にじさんじ闇落ちファンタジーが読みたかった。 (ずみさん)
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第1話 はじまり

孤独な英雄がすこ。


エクス・アルビオは勇者に非ず。

 

それは彼の英雄が自ら周囲によく言い回っている事だ。

 

彼がかつて何という地で、どの様な偉業を成し遂げたが故に英雄と呼ばれるに至ったのか。

 

何故、勇者と混同されることを厭うのか。

 

ずぼらな彼にしては異様に手入れされた彼の鎧と、そして剣に染み付いて取れない鉄錆の匂いだけがその理由を知っていた。

 

 

 

 

ヘルエスタ皇国の崩壊、その一報は何の前触れも無く世界に響き渡った。

 

ヘルエスタ第3皇女、リゼ・ヘルエスタは、ある日突如として自らに付き従う少数の親衛隊と、おぞましい魔物達を引き連れて彼女は王宮を急襲、制圧した。

 

皇帝の一族は第三皇子を除く全てが囚われの身となり、その第三皇子の行方も不明となる。

 

統制を失った皇軍は何処からともなく現れた異形の軍勢に瞬く間に飲み込まれ壊滅。

 

他国の間諜達が命からがら騒乱を生き伸び国境を抜け、報告を終える頃にはリゼ・ヘルエスタは領土の全てを掌握し『ヘルエスタ帝国』の建国を宣言していた。

 

 

 

 

 

エクス・アルビオ殿へ

 

あなたもご存知だろうが皇女のリゼが乱心した。

 

現在、ヘルエスタはそのほぼ全域がリゼ皇女操る魔物達の監視下にあり恐怖政治が敷かれている。

 

かつてヘルエスタ王宮錬金術師であった私、アンジュ・カトリーナは皇軍の生き残り達を纏め辺境にて反乱軍を結成し抵抗することにした。

 

だが長らく平穏だったヘルエスタの民と軍では魔物の軍勢に対抗することが精一杯、長くは保たないだろう。

 

だが私は他国に助けを求めることは出来ない。ただの錬金術師であった私に他国と交渉するコネもノウハウも材料も無く、頼みの戌亥も行方不明。

 

国が魔物達で満たされ、誰も手出しが出来ない状況で、かつ利権が絡まない異界の英雄である貴方にこの依頼を送る。

 

1つはクーデターの原因を調査と排除、もう1つは行方不明になった戌亥と第3皇子の捜索だ。

 

貴方はこの世界に来てから元の世界に戻る術を探していた、リゼが魔物達をこちらに呼び出した以上、このクーデターは何か異界との繋がりを持っている筈。何か貴方にとっても重要な情報が手に入るかもしれない。

 

もう1つの依頼はあくまでそのついでで構わない。

 

だが第3皇子はリゼが最も気にかけていた皇族であり、戌亥はリゼを気にかけていた。

 

根拠は無いが彼らは今回の件を解決するために重要な要素であるような気がするんだ。

 

これはヘルエスタ皇国からの依頼だと思ってくれて構わない、よろしく頼む。

 

 

 

 

「以上が、昨日届いたヘルエスタからの暗号通信の解読結果だよ…」

 

車中にて電話越しに聞く黛の声に、エクスは若干の疲れを感じた。

 

「くっそ面倒くさい話じゃないですか。というかなんで俺に?僕、ヘルエスタ関係者とほぼ関わり無かった筈ですよ。」

 

「………あくまで予想だけど、理由はエクスが人間であること。魔物達に制圧されてるヘルエスタに人じゃない誰かが行ったら敵味方の区別をレジスタンス側は付けられない、合流が難しい上に同士討ちの危険もある。そしてもう1つ…」

 

黛は机の上に置いてあるにじさんじの名詞をチラリと見た。

 

「僕以外は身内の周りからに動けないから、ですか?尊さんは詩子さんを、ドーラさまや葛葉さんは本間ひまわりさんを…みたいに。」

 

「そう、その点エクスは身軽だ。アルスは魔法使い、レヴィさんも子供とは言え亜人、自衛する力はある…で?やるよね?」

 

「だからめんどくさいって言ってるじゃないですか…戌亥さんがどこからともなく現れて解決して終わりとかありませんかね?」

 

「アンジュさんの危機に戌亥さんは未だ現れないことがその答えだよ。卯月財閥と加賀美インダストリアルの支援はもう取り付けてある。以前、卯月財閥がヘルエスタの一部を植民地化した時に作ったヘリポート付きの別荘、及びそこに置いてあるものを自由に使って良いらしいから、追加の支援物資もそこに送る予定。」

 

エクスは手元にあるヘルエスタの地形図を確認する。ヘルエスタ北部の山中、あからさまに交通の便が悪そうな場所に印が付けられていた。

 

「ヘルエスタの地形図と偽造パスポートはもうそっちの手元にあるよね?パスポートの方は状況的に、多分使う機会は無いけど一応渡しておいた。」

 

エクスはパスポートの中身を検めた、一通り見た限り不自然な点は無い。日本生まれのイギリス人と日本人のハーフ…どこかで聞いたことがある出自になっている。

 

「至れり尽せりですね?現地までの運転手さん以外、人を一人もやってくれない事以外は。」

 

「加賀美社長はエクスを一人で行かせる事を嫌がってた、けど俺が無理を言った。つまり責任は俺にあるから文句があるなら俺のマシュマロにでも送っといて。」

 

「現地に生身の人間が来られても邪魔だったので結構です、帰ったら焼肉奢ってくださいね。…じゃあ、空港に着いたんで切ります。」

 

 

 

 




これが呼び水になって闇エクス小説もっと増えればええな…


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