「うっ・・・で、ですが・・・」

 

「ランデル?」

 

「よ、用事を思い出しました!失礼します!」

 

自分の非を認めたくないランデル王子は踵を返してササッと消えていった

 

「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」

 

「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」

 

「そうだな。なぜ、怒っていたのか分からないけど・・・何か失礼な事をしたんなら俺の方こそ謝らないと」

 

白崎と天之河の言葉にリリアーナは苦笑いを浮かべる。姉として弟の恋心を察してはいるのだが、全く気付かれていない現状に多少なりとも同情してしてしまう

 

「いえ、光輝さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。あの子が少々暴走気味なだけですから。それよりも・・・改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

「えっ、そ、そうですか? え、えっと」

 

またしても天之河の善意100%の言葉が炸裂。リリアーナは聡明であり、秀才、王女という事もあり、お世辞混じりの褒め言葉等は慣れているし、そういった事を見抜く事も出来る。だが、下心一切無く素で言った天之河にどう返そうかとおろおろとしている

 

「えっと、とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

天之河達は迷宮での疲れを癒やして、居残り組達にベヒモスを倒したと報告して舞い上がったのは言うまでも無い

それから三日後、遂に帝国の使者が訪れた

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

 

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

 

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

 

「はい」

 

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので?確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが・・・」

 

使者は天之河を観察する様に見て、疑わしそうにしている。特に、使者の護衛の人は値踏みする様な感じでジロジロと見ている

 

「えっと、ではお話ししましょうか?どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

 

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

 

「えっと、俺は構いませんが・・・」

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

 

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

勇者(笑)と帝国の使者の護衛の戦いが決定した

相手の護衛は、見た目は平凡で、特に目立った特徴の無い人物で強そうには見えない。だが、刃引きした大型の剣をだらんと無造作に持っているのだ。これといって意識をしていない天之河は、使者は強くないと判断した。この場に居る全ての人に、驚かせてやろうと割かし本気の一撃を放つ事にした

 

「いきます!」

 

縮地で一気に距離を詰めて唐竹に振り抜いたが、天之河の反応よりも早く護衛の攻撃が直撃して吹き飛ばされた

 

「ガフッ!?」

 

地を滑りながら体勢を整える天之河は驚愕の面持ちで相手を見る。護衛は、掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

その表情は失望。天之河は、意気揚々と仕掛けた自分が吹き飛ばされた事実を受け入れ、相手を舐めていたと自分に怒りを抱く

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

 

天之河は再び気合いを入れ直して攻撃を開始する。超高速の剣撃は体をブレさせて残像を生み出す程――――――だが、紙一重で躱されて隙あらば反撃されて天之河は、自分の戦闘を見失っていた。それでもステータスに物を言わせて直撃を避けているという点は流石勇者(笑)だろう

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

 

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

 

「・・・それが今や"神の使徒"か」

 

チラッと教会関係者の方を見て不機嫌そうに鼻を鳴らす

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ?うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

「ッ!?」

 

気付かぬ内に懐に潜り込まれ、不規則な攻撃が天之河を容赦なく襲う。先読や縮地で体勢を整え様とするが、まるで磁石の様に一定の距離を保ったまま離れない。徐々に焦りが顔に出始め、多少のダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間に護衛が魔法のトリガーを引いた

 

「穿て――"風撃"」

 

「うわっ!?」

 

片足に撃ち込まれた魔法の威力は高くは無い。だが、姿勢を崩す程度の威力が有り、バランスを崩した。それと同時に、壮絶な殺気が天之河を射貫いた。ようやく天之河は理解した。相手は自分を殺すと―――――しかし、そうはならなかった

 

ズドンッ!

 

「ガァ!?」

 

今度は護衛が吹き飛んだ。天之河は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。生存本能に突き動かされるまま、限界突破を使用したのだ。殺されていたかもしれない・・・天之河の表情は恐怖を必死で押し殺した険しい顔をしていた

 

「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

 

「ビビリ顔? 今の方が恐怖を感じてます。・・・さっき俺を殺す気ではありませんでしたか?これは模擬戦ですよ?」

 

「だからなんだ?まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか?この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ?その自覚があんのかよ?」

 

「自覚って・・・俺はもちろん人々を救って・・・」

 

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな?最初に言ったろ?気抜いてっと・・・死ぬってな!」

 

だが、護衛はそれ以上踏み込んでは来なかった。何故なら、二人の間に光の障壁がそそり立っていたから

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。・・・ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

 

「・・・チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 

護衛は、耳に付けていたイヤリングを外す。すると、霧がかった様に姿がボヤけ始め晴れる頃には別人が立っていた

 

「ガ、ガハルド殿!?」

 

「皇帝陛下!?」

 

「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

 

「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

それからは無し崩しで試合は有耶無耶となって終わり、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質が取れ、訪問の目的も達成された

晩餐も終わり、部屋で部下と共に勇者(笑)について本音で話し合うガハルド

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。"神の使徒"である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

 

「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

 

「あぁ?違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」

 

「御意」

 

部下からもたらされる情報を一つ一つ聞くガハルド。その中に一つだけ興味を引く物があった

 

「あぁん?メイドだと?」

 

「はい。ステータスは勇者よりも高く、試合で圧倒したとの情報です。聞き伝ですが、目撃者も多数存在している事から間違い無いかと思われます」

 

「・・・未だ何かあるんだろう?」

 

「勇者一行が初めてオルクス迷宮に挑み奈落へ落ちて行ったと」

 

「ん?待て。今"落ちて行った"と言ったな?"落ちた"じゃなくて」

 

「現場に居た神の使徒の報告では、転移に巻き込まれなかった唯一の人物。そして、短時間でその場所に到着して無能と呼ばれる二名を躊躇無く追いかけたらしいです。落ちる際に、フレンドリーファイア?なる者と一緒に行動出来無いと言う事と、処罰をしなければ殺害も辞さないと宣言されていたとの事です」

 

「へぇ。フレンドリーファイアってのが何か分からないが想像は付くな。極め付けは最後の処罰・・・間違い無く味方を攻撃した何者かが居るのは確定だな。んで?仲間を攻撃した人物は処刑されたか?」

 

「・・・いえ。あの勇者が許したとの事です」

 

「・・・・・嘘だろ?」

 

「・・・・・本当です」

 

ガハルドは深い深ーいため息を吐き、勇者(笑)の評価を最低の物へと切り替えた

 

「ありゃあ人の善性しか見てねぇガキだな。戦力にもならねぇ・・・」

 

「・・・同感です」

 

「それよりもメイドについてだが、聞き伝だけでもハッキリと分かる。日和った連中と違って絶対に裏で色々とやってそうだな」

 

「実は・・・騎士団長曰く、自分よりも強いと感じさせる程との事です」

 

「何かしらの考えが有って後を追ったんだろうな。・・・って事は生き抜いている可能性は大きい」

 

「情報を収集致します」

 

「おう」

 

翌日には帰国するガハルド達・・・何ともフットワークの軽い皇帝である。余談ではあるが、早朝訓練をしている八重樫を気に入り愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあったが、当人は丁重にお断りして、皇帝陛下も「まぁ、焦らんさ」と不敵に笑いながら引き下がったので特に大事には至らなかった

知らずの内にガハルドにロックオンされた深月。だが、ガハルドの失敗はそこだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月の絶対なる忠犬である深月を手に入れよう等、絶対に出来無いのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「いやぁ~メイドさんは大変だ~大変だ~」
深月「えっ・・・ちょっと待ってください。私大変じゃないですか!?」
布団「皇帝さんは有能な人材ほちいだからね♪」
深月「私の主はお嬢様だけです!!」
布団「皇帝がお嬢様を狙ったら?」
深月「無論、玉を引きちぎって竿をぶった切ります!」
布団「ひゃ~!過激だぁ!!」
深月「それでは、今回もこの辺りにしましょう」
布団「記念話はもう少し余裕が出来た日に書く予定ですー」
深月「感想、評価、お気軽にお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

またしてもお嬢様と離ればなれに・・・メイドは戦います

布団「ホワァーーーー!」
深月「何を言っているのですか」
布団「はい。投稿しまーす」
深月「今回はタイトル通りですね」
布団「まぁ・・・そうなるよね」
深月「しかし・・・またですか」
布団「今回は真逆だね」
深月「私の幸運値低くありませんか?」
布団「しょうが無いのよ。メイドさんが一緒に攻略すると駄目駄目だああああ!」
深月「・・・では、本編に参りましょう!」
布団「誤字報告有り難う御座います。本当に助かります」
深月「読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」


~深月side~

 

ブルックの町を出てライセン大峡谷に入っておよそ二日、私達の通った後の道は蹂躙した魔物の死骸で一杯です。そしてここからが怒濤の展開なのです。シアさんが"お花摘み"に席を外した先に見つけた案内板は迷宮の物でした。これだけなら、運が良かっただけで怒濤の展開ではありませんよ。・・・何故なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁさぁさぁ!絶望絶望♪たった一人でのラスボスのミレディちゃんと一騎打ち!プププッ♪ねぇねぇ、今、どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に佇む巨大ゴーレム――――――ミレディ・ライセンが居るからです

どうして私の目の前に居るのかですか?あれはほんの少し前に遡ります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハ、ハジメさ~ん!皐月さ~ん!深月さ~ん!ユエさ~ん!大変ですぅ!こっちに来てくださぁ~い!」

 

ライセン大峡谷を探索して数日―――――野営のしようとした一同だが、シアが花摘みで席を外していた。すると、帰って来たシアは四人を導いて岩の隙間に入ると、意外なほど広い空間が存在した。そして、その空間の中程まで来ると、シアが得意げな表情でビシッと壁の一部に向けて指をさした

 

"おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪"

 

『は?』

 

呆然と地獄の谷底には似つかわしくない看板を見つめるハジメと皐月とユエ。深月は周囲の様子を観察している

 

「・・・マジだと思うか?」

 

「・・・・・ん」

 

「マジだと思うわ・・・だってミレディって書いてるし」

 

「やっぱそこだよな・・・」

 

外で知られている名前は"ライセン"。ファーストネームが分からないのが普通だが、オスカーの手記に書かれている。故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かったのだが、素直に信じられない理由は・・・

 

「「何でこんなチャラいんだよ(のよ)・・・」」

 

ハジメと皐月とユエの予想では、オルクスみたいに死闘を繰り返す迷宮だと踏んでいたからだ。これを見るからに誰かのいたずらではないかと疑っているのだ

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね?奥も行き止まりですし・・・」

 

「シアさん、駄目ですよ。不用意過ぎます」

 

微妙そうにしている三人と警戒をしている深月を余所にシアは、「入口はどこでしょう?」と辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている

 

「シア。あんまり・・・」

 

ガコンッ!

 

「ふきゃ!?」

 

"あんまり不用意に動き回るな"そう言おうとした皐月の眼前で、シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。深月は「だから不用意だと申しましたのに・・・」と頭に手を当ててため息を吐いている

 

「「「・・・・・」」」

 

ハジメ、ユエ、皐月―――――と続く様に、シアが飲み込まれた回転扉に手を掛ける。グルンッと後方に居る皐月を巻き込んで扉の向こう側へと送る最中、深月が皐月を呼んだが皐月当人は聞こえていなかった。中は暗闇で見えず、ガコンッと扉が停止すると同時にこちらに向かってくる飛来物・・・それは矢だ。全く光を反射しない漆黒の矢が侵入者を排除せんと無数に飛んで来たのだ

皐月はドンナーを出さず、拡散型の衝撃波を放って迎撃。吹き飛ばした矢の本数は二十程だった。静寂が戻ると同時に周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた

 

"ビビった?ねぇ、ビビっちゃった?チビってたりして、ニヤニヤ"

"それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?・・・ぶふっ"

 

「「「・・・」」」

 

ハジメと皐月とユエの三人の内心はかつてないほど一致している。―――――「うぜぇ~」と。わざわざ、"ニヤニヤ"と"ぶふっ"の部分だけ彫りが深く強調されているのが余計腹立たしい。特に、パーティーで踏み込んで誰か死んでいたら、間違いなく生き残りは怒髪天を衝くだろう

多少額に青筋を浮かべていると、ユエが思い出した様に呟く

 

「・・・シアは?」

 

「「あ」」

 

二人は思い出し、先に入ったシアを確認するべく、巻き込まれない様に扉を回転させると・・・シアは回転扉に縫い付けられていた

 

「うぅ、ぐすっ、ハジメざん・・・見ないで下さいぃ~。でも、これは取って欲しいでずぅ。ひっく、見ないで降ろじて下さいぃ~」

 

もの凄く哀れな姿であった。恐らく、天性の索敵機能が飛んで来る矢を察知して回避行動を行ったのだろう。だが、全てがギリギリでの回避だった為に非常口のピクトグラムに描かれている人型の様な格好で固定されていた。そして、何故シアが泣いているのか・・・恐怖故の物では無く、足元が盛大に濡れていたから―――――お漏らしをしてしまったからだ

 

「そう言えば花を摘みに行っている途中だったな」

 

「そういう事は良くあるわよ・・・・・多分」

 

「ありまぜんよぉ!うぅ~、どうして先に済ませておかなかったのですかぁ、過去のわたじぃ~!!」

 

無表情ながらも同情を禁じ得ない皐月とユエは張り付けにされたシアを解放する

 

「・・・あれくらい何とかする。未熟者」

 

「面目ないですぅ~。ぐすっ」

 

「ハジメ、着替えを出して」

 

「あいよ」

 

宝物庫からシアの着替えを出してやり、シアは顔を真っ赤にしながら手早く着替えて顔を上げると三人が見た文字が目に入る。八つ当たりする様に壁をドリュッケンでドッカンドッカンと破壊するが、砕けた石板の跡―――――地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには・・・

 

"ざんね~ん♪この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!"

 

「ムキィーー!!」

 

シアが遂にマジギレして更に激しくドリュッケンを振い、壁を粉砕して行く。しばらく破壊行為をした後、復元する壁には更に文字が彫られていた。それは・・・

 

"むだむだむだ~♪お馬鹿さん♪それよりも気付かない?気付いていない?プークスクスクス!"

 

「一旦止まりなさいシア」

 

「何でですか!この恨み晴らすべからずうううう!!」

 

「と・ま・れ」ゴゴゴゴッ

 

「スイマセン」

 

徐々に修復されて行く壁。新たに彫られている文字・・・

 

"お仲間が減ってる事に気付かない?あっゴッメーン!ひとりの君はボッチだよね?ソロ=ボッチ―――――ブフッ!"

"えっ?減った事に今気付いたの?プギャー♪鈍感鈍感!後方さんはボスと一騎打ちなの~!あ、戻ってもむ・い・み!焦った?焦った?ねぇねぇ、今、どんな気持ち?どんな気持ち?"

 

最後の彫られた文字を見て四人は合掌した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深月では無く、ミレディに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘はしました。もう過去形ですよ?

 

「それで?私と戦っていた巨大ゴーレムは、ミレディ・ライセンご本人様で宜しいでしょうか?」

 

『えっと・・・はい。ってか最初に思っていたけど何でメイドなの!?普通は冒険者じゃないの!?そして強すぎるんですけど!?何で重圧を増やしたのに動けるの!?』

 

「この程度の重圧で動けなくなる様ではメイドとして失格です」

 

『それメイドじゃ無いよね!?何処の世界に超人メイドを育成する所があるの!?』

 

「全てはお嬢様の為にです」

 

『会話が成立してないよ~!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数刻前――――――

ミレディゴーレムと一対一の勝負で、深月はゴーレムを攻撃するも傷一つ付かなかった。その事実を踏まえながら、関節部を攻撃するも無傷。ミレディが高笑いしながら挑発するも、深月は気にせずに要所要所で攻撃して行く

 

『も~!避けて攻撃、避けて攻撃ばっかりでウザったい!という訳で、レッツゴーゴーレムちゃん♪』

 

総数およそ五十体の騎士型ゴーレムが剣を携えて深月に群がる

 

『むっふっふっふっふ♪ねぇ、今、どんな気持ち?卑怯?セコイ?でも私ボスだから~♪』

 

ギリギリでゴーレム達の攻撃を回避している深月の様子を見て上機嫌なミレディだが、深月のいやらしさは全く知らない。このメイドはチートを超えるチート・・・特に、魔力糸を獲得してからはそれが顕著に表れている

振り下ろされるゴーレムの腕に、不可視状態の糸を巻き付けて身を屈めながら引っ張る。隣のゴーレムの胴体を軸に巻き付けているので、降り下ろしが横薙ぎとなって周囲のゴーレムをなぎ倒した。自分の命令とは違う動きをするゴーレムに驚愕するミレディは、一瞬だけ意識を深月に反らしてしまった。その隙を逃さず、魔力糸を細いノコギリ状の形へと変えて一気に引き絞る。避けながら、関節部へと巻き付けていた魔力糸・・・引き切る様に四肢の関節に絡ませていたので、殆どのゴーレムがダルマとなり地面へと崩れ落ちた

 

『はぁ?』

 

目の前で起きた事が理解出来無いミレディ。完全に硬直したその胴体に金剛で極限まで硬くした拳を心臓部へ向けて殆ど同時の連打八卦を打ち込んだ

 

ドガガガンッ!

 

某グルメ主人公の連続パンチを再現した攻撃。ステータスに物を言わせたごり押し・・・貫通と破壊に特化したそれの衝撃は凄まじく、巨大ゴーレムを大きく仰け反らせる程だった

 

『ちょ!?ちょちょちょ、ちょっと待って!?素手でこの威力ってヤバイわよ!?このゴーレムじゃなかったら完璧に破壊されていたんですけど!?』

 

「ちっ!」

 

『ひぇっ!?こ、このメイド、私を完全に破壊するつもりなの!?で、でも残念でした~♪アザンチウムの硬度は最強!破壊なんて出来無いのよ!!』

 

「そうですか・・・アザンチウムを使用していながらその動きとなれば――――――装甲板の扱いをしているのですね」

 

『どうして分かったの!?攻撃した瞬間に気付いたの!?』

 

会話をしながら攻守攻防?・・・ミレディの攻撃は空を切るばかりだが、周囲の騎士ゴーレムは再生して復活してミレディを注視している深月の死角からの攻撃。ゴーレムの為笑みを浮かべたり出来無いが、間違い無く「勝った」と確信したのだが、それすらも裏切られた

深月は振り向き様に刀身の腹に裏拳を叩き込んで弾き、ミレディ本体に叩き込んだ連続八卦を胸部に打ち込んだ。粉々に砕け散った礫は、後方に待機していた騎士ゴーレム達を巻き込み全滅させたのだ。これ程までのTHE理不尽の前に、ミレディは激おこだ

 

『理不尽でしょ!?粉砕した礫で奧のゴーレムまで倒すとかわけ分かんない!!』

 

騎士ゴーレムの再起動まで少しだけ余裕が出来た深月は、再び巨大ゴーレムの攻略を開始する。しかし、攻撃全てがアザンチウムの前に弾かれたり、傷を付ける程度だった

 

「硬い・・・」

 

『チマチマと!挑戦者ならドーンと大きな攻撃でもしてきなさいよ!』

 

巨大ゴーレムが何やら文句を垂れていますが無視です。現在知り得ている情報を整理しましょうか・・・

一つ。アザンチウム鉱石で出来たゴーレムですが、装甲板として使用している事

二つ。周囲の騎士ゴーレムが動く際は本体が殆ど動けない事

三つ。傷を付ける事が出来る武器は、同じアザンチウム製の武器とノコ状の魔力糸

そして、最後は予測となりますが・・・人間と同様に心臓部に核がある筈です。騎士ゴーレムの核も同じ部分に存在して、私が胸部を攻撃した時に"完全に破壊するつもり"と発言されていたので間違い無いでしょう

これだけの条件が揃えば、殺りようはありますね

 

思考は途切れさせずに、微々たる成果しか無いものの"同じ場所"に攻撃を続けていく。勿論巨大ゴーレムに気付かれない様に、魔力糸を常時ノコ状にして小さな傷を付けている。ゴーレム自身は、同じ場所を攻撃されている事に気が付いてないのか大振りの攻撃ばかりを繰り返している

深月は次の一手を出す為に大きく後退。ゴーレムは後退する深月に向けて手をかざした。その瞬間、深月の体がズシッと重くなり膝を付く

 

「――――ッ!これは重さを変える魔法!?」

 

『ふっふ~ん!私の重力魔法のお味は・い・か・が・?これで私の勝ち確定ね!残念ね~♪貴女は私に潰される運命なのよ。じゃあね~♪』

 

膝を付いて動かない深月に向けて特大の拳を振り下ろすゴーレム。近づく拳の前に微動だにしない深月を見て勝ちを確信するが、それすらも裏切られた。ゴーレムの一撃は、深月の前眼で止まったから。それは奇しくもオルクスでの使徒擬きと同じ状態だった。そんな事を知らないゴーレムは当然驚愕して焦った

 

『な、何で!?嘘!動かない!?引く事も押す事も出来無い。それどころか体が動かないんだけど!!』

 

「これで終わりです」

 

微動だにしなかった深月は、何事も無かったかの様に立ち上がってゴーレムを見据えた

 

『じゅ、重力魔法が効かない!?嘘!?だって五倍の重さを掛けたのに!』

 

「それは残念でしたね。私は限界突破の技能を持っています―――――後はお分かりですか?」

 

『げ、限界突破を持ってるの!?・・・で、でもっ!私は健在しているから攻略は出来ていないわ!』

 

「そうですね。アザンチウムの装甲の前には"普通の攻撃"は通用しません」

 

『そうよ!だから、貴女は迷宮から出る他無いのよ。ねぇねぇどんなk―――――』

 

「ですので、普通の戦闘では出来無い攻撃を致します。動きを封じたのもその為です」

 

『えっ?――――――ちょっと待って何を』

 

深月は考えていた。どうすれば貫けるのか――――――と

ハジメがパイルバンカーを創っていた事は知っているが、当人はこの場に居ない。よって、この現状を自分の力だけでどうにかしなければいけないのだ。そこで、一つだけ思い至った方法が魔力糸を物質化させた攻撃という事だ。ゴーレムを拘束している糸はそのままで、胸部に向けてバリスタの様な形を作って黒刀をセット

 

『・・・その剣ってもしかしなくても』

 

「アザンチウム100%の武器です♪」

 

『で、でも貫通力は無いわよね!?』

 

「貴方はお気づきでは無いでしょうが、私が無意味な攻撃を続けるとお思いですか?胸部をしっかりと観察してみてください」

 

『・・・あっれれ~?おっかしいぞ~?傷が付いているんだけど』

 

「私の攻撃で薄い切り傷が付く程度でしたが、塵も積もれば山となります」

 

『だ、だけど!最初に言った通り貫通力が無いと意味が無いわよ!』

 

「これを見てもそう言い切れますか?」

 

深月は破砕したゴーレムの一部を取って、纏雷を使って指で弾くとキュガッ!と音を立てて壁を貫通していった

 

『  』

 

「後はお分かりですね。では、早速実行しましょう♪」

 

『待って!?待って待って待って!!降参するから!?降参するから破壊だけはしないで!?』

 

「振りですね。分かりました」

 

『まっt―――――』

 

「待ちません」

 

黒刀の柄を魔力糸で縛り付けたのを確認した後、バリスタ擬きを躊躇無く発射。轟音と共に傷付いた装甲を黒刀が貫通してゴーレムの核を砕き、ドォンと地面に崩れ落ちたのだった。深月はやり切った顔をして壁の奥へと貫通していった黒刀を、魔力糸をつたって回収したのは言うまでも無い

 

『はぁ・・・止めてって言ったのに。・・・容赦ないなぁ』

 

「まだ息があるのですか。今の内ににトドメを刺しましょう」

 

『まぁまぁ、もうすぐ消えるから少しぐらい・・・お話ししようよ』

 

「・・・お話ですか。それなら大丈夫ですよ」

 

『私の名前はミレディ・ライセンよ』

 

そして話しは戻る――――――――

最初の紹介は終わり、何故迷宮を攻略しているのか――――ミレディは迷宮の本当の意味を深月に教える

 

『神代魔法は貴女達が帰還する為に必要』

 

「そして、盤面を引っ掻き回す私達はイレギュラー」

 

『いつ頃から手出しをしてくるか分からないけれど、確実に来るから注意はしてね』

 

「忠告感謝致します。ですが、恐らく既に目を付けられているのは確実でしょう」

 

『ははは・・・あいつらは性根が悪いから・・・もうそろそろ・・・時間かな』

 

「ではお休みなさい」

 

『メイドフェチな・・・オーちゃんだと・・・嬉しいだろうなぁ・・・』

 

「"その体"ではもうお休みなさいでしょう?早く切り替えて修復しなければお嬢様達が来られますよ?」

 

『・・・何時から気付いたの?』

 

「出会って直ぐの性格から考えてです。ハジメさんとお嬢様は気付くでしょう」

 

『あっ・・・はい。それじゃあ、あの浮遊ブロックに乗ってね』

 

「解放者の拠点があちらですか」

 

奥に案内された浮遊ブロックに乗って進んで行くと、扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。深月が近づくと、タイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった

 

「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」

 

「では、私は此処で皆さんを待たせて頂きます」

 

「神代魔法は?」

 

「後でお願い致します」

 

「それじゃあ私は修復しに行ってくるよ~♪」

 

こうして、深月は最初の迷宮攻略者となりハジメ達の到着をゆっくりと待つ事に

修理を終えたミレディと雑談をしたり、ミレディの案内から外に出て魔物を駆逐して食料にしたりと何気にオルクスでのサバイバルと変らない事をやっていたりしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ達と分断されてからおおよそ一週間。ハジメ達はようやくボス部屋へと到着したのだった

戦闘描写は特にこれと言って無い。何故か?開幕速攻で終わったからだ。巨大ゴーレムの四肢、特に関節部を水で濡らしてユエの魔法で凍らせてパイルバンカーを心臓部に撃ち込んだからと言っておこう。皐月は魔力魔力そのものを見通す魔眼を持っている。ハジメも同じ効果を持つ眼帯を創っているので核は直ぐに発見。初撃はオルカンのロケット弾で傷付かなかったから、パイルバンカーの最大火力でやっちゃおうとの事。パイルバンカーで完全に貫く事は出来無かったが、シアのドリュッケンで杭を叩き込む事でぶち抜いたのだ。あっという間の攻防。迷宮でのイライラを最大火力出発散したと言う事である

その後は、ミレディの死の演出によりユエとシアが騙されてという流れである。何が言いたいかというと

 

「・・・死ね」

 

「死んで下さい」

 

「ま、待って!ちょっと待って!このボディは貧弱なのぉ!これ壊れたら本気でマズイからぁ!落ち着いてぇ!謝るからぁ!」

 

ドッタン!バッタン!とユエとシアに追い回されているミレディの姿である

じゃれ合いを無視してお互いの状況を説明するハジメ達。深月はどうしたのか、ハジメ達は攻略でどうなったのか等々

 

「「本当にウザかったんだよ(のよ)!深月がいたら一直線だったのに!!」」

 

オルクスでの出来事から深月の探索能力を目の当たりにしているハジメと皐月は手痛い出来事だったのだろう

 

「いえ・・・お話を聞く限りですと、オルクスと同様の事は出来ませんよ?」

 

「「えっ?」」

 

「あれは部屋が移動したり創り変らないという点が前提ですから・・・」

 

「そうか・・・」

 

「深月ならチートを生み出すかと思ってたの・・・」

 

追いかけ回されているミレディは無視して話し込んでいる三人・・・特に、話し安く、乱暴にしないであろう深月の背に回り込む様に隠れた。流石のユエとシアも止まった

 

「助けて!あの二人私を殺すつもりなんですけど!?」

 

「駄目ですよユエさん。シアさん。神代魔法を手に入れていないのですから」

 

「そーだ!そーだ!・・・・・あれ?その言い方だと手に入れたら不要って事?」

 

「知るべき情報は手に入れましたから」

 

「・・・もしかしなくても・・・私とのお喋りは情報収集だった?」

 

「そうですが何か?」

 

「うわああああん!もう誰も信じられないよ~!」

 

ミレディとのお喋りは雑談だったのだが、殆どが有益な情報だったので深月にとって有意義な時間であった。大迷宮の内容は知る事が出来無かったが、場所等については正確に把握出来たのである

 

「それじゃあ・・・さっさと神代魔法を寄越せ」

 

「キリキリと働きなさい。さもないと砕くわよ?」

 

ミレディを脅す二人。皐月に関しては義手の手でミレディをギリギリと締め付けている

 

「あのぉ~、言動が完全に悪役だと気づいてッ『メキメキメキ』了解であります!直ぐに渡すであります!だからストーップ!これ以上は、ホントに壊れちゃう!」

 

魔方陣の中に入り、神代魔法を書き込まれて行く。経験者の四人は無反応だが、初体験のシアはビックン体を跳ねさせた

 

「これは・・・やっぱり重力操作の魔法か」

 

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね――――って言いたいところだけど、君と貴女とウサギちゃんは適性無いねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

 

「それくらい想定済みよ」

 

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は・・・生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。メイドと金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

 

初めての神代魔法の適性が無いシアはガックリと項垂れた。ユエは適性が有るとの事だったので内心嬉しかった。ここでもやっぱりあれなのが深月である

 

「ホントさぁ・・・メイドって何なの?生成魔法は鉱石に付与する筈なのに、魔力糸?に適応しているとかありえないでしょ。そして重力魔法も適性有りって・・・」

 

「「「「深月(さん)だから仕方が無い(ですぅ)」」」」

 

「・・・貴方達も諦めているのね」

 

「重力魔法ですか・・・抽出する際には便利ですね」

 

深月の頭の中で一番早く思い付いた活用法は、"植物性油を手に入れる"―――――これで料理の幅が広がったのである。そんな深月を放置してハジメ達は、ミレディに対して要求していく

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ」

 

「便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱物類もね?」

 

「・・・君達さぁ、セリフが完全に強盗と同じだからね?自覚ある?」

 

はぁ、とため息を吐きつつ一つの指輪を取り出し、それをハジメに向かって放り投げて虚空に大量の鉱石類を出現させる。しかし、この程度でよしとしないのがハジメクオリティー

 

「おい、それ"宝物庫"だろう?だったら、それごと渡せよ。どうせ中にアーティファクト入ってんだろうが」

 

「あ、あのねぇ~。これ以上渡すものはないよ。"宝物庫"も他のアーティファクトも迷宮の修繕とか維持管理とかに必要なものなんだから」

 

「知るか。寄越せ」

 

「あっ、こらダメだったら!あげないって言ってるでしょ!もう、帰れ!」

 

ジリジリと迫ってくるハジメに、ミニ・ミレディは勢いよく踵を返すと壁際まで走り寄り、浮遊ブロックを浮かせると天井付近まで移動する。この時、深月は何かに感づいたのか皐月の側に待機

 

「逃げるなよ。俺はただ、攻略報酬として身ぐるみを置いていけと言ってるだけじゃないか。至って正当な要求だろうに」

 

「それを正当と言える君の価値観はどうかしてるよ!うぅ、いつもオーちゃんに言われてた事を私が言う様になるなんて・・・」

 

「ちなみに、そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観だ」

 

「オーちゃぁーーん!!」

 

今までミレディに散々やられたユエとシアも参戦して包囲していく。皐月も混じろうとしたのだが、深月に止められている

 

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて・・・もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ!戻ってきちゃダメよぉ!」

 

今にも飛び掛からんとしていたハジメ達。ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った

 

「はぁ・・・やはりそうきますか」

 

「「「「?」」」」

 

深月を除いて、ミレディが何をしているのか分からない一行。だが、次の瞬間・・・嫌と言う程聞き覚えのある音で確信した

 

「ハジメさん、ユエさん、シアさん。早くこちらに!」

 

ガコン!

 

「「「「!?」」」」

 

トラップの作動音。その音が響き渡った瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。四方八方から襲い来る。そして、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた

 

「てめぇ!?」

 

「こういうのは緊急脱出用じゃないの!?」

 

「お嬢様失礼致します」

 

深月の招集よりも、激流を逃れようとユエが"来翔"を行使しようとするが

 

「させなぁ~い!」

 

ミレディの重力魔法が襲い掛かり、激流へと飲まれる。深月の方は、皐月を抱き上げて魔力糸で繭の様に展開させた。本来は五人で入りたかったが、ハジメ達が集まらなかったので皐月と深月の二人だけだ

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~。そしてメイドはしっかり対応しているって・・・」

 

「ごぽっ・・・てめぇ、俺たちゃ汚物か!いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

 

「ケホッ・・・許さない。・・・深月いr――――――」

 

「ちょ深月ざん!?わだじもおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」

 

ハジメ達はそう捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていった。穴に落ちる寸前、ハジメだけは仕返しとばかりに何かを投げたようだ。ハジメ達を流した後はあっという間に水が引き、床も戻って元の部屋の様相を取り戻した

 

「ふぅ~、濃い連中だったねぇ~。それにしてもオーちゃんと同じ錬成師、か。ふふ、何だか運命を感じるね。願いのために足掻き続けなよ・・・さてさて、迷宮やらゴーレムの修繕やらしばらく忙しくなりそうだね・・・ん?なんだろ、あれ」

 

ミレディが独りごちる中、ふと視界の端に見慣れぬ物を発見。壁に突き刺さったナイフとそれにぶら下がる黒い物体。嫌な予感がヒシヒシと伝わり、わたわたと踵を返すミレディだが、時すでに遅し。ミレディが踵を返した瞬間、爆発――――――。「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「いやぁ~メイドさんはお強いですなぁ」
深月「これも全て派生技能のお陰です」
布団「節約とかぶっ壊れ性能だと思うのよ」
深月「本来の魔力消費量が10の所を1辺りまで抑える事が出来ますので」
布団「うん・・・もうさ、メイドさんに勝てる人って居ないんじゃないかな?」
深月「油断や慢心はいけませんよ!」
布団「罠に掛かったじゃん?」
深月「一度に入れる人数が決まっていたのです!」
布団「しっかし・・・糸を束ねて武器を創るって・・・錬成師顔負けじゃないですかぁ」
深月「いえいえ、硬度は変えれますが鉱石の特性までは再現出来ませんので・・・」
布団「某正義の味方みたいに同調開始出来るんじゃない?」
深月「ふむ・・・ハジメさんに色々と教えて頂きましょう」
布団「あっ!ちょ!?タンマ!それ駄目ええええ!」
深月「感想、評価、お気軽にお願い致します。では、私はハジメさんにアドバイスを」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは暗躍していました

深月「投稿ですよ!今回は作者さんが忙しそうにしているので、私一人の豪華一本立てでございます。・・・とはいえ、前書きで話す事は殆ど無いにも等しいです。ですが、このまま終わるとなると味気無いので独り言を呟きましょう
お嬢様は日々進化しておられます。それはもう、あらゆる所ですよ!(意味深の)訓練や(戦闘の)諦めない粘りで私の攻撃を凌ごうとする姿はたまりません!!さぁ皆さんもおzy―――――――」
布団「それ以上はいけない!無理矢理にでも話しを断ち切らせて頂いたのです」
深月「チッ・・・」
布団「舌打ちしないで下さいよぉ。お嬢様について色々書いてみるから(本当に書くとは一言も言っていない)」
深月「作者さんは遊んでいました―――――と、いう事ですね?」
布団「朝から晩まで色々と諸事情で書けなかったんです!  誤字報告有り難うなのですよー」
深月「感想も有り難う御座います。・・・作者さんのモチベを上げ上げするには必要なのですね」
布団「テンション上がってきたー!   って?」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」




~ハジメside~

 

ブルックと隣町の間にある湖がいきなり泡立ち

 

ゴポッ!ゴポゴポゴポッ!    ゴッパーーーン!

 

「どぅわぁあああーー!!」

 

「んっーーーー!!」

 

「   」

 

吹き上がる水の勢いそのままに、三人と大きい白い玉が飛び出す。おおよそ十メートルまで飛ばされた一行はボチャンと水柱を立てながら墜落した。そして、その光景を見ている者達・・・服屋のクリスタベルと、マサカの宿の娘のソーナと、護衛の冒険者達は呆然としていた

深月は、魔力糸を球体からボートの形に変えてハジメ達三人の回収する

 

「ゲホッ、ガホッ、~~っ、ひでぇ目にあった。あいつ何時か絶対に破壊してやる。ユエ、シア、無事か?・・・皐月と深月は・・・まぁ、そうだよな・・・」

 

「ケホッケホッ・・・ん、大丈夫。・・・深月酷い」

 

「お声を掛けたのですが聞こえませんでしたか?」

 

「・・・むぅ。それを言われると何も言い返せない」

 

水面からボートに上がった二人と、回収された一人。返事が無いシアは、現在皐月が人工呼吸を行っている

 

「それにしても、深月の魔力糸だが・・・応用効き過ぎだろ」

 

「・・・船」

 

「重力魔法で沈まない様にしているだけですよ?本来は定員一~二人です」

 

魔力糸でオールの形を作りクリスタベル達が居る岸へと近づけて行くと、シアも目を覚ましたのか・・・皐月にアイアンクローをされている

 

「・・・何があった」

 

「・・・ん」

 

「この残念ウサギッ!あそこに居るクリスタベルさんの所までぶっ飛びなさい!!」

 

まるで水切りの様にシアを水面に叩き付けて吹き飛ばした皐月。シアは「あっぶぇえええええ!」と叫びながら吹っ飛んでいった

 

「本当に何があった・・・」

 

「・・・なにかされた?」

 

「人工呼吸をしている私をハジメと間違えてキスをしてきたのよ。救助している人に対しての侮辱に等しいわよ!」

 

「後程OHANASHIしておきましょうか?」

 

「やらなくて良いわよ。その代わり、ハジメに癒やしてもらうから―――――――良い?」

 

「ん!」

 

「おっ、おう」

 

ハジメの右腕に引っ付く皐月。肉眼でハジメ達を見て、「あら? あなたたち確か・・・」と記憶にある三人を思い出すクリスタベル。そして、嫉妬の炎を瞳に宿す男共とそんな男連中を冷めた目で見ている女冒険者

シアの元まで到着したハジメ達の元に、飛ばされたシアが帰ってくるなり文句を言い始める

 

「酷いですよ皐月さん!ちょっと間違えてキスしちゃった位であんなに怒る事ないじゃないですか!これは断固抗議です!対価としてハジメさんを一日貸して頂きます!!」

 

「あ"ぁ"ん"?」

 

「・・・調子に乗ってすみません」

 

皐月の憤怒の視線を浴びて素直に土下座して謝るシア。中々怒らない人物が怒るのはとても怖いのである

 

「お嬢様がシアさんをあのまま放置していたら死んでいましたよ?助けられた際に言うべき言葉は何かお分かりですか?それをちゃんと言いましたか?」

 

「ありがとうですぅ~」

 

「はいはい。どういたしまして」

 

あまりの棒読みに戸惑う。それ程までに怒っていると改めて気付き、シュンと耳を垂れ下げたシア

クリスタベルが近付きハジメ達に状況を聞こうとすると、顔を背ける二名。深月は初対面という事もあって、ユエが対処する事で、一緒にブルックまで同行する事となった

 

「・・・店主いい人」

 

「ですねぇ~」

 

揺れる馬車に馬の足音、心地よいBGMを聞きながらブルックへと進む一行。道中で出てくる魔物達は全て深月によって瞬殺されたのはお約束である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

月が時折雲に隠れながらも、夜の闇を光りが地上のとある建物を照らす。分かりやすく言うならば、建物の屋根からロープを垂らして綺麗に下降している少女――――――ソーナがそこに居た

 

「ふふっ、あなた達の痴態、今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」

 

ゆっくりと、しかし、スルスルと慣れた様子で三階にある角部屋の窓まで降りるて窓の上部から中を覗き見る

 

「この日のためにクリスタベルさんに教わったクライミング技術その他!まさかこんな場所にいるとは思うまい、ククク。さぁ、どんなアブノーマルなプレイをしているのか、ばっちり確認してあげる!」

 

ハァハァと気持ちの悪い荒い呼吸をしながら室内に目を凝らすソーナ。普段は明るく、ハキハキとしたしゃべりに良く動き回る働き者、美人の様に目立つ様な少女では無いが素朴な可愛らしさを持つ看板娘。そんな彼女は、現在、持てる技術の全てを駆使して、とある客室の覗きに全力を費やしていた

 

「くっ、やはり暗い。よく見えないわ。もうすこってきゃああああああああーーーーーー!」

 

視界をずらして中を覗き込もうとした彼女だが、自身を吊していたロープが切れて落下する。地面と激突する寸前で止まった

 

「な、何でロープが切れたの。新品同然だったのに・・・」

 

シュルルル

 

紐が引かれる様な音が聞こえた瞬間、ソーナを拘束するロープ。何が起きたのか理解出来無い彼女の前に現れる人物―――――深月がそこに居た

 

「一体何をなされているのですか?」

 

「わ、罠よ!これは罠よ!誰かが私を陥れようとしているの!」

 

「そうですか。・・・貴女が縛られているロープはあそこで切れている物ですよ?」

 

「えっ?違いますよ。切れたロープは私の腰に――――――」

 

「ご協力感謝致します。自ら自首されたので私からは何も言いません」

 

「えっ?自首って?」

 

「貴女の腰に付いているロープは上のそれだと自身で申されましたよ?」

 

深月の後ろからヌッと出てくる人影――――――笑顔だが、眼が全く笑っていない母親が現れたのだ。ソーナは顔を青ざめて母親にドナドナと連行されて、少しして小さな悲鳴が上がった

 

「さて、私は私でシアさんのお説教をしませんと」

 

実は、ソーナが覗きをする前にハジメ達の部屋へと突撃しようとしていたシアを深月が捕縛して説教をしていたのだ。その為、少しばかり遅めの対処とした

 

「ひんひん。どうじで深月しゃんにばれちゃうんですかぁ~」

 

「あれで気配を消しているつもりだったのですか?それはそれとしてお説教の再開です」

 

「もう許してください~!」

 

再び深月のお説教が始まった。ハジメはもう既に寝ており、皐月とユエの二人がひっそりと起きている

 

「全く、油断も隙も無いわね」

 

「・・・皐月はシア反対?」

 

「そうじゃ無いのよ。ユエ、ハジメの正妻は?」

 

「皐月」

 

「納得はしているの?」

 

「文句無い。・・・ハジメが私も愛してくれる様に気配りしてくれているから」

 

「ちゃんと見てるのね。まぁ、シアがハジメの正妻となったとしたらどうなると思う?」

 

「・・・自分ばかり良い思いをしそう?」

 

「そゆこと。ちゃんと分かってるじゃない」

 

「・・・シアが認められないのはそれが理由?」

 

「ちゃんと普段の生活の中でチャンスを与えているわよ?それを物に出来るかは観察しているけれど」

 

「・・・そこまで気が回らなかった」

 

皐月はシアを拒絶はしていない。寧ろチャンスを活かせる機会を作っているのだ。何気ない所でも目を光らせており、空振りとハジメの感情を読み取って、うっとうしいと感じるまでの行為を見て減点を付けているのは言うまでも無い

 

「・・・シアはがっつきすぎ?」

 

「一歩手前に下がって物事を見れば良いのにね。ハジメも嫌がってはいないのよ?ただ・・・やり過ぎでウザいと認識しているの」

 

考えても見て欲しい。押して押して押しまくる女性を好きになれるか?積極的にアピールするのは未だ許せる範疇だが、度が過ぎればただただウザいだけ。シアの現在がこれに相当し、自らが好感度をへし折っていくスタイルだ

 

「教えたら駄目よ?自分で気が付かない様なら、ハジメへの愛情もその程度なのよ」

 

「・・・分かった。・・・けど、助言する」

 

「ほんの少しだけなら良いわよ」

 

「ん!」

 

「それじゃあ私達も寝ましょう」

 

「おやすみ皐月」

 

「おやすみユエ」

 

ハジメを真ん中において川の字で眠った二人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう寝させてください~」

 

「反省するまで終わりませんよ!」

 

深月のお説教は一晩中続いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が昇り、朝になった。ハジメ達は一階に降りると、お尻を腫らして吊されている看板娘と、目の下に隈を浮かべて椅子に座っているシアが居た

 

うわぁ・・・深月のお説教が一晩中続いたのね。きっとお説教中に眠ったのね

 

三人は何があったのか容易に想像出来、深いため息を吐いてシアが座っているテーブルへと着く

 

「ハジメさん聞いて下さいよ~。深月さんが~」

 

「大方、説教中に居眠りでもしたんだろ」

 

「ぎっくぅ!」

 

「自業自得よ」

 

「・・・それは怒る」

 

三人共が深月に賛同している。シアの味方は誰一人居ない

 

「それでもお説教が長すぎますよ~。ハジメさん、どうにかして下さいよ~」

 

「俺に振らず自分でどうにかしろ」

 

「え~、いいじゃないですかぁ~!ほらほら、私の胸を触っても怒らないですよ~」

 

「うっとうしい!そんなに眠たいんだったら目を覚まさしてやるよ」

 

「い"っ!?イダダダダダダダ!め、めり込んでいますぅ!指が頭にめり込んでぇえええええ!?」

 

「・・・はぁ」

 

本当に残念ね。早々に減点とは・・・

 

皐月は、ハジメがシアの頭をギリギリと締め付けている光景を眺めつつ、ユエと一緒に朝食を注文した。厨房から深月が運んでくる料理は、パンとスープのありふれた料理だ。しかし、一つだけ違う点があった。パンである

話は変って、この世界に来てから深月が料理を始めたのは迷宮に入ってからだ。王国に居た時は離れる余裕が無かったのと、深月はクラスメイトを赤の他人として認識していた。戦闘面で目立っていた為、これ以上目立つ事はしまいと息を潜めていた

しがらみも無くなり、思う存分力を振るえる環境に解き放たれた者が自重をするとお思いだろうか?・・・絶対にしない。この世界の食文化レベルは低いのは分かりきっていたので、手近な所から変えていこうと行動を起こしたのだ。特にパンは違い過ぎるの一言。カッチカチのパンを主食にしているこの世界は、ハジメ達の様な柔らかいパンを食べ慣れている者達からすれば地獄以外に他ならない。そこで、深月は天然酵母を作る事から開始したのだ。果実や小麦等も露店で容易に手に入ったので、残る手間は熟成や温度管理等だが―――――忘れてはいけない。深月の技能に熟成短縮と熱量操作を保有しているので、発酵と保温は完璧。本来は数日掛かる種酵母作りが数時間で出来てしまい、ガス抜きも清潔で抜き取って時間短縮。数日間が、数時間に短縮されるという・・・本職の人間がそれ聞いたら膝を付いて倒れ伏すだろう

話しは戻り、硬いと思い込んでいたパンを手に取った皐月は驚いた

 

「は、ハジメ!パンが硬くない!柔らかい!!」

 

「何っ!?・・・ほ、本当だ。柔らかい・・・何故だ・・・?」

 

「やわらかい!」

 

「何ですかこのパン!?ふわっふわしてますよ!」

 

周囲の客達は、ハジメ達を見て「何言ってるんだ?パンは硬いだろ?現にこれは硬いし」と疑問に思っていた

 

深月が運んで来たという事は、作ったって事よね?・・・パンってイースト菌が無ければカチカチになるんじゃないの?イースト菌は培養の筈よ。・・・何故?何かの技能で出来たの?分からない・・・

 

「うめぇ・・・柔らかいパンは偉大だな」

 

「うまうま♪」

 

「んほおおおおおお!おいしいですううううう!おかわり!おかわりを要求します!!」

 

思考に耽っている皐月よりも先にパンを食べた三人は、その味と食感を噛みしめていた。皐月も考えるのを止めて、手に持っているパンを千切って一口

 

「ん、美味しい♪」

 

自然に笑みが零れる皐月を見る周囲のお客は見惚れていた。自然に笑みを零す姿の皐月は、高貴な令嬢を幻想させる。まぁ、地球では本物の令嬢なのだが・・・

周囲を気にせず黙々とパンを食べる皐月を見ながらハジメは、周囲の客(※男性)に向けて警告を込めた殺気を一瞬だけ叩き付けた。警告も済んだハジメは、幸せそうにパンを食べている皐月を見ながら厨房に戻って行く深月を見て一言

 

「このパンを作ったのってどう考えても深月だよなぁ」

 

「・・・深月は私達の胃をつかんでいる」

 

「あははははは・・・私も既に掴まれちゃってますぅ~」

 

「それにしても、柔らかいパンを作るにはイースト菌が必要な筈だが・・・この世界では手に入らないぞ?」

 

ハジメも皐月同様で、イースト菌が無いと柔らかいパンは作れないと思っていた。二次小説等で、柔らかいパンを作って儲ける等は良く目にするが、行程は書いていない物が殆ど。どの様な二次小説にもあるご都合主義だろう・・・そう考えていた時期があったが、実際に体験すると疑問ばかりだ。すると、厨房に行った深月が容器を片手に持って戻って来たのだ

 

「もしや・・・お嬢様以外は既にパンを食べ終えてしまいましたか?」

 

「あ、・・・あぁ。久しぶりの柔らかいパンだったからな」

 

「おいしかった」

 

「おかわりは無いんですか?」

 

「お試しで作ったパンですので・・・おかわりはありません」

 

「そ、そんなぁ~」

 

「深月が持っているその容器は何なんだ?」

 

「秘密です♪」(ハジメさんには教えますが、口外はしないで下さい。ユエさんとシアさんは喋りそうですので)

 

(念話にしないといけないぐらいヤバイ代物なのか?)

 

(危険では無いのですが・・・実は、オルクス迷宮に居たトレント擬きの果実を使用しているのです)

 

(あぁ、成る程な。確かに二人には教えない方が良いだろう。うっかり喋りそうだからな)

 

深月の懸念を理解して話しを合わせる事にしたハジメ

 

「秘密なら仕方がねぇな」

 

「えぇ~、ケチケチしないで教えて下さいよ~」

 

「お嬢様、こちらを塗って食べてみて下さい」

 

深月はシアを無視して皐月が食べているパンに、ペースト状のそれを渡す。皐月は深月なら良い物を作ると理解しているのでパンに付けて一口

 

「爽やかな甘みのジャム?ね。砂糖を使わず、素材本来の味でこれならコスパも良いわね」

 

「量は少ないですが、これと同程度の容器に三つ作れました」

 

「趣向品として偶に食べましょう。素材は中々手に入らない物でしょ?」

 

「ご想像通りです」

 

「なら、素材も聞かないわ。その方が楽しみも増えるしね」

 

「えぇ~、素材なら取りに行けばいいじゃないですか~。私にも食べさせて下さいよ~」

 

「・・・素材を知ったらどうするつもりか聞いても良いかしら?」

 

残念そうに、諦める形でシアに尋ねる皐月。皐月の予想では、シアは情報を共有して世に広めようと思っているのだろうと予想した

 

「勿論採りに行きますよ!他の人達にも広めて流通させるのです。そうすれば何時でも食べれて幸せになれます!」

 

「はぁ・・・」

 

「な、何ですかその反応!私何か変な事言いましたか!?」

 

見事に皐月の予想通り。呆れて物も言えず、盛大なため息を吐いた

 

「この世界の人達を見てきたけど、広めるのは悪手よ。どうせ、貴族辺りが乱獲して種その物が無くなるわ。例え、法を敷いたとしてもそれを破る人間は居るわ。私達の世界でもそういう人は少なからず居たわ」

 

「そ、それなら・・・自分で採りに行けば」

 

「深月が手に入れて来たと言ったわよね?考えてもみなさい。"深月じゃないと行けない"場所にあったらどうするつもり?自殺行為に他ならないわ。だったら、深月の負担にならない程度で味わう方が手間も無いわよ」

 

「あうぅぅ・・・」

 

「人の闇は深いのよ。シア自身も気が付いていないだけで、貴女を連れ去ろうとした企んでいた連中はこの町に何人も居たらしいわよ?」

 

「え"っ!?」

 

「全部深月が処理したと言っていたわ。まぁ、私も気が付かなかったけれど」

 

「もしかして・・・私は深月さんに負担をかけてました?」

 

「今更気付いたのですか?」

 

「す、すいませんでしたああああああーーーーー!」

 

「食事処で働いていたのは理由は、情報が沢山入ってくるからです。寝室を同じにしたのも同様で、考え無しに行動しているとお思いでしたか?」

 

シアを連れ去ろうとした輩はそれなりに存在した。だが、その全ては深月の暗躍により悉くが潰えた。噂は噂を呼び、シアを狙う輩達がどんどんと消されている事実は関係者に広がり恐怖に駆られた者達は計画を取り止めていき、鎮火していったという事だ

 

「これからは、自分がどういった問題を引き寄せるかちゃんと理解しておきなさいよ?全部が全部、深月だけで対処させるわけにはいかないの」

 

「はいぃ」

 

シリアスな話しを切り上げて、皐月はパンをじっくりと味わいきり食事を終えた。朝食を済ませて冒険者ギルドへと直行した。道中で変人や変態に出会ったが、ハジメと皐月が対処したのは言うまでも無い。深月は皐月から「自分がやる」と命令されていたので今回はギャラリーに徹した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

カラン、カラン

 

冒険者ギルド:ブルック支部の扉を開き中へと入るハジメ達は、この数日でかなりの有名人?となった。ギルド内の男共は皐月、深月、ユエ、シアに見惚れ、ハジメには羨望と嫉妬の視線を向けるが陰湿な物は一つも無い

ブルックに滞在して一週間、その間に"死神の一撃"の皐月。"股間スマッシャー"のユエ。"決闘スマッシャー"のハジメ。誰が言い始めたのかは分からないが、パーティー申請もしていないのに"死神のスマッシュ・ラヴァーズ"という名が浸透しており、自分の二つ名と共にそれを知ったハジメがしばらく遠い目をしていた

深月の二つ名が何故無いのかと疑問に思うだろう。裏で暗躍していた時期が極僅かで、姿を見た者が誰一人居らず、ライバル組織の邪魔の可能性という事も有る為に正体を掴ませていない。因みに、裏が勝手に付けた二つ名は"白の霧"。見せしめとして一人だけ生き残りを残した深月、その者の証言曰く「白が迫って・・・」「来るなぁ!来るんじゃ無い!・・・消え?うわああああああ!」等と姿を全く想像も出来ない事から付けられた二つ名である

 

「おや、今日は五人一緒かい?」

 

ハジメ達がカウンターに近づくと、マダム事――――キャサリンが居り、先に声をかけた。彼女の声音に意外さが含まれているのは、この一週間の間にこのギルドにやって来たのは大抵、ハジメ一人か皐月と深月の二人組かユエとシアの二人組だったから

 

「ああ。明日にでも町を出るんで、あんたには色々世話になったし、一応挨拶をとな。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ってな」

 

「広い部屋を貸してくれたからそのお礼も兼ねているの」

 

ハジメと皐月は生成魔法と重力魔法の組み合わせを試行錯誤する際に、ギルドの一室を無償で提供してくれていたのだ。なお、ユエとシアは郊外で重力魔法の鍛錬である。深月は既に物にしているので問題は無い

 

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

 

「勘弁してくれよ。宿屋の変態といい、服飾店の変態といい、皐月とユエとシアに踏まれたいとか言って町中で突然土下座してくる変態どもといい、"お姉さま"とか連呼しながら三人をストーキングする変態どもといい、決闘を申し込んでくる阿呆共といい・・・碌なヤツいねぇじゃねぇか。出会ったヤツの七割が変態で二割が阿呆とか・・・どうなってんだよこの町」

 

現在、ブルックの町には四大派閥が出来ており、日々しのぎを削っている。一つが「皐月ちゃん見守り隊」、もう一つは「ユエちゃんに踏まれ隊」、もう一つは「シアちゃんの奴隷になり隊」、最後は「お姉さまと姉妹になり隊」である。それぞれ、文字通りの願望を抱え、実現を果たした隊員数で優劣を競っているらしい

町中でいきなり土下座で「踏んで下さい!」と叫ぶのだ。恐怖以外の何物でも無いが、ユエが踏むと「WRYYYY!」と叫んだりする。「奴隷になり隊」は見つけ次第駆逐している。最後の隊は女性のみで結成された集団で、皐月とユエとシアに付き纏うか、ハジメの排除行動が主だ。一度は、「お姉さまに寄生する害虫が! 玉取ったらぁああーー!!」とか叫びながらナイフを片手に突っ込んで来た少女も居たが、皐月が見せしめに叩きのめした後、裸にひん剥いて亀甲縛りモドキをして一番高い建物に吊るし上げた挙句、"お姉様の幸せを邪魔した愚か者です""次邪魔したら殺す"と書かれた張り紙を貼って放置した。皐月手ずからの行為だったので、少女達の過激な行動がなりを潜めたのはいい事である。この中で一番常識のあるまともなのは「見守り隊」だけだ

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

 

「やな、活気だな」

 

「で、何処に行くんだい?」

 

「フューレンよ」

 

ハジメ達の次の目的は、グリューエン大火山。その次はメルジーネ海底遺跡となっている。大火山に行くには、大陸を西に向かわなければならないのだが、その途中に中立商業都市フューレンがあるのだ。大陸随一大陸一の商業都市に一度は寄ってみたい。何より、深月が寄って下さいとお願いをしている事もあるので寄るのは確定である。深月は調理道具や交易品等を調べたいという考えを持っている

 

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ・・・どうだい?受けるかい?」

 

「連れを同伴するのはOKなのか?」

 

「ああ、問題無いよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん、シアちゃんも結構な実力者だ。一人分の料金でもう二人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

 

「そうか、ん~、どうすっかな?」

 

「全部を急ぐ必要は無いわよ。偶にはゆっくりとした旅を満喫したいわ」

 

「・・・皐月と同じく」

 

「そうですねぇ~、偶には他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

 

「急がば回れ。急ぎすぎて何かを仕損じてはいけませんので、ここは一つ回り道をするのも良いかと」

 

「・・・そうだな、急いても仕方ないし偶には良いか・・・」

 

ハジメは皆の意見を取り入れてキャサリンに依頼を受けることを伝える。何事も経験が一番。特に、ベテラン冒険者からノウハウを学ぶ価値も有ると理解した

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

 

「了解した」

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

 

「ハジメを信頼しているから泣かされないと言いたいけど、もしもそうなったらそうさせて貰うわ」

 

「・・・ん、お世話になった。ありがとう」

 

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」

 

「あんたも、こんな良い子達泣かせんじゃないよ? 精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

 

「・・・ったく、世話焼きな人だな。言われなくても承知してるよ」

 

キャサリンの言葉に苦笑いで返すハジメ。彼女はそんなハジメに一通の手紙を手渡した

 

「これは?」

 

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びの様な物だよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

 

思わず頬が引き攣るハジメ。このオバチャン一体何者だ?と思った所で

 

「ハ・ジ・メ・さ・ん・?キャサリンさんに失礼な事を考えませんでしたか?」

 

お前はエスパーか!?と叫びたかったが、その言葉を飲み込んで心の中で謝罪しておいた

 

「おや、ちゃんと謝るとは成長したねぇ?」

 

お前もか!?と叫びそうになったが、その言葉も飲み込んでこれ以上詮索しない様にした

 

「・・・はぁ、詮索もしねぇよ。これは有り難く貰っとく」

 

「素直でよろしい!色々あるだろうけど、死なない様にね」

 

謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリンの愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出されたハジメ達。その後、お世話になったクリスタベルと第二のクリスタベルことエリナベルの所にも寄った。ハジメは拒絶、皐月は顔色を悪くしていたが、ユエとシアがどうしてもというので仕方なく付き添った。だが、町を出ると聞いた瞬間、クリスタベルは最後のチャンスとばかりにハジメに襲いかかる巨漢の化物と化し、深月が一瞬で無力化する事で難を逃れる事に成功したハジメだった

宿の方にも最後の晩だという事を伝えると、遂には堂々と風呂場に乱入しようとしたり、そして部屋に突撃を敢行しようとしたソーナちゃんは深月がしっかりとOHANASHIして母親に引き渡し、ブチギレた母親に本物の亀甲縛りをされて一晩中、宿の正面に吊るされるという事件があったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「暴走する奴が多いなぁ・・・」
深月「お嬢様とハジメさんのお二人は、クリスタベルさんにトラウマを植え付けられてしまいました」
布団「メイドさんが速攻で沈めたのにも関わらず?」
深月「そのー・・・クリスタベルさんの表情が、肉食獣のそれと同じだったのです」
布団「もう少しでホモォ展開だったという事か!」
深月「特に、ハジメさんが心に深い傷を負ってしまいました・・・」
布団「ヒェッ」
深月「フォローはお嬢様達に任せて私は自分のお仕事を致します」
布団「ファイトデスーメイドサンー」
深月「それでは、この辺りでお別れです」
布団「誤字報告にとても感謝感激です」
深月「感想、評価等。お気軽にお願い致します」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会と変態
メイドはあくまでメイドです


布団「とうっ!こうっ!だっ!!」
深月「普通に話して下さい」
布団「(´・ω・`)ソンナー」
深月「しょぼーんとしても駄目な物は駄目です!しっかりとして下さい!」
布団「はい」
深月「それではアンケートの結果に参りましょう」
布団「いや・・・もう良いじゃない?」
深月「本編を進めましょう!」
布団「う、うん・・・了解しました。頑張って書きますよお!」
深月「それで良いのですよ。頑張って書いて下さいね?」
布団「はい」
深月「読者の皆様方からの誤字報告にとても感謝しております。有り難う御座います」
布団「すまない・・・誤字が多い作者で本当にすまない」
深月「では、読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」





~深月side~

 

『これが人生勝ち組の余裕かよチックショオオオオオオオーーーー!』

 

今現在私達は、中立商業都市フューレンに向かうユンケル商会の馬車の護衛任務を行っております。十四人程の冒険者達との合同なのですが・・・冒険者の方々は殆どが男性で、ハジメさんに嫉妬しております。ほんの数人だけ女性の冒険者が居ますが、冷めた目で見られていますよ

 

「女を護る為にあそこまで言い切れるのは凄いわね」

 

「まぁ、この男共にはそれ程の気概は無いわよ」

 

「私もあんな事言われたいわ~」

 

実は・・・護衛の商会の方がシアさんを欲しがっていましたが、ハジメさんが拒否しても商売人魂燃やしてしつこく交渉をしていました。そこで、ハジメさんが「例え、どこぞの神が欲しても手放す気はないな・・・理解してもらえたか?」と宣言されてこのお話は無かった事になりました

今は、お嬢様とユエさんのお二人に挟まれて心を癒やしている最中です。しかし・・・ユンケル商会ですか。商売人としては優秀ですが、相手の力量を見抜く力を持っていないのが残念です

 

六日の道のりの為、日の出前から出発して、日が沈む前に野営の準備に入る。これの繰り返すこと三回目。フューレンまで残り三日の位置まで来たハジメ達は、野営の準備を始めていた。基本、冒険者達の任務中の食事は雑の一言。だが、ある程度の物を用意するとなれば荷物がかさばって時間が掛かるし、邪魔にもなるから雑になるとの事

そして現在―――――彼等は、ハジメ達が用意した豪勢なシチューにパンを浸したりしながら食べている

 

「カッーー、うめぇ!ホント、美味いわぁ~、流石深月ちゃん!もう、俺の嫁にならない?」

 

「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる!深月ちゃんは俺の嫁!」

 

「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ?身の程を弁えろ。ところでシアちゃん、町についたら一緒に食事でもどう?もちろん、俺のおごりで」

 

「な、なら、俺はユエちゃんだ!ユエちゃん、俺と食事に!」

 

「ユエちゃんのスプーン・・・ハァハァ」

 

「ばっかお前ら!皐月ちゃん一択に決まってんだろ!!」

 

「皐月ちゃんを嫁にすれば、深月ちゃんも一緒に付いてくるんだよ。間抜け共」

 

「「「そうだった!?」」」

 

「で?腹の中のもん、ぶちまけたいヤツは誰だ?」

 

「「「「「「「調子に乗ってすんませんっしたー」」」」」」」

 

何故こうなったのか・・・。原因は、ハジメ達が用意する料理の匂いにつられてハイエナの如く群がって来たからだ。ハジメと皐月とユエの三人は、無視して食べようとしていた。しかし、シアがお裾分けしましょうと言い出し、深月も負担にならないとの事でゴーサインが出たのだ。冒険者達も最初の方は恐縮していたが、彼等も次第に調子に乗り始めて四人を口説き始めていた

段々と五月蠅くなるし、自分の仲間を・・・特に、嫁の皐月とユエを口説く事は腹立たしかったのだ。ギャアギャアと騒ぐ冒険者達に、無言の圧と殺気を叩き付ける事で調子に乗っていた彼等はスゴスゴと引き下がったのだ

 

「もう、ハジメさん。せっかくの食事の時間なんですから、少し騒ぐくらい良いじゃないですか。そ、それに、誰がなんと言おうと、わ、私はハジメさんのものですよ?」

 

「そんな事はどうでもいい」

 

「はぅ!?」

 

シアさん、貴女のそういう所が・・・いえ、もう何も言いません・・・・・。これ以上説明したとしても本人の為にはなりませんね。特にお嬢様がそこの所を見ているでしょうし

 

深月の予想通りである。皐月はシアを見ており、その目は残念そうだった

 

「ハジメさん!そんな態度取るなら、"上手に焼けた"串焼き肉あげませんよぉ!」

 

「・・・深月。そっちの串焼きをくれ」

 

「私の分もお願い」

 

「こちらですね?」

 

「むっぎぃいいいいいいい!」

 

シアが焼いている串焼きも上手に焼けているのだが、如何せん相手が悪すぎた。どの様な環境下でも適応して、料理を作る深月が相手となると勝ち目が一つも無いのだ。しかも、深月は、ハジメの好みの味も把握しているので万に一つも有り得ないのだ

串焼きを受け取ったハジメは早速食べようとするが、皐月によってその腕は止められた

 

「・・・皐月?」

 

「あーん」

 

皐月は、手に持った串焼きをハジメの口元へ持って行き、口を開けている

 

「あーん」

 

ハジメは、躊躇いなく皐月の口へと串焼きを持って行き、皐月が差し出している串焼きを食べる。二人の食べさせ合いを目の前で見たユエは、自分もと言わんばかりに両手に串焼きを持ってハジメに突撃。勿論、食べさせ合いは成功した

 

「皐月さんもユエさんもズルイですぅー!こうなったら・・・」

 

シアは何を思ったのか、串焼きの肉を口で咥えてハジメに突撃

 

ふぁふぃめふぁん。ふぉうふぉ(ハジメさん。どうぞ)!」

 

「・・・お前は自分で食べろ」

 

「ゴックン そんなぁ~」

 

ハジメ達のやり取りを目の前で見せられている冒険者達の心の声は一致している。「爆発してしまえ!」と。だが、深月が追加の串焼きを渡す事で癒やされたのだった

あれから二日―――――フューレンまで残り一日となったのどかな旅路は、襲撃者によってぶち壊された。最初に気付いたのは深月で、少し遅れる様にシアが気付いた

 

「森の中から敵が来ます。皆さんは襲撃に備えて下さい」

 

「数は百以上います!注意して下さい!」

 

二人の警告を聞き、冒険者達の間に一気に緊張が駆け抜ける。現在通っている街道は、森に隣接してはいるもののそこまで危険な場所では無い。整備されているこの道で、魔物の襲撃に遭ったとしても二十から四十程度が限度の筈だった

 

「くそっ、百以上だと?最近、襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか?ったく、街道の異変くらい調査しとけよ!」

 

物量差の前では押し切られてしまう。どうしようかと考えている冒険者の彼等に凶報が追加される

 

「これは・・・反対の方からも襲撃が来ますね」

 

「なにぃ!?」

 

「クソッタレ!スタンピードまでとは言わないが、多すぎるだろ!」

 

落ち着かせようとした思考は再び慌てふためき、まともな判断を下せずにいた

 

「迷ってんなら、俺らが殺ろうか?」

 

「えっ?」

 

もの凄く軽い口調で提案するハジメに、護衛隊のリーダーのガリティマは提案の意味を掴みあぐねて、つい間抜けな声で聞き返した

 

「だから、なんなら俺らが殲滅しちまうけど?って言ってんだよ」

 

「い、いや、それは確かに、このままでは商隊を無傷で守るのは難しいのだが・・・えっと、出来るのか?このあたりに出現する魔物はそれほど強いわけではないが、数が・・・」

 

「数なんて問題ないわよ。ユエは右、深月は左。それで大丈夫?」

 

「・・・問題無い」

 

「討伐した魔物の処理はどう致しましょうか?」

 

「ハジメどうする?」

 

「森から出て来た魔物の順番で殲滅出来るか?中に入ると焼却処分出来無いからな」

 

「では、左の森から出て来た魔物を殲滅。逃げる魔物は引きずり出して殲滅ですね」

 

「お、おう・・・引きずり出せるのか

 

ハジメのオーダーを聞いて了承する二人

 

「分かった。初撃はユエちゃんに任せよう。仮に殲滅出来なくても数を相当数減らしてくれるなら問題ない。我々の魔法で更に減らし、最後は直接叩けばいい。深月ちゃんに関しても同じだ!みな、分かったな!」

 

「「「「了解!」」」」

 

流石に二人では魔物を殲滅する事は出来ないと思っているガリティマは、他の冒険者達にフォローする様に待機させる。ユエは屋根の上へ、深月は左側の森の手前で待機している

 

さて、高々百程度の魔物では相手にならないと思っていたのですが、更に後方から魔物が来ていますね。ですが、ハジメさんからのオーダーは、殲滅となっていますので倒しましょう

 

右と左から魔物が姿を現し、ユエのオリジナル魔法が炸裂。取り囲む様に放たれた龍を象ったそれは、右側の魔物を全て焼き付くした

一方、深月の方はユエの様な派手さは無い。ナイフの柄を糸でくくりつけた状態で、魔物の頭部に向けて投擲するだけ。だが、深月の投擲するそれらは全てが正確無比。一撃で魔物の命を絶ち、糸を引っ張って回収して再び投擲。繰り返すことおよそ十回で百居た魔物は絶滅し、少しして深月の予想通り大型の魔物が姿を現した

 

グゴォオオオオオオ!

 

馬の様な頭を持つミノタウロスだった

 

「なっ!?み、ミノタウロスだと!?」

 

「何でこんな所に居るんだよ!?」

 

「クソッ!間に合わねぇ!」

 

冒険者達は悲鳴を上げて、ミノタウロスが持つ大斧で深月が叩き潰されると想像した。だが、ハジメ達はミノタウロスに向けて合掌した

 

「牛肉ですか。そういえばすき焼きを久々に食べたい気分なので、その為に死んで下さい」

 

黑刀を一閃。叩き付けようとした豪腕が肩から切断され、痛みの悲鳴を叫ぶ前に返す刀で首が切断された。あまりにも早い動作は、ベテラン冒険者達とユエとシアは視認する事が出来なかった

 

「お、おい・・・二撃目の攻撃が見えなかったんだが」

 

「あの剣は何かしらのアーティファクトか・・・?」

 

「全然見えなかった・・・」

 

「・・・深月は何時も通り」

 

「あれ?深月さんってものすごく手加減して私達と闘ってたのですかぁ?」

 

「今更気付いたのか?」

 

「私とハジメとユエの三人がかりでも一分保たないのよ?手加減しているのは当たり前でしょ」

 

地面に仰向けに崩れ落ち、切断された事に気が付いた様に血が吹き出る。深月は油断無く、ミノタウロスの心臓部に黑刀を深々と突き刺してその命を絶った

深月は、ハジメ達が来る間に四肢を切断して解体して行く。因みに、このミノタウロスの肉は、高い値段で取引される牛肉みたいな肉質だ。但し、魔物の肉なので一般用の食肉ではない。商会の者はこれ幸いと思っており、ミノタウロスの素材を売ってくれとハジメに交渉している

 

(ハジメさん。素材の買い取り交渉は私にお任せ下さい)

 

(そうだな。・・・しつこいから頼むわ)

 

ハジメにしつこく言い寄る彼の間に割り込んで流れを途切れさせる深月。普通のメイドがその様な行為をすれば、不躾だと思うだろう。しかし、目の前で見せられた戦闘力と奉仕の技術は天下一品の一言だったので、何かしらの考えがあると感づいた

 

「近い将来、私の主の一人となられますのでお手数を掛ける訳には参りません。よって、私を介しての交渉とさせて頂きます」

 

「交渉して頂けるなら構いませんよ」

 

目の前に吊り下げられた針の餌は巨大で、彼がなんとしても成功させたいと見え透いている

 

「では、この魔物の素材についてですが・・・五万ルタでどうでしょうか?その際に、こちらから一つだけ厳守して頂きたい条件を提示します」

 

「えぇ良いでしょう!ささっ、お受け取りください」

 

「では、こちらの書面にサインと血判をお願いします」

 

「ふむふむ、この条件を破棄した際には互いが"無関係"になるということですね」

 

破格の値段に条件も旨い。大金が転がり込むのを想像して、認識がそちらに誘導され―――――躊躇い無くサインと血判を押した

 

「こちらからの条件の詳細につきましては、"私達の障害にならない事"です。その書面にも書かれている通り、とても分かりやすいでしょう?」

 

「いやはや、こちらとしては旨味ばかりですな」

 

(おい・・・条件に関しては言うまでもないが、破棄した際の無関係は不味くないか?)

 

ハジメの言う通りである。だが、深月のターンは未だ終了していない

 

「ふふふ、サインと血判を本当に有難う御座います♪これで私達の条件を破棄した際には、問答無用無く貴方様に関係する全てを潰せますね♪」

 

「「は?」」

 

商会の彼は勿論だが、ハジメも呆然としていた。最も、ハジメの場合は想像以上の対応だった事に驚いているのだ

 

「お、お待ち下さい!」

 

「大丈夫ですよ。貴方の商会が私達に手を出さなければ良いだけですし、素材も破格で提供されるのですよ?」

 

「そ、それはそうですが・・・」

 

彼は頭をフルに働かせて対処をしようとするが

 

「もしも、国に助力を乞うて害を為すならば―――――国落としもいいですね」

 

「一国を敵に回して生き残れるとお思いですか?」

 

個では群に勝てないと踏んでいるのだろう。深月はカードをもう一枚切る事にした

 

「私のステータスは万越えですが、如何されますか?」

 

最後のがトドメとなった。歴代最強の冒険者といえども、千を越える事は出来ないステータスなのだ。全て手遅れ―――――欲を出し過ぎた故の失敗は、彼の顔を真っ青にさせた

口外すれば、国を巻き込んでの絶滅。闇討ちしようにも、それを許さない程の力量。賭け事の一騎討ちは論外である

 

「私は悪魔と契約したという事ですか・・・」

 

「悪魔とは酷いですね。私はあくまでメイドです」

 

「・・・狙って言ってるだろ」

 

ハジメの突っ込みは響かない。しかし、彼の前に天使が舞い降りる

 

「深月やり過ぎよ」

 

「しかし――――」

 

「しかしもへったくれも無いわよ。・・・私のメイドが御免なさいね?私達はむやみに敵を作りたくないだけなのよ。まぁ、手にしている者に何かをしようとしたら敵対者として始末するわ。しっかりと覚えてね?」

 

「は、はい!かしこまりました!もう二度としません!!皐月大天使様!!」

 

・・・・・私の何処に天使要素があったのかしら

 

「さ、さぁな・・・」

 

ハジメは皐月の新たな二つ名に苦笑しながら事を見守る

 

「兎に角!私達の事は広めず、厄介事を寄越さない様にする事よ。しっかりと守りなさい」

 

「ははぁっ!」

 

こうして、何事も問題無く切り抜ける事が出来た一行であった。余談ではあるが、皐月を神聖視する者達が現れて、当人の頭を悩ますのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フューレンに到着した一行は、証印を持って冒険者ギルドに直行した。ギルドに到着したハジメ達は、軽食を食べながら町の案内人のリシーから色々と説明を受けた

 

「そういう訳なので、一先ず宿をお取りになりたいのでしたら観光区へ行く事をオススメしますわ。中央区にも宿はありますが、やはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービスは観光区のそれとは比べ物になりませんから」

 

「成る程な、なら素直に観光区の宿にしとくか。どこがオススメなんだ?」

 

「お客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿が数多くございますから」

 

「そりゃそうか。そうだな、飯が上手くて、あと風呂があれば文句はない。立地とかは考慮しなくていい。あと責任の所在が明確な場所がいいな」

 

「あの~、責任の所在ですか?」

 

「ああ、例えば、何らかの争い事に巻き込まれたとして、こちらが完全に被害者だった時に、宿内での損害について誰が責任を持つのかという事だな。どうせならいい宿に泊りたいが、そうすると備品なんか高そうだし、あとで賠償額をふっかけられても面倒だろ」

 

「え~と、そうそう巻き込まれる事はないと思いますが・・・」

 

「まぁ、普通はそうなんだろうが、連れが目立つんでな。観光区なんてハメ外すヤツも多そうだし、商人根性逞しいヤツなんか強行に出ないとも限らないしな。まぁ、あくまで"出来れば"だ。難しければ考慮しなくていい」

 

リシーは軽食を食べている皐月、ユエ、シアの三人とメイドの深月を見て「あぁ~」と納得していた。皐月の姿は痛々しいが、高貴な令嬢を思わせる姿。ユエもかなりの美人である。だが、目を引くのは兎人族のシアで、奴隷だろうと強引に誘拐される可能性もあるから。で、一番目を引いているのは深月である。普通の人間の認識だと、メイドは弱く、奉仕するだけの存在だ。シア同様狙われる可能性が大なのだ

 

「うちのメイドは問題無いが、兎人族の方は隙がありすぎるからな」

 

「え?メイドって奉仕するだけだと思いますが・・・」

 

「共通認識はそうだ。だが、うちのメイドは戦闘もこなせるスーパーメイドなんだよ。あいつに手を出した奴には―――――きっと、死よりも恐ろしい事が待ち受けているんだろうなぁ」

 

容易に想像出来る光景を思い浮かべながら呟くハジメ。二人の会話から情報を聞き出そうとしていた輩は、ギョッと眼を剥いて深月を一瞬見やる。深月は相手に合わせる様にニッコリと微笑み、それに気が付いた者はサァーッと顔を青ざめてちょっかいを掛けまいと心に誓った

宿については一通りの条件を提示して区画の説明を受けていると、ハジメ達は不意に強い視線を感じた。特に、深月とシアとユエに対してだ。ユエとシアは、今までで一番不躾で、ねっとりとした粘着質な視線が向けられている。視線など既に気にしないユエとシアだが、あまりに気持ち悪い視線に僅かに眉を顰める。深月は、地球に居た時から経験済みなので表情には出さずにスルーしている

ハジメがチラリとその視線の先を辿ると・・・ブタがいた。体重が軽く百キロは超えていそうな肥えた体に、脂ぎった顔、豚鼻と頭部にちょこんと乗っているベットリした金髪。身なりだけは良いようで、遠目にもわかるいい服を着ている。そのブタ男が深月とユエとシアを欲望に濁った瞳で凝視していた。案内をしていたリシーも視線に気付いて視線を向けると、営業スマイルを忘れて「げっ!」というはしたない声を漏らす

豚男はハジメ達の近くまで近づいて三人をジロジロと見て、ハジメ達に一方的な要求を口にする

 

「お、おい、ガキ。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの金髪はわ、私の妾にしてやる。メ、メイドは俺に奉仕させてやる。い、一緒に来い」

 

ハジメと皐月は、豚男に殺気を一点集中で叩き込むで失禁させる

 

「席を変えるぞ」

 

「汚物を撒き散らすなんて最悪ね」

 

早々と立ち去ろうとする一行の前に、全身筋肉の歴戦の戦士が立ち塞がった。その者を目に入った豚男は、再びキィキィと喚きだす

 

「そ、そうだ、レガニド!そのクソガキ共を殺せ!わ、私を殺そうとしたのだ!嬲り殺せぇ!」

 

「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや」

 

「やれぇ!い、いいからやれぇ!き、気味悪い白奴等以外は、傷つけるな!私のだぁ!」

 

「了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ」

 

「い、いくらでもやる!さっさとやれぇ!」

 

「おう、坊主達。わりぃな。俺の金の為にちょっと半殺しになってくれや。なに、殺しはしねぇよ。まぁ、そっちの三人の嬢ちゃん達の方は・・・諦めてくれ」

 

「お、おい、レガニドって"黒"のレガニドか?」

 

「"暴風"のレガニド!?何で、あんなヤツの護衛なんて・・・」

 

「金払じゃないか?"金好き"のレガニドだろ?」

 

筋肉の塊はレガニドと言うらしい。男の名前を聞いた冒険者達はざわめきだす

ハジメと皐月は冒険者ランクが黒という事は、上から三番目の強者?の実力とはどれ程なんだろうと対処しようとするが、ユエがシアの手を引っ張って三人の間に入り込む

 

「・・・私達が相手をする」

 

「えっ?ユエさん、私もですか?」

 

「ガッハハハハ、嬢ちゃん達が相手をするだって? 中々笑わせてくれるじゃねぇの。何だ?夜の相手でもして許してもらおうって『・・・黙れ、ゴミクズ』ッ!?」

 

風刃がレガニドの頬を深く切り裂き、プシュッと血が吹き出る。レガニドは、ユエの魔法が速すぎて全く反応できなかったのだ。心中では「いつ詠唱した?陣はどこだ?」と冷や汗を掻きながら必死に分析している

 

「・・・私達が守られるだけのお姫様じゃないことを周知させる」

 

「ああ、なるほど。私達自身が手痛いしっぺ返し出来ることを示すんですね」

 

「・・・そう。せっかくだから、これを利用する」

 

「深月さんは・・・問題無さすぎて何もしなくても大丈夫ですね」

 

「・・・深月の戦闘力は未知数」

 

「ユエさんが何人居れば勝てますか?」

 

「・・・深月は私の天敵」

 

「それだと・・・全ての人に対して天敵と思った方が良いでは?」

 

「まぁ、言いたいことはわかった。確かに、お姫様を手に入れたと思ったら実は猛獣でしたなんて洒落にならんしな。幸い、目撃者も多いし・・・うん、いいんじゃないか?」

 

「・・・猛獣はハジメの方。・・・ポッ///」

 

野次馬達の心の思いはただ一つで、「爆発してしまえ!こんちきしょー!!」嫉妬の眼差しで睨み付ける

シアは、ドリュッケンを軽々と片手で持ち上げて、レガニドに突きつける

 

「おいおい、兎人族の嬢ちゃんに何が出来るってんだ?雇い主の意向もあるんでね。大人しくしていて欲しいんだが?」

 

「腰の長剣。抜かなくていいんですか?手加減はしますけど、素手だと危ないですよ?」

 

「ハッ、兎ちゃんが大きく出たな。坊ちゃん!わりぃけど、傷の一つや二つは勘弁ですぜ!」

 

ドリュッケンを腰溜めに構えたシアを見て、無手でも無傷で捕獲は無理だろうと直感したレガニドは、豚男に断りを入れて戦闘準備を整える。少しだけの沈黙を破り、シアが一気に踏み込んで前眼へと躍り出る

 

「ッ!?」

 

「やぁ!!」

 

可愛らしい音声とは裏腹に素早く振り抜かれたドリュッケンは、レガニドの胸部に迫る。咄嗟に両腕をクロスにしてガードするが

 

(重すぎるだろっ!?)

 

踏ん張る事も叶わず、速すぎる攻撃の衝撃を逃せない。直撃した生々しい音を響かせて、ギルドの壁に激突してめり込んだ。意識が朦朧とするレガニドを無視して、ユエの追撃が襲い掛かった

 

「舞い散る花よ 風に抱かれて砕け散れ "風花"」

 

迫る風が直撃する前にレガニドは内心で愚痴る

 

(坊ちゃん、こりゃ、割に合わなさすぎだ・・・)

 

空中で踊るという生涯初めてを体験したレガニドは、床に墜落してピクリとも動かなくなった

静寂な空気を破る様にハジメが豚男の前まで歩み寄り、全員の視線が釘付けとなる

 

「ひぃ!く、来るなぁ!わ、私を誰だと思っている! プーム・ミンだぞ!ミン男爵家に逆らう気かぁ!」

 

「・・・地球の全ゆるキャラファンに謝れ、ブタが」

 

顔面を踏みつけて、グリグリと少しずつ力を入れていく。床と靴底にサンドイッチされた豚男

 

「おい、ブタ。二度と視界に入るな。直接・間接問わず関わるな・・・次はない」

 

「深月は私専属のメイドよ。例え、嘘だとしても容赦しないわ」

 

ハジメに頭を踏みつけられて動きが出来ない豚男の股間とお尻に向け、硬貨を二枚弾き飛ばす。威力は今までの中で一番で、生々しく潰れる音とめり込む音が響き渡った。部屋に居たハジメを含む男達は内股になって、咄嗟に両手で前と後ろを覆い隠す

 

「その硬貨は乙女にした駄賃よ。受け取っておきなさい」

 

ハジメは、追撃として錬成で靴底をスパイクにして踏みつけようとしていたのだが、皐月の無慈悲な攻撃を前に・・・男の同情から追撃はしないでおいた

 

「じゃあ、案内人さん。場所移して続きを頼むわ」

 

「はひっ!い、いえ、その、私、何といいますか・・・」

 

恐怖で何も言えなくなっているリシーは、咄嗟に逃げようとするがユエとシアの二人に腕を掴まれて逃げ場は存在しない。そんな彼女に救世主のギルド職員が姿を現したが、ハジメが典型的なクレーマーの様に物申していると

 

「何をしているのです?これは一体、何事ですか?」

 

眼鏡を掛けた理知的な男性が、厳しい目付きでハジメ達をみていた

 

「ドット秘書長!いいところに!これはですね・・・」

 

どうやら彼はお偉いさんだ。ハジメはまだまだ解放されない事にため息を吐いた

 

 

 

 

 

 

 




布団「さーてと、頑張るぞい!」
深月「あれ?私が悪魔表現されているのですが・・・」
布団「お嬢様の害となる者全てを排除するメイド―――――格好いいよね!」
深月「無闇矢鱈とその様な事は致しません!利用価値のある者をちゃんと見ていますから!!」
布団「不要となったら処理しちゃうんでしょ?」
深月「・・・仕方の無い犠牲ですよ」
布団「いやぁ~メイドさんも凄いけど、お嬢様も無慈悲ですねぇ。男だと昇天してしまいます!」
深月「ウフフフ、お嬢様は私を必要として下さっています。とても嬉しいです♪」
布団「おぉっと、これ以上は暴走しかねないので終わりにしましょう」
深月「ふぅ・・・。それでは、感想、評価等、お気軽にお願い致します」
布団「頑張ってモチベーション上げて書くぞおおお!」
深月「頑張って下さいね♪」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは依頼を受諾します

布団「投稿だ!」
深月「その前に言う事がありますよね?」
布団「・・・やっちゃったんだZE☆」
深月「意味深回を執筆する暇があったのなら、本編をキリキリと書いて下さい!」
布団「やむにやまれぬ事情があったんです・・・本当よ?だから赦して!!」
深月「本当ですか?」
布団「本当でござるよぉ~」
深月「はぁっ・・・もう深くは聞きません。ですが!しっかりと書いて下さい!!」
布団「がんばる」
深月「話は変わりまして、誤字報告有難うございます」
布団「変換がいかんかったんや!」
深月「読み直ししましたか?」
布団「最低でも五回はやってるよ!」
深月「では、読者の皆様方ごゆるりとどうぞ」
布団「え?まさかの無視ですか?」







~皐月side~

 

「話は大体聞かせてもらいました。証人も大勢いる事ですし嘘はないのでしょうね。やり過ぎな気もしますが・・・まぁ、死んでいませんし許容範囲としましょう。取り敢えず、彼らが目を覚まし一応の話を聞くまでは、フューレンに滞在はしてもらうとして、身元証明と連絡先を伺っておきたいのですが・・・それまで拒否されたりはしないでしょうね?」

 

「ああ、構わない。そっちのブタがまだ文句を言うようなら、むしろ連絡して欲しいくらいだしな。今度はもっと丁寧な説得を心掛けるよ」

 

ハジメと皐月の二人は、呆れ顔のドットにステータスプレートを差し出す

 

「連絡先は、まだ滞在先が決まってないから・・・そっちの案内人にでも聞いてくれ。彼女の薦める宿に泊まるだろうからな」

 

ハジメに視線を向けられたリシーは、ビクッと震えて全てを察して諦めたか深い溜息を吐いた

 

「ふむ、いいでしょう・・・"青"ですか。向こうで伸びている彼は"黒"なんですがね・・・そちらの方達のステータスプレートはどうしました?」

 

レガニドを倒したのは、あくまでもユエとシアの二人。明らかに疑問点が多いので、ステータスプレートの提示を要求する

 

「あっ・・・あー・・・・・実はあの二人、ステータスプレートを紛失させたのよ。再発行は高額だから、今は出来無いの」

 

さらりと嘘をつく皐月。二人のステータスを事細かく知られるのは得策ではないと判断したのだ

 

「しかし、身元は明確にしてもらわないと。記録を取っておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こす様なら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せる事になりますからね。よければギルドで立て替えますが?」

 

痛い所を突かれてしまった。相手が提案している事実はどれも正論で、もしも拒否などしようものなら疑惑が向けられてしまう。そうなってしまえば、敵対する可能性が無きにしも非ず。どうしようかと内心焦っていると、深月が一歩前へ出てドットへ手紙を渡す

 

「こちらのお手紙はブルックの冒険者職員からの物です。宜しければこちらを拝見してから判断をお願い致します」

 

「うぇっ!?何時の間に!?」

 

手紙を預かっていたのは皐月で、手提げ鞄の中に入れていたのだが深月に気付かぬうちに抜かれていたのだった。本当は皐月が出した方が良かったのだが、手紙の事をすっかりと忘れていた。皐月の内心を見抜き、会話が不利にならない様に即座に行動に移したのだった。返答が遅れれば遅れる程怪しまれるし、例え疑惑を晴らせたとしても何かしらの無茶な要求を提示される可能性が有ったのだ

ドットは、深月から手渡された手紙を拝借して、目を皿のようにして手紙を読んでいる。やがて、ドットは手紙を折りたたむと丁寧に便箋に入れ直し、ハジメ達に視線を戻した

 

「この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが・・・この手紙が差出人本人の物か私一人では少々判断が付きかねます。支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか?そうお時間は取らせません。十分、十五分くらいで済みます」

 

深月を除いたハジメ達は「キャサリンさんって何者?」と心同じくしていた

 

「まぁ、それくらいなら構わないな。分かった。待たせてもらうよ」

 

「職員に案内させます。では、後ほど」

 

ドットは仕事の引き継ぎを他の職員に任せて、便箋を持ったままギルドの奧へと消えていった。ハジメ達は別室へと案内されて待機する

 

「そういえば、何で深月は皐月の鞄の中から手紙を抜き取ったんだ?助言でもして出させても変らないと思うんだが」

 

「いいえ・・・お嬢様は内心で焦りを感じていましたし、返答が少しでも遅れてしまえば疑われます。唯でさえ私達は注目の的―――――騒ぎを大きくし過ぎてしまいました。例え疑惑が解消されたとしても、何かしらの要求は確実です。少しでも要求の内容を軽くする為に、即時行動が必要だっただけです」

 

「・・・もしも手紙の内容が無関係だっ―――――」

 

「それは有り得ません。キャサリンさんは、最初の出会いで損得計算をされて得が大きいと判断されています。そして、個人の力量も把握して敵対してはならないと感付いています。これは、私個人の感想ですが・・・彼女は教育者だったのでは?と予測しています。あれ程の観察眼を持った人が教育者ならば、上層部は是非ともスカウトしたいと思うでしょう」

 

「「「深月が言うと現実味を帯びる・・・」」」

 

流石にそれは無いだろうと言いたいが、深月の予測は馬鹿に出来無い。この世界の神が何をしているのかを予測して、それが見事に的中しているからだ

ハジメ達が応接室に案内されてから丁度十分。扉がノックされ、ハジメの返事を一泊置いて扉が開かれる。現れたのは、金髪オールバックに鋭い目つきをした三十代の男性と先程のドットだ

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。ハジメ君、皐月君、深月君、ユエ君、シア君・・・でいいかな?」

 

簡易な自己紹介の後に握手を求めるイルワ。ハジメも握手をしながら握り返す

 

「ああ、構わない。名前は、手紙に?」

 

「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている・・・というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

 

「トラブル体質・・・ね。確かにブルックじゃあトラブル続きだったな。まぁ、それはいい。肝心の身分証明の方はどうなんだ? それで問題ないのか?」

 

「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」

 

ハジメ達は、イルワが言う"先生"が恐らくキャサリンさんなのだろうと理解した

 

「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」

 

「ん?本人から聞いてないのかい?彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

 

「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~。そして深月さんの予測が当たりましたね」

 

「・・・キャサリンすごい。・・・深月もいうまでもない」

 

「只者じゃないとは思っていたが・・・思いっきり中枢の人間だったとはな。ていうか、そんなにモテたのに・・・今は・・・いや、止めておこう」

 

「もうね?・・・予想は深月に任せようと思ってしまうわ」

 

「駄目ですよ?何事も経験するのが一番で御座います」

 

「・・・主として頑張るわ」

 

ハジメ達はここにもう用は無いと判断して一言だけ入れて退室をしようとする

 

「まぁ、それはそれとして、問題ないならもう行っていいよな?」

 

そもそも、この部屋に来たのは身分証明だけだったのでこれ以上居る意味は無いのだ。しかし、イルワは「少し待ってくれるかい?」とハジメ達を留まらせる。皐月は「あぁ・・・やっぱりそう来るわよね」と呟く

 

「皐月君は理解しているだろうけど、一応提案しよう。実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」

 

「ことわ――――――イテェ!?」

 

ちょっと待ってハジメ。深月が言っていた事をもう忘れたの?恐らくこの件を不問にする代わりの依頼の筈よ

 

イルワの依頼を間髪入れずに拒否しようとしたハジメを、皐月がハジメの耳を抓って寸断させた。ハジメは、皐月の言った事を改めて思い返し、話の主導権を握っているのは相手だと自覚する

 

「その依頼の話を聞かせてもらっても良いかしら?」

 

「皐月君は理解していた様だね。でも、話を聞くか・・・中々に鋭い」

 

「ここ最近は物理で押し通すばかりで偶には頭で考えて駆け引きをしないといけなくなったのよ。・・・それに、ハジメが否定していたら今回の件を不問にするかどうかの餌をちらつかせるつもりだったのでしょう?なら、話を聞いて情報を精査しないといけないわ」

 

殆どは深月の予測通り。目先の問題を最小限の被害でどう切り抜けるかを見つけ出そうとしているのだ。イルワの方も、皐月が落としどころを探している事を理解しているので丁度良い依頼を提示するつもりだったのだ

 

「・・・分かったよ。皐月の言う通り話を聞くよ」

 

「聞いてくれるようだね。ありがとう」

 

「・・・流石、大都市のギルド支部長。いい性格してるよ」

 

「君も大概だと思うけどね。さて、今回の依頼内容だが、そこに書いてある通り、行方不明者の捜索だ。北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者一行が予定を過ぎても戻って来なかった為、冒険者の一人の実家が捜索願を出した、というものだ」

 

話しを細かく聞く所によると、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物が依頼していた予定の冒険者パーティーに強引に同行を申し込んでの臨時パーティーとなった。彼等が向かう場所は北の山脈地帯で、魔物を見かける頻度が増えた事を調査する事だった。伯爵家の方も馬鹿ではなく、連絡員を影ながら同行させていた。しかし、その連絡員からの情報がパッタリと無くなった事から、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ

 

「伯爵は、家の力で独自の捜索隊も出しているようだけど手数は多い方がいいと、ギルドにも捜索願を出した。つい、昨日の事だ。最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」

 

「前提として、俺達にその相応以上の実力ってやつがないとダメだろう?生憎俺は"青"ランクだぞ?」

 

「さっき"黒"のレガニドを瞬殺したばかりだろう?それに・・・ライセン大峡谷を余裕で探索出来る者を相応以上と言わずして何と言うのかな?」

 

「なっ!・・・どうして知って」

 

「えっ!?私はキャサリンさんとお話をしたりしたけど、そういった情報を話したりしてないわよ?」

 

ハジメ達がライセン大峡谷を探索していた話は誰にもしていない。イルワがそれを知っているのは手紙に書かれていたという事以外には有り得ない。しかし、ならば何故キャサリンは、それを知っていたのかという疑問が出る

 

「ユエさん、シアさん。正直に言うならば今の内ですよ?」

 

深月の宣告を聞いたハジメと皐月は、二人を見ると冷静そうで冷静じゃ無いユエと、冷や汗を掻いているシアの姿だった

 

「・・・お前等」

 

「深月、後で良いから二人にOHANASHIしておきなさい。内容は任せるわ」

 

「かしこまりました。お二人共、逃げないで下さいね?」

 

「「・・・はい」」

 

二人は後程、深月からのOHANASHIを受けたのは言うまでも無い。イルワは、そんな三人の様子を苦笑してハジメと皐月の二人を見つめ直して話を続けた

 

「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

 

「そう言われてもな、俺達も旅の目的地がある。ここは通り道だったから寄ってみただけなんだ。北の山脈地帯になんて行ってられない」

 

「断るわ。今回の件を不問にするだけなら旨みが何も無いわ」

 

「報酬は弾ませてもらうよ?依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に"黒"にしてもいい」

 

「いや、金は最低限でいいし、ランクもどうでもいいから・・・」

 

「なら、今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな?フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ?君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」

 

「・・・予想だけど、その依頼を薦めたのは貴方なの?」

 

「察しが良くて助かるよ。あの依頼を薦めたのは他でもない私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね・・・だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて・・・だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに・・・」

 

ハジメ達はイルワの独白を聞きながら思案する。思っていた以上に繋がりが深い事から察するに、内心では藁にもすがる思いな程焦っているのだろう。ハジメ達は、これからの事について考えていた。ユエやシアのステータスプレートの有無で起こりうる問題の数々・・・恐らく想像を上回るだろう。もしも、ギルドという大きな組織が後ろ盾になってくれるのならばその問題も少なからず減るだろうし、それに必要な時間も無くなるという事だ

 

「そこまで言うなら考えなくもないが・・・二つ条件がある」

 

「条件?」

 

「ああ、そんなに難しいことじゃない。ユエとシアにステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、更に、ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」

 

「それはあまりに・・・」

 

「出来ないなら、この話はなしだ。もう行かせてもらう」

 

「何を要求する気かな?」

 

「そんなに気負わないでくれ。無茶な要求はしないぞ?ただ俺達は少々特異な存在なんで、教会あたりに目をつけられると・・・いや、これから先、ほぼ確実に目をつけられると思うが、その時、伝手があった方が便利だなっとそう思っただけだ。面倒事が起きた時に味方になってくれればいい。ほら、指名手配とかされても施設の利用を拒まないとか・・・」

 

「指名手配されるのが確実なのかい?ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが・・・そう言えば、そちらのシア君は怪力、ユエ君は見たこともない魔法を使ったと報告があったな・・・その辺りが君達の秘密か…そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと・・・大して隠していないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか・・・そうなれば確かにどの町でも動きにくい・・・故に便宜をと・・・」

 

頭の回転が早いのは流石だろう。イルワはしばらく考え込んで、意を決してハジメ達に視線を合わせる

 

「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう・・・これ以上は譲歩できない。どうかな」

 

「まぁ、そんなところだろうな・・・それでいい。あと報酬は依頼が達成されてからでいい。お坊ちゃん自身か遺品あたりでも持って帰ればいいだろう?」

 

「本当に、君達の秘密が気になってきたが・・・それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。ハジメ君の言う通り、どんな形であれ、ウィル達の痕跡を見つけてもらいたい・・・ハジメ君、皐月君、深月君、ユエ君、シア君・・・宜しく頼む」

 

イルワは最後に、真剣な眼差しを持ってハジメ達を見つめた後、ゆっくり頭を下げた

 

「あいよ」

 

「まぁ、やってみるわ」

 

「・・・ん」

 

「はいっ」

 

その後、支度金と紹介状、件の冒険者達が引き受けた調査依頼の資料を受け取ってハジメ達は部屋を出た。深月がゆっくりと扉を閉めて、少しした後で「ふぅ~」と一息吐いて椅子に深く座り込んだイルワ。部屋にいる間、一言も話さなかったドットが気づかわしげにイルワに声をかける

 

「支部長・・・よかったのですか?あのような報酬を・・・」

 

「・・・ウィルの命がかかっている。彼ら以外に頼めるものはいなかった。仕方ないよ。それに、彼等に力を貸すか否かは私の判断でいいと彼等も承諾しただろう。問題ないさ。それより、彼らの秘密・・・」

 

「ステータスプレートに表示される"不都合"ですか・・・」

 

「ふむ、ドット君。知っているかい?ハイリヒ王国の勇者一行は皆、とんでもないステータスらしいよ?」

 

「ッ!支部長は、二人が召喚された者の"神の使徒"の二人であると?しかし、彼等はまるで教会と敵対する様な口ぶりでしたし、勇者一行は聖教教会が管理しているでしょう?」

 

「二人じゃなくて三人だよ。でもね・・・およそ四ヶ月前、その内の三人がオルクスで亡くなったらしいんだよ。奈落の底に魔物と一緒に落ちたってね」

 

「・・・まさか、その者達が生きていたと?四ヶ月前と言えば、勇者一行もまだまだ未熟だったはずでしょう? オルクスの底がどうなっているのかは知りませんが、とても生き残るなんて・・・」

 

ドットは信じられないと、イルワの推測を否定する。しかし、イルワには確信めいた物を感じていた。顔には出さない様にしていたが、感付かれていただろうと考えている

 

「一人だけはこちらの考えを全て見抜いていただろうねぇ」

 

「あの白髪の彼女ですか」

 

「違う違う。キャサリンさんの手紙に直接書かれてはいないけど、伏線として深月君・・・メイドさんについて色々と書かれているよ。多分だけど、この会話すら予測しているんじゃないかな?」

 

「神の使徒の事ですか・・・」

 

「そうだね。でも、もし、そうなら・・・何故、彼等は仲間と合流せず、旅なんてしているのだろうね?彼等は一体、闇の底で何を見て、何を得たのだろうね?」

 

「何を・・・ですか・・・」

 

「ああ、何であれ、きっとそれは、教会と敵対することも辞さないという決意をさせるに足るものだ。それは取りも直さず、世界と敵対する覚悟があるということだよ」

 

「世界と・・・」

 

「私としては、そんな特異な人間とは是非とも繋がりを持っておきたいね。例え、彼等が教会や王国から追われる身となっても、ね。もしかすると、先生もその辺りを察して、わざわざ手紙なんて持たせたのかもしれないよ」

 

「支部長・・・どうか引き際は見誤らないで下さいよ?」

 

「もちろんだとも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

ハジメ達は、部屋から退出してから市場で消耗品の食料を補給していた

 

「あぁ~、面倒くさい。寄り道しないとしけないとか本当に面倒いの一言だ」

 

「仕方が無いと割り切りましょう。これからの旅で、ユエとシアのステータスプレートが無いと困り事が増えるじゃない」

 

「「・・・ごめんなさい」」

 

ションボリと反省しているユエとシア。自分達がやらかした事と、面倒事を引き連れた事を改めて気付いたのだろう

 

「ほらほら、落ち込む暇があるなら反省して次に活かしなさい。この依頼を終わらせたら問題が減るのよ?しっかりと依頼を達成する為に行動に移しなさいよ」

 

「ん!」

 

「はい、分かりました!」

 

四人は気分を一新して買い物に戻ろうとしているが、深月だけは時偶冒険者ギルドの方をチラ見している。皐月は、そんな深月の様子を疑問に思った

 

「冒険者ギルドをチラ見しているけど・・・何かあったの?」

 

「いえ、メリットとデメリットを考えていたのです。つい先程メリットに傾きましたので問題ありません」

 

「・・・一応聞くが、何をした」

 

「私達が退室してからの会話を聞いていたのです。糸電話の要領で盗み聞きしていたのですよ」

 

あっけらかんと答える深月に、「はぁっ」と溜息を吐く一同。こいつは本当に何でも有りだなと心同じく思ったのだ

 

「大丈夫ですよ。彼等はこちらを害そうとする事は有り得ないでしょう」

 

「あ・・・あぁ~。よくよく考えればそういう事なのね」

 

「どういう事だ?」

 

額に手を当てて察した皐月。ハジメの方は、感付いていない模様だった

 

「今回の条件提示でステータスに他言無用に教会に異端認定。これだけの情報があれば、私達が召喚された事実に辿り着くって事よ」

 

「・・・そうか。他国でも召喚については知らされているのか」

 

「有り得ないステータスに、有り得ない技能数と来れば確信されるわよね~」

 

「だが、他言無用の条件を付ける事が出来ただけでも十分だな」

 

「ですが、油断は禁物です。これからの旅も気を付けて行動に移りましょう」

 

「おう」

 

「そうね」

 

食料補給を終えた一行は、一泊した後に魔力駆動二輪で湖畔の町―――――ウルへ出発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「・・・主武装が魔力糸な件について」
深月「糸の可能性は無限大とも言います」
布団「初めて聞くんだけど」
深月「作ればいいのですよ。作れば!」
布団「ごり押しですね。分かりました」
深月「次の町が楽しみです」
布団「何があったんや?」
深月「香辛料を使う料理を扱っているとの情報を得ました!しかも稲作地帯なのです!」
布団「カレーかな?」
深月「全容は判りませんが、カレーに類似する食べ物だと思います」
布団「レパートリーが増えるんですね。分かります」
深月「感想、評価等、お気軽にお願い致します」
布団「次回が楽しみだわ~」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイドは再会します

布団「忙しい・・・イベントに追いやられて忙しい・・・」
深月「ゲームですか」
布団「ごめんね!最低限のノルマがまだ終わらないの!」
深月「残り数日ですが間に合いますか?」
布団「間に合わせる!そして書く!・・・と宣言したいところだぁ」
深月「イベントのノルマが終わればちゃんと執筆できますね」
布団「もちろんさぁ。それはそれとして、誤字報告ありがとうございます!」
深月「本当に誤字が多いですね」
布団「ぐふぅっ!」
深月「長々と前書きを埋めるのもいけませんので進めましょう」
布団「投稿だよ!」
深月「読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」






~ハジメside~

 

広大な平原のど真ん中に、北へ向けて真っ直ぐに伸びる街道を爆走する二つの影。一つは、黒塗りの車体に二つの車輪のバイク。もう一つは、タイヤを二つに直結させた大きい車輪のバイク――――――ハジメと深月の操る魔力駆動二輪である

 

「はぅ~、気持ちいいですぅ~、ユエさぁ~ん。帰りは場所交換しませんかぁ~」

 

「・・・ダメ。ここは私に託された場所」

 

「え~、そんな事言わずに交換しましょうよ~、後ろも気持ちいいですよ?」

 

「・・・深月の方に移れば良い」

 

「う"っ!・・・いやぁ~、深月さんはちょっと怖いので遠慮しておきま―――――」

 

(シアさんは私の事を恐怖の代名詞としているのですね)

 

(深月が怖いですって?怒る時は怒るし、褒める時は褒めるじゃない。そう感じるのはシアが失敗ばかりしているからよ)

 

「正論過ぎて何も言えないですぅ~」

 

「あのなぁ、お前じゃ前には座れないだろ?邪魔でしょうがねぇよ。特にそのウサミミ。風になびいて目に突き刺さるだろうが」

 

「あ~、そうですねぇ~」

 

ハジメの追い打ちに何も言い返す事も出来無いシアは、うっつらうっつらと眠りに落ちていく

 

「・・・ダメ、ほとんど寝てる」

 

(長時間揺られて眠くなるのは解るけど・・・危ないからやめなさい)

 

皐月は右手で小石を弾き飛ばしてシアの頭にぶつける

 

「あうっ!・・・酷いですよ~」

 

(眠るぐらいならイメージトレーニングでもしていなさい。深月との訓練でいの一番に陣形を崩されているのはシアなのよ?)

 

そう。現在の訓練では深月に対して、ハジメと皐月とユエとシアの四人掛かりでの訓練なのだ。だが、四人は未だに深月に勝てないでいるのだ。更に付け加えるなら、シアを切っ掛けとして陣形を崩されて各個撃破されてしまっているのが現状なのだ

 

(シアさんはフェイントも何も無い唯の猪ですので・・・その・・・・・私はどうしても楽な者を先に対処してしまいます)

 

「むぎいいいいいいい!それって、私が馬鹿って事じゃないですか!」

 

「いや・・・深月相手に真っ正面からフェイントも無しに突っ込む事自体が馬鹿だろ」

 

「・・・もう少し頑張る」

 

(ユエさんは目で追える程度まで成長されています。後は、完全な無詠唱で魔法が撃つ事が出来れば完璧です)

 

「・・・頑張る。・・・暇な時は深月を驚かせる魔法を研究中」

 

(ほっほ~う、ユエの新しい魔法ね。・・・深月が本気を出すと魔法が全て吸収されちゃうからね)

 

「・・・ライセン大峡谷よりも酷い」

 

「えっ・・・深月さんに魔法が効かないって?」

 

この面子の中で深月に対しての魔法攻撃が効かない事を知っているのは、ハジメと皐月とユエの三人だけ。深月の数少ない凶悪な初見殺しのカードを公にしたくないからである。ユエは口が軽いが、シアの口はもっと軽いだろうと予想していた皐月の提案でしばらくの間は内緒にしておく事になっていたのだ

 

「深月の技能の一つだ。自分に害を及ぼす魔法攻撃を無効化して自身の物にする――――――魔法の性能を理解していないと使えないから、他の奴等がそれを習得しても使い道の無い代物なんだよ」

 

(深月の思考速度は群を抜いているから出来る芸当なのよ)

 

高速思考で集中力を極限にまで高めて周囲をスローモーションの様に捉えて、その間で魔法攻撃の害意を判断する。戦闘センスが高い深月だからこそ出来る芸当なのだ

 

「それに・・・もしかしたら、俺達が知らないだけで新しい技を開発している可能性があるからな」

 

「・・・深月の進化は無限大」

 

(この世界に来てからは、それが顕著に現れているのよ)

 

「・・・深月さんに関しては人智を越えた存在と認識します」

 

(酷いですね。私はメイドですよ?)

 

「「「(普通のメイドはそんな事しません!)」」」

 

しばらく魔力駆動二輪を走らせる一行は、北の山脈地帯に一番近い町まで後一日ほどの場所まで来ていた

 

(フューレンで得た情報によりますと、予定の町―――――ウルは水源豊かで稲作地帯との事です)

 

「何?」

 

(ニルシッシルと呼ばれる香辛料を使った料理が有るとの情報も得ています)

 

ハジメと皐月は脳裏に米が思い浮かんだ

 

「よし・・・このペースなら後一日ってところだから、もう少し速度を上げてノンストップで行くぞ!米が俺を待っている!!」

 

「・・・米?」

 

「おう、つまり米だ米。俺の故郷、日本の主食だ。こっち来てから一度も食べてないからな。同じものかどうかは分からないが、早く行って食べてみたい」

 

(お米食べたい・・・パンも美味しいけど、お米が恋しいのよ!)

 

ハジメが更にペースアップして、それを追う様に深月もペースアップ。食は偉大なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

町の手前で降りてハジメさんとお嬢様は早足で向かっています。お米が恋しいのは分かりますが、ユエさんとシアさんのペースに合わせて下さい。食事は逃げませんよ?

 

深月は、二人に一言入れてペースを落とさせて一緒に町へと到着して目当ての宿へと向かう。宿に入ってチェックインした後、部屋に入って依頼の再チェックを行いつつ時間が経つのを待った。深月は何時もの様に宿の主に許可を貰い厨房へ入って使用している食材等を見せてもらっていた

すると、聞いた事のある声がチラホラと深月の耳に入って来た

 

この声は・・・畑山先生の声でしょうか?それに若い男女数人と、成人男性の声が複数――――――放っておいても大丈夫ですね。今は赤の他人、誰が何を言おうと旅の目的は変りません

 

深月は気にせずに食材と香辛料を直に観察し、触り、覚えた。料理人に一言入れて、気配を溶け込ませてハジメ達が降りてくるタイミングと合わせて合流し、席へと移動して行く

 

「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

 

「そうか、わかった。しかし、随分と若い声だ。"金"に、こんな若い者がいたか?」

 

あれは・・・騎士、神殿騎士で間違い無いですね。大丈夫かと思った矢先にこれですか・・・目を付けられなければ良いのですが、無理ですね・・・諦めましょう

 

深月は気付かぬふりをして皐月達の後を追って席に着く

 

「もうっ、何度言えばわかるんですか。私を放置して"皐月"さんと二人の世界を作るのは止めて下さいよぉ。ホント凄く虚しいんですよ、あれ。聞いてます? "ハジメ"さん」

 

「聞いてる、聞いてる。見るのが嫌なら別室にしたらいいじゃねぇか」

 

「んまっ!聞きました?ユエさん。"ハジメ"さんが冷たいこと言いますぅ」

 

「・・・今日は"皐月"に譲るのは当たり前。・・・でも、"ハジメ"・・・メッ!」

 

「へいへい」

 

「そういうシアも、もう少し余裕を見せないと駄目よ」

 

「うぐぅっ!"深月"さんだって"ハジメ"さんとイチャイチャしたいですよね!?」

 

「えっ?・・・いいえ。思いませんが?」

 

そのまま席の場所まで移動しようとする一行の側のカーテンが勢い良く引かれた

 

「南雲君!高坂さん!神楽さん!」

 

「あぁ?・・・・・・・・・・・先生?」

 

「あっ」

 

カーテンを引き開いた先に居た人物は、クラス担任の畑山先生――――――通称"愛ちゃん先生"だった

 

「やっぱり・・・やっぱり南雲君達なんですね?生きて・・・本当に生きて・・・」

 

「いえ、人違いです。では」

 

「へ?」

 

死んだとされた三人の再会に感動して涙目になっていた畑山だが、返ってきたのは全くもって予想外の言葉だった。思わず間抜けな声を上げる畑山を無視して、ハジメは出口へと向かったが皐月の手に引き戻される

 

(こらっ!咄嗟に口に出たのは言い逃れできないわよ!大人しくしなさい!)

 

皐月の言う事は正論だ。渋々皐月の元まで戻り、無難な言葉で返事をする事に

 

「まぁ・・・なんだ。・・・久しぶりだな、先生」

 

「先生、久しぶり」

 

「畑山先生、お久しぶりで御座います」

 

「あ、お久しぶりです。・・・・・じゃなくて!今まで何をしていたんですか!!」

 

ハジメに言い寄る畑山にユエが割り込む

 

「・・・離れて、ハジメ達が困ってる」

 

「な、何ですか、あなたは? 今、先生は南雲君と大事な話を・・・」

 

「・・・なら、少しは落ち着いて」

 

「すいません、取り乱しました」

 

ハジメ達はテーブルに座り、続く様に皐月とユエとシアが座って、最後に深月が座る。畑山達はハジメ達の行動にポカンとしているが、それを気にせずに宿の主のフォスを手招きして料理の注文をする

 

「ニルシッシルをくれ」

 

「私も同じく」

 

「・・・ハジメの好みの味を知っておきたい」

 

「私も同じのをくださ~い」

 

「私もニルシッシルをお願い致します。全員同じ料理ですので、ニルシッシル五つをお願い致します」

 

自然な流れで料理を注文しだしたハジメ達に呆然していた畑山は息を吹き返し、ツカツカとハジメのテーブルに近寄ると「先生、怒ってます!」と実に分かりやすい表情でテーブルをペシッと叩く

 

「南雲君、まだ話は終わっていませんよ。なに、物凄く自然に注文しているんですか。大体、高坂さんと神楽さんを除くこちらの女性達はどちら様ですか?」

 

この場に居る全員の台詞を代弁する一言で、周りの騎士も、クラスメイト達もウンウンと頷いている。ハジメと皐月は面倒くさそうに眉をしかめるが、畑山は持ち前の行動力で食い下がる

 

「申し訳御座いませんが、私たちは休憩を挟まずにこちらまで来ましたので先にお食事を済ませたいのです」

 

深月の一言で「うぐっ!」と止まるが、せめて彼女達がどういう関係なのかは聞き出そうとする

 

「あぁ、それとこいつらは・・・」

 

「・・・ユエ」

 

「シアです」

 

「ハジメの女・・・側室」

 

「ハジメさんの女ですぅ!せいさいっだぁ!?―――――――そくしt――――――――ぐっふぅ!?―――――――仲間ですぅ」

 

シアが馬鹿な発言をする前にユエの拳が鳩尾に入り込み悶絶して、側室と言い直そうとするが、再び拳がめり込み悶絶し、無難な事で落ち着いた

 

「は?・・・え?・・・側室って?えっ?」

 

「・・・正妻は皐月。・・・これは絶対。・・・だれであろうとその座は奪っちゃダメ」

 

「ハジメが平等に愛してくれれば良いのよ。・・・多少は融通してもらうけれど」

 

「・・・皐月の器はとても大きい。・・・だから融通は当たり前」

 

「そんな事を言えるユエは大好きよ」

 

「私も皐月の事が大好き」

 

「俺は?」

 

「一番好きよ」

 

「・・・おう」

 

未だに情報の処理が追いついていないのか、畑山は「えっ・・・えっ・・・?」と混乱していた。それは周囲も同様だった。ハジメと皐月の甘い空気を作りだした所で、情報が整理し終えた畑山は顔を真っ赤にして非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた

 

「ふ、二股なんて許しませんよ!直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか!もしそうなら・・・許しません!ええ、先生は絶対許しませんよ!お説教です!そこに直りなさい、南雲君!」

 

「なんでやねん・・・」

 

きゃんきゃんと吠える畑山を尻目にして、ハジメと皐月は深い深い溜息を吐いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

畑山が沢山吠えた後、VIP席の方に案内されたハジメ達。多く質問されるが、全てを端折って答えをおざなりに返していく

 

Q.橋から落ちた後、どうしたのか?

A.超頑張った

 

Q.なぜ白髪なのか

A.超頑張った結果

 

Q.皐月の目はどうしたのか

A.超超頑張った結果

 

Q.なぜ、直ぐに戻らなかったのか

A.戻る理由が無い

 

そこまで聞いた畑山は「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒るが、全く持って迫力が無い。ハジメは皐月とユエと食べさせ合いをしながら、ニルシッシルに舌鼓を打っていた

その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた

 

「おい、お前等!愛子が質問しているのだぞ!真面目に答えろ!」

 

「今は食事中よ?礼儀がなっていないのは一体どちらか分かってる?」

 

プライドが無駄に高いデビッドは顔を真っ赤にして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないハジメ達から矛先を変え、その視線がシアに向ける

 

「ふん、行儀だと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前達の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう」

 

シアの耳はシュンと項垂れて端から見ても、悲しそうにしていると見て分かる。皐月はシアの手を握って頭を撫でて言い放つ

 

「器の小さい男ね。男ならもっと大きくないとモテないわよ?」

 

皐月はデビッドを、ただの種族の違いで優劣を決める程の器の小さい男と嗤った。唯でさえ怒りで冷静さを失っていたデビッドは、よりによって畑山の前で男としての器の小ささを嗤われ完全にキレた

 

「・・・異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

無表情で剣に手を掛けたデビッド。修羅場にオロオロとするクラスメイト達と、愛子やチェイス達は止めようとするが声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた

 

ドパンッ!!

 

炸裂音が宿全体に響き渡り、デビッドの頭部が弾かれたように後方へ吹き飛んだ

 

「俺の温情に感謝しろよ?もしも俺がお前を撃たなかったら、首が確実に飛んでいたぞ?まぁ、ここから先はどうなっても知らないがな」

 

騎士達は突然の出来事に硬直して直ぐさま警戒する様に剣を引き抜こうと手を動かそうとするが、ピクリとも動かない。それは畑山とクラスメイト達も同じだ。今まで見た事も無い目で自分達を刺す無機質な視線――――――深月の眼光が普段の物とは違っていた

 

「私はお嬢様のメイドで、お守りする主。分かりますか?貴方方は敵意を向けたのです。つまりは―――――殺されても文句は無いですね?」

 

深月が右手を少しだけ握ると騎士達が苦しみだした。畑山とクラスメイト達は「何事!?」と様子を伺うと、首筋が何かに絞められている事に気付いた。その締め付けは徐々に強くなって行き、騎士達はより一層苦しむ

 

「まっ、待って下さい!これをしているのは神楽さんですよね!?お願いです!彼等を離して下さい!!」

 

「何故ですか?」

 

「こ、このままでは人を殺してしまいます!それだけは絶対にだm―――――」

 

「私は人殺しには慣れています。ですので、今更増えた所で何も思いません」

 

更に締め付けを強くする深月。騎士達の首筋から血がツゥーと垂れはじめる。もう容赦は無く、殺す気は見て取れる。クラスメイト達は、知り合いが・・・深月が殺人に躊躇いを覚えない事に顔を青くする

 

「・・・お願いです。止めて下さい・・・」

 

「はぁっ、深月止めなさい」

 

「かしこまりました」

 

皐月の一言で、騎士達の首を締め付けていた物は取られて彼等は咳き込みながら大きく息をする

 

「俺は、あんたらに興味がない。関わりたいとも、関わって欲しいとも思わない。いちいち、今までの事とかこれからの事を報告するつもりもない。ここには仕事に来ただけで、終わればまた旅に出る。そこでお別れだ。あとは互いに不干渉でいこう。あんたらが、どこで何をしようと勝手だが、俺の邪魔だけはしないでくれ。今みたいに、敵意をもたれちゃ・・・つい殺っちまいそうになる」

 

「"今回"は許したけど、覚えておきなさい。深月が本気でキレたらどうなるか・・・私は見た事が無いわ。多分・・・今まででキレた事は無いんじゃないかしら?」

 

深月の威圧は解いたが、ハジメと皐月の威圧によって彼等は何も言葉を発せずにいる。二人は、彼等に興味を無くし威圧を解いてニルシッシルに再び手を付け始めた。未だに落ち込んでいるシアに四人は話しかける

 

「おい、シア。これが"外"での普通なんだ。気にしていたらキリがないぞ?」

 

「はぃ、そうですよね・・・分かってはいるのですけど・・・やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」

 

「・・・シアのウサミミは可愛い」

 

「ユエさん・・・そうでしょうか」

 

「大丈夫よ。私もハジメも、シアが寝ている隙にウサ耳を堪能しているわ」

 

「おいっ!それは言うな!」

 

「ハ、ハジメさん・・・皐月さん・・・私のウサミミお好きだったんですね・・・えへへ」

 

「あの騎士達は神殿騎士です。幼少の頃から人族至上主義の刷り込みがされていますので気にせずとも良いかと。それに、愛玩奴隷としての需要はかなり高い所を察するに、一般の方からは敬遠される事は無いでしょう」

 

「・・・深月」

 

「・・・最後の最後でそれは俺でも酷いと思うぞ」

 

「・・・容赦ない」

 

「私は何か間違った事を言いましたか?」

 

「事実だけど・・・もうちょっと優しい言い方をした方が・・・ね?」

 

最後の深月の言葉はスルーして、四人で桃色空間を作り出している事に目を白黒させる彼等。しばらく、ハジメ達のラブコメなやり取りを見ていると、男子生徒の一人相川昇がポツリとこぼす

 

「あれ? 不思議だな。さっきまで南雲のことマジで怖かったんだけど、今は殺意しか湧いてこないや・・・」

 

「お前もか。つーか、あの二人、ヤバイくらい可愛いんですけど・・・どストライクなんですけど・・・なのに、目の前にいちゃつかれるとか拷問なんですけど・・・ってか高坂さんと神楽さんがより一層奇麗な件について」

 

「・・・南雲の言う通り、何をしていたか何てどうでもいい。だが、異世界の女の子と仲良くなる術だけは・・・聞き出したい!そして最後の二人がもっと奇麗になった事がヤバイ!・・・昇! 明人!」

 

「「へっ、地獄に行く時は一緒だぜ、淳史!」」

 

ハジメを見ながら、嫉妬を込めた眼で一致団結する男子三人。そして、それを冷めた目で見る女子

騎士の一人――――チェイスは場の雰囲気が落ち着いたのを悟り、デビッドの治癒に当たらせる。同時に、警戒心と敵意を押し殺して、微笑と共にハジメに問い掛けた。ハジメの事情はともかく、どうしても聞かなければならない事があったのだ

 

「南雲君でいいでしょうか? 先程は、隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」

 

「へぇ?少し観察して察したけど、相当腹立たしいようね。因果応報――――――殺っていいのは、殺られる覚悟のある者だけよ」

 

冷めた目でチェイスが必死に隠している心情を読み取って言い返す。無論、チェイスは皐月の言が正論過ぎて何も言い返せない。チェイスは頭の回転を変えて、ハジメが持っているアーティファクトらしき物に目を向け切り込んだ

 

「そのアーティファクト・・・でしょうか。寡聞にして存じないのですが、相当強力な物とお見受けします。弓より早く強力にも関わらず、魔法のように詠唱も陣も必要ない。一体、何処で手に入れたのでしょう?」

 

詠唱も要らず、殺傷能力の高い武器が目の前に存在する。戦争の情勢を一気に左右させる程の力を秘めている為、聞かずにはいられなかったのだ

 

「そ、そうだよ、南雲。それ銃だろ!?何で、そんなもん持ってんだよ!」

 

「銃?玉井は、あれが何か知っているのですか?」