この面倒臭い根暗に祝福を (漆塗り)
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プロローグ

承認欲求が人よりも数倍強く、面倒臭い作者です。

あ、転生神のアクア様は今日非番です↓


俺は死んだようです

 

「貴方はながらスマホ自転車運転で横断歩道を渡っている最中に居眠り運転のトラックに引かれて即死しました」

「えぇ・・・」

 

なろうを読んでいたらいつの間にか死んでしまったみたいだ、ながらスマホをしていた俺の事を、目の前の女性は割と蔑んだ目で見ている。

 

言い訳をさせて貰うと俺がスマホに集中している時間はごく僅かだし、今まで事故を起こしたことは無いし、なんなら田舎なので歩道で出会う人は皆無と言っていい様な場所だった。

 

車が居ない時に信号無視をすると怒る人なら俺の事を批難するだろう、しかし無視する人なら許してくれる筈だ。

 

「確かに信号無視の下りは納得が行かないでもないですが、ながらスマホは長時間危険な事をしているのですから、比べられるものじゃないですよ」

「・・・あれ?俺、口に出して、ましたか?」

 

そう言えば、俺が死んだと言うのなら此処はどこなんだろう。全く見覚えがない、と言うか覚えられる物が無い場所なんだけど・・・。

 

「あぁ、自己紹介がまだでしたね。私は女神エリス、転生なんかも担当している、正真正銘の神です」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・」

 

女神様の説明を纏めると、地球とは違う異世界が存在し、そこでは魔王呼ばれる存在が人類を滅ぼそうとしていて、本来死んだ人間は元いた世界に記憶を消され転生するものなのだが無残に殺された人達は転生を拒否してしまう、と。

そのせいで世界へと帰っていく魂の数が減り、ただでさえ人類は劣勢であるのに、人口も増えにくくなってしまったみたいだ。

 

そして若い異世界好きな人間にチートを持たせて送り込んで世界を救わせようという結論に達したらしい。

 

あーそういう事ね、完全に理解した(してない)

 

「と、言うことで、強力な神器や、特殊な能力を何か一つ選んで、異世界へと旅立って欲しいのです。一応記憶を失っての地球への転生や天国でのんびりするという選択肢もありますが、多分異世界に行きますよね?」

「はい、俺は人を助けられる能力が欲しいです」

「・・・えぇ?本当に?」

 

ながらスマホなんかしてた癖に・・・とでも言いたげな顔だ。

 

「女神様、自分は確かにながらスマホをしてましたが、人助けもするし面倒見もいいんですよ。自分の過去とか見たら分かると思います」

 

女神様は暫く沈黙した後、まぁ、確かに。と零した。本当に過去が見えるのか・・・。

 

「でも、ゲームしながら暴言吐いたりしてますよね?」

 

・・・ま、多少はね?

 

言い訳をさせて貰うと、リアルでいい人するのはストレスが貯まるのだ。誰もやらない仕事を引き受けても、その場限りの感謝の言葉があるのみで、別段何がある訳でも無い。周りの奴らは俺の事を出しゃばりな奴だと思っているかもしれない。

後輩の面倒もよく見ているが、本当に好かれているのかが分からない。向こうから夜にゲームの誘いが来る事もあるが、街で出会った時に、気が付いていないのか確信犯なのか、スルーされる事もある。確かめれば、白々しい反応が帰ってきてしまいそうで、尋ねることも憚られる。

心に少しばかりの傷を負うことになるし、本当に人間関係という物は面倒臭い。

そして我ながら屑だとは思うが両親のコトがあまり好きではなく、家に居てもストレスが溜まる。

共働きだった両親、幼少の頃は祖父母と暮らしていた記憶しかない。しかし小学校を出る頃には両親と祖父母が不仲になり、家を出た。育ての親は祖母だ、しかし母親に泣き落としを喰らい両親と共に家を出た。

仕事も変わり、前よりは家にいる時間も長くなったがそこで発覚したのは両親の致命的な相性の悪さ、離婚寸前まで行った両親を見て、こんな生活の為に祖父母を捨ててきたのか、と。そう思ってしまった。それからはもうダメだ。

 

家では家族にも関わらずお互いを傷付けあう両親、外では雑談とは名ばかりの序列の押し付け合い。相手の地雷を踏まないように気を遣う窮屈な人間関係。人の事を気にしない程にメンタルが強ければ人間関係なんて無視してしまえるのかもしれない。しかし、俺はふと気を抜くといい人を演じている。すっきり解決する事は殆ど無いし、すっきり解決しても特に何も無いし、なんならストレスの方が多くながらスマホなんかやっちゃう様な状態でも、そんな事をやってしまう。

 

「・・・えぇと、中々に面d んん。難儀な性格をしていますね・・・」

 

1人が怖いから、周りに来て欲しくて、人を助けるんだ。性格も特徴も雰囲気も、人を惹き付ける何もかもに自信が無いから、恩で人を縛りつけようとしていた。

 

まぁ、誤算があるとすれば多少の恩なんか幾らでも踏み倒す連中しかいなかったって所かな・・・。それとも、相手からすれば恩ですら無かったのか。

 

・・・誕生日プレゼントに500円普通に渡したら「少なっ」って言われたこともあったな・・・少ないのかな・・・。普通学生なんて渡さない物ぐらいの勢いだと思ってたけど1000円とか上げるのかな・・・。

・・・遊びとか誘って来るような相手だったのn

 

「異世界転移するんですか?しないんですか?」

 

あ、はい、します。無駄な話でしたね、へへ・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

悩む・・・

 

実を言うと、地球に居た時からこういう状況で、どういう選択をするか、っていう妄想は死ぬ程していた。人を助けられる能力、と言うのは今思いついたカッコつけの言葉では無い。本当に、そういう力を願っていたんだ、まさかマジでこんな事になるなんて思ってなかったけどな。

 

そして、ずっと考えていても答えは出なかった。

 

色々考えすぎてしまうんだ。

 

例えば、チート能力に戦闘力を選んだ場合、病気や大怪我で、知人が危機に陥ってしまっても助けられないかもしれないだろ?目の前で死ぬなんて想像するだけで・・・

 

なら、回復魔法なんかに全振りしたとする。そしたら今度は絶望的に力が足りないんだ。盗賊や、もしかすると魔物なんかに、大切な人が殺されてしまうかもしれない。そんな時に回復魔法なんて持ってても、何の役にも立たない。

 

なら財力はどうだ。金があれば強い人間も雇えるし、高い医療技術も思いのままだ。

 

金で繋がる人間関係の儚さは嫌という程知ってる。

 

権力は?

 

人を従える自信なんてこれっぽっちもない。

 

あれなら・・・これなら・・・いくら考えても纏まらなかった。地球でもよくこんな迷路に迷い込んでいたものだ。

 

無敵、なんかの余りに強い能力は論外。そんな力を持ってしまえば自分が何をするか分からない。人よりも、自分が一番信用ならないんだ、それだけは分かってる。

 

「・・・女神様なら、どうしますか?」

 

最初に比べてかなりテンションダウンした俺の言葉に、女神様はううんと悩み、答えを出した。

 

「ひとまず、アドバイスはしますけど。最後に決めるのは貴方です」

「それは、まぁ」

 

そう前置きし、女神様は話し始めた。

 

俺が向かう世界は、レベルやらステータスやらの存在するファンタジーなせかいだ。そして、その世界の基準で俺の能力を表すと、魔力・器用の能力が平均より高く、他の能力は平均程度らしいが、運は少しばかり低いのだとか。まぁ、運動はずっとやってたし、身体は鍛えられてるかな・・・。運も、自信なかったから妥当な評価だ。

 

「職業に就くとしたら、ウィザードかアーチャーですね。どちらも需要のある職業です」

 

・・・しかし、ウィザードになれば魔法の効かない敵なんかにはなすすべもなくやられることがあるかもしれないし、アーチャーはマトモに矢が刺さらなそう(偏見)

 

「そう言うのって、その、仲間とかに頼るものなんじゃ・・・」

 

自分は、仲間と強固な信頼関係を築く自信はないし、そもそも自分が信頼出来ないと思うのでその選択肢はあんまりないです。

 

「(め、めんどくさい・・・)」

 

女神様でも手詰まりなのか、と思いきや彼女は溜息を付きながらこう言った。

 

「なら、冒険者になるしかないですね。なんでも1人でできる職業ですよ。本職の人には劣りますが・・・」

 

冒険者、あらゆる職業のスキルを覚えることが出来る。しかしその効力は本職の人間には及ばず、更に覚える為に消費するスキルポイントも多くなってしまう為人気の無い職業らしい。

 

「そういう事ならいざと言う時に力不足になったr」

「記憶消されたいのか」

「あ、はい、なります。すみませんでした・・・へへ・・・」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

重井 光明(おもい こうめい)

所持チート:スキルポイント爆増




自分の事を言葉にしてみるとこんな感じです

表面・クラスに一人はいるヤツ、便利屋。断らない

表層・傲慢、自信家。自分よりも劣った人間を心の中でバカにしている

中層・寂しがり屋、人に認められたい。何も出来ない自分が嫌い

深層・嫉妬深い、なんでも出来る人が嫌い

普段出るのは中層位までです。表面で普段は対応して、心の中では表層が幅を効かせてます。しかしその表層は中層の心理の裏返しでその奥には深層が隠れてます。

我ながら汚い人間です


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駆け出し冒険者の街アクセル

自分がお節介を焼く分にはなんの問題もありませんが、人にされると裏を疑います


「・・・おぉ」

 

レンガで建てられた家、道行く馬車、そして、言っちゃ悪いが地球では見ないような服装の人達。ドッキリなんかじゃなければ、本当に異世界に来ているみたいだ、なんだかワクワクしてきたぜ。

 

それにさきても、神の性格がゴミクズな感じの転生物じゃなくて良かった。支度金として10万エリス(価値は分からないけど)も渡してくれたし、アドバイスもしてくれたりと、良い女神様だったと思う。

 

さてと

 

「あのー、すみません。冒険者ギルドの場所を教えて貰えませんか?」

 

言葉は神パワーで覚えることが出来た、街の人の中で、人が良さそうな人を探してそう訊ねる。自分の経験上、こういう時に狙い目なのは2人以上のおばさんの集まりだ。基本的には気のいい人達だから少し関わるだけなら問題も起きない。異世界で通用するのかは分からないが。

 

「冒険者ギルドならすぐそこさ、あそこに見える赤い家で右に曲がれば、奥に一際大きな建物が見えてくるよ」

「あぁ、分かりました。ありがとうございます、助かりました」

 

ペコペコとお辞儀しながら離れ、その後は振り返らずに歩く。後ろをチラッと見るとなんだアイツ、と思われる可能性も少しある。

 

歩いていると、教えて貰ったとおり一際大きな建物に辿り着いた。1軒家2つ分位のサイズだ。

 

(でけぇドアだな・・・)

 

木製のドアをあけると、中の喧騒が一気に耳に飛び込んできた。

 

「いらっしゃいませー!お食事ならテーブルへ、冒険者絡みなら奥のカウンターまでどうぞ!」

「あ、はい・・・」

 

ウエイトレスらしき人に、そう言われた。どうやらここは酒場も兼ねているらしい。依頼を終えて疲れてる時に飯の匂いがすれば此処で金を落として行くと分かっているんだろう。

 

(・・・カウンター)

 

3人ほど受付らしき人が居る、美人で巨乳な金髪の受付嬢の所には10人を超える列が出来ており、並ばなければいけなさそうだ。

 

(いくら可愛くたってあんなあからさまに行くか?普通。望みなんてねぇだろ)

 

心の中では屈強な男達を馬鹿にしているが、勿論言葉どころか表情にさえ出すことは無い。殺される。

 

人の少ない所へと並び、ものの数分で順番が回ってきた。

 

「本日はどう言った御用事でしょうか?」

「ええと、冒険者になりたいので、手続きをお願いします」

「かしこまりました、先ず、登録費用として1000エリスが必要となりますが、宜しいですか?」

 

1000エリス。どれ位なのかは分からないが、必要となるなら払うしかない。

通貨の額は教えて貰ったので、1000エリスぴったりを支払った。

 

「はい、確かに。では、冒険者の説明をしますねーーー」

 

そこでの話は、あの世界で女神様に聞いたものと大体一致するものだった。

冒険者の証であるギルドカードを作成する為、カウンターに置かれている奇妙な球体に手をかざした。手をかざした瞬間から球体は綺麗な青の光を発し、その光は少しずつ増していく。

 

(綺麗な光だ)

 

「はい、これで完了です。貴方のステータスはしっかりとここに刻まれました。えぇと・・・オモイ コウメイさん、ですね。ステータスは・・・ウィザード向きですね。他の職業もなれない訳じゃないですが、1番活躍できるのはやはりウィザードだと思われますよ」

「冒険者でお願いします」

「・・・ぇぇと、冒険者?」

 

はい。

 

受付の人は、なんだコイツと言わんばかりの目で俺を見つめかけるも、プロ意識でそれを押さえ付けたような苦しげな表情をし、俺の説得に回った。

冒険者のデメリットを丁寧に伝えられたが、それは承知の上だと答えると、納得は行かないながらも受け入れてくれた。後で転職も可能だし・・・と言ってたから本当に納得はしてない。

 

まぁ、それでも問題なく登録は終わった。ここからするべきなのは情報集めだ。まず、ギルドの外に出る。途中、声を掛けられたが「急いでるんで」と、振り切った。

 

時計は無いが、太陽の感じからすると昼前だな、時間はある。外に出て向かったのは、途中で見つけていた商店街だ。1番初めに、物価を知らなくてはいけない。

 

数ある店の中からそこそこ人の姿のある八百屋を見つけた。値段を見る限り、概ね3桁エリスの物ばかりだ、次。

 

肉屋では、安いものはギリギリ3桁だが殆どは4桁で売られている。成程。

 

最後に屋台、野菜のサンドイッチのようなものが売られていて、一つあたり200エリスらしい。客も特にリアクションを見せずに買って行くことから高級品という訳でもないだろう。食事の物価は大体把握した。次は装備だな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

安物らしき鉄剣 15000エリス

安物らしき皮鎧 20000エリス

 

「・・・これは無理だな」

 

残金の半分ほどが無くなる、まだ準備は出来てないのに払ってしまうとどうなるかが分からない。となると直ぐにでも狩りをするなんて事は出来ない訳だが・・・。

 

みーー君ーー!

 

「君ってば!聞こえてないの!?」

「うぉっ、なんだよ、あ、いや、なんですか?」

 

考え込んでいたら、誰かに声を掛けられていることに気が付かなかったようだ。と言うより、知り合いもいないから話しかけられるとは思っていなかったのだが・・・。

 

「あ、さっきギルドに居た・・・」

 

ギルドから出る時に話しかけられた、銀髪の女の子が後を追いかけて来ていたようだ。俺になんの用だろう。

 

「君、結構足速いね・・・人の間もスルスル抜けてくし。追い付くのに苦労したよ」

「はぁ・・・えぇと、それで、なにか御用ですか?」

 

そうだった、と女の子は呟き、

 

「あのね、ギルドでのやりとり見てたんだけど、この業界にあんまり詳しくないみたいだね?」

「まぁ・・・はい」

 

それがなんだと言うのだろう。

 

「で、ちょっと危なっかしいなーと思ってね。君が良ければなんだけど、あたしに冒険者のノウハウを教わる気はないかな?」

 

・・・は?

 

ちょ・・・、こんな状況は予想外だ。そんな事をしてコイツになんのメリットがあるんだ?ギルドで見掛けたルーキーを心配して、こんな所まで追いかけてくるなんて普通ないだろ。

 

「あー、怪しまないで?ホントにただ、そう。助けたいなーって思っただけだからさ」

 

いや・・・無理だろ・・・

 

「じゃ、じゃあさ。スキルだけでも覚えていかない?確か冒険者だよね。なんのスキルもない状態だと危ないじゃん?ほら、幾ら怪しいヤツでもこんな往来で悪いこと出来ないって」

 

えぇ・・・何がしたいんだ、この人は。確かに、こんな所で変な事をしても直ぐにバレるだろうけど・・・ハッ!いや、待てよ。ここは異世界だ。俺の想像もつかないような方法で悪事が行われるかも・・・

 

「(なんでそんな思考になるんですかぁ〜!)ぇ、えぇと、あ、ほら!コレ見て?あたし盗賊で、魔法なんかも使えないしさ、変な事をなんて出来ないよ〜」

「盗賊なんて悪い事しかしなさそうなんだけど・・・あ」

 

しまった、口に出していた。

 

「いやいやホントほんと、攻撃の技も殆どないし、ね?ホントに人助けしたいだけなんだって。信じてよ」

 

思わず悪口が出てしまった俺に気を悪くする事もなく、笑顔を浮かべそう言う彼女。ここまでされると、なんだか罪悪感が・・・。

 

「・・・じゃあ、5000エリス受け取って貰えますか。無償はやっぱり信じられないので」

「(面倒臭い・・・)・・・うん、それでいいよ。じゃあ早速やろう!」



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女神クリスの助言

こんな面倒臭いこじらせ転生者にアドバイスするなんて、一体何エリスさんなんだ・・・


「私の名前はクリス、よろしくね。じゃあまず、どうやってスキルを覚えるのかは知ってるかな?」

 

道のど真ん中でやるわけにも行かないので、端によってからいきなり冒険者講座が始まった。

 

「一応(女神様に教わったし)」

「なら、話が早いね。居心地悪そうだし、手早く済ませようか」

 

窃盗

敵感知

潜伏

短剣術

 

俺が教わったのはこの4つだ。

窃盗は相手から確率で物品を奪い取ることができる。俺は運が悪いので、相手の持っていた石ころしか奪えなかったが。

 

敵感知・潜伏は合わせて教えられた。後ろを向いて、と言われその後衝撃が頭に走った時はやっぱり悪人だったのかと思ったが、それ以上は何もなく。後ろを見てみるとクリスさんの姿は無かった。あるのはあからさまに怪しい樽のみ。

 

「・・・」

 

もし相手が嫌いな相手だったら思い切り蹴飛ばしたのに、教えて貰ってる立場だから苛立ちを抑えるしかねぇな。

 

最後の短剣術は剣舞を見せてもらい、習得した。

何となく剣の使い方が頭で理解出来るようになり、少し怖かったが知らない言語が分かるという経験をしているので問題ない。

 

「とりあえず、コレがあれば最低限大丈夫かな。何か聞きたいことはある?」

「・・・じゃあ、日収はどれくらいですかね」

「日収って・・・うぅん。10万エリスくらいかなぁ」

 

恐らくそこそこの腕利きであろうエリスさんで、10万か。命の危険のある職業でそれは、高いのか?分からない。

 

「まぁありがとうございました助かりましたコレ、お礼ですそれでは」

 

相手の目的がなんにせよ、教わる事は教わったので5000エリスを支払ってその場から離れる。

 

「ぇちょ、待ちなy」

 

物陰に隠れて潜伏!その後は人混みに紛れながらギルドへと向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ギルドで、本が読める場所はないかと聞いた所、ギルドに一般開放されている資料室があると言う事を教えて貰った。一言断りを入れてから資料室へと入る。

あの荒くれ者達が利用するとは思えないが、キチンと掃除されているようで埃っぽさは感じない。

 

(スキル・・・後は魔物・・・あった)

 

目当ての資料を発見し、備え付けの読書スペースへと移る。戦闘の経験が無い俺にとってスキルとは生命線だ。めぼしい物に目を付けて、冒険に出る前にどうにか習得したい。そして魔物の資料も読んでおく。討伐するかもしれない相手の特徴をしっかりと覚えておきたい。暮らしていたら身に付く常識も持っていない訳だしな。

 

ーーみーーきみーー!

 

「おぉい・・・!君・・・!また無視かい・・・!?」

「え?・・・あ、すみません。って、クリスさんですか」

 

読むのに夢中になっていて、身体を揺すられるまで全く気が付かなかった。

と言うか、なんで俺の場所がバレてるんだろう。

 

「全く、まだ話は終わってないのにいきなり居なくなるから、探すのに苦労したよ」

「えぇと、それは申し訳なかったですけど(・・・いや、申し訳なくはないか)なんで俺のいる場所が分かったんですか?」

「え?そ、それは・・・盗賊だからね。幾らでも方法はあるのさ」

 

・・・へぇ。怖いけど、みつかってしまったものは仕方ないか・・・。

 

「んん、君がまた逃げるといけないから、最初にコレから聞いて欲しいことを言うよ?まずね、この街の駆け出し冒険者は皆馬小屋に泊まるの」

 

マジカヨ

 

「宿は1泊でも1万取られたりするからね、お金が無いととてもじゃないけど無理だよ。それと、最初の頃によく狙いに行くジャイアントトードについてだけど」

「あ、それはもう大丈夫です。資料に載ってたんで。金属製の武具を持ってなかったら、呑まれる危険があるんですよね」

「・・・そう、だけど。あぁ、資料読む為に此処に来てたんだね。キチンと準備をするのは偉いよ」

 

むしろ資料読む以外で何をしに資料室に来るんだろうか?

 

「じゃあ、後は1つだね。もし、討伐クエストに行くのなら、絶対に1人じゃダメだよ。パーティを組まないと、ね」

「あー、・・・はい」

 

言いたいのはそれくらい、じゃね。そう言ってクリスさんは資料室を出ていった。・・・ここでも、何かされることは無かったな。こっそり敵感知を使ってたけど、敵意は感じなかったし。まぁ、理解は出来ないけど、お人好しなんだろう。

 

「パーティか・・・」

 

まぁ、そりゃそうだな。魔法も技術も何も無い冒険者が1人で出来ることなんてたかがしれてる。

 

そして魔法も技術も無い冒険者が入れるパーティなんてたかが知れてるんだよなぁ・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時刻は3時頃。新たに狩りに出かけるには遅く、仕事を終えて飲みに来るには早い。そんな中途半端な時間に資料を読み終えた俺は資料室を退室し、掲示板を眺めていた。

 

『ジャイアントトードの討伐(3匹)5万エリス』

ジャイアントトードが3匹の小さな群れを作った、1人では追い払うのも難しいので討伐して欲しい。

 

『別荘の掃除 1万エリス』

使っていなかった別荘でパーティを行うこととなったので、なるべく早く掃除を終えて欲しい。仕上がりで追加報酬アリ

 

簡単そうな依頼は、やはり報酬が安い。1・2日かかりそうな依頼でもパーティで挑めば宿に泊まれない位の物になってしまう。馬小屋に泊まるのもやむ無しなのだろう。

 

まぁ、命と尊厳を天秤にかけたら大概は命に傾くんだろうな、そう思いながらパーティ募集の掲示板を見た。

 

『中級以上が使えるウィザード1名募集』

今のメンバーはシーフ、ナイト、アーチャーです。

『罠発見・解除の出来るシーフを募集してる』

近々ダンジョンを探索する予定だ、今はウィザード、戦士、プリーストなんでシーフが欲しい。

 

(大半は無理だな)

 

募集条件を全然満たしていない。

 

初心者の募集でも、あんまり自分にぴったりの募集は無かった。欲しがられるのはウィザードが多く、次いでプリーストだ。シーフや戦士は基本的に溢れているらしく、余りみない。

 

(おっ、これは・・・?)

 

『職業不問』という文字が目につき、その募集紙を手に取ってみる。

 

『パーティメンバーを募集しています』

当方紅魔族のアークウィザードです

レベル・職業は不問です

 

アークウィザード、確かウィザードの上位職だったかな。そんで紅魔族ってのも確か・・・魔力と知力に優れ、ウィザードに向いている種族・・・だったっけ?スキルの資料に乗ってた気がする。皆上級魔法ってのを覚えてるんだったっけな

 

・・・んなとこにレベル1の冒険者が行ったら流石に呆れられるな。寄生する気満々かよって感じだ。

 

ん?待てよ。この紙2枚目が・・・

 

『追記』

名前を笑わない方

意地悪をしない方

噛んでもゆっくり話を聞いてくれる方

たまに一緒にお出かけしてくれる方

ご飯を一緒に食べてくれる方

etc・・・

 

そんな人を募集しています

 

えぇ・・・(困惑)

 

文面見るに、ぼっちだ。それも相当こじらせてるよ。文に切実さが滲み出てるから釣りなんてことも無いだろう。俺は人間の良い感情はあまり信じないが悪感情は信じる。人間の本性は悪い所にこそ出るものだと俺は思っている。

 

こんなに真剣に友人を求めてる人なんて初めて見た、いや、求めてるのはパーティメンバーなんだけど、コレはもう友人募集でいいだろ。

こんなこじらせてる人が社会の闇に飲まれず未だに生き残ってるとはな・・・。正直騙されて借金背負ってたりしてもおかしくないぞ。

 

・・・コレなら、冒険者が行っても問題無く受け入れられそうだ。俺は表面だけなら万人に嫌われない、良い人な自信がある。

 

・・・行くか。

 

剥がした募集紙を持ち、カウンターへと向かう。時間帯が微妙なので、人は並んでいなかった。

 

「すみません、パーティの事なんですが。この人のパーティに入りたいんです」

「かしこまりました。パーティですね。えぇと・・・えっ」

 

募集紙の詳細を確認し、2枚目の文面を読んだ受付嬢さんは俺を正気かと言うような目で見てきた。流石に抑えられなかったようだ。

 

キチンと正気である事を伝え、パーティの申請を催促する。

 

「この募集を出している方は、その、あそこの隅に座っている方です」

 

指さされた方向に目をやる、そこに居たのは

 

複数の箱を使用しているのであろう、超巨大トランプタワーに挑戦している少女だった。



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ぼっちのゆんゆん

童貞がゆんゆんとパーティ組んだら破裂しそう


・・・今彼女は大記録へと挑戦中の様だ、暫くそっとしておこう。

 

タワー建築に必要な部品は残り3枚を残すのみだ。既に子供が見上げるほどの高さになっており、彼女も椅子の上に立っての作業になっている。

 

そろり、そろりと伸びる腕。微かな震えが崩壊へと繋がるその塔へと、ゆっくりと、確実にトランプが近づいていく。

 

・・・スッ

 

最後となる土台、その1枚がしっかりと塔の上に乗せられた。残り、2枚

 

1番難易度が高いのは此処だ。一度に2枚を纏めて立てなければならない上に、最後の部品ともなると緊張も一塩、更に1番高い場所なので体勢的にも厳しい物がある。

 

しかし、彼女はトランプの塔に立ち向かっていった。

 

不安を振り切るためか、先程よりも勢いの付いた両腕、しかしさっきよも安心感がある。

 

このまま流れに乗りきるか・・・!

 

そう思ったその瞬間、風が流れてきた。今日は穏やかな気候だった。日本ではもはや消えかけている春を感じさせる暖かな気温、風もなくのんびりとした雰囲気の漂う日だった。しかし、風が吹いた。

 

髪を少し攫うようなちいさな風、それは彼女のトランプタワーに近付いて、塔を崩壊に・・・

 

「ウィンドブレス」

 

ピタッ

 

彼女が何かを唱えた瞬間、崩れるかと思われた塔はその安定を取り戻した。

ウィンドブレス、たしか初級魔法だ。初級魔法は生活魔法と揶揄される程に力が小さい。ウィンドブレスもそれに漏れず、少し空気を操る程度の魔法と書かれていた。それを完璧に制御し、トランプタワー全体を襲った風の影響全てを相殺するように風を纏わせた、のだろう・・・

 

「天才かよ・・・」

「ひょぇっ!」

 

ガッターン、ゴッ

 

「・・・」

「きゅー・・・」

 

 

誠に遺憾に思います

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いや、本当に申し訳ないです」

「い、いぇ・・・わた、私もその、お、大袈裟な反応をしたので・・・」

 

目の前の少女ーーゆんゆんと言うらしい、本名だーーが見ていて可哀想になるほどに縮こまり、掻き消えそうな声でそう返した。

 

いくら俺でも申し訳ないとは思った。あんな大作を一瞬で崩壊させてしまったのだから。妬み嫉みに塗れた俺の心の一部分は気にしていない様子だったが多少綺麗な一部分は罪悪感を抱いている。

 

そして、入る事が簡単そうなのでこのパーティに来た訳だが、ちょっと諦めようかな。

相手が女の子なのはまだ予想していた。しかし、予想より若かった。

中学生位だと思う。アークウィザードだと言うことを疑っている訳では無いが自分から関わるのは少しばかり面倒そうだ。男か、せめて同年代なら話しやすかったのに・・・。

 

しかし、入る事は諦めるがこの子を見捨てるのは心苦しい。この世界に来て初めての良い人演技をしてみようか。

 

「あ、そ、その紙・・・!も、もしかして、パーティ申請n」

「いや、違います」

「あ、そうですか・・・」

 

テーブルから乗り出すほど期待していたみたいだが、組む気はない。途端に萎れてしまった。

 

そうやって罪悪感を刺激するのは卑怯だぞ

 

「俺が来たのはアドバイスの為です」

「・・・アドバイス?」

 

自分がパーティに入らないなら、パーティメンバーが来るような募集文に変えてやればいい。と言うか、ギルドの連中も少しくらい手助けして上げようとか思わねぇのかな。

 

「ええ、アドバイスです。パーティメンバーを募集する為のコツを教えますよ」

 

こっちの常識なんて正直分からないが、コレよりはマシな物は作れる。

 

「まず、この2枚目の紙なんですが、こんなに必要ないですね。これがあるだけで『あ、ちょっとヤバい人かな』と思われてしまいます」

「ふぐっ」

「そして、当方アークウィザードと言う文、コレもカットします」

「えっでも、職業が無いと相手は不安になるんじゃ・・・」

 

まぁ、それはそうだろうが。

 

「ここは駆け出し冒険者の街アクセルです。上級職の上に、魔法に長ける紅魔族の出身ともなると、敷居が高くて初心者の冒険者は声を掛けずらいでしょうね。人が来ないのはこの2つの原因が大きいです」

「・・・そ、そう言われればそうですね・・・」

 

彼女の所持スキルを聞いたところ、中級魔法と上級魔法、そして少しばかりの体術も納めているらしい。いよいよ駆け出し冒険者では釣り合わない。

よってこうなった。

 

『初心者のパーティメンバーを募集しています』

当方、中級魔法が使えます。

まだ覚えたての初心者なので、同じように今から冒険を始める仲間を募集しています。クラス・レベルは問いません

 

「まぁ、こんなもんでしょうね」

「えっ、で、でもコレって詐欺なんj」

「誇張してる訳じゃないから大丈夫です。で、メンバーの前では中級魔法しか使わないようにして、緊急事態で使わざるを得ない時は魔力を全力で込めたとか言っとけば上級魔法使っても大丈夫でしょう」

 

は、はぁ・・・と納得の行かないような顔が見える。ぼっちは嫌なんだろうになぜ抵抗があるのか。

 

人間は知れば知る程分からなくなる。

 

「まぁ、・・・そうですね。その、友達・・・欲しいですし。・・・あの、一つ質問なんですけど、そう言う、人の事って、どうやれば分かるんですか・・・?」

 

人の事・・・俺は殆ど分かっちゃいない。もし彼女が『ちっ、上から目線で来やがって。だがまぁ言ってる事はズレちゃいねぇから聞いてやんよ』と内心思っていたとしても俺にそれを知る術は無い。まずそんなことは無いと思うが、無い話でも無いだろう。自分ならそう思うからだ。自分が少数派の人間なのは分かっているが他にいてもおかしくは無い。だがそれはそうとして、簡単な一言だけを伝えておいた。

 

「世の中は自分が思っている程自分に興味が無い、という言葉を聞いた事があります。見る限り、自分に自信が無いみたいですが、ゆんゆんさんは別に何がおかしいと言う訳じゃないですよ。少し世間知らずな所はあるかも知れませんが普通の女の子です。周りの人に笑われてる、と感じる事があるとしても自分の思い込みな事が多いです。冒険者は豪快な性格の人が多いだろうと思うので、少し怖気付いてしまうかもしれませんが、そこでめげずに頑張る事が大切だと思いますよ」

 

ソコソコいい事言ったんじゃないか?まぁ、自分でそれをやれと言われても無理だし、そもそも自分の言ってる事が正しいなんてこれっぽっちも思ってないけどな。

 

しかしそんなアドバイスにも、ありがとうございます、とゆんゆんはお礼を言った。アドバイス料に・・・と何やら財布を取り出そうとするが、光明はそれを押し止めて一つ頼み事をする。

 

「図々しいかもしれないんですが、自分に中級魔法を教えて貰えませんか?自分は冒険者でして、それが1番助けになります」

「冒険者・・・そうだったんですね。そ、それなら私でもお手伝いできますね。お礼に、頑張ります・・・!」

 

頑張ると言っても、少し魔法を唱えるだけなんだけどな・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「では、簡単な物を使いますね」

「お願いします」

 

場所は寂れた広場、まだ街に来て間もない光明を先導したゆんゆんは、人の通らない路地裏をつたい、全く人気のない広場へと来ていた。一応光明は男なんだが。まぁ、レベル差もあるだろうし、ゆんゆんは体術の使えない光明より強いのかもしれない。

 

ふー、と息を吐き、キリッと表情を切り替えたゆんゆんの瞳は、赤く染っていた。

 

(・・・あぁ、だから『紅』魔族か。炎が得意なのかと思ってた)

 

「えぇと、詠唱は短縮していいんでしたよね?」

「はい、『詠唱短縮』も、出来れば覚えたいので」

 

ゆんゆんに、自分の初期スキルポイントが多い事を説明すると、持っているスキルの殆どを教えると言う話になった。

本来魔法は小っ恥ずかしい長い呪文を唱えなければならない。そしてそれを削ろうとすると消費する魔力が上がったり、威力が減少したりとデメリットがあるので、それを改善する為に魔法使いはパッシブスキルという常時発動のスキルを幾つも所持している。

 

調べた所によると

『高速詠唱』

『威力向上』

『消費魔力軽減』

なんかが代表的なものらしい。

 

そしてこのゆんゆんは『消費魔力軽減』と、『高速詠唱』の上位互換である『詠唱短縮』を覚えていると言うのだ。最高かよ

 

(あの程度で職業の技術を色々教えてくれるなんてとんだお人好しだな。絶対に食い物にされるタイプだ。というか、俺が食い物にしてるしな)

 

・・・そう考えると、いくら年下が面倒だからと言って、この世間知らずのお嬢さんを放置していいものなのかと思ってしまう。

 

「うぅん・・・」

「・・・?ど、どうしたんですか?魔法打ちますよ?」

「あ、お願いします」

 

行きます、そういった彼女の身体をオレンジっぽい光が覆う。そして直ぐに。

 

「ストーンエッジ!」

 

ズズっ!

 

ゆんゆんが魔法名を唱えると、前方の地面が突如浮き上がり、土が変形して尖った杭の形になった。

 

つんつんと触ってみると、元が土とは思えない程度に硬い。勢いもあったし、殺傷能力は充分ありそうだ。

 

「コレは・・・凄いですね。足元からだと見えないし、中々強そうに見えます」

「ま、魔法を唱えてから少し時間がかかるので、言葉が分かっていたら多分避けられますけどね・・・す、すみません。私が『詠唱破棄』を持ってたら、もっとお役に立てたのに・・・」

 

・・・何故そこで謝るんだろう・・・。卑屈さ加減といいお人好し加減といい、今までにあった事が無い人種だ。この世界にはこういう人が多いんだろうか、なら過ごしやすいかもしれない。

 

「いえ、コレでも充分以上に助かります。ありがとうございます。これでマトモに戦えそうです」

 

冒険者カードに浮かんだスキルをポチポチとタップして、俺は中級魔法を習得した。何が変わったという実感は無いが、俺はもう魔法が使えるはずだ。

 

なかなかに嬉しい

 

「少し、使ってみます」

「は、はい。頑張って下さい」

 

ゆんゆんを見習ってキリッとしてみると、なんだか身体が暑くなってきたような気がした。手を前に構え、杭を出す場所をイメージする。そして、ストーンエッジと唱えた。

 

・・・ズッ!

 

ゆんゆんの作り出した杭の近くに、半分ほどのサイズの杭が出てきた。それと同時に、身体を巡っていた熱が少し冷えた様な感覚もした。

 

「す、凄いですね、魔法使いじゃないのに、いきなりこんなサイズのストーンエッジが出せるなんて」

 

嫌味かな?触ってみると、充分な硬さはあると思うのだがいささか柔らかいような気もする。土属性の魔法は、まだ実用性が無さそうだ。

 

「いや、本当に助かりました。収入が安定したらまた、うおっ」

 

お礼に行きますと繋げようとしたのだが、振り返ると肘打ちをしかねない程近距離にゆんゆんが接近していた。

 

「ど、どうしました?」

「あ、い、いや。ちょっとその・・・あにょ、いたっ」

 

ぼっち気質らしく、今までもちょくちょくどもっていたが今回は比じゃない。何かやらかしたか?と思い返すも心当たりは無かった。

 

「あ、あの、も、もし、ですけど、その・・・よかったら・・・。お、お祝いでもしませんか!?」

 

・・・

 

「なんの?」



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病ん病ん

ゆんゆんは、拗らせたらこれくらいやりそうだなぁって。


ゆんゆんは、どうにも俺の中級魔法習得祝いとしてギルドでお祝いをしようとしているらしい。ちょっと意味が分からない。

 

俺のアドバイスへのお礼はスキルを教える事で終わった話のハズ。態々その後お祝いまでする理由は無い。そもそも初対面同士が、しかも人付き合いが苦手な2人が一緒に飲んだ所で楽しくは無いと思うんだが。

 

「き、気持ちは嬉しいんですけど・・・うっ」

 

うるうる

 

そういう音が聞こえてきそうな程に潤んだ瞳。かなりの勇気を出して言った言葉らしい。

 

(もしかして、俺が怖気付かずに、とか言ったから・・・?)

 

そんな所で勇気を出さなくてもいいのだが。しかし、コレを断るのはそれなりに度胸が要るな。向こうはそう思っていないかもしれないが、俺のアドバイスは正直スキルの対価として足りていない物だったので後ろめたい気持ちがあるからだ。

 

パーティの募集文にも『ご飯を一緒に食べてくれる方』なんて書いていたし、誰かとご飯を食べてみたいのだろう・・・不憫だ。

 

(・・・俺実は薄幸少女が好きなんだよな。現実だから尻込みしてたけど)

 

光明は折角天下無双の力を得れる機会に『どうすれば多くの人助けに繋がるのか』を考える男だ。基本的には優しい(?)男である。タブンネ

 

「まぁ、中級魔法以外にも教えて貰った恩があるので、お言葉に甘えましょうかね・・・」

「!ほ、ホントですか!(や、やった!家族以外と一緒にご飯を食べるなんて、久しぶりだなぁ・・・グスッ)」

 

潤んだ瞳を通り越して、既に泣き掛けている。そんなに嬉しいのか・・・不憫だ。

 

「(よ、よし。この機会を逃さないように、あの作戦を・・・!)」

「ん?何か言いました?」

 

イ、イエナニモッ。変に焦りを含む声、何か聞かれたくないことを呟いたのか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そ、それではコウメイさんの中級魔法習得をお祝いして、かんぱい」

「かんぱーい・・・」

 

侘しいお祝いである。特にめでたいとは思っていない上に2人、盛り上がりは望めないだろう。

 

手元にはゆんゆんに『お、美味しいですよ!飲んだ事ないけど・・・』と勝手に注文されたお酒が。ネロイド?と呼ばれていた。なんで勝手にお酒を頼むのか、コレガワカラナイ。

広場を出てから、随分と積極性が増したような気がする。そのやる気は俺にではなく、パーティメンバーの獲得に使って欲しいものだが。

 

まぁ、お酒については問題ないだろう。この世界の法律では既に飲んでも問題ない様だし、地球でもこっそり飲んだ事はある。家系的にも強いらしいのでそこまで心配はしていない。

 

グイッ

 

味的には・・・甘みがある。癖のない甘酒みたいな感じだな。普通だ。つまみによく分からない肉やチーズの何かを食べたりして腹を膨らませた。そう言えばこちらの世界に来てからまだ何も食べていなかった。

 

(と言うか、まだ1日目何だよな・・・)

 

随分と濃い一日を過ごした気がする。地球では、平日は学校だし、休日も一日スマホをつついているだけで過ぎていく日々だった。

 

(あ、そう言えばスマホ無いんだ。俺大丈夫かな)

 

光明はかなりのネット中毒者だ。ゲームも好きだったし、ネットで小説を読む事も多かった。

 

まぁ仕方ない、と問題を先送りにした所で、ゆんゆんが声を掛けてきた。最初はお互いの自己紹介なんかの当たり障りのない話題だったが、少し困る物も。

 

「あ、あの、コウメイさんって、なんで冒険者になろうと思ったんですか・・・?」

(あー、どう答えりゃいいんだろうな)

 

女神に世界を頼まれたので、とは答えられない。となると適当に言うしか無いのだが・・・

 

「えぇと、まぁ、男によくある理由ですよ。魔物とかとカッコよく戦う冒険者って言う職業に憧れたからです」

「な、なるほど・・・」

 

勿論微塵も憧れていない。上手く誤魔化せた所で、コッチからも質問を投げてみる。

 

「ゆんゆんさんは?」

「ふぇ?」

 

ふぇ?って、クソっ可愛いなおい。3次元に呑まれる・・・

 

「冒険者になった理由ですよ」

「あ、あぁ。私はその、とあるライバルを見返したくて・・・」

「ライバル?」

 

酷なことを言うが、この子とそんな関係性の人間が居るとは思わなかった。

それからゆんゆんは、そのライバルとの馴れ初めを話し始める。

 

里の学校で、何時も相手は1番、自分は2番だった事。

 

族長の娘として負けていられないと勝負を挑んでも、毎回マトモに戦ってくれない事

 

お弁当を毎日食べられていた事。

 

「・・・それは、ライバルなのかな?」

「ら、ライバルですよ・・・多分」

 

自分で言っていて自信を無くしたらしい。しかし、その子の事を話している間の顔は今日の中で1番落ち着いていて、信頼しているんだろうなと感じさせた。

 

(じゃあ、その子との関係を改善させれば、友達もGET出来てこの子も助かりそうだな)

 

話を聞く限り、強かな子のようだし。

 

「そ、そんな事より、もっと飲みませんか?その・・・めでたい日ですしググッと、さぁもう1杯」

「え、いや、・・・うん、ありがとうございます」

 

少し考え事をしている間に、目の前はお酒らしき物でいっぱいになっていた。おかしいな、俺は1つも頼んでないのに・・・。

 

さぁさぁと勧められるままにグイグイと飲んでいくが、そんなに酔っている感覚は無い。身体は熱くなっているが、クラっとしたりと言うものは感じなかった。

 

「(お、おかしいわ。戦士の人でも、これくらい飲んだらベロンベロンになっていたのに・・・。こうなれば、奥の手の・・・)」

 

「さ、流石にお酒はもういいよ、お腹が苦しくなってきた」

 

食い物もロクに入っていないのに、水分だけで腹が膨れてしまった。お腹は苦しいが食べたという感覚はないので腹は減っている。誤算だった・・・

 

「そ、そうですね(えぇい、怖気付いてちゃダメよゆんゆん!『スリープ!』)」

 

じゃあ、そろそろお暇します。と、言おうとした瞬間、いきなり視界が歪んだ。

 

(あれ、ね、む・・・)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

チュンチュン・・・

 

「ん・・・?あれ、俺いつの間に・・・」

 

ぼうっとする頭を働かせ、記憶を掘り起こす。

 

(中級魔法教えて貰って、お祝いつって酒飲んで・・・あれ?俺、酔って寝たのか・・・?)

 

最低じゃないか。酔っ払って寝落ちとか・・・。てか、ここ何処だ。

 

どこかの一室みたいだ、俺はベッドで寝ていた。

 

「記憶に無いけど、宿を取ったのか。馬小屋で我慢するつもりだったんだけど・・・って、俺服脱いでるじゃん」

 

偶に、寝苦しい時は抜いじゃうんだよな。えぇと、服は何処だろうか・・・

と、部屋を見渡すと、何やら違和感のある物を見つけた。ベッドの横に膨らんだ毛布が落ちていたのだ。

 

「あぁ、また布団蹴ったのか。俺寝相悪いからな・・・」

 

それにしても、この部屋を取るのに幾ら掛かったんだろう・・・安くても1万らしいし、いい所だから3万とか・・・?

なんて事を考えていた俺を、予想外の事態が襲う。

一息に毛布を取り去り、とりあえず一眠りでも・・・えっ?

 

「・・・えっ・・・!?」

 

毛布の下に隠れていたのは、人間だった。ゆんゆんだった。

 

「アイエエエ!?ユンユン!?ユユンユンナンデ!?」

「ん、・・・はれ?なんでこーめーさんが・・・、!(そ、そうだ、私が運んだんだった)」

 

待て!そうなると俺は、酒に酔って正気を失った挙句年下の女の子の家に転がり込んで家主を床で寝かせたクズという事になるぞ!というかなんで俺は裸なんだ!?寝苦しいからじゃなくて・・・、ヤッタノカ・・・?

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

光明は後にこう語る

『あの日、俺は命を絶とうと思った』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

衝動的に壁に頭を打ち付け始めた俺はゆんゆんの手によって止められた。女の子の細腕に抵抗も出来なかった俺のプライドはもうズタボロだ。

それからゆんゆんは俺に昨日の事の顛末を話す。

 

俺は食事の最中に急に倒れてしまった事

置いていく訳にも行かないので、ひとまず宿まで運んだ事

服は食べ物で汚れてしまったので、自分が脱がせた事

 

(・・・やってない!最高の気分だ!)

 

俺は人としての最後の一線を越えていなかった!よくやったぞ俺、しかしもう酒は飲まない。

 

洗濯されていた服を着終えた俺は、ゆんゆん、いやゆんゆんさんへと向き直り深深と頭を下げ謝った。

 

「自分で飲んでおきながら酔っ払ってしまって本当に申し訳ございません。介抱して下さり、本当に助かりました。コレはほんの少しばかりの気持ちです。・・・すみませんでしたっ!」

 

俺は服のポケットから小分けした財布用の袋をベッドへと並べ、脱兎のごとく逃げ出した。ヤッテナカッタとしても、ゆんゆんさんの前に立つと胸が痛くなるからだ。

 

「い、いえ。ドンドンお酒を飲ませた私が1番悪いので・・・(ホントは無理やり眠らせただけだし・・・)って、あれっ!?」



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孔明に罠

自分が主人公の作品を書くのが恥ずかしくなってきました


何をするにも金が必要だ。ゆんゆんさんに殆どの財産を渡したので、5000エリスしか残っていない。道に迷いながらもギルドに辿り着いた俺は、掲示板を眺める。昨日ならどうするか悩んでいた所だが、今の俺には魔法がある。クリスさんに習った盗賊スキルも合わせれば、少しはやれるんじゃないだろうか。幸い、早い時間に寝たおかげで今は朝早くだ。依頼も多く残っていた。

 

『ジャイアントトード3匹の討伐』

 

(受けるか、期限も3日あるし、一日一体倒せればどうにか)

 

その依頼表を剥がし、カウンターへと持っていく。昨日何かと世話になった受付の人は居なかったので、1番近いカウンターに向かった。

 

「すみません、この依頼を受けたいのですが」

「はい、少しお待ち下さい」

 

職員が手元の資料を捲り、重井 光明と言う冒険者がこの依頼を受けたという事を書き記す。と、ふと職員の手が止まった。

 

「申し訳ございません、|パーティリーダーのゆんゆんさんはいらっしゃいますか?《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》リーダーに任命された人、若しくはリーダーから許可を貰った人でないと依頼は受けられないんですよ」

「・・・えっ、と。パーティリーダー?」

 

どういう・・・あぁ、そう言えば受付の人にはパーティに入りたいって事を伝えてたな。なら、俺がパーティに入ったと勘違い・・・してるのか?

 

「えぇと、すみません。自分は昨日受付でパーティに加入したいと手続きしたんですが、結局パーティには入れなかったんですよ。報告が遅れました」

 

報告しないと、こういう間違いが起きるんだな。知らなかった。そう納得した俺とは違い、受付嬢は怪訝な表情をする。

 

「?いえ、資料によるとゆんゆんさんが昨夜、コウメイさんとのパーティ結成の手続きをされたようですが」

 

???

 

どういう事だ?そんな記憶はさっぱり・・・ハッ!

 

酔っ払ってる間に・・・そういう感じになったのか!やらかしたな俺!

パーティ入るつもり無かったのに・・・そんなに女の子のパーティに入りたかったのか酔ってる俺・・・。

 

「えぇっと、そのパーティ登録って解消出来たりは・・・」

「無理ですね、リーダーと抜けるメンバーの両方が揃っていないと」

 

( ◜ ࿀ ◝ )

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

酒なんて飲むもんじゃないなと再確認した俺は、ゆんゆんさんを探しにギルドから出た。逃げ出して来たのに直ぐに戻るのは気恥ずかしいが、仕事が出来なければ生きていけない。まだ街のほとんどに見覚えが無いことを逆に活かし、出てきた宿へと戻る事に成功した。と

 

「あ、ゆんゆんさん」

「こ、コウメイさん!戻って来てくれたんですね!」

 

丁度、宿を出たゆんゆんさんと出会う事が出来た、声を掛けるまでは何処か落ち込んだ様子だったが、こちらの存在に気がつくと一気に元気になった。

まぁ、向こうからすれば

長年ぼっちだったけど遂にパーティメンバーが・・・!って感じだったのに逃げられたという事だし、申し訳ない事をしたな。

 

「ゆんゆんさん、先程ギルドに行ってきたんですが」

 

ビクゥ!

 

「すみませんでした、昨夜の記憶が飛んでいて。パーティを組んだ事を忘れてたみたいです」

「イ、イエ、コウメイサンハワルクナイデスヨ・・・(私が勝手にやったんだし・・・)」

 

・・・?随分とビクビクとしているみたいだ。もしかすると、また逃げられてしまうかもと不安がっているのかもしれない。

 

「安心して下さい。正直全く覚えていませんが、1度決めたからにはもう逃げません」

 

そう言えば安心して貰えるかと思ったが、どうにも緊張が取れない様子。

 

(まぁ、そう簡単に信用出来るものじゃないか)

 

入るつもりは無かったが、もう入ってしまったのだから仕方ない。強力なアークウィザードの力を貸してもらえるんだし、結果オーライだと思っておこう。ゆんゆんさんは、悪い人間では無いだろうし。

 

「そ、その、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

「えぇと、若輩者ですが。よろしくお願いします」

 

こうして、正式にパーティが結成された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(え、えへ、えへへへ。私にも遂にパーティメンバーが・・・!)

 

相手はオモイ コウメイさん。17歳らしい。初めに声を掛けられた時は、その、目が少し怖くて萎縮しちゃってたけど、話してみるとすごく優しい人だった。名前を聞いても、少し驚いただけで全然笑わなかったし、見ず知らずの私の為にアドバイスまでしてくれた。まぁ、それは魔法を習うって言う目的もあったらしいから少し残念だったけど・・・。

 

年下の私にも敬語で丁寧に接してくれて・・・人付き合いが上手く出来ない私の事をからかったりもせず、優しくしてくれる人はコウメイさんが初めてだった。

 

コウメイさんの『怖気付かなくていい』って言葉でなんだか気が楽になった私は、少し勇気を出してみる事にした。

まだ会って間もなかったけど、人生で初めて男の人を食事に誘ったし、食事の間も普段より頑張って会話をした。

 

(・・・ホントは、普通にパーティに誘うつもりだったんだけど・・・)

 

やっぱりそこまでは勇気が出なくて、2つ目に考えていた『お酒を飲ませてなし崩し的にパーティを組もう作戦』を発動する事になった。

でも、それも上手くいかなくて、焦った私は魔法に手を出した。

 

(あんなにお酒に強いなんて、予想外だったわ・・・)

 

やってる事が悪い事だって言うのは分かってたけど、コウメイさんなら許してくれる気がして・・・。思わずスリープを唱えてしまったのだ。

コウメイさんはレベル1の冒険者、魔法抵抗も弱く一瞬で意識を失い机に頭を打ち付けた。申し訳気持ちでいっぱいだったけど、今の機会を逃してしまえばもう二度と勇気が出てこなくなるのが何となく分かったので、つい。

 

そのあとはカウンターでパーティを結成した事を伝え、眠っているコウメイをどうにか宿まで運び、ベッドへと寝かせた。上着は、汚れていたのであまり見ないようにしながら脱がせて魔法で洗濯した。

 

その後寝ようと思っても、同じ部屋に男の人が居るって意識しちゃうと目が冴えちゃって、暫くは寝れなかった。

 

朝起きた時は混乱したけど、私よりも混乱したコウメイさんがいたから直ぐに落ち着けた。コウメイさんからすれば何が何だかだもんね、申し訳ないと思いながらも嘘の説明をして、さぁ最後。パーティの話をしようと思った瞬間にコウメイさんは部屋を出ていってしまった。

悲しむと同時に、コウメイさんの置いていったお金を見て、私は酷いことをしてしまったのだと理解した。

心優しいコウメイさんなら、お酒に酔って正気を失ったとなれば自分に責任を感じてしまうだろう。何も起きていない、と言うのは問題じゃない、何が起きてしまうかもという事が、コウメイさんにとっては問題なんだ。

 

その時私は、もちろん反省してたけどそれ以上にコウメイさんの優しさが嬉しく思った、やっぱりコウメイさんは私の事を大事にしてくれる・・・♡

 

ゆんゆん14歳。里で、騙されていると分かっていてもお金を貸してしまうような彼女。

 

チョロ紅魔族だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「リーダーはゆんゆんさんなので、従いますよ。まぁ、出来れば簡単なもので慣れていきたいんですけども・・・」

「ぜ、全然大丈夫ですよ!!で、でも、そのままじゃ危険だと思うので、装備を買いに行きませんか?」

 

和解?した後、これからどうするかという話になったのだが。ゆんゆんさんはそんなことを言い始めた。

 

しかしながら俺は今、ほぼ無一文である。

 

「あ、それは、さっきのお金を返せば・・・」

「いえ、それはお詫びの気持ちなので、受け取って下さい」

 

しかし、無装備は危険だというのももっともな意見である。

 

・・・

 

「そ、それなら、私がもともと持っているところからお貸しします・・・よ?あんまり変わらないかもしれませんけど・・・」

 

14歳、中学生の女の子から武器を買うお金を借りる高校三年生の男。ゴミじゃん。

それ以外に選択肢が無いことは分かっているが・・・ぬぅ・・・。

 

「・・・お願い、します・・・」

「か、返さなくてm「いや、直ぐにでも返します」は、はい」

 

俺は、『わりー、100円貸してくんない?』と、貸してと言いつつも返すつもりが微塵もないカスとは違うんだ。変に誤魔化さず最初から頂戴って言えよウザいから。

そんなことを言えば面倒なことになるから抑え込むのだが。

 

そういう感じで、俺たちは武具を扱っている店へと向かった。



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