イナズマイレブン The Price of Change (とっぴぃ)
しおりを挟む

第1章 前編 『最悪のスタート』

感想や要望、意見などありましたらお気軽にお声がけ下さい。
Twitterと連携して、キャラクターデザインやキャラクター名など募集していく予定です。
王道かつ新しいイナズマイレブンの世界に挑戦してみたいので、応援よろしくお願いします。


【プロローグ】

中学少年サッカー全国大会

通称「フットボールフロンティア」

40年間無敗を誇ってきた帝国学園がまさかの敗退。

そして無名だった弱小サッカー部、雷門中が全国の並み居る強豪校たちを退け、優勝!

その衝撃は全国のサッカーファンに情熱と感動を与え、現役にして伝説となった!

 

 

そして...

 

 

決勝戦をテレビで観戦していた少女が一人、目を輝かせながら決意した。

 

「中学に入ったら絶対にサッカー部に入る!」

 

鈴雲 成恵《すずも なるえ》

来年から中学1年生だ。夢と希望に満ちた少女の想いは、1年後、現実の前に儚く崩れ去るのだった...。

 

 

【第1章 前編 『最悪のスタート』】

 

ー翌年・春学期初日ー

入学式を終えて、成恵が一目散に向かったのは職員室だった。

 

「サッカー部が廃部ー?!」

 

職員室から学校の外まで聞こえるほどの絶叫が聞こえてきた。

耳を塞ぎながらも、やれやれといった面持ちで成恵と話しをしていた先生が説明する。

 

「あのね、あなたもサッカー部に入りたいと思っているなら知ってると思うけど、スポンサー制度のせいでね」

「すぽん...さー?」

「知らないの?」

「知りません...」

「小学生のときはサッカーやっていなかったの?」

「去年のFFの決勝戦を見て、サッカーしたいな!って、絶対にサッカー部に入るぞ!って思ってたんですけど、うちの小学校にはサッカー部なくて...地元のサッカークラブに入るにもタイミング的に遅いなって思って、近くの公園でボール蹴ってました!」

「なるほどね...」

 

鼻息荒く熱く説明する成恵に頭を抱えながら、どう説明したものかと悩む先生。

ありのまま説明するのが一番手っ取り早いと判断したのか、説明を始めた。

 

スポンサー、つまりサッカー部に企業がお金を出してくれないサッカー部は廃部になるという制度である。

去年の雷門中サッカー部優勝により、中学サッカー界のシステムが大きく変わることとなったのだ。

元々、新人戦を含めたサッカー部の全国規模の大会は年に3回行われていた。

 

 

メインは春のFF《フットボールフロンティア》

入部して1年未満の選手のみ出場できる夏の新人戦

全国ランキングをかけて争う秋のFFT《フットボールフロンティアトーナメント》

 

 

...だったのだが、

 

雷門中のFF優勝によってサッカー人気は急上昇!

皮肉にもサッカーで雷門中を潰そうと目論んでいた影山という男の策略が全国の関心を集め、

全国で雷門中サッカー部の活躍が広まる結果となったのだ。

そして、第一回となる少年サッカーの世界大会FFI《フットボールフロンティアインターナショナル》が開催。

雷門中メンバーを中心とした日本代表チームが結成され、アジア予選を突破。初めは世界からは軽視されていた実力のジャパンであったが、円堂キャプテンという存在や豪炎寺という絶対的エースストライカーの存在、そして鬼道という天才ゲームメイカーの3本柱の結束力で鍛えられた日本の選手たちは、なんと世界3位という好成績を叩き出した。

 

結果として日本のサッカー熱は留まることを知らず、練習試合ですら観客が押し寄せる始末。

強豪同士の試合ともなると、観客が多すぎることによる事故が全国で多発。

強豪でない学校でも観客は集まるが、まだ未熟な一部の選手が無理に出来もしない必殺技を使って観客席にボールを蹴りこんでしまう事故も起きる始末。

それ以外にも観客同士の喧嘩や、選手へのヤジなど、大きな問題から小さな問題まで積み重なっていくこととなった。

 

これらの事故を早急に防ぐために、全国少年サッカー協会は新たな提案をした。

それこそがスポンサー制度である。

 

社会現象まで引き起こしているサッカーブームにあやかりたい企業と、サッカーを安全に行いたい協会との利害が一致したことにより、

義務教育機関としては異例中の異例ではあるが、昨年のFFTから導入された制度である。

 

スポンサーのついていない学校はサッカー禁止。とのお達しが出て、弱小サッカー部や、地方で企業にアピールできないサッカー部は軒並み廃部となった。

成恵が通うことになった中学、雪花学院中等部《せっかがくいんちゅうとうぶ》も山に囲まれた東北地方の田舎にある学校なのでスポンサーが付かず、やむなく廃部となったというわけだ。

 

 

「...と、まぁこんな感じ。わかった?」

「半分くらいは...」

「とにかく、そんなわけだからウチのサッカー部は去年の秋のFFTで結果を残せずじまいでスポンサーが付かずに廃部しましたとさ」

 

先生も暇じゃないと言わんばかりに成恵から目を離し、机に向かって何やら書類に目を通し始めた。

 

「...あとは、どうしても納得できないなら元部員たちに詳しいことでも聞いてきたら?」

 

黙りこくってその場から動けずにいる成恵に気づいた先生は、気を遣ってか、優しく言葉をなげかけた。

東堂 満帆《とうどう まほ》、これでも一応は元サッカー部顧問だったのだ。

『自由なサッカー』が信条でコーチをしていたと聞いている。地元では昔、少しだけ有名なサッカー選手でもあったらしい。

詳しくは知らないけれど、成恵は父からそんな話を聞いたことがあったのだ。

 

(やっぱり、先生も廃部になったこと、悔しかったのかな...)

 

と、口には出さないけれど成恵は先生が眺めている書類を遠目で見ながらそう思った。

 

「あ、そうか。元部員って言っても誰か分かんないよね」

 

一向に動こうとしない成恵に、元部員の名簿と、今のクラスを書き出して渡した。

忙しくても細やかな気遣いは忘れない。成恵はそんな印象を受けた。

 

 

職員室から出た成恵は元部員の名簿をなんとなく見てみた。

この日は入学式だけなのでほとんどの生徒はもう帰っている。今日中に元サッカー部員に会ってみるのは無理だろう。

もちろん学年が違うわけで、知っている先輩の名前は一人も見当たらない。全員2年生みたいだ。

名簿には8人の名前しか載っていなかった。今となっては関係ないことだが、チームを作るには3人のメンバーが足りなかったみたいだ。

いたとしても11人、先生の言い方から察するに、大会には出ていたみたいだから、試合のときには助っ人でも入れていたのかもしれない。

 

溜息をつきながら肩を落とした成恵は廊下の窓からグラウンドを見る。

サッカーゴールはグラウンドの端っこに申し訳なさそうにちょこんとどけてあった。

 

『使用禁止』

 

でかでかと書かれた注意書きがゴールポストに張り付けてあるのが2階の職員室前からでも見える。

その事実が成恵の心をギュッと締め付ける。自分にどうにかできる問題じゃないという現実が立ちふさがったのだ。

 

そもそもサッカーができないなんて思ってもみなかった。

優勝できなくてもいい、ただサッカーを楽しめれば、それだけで...

 

そう思うと、あの日の試合を見てから毎日のように一人でサッカーボールを追いかけていた日々を思い出す。

気付けばうっすらと涙がこぼれていた。

 

「サッカー、やりたかったな...」

 

自然と口をついて出た。独り言。ボソっと決して誰かに話しかけるような音量ではなかったハズだ。

ハズなのに、

 

「ねぇ!キミ、新1年生?!サッカー部入部希望?!」

 

と、突然背後から声をかけられた。

片腕にサッカーボールを抱え込んだ生徒。スカーフが青色なので2年生だということはすぐにわかった。

いかにも快活な雰囲気のあるショートカットのスポーツ少女といった印象だ。

 

「え?あの、そうだったんですけど...でも...サッカー部は...」

「へへっ!ねぇ!いっしょにサッカーやろうよ!」

 

廃部になったんじゃ...と言いかけた成恵の言葉をさえぎって、グイグイ来る。

満面の笑みでそう語りかけてきた。初めて会ったのは確かなのに、どこかで見たことあるような既視感を感じる成恵であった。

 

「ウチはサッカー部キャプテンの白石 和《しらいし やわら》!ポジションは一応ディフェンダー!あとたまにゴールキーパーも!見てて見てて」

「え?何を...?」

 

突然、和は手を突き上げ、力を込めた所でその手を前に突き出した!

巨大な黄色の手が和の突き出した手から飛び出した!それはまさしく、成恵がサッカーを始めようと思ったきっかけとなった試合で見た『必殺技』であった。

 

『ゴッドハンド』

 

成恵と和は同時にその必殺技の名前を叫んだ。

まさしく、伝説にして原点と言われる必殺技、伝説のキャプテン、円堂 守《えんどう まもる》の代名詞とも言える技だった。




どうも、とっぴぃです。
キャプテンの方が主人公っぽい感出てますけど、成恵ちゃんはこれからドンドン成長していきます!
成長の鍵となるのは強化委員制度!
...とその前にまずはサッカー部を立て直さないといけませんね!
主人公の目の前に現れたキャプテン(正確には元・キャプテンですが)なにか秘策でもあるのか...。
とまぁ意味深なことを言ってみたりしていますが、後書きを書いてる時点では先のことは考えずに書いているので、どうなるかは分かりません!

それでは!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 後編 『はじまりの一歩』

第一章『最悪のスタート/はじまりの一歩』はこれにて完結。
完結といっても、第一章=アニメの1話分くらいの感覚で執筆していく予定です。
とはいえアニメのシナリオライターなんてやったことないので、あくまでなんとなくです!
1年生って、先輩の前だと緊張して自分のキャラだせないですよねぇ(フラグ)
続きが気になるって方は評価やコメントなどお願いします!


【第1章 後編 『はじまりの一歩』】

 

 

鈴雲 成恵《なるえ》の通う学校、雪花学院中等部は去年まで女子高であった。

地域の過疎化が進んでいる今、ここ、大原町《おおはらちょう》も例外ではなかった。

多くの小中学校が統廃合されていった結果である。

統合されたとはいえ、生徒数はそれほど多くない。教員を合わせても200人に届かないだろう。

そんな中結成されたサッカー部も、元女子校だからというわけでもなく、入部希望者が減っていき、

とうとう人数割れしていた、というのも仕方のないことだろう。

現3年生の中にも入部していた先輩が1人だけいたらしいのだが、まともな試合も出来ないサッカー部に用はないと

親に退部させられ、高校受験に向けて勉強を始めているらしかった。

そんな折、都会ならいざ知らず、地方では余程の強豪でなければ名前すら知られていない学校にスポンサー等つくはずもなく、他のスポーツ部員を助っ人を呼んで参加したFFTでも地区予選1回戦で敗退。結果を残せずじまいだった。

そんな、廃部までの経緯をサラッと説明された。サラッと。

キャプテンである和《やわら》は廃部になったことをそこまで気にしていない様子だったのだ。

普通、もっと落ち込んでてもおかしくないのでは?という成恵の疑問はすぐに解決した。

 

「ほら!これを見てくれよ!」

 

和に見せられたのは、ポケットから取り出した為、ちょっとくしゃくしゃになった小さなポスターだった。

いつもポケットに入れているのだろうか…?

 

「大原商工会主催サッカートーナメント?」

「そう!」

「これが、なんですか?」

「参加するぞ!」

「えぇ?!」

「キミ、えーと...ごめん、名前聞いてなかったね」

「あっ、鈴雲成恵です。友達からは、なるって呼ばれてまs」

「なる!だな!」

「はぃ」

「サッカーは好きか?」

「はい」

「サッカー部に入ろうと思ってたんだよな?!」

「はいっ」

「ごめんな!さっきまほりんと職員室で話しているの聞こえちゃってさ!」

「あっ、それで私に声をかけて...まほりん?」

「ししし!まほりんってのは東堂センセのあだ名!サッカー部以外でそう呼ぶとすごく怒られるんだけどさ!」

「はぁ」

「あっ、あと年齢のことも言ったらすっごいキレるから気をつけろよ?」

 

すごく自分のペースで話す先輩だ。というのがなるが抱いた和先輩への第一印象だった。

すごい勢いで話しかけてくる和先輩に終始押され気味でタジタジだ。

ただ、話が脱線しかけていたが、疑問はまだ残っている。

 

「でも、サッカー部は廃部になったから試合とかできないんじゃ...?」

「そのとーり!」

「じゃあ、そのトーナメントも参加できないんじゃ?」

「ちっちっち!このチラシをよく見てみなさいな!」

 

突き出されたチラシをそのまま受け取り、隅々まで見てみる。

書かれている情報といえば、トーナメントの名前と日付、参加要項に、優勝の特典...?

なるは思わず大きな声を出した。

 

「これって!」

「そう!優勝すれば、大原商工会がスポンサーになってくれるって!」

「それじゃあ、優勝さえできれば!サッカー部は復活できるってことですか?!」

「そのとーり!」

「わー!まだ希望はあったんだ!」

「へへっ、そゆこと!」

 

自慢気に胸を張る和先輩だった。

 

「参加要項のところもちゃんと見た?」

「はい!大原町にある中学生のチームであれば、だれでも参加可能!」

「そう!つまり、サッカー部じゃなくても人数さえいれば、参加できるってこと!」

「じゃあ私たちにもチャンスがある!」

「そのとーり!」

「優勝できれば!」

「そのとーり!」

「...ゆ、優勝?」

「ん?どーした?」

 

にっこりとほほ笑む先輩の笑顔がまぶしい...。

 

「優勝できなかったら?」

「そりゃもちろん、廃部だな!」

「えー?!」

「まぁでも考えてもみろよ!」

 

まさかこの先輩から「考える」というワードが出てくるとは思わなかった、ということは黙っておこうと思ったなるであった。

 

「なんでこんな大会が開催されると思う?」

「え?それは。えーと?」

 

ぶっちゃけ商工会とか言われてもイマイチピンと来ない、ほんの少し前まで小学生だったなるである。

イベントの開催理由なんて考えたこともなければ、スポンサー制度についてもなんとなーくしか理解できていないレベルだった。

 

「ま!単純な話なんだけどさ!町おこししたいんだってさ」

「町おこしですか」

 

それならなんか聞いたことがある。地域のみんなで地域を盛り上げよう的な、あれだ。

 

「そ!サッカーの人気は今やうなぎ登り!それにあやかろうって魂胆が見え見えなんだよなー。まぁそのせいでサッカー部も廃部に追いやられたわけだけども」

「なんか気持ち複雑ですね...」

「でもさ!」

「はい?」

「結局強くなくちゃ、FFで優勝なんてできないもんな!」

「そうですね...って、えぇ?!優勝?!」

「ん?なんか変なこと言ったかな?」

「参加するなら優勝をめざす!そうじゃなきゃ、対戦相手にもサッカーにも申し訳ないだろ?」

「サッカーにも?」

 

そうか、今やっとわかった気がする。なるがなぜ雷門と世宇子の試合を見て心が熱くなったのか。

なるだけじゃない、日本全国、サッカーの制度を変えるまでの存在になったのか。

言葉には出来ないけど、なんとなく、分かった気がする。

 

「もちろん!なるも参加してくれるよな?!」

「はい!」

 

考えるまでもなかった。なぜなら、そのために一人で練習してきたのだ。

 

「それで、他のメンバーは?」

「なる!」

「はいっ!」

「ウチとなるで、2人だ!」

「...え?」

「おいおい、春学期初日だぞ?他の元部員に声かけようと思ってたんだけど、ちょうどなるとまほりんの会話が聞こえてきたからさ」

「あ、それで」

 

納得しつつも、窓から中庭でシンボルみたいに堂々と建っているそこそこ大きな時計塔を見る。

気付けばもうすぐ夕方になろうかという時間だった。

午前中には入学式・始業式も終わって、すぐに職員室に来たのに、気付けばずいぶんと話し込んでいたらしい。

 

「わわっ!早く帰らなきゃ!」

 

家ではお母さんが昼食を用意してくれているハズだった。なるは怒られることを覚悟せざるを得なかった。

 

「ん?そうなのか?」

「はい...お昼ご飯、家で食べる予定だったので」

「そうだったのか?!わるいわるい!」

 

申し訳なさそうに頭を下げる先輩だった。とりあえず、悪い(?)人ではないと確信できた。

 

『中学に入ったらサッカー部?!なる、本気なの?!スポーツ系の部活は上下関係すっごーく厳しいんだよ?!』

 

そんなことを小学生のとき、親友にそう言われたことを思い出していた。

下級生の私にも頭を下げるなんて、親友に何度も脅されてちょっぴり不安だった気持ちは吹き飛んだ。

 

「それじゃあ私、帰りますね」

「おう!また明日な!」

 

今日は月曜日だ。明日から通常授業が始まる。明日の放課後、また先輩と話すチャンスもあるだろう。

 

「あ、そういえば大会っていつでしたっけ?私、初心者だからちゃんと練習しないと」

 

振り向きざま先輩に尋ねた。

 

「今週の土曜日だ!」

 

振り向きざま尋ねた格好のまま、なるはその場で石のように固まった。

 




と、いうわけで一縷の望みはあるものの果たしてトーナメントに参加できるのか?
メンバーは足りるの?練習は間に合うの?そんな不安がなるの胸中で駆け巡っていることでしょう。まさに「最悪のスタート」をきったなるでしたとさ。
大原町は統廃合により校区が広がったはいいものの、FFに参加できるほどの中学はほとんどなく、あったとしても地方予選1回戦敗退などが続く地区でした。
そんな中、スポンサー制度を逆に利用して、地域活性化を試みたのが大原商店街を中心とした、大原商工会の会長、一善 元《いちぜん はじめ》氏なのでした。
一善会長も学生時代はサッカー部所属。サッカー人気にあやかりたいという野望を秘めながらも純粋にサッカーを応援したい人物の一人なのでもあったのです。
今後、登場したとしてもあまり活躍はしないでしょうから後書きにて補足説明させて頂きました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。