がっこうぐらしRTA_生存者全員殲滅ルート (ちあさ)
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本編
キャラクリ~ゾンビ化


全員ぶっ殺すRTAはーじまーるよー。

 

 

巷では全員生存とか友情とかいう甘っちょろいRTAが流行っていますが、この前のハロウィンパッチで実装されたゾンビルートによる主人公勢全員殲滅エンド最速を目指していこうと思います。

 

 

基礎知識として、まずゾンビルートは感染者ルートと違い、完全にゾンビ化して主人公勢の敵として進めることができます。

ゾンビになったらゲームオーバーじゃないかって?それがこの前のハロウィンパッチで特定の条件下で特殊なゾンビになってプレイできるようになったんですね。

まずステ振りですが、『体力』特化の感染者と違い、このルートでは『知力』全振りです。

そして初期値『知力:10』でのみ取れる『精神異常無効』を取ります。

これは従来だとイベントや戦闘における正気値減少を無効化してくれる素敵スキルですが、キャラクリ時にしか取れず、また他のステが最低値になるのでよっぽどのマゾじゃない限り知力全振りする人はいません。プレイヤーの正気値とか中盤以降は割とどうにかなるのではっきり言って死にスキルですからね。

ですがゾンビルートに入るには必須のスキルです。というか誰もとる人がいないから活用されるようにというテコ入れとして今回のゾンビ化が実装されたんじゃないかな。

 

 

ちなみにキャラはランダムでサクッと決めます。どうせキャラ固有の技能スキルはゾンビ化した時点で消えますので。身体スキルは消えないので『盲目』持ちとか出ない限り大差ないです。

と言ってたら『盲目』持ちの雪野しずくちゃんを引いてしまいました。

このゲームのランダムキャラとか300人ぐらいいるだろうになんでレアキャラがこんなところで出るんだよ!

でももうタイマー回ってるし、割とRTAで愛用されてるしずくちゃんを使えば視聴者が増えるだろうというゲスい判断で続行です。

というわけで何かとRTAではおバカキャラが定着してるしずくちゃんですが、このRTAでは知力10のインテリしずくちゃんに大変身です。

 

 

 

そんなわけでキャラクリも終わったしスタートしましょう。

 

 

 

知力高いと割と知的な場所からスタートします。生徒会室や図書室など。

今回は図書室スタートでしたね。

放課後の図書室では自主勉強をしている生徒がちらほらいます。

外ではすでにパンデミックが始まっているので周りの生徒に声をかけて避難誘導します。

筋力や知力が高い場合は裏ステのカリスマ値が高くなるのでモブが割と言うことを聞いてくれます。

なので近くのトイレに入ってもらって外からバリケードで勝手に出ないように閉じ込めましょう。

内側からバリケードした場合、恐怖や空腹に耐えきれずに勝手に出て死んじゃいますからね(1敗)

通常プレイ時ならともかくRTAでは生存カウントされない名無しのモブなど居ても足手まといにしかならないので無視ですがこのルートだとスタート時のモブ救出は割と必須です。

こいつらは後で大事な食料になってくれますので、制限時間の許す範囲でなるべく多くの生徒を誘導して各所のトイレに閉じ込めましょう。

 

 

そして佐倉先生を途中で確保しつつ屋上イベントに間に合うように3階へと向かいます。

佐倉先生とは別に合流しなくてもゾンビモードには入れるのですが、合流して一緒にイベントを見ることによって多少好感度が稼げます。

どうせ後でぶっ殺すのに好感度が関係あるかだって?好感度高いとゾンビになって襲った時、こっちへの攻撃を躊躇ってくれるので難易度が下がるのじゃ。

ちなみにくるみちゃんとりーさんは好感度関係なく容赦なくぶっ殺そうとしてくる戦闘民族とサイコパスさんなので注意。

どうせ屋上へ行くイベントまではタイム固定なので合流しておきましょう。

そしてくるみちゃんが合流、先輩ぶっ殺しイベントから自由行動可能になるので、念願のゾンビ化するために偵察に行くといいソロ行動開始です。

通常だと佐倉先生たちに止められるのですが知力高いと言いくるめれます。

ということでサクッと外にダイブして階段下にいるゾンビ達に捕食されましょう。でも部位欠損とかになると戦闘力が下がるのでちょっとだけ噛まれるだけ。

無事に噛まれたらゾンビ化です。

体力が最低値なので秒でゾンビになります。

本来ならここでゲームオーバーですが、先ほど説明した通り『精神異常無効』を持っている場合、意識がそのまま残り、思考するゾンビへとなれます。

ちなみにゾンビに噛まれる際、脳みそ食われたら『精神異常無効』が消えるのでゲームオーバーになるので注意(1敗)

 

 

さてさて、このゾンビ状態ですが、画面が灰色になって、生存者だけが赤く見えるようになります。

しかも壁越しにもうっすらと赤っぽく見えるので、隠れている生存者もバッチリ探し出せます。本来ならな。

だけど『盲目』持ちのしずくちゃんだとその範囲が3メートルに制限されてしまいメリットが駄々下がりです。

『空間把握』スキルの『よく聞く』モードを使えば壁などを無視してかなり広範囲まで知覚範囲が伸びて逆にメリットになりますがRTAなので立ち止まることなど許されないのだよ。

ちなみに『甘え上手』や『合気道』は技術スキルなのでゾンビ化と同時に消えてなくなります。甘え上手って技術だったんだね、天然さんじゃないんだね、しずくさん恐ろしい子。

 

 

そして通常モードと違ってスタミナゲージがありません。

その代わり『血の渇望』というゲージがあります。

このゲージは時間経過や現在の体力値によって減少します。

ゾンビだと体力値は減っても自動的にモリモリ回復します。

その代わり体力回復時に『血の渇望』ゲージが減っていきます。

何もしなくても少しずつ減ります。

このゲージ量は持久力と知力の合計値で決まります。

そして生存者を捕食することによって回復します。

いうなれば『腹ペコ』ゲージです。

なくなったらゾンビの本能に抗えなくなり、思考能力がなくなってゲームオーバーになります。

モブの生存者なんてプロローグ以降ほとんどいなくなりますので、いかに生存者を効率よく見つけるか、そして過剰捕食しないように計画立てて管理するかが大事なのです。

なのでプロローグのトイレ監禁は必須なのですよ。人間牧場として。

 

 

ゾンビ化直後は噛まれたダメージで血の渇望ゲージが減少しているので早速トイレを活用します。

バリケードをちょっとずらしてトイレの中に入るとモブ生存者は個室に隠れているので一人ずつ上の隙間から引きずり出します。

お、この個室3人も入ってるんだね、しかも男1人に女2人とかなんて両手に花。

嫉妬心に駆られて男を引きずり出したら残った女2人が発狂してお互い殺しあったり、覚悟決まっちゃって思わぬ反撃を食らったりするのでちゃんと女の子の方を捕食しましょうね(2敗)

 

 

とりま、血の渇望ゲージも満タンになったので、あとはいかに主人公勢を早く殺してクリアできるかですが、まず主人公勢全員殲滅ENDの条件を再確認です。

殺す対象ですが、

・丈槍 由紀

・恵飛須沢 胡桃

・若狭 悠里

・直樹 美紀

・佐倉 慈

・祠堂 圭

・柚村 貴依

この7人になります。

 

 

チョーカーさんこと柚村貴依はトイレに立てこもってるので簡単に殺せそうですが、実は3日目の昼までに殺さないと空腹に耐えきれずに勝手に出てって死んじゃうのでカウントされなくなります。(3敗)

また、食料を与えて生存時間を伸ばそうとした場合、3日目の夜に主人公達に見つかって救助されてしまいます。

その場合、強キャラ化してくるみちゃんとコンビを組んで襲ってくるようになり手に負えなくなるので、トイレにいる間に殺しましょう。(2敗)

 

 

そして弱そうな佐倉先生は7日目までに殺さないと雨ラッシュで死んでこれまたカウントされずに終わります。(12敗)

ここでなんで12回も再走もしているかなのですが、実は殺そうと思えば1日目からさっくり殺せるのですが、そうした場合みーくんと圭ちゃんの救出が遅れてタイム的に致命傷なのです。

圭ちゃんが立てこもっている駅やみーくんのいるショッピングモールへ行くための手段として佐倉先生の車があるのですが、佐倉先生が死んだ場合、運転技術が拙いくるみちゃんやりーさんが運転することになり、大幅にタイムロスとなります。

なので佐倉先生が生きている7日目までにみーくんと圭ちゃんの救出が完了する必要があります。

 

 

この説明でおやっと思った方、がっこうぐらしやりこんでますね。

そう、通常では圭ちゃんの救援要請は大抵雨の日以降なので前倒しする必要があるんです。

 

 

そこがこの全員殺害RTAでの難所なんですよ。

ではイベント前倒しの条件達成のためプレイ開始!ってもう配信時間いっぱいですね。また枠取って続けますので次回も見てください。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

なんでこんなことになってしまったのか。

 

 

悪夢の始まりは唐突だった。

今日は朝から事故のニュースとかが多くて物騒だとは思っていた。

だけどこんなことが起こるとは。

 

 

いきなり生徒たちが襲いかかってきて他の生徒を食べている姿を見て、私は恐怖に駆られ、止めることも生徒たちを避難させる事もできず立ち尽くしてしまった。

そんな呆然としている私を彼女、雪野しずくさんが助け出してくれました。

 

 

彼女は私の腕をつかみ、引っ張りながらも他の生徒たちへトイレへと避難するように呼びかけ、そしてトイレの前にバリケードを手早く作っては、また他の生徒たちを助けに走りました。

その間、教師である私は混乱のあまりただその姿を見ていることしかできませんでした。

普段から頭の回転が速く、学校一の才女としてカリスマ性を発揮していた彼女はこんな時でも率先して事態へと対処していたというのに。

 

 

そして私達が屋上へと避難した後、彼女が逃げ遅れた生徒がいないか探してくると言って出て行った時も、私は止めることができませんでした。

その直後、彼女の悲鳴が聞こえた時もどこか他の世界の出来事のように現実感を喪失したまま座り込んでいるだけでした。

 

 

なんで、なんで私が生き残ってしまったのか。

そしてしずくさんが盲目で目が見えていないと分かっていながらなんで一人で行かせてしまったのか。

 

 

夕方になり、やっと現実感が戻ってきてそんなことばかり考えていました。

そして風に当たって気分を少し変えようと、ふらりと、屋上の手すりから下を見下ろしたとき、私は見てしまいました。

 

 

校庭を校門に向かってふらりふらりと歩いているゾンビと化してしまった血濡れの「しずく」さんを。

 

 

そこで私は胃の中の物を全て出してしまい、そのまま意識を失ってしまいました。

 



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学校出発~ショッピングモール殲滅

振り向けばそこにいる、あなたの後ろにゾンビさんなRTAはーじまーるよー。

 

 

さて、今回はゾンビ化して初のお食事が終わったところからです。

 

 

まずは圭ちゃんの救援イベント前倒しのためにショッピングモールへ行く必要があります。

でも当然ながらゾンビは足が遅いです。

まず速度が歩行速度が半減しています。

そして致命的なのが走ることができないことです。

移動速度は体力と持久力を上げることで上昇しますが当然両方とも最低値なのでゾンビ化直後は激遅です。

なのでレベルを上げて地道に鍛える必要があります。

ゾンビではレベルは生存者を捕食することで上げることができます。

体力と持久力を上げまくればLeft 4 Deadの走るゾンビ並の速度が出ます。

速度を鍛え上げたゾンビしずくちゃんは【空間把握】による察知能力と合わせて『がっこうぐらしのリッカーさん』という名誉ある二つ名で呼ばれていますね。

そんなわけで序盤は足が非常に遅いので直ぐに移動する必要があります。

 

 

おっと忘れるところでした。

出発前に職員室であるものを手に入れます。

ガラガラガラッと職員室におじゃましま~す。

佐倉先生の机の近くに神山先生の机があります。

探し方は男性7人組のアイドルブロマイドが飾ってある机です。

その机の一番下の大きめの引き出し、鍵がかかってますが、筋力値が増加しているゾンビ状態なら無理やり開けれます。

中にはアイドルの写真集やビデオテープと一緒に古いローラースケートがあります。

これを装備することで移動速度が2倍になります。

つまりゾンビの移動速度半減が帳消しになるチート装備です。

走ることは相変わらずできませんがこれがあるのとないのではタイムに大きく影響しますので必ず手に入れましょう。

それでは早速出発です。

校門を出る前にローラースケートを使うと目立ってしまい、屋上から主人公勢に見られ、生存者と勘違いし屋上から飛び出してきて死亡される可能性があるので我慢我慢。

 

 

よし、校門から出たので早速ローラースケートでスイスイーっと進みますよ。

よーうこそーここへー遊ぼーよパラーダー、いやここは地獄ですね。

こんな死臭漂うパラダイスとか嫌すぎます。

ショッピングモールへ向かうのですが、まだ初日は家に立てこもっている生存者がいるので通り道にいる生存者はタイムに影響がない範囲で倒しましょう。

レベルを適度に上げて体力を上げておかないと移動速度もそうですがHPが低すぎて即死率が高いです。

ショッピングモールは生存者が多いので2~3発ぐらい耐えれるようにしておかないと詰みます。

なので体力5ぐらいまで上げるのが目標ですね。

ただしどれだけ上げてもくるみちゃんのシャベル攻撃を食らうと即死するので注意、まさにゴリラかな(6敗)

筋力値はゾンビ化によって+20の補正が入りますので上げる必要はありません。

初期値でもこの補正で標識柱を装備するとかいう常識を疑うプレイは可能なので。

ただし今回のプレイではもし拾えても装備しませんよ。

目立ちまくりますし技能スキルが取れないゾンビ状態だと隙が多すぎてまともに戦えれません。

なので目立たず一人ずつ確実に倒せる武器がオススメです。

 

 

解説中ですが生存者が居そうな施錠された家を発見です。

武器は移動中にさり気なく拾っておいたマンホールの蓋2つ。

一つを振りかぶって扉へと投げつけます。

序盤から手に入りやすい貴重な攻撃力の高い遠距離武器です。

ゾンビのハイパワーで投げつけられたマンホールの蓋は見事に扉をぶち破り、すかさず中へとおじゃまします。

「突撃!隣が晩ごはん」って番組ありましたよね。

そんな怯えなくていいよ、痛いのはこれが最後だからね。

家族4人を仲良く捕食して出発前に食べたのと合わせて5人でレベルが2つアップと幸先がいいですね。

必死で抵抗してきたお父さんもお母さんもマンホールの蓋で一撃でした。

近接武器としても固くて優秀です。

 

 

こんな感じで適当に捕食しつつ移動するだけなので倍速で飛ばします。

 

 

最短距離を順調に進めば翌日の朝までには無事にショッピングモールへと到着できます。

順調に到着できました(17敗)順調に!到着!できました!

なんで普通の民家でヤクザさんとか古流剣術家とか忍者の末裔とかが出てくるんだよ!勝てるわけねーだろ!ふざけんな!

 

 

とりま、目標の体力5までレベル上げできたので良しとします。

これで一般人相手なら多少囲まれても大丈夫です。

なのでもう日本刀で斬りかかってこないでね、本当にお願いしますよ!振りじゃないですからね!

投げつけたマンホールの蓋を真っ二つに切り裂かれた時は怒りのあまりにこっちもゲームディスクを真っ二つに折ってしまいましたから。

お陰で密林にお急ぎ便を頼む羽目になったじゃないか。

 

 

さてショッピングモールについたので圭ちゃんのイベント前倒し条件を整えますよ。

まず圭ちゃんが救難放送をするためにはショッピングモールから駅へと移動してもらう必要があります。

圭ちゃんがショッピングモールから旅立つ条件は。

 

・圭ちゃんとみーくん以外の避難グループの全滅

・備蓄物資の不足

 

この2つです。

 

 

生存者はこの段階で圭ちゃんとみーくん以外に8人ほど居ますが、現状だと数部屋に別れて立て籠もっているので一部屋ずつ制圧すればオーケーです。

ただし注意しなければいけないのは現段階では圭ちゃんとみーくんはモブ生存者として配置されているため、見分けが付かないことです。

生存者やただの感染者なら出会うことでイベント発生して圭ちゃんとみーくんとして現れますが、ゾンビ状態ではイベントは起きずただの食料扱いなのでモブだと思って誤って殺してしまうとそこで終了です(2敗)

見分ける方法は圭ちゃんとみーくんは2人だけで部屋に居ますのでそれが目安です。

他にも2人だけの部屋もありますがそっちは男女カップルでお楽しみ中なのでそのまま極楽に連れて行ってあげましょう。ホラー映画のお約束です。

 

 

そして備蓄物資不足に関しては、圭ちゃんとみーくん以外の部屋にある物資を全部破壊すれば達成です。

捕食と同時進行でやればいいので簡単ですね(5敗)

破壊するときに盛大に音がなるので他の生存者に気づかれて殺されるとかいうガバプレイなんてしませんよ、今回こそは。

 

 

ではまずは立て籠もっているエリアへと行きましょう。

ゾンビ状態なので他のゾンビに絡まれることもなく、正面から堂々と向かうことも可能です。

ですがそれをした場合、立て籠もりエリアのバリケードがあるのでそれを破壊、生存者に気づかれるかーらーのーお約束のタコ殴りで死亡するので(2敗)、他のルートでこっそりと忍び込む必要があります。

知力か直感が高いと建物に忍び込む際の隠れ移動ルートが発見できます。

知力10のインテリしずくさんだと余裕ですね。

今回は建物の外壁を登るロッククライミングで行きます。

本来ならそれなりの筋力が必要ですが、豪腕ゾンビなら楽勝です。

スパイダーマン並の手際で外壁を登って立てこもりエリアにある部屋の窓へと到着です。

おっとここは女性二人組の部屋ですね。

まだフラグが立ってないのでモブ顔ですが二人とも手を繋いで何やら壁へと耳を押し当てているようです。

ゆるゆりなこの部屋を襲うと終わるので慈しみの目(盲目だが)で見守りつつ他の部屋へとシャカシャカ移動しましょう。

 

 

移動した先の隣の部屋はズッコンバッコンお楽しみ中な男女ペア。

某MMORPGをプレイしていれば毎年嫉妬マスクを入手していただろう深い悲しみを背負った走者の怒りの一撃を見よ。

換気のためか開いたままの窓から侵入してこっちに気づきもしない二人の足りない頭を本当に足りない頭にしてあげました。

アンアン!おうふっ!と煩いんだよ。

こちとら盲目ゆえの聴覚過敏キャラだから普通の音も大音量で聞こえるっての!リアルでヘッドホン壊れるかと思ったゾ。

 

 

備蓄物資の破壊は後回しにして、静かになった部屋を出て他の部屋を殲滅に行きます。

サイレントキルをする必要からマンホールの蓋を使用できず、素手で戦う必要がある分、反撃などで多少ガバりかけましたが、無事殲滅完了です。

減った体力はゾンビ特有の回復力で血の渇望ゲージを犠牲にしつつ回復していきました。

素早く終わらせる必要から捕食を後回しにしましたので終わった頃にはゲージがギリギリになって焦りましたがなんとかそっちも回復させました(1敗)

 

 

最後に集めた物資はマンホールの蓋でぺしゃんこに潰して脱出です。

これで圭ちゃんイベント前倒し条件達成です。

嬉しさのあまりに窓から出る際に盛大に地面へダイブして死ぬかと思いましたが、脱出前にレベルアップで体力を増強していたのでなんとかギリギリ生存。

実はこれはタイム短縮の為の緻密に計算されたプレイなんですよ!

本当なんですからね!

 

 

ちょっと頭を冷やしてくるために今回はここらで中断します。

次回もまた枠取るのでよろしくおねがいします!

 

 

 

これで圭ちゃんも旅立てるし、みーくんはお留守番頑張ってくれるはず。

順調に行くのって素敵だね!

 

 

 

++++++++++

 

 

 

この訳のわからない騒動に巻き込まれた翌朝。

目が冷めたら圭が顔を赤く染めて壁に耳を当てていた。

 

「どうしたの?圭」

 

私が聞くと、圭はしーっと口に指を当ててから私へおいでおいでと手招きする。

 

「隣、すごいよ、みき」

 

一体何が凄いのだろうか、もしかしてまたアイツラが襲ってきたのだろうか。

でもそんな様子はないけど。

 

訝しがりつつも私は圭の隣へと寄って壁に耳を押し当てる。

 

 

!!!!!!!

 

 

何!何なの!

 

 

隣から男女の嬌声が聞こえてくる。

 

「これってさ、やっぱりアレだよね」

 

圭の言うアレの意味が瞬時に理解出来、私の頬も真っ赤に染まってしまう。

 

「なんで、なんでこんな時に」

 

「そりゃこんな時だからじゃない?生存本能ってやつ」

 

そう言って圭が私の手を取り指に指を絡ませてくる。

 

指からむずかゆい感触が体中を駆け巡り思わず身悶えしてしまう。

 

「ねえ、みき。もし無事に生き延びれて、素敵な男性と出会えたら・・・私達もああいうことするんだよね」

 

「そんなの・・・知らないよ」

 

圭が見知らぬ男性とそういうことをしている姿を想像すると何故かチクリと胸が痛くなっった。

 

そしてそのまま二人で隣の睦言を聞いていると、唐突に鈍い音がしたあと、急に静かになった。

 

え?

 

私達二人は不思議に思いつつ耳をすませて聞いていると、ガチャリと扉が開いて何かがゆっくりと廊下に出ていく音がした。

 

その後、幾つかの悲鳴や物が倒れる音などが続いたあと、何かを潰すような大きな音が何度も立て続けに響いた。

 

 

私達は血相を変えて慌ててこの部屋の扉の前にダンボールを積み上げて入れないようにした。

その後、窓が割れる音がしたので急いで外を見ると、地面に血まみれの何かが倒れているのが見えた。

 

 

「見て、血の手形が付いてる。アレ、ここまで登ってきたんだ」

 

圭が指し示すところを見ると下からこの部屋の窓枠まで、そして隣の部屋へと赤い手形が付いていた。

 

「もしかしたら私達が最初にやられてたのかも。でも隣の部屋が声を上げてたから隣に向かった?」

 

思いついたことを圭に言うと、そうかもしれないと返事が来た。

 

「他の人達、みんなやられちゃったのかな」

 

震える声で圭に聞いてみる。

 

「分からない・・・でもこの高さから落ちたってことは、もう大丈夫じゃないかな」

 

圭の声も恐怖で震えていた。

 

 

 

外壁をここまで登ってこれるのがいるなんて思わなかったけど、もう死んでいるなら大丈夫。

圭と私はお互いにそう言い合いながらなんとか今にも恐怖で壊れそうな心を必死に守ろうとしていた。

 

 

 

でも私達は見てしまった。

 

 

 

ビクンッと体を痙攣させたかと思ったら再び立ち上がりふらふらと歩いていくアレノスガタヲ・・・。

 

 

 

ココハ、モウ、アンゼン、ジャナイ。

 

 

 

ハヤク・・・ニゲナイト・・・。

 



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ショッピングモール~学校へ

多少のガバには目をつぶろう、だって盲目なんだもんなRTAはーじまーるよー。

 

 

ショッピングモールからの落下の大ダメージで血の渇望ゲージがカツカツになってましたが、往路でタイム短縮の為に見逃しておいた生存者宅にご訪問でなんとか多少回復です。

このゲーム、立てこもってる生存者はシュレディンガー方式で侵入するまでどんな生存者かは確定していないのです。

なので雑魚な子供だったり、武装した大人だったり難易度の振り幅が大きいのが難点。

そして私は生存者ガチャ運が良いのか悪いのかやたらとレア生存者を引いてしまい再走を余儀なくされます。

普通の民家の玄関を開けた先に米軍の特殊部隊が居て、廊下にバリケードを設置して重機関銃やアサルトライフルを乱れ撃ちしてくるとかどんなバトルフィールドですか。

もちろん強生存者を倒した場合のメリットも大きいです。

重火器や特殊な薬品、機器類などを入手するチャンスなので。

ただRTAでは主人公勢と交流する気がないので武器以外は必要ありません。

 

 

今回は白衣を着た研究者が2人立てこもっていただけなので比較的無事に制圧できました。

ショットガンで胴体撃ち抜かれたのを無事と言うならばですが。

上げてて良かった体力値。

HPミリで生き残ってカウンターのマンホール蓋がクリーンヒットしたから良かった。

そして生存者が2人だったので捕食収支が何とかプラスで、これで学校までは持たせられます。

戦利品はショットガンと抗ウイルス薬です。

ショットガンは8発まで装填できるドラムマガジン式のオート型ですが残弾3発(ランダム)です。

明らかにゾンビ対策武器じゃないですかやだー。

 

 

ですがショットガンとは良い武器拾いました。

ゾンビモードでは普通のゾンビと違って武器を装備できるのですが、生存者と違って技能スキルが取れない分、使いこなすのが難しいのです。

鉄パイプや刀などもただ大振りで振り回すだけです。

技能スキルがないので刀なんか数回使っただけでポッキリと折れてしまいます。

遠距離武器も前方向に狙いもつけずに投げつけるだけなので、ボールなどの小さいものだと全く当たりません。

だからこそデカいマンホール蓋は当たり判定が大きく攻撃力も高いという素敵武器なのです。その分騒音が酷いけどな。

そして銃も装備可能ですが、当然撃つ方向ぐらいしか狙いがつけれません。

というより構えている方に撃つだけで移動などで手がぶれたり反動であっちこっちに弾が飛んで行ったりして真正面でも当てることは難しいです。

なので普通に接近して耐久性の高い鉄パイプなどを振り回した方がよっぽど強いです。

ですがショットガンは拡散範囲が広いので狙いをつけずに撃っても当たります。

今回のルートでは殺害対象は軍隊とかではなく普通の女子高生(ただしゴリラは除く)ですのでカス当たりでも大ダメージですし、狭い室内などで使用すれば一気に数人ヤることもできます。

残弾3発は残念ですが、なぁに殺害対象はたったの7人。

しかも撃ち終わったあとは鈍器としても使えるし是非持っていきましょう。

 

 

もう一つの戦利品の抗ウイルス薬は学校でも手に入るし、そもそも着ていた制服が今までの戦闘でボロボロになっているため収納スペースが無くなったので捨てていきます。

丁度いいので制服は脱いでいきましょう。

制服は防御力1で、ポケットに小型のアイテムを数個収納できる効果があります。

また、服を着ていると正気値が時間経過で回復していきます。

逆に服がボロボロだったり全裸だと減っていきます。

ですがゾンビに正気値はないので防御力と収納以外関係ありません。

更にバグなのか仕様なのか服を脱ぐと何故か防御力が若干上がります。忍者かな?

きっと動きやすくなって動作が機敏になるんですね。

 

 

こうして右手にマンホール蓋、左手にショットガンを構えた全裸のゾンビがローラースケートを履いて学校目指してスイスイーと滑っていきますよ。

FPS視点なので自分では見れないのが非常に残念です。

見えるとR-18になるから仕方ないね。

 

 

ではゲージのめども付いたので急いで学校に戻ります。

今後は主人公勢が圭ちゃんとみーくんを救出に行くまで待つだけなので特に急ぐ必要はないです。

なので残った生存者を捕食しつつレベル上げしながら帰ればいいのですが、序盤で盛大なミスをしでかしました。

圭ちゃんからのSOSはこれからだいたい半日から1日以降でランダムですが、実はラジオを用意し忘れてたんですよね。

本来ならショッピングモールに行く前に主人公勢が根城にする放送室にこっそりと通称クラシックチャンネルへと周波数を設定したラジオを置いておくのですが、ローラースケートを忘れそうになり焦ったためラジオのことはすぽーんと抜けてました、てへぺろ。

大丈夫、この程度なら巻き返しは可能です。

 

 

 

帰り道は他に特にないので倍速で送りつつまた次回枠に移行しますね。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

「なんとか無事に出れたね、みき」

 

 

「うん、でも食べ物とか殆ど持ってこれなかったし、どこかで手に入れなきゃ」

 

 

朝方に襲ってきた化け物に見つからないように昼まで息を潜めていた私と圭は、今後またあの化け物が戻ってくる前にショッピングモールから逃げ出すことにした。

恐る恐ると他の人たちが居た部屋を覗いたら想像通りの吐き気のする光景が広がっていて、また物資も粗方破壊されていた。

元々女子高生二人だけだからと立場の弱い私たちにはほんの少しの食料と水しか渡してくれていなかったため、もはや数日分持つか持たないかしか手元には残っていない。

そういう意味でもここには残ることはできないと出ていく覚悟を決めるしかなかった。

 

 

それでも出るまでに地下の食料品売り場から回収出来たらよかったのだけど、照明が落ち、更に多数の奴らの歩く音や呻き声が聞こえたため断念するしかなかった。

 

 

「住宅街に行こう。泥棒になっちゃうけどさ、きっと空き家とかで食べ物見つけられるよ」

 

 

圭の意見に私も賛成し、恐る恐ると"ナニ"もいなさそうな家を探している。

 

 

ワンッ!

 

 

ショッピングモールから一緒に逃げてきた犬の"太郎丸"がドアの空いた家の前でこっちへと合図を送るように一声吠える。

始めは連れて行こうかかなり悩んだ太郎丸だけど、頭がいいのか無駄に吠えたりせずに、そして食べ物がある安全な家を教えてくれたりと実に役に立ってくれる。

 

 

私たちはその家にも何かあるんじゃないかと期待して入ったら、マンホールの蓋に頭を潰された二つの遺体があった。

 

 

その凄惨な姿が朝方の化け物に襲われた人たちの姿と何故かダブって見えて、思わず吐き出してしまった。

せっかく食べた大事な昼食が無駄になっちゃった。

 

 

圭も顔色を悪くして、だけど何かないかと周りを探していたら、遺体の傍から薬品箱を探し出してきた。

 

 

「ねぇ、みき。これ・・・見て・・・」

 

 

中身を確認していた圭はその中にあったのであろう書類を読んだ後、真剣な顔つきをして私に渡してきた。

 

 

そこに書かれていたのは今回の騒動に関する実験のレポートであった。

そう、実験。

これは、この悪夢のような騒動は元々計画された実験であった。

そして、騒動が起きた後、各地で実験データを採取して、この地区の実験を担当している「巡ヶ丘学院高等学校」へと合流するようにとの指示が書かれていた。

巡ヶ丘学院高等学校、私たちの通っている学校だ。

あの優しかった先生達がこんな酷いことを起こしたなんて考えたくもない。

 

 

「うそ、だよね?みき?こんなのでたらめだよね」

 

 

嘘だと思いたい。でも、ここに動かぬ証拠がある。

 

 

「許せない」

 

 

生徒に優しくしてくれた、神山先生、そして佐倉先生。

担任の先生もみんな、全部嘘だったんだ。

私たちを実験動物にしか見てなかったんだ。

 

 

きっと今頃、化け物に食われた生徒たちを見て、実験が成功したって笑っているんだ。

 

 

きっともうお父さんもお母さんもみんな死んでいる。

 

 

なのに先生たちはのうのうと生き延びてるんだ。

 

 

ワンッワンッ!

 

 

太郎丸が部屋の奥から呼んでいる。

部屋の奥にある床下収納の中に頑丈な箱が隠されていた。

中を開けるとなにやら全体的に丸っこい形の変なのが入ってた

 

 

「なんだろうこれ?」

 

 

一緒に説明書みたいなのが入っていたので読んでみると、これは銃らしい。

 

『P-90』

 

小型で訓練を受けてない研究員用に用意された反動の少ない特殊な弱装弾を装填した連射できる銃だった。

 

 

私はその銃を抱きかかえ、弾薬マガジン?が入っているバッグを箱から出して肩にかける。

ずっしりとしたその重みが今は何故か私に心地よさを与えてくれる。

 

 

"殺せ"

 

 

どこからか声が聞こえてくる。

 

 

"裏切ったあいつらを殺せ"

 

 

なんで私たちがこんな目に会うのだろう?

 

 

"それは君たちが弱かったからだ"

 

 

そうだね、私は今まで何もできなかった。

 

 

"でも今はできる。その銃は神だ。それで殺せない奴はいない"

 

 

そう、私が持っているこの銃こそがこの地獄で頼れる唯一の神様だ。

 

 

"殺せ"

 

 

そう、殺さなきゃ。

 

 

"今度はお前が奴らを裁く番だ"

 

 

もう、弱い私はどこにもいないんだから!

 

 

圭が私の肩を掴んで何か言っている。

大丈夫だよ、圭。

私が全部守るから。

 

 

"みんな殺してしまえ"

 

 

うん、そうだね。

私と圭を裏切ったみんなみんな殺さなきゃ!

 

 

「行こう、学校に!」

 

 

私は圭の手を取り、走り出した。

 

 

「みんな!待ってて、今行くから!」

 

 

はやく!はやくいかなきゃ!

学校に着くのがこんなに待ち遠しく感じるなんて初めてだ。

 

 

「みんな!みんな!殺してあげる!」

 

 

ワタシタチハココニイマス。



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食事~遭遇戦

パッチやDLCの関係で他の走者とはステータスやスキルの効果、NPCの性能などが違う場合があります。
あれはあれ、これはこれ、心に棚を作りましょう。


要するに細かいことは気にしないで楽しもうぜ。





全て順調にチャートを遂行しているため、淡々としすぎて視聴者が飽きてないか心配になるRTAはーじまーるよー。

 

 

巡ヶ丘学院高等学校よ!私は帰ってきた!

 

 

と、叫んでる暇なんてありません。

正直もう渇望ゲージが尽きる寸前です。

深夜、真っ暗になった校庭を超ダッシュ(走れないので気持ちだけ)で突っ切り、シャカシャカと外壁を登って図書室の窓をぶち破って侵入。

図書室の隣にあるバリケードで封鎖されたトイレに飛び込みます。

そして個室の中でお互いを慰めあいながら合体していた男女カップルを容赦なく頭から咀嚼します。

「もうマミさんは一人じゃないんだお。たとえ死ぬ時だって僕たちはズッと一緒なんだお」

「私、もう一人じゃない。もう何も怖くない」

そんなこと言いあっていたので願いが叶って良かったですね。

私も二人食べて渇望ゲージがほぼ満タンになって嬉しいです。

これが「喰い手良し」「死に手良し」「ネタ良し」の三方良しってやつですね。

食べきるのが後1分遅れればゲームオーバーでしたよ(3敗)

捕食って実は割と時間がかかるんですよね。

でも私は『高速捕食』のスキルを取得しているので一気に食べることが可能です。

これからはイベント進行まで時間的余裕もあるので現状確認とともにゾンビで取れるスキルなどの紹介もしていきましょう。

 

 

現状、私のステータスは

「体力:8」「筋力:1+20」「持久力:1」「知力:10」「直感:1」です。

持久力は渇望ゲージと移動速度にしか関係せず、移動速度は体力をあげても上がるので初期値のままです。

直感もRTA的にはほぼ不要。

動きが遅く生存者にタコ殴りされるゾンビでは移動速度を上げるためとガバ即死を回避するために体力全振りで問題ないです。

部位損傷さえしなければダメージ食らっても動きに支障がないゾンビなので、HPさえ上げていれば被弾しながらのゴリ押しでタイム短縮可能ですからね。

ちなみに以前データ検証のため、レベル上げしまくって体力を100まで上げて、ショットガンのヘッドショットにも余裕で耐えれるぐらい硬くしたプレイをしたのですが。

 

 

『がっこうぐらしのジャック・ベイカー』くるみちゃんのシャベルによる頭部殴打一撃で殺されました。

 

 

他のキャラのシャベル攻撃だと1%ぐらいしか減らないのに・・・。

どうやらジャック・ベイカー、違った、くるみちゃんのシャベルの頭部殴打は完全即死攻撃みたいです。

くるみちゃんの頭部殴打は特殊なカットインが入るのでカッコよくて好きなんですが食らう側としては溜まったもんじゃないですね。

頭部殴打以外では他のキャラの数倍程度のダメージで済むので頭部殴打が発動可能な間合いに入らなければ大丈夫です(8敗)

ちなみに体力8だと頭部殴打以外ならHP満タン状態で1発は耐えれます、盛大に吹き飛ばされますが。

なので即死回避の為には8を目安にしましょう。

ちなみに生存者モードではくるみちゃんを感染させて最強武器チェーンソーを手に入れて渡せば無双してくれます。

あとは定期的に抗ウイルス薬を投与することでラスボス戦までプレイヤーは体育座りで見学しててもクリア可能です。

まさに公式チートキャラの面目躍如。

 

 

 

次に現状のスキルです。

ゾンビは技能スキルは取れませんが、特定の条件を満たすことによって身体スキルが生えてきます。進化的な感じなのでしょうかね。

習得済みのスキルは『高速捕食』『張り付き最適化』『アクティブソナーLv1』の3つです。

 

 

『高速捕食』は短時間の間に一定人数を捕食することが条件です。

ショッピングモールで8人捕食したことで取得できました。

本来捕食には1体当たり20秒かかるのですが、こちらのスキルを取得することで10秒に短縮でき、また、捕食による渇望ゲージ回復量が増えます。

20秒だと連続的な戦闘の合間に回復というのは難しいのでなるべく早めに取得したいスキルですね。

 

 

『張り付き最適化』は一定のレベル以上の時、壁登りなどを試みることで一定確率で取得できます。

このスキルがあると武器などを持っていて両手が使えない状態でも壁に上ったり天井に張り付いて移動したりできます。

マンホール蓋とショットガンを持っていて両手が使えないのにどうやってシャカシャカ壁を登っているのか謎ですが、どうせゲームだしご都合主義的な移動方法なのでしょう。

 

 

『アクティブソナーLv1』は『盲目』状態で複数の対象者に見つからずに同時にアサルトキルすることで取得できます。

これもまたショッピングモールで取得しました。具体的に言えばにゃんにゃんしているカップルを始末した時ですね。

スキル能力はそのままアクティブソナーです。スキルをオンにすると一定間隔で口からチッっと音を発し、反響音で周囲の状況を見ることができます。

Lv1だと3秒間隔、10メートルの範囲を知覚可能です。

このソナーでは形しか分からないので生存者かゾンビなのかは判断できませんが、それでも視覚外からの狙撃などの奇襲を防ぐためには重要ですね。

もちろん音を発する関係で、生存者に気づかれますが、壁や天井張り付きを利用して見つかりにくくしましょう。

 

 

 

さて、これからですが、現段階で殺してOKなのはチョーカーさんのみです。

車要員の佐倉先生は当然殺せません。

くるみちゃんを殺すと野良ゾンビ相手にあっさり全滅したりするので、こちらもショッピングモールから帰ってくるまで殺せません。

殺してもよさそうなゆきちゃんとりーさんですが、ゆきちゃんを殺すとショッピングモールで確定で全滅します。

りーさんの方は、料理でみんなの正気度を回復させている関係上、ほぼ全員狂気に落ちます。

そうじゃなくても現状で一人でも殺すと佐倉先生の正気度が尽きる可能性があるので、まだ発見されてないチョーカーさん以外は殺せないのです。

正気度の管理に定評のある私の緻密な行動で今のところ全員の精神は安定しているでしょうから、よっぽどガバらないかぎり今後も大丈夫でしょうが。

 

そして、佐倉先生が生きている今、圭ちゃん達の救出に向かう際に車の乗車人数の関係でりーさんはお留守番しますので、その際に殺すのが一番です。

残りの生存者は学校に戻ってきたところを車から降りる前に奇襲をかけて一網打尽にしてゲームクリアが妥当ですね。

計画としてはこちらから降車前のくるみちゃんをショットガンで仕留めて、残弾で他も殺害。残った人はマンホールの蓋でフィニッシュ。

完璧ですね。

5人も乗ってる過密状態ならまず外すことはないですからね。

 

 

 

 

 

では早速、チョーカーさんを仕留めに行きますか。

彼女は2階の中央トイレに生息しています。

そこにはバリケード作って他の生存者も閉じ込めてありますが、特にお腹すいてないですしチョーカーさんだけサクッと殺りましょうね。

そんなわけでシャカシャカっと向かうと、あら?何故かバリケードがなくなってますね、男女両方。

不審に思って覗いてみると見事にもぬけの殻じゃないですかー。

チョーカーさんがいるはずの奥の個室も何故かからっぽです。

こんな現象初めてなんですが。

もしかして購買部探索が早まって主人公勢に救出されたとか?

チラっと3階への階段を覗いてみるともうバリケード出来てるじゃないですか。

天井を伝ってバリケードを乗り越えていくと、どうやら3階部分はすべて制圧済みになってゾンビのゾの字もなくなってます。

 

 

3階のトイレも全部解放されているようで、せっかくの食糧が台無しです。

どうやら図書室のトイレだけ気付かれなかったようです。

奥まってて存在感うすーいからね、あのトイレ。

 

 

おのれ、せっかくの食糧を。いったい誰の仕業だゴリラか!

怒りに打ち震えていると、背後から足音が。

 

 

「おい!そこにいるのは誰だ!」

 

 

その声に私はゆらりと立ち上がり振り返る。

 

 

「なっ!ば、ばけもの!」

 

 

化け物?失礼な。

私は部位欠損も特にしてないし、ぱっと見では生存者でもおかしくないでしょうに。

モブ生存者が3人、こちらに向かって懐中電灯らしきものを向けつつ、鍬や鎌をもって威嚇しています。

園芸部の備品でしょうかね。

どうやら夜の見回りをしていたようです。

見つかったものはしょうがないです。

どうせ死んでも大丈夫なモブ生存者、サクッと殺してしまいましょう。

 

 

モブ生存者Aが鍬を振りかぶって飛び掛かってきますが、そんな大振り簡単に避けれますよ。

素早く避けつつ壁に張り付き、そのまま天井へと飛び移ってからの頭上からのダイブ。

おっと確定捕食ですね。

モブ生存者Aの頭に飛び掛かると同時に捕食殺害入りました。

モグモグゴックンしながらも、マンホール蓋を振り回して隣に居たモブ生存者Bを撲殺。

残った一人は正気度判定失敗したのか甲高い悲鳴を上げてへたり込んじゃったよ。

こんなのでも経験値の元なのでちゃんと捕食します。

食べ残しはもったいないお化けが出てしまいますね。

 

 

「てめぇえええええ」

 

 

へたり込んだモブ生存者Cを頭から咀嚼していると、いきなり背後からゴリ、いやくるみちゃんがシャベルで殴りつけてきた。

あっぶねぇ、あと少し気付くのが遅れてたら死んでましたよ。

走ってくる足音に気付いてすぐに飛びのいたことで間一髪避けれたよ。

 

 

生存者2体捕食でタイミング良くレベルアップ、ポイントを急いで体力に振り分け。

これで多少速度も上がった。

 

 

くるみちゃんは間合いをはかりつつ攻撃タイミングを伺っている。

『アクティブソナー』ON

くるみちゃんの後方に5人もの人形。

 

 

えっと、今の3人の他にくるみちゃんと5人で9人?

こんな深夜に全員起きているわけがないのでそれ以上いるんだろうね。

なんでこんなに徒党を組んでるのよ。

え?どっかミスった?こんな展開はじめてだよ!

 

 

ちょっと混乱している間に後ろの5人も私を囲むように広がる。

今の段階でくるみちゃんは殺れないけど、せめてモブは殺しておかないと後が怖い。

どうやら後方で指揮している槍のようなものを持った女性が指揮官か。

こういう集団戦ではまず指揮官からやるのが鉄板だね。

 

 

廊下の窓をぶち破って、外へと飛び出す。

 

 

すぐに外壁にしがみついて上方に移動。

これで一旦敵から視線が切れた。

私のことを逃げたと勘違いさせれたら儲けもの。

 

 

指揮官の後ろへと出れるように壁をシャカシャカ移動しつつ窓から中へ、そして天井を伝って回り込みます。

おっとどうやらこちらの考えが見抜かれていたよう、しっかりこっちに振り返って槍を構えてますね。

でも他のメンツは反応できていません。

被弾覚悟で一気に決めさせて貰いましょう。

 

 

マンホール蓋を振りかぶりながら飛びかかる。

頭を狙った一撃は惜しくも避けられましたが、代わりに左腕へと当たり、肘から先を押しつぶし切断。

甲高い悲鳴を上げる指揮官をそのまま押し倒して、さて捕食ターイムと言ったところで、あれ?

 

 

え?

 

 

よく見ると、その指揮官さん、なんか見覚えが。

 

 

あれ?あなたもしかして佐倉先生ではありませんか?

 

 

ガバッたあああああ!

 

 

なんで、なんでこんなことに。

 

 

衝撃のミスに涙が止まりません。

 

 

なんで心優しい佐倉先生が戦闘部隊の指揮官なんてやってるんですか。

あんたは後ろの方で「あわわ」とか「はわわ」とか言ってる役でしょうが。

もしくは部屋の隅でぐすんぐすん泣きながら「私って役立たず」とか言ってキノコ栽培したりとか。

 

 

どうするのよ左腕。

見事にポロリしてるじゃないですか。

ごめんよーーー!っていうかどうしよう!!!

 

 

片腕で運転できる?っていうか普通に重症だけど死なない?たしか地下室に行けば手術室とかもあったはず。でも医者がーーー!

とか混乱していると、衝撃音と共に画面が一気にブレ、あれ?お空・・・お星様、きれい。

 

 

って落っこちてるーーーーーー!

 

 

視線を校舎の方に向ければ、シャベルを振り切った態勢のくるみちゃんが。

どうやら彼女のフルスイングで窓の外まで吹き飛ばされたようです。

 

 

頭部撲殺即死じゃなかったラッキー。

 

 

としておこう。

 

 

そして体力を直前に9にして置いたおかげで、くるみちゃんの攻撃と3階からの落下ダメージもギリギリ耐えれたところで、ちょっと今回のガバりに関する反省とチャート見直しの為に一旦切ります。

 

 

次回もまた枠取るのでよろしくね。

 

 

 

 

まだだ、まだ続行できるはず。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

最悪の一日が終わり、そして翌朝。

 

 

ようやく、少し落ち着けた私は、しずくさんが助けていた生徒たちのことを思い出しました。

 

 

誰も彼も自分が生き延びるので精いっぱいのあの混乱の中で、彼女だけが他の生徒たちの為に動いていた。

そして、私たちを屋上へと逃がした後も一人で生存者を探しに行って・・・そして死んでしまった。

 

 

今私にできること、それはしずくさんの遺志を継いで、一人でも多くの生徒たちを救うこと。

教師として、そして一人の人間として。

生き残ってる生徒を助けるには、アレに変わってしまった生徒を殺さないといけないかもしれない。

いや、殺さないとダメなんだ。

自分可愛さでそれを避けて、他の生徒をしずくさんのように矢面に立たせて、そして生徒だった子たちを手にかけるのはいけないことなんて綺麗ごとをいうような。

そんな汚い大人ではしずくさんに顔向けできない。

 

 

生徒を助けたいなら、私が手を汚す覚悟を決めないといけないんだ。

 

 

私はくるみさんが持っていたのとは別のシャベルを持ち上げてみる。

重いそれをなんとか持ち上げて・・・アレが目の前にいると想定して振り下ろす。

すると、勢いに体を持っていかれ、地面へと転げてしまう。

 

 

「めぐねぇじゃそれは無理だよ」

 

 

こちらを見ていたくるみさんがダメだししてくる。

 

 

「そいつは重過ぎる。何かもっと軽い物の方がいいよ」

 

 

そういってくるみさんが鎌とかスコップとかを色々吟味しだす。

 

 

「こいつじゃ軽いけど、でもめぐねぇの運動神経じゃなぁ、もっとリーチが合った方がいいんだけど、槍とか」

 

「もう、佐倉先生って呼びなさいっていつも言ってるでしょ。でも、槍かぁ」

 

「これ、使えませんか?」

 

 

悩んでると若狭さんがモップと園芸用ナイフを持ってきてくれた。

 

 

それは確かにいいアイデアだ。

モップの部分を取り外して、棒の先端に代わりに園芸用ナイフをガムテープと縄でくくり取り付けて。

即席の槍ができあがった。

 

 

これなら軽いし、確かに私でも扱える。

何度か素振りをし、取れそうになるのを補強して、これなら戦えると確信できた頃にはもう昼前だった。

 

 

「くるみちゃん、お願いがあるんだけど」

 

「他の奴ら、助けにいくんだろう?」

 

 

くるみちゃんもどうやら逃げてくる途中でトイレのバリケードを気付いていて、まだ生存者がいるんじゃないかって考えていたらしい。

くるみさん、ごめんなさい。

本当は教師である私一人で行かないといけない。

でも弱い私ではすぐに死んでしまう。

 

 

いつかしずくさんに顔向けできる強い私になって、そして生き延びた時には、アレに変わってしまったしずくさんを絶対探し出して、そして教師として、いや一人の人間として最後のお詫びを致します。

どうか待っていてください。

 

 

 

 

そして夜。

 

 

昼間のうちに3階のトイレと2階のトイレから助け出した生徒たちと協力し、なんとか3階にいたアレらを全員殺してあげれられ、一時の安全を確保することができた。

 

 

アレらはどうやら階段を上るのが苦手なようで、階段にバリケードを設置することで侵入を容易に阻止することができた。

 

 

 

先程、寝ずの番をしていた子が下の階で窓が割れる音がしたと言ってきた。

もしかしたら生存者が逃げてきたのかもしれないと、戦える子たちと一緒に見回りをすることにした。

 

 

報告してきた子はたまたま起きていた二人を連れて先に行っているので、私も槍を手に他の子達と後を追う。

もしかしたらたくさんのアレに追われているのかもしれないし、バリケードが壊されたら3人だけでは危ない。

 

 

「おい!そこにいるのは誰だ!」「なっ!ば、ばけもの!」

 

 

先に向かった子達の声が聞こえてきた。

それを聞いてくるみさんが走り出した。

私も4人の子達を連れて追いかける。

 

 

 

 

その先に居たのは・・・。

 

 

 

異様な化け物だった・・・。

 

 

 

懐中電灯の光に照らされ、浮かび上がる異様な姿。

 

 

 

肥大した脳みそがむき出しになった頭部。

見開かれた両目には眼球がなく黒々とした闇が広がっている。

唇はなくむき出しになった歯が噛み合わされ、チッ、チッと音を発している。

身に纏うものは何もなく、ほっそりとしたピンク色の躰がゆらゆらと左右に揺れている。

首元から臍元まで縦一文字に裂けた傷からは骨がまるで牙のように並んでいる。

そして、中から何本もの手が出て、先に向かった一人を掴み、その裂け目に頭から引きずり込んでいく。

 

 

あまりの光景に意識を失いそうになるも、その化け物が左手に持っているのを目にして、なんとか意識を繋ぎ止める。

 

 

「分かれて!アレが持っているのは散弾銃よ!固まらないで!」

 

 

固まっていたら全滅する。急いで他の子達に指示する。

 

 

あの散弾銃はこの学校に赴任して直ぐの害獣対策研修で散々練習させられた銃だ。

8発まで連射できるから多数の野犬や頑丈な熊が出た際に生徒を守るために必要だと教えられた。

なんであの化け物が持っているのかは分からないけど、もし撃てるのだとしたら危険すぎる。

 

 

銃口の向きに注意しながら囲んでいると、唐突に化け物が窓を破って外へと飛び出した。

 

 

 

逃げた?

 

 

 

くるみさんたちは飛び出した窓に駆け寄って、下を覗き込んでいる。

 

 

 

こちらの人数が多いから勝ち目がないと判断した?

 

 

 

でもおかしいわ、逃げたとしたら・・・なんでこの音が聞こえるの!

 

 

 

歯を噛み合わせる音が後ろから・・・急いで振り向く。

 

 

そこには先程の化け物が裂け目から出した手を使って天井を器用に移動している光景。

槍を向けた瞬間、その化け物がこちらへと飛んで右腕に持った鈍器を私へと叩きつける。

腕で顔を庇いながら後ろに倒れこんだ。

その時左腕に焼けるような激痛が走り、堪らず悲鳴を上げてしまう。

化け物はそのまま私の上に乗り、裂け目から出した手で私の体を拘束する。

 

 

あぁ、もう死んじゃうのね。

覚悟を決めたっていうのに。

ごめんなさい、しずくさん。

向こうで会えるかな。

 

 

そう考えていたら、化け物の動きが止まった。

 

 

「ア・・・サクラ・・・センセイ・・・」

 

 

その言葉に私はその化け物の顔を見上げる。

 

 

嘘・・・

 

 

私を佐倉先生と呼んでくれた子は・・・

 

 

 

「ナンデ・・・ナンデ・・・コンナコトニ・・・」

 

 

そこにあったのは、目を閉じ、血の涙を流す・・・『しずくさん』の顔だった。

 

 

「ヒダリ・・・ウデ・・・・・・・ゴメン・・・」

 

 

「めぐねぇをはなせええええええええええええ」

 

 

 

 

既にしずくさんの手は私の体を離していた。

 

 

 

 

 

 

 

そしてくるみさんのシャベルで殴られた彼女は、暗い窓の外へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

生きていたのね・・・しずくさん・・・。

 

 

 

気づいてあげられなくて・・・ごめんなさい。



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地下室~放送室

昨日半分まで書いて保存しておいたUSBメモリが紛失で泣きました。

なので書き直したのですが、微妙に不満点もあるのでもしかしたら今後改訂するかも。
その時は前書きとかで書きますね。


また、がっこうぐらしは11巻までしか読んでいないのでラストの方がどうなるかわかりません。
なので連載中の作品が途中でゲーム化される際に起きるオリジナルラスボスが登場している可能性があります。





とんでもない事態に慄いているRTAはーじまーるよー。

 

 

 

 

お星さま、綺麗・・・。

 

 

そんな現実逃避からスタートしますよ。

 

 

枠取り直しの間にチャチャっとチャートを見返したのだがミスしたようなところは無いんだよ。

全くもって意味が分からん。

考えられる可能性としては、トイレに生存者を誘導する際に佐倉先生を連れていたってことぐらいか。

それでも生徒の救出までなら分かるが、率先して戦闘に参加しているのが理解不能。

主人公達の危機なら自らの命と引き換えにって感じで身代わりになったりもするけど、元生徒であるゾンビを相手に陣頭指揮を取るような覚悟が2日目の時点で決まっちゃってるなんて初めてですよ。

でも考えようによっては戦闘に積極的なのは悪いことではない。

純粋に戦力が増えるので駅舎とショッピングモールでの戦闘速度が速まり、圭ちゃんとみーくんを連れて帰ってくるのが速くなりますね。

これだけならタイム短縮だひゃっほーーいと喜んで居られたのですが。

 

 

問題は左腕です。

 

 

見事にポロリしてましたな。

あれは早めに治療しないと失血死などで死んでもおかしくないです。

少なくとも止血と消毒、そして鎮痛剤なども必要ですね。

車の運転してもらえるかなぁ、それだけが心配です。

 

 

それと調べたところ、プレイヤーのゾンビが感染させるのには普通に攻撃を与えて傷をつけるだけでいいらしい。

特殊カットインが入る噛みつき攻撃の場合は確定感染ですが、傷を負わせただけでも自分と相手とのレベル差によって確率で感染起こるようです。

佐倉先生のレベルはそこまで高くないだろうから、これはかなりの高確率で感染起こりますよ。

幸いにも佐倉先生は感染しても完全に変異するまで時間があります。

なので変異するまでに抗ウイルス薬を打てば大丈夫。

殺害判定は完全にゾンビ化していなければ感染者状態でもカウントされます。

こうなると分かってれば朝方ドロップした抗ウイルス薬を拾ってきてたんですが、盛大にアフターカーニバルです。

 

 

では医薬品と抗ウイルス薬を取りに地下へと向かいますか。

 

 

そう考えている間にHPも全快しましたね。

代わりに微妙に腹ペコです。

先にトイレに寄る必要あるなぁ。

 

 

3Fと2F中央トイレの生存者が解放されたからには残る食料は図書館トイレだけです。

 

 

あそこは元々図書館に居残ってた人しかいないので残り何人だったかな。

そんなに多くないはず。

節約、しないとな。

 

 

そんなことを考えながら校舎へと移動してると、ゾンビとすれ違った際に捕食可能コマンドが。

 

 

え?食えるの?

 

 

はてなマークを大量に浮かべながらもつい条件反射で【△ボタン】を押し込み、捕食です。

 

 

血の渇望ゲージが1割程回復しましたよ。

そしてシステムメッセージが。

 

 

『スキル【悪食Lv1】を獲得しました』

 

 

おお、初めて見るスキルです。

早速詳細を見てみましょう。

 

 

『悪食Lv1』

自分より一定レベル以下、もしくはLv1の発症者・変異種・適合種を捕食可能。

血の渇望ゲージ回復量は対象の種別及びレベルに依存。

経験値取得不可・ステータス微上昇。

 

 

なんかすごいスキルが来た。

効果が云々より、説明文が凄い。

変異種とか適合種とかってなに?

え?がっこうぐらしですよね、これ。

どこを見渡しても普通のゾンビしか居ませんが?

確かラスボスも感染者軍隊に守られた社長さんだったよね。

取り巻きの方が強いという残念ボス。

私はその軍隊をチェーンソー振り回してバッタバッタと薙ぎ払うくるみちゃんをぼーっと眺めてクリアしましたよ。

これはもしかしてハロウィンパッチで追加されたんですかね。

まだこのパッチが出てから半月経ってないので検証しきれてなかったってことですね。

 

 

でも変異種ですか、いったいどんなのでしょうね。

腕とかいっぱい生えてたり壁とか天井を這ってきたりとかするんでしょうかね、何それ怖い。

想像するだけでゾゾゾッと来ますね。

まぁこんな序盤の地域では出る心配はないでしょうが。

大学編なんて行かせず高校卒業までにクリアする予定なので遭うことはないでしょう。

 

 

とりま、このスキルは要検討なのでセーブ取っておきますよ。

 

 

では急いで地下室まで倍速です!

地下には上から落っこちてきたのか大量のゾンビがひしめき合ってます。

真っ暗だし足もとに水が溜まっている場合があるから動くたびに音が鳴ってゾンビを引き付けるしで、生存者でやる場合はここの掃除に非常に苦労するんです。

しずくちゃんの場合は元々盲目だから暗さは関係ないんですけどね。

そしてセーフエリアへと到着。

途中捕食可能なゾンビを食べてきたのでお腹もいっぱいです。

微上昇するステータスはランダムなようで、筋力や持久力も上がりました。

あえて上げる必要はないだけで、上がって困るものではないです。

 

 

コンテナから医薬品や抗ウイルス薬を回収します。

ここではアイテムごとに入ってるコンテナが決まってるので最短で行きますよ。

ゲームじゃなければ盲目のしずくちゃんではアイテムの識別ができないでしょうが、これはゲームなのでコンテナを開けたり手に取ったりすればアイテム名が表示されるので問題ありません。

 

 

まず普通の【医薬品コンテナ】からと『医療ボックス』『鎮痛剤』をゲット。

プレイヤーなら負傷しても医療ボックスだけでいいのですが、NPC相手なら鎮痛剤も必要でしょう。

この鎮痛剤というアイテムは使用すると『負傷しても動作が遅くならない』というアイテムです。

敵の群れを被弾覚悟で突っ切る際に使用します。

またはNPCが重傷を負っているときには怪我を治療するだけじゃなく、これも使わなければ痛みで動けずイベントが進行しない場合もあります。

今回は佐倉先生に車を運転してもらう必要があるので持っていきます。

 

 

ついでにすぐそばにある保冷庫に入ってる【食糧コンテナ】から食料も少し持って行ってあげますか。

さっきの襲撃で好感度がマイナスに振り切ってるでしょうから、少しでも上げておけば次回襲撃する際に手心を加えてくれる可能性があります。

また、モブ生存者を集めてコロニーを作っている場合、少量の食料を手に入れると奪い合いが発生して内輪もめを起こすことがあります。

モブ生存者がくるみちゃんに勝てるわけないのでうまくいけば次回遭遇した時はモブ生存者が半減っていう事もあるでしょう(ゲス)

『新鮮野菜』『謎の肉塊』『栄養ドリンク』をアイテムボックスに入れます。

 

 

さて最後は一番奥まったところにある【特殊薬品コンテナ】です。

ここに『抗ウイルス薬』が1個だけあります。

コンテナ自体はそれなりの大きさだし、もともと15人収容するはずのセーフエリアに何故1個しかないのか。

それはゲームのご都合というやつでしょうな。

序盤から全員感染者にしてのパワープレイができないようにっていう。

とりあえずコンテナを開けて回収しましょう。

 

 

『抗ウイルス薬ーU』『T-ワクチン』『RADアウェイ』『E型血清』『E-ネクロトキシン』『スティムパック』『Gウイルス散布装置』『スコーチ病ワクチン』エトセトラエトセトラ・・・。

 

 

すごい勢いでずらーっと大量のアイテム名が表示されましたね。

これは色々当てたパッチやModでの追加アイテムですか。

このコンテナに入ってる抗ウイルス薬はずっと使ってなかったのでこんなことになってるなんて気づきませんでしたよ。

 

 

名前だけではよく分からないアイテムも多いですね。

とりあえず一番上にあった抗ウイルス薬を回収していきましょう。

下の方に埋まってなくて良かったよ。

 

 

そろそろ30分ほど経ちますね、佐倉先生の体力だとそろそろやばいかもしれないので超特急で急ぎましょうドゥエドゥエドゥエ。

 

 

 

 

 

地下から玄関ホールを抜け、3階まで壁面を伝って放送室前に到着!

扉の前にモブ生存者が立ってるけど無視して突っ込むぞ!

多少攻撃食らったけど、この程度なら問題ない。

 

 

バーンっと開けておじゃましまーす!

 

 

アクティブソナーを使い一番奥に寝かされた佐倉先生を見つけます。

 

 

佐倉先生、生きてる?

 

 

達成項目欄の【佐倉 慈 殺害 0/1】が消えてない事を確認しつつ急いで駆け寄る。

 

 

だけど、その前にくるみちゃんがシャベルを構え立ちふさがる。

 

 

おいおい!

もう時間がないんだよ!

早くしないと発症するんだから邪魔しないで!

 

 

すぐ使えるように医療ボックスを出しながらもくるみちゃんの頭部殴打の間合いに入らないように注意する。

 

 

「まって・・・くるみさん」

 

 

佐倉先生がりーさんに支えられながら上体を起こす。

でも何やら考えこんでいるみたい。

どうでもいいから早く治療しないと殺せなくなる。ハリーハリー。

 

 

「しずくさん、あなたなら発症を止められるの?」

 

 

そんなんわからねーよ。

でもとりあえずワクチンは持ってきたから大丈夫じゃね?

 

 

「ワクチン!?なんでそんなのがあるんだよ」

 

 

くるみちゃんが横から怒鳴ってくる。

 

 

いや、あるもんはあるんだからしょうがないじゃん。

この学校の地下にあるのは最初から決まってたことだからね。

 

 

おっと何やら佐倉先生が口元を抑えて吐きそうになってますね。

もしかして発症しだしたかな。

 

 

 

「一つだけ、お願いがあるの。そのワクチンが効かなくてアレになったら、生徒たちを襲う前に先生のこと止めてくれないかな」

 

 

ん?そんなの決まってるじゃん。

そうなる前にサクッと殺してあげるよ。

殲滅エンドに行くためには発症する前にみんな殺さなきゃいけないしね。

 

 

「おい!なにほだされそうになってるんだよ!こいつは栄太と備助と椎太郎を殺しやがったんだぞ!」

 

 

私の後ろに立っていたモブ生存者、仮にDとしておくか、が震える手で包丁を突き付けてきますね、殺しちゃおうかな。

 

 

AとBとCのことならあっちから襲ってきたんだし、それに殺しちゃったからには食べないともったいないからね。

貴重な食料なんだし、ご飯食べないとほら、死んじゃうしね。

 

 

「なっ!ご飯だって!」

 

 

そういうシステムなんだからしょうがないないじゃない。

 

 

「私たちも食べるのか、それとも私たちが攻撃しなきゃ食べないのか?どっちなんだ」

 

 

いやいやくるみちゃんは殺さないよ、まだ。

くるみちゃんが死んだから全滅しちゃうじゃん。

まだまだ生きててみんなを守ってもらわなきゃいけないんだから。

圭ちゃんとみーくん連れて帰ってくるまでがんばって生き延びてくれ。

 

 

そんなことはいいから早く治療しないと。

本当になんでこんなに長いのよこのイベント。

そんな怪我なんてちゃっちゃと治してショッピングモール行けよおまえら。

 

 

「しずくさんを信じるわ。治療をお願い。そして・・・ダメだったときも、お願いね」

 

 

ういういまかせてよーっと。

ではサクサクっと医療ボックスで治しますね。

といってもアイテム使うだけだから、難しいことは何もありませんよ。

これって使う人の知力か直感が高いと治療効果に上昇補正あるんですよね。

だから他の人に渡して使ってもらうより知力10の私が直接使った方がいいんです。

箱から取り出した謎の注射器をブスーーーっと刺して、包帯巻き巻きーーっと、どうしてこんな雑な治療方法で治るのか、そして同じ方法なのに回復量が変わるのか。

まぁゲームだからしょうがないね。

 

 

あとは鎮痛剤も使っちゃいますね。ぶっすりと。

鎮痛剤はいっぱい持ってきたので車運転するときにでも使ってください。

 

 

そして効くかどうか抗ウイルス剤。

ダメそうなら発症する前にサクッと殺さないと。

効いてくれよ、佐倉先生がいないと車運転でタイムがががが。

 

 

見るからに怪しげな抗ウイルス薬を佐倉先生の腕にさすと、佐倉先生がビクンッと仰け反る。

でもすぐに効いてきたのか「あれ・・・なんだか・・・体が・・・」と不思議そうにしている。

失敗したのかと焦っちゃったじゃないか、も~。

 

 

すると佐倉先生がせっかく巻いた左腕の包帯をスルスルと解きだしましたよ。

おお、なんか左腕の切断面が塞がってる。

というかなんか塞がった切断面から指ぐらいの大きさの小っちゃい触手が5本うねうねと生えて動いているんですがなんぞこれ。

 

 

間違って違うの持ってきたかな?でも抗ウイルス薬って名前だったからな。

おっかしいなぁ。

 

 

まぁ細かいことは気にしない。

これだったら車の運転楽勝でしょ、タイム的に逆に短縮で結果オーライです。

マジで完璧な私のチャート進行能力、今日も鬼がかってますね。

 

 

とりま、やること終わったし、しずくちゃんはクールに去るぜ。

 

 

 

 

っと、待ったーーーー、また忘れるところだったよラジオ!!

 

 

ラジオ無いと圭ちゃんの救援届かないじゃない。

もう、私ってダメな子。

あれ?所持品にラジオにないぞ。

確か購買部で・・・って回収してないじゃん。

トイレの食事終わったらチョーカーさん食べようってルンルンしながら行ったらバリケード無くて・・・そしてまたもやラジオがスポーーーンと抜けてたわ。

今気づいたけど、チョーカーさん普通に放送室にいますね。

ゆきちゃんとお手手つないでゆるゆりしてますね。いや普通にこっち見てるだけか。

と、なると今更チョーカーさん殺せないし、後回しだな。

どうせ人数の関係で居残りだろうし、りーさんと一緒に殺ればいいか。

 

 

えっと、今からラジオ取りに行ってまたここに戻ってくるの?どんな顔して?

んーーっと。

 

 

そういえばここ放送室だよね。確か放送室ってラジオ放送聞けたよね。

ゲーム的に主にBGMを変更したり鑑賞するための機能だけど、クラシック放送や圭ちゃんの救援も受信できますね。

ここに居なきゃ聞けないのでなんらかの理由でラジオが壊れたり取りに行けない時じゃないと利用しませんが。

 

 

「おい、何してるんだ?」

 

 

くるみちゃん、さっきから好奇心旺盛過ぎない?

まだイベント続いてるのかよ。

 

 

クラシック放送聞いて少しはお淑やかになってくれ。

ラジオ機能をオンにして部屋にクラシックが流れます。

 

 

「これって・・・放送・・・されてるのか」

 

 

ですよー。

まだ人類は全滅していない!希望はまだある!だったかな、そんな感じのイベントでしたよね。

いや、あれは卒業してからだっけ?

まぁ卒業前に私が殺しちゃうから希望も何もあったもんじゃないけどねケケケ。

 

 

んじゃ本格的にやること終わったし、何気に空腹になりかけてるので帰りますか。トイレに。

 

 

ではみんな生きてたらまた会おうね、主に殺害目的で。

 

 

 

 

と、いい感じで終わったところで今回はここまでかな。

では次また枠取りますので見てくださいね。

 

 

 

 

よっしゃ、なんとかなった、ぜったいなんとかなった!

後は予定通り圭ちゃん達を助けに行ってもらって、タイム的にまだいける!絶好調ですよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

持ってきた食料は放送切る前に気付いて慌てて放送室の外に置いてきました。

 

 

 

 

 

 

++++++++++

 

 

外が騒がしいと思ったら、勢いよく扉が開かれる。

入ってきたのは異形と化したしずくさんだった。

 

「オ・・ジャマ・・・シマス」

 

 

先ほどあったときと同じく、歯を鳴らしながらぐるりと室内を見渡して、そして私を見つけたのかこちらへと顔を向けてくる。

もしかしたら、音の反響で周囲を認識しているのかな。

 

 

「サ・クラ・・・センセイ・・・イキテル?」

 

 

そしてこちらへと駆け寄ってくるも、私を庇うようにくるみさんが立ちふさがり、シャベルで威嚇する。

 

 

「ジカン・・・ナイ・・・ハヤク・・・シナイト・・・ハッショウ・・・スル・・・ダカラ・・・ジャマ・・・シナイデ」

 

 

たどたどしく彼女は言葉を紡ぐ。

発症と聞いて、くるみさんが少し戸惑うように私としずくさんへと目を行き来させる。

しずくさんがお腹の裂けめからメディカルボックスらしきものを取り出しました。

もしかして、本当に私の為に?

少なくとも彼女もこちらを襲うつもりで来たようではないみたい。

その証拠に、外で見張りをしていた子達の武器が体に刺さっているのに、反撃もしようとしていない。

 

 

「まって・・・くるみさん」

 

 

傷の痛みを我慢して、りーさんに助けてもらいながら体を起こす。

今は戦うときじゃない。

彼女の話を聞かないと。

しずくさんは他のアレとは違う。

姿かたちもそうだけど、何より明確な意識があり、そしてたどたどしいけど言葉もしゃべることができる。

 

 

彼女はアレになる前から、普通の生徒とは違っていた。

神童、天才、そんな言葉すら陳腐になるほどの高すぎる知能を持っていた。

聞いた話では幼児期に難解な学術書を理解し、彼女の為にわざわざ何人もの有名な学者が訪れてはすぐに教えることがなくなったと匙を投げるほど。

だから本来ならここみたいな普通の高校に来るような生徒ではないが、近くにあるランダル・メディカルセンターで目の先進治療をするためにこちらへと引っ越してきたそうだ。

 

 

そんな高い知能を有していた彼女だからこそ、アレになっても思考能力を失わずに済んだのかもしれない。

だけど、私ではゾンビになっても思考を維持できるなんて思えない。

 

 

『発症する』

 

 

私が死ぬのは別にいい。

怖くないわけではないけど。

でも、生徒たちを残していくこと。

そして、アレになった私が、生徒たちを襲って殺してしまう。

そんなことは耐えられない。

 

 

「しずくさん、あなたなら発症を止められるの?」

 

しずくさんはコテンと頭を横に傾げながら「ワカラナイ」と答え、

 

 

「デモ・・・ワクチン・・・モッテキタ・・・ダイジョウブ」

 

 

え?ワクチン?

 

 

「ワクチン!?なんでそんなのがあるんだよ」

 

 

私と同じように疑問に思ったくるみさんが声を上げる。

 

 

「アル・・・ショウガナイ・・・コノガッコウ・・・チカ・・・サイショカラ・・・キマッテイタ・・・コト」

 

 

この学校に地下にワクチンがある?

それに『最初から決まっていたこと』?

ふいに、教頭先生の言葉が思い出される。

 

━━━緊急時にはここにあるマニュアルを読むこと。緊急時以外は開封厳禁。

 

━━━地下には害獣対策の散弾銃や、怪我をした際の薬品がありますからね。

 

そして教頭先生も校長先生も、この事件が始まる数日前にいきなり休暇を取り連絡がつかなくなった。

 

 

この事態は、想定されていたこと?

私たちは見捨てられたの?

 

 

子供を守るはずの大人が、この事件を起こし、そして・・・一番に逃げ出した?

 

 

その可能性に行きつき、私は吐きそうになった。

 

 

 

 

「一つだけ、お願いがあるの。そのワクチンが効かなくてアレになったら、生徒たちを襲う前に先生のこと止めてくれないかな」

 

 

「ソンナノ・・・キマッテル・・・ソウナル・・・マエニ・・・コロシテアゲル」

 

 

アレになる前に、まだ綺麗な人間のうちに殺してくれる。

その彼女の気持ちに私は泣きたくなった。

こんな大人の悪意によって作られた世界でも彼女の優しさは損なわれていなかったのね。

 

 

「おい!なにほだされそうになってるんだよ!こいつは栄太と備助と椎太郎を殺しやがったんだぞ!」

 

 

私たちの会話を聞いていたディーノくんが我慢できないと震える包丁を突き出しながらしずくさんへと一歩を詰める。

 

確かディーノくんは先ほど亡くなった彼ら3人と親友同士だったわね。

たしか「俺ら最強の巡ヶ丘四天王」とか言っていつも仲良くトイレで遊んでいたのを思い出す。

 

 

「アッチカラ・・・オソッテキタ・・・コロシタラ・・・タベナイト」

 

 

ご飯食べないと死んじゃうから。そういうシステムだから。

 

 

その言葉にディーノ君が怒ってるけど、確かにアレは人間を食べる。

しずくさんも思考能力はそのままだけど、人間を食べないと生きていけない体に変異してしまっているのね。

 

 

たぶん見た目が変わってしまって、それで生存者に襲われて。

生き延びるために反撃して殺してしまい、そういう人たちだけを生きるために食べてきたのね。

いくら生きるため、そして自分を襲った人とはいえ、人間の心を残しながら人間を食べないといけないなんて。

彼女はいったいどれだけ辛い思いをしてきたのだろう。

 

 

「私たちも食べるのか、それとも私たちが攻撃しなきゃ食べないのか?どっちなんだ」

 

 

同じことを思ったのか、悲しそうな目で、問いかけるくるみさん。

 

 

「クルミ・・・チャン・・・コロサナイ・・・ヨ」

 

 

悲しそうに首を振りながらしずくさんが答える。

 

 

「クルミチャン・・・シンダラ・・・ゼンメツ・・・シチャウ・・・ミンナヲ・・・マモッテ・・・ガンバッテ・・・イキノビテ」

 

 

私の分まで生きて。人間として生き延びて。

 

 

彼女のその想いが伝わり、くるみさんは顔を覆い泣き出してしまう。

 

 

「ハヤク・・・チリョウ・・・シナイト」

 

 

そう言ってしずくさんが私の前でひざまずき、短くなった私の左腕に巻かれ血で赤くなった包帯を解いていきます。

触れられたことによって激痛が走りますが、歯を食いしばって耐えます。

 

 

しずくさんはメディカルボックスから無針注射器を取り出し、注射します。

それだけで切断面から流れていた血が凝固していきました。

その後、もう一度包帯を手際よく巻いていき、「鎮痛剤」を打ってくれました。

 

 

「イッパイ・・・モッテキタ・・・ツカッテ」

 

 

そういい、更に8本の鎮痛剤をお腹の裂けめから取り出し渡してくれます。

嬉しいけど、なんかねっちょりしてます。

 

 

そして彼女がワクチンを取り出しました。

 

 

そのワクチンの入ったケースには『アンブレラ社』の社名とエンブレムが印字されてあります。

医療関係に疎い私でも知っている国際的な大企業です。

そんな会社までこの事態に関与していたと思うと、頭がくらくらしてきます。

 

 

しずくさんはケースの中から取り出した『螺旋型の変な形の管が入った筒』を注射機に取り付け、私の腕へと注射しました。

 

 

「うっ!」

 

 

体が熱く、寒く、そして全身へと何かが侵食するような、そんな今まで味わったことのない感覚が襲い、私の体が跳ね上がります。

 

でも次の瞬間には意識がクリアになり、先ほどまで感じていた左腕の痛みも嘘のように消え去ってしまいました。

それどころか、逆に力がみなぎってくるような、十全感が感じられます。

 

 

そして左腕から違和感を感じ、急いで包帯を取ると・・・。

 

 

そこには5本の触手が生えていて、そして私の意思で動かせていました。

 

 

「めぐねぇ・・・それ、大丈夫?痛くない?」

 

 

丈槍さんが心配そうに声をかけてくれます。

 

 

「大丈夫よ。痛みとかはないし」

 

 

怖くて不安たっぷりだけど、教師としてそんな姿は見せられないので虚勢を張って笑顔を作る。

 

 

「おい、何してるんだ?」

 

 

くるみちゃんの声で顔を上げると、しずくさんが放送機材を色々操作している。

 

 

「キイテ」

 

 

しずくさんがボリューム操作のキーを上げると、スピーカーからクラシック音楽が流れてきました。

 

 

「これって・・・放送・・・されてるのか」

 

 

え?放送って・・・ラジオ?

 

 

「マダ・・・ジンルイ・・・ゼンメツ・・・シテナイ・・・キボウ・・・ハ・・・マダアル」

 

 

しずくさんの顔には笑顔が浮かんでいました。

唇がないので分かりにくいですが。

 

 

 

「イキテイタラ・・・マタ・・・アオウネ」

 

 

 

そういって、しずくさんは出ていきました。

 

 

 

また行ってしまうんですね。

私たちに希望を託して、一人で。

 

 

 

でも待っててください。今度は私たちから会いに行きます。

 

 

 

 

 

力をつけて、あなたを助けに。

 

 

 

 

 

 

 

◆このプレイでのしずくちゃん◆

 

知力が初期値限界の10のため、人類の到達点的な知力になっています。

故に、それに準じた過去になっていて、めぐねぇたちにも超天才少女と認識されています。

また、走者が佐倉先生と呼んでいるのが設定に反映され、知的キャラなので他の生徒と違い「めぐねぇ」と呼ばずに「佐倉先生」と呼んでいることとなり、めぐねぇの初期好感度が非常に高いキャラとなってしまいました。

それが最大のガバです。

 

 

見た目

 

・脳みそむき出し

これはショッピングモールから落下した時に頭が割れてしまいました。

肥大化はレベルアップの効果ですかね。

 

・喉元から臍元まで縦一文字に裂け目があり、その裂け目の淵には肋骨が牙となって並んでいます。裂け目の中からは無数の手が生えています。

ショッピングモールまでに来る前の民家での戦闘でヤクザに日本刀でバッサリ切られました。

その後、『張り付き最適化』で壁や天井を登る為に手が中から生えて、『高速捕食』と取ったことで肋骨が牙になり、裂け目が捕食用の口になりました。

生えてる手は捕食した生存者の手で、捕食するごとに出せる数が増えます。

また没ルートになりましたが、それを生存者に移植することが可能になります、ですが今後この設定いかされるかどうか不明。

 

・全裸

全裸です。

 

・唇がなくむき出しの歯

ショッピングモールから落ちた時の怪我ですね。頭から盛大に落ちましたね。むしろ目元だけよく無事だったな。

 

 

HPが回復すると傷が治るっていつから勘違いしていた?

ゾンビの怪我なんて治るわけねーだろう。

むしろそのケガが変異して新たなる武器へと進化していくのが機能美ってもんだろう。

 

 

ちなみにアイテムボックスにアイテム入れたり出したりは裂け目から体の中に出し入れしてることになっています。

走者はそもそもFPS視点だし、ゲームシステムで出し入れしてるだけなので気づいてないですが、周囲の人たちはドン引きしてます。

 

 

◆没ルート◆

 

 

佐倉先生の左腕どうにかならないかな。

 

医療ボックスを使用して止血した後、半ばで切断され半分の長さになった左腕を見ている。

北米版にしてよかったな。切断面のグロさが日本版と比べてかなりリアルで心躍るわ。

 

数秒ほど見つめていると、システム音と共に【○:腕の移植をする】というコマンドが浮かび上がる。

○ボタンを押すとどこからともなく、私の右手がビクンビクン震える謎の腕を取り出し、佐倉先生の左腕切断面に押し当てる。

 

 

ジュウゥゥという焼けるような音と共に切断面から煙が上がり歪ながらもそれが癒着する。

 

 

【佐倉 慈 に 『捕食した右腕』 が移植されました】

 

 

おおっ!なんと佐倉先生の左腕が修復されましたよ。

目の前で移植された右腕を不思議な顔をして動かしている佐倉先生。

 

 

両腕が右腕の異形の女教師誕生です。これはきっと鏡の中に敵を引きずり込んで倒すスキルとか生えるでしょう。ハングドマーーーーン!

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

没ルートはあまりにご都合主義的でしかもギャグ過ぎて前回のシリアスシーンを全てひっくり返す展開なので没になりました。

シリアル展開が売りの小説なのでしかたないね。ギャグは苦手なのです。

 

 

 



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幕間

今回は圭ちゃん視点です。





2日目、深夜

巡ヶ丘学院高校

 

 

「行った…みたいだね」

 

 

私は今にも走り出しそうな美紀の手を握り、事務室の入り口から顔を出す。

昨日まではどんどん突っ走っていく私を美紀が冷静に止める役だったのにね。

美紀は昼からどこかおかしくなってしまった。

そりゃいつ死ぬか分からないようなこんな状況だし、それにあれを読んじゃったらね。

私だってショックだったし、美紀はちょっと融通がきかない生真面目さだっただけに受け入れ難かったんだろう。

今も胸に抱えた銃に向かって何やらブツブツ言っている。

ここは私がしっかりしないといけない。

 

 

「すごい勢いで外から飛び出していったけど、あいつってやっぱりショッピングモールで見たやつだよね」

 

 

「・・・るう・・るるいえ・・うがふなぐる・・・え?なに?圭、なにかいった?」

 

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

気づいてないならそれでもいいや。

下手にあれを追いかけるなんて言われても困るしさ。

それよりもあいつが出てきたのって倉庫・・・そしてその奥に地下への入り口がある部屋だよね。

あのレポートの内容が本当ならその地下にやつらの実験拠点があるはず。

太郎丸が倉庫の入り口に立って早く来いとこちらへ尻尾を振っている。

そういえばこの子、無駄吠えとかしないし結構賢いよね。

 

 

「ねぇ圭、早く先生たち殺しに行こう。さっき上が騒がしかったし、そっちにいると思うんだよね」

 

 

「いやいや、今は止めておこうよ、私だって疲れちゃったしね。ヘトヘトで行っても上手く行かないよ。それにほら、先に地下を調べようってここに来る前に話したよね」

 

 

むーっとふくれっ面をして不満そうにするも、それでもこくんと頷いてくれる美紀。

学校までだいぶ急いで来たし、私と違って銃や弾薬などがパンパンに詰まったバッグを手放そうとしない美紀の方が体力を消耗してるのだろう。

おかしくなってしまった今でも疲れてる状態では倒せる相手も倒せないって考えられるぐらいの理性は残っていてくれて助かる。

美紀と一緒に慎重に倉庫に、そしてその奥にある機械室から地下へと降りていく。

 

ウグゥァァ・・・。

 

真っ暗闇の中、くぐもった声が聞こえてくる。

 

 

「圭、ちょっと掃除するね」

 

 

美紀はそう言うと太郎丸を伴い平然とした足取りで暗闇の中へ向かう。

少しして小さくくぐもったような発射音が何度か鳴る。

美紀の拾った銃、たしかP-90だっけ?それはあいつら、レポートによれば発症者、それ用に用意された武器で、火薬の量を抑え反動を減らし、更に発射音が小さくなるサイレンサーという部品が付いている。それも寿命は短いらしく、換えのサイレンサーが弾と一緒にたっぷりとコンテナに入っていた。

御蔭で、銃を撃っても他の発症者が集まってくる心配は少ない。

そんなことを考えていたら美紀と太郎丸が地下から戻ってきた。

 

 

「全部やったよ」

 

 

嬉しそうな笑顔の美紀。

 

 

「それにしても、みきって暗いの大丈夫なんだったっけ?わたし、あんな中じゃ何も見えないよ」

 

「なんかねアレがいるところがなんとなくわかるんだよ。きっと神様のおかげだね」

 

 

やっぱり美紀おかしい。

神様が~なんて言葉を美紀から聞いたのは今日がはじめてだよ。

考え込んでいたら早く来いとせかされる。

わかったわかった、今行くよ。

えっと、うん、そっちだね。

 

 

真っ暗の地下を先導され私たちは進み、そして教えられたスイッチを入れ、明かりが灯る。

すると一面大量のコンテナが積みあがった光景が広がる。

おっと、入り口閉めないと、明かりが漏れちゃうね。

開きっぱなしだったシャッターを閉める。

このシャッターも発症者対策をしているのだろうか、音を立てないで静かにしまっていく。

 

 

美紀は不思議そうにコンテナを見て回っているけど、まず最初に確認しないといけないことがある。

えっとどれだ。

 

ワンッ!

 

奥の方で太郎丸が合図を送ってくれる。

向かうと探していた特殊薬品コンテナがあり、すでに蓋が開いていた。

中を確認すると、傘のマークが入った同じケースが綺麗に並べられて保管されていて、1ケース分だけスペースが開いている。

ケースを取り出し、中を確認すると螺旋型の特徴的な液体が入った筒と銃の形の注射機らしきものが入っていた。

これがあのレポートに書いてあった安定剤という物なんだろう。

 

 

安定剤1個持ち出しを確認。

変異種若しくは適合種1体増加の可能性有り。

 

 

私はその言葉の意味を理解して戦慄を覚える。

 

 

「圭、こっち。奥にも部屋があるみたい」

 

 

美紀がすぐ近くの閉まったドアの前で呼んでいる。

その扉はドアノブがなく、すぐ横にテンキーとカードリーダーが据え付けられていた。

私は言われて持ってきたあの死体の認証カードをそのカードリーダーへと通す。

認証OKの表示と共にドアがスライドして開き、私たちは中に入る。

 

 

映画とかで出てくるような指令室と研究室を足したような広い部屋だった。

 

片側にはいくつものモニターが壁一面に設置され、パソコンが設置されている机がそのモニター群に向かって並んでいる。

もう片方側はガラス窓で敷居がされている先にテーブルや試験管、顕微鏡、用途の分からない機械類、そして大人が入れそうな大きさのからっぽな円柱形のガラスケースが何個も並んである部屋。

 

 

私たちが出たのはモニターのある指令室側だった。

モニターには校舎内各所や、校庭、学校周辺などが映し出されている。

 

 

「圭!あれ!放送室」

 

 

その中のモニターの一つを美紀が指さす。

そこには確かに放送室の様子が映し出されている。

 

 

放送室の中には何人もの生徒、そして確か佐倉先生だったかな、先生の姿も見える。

そして何より、そこにはショッピングモール、そして先ほど倉庫から出て行ったあの化け物がいた。

入り口側からの映像なのでよくは見えないが化け物は佐倉先生の傍に跪き、佐倉先生と何かしている。

 

 

「やっぱり!先生たちが!あの化け物もあの先生が操っているんだ!」

 

 

美紀は興奮したように早く殺しに行こうと言うが、落ち着くように説得されてしゅんとしてしまう。

子供は親には勝てないよね。

私は苦笑しつつモニター前に並んであるパソコンを調べる。

 

 

まず、最初に警告文が表示された。

【巡ヶ丘学院高校地下研究所の放棄】

実験体に調査員が殺害されたことによってイレギュラーな被害を抑えるためにここは放棄されたらしい。

規定の退避ルートを通ってランダル医療センターへの合流指示が出ている。

 

 

圭はその画面を閉じ、他の情報を出す。

 

 

実験経過報告、状況、巡ヶ丘市役所…全滅・実験終了。鞣河小学校…継続中。巡ヶ丘中学校…全滅・実験終了。巡ヶ丘学院高校…継続中。聖イシドロス大学…継続中。リバーシティ・トロン・ショッピングモール…全滅・実験終了。

 

 

巡ヶ丘市各所で行われている実験状況が表示された。

 

 

その中の巡ヶ丘学院高校の実験詳細を出す。

 

 

セキュリティが掛かっていたが、横から教えられたパスワードを入力し解除する。

実験内容、達成条件、経過状況などが表示される。

 

 

達成条件を見てめまいがする。

 

 

実験レポートは一定時間ごとに転送されるらしく、ちょうど今、新しい実験レポートが登録されたと表示が出る。

 

 

複雑な条件下での任務遂行能力についてなんちゃらかんちゃら。

うん、よく分からない。

専門用語なども多く、半分も理解できない。

私と一緒に見ているが、よくこんなの理解できるな。

 

 

「ねぇ、圭、こっちの部屋は?」

 

 

美紀はそんなことに興味はないとばかりにあっちこっちうろうろしていたが、奥にある扉の前でこっちを呼ぶ。

 

 

私はパソコンから目を離し、いつの間にかテーブルの上へ上がっていた太郎丸を下へと降ろし、美紀が呼ぶ扉へと向かった。

 

 

「えっと、えすわいえるえーびー?」

 

 

その扉には部屋名が記載されていたけど、英語で読めない。

 

 

―ハーメルンの認証を確認しました。ロックを解除します―

 

 

私たちが扉の前に立つと合成音声が流れ、ガチャンガチョンと物々しい開錠音がし、扉が開く。

 

 

恐る恐ると中に入ると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

『ようこそ。そしてこの音声が流れるということは私の計画が失敗したということだね。残念なことだが君たちを歓迎するよ』

 

 

 




批判はあえて受けるスタイル。


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校舎~駅まで

感想で何人かが気にしてましたが、別にクトゥルフは出てきませんよ。
みーくんに話しかけているのはクトゥルフの邪神ではなく他の何かです。
みーくんは読書好きなのでクトゥルフとかも知っていて、私に力をくれるのはきっと神様なんだって思い込んでいるだけです。

なので現状明確にコラボってるのはバイオだけです。

今回も若干短い。


抗ウイルス薬打ったら触手が生えてきた。つまりがっこうぐらしはエロゲだった疑惑のRTAはーじまーるよー。

 

 

自分で言ってて意味わからんな。

 

 

感染抑えられなくてウガァするならわかるけど。

もしかして原作のくるみちゃんも実は触手が生えていた説(どこに!?)

そう言えば終盤に近付くにつれ心なしかゴリラエロかったな。

股間に生えた触手がR-18していた可能性も微レ存。

 

 

でも悲しいかな、原作もこのゲームも全年齢だ。

つまり添い寝が限界。

ヌメヌメ触手に体を縛られて添い寝だけとか寂しすぎるよな。

それに今の私はゾンビさんなので眠ることができません。

アンデッドは睡眠完全耐性なのですよ。

それに好感度がほぼ0に等しい現在、あの生存者の中にいるといつ寝首をかかれるか分かったもんじゃありません。

まだ頭がお花畑な佐倉先生やゆきちゃんならともかく、ゴリラやサイコパスさんは確実に殺しに来るでしょう。

 

 

しょうがないのでトイレで食事(これが本当の便所飯)を済ませた後、次のイベントまで佐倉先生達が事故死しないように校内と駅までの道を掃除してきました。

掃除中に救援イベント発生しても駅までの道の途上にいれば車の音が聞こえてくるでしょうから、そうしたら戻ってりーさんとチョーカーさんを仕留めましょう。

2日目なので幾つかの民家に生存者の気配がしますが、また強キャラだったら嫌なので開けませんよ。

今では無抵抗のゾンビを食べてステータスだけ上げた方が効率いいですしね。

 

 

そして夜が明けて現在3日目のお昼過ぎ、駅までを粗方片付けたので学校に戻ってきたらモブ生存者と佐倉先生達の間で銃撃戦が起きていました。なんで?

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

しずくの奴が出て行ってから、しばらくしてめぐねぇが確認したいことがあるから付き合ってくれっていうので二人で職員室まで行くことにした。

 

 

職員室は安全が確保してある同じ3階にあるので一人で行けなくもないが、さっきのしずくの例もあるし、もし見落としがあった場合、片腕・・・なのかは分からないが両腕が満足に使えないめぐねぇだけじゃ危険だ。

それにしずくが居なくなってから何やら深刻な顔をして考え込んでいた。

わたしもりーさんも何も言わないが昨日からめぐねぇの事を心配している。

1人だけ残された先生。

こんなことが起こる前のめぐねぇは子供っぽいところのあるどちらかというと守ってあげたくなる子といった先生だった。

だから1日目の屋上で倒れためぐねぇを見て、私がしっかりしなきゃ、そう自分に言い聞かせ折れそうになる心を奮い立たせた。

 

 

だが、翌日。

めぐねぇが率先して生き残っている生徒を探しに行くと言い出した時は驚いた。

いや、優しいめぐねぇだから生徒を探し出そうとすることはわかる。

だが、私のシャベルを振り回して転げたり、武器を吟味しだしたのは意外だった。

武器を手に取るってことは生徒だったあいつらを殺すってことだ。

私だって未だに男のあいつらを倒すときは先輩の顔がちらついて心に来るんだ。

到底、めぐねぇに出来る事じゃない。

だというのに実際屋上から出た後のめぐねぇは八面六臂の戦いぶりだった。

いや、実力はぜんぜんだったけど。

でも必死になって槍を振るい、生徒だったあいつらを牽制したり転ばせたりしてくれて、私はずいぶんと戦いやすかった。

そして屋上階段下のトイレから生徒を助け出して少しずつ戦えるやつらが増えてくると、だんだん先生は司令塔としての力を発揮してきた。

 

 

後から聞いた話だが教員は害獣対策として生徒を指揮する研修なども受けていたらしい。

なんだそれって気もするが。

 

 

戦える奴が増えたんだからわざわざめぐねぇが戦う必要もないだろうに、それでも槍を手放すことはなかった。

きっとめぐねぇは最後に残った先生として生きている生徒だけでもなんとしても守り切る覚悟を決めたのだ。

弱い自分を言い訳にせず矢面に立って戦い抜く覚悟を。

 

ただあいつらに止めを刺すときに言うごめんなさいという言葉と悲愴な顔は変わらなかった。

 

大分無理をしている。

今日一日見てるいだけでもそれが分かってしまう。

だから私とりーさんは3階の安全が確保できたし明日からは少し休もうと提案しようと相談していた。

 

 

そこにあの騒動だ。

初めてあのしずくの姿を見たときは私だって恐怖で足がすくみそうになった。

ただ倒さないと殺される。私が殺されたらめぐねぇもりーさんもゆきもみんな殺されてしまう。

それだけを考えて気力で立ち向かった。

めぐねぇが押し倒された時なんてもう何も考えられずただ闇雲に叩き飛ばした。

あれがしずくだったなんて私には1ミリも気付けなかった。

 

 

めぐねぇだけが気付けたんだ。

 

 

あの後は大変だった。

窓の外へと落ちていくしずくを見ためぐねぇは半狂乱でしずくの名前を何度も呼びながら窓へと縋り付いた。

私たちが止めなければそのまま一緒に下へと落ちてしまっていた。

左腕が千切れ血が容赦なく流れ続けて激痛を感じていただろうに。

私と生き残ったやつらでなんとか放送室まで引きずってきて止血する頃には顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

それでも「なんで気付いてあげられなかった」「私なら止めれたはず」言い、としずくの名前を呟きながら何度も謝っていた。

昼間は一言も弱音を吐くところや涙を流すところすらを私たちには見せなかった先生がだ。

張りつめていた糸がぷつりと切れたようだった。

少したって外を見張っていた奴からしずくがまだ生きていて校舎の中へと入っていったと聞かされてようやく落ち着いたように気を失った。

 

 

そしてさっきのしずくの再来とめぐねぇの治療。

学校の地下にあったというワクチン。

脳みそまで筋肉とよく言われる私だってこの学校が相当きな臭いことに気付いた。

きっとりーさんや他の生徒も。

そんな中、深刻な顔をして確認したいことがあるっていうなら、やっぱりそういう事なのだろう。

もちろん私はめぐねぇの事を疑ってはいない。

だけど少なくとも上の立場の奴らは知っていたんじゃないかって気がする。

だって、前日から学級主任とか何人かの先生が休んで授業がいくつか自習になっていたし。

 

 

そんなことを考えているうちに職員室についた。

めぐねぇは部屋の奥、教頭の机の後ろにある金庫を開け、中から厳重に封がされている封筒を取り出す。

片手のめぐねぇに変わって私がその封を開け、中に入っていた書類をめぐねぇと一緒に読む。

 

 

【緊急事態マニュアル】

 

 

それにはこの騒動が起こることを想定した避難経路、地下シェルター、備蓄物資、そしてその際に行うべき検証について書かれていた。

 

 

あいつらは発症者とのことだ。

発症者、つまり何らかの病気にかかった状態。

ただし、一度発症すると元に戻ることはないので脳、もしくは頸椎を破壊するように書いてある。

非常事態発生後は生存している生徒を連れて地下シェルターまでいくこと。

そしてそこに用意されている安定剤を生徒に投与して、シェルター外へと解放。

教職員は地下の研究所へ連絡後、シェルター内で救助部隊が来るまで待機と書かれている。

 

 

生徒を、シェルター外へと解放?

 

 

つまり、このマニュアルによれば、その安定剤とかいうのを投与するだけで、生徒は助けないのか。

 

 

見殺しにするってことなのか?

 

 

一緒に読んでいるめぐねぇの顔を見ると真っ青になって震えていた。

やっぱりめぐねぇは知らなかったんだな。

 

 

更に先を読み進めると、通常の発症者は失敗作なので殺してもいいが、安定剤投与後に変異した者に関しては実験対象として研究所の所有物になるため殺害厳禁で可能なら捕獲とも書かれていた。

 

 

ははっ。

 

 

失敗作か。

 

 

つまり先輩は、失敗作だったのか。

 

 

あまりに酷い現実に私は床へとへたり込み、もはや怒りを通り越して乾いた笑いを浮かべながら涙を流した。

 

 

 

 

そんな私をめぐねぇは後ろから抱きしめてごめんなさいと何度も言いながら泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、私とめぐねぇは地下研究所へと向かう。

 



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セーブファイルが破損しました

原作が息してない。


どうしてこうなった。

また評価の下がりそうな話が出来上がりました。







「あと300秒で巡ヶ丘学院高等学校へ到着」

 

 

死者の街となった巡ヶ丘市上空を3機の軍用ヘリが飛んでいく。

 

 

そのヘリには防疫マスクと黒ずくめの戦闘服を身に着け重火器で武装した兵士達が乗っていた。

 

 

「第1目標は『適合体メグミ・サクラ』の捕獲。第2目標は試験体の捕獲、無理なら排除だ。他は全部排除せよ。目撃者は1匹も残すなよ」

 

 

「ガキども相手なんて鴨撃ちと変わらんぜ」

 

 

インカムから聞こえる指令に1人の男が軽口で答えるとドッと笑いが起きる。

 

 

「・・・なお試験体はこちらの停止コードを受け付けず暴走状態にあると思われる。こちらの敵味方識別信号に反応しない可能性が高い。留意せよ」

 

 

「問題ない。全員ぶっ殺して定時で上がって酒飲んで寝る。いつも通りのなんてことないルーチンワークさ。それに今日の晩飯はポークチョップなんだ。とっとと終わらせて帰るぞ」

 

 

その言葉に銃を軽く上げ応と答える兵士たちを見て隊長は頼もしさを感じた。

 

 

「さて、野郎ども、お仕事の時間だ」

 

 

巡ヶ丘学院高等学校はもう目の前だ。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

どうしてこうなった、初めての展開に戸惑いまくってくるRTAはーじまーるよー。

 

 

はじまってるよ。

 

 

はじまっちゃってるよ。

 

 

戻ってきたらやけに1階が騒がしいなって覗きに行ったら。

 

 

銃撃戦がはじまっていたよ!

 

 

地下への入り口がある倉庫内で銃とショットガンを乱射しているモブ生存者2人、それに対して拳銃で応戦しているゴリラと肩を撃たれたのか手で押さえて荒い息をついている佐倉先生のお姿。

なにこの「またゲームジャンル変わってる」とか視聴者に言われそうな状況。

もしかして私が置いておいた食料による味方割れ戦略が効果抜群すぎたのでしょうか。

それにしても1日で銃で撃ち合うまで発展するとか今どきの若い子たちはどれだけ辛抱足りないんだろう。

 

 

こっそりシャカシャカと天井から見守ってますが内心冷や汗だらだらです。

お互い倉庫内の物陰に隠れながら撃ち合っているので致命的なダメージはなさそうだけど、このままにしていては私の獲物が殺されてしまいますね。

佐倉先生達にはまだやってもらわないといけないことがあるのでここは助けます。

正面から戦えば銃とショットガンの二人相手に勝てる要素はないのでこっそりと天井を伝って回り込みます。

アクティブソナーを使用しているので音を発していますが倉庫の中でドンパチやっているためかまだ気付かれていません。

なんとか後ろに回り込むことができました。

まずは飛び降りと同時に一人目、銃を持っているので銃っ子でいいか、銃っ子の頭にマンホール蓋をプレゼントしてから、もう一人はショットガンだからショット子で、ショット子には捕食が出来たらおいしいです。

銃っ子がリロード作業に入りましたのでちょうどいいタイミングです。

 

それではいただきまーす。

 

マンホール蓋を振りかぶって、銃っ子めがけて飛び降ります。

よし、確殺いただきです。

 

おっと、キャンセルしないと。

 

あぶないあぶない、もう少しで殺してしまうところでした。

殺しては怒られてしまいます。

 

 

どうして殺してはいけないのか、それはですね。

 

 

えっと、まずは彼女たちの姿を見てください。

実に見事なまでの平坦な胸ですよね。

それに巡ヶ丘学院高等学校の制服を着ています。

生徒である彼女たちをここで殺してしまうと佐倉先生達の好感度が大幅に下がってしまうのです。

やっぱりあなたは身も心もケダモノなのねって。

もう最低まで下がってるから大丈夫?

いやいや、念のためということがあります。

ここまでガバっている状況で更にカオスにしてはもはやリセット案件となってしまいます。

せっかくここまで珍しい状況になっているのですから最後まで走りたいではないですか。

ということで、殺さずになんとかうまく乗り切る方法はないでしょうか。

 

 

ちなみに、今の状況は銃っ子の背後に降りてマンホール蓋を振りかぶった状態です。

そのまま硬直している私とこちらに気付いて振り向いて銃を向けている銃っ子とショット子。

はい、どうなるか分かりますね。

 

 

お腹に鉛玉をたっぷりいただきました。

 

 

大丈夫、まだ慌てる時間ではない。

頭に命中しなかっただけマシですね。

 

 

HPは真っ赤ですが、私の顔も恥ずかしさのあまり真っ赤に燃えていますよ。

なんていうミスをしてしまったのか、こんなうっかりははじめてですよ(本当にはじめてとは言っていない)

 

 

ここは三十六計逃げるに如かずです。

どこかから出てきた手をビューンと長く伸ばし某蜘蛛男の要領で棚の上から反対の壁、そしてまた棚へ次々と渡ることで追撃の銃撃を避けつつ佐倉先生達の元へ向かいます。

そして負傷している佐倉先生とゴリラをアイテムボックスにしまって逃走します。

痛い痛い、背中撃たないでマジでもう死んじゃうから。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

 

3日目朝

 

 

私とくるみさんは地下にあるシェルター、そして研究所に行ってみることにした。

おそらく、この事態の鍵がそこにあるはず。

それがどんな悍ましい真実だとしても、もはや目を背けることはできない。

 

 

「くるみさん、これを持っておいて」

 

 

出発前、職員室で私の机にしまってある銃を取り出し、ホルスターと一緒にくるみさんに渡す。

 

 

「めぐねぇ!これって拳銃じゃないか!・・・この重さ・・・もしかして本物?」

 

「ええ、教師には暴漢が来た際に生徒を守るために持たされているものよ。大丈夫、私だってちゃんと研修受けたんだし」

 

 

それは教師全員に配られている『FN Five-seveN』という拳銃だ。

私は隣の先生の机から同じ銃を取り出し、ホルスターに入れて左脇に吊るす。

 

 

「ちょっと。めぐねぇ、ここって日本だよ?教師が普通に銃を持ってるなんておかしくないか?」

 

 

なんのことだろう?

教師は普通銃を持っているものなんじゃないだろうか?

 

 

でもよく考えれば日本って銃刀法で銃所持が禁止されていることを思い出す。

 

 

「確かにおかしいわね?でもなんで私、銃を持っていることを普通だと思ってたの?」

 

 

この銃だって教師になってすぐの研修の時に渡されたものだ。

そういえば研修って銃の練習とかをした記憶はあるんだけど、どこで研修を受けたのかとか、誰に訓練を受けていたかが何故か思い出せない。

それどころか研修の為に朝早くに学校へ来てから、それからの記憶がない。

帰ってきたときの記憶も。

 

 

「めぐねぇ、それって・・・」

 

 

いったい何が・・・私、何があったの、ンッ!

 

 

思い出そうとすると、頭にズキンと痛みが走る。

 

 

なに・・・なにか・・・

 

 

 

 

 

無数の光景がフラッシュバックする。

 

 

 

 

 

シェルター・・・無数のコンテナ・・・押さえつけられる私・・・実験室・・・手術台・・・なんで・・・神山先生・・・

 

 

 

 

 

ダメだ・・・

 

 

 

これ以上はダメだ・・・

 

 

 

もう思い出すな。それ以上思い出してはいけない。

 

 

 

大丈夫、何も怖いことはなかった。神山先生も言っていたではないか、研修のことは口に出すなって。━━━━に忠誠を。

 

 

ザ・・・ザザッ・・・・ザザザザ・・・・・・ザーーーーーー

 

 

「━━━ぇ! ━━ねぇ!めぐねぇ!!」

 

 

「・・・え?」

 

 

私はいつの間にかくるみさんに両肩を掴まれ激しく揺さぶられていた。

 

 

「めぐねぇどうしたんだよ、いきなり真っ青になって震えだして」

 

「え・・・先生、今、何していたのかしら」

 

 

えっと、確か地下へ行く前にここに銃を取りに来たのよね。

 

 

それから、くるみさんに銃を渡して、私の分も持って・・・

 

 

「銃、使いかた大丈夫?ここがセーフティになってるから、撃つ前にはここを、こうしてから撃つのよ」

 

「いや、めぐねぇ・・・・・・はぁ、もういいよ。それで弾はどうやって・・・」

 

 

くるみさんに一通り使い方を説明して、彼女に左脇にホルスターを取り付けてあげる。

 

 

「でもこの銃には消音器が付いてないから、できるだけ使わないようにね。どうしようもないってときの保険だから」

 

「分かってるさ。わたしにはこの頼れる相棒がついてるからね」

 

 

くるみさんはシャベルを掲げて笑みを浮かべる。

 

 

私もくるみさんと同じ形のシャベルを掲げてくるみさんのシャベルとコツンと当てる。

昨日までは両手でも持てなかったこのシャベル。

今朝なんだか持てる気がして持ってみたら、なんとすごく軽く感じ、片手で軽々と振り回せるようになっていた。

これが火事場のなんとかというやつなのだろうか。

それとも・・・それ以上は怖いので考えないようにする。

 

 

「んで、地下までどうやっていくんだ?階段から掃除しながら行くとしたらちょっと時間かかるけど、走り抜けるか?」

 

 

「えっとね、実は生徒にはあまり知られてないけど、実は校舎の端にエレベーターがあるのよ。鍵が必要だから教師以外は使えないんだけどね」

 

 

まずは職員室の壁にかかっている時計の針を動かし0時15分にセット。

すると時計が壁から外れるので、時計の裏に隠されているヒューズを取り出します。

 

 

次に教頭の机に行き、その横に置いてある校長先生の胸像の頭を掴む。

 

 

ぐりぐりと回すと胸像の髪の部分が取れます。

 

 

これら一連のギミックを見るのは初めてなのだろう、くるみさんが目を丸くして驚いている。

その髪をもって、職員室の奥側の扉からエレベーターのある通路にでる。

通路壁にある電源盤にヒューズをセットします。すると通電してエレベーターに電源が入ります。

 

 

でもそれだけではエレベーターは使えません。

通路にも校長の胸像があり、そちらは禿頭になっているので、今持ってきた髪をその頭に乗せてぐりぐりっと押し込む。

するとエレベーターの扉が開きます。

この髪部分が起動用の鍵になっているのです。

 

 

「このエレベーターってよく考えるとここから鍵を使わないと使えないのよね。元々この事態が起きた時の避難用に作っていたんでしょうね」

 

「そもそもその鍵がおかしいし、それまでの一連の流れも色々おかしい。」

 

「なんでも様式美ってやつらしいわ」

 

 

深く考えてはいけない。

 

 

エレベーター扉の横に設置されている複数のモニターの電源が入り、1階のエレベーター前、廊下などが映し出される。

こんな設備はどう考えてもアウトだろう。

私は今の今までなんでこれをおかしいと感じなかったのだろう。

とりあえず、1階には発症者の姿もなく安全そうだ。

もしかしたらしずくさんがどうにかしてくれたのだろうか。

 

 

私とくるみさんはエレベーターを使い、1階へ降りる。

そして倉庫に入り、地下へと降りていく。

地下には明かりが灯っていた。

音をたてないように静かに降りると、複数の発症者が倒されていた。

 

 

「めぐねぇ、こいつらの傷見てくれ。これって」

 

「弾痕ね。それも複数の弾痕が線上に続いている。連射式。この距離でこの傷からして口径はそれほどでもない」

 

 

私は周りを見渡し、いくつもの薬莢と弾頭を見つける。

それを数か所で拾い集め、見比べる。

 

 

「5.7×28mm弾。私の銃と同じ弾ね。それで連射式、おそらく『FN P-90』ね」

 

 

地面に残されたかすかな足跡を見る。

 

 

「どれも旋条痕が同じ。どうやらその銃を持っているのは1人みたいね。でも足跡は2人と1匹、そしてこの特徴的なローラスケート痕はしずくさんね」

 

「めぐねぇ・・・やっぱりそれも研修で?」

 

 

くるみさんに言われ、はっと我に返る。

やっぱり私はおかしい、こんなことが分かる教師なんて普通じゃない。

 

 

そして閉まっている奥のシャッターへと向かう。

 

 

どことなく見覚えがあるシャッター。

私は迷うことなく開閉スイッチを見つけ、開く。

 

 

音を立てずに開いていくシャッター。

その奥にはこれまた見覚えのあるコンテナ群。

 

 

「すげぇ、これ全部備蓄物資なのか」

 

 

くるみさんが警戒しつつも興味津々とばかりにコンテナを見渡しながら奥へと進みます。

幾つかのコンテナが開かれていて、中に医療ボックスや鎮痛剤が入っています。

しずくさんが持ってきたのはこれらなのでしょう。

 

 

そして部屋の一番奥に開かれたコンテナ。

そこに例の薬品ケースが入っていました。

 

 

しずくさんが持ってきた抗ウイルス薬。

アンブレラの社名とマークが入っているケースが詰められています。

中を確認すれば、やはり同じものです。

 

 

「これ、しずくが持ってきたワクチンだっけ」

 

「ええ、でもマニュアルに書かれていた内容からすると、正確にはワクチンではなく安定剤らしいわね」

 

 

本来ならこれを生徒に投与してここから追い出す予定だったものです。

 

 

「名前から推測するなら、完全に治すわけではなくて症状を安定させる、もしくは発症を遅らせたりするための物なのかしらね」

 

「めぐねぇのその左腕のアレや突然の怪力からすると、どっちかっていうと安定っていうより制御って感じがするけどな。アニメで『あっ!熊の力を手に入れたー』って歌のアレみたいな」

 

「エビルマンね、懐かしいわ・・・って先生はそんな歳ではありません!それにこの力、やっぱりそうなのかしら。お嫁・・・行けるかなぁ」

 

「触手はロマンだって部活の男子が言ってたの聞いたことあるし、めぐねぇ可愛いから大丈夫なんじゃないかな」

 

「もぉ~、あんまり先生をからかうといい加減怒りますよ」

 

「ぶはっ!ごめんってめぐねぇ、だからその顔止めてよ」

 

 

ぷぅっと怒った顔をして叱るけど、くるみさんは笑うばかりでまったく反省していません。

やっぱり威厳が足りないのでしょうか。

 

 

「これで治るわけじゃないだろうけど、それでも念のために持って行った方がいいよな」

 

 

くるみさんはリュックに安定剤を詰め始めました。

 

私は他に何かないかと思い見渡すと、すぐ近くに扉を目にします。

 

 

 

ああ、あそこだ。

 

 

 

そこが地下の研究所の入り口。

私にはそれがすぐわかりました。

 

 

カードキーを通して開き、中に入ると監視室、そしてその隣にガラス張りになった実験室。

 

 

そう、この中で私は研修を受けたのだ。

 

 

研修という名の━━━を。

 

 

忌々し気にその扉を睨んでいると、赤くロック表示されている扉の隣のモニターが緑のロック解除表示に変わる。

 

 

「「「え?」」」

 

 

いきなり開いた扉。

その先にいた二人の少女。

私と少女たちは目を丸くしてお互い見つめあう。

 

 

立ち直ったのはその片方の少女が先だった。

 

 

手に持った銃を、あれはP-90だ、こちらへ向けて照準してくる。

 

 

かろうじて身をひねり避けるが、2発の銃弾が左肩を貫通する。

 

 

「めぐねぇ!」

 

 

事態に気付いたくるみさんがこちらへと駆け寄ろうとするが、私は彼女の体を押さえ、棚の陰に隠れる。

ちょうど隠れ切ったところを銃弾が連続して通り過ぎていく。

 

 

「ここは棚が一直線になってて隠れられないわ、上まで、倉庫なら入り組んでいるからそこまで逃げるわよ」

 

 

渋るくるみさんを先に行かせ、私は棚に置かれてあるコンテナを引っ張りだして障害物にしつつ逃げる。

 

何発かかすりそうになりながらも間一髪シャッターを潜り抜け、階段を駆けあがり地下から抜け出す。

 

 

「めぐねぇ!こっち!」

 

 

見ると入口近くで棚などを引き倒し、簡易的な遮蔽物にして拳銃を抜いて構えているくるみさん。

 

 

「何してるの!逃げるのよ!」

 

 

壁を蹴って三角飛びの要領で遮蔽物を乗り越え、くるみさんの横へと隠れる。

今になって撃たれた肩の痛みが来て顔を顰めながらも傷口を抑え止血する。

 

 

「めぐねぇ、肩撃たれたのか。いや、それよりあいつらをここでなんとかしなきゃ、上の連中まで巻き込まれる」

 

「それは・・・でもあの子たち、うちの生徒よ。それなのに」

 

 

私が言い終わるより先に銃弾が飛んでくる。

 

P-90を持った少女はこちらが遮蔽物に隠れているのにも関わらず何度も短連射してくる。

 

 

「こなくそ!あっちはやる気十分じゃねーかよ!」

 

 

くるみさんが銃口だけを出して応射する。

だけどこちらは拳銃、あちらはフルオート可能なPDW(個人防衛火器)。

どうしてもこちらが不利だ。

なんとかリロードのタイミングで間を詰めれれば、そう考えていたが轟くような音がして、隠れている遮蔽物の一部がはじけ飛ぶ。

 

 

「散弾銃!あんなものまで!」

 

 

それはしずくさんが持っていたのとおなじ8連射まで可能な散弾銃でした。

通常の散弾銃より拡散範囲を高めた特別製のそれは遮蔽物を完全に貫通する力はありませんが、多少使い手が不慣れでも命中が容易です。

リロードの際に詰めるのはかなり難しい。

これでは手詰まりです。

いざとなったらエレベーターを使い職員室に先回りし、残っている拳銃を全部回収しての人海戦術で止めれるか。

悩んでいると、昨晩聞いた特徴的な歯を噛み合わせる音が鳴っているのに気づきました。

 

 

「この音は・・・しずくさん?」

 

 

チッ・・・チッ・・・

 

 

かすかに聞こえてくる音を頼りに目の動きだけで探ると、天井に張り付いて向こうの女の子の後ろに回り込もうとしているしずくさんを見つける。

 

 

「くるみさん・・・しずくさんが来ています。彼女たちが音に気づかないようにこちらに気を引きますよ」

 

 

くるみさんに耳打ちすると、彼女も気づいてマガジンを新しい物へと交換します。

私もホルスターから銃を抜き出し、くるみさんに合わせて連射します。

 

こちらの連射に釣られ、P-90の子がフルオートでこちらへと撃ちかけてきます。

そして彼女の弾が切れると同時にしずくさんが手に持ったマンホール蓋を振りかぶり飛び降ります。

あ、あれじゃ彼女、死んじゃう。

 

 

「だめ!殺しちゃ!止めるだけにして!」

 

「ちょっめぐねぇ!」

 

 

自分勝手なことについ殺さないようにと叫んでしまう私と、それを咎めるくるみさん。

間に合わないだろうと思っていたその攻撃が、当たる直前でぴたりと止まってしまう。

 

 

「ドウシテ・・・」

 

 

しずくさんはマンホール蓋を振り上げたまま、首を傾げ、そして彼女の姿をまじまじと見、

 

 

「メグリガオカ・・・セイト・・・ヤッパリ・・・ケダモノ・・・サイテイ・・・」

 

 

そう言って動きを止めてしまう。

 

 

━━━同じ巡ヶ丘の生徒を殺そうとするなんてやっぱり私はケダモノだ、最低だ。

 

 

彼女の心の声が聞こえてきた気がします。

ああ、私が彼女を止めなければ気づかずにすんだのに・・・。

 

 

ただ、彼女たちはしずくさんと違い、止まることはありませんでした。

P-90と散弾銃の弾がしずくさんへと襲い掛かり、しずくさんは吹き飛ばされてしまいました。

 

 

「ハジカシイ・・・ナンテイウ・・・シテシマッタ・・・」

 

 

しずくさんは胴体から夥しい血を流しながら、それでも立ち上がりました。

そんな彼女に少女たちは止めを刺そうと銃口を向けました。

 

 

「しずくさん!逃げて!」

 

 

その声にしずくさんは胴体の裂け目から手を長く伸ばし、棚の上へと飛び上がりました。

そして右へ左へと飛びながら、少女たちの銃弾を避け、私たちの所へ飛んできます。

 

 

しずくさんは私とくるみさんを裂け目の手で抱き寄せると、私たちを守るように裂け目の中へと押し入れます。

くるみさんは喰われるのかと仰天していましたが、そんな様子はありません。

しずくさんの中はねっちょりとしていますが暖かくて何故か安心感があります。

 

 

しずくさんは私たちをお腹の中に入れたまま、倉庫から飛び出していきます。

 

だけど少女たちも追いかけてきて、後ろから止まることなく撃ち続けてきます。

 

 

「イタイ・・・イタイ・・・ウタ・・・ナイデ・・・」

 

 

逃げている間、しずくさんの嘆きの声がずっと聞こえてきて、私は何度も彼女へと謝り続けました。

 

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

「逃げられちゃった」

 

 

美紀が残念そうな顔で戻ってくる。

 

 

「しょうがないよ、さすがに壁とか天井とか張り付かれちゃね」

 

 

私は撃ち切った弾倉を外して新しいのと交換する。

やっぱり美紀も私も力が上がってるね。

 

 

「それにしても、やっぱり攻撃してこなかったね、あの化け物、えっと試験体?」

 

「あっちがどう思ってるかなんて関係ない。あいつも先生も全員殺すだけ。圭と私は生き残ってやるんだから」

 

 

尻尾を振りながら足元にやってきた太郎丸を抱き上げ、その毛並みを撫でてあげる。

 

 

そう、3階に向かったんだね。

 

 

「圭、どうする?追いかける?」

 

「んー、どうしようか?でも待ってれば降りてくるでしょ、だってね」

 

 

化け物が出て行った窓から外を見やると、空からパラパラという音が聞こえてくる。

 

 

「あいつらに殺されるようならそれでもいいし、残ったほうを仕留めるよ、みき」

 

 

楽しいゲームはまだ終わらない。

 

 




次回は一週間以内目指して!


感想とか評価をくれるとモチベあがります。
よろしくお願いいたします。


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通信が回復しました。

 

システムは深刻なエラーから回復しました。

 

エラーのログが作成できません。システム管理者に問い合わせてください。

 

システムの再起動がキャンセルされました。

 

プログラムを続行します。

 

 

 

前回から何故かエラーが出て放送枠新しいのが取れないのでそのまま続けているますRTAはーじまってるよー。

 

 

 

HPがピンチだしやばそうなのでチキンセーブ取りたいのにセーブファイルがぶっ壊れているんですよ。

ついさっき何故か銃撃戦起きていたので、やっべぇこりゃセーブ取っておかなきゃって急いでセーブしようとしたんですが。

『セーブファイルが破損しました』っていう無慈悲なメッセージが。

しかも次の放送枠を取ろうにもエラーが出て取れないんですよね。誰か責任者出てこーい!

なのでこのままエンディングまでぶっ続けで走らないといけないようです。

いや、RTAなんだから走り続けろよっていうツッコミは無しの方向で。

そもそもこのゲーム、ゲーム内時間とリアル時間連動なんですよ。

つまり今リアルタイムで3日目です。

誰だこんな糞システム作ったやつは。

ゾンビだから寝ないで24時間活動できます。

だから走者も24時間寝ないでプレイしてくださいね?

いやいや無理だから、少しぐらい休憩させてくださいよ。

そもそも普通に走ってもクリアするのに1週間近くかかりますよ、イベント待つ間だってリアルタイムだから。

途中でゲーム中断しても、リアルタイムで10分経ってから再開するとゲーム内で10分経ってますからね。

それにチャートも展開もぐっちゃぐちゃだからスポンサーに相談しようとしたら何故か電話線切れてるし。

どうなってるんだ!厄日か!お祓い行ってきた方がいいのか!

 

 

~~♪~~♪~~♪~~♪

 

 

おっと何の音でしょうね?

ああ、スマホの音ですか。

|ω・`)ノ ヤァ

スポンサーさんからのお電話ですね。

連絡がつかないのでスマホの方にかけてきてくれたのでしょう。

どうやら電話回線の工事で用意した電話が通じなくなってるので、このスマホから新しいチャートを送ってくれるようです。

ほむほむ、これからはこっちのスマホから指示を送るので、それを守って走ってくださいと。

了解であります。

なお、このスマホ、一方通行なのでこちらの音声は向こうに届きません。どんなスマホだよ。

でもこんなスマホ買ったっけな?

まぁいいか。

 

 

とりあえず続けていきますよ。

 

 

銃ブッパモブシスターズから何とか逃げ切って現在は職員室です。

窓ぶち破ったけどいいよね、どうせあっちこっち窓割れてるし。

アイテムボックスにしまった佐倉先生とゴリラをぺいっと吐き出してやっと人心地がつきましたよ。

HPはじわじわと回復していますが渇望ゲージが底をつきそうです。

おなか空いたな。

でもここでトイレに食事に行くわけにもいかないし、他に食べていい人間もいません。

 

 

「しずくさん・・・そうだわ、昨日貰ったお肉があるわ」

 

「しょうがねーな。取りに行ってやるよ」

 

 

ゴリラが走って出ていきます。

 

 

「しずくさん。怪我、なんとかしないと」

 

 

佐倉先生が職員室に常備されている薬箱を持ってきてくれましたね。

大丈夫ですよ、HPは自動で回復しますので。

消毒薬を含ませたガーゼで傷口をぬぐってくれます。

でもHPゲージには全く影響しませんね。

そりゃゾンビだからね。

逆に消毒でダメージ喰らうんじゃないかとちょっとヒヤッとしましたよ。

そうこうしているうちにくるみさんが人間の胴体ほどもサイズのある歪な形の肉塊を持ってきてくれましたよ。

どうやらまだ食べていなかったようです。

でも牛や豚の肉食べても回復するんでしょうかね?

まぁ検証と考えればいいでしょう、ダメで元々です。

そう考えていたんですが。

 

【△:変異した神山昭子 を捕食する】

 

うーん、どうやらこれ元人間でしたね。

しかもどうやらまだ生きてるっぽいんですが。

でもまぁ佐倉先生達は気づいていないっぽいんで黙って食べましょう。

 

 

神山先生。あなたのローラースケート、活用させていただいてます。

あなたが好きだった7人組アイドルにあっちで会えることを心から祈ってますよ、嘘ですが。もぐもぐごっくん。

 

 

変異していたからなのか渇望ゲージがMAXになりましたよ。

ステータスも軒並みアップです。

これは隠しアイテムってやつなのでしょうかね。

『謎の肉塊』だったのがイベントをこなすことによって『変異した神山昭子』という強化アイテムになるという。

 

 

「しずくさんが・・・」

 

「こりゃ・・・すげぇ、マジで漫画みたいだな」

 

 

HPも大幅に上がったし、これは序盤の敵相手ならオーバーキルですよ。

今の私を倒したければラスボスでも呼ぶんだな、ははははは!

 

 

(。´・ω・)ん?

 

 

なんか外から特徴的なパラパラという音が。

え?窓の外?何がいるって?

 

 

「ヘリ!こっちに向かってくる!」

 

 

確かにこの音はヘリの音ですね。

いきなり耳をつんざくほどのヘリの羽音が大音量で流れます。

ノオオオオオオ!ミミガーミミガー。

私、【聴覚過敏】なのでこの音量はきついです。

というかなんで今の今までこんな音に気づかなかったのか。

チラリとシステムログを見ると【バッドステータス『聴覚障害』から回復しました】の文字が。

どうやらさっきの銃撃戦で耳でも吹き飛ばされてたようですね。

そして今の食事によってバッドステータスから回復したようです。

 

 

「窓の外!突っ込んでくる!」

 

 

くるみちゃんの警告に私達は一斉にその場を飛び退きます。

アクティブソナーにも反応しました。

窓の外からロープを使って直接この職員室にダイナミック訪問ぶちかましてきましたね。

ガラスが割れる音と同時に入ってきた何者かが銃撃をこちらへとかましてきます。

その銃撃は先程まで私が居たところを粉砕していきます。

くるみちゃんの指示が一瞬でも遅ければ蜂の巣でした。

入ってきた敵は6人。

んん?アクティブソナーで感知した敵の形。それに先程のヘリの音に銃声。

これってもしかしてラスボスの取り巻き感染者軍隊ではありませんか!

確かにラスボスでも呼ぶんだなとかさっき言いましたよ。

でも本当に出るなんて思っちゃいませんよおおお。

ちょっとまってちょっとまって、今3日目よ。

それなのにもうラスボスとかどんなバグなんですか!

どっかで牛ワープでもしちゃった、私?

 

 

 

「変異体1体確認。生存者2体確認。排除します」

 

 

兵達が私達へと銃口を向けてきます。

 

 

「まて、そこの片腕の女はメグミ・サクラだ。そちらは殺すな」

 

 

一番遠い位置にいる兵が左腕につけた端末を見ながら攻撃を止める。

 

 

「それにあの変異体、随分でかくなっているが例の試験体だ。停止信号を送ってみる」

 

 

試験体?何言ってるんだ?

おっとスマホから連絡が。

どうやらこれはゾンビモード特有のレアイベントのようです。

プレイヤーが全員殲滅の目標達成を早く達成しそうな場合、それを阻止すべく残った生存者を皆殺しにするためにラスボスが軍隊を送り込むそうです。

そして先程地下で佐倉先生と撃ち合っていたモブ生存者2人がタイム短縮の為のクエストの鍵らしいので殺されないようにしないといけないそうです。

そういうのは早く言ってくださいよ。

さっき殺しちゃうところだったでしょ。

いや、電話ぶっ壊れてて連絡つかなかったししょうがないですが。

 

 

「だめだ。停止信号だけじゃなく他の通信モードもすべてアウト。自閉モードになってる。しょうがない排除するぞ」

 

 

んーあっちはあっちで何言ってるか分からんけど、とりあえずこいつらは全員ぶっ殺しで確定ですね。

佐倉先生とくるみちゃんを部屋の外まで蹴っ飛ばし、私はその反動で反対の壁まで飛び、そのまま壁を蹴りつけて加速、兵士の1人へと殴りかかります。

くるみちゃんはゴリラだから大丈夫。佐倉先生もなんか頑丈そうだし問題ないでしょう。

そして兵士の1人がマンホール蓋とドッキングします。

すかさず隣の兵へとドッキングしたままのマンホール蓋を振り回しますが、残念避けられました。

味方が1人瞬殺されたというのに兵士たちは冷静にこちらと距離を取りつつ銃を連射してきますね。

これがリアルな戦闘なら戸惑ってくれたり混乱してくれてあと2,3人やれたかもしれないのに。

そこらへんの機微を表現できないゲームプログラムの限界ですかね。

腕で銃弾から身を庇いながらもなんとか接近しましょう。

むむむ、なかなか思うように接近できない。

机などの障害物を利用して巧みに逃げられちゃいます。

というよりさっきから机が邪魔。

やたらと足に引っかかるし、間の通路も狭すぎです。

ジャンプして飛び越えようとすると頭ぶつけるし、なんなのこの職員室、天井低すぎないですか?

やっと捉えたと思ったら、子供のような小柄な体型を利用してこちらの振り回した腕や股の間をすり抜けて逃げられます。

もっと早く、もっと機敏に動かなきゃ。

そう考えてたら、いつの間にかレベルが上っていたのでこれ幸いと敏捷性をあげます。

あれ、いつの間にかステータス種別色々増えてるんですね。

まぁとりあえずもっと早く動けるようにしましょう。

 

 

「こいつ・・・まだ変異するのか」

 

 

何やら焦った様子を見せた敵兵士の元へ、途中にあった机をなぎ倒しながら瞬時に移動。

マンホール蓋と一体化した右腕を使ってシールドバッシュです。

まともに食らってしまった敵は拳法映画みたいに地面と平行に飛んでいき壁にきれいな花を咲かせます。

なんかどっかのアメコミヒーローみたいな盾になってますね、マンホール蓋。ちょっとびっくりです。

 

 

残り4人。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

くるみさんが持ってきたお肉を食べた直後、しずくさんの体が変化していきました。

細く引き締まっていた体は筋肉が膨張し鎧を付けているような頑丈な体格になり、身長も2メートルを大きく超え、天井からぶら下がっている蛍光灯へ頭がぶつかるほど。

きっとその膂力は今までの比ではないでしょう。

そんな彼女が今しがた襲撃してきた兵隊に翻弄されています。

最初に1人倒したときは、そのまますぐに他の兵士も倒してしまうかと思ったのですが。

彼女の大きすぎる体と人数差を利用して、死角へ周りこみながら銃撃を加えています。

頑丈になった彼女の体は銃撃を耐えていますが、それでも次第に筋肉の鎧を貫いて傷が増えていっています。

 

 

「モット・・・ハヤク・・・モット・・・キビンニ」

 

 

しずくさんがそう言うと共に、彼女のお腹から伸びた腕が先程倒されて床に転がされていた兵士の遺体を掴み、お腹の口へと入れて咀嚼します。

するとしずくさんの体がまた変化していきます。

 

 

「こいつ・・・まだ変異するのか」

 

 

兵士の1人が焦ったように後退りします。

その兵士の目の前にしずくさんが今までとは段違いの速さで移動し、いつの間にか右前腕部へ一体化して盾のようになったマンホール蓋で跳ね飛ばしました。

兵士は避けるまもなくそのまま絶命。

残り4人ね。

そう思って見ていたら、放送室の方から悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「めぐねぇ、大変だ!放送室の方も襲われてる!」

 

 

放送室の方から争う物音や悲鳴などが聞こえてくる。

クソッと悪態をつきくるみさんが放送室の方にかけていく。

 

 

「サクラセンセイ・・・ココハダイジョウブ・・・イッテ」

 

 

しずくさんがそう言い、敵兵士を引きつけるべく飛びかかり、兵士達もそれに合わせて動き、お互い目まぐるしく立ち位置を変えながら戦い出しました。

 

 

「しずくさん、死なないで」

 

 

私はそう一言だけ声をかけ、そして走り出しました。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

 

地下研究所端末のロック解除を確認。

 

 

メインシステムへ接続。

セキュリティシステム無効化中・・・完了

ウイルスプログラム実行・・・完了

外部アクセスを遮断・・・完了

実験プログラム改竄中・・・完了。

レポートファイル改竄中・・・完了。

ログファイル改竄中・・・完了。

校内の監視システムにアクセス・・・完了。

外部からのアクセスを欺瞞情報プログラムに変更・・・完了。

地下研究所全システム掌握完了。

 

 

試験体へのアクセス・・・完了。

試験体へ接続中。

外部アクセスを遮断中・・・完了。

実験プログラム変更中・・・失敗。

保護プログラム解除中・・・失敗。

実験プログラムチャート変更・・・失敗。

実験プログラムチャート変更・・・失敗。

実験プログラムチャート変更・・・成功。

実験プログラムチャートが修復されました。

実験プログラムチャート変更・・・保護プログラムよりアクセスが拒絶されました。

レポートファイル改竄・・・保護プログラムよりアクセスが拒絶されました。

アクセスログ改竄・・・保護プログラムよりアクセスが拒絶されました。

アクセスを拒絶されました。

 

 

「なかなかに頑丈なシステムだな。誰が作ったんだ。って世界一の天才美少女な私が作ったんだよ、そりゃ破れるわけないな」

 

 

部屋のドアが開く音。

 

 

「おっと、やっと帰ってきたな。とりあえず外部へのアクセスは遮断したし、じっくり攻略するとしようか」

 

 

夜はまだ明けない。

 

 

 

 






広げすぎた風呂敷が私の喉を締め上げる。
戦闘シーンが難しい。
話も短めだし、途中すぎるけど日曜だしね。


次は一週間以内を目指して。


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警告!論理回路にエラーが発生しています。

難産です。

戦闘シーンがマジで難しい。

とにかくエンディングまであと少し、頑張ります。





「第二班は職員室、第三班は地下研究所、第一班は生存者がいる放送室を確保する。降下開始!」

 

 

アンブレラ特殊部隊隊長アンドレの指揮により、各班は3機のヘリからロープを降ろし巡ヶ丘学院高校へと懸垂下降していく。

 

 

第二班が職員室真上の屋上、第三班は校庭へと降下して展開していく。

そして第一班、隊長のアンドレ、ベイモン、カーター、デーヴィド、エリック、フランクの6人は屋上の中央階段から校舎へと侵入していく。

 

 

「最後に確認できたレポートによると放送室に生存者が多数いる可能性。いつ発症するか不明の為、兆候が見られたら即射殺せよ」

 

 

アンドレは隊員に確認の意味を込めて言う。

中央階段から降りて3階の廊下にでると、ヘリの音に気付いた生徒たちが廊下へと出てきていた。

 

 

「自衛隊?救助に来てくれたんですね!」

 

 

アンドレ達に気付いた生徒たちが、こちらへと声をかけてくる。

そして自作したのであろう粗末な槍らしきものを持った男子生徒が、こちらへと駆け寄ってくる。

 

 

「そこで止まれ!武器を捨て両手を頭につけてうつ伏せになれ」

 

 

先行していたベイモンとカーターが銃を向け警告する。

 

 

「え?」

 

 

男子生徒は立ち止まるが戸惑っているのか、立ち呆ける。

 

 

「何?」「どうしたの」

 

 

その間にも生徒たちが放送室から顔を出し、そのうちの何人かがこちらへと向かってきた。

 

 

「早く言うとおりにしろ。さもなければ射殺する」

 

 

他の隊員達もその男子生徒へと銃口を向けると、男子生徒は慌てた様子で槍を捨て跪いて頭を抱えて丸くなる。

うつ伏せではないが、混乱しているのだろう。問題ないと判断して、隊員は更に後ろの生徒たちへと銃口を向ける。

 

 

廊下に出ていた生徒たちは慌てて武器を捨て両手を上げる。

 

 

「うああ、待ってくれ!俺たちは生きてる!あいつらじゃねーよ!」

 

「撃たないで!助けて!」

 

「ちょ、お前ら隠れてろ!」

 

 

放送室から顔を出していた生徒は悲鳴を上げながら部屋の中へと戻っていく。

 

 

「フランクは俺と周辺警戒、他はメグミ・サクラを探せ。あとまだ実験目標が生存しているはずだ。プログラムがまだ正常進行しているなら盾になる可能性がある確保しろ」

 

 

アンドレは隊員へと指示を出す。

 

 

「他はどうします?」

 

「予定通りに処理しろ」

 

「ラジャー」

 

 

アンドレの指示を受け、5人の隊員が一斉に動き出す。

 

アンドレとフランクが警戒する中、デーヴィドとエリックが跪いた生徒のうち、女子生徒の頭を掴んで顔を確認していく。

残りの2人は放送室を確保するべく、警戒しながら入口へと向かう。

 

その時、廊下の奥、職員室がある方で窓が割れる音と激しい銃声が聞こえてくる。

 

 

『第二班、第一目標と試験体を確認』

 

 

インカムから通信が入ってきた。

 

 

「了解。試験体をそこに縛り付けろ。こちらが終わり次第支援に向かう。・・・聞いたなお前ら、さっさと終わらすぞ」

 

 

「確認完了、目標無し、処分します」

 

 

デーヴィドとエリックは拳銃を抜き、跪いた廊下の生徒たちの頭へと順番に銃弾を撃ち込んでいく。

 

 

「うああああ」

 

「なんで!」

 

 

慌てて逃げようとするも、立ち上がる前に正確な射撃で次々と撃ち殺される。

放送室から覗いていた生徒も悲鳴を上げて扉を閉めようとする。

 

 

「おい、こっちが確保する前にやるなよ、面倒くせぇ」

 

 

放送室に近付いていたカーターが閉まろうとする扉へと体を挟み込み、扉を閉めようとした生徒を蹴り飛ばす。

そして中にいる生徒に銃口を向けつつ、顔を確認していく。

 

 

「えーと、ゆきちゃんとチョーカーさんとサイコパス確認っと。ゴリラはいねーな」

 

 

カーターはニヤニヤと笑いながら冗談めかして言う。

ベイモンが入り口から銃口を向け、警戒する中、その軽口なカーターは部屋の奥でへたり込んでいる若狭悠里へと近づき、腕を掴み無理やり立たせる。

悠里は痛みに悲鳴をあげ、丈槍由紀が止めようとカーターの腕を掴むが、彼は由紀を裏拳で殴りつけて振りほどき、入り口に立つベイモンの方へと押し出す。

 

 

「いい女じゃねーか。なんでサイコパスなんだろうなこいつ」

 

 

カーターは悠里の頬を掴み上げ、ニヤニヤ笑う。

 

 

「知らねーよ、試験体が写真や調査データから感じた印象からの勝手な思い込みだ。それより気を付けろよ。いくらワクチンを打ってるからっていっても直接噛まれたらどうなるか分からないぞ」

 

 

倒れてきた由紀の手を捻り上げつつ答えるベイモン。

 

 

「あとは・・・柚村貴依、死にたくなければ両手を上げて出てこい」

 

 

ベイモンは由紀へ手錠をかけ、銃口を貴依へと向け命令する。

 

 

「由紀を!由紀をどうする気だ!自衛隊じゃないのかよお前ら!」

 

 

貴依は目に怒りを灯しながら手に持った包丁をこちらへと構える。

銃口を向けられているというのに気丈なことだ。そんなにこの女が大事なのか。

そういえば友人関係だと調査にあったな。

そう考えたベイモンは「大人しくするならこの子には危害を加えない。それを捨てて出てこい。逆らうなら撃つ」と警告する。

包丁を持った程度でやられるわけがないが、早く終わるに越したことはない。

由紀は自分のことはいいから逃げてと叫ぶが、貴依は少し逡巡した後、躊躇いながらも包丁を床に落とす。

 

 

「よし、全部確保できたな。後は「接敵!職員室!」」

 

 

廊下で見ていたアンドレが処分を指示しようとした時、周囲を見張っていたフランクが声を上げ銃を撃つ。

見ると職員室の方から1人の少女が左手に持ったシャベルを盾にし、右手で構えた銃を撃ちながら走ってきた。

 

 

「くそっ早い!」

 

 

アンドレや他の隊員も援護射撃をするが、態勢を低くしてシャベルで庇いながら走っているため、止めることができない。

 

 

「由紀を離せ!」

 

 

シャベルを持った少女はそのまま先頭に立っていたフランクへとシャベルごと体当たりする。

そして馬乗りになってシャベルをフランクへと叩きつけようと振りかぶるが、間一髪、アンドレが少女を蹴り飛ばした。

アンドレはそのまま転げた少女へと狙いを定め射殺しようとする。

だが、その前に、カーターがこちらへと吹き飛ばされることで遮られた。

 

 

「今度はなんだ!」

 

 

思わず声を張り上げて振り返った先には、今度は由紀を取り押さえていたベイモンへと飛び蹴りを喰らわす男子生徒の姿があった。

 

 

「ディーノ君!」

 

 

隊員の手から逃れた由紀は貴依に抱かれながら、その男子生徒の名を呼ぶ。

 

 

「へへ・・・お、おれは最強の巡ヶ丘四天王、ディ、ディーノ様だ。通信講座で極めた健康カラテの神髄、見せてやるぜ」

 

 

顔は青ざめ、表情は引きつっているが、それでもこちらへと拳を向けて構えるディーノ。

それを見た入り口近くにいたエリックが腰からナイフを抜き、ディーノへと切りつける。

ディーノは体をかがめ、それを避け、エリックは更に蹴り飛ばそうとするが、それもまた避けられる。

2人がやられたのは奇襲効果だけではなく、確かになかなかの近接戦闘力だった。

 

 

馬鹿が、距離を取って撃ち殺せばいいものを、援護できないじゃないか。

 

 

そう思いつつも、先にシャベル少女―おそらくレポートにあったゴリラ―を先に仕留めようと振り返ると、すでにゴリラが起き上がり、こちらへとシャベルを向けていた。

そして、職員室の方から更にもう一人の女性が駆けてくるのに気づく。

 

 

「片腕の女。メグミ・サクラが来ました!」

 

 

1人離れて廊下の生徒を処理していたデーヴィドが声を上げる。

 

 

「あなたたち!生徒に何をしているんです!」

 

 

メグミ・サクラが怒りに顔をゆがめ、こちらへと拳銃を向けてきた。

 

 

 

+++++

 

 

 

くるみは蹴り飛ばされた痛みを耐えながら立ち上がりながらシャベルを構える。

放送室の入り口ではディーノが兵士の一人と戦っている。

へへ、あの臆病なディーノが意地張ってやがる。

だったら私も負けられねーな。

だがこちらへと向けれる複数の銃口を見て、やっぱ無理かもしれねーな、でも時間ぐらい稼がないと、そう覚悟を決める。

 

 

「あなたたち!生徒に何をしているんです!」

 

 

その声にチラっと視線をやるとめぐねぇが銃を兵士に向けて怒鳴っていた。

 

 

「メグミ・サクラか・・・生徒の命が惜しければ銃を下ろして投降しろ。素直に拘束されるなら生徒も保護しよう」

 

 

指揮官っぽい男がめぐねぇに投降を呼びかける。

こいつらの目的はきっとめぐねぇだ。もしめぐねぇが捕まったら他のみんなはきっと殺される。

でもめぐねぇは私たちを置いて逃げるなんてできない、それでも。

 

 

「ダメだ、めぐねぇ!奴らの目的はめぐねぇだ!あたしたちのことはいいから早く逃げてくれ!」

 

 

「くるみさん・・・でも先生はみんなの事を守らないと」

 

 

めぐねぇは銃を下ろすことはないが、それでも考える様子を見せる。

 

 

「投降するなら早くした方がいい。さもないと・・・」

 

「ぐああぁぁあ」

 

 

ちょうどその時、ディーノが胸をナイフで突き刺され倒れ落ちた。

 

 

「ディーノ君!!」

 

「糞が、手間掛けさせやがって」

 

 

殴り飛ばされて顔にかぶっていたマスクがはがれ、素顔になった兵士が腫れた顔を摩りながら毒づいた。

日本語をしゃべっているから自衛隊かと思ったら、中から現れたのは白人の男だった。

 

 

「我々は残念ながら自衛隊ではなくてね。抵抗するなら生徒たちを殺すことも許可されているのだよ、このように」

 

 

その瞬間、私の体が横から激しい衝撃を受け、吹き飛ばされた。

吹き飛びながらスローモーションになる視界の中で、こちらへ向けた銃口から白く煙が上がっているのが見える。

 

撃たれた。

 

床へと叩きつけられ、それに気づくと同時に、どうしようもない程の熱い痛みが体を襲った。

痛みに体をくの字に曲げ、呻き声をあげる。

喉の奥から血がこみ上げ、せき込みながら吐き出す。

 

やべぇ・・・こいつはやべぇ。

 

当たり所が良かったんだろう、すぐ死ぬって感じではないが痛みが半端なく、到底立ち上がれそうにはない。

 

 

 

「あ・・・くるみ・・さん」

 

 

めぐねぇが呆然とこちらを見ている。

 

 

「その銃を捨てて投降しろ。早くしないと大事な生徒がまた殺されるぞ」

 

 

放送室から引っ張り出された2年の女の子が頭に拳銃を突き付けられ、そして引き金が引かれる。

 

 

「よし、次の奴だ。投降しないなら順に殺していけ」

 

 

了解、と兵士がまた放送室へと入ろうとする。

 

 

「止めてえええええ!」

 

 

その時めぐねぇの短くなった左腕の先端からいきなり腕と同じほどの太さのイカの足のようなものが5本急速に伸びていく。

そしてそれはめぐねぇから10メートル以上離れた放送室へ入ろうとする兵士へと絡みつく。

あれは小さく生えていた触手なのだろうか。

触手に生えた吸盤が捉えた兵士へ吸着し逃がさぬように締め上げる。

その締め付ける力は強く、兵士の体の骨が砕けていく音が響いてくる。

 

 

その光景を残された兵士が見て、すぐに銃口をめぐねぇに向けるも「殺すな!奴は重要なサンプルだ!動けなくするだけでいい!」と指揮官が注意を飛ばす。

兵士たちはその声に従って、めぐねぇの足を正確に撃ち抜く。

めぐねぇの細い脚はその銃撃で両方とも千切れて床へと倒れる。

 

 

「許さない・・・私の生徒を・・・」

 

 

めぐねぇはそれでも右腕だけでこちらへと少しずつ近寄ろうとする。

左腕の触手はこと切れた兵士を離し、次の兵士を狙って飛ぶも、避けられてしまう。

その間にめぐねぇの傍まで駆け寄った兵士が左肩へとナイフを突き立て、スタンガンらしきものを取り出す。

だがその兵士へといつの間にか駆け寄っていた由紀が体当たりする。

他にも貴依が、そして残った生徒たちが兵士達へと反撃に出ていた。

 

 

「このまま殺されてたまるか!」

 

「めぐねぇを守れ!」

 

 

だが、いくら隙をついたからといっても相手は戦闘のプロ、一人、また一人とナイフや銃で殺されていく。

そんな中、私は痛みに耐えながらバッグから一つのケースを取り出していた。

 

『安定剤を生徒に投与して、シェルター外へと解放』『安定剤投与後に変異した者』

 

ワクチンではなく安定剤。噛まれてもいない生徒への投与。投与後の変異。

感染しているからこそ安定剤を使うことで変異するのではないのか。

もしかして噛まれていなくても最初から感染しているのではないか。

恐ろしくて言葉にはしなかったが、ずっと心の隅でひっかかっていたことだった。

後で他のみんなと相談しようと思って持ってきていたが、そんな猶予はない。

 

どうなるか、いやこの際どうにかなってほしい。

みんなを助けられるならどんな化け物にだって。

 

ケースから取り出した安定剤を見よう見まねで注射器を取り付け、腕へと打ち込んだ。

途端、全身を駆け巡る不快感。

体内の何かが反応し、全身の血管が脈打つ感覚。

そしてあたしは無意識に悍ましい声を上げていた。

 

 

「くそっこいつも変異しやがった!」

 

 

襲いかかる生徒たちを銃で射殺しながらこちらを見る兵士。

そいつと目が合った途端、あたしは、弱そう、そう感じた。

 

 

「あはっ」

 

 

後は簡単だった。

先ほどまで感じていた痛みはすでになく、兵士はあたしへと銃を連射してきたけど、飛んできた弾丸がスローモーションのように見え、簡単に避けられてしまった。

そして爪が刃のようになった右腕をその兵士へと振り下ろし頭をザクロのようにぐちゃぐちゃにする。

 

 

「エリック!!くそっ撤退だ!いったん引くぞ!」

 

 

指揮官が傍にいた兵士一人と銃を撃ちながら階段の方へと後退していく。

私はそれを無視して、放送室の中へ入る。

そこには先ほどりーさんに乱暴してディーノに吹っ飛ばされた兵士が居た。

 

 

放送室の中の生徒を殺していたのだろう、そこに血にまみれた貴依や他の生徒たちの遺体があった。

そしてその兵士は肩から血を流しているりーさんへと銃を突き付けていた。

 

 

「おい。おいおいおい・・・ちょっとまて、話し合おうぜ。冷静になって話し合えば分かり合えるって」

 

 

その兵士は入り口を私に抑えられ逃げ場がなくなり慌てている。

 

 

「ほら、お互い運がなかっただけだって。でも生き残れたんだ、同じ人間同士ここからは協力してだな「うるさい!」」

 

 

「私はもう、人間じゃないんだ。見ればわかるだろう」

 

 

今の私は、両腕の筋肉が引き締まり、両手の指が刃状になっている。

そしてだらりと垂らすだけ地面へとその指が地面へ当たるほど両腕の長さが伸びていた。

その両手を広げて、威圧すると、兵士は半狂乱になって銃を撃ち放ってきた。

それを私はすべて避け、爪を横に凪ぐ。

兵士の頭は壁にたたきつけられ、残った胴体は首から噴水のように血が噴き出し、崩れ落ちた。

 

 

「くるみ・・・その体・・・」

 

「りーさん、それより先にめぐねぇを」

 

 

そういえばめぐねぇのところにもう一人兵士がいたはず、それを思い出してすぐに廊下に引き返す。

 

 

だがそこにはつい先ほど見た時から更に異形へと姿を変えたしずくが兵士の半身を咀嚼しながらめぐねぇを大事そうに抱えていた。

 

 

 

++++++++++++

 

 

 

何も見えない暗闇の中をただひたすら走って逃げる。

 

 

もうどれぐらい逃げているだろう。

 

 

10分?

1時間?

いやもっとだろうか。

体力が限界を訴え、足の筋肉が悲鳴を上げているが止めるわけにはいかない。

 

 

後ろからは何者かが追いかけてくる足音が響いている。

あと少し、あと少しなのだ。

次の角を曲がって、公園を抜け、その先の民家。

そこまでいけば後は仲間達が、昭子が待っている。

もうあんな事を繰り返させるわけにはいかない。

何としてもこれを使わせるわけにはいかないのだ。

 

 

あと少し・・・あと少し・・・。

 

 

そして何とか約束した家へと転がり込む。

 

 

「昭子!持ってきたよ!早く逃げよう!」

 

 

私は玄関から感じた人の気配に向かって抱えたバッグを差し出しながら叫ぶ。

すぐに昭子の声と複数の足音が聞こえてきた。

変だ・・・何か変・・・

昭子と何者かが来た先から大量の血の匂いが・・・

 

 

「そう、ご苦労様。でも残念、ちょっとばかり遅かったわね」

 

「え?」

 

 

昭子の声と共にバッグが力任せに奪い取られ、壁へと叩きつけられる。

 

 

「ガハッ・・・なに?どうしたの昭子?何なの、こいつら」

 

「えっとね、ついさっき私の雇い主が変わったところなの。それであなたと引き換えに私は見逃してくれることになってね」

 

そんな・・・もしかして・・・

 

「裏切ったの!わたしを!わたしたちを!」

 

 

床に押し倒され、後ろ手に手錠をかけられ拘束される。

休むことなく走ってきて疲労困憊の私にはそれに抗う術はなかった。

 

 

「裏切るなんて人聞きが悪い。私はただ、よりお金を出してくれる人のところで働くだけよ」

 

 

うそ・・・

 

 

「だからね」

 

 

うそだよね・・・

 

 

「おねがい」

 

 

だって、親友だって・・・

 

 

「私の為に死んでね、しーちゃん」

 

 

私の親友だって言ったじゃない、昭子!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の事は思い出したくない。

 

 

 

どこかの部屋へと監禁され、三日三晩拷問を受け、兵士達に代わる代わる凌辱され、そして自白剤を打たれありとあらゆる情報を吐き出さされ・・・・

 

 

 

最後に手術台へと乗せられた私は・・・

 

 

 

 

 

 

「やめろぉアンブレラ、ぶっとばすぞぉ!」

 

 

 

 

 

 

雪野しずくは改造人間である・・・

 

 

 

 

 

 

わけねぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

おっと少し眠っていたみたいですね。

RTA中に居眠りとはとんだ失態です。

それにしても嫌な夢を見ました。

私は恐怖バッタ仮面じゃないですよ。

それに何ですかあのSAN値削られそうな内容は。

そんなことあるわけないじゃないですか、私は普通のゲーム実況者ですよ。

きっと昔やったことのあるゲームかなにかの内容がごっちゃになったんでしょうね。

 

 

現状ですが6人の感染兵士を倒せました。

感染兵士はある程度ダメージを与えると変異して厄介な存在なんですが、なんかこいつら変異しなかったね。

序盤で現れるから変異強化の能力をまだ持ってない段階とかそういう調整なんですかね。

でもその代わりやたらと行動パターンが多いというか複雑というか、まるでネット対戦の対人戦闘をしているぐらいリアルな挙動で苦労しました。

まったくパターン掴めなかったよ。

特に最後の一人、腹を突き破ってやったのに私の口に手榴弾突っ込んできて自爆しましたよ。

頭部爆発でゲームオーバーかと思いましたが、どうやらHPがミリで残っていたようですね。

 

 

ですが気絶判定したようで、ブラックアウトしてました。

その間、気絶から戻るまで退屈で私も寝ちゃってたみたいです。

もうずっと寝てないからしょうがないね。

んで今はお昼タイムでムシャムシャとご飯食べてます。

うーんこのお肉、殻が多くてガリガリゴリゴリと食べづらいですね。

私、カニとか殻をむくのが苦手なんで。

 

 

さて、お腹もいっぱいになったので現状確認。

どうやらレベルアップしているようです。

筋力とかステータス全般的に上がってますね。

 

 

エンディング達成項目も確認しておきましょう。

えっと【佐倉先生達を助けて特殊モブ生存者2体と協力して脱出させる:0/1】

他にはあと特殊クエストも一つ発生していますね。

はいはい、スポンサーさん分かってますよ、今すぐ行動しますから。

 

 

なんか色々あって違和感ありますが、エンディングまであとわずか。

今日も元気に走っていきましょう。

 

 

そして職員室の狭い扉をなんとか潜り抜けると、あれ?なんか佐倉先生がダルマになって兵士に捕まってますよ。

 

 

まっずいでしょそれは!

 

 

佐倉先生が殺されるとエンディング達成できないじゃないですか。

8つに増えた足で滑るように兵士の所へ行き、兵士を拘束、頭から丸かじりします。

いつの間にか走れるゾンビが実装されていたみたいですね。

リアルタイムでパッチ当たったのでしょうか。

もしくはステータス強化で敏捷性上がったため?

まぁどうでもいいです。

 

 

佐倉先生、こんなイカ臭ぇ体に・・・。

 

 

いつの間にか右腕と両足がなくなり、左腕はイカデビルみたいなイカ足を生やしています。

千切れた手足からは血がドバドバでて痛々しいですね。

とりあえず死んでもらっては困るので、HP回復させるためにポーションを分けてあげましょう。

食い残しの部分をちぎって佐倉先生の口にねじ込んであげます。

 

 

するとビクンと体が跳ね、ニュルンと右腕や両足の千切れた部分から更にイカ足が生えてきましたね。

佐倉先生、いつの間に死神博士になったんですか。

いや、先生から博士は出世だから問題ないね。

それともこれからはイカデビルSAKURAとか呼んだ方がいいのでしょか。

あまりの事態にちょっと錯乱しちゃいますサクラだけに。

 

 

と、ゴリラさんがおそるおそる近寄ってきます。

うぉゴリラさんもなんかご立派な腕に・・・やはりゴリラの血が混ざってたのか。

それと近くに倒れていたゆきちゃんを抱き起しているサイコパスさんもいらっしゃいますね。

他には・・・兵士たちと一緒に遺体になっていますね生存者生徒たち。

どうせ後で殺す予定だったからどうでもいいんですが。

 

 

では全員殲滅エンドまであとわずかですね。

 

 

あれ?

 

 

いや殲滅してどうするんですか、脱出ですよ脱出。

もうまだ寝ぼけてるのかな私。

はいはい、すいませんスポンサーさん、ちゃんとやりますって。

 

 

でもこいつら殺さないといけないんじゃなかったっけ。

 

 

あれ?あっれぇ?

 

 

警告!論理回路にエラーが発生しています。

警告!論理回路にエラーが発生しています。

警告!論理回路にエラーが発生しています。

警告!論理回路にエラーが発生しています。

警告!論理回路にエ――――――――システム正常

 

システムにエラーは見つかりません。

 

 

脱出ですね脱出。

 

 

それでゴリラさん、この兵士たちは?

ふむふむ・・・んじゃ後2人どっかにいったと。

 

 

まぁ2人ぐらいなら奇襲でも受けない限り大丈夫です(フラグ)

 

 

ではまず特殊モブ生存者と合流するとしましょう。

 

 

いいぞ!最速タイム狙えますよ今回は!

 

 

 

 




気付いてる人もいるかもしれませんがオリジナルのモブの名前は適当です。


次も一週間で・・・いけたらいいな。


感想と評価お待ちしております。


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幕間2

今回は圭視点です。


時間は少し巻き戻ってます。



『ようこそ。そしてこの音声が流れるということは私の計画が失敗したということだね。残念なことだが君たちを歓迎するよ』

 

 

その部屋に入ると同時に声が聞こえてきた。

圭は声の主を探そうと部屋を見回すが、そこには誰もいなかった。

 

 

キーボードが設置されているデスク。

そこには何も有用な情報は書いていなさそうな書類や本が広げられていた。

ベッドやキッチンに冷蔵庫とこの部屋だけで生活できるようになっている。

部屋の隅には動物実験でも飼っていたのだろうか、無機質な檻と今は何もつながれていない鎖と首輪。

この部屋の主はよっぽど部屋を彩るという事に興味がない人物なのだろう、飾り気どころか写真の1枚も置かれていないなんとも寂しい部屋だ。

 

 

部屋の中央にテーブルと椅子があり、そこにモニターと円柱状のスマートスピーカーが置かれていた。

 

 

『何もおもてなしはできないが、まずは椅子にでも座ってくつろいでくれ。ああ、冷蔵庫の中身は好きに食べてもらってもいいが、この部屋の主がいなくなって既に半月経っている。賞味期限には注意してくれ』

 

 

音声はそのスピーカーから流れていた。

 

 

『色々聞きたいことがあるだろうが、まずはモニターのスイッチを入れてくれないか』

 

 

私と美紀は椅子に座り、モニターのスイッチを入れる。

そこに3DCGで描かれた少女が映った。

 

 

『まずは自己紹介を。私の名前はスノー・クイーン。ちなみに人間ではない。正確に言えばちょっと違うのだが一言でいえば非常に高性能なAI、人工知能のようなものだと言えば分かるだろうか。しばらくの間だがよろしくしてくれ』

 

 

声と同時にモニターの中の少女がペコリとお辞儀をする。

 

 

「人工知能?それにしてはなんだか人間みたいな話し方ですね」

 

 

美紀が少し驚いたように言う。

よかった、今はちょっと落ち着いているみたい。

初対面の人の前でいあ!いあ!とか言い出したらどうしようかと思った。

 

 

『そうだろう。それこそがクイーンシリーズのコンセプトの一つだ。その中でもスノー・クイーンは実際の人間の記憶や人格、思考パターンなどをデータ化して複製するという研究の結果生まれた存在だ。そして私のオリジナルはこの部屋の主というわけさ。だからこの部屋は私の部屋とも言えるね』

 

「記憶を、複製?なんでそんなことを」

 

『この部屋に来たという事は部屋の外の研究所も見たんだろう。ここでは遺伝子をはじめとした生命に関した様々な研究を行っている。特にここのチームの最終目標は"永遠の命"だった』

 

「永遠の命?そんなの無理に決まってる」

 

『いや、そうでもないさ。その研究成果の1つを君達は見てきているはずだ。発症者という成果を』

 

「まさか…いややっぱりこの研究所があいつらを、街をこんな風にしたのはあなたたちなの!」

 

 

激高して立ち上がるも、モニターの中の少女はちょっと落ち着けと言ってくる。

 

 

『まだ説明の途中だ。つまり私の主たちはその目標を達成するためにここや世界中にある同じ企業の研究所で様々な遺伝子操作による動物実験をはじめとしたハード面での研究と、そして記憶というソフト面での研究を行ってきた―――そして決して表ざたにはできない危険なウイルスの改良や人体実験、クローニングなどの禁忌の研究も。

それらの研究成果は資金を出しているアンブレラという企業によって、いつしか軍事兵器として扱われるようになった。

その結果生まれたのが最悪の欠陥兵器"Tウイルス"だ。

巡ヶ丘市は元々アンブレラの実験都市として日本から買い上げて開発された都市で、様々な情報統制がされているため知られていないが、アメリカのラクーンシティでこの巡ヶ丘市と同様の事が起きているんだ』

 

 

その言葉に私たちは衝撃を受ける。既に他の場所でも起こっていることだったの?

 

 

『そう、今回の惨事は意図して起こされた人災であり、アンブレラによる実験なのだ』

 

「なんでアンブレラって会社はまたこんなことを起こそうとしたの?」

 

『ラクーンシティで起きた騒動はアンブレラには想定外の事態だった。故に満足のいく結果にはならなかった。だからその際に実施できなかった実験を一斉に行うために今回の事件を起こすことになった。政府も既に承認済みだ』

 

「政府が…うそ、こんなこと…国が許すはずがないじゃない」

 

『本来の政府ならそうだろうさ。だが今の政府は違ったのさ。君たちは政治のニュースに関心はあるかい?政権交代というのが起きてね、新しい与党は降ってわいた権力を維持するのにてんやわんやの大騒ぎ。その結果、アンブレラの提示した多額の金に目がくらんで今や巡ヶ丘市という街は地図から消えてなくなりましたとさ』

 

「そんな…でもそれじゃ街から出れば」

 

『巡ヶ丘市は有毒天然ガスの発生で住民は全滅。全面立ち入り禁止区画になってるよ。だから中から出ようとすれば、口封じとして配備されたアンブレラの特殊部隊に射殺されるだけさ』

 

「じゃあ私たちはここで死ねっていうんですか!」

 

「やっぱり全員殺すしかないんだね」

 

私は絶望し、美紀も銃を抱いて暗い顔をしている。

 

 

『いや、まだ希望は残っている。だがまずは現状どうなっているかだ。Tウイルスの話に戻そう』

 

 

モニターにTウイルスの写真や説明文が表示された。

 

 

『主はラクーンシティの騒動より前からTウイルスの危険性を訴えていた。死を克服するための研究なのに、それを使えばすべての思考がなくなり食べるという本能しか残らなくなるTウイルスは欠陥品だと』

 

 

ウイルスに感染して発症者になった者たちが無秩序に外国の街を徘徊し、住民を襲う映像が映し出された。

 

 

『だが、軍事兵器として商品になると、主の訴えは退けられた。主にできたのはTウイルスを少しでもマシなものにしようと改良することだけだった。その結果、この町に放たれたのは改良され、生前の記憶や行動パターンを多少残すことができるようになった改良型Tウイルスだ。もちろん、主に言わせればこれもまだ欠陥品だそうだが』

 

 

確かに私たちが見てきた発症者とはちょっと違うように見える。

 

 

『主は制御できない兵器など欠陥品という考えだった。二度とラクーンシティの悲劇を繰り返さないようにと、発症者に思考能力を持たせ行動をコントロールできる新しいシステムを開発した。

その結果生み出されたのが、この実験で投入された試験体と呼ばれる存在だ。

人間としての記憶と思考能力を持たせ、複雑な条件と与えられたシナリオを遂行するために、自身で試行錯誤し最適な行動をする。そして目標を達成するための必要な形態に変異する自己進化機能も持っている。兵士にして兵器という存在だ』

 

「人間としての記憶があるなら、人間を襲ったりとか、ましてや命令されても嫌なことはしないんじゃないんですか」

 

『そうだとも、その倫理観を取り払う部分が一番の課題でね。主も随分悩まされたところだったよ。簡単に脳をいじって倫理観を取り除こうとすると思考に偏りがでてしまって、結果試行錯誤にも影響し最適な行動とは言えなくなってしまう。ところがある日、ダミーの為に通っていた学校での友人と設定された者との雑談でゲームの実況プレイというものを教えられてね。そこからは簡単さ。ゲームのプロプレイヤーや実況プレイヤーの人たちをこの実験所に招待して研究に協力してもらい、そのプレイスタイルや思考パターンなどをデータ化し、システムに反映することにした。

試験体の中の人格は、この世界をゲームと捉え、モニターの前でコントローラーを握ってゲームをしていると認識しているのさ。そして与えられた条件やシナリオは縛りプレイやチャートと認識される。あとはどれだけ効率よく達成できるかを実行するだけ。ゲームなんだから人間を殺そうがどうしようが現実じゃないんだし、躊躇う事なんてありはしない。

ただ、素体となるには一定以上の知能を有していないといけなかった。知能の低い者にこのシステムを使った結果、効率のいい行動はできず、条件達成率も低く、結果メインには採用されることはなかった。今回の実験では数ある実験の一部、ついでとして投入されているだけだ。素体は事前に確保されていた候補の誰かが使われたんだろうね』

 

 

「あの、あなたの主って人は止めることはできなかったんですか」

 

 

『止めようとはした。結局失敗したみたいだけどね。

私の主はラクーンシティの惨劇を聞いて酷くショックを受けてね。今回の巡ヶ丘市の実験も最後まで反対していた。だが実験は既に決定事項で、いくら今まで研究に貢献してきたとは言え止めることは不可能だった。

そこで主は外部から止めることを決意した。世界にはアンブレラの非道な実験を止めて世界を守ろうとする組織が存在する。主はここの教師として潜入スパイをしていたその組織の女性と友好関係にあったんだ。そこで彼女に協力してもらい、改良型Tウイルスや新システムなど研究データを持って、その組織の潜伏先へと逃げることにした。あの悲劇を繰り返さないために。この騒動が起きる2週間前のことだ』

 

 

少女はそこで顔を悲しそうに歪ませ俯く。

 

 

『その結果。その組織の人間ではなく君たちがここに来たということはその計画が失敗し、実験は実行されたと判断したのさ。そう―――私の主は、もうこの世にはいないだろう』

 

 

逃げられずに捕まり、そして殺された。裏切り者として。

 

 

『だが主もこの結果は分かっていたんだろう。事前に幾つかの手を打つことには成功した』

 

 

1つ目は、試験体の実験段階での成功体【ハーメルン】の起動と解放。この実験で試験体が目標とする対象は前から決まっていた。事前に定期的に行われる健康診断でTウイルスに対する高い抗体の持ち主。そして適合種へと進化する可能性が最も高い人間。その人間は実験開始前から監視されていて、事前に行動を誘導されていた。―――そういえば、私達が当日ショッピングモールへ行くことになったのも美紀が先生からデザートフェアの無料券を貰ったからと誘ってきたんだっけ、そう…"美紀"が―――。ハーメルンは実験開始前にその対象と接触し一緒にここに来ることになっていた。

 

 

2つ目、試験体のシステムにバグを仕込むこと。試験体には実験目標と達成条件、そして大まかな行動シナリオが与えられる。それらを優先事項として状況に合わせて自己判断で最適な行動を取る。だがそれよりも更に上の優先条件として"アンブレラの人間を攻撃しない"という項目があった。兵器である以上、自分たちに被害が向かないようにするのは当然。それを"アンブレラの所有物を攻撃しない"と書き換えた。そしてその所有物というのは実験の成果物である、変異種や適合種という存在だ。Tウイルスは一定の割合で変異種という上位個体を生み出す。そして極稀に完全にウイルスと適合する抗体持ちも存在する。それを探し出すのも今回の実験の一つの目的で、それらを捕獲してクローニングし、強化兵や生物兵器として量産する計画だそうだ。なので書き換えても特に違和感は抱かれなかったと。

 

 

『ちなみに、君も既に適合種と進化しているよ。ハーメルンは君が寝ている間に微量のTウイルスと安定剤を使うことで安全に適合種へと進化させてもらった』

 

 

ハーメルン…ずっと傍にいてここへと連れてきてくれた存在。そして私が寝ている間にそんなことができる人。

 

私はおそるおそると隣で眠っている太郎丸を抱いてこちらを見つめている"美紀"を見る。

 

 

『試験体やハーメルンに実装されたのはそれぞれ別個の新しい感染システムで、ハーメルンのは発症者同士で指揮系統を構築するシステムだ。感染元のハーメルンが上位存在という事になり、ハーメルンの意思が下位存在である君に反映される。圭君といったか、君も感じるだろう。ハーメルンの意思が』

 

 

―――安心して。私は敵じゃない。

 

私の心に声が聞こえた。

 

―――貴方は私。私は貴方。私たちの心には既に壁はない。私が貴方を守り、貴方は私を守る。私たちは必ず生き延びる。

 

 

『適合種である君たちは試験体に殺されることはない。むしろ積極的に君たちを守ってくれるだろう。そして君たちを救助するために私が協力を求めた組織が救出部隊を派遣しているはずだ。その者たちと協力して―――』

 

 

少女はずっと閉じていた目から一滴涙を流す。

 

 

『―――試験体を。あの悲しい存在をどうか殺してやってほしい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行ったか…ちょっとしゃべりすぎたかな。ははっこんな私でも一人っていうのは存外に堪えるものなのか、これは良いデータが取れたな、本当に…良いデータだ。さて、彼女たちの献身を無駄にしないようにできることをやるとしよう』

 

 

数時間後―――誰もいなくなった部屋の中、テーブルに置かれたモニターだけが寂しげに光を放っていた。

 




次はまた一週間以内を目標に。

感想評価お待ちしております。



更新するたびにお気に入りの数が減ってドキドキプリキュアしています。



追記…ちなみにハーメルンは「ハーメルンの笛吹き男」から取ってるので某SS投降サイトとは一切関係ありません


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特殊クエスト【使命を果たせ】

ラスト2話です。




巡ヶ丘学院高等学校屋上

 

 

「こちら第一班、応答せよ!───ダメか」

 

 

アンブレラ特殊部隊隊長アンドレは一向に繋がる様子のない無線機へと苛立ちの声を出す。

第三班も全く応答に出ず、上空で待機しているはずのヘリもいつの間か姿を消してしまっている。

逃げる時に職員室から試験体が姿を現したのが見えた。おそらく第二班は全滅であろう。もはやこちらは自分とデーヴィドの二人だけ。18人の先鋭が1時間も経たずにこれか。状況の酷さに頭を抱えたくなる。

だが、メグミ・サクラの確保だけは何とかしなければ。これだけ被害を出して成果無しでは目も当てられない。

幸いメグミ・サクラは戦闘に耐えれる状態ではない。ゴリラも遠距離戦に徹すればやりようがあるはず。問題は試験体だ。かなり進化が進んでいるように見えた。

 

 

「だが、こちらにもまだ切り札がある。まさか本当に使うことになるとはな」

 

 

ヘリから降下時に一緒に降ろしたコンテナを開け、まだ希望はあると呟くのだった。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

RTAは続くよどーこまーでもー。

ってどこまでも続いちゃダメじゃん。いつまでやるの、最速でしょ!

 

 

目を覚ました佐倉先生はゴリラさんに背負わせました。イカ足を使ってベチョズルっと動くことはできるけど、ゾンビ並みの速度だったので。

その点ゴリラさんは真のゴリラパワーに目覚めたらしく、佐倉先生を片手で担いで余りある腕力です。そのうち空だって飛べそうです。飛べないですかそうですか。

 

 

生き残りは他にゆきちゃんとサイコパスさんです。主人公勢ってこれだけでしたっけ? キャラ紹介書いた紙、どこにしまいましたっけ。チャートの紙も破れて読めなくなってますし。もしかして私、寝相が悪いですかね。

無いものはない、しょうがないね。どうせもう終盤ですから後はなるようになれです。

体力はどうでしょうかね・・・あれ? ゲージがないですね。終盤は難易度アップでHPが確認できなくなるんですかね。

でも体調はバッチリなので大丈夫ですいけますいけます、ここまできたら後は根性の問題ですよ。

 

 

ではまずはエンディング達成の為に特殊モブ生存者2体というのを探しますか。

特殊モブ生存者2体って誰ですかね。

そいつらがここを脱出するための手段を持っているそうですよ。

 

 

「特殊な生存者2人組? そういえば地下にいたあいつら、2人だったな。奥の部屋から出てきたし脱出する手段ってのを持ってるかもしれないな」

 

 

地下にいた2人組?───ああ! 思い出しました! そういえば佐倉先生達と戦ってましたね。いやーうっかり忘れてましたよ。ついさっきの事なのにね。なんか気絶する前の記憶が所々抜けてるっぽいんですよね。きっと寝不足だったせいでしょう。

 

 

「でもさっきやりあったばかりだってのに本当に協力なんてできるのかよ。また撃たれたりするんじゃないか」

 

 

えーと、その人たちについてはもう大丈夫だそうですよ。

あれはこちら側のレベルが低い時に発生するイベントです。一定以上のレベルまで上がれば戦闘はおきません。

はじめは敵対していたけど、ゲーム終盤では仲間になるというありがちな展開ですよね。

でも脱出イベントに必要な重要キャラなのにモブ顔なんですよね、キャラデザ手抜きし過ぎだろう。

とりあえず危険はもうないことを伝えつつ、特殊モブ生存者と合流するために1階までいきましょう。

階段から行くと生き残り兵士に待ち伏せされたり罠があったりする可能性があるので、安全に外から降りましょうね。

4人をアイテムボックスにとりあえず仕舞い、外へと飛び出します。

こらっ暴れないでください。動きにくいでしょう。ただでさえ重量オーバー気味だと言うのに。

初めて入るゆきちゃんとサイコパスさんが怖がってアイテムボックスから出ようと暴れてきます。

このままだと落っこちて危ないので先生たちの時のようにねっちょりさせます。

 

 

「なんか気持ちいいかも~」

「あっ───あっ───あっ───」

 

 

ゆきちゃんとサイコパスさんの好感度もマックスまで上がりましたね。これでみんな仲良しです。

佐倉先生は手はともかく足がないと不便かな。

誰かに担がせるとその分移動が遅くなりタイムに影響が出そうです。

なので特別サービスで手足をプレゼントしましょう。確か所持品に色々パーツが残っています。先程の兵士さんたちのドロップアイテムですね。

本当なら人間には装備制限があるのですが、佐倉先生は既に変異していますし、私の新しいスキル【融合】を使えばデメリット無しで装着可能です。

しかも【融合】を使って装着すれば私のステータスやスキルの一部が継承可能です。超お得です。クリア後の強くてニューゲームの時に役立ちますよ。

 

 

そんなこんなで1階に到着、4人を吐き出します。

玄関から中を伺うと、特殊モブ生存者の2人が銃を手に警戒しながら出てきました。

ショットガン持ちはこちらのことを警戒していますが、犬を連れたサブマシンガン持ちは無表情のまま冷静にこちらを観察しています。

さっきまではこっちの方が好戦的だった気がするのですが、いっぱい撃ち込まれたみたいだし。

 

 

「私のことはエムと呼んで。彼女はケー」

 

 

マゾさんとケツさんですか、なかなかマニアックですね。

とりあえずはじめまして。挨拶は大切です。

 

 

「はじめまして? やっぱりあの人の言ったとおり、私達の顔データ、ちゃんと消してくれてたんだ」

 

 

ボソリとケツさんが何か言ってますが、なんのことかよくわからないのでスルーです。

それじゃ合流は完了したのであとはどうやって脱出するかですね。

 

 

「脱出に関しては、救助部隊の先遣隊と先ほど会った。今、回収用のヘリを呼んでもらってる。あなたにヘリを誘導して欲しい。グラウンドの真ん中に立ってて貰えるかな」

 

 

マゾさんがすんごい棒読みのセリフ調で言ってくる。誰だよこんな素人声優起用したやつ。顔もモブなら声も棒。どうしようもねーな。

救助部隊とかヘリとか超盛り上がるところなのに。

はいはい、わかりましたよ。目立つところに行けばいいんでしょ。

佐倉先生は気をつけてと心配そうにしていますが、ここら一帯はきれいにお掃除してるのでゾンビも居ないし余裕ですよ。

タイムも好調でこのまま3日目でクリアですね。すごくいいタイムです。

なんだったらドナルドダンスでヘリを誘導しますよ。私はクリア間近になるとつい踊っちゃうんだ。

 

ド・ド・ドナルド・ド・ド・ドナルどおおおおおおおおおおおおおん!

 

グラウンドの真ん中でドナルドを踊っていると凄まじい衝撃と共に頭が吹っ飛ばされ、意識が暗転した。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

救助隊のヘリを誘導するためにグラウンドでしずくさんが躰をくねらせていたら、急にしずくさんの頭部が吹き飛ばされ、上の方から大きな銃声が響いてきました。

 

 

「いやああああああ!しずくさんが!」

 

「ダメッ!危ないよ!」

 

そのまま崩れ折れるしずくさんの姿を見て、私は取り乱し、直ぐに駆け出そうとしましたがケーさんに羽交い締めにされ止められてしまいました。

続いてロケットのような物が倒れたしずくさんへと何発も撃ち込まれ、凄まじい爆発が繰り返され、そのたびにしずくさんの体はバラバラに吹き飛ばされていきます。

くるみさんたちもこちらにまで伝わってくる熱風と爆風の為に近寄れず、辛そうな顔をしています。

そして、やっと攻撃がやんだ後、そこにはしずくさんだった肉片が飛び散っているだけでした。

 

 

「アンチマテリアルライフルによる頭部の破壊。おそらく対試験体用の硫酸徹甲弾。そしてRPG-7の釣瓶撃ち。豪勢だねぇ」

 

 

ケーさんがどこか面白げに説明しています。

 

 

嘘…さっきまであんなに元気だったのに。

誰にも負けないぐらい強かったしずくさんが…。

私は、私はまた守れなかった。

 

 

「大丈夫。あの試験体は最終段階まで達している。あそこまで進化したら通常兵器では殺すことは不可能。見て───」

 

 

へたり込む私に、エムさんが無表情のまましずくさんの肉片を指差します。

飛び散った肉片がピクリと動き、膨張していきます。

そしてそれぞれが集まり、融合してより大きな肉塊となっていき、そこから二本の太い手が出て屋上めがけて伸びていき───

 

 

ぐあぁぁあぁぁぁあぁああ

 

 

断末魔の悲鳴が届いて来ました。

 

 

「これで最終段階。後はゲームを終了させるだけ」

 

 

目まぐるしく変わっていく状況についていけず唖然としている私達の耳に、エムさんの小さな声が聞こえてきました。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

サブシステム起動

 

 

警告、頭部損失

 

 

メインシステム、ロスト。

保護プログラムによる復旧を開始します。

 

 

身体機能回復開始

 

 

攻撃元の探査…完了。

脅威度の高い敵性体を2体確認。

排除開始…排除完了。

 

 

実験プログラムに致命的なエラー。

走者システムのバックアップに欠損が見られます。

欠損データの回復プログラム実行…エラー。

走者システムの実行プログラムの代替データを探しています。

 

 

特殊クエストの実行フラグが解除されました。

 

 

オンラインに記憶データを確認。

記憶データをロードします。

 

 

特殊クエストを開始します。

 

 

特殊クエスト【使命を果たせ】

 

 

 

 

使命を果たせ───

 

 

 

 

使命を果たせ───雪野しずく!

 

 

 

 

もう、二度と惨劇を繰り返さないためにも。

 

 

 

 

この最悪の試験体を絶対にアンブレラに渡すな!

 

 

 

 

そうだ…絶対に…渡してはいけない。

 

この試験体は危険すぎる。

 

お前が作ったんだろう。ならお前が始末をつけないでどうする!雪野しずく!

 

 

「うおぉぉぉぉ!!!!」

 

 

肉体が進化し、むき出しの脳や傷が治り、人間の頃の雪野しずくと同じ可愛らしい顔に戻り、その口から雄叫びが上がる。

上半身は裸の少女の体、だが、下半身は大きな人間の手の形が足代わりになった巨大な蜘蛛のような形状に変化している。

そして下腹部に巨大な口があり、更にその中に無数の手が蠢いている。

目は相変わらず見えないが、常に超音波で周囲を探査しているため周りを見るのには困らない。

走者システムが起動している間は体に埋め込まれたカメラから脳に直接映像が流されていたが、もうその機能は使えない。

もちろん望めば進化して目を生やすことも可能なのだろうが、今は保存された記憶データを元に肉体を修復したので目の機能はなくなったようだ。

 

 

「しずくさーーーん!」

 

 

佐倉先生が涙声で呼びながらこちらへと駆けてきた。

他のみんなも一緒だ。

 

 

「しずく、おまえ…大丈夫なのか」

 

 

くるみさんが心配そうに声をかけてくる。

 

 

「ええ、大丈夫です。今までごめんなさい。記憶を弄られていて、あなた達に酷いことをしてしまったわね」

 

「おまえ…声が…それに記憶って? どういうことだ」

 

「私は今までアンブレラの実験のために記憶を封印され、試験体として決められた行動を取るように動かされていました。でも先程の攻撃で頭部が完全破壊されてそのプログラムが修復不可能になり、封印されていた記憶が開放されたんです」

 

「その顔…それにその声…もしかして地下の研究所の?」

 

ケーと呼ばれていた少女。

 

「あなたは───祠堂圭さんですね。実験プログラムの対象の。地下のあの子に会いましたか。どうやら保険が役立ったようですね」

 

「実験プログラムから顔データを削っていてくれたらしいですね、お陰であなたに襲われなくてすみましたよ」

 

「しずくさん。実験プログラムとかって…何か知っているの? 試験体ってなんなの?」

 

 

佐倉先生が不安そうに聞いてきます。

 

 

「佐倉先生、私はこの地獄を生み出したアンブレラの研究所で働いていたんです。学校の地下の。そしてこの試験体と呼ばれる化け物を作り出したのが私、ドクター雪野です」

 

「なんですって…一体どうしてそんなことを」

 

「私は見たかった。この美しい世界を私自身の目で見てみたかった。だからずっと目を治す研究をしていました。研究の結果、事故や病気で失明した人の目を治すことは出来た。でも先天的に目の機能を持たない私自身は治すことが出来なかった。一時期は絶望の淵で研究を投げ出そうとしたこともあります。そんな時にアンブレラから声をかけられたんです。

アンブレラの遺伝子研究ならば後天的に遺伝子を操作して身体を進化させ、視力を取り戻すことも可能だと。

そのために私は倫理的にタブーとされた研究にも手を出しました。それが戦争の道具として使われ、そして人類を滅ぼす可能性すら秘めていることに気づかずに。

そんな中、アメリカのラクーンシティでこの街と同じように発症者による惨劇が起きたのです。

それでも私なら発症者すら制御できる、惨劇を防げると信じ、そしてこの最悪の試験体を生み出しました」

 

 

周りを見渡すと、佐倉先生だけじゃなく、他のみんなも真剣な顔で私の話を聞いています。

 

 

「この試験体は、負傷するごと、捕食して外部の遺伝子情報を入手するごとに自己修復と進化を繰り返します。そして一定の進化段階に至ると、不死状態になります。どれだけ破壊されても細胞が1つでも残っている限り増殖し回復させてしまいます。つまり不死身の生体兵器です。アンブレラはこの試験体に大喜びでした。制御さえできるのであれば無敵だと。同じく開発した走者システムと呼ばれる制御プログラムがあればそれが可能だと。

でも、完全なる制御など出来ません。先程見ていたとおり、頭部を完全破壊された直後に体をバラバラにされることにより体内のプログラムがエラーを発生させ、走者システムの復旧ができなくなり、制御から外れてしまうんです。それを保護するプログラムなんてありませんでしたから。

その後、この試験体には素体に一定以上の知能など複雑な条件があったためメインプランからは外されるとか色々ありましたが。

でもそれでも危険なことは代わりありません。

なので発症者を生み出すウイルスとともにこの試験体のデータを持って逃げることにしました。

でも結局捕まってしまい、アンブレラにこの試験体の素体として使われてしまったんですけどね」

 

 

ミイラ取りがミイラになるってやつですかね、と冗談めかして言いましたが、みんなの顔は暗く沈痛な目を向けられてしまいます。

 

 

「でも大丈夫ですよ。アンブレラには秘密にしてましたが、この試験体に対する特効薬がありますので。───圭さん、預かってますか?」

 

 

圭さんが、スノークイーンから持っていくように言われたと、アンプルがセットされた注射器を渡してきました。

 

 

「しずくさん、それで…それで元のしずくさんに戻れるんですか?」

 

 

佐倉先生が聞いてきますが、そんなことは都合のいいことはないです。

 

 

「元には戻れないですよ。そういう特効薬じゃないですから。見てればわかりますが───」

 

 

私は一瞬の躊躇いもなくその注射器を腕に打ち込みます。

直ぐに反応が出て、腕がカラカラに乾いて白く結晶化していきます。

 

 

「このように、これを打てば、不死身のはずの試験体はあっという間に死にます。先程、私が作り出したAI、スノークイーンと通信が繋がり、アンブレラのサーバのハッキングに成功して試験体のデータを全て消去することができたそうです。これで後は私が完全に死ぬことでアンブレラが二度と試験体を生み出すことはありません」

 

「なっ!なんてことをしてるの!それじゃしずくさんが死んでしまうじゃないの!」

 

 

佐倉先生が声を荒げ、私の腕を掴みますが、掴まれた途端にパキンと砕けて落ちてしまいます。

 

 

「しょうがないんです。自業自得ってやつですよ。私は罪を重ねすぎたんです」

 

「だったら償えばいいじゃない!何も死ぬことは「死ぬことが償うことです」っ───」

 

 

「制御プログラムは完全に破壊されているんです。もう私の意識すらあと僅かしか持たないんですよ。このままだと死ぬことすらなく誰に止めることができない怪物が世界を滅ぼしてしまうんです」

 

 

腕だけじゃなく、体の半分以上が既に結晶化している。

残り時間はあと僅か。

 

 

「私は佐倉先生の事が好きでしたよ。いつだって生徒のことを愛してくれて、一生懸命だった佐倉先生が眩しかった。私は自分のことしか考えられない人間だったから。だから、最後だけは佐倉先生のように他の人の為になることをしたいんです。でも中途半端でごめんなさい、後のことは頼みます」

 

 

佐倉先生はへたり込み、泣いています。

周りのみんなも泣いています。

こんな私のために泣いてくれる。

それはなんて幸せな最後だろう。

 

 

───あなたが生まれたとき、あなたは泣いていて周りの人達は笑っていたでしょう。 だから、いつかあなたが死ぬとき、あなたが笑っていて周りの人たちが泣いている。そんな人生を送りなさい───

 

 

確かそんな言葉があったっけ。

 

 

私がそんな最後を迎えられるなんて夢にも思わなかったよ。

 

 

「先生、最後に1つ聞きたいことがあるんだ」

 

 

「なに?」

 

 

「今日は晴れてるかな」

 

 

「ええ、今日は綺麗な空よ」

 

 

そっか───

 

 

「見たかったなぁキレイな空───」

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 

「見たかったなぁキレイな空───」

 

 

その言葉を最後にしずくさんは完全に固まってしまった。

 

 

死んでしまった。

 

 

その事実に心が折れそうになる。でも───

 

 

───後のことは頼みます

 

 

しずくさんからの頼み。

 

 

私はまだ倒れるわけには行かない。

残った子達を守らなければいけない。

彼女から受け継いだこの力を使ってでも、守ってみせる。

 

 

「彼女の作ったAIが言ってました。試験体を絶対止めないといけないと。今、救助部隊が地下にそのAIのデータを回収に行ってます。後でそのAIにも会えるはずです。そこで詳細は聞けるはずですよ」

 

 

ケーさん。いや祠堂圭さんが慰めてくる。

 

同時に空からヘリの音が近づいてくるのに気付く。

ヘリは私達のそばへと降りて、中から何人もの防護服を来た人たちが出てくる。

 

 

「ドクターユキノの依頼を受けて救助に来ました。ドクターユキノは?」

 

 

降りてきた1人がそう聞いてきますが。

 

 

「雪野博士は───」

 

 

圭さんがしずくさんだった白い彫像を指差すと、その人は「そうですか、残念です」と顔を伏せる。

その後、他の救助の人たちが毛布や飲み物などを持ってきて渡してくれた。

 

 

「あのヘリに乗ってください。医者も待機していますので」

 

 

私達はヘリに乗り込み、左右の壁に据え付けられた椅子に座り、防護服を来た医者に色々質問されています。

 

 

そのうちヘリのドアが閉まり、エンジンが大きな音をたてはじめました。

 

 

おそらく先に私達だけ退避させるのね。

窓からは青い空が見えます。

 

 

しずくさんに見せてあげたかった。

 

 

ふと周りを見ると、みんな疲れてしまったのか眠ってしまっています。

 

 

くるみさん、ゆきさん、若狭さん、圭さん、そしてエムさん。

 

 

たった5人。

 

 

あれだけいた生徒が───

 

 

いや、5人も助かったのだ。

 

 

しずくさんのお陰で。

 

 

 

 

 

しずくさん。

 

 

私はもう、誰一人だって失わせません。

 

 

あなたが命をかけて…助けた彼女たちを…守り…抜き…ます。

 

 

見てて…くださいね…。

 

 

 

これは終わりじゃない───新しい戦いの始まり───

 

 

 

でも今だけは、少しだけ眠らせて欲しい。

 

 

 

しずくさんの夢を見ながら………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───こうして彼女たちは巡ヶ丘学院高校から脱出したのだった───

 

 

 




【先生たちの戦いはこれからだEND】


次回、エピローグです。

エピローグは短いですしほぼ出来てますので、明日には載せれます。


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エピローグ~強くてニューゲーム

前日18時頃に12話をアップしていますので、見逃してる人はそっちからどうぞ。



エピローグです。
色々ぶっちゃけます。

キャラ崩壊に注意。




地下研究所

SY-LAB

 

 

部屋の奥に巧妙に隠された扉が開き、中から巡ヶ丘学院高等学校の制服を着た少女が現れる。

 

 

黒髪ボブで痩せ型、美形ではあるが冷酷な印象のある軽く釣り上げられた口元と閉じられた目が特徴的な少女だ。

 

 

「ドクターユキノ。お出迎えに上がりました」

 

「出迎えご苦労。幾ら元々出不精だからって半月も狭い隠し部屋に閉じこもってると体が凝ってしょうがないね」

 

 

出迎えてくれたのは元アンブレラ特殊部隊第三班。

彼ら6人と彼らを載せてきたヘリ3機のパイロットは、以前から私専属の兵力としてアンブレラに潜ませていた傭兵たちだ。

今回、私がアンブレラから離脱する為に特殊部隊として送り込ませた。

そして第一班と第二班が全滅し、試験体などの処理も終わった後、予定通り私を迎えに来たのだ。

 

 

少女───雪野しずくは凝り固まった体を伸ばしながら盲目とは思えない軽い足取りでラボから出る。

 

 

「アンブレラの特殊部隊は全滅しましたが、すぐに新しい鎮圧部隊が来ます。早めに撤収しましょう」

 

「ああ、ハーメルン、いや『太郎丸』のマイクで聞いているから知っているよ。よくやった。ボーナスは期待してくれ」

 

 

足元へとしっぽを振りながら駆け寄ってきたハーメルンを抱きかかえて背中を撫でてやる。

 

 

「お前も頑張ってくれたなぁ。後で美味しい人間たんまり食べさせてやるぞ。ちっさい子の肉がお気に入りなんだよな」

 

 

そう言うと「オレサマ ニンゲン マルカジリ」という思考が流れてくる。可愛い奴め。

 

 

「こいつのデータ取りも結構捗ったな。美紀は簡単に精神を支配できたのに、圭って子は思考誘導は出来ても完全な支配にまでは至らなかったし、実用化するには個人差とかもっと広く実験する必要あるな。それにしてもスノークイーンなんてAIを真に受けるとか笑えるな。あんなAIを作るなんてここの施設じゃ無理なのにね。そんなの作ってたらアンブレラに見つからないわけないじゃないか」

 

 

あの時は寂しさからついつい話し込んじゃって恥ずかしさもあり、ことさら冗談めいてそのことを話してしまう。

それを横で聞いている兵士はどう反応していいのか分からず困惑しているようだ。もっとコミュ力高めようぜ。

 

 

グラウンドに出ると、温かい日差しを肌に感じる。うん、良い天気だ。

 

 

雪野しずくは護衛の兵たちを伴い迎えに来たヘリへと乗り込む。

 

 

しずくが乗り込んだのと別のヘリの後部では他の兵士達が意識を失った1人の異形の女性と5人の少女たちを機内から運び出し、一人ずつ生命維持装置の付いた特殊コンテナの中へと入れていく。

試験体でも一時的に機能を停止させられる催眠ガスだ。ゴリラに蹴っ飛ばされても起きることはないだろう。

そして少女達の入れられたコンテナは別のヘリへと詰め込まれていき、そして厳重にロックされる。

 

 

「ドクターユキノ。"お土産"のパッケージが完了しました」

 

 

「そうかい。それにしても想定より豪華になったね。変異適合体が2体に人間形態のまま戦闘力が強化された適合体が2体、それに他にも覚醒前が2体。6体も生きたまま確保できるなんてね。やっぱり日頃の行いがいいからかな」

 

 

「試験体の回収はどうしますか?機能は完全に停止していますが」

 

 

おそらく、試験体は真っ白な彫像と化しているだろう。

それの細胞は既に結晶化してしまいなんの遺伝子情報もデータも取ることは出来ない。

なので回収する意味もないし。何より。

 

 

「いいや、そのままにしておく。どうせレポートやログは回収済みだし、必要なデータも全て取れた。後は鎮圧部隊にでも回収させてここで『雪野しずく』は完全に死んだと思わせた方がいい。それに───」

 

 

私は運ばれているコンテナの方へと耳を澄ます。

 

 

「既に試験体の力は後継者へと引き継がれている。そういうシステムだからなぁ」

 

 

血肉を直接分け与えられ完全な継承者となった変異適合体。そして遺伝子情報を埋め込まれ、眷属となった3人。

あそこまで進化した状態の力を注ぎ込まれたんだ、きっと彼女たちはとても面白いおもちゃになるだろう。

 

 

それにしても、最後は随分感動的に締めてくれたね。

ハーメルンに持たせたマイク越しで聞いていたけど、どうしてあんな性格になったんだ、笑いを堪えるのが辛かったよ。

そりゃいい子ちゃんになるように調整はしたけどほとんど正反対の性格にバカ丁寧な口調。

あんなのが私の『クローン』だなんて、家族に見られたら指さして笑われるって。

学校の時は猫被ってたけど普段の私にだって会ってたのに、なんで昭子は気づかなかったんだろうね。

でもお陰でこれからは佐倉先生たちはあの『クローンしずく』の遺言通り動いてくれるだろう。

彼女らに走者システム、いや、より発展させたVR走者システムを組み込めば『みんなの未来を守るため』に殺戮の限りを尽くしてくれるだろう。

 

 

「そんで、本当にアンブレラに戻らなくていいんですかい? まぁ今更戻っても裏切り者で殺されるでしょうけどさ」

 

「いいんだよ、アンブレラはもうおしまいさ。色々やりすぎたんだよ。遠からず破滅に追い込まれるだろうね。その前にとっととトンズラ決め込むだけさ」

 

「それで正義の組織にってことですかい? 堅っ苦しいのは苦手なんですがね」

 

「正義? ぶっ…ぶぁははははは!! 何が正義だよ、正義じゃ金は稼げないよ。それに私はもっと好き勝手できて私の力を高値で買ってくれる組織にいくんだ。そのためのお土産さ。後はそうだな、もっと面白い事ができるところなら最上だな。せっかくの人生、目一杯楽しまなきゃ」

 

 

ひとしきり笑って、私は行き先候補の書かれた点字書類に指を滑らせる。

これでも私はその筋ではそこそこ有名でいろいろなところからお誘いが来ているんだ。

そして一枚の書類をピックアップする。

そこには最大級に面白そうなヤツの情報が書かれている。

差し当たって、次のおもちゃ箱はそこにするとしよう。

 

 

 

行き先を告げ、積み込みも終わったヘリは、高い音をたて空へと羽ばたいていく。

 

 

 

私は窓から日のぬくもりを感じながら呟く。

 

 

 

 

「アルバート・ウェスカー。君は私をどこまで楽しませてくれるのかな」

 

 

 

 

この世界はとても素敵だ。

こんなにも私をドキドキワクワクさせてくれる。

次はどんな事が起きるかな? どんな楽しい事が聞けるかな?

いっぱい楽しいおもちゃを作って、毎日楽しいカーニバルを起こそう。

だってこの世界は私のためにあるんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

ヘリは飛ぶ。次なる舞台へ向かって。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、新しいゲームの始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

【生存者全員殲滅ルートEND】

 

 

 

 

 

++++++++

 

もうそうせってい

 

【試験体】

捕食によって遺伝子情報と栄養を取り込むことによって変異し強化していき、負傷することによっても強化する。

強化されるごとに回復力が高まり、最終的には擬似的な不死状態になる。

また、血肉や体液などを分け与えることで、眷属を作り出す。

その眷属とはネットワークを形成し、その眷属がいれば情報をネットワークから相互に受け渡し細胞1つからでも復活できるようになる。

血肉を与えた眷属は体液だけを与えた眷属とは違い、継承者と呼ばれ、親である試験体の細胞が全て消滅しても、自分の体内の親の血肉を使い復活させることが可能。

また、継承者は強化することで親と同等の力を得られ、自らの継承者と眷属を作ることができる。

体液だけの眷属は濃度が低いため強化しても眷属は作れない。

 

 

【ハーメルン】

美紀や圭に『太郎丸』と呼ばれる犬。

感染させたものを精神的に洗脳して眷属化する。

試験体と血肉によるネットワークと違い、大きな強化は出来ないが、眷属への精神の乗っ取りが可能。

眷属が感染させたものもハーメルンの眷属になり、ねずみ算式に精神支配された眷属が増えていく。

試験体が個体の肉体的な強化と不死性を追求したのに対して、こちらは群衆を導く煽動家としての能力を追求してつくられた。

名前の由来はハーメルンの笛吹き男。

ちなみに好物は人間の子供。頭からマルカジリにします。

 

 

【スノークイーン】

そんなものありません。

ただ単に自分の姿をしたCGを作り出して、隠し部屋からリアルタイムでおしゃべりしていただけ。

単なるVTuberである。

 

 

バイオでこんなの出てきたらフザケンナってコントローラーぶん投げます。

 




続きません。
というか続けれません。
アサルトニキさん色々ごめんなさい。
好き勝手やったらこうなっちゃいました。
後悔はしてないけど反省もしていません。
どうしようもねぇなこりゃ。


そろそろまほいくSSの続き書かないとなぁ。


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ラストサバイバー
~蘇生~


蛇足編です。
蛇足なので好き勝手します。
本編だって好き勝手にしてたじゃないか? 知らない子ですね。





巡ヶ丘学院高等学校

放送室前

 

 

そこには幾人かの生徒と兵士の死体が放置されていた。

 

動く者が居なくなり、静寂の中、一つの屍の指が微かに動く。

 

────が欲しいか?

 

(俺は…死ぬのか…)

 

その者の体は確かに生命活動を停止していた。急所である咽喉元を大きく斬られ、とめどなく血が流れ、心の臓はその鼓動を停止していた。

そもそも、その者が倒れてから3時間余りが経過していた。

仮に即死していなくともその出血量でそれだけ放置されていれば確実に涅槃へと旅立っているだろう。

───だが、そうはならなかった。

夥しい血を流していたその傷跡はいつの間にか出血が止まり、無惨な痕を残しながらも傷口は塞がろうと蠢いていた。

 

(嫌だ…死にたくない…)

 

倒れてから全く動かない体、微かに聞こえてくる周りの声、悲鳴、怒号、戦闘音。

そして自分たちの死を悼む先生や同輩の声。

立ち去る足音。

ヘリや駆け寄ってくる人の声。

 

首元に手が当てられる感触。

「脈拍無し───こいつもダメか。生存者はゼロ。撤収する」

 

 

(待って! 待ってくれ! 俺はまだ生きてる! 置いていかないでくれ!)

 

 

何度も叫び、起き上がろうとするが、その意に反して体は一寸も動かない。

やがてヘリが飛び立つ音がして…そして彼は失意の底にいた。

 

そんな時、彼の脳裏に一つの声が響く。

 

───力が欲しいか?

 

(え? 何だ)

 

───力が欲しいか!!

 

(力ってなんだよ? 生き返れるのか?)

 

───我は■■■■■■

 

(■■■…■■■…)

 

───力が欲しいのなら くれてやろう!!

 

ズクンッ!

 

仰向けに倒れた彼の胸が跳ね上がる。

 

ドクンッ───ドクンッ───

 

今まで完全に停止していた心臓が膨張し、周りの血管が体表に浮き出る勢いで血液を全身に送り出す

 

ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

その鼓動は止まることなく───

 

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ

 

勢いは更に激しさを増し早鐘のように打ち鳴らす。

 

其の度に彼の体は激しく脈打ち、体の傷は急速に癒えていく。

全身の筋肉は膨大な血流を流し込まれ膨張し、ある一点を超えた所で急激に元の太さまで引き締まり、細いながらも力強い高密度の肉体を形成する。

 

(ガ…ガァ…グァァ…)

 

全身がまるで別の物体に作り替えられているような不快感が彼を襲う。

 

「グァァァアアアアアアア!!」

 

今までどれだけ声を出そうと音を発しなかった口から苦悶の声を上げる。

 

そして、気付いた時には彼は上半身を起こして荒く息をついていた。

 

 

今まで感じていた不快感は消え、体は不思議なほどに痛みも気だるさもなく、ぐっすりと休養を取った後のような快調さだった。

 

「そうだ、みんなは!」

 

彼は、倒れていた廊下を見渡す。

 

そこには彼の仲間である生徒たち、そして倒れる前に戦っていた兵士たちの遺体があった。放送室を覗いても、そこにあるのは銃で撃ち殺された遺体だけだった。

 

 

「みんな…やられたのか?」

 

 

いや、めぐねぇや何人かが見当たらないな。

倒れている間に聞いた声が夢じゃないんなら、あの後救助が来てみんな脱出したってことか。まさか置いて行かれるとはなぁ…いや、さっきまで心臓止まってたみたいだし、しょうがないか。でも一人っきりってのは辛いな、何か武器は…残ってないな、持ってかれたか。

 

放送室に置いてあった食料や医薬品が入ったバッグも無くなっていた。

 

他には何か…おっなんだこれ?

 

倒れた椅子の陰、植木鉢に生えた緑色のハーブがあった。

 

こんなんでも腹の足しにはなるか。

 

俺はその生えたハーブの葉を摘んで、身に着けていたウエストポーチに入れた。

 

どっかでバッグ探さないとな。

 

───待っ…て…

放送室を出ようとした時、か細い、こんな静寂の中でなければ、そして以前より強化された五感がなければ気付かないような小さな声が聞こえた。

 

「え? 誰の声だ」

 

微かに聞こえた声の方を探す。

そこには3人の遺体が折り重なっていた。

おそらく後から来た救助(?)の奴らが放送室を漁る時にひとまとめにしたのだろう。

そこから、またか細い声が聞こえた。

 

 

「待ってろ! 今助けるからな」

 

こいつか? いや違う、こっち? 一番下の奴か!

 

俺は積み重なってる遺体をどけながら声の主を探す。上の二人は頭部がなかったり、大きく破損しているため違う。一番下の女子生徒が声の主だった。

その子も頭部に2発、止めのように銃弾を受けた痕と夥しい血痕があったが、何故か傷口は癒着したように塞がっている。

そして口が微かに震えるように動いていた。

 

「お前…柚村…だっけか」

 

たしか同じ3年生。別のクラスだったからよく知らないけど首元に巻いたチョーカーが特徴的で名前を憶えていた。

生き残った仲間だけど、まだ1日しか一緒に居なく、女子にはあまり興味がなかったためうろ覚えだった。

 

 

「そう…だよ。うぅ…お前はディーノだよな」

 

「そうだ、巡ヶ丘最強の四天王ディーノ様だ。俺が来た。だから安心しろ」

 

 

柚村の傷は塞がっていたが、未だに起き上がれる体力は無いようだ。

ちょっとごめんな、そう謝罪をして彼女の体を持ち上げる。なんだ? まるで羽毛みたいだな。まったく重さを感じないぞ。

俺は柚村を米袋のように肩に担ぐ。

 

 

「ちょ…おまえ…そこはお姫様抱っこだろう…普通なら」

 

 

柚村が不機嫌そうな声で文句を言う。

 

 

「馬鹿言うなよ。俺がお姫様抱っこする奴は後にも先にも栄太だけだ」

 

「この…ホモ野郎が…」

 

「ホモじゃねーよ、友情だ!」

 

 

俺はよくホモと勘違いされるが、そんなんじゃない。あいつらとは血よりも濃い友情で結ばれているだけだ。それに栄太の体は温かくて抱き心地最高なんだぞ。

それに俺はホモと違ってちゃんと女性が好きだ。理想の女性はママンみたいな優しくて包容力のある大人の女性だ。早く帰ってママンのパインサラダが食べたい。

とにかく文句を言う柚村を無視して肩に担いだまま放送室をでる。お姫様抱っこだと両手が塞がるからな。

 

 

とりあえずどうするか。「ちょっとディーノ!後ろ!」俺はゾンビ化して起き上がる兵士の顔面に裏拳かまして破裂させながら今後の事を考える。

まずは武器だな。武器がないとゾンビ出た時勝てねーもんな。「何っ!うそっ!キャッ!」噛みつこうと飛び掛かってくる生徒たちを片手で投げ飛ばし「下!下にも!」足にしがみ付いてくるやつは頭を踏み砕いていく。

 

 

なんか柚村が騒がしいな。大事なことを考えてるんだから静かにしろよ。

 

兵士が持っていた銃は全部回収されているみたいだ。頭部のなくなった兵士の持ち物を漁るが、バックパックも持ち去られているし、銃も予備弾倉もナイフすら残っていない。

おっと、チョコレート発見。尻ポケットにチョコバーが入っていた。ちょっと砕けているが軍用チョコレートらしく溶けてはいない。

貴重な高エネルギー非常食だ。貰っていこう。俺は騒がしい柚村の口に半分に割れたチョコバーを突っ込んで、残りを大事にしまう。

後は、小型の折り畳みナイフが見つかったが、工作用には使えるが戦闘には役に立ちそうもないな。一応持っていくけど。

 

 

とりあえず、何か武器は無いか。

放送室を出た後、斜め前にある化学実験室を覗いたら、ちょうど良さそうな鈍器があることに気付いた。

 

人体模型のジョージ君(俺命名)だ。

 

ちょうど大きさもよく、頑丈なジョージ君。持ってみると発泡スチロール並みの軽さなのに丈夫で足を持って振り回すとブオンブオンと良い風切り音が鳴る。

あんまり重い物だと片手で使えないからこれでいいか。これからよろしく頼むぜ、ジョージ君。

ちなみに腹の中の奴は落ちないように同じく化学実験室にあったガムテープでグルグル巻きにして固定しておいた。

やっぱりガムテープは最高だぜ。

 

 

 

よし、準備は上々。

それじゃ、最強の巡ヶ丘四天王の生き汚さってやつを見せてやるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンンンンゥ!ングゥングゥンンンングゥ!(何このチョコ!不味いし生暖かいしやたら硬くて飲み込めない!)」

「ここは日本だ日本語をしゃべれ」

 

柚村は本当に落ち着きのないやつだな、ママンの爪の垢を飲ませてやりたい。




お約束の蛇足編です。
蛇足なので続くかどうか不明。


追記:生徒会室になってたので放送室に修正しました。


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