アナザー・シャングリラ(って呼ばれるようになりたい) (マクバ)
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楽玲
楽郎が玲氏に惚れてしまったらif


どうも閲覧ありがとうございます。楽玲書いてみました。といっても今回は玲氏ほぼ出てきませんが……よかったらどうぞ。


 今の俺の心境を一言で表すとこうなるだろう。

 

 マジで不味い。

 

 確かに彼女は同じ学校の人間の中では一、二を争う美人だ。そんな彼女とはココ最近かなりの時間を共にしている。現実ではなくゲームでだが……いや現実でも登下校はよく一緒にしているし。そのせいだろう。俺は、彼女に…………こう……惚れてしまった。

 

 話してて時々読み込みが入ったように固まるのも、急に早口になったりだとか、ちょくちょく噛んだりする所とか一々可愛いのだ。もちろん彼女が育ちのいいお嬢様で俺とは釣り合わないのは知っている。それに彼女はとんでもない廃人だ。そういうギャップも好きなのだ。ただリアルで恋人なんて作る気はさらさらないだろう。俺もそうだったし。ゲームが楽しい間は他のリアルのことはある程度疎かになるものだ。

 

「という訳でどうしたらいいっすかねぇ? 岩巻さん」

 

 俺は内心を吐露して岩巻さんの方を見る。彼女の顔は肉食獣が獲物を見つけた時のような満面の笑みだった。これは……早まったか? 何となく俺はそう思った。

 

「楽郎君、貴方ねぇ」

 

 そこまで言って岩巻さんは1度言葉を切って俺に視線をやる。

 

「もっと早くいいなさいよね。貴方にクソゲー脳以外がインストールされてるなんて!!」

 

「えー、…………早くって……俺かなり速攻で相談しに来たんですけど……」

 

 俺がそう言うと岩巻さんは顎に手をやりブツブツと何かを言い始めた。何を言っているかは聞き取れないが、先程の発言と関連はあるはず……

 

「まぁそれはいいわ。なら簡単よ。玲ちゃんをデートに誘いなさい。連絡先は持ってるんでしょ?」

 

「え? いや持ってはいますけど、いきなりデートに行ったりとかはハードル高いから、相談しに来てるんスけど」

 

 旅狼のSNSもあるし、学校のクラスのSNSもあるしで斎賀氏の連絡先自体は持っている。だがそんなんが出来るのはギャルゲーの世界だけだ。なおクソゲーの世界では、学校で会話をした時に選択をミスしただけでヒロインがイタリアに飛ぶこともある。

 

「高くないわよ。この日空いてる? おっけー。なら何時に駅集合で。これで終わりよ」

 

「それはOKが貰える前提の話では?」

 

 ただでさえ斎賀氏は良家の子女だ。習い事なんかもたくさんあるだろう。その上でゲーム廃人ときている。俺なんかと出かける時間を割いてくれるだろうか? いや、シャンフロの中なら有り得るか? 

 

「だからとりあえずシャンフロ内で遊ぼうかなと」

 

 シャンフロの中なら廃人の斎賀氏でもOKしてくれるのではないだろうか? 現に何度か一緒にパーティーを組んでいたわけだし。という俺の名案は岩巻さんの

 

「何言ってるの。リアルでよ。リ ア ル で !」

 

 との言葉により却下された。さらにそのまま

 

「今ここでお誘いの連絡しなさい。その調子じゃ1人だと一生出来なさそうよ。大体2人で遊びに行く以外にどうやって距離詰めるのよ」

 

「まぁ確かにそれもそうッスね。分かりました。今誘います」

 

「日付は今度の土日にしなさい。どっちか空いてる方で遊びに行こう、って遊びに行くのは決定事項にした上で日付だけ聞きなさい。脈アリならこっちの曜日って返事が来るわ。用事があるって言われたらいつ空いてるか聞き返しなさい。脈があるならこの日ならって言われるわ」

 

 岩巻さんに言われるがまま今日お誘いの連絡をすることを決意する。地味に高等テクニックを教わっている気がするが、それって脈がなかったらこれから入院の予定が……とでも言われるんですかねぇ。そんなの言われたら俺もう立ち直れないんだけど。

 

 

 サンラク:斎賀さん。急に連絡してごめん。今週の土日どっちか空いてない? 良かったら一緒に遊びに行けたらいいなって思って。

 

 サイガ-0:ひ、陽務君……えっ、えっとー……お誘いありがとうございます!! ど、土曜日なら空いてます!! 

 

 

 送ってから結構早くに返信が来た。それも了承の返事だ! 

 

「岩巻さんOKってきました」

 

「だから言ったでしょう。まぁ場所は無難に近場にしときなさい。近くのショッピングモールとかが丁度いいと思うわ」

 

 俺は完全に岩巻さんの意見を盲信するマシーンと化していた。確かにいきなりちょっと離れた場所まで行ってテーマパークに、とかよりは近場の方がいいか。

 

 

 サンラク:ならさ近くのショッピングモールに行かない? 映画館とかあるくらいには広いし。良かったらでいいんだけど。

 

 サイガ-0:ショッ……ショッピングモール!? え、映画館……是非っ! 

 

 サンラク:それじゃ10時に○○駅で大丈夫? 

 

 サイガ-0:……ひゃい! 大丈夫れす! 

 

 サンラク:それじゃあよろしくね

 

 サイガ-0:こ、こちらこそ! よ、よろしくお願いいたします!! 

 

 

「どうだった?」

 

 連絡が一通り済み、顔を端末から上げると岩巻さんがそう聞いてきた。

 

「一応、土曜日の10時に○○駅に集まる感じっス」

 

 俺がそう言うと、ウンウンと頷き、

 

「なら当日のプランもちゃんと考えておきなさい。アドリブで出来るほど経験値ないでしょ?」

 

 

「……そりゃそうっスね。まぁ映画見て、その後は適当に雑貨屋回ったりとか? 後はゲーセンとかっスかね」

 

 俺がモールで遊べそうな場所を幾つかあげると岩巻さんは

 

「なら見たい映画の上映時間は把握しておきなさい。それを軸にコースを決めるの。ゲームセンターより雑貨屋の方が時間の調整がしやすいわ」

 

「なるほど。そこら辺も込みで考えておきます」

 

「あと、映画は恋愛モノにしておきなさい。間違ってもホラーとかいったらダメよ」

 

 この後も幾つかアドバイスを貰ってから俺はロックロールを出た。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 その日の夜

 

『い、岩巻さん!! ……わ、わたし……どうしたら!?』

 

『玲ちゃん! よく聞きなさい』

 

『……ひゃい』

 

『この展開は乙女ゲーで言えば、かなり後半のシチュエーションよ。好きです、って一言いえば勝ちよ!』

 

『……そんなっ!? ご無体な!?』

 

『まぁそれが出来るとは思ってないわ。でも楽郎君から誘ってきたってことはかなり意識されてるわ』

 

『……そ、そうなんでしょうか!? た、たまたま私しか都合が良い人間がいなかったとか…………』

 

『そんな訳ないでしょ。楽郎君そういうタイプじゃないのは知ってるでしょ』

 

『……そ、それは…………もちろん』

 

『なら安心してデートに行ってきなさい』

 

『デッ! デート!? デ、デ、デートってあのだ、男女がふ、ふ、2人で遊ぶあの!?』

 

『それ以外このシチュエーション何て言うのよ』

 

『……あ、あうぅ…………』

 

 両想いとは言わなかった。言ってしまえばそれでゴールインするだろうが、言わなくても無事にゴールするだろうと思ったからだ。ならば言わずに両者の心境をリアルタイムで聞ける立場を活かして存分に味わいたい、そう考えるのも無理のないことだと思うのだ。

 




閲覧ありがとうございました。私が別に書いた鉛筆ifとデートコース一緒なのは触れないでください。遠出しないって考えたら近場のショッピングモールになるのは必然だから!!仕方ないことだから!


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楽玲if-続き-

長々と時間が空いてしまった。本当に済まないと思っている。あと内容もだ。


 さて、斎賀さんとの約束の日になった訳だが俺は集合の30分前には駅にいた。これは岩巻さんに言われるまでもなく、女の人、斎賀さんを待たせることになったりするのは嫌だったからだ。彼女は集合の少し前に来るタイプだろうと踏んでそれより早く来たんだけど……

 

「ごめん。待たせちゃったみたいだな」

 

「い、いえっ! わっ……私も今来たところでっ!!」

 

 これって普通男女逆になるのがお約束では……? とはまぁ遅れてきた俺が言えるはずもなく、想像以上に斎賀さんは早めに来る人だと言うことが分かった。

 

「ちなみにいつ来たの?」

 

「……10分ほど前です! あ、あの陽務君は30分は早く来ると思いまして、それより早く着いておこうと……」

 

 俺が斎賀さんのことを知っている以上に、斎賀さんは俺の事を知っているらしい。面目ねぇなと思いつつも、何だか嬉しい……って俺チョロ過ぎないか? これが惚れた弱みってやつか……っ! 

 

「……あ、あの…………陽務君、え、えっと…………その」

 

 斎賀さんは何かを言いたいのか俺を呼んだ。その姿を見て

 

「あ、そうだ。斎賀さん。その服似合ってるよ。制服以外を見るのは初めてだからなんか新鮮だわ」

 

 自分でも驚く程にスっと言うことが出来た。これで詰まりながら言ってたら半ば変態である。って変態なのはゲームのアバターだけで充分だわ。

 

「……こヒュッ!?」

 

「だ、大丈夫か? 腹にグーパン喰らったような声でてるけど?」

 

 潰れたカエルと言わなかったのを褒めて欲しい。いや流石に言わないけどさぁ、咄嗟に思い浮かんでしまったのだ。

 

 

「え、えっと……あっ! ……ありがとうございますっ!! ひ、陽務君もっ! ……そっ、その……似合ってます!! 服しょう!」

 

 

「復唱?」

 

「……っ!! いっ! いえっ……ちっ、ちがっ! ふ、服が!」

 

「冗談だよ。ありがとう」

 

 いつもの斎賀さんの噛み癖だと分かってはいるが、ついイジってしまう。じゃないと照れ臭くてたまらなかったからだ。これが外道共なら終日イジり続けるんだが、斎賀さんにはそんなことは出来ない。というかその後なるべく平常心を持って返せた俺を褒めてくれ。瑠美に恥を忍んで服のチョイスを手伝ってもらったんだ。それをお世辞でも褒められて嬉しくないわけが無い。顔がニヤついてたら嫌だな。大丈夫だとは思うんだけど。

 

「それじゃあ行こうか。多分席は取れると思うけど」

 

「……ひゃいっ!」

 

 俺と斎賀さんは並んでショッピングモールに向かった。まずは映画館かな。

 

 

「どれを観ようか? 別に直ぐのじゃなくても大丈夫だけど。時間潰せる場所はたくさんあるし」

 

「そ、そうですねっ……あ、あれなんていいんじゃないでしょうかっ!?」

 

 そう言って斎賀さんが指したのは、恋愛モノの映画だった。偶然にも俺が事前に調べてた時に良さそうだと思ったのと同じやつだ。

 

「いいんじゃないか? 俺もあれ見ようと思ってたし丁度良かった」

 

「お、同じのっ!?」

 

「そうそう。見解の一致ってやつだね」

 

 いやー良かった。こういう時に変に意見割れても嫌だったし。

 

「……ケンカイノイッチ」

 

「急にオウム返しのロボにならないで。玲さん」

 

 気づくかどうかの微妙なタイミング。玲さんはいつものバグが入ってるし、もしかしたら気づかないかもしれない。まぁそれでもいいのだ。俺がこう呼んだのは始めてだったし、気持ち練習がてら言ってみるかってテンションの勢いに任せて言ってみてしまった。

 

「は、はいっ! す、すみませ……ん?」

 

 何かに気づいたように玲さんは少し沈黙した。そして読み込みを経て

 

「と、とりあえず、ち、チケットを買いませんか? …………ら、楽郎君!」

 

「あ……ま、まぁそうだね。そうしようか」

 

 玲さんが顔を真っ赤にしながら俺を名前で呼んでくれたのが想像以上に破壊力があって、俺も玲さんみたいに読み込みが発生しかけたが、何とか誤魔化せたと思いたい。いつだって男の子は好きな女の子の前では格好つけたいのだ。ただしラブクロックの主人公、テメーはダメだ。

 

 ────────────────ー

 

 劇場に入って映画を見始める。スクリーンを観ながらも横に居る玲さんに思考が向くが、それだけならまぁ何とかなった。だが映画の中盤当たりだろうか? 飲み物を取ろうとした手が、玲さんの手に重なってしまった。

 

「……あ」

 

 思わず声を出して玲さんの方を向いたら、彼女もこちらを見ていた。ヤバいっと思って手を引こうとしたが、

 

「こ、このままでっ…………このままで、だ、大丈夫……です」

 

 そこからは手を繋いだまま映画を見ていた。内容なんざ覚えてるわけが無い。とりあえず、俺は自分が手汗が大変なことになってないかと、それ以上に右手の感覚に囚われていた。今まで何となく曖昧だった距離感が確かに1つ縮まった感覚だ。物理的な接触が、精神面にまで作用しているようなそんな感覚。ちらっと横目で玲さんを見る。スクリーンを観るその横顔は、暗くて分かりづらかったが耳まで赤かった。そして多分俺もそうだった。

 

 ──────────────────

 

 映画が終わり、エンディングのスタッフロールが流れる。まばらに席を立ち去り始める人達がいる中俺たちは黙って座ったままだ。当然手は繋がっている。

 

 

「……あのっ!」

 

「……あのさ」

 

 2人の声が重なった。気まづいと言うよりは気恥しい。お互い見つめあったまま、黙ってしまう。だが立ち去る人々のざわめき声が気にならないくらい、暗がりの中だが玲さんとの距離が近い。

 

「…………綺麗だ」

 

 言おうと思ってなかったセリフが自分の口から飛び出る。自分で言ったのだが、驚きのあまり手を離す。

 

「…………へ?」

 

 それだけ言って玲さんは、今にも火を噴くんじゃないかというくらい顔を赤くしていた。いや言ってしまったら後に引けない。繋がった手を握りしめながら俺は言った。

 

「そのさ、玲さん。あなたが好きなんだ。色々と釣り合わないかもしれないけど、付き合って欲しい」

 

 多分、今までの人生で1番勇気を持って言ったセリフだと思う。

 劇場内の人がほぼ立ち去り、先程まで僅かにあったざわめきもなくなる。

 

「…………そ、そのありがとうございますっ! わ、私も、楽郎君。貴方をずっと好きでした。そ、そのっ! これからもよろしくお願いします!!」

 

 こう言ってくれた時の玲さんの顔を忘れることはないだろう。俺はOKされて安堵した気持ちを持ちながら、玲さんの満開の桜のような笑顔を観ながらそう思った。お? 

 

「と、とりあえず出ようか」

 

 俺が指した先には、空気を読んで待ってくれていた清掃のおばちゃんがいた。

 

「そ、そそそ、そうですね。で、出ましょうか!」

 

 それじゃあと手を差し出すと、玲さんは黙ったままその手を取ってくれた。掃除のおばちゃんにペコペコ頭を下げながら劇場を出た。当然ながら俺ら2人の手は繋がったままだ。

 

 あーてかこの後のデートプランどうしよう。自分で全部跡形もなくぶっ壊しちまったよ。

 まぁでもいいか。俺は繋がった手を見ながらそう思った。今の俺ならどうにでもなりそうだ。



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Hot Warehouse

遅くなったけど3周年記念。長い割に中身はない。
あとキャラが崩壊してる←いつも通り


「暑いな」

 

 倉庫に閉じ込められて大体20分程度たったか? 

 体育の授業終わりに用具の片付けを頼まれて片しに行ってたら何故か扉を閉められた。 体操服だから当然スマホなんて持ってないから連絡もできない。

 

「そ、そそ、そうですね。窓も閉まってますし」

 

 何故か玲さんもいるという事だ。同じように授業終わりに頼まれたらしい。2人も中に人がいるのに気付かずに鍵をかける教師がいるとか信じられん。

 しかし体操服の女子と倉庫に閉じ込められている。最早エロゲーの状況である。

 いや、勿論エロゲーのような展開にする気はないんだけど。玲さんの言う通り窓は高い位置に小さな窓がついてはいる開けたところで1人ギリギリ通れるかどうかといったところだが。

 

「とりあえずどうにかして出ないと。次の時間って体育の授業あったっけ?」

 

 俺は極力玲さんの方を見ないで聞く。理由? この暑さ、体育終わり、白い体操服、これだけいえば伝わるだろう。

 

「お昼休みが終わった後はなかったと思います」

 

「そっか今昼休みなのか」

 

 え、待って。放課後に体育館部活のヤツらが開けるまでこのまま? てか開けて俺らが居たらどんなリアクションされるんだっ!? 

 

「これ出ないと不味くね?」

 

 一緒に玲さんと登下校しただけで吊るしあげようとする奴らだぞ? 倉庫に一緒に閉じ込められたなんて話しが出たら、俺は屋上から紐なしバンジーの刑に処されかねない。何としてでも出なければ。教師に見つかるのはいい。生徒に見つかる前に脱出するのだっ! 

 大丈夫。あの毎回アイテムがランダム生成されるとかいうクソ仕様の脱出ゲームよりはましだ。なんだよ、アイテム見つけられるところを全部探しても鍵がなくて結局、バールで床を剥がしてそこに隠されてる爆弾で扉を爆破して脱出するって、ハリウッドのB級映画かよみたいな脱出方法ばかりになるとかいうシステム。一応詰まないようにはなってるらしいけど、ランダム性が異次元すぎてルートが見つけられず、阿鼻叫喚のレビューが垂れ流しになってたなぁ。

 

 いやいやいや現実逃避している場合じゃない。とりあえずあの高い窓をこじ開けるしかない。最悪割ればなんとか出れるだろう。

 

「あ、あの〜。ら、楽郎君?」

 

「あ、あぁ悪い。とにかくここから出な……」

 

 現実逃避の思考に耽ってた所に急に声をかけられたから、俺は玲さんの方を見てしまった。薄暗い倉庫とはいえそれなりに近くにいたために俺は直視してしまった。

 

「ピンク」

 

「え? …………ふへぇ!?」

 

 あ、これは死んだ。社会的にも、もしかしたら物理的にも。

 

 ──────────────────────ー

 斉賀玲はいま

 

(な、なんでいま千姉さんの既成事実ってこ、言葉が頭ににっ!?)

 

 非常に切羽詰まっていた。表面上は楽郎と普通に会話(だいぶキョドっているけどそれは普段通り)をしてはいるが、頭の中は暑さのせいもあってかグルグルと既成事実、押し倒す、斉賀の女は恋愛下手今が好機と自らの姉の囁きが響き続けていた。そんな時である。楽郎から

 

「ピンク」

 

 と言われたのは、その時すぐには玲の頭にはピンとこなかった。ただ楽郎の視線が自分の顔より少し下に向いたのに気づいてしまった。

 

「え? …………ふへぇ!?」

 

 気づいた途端に普段の3割増で顔が熱くなる。暑さのせいだけじゃないのは明白だった。なんで体育の日にそんな色の着けて着たんだろうとまず思い。そして先程まで脳裏に過ぎっていた姉の言葉が音量を上げて脳内でリピートし続ける。

 思考がほぼぶっ飛んだまま、脳内で響く姉の、今です、という声かあるいは自らの本能に従って玲は行動した。

 

 ──────────────────────

 

 不意に出る失言ほど危ないものはないと身をもって体感している。俺の言葉に最初は疑問しかでなかった玲さんだが、気づいた途端にリンゴのように真っ赤に顔を染めた。俺はそういえば玲さんに古武術みたいなのやってたんだっけ? と思考を回しながらも玲さんから目を背けられずにいた。

 

「うおっ!?」

 

 目を背けずにいたはずなのに反応できなかった。リアルスペックが違いすぎる。気づいたら天井の方を向いていた。背中に伝わる感触的にこれはマットか? 

 天井と玲さんが視界に写り込む。が体は微塵も動かない。俺は手足を完璧に封じ込められたが、玲さん手が俺の手を押さえ込んでいるため必然的に俺と、玲さんの距離は近くなる。

 

「れ、玲さん!?」

 

 俺の呼びかけに玲さんは反応しない。目がなんか俺を見てるようで見てない。これはガチで怒らせちゃったやつ? いやどちらにしても

 

「で、出来ればもう少し離れていただきたいのですが」

 

 シャンプーだろうか? 玲さんからの仄かにくる甘い香りと、体育終わりのお互いの汗の匂いと、体育倉庫独特の匂いが混ざりあってホントに何かやばい。

 しかし玲さんは相変わらず俺の声には反応しない。その体勢のまま全身を重ね合わせるように玲さんは体を前に傾ける。

 

「マジで体が1ミリも動かないんだけど」

 

 体全体に柔らかいか、感触がっ! 

 

「ちょ、ちょっと! 玲さん!? ホントに!」

 

 俺がかなり全力でシャウトしたからか玲さんの動きがピタりと止まった。もうすでにほとんど抱きつかれてるようなもんだけど。

 抱きつかれたおかげか手足の拘束は緩くなったけれども、さっき以上に動きづらい。いやここは打ち勝て! 俺の理性よ! 

 そこから理性がフルに作用して何とか玲さんを上から退かす。

 

 いやもしよ? もし万が一体育倉庫でそのままGOしたら不味いでしょ。確実に放課後には部活の奴らが来る訳ですし。紐なしバンジーで済まない目に合う。というかもう学校に2人とも来れなくなるだろ。

 

「おーい! 玲さん! 大丈夫!?」

 

 お互い座って向かい合う姿勢まで戻して、玲さんの肩を揺する。これが正しいかは分からないがとりあえず、玲さんをフリーズというかバグから復帰させないと。

 なるべく玲さんの首から下を見ないで揺する。理由? いや、透けてるし、揺れてるし。揺れてるってか俺が揺らしてるんだけど。

 

「……ほわぁ!?」

 

「大丈夫? 熱中症とかになってない?」

 

 さっきまでの声の届かなさはヤバかった。熱中症気味なら部活の時間を待つとかしてられないぞ。

 

「……………………だ、大丈夫です」

 

 玲さんは蚊の鳴くような声でそう言ったが、顔はさっきよりさらに赤みがましている。

 

「だ、大丈夫ですっ! ほ、ホントにっ!!」

 

「おーけー。分かった。とりあえず何とか出ようか」

 

 ってもどうするかな。叫んだところで、体育館の入口と反対にあるここからじゃ教師に気づかれる可能性は低いし。

 俺が思案していると

 

「そ、その先程は失礼致しました! で、出来れば忘れて頂けると非常にありがたく」

 

 玲さんがマットの上で土下座していた。

 

「え、あ、いやさっきのは暑さで頭がやられかけたかなんかでしょ。とりあえず早くどうにかして出よう」

 

 忘れられる気はあんまりしないけど。後々気まずくなっても困る。シャンフロ内でも気まずくなったら外道共に間違いなくバレて煽られ続けるからな。多分玲さんポロッと言うだろうし。

 

「え、えーと頭がやられたのは間違いないんですが……」

 

「ならそういうことにしよう。俺的にこの絵面が続く方がやばい」

 

 考えてみ? 同級生の女の子に密室になった体育倉庫のマットの上で土下座させてる男子の図。犯罪だろ。

 

「だから早く頭上げて。出る方法考えようぜ」

 

 玲さんは頭を上げて、それでも申し訳なさそうな表情はしていたけれど、はいと返事をしてくれた。

 

「とりあえず出れるとしたらあの窓だな」

 

 といっても高い位置にある倉庫の中には跳び箱なんかもあるけど2人でこの物が所狭しと置かれている中で、窓の下まで動かすのは無理だろう。

 

「……そ、そうですねっ」

 

 玲さんはさっきのことを気にしてるのか普段より反応が遅い。この状況だから仕方ないか。とにかく早く出ないと。

 

「俺の上に乗って開けれる? 肩車的な感じで」

 

 多分これが現状1番確実なんだけど。玲さんなら多分開けたとこから出られるだろうし。

 

 ──────────────────────ー

 

 玲の心境は一言でいえばやってしまった、これに尽きるだろう。

 理性をかなぐり捨てて襲いかかったようなものだ。楽郎に止められはしたが止めなかったらどこまでいっていたのか。

 

(護身術まで使って押し倒すなんてっ!)

 

 本能がそれほど楽郎を求めていたといえばいいのだろうか。いやそれで済むようなことではない。

 

(あんなに密着……)

 

 言い訳は幾らでも出来るだろう、多少苦しいかもしれないが、熱に浮かされた、さっき楽郎が言っていた熱中症気味だったでも何でも。なので玲は最上位の謝罪をすることにした。

 流石に恥ずかしすぎる自らの心境を全て打ち明けることはできない。故の土下座だったが、楽郎にそれが伝わる訳もなく、頭を上げるように言われ、それに従わざるをえない。ちなみに楽郎には忘れるように言ったが当の本人が忘れることは多分ない。

 

 そして頭を上げた玲はポロポロと言い訳をしながらぼーっと向かい合って座っている楽郎を見ていた。

 

(……汗でシャツが貼り付いてっ)

 

 乙女の思考回路はこんなものである。自分が密着したせいだということには目を瞑ってそんなことを考えていた。

 

(さ、さっき楽郎君も、わ、私のを見てましたし、これでおあいこでは?)

 

 一周回って開き直りかけていた玲の思考は楽郎の一言でさらにグルグルと回り出す。

 

「俺の上に乗ってあけれる? 肩車的な感じで」

 

「うへぇっ!?」

 

「うん。1人じゃ届きそうにないし」

 

(か、肩車!? 私今日で死んじゃうんですか!?)

 

 今まで距離を詰めるのに苦戦してきたのに、急展開の連続である。玲は混乱していた。

 

(なんかここから出なくてもいいような気が……むしろ居た方が)

 

 そこまで考えて玲は、その思考を追い出すように頭をブンブンと振った。

 

「わ、分かりました! 私頑張ります!」

 

 まだ追い出しきれていない、このまま2人っきりでという思考を振り払うために玲はいつもより少し声を張った。それでもこの窓が開かなくてもいいかも同時に思っていた。

 

 ────────────────────────ー

 

 玲さんも出る気十分ってことで頑張るか! あんまり長くここいるとマジで熱中症で2人とも倒れかねないし。いやホントに蒸し暑い。玲さんの方見れないくらいにはもうね色々とヤバいです。

 

 それはひとまず置いといて

 

「玲さん乗れる?」

 

 壁の方を向き窓の下でしゃがみながら訊ねる。ここで無理ですとか言われたら俺正直泣くんだけど。

 

「ひゃ、ひゃい! いきますっ」

 

「そんなパイロット並に気合い入れなくても大丈夫だよ」

 

 しゃがんだ姿勢の俺に負荷がかかる。といっても玲さん重くないから大した負荷じゃないけど。

 

「玲さん軽いね」

 

「ひぇっ!? ありがとうございますっ! ホントに重くないですか?」

 

 ウェイトは全然問題ないんだけど、太ももの感触がヤバい。間違っても口に出すことはないんだけど。あとさっきより匂いを強く感じる。いやこれも口に出すことはないんだけど。

 

「じゃあ立つよ?」

 

「だ、大丈夫です」

 

 玲さんに声をかけてから立ち上がる。玲さんを落としたら不味いと思って玲さんの足を抱えるように持つ。

 

「うへぁ!?」

 

「ご、ごめん。持たない方がよかった?」

 

「い、いえっ! 大丈夫デスっ! そ、その、そのままでっ!」

 

「おっけー。窓は開けられそう?」

 

 耳にかかる柔らかい圧力と、鼻にくる汗の匂いを無視するために口をまわす。話すことに集中しろ俺。

 

「えっと、ちょっと固くて」

 

 どうやら苦戦している様子。上を向いて玲さんの様子を見てみようとする。

 

「あ」

 

 この角度はあかん。玲さんって以外と大きいんだなとか思ってはいけない。もう体操服が意味無いくらい透けてるとかも思ってはいけない。一瞬で視線を壁に戻す。だけど強烈に焼き付いて離れない。

 

「どうしました?」

 

「い、いや何もないよ。ホントに大丈夫」

 

 壁をひたすら見つめながら答える。まずいぞ。もうしばらく玲さんのこと見れないかもしれない。

 

「開けられそう?」

 

「むっ、難しそうです」

 

 どうにも開けられそうにないらしい。仕方ない。待つしかないかな。

 

「わかった。1回下ろすよ?」

 

「い、いや。も、もう少し頑張ってみます」

 

「玲さんがそう言うなら俺は大丈夫だけど」

 

 嘘です。玲さん軽くてこの姿勢を維持することは問題ないんだけど、肩と耳にくる柔らかい感触がヤバいです。

 

「っん〜!」

 

 玲さんが鍵を開けようと力を入れる度に俺の耳と玲さんの太ももが擦れてやばい。それに段々と玲さんの足による締め付けが強くなってる気がする。

 

「れ、玲さん、足締めすぎっ」

 

「あっ、すっ、すみません!!」

 

「大丈夫。とりあえず1回降ろすよ?」

 

 俺は玲さんの返事を聞かずにしゃがんだ。それがいけなかったんだろう。

 

「あわっ!?」

 

 多分鍵を開けようと奮闘して玲さんが急にしゃがまれたせいでバランスを崩したのだろう。俺の頭に玲さんの手が乗る。

 

「す、すみません!」

 

「こっちこそ急にしゃがんでごめんね」

 

 俺の首から上にかかっていた負荷がなくなる。玲さんが無事に降りたらしい。

 

「開きそうにない感じだった?」

 

「はい。その、すみません」

 

「いや玲さんは何も悪くないでしょ」

 

 2人も中にいるのにとっとと閉めた教師が悪い。これは間違いない。しかし男子高校生には目に毒すぎる。この景色は。

 

「そのあんまりそっち見ない方がいいかな」

 

 俺は玲さんに背中を向けて言う。玲さんがどんな反応をしたか判断出来ないけどこの方がベターだろう。

 玲さんから特に反応はない。まぁ反応に困るか。

 

「あとどれくらい待つことになっ!?」

 

 何故か背中に柔らかい感触ががが、それに玲さんの腕が俺の胸に回されてっ!? 

 

「玲さん!? 大丈夫?」

 

「…………だ、大丈夫です。あの、その、ホントに大丈夫なんです。た、ただ、もうしばらくこうしてていですか?」

 

 お互いの汗でベタついた体操服の感触が俺にこれが夢でなく現実であることを物語っていた。

 

「あ、ああ。いいけど」

 

 なんで? とは口にださなかった。理由はなんでもいいだろう。

 会話はなくただ抱きつかれている。背中にさっきと異なる柔らかい感触の奥から聞こえる鼓動と耳にかかる玲さんの吐息の音だけ聞いていた。

 玲さんがいま何を考えているか聞こうとは思わなかった。というかさっきまでと打って変わって話そうという気持ちがなかった。

 無言の空間が心地よく感じる。

 

 どれほど時が立ったのだろうか? 5分? 10分? 1時間? 自分の中の感覚ではそんなに経ってないような気がする。ふと玲さんが背中から離れた。

 

 

「楽郎君」

 

「どうしたの?」

 

 背中を向けたまま応える。

 

「……こ、こっちを向いてください」

 

 俺はなんとなく迷うことなく玲さんの方を向いた。玲さんの顔は相変わらず真っ赤に染まっていて、でも多分俺の顔も同じくらい真っ赤に染まっている気がする。

 

 段々と玲さんが距離を詰めてくる。俺は玲さんの目を吸い込まれるように見つめていた。そして無意識に同じように玲さんの方に距離を詰めていた。

 

「……玲さん」

 

「……楽郎君」

 

 お互いに目を見続けたまま距離が近づいていく。お互いの吐息を顔に感じるくらいまで距離が近づく。

 

 

「お前ら! 大丈夫か!?」

 

 バンッと体育倉庫の扉が開いた。その音に反応して俺と玲さんは弾かれるように距離をとった。

 

「暑すぎてやばいです」

 

「……はい。大丈夫です」

 

 あと5分だけ遅く来ればよかったのに。

 

 とりあえずこのことは誰にも言えないな。玲さんの口元を何となく見つめながらそう思った。

 ただ、玲さんは俺をどう思っているのだろうか? 自分にとっていいように考えてしまうのは、男の都合のいい勘違いかそれとも。




後日岩巻さんにイジられるまでがセット。

体育倉庫の匂いと汗の匂いとが混じった空間に男女二人がいるってエロいよなって妄想だけで書かれております。


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スタディ・ハプニング

Twitterで貰ったリクエストからー。本家であったとは言ってはいけない。いや言ってもらっても全然大丈夫です。
多分ネタの中身自体はそんな被ってないはず……はず。皆さんの反応が不味かったら消します。


俺は高校2年生だ。世間一般でいえば部活なり趣味なり友達と遊ぶなり青春真っ只中な時期と言える。だが来年には人生の転機である大学受験がある。ゲーマーとしての理想の生活をするためにも目標とした大学に確実に行くためには日頃の積み重ねが大事である。

つまるところ俺は2年生だがある程度受験用の勉強もしているということだ。もっぱら今までやってきたた所の復習だが。

 

「んー分からん」

 

その復習で今、俺は若干詰まっていた。若干苦手な数学でだ。公式丸暗記すれば済むっちゃ済むんだが、どうせなら頭の中にスッキリ収めてしまいたい。来年の受験自体は文系選択の予定だけど、数学を受験に使えるところもある。社会科系の科目は高得点を取りやすい分、全体の平均点が高い。使えるなら数学の方が若干そういった点では楽だ。そういった意味で数学を勉強していたんだが。やっぱり苦手なものは苦手なんだよなぁ。

教科書片手にうんうん唸るがいまいち納得できない。誰かに聞いてみるか?雑ピは……あいつに聞くくらいなら側溝に住んでるネズミに聞いた方が俺は納得できるアドバイスを貰える。

玲さんならどうだろう?めちゃめちゃ頭良かったよな?確か。メッセージ飛ばすだけ飛ばしてみるか。廃人だしシャンフロに潜ってたら暫く気づかないかもしれんが、まぁその時はその時だ。

 

ーーーーーーーー

 

楽郎:いきなり連絡してごめん。よかったらでいいんだけどさ。数学で分かんないところあって教えて欲しいんだけど、時間ある?

 

 

 

俺がメッセージを送ってから10分ほどだろうか?返事が来るまでは別の科目をと英語に手をつけているとスマホが鳴った。玲さんから返事が来ている。

 

 

玲:じ、時間ありまし!きょ、今日でも!

 

 

玲さんはおっけーか。ありがたいな。それも今日とは都合がいい。誤字とかはいつもの事だしスルーしとこ。

 

楽郎:本当?助かる。場所は○○駅の近くのカフェでいい?他に場所があるならそこでもいいんだけど。別に電話とかでもいいんだけど。

 

流石にどっちかの家はよろしくないだろう、と思っての提案だ。カフェで勉強ってのもちょっと気取ってる見たいで良くは思われないか?いやそれは考えすぎか。

 

次の返事はすぐに来た。

 

玲:で、電話!?い、いえカフェで、だ、大丈夫です!!ご、午後からでいいですか?

 

楽郎:もちろん。急に言ったのは俺だし。昼は食べてからでいいか?

 

玲:は、はい!じゃ、じゃあ1時に!

 

楽郎:分かった。ありがとうね!よろしく!

 

玲:こちらこそ!よろしくお願いいたします!!

 

とびっくりするほどすんなり約束を取り付けることに成功した。こうして始まる俺と玲さんの勉強会は、クソゲーもびっくりの予想外の展開を向かえることとなる。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

約束の時間の15分前、俺は集合場所に着いていた。こっちから頼んだのだから遅刻というか、待たせたら流石に悪いし早く来たのだ。

「ら、楽郎君!おまたせしました!」

 

「いや待ってないよ。今来たところだし」

 

俺が着いてから数分も経たずに玲さんが来た。早めに来てよかったな。時間ピッタリというかギリギリに着いてたらかなり待たせることになってたし。

「い、いまきたところっ!」

 

「ん?そうだよ」

 

まるでカップルのテンプレートな会話をしてしまっているな。残念ながら俺と玲さんはそういう関係ではないんだけど。

 

「暑いし、早く行こうか。今日はよろしくお願いします」

 

「え?こ、こちらこそっ!不束者ですがよろしくお願い致します」

 

「いや、勉強教わるの俺の方だから」

 

それにそのセリフはなんか違うと思う。顔を赤らめて早口で言った玲さんに俺はそう思った。

 

チェーン店のカフェに入った俺たちは当然の事ながら注文をする。注文せずに店の中に居座る訳にはいかないからだ。

普段はエナドリ派な俺だが、流石にカフェで勉強するってなったらコーヒーにする。いやここでトゥナイトとか言えないでしょ。てかある訳ないし。

 

「俺は普通にブレンド頼むけど玲さんは何にする?」

 

「わ、私はカ、カフェラテにしようかなと」

「おっけー。じゃあ頼んでくるわ」

 

「え?」

 

何やらフリーズした玲さんをほっといて注文をすます。サイズはまぁ無難にMでいいでしょ。

当然の事ながら俺がお願いしたのだから、俺が全額受け持つ。玲さんはそういうのを良しとするかは分からないけどこれは譲れない。男しての面子の問題だから。

 

ぱぱっと注文を済ませ、受け取り口で待つ。

 

「あ、玲さんよかったら席取っといて欲しいかな」

 

「え?え?はいっ」

フリーズから復帰した玲さんに席の確保を頼む。店内は比較的まばらで空いているが、急に混み出すこともありえるし、立たせたまんまにしとくのもあれなので頼んでしまうことにした。

 

「お待たせいたしましたー」

 

店員の読み上げた商品が自分の物だったので受け取る。さて玲さんはと……窓際の席に居た。飲み物2つが乗ったトレーを持って向かう。玲さんが確保してくれたのは丸い机を挟むように椅子が2つ置いてある窓際のテラス席だ。机は2人分の勉強道具を並べるには十分な大きさだった。

「席取っといてくれてありがとう」

 

「い、いえ!こちらこそっ!そ、その代金の方を……」

 

「今日頼んだの俺の方だしいいよ。というか払わさせてくれ」

 

「そ、そうですか。ならっ!お言葉に甘えて」

 

俺がそう言うと玲さんは恐る恐るカフェラテを取った。 それを見てから俺は勉強道具を広げた。カフェの2人席である以上俺たちは必然的に向かい合って座る形になった。

 

「早速だけど、ここがよく分からなくてさ」

 

俺がそういって見せたのは数学の問題の1つだ。

 

「この公式を使う応用問題なのは分かったんだけどさ、公式に当てはまる形にどうも綺麗にいかなくてさ」

 

俺が自身の理解の状況を伝えると、玲さんは真面目な顔で俺の計算式を見ながら考え始め、10秒程で口を開いた。

 

「た、多分ですけど、ここの式を代入すれば綺麗に解けると思いますよ」

 

「お!?マジじゃん!?やばい!超スッキリした!ありがと!」

 

まさかこんな一瞬で終わるとは。いや玲さんが頭いいのは知ってたんだけど、俺の理解込みでもうちょい時間がかかると思ったんだが。だがとにかくもうこの手の問題は俺にはきかぬ。あの数学の教師に目にものを見せてやる。いや目をつけられたことはないけど。

 

「お礼にここのケーキでも奢るよ。何か食べたいのとかある?」

 

「お、お礼だなんてっ!?そ、そんなとんでもない!!」

 

「いいからさ。まぁ、早く帰りたいなら別に良いんだけど」

 

玲さんもシャンフロで次のイベントまでに色々とやっておきたいこともあるだろうし。

 

「い、いえっ!そういう訳じゃ!!えっと……その…………ごちそうになります」

 

「そうそう、女の子は男にドンドン貢がせないと」  

 

ん?誰だ?態々他人の会話に入り込んでくるやつなんて……

 

「…………は?」

 

「やーサンラク君。楽しそうじゃないか。妹ちゃんもお久ー」

 

「え、えっと〜、お久しぶりです?」

 

変装しているためパッと見じゃ分からないが天音永遠がいた。

 

「どうしてここにいる?ペンシルゴン」

 

なんでカリスマモデルが街中のチェーンのカフェにいるんですかねぇ。俺の疑問にペンシルゴンは

 

「たまたまだね。ちょっとプライベートの用事があってこっち来たんだけど、君たちが見えてね。楽しそうだったからつい」

 

「身バレしたらどうする気なんだ。コイツ」

 

この場で叫んでやろうか。天音永遠がいるっ!って。カフェに来る客層にはコイツのフォロワーはかなりいるはずだ。

 

「そんなことしたら君のこともバラすよ」

 

俺の考えを読んだのかペンシルゴンはニヤついてそういった。その目は私はいいけど君は困るだろ?っと言っている。

 

「チッ、ならさっさと用事を済ませに行ったらどうだ?忙しいんだろ?」

 

 

「そんな邪険にしないでくれよ。それとも妹ちゃんと2人っきりがそんなに良かったのかな?」

 

「ふぇっ!?」

 

ペンシルゴンの放った口撃は俺ではなく玲さんにクリティカルヒットしたようだ。

 

「あのなぁ。玲さんとはそういう仲じゃ」

 

「玲さん?随分親しそうじゃん」

 

「いや、ホントにさぁ」

 

俺は普段通りの外道とのやりとりだからいいけど、玲さんに流れ弾が飛んでいくのはあまりよろしくない。そしてコイツにそういう方面で人道的措置を期待することは無意味だ。

 

「あっ、ふ、2人っ……キリッ!?そ、そういう仲?!」

 

案の定玲さんがバグりだした。いつもの3割増で顔が赤い。

 

「あー、そうだよね百の妹だもんね。そうなるよね」

 

この状況を作り出した悪魔は1人で勝手に納得すると

 

「じゃ、私行くから!」

 

「は?収集つけてから行けよ!」

 

俺の声を無視して、後で事の顛末は聞いてあげよう!とだけ残して去っていった。なんでやつだ。嵐よりタチが悪い。

 

「えっと、その……玲さん?」

 

「……ふぇ?」

 

あ、今の声可愛かったな。いや、それは置いといて。

 

「アレはああいう人間だから一々言うことを気にしないでくれ」

 

「え、えっと……わ、分かりました?」

 

とりあえずさっきのイレギュラーなバグは無かったことにしよう。俺の中ではそういう方向に舵を切ることにした。アイツからの煽りメッセもスルーでいこう。

 

「とりあえずケーキ買ってくるよ。何がいい?」

 

「あ、えっと……じゃ、じゃあモンブランでお、お願いします」

 

「おっけー。ちょっと行ってくる」

 

そう告げて席を立ってカウンターに向かう。

 

アイツに言われるまで意識しなかったけど、これ傍から見たらカフェデートなんだな。というか勉強教えて貰い終わったからもう完全にカフェデートでしかないじゃん。

 

そう思うと急に顔が熱くなった。いやいやいや待て待て待て、相手は玲さんだぞ。俺と玲さんが?ないない。釣り合わないでしょ。

考えが飛びそうになったのを戻す。玲さんはただのゲーム友達、カッツォやペンシルゴンと同じ……とは言うと玲さんに非常に申し訳ないけど、とりあえずの区分としてはゲーム友達でしかないはずだ。玲さんがかなりの廃人ゲーマーとはいえ、リアルでのあれこれを考えると釣り合うはずがない。向こうもそういう意識はしてないだろう。多分。

 

「モンブランとチーズケーキ1つずつ」

 

注文を受け取るまでの間にそういう意識を外す。大体こっちから勉強教えてくれって頼んでおいてカフェデート!!とか思い始めるのやばいだろ。勘違いも甚だしい男子高校生の思考じゃん。自身のメンタリティに悶々としながら。

 

注文を待っているとピコンとメッセージが来たことを知らせる通知が鳴る。

送り主はさっきまでいた性悪モデルである。見てもろくなことにならないとは知りつつもシカトしたらしたでろくな事にならないことを知っているので開く。

 

天音永遠:やぁやぁ青春してる少年よ!あんまり女の子に恥かかせたらダメだゾ

 

恥かかせようとした張本人が何言ってやがる。と思っていると更に通知が。

 

天音永遠:後で結果を聞いてあげるよ。年上のお姉さんとして君の恋愛が上手くいくことを祈ってるよ。

 

パッと見本当に年上風?を吹かせて相談に乗ってあげる心優しい女に見えるかもしれないが、どう考えてもここで得た情報を後でばら撒く気満々である。いや、そもそも玲さんに恋愛感情は抱いてないんだけど。

 

サンラク:いや、玲さんとはホントにまだそういうのじゃないから

 

天音永遠:まだ?まぁその内ってことね。じゃあ期待して待ってるよー。これから用事だから。

 

自分がまだ、と無意識に打ってたことにコイツの指摘で気づいた時にはもう遅かった。そこからは俺がいくら言おうと既読すらつかなかった。これは次に会う時はこのネタでイジられるのを覚悟せねば。矛先を変える手段を用意しとかないと。魔界に潜るか?それじゃ無理な気もする。

 

半ば現実逃避気味に思考する。自分が将来的に玲さんと恋愛関係を築きたいと思っていることを誤魔化すために。

 

「お待たせ致しました。モンブランとチーズケーキです」

 

その言葉を聞いてハッと思考の海から浮上する。何となく今は玲さんの目を見れない気がする。それでも席には戻らないといけない。

とりあえず平常心だ。あの悪魔のことは忘れろ。

 

俺は残った玲さんも同じくらいあの悪魔の襲来に動揺していることを知らなかった。

 

 

 

 




ペンシルゴン先輩は百ちゃんの所へ行く感じです。なので間違いなく妹の方が青春してるいじりをします。
後はしれっと旅狼のチャットで匂わせイジりをしたりとかするかなとか思ったり。
ここからは正直勉強会じゃなくてカフェデートなのでここまで。
誤字脱字、感想等あったらお願いします。気に入ったら評価も是非おなしゃす。


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夜を駆ける

何の知識もないのに天体観測ネタ。この辺の知識のガバは許して欲しい。
そしていつも通りキャラは崩壊してます。というかこの2人天体観測とかするの?とか思ってはいけない。


 玲さんと付き合ってそれなりに月日が経った。いい加減玲さんがバグることもなくなり、俺もクソゲー思考から恋愛思考に玲さんといる時だけ若干シフトするようになった。つまりお互い付き合っているという状況に良い意味で慣れた頃。

 

 技術が進歩した今じゃ一昔前みたいな工場地区何てものは居住地の近くにはない。それでも何かしらの事情で取り壊せなかった廃工場なんかは少し離れたところに行けばないこともない。そういう場所は大概人が少ない。

 夜、日も落ち通勤帰りの会社員もほとんど見ない時間に、俺と玲さんはそんな寂れた工場のある地区にいた。

 

「にしても良かったの? こんな時間に外出てて」

 

「大丈夫です。家の人には言ってありますし」

 

「ならいいんだけど、俺も素人だからちゃんと見れるか分からないよ」

 

 シャンフロで一緒に遊んで時に玲さんが天体観測をしてみたいんですよ、と言ったのがきっかけだった。いつぞやのプラネタリウムが理由らしい。

 俺も興味が無いわけじゃなかった(それ以上に玲さんと行けるならどこでも行きたいというのもあった)から見たいねと言えば、うちに天体望遠鏡があるんですよという話になり、玲さんの家からじゃ見えないということが分かって、ここまで来ることになったという具合である。

 

「それより持たせちゃってすみません」

 

 そう謝る視線の先は俺の背中にある天体望遠鏡だった。

 

「持たせた方が俺のダメージが大きいから」

 

 いくら玲さんの方がリアルファイトが強くて、下手すりゃ単純なパワーですら負けてる疑惑があろうとこれを持たすのは流石に男が廃るってもんよ。

 

「やっぱり少し遠かったですかね」

 

「星見ようと思ったら灯りは少ない方がいいでしょ」

 

 人がいるとどうしても灯りが増える。ゆえに人通りのなるべく少ない場所にいかなきゃいけない。

 

「見れる時間帯っていつ頃だっけ?」

 

「えーっと、あと30分ほどですね」

 

「ならちょっと急ごうか」

 

 重たい天体望遠鏡を背負ってることを一先ず忘れて、玲さんの手を掴んで走る。

 

「ふぇっ!?」

 

「久々に聞いたな! 玲さんのそれ!」

 

 俺が笑いながらそう言うと玲さんは少し照れたあとにくすりと笑って

 

「そうかもしれませんね」

 

 と言った。その時の笑顔はどの星よりキラキラと輝いて見えた。

 

 アスファルトで舗装された道を2人で走る。お嬢様である玲さんにこんなことさせていいのかと思いながら、フェンスの敗れたところを潜り抜けてさらに走る。そして……

 

「ここなら見れるんじゃないか?」

 

 駐車場だったのだろうか? 開けた所に出た。

 

「多分見れると思いますっ!」

 

「ならここで待とう。そろそろ見れるだろうし」

 

「はい」

 

 そこから天体望遠鏡をセッティングした後、俺たちは暫く沈黙の時を過ごした。今さら話すことがなくて沈黙が苦痛だなんてことはないが、俺は単純にさっきまで走っていた分のツケが回っていた。いや冷静に考えたら、天体望遠鏡担いで玲さんの手を引っ張り走るのはかなり疲れる。

 玲さんの前でゼェゼェ息を切らす訳にもいかなくて、というかこの夜の帳の中で廃工場を背景にした、深窓のお嬢様のような玲さん、ある種神秘的とも言えるそんな空間に自分の喘鳴が聞こえることを俺が良しとしなかった。

 そんな深窓のお嬢様は俺の恋人で、重度のゲーマーなことは触れてはいけない。ただ、少なくともリアルでそれに触れられるのは今のところ俺だけだ。

 

「少し見え始めたな」

 

 セットしてある天体望遠鏡に近づく。なくても星座を見るくらいなら全然困らない。

 

「望遠鏡で見るならとりあえず月とかからじゃない?」

 

「そうしてみます」

 

 玲さんは天体望遠鏡を覗くためにしゃがみレンズの倍率を弄り始めた。ああでもない、こうでもないと呟く様は見事なまでに天体観測初心者のそれだった。俺も多分覗いたらそうなるんだけどね。

 

「見えたっ! 見えましたよ! 楽郎くん!」

 

 無事にピントが合ったらしい。それこそ月の兎のように飛び跳ねて喜んで近づいてくる。

 

「ホント? 俺も見たい!」

 

 そういえば玲さんは俺の手を引っ張って天体望遠鏡まで連れていく。たった数歩の距離だ。付き合う前どころか、付き合ってから暫くはやらなかったであろう行為。それは確かにお互いの距離が以前より近づいたことの証左であった。嬉しいようで少し寂しい気もする。バクった玲さんも可愛いかったのにそれを見る機会はここ最近はなくなってしまったからだ。

 

「はい。どうぞ!」

 

 玲さんに導かれて俺は天体望遠鏡を覗き込む。当然ながら肉眼で見るよりも遥かにはっきりと月が見えた。だけど月の兎はそこにはいない。なんせ隣に居るから。

 なんていうのはクサすぎて口にはできないけど。

 玲さんの方を見る。楽しそうに満面の笑みを浮かべている。

 

「ありがとう。次は何見る?」

 

 空では夏の大三角形が輝きを放っている。ベガとデネブとアルタイル。もしくは織姫と彦星と何だっけ? 七夕と夏の大三角形は同じ星をモチーフにしてるだけで繋がりはないんだっけ? 

 まぁいいや。一年に一回しか会えない悲しい恋人たちよ、俺は365日一緒にいるぞと心の中でドヤる。これがリア充が非リア充を見下ろす構図か。

 玲さんが口を開いたので罰当たりな思考を止める。

 

「ベガにしましょう。次はアルタイルです」

 

「夏の大三角形だな」

 

「そうです」

 

「どれがどれだっけ? あれが三角形でしょ?」

 

 俺が指さす方の星を玲さんが見る。そして1つ頷く。それを3回繰り返した。三角形の場所は無事に分かっていたらしい。

 

「最初に指したのがアルタイル、次がベガ、最後のがデネブですね」

 

 俺が指してた指の軌道をなぞるように玲さんが宙に指を走らせる。

 俺の視線は光に群がる虫のようにその指先に吸い込まれる。玲さんがどの星がどの名前なのか説明してるのを聞いてる間もそうだった。

 

「じゃああの星からだな」

 

 ベガを指さし俺は言った。さっき玲さんが説明していたことはきちんと頭に入っている。

 玲さんはどんな思いでベガとアルタイルを見ようと言ったのだろうか。もしかしたらそこまでセンチメンタルに考えてなくて、ただ夏の大三角形っていうメジャーな星だからかもしれないし、俺のようにほぼ非リア充を見下してやろうだなんて考えてる事はきっと無いのだろうけど。

 わざわざ聞こうとまでは思わないけど少し気になった。七夕はまだ少し先だ。今年は何を願おうか? 去年までは幕末やらなんやらのイベントで血生臭い願いしかしてこなかったが。

 ピントを合わせるのに試行錯誤をしてる玲さんを見ながら考えていた。さて手伝うか。

 

「玲さんどう?」

 

「少しボヤけてしまって」

 

 玲さんが場所を譲ったので天体望遠鏡を覗き込む。確かにピントが合ってないらしく滲んで見えている。

 

「最低限の機械弄りのスキルは持ち合わせてるからな」

 

 ボヤくように呟きながらピントを調節する。お、

 

「見えたっ!」

 

 俺の声に反応して玲さんが背中にくる。ピッタリと俺に重なるように覆い被さってくる。

 

「うおっ!? 玲さん?」

 

「み、見えたんですか?」

 

「あ、あぁ。ほら」

 

 俺から玲さんの顔は見えない。上擦った声だけが聞こえる。ただその距離はとても近い。耳に息がかかる。背中に柔らかい重みがのっかる。玲さんはいつの間にこんなに距離を物理的に近づくようになったんだ? 

 俺が場所を譲ると、玲さんは俺にのしかかったまま少し躊躇してるような声を出した後に望遠鏡を覗き込んだ。

 

「よく見えますね。やっぱり綺麗です」

 

 無邪気そうに喜ぶ玲さんを見て、さっきまで覆いかぶさってきてたからか、最近は玲さんのバグる所を見てなかったせいか悪戯心が俺の中で芽生えてきた。バグった玲さんを久々に見たいな。あまり俺からこういうことすることはなかったし。

 

「んぴゃっ!?」

 

 さっき玲さんがしたのと同じように後ろから覆い被さる。そのまま手を回してすっぽりと玲さんを包み込む。

 

「よく見えたでしょ?」

 

「えっ!? ひゃいっ!」

 

 付き合う前、シャンフロを一緒にやり始めた頃に近いリアクションだ。最近はめっきり見かけなくった、耳まで真っ赤な顔の玲さんの耳に口を近づけて囁く。

 

「でもやっぱり玲さんの方が綺麗だ」

 

 言った俺の顔も多分真っ赤だ。ただこの場に唯一居る玲さんは俺の顔を見ることは今の状況じゃ出来ない。

 

「キ、キ、キキ、キレイッだなんってっ!? そんなっ! 急にっ!?」

 

「急じゃないよ。ずっと思ってたから」

 

 ギャルゲーのようにどストレートなセリフを連発する。ただどれも本心であることに変わりはない。それに玲さんには直球勝負が1番有効なことはこれまでの積み重ねで分かっている。

 

「さぁ、望遠鏡を覗いて見なよ。次はアルタイルだろ」

 

 玲さんを包むようにしていた手を外し、天体望遠鏡を支えていた玲さんの手に自らの手を重ねつつ言う。

 

「……ひゃい」

 

 玲さんはさっきよりゆっくりとした動作で望遠鏡を覗き込む。

 あんまりやりすぎるとホントにフリーズして暫く帰ってこないかもしれないから程々にしないと。

 

「どうピントはあった?」

 

「も、もう少し待ってください」

 

 俺が耳元で囁くと、玲さんはゾワッと背筋を震えさせながらそう答えた。あれ? もしかして玲さんって耳弱い? いや、今日の主目的を履き違えるな。天体観測だぞ。それを無視するほどやり過ぎたら初の喧嘩が起こりかねない。

 自らを自制して、玲さんの耳から距離をとる。といっても抱きつくのを辞める気はないので密着したままなのに変わりはない。

 

「で、出来ました!」

 

 多少余裕が出来たからかそれからすぐにピントが合ったらしい。跳ね回ることはないが、首から上だけをこちらに向けて玲さんは花が咲いたような笑顔でそういった。

 俺と場所を交代して、今度は俺が望遠鏡を覗き込む。

 

「すげぇ!」

 

「ふふっ、素敵ですね」

 

 望遠鏡を覗いていない玲さんが何に対してそういったのかは知らない。だけどそのセリフと共に望遠鏡を覗き込む俺の背中で意味深に指を走らせていた。

 

 

 

 

「願うだけじゃ届かないんです」

 

 帰り際、望遠鏡を玲さんの家まで持って帰る道中、玲さんはふと思い出したように、だけど大切な宝物を持ち出すようにはっきりと丁寧にそういった。

 夏の日の月夜の下、いつもとは少し違った非日常的なデートによる高揚感からか、それとも夜の月の魔力がそう言わせたのか。

 

「願うだけじゃ足りない。取りにいかないと。何事も」

 

 俺がゲームをしていて感じることだ。今の状況でその心境が合うかは分からないけど、こういう時には自分の経験の中からしか言葉は出ない。

 

「そうですね。よかったです。本当に」

 

 玲さんが取りにいったものはなんなのか俺は聞かなかった。玲さんの目を見た瞬間に分かったからだ。星の煌めきのように輝いたその目は俺を真っ直ぐ見つめていた。

 

「また、見に行こう。次は冬の大三角形かな」

 

「はい。北極星とかも見たいですね。ここからじゃ見えないんでしたっけ?」

 

 何となく照れくさくなって話を変えた。そんな俺を玲さんは変わらず真っ直ぐ見つめていた。

 




閲覧ありがとうございました。誤字、脱字、感想等あった気軽にお願いします。
マイページの活動報告かTwitterのアカウントでお題募集とかしたりしてるので、自分が書いたもので良かったら気軽にどうぞ。


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トワラク
ある日のデートの一幕


お久しぶりです。FPの勉強してたはずなのに……
久々に書くと元々低かったクオリティがさらに低いのねん。
会話分多め、地の文少なめの地雷です。

ヤンデレペンシルゴン?今1800文字(‪゚σA゚)‬


それはトワとデート、といってもトワの仕事の合間の時間と俺の大学の講義の空き時間が重なって、お互いの場所が近かったから2時間ほど会って喋っていただけのとき、のことだった。

 

「ねぇねぇ、あのバック可愛くない?」

「あれブランド物じゃねーか」

 

「いいじゃん。欲しいなぁ」

 

通りの反対の店の前を歩いているカップルのそんな会話が、カフェに居た俺たちに聞こえてきた。

 

「トワはやっぱブランド物?っていうのしか身につけないのか?」

 

本人曰くどころか日本が認めるスーパーカリスマモデルである天音永遠ならそうなんだろう、見たいな偏見が俺にはあった。服とか全然分からないからトワの格好を見てブランドが分かる、なんて事はほとんどないんだけど。

 

「まぁスポンサーとか私がアンバサダーになってるブランドは使うけどさ」

 

そこまで言ってからトワはサングラスとマスク越しでも雰囲気で分かるくらい、キリッとキメ顔で言った。

 

「私くらいになると何着ても完璧だからさ」

 

意外とあんまりブランドには拘らないんだよねぇ。そう手をひらひらと振りながら言った。まぁ確かにトワが着てれば高級ブランドと大衆向けの安めの服も、背伸びした学生が着そうなちょっと高めのブランドの区別何て逆につけれなくなりそうだ。

 

「それでもプレゼントで貰うならああいう感じの方がいいんじゃねーの?」

 

俺は次にトワにプレゼントする機会が来る時に備えようと思ってこう尋ねた。世の男性には女性とボーリングに行くのは足のサイズを把握するため、と言う者もいるらしい。それくらいサプライズっていうのは事前の準備が大切なのだ。勿論バレないようにしなければならない。

 

「確かにね。ああいう高級品を貰えば嬉しいね。でもさ」

 

トワはもうカップルも歩き去った反対の店を見ながら続ける。

 

「ああやってねだって貰ったってさ、それって相手からの愛情の証じゃなくてさ、ただの自分の物欲を満たしているだけじゃん。あれは愛を皮に被ってるだけさ。相手を自分の財布としか認識してない」

そう思うだろ?とトワは目線をこちらに戻して言う。

 

「そうじゃなくても相手が自分に幾ら使ってくれるかで愛を量るのはさ破滅を招くだけさ。勿論ああいうのが好きな男も居るんだろうけど」

 

ゲームの世界とはいえ幾つものサーバーを破滅に導いてきた女がそう主張する。いやむしろ、そうやって言葉巧みに他のプレーヤーを操り、破滅させてきたからこそ言えるのかもしれないが。

 

「本当に愛があるって言うなら、何をもらって喜べるはずさ。私が楽郎君から欠片もセンスがないハシビロコウのTシャツを貰った時のようにさ。」

サラリとカッコイイことを言えるのがトワである。いやめっちゃキュンと来たよ俺。たださ1つ解せないのが

 

「なんだよー!?可愛いだろ?ハシビロコウ」

 

あのTシャツをダサいと言うのは解せない。幾ら相手がカリスマモデルだとしてもだ。瑠美にはこのシャツ上げたって言ったらボディーに強烈な一撃を貰ったがそれでも俺はこの主張を曲げる気は無い。だけど次のプレゼントくらいはもう少し頑張るべきか。

脊髄反射的にトワと会話しながらそんな事を考えていた。

「絶望的にダサいんだよねぇ。絶対に着てるところを人に見せたくないくらいには。まぁそれでも貰ったこと自体は嬉しいよ」

「なら次はペリカンTシャツにするか。トキとかでもいいけど」

 

「なんで君はそこだけはそんな拘るの!?」

 

俺が冗談で言うとトワは慌てたように止めろと言った。

 

「さてと、もうそろそろ次の仕事の時間だから行かなくちゃ」

 

腕時計をチラリと見たあとにトワはそう言った。確かにそれなりにいい時間だ。

 

「俺も大学の講義にはそろそろ行かないと間に合わないな」

 

玲氏に連絡すれば多分、講義のレジェメは手に入るだろうが彼女をそうやって使うのは非常に申し訳ない。

 

「あんまりレイちゃんをこき使わないであげてよ。百に言われるの私なんだから」

 

それにとトワは俺の方に顔を寄せて続ける。

 

「彼女が君を好きなの流石に気づいてるでしょ?私もそんな器の小さい女じゃないからまぁある程度はいいんだけどさ」

そこまで言うと更に顔を俺の耳の近くにまで寄せる。

 

「君と一緒に大学生活を送れないのが、年上に生まれた数少ない後悔だからさ」

 

あんまりずっとレイちゃんと大学で一緒に居られると妬いちゃうよとトワは冗談めかして囁いた。半分くらい本気だろう。何となく俺でもわかる。それが分かるくらいのトワとは付き合ってきた。

 

「そうだなぁ。まぁ玲氏もその辺は振り切れてそうだけどな」

ただ姉と同じルートに行きたくないと俺にボヤくのはやめて欲しい。非常になんとも言えない気持ちになる。というか何を言ってもお前が言うな、としか言われないだろう。

 

「ならいいんだけどさ。あまり油断しないでよね」

 

「はいはい。まぁそろそろ出ますか」

 

俺とトワは席を立って店を出る。店を出て少し歩けばもう別れる場所まで来た。

 

「それじゃ仕事頑張ってな」

 

「楽郎君もサボるなよー」

 

付き合う前までやっていたような煽りあいもせずに別れようとすると

 

「無理してブランド物なんてやめてよね。そんなの貰うくらいなら君と少し遠くに出かけた方がずっと楽しいんだからさ」

 

「っ。分かったよ。キジTシャツ探しとくわ」

 

「ホントに君が着て街を歩けるものにしてよ?」

 

そこがどうやらトワの最終妥協地点らしい。

「そもそも私の方がお金あるんだからデート代くらい出すのにさ」

 

「彼女から施しは受けたくない」

 

トワの方が年上だろうと収入があろうと男として割り勘までしか認めねぇのは当たり前なんだよなぁ。

よし、プレゼントはツチノコTシャツにしてやろう。トワを思いっきり笑かすのだ。




閲覧ありがとうございます。感想・誤字脱字あったら気軽にどうぞ。


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エスケープ フロム ミラクル

信じられるか?とんでもなく時間かかってこのクオリティなんだぜ。


それはある朝の瑠美の一言が原因だった。

 

「買い物行くから付き合って。荷物持ち」

 

なんでもファッションストリートで古着屋巡りをしたいんだと。数をこなす以上荷物持ちとして俺を呼んでおこうという訳だ。今はシャンフロも急いでこなすクエストもないし、新しいクソゲーも特にない。行くのは別に構わないかな。ジョギング代わりの運動ってことで。

 

「それに永遠様と会うこともあるのに、そのクソダサいファッションで居られると妹のあたしまで恥かくから!」

 

どうやらこっちの理由の方が強そうだ。トワ、俺にとってはペンシンルゴンの方が馴染みがある、が関わった時の妹には逆らって良い結末を迎えたためしがない。特に俺がペンシンルゴンとゲーム友達であることがバレて、妹と邪神が直接繋がった今は尚更だ。

 

「おーけー。おーけー。道中でハシビロコウTシャツの素晴らしさとジャージの利便性について死ぬほど語ってやろう」

 

「必要なのは利便性じゃなくてファッション性なの」

 

語る前から撃墜させられた。まぁかくして意外と仲は悪くない俺ら兄妹は出かけることとなったのだ。

 

いやまぁ出かけること自体は問題なかったんだ。面倒くさいという感情がない訳でもないが、こうでもないと俺が服を買いに行くこともないし。ジャージは春夏秋冬いつでも着れちゃう万能アイテムだからな。

それはともかく問題だったのは出かけた先で出会った人物だ。

 

 

「そういやなーんでわざわざ古着を買いに行くんだ?ネットで買えばいいじゃねーか」

 

電車の中、俺は瑠美に今更なことを聞いた。家出る前に聞いとけばよかった。そこからの展開次第では出掛けなくて済んだかもしれないのに。

 

「それはね、永遠様が言ってたから!プライベートでたまに古着屋に行くって!」

 

流石は邪教徒。邪神のフォロワーなだけある。信仰の対象のススメにはすぐに乗っかっていく。ただあの邪悪なペンシルゴンがホントに古着屋巡りをしているとは思えないが。多分雑誌の取材で適当に答えたのだろう。変にブランド名を出さずに古着屋という事で、自分が仮にプライベートで邪教徒と遭遇した際に服のブランドで突っ込まれない為の防波堤としているのではないか、と考えられる。

とにかくあいつのでまかせのせいで俺の外出が確定したことだけは確かだ。必ず復讐するっ!

 

復讐の機会はすぐに訪れた。復讐の代償として俺の魂、プライド、その他諸々全てが失われそうだが。

どういうことかというと俺と瑠美が買い物に来た、古着屋の通りにペンシンルゴンが居たのだ。居たといってもオフじゃない。周りにはカメラを持った人やカンペを持った人、照明スタッフもいる。その中心にペンシンルゴンと流行りのお笑い芸人のコンビが居たのだ。

つまりはロケである。よくある街をぶらぶらする系のやつか。あんまペンシンルゴンがするイメージはないけど、そういうのを見るとあいつも芸能人なんだなぁと実感する。

まぁ実感するのと巻き込まれるのは別だ。まだ遠目にしか見えていない。変に視界に入る前に(視界に入ったところで流石に向こうも仕掛けてくることはないだろうが)とっとと退散しとこう。

 

だが俺の考えは甘かった。間抜けなことに邪教徒である妹のことを失念してたのだ。

 

「なんかロケしてるじゃん」

 

俺が気づいたのだから当然瑠美を気づく。だが今は人だかりでペンシンルゴンの姿は見えない。

 

「まぁここは有名なとこだしよくあるんだろ。あれが来る前にどっか入ろうぜ」

 

俺がそう言うと瑠美も同意したので、手近な古着屋に駆け込むように入った。

 

「おや?あれはもしかして」

 

それとあの悪魔に対しての考えもだ。そう、悪魔からは逃げられない。

 

 

 

 

 

俺たちが入ったのはメンズとレディースどっちも取り扱ってるオーソドックスな古着屋だった。とりあえず今日は瑠美に付き合うと決めているので黙ってレディースのコーナーへ向かう。

 

「うーん。あんまりこういうとこ来たこと無かったけど、意外と良いね」

 

そう言うと瑠美は、これもいいかもと色々手に取って物色している。俺は端末をいじりながら黙って待っていた。瑠美がわざわざ俺にファッションに関して意見を求めてくることはないだろうし、俺も瑠美のファッションに口を出すなんてことはしないからだ。俺が瑠美にゲームのプレイスタイルに注文をつけられるようなもんだしそんな真似はされたくないから、自分もしない。

 

なので黙っている。すると店の外がなんだか騒がしくなった。

 

「へぇ〜永遠ちゃんこういう感じで休みの日に回ったりするんだ」

 

「そうですね。たまーにですけどこんな感じでふらっと入ったみたりするんです」

 

まったく聞き覚えの無い口調で、よく聞く声の人物が話しているのが聞こえ、背筋に悪寒が走る。いやもう手遅れだ。この手の店は出入口は1つしかないし、瑠美がペンシルゴンと出会ったらもう一直線だ。

街ロケ系で自分の熱心な信者と出会う、なんてシチュエーションじゃあそのままファッションコーデ講座に移行するなんて展開は有り得る。なんて言ったってこの2人知り合いでもある訳で、当然横にいる俺の正体にも気づく。その先は魔王の気分と番組の進行しだいだが……あまり期待はできない。つまり今俺がすべきは

 

やつが店に入る前にでる。撮影交渉中にだ!これしかない。

早速実行しようと瑠美に声をかける。いや、まて

 

「声掛けたらアイツくることを知るよな?」

 

これもう詰みでは?

 

お祈りするしかないな。撮影交渉に失敗する。もしくは番組のスタッフの手によって俺らが追い出されるのを。

 

「許可も出たのでお店の中に入って行きましょうか」

 

「いいねぇ。お茶の間の皆さん!天音永遠が古着屋に行きますよ。中々ないでこれ!」

 

 

魔王の声と、共演者の関西弁を操るお笑い芸人の声が聞こえる。もう終わりだぁ。

 

「おい。瑠美」

 

「なに?お兄ちゃん。邪魔しないでよ」

 

トップスを2つ持って、唸っていた妹に声をかけると、こちらに視線を向けることなく冷たく返事をした。まぁ趣味の時間の邪魔はされたくないなよな。その気持ちわかるぞ。

 

「さっきのロケ天音永遠が居たらしいんだが、この店に来るぞ」

 

俺がそう言うと妹は閃光のごとき早さでこちらを向くと

 

「何でもっと早く言わないの?!準備できないじゃん!」

 

「お前は店員かよ。隅で大人しくしてろ。流石に撮影の邪魔はしたら不味いだろ」

 

俺がそう言うと瑠美は納得したのか、手に持っていたトップスを2つともカゴに入れると俺に渡した。

 

「あー結局2つとも買うパターンなのね。そして俺が持つと」

「そのために来たんだから当然でしょ」

 

兄を顎で使うことにまったく躊躇がない。そういう所までペンシルゴンから習わなくていいんだぞ。

 

俺らがそんな感じでいると店のドアが開いた。

 

「雰囲気以外とええなぁ」

 

「ネットも便利になりましたけど、こういう所で買うのもいい物ですよ。ネットと違って意外な発見があるので」

 

ペンシルゴンの敬語にとんでもなく違和感を覚える。いやまぁあのお笑い芸人の方が年上だし、芸能人モードならそうなるのか。

 

「普段はどうやって買う物決めるん?」

 

 

「んーこの前買ったあの服に合うやつないかなーって感じで探しますね。それに気分転換の散歩にもなりますし」

 

とんでもない嘘だ。あいつの気分転換はゲームの中でNPC、プレイヤー問わず爆殺することだ。俺とカッツォがされた。シャンフロじゃないがリアルの仕事の相手がくそ面倒くさくてとかいう理由でだ。

 

「お!お客さん居るやん。男女だけどカップルかいな?」

 

お笑い芸人のその声に俺は完全に詰んだことを悟った。芸能人モードだからか自分から一般人に触れなかったペンシルゴン、いや天音永遠がこっちに触れる大義名分を得てしまったのだ。

 

 

「んー2人は兄妹じゃないですかねー?何」

 

「はいっ!そうなんです!今日は兄に着いてきて貰って買い物なんです!」

 

魔王の質問にそう元気よく答えたのは瑠美だ。ペンシルゴンに、この前の電話以来です、だなんて言うことは無い。真のファンは相手に迷惑をかける可能性のある行動はしないのだ。訓練された邪教徒ともいう。まぁペンシルゴンがそれも今日込みで兄妹か聞いたのだろうが。

 

「いいなぁー。兄妹の仲がよくて。自分一人っ子やから憧れるわー、そういうの。というか君よく見なくてもすごい永遠ちゃんぽい格好してるね」

 

「そうなんですよ!私、永遠様のファンで!」

 

一般人に慣れてるお笑い芸人だからか瑠美を上手いこと乗せながらトークしている。

 

「永久審美眼的にも100点だよ!それにもしかして読モやってない?見たことあると思ったんだけどさ」

 

「永遠様見たことあるんですか!?そうなんです。実は最近始めてまさか見てもらえてるだなんて」

 

多分見たとかじゃなくて、お前が電話で話したんだぞ、とは言えるはずもなく……番組的にも天音永遠がゲストで服屋でファンの読モの子に遭遇、って展開は美味しいだろう。余程やらかさない限りはこのまま使われそうだ。

 

「お兄ちゃんの方は永遠審美眼的には点数低いかなぁ」

 

お兄ちゃんと呼ばれた瞬間に全身に鳥肌が立った。何よりあのくっそムカつくニヤつき顔で行ってきたのが腹立つ。カメラが俺の方に向いてたからってここぞとばかりに煽りやがって。

 

「ファッションには疎くて」

 

「お兄ちゃんはいくら言ってもジャージか変なTシャツしか着ないんです」

 

「それだけだと俺がニートみたいになるんだけど」

 

しかし思わぬ形でこいつに顔バレしたな。というかこのままテレビで使われたらもう全員にバレるじゃん。

 

「うーん。それは私的には点数低いなぁ」

 

そうだ、と天音永遠が名案を思いついたような顔をする。しかし俺にはわかる。あれは悪魔的発想を思いついた時の顔だ。

 

「この永遠ちゃんがファッションに疎いお兄ちゃんの服をコーディネートしてあげるよ!妹ちゃんも一緒にどうだい?」

 

あーもうどうにでもなれ。

 

妹は満足そうにうんうん頷いてるし、番組的にも美味しい展開だろうし、お笑い芸人の方は何故か羨ましがってるし。

 

「いや俺は付き添いだけなんで」

 

「何言うとるんや!兄ちゃん!あの天音永遠やぞ!クラスの皆に自慢し放題や」

 

「ままま折角の機会だからさ」

 

天音永遠はそこまでしか言わなかったが、俺には聞こえた。

 

存分に楽しませろよ。って声が。

 

 

 




一応形としてはここまで。4000文字くらいでキリいいので。


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秋といえば(楽鉛)

久々の投稿なので元々からさらにクオリティなし。
オチもなし。ストーリーもなし。


「楽郎くん! 秋といえば?」

 

 土曜日の朝、目が覚めてからの永遠からの第一声がこれだ。また瑠美を使って家に侵入したらしい。俺のプライベートはいつの間にか消し飛んでいる。起きて、リビングに行ったら永遠がいる。この状況に慣れすぎて何も驚かなくなってきた。

 

「なんだよいきなり。ゲームだろ?」

 

 俺がそういうと、チッチッチッと指を横に振りながら舌を鳴らした。無駄に様になっているのに腹が立つ。寝起きだからか? いや関係ないな。付き合ってようが昔から腹立つ動作には腹立つ。可愛いと思う感情があることは否定しないが。

 

「分かってないなぁ。楽郎くんは。てか楽郎くんに関していえばそれはオールシーズンじゃん」

 

 そこで永遠は一呼吸置いてから言った。

 

「秋といえばスポーツの秋。スポーツといえば『友情』『努力』『勝利』でしょ?」

 

「俺らマガジンなんでぇその3ヶ条はちょっと。つかスポーツこそオールシーズンじゃねぇか!」

 

「そんな言い方したらそもそも○○の秋って言うもの大体オールシーズンできるよね」

 

「それは確かに。あ、でも食欲はあれじゃね? 秋が旬のもの多いじゃん」

 

「でもどのシーズンも旬のものってある訳じゃん?」

 

「まぉ確かに」

 

「やっぱ秋といえば紅葉だよね!」

 

「さっきスポーツって言ってなかったっか?」

 

「そんなこと言ったっけ?」

 

 寝起きから殴り合いの会話をするのは中々しんどい。寝癖だらけの頭を永遠に見られてるのも中々辛い。向こうはきっちりメイクまでしてきてるっつうのに。

 

「シャワー浴びてきていいか?」

 

「なに? まだ朝だよ?」

 

 ニヤつきながら永遠が言う。わかってるくせによぅ! 

 

「寝癖直しと目覚ましのためにだよ! 何考えてやがる!」

 

「そりゃあ大学生になって欲求が高まってる楽郎くんのことだよ」

 

「高まってねぇわ!」

 

「それはそれでどうなのさ」

 

 じゃあなんて答えりゃいいんだよっ! 

 

 俺がシャワーを浴びてる間に永遠が乱入してくるなんてことはなく(前にあったがそれは夜だ)リビングに戻ると永遠の姿はなかった。

 俺は無言で自分の部屋に向かう。

 部屋に入ると俺のベッドの上には永遠が寝そべっていた。

 

「何してんだよ」

 

「んー昨日も夜遅かったから疲れた」

 

「ったくなら態々家に来なくてもいいのに」

 

 俺がそう言うと永遠はこちらに体を向けると

 

「それとはこれとは別じゃん。それにオフに楽郎くんに会うのが1番休まるからさ」

 

「……っ」

 

 こいつはホントに真顔でこういうこと言うからズルい。腐れ縁でゲーム友達をやってたころには全く思わなかったが、やはり永遠はトップモデルを突っ走ってるくらいには綺麗なのだ。いたいけな少年の心(もう大学生だし青年か)にグサグサとくる言葉を的確にチョイスする。中身に外道がインストールされていようが関係ない。

 

「あ、でも楽郎くんにスイッチが入ったら休まらないかもね」

 

 あぁ、外道の掌の上だと分かってて転がされてもいいかもなんて思ってしまう。付き合う前の自分が今の自分の心境を聞かされたらどう思うだろうか。

 

「何言ってんだ。朝から盛るわけないだろ。瑠美もいるんだぞ」

 

 俺がそういうと永遠はニヤニヤと笑みを浮かべた。

 

「お義父さんは朝から釣り、お義母さんは今日は多摩の方まで虫取り。瑠美ちゃんはあと1時間もしないでバイトでしょ? 瑠美ちゃん以外は今日帰ってくるかも怪しい」

 

「なんでウチの家族の予定全員把握してんだよ?」

 

「そりゃあ楽郎くんの家族だからねぇ」

 

「やかましい! ヤんねぇぞ」

 

 俺が頑なに拒否すれば永遠は嗜虐的な笑みを浮かべながら

 

「ヘタレ」

 

 そういった。なんて言われようとヤらん。

 

「うっせ」

 

 俺は永遠を巻き込むようにベッドに倒れ込む。ちょうど永遠を両手で包むようにだ。

 

「あら結局その気になっちゃった?」

 

「このまま寝る。二度寝だ」

 

 俺は朝までギャラトラの新イベで疲れてんだ。ただのマラソンイベだが無駄にマップが広大なアステロイドベルト帯を駆け抜けるというもので、廃課金の艦隊持ちとも、小型船でも張り合える可能性を持った数少ないイベントだったから頑張ったのだ。結局課金勢はアステロイドベルト帯を全て消滅させてひたすら直進してたから負けたけど。

 

「ホントに寝るの? 嘘でしょ? 私動けないんだけど」

 

 離れないように思いっきり抱きしめて眠る。お互い顔を向けた、というか額と額をくっつけるように寝るのは気恥しい気もするが今更だ。

 

「お前も寝とけ。疲れてんだろ。何がするにしてもその後でいいや」

 

 飯もいらない。さっきシャワー浴びたけどまぁいいや。永遠の柔らかい感触を全身に感じながら俺は眠りについた。まぁこんな土曜日もいいだろう。睡眠の秋だ。

 

 

 

 

 

「ホントに寝ちゃったよ」

 

 全くこいつは。曜日がほとんど関係ない仕事とはいえ、休みの朝からホントにシようと思うほど飢えてないんだけど。流石に

 

「この体勢起きるまではヤバいよ」

 

 まず、楽郎くんに包まれてる感じがすごい。感じというか文字通り包まれてるんだけどすごいね。ドキドキが止まらない。

 

 あと匂い。シャワー浴びてきたからか男の子の癖に無駄にいい香りがする。もしかしたら瑠美ちゃんがなんかしてるかも……。って彼氏の実の妹にちょっとジェラシーを抱くのは流石に痛すぎる。

 

「ちょっと楽郎くん起きて。ガッシリ掴まれてるから出れないし。なんなら腕も動かせないんだけど」

 

「こんな状況で寝れるわけないじゃん」

 

 もがきにもがいて抜け出せた右手で、仕方なく楽郎の頭を抱き締めるように撫でる。

 

「土曜の朝からこんなことしてるのも大概甘々すぎるけど」

 

 果たして付き合う前の自分がこの状況を見たらどう思うか。自分は慣れすぎて当たり前と思うが、指を指して笑うだろうか? それとも案外乙女な行動に走るかも。

 

「ま、そんなifに意味は無いけど」

 

 リアルで会うまではゲーム友達で悪友だったんだけどなぁ。いつの間にか本気になってたな。

 

「ま、いっか。毎日楽しいし」

 

 柔らかく笑みを浮かべると頭を撫でていた手をそのまま楽郎の頭を抱えるような形に変えて永遠も眠ることにした。

 

「おやすみ」

 

 この後、永遠がまだ家にいる可能性を信じて、昼過ぎにバイトが終わり直帰した瑠美に見つかって、騒動が起きるのはまた別の話。

 



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いちごみるく(楽鉛)☆

いちごみるくってお題で楽鉛と楽玲を書こうと思い楽鉛から
Hじゃないよ。R-15くらいかな。うん。


「折角2人とも休みなのに出かけないのー?」

 

「んじゃシャンフロやるか?」

 

「仮想現実の気分じゃないんだよなぁ。乙女心分かってる?」

 

「わかってるよ。じゃあさ降りてくんね? 準備できないんですけど」

 

 俺の大学入学を機に同棲を始めて、初めての2人ともオフな日。人生のモラトリアムを満喫してる俺はともかく、多忙な永遠も土日にオフがくるなんてのはかなり珍しい。

 マスコミの目だけ気にしなきゃいけないが、外にデートも悪くないそんな朝。

 だが、出かけようと言う割には永遠はソファに座った俺の上からどかない。むしろ俺に背中を預けるようにして寛いでいる様子。

 しゃあなしに永遠のお腹の前まで腕を組むように回している。

 

「えーそれはヤダ」

 

「いやどうしろと?」

 

「そこはほら察して欲しいなぁ……なんて」

 

 首だけこちらに向けながらそう囁いた永遠の顔は赤らんでいた。

 

「いやまだ朝なんだけど」

 

 俺がまぁ至って理性的な答えを言うと、自爆主義というかゴールまでしか考えないこの女はひと目でわかるくらい私不満です、という顔をした。その顔ですら少し見惚れるのは彼女がモデルだからだろうか。それだけじゃない。そんな当たり前なことを自覚しながらもその誘惑に乗るのはあまり廃退的な休みになると自制していた。

 

「いいじゃん。誰が見てんのさ」

 

 首だけじゃなく上半身ごとぐるりと向けた永遠は片方の手を俺の胸の上に置きながらなおも言う。あぁ、こんな姿を彼女のファンのティーンの少女や大きなお友達が見たらどう思うか。

 案外俺と同じでギャップにやられちまうかもなぁ。この姿を見せる気はないけど。

 

「誰も見てなくても、さ」

 

 どうしようかと思いつつ視線を部屋に向けると、目の前のテーブルにいちごみるくの飴が置いてあったのが見えた。手を伸ばしてあける。

 俺のそんな動きを永遠は不思議そうに見ている。前までの関係なら煽り煽られがすぐ起きていただろうに、最近の俺たちは間にカッツォが入らない限りはお互いの行動をじっと見ることが増えた、そんな気がする。少なくとも俺はそうだった。永遠も多分そうだった。

 

 俺の右手にある甘いピンク色の飴玉を永遠はじっと見ていた。俺は何となしに黙って永遠の口に近づける。すると彼女も無言のままそれを口に含んだ。顔が不満そうな表情から緩む。

 

「まぁそれでも舐めて落ち着けよ」

 

 永遠の誘惑の言葉からどれくらい無言の時間があっただろうか。テレビすらついていない部屋での無言の空間は俺のそんな一言で壊れた。

 

「ヘタレ。これで誤魔化せるとでも?」

 

 飴を口にしながらもハッキリとした口調で永遠は言った。その顔はさっきまでと同じく不満げな表情に戻っていた。

 

「いや朝からはちょっと」

 

 昨日も飲み会でそこそこしんどいのだ。大学生は辛い。付き合いの仕方が馬鹿な遊びばかりになりがちなのだ。ここでそれを言えば間違いなく永遠は不機嫌になるので言わない。たとえ昨日の面子が全員男であろうとだ。

 

「ふーん。そういうこと言っちゃうんだ?」

 

 不満げな顔の中に何か思案するような表情が浮かんでくる。これは外道ムーブの時と同じ空気。

 

「飴取ってくれよ。俺も食いたい」

 

 あえてそんな空気を読まずに口にする。このまま永遠のペースになると気づいたらベッドに上に行かねない。

 俺の言葉を聞いて永遠は1つ頷くと。俺の方に顔を寄せてきた。飴のある机は俺の前にある。当然いまだに俺の上に乗ってる永遠は俺から離れる必要があるのだがその逆の行為だ。

 

 だが近づいてくる目を逸らせない。何をするかなんて何となく分かりきっているのに。そんな戸惑いの中その瞬間はやってくる。

 

「んっ」

 

 永遠と俺の唇が触れ合う。そのまま永遠は口を開いて俺の口内に入る。この間も目は合わさったままだった。

 

「んんっ」

 

 その目の魔力に抗えずにいると、永遠の口から何かが入ってきた。丸い何かだ。それと永遠の舌と俺の舌が絡みあう。

 甘い味がした。いつもと違う甘さだ。いちごみるくの飴の味。それと永遠とのキスの味だった。

 そのまま1つの飴玉を舐めたまま深く深く口付けをする。

 いちごみるくの飴玉は俺と永遠の口内を行き来しつづける。俺はその甘ったるさと永遠の舌の感覚にどんどんと頭が痺れていくように理性が削られていった。

 

 ちゅぱちゅぱと音がお互いの口からひっきりなしに聞こえる。1度も唇を離すことなくどれ程の時間こうしていたか。飴玉は徐々に小さくなっていった。この飴玉を噛み砕くことはなんでかできなかった。

 俺たちの目はずっと合わさったままだった。飴玉なんて子供の頃から食べてたものだったのに今はまったく違う酷く卑猥なものに感じた。

 冷静ななれば卑猥なのはどう考えても俺たちだったが今はそんな思考にはいたれない。目を合わせたまんまそんな、一種のトリップのような思考に陥っていた。

 どれ程の間口付けをしていたのだろうか。飴玉がすっかり溶けたあとようやく俺たちは唇を離した。

 

「美味しかったかい?」

 

 そう聞いてくる永遠の笑みはテレビや雑誌で見るものもは全く別物で、ただ俺にはとても見なれたものだった。達成感に満ちた顔だ。あるいは征服感に満ちた顔。

 

「非常に悔しいことにとても」

 

「どうして悔しいのさ」

 

 俺のそのセリフに永遠はどうしてなんて言いながら酷くSっ気に満ちた満足気な顔をしていた。

 

「もう一個食べるかい?」

 

 そう聞いてきた永遠の手にはすでにピンク色の甘そうな飴玉が握られていた。

 

「貰おうかな」

 

 俺がそう言って口を開くと、待っていたように永遠は俺の口に飴玉を放り込んだ。俺は永遠の目を見たまま口付けをした。永遠も俺から目を逸らさなかった。




Hじゃなかったでしょ?
誤字・脱字ありましたらご報告お願いします。
感想・評価なんかも気軽にお願いします。


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楽茜
光属性ちゃんの光溢れるルート


導入っぽいのだけ書いてみた。クオリティがうんち


 シャンフロ界隈を賑わせるスーパーニンジャガール秋津茜。泥沼のリアルバレ争いが繰り広げられている旅狼の中で唯一誰ともリアルの接点がない光溢れる女の子。乱数の女神に愛され、常に天真爛漫な太陽の如く輝いてる女の子。そんな彼女が

 

 

「隠岐紅音です! 初めまして! でも何だか初めて会った気がしないです!」

 

 妹の友達だった。アバターでは仮面を被っていて普段はほとんど見えないが、顔のパーツも似ているし、声も喋り方似ている。名前もあれが本名をイジった形ならありえそうだ。そして何より、その太陽のような輝きの雰囲気はまさしく彼女そのものだった。

 

 ゲームとリアルを混同しない。VRが世に広まる前から声高に言われ、VR全盛期となった今ではゲーマーの中でも不問律として広まった単語に俺は真っ向から反していた。

 

 秋津茜って言葉に聞き覚えある? そう聞けば全てが分かる気がする、向こうも初対面な気がしないと言っているし。だけど聞けなかった。聞いたらホントにリアルとゲームを混同して戻れなくなりそうだった。

 

「陽務楽郎です。よろしく。多分初対面だと思うけどそう言われるとそんな気もしてくるな」

 

 だから俺は気づかないフリをする。この行為に意味があるのかは自分でも分からない。俺の知ってる秋津茜の性格ならパッと聞いた方がいいような気もする。だけどあえて聞かない。本当に、本当に運命というものがあるのなら、きっと聞く必要はない。そんなロマンチストな考えが脳裏によぎっていた。

 

「なにー? 2人とも一目惚れしたの?」

 

「そんな訳あるか!」

 

「瑠美ちゃんのお兄さんかっこいいですね」

 

「紅音ちゃんマジー? この人半分引きこもりのゲーマーだよ?」

 

「引きこもりじゃねぇよ」

 

 ちゃんと外に出て運動してますがな! 最近のゲーム業界はそういうのうるさいんだぞ。

 

「私もゲームやってますよー! 楽しいですもんね!」

 

「え!? 紅音ちゃんマジ?」

 

「マジのマジです!」

 

 このままなし崩しにシャンフロの話題になるのを何となく避けたかった俺は急に別の話を切り出すことにした。

 

「そういえばさ隠岐さんは何か部活とかやってるの? ほら、うちの瑠美はバイトと邪教に青春を捧げてるからさ」

 

「邪教?」

 

 首をぐりんとこちらに回しながら瑠美が聞いてくる。ホラーゲームなんかより数百倍怖いんだけど。心無しか目が濁っているようにも見える。やっぱり邪教じゃないか! 

 

「いや、今のは言葉の綾でな」

 

「どういう綾か気になるけど見逃してあげる」

 

 何とか邪教の儀式の生贄になるのは避けれたようだ。

 

「で、隠岐さんは何部なのー?」

 

 わざわざ知っていることを知らないフリして聞く。確か秋津茜は陸上部だったはずだ。

 

「陸上部ですよー!」

 

「茜ちゃん超足速いの!」

 

 あぁ確かに走るの好きそうだったな。そう思い、自分はシャンフロの中の彼女をかなりよく見ていたんだなと自覚する。リアルとゲームを正常に分けられなくなっていく。

 そこまできて自分はゲームとリアル、秋津茜と隠岐紅音を重ねなたくないがためにシャンフロの話題を避けたいと思っていることに気づいた。そしてサンラクと陽務楽郎を重ねて欲しくないとも。これは自分が今までリアルとゲームの中を完全に割り切っていたからか。結局リアルの恋愛事情にゲームが絡んでいる時点で、ゲーマーとしてある種失格なのかもしれない。

 自身の中で言語化すら出来ていない感情に戸惑いながらも俺は彼女の笑顔に見惚れていた。



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複数キャラ
外道共の人生ゲーム(サンラク・ペンシルゴン・カッツォ)


勢いとノリだけで書いた。クオリティはうんち。


「ねぇーねぇー今度3人でこれやらない?」

 

 ペンシルゴンが俺とカッツォにトークであげたのはVRの人生ゲームだった。ソフト1本あればオンラインで何人か出来るパーティーゲームらしい。

 ただ、俺はわざわざペンシルゴンが俺とカッツォだけ誘ってきた時点で嫌な予感しかしなかった。

 一応ネットでタイトルを調べてみたが、本数が少ないのかゲームのレビューのようなものは見つからず、とりあえず人生ゲームが出来るということくらいしか分からなかった。この時点で俺はペンシルゴンが邪悪な顔をしながら誘ってきていることを感じ取っていた。俺は自身のクソゲーレーダーがビンビンに反応しているのを無視して尋ねる。

 

「どこでそれを? てか何で俺らなの?」

 

「パーティーゲームを一人でやるとかありえないでしょ。これはスポンサー様からの頂き物だよー。キミらならまぁ楽しめるでしょ」

 

「偉く真っ当ぽい理由だな。凄まじく嫌な予感がするけど俺はいいぜ」

 

 何より新たなクソゲーに出会えるのなら、ペンシルゴンの掌の上で踊ったって構わないだろう。大体クソゲーだとしてもペンシルもプレイするならそこまで酷い目に合わないだろうし。

 

「ぽいじゃなくて真っ当ななんだよ。カッツォ君はどうだい?」

 

「息抜きにはいいんじゃない? この面子で息抜きが出来るかは別だけど」

 

「少なくともストレス発散は出来るでしょ」

 

「発散どころか溜め込む可能性もあるんですが」

 

「その時はその時でしょ。やられる方が悪いってことで」

 

「それは一理ある」

 

 まぁ、結局のところコイツらを地獄に叩き落として愉悦に浸ればそれでいいって訳だ。リアルでモデルだかプロゲーマーだか知らねぇけど人生ゲームじゃ関係ねぇって所を見せてやらなきゃならねぇよなぁ。

 

「んでいつやるの? それ俺は直近のスケジュールだと今週末しか空いてないんだけど」

 

「ちょうど良かった。私も週末しか空いてなかったんだよねぇ。サンラク君は学生だしどうせ暇でしょ?」

 

「確かにそうだけど、その言われ方は釈然としねぇ」

 

 ただ、まぁ今週末に久々にシャンフロ以外のゲームを3人ですることになったって訳だ。

 

 

 

「ふーん、そこそこ前のVRにしてはクオリティ高くね?」

 

「流石にシャンフロほどじゃないけどね」

 

「あれと同じレベルなら無名のゲームになることはありえない」

 

 俺とカッツォはペンシルゴンから送られたコードでこの人生ゲームウルトラスーパーデラックスvol.7にやってきた。ちなみにシリーズ7作品目って訳じゃなく単純に語呂が良くて7にしたらしい。もうこの時点で軽い地雷である。製作者の頭の悪さがよく伝わってくる。

 

「じゃあ早速始めようか」

 

 VR人生ゲームなだけあって、マップは頭上に展開され、俺たちプレイヤーは基本的にこの場から動く必要は無い。ただし、止まったマスに応じたイベントがその場で発生するという訳だ。ようはプレイヤー同士の距離が離れることがないので、他のプレイヤーがどんな目にあっているか常に見ることが出来る。奴らが地獄に落ちる様を存分に眺めてやるとしようかね。

 

「いいぜ」「いいよ」

 

 ペンシルゴンの掛け声に俺とカッツォが返事をした所でゲームをスタートさせた。

 

「あ、じゃあビリは罰ゲームで、内容は勝った人が決めるってことでよろしくぅ」

 

「始まってから言うのはずるくね?」

 

「私の勝ちが決まってから言ったわけじゃないからいいじゃん」

 

「こういうの言い出した時のペンシルゴンは大抵負けるからいいよ」

 

「カッツォ君、そうやってイキるのはいいけどイキった時の君の敗北率も中々だよ」

 

「某GH:Cの時とかな」

 

「あの時のことは言うなよ!」

 

 そんなこんなで始まった。罰ゲームなんて何されるか分かったもんじゃねぇから負けらんねぇ。乱数の女神よ! 俺に力を! 

 

 トップバッターはカッツォだ。

 

「まぁ序盤は職業決めだからあんまり変な要素はないでしょ」

 

 そういいながらカッツォが振るったダイスの出した目は4だった。

 

 ・職業マス 大学を卒業後、世界の広さを知るために冒険家になる。給料は0円。夢とロマンがあればそれでいい。

 

 

「は?」

 

 俺とペンシルゴンは爆笑していた。

 

「よかったじゃん! カッツォ! 夢とロマンに生きていけよ!!」

 

「フリーターより酷いとか。これ無職と変わらないじゃん!」

 

「2人ともうるさいよ! 君らも同じような目に合うんだから、黙っといた方が身のためだよ」

 

 その時はその時である。今イジられるのはカッツォしかいないのだからカッツォがイジられるのは仕方ない。カッツォはそのまま給料日マスまで進む。というかしれっとなるかならないかの選択出来ないのな。そして当然給料は0だ。

 

「てかこいうのってサンラクが引くやつじゃないの!?」

 

「そんな事言われても知らねーよ。まぁでもユニーク(笑)だしよかったじゃん」

 

「確かにサンラク君は夢とロマンに生きる鉄砲玉だもんね。確かにこれはユニーク(笑)だね。おめでとう」

 

「夢とロマンに生きがちなのは認めるが鉄砲玉はマジでまだ認めてねぇからな」

 

「さりげなくユニーク関連でマウント取らないでもらっていいですか? これ別ゲーなんでっ!!」

 

 ペンシルゴンの鉄砲玉とかごめんである。そこ! もう手遅れとか言わない! 俺はまだ諦めてないぞ。確かに色々真っ先にやらかしてはいるけども! 

 カッツォの戯言はスルー。

 

「まぁいいや、サンラク君、振りなよ」

 

 カッツォの次は俺だ、正直あんまり振りたくないけど振るしかない。

 

 サイコロを振って出た目は9。かなり進むことができる。職業ゾーンは基本的にどのゲームも奥の方が良い職業の傾向がある。少なくともカッツォの冒険家(無職)よりはマシだろう。

 

 俺の止まったマスには

 

 ・職業マス 任侠映画にハマった影響でアウトローに憧れを抱く。ヤクザの下っ端に就職する。目指せ! 最強の極道! 給料は出た目×1000円。ただし、3以下だとケジメ。

 

「鉄砲玉じゃねーか!!」

 

 俺の魂の叫びをかき消すほどの爆笑が両脇から聞こえる。言うまでもない奴らだ。

 

「やっぱ鉄砲玉じゃん」

 

「冒険家より給料良いのなんで?」

 

 いやそれより

 

「給料の時の出目が3以下だとけじめってなに?」

 

「そりゃああれでしょ。3以下だとノルマ的にアウトなんでしょ?」

 

「指? 指詰めちゃう? 何本いっちゃう?」

 

「詰めねーよ! なんで給料日がデスゲームなんだよ!」

 

 俺だけ命懸け要素強すぎないか? 和気藹々のパーティーゲームからは程遠いぞ。途中で死亡してリタイアとか全然ありそう。

 

「とりあえず給料日マスまで進みなよ」

 

「ヘイヘイヘーイ! サンラク君のちょっといいとこみてみたーい!」

 

「そのコールはなんか違くね?!」

 

 ペンシルゴンのコールにツッコミつつ、カッツォの言う通り給料日マスまで進む。気分はさながら断頭台にあがる死刑囚のそれだ。いや、サイコロの目次第じゃ全然生き残れるというか生き残る可能性の方が全然高いんだけど。乱数の女神は気まぐれな上に残酷なことが多いからなぁ。

 

「はーやーくーふーりーなーよー」

 

 小学生のようなペンシルゴンの煽りが飛んでくる。

 

「お前っ! 後で覚えとけよ!」

 

 カッツォはカッツォで無言のまま負けイベントのムービーを見るような目で俺を見ている。ただしその口元は笑いをこらえているのかピクピクと動いている。

 

 俺はサイコロを振る…………出た目は

 

「よっしゃ! 8! やっぱ乱数の女神は俺に微笑むもんさっ!」

 

「詰まんなーい」

 

「もっと芸人根性見せろー。お前はそれでもエンターテイナーかぁ?」

 

「俺はお前らと違ってエンターテイナーじゃねぇから!」

 

 奴らの理不尽な不平不満を押し流す。多分俺は将来どんなクレーマーにも屈することはないだろうという自信がある。

 

「いいから次っ! ペンシルゴンやれよっ!」

 

 だが、そんなおれにも限界がある。ペンシルゴンがサイコロさえ回せば、この流れが終わると確信しその方向に誘導する。奇しくもそれはさっきのカッツォが俺に降れと言った時と同じ心境で同じ考えであることには全く気づかなかった。

 

「やれやれ仕方ないなぁ」

 

 チッチッチッと指を左右に振りながらペンシルゴンはダイスを回す。

 

「お、7だね。ラッキーセブンとは運がいいねぇ。さっすが私」

 

 このゲームの傾向的に、スタートから7マスだからラッキー良い職業とは限らないはず。俺は奴が地獄に落ちることを祈りながら歩みを見つめる。

 

 

 職業マス:探偵漫画を読み漁り続けた結果、探偵を志す。人の弱みを握り、支配下に置くのだ! 給料は支配下の人間の数×1000円

 

「ん? あれぇ? 探偵?」

 

「普段とやってること変わんねぇじゃん」

 

「ズルくない? 処す? 処す?」

 

「うるさいよ。冒険家というなのニートと鉄砲玉。鉄砲玉にいたっては君だって普段とやってること変わらないでしょ」

 

 てか弱みを握り支配下に置くって探偵か? 漫画読んで志すなら推理系だろ。なんでストーカー調査してそのストーカー脅すとか、不倫調査して、それをネタに揺するみたいな雰囲気しかないんだ? 

 つか俺も普段と同じって暗に自分も普段とやってることが同じだって認めてるじゃねぇか。

 

「絶対これ不倫とかで揺する奴だよね」

 

 どうやらカッツォも同じ考えみたいだ。

 

「ふっ、君たちは揺すれそうにないけどね。ニートに鉄砲玉じゃ女もついてこないよ」

 

「俺は別にニートじゃないからっ! 冒険家だからっ!」

 

「俺だって鉄砲玉じゃねぇし! 下っ端なだけだから! てかペンシルゴンだって説明的に今は無給だろ? ニートみたいなもんじゃん」

 

 結局俺たちはニート、鉄砲玉、ニートというクソみたいな職業からスタートすることになった。

 

 以下ダイジェスト

 

「おい! 家から追い出されて大冒険スタートってなんだよっ!? ニートですらなくなったんだけど!?」

 

「よかったじゃないか。人生は冒険だぞ」

 

 カッツォが冒険家(ニート)から冒険家(ホームレス)になったり

 

 

 

 

「やっと、やっとここまで来たぜ。若頭!」

 

「ヤクザとはいえ順調に出世されると腹が立つんだけど」

 

 フッフッフッ、ニートどころかホームレスになった君とは違うのだよ。

 

「うおっ!? 暗殺だとっ!?」

 

 誰がやった?! 急に出世したから外部だけじゃなく身内も怪しい。クソっ! って俺は何をやってるんだ? 

 

 俺が下っ端(鉄砲玉)から若頭(暗殺対象)に出世したり

 

 

「まーた見つけちゃったよ。どうしてこうバレるようなマネするかねぇ」

 

「誰かっあの魔王を止めてくれ……っ!」

 

「あぁどんどん奴の下僕が増えていく」

 

 ペンシルゴンが記念すべき? 100人目の下僕を手に入れ、給料がとんでもない額になったりした。

 

 というかこのゲーム明らかに職業に応じて止まったマスの内容が決まるんだけどっ!? 

 

 そして転職が基本的に起きない。

 果たして俺は大魔王となり、ウチの組長とも組んでるペンシルゴンに勝てるのか。カッツォは負のスパイラルから抜け出せるのか。乞うご期待!? 

 

 

 

 

 




続きは未定。カッツォ書いたの初めてだからクオリティが不安。いや別によく書く2人もそんなクオリティ高くはないんですけど。
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とある配信者の初幕末(オリキャラ)


続きはない。


「どーも。みなさんこんにちは。こってりなめたけです。さて今回やっていくのは、リクエストにも度々でてきた知る人ぞ知るMMO、辻斬・狂想曲;オンライン、通称『幕末』です」

 

いつもの挨拶をしてこってりなめたけこと佐久間時臣は幕末にログインした。

主にFPSゲームをメインにストリーマーとして活動しているが、彼は時たまこうやって別ジャンルのゲームをあげている。

 

今回は彼のファンからの要望として時たま出てくるこのゲームをプレイすることにした。リリースされてからそれなりに時間が経っているが根強いファンがいるこのゲームの実況から新規のファンの獲得にも期待できるし何より自分も多少興味があったというのもある。何より同業でやってる人があまり居ないというのが大きい。

 

早速コメントには〘こんにちは〜〙、〘何このゲーム?〙、〘今日の動画みましたー〙といういつものリアクションをする人もいれば、〘幕末やるのまじ?〙、〘こてなめ一瞬で心折れそ〙といった恐らく幕末を知っている人間の米が流れてきた。

 

こてなめはそのコメ欄を眺めながら導入を済ませ、キャラクリに入った。 この時はコメ欄の経験者の発言から、VRだと余りみない死にゲー系かな?と言うくらいの予想しかしていなかった。その予想がある意味当たっているが、ある意味では全く違うことを彼は知る由もない。

 

「んー維新軍だと銃が使えるのか。幕府軍だと使えないのね」

 

彼がそう言えばコメ欄には〘こてなめは銃使うでしょ〙〘あえて剣しか使わないのもあり〙とまぁどっちの陣営でもあまりリスナーからの反応は変わらない感じだ。

 

「今回はあえて銃使わないでいこうかな。幕府軍にします」

 

彼がそういえば案の定〘銃使わないとかこてなめじゃないな〙だとか逆に〘新しいからあり〙みたいなコメもでてくる。

 

今のところ掴みは上々といったところか。こてなめは1つ満足しながら幕末の世界にログインした。

 

 

ログインした彼の目には納屋だろうか?世界観的には幕末だしまぁ違和感はない、が写った。

 

「まぁまずはチュートリアルからかな?とりあえず外に出ましょうか」

 

彼がそう言うと、〘結構雰囲気よさげ〙、〘普通に面白そう〙という声もあるが〘気をつけろ。まぁ無駄だけど〙といった不穏なコメもあった。

 

この手のコメはどのゲームでも出てくる。こっちをビビらせてリアクションが見たいだけの半分煽り勢だろう。気にするだけ無駄。そう考えて納屋の扉を開けると

 

「チュートリアル天誅!!」

 

その瞬間こてなめは真っ二つに切り裂かれた。彼に聞こえたのは

 

「俺は悪くない。天がやれといった」という声とその直後の

 

「余韻天誅!!」という声だけだった。

 

 

そして目の前が真っ暗になる。目を覚ますと当然納屋の中に戻される。

 

「なんだこれ?これがチュートリアル?」

 

〘今のは理不尽過ぎでは?〙、〘クソゲー〙、〘死にゲーにしても酷い〙、〘幕末へようこそ〙と困惑の声があがっていた。

 

「まぁとりあえずもう1回出ますか」

 

こてなめだって理不尽の多いFPS界隈出身だ。そして学習しない程馬鹿ではない。扉の横側に体をつけ、勢いよく扉を開ける。

 

開いた瞬間に剣が、扉の向こうから振り下ろされ、開けるために伸ばした左手が切り飛ばされた。

〘ま?〙〘クソゲー〙〘ウェルカァム〙

 

「ざっけんな。2度もやられてたまるか」

 

FPSプレイヤーとしての反射か即座に迎撃する。幸いにも利き手は右手だ。生きている。刀を抜き、居合の要領で扉の先にいるであろう敵に切りつける。

 

「うぉっ!?新入りやるな」

 

確かに斬った感触があった。状況を確認すると、扉の先にいた敵は刀を持っていた方の手、右手が切り落とされていた。

 

「チュートリアルにしてはハードだけどなんとかなったな」

 

こてなめがそう言って、トドメを誘うとすると

 

「これはチュートリアルにあらず」

 

「え?」

 

敵の言ったセリフに思わず聞き返す。リスナーも

〘??〙〘チュートリアルじゃないなら何なんだ?〙〘これも天が言ったからよ〙と困惑気味だ。

 

「これは天誅である」

 

「は?」

 

「……天誅!」

 

右手のない敵がそう言うと空いてた左手で何かを投げた。それは確かにこてなめの喉に突き刺さった。

 

「これは……串?」

 

そこでこてなめの目の前は真っ暗になった。

 

「ちくしょう!」

3度目の納屋での目覚め。こてなめはここまでイラついたのはFPSでキルされた後にくそほど煽られた後にメッセージでも煽られた時以来だった。いやその時よりよほどイライラしている。

 

〘あれプレイヤーだぞ〙〘幕末はこういうゲーム〙〘初心者狩りとかクソゲーか〙〘サイコパスしか生き残れないと有名〙

 

こてなめがここまでやられたのを見てから、経験者であろうリスナーが煽るように幕末を説明する。その説明のコメをみてこてなめは

 

「上等だ。FPSプレイヤーなめんな。殺ったるわ」

 

〘幕末ではこの言葉を忘れるな〙

 

「〘天誅……!天がやれといった。だから俺は悪くない〙」

 

 

これはこってりなめたけがFPSストリーマーからFPS兼幕末ストリーマーとして、幕末初の配信しながら初心者天誅をするようになるまでの物語である。

 




エイプリルフール単発?なんか違う


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