光の巨人のいない世界で怪獣娘達との話 (クォーターシェル)
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1話 江戸川家、日曜日の朝

割とオリジナルの要素多くなるかもしれません。


――日曜日、自分こと『江戸川(えどがわ)皐月(さつき)』は雨音で目を覚ました。

昨日の天気予報の通り、今朝から結構な量の雨が降り続いているらしい。この雨は一日中降る見通しらしいので、せっかくの休日にこの天気を残念がる人も多いだろう。

 

雨音に混じってピポポ…と電子音のようなものが聞こえてきた。自分にとってはすっかり慣れてしまったこの音のする方へ視線を向けた。

音の出どころ――自分のベッドの傍らには黒髪の少女が立っている。彼女はこの家の家族の一員であるのだが、自分は彼女が寝ている姿を見た事が無く、どれだけ早起きしても彼女は自分の寝床の側にいるのだ。

まだ眠い目をこすりながら自分は彼女に挨拶する。

 

「おはよう。ゼットン」

 

「…おはようございます。サツキ」

 

 

 

 

 

 

洗面所で顔を洗った後に黒髪少女―ゼットン―と共にリビングへ向かった。既に朝食は出来ているらしく、リビングの方から美味しそうな匂いがしてくる。

リビングに入ると赤髪の女性が朝食を載せたちゃぶ台に座っていた。こちらに気づいた女性はこちらに声を掛けてくる。

 

「おはよう。サツキ、ゼットン。朝ごはんはもう出来ているよ」

 

「おはよう。母さん、またお茶漬けなんだ」

 

「ああ、眼兎龍茶漬けだよ。今回は新茶を使っているから冷めないうちに食べてね」

 

我が家の朝食には結構な頻度でお茶漬けがでる。それも一般には出回っておらず、どこからか仕入れてくるか分からない『眼兎龍茶』というお茶を使っている。一度どこから手に入れて来ているのか聞いたことがあるのだが結局はぐらかされてしまった怪しいものなのであるのだが美味いのは確かだった。

しかしいくら美味くてもこう何度も出されるとありがたみが薄くなるというか、飽きる。

一応茶の時期などを変えているらしいが、どうにも自分の味覚では判別できない。

そんな生意気なことを考えながらお茶漬けをすすっていると、リビングにスーツを着た黒髪の女性が姿を現す。

 

その女性もこちらに「おはよう」と挨拶してきた。

 

「父さん、今朝は起きるのが早いね」

 

「今日は仕事疲れが上手くとれたんだよ。そういうサツキは何時も早いな、やはり子供の身体には活力が満ち溢れているものなのだな」

 

「…そもそもサツキは元々貴方のように休日の昼までぐーたら寝ているようなダメ人間ではありません」

 

「母さんや、思うのだがなぜゼットンは私に対しては辛辣なんだろう!?」

 

「日頃の行いと言うものかな。まあそれよりせっかく早起きしたんだから父さんも新茶の茶漬けを食べたまえ。」

 

こうして食卓には我が家のメンバーが揃った。

 

改めて、自分の家族を簡単に紹介しておこう。

 

まずは父さんだ。

自分からはどう見てもグラマラスな体型の美女にしかみえないのだが、なぜか家族以外の人間には男性に見えているらしく、戸籍上は自分の養父ということになっている。

本人も父と呼べと言っているので父さんと呼んでいるのだが、彼女のような女性を父というのは他には某騎士王の子である叛逆の騎士くらいのものだろう。

 

そんな父は家ではぐーたらしている姿を見ることの方が多いが、平日は仕事に行っていて、夜遅くに帰ってくることも多い。

仕事は何をやっているのかはよくわからないのだが、相当高給な仕事をしているらしく、我が家は金に困らず裕福な暮らしをしている。

一家の大黒柱であり、休日には息子の自分と遊ぶ時間を作ってくれる、いい父親だとは思う。

女性だけど。

 

次に母さん。

畳の上でちゃぶ台に座っているのが様になっている、父とは対照的に鮮やかな服装が素敵な女性だ。

前述の通り、眼兎龍茶という茶が大好きで、我が家にはたまに近所におすそ分けされるほどの大量の眼兎龍茶が貯蔵されている。

けれども大抵の家事はそつなくこなし、養子である自分に惜しみない愛情を注いでくれるいい人だ。

こう書くと日本では絶滅危惧種である良妻賢母に見えてくるのだが。

 

「サツキ。今日は生憎雨だが父さんが買ってきたマ〇オパーティで遊ばないか?ゼットンもどうだい?」

 

「ア・ナ・タ」

 

「あっ」

 

「ごめんねサツキ。お母さんちょっとお父さんと席を外すから先にゼットンと朝食食べてて」

 

 

 

 

 

 

「TVゲームの類は買い与えるなと言っただろう!!私はサツキを退化した猿ではなくまともな奴に育てたいんだ!悪影響が出たらどうする!」

 

「いつも思うが君はその件に関して神経質になりすぎなんじゃないか…?みながみな地球人に悪影響を与えているわけではないだろう。パーティゲームくらいいいじゃないか」

 

「私は実際に地球人たちが堕落していく様を見てきたのだよ!この地球もだいたい同じだ。彼にゲームを与えるなら独楽や双六で十分だ」

 

「君はやけにレトロな物にこだわるな…家のテレビもブラウン管だし。なにはともあれパーティゲームはそんなものではない。他者との交流を育めるものだ。それで彼は堕落しないよ。きっとね。」

 

「そこまで言うなら考えなくもないが…念のため遊ばせるなら必ず私も参加するぞ。少しでも悪影響があるようなら即刻処分するからな。」

 

「それでいい。サツキを信じろ」

 

 

 

 

 

 

なぜか自分が電子機器に触れるのを頑なに嫌がるのだ。お陰で将来携帯を使わせてもらえるか分からないし、碌にゲームも買ってもらえない。

 

最後にゼットンだ。

彼女はなんというか、ちょっと特殊だ。

自分がこの家に来た日に出会ったのだが、どうも戸籍上この家の子ではないらしい。

近所では自分の姉ということで通っているのだが。

彼女との関係もどうにもハッキリと言いにくい。

姉弟かと言われると違う気がするし、他人同士だと言うのもアレな話だ。

 

出会って数年経っているのだが、表情をあまり変えず、口数も少ないと言うのもあるが彼女はいまだに謎が多い。

家に居るときはよく行動を共にしているが、自分が外出している時などはなにをしているのかよく分かっていない。学校には通っていないらしく、ならば家にいるのかというとそれも違うらしい。

だが自分が外で怪我をしそうになったりした時にはいきなりその場に現れて自分を助けてくれる。とても有難いのだが、礼を言う前にかき消すように姿を消してしまっていることはザラだ。

前に一度昼間になにをしているのか聞いたことがあるが、当然の如くスルーされ結局分からず仕舞いだった。

 

そんな感じで一癖も二癖もある面子が揃っているが、現状今の暮らしに不満はない。

血は繋がっていないが、皆自分を家族として扱ってくれるし、自分もそれに応えたい。

正直言って今の状況は『前世』より幸福だと思う。これから家族に支えられるだけじゃなく、こちらからも支えられあえる人間に成長したいと思っている。

もっとも――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――実は彼女たちは人間ではないのだけれども。

 

 

 

事の発端は数年前に遡る。




駄文ご閲覧ありがとうございました。


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2話 知らぬ間の臨死体験

いきなりの話だが、自分は俗に言う「転生者」というものらしい。

らしい、というのは自分の中にある前世の記憶と言うものがどうにもあやふやで朧気なのである。

 

例えば小説や映画、漫画だのの知識はあるが、自分が前世ではどんな生活を送っていたのかがあまり思い出せない。自分が男だったのか女だったのか曖昧だし、どうやって死んだのかも全く記憶にないのだ。感覚的に余り楽しくない人生だったなーと言う感じはあるのだが。

正直言って覚えているメディア文化の知識の方もかなり怪しい。例えるなら〇ィキペディアの記事に載っているような簡単な概要は分かるが、それ以上の細かい情報はどうだったか分からないし、そもそも色々他にも偏りや穴があるような気がしてならない。

 

前世によくあった創作の転生物の中には神によって転生するという内容も数多くあったが、自分がそのように転生してきたのかもよく分かっていない。

しかし奇妙なことに自分は自分でこの世界を選んだという根拠のない確信はあるのだ。

「前世とほぼ同じ世界」へというのを。

 

自分がこの怪しい前世の記憶が蘇ったのは3歳ごろで、気づいた時には皐月という名の男の子になっていた。

両親はおらず自分は児童養護施設、俗に言う孤児院で暮らしていた。後から聞いた話によると自分は赤ちゃんポストに預けられており、そのままこの施設に来たらしい。

 

転生者であると知った自分は正直もっとマシな境遇に産まれるよう頼んどくべきだったかなぁなんて思いながら施設での日々を過ごした。

まあ施設での日々は特筆すべき所はない。わりとちゃんとした所だったと思う。

 

 

 

 

 

 

5歳になったある日、不思議な夢を見た。

 

自分は暗闇の中にいて、そこを漂っていた。

そこには特に何もなく、本当に辺りには闇しか見えなかった。

自分はここは宇宙空間なのかなと思いながらその空間を漂うままに任せていた。

なにもないところだったが、不思議と静かで落ち着けるところでもあった。

 

しばらく漂っているとなにかが見えてきた。まだかなり遠い位置にあるので点みたいだったがどうも陸地のようなものがあるらしい。

他に行くところもないのでどうにかそこに行く手段はないか考えていると、

 

「な、な、なななんで人間がこんな所にいるんですかぁ~~!?」

 

と声がしたので振り返ると、そこには少女がいた。

黒を基調としたゴスロリのような服を着ており頭には菊の花飾りと夜店で売っているお面の様な物をつけていて透き通るような白い肌で目には涙を浮かべている。

そんな子が筒のようなものに跨って浮かんでいた。

 

「こ、ここは怪獣墓場ですよぉ~!人間が来るべき場所ではないんですぅ!」

 

「えっ?どういうこと?ていうか君は誰なの?」

 

いきなりの展開に困惑した自分はその少女に質問した。

 

「私はシーボーズ!この世界の住人です!貴方こそ誰なんですかぁ!?この世界は人間は普通来れない…来ちゃいけないのです!」

 

と名前を名乗った。シーボーズ…可愛らしい姿に似合わない武骨な名前だな…。

どこかで聞いたような名前の気がするのだけど、どうにも思い出せそうで思い出せない。やはり前世の知識はあまり当てにできないようだ。

とりあえず自分も名乗り返すことにした。

 

「俺は皐月。〇〇園ってところで寝ていたはずなんだけど、気づいたらここに居たんだ。どうやって来たのか分からないんだけどここはどこなの?」

 

「ここは怪獣墓場と言って、宇宙中の爪はじき者たちの魂が集まる場所なんです!私もある惑星から追放されて長い間ここにいるんですよ」

 

怪獣墓場…これもどこかで聞いたような単語なのだが、やはり思い出すことが出来ない。

墓場や魂といった単語から推測するに、あの世のような所なのだろうか?

 

「じゃあ、俺は死んでいるの?」

 

「いいえ、私には分かります。貴方はまだ生きていますよ!なぜだか分かりませんけど魂だけがここまで来てしまったみたいです」

 

「それなら俺は元に戻れるの?」

 

「貴方が通ってきた『門』があるはずなのですが…。そこから元の所に戻れるはずですよ」

 

「門?一体それはどこにあるんだろう?」

 

「あっ!あれじゃないですか!?」

 

と、シーボーズの指さす先を見ると、今まで気付かなかったが自分の頭上の方に複数の輪が組み合わさってできたようなオブジェのようなものがあった。

あれがおそらくは門なのだろう。

 

「分かった。あそこまで行ってみるよ。ありがとうシーボーズ!」

 

「サツキ、二度とここに来てはいけませんよ!帰るべき場所に帰るんです!さようなら!」

 

シーボーズに別れを告げ、自分は『門』の方へ泳ぐ要領で進んで行った。

 

 

 

 

 

 

――そこで自分は目覚めた。

おかしな夢だったなーと思いながら起床した。それにしてもあの夢の中にでてきたシーボーズって子は可愛かったな。学生時代にクラスメイトにいたらアイドル的存在になっていただろう。

そんなことを考えながらまたいつも通りの日常を過ごす。

その筈だった。

 

「なんだろう……これ」

 

あの夢を見てから自分の近くにおかしなものが現れるようになった。

それはあの夢にでてきた『門』をバスケットボールほどの大きさにしたもので、自分がどこに行っても、いつの間にか自分の数メートル近くに出現しているのだ。

 

施設の仲間や職員にはこれは見えず、自分だけに見えているらしいので幻覚の類かと疑ったのだが、触ることができたので単なる幻覚ではないようだ。

とりあえず近くによっても触ってもなにも起こらなかったので放置しているが本当にこれはなんなのだろう?

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

少年は知らない。既に『門』が開いていることに。それによりこの世界にとって招かれざる客がやって来たことに。

 

―――深夜、少年を含めた施設の者が寝静まった頃

『門』から二つの人影が現れていた。

 

「ここが、この『門』の先か。どうやら『地球』によく似た惑星のようだな」

 

「ああ、しかし驚いたよ。超微小の規模とは言え、まさか新たな門が出現するとはね」

 

「お陰で数人やごく少量の物体くらいしか通り抜けられないようだがな」

 

「さて、ここからどうする?例の計画を実行するのかい?」

 

「いや、それにはまだ早すぎるな。当面行うべきことはこの世界の調査と拠点の構築……」

 

人影の一人は眠っている少年に視線を移す。

 

「そしてこの『門』の鍵を握っているらしい子供の確保か」

 



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3話 新しい家族

もしかしたら今後なにか矛盾が発生するかもしれませんが、ご容赦ください。


●●●●●●のレポートより抜粋

 

――以上から現時点でこの宇宙のことに関して判明しているのは以下の通りである。

 

・この惑星は我々の知る地球とよく似た歴史・文化・自然環境等を有している

 

・この『地球』の文明は我々の知るところのものよりいくらか技術レベルが遅れている

 

・この『地球』において我々のような存在が確認された事例は無く、我々のような存在は虚構とされている

 

・これは我々の良く知るところの『彼ら』に関しても同様である。この宇宙の『M78』などにも生命の痕跡は確認されていない

 

・怪獣墓場とこの宇宙を繋ぐものは現状、例の『門』のみである

 

よってこの宇宙にはこの惑星以外の文明の存在は非常に少ない可能性が高い。少なくともこの『地球』が所属する銀河系には存在せず、我々の元々の故郷も同様であろう。

 

例の計画を実行するにあたって、この宇宙は非常に好条件を備えていると考えられるが、同時に計画の実行は早計であると判断する。

 

まだ調査が今の段階では不完全というのもあるが、そもそもの問題は出入口である『門』のことである。

この『門』は固定化こそされているが、超微小の規模なので、出入可能な物体に限界がある。更に怪獣墓場からこの宇宙に来る際に大幅な能力の減退が確認されている。

『門』に干渉する方法が不明である現状、計画の実行は非常に困難と思われる。

 

引き続きこの宇宙及び『門』の調査を行う他、『門』に何らかの形で関係していると思われる地球人の少年との接触、並びに可能ならその確保に動くこととする。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

あの不思議な夢を見てから一年が経った。

相変わらずあの『門』は自分の視界に姿を現しているが、それにもすっかり慣れてしまった。

そうして奇妙な『門』が日常の一部と化した頃、自分にある話が来た。

とある夫婦が自分を養子として引き取りたいのだという。

とりあえず顔合わせをするそうなので、自分はある部屋で待機することになった。

 

どうやら準備ができたらしく、職員さんが

自分を連れて件の夫婦のいる部屋へ向かった。

部屋には2人の知らない人が椅子に腰かけていた。話の流れからこの2人が件の夫婦の筈だが――

 

「お待たせいたしました。さあ自己紹介を」

 

職員さんが自分に自己紹介を促す。

 

「〇〇皐月、6歳です。始めまして」

 

自己紹介と共に自分は2人を見る。

 

1人はスーツを着た黒髪の女性で、目も覚めるような美貌に黒いスーツに黄色いネクタイが似合っているのだがなぜか、なんと形容すべきか、吸盤かなにかのようなものが頭頂部から伸びている。髪型の一種だろうか。

 

もう1人は青系統の色の服を来た赤髪の女性で、こちらも前世でも見かけなかった程の美女なのであるが、その服装は胸部と腹部が露出しており、しかも露出した胸部には黄色の湿布のようなものが貼られている。

 

なんというか、色々とツッコミどころがあるのだが、とりあえず「夫婦」ではない気がするのだが……!

 

「始めまして、その年で凄く丁寧にお辞儀が出来るのだね。私は『江戸川山斗(しゃんと)』と言う。以後お見知りおきを」

 

と黒髪の江戸川と名乗る女性がこちらにお辞儀を仕返す。

 

「こんにちは、私は『江戸川メル』。まだ6歳なのに偉いね」

 

と赤髪の女性はフリンジのついた白い手袋で自分の頭を撫でる。

む、流石に精神年齢が年相応ではないのでこれはなんか気恥ずかしい。

 

「さあ、もういいでしょう。皐月君は戻って結構です」

 

と職員さんに言われたので自分は部屋を出て自分の部屋に戻ることになった。

二人とも女性だったのだがこれは所謂同性カップルというやつなのだろうか?

一応場が場なのにいくらなんでも、あの服装はどうなんだろうか。

などという疑問が戻る途中自分の頭を離れなかった。

 

なんか怪しい2人だったが、仮にもこの施設は国に認められている所である。まさか信用の置けない人物に孤児を引き渡すことはないだろう。

彼女たちもちゃんとした手続きを行った上であの場にいたはずだ。

自分はそう思いなおし、帰路に着いた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「これで漸く第一段階をクリアしたといった所か」

 

「うん、少なくともこれでもう向こうに物資を取りに行く度にあの施設にこっそり忍び込むなんて真似はしなくともいいわけだね」

 

「全く、宇宙船の一つでも持って来られれば色々と手間が省けていたのだがな」

 

「それにしても、対象を養子として引き取るなんて随分と回りくどいやり方になったね。そんなことせずに拉致してしまえばいいものを」

 

「それもそれで相応の準備がいるだろう。それに、出来る限り穏便な手段をとれと言うのが我らの上司の意向だからな」

 

「ああ、自分は直ぐに頭に血が上ってキレるくせに、穏健派の代表だと名乗っているからね。まったくお笑い草だよ」

 

「まあ、そういう気質を自覚しているからこそ直接出向かず我々を現地に実働隊として向かわせたのだろう。それにあれが他を抑えているからこそこちらも自由に動けるというものだ」

 

「なにより強硬派の代表である極悪(笑)宇宙人が『彼ら』がここにいないと知った途端やる気を無くしたらしいのも大きいのだけれどね」

 

「さて、ゼットン」

 

「……ゼットーン」

 

「重ねて言うがこの惑星ではその鳴き声は控えなさい、今回は潜入任務でもあるからな」

 

「……了解しました」

 

「先にも言った通り君の役目は対象の護衛と監視だ。能力は使用して構わないが、なるべく目立つことは避けろ。我々は地球人としてこの惑星で暮らすことになる。それも長い間、だ」

 

「……了解です」

 

「まあ、気楽に気長にやっていこう。この宇宙に我々の敵となる存在はいない。それに一度死を経た我々には時間は有り余っているのだからな」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

衝撃の面会からあっという間に数週間が過ぎた。

今日は自分があの2人の家に行く日だ。自分は少ないながらも荷物をまとめ、施設の仲間や職員さんたちに別れの挨拶を済ませると、職員の1人が運転する車に乗り込んだ。

車に揺られること数時間、途中で休憩や食事を挟んで自分は2人の邸宅がある住宅地までたどり着いた。

車を降りると職員さんが、ある方向を指さした。

 

「あそこがこれから皐月君の住む家だよ」

 

その方向を見ると中々大きな家があった。あれがそうなのだろうか。そういう方向の知識は薄いのでよくわからないが割と豪邸に分類されるレベルじゃないだろうか。

自分達が家の玄関まで行ってドアベルを鳴らすと江戸川氏(?)が自分達を迎え入れ、客間に案内してくれた。

用意されたお茶やお菓子をご馳走になりながら、職員さんと江戸川氏は

 

「しかし、素晴らしくご立派なお家ですね」

 

「はい、新築なんですよ。妻はアパートの方が落ち着けるからいいと渋っていましたが、和室を設ける条件でやっと引いてくれました」

 

「ですがこう広いと手入れとか大変じゃないですか?」

 

「住んでいる人数も少ないし汚れもそれほどつきませんよ」

 

といった風に談笑していた。自分はジュースを飲んでいると、江戸川夫人ことメルさんがジュースのお替りを継いでくれてお礼を言おうとしたのだが台詞を噛むという失態をしてしまった。

これはかなり恥ずかしかったが場の空気を更に和ませることにはなったようだ。

 

その後、職員さんはいくつかの注意事項を説明すると、早々に帰ってしまった。

そして自分はこの家に1人残されたのだが、やはりこの2人と会うのは2回目なので緊張するが自分は話を切り出した。

 

「ええと…それじゃあ、今日からこの家にお世話になります。宜しくお願いします。」

 

「「はい、こちらこそ」」

 

と皆でお辞儀をする。それから改めての自己紹介と相互に質問をしていった。

 

「今日から私たちは家族になる。いずれ家事も手伝ってくれ」

 

「はい。頑張りたいです」

 

「私からは以上だが、サツキ君はなにか要望はあるかな?」

 

「俺のことは呼び捨てでいいです…後、こちらからはなんて呼べばいいですか?」

 

「そうだね、サツキ。私のことは気軽に父さんとでもパパとでも呼んでくれ」

 

やはり父親役なのか。正直言ってその豊に実った胸で男だと言い張るのは無理があると思う……

 

「うん、分かったよ。お父さん」

 

「ねえ、サツキ。私の事もお母さんって呼んで欲しいな」

 

とメルさんが自分の頭を撫でながら言ってくる。

 

「じゃあ、お母さん」

 

「お母さん…お母さん、お母さん。お母さんかぁ………」

 

とメルさん改め母さんは自分の台詞を反芻する。

 

「どうしたんですか?お母さん」

 

「いやぁ。なんか、地球捨てたものじゃないなぁって」

 

「そんなに!?」

 

なぜか感極まったらしい母さんが自分を抱き寄せる。

 

「あの…お母さん?」

 

「うん!私、サツキのお母さんとして頑張るよ」

 

どうやらなにか絆が結ばれたらしい。早くも打ち解けられたようで嬉しくもあるけどそれはそれとして少し苦しいのですが……

 

そんなこんなで出された湯飲みや皿が片付けられた後、自分は父さんからサプライズをもらうことになる。

 

「実はなサツキ、この家にはもう1人同居人が居るんだ」

 

「そうなの?職員さんたちはなにも言っていなかったけど」

 

「彼女は人見知りだからね、職員の方には内緒にしていたんだ。けどこれから長い付き合いになるからサツキには彼女を紹介するよ」

 

人見知り…言っては悪いがなんらかの事情で引きこもったりしている人なのだろうか。

 

「それじゃあ紹介するよ、今日から君の最強にして最高のボディガードになる娘だ」

 

それと同時に家の奥から人影が姿を現した。その人物は自分の前に来る。

目の前には1人の少女が立っていた。艶やかな黒髪にそれに合わせたような黒基調の服装、頭からは雄牛のような角が生えており、人形のような顔からどこか冷たげな眼差し。

 

「……始めまして。ゼットンと申します」

 

その少女は簡潔に名乗った。

 

――『ゼットン』。その名称を聞いた瞬間。脳が揺れるような感覚がした。

 



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4話 新生活1日目

今回は少し長くなったかも


ゼットン…ゼットン…ゼットン…ゼットン…ゼットン…ゼットン…ゼットン…

何かが引っかかって開けきれない引き出しの如くな自分の記憶は脳裏にある映像を再生させる。それは体に赤い模様の入った銀色の巨人と真っ黒な甲虫を彷彿とさせる異形の戦いの場面だった。戦闘の末、異形は巨人を倒す。そんなことを思い出した。

 

そうだ、ゼットンは「ウルトラマン」の怪獣ではないか。それがどうして、いや、この少女は違うだろう……しかし、無関係というには余りにもこの少女は似ている……まて、まさか特撮と現実を混同するのか?でも、まとう雰囲気がなにか普通の人間とは――

 

混乱する自分は彼女――ゼットンを見る。彼女も自分の混乱を知ってか知らずかこちらを見つめ返す。自分は彼女の目を見る。彼女もただ何も言わずにこちらの目を見ている。

見る。見ている。見る。見ている。見る。見ている。見る。見ている。見る。見ている――

そんな状態が1分ほど続いただろうか、父さんが

 

「どうしたんだサツキ。まさかゼットンのあまりの美貌に言葉を失ったか?」

 

と冗談を交えて尋ねてきた。

 

はっと我に返った自分は

 

「あ、あー、そ、そうかも」

 

と返事を絞り出した。すると母さんが

 

「ああ!もしかして眠くなっちゃった?結構長い距離を移動してきたものね」

 

と言ってきた。違うのだが一旦休憩を取った方が良さそうなのは確かなので、

 

「うん、ちょっと疲れちゃったかな。休みたいんだけど」

 

と、その言葉に乗ることにした。

 

という訳で自分は母さんに連れられ自分に用意された部屋まで来た。

部屋の内装はまあ典型的な子供部屋といった感じで、子供用の調度品が揃っていた。

 

母さんは自分を部屋内のベッドに寝かせると、

 

「じゃあ晩御飯ができたら呼びに来るからそれまで休んでいてね」

 

と部屋を出ていった。自分は寝転がりながら部屋の隅に出現している『門』を見る。そうだ、そういえば怪獣墓場というのはウルトラシリーズに登場するあの世のような場所だった。「シーボーズ」もその怪獣墓場にいる怪獣の名前だったはずだ。

じゃああのシーボーズもゼットンも人の姿をした怪獣なのか?そんな馬鹿なと思う話ではあるが、既に転生や『門』と言った常識外れの出来事が起こっているのだ。

既に自分の前世からの常識が通じない世界に足を踏み入れてしまったのかもしれない。

 

そこまで考えて自分は一旦考えるのをやめた。どうやら自分は中々混乱しているようだ。なにはともあれとりあえず十分に休んでから考えをまとめたほうが良いだろう。

自分は目を閉じてそのままベッドで休むことにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

――自分の意識はまどろみから浮き上がった。どうやらあのまま眠っていたらしい。なにかピポポという音が聞こえてくるがそれで目がさめたのだろうか。今何時になっているだろうと、目を開けると――

 

「………」

 

目と目が合った。というか視界にゼットンの顔面が広がっていた。

 

「ほわぁっ!!」

 

これには思わず飛び起きてしまった。

 

「どうしたのですか……?」

 

とゼットンが怪訝そうに聞いてくるが、どうしたはこっちの台詞だよ。

なぜ知り合って一日目の女子に寝顔を観察されていたのだろう。

 

「なんで見てたの?」

 

「……サツキを見ているように言われていますので」

 

どうやら様子を見てくるよう言われたらしいが、

 

「だからって至近距離で見つめる必要はないよ…」

 

「サツキ!なにかあったの!?」

 

と母さんが部屋に駆け込んできた。どうやら起き抜けの悲鳴が届いていたらしい。

 

「あっ母さん」

 

「サツキ!それにゼットンもなにがあったの?」

 

「私がサツキを見ていたら……目覚めた途端悲鳴を上げたのです」

 

「目覚めたらいきなり真ん前に人の顔があったら大抵驚くよ!」

 

「そうだったの…驚かせてごめんねサツキ。さっきも言っていたけどこの子ちょっと人と人との距離感を計るのが苦手なの。悪気があった訳じゃないから許してあげて」

 

と母さんは平謝りしてくる。距離感って物理的な意味なのだろうか?まあ悪気がなかったのは確かだろうし、初日からギスギスするのも良くないのでこのことは水に流そう。

 

「うん、今度からは驚かせないでねゼットンさん」

 

「はい。以後、気を付けます。ああ、それと……」

 

「なに?」

 

「私にさんをつけなくていいです。呼び捨てで呼んでください」

 

「なんで?」

 

「……私はあなたに敬称で呼ばれる程のものではありません。」

 

「わかった。じゃあこれからよろしくゼットン」

 

「よろしくお願いします……サツキ」

 

「うん、二人とも仲直りできたみたいだね。じゃあそろそろ夕飯にしようか」

 

と母さんが言ったので、自分達は夕食を食べにリビングに向かうことにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

食卓であろう真新しい大きめのちゃぶ台には人数分のカレーライスが置かれていた。

父さんは既に腰かけてカレーを食べていた。

 

「ああ、元気になったみたいだなサツキ」

 

「うん、ゼットンには驚かされたけどよく休めたよ」

 

「ははは、ゼットンがなにかしたのか?ちょっと世間知らずな所があるからそう目くじらを立てないでくれ」

 

「うん、もう許したよ」

 

「それなら良かった。これから長いつきあいになるからな、ファーストコンタクトがどうなるかと思ったけど上手くいってるようで嬉しいよ」

 

「うん、サツキはいい子だよ。今日はサツキが家に来た記念日だから、腕によりをかけたからどんどん食べてね」

 

とまた母さんは自分の頭を撫でる。流石に何回も撫でられると慣れてくるかな。

 

そんなこんなでテレビ番組を見ながら皆で食事をした。

主にテレビの話題で盛り上がって話をしている中、自分はふと気になったことがあって父さんに尋ねた。

 

「あの、そういえばさっき聞かなかったけど父さんはなんの仕事をしてるの?」

 

「まあ、事情があって詳しいことは教えられないが、調査をやっていたりするよ」

 

「調査?一体何を調査してるの?」

 

「だからそれは教えられないんだ。守秘義務がある仕事なんだよ」

 

守秘義務…探偵のようなことでもやっているのだろうか。まさか危険な仕事ではないだろう自分を引き取ったからにはその辺も調べられているだろうし。

 

「じゃあ他に何か俺に教えられることはないの?」

 

「そうだな…父さんには同僚が何人かいるんだが、皆個性的な人だな」

 

「例えばどんな人?」

 

「ああ、落ち込むと引きこもってしまったり、女の子の脚やへその写真を勝手に撮るのが趣味だったりするのがいるぞ」

 

後者はそれ犯罪に片足突っ込んでないですかね?本当に父さんの職場は大丈夫なのだろうか……

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「くしゅんっ!……花粉症の季節はまだですよね…?あれ――」

 

「………………………………………………」

 

「ガッツさん?どうしたんですか、ゼットン星人さんからの資料をそんなに食い入るように見つめて……」

 

「……ん?あっ!?ペ、ペガちゃん!!?あっ、うん。別に何でもないの!ファイルにあった画像の男の子が気になってるとかそういうのじゃないからね!?」

 

「は、はぁ……(こんなに取り乱してるガッツさんって珍しいな…)」

 

「と、とにかく!それはそれとして例の宇宙に私たちはいつ行くの!?」

 

「えっ?その話は当面ゼットン星人さん達が当たって私たちは後方って決まってたじゃないですか」

 

「ええ~~!!そんなぁ~~~!!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

カレー美味しかった(小並感)夕食も終わって次は入浴ということになったのだが、

 

「自分で洗えるから大丈夫だよ!」

 

「そんなに母さんと入るのが嫌なの?お母さん悲しい……」ヨヨヨ

 

「そういう訳じゃないけど……」

 

母さんと一緒に風呂に入るという話になっている。肉体年齢的に全然問題ない歳ではあるがその…一応親とはいえ美人と混浴するのはどうにも気が引けるというか……

 

「じゃあ父さんと一緒に入るか?」

 

それはもっと恥ずかしいことになりそうなのでやめて下さい。

その後一人で入るという選択肢は無く、どちらかと一緒に入る事を強いられたが、悩みに悩んだ末、身体の起伏が比較的緩やかということで母さんと入浴することにした。

 

入浴中、天井の方に意識を向けるのに夢中でまったくリフレッシュした気がしなかった。

 

そうして、後は眠るだけとなり自分は再び自室のベッドに身を横たえた。しかし、今日は濃い1日だった……人間の姿をした怪獣に会ったり、色々恥ずかしかったり……

結局、ゼットンや義両親は何者なのだろう?本当に人間ではないのか、それとも単なる変わり者なのか。彼女達と出会ったのは『門』のことと関係があるのだろうか?まったくの偶然なのだろうか?

分からないことばかりだけど、なんかあの人達は悪い奴じゃないって直観はするんだよな……その直感をどこまで信じていいかは微妙なのだけれど。

 

まあ、皆初対面の1日目だし、これからの生活で色々分かってくるだろう。不安もあるにはあるが、わくわくしているのも事実だ。この家に入ったことが自分にとって幸運であることを祈ろう。

それにしても……

 

「………」

 

「ええっと…」

 

「…はい?」

 

「ゼットンは自分の部屋に戻らなくていいの?俺がベッドに入ってから其処に立ちっぱなしだけど」

 

「サツキが眠ったら戻ります。私のことは気にしなくて大丈夫です……」

 

気になるんだよなぁ…

まあ、とにかく目をつぶっておこう………

 

「おやすみ、ゼットン」

 

「おやすみなさい、サツキ」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

少年が眠りについた夜。暗い子ども部屋の中に眠っている少年以外に二人の人物が居た。

 

「…チュ…ンッ……チュ…ンハァ…チュ…チュ…」

 

「……………………………………」

 

1人は熟睡する少年の頬に口づけをする女、もう1人はその光景をじっと見つめる女。

 

「……その、なにをしているのでしょうか。……メトロンさん?」

 

「…ん?サツキが起きちゃうから静かにね。後、今はいいけど一応地球人ってことになってるからサツキや他の人の前ではメルって呼んで」

 

「…では、改めて。さっきから何をしているのです?」

 

「何っておやすみのキスだよ?親子なら普通のことじゃないか」

 

「そうですか……」

 

「君こそずっといるけど別に家の中なら機器も揃っているし監視の必要はないんだよ?」

 

「……万が一ということもありますから」

 

「そう。まあ、君も生物だし休息はいると思うから程々にね。じゃあ私ももう寝るから。おやすみなさい。」

 

「……おやすみなさい」

 

1人は子ども部屋を後にする。もう1人は――

 

「スゥ…スゥ…」

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

再び眠っている少年をただただ見つめ続けるのだった。

 




駄文ご閲覧ありがとうございました


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5話 赤くてとげとげの初友

超久々の更新
ウルトラ怪獣擬人化計画の二次創作がもっと増えればよいのにと思う


さて、あれから時間は結構進む。まあ特筆すべきイベントが小学校に入学したくらいだし、色々端折らせてもらってもいいだろう。

 

自分が江戸川家に迎え入れられてから数年たった訳だが、まあ家には馴染んだと思う。

みんな自分を暖かく迎えてくれたし、特に問題のある家庭ではない。というか問題のある家庭だったらそもそも自分を引き取る許可は降りなかっただろうし。

同性夫婦だったり奇抜な格好してたり(なぜか周囲の人間からはそう見えてはいないようなのだけど)そういうのを除けば割かし普通の家だと思う。

 

父さんは相変わらず家に居るときはゴロゴロしてることが多いが、最近我が家でTVゲームが解禁されてからは、一緒にプレイしてくれる。ちなみに家にあるゲームはパーティゲームとかレーシングとか対戦系のものばかりだ。RPGとか一人でのめり込むタイプのは母さん的にNGらしい。

他には1回親子らしい遊びとしてキャッチボールをしてくれたのだが、その際に腰をやってしまったらしく、その日以来キャッチボールはやってない。運動は苦手なのだろうか?

流石に仕事的にも運動不足はよくないと思うので勧めたら、早朝のジョギングを始めたらしい。

 

母さんは専業主婦として家事と俺の子育てをやってくれてなんというか、頭が上がらない。

というか本人が主張しないだけで、現在我が家のヒエラルキー最上位なのではと思う。

母さんが好きなことは家事の合間に家の小さな和室でお茶を啜ることらしい。その際にリビングにあるものとはまた別の、小さめのちゃぶ台を使っているが、なんでも母さんが故郷から持って来たマイちゃぶ台なんだとか。最近の楽しみは其処に俺を誘って一緒にお茶を啜ることらしく、自分が部屋に入ってくる際に「ようこそサツキ。私は君が来るのを待っていたのだ」言うのが定番になっている。

後、スキンシップを取ってくることが多く、ハグや頭を撫でることをよくしてくるけど慣れてきたとはいえやっぱり人前でやってくるのは恥ずかしいので止めて欲しい。

 

ゼットンは母さんとは対照的にそれほど自分に触ってくることはしない。むしろ行動を共にしてる時も一定の間隔を開けている感じだ。嫌われているのだろうかとも思ったが、もしかしてあの時自分に接近して驚かせたことを反省した結果…なのだろうか?単に自分を避けているにしても家の中だと大体自分についてくるし間隔もただ離れるというよりも付かず離れずの距離感を保っているようだ。

ある夜尿意がしてトイレに行こうと起きた事があったのだが、その時暗い部屋でゼットンがこちらを見て立っていたのを見た時は危うくちびるかと思った。自分が寝たら部屋に戻っているはずじゃなかったのか……?その後、トイレにまで着いてきたのだけど頼んでもいないのにそれは止めて欲しいと思う。別に怖いとかじゃないし。

 

まあそんなこんなでいい暮らしさせてもらってます。家族人外疑惑も割とどうでもよくなってきた感じだ。あれから特に奇妙なことも起こってないしー優しい美人のパパ(?)ママと後お姉さん的なにかと同居できてさー結構前世で言うリア充の分類に入ってるんだと思うんだよね。

前世よく覚えてないんだけど間違いなく前世よりいい人生送ってるって感じがする。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

いい人生送ってるって言ったけど、問題はあるにはあった。

 

「ふー………」

 

と、一人ベンチに座って深いため息をつく。

ここは家の近所にある大き目の公園だ。今日は休日で、特に予定もなかったので小学生らしくこの公園に遊びに来ていたが、遊んでいてしばらくして自分はある悩みに気づいた。

遊具で遊んでいる子供たちを見ながら、こう呟く。

 

「中々友達できないなー……」

 

そう、どうも今世の自分は友達を作るのが苦手だった。施設では割と上手くいってた気はするんだけど、どうもこの町に越して来てからは友達らしい友達が出来た事が無い。

あれー自分こんなに友達作るのって下手だったっけ?と思う。なんか一定は親しくなれるけどそれでもそれ以上には仲良くはなれない感じなのだ。

なんなんだろうね、前世の記憶があるから精神が同年代とずれているとかそんなのだろうか。しかも肝心な前世の知識には友達の作り方とかそういうのは無いと来た。アニメだのの知識は無駄にあるのにもっと実用的な情報を前世から持って来れなかったのだろうか。

 

そんな訳で絶賛友達作りに苦戦中な訳である。やはりこれからの青春、友達がいるのといないのとでは大違いだろうし、あんまりにぼっちなようなら両親にもいらぬ心配をさせてしまうだろう。

しかし実際問題友達ができないのが現状なので、自分はこれからどうしようかと遊ぶ子供を遠目に眺めながら途方に暮れていたわけである。

 

「あー、友達が欲しいなー」

 

「友達が欲しいのですか~?」

 

「そーなのー」

 

「なんでですー?」

 

「なんでって、友達いないからだよー」

 

「じゃあ私が初めての友達ですね~」

 

と、そこまで会話が続いた段階で思う。…自分、誰と話しているんだ?

声のした方に視線を移す。そこには赤毛の少女が立っていた。

 

「だ、誰?」

 

と自分が問うと、

赤毛の少女はにぱーっという擬音がでそうな笑顔で言った。

 

「こんにちは~私はピグモンですよっ!」

 

ピグモン?ピグモンと言えばウルトラマンに登場するマスコットみたいな怪獣だけど……

改めてその少女を見てみる。

ツインテになっている長い赤髪にそれと同じ色の衣装、腰にはあのピグモンの長い手の様な装飾がついている。

なるほど、確かにピグモンが人間になったような感じではある。

でもなんでそんなのがこんな所にいるのだろう?

 

「俺は皐月だけど…ちょっと待って。そのピグモンがどうしてこんな公園にいるの?」

 

「どうしてですか~?サツキくんが私を呼んだのでは?」

 

え?いや、自分は彼女を呼んだ覚えなど全然ないのだが…?

 

「いや…俺は友達欲しいって言ったけど、誰か個人を呼んだ訳じゃないんだけど……」

 

「ええ~~!?そうなんですか~~?私はサツキくんの友達が欲しいって声が聞こえて来たからここまで来たんですよ?」

 

「えっ、どこから来たの?」

 

「私は、あそこの向こう側の世界からやってきたんですよ~『怪獣墓場』って所なんです」

 

と、ピグモンは『門』を指さす。

えっえーとつまりあの『門』は本当に怪獣墓場に続いていて、ピグモンはそこから自分の声を聞いてはるばるやって来たってことなのか?

 

「ほっ本当なの?」

 

「はい~。どうしても気になってそれであの『門』を潜り抜けたら、ここについたんですよ」

 

「そっ、そうなんだ…じゃあ、俺の友達になってくれるのか?」

 

「もちろんですよー!このピグモン一人の子供を放っておけませんからー!!」

 

マジか。友達が欲しいとは言ったけどまさか特撮のキャラが友達になるとは思ってなかったぞ。あの門いままでわけわかんなかったけど今初めて自分の役に立ったんじゃないだろうか。

ここは是非彼女の言葉に乗るとしよう。

 

「そうか!ありがとうピグモンちゃん!俺の友達第一号だな」

 

「ええ~!これから私がサツキくんの友達ですよ~」

 

「よっしゃ!じゃあ早速遊びに行こうか」

 

「はい、行きましょ~」

 

という訳で、自分達二人は公園で遊ぶことにした。ここはそれなりに広い公園なのでまあ遊ぶ場所には困らない。それにしても一人増えるだけで遊びの幅が広がる広がる。シーソーも出来るし、しりとりもあっち向いてほいだってできる。これは一人では味わえない感覚ですよ。

 

とにかく、いままで燻っていたものを燃焼させる勢いでピグモンと遊びまくった。

ああ、いい、実にいい、小学生の青春ってこんな感じだよな。なにか小学校に上がってからの微妙なボッチ感が馬鹿らしくなってきた。

しかしちょっと疲れて来たので小休止することになった。

 

そして自分は休憩がてら少し気になったことをピグモンに質問することにした。

 

「なあ、怪獣墓場ってどんな所なの?」

 

「そうですね、とても広くて~、とても静かな所ですよ」

 

「そうか。割と居心地のいい所なのかな?」

 

「はい~。みんな普段は静かに眠っていますし。でも、私はここの方が好きですね~」

 

「そうなの?」

 

「私は誰かと遊んだり話をしている方が好きなんですよ。墓場では滅多に話をしたり遊んでくれる相手がいませんから~」

 

「そうなんだ。ピグモンは陽キャなんだね」

 

「陽キャ~?」

 

「あっ、いや、明るい人ってことだよ」

 

いかんな気を付けないと変なスラングを言ってしまう。しかしなるほど、怪獣墓場はウルトラマンで言われていたように怪獣たちが静かにしている場所のようだ。

次に俺は『門』を指さして質問した。

 

「じゃあさ、ピグモンはあの『門』についてなにか知らない?」

 

「はいはい。私も余りよくは知りませんが、あの『門』は怪獣墓場と色々な宇宙と繋がっていて~、怪獣たちはそれを通じて怪獣墓場に流れてくるそうです」

 

「そうなのか、なんかあの『門』は俺の側に付いてくるように現れるんだけどそれについてはなにか知らないかい?」

 

「すみません。それは私も分からないです~。でも、それくらいの大きさの『門』は珍しいというか、私は初めて見ましたよ」

 

そうか。向こうの住人ならなにか分かると思ったけど結局のところこの門はなんなのかは分からないままらしい。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

その後もピグモンが何処からか出した風船を他の子供にも渡してみんなで遊んだりもしたが、いつの間にか空は夕焼けに染まっていてそろそろ家に帰る時間となった。家は一応門限が決まっていてそれを越えると何処からともなく現れたゼットンによって強制的に連れ帰られることになる。

別に家から遠い場所でもないしゼットンの手を煩わせる前に帰宅したほうが良いだろう。

 

「ピグモンちゃん。俺はそろそろ帰ろうと思うんだけど、ピグモンちゃんはどうするんだ?ちゃんと帰れる?」

 

「はい。大丈夫ですよ~。『門』から元の怪獣墓場に戻れると思います」

 

「じゃあお別れかな。今日は本当に楽しかったよありがとう」

 

「どういたしまして~その、サツキ君に頼みたいことがあるんですが、いいですか」

 

「ん?なに?」

 

「また、私を呼んでくれませんか。こういう色んな人がいる場所って中々いけなかったので」

 

「ああ、いいよ。またピグモンちゃんを呼べばいいんでしょ?また色んな所にいこうよ」

 

「あっありがとうございますっ~!」

 

ピグモンはよほど喜んでいるのかピョンピョンと跳ねていた。なんだろう可愛いじゃないか。

 

「それじゃあ約束ですよ、またこのピグモンを呼んでくださいね~」

 

そう言ってピグモンは『門』の側によると、ふっと消えてしまった。恐らく、向こう側にある怪獣墓場に戻って行ったのだろう。

 

それを見届けた自分は、家族に新しく友達が出来た事を報告しに、帰路に着くのだった。

 




今更ながら主人公の名前が怪獣娘黒のキャラの名前と被ってるのに気づいた…
一応本作の世界は怪獣娘とは別世界なのですが


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6話 実験してみる

先駆者様たちの様に長編書くのって難しいですね。


ピグモンと友達になって半月たった頃、自分はある実験をしてみようと考えていた。

それはあの『門』から色々呼び出せないかというものだ。

 

ピグモンの証言によってあの『門』の向こう側はウルトラシリーズの怪獣墓場に繋がっているらしい。そしてピグモンは自分の呼びかけによって向こう側からでてきたと。

 

それで数日考えていたのだが、これであの『門』に呼びかけたらピグモンだけじゃなく他のウルトラ怪獣を呼び出すことができるんじゃないかと思った。

まだ試してはないのでどうなるか分からないが、なんか怪獣を呼び出せるかもしれんとしたらワクワクするのだ。レイオニクスとはいかなくとも某妖怪時計の友達妖怪みたいな感じにならないかと憧れるのだ。

 

もちろんむやみやたらに怪獣を呼び出す気はない。改めていうが、怪獣というのは基本的に危険な存在である。凶暴で好戦的な奴もいれば、その場に存在するだけで災害を引き起こすような能力を持っている奴もいる。

もし下手にそんな奴らを呼んでしまえば例えピグモンと同じくらいのサイズだとしても大騒ぎになるだろうし、最悪死者が出かねないだろう。

 

ということで呼び出す怪獣は大人しく劇中で人間を襲わなかったり、人間に友好的だった怪獣たちにしようと思う。そもそもピグモンのように呼びかけに応じるかどうかだったら応じやすそうだし、出てきて早々暴れだしたりする心配も少ないだろう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

というわけで自分は近所の河川敷にやって来た。自分の家で呼び出そうとも考えたが、呼び出す相手がピグモンの様に小さくない可能性もあるので出来るだけ広い場所で呼び出そうと思ったのだ。

 

そうして河川敷の広場で自分は『門』に向かって念じることにした。

とりあえず念じ方は適当だがピグモンはこれで来るので、同じように『門』の方へある怪獣を呼んでみた。――さて、本当に来るのだろうか。

 

――来てください。――来てください。――来てください。

と念じ続けていると、『門』の周りの空間が一瞬歪んだかと思うと、そこに1人の人影が立っていた。

 

「あ…あれ?ここはどこでしょうか…?あっ貴方が私を呼んだんですか?」

 

「そうだよ。久しぶりシーボーズ」

 

そう。今回呼び出したのはシーボーズだ。とりあえず自分の求める条件に合っていたというのもあるけど、あの時みた夢の場所が本当に怪獣墓場だったのか確かめたかったのだ。

このシーボーズはあの夢で会った時と同じ姿をしているけど同一人物(同一獣?)なのだろうか。 

 

「だ…誰?いや、何処かで会ったような…あっもしかしてサツキですか!?」

 

「覚えててくれたんだね。そう。数年ぶりだね、シーボーズ」

 

どうやらあの夢のシーボーズ本人(本獣?)のようだ。そういえばあの夢の時には気付かなかったけど彼女が着けてるお面はまんまウルトラマンに登場したシーボーズの顔そのものだ。

 

「でも…どうしてサツキが私を呼んだんですが?」

 

「友達になりたいから…じゃダメかな?」

 

「えっ、と、友達!?私が…ですか?」

 

「うんそう」

 

「私…今はなんでか分からないですけど人間に近い姿になってますが、私、怪獣なんですよ?」

 

それは知ってる。そういえばピグモンといいこのシーボーズといいあとゼットンといいなぜ人間の姿になってるのだろう?お陰でコミュニケーションが取りやすいのではあるけれど。トモダチハ、ゴチソウ!な価値観でもない限り。

 

「いやだってシーボーズはいい奴でしょ?いい奴に人間も怪獣もないと思うよ」

 

劇中でもシーボーズは積極的な破壊活動しなかったし、凶暴な性格でも悪意を持っているわけでもない大人しい存在だった。身体が巨大なのと怪獣墓場に帰りたがっているのを除けば人類と共存できそうなくらいに。

 

「だからシーボーズが良ければ友達になりたいんだけど…」

 

「…私なんかでいいんですか?私は人間じゃないし、人間の友達を作ったほうが…」

 

「シーボーズでいいんじゃなくて、シーボーズがいいんだよ。可愛いし」

 

「かっ可愛いっ!?」

 

正直今の姿もいいけど原型の時点で十分可愛い怪獣だからなシーボーズは。そんなだから科特隊やウルトラマンも倒す気が無くなったんじゃないだろうか。

 

「じゃ、じゃあ本当に友達になってもいいんですね…?」

 

「うん!」

 

「…分かりました。それじゃあ、これから私とサツキは友達です」

 

「よろしくね、シーボーズ」

 

よしよし、これで友達妖怪ならぬ友達怪獣第2号が出来たぞ!

それにしても他の怪獣も人間化してるのだろうか?気になるがこれから確かめていけばいいか。

 

「あっあの…悪いのですがサツキ…」

 

「?どうしたの?」

 

「そろそろ怪獣墓場に帰らせてくれませんか…?やっぱりあそこじゃないとなんか落ち着かなくて…」

 

どうやら擬人化してもホームシックは治ってないらしい。

友達になるという目的も達成したしこのまま彼女を帰したほうが良さそうだ。

 

「分かったけど、その前にこれ」

 

と小学生の身としては一抱えある包をシーボーズに渡す。

 

「?なんですかこれ?」

 

「色んなお菓子の詰め合わせ。君の好みは分からないけど友達になった印に」

 

物で釣るみたいだが、風船を渡して他の子と直ぐに仲良くなったピグモンを見てヒントを得たのだ。なにもないよりお土産の一つがあった方がいいだろう。

 

「あっありがとうございます!いいんですか?」

 

「いいよ。俺の勝手だし、喜んでもらえてこっちも嬉しいよ」

 

どうやらそこそこ喜んでもらえたらしい。一概にベストとは言えないかもしれないけどこれから挨拶として使っていくのはありかな。

 

「怪獣に贈り物するなんて…サツキくらいだと思います。この包ロケットの次に大切にしますね!」

 

そこまでしなくともいいんだけど。

怪獣に贈り物をする奴か…春野ムサシや大空 大地辺りはするだろうか…?

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

シーボーズと別れた後、ふと振り返るとそこにゼットンが立っていた。

前にも言ったけどゼットンはこんな風に前触れもなく俺の前に姿を現す。助けてくれることもあるのだがやはり急に出てくるのは慣れない。

 

「………………………」

 

ゼットンはいつものようにジト目気味な眼で自分を見つめてくる。

 

「えっと…どうしたのゼットン?」

 

「サツキは…私のことを不要と思っていますか?」

 

「えっちょ、急に何を言い出すのさ!?」

 

「…最近サツキはトモダチというものを作る様になりました。ならば私のことを疎ましく思っているのでしょうか」

 

なんでそんな考えになるんだ。論理が何段階か飛躍してない?

 

「そんなことないよ!ゼットンは家族じゃないか」

 

「…トモダチとカゾクは違うと?」

 

「違うよ!初代ゼットンと2代目ゼットンくらい違うよ!」

 

興奮の余りわけのわからないことを言ってしまった。

 

「つまり…その、友達は友達で大事だけど家族は別に大事ってこと」

 

「つまり…私は疎まれていないということですか?」

 

「そうだよ。急に変なこと言うからびっくりしちゃったよ」

 

そう言いながら手を差し出す。

 

「これは…?」

 

「偶には手をつないで帰ろうよゼットン。家族らしいことすればいいだろう」

 

「家族らしいこと…ですか?」

 

「そう。父さんや母さんはよく繋いでくれるけどゼットンはあまりやったことないでしょ」

 

「…そういう命令ですね」

 

「いや別に命令じゃないから。ああもうほら」

 

と自分からゼットンの手を掴む。

 

「もう埒が明かないし引っ張っていくよ」

 

「……」

 

「今度はどうしたの?」

 

「…いえ、サツキの手、暖かいですね」

 

なんかクサイ台詞を言ってくれるじゃないか。なんかちょっとドキッとしてしまったぞ。

 

「いいからもう行こう!」

 

「…はい」

 

と自分とゼットンは手をつないで帰路に着くのだった。

 




もうそろそろ新キャラがG1トランスフォーマー並みに唐突に登場することもありますので悪しからず。


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7話 実験してみる2

今更ながら怪獣娘達の容姿は基本的に電撃版です。


さて、引き続き『門』の向こう側から怪獣たちを呼び出す実験&友達になれないかのアプローチを続けてみようと思う。

『門』の影響なのかどうかなのかは不明だがどうやら呼び出せる怪獣はピグモンやシーボーズの様に人間のような姿になるらしい。所謂擬人化してるのだが、サイズや人格が人間に近くなってるからといって、やはり劇中で暴れていたような怪獣等を呼び出すのはリスクが高いと思われるので、引き続き呼び出す怪獣は出来るだけ大人しかったり、人類に友好的そうな怪獣を呼び出すことにする。

 

ということでこれから呼び出した怪獣の記録を箇条書きで書いていく。なぜ箇条書きだと言うとこれから一人で何体もの怪獣との記録を書いていくので文才に自信が無いのもあって簡単なもので済ませたいのだ。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

「デバン」

・正式名称はデバンダデバンというらしい原型はピグモン同様小型の怪獣だ。

 

・のじゃロリ口調で喋っていた。劇中だと劇団に所属していたがもしかしてそういうキャラ作りなのだろうか。

 

・劇中では死んでない怪獣なのだが、どうして怪獣墓場にいたかのかというと、気が付いたらいたらしい。怪獣墓場は怪獣の概念も流れ着くといった設定もあったはずなのでそういうものなのかもしれない。

 

・一座の面々とは別れてしまったが、また劇をやりたいそうで怪獣墓場で団員を募集しているが全然集まらないらしい。役者になりたい怪獣、いるんだろうか。

 

・色々話したが久しぶりに人間と触れ合えたことに喜んでいた。やっぱり劇中で友好的だった怪獣はコミュニケーションが取りやすいようだ。

 

 

 

「ハネジロー」

・原型はピグモンやデバンより小型の怪獣。正式名称はムーキットというらしいがウルトラマンダイナの主人公アスカが名付けた名前の方がメジャーだと思う。

 

・メガネっ子ロリだった。劇中で小学生くらいの知能と言われていたけど、人間化すると自分と同年代くらいの幼女だった。

 

・他の怪獣たちと違いパムパムとしか言わず、会話ができるのかと心配したが、なぜか背負っているランドセルの中にタブレット端末のような機械を持っており、それを通じて会話することができた。

 

・彼女も劇中では死んでいない怪獣のはずだが、やはり気づいたら怪獣墓場にいたらしい。

 

・別れる際メル友にならないかと持ち掛けられたが、母の意向もあって携帯の類を持っていないのでメル友じゃない友達ということになった。

 

 

 

「ウインダム」

・原型はウルトラセブンの使うカプセル怪獣の一体。ロボットの様な怪獣で劇中初めて殉職(?)したカプセル怪獣である。

 

・メカっぽい怪獣だったためか堅物な雰囲気の眼鏡をかけた少女だった。

 

・いままで呼び出した怪獣たちは性格もあってか初対面でも早々に打ち解けられたけど、彼女の場合は程度の差はあれ、終始警戒されていたようだ。

 

・帰り際に他の怪獣たちにしたように菓子を渡したら困惑していた様子だった。原型がロボっぽい怪獣でも今人間の姿なら少なくとも食べることはできるだろう。…たぶん。

 

 

 

「ミクラス」

・原型はウルトラセブンの使うカプセル怪獣の一体で大きな角が特徴的だ。

 

・ウインダムとは対照的に褐色肌で野生児のような出で立ちの少女だった。

 

・態度もウインダムと対照的で彼女は特にこちらを警戒してはいなかった。

 

・彼女とウインダムの話と合わせて分かったが、ウインダムとミクラスはウルトラセブンのカプセル怪獣としての記憶だけでなく、ウルトラマンメビウスに登場したマケット怪獣の記憶も持っているらしい。怪獣墓場の存在は異なる個体の記憶も統合されるのだろうか。

 

 

 

「アギラ」

・原型はウルトラセブンの使うカプセル怪獣の一体でトリケラトプスのような姿をしている。

 

・フードを被ったアンニュイでダウナーな雰囲気の少女。

 

・前に呼び出したカプセル怪獣に比べると無口。

 

・最初自分を呼んでいたのでセブンかと思っていたらしい。…他のカプセル達も自分をセブンと間違えて呼びかけに応じたのか?

 

・最初は警戒気味だったが先にウインダムとミクラスを呼んだことを伝えたら警戒を解いてくれた。

 

・帰り際お菓子を渡したら、次はお茶が飲みたいと言われた。お茶飲んだことあるのか。

 

 

 

「セブンガー」

・カプセル怪獣に似た怪獣ボール。強いが地上では1分しか活動できない。

 

・カプセル怪獣たちがお姉さんという感じなら彼女は幾分か背の低い女の子だった。

 

・人間と間近に接したのがとても久しいらしく、興奮した色々話そうとしていたが、1分程でボールに戻ってしまった。制限時間健在なのか…。

 

・そのしょうがないので菓子を括り付けて『門』に押し付けたら戻って行った。彼女とコミュニケーションを取るのは別の意味で大変そうだ。

 

 

 

「ローラン」

・宇宙で一番美しいと言われる怪獣…だがその美しさの基準は地球のものでは無いと思う。

 

・露出度の高い衣装にモデル並のプロポーションを持った女性。ワニ顔より遥かに納得できる美しさだ。

 

・他の呼び出した怪獣たちとはまた違った物腰柔らかさで正にお姉さんといった雰囲気だった。

 

・帰り際、菓子のお礼として風車をもらった。自転車につけるとスピードが上がるそうだけど、そういえば自分自転車持っていなかった。今度買ってもらわないと。

 

 

 

「ガーディー」

・珍しく、カラータイマーを持つ怪獣。カプセル怪獣の亜種なのかもしれない。

 

・犬耳っぽい髪型の少女。

 

・なにか仕草もどことなく犬っぽくなっているが、聞いてみると昔犬と融合した時以来こんな感じになったらしい。そういえば子犬と合体してたっけ。

 

・仲間(イーヴィルティガ?)を探しているらしいが、見つけられていないらしい。イーヴィルティガは怪獣墓場にいないようだ。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

こんな感じで自分は怪獣たちとの交流を進めて行ったが、まだこの時の自分はあんなことが起きるとは思っていなかった。

 

 




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8話 古代怪獣参上

それは『門』の向こうの怪獣たちとの交流が始まってからしばらく経ち、今世での小学生として何度目かの夏休みに入った時期だった。

 

その日自分は早い所夏休みを満喫するべく、宿題の処理に取り掛かっていた。

 

「ふぃー。終わった…」

 

この時点で自分は算数、漢字ドリルを終わらせたところで夏休みに入ってから数日目にして宿題を半分以上終わらせた所だった。残りは自由課題で何か絵を描いたり、小物を作って済ますか、読書感想文を何枚か書くかといったところだ。

 

そんな時、後ろからミシッという感じの音がした。なんだろうと思いながら振り返ってみると、見知らぬ少女が『門』の側で尻もちをついていた。

 

「ヴォォ…どこだろ?ここ」

 

辺りを見回す少女の格好は頭に三本の角が生えており、スクール水着のような服を身にまとい、さらに四肢は恐竜の着ぐるみを付けたようになっていて下半身後方からは大きな尻尾が伸びていた。

直ぐにこの風体は怪獣だと思ったが、はて、彼女は『門』の向こうから来たのだろうけど自分はこの子を呼ぶような念を送ったわけじゃないし、どうして彼女はここにいるのだろう?

 

「ねえ君…」

 

「?」

 

声を掛けると少女はこちらに気づいて顔をこちらに向ける。その表情は初めはきょとんとした顔だったが直ぐに笑顔になって

 

「ここでお菓子貰えるの!?」

 

「えっ」

 

と少女はこちらに詰め寄って来た。お菓子?と自分は少し混乱しはじめていた。

 

「ねーちょうだい!ちょうだい!」

 

「いやいきなり言われても…」

 

とりあえず自分は彼女をなだめることにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

なんとか彼女をなだめることが出来た自分は彼女から話を聞くことにした。

彼女の名前はゴモラ。番組の主役になったこともある、ウルトラシリーズの中でもかなり有名な怪獣だ。そんなゴモラがなぜこの世界に来たのかというと、

 

「ここに来ればお菓子貰えるって聞いたんだ!」

 

なぜか最近怪獣墓場の方で小さい『門』の向こう側でお菓子を貰えるという噂が出回っているらしく、それでゴモラもお菓子を貰うべく『門』を抜けて来たらしい。

…もしかして自分が呼び出した怪獣達にお菓子のセットを配っていたせいなのか?

後、こちらが念じなくても普通に向こう側から来れるんだ…

 

「ねえ、お菓子貰えないの…?」

 

そんな悲し気な顔で見られても困る。予定があったならまだしも彼女の登場は完全に予定外だ。怪獣達にあげていたお菓子のセットは当然ない。

が、自分が今まで呼び出してきた怪獣達と違ってゴモラは大阪等で大暴れした実績のある怪獣だ。人間の姿になった怪獣はピグモンみたいに元々非力だったものを除くと人間以上の身体能力を持っていることが分かったので(例としてシーボーズと食事した時最初の時は食器を捻じ曲げてしまっていた)、下手に機嫌を損ねて彼女に暴れられる訳にはいかない。

 

「お菓子はないけど、他に欲しいものはある?」

 

「んー、じゃあ…カレー」

 

「カレー…食べたことあるの?」

 

「食べたことないけど、美味しいっていうのは知ってる!」

 

よし、それでいこう。自分はゴモラにちょっと待っててと言って、同居人を探しに自室のドアを開けると、ゼットンが立っていた。いつも彼女を呼びに行くとタイミングが良すぎるくらい近くにいることにふと疑問を覚えたが、今はそれどころではない。

 

「ゼットン。今買い物に行ってる母さんに今日の夕飯カレーライスにして欲しいのと夕飯に友達が来るって伝えてきてお願い」

 

「…分かりました」

 

そういうとゼットンは1階の方へ向かう。家の方針で自分は携帯を持っていないが、急ぎの用事はゼットンに伝えれば親に連絡が行くことになっている。

母さんが出かけてからさほど時間はたってないのでこの夕飯のリクエストは間に合うと思う。…たぶん。

ゼットンを見送った後、後ろを振り返るとゴモラがこっちを見ていた。

 

「ねえ、今の子って怪獣?」

 

「えっと…」

 

そう言われても返答にこまる。ゼットンはそのまんまの名前だし、確証を得ていないが『門』の向こうの住人と同じような存在なんじゃないかと思うのだが、どうにも疑惑の先に踏み切れないのが現状だ。いままでの関係が壊れるんじゃないかとも思うし、まさかとは変な地雷を踏んで自分の身に危険が及ぶなんてしょうもないことも考えてしまう。

 

「どうなんだろう?それよりも夕飯まで時間あるし何かして遊ばない?」

 

と強引に話題を変えてみる。夕飯まで大分時間あるのは本当だし、どのみち穏便に時間を潰さなきゃいけないのは変わりない。

 

「じゃあ、穴掘り!」

 

「この近くじゃできないかな……」

 

この場合、砂場でスコップ使って穴掘りするんじゃなく、ガチで地中潜行する気だろう。田舎の野原とかならともかく住宅街でそれはまずい。

 

「じゃあ、戦いごっこー!」

 

「うーん…それも場所がなぁ…」

 

それって暴れられるのと大して変わらない気がする。所謂ごっこ遊びなら相手は友達怪獣にやってもらうっていう手もあるけどそれによってでる被害が未知数だからな…。

二度目の断りをするとゴモラは機嫌を悪くしたようで、

 

「むー、じゃあどうすればいいのさー!」

 

と不満気な表情で尻尾をぶんぶん降っている。このままでは夕飯を迎える前にまず自分の部屋から破壊されかねん。なんとか他の遊びを提示して時間を稼がねば。

縄跳び…は尻尾引っかかって直ぐ終わりそうだし、マリ○パーティ…は元々孤島育ちの恐竜に操作とか覚えさせる時間はあるか?うーむ……

 

「そうだ!手押し相撲とかどう?」

 

「手押しずもー?」

 

自分は手押しの相撲のルールを説明した。

 

「へー、つまり相手を倒せば勝ちなんだね」

 

「いや単にバランス崩して足が動いちゃったら負けなんだけど」

 

「じゃあ、それでいいよ」

 

よし、これでなんとか夕飯まで時間を稼げそうだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

舞台を庭に移し自分達は手押し相撲をするべく向かい合った。

 

「よーし負けないぞー!」

 

「(ゴモラが夕飯まで飽きませんように…)あっそうだ」

 

「?」

 

「ゴモラさんの方が背が高くて力あるからハンデとして足閉じててね」

 

「むー、分かったゴモ」

 

急に変な語尾つかうようになったな。

 

「こっちのほうがいいザウルス?」

 

地の分を読まないで、ていうかそういう問題じゃないから。ゴモでいいよ。

では気を取り直して、

 

「じゃあ始めるよ」

 

「よおし!いくぞゴモォォォ!!」

 

とゴモラは勢いよく手のひらをこちらへ押して来た。これはまともに押しあったら小学生いや一般人の腕力じゃ押し負けるだろう。ならばと、

自分は構えていた手を後ろに引いた。すると

 

「えっ?ゴッゴモヴォ!」

 

と勢い余って盛大にこけた。

 

「そ、そこまでするつもりじゃなかったんだけど…大丈夫?」

 

「い…今のは反則じゃないの?」

 

「いや、反則ではないよ」

 

これも手押し相撲の立派なテクニックである。力がいると見せかけて相手の攻撃を空かす等は非力な人でも勝ちにいける戦略なのだ。

 

「むむむ、今度はそんな手に引っかからないゴモ!」

 

よしよし、どうやら手押し相撲に食いついてくれたようだ。このまま母が帰ってくるまで待とう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

手押し相撲を初めてから2、3時間程経っただろうか。日が暮れ始め、お互いの勝敗がそれそれぞれとっくに10を超えた頃、

 

「ただいまー」

 

と、母さんが帰って来た。どうやら自分は耐え抜いたらしい。

 

「おかえりー。今日いきなりリクエストしてごめんね。」

 

「ううん。確かに急だったけど大丈夫だよ。そこにいるのは新しい友達かな?」

 

「うん。彼女は「ゴモラだよ!」…だって」

 

「…そうか。ゴモラちゃんか。今日夕食一緒に食べるんだね?」

 

「うん!早くカレー食べたい!」

 

「それじゃあ身体汚れてるみたいだし、先にお風呂に入ってからだね」

 

そういえばゴモラは手押し相撲の最初の方ですっころんでいたな。

ちょっと気になったことがあるので聞いてみる。

 

「ゴモラさん。シャワーの使い方とか分かる?」

 

「?シャワー?」

 

ゼットン辺りに一緒に入って貰った方が良さそうだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「これがカレー…とっても美味しいゴモ!」

 

食卓に座ったゴモラは早速カレーを頬張ったが、好評なようだ。食べ終わったらこのまま帰ってくれば良いのだが。

 

「作った方としてシンプルな感想ありがとう。眼兎龍茶もたっぷり飲んで構わないよ」

 

「どうゴモラさん?お菓子はあげられなかったけど満足した?」

 

「うん!とっても楽しかったよー!また遊びに来たいな!」

 

えっ、また来るんだ…なんだかんだ仲良くなった感じだけど不安がでかい…

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――ねえ知ってる?小さな『門』から「娑婆」にいけるんだって――

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

こうして、夏休みのゴモラの出現をきっかけに自分の日常は更に混沌としていくのだった。

 




ご感想お待ちしております。


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9話 SIDE:おとん(♀)

擬人化計画公式がほぼ沈黙しちゃってるのが本当につらい…


ある計画の為この星ひいては宇宙の調査に訪れてから地球時間で早数年が経過していた。

といってもこの宇宙とは別の地球の偵察の為に数十年かけた記憶もあるのでまだまだといったところなのだが。

 

私はゼットン星人。現在ある組織のエージェントとして活動している者だ。詳細は伏せるが組織というのは怪獣墓場を拠点とする墓場の者たちの集まりである。乱暴でメタな言い方をすれば、『いつもの(?)宇宙人連合』といったところだ。

 

そんな感じで今調査を行っているが、やはりこの地球は我々が知っている地球とは大きく違うところは所謂「怪獣」といった存在がいないことだろう。調査の結果、この星の歴史にそういった者が出現した報告は無いに等しく、隠蔽の線も疑ったが、更なる調査でそれもなくなった。異星人に置いても同様で、少なくともこの地球が存在する銀河系近傍には恒星間旅行を行える文明は皆無であろう。

 

侵略者としてはこういう星の侵略は容易いと思われるが、事はそう簡単ではない。現在我々の組織が進めている計画は所謂単純な侵略とは趣が違うものであるし、そもそもこの宇宙のデータはまだ全然集まっていない段階にある。

 

地球の主要な調査は大体終了したといえるが、この宇宙全体に関してはあくまでこの地球視点からの資料しかなく、そろそろ本格的な地球外の調査も必要になるが、これは近日完成する別の拠点と追加人員によってある程度は解決すると思う。

 

次に怪獣墓場とこの宇宙を結ぶ『門』。別名グレイブゲートのことだ。このグレイブゲートは怪獣墓場に複数存在し、それぞれが別の異なる宇宙の出入り口となっている。

 

それでこの地球が存在する宇宙に繋がるグレイブゲートだが、この『門』は他のものと比べると極端に小さいのだ。それが今まで発見を遅らせてきた原因といえるが、それだけではなく通り抜けられるものにも制限があるらしく、かなりの規模までダウンサイジングしないと他の『門』では通り抜けられる物は通る事が出来ないらしい。

お陰で組織の本部のある怪獣墓場から物資を調達するのには苦労している。

 

そして、我々は現在その『門』と密接な関わりがあると思われる少年を保護している。

彼の名はサツキ、私とメトロン星人が彼を擁護施設から引き取って数年経つ訳だが、地球の調査と比べ、彼の『門』に関する調査は余り進んでいないのが現状だ。

 

分かっているのは主に、

・『門』は常に彼の周囲数メートルに浮遊する形で存在している。彼の意識が途切れていても同様。

 

・『門』を彼以外の地球人は視認できない。認識しているのは彼と我々を含む『門』から出て来た存在だけの模様。

 

・彼は『門』に対してテレパシーのようなものを行使することができ、『門』の向こう側の存在と交信することが可能。

 

ということくらいだ。

健康診断と偽って、何度も精密検査にも掛けているが、彼と『門』の関係については未だに不明な点が多い。

組織の中では解剖してみてはという意見も上がっていたが、彼の身に何かあれば門がどうなるか分からないため、それは悪手であるだろう。

 

しかし、これから計画を遂行するためにはこの『門』ひいては彼の存在が必要不可欠と思われるため、彼の成長に伴い何らかの実験をするための手段が必要になってくる。

 

ゼットンからの報告によれば彼自身も自分の能力を自覚はしているらしいが、我々が分かっていること以上のことは知っていないらしい。

一番好ましいのはサツキ自身からこちらに積極的な協力をしてもらうことだが、まだ彼に我々の正体を明かすなどして協力へ持っていくのは時期尚早と言える。

これは彼がもっと成長した段階の話になってくるだろう。

 

いずれにしても時間はあるとは我々の前途には未だに問題は多い。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

――「ただいま」

とこの国の時間で深夜になる頃私はこの地球での拠点に帰って来た。おかえりと、組織の同僚が私を出迎えた。

彼女はメトロン星人。組織に所属する者の一人であり、今回の計画で共に地球に訪れた相棒だ。今回の潜入の役割として私の妻として家事をしたり、収集したデータの整理などしている。

彼女の働きにもまた大変助けられてはいるのだが――

 

「ゴクッ、ゴクッ、…おいちーっ!」

 

「…お前またサツキが口をつけた湯呑で眼兎龍茶を飲んでいるのか…?」

 

「あっ、…バレたかい?」

 

「表情で分かるよ…」

 

何故か彼女はサツキを妙に気に入っているらしく、彼が口づけた湯呑で眼兎龍茶を飲む、夜な夜な眠っている彼の頬に接吻をする、彼の周りに電子機器を近づけたがらないなどの奇行を行っている…

 

彼との関係に問題が生じる恐れがあると諭しても、一向にやめようとしない。結局彼女の奇行をやめさせるのは諦めてしまったが、これらのことがサツキにバレたらと思うと気が重い。最悪記憶を消せばよいとはいえ本当に彼女の謎の執着はなんとかならないものか…

メトロン星で地球製のちゃぶ台が大流行したことといいあの種族はなぜ地球関係で妙な執着を見せるのだ?

 

彼女に比べればゼットンは胃を痛ませることのない本当に信用の置ける存在だ。

ゼットン…我が故郷における最強の怪獣であり、怪獣墓場の住人となる前からの配下だ。

今回は潜入任務に辺り、人化したままでこの地球に来ているがダウンサイジングしたことによりパワーなどは落ちているとはいえ、鍛え抜かれた戦闘技術や数々の能力は健在であり、頼もしいことこの上ない。

 

そんな彼女だが現在はサツキの監視と護衛に就かせている。任務の方は順調で、サツキを外敵から守っていると同時にサツキに気づかれずにサツキの挙動をこちらに伝えている。

お陰で最近サツキが自らの力を行使して怪獣墓場の怪獣とのコンタクトを図っていることなどが分かっている。

 

少し気になるのが報告の中に靴下をどっちの脚から履いた、昼食は何から口をつけていた、風呂では何処から身体を洗い始めていたなどの細かいと言おうか、どうでもいい情報まで報告してくるのだ。そんなことまで報告しなくともと思ったが、本来は諜報の真似をやらせるべき人材ではないし、肝心な情報を逃した訳でもないので、大目にみている。思わぬ効果もあったわけだしな。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

自室に入り眠ろうとしたところ、所持している端末に連絡が入った。

…ガッツ星人か。

 

ガッツ星人は組織の同僚の一人で何故か、サツキの情報を寄越せと躍起になっている。組織本部には定期的に情報を送っているのだが、彼女はそれでは足りぬとぬかす。

本当に面倒くさいのだが、ゼットンが送ってくる「どうでもいい情報」をそのまま送ってやると不思議としばらくは黙り込む。またしばらくすると騒ぎ出すのだがその度にゼットンからの報告を出すの繰り返しでなんとかなっている。

ガッツ星人も近日こちらへの増員として派遣される予定だが、そうすればこのやり取りもしなくて済むのだろうか?

 

いつものように「情報」を送信すると、私は睡眠の為(地球人に比べれば数分で済むが)、寝床へ向かった。




駄文閲覧ありがとうございました。
ご感想お待ちしております。


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10話 鑑賞とどくろ怪獣

なんやかんやで10話到達です。
閲覧してくる方・お気に入りに入れてくれた方・評価してくれた方
感謝です。


~~~♪

 

~~~~~~~~♪

 

~~~~~~~~~~~~~♪

 

「…………」

 

(もうそろそろ終わりですかね。レッドキングさんすっかり入っちゃってます)

 

(ほんとにはまってるね…本当にこの子レッドキングなの…?)

 

今自分達は自宅で映画を鑑賞していた。観ている映画は女子を中心に人気を博し、何年も続くアニメシリーズ『○リキュア』の映画である。

 

観ているメンバーは3人。自分とピグモンと最近知り合ったばかりの怪獣レッドキングだ。

 

なぜこんなことになっているのかというと、レッドキングと初遭遇した頃に遡る。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

リビングで何か見ようとテレビをつけようとした時、

 

「よう!お前がサツキだな!ピグモンから聞いてるぜ!」

 

といきなり褐色肌の少女が現れた。自分は

 

「えっ?」

 

とそのままリモコンのスイッチをオンにした。当然テレビは点く訳で、その時テレビでやっていたのが『○リキュア』の再放送だった。

褐色の少女は

 

「ん!?」

 

と警戒するように画面を見ていたが、次第に表情が変わっていき、そうなにかにときめいたかの様な雰囲気になっていた。

 

「……」

 

そのまま少女は『○リキュア』を黙ってみていた。途中で状況を掴み切れていない自分が

 

「あのぅ…誰で」

 

と問いかけようとしたら、

 

「うるさい後にしろ!」

 

と言われてしまった。なんか理不尽だ…

 

そして結局彼女はその回を1本見終えてしまい。変な空気の中自分は再び彼女が何者なのか尋ねようとした時逆に彼女が

 

「…おい。これ続きはいつやるんだ?」

 

と尋ねてきた。

自分は

 

「たぶん来週続きをやると思うよ…」

 

と答えた。すると彼女はきまり悪そうな又は恥ずかしそうな表情で

 

「な、なぁ…じゃあまた来週さっきやってたのを見に来ていいか…?」

 

と尋ねてきた。それが彼女…レッドキングとの出会いだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

その直ぐ後ピグモンがやってきて、彼女がレッドキングであること、ピグモンと彼女が所謂友人であることを教えてもらった。ウルトラマン本編では殺し殺された仲だったにもかかわらず、友好関係を築いているとはピグモンがコミュ強なのかレッドキングが割とチョロかったのか。まあそれは置いといてレッドキングがこっちに来たのはピグモンから自分の話を聞いて、友人…もとい子分にしに来たらしい…。それで意気揚々とこっちに来て、○リキュアにドハマりしたと。

 

まあそこで自分はレッドキングを手なずけるもとい友好関係を築くために、レンタルした劇場版○リキュアの鑑賞会をやることにしたのだ。ピグモンを通してレッドキングを誘い、お菓子なども用意していざ1本みることになった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

~~~~~~~♪

 

~~~~~~~♪

 

~~~~~~~♪

 

映画本編が終わり、エンドロールに入って鑑賞はひと段落ついた。

 

「面白かったですねー。レッドキングさん。サツキ君。」

 

「うん、俺もそう思う」

 

とピグモンの感想に相槌をうつ。自分も○リキュアシリーズについてはさほど詳しくは無かったのだが、実際に観てみると割とヒーローものとして王道な展開で男子の自分にも中々楽しめた。

 

「レッドキングさんはどうでした?」

 

と肝心のレッドキングに感想を尋ねてみる。

 

「…す」

 

「す?」

 

「すげぇかっけぇぇぇぇぇ!」

 

「うわ!」

 

いきなり大声だすからビビった…

 

「レッドさん本当に好きなんですねー」

 

ピグモンの方は慣れているのかそこまで驚いてはいないようだ。

 

「なんつーの?最初はあんなほっそい身体であんなに戦えてるのが疑問だったんだけどよー、観てるうちにそんなこと頭からふっとんでたぜ!」

 

なんやかんやでやっぱ好評だったみたいだ。

 

「レッドキングさんが気に入ったならなによりだよ」

 

「ああ!サツキに会いにいって正解だったぜ!こんな素晴らしいものが観れるなんてよー。もうこれだけで子分序列1位だぜ」

 

あっ、子分なのは変わらないんだ…しかもいつの間にか1位…

 

(レッドさんの言い方はあまり気にしないでくださいねー。ちょっと友達づくりが不器用なだけですからー)

 

とピグモンが耳打ちしてくれた。ガキ大将気質ってことなんだろうか。

 

「おいサツキまだあるんだろ!早くみせてくれよ」

 

「ちょっと待ってよ、少し休憩したいから。席外させて」

 

レッドキングは他の映画を催促するが、自分はトイレとかを済ませたいので休憩することにした。

 

「しょーがねーな。早く済ませて来いよ」

 

「じゃあサツキ君が戻ってくるまで待ってますねー」

 

「うん、じゃあ行ってくるから」

 

そう言って部屋のドアを開けると、

 

「……」

 

ゼットンが立っていた。

 

「うわっ!ゼットンいたの!?なにか用があるなら入ってくれば良かったのに」

 

「…そういう訳でも無かったのですが」

 

「ゼットン!?」

 

「なに!?ゼットンだと!?」

 

後ろで二人が驚いている。そういえば二人にはゼットンのこと紹介してなかったよーな…

 

「サツキ君あのゼットンと知り合いだったんですか!?」

 

「ああ、知り合いっていうか家族なんだけど」

 

「家族!!?」

 

ピグモンはいつものほんわかした雰囲気がなくなっている。ゼットンはウルトラシリーズでもかなりの知名度を持つ怪獣だが怪獣の世界でもそんなに有名なのだろうか。

 

「ゼットン…話には聞いてたが会うのは初めてだな…俺を含めた数々の怪獣を葬って来た『ヤツ』を倒したことのある怪獣…!」

 

レッドキングはなんというかファイティングポーズ的なものをとっている。これは例によってバトルが発生する危機…?

 

「一度は戦ってみたいと思ってたんだ…来な…!」

 

「…………」

 

こ、これはまずい…

 

「レ、レッドさん落ち着いてください!サツキ君もいるんですよ!?」

 

「そ、そうだよ二人とも喧嘩は止めて!」

 

「止めるな!俺も怪獣としてどうしても戦ってみたいんだ!」

 

「向こうからくるというのなら…やむを得ませんが…」

 

「ゼットンも止めて!あ、そうだ!レッドキングさん。もし戦うなら今見ようとした○リキュアの映画見せないよ!」

 

「!?なにぃ!!?」

 

レッドキングは動揺している。よし畳みかけよう。

 

「それにもう放送している方の○リキュアも観にこさせないからね!」

 

「な…なんだと…」

 

「それから…」

 

「わ、わかった!戦いは止めるから!だからな!勘弁してくれ!」

 

「ゼットンは?」

 

「…私は向こうから来ないのならそれでいいです」

 

どうやらなんとかなったようだ…。ピグモンの方も胸をなでおろしている。

 

「本当にびっくりしましたー。喧嘩にならなくてよかったです」

 

「本当だよ…。あっそうだ。ゼットンは○リキュア観ていかない?面白いよ?」

 

「…サツキがそう言うのならば」

 

よし、これで○リキュアを皆で観て仲が深まるといいんだけど…

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

あっそういえばトイレいくの忘れてた…

 

「ねえゼットンはどのキャラが好き?」

 

「…あの敵の奴ですかね。ガマちゃんっぽくていいです」

 

「…そうなんだ」

 




閲覧ありがとうございました。
感想・意見待ってます。


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11話 重い子との距離は

スランプ気味ですが、それでも続けられるなら続けたいと思っています。


こんにちは、皐月です。

 

「ぐー…ぐー…」

 

早速ですがピンチです…

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「スカイドンさん。眼兎龍茶です」

 

「あら、どうも」

 

まだ夏休みの最中。自分は最近知り合った怪獣。スカイドンと家の縁側で過ごしていた。

 

このところ、ゴモラやレッドキングといった原作では暴れていたが擬人化してそうでなくなった怪獣に会ったお陰か怪獣達への警戒は大分薄れていた。

みんな割と人(?)当たりがいいな。この間出会ったバキシムも流石に警戒したけど話してみたら割とフレンドリーだったし。

 

「ねえサツキくん」

 

「なんですか?スカイドンさん」

 

「ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「お願い?」

 

「一度私の抱き枕になってくれない?」

 

「ぶーっ!」

 

思わず口に含んでいた眼兎龍茶を噴き出してしまった。

 

「サツキくん、行儀悪いわよ」

 

「そんなこと言われれば噴き出しますよ…」

 

そりゃ誰だって抱き枕宣言されれば驚くだろう。

 

「なんでいきなりそんなことを?」

 

「サツキくん…私はね、質の高い眠りを求めているの」

 

そういえばスカイドンと言えば重さの話が出るが劇中よく眠っていた怪獣でもあった。

 

「君と初めて出会った時からね、良さそうだなぁって思ってたの」

 

「良さそうって…?」

 

「抱き心地」

 

「そうなんですか…」

 

「うん、だから一緒に眠りたいなって」

 

「で、でもなんか恥ずかしいんですけど」

 

「大丈夫、少しの間ギュってするだけだから」

 

「いやでも…」

 

「人間と怪獣だからいいじゃない。お試しでね?」

 

「は、はい…」

 

結局折れてしまった…しょうがないだろう。自分も男だし、美少女に抱き枕にされるという魅惑のシュチュエーションに抗いきれなかったのだ。

 

しかし、自分はここでどうにかして断っておくべきだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「それじゃあいくよー」

 

「う、うん」

 

スカイドンが自分に覆いかぶさって来た。そしてその腕が自分の身体に回されて――自分の視界に空が映っていた。

 

「え?」

 

―――!?おっ重い…!?

その時ようやく自分の身体がスカイドンと一緒に庭に横たわっているのに気づいた。

今、自分に掛かっているこの重さは十中八九自分に抱き着いて来ているスカイドンのものだろう。

油断した。スカイドンは重いのが特徴の怪獣だというのに、その外見に騙されてまんまとどつぼにはまってしまった。メガトンとはいかないが彼女の質量はその華奢な見た目から想像もつかないほどの重さであった。

 

「ちょ、スカイドンさん…ちょっとタンマ…」

 

たまらず自分はスカイドンに事の中止を求めるが、

 

「すーすー…」

 

「スカイドンさん!?」

 

彼女は既に眠っていた。なんという寝入りの速さだ。しかし起きてもらわないとまずい。

 

「スカイドンさん!起きてください!」

 

「ぐー…」

 

「スカイドンさんってば!」

 

「ふふふ…えっちーすぅ…」

 

ダメだ。全然起きてくれない。ここまでならわざわざ質の良い睡眠とか求めなくともいいではないだろうか。

 

そんな訳で冒頭にいたるのだが、本当にどうしよう。今はまだいいが、このままスカイドンが寝返りでもしようものなら最悪圧死しかねない。両親が帰ってくるまで時間あるし、ゼットンも何処にいるか分からないし。

そんな感じに悩んでいると、

 

「んー…友達ぃ―?…」

 

スカイドンが寝言を言ったので思いついた。

そうだ!こんな時こそ友達怪獣を呼べばいいじゃないか。ちょっと力の有りそうな子をよんでスカイドンをどかしてもらおう。

 

そうと決まれば早速自分は『門』へ向かって念じた。

 

すると、

 

「やっほー!サツキよんだー?」

 

とバッファローのような角を生やした褐色女子が現れた。カプセル怪獣の1体、ミクラスである。

 

「あっミクラスさん…」

 

「やあ!サツキ…ん?んん!?」

 

ミクラスはこちらに気づくと面食らったような表情になって頬を赤らめた。

なんか…勘違いされてないか…?

 

「ちょ、ちょっとサツキ!そういうのはまだ子供には早いと思うぞー…」

 

「いや違うんですミクラスさん!話を聞いてください!」

 

と自分は事の経緯を説明した。多少なりとも下心があったのは隠して…

 

「そ、そうなのか…?じゃあサツキはこの子をどけて欲しいんだな!」

 

「そうです。お願いだから助けて…」

 

「ぐー…」

 

「よぉーし!この私に任せろー!」

 

どうやらやる気になってくれたようだ。

 

「んぅー!」

 

「ミクラスさん頑張って!」

 

「zzz…」

 

ミクラスはスカイドンの身体を掴みどかそうとするが、その腕力をもってしても苦戦する重さのようで、中々持ち上がらない。

 

ウルトラマンでも苦戦した重さだし、ミクラス一人ではダメなのか…?

ならば数だ!こうなったらカプセル怪獣の残りも呼び出してみよう。

 

自分は再び『門』に念を送った。すると――

 

「なにか用か?サツキ」

 

「助けを呼ばれた気がしたんだけど…どうしたの?」

 

と、ウインダムとアギラが来てくれた。三人がかりならきっとどかせるはずだ。

 

「あっウインちゃん!アギちゃん!ちょうどいいから手伝ってくれー!」

 

「二人ともお願いします…」

 

「すーすー…」

 

「?一体何してるの?」

 

「状況が分からんぞ…」

 

二人とも困惑してるみたいなので訳を話す。

 

「――という訳なんです」

 

ウインダムは呆れた顔で

 

「お前何をしてるんだ…スカイドンの重さを知ってたのにそんな頼みを受けたとか、歳の割にかしこい子だと思ってたのに…」

 

とこぼす。ミクラスは

 

「そんなこと言わずに助けようよ!サツキだって友達だぞー!」

 

とフォローしてくれる。アギラは

 

「でも三人でもこの子どかせられるかな?」

 

と疑問を呈す。

 

「皆さん本当にお願いします!このままだと死ぬかもしれないし…」

 

「しょうがないな…」

 

どうやらカプセル怪獣たちはやる気になってくれたようだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「んーしょ!」

 

「ぐぬぬ…」

 

「重たい…」

 

カプセル怪獣達は三人がかりでスカイドンをどかそうとしているが、それでも彼女の重さは凄まじいのかさっきよりは重さが軽くなった気もするが中々スカイドンはどいてくれない。

とうとうカプセル怪獣達は疲れたのか座り込んでしまった。

 

「はあ…はぁ…しんどいなあ…」

 

「なんて重さ…セブンさんのウルトラ念力でもどうにかできるかどうか…」

 

「zzz…もう寝れないよ…」

 

「てか結構騒いでるのに全然起きんなコイツ…」

 

そういえばカプセル怪獣達が登場して結構経つのだがやっぱりスカイドンは寝たままだ。本当にいつ起きるんだろう…

 

「あー…こうなったら奥の手だ。サツキ、動くんじゃないぞ」

 

とウインダムが立ち上がった。

 

「えっ、ウインダムさんどうしたの?」

 

「いいか、絶対に動くんじゃないぞサツキ」

 

そう言うとウインダムの頭から光線が発射された!

 

「うわぁ!」

 

思わず目をつぶったがどこも痛くない。眼を開けてみるとスカイドンの顔が煤を被ったようになっていた。どうやら光線が命中したらしい。

すると、

 

「んぅ…ふぇ?あれ寝ちゃってた?」

 

スカイドンが目を覚ました。顔面に喰らった光線が目覚ましになったようだ。

 

「やっと起きたか…ごめんサツキ。いっそのことこうした方が早いんじゃないかと思ったんだ」

 

ウインダムが謝ってくる。ちゃんとスカイドンが起きたからいいけど、下手したら自分に命中してたかもしれないしいきなりやるのはやめてほしい。

 

「私もびっくりしたよー。ウインちゃんいきなりレーザーショット出すんだもん」

 

「セブンさんが見てたらたぶん怒られると思う…サツキは怪我はない?」

 

「うん、ないけどスカイドンさんは大丈夫?」

 

「んん…なんの話ですかサツキくん?というかこの人達は誰ですか?」

 

スカイドンは殆どダメージを受けてないようだ。ウインダムが手加減してたかもしれないけど頑丈だな。なにはともあれこれで自分は圧死の危機から解放された訳だ。

 

「スカイドンさんがいきなり眠っちゃって…友人を呼んで助けてもらったんです」

 

「あら…そうだったの。ご友人の手を煩わせちゃってごめんないね。サツキくんの抱き心地が良かったものだからついね…」

 

「そうなんですか…」

 

「いいんだ…抱き心地…」

 

「それでね、サツキくんにお願いしたいんだけど、また今度抱き枕になってくれない?」

 

「勘弁してください」

 

彼女の昼寝の度にカプセル怪獣を総動員する事態になるのは流石に…。

 

「えー、減るものじゃないのにー」

 

「減るというかなんというか…」

 

「しょうがないなー、今日はもう帰るけど、サツキくんの気が変わるのを待っているわ」

 

そう言い残してスカイドンは門の向こう側へ行ってしまった。

これエライことになったんじゃないだろうな…

 

「私たちも帰っていいか?」

 

「あっウインダムさん今日はありがとうございました。帰る前に眼兎龍茶飲んでいきませんか?」

 

「わー!私飲んでくー!」

 

「僕も」

 

「お前たち…そうだな、じゃあ頼むよ」

 

「わかりました」

 

そう言って家の中の茶とお菓子を取ってくるときふと、今度スカイドンが来て一緒に寝るのを頼まれたとき自分はちゃんと断れるのだろうかとか、抱き着かれている最中重さで気がそっちに行ってたけどなんかいい匂いしたな…とか考えてしまうのだった。

 

 




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12話 一角娘とだだっ子

お久しぶりです。コロナ禍に負けないよう頑張りたいです。


夏休みも後半になって今日は何をしようかと玄関を出た時、

 

「やあ」

 

ぱりーんという音と共にそんな声が聞こえてきた。

声のした方を見てみると其処に一人の少女が立っていた。

 

「こんにちは。バキシムさん」

 

鮮やかな青い服と橙色の髪、その頭から生える角。そんな特徴をもった彼女の名はバキシム。超獣というカテゴリに分類される怪獣だ。

彼女もこの夏休みの内に知り合った怪獣の一人で、原作では人を騙していたキャラでもあったので始めは警戒していたが、考えてみれば自分を態々騙すメリットはあるかと言われると特になさそうだった。

 

「呼び捨てでいいよ。敬語も使わなくていいしさ」

 

「そうかな?じゃあ今日は何か用があるの?」

 

「今日は暇ができたから、サツキの所にいこうと思って」

 

「そう。俺はどっかに遊びに行こうとしてたんだけど、バキシムも来る?」

 

「いいね。何かして遊ぼうか!」

 

この夏に何人かの怪獣と知り合ったけど、バキシムはその中でもピグモンと並んで人(?)当たりのいい性格でコミュ強とも言うべきか、他の怪獣たちとも初対面でも仲良くやれてたりする。

その為、他の子供と遊ぶ時に問題なく混ざることができる怪獣でもある。彼女と一緒なら人の多い所でもいいだろう。

 

ちょっと遠出して噴水のある公園にいって涼みながら遊ぶのもいいかもしれない。そんなことを考えていると。

 

「着いたわ!ここが現世ね!」

 

「おや?」

 

「ん?」

 

『門』から知らない少女が出てきた。また新しい怪獣だろうか?

少女の容姿は紫色の髪に角が生えていてセーラー服とスクール水着のような衣装に身を包み背中から蝙蝠のような羽が生えている。

これまた原型が分かりづらいが蝙蝠みたいな怪獣とか?

 

「あの子は誰だろう?」

 

「あの子は確かザンドリアスだよ」

 

知っているのかバキシム!?

ザンドリアスと言えばウルトラマン80などに登場する怪獣だ。初登場時では親と喧嘩して地球に来たという類を見ない理由で出現したんだったか。

取り敢えず彼女と会話してみることにしよう。

 

「あの、ザンドリアスさん?」

 

「…なによ?貴方誰?」

 

「自分は江戸川皐月って言うんですけど…ザンドリアスさんはどうしてこっちに?」

 

「ああ、なんか噂になってる子だよね…どうしたもこうしたも向こうにいるのが飽きたからこっちに来たのよ」

 

飽きたって…原作並みにアレな理由だな。別に門番を気取っている訳じゃないけど、そんな理由で居座られると困る。なんとか『門』の向こうに帰ってもらいたいのだけど。

 

「その、いつまでここにいる予定なんですか?」

 

「ずっと退屈してたし、当分の間こっちにいるわよ」

 

「当分!?」

 

「なによ!?なんか文句でもあるわけ?」

 

これは参ったな…このまま放っておいたら絶対騒ぎを起こしそうだし、かといってだだっ子怪獣の異名の通り素直に話を聞いてくれるタイプとは思えないしなあ。

 

「ねえザンドリアスちゃん」

 

とここでバキシムがザンドリアスに話しかけた。

 

「ん?貴女は?」

 

「私はバキシム。貴女と同じように『門』の向こう側からきた超獣だよ」

 

「ふーん。それで何よ?」

 

「いや、貴女こっちの世界に来たばっかりだから、案内が必要だと思って」

 

「案内?」

 

「うん、私は貴女より先にこっちに来てるし、割とこっちに明るいんだ」

 

そう、バキシムは原作で人間に変身していたこともあってか、人間の世界をあまりしらない怪獣が多いのに珍しく人間の世界に詳しい。それが人の多い場所に連れていってもいい理由の一つである。

 

「だから先輩として言わせてもらうけど、この星は人間の世界だしそこでやっていくためのルールが必要だよ?ねえ?」

 

と、こちらに振られる。

 

「まあね」

 

ザンドリアスは訝しげに

 

「ルールね…、それで何が言いたいのよ?」

 

「だからね、こちらの世界にいる間私たちと一緒に行動しない?メリットは安全にこっちを楽しめるよ」

 

こっちも巻き込むのか。まあ今までもゴモラとか人間世界に不慣れな子の相手もしたし、別にいいんだけど。

 

「うーん…そうね…確かに右も左も分からないから案内はいるかも…」

 

相手は納得しかけているけどまだ問題はある。自分は小声で

 

「バキシム。この子がこっちにいる間住むところとかどうするの?悪いけど犬猫じゃないんだし家に置いてけるか分からないよ」

 

と疑問を呈した。

 

「ああ、それならこっちの世界の私の隠れ家に置いとくよ。彼女一人くらいなら平気平気」

 

…いつの間に隠れ家なんて用意していたんだ?

いくら何でも順応早くない?ヤプール恐るべし…

 

「それならいいんだけど…」

 

「よし決めた!その話乗るわよ!」

 

ザンドリアスはどうやらこちらの提案を受けてくれるようだ。

 

「で?どこに案内してくれる訳?」

 

「そうだね。先ずはこの町を案内したほうがいいかな?サツキも協力よろしくね」

 

「うん。じゃあこの近所を案内するよ」

 

こうして自分達はザンドリアスに町を案内することになった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

商店街や公園など町のスポットを紹介して回る事数時間。

大体のところは回ったかな?

 

「これで、家の近所は大体かな?ザンドリアスさんはどうでした?」

 

「そおね、まあまあだったかな。殺風景な向こう側よりは全然良かったわよ」

 

ザンドリアスは案内の途中色々と興味を示していた。気に入ったものはあったのだろうか。

 

「じゃあ満足しました?」

 

「全っ然よ!せっかく来たのに半日其処らで満足する訳ないじゃない!」

 

うーん。どうやらまだまだこちらの世界に飽きる気は無さそうだ。

 

「そういえばサツキだっけ?あんた年下でしょ」

 

年下…そうなのだろうか?一応自分は精神はともかく小学生で、ザンドリアスは実年齢は分からないが外見は中学生くらいなのだが。

 

「そう…なんでしょうか」

 

「なんかあんたみたいな子供に敬語使われるとムズムズするから使わなくていいわよ。」

 

「そうですか?なら普通に話しますけど」

 

「そうそう。サツキはちょっと固くなりすぎだよー?他の友達にも敬語使う時と使わない時あるけどどうなの?」

 

「いや、同年代くらいならまだしも明らかに年上の見た目してたりすると自然に…」

 

なんだろうね?後は距離の近さとかかな。ピグモンやシーボーズは最初の方にできた友達だし。

 

「話を戻すけど、他にも色々な所見てみたいのよ!なんか他に面白そうな所ある?」

 

「そうは言われても…」

 

もう遠出するには遅いし、自分も結構歩いて疲れて来てるんだけど…

するとバキシムが

 

「それじゃあ今日の締めに私のとっておき出そうかな?」

 

とっておき?

 

「えっ、そんなのあるんだったら早く見せなさいよ!」

 

「バキシムのとっておきって…」

 

「ちょっとまっててねー」

 

バキシムは何処からかパラソルのようなものを取り出すと、それを宙に向かって振った。

すると、ぱりーんっという音ともに目の前が突然割れてその向こう側になんかよくわからない空間が広がっていた。

 

「なっなによこれ!」

 

「何ってちょっと異次元空間の通路を開けただけだよ?」

 

そうか。これはバキシム達超獣が持っている能力で空間を割って出入りすることが出来る。

今朝自分の前に現れたときもこれを使ったのだろう。

 

「じゃあ私の後についてきて。先に言っておくけど私から離れないほうがいいよ?」

 

もしかしなくてもこの穴に入るのか。大丈夫なのか?ザンドリアスも同じ印象を持ったようで

 

「大丈夫なのこれ…?入ったら二度と帰れないとかじゃないよね」

 

「大丈夫大丈夫。私から離れすぎなければ迷子にはならないから。じゃあ行こうかサツキも」

 

自分が行くことは確定らしい。しょうがないが先がどうなっているか気になることもあるので行こうか。

 

自分はバキシム、ザンドリアスと共に異次元空間とやらに足を踏み入れる。するとどうにも形容しがたい感覚が来たが迷子になりたくないのでそのままバキシムについて行く。

体感で数分歩いただろうか、バキシムが再びパラソル擬きを振るうと前方の空間が割れる。

 

「この先だよ。先にどうぞ」

 

そう言われたので、ザンドリアス、自分の順に割れた空間を潜る。すると。

 

「わあぁ~。綺麗~」

 

目の前にはエメラルドグリーンの海を臨む人気のない静かな砂浜があった。

 

「本当に綺麗だなぁ。これがバキシムのとっておき?」

 

「まあそうだね。人間が好みそうな穴場をいくつか知ってるんだ」

 

「人間の町も悪くなかったけどこれもいいじゃない~ママにも見せたいかも…」

 

「二人とも気に入ってもらえたようで何よりだよ。どう?せっかくだから泳いでく?」

 

「水着とか持ってきてないし今日はいいかな」

 

「ちょっとノリが悪くない?私はもちろん遊んでくわ!」

 

自分は疲れているしパスだ。その時

 

「…サツキ」

 

後ろを振り返るとゼットンがいた。

 

「ゼットン!?」

 

「うわ何時の間に!?」

 

「誰!?」

 

と三者三葉の反応をする。彼女が神出鬼没なのはいつものことだけどどうやってここまで来たのか。

 

「バキシムの開けた穴からついてきたのですが」

 

「全然気付かなかったよ…それでサツキの“お姉ちゃん”が何の用?」

 

「はい…メルさんから言伝です。夕食の準備ができたので帰ってくる様にと」

 

あっもうそんな時間か。

 

「バキシム。悪いけどそろそろ帰らせて」

 

「分かったよ。二人とも送るから」

 

「ちょっと、私は!?」

 

「ザンドリアスはここで待っててね。二人を送ったら直ぐに戻ってくるから」

 

「しょうがないわね…バキシム。あとサツキ。今日は案内してくれてありがと…」

 

自分はザンドリアスに手を振る。

 

「また今度ねー!」

 

「…では行きましょう」

 

「はいはい。じゃあサツキの家に行くよー」

 

自分達は来たときと同じようにバキシムの異次元を通って砂浜を後にした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「じゃあね~サツキ。バイバ~イ」

 

「……」

 

「はあ、今日はベロクロン辺りを紹介しようと思ってたのに、結局一日つぶれちゃった」

 

「それにしてもまたかあ。“あの子も”サツキに惹かれないといいんだけど…まあ現時点ではあの駄々っ子は居てもいなくてもいいかな」

 

「一番の問題はやっぱあいつかなー。怪獣のくせに戦闘用超獣のスペックを凌駕してるとかほんとなんなの」

 

「正面からぶつかるなら最低でもエースキラーは要るけど…そんな事態になって他が黙ってるとは思えないしなぁ」

 

「はあー。サツキを手に入れるのはエースを倒すより難しいかも…」

 




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13話 分身宇宙人との出会い

今回はちとドロドロしてるかもしれないですがまだ日常の範囲内ということで。


彼女に初めて出会ったのは、夏休みが終わり新学期が始まって数日、下校中の事だった。

 

「君が江戸川皐月君ね♪」

 

と弾んだ声で話しかけてきたのは、白い髪が先端に近付くにつれ青くなり時折黄色い模様が入った長髪の女性だ。もちろん自分はこの時この人に会うのは初めてだったし、知らない人が話しかけて来たので、不審者という単語が頭を過ったが、いざとなったら逃げるか、ゼットンか友達怪獣を呼び寄せればいいと思い話を聞くことにした。

 

「そうですけど、貴女は誰ですか?」

 

「あら?お父様から話は聞いてないの?私は君のお父様の同僚で、最近近所に引っ越してきたのだけど」

 

あー。そういえば少し前に父さんがこの近くに仕事仲間が引っ越してくるから、挨拶で顔を合わせることになるかもって言ってたような。

 

「そういえばそんな話を聞いていましたけど、なんで俺のことを知っていたんですか?」

 

「うふふっ、お父様から君の話を聞いたことがあるし、写真も見せてもらったことがあるの。それで君が“たまたま”通りかかった所を見かけた訳。」

 

「そうなんですか…じゃあ江戸川皐月です改めてはじめまして」

 

「ふふっ『印南ミコ』よ。はじめまして」

 

と挨拶する。といった所でそろそろ行こうと思う。このミコさんが不審者という線は薄くなったけど、まだ完全に白な訳でもないしこのまま家に帰って父さんに確認したほうが良いだろう。

 

「それじゃあ自分はこれで」

 

「あっ!ちょっとまって!」

 

「なんですか?」

 

いきなり呼び止められたので驚いた。なんだろう。

 

「いや、あの、せっかくご近所さんで帰るところも近いし一緒に帰らない?」

 

なんかちょっと動揺してるのが怪しいしどうしよう。

 

「途中でガリガリくん食べよう!」

 

「分かりました」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そんなこんなでぺちゃくちゃとお喋りに興じながら帰路を進みやれ若いけど結局どんな仕事しているのとか、やれ今回のガリガリくんの新作は微妙だのと話は弾み、家の前に到着した。

 

「ミコさん。俺はこのまま帰宅しますけど」

 

「そうね…お父様はまだだと思うけど、お母様は家にいるでしょ?この際だからご挨拶に行きたいのだけど」

 

「別にいいと思いますけどじゃあちょっと母さんに言ってきますね」

 

と門にミコさんを残して家に入る。ただいまと言いながらリビングに行くといつもの様に母さんが居た。

 

「お帰りサツキ私は君が来るのを待っていたのだ」

 

「お母さん。お父さんの同僚の印南ミコって人が挨拶にきてるんだけど」

 

「印南ミコ…ああガッツせ…いやガッツのあるあの人だね。父さんはまだ帰ってないけど何か用かな?」

 

「さあ…そこまでは分かんないけど」

 

どうやら母さんもミコさんのことを知っていたらしく、ミコさん不審者説はこれで消えた。

 

「まあいいか、せっかくだし上がって貰おう」

 

という訳でミコさんを座敷へ上げることになった。

 

「お母様お久しぶり~元気にしてた?」

 

「ははは、私は君の母ではないよ印南君。」

 

気のせいだろうか、ミコさん早々にbadコミュニケーションな発言をしてしまったような…

取り敢えずお茶を出すことにする。

 

「粗茶ですが」

 

「あっ、ありがと~これって眼兎龍茶?メルさん本当にこれが好きねー」

 

「ああこれが無いと始まらないよ」

 

「お母さん、俺は宿題やらなくちゃならないから上行ってるね」

 

「分かった。分からないところがあったらお母さんに聞いてね」

 

「はーい」

 

自分は宿題を片付けるために2階の自分の部屋に行った。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「それで、今日は本当に何の用で来たのかな?ガッツ星人」

 

「いやー、本当に今日は挨拶に来ただけだよ?帰るとき“偶々”サツキ君を見かけてここに来たの」

 

「“偶々”ね…」

 

「それでどう?ここ数年の地球での暮らしは?」

 

「どうって…まあ相も変わらずこの地球も信頼に欠けた、技術だけが進歩した星だけどまあ悪くないよ」

 

「それってやっぱりサツキ君がいるから?」

 

「…そうだね。何事にも醜い面も美しい面もある。サツキは地球の夕焼けのようなものだ」

 

「そう。随分入れ込んでるのねー。まさかサツキ君可愛さに計画を裏切ろうとか思ってないわよね?」

 

「ははは、見くびらないでくれるかな。自分の仕事はしっかり果たすつもりさ」

 

「そう、それは失礼したわね。それならね、事が終わったらサツキ君を私の物にしていいかしら?」

 

「……本性を現したな。君がサツキのデータを収集していることは知っていたよ。何が目的なのかな」

 

「ちょっとそこまで殺気ださなくてもいいじゃない。別に今日明日どうにかするとかじゃなくて、計画が完遂したらの話よ」

 

「そうか計画が完遂したらか…」

 

「そうそう、今変に動いたらこっちが粛清されちゃうっての。用はそれまでに彼をメロメロ♡にしちゃおうと思ってるの」

 

「サツキが君のようなのに篭絡されると思っているのかい?」

 

「それはわからないわよ?彼と話してみて結構話あったし第一印象は悪くなかったんじゃないかしら」

 

「…私は今まで君に対して特にどうとも思っていなかったが、正直言って君の事は好きになれそうにないよ」

 

「私は結構貴女のことは嫌いじゃないわよ『お母様』」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

宿題が一区切りついて、下に向かうとミコさんが

 

「あっサツキ君。ちょうど良かったぁ帰る前にサツキ君にも挨拶してからって思ってたの」

 

と言ってきた。

 

「そうですか。それじゃあ改めてさっきはアイスを買ってくれてありがとうございました。お元気で」

 

「ふふっ、どういたしまして。あっそれから近い所に住んでるから近い内にまた会うことになるかもね。それじゃあさようなら」

 

そしてミコさんは家を出ていった。

ふう、悪い人では無かったな、昔父さんに職場のことを聞いたら変人ばっかりの印象があったけどそうでもなかったようだ。

 

ふと母さんの方をみると母さんはやけに神妙な面持ちをしていた。

 

「お母さん、どうしたの?」

 

「ん?いや特になんでもないよ」

 

「そう?それならいいんだけど、俺も話を聞くだけならできるよ」

 

自分の場合小学生の身なので本当に聞くだけなんだけど。

 

「そうか…ありがとうねサツキ。じゃあ代わりにサツキをハグさせて貰おうかな?」

 

母さんが手を広げる。

えっ

小学生高学年となってくるとちょっと恥ずかしいんだけど。

 

「おや?ダメかい?」

 

「う、ううん。いいよ」

 

と母さんにハグされることにした。

 

「ふふふ…ぎゅ~~~~~」

 

ああ…なんかの花っぽい香りと煙草の香りが混ざったような香りがする。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――近所の組織第二基地――

 

「あ~~~!!!今日は良かった~~!」

 

「ガッツさんすごいご機嫌ですね…」

 

「あっ!ペガちゃんただいまー!」

 

「ガッツさん例の子と接触してたんですよね?」

 

「うん。とうとう生サツキ君にあって来たの!いやぁ本当にランドセルを背負った姿とか愛らしくてねー他にも何人か下校途中の可愛い子見かけたけどサツキ君のは格別だったわー!」

 

「は、はあ…」

 

「いやあ、本当にここに来てよかったー!サツキ君もだけど今この星に来てる怪獣達も可愛い子ばっかりって話じゃない、これは私の秘蔵ファイルも分厚くなるわー!」

 

「あ、あのガッツさん。私たちの仕事はあくまでこの宇宙の調査と足場固めであって…」

 

「わかってるって!ペガちゃんも放っておかないよ!今日だって分身に作業を手伝わせておいたでしょ?」

 

「確かにそうなんですが…」

 

「おいガッツ。基地の設備はまだ整いきってないのだぞ、分身だけじゃなくお前本体も手伝え」

 

「あっチブルさん…」

 

「なによーチブル。だれも爪を伸びることを止めることが出来ないように、持って生まれたサガというものは誰にも抑えることはできないのよ」

 

「お前のはエロいだけだろこの淫乱星人が」

 

「うるさいわよこの機械フェチが、人のこと言える?」

 

「私はお前みたいに子供相手に発情する変態ではないのだよ」

 

(ああ…この先行きが不安です……)

 

 




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14話 幼放電竜とロボット

自分は今ゲーム中だ。やっているのはマリカー。家ではTVゲームをする際のルールが幾つかあり、長くやり過ぎない事、必ず複数人ですることなどがある。

という訳で自分がゲームをやっているということは、誰かと一緒にやっていることになるのだが…

 

「…」

 

小さな手がコントローラーを操作している。その手の持ち主は、頭から角が生え、腰から魚のような尻尾が伸びた小さな女の子だ。

ゲーム画面内で勝敗が決まった。今回は相手の勝ち。今日はこれで2勝2敗だ。

 

「前より上手になってきたね」

 

「ん」

 

「でも、俺も負けてられないよ」

 

「そ」

 

等といった会話をしながら次の試合に移る。さっきとは違うキャラ、ステージを選択してスタートダッシュをするべく自分達はスタート前からアクセルのボタンを押す。

 

そうして一緒にゲームに興じている彼女はエレキング。向こう側の怪獣にして友達の一人だ。

彼女との出会いは夏休みの時庭のビニールプールで遊んでいたら例によって何の前触れもなく『門』の方から現れた。今にして思えばもし彼女が電気を発していたら危なかった。

彼女は今まであった怪獣に比べると話し方がぶっきらぼうで最初はコミュニケーションを取るのが難しかったが、一緒に遊んだりTVを見てるうちにそれなりに心を開いてきたのか、今はよくゲームを一緒にするメンバーに入っている。

 

「ん」

 

何回目かのレースが終わった後、エレキングが自分にコントローラーを手渡してくる。

 

「もういいの?」

 

「うん」

 

「じゃあおやつでも食べようか」

 

「ん」

 

とゲーム機を片付け、戸棚から菓子を取り出すことにする。今日は…おっとっとにしようか。

皿におっとっとを出してエレキングとぼりぼりと食べる。あっ、レアなクリオネ型あったけどエレキングに食われた。

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

「なんでエレキングは大人の姿じゃなくて子供の姿なの?」

 

「しらん」

 

「そう…」

 

彼女との会話は何時もこんな感じだ。いやほんと何でエレキングは子供の姿でいるんだろう…確かに劇中で幼体が出てきた怪獣ではあるんだけど。…ま、いいか。

 

「サツキ」

 

「どうしたの?」

 

エレキングは空になった袋を自分に見せる。

 

「おかわり」

 

「えっ、もう食べ終えちゃったの?」

 

「おかわり」

 

そういいながらエレキングはぎゅうぎゅうと空になった皿を当ててくる。

 

「わかったから押し付けるのはやめてね」

 

「ん」

 

エレキングは皿を押し付けるのを止めた。こういうところは素直なんだけどね。

さて、どうしようか。もうおっとっとは無いんだけど。

 

「なにか希望はある?」

 

「パチパチするやつ」

 

「ドンパッチだっけ…?あれももう無かったような」

 

家には何故か生産終了した筈の菓子があることがある。しかも何故か消費期限が最近。昭和趣味の母さんの仕業なのか?兎に角エレキングはその中で食べたことのあるドンパッチと言う菓子を所望の様だ。

 

「じゃ、かってきて」

 

「しょうがない…似たようなのを買ってくるよ」

 

ドンパッチももう売ってない菓子であるが口の中で弾ける似たような菓子はあるだろう。

取り敢えずリビングから玄関に向かおうとした時。

 

「それでは、ワタシも同行しまショウ」

 

と声がした。声がした方を振り返ると、長い黒髪に手足等に硬質感のある衣装を着けた女性がいた。

 

「キ、キングジョーさん」

 

そう、彼女の名前はキングジョー。特撮番組ウルトラセブンを代表する怪獣の1体である。

 

「いつから、ここに?」

 

「『ゲート』を潜り抜けてきたらお二人がお菓子を食べていたので見守らせていただきマシタ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

いきなりであるが、自分はこのキングジョーさんが苦手だ。見た目はそれはそれは麗しいものであるし、物腰も元がロボットだったとは思えない程柔らかである。しかし今まであった怪獣たちの中でも彼女を苦手としている要因は。

 

「外はデンジャラスがいっぱいですサツキ様。私を盾にしていくといいでショウ」

 

何故か彼女に一方的な主従関係を結ばれていることだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

発端は夏休みの時、色々な怪獣と知り合い、大体皆擬人化してて安全と確認された前にやってた実験の続きをやってみようと思い、メジャー所の怪獣を呼び出してみようと思ったそれで、キングジョーの呼び出しをやったのだが。

 

「問オウ。貴方がワタシのマスターデスカ?」

 

な…なぜにfate風?

 

「えっとどういう意味?」

 

するとキングジョーは

 

「今地球でホットなワードと聞いたのデスガ…」

 

と呟き。

 

「それでは、ワタシのご主人様になってくだサイ」

 

いやいやいや。なってくださいと言われても困るんだけど。

 

「駄目デスカ?」

 

「駄目も何も初対面の人?に言われても…」

 

なにがなんだかわからないんだけど。

 

「ワタシは貴方をその…気に入りマシタ。母星に来て妹を○ァックしてもいいデスヨ」

 

そんな清楚な顔でハートマン軍曹みたいなこと言わんでください。

 

「ワタシはドッグです」

 

「文法なんか間違えていません?」

 

「ワタシを地球でいう犬の様に扱ってかまいませんヨ」

 

「そのまんまの意味!?」

 

なんなの…このロボットは。キングジョーと見せかけてクレージーゴン呼び出した訳じゃないよね?

 

「あの…自分貴女の特殊な性癖に付き合う気はないので、呼び出して早々悪いんですけど帰って貰ってもいいですか?」

 

と言うとガシッと腕を掴まれ、

 

「じゃあ、ワタシとあなたは前世で共に闘った仲間ということにシマス。勇者様、ようやくお会いできマシタ。ずっとずっと探しておりマシタ。ワタシをお嫁にしなさ……」

 

「いまじゃあって言ったし絶対その場のノリで考えたよねそれ!」

 

確かに前世あるけどそんな電波なものじゃなかったよ。

 

「ご主人様、旦那様、王子様、ナイト様、マスター、ロード………」

 

ああ…どうしようこれ……

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

結局彼女の執拗なお願いにより、自分は見た目大和撫子のロボットに慕われもとい傅かれることになった…

 

そして、彼女は自分が最高のボディーガードになると言って四六時中一緒に居ようとしてきたのだが、もう間に合ってますといったらかなりのショックを受けたようで、こっちに居っぱなしということにはならなかった。しかし

 

「いつかあの根暗よりワタシの方が従者としてベターだと証明するデス!」

 

とゼットンをライバル視している…ゼットンの方はどこ吹く風なのだが…

 

話を今に戻そう。

エレキングは回想の間、キングジョーの脛辺りをげしげしと蹴っていた。

エレキングは余り見慣れない相手がいるときこういう行動をとる事がある。両親にエレキングを紹介した時は触れようとした父の手をはたきおとしたし基本的に警戒心が強いのだろうか。

取り敢えずやめなさいとエレキングに蹴るのを止めさせる。

 

「エレキングがすみませんキングジョーさん」

 

「気にしていませんよサツキ様。これくらいノーダメデス」

 

まあ固いんでしょうね。

 

「それでは、一緒にお菓子を買いに行きまショウ」

 

あっやっぱ来るんだ…正直彼女を連れていくならゴモラ辺りの方がマシな気がするんだけど…

 

「大丈夫デス。ワタシ、爆弾をいくら落とされようとサツキ様を守り切りますカラ」

 

キングジョーがガッツポーズをする。普通買い物で爆弾は落ちないからね?

 

「と、とにかく買ってくるから待っててね。エレキング」

 

「ん」

 

そして自分とキングジョーは近所のスーパーに向かうのだった。

 

「ワタシにつかまっていけば直ぐに着きマスヨ?」

 

「自分の足で歩くからいいです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

皐月(思ったんだけど『門』にゼットンを呼んだらどうなるんだろう)

 

皐月「来いゼットン!」

 

ピロロロロロロロ

???「………」

 

皐月「ゼ…」

 

パワードゼットン「ん?」

 

皐月「誰!?」

 




おジョーさんファンの方申し訳ございません…本作のおジョーさんは少々ネジが飛んでます。

エレキング幼生体の容姿は電撃G's magazine.comで公開されているCHOCO氏の設定画からです。

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15話 おつかい

「ねえ、いいだろう?私は今手を離せないんだ。だから私の代わりに――」

 

「分かりましたよ。しかし態々私が行くほどのことでしょうか?何なら向こうに居るゼットン星人たちにたのんでも――」

 

「いや、ここは君に任せたい。この重要な仕事は私の腹心の君にね」

 

「そういうことなら向かいましょう」

 

「ああ、頼んだよ“二代目”」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ふふふ…見つけたわよサツキくん」

 

「しかも怪獣と一緒…」

 

「さて、このまま合流して好感度上げるのもいいけど――」

 

「まだこっちに気づいてないみたいだし、絶好の撮影チャンスよね!」

 

「二人ともいい写真を撮ってあげるからね~~」

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

何か視線のようなものを感じるのは気のせいだろうか?

 

「どうかしましたカ?」

 

「ううん、なんでもないよキングジョーさん」

 

自分達は近所のスーパーの前についた。時間は夕暮れ時近くだからか、人でにぎわっている。

 

「混んでるな。目当ての菓子が見つかればいいのだけど」

 

「お任せくだサイサツキ様。邪魔な客が居たらサツキ様の手を煩わせる事無く葬りさりマスヨ」

 

「お願いだから物騒な事はしないでくださいね」

 

なんて会話をしていると。

 

「ここが地球ね…」

 

という声と共に、『門』の前に1人の女性が立っていた。猫耳のような髪型に頭に尖ったサングラスを着けている。

初めて見る顔だけど、この人多分怪獣だよね…この髪型にサングラス。どっかでみたような。あっアレかな?

 

「メフィラス星人?」

 

「ん?アンタなんで私のこと知ってるのよ?」

 

相手もこっちの方に気づいた。

 

「ええ…怪獣図鑑で見たものの面影が…。あのウルトラマンと戦ったメフィラス星人ですよね?」

 

「えっ…え、ええそうよ。そのメフィラス星人だけど」

 

ちょっと焦ったような態度が気になったけど、この人はメフィラス星人で間違いないようだ。

 

「それで何をしにきたんですか?もしかしてお菓子目的ですか?」

 

「そんな子供みたいな目的じゃないわよ!こっちは重要な仕事で来てるの!」

 

いかん怒らせてしまったようだ。そういえばこの『門』から宇宙人が出てきたのは初めてだった気がする。となると目的は何だろうかもしかして地球侵略?怪獣達は大体温厚な性質だったけど宇宙人となると勝手が違うのかも…

 

「あの…じゃあその重要な仕事ってなんですか?」

 

「なんであんたみたいな子供に教えなきゃならないの?あんたに構ってる暇があるならとっとと用を済ませたいのよ」

 

なんか雰囲気が悪いな…コミュニケーションに失敗しちゃったかな。

 

「そんなこと言わないでください。もしかしたら力になれるかもしれませんよ?」

 

「くどいわね。あんたが力になれるわけないでしょ!」

 

「黙って聞いていればさっきからサツキ様に失礼デスネ…」

 

あっキングジョーさんが居るのを忘れてた…メフィラス星人さんに負けず劣らず険悪な雰囲気を纏っている…

 

「えっ、ペダンのロボット!?どうしてこんな所に!?」

 

「サツキ様、私に一言命じてクダサイ。そうすれば…」

 

そうすれば何!?怖いよ!

 

「やめてくださいキングジョーさん!ここスーパーの前ですし物騒な真似は勘弁してください!」

 

「むっスーパー?この星の商店ってこと?」

 

「えっはいそうですけど…」

 

メフィラス星人さんの雰囲気が変わった。険悪なものから元の感じに戻ったようだ。

 

「じゃあ…あれはあるかしら?」

 

あれ?

 

「この星でラッキョウと呼ばれている植物よ」

 

「えっメフィラスさんラッキョウを探していたんですか?」

 

「そうよ。それでこのスーパーにラッキョウはあるの?」

 

「たぶん野菜コーナーにあると思いますけど」

 

「そうね。気が変わったわ。あんたそこまで案内しなさい」

 

「この態度…サツキ様、やはりこのモノを消すべきデハ…?」

 

「キングジョーさんは大人しくしててください。分かりました自分もスーパーに用事があるので案内しますね」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「誰かと思ったらあれはメフィラスの所の妹さん…相変わらずだらしない身体してるわねー。まあ撮るけど!」

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

自分たちはスーパーの中に入って野菜コーナーに向かった。少し探すとラッキョウがあった。

 

「ここですよ」

 

「よくやったわ。これで私も仕事を達成できるわ」

 

とメフィラスさんは買い物かごにありったけのラッキョウを詰めていく。

 

「そんなに買うんですか!?」

 

「また来るか分からないし取り敢えずこれだけ買うのよ。」

 

「そうですか…」

 

「サツキ様、私たちも目的の物を買いに行った方はいいのデハ?」

 

「そうだね。パチパチするお菓子を探しに行こう」

 

自分たちもお菓子コーナーに行くことにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

「さーて、撮るものも撮ったし、私もサツキくんの所に合流しよっと」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

お菓子コーナーを探すこと数分。自分は良さげな菓子を見つけた。

 

「パチパチパニックか。エレキングが満足するといいけど…」

 

「こんにちは。サツキ君」

 

おや、ミコさんだ。彼女も買い物だろうか。

 

「こんにちは。買い物ですか?」

 

「そうよ。サツキ君は何を買いに来たの?」

 

「お菓子です。友達と一緒に食べるんです」

 

主にエレキングが食べるけど。

 

「そっかー。友達のために買いに来たんだね。ちなみその友達って男の子?女の子?」

 

「女の子ですけど…」

 

「それじゃあ今度その子紹介してくれないかな?」

 

「別にいいですけど、その子人見知りだから仲良くなれるか分かりませんよ」

 

「ふふっありがとう。サツキ君は優しいのね」

 

そんな会話をしてからミコさんと別れてメフィラスさんの所に戻って来た。

メフィラスさんはラッキョウが積み込まれた袋を両手に持って待っていた。

 

「遅かったわね」

 

「知人と話してたもので」

 

「まあいいわ。今日はその…ありがとう地球人」

 

「自分は皐月です」

 

「そう。まあ感謝はするわ。それじゃあね」

 

そういってメフィラスさんは『門』の向こうに去っていった。

ラッキョウをどうするのか分からないけど、重要な仕事なんだしメフィラス星人にとってラッキョウは貴重なものなのだろうか?

 

それはともかくとして自分たちも帰路に着くことにした。

 

「サツキ様。先ほどは黙っていましタガ、あのミコという女性危険なサムシングを感じマス。今度会ったら殲滅の許可ヲ」

 

「物騒な事は止めてって言ってるよね!?ミコさんは安全だから!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「それで、地球産のラッキョウは手に入ったかい?」

 

「はい、この通りです」

 

「よし。よくやったね。ここでの暮らしを続けていると中々他の星の物は手に入らないからね」

 

「初代に喜んでいただけて私も嬉しいです」

 

「ではこれでミッションコンプリートだ。ところで…」

 

「はい?」

 

「サツキ君には会ったかな?」

 

「?なぜ彼のことを?」

 

「いや、君はゼットン星人の報告を知らないのか?」

 

「ああ!あの地球人が?」

 

「そう。今回の計画のキーパーソンさ」

 

「そうですか。私の見たところただの地球人にしか見えませんでしたが…」

 

「そうか…まあいい。さて、さっさとあのグレイブゲートをどうにかする方法が見つかればいいのだがね…」

 




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16話 帰ってきた彗星怪獣

ただいま部屋で勉強中だ。机に向かって教科書と格闘している。

そんな時、後ろの方から物音がした。また『門』の方から誰かきたのだろう。

誰かなと後ろを振り返ろうとすると、

 

「動くな」

 

と知らない声がした。一体だれが来たんだ?と思っていると、

 

「いいか、そのままゆっくりと後ろを向け」

 

と言われたのでその通りにする。後ろを振り返ってみると、赤髪に黒い目、更にパッドなのか大きく盛り上がっている肩をした女性が立っていた。このシルエット…もしかしてあの怪獣か?

 

「ジャミラ?」

 

「なんでアタシの名を知ってんだ?まあいい。お前サツキだろ?」

 

どうやら彼女はあの真似されるのと人間だったことで有名な怪獣ジャミラらしい。

 

「そうですけど」

 

「なら話は早い。おい、アタシの言うことを聞け。さもないと――」

 

「さもないと、なんですか?」

 

いつの間にかジャミラの背後にいたゼットンがジャミラの肩の部分を掴んでいた。

 

「なっお前誰…いてててててててててててててててててて!!」

 

「ちょっ、ゼットンどれだけ力込めてるの!?可哀想だから止めてあげてよ!」

 

「こいつはサツキを害そうとしました。見過ごすわけにはいきません」

 

いや、さもないととか言ってたけどそれにしてもやり過ぎな気がする。自分を心配してくれているのは嬉しいけど。

 

「いいから放してあげてよゼットン」

 

「…分かりました。サツキに免じて放しますが、二度はありませんよ?もしまたサツキを害そうとした場合は――」

 

とゼットンはジャミラに対して冷たい目を向ける。こういう時のゼットンは滅多にみないけど恐ろしい。

 

「分かった、分かったから放してくれよ!」

 

ジャミラがそういうとゼットンは手を掴んでいた個所からゆっくりと放した。

 

「あ~、痛てえ。引きちぎられるかと思った。クッソ!まさかこんないかれた用心棒がいるとは思ってなかったよ…」

 

悪態をつくジャミラに自分は質問することにした。

 

「あの、なんで俺を脅すような真似をしたんです?」

 

「あ?答える義務があるかよ?」

 

「…」

 

ゼットンが無言でジャミラの両肩部分に手を添える。

 

「わ、分かったから穏便に済まそう!」

 

「じゃあさっきの質問に答えて欲しいんですけど」

 

「じゃあ話すよ」

 

ジャミラが言うには、自由に出入りできる『門』の噂を聞きつけ、手軽に地球に郷帰りできると踏んだジャミラはこっちに来て『門』の番人のような少年、つまり自分のことだがを脅してある場所に行こうとしていたのだ。そのある場所というのは、

 

「――生まれ故郷だよ」

 

真面目腐った顔でジャミラは言った。

 

「生まれ故郷、ですか」

 

「そう、●●●●って国の×××という町だ。もう怪獣やってる期間の方が長いし大分記憶が摩耗しちまってるんだが、そこで生まれ育ったことは覚えてる」

 

「そうですか。態々故郷に帰る為にこんな事を」

 

「まあ計画と言うにはお粗末だったがアタシにとってはまたとないチャンスだったんだ。頼むから見逃してくれないか?」

 

「うーん…」

 

どうしよう。別に実害を被った訳じゃないんだし、このまま見逃してもいいけど、放っておくと何かしそうな気もするからなあ…

 

「…サツキ」

 

「ん?なにゼットン」

 

「こいつの言うことを聞く義理は我々にはありません。早急に元居た場所に戻って貰いましょう」

 

とゼットンは言う。しかし、それをしたところで根本的な解決にはならない気もするんだよね。『門』の向こうに帰したところで結局は向こう側からやってくるのを自分は止めることはできないのだ。

 

「あっそうだ」

 

いいことを思いついた。うまくいけばジャミラに穏便に帰ってもらうことができるかもしれない。

 

「ジャミラさん、ここ日本ですけどどうやって●●●●に行くつもりだったんですか?」

 

「それは深く考えてなかったな…適当に船なりに潜り込んで海路を何とかしてあとは徒歩で行くつもりだったよ」

 

それはいくら怪獣だからって余りにも無謀ではないだろうか?身分証明書すらないだろうし絶対どこかでトラブりそうだ。

 

「その、もしかしたらですけど、直ぐに●●●●に行ける方法を思いつきました」

 

「何だと!?詳しく教えろ」

 

「教えますけど、その前に約束してください。一つは生家までいったら、大人しく向こう側に戻ってもらうこと。もう一つは道中他の人に迷惑をかける真似はしないこと。最後に自分も同行することです。これを守るなら生まれ故郷に行くのを手伝います」

 

「おお!分かった!約束するよ!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

●●●●国、×××

 

自分は今世で初めて異国の土を踏んでいた。

少し肌寒さを感じる。もうちょっと厚着でも良かったかもしれない。

自分たちが訪れた×××という町は郊外にあるらしく、自然が多めの場所だ。

 

現在のメンバーは4人。自分とジャミラとゼットンとバキシムだ。

なぜ自分達が短時間でここに来れたのかというと、バキシムの異次元通路を通ってきたのだ。バキシムに頼んだら、彼女は快く引き受けてくれた。曰く「貸し一つだね」だそうだ。

後で彼女に何かプレゼントを贈った方がいいのだろうが、何がいいだろう。元は芋虫らしいし、桑の葉とか?それとも普通に装飾品でも贈った方がいいかな?

 

話を戻す。この町のどこかにジャミラの生家があるのだろうか?

 

「ジャミラさんの話が正しいならここがジャミラさんの生まれ故郷らしいけど…どうなんです?」

 

とジャミラに問う。

 

「ああ、随分近代的になっちまってるけど、確かにこの町だったよ」

 

「家がどこだったかも分かりますか?」

 

「町の構造自体は変わってないみたいだから、取りあえず駅の方に行ってからだな」

 

まあ確かに駅などは探す際に目印になるだろう。

 

「それにしても町を散策するって新鮮な気分になるよねー」

 

とバキシム。あれかな。元々デカかったからとかそんな理由なのかな。

 

「俺も初めて訪れる外国だから新鮮かな。ゼットンは?」

 

「…私にとっても今までになかった体験です」

 

あいかわらず表情が乏しいが数年一緒に居た身としては、結構嬉しそうだと思う。

 

そんなこんな一行は駅に到着した。駅のすぐそばには、ロータリや噴水のある広場がある。

キョロキョロと辺りを見回すジャミラの再び質問する。

 

「どうですか?家の位置は分かりそうですか?」

 

「ああ…前は噴水とかは無かったが確かに…とすると方向は……」

 

と言っている。あと少しで見つかりそうかな?

と、そんな時。

 

「ねえ、せっかくだし記念写真撮ってこうよ!」

 

とバキシムが提案した。

 

「記念写真か…まあ海外に来てるわけだし撮っていこうかな?ジャミラさん。少し寄り道してもいいですかね?」

 

「ん?まあ、さほど急いでるわけでもないし構わんが…」

 

「じゃあ決まりだねぇ。ゼットンさんも一緒に写ろ」

 

という訳で自分達は噴水の前で記念撮影をすることにした。

バキシムが持っていた携帯で代わりばんこに撮っていく。

 

「おいアタシもか?噴水に余り近づきたくないんだが…」

 

あっそういえばジャミラって水が弱点なんだっけ。

 

「濡れたくないんですか?」

 

「まあ、今はどうだか分らんが身体が本能的に拒否するんだよ…」

 

それは難儀だなあ。元々人間なのにそれってかなり辛そうだ。

 

「そんなに噴水に近づくわけじゃないし大丈夫だよ。なんならジャミラさんがシャッター押す係なら飛沫もかからないって!」

 

「なんでアタシがシャッター押すことになってんだ?」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

記念撮影を終えた自分達はジャミラの生家の方向へ向かっていた。

自分達のちょっとした旅もあと少しだろう。

 

「ねえねえ、ジャミラさん家ってどんなところだったの?」

 

「まあ、普通っちゃ普通の裕福な家庭だったよ。クリスマスプレゼントに望遠鏡を貰ったっけ」

 

とバキシムとジャミラが話している。道中ジャミラはこの近所で友達と追いかけっこしたことだの、少し遠出して天文台で星座を見せてもらったことだのを懐かしそうに話してくれた。いよいよ帰るときが近づいてきて気分が高揚しているのだろうか。初めて会った時よりも表情が柔らかくなってきている気がする。

 

「楽しそうですねジャミラさん」

 

「当たり前だ。ずっと帰りたかった家に帰れるときが来たんだからな。ほらそこの角を曲がればすぐそこだ」

 

と、その角を曲がってみると――

 

「なっ!?」

 

「あっ」

 

「あら」

 

「…」

 

――そこには真新しいマンションが建っていた。

これは、つまり、そういうことだろう。

そもそもこの世界はジャミラがいた地球ではない。「故郷は地球」は架空の話でありジャミラがいたとしてもこのジャミラとは別の存在だろう。それはジャミラも承知だったろうが、現実は更に残酷だった。嘗ての宇宙飛行士の生家は既に無くなり代わりにマンションが建築されていた。

 

「………」

 

その場に立ち尽くすジャミラにどうにもかける言葉が見つからなかった。

 

それから数分ほど経っただろうか、不意にジャミラが口を開いた。

 

「なあ…このビルぶっ壊してもいいか?」

 

「ちょっ、ジャミラさん!?」

 

焦る自分。

 

「……冗談だよ」

 

「はいはい。話題変えよ~そろそろご飯にしない?」

 

とバキシムが強引に話を変えようとする。

 

「バキシム、流石にそれは…」

 

「いや…いいんだ。心のどこかでこんなことになるんじゃないんかとは思ってたんだ…」

 

「ジャミラさん…」

 

「正直なところ久しぶりに此処までこれただけ儲けもんだ。普通に青い空の下地球の地面を踏んでるだけでな。……今日はありがとうな、お前ら」

 

「これで話は終わりの様ですね。帰りましょうサツキ」

 

「ちょゼットンもう少し空気よんでよ」

 

「じゃあさあ。このままこのメンバーでどっか食べに行こうよー今回は私が奢るからさ」

 

「バキシムとかいったか…悪いなじゃあこの町のレストランに案内するよ」

 

なにはともあれジャミラが調子を取り戻したのは良かった。それならレストランに向かうとしよう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「あとどれくらいで着きますか?」

 

「ああ、もうすぐそこだ。小さいが子供の頃からのなじみでな、味は保証するぞ」

 

と向かった先には、有料駐車場があった。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「クソッ!ここもかよ!!」

 

結局その後家にジャミラを招待することになった。

 




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17話 SIDE:おかん

この星の時間にしてAM5時頃、私は寝床から起床する。

私はメトロン星人。この家の主婦である。

 

身支度を済ませると、台所に向かい朝食の準備することにする。今日のおかずは味噌汁と小魚にしようかと米を研ぎながら思考をめぐらす。

 

昔はこの様に他の星の料理を作ったりなどと考えもしなかったが訳あって数十年間地球に潜伏した身でいつの間にかこのような技能も身に着けていた。

炊飯器を起動させ次はおかずの準備に取り掛かる。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

AM6時頃、朝食を食べにゼットン星人がリビングに顔をだす。

 

「おはよう。今日の朝食は?」

 

「お味噌汁に焼き小魚だよ」

 

ゼットン星人は数分しか眠る必要がないので、夜中は自室で仕事をやったりしているか疲労が回復するまで休んでいる。

去年までは過労死するんじゃないかってくらい働いていたけど、最近は第二陣がやって来たお陰でちょっとは楽になったかな?

まったくこの地球の調査の次は範囲を広げて星系から更に広い範囲の宇宙だからね。まあ取りあえず。文明の有無の確認くらいだから、第二陣の基地が完成すれば宇宙中に探査機を放つなどして手っ取り早く終わらせることもできるだろう。

 

「そういえば第二陣の基地の建造のほうはどうなってるの?」

 

「ああ…まあ順調といったところだな。此処よりも規模の大きいものになるから完成まで後1年ほどになるが」

 

「なるほどサツキが中学に上がる前には終わるかな?」

 

そんな会話をしながら、食卓の準備をする。そろそろあの子が起きてくるかな。

 

「おはよう」

 

とサツキがリビングにゼットンを伴って入ってきた。

ああ~そのまだ半分寝ぼけた表情、たまらないなあ。

 

「おはよう!朝ごはんできてるよ」

 

「うん、ありがとう。いただきまーす」

 

とサツキは美味しそうに私の作った朝ごはんを食べてくれる。ああ、サツキが幸せそうな顔をしてると、私も幸せになってくる。

 

それはいつからだったろう。最初は計画のために近づいたのだが、いつの間にかこの子が愛しくて仕方が無くなってしまった。

地球での思い出は色々あったが、今まで地球のことを調べてきたのもこの子に会うためだったかもしれない。

 

そんなこんなで家族との会話を弾ませる。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

AM8時頃。皆出かけて一人になったのだが…

ここ最近私を悩ませることが起こっている。

 

朝食の洗い物を済ませた後2階のサツキの部屋に向かう。

部屋の前に到着したが、本来私一人しかいない家なのに人の気配がする…

ゆっくりドアを開けると。

 

「はあっ…はあっ…サツキくんっ!サツキくぅぅぅぅぅううん!!」

 

寝床で掛け布団を被りながら悶えているガッツ星人が居た。

 

「なにをしているのかな?」

 

と布団をはぎ取る。同時に半裸のガッツ星人が床に転がった。

 

「あら、お母様。こんにちは♪」

 

「ははは、こんにちは。で、なにをしているのかな?」

 

「あはは…そりゃあ、ナニを…」

 

「勝手に人の家に入り込んで盛るな!」

 

彼女は組織の第二陣の一人であるのだが、最近こうやってサツキの部屋に忍び込んではトリップをするといううらやまけしからんことをしている。ある時にはサツキの下着を顔に被り、更に自分の下着とサツキの下着を絡めていた…

その時はサイズぴったりの新品の下着を買ってきたから取り換えるといいとほざいていた。

 

正直ぶん殴った後、怪電波と宇宙ケシの実で脳を破壊してやりたいのだが、万一の為か家に忍び込むのは分身である。しかも曲がりなりにも同僚であるため消すという手段を実行できない。

 

「だって、サツキ君の温もりと香りが残ったベッドなのよ!ダイブするしかないでしょー?」

 

頼むからそれ以上喋らないで欲しい。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

AM10時頃。ガッツ星人を追い出した後洗濯を開始する。特にサツキの掛け布団は念入りに洗っておかないと。後サツキの部屋に脱臭剤をかけるのも必要だね。

 

洗濯の途中、第二陣の一人であるペガッサ星人からメールが届いた。内容はガッツ星人がしでかしたことへのお詫びだ。ガッツ星人の侵入はここ最近ほぼ毎日起こっているので、このメールも日常の一部になってしまっている。

 

ガッツ星人は前から自らがかわいいと判断したものに対してその情報を調べ上げたり、その人物への無許可の撮影をしていたが、この星に来てから更にそんな行動がエスカレートしている気がする。

前々から親交のあったペガッサ星人も手を焼いているようで、サツキのみならず彼と親交のある怪獣や女児を中心とする他の地球人への撮影等を止めきれてないようだ。

 

前にあいつはサツキを自分の物にしたいと言っていたが、そんなことは絶対にさせない。

今現在、サツキを利用する立場ではあるのだが、それとは別に私はサツキの幸せを願っている。あんな異常者の餌になどするものか。

 

私は決意も新たに洗濯物を干しに掛かるのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

PM3時頃。掃除、昼食、買い物、夕食の下ごしらえなどを終えて現在和室で休憩を兼ねてサツキが学校から帰ってくるのを待っている。眼兎龍茶の準備も万全だ。

 

待つこと二、三十分。玄関のほうからただいまと声がした。こちらもおかえりーと返す。

そして、サツキが和室に入ってきた。私はいつもの通りこの台詞で出迎える。

 

 

「私は君が来るのを待っていたのだ」

 

 

そうして私たちは眼兎龍茶を飲みながら学校であったことなどを話のネタにして過ごす。

この時間は何物にも代えがたい。他愛のない話ばかりではあるのだが、他者とは物騒な話をすることも多い自分にとって心が洗われるのだ。

この次に好きな時間は夕焼けを眺めながら煙草を一服するのと夜のあの時間くらいだ。

 

そんなこんなで話をしていると、

 

「友達を家に呼びたいんだけどいいかな?」

 

とサツキはお願いしてくる。それに私は

 

「いいよ。ただしちゃんと宿題を済ませてからね」

 

と返答する。

サツキが家に友達を呼ぶ時は大抵一緒にアニメを観るかTVゲームを一緒にやるときだ。私としてはサツキに余りハイテクな機械を触らせるのは反対なのだが、彼の成長のために友達とのコミュニケーションのツールとして渋々それを認めている。

ただしSNS等のこともあって携帯電話を買い与えることは止めようと思っているが。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

PM4時頃。夕食づくりに入ろうとした時、サツキが友達を連れてきた。今日連れてきたのは三人。シーボーズちゃん、ガーディちゃん、ハネジローちゃんだ。

サツキが連れてくる友達は、地球人よりも怪獣墓場の者が多い。一時期は友達が出来ないことに悩んでいたようだがこの様に友達を連れてくる様になって私は嬉しい。

女子が多いのはちょっと気になるけど。

 

今日は四人でスマブラをするみたいだ。ちなみにサツキが言うには今日のメンバーの中ではハネジローちゃんが一番上手いらしく、よく3対1になるがそれでもハネジローちゃんが勝ち越すそうだ。

 

「それっそこだ!」

 

「うう…ハネジローさん強いです…」

 

「パムー!」

 

さて彼らが楽しんでいる間に夕食を作ってしまおう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

PM6時頃。ゲームを終えたサツキたちと一緒に夕食を食べることにする。

今日は炒飯。サツキの友達が来たので量は多めにしてある。

 

「どう?美味しい?」

 

「うう…サツキのお母さん美味しいです~」

 

とシーボーズちゃんは泣きながら食べている。サツキの友達の中でも古参の子だけど相変わらず涙もろい子だなあ。

 

ガーディちゃんは所謂犬食いをしていた所をサツキに注意されていた。

わん!すみませんと彼女は謝っていた。

 

「パム~」

 

とハネジローちゃんは美味しそうに食べている。

 

ゼットンは我関せずといった感じと黙々と食べていた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

PM8時頃。夕食が終わってサツキの友達も帰り、後片付け等の雑多を済ました。サツキは明日の準備も済ませ寝床に向かった。

 

私はサツキが自分の部屋に行ったことを確認すると、台所に唯一残してあった湯呑を手に取り眼兎龍茶を注いだ。

そして、それを飲む。

 

「あー!おいちーっ!」

 

この湯呑はサツキの物だ。かなり昔に間違えてサツキが口を付けた眼兎龍茶を口にした。

その瞬間衝撃が走ったのだ。う…美味い。眼兎龍茶が美味くなっている…

それからその味にハマってしまい。隙をみてはサツキの湯呑で眼兎龍茶を飲んでいる。

もちろんサツキには内緒だ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

PM11時頃。遅くに帰ってきたゼットン星人を迎えた後、サツキの部屋に向かう。

静かに扉を開け、ゼットンに小さな声で挨拶して一日の終わりの日課をすることにする。

 

「ん…ちゅう……」

 

サツキへのお休みのキスである。かわいいサツキの寝顔にこれをしておかないと、一日が終わった気がしない。

 

「おやすみ、サツキ」

 

小声でそう言い、私は自分の部屋に向かった。

 




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18話 食いしん坊怪獣の畑

今回の話は歩輪気様のリクエストを元に書かせていただきました。ありがとうございます。


自分達家族は父の所有する自動車に乗って、ある場所へ向かっていた。

向かう場所は郊外にある農園だった。

 

なぜそこへ向かっているのかというと、あれは数か月前――

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「もっとちょーだいよ~…これじゃあ足りないよぉ~」

 

「そうは言われても」

 

自分は困っていた。向こう側からやってきたのはモットクレロン。

兎に角野菜に目が無い怪獣で正確にはビタミンCをため込んでいるらしい。

そんな彼女がこっちに来るなり野菜を要求してきたのだ。

 

やっぱり断ると彼女は何をするか分からないし、

人間の姿になっているからそれ程でもなかろうと高を括ったのが行けなかった。

彼女、あっという間に冷蔵庫内の野菜を食い尽くしてしまったのだ。

しかもそれでまだ足りぬという。

 

「もっと野菜くれよぉ~」

 

「だからもうないんですよ…」

 

さっきからこんな感じの応答を続けているがにっちもさっちもいかない。なんとかしなければならないと焦っていると、

 

「ただいま~」

 

と帰ってきたのはお父さんだ。今日は随分早い帰りだ。

 

「あっおかえり早かったね」

 

「ああ、今日は仕事が早く終わったんだ。その子は新しい友達かな?」

 

ああ、モットクレロンのことはどうしよう。家の野菜を食い尽くしたことも説明しないと。

自分はこれからのことに頭を抱えたくなった。

 

「まあ、そうなんだけど…彼女はモットクレロンっていうんだけど、その」

 

「モットー!」

 

「…ああ、少し嫌な予感がするんだが」

 

「彼女が冷蔵庫の野菜を全部食べちゃったんです…」

 

自分は正直に話した…怒られると思ったが、

 

「そうか…いやいいんだ、野菜ならまだまだこの国にはあるから買い足せばいいし、後で母さんに一緒に謝ろう。それに事情があったんだろう?」

 

父の心は広かった。いやー良かった。そうだ。モットクレロンにも事情があるのだろう故郷にビタミンCを持ち帰るとかそういうのが。

 

「んーん?単に野菜が大好きなだけだよ」

 

その返事に眩暈がする気がした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

落ち着いた自分達はモットクレロンと話していた。

 

「だって~野菜を食べる機会なんて久々だもの」

 

「だからといって人の物をむやみに食べるのは良くないな」

 

「ごめん…俺も途中で止めるべきだったよ」

 

といってもモットクレロンも怪獣の一種だしどうにかできなかったんだけど…

 

「帰る気はないの?」

 

「やだー。もっと野菜食べたい!」

 

うーん本当にどうしようか…

あっそうだ

 

「それなら、野菜を直接作るのはどうかな」

 

「直接?」

 

「どこか、畑を貸している所に行ってそこで野菜を栽培するんだ。自分で作った野菜ならどれだけ食べても咎められないよ」

 

「へー。そんなことがあるんだあ」

 

どうやらモットクレロンの興味を引いたようだ。うん。どれだけ彼女の腹を満たせられるか分からないが、この案はいいと思う。

 

「という訳でお父さん」

 

「うん?」

 

「貸し農園の手配をお願いします!」

 

「あー…そうきたか…」

 

やっぱ流石に渋るよね。でもここで引くわけにもいかない。

 

「俺も収穫とか手伝いに行くし、勉強の一環だと思って!」

 

と自分はお祈りのポーズをする。

 

「わかった。わかったから。その辺は父さんがどうにかしよう。けど約束として投げっぱなしにしないでちゃんと野菜作りのこと勉強するんだぞ?」

 

「ありがとう父さん。ほらモットクレロンさんも」

 

「わーい!よくわからないけど野菜が食べられるんだなー!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

数時間後自分たちは郊外にある畑に来ていた。ここが父さんが用意してくれた畑のようだ。

広さは某猫ロボによく出てくる空き地くらいだろうか?モットクレロンが満足するくらいの野菜を収穫できるかは分からないが、とにかく用意してもらっただけでも感謝しなければならない。

モットクレロンは辺りをキョロキョロと見回して

 

「野菜はどこだぁ?」

 

と野菜を探している。

 

「これから作るんですよ」

 

「えっそうなの?」

 

話を聞いてなかったのかな?

 

「種を持って来たよー」

 

と父さんが各野菜の種をもってきた。秋が旬の野菜が中心のようだ。

 

「じゃあモットクレロンさん。この種を畑に植えていきましょう」

 

「わかったー」

 

そうして自分たちは畑に種を植えていった。様々な形の種を畑に植え終えると、

 

「で?あとどれくらいで野菜出来るの!?」

 

とモットクレロンが聞いてきた。

 

「数か月くらいですかね」

 

「えーそれくらい待たなきゃいけないの!?」

 

「それくらい待たなければいけないんです。果報は寝て待てという言葉もありますし辛抱してください」

 

「うー…」

 

モットクレロンには悪いけどこればっかりは仕方がない。

 

「さあモットクレロンさん帰」

 

「じゃあ野菜ができるまでここから動かないぞ!」

 

「ええ!?」

 

これはどうしよう。へそを曲げてしまった。

 

「野菜が出来たらちゃんと呼びますから」

 

「やだー!」

 

すると父さんが

 

「じゃあこの畑の管理人になる気はないかい?」

 

「「管理人?」」

 

「そうだ。この畑を管理している団体が管理人を募集しているらしくてね、モットクレロンが畑の管理人になれば毎年野菜を分けてもらえるぞ」

 

「えー!本当!?」

 

モットクレロンは目を輝かせているが

 

「お父さん。大丈夫なんですか彼女が管理人なんて」

 

「まあ色々と裏技があるんだ。そうすればこの子も満足するだろう?」

 

と父さんは言うけど本当に大丈夫なのかな?

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そして、それから数か月が経ち、野菜が収穫できる時期になったそうなので、家族で収穫体験にきたわけなのだ。

 

作業着に着替えた自分は久しぶりにモットクレロンに会った。

 

「よーこそーモットクレロンの畑へー!」

 

「モットクレロンさん久しぶり。あれからどうしてたの?」

 

「ああ!野菜を育てながら色々勉強してたんだー。今日はやっとやっと野菜が食べられる日だよね!昨日は眠れなかったよー!」

 

どうやら本当にこの日を楽しみにしていたようだ。

じゃあ収穫に取り掛かろうか。

 

「まずは白菜」

 

「白菜はねー漬物や煮物にすると美味しいよー」

 

「次は人参」

 

「人参は煮ても炒めてもいいよー」

 

とこんな風に収穫する度にモットクレロンが野菜の解説をしてくれるのだが、瞳孔開いて涎たらしながらは止めて欲しい。

 

そんなこんなで大体畑から野菜を収穫し終えた。

 

「野菜野菜野菜野菜野菜~!」

 

「モットクレロンさん落ち着いてください。一緒に食べますから」

 

近くにある施設の厨房を借りて母さんがポトフを作る事になった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「出来たよ~」

 

と畑で収穫された野菜をふんだんに使ったポトフが出された。

 

「あっ美味しいねこれ。ゼットンもそう思うでしょ」

 

「…はい。そうですね」

 

「それなら嬉しいな。サツキの友達が育てた野菜がいいんだろうね」

 

「はあ~生もいいけど料理した野菜も美味しいな~」

 

「どうだいモットクレロン。次のシーズンも育ててみないか?」

 

「はいはい!もちろんやらせて!地球に来てよかったよ~」

 

こうしてモットクレロンさんは地球に残り、畑の管理人を続けることになったのだった。

 




感想・評価おまちしてます。


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19話 火山怪鳥

たぶんまたしばらく間隔空くと思います。悪しからず。


今、自分達は公園で「路上ライブ」を鑑賞していた。

 

「……」

 

「……」

 

「――~~♪」

 

聴いているのは二人。自分とザンドリアス。そして自分達の前でギターをかき鳴らしているのは怪獣ノイズラーだ。

 

このノイズラーは音が食事的な意味で大好きな怪獣で人化してからは何故かギターを装備するようになり、地球のエレキサウンドを気に入って自分でも演奏するようになったらしい。

それで、自分のギターの腕前がどんなものか自分達に聴いてもらうよう頼んできた。そうして自分と前から知り合いだったらしいザンドリアスが聴き手になったのだが――――

 

ノイズラーの演奏は一息ついたのかギターを演奏する動作を止めた。

自分はパチパチと拍手をしておいた。

 

「ありがとう!――で、どうだった?私の演奏」

 

と、ノイズラーは感想を聞いてきた。

自分は音楽に余り詳しくなく、良し悪しを評価できる立場に立てるのか微妙なのだが今のはその――

 

「ええと」

 

「アンタ途中から音喰ってたでしょ。聞こえなくなってたわよ」

 

とザンドリアスがずばりと言ってしまった。

そう、彼女の演奏は途中から全くの無音になってしまっており、後半自分達は無音の中ギターを弾く動作をしているシュールな構図を眺めていた。

 

「あれ?そうだった?」

 

「白々しいわねー、いくら気に入った音だからってつまみ食いするのは止めなさいよ。何のために付き合っていると思ってるの?」

 

「そうですね。ちゃんと1曲聴かないとどうにも評価しづらいと思います」

 

「あはは、ごめんごめん。もう一度弾きなおすから~」

 

こうしてもう一度ライブはやり直されることになった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――同時刻・公園近くの建物の屋上――

パシャ、パシャ、パシャ

「ふふふ~今日もサツキ君は可愛いなぁ~」

 

「……」

 

「今日の友達は初めて見る子ね。サツキ君って意外と気が多いタイプなのかしら?まあ可愛い子を撮影するのに好都合なんだけど」

パシャ、パシャ、パシャ

 

「……」

 

「あら、ゼットンさんこんにちはー。今日もサツキ君の監視かしら?」

 

「……」

 

「ちょっとー反応してくれてもいいじゃないの」

 

「貴女とは最低限の会話にしないと変態がうつると言われましたので」

 

「ちょっ!なにそれひどーい!だれがそんなこと言ったのよ!」

 

「……」

 

「また無視?それならそれでいいもん。貴女のことも撮っちゃうから」パシャ

 

「あれ?いない…」

 

「……」

 

「いつの間に後ろに!?」パシャ

 

「また消えた!?減るもんじゃないしいいじゃないのよー!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

今度こそライブが終わった自分達はベンチで休んでいた。

 

「どーだったかな、私の演奏は?」

 

「まあ良かったんじゃないんですか?」

 

「さっきよりは大分良いわね」

 

そんなことを話していると。

 

「……よいしょ」

 

声のした方を見ると、『門』の傍に赤青黄の三色に彩られた髪をして腕に何かひらひらとした装飾品をつけた女性が居た。

例によって怪獣だろうか。

その怪獣らしき女性はこちらに気づくとじっとこちらを見てくる。

 

「ねえ、あの人サツキの知り合い?」

 

とザンドリアスが訊いてくる。いや、自分もこの怪獣さんに出会うのは初めてだ。

一体何の怪獣だろう。ひらひらしていたり羽毛のような装飾をしている所をみると鳥の怪獣だろうか?

 

そんなことを考えていると女性はこっちに歩いてくる。そしてベンチに座っている自分の前まできた。何か用かと思い言葉をかけようとすると女性は両手を自分の肩の上に置いた。

そして

 

「君が欲しい」

 

「え?」

 

「へ?」

 

「ん?」

 

自分たちは間の抜けた声を出してしまった。

えっこれは何?告白されたの?初対面の女性に?

と混乱する自分はいつの間にか女性に担がれていた。

 

そして女性はその場から走り出した。

 

「えっ、え?」

 

「サツキが誘拐されたー!?」

 

怪獣二人を残して。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――公園近くの建物の屋上――

 

「はあっはあっ…やるわね、流石はゼットンといった所かしら。全然隙見せてくれないんだもの」

 

「……」

 

「あー、今日は降参。貴女を撮影するのはまた別の機会にね。さて撮影の続き続き…あれ?サツキ君がいない…」

 

「しまった…」

 

「あれ!?ゼットンさんもいない!?もしかして私おいてかれた…?」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

女性に担がれて運ばれて数十分。自分は住宅街から離れた野原にいた。もちろんあの女性も一緒である。

 

そして降ろされた自分は何故か体の各所を揉まれていた…。

 

「あのう…何をやっているんですか?そもそも貴女は誰なんですか?」

 

本当に訳が分からない。告白?されたと思ったらこんな所に連れてこられて体を揉まれてるのだ。一体どうすればいいのか。

 

「私はバードン」

 

と女性改めバードンさんがここでやっと名前を言ってくれた。バードンといえば火山に生息する鳥怪獣で、ウルトラ兄弟2人を葬ったこともある強豪だ。

そんな怪獣がなにをやっているんだろう?

 

「ちょっと君のことを調べているの」

 

調べている?なにを?

 

「ふむり」

 

バードンが自分の体から手を放す。

 

「肉付きはそこそこ、脂肪分は少なめ。やっぱり子供だからかしら適度に柔らかい…」

 

えっなにそれ肉の質かなにか!?

そういえばバードンって肉食だったよね?えっなに自分食べられちゃうの!?

 

「俺を食べる気なんですか!?」

 

「大丈夫、あくまで非常用だから」

 

全然安心できない返答が帰ってきたんですけど!

 

「あのー俺帰ってもいいですか?」

 

「駄目。私と来てもらう」

 

と自分はバードンに掴まれてずりずりを引きずられていく。その先は『門』だ。

 

「えっちょ、ちょっと待ってください!」

 

「待たない」

 

そしてバードンの体が『門』に沈み込む。しかし――

 

「あいたたた!」

 

「あれ?」

 

「俺はこの門を通れないんですよ!」

 

そうなのだ。人間だからなのかどうかは分からないが怪獣達が割と自由に出入りできるのに対して自分は『門』を視認することはできるがそこを通り抜けたりはできないのだ。

 

「そう…」

 

バードンは『門』に自分を連れ込むのを止め、『門』から離れた。

何処かに連れ去られるのは無くなったけどどうしよう。助けを呼ぼうにも辺りに人の影はないし。

 

「ふむう…」

 

バードンは何やら考えていたようだが、自分の腕を掴んだまま自分と向き合う。

 

「あの、バードンさん…?」

 

「本当は私の縄張りに連れて帰りたかったのだけど…」

 

バードンはじっと自分を見つめる。

 

「ちょっと横になって」

 

「はい?」

 

「いいから」

 

「え?なにをする気なんですか」

 

「気持ちいいこと」

 

「えっ。えーー!!」

 

ちょちょちょなんで初対面の人に逆レ○プされそうになってるの!?

 

「なっなんでですか!?」

 

「君を一目見たときから私は二つの感情を抱いた。一つは食欲で一つは性欲」

 

「やっぱり食べる気だったんですか!?」

 

「いや、食べちゃうとそれで終わりだから。私は長く楽しみたいから。あくまで非常用ね」

 

まずい、このままでは二つの意味で美味しく頂かれてしまう!

なんとか脱出しなくては!

この場をどうにかする方法を考えていると、

 

「ん…ちゅう、ちゅ」

 

「んう!?」

 

バードンが自分に口づけをしてきた。それと同時に口内に何かが流れ込んできた。

自分はとっさに吐き出そうとしたが、彼女はそれを許さなかった。というかキスうまくない!?この人?なにかとても気持ちよく感じるんだけど!?

 

そうこうしているうちに何かフワフワとしたような酔いに近い感覚が来た。思わずその場にへたり込んでしまう。

そこにバードンが覆いかぶさってくる。

 

「私のクチバシ攻撃はどうだった?これはほんの序の口ですよ。本番はこれから…」

 

ああ、もうこの雰囲気に流されてもいいかなぁなんて思い始めていると、

 

「!」

 

バシッという音と共に黒い影がバードンを弾き飛ばした。

その影の正体は――

 

「ゼ、ゼットン!」

 

そこには家のボディーガードが立っていた。

 

「…サツキ、大丈夫ですか?」

 

とゼットンに助け起こされる。まだふらつき、立てるまでもう少しかかりそうだ。

弾き飛ばされたバードンは体勢を整えると、

 

「誰ですか貴女は?せっかくのお楽しみが台無しなんですが」

 

「……」

 

ゼットンと対峙する。しばらくにらみ合いが続くが、次の瞬間――

 

「…」

 

「ッ!」

 

ゼットンが瞬時にバードンの背後に移動し首筋に手刀を炸裂させた。

バードンはうめき声すら立てずにその場に崩れ落ちた。

 

自分はやっと回復しゼットンの所に行った。

 

「ありがとうゼットン」

 

危なかった。もう少しで貞操がどうにかなってしまう所だった。

 

「怪我はないですかサツキ」

 

「うん。その辺は大丈夫だよ」

 

「そうですか。話は変わりますが」

 

「うん?」

 

ゼットンは倒れているバードンに視線を移し、

 

「この女はどうすしますか?よろしければ止めを刺しますが」

 

「いや!そこまでしなくてもいいよ!!」

 

よろしければじゃない。いくら逆レされかけた相手とはいえそれは後味が悪すぎる。

こちらは怪獣と出来る限り仲良くしたいと思ってるし。

 

「ではどうしますか?」

 

「そうだね、この場に放置するのも何だし取りあえず…」

 

自分達はバードンの体を抱え、『門』に接触させた。するとバードンの姿は消えた。ちゃんと向こう側に行ってくれたようだ。

さようならバードン。こんど会う時には体は差し出せないが焼肉でもご馳走しようかな?

 

その後、徒歩で帰ったが体がクタクタになった。誘拐されかけたことは内緒にしてもらったけど、それからしばらくゼットンが『門』のように自分について回るようになった。

 

 

 

おまけ

 

ノイズラー「新しい曲覚えたから聴いてくれー!」

 

サツキ「何の曲かな?」

 

ゴモラ「楽しみー!」

 

~レッドキック♪ レッドチョップ♪

 

ゾワッ

 

ゴモラ「………なんか気分が」

 

サツキ「どうしたの?」

 

おまけ2

 

ノイズラー「続けていくぜー!」

 

ゴモラ「おーっ!」

 

サツキ「おー」

 

~宇宙の王子♪ 平和の戦士♪

 

ゾワッ

 

ゴモラ「……なんか…もういいかな」

 

サツキ(トラウマかなにかかな?)

 




駄文閲覧ありがとうございました。

おまけ2の歌詞瞬時に分かった方は多分かなりのウルトラ通。


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20話 宇宙怪獣の姉妹

平日の深夜に何やってんでしょう自分…


バードンに拉致られかけてから数週間後、今年も残り少ない時期となっていた。

外はすっかり冬の様相を呈している。一部の生き物は冬ごもり・冬眠を始める時期だが人間にはそんなものは余り関係ない。おそらく人になった怪獣達にとっても。

 

「寒い…」

 

「でしょうね」

 

近所の公園にて、ゴモラと遊んでいたらゴモラが寒がり出した。無理もないあんな薄着じゃ普通の人間なら風邪を引く。ちなみに自分はちゃんと冬物の服をきている。防寒対策はばっちりだ。

 

「さーむーいー!」

 

「だから遊びに行く前にいったよね?ゴモラも防寒着着てかない?って」

 

「だってあの時はそこまで寒くなかったもん!」

 

まあ確かに出かける頃は晴れていてそこまでの寒さじゃなかったけどさ。

 

「あーあー故郷は何時でも暖かかった…」

 

しょうがない。今着てる服のどれかを貸そうか。多少サイズは合わなくてもそこには目をつぶってもらおう。ゴモラに話しかけようとしたその時、

 

「あっいいこと思いついた!」

 

「どうしたんです。ゴモラさん。」

 

「暖かい子を向こうから呼び出そうよ!」

 

「えっ向こうから?」

 

この場合の向こうは恐らく怪獣墓場のことだろう。

でもまさかそうほいほいと怪獣を呼び出す訳には…

 

「服なら自分が貸しますから。いいんじゃないですか?」

 

「それだとサツキが寒くなっちゃうでしょ」「暖かくなれる子を呼んでみようよ」

 

うーん彼女は言い出したら聞かない所があるし呼ぶしかないの、か?

 

「はやくしようよー!」

 

「分かりました。分かりましたから。」

 

かくして自分は『門』と交信する。最初灼熱系の怪獣が思い浮かんだけど、危なそうなのでパス。ほどほどに暖かそうな怪獣が来ないか念じてみる。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

念じて1分ほどだろうか。『門』から人影が二つ現れた。一人はファーコートのような物を身にまとった褐色の長身の女性で、もう一人は同じく褐色の肌でなにやら大きな被り物をしている女性だ。あの被り物、どっかでみたような…。そう考えていると、

 

「うわぁー♪モフモフだぁー!」

 

ゴモラがファーコートの女性の方に抱き着いた。

 

「うわっ!なに!?」

 

「ちょっ誰よ!?」

 

と二人の女性は困惑している。自分も焦りながら

 

「ちょっとゴモラちゃん、初対面の相手に失礼だよ!」

 

と注意するが、

 

「えーやだよー。せっかくモフモフで暖かいんだもん」

 

と離れる気配がない。これはどうしようかと思っていると

 

「あの…何か知りませんがこのままじゃ動きにくいんで離れてください…」

 

とファーコートの女性はゴモラを引きはがそうとする。しかしゴモラはそれに応じずしがみ付いたままだ。

 

「ゴモラちゃん、本当に止めたほうがいいですよ。」

 

そういいながら自分もゴモラを放そうとしたが離れない。しかし、その時ファーコートに少し触れたのだが、なるほど…モフモフしている。

 

「もういい加減にお姉ちゃんから離れなさいよ!」

 

被り物をしている女性の方が業を煮やしたのか、ゴモラに近づく。何をするのかとみていると、

 

「吸引アトラクタースパウト!」

 

そう言うと女性のベルトに付いていた五角形の装飾が開いたかと思うと、そこから吸い込むような風が発生した。

 

「ゴモッ!?」

 

ゴモラの身体はファーコートの女性の身体から離れ、被り物の女性の腹部にくっ付いた。

今の技は間違いない。ウルトラシリーズでも有名な怪獣ベムスターの技だ。というか被り物がベムスターの姿そのものである。ファーコートの女性の方もよくよく見ると、ベムスターらしき意匠が見受けられ、この二人の正体はどうやらベムスターらしい。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「本当にすみませんでした。」

 

「ゴモォ…」

 

と自分とゴモラは二人のベムスターに頭を下げる。ちなみにゴモラの方は正座させている。

 

「別に…そこまで謝らなくてもいいよ。最初はびっくりしたけど訳が分かったらまあいいかな…って」

 

「お姉ちゃんは甘すぎるよー。仮にも一族のエリートなんだしもっと決然とした態度で臨んでもいいんだよ」

 

「でも、この子は悪気があったわけじゃなかったし、ちゃんと謝ってくれてるしいいじゃない」

 

この寛容な態度でこちらを許してくれたのはファーコート改め改造ベムスター。ウルトラマンタロウにてヤプールに改造されたベムスターで、その縁もあって超獣たちとも知り合いでベムスター一族の中でもエリート扱いされているらしい。

 

「そこまで言うならしょうがないけど…ゴモラとか言ったわね。これからはお姉ちゃんに軽々しく抱き着くような真似は止めなさい」

 

こちらのは被り物改めベムスター。改造ベムスターの妹で一族の中でもポピュラーなタイプのベムスターだそうだ。

 

なにはともあれ場が収まったみたいでよかった。一歩間違えれば公園を舞台に大怪獣バトルが勃発してたもしれないし。

 

「寒い…」

 

正座していたゴモラは相変わらず寒そうだ。

 

「やっぱ俺のを貸しますよ。」

 

とゴモラに自分の上着を掛ける。少し自分が寒くなったがゴモラがトラブルを起こすよりはマシだろう。

 

「ありがとうサツキ…」

 

「しかし変わってますね。怪獣相手にそんなに優しくしてくれる人間なんて」

 

「そうですか?まあ襲ってくるならまだしもちゃんと話も通じる相手ですしね。あっそういえばお詫びといってはなんなんですけど、家に行ってお茶とお菓子でもいただきませんか?」

 

「えっいいの?」

 

「じゃあいただきましょうか。でも我々としてはあれの方が…」

 

あれってもしかして…

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ゴモ~食った食った~」

 

「人間の食べるものは余り経験がないけどいけるね」

 

「うん。変な味だけど美味しいねー」

 

家に帰った後、自分達はお茶とお菓子を飲み食いしていた。

何度も家を訪れているゴモラはともかくベムスター姉妹も最初は着心地なかったが落ち着いてきた。

 

「ああ、結構長居してしまったけどそろそろ帰らなきゃ私たち」

 

「あーそうだねー他の人間がくるとヤバいかもしれないし」

 

そうかもう帰るのか。だったら。

 

「それじゃあこれ少ないですけどお土産です。」

 

と渡したものは。

 

「なにこれ風船?ん、この匂いは…」

 

「ヘリウムガスが詰まってます」

 

「えー!いいの貰って!」

 

「これもお詫びです。できたらまた俺たちと仲良くしてください」

 

「ありがとうサツキくん。人間に爆弾じゃないプレゼントを貰ったなんて初めてよ」

 

「サツキー。私にも何か頂戴よー」

 

「ゴモラには後で一緒に夕飯ご馳走するから」

 

この風船はピグモンから譲ってもらったもので、ベムスターの主食の一つがヘリウムであることを思い出しからこれを実行したのだ。因みにピグモンにはお返しとしてこんど一緒に家族の外食の回転寿司に誘っている。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そしてベムスター姉妹は『門』の向こうに帰っていった。

 

その後ゴモラは

 

「そういえばサツキはなんで私たちに優しくしてくれるの?」

 

と聞いてきた。自分は

 

「怪獣と友達になってみたかったからかな」

 

と答えた。怪獣との共存を夢見たあの人やあの人のようにはなれないかもしれないけど、これからも出来る限り自分も個性豊かで憧れたこともある怪獣達と仲良くなりたいな。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「あ~♡夏服のサツキ君とお別れするのは残念で寂しかったけど、冬服のサツキ君もいいじゃない~♡」

カシャカシャカシャ

 




公式の通常ベムスターのデザインはツインテールみたいにリファインしてくれればな~なんて。

駄文閲覧ありがとうございました。
ご感想評価お待ちしております。


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21話 大晦日

静かに雪が降る今年最後の夜。自分たちは家で思い思いに過ごしていた。

 

「「「かんぱーい!」」」

 

大人たちはリビングで忘年会をやっている。メンバーは両親とミコさん。それから父さんやミコさんの同僚である沢中イズミさんという女性だ。彼女に最初に会った時は中学生くらいかなと思ったくらい低身長で童顔なのだが、立派に成人しているらしく。父たちと一緒にお酒を飲んでいる。

 

「結局チ…千頭たちは来ないのか?」

 

「ええ、『それより仕事を片付けなければならない』とかいって来なかったの。せっかくの年末年始なのにねー今回は私とペ…じゃないイズミちゃんだけよ」

 

「はい、本当は私も残ろうと思っていたんですけどミコさんがどうしてもと」

 

「へえ。前から思ってたけど二人とも仲がいいんだね」

 

「!い、いえ、半ば強引な形で…」

 

「もー。イズミちゃんってば照れ屋さんなんだからー」

 

と大人たちが話してるのを尻目に自分とゼットンはテレビの紅白歌合戦を見ていた。当然と言えばそうだが、今年注目された歌手が歌っている。

 

「ゴモォ…人間ってこういうのが面白いの?」

 

「まっ、そうだよー」

 

「ノイズラーがいたらどう反応するんだろ…」

 

お客さんはミコさん達だけではない。自分が呼んだ訳ではないがゴモラ、バキシム、ザンドリアスが一緒にテレビを見ている。ゴモラはいつもの如く勝手に『門』からやってきて、バキシムとザンドリアスは普通に玄関から年越しそばを土産に入ってきた。

最初は怪獣は呼ばず、家族だけで静かに年越しする予定だったが、父さんの方も同僚を連れて来てるし、まあいいかと思った。

 

「あっちで飲んでるお酒私も欲しいなー」

 

ゴモラは大人たちが囲んでいるテーブルを見ながら言う。

 

「駄目だよあれは人間の世界では大人しか飲んじゃいけないんだ。ジュースで我慢してね」

 

実際怪獣に法律が適用されるのかどうかはよく分からないが、絵面的には完全にアウトだろうな。ていうかロクな展開になる予感がしない。

 

「わかったよう、ジュースで我慢するゴモ…」

 

「うんそれがいいよ。」

 

子供はジュースを飲むのに限る。ゴモラがゴクゴクとボラジョジュースというどこかで聞いたことのあるようなないような名前の果物のジュースを飲む。どこで売ってるんだろうこのジュース?やっぱ母さんが持ってきてるのか?

ふと、母さんといえばザンドリアスの家族のことに思い至る。

 

「そういえば、ザンドリアスは家族と一緒に過ごさないの?確かお母さんがいるって聞いたけど」

 

「ちょっ、その話題を出さないでよ!いいのよ、まだまだアタシは帰る気は無いから!」

 

ザンドリアスは少し機嫌を悪くしたようだ。彼女には母、つまりマザーザンドリアスが『門』の向こうにいるようだが、どうも彼女は家出のような形でこっちに来たらしい。それでバキシムの所に居候して今日に至るのだが、彼女はまだ意地を張り続ける様だ。

 

「じゃあサツキにお母さんをこっちに呼んでもらえば~?」

 

と、お菓子をつまんでいたバキシムがそう言った。そういう問題ではないような。

 

「そういう話じゃないわよ!まあ、ママがこっちに頭を下げてくれるならいいかもしれないけど」

 

どうやら親子喧嘩はまだ続くようだ。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ神社にお参りに行くから準備しなさい」

 

しばらくTVを観ながらお菓子を食べて過ごしていると父さんが声を掛けてきた。

 

「わかった」

 

自分も部屋にいって防寒着を取り出してこよう。

 

「そういう訳で俺達はお参りに行くけどゴモラ達はどうする?」

 

「ゴモは寒いから行かないよ」

 

この間も寒がっていたからね。ゴモラはパスと。

 

「私たちはそろそろお暇しようかな。今日はお菓子とかありがとうね」

 

「いやこちらこそ年越しそば持ってきてくれてありがとう」

 

バキシム達はもう帰るようだ。じゃあ玄関まで見送ろうか。

 

「じゃあアタシもバキシムと一緒に帰るから。サツキのパパ?さんとママさんもありがとうございました!」

 

と、ザンドリアスが父さんと母さんに声をかける。

 

「うん、もう遅いし帰り道に気をつけてね」

 

「出来れば来年もうちの子と仲良くしてやってくれ」

 

家族でバキシムとザンドリアスを見送った後、自分達はお参りの準備をすることにした。

 

そういえばミコさん達はどうするのだろう?

 

「お父さん、ミコさん達は?」

 

「ああ、二人はゴモラちゃんもいるから家に残って貰うことになったよ」

 

確かに子供一人だけ残していくのはちょっと危ない気がするな。ありがとうミコさん達。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

家にミコさん達とゴモラを残して出発した自分達は、あと10分くらいで日付が変わるという頃に神社に到着した。神社では他にも多くの参拝客が訪れていて、お焚き上げの為のたき火にあたっている人やお参りに来た人に配られている甘酒を飲んでいる人がいた。

自分達は参拝客の並ぶ列に同じようにならんだ。

 

「ねえサツキ」

 

並んで進み、もう少しで来年になるという時、母さんが話しかけて来た。

 

「今年はどうだったかな?良かった?」

 

今年はどう…か。

 

「今年は友達が沢山できたし、良かったよ」

 

うん、人間の友達も怪獣の友達もできた。他にも色々あったけど、やっぱり友達ができるのは嬉しいからね。

 

「それなら私も良かったよ。来年も新しい友達ができるといいね」

 

「うん。そうなれば素敵だね」

 

その後、日付が変わった後本殿の前に来た自分は新年の新しい出会いに期待しながら祈るのだった。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

――その頃江戸川家では

 

「このマンダリン酒?ていうお酒美味しいゴモ~」

 

「ちょっ!?ガッツさん!?なんでゴモラちゃんにお酒飲ませちゃうんですか!?」

 

「ふふふ、ゴモラちゃんの酔っぱらった姿というレアな図を撮りたかったのよ!は~いゴモラちゃんこっち向いてね~」

カシャカシャカシャ

 




珍しく次回予告。ティガのあの怪獣が出ます!

駄文閲覧ありがとうございました。感想評価お待ちしております。


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22話 邪神降臨!?

今回は前回と比べて調子よく書けた感じです。


正月が過ぎ、まだまだ寒気が居座る中。自分は外に出かけていた。

何のためかというと、お菓子などの買い足しである。最近になってから怪獣達がこっちに遊びに来ることが多くなっており、その度にお菓子などが消費されているから自分でも買い出しに行くようになっているのだ。特にゴモラやライブキングなどは遠慮なくばりばり食べているので我が家のエンゲル係数は嵩んでいく。我が家はお金持ちとはいえちょっとは自重して欲しい。

 

「いつも助かるよゼットン」

 

「…恐縮です」

 

お菓子や諸々が入った袋を持って自分達は帰路を歩いていた。ゼットンがいるお陰で荷物を半分にできるので最近の買い出しはゼットンが側に居る。

自分もずっしりと重い袋を持ちながら歩いていると

 

「ん?」

 

いつの間にか、辺りに黒い靄のような煙のようなものが漂っている。最初は近くで何かが燃えているのだろうかと思ったのだが、それにしては焦げ臭くはない。一体何だろうと思いふと『門』の方を見ると、どうにも『門』の方からその黒い靄のような煙もどきが噴き出して来ているようだ。

 

「なんだなんだ…?」

 

こんなことは初めてだ。『門』になにか不調でも起きているのか?まるで加湿機の様に黒い靄のような煙もどきが噴き出している。一体何がどうしたんだろうと思いながら『門』に近づこうとするとそれを遮るように目の前に一本の手が差し出された。ゼットンだ。

 

「ゼットン?」

 

「サツキ…私の側から離れないでください」

 

ゼットンは『門』の方に視線を合わせながらそう言う。ゼットンも何か異常を感じているのか?そうしているうちに黒い靄ような煙もどきよって日光が遮られているのか辺りが段々薄暗くなっていく。ゼットンは自分を背に『門』への視線を外さない。

そうして数分が過ぎただろうか、辺りに声が響いた。

 

――ふふふ、貴方がサツキさんですか――

 

「っ!誰だ!?」

 

自分は辺りを見回すがすでに周りは黒い靄のような煙もどきが立ち込めていて、よく見えない。そんな中、声は続く。

 

――そこまで警戒しなくともいいですよ。この闇は貴方たちを優しく包んでくれます――

 

「闇…?」

 

この黒い靄のような煙もどきは闇らしい。なんか吸い込んだら健康に悪そうな感じがするんですけど…

 

「結局一体だれなんですか…?」

 

――私は暗黒の支配者。そう、私の名前は複数ありますが貴方方地球人にとってなじみ深い発音は――

 

――ガタノゾーア――

 

その名を聞いた時、背筋が凍るような感覚がした。『前世』でも感じなかったような恐怖。それも本能に根差しているかのようなもの。頭の中でその名前が反芻される。

ガタノゾーア。それはウルトラマンティガに登場する怪獣、若しくはまさに邪神とも言うべき存在だ。有害な闇を吐き出し、生命体を石化させる光線を放つ。ティガと人類を絶体絶命の危機に追い込んだラスボスであった。

そんなのが、今すぐそばにいる。これは真面目に命の危機じゃないのか?

 

「い、一体なんの目的で…こんなところに?」

 

――ふふ、それはですね――

 

その時だった。

 

「…!」

 

自分達の頭上の大きな火球が出現したかと思うと、それがはじけ飛んだ。一瞬辺りが光につつまれその眩しさに思わず目をつぶる。

 

次に目を開けたときには辺りを漂っていた闇は消え、普通に日差しが差していた。

 

「今のは一体…?」

 

「まだ私の側から離れないでください」

 

ゼットンはまだ警戒しているようだ。自分達は助かったのか…?さっきまでの恐怖感も無くなっている。その時だ。

 

「ふむ、中々やるようですね。しかし話の途中でそれはないんじゃないですか?ああ、すみません話の途中ですがその前に――」

 

自分はがばっという擬音がでそうな勢いで振り向いた。そこには

 

「――ちょっと起こすのを手伝ってくれませんか?」

 

「えっ」

 

巨大な巻貝から少女が逆さまに生えていた。いや違う。そういう被り物なのか。兎に角自分達の背後にそんなものが鎮座していた。

 

「ええと…もしかして、ガタノゾーア……さん、ですか?」

 

「はい。そうですよ」

 

素直な返事が返ってきた。ええい今更女の子になっていることには突っ込まん。しかし

 

「なんで、逆さまなんですか?」

 

「それは、さっきの攻撃に驚いてしまってうっかりバランスを崩してしまったんです」

 

びっくりしましたよおと彼女は逆さまのまま頬を膨らませる。さっきまでのプレッシャーはなんだったんだ。なんかほのぼのした場面になってきたぞ…

 

「はあ…」

 

「それで、私を起こし「サツキ。早く帰りましょう」ちょっ、ちょっと!?このまま放置する気ですか!?」

 

ゼットンは自分の手を引いてそのままこの場を離れようとする。

 

「ゼットン。話はだけは聞いてあげようよ。ちょっと失礼だよ」

 

「ですが…」

 

「困っている人(?)を放置するのは流石に可愛そうだよ。それでガタノさん。一体俺らに何の用があったの」

 

「その前に起こしてもらえますか」

 

「念のためそっちの話を聞いてからね」

 

「実は…前々からこの地球の噂を聞いていたので」

 

「それで」

 

「この世界を闇につつもうと…」

 

「行こうかゼットン」

 

「ああ!ま、待ってください…!冗談!今のは冗談ですから…!」

 

「結局何しに来たの?」

 

逆さまのままガタノゾーアは話始める。

なんでも、文明を滅ぼすのが仕事のような趣味のような彼女であったが、人の姿になったことで自分の能力が上手く使えなくなってしまい、邪神として一から出直すためにまずは眷属などにやらせていた文明の観察をしようとここまで来たらしい。

 

「という訳なんですが、そろそろ起こしてもらえますか?」

 

「いいよ。ゼットンも手伝って」

 

「わあ、ありがとうございます!」

 

「いいのですか。彼女は…」

 

ゼットンが小声でささやくが、こっちも小声で

 

「いいんだよ、バランスが悪くてずっこけている邪神なんて怖くないもの」

 

幽霊の正体見たり枯れ尾花というが、こんな情けない姿をさらしているものをどうして怖がることができよう。

 

かくして自分たちは重い頭のガタノゾーアを起こした。

しかし重かったな…あの被り物何キロくらいあるんだろう?そらバランスも崩すよ。

 

「ありがとうございました。それでは不躾ながら、この地球の案内をお願いできませんか?」

 

「分かりました。俺でいいなら喜んで」

 

こうして、また怪獣相手に町の案内をすることになった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――公園

 

「ここがみんなとよく遊ぶ公園だよ」

 

「子供が沢山いますね」

 

「そりゃ大きい公園ですからね」

 

「子供は侮れませんよね。あんなに小さいのに…光が…」

 

「ちょっと顔色が悪くなっているけどどうしたの?」

 

「あっ…なんでもありません」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――ショッピングモール

 

「わあ~大きな建物ですね」

 

「中には色々あるよ。見ていきます?」

 

「はい!どんな文明になっているか楽しみです!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――家具店

 

「わわっ」グラァ

 

「危ない!ゼットン。支えるよ」

 

「す、すみません…」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――ペットショップ

 

「美味しそうな魚ですね!」

 

「ここのは食用じゃないんですけど」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――喫茶店

 

「苦っ!なんですかこの液体は!?闇色で美味しそうなのに!」

 

(普通のコーヒーなんだけど…見た目通りの子供舌みたいだ)

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

その後も自分達は河川敷やゲームセンターなど色々な所を回った。度々ガタノゾーアは転びそうになったけどその度で自分とゼットンで支えて事なきを得た。

そんなこんなで家まで帰ってきたのだが。

 

「すっ進めません…」

 

ガタノゾーアが家に入ろうとして引っかかっていた。あの頭では民家の扉を通り抜けるのはきついだろう。

 

「ガタノさん…あんまり無茶はしないでくださいね…ドアが壊れます」

 

「むむむ、仕方ありません。こうなったら…」

 

「こうなったら?」

 

「うーん…ええーい!!」

 

ガタノゾーアが力んだと思うと、ボンッという音がした。そうするとガタノゾーアの被っていた巻貝がかなり小さくなっていた。

 

「それ縮められたんですか!?」

 

これはびっくりだ。それができたら今日度々バランスを崩していたのはなんだったんだ。

 

「少しの間だけですけどね。それではサツキさんのお宅を見させてください」

 

そうしてガタノゾーアは自分の家に上がっていった。唖然としていた自分達も慌てて後に続く。

 

「あれ?やけに静かだけどみんなどうしたのかな?」

 

今日は何人か怪獣が遊びに来ていて、ちょっとしたパーティーのような様相になっていてそれでお菓子も多めに買ってきたのだが。行くときは賑わっていたはずの家がしーんとしている。『門』を通さなければ向こう側へはいけないはずだし、帰ったわけでは無さそうだが。

 

「シーボーズー。バキシムー。改ベムさーん。」

 

と呼びかけてみるがやっぱり返事がない。

一体全体どうしたんだろう。

 

「どうかしたんですか?」

 

ガタノゾーアは不思議そうな顔で聞いてくる。なんでもありませんよと返して彼女を客間に案内することにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「「ふー(…)」」

 

客間ではお茶を出し、皆で息をつく。まだ終わったわけでもないけど、今日は疲れたな。

 

「この飲み物は美味しいですねさっき飲んだ闇色のとは大違いです」

 

「眼兎龍茶を気に入ってくれたならこっちも嬉しいですよ。今日買ってきたお菓子もどうですか?」

 

「じゃあいただきます。うん…この棒の様な食べ物も美味しいです。」

 

ガタノゾーアが今食べているのはう○いぼうだ。ちなみにたこ焼き味。

 

「ほんとは遊びに来ている友達に振る舞う予定だったんだけどね、どこに行っちゃったんだろう…?」

 

「あのーサツキさん。大変言いづらいのですが…」

 

「ガタノさんどうしたんです?」

 

「足に変な感触がするんですが、怖くて確認できなくて…」

 

「足?」

 

自分はテーブルの下を見てみる。すると、

 

「うん!?」

 

ガタノゾーアの足先を橙色の髪をした少女が咥えていた。

 

「んむー」

 

「あわわっ」

 

「ラ、ライブキング何をしてるの!?」

 

彼女の名はライブキング。いつも笑顔なことと、食い意地が張っているのが特徴の怪獣だ。今日遊びに来てた怪獣の一人だったのだが、こんな所に隠れていたのか。

 

「サ、サツキさん助けてくださいっ!」

 

「んむう、むー」

 

「いいから口を放しなさい!」

 

自分達は数分がかりでなんとかライブキングをガタノゾーアから引きはがした。

そしてライブキングをその場に座らせ何故ガタノゾーアの足を咥えたのか問うた。

わははははといつもの様に笑いながらライブキングは

 

「見慣れない子がいたから味が気になった!」

 

と答えた。食い意地が張り過ぎだろう。初対面の人物をみてまず味がどうなるのか気になるとかいつもながらこの子の思考回路がよくわからん。そういえば自分も初めて会った時手を咥えられたっけ。

 

「ごめんなさいガタノさん。うちの友達が粗相をもうこんなことをしないようきつく言っておきますから」

 

「はい…最初はびっくりしましたけど大丈夫ですよ。個性的な友達をお持ちなんですね」

 

どうやら許してくれるようだ。よかった。人になっているとはいえ、怒らせて闇をまき散らされたらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「よふぁったね!」

 

ライブキングがお菓子をもぐもぐ食いながら言う。君はもうちょっと反省の色を見せてくれ。

 

「そろそろ頭のサイズが元に戻るころですし、私はもう帰りますね。サツキさん今日は色々ありがとうございました!今度は私の住居に案内しますね」

 

「ごめんなさい。自分は『門』を通れないからいけないです」

 

それにSAN値が下がりそうなので嫌です。

 

「そうですか…」

 

ガタノゾーアはシュンとした顔をするが、

 

「じゃあ、また文明を観察しにきてもいいですか?」

 

と聞いてくる。断るとちょっと嫌な予感がするので、自分はいいよと返し、ガタノゾーアは帰っていった。

 

「はあ…」

 

自分は気をぬいた。今日は本当に疲れたな。そういえば遊びに来ていた皆は結局何処にいったんだろうと思っていると、

 

ぱりんという音と共に目の前の空間が割れてバキシムが出てきた。

 

「はー。やっといったかー」

 

「あっバキシムどうしたの?」

 

バキシムはやれやれといった仕草をして

 

「どうしたもこうしたもないよ。サツキがヤバい奴を連れてくるからさー急いで皆隠れたんだよ」

 

「ヤバいやつ?ガタノさんのこと?」

 

「そうだよ。もう、あんなのを連れてくるなら事前に言っておいてよ」

 

「そんなになのか?」

 

自分はひっくり返った姿を見て怖くもなんとも無くなってしまったが。

 

「あーびっくりしたーサツキも友達選びなよ」

 

「うう…心臓が止まるかと思ったですぅ…」

 

と改造ベムスターとシーボーズが2階から降りてきた。どうやらガタノゾーアが来るときは友達は近づけないようだ。

 

「なんかごめん皆。まあ気分を変えてお菓子でも食べていって」

 

「サツキ」

 

「どうしたのゼットン?」

 

「たった今ライブキングが我々の購入した菓子を食い尽くしました」

 

「わはははごちそうさまー!」

 

自分はずっこけた。

 




頭が小さくなったガタノさんの外見は怪獣娘(黒)版です。

駄文閲覧ありがとうございました。感想評価お待ちしております。


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23話 三面怪人・手紙・サーベル暴君

今回は難産


「お願いっ!お金貸して!」

 

「え?」

 

桜の蕾が膨らんだ季節。自分はとある少女に頼み事をされた。

彼女はダダ。ウルトラシリーズに登場する宇宙人であり、初代ウルトラマンに出てきた宇宙人の中では珍しく星人と呼ばれていなかったりする。見てくれは不気味だが実際に初登場した回を見てみると世の中の世知辛さを感じさせてくれる奴だ。自分はそんなダダと知り合い。たまに家に対戦ゲームのメンバーとして呼ばれたりするくらいの仲にはなった。

怪獣と違って理性的に動くことが多い宇宙人なのでさほど問題行動を起こしてはいないはいいことだ。そんなダダは最近あるものにハマっているようだ。それは――

 

「ダダさん。一応最初に聞きますけど、何に使う金なんです?」

 

「それは…ガチャに使うお金を」

 

「やっぱりそうですか…」

 

「いや!次の給料日には返すよ!?どうしても引きたいキャラがいるんだよ!」

 

このダダ、こちらの世界のソーシャルゲームにドハマりしていて新キャラが出るたびにガチャを回しているらしい。まあゲームにハマるのは個人の勝手だが、だからといって知り合いに金を借りようとするのはどうかと思う。

 

「ギャンブルの為に子供からお金を借りようとするとか恥ずかしくないんですか?」

 

「うっ…辛辣…」

 

「いくら知り合いと言っても出来ることと出来ないことがありますよ」

 

「で…でもお願い…!」

 

ダダは涙目で土下座してくる。流石にそうまでしなくとも…

 

「わっ分かりましたよ…1回分だけ、ちゃんと給料日に全額返す感じで!」

 

「ほんと!?ありがとうサツキ~!」

 

と、結局ダダに金を貸すことになってしまった。

  

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

さて、ダダは金を借りるとなにやら端末を取り出して操作をしている。しばらくすると。

 

「よしっ入金できた!」

 

ゲームの方の入金ができたらしい。

 

「ダーダー!ダーダー!」

 

なんだろう?この掛け声は

 

「一体なんですかその掛け声?」

 

「これは念を送っているの。1回しかできないからね」

 

「はあ…」

 

「よし!来い!」

 

ダダがゲーム画面を操作する。そして、

 

「あっ…」

 

ダダの顔から表情が消えた。これはダメなやつだ。

ダダが震えながらゆっくりとこちらに顔を向ける。

 

「サツキくん。お金「駄目です」」

 

「でっでも」

 

「でもじゃないです。1回分限りって言ったでしょ」

 

「くっ…こうなったら…」

 

ダダが腕を交差させる。すると

 

「ダーダー!」

 

ダダの衣装が微妙に変わった。具体的に言うと胸の部分の赤いパーツが青くなってその他の模様も変化している。

 

「ダダBです」

 

「…」

 

「さっきとは別人なのでもう1回「駄目です」あれ…?」

 

「別人じゃなくて同一人物でしょ」

 

「なっならばダダCに…」

 

「もう帰ってもいいですか?」

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

「それは大変じゃったのー」

 

「はい…」

 

ダダと別れた自分は自宅でデバンとお茶をしていた。

 

「まったく、子供から金をたかるなど本当にしょうがないやつじゃなそのダダというのは」

 

「あの後ダダさんを振り切るのに苦労しましたよ」

 

「そのそしゃげ?とかいうのはよく分からんがサツキも賭け事の類には気を付けよ」

 

「はい」

 

そもそも自分は携帯を持っていないので手の出しようがないんだけどね。

 

「ああ、そうじゃ。すっかり忘れていたがサツキにも手紙が来ておるぞ」

 

「手紙ですか?」

 

『門』の向こう側へは直接呼ぶ以外にも手紙を通してやりとりができるようで最近では年賀状を怪獣達の方へ送らせてもらった。

 

さて、何の用事だろう。

 

「誰からの手紙ですが?」

 

「それが…分からんのじゃ」

 

えっなんか嫌な予感がするが

 

「分からないって、差出人には会ってないんですか」

 

向こうでは手紙でのやり取りは珍しく、デバンは直接手紙を受け取っているはずだが。

 

「いや、なんかいつの間にか鞄の中に入っていたのじゃ」

 

「そうなんですか」

 

なにそれ怖い

 

「とにかく受け取りますけどその手紙は?」

 

「ああちょっとまっておれ、複数枚あるのでの」

 

そうして自分は10枚以上の便箋を渡された。

 

「それじゃあ用もすんだし私はいくぞ。茶とお菓子ありがとうの」

 

そう言ってデバンは『門』の向こう側へ言ってしまった。

さて、差出人不明の手紙か、何が書いてあるんだろう。自分は便箋の封を1枚開けてみることにした。

そこには

 

『メラ』

 

と書かれていた。…?一体どういう意味だ?他の便箋も開けてみるが、書かれているのは何とも言えない単語だった。小一時間手紙とにらめっこしていると手紙の端に小さく番号が振られているのが分かった。もしかして、番号順に読んでいくのか?しかし一体なぜこんな真似を…?

そう思いながら手紙を番号順に並べてみる。すると

 

『ああ、貴方のことを考えると体がメラメラ燃え滾る。この思い貴方に届け』

 

と読めた。

怖っ!ストーカーか何かか!?一体何処の誰がこんな手紙を送ってきたんだ。

どうしよう…いっそのことこの手紙を見なかったことにしようか…

とりあえずこの手紙をシュレッダーにかけることにした。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

「――ということがあったんです」

 

「そう…ていうかなんで私に相談するの…?」

 

そんな怖いことがあった自分は金髪で黒いタイツの女性、マグマ星人に相談していた。

マグマ星人。かのウルトラマンレオの宿敵の一人でもある宇宙人でサーベルやフックを武器としている。

正直言って『門』の機能を知り始めた頃の自分なら絶対呼び出そうとしない相手だったが、なぜ相談できる仲になっているのかというと、

 

『友達を紹介したいの』

 

と先に友達になっていたローランに紹介されたのがこのマグマ星人だったのだ。

原作での関係では想像できなかったが、怪獣墓場に行ってから二人は交友を結んだらしく、偶に一緒に散歩するなどの仲に進展しているらしい。

 

最初は自分も相手も警戒していてぎこちなかったが色々悪さをしたのは昔の事らしく、今の性格は大分丸くなっているみたいだ。そういうことと、ある理由でこの相談をしたのだが、

 

「家族には話しにくいですし、それにマグマ星人さんってストーカーやってましたよね?」

 

「ち、ちょっと!?私はストーカーなんてやってないけど」

 

「いや、ローランさんに迫った挙句に殺そうとしてたじゃないですか。それを世間一般ではストーカーっていうんですよ」

 

「あの事については反省してるし…」

 

「とにかくそういう経験があるマグマ星人さんに相談したらなにかヒントが得られると思って呼んだんです」

 

相手が怪獣宇宙人なら警察より目には目を歯には歯をでこっちのがいいだろう。

 

「そ、そうね、ならあの宇宙警備隊に任せたらいいんじゃ…」

 

「宇宙警備隊はこの世界にはいないと思うんですけど」

 

確かにウルトラマンに任せるのがベターな方法かもしれないけどこの世界にはウルトラマンは実在しないのだ。

 

その後も話し合ったが結局いい解決方法は出なかった。

 




駄文閲覧ありがとうございました。感想・評価お待ちしております。


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24話 父の日

お久しぶりです。今回は歩輪気様のリクエストを元に書いてみました。


すこし時間が飛んで今は6月である。明日は父の日だ。諸国では様々な日にばらけているが少なくとも今生のこの国ではこの時期に父の日がある。

前世では父の日に父親にプレゼントをしたがどうかは曖昧だが、今生では父の誕生日がよく分からないし、日頃の感謝も込めて父にプレゼントをしようと思う。

さて、何をプレゼントするかだが、結構お小遣いを貰っているとはいえ、小学生の貯金にも限界があるし、ここは花をプレゼントしよう。ベストかどうかは分からないけどベターな物ではあるだろう。

という訳でプレゼントする花は何にするのかだが、ここは花に詳しそうな知り合いに聞いてみよう。

 

「なにか良さそうな花はないかって?」

 

「そうなんです」

 

この深緑色の被り物とスカートを着けた女性はケンドロス。ウルトラマンレオに登場した怪獣である。植物の怪獣なら花にも詳しいかもしれないと思い呼んだのだ。

 

「父にプレゼントをしたいので、おすすめの花を教えて欲しいんですけど」

 

「なるほどな。じゃあちょっと待っててくれない?趣味で育てている花をいくつか持ってくるから」

 

「ありがとうございます」

 

ケンドロスは快く引き受けてくれた。これは良いものが期待できそうだ。ケンドロスが『門』の方に消えて暫くすると、いくつかの花が入った籠を抱えてケンドロスが出てきた。

 

「お待たせ!色々持って来たよ!」

 

「ありがとうございます!なんて花を持って来たんですか?」

 

するとケンドロスは赤い花を出す。

 

「まずはこれ!剣輪草っていうんだよ」

 

「わあ、綺麗な花ですね」

 

「でしょ?でもこれだけじゃないんだよ!」

 

そう言うとケンドロスは頭に剣輪草という花を差す。すると、

 

「うわっ」

 

剣輪草が鋭い刃物に変化したのだ。

 

「どう?これが剣輪草の真価。金属のように固くなって武器になるんだ」

 

「すごい!すごいけど…正直ちょっと…」

 

「なんで!?」

 

「だって普通に危ないですし…、武器になると言われても」

 

「えー、回転させて丸鋸みたいにしたり、ブーメランみたいに飛ばしたりできるのに?」

 

そんなこと言われてもこれは要らないかな…社会人は企業戦士ともいうけど本当に戦う訳でもないし…

 

「あの、できれば他の花にしてもらえませんか…?」

 

ケンドロスは不服そうな顔をして、

 

「しょうがないなー、故郷の花だったのに…じゃあこれはどう?」

 

と今度は黒い花を差しだしてきた。

 

「これは?」

 

「メージヲグって花。これはねー」

 

その時後ろか呻き声が聞こえた。振り返ってみると、

 

「ヴアアア…」

 

「うわっー!」

 

そこには醜い顔のゾンビが立っていた。

 

「恐怖心からくる幻を見せるの」

 

「いらないです!」

 

「そう…」

 

ケンドロスがメージヲグをしまうとゾンビは消えた。

 

「もうちょっといい感じの花はないんですか…」

 

「いい感じの花?じゃあこれは?」

 

と今度はユリのような花を見せてくる。

 

「この花は?」

 

「これはギジェラっていうの!」

 

ギジェラ…これまたどこかで聞いたような…?

花を見ていると花から花粉が噴き出した。

なんだ…?なんか、ふわふわとしか感覚につつまれる。

あれ…なんカ…スゴイ、キモチイイ…

 

「この花の花粉は人間を幸せにするらしいんだけど、おーい。聞いてる?」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

はっ!自分はなにを!?

 

「あっやっと気が付いたね!なんかボーっとしてた感じだったけど良かった」

 

そうだ、自分は花のおすすめをケンドロスに尋ねていたのだ。なんか記憶が曖昧だけど。

 

「さっきからろくな花がないような…もっと他にはないんですか?」

 

「えーと、まだ他にも色々あるけど…ジュラン、チグリスフラワー、ジャギラ、アブトシア、ソリチュラ、プラーナ、ホオリンガ……」

 

「なんか…もういいです…」

 

決めた!普通に花屋から旬の花を見繕ってもらおう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「父さん!今日は父の日だからこれ!」

 

「おお、ありがとう!」

 

結局お父さんにプレゼントしたのは、ユリ、クチナシ、バラなど花を混成した花束だった。

 

「いつもお仕事頑張ってくれてありがとう!」

 

「はは、こちらこそありがとうサツキ。ところで庭に見慣れない花が咲いているんだが何か知らないか?」

 

この後ケンドロスが偶然持込み、庭に繁殖しようとしていた外来種を家族総出で駆除することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

それは皐月の前に『門』が現れて数ヶ月程、施設から引き取られる前のことだった。

 

「ふふふ…ここが地球か…うまく組織を出しぬいてやったぞ」

 

「流石○○○○ちゃんやることが汚いー!」

 

「それでここからどうするのだ?」

 

人が寝静まった深夜に『門』から三つの影が現れていた。

全員女性で一人は黒、一人は白、一人は赤を基調とした衣装を着けている。

黒の女が言う。

 

「ふっ。決まっているだろう?早いとこ何処かに拠点を作って他の仲間を呼び出す。そして侵略よ!」

 

「そうか、でも静かに。今足元にいる子供に起きられたら無駄な仕事が増える」

 

「むう…そうだな子供か…」

 

「○○○○ちゃん子供怖いもんねー」

 

「馬鹿なことを言うな○○○○○○○。別に怖いわけじゃない!こんなガキ…」

 

黒の女は辺りを見回すとあちらこちらに子供がいるのに気づく。多数の子供。それは彼女のトラウマにスイッチを入れるのに十分だった。

 

「子供…いっぱい…」

 

「ここは児童養護施設のようだな。○○○○…?」

 

赤の女が異変に感じた頃には遅かった。

 

「~~~~~!!!」

 

「あちょ、○○○○ちゃん~」

 

「冷静になれ…」

 

黒の女はその場から逃れようと駆けだしていた。それを追う白の女と赤の女。

彼女らが施設を飛び出し、後で『門』の所に戻ろうと施設に戻った時には既に1人の子供と共に『門』は消えていて、後悔することになる。

かくして3人はろくな準備もないままこの地球に放り出され、侵略どころでは無くなり『門』を探すことになるのだが、彼女らが戻れるようになるのはまだまだ先の話。

 




おまけの3人は一体誰でしょう?(バレバレ)


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25話 亀と夏祭り

今回は歩輪気様のリクエストを元に書いてみました。どこかで怪獣娘のミニトータスが登場したコラボアニメみれないかしら?


小学生最後の夏である。夏休みの宿題は済ませた?OK!とにかくまたまた宿題を片付け、夏休みを満喫することにしよう。

 

「市内のお祭り?」

 

「そうだよ、今年も行くでしょ?」

 

夏と言えば夏祭り。今年もお盆の時期に自分の住む町で行われるのだ。まあそれほど規模は大きくないが、花火の打ち上げもやったりする。そんなお祭りに自分達は今年も行く。

母さんとそんな会話をしていたら、

 

「ホント!?私も行きたい!!」

 

と今日も遊びに来てはスイカを食べていたゴモラが声をあげた。意外だな、人の多い所は余り行きたがらないと思っていたけど。

 

「おや、ゴモラちゃんもお祭りに行きたいの?」

 

「うん!連れてって連れてって!」

 

ゴモラは尻尾をブンブンと振る。分かったからその大きな尻尾を室内で振るのは止めなさい。

 

「ゴモラさん、お祭りに来るのはいいけど他の人に迷惑かけないって約束できます?」

 

「約束?」

 

ゴモラは首をかしげる。

 

「そうだねー、確かに公共の場で良い子にできない子は連れてけないかな~」

 

母さんもそう言う。いくらお祭りが楽しいからって羽目を外し過ぎるのは良くない。自分だけでなく皆が楽しんでのお祭りである。

 

「んー、分かった。約束するよ!」

 

取り敢えずゴモラは納得したようだけど、お祭りの最中は眼を放さない方が無難かな…。

 

「ゴモラちゃんも連れていくことに決まったけど、2人はどう?参加したいなら今の内だけど」

 

「はい~?」

 

「?」

 

と母さんは同じくリビングでスイカを食べていたピグモンとエレキングに視線を向けた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そして自分達は夏祭りに来た。ただいま屋台が並ぶ道を歩いている所である。

 

「そういえばお父さんは?」

 

「どうしても外せない用ができちゃったんだって。まあお父さんの分まで楽しもうか」

 

「そうなんだ。じゃあ俺と二人で皆のこと見ないとね」

 

今回は家族だけじゃなく、皆が来ているのだ。ピグモンは兎も角、ゴモラはよく動くしエレキングはこの中で一番小さいので目を放さない方がいいだろう。そんなこと考えていると

 

「サツキお面買ってー!!」

 

ゴモラが大声を出しながら手を振ってきた。どうやらお面に興味を示したらしい。

 

「お面?いいのかなお母さん?」

 

お母さんは、

 

「うん。じゃあ皆の分も買おうかな」

 

「いいの?」

 

「折角のお祭りだからね。サツキも楽しまなくちゃ」

 

そういう訳でお面屋の前にやって来た。色々なキャラのお面がある。

 

「どれにしようかな…」

 

悩んでいると、

 

「あっこれ私だ…!」

 

ゴモラがあるお面を指差した。それは怪獣ゴモラのお面だった。

 

「あっホントだ」

 

「これが欲しいなー」

 

と、ゴモラはねだる。まあお面を買いに来たんだし本人が気に入ったならそれでいいだろう。

 

「わー!私のお面もありますねー!」

 

ピグモンも怪獣としての自分のお面を見つけたようだ。そのお面…ガラモンかもしれない。

 

「あっ、エレキングのお面」

 

自分もエレキングのお面を見つけた。エレキングを見ると、

 

「…」

 

こっちを見ている…

 

「このお面いる?」

 

こくりとエレキングは頷いた。せっかくなので自分もウルトラマンのお面にしようか。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

ちょっとお母さん達とはなれてコンビニのトイレを借りた後、お面を買ったけど次はどうしようか。焼きそばでも食いに行こうかりんご飴をいただきにいこうか、そう考えていると、

 

「あれ?おとーさん、おかーさん?…どこ?」

 

迷子かなと声のした方をみると、そこには亀の甲羅のようなものを背負い、緑色の尻尾を生やし、潜水服の様な物を着た少女が居た。ああ、この格好、いつものパターンだなと思った。少女はキョロキョロと辺りを見回している。

 

百中一でただの迷子かもと思いながらも声を掛けてみることにした。

 

「あの、どうしたのかな?お父さんとお母さんとはぐれちゃった?」

 

「あれぇ?キミはだあれ?」

 

「俺は皐月。この縁日に遊びに来てるんだけど、お父さんとお母さんはどこにいったか分かるかな?」

 

「んー…おとーさんとおかーさん。さっきまで一緒に居たんだけど、今は分かんない」

 

少女は首をかしげる。やっぱり迷子のようだそして、

 

「君、名前言える?」

 

「うん!ボク、ミニトータス!」

 

やっぱり怪獣だった。ミニトータス…ウルトラマンタロウに登場するカメの怪獣だったか、お父さんとお母さんというものも親の怪獣であるキングトータスとクイントータスのことであろう。やっぱり怪獣墓場から来たのだろうか。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「おーい」

 

「おーい」

 

取り敢えずミニトータスを連れて皆の所へ戻った。怪獣墓場に戻すことも考えたが、もしミニトータスの両親もこっちに来ていた場合、入れ違いになる可能性もあったのでまずはこっちで両親を探すことにしよう。皆は自分が見知らぬ少女を連れてきたことに少し驚いていた。お母さんが訪ねてくる。

 

「その子は誰かな?もしかして新しいお友達?」

 

「その、この子はミニトータスっていうんだけど、迷子らしいんだ。」

 

「おや、迷子か…じゃあ親御さんを探したほうがいいね」

 

「うんお願い」

 

「ねえお祭りは?お祭りは?」

 

ゴモラが訊いてくる。

 

「あっそうだね…じゃあミニトータスちゃんの親御さん探しを優先するけど縁日も楽しむということで。皆もそれでいいかな?」

 

「うん」

「はーい!」

 

「ん」

 

こうして皆で祭りの傍らミニトータスの両親を探すことにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「そういえばミニトータスのお父さんとお母さんってどんな感じ?」

 

キングとクインも擬人化しているんだろうか?せめて外見くらい分からないと探しようがないし。

 

「ボクに似てるよっ!立派な甲羅を持ってるの!」

 

まあ劇中似ていたけどさ…もうちょっと他にないのかな?

するとミニトータスは俺とお母さんと見比べると。

 

「サツキとおかーさん似てない!」

 

と言った。野郎…タブーに触れやがった…

お母さんは

 

「血がつながってないからねー」

 

と苦笑いしていた。

取り敢えず自分も

 

「ミニトータス。血がつながって無くても家族になれることがあるんだよ」

 

と言った。ミニトータスは

 

「へー、そうなんだー」

 

吞気に言った。

 

「サツキわたあめ買ってー!!」

 

微妙になった空気を壊すようにゴモラが来た。

 

「わたあめってなあに?」

 

「甘くてふわふわしたお菓子だよ」

 

「わあ、食べてみたいな!」

 

「じゃあ一緒に買ってあげるから食べに行こうか」

 

わたあめ屋で皆はわたあめを買う。ミニトータスは渡されたわたあめを不思議そうに見ていた。

 

「雲みたいだねー」

 

「そうだね「おかわりっ!」ゴモラさん食べるの早っ!?」

 

ゴモラがわたあめが無くなった棒を差し出してきた。食い尽くすの早いな。遅れてミニトータスもわたあめを食べる。

 

「あまーい!美味しいねこれ」

 

気に入ったようで何よりだ。他の屋台の食べ物も見てみようかな。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――りんご飴屋

 

「これ中身は本当に林檎なんだー!美味しいっ」

 

「おかわりー!」

 

――チョコバナナ屋

 

「これもふわりとして甘くていいね!」

 

「おかわりー!」

 

――焼きそば屋

 

「もぐもぐ」

 

「おかわりゴモ!」

 

自分達はミニトータスの両親の探しの傍ら色々な屋台の食べ物を食べた。毎回ゴモラがおかわりしてた気がするけどライブキングか己は。まあライブキングだったらここらの屋台の食べ物を食い尽くしそうだけど。あと他にもミニトータスが赤い水玉の模様が入った団扇を欲しがったのでこれも買った。

 

「ありがとう!これ大切にするね!」

 

「その団扇似合っているよ。あっもうそろそろ花火の時間じゃない?」

 

色々やっているうちに花火の時間が迫ってきた。花火をよく見るために自分達は高台に向かうことにした。

 

「ボク花火見るの初めてだな~」

 

「ミニトータスちゃんは花火見るの初めてかぁ」

 

「ふふっ、じゃあ今回はよく見たほうがいいですねー」

 

そんな会話をしながら自分達は高台にある公園に到着した。花火をみるためか既に人が集まってきている。念のためミニトータスに聞いた。

 

「ミニトータスさん。ここにお父さんとお母さんは居る?」

 

「うーん…居ないよ」

 

ここにもいないか…じゃあやっぱり怪獣墓場の方に居るのかな?まあ取り敢えず花火が終わってから考えよう。もう花火が打ち上る時間だ。

 

ヒュ~という音とともに一筋の光が空に上がり、ドンッという音とともに眩い色とりどりの光が夜空に弾ける。やっぱり日本の夏と言えばこれだろう。皆も空を見ながら顔を輝かせている。

 

「わあ~!キレーだな~!」

 

「夕日も良いが偶には花火もオツだね~」

 

「そうですねー」

 

「ゴモォ…」

 

「…」

 

次々に花火が上がっていき、夜空を華やかに照らす。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

花火も終わり、そろそろ帰る時間になった。結局ミニトータスの両親はこちらでは見つからなかったけど怪獣墓場の方に1人で帰ってもらうしかないか…

そう思っていると、

 

「あーっ!見つけたっ!!」

 

「あれ?ウインダムさん」

 

「あら、ウインダムちゃん」

 

『門』の方からウインダムが現れた。彼女は何をしに来たのだろうか。

 

「もしやと思ったけどサツキの所にいたか」

 

「ウインダムお姉さん!どうしたの?」

 

どうやらウインダムとミニトータスは顔見知りらしい。

 

「どうしたも何もお前がいなくなったって連絡を受けて皆で探していたんだよ!」

 

「そうだったんですか」

 

「そうなのー!?」

 

正直1人だけで向こう側に送るのは不安だったから迎えが来て一安心だ。

 

「というわけだ。ご両親が心配しているしさっさと帰るぞ」

 

「うん、分かったよ。でもちょっと待ってー」

 

ミニトータスはこちらに向くと。

 

「今日はありがとー!とても楽しかったよー!」

 

とお礼を言ってきた。

 

「どういたしまして」

 

「うん、良かったらまた遊びにおいでね」

 

「ばいばーい」

 

「迎えがきて良かったですねー」

 

こちらも口々に返す。最初はどうなるかと思ったけど良かった良かった。

 

「うん!じゃあまた遊びに来るねー!」

 

そう言ってミニトータスはウインダムとともに『門』の向こう側へ行った。

そうして自分達も帰る事になったが途中、

 

「かき氷買ってー!」

 

「まだ食べるの!?」

 

ゴモラがデザートを所望した。ほんとよく食べるな。

そしてまたしてもゴモラはおかわりするのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「――それでね、こんな団扇貰ったんだー!えっ?酷いことされなかった?全然!おとーさんおかーさん。人間っていい奴もいるんだねー!」

 




駄文閲覧ありがとうございました。よろしかったら感想・評価お待ちしております。


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26話 SIDE:ベムスター(妹)

明けましておめでとうございます。今回は歩輪気様のリクエストを元に書いてみました。

今回登場するゲームはモデルはありますが実在してません。


私には姉がいる。姉はお人好しだ。

 

「…………」

 

なぜ姉はあんなにも優しいのか?

 

「……」

 

私は時々考えるが、答えが出たことはない。ただ一つ言えることは、姉の優しさに付け込んでいる奴は大勢いるということだ。

例えば、今この瞬間も……。

 

「あら? どうしたの?」

 

ある人物に貰ったゲーム機をやっていると、姉が声を掛けてきた。

 

「なにやってるの?」

 

「この間地球で貰ったゲームだよ」

 

姉は私の手元を覗き込んでくる。その顔を見ると――

 

「……」

 

化粧をしていた。一体いつの間にそんなものしてきたんだろう。怪獣墓場にはそんなもの無いというのに。

 

「…なんで化粧なんてしているの」

 

「えーっとね」

 

姉は少し恥ずかしそうな顔をして言った。

 

「地球に遊びに行ったらサツキの知り合いの印南って人に会って、それで話していたらいつの間にかそういう話になっちゃって…どう?似合う?」

 

「別にー」

 

「あ、そう……」

 

姉はなんだかガッカリしたようだ。しかしすぐに気を取り直したようでまた話しかけてくる。

 

「ねえ知ってた? 地球人ってみんなこんな感じらしいよ」

 

「ふうん」

 

「地球の女の子ってみんなこうやってメイクするんだって」

 

「へぇ」

 

「男の子の方もこういう格好をするらしくてさ」

 

「へぇ」

 

「でもやっぱりサツキが一番可愛いわよね!」

 

「……」

 

「あれ? どしたの?」

 

「なんでもない」

 

「そっかぁ~」

 

姉は最近どうも地球で知り合ったサツキという男の子のことが気になっているらしい。

それを自覚しているのかしてないのか、私としては余り喜ばしくない。別に姉が取られるのが嫌とかそういう訳ではなく、人間とだなんて絶対上手くいくわけが無いと思うのだ。

私たちベムスターはどうも人間と相性が良くない。過去に何度も人間と戦ったことがあるし、その結末は大抵どちらが死ぬかである。

 

とにかくだ、私としては人間とはあまり関わり合いになりたくないのだが、姉はちょくちょく地球に遊びに行ってしまう。本当に困ったものだ。それもサツキの存在もそうだが、これまた地球で知り合ったゴモラに誘われている。私は正直ゴモラも好きではない。あの能天気にずけずけとこちらの領域に入ってくるのがどうにも気に入らないのだ。

 

今日もまた姉は出かけていく。行き先はいつも通り、あの少年のところだろう。姉はここ最近ずっと楽しそうだ。

 

「いってきまーす」

 

「いってらっしゃい」

 

姉を見送る。やはり嬉しい気持ちなど欠片もない。むしろ心配の方が勝ってくる。………………

 

「おーい」

 

そんな時私に呼びかける者がいた。あれは…ナックル星人か。

これまたあまり好ましくない客が来た。ナックル星人はこの怪獣墓場の住人の一人で確か今は連合だったか同盟だったかに所属していたはずである。私はこのナックル星人があまり好きではない。あまり多くは語らないが、過去にこいつに手を貸したことがあったのだが、結局のところひどい目にあったというのは覚えている。こいつは自分の為に平気で他者の命を軽んじることができる奴である。

 

私は無視することにした。相手などしていられない。

 

「おい! 聞こえてるんだろ!?」

 

うるさい奴だ。私の神経を逆撫でしようとしているに違いない。

 

「おいコラァッ!! ちょっと待て!!」

 

しつこいな。仕方がないから振り返ることにした。

 

「なんですか?」

 

「この前の返事を聞かせてもらいたいんだが?」

 

「ああ、部下になれってあれですね」

 

そうだ、こいつは私たち姉妹に部下にならないか?と言ってきた。その時はなんかかんやあって保留にしたのだが、

 

「普通に断るわよ」

 

「なんでだ?部下になって組織の一員になればお前たちも美味い飯が食えるだろ?」

 

「それが信用できないのよ。そういって使い捨てられたらたまったもんじゃないわ」

 

「大丈夫だって」

 

全くもって信用ならない言葉だが、一応聞いておくことにする。

 

「じゃあ聞くけど、あなたたち怪獣墓場の組織ってどんなことやってるの?」

 

「それは秘密だ」

 

やはりかと思った。

 

「それならいいです」

 

「そう言うなって」

 

「しつこくしないでください」

 

「分かったわかった。じゃあこうしよう。部下になったら前払いでヘリウムをタンク3つ分はどうだ?」

 

「なんですって……?」

 

「嘘はつかない。なんなら水素や窒素でもいいぞ。おい、ブラックキング」

 

「はっ」

 

彼女の腹心である怪獣ブラックキングがガスが入っているであろうタンクを持って来た。

 

「うーん」

 

さて、どうしようか?姉に相談?それは悪手だろう。お人好しの姉のことだ、この好条件にホイホイつられてしまうだろう。

 

「やっぱりもう少し返事を待たせてもいいですかね?」

 

「…まあいいだろう。これはお前だけではなく改造された方のベムスターにも関わることだ。しかし永くは待てないからな。行くぞブラックキング」

 

「はっ」

 

そう言ってナックル星人とブラックキングは去っていった。とりあえずこの場は切り抜けられたがさて、どうしよう?あのナックル星人のことだ、部下になったら危険な件でこき使われるかもしれない。しかし、この怪獣墓場に来てから久しくガスの類にはありついていないし…

と、そこまで考えてから最近少量であるが、ガスを貰ったことを思い出す。

 

「はあ…ダメ元で行ってみるか」

 

私は姉の様に地球に行くことを決意した。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「勧誘…ですか?」

 

「そう、断り切れなくてどうしようかって、悩んでいるのよ」

 

人間の民家の居間、そこに私とサツキは座っていた。

テーブルの上にはお茶菓子があり、それをつまみながら話している。

 

「それでどうしたら良いと思う?」

 

「えっと、その話は断るべきだと思うのですが……」

 

「やっぱりそうよね。でも断ったらただではすまなそうな気がするのよね」

 

「……」

 

無言になる少年。そりゃそうだ。下手すると命に関わる話をされているのだ。

 

「その…改ベムさんにはそのことは相談したんですか?」

 

「お姉ちゃんにはしてないのよ。もししてもよく考えずに首を縦に振っちゃうと思って」

 

「そうですか…でもなんで俺にそんな話を?」

 

「だから、その……」

 

「?」

 

「私達を保護してくれないかしら」

 

「えっ?なんですって!?保護!?」

 

サツキは驚いたような顔をしている。急な話だし当然か。でも私達もここで引くわけにはいかない。

 

「サツキの所には怪獣が大勢いるでしょ?サツキの所に住まわせてくれたら、ナックル星人も迂闊に手出しができないと思って」

 

「いや…居るって言っても皆勝手に遊びに来ているだけだし…急に住まわせてくれって言っても」

 

「やっぱそうだよね…」

 

困ったことになった。他に頼れる存在と言えば、姉に縁のあるあの怪獣墓場のヤプールの連中くらいしか思い浮かばないが、あいつらは信用できない。

 

「悪いんだけど、なんとか説得してくれないかしら?この通り!

私は頭を下げた。

 

「ちょっ!?そんなことをされても!そもそもどうして俺に頼むんですか?」

 

「それは……あなたが一番頼みやすいから」

 

嘘ではない。

 

「いや、そういう問題じゃなくって」

 

「お願いします!!」

 

再度、今度は深く頭を垂れる。

 

「はあ……分かりました。やってみます。でもその前に試したいことが…」

 

「本当!!ありがとうね」

 

試したいこと?なんだろう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

それから数日が経ち、私達は再び卓を囲んでいた。しかし今回は私とサツキの二人だけではない。その場にはナックル星人とブラックキングもいた。彼女らはサツキが呼び出したのだ。

 

「それで、どうだったんだ?結論は出たのか?」

 

「そのことなんですが」

 

サツキがナックル星人に応対する。

 

「ん?なんだ交渉の席を設けただけじゃないのか?」

 

「彼女は貴女方の部下になる気はありません。彼女のお姉さんも同様です」

 

ナックル星人は顔をしかめる。

 

「ほう。じゃあ交渉は決裂ということか?」

 

「いえ、ナックル星人さん。ゲームの類は好きですか?」

 

「うん?まあカードゲームくらいなら嗜むが……」

 

「そうですか。実は最近新しくボードゲームを買ったんですけど、ベムスターさん達が貴女の部下になるかならないかゲームの勝敗で決めませんか?もちろんナックル星人さん達にもメリットは付けますよ」

 

「…メリットは?」

 

「ナックル星人さんが勝ったら…俺がナックル星人さんの言うことを一つ聞くと言うことでどうでしょうか」

 

「ほう……」

 

サツキは私達だけじゃなく、色んな怪獣とコネクションのある存在だ。ナックル星人的にももしかしたら私達を部下にするよりも大きなメリットがあるだろう。ナックル星人は少し考え込む素振りをすると、

 

「いいだろう。その勝負に乗ってやる」

 

と、言った。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「――というゲームです。ではナックル星人さん、貴女はどちらのチームを選びますか?」

 

サツキは出してきたボードゲームは、あのウルトラマンや私達怪獣を題材にしたゲームだった。ルールの方だがプレイヤーはウルトラマンチームと怪獣チームに分れて対戦し、怪獣チームはボード上の施設を全て破壊するかウルトラマンチームの体力を0にすれば勝利、ウルトラマンチームは施設を守り切り、怪獣チームを全滅させれば勝利といった内容のものだ。

 

「ふむ…では私は、ウルトラマンチームを選ぼう。ゲーム上のこととは言え、ウルトラマンをこき使うのは面白そうだ」

 

「分かりました。では俺は怪獣チームを操作しますね」

 

二人はゲームボードを挟んで向かい合う。その時ナックル星人は

 

「あっ、そうだ。ブラックキング、サツキがイカサマの類をしないか見張っておけ。これは向こうが仕掛けてきたからな」

 

とブラックキングに命令した。

 

「了解しました。ナックル様」

 

ブラックキングは仏頂面でサツキを睨む。

 

「さて、そろそろいいか?」

 

「はい、始めましょうか」

 

こうして私達の今後を賭けた遊びが始まった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「じゃあまずはサイコロを振ってコマの配置を決めますね」

 

「いいだろう」

 

「ではダイスロール。うんこんな配置ですね」

 

「ウルトラマンとウルトラセブンは分断されたか。まあ単独で怪獣を蹴散らせるステータスだしいいだろ」

 

「それでは俺のターン、バルタン星人で隣に配置されていた施設を攻撃。残りの怪獣はウルトラマンチームを避けて進軍させます」

 

「では、私のターンだな。ウルトラマンを施設の近くへ進軍。ウルトラセブンでレッドキングを攻撃する。ダイスロール」

 

「攻撃は成功ですね。レッドキングは撃破されます……俺のターン。怪獣チームは2ターン目からランダムなマスに助っ人怪獣を出現させられます。俺はゴルザを呼び出します。そしてゴモラでウルトラマンを攻撃。ダイスロール」

 

「攻撃成功か。だがウルトラマンの体力はまだまだ余裕だ!」

 

「ですがそれは本命ではありません。バルタン星人で施設を完全破壊」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「ウルトラセブンでマグマ星人に攻撃!ダイスロール」

 

「失敗ですね。カウンターでウルトラセブンの体力が1点削れます」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ウルトラマンでバルタン星人を攻撃。ここで必殺技カードを使い、成功確定にする!」

 

「バルタン星人は撃破されます。俺のターン。レイキュバスを召喚、そのまま近くのウルトラマンに特攻。ゴルザで3つ目の施設を破壊します」

 

「私のターン。ウルトラセブンでゴルザを攻撃。ウルトラマンでレイキュバスを撃破したあとマグマ星人のところへ進軍!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「俺のターン!キングジョーで最後の重要施設を攻撃。ダイスロール。出目はクリティカルです!これで最後の施設は破壊。つまり、俺の勝ちです」

 

「なっなんだと!?」

 

や、やった。サツキがゲームに勝利したのだ。

 

「おめでとうサツキ!」

 

私は思わず拍手してしまった。

 

「さあナックル星人さん。これでベムスター姉妹には手は出させません」

 

「ぐぬう……」

 

ナックル星人は悔しそうにしている。

 

「ナックル様……」

 

ブラックキングも呆然としているようだ。

 

しかしサツキはそんな二人を無視して、私達に向き直ると言った。

 

「じゃあ、俺が勝ったんで、俺の命令を聞いてください」

 

「ああ、いいぞ。何なりと言え」

 

「ありがとうございます。では、俺の仲間になってください」

 

「仲間?」

 

「ええ、俺思ったんです。上司部下より仲間って関係ならひどいことにはならなそうだなって。これから俺とベムスターさん達とナックル星人さん達は仲間です」

 

呆れた。サツキは本当に私達を仲間にする気なのか。でも心の中でそれもいいかなという自分もいた。

 

「……そうか。私はいいと思うけど、皆はどう?」

 

私が聞くと、全員が笑顔で賛同してくれた。

 

「よし決まりですね。じゃあナックル星人さんもよろしくお願いします」

 

サツキはナックル星人に手を差し出す。

 

「ふん、仕方ないな……」

 

ナックル星人は渋々といった感じでその手を握った。

 

「それで、今日は何をするんだ?」

 

「いえ特に何も決めてませんね。ただ一緒に遊べればいいんですよ」

 

「そうなのか?……まあいい、私は私で勝手にさせて貰うよ」

 

そういうとナックル星人はブラックキングと共に「門」に消えていった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「そんなことがあったんだ。私も参加したかったな」

 

事の顛末を姉に伝えると姉は呑気そうに言った。

 

「今度やってみたら」

 

「そうだね、次は参加することにするよ」

 

私は姉の返事を聞きながら、この前サツキと交わした会話を思い出していた。

 

『また来てください』

 

あの時サツキは確かにそういった。人間に大きな貸しできちゃったな。

 

「……ねえ、お姉ちゃん」

 

「ん?」

 

「私ね……もう少しだけ、ここにいてもいい?」

 

「もちろんだよ。ずっといていいんだよ」

 

「……ありがと」

 

この時、私はまだ知らなかった。このことが切っ掛けでサツキに新たなトラブルが運ばれてくることを。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

~もしゲームに負けてたら~

ナックル星人「私の勝ちだ!」

 

サツキ「あっ!ウルトラマンが帰ってきた」

 

ナックル星人&ブラックキング「「何!!」」

 

サツキ「……ゼットン」

 

ゼットン「はい」二人を気絶させる。

 

ベムスター「どっどうするの!?」

 

サツキ「取り敢えず勝負はうやむやにして…、ベムスターさん達に護衛を付けましょう」

~そのあと~

サツキ「お菓子一年分贈呈するんでベムスターさん達の護衛に就いてください」

ガタノゾーア「やりますっ!!」

 




駄文閲覧ありがとうございました。よろしかったら感想・評価お待ちしております。

次回登場予定の怪獣のヒントは…「サルシンバル」です。


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27話 深夜と極悪宇宙人

最近調子いいです。


「おいナックル」

 

「むっテンペラーか…」

 

「例のガキに下ったと言うのは本当だわよ?」

 

「人聞き…宇宙人聞きの悪いことを言うな。ちょっとおままごとに付き合ってるだけだ」

 

「おままごと……ねえ。あのナックル星人も堕ちたものだわよ」

 

「うるさいよ。メフィラス達に釘を刺されてるとおり下手な手出しは出来ないだろう?それにゼットンを用心棒としてる奴とまともに事を構えたくないしな」

 

「まあ、ゼットンともなればお前の用心棒よりもずっと強いだわね」

 

「おい!ブラックキングを馬鹿にするなよ!奴にはまだまだ成長の余地があるんだ。ゼットンにも負けんよ」

 

「ウルトラマンをサシで1人くらい倒す実績を見せてから言うだわよ。それにしてもどうだっただわよ?サツキってガキは」

 

「ああ、見てくれは単なる地球人の坊主なんだが、あたしやブラックキングを前にして臆さなかったな。他にも怪獣と接触してるせいか?肝が据わっている。あと、妙に子供らしくないところがあってそこら辺は少し気になるかな」

 

「メフィラスたちが目を付けたゲートの鍵……私も接触してみるか……」

 

「お前も行くのか?メフィラスに釘を刺されてるんだろ?それに前にウルトラ兄弟絡みじゃないからパスって言ってなかったか?」

 

「気が変わっただわよ。『邪神』とも接触した小僧…メフィラス達はどう扱うかは知らんけど侵略に利用できれば絶対に有用だわよ。それに手荒な真似をしなければメフィラスも文句を言えないだわよ」

 

「確かになぁ……。でもあいつ……本当にただの子供なのかねぇ……」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

寒い。ここは、雪原だろうか?あたりの大地は白い。よく分からないが確かなのはとても寒いということだ。ガチガチと歯を震わす。口の中も凍りそうだ。

空を見上げる。太陽がない。暗い灰色の世界。そして空の果てまで黒い雲で覆われている。自分は何時の間にこんなところに来てしまったのだろう。そもそも此処は何所なんだろう。

そんなことを考えてると後ろの方から何か物音がする。振り返るとそこには白い髪に褐色の肌をしていて、振袖の袖だけが腕に付いていて後は水着の様な露出。足にはモコモコとしたブーツを履いているというアンバランスな格好をした女の子が立っていた。眠そうな目をした女の子は手に何かの袋を持っておりその手をこちら向けた。

 

「グミくうのです?」

 

――そこで目が覚めた。時計を見ると深夜2時半。もう一度眠りたいのだがさっきの夢のせいで目が冴えてしまっている。仕方なく起き上がり部屋の電気をつけた。すると部屋の中にゼットンが立っていた。

 

「あれ?ゼットンまだ起きてたの?」

 

「……いえ、眠ってはいます。……サツキこそ起床の時間にまだ早いのでは…?」

 

「なんか変な夢見てそれで目が覚めちゃったみたい」

 

「夢ですか……どんな内容です?」

 

「うーん……あんまり覚えて無いんだけど、真っ白な雪に覆われた世界で……誰かと話していたような気がする。ところでゼットンは俺の掛け布団知らない?起きちゃったのは寒いせいもあると思うんだ」

 

「……もしかしたら、あれではないかと」

 

そう言うとゼットンが指差す先には、

 

「すう…すう……」

 

スカイドンが自分の掛け布団を被って寝ていた。いつの間に自分の掛け布団をはぎ取ったんだろう。いやそれよりも……

 

「なんで俺の部屋にいるんですか!」

 

思わず声を上げてしまう。

 

「んん…起こしちゃった……?すみません」

 

どうやら向こうは起きたらしい。

 

「別に謝らなくてもいいけど……どうしてここに来たの?一応言っておくけど勝手に入っちゃ駄目ですよ」

 

「普通に遊びに来たのだけれども、サツキが眠ってたのでサツキが起きるまで一緒に寝てようかと思って」

 

その途中で俺の掛け布団ははぎ取られたのだろうか。

 

「ちなみにどれくらい寝てたのかな?」

 

「三時間くらいだと思うけど……あっサツキを抱き枕にするのは我慢したから安心してね」

 

「ありがとうございます……じゃなくて!今すぐ出て行ってください!!」

 

「えっ……でも、もう夜遅いし、もう少しだけ居させてくれないかな?寂しいよぅ」

 

「……分かりました……ただし、明日の朝早くに出ていってください」

 

「分かった……それならもう一回お休みなさい」

 

そういうと彼女は自分のベッドに入り込んでくる。

 

 

「ちょ!なんで入ってくるの!?別の部屋に行ってください!」

 

「だって、サツキと一緒に寝るって約束だったでしょう?それに私がここにいた方が暖かいし、すぐに眠れます」

 

「そんなこと言ったかなあ……ていうか俺より背が高いくせに子供みたいなこと言わないでくださいよ」

 

「む……私は子供じゃないわよ」

 

「はいはい、わかりましたからとにかく帰って下さい」

 

「嫌」

 

「嫌って言われても困ります。明日も学校あるんですよ?」

 

「だから何?」

 

「えっと……遅刻とかしたら先生に怒られるんじゃないでしょうか?」

 

「私は怪獣だしそんなの関係ないわ」

 

「……まあ、確かにスカイドンさんは怪獣だけど……」

 

「むしろ、授業を受ける必要も無いからもっと堂々としているべきよね」

 

「それはどうかと思いますが……あの、やっぱり出て行ってくれませんか?」

 

「何故?」

 

「あなたは人間じゃないんだし、この家にいてもいい事なんて何もありませんよ?」

 

「あら、残念。嫌われてしまったのね私。でも、私はサツキの事嫌いではないわよ?」

 

「余計なお世話です。というわけで、別の部屋で寝て欲しいんですが」

 

「わかった……サツキは私の事が大好きなのね」

 

「……はい?何の話ですか?」

 

「だって、本当は一緒に居たいのにそれを必死で隠してるんでしょう?可愛いところがあるのね」

 

「違います」

 

「照れなくって良いのに……恥ずかしかったら無理して一緒に居てくれなくても大丈夫よ。私は一人でも平気だもの」

 

「……はぁ」

 

自分は溜息をついて再び眠りにつくことにした。すると、横の方からもぞもぞと動く気配を感じた。スカイドンではない彼女とは逆側である。そして隣を見てみるとそこにはもう一人の人影があった。

 

「……え?ゼットン!?なんで一緒に寝てるの!」

 

「……お気になさらず。それより、まだ眠らないのならば少し話相手になって頂けませんか?」

 

「えぇ……はい……」

 

断ろうにも断るタイミングを逃してしまい、結局僕はそのまま彼女と話した。自分達は一通り話し終えるとどちらともなしに目を閉じて眠る事にした。

 

そんな翌日――

学校が終わり一人で通学路をとぼとぼ歩いていると、後ろから声をかけられた

 

「お前が江戸川皐月だわね?」

 

振り返ろうとすると、

 

「特殊スペクトル光線!」

 

なにか俺の身体に光が浴びせられた。

 

「!?」

 

「ふっふっふっ。どうやらウルトラマンが憑いている訳じゃなさそうだわよ」

 

そう言いながら、こちらへ歩み寄ってくる一人の少女。

青い髪に青い衣装、頭頂部から生えるアンテナの様な突起物に金色の触手のようなマント。自分はこの特徴を持った宇宙人を知っている。

 

「貴女は……テンペラー星人ですか?」

 

「その通りだわよ。ちなみにこの肩に乗っているのは腹心のサルノスケだわよ」

 

「コンゴトモ、ヨロシク」

 

彼女の方に乗っているシンバルを持ったサルの玩具が喋った

 

「それで、なんの用でしょうか?」

 

「うーん、特にこれといったことはないんだけど、暇だったからちょっと遊ぼうと思っただけなのだわよ」

 

「はあ、遊ぶって何をするんですか?」

 

「勿論、ゲームだわよ。ちなみに内容はジャンケン勝負だわよ」

 

「え?なんでそんな事を?」

 

「いやあ、昨日たまたまテレビでやってて面白そうな内容だったからやってみようと思ってるのだわよ」

 

「テレビって……」

 

「たまに宇宙警備隊の訓練とか見せてもらったりするのよね」

 

「まあいいですけど、まさか勝ち負けで何か奪われるとかはないですよね?」

 

「そんなの無いわよ。ただ、負けた方は勝った方の言うことを何でも聞くルールにするだけだわよ」

 

「それならいいです」

 

「では始めるのだわよ」

 

ジャンケンの結果、自分の勝利で終わった。相手はハサミ状の手なのでグーをだせば楽勝だった。

 

「ぐぬぬ……もう一回やるのだわよ!」

その後、十戦したが結果は全て自分が勝った。

 

「くそおおお!もうこうなったら、アレを使うしかないのだわ!!」

 

彼女はそう言って自分の服を脱ぎ始めた。

 

「ちょ、何してるんですか!」

 

「うるさいのだわよ。黙ってみてろだわ!」

 

「いや、そういう問題じゃないでしょう!」

 

「いくぞお、必殺・テンペライザー!!!」

 

彼女が叫ぶと同時に、全身に電流が流れ出す。

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そして、身体中から煙を噴き出しながら地面に倒れた。

 

「……」

 

自分は呆然としながら彼女に近づいた。

 

「だから言ったじゃないですか……」

 

「いや、つい夢中になっちゃって……テヘペロ☆」

 

「可愛い子ぶってもダメなものはダメです」

 

「むぅ~。しかしサツキが勝ったのなら、しょうがないがなにか言うことを聞くだわよ。さあ、なんだわよ私の肢体に手でもだすだわね?」

 

「しませんよ……」

 

「つまんない男ね……。で、一体私にどんな命令をする気だわよ?」

 

「とりあえず、服を着てください」

 

「えぇ〜面倒くさいだわよ〜」

 

「じゃあ、裸のまま家に帰ってください」

 

「わかっただわよ。全く……」

 

ぶつぶつと言いながら彼女は衣装を着る。

 

「ところで、俺にお願いしたい事ってあるんですか?」

 

「ああ、そうだわよ。お前にはゲートの秘密を教えて欲しいのだわよ」

 

「ゲート?」

 

「ええ、お前の傍に浮かぶ怪獣墓場のゲート。お前はなにか知っているに違いないのだわよ」

 

「知らないですよ」

 

「本当かしら?」

 

「本当に知りません」

 

「ふーん……嘘つきは嫌いなのだわよ」

 

「なんと言われようとも、絶対に教えません」

 

『門』ことをあまり知らないのは本当だ。しかしこの人に教えてはいけない気がする。

 

「そう……なら力づくでも…「テンペラーサマ」なんだわよ、サルノスケ」

 

「ソレイジョウハ、メフィラス二オコラレルッス」

 

「っち……運がいいだわよ」

 

テンペラー星人は舌打ちをし、

 

「機会があったらまた会うだわよ」

 

と去っていった。

 

「ふう……」

 

少し疲れたような息を吐いて、空を見上げる。

今日もいい天気だ。雲一つ無い青空が広がっている。

この光景を見て、僕は思う。

平和だと。

こんな平穏な日々が続くといいのだが、世の中そんな甘くは無いだろう。

だが、それでも願わずには居られない。

この幸せがずっと続けばいいのに……と。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「まさかテンペラーが来るだなんて!サツキ君は渡さないわよ!それはそうとして、このことをゼットン星人さんに報告しなくちゃ」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「はあ~、結局詳しいことは分からなかっただわよ」

 

「やあ、テンペラー。久々の地球はどうだった?」

 

「げっ…メフィラス……相変わらず耳が早いだわよ」

 

「まあ、私は穏健派のトップだしね。それで?何を調べていたんだい?」

 

「大したことではないのだわよ。ちょっとした好奇心なのだわよ」

 

「そうかい。まあ君が余計なことに興味を持たないように私がしっかりと監視しておくよ」

 

「ふん、好きにするだわよ」

 

「そうそう。君は何故手を五本指にしてジャンケンしなかったんだい?」

 

「あっ……」

 

「まさかとは思ったけど、やっぱり忘れてたか。本当に困った娘だよ。そんなんじゃあ、ウルトラ兄弟に勝てないぞ」

 

「うるさいのだわよ!! それとこれとは関係ないだわよ!」

 

「全く……ほら、帰った帰った」

 

「ふん!」

 

「はぁ……まあいい。まだサツキ君に確信に迫られるのは時期尚早だ。今後はあの脳筋が馬鹿なことをしでかさぬよう一層警戒せねばね」

 




今作のテンペラーさんは口調がPOP版で見た目が電撃版というややこしい状態です。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想・評価お待ちしております。


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28話 冷凍怪獣と戦車怪獣

「これで冷凍完了なのです!」

 

「ありがとうございます。ペギラさん」

 

「酷い……でも強引な手段をとってくるサツキも好き」

 

春になってしばらくたった日、久々に会ったバードンがセクハラをしてくるので貞操の危険を感じた自分は、怪獣ペギラを呼び出してバードンを冷凍してもらった。これでしばらくはバードンも動けないだろう。

 

「バードンさんは後でキングジョーさん辺りに頼んで怪獣墓場に戻してもらいましょう」

 

「それじゃあ帰りましょうか。なのです」

 

「うん」

 

ちなみにこのペギラは自分に懐いているようで、呼び出してもあまり嫌な顔をしない。むしろ呼び出す度に嬉しそうにしている気がする。

しかし最近このペギラを夢の中でみた気がするのだが、はて、いつの事だったか…

 

「サツキ、協力したお礼に連れていって欲しい所があるのです」

 

「えぇ……まぁいいですけど……」

 

家路へと歩いていたら、ペギラからお願いされた。珍しい事もあるものだ。

 

「それでどこに行くんですか?」

 

「ふっふーん!秋葉原という所なのです!」

 

「……へ?アキバァ!?」

 

「はいそうなのです!一度行ってみたいと思っていたのです!」

 

いや待ってくださいよ!!なんでまたそんな所に行かなきゃいけないんだ!?

 

「実はですね。私達怪獣にはよくわからないのですが、人間達はその昔『オタク』と呼ばれていた人達がいたらしいのです。つまりはそういう文化に詳しいはずなのです!だからそこでなにかお土産を手に入れたいという話なのです!!」

 

うぅむ……なるほど。そもそも俺自身アニメとかゲームに興味はある方だし、それを好きな人も多いはずだ。もしそこに行けたら何かしらのヒントになるかもしれないな。

 

「わかりました。行きましょう」

 

「やったのです!ありがとうなのです!」

 

「でもまず家に秋葉に行くことを伝えないと」

 

そうして取り敢えず家に戻った俺達は母さんにゼットンが常に同行することと、危なそうな所へは行ってはいけないことを条件に秋葉原に行くことになった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ここが秋葉原ですか……噂通りすごい賑わいようですね」

 

「そうだね」

 

自分の記憶にある秋葉原はもっと寂れていたような気もするが現在の秋葉原は活気があるようだった。

 

「さて、どうするのです。私は特に予定はないのです」

 

「俺もないなぁ。やっぱりこういう時は定番のお店に行ってみる?」

 

「そうですね。ではまず電気街の方に向かってみるのです」

 

「……私は二人について行きましょう」

 

ということでやってきました電気街の大通り。やはりこの街にもたくさんの人がいてとても賑わっているようだ。

 

「とりあえずここら辺を見て回るのです」

 

「うん。わかった」

 

そう言って三人で歩き始める。

 

「あ、これ懐かしいな」

 

とあるお店で見つけた一冊の漫画を手に取る。前世?に読んでた漫画だな。

 

「これがどうかしたのです?」

 

「あぁいえ、ただちょっと思い出していただけです」

 

「そうなのです?ならいいのですけど」

 

それからしばらく歩いた後、またある店に入った。その店はフィギュア店の様で、店内に様々なフィギュアが展示してある。

 

「これはすごいのです……。こんなものが作れるなんて人間は恐ろしいのです……」

 

「確かに……」

 

そうして店内の戦車やヘリコプターのミニチュアを展示しているコーナーを通ると、

 

「ふむ、これは中々の出来であります」

 

いつの間にかふと眉で恐竜を思わせるヘルメットを被り、軍服を思わせる衣装に身を包んだ女性が居た。

 

「貴女は?」

 

怪獣だろうか?ここはアキバだしコスプレの可能性もあるけど。

 

「私は恐竜戦車であります!」

 

女性、恐竜戦車は敬礼する。

 

「シンプルな名前なのです…」

 

「えっと、どうしてここに?」

 

「それはもちろんこの素晴らしい作品を見に来たからであります!」

 

「それって何の作品なのです?」

 

「これであります!」

 

そういって彼女が指差したのは、俺の前世の有名なロボットアニメの一つ、「機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争」の主人公機である「ザクⅡ改」であった。

 

「あー、あれか」

 

「あれはいいものなのであります!ぜひ買って帰るといいであります!」

 

「あ、はい、検討します」

 

「それじゃあ私はこれで失礼するのであります!」

 

「あっ恐竜戦車さん。折角なら俺達と一緒に行きませんか?『門』は俺の近くにありますし、帰るときに便利だと思うのですが」

 

「ふむ。この後恐竜の化石を見に博物館へ行こうと思ったのでありますが…それならご一緒するであります」

 

「じゃあ決まりですね」

 

という事で、新たに一人仲間が増えた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「お帰りなさいませご主人様」

 

自分達4人は昼食も兼ねてメイド喫茶に来ていた。なぜメイド喫茶なのかというと、ペギラがここに来たがったからだ。

 

「いやぁ、ここには一度来てみたかったのです」

 

「へぇ、意外ですね」

 

「まぁ私も怪獣ですのであまりこういった所には来ないのですが。でも人間の文化を知るために一度は来るべきだと思っていたのです」

 

「それは良い心掛けですね」

 

「ふーむ。私もこういう所は初めてであります……」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。そもそも私が興味のある人間の文化はミリタリーと古生物学なので」

 

「そうなのですか。でも今日はサツキが払ってくれるし楽しむのです」

 

そう言ってペギラはメニュー表を見る。

 

「うぅん悩むのです」

 

「どれにしますか?」

 

「オムライス……でもパンケーキもいいのです……」

 

結局彼女は悩んだ末、両方頼むことにした。

 

「ゼットンは何を頼む?」

 

「……サツキと同じものを…」

 

「わかった。すみません注文お願いしまーす」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ゼットンさんって今いくつなんでありますか?」

 

「……私は年齢を数えていないので、よくわかりません。貴女方も同じなのでは…?」

 

「それもそうでありますな!」

 

「みんな年齢なんて分からないのです!」

 

変な会話だ……怪獣墓場にいると年齢感ガバガバになるのだろうか。そんな風に談笑していると店員さんが料理を持ってくる。そしてそのテーブルの上に置かれたのは二つの大きな皿だった。

 

「こちらオムライスになります。もう一品の方はまだお待ちください」

 

「おぉー大きいのです!」

 

「確かにこれは大きいでありますな」

 

「はい」

 

目の前にあるのは巨大なオムライスだ。その大きさは直径40cm程もありそうだ。

 

「では早速……」

 

「「いただきます」」

 

スプーンですくって一口食べる。卵はふんわりとしていてとても美味しい。

 

「うん、おいしいね」

 

「これは確かに絶妙な味加減であります……」

 

「これはなかなかなのです……」

 

「はい」

 

それからしばらく食べて、途中でお土産用としてメイドさんと写真を撮った。ペギラは喜んでいた。

その後、メイド喫茶を出た自分達は、秋葉原を後にして恐竜戦車の要望の博物館へ向かうことにした。

 

「あの、恐竜戦車さん。もしよかったら恐竜戦車さんの事について教えてくれませんか?」

 

「私のことなのでありますか?」

 

「はい、そういえば自己紹介もそこそこだったし、博物館に到着するまでの間でいいですから」

 

「別に構わないでありますよ」

 

「ありがとうございます。じゃあまず恐竜戦車というのは種族名であって、恐竜戦車そのものの名前ではないんですよね?」

 

「はいその通りであります。私は恐竜戦車であり、それ以上でも以下でもないであります」

 

「恐竜戦車ってどういう生き物なんですか?やはりティラノサウルスみたいな感じですか?」

 

「生き物と機械の中間、俗にいうサイボーグであります。この姿になってからはほとんど生身でありますが」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

「あとは、こんなこともできるであります」

 

と言って彼女は背中に背負っていた大砲を取り出す。

 

「おおっ」

 

「これを見てほしいであります」

 

彼女はその砲身を両手で掴む。すると突然砲口からバチッと火花が散り、轟音が響く。

 

「わぁ!?」

 

思わず耳を塞ぐ。

 

「このように、砲撃も可能なのであります。今のは空砲でありますが」

 

「凄いですね」

 

「ちなみに、身体を改造すればビーム兵器も使えるようになるらしいのであります」

 

「えぇ……」

 

「まぁ、私にはあまり関係ない話でありましたな」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。私は元々戦闘用でありましたが、今はただの骨董品としての価値しかないものであります。だからもう戦う必要はないのであります」

 

「なるほど」

 

「ところで、サツキはどうして私を仲間にしてくださったのでありますか?」

 

「うーん、最初は偶然出会っただけだったけど、今は一緒にいるの楽しいし、これからもよろしくお願いします」

 

「はい!こちらこそであります!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「ここであります!」

 

博物館に到着した。そこは小さな建物だが、中に入ると思っていたより広く、たくさんの展示物があった。

 

「すごい」

 

「たしかここは日本で最初に作られた恐竜のレプリカがある所だったはずであります」

 

「へぇ」

 

「どうせならもっと早く来たかったであります」

 

「そうなのです?」

 

「だってここを知ったの最近であります。まぁ過ぎたことは仕方ないであります」

「それにしてもいろんなものがあるのですよ〜」

 

「これなんか興味深い」

 

「それは化石の標本でありますな!」

 

「これは……何の化石だろう」

 

「これは多分……トリケラトプスでありますな」

 

「あれ、知ってるんだ」

 

「はい。昔生きていたものなので、よく覚えているのであります」

 

「ふーん」

 

「他にもいろいろあるみたいでありますな」

 

「行ってみよう」

 

「はいなのです!」

 

そう言って自分達はその日一日博物館を楽しんだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「今日は楽しかったでありますな!」

 

「そうですね」

 

「またどこか行きたいのです!」

 

「うん。機会があればね」

 

「はい!」

 

「……はい」

 

「それでは、さよならなのです」

 

ペギラは帰るため飛び立っていった。

 

「うん、バイバーイ」

 

自分はそれを手を振って見送った。

 

「私もここでお暇するであります」

 

恐竜戦車も帰っていく。

ペギラと恐竜戦車を見送って自分とゼットンも家に帰る。そしていつものように夕食を食べてお風呂に入って寝床につくのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「サツキ様の為にユーを怪獣墓場の辺境にシュートデスよ~♪」

 

「なんでサツキは私を受け入れてくれないのかしら。私はただサツキの童○を貰いたいだけなのに」

 

「それが受け入れられない理由なのでワ?ちなみにサツキ様の童○は私が貰う予定デス♡」

 




駄文閲覧ありがとうございました。ご感想・評価お待ちしております。


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29話 始まりの敵、終わりの敵

当作のお気に入り登録が100を超えていました!応援ありがとうございます。


小5の夏休みの半ば、自分は怪獣ベムラーに会った。ベムラーはかつてウルトラマンに追われ地球に飛来した怪獣である。この時の騒動で科特隊のハヤタ隊員は重症を負いウルトラマンと一体化するという歴史的な事件が起こる。すらりとした体型で青髪で褐色のそんなベムラーさんが近所のバイク屋のラインナップを見ていた。どうしたと尋ねると、「自分だけのバイクが欲しい」らしい。それまで何回か怪獣の頼みを聞いてきた自分だが、流石に今回はお小遣いだけでは厳しいのでベムラ―がバイクを購入できるよう。お父さんにお願いしてまともなバイト先や自動車教習所を紹介したのだ。それから1年ほど――

 

「――という訳でやっと私だけのバイクができたの」

 

「それはめでたいですね、ベムラーさん」

 

「そうでしょう? それじゃあ早速乗ってみるわね!」

 

そういうとベムラーはヘルメットを被って店から出てきた

 

「うーん……いい感じ! さて次はどこへ行こうかしら?」

 

「あの……そのバイク代ですけど大丈夫ですか?」

 

「えぇ!? どうしてよぉ!!」

 

「だって予算オーバーだったんですよね……」

 

「あれはその……そう!! 私がアルバイトをして貯めたお金を使ったの!!」

 

「でもそれでしたら俺にも相談してくれればよかったじゃないですか?」

 

「……」

 

「もしかしてベムラーさん……」

 

「なっ……何かしら?」

 

「俺に隠れてこっそり貯金していましたよね?」

 

「ギクッ!?」

 

「しかもそれだけじゃなく、まだ余裕があると思ってまた別の買い物をしたんじゃないんですか?」

 

「ギクゥゥウウッ!?」

 

「図星みたいですね……。もうあんなことはしないでくださいね?」

 

「はい……」

 

「よろしい、では改めてベムラーさんのバイクを見てみましょう」

 

「この黒いボディが格好良いわぁ~」

 

「それにハンドルカバーにタンクキャップまで付いていますね。これなら盗難防止になりますよ」

 

「本当? ありがとうサツキ君!」

 

「いえいえ、喜んで貰えて嬉しいですよ」

 

「あっそうだ! ねぇサツキ君、ちょっと後ろに乗ってみてくれない?」

 

「わかりました」

 

そう言うと自分はベムラーの後ろに乗り込んだ

 

「どう? ちゃんと掴まっている?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ふふっ……なんかデートしている気分だわ」

 

「変なこと言わないで下さいよベムラーさん……」

 

「あら、私は別に構わないけれど?」

 

「俺は構うんでやめて頂けませんかね?」

 

「嫌よ」

 

「なんでですか!?」

 

「だって貴方との会話楽しいんだもの♪」

 

「うぐぅ……」

 

「ふふっ♪照れちゃって可愛いわね~」

 

「べっ……別に照れてなんていませんよ!」

 

「はいはいわかったわよ。それより今日は何するの?」

 

「特に決めていませんでしたね……。ベムラーさんはどこか行きたい場所とかありますか?」

 

「そうね……。せっかくだし竜ヶ森湖に行きたいかな〜」

 

「なるほど、ベムラーさんにとって思い出の場所ですね」

 

「だから今すぐ行くわよ!!」

 

「ちょっ……!? 引っ張らないでくださ〜いっ!!!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「到着っと!」

 

「ここが竜ヶ森湖ですか。初めて来ましたけど結構大きいですね」

 

「そりゃあ私が隠れられるくらいなんだから当然よ」

 

「それもそうですね。ところでベムラーさんはここで何をしたいんですか?」

 

「もちろん釣りをするのよ!!」

 

「あぁやっぱりそうなるんですね……」

 

「私こう見えても釣った魚を料理するのが好きなのよ」

 

「それは初耳です」

 

「さてそれじゃあ早速始めましょうか!」

 

相変わらずマイペースな人だな……。まぁそこが良いところでもあるんだけど

 

「あっ」

 

「どうしたんですか?」

 

「エサを忘れたわ…」

 

「忘れたんですか!? 」

 

「うーん……仕方がないわね、もう素手で獲るわ」

 

そう言って彼女は立ち上がると湖に飛び込んだ

 

「えぇ……」

 

それから数分後――

「見て見て!! たくさん捕まえたわよ!!」

 

「凄い量ですね……」

 

「これだけあれば今夜はご馳走ね!!」

 

「あの……ちなみにどうやって食べるつもりなんですか?」

 

「えっ?普通に焼いて食べるけど?」

 

「…………」

 

「なによその目は?」

 

「いや……本当にそれでいいのかなって思って……」

 

「失礼しちゃうわね! 私の料理の腕を知らないくせに!」

 

「そっ……そういえば聞いたことがありますね」

 

「でしょう? でも安心して! 私が美味しく調理してあげるから!!」

 

「おっ……お願いします……」

 

「任せておきなさい!!」

 

そして出来たのは魚の串焼きである。これ料理の腕関係あるんだろうか……?そんなことよりお腹空いたな……

 

「はい、サツキ君できたわよ!!」

 

「ありがとうございますベムラーさん」

 

「いっぱい食べてね!!」

 

「いただきます!!」

 

パクッ……モグモグ……ゴクン

 

「どうかしら?」

 

「とてもおいしいですよ! 素材の味が生きてるって感じです」

 

「もぉ褒め過ぎよ。でも嬉しいわ!」

 

「いえいえ本心から言ったんですよ」

 

「ふふっ、ありがとうね」

 

「こちらこそありがとうございます」

 

それから湖畔の倒木に座って二人で色々話した。その内話題が自分自身の過去のことになった。

 

「へえ…夢の中でシーボーズにあってからあの『門』が出たのね」

 

「はい。シーボーズの方も覚えていたので夢じゃなかったかもしれませんが」

 

「じゃあ私も話そうかな……この竜ヶ森湖で起こったこと」

 

そう言うとベムラーは自分の昔語りを始めた。とても興味深い話を聞けたが、詳細をここに記すのはよしておく

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「さあそろそろ帰る頃合いかしら。サツキの親御さんにどやされちゃう前に」

 

「確かにこれ以上遅くなると心配させてしまうかも知れませんね。では帰りましょうかベムラーさん」

 

「そうねサツキ君!」

 

こうして自分の初めてのバイクでの外出は終わりを迎えた。しかし今回の出来事は一生忘れられないだろう。なぜなら……

 

「また行きたいですね」

 

「そうね! また行きましょう!」

 

「楽しみにしてますね♪」

 

「ふふっ、私に任せておいて♪」

 

こうやって怪獣達と過ごす時間はすごく楽しいからだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

ベムラーと遠出してから数日後。

 

『サツキ様。インカムの調子はどうデスカ?』

 

「うん、大丈夫。バッチリ聴こえてますよキングジョーさん」

 

『それならバ、このままゼットンを追いマスヨー!』

 

自分は学校の下駄箱の辺りでキングジョーと傍目では装着しているのが分からない超小型インカムで会話していた。なぜこんなことをしているのかというと、ある時ふとゼットンが自分の傍にいない時何をしているのか気になった。ゼットンは学校に行っている時以外とかは自分と行動してることが多い。この間ベムラーと遠出した時など姿を見せない時もあるけれど、休日などは大体視界の端からこっちを見ている。ゼットンは余り感情を見せず、考えてみれば自分と一緒にいる時以外はどうしているのか想像がしにくいのだ。それとなく本人に聞いたこともあるがはぐらかされてしまった。それでも気になって仕方がなくなってしまったのでどうしようかと思っていたが、一人こういうことに協力してくれそうな友達が浮かんだ。キングジョーだ。彼女は価値観がアレみたいなのでもしかしたらと思い呼び出した。

 

「お呼びデスカ?サツキ様」

 

「うん。キングジョーさん、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」

 

「ハイ!サツキ様の為なら何でもヨロコンデーッデスヨ!」

 

「今度1日だけゼットンが何をしているのか知りたいんだ。だから協力して欲しいんだけど……」

 

「ふむふむ。つまりあの根暗女を解雇する為に弱みを握りたいということデスネ」

 

「いや、全然違うんですけど」

 

別にゼットンを雇ってるわけじゃないし、弱みを握ろうという気でもないんだが。

 

「今根暗って言いましたよね?ゼットンのこと?」

 

「HAHAHA。今のはジョークデース。キングジョーだけに」

 

ジョークに聞こえなかったんですが……まあいいや。

 

「とにかく、ゼットンが俺がいない間何をしているのか気になるんです。こんな事頼めるのはキングジョーさんくらいしか居なくて……キングジョーさん?」

 

キングジョーは何やら震えている。怒らせてしまったかな?やっぱり人のプライベートを除くような真似だし、駄目かな?

 

「Oh!!」

 

「うわっ!?」

 

キングジョーはいきなり顔を上げた。どうしたんだ?

 

「サツキ様からワタシを頼ってくれるとは珍しいデス!ワタシ、感動しまシタ!」

 

「そっそうなんだ……」

 

「分かりまシタ。このキングジョーの名に誓ってゼットンの秘密を丸裸にしマス!」

 

「う、うんよろしく…」

 

こうしてゼットンの秘密を探る作戦がスタートした。そして当日キングジョーから超小型インカムを貰った自分は、それを着けてキングジョーからの連絡を待つことにした。朝のホームルーム中、自分は囁くような小声でキングジョーと連絡を取る。

 

「ヒソヒソ…どうですかキングジョーさん。今ゼットンは何をしてます?」

 

『ハイ。ゼットンにバレないようにつけて、今サツキ様がいる学校の近くの建物の屋上に居るのデスガ、そこから学校の方向に向いたまま動きまセンネ』

 

「学校の近く?何かしているの?」

 

『NO。その場に立ったまま微動だにしていないデス。このままモニタリングを続けてみマス』

 

「うん分かった。くれぐれも気づかれない様にしてください」

 

『OK!』

 

一旦通信を切る。さて、ゼットンは何をしてるのだろう?その場に立ったまま動かないとは。日向ぼっこでもしている?それは違う気がする。兎に角今はまだ朝だし、これから何か動きがあるかもしれない。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そのままゼットンが動かないという定時連絡を受け続け、水泳の授業になった。当然プールのある場所へ移動する。

 

『待ってくだサイ!ゼットンがテレポートしまシタ!』

 

「何だって!追うことはできる?」

 

『まだ反応が近くにありマス。直ぐに追跡しますヨ』

 

「分かったお願いします」

 

通信を切る。一体ゼットンは何処に向かったのだろう?その疑問が晴れぬまま授業は進み、次にキングジョーから連絡があったのは授業が終わり給食が始まる直前だった。

 

『Oh……お待たせしまシタサツキ様。ゼットンは別の建物の屋上に移動していまシタ。また動きません』

 

「そう…また何かあったら連絡してください」

 

『了解しまシタ』

 

そのまま給食の時間が過ぎ、昼休み…5時限目、6時限目が終わり放課後になった。結局、ゼットンが何かしているという情報は無いままだった。

 

『申し訳ありまセンサツキ様……これといった情報が無クテ…』

 

「うん、まあいいよお疲れ様キングジョーさん。もうすぐゼットンも来るだろうし、キングジョーさんも気をみて帰ってきて。今日は付き合ってくれてありがとう」

 

『ハイ!今後も何かあれバ、ワタシを頼ってくだサイサツキ様!』

 

「うん。じゃあね」

 

そう言って通信を切る。はあ…何も分からなかったな…こういうの自分向いてないのかな…

 

「…サツキ、迎えに来ました……」

 

「うわっ!居たのゼットン!?」

 

気づいたら背後にゼットンが居た。脅かさないで欲しい。そのままゼットンと帰ることにする。その道すがら、ゼットンは立ち止まり

 

「……サツキ」

 

「なに?ゼットン」

 

「…何か、私に隠していることはありませんか…?」

 

ぎくっ、もしかしてバレてる?いやまさか。表情を変えずにこう返す。

 

「ゼットンだって、他人に隠していることの1つや2つはあるでしょ?もしあったとしても勘弁して欲しいな」

 

「……そうですか」

 

いつもジト目気味のゼットンだが、心なしかその目がこっちを批判しているように見えた。

 

「…サツキ」

 

「はい?」

 

「1つ言っておきます……私は、貴方を見ています。…これまでも…これからも……」

 

「うん?」

 

そう言うとゼットンは再び歩き出す。一瞬その目に暗い何かが見えた気がした。

 

「……!?」

 

一瞬惚けていた自分は慌てて歩き出す。……取り敢えず、他人のプライベートを除く真似はもう止めておこう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

~~水泳の授業中~~

 

「ふふふふ~ん♪夏場のここは絶好の撮影スポットね♪」

 

「オヤ…?貴女はガッツせ…」

 

「あっキングジョーさん。私がここに居たのは皐月君たちには内緒ね♪口止め料にこれをあげるわ」

 

「Oh!!コレハ……」

 

「私が今まで撮った中でも一番の皐月君のベストショット!折角焼き増ししたのにペガちゃんたちは受け取ってくれなかったのよねー」

 

「分かりまシタ!取引成立デス!」

 

「うんうん♪可愛いものは共有もありよね!」

 

「…………」

 

その場に居たゼットンは、“雑音”は聴いていなかった。

 




駄文閲覧ありがとうございました。ご感想・評価お待ちしております。


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30話 スマホとき○がいと

久々にこちらの話を投稿です。


自分は今年で中学生になる。中学生ともなると、色々と忙しくなる。部活も始まり、勉強もしないといけない。なにより行動範囲も広がるので、携帯端末が欲しいのだ。しかし、自分はまだ子供なので親に頼まなければならない。そういう訳で自分は、ある人物に相談することにした。

 

「……という訳なんでスマホが欲しいんですが」

 

「んー、駄目」

 

相談相手は母親だった。その言葉を聞いて自分は項垂れる。前にも言ったと思うが、なぜか母は自分が電子機器の類に接触するのを嫌がるのだ。それはもう異常なほどに。

 

「いや、別にゲームとかしたいわけじゃないよ?ただメールとか電話とかできればいいだけで……」

 

「でも駄目」

 

「えぇ……」

 

この会話は何度目だろうか。流石に何度も繰り返していると疲れてくる。母との話し合いでは大抵こうやって却下されるのだ。

 

「いいかい。スマホだのなんだの、ああいう便利な機械に頼る人間はいずれ自滅するんだよ。連絡なら家にある黒電話でいいじゃないか」

 

いや……ダイヤル回す式の電話使ってるの町内でも家だけだと思うよ母さん……と思いながら自分はため息をつく。そして、とりあえず今回は諦めて、別の方法で何かないか探してみることにした。

数日後、今度は自分の父に相談したのだが、やはり同じような結果になった。

 

「あぁ……やっぱりかぁ……」

 

我が家のヒエラルキーは母が一番上なのだ。父も母には強く出れず

 

「母さんの許可があるならいいんだが…」

 

という消極的な答えが返ってきた。さてどうしようかな……。そう思いながら自分は部屋に戻った。すると、机の上に見慣れぬ箱が置かれていた。開けてみるとそこには最新型のスマートフォンが入っていた。これって……箱の中には手紙が同封されていた。

 

『皐月君へ――皐月君がスマホが欲しいと困っているみたいなので早い中学上がりのプレゼントを贈ります。既に私の電話番号、メールアドレス、ラインなどのデータは入れてあります。通信代も私が何とかするので大丈夫です。これからもよろしくね!――あなたのミコより』

 

どうやらこのスマホはミコさんが送ってきたようだ。嬉しいのだが、スマホの話の事、ミコさんに話したっけ?と思ってしまう。しかし、せっかく貰ったものなので有り難く使わせてもらうことにした。

こうして、自分は念願のスマホを手に入れたのであった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

その後、色々設定などを終わらせ、ある程度使えるようになったので、早速友人に連絡を取る事にした。といっても人間の同級生で知り合いにはまだスマホを持っている人物はいなかったので、取りあえずハネジローを呼んでメールアドレスなどの交換をすることにした。

 

「パム~」

 

「うん、念願のスマホが手に入ったんだ。これでメールアドレス交換とかできるね」

 

「パム!パムパムー」

 

ハネジローが何言ってるかは今までフィーリングだったが、メールでやり取りすればちゃんと理解できるかな?そうして交換を終えてハネジローと別れた後、早速メールが届いた。ハネジローからのかと思ったがミコさんからのメールだった。内容は他愛のない短めの日常のことだった。今日こんな事があっただとか、今度遊びに行くとかそんな感じの内容だった。正直自分も暇だったので返事を送ったりした。それから何通かメールを送り合い、そろそろ寝ようかという時間になった時、

 

「サツキ。そろそろ寝る時間……」

 

「あっ」

 

自分の部屋のドアを開けた母さんの表情が固まった。しまった、スマホのこと話すの忘れてた……

 

「サ、サツキ……それはどう見てもスマホ……」

 

「あっ、母さんこれはね……ミコさんがプレゼントしてくれて……」

 

なんか○慰してるのがバレた感じになってるけど自分は何一つやましいことはやってないぞ。母さんの眼から水滴が床に垂れる。ちょちょちょ!?なんで泣いてるの母さん!?

 

「私の子はもう大人なんだねぇ……お母さん寂しいよぉ」

 

「いや、まだ小学生だよ?」

 

なんか母さん情緒不安定だなぁ……。それにしても母さんは息子にスマホを渡すのはそんなに嫌なのか?いや、確かに自分はスマホを持っていい年齢ではないかもしれないが、ここまで拒否されると少し悲しいものがある。

結局、母さんはその日ずっと泣きっぱなしだったので、スマホは没収されてしまった。

 

「母さん……酷いよ」

 

「ダメなものは駄目なんだよ。せめて中学生になってからにしよう」

 

母さんはどちらかというと自分に甘い方なのではあるのだがこの件に関しては何故か厳しい。だが、今の自分は子供である。スマホの所持ぐらい許して欲しいものだ。

 

「はぁ……仕方がない。また別の手を考えないと」

 

自分はそう言いながら部屋に戻った。すると部屋には

 

「キヒヒ…お帰り……」

 

右腕と両脚が金属製でツインテールで眼帯をかけた少女が居た。初めて会うが、この格好は十中八九怪獣だろう。

 

「貴女は……?」

 

「キヒヒッ。私、クレージーゴン」

 

クレージーゴンと言えば、ウルトラセブンに登場するロボット怪獣である。確か別名は○ちがいロボットとも呼ばれ、地球の鉄を奪う為に送り込まれたのだった。なるほど、そういえばあの特徴的な右腕が面影があるな。

 

「その、クレージーゴンさんは今日は何の用ですか?」

 

「キヒッ。貴方ならわかるでしょ……鉄よ鉄。鉄が欲しいの」

 

「えっと……」

 

鉄が欲しい?どういうことだろう?別に鉄を奪っていたのはバンダ星人の指示であったはずなんだが。

 

「なんで鉄が欲しいんですか?」

 

「この姿になっても、鉄を取り込みたくてたまらないのよ…キヒヒ」

 

そういう事か。恐らく彼女は生前?からの指令が習性のようなものになってしまったのだろう。しょうがないな…なんとかして彼女を納得させて帰ってもらわねば。

 

「分かりました。鉄は心当たりがあるので、ついて来てください」

 

自分は彼女を連れて、公園の砂場に向かった。

 

「キヒッ、鉄はどこ?」

 

とクレージーゴンが尋ねてくる。

 

「ちょっと待ってください」

 

自分はポケットからあるものを取り出した。

 

「それは……磁石?」

 

「そうですU字磁石です」

 

そう言って自分は砂場に磁石を突っ込み、クレージーゴンの前に差し出した。

 

「これは……」

 

「砂鉄です」

 

そう、砂の中には砂鉄があり、磁石で取り出すことが出来るのだ。

 

「これでどうですか?」

 

「キヒヒッ、いただきます!」

 

とクレージーゴンは砂鉄のついた磁石の先を口に含んだ。

 

「ママ―、あのおねえちゃんなにしてるの?」

 

「しっ!見ちゃダメよ!」

 

じょりじょりとクレージーゴンは砂鉄を味わっている。

 

「キヒヒッ、美味しい♪」

 

満足したのか、クレージーゴンは笑みを浮かべている。

 

「どうでしたか?」

 

「美味しかったけど…もっと欲しいな……」

 

うーむそれではこの方法だと効率が悪いな……ならば…と考えてるところ。

 

「ママ―!おねえちゃんがぼくのぶーぶーとったー!」

 

「キヒヒヒヒヒッ!美味しそうな車……」

 

「ちょっと!なにをするんですか!?」

 

クレージーゴンが近くの子供からミニカーを取り上げていた。

 

「返しなさい!」

 

自分は必死になってミニカーを取り返そうとしたが、相手の方が背が高く腕の長さが違うため上手くいかない。

 

「ゼットン!」

 

自分がゼットンを呼ぶとゼットンが前にでてきた。

 

「お願いゼットンミニカーを取り返して!」

 

「はい」

 

ゼットンは聞くやいなや素早くクレージーゴンに近づき、喉輪をしかけた。

 

「ギヒッ!?」

 

それのダメージを受けたクレージーゴンはミニカーを落とした。その後、俺達は親子に謝り慌ててその場を立ち去るのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

その頃、メトロン星人は居間でお茶を飲んでいた。その時

 

「私参上!」

 

居間に印南ミコ……いやガッツ星人が乱入して来た。

 

「……君に出す茶はないよ」

 

メトロン星人は冷ややかな目でガッツ星人をみる。

 

「いいじゃん別に、お茶くらいくれたってさ~」

 

「駄目だ。君はすぐ私のお菓子を食べるじゃないか」

 

そう、このガッツ星人はメトロン星人の菓子をよく食べるのだ。そのため、彼女は常にお菓子を持っているのだが……。

 

「だって貴女が作るのはどれも美味しくないんだもん」

 

「失礼な奴め……まぁいい、それより君は何の用だい?」

 

「あっそうだ、本題に入るけど……私がプレゼントしたサツキ君のスマホを返しなさいよ!いくら貴女が母親役だからってやり過ぎよ!」

 

「これは家庭の問題だ。君に口出しする権利はあるのかい?」

 

「あーりーまーすー!折角私のとお揃いのスマホプレゼントしたのに意味ないじゃない!貴女ねえ、いくら地球人が退化するのが嫌だからって息子のスマホを取り上げるのはどうなのよ?ぶっちゃけ携帯端末くらいどこの文明人も持ってるわよ」

 

「……私は地球の文化には疎くてね。それに、地球に来たばかりの頃はまだスマホなんて無かったんだよ。だから仕方がないのさ」

 

「でも、それでも取り上げなくても良いと思うんだけど?」

 

「……」

 

「あの子まだ小学生だけど直ぐに中学生、高校生になるのよ?早いうちから親離れさせないと」

 

「それは確かにそうだが、今のご時世では必要な事だと思うよ。現に、最近の若者は他人とコミュニケーションをとる機会が減っているらしい。その証拠にほら……」

 

テレビをつけるとニュースをやっていた。内容は、SNSによるいじめ問題だった。

 

「最近、SNSで知り合った人間とのトラブルが増えてるみたいだし、そういうのは早めに解決しないと」

 

「うぐぅ……そ、そんな事言ったら、宇宙人の侵略だって似たようなものよ!」

 

「あれは、私達が攻めて行った訳じゃなくて、向こうが勝手に騒いだだけだろう?こっちは被害者なんだから、文句を言うならそちらに言ってくれ」

 

「むきぃー!!もう知らないわ!!」

 

そう言って、ガッツ星人は出て行ってしまった。

 

「ふぅ……やれやれ、騒がしい奴だ」

 

そう言ってメトロン星人は茶を一服すると、

 

「なあ、私は酷い母親かい?ケンちゃん……」

 

ここにはいない誰かに呟くのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

自分達は公園を離れたあと、ドラッグストアへ向かっていた。その道すがら自分は最近の悩みをクレージーゴンに話していた。

 

「へえ母にスマホを……」

 

「そうなんです。自分は大丈夫だと言ってるんですけどね…」

 

「キヒヒ、大変ねえ」

 

クレージーゴンは同情するように言う。

 

「ところで、鉄なんかちゃんと吸収できるんですか?」

 

「ああ、そうね。なんでか分からないけどちゃんと吸収できちゃうの。おかげで私のクローは日に日に固くなっていくわ」

 

「なるほど……しかしああ、スマホの件はどうすればいいのかな。中学に上がったらどうにかなるだろうか」

 

「キヒヒッ、そんなに欲しいなら気づかれないよう頭の中にチップを埋め込むってのはどう?テレパシーで連絡できるわよ」

 

「えぇ……流石にそれはちょっと」

 

「キヒヒッ、冗談よ♪」

 

そんなことを話しているうちに自分達は目的地であるドラッグストアに到着した。

 

「ここにいいものがあるのかしら?」

 

そういいながらクレージーゴンの視線は駐車場の車に向いている。

 

「はいこの中にありますよ」

 

数分後、自分達が持っている袋の中には鉄分のサプリメントがいっぱい入っていた。

 

「これが……鉄……」

 

「はい。ただ単に摂取するだけならこれにした方がいいですよ」

 

「分かったわ。それで、これどうやって飲むの?」

 

「カプセルです。こうやって……」

 

自分がカプセルを見せるとクレージーゴンは驚いたような顔をして

 

「あら凄い…!こんな小さなもので人間の体に吸収されるというの!?」

 

「そうですね。でも一度に摂取すると副作用があるらしいんで気をつけてください」

 

「キヒヒ、分かってるわよ。それじゃあ帰りましょうか」

 

そして、自分達は再び歩き出した。その後、クレージーゴンを帰したあと、母さんとまた話をした。いつになったらスマホを使わせてもらえるのかと。すると母さんは

 

「スマホを使うことで他人への信頼が無くならなければいいよ」

 

と言ってきた。

 

「えっ?どういうこと?」

 

「そのままの意味だよ。便利な道具を使っていくと、自然と他人への信頼も薄れていくから」

 

「つまり、信じろって事?」

 

「そうだよ。どんなに優れた技術であっても、使い続ければ必ず壊れてしまう。そうならないためには、使う人間が強くなきゃいけないんだ。だから君にも強くなって貰わないと」

 

「強くなるって言われても……」

 

「まぁ、今すぐってわけじゃないさ。これから少しずつ学んでいけばいい。それより、君は明日休みだよね?」

 

「うん」

 

「そうか……実はお父さんも今日は仕事が休みなんだよ。だから、久々に家族水入らずでどこかに出掛けないか?」

 

「ホントに!?行く!絶対に行く!」

 

こうして、次の日自分は、家族と一緒に遊園地に行ったのであった。

……うまくはぐらかされたような気もする。

 




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