セルモノー・リューに生まれ変わった青年の話。 (黄色いうちわ)
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 セルモノー・リューに生まれ変わりました。



  やったね。強くてニューゲームの始まりだよ。  


 

  

 

 

 

     車に跳ねられて死んだ。

 

  でもって、神様と死神と閻魔様からに間違いでした。ほんとは君の隣にいたご老人が亡くなるはずでした。と言われた。

 

 

  間違いじゃあしょうがない。誰だって間違いますし。で、私はどうなりますかと聞いた。

 

  この度はこちらの責任ですから、また人間に転生させます。だけど、人間に転生するには手続きに時間がかかります。ですから、暇潰しにあなたの望む世界に転生をさせてあげます。その世界で生きて天寿をまっとうして下さい。望む世界がなければこちらがランダムで選びますが。

 

   そう言われて、私が望んだのはジルオールの世界だった。あの世界で冒険者になって自由に生きてみたい。そう思ったからだ。

 

   わかりました。では、あなたはそのゲームを何度もクリアしていたので、その分のデータ能力・スキル・ソウルポイント・アイテム・武器・防具・アクセサリー・イベントアイテム・知識を全て継がせましょう。かさばるからマジックポケットも授けましょう。一生遊んで安全に暮らせる地位も授けましょう。では、よい旅を。

 

 

   神様死神閻魔様からの言葉に嬉しがった自分は馬鹿だった。いや、嬉しいです。だけどね、セルモノー・リューに生まれ変わるってなんですかね?

 

   あ、でも王様にならないで王弟のままで生きていけばいいのか。王弟で冒険者になってロストールに寄り付かなければ、エリスさんは生きるよね。うん、そうだそうしよう。先ずは、嫌だけど王族として立ち居振舞いを身につけて勉強をして体を鍛え上げないとだな。

 

   気さくで緩い王族なら、だれからも担ぎ上げられないだろう。そうと決まれば、ソウルポイントを振り分け…うふ。神様死神閻魔様ったら、500回クリアをしまくった私の愛すべきデータ全部、お金もアイテムも全部を継承ですか。わーい、やることあんまりないですね。これ、竜王もウルグもティラも赤ん坊の今でも余裕でワンパンで倒せますわ。

 

   王族だからウルグをつけて威圧しながら鬼成長してやらあっ。やけくそ。

 

 

   第二王子様のセルモノー様は、産まれながらの王者であらせられました。

 

   威圧感を、誰もがこうべを垂れざるをえない威圧感を発したのです。

 

   泣かないお子様でした。そしておむつを換えたりミルクを飲ませると「あー」と言葉を発してお辞儀をするかのように頭を動かしたりと、賢すぎる御方でございました。

 

   すくすくと成長されると、剣に魔法に興味をしめされました。セルモノー様は賢く、一を教えれば百を千を知る。まさしく天才でした。

 

   でも、私ども使用人に気さくで優しい御方でした。慈悲深く、兄上を敬愛して…下町に抜け出てしまっておりました。隠すこともせずに、堂々と父君と母君、兄君に《セルモノーは冒険者になります。世界を旅してロストール王家に有益な情報を得てきます。兄上を補佐する文武官を目指します。セルモノーはエンシャントに留学します》と告げてしまいました。

 

   ご家族は認めました。止めても止められないとわかっていたのでしょう。

 

   セルモノー様が、既に冒険者になっていたのは全国民が知ることになっていましたから。

 

 






  物事には限度があったよ…。


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 ある、夜会にて。


   エリス・セルモノーにメロメロなセルモノー・エリス。


 

   セルモノー・リューになってから、王族をしています。王公貴族の立ち居振舞いやら常識を身に付けましたが、言えることはただふたつです。平民万歳。民主主義万歳っ。

 

 

 

   しきたりだの貴族の嗜みだのは疲れます。そして王公貴族のおもわず吐き気をもよおす傲慢さっ。セルモノー、ポンポンいたい。生まれは王子様でも中身は平和な日本人(庶民)ですからね。使用人には普通にお礼を言います。自分の学友の貴族と喧嘩みたいになった時にも、自分に非があれば後から謝ります。

 

   何となくですが、当初の目標である気さくで緩い王族にはなれた気がします。

 

   …愛のない結婚をエリスとしたと悔やんでいましたが、エリスは可愛いです。ぶっちゃけ、ゲームのセルモノーがお鈍さんだっただけでした。ていうか、罪作り野郎でした。

 

   普通はさ、第一王子に群れますやん?未来の王妃の座を狙いに、禿鷹やハイエナの様に第一王子の取り巻きになりますよね?エリスは筆頭貴族のファーロス家の娘。有力貴族の御令嬢。彼女を娶れば王になれる事が確定。そんな彼女ですが、兄上の側にはいかないのです。

 

   弟(レムオンとエストパパ)の側にも行かずに、私の座る椅子の近くや立っている壁の近くにいつもいるのです。小さな可愛い女の子の熱視線に照れます。これで気づかなかったって馬鹿かとっ。ゲームでも言ってました。最低最悪の戦況下で、《私には愛する夫と娘がいる。逃げるわけにはいかぬ》と。それなのにセルモノーときたら…。もうね、結婚して翌日に気づけよ《愛せなくても次の日から愛せば良かったのだ》と。うわああああっいまわのきわで気づくなよっ。

 

   「エリス嬢、一曲踊っていただけませんか」

 

   「すみません、足を痛めておりますの。ですから本日は壁の花ですの。また、誘って下さいますか」

 

   「それは失礼いたしました。それでは、また次の夜会で。ごきげんよう」

 

   「ごきげんよう」

 

   本日の夜会で八回目のやり取りでございます。一番最初に私と踊ってから誰とも踊ってません。髭と無気力さと死んだ魚の目で残念なオッサンでしたが、鏡に映るセルモノー・リューは中々の美少年です。おまけに特典で強くて賢いが加算されているので無敵状態です。

 

   「あ、あのう。殿下はもうどなたかとは踊りませんか?」

 

   顔を真っ赤にして聞いてくる。可愛い。

 

   「エリスと踊ったからもう踊りません。エリスと同じで壁の花で料理を食べています。エリス、この果実をどうぞ。これはテラネの特産品ですので珍しいものです」

 

   「ありがとうございますっ。美味しいっ。あの、どちらに置いてありますか?」

 

   「ごめんなさい。これは、私からのお土産です。エリスにだけのお土産だから、エリスだけで食べて下さい。前の、君の従兄弟殿が食べたエンシャントのチョコレートで懲りました。まさかお酒入りだったなんて」

 

   「そ、その節は申し訳ございませんでしたっ」

 

   「ごめんなさいエリス。謝らないで下さい。材料を確認しないで大量に買ってしまい、みんなへと配ってしまった私が悪いのです」

 

   「殿下…。ありがとうございます」

 

 

   あまりにも美味しかったから、金に物を言わせて大量に購入して、家族親戚貴族達と使用人にパーティで振る舞った。パーティに親に連れられてきたエリスの小さな従兄弟殿が手を伸ばして食べてしまい、ちょっとした騒ぎになってしまった。慌てて回復魔法を唱えてしまったのも騒ぎの一因だ。教えていない魔法を唱えたのだから。図書室で見、て興味が湧いたので練習していた事にした。

 

   「殿下、またあのチョコレートを食べてみたいです」

 

   「わかりました。お土産に買ってきますね」

 

   「は、はいっ。ありがとうございますっ」

 

   …可愛いのです。エリスが。つい、口に出してしまったのであろう言葉に、了承の返事をしたら驚いてお礼を言う。照れてはにかむ。可愛すぎかっ。

 

   ああ、でも。エリス、貴女が喜んでくれるのなら、何度でもエンシャントに赴いて買ってきますとも。エンシャントの不思議な冒険者がもつ魔法の箱で荒稼ぎをして、髪飾や宝石を贈るのも良いかな。

 

 

   …賢者の森を抜けて賢者に会えるかなと思って探索していたら、父親の娘(と孫)殺しの場面に遭遇してしまい、父親(バロル)をぶん殴って娘に蘇生魔法と回復魔法をかけてエスケープ。うちに連れて逃げ帰ってきました。

 

   両親に土下座をして、ノーブルをもらってネメアのお母さんをノーブルの代官にいたしました。まともな領地経営をしてくれています。ネメアは元気に生まれて育ってます。母子共に健康です。

 

   さあ、魔神なネメア父よ、早く妻子を迎えに来るが良いっ。ネメアがチラチラと私を見ています。今なら間に合いますよっ。《セルモノーさまはネメアのおとうさまにはならないのですか?》とネメアが言う前にっ。猫屋敷の賢者様でも構いませんよ?英雄の命の恩人と父親役は、私には荷が重すぎます。

 

   …ちみっこネメアが可愛くて、一緒に旅に、冒険に連れて行っていたのが敗因なのはわかっています。しつこく賢者の森をさ迷っていて、ネメアがうっかり泣いているハーフエルフのお嬢さんを見つけて《ネメアが面倒を見ます。だからネメアの妹にして下さい》と言われて快諾した後に、無茶苦茶後悔しましたともっ。これ、賢者様ポジションっ。無理っ。私、魂を指輪に隠したり死んでしまった子猫様の体を借りるなんてできませんからっ。…バロル生きてますかね?ロストールの王子が皇帝を殺してしまったら戦争待ったなしですよね。大丈夫かな?生きていてね。お願いっ。

 





   突然、頭に衝撃を受けて気絶した。気がついたら娘が消えていた。娘婿の仕業か。


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 国王になりました。


  不可抗力でした。





 

 

   念願の気さくで緩い王族冒険者になりました。

 

   スラムの人達や平民の方々に、ゲームのゼネテスみたいに受け入れてもらえてご機嫌です。

 

   幼いゼネテス君には会うたびに襲いかかれていますが、返り討ちにしています。憧れの叔母さんの夫が嫌いなのでしょう。

 

   レムオン君には国に帰るたびに警告をされています。国王なのですから冒険は程々になさって下さいと。

 

   ちなみにタルテュバ君は生まれたと知らせがきてから、彼を構い倒して生きてきました。誕生日や季節ごとのイベントには必ず贈り物をして、勉強や剣術を教えて、君が大切だと言葉と態度で示してきました。下町やスラムに連れ出して、そこに生きている人々と交流を持たせました。ノーブルに連れていき、父親に殺されかけたエスリンさんに会わせて、エスリンさんと魔人の間に生まれたネメア君と友達にさせました。

 

   暇をみつけてはスラムにいき炊き出しを行い、下町で子守りの仕事をしてノーブルでネメア君と畑の手伝いをする良い子になりました。優秀な従兄弟やゼネテスを妬まない…彼なりにわだかまりはあるのでしょうが、貴族でなくても生きていける事に気づいて、生き方を模索しているようです。

 

   …王になる気はありませんでした。

 

   ですが、兄と弟が国王の座を争ったのです。王国の貴族をそれぞれの派閥に入れて醜い争いを起こしてしまったのです。そうして、相討ちの形で、兄は毒殺され狂った兄の妻によって弟はナイフで心臓を刺されて亡くなってしまったのです。

 

   その知らせはアキューリスで知りました。

 

   急いでロストールに戻ると、生き残っていた貴族達から頭を下げられました。

 

   「セルモノー・リュー国王陛下、私共をお導き下さい」と。

 

   兄上と弟の遺児に継がせてほしい。私は幼い子供達が成人するまでの後見人になりますと言ったら、残された御子様方は、王族殺しの大罪人の子。レムオン様はご自分が罪を負うのでエスト様の命を救ってほしいと告げ、自ら牢にお入りになりました。アトレイア様は王子妃の無理心中の際に盲目となられました。大罪人の子が国王になるなどは他国に侮られます。

 

   最後まで聞かずにレムオンに会いに行き牢から出した。そうして、レムオンとアトレイア、エストとタルテュバ、ネメアとケリュネィアを養子にして、私はロストール王になった。六人には、私の後を誰が継いでも六人でいつまでも仲良くしなさい。六人で支えあって生きていきなさい。守るべきは国民です。と教えました。

 

   驚く事に五人が揃いも揃って国王はネメア君・兄さんで良いよね。だって貫禄が違うし一番民を思えて冷徹になれるものと言っています。待って。ネメア君はディンガル帝国に売約済み。ネメア君も乗り気になって私に民主主義について教えて下さいと言ってきています。

 

   子供達の前で酔って《民主主義最高。賢く公平な王が王でない王国は駄目になるに決まっています。多数決に選挙万歳~政治経済について熱く語る~》をしては駄目に決まってますね。

 

   いえ、幼い頃から自国の政治や経済のありように興味を持つのは良いことだとは思います。生まれてきた時や幼い頃には、国が疲弊していて原因が王族に貴族の派閥争い、内戦が原因だと知ってしまったら責任感が芽生えますよね。…傲慢さのない謙虚で勤勉で年下に優しいレムオン君に平民を愛し平民に愛されているタルテュバ君。盲目だからこそ同じ盲目な人に優しい国や制度を造りたいですと燃えているアトレイアちゃん。兄上を支えますと勉強を頑張るエスト君に、自由にネメア君と下町やスラムに遊びに行くタルテュバ君を羨ましそうに見ているゼネテス君…私、もしかしたらとんでもない事をしちゃいましたかね?

 

          ※※※

 

   「セルモノー陛下が昨日、またスラムの酒場で泣いていたな」

 

   「ああ。冒険からもどられたのか。ならノーブルか王宮に戻られれば良いのにな。あの優しい御方が泣くなんて旅先で悲しい事があったのだろうな。落ち込んだままかえられたらエリス様や御子様達が悲しまれるからな。気をつかわれたのだな」

 

   「だよなぁ。ロストールは平和そのものだからな。ああ、もしかしたら悲しいの涙ではなくて嬉し泣きだったかもしれないな。ほら、スラムだった名残なんて、あの酒場だけだろう?」

 

   「だよなあ。優秀な王子様と王女様達が率先して俺達平民の為に改革をしてくれているから皆が笑顔だ」

 

   「アイリーン嬢ちゃんが、女騎士になる日も近いなぁ。叙任式でびっくりするだろうな。親切な貴族様のセルモノー様とタルテュバ様が国王陛下と王子様としていらっしゃるのを見るんだからな」

 

   「ああ。オッシさんの敬語に貴族だった頃の上司なんですね認識で訂正されないままここまで成長しちまったからな。…平和だなぁ。王公貴族は優しく賢く慈悲深く、国と民を導いてくださる。兵士は強いし頼りになるし実直だ。騎士団は強くて優しく国の誉れで子供達や女性の憧れちくせう。国土は豊かで治水も完璧で飢饉に備えて蓄えがある。医療や福祉も雇用も充実していて女性が安心して働けているっ」

 

   「ああ、平和だ。この平和をくださったセルモノー・リュー国王陛下に万歳っ」

 

 

   「万歳っ!もう、俺はセルモノー様に一生ついていくぜっ」

 

   「俺もだぜっ。ガキの俺と妹がスラムで生き残れたのはセルモノー様が孤児院と施療院を国中に造ってくれて毎日炊き出しをしてくださったからだ」

 

   「ご自分の資産を惜しげもなく使って、キマイラやグリフォンを狩って炊き出しをして下さったから俺達国民とロストール王国は立ち直れた。…エリス様やエスリン様の手料理を食べれて光栄だった。陛下と王家に乾杯っ」

 

   「乾杯っ。ぶっちゃけ冒険には行かないで欲しいぜ」

 

   何やら深刻そうな顔をして話し合っていたから、悩みがあるのかと思った。相談にのろうと声をかけようとしていたが、父上のファンだった。父上のファンといえば、ロストール王国の臣民がほぼファンだが。息子として誇らしいものがある。赤い髪の男性よ、最後の言葉は丸っと同意しよう。

 

   父上はいまだに賢者の森を探索している。あの森は捨て子が多いし犯罪者の温床だからな。優しい父上は定期的に見回りをなされているのだろう。

 

 

   「ネメア、買い物は終わったか?」

 

   「タルテュバ、終わったぞ。…本当に付いてくるのか?お前はロストール貴族だ。私のゴタゴタに関わる必要はないぞ」

 

   「ネメア、お前は俺の親友で兄弟だ。で、うちの次期国王だ。ディンガル帝国に命を狙われまくるなんて冗談じゃない。さっさと憂いは断つに限る。レムオンとエリスお母様が集めた情報を無駄にはせん。ケリュネィアの弓の稽古を無駄にさせるな。セルモノーお父様を足止めしてくれているゼネテスとレーグ殿の苦労を考え「へぇ。で、ネメア君とタルテュバ君は、お父様に黙って何処に何をしにいくつもりなのかなぁ?君達が強くても子供のうちに、子供達だけでよその国に行くのはお父様は許さないよ」「すまん。このオッサン強すぎた」「…すまぬ。師には勝てなかった」

 

   …こってりとお父様にお説教をされた。

 

   ゼネテスはなんとなくだが司法取引をした気がする。俺達子供は縄で縛られているが、あいつだけ縄がゆるゆるだし、エリスお母様のクッキーを食べれているし。

 

  

 

 

    






  レーグ君はリベルダムの闘技場で倒したら弟子になってくれました。



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 エリス・ファーロス嬢の昔話。

 
  エリス嬢の昔話。


 

 

     自分の容貌が嫌いだ。

 

  お母様に似た顔なのに、優しげでない儚さがない。鏡を見るたびにため息がでる。なぜ、こうも《いかにも何かを企んでいます》《悪女の見本です》《毒婦ですが、なにか?》《謀略・策略を考えるのが大好きです》な顔をしているのかと。

 

  周りからの、愛する家族からの声も、気が沈む内容だ。

 

  《エリスが男であれば良かったのに》《エリスがいればファーロス家は安泰だ》《いっそエリスを女当主にして息子を有力貴族の御令嬢に婿入りさせようか》

 

  私は普通に暮らしているだけで、普通に貴族の令嬢として、家の為に嫁ぎます。できたら暖かい家庭を築きたいです。

 

  信頼している乳兄弟のフリントにそう言ったら、エリス様ったら、笑えない冗談は止めてください。エリス様でしたら王家をぶっ潰して新たにファーロス王家を創れますよと返ってきた。この世は地獄です。

 

  信頼しているフリントを常に側に置いているのもよくない気がしてきた。フリントと恋仲なのかと疑われている。フリントからの想いは百パーセント忠誠心だ。本人が言っていた、

 

  《エリス様へ向ける感情は、忠誠心と敬愛です。もはや信仰心といっても過言ではありません。エリス様の罪を被って死ぬ名誉を私にお与え下さいませ》と。

 

  嘘やおべっかなら良かったのに、心の底から思っているのが困る。普通が良い。

 

  第二王子のセルモノー様。あの御方の噂話や風評もすさまじいものであったな。ご本人も私の様に戸惑いを感じておられるのやも知れぬな。

 

  そう。私はセルモノー様に親近感を抱いていた。

 

  《魔王バロル以上の魔王となる御方》《あの御方の禍々しさはデス以上だ》《ロストールで一番の賢人が、教えられる物がなにひとつ有りませんと言っていた》《騎士団長がセルモノー様と打ち合って負けて、セルモノー様に剣と忠誠を捧げたぞ》《兄上を慕い弟君を可愛がっていらっしゃるが、内情はわからぬな》《肥沃な領土を拝領した。やはり王位を狙っていらっしゃるのだ》《冒険者になられたのはきっと他国に私兵を増やす為に違いない。狡猾な御方だ》

 

   貴族や豪商の噂話で語られるセルモノー様の印象は私が噂されている内容に似ていた。だからこそ、ご自分の風評に困惑されておられると思った。

 

   私の代わりに《外》を見てもらっているフリントの話してくれたセルモノー様は、違った姿をしていた。

 

   「フリントから言わせていただくと、あの御方は神の慈悲の代行者。破壊神の裁きの執行者でございます。疫病で倒れた旅人の治療を王子がしていたのです。貧しい寒村から食糧を女を略奪した傭兵崩れのならず者集団をたった一人で全滅させ、奪われた食糧と女を取り戻したのです。王子をお守りする王家の守護者を頼る事なく、ご自分の判断と力で為し遂げたのです。

 

  …スラムに慈悲を施す、いいえ、セルモノーはスラムに生きる人々に寄り添い生きている。平民の生きる町で平民と共に喜怒哀楽を共にしている。神の慈悲破壊神の裁き、そして何より、人間です。身分などにあの人間はとらわれない。人間としてよわきに優しくあろうとし、弱者をうつものに抗う。それを選べてしまう強き人です。

 

  殿下御自身が、王家の櫛びから飛び立っておられます。王家のセルモノーではなく、冒険者のセルモノーとして生きておられます。大旦那様と旦那様は、セルモノー様の本質に気付かれて、獲得に向けられて策略を練っておられます。陛下にセルモノー様を我がファーロス家に降嫁させて下さいませんかとおっとしまったついうっかり。…セルモノー様のお話し相手としてエリス様と若様を紹介されるそうです。良かったですねエリス様?エリス様―っ!医師を呼べーっ!」

 

  亡くなったお祖母様に会いに逝きかけてしまった。人間は嬉しすぎても死にかけるらしい。

 

  傲慢で愚鈍だった救えない兄が、セルモノー様に出会った瞬間に劇的に変わった。騎士としての忠誠をセルモノー様に誓い、剣と学問を習い直し、父上とお祖父様にお願いをして、ファーロス家の跡取りとしての再教育を受けているのだ。

 

  変わった理由を聞いたら、真剣な顔をして語られた。

 

  「…笑うなよ。俺はな、魂、その者の宿している魂がわかるときがあるんだ。騎士の奴等はアークソードがやっぱり多いよなとかそんな感じでな。だけどな、セルモノー様は違った。違ったんだ。神様、異界の神様の守護が三つもあった。それと、セルモノー様の魂は無限だった。無限なんてありえないだろう?一際強く感じられた魂は、人間の持ち得る魂ではなかった。神様としかいえなかった。貴族や豪商の語っている噂は所詮噂だ。うちの実直なフリントの言う事こそが真実だ。現人神が近いな。エルズのエアは所詮巫女。竜だって神様から創られた存在。あの御方は神様を宿している尊い御方。…ファーロスが神の従者になれるなんて光栄だろう。俺は一の従者を目指すから、お前はセルモノー様の妻の座を狙えよ。お前は俺の自慢の妹で、ファーロスの自慢の一人娘だ。絶対に第二王子妃の座を得るんだぞ?エリスーっ!フリントっ、医師を呼べーっ」

 

  私の兄と乳兄弟よ。私の心は初なんだからもう少しオブラートにくるんで欲しい。

 

  前当主・現当主・未来の当主からのお墨付きなので、私もセルモノー様の妃になるという覚悟を決めた。だが、問題がある。セルモノー様が私を気に入って下さるかどうかだ。

 

  兄が、セルモノー様のお部屋に入るなり、いきなり泣きながら忠誠を誓うからだ。周りが慌てて兄と私を回収して無理矢理帰宅させてしまったから、私はセルモノー様にご挨拶できなかった。

 

  …美しい方だった。細身の、だが、均整のとれた逞しい体。美しい銀髪で、優しい目をしていた。控えていた従者やメイドがセルモノー様に向けている視線は敬虔な信者の視線そのものだった。兄に向ける眼差しが、《よく真実に、真理に気がつきましたね。貴方の選択は正しい。さあ、同胞よ。共に尊き御方にお仕えしましょうね》と語っていた。

 

  …七つの年齢差が呪わしい。同じ年ならば、生まれたと同時に婚約者になれたのにっ。父上のお祖父様の親戚の勘違いが呪わしいっ。私の容姿のイメージから、この娘を当主にしよう。そうしたほうがお家が安泰だなんて考えついたばかりに十一まで嫁ぎ先を考えなかった!兄よ、目覚めるのが遅いっ。噂にビビってセルモノー様に近づかなかったってどこの気弱な乙女だっ。なんかもう、身内にせっせと足を引っ張られて妨害されている。でも、絶対に負けないっ。絶対にセルモノー様に選ばれてお、奥さんになるっ。

 

 

 






  ファーロス家は一族揃って敬虔なセルモノー教徒。(ゼネテス除いて)


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 国王になりました。2


  会議前に家族に相談するのが新国王スタイル。


   

 

     《ロストール王国にて新王即位》

 

  その一報を聞いた他国の者達の反応は二通りに分かれた。

 

   《セルモノー・リュー様でありますように》と《セルモノー・リューではありませんように》だ。

 

   前者は冒険者や一般人。後者はロストールと敵対している国の王や兵士であった。

 

   誰だって慈悲深い王に国主になってもらいたい。自分の住む国で生きづらくなったのなら優しい王が治める豊かな国に移り住みたい。

 

   誰だって敵対している国の国主に内政に有能で臣民から圧倒的な支持を受けていて敵には情け容赦もない戦の指揮が天才で化物みたいに強い男に国王になってほしくない。戦争になってしまったら、必ず敵側が負ける。降伏勧告を三回は必ずしてくれているが、それの三回以内に降伏しないと、王や全ての王公貴族に騎士団長は城壁に首を晒される。女性でも幼い子供でも関係なく処刑される。代わりに国民や兵士は手厚く保護をしてくれる。…そんなこんなだから、大抵は城門は内側から開く。蜂起した民衆の手によって。

 

   兄を慕い弟を愛している冒険者王子が、国王になるはずがなかったが、兄と弟が王位を争った末に相討ちになって倒れてしまった。

 

   ロストール王国と敵対している君主や指導者達は神に祈った。

 

   ロストール王国の新王が、悲しみのあまり兄弟の後を追って亡くなって下さいますようにと。

 

           ※※※

 

 

   王様になって最初に勅令を、

 

  《ロストール王国臣民はドワーフ・エルフ・ハーフエルフ・ダークエルフ・リルビー・ボルダン・コーンス・ダルケニス・半魔の存在を否定せず迫害することなく、これらの種族と友人となり共存共栄を目指す事》と布告しました。

 

   その上で、私の可愛い養子達が魔人と人間のハーフとハーフエルフとダルケニスと人間のハーフであると公表しました。

 

   ロストール王国の住民全員がそうだと知っていれば、将来的になんの弱味にもなりませんからね。

 

   王子に王女が、人間と異種族との間に生まれた子供。人間と暮らしている。その事は隠れる様に暮らしていた存在にとって希望になったのでしょう。移住してくる異種族が増えました。

 

   内乱で人口が減り働き手がいなくなってしまったロストールにとっては渡りに舟でした。自然に人間と異種族との間の蟠りはなくなりました。

 

   ダルケニスとエルフ種は美しいですからね。いままで隠れていた美人さんや美形さんは、内乱で疲弊しきった国民の目の保養になりました。リルビーの可愛らしさと歌声に心が癒されました。ドワーフの技術とボルダンの力に復興が進みました。コーンスだけが来てくれなかったのが残念ですが。

 

   王家の、もう私と幼い子供達しかいませんが、所有領地をそれぞれの種族の住む場所へと提供しました。還れる場所があるという事は、心が擦りきれることがなくなり、拠り所になります。もちろん王都ロストールにも《大使館》を置きました。それぞれの種族の代表が《村》と《国》に連絡をして困っている同族を助ける制度です。

 

   …反対はなかったです。至極当たり前ですよね。最後の王子がこれを了承しないのなら、自分の娘と息子、兄と弟の遺児と可愛がっている子供を連れて出奔しますとえげつない脅しをかけましたから。

 

   唯一無傷だったファーロス家までもが私の考えを支持しますと言ってくれたおかげもありますが。

 

   ああ、本当に国民が異種族を受け入れてくれて良かった。異種族がロストールに来てくれて良かった。ハーフエルフやダルケニス、半魔の子供達がいてくれて良かった。私の大切な子供達が孤独と寒さに潰されずにすむ。

 

   後は、国民が飢えないように自給率の向上。学校や病院も建てないと。娯楽も必要ですね。劇場に闘技場も造りたい。リベルダムに行きたいけど、行けなくなったからには自国で造るしかない。女性が安心して働ける社会にしないと。身分で職業を選ぶのではなく、国民が自分の就きたい仕事に就職できる様にもしたいですね。弱者に優しい社会にしてそうだ点字を普及させよう。この国にはなかったけど、他の国にあるかな?あったらアトレイアちゃんに教えてあげて。あとはファーロス家と生き残った貴族達に私を拝むのを止めさせる事ですね。貴方の事ですよノヴィン?

 

  「ですが神よ、貴方は私の唯一敬愛と忠誠と信仰を捧げる御方。拝むななどとは仰らないで下さい。ところで点字とは何でしょうか?フリント、お前は知っているか?密偵として各国に行っているだろう」

 

  「初めて聞いた単語です」

 

  「ないのかな?点字とは、紙にこういった感じでポチっとします。凹凸ができます。で、一つ一つの形に言葉を当てはめます。あなら・ですね。これを文字板にして覚えて、本や書類の内容にこれをつければ盲目の人にも字がわかります。これと同じで、手話もありますね。手の形やしぐさで言葉を表して耳の聴こえない方や喋れない方の言葉になります。…なかったのは理解しました。二人で私を拝むのを止めて下さい。大臣、至急ですがこれらの普及のために部署を作って下さい。異種族の代表者も交えて…待ってください、冷静になって。国教を《竜教》から《セルモノー教》に変える会議も兼ねますだなんて言わないでっ。私、厨二病治ったからっ。待って!大臣とノヴィンとフリントっ行かないでーっ。戻ってきてっエリスにアトレイアちゃんっ」

 

   「お父様、人世諦めも必要です。ですが、手話と点字は素晴らしいお考えです」

 

   「そうです。アトレイアもエリス母上もあんなに走ってしまう程に喜んでいるではありませんか」

 

   「「(言えない。昔っからスラムで炊き出しをしながら「竜教を止めて俺達の敬愛しているセルモノーお父様・父上を信仰するセルモノー教に入れば肉を多目によそるか二杯目をよそってやる」とタルテュバ・ネメアと一緒に言っていたなんて)素晴らしいお考えですっ。セルモノー教はそのまますぎるからちょっと名前を変えたらいいよな。な、タルテュバ・ネメア(アイコンタクトをし合う)」」

 

   「すばらしいです、おとうさま」

 

   「流石、師匠」

 

   上からケリュネイアちゃん・レムオン君・タルテュバ君とネメア君・エスト君レーグ君だ。相変わらずタルテュバ君とネメア君は仲良しだね。でも改宗に反対はしてくれないんだね。でも絶対に反対されて否決されるよね?いくらなんでもさ。でないと金髪うざエルフの竜教野郎が出てきやがります。一時期執拗に竜王を最初の方の歴史で倒してやっていましたね。翔王に対しても《何様のつもりだ》を選んでましたし。短気なところ直さないとですね。もう私はロストール王国の国王でお父様で師匠なんだから。

 

   あと、《側室は絶対に持ちませんからね》と《王妃はエリスで離婚は絶対にしないですよ》と大臣達と貴族達とゼネテス君に強く言っておかないとですね。

 

 

 

 

 

 





  セルモノーはゼネテスにせんせんふこくした。


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 タルテュバ・リューガ君の昔話。  

  愛された子供は強いんだぜ。



   

 

    毒を、悪意を呑まされて生きてきた。

 

   《父上の敵をうちなさい》《レムオンに負けてはなりません》《ゼネテスに遅れをとってはいけません》《リューガの真の主は貴方です。第三王子から奪われたリューガ家の全てを取り戻すのです》

 

 

    それらの毒と悪意は、期待に添えなかった自分に向けられる様になった。

 

    《また、敵わなかったのですか。失望しました》《剣も魔法も学問でも敵わない。恥ずかしいと思わぬのですか》《王の慈悲により優秀な第三王子をリューガに遣わされたのですね》《家の恥にならぬようお過ごし下さい》

 

    毒に心を殺されなかったのは、俺が亡くなった母上とセルモノーお父様に愛されていたからだ。愛されていることを解っていたから、毒と悪意を鼻で笑うことができた。

 

   物心ついた頃には、セルモノーお父様に抱っこかおんぶをされて旅をしていた。母上も一緒だったから、両親だと思っていた。

 

   後に、実父の死により、身分の低い母上と母上の子である俺の殺害を企てていた親戚から逃げていたと教わった。

 

   王都の、セルモノー・リュー第二王子の自邸(冒険者セルモノーとして購入した邸宅)に、母子ともにかくまってもらった。

 

   そこで、俺は愛されて幼少期を過ごした。

 

   母上は亡くなった父上の事を話してくれた。俺が生まれる事を喜び楽しみにしていた事。第三王子様とは親友であった事。毒を盛られたのではなく、父上が生まれつき体が弱く、生きるための賭けとして強い薬を飲んだ事。体に合わなくて、衰弱していく父上の為に、第三王子様が中和剤を送ってくれていた。それが真実なのに、貴族の噂話しで歪んでしまったと。当主としての激務に耐えれそうにない父上の代わりに、リューガの当主になり、消えてしまった愛する女性を探す事を諦めてくれたと。病を治したら、貴族を止めて平民として親子三人で暮らそうと最期まで希望に生きていたこと。

 

   母上は俺に身分やしきたりに捕らわれないで自由に、幸せに生きてほしいと何度も言ってくれた。愛していると大好きだと告げて抱きしめてくれた。臨終の際にも、最期まで愛している幸せになってと告げてくれた。俺は両親に愛されている。愛してくれた両親の言葉こそが真実であると思えた。

 

   現に、リューガの当主は俺や母上、お父様に会いに何度も屋敷な来てくれていた。君が成人した折りにはリューガ当主の座は返すからねと話して、お父様にタルテュバ君の意思も尊重しなさいねとたしなめられていた。困って笑った顔がお父様に似ていて兄弟だなぁと思った。

 

 

  お父様は王族としての公務の間に、俺に会いにきてくれて、剣と魔法を、学問を教えてくれた。社会を外を知ろうねと言って、スラムに平民街、農村へと連れて行ってくれた。

 

  ネメアとは直ぐに親友になった。ノーブルで畑仕事の手伝いが終わると泥団子になるまで笑いながら遊んだ。俺がノーブルに行くのとネメアがロストールに来るのは半々くらいだった。ネメアもスラムに衝撃を受けていた。そしてロストール貴族の傲慢さに吐いていた。俺はちょっと貴族の自分が恥ずかしかった。ネメアの背をさすりながら、謝った。俺も俺の実の父上も貴族だ。領民に優しい方でいまだって墓に献花が絶えない。俺もお父様も貴族で王族だ。だが民に優しい貴族や王族であろうと努力している頼む嫌わないでくれと。

 

   「嫌わない。魔人の子の私の手を握ってくれた大切な父上と兄弟を嫌うものか。魔王バロルが私の祖父だ。実の娘の母上を殺害したけだもの。あれと先程の貴族が重なった。嫌悪感と憎しみ、拒絶感で吐いてしまった。誤解をさせてしまってすまなかった。父上が憎しみから遠ざけるために私と母上をノーブルでかくまってくれたのにな」

 

   優しいエスリン殿と兄弟のネメアの事を考えると、強くなりたいと思えた。大切な人になった二人の力になりたい。悲しみに寄り添いたいと自然に思えた。

 

  路地裏で吐いていた少年と、泣きながら背をさすっている少年を心配してくれたスラムの住民達の優しさに、二人揃って泣いた。

 

   「だめだ。きっと水に当たっちまったんだ。セルモノーの兄さんを呼んでこよう」

 

   「俺、平民街の酒場を見てくるっ。エリスお嬢様とセルモノー様が料理を教わっていたのを前に見たからいるかもしれないっ」

 

   「ならあたしは自警団の集会所を見てくるよ。稽古にしょっちゅう参加していたっ」

 

   「セルモノー様ならギルドでしょうよ」  

 

 

   当たり前のように出てきた慈父の名前に噴き出してしまった。

 

   「「お父様・父上ったら…。じっとしていられませんか」

 

   「ああ、セルモノー様の自慢の息子さん達でしたか」

 

   「お使い、お迎えかい。お疲れ様。ここは空気がよくないからねぇ。汚いけど、酒場で休んでいなさいよ」

 

   「年齢からして、ネメア君とタルテュバ君かな?」

 

   「私がネメアです」「俺がタルテュバです」

 

   「「父上・お父様がいつもお世話になっております」」

 

 

   二人揃って頭を下げた。この時以降、俺とネメアはスラムに住む人々から兄弟認識で二人でいちセット扱いになった。

 

   お父様に連絡をしてくれたので、お父様が迎えにきてくれた。恩返しをしたいと言ったら、炊き出しをしているからそれを引き継いでくれるかいと言ってくれた。あのスラムをお願いするね。私だけでは追いつかないからとも。

 

   この方は、冒険者で貴族だが、それ以前に王族であられる。王位継承権第二位の王子であられる。

 

   放蕩しまくるロストール貴族や豪奢な暮らしを当たり前の様に享受する王族の中で、唯一人国民に寄り添う方。

 

   いち貴族の子にすぎない俺を救ってくれた。敵国の狂った王から、殺害された皇女を、皇孫を救い育てる。

 

   冒険者として、数多の民を守るために魔物を退治する。

 

 

   手を伸ばせる範囲だけでだよと笑う人のようになろうと、胸に誓った。背伸びをしないで無理をしないで、手を伸ばせる範囲で。それでも、俺は救われた。ネメアもエスリンさんも救われた。お父様に救われたスラムに住む人々は、俺達が困っていると思い手を伸ばして救おうとしてくれた。

 

   人は人を救える。寄り添いあって生きていける。憎むことも妬むこと、そんな事を強いる人間の言葉に揺らぐ事はない。

 

   毒を吐いていた奴等は、お父様を尊ぶファーロスが少しずつ消していった。

 

   「一気にやってしまっても構いませんが、神が悲しまれそうな気がしますからな。いえ、殺害はしてはいませんよ。ちょっと壊して作り直しただけです。フリントが部下が欲しいと言ってましたから再利用して密偵にしました。ウルカーンとエルズに放ったので、リューガには戻りませんよ」とノヴィン氏は語っていた。

 

   この方も大昔は傲慢で愚鈍だったとエリス様が教えてくれた。

 

   セルモノー様の話し相手としてお城に上がったその日に目覚めたと。

 

   第二王子のみに忠誠を誓う、ロストールで三番目に強いと噂をされる騎士。ファーロス家に繁栄をもたらしている有能な能吏。第二王子が信頼している実直な従者。

 

   優しくて気安く付き合ってくれている人が傲慢で愚鈍だったと言われて耳を疑った。

 

 

   でも、スラムに住む人々や平民に聞いてみると、エリス様が言っていた事と同じだった。曰く、セルモノー様の慈悲に触れて改心できた幸運な方だと。本人に向かって、昔は傲慢で愚鈍だったというのは本当ですかと聞いてしまえるネメアは凄いと思った。メンタルが鋼なのかと聞きたくなった。

 

   ノヴィン氏は簡単に、そうですよと照れ臭そうに笑いながら言った。セルモノー様に出会えて、自分の小ささと弱さを知った。セルモノー様の魂に触れて、優しさと強さを知りセルモノー様に終生お仕えすると決めました。セルモノー様の冒険者としての旅のお供をして、世界の美しさと醜さを知りました。人の愛憎に触れて希望と絶望を味わいました。冒険者として世界を自由に生きていけるセルモノー様が、小さなロストールにお戻りになられる理由が、国民への愛や家族への愛と知り、私も優しくなろうと思いました。貴族として騎士として護り導く存在であろうと誓いました。息子、ゼネテスにもそう有れと願っているのですが、どうにもうまくいきませんな。貴族としてもうちょっとまともな着こなしをしないと。

 

   …ゼネテスのあれは、完全にお父様への反抗心ですからね。エリス様に憧れて惚れているから、エリス様が惚れているお父様と、エリス様に惚れていて大切にしているお父様が嫌いと。ファーロスの一族がお父様を敬愛して忠誠を誓っているのも反抗心に火をつけているのでしょう。

 

   俺がネメアとレムオンと遊んでいたりスラムや平民街で働きに行くのを羨ましそうに見ているけど、まざりたいのなら素直に言えよ?まぜてやるからな。だって話し合えば分かり合えるとお父様が言ってらしたからな。現にレムオンとは分かりあえた。分かり合えたからこそ、レムオンは俺とネメアにも秘密を教えてくれた。

 

   《王家の第三王子の子がダルケニスとのハーフというのよりは、リューガ家当主の子がそうであることの方が良い。だからね、私の代わりにリューガ家の当主になって。私はそもそも貴族が嫌いだ。逃げて逃げた末に妻に会えた。連れ戻されて生きてきたけど、子供が生まれたら平民として生きる。捨てる家だからこそ、親友である君と君の子供のレムオン君を救う為に使って欲しい。レムオン君、泣かないで。笑おう。君が私の子供に悪いと思うのなら、私の子供の親友になって。私と君の父上のような親友にね。で、私の子供と笑って幸せに生きるんだよ》父上は幼いレムオンに語っていたと話してくれた。

 

   俺の実の父上も母上も底無しのお人好しだった。で、養父母も似たり寄ったりの人柄だ。だから、まあ、息子の俺もお人好しになろうと思った。

 

   だから、レムオンの血の提供者になった。吸血は絵的にヤバイので、血を抜いて飲ませる形にした。お父様はがっぷりと吸わせていたが、細身でありながらボルダンを片手であしらえるお父様とは同じ土俵入りは無理だ。無理。ちなみにネメアもがっぷりと派だった。俺は採血後に立ち眩みや貧血になる事もあるというのに、こいつは何時だってけろっとしていた。むしろ吸血後のレムオンが俺みたいに立ち眩みや疲労状態になっていた。魔人の血の影響力か?俺はネメアには逆らうまいと思った。

 

 





  タルテュバ=父上>>>ネメア>>>>伯父上です。なんか旅帰りの伯父上の血は最悪でした。


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 賢者の森での出会い。

 

  おっさんというと本人以外から睨まれたから止めた。


 

 

   冒険の旅の締めは賢者の森探索と決めています。オルファウスさんに会いたいですからね。

 

   私が運命に選ばれてはいないからか、中々会えませんが、数をこなせば会えるはずです。

 

   しかし、この森は、私になにか恨みがあるのでしょうかね?今日も捨て子を拾いましたよこんちくしょうめっ。

 

   双子の姉妹とお兄ちゃん…オッケー把握しました。

 

   「おっさん。焼けているけど食ってもいいか?」

 

   「どうぞ、召し上がって下さい。スープは熱いから気を付けて下さいね」

 

   「ありがと。なあ、妹の治療費は必ず払うからちょっとだけ待っていてくれ。エンシャントで稼いでくるから。おっさん、潔癖すぎんだよ」

 

   …稼ぐって、スリとか売春でしょう?ダメですからね。もうね、モンスターに襲われているところを助けて、兄妹の傷を魔法で治療した直後に、お礼を言われて妹二人から離れた場所に連れていかれてモゴモゴされかけたら察しますよ。ついつい、拳骨を頭に落としてお説教を一時間。無理っ。もうディンガル帝国と周辺国は終わっています。近寄りたくないっ。

 

   「あ、治療費はいりませんよ。あなた達三人は私が雇いますから。養子にしたいけど、あなたは妹達を自分で育てて守りたいのでしょう。私の故郷で教育を受けて下さい。あなた達兄妹が大人になるまでは私が保護者になります。大人になったら私の会社の社員になって下さいね。なりたくなければならなくてもかまいませんから」

 

   「…おっさん、あんたは馬鹿か?あんたが損をするだけじゃねーか。なんか、こう、俺達に求める対価はないのかよ?」

 

   「対価?対価ですか?う~ん無いですね。ボランティアの一種ですし。あなた達兄妹の前にも結構拾って育てていますから。大人を拾えば行き先がなかったら雇いますし、迷子の子供だったら親御さんを探しますし、孤児だったら養子にしましたし。エンシャントの魔法の宝箱に挑戦すれば、養育費なんか一瞬で稼げますから心配しないで下さい。申し遅れました。私はセルモノー・リューです。ロストールの冒険者王族です」

 

   「ああ、そっか。おっさんがあの稀代のお人好し王子か。なら、俺と妹達を頼む。俺が汚れ仕事は全部してやるから妹達はキレイなままでいさせてくれ」

 

   「…わかりました。(流石シスコンの鏡ですね。汚い仕事っていいましても貴方に押し付けるのはエスリンさんの補佐官ですよ)」

 

   優秀な三人の兄妹を拾えたのが旅の収穫でした。…うまくお兄ちゃんの消滅を避けられれば良いのですが。

 

   三人の養育はエスリンさんに任せました。ネメア君とタルテュバ君がノーブルの代官の仕事を完璧にこなしてくれているので、エスリンさんには孤児院の院長をしてもらっています。ノーブルの代官でも有能でしたが、孤児院の院長は更に大活躍をしてくれて、適任でした。ありがたい事です。

 

   

 

         ※※※

 

 

    お人好しな親父に拾われてから八年が過ぎた。

 

   …育ての親のお袋も拾ってくれた親父も、見掛けが変わらないのはなぜだ?

 

   同じ孤児院で育った兄弟姉妹も、俺の大切な妹達も親父の子供達も年をとったというのにっ。

 

   「兄さん、どうしたの?」

 

   「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

   「いや、そのな、セルモノー様とエスリン様とエリス様の見掛けが変わらないなと思ってな」

 

   「「皆が、いつまでもエスリンお母様やセルモノーお父様とエリスお母様に元気で若くいてほしいとお祈りしたり願っているからかなぁ?神様が聞き届けてくれたのよ」」

 

   「…そっか。うん、きっとそうだな」

 

   神様か。いないと思うが、俺の大切な妹達がいるというのならいるんだろうな。でもって、女の神様ならお袋達の顔をしていて、男の神様なら親父に似た顔をしているのだろう。

 

   成人の日にお祝い金とお祝いの品が贈られて、更にはお袋の孤児院の副院長の任命証書が贈られて力が抜けた。ロストールに行って汚れ仕事はどうしたと聞いたらキョトンとした顔をしやがった。

 

   執務室にいたタルテュバとエストが西地区のどぶさらいを手伝ってくれるのか?助かる。早速行こうと嬉しそうにいったから、断れなかった。汚れ仕事は汚れ仕事でもな、こういった民衆から感謝される仕事じゃないんだよ。三人で仕事後に飲んだ麦酒は美味しかったが。

 

   「なあ、タルテュバにエスト。親父に黙ってやっておいた方が良い仕事はなんかないか?ディンガル帝国系とかでさ」

 

    思いきって聞いてみた。

 

   「ツェラシェル兄さん、悩み事があるのですね。相談にのりますよ」

 

   「お父様に黙ってなんて無理だろう。俺とネメア、レムオンとエリスお母様が内緒で考えていた計画もばれたぞ。酒場でお前が発言した直後に数人が王宮とノーブルとギルドに向かって走って行ったしな。さて、お前に連座をしてお説教を受ける前に食べておくか。フェルムさん、オムライスとコーンスープと白身魚のフライを下さい。エストとツェラシェルはどうする?」

 

   「フェルムさん、僕もタルテュバ兄さんと同じものをお願いします」

 

   「かしこまりました~」

 

   「…ごめんなさい。お嬢さん、俺も同じ物を下さい」

 

   「はい、わかりました。あの、このチーズの盛り合わせはお店からの差し入れです。陛下のお説教頑張って下さいっ。拳骨がないことを神様にお祈りしてますから」

 

   「「「…あ、ありがとうございますっ」」」

 

   「ここの会計は俺が払う。正直悪かった!」

 

   「み、みずくさいぜ兄弟っ。俺達はお父様に拾われて育った者同士だろうっ。神様っ、拳骨がありませんようにっ」

 

   「そ、そうですよっ。お父様に育ててもらった者同士でしょうっ。拳骨だけは嫌だっ。神様、慈悲をっ」

 

   「神様っ。二人は見逃して下さいっ。悪いのは俺ですっ」

 

    三人で震えながら神様に祈った。

 

   あのお人好しな親父は細身の優男だが、戦闘能力が化け物だし魔法も化け物だ。ぶっちゃけ、ガチで親父は人類卒業していると思う。性格がお人好しであるから辛うじて人類のはしっこに踏みとどまっているだけで、性能は人類卒業で魔人に近いと思っている。でもって、大抵の事は笑って許すが、俺達子供が危険な事をすると怒る。マジ切れする。すっごく怖いし拳骨が痛い。叱られちゃったね、テヘッ。で済むのはネメアとレムオンだけだ。ちなみに娘とエリスお母様には鉄拳制裁はないので女性陣が羨ましい。

 

   結論から言うと、三人揃ってお説教された。拳骨がなくて良かった。ディンガル帝国にも他国にも、子供のうちは関わってはいけませんと念をおされた。

 

   俺とタルテュバ、ネメアとレムオンはもう大人の仲間入りをしたのだが。しかし、これを言うと、鉄拳制裁待ったなしになりそうなので黙っておいた。

 

   汚れ仕事をさせる気が、これっぽっちもないようなので、俺が親父と二人のお袋の老後、介護をしてやろうと決めた。 





   いやいや、そこは子供達全員でしましょうよ。by兄弟姉妹全員。


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 ロストール王国新住民のお話し。



  住めば都でした。




 

 

   ロストール王国に希望を見いだし、旅立った同胞は帰ってこなかった。

 

   ドワーフの場合。

 

   居住地をもらった。いやはや驚いたわい。集団移民としてロストールに行くぞとセルモノー坊主に伝えておいたが、まさか儂らドワーフの住む村を用意してくれてるとはな。もっと驚いたのは、各家庭に専用の鍛冶場を造ってくれた事よ。町の中心部にはこりゃまた大きな炉と鍛冶場があったらなぁ。ドワーフ王国に負けず劣らずの炉と鍛冶場。これで打たなきゃドワーフではないわ。隣村は人間の村でロストール王国随一の酒蔵ときたら、セルモノー坊主に乾杯っ。そういえば、復興後に帰るつもりでいた奴等は、帰らずに逆に家族を呼んで、今は一緒に住んでおるな。良質の鉱山が発見されたし、セルモノー坊主が貴重なキマイラの牙とかを無料でくれるからな。誰だって最高の環境で暮らしていたいだろう。

 

   ボルダンの場合。

 

 

   ボルダンの英雄がいる地だ。そして不敗の王が治める王国だ。闘技場に数多の道場に鍛練場所がある。望むものは全てある。与えられた村の建物が全て大きなのも助かる。酒と美味い飯、歌や劇、強者と強者の戦い。地上の幸せがロストールにあるのに、なぜ他国にいく必要がある?ロストール闘技場で、英雄レーグに勝てたらセルモノー王に挑む権利が与えられるのだぞ?俺達ボルダンにとってこれ以上の栄誉はないぞ。

 

   リルビーの場合①。

 

   セルモノーお兄ちゃんはね、あたし達リルビーからしたら、詩の題材として最高なのっ。だって、王子様なのに、異種族に優しいのよっ。王子様なのに、国王様になっても変わらずに優しくて冒険者しちゃっているし、異種族の子供を子供にするし。エスリン姫と恋仲になるかと期待していた仲間はがっかりしていたけど、エリス様に一途で大切にしているから穏やかな愛の歌のネタがつきないわ。国民や異種族から愛される人間の王様は凄く貴重だから、ロストールに留まっているの。

 

   リルビーの場合②。

 

   セルモノー様にはね、あたしと家族の命を救われたからねぇ。だからかね、あの尊き御方があの清冽な魂を魔王としてしまっても、お側にお仕えして歌を捧げようと思っているんだよ。…最後列のリルビーの一家が、グリフォンに襲われている状況なら、皆が逃げ出すだろう。あたしだって違う奴等が襲われていたなら逃げ出した。だけどね、あの方は違った。たった一人で戻ってきてくれた。戻ってきて、グリフォンを倒してしまわれた。たった一人でだよ。グリフォンを倒してしまえるくせに、衝撃で起きてしまった背負ったネメア様の泣き声に情けなくもあたしに「…ご婦人、いないないばぁで泣き止まぬ場合の対処方法を教えて下さい」と頭を下げられたんだ。むしろ、こんな御方が闇落ちした瞬間に立ち会ってみたいもんだよ。まあ、あたし達リルビーはもともと流浪の民だ。エンシャントに住んでいた時の知り合いも気になんかしていないよ。

 

   リルビーの場合③。

 

  大きな劇場と闘技場があるんだよっ。英雄潭が生まれる場所とぼくたちの活躍できる場所があるんだよっ。ここは差別が少ない尊い場所だ。ダルケニスとダークエルフの店主が深夜の八百屋で値切りあっているのを見たらね、創作意欲が掻き立てられたよ。エンシャントでは人気があった先生もね、こっちに来てからは色んな種族に話を聞いて題材にしているよ。うん、もう帰らないだろうね。

 

   ダルケニスの場合①。

 

  たまたま偶然だったのだ。即位式で沸き立つロストールにいたのも。あの頭のおかしい勅令を聞いたのも。直ぐにでも、ロストールから離れる気でいた。だが、レムオン王子の事が気になった。自分達ダルケニスと人間の間に産まれた子供。素性を全国民に知られてしまったのだ。他国からの使者にもダルケニスの血を引く王族だと知られた同族。彼が不幸になるのは見えていた。優しい王も自分の子が生まれれば変わってしまう。裏切られてしまったら、自分がレムオン王子を王宮から連れ出そうと思っていた。

 

  杞憂だったがな。魔人と人間の子であるネメア王子と人間とエルフの子であるケリュネィア王女が笑顔で暮らしている。レムオン王子も常に笑顔だ。セルモノー王にいたっては《国民投票で次代国王を決めたい。むしろ王政辞めたい》と言い国民からあきれられている。流石、キングオブお人好し。

 

   ダルケニス(ハーフ)の場合②。

 

  恥ずかしながら、僕は死に場所を探していました。生きる事に疲れていたから。最後に受け入れてもらえる夢を見たかった。どうせ捕まって殺されるとわかっていても、暖かな食べ物を食べてから死にたかった。

 

  あっけにとられましたね。住民登録をされて、立派な貴族の館に連れていかれて、たくさんの仲間にあった。ダルケニスに自分と同じダルケニスと人間のハーフ。仲間がたくさんいた事に驚いた。村を与えられて住む家を与えられて、顔をくしゃくしゃにして泣いた。もう、怯えながら隠れながら生きなくていいんだとわかり嬉しくて泣いた。生き別れた母親にも会えた。

 

  普通の人間の様に仕事にありつけた。自分達が耕し日々の糧を得れる様かに土地をもらえた。こんなことはなかった事だ。迫害されない土地に国に皆が喜んでいた。渡された配給カードに首をかしげた。先にロストールに移住していた仲間が教えてくれた。

 

  「このカードをもってロストールの配給所に行くとな、吸血をさせてくれるんだ。ただしくは吸血か血を飲ませてもらえるだけどな。あ、セルモノー様の血は不味いからやめとおけ。ネメア王子も不味いから注意しろ。ボルダンやドワーフもいるが酒を飲んでないかを聞いてから吸血させてもらえよ。あいつら、配給所から出されるお礼の酒目当てで来ているからよ」

 

  「劇場で役者として働くのもおすすめだよ。なんか人間達からしたら私達は美しいみたいでね。ファンが自分で吸血会を開いてくれるんだよ。吸血する事で、新しい血がつくられるからってセルモノー国王が推奨しているよ。あの御仁は、なんか私達とは違う視点をお持ちのようだよ」

 

  「…変わらないでいてほしいですね。母さんと会えたから、この優しい場所で生きていたい」

 

  「そうだね。あの優しい王が優しいまま若いままで王であってほしいね」

 

  配給所に行ったら、同胞がたくさん並んでいた。8列あってどれも大勢並んでいてちょっと困った。

 

  「あ、こっち空いてますよ~。なぜか人気ないですけど、私と息子は健康ですからっ」

 

  「どうぞ。父上も私も健康には自信があります!吸血して下さいっ」

 

  列は10列だった。一斉に顔を背けて聞こえていない風を装う同胞達に察すれば良かった。

 

  のこのこと向かっていった過去の僕をぶん殴りたい。

 

  父親の血を吸血してからの記憶がとんだ。

 

  吸血後にぐんにゃりとして動かなくなったらしい。慣れている同胞達に背負われて、僕はダルケニスの《大使館》に運ばれた。

 

  《大使館》は、それぞれの種族に与えられた館だ。そこで王都やほかの村でトラブルにあった場合、種族の代表に相談する場所だ。代表は対処してくれるが、対処できない場合は《村》の長と《国》に連絡をして対処をする。

 

   …なんか、僕に沈痛な顔で頭を下げている人が考えついたシステムだとは思えなかった。

 

   国王が簡単に頭を下げていいのかなと思った。でも、嬉しかった。口直しにどうぞと言われて吸血したネメア王子の血も僕を意識混濁へと追いやった。長と大使からお説教された。だけど、僕みたいにネメア王子と国王様の血を吸血したダルケニスはまた吸血しにいくらしい。気持ちはわかる。だってなんか悔しい。次こそは具合悪くならないぞと決めて挑んでいる。敗退記録更新中だ。

 

  …レムオン王子にお会いして、「レムオン王子、王子はネメア王子と国王様の血を頂いているのですか?」と聞いてみた。

 

  「いえ。タルテュバやアトレイア、ケリュネィアとエリスお母様からもらっています。父上とネメア、ゼネテスは善意の塊ですが、列には並ばない方が良いですよ。身内が言うのも何ですが、あの三人はダルケニスへの吸血行為に対して実に協力的です。健康に気を付けすぎて、配給所に行く日の前夜から大蒜に生姜に葱にトマトに韮に人参と玉葱とごぼうとミルクをミックスジュースにして飲みホルモン焼きとステーキを食べているのです。昔、旅帰りでもやってから私に血を飲ませてくれていたと話してくれました。…三人の血はダルケニスの意識を刈ります。長年の吸血で耐性のついた私が貧血や立ち眩みをおこすのです。あれはコップにもらってちびりちびりと嘗めるべきものです。ドワーフやボルダンから貰う事をおすすめします」

 

  返ってきた返答に、レムオン王子の悲哀を感じた。

 

 

 

 

   ハーフエルフの場合。

 

  ああ、ロストール王に感謝をしてもしたりない。何処にも居場所を持たなかった私達に帰れる場所を与えてくれた。

 

  私達を受け入れてくれた優しい人間に、同じ追われる立場の種族達がいとおしい。ちょっと、ちょっとだけドワーフが怖いけどっ。あなた方を毛嫌いしているのは私達の片親であって私達ではありませんからっ。ダークエルフやエルフはドワーフに近づかない方が良いですよと忠告してくるけど、私達はできれば仲良くしたいです。怖いけどっ。だけど、ロストールが私達を受け入れてくれた事を考えると、異種族同士手をとりあうべきだと思う。 

 

   ロストールを信じて集まったのは、私達子供だけだった。住む村を用意してくれたけど大人がいなかったから、私達ハーフエルフは大人になるまではノーブル領で暮らす事になった。魔人と人間のハーフも一緒だ。ケリュネィア王女様とネメア王子様が私達の代表になった。魔人のハーフの子供達とは直ぐに仲良しになった。だって、私達はなにもかもが同じだった。親から捨てられた悲しみと憎しみは、拾ってくれたセルモノー様への思慕へと変わった。私達の中で、父親はセルモノー様、母親はエスリン様とエリス様になった。優しい二人のお母様にどうしようもないくらいに優しくお人好しなお父様。暖かさを知れた、優しさを与えられた。帰りたかった場所に帰れた。今が泣きたいくらいに幸せ。

 

  同じ追われる存在のダルケニス達が、お父様とネメア王子様の血が不味いと言っていた。ネメア王子様は魔人のハーフだからかなと思ったけど、何でお父様もなのかな?魔人とのハーフの子供達が「ウルグ様は破壊神だからなぁ。お父様、対子供用のハニーフェイスをつけましょう」と言っていた。えっ?お父様ってウルグ様を宿せているの?何で?お父様人間よね?神様みたいに慈悲深いけど人間でしょ?

 

 

 

 

 

 

   誰も帰ってこない、だが、普通に幸せになれているので心配無用なわけだが、疑心暗鬼になる輩は存在するのである。

 

   ちなみに、エンシャントではロストールに移民すると王都で毎月血を抜かれると噂されているし、リベルダムではロストールでは売血商売が流行りだしたと噂されている。この世の中は真実と虚構が双子みたいにワンセットである。

 

   因みにダルケニス間では、タルテュバ王子とアトレイア王女の血が大人気である。

 

 






   Q なぜだ?そんなに俺・私達の血は不味いのか?

   A 不味いです。


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 セルモノー・リュー第二王子の昔話。


  強くてニューゲームでも心は折れました。






 

 

   ジルオールの世界に、セルモノー・リューとして生まれ変わった。

 

 

   最初の初陣で心が折れました。

 

   だってね、うちの軍にいた兵士さんが大勢捕虜になって、中には私によく仕えてくれた従者や年若い小姓達がいて、私の身柄と交換だって言われたら交換に応じますよねっ。そろそろ元の世界の人間に転生できる準備ができたのかなって思ったし。

 

   ええ、私はまあ死んでも約束がありましたから、そもそも一度死んでいますから元の世界の人間に転生できなくても最期に素敵な夢を見れて良かったなくらいでした。勿論、止められましたけどね。でも、第二王子だし王位継承者はまだ二人もいる。私は王にはならない人間ですからと言ってお目付け役の将軍を説得しました。彼の一人息子は捕虜として捕らわれていましたから。

 

   …この世界では、人の命が軽すぎでした。

 

   城門に単身近づいた私に向けられて、たくさんの物が降り注ぎました。

 

   城門からそれらを投げ捨てた奴等は笑っていました。

 

   「ロストールの腰抜け王子。お前を慕う兵士が役目を果たそうとせずに自害しやがったから首をはねてやったぞ」

 

   「武器も持たずにノコノコと来やがって次は魔法をくれてや」

 

   テレポートで敵の城の上空に移動して、ファイアボールとサンダーボルトとフレイムを詠唱しまくりました。私の甘さが私の国の守るべき存在を死なせてしまった。蘇生魔法を唱えるにはゴミが邪魔だ。敵認識をしたゴミを魔法で一掃しました。

 

   この世界では、人の命が軽すぎる。なら、私の大切な存在は護る。家族に友人に国民、この三つは何を犠牲にしても護る。私の日本人として常識や良心は捨てる。でないと大切な存在を護れない。

 

   地上に降りて、内側から門を開けた。

 

   首を抱き締めて泣いている自軍の兵士と将軍に告げた。

 

   「今なら間に合う。身体を見つけて来い。敵兵は殺したが、まだ残党がいるかも知れないから気を付けろ。…残党は必ず殺せ。これは戦争だ、全ての責任は父上と私が背負うものである。いけ、私の勇敢なる兵士達よ」

 

   兵士達は私に一礼すると、城内へと駆け出した。

 

   次々に運び出されてくる身体。首と繋げて蘇生魔法と回復魔法をかけた。

 

   …ええ、私情に流されてノヴィンを一番最初にしたのが悪かったと今も後悔しております。でも、彼は良いやつなんです。ゲームではかなり嫌なやつですが、実際の彼は生真面目すぎるけど努力家なんですっ。彼が亡くなったままだとゼネテスが産まれてこないのですっ。困りますっ。私はエリスやノヴィン以外にもジルオールのキャラクターに会いたいっ。エリスが悲しむのは嫌なんですっ。ゲームではエリスにがっかりな兄扱いですが、今は仲良し兄妹っ。将来的には私の義兄っ。

 

   でも、蘇生魔法を使えるって、自分みんなに内緒にしていたんや。回復魔法を使えるから君の従兄弟が具合悪くなった時に治せたんだよ。で済んでいたのに。

 

   唯でさえ何故か私を敬愛してくれて忠誠を誓ってくれていたのに、パワーアップは当たり前ですよね。

 

   「…我が忠誠を捧げるはセルモノー様のみってセルモノー様っ?」

 

   蘇生して、第一声がそれな時点で察しますよね。

 

   「…ノヴィン、おかえりなさい。お前は私が一番に信頼している従者なのだから、私の側を離れて勝手に黄泉の王の謁見に向かうのは駄目だよ。さ、父上に殴られて来なさい。殴られたら、私の為に飲み物を用意して下さいね」

 

   「はいっ。あ、でも私は自害して死んだはずで…《父親である将軍から頭に拳骨を落とされた》「愚息がっ!セルモノー様に感謝をせんかっ。祈れっ我らの神にっ。セルモノー様、ファーロスはあなた様に永遠の忠誠を誓い信仰し続けると誓約いたします」「父上、私の前に捕虜になった者達が首を斬られて」「…取り引きをする気は更々なかったか。見ろ、ノヴィン。セルモノー様の慈悲と奇跡だ」「あ、あああっ。か、神よっ…」

 

   ファーロス家の父子のやり取りを最後まで聞いていると、完治したはずの厨二病が再発しちゃうからね。心を無にして蘇生&回復魔法をかけ続けました。兵士と将官全員が私を拝んでいるわけがありませんよっ。

 

 

          ※※※

 

 

 

 

 

   ロストール王国第二王子、セルモノー・リューの初陣は近隣諸国を震え上がらせた。

 

   味方の死傷者ゼロ。敵方、全滅。戦場における死体は確認できたが、城塞においての死体は消滅。セルモノー・リュー第二王子の攻撃魔法の威力は天災そのものである。

 

 

   …ええ、初陣で心が二つの意味で折れましたから、次の戦では魔法を禁止しました。

 

  STR255×500の人間が、ダフルブレードでゲイルラッシュを敵陣に向けて放ったらどうなるのかななんて…後は解るね?敵方わんさかいたのに、静かな原っぱになりました。怖かった。怖かったんや。

 

  苦肉の策で、《仏の顔も三度まで》方針をとることにしました。要は、敵陣に向けて降伏勧告を三回するのです。勧告して降伏したら攻撃をしない。降伏しなかったら攻撃をすると。

 

   攻撃をするはめになったら、徹底的に潰しました。禍根を残すの良くない。そうしないと生かした人間の子孫に滅ぼされますからね。日本人はそういう歴史を繰り返してきましたから。やらないとやられる。護りたいものがあるのなら、躊躇ってはいけません。報いがくることに怯えてはいますけど、なんかこなさそう。そもそも降伏したら助けるんだから、降伏しないほうが悪いんですよ。    

 

 

   ロストール王国に喧嘩をふっかけてくる小国や豪族が減りました。INTとMINも255×500状態ですから、前世では平凡だった私も天才ですからねっ。えげつない戦略や戦術が思い浮かぶ思い浮かぶ。軍隊の指揮能力もアップしていましたからね。ロストール王国では救国の英雄王子で他国からは悪魔や魔王扱いですよ。疲れきった顔を心配してくれた両親と兄弟が、冒険に行って来ても良いよと言ってくれたので、旅に出ました。

 

   こっそりと城を抜け出したのですが、エリスとノヴィンとフリントが素敵な笑顔で待ち構えていました。

 

   豪商の若様と御付きの侍女と従者二人の設定で旅に出ました。

 

 






  最愛の神の御供ができて楽しかったです。エリス・ノヴィン・フリント。


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 セルモノー・リュー第二王子の昔話。2

 
 く~る、きっと、く~る。(きたら負けますが。)



 

 

  セルモノー・リューになって初陣をし、いくつかの戦争をした頃に、イベントが発生してしまいました。

 

   ええ。賢明なる読者諸氏は思い浮かびますよね。

 

   うふふ。神様死神閻魔様ったら、イベントアイテムも×500は嬉しかったです。嬉しかったけど、闇の神器まではいらなかったです。…いらなかったんや。

 

   寝苦しくて、従者のノヴィンと散歩に出ました。ツェラシェル曰くのデカブツを倒して、ノヴィンに祈られました。ここまでは、いつもの日常的な出来事でした。デカブツでないと暗殺者ですが。その日は大物が釣れました。

 

   ぶっちゃけ思いました。ウルグを既に宿せているからお前は呼んでないと。

 

   戦いになりましたが、一ターンで倒せました。トリプル取れてましたし、負ける要素がありませんでした。

 

   なんか、余の家臣を返せなんて言っていましたが、永く生きてきてとうとう痴呆にでもなってしまったのでしょうかね?そもそもそれが遺言って何ですか?恐怖を伝えてやったわとか災いを残したとか言いませんか?

 

   家臣か。円卓の騎士の事ですかね?ウルグ、倒しておいてなんですが、謝っておきます。ごめんなさい。私、バルザーとマゴスは嫌いなんで、ぐーで鼻の下をぶん殴ります。バルザーはその後に全力で腹パンもします。神様に完璧に創られた存在というのなら、妻子を守りなさいよっ。ていうか、ウルグ貴方もですよ。神様なんだから、システィーナさんを護りなさいよ。なんで一番大切な存在から離れてしまうかな。当時の人間も、システィーナさんは女性なのだから大切にしないと。なんか、この世界人の命が軽すぎだけど、男尊女卑も酷すぎます。父上と兄上に女性を大切にするべきですと進言しましょう。

 

   「せ、セルモノー様っ。先程のセルモノー様はいったい?」

 

   ああ、ずっとウルグを宿していましたから、ノヴィンからしたらあれは私自身みたいなのですね。姿も一緒でしたし、さて、言い訳をしないとですね。あ、ステータスがまた爆上げ…ああ、なんか色んな体験していない事や記憶が加算されましたね。完全に同化しても狂わないのは、私がゲームをしていたからですね。神様死神閻魔様からの加護もあるからでしょうね。ありがとうございます。

 

   「ノヴィン、あれは私の過去です。人間を滅ぼしたい、亡くしてしまった恋人を甦えさせたいと願う私と人間を魔の軍勢から救いたい私で分かれたのです。前世で私は神様、神ウルグだったと言ったら信じてくれますか?変わらずに私に仕えてくれますか?」

 

   …相手が普通の小姓や従者だったのならともかく、今日の従者は狂信者ノヴィン・ファーロス君でした。人選と言葉を失敗しました。失敗やったんや。

 

   「神っ。セルモノー様が(やっぱり)ウルグ様っ。この身も魂も、ファーロス家も全てセルモノー様に捧げることをお許し下さいませっ。今はまだ何の力もありませんが、必ずやセルモノー様の為の神殿をこのロストール王国に建立いたします!そうだ、今すぐにも陛下にセルモノー様に王位を禅譲するように進言(+.+)(-.-)zzZZ」

 

   ノヴィンを魔法で眠らせてファーロス家へと送りました。噴水を見ながらロストールの将来について語り合っていた。夜店で買ったホットワインをついつい飲みすぎてしまった。私のせいだからノヴィンを叱らないで下さいと言いました。ノヴィンがきれいに忘れて下さいますように。…結果的には、ファーロス家の総意になりましたが。国教を竜教からセルモノー教に改宗して神殿を建立する事を。なんてこったいっ。

 

   勿論、止めましたよ。全力で。だって、厨二病の極みじゃないですかっ。なんかファーロス家って私の事が大好きすぎて怖いっ。…もしかして、ファーロス家とエリスからの愛と忠誠が重すぎて、ゲームのセルモノーは恐怖心からファーロス家に傀儡にされている。エリスと愛のない結婚をしてしまったと思い込んでしまったとか…は、ははっ。無いよねっ。それだと、《セルモノー様から死を賜れた!財産をついに受け取って頂けたっ!》になってしまう……ゆ、癒着や忖度や汚職や談合と言われても、私はノヴィンとエリスとファーロス家を大切にしましょうっ!私が犠牲になってファーロスが幸せになるのならそっちが良いっ。

 

   「しかし、セルモノー殿下は謙虚ですな。爺としてはセルモノー殿下が孫を蘇生して下さった時点で竜教信者と寄進をやめましたぞ。だいたい、自害をしセルモノー様に蘇らせてもらった孫とセルモノー様を慕う将兵は全員竜教を辞めておりますのに」

 

   「は、初耳です。爺、あの…私が蘇生した将兵達だけですよね?や、止めてくださいっ。そのどや顔っ」

 

   「初陣従事者全てとその家族恋人は少なくとも信仰の対象をセルモノー様へとしておりますよ。勿論、ファーロスの信仰と忠誠もセルモノー様へと捧げておりますよ(晴れやかな笑顔)」

 

 

   なに言ってんだこいつらと言いたいが、この人達はマジで真剣に心の底から言っているのです。そう、そして厄介な事に私自身がファーロスを大切にしたいと思っているのです。ファーロスの人々が愛しいのです。言葉があれですが、ファーロスは大貴族に見える忠犬ですからね。

 

   「爺、父上と兄上が困るから改宗の件は秘密ですよ?」

 

   「わかっておりますとも。ロストールの竜教の大神官は既に捕らえて、洗脳と調教を済ませて毎日セルモノー様だけに祈りを捧げていないと不安感から自殺をしたくなるくらいにセルモノー様だけに夢中になっておりますからな。セルモノー様、邪魔な存在がありましたら、隠さないで爺にこっそりと教えて下さいませ。単に殺すよりもこちらの下僕にするのがセルモノー様の利益になりますから。爺はセルモノー様から手作りのクッキーを下賜されましたら光栄でございますれば」

 

   「め、目敏いですね。スラムに暮らす子供達に食べさせてあげたくて作った試作品の余りですけど、ファーロス家の皆さんでどうぞ(糞ナーシェスじゃないと祈りたいっ。神様死神閻魔様っ、ナーシェスがロストールの竜教の大神官ではありませんようにっ)」

 

   …余りもののクッキーに嬉しそうに笑う老獪な貴族。今日も良い天気だな(激しい現実逃避中)

 

 

 

 

 




 

 …ナーシェスからの報告がない。


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