聖杯少女と調律師 (風剣)
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プロローグ

 獰猛な吼え声が響き渡る。

 黄昏時、あるいは逢魔が時。極東の地にて古来より妖の者が現れ、地上を跋扈していくと伝わる時間が訪れ、街もまた薄闇に包まれようとする中。

 人気の存在しない林の中を駆ける、複数の影があった。

 

「よぉっし、この辺りで良いんじゃない!? まさか撒いたってことはないだろうし……」

「うん、確かに追ってきてる……けれど、これは」

「ひっ! ら、ライオン!?」

「いやこれキメラよ! いや安心したわ、とてもじゃないけれどこんなのを街中で解き放たれたら対応しきれなかったかもしれないしね……」

 

 

『――ほう、ここでなら対処できるとでも言いたげだね』

 

 

「「「!」」」

 

 軽い隠蔽を施した上での飛行をも駆使し移動していた少女たち。各々の得物を構えながら話し合う彼女たちに、声をかけて歩み寄る影があった。

 燃え盛る炎の如く膨れ上がった鬣、ギラギラと輝く眼光。鱗と甲殻にその胴を包み尾の蛇を揺らす獅子は、おおよそ尋常な生物には見えはしない。

 神話においてはヘラクレスの振るう武具をも受け止めたという毛皮に身を包む獣――その肩に止まったカラスの姿を見て取ったクロエが、忌々し気な様子を隠しもせずに舌を打った。

 

「ペットに戦わせておいて自分は高見の見物とは、また随分と慎重なことじゃない。女子中学生相手にそんなに及び腰になっちゃって恥ずかしくないの?」

 

『これまでの君たちの戦果を侮るつもりはないと言う訳だ。今は下調べと前準備の段階だとも』

 

 クロエの挑発にも乗らず飄々と嘯いて。複数の猛獣の因子を重ね合わされた獣が唸り声をあげたのに、使い魔のカラスがばさばさと羽ばたいて行く。

 

『流石に古代存在した本物の幻想種には到底及ぶものではないが、時計塔の迷宮に棲まう怪物にも迫る傑作の一体だ、使い潰すのには惜しいが――出し惜しみして勝てる難易度ではないことは保証しておこう。楽しんでくれたまえよ』

 

「――くる」

「ええい動物愛護法に従え──!」

「そんなこと言ってる場合じゃないわよ、構えなさい!」

 

 ヤケクソ気味に叫んだイリヤにクロエの叱咤が飛び少女たちが構えるなか異形の獣もまたその柔らかな血肉を貪らんと牙を剥き出しにして唸る。林の中、じりじりと間合いを測り合う4つの影。

 キメラの咆哮を皮切りに――魔法少女たちと魔術師の操る魔獣が、冬木円蔵山の林木の中にて激突した。

 

 

 

 

 

「――んっ」

 

 美優を、聖杯を巡り繰り広げられていたエインズワースとの戦いは終結を迎えた。

 美優は取り戻され、パンドラは眠りにつき、エインズワースの始祖の妄執もまた潰えて。

 元の世界へと、6人で戻り――イリヤたちは、()()()になっていた。

 

「……ん、ふぅ」

 

 冬木市、新都。日も沈むにつれ商店が続々とシャッターを閉じては飲食店の明かりが灯り、各々の暮らしがスイッチを切り替えていくなか。路地裏で、荒い息を吐いて呼吸を整える少女の影があった。

 スカートの一部を裂かれた魔法少女の衣装――桃色の光粒と共にそれが解れ、穂群原学園中等部の制服が露わになる。

 ──1年と数ヶ月前。初めて魔法少女になったときと比べやや女性らしい輪郭を帯びた身体をくの字に折り曲げて。

 呼吸のペースを維持し、調子を整えようとするが――どうにも、上手くいかない。白磁の肌に熱を灯し、目を潤ませるイリヤは――狂おしいまでに熱くなった身体の昂ぶりを、自覚せざるを得なかった。

 不意にポケットの中で振動した携帯端末を開くと、慣れ親しんだ家族からのメッセージが届いていた。

 

『セラやお兄ちゃんには帰りは遅くなるって伝えておいたわよー♪ 魔術師との戦闘前に念のため声はかけてたし朝帰りになっても大丈夫だからね♡』

 

「う、ぅぅう。クロぉ」

 

 顔を真っ赤にして妹を呪う。

 これから済ませないといけないことに羞恥を覚えないでもなかった、が――それでも、背に腹は代えられないのは事実だった。

 

 立ち上がって見上げるのは、限られた住民の住まう建物。一人の青年が住まう廃れた外観のアパートであった、が。彼女は、彼女と同じ『利用客』は、そこが見た目にそぐわぬ確かな建築技術を用いられた快適な住居であることを知っている。

 

 これは必要に迫られてのことだ。胸の奥の昂ぶりも、胎の奥が苦し気に疼くのも魔法少女としての力を行使した副作用に過ぎない。だから身内で時折揶揄されるような感情などが存在する筈はなくて。

 断じて、そう断じて――私は、期待なんか、していな、

 

 

 

 

 

 

「お、来たかお疲れさん」

 

 特に事前から来訪の連絡があった訳でもないが、客の動向はある程度把握していた。登録されたIDに反応した自動扉が来客を告げる音声とともに開かれるのに応じ廊下に顔を出して端的に声をかけてやると、立ち竦んでいた少女がびくりと肩を震えさせた。

 

「……こんばんは、暮人くん」

 

「いらっしゃい。今回はまだ軽めの案件だったにせよまあ疲れもあるだろう……? 調律が終わったらゆっくり休んでいくといい」

 

「軽め……あのライオンと戦うのが、軽め……?」

 

 バイタルを確認する限りでは、今日彼女たちを襲撃した魔術師の操るキメラを魔力砲で消し飛ばすのに勢いよく魔力を回した筈だった。

 そのせいか息は全力疾走でもした後のように乱れ、顔色も平時のそれと比べだいぶ赤くなっている。一瞥しただけでは確認できなかったが、あの分ではすっかり濡れてしまっているだろう。

 多少際どいラインではあるものの、学校で身内やクラスメイトに対して見せてるような様子を維持するのに随分と頑張ってるなあと苦笑する。調律を始めるからその前に水分でも補給しておくといいと伝えると、イリヤはぎこちなく頷いてからキッチンに向かっていった。

 

「……さて、と」

 

 既に準備は終わっていた。寝室に乱雑に放られていた調律用の薬剤を注入するのに使った空の注射器や機材を片付け、使い終わったものを白いトレイに仕分ける。

 開きっぱなしにしていた扉から来客の様子を覗くと、自分を待っていたのだろうイリヤが部屋のすぐ近くで所在なさげに佇んでいた。暮人も通う学園の制服を身に纏う白の少女が、彼を認めるなり目を泳がせ、羞恥に耳を真っ赤にしてうつむくのに――躊躇うことなく、その細腕を掴んで寝室に引っ張り込む。

 

「――あ」

「ん、っ。うっ、んむ――――は。ふぁ」

「んんっ、そこ、は。ひゃっ、んむっ……!」

 

 柔らかな唇に口づけを落とし、舌を絡め合わせながら。初めて会った頃と比べても着実に成長しつつある身体をまさぐって中等部の制服のボタンを次々と外していく。

 

「ふぇ、待ってぬぬぬ脱がすのは待って! ……さ、先にシャワー浴びせてくれないと、汗が――んむっ」

「ん……、俺はこのままで構わないぞ、どうせこれからもっと汗を流すんだし、君の匂いも……うん、悪くない」

「や、ぁああああ」

 

 腰を片手でまさぐりスカートのファスナーを開きながら、ブレザーを脱がせて露わになった華奢な腕をもう片方の腕で持ち上げた。腋に顔を寄せわざとらしく匂いを嗅ぎだすと涙目になっていやいやと悶えだすのに、苦笑しながら腰に回した手で少女の身体を引き寄せる。紅い瞳を潤ませて恨みがまし気に睨みつけてくるイリヤに嗜虐心がそそられるのを自覚しながらも、これ以上の顰蹙を買う前に用だけでも手早く済ませることにする。

 衣擦れの音。するりとスカートを腰から落とせば恥じらうように頬を染めて見ないでと絞り出すが、知ったことではないとばかりに露わになった肌を慣れた手つきで触られるのに翻弄される。脱がしていった制服を汚さないようにと伸ばした爪先でスカートやシャツを寝室の端にどかしたのはせめてものの配慮だった。

 制服の上からでもその膨らみを主張していた乳房を揉みしだきながら、ショーツの中に滑り込ませた指で濡れぼそった秘部を刺激して少女の調子を確認していく。

 

「ふぁ、や、ぁ……!」

「ん、すっかり濡れてるね、準備は万端だ」

「い、言わないでぇ……ん、あ……!」

 

 既に発情していたのもあってか、軽く愛撫をしていれば絶頂までさほどかかりはしなかった。弱いところを的確に擦り上げられるのに反応し愛液を溢れさせてきゅっと締まる膣口に指先が締めつけられるのを堪能しつつ、身体を震わせのけぞるイリヤを受け止めながら腕の中の華奢な少女をベッドに押し倒す。

 そのまま調律用の術式を確認、自身もまた衣服を脱ぎすて、潤んだ瞳に熱を灯らせてこちらを見上げるイリヤと目を合わせ――ずぷりと、粘質な音をたてて少女を貫いた。

 

「んっ……! あっ、ひぁっ――いィ、ひっ……しょこ、はあ!」

「あぁ、これは本当に――たまらない、な!」

 

 可愛らしい薄桃色のショーツをずらして挿入しながら、下着だけになった少女の下腹部に浮かび上がった喰い合う双蛇(ウロボロス)の呪的刻印を見やる。聖杯化(・・・)に対応すべく刻んだ補助術式による催淫作用の助けもあったとはいえ、膣壁を抉る肉棒を逃がさないとばかりに捕らえ蠢き奥へ奥へ誘い込まんとする蜜壺の様子は名器の一言に尽きた。そういう稼業だ、『調律』にあたって抱いた少女は指の数では数え切れない、そのなかにはホムンクルスもいたが……理性を炙る征服感と快楽は比べ物にならない。

 腰を打ちつける度に嬌声をあげる少女の柔肌に幾度となく唇を落としながら、何度交わろうとも飽きさせてくれることのないイリヤの極上の肢体に感嘆を漏らした。

 正直なところ、気を抜いてしまえば即座に射精してしまいそうなところだったが――仕事を果たす前に快楽に自分が呑まれてしまっては、調律師としての意味がない。術式を駆動――、性的接触を媒介とした魔術回路への、否イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという存在そのものに対する干渉を開始する。

 

「あっ……! やあ、あっ。わたしの、なかにぃ……!?」

 

「いちいちエロいな本当に……」

 

 イリヤと暮人の身体に浮かび上がった刻印。術式を起動し繋がる(・・・)と同時、電撃にでも撃たれたかのように少女の身体が跳ねびくびくと痙攣する。ズレ落ちたブラからまろびでるそそりたった乳頭が身体の動きに合わせ震え、大きめの絶頂に達したのか小水混じりの愛液が接合部を濡らした。肢体を震わせて『接続』の衝撃に打ちのめされる姿につい言葉を洩らす。

 まあ、自身の『中身』に踏み入られるのに慣れてもらっても困るのだが──万一これが病みつきになってしまわれてしまうと扱いにも困る──拒絶反応をされないのは僥侯だった。

 

 直に交わるという行いを記号に発動される魔術。聖杯としての方向に傾き過ぎた少女を人の位階に引き戻す――引きずり下ろす調律魔術。

 

「っ……」

「あ、あ、ぁ――」

 

 寝台に仕込まれた補助礼装が動きを止めたことを察する。

 腕の中で華奢な身体を震わせたイリヤを抱きしめ、組み伏せ、指先でその紅い瞳を開いて瞳孔を確認した。徐々に発光の収まる少女の身体に浮かんだ下腹部や胸の中心の刻印に触れることで経過を把握し――過去にこなした依頼とは比べ物にならないくらいの集中力と魔力を削っていかれた苦悶を押し殺し息を吐く。

 

「お、終わぁ――ったぁ!?」

 

 ズン!

 

「いつもの調律はもう終わったから。これから1時間……30分程度でいいか。その後は風呂にでも入って念入りに洗おうね……っと」

 

「やぁ、まっ。不意打ち、きんしぃ! やっ、まっ待って……! ~~~~~!!」

 

「もう達したか、ちょっと早い気もするけどそれもしょうがないか……。悪いがこっちも生殺しされて限界なんだ、待ってなんかやれないよ」

 

 突き入れては腰を引き、再度叩きつける。

 嬌声と水音。自身の発する淫猥な響きが少女の耳に届くように激しい抽挿を繰り返し、亀頭に弱点を突き上げられた少女が締めを強くするのに合わせ精を吐き出す。

 

「また、なかぁ……! やっ、あっ……!」

 

「本当に搾り取ってくるよな……何なんだ一体。抱くたびにエロくなってない……?」

 

「そんな、こと。な――ひぃん! また、おっきく――」

 

 調律の最中のそれにも負けず劣らずの乱れ具合に責めてる筈のこちらの方がおかしくなりそうだと暮人が笑みを引き攣らせる。クロエや美遊といい聖杯三人娘は男を惹きつける魔性としての完成度は凄まじいものだった。

 雛が餌を欲しがるように顔を寄せたイリヤの唇を塞ぎ、舌を絡め合わせる。乳房を揉む手のなかで自己主張する乳首を爪弾いては可愛らしく喘ぐのに薄く嗤いそのまま口を開いて胸元を貪った。狂おし気に腰を振る卑猥な雌の尻をわしづかみそのまま中に白濁をぶちまけて――そのまま、少女を翻弄するように愛撫と抽挿を続ける。

 

「。っ、あっく……ひや、あっ、ぃ……!」

 

「あっ……!や、また――今すっちゃ……!」

 

「まって、お願いまって――あっっ……~~~~~っっ、うぅ……」

 

 愛撫と交合を重ね、度重なる絶頂に息も絶え絶えになって割り開かれた脚を精と愛液で濡らすイリヤから吐精したばかりの剛直を引き抜いて。息を荒げながら、ベッドに仕込んだ礼装を引っ張り出して片付けていく暮人は思わずといったように苦笑する。

 多少は自重しないと病みつきになりかねないなと呟いて――軽く首を振り、湯でも沸かすかと寝室をあとにした。

 




芥子菜 暮人(からしな くれと)
エインズワーズ戦で聖杯としての力を使いすぎたイリヤたちを人間寄りに調整するため訪れた調律師の少年。薬の副作用で年若い容姿で固定されているのをいいことにイリヤたちと同じ学校に通う。だいたい20代後半。ヤク厨。


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微睡みの縁

JCイリヤの体格はだいたい戦乱カグラコラボくらいのをイメージ


 夢を、見ていた。

 

 木々に囲まれた屋敷。窓から覗くことのできる庭は丁寧に管理され育てられているのだろう花々や草木で色鮮やかに彩られていて。

 自分は、『選ばれなかった』妹や弟がその庭で駆け回っているのを寝室から眺めていた。

 

(──あれ……?)

 

 羨ましい、と思わないのは。既にこの環境に馴染んできていることもあるのだろうとぼんやりしながら考える。悪く言えば毒されているということなのだろう、が──自分が一族の刻印や技術を継ぐ当主として選ばれるだろうことは物心ついた頃から薄々と理解していたことである。

 楽しいと思えることよりも苦しい時間の方が長いのも確かだが、それでもまだ受け入れることのできる範囲だった。

 

 まだ、耐えられる範囲だった。

 

(夢? でもこれは、違う……私のじゃ、ない……?)

 

 見覚えのない屋敷と記憶の中で。少女は部屋の主である幾つもの点滴に繋がれた、少女のよく知るそれと比べあまりにも顔色の悪い少年の顔をみつめて。

 

 いつものように邪悪に、いきいきと、瞳を爛々と欲望で耀かせる彼と目があった。

 

「暮人、くん……?」

「起きろー、イリヤ。朝だぞー」

「えっ……ひゃあ!?」

 

 身体を穿つ衝撃。それで、意識が一気に現実に引き戻された。

 目の前にあったのは、唇がいまにも重なりそうなくらいに密着し自分の身体の上に覆い被さって少女を犯す少年の顔、で――

 

「やあっ、えっ、な。なんっ……⁉ ひぅ!」

 

 無防備な胎に強烈な突き上げを受けたイリヤの身体が雫を散らし跳ねる。訳もわからぬまま浴びせられる衝撃と快感。のしかかってくる暮人の掌に最近は林檎だどうとかとクロエにも揶揄されるくらいに実った双丘を捏ね上げられるように揉まれるのに肩を震わせながら、紅い瞳を蕩けさせて衝撃の元である下腹部を確認する。

 溢れた愛液でシーツを濡らして。一目で固く充血し膨張してるとわかる肉棒に乙女の花園が深々と穿たれているのを目の当たりにして、もぉぉ……! と熱くなった顔を両手を覆う。

 隠すな隠すなと伸ばされた手に顔を覆った手を強引に掴まれて引き剥がされる。

 

「やぁあ……! 手を、離してよぉ」

「恥ずかしいのはわかるが、まあ待ってくれ。じっくり顔を見たい」

「それがダメだから、言っ、~~っ、てるの、にぃ……っ! ぉ、奥ぐりぐりするの。やめ、イッちゃ、こんな朝から……!」

「やめない」

 

 せめてもの抵抗とばかりに再度顔を隠そうとした華奢な腕を掴み止めながらの無慈悲な宣告。総身に叩きつけられる快楽に腕に力をこめるのもままならぬまま喘いで懇願する少女のイキ顔を目に焼き付けてやると笑った彼は、調律の施術と継続で完全に把握している性感帯を刺激してやりながら膣にしっかりと覚えこませた(・・・・・・)剛直で突き上げ、射精も間近に迫っていたそれで膣壁を抉った。

 根本まで届かないくらいのところまで肉棒を咥えこんだ秘裂が震え愛液を迸るのに合わせ、己もまた精を吐き出す。

 びくん!!と身体を跳ねさせ、限界まで見開いた瞳から涙を流し、口の端から唾液を垂らして舌を突き出し、恍惚と快感に打ち震え割り開かれた脚を彼の腰に回し互いの下腹部をくっつけんばかりにして快楽を享受しようとして──その全てを見られたことに、顔を真っ赤にして爆発する。

 

 ぱくぱくと口を開閉させて、やがてその瞳を涙で潤ませるのに苦笑する。彼女が何らかのアクションよりも早く身を寄せ、その唇を塞いだ。

 快楽に翻弄され緩んだ唇をこじあけ舌を挿しこみ、絡め合わせていく。

 口蓋を、舌を、歯ぐきの尽くを蹂躙するような舌使い。静かになったのを見計らい解放すると、愛撫を続け軽く絶頂させ申し訳程度の抵抗を封じてたこともあってか形のいい乳房を揺らすように胸を上下させ息も絶え絶えになっていた。

 ずるりと愛液と精にまみれ亀頭から糸を垂らす剛直を膣腔から引き抜いて。手慰みに腕の中の少女に触れながらそっと顔を寄せ囁きかける。

 

「可愛かったよ」

「……………………さいっってぇ」

「悪かったって、調子に乗りすぎた。ところでさ、結構経験も技術もあるつもりだけどやっぱりキスはクロの方が上手いよなぁ……イリヤはどう思う? 魔力供給だなんだで結構キスしてたと聞いたけれど」

「…………知ら、なぃよもぅ…………あとお尻触らないで…………」

「あ、もう腰砕けか……、しょうがないな風呂には俺が運ぶかな」

「ねぇ話を……待ってお風呂? ちょっとま──ひゃあ!?」

 

 互いの体液に濡れたベッドの上から軽々とお姫様抱っこで持ち上げて。華奢な身体を抱え風呂場に直行する暮人の顔を見上げるイリヤは、顔を真っ赤にして少年の胸板を叩く。

 

「──! ま、まだするつもりなのこのケダモノ──」

「痛い痛い痛い。何だよ学校いくなら一度身体を清めないとでしょ」

「がっこ、学校!? い、今何時!? あああどうしよう身嗜みも整えなきゃなのに……」

「落ち着いて、今は6時半だから。朝食も用意してるから身支度の時間を考慮しても十分間に合うよ、最悪魔法少女すれば間に合うだろうしね」

「あ、良かった、いやそうじゃない! 待って暮人くんとお風呂入ると身体綺麗にするどころじゃないから! もう本当におかしくなっちゃうからせめて1人で入らせ──」

「加減はするよ」

 

 信用ならない! という叫びと、可愛らしい抵抗。

 少女の暴れる音はバスルームの扉が締まり、シャワーの水音が響き始めると、すぐに聞こえなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異世界旅行。

 

 口にすればそれこそ陳腐なライトノベルや漫画にでも出てきそうな単語である。一般人が聞けば小説の話でもしているのかと首を傾げ、世界から一歩二歩ズレた境地に立つ魔術師であろうとも鼻を鳴らして理論上不可能ではないが少なくとも第二魔法なしには荒唐無稽と口にしてしかるべき事象が――この冬木にて一度引き起こされたのだという。

 だが、それ自体は驚きこそすれど受け入れられる範囲の話である。少なくとも一方通行であれば、異世界の遥か深奥とでも言うべき根源へと向かい、辿り着いて消えた魔術師もいるのだ。最も注目すべき点は、冬木市円蔵山にてまるで神代の宝具でも振るったのではないかと見紛う時空の断裂と共に姿を消し、発見はほとんど絶望的と思われていた6人の少女たちが五体満足の上体で帰還してのけたことだろう。

 加えその6人の内3人が、それこそ10代前半の年端もいかない少女であり──姿を消して迷い混んだという並行世界から帰還するために使ったという万能の願望器である聖杯を抱えていたというのだから、報告を受けた時計塔を揺るがした衝撃はそうそうたるものだったろう。

 

 聞けば並行世界で聖杯を求めた魔術師と複数の激闘を繰り広げたとか、英雄王ギルガメッシュが顕現し湯水のように宝具をばらまいたとか、敵対する魔術師がこの世界ではとうに滅んだエインズワースなる魔術師でありギリシャ神話の乙女パンドラと共に世界救済を目論んだとかどうとか──全部真実らしい辺り、つくづく世界は狂っていた。

 

 拐われた親友を助けに強大な敵に挑み、あらゆる苦難を乗り越え在るべき場所に帰った彼女たちの活躍はそれこそ英雄碑か何かと言いたくなるものだったが……物語のようにハッピーエンドで大団円とはいかない。

 聖杯という魔術師垂涎ものの資源(・・)、それが3人である。魔術師たちの欲望は、ようやく家に帰ることのできた少女たちに構うことなく膨らもうとしていて──エルメロイ教室稀代の宝石魔術師(問題児)として名高い遠坂の当主とエーデルフェルトの令嬢の動きもまた、素早いものだった。

 

 道具でありながら本来の担い手に従うことなく無関係の少女たちを巻き込んだ魔術礼装を作成、彼女たちに預けた魔術翁の責任を追及。彼から少女たちを時計塔の有力者から保護するという言質を勝ち取り想定しうる最大の後ろ楯を手に入れたのだ。

 

 そうして、ひとまずの安寧を手に入れた少女たちは時折現れる時計塔の圧力を逃れ現れる魔術師たちに悩まされながらも、極限の戦闘を経て聖杯として傾きすぎた己を人間として維持するために調律師の魔術師に処置を施してもらうこととなったのだが──。

 

「……」

「……」

 

 あの魔術師殺しから依頼が来たときは一体どのような異形なのか戦々恐々としていたものだが……実際に会ってみれば、その性能を万全に発揮すれば根源にさえも至れるという聖杯を抱え持つにしては随分と可愛らしいものだった。

 

 軽く息を吐いて。肩や首、背にかかる温かな重みを受け止めながら路上を進む。

 制服越しに触れる柔らかな感触を密かに堪能しながらも、でもやっぱり触るなら生が一番だよなと思いをはせていると、彼の肩を借りるようにして歩いていた白髪の少女が耳元に唇を近付けて囁いた。

 

「…………ケダモノ」

「えぇ……」

「変態、スケベ、鬼、悪魔、性欲魔人……」

 

 少年の肩を借りるイリヤはご機嫌斜めだった。

 魔術師たるもの時間の管理は徹底しなければならないと豪語する彼が風呂場からイリヤを連れ出したのはぴったり20分が経った時だった。その20分で徹底的に触られ、吸われ、拡げられ、洗われ洗わされ──想起した淫溽に顔を真っ赤にしたイリヤは、あうあうと言葉を失って暮人の肩に顔を埋めた。

 恥ずかしいところをいっぱい触られて、見られて、弄ばれた。乙女の尊厳など跡形も残っていない。散々身体を貪っておきながらあれでも加減はした方だぞなどと宣って肩を竦める少年に抗議の視線を送る。

 

「だいたいあんな朝から、あ、あんな風に……する必要、なかったじゃない。……調律だって、夜の内に終わらせてたのに……」

「でもそれは俺のところに来るときからわかってただろうし、実際ノリノリだったじゃないか。期待してたんだろう」

「そ、そんなこと! っ──ないもん……」

 

 否定しようとした声を小さく潜めたのは、耳元で叫ばないでくれと唸った彼の指摘だけ、ではない。声をあげたイリヤになんだ痴話喧嘩かと視線を向けてくる通行人たちに気付いたのも要因の一つではあるが、もう一つ。

 彼に触れられ、求められ、抱かれることを。心の底から否定することができず、寧ろ求めてすらいることを、どうしても拭い去ることができなくて──、

 

「いやまあ朝からイリヤ抱き倒す必要なかったのは確かだけれども君たちの相手することになってからやけにムラムラしててさ……正直美遊かクロ辺りはいっそ俺の家に棲んでもらうか本気で検討するところではある」

「一応恋人ってことになってる女の子の前でそういうこと言うの本当にやめない?」

「それにその言い草だと同棲というよりは完全に性処理係じゃない……私は良いんだけどさ、どうしても1人じゃクレトくんの相手しきれないからイリヤも棲ませれば良いじゃない」

「あ、クロおはよ……んん!?」

 

 真っ当な中学生の発して良いものとは到底言えない下衆極まった発言に応じたのはイリヤと同じく中等部の制服を纏う褐色の少女。会話に混ざったクロエがイリヤを支えるのとは逆の腕に抱き着いてくるのに驚いた素振りを見せることもなく暮人が頬を緩める。

 両手に花。とはいえ元々少女に肩に貸していた以上これではあまりに動きにくい──クロエの後をを追うようにして駆け寄ってきた美遊の姿を認めると、満足に動けないイリヤを支えてやってくれと何やらフリーズして固まっていた彼女を黒髪の少女に預ける。

 

「クロおはよう。美遊も」

「おっはよー☆」

「暮人くんおはよう」

「えちょっと待って私さらっと売られたのかなりショックなんだけど……!?」

「イリヤ、可哀想……よしよし……」

「美遊……私の味方は美遊だけだよ……」

 

 絶頂地獄を垣間見て腰砕けになってしまっているのもおおよそ察しているのだろう、労るようにしてイリヤを抱きしめ頭を撫でていた美遊は、自分の胸に顔を埋める親友の頭に鼻を寄せ、すんすんと嗅いでは目を丸くした。

 

「……暮人くんの匂いする……」

「嘘でしょ私身体は洗ってたよ?!」

「……シャンプーのことなんじゃない?」

「あぁそういう……なら教えてやればいいのに」

「えー反応面白いから放置で」

 

 酷い妹もいたものだと呆れたような口振りで呟く暮人だったが、美遊の指摘に慌てふためいて自分の身体を確認する少女を見つめては笑う口元を隠しきれてはいなかった。にやにやとしながらイリヤを見守りつつ、やがて2人の視線に気付いた彼女が両手を振り上げて憤慨するのをからかいながら進み──中等部の校門が見えてきたあたりで、視線が一気に増すのを知覚する。

 

 調律の対象であるイリヤたちの観察と緊急時の処置を行えるよう、外見の若さを利用し学生としての身分を得ている暮人だったが。少女たちと日常的に接触を図るにあたって、3人とは恋人の関係を構築していると公言している。学内随一の美少女たちを誑かす悪漢として悪い意味で注目を集めていた。

 

「見せつけちゃう?」

「進んで風紀を乱すつもりはないよー、一応俺は業界では秩序寄りで通してるんだし」

「秩序……秩序……?」

 

 信じられないとでも言わんばかりの表情で見てくるクロエに失礼なやつだなと目元を吊り上げて抗議する。実際必要とあらば校内でも構わず押し倒すし一度美遊を倉庫裏でがっつり犯して調律したのだが。それでも民間人拐って改造したり貴重な人材だからとホルマリン漬けにして研究したがる輩よりは余程マシである。

 

「比較対象が酷すぎる件については?」

「実際聖杯としての特別性を私利私欲のために利用したりしない遠坂やエーデルフェルトの方が異端だからな……?」

 

 聖杯による人格浸食が発覚して魔術師殺しとも連携して調律者を選定していた時だって、乙女の純潔とでもいうべきものを否応がなく奪うこととなる芥子菜の調律師を頼ることを最後まで悩んでいたという話だし。つくづく魔術師らしくない人格者だと言えたが――それが魔術師を推し量る基準になっては命取りである。

 美遊やクロエはあまり心配する必要はないと思うが。イリヤに関しては可愛らしい姿をした女魔術師や喋る使い魔に「きみの力が必要なんだ、友達を助けてください!」なんて言われれば一発で騙されて使い潰されそうな気がしてならない。

 冬木の管理者である遠坂が魔法使いの弟子として時計塔に拘束されている以上聖杯を狙う魔術師の搦め手には暮人が対処する必要が出てくる。厄介事にならなければ良いんだがと軽くぼやいて──イリヤや美遊の後を追うようにして校門をくぐる。

 

「……? どうしたクロエやたらニヤニヤして」

「ん? べっつにー♪」

「……?」

 

 自身にくっつきながらご機嫌ににやつくクロエに気づくも、イリヤと瓜二つの顔で小悪魔のように悪戯っぽく笑う彼女は何も言わず。まあどうでもいいかと捨て置いて、制服のポケットのなかにある薬剤を確認しながら思いついたように呟いた。

 

「次は美遊だったっけ……スク水でも着せるかな……」

「……」

 

 笑みを引き攣らせ内心で親友の安寧を祈るクロエは、しかし藪をつついて蛇をだすようなことはしない。本気で興が乗った時、彼の責めはあまりに激しいものになることをよくよく理解していた。

 

 



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神稚児の奉仕

コミケの待機列でこつこつ書いてました



 

 それが、健康を重視したものであるか否かは別として。

 

 おおよそほとんどの魔術師にとって、己の身体の管理は根源への到達や相伝の刻印や技術を磨く使命にも迫る最優先事項に等しい。

 男か女か。中肉中背か筋骨隆々か。朝食は摂ったか否か。同じ基盤、同じ儀式、同じ適性を持つ者で魔術を行使したとしても、それらの前提条件の差異によって魔術の成功率と完成度は著しく変動する。

 血液の成分、栄養の配分、身体の特徴。人体に秘められたあらゆる情報を網羅し掌握してようやく魔術師は己の魔術を真の意味で支配できるといっても過言ではない。

 

 とはいえ。そういった魔術の行使にあたっての前準備も、芥子菜のそれは比較的軽い方であった。

 

 ペットボトルになみなみと満ちたミネラルウォーターを傾け口に含んだ錠剤を飲み下す。購買で購入したパンの包み紙を丸めて制服のポケットに突っ込み、やがて煙草を取り出しては口に咥えてライターで火を灯した少年の姿に、顔を両の手で覆った白の少女が絞り出すような声を漏らした。

 

「ふ、不良……」

「絵面は……おおよそ教師が想定し得る最悪よねえ。今飲んでた錠剤だって色とりどりでやばいクスリにしか見えなかったし……」

「確かその煙草も、お手製のハーブ?か何かを調合してるって言ってたような……」

「余計に違法感が増している……」

 

 散々な言われようだった。震え声のイリヤに同調したクロエと美遊の加わった集中攻撃に天を仰いで暮人も苦笑し……特に反論の言葉も思い浮かばずに煙を吐き出す。

 一応この場は自分たち以外の生徒や教員がいないことを確認した時点で封鎖しているが……屋上とはいえ中等部の校舎で、しかも生徒を騙って在籍している少年が奇怪な薬や煙草を服用する様子はとても他者に見せられるものではない。付き合っていることになっている――実際の関係はそれどころではない――学内最上の美少女3人を連れ込んでのこれだから猶更だった。

 

「……まあ、理性トばしたり快楽ホルモンやらを過剰に分泌するようなものではないとだけ言っておくよ。合法とはとても言えたものではないけれども」

 

 そもそも数々の調律依頼をこなすにあたっての薬の多用が祟ったこともあり外見年齢が中高生の中間くらいで止まることになったのだ、誤って服用してしまった場合の危険度は下手なドラッグを鼻で笑う代物だが――それについてはおいておく。薬も用法次第で毒になるのはよく知られた話だった。

 

「全部調律の下準備、なんだよね……? うぅ、なんか申し訳なさを感じる……」

「罪悪感感じてるんならそうだな、取り敢えず膝を貸してくれ」

「え、膝!? 別にそのくらいならいいけど……どうぞ……」

 

 言質は取った。困惑しながらも姿勢を整えて露出した膝をぽんぽんと叩く少女の善意につけこんで後頭部を柔肌の上に乗せる。

 ずしりと膝上に乗せられる重み。突然の発言に困り顔になりながらも、暮人の頭をそっとなでようとして……彼の要求を普通に受け入れて膝枕をしてしまっている事実に気付いて固まる。

 

「……あれ、なんで私あっさり受け入れ……なんか感覚が狂ってる気がする……!?」

「毒されてる毒されてる、普段のあれそれからして爛れきってるしそうなるのもおかしくないと思うけどね……。あ、私も~~~~」

「……わ、私も」

「!?」

 

 学生の身で体験するにはあまりに過激なスキンシップをとっている自覚はあった。当然のように少年を膝枕してしまっていたことにイリヤが戦慄しているのに苦笑しながらも、クロエもまた猫が頬擦りするようにイリヤの腰にしがみついては頭を膝に乗せる。便乗して美遊まで狭いスペースに強引に入り込んで膝上に頭部を乗せるのに目を白黒させた。

 

「え、いやちょ流石にこれは重っ……暮人くん一旦どいて──いやスカートめくらないで!?」

「面積確保すれば3人でもいけるいける。ほらその手を離したまえ」

「いやー!足が潰されるー!」

 

 悲鳴をあげて脚を露出させようとスカートを掴んでくる魔手に抗うイリヤだったが――不意に伸ばされた腕に肩を押され体勢を崩す。

 屋上のフェンスに上体を押しつけられ目を白黒させた少女に、ずずいと近寄ったクロエはにっこりと笑って。

 

「重いとか潰されるとか、随分と失礼なことを言ってくれるじゃないイリヤ……そんなことを言って、乙女の地雷を踏んだ報いを受ける覚悟はできてるのかしらぁ~~?」

「く、クロエが本格的に敵に回った!? ワタシワルクナイモン!」

 

 何をー!? このー!

 頭を預けていた膝が離れていくのをやや名残惜しく思いながらも間近で暴れられて押され蹴られてはかなわぬと離れつつじゃれあうようにして掴み合う2人の少女を見守る。仲睦まじいのはいいことではあるが、同じ顔の少女が言い争っている様子は出逢って数ヶ月の過ぎた今でも奇妙に感じさせられるものだった。

 

「確か聖杯戦争とやらで封じられた人格が別たれたんだっけか……? クラスカードとの融合も相まってかほとんど境界記録帯(ゴーストライナー)みたいなもんになってるのに、ああも人間やってるとはなあ……」

 

 まあ、特異といえばそれこそイリヤも美遊も負けたものではない。片やアインツベルンの遺した根源にも至り得る聖杯、片や神稚児信仰を体現した天然もの、それも並行世界の住民である。時計塔の締め付けを逃れてでも魔術師がつけ狙うのも仕方ないというものだった。

 ――だからといって、みすみすくれてやるつもりもないのだが。

 

「――おいで、美遊」

「……? どうしたの暮人くん――ぁ」

 

 屋上から見渡すことのできる街並みをぼんやりと見つめながらどっかと座り込み、くいくいと黒髪の少女を手招いて。知ってか知らずか無防備に近付いてきた美遊を抱き寄せてあぐらをかく上に少女の身体を乗せる。

 すっぽりと腕の中に納まる華奢な身体に、思わず呆れたように目を白黒させる。イリヤも君ももっと飯を食って肉を付けた方が良いんだがなと漏らすと、その瞳を瞬かせて首を傾げられた。

 

「太い方が良いの?」

「んーーー……いや、そうでもないな。どちらかと言うと好みはスリムな方だけど……そろそろ娶るのも視野に入れてるからなあ」

 

 子ども産んでもらうなら身体はしっかり作ってもらいたいところではある、と。そう呟くのにギョッとしたように目を見開いた美遊は、眠たげに細められた暮人の目を見つめ、小さく呟いた。

 

「もしかして、私――でも、薬はちゃんと飲んで」

「いやいやそれはない。多少そういった管理にだらしなくなってきた自覚はあるけど、そういう意思もないのに孕ませるほど職人意識も廃れちゃいないさ」

「っ……」

 

 ただ、欲しくなったというだけの話だと。襟元から制服の中に手を差し込んでは柔肌に指を這わせる彼の言葉に背筋の逆立つものを感じながらも――胸の中で溢れだす悦びを否定することはせずに。それでも意識して淡泊な口調を維持して、未だに掴み合っている瓜二つの少女たちを見ながら問いかける。

 

「それは……っ、イリヤたち、には……?」

「……クロエはともかくイリヤはなあ。魔術師殺しの鉛弾喰らっても生存できる準備整えてからになるかな……」

「、ひゃ……」

 

 つまるところ。

 聖杯を狙う魔術師たちや逆に保護せんとする者たちと真っ向からやり合うだけの武力もコネも薄く、あくまで調律に特化した術師でしかない暮人にとって、異世界からの渡航者であり、真っ当な戸籍も存在せず、イリヤたち以外との人間関係も薄い美遊が最も彼にとって都合の良い女であるという話であって。

 それと同時に、美遊だけに飽き足らず――それこそ多少の無理を押してでも――クロエやイリヤを手籠めにする気概であることも、語っていた。

 密着したまま制服の内側に突っ込んだ手で未発達ながらも確かな柔らかさを持つ膨らみを弄びながらもあくまで自分本位な言動であることも自覚しているのか、少年もまた苦笑し。美遊の胸の中央に触れた手で調律用に刻んだ呪紋を励起させながら、あっさりと呟く。

 

「ん、ふぅ……」

「まあ、選択肢を固定させるつもりはないさ。3人とも他の男に渡すには余りにも惜しいからいっそ全員……なんて思わないでもないけれども強制はしないよ。……少なくとも、今のところは」

 

 なにせ中学生だ。約3年の時間を使って何をするかは自由、進路の検討も学業に勤しむのも知己との友愛を深めるのも良い。それは昨年の戦いでまざまざと特異性を発露させてしまった彼女たちが日常に踏みとどまることのできる唯一の機会であり――魔術師としての道が生まれた時から決まっていた自分には、決して与えられることのなかったものだった。

 ……魔術師として歩んだ人生を嫌悪する訳ではないが。だからこその拗れた執着も、ないではなかった。

 だけれど。今は──、

 

「あー、美遊が抜け駆けしてイチャイチャしてる!」

「め、目を離した隙にもうあんな風に……でも美遊があんな顔してるの見ると……こう、変なスイッチ入りそう……」

 

 気は済んだのか、制服を乱れさせながらも掴み合いを終えたらしいイリヤたちが密着するこちらの様子を見守るのに術式の前準備をしていた手の動きを止め、熱を灯した呪刻の疼きに切なげに声を漏らす美遊を支えるようにして立ち上がる。

 そこで。にこやかに笑って、耳元に口を寄せそっと囁きかけた。

 

「そうそう、調律のことなんだけども。今回は――」

「……ぇ?」

 

 続いた言葉に、思わずといったように美遊は目を丸くして。

 一拍の間を置いて、恥じらいに頬を紅く染めながらも――小さく、頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局のところ。

 肝心なのはモチベーションなのだ。

 

 扱いを間違えれば――適切な用法であったとしてもそれなりの副作用で身を苦痛で蝕む薬品の調合と服用。調律の対象はといえば、それこそ研究さえ進められれば身内の悲劇ひとつふたつどうでもいいと断じられるような魔術師が余所者の手に縋ってでも頼るにふさわしい厄介事ばかりで。それは如何に本来なら巡り合うこともできなかったであろう美少女であったとしても、聖杯などという危険物を宿す3人の少女たちも然程変わりはしなかった。

 

 だから、趣味に走る。

 別段加虐的ないし被虐的趣向を持ち合わせているというわけでも、AVのように台本を用意しての戯れに興じる訳でもないが。性交を経て調律をこなす少年にとって、ある程度行為の内容に幅を持たせる形で己の欲求を満たす行いは少なからず重要なことであった。

 

 自宅の浴室にて一糸纏うことなく裸体を晒し、シャワーを浴びながらゆるりと待つ。

 扉の先から僅かに届く衣擦れの音に、少なからず胸を高鳴らせつつ。向こう側から扉の取っ手に手がかけられるのに一旦シャワーの栓を閉め、湯の滴り落ちる前髪を鬱陶しげにかきあげると扉を開いた美遊の姿を拝むべく視線をやって──やはりこの発想は悪くなかったと口元を綻ばせる。

 

「っ……その、本当にこれで良いの? 必要なら、その、裸でも良いんだけど……」

「ん? あー……そういうのも悪くないけど後でかな、いつもやっていることと大差ないし……着ているから良いんだよそれは」

 

 言外にこの一晩を使って遠慮なく抱き潰してやると告げられるのに抱くのは、諦感と期待。所在なさげに浴室で立ち竦んでいた美遊は、水着を着た己に向けられる邪な視線に目を泳がせた。

 いわゆるスク水。

 彼女が纏うのはそれこそ水泳の授業で女学生が使用するそれと何の違いもありはしない。しない、が──ここはプールではなく風呂場で。これからすることになるだろう行為を思えば、犯罪感は凄まじいものだった。

 

「その、あんまり見ないで……なんだか恥ずかしいから……」

「そうはいってもなあ……」

 

 要求にこそ健気に応えてはくれたもののまじまじと見つめられて気恥ずかしいものがあるのだろう、頬を赤らめて窘める美遊の言葉にも生返事を返してじっくりとその姿を見定める。

 肌にぴったりと吸い付く紺色の生地。惜しみ無く露出された白い脚。水着を内側から盛り上げる胸元の膨らみは慎ましやかながらもスタイルの良さも相まって女性らしい輪郭を完成させていて。普段は結わえられている黒髪をほどき背まで伸ばした姿は年齢に見合わぬ色気を感じさせるものがあった。少年の視線から守るように細腕を前に回す彼女が顔を真っ赤にして俯くのも含めその愛らしい姿を堪能すると、箱状の椅子に座りながら声をかけた。

 

「それじゃあ、早速だけれど……、身体洗ってもらおうかな」

「……う、ん。わかっ──ぁ」

 

 タオルも身につけずにいた暮人、彼の股間で肉棒が既に膨張しつつあるのに気付いて動じた様子を見せながらも。少年の背後に立った美遊は、手に注いだボディソープを泡立てつつ、余分な肉の薄い背に触れて指示に従い洗い始める。

 

「えっと、このくらいの加減で合ってるかな……」

「良いよ良いよ、上手だと思う」

 

 ややぎこちないものの手慣れている節が見受けられるのはイリヤやクロエとお泊まり会でもしたのか。手の動きに迷いはないように思えた。背の泡が湯に流されるのをされるがままにして受け入れていたが──シャワーを浴びせていた美遊の手が止まったのに、にやにやと笑いながら振り向いて問いかける。

 

「どうした?」

「……前、も?」

「勿論」

 

 即答。これから行うことを想像したのか、顔を真っ赤にして動きを止めた美遊だったが──覚悟を決めたように頷くと、背後から暮人に抱きついて密着する。

 腕を、胴を洗われながら。背に押しつけられる柔らかな弾力と温もりに、目を丸くした。

 

「随分驚いたよ、積極的なんだな」

「クロエが……こうすれば、男の人は喜ぶって言ったから……」

 

 違いないと笑う。くっついて身体を洗っていた美遊がおずおずと陰茎に触れるのに手を添え、細い指が亀頭を擦り上げるのに助力した。

 

「凄い、もうこんなに熱い……」

「まあそんなもんだよ。にしても美遊も上手になったなあ……っと」

「──、」

 

 少女の手の中で迸る怒張。暮人の方で意識して量は削ったが、それでも小さな掌から精が溢れて浴室のタイルに零れ落ちた。

 

「わ──ひゃっ、むっ……!?」

 

 掌にまざまざと刻まれる精の熱と感触に、束の間忘我して。直後、身体を引き寄せられた美遊は唇を塞がれていた。

 

「ん、ぅ。ま、む──っっむ!!?」

 

 待ってと口にしようとして半開きになった唇から滑り込んだ舌。的確に口内をねぶり、つつき、絡め合う舌使いに翻弄される。

 そして抵抗を封じられた少女に対しても、魔術師は何ら容赦をしなかった。

 露出した腿から股下に向かって白い肌に指を這わせ、水着の上から秘所を刺激する。腋からスク水の内側にてを突っ込んで乳房を掴んで先端の突起を弄んだ。

 

「さて、美遊はここが弱いんだったよな……?」

「ぃイ、っっ、ふぁ……ッん──!」

 

 指先での刺激にすっかりそそりたった乳頭を引っ張られた少女の嬌声が飛んだ。

 腕の中で肢体を跳ねさせる少女への責めを継続し、目を潤ませて快楽に悶える美遊の姿に笑みを漏らす。

 暮人が依頼を受け調律をこなすようになってから、約3ヶ月──その間の度重なる施術にあたっての接続や淫行を経て美遊の、いや聖杯の少女たち3人の性感帯は完全に把握している。裸エプロンで煽ってきたクロエを10分もかけずにガチ泣きさせて抱き潰したのは記憶に新しかった。

 腕の中の少女がどういった責め方をされると悦ぶのかも既に把握している。尻肉を揉みしだく手で水着を掴むと、引っ張りあげられた水着の布地に秘所を擦りあげられた美遊が悲鳴をあげて暮人に身を預けるようにして倒れ込む。そのまま指先を秘裂に埋め具合を探り、十分に濡れているのを確認すると。これで仕上げと言わんばかりに、人差し指と親指で陰核を爪弾いた。

 

「――イぃッっ、~~~~!!?? っ、ぅ……!」

 

 僅かな時間の愛撫で絶頂に導かれ、総身を打ち震えさせて。腿に愛液を滴らせてがくりと身体から力を抜いた美遊は、蕩けた目をどうにか剣呑なものにしようと努力しながら暮人を見上げた。

 

「どう、して急に。こんな……?」

「美遊に気持ちよくして貰ったからな。せめてものお返しだ」

 

 あと、身体も洗って貰ったことだし。

 そう呟きながら、あくまで口元はにこやかに――ただし目は情欲に染まって獣のようにぎらついていた――暮人は少女を抱く腕に力を籠める。

 

「こっちも、隅々まで洗わないとな――?」

 

 




前後篇みたいになった美遊回、案外筆が捗ってしまったかもしれない


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神稚児の寵愛


プリヤ無料公開キャンペーンに釣られ初投稿です



 

 

 水音が響く。

 

「っ。ん、う……。――あっ?」

 

 シャワーの飛沫。勢いよく肌の上で跳ねては流れる湯。

 身に降りかかる飛沫の感触と身を穿つ異物のもたらす衝撃と快楽に、少女は目を覚ました。

 

「ん……ひゃっ……!」

 

 目を瞬いて、目の前の鏡に映った自分を見て、胎を打ち付ける剛直のもたらす快楽に身をよじらせて。ちかちかと視界が明滅するなかで、美遊は己が気を失ってしまっていたことに気付く。

 苛烈な責め。美遊を膝上に乗せた少年の指使いは無防備な少女を幾度となく絶頂に追いやり、肢体に這わせた手で身体を洗いつつの愛撫で何度も何度もイカせた後に止めとばかりにずらした水着のクロッチから挿入された肉棒による抽挿は朦朧としていた彼女の意識を呆気なく吹き飛ばしていた。

 意識を失っていた時間自体は短かったのか、細い腰に手を這わせ起きたのかと愉快そうに笑う少年は、けれど失神していた彼女を責める凌辱の手を一切休めはしなかった。

 

 調律を担当した少女の身体を完全に把握している彼にとって今も繋がっている少女の『ほしいところ』に竿を当ててやることなど造作もない。膝上に跨る少女の腰を軽く持ち上げ、位置を調整すると湿った音をたてて剛直を打ち付ける。

 一度腰を引かれてから根本近くまで挿入された陰茎、いざ調律を受け見出され開発されるまでは自覚さえしていなかった弱点を亀頭で突き上げられた美遊の華奢な身体が電流にでも撃たれたかのように跳ねた。

 

や、あ。っ、イっっ、ふ……!?」

 

「美遊」

 

「暮人っ、くんま、やっ。ィ、いまはッ駄目だか、ら……、~~~~~ッッ!!??」

 

 目に涙を滲ませいやいやと首を振る美遊を子宮口すぐ前の弱点を一突きして黙らせて。ぴんと伸びた背筋から力が抜けくてんと己の胸板に身を預ける彼女の乳房を水着のなかに滑り込ませた手で弄びつつ少年は術式の経過を確認する。

 下腹部に浮かびあがる呪紋は淡い桃色で彩られている。十二分に温まってるなと美遊専用に組み上げた術式の調子を見て頷いた暮人は、繋がり合う少女に干渉すべく術式を励起させる。

 

「っ、あ、あ……」

 

「さて、準備も整ったしぱぱっと仕上げちゃうよ。呼吸はしっかり整えてねーっと……」

 

「――ひっ、やだ、アレはやめて。おかしくなっちゃう、なっちゃうから……、せ、せめて休ませて。 い、今イッたばかりだか、ら……」

 

 涙を浮かべる黒い瞳。紅潮する頬に触れれば病にでも罹ったかのように熱くなっていた。流石聖杯というだけあってか己に干渉する術式の前兆にも気づいたのだろう、忠告を聞いて律儀に息を整えつつも力なく訴える彼女に、往生際が悪いぞと口元を弛める少年は背後から回した手で少女の下腹部をそっと撫で上げる。

 

 指先に擦り上げられ、魔力の光を灯した呪刻。己を貫き、繋がり合う少年によって起動された調律術式はすぐさま効果を発揮した。

 

「あ……ッ、つぅっ、ひぁ、あ。くる、く、――っ、あ、ぁぁぁぁ……ッ!」

 

 魔術師にとって、ある意味では臓器とすら言える魔術刻印や魔術回路に魔力を通すことで行使する魔術というのは多くが痛みを伴うものだ。それに無遠慮に干渉すれば相手に相応の苦痛を強いり、また一定の格を持つ魔術師に抵抗されれば逆に己の回路、最悪精神さえ焼き切れる可能性もある。

 魔術師にとって魔術にある程度精通した存在に接続し干渉を試みるのはそれだけリスクの高い行為であり、相手が完全に無防備である――己の存在を構成する情報を書き換えられてもなお抵抗しないという前提を満たす必要があった。

 

 それこそ芥子菜の家系の用いる調律の方式も文字通りの意味で『繋がる』ことを基点に施術対象に干渉する方式を取っている。……ある程度の耐性を持つ魔術師であろうとも耐えかねる己という存在そのものを侵される苦痛から顧客を、そして術師を守るためにも、身体と精神が受け取る調律の反動を変換するために彼の一族は様々なアプローチを行っていた。

 それがつまり――調律の術式と相性のいい性魔術を組み合わせての、苦痛の快楽への変換。

 

「っ、っっっあ、イっ……。ひぁ――、っ。あ、あ――」

 

 調律を施される美遊は今、幾度も絶頂に導かれ蕩けた身体(カラダ)と術式により他者と繋がり己の存在を()()()()()苦痛を快楽の方向に転換させられた精神(ココロ)、双方を苛まれた状態にある。華奢な身体を打ち震えさせのけぞり、少年の剛直を咥えこむ秘裂をとろとろにして肉辱を受ける少女は声にならない悲鳴をあげながら許容を超える法悦に打ちのめされていた。

 浴室にて間断なく鳴り響く水音は決して流しっぱなしにされているシャワーだけによるものではない。己の晒す痴態に恥じらうこともできぬまま悶える彼女を乗せる少年の腰は潮を吹くようにしてぶちまけられた淫液でずぶぬれになっている。接合部では快楽の奔流に呑まれる美遊の意思に関わらず男根に馴染んだ媚肉が淫猥な水音をたてながら飢えに渇きに苦しむ獣のようにもっと、もっとと肉棒に吸い付いているのを少年は灼ける理性のなかで実感する。

 

 今すぐにでも刺し貫いた少女のなかに劣情をぶちまけてやりたくなるのを堪えながら、集中を途切れさせぬまま調律を仕上げていく暮人。施術のなか少女を襲う快楽に耐えかねたのか、愛液に、汗に、シャワーに濡れ肌にぴったりとくっついた黒い生地に包まれたこぶりなお尻が膝上で跳ねるのを大人しくしてろと尻肉を叩いては繋がり合う逸物がきちんと最奥まで届くように強めに腰を打ち付けた。

 

 根本まで串刺しにされて達したらしい美遊はほとんど息も絶え絶えになっていた。髪を振り乱し、黒い瞳からぼ一筋の雫を垂らし、熱い吐息を漏らす唇から唾液を滴らせる彼女は懸命に唇を動かして少年に意思を伝える。

 

 キス、して。

 

「――」

 

 断る理由はなかった。

 少女の胸元、水着のなかに侵入して乳房を揉みしだいていた手で彼女を引き寄せつつも暮人もまた身を乗り出す。何度かの口づけを交わし、次いで美遊の方から舌を突き出してくるのに応じて互いの味を確かめ合うように舌と舌を絡め合わせる。

 

「っ、ふ、ぅ……。む――」

 

 イリヤの方も大概ではあるが、夢中になって唾液を求める美遊は果たして自分のしていることをどれだけ認識しているのか。今も鏡の前で繋がり合って乱れる様を見せつけているのに構わず男を求める彼女が冷静になってこの状況を振り返ればどのような反応を見せてくれるのかを想像して苦笑する。

 不貞腐れるだろうか、泣き崩れるだろうか。もしかしたら口をきいてくれなくなるかもしれない。

 まあもし嫌がられたところで、少女への辱めを止めるわけでもないのだが。

 

 ――調律を終える。術式の起動中に光を灯していた下腹部の呪刻からも魔力が抜けていった。

 事前に準備を整えていても術式の都合上相応に神経を削る施術を終えて。少女を膝上に乗せる暮人は、目に情欲の色を滲ませほくそ笑んだ。

 

「……さて」

 

「? くれ、とくん――、ぁ、や」

 

 そっと腰に手を回されると少年と密着し唇を重ね合っていた美遊も彼の気配の変化に気付いたのか、暮人の上に座りながらぴくりと身を竦ませて。

 待って、待ってと呟くのも気にせずに腰を打ち付ける。身体を重ねたのも一度二度の話ではない、己の仕事を終え()()する必要のなくなった少年の遠慮がなくなったのを悟る美遊が身をよじらせながら制止するもそれで彼が止まるはずがないのは身をもって思い知っていた。

 

「ひぅ、やあ、まっ。んんぅ……っ!! ゃあ、あっ、あっ――、まっ、え。――いうっっ!!」

 

 調律を終えるまでに数えるのも億劫になるだけの絶頂を強いられ、今もまた並行しての愛撫で留めなく蜜を溢れさせる秘裂は抽挿を繰り返されるたびに淫猥な水音を鳴らす。一挙一動のたびに浴室に嬌声を響かせる少女の身体はいっそ楽器のようですらあった。

 肉槍に根本まで貫かれてから子宮口を責めてやまぬ快楽。水着ごしに、あるいはなかで直接弄り回され愛撫された乳首は水着の上からでもわかるくらいにその存在を強調している。未知の弱点ひとつ逃すことなく開拓されきった撫でられ、揉まれ、突かれるたびに少女は彼のためだけの雌として身を震わせ悶え、媚肉を蠢かせて己を貫く少年に歓びを与える。

 

「ふ、ぁ……」

 

「――見てみな、美遊」

 

 気付けば射精されていたのだろう、暮人に刺し貫かれる胎の奥でどくどくと子種が注がれるのをまざまざと感じ取った美遊は目を揺らす。

 前だよ前と。少年に指摘され鏡に視線を向けた美遊は、羞恥で死ねるなら5回は死ねると本気で思った。

 

 浴室の鏡は湿度と熱気ですっかり曇っていたが、美遊に見せる前に彼がシャワーを浴びせ綺麗にしていたのだろう。表面を濡らす鏡には乙女を貪る悪漢の膝上に乗せられ捕食される少女の痴態がまざまざと映っていた。

 背に肩に張り付く黒髪はシャワーを浴びながらの行為で艶やかに濡れ、身に纏っていた水着は愛撫のなかで半端に剥がされ片方の乳房を含めた白い肌を惜しみなく露出させる格好になっていた。脚は少年の膝を挟むようにして割り開かれ、水着のスリットをずらし晒された秘裂は雄の怒張を咥えこんで溢れた愛液や白濁の精を接合部から滴り落としている。

 

 あまりに卑猥で。あまりに淫靡で。情けなくて、無様で、苦しくて、恥ずかしくて、気持ちよくて、ウレシクテ――。射精の直後に関わらず未だ熱と硬さを残す肉棒に胎を突かれ小さく嬌声を漏らした美遊は、淫らに乱れさせられた少女の姿を満足そうに鑑賞する少年の胸に背を預ける。

 

「……見ない、で。――ィうっ」

 

「鏡を? 美遊を?」

 

「どっちも、ヤ――、うァ……!? 吸っちゃ。やぁ……!」

 

 もはやこうとなっては抵抗の意思が残っているのかさえ怪しいところではあった。拒絶の言葉に愉快そうに笑った少年の落とす口づけと愛撫に何もできぬまま悶えながら、こんな姿は、こんなにも恥ずかしい自分は誰にも見せられないと強く思う。

 クラスメイトにも、友達にも、大好きな家族にさえも――、

 

 ――あぁ、でも。

 

 2人だけ……自らと同様に、魔術師の少年による恥辱を受ける、親友にならば。

 こんな恥ずかしい姿も、見せられるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ。……まだ、やるの……?」

 

「んー、それも良いけど……しっかり堪能させてもらったからなあ。取り敢えず今晩はこのくらいにしとくよ。あまりヤリ過ぎて病みつきになっちゃったらかわいそうだし」

 

 ……それはもう手遅れかもしれないと呟く声は掠れていた。ベッドの上に身を投げ出す美遊は胎のなかに幾度となく注ぎ込まれた精が重たくなっているように錯覚して、光こそ喪えど調律を終えたあとも呪刻の輪郭を残す下腹部をそっと撫でる。

 

 水着はとうに脱がされている。浴室からあがったあとも、暮人の気が済むまで少女は延々と抱き潰されていた。体位を趣向を変え、放課後暮人の住居に訪れてから深夜の2時を回るまでずっとずっと弄ばれ抱かれ愛された美遊は、口移しで彼から飲まされたミネラルウォーターを嚥下し呼吸を整える。

 ……少年の与える恥辱に、快楽に抗うことは指の数で足りぬだけ犯されてもまだできずにいるし、寧ろ最初の一回でほとんどの弱点を特定された今では拒絶も抵抗も口先だけのものに成り下がっているのが実情だった。

 本人曰く「一度ある程度身体把握してしまえばあとは術式の発情抜きでも2分あれば絶頂地獄に落とせる」とのことだったが……それが過言ではないことは美遊も、この場に居ない親友たちも理解している。させられていた。

 

 下腹部に浮かぶ蛇の紋様、調律を受けるようになって彼に刻まれた呪刻を指でなぞる。

 2対の蛇、ウロボロスの呪刻は調律を用いて少女たち聖杯の器を含めた施術者に刻まれる芥子菜の調律魔術の神髄であり――美遊を、イリヤを、クロエを彼のものにする証でもあった。

 

「……こどもが、できたら。責任は、とってくれる……?」

 

「薬は飲んでもらったしまずそれはないと思うけど、勿論一生面倒を見るくらいのことはするさ。一応は俺も一族の当主だし、財産は女の子や子供複数人を養えるくらいは普通にある」

 

「――そう」

 

 己の頭を撫でる少年の手を受け入れながら、一糸纏わぬ肢体を寝台に横たえる美遊は唇を動かす。

 

「それ、なら。……ちょっと、は、安心……」

 

「――美遊?」

 

 錠剤を飲み下す暮人が視線を向ければ、艶やかな黒髪を枕元に広げる少女は穏やかな寝息を吐いて目を閉じていた。

 軽く息を吐いた彼は裸体を晒す美遊に毛布を被せると、衣服の散乱した寝室の床から自らの服を回収し身支度を整え玄関に向かうと、いつの間にやらリビングで机に腰を下ろしていた少女を一瞥する。

 

 健康的な褐色の肌、片割れと同じ白い髪――暮人が調律を担当する3人の内の1人、イリヤの家で暮らしているはずの彼女は、クロエはにまにまと笑う。

 

「本当に暮人くんも来るのー? 足手まといが1人いた程度で私は気にしないけれどぉ、もしアナタに何かあったらイリヤも美遊も大変なことになっちゃうから勘弁してほしいんだけどニャー?」

 

「別に気にする必要はないさ、十全に準備は整えてる。……それに盤面はおおよそ詰みに近い状況までもっていっている、問題はないよ」

 

「……ふーん? まあ、確かに話を聞いた限りじゃあ負ける要素もなさそうだけど……、今日は美遊の番だったのにこうして『デート』に連れ出すのも気が引けちゃうなー」

 

「早朝には帰れるだろうしなあ、朝可愛がるから問題ないだろ。クロエも混ざるか?」

 

「……ちょっと、だけ、ね?」

 

 目を泳がせ頬を赤らめさせる少女と言葉を交わす暮人は目を細めて笑い、玄関の扉を開くと外へと繰り出していく。

 

「それじゃあ、とっとと済ませるか……厄介な害獣は、駆除しておくに限る」

 

 



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爛れた目覚め、あるいはイリヤが半ギレで乗り込む前の夜

おまたせ
書けば出る教、水着イリヤ宝具2にしたいので投稿です



 エインズワーズという一族がある。

 

 この世界ではとうに滅び、時とともに忘れ去られていったひとつの魔術基盤を極めた魔術師。

 並行世界の冬木において聖杯戦争……英霊の力を封じたクラスカードを用いての戦いで万能の願望器である聖杯を巡り魔術師で争い合う儀式を執り行っていた彼らは、街ひとつを壊滅させる災害の後に神稚児と呼ばれる少女を発見する。

 

 ()()()()()、そんな執念(せいぎ)を掲げ神稚児の少女を追うエインズワーズ……魔術師殺しの助手を務めた少年によって並行世界へと逃れた美遊を巡っての争いは、世界ひとつ越えて彼女を取り戻しに来たイリヤたちも加わり非常に熾烈なものとなった。

 何度も限界を超えて。幾つもの不条理に叩き落されて。偶然と必然を積み重ね奇跡を起こし、エインズワーズを打ち破った少女たちは、無事に友の、家族の待つ世界へと帰還して。

 

 エーデルフェルト邸の主、クラスカードを発端として巻き起こった様々な異常を解決したルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが屋敷を少女と何人かの使用人に預けロンドンに報告しに戻ろうと準備を整えていたとき、朝食を摂っていた美遊は気付いた。

 

『……味が、しない……?』

 

『──あいたぁっ!?』

 

 それと時を同じくして、白い少女もまた目を覚まし洗面所に足を運ぼうとしたところで自室の扉にぶちあたる。

 

 

 

 ──少女たちを襲った異変。

 それこそが、調律師を名乗る少年と巡り遭うこととなるきっかけの出来事だった。

 

 

 

 

 

『初めまして。君たちの調律を担当する芥子菜暮人、15さ――じゃない、これでも26だ。まあ魔術師に若作りはよくあることだからそこは気にしないでくれ』

 

 美遊のみならずイリヤまで心身に異常が発覚しているのを知り、衛宮切嗣と連携してロンドンと冬木の行き来を繰り返してきた遠坂凛に「女の子の敵みたいな系列だけど腕は確か」といって教えられたマンションで、調律師と名乗って3人の少女を出迎えた白衣を纏う魔術師はうっすらとした笑みを浮かべて。

 

『……お医者さん?』

 

『まあ、これが適切な服装であると判断したのは事実だけどね。僕はただの魔術師だとも』

 

 カルテをずらりと並べたデスクを見ながら問いかけたイリヤに微笑んでは白衣を着てはいるがこれは施術前の聴診に必要なだけで医師をしてる訳ではないと説明しながら、彼は淡々と状況を説明していった。

 

『3人の聖杯、クラスカード、英雄王ギルガメッシュの顕現、並行世界の移動、少なくともこの世界では疾うに滅んだエインズワースの暗躍……。僕自身この荒唐無稽な――いや失礼、一介の魔術師の理解からあまりに離れた遠坂やエーデルフェルト、バゼットからの情報を鵜呑みにしている訳じゃないが。それでも、実際に君たちの身に起こった異変についてある程度の考察と改善に臨んでやれるくらいのことはできる』

 

 その事象を、彼は聖杯化と呼んだ。

 

 魔術爺の礼装、クラスカードの英霊たちの力の限界を超えた行使。神話の再演とまで言うべき死闘、そして極めつけに並行世界の移動──、人の身で為すにはあまりにも大きな奇跡は、少女の持つ願望器としての性質を露にしそして余分な人間としての要素を削ぎ落とすようになったのだと。

 

 美遊は味覚、そしてイリヤは視覚に影響を及ぼし遠近感を掴めなくなっていて。このまま症状が進めばよくて記憶や一部の身体機能の喪失、最悪心身を喪っての聖杯化へと繋がるだろうというのが少年を含めた複数の魔術師の見立て。

 

 とはいえそれも、何もしなければの話。既に聖杯として溶けつつある機能もまた、自分の調律がうまくいけば自然に快復していくだろうと少年が語るのに、イリヤは一瞬だけ顔を明るくしたが──けれど彼女たちには、どうしても素直に喜ぶことができなかった。

 

 少女たちは知っていた。『存在そのものの情報を書き直す』技術を求めるにあたって奔走した魔術師殺しが真っ先に見つけ出しながらも、娘たちに紹介するまでに延々と悩まざるを得なかった調律の一族の魔術基盤を。

 

 ──性交(セックス)によって発動される性魔術。凛が「女の敵みたいな系列」とまで評した理由を、彼女たちはよくよく理解させられることになる。

 

 

 

「……ん」

 

 

 

 聖杯化は刻々と進行する、少女たちに拒否する選択肢はなかった。調律の準備は段階を踏んで進められる。

 初日の採血と身体測定、唾液の摂取を終え──暮人が初日だけは白衣を着ていたのはこうした行為をイリヤたちに医療行為と割り切らせる意図もあったらしい──定期的に課せられたのは少年から渡された薬物の服薬。それ以外の要素に魔術師が干渉することはなく、最初の調律は滞りもなく終わった。

 

 ……未知の快楽を経験した数日の間は顔を真っ赤にして寝込んでいたイリヤが、半年あまりが過ぎた頃には「私あのときはハジメテ以上のこと経験するのとか全然想像つかなかったんだけどあれって凄い加減(ヤサシク)されてたんだね……」と遠い目になって語っていたときには達観のようなものすら感じた美遊である。

 気付けば依存と指摘されても否定しきれないくらいには少年との爛れた時間が日常を侵食されていた彼女には頷くことしかできなかった。

 

『──、どうした、もう限界か? 御褒美が欲しいって言ったのはそっちだろう』

 

 実際、暮人と過ごす日々に反感を抱く要素は薄い。

 ……14にも満たぬ齢で経験するにはあまりに苛烈な性行為の数々が日常のものとなっているのに危機感はないでもなかったが、それを除けば少なくとも少女たちの生命与奪を握る立場である少年が彼女たちやその親類に危害を及ぼすことはなかったし、聖杯という万能の願望器を狙う魔術師たちとの抗争ではバックアップも受けている。

 魔術の行使にあたって魔術師が己の体も含め様々な要素を消費させることも理解している。少なくとも世界を飛び回っていたイリヤの父や遠坂が他に少女たちを担当する調律師を見出せなかっただけの難度の調律を日々こなす少年に対しては感謝の思いも強かったが――不満は、ないでもなかった。

 

『やぁ、らってぇこんな……! おかしく、なっちゃっ。ァあ……!?』

 

 調律にあたり服薬を拒否しようとした美遊に対する倉庫裏に呼び出してのお仕置き絶頂地獄、白黒姉妹わからせ半日コース、魅了の術式を用いた魔術師に発情させられた3人をラブホに連れ込んでの解呪(4P)、たまに昂ぶりが効かなくなった調律師に呼び出されての丸一日を費す『発散』……。調律の有無を問わず行われる行為の数々を含めた彼と過ごす日々は、睡眠時間や登校の余裕を徐々に削りつつあるという問題を有していたが、もう一つ。

 

 目を覚ませば隣で慣れ親しんだ友人が辱められているという状況が頻繁に発生しているという状況も、どうにかしてほしいところではあった。

 湿ったシーツに包まって一糸纏わぬ身体を早朝の寒気から守りながら。目を瞬いた美遊が間近で感じ取った気配に視線を向ければ、暮人と身を重ねる褐色の少女の姿があって。いつの間にか現れた少女が彼に貫かれ乱れる姿に、驚愕も露わに硬直する。

 

「く、クロ……?」

 

「つぅ、もぉやらぁ。奥こりこりって、やるのダメぇっ、きゅあッア、あ――っっ!!」

 

 電流でも浴びせられたように肢体を跳ね上げ、3人の少年少女が横たわってもまだ余裕のあるベッドを揺らして悶えるクロエは彼女に馬乗りになって腰を打ち付ける暮人と繋がる接合部から淫猥な水音を鳴らしながら嬌声をあげる。

 幾度ものの交わりを経て相応の慣れが生まれても、体格差が変わるわけではない。華奢な少女が脚を開いて迎え入れても尚膣内を埋め尽くすようにして突き立てられる剛直は根元まで挿入するまでもなく子宮口をはじめとした開発され切った弱点を一突きごとに打ち、擦り、圧すことで絶え間なく少女を絶頂へと導いていく――。他の人間には決して聞かせないような甘い声を漏らし、美遊が部屋の外にいたとしても聞こえただろう粘質な水音をたてての抽挿に仰け反ったクロエは びくびくとその身体を震わせた。

 

「んっ、ひゅぁ。あ、あ――っ、ふむ……!」

 

 褐色の肌を朱に染め、割り開かれた脚を断続的にひくつかせて胎に注ぎ込まれる精を受け止める彼女の漏らす呻き声は、身を寄せた少年が開かれた口元から舌をねじこむようにして唇を塞いだことで途切れる。

 上下の口からこれでもかと鳴らされる水音。淫蕩に耳朶を犯す体液の擦れ合う粘質な音に、抽挿が繰り返されるたびに唇の隙間から漏れ出る雌の喘ぎ声に耳を塞ぐのも忘れ見入る美遊の前で、一際強烈な快楽に打ち抜かれたのだろうクロエの肢体が跳ねた。

 

「っ、~~~~~!! む、ぅあ……」

 

 ずるりと、いっぱいいっぱいになって剛直を咥えこむ陰唇から白濁をあふれさせる彼女を貫いていた肉槍が亀頭から精白い糸を垂らしながら引き抜かれる。切なげな悲鳴――さぞ可愛がられたのだろう、全身をあらゆる体液に濡らしたクロエは裸体を晒すのにも構わずぐったりと横たわっていた。

 ベッドに広げられた桃の色素に寄った白髪を体液で湿らせ、形のいい胸元を上下させ荒い呼吸を繰り返すクロエの姿に下腹部の奥が疼くのを自覚しながら、眠るどころではない激しい情事を見せつけられ完全に目を覚ました美遊は随分と性欲の旺盛な調律師に文句の一言でも言おうとして。

 

 上体を起こし開いた口を塞がれ、そのまま再度ベッドに押し倒される。

 

「……!? くれと、くん。ん、んんぅ……っ」

 

 唇を貪られ、次には舌を歯茎に、舌に絡めるようにして挿入される。目を白黒させた美遊は唾液を啜られ、また注がれるのに応じ喉を鳴らして嚥下しながら潤んだ目で少年を見上げる。

 少女の頬に触れる手――。何度も、何度も何度も自分たちを抱いて、弄び、辱めてきた手つきは、硝子細工にでも触れるように丁寧に頬を撫でて。激しい接吻を交わしながら身を覆い隠したシーツも剥ぎ取られるのに美遊は目を潤ませ吐息を吐いたが、彼女の身体はこれからどのようなことをされるのかを鋭敏に悟っていた。

 頬を上気させた美遊の瞳がとろんと蕩ける。唇を離し、口端から垂れる粘ついた唾液の糸で彼女と繋がり合う少年と目が合った――、愉悦と嗜虐的な色を滲ませる彼の視線に、美遊は自らが男を求めるように脚を開いてしまっていることに気付いて。

 

「ぷぁ、まっ、て――、んぅっ、ああぁっ。にッ、ふぅ……!!」

 

 指示されるまでもなくほとんど本能的に脚を開いた彼女が羞恥を覚える間もなく、睦事を見せつけられた昂ぶりを示すように濡れた恥裂へと遠慮なく指が挿し込まれる。肉びらを開き押し入った指先が膣襞を好き勝手に、けれど少女の性感をいやというほど刺激するようにかきまわしていく。

 掌まで濡らすほどに溢れた淫蜜に、もう十分と判断したのか。陰唇から引き抜いた指で陰核を弾かれ声にならない声を出した美遊が絶頂するのを確認すると、暮人はそのまま剛直をずぶ濡れになった股に押し当てた。

 

「ぁ――」

 

 クロエを、そして数時間前には美遊も幾度となく犯し吐精をしながらも未だ猛々しくそそり立つ逸物に衰えは見られなかった。愛液をだらだらと流してひくつく蜜壺に触れた男根の感触に、快楽の奔流に打ちのめされかけながら美遊は身を震わせる。

 最早身体の昂りは隠しようもない。今すぐにでも犯して、気持ちよくしてと懇願しそうになる雌の本能を堪えながら己の上にのしかかる少年を見上げた美遊は、声を掠れさせながら疑問の言葉を投げかける。

 

「どうして、こんな、いきなり……?」

 

「? そりゃあ、構ってほしそうにしてたからな」

 

「っ……そんな、こと」

 

 平然とした調子で、あんまりにあっさり言われるのに答えに窮する。そんなことはないと否定するのは簡単だったが、クロエが快楽に翻弄され貪られる様をずっと見ていたことを悟られていたことに思い当たった彼女には暮人の追及を逃れる自信を持つことができなかった。

 けれどもそんな葛藤さえも少年にとっては愉悦をもたらす要素のひとつでしかないのだろう。身体に聞いても良いんだぞ、と。ずぷりと亀頭を膣に埋めながら気軽に言う彼に、小さく喘ぎ声を漏らして身悶えする。

 

「ふっ、ン……! やだ、なんて答えたって……どうせ、犯す癖に――、んんっ」

 

「否定はしない。趣味の要素も強いけど……()()()()()()()()()()()()()からな、休息と慰安の一環でもある」

 

「それ、は――夜出て行ってたとき、何かあったの?」

 

「ん、気付いてたのか。クロエとちょっと夜のデートしてたんだよ。こっちの方でも所用があったからな、面倒ごとの処理を手伝ってもらって、終わったからご褒美をあげてたって訳だ」

 

 焦らすような手つき。その気になれば10分もかけずに性感帯を把握した少女をセックスのことしか考えられないくらいの快楽漬けにできるだろうに、じれったい反応を楽しむように成長期の膨らみかけた乳房を指で弄ばれるのに身を震わせながら美遊は隣に横たわる褐色の少女に視線を向ける。

 くびれた腰、瑞々しい果実を思わせる乳房、振り乱された白い髪――、精液にまみれ愛液と汗を滴らせるクロエは、あるいは数刻前の美遊と同様に全身くまなく使われたのだろう。幾度となく注ぎ込まれたのだろう精液を膣から溢れさせる彼女の姿は、数刻前の、そして間近な未来の美遊の姿を示すようだった。

 

 ぁ──、

 甘い喘ぎの混じった声、陰核を擦りあげては貝状の媚肉に押しあてられた剛直に少女の身体がきゅんと疼く。

 

 最早盛りのついた猫と言われようとも否定しきれまい。年相応の幼さを残しながらも数ヶ月の交わりを経て快楽の味というものを刻まれた身体は当人さえも翻弄する肉欲で雄によって与えられる快楽と法悦を求めようとしていて。

 

 熱い吐息を吐く。下腹部に刻まれた呪紋も励起していないのに昂る身体の熱に観念したように目を伏せた彼女は、己を押し倒す暮人の背に手を回し縋るように身を寄せた。

 

「っ、ふ――、暮人、くん。おなかが、熱くって、収まらないから……ィ、挿入(いれ)て、いっぱい気持ちよくして、奥まで……!」

 

「……いいね。体を張ってきた甲斐があるってもんだ」

 

 ずちゅりと鳴らされる淫靡な水音。勢いよく己を刺し貫いた怒張に、少女の身体が勢いよく跳ねる。

 

「ッッ、いっ、あ……!? ああっ、ひッう、すごいの、きちゃっ、あ、アっ奥、奥にっ……っううう!?!?」

 

 慣らされた──彼のモノでしか満足できないくらいに躾られた肉穴はほとんど抵抗なく突き入れられた肉棒を受け入れる。とうにずぶ濡れになっていた秘裂は肉ひだをうねらせ咥えこんだ剛直に精液を絞り出さんばかりに絡み付いていく。挿入の快楽に震える膣襞の締めつけに応じるようにして腰が打ちつけられる、開拓され尽くした弱点を的確に穿たれた美遊は速やかに絶頂へと導かれていった。

 

 押し寄せる快楽の波。少年の腕のなかで美遊の華奢な体躯が嬌声とともにのけぞりくねる。間断なく襲う絶頂に甘美な声をあげる彼女は卑猥な音色を鳴らす楽器に等しい。むせかえるような性臭に満たされた寝室には蜜壺を嬲られる度に奥深くまで抽挿された剛直の亀頭が子宮口をノックする度に卑猥な音色が鳴り響いていた。

 肉の打ち付ける音が響く度に啼いて身をよじる少女、はしたなく開かれた脚を己を抱く男の腰に絡め接合部から精液と愛液をこぼしながら発情しきった肢体を蹂躙する悦びを受け止める。

 

「ああ、これは、いい具合だ……、出すぞ、美遊……!」

 

「あっ、く、ゥん……! クれとく、おねがっ、ぁん、なか、なかにいっ、だして……! わたしで、イッて……! いいッ、あ、クっ、っ~~~!!」

 

 一際大きい水音、雌穴の最奥までつぎ込まれた剛直からどろどろとした精を注ぎ込まれるのに細い喉を震わせて身体が跳ねる。途方もない快楽に火照った頬を濡らす涙、汗ばんだ手を少年の首に巻き付け密着しながら喘ぐ美遊は、直後に下腹部で爆ぜた衝撃に身を揺らした。

 

「っっ、まだ、おっきく……!?」

 

「本気で酷いときほどじゃないけど、今日服用した薬の効能がちょっとえぐかったからな。あと少しシたらそこのクロエも混ぜてやるから、それまでもうちょっと頑張ってくれよ」

 

「ッ――」

 

 ベッドの上で気を失ってたのから意識を取り戻していたクロエが少年の発言に期待と怯えをないまぜにしてぴくりと身を震わせる中、熱と硬度を維持した剛直の一突きに再度絶頂に昇りつめさせられた美遊がシーツを濡らしながら啼く。

 

 その日の夜、調律師の寝室からは2人の少女の嬌声が延々と響き続けていた。

 

 

 

 

 翌日、クロエが自分を置いて暮人の家にあがりこんでしっぽりしていたことに気付いたイリヤが顔を真っ赤にして怒鳴り込んだものの、眠たげに目を瞬かせ両手に花の状態で起きた家主に性的に黙らされることになるのは別の話だった。

 

 



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