ダシマ式ラブライブ!「転生者・一丈字飛鳥」 (ダシマ)
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登場人物紹介
~ オリジナルキャラ編 ~


原作に登場していないオリジナルキャラクターの紹介です。


<主要人物>

 

一丈字 飛鳥(いちじょうじ あすか)

本作の主人公。高校1年生であるが、転生時は高校2年生。

普段は広島のとある高校に通学している高校生だが、もう一つの顔は超能力者グループ「WONDER BOY(ワンダーボーイ)」のメンバーである。

 

薬物を密輸していた売人とその用心棒を大量に検挙した所を、神様・羅城丸に見込まれて、悪徳転生者「フォー」退治を依頼される。

 

性格は大人びており、生真面目な性格である。周りの空気を読んでそれに合わせて行動できるが、色々気が回る性格であるのが災いして、振り回される事が多い。

 

仲間内で年が目上以外に対しては、一人称が「オレ」で喋り方が砕けているが、それ以外の人間に対しては敬語で話し、一人称は「私」である。

 

余談だが、声がアニメのポケモンの主人公の声に似てる。

 

 

羅城丸(らじょうまる)

天界側の主人公と言っても過言ではない。年齢は70代くらい。

 

「転生」の力を持つ神様であり、生身の人間である飛鳥もアニメの世界に飛ばせる程の力を持つ。

 

性格は大らかでギャグも言えるおちゃめな性格であるが、常に天界の未来や将来を考えたりする等、年長者らしい所もある。

 

最近の悩みは、若手の天使が弱い事と、転生して異世界に行きたがる若者が多い事である。

 

 

<WONDER BOY>

 

古堂 孫(こどう そん)

超能力グループ「WONDER BOY」のメンバーであり、和哉の弟。

高校3年生に該当するが、学校には行っておらず、普段は農家として自宅の畑で野菜や果物を作っていたり、地元の人達から力仕事を任されている。

 

性格は明るくて元気いっぱいだが、思考能力が乏しく、天然ボケである為、度々飛鳥に苦労を掛けたりしている。

 

黒髪に大きな双葉頭があり、瞳の色は黒(ハイライトがない)。

 

 

古堂 和哉(こどう かずや)

超能力者グループ「WONDER BOY」のリーダーで、飛鳥の師匠である。21歳。

目の下に大きな隈があり、目にハイライトが無いため、恐れられている。

戦闘時や、相手をいたぶっている時だけ好戦的になり、その時は笑みを浮かべるが余計に怖い。

 

 

<天界>

 

ザキラ

天界護衛隊に所属している天使で、普段は天国の治安を守る為に日夜戦っている。羅城丸とは仕事では一緒に仕事はしていない。

 

若手の中では飛びぬける程の実力を持っており、一人で敵を100人以上倒したという程の実力を持っており(通常の天使だと5人~10人ほどらしい)、若くして護衛隊の分隊長を任されている。

 

しかし、羅城丸が飛鳥にフォー退治を依頼した事については快く思っておらず、それ以来飛鳥を目の敵にしている。

 

コロロ

ザキラの妹。天界にある天使専門学校の女子学生であり、いずれは兄と同じように天使護衛隊に入る事を目指している。

 

 

<フォー>

 

転生者A

穂乃果、ことり、海未のクラスに転入してきた男。

顔はジャニーズ顔の正統派イケメン。

推しは海未。

 

転生者B

にこ、希、絵里のクラスに転入してきた男。

顔はワイルド系で色黒。

推しは絵里。

 

転生者C

花陽、凛、真姫のクラスに転入してきた男。

眼鏡をかけていて、顔は知的系イケメン。

推しは真姫。

 



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プロローグ
第1話「転生の世界へ!」


タグの説明

ダシマ劇場     … ダシマが書く小説の総称
ダシマ式ラブライブ … ダシマが書くラブライブ!小説


pixivでは台本形式にしていましたが、ハーメルンではこういう書き方をした方が良いとアドバイスを頂いた為、pixivもといサンプルと、書き方を変えました。


もしよろしければどうぞ。


 

「はー…。最近の若いもんは…」

 

 とある建物で嘆いている老人が一人。神様である。あの世の平和を保つため、天国で働いている天使である。しかし、彼には大きな悩みがあった。

 

「チート能力を与えた転生者を碌に倒せないとは情けない」

 

 そう、若手天使の育成と、マナーの悪い若い転生者に手を焼いていたのだった。あの世、もとい天国では元々争いは起こらず、悪人たちはすべて地獄に行っている為、現場に出ることも殆どなかった。

 

 そしてこの様である。チート転生者を倒せずにいたのだった。

 

「まあ、ワシらが魔法を使って、悪い転生者「フォー」の力を無効化させれば済む話なのじゃが…。このままじゃと本当に将来が不安じゃわい…」

 

 チート転生者もそうだが、若手天使の軟弱さには本当に困り果てていた。

 

「ワシ等年寄りがいつまでもいると思われても困るが、かといって怒鳴り散らすとパワハラだと訴えてくるからのう…。本当に要らんところで変な知識を回しおって…」

 

 実際に若手天使はそんな事はしないのだが、あまりのチート転生者の強さに若干諦めがちな所もある。

 

「娯楽のために、アニメの世界に転生できるゲームセンターを作ったのが、何よりの間違いだったのじゃ…。奴ら、入ったっきり帰ってこん…。ったく、どんだけ女に飢えとるのじゃ。情けない!」

 

 と、とにかく嘆き続いていたその時だった。

 

「……ん?」

 

 神様はふと見やった水晶玉に映っていた光景に目を奪われた。一人の少年が、大勢の人間を相手にし、超能力を使ってなぎ倒していたのだった。黒髪にストレートのセミロング、青い瞳で中性的な顔立ちの少年だった。

 

「……!!」

 

 

 変わって、少年のいる世界。貨物船の上で大勢の人間を倒し、縄で拘束していた。

 

「拘束させてもらう。大人しくしときなよ」

 

 そう言って腕を組んだ。彼の名前は一丈字飛鳥(いちじょうじ あすか)。この作品の主人公である。広島のとある高校に通う超能力者である。ライトノベルでよくある『ごく普通の男子高校生』ではない。断じてそうではない。

 

(断じてって…(汗))

 

 飛鳥は困惑しながらも、通信機で仲間に連絡を入れる。

 

「こちら一丈字です。全員身柄を拘束しました」

「ご苦労」

 

 

「いやー!! 本当に助かったよ! ありがとう! WONDER BOY!」

 

 と、小太りの男が飛鳥をふくめ、3人の青年に礼を言っていた。

 

「こちら報酬ね!」

「ええ、確かに受け取りました」

 

 礼を受け取った男の名前は古堂和哉(こどう かずや)。飛鳥と同じ超能力者であり、超能力者グループ『WONDER BOY』のリーダーである。飛鳥よりも短い黒髪のストレートで、瞳は黒。そしてトレードマークは人間一人を殺してそうな目つきの悪さと、大きな眼の下の隈である。飛鳥の超能力の師匠でもある。

 

「君も中々強いね!」

「ああ!」

 

 男が和哉の横にいた青年にも話しかけた。彼の名前は古堂孫(こどう そん)。和哉の実弟である。彼も超能力者だが、彼は肉弾戦が多い。

 

 3人は、この小太りの男の依頼を受けて、違法薬物を密輸していた犯罪集団と、その護衛を任されていた用心棒を撃退したのだった。

 

「そして…」

「……」

 

 男が飛鳥を見つめていた。

 

「流石だよ。強いだけではなく頭の回転も速い。うちの会社に欲しいくらいだ!」

「それはちとほめ過ぎですな」

 

 と、特に飛鳥を絶賛していた。上司の和哉が軽くいさめるが、飛鳥に対する信頼はある。

 

 

 変わって天国

「……!!」

 

 WONDER BOY、もとい飛鳥の強さに驚いた神様はある事を思いついた。

 

「これじゃ…これじゃああああああああああああ!!!!」

 

 と、椅子から立ち上がる。周りには誰もいなかったので、誰も振り向いたり、驚くことはしないだろうが、もしいたら、皆驚いて振り向くだろう。

 

 

 ここは和哉と孫の故郷『虹島(にじしま)』。和哉と孫の家は虹島のとある山の中にある。島の人間からは何故か『古堂一族の屋敷』と呼ばれている。

 

「という訳で、一丈字飛鳥くんをお借りしたいのじゃが」

「あの、すみません。ちょっと宜しいでしょうか」

 

 神様が突然古堂一族の屋敷を訪ねていたので、飛鳥が待ったをかけた。

 

「何かね?」

「いや、何急に訪ねてるんですか」

「そんなファンタジー的な展開、ダシマ劇場には似合わないだろ?」

「そんな事言われても、これを見てる人たち分かりませんよ…」

 

 ダシマ劇場。それは、ダシマが書く小説の総称である。ギャグ多め、超展開多めの作品である。ちなみにダシマ式とは、既にある作品をダシマが二次創作として書いた小説のことを指す。本当に唐突ですみませんでした。

 

「いや、誰に謝ってんだ」

 

 飛鳥はすかさず突っ込んだ。和哉は全く気にせず、神様とお話しする。

 

「さて、お話は聞かせて頂きましたが…」

「ああ…。飛鳥くんに是非、あの世にある転生ゲームセンター『ブランニューライフ』に居座っている転生者たちを懲らしめて欲しいのだ。そして、うちの若手たちがもっとやる気を出すように力を貸してほしい!」

「は、はあ…」

 

 飛鳥はただ困惑するしかなかった。依頼されている作業はおおむね理解できたが、あの世で仕事をするというのが、いまだに信じられない気持ちでいっぱいだからである。

 

「勿論、事が済んだら、そちらの人生に影響が出ないようにしておく」

「それは…お願いします」

「引き受けてくれるか!」

「え、えっと…」

「オレ達は問題ない。寧ろお前の修業になるだろう。訓練ばかりでは強さは身につかん。実践を積んで来い」

「わ、分かりました」

 

 和哉からのOKがでた為、飛鳥は神様からの依頼を受けることにした。

 

「なんだかよくわかんないけど、がんばれよアスカ」

「あ、ありがとうございます…孫さん」

 

 孫の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

「それでは決まりじゃ! 早速ラブライブの世界に行くぞ!」

「ラブライブ?」

 

 飛鳥が首を傾げた。

 

「何じゃ、知らんのか?」

「いえ、名前は聞いたことあるんですけど…」

「ああ。実はのう、ラブライブという作品が一番人気があって、フォーが一番多いんじゃ。お前さんの目標はフォーをあぶりだす事。フォーを倒す事じゃ!」

「あ、はい」

「ちなみに…能力は与えんでも大丈夫じゃな?」

「問題ありません。レベルアップの邪魔です」

 

 和哉が答えた。

 

「そういう事だ。行ってこい。何かあったらオレが何とかする」

「分かりました。それでは宜しくお願いします!」

「ああ。それではスタートじゃ!」

「ノリ軽っ!!!(大汗)」

 

 神様の軽いノリに飛鳥はずっこけた。

 

 

 果たして、一丈字飛鳥の運命や如何に…。

 

 

 

つづく

 




不定期更新です。


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第2話「事前準備をしましょう」

ラブライブの世界で大暴れする前に、飛鳥は神様からレクチャーを受けることになったのだ…。


 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。以前にもこちらのハーメルンでお世話になりました。またよろしくお願いいたします。

 

 さて、私は今転生の神様・羅城丸様に連れられて…あの世にいます。

 

「お主がこれるのはワシの部屋と、このゲームセンターだけじゃ」

「ここが…」

 

 神様と飛鳥は転生できるゲームセンターの前に立っていた。見た目はただのゲームセンターとなんら変わりはなかったが、とても大きかった。

 

「とても大きいですね…」

「ああ…。ここが例の転生できる装置がたくさんあるからのう…。見てみろ。沢山並んでいるだろう」

 

 神様が横を見ると、飛鳥も横を見た。そこには長蛇の列が出来ていた。

 

「中にはちゃんとしたユーザーもおるんじゃがのう…。そんなに楽してモテたいか」

「ほっとけ!!(激怒)」

 

 参列者が怒涛の突っ込みをしてきた。それを見て飛鳥が困惑した。本当に大丈夫なのだろうかと…。

 

「まあ良い。中についてきなさい」

「は、はい…」

 

 

 転生ルーム・ポット

 

「このポットの中から転生が出来る」

「あの、神様」

「分かっておる。そんなにマナーを守らないなら、強制退去すればいいんじゃないか。じゃろ?」

「あ、はい…」

 

 言おうとしていたことを神様に読み取られて困惑する飛鳥。

 

「言ったじゃろう。今からお主の力で現実を見せて…」

「いや、そうではなくて、私が来る前にそういうお考えは…」

「それも考えたんじゃが、上から猛反対されてな…。マナーのいい転生者もいるし、市民の反感を買うからじゃと…」

「あ、そうなんですか…」

「まあ、本当は自分達も使いたいからじゃし、お偉いさんの息子たちも使っているからじゃと。全くどういう教育をしてるんじゃか…」

「えぇぇぇ…」

 

 私情が混ざっていたことに、飛鳥は驚きを隠せなかった。

 

「しかもその息子たち、不細工じゃぞ。女と手を繋いだことがなさそうな程の」

「そんな事言っていいんですか!?(大汗)」

 

 そして神様がぶっちゃけたので、飛鳥は更に突っ込んだ。そして思った。本当に大丈夫なのかと。絶対大丈夫じゃないよねコレ、と。

 

「さて、お主はこのポットではなく、直接その世界に送る!」

「え、そんな事出来るんですか?」

「ワシは転送の神じゃからの」

「…え?」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「異世界に送ることが出来るのじゃ! それでは…えーい!!!」

「え、ちょ…うわぁああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 飛鳥は唐突にラブライブの世界に飛ばされた。

 

 

 

「ここは…」

 

 ふと気づくと、飛鳥は部屋の中にいた。畳が敷いてある和室であり、障子もある。

 

「あれ? オレの部屋?」

『聞こえるか。飛鳥よ』

「!?」

 

 どこからか神様の声がしたので、飛鳥が驚いた。

 

『聞こえていたら返事してくれ』

「あ、はい。聞こえますが…」

『無事にそちらの世界に行けたようじゃな』

「あ、はい…。えっと…」

『ああ。部屋はお主が今使っておる部屋をそっくりそのまま再現しておいた。その方がいいじゃろう』

「あ、ありがとうございます…」

『この世界に必要なものをテーブルの上に置いてある。見てみなさい』

 

 と、神様に言われた通り、テーブルの上に置いてあるリュックサックを見て、中身を見た。

 

『まず、ワシと連絡が取れる連絡機』

「はい。スマホですね」

『お小遣いとか色々入ってる財布』

「100万!!?」

 

 財布の中には1万円札が100枚入っていた。金額もそうだが、よく100枚も財布の中に入ったな…。と飛鳥は思っていた。

 

『生活費や交際費とかも込みじゃ。足りなくなったら渡すが…お主なら、分かるよな?』

「はい、節約します」

『フォーと対決するときは、遠慮なく貸すからの! 寧ろそれが肝じゃ!』

「は、はい」

 

『それから、音ノ木坂までの地図じゃ! まあ、すぐ近くにあるんじゃが、東京の地理は分からんじゃろうから、覚えといて損はないじゃろう』

「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥が地図を見る。地理は音ノ木坂学院など、ラブライブの世界にしかない土地があること以外は、現実の世界と変わらなかった。東京スカイツリーもあるし、雷門もある。もっと大げさに言うと、大阪も現実のままである。

 

「で、いつから行けば宜しいでしょうか」

『明日からじゃ!』

「早っ!! 私そんなに詳しくないんですよ!?」

『大丈夫! スマホを見てみなさい。ナビをしてくれるアプリをつけておいた!』

 

 飛鳥がスマホを見ると、確かにそれっぽいアプリがあり、それを押した。確かに何をすればよいかしっかり記載されている。

 

「『明日、学校に行きなさい』…。至ってシンプルだな」

『分かりやすいじゃろ?』

「ええ、とても。ありがとうございます」

『うむ! それでは素敵なスクールライフを過ごすのじゃ…あ、そうじゃ。言い忘れておった』

「何ですか?」

 

 すると、神様が急に現れた。

 

「うおっ!!!」

 

 飛鳥は思わず驚いた。

 

「何じゃ、これくらいで驚くんじゃない」

「いや、急にびっくりしますよ。今までテレパシーで話をしてたのに…」

「ふーむ…。うちの若手もそういう事を言うのじゃ…」

「いや、絶対若手だけではないと思います…」

 

 飛鳥が困惑した。自分がされたらどんな気持ちになるのか考えた事があるのかこの人は…。とも思っている。

 

「まあ良い。で、肝心のフォーなのじゃが…」

「!」

 

「基本的に転生の世界は1人までじゃ。稀に友達と楽しむために数人で来ることもある」

「確かに冒険の世界ではありそうですね…」

 

「じゃが、フォーは他人が転生している世界でも容赦なく割り込んで、ヒロインを横取りするのじゃ!」

「え、何でそんな事を…」

「そりゃあ、ヒロインを自分一人のものにしたいからじゃろう。そして、何よりも自分より弱い奴を許さんのじゃ。まあ、早い話が自己顕示欲が強すぎるのじゃ。それゆえに、他人への思いやりを忘れ、地獄にいる連中と何ら変わらんことをする。ゲームの世界だというのをいい事に、他の転生者や主人公を殺したりな」

「他の転生者を殺す?」

 

 飛鳥が怪訝そうにする。

 

「どういう事ですか?」

「転生の世界にも一応生死は存在してな。転生の世界で死んだ場合は、強制終了となり、転生ポットから出される。で、転生者の記録が更新されてしまうという訳じゃ」

「そ、そうですか…。で、私がフォーを追い出すことで…」

「その通りじゃ。転生チートでもどうにもならないという、現実を見せつけてやめさせるという大作戦でもあるのじゃ!」

 

 そんなプレッシャーのかかる作戦に何故、自分が選ばれたのかよく分からないまま、飛鳥は明日からの生活に備えて、眠りについた…。

 

 

「寝れん」

 

 

つづく

 



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第3話「転生生活、始まる!」

本日のイメージオープニングテーマ

「グロウ・アップ」
歌:Hysteric Blue
(学校の怪談 OP)


日曜の夜にやってたアニメです…。


 

 

 

 ここは音ノ木坂学院(おとのきざかがくいん)。ラブライブの主人公である高坂穂乃果達が通う高校である。秋葉原、神田、神保町という3つの街のはざまにある伝統校。しかし、入学希望者の減少により、廃校寸前となっていた。

 

このラブライブの物語は、この音ノ木坂学院の廃校を阻止する為に、主人公達が「μ's」というアイドルになって、そのアイドル活動を通じて入学希望者を増やそうとする物語である。最終的には上手く行く。

 

ちなみに転生センターでは、好きな話を選んでその話だけ転生体験する事も出来れば、大抵は第1話から全話転生する事もできる。フォーになれば全話転生して、ずっとそのままである。

 

「そういえば、最終回が終わったら、強制的に出られるんじゃないんですか?」

 

 飛鳥が神様に質問をした。

 

「そのはずなんじゃが、そのチート能力を悪用して、出られないようになっておるんじゃ。そのせいで長蛇の列が…」

「……(汗)」

 

 もう完全に撤廃したほうが良いんじゃないか? と飛鳥は思った。

 

ちなみに、ラブライブの世界にも色々並行世界があり、とある所では、明治期から始まり、創立115年を数える名門校として、地域NO.1を誇っている。

 

 

「ワシらの話はもうどうだって良いじゃろう。そんな事よりもラブライブじゃ!!」

「えー…」

 

 そんなこんなで、飛鳥の(死んでないけど)転生生活が始まります。

 

 

 朝

「ここが音ノ木坂学院か…」

 

 神様から渡された転校案内書を持って、飛鳥が校門前に立っていた。ちなみに飛鳥は目立たないように、大きな伊達眼鏡をかけていた。普段は裸眼であるが、超能力者である為、目立つのは色々まずいので、こうして眼鏡をかけて、前髪も出して、『どう考えてもどこにでもいそうな普通の高校生』を演じているのだ。

 

「あなたが転校生?」

「!」

 

 と、現れたのは一人の美女。ラブライブのヒロインの一人である南ことりの母であり、音ノ木坂学院の理事長である。本当に高校生の娘を持っている母親なのかと疑問に思うくらいの美貌だった。メンバー全員の母親が大体そんな感じである。

 

「あ、はい。一丈字と申します」

 

 飛鳥はそんな事全く気にせず、普通に自己紹介した。鈍感という訳ではないが、基本的に仕事第一という社畜思考を持っている、いずれにせよ可愛げのない男である。

 

「音ノ木坂学院理事長の南です。どうぞこちらへ」

「はい、宜しくお願いします!」

 

 理事長に連れられて、飛鳥は音ノ木坂学院の門をくぐった。

 

「あなた以外の転校生はもう来てるのよ」

「え、そうなんですか?」

 

 飛鳥が驚くそぶりを見せたが、実はそんなに驚いていなかった。というのも、事前に神様から『自分以外にも転校生がいる。そいつら全員フォーだ』と教えてもらっていた。恐らく、自分より早く来ているという事は、ヒロイン達にいい顔をしたいからだろうと考えていた。

 

「あ、ちなみに」

「?」

 

 神様がニヤリと笑った。

 

「フォーには、『女にモテる』という機能は全部取り上げておいたから、安心したまえ。女の子は全員お前さんの味方じゃ!」

「え、えぇ…(汗)」

 

 もうそれやるくらいなら、その方法を若手に教えた方が良くないか? と思っていた。

 

 

 そして転校生全員が理事長室に集合した。

 

(オレは転生者A…。他に転生者がいるが、ハーレムを手に入れるのはオレだ!!)

(この転生者Bこそが、ハーレム王となるのだ!!)

(僕は転生者C…。この僕が、μ’sのハートをつかむ。これは決まっている事なんだ)

(……)

 

 飛鳥と一緒にいるこの男性生徒3名が、神様たちが手を焼いている悪質転生者『フォー』だった。基本的に『女とヤる』『無双』『ハーレム』『モテモテ』の4項目しか考えていない。原作の主人公や他の転生者を殺害し、その作品のヒロインを寝取ったり、強姦する事を生きがいとしている。元は冴えない男で、女に縁のない生活を送っていたが、この転生センターで悪い方向に自信を持ってしまってしまい、今となっては神様たちから目をつけられている。

 

 そんな中で、飛鳥は平然としながら理事長を見つめていた。

 

(こいつも転生者か…?)

(弱そうだな!)

(相手にするまでもありませんね)

 

 と、完全に舐め切られていた飛鳥。それもそうだ。フォーたちは神様の力でイケメン(もとは不細工が多い)になり、(女にモテる以外)全知全能になり、そんな奴が自分達に勝てるはずがないと思っていた。

 

 しかし、神様は思った。

 

『その気になっていたお前らの姿は御笑いだったぜぇ?』

『何でパラガスなんですか』

 

 テレパシーで飛鳥が突っ込んだ。

 

「さて、これで全員そろったわね」

 

 と、南が4人を見つめた。

 

「改めてようこそ。我が音ノ木坂学院へ。あなた達には今日から体験入学生として、我が校の生徒として学校生活を送ってもらいます」

「はい!!」

  

 フォーたちが愛想良く返事をした。これも教師たちの評価を上げるためだ。

 

(フフフフ…。この後職員室でイケメンが来たって大はしゃぎになるんだ)

(きっとオレを取りあうんだ…)

(参りましたね)

 と、A、B、Cが順番に心の中で笑っていたが、完全に顔に出ていた。

 

(な、何だこいつら…)

(そんなに女子高にこれたのが嬉しいのかしら…)

(へ、変な事しなきゃいいなぁ…)

 

 と、彼らの担任になるであろう女教師たちは顔をひきつらせた。下手すりゃ逆にトラウマを与えられかねない。あくまでゲームの世界なので、全部終わったらデータは消えるのだが、それまでは地獄でしかない。

 

(……(汗))

 

 飛鳥も一緒になって引いていた。そして教師の注目は一気に飛鳥に集まる。

 

(あ、こいつはまともそうだな…)

(この子真面目そう…)

(私達と同じ気持ちなんだなってよく分かる…)

(…まともそうな子が1人いて良かったわ)

 

 すると理事長が咳払いした。

 

「さて、クラスを発表しますね」

 

 クラスは下記の通りになった。

 

・ 一丈字飛鳥:2年1組

・ 転生者A:2年2組

・ 転生者B:3年

・ 転生者C:1年

 

飛鳥はヒロイン達がいないクラスに配属された。

 

(フン! バカめ! ヒロイン達がいないクラスに配属されるとはな!)

(ついてないなこいつ。精々地獄を味わえ!!!)

(可哀想な人です。せめて僕がハーレムを作るところを指をくわえてみてなさい)

 

 この後、そっくりそのまま同じことをまだ彼らは知らなかった…。

 

 

 2年2組・教室

 

「そういえば今日うちのクラスに転校生来るらしいよ」

「へー…」

 女子生徒達が話をしていた。そんな中、主人公である高坂穂乃果はある事を言った。

 

 

「興味ないや」

 

 

つづく

 



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第4話「自己紹介!」

 

 

 理事長からのデモンストレーションも終わり、飛鳥達はそれぞれの担任に教室まで案内して貰った。

 

(しかし…ラブライブってそんなに詳しくないんだよな…。女の子好きの省吾さん(飛鳥の古くからの知人)もアニメの女の子にはあまり興味ないって言ってたし…)

 

 現実の世界の女の子ならまだしも、アニメの女の子となると、飛鳥も流石に対応に困っていた。神様が言うには「ワシの言うとおりにしておれば大丈夫じゃ!」とも言われているが、そういう発言程信用できないものはないと、飛鳥は知っていた。

 

 しかし、今は神様しか頼る人間がいない為、従う事にした。

 

「あなたの教室はここよ」

「ありがとうございます」

 

 灰色のスーツを着た深山聡子が飛鳥に話しかけた。ちなみに巨乳であるが、飛鳥はまったく気にした様子が無かった。

 

「お前の教室はここだ」

「ありがとうございます」

 

 転生者Aはジャージを着ている山田博子に案内して貰っていたが…。

 

(担任はあっちの方が良かったな…)

 

 と、深山の巨乳を思い出していた。それを察したのか、山田は若干嫌そうな顔をした。

 

A(まあいい…。このドアの先に穂乃果、ことり、海未が…。μ’sはオレのものだ…いや、サブキャラもモブキャラもぜーんぶオレのものだぁ!!)

 

転入初日、Aは穂乃果・ことり・海未に会える興奮を内心は隠し、その他のメンバーもどう惚れさせようか考えていた。そして、教室の前でまだかまだかとソワソワしている所であった。

 

(…あの様子だと、自分のやった事について自覚はしてないみたいだな…。てか、邪心がある人は報われないって漫画によくあるパターンだけど、報われない方が良いのかもな)

 

 飛鳥が転生者達の邪悪な笑みを思い出して、静かに一息をついた。

 

(あくまでも仲良くする気はない…という事か。まあ、自分だけだと思ってたのに転生者が4人もいたらそうなるわな)

 

 Aに至っては、飛鳥は完全に相手にならないと感じ、2年の女子は完全に自分が貰ったと思っていた。

 

(いつまでもいい気になりおって。見ていろ、偽物のチートと本物のチートの差を見せてやる)

(いや、チートじゃないですから)

 

 モニタールームから神様が見ていて、転生者Aに天罰が下るのを今か今かと待ち構えていた。それに対し飛鳥はチート呼ばわりする神様に冷静に突っ込みを入れた。

 

 そして山田が扉を開けた。

 

「急な話ではあるが今日からウチのクラスに転入生が入る! ウチの学園は入学希望者が年々減少傾向にある! 学園は共学可を視野に入れる決断をし、お試しではあるが男子生徒の転入生を募集した! 現時点では4人だけだったが、学園側はこのまま少し様子を見るそうだ! 早速だが今から転入生を紹介する! 入って来い!」

(来た!)

 

山田の話が終わったと同時に、転生者Aは教室のドアを開けて堂々と教室に乗り込んだ。

 

(高坂穂乃果だ! 南ことりや園田海未もいる! 本当にラブライブの世界だ…!)

 

 穂乃果、ことり、海未がいる事に感動するA。それと同時に性欲も一斉に高まっていく。早くμ’sと触れ合いたい、愛しあいたい、絡み合いたい、孕…と、ダシマ劇場ではあるまじき展開にしようとしている。もう下心丸出しだ

 

「今日からこいつがウチのクラスメイトになる男子転入生だ。A。自己紹介を始めろ。」

 

「はい!」

 

転生者Aは教卓の前に立ち、堂々と自己紹介を始めた。

 

「今日から皆さんのクラスメイトになったAです! よろしくお願いします!」

 

Aはとびきりの笑顔で自己紹介した。顔にはとてつもない程の自信があったので、まあこうやって愛想良く笑えば、女子達は感嘆して自分に見惚れるだろうと思っていた。

 

ちなみにこのような行為を『ニコポ』と呼び、主人公が「ニコッ」と笑うだけでヒロインが「ポッ」と惚れるものである。

 

『が、本当に惚れると思っていたお前の姿はお笑いだったぜぇ?』

『気に入ってるんですか。ソレ…』

 

 神様と飛鳥がコマの外から話をしていた。

 

「!?」

「……」

 

Aは驚愕した。座っている生徒は気味悪がったり、機嫌悪そうにしたり、無視したりしていた。

 

A(何、何故だ!?何で誰も反応しない!?)

 

 突然の展開にAは混乱した。

 

『あれ? 神様、これってどうなってるんですか?』

『最初の断罪だ。ヒロイン達の好感度がずっと0のままだ』

『本当に私いらないんじゃないんですかねぇ』

 

 飛鳥が皮肉気味に答えた。

 

『何を言っておるか! 前に言ったじゃろう。女にモテるという機能は失くしたと。ある意味奴らにとって、美少女とのかかわりが一番の肝じゃからな!!』

『それって要するに…』

『まあ、早い話がもう奴らにとって、このラブライブは何の価値の無いものとなったな。どんだけ頑張ろうが、決して振り向くことはない』

 

 

Aは内心かなり焦っていた。今までならここでキャーキャー言っている筈だったのに、今回は真逆だったからだ。

 

「質問ある奴はいるか? 無いよな。A。下がっていいぞ」

「…はい」

 

 ちなみに、転生者BとCも同じような展開で、女子のハートをつかもうと愛想良くしたが、いずれも彼らが望んた通りの反応はしてこなかった。

 

(な、何故だ!!?)

 

(これは計算外ですね…)

 

 

 そして飛鳥。教壇の前に立っていた。

 

「今日からこの学校に転校してきた、一丈字飛鳥くんよ」

「一丈字です。本日から宜しくお願いします」

 

 飛鳥が一礼して、そのまま終わらせようとした。飛鳥としてはあまり自分の事を話したがらない性格だった。小学校、中学校の時も名前だけを言って終わりにしていたのだった。趣味や特技は聞かれたら、答えるようにはしていたが…。

 

「宜しくー」

 

 と、クラスメイト達がそれなりに挨拶をしてくれた。

 

 

 変わってAの教室

 

(自己紹介は若干滑ったが、これで穂乃果達と同じクラスになれたぞ…!! さて、どのようにしてオレのものにしていこうか…)

 

 と、Aは穂乃果達の方を見ながら企んでいた。

 

「……」

 

 穂乃果、ことり、海未はAの視線を気にしていた。

 

「な、何なんですかあの人…」

「ことり達の方ばかり見てる…」

「……」

 

 穂乃果が口角を下げた。

 

「大丈夫だよ二人とも」

「!」

 

 穂乃果が口角を上げた。

 

 

 

「絶対に大丈夫。だから気にしなくていいよ」

 

 

 

つづく

 



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第5話「邂逅! 飛鳥と穂乃果!」

 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。早いところでこのお話も5話目に突入いたしました。もしよろしければ、第1話からご覧になってください…。

 

 さて、私は音ノ木坂学院の入学と初めの自己紹介を済ませて、一息ついているところです。

 

「……」

 

 クラスメイトの皆さんは特に話しかけることはありません。こちらから声をかけていくパターンなのでしょうか…。ですが、特にお話しする用事もありません。フォー達の様子がちょっと気になるけれど、今は様子を見ましょう。

 

 授業中…

「であるからして…」

 

 と、深山が担当する現代文を真面目に受ける飛鳥。しかし、隣の生徒がウトウトとしていた。

 

(まあ、授業って眠たくなるときってあるよな…)

 

 と、女子生徒の心情を理解しつつも、特に起こすことはせずに授業を熱心に受けた。

 

「それじゃあ次の問題を…〇〇さん!(飛鳥の横の席でウトウトしていた女子生徒)」

「はっ!!?」

 

 女子生徒は目を覚ました。

 

「ふぇ、あ、私!!?」

「…寝てましたね?」

 

 担任の深山は呆れたように隣の生徒を見つめていた。飛鳥は若干苦笑いしていた。

 

「え、その、ちょっと…」

 慌てる女子生徒に飛鳥は、そっと教科書を見せた。

 

「…この問題ですよ。分かりますか?」

「!」

 女子生徒が飛鳥を見つめると、飛鳥も女子生徒を見つめた。そしてじっと見つめあう。

 

「…私じゃなくて、問題を見てください」

「は、はい!!/////// ごめんなさい!!///////」

 

 と、女子生徒は顔を真っ赤にして、テキストに書いてある問題を見つめた。しかし、問題の事など全く頭に入らず、少女漫画っぽい展開になった事に対して、テンパっていた。彼女は小学校からずっと女子校にいて、男の家族も父親だけだったため、男性に対する免疫が無かった。

 

 そして飛鳥が苦笑いすると、女子生徒は耳まで真っ赤にした。

 

(あやつ…。女たらしの才能があるわ…!)

 

 モニターで見ていた神様が絶句していた。やっぱり自分が見込んだとおりの男だわ。ワシの目に狂いはなかったわ。やっぱりワシ人を見る目があったと。これでもかという程、自分で自分をほめていた。

 

 そして周りにいた女子生徒もドギマギしながら、飛鳥と女子生徒を見つめていた。本当に少女漫画みたいな展開だったうえに、飛鳥の顔もそこそこ悪くなかった為なのか…。

 

「え、えっと…臥薪嘗胆です!」

「正解よ。でも、今度からちゃんと聞きなさいね」

「は、はい…。すみませんでした…」

 

 と、隣の女子生徒は飛鳥を見つめた。

 

「…ありがとう」

「いえいえ。まあ、今の季節暖かいですもんね」

 

 飛鳥が口角を上げると、女子生徒はモジモジと俯いた。

 

 

 その頃…

 

(どうしてくれようか…どうして穂乃果達を手籠めに…)

 

 と、転生者Aが下種な笑みを浮かべながら授業を受けていると、

 

「A! ちゃんと授業を聞いてるのか!!?」

「は、はい! 〇〇をやってるんですよね?」

「お、おう…」

 

 と、チート能力を駆使して返答して納得させようとしたが、山田としてはちゃんと授業を受けて欲しいし、周りの生徒は気味悪がっていた。山田は本当にこの生徒で大丈夫なのかと心配するばかりだった…。

 

 

 授業が終わって…

 

「ね、ねえ。一丈字くん」

「ん?」

 

 飛鳥が女子生徒達に囲まれていた。

 

「あ、お騒がせしました。すみません」

「いや、それはいいんだよ///////」

「なんていうかその…////////」

「…ん?」

 

 女子生徒達がモジモジしていたので、飛鳥が困惑した。

 

「私達ともお話しましょ!」

 

 

 同じころ、転生者Aは穂乃果達に話しかけようとしていた。

 

「ねえねえ! オレと仲良くしようよ!」

「は、はぁ…」

 

 海未とことりは困惑するばかりだった。

 

「あ、ごめんねAくん」

「!」

「穂乃果達、ちょっと行かないといけない所があるんだ。行こう」

 

 と、穂乃果が海未とことりを連れてどこかに行こうとした。

 

「ま、待ってよ!」

 

 Aが穂乃果の手をつかんだ。

 

「離して」

「どうしてそんなに素っ気ないんだ? 君はそんな子じゃないだろう?」

「今日会ったばかりなのに、穂乃果の何が分かるの?」

「!!」

 

 穂乃果がAを睨みつけた。

 

「穂乃果達の事はほっといてよ。それから授業中、あんまり変な顔しないで。他の子が気味悪がってるから。ことりちゃん、海未ちゃん。行こう」

「う、うん…」

「分かりました…」

 

 と、ことりと海未は穂乃果を連れて去っていった。

 

「……!!」

 

 穂乃果に嫌われているという事実に驚きを隠せないA。

 

(な、何でだ!? 何でこのオレが穂乃果に嫌われてるんだ!!? オレは今までも世界を救って、チート能力も持っているイケメンなんだぞ!!)

 

 ただし、異性関係に関しては、これでもかという程モテないというステータスに書き換えられている事をまだ彼は知らない。そうやって表情を歪ませていると、他の生徒が恐怖に陥っていた。本当にイケメンがしていい顔をしておらず、イケメンに嫉妬するキモメンの醜い顔だった…。神様のチカラで能力は上げて貰っても、心の強さは変わらないのだ。はい、ここテストに出まーす。

 

 そして穂乃果達は1組の教室に向かっていた。

 

「!!」

 

 穂乃果達が現れた事で、1組の生徒は皆穂乃果達を見た。

 

「あ、穂乃果…」

 

 クラスメイトの一人がそう呟くと、穂乃果が飛鳥を見た。飛鳥は状況が全く呑み込めておらず、「あれ? ラブライブの人がどうしてこっちに…?」としか、思っていなかった。飛鳥の心情にお構いなしに、穂乃果は飛鳥に向かって歩を進める。

 

「あの、何か御用でしょうか」

 

 と、飛鳥が事務的に穂乃果に問いかける。穂乃果と一緒にいる海未とことりも困った顔をしている。今の状況では穂乃果の友達というより、子分みたいになってしまっている。

 

 すると…

 

「何で…?」

「?」

 

 穂乃果が涙目になり、そして大量の涙が噴水のように出た。

 

「どうして君が1組なのぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」

(えええええええええええええええええええええええええええ!!!!!?)

 

 飛鳥は心の中で絶叫した。

 

(いや、高坂さんこんなキャラじゃなかったよね!!? どういう事だよ神様ァ!!!)

『あー…すまんすまん』

 

 心の中で飛鳥が突っ込みを入れていると、神様が飛鳥の心の中に話しかけてきた。

 

(まあ、君の力なら神の力を遣わずともハーレムを作れると思ったんじゃが、せめて主人公は君にぞっこんでないと…。話の中心人物でもあるわけじゃし。ある程度落ち着いたら元に戻す!)

(本当にお願いしますよ…(汗))

 

 

 本当にオレは無事に成し遂げることが出来るのだろうか。と、飛鳥は思った。

 

 

 

つづく

 

 



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第6話「ハーレムをつかむのはだれだ!?(前編)」

 

 一丈字です。ありのままに起こったことをお話ししましょう。高坂さん達が私のクラスに来て、高坂さんが何故私が別のクラスなのかと残念がっていました。

 

 あの、すいません。初対面ですよね?

 

「あの、すいません…」

「なに?」

 

 飛鳥が困った様子で穂乃果に話しかけた。

 

「どなたですか?」

 

 飛鳥がわざと穂乃果に名前を聞いていた。穂乃果は少し瞬きをすると、あははははははと笑い出した。

 

「あーそうだった! 自己紹介まだだった! 私、高坂穂乃果! で、こっちは友達の南ことりちゃんと、園田海未ちゃん!」

「み、南ことりです」

「園田海未です」

「あ、宜しくお願いします…」

 

 飛鳥が苦笑いしながら、自己紹介をした。

 

「…で、何故私の事を?」

「あ、えっと…。ことりちゃんのお母さんから聞いたんだ! あ、ことりちゃんのお母さん理事長なんだよ! 知ってた?」

「あ、いや。知りませんでした…」

 

 事前は神様からラブライブに関する情報が書かれている資料を見せてもらい、そこで親子だという事を知った為、本当は知っているが、事が事なので言えなかった。まあ、仮に神様から教えてもらいましたなんて言っても、信じて貰えるわけがない。というか飛鳥自身も言えるはずがなかった。

 

「ふーん…。まあいっか!」

 

 穂乃果はアニメと同じキャラに戻った。

 

「これから仲良くしよーね!」

「え、あ、はい…。その前に高坂さん。質問があるんですけど」

「何かな?」

 

 穂乃果は飛鳥の顔をじっと見つめる。

 

「どうして私じゃなくて残念だって言ったんですか? 初対面なのに…」

「あー…」

 

 穂乃果が困惑した。飛鳥としてははぐらかしても、超能力で考えている事を読み取れればいいのだが、ここは穂乃果の善意を信じてあえてしない事にした。

 

「あのね、転校してくる人たちの情報は事前に知ってるんだ。理事長に見せて貰ったの」

「!?」

 

 飛鳥が片眉を上げた。友達が理事長の娘とはいえ、普通そんな事をするのだろうか。神様が前話で穂乃果だけ自分に興味があるようにしておいたと話していたが、念のため本人からも聞くことにしたのだった。

 

「それでねー…。同じクラスのAくんはちょっと話しかけづらいかなーって。で、飛鳥くんなんだけど、真面目そうだし何かいいなーって」

「は、はあ…」

 

 理由が抽象的過ぎて、少し理解に苦しんだが、目的は穂乃果達と仲良くなって、フォーから守る事であるので、飛鳥としてはもうこれ以上聞くことはしなかった。

 

「そうですか…。分かりました」

「あ、そうだ! お昼ご飯一緒に食べない!?」

 

 穂乃果が飛鳥にぐいっと顔を近づけた。普通の男子ならドギマギして、ろれつが回らなくなるところだが…。

 

「近いです」

 

 飛鳥に至っては平然としていた。職業柄、色んな人と話をする為、同じくらいの女子高生と話しても何の問題もなかったのだ。

 

「ほ、穂乃果ちゃん!!///////」

「近いです!!/////// は、破廉恥です!!!////////」

 

 と、ことりと海未が頬を染めて穂乃果をいさめた。

 

「お気持ちは有難いのですが」

「なに?」

「ちょっとばかし、用事があるんですよ。また次の機会にして頂けないでしょうか」

 

 と、飛鳥が苦笑いした。

 

「そ、そうなんだ…。約束だからね!」

「はい」

 

 すると、チャイムが鳴って穂乃果達が自分の教室に戻っていった。

 

「……」

 

 そして穂乃果達は自分の教室に戻ろうとしたが、Aがずっとその様子を見ていたらしく、不機嫌そうにしていた。

 

(何故だ…!!? 何故オレじゃなくてあの眼鏡に穂乃果達が…!!!)

 

 Aが表情を歪めたが、穂乃果は平然としていた。海未とことりはAを不審に思うだけだが…。

 

(まあいい。最後に勝つのはオレだ。ちょっとリードしたからっていい気になるなよ!!)

 

 そして昼休憩。

 

「さて、行くか」

 

 飛鳥が教室を出ていった。特に用事という訳ではないが、遠くから他の転生者の様子を見ようとしただけだった。

 

 2年2組の教室では…。

 

「……」

 穂乃果が口角を下げていた。

「ほ、穂乃果ちゃん。どうしたの?」

「あ、ごめんことりちゃん。海未ちゃん。ちょっと先にお昼ごはん食べてて」

「どうされたのですか?」

「やっぱり飛鳥くんが気になるから」

 

 と、穂乃果が行こうとすると、Aが通せん坊した。

 

「一丈字なら理事長先生に呼び出されたみたいだよ」

「え?」

「そういう事だから、何も心配する事はない。オレと一緒に昼ご飯食べようぜ!」

 

 Aが満面の笑みで穂乃果達に話しかけたが、穂乃果はもういなかった。

 

「あ、あれ!?」

「ま、待ってよ穂乃果ちゃ~ん!!!」

「待ちなさい穂乃果!!」

 

 と、ことりと海未もAを無視して去って行ってしまった。そして取り残されるAとクラスメイト達。

 

(な、何でだ!!! 何でオレよりもアイツの事を…!!!)

 

 と、またしても表情を歪めた。醜いったらありゃしない。そしてクラスメイト達もどんどんAに対する評価を下げていった。

 

(Aくんって、怒ると凄く不細工な顔するよね…)

(うん…)

(さっきの高坂さん達の態度もそうだけど…)

(もしかして顔だけなんじゃない…?)

 

 

 食堂にやってきた飛鳥。

 

「でも小腹が空いてきたから、何か食べてからにするか…」

 

 と、飛鳥が購買部でいつも飲んでるグ〇コのカフェオーレを買おうとしたその時、

 

 そして…

「何なのよ! さっきからしつこいわね!」

「ホンマや。おイタが過ぎるんとちゃう?」

「ちょっと! 何でにこじゃないのよ! いや、今回はにこじゃなくても大丈夫か…」

「ちょっと待ってくれよ! 何かの間違いだ!!」

 

 3人の女子生徒に縋りついている男は転生者B。Aと同じくフォーである。Aと同じく、他所の転生者がいる世界に割り込んで好き勝手やっていたが、それに加えBは他所の転生者の悪い噂を流して寝取るという卑劣極まりないものだった。

 

 今までハーレム生活を送っていたので、今回も何もせずにヒロイン達は自分の事を好きになってくれて、自分を巡って取り合ってくれて、今までと同じようにいい思いが出来るだろうと思っていたが、Aと同様嫌われていた。今も絵里達にまとわりついてこの様である。

 

「……」

「奴はB。3年の教室に送り込んだが案の定だな。奴は他の転生者の悪い噂をでっち上げて、ヒロインを寝取った女の敵だ」

「そ、そうですか…」

 

 もう寝取るのが当たり前というフォーを目の前で見て、飛鳥は引いた。そんなに人の女を取るのが好きなのかと、まるで獣を見るような目でBを見ていた。

 



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第7話「ハーレムをつかむのはだれだ!?(後編)

『今はどうされますか? あのままほっといても靡くことはないんですよね…?』

『無い。そればかりか周りの女子を見てみろ。あまりにも無様すぎて引いてるぞ』

 

 飛鳥と神様がテレパシーで作戦会議をしていた。周りの女子生徒はゴミを見る目で見ているか、まとわりつかれている少女達が可哀想と見ていた。ちなみに金髪の美女が絢瀬絵里、紫色の美女が東條希、黒髪のツインテールが矢澤にこである。

 

「ちょっと!! にこにも美女をつけなさいよ!!!」

「美女って言うより美少女の気が…」

「そ、そう…?」

(あ、機嫌直った)

 

 矢澤にこがナレーションに突っ込み、更に飛鳥が話をするとにこが飛鳥を見た。そして絵里と希とも目が合った。Bとも目が合うのだが、飛鳥の顔を見るなり、表情を歪めた。

 

「何? お前」

 

 お前が何なんだよ…とB以外の全員が思った。

 

「アナタが何なんですか」

(突っ込んだ!!)

 

 飛鳥は負けじとBに噛みつく。自分の勝利が決まっているからではない。ごく自然に突っ込みを入れた。そう、彼は大阪府出身であり、関西人特有の突っ込み気質なのだ。

 

(いや、意味わかんないし、関西人全員がそうじゃないから)

 

 飛鳥はまたしても突っ込みを入れた。

 

「言っておくがこの絵里はオレの女だ。手を出すなよ」

「あ、そうだったんですか」

「違うわよ!」

「違うって言ってるじゃないですか」

「違う違う。照れているだけだよ」

「え、えー…」

 

 どうやったらそんな解釈が出来るんだ…と、飛鳥も引いた。Bは絵里の大ファンであり、それが変な方向まで行ってしまった。自己紹介して早々絵里にプロポーズまがいな発言をして、クラス全員の女子をドン引きさせた。確かに顔はイケメンだが、下心が丸出しだった為、仕方がないと言えば仕方がないのだが…。

 

 

「いい加減にしなさいよ! 転校初日だから黙ってあげようと思ってたけど、もう我慢できない! 何様のつもりよ!」

 

 にこが激怒する。この時点では一緒にいることはないのだが…。まあ、細かい事は気にしないでおこう。

 

「…あの、何をされたんですか?」

「転校していきなり、馴れ馴れしく挨拶してきたのよ! 休憩時間もしつこく絡んでくるし、今だってこの2人が一緒にお昼を取るつもりなのに、一緒に食べようってしつこいのよ!! おまけに絵里に関しては自分の女だって言ってくるし! にこが止めに入っても聞かないのよ!!」

(あー…これもう手遅れってパターンか)

 

 飛鳥はガチで引いていた。もう熱狂的になり過ぎて、妄想と現実の区別がつかなくなっているパターンだと確信したが、こうなってくると本人に何を言っても無駄である。警察にぶち込む他ない。もし自分が神様だったらそうしている。アニメのキャラクターとはいえ、女の子は女の子。やっぱり心配になってくる。

 

『さあ、助けに行くのだ。勇者よ』

『ほざきなさい』

 

 飛鳥は思わず突っ込んだ。

 

「あの…嫌がってるのでしたら、やめてあげてください。彼女達にも選ぶ権利がありますよ」

「うるせぇ! 何でお前の指示に従わないといけねーんだ! オレよりも地味で貧弱そうな体しやがって!」

 

 すると、ヒロインの一人である東條希が飛鳥に近づいた。彼女は何かしら掴みどころのない性格をしている。

 

「なっ!?」

「そうかー? うちはこの子の方が好みやで。可愛いし」

「アナタの方が可愛いですよ」

「やーん♥」

 希がわざとらしく照れる。

「あ、美人さんって言ったほうが良いですかね」

「……///////////」

 

 希はガチで照れた。

 

「なっ! 誑かすな!」

「誑かしてませんよ。この方が私の事を可愛いと仰ったので、可愛いって言い返しただけですよ。この方可愛…じゃなかった、美人ですか?」

「ああ! 美人だ…って、邪魔するな!」

「何? あれだけ絵里を自分の女って言ってた癖に、すぐに希に浮気? 最低」

B「!」

 

 絵里が押しなのに、希を美人と言った事でにこが噛みついてきた。

 

「せやね。アンタに言われても嬉しゅうないし、絵里ちから浮気するなんて最低や」

(女子のネットワーク怖ぇー)

(いつの時代も、どこの世界でも女子は皆こうじゃ。刺されんようにの)

 

 希の冷たい一言に飛鳥は冷や汗をかくと、神様も突っ込んできた。男性読者の皆さんも気をつけましょう。そして女性読者の皆さんは…お手柔らかにお願いします。勿論、A達のような屑にはどんどんやってしまってください。

 

「分かったらさっさと消えて頂戴! 貴方とお付き合いするなんて…認められないわぁ」

 

 絵里が腰に手をあてて悪態をついた。そしてそれを皆で冷ややかな目で見ていた。

 

「絵里ち…。それ、ギャグでやっとるん?」

「すぐに忘れて貰ったら有り難いわ…はい、そこ!! 露骨に視線をそらさない!!」

 

 絵里が飛鳥の方を指さして叫んだが、飛鳥は視線を逸らしたままだった。

 

「ワカリマシタ」

「いや、全然目を合わせないじゃない!! いや、ホントにほんのギャグなのよ!! ねえ!! ちょっとこのままだとポンコツな生徒会長のイメージがついちゃうからぁ!!」

「前々からついとんで。サンプルのチョコを本物を間違って食っとったし、他にも…」

「や―――――――め―――――――――――て―――――――――!!!!!///////」

 

 と、自分の恥ずかしい秘密を暴露しようとする希を止める絵里。普段は御硬いが、かしこくて可愛いエリーチカとして通している絵里だが、若干天然ボケな所もあり、巷では「ポンコツ可愛いエリーチカ」とも言われている。ちなみに声優さんにも言われている。

 

「な、何だよお前はぁ!! オレの邪魔をするな!! 痛い目に遭いたいのか!?」

 

 自分が置いてけぼりにされかけているので、怒鳴る事で注目を自分に集める。しかし、飛鳥の表情がおかしくなった。

 

「何だ? 逃げ腰になったのか? だったら絵里達を置いて…」

「いえ、痛い目に遭うのはアナタですよ。後ろをご覧ください」

「!?」

 

 Bが後ろを振り向くと、担任の笹原京子がいた。とても険しい顔をしており、Bは青ざめていた。

 

「Bくん」

「ち、違うんです!! こいつが…」

「どういう事か説明してくれるかしら?」

「だからこいつが…」

 

 Bが飛鳥に罪を擦り付けようとしたが、誰が悪いのか一目瞭然だった。

 

「先生―! こいつが絢瀬さんに言い寄って来るんですけど、とってもしつこいんです!」

「しかも私の事、勝手に自分の女とか言ってくるんです!」

「しかもうちら3人に話しかけとるから、このままやとうち等、人気のない所に連れ込まれてスッポンポンにされて、セ×××させられそうやー。どないしましょー」

(えげつねェ!!!!(大汗))

 

 改めて女子怖いと思った飛鳥だった。笹原は卑猥な言葉が出て頬を赤らめた。

 

「ゴ、ゴホン!! どういう事? Bくん」

 

 強姦しようとしていたと聞いて、笹原はBを更に睨みつける。

 

「ち、違うんです先生! こいつが絢瀬さんを…」

「犯人はBくんです!!」

「この子はただ通りかかっただけなんですよ!」

「私達、みーんな見てました!!」

(ああ…。これでオレが犯人ですなんて言われたら、おしまいだわ)

 

 飛鳥が頭をかいたと同時に、Bは激しく責められて涙目だった。

 

「泣くな!!」

「?」

 女子生徒が叫んだ。

 

「泣きたいのは絵里ちゃん達の方よ!」

「被害者面してんじゃないわよ!!」

「泣く前に謝りなさいよ!!」

「ただでさえ受験でイライラしてんのに…」

 

 と、避難轟々だった。確かに3年生は受験勉強を始めてもおかしくはなく、本当にイライラしている状態だった。Bはどうしたら良いか分からない状態だった。

 

「…ああ、これならもう大丈夫そうですね。もう行っても宜しいでしょうか」

「あ、それから君は…2年生の一丈字くんね」

「あ、はい…」

「放課後、職員室に来て頂戴」

「…分かりました」

 

 事情聴取か何かだろうと思い、余計な事は言わずに飛鳥は承諾した。

 

「それじゃ、行ってもいいわ」

「ありがとうございます。それでは、失礼します」

 

 そう言って飛鳥は笹原に頭を下げて、その場を去ろうとした。

 

「あ、ちょっと!」

「私の事はお気になさらずに!」

 

 にこが呼び止めたが、飛鳥は去っていった。

 

 

 

つづく

 



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第8話「彼女たちは見ていた」

これでμ'sが全員出てきました。


 

 そんなこんなで放課後になっていた。飛鳥は笹原に言われた通り、職員室に向かおうとしていた。

 

「さて、行くか…」

 

 その時、穂乃果、ことり、海未がやってきた。

 

「ねえ、飛鳥くん!」

「?」

 

 教室に入って来るなり、穂乃果が飛鳥に話しかけた

 

「今日、時間空いてる?」

「すみません。今日は空いて無いんですよ」

「どうして?」

「職員室に来るように言われましてね…」

 

 飛鳥がそう言うと、穂乃果がジト目で飛鳥を見つめる。

 

「もしかして、Aくんに何かされたの?」

「別の方ですね。またの機会にお願いします。そういう訳で、失礼しますね」

 

 そう言って、飛鳥は職員室に向かっていった。

 

 職員室。飛鳥がノックして入ってきた。

 

「失礼します」

「来たわね一丈字くん」

「あれ?」

 

 職員室にはにこ・絵里・希の他に、女子生徒が3人いた。制服の色は穂乃果達ともにこ達とも違っていた。1年生である。

 

 

「これはこれは…」

「ああ! この人で間違いないにゃ! この先輩が真姫ちゃんの事を助けてくれたにゃ!」

「間違いありません!」

「間違いないわ」

 

 と、3人の女子生徒が言い放った。語尾に「にゃ」とつけている女子生徒は星空凛。その後に答えたのが小泉花陽。そして、最後に喋った女子生徒の名前は西木野真姫だった。3人とも1年生である。

 

 実はこんな事がありました。にこ達と合流する前…。

 

「この辺にはいなさそうだな…」

 

 と、飛鳥が散策をしていると、真姫が脚立の上に立っていて、下には花陽と凛がいた。何かものを取ろうとしていた。

 

 すると突風が吹いて、真姫がバランスを崩して、落下しそうになった。

 

「!!?」

「かよちん!!」

「危ない!!」

「!?」

 声がしたので、飛鳥が声をした方を見ると、真姫が落下しそうになっていた。

 

「キャー!!!!!」

 花陽も悲鳴を上げたが、真姫と凛も悲鳴を上げていた。

 

「危ない!!!」

 飛鳥が瞬時に走り出したその時、誰かに突き飛ばされた。

 

「ぐあっ!!!!」

 飛鳥は転倒した。そして転生者Cが真姫をお姫様抱っこした。

 

「……!!」

 真姫たちが唖然としていた。

 

転生者C「ふう。危ないところでしたね」

真姫「……!!」

転生者C「ケガはないですか? 真姫」

 

 と、転生者Cが微笑みかけた。

 

「…して」

「ん?」

 

 真姫が転生者Cを睨みつけた。

 

「離して!! さっきあの人を突き飛ばしたのちゃんと見てたわよ!!」

「なっ!!」

 

 すると花陽が飛鳥に駆け寄った。

 

「大丈夫ですか!?」

「いたたた…」

 

 この状況に転生者Cも驚きを隠せなかった。

 

「そうにゃ!! 凛もかよちんもちゃんと見てたよ!! 真姫ちゃんを助けようとしたのはありがとうだけど、何もあの人を突き飛ばす事ないにゃ!!」

「そこまでして私に良いところ見せたかったの? イミワカンナイんですけど!!」

 

「なっ!! ひ、人が助けてやったのに何だその態度は!!」

「助けた!? わざと人を突き飛ばしといて何言ってんのよ!! それなら、ちゃんとあの人に謝りなさいよ!! それに、ついてくるなって何度も言ったわよね!!? それからいい加減降ろしてよ!!」

 

 と、真姫はひとりでに降りて、凛と共に飛鳥に近づいた。

 

「大丈夫にゃ!? 足挫いてにゃい!!?」

「凛、この人2年生よ。ごめんなさい、私を助けようとしてくれたんでしょ?」

 

 自分ではなく別の転生者に優しくしている真姫たちを見て、転生者Cの顔は真っ赤になった。

 

「な、何故だ…。何故だ何故だ!! 真姫を助けたのはオレなのに!!」

 

 すると真姫、凛、花陽が睨みつけた。

 

「うるさいわね!! そんな事よりもこの人に謝りなさいよ!!!」

「そうにゃ!! そこまでして女の子を助けてもカッコ悪いにゃ!!!」

「そうです!!」

 

 3人とも怒った顔でCを責め立てていた。飛鳥は困惑した表情を浮かべていたが、Cも引くようすはない。

 

「カッコ悪い…このオレがカッコ悪いだと!!?」

「あーはいはい。もうやめなさいな」

 

 Cが激昂すると、飛鳥が立ち上がって止めた。

 

「確かCさんでしたよね?」

「う、うるさい!! どうしてお前が真姫たちに優しくされるんだ!!!」

「分かりません。ただ、これだけは言っておきますね」

 

 飛鳥がCを見つめた。

 

「女の子を助けたい気持ちは分かりますが、落ち着きましょう」

「……!!」

 

「ふん!! 行きましょ!!!」

 

 と、真姫は飛鳥を連れて凛と花陽と共に去っていった。この後別れるのだが、にこ達とのトラブルに巻き込まれるのだった…。

 

「神様…。これってアトラクションの一つなんですか?」

「いや、転生者の行動パターンを見て、それに合ったイベントが起きるようにしているのじゃが…。このパターンは初めてじゃな…」

「そうですか…」

 

 飛鳥と神様が心の中で会話していた。

 

 

 そして回想は終わり、今に至る。

 

「そ、そう…」

 担任の山内が返事をした。

「あ、えっと…小泉さんを助けてくれてありがとう!」

「あ、いえ…。助けたのは私じゃなくて、彼なんですが…」

 

 本当に助けたわけではないので、飛鳥は複雑そうにしていた。

 

「いいわよ。あんな奴。3年生も助けたんだし、あなたの手柄にしておけば」

「そ、それはどうなのかな…」

「いいにゃ! 人を突き飛ばして謝らない人なんて、ヒーローでもなんでもないにゃ!!」

「ま、さしずめ女の子にモテたいから。でしょうね」

(めっちゃズバズバ言うな…(汗))

 

 真姫の一言に、飛鳥は困惑するしかなかった。本当に困惑するしかない。何しろこんなにズバズバ言うのだから。

 

「それにしてもアナタ…。随分地味ね」

「西木野さん。一丈字くんは先輩ですよ!」

 

 と、真姫たちの担任である山内が諫めた。すると絵里が飛鳥の方を見た。

 

「あ、それはそうと…さっきは助けてくれてありがとう」

「いえ」

「確かに大したことはしてないかもしれへんけど、絵里ちの為に嫌がらせはやめろ言うたやん。それや」

「あー…」

 飛鳥が納得した。確かに言われてみれば言ったような気もしたな…。という感じで思い出していた。

 

「本当に大した奴よ。あんた」

(あぁ…。今まで頑張った甲斐あったなぁ…)

 

 身内以外でこんなに褒められることは滅多にないので、飛鳥は称賛をかみしめていた。しかし、神様からは「転生世界での過剰なまでの称賛が、転生者をダメにした」と言われているため、あまり調子に乗らないようにしていた。

 

「山内先生と笹原先生からお前の話は聞いた。転校初日から本当に大した奴だ」

「いえ、お恥ずかしい限りです…」

 

山田から褒められて、飛鳥が視線を逸らした。

 

「謙遜するな。自信を持て」

(本当に今まで頑張って良かった!!!)

 飛鳥は感涙しそうになったが、何とかこらえた。

 

「…それに比べてあいつは」

「え?」

 すると笹原と山内も沈んだ。

「そうね…うちもまずいかも…」

「……」

(あっ)

 

 飛鳥は察した。この3人の教師はフォーを受け持っていたのだった。これからの学校生活を考えたら、同情するしかない。

 

『ちなみにCの事について教えてやろう』

『え、何かあるんですか?』

 

 神様が突然テレパシーで飛鳥に話しかけた。

 

『自分がヒロインにちやほやされていないと気が済まない性格で、本当に殺しておる』

『……』

 

 ちなみにフォーの特徴

転生者A:正統派イケメン。ジャニーズにいそうな顔。

転生者B:ワイルド系イケメン。俳優っぽい顔。

転生者C:頭脳派イケメン。眼鏡をかけている。漫画に出てくるメガネ系イケメン顔。

 

 ちなみに元の顔は3人とも不細工である。

 

『何度も言っておるが飛鳥よ。お前の仕事はあの3人からμ’sや他の女子生徒を守るという事と、チヤホヤされる事だ』

『ダメになりそう…』

 

 と、飛鳥が弱気な態度を見せていると、山田がため息をついた。

 

「はぁ…。どうすればいいんだ…」

(ガチのトーンで困ってらっしゃる…)

 

 共学化のテストという名目で転入した飛鳥達だったが、状況は最悪だった。眉間にしわを寄せた山田たちの姿がすべてを物語る。もし自分までああなってしまったら、完全に音ノ木坂は暗黒の未来を迎えることになる。そして自覚した。自分が『最後の希望』だと。ゲームでよくあるパターンだが、まさかこんな状況でそのパターンになるとはと、飛鳥は信じられずにいた。

 

「4人中3人がろくでなしとはな…」

「はぁ…」

「……」

 

 転生に限らず、人気アニメのキャラクター達って大変だなぁ…と、飛鳥は思った。

 

 

つづく

 



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μ's編
第9話「夜の戦い!」


 

 その夜、飛鳥は家の周りを見渡していた。神様もいる。

 

「本当にいいおうちをご用意して頂きましたね」

「これでストーカー対策は万全だ」

「何かある前提なのが、少し気になりますけど」

 

 飛鳥が住んでいる場所は、入居者が飛鳥以外いない高級マンションの一室だった。

 

「まあ、ワンルームだから掃除は楽そうだけど」

「いざとなればハウスキーパーや、クリーニングも頼めるぞ」

「居たり尽くせり!! 何かあの人達が駄目になる理由が分かる気がしてきた…」

 

 あまりの待遇の良さに飛鳥は頭をかいた。人間、楽な方に流れていくのは簡単である。

 

「マナーの良い転生者はそういう所もきちんと守ってくれるが…、飛鳥よ」

「何でしょう」

「こういう仕事をしてきて、今までこんなに女性から好意を寄せられる奴、あんまりいなかったぞ。しかもチートなしで」

「またまた。御冗談を」

 

 飛鳥はそう言ったが、本当に勘弁してほしかった。別れるのが非常に辛くなるから。結婚相手は一人に絞らなければいけないし、アニメの女の子と結婚するなどありえない。でも、少なからず情はある。人間だもの。

 

「ちなみにこのマンションにはトレーニングルームも完備しているので、超能力者としての修業も出来るぞ」

「神様の力ってすごい!(大汗)」

「君も凄い。本当に人間かね?」

「人間です」

 

 超能力者であるが故、たまにそう言われる事もある。ちなみに超能力を使うときは、救助がメインで、戦闘ではあまり使わない。それだけ体力を使うのだ。

 

「大技ばかりに頼っても、足元を掬われるだけだしのう。フォーと来たらすぐ大技に頼るからのー」

「……(汗)」

 

 その時、飛鳥の腹が鳴った。

 

「今日は外食しよう」

 身支度する飛鳥。

(この生活…いつまで続くのかなぁ)

 

 飛鳥は心配していた。元の時間に帰る時は、旅立ってから5秒後しか経ってないと聞かされていたが、それまでの間、仲間はどうしてるか等心配になる。

 

 しかし、これも仕事であるため、飛鳥はそのまま外に出ることにした。

 

 マンションを出る飛鳥。

「周りは誰もいないようですね…」

「そうだな」

「近くに食堂屋が何かあればいいんですけど…」

「あるよ」

 

 神様は同行せず、あの世からテレパシーで飛鳥と会話していた。

 

『食堂 ダシマ』

 

(ネーミングセンスェ…)

『いちいち名前つけるのめんどくさいんだろうな。覚えるのもめんどくさいし』

「…まあいいや、あそこで夕食にしよう」

 

 飛鳥が食堂ダシマで夕食を済ませた。

 

「何でもあるな…。ビュッフェ形式」

「ちなみに君はこの店のプレミアム会員なので、良い値段で食事が楽しめるぞ☆」

「朝が500円、夜が1000円ですもんね。そりゃ安いわ」

 

 と、飛鳥はチャーハンを大量に食べた。

 

 そして食事が終わって、飛鳥が店から出てきた。

「ふー、食った食った」

「良く食べるな。君はサ○ヤ人か?」

「地球人です…ん?」

 

 飛鳥がBを見かけた。何やらにやにやしていたし、飛鳥が直感的に嫌な予感を感じ取った。

 

「あの人は…如何にも何かしそうなんですけど」

「どうする?」

「…まさかとは思いますけど」

「神がそんな事するか」

「ですよねー」

 

 飛鳥が真剣な顔で見つめる。神様がアトラクション的な何かでトラブルを起こそうとしているのではないかと考えていたが、本人が否定したため、飛鳥は神様を信じることにした。

 

 とある道路

 

「……」

 一人歩いていた絢瀬絵里は嫌な悪寒を感じた。生徒会の仕事があり、夜遅くまで残っていた。

 

(や、やっぱり誰かにつけられてる…ストーカーかしら…)

(間違いない…やっぱり絢瀬絵里だ…オレの絢瀬絵里…)

 絵里に近づいている事もあり、バレないように変装しているB。絵里が家に向かって早く走るが、Bは逃がさないように追尾する。

 

(イヤ…!!! 誰か助けて…!!!!)

 絵里が家の近くまで来た。

 

(フフフフ…ここが絢瀬絵里の家)

 Bも絵里の家を特定して、気持ち悪い笑みを浮かべていた。

 

 すると絵里は転んだ。

「きゃっ!!!」

 転んで顔を上げる絵里は青ざめた。それもそのはず、後ろから気配を感じていたからだった。

 

(転んだ! 助けて好感度アップだ…!! 君の王子様が助けに行くヨ♪)

 Bが近づこうとすると、絵里が振り向き、目が合った。

 

「い、いやああああああああああああああ!!!!!!! 来ないでぇぇぇぇえええええええ!!!!」

 絵里が泣きながら悲鳴を上げた。

「え? え?」

「お姉ちゃんどうしたの!? あ!!」

 

 絵里の妹である絢瀬亜里沙がマンションの入り口から出てきて、Bと鉢合わせした。

 

(あ! 妹の亜里沙!)

「あ、ああ…!!!」

 亜里沙もBの顔を見てパニック状態になっていた。それもその筈だ。姉がBを見ておびえているのを見て、明らかにヤバい奴だと感じていたからだった。

 

「あ、ぼ、僕は怪しい者じゃないよ!? ほら!」

 Bが顔を見せてイケメンスマイル(笑)を放った。

 

「……!!!」

 亜里沙は完全にBの事を不審者と認識した。

「あ、あり、あり、亜里沙!! あなたは危ないから家にいなさい!!」

「ご、ゴメン…。あ、足がすくんで…!!」

 

 と、亜里沙も恐怖で動けなかった。これはアトラクションなんかではない。本当におびえているのだ。それもそうだ。飛鳥達から見たらアニメのキャラクターだが、彼女たちはこの世界で飛鳥達と同じように「普通の人間」として生きているのだから。恐怖があって当たり前だ。

 

「ほ、本当に何なのよ!! ホントに!! い、妹にだけは手を出させないんだからぁ!!」

「ち、違うんだ! 僕はただ君を…」

絵里「来ないでぇ~~~~~~~~~!!!!!」

 絵里が泣き喚いていた。Bはとても鼻息を荒くして近づこうとしているのだから…。

 

「…神様」

「何だ?」

 飛鳥が陰から絵里達を見ていた。

 

「もしもあのBさん達がマナーの良い転生者だったら、ちゃんと仲良くなれたんですよね?」

「勿論。与えてやったチャンスを悉く踏みにじりおって…神を怒らせるとどうなるか教えてやる必要があるのだよ」

「実際に下そうとしてるのは、私なんですけどね」

「細かい事は良い! 助けに行くのだ!」

「え」

 

 ドンッ!!!

 

「うわあああああああああああっ!!!」

 

飛鳥は後ろからぶっ飛ばされるように、Bと絵里の前に現れた。勿論受け身を取っている。

 

「いてててて…」

 

 

 つづく

 



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第10話「絵里と亜里沙を守れ!」

 

 

「そういうパターンかよ…」

 

 受け身を取った飛鳥はすぐに起き上がった。絵里、亜里沙、Bが飛鳥を見て驚いている。

 

「あ、き、君は!!」

「!!?」

 

 絵里と亜里沙が飛鳥を見て驚いていた。

 

「すみません。実は…」

「こいつだ!!」

「!!?」

 

 Bが叫んだ。

 

「こいつが絵里の事を付け回してたんだ!! オレは絵里の所に活かせまいとずっと後ろにいて君を守ってたんだよ!!」

 

 と、とんでもない嘘を突き出した。

 

「う、嘘仰い!!! 嘘をついてるのはあなたでしょ!!!」

 

 絵里が叫んだが、Bは無視をして飛鳥を睨みつけた。

 

「お前!! 絵里を付け回してどういうつもりだ!!!」

「あ、笹原先生にはもう連絡入れときましたので」

「なっ!!」

 

 B達が驚いた。すると飛鳥が絵里に近づいた。

 

「大丈夫ですか? 立てますか?」

「う、うん…」

 

 すると飛鳥が亜里沙を見つめた。

 

「ご家族の方ですか?」

「え? あ、は、はい…」

 

 亜里沙は若干放心になりながらも答えた。

 

「この人の相手は私がします。あなたは絵里さんを家に連れて帰ってください」

「……!!」

 

 さっきまで足元をすくんで動けなかった亜里沙だったが、勇気を出して歩き出した。

 

「お姉ちゃん!! 行こう!!」

「え!?」

「いいから!!」

 

 と、亜里沙は絵里を担いでいった。

 

「あっ!!」

 

 Bが追いかけようとするが、飛鳥が足止めした。

 

「私がお相手しますよ」

「……!!」

「最も。警察は呼んだので、じきにあなたを捕らえに来ます」

 

 するとBが笑みを浮かべた。

 

「そうかよ…。だがこっちには転生チートの力があるんだ! お前にはここで死んでもらう!!! 後で何とでもできるんだからな!!」

 

 と、Bがチートの力を使おうとしたが、何も起こらなかった。

 

「……」

「な、何故だ!? 何故何も起こらない!!!」

「どうしたんです? 一体何の話してるんですか?」

「て、てめぇ!! 一体何をしやがった!!」

 

 と、Bが飛鳥の胸ぐらをつかんだ。

 

「今すぐ元に戻せ!! あれがないとオレは…」

 

 その時、警察官がやってきた。

 

「君たち!! こんな所でなにをしている!!!」

「く、くそう!!!」

 

 と、転生者Bは逃げ出した。飛鳥は特に追いかけることはしなかった。

 

「……」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

「間一髪じゃったのう」

「ええ…」

 

 またテレパシーで話をしだした。

 

「それにしてもお前さん、やるではないか。もうフォー達のチート能力を封じたのか?」

「ええ…。修業にはなりませんけど、奴らの顔を見たら、もうμ’sの人たちの安全を優先した方が良いかと思いましてね…。それに、こんな街の中で能力者バトルなんてやったらアレですし、ラブライブはそういう作品じゃないでしょう」

 

 飛鳥が一息ついて、疲れ切った顔をした。実はこの騒動が起こる前に、A、B、Cのチート能力を超能力で封じ込めていたのだった。いくらチート能力を持っていたとしても、油断をしていれば奪われたことに気づかないとのことである。

 

「まあ、奴らに与えたのはアトラクション用のものじゃからのう…」

「こういう事が起こるたびに思いますよ。もうハーレムどころじゃありませんって…」

 

 飛鳥が疲れ切った顔をしていたが、それもつかの間、絵里達の事が気になっていた。

 

「そういやどの部屋なんだろう…」

 

 と、飛鳥が見つめていると、亜里沙がベランダから顔を出した。

 

「!」

 

「どうなりました…」

 

 亜里沙が状況を聞こうと大声を出そうとしたが、飛鳥が手を突き出して制止した。

 

「!?」

 

 飛鳥はうまくジェスチャーをして、中で話が出来ないか交渉した。

 

 

 絵里と亜里沙のマンションのエントランスホール

 

「絢瀬先輩、大丈夫ですか?」

「……」

 

 椅子に腰かける絵里に話しかける飛鳥。亜里沙も心配していた。

 

「学校には私から説明…」

 

 その時、絵里が飛鳥に抱き着いた。

 

「!!!(大汗)」

「…ぅうわあああああああああああああああああああん!!! こわかったよ~~~~~~!!!! え~~~~~~~~ん!!!!」

 

 絵里は子供のように泣きじゃくっていた為、無下にできず飛鳥は絵里を優しく抱きしめて、頭を撫でた。

 

 暫くして…

「本当にお姉ちゃんを助けて頂いて、ありがとうございましたっ!!!」

 

 と、妹の亜里沙から何度も頭を下げられた。

 

「いや、それは構いませんが…。絢瀬先輩」

「な、なに…?」

 

 絵里はまだ泣きじゃくっていた。

 

「音ノ木坂の先生のどなたでも構いません。連絡先って分かりますか?」

「…理事長なら」

「分かりました」

 

 飛鳥が理事長に電話を掛けた。

 

「もしもし?」

「もしもし、南さんの携帯でお間違いないでしょうか?」

「その声は…一丈字くん?」

「ええ、そうですけどその声…もしかして、南さん!? 隣のクラスの…」

「そ、そうだよ。南ことり…。うちの電話番号なんだけど…」

「え!? あ、失礼しました!!」

 

 理事長の携帯番号ではなく、ことりの家の電話番号だったのだ。間違っていたことに飛鳥は慌てて謝った。

 

「理事長先生はいらっしゃいますか?」

「お母さんは今お風呂だけど…どうしたの?」

「実は…」

 

 飛鳥が事情を説明した。するとことりはとても驚いていた。

 

「ええっ!!? そ、そんな事になってるの!!? 大丈夫なの!!?」

「何とか追い払ったんですけど、問題なのはこの後なんですよ。私がいなくなった後に来る可能性は高いので、今夜は2人だけにしておくのは危険です。で、私は一人暮らしなので、それはそれでちょっと問題なんですよ。で、夜分遅くに申し訳ないんですけど、どなたか泊めて頂ける人がいないか探してて…」

「わ、分かった!! ちょっとお母さんに相談してみる!!」

「あ、今じゃなくても…」

 

 と、ことりは受話器を離して、理事長に相談しに行った。

 

「行っちゃった…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「あの…」

「?」

 

 飛鳥が後ろを振り向くと、絵里と亜里沙が涙目で飛鳥を見ていた。

 

「ゴメンね…。私達のせいで…」

「いや、それは大丈夫なんですが」

「おうちの人は大丈夫ですか!?」

「あ、私一人暮らしなので心配いりませんよ」

 

 亜里沙の問いに飛鳥は苦笑いして答えた。

 

「もしもし飛鳥くん!!?」

「!?」

 

 ことりから電話が来た。

 

「お母さんが今からそっちに行くって!!」

「分かりました! ありがとうございます!!」

 

 

 と、理事長が自ら絵里の家に出向くことになった。

 

「とはいえ、まだ安心できないので私のそばを離れないでください!」

 

 と、その時、絵里が横から飛鳥にくっついて、飛鳥の右腕に自分の腕を絡めていた。勿論おっぱいも当たっている。Bが見たら発狂するだろう。『よくも…よくも絵里のオッパイ…いや、えりっぱいを』などと、はい、この話はもう終わりにしましょう。

 

「いや、それはちょっとくっつき過ぎですね…(汗)」

 

 躊躇もなく、異性の腕を絡めて、その上胸まで当てている絵里に困惑する飛鳥だった。気持ちは分からなくはないが…と、飛鳥は複雑だった。

 

「あ、あのう…」

 

 亜里沙も涙目で飛鳥を見ていた。

 

「あ、亜里沙も…くっついていいですか?」

「あ、どうぞ…」

 

 と、亜里沙も飛鳥の服をつかんでいたが、手が凄く震えていた。

 

 

(まあ、このまま待つか…)

 

 

 と、飛鳥は理事長が来るのを2人と一緒に待ち続けた。

 

 

つづく

 



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第11話「人の心を忘れずに」

 

 

 暫くして、理事長が絵里達のマンションに到着して、絵里と亜里沙は保護された。2人が理事長の車に乗せられるのを見送った。その時に亜里沙から何度も頭を下げられたという。

 

 

 翌朝、飛鳥は笹原達にも事情を説明した。

 

「…という訳なんです」

「そ、そうですか…あぁ…」

「さ、笹原先生!!!」

 笹原はショックで倒れそうだった。前々からそういう節があったとはいえ、そこまでするなんて…と、信じられない気持ちでいっぱいだった。隣にいる山内は本当に心配していた。

 

「一丈字。お前はよくやってくれた。本当に凄い奴だ」

「いえ、嫌な予感がしたので、見張っていて良かったです」

 

 山田に褒められたが、飛鳥は複雑な気持ちでいっぱいだった。それもそうだ、知り合いが強姦されそうになっていたのだから、気が気じゃない。

 

「一時的ですが、絢瀬さんのご両親が帰国されるそうなので、あとは絢瀬さん達の判断にお任せしたいと思います」

「そうか…」

「それから…絢瀬さんのケアをお願いします。最後に彼女をみた段階では、落ち着きを取り戻していますが、かなりショックを受けているようなので…」

「…分かった」

 

 山田も複雑な表情を浮かべる。

 

 

「ひっく…ひっく…」

「お姉ちゃん…大丈夫?」

 

 絵里と亜里沙は保健室にいた。というのも、自宅にいるとまた転生者Bが襲い掛かってくる可能性が高い為、避難しているのだ。

 

「ごめんね…ごめんね…。えりーちか…おねーさんなのに…」

 

 絵里が亜里沙に泣きじゃくっていた。正直、妹に頼るのは姉としてプライドが許さなかったが、それだけBが怖かったのだ。

 

「大丈夫だよ。確かにお姉ちゃんは亜里沙のお姉ちゃんだけど、無理しなくていいんだよ。怖いなら素直に怖いって言えばいいんだし…」

「うぇぇぇぇぇええええええええええええええん」

 

 絵里が声を上げて泣くと、亜里沙も泣きそうになっていた。その時、保健室の外からノックする音がしたので、絵里と亜里沙が吃驚して震えていた。

 

「絵里ち。亜里沙ちゃん。うちや、入るで」

「希…?」

 

 声が同級生で一番仲の良い東條希の声だと分かると、絵里は一安心した。そして扉を開けて中に入ってきた。希に続いてにこ、希、飛鳥が入ってくる。

 

 すると希、にこ、笹原が入ってきた。飛鳥も一応同行してきたが、中には入ろうとしない。

 

「……!」

「絢瀬さん。大丈夫?」

「先生…」

 

 担任である笹原が絵里の体調を心配していると、にこが飛鳥の方を向いた。

 

「アンタも来なさいよ」

「いえ、男性がトラウマになってもおかしくない状況ですので…」

「アンタはいいのよ! ほら、こっち来なさい!」

 

 にこが飛鳥の手を引っ張って、中に入れた。

 

「絢瀬先輩、大丈夫ですか?」

「うん…」

「そうですか…」

 

 苦笑いして強がる絵里を見て、飛鳥は困った顔をする。

 

『このように、奴らは今までヒロイン達に迷惑行為を繰り広げてきたのだ』

『となると…私も命を狙われますね』

『ああ…』

 

 飛鳥と神様がテレパシーで会話をする。

 

『あの、神様…』

『なんじゃ?』

 

 飛鳥が困った顔をする。

 

『アナタ方の復讐が果たされるまで、彼女達をこんな目に遭わせるのですか? さっさと追い出した方が…』

『そうじゃな。じゃが、これ以上被害者を増やさない為じゃ。もうこの物語で終わりにしたいんじゃ』

『……』

『お前さんが支えになればいいだけの話だし、いざっていう時にはちゃんと手を打っている』

『くれぐれも今後は怖い思いは極力させないでくださいね…。後で私も同類にさせられる可能性もありますし』

『ないない。それは絶対ない』

 

 と、神様が根拠もないのにきっぱり否定したので、飛鳥は更に困った顔をしていた。

 

「それにしてもBって本当に地球のゴミよね! 死ねばいいのに!」

「死ねは言い過ぎやけど…せやなぁ、ホンマに偉い事になってもうたわ」

「……」

 

 Bの話になり、絵里がまた震えだした。にこと希に至っては、Bに対する評価は最底辺になっている。飛鳥と神様としては思惑通りになっているのだが、彼女たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。そんな中、希が絵里に近づいた。

 

 

「絵里ち。気持ちは分かるけど、生徒会長やろ? な? 元気だし」

 

 と、希は後ろから絵里を抱きしめた。この時絵里は小動物のように震えていた。

 

「それにしても、飛鳥くんにはホンマに頭が下がるわ。絵里ちを二度も助けてくれるんやから」

(…その前に、突き止めた事に関しては特に突っ込まないのかな)

 

 希が飛鳥の方を向いて褒めてたが、飛鳥に至っては自分も怪しまれるんじゃないかと心配していた。

 

「あ、そ、そうでした! お姉ちゃんを助けてくれて、本当に…本当にありがとうございました!」

「いえ、お気になさらないでください」

 

 亜里沙が頭を下げたので、飛鳥が苦笑いした。そして絵里の方を見た。

 

「…暫くは1人で出歩かない方が良さそうですね」

「そうね…」

「それは心配せんでええで。うちとにこっちに任しとき」

「分かりました。お願いします」

「……」

 

 絵里も飛鳥を見つめる。

 

「そういう訳ですので絢瀬先輩、もう心配は要りませんよ。私は教室に戻りますね」

 

 そう言って飛鳥が去ろうとすると、絵里が飛鳥の服の袖をつかんだ。

 

(何か…フラグ建ったっぽい?)

(建ったな)

 

 飛鳥が絵里の方を振り向くと、絵里は俯いて飛鳥の服の袖を離さないままだった。

「どうしました?」

「…め」

 

 絵里がか細い声で何か言ったので、飛鳥はもう一回聞くことにした。

 

「すみません。もう一度お願いします」

 

 すると絵里は目に涙を浮かべて、飛鳥を見た。

 

「いっちゃだめ…!」

 絵里はまた泣きそうになった。この状況ににこ達も驚いていた。すると笹原が困惑した表情を浮かべて飛鳥を見た。

 

「…一丈字くん、悪いんだけどもうちょっとだけ一緒にいてくれないかしら」

「私で宜しいんでしょうか…」

「いや、滅茶苦茶アンタじゃなきゃダメな感じじゃないの…」

 

 と、にこが突っ込みを入れると亜里沙が頭を下げた。

 

「あの、お願いします! ちょっとだけでいいので、もうちょっとだけ一緒にいて貰えませんか?」

「ていうか男でしょ。黙って一緒にいてあげなさいよ」

 

 飛鳥が困惑した表情を浮かべた。

 

「一緒にいる事は別に構いませんけど、私も男ですよ。その辺は大丈夫ですか?」

「成程。そういう気遣いは大事やな」

 

 絵里が頷いた。

 

「分かりました」

「それなら話は決まりやな」

「ちなみにBは停学を言い渡したから安心して」

「ありがとうございます」

『楽には殺さんぞ』

『……』

 

 神様の発言に、本当に大丈夫なのかと心配する飛鳥だった。

 

 

 その頃、Bはというと…。

「畜生…どうしてこうなるんだよ!!!」

 

 と、ものを壁に投げつけていた。朝、南や笹原から停学を言い渡された上に、こっぴどく怒られた。となれば、もうクラスや学校での自分の評判は滅茶苦茶である。これも全部一丈字のせいだと、Bの憎悪は増していった…。

 

 

つづく

 



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第12話「飛鳥 VS 転生者A!」

 

 

 2年2組の教室。飛鳥と絵里、そして転生者Bの話題でもちきりになっていた。

 

「ねえ、聞いた?」

「聞いた聞いた。一丈字くん…変態ストーカーのBから、生徒会長を守ったんだって?」

「ホントに凄いよねー…あの子」

 

 そんな中、面白くなさそうに表情を歪めていたのは転生者Aだった。

 

(くそう…本来はオレが一丈字のポジションにいるべきなのに!!)

(はぁ…またこいつは…)

 

 ヒフミトリオの一人、ミカがうんざりした顔でAを見つめる。運悪くAの隣の席になってしまい、何かしらAの顔を見てはうんざりしており、一日でも早く席替えをしてほしいと思っている。

 

「1年生も間一髪で助けるし、昼休憩も会長達を助けたんでしょ? 本当に凄いよね…」

「ていうか、一丈字くんって結構トラブルに巻き込まれるよね」

 

 この言葉を聞いたAは席を立ちあがり、すかさずこう言った。

 

「そうだ! 全部あいつが悪いんだ! あいつが裏で何かしているんだよ!」

 

 は? 何言ってんだコイツという顔でAを睨む。とんでもない言いがかりだ。

 

「あのさぁ…」

「?」

 

 ヒフミトリオの一人、ヒデコがうんざりしたような顔でAに話しかけた。

 

「それってなに? 一丈字くんに対する嫉妬?」

「言っとくけどね。仮にそうだとしても、アンタの好感度上がんないよ? それに今の発言だって、一丈字くん可哀想って話だし」

「そうそう。でさ、隣で不機嫌そうにするのやめてくんない? そろそろ鬱陶しいんだけど」

「!!」

 

 Aははっとなった。よくよく考えたら、ヒロインに嫌われる行動ばかりしているではないかと考えていた。ヒフミトリオだけではなく、他の女子生徒も同様の反応だった。

 

 

「あ、ああ…そ、そうだね。ゴメンゴメン。今度からは気を付けるね!」

 

 と明るく言い放つが、信頼は完全に失墜していた。

 

(…くそっ!!!)

 

 当然面白いはずもない。そう考えていると、飛鳥が通りかかり、穂乃果が飛鳥の顔を見るなり叫んだ。

 

「あ、飛鳥くん!」

「!?」

 

 Aは心底憎む顔で飛鳥を見た。飛鳥はふと驚いたが、穂乃果に返事した。

 

「あ、高坂さん。こんにちは」

「聞いたよ! 絵里ちゃんの所にずっといたんだって!?」

(え!?)

 Aは驚いていた。

(そ、そんな馬鹿な! この時点ではまだ廃校の話も出てないし、知り合いでもないんだぞ!!?)

 

 そう、まだ第1話の時点にもなっていないのだ。

 

(お前達が無茶苦茶やってくれたお陰で、シナリオの流れもおかしくなったんじゃよ。こちらも好き勝手にやらせてもらう!)

(大丈夫かなぁ…)

 

 飛鳥はもう心配事しかなかったが、冷静さを取り戻して会話を続けることにした。

 

「ええ。ですが、落ち着きを取り戻しました」

「良かったぁ…」

 

 ことりが胸をなでおろした。

 

「南さん。昨晩はありがとうございました」

「う、ううん!! 気にしないで!!」

(な、なんだと!!?)

 

 飛鳥とことりの会話にAが反応した。お前らそんなに関係が進んでいたのか!? と、驚きが隠せなかった。

 

「あ! それはそうと飛鳥くん! ストーカーを追い払ったんでしょ!?」

「えーと…」

 するとAが立ち上がって、飛鳥に近づいた。

「どうしたんです?」

「ちょっとこっち来い」

 

 そう言ってAが強引に飛鳥を連れて行った。

 

 人込みのない所

「どうかしたんですか? 私の顔に何かついてるんですか?」

 

 飛鳥が困惑しながらAに話を聞こうとしたが、瞬時に飛鳥の鳩尾に裏拳をお見舞いした。

 

「うッ…!!!」

「出しゃばってんじゃねーよ。オレの時といい、Bの件といい、何で邪魔ばかりする」

 

 Aの目は殺意に満ちていた。

 

「グハッ!!」

 

 殴られた拍子に飛鳥は吐血した。

 

「血を吐いてんじゃねーよ!! どうせチート能力があるんだろうが!!」

 

 と、Aは飛鳥を殴り続けた。飛鳥はチート能力によって、感覚がマヒしていると感じていた。

 

「邪魔をするなんてそんな…」

「お前、何か能力があるんだろ」

「能力?」

「お前がμ’sを洗脳してるんだろ!」

(オレじゃなくて運営なんだけどね…)

 

 運営が関わっていると言ってしまっても、信じて貰えない可能性があった為、飛鳥は何とも言えなかった。あったとしても、どんな注文をつけてくるか分かったものじゃない。正直話を聞くだけめんどくさいと飛鳥も感じていた。

 

 

「今すぐ元に戻せ! 何でヒロイン達はこんなにオレに冷たいんだよ!?」

(自分の行いが原因で、運営が重い腰を上げたんだよ…)

「とにかくお前がいると邪魔なんだよ! オレを取り合って喧嘩をしてほしいんだよ! チヤホヤしてほしいんだよ! ハーレムにしろよ!」

 

 と、殴りながらぶーぶー言い放つ。飛鳥自身は攻撃はかわせるが、反撃する事は無かった。

 

「そ、そんな事言って大丈夫なんですか…?」

「何が大丈夫なんだよ! 殺すぞてめぇ!!」

 Aが飛鳥の胸ぐらをつかむと…。

 

「いい加減にしろA!!!」

 

 という声がした。山田先生を筆頭に、A組の面々が現れた。飛鳥が攻撃をしなかったのは、完全に味方をつける為である。

 

「な……!!」

「お前が言いたい事はよく分かった。どうやらお前…そういう趣味があったようだな。気持ちは分からなくはないが、学校のルールは守れ!」

 

 山田だけでなく、穂乃果達にまで見つかってしまい、青ざめるA。

 

「そうだよ! ホントにいい加減にしてよ! 飛鳥くんは何も悪くないじゃん!!」

「あ!!」

 

 ことりが悲鳴を上げて、両手を口に当てた。

 

「ど、どうしたんですか?」

「飛鳥くん、口から血が…」

「!!」

 

 穂乃果達も飛鳥の吐血に気付いて、青ざめた。穂乃果とことりが飛鳥に駆け寄った。

 

「大丈夫!!?」

「気分悪くない!?」

「あ、大丈夫ですよ。元々体が弱くて…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、海未が前に出てAの前に出た。

「ち、違うんだ海未!! 悪いのはオレじゃない!! 悪いのは君に手を出そうとした一丈字で…」

 

 すると海未が思い切りAの頬を叩いた。

 

「あなたは最低です!!!」

 

 涙目で言い放った。

『これがラブライブ名シーンの一つ、「あなたは最低です!」だ』

『え、そ、そうなんですか…?』

『お前もされる可能性はあるぞ。道を踏み外せば…な』

『そ、そうですか…』

 

 神様と飛鳥がテレパシーで会話していた。

 

「一丈字さんがそんな事する訳ないじゃないですか!! もう関わらないでください!!」

 

 皆がシーンとした。

 

「大体、何がハーレムよ!!」

「こんな大変な時に何考えてんのよ!! バカじゃないの!?」

「そうだそうだ!」

 

 ヒデコ、フミコ、ミカの順に怒鳴ると、女子たちが一斉にAを睨みつけた。

 

(絶対一丈字だ…。一丈字が何かしたに違いない…!!!)

(してねェよ…。そんな事してこっちに何のメリットがあるんだ)

 

 絶対自分が何かしていると踏んでいるAに対し、飛鳥はあきれ果てていた。

 

「とにかくAは職員室に来い!」

「くっ…!!」

 

 Aは渋々連行されていった。

 

ヒデコ「バーカ!! こってり絞られちゃえー!!」

フミコ「もうお願いだから学校辞めてよ!!」

ミカ「もうこっちも泣きたいよ…」

 

 ヒデコ達は連行されるAに罵声を浴びせ続けた。

 

「ふぅ…」

 飛鳥が一息ついた。

 

『どうだ。あいつの拳は』

『…いや、あんまり大したことなかったですね』

 

 飛鳥と神様がまたテレパシーで会話をする。

 

『そりゃそうじゃ。チート能力を失くしたんじゃからな』

『……』

『今のアイツらは裸の王様だ。過去の栄光に縋りついている哀れな連中だ)

『…よっぽど恨みがあるみたいですね』

『そして止めは、これ以上という程ない恥ずかしい思いをさせてやる』

『……』

『50話までまだ時間はある。たっぷり玩具としてやるぞ』

『……(汗)』

 

 飛鳥は困惑していた。そんなにフォーに手を焼いてたんだなと…。

 

『それはそうと飛鳥くん。本当に大丈夫!!?』

『ええ、これくらいどうって事ありませんよ…』

 

 穂乃果が改めて飛鳥を心配していた。

 

『いやいや、口から吐血って結構大事なんだけど!!』

『もう傷害事件で訴えるべきよ!!』

 と、飛鳥の周りには女子が囲んでいた。

 

「な、何故だ…。何故あいつにあんなに女子が…!!」

 

 陰で見ていた転生者Cが驚いていた。

 

『やっぱりあいつは排除するべきだ…。このままだとオレの真姫も…』

「Cくん」

 

 Cが振り向くと、山内がいた。

 

「何をしているんですか…?」

 

 山内の後ろで、花陽・凛・真姫が怒った顔で睨んでいた。

「あ、こ、これはですね…」

「何でもいいけど、誰がオレの真姫よ。イミワカンナイ」

「きもいにゃ」

「……」

 

(あっちで、何かが起きているな…)

 飛鳥はC達がいる方を見た。

 

 

 

つづく

 



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第13話「崇められる者と蔑まれる者」

 

 

 

 それから、学園生活は続いていった。飛鳥は少しずつではあるが、女子からの評判は高まっていった。

 

 例えば調理実習。

 

「一丈字くん! すごーい!!」

「家で料理しますからね」

 

 この日の授業はケーキを作る事になっており、飛鳥はメレンゲを作っていた。ちなみにメレンゲはかきまぜるのにもテクニックがいるし、力仕事でもある為、色々大変らしい。

 

「あ、メレンゲすぐに立った!」

「あ、ギターやってて、ギターのストロークに似てるんですよ」

「ストローク?」

「ああ。弾き方の一つなんですよ。音の低い弦から音の高い弦に向けて垂直にかき鳴らす方法です」

「今度やってみせてよ!」

「機会があれば」

 

 4人1組のチームを組んで調理実習が行われていたが、飛鳥の争奪戦になっていた。絵里を助け出した事が大きいが、普段の飛鳥の授業態度からも信頼を掴み取り始めていたからだった。

 

 -回想-

 

「いい!? 勝ったチームが一丈字くんとペアを組めるのよ!」

「恨みっこなしだからね!」

「あのー…」

「一丈字くんは黙ってて!!!」

 

 飛鳥が何か言いだそうとすると、女子たちが一斉に止める。

 

「料理できないかもしれないんですよ?」

「いいの! 出来なくても私達がカバーするわ!!」

「やっぱり男子がいるとやりがいがあるわよねー」

 

 それを言ったら他の3人は一体どうなるのだろう。と、飛鳥は疑問に思いながらも、女子たちの争いを見守る事にした。

 

「いよっしゃああああ!!!」

 

 勝った女子生徒が雄叫びを上げて、一緒に組むチームメイトも喜んでいた。

 

「アンタ後出ししたでしょ!!」

「やり直しやり直し!!」

 

 負けたチームは抗議していた。これでは完全に自分がモテてるみたいではないかと、飛鳥は心の中で思っていた。

 

(神様…これ、やり過ぎでは)

(そう思うでしょう。だけど、女子高ってこういうノリみたいだぞ)

(そうですか…)

 

 最近の女子高生は元気だなー…と、飛鳥はそう思う事にした。

 

 

「完成ですね! ベイクドチーズケーキ」

「本当においしそう…」

 

 チーム外の女子生徒達が集まっていた。というのも、本当に店に出てそうなチーズケーキだったからだった。

 

「食べていい?」

「どうぞ」

 

 飛鳥がそう言い放つと、一部の女子達が飛鳥を見た。

 

(良い声…)

(それに落ち着いてるし…A組絶対悔しがってるだろうなー)

 

 一緒にチームを組んだ女子がケーキを食べた。

 

「おいし~!!」

飛鳥「そうですか?」

 飛鳥が向かい合って座っていた女子の顔を見て、口角を上げた。

「……//////」

 女子生徒が頬を染めた。そして周りの女子生徒も頬を染めた。それを見て、飛鳥は困惑した。え、オレ何かした? みたいな感じで。

 

「……(汗)」

『一丈字くん』

『何です?』

『笑っただけで異性を赤面させて惚れさせる力をよく転生者に与えているのだが…君は自力で会得しているようだな』

『何が言いたいんですか…。そんなんじゃないですから』

 

 飛鳥は若干恥ずかしくなった。思えばこれまでも、知人からそういう所があると突っ込まれていたが、認めてしまえば何かダメになってしまいそうだったので、これ以上は何も言わなかった。

 

「あー…一丈字くんはまともで良かった」

「もし私が彼らと同じことをしたらどうしますか?」

「追い出すけど…する予定あるの?」

「ありませんよ。絢瀬先輩の事もありますし…まあ、ちょっと色々ありましてね…」

 

 飛鳥が視線を逸らした。女子達は不思議そうにしていた。

 

「どうしたの? 私達に話してよ」

「山田先生からは「お前が最後の希望」だと言われました」

「うん、そりゃそうだよ」

「ですよね」

 

 飛鳥も女子生徒達も沈んだ。そりゃそうだ。あのフォー3人は女にモテる事しか考えてない猿野郎なのだから。神様の力を使って強制的に追い出してしまえば、一発で済むのだが…難しい話である。

 

「大丈夫だよ! 少なくとも今までの功績もあるし、多少は大目に見てあげるわ。でも、流石におイタが過ぎたらダメよ?」

(出来ませんよ。こちらには運営が見張ってるから)

 

 女子生徒の発言に飛鳥は心の中で突っ込んだ。

 

「それにしても一丈字くんがいるとこんなに楽しいなんて思わなかったなー」

「そうだよねー」

「……」

 

 1組の女子の純粋な笑顔を見て、飛鳥の涙腺が若干緩んだ。今まで同級生に嫌われることが多かったので、頑張った甲斐があると感じていた。

 

「…一丈字くん?」

「あ、いえ。何でもありませんよ。本当に受け入れてくれて、ありがとうございます」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

「ほら、沢山ありますからもっと食べてください」

 飛鳥が口角を上げた。

 

 

 また、とある時間の事。2組は体育の授業が行われていた。

 

 

(うっひょお!! μ’sの体操服姿…!! 最高だ!!)

 

 転生者Aは下衆な目で海未を見ていたが、それを見透かされていて、ほぼ全員からゴミを見る目で見られていた。ちなみに海未はジャージの上を着ている。

(しかしジャージが邪魔だな…)

 

「よーし。それじゃ早速2人1組になれ」

「園田さん! 僕と」

「お前は私とだ!!」

 

 山田はイライラしながら叫んだ。というのも、転生者Aが飛鳥に暴行したことで、完全にAに対する信頼はゼロになっていたからだ。それでも生徒として接さなきゃいけない為、本当にイライラしていた。

 

 そしてそれを遠くから見ていた1組の面々。美術で写生大会をしていた。担任の深山も同行している。

 

 

「……(汗)」

「見事に嫌われてるわね…」

「かける言葉が見つかりません…」

 

 飛鳥が深山とともに困惑した。

 

「はー…2組はこれから地獄になるのね」

「かわいそー…」

 

 1組の女子生徒達も、2組に同情していた。そりゃそうだ。あの性欲の権化がクラスにいるのだ。

 

「ここだけの話ね、成績上位者が一丈字くんと同じクラスっていう話が浮上してるのよ」

(やり過ぎやろ)

 

 そんなにフォーが嫌いか。ていうか、そんなことして大丈夫なのかと飛鳥は思っていた。

 

『問題はない』

『あるだろ!! 一体どこにそんな学校があるんだ!!(大汗)』

『ここにある!!!』

『えー…(汗)』

 

「え、マジで!!?」

「うっそー!!!」

(いたり尽くせり…)

 

 本当に全部知られたらえらいことになるぞ…と、飛鳥は心底喜べなかった。

 

「うぅ…何でこんなことになったのよォ…」

「もうダメだぁ…おしまいだぁ…」

「まさに地獄よ…」

 

 ヒフミトリオをはじめ、2組のテンションは完全に地に落ちていた。

 

(うぅぅ…。やっぱり変な目で見てくるよぉ…)

(…怖いです)

(……)

 

 怖がることり、海未に対し、穂乃果はイライラしていた。

 

(完全にテンションが落ちているが…まあいい、あいつもいないから少しずつ回復すればいいさ)

 

 全く懲りていなかった。もう頭の中は穂乃果達をメロメロにして、セックスする事しか考えてなかった。

 

「……あ!!」

 

 その時、穂乃果が遠くにいる飛鳥に気づいた。

 

「どうしたの? 穂乃果ちゃん」

「あそこに1組がいる! 飛鳥くんもいるよ!!」

「え!?」

「ホント!!?」

 

 他の生徒も飛鳥達を見た。

 

「おぉぉぉーい!!!!」

「助けて――――――――――――!!!」

「あなたが2組に来て―――――――――――!!!!」

 

 と、ヒフミトリオが叫ぶと、他の生徒も声を上げた。

 

「…何か助けてって言ってるんだけど」

「もしもうちに最初からあいつがいたら、私達があんな事になっていたのか…」

 

 1組の女子生徒達は心の底から2組(A除く)に同情していた。あんな変態がクラスメイト、教え子なんて冗談じゃないと。

 

「…頼んだわよ、一丈字くん」

「…はい」

 

 深山の呼びかけに飛鳥も答えたが、2人ともげんなりしていた。飛鳥に至っては、冗談抜きで同じ男性として恥ずかしいし、申し訳ないと思っていた。

 

 というかもう、転生センター閉鎖した方がよくね? と考えていた。

 

「山田先生も言ったけど、アナタが最後の希望よ」

(山田先生も止めない辺り、本当に追い詰められてるな…あ、Aさんがこっち睨み付けてる)

 

 また邪魔しに来たのか…とAが醜い顔で飛鳥を睨み付ける。本当にイケメンがしていい顔ではなく、不細工がイケメンに嫉妬する顔だった。

 

「あいつ、こっち睨み付けてる~!!」

「きもーい!!!」

「一丈字くんに嫉妬してるのよ! 行きましょ!」

飛鳥「え、おっと…」

 

 1組の生徒数名が飛鳥を退散させた。

 

「一丈字(飛鳥)くーん!!!!!(泣)」

 2組の女子生徒が悲鳴を上げた。

 

「一丈字の事なんかほっといて、早く授業やろうよ!」

「は? 一人でやってなさいよ」

 

 転生者Aがにこやかで話しかけたが、女子生徒がゴミを見る目でAを睨んだ。まだ自分がモテると思ってんのかこいつ。と言わんばかりに。

 

「先生。Aくんだけ特別メニューでお願いしまーす」

「そうだな…」

 

(何でだ…何でこんなに冷たいんだよ…!! 全部あいつのせいだ…!!)

 

 と、自分が殴ったことで信頼をゼロにしたのにも関わらず、転生者Aは飛鳥を憎んだ。

 

(ていうか去っていくとき、おっぱい当たってたよな!!? チクショオオオオオオオオオオオオ!!!!!)

 

 

 Q. 実際どうでした?

 

「いや、そんな事ないよ」

「え、私そんなにちっさい?」

「…ん?」

 

 

つづく

 

 



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第14話「制裁は続くよいつまでも」

第14話

 

 昼休憩の時間がやってきて、飛鳥は自分の教室で一息ついていた。

 

「ふぅ…」

 

 その時、クラスの女子生徒数人が飛鳥の所にやってきた。

 

「ねえ、一丈字くん!」

「何でしょう」

「一緒にお昼食べない?」

「私で宜しいんですか?」

「勿論! あ、お弁当かな?」

「はい」

「よーし! それじゃ決まり…」

 

 女子生徒の一人がそう言いかけた時…

 

「飛鳥くーん!!!」

 

 穂乃果がやって来た。ことりと海未も来ている。

 

「あ、高坂さん」

「一緒にお昼食べよー!」

「すみません、こちらの方達と…」

「あ、いいよいいよ! ちょっと2組と情報交換したいし!」

「あ、良いそうです」

 

 1組の女子のOKが出ると、飛鳥が海未を見た。

 

「?」

「園田さん。調子はどうですか?」

「あ、は、はい…」

 

 海未は遠慮がちに答えた。

 

「大丈夫だよ! 穂乃果やことりちゃんがいるし!」

「あ、それはそうとあいつはどう? A」

「…えっとね」

 穂乃果達のテンションが低くなった。

 

「やっぱり怖いよ。海未ちゃんと違う何か…」

「どういう意味ですか?」

 

 海未が黒い笑みを浮かべた。

 

「園田さんは彼の事どうですか?」

「……」

(トラウマになってるみたいだな…)

 

 震える海未を見て、飛鳥が口角を下げた。これはもう迅速に手を打たなければならないと考えているが、今は迂闊に動ける立場ではなかった。

 

「どうしてAくんは海未ちゃんばっかり見るのかな…」

「体育の時間も海未ちゃんばっかり見てたし…」

「あ! それはそうと飛鳥くん! 体育の時間、何であそこにいたの!?」

「2組の様子を見るようにお願いされたんですよ。そしたら案の定です」

 

 飛鳥が困惑しながら話した。2組の女子の様子から見ると、転生者Aが本当にろくでもない男だという事が分かる。

 

「で、話は戻すけどどうして海未ちゃんばっかり見るんだろう。どうしてか知ってる?」

「園田さんが好きなんじゃないですか?」

「!!?」

 

 飛鳥がはっきり答えた。女子たちの反応はぎょっとしたり、困惑したりと様々だった。

 

『君も結構言うな…』

『まどろっこしいのはあまり好きじゃないんですよ』

『君がモテる理由が分かったよ』

『え、何でですか』

 

 飛鳥と神様がテレパシーで会話をしていた。

 

「あー…やっぱりか」

 

 と、2組の女子生徒が言い放つ。

 

「心当たりあるんですか?」

「うん。園田さんって大和撫子で照れ屋で、気品もあるから人気があるのよ…」

「ああ。海未ちゃん昔から弓道とかやってるから、それで知ったとかかな」

「へー…そうなんですか」

 

 飛鳥が相槌を打った。流石に転生者の好みまでは分からないので、話を聞いて相槌を打つことにした。

 

「だとしてもやっぱりきも~い!!」

「にしても一丈字くんも災難だったね。殴られたんでしょ?」

「ええ。ですがもう大丈夫ですよ」

 

 心配する女子生徒達を見て、飛鳥が苦笑いした。

 

「私達は一丈字くんの味方だからね?」

「ありがとうございます。それでしたら、冤罪かけられたりするかもしれないので、その時は宜しくお願いします」

「任せて!」

(あふれ出す人のやさしさ…)

 

 1組の女子達が本当に任せろ!と言わんばかりのガッツポーズをした。それを見て、飛鳥は嬉しそうな顔をすると共に、後ろを振り向いて苦笑いした。

 

「噂をすればAさんがこちらを見てらっしゃいますね」

「えっ!!?」

 

 Aが睨み付けていた。勿論言うまでもない。飛鳥穂乃果、ことり、海未と一緒に食事をしている事に対して腹を立てているのだ。

 

「ああ。やっぱりちょっと相手してきますね」

「あ、待って! 一丈字くん!」

「?」

 

 クラスメイトの一人が止めた。

 

「私にいい考えがあるわ。さっきの事が本当だとしたら…ちょっと園田さんも耳貸して」

 

 女子生徒が飛鳥と海未に耳打ちした。

 

「えええっ!!? そ、そんなの無理ですっ!!////////」

 

 海未が頬を染めて恥ずかしがる。

 

「無理でもやるの!! そうする事があいつへの制裁なんだから!!」

「それ、本人に聞こえてますよね?」

(何をするつもりだ…!? 一丈字と園田に耳打ちをするなんて…まさか…)

 

 Aが何かに気付いた。

 

(そんな事させるか!! 海未はオレのものだ!!)

 

 Aがずがずがと入ってきて阻止しようとした。

 

A「やあ、一丈字くん。此間はごめん! ちょっとやり過ぎだよ。これから…」

「何勝手に入ってきてんのよ!」

 

 1組の女子達が激怒した。

 

「入ってくんな! この変態!!」

「園田さんをつけ狙ってたんでしょ! このストーカー!!」

「一丈字くんに指一本触れさせないんだから!!」

A(な、何でだよ…何でこいつがこんなに女子達から好かれるんだよ!)

飛鳥(あなたが嫌われているだけです)

 

 Aの心の声に飛鳥が突っ込んだ。ギャグマンガならぬギャグ小説お約束の展開である。

 

「い、一丈字くん? 此間の事謝りたいから、ちょっと一緒に来てくれるかな。そうだ、昼ご飯一緒に食べよう!」

「あ、それは結構です」

「私達と一緒に食べるから、どっか行ってよ!」

「そうだ。それだったらいいものを見せてあげるよ」

「?」

「一丈字くん」

「はい。園田さん…失礼します」

「えっ…?」

 

 飛鳥が海未の手を優しく握って、そのまま恋人繋ぎをした。

 

「ぴゃっ!!!////」

 

 急に手を握られて、海未は顔を真っ赤にした。それを見て、Aは頭に血を登らせる。

 

「……!!!!!」

「アナタ、園田さんの事が好きなんだってね。でも残念でした!」

「園田さんはアンタよりも、一丈字くんがいいんだって!」

「な…な…!!!」

 

 Aが震えていた。そりゃそうだ。目の前で自分の推しである海未が、訳の分からない男と手を握っているのだった。クラスメイトの声など聞こえていない。

 

「だから諦めなさい!! このストーカー!!」

「~~~~~~!!!!」

 

 Aが叫んだ。

 

「ふざけるなぁ!!! 海未はオレのもんだぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!」

 

 Aが激昂して、襲い掛かった。

「ちょっ…!!!」

 

 女子生徒達が怯えると、飛鳥が立ち上がって瞬時にAの拳を受け止めた。

 

「!」

「なっ…!!」

「Aさん。乱暴は良くないですよ」

 

 飛鳥が真剣な顔をして言い放つと、そのままAに関節技を仕掛けた。

 

「く、くそ…いいカッコしてんじゃねぇぞ!! オレには…」

 

 Aがチート能力を使おうとしたが出なかった。それもそのはず、飛鳥が超能力で封じ込めているからである。

「な、何でだ!? 何で出ないんだ!!?」

「何が出ないんです?」

「くそう…このオレが…このオレがこんな雑魚にやられる訳がないんだ…ぐぅ…!!!」

 

 飛鳥が力を入れる。

 

「さっきから何言ってんのよアンタ!!」

「寝ぼけてんじゃないの!!?」

「やっちゃえ一丈字くん!!!!」

「あ、皆さん、ちょっとお静かにして頂けますか?」

「!?」

 

 飛鳥がAを見つめる。

 

「言いたい事があるならここで聞きますよAさん。あなたは…何がお望みなんですか?」

「!」

「何がお望みかと聞いているんです。アナタはこの音ノ木坂にやってきて…何をするおつもりだったんですか?」

「ぐ…!! それをお前に何で教えないといけないんだ…ぐあああああっ!!!!」

 

 飛鳥が更に力を強める。

 

「あまり手荒な真似はしたくないんです。早く教えて戴けますか」

 

 その後に飛鳥が目を光らせて、Aに本音を喋らせる。

 

「オレはただμ’sとのイチャイチャハーレム生活を送りたかったんだ!! それだけなんだ!!」

「そういう事を聞いてるんじゃないんですよ」

「!?」

 

 飛鳥が神様にテレパシーを送り、協力を求めた。

 

『神様、後で上手い事誤魔化してください』

『分かった』

『それから…』

 

「μ’s?」

「何それ?」

(そうなるよね)

 

 まだアイドルグループとして活躍していない為、穂乃果達は何を言っているのか分からなかった。飛鳥は気にせず尋問を続ける。

 

「そのハーレム生活でどうするつもりだったんですか?」

「いてててててて!!! そんなの決まってるだろ!! オレを取り合って喧嘩したり、オレにチヤホヤしたり、夜はずっとオレとセッ○スをするんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! それをよくもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「…そうですか」

 

 Aの汚すぎる欲望を聞いて、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

つづく

 



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第15話「転生者A 終了のお知らせ」

 

 

 

 Aのカミングアウトを聞いて、女子たちは悲鳴を上げた。

 

「何それ!!!」

「きも――――――――い!!!!」

「もう本当にこの学校から出てってよ!!!」

 

 女子生徒達はドン引きしていた。飛鳥はAの体を拘束したままである。

 

 

「で…園田さんをずっと狙っていたのは、彼女が本妻だと?」

「お、お前には関係…ぐああああああああああ!!!! そ、そうだよ!! 海未をオレのものにして、あの綺麗な髪の自由に触ったり、においを嗅いだり吸ったりして、慎ましい胸もオレ好みに…」

(マ、マジか…)

 

 Aの言葉に女子生徒達は青ざめた。飛鳥もげんなりしていた。

 

「一丈字くん!! その変態もっとやっちゃって!!」

「もう腕折って!!」

「警察警察!!!」

「コラー!!! 何やってるんだお前達!!」

「!!」

 

 山田がやってきた。

 

山田「い、一丈字…」

 山田がショックを受けているが、飛鳥の態度は変わらない。するとAがわざとらしく、

 

「せ、先生!! 助けてください!!! 一丈字くんが急に暴れ出して…!!!」

「いいぞもっとやれ!!!」

「先生!! それはダメです!!!(大汗)」

 

 山田からのゴーサインが出て、飛鳥が突っ込んだ。

 

「はぁ!!? 何言ってんのよ!!」

「アンタが高坂さん達を襲おうとしたんでしょうが!!」

「しかも変態的な事も言ってただろーが!! 髪を触りたいとか、おっぱい揉みたいとか、脇の匂いを嗅ぎたいとかよぉ!!」

「脇は言ってない!!!(大汗)」

 

 しかし、これで山田に変態発言をした事を認めてしまった。

 

「言いたい事はよく分かった。一丈字、やめろ」

「はい」

 

 飛鳥がAを解放した。

 

「お前は私と一緒に来い。理由はどうであれ暴力は良くないな」

「…申し訳ございません」

 

 飛鳥が頭を下げると、Aは勝ち誇った顔をしていた。

 

「職員室まで来い」

「分かりました…」

「ちょ、ちょっと待ってよ!! こいつは!?」

「お前達で何とかしろ」

「えええええええええええ!!!?」

 

 そう言って、山田は飛鳥は連れて行き、Aと女子生徒達が取り残された。

 

「様子を見るぞ」

「はい」

 と、陰から1組の教室の様子をじっと見ていた。

 

「ふぅー…まあ、さっきのは冗談だとして」

「何が冗談よ!!! さっきのがアンタの本音じゃない!!」

「出てって!!! この変態!!!」

「金輪際園田さんには近づけさせないから!!!」

 

 と、1組の女子達がAにものを投げ始めた。しかし、穂乃果達にもあたっていた。

 

「あのっ!! 穂乃果達にもあたってるんだけど!!! ちょ、痛いってば!!!」

「いや~ん!!! いた~い!!」

「あのっ!! 庇ってくれるのは嬉しいんですけど、せめてコントロールを…いたたたたたたた!!」

「あの、ちょっと理由を…」

「「「「「出てけー!!!!!!」」」」」」

A「うわああああああああああ!!!!」

 

 Aは追い出され、どこかに去っていった。もう1組の女子がAを好く事はないだろう…。

 

「余程の事をしでかしたようですね…」

「ああ…もうヤダ…」

 

 飛鳥と山田が呆れるのもつかの間、無実を証明しようと山田は1組の生徒達に顔を出した。飛鳥も後に続いて顔を出す。

 

「大丈夫ですか?」

「あれ!? 飛鳥くん!?」

「山田先生と一芝居打って、私が連れ出された後、どう出るか試してたんですよ」

「もうあいつはクロだ。これから審議にかける。一丈字が証拠を掴んだ。園田、もう心配いらん」

「先生…」

 

 海未が飛鳥を見ると、飛鳥が口角を上げた。

 

「山田先生もこう仰ってますから、大丈夫ですよ」

「一丈字さん…」

 

 海未が飛鳥をじーっと見つめる。

 

「あ、私ちょっと用事があるから席を外しますね」

 

 飛鳥が教室を去っていった。

 

「くそっ…!!! こんな筈じゃなかったのに…!!!」

 

 人気のいない校舎裏でAが憤っていた。

 

「くそぉ!! 何もかもあいつのせいだ!! あいつさえいなくなれば海未もμ’sも…」

 

「オレのもの。って所か?」

「!」

 

 Aの前に神様が現れた。

 

「お、お前は!」

「随分派手にやってくれたな」

 

 神様は険しい表情でAを見つめた。

 

「そ、そうだ!! お前!! あいつに何かチート能力を与えてるのか!!? ズルしてんじゃねぇよ!!」

 

 Aが文句を言うが、神様は何も言わずにAを睨み続ける。その気迫にAは後ずさりした。

 

「な、何だよ」

「そう思うだろう。だが、残念ながら彼には何も与えていない。自前だ」

「そ、そんな事がある訳ねぇだろ!! あんな能力が自前である訳がない!! そんな事よりも能力よこせよ!! 一丈字をぶっ殺す力をよぉ!!」

「もうお前に能力は与えない」

「えっ!!?」

「これまで自分が何してきたか分かっているのか? 分かっていないだろうな」

「何言ってんだ。オレは今まで沢山の世界を救って、ヒロイン達も虜にした勇者だぞ!」

 

 と、鼻息を荒くして神様に怒鳴るA。何とも無様だろうか…。

 

「それは自分の力ではない。我々神が与えたアトラクション用の力だ。遂に妄想と現実の区別がつかなくなったか」

「だからどうした!! さっさと能力よこせよぉ!!! 一丈字をぶっ殺して、μ’sをオレのものにするんだよぉ!!!」

 Aが地団駄を踏んだ。正直みっともないったらありゃしない。この男、生前は冴えない男で、女とは全く縁がない生活を送っていた。ある日、運悪く死んでしまいあの世の生活を余儀なくされた所、転生センターに出会い、今ではこの様である。

 

 あの世でも人間関係は続いており、勿論嫌な事もある。その場合は、家に引き籠ってればいいのだが、この男の場合は転生センターに味を占めてしまい、女に対する欲望があふれ出してしまった。女に触れたい、女と交わりあいたい、女を侍らせたい。今まで胸の中にしまい込んでいた煩悩が、彼を変えてしまったのだ…。

 

 今となってはもう遅い話なのだが…。

 

「妙な下心を持たなければ、夢は実現できたものを…」

「うるせぇうるせぇ!!! さっさとよこせ!! この無能がぁ!!!」

 

 神様がため息をついた。

 

「分かった。お前に能力を与えるか」

「分かればいいんだ。さっさと…」

「はっ!!!」

 

 神様が手を突き出して念じたが、Aの姿はとてつもなく醜くなった。

「え…?」

「あらまあ、私が無能だったばかりにお前を元の姿に戻してしまった。済まないな。もう私が出来る事がなさそうだ」

 

 元の姿に戻ったことに、転生者Aは青ざめた。

 

「ふ、ふざけるな…今すぐ元の姿に戻せぇ!!! こんな姿じゃ…」

「おやまあ、今までいくつもの世界を救っても、容姿には自信がないのか? 随分無様なもんだ。それこそお前の今までの実績が幻だと言うもんだ。では、さらばだ」

「ま、待てよぉ!!」

 

 Aが神様を掴もうとしたが、神様が消えた。

 

「あ…あぁ…!!!!」

 

 Aが膝から崩れ落ちた。

 

A「びぇえええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!」

 

 と、泣き叫んだ。その様子を上空から飛鳥と神様が見つめていた。

 

「はー…ちょっとだけすかっとしたわい」

「そ、そうですか…」

「ちなみに次回には元に戻す」

「え?」

 

 神様が黒い笑みを浮かべた。

 

「まだまだわしの気がスマンし、見せしめにならんじゃろう…!!」

(神様がしたらいけない悪い顔になってる…(汗))

 

 神様の悪い笑みに、飛鳥は心の底からAに同情した。

 

 

 

 

つづく

 



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第16話「こうして少年は英雄になっていく」

 

 

 Aに制裁を加えた後、飛鳥は1組の教室に戻ってきた。すると、皆飛鳥を称賛していた。

 

 

「それにしても一丈字くんって強かったんだね!」

「いえいえ…」

 

 飛鳥はクラスの女子生徒達に囲まれていた。今までの事があり、女子生徒の飛鳥を見る目は好意的なものだった。

 

『ご褒美だ。ハーレムを満喫したまえ』

『いや、ありがた迷惑です…』

 

 飛鳥が困惑した。本当に女子達に囲まれているのだから。飛鳥としては女の子はあまり得意ではない。というのも、昔から色々やっかみが多かったせいで、異性に囲まれるのは嫉妬を招きやすいため、本当に得意ではなかった。

 

「それにしても絢瀬生徒会長や、1年生の子も助けてるんだよね! 凄いなー! まるでヒーローみたい!」

「ていうかヒーローでしょ」

「いやいや、大した事してませんから」

「いや、普通にしてるし、結構凄い事だよ!!?」

 

 と、皆から突っ込まれると、飛鳥はたじたじになった。今まで同級生にそんな事を言われた事は殆ど無かったからである。異性ならなおさらだ。

 

「何か格闘技やってたの?」

「まあ…護身術は習ってましたね」

「しかも手際良かったし…」

「そうですか…」

 

 飛鳥は適当に返事をすると、一人の女子生徒が飛鳥に顔を向けた。顔立ちは良い少女だった。というか、ラブライブの登場人物はモブでも顔立ちはレベルが高い方である。

 

「こーらっ! ちゃんと人の顔を見て話しろっ!」

 

 飛鳥はその女子生徒の顔をじっと見た。

 

「……!!/////」

 

 飛鳥が真顔で見つめるので、女子生徒は頬を染めた。

 

「そ、そんなにじっと見つめないでよっ!!!/////」

「アナタが見ろと言ったんでしょう」

「う、うるさい!!//////」

 

 他の女子生徒も頬を染めた。自分も同じように見つめられたら照れてしまうと言い切ってしまう。ちなみに飛鳥の瞳の色は青色で、人からサファイアのように綺麗だと言われている。

 

「恐らく彼は、自分がこういう事をされる事を望んでいたんでしょうね」

「は?」

 

 女子生徒の問いに飛鳥が一息ついた。

 

「彼って…あ、あいつか」

「女子高ですからね。女子も多いですし、男子も珍しい筈ですので今みたいに自分に興味を持ってくれると思っていたんでしょう。まあ、私がいた事で外れてしまいましたが…」

「いや、アナタはいていいのよ」

「ていうかアナタだけで良かったのに…」

「恐縮です」

 

 飛鳥が軽く一礼した。しかし内心本気を出せばすぐに解決できるのに、自分達の都合でそれをしない事を心から詫びていた。本当なら今すぐにでも解決させたい。というかしないと下手すれば自分まで巻き添えを食らってしまうからだ。

 

「一丈字くん」

「?」

 

 深山が現れた。

 

「深山先生」

「放課後、職員室にいらっしゃい」

「あ、はい…」

 

 放課後、飛鳥は職員室を訪ねると、山田の座席の前に立っていた。

 

「お前には本当に頭が下がる。ありがとう」

「いえ」

 

 飛鳥だけではなく、穂乃果、ことり、海未、そして居合わせた1組の生徒が集められた。

 

「Aが園田を狙っていたのは分かった。Bの事もあるしな…私もそろそろ腹を括らんといかん」

「そうですか…」

 

 まあ、当然と言えば当然だろうと飛鳥は心の中で思っていたが、神様がフォー3人をどうするのか、まだ聞いていない為、安心は出来なかった。

 

「先生! Aを退学にしましょうよ!」

「そうです!! このままだと怖くて学校に行けません!」

 

 と、女子生徒達はAの退学を訴えていた。

 

『…って、言ってますよ』

『心配するな。奴らが天下を取る事はない』

 

 飛鳥と神様がテレパシーで会話し、飛鳥は遠回しに物事の解決を急かしたが、神様はもう少し様子を見ることにした。

 

「まあ…、停学は免れんだろうが、今は退学は難しい。学校の経営にも関わるからな…」

「そんなぁ~!!!」

 

「にしても…」

 

 山田が飛鳥を見た。山田の羨ましがる目を見て、飛鳥は困惑した。

 

「2組にきてくれんか…。ていうかもうAと交換してくれ…」

「交換はやめてください!!!!(大汗)」

 

 山田のトンデモ発言に1組の生徒は絶叫した。今のクラスにあの変態が来るなんて冗談じゃない。飛鳥がいなければ男性恐怖症不可避の状況である。

 

「そうだ。今度の成績が良かったクラスを一丈字、悪かったクラスをAにすればいいんだ」

「先生。その発言は教師としてどうなんですか」

 

 苦しみから逃れるために言い放った山田のトンデモ発言に対し、飛鳥は冷静に突っ込んだ。

 

「一丈字くん」

「?」

「私達、頑張るからね!」

「あ、はい…」

 

 それだけ皆Aが嫌いになっていたのだ。BやCのいるクラスもきっと同様だろう。いや、間違いなくそうだ。Bに至っては生徒会長の絵里に対してストーカーをしていたのだから、当然と言えば当然だろう。というかもう寧ろ飛鳥も安心できる状況ではなかった。

 

『神様がバックにいるんだけど、普通に安心できねぇですわ…』

 

 その時、穂乃果が飛鳥を見つめた。

 

「あ、そうだ! 飛鳥くん!」

「?」

 

 飛鳥が穂乃果を見ると、穂乃果は口角を上げた。

 

「さっきは海未ちゃんを助けてくれてありがとう!」

「ああ。あれは気にしないでください」

「それはそうと怪我してない!?」

「してませんよ。ありがとうございます」

 

 飛鳥が苦笑いしながら礼を言うと、海未がモジモジしながら飛鳥を見つめた。

 

「どうしました?」

「そ、その…」

 

 海未は目を閉じて思いっきり頭を下げた。

 

「ほ、本当にありがとうございましたっ!!」

 

 その様子を見て、飛鳥があっけにとられた。

 

「…まあ、今日の事で男性恐怖症にならなきゃいいのですが」

 

 飛鳥が困った顔で周りを見渡した。

 

「まあ…Aさんの本性が分かった今、1人で登下校しない方が良さそうですね」

「そうだな…そうだ、一丈字。お前暫くの間送ってやれ」

「え?」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「何だ。嫌なのか?」

「一丈字くん。海未ちゃんを送ってあげたら更に好印象なんだけどなー」

 1組女子がジト目で見つめる。

 

「あ、先日笹原先生から、絢瀬さんを家まで送るようにお願いされていて…絢瀬さんとご一緒になりますが、それでも構いませんか?」

「そうだったの!!?」

「それだったら先に言ってよ!!!」

 

 女子生徒が慌てながら突っ込んだので、飛鳥がまた苦笑いした。すると、笹原がやってくる。

 

「あの、山田先生…」

「?」

「そういう事なので…。一丈字くん。悪いんだけど、お願いできるかしら?」

「あ、私は構いませんが…。園田さんは大丈夫ですか?」

 

 飛鳥が事務的に答えると、海未の方を向いて問いかけた。

 

「ええっ!!? あ、はい! 私は大丈夫です…!!?」

「ちょ、ちょっと待って!!? 本当にいいの!!?」

「ええ。丁度試したい事がありまして…」

「試したい事?」

「……」

 

 

つづく

 



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第17話「μ's 全員集合!(前編)

 その日の放課後、飛鳥は絵里、希、にこの3年生組と、穂乃果、ことり、海未の2年生組を引き合わせた。

 

 

「…という訳で、2年生からも被害者が出てしまったので、本日から一緒に帰って頂きます」

 

「そ、園田海未です…」

「あ、うん…宜しくね…? あ、えっと…絢瀬絵里です」

「絵里ちは知っとうやろ。生徒会長なんやし。まあええわ。うちも自己紹介するな。東條希。生徒会副会長や。よろしゅうな」

「は、はい…」

 

 すると希は飛鳥を見た。

 

「話は聞いたでー。君、ホンマに凄いなー」

「いえ…」

 

 飛鳥が視線を逸らした。半分は出来レースみたいなものなので、素直に喜べなかった。もし事が知られたら、あの3人と同じ運命をたどることだってあり得なくない。今はせめて、あの3人から穂乃果達を守る事に専念する事にした。

 

「これがいつかは、お前がいるとトラブルが起きると言われる運命ですから…」

「気持ちは分かるで。まあ、ウチもおるし大丈夫やろ。で、そっちは?」

「高坂穂乃果です!」

「み、南ことりです!」

 

 穂乃果とことりが自己紹介した。

 

「そうかいな。よろしゅうな」

「私は矢澤にこよ」

 

 と、にこもついでに自己紹介した。

 

『…神様、原作の展開と違う気がするんですけど』

『あのバカ共が好き勝手やったからな。まあ、最終的にはハッピーエンドになるから安心しろ』

『バッドエンドになっても責任取れませんよ…』

 

 飛鳥が肩を落とした。もう原作と随分かけ離れてしまったので、完全オリジナルでお送りする事となってしまった。大丈夫だろうか…。

 

『大丈夫じゃない』

 

 飛鳥はナレーションに突っ込んだ。

 

 登下校中。飛鳥とμ’s3年生組、2年生組と下校していた。傍から見たら、飛鳥はハーレム状態だった。これがA達の望んでいた姿なのだろう…。

 

「最近調子は如何ですか? 絢瀬先輩」

「ま、まあ…Bくんが近づこうとすると皆がガードしてくれるから、今は何ともないわ」

(ていうかちゃんと学校に来てるんだな…)

 

 何回か校内で目撃していたが、あのような事があっても普通に登校しているメンタルの強さは飛鳥も感心していた。褒められたものではないが

 

「おーい!! 一丈字せんぱーい!!!」

「?」

 

 後ろから真姫、凛、花陽が追いかけてきた。

 

「あれ? 貴方達は確か…」

「間に合って良かったにゃー」

「つ、疲れた…」

「全くもう…この私をここまで走らせるなんてどういうつもり!?」

 

 穂乃果達は少し驚いていた。

 

「だから言ったにゃ。真姫ちゃんは残ってていいって」

「それも嫌なのよ! 今日もCにジロジロ見られたし…」

「え、そうなんですか?」

「凛も見たにゃ。アレはもう完全に真姫ちゃんを自分の女になる事は決まってるんだって顔してたにゃ」

 

 飛鳥は真顔になったので、花陽が様子を聞いた。

 

「ど、どうしたんですか…?」

「いえ…それを聞いたら、私も音ノ木坂を去らなければいけないかなと」

「な、何で!!?」

 

 穂乃果達が慌てる。

 

「んー…。AさんやBさん、Cさんがそういう事をされるのであれば、他の方も私に対していいイメージは抱かないでしょうし、追い出されるのは時間の問題でしょう」

「そ、そんな事ないよ!」

「そうだよ! 海未ちゃんや絢瀬先輩を助けてくれた事、皆分かってるから…」

 

 穂乃果、ことりが必死に引き留める。

 

「もし仮に」

「?」

 

 飛鳥がことりを見た。

 

「もし仮に私が過ちを起こしてしまったら?」

 

 そう言うと希が飛鳥を見つめる。

 

「起こす予定あるん?」

「無いですけど」

「無いんかい!!!」

 

 あからさまに過ちを起こしてそうな雰囲気だったので、結局起こす気がないと言ったので、思わず突っ込んだ。

 

「色んな先生から「最後の希望」って言われてますから、過ちを犯す気なんてないですけど、嵌められたり、誤って女子更衣室や女子トイレに入ってしまう可能性だって考えられるので…」

「あ、ああ…そっちか…」

 

 絵里が苦笑いした。すると希がニヤリとからかうように笑いながら飛鳥を見た。

 

「心配せんでええで。飛鳥くん顔が女の子っぽいから違和感あらへんし、寧ろからかいたい子が多いで♪」

「それ…喜んでいいのでしょうか」

「怒って良いわよ」

 

 希のからかいに飛鳥が突っ込むと、にこが困惑しながら更に突っ込んだ。

 

「そんな事言うんだったら、どうして一丈字先輩はこの学校に来たにゃ?」

「中学卒業した後、高校行かないで働いてたんですけど、社長からやっぱり学校に行けって言われて、この学校を紹介されたんですよ」

 

 ちなみにこの世界での設定は、中学までは元にいた世界と同じという設定である。本来の飛鳥は広島の高校に進学しているが、本作では事情が変わっている。ちなみに第1話に出てきた古堂和哉と古堂孫も一応この世界には存在しているが、あくまで別の世界の2人であり、このラブライブでの絡みは一切ない。

 

「働いてたの!?」

「ええ」

 

 働いていたことに対して、穂乃果達は驚いた。

 

「あ、そうだ飛鳥くん」

「何でしょう」

「そろそろ敬語止めて。穂乃果達同級生でしょ?」

「いや、Aさん達の怒りをさらに強めるので…」

「いーの! ほら!」

 

 と、穂乃果が強引に敬語を辞めさせた。飛鳥としてはどちらでも良かったので、従う事にした。

 

「家族でも敬語にゃ?」

「いや、普通にしゃべるよ」

「仲のいいお友達とかは?」

「ため口」

 

 と、凛や花陽と普通に喋っていた。すると飛鳥は海未を見た。

 

「そういや園田さんは落ち着いた?」

「え?」

 

 飛鳥が海未を見つめると、海未は困惑した。

 

「今日の事。まだ時間がかかりそう?」

「え、ええ…それは…」

「私と一緒にいるのが辛いなら、山田先生に言って変えて貰ってもいいからね」

「そんな事ないよ」

 

 穂乃果がそう言うと、飛鳥が穂乃果を見つめた。

 

「そう思ってないとしても、そういう気遣いって必要だよ。社会人になると…絢瀬先輩も」

「う、うん…」

 

 飛鳥が横を向いた。

 

「さて…この光景をAさんやBさんが見たら発狂しそうだな」

「あー…少なくともBくんは絵里ちの事、まだ自分の女とか言うとるからな」

「何それ、キモチワル」

 

 真姫が口元を抑える。それを聞いて凛は驚いていた。

 

「という事はCくんも同じ事考えてるにゃ!?」

「冗談じゃないわよ!!」

「それはそうと…後ろからつけとる人がCくんちゃう?」

「え」

 

 希がある方向を向きながら言うと、それ以外のメンバーも同じ方向を向いた。確かにCがいた。真姫は嫌悪感丸出しにする。

 

「あっ!!?」

「や、やっぱり…」

「何なのよ!! 人を付け回したりして!!」

 

「いえ、偶然見つけたもので…何をしてるのですか?」

 

 転生者Cとしては逃さない手はない。何しろμ’s全員が揃っているのだから。ここで飛鳥を消せば、μ’sを独り占めできるチャンスだと思っていたからだった。

 

希「♪」

 

 そんな中、希はある事を考えて、真姫の方を向いた。

 

「あっ!! 真姫ちゃん危なーい!!!」

「ひゃっ!!」

「わっ」

 

 希が思いっきり真姫を押すと、飛鳥の腕の中にすっぽり入った。真姫の顔は飛鳥の胸にうずまり、顔を真っ赤にした。そしてCはその姿を見てショックを受ける。

 

「こら希!! 転んだらどうするの!!!///////」

 

 絵里が希を怒鳴ったが、突然のラブコメチックな展開に頬を染めていた。μ’sのメンバーほぼ全員がドギマギしながら見ていた。海未に至っては小声で「破廉恥です…」とつぶやいていた。

 

「ごめーん。うちの勘違いやったわ」

「西木野さん、大丈夫ですか?」

「……//////」

 真姫は飛鳥の顔を見て、更に顔を真っ赤にした。凛と花陽はそんな真姫の事を可愛いと思っていた…。

 

 

つづく



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第18話「μ's 全員集合!(後編)

「んが~~~~~~~~!!!!!!!!! 一丈字ぃ~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 Cは飛鳥に対し、怒り狂っていた。

 

「Cさん…」

「一丈字!! オレの真姫に何してやがるんだ!!! お前だけは…お前だけは許さんぞ~~~~!!!!!」

 

 Cが怒鳴り声を上げると、通行人が飛鳥達を見たが、Cの事は完全にヤバい奴だと思っていた。

 

「まだ西木野さんを付け回してたんですか?」

「そうにゃ!!」

 

 飛鳥の問いに凛が答えると、そのままCを睨みつけた。

 

「あんたこそどういうつもりにゃ!!! 真姫ちゃんをずっとつけまわしたりして!!!」

「迷惑です!! やめてください!!!」

 

 凛と花陽が怒鳴ると、Cはショックを受けた。凛はともかく、花陽は温厚な性格である為、そんな彼女にまで怒鳴られるとは思わなかったCであった。

 

(な、何でだよ…何でμ’sはこんなにオレを嫌うんだよ!!!)

(付け回してたら誰でも嫌われるわ)

 

 Cの心の声に飛鳥が心の中で突っ込んだ。見ていて段々情けなくなっていった。

 

「あの、Cさん…」

「ああ゛ん!!?」

「多くの人達が見てますし、西木野さんも嫌がってるじゃないですか。やめましょうよ」

「その状態でよくそんな事が言えるな!!(大汗)」

 

 飛鳥は真姫を抱き寄せたまま言い放ったので、Cは思わず突っ込んだ。

 

「も、もういいからっ!!///////」

「あ、ごめんなさい」

 

 真姫が飛鳥から離れたが、この後凛や穂乃果からからかわれるのは言うまでもない。

 

「お前が真姫を誑かしたんだろ!!!」

「誑かした? 何をバカな事を」

 

 飛鳥が口角を下げて、頭をかいた。転生者Cは鼻息を荒くして興奮していた。正直言って豚そのものである。

 

「で? 結果的に私にどうして欲しいんですか?」

「真姫を置いて帰れ。いや、真姫だけじゃない。そこにいる女子生徒全員だ!」

「成程。アナタもハーレムを作りたいのですか」

「!!?」

 

 飛鳥はもう普通に言い放った。

 

「ハーレムってなに?」

「女性の中に男が一人の状態ですよ。今の私がそうです」

「まあ、早い話が男の夢って奴やな」

 

 穂乃果に聞かれたので飛鳥は普通に答えると、希も会話に参加した。そして飛鳥を見つめる。

 

「何ですか」

「も、もしかして飛鳥くんもハーレムを作りたいって思ってるの…?」

「御冗談を」

「いや、そんな事はない!! 男ならそう思うはずだ!!」

 

 と、転生者Cが言い放った。早い話、飛鳥の好感度を下げる為である。

 

「ま、飛鳥くんやったらウチはえーけど」

「!!?」

 

 皆が驚いた。

 

「あ、穂乃果も」

「え、えぇ…////////」

 

 と、他のメンバーは困惑した。

 

「それはそうと、分かったでぇ」

「何が分かったの?」

 

 絵里の問いに、希が口角を上げると、そのまま転生者Cを見つめた。

 

「本来やったら、ハーレムになって女の子達にチヤホヤされるのは自分の筈やった。せやけど、飛鳥くんが来た事で阻止された。だから、絵里ちや海未ちゃん、真姫ちゃんといった本命の子を先に落として、その後にうち等を毒牙にかけるつもりやったんやろ」

「!!!」

 

 Cは青ざめた。完全に言っている事があっていたからである。東條希。占いが好きだが、彼女の占いはよく当たる事で定評がある。フォー達の動機が明らかになり、絵里と海未は青ざめた。

 

「そ、それって…」

「も、もしかしてAくんと同じ考えなのかな…?」

「や、やだ~!!!」

「き…きもいにゃ~!!!!」

 

 にこと穂乃果が顔を合わせて困惑し、ことりと凛が気持ち悪がり、花陽もドン引きしていた。

 

「く、くそう…!!!」

「残念やけど、君の野望もここまでやでCくん」

 

 希が口角を上げる。

 

「君達が喉から手が出るほど欲しがっているハーレムを手に入れるのも、音ノ木坂の運命を背負うのも、君達やないで」

「な、何だと!!」

「誰なの!?」

 

 希が口角を上げると、飛鳥を見つめた。

 

「飛鳥くんや」

 

 皆が飛鳥を見た。

 

「そういう事やから諦めぇや。飛鳥くんやないとしても君はあり得へんで。現に良い噂も聞いとらんからな」

「ぐ…!!! ぐぅ…!!! そ、そんなわけあるかぁ!! オレよりも出来損ないで弱いくせに!! 真姫も助けられなかった癖に!! オレに突き飛ばされたくせにー!!!」 

 

 興奮して叫ぶCに対し、飛鳥は前へ歩き出した。

 

「飛鳥くん…!?」

 

 穂乃果がそう言うと、飛鳥が真剣な顔でCを睨む。

 

「いい気になるな…!!」

「!」

「いい気になってんじゃねぇ!! お前なはずがない!!! だったら…今ここでお前をぶち殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

 

 Cが飛鳥に襲い掛かってきた。

 

「きゃあああああっ!!!」

「東條先輩、彼女達をお願いします!」

「分かった!」

「カッコつけてんじゃねぇぇぇぇえええええええええ!!!!」

 

 Cが殴りかかるが、飛鳥が瞬時に交わしてCの首元に手刀を打ち込んで気絶させた。

 

μ's「……!!!」

 

 μ’sは驚いた。瞬時にCを気絶させたのだから。

 

「……」

 

 飛鳥はCを担いで、近くにあったベンチの上に寝かし、電話をかけた。

 

「あ、もしもし…救急車呼んで貰えませんか? 場所は…」

 

 

つづく

 



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第19話「それぞれの苦悩」

 

 

 その夜。飛鳥と神様は、飛鳥の部屋で会話をしていた。

 

「今日も大活躍だったな」

「…ありがとうございます」

 

 飛鳥は自分の部屋にいたが、テンションが低めだった。

 

「言いたい事は分かる」

「結構好き勝手やってますね…。本当に神様の力で何とかした方が良いですよ」

「まあ、Aは締め上げたが、まだ退学には出来ん」

「まだダメなんですか…?」

「他の神たちから連絡があったが、今君達が転生しているこの世界に入りたがっている輩が多数いる」

「え?」

 

 飛鳥が神様を見つめた。

 

「そういう人気のある作品って何個かスロットを用意してるもんじゃないんですか?」

「相手は既に転生者がいようがお構いなしの連中だぞ」

「あ、そうでしたね…」

 

 本当に面倒な事になったと感じる飛鳥。この世界は本当にどうなるのか不安で仕方なかった。

 

「それに、もう今後は同じことを起こさないように、見せしめをしないといけないからな。もうこれで最後にしたい」

「そ、そうですね…」

「にしても…君程現実を見てる子はいない。アニメの女の子に興味がないのか?」

「そうですねー…やっぱりアニメの登場人物同士、くっついて欲しいと思います」

「そうか…。それだったらハーレムもあまり意味がないな」

「ええ」

 

 飛鳥が腕を組んで頷いていた。実は同世代の女子とそれなりに接する機会もある為、特にハーレムへの憧れは無かった。

 

「だが、ハーレムを作る事が奴らにとって、一番の制裁にもなるからな」

「いやいや、神様の力で作ったって…」

「何を言っているんだ? ハーレムに関しては、私は何も関与していないぞ。全部君の力だ」

 

 神様の言葉に飛鳥が絶句した。

 

「いや、あれてっきり神様の力かと…」

「君なら必要ないと、和哉くんが言っていたぞ。だからあえて与えずに様子を見たら、予想通りだ」

「要するに嵌められたと」

「そうなるな」

「ハァー…」

 

 飛鳥が深いため息をついた。正直今でも信じたくない気持ちでいっぱいだった。

 

「本当にどうなるんだ…」

「それ何回も聞いたぞ」

「誰のせいだと思ってるんですか!!!(激怒)」

 

 

 数時間後、天界。

 

「全く、あそこまで怒る事ないじゃろ…ブツブツ…」

 

 と、神様が飛鳥に対して文句をつぶやきながら、自分の書斎で仕事をしていた。飛鳥の監視だけではなく、ちゃんと天界での仕事をしていた。

 

 その時、ノックする音がした。

 

「入れ」

 

 一人の青年が現れた。白いロングヘア―の青年である。

 

「ザキラか」

「夜分遅くにすみません。羅城丸様。少しお話が…」

「転生センターの件なら心配いらん」

「!」

 

 神様はザキラの顔を見ずに言い放った。

 

「…しかし!!」

「お主ら護衛隊には別の仕事が与えられているはずじゃ。そちらの仕事に専念しろ」

「…わ、分かりました」

 

 ザキラが俯いた。

 

「羅城丸様。お言葉ですが一言だけ申し上げたい事がございます」

「…話は聞こう」

 

 ザキラが羅城丸を見つめた。

 

「羅城丸様が派遣している人間は…本当に信用できるのですか?」

「出来る」

「何を根拠に…」

「直感じゃよ」

「…直感ですって!?」

 

 羅城丸が正面を見つめた。

 

「今はそれしか言えん」

「……」

 

 ザキラは俯いた。

 

「分かりました…。失礼します」

「うむ。ゆっくり体を休めよ」

 

 と、ザキラは去っていった。

 

「ふぅ…」

 

 神様の部屋を去った後、ザキラはこぶしを握り締めて、歯ぎしりした。

 

「何故私ではダメなのだ…!!!」

 

 

 

 翌朝、1時間目は全体で自習となり、大会議室で臨時の職員会議が行われていた。

 

 

「これより、緊急の職員会議を始めます」

 

 南がそう言い放つと、そこにはどんよりした面持ちの教師陣がいた。南もげんなりした。

 

「えーと…まずは山内先生……現状の報告をお願いします」

「はい…」

 

 真姫たちの担任である山内はもう泣きそうだった。

 

「1学年に転入したCくんは昨日、道の真ん中で女子生徒と2年生の転入者に一方的に言いがかりをつけて、そのまま大暴れしました。その後、転入者の子に取り押さえられて救急車に……。居合わせた女子生徒からも一般市民からも苦情が来ていました。報告は以上です」

「…はぁ」

 

報告をし終えた1学年の担任教師、山内奈々子は心底疲れた表情を見せていた。南はにこ達の担任、笹原京子に視線を移した。笹原も同じく疲れた表情を見せていた。

 

「笹原先生……報告をお願いします」

 

「はい。3学年に転入してきたBくんですが…。転入初日に女子生徒を尾行。それとアイドル研究部の部室で聞き耳を立てている奇怪な行動もしていました。更に転入2日目の朝に電柱の物陰でニヤニヤと笑っていたり、路上で泣き叫んでいると一般市民から苦情の電話がありました。ましてや夜道に…女子生徒を自宅までストーカーしてました…報告は以上です」

「…誰か頭痛薬と胃薬を持ってませんか?」

笹原の報告に雛子は目頭と胃を押さえ始めた。他の教師達も頭を抱えたり、額を押さえながら溜め息を吐いたりと、心底疲れた表情を見せていた。

 

「山田先生の方はどうでしょうか?」

 

 山田も嫌そうにしていた。

 

「転入生のAは、既に女子生徒達から気味悪がられてますよ。何かぶつくさと独り言を呟いてますね。オレの能力とか、ハーレムがとか……隣の席の生徒が話してました。更に女子生徒を物陰から見ていたり、変な顔でもう1人の転入生を睨んだりの問題行動ばかり起こしてます。あ、そういや此間もう1人の転入生を殴ってました」

 

「……共学化は失敗だったようね」

「もう失敗ってレベルじゃないっすよこれ…」

 

2学年の担任教師、山田博子の報告により、南の精神は完全に磨り減ってしまった。共学化は完全に失敗に終わってしまったかと、雛子は何回吐いたか忘れてしまった溜め息を再び吐いた。というかもう物理で吐きそうだった。

 

「もう1人の転入生……一丈字飛鳥くんは大丈夫? 深山先生」

「全く問題ありません!(笑)」

「はっ倒すぞこのアマァ!!!(激怒)」

 

 飛鳥の担任である深山がにこやかに宣言すると、山田と笹原が突っ込んだ。山田、笹原、山内は本当に限界寸前だった。もう山内に至っては自信を無くし始めていた。

 

「うちのクラスの子達もよく口にしてるわよ。一丈字くんがうちのクラスに転入してくれたら良かったのにって。深山先生。うちの問題児と一丈字くんを交換しない? ていうかしてください」

「学年が違うから無理ですよ」

「それアタシが言いたかったのに!!」

 

 深山が苦笑いして言うと、山田が指をさして突っ込んだ。

 

「あの…Cくんと交換しませんか?」

「だから無理ですってば」

笹原と山内は、現在の担任である深山に飛鳥と自分が受け持ってしまった問題児と交換しようと持ちかけるも、深山は断固拒否した。学年が違う時点で無理な話ではあるが。2人はこの5日間で何回か授業で飛鳥と話をしたことがあるが、絵里や真姫を助けた事も知っている上に、元の印象も良いので大変気に入っていた。

 

(皆んな嬉しそうな表情で一丈字くんの事を話してるわね。ことりの言っている事は間違っていなかったみたい)

 南が口角を上げたが…

 

(配属するクラス間違えた…(泣))

 

 南は涙した。もし、ことりのクラスにAではなく飛鳥を配属していれば、母親として心配する事は何一つなかったのに、この状況である。正直もう凛々しい理事長のプライドを捨てて、旦那に泣きつきたい気持ちでいっぱいだった。

 

「皆さん。この緊急会議を開いたのは他でもなく……廃校の件についてです」

 

雛子の言葉に、教師陣達は一斉に視線を雛子に移した。全員予想はしていたらしく、驚く者は誰1人としていなかった。

 

「娘や皆さんの話を聞く限り、一丈字くんはとても良い子だということがわかりました。とても素晴らしい生徒が転入してくれた事を、私は嬉しく思っています。しかし……他の転入生達が起こしている問題を無視することはできません。一般の方々から苦情の連絡がきたということは、既に音ノ木坂周辺では噂が飛び交っていると思われます」

 

「……」

 

 すると南はこう言った。

 

「ですが、有難いことに入学希望者は一定の人数を超えたので、廃校は見送ります!」

 

 

 

つづく

 

 

 



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第20話「先生も大変なのヨ」

 

「会議はこれにて終了とします。皆さんお疲れ様でした。各自受け持っているクラス、業務に戻ってください」

 

 皆が席から立ち上がった。

 

「…それにしても、本当にどうにかならないかしら」

「いっつもギスギスするんですよ…教室…」

 

会議の終了を南が告げた瞬間に、笹原と山内は転生者B、Cによってクラスの雰囲気が悪くなった現実を憂いていた。

 

山田「私も戻るか…」

 

 と、山田も席を立ちあがった。ふと深山を見ると…。

 

「……」

 

 深山は凄く嬉しそうに立ち上がっていた。

 

「あの、深山先生?」

「え、な、何でしょう?」

 

 山田がジト目で深山を見つめる。笹原と山内も深山も見つめる。

 

「何でそんなに嬉しそうなんですか?」

「え!? そ、そんな事ないわよ!?」

 

 笹原と山内がジト目で見つめる。

 

「自分だけあたりを引いたからって…」

「酷いです…」

「ち、違いますよ!! 私は至って普通ですよ!!! ほ、ほら! 早く戻りましょう!! 生徒が待ってますよ!!?」

 

 と、深山が笑ってごまかしたが、残りの3人にとっては地獄でしかなかった。

 

 

 ちなみに現在どうなっているかというと…。

 

 山田先生のクラスでは、静かにしていた。ただ、Aと海未は完全に隔離されていて、席からは海未が見えない状態だった。これはもう女子たちが総出で遠ざけました。

 

(くそっ…!!! 海未が全然見えないじゃんかよ…!!! ふざけやがって!!!)

 

 ふざけてるのはお前です。

 

 笹原先生のクラス。Aと同様、絵里と隔離されていた。Bは抗議をしようとしたが、受験で完全にイライラしている受験生を全員相手するのは得策ではないと感じ、甘んじた。

 

 山内先生のクラス。Cも真姫と隔離されていた。この時Cは理論的に抗議を立てたが、その上から目線の態度で完全に女子たちの反感を買った。今では「屁理屈クソメガネ」というあだ名がついてるとかついてないとか。

 

 

 深山先生のクラス。すなわち、飛鳥のクラスでもある。

 

「そういや一丈字くんってなんかゲームしてるの?」

「最近はしてないんですけど、Switchは一応ありますね…」

「ソフトは?」

「最近のポケモンですね…。知り合いから貰ったんですよ」

 

 と、楽しそうにゲームの話をしていた。

 

「あの、これは休憩時間に…」

「えー」

「いいじゃんいいじゃん」

「ゆっくりお喋りしようよ!」

 

 女子生徒達に引っ張りだこだった。どこかの3人組とは違って。

 

「ソードとシールドどっち!?」

「確かソードでしたね…」

 

 その時、深山が入ってきた。

 

「アナタ達、課題はもう終わったのかしら?」

「終わりましたー」

「あ、そ、そう…。でも、他のクラスは授業してるから静かにね」

 

 と、深山が苦笑いすると、飛鳥を見つめた。

 

「?」

「……」

 

 深山は心の中で感涙していた。ありがとう、神様!!! と。

 

『どう致しまして』

『事の発端我々ですけどね…』

 

 いつものようにテレパシーで会話して、飛鳥は神様に突っ込んだ。

 

 そして昼休憩…

 

「一丈字くん。一緒にお昼ご飯食べよ」

「あ、すみません。ちょっと用事がありまして…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「用事?」

「ええ…ちょっとまあ…。またお願いします」

 

 と、教室を出て、2組の教室を見ると、中からとても禍々しい気を感じた。

 

「…やっぱりか」

 

 飛鳥は遠い顔をした。

 

「ちょっと他行ってみよう」

 

 と、笹原先生と山内先生のクラスを訪ねたが、同じように禍々しい気を放っていた。

 

「ですよねー…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「一丈字」

「?」

 

 飛鳥が後ろを振り向くと、山田がいた。

 

「山田先生」

「その…なんだ。ちょっといいか?」

「?」

 

 飛鳥は食堂まで連れていかれた。

 

「悪いな。ちょっと話があるんだ」

「分かりました」

 

 と、山田はカレーを頼み、飛鳥はざるそばを頼んだ。2人が注文してから料理が来るのはそんなに時間が経たなかった。

 

 二人が向き合って食べる。

 

「……」

「……」

 

 お互いが向き合っていて、沈黙した状態が続いた。

 

「あの、山田先生…」

「そうだったな。だが、食べながらにしよう」

「分かりました」

 

 と、二人が食べた。その様子を生徒達が見守っていた。何事かと思いながら…。

 

(凄く注目が集まってるな…(汗))

 

 山田は気にしていなかったが、飛鳥は割と気にしていた。それだけ生徒達が見ていたからだった。

 

「食わんのか?」

「あ、いや。食べます…ハイ」

 

 と、飛鳥はそばを食べた。

 

 暫くして…

 

「一丈字」

「あ、はい」

 

 山田が飛鳥を見た。

 

「学校には慣れたか?」

「あ、はい。お陰様で慣れました」

「そうか…」

 

 と、他愛のない話をしていた。飛鳥としてはもっと聞かれたらマズイ事を聞かれるのではないかと考えていたが、少し安心していた。

 

「あ、そういえば山田先生」

「何だ?」

 

 今度は飛鳥が聞き返す。

 

「最近、園田さんの様子はどうですか?」

「お前もよく知っているだろう」

「そうかもしれませんが…。私は男性ですので、やはり無理をされているのではないかと思いまして…」

「…そうだな。園田は真面目だからな」

 

 と、山田が困惑していた。

 

「まあ…高坂と南がついているから、今のところ心配はない」

「そうですか。ありがとうございました」

 

 山田が飛鳥を見つめる。

 

「それにしても不思議な奴だ」

「そうでしょうか」

「ああ。是非共うちのクラスに欲しいくらいだ」

「ありがとうございます」

 

 と、飛鳥は静かに口角を上げた。

 

「ところで一丈字」

「はい」

「お前…サッカーやってたのか?」

「え?」

 

 山田の問いに飛鳥が驚いた。

 

「此間の体育の時間にリフティングをしていただろう。どう考えても初心者とは思えないが…」

「ああ。実は中学の時の友達にサッカー部の子がいまして、その子とよくサッカーの練習してたんですよ」

「そうなのか…。意外だな」

「そうですか?」

「ああ。いかにも勉強しかしてなさそうに見えたからな」

「よく言われますね」

 

 と、そのまま談笑した。気のせいか話しているうちに山田の表情が穏やかになったように見える。飛鳥もそれを感じて安心したように口角を上げた。

 

 暫くして、午後の授業が始まろうとしていた。

 

「そろそろ授業があるので…」

「おお…そうだな。話し込んでしまった。済まない」

「いえ、こちらこそありがとうございました」

 

 と、飛鳥が立ち上がろうとすると…。

 

「一丈字」

「?」

 

 飛鳥が山田を見ると、山田が照れ臭そうに視線を逸らした。

 

「その…何だ。また機会があったら…////////」

 

 飛鳥が笑顔を見せた。

 

「はい! またお話ししましょう!」

 

 

 その後、職員室で…。

 

「理事長。一丈字とAを交換してください」

「ちょっと!! ダメに決まってるじゃないですか!!!(大汗)」

 

 山田が理事長に直談判をしたので、深山が突っ込みを入れた。

 

「検討しています」

「検討すなっ!!! 職権乱用反対!!!!」

 

 という理事長の発言に深山がさらに突っ込んだ。どうなります事やら…。

 

 

つづく

 



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第21話「人として」

 

 放課後、飛鳥は1人屋上にいたが、テレパシーで神様と会話をしている。

 

『本当に良かったのか? μ’sをほっぽり出して』

『今は1人になりたい気分なんですよ』

 

 しかし、屋上に来るまでに何人かに見られていた。そりゃそうだ。絵里や海未、真姫を助けたのだから、見てもおかしくはないだろう。

 

『結構見られましたね…』

『そりゃそうだ。何度も痴漢から少女を助けてるんだ。見るだろう』

 

 飛鳥は口角を下げて、真剣な顔をした。

 

『神様』

『何だ』

 

『あの3人以外にも、フォーがこの世界にいる可能性があるのでしょうか』

『運が悪ければな』

『そうですか…』

 

 飛鳥が空を見上げた。出来ればこのままの状況であってほしいのだが、残念ながらそうはいきそうにないと飛鳥は感じていた。

 

『まあ、仮に勝てないとしても、最終的に止めないといけないから私が手を下す』

『ありがとうございます』

『だが、それまでは君が頑張ってほしい。これからの地球の為にも、君自身の為にもな』

『分かりました』

 

 飛鳥が返事をしたその時だった。遠くに黒い煙が立っているのが見えた。

 

『!!?』

『火事じゃ!! あそこは…』

 

 飛鳥と神様も気づいた。

 

『矢澤にこが住んでいるマンションじゃ!! 行くぞ飛鳥!!』

『は、はい!!』

 

 

 神様に言われた通りに、飛鳥は火事現場まで瞬間移動した。

 

「!!!」

 飛鳥が現場に駆け付けると、マンションが燃えていた。

 

『思ったんですけど…神様が何とかするって事は出来ないんですか?』

『出来るが、不自然すぎるだろう。それよりも君が無謀に突っ込んで、助けた方が良いだろう。私のやる事は、君や中に取り残されてるかもしれない輩が死なないようにする事だ』

 

 その時、ベランダから2人の女の子が顔を出した。

 

「たすけてー!!!」

「!?」

 飛鳥が女の子を見る。

 

「あついよー!!!」

「ケホッ…ケホッ…」

 

 女の子たちはせき込んでいた。恐らく煙を吸ったものだと思われる。

 

「……!」

『助けに行かないとあの子達が死ぬぞ』

「消防車は…」

 

 飛鳥が消防車を確認しようとしたその時だった、観衆がざわざわしていた。

 

「消防車はまだ来ないのか!!?」

「はぁ!!? 飲酒運転の車と衝突事故を起こしたぁ!!?」

 

 と、消防車は来る様子が無かった。そしてまた…。

 

「離せよ!!!」

 

「!!?」

 と、A、B、Cが揉めていた。

 

「オレが助けに行くんだよ!!!」

「でしゃばんな!!! 同じ3年なんだからオレなんだよ!!」

「非合理的です。僕が行くべきです」

 

 と、手柄の奪うために小競り合いをして、助ける様子もなかった。

 

 

「行ってきます!!!」

 

 悟った飛鳥は、超能力で悟られないようにして、中に突入していった。

 

 火事が起きているのは4階だった。

 

(凄い火だ…!!)

 

 飛鳥が扉を開くと、煙が充満していた。

 

(まあ、地道に消していくのが良いんだろうけど…時間もない)

 

 飛鳥が両手を突き出した。

 

飛鳥「はっ!!!!」

 

 飛鳥が気合を入れると、両手の前に黒い空間が発生して、煙や炎を吸い込んでいった。

そして火や煙をある程度消すと中に進んでいった。

 

「おーい!!!」

「!?」

 

 飛鳥が子供達と合流した。

 

「大丈夫!?」

「あれ!? ひは!?」

「話は後だ! それよりもここを出るぞ!」

「は、はい!」

「あ、まって!! 虎太郎が!!」

 

 虎太郎と呼ばれる少年は意識を失って倒れていた。飛鳥はすぐに虎太郎を抱きかかえる。

「その子はオレに任せて。あっちから脱出しよう」

「……」

 

 2人の少女が怖がる。

 

「大丈夫」

「?」

 飛鳥が口角を上げる。

 

「おじさんが一緒にいる」

「……!」

「さあ、行くぞ!」

 

 地上

「先程から火が燃え上がってまいりましたが、突如火の勢いが弱まりました! 取り残されている人の安否が気遣われております!」

 

 マンションの外でキャスターが実況をしていた。

 

「う、うちのマンション…」

 

 にこは膝から崩れ落ちていた。希と絵里も同行している。

 

「原因は火のついたライターをゴミ箱に捨てたのが原因みたいやな…」

「はっ!! そういや今日こころ達ずっと家にいるじゃない!!」

 

 希の呟きに対し、にこは思い出したように自分の弟妹達を思い出した。そして走り出した。

 

「こころ!! ここあ!!! 虎太郎!!!」

 

 にこがマンションに行こうとしたが、希と絵里に止められる。

 

「アカン!!」

「危険よ!!!」

「離して!!! 離してぇ!!! うちの妹達がー!!!!」

 

 にこが泣き叫ぶと、マンションの出口から飛鳥とこころ達が現れた。

 

「!!!」

「ハァ…ハァ…」

 

 虎太郎を抱きかかえている飛鳥を見て、にこは目を大きく開けた。

 

「人が出てきたぞ!!」

 

「こころ!! ここあ!! 虎太郎!!!」

 

 にこが希と絵里を振り切り、こころ達に近づいた。

 

「おねーさま!!」

「おねーちゃーん!!!」

 

 にことこころとここあが抱き合った。

 

「うえ~~~~ん!!!!!」

「こわかったよ~~~~!!!!!!」

「よしよし…怖かったねぇ…! もう大丈夫よ!」

 

 にこがこころとここあを抱きしめて頭をなでると、目に涙を浮かべた。すると希と絵里が飛鳥と虎太郎を見た。

 

「それはそうと、飛鳥くん大丈夫!!!?」

「どうしてあなたが!!?」

「様子を見に来たんですよ。そしたらあの子達が助けを求めてて…」

 

 にこが飛鳥を見つめた。

 

「も、もしかしてアンタが助けてくれたの!?」

「そうです!」

「このおねーちゃんがたすけてくれたんだよ!!」

「おじさんだよ」

 

 飛鳥が困惑しながらも、虎太郎を地面に置いた。

 

「あ、おねーさま! 虎太郎が!」

「え!?」

 

 にこがこころとここあから離れて、虎太郎の様子を見た。

「虎太郎!!!」

「少し煙を吸って気を失っていますが、命に別状はございません。脈はあります」

 

 ちなみに飛鳥が超能力で呼吸器をある程度正常に戻している。

 

にこ「……!」

 にこの涙腺が緩くなると、

 

「おーい!! 消防車と救急車が来たぞー!!!」

 消防車と救急車がやって来た。そしてフォー達も来た。

 

 飛鳥が安心したその時、突如Bに殴られた。

 

「!!?」

 

 飛鳥はぶっ飛ばされた。

「飛鳥くん!!!」

「!!?」

 

 すると3人が飛鳥に詰め寄った。

 

「……!?」

 

「何でこんな無茶したんだ!!!」

 

 と、Bが怒鳴った。

 

「そうだ!! お前が無茶する事は無かったんだ!!」

「その通りです。無茶としかいいようがありませんね」

 

 と、AとCも怒鳴った。周りの人間は「なんだこいつら…」と思っていた。飛鳥は正論を言われているので、苦笑いするしかなかった。

 

「何ヘラヘラしてんだよ!!」

「そうですね。すみません」

 

 その時、にこ達が駆け寄った。

 

「大丈夫!? あんた!!」

「!」

 

 にこ達が飛鳥に話しかけたので、A達が驚いた。

 

「ほっとこ。あんな奴ら」

「そうね」

 

 と、飛鳥を避難させようとするが、A達は後を追いかける。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

「オレ達はただそいつの事を考えてだな…」

「待ちなさい!!」

 

 その時だった。

 

「しつこいわね!!!」

 

 にこがBにビンタすると、静寂が起きた。

 

「あんた達って本当にサイッテー!!! どうせヒーローになる為にあの中に入ろうとしたけど、こいつに邪魔されたから怒ってるだけでしょ!!!」

 

 にこの怒鳴り声にA達は固まった。

 

「そうだそうだ!!」

「!!?」

 

 ギャラリーの中にいた男性が叫んだ。

 

「お前ら、自分が助けに行くって言ってずっとあそこでもめてただろうが!!!」

「そうよ!! こういう時は協力しなさいよ!!!」

「てか、その子怪我してるのに殴るとか馬鹿じゃないの!!?」

「しかも子供達も近くにいるのに危ないじゃない!!!」

 

 と、避難轟々だった。A達は立ちすくんでいる。

 

「ふん!! 行きましょ!!」

「あ、救急車…」

「じゃあそれに乗りましょ!!」

 

 と、飛鳥が虎太郎を抱きかかえて、にこ達と一緒に移動した。

 

「べーだ!!!」

「ここあ。めをあわせちゃだめです」

 

 と、にこの妹であるここあがA達に向かって舌を出すと、ここあの姉であるこころが制した。冷静に見えるが、A達を軽蔑していた。

 

 そして飛鳥達が救急車に乗り込むと、A達は呆然と立ち尽くした。

 

 

『コングラチュレーションじゃ。飛鳥』

『あ、ありがとうございます…』

 

 

 つづく

 



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第22話「真の英雄」

 

 

 

 救急車内

 

「……」

 

 虎太郎が意識を取り戻した。

 

「虎太郎!!」

「!!」

 

 にこが叫ぶと、飛鳥達も嬉しそうにした。

 

「あれ…?」

「虎太郎~!!!!!」

 

 と、にこが泣きながら虎太郎を抱きしめた。虎太郎はどういう状況か分かっておらず、きょろきょろ見渡していた。

 

「きゅうきゅうしゃ~…?」

「そう! 救急車よ!! 心配かけてぇ~!!!!!」

「にこ。虎太郎くん潰れるから(汗)」

「あんま無茶させたらアカンで」

 

 と、にこが虎太郎を力強く抱きしめると、虎太郎が苦しそうにしたので、絵里と希が諫めた。

 

「そ、そうだった!! ごめん!!」

 

 こころとここあも泣きじゃくりながら、虎太郎の無事を喜んでいると、飛鳥は口角を上げ、そのまま超能力で存在感を消して、自分には触れさせずにそのまま時間を過ごした。

 

 そして病院に到着すると、こころ、ここあ、虎太郎が入院する事になった。

 

「本当にごめん」

「いえ、大丈夫です」

「まあ、家の事は相談してや」

「私も協力するわ」

「ありがとう」

 

 にこは弟妹達の面倒を見る為に、病院で別れることになった。にこが飛鳥の腕を見つめた。

 

「本当にありがとう」

「妹さん達が無事で良かったです」

 

 飛鳥が口角を上げた。

 

「でも…あんたもあんたよ!!! 無茶しすぎ!! もしあのまま死んじゃったら…」

「…すみません。ご心配をおかけしました」

 

 にこが叫ぶと、飛鳥が俯いた。

 

「せやな。そういう所はちょっと反省せなな」

「こころちゃん達の事は心配だけど、飛鳥くんが死んだら元も子もないわ」

「はい」

 

 希と絵里も無茶をしたことについては、毅然と諫めた。これがA達だったら、助けたのは自分だぞ。そんなのいらないから、礼をしろと言うだろう。

 

「でも…」

「!」

 

 にこが大粒の涙を流して、泣き出した。

 

「あんたがいなかったら、今頃こころ達は…!!! 本当にありがとぉ…!!」

「矢澤さん…」

 

 飛鳥が口角を下げると、にこに近づいた。

 

「私は大丈夫ですよ」

「!」

 

 飛鳥がしゃがんでにこと目線を合わせる。

 

「それよりも、虎太郎さん達の事を見てあげてください。一命はとりとめたものの、油断は出来ません。我々も出来ることがあったら協力致しますので、一緒に頑張りましょう」

「うん…」

「せやで。にこっち」

「……!!」

 

 希と絵里が口角を上げてにこに近づいて、希はにこを抱きしめた。

 

「一人で抱え込まんと、何でも言うてや。もううちらは…友達なんやから」

「そうよにこ。私達がついてるから」

「う…うわぁぁあああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

 

 と、にこは声を上げて泣いた。すると希はにこの頭を撫で、絵里と飛鳥は口角を上げた。

 

「矢澤さん」

「!」

 

 にこが飛鳥を見た。

 

「私はここで失礼します。ご家族にはよろしくお伝えください」

「あっ…」

「せやな」

 

 希が体を離し、絵里と共に飛鳥のもとに向かった。

 

「にこっち。また明日」

「またね」

 

 にこが口角を上げた。

 

「ありがとう! また明日!!」

 

 と、にこやかに返した。

 

 

 

 

「オレ達で力を合わせよう」

「は?」

「いきなり何を言ってるんですか?」

 

空き地で、Aから発せられた突然の共闘の申し出。BとCは唖然とした表情になった。いがみ合っていたライバルに突然共闘を持ちかけられれば当然の反応である。

 

「今のオレ達の状況は最悪だ。気味の悪い転入生、不審者、変態とレッテルを貼られた転入生。そしてさっきのビンタ。時間もそんなに経ってもないのにオレ達はこんな扱いを受けている」

「!」

 

悔しそうに話すAと同じく、BとCも同じ表情で拳を握りながらワナワナと体を震わせていた。そうだ。何で自分達がこんな扱いを受けなくてはいけないんだ? 様々な世界を救い、様々なヒロイン達を惚れ落としてきた完璧な自分達が、この世界では真逆の扱いを受けている現実を未だに受け入れられないでいた。

 

A「今までは全てが上手くいっていた。全てが順風満帆だった……しかしこの世界では今までとは決定的に違うイレギュラーがいる」

 

Aは憎悪に満ちた表情で顔を上げた。

 

「一丈字飛鳥だ」

 

Aが飛鳥の名前を出した途端、BとCも憎悪に満ちた表情で勢いよく顔を上げた。

 

「能力はともかく、容姿はオレ達に圧倒的に劣る。完全にμ’sにも興味が無い筈なのに何故μ'sのメンバーにあんなに優しくされているのかがあり得ないとずっと考えていた。そこである仮説がオレの脳裏に浮かんだ」

 

Aは黙って聞いているBとCに考えついた仮説を話し始めた。

 

「一丈字の能力は、ラブライブの世界のキャラクターを誘惑する能力なんじゃないかとな」

「…やっぱりか。実はオレももしかしたらと思っていた。一丈字にはそんな能力があるんじゃないかとな」

「彼がμ'sにあんなに好かれていることが可笑しいと思っていましたが、僕も同じ仮説を考えていましたよ」

 

Aの言葉にBとCはやっぱりかと納得した様子でAを見た。どうやら3人は同じ仮説を頭の中で考えついていたようであった。飛鳥からしてみたら、「そんな現実世界で役に立ちそうにない能力なんかある訳ないだろ」と言うだろうが…。

 

「恐らく一丈字は、誘惑する力に特化した能力を持っているんだろう。だからオレ達の能力がμ'sに効かずにあんなに冷たい態度を取られてしまっている。そう考えれば今まで疑問に思っていた全ての問題に辻褄が合うんだよ」

 

「一丈字め!」

「ふざけてますね…」

 

Aの言葉にBとCは表情を歪ませながら目の敵にしている一丈字を脳裏に浮かべていた。

これを本人が聞いたら呆れながらツッコミを入れるだろう。「なんでやねん」と。

 

「そこでだ……この状況を打破する為にオレが提案した作戦に乗らないか?」

「打開策だと?」

「どんな作戦ですか?」

 

Aの言葉にBとCは速攻で食いついた。この状況を打破する為なら何だってしてやると腹をくくった様子であった。

 

「いくら一丈字の能力が1つに特化している物でも……様々な世界を救いヒロイン達を侍らせてきたオレ達だ。そんなオレ達の能力を重ねがけすれば一丈字の能力を無効化できるんじゃないか?」

「能力の重ねがけ」

「3人の能力を合わせれば……確かに一丈字の能力を無効化できるかもしれませんね」

 

Aの言葉にBとCは成る程と頷いた。自分達の全能力を重ねがけすれば、一丈字の能力を超える力を出せるのではないかと。そうすればこの地獄のような日々を脱することが出来ると怪しく笑いながら3人は顔を見合わせた。

 

「まずは一丈字の能力を3人で協力して無力化する。そして最後に一丈字をこの世界から排除する。μ'sとのイチャラブハーレムライフを誰が手にするのかを争うのはそれからでも遅くはない……どうだ?」

 

「その作戦に乗った。今は一丈字を排除することが最優先だ」

「μ'sとのハーレム生活を手に入れる為です。異論はありません」

「決まりだな。明日から早速作戦を実行するぞ」

 

ここに今一丈字を排除する為の駄目転生者同盟が結成された。しかし、自分達の仮説が全く見当違いであり、神からは「色んな意味でお前達の姿はお笑いだったぜぇ?」と言われ、地獄を見る日も近くはない。

 

 そしてまた飛鳥。家で神様と会話をしていた。

 

『しかしお前も欲がないな。あそこに残っていればヒーローだったものを』

『ご冗談を』

 

 飛鳥が口角を上げた。

 

飛鳥『皆生きてる。それで十分じゃないですか』

 

 この男もまた、良い意味で地獄を見る事になる。

 

 

つづく

 



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第23話「三人寄っても馬鹿の知恵」

第23話

 

 にこの家が火事になって翌日…。この日は全校集会や張り紙で廃校が発表され、ラブライブの本格な物語が始まる筈だった…。

 

 通学路。A、B、Cが同盟を結んで早速行動を共にしていた。傍から見ていた女性生徒は「汚物が集結した」などと、酷い言い様だったが、3人は我慢していた。

 

「いよいよだな……ラブライブの本格的な物語が始まるのは」

「この後、穂乃果はショックを受けて気絶する筈だ」

「気絶して倒れた瞬間に、僕達の能力を最大にして接し、一丈字の能力を無効化して、穂乃果達に好意的に接してもらえる筈です」

 

神の手によって停学が終わった3人は、昨日立てた作戦を実行する為に身なりを整え始めた。3人の力…ニコポ(笑)を重ねがけした、自分達のオリジナル能力を発動する為である。昨日の深夜までAのマンションで予行練習を念入りに行った3人は、必ずこの能力はμ'sに効果があると確信しニヤニヤと笑っていた。当然傍から見ていた女子生徒達は吐き気を催していた。

 

 

「能力名は、一丈字ブレイク。我ながら素晴らしいネーミングを考えたものだ。一丈字……オレの海未達を返してもらうぞ」

「今度はお前がヒロイン達から冷たくされる番だ。俺と絵里達がイチャイチャしてる姿を見せつけてやるからな」

「今まで優しくしてくれたμ'sが嘘のように、アナタを拒絶するんだ。覚悟しなさい一丈字…お前の泣き叫ぶ姿が目に浮かびます」

 

自分達の能力を重ねがけし……飛鳥のμ'sを誘惑する能力を無効化し、自分達の最も憎むべきライバルの飛鳥がμ'sに冷たくされ、自分達がμ'sとイチャイチャしている姿を見て泣いている姿をニヤニヤと馬鹿みたいな顔をして想像している愚かな転生者達…どうやら自分達が数々のアニメの世界で好き放題に問題を起こした罪人という自覚は無く、自分達は無敵の転生だと、勘違いをしていた3人の姿はお笑いだったぜぇ?

 

『何で事あるごとにパ○ガス入って来るんだよ…』

『癖になる独特のイントネーションだからな』

 

コマの外から飛鳥と神様が突っ込んでいた。

 

 正門前、何やらテレビ局の面々が来ていて、A達はおどろいていた。

 

「な、何だ…?」

「テレビ取材…どう考えてもおかしいぞ」

「いや、待てよ。もしテレビに映る事になったとして、印象良くすれば真姫達の印象も良くなるかもしれないぞ」

「お前天才か」

 

 そうと決めた3人はテレビ局のインタビューに答えてもいいように、愛想よく振る舞って歩いたが、テレビ局のクルーは面々をスルーした。

 

(え)

 

 ちなみにそれを見ていた女子生徒達には鼻で笑われていた。

 

「ど、どういう事だよ! 何でテレビクルーはオレ達を無視したんだよ!」

「オレが知るか! こいつに聞け!」

「オレのせいにするな! 必ずインタビューされるなんて言ってない!」

 

 と、フォー達が責任転嫁しあっていると、テレビクルーの一人が首を傾げた。

 

「うーん…中々来ないなー。もう来たんじゃないか?」

 

 と、テレビクルーの一人が口を開いたのを3人は聞いた。

 

「もうやめましょうよ。この学校の理事長にも取材断られたじゃないですか…」

「バカやろう! 高校生がたった一人で火事現場から子供達を救ったんだぞ! これを伝えないでどうするんだ!」

 

 3人の表情が歪んだ。忌々しい思い出である。今まで沢山世界と女を救った自分達が、ヒロインにビンタされて、大勢の前で恥をかかされた。何もかも一丈字のせいだ。一丈字絶対殺すと考えていた。

 

「それにしても凄いですよねー、その子。自分も怖かっただろうに…」

「ホントにそれだな」

 

 飛鳥を称賛するテレビクルーに、A達は嫉妬していた。

 

「くそう…」

「ああ…。間違いなく奴しかいねぇ…」

「おのれ…!! 売名行為しやがって…!!」

 

 するとテレビクルーの面々はA達を見た。

「あのー、君達」

「や、やべっ!」

「今の事聞かれたか?」

「いや、待ってください。これは奴に関する情報を詳しく聞かせて欲しいってパターンです」

 

「さっきの発言について、ちょっと聞かせて貰えるかな」

「同じ学校の仲間が人助けしたのに、それは無いんじゃないの?」

 

 そんな筈が無かった。しっかり聞かれていて、また自分達の評判が下がった。そして×が悪くなったのか、A達は逃げ出した。

 

 

「ハァ…噂は本当だったみたいですね。音ノ木坂にはとてつもない程の問題児がいると」

「それだ!」

「え」

 

 

 そして飛鳥が学校にやって来た。

 

「ハァ…」

『腹括れ』

 

 飛鳥は休もうか考えていたが、朝に学校から電話があり、登校後すぐに理事長室に来るように言われてしまった。

 

(何かテレビクルーも来てるし…)

 

 飛鳥が超能力で存在感を消して、そのまま通り過ぎていった。

 

 理事長室。飛鳥は理事長の前に立っていた。

 

「ご心配をおかけしました」

「え、ええ…。無茶はダメよ?」

 

 南は苦笑いした。正直無茶をしてほしくない気持ちはあったが、病院からもし救出が遅れていたら、助からなかったと言われていた為、これ以上は何とも言えなかった。

 

「…電話で話したけど、本日あなたの事でテレビ取材が来ます。アナタが表彰されている所と、インタビューにも答えて頂きますので…」

 

 理事長は額を抑えていた。

(あの転生者達の事をダシにされたのか…)

 

 飛鳥は責任を感じ、毅然とした態度で承諾した。

 

「承知しました」

「引き受けてくれるの?」

「はい。ですが、一つお願いがございます」

「何?」

「時間が来るまで、ここにいても宜しいでしょうか…。他の生徒と出くわすとアレなので」

「わ、分かったわ…。こっちも無茶なお願いしてるからそれくらいは…」

 

 こうして飛鳥は、時間が来るまで理事長室にいる事にした。

 

 にこ・希・絵里の教室。にこの家の火事で持ちきりになっていた。まだにこは来ていない。

 

「矢澤さん…大丈夫かしら」

「うん…人が死ななくて良かったね」

 

 こんな形で注目を浴びるのは本人も望んではいないだろう。教室にはBもいるが、完全に空気だった。作戦の為、大人しくしていたが…。

 

「暫くは親戚の家に泊まるとかいうとったけど…大丈夫やろか」

「そうね…」

 

 するとにこがやってきた。

 

「矢澤さん!」

「何よ。幽霊を見るような顔で」

 

 にこが呆れた。

 

「その…えっと…」

「大丈夫よ。確かに家は全部燃えたけど、何とかなってるから」

「そう…」

「それよりも…あいつの所に行ってくるわね」

「あいつ?」

「ああ…あの子の所な。うちも行くで」

「誰?」

「2年生の一丈字くん。あの子やで、にこっちの兄弟助けたん」

「えええっ!!!?」

 

 驚く女子生徒達に対し、Bは歯軋りをした。

 

(いい気になるなよ一丈字…。お前の天下も今日までだ…!!)

 

 2年2組教室

 

「ええっ!!? 飛鳥くんが!!?」

 

 穂乃果、ことり、海未が驚いた。

 

「うん…3年生の矢澤さんの妹さん達を火事から助けたんだって」

 

 穂乃果・ことり・海未が顔を合わせた。

 

 1年生教室

 

「マ、マジで…」

「す、凄すぎるにゃ…」

「うん…」

 

 真姫たちも穂乃果達と同様に驚いていた。

 

 理事長室。理事長は飛鳥をずっと見ていた。

 

「あの…何でしょうか…」

「あ! いや、何でもないのよ!?」

 

 理事長が慌てる。

 

「…ですが、アナタは本当に不思議な子ね」

(よく言われる。ホントに)

 

 飛鳥が困惑する。超能力者だからなのか、それとも…。

 

「学校でも何度も女子生徒を助け、外でも人を助けるなんて…」

「え、私の行く所行く所トラブルが起きるなって話ですか?」

「違うわよ! あなたのやった事は立派ですから、もうちょっと胸を張りなさい!」

「あ、はい…」

 

 飛鳥が困惑した。原因は自分達にもあるようなものなので、何とも喜べない状態だった。

 

「…何かあったの?」

「いえ、ここまで来るともう私が仕組んでるんじゃないかって疑われそうで」

「実際そうなの?」

「いいえ?」

 

 飛鳥は首を横に振った。寧ろそんなの勘弁してくれと思うばかりだった。

 

 

つづく

 



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第24話「勝者と敗者」

 

 

 全校集会

「そういう訳で、廃校の件は以上です」

 理事長が廃校の話をした。μ’sは勿論、女子生徒は一安心していた。転生者達に至っては…。

 

(どういう事だよ!!! 廃校にならないって!!)

(ストーリーが成り立たないじゃないか!!!)

(僕が気絶しそうです…!!)

 

 

 すると理事長がマイクを見直して、正面を向いた。

 

「続きまして、当初は予定にありませんでしたが、表彰授与に移りたいと思います」

 

 テレビクルーが生徒達を撮影していた。

 

「昨日、音ノ木坂の生徒が火災現場から子供達を救助したという報告を受け、その生徒の承諾を得て表彰致します。2年1組、一丈字飛鳥くん。こちらへ」

 

 すると、飛鳥が舞台袖から出てきた。

 

「飛鳥くん!!」

 

 他のメンバーも反応した。2年生組、1年生組は驚いて、3年生組は感慨深そうにしていた。フォー達は嫉妬で怒り狂っていたが…。

 

「感謝状、音ノ木坂学院 一丈字飛鳥殿…」

 

理事長が読み上げるが、飛鳥は特にテンパる様子もなく、普通に表彰状を受け取っていた。

 

 全校集会が終わって、飛鳥はインタビューにも答えた。

 

「どうして助けに行こうと思ったんですか?」

「本当は迷ったんですけど、消防車や救急車が来ないって聞いて、これはもう行くしかないなと。子供達も小さいですから待ってる時間も限られていました」

「そ、そうですか…」

 

 高校生とは思えない落ち着いた態度にテレビクルーも困惑した。それを遠くからA達は嫉妬した目で飛鳥を睨んでいた。

 

 そして1組の教室に帰って来ると…

 

「飛鳥くん!!!」

「一丈字くん!!」

 

 女子生徒達が飛鳥に詰め寄った。飛鳥はある程度覚悟はしていたが、やっぱり女子生徒が詰め寄ってくると少し辟易する。

 

「聞いたよ! 火事から子供を助けたんだって!!?」

「凄い!! ホントに凄い!!」

「怪我とかしてない!!?」

「あ、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、Aが陰で面白くなさそうに歯軋りした。

 

(いい気になるなよ一丈字…お前の天下も今日までだ!!)

 

 

 ある休憩時間

「邪魔するわよ!!」

 にこ・絵里・希の3人がやって来た。

 

「一丈字くんおる?」

「あ、はい」

 

 飛鳥が反応して立ち上がると、にこが飛鳥に近づいた。

 

「ちょっと来なさい」

「あ、はい…」

 と、にこが飛鳥を連れて行った。希と絵里もついていく。

 

 廊下

「そういや…あれから、妹さん達は大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。一番下の子もすっかり元気になったわ」

「そうですか。それは良かった」

 

 飛鳥が口角を上げる。

 

「その…お母さんがね。今度お礼が言いたいって」

「お気遣いはいりませんよ」

「気が済まないの! ママもにこも!」

「!」

 

 にこが飛鳥を見つめると、チャイムが鳴った。

 

「にこっち、もう時間や」

「う…分かってるわよ!」

 

 にこが飛鳥を見つめる。

 

「いい!!? 分かったわね!?」

「あ、はい…」

「それから今日のお昼!」

「?」

 

 にこが頬を染めて、飛鳥に指をさした。

 

「昼、空けときなさいよ!」

「あ、ごめんなさい。ちょっと昼は理事長室に呼ばれてて…」

「それじゃ明日!」

「本当にお気遣いは結構ですよ。妹さん達が無事ならそれで。それでは、失礼します!」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

「ホンマに不思議な子やな。もしかしたら…」

「うん…」

 

 と、にこ達は飛鳥の背中をずっと見ていた。

 

 

 次の授業。1組と2組の合同授業だったが、自習となった。

 

「何かあった!?」

「ありがとうって言われたよ」

 

 穂乃果の問いに、飛鳥が苦笑いした。

 

「あ、そう言えば今日は自習だって!」

「あ、そうなんですか…」

 

 穂乃果が飛鳥に言うと、飛鳥は適当に返事した。するとヒデコ、フミコ、ミカのヒフミトリオが飛鳥に詰め寄った。他の2組の女子も興味津々である。

 

「ねえねえ! 一丈字くんの事、もっと知りたいな!」

「教えて教えてー!!」

 

 と、ヒデコとミカが言う。飛鳥は苦笑いし、Aはぐっとこらえていた。

 

(それが一番マズいんだよな…どうしよう)

『いいじゃないか。私が上手い事誤魔化してあげよう』

 

 その時、山田がやって来た。

「お前ら。自習の時間だ。席付け」

(あ、助かった…)

 

 2組の生徒が残念そうにしながら、自分の席へとついた。

 

 自習時間。飛鳥は普通に自習していたが、隣に座っていたことりが横で飛鳥をじーっと見ていた。

 

飛鳥「何?」

ことり「ぴっ!?」

 

 飛鳥が急に話しかけてきたため、ことりは驚いて声を上げた。

 

「どうした、南」

「い、いえ! 何でもありませんっ!!」

 

 ことりが慌てていた。

 

「どうしたの? ことりちゃん」

「ち、違うの! あ、飛鳥くんこそ急になに!?」

(いいぞ。そのまま嫌われろ!)

 

 飛鳥が自分から墓穴を掘ったと思い、Aはニヤニヤしていたが、周りの生徒は露骨に嫌そうにしていた。ちなみに座席はくじ引きである。

 

「いえ、何か見られてた気がしたから…。分からない所があるの?」

「えっ…」

 

 ことりが驚いた。

 

「あ、違った? ゴメンね」

「え、えっと…」

 ことりが迷うと、テキストを手に持って、ぱらぱらとページをめくり、問題を飛鳥に見せた。

 

ことり「その…ここの問題の解き方が分かんないんだけど…」

飛鳥「あ、これ?」

ことり「う、うん…」

 

 飛鳥は一瞬ことりを見ると、すぐにプリントに視線を移した。

 

「メモの用意して。教えるから」

「えっ?」

「やり方さえ分かれば、すぐに解けるよ」

 

 飛鳥に言われた通り、ことりがメモの準備をした。

「これはね…」

 

 飛鳥はことりに問題の解き方を教えた。最初は分からなさそうにすることりだったが、飛鳥が例などを紹介すると、頭の中に入ったようだった。

 

「あ! こうなった!」

「そう。それが正解だ。分かったかな?」

「う、うん! ありがとう!」

「いえ」

 

 飛鳥がそう言うと、ことりと目が合った。ことりは恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「あ、ご、ごめんなさい!!////////」

 

 と、照れて目をそらしてしまった。

 

(一丈字の野郎…! ことりに色目を使っているのか!? よし!)

 

 するとAが立ち上がった。

 

「一丈字くん。今は授業中だし、南さんに色目を使うのは良くないなぁ」

 

 と、気障な感じで言い放つと、周りにいた女子生徒達が殺気立てた。もう喋るだけで殺意が湧いてくるんだよ。喋るなと言わんばかりだったが、Aにとっては今日が飛鳥の命日だと思い込んでるため、気にしていなかった。

 

「ああ、すみません」

 

 飛鳥が謝ったので皆が驚いていた。

 

「ぴっ!!?////////」

「ええっ!!? あ、飛鳥くんってことりちゃんに気があったの!?」

「え、えっと…えっと…///////」

 

 ことりは顔を真っ赤にしてプルプル震えている。

 

「は、破廉恥です!///////」

「あ、そうじゃなくて、今朝理事長から色々お話を伺ったんですよ」

「お母さんに!?」

 

 ことりが驚いたような顔で飛鳥を見た。

 

「話してた通りの子だなーって思っただけだよ」

「な、何て話をしてたの…?」

「えーっと…」

 

 飛鳥が理事長と会話した内容を思い出す。

 

 ― 回想 ―

 

「うちの娘を、お嫁さんにする気ない? 内気だけど家事は得意だから…」

「……」

 

 

 回想が終わり、飛鳥が口角を上げた。

 

「やっぱりやめよう。忘れて」

「ホントに何話したの!!!?(大汗)」

「ほら、山田先生もあそこにいるから…ね?」

「ね? じゃないよ! 教えてってばあー!!/////////」

 

 ことりが飛鳥に詰め寄って、まさにイチャイチャしていた。

 

 

(そうやってイチャイチャしてろ一丈字…!! あと数時間後にそうなっているのはオレだ…!!!(激怒))

 

 と、転生者Aは醜い顔で飛鳥達を睨みつけていた。周りの生徒はげんなりしていた。

 

「むー…///////」

「……」

 

 ことりが頬を染めてジト目で睨むのに対し、飛鳥は視線をそらして自習をしていた。

 

 

 

つづく

 



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第25話「需要と供給」

 

 

 天界

 

「聞いたか? 羅城丸様。地球人にフォー退治を頼んだらしいぜ」

「一体どういうつもりだろうな」

 

 と、とある宮殿の中にある食堂で、天使たちが話をしていた。

 

「やる気を出させようって魂胆だろどうせ」

「だよなぁ。でも、無理なもんは無理だっつーの」

 

 相変わらず若い天使達はやる気がない様子だった。しかし、ザキラが現れて空気が一変した。

 

「やべっ! ザキラだ…」

「あいつにキレられたら、一たまりもない…」

 

 と、皮肉を言っていた天使達は口をつぐむ。そう、ザキラは若手の天使で一番強く、権威もあった。おまけに機嫌も悪い為、先ほどの発言をすればどうなるかは目に見えている。最悪、上の天使に言いつけて、自分達の立場を更に悪くすることだってあり得るのだ。

 

「兄さま…」

 

 ザキラの後ろをついて来ていた白い髪の美少女の名前はコロロ。ザキラの妹であり、天使見習いである。最近ずっと機嫌が悪い兄・ザキラを心配していた。

 

 

ザキラ(一丈字飛鳥…!! 何故あの者が…!!!)

 

 ちなみに声は「ポケットモンスター」のコジロウの声をしている人でお願いします。間違っても「ドラゴンボール超」のザマスではありません。ザマスを知っている人からしてみれば、シャレになりません。

 

 

 

 ところ変わって音ノ木坂学院。昼休憩になり、飛鳥は移動しようとしたが、穂乃果達に呼び止められていた。

 

「飛鳥くん!」

「何だい?」

 

 飛鳥が穂乃果を見た。

 

「今日は空いてるよね!?」

「いや、理事長に呼ばれてるんだ。だから理事長室で昼食」

「もう! いつになったら時間空いてるの!? って理事長室!? 何で!?」

「今回の火事の件で、更に話したい事があるみたい。それじゃ、行ってくるね」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

「ホントに凄いよねー。飛鳥くん」

「うんうん」

「今じゃ、音ノ木坂のヒーローだもんね」

 

 同行していたヒフミトリオが飛鳥を絶賛すると、陰で見ていたAが面白くなさそうに歯軋りをする。

 

「…それに比べて」

「な、何の事かなー…? あははははは。僕もちょっとお昼食べてこよーっと」

 

 そう言ってAは去っていったが、何人かは思った。もう帰って来るなと。

 

 そして掲示板前

「……」

 

 転生者トリオは穂乃果達が掲示板の前に来るのを待っていたが、来なかった。そう、本来であれば、廃校の張り紙が張り出されて、穂乃果が気絶するところから物語が始まるのだが、全校集会で理事長が、廃校はないと言ったのだ。当然来る筈がない。

 

「何でこうなるんだよ!!!」

「そんなのオレが知るか! どうして廃校しないんだよ!!」

「一丈字が何かしたみたいですね」

 

 その頃穂乃果達はというと、理事長室の前にいて、穂乃果が盗み聞きしようとした。

 

「ちょ、ちょっと穂乃果!」

「それはダメだよ~」

「…ちょっとだけ」

 

 海未とことりが慌てて制止しようとするが、穂乃果は止まらず、理事長室の扉に耳を当てた。

 

 理事長室。飛鳥と理事長が向かい合って座り、飛鳥は理事長が用意した高級弁当を食べていた。

 

「…すみません。お昼頂いて」

「いえ、これくらい当然です。食べなさい」

 

 飛鳥は高級弁当を食べていた。

 

「さて、今朝の話の続きをしましょうか」

「……」

 

 理事長が飛鳥を見つめた。

「無茶をしたことについては、大人として諫めないといけませんが、アナタの行動には、こちらも頭が下がるばかりです。全校集会が終わった後、音ノ木坂学院に対する称賛の声もありました」

「電話でですか?」

「ええ。その事もあって、元々決まっていた入学希望者も減らずに済みました。このままだと本当に廃校を防げます」

 

 飛鳥が口角を下げる。廃校を何とかするのは自分ではなく、μ’sなのだから。

 

「今後も、我が校、いや…人として模範となるような生徒でいてください」

「…分かりました」

 

 飛鳥としてはただ、μ’sやこの世界の住人たちを守る事だけを考えていた。

 

「ところで一丈字くん」

「何でしょう」

「前も聞いたと思うけど、うちの娘について…どう思う?」

 

「ことりちゃんの事について聞いてるね」

「ぴっ!!?」

 

 穂乃果の言葉にことりがドアに張り付いて、耳を立てた。穂乃果は苦笑いしていた。

 

「またそのお話ですか?」

「母親としても気になるのよ。たまにあなたの話をするのよ。あの子」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

(絶対に変な事喋らないで…!!!)

 と、穂乃果達は休憩時間が終わるまで張り付いていたという。

 

 その頃…

「結局来ませんでしたね…」

「あのクソ丈字が!!」

「どこまでも舐めやがって!!!」

 Cの言葉にAとBが憤っていた。舐めてるのはお前らだと言いたい。

 

 

 昼休憩後…

『神様』

『何だ』

 

 飛鳥と神様がテレパシーで会話をしていた。

 

『よくよく考えたら…今日、廃校が発表されて物語が始まる日じゃありませんでしたっけ?』

『そうだが?』

『…大丈夫なんですか? 彼女、普通に教室にいましたけど』

『大丈夫だ、問題ない』

 

 飛鳥としては本当にどうなるか予測もつかなかったが、神様の言葉を信じることにした。

 

 午後の授業を普通に受けて、あっという間に放課後になり、飛鳥は帰ろうとしていた。

 

「さて、帰るか…」

「飛鳥くん!」

 

 穂乃果が教室にやってきて、飛鳥を呼び止めた。

 

「何です?」

「今日予定ある?」

「特にありませんけど…」

「良かった! 今日一緒に帰らない?」

 

 飛鳥は少し驚いた。

 

「それは構わないけど…」

 

 その時、陰から見ていたAが阻止しようとした。

 

「(そんな事させるか!) おー…」

 

 Aが割って入ろうとしたが、1組の女子達に通せん坊される。

 

A「あの、ちょっと」

飛鳥(相変わらずガードされてんなぁ…)

 

「分かってんのよ! 穂乃果と飛鳥くんが一緒に帰るのを邪魔しようって話でしょ!」

「もういい加減にしてよね!」

「さっさと諦めなさいよ! しつこいなぁ!」

「もう罵声のネタ尽きかけてるんだから、ちょっとは我慢しなさいよ!」

「そんな事考えてたの!!?」

 

 女子達のカミングアウトに飛鳥が突っ込んだ。

 

「飛鳥くん。今のうちに!」

「あの、高坂さん?」

 

 穂乃果が飛鳥の腕を絡めた。それを見ていたことりと海未が赤面する。

 

「ホ、ホノカチャン!!/////」

「は、破廉恥です!!」

「え? 何が?」

 

 穂乃果は何も気づいておらず、きょとんとしていたが飛鳥は静かに目を閉じた。

 

「穂乃果だいたーん!」

「うん…」

「当ててるの?」

「え?」

 

 穂乃果は何のことか分かっていなかった。しかし、ヒロインのおっぱいが恋敵の体にあたっていたので、Aは唖然としていた。

 

「あの…帰っても宜しいでしょうか」

「あ、飛鳥くんまでどうしたの!?」

「どうもしないよ」

「とにかく離れなさい!!////////」

 

 海未が飛鳥と穂乃果を引き離した。飛鳥は穂乃果の天然ボケに呆れていた。その時だった。

 

「い、一丈字こらぁ!! どういうつもりだ!!」

 

 と、Aが憤慨しだした。お前がどういうつもりだと、周りの生徒達は思った。

 

「行こっ! 飛鳥くん」

「え、あ、うん…」

 

 と、穂乃果達が飛鳥を連れて行った。Aは追いかけようとしたが、1組の女子達に足止めされ、そのまま罵声を浴びせられた。

 

 

 

 

 つづく

 



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第26話「A-RISEにも会いました」

 UTX学院前

「ここがUTX学院…」

 

 飛鳥、穂乃果、ことり、海未は下校途中、UTX学院前に寄り道しており、学校に設置されているモニターに3人の少女が映し出されていた。

 

「あの子達は?」

「さあ…」

「アイドル…でしょうか」

「……」

 

 飛鳥は何もしゃべらなかった。というか、何をしゃべったらいいのかも分からなかった。

 

「もしかして出身校なのかな?」

「違うわよ。A-RISEよ」

「!」

 

 4人が後ろを振り向くと、にこ・花陽・凛が現れた。

 

「にこ先輩! それに凛ちゃんと花陽ちゃん!」

「こ、こんにちは…」

「アンタ達。A-RISEも知らないでここに来たの?」

「凛も知らなかったにゃ。にこ先輩とかよちんの付き添いだから」

 

 凛が首を傾げた。

 

「それにしても…そのA-RISEって人達、そんなに凄いんだ」

「凄いも何も、No.1スクールアイドルグループよ。正直言って彼女達目当てで生徒も沢山来てるんだから!」

「…そうなんだ」

(あ、これはターニングポイント来たな)

 

 にこと穂乃果の会話を聞いて、飛鳥は何かを感じ取った。しかし、次の瞬間、状況が一変する。

 

「おい! まだ見つからないのか!?」

「?」

 

 という男の声がしたので、飛鳥が横を向くと、何やら慌てている黒服の男たちがいた。

 

「早く見つけろ! A-RISEが誘拐されたなんて知られたら、大騒ぎになるぞ!」

(えええええええええええええええええ!!!?(大汗))

 

 飛鳥は心の中で絶叫した。火事に続いて誘拐イベントもあったのだから。

 

『神様!! これはちょっとやり過ぎじゃないですか!!』

『……!!』

 

 飛鳥が神様にテレパシーで伝えた。

 

『神様!!』

『…まさか』

 

 神様がある事に気づいた。

 

『もう既に他のフォーが現れているのか!?』

『…そうとしか』

 

 飛鳥が困惑した。そして、神様の発言からして状況はかなり悪いことも感じ取っていた。

 

『まあいい。今はそのA-RISEって娘たちの救助が先じゃ! ワシは原因を究明する!!』

『分かりました!』

 

 その時、穂乃果達も『誘拐』という言葉が聞こえて、黒服の男達を見た。

 

「え…誘拐?」

「誘拐…」

「誘拐ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」

 穂乃果、花陽の言葉に続き、にこが絶叫すると、映像のA-RISEにかじりついていた生徒達もにこ達をみた。

 

「な、何だ! 君達は!!」

『そんなでかい声で言ったらそうなります』

 

 飛鳥が心の中で突っ込んだ。

 

「あの!! 誘拐ってどういう事なんですか!?」

「A-RISE…誘拐されっちゃったノォ!!?」

「あ、だ、大丈夫だよ…今、警察が捜査してくれてるから…」

 

 詰め寄る穂乃果達に、黒服の男たちは慌てて弁解する。モニターの中のA-RISEを見ていた観衆達もざわざわしていた。

 

『それでは間に合わぬ。飛鳥、場所が分かったぞ。場所は…』

 

 神様が場所を伝えた。

 

『分かりました。で、神様…』

『ああ。μ’sを遠ざけてあげよう』

 

 神様が魔法を使った。

 

「あ、それはそうと飛鳥くん。今日用事があるって言ってなかった?」

「え」

 

 穂乃果が急に用事があると言いだしたので、驚く飛鳥。

 

「そうだよ。早く行ってあげて?」

「遅れるのは良くないにゃ」

(本当に色んな意味でゴメンね!!)

 

 ことりと凛が心配そうに言った為、飛鳥は申し訳なさそうにした。

 

「あ、う、うん。また明日! 気を付けて帰ってね!」

「バイバーイ!!」

 

 そう言って飛鳥はμ’sと別れた。

 

『神様! 場所を詳しく教えてください!』

『任せろ!!』

 

 神様の指示の元、飛鳥は攫われたA-RISEの元へ向かった。

 

 とある寂れた工場

 

「ちょっと!! 何なのよアンタたち!!!」

 

A―RISEのリーダー・綺羅ツバサが叫んでいた。A-RISEは綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅの3名だが、3人共全裸にされて足は自由に動かせるが、手首は上に縛られている状態だった。

 

 そして縛り付けているのは8人の女達だった。

 

「いきなり裸にしてどういうつもり!!?」

「どうしてこんな事を!?」

「…ていうか、君達、女性だよな?」

「アンタ達にはここで消えて貰いたいのよ」

 

 主犯格と思われる女が口角を上げて言い放った。

 

「どうして!?」

「どうしてって…そんなの決まってるじゃない」

 

 ツバサの問いに女は拳を震わせて言った。

 

「アンタ達がずっとNo,1に居座っていたせいで、私達の人気は落ちて、廃校に追い込まれたのよ! アンタ達さえいなければ学校は存続できたのに!」

「絶対に許さないわ!!」

 

 と、完全に逆恨みだった。ツバサはあざ笑うように主犯格の女を睨みつけた。

 

「へぇ…それで私達をどうする気なの?」

「決まってるわよ。動画を公開するのよ。アンタ達「A-RISE」がスッポンポンになった動画をね!」

「!」

「大勢の人間に裸を見られて…大路を振って歩けるかしら?」

「歩けないでしょうね。行く所行く所変な目で見られて、最終的には発情した男達に襲われるのよ。助かったとしてもね」

「これでA-RISEは終わりよ」

 

 ツバサが冷や汗をかいた。

 

「何、その顔。もしかして見られるのを想像して興奮してるのかしら?」

「違うわ。アンタ達って本当に可哀想ね」

「何?」

 

 犯人グループの表情が歪んだ。

 

「学校が無くなったのは同情するけど…それで自分達を見失ったら何もかもお終いよ。全部が無くなった訳じゃないじゃない」

「うるさい!!」

「アンタに私達の何が分かる!!」

「自分達の状況を理解できているのかしら…」

「まあいいわ。予定よりも早いけど、今すぐショーを始めるわよ。アンタ達の大事な所、大っぴらに見せてやるんだから! カメラの準備!!」

「ええ…。もう準備できてるわ」

「っ!!」

 

 と、ツバサ達は目を閉じた。

 

「その体を是非観客たちに…って、あれ?」

 

 犯人の一人がカメラを操作していて、異変に気付く。

「どうしたのよ」

「カメラが壊れてる!!」

「予備があるでしょ」

 カメラの予備を確認する。

 

「無駄だ。超能力でカメラは故障させて貰ったよ。警察も呼んでおいた」

『手際良いな。お前さん…』

『…誰かさんのせいでね』

 

 飛鳥が困惑した。

 

『ところで神様。あの女たちは…』

『間違いない…フォーじゃ。どうやらこの世界に転生した時には、モブ中のモブに転生してしまったようじゃな。で、A-RISEを失脚させて自分達がその座に居座ろうと…』

『そういうのもあるんですね』

『ああ。バアさんから聞いたんじゃが、女の承認欲求は男の数百倍じゃ』

『……(汗)』

 

 その時、飛鳥が何かに突き飛ばされて、女たちの前に現れた。

 

「!!?」

「…いたた」

 

 飛鳥が起き上がった。

 

「あ、あんたは!!」

「もしかして警察!!?」

「…じゃなさそうね。一人だし」

「何しに来たのよ」

 

 女たちが飛鳥達を見た。ツバサ達は唖然としていた。

 

 

「そんな事、アナタ達が一番分かってるでしょう」

「!?」

 

 飛鳥がハッタリをかました。

 

「警察にも通報したわ。もう逃げられないわよ!」

「警察に!!?」

 

 狼狽える犯人グループ。飛鳥が女言葉で喋っている事には誰も突っ込まなかった。

 

「ハッタリよ。分かる訳ないわ」

「なら、何故私がここにいるのかしら?」

「フン…。知られたからには大人しくして貰うしかないわね」

 

 と、フォー達が転生の力を使って、飛鳥を始末しようとする。

 

「逃げて!!」

「……」

 ツバサが叫ぶと、飛鳥が目を閉じて口角を下げた。

 

「アンタ達!! あいつを捕まえるのよ!」

「おう!!」

「悪いけど…悪く思わないでね!」

 犯人グループは全員で8人いて、そのうちの4人が飛鳥に襲い掛かった。近接格闘タイプらしく、拳や脚を強化して、飛鳥に打撃を与え、一撃で気絶させようという作戦だ。

 

 だが、飛鳥はその4人の攻撃を見抜いてかわして、手刀一発を当てて、地面に沈めた。

 

「!!!?」

「あまり手荒な真似はしたくないわ。大人しく自首して頂戴」

 

 飛鳥が凛とした顔で犯人グループのリーダーを見つめる。

 

「くっ…やりなさい!!」

 

 と、残りの3人が光の矢を使って飛鳥の心臓を打ち抜こうとしたが、飛鳥は左目を光らせ、その3人を気絶させた。

 

「!!?」

「何をしようとしたかは分かりませんが…させないわよ」

「な…な…!!!」

 

 そして主犯格の女には金縛りをした。

 

 

「な、何…!? 体が…!!」

「さて…」

 

 飛鳥はツバサ達を見たが、ツバサ達は全裸で丸見えだった。そして飛鳥は3人に近づいた。

 

「解放してあげますので、動かないでくださいな」

「う、うん…」

 

 と、女の口調でツバサに問いかけると、ツバサは返事した。そして3人の縄を超能力で解いた。

 

「さてと…」

 飛鳥が犯人グループのリーダーを見た。

 

「この人達の服、どこですか?」

「そ、そんなの燃やしたわよ!!」

「燃やしたぁ!!?」

 

 ツバサ達が驚いた。

 

「それだったら私達、どうやって家に帰ればいいの…?」

「裸で帰る訳にもいかないしだろ…」

ツバサ「今伸びてるあの人達から借りればいいんじゃない?」

「え」

 

 飛鳥が指をさした先には、気を失ってる女たちがいた。

 

「やられたらやり返せじゃないですけど。どっちにしろもうすぐ警察も来るみたいだし、何とかなるわよ」

「そ、そう…」

 

 英玲奈は苦笑いした。

 

「そ、それよりもこれ…本当に動けないんだけど…!!」

「ご冗談を」

 

 そして警察がやってきた…。いずれも女性警官であり、女達は捕まった。飛鳥はどさくさに紛れて、A-RISEから逃げた。

 

『神様。後処理お願いします』

『ああ。あの女たちはパトカーに乗せた後、地獄に送る』

『…あ、そういうシステムなんですね』

 

 と、心の中で会話をした。

 

「助かったー」

 

 と、あんじゅがつぶやいた。

 

「……」

「どうしたツバサ」

 

 ツバサが考えていたので、英玲奈が話しかけた。

 

「あの人…。本当に女の人なのかしら? 声が低かったし…」

「ああ…。何か喋り方でごまかしてたような気が…」

 

 空気が止まった。

 

「…男の人だったらどうしよう//////////」

「い、言うな////////」

「全部見られちゃった~//////////」

 

 ツバサ達は顔を真っ赤にして恥ずかしがった。

 

 

『ところで、アニメの女の子の裸を見た感想は?』

『座長(小説の主人公)なのでノーコメントでお願いします』

 

 

つづく

 



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第27話「神の居ぬ間に修羅場」

 

 

 

 飛鳥がA-RISEを助け出してから一晩が過ぎた。飛鳥は知られていない事を願いながら、音ノ木坂学院に向かう。

 

(こういう時に限って神様はいないし…。今日は長い一日になりそうだ…)

 

 と、どんよりしていた。あれだけ大騒ぎになっていて、顔も知られたわけだ。何も起こらない筈がない。と、飛鳥はそう思っていたら、転生者トリオが目の前に立ちはだかった。

 

(いるよー。早速いるよー。そして、何かあったか全部わかってるって顔してるなこれ)

 

 A、B、Cがニヤニヤした様子で飛鳥を見ていた。下手をすればこれをいいことに、自分を変態のレッテルを押し付けて、μ’sを横取りしようって寸法だろう。作戦としてはありなのかもしれないが、神様の介入がある今、果たして本当に上手く行くのかどうか、飛鳥はそっちが気になっていた。

 

「やあ、一丈字くん」

「あ、おはようございます…」

 

 Aが機嫌よく挨拶すると、3人が同時に囲もうとしたが、飛鳥は瞬時に逃げた。

 

「あ、逃げるなコラァ!!!!」

「待ちなさい!!!」

 

 と、3人が追いかけてくる。女にモテる事以外はチート能力を持ったままだったなので、簡単に追いつかれる。

 

(成程。これも修業って奴か…)

 

 飛鳥はそう解釈した。

 

「おい、逃げんじゃねぇよ」

「聞いたぞ? A-RISEを助けたんだってな」

「ですが、それと同時に裸体も見たと」

 

 すると

「え!? そんなに知りたいんですか!!?」

 

 と、飛鳥がわざとらしく叫んだ。

 

「ちょ、バカ! 声がでけぇよ!!」

「何考えてるんですか!! あの人たちは今傷ついてるんですよ!!? 気持ちは分からなくはなりませんが、もう少しその辺考えなさい!!!」

 

 わざと怒鳴ると、周りにいた女子生徒達が何事かとB達を見ていた。

 

「く、くそぉ!! 行くぞ!!」

「ただでは済ませませんからね!!」

 

 と、B達は去っていった。ちなみに記憶を消す能力はあるのかだが、無い。とにかく敵を無双する力しかもっていない為、補助系の技はあまり持ち合わせていなかった…。

 

「ふぅ…」

 

 飛鳥が一息ついた。人気の多い場所であり、時間帯も時間帯で女子生徒達の一人はいるだろうと踏み、ハッタリで叫んでみたが、案の定女子生徒達がいたので助かった。最も、女子生徒達がどう思ったのかは、今の段階では分からないが…。

 

「……」

 

 飛鳥は凛とした表情で女子生徒達を見つめた。

 

「お騒がせしました。失礼します」

 

 そう言って飛鳥は女子生徒達に頭を下げて、その場を去っていった。

 

 

 音ノ木坂学院

 

「飛鳥くん聞いたよ!! A-RISEを助けたんだって!?!」

「……」

 

 穂乃果が1組にやってきて、飛鳥に詰め寄った。ことりと海未も同席している。

 

「うん。事実だよ」

「どうして一人で向かったの!?」

「いや、警察にはちゃんと通報した…」

「そうじゃないよ!! もし飛鳥くんの身に何かあったら…」

 

 と、ことりが胸を締め付けられる表情をすると、飛鳥は「ゴメン」一言だけ謝った。

 

「…ですが」

「!」

 

 海未が口を開いた。

 

「もし飛鳥さんが来なければ、綺羅さん達は性的被害を受けていたと伺っています。ですが!! このような無茶は…」

「それじゃ聞くけど園田さん」

「!」

 

「もし、今度あのような状況にあったら、どうすれば宜しいですか?」

 

 飛鳥が海未を見つめた。

「このような事態を起こしておいて言うのもアレだけど、対策が見つからないんだ。他の人の意見も聞きたくてね。園田さんはどうすればいいと思う?」

「そ、それは…」

 海未が視線を逸らすと、穂乃果が机をたたいた。

 

「今度からは穂乃果にも話して!!」

「話してどうなるの?」

「その…。な、何か出来る事があるかもしれないよ!!」

「……」

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

「…分かった。それじゃ一先ずそれで考えるよ。それと…」

「!」

 飛鳥が穂乃果達を見つめた。

 

「高坂さん達も気を付けて。決して他人事じゃない。深山先生か理事長からも話があると思うから、その指示に従って」

「……」

「本当にいつも迷惑をかけてすまない。けど…この通りだ」

 

 飛鳥が頭を下げた。

 

「……」

 穂乃果達が困ったが、

 

「ホンマにしょうがないなぁ。飛鳥くんは」

「!!」

「東條先輩!! それに、生徒会長も!!」

「ちょっと!! にこもいるんだけど!!」

 

 と、廊下から希、絵里、にこが現れた。

 

「まあ、なんやかんや言うても、肝心な時に女の子を守れんようじゃアカンしな」

「飛鳥くん。出来ることがあったら何でも言って頂戴。いつもあなたに助けられてるから…」

「にこも。アンタのその態度はちょっと納得いかないけど…妹たちも助けてもらったから」

 

 飛鳥が驚いた。

 

「私達もいるわ」

「そうにゃ!」

 

 と、真姫、凛、花陽も現れた。

 

「そういう事だから飛鳥くん!」

「……!」

 

 穂乃果が口角を上げた。

 

「穂乃果達は、飛鳥くんの味方だから! 大丈夫!」

「!」

 

 飛鳥は穂乃果の顔を見て、中学時代の同級生を思い出した。超能力者であるが故に、悩みやトラブルも多く、同級生たちとも何度か対立しては、拒絶したこともあった。しかし、ぶつかりあいながらもいつも助けてくれ、今では親友になった。

 

 そして確信した。自分は大丈夫だと。

 

「高坂さん…皆さん…」

 

 飛鳥が口角を上げた。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 ところがどっこい、昼休憩

 

「大丈夫なわけねーだろうがぁ!!」

 

 と、空気をぶち壊すようにA、B、Cが飛鳥の前に立ちはだかった。

 

(ですよねー…)

 

 飛鳥は渋い顔をした。そりゃそうだ。今日は自分で「長い一日になりそう」と言ったのだ。ここで災難が終わるはずなどない。

 

「おい! A-RISEの裸を見といて、何μ’sと一緒にいるんだよ!」

 

 と、Aがいちゃもんをつけてきた。

 

「そうだそうだ!! 離れろこの変態野郎!!」

「皆さん。そのような痴漢と一緒にいてはなりません。こっちに来るのです」

 

 その時だった。

 

「あのさ」

「!」

 

 穂乃果が睨みつけた。

 

「いい加減にしてよ。どうして綺羅さん達を助けたのに、そんな事しか言えないの?」

「!!」

「バカね」

 

 にこが前に出た。

 

「本当は自分達がヒーローになりたかったのよ。もし自分がこいつと同じ立場だったら、自分はツバサちゃん達を助けたんだ!! 何でそんな事言われなきゃいけないんだよ!! って、鼻息荒くして怒るわよ」

「何それ。意味わかんない」

 

 と、他のメンバーもA達を軽蔑する。

 

 

 さて次回はお待ちかねのμ’s VS フォートリオの全面戦争だ!!!

 

 

(お待ちかねはしてないと思います!!!(大汗))

 

 

 飛鳥は心の中で突っ込んだ。

 

 

 

つづく

 



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第28話「男って愚か」

 

 

「海未! 君たちは騙されてるんだ!!」

「ああ!! 可哀想な絵里…。必ずそいつから取り戻してみせるからね!!」

「安心してください。必ずあなたを取り戻してみせます」

 

 と、フォートリオがそれぞれの推しに愛の言葉(笑)をかけた。飛鳥としてはもうげんなりしている。

 

(帰りたい)

 

 しかし、そう思っているのは飛鳥だけではなかった。しかもここは食堂で、周りに人がいる状態だ。このフォートリオの絶対的な自信はどこに来ているものかと、飛鳥は理解に苦しんだ。

 

「な、何なのこいつ等…」

「やっぱりきもいにゃ~!!!!」

「……」

 

 真姫、凛、花陽は完全にドン引きしていた。あの花陽ですら青ざめて引いているのだから、よっぽど気持ち悪かったのだろう。

 

「なんか頭痛くなってきた…」

「私も…」

「うーん…。こりゃ相当拗らせとるなぁ」

 

 にこと絵里は立ち眩みがして、希も流石に何とも言えなさそうにしていた。

 

「穂乃果達は騙されてないもん!!」

「そうだよ!!」

「騙されたとしても、誰があなた達の所に何か!!(大汗)」

 

 穂乃果やことりはともかく、海未は完全に拒絶反応を出していた。

 

「ってか…どんだけ、女の子に飢えとんねん」

「やめなさいよ。相当女子に嫌われたんじゃないの? 手を繋いだこともないんじゃない?」

 

「失礼な事を言うなぁ!!」

「こっちは何度も世界を救って、何度もハーレムを作ってきたんだぞ!!」

「そうです…。僕の計算に狂いはないんですよ」

 

 飛鳥は膝から崩れ落ちた。

 

「あ、飛鳥くん?」

 

 穂乃果達が飛鳥を見た。

 

「同じ男性として本当に情けない。ご迷惑をおかけして申し訳ありません…」ズーン…

「飛鳥くん!!?(大汗)」

 

 飛鳥のテンションが完全に落ちたので、穂乃果達が慌てた。

 

「そうやって同情を引いても無駄だぞ!!」

「そういうことやっといて、他にもエッチな事してんだろうが!!」

「男の風上にも置けませんね」

 

 AとBが叫んだ。Cに至ってはどの面下げて言ってんだと、皆思った。

 

「た、例えば?」

「穂乃果!!」

 

 穂乃果が聞くと、海未が突っ込んだ。するとAが目をカッと見開いた。

 

「下着とか、自分が選んだ奴をつけさせたり、はかせてんだろぉ!!!?」

 

 空気が止まった。飛鳥はAが何を言っていたのか分からなくなっていた。μ’sは完全にドン引きしていた。

 

「えっ!!? そ、そんな事してないよ!!!」

「してないしてない!!」

「な、何を言いだすのですか!!! 破廉恥です!!//////// あなた達は最低です!!///////」

 

 穂乃果とことりはそのままの意味で捉えていたが、海未は完全に理解していて怒鳴った。

 

「ヴェエエエエエ!!!! 本当に何なのよこいつら!!!(大汗)」

「気持ち悪いにゃ~~~~~!!!! かよちん!!! 絶対に近づいたらダメ!!!」

「え? あ、う、うん…(真っ青)」

 

 真姫と凛が絶叫し、凛が花陽をガードした。

 

「あー…もう、バカにつける薬ってないのかしら…」

「ウォッカでも飲ませて永遠に眠らせる?」

「絵里ち。それ殺人や。でも大人しゅうしてほしい気持ちはわかんで…」

 

 3年生組も完全に引いていた。

 

「でも大丈夫!」

 

 Aが言い放った。何が大丈夫なんだと飛鳥達は思った。飛鳥に至ってはもう変態発言のし過ぎで精神がすり減っていて、超能力で作った特大のエネルギー弾をぶつけたいと思っていた。

 

「下着ならオレ達が選んでやるよぉおおおおおお!!!」

「そんな出来損ないよりもセクシィィィィィィな下着をぉ!!」

「自信ありますよォ」

 

 と、完全に勝てると余裕があるのが、下種な笑みを浮かべて近づく3人。すると飛鳥は穂乃果達を見た。

 

「…って言ってますけど」

 

 μ’sの回答は

「いいよ!! 自分で選ぶから!!!(大汗)」

「イヤー!!」

「は、破廉恥です!!!///////」

「……(泣)」

「いらないにゃ!! それよりもかよちんに近づくな!!!」

「ちょ、ちょっとあなた何とかしなさいよ…!!」

「本当にキモッ!!!」

「こりゃアカンな…」

「そんなの認めないわぁ!!!(大汗)」

 

 当然答えはNOだった。

 

「ふひひ! そんな釣れない顔をするなよぉぉ! オレは君達の王子様なんだぜぇぇ!」

「君達の愛しのダーリンがそのクソガキの洗脳から君達を解放してあげるよぉぉ。だからそんな怖い顔をしないでくれよぉぉ」

「君達は僕を愛すべきなんだよぉぉぉぉぉぉ」

「……(汗)」

 

 気持ち悪い顔で笑いながら一歩一歩μ'sに近づく馬鹿3人。恐怖におびえるμ’s。そして飛鳥がふと目を閉じた。そして体に電流が帯びる。

 

「もういい」

 

 飛鳥がそう呟いた。

 

「おっ、何だ。諦める気になったのか?」

「分かればいいんだよ」

「さあ真姫。僕達の所に来なさい」

 

 と、完全に勝ちを確信するフォー。

 

「あ、飛鳥くん!!」

「ちょ、まさかとは思うけど、にこ達を見捨てるの!!?」

「そんな筈ないじゃないですか」

「!」

 

 飛鳥が穂乃果達を見つめた。

 

「ただ…。私も少々我慢の限界が来てまして、それ以上の顔はちょっと見られたくないんですよ…。高坂さん…皆さんを連れて、少し離れてくれませんか?」

「え? あ、うん…」

「ちょ、何をする気なの!?」

「にこちゃん!」

 

 穂乃果がにこを見つめた。

 

「皆、少し離れよう」

 

 と、皆が飛鳥とフォー達と距離を取った。

 

「ありがとうございます」

「ちょ、てめぇ!!」

「オレ達とやろうってのか!!」

「分かりました。それではお望み通り、あなたをここで始末します!!」

 

 と、フォー達がチート能力を使おうとしたが、何も出なかった。

 

「!!?」

「な、なにも出ない!!?」

「何故だ!! 貴様!! 一体何をし…」

 

 その時、飛鳥の周りに禍々しいオーラが放たれ、飛鳥は目を閉じる。

 

「!!?」

 

 次の瞬間、食堂でとてつもない殺気が放たれた。そして地響きもする。

 

「ひぃいいいいいいいいいいいい!!!!(泣)」

 にこ・凛・花陽が身を寄せ合って涙目になり、震えていた。

 

「な…な…!!!(大汗)」

「なんだおまえは!!(大汗)」

「そんな…ばかな…!!(大汗)」

 

 フォー達は完全にしりもちをついて、飛鳥を見上げたが、飛鳥の顔はよく見えなかった。しかし、完全に「獲物を殺そうとしている獣の目」をしていた。何も言わず、A達を睨み続ける。

 

「ひ、ひぎ…」

「そ、そんな面しても怖くねぇぞ!!」

「ふ、二人とも!! 今こそあの必殺技を!!」

「バカ!! あれはμ’sが対象でこいつには…」

 

 その時、飛鳥が更に殺気を強めた。衝撃波のようなものが発生し、周りにいた人間を震撼させる。

 

 そして…

 

「……(泣)」

 

 A、B、Cはそのまま気絶し、涙を流しながら失禁と脱糞をしていた。

 

「……」

 

 飛鳥はというと、我に返って俯いていた。暫くして、穂乃果達の方を振り向いた。

 

「…終わりました」

「……!」

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

「本当にご迷惑をおかけしました。失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

 

つづく

 

 

 

 



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第29話「天界からの刺客!」

 圧倒的な殺意で、フォー達を退けた飛鳥。この後、教師たちがやってきて事情聴取を受ける。

 

「申し訳ございませんでした」

 

 飛鳥が担任である深山と他の先生達に頭を下げて謝った。

 

「一丈字くん…」

 

 深山が飛鳥を見て口角を上げた。

 

「顔を上げて頂戴」

「深山先生…」

 

 飛鳥が苦笑いをした。

 

「ありがとう!! あそこまでギタギタにしてくれて!」

「え」

 

 教師としてまさかの発言に飛鳥が驚いた。

 

「教師としてこんな事を言うのはあれだが…スカッとしたよ。ありがとう」

「ええ。いい気味です」

(ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!?(大汗))

 

 山田と笹原がにこやかに言ったのに対し、飛鳥は辟易した。確かに彼らに対してストレスが溜まっている事は分かっていたし、もし自分が同じ立場だったら、そう思っていたかもしれないかもしれないけど、教師としてその発言はどうなんだと思っていた。ましてや生徒に堂々と言うなんて…飛鳥は神様の仕業であってほしいと思っていた。

 

 そうでなければ、これこそ転生世界であまり好まれない「改悪」である。自分、転生者が活躍するために、元のキャラの能力や人間性を下げる事を「改悪」と呼ぶのだが、今の状態がまさにそうだ。これでは説得力が無くなるじゃないかと飛鳥は考えていたが、余計な事は言わない事にした。

 

 そんな中…

 

「……」

 

 山内だけ元気がなかった。飛鳥もそれに気づいていて、心配そうにしながら話しかけた。

 

「あの、山内先生…」

「あ、だ、大丈夫ですよ一丈字くん! よく言ってくれましたね!」

 

 と、笑って誤魔化す山内だったが、これ以上ここで何も言うまいと飛鳥は何も言わなかった。これがラノベの主人公であれば、何でもないって言った時に半ば強引に聞き出して、ときめかせるのだが、この世界はラノベとはちょっと違うし、飛鳥自身も空気の読めない男ではない。ここはそっとしておくのが一番だろうと考えていた。

 

「…分かりました」

 

 しかし、飛鳥の嫌な予感はすぐに的中した。それは、飛鳥が放課後に校舎裏に向かった時の事だった。

 

「ぐすっ…ぐすっ…」

 

 山内が一人で体育座りして泣いていたのだった。時折かけている眼鏡を取って、手の甲で涙をぬぐい、またふさぎ込んでいた。

 

「……(大汗)」

 

 この様子を見て、飛鳥は居たたまれない気持ちになった。そりゃそうだ。自分達が早く解決させれば、山内にあんな思いをさせずに済んだのだ。

 

 

 放課後、飛鳥は河川敷で黄昏てた。芝生の上で体育座りをして、夕日を見つめていた。泣いている山内の姿を思い出していた。

 

(何だこの気持ちは。どうすればいいの。本当にどうすればいいの)

 

 本当に罪悪感しか生まれなくなってしまった飛鳥。もう今すぐにでもあのフォー3人を倒して、元に戻してやりたいと考えていた。WONDER BOYの仕事として引き受けたが、こんなにも辛いと思わなかった飛鳥であった。

 

(ていうか、オレ達にも原因あるやん…)

 

 飛鳥は肩を落とした。

 

 その夜だった。

 

「あーあ…。顔合わせづらいなぁ」

 

 飛鳥は一人ベランダで黄昏ていた。結果的に穂乃果達と顔を合わせず、そのまま帰ってきてしまったのだ。

 

「明日なんて説明しよう…」

 

 その時、数㎞先で巨大な光の柱が発生した。それはとても見た事のないような神々しい光だった。

 

「!!?」

 

 飛鳥はそれに気づいてはっとした。もしかしたら最悪の事態が考えられると。

 

「な、なんだあの光は!!」

 

 飛鳥はすぐさま光の方に向かった。

 

「……!!」

 光の柱に近づいたが、周りの人間は誰もおらず、飛鳥一人だった。

 

「おかしいな…。もしかして、フォーの罠か?」

 

 飛鳥がきょろきょろ見渡したその時、

 

「!!」

 

 光の矢が数本飛鳥に向かって飛んできて、飛鳥はバク転した。

 

「ほう、私の矢を避けるとは、羅城丸様が推薦するだけの事はあるな」

「……!!?」

「よくここまで来たな。この光は私が放ったのだ。貴様をおびき寄せる為にな」

 

 飛鳥の目の前に、ザキラが現れたのだ。ザキラは宙を舞っている。

 

「誰だ!!?」

「私はザキラ。天界の戦士だ」

「!!?」

 

「一丈字飛鳥。貴様の事は聞いている。羅城丸様の命令で、この世界でフォー退治をしているそうだな」

「え、ええ…」

「だが、私としては納得していない」

「……!?」

 

 ザキラが飛鳥に襲い掛かり、剣で飛鳥を切ろうとしたが、飛鳥も超能力で剣を作り出し、応戦した。

 

(なんて力だ…!!)

「貴様が本当にフォー退治をするにふさわしいか…今ここで私が見極める!!!」

 

 

 その頃…

「…飛鳥くん」

 穂乃果は自分の部屋で考えていた。A達に激怒してそのまま背を向けて去ってしまった飛鳥の事を…。

 

「……」

 穂乃果は持っていた抱き枕を抱きしめていた。

 

 そしてまた飛鳥とザキラに戻る。二人は河川敷で戦っていた。所々砂煙が起きている。

 

「少しはやるようだな…!!」

 飛鳥は剣を消して、格闘技でザキラに応戦する事にした。

「甘い!!」

 ザキラも剣だけではなく、剣を持っていない左手を突き出して掌から、光の矢を放った。飛鳥は走って避け、飛鳥は手裏剣を投げた。

「そんなもので…!!」

そして瞬時に飛鳥はザキラに近づいて蹴りを入れたが、ザキラがガードした。

「!!」

「それで勝ったつもりか!! ホーリーフィールド!!!」

 と、ザキラの周りに白いバリアが張り出され、飛鳥はぶっ飛ばされた。

「ホーリーアロー!!」

 ザキラがまた左手から光の矢を飛鳥に向けてはなった。

 

「くっ…!! 闇穴(ダークホール)…」

 飛鳥が右手を出そうとしたその時、対応が間に合わず、矢が飛鳥の体を貫いた。そして飛鳥はそのまま体制を崩した。

「……」

 ザキラは口角を下げていた。

 

「閃光四方手裏剣!!!」

 

 と、金色に輝く四つの巨大な手裏剣がザキラに襲い掛かった。

 

「やはり砂煙の間に分身を作っていたか!!」

 ザキラが手裏剣をかわして、本体の飛鳥に襲い掛かろうとしたが、動けなかった。

「!!?」

 ザキラが後ろを振り返ると、飛鳥が口角を上げていた。そして手裏剣の一つが上空でずっと回っていて、飛鳥とザキラの周りを照らしていた。

 

「影縛りの術…成功!!!」

 

 飛鳥のザキラの影がくっつき、そのままザキラの動きを止めた。

 

 

つづく

 



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第30話「飛鳥 VS ザキラ!」

 

 

「何度も手裏剣に化けていたのか…!! 私の動きを防ぐために…!!」

「ええ…!! お陰様でスタミナが…。本来であれば、私の仲間がここで止めを刺すところなんですがね。今はいないので長期戦。ってところですか」

 

 飛鳥が口角を上げた。

 

「ザキラさんでしたっけ…」

「……!!」

「あなたはとても強い。私のような人間がフォー退治をするのは、確かに納得がいかれないと思います。ですが…、こちらも修業中の身である為、ここはどうかご理解いただけないでしょうか…」

 飛鳥の言葉にザキラが激昂した。

 

「一丈字飛鳥…。多少は貴様の力を認めてやる。私に食らいつく姿勢は、確かに羅城丸様が言っていた通り、天界にいる若手兵士たちにも見習わせなければならない。だが…」

 ザキラの目がカッと開いた。

 

「それで私が納得すると思っているのかッ!!」

「……!!!」

 

 ザキラのパワーに飛鳥が押されそうになったその時、

 

「何をしておる!! ザキラ!!!」

「!!?」

 

 羅城丸と、ザキラの妹であるコロロが現れた。

 

「羅城丸様!!」

「……!!」

 

 戦いは強制的に終わり、両者から事情聴取を受けていた。

 

「全く…」

「……」

 

 ザキラが罰が悪そうに視線をそらしている。

 

「あの、神様…」

「すまん飛鳥くん…。私が少し目を離したすきに…」

 飛鳥が羅城丸に話しかけると、羅城丸は首を横に振って申し訳なさそうにしていた。コロロも心配そうに見つめている。

 

「兄さま…どうしてこんな事を」

「わ、私は天界の未来を思ってだな…」

 羅城丸が正面を向いた。

 

「そんなに悔しいか。普通の人間にスクールアイドルの護衛任務を取られたのが」

 

「!!?」

 飛鳥とコロロが驚いた。ザキラが焦っていた。

「な、何をおっしゃって…」

「調べはついておるぞ。ザキラ、お前…ラブライブのアイドルグループの親衛隊をしているそうじゃな。しかも天界支部隊長」

「!!!」

 ザキラは驚愕した。

「し、親衛隊…?」

 飛鳥とコロロがぽかんとしていた。

 

「ザキラは生粋のラブライバーでのう…」

「いや、あの…羅城丸様…」

「地上の世界で行われていたラブライブのファンミーティングにも行っていたのだ」

「え、天界の人間が行けるんですか?」

「長居は出来ないがの」

 飛鳥の質問にもあっさり答える羅城丸。ザキラは妹の手前、凄く慌てていた。

「演者さんに握手して貰った時なんか感涙しておったそうじゃ」

「そ、そうですか…」

 飛鳥は腕を組んで困惑していた。それなら、オレを目の敵にするわな…と思っていた。

 

「で、あとは察しの通りじゃ。最近フォーが色んなアニメの世界で悪さをしているから、自分も今までの功績を立てにして、ラブライブの世界に行こうとしたが…お前さんに邪魔されたという訳じゃな」

「いや、それでしたらあのゲームセンターを使えば…」

「…天界の戦士がそんなみっともないことが出来る筈なかろう。行こうとしても止められ取ったんじゃ」

「……」

 ザキラは黙ったままだった。

 

「に、兄さま…」

 コロロがザキラを見つめていた。

「コロロよ。兄は確かにこんな趣味を持っているが、今まで通り接してやるのじゃぞ。何はともあれ、若手天使の中では飛びぬけた力を持っておる」

「は、はい…」

 コロロが困惑しながら答えていた。

「えっと…そちらの方は…」

「ザキラの妹、コロロじゃ。天使養成学校に通っておる」

「え、学校ってあるんですか?」

「勿論。何もわかっておらん素人を現場に出すわけにはいかんじゃろう」

「そ、それもそうですね…」

 飛鳥が困惑した。

 

「本当に申し訳ない。ザキラは連れて帰る」

「は、はあ…」

「コロロ。彼を治療してあげなさい」

「は、はい!」

 

 と、コロロが飛鳥を治療魔法をかけようとしたが、効果が無かった。

 

「あ、あれ?」

「あ、ああ…。すみません。私、魔法が一切効かないんですよ」

 飛鳥が苦笑いした。

「そういやそうじゃったな。後で薬を持ってくるから、それで我慢してくれ」

「分かりました」

 コロロが飛鳥を見つめた。

「す、すみません…」

「いえ、大丈夫ですよ」

「……」

 ザキラはずっと黙ったままだった。

 

「ザキラ!」

「…申し訳ございません」

「謝る相手が違うじゃろう」

「あ、その事については大丈夫ですよ」

「そうではない。謝らなければ、他の者に示しがつかん。ましてや、妹にも」

「……」

 ザキラが飛鳥を睨んだ。

 

「…一先ずは謝ってやる。済まなかった」

 

 と、飛鳥に頭を下げた。

「ザキラさん…」

「…これでいったんは、解決じゃな」

 羅城丸が首を横に振った。

 

「一旦飛鳥くんの家に戻ろう。ここだと人目に付く」

 

 飛鳥の家

「これが薬じゃ」

「ありがとうございます」

 羅城丸が知人から取り寄せた薬を飛鳥に渡した。

「ザキラの件はワシに任せなさい」

「は、はい…」

「また明日からサポートするからの」

「感謝します」

 飛鳥が一礼した。

「それではの」

 そう言って羅城丸たちは去っていった。

「……」

 

 飛鳥はさっと薬を塗った。

 

「めっちゃ効く」

 そう感心する飛鳥だったが、ザキラとの闘いを思い出していた。

 

(ザキラさん…とても強かった。暫くの間、修業らしい修業もしてなかったからな…)

 

 飛鳥が静かに目を閉じた。

 

「明日からまた頑張らないとな!」

 そう言って飛鳥は立ち上がった。

 

 

 翌日

「朝だ」

 飛鳥が窓から朝日を見つめてた。

『新しく生まれ変わるには絶好の朝じゃな』

 羅城丸がテレパシーで話しかけた。

「…そうですね!」

 飛鳥が口角を上げた。

 

 そして家を出て、飛鳥は音ノ木坂学院に向かった。

 

「飛鳥くん!」

「?」

 飛鳥が振り返ると、そこには穂乃果、ことり、海未がいた。

飛鳥「皆さん」

「飛鳥くんの家ってこのマンション?」

「え? ああ…そうですね」

 飛鳥が苦笑いした。

「そうなんだ…。あ、昨日は助けてくれてありがとね」

「あ、い、いえ…」

「……?」

 穂乃果達が不思議そうにしていた。

「どうしたの?」

 ことりが飛鳥に聞いた。

「いえ、何でもありませんよ」

「そ、そうですか…」

「絶対なんかあったでしょ! 穂乃果達に話してよ!!」

「……」

 飛鳥が穂乃果を見つめた。

「な、なに?」

「高坂さん」

「?」

 するとことりと海未もちらっと見た。

「南さんも園田さんも」

「ど、どうしたの?」

「何があったんですか?」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「あなた達は絶対に守ります」

「!!」

 

「…失礼します」

 飛鳥が敬礼して、その場を後にした。

「……///////」

 穂乃果達の頬が真っ赤に染まった。

 

 

(ごまかすためとはいえ、ちょっとクサすぎたかな…)

(そんなレベルじゃないぞ)

(え)

 神様の突っ込みに飛鳥が固まった。

 

 

 そしてまた、天界の羅城丸の部屋

 

「くぁああああ~~~~~~~~~~!!! 穂乃果ちゃん達をたぶらかしやがってあの男~~~~~~~~~~!!!!!」

(兄さま…)

 モニターから飛鳥達の様子を見て、発狂する兄を見て、困惑するコロロだった。

 

 

つづく

 



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敗北編
第31話「栄枯必衰」


 

 

「Aくーん♥♥♥♥♥」

「Aせんぱーい♥♥♥♥♥」

 

 と、黄色い声援を送る女子生徒達。それに対して笑顔で対応するA。

 

(うっひょお!! 綺麗で可愛い女子がオレに微笑みかけてるぞ!! ぶひひひひ!! もっとオレの事だけ見ろぉ!!!)

 

「Bくんは私とエッチするのー!!」

「私とだよー!!」

「あたし!!」

「おいおい。オレを取り合うなよ。オレは皆のものだぜ?」

 

 自分を取り合う女子達に気障っぽく答えるB。

 

(そうだ!! もっと取り合え!! もっとオレを取り合ってくれぇええええええ!!!)

 

「Cくん。お弁当作ったんだよ」

「ありがとう」

 Cが弁当を食べた。

「味付けがいまいちですね。40点です。もう少し僕の好みについて勉強してください」

「ご、ごめんなさい…」

「私なら満足させられるわ!」

 

 と、女を自分の欲望を満たす道具として扱っているC。

 

(いいぞ…女が僕の忠実な下僕になっている。ふひひひひひひひひひ)

 

 

 3人は自分のこう思っていた。

 

(オレは…)

(僕は…)

 

 

 

 勝ち組だ!!!

 

 

 そしてこの世界でもこうなると確信していた…。

 

「Aくん。おはよ~」

「おはよう穂乃果」

 穂乃果がAに抱き着いて、おっぱいを押し付けた。大きさは関係なく、可愛いもしくは綺麗な女のおっぱいであれば良かったのだ。

(そしていい匂い!! ん~!! やっぱり可愛い女の子はいい匂いするなぁ!!)

 と、この上気持ち悪い発言をしていた。これを見ている女性読者の皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいである。ただ、この男達が如何に気持ち悪いかを表現するにはこうするしかなかったのだ…。

 

「あ、穂乃果ちゃんだけずるい~!! ことりも~!!」

 と、ことりも抱き着き、

「わ、私も…/////」

 と、海未も抱き着いた。これでハーレムの出来上がりである。

 

(ことりも海未もいいにおいするし、ちゃんとした膨らみもある!! もう股間が偉い事やでぇ!!)

 もう死んでるけど、死んでください。

 

 

 また…

「B♥」

 絵里がBに腕を絡めていた。とても嬉しそうに…。

「全くしょうがないな絵里は」

「ねえ。今日もお姉さんとイイ事しない?」

「練習はいいの?」

「練習なんかいいわよ。あなたがいてくれればそれだけで♥」

 と、胸を押し付ける。

 

(うっひょオ…!! 夢にまで見たエリーチカのエリーチチ…。ケツ触ってもいいよな…)

 と、絵里の尻を触る。

「あんっ♥」

 と、嬌声を上げる。

「もぉ、エッチ♥」

 嬉しそうに言う絵里。

「ゴメン。でも、絵里が魅力的でエロい体してるのが悪いんだよ…」

 と、いちゃついていた。

 

「ちょっと!! 絵里ばっかりずるいわよ!!」

「Bくん。うちもそういうテクニック自信あるんやけどなー」

「それじゃ今日は4人でイイことしよっか」

「ムスー」

 絵里が剥れる。

 

「剥れる絵里も可愛いなぁ」

「そ、そんな事言ったって騙されないんだからね/////」

「そうだ! 折角だから亜里沙も誘おうよ!」

「えー。だってあの子も貴方に興味持ってるし…」

「いいからいいから」

 

 と、こんな感じのを期待していた。

 

 

 Cはというと…。

「40点ですね」

 と、弁当にケチつけていた。

「うー…。やっぱり凛にこういうのは無理だにゃ…」

「り、凛ちゃん。頑張ろうよ」

「これはやっぱりお仕置きが必要ですね」

「お、お仕置き!!?」

 凛が頬を染めて嬉しそうにする。

「何を嬉しそうにしてるんですか? お仕置きなんですよ?」

「だ、だってCくんからのお仕置きなんて嬉しすぎるにゃあ…」

「り、凛ちゃんだけずるいです!!」

「仕方ないですね」

「ちょっと!」

 と、真姫が出てきた。

「Cは私のご主人様なんだから!!」

「そんなルールは無効にゃ!!」

「そ、そうだよ! 真姫ちゃんだけずるいよ!」

「やれやれ。仕方ありませんね」

 Cが眼鏡をクイっと上げた。

 

「3人纏めて可愛がってあげましょう。勿論一糸纏わぬ姿で…」

 

 

 と、まあ何とも女を何だと思ってるんだという感じの展開を期待していた3人だったが、その野望は1人の超能力者によって阻止された。

 

その結果、学校の生徒に会えば気持ち悪い物を見るような目で見られ、挨拶をしても無視される日々を送っている。特に初日と2日目に自分が起こした奇行が噂となり、彼らは今までの世界とは違い惨めな生活を送っていた。

 

何も苦労する事は無かった。朝はヒロインが起こしてくれた、料理もヒロインがしてくれた、学校や街に行けば自分は注目の的になり、女性キャラクター達を侍らせてハーレム生活をいくつも堪能してきた。だがこの世界では買い物は自分でする、料理や洗濯も自分でする、自分で起きなくてはいけない、学校に行けば女性キャラクター達からは嫌われる。今まで勝ち組だった自分の面影はこの世界には存在していなかった。

 

 だが、最後の女性キャラクターに嫌われるという点を除けば、飛鳥も当てはまる。現職の職業柄、朝は早く起き、料理もそれなりに好きなので自分でやる。ここぞという時に頼りになるので、学校や街ではいい意味でも悪い意味でも注目の的になる。ハーレムと言えるかどうかは分からないが、結構沢山の女子に囲まれて、家事を教えてる事もある。

 

 

 そんな彼が学校で見せた強力な殺気。あれを感じてAたちはなにもできず、恐怖におののいていた。今までの自分達ならあり得ない事だった。神様から貰ったチート能力で簡単にいなせた。しかし、それを使う勇気が無かったのだ。

 

 もうお分かりだろう。たとえどんなに強力な力を持ってようとも、使わなければないのと同じなのである。つまり、あの時の彼らはチート能力を授けられる前の弱い人間に戻っていたのだ。そんな奴らが勝てるはずなどない。

 

 そして彼らは思っただろう。

 

「何処で間違ってしまったんだ!? 今までの世界では全てが上手く行っていた筈なのに! 全てがオレを中心に回っていた筈なのに!」

 

 ずっと回り続けたアニメの世界。そしてその中で必ず『勝利』と『栄光』が約束されていた。必ず自分のやる事は上手く行って、何の努力や苦労をせずとも、圧倒的な力で楽が出来た。いつもみたいに敵を圧倒して、気に入った女を抱いたりすることも出来た。たとえそれが彼氏持ちや既婚者であっても。チート能力の前では何の意味もなさなかった。

 

 

 しかし、彼らはまだ気づいていない。

 

 

自分達の栄光は終わり、地獄が始まっている事に…。

 

 

つづく

 



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第32話「負け犬!! 転生者A!!!」

 

 

 話は戻り、飛鳥は何気ない毎日を再び送っていた。

 

「一丈字くん。おはよー」

「あ、おはようございます」

 普通に登校すれば、クラスメイトは勿論の事、クラスメイト以外の女子生徒も挨拶をしてくれる。

 

 それに対し…

 

「あ、A達よ…」

「まだ退学になってなかったんだ…」

「あれだけの事をしといて、よく学校来れる気になるよね」

「しょうがないよ。女の子がいっぱいだもん。ハーレム(笑)を手放したくないんじゃない?」

 

 Aたちが登校すると、女子生徒全員から後ろ指をさされる始末。

 

(くそっ!! どうしてオレがこんな目に逢わなきゃいけないんだよ!!)

(何もかも一丈字のせいだ!!)

(これはあってはならない事だ…。早急に一丈字を始末しなくては…)

 

 2年1組の教室

「飛鳥くんおはよー」

「おはようございます」

「ねえねえ。昨日のドラマ見た? 主演の俳優さんめっちゃかっこいいよねー」

「飛鳥くん男の子よ?」

「あ、そうだった!」

「あはははははははは!!」

 と、和気藹々としていた。

 

 2年2組の教室

「やあ、おはよう!」

 Aから挨拶をするが、殆どの生徒がガン無視。声をかけてきてくれても、すっごい嫌そうな声で「おはよう」と一言だけ言う始末。

(何で…何でこうなるんだよ!!!)

「その顔やめろや!!」

「朝からイラつかせるのう!!!」

 と、Aが不貞腐れる度に女子生徒達もイライラしていた。これはBとCも同様で…。

 

 Bの教室

「はー…本当にBいなくなってくれないかな…」

「1年辛抱すればって考えても…長いわー。残り時間5分の授業と同じくらい長いわ」

「それな」

 

 Cの教室

「見て。またCが来てるわよ」

「もういい加減にしてほしいわ…」

「入学早々嫌な奴が来ちゃったよ…」

 

「何だこの格差」

『因果応報じゃ』

 飛鳥と神様がコマの外で突っ込んでいた。

 

 

 とある授業で選択授業があり、調理実習を選択していた。

「あ! 飛鳥くーん!!」

「高坂さん」

 なんと、穂乃果、ことり、海未も同じく調理実習を選択していた。

 

 ちなみにAはというと、体育を選択していたが…。

 

(ど、どうして穂乃果達がいないんだ!? 盗み見た時は体育を選択してた筈…!!)

 Aはチート能力を使って穂乃果達が何を希望したかを盗み見て、体育を選択している事が分かり、体育を選んだが、よくよく考えてみましょう。あれだけ海未の事をいやらしい目で見ている事が分かっている筈なのに、学校も対策を打たないわけがないと。早い話、別々にされたのだ。

 

 ちなみにヒフミトリオが穂乃果達に第一希望を体育にするように教えたのだが…。

 

「山田先生怖いからねー」

「うんうん」

 

 そしてAは山田の指導を受ける羽目になった。お目当ての海未がいない状態で…。

 

「まずは手始めにグラウンド10周!!!」

「きっつ!!(大汗)」

「手始めの意味わかってます!!?(大汗)」

「つべこべ言わず行ってこい!!」

 

 と、Aと体育を希望していた生徒達は走らされていた。ちなみに他の希望者は「どうせ海未の他にも透けブラ狙ってんだろ」と、ジャージを羽織っていた。

 

(ちくしょ~~~~!!!! 一丈字め~~~~~~!!!!)

 

 

 そんなAの無様な末路はさておき、飛鳥に戻ろう。

 

「飛鳥くん! 穂乃果達と組もうよ!」

「……」

 穂乃果が早速アタックしていた。ことりと海未もペアを組んでほしそうにしている。

「ちょっと待った! 飛鳥くんは私達と組むんだから。同じクラスだし」

「えー。クラスが一緒ならたまには譲ってよ!」

「そうよそうよ!!」

「うちの男子がどんだけ屑かアンタたちも分かるでしょ!!?(大汗)」

「じゃあペア組まなくてもいいから、一丈字くんとA交換して!」

「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」

 2組の女子の発言に、1組の女子は訳が分からなさそうにした。

 

「ここだけの話、理事長がそう検討してるらしいよ」

「お母さんが!!?(大汗)」

「ブーブー!!」

「職権乱用ブー!!」

「バンザーイ!! 理事長バンザーイ!!」

 と、収拾がつかない事になり、飛鳥が困惑した。

 

「あの、神様…」

『Aたちはせいぜい、お主の引き立て役として頑張ってもらうからの。女には手を出せず、わき役の毎日を過ごす! 奴らにとってこれほどの屈辱はないわい!!』

「は、はあ…」

 

 最終的に、班決めはくじ引きで決める事になり…。

 

「あ、宜しくね一丈字くん。私ヒデコ!」

「私フミコよ。知ってるかしら?」

「ミカでーす」

「3人合わせて、ヒフミトリオ!!」

「あ、はい…宜しくお願いします…」

 と、ヒフミトリオと組むことになった。

 

「む~~~~~~」

「ほ、穂乃果ちゃん…」

「…むぅ」

 一緒の班になれなかったことに対し、悔しがる穂乃果と海未。ことりもなだめるが心の底から残念がっていた。

 

「分かるわよ。飛鳥くん大当たりだもの」

「料理上手だし」

「まあ、組めなくてもああいう男子と一緒に組めるからね」

「Aだったら喜んでくれてやるけど」

(めっちゃ言われとるがな…)

 と、飛鳥は心の中で突っ込んだ。

 

 そして調理実習が始まると、飛鳥はやっぱり活躍した。

 

「ヒデコさん。こちらをお願いいただけますか?」

「あ、うん…」

 

「一丈字くん。これ、出来たよ」

「ありがとうございます。フミコさん」

 

「一丈字くん。これ、どうしたらいい?」

「あ、ミカさん。それはですね…」

 

 と、同じ班の女子に紳士的かつ丁寧に教えていた。それに見とれる他の班の女子達。

 

(…何かすっごい見られてる)

(お前さん、やっぱり素質あるのう…)

(いやいや…)

 

 数十分後に、調理が完了した。

 

「できたー!!」

 と、皆が料理を食べ始めていた。飛鳥達が作ったのはホールケーキである。

 

「おいし~!!!」

「生クリームとかお店の奴みたーい!」

「ほんと!!」

「……」

 飛鳥は満足そうにヒデコ達を見ていた。

 

「え!? そんなに美味しいの!? ちょっと一口だけ…」

「あ、こら穂乃果!!」

 穂乃果が一口だけ食べた。

 

「お、美味しい!!」

 穂乃果が飛鳥を見た。

「飛鳥くんとっても美味しいよ!!」

「そ、そりゃどうも…」

 飛鳥が苦笑いした。

 

「ちょっと。褒めてるんだから、もうちょっと嬉しそうにしなよ」

「あ、いえ…。そこまで褒めて頂けるなんて思いもしなかったのもので…。気に入って貰えて良かったです」

 飛鳥が苦笑いした。

「けどこの作り方、飛鳥くんのオリジナル?」

「えーと…全部ではないんですけど」

 飛鳥が頭をかいた。

「今度教えて!!」

「あ、えっと…」

「あ、ずるい私もー!!」 

 と、囲まれた。

 

 そしてAはというと…

「調理室に行くつもりなんでしょ!!?」

「行かせないからね!!!」

「ちょ、本当にトイレだってば!!」

「ここでしなさいよ!!!」

「鬼畜!!!(大汗)」

 と、女子達に通せん坊されていた。

 

「一丈字くんがケーキ作ったみたいなんだけどめっちゃ美味しいって!!」

「え~~~~~!!!!?」

「調理実習にすればよかった…」

(一丈字め~~~~~~~~~~~~!!!! そこ代わってくれよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!)

 

 

 と、Aは心の中で負け犬の遠吠えをあげるのだった…。

 

 

つづく

 



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第33話「無様!! 転生者B

 

 ある日の職員室

 

「もういやです…」

 と、山内がしくしくと泣いていた。

 

「頑張りましょうよ!! 山内先生!!」

 笹原も山内を支えていたが、笹原自身も泣きたい気持ちでいっぱいだった。そんな様子を山田と深山は不思議そうに見ていた。

 

「あの…何かあったんですか?」

 深山がそう言うと、笹原と山内は涙目で睨みつけた。

 

「あ…ごめんなさい。聞くまでもありませんでしたね」

 

 と、深山は謝った。

 

「深山先生」

「だから何度も言ってるじゃないですか。一丈字くんは学年が違うから…」

「違います」

「あ、そうなんですか?」

 笹原の発言に深山は驚いた。

 

「担任交換して!!!」

「あーそう来ましたかー。無理ですー。猶更無理ですー」

 と、笹原のとんでも発言に深山は突っ込んだ。

 

「最近悪さをしてないとはいえ、もうあんなギスギスしたクラスいや…(泣)」

「私もです…(泣)」

 何とも言えなさそうにする深山。

「深山先生」

 山田が深山の肩を抱いた。

「な、なんですか? 山田先生」

「いくら払ったんですか」

「いくらって…?」

「いくらで一丈字を買い取ったんですか!!? パイロット版では私が担任だったのに!!!」

「パイロット版とか言わないでください!!!(大汗)」

「いいじゃねーですか!! もうメタ発言もしなければやってられませんよ!!!」

「いや、あの山田先生!! 落ち着いてください!!(大汗)」

 山田を諫めようと、深山が叫んだ。

 

「いいですよねぇ…!! 深山先生のクラスとっても楽しそうじゃないですか…!!」

「羨ましいです…(泣)」

 と、笹原と山内にも問い詰められる。

 

「い、いや。そんな事言われましても…」

「本音は?」

「とっても幸せ…じゃなくて!!!(大汗) ああああああああああああああ!!!」

 と、深山の断末魔が聞こえた。

 

 

 そしてそれをBが聞いていた…。

 

 

(何でだ!! 何でオレはこんなにも嫌われて、あいつだけあんなに好かれるんだよ!! 一体どんな能力を持ってやがるんだホントに!!)

 運営が味方です。

 

 

「絵里に近づこうとすれば、ガードされるし…どうしてオレの思い通りにならねぇんだよ!!」

 と、廊下を歩きながらBはぶつくさ言っていたが、通り過ぎる女子生徒達はゴミを見る目でBを見ていた。

 

「だがこんな事でオレが諦めると思うなよ。必ず絵里もμ’sもオレのものにして、ハーレムを作ってやる! そして全員がオレに尻を振って求めるんだ…!! ぐふふ…ぐふふのふ…!!」

 と、気持ち悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 それと同じころ、飛鳥は自分の教室で希と話をしていた。希の後ろにはにこ、絵里がいる。

 

「え…?」

 希から言われた言葉に飛鳥が困惑した。

 

「せやからね。今度の休み、飛鳥くんにもお泊り会に参加してほしいねん。にこっちや絵里ちの家族の話もあるし」

「は、はあ…」

 飛鳥は相槌を打った。

「…済まないわね。下の子がどうしてもあんたに会いたいって聞かなくて」

 と、にこが困った顔で言い放った。

「うちも何かしてあげられたらなーって」

「いや、それはお気遣いなく…」

「そういう事やから、ええか飛鳥くん」

「か、畏まりました…。私で宜しければ」

 と、飛鳥は承諾した。

 

「おっしゃ! 流石飛鳥くんやで。楽しみになってきたなー」

「そうね…」

 希の言葉に絵里が答えると、にこが難しそうなお顔をした。

 

「どうしたのにこ」

「いや、こういう時、Bたちがついて来ようとするから…」

「そんなのかたくなに断るわよ」

「聞かれてなかったらいいんだけど…」

 飛鳥が超能力で聞こえないようにしていたが、Bが飛鳥達の光景を見ていた。

 

(な、なんだ!!? 何で一丈字と絵里達が話をしている!! 絵里め~。オレ以外の男に浮気するなって言ったのに。まあ、一丈字が絶対洗脳してるからどろうが、オレからはん魏えられないヨ♪)

 

 そう言って、Bは鼻息を荒くしながら様子を見ていたが、近くにいた女子生徒に強制退場させられた。

 

「はなせぇえええええええええええ!!! オレは絵里の彼氏なんだ!! 本当なんだ!! だから離せぇええええええええええええええええ!!!」

 

(…案の定盗み聞きしてた)

(致し方ない奴じゃ)

 

 と、飛鳥と神様が心の中でツッコミをしていた。

 

「これで約束も取り付けた事やし…。ほな、うち等はもう行くわ」

「あ、はい。分かりました」

 と、にこ達が教室に出た。

「……」

 

 これからどうしようと考える飛鳥だった。

 

 

 そして…

 

「失礼します」

 と、飛鳥が入ってきた。

「一丈字(くん)?」

「2年2組の一丈字ですが、深山先生はいらっしゃいますか?」

「あ、ごめんね。今、深山先生いないのよ」

「あ、そうなんですか」

 

 職員室にいたのは山田、山内、笹原だけだった。この時、山田たちは飛鳥が輝いて見えた。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 飛鳥が笹原に一礼した。

「本当に礼儀正しい子…」

「それな」

 笹原の問いかけに、山田があっさり返答した。

 

 2年1組教室

「ねえねえ飛鳥くん」

「何です?」

 穂乃果が2組の教室からやってきて、飛鳥に話しかけていた。

「今度の休み、予定ある?」

「ありますよ」

「あるの!!?」

 驚く穂乃果達。傍で聞いてたことりと海未も穂乃果と同じく驚いていた。

 

「よ、予定って誰と!!?」

「あ、矢澤さんと絢瀬さんのご家族です。私の事、気にかけてくださって…」

「そ、そう…」

「悪い人じゃなくて良かった…」

 穂乃果はそう安心した。

 

「で、何しに行くの?」

「ちょっと顔合わせがしたいと仰っていましたね…」

「そ、そうなんだ…へー…」

 と、穂乃果は笑顔で振りまいたが、青筋が経っていた。

 

「穂乃果達も参加できないかな?」

「ほ、穂乃果!! 図々しすぎます!!」

 海未がそう諫めると、穂乃果は泣く泣くあきらめた。

 

「本当に矢澤先輩たちが来るのですよね?」

「そうですね」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「じゃあ全員誘ってくれてもいいじゃ~ん」

「…色々話したい事があるんでしょう」

 

 と、飛鳥がそう言うと、今日の晩御飯は何しようか考えるのだった。

 

 

「このままで終わると思うなよ一丈字…。何が何でもお前から絵里を奪ってみせる!!!」

 と、Bは拳を突き出して誓ったが、それでも女子生徒の冷たい視線は変わらない。

 

「チクショォオオオオオオオオオオオオオオオ!! 女にモテてぇえええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 

つづく

 



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第34話「凡骨! 転生者C!」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!! 女にモテてぇよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!(泣)」

「絵里達に膝枕…いや、絵里達とセックスしてぇええええええええええええ!!!」

 と、転生者AとBが泣きながら転がっていた。

 

「ふっ、無様ですね…」

 と、転生者Cが遠くであざ笑っていた。

 

「僕はあの二人のようには行きませんよ」

 眼鏡をクイっとあげて、その場を去っていった。

 

 

 ある日の事

「飛鳥せんぱーい!! 今日時間空いてるにゃ?」

 と、星空凛が飛鳥に話しかけてきた。凛の同級生である小泉花陽と西木野真姫も一緒である。

「特にないけど、何か用?」

「先輩はラーメン好きにゃ?」

「まあ…そうだね。好きな方かな」

 凛の問いに飛鳥は答えた。

「それだったら今日の放課後、みんなでラーメン食べに行くにゃ!」

「ラーメン…」

 飛鳥が凛を見た。

「な、何にゃ? 女の子がラーメン好きで悪いにゃ?」

「いや、そんな事ないけど」

 その時だった。

 

「そんな事ないはずないじゃないですか」

 と、Cが現れた。

「Cさん」

 飛鳥が名前を呼ぶと、凛、真姫がゴミを見る目でCを見た。

(こっわ)

 飛鳥が心の中で突っ込むと、温厚な花陽ですら、ちょっと嫌そうにしていた。

(もうよっぽどだぞ)

 

「いきなり出てきて何なのよ」

「彼は女がラーメンを食べてはいけないと考えてるんですよ。差別も甚だしいですね」

「女の子にしかいい顔しないあなたよりかはずっとマシだと思うけど?」

 真姫が痛い所をついた。

「何? 私がダメだったから、凛に乗り換えたの?」

「節制がないにゃ」

「り、凛ちゃん…それを言うなら、節操がない。だよっ」

 花陽が凛の言い間違いを訂正したが、飛鳥は静かに目を閉じてこう思った。

 

(やっぱり女の怖さはどこに行っても同じなんだなぁ…)

 

 と。

 

「まあ、そういう訳だから。あっち行って」

「ぐっ…!!」

 真姫がしっしっと手で払うと、Cは飛鳥を睨みつけた。

「ちょっと来なさい!!」

「!!」

 Cが飛鳥の手を引っ張って、連れて行こうとした。

「な、何するにゃ!!」

 凛が飛鳥にしがみついた。

「ぼ、僕は彼とちょっと話を…」

「どうせ凛たちに近づくなって脅す気にゃ!! 此間A先輩が飛鳥先輩を連れ出して、殴ったから信用できないにゃ!!」

(クソ…!! 余計な真似を!!)

 と、CはAに対して舌打ちしたその時、凛の胸が飛鳥の左腕に当たっている事に気づいた。

「!!!!」

 Cが目を見開いた。

「あの、離して戴けませんか?」

 飛鳥は気づいてない様子。

 

(このぉぉぉぉぉ~~~~~!!!! 転生ならではの羨ましいイベントが何故僕じゃなくてこいつに降りかかるんだ!! 主役はこの僕なんだ!!!)

 

 なんて思っていた。

「とにかく飛鳥先輩は渡さないにゃ!!」

 凛がそう強く引っ張ると、余計に凛の胸が飛鳥の腕に当たる。すると、花陽と真姫が気づいて頬を染めた。

 

「ちょ、ちょっと凛!!//////」

「凛ちゃん!!//////」

「にゃ?」

 

 凛が花陽と真姫を見た。

 

「ちょっと胸!!」

「え…」

 凛が胸元を見ると、飛鳥の左腕が当たっているのに気付いた。

「……!!!///////」

 凛は顔を真っ赤にした。

 

「にゃ―――――――――――――――っ!!!!!/////////」

 

 凛はものすごい勢いで飛鳥を引っ張って、Cの手を振りほどいた。そしてすぐさま飛鳥も離した。

 

「……」

 飛鳥は困惑しながら凛を見た。飛鳥の脳裏では、絶対自分のせいにするだろうなと思った…。

 

「ご、ごめんなさいごめんなさい!! わざとじゃないにゃ!!!/////// 凛はえっちな子じゃないにゃ!! それだけは信じて欲しいにゃあ!!/////」

 まさかの女性側が謝るというパターンだった。

 

『言っとくが、ワシは何もし取らんからな』

「……」

 

 そして花陽と真姫も飛鳥達に近づいた。

「ホントに気をつけなさいよ!!/////」

「ご、ごめんにゃあ…/////」

 真姫が注意すると、凛も謝った。

「ま、まあまあ…。一丈字先輩も奪還出来たんだし…////」

「そ、そうにゃ!! ここは早くずらかるにゃあ!!」

「ま、待ちなさい!! 話はまだ終わって…」

 するとクラスメイト達が塞いだ。

 

「ここは私達に任せて!!!」

「あ、ありがとにゃあ!! 一丈字先輩!!」

「え? あ、ああ…」

 と、飛鳥は凛に引っ張られてその場を後にした。

 

 

 そして…

「……//////」

「……」

 飛鳥と凛は見つめ合ったものの、凛は恥ずかしそうに上目遣いで唇を尖らせていた。それに対して飛鳥は困った顔をしている。真姫と花陽も頬を染めて困惑している。

 

「あの、星空さん…」

「分かってるにゃ。分かってるから何も言わないで!!//////」

 飛鳥が一息ついた。

「じゃあ最後に一言だけ。さっき起こったことはお話しませんし、忘れますから」

「……//////」

 凛が飛鳥を見つめた。

「一丈字先輩」

「何でしょう」

「その、先輩は…/////」

 凛がとんでもない事を言いだした。

 

「先輩は女の子のおっぱいは大きい方がいいにゃ? それとも小さい方?」

「え」

 飛鳥が驚いた。そして凛は自分の胸元を抑える。

 

「えっとね。星空さん」

「にゃ…」

「ノーコメントで」

 飛鳥が即答した。

「な、何で!?」

「いや、答えづらいから」

「そ、そりゃそうよね…」

 真姫も納得した。

「け、けど…//////」

 凛が視線を逸らした。

「でも…凛がおっぱい当てても、先輩…興奮しなかったにゃ/////」

「星空さん。それ所じゃなかったんだよ。Cさんの目がアレだったから」

「そうね。あいつの目、本当にヤバかったから」

「だからそんな事気にしなくていいんだよ」

 飛鳥が何とか話を逸らせようとするが、

「で、でもでも!! 凛の事、ちゃんと女の子として意識してるかどうか心配で…」

「星空さん」

 飛鳥が困惑した。

 

「それはひょっとして…プロポーズ?」

 空気が止まった。

「にゃ…//////」

 凛がさらに顔を真っ赤にして涙目になった。

 

「これだけ言っとくね。今は誰とも付き合えないけど、ちゃんと女の子として意識してるよ。だってこんなに可愛いもの」

 飛鳥が苦笑いした。

「小泉さんもそう思うでしょ?」

「は、はい!! もちろん!! 抱きしめちゃいたいくらいかわいいです!!//////」

「だから大丈夫。自信持って」

 飛鳥が凛に目線を合わせて口角を上げた。

「さて、オレはそろそろ行かなきゃ。ラーメンの話はまた今度にしようか。Cさんが何してくるかわからないし」

「!!」

 飛鳥が去っていこうとすると、凛たちの方を振り向いた。

「あ、そうだ星空さん。これだけは覚えといてね」

「?」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「女の人はね、誠実さと愛嬌があれば絶対に大丈夫だから。じゃ!」

 そう言って飛鳥が去っていった。

 

(なんか本来の話とズレた気がするけど…まあいいや)

『お前さん…中々才能あるのう…』

『いや、まさか』

 

「……//////」

 凛はうずくまった。

「り、凛ちゃん…/////」

「何も言わないでほしいにゃ…//////」

 

 

 ちなみにCは女子達にボコボコにされてました。

 

 

つづく

 



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第35話「永遠に勝てないエブリデイ」

 

 

 

 一丈字飛鳥に悉く敗北し、μ’sはおろか、女性たちに相手にされない日々を過ごすフォートリオ。もう彼らの性欲は限界を迎えていた…。

 

「どうして…どうしてこうなっちまったんだ!!」

「オレのラブライブライフはこんなものじゃなかった!!!」

「何故…何故こんな事に…!!」

 3人の男たちは、人気のない体育館の裏でもだえ苦しんでいた。

 

「本当に!! 本当にあいつさえいなければ、オレは海未をはじめとしたμ’sメンバーとハーレムライフを過ごすはずだったんだ!!」

 と、Aは頭を抱えて叫んだ。

 

「絵里と恋人になって、そこからμ’sメンバーを虜にして…。ラブライブでもオレはハーレムを堪能するはずだったんだ!!」

 Bは崩れ落ちた。

 

「僕は真姫を正妻にして、μ’sだけでなくこの世の美女・美少女全てを我が物にするつもりだった…どこで計算を間違えたんだ!!」

 Cは眼鏡をクイっとあげて、そう呟いた。

 

 しかし、彼らが言いたい事はそういう事ではない。そう、こういう事だ。

 

 

「μ’sとセ〇クスしてぇえええええええええええええええええええ!!!!!」

 

 女性読者の皆様。本当にすみません。

 

「もう我慢できねぇ!! この世界に来て、女の体に碌に触れなくてどれくらい経ったと思ってる!!」

「絵里のおっぱい…絵里のお尻…絵里の女の部分…。どれだけ待ち遠しくしてたかどうか!!!」

「下品ですが…。僕にも性欲というものがあり、全員を犯したい…!!」

 とんでもない事言いまくってます。

 

「うるせぇ!! もうムラムラしてんだよぉおおおおおおおおおおおお!!!!」

「μ’sとセッ〇スさせてくれぇええええええええええ!!!!」

「そこら辺の女で妥協なんかしませんよ。最初に性交するのはμ’s…ましてや、真姫と決めているのですから!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!」

 と、フォー達は泣き喚いていた。

 

「……(汗)」

 飛鳥は陰で聞いていた。

 

『無様なもんじゃ。ちょーっと力を与えてやったら、自分の実力と勘違いし、調子に乗りおって』

「あの、神様…(汗)」

『なんじゃ』

 飛鳥が羅城丸に聞いた。

『これ、いつまで続くんですか…?』

『少なくとも50話までは続ける』

『50話とか言わないでください!!(大汗)』

 ダシマ劇場(※ダシマが書く小説の総称)はメタ発言多めですが、そこはご了承ください。

 

『まだまだ足りんからのう…』

『なんかストレス発散人形みたいになってません?』

『それだけの事をやったのだ。罰は当たらんじゃろう』

(神様の考える事じゃねー…)

 羅城丸の腹黒さに飛鳥は困惑するしかなかった。

 

『ま、当面は女に相手にされない無様な男達を演じて貰おうかの』

「……(汗)」

 果たして、いつになったら帰れるのやら。と、飛鳥は思った。

 

 

 飛鳥が歩いていると…。

「飛鳥くん」

「?」

 目の前に真姫が現れた。

「あ、西木野さん」

「どうしたの? そんな顔して…」

「いや、何でもないよ」

「嘘。絶対何かあるでしょ」

 真姫が飛鳥をジト目で見つめた。

「あるけど、女の子には言えない事だよ」

「…まさかエッチな話?」

「そんなトコかな」

 空気が止まった。

「…Cがまた変な事言ったの?」

「そうだね。君の事も諦めちゃいないみたいだ」

 真姫が嫌そうにした。

(そうなりますよね…)

 飛鳥が静かに目を閉じた。

 

「まあいいわ」

「え?」

 真姫が飛鳥を見た。

 

「あなたが守ってくれるんでしょ? 私を」

「……!!」

 飛鳥は驚いた。

 

「そうなんでしょ? 穂乃果先輩にそう言ったんだから」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「…そうですね。勿論です」

 飛鳥が真姫の顔を見て言い放ったその時、

 

「あ!! こんな所にいたにゃ!!」

 凛と花陽が現れた。

「おや」

「に゛ゃっ…//////」

 飛鳥が凛の顔を見るなり、凛は頬を染めた。

「やあ」

「あ、う、うん…こんにちは…//////」

 と、もじもじした。

「何モジモジしてんのよ」

「モ、モジモジしてなんかないにゃ!!/////」

「席を外した方が良いかな?」

「いや!! 飛鳥くんに用があるにゃ!!」

「オレに?」

「そ、そうにゃ。此間のラーメンの件…」

 飛鳥が少し考えると、思い出した。

「あー…そういや、言ってたね。今日空いてる?」

「は、はいにゃ…/////」

「いいよ」

 飛鳥が口角を上げた。

「けど、オレで良いの?」

「あ、飛鳥くんじゃなきゃ…って、そんな事言わせないでほしいにゃ!! イジワル~!!!/////」

 凛が顔を真っ赤にした。

「な、何か凛だけドキドキしてズルイにゃ!!/////」

「何でドキドキしてるの?」

「も、もう!! とにかく放課後待つにゃ!!/////」

 そう言って凛は走り去っていった。

「ま、待って凛ちゃーん!!!」

 と、花陽も追いかけていった。それを見て真姫は呆れた。

「…まあ、これからの事も兼ねて食べに行きましょうか」

「そ、そうね…(汗)」

 飛鳥が頭をかいた。

 

 その頃のザキラ

「まきりんぱなとラーメン屋!!? 何て浦山けしからん!!!」

「兄さま…」

 モニターで飛鳥達の様子を見ていたザキラだったが、フォー達と同じように羨ましがっていた。そしてそれを陰から見ていた妹のコロロはちょっとだけ引いた。

 

 ラーメン屋

「ここにゃ!!」

「おー…トマトラーメンもあるんだ」

 

 ラーメン屋「猫ラーメン」

 

「凛とかよちんと真姫ちゃんの好きなものが全部揃ってる店にゃ!」

「好きな食べ物?」

 飛鳥が聞くと、

「凛はラーメン、かよちんはお米、真姫ちゃんはトマトにゃ!」

「成程。ここトマトラーメンがあるんだ。納得」

 凛からの回答に飛鳥は納得した。

「あ、そういえば飛鳥さんってラーメンとか大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。寧ろ中華料理は一番好きだね」

「意外…」

 花陽の問いに飛鳥が答えると、真姫が驚いていた。

「え、何で?」

「なんか脂っこいの食べるイメージないから…」

「あー…」

 飛鳥が苦笑いした。

「そういえば飛鳥くん…何か腰が細いにゃ」

「羨ましいです…」

「そ、そう?」

 飛鳥があたりを見渡した。

「そういう所も聞いてみたいわね」

「え、他にもいるんじゃないの? そう言う人」

「いや、せっかく一緒に食事するんだから」

「そうにゃ! それじゃレッツゴーにゃ!!」

「言っとくけど、無駄遣いして足りなくなっても貸さないからね」

「それは大丈夫にゃー」

 と、4人は店の中に入っていった。

 

 

「一丈字の奴…!! 真姫たちとラーメン屋に入っていったぞ!!」

「くぅ~~~!!! 憎たらしい奴め!!!」

「いつまでもいい気にならない事ですね…!!」

 と、フォートリオは嫉妬の炎を陰で燃やしていたが、警察官が店の前でうろうろしていたので、その場から逃げ去ったという。

 

 

つづく

 



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A-RISE編
第36話「新たなる戦い!」


第36話

 

A- RISEの事件から少しだけ時間が過ぎたころ、飛鳥はすっかり音ノ木坂学院の人気者になっていた。

 

「一丈字くん。おはよー!!」

「おはようございます」

 一人で登校すれば、女子から挨拶してくれる。

 

「早いのね。いつもこの時間に登校してるの?」

「その時の気分によりますね」

「でも遅く来てるの見た事ないよ」

 あまり話した事のない女子生徒とも普通に会話できたりしている。

 

「……」

「あの、何でしょうか」

 女子生徒が飛鳥を見つめる。

「そういえば眼鏡かけてるけど…目が悪いの?」

「え? あー…そうですね」

 飛鳥が困惑した。

「ちょっと外してみてよ」

「何故ですか?」

「いや、外した方がかっこいいと思ってさ」

「ていうか、その眼鏡合ってる?」

「ああ…。これ、伊達なんですよ」

「伊達!!?」

「昔、色々ありましてね…。これで、あまり目立たないようにしてるんですよ」

 飛鳥が苦笑いした。

「そうなんだ…」

「ええ。では、私はこれで失礼します」

「あ、もっと話そうよー」

 と、ずっと女子生徒達につかまったままだった。

 

「なんであいつばっかり…!!」

「ちくしょう…ちくしょう…!!」

「羨ましすぎる…!!」

 

 と、フォートリオが完全に嫉妬していた。ちなみにこの3人に至っては女子から避けられる始末だ。顔はイケメンなのに、とてつもなく醜い顔をしている。

 

 そして教室に行けば、クラスメイトとも普通に話をしている。男子は一人だけなのだが、全く意にも介さず、心を許していた。

 

「ちょ、ちょっと! 男子がいるのにスカート!!」

「えー。別にいいじゃん。あ、一丈字くん。見てた?」

「え? 何がですか?」

 飛鳥が普通に聞き返した。

「…女の子に興味ないの?」

「何だかよく分かりませんが、親しき中にも礼儀ありですよ」

 空気が止まった。

「まあ…親しいと思っているのは私だけかもしれませんが」

「そんな事ないよ!!?(大汗」

「私も思ってる!! お友達だよね!!(大汗)」

「そうそう!!(大汗)」

 と、なんやかんやで仲良くやっている。担任の深山もその様子を微笑ましく見ていた。

 

 その一方で…。

「……」

 2年2組の教室では、皆Aに警戒していた。Aが教室にいると女子生徒達は警戒していた。

(くそっ!! 何でこんなに警戒されてるんだよ!! おかしいだろ!!)

 と、不満そうにしていた。

 

 BとCも同様で、完全に女子から嫌われていた。

 

(何もかも一丈字のせいだ!!)

(何で僕がこんな目に…)

 

 と、納得がいかない様子だった。

 

 

 昼休憩

「飛鳥くんの所に遊びに行ってこよーっと」

 と、穂乃果、ことり、海未の3人は1組の教室に行くようになった。Aを避けるかのように…。

 

「そ、それじゃ僕も…」

 と、Aが追いかけようものならクラスメイト達が足止めする。

「ダメ!」

「本当に懲りないね…」

「ていうかいい加減にしてよ」

「退学にならないだけ有難いと思いなさい!」

 

(こ、こいつら…!!)

 Aはクラスメイト達に怒りを増し、飛鳥に復讐しようと考えた。飛鳥を亡き者にした後、クラスメイト達に対して一人ずつ性的暴行(但し醜女は抹殺)を加えるというものだった。どこまでもみみっちい男である。

 

 そして1組の教室はというと…。

「前に言っていたスティックロールケーキです」

「お、おおおお…」

 飛鳥が女子生徒達にお菓子を作ってきていたが、その出来の良さに女子生徒は驚くしかなかった。

「ほ、本当に作ってきてくれたんだ…」

「はい。どうぞお召し上がりください」

 と、飛鳥に言われるがまま、注文した女子生徒は恐る恐るスティックロールケーキを口にした。

「!」

「如何ですか?」

 飛鳥がそう聞くと、女子の表情は蕩けた。

 

「うまぁぁあああああああああああああい♥」

 

 その表情に飛鳥も満足そうにしていた。

「恐縮です」

「いや、本当に美味しい! しかも簡単に食べられるし!」

「そ、そうなの?」

「わ、私にも食べさせて!」

「どうぞ」

 飛鳥が口角を上げると、女子生徒は次々とロールケーキを口にした。飛鳥はそんな女子生徒達を見つめていた。

 

「な、なに?」

「え、何ですか?」

 自分達を見つめている事に対して、女子生徒達が飛鳥に話しかけた。

「いや、こっちの事をじっと見て…」

「あー…すいません。美味しそうに食べてるなって思いまして」

 飛鳥が苦笑いすると、女子生徒達が頬を見つめた。

 

「い、一丈字くんってよく見たら結構顔整ってるよね//////」

「うん…/////」

「目とか凄くキレイだし…/////」

 女子生徒達がもにょもにょし始める。

 

(やっぱり見つめるのは良くなかったか…)

 飛鳥は少しだけ自分の行動を反省した。

 

 その時だった。

 

「飛鳥くーん! 遊びに来たよー!!」

 

 穂乃果、ことり、海未が遊びに来た。

 

「あ、高坂さん。こんにちは」

「穂乃果!!」

「まあ、やっぱり敬語で統一するとして…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

 そして放課後になった。

「さて、帰るか」

 飛鳥が帰ろうとした次の瞬間。

 

「あ、そうだ。買い物しなきゃ。街に寄っていこ」

 

 そう言って飛鳥は街に出かけた。

 

 街

「これで買い物は終わりだな…」

 その時だった。

 

「あれ!? 君!!!」

 

 という聞き覚えのあることがした。

(どうしたんだろう…)

 飛鳥は自分の事だと思わず、正面を向いた。

 

「おーい! 君だよ!! 一丈字飛鳥くん!!」

「!!?」

 飛鳥が後ろを振り向くと、そこにはA-RISEの綺羅ツバサがいた。

 

「あ…」

「……」

 

 飛鳥とツバサが見つめ合った。

「どなたですか?」

「あの事なら気にしなくていいんだよー///////」

 ツバサが頬を染めた。

 

「アイドル活動は継続されてるそうですね」

「そ、そうよ。あれくらいで辞める程ヤワじゃないわ。それはそうと、今日予定ある?」

「買い物しちゃいまして」

 飛鳥が荷物を見せた。

「そ、そう…」

 ツバサが困惑した。

「そ、相談があるの!!」

「相談?」

 飛鳥が驚いた。

「ほ、ほんの数十分で終わるから!」

「お話ってどこでするんですか?」

「え、えっとぉ…」

 ツバサが困惑した。

「あ、荷物置いてきてからでいいですか?」

「わ、分かったわ」

 そう言って飛鳥はいったん自宅に戻ってから、ツバサからの相談を受ける事にした。

 

「別行動の方が宜しいですかね」

「…出来れば一緒にいてくれた方が助かるわ」

「ストーカーですか?」

「ええ、そうよ。それで対策を立てたいの」

「分かりました」

 

 

『新章突入じゃ!!』

『いやいや…(汗)』

 

 

 

つづく

 



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第37話「A-RISEとのお茶会!」

 

 

 A-RISEのリーダー、綺羅ツバサからストーカーに関する相談を受ける事になった飛鳥は、荷物をいったん自宅に置いてからツバサと合流する事にした。

 

「おや」

 

「む…」

「こんにちはー」

 

 ツバサと同じA-RISEのメンバーである統堂英玲奈、優木あんじゅがいた。

 

「あ、こんにちは」

 飛鳥は普通に挨拶をした。

「それじゃ行きましょうか」

 と、ツバサが先頭に立って移動した。

 

 そしてそれを…にこが見ていた。

 

「あ、あれってA-RISE!!? それにあいつもいる…!!!」

 

 

 十数分ほどして、飛鳥達はとあるカフェに来ていた。

 

「こちらにはいつもいらしてるんですか?」

「ううん。No.1スクールアイドルって言っても、まだそんなに認知されてるわけじゃないから」

「…いや、その割には貸し切りの席じゃないですか」

 飛鳥が困惑した。

 

「さて、一丈字くん」

「……」

 飛鳥とA-RISEが向き合う形で座っていた。

 

「此間は助けてくれてありがとう」

「……」

 飛鳥は困惑していた。黙っていれば良いものを何故この人たちは…? と考えていた。

「…あ、は」

「今何を考えてた?」

「いえ、あの事についてはもう触れないつもりでいたんですけど、綺羅さんがあまりにも…」

「そうね…//////」

 ツバサが頬を染めると、英玲奈とあんじゅも頬を染めて恥ずかしそうにした。

 

「でも、けじめよ」

「そ、そうですか…」

 ツバサがそう言い放つと、飛鳥は納得した。

「あとね」

「?」

 ツバサが飛鳥を見た。

 

「まだ見込みはあるんだから!!!」

「そんな大声で言って大丈夫ですか?」

 飛鳥は突っ込んだ。

「…大丈夫じゃないけど/////」

「…そうですか」

 飛鳥は困惑した。

 

「ただ、我々としてもちゃんと君に礼を言わねばならなかった。そして、われわれの為に時間を割いてくれてありがとう」

「統堂さん…」

 飛鳥が英玲奈を見た。

「これから仲良くしましょうね。飛鳥くん♪」

「あ、はい…」

 飛鳥はあんじゅの方を見ると、あんじゅが穏やかな笑みを浮かべて喋り、それに対し飛鳥が相槌を打った。

 

 自分の裸を見た男に何故ここまで優しく接せられるのか不思議でしょうがなかった。普通なら理不尽に怒ると踏んでいたからである。

 

「確かにそういう人多いけど、私達はそんな安っぽい女じゃないわよ」

「わあ」

 ツバサの突っ込みに飛鳥が驚いた。心の中を女性が読むというのも、ライトノベルではよくあるパターンだが、何故分かるのだろうと飛鳥は思ったが、すぐに結論はたどり着いた。

 

 この小説は大抵ギャグ小説だからだと。

 

『メタ発言するでない』

『…もうせざるを得ませんよ』

 

 神様の突っ込みにもそう答える飛鳥だった。

 

「さて、本題に入るわね」

「はい」

 ツバサが飛鳥を見た。

 

「実は…」

「あのー。お客様。何かご注文を…」

 ツバサが話しかけようとすると、店員が割って入ってきた。

 

「そ、そうね…。何か注文しないと。飛鳥くん。もう決まってる?」

「あ、アイスティーの無糖で」

「…渋いわね。じゃあ私もそれで」

「私も」

「アイスティー4つで」

「畏まりました」

 

 と、店員が去っていった

 

「…さて、改めて本題に入るわね。一丈字飛鳥くん」

「は、はい…」

 

 畏まった様子で話すツバサに飛鳥にも緊張感が走った。

 

 

「単刀直入に言うとね。私たちの学校にもいるのよ。厄介なストーカーが」

「!?」

 飛鳥が反応した。

「ストーカー?」

「そう。これがなかなかの曲者でね」

 ツバサが一息つくと、飛鳥が不思議そうにした。

「学校には相談したんですか?」

「したわよ。したけど中々証拠を出さなくて…」

 飛鳥が考えた。

 

「代わりに誰かに恋人とかになって貰って、証拠をあぶりだすとか…」

「で、その事で相談したい事がある」

「ああ。その辺の人材を見繕ってほしいんですか? あの、私の学校も一応女子校なのですが…」

「見繕う必要なんてないわよー。あなたにやって貰えないかな」

「あー。成程、そういう事ですかー。じゃなきゃわざわざここまで来て相談なんかしませんよね」

 あんじゅの言葉に飛鳥は素直に返事した。

 

「…え? 私ですか?」

「あなた強いし…ダメ?」

 ツバサが苦笑いした。

「ちょっとその件に関しては私だけの判断ではどうにもなりませんね。うちにもおそらく同じ人種であろう人が3人もいるんですよ」

 ツバサたちが考えた。

 

『神様。どうしましょう』

『大丈夫じゃ、もし仮に彼女のいるUTX学院に行ったとしても、ワシが絶対にさせんよ。でもまあ、ちょっと話は聞いておいた方が良さそうじゃな』

『そうですね』

 羅城丸と相談する飛鳥。音ノ木坂学院を離れるとなったら、絶対A達が強姦でもするだろうと考えていたので、ちょっと慎重に考える事にした。

 

「UTX学院って他にも男子生徒がいたはずなんですけど…」

 3人が考えた。

「ダメよ。自分で言うのもアレだけどUTXの人にお願いしたら、内部戦争が起こるもの」

「収束できる力も必要になる」

「うんうん」

 と、ツバサ、英玲奈、あんじゅがNGを出した。

(まあ、普通に考えたらそうなるけど…。他校からわざわざ来させる意味も分からないけどな…)

 飛鳥が困惑した。

 

「…綺羅さん達の仰りたい事や事情はよく分かりました」

「!」

 飛鳥が言葉を続ける。

 

「で、もしそうなったとして、具体的に何をすれば宜しいでしょうか」

「そうねぇ…。可能な限りでいいから、私達と一緒にいて貰えないかしら」

「ファンの方とか大丈夫ですか…?」

「大丈夫よ。ストーカーに逢ってるって事は、概ね話してるから」

「あ、そうですか…」

 ツバサの言葉に飛鳥は困惑した。

 

「それじゃ前向きに宜しくね!」

「は、はい…」

 と、飛鳥は音ノ木坂学院の理事長に報告だけしてみる事にした。まあ、決めるのは神様だが…。

 

 暫くして、飛鳥とA-RISEは店を出た。飛鳥の両隣には英玲奈とあんじゅが並んでいた。

 

「よく考えたら、これスキャンダルとかになりませんか?」

「気にする必要はない」

「よく考えたら両手に華だね~」

「おーい。一人忘れてるんですけどー。リーダーなんですけどー」

 ツバサが横から突っ込んできた。

「それもそうですし、お茶した時間も物凄く贅沢なお時間ですよね」

 飛鳥が困惑した。

「それじゃ、駅まで送って貰えるかしら?」

「あ、はい。それは大丈夫ですが…」

「嫌がったりしないのね」

「断らない方がいいかもしれないですね」

「え?」

 ツバサたちが驚くと、飛鳥は困惑してこうつぶやいた。

 

 

「真剣に考えましょうか…。音ノ木坂とUTXの未来の為にも」

 

 

つづく

 



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第38話「新しいフォーがやってきても、飛鳥の前では無力だった」

 

 飛鳥とA-RISEが店を出た矢先、飛鳥はイヤな予感を感知していた。

 

 

 ちょっと前…

 

「クソッ!! 今日も女子から相手にされなかった!!」

 と、ゴミ箱を蹴飛ばすB。それを見て通行人たちはドン引きしていた。

「何見てんだ!! ぶっ殺すぞ!!」

 そう言うと、通行人たちは引いた。

 

「何もかも一丈字のせいだ…!! こんな筈じゃなかったのに…!!!」

 

 そう思っていた矢先、飛鳥がA-RISEと一緒にいるのを見かけた。

 

「あいつ!! μ’sだけじゃなくてA-RISEまで…くぅぅぅぅ…!!!!」

 と、Bは歯ぎしりしたが、ある事を考えた。

 

「待てよ? もし一丈字とA-RISEが一緒にいる所を写真で撮れば、脅せるかもしれない。そうすればμ’sとも近づかないぞ…!!」

 そう考えていた。あまりにも愚直である。

「そうと決まれば、早速写真を撮ってやる!!」

 と、Bはカメラを持ち出して飛鳥とA-RISEの写真を撮った。

 

「見てろよ一丈字…。これでお前のハーレム生活は御終いだ。あとはオレがその座についてやる…!!」

 Bは気持ち悪い笑みを浮かべた。本当に気持ち悪い。

「だが、A-RISEとどういう話をしているか気になるな。見てみるか…」

 Bは店に入ろうとしたが、

 

「あーチミチミ」

「!?」

 と、水色の髪の小柄な少年が止めた。彼の名前はD。Bと同じ『フォー』である。

 

「A-RISEの邪魔をしないでくれたまえ」

「あ!? 何だテメェは! 知るかよ」

 と、Bが進もうとすると、Dが手を突き出してBの足元を凍らせた。

「!?」

 

「見た所君も「転生者」だね。だけど、残念ながらA-RISEは僕のものだ」

 Dが気味悪い笑顔で言い放った。

「あぁ!!? てめぇもこの世界のスクールアイドル狙ってんのか!? どっか行けよ!! 何勝手に入って来てんだよ!!」

 令和2年度お前に言われたくない大賞受賞、おめでとうございます。

「君の発言には興味ない」

 そして令和2年度お前の発言にも興味ない大賞受賞、おめでとうございます。

 

 と、ひと悶着が起きて数十分後、飛鳥とA-RISEが出てきた。

「出てきた!!」

 

 そして飛鳥がBとDの気配を感知して、今に至る。

 

「誰かいますね…」

 飛鳥がそう言い放った。

「もしかしてDかしら…」

「あり得る…」

 ツバサ、英玲奈が警戒していると、

「飛鳥くん。こわーい」

 あんじゅが飛鳥に抱き着いた。

「!!?」

「ちょ、あんじゅ!!//////」

 お察しのとおり、あんじゅのおっぱいが飛鳥の腕に当たっている。

 

「私の傍から離れないでください」

(冷静にふるまってる!!!(大汗))

 しかし、感触はちゃんと飛鳥の腕に伝わっていて…。

 

(最近のアイドルは肝が据わってるのか、怖いもの知らずなのか…)

 と、考えていた。

 

「こんな所で何をしているのですか?」

 と、Dが現れた。

 

「D!!」

 ツバサが叫んだ。

「A- RISEともあろう人間が、どこの馬の骨と分からない男と逢瀬…ましてや、そんな破廉恥な真似を…ファンは悲しみますよ。大体…」

 と、話そうとするとあんじゅは飛鳥を誘導して、ツバサ、英玲奈と共にその場から離れようとした。すると…

 

「待ちなさい。まだ話は終わってませんよ」

 瞬時に飛鳥達の前に立ちはだかった。

 

「あ、すみません。あなたがDさんですか?」

 飛鳥がそう聞いた。

「如何にも。僕はD。このA-RISEの1番のファンであり、騎士(ナイト)…」

 と、かっこをつけるD。

「うちのA-RISEが突き合わせてしまって済まなかったね。後は僕に任せてあなたは帰ってください」

 と、Dが手を差し伸べるが、

 

「あ、お構いなく。私は今日飛鳥くんと帰るから」

 そう言ってあんじゅは更に飛鳥にくっついた。

 

『ワシ…何もしとらんのに、ここまで好かれとるとはなぁ』

『御冗談を…(汗)』

 色んな意味で冗談であって欲しいと思う飛鳥だった。第一の理由としては、公式に怒られるからだ。二次創作とはいえ、可愛い女の子達がこのような名前も認知度もない男と一緒に仲よくしようものなら、色々まずい。飛鳥としては何も言われないようにしたかったのだ…。

 

「それはダメだ」

「どうして?」

「あなた達は僕と一緒にいなきゃダメなんだ」

 と、Dが冷徹な表情で言い放った。

 

(何だかよく分からねぇがチャンスだ!!)

 と、Bも現れた。

「おやおやぁ? こんな所で何をしてるのかな一丈字くん」

「あ、Bさん」

 飛鳥は至って普通だった。

「μ’sと言うものがありながら、A-RISEと仲良くするなんて良い御身分じゃないか」

「そういう関係じゃな」

「どうしようかな~? この事μ’sに喋っちゃおうかな~? 喋ったら間違いなく嫌われるかもな~?」

「あ、お好きにどうぞ」

 飛鳥が普通に言い放った。

「なっ!!? ほ、本気だぞ!!? 本気でμ’sにチクるからな!!」

「何とでも」

「飛鳥くん。この人がBさん?」

「そうですよ」

「ふーん…」

 あんじゅが口角を下げた。

 

「まあいいわ。行きましょ飛鳥くん」

「え? ちょ…」

「逃がさないと言ってるでしょう」

「きゃっ!!」

 Dがツバサの手を掴んだ。

「へへ。だったらオレも!!」

「!!?」

 Bが英玲奈の手を掴んだ。

「ツバサ! 英玲奈!!」

 あんじゅが驚いたが、飛鳥はノーリアクションだった。

 

「おっと動くなよ」

「あんじゅも大人しくこっちに渡しなさい」

 と、BとDはツバサたちを人質に取った。

「ダメ!! 飛鳥くん!!」

「あんじゅだけでも連れて逃げるんだ!」

「あ、その必要ございませんよ?」

「え?」

「何だと!!?」

 飛鳥が指をさした。

「後ろをご覧ください」

「え?」

「おっとぉ。その手には…」

「ゴッホン!!」

 誰かが咳払いをしたので、皆が飛鳥に言われた通り、後ろを向くと、そこには警察の姿があった。

 

「君たち。一体何をしてるのかね?」

「!!?」

「あ、痴漢です」

「!!!」

「一丈字てめー!!!」

 と、BとDがツバサたちを置いて逃げ出した。

「待てー!!!」

 警察が追いかけていくが、どうも足が遅い。飛鳥とA-RISEが取り残された。

 

「あ、大丈夫ですか? 綺羅さん、統堂さん」

「…あ、うん」

「ああ…」

「そうですか」

 飛鳥が微笑んだ。

 

「さあ、帰りましょうか」

「う、うん…」

「あ、やっぱりタクシー呼びましょう。もう危ないですし」

「え!?」

A- RISEが驚く。

「ちょ、そこまでしなくても…」

「あ、すみません。これ、皆さんの為でもありますけど、私の為でもあるんですよ」

「え?」

 飛鳥が苦笑いした。

 

「怒られるんですよ。何で最後まであなた達を守らなかったんだって」

 

「……!!」

「なので、最後まで守らせてください。お願いします」

 飛鳥が一礼した。

 

「…それはいいけど」

「ありがとうございます」

 飛鳥がツバサ達を見つめたが、ツバサが頬を染めた。

 

「どうされました?」

「な、何でもないっ!!///// タクシー呼ぶんだったら、早く呼んでよ!!」

「あ、はい」

 飛鳥が携帯電話からタクシーを呼んだ。

 

「…あのオーラは反則だろ/////」

「う、うん…/////」

 男子に守られているという事に、何か照れ臭くなるA-RISEだった。

 

 

『…ところで神様。Dはどうするんですか?』

『安心せい。チート能力は全部没収しておいた。後はワシが飽きるまで負け組の人生を歩むだけじゃ』

『そ、そうですか…(汗)』

 

 

 

つづく

 



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第39話「転生生活で思った事」

2か月半ぶりの投稿です。
50話はやりたいです。


 

 

<飛鳥side>

 

 皆さんこんにちは。一丈字飛鳥です。38話の投稿から大分時間が空いていましたが、ずっとpixivの方で働いてました。申し訳ございません。

 

 さて、A-RISEをつけ狙っていた転生者Dをやっつけた私。その事をUTX学院に報告すると大変感謝されました。

 

「本当にありがとう!!」

 

「あの生徒には困っていたんだ!!」

 

「これでこの学校の体裁は守られた!!」

 

「君は英雄だ!!」

 

 と、褒めちぎられました。神様、これも仕様ですか?

 

『いや、ガチじゃ。変質者に学校の名誉を傷つけられそうになったのを救われたのじゃ。嫌でもそう言いたくなる』

 

 転生者生活をしてみて、思った事は多々あります。フォー達を見ても分かるように、この世界ではとにかく転生者を神様のように祭り上げます。で、何でもかんでも自分の思い通りになります。その結果、何をしても自分は許されるという『勘違い』が発生して、彼らのような人間が出来上がってしまいます。

 

 少しでも自分には向かおうとすれば、神様たちから貰ったチートでものを言わせようとします。彼らの場合だと男は無条件で殺すか追放したりして、女性は食い散らかしていく。まるで獣のように成り下がっていきます。

 

 しかし、皆さんにももう分かっていると思いますが、アニメの世界とはいえ、登場人物には登場人物の人生があります。そして私達と同じように生きています。

 

 だからこそ、あのような暴挙が果たして許されるだろうか?

 

 アニメの世界だからいい。ましてやここはゲームセンターだから色々やらかしてもすぐにリセットされてなかった事になる。それでいいのだろうか?

 

 もしこれが自分達がやられる立場ならどうだろう。どこからかやってきた訳の分からない男達に理不尽に殺されて、奥さんや彼女がいようものなら、好み次第では寝取られてしまう。たまったものじゃない。

 

 そんな事を言ってしまえばゲームなんて出来ないだろ。と思うかもしれない。だけど、少なくとも私が今いる世界はゲームのようでゲームではない。負けてもリセットで済まされない所まで来ているのだ。ここの世界じゃないにしろ、実際に被害は出ている。

 

 過ごしていく上で、生き方について日々自分に問い続けるようになった。

 

 確かに皆甘やかしてくれたり、思い通りになる方が良いかもしれない。だけど答えが分かってる人生なんて面白いのか。悪い事を肯定したい訳じゃない。だけど何かがおかしいんだ。

 

「……」

 

 私はもう少しこの世界にいて、答えを探してみようと思います。そして決して彼らのようにはならないと改めて誓います。

 

<飛鳥side 終わり>

 

 

 そして、登校日がやってきた。飛鳥はいつも通り通学路を歩いていた。

 

「……」

 

 答えは見つからず、ずっと悩んでいた。

 

「…い。一丈字先輩!!」

「!!」

 

 飛鳥が振り向くと、真姫がいた。

「あ、西木野さんでしたか。おはようございます…」

「おはよう。何ぼーっとしてたんですか?」

「人生について悩んでました」

「はぁ? イミワカンナイ」

「ですよね」

 

 真姫が悪態をついたが、気になったのか飛鳥の方を見た。

 

「人生について悩んでたって…進路の事で?」

「そんな感じですかね」

「そんな感じですかねって…またあいつらに何か言われたの?」

「あの人達には何も言われませんでしたけど…そうですね」

「……」

 

 その時だった。

 

「一丈字飛鳥…。またしても僕の真姫とくっつくなんて…」

 と、Cは指をかんで睨みつけていた。そして周りにいた女子生徒は気持ち悪がっていた。

 

「あの邪魔者を追い払った所で僕は認めないぞ…。真姫は僕のものになるんだから」

 

「……」

 そしてCの気配に気づいた飛鳥。

「ねえ、聞いてるの?」

「あ、はい。聞いてます」

 真姫の返事にも上の空だったが、

「…見られてますよ」

「!!」

 と、ぼそっと教えてあげると真姫が後ろを振り向き、Cを見た。

「!!」

 

「行きましょ。先輩」

 真姫が飛鳥を急かすと、Cも追いかけてきた。

 

「しつこいわね!」

 真姫が苛立つが、Cは真姫の都合を気にせず追いかけ続ける。

「……」

 飛鳥は口角を下げて、真姫の手を引っ張ってその場で止めた。

「何!!?」

 飛鳥がCを見つめる。

 

「何ですか?」

「止めて頂けませんか」

 飛鳥が言い放った。

 

「何故あなたにそんな事を言われなくてはいけないんですか」

「西木野さんが嫌がっているのが分かりませんか?」

「そんな筈はありません。あなたが彼女を洗脳しているんでしょう」

 飛鳥が口角を下げた。

 

「分かりました」

「ちょ、ちょっと先輩!!」

「ほら。分かったらさっさと洗脳を解いて彼女を…」

「行きましょう。西木野さん」

 飛鳥が真姫の背中を押した。

「ひゃっ…//////」

「話を聞いてなかったのですか? 真姫を渡せと言ってるんですよ」

 と、Cが飛鳥に近寄ろうとしたが、飛鳥が金縛りを使った。

 

「!!」

「私の事はどう思ってくれたって構いません。ですが…あなた達の望み通りにはならない。そう思っていてください」

 飛鳥はそう言って今度は真姫の手を引っ張った。

 

「くっ…!! や、やっぱり…彼は能力者だったのか…!!」

 と、Cは歯ぎしりしたが女子生徒に囲まれた。

「!!」

 

「ちょっといい加減にしなさいよ」

「どういうつもり!!?」

「これ以上変な事するんだったら…」

 と、女子生徒が囲んだがCが激昂した。

 

「うるさい!! 黙れ黙れ黙れ―――――――――――――っ!!!!」

 と、チート能力を使って女子生徒を殺そうとしたが、チート能力が出なかった。

 

「な、何故だ!! 何故でない!!」

 Cは狼狽えた。

 

「……」

 飛鳥は女子生徒達にもみくちゃにされていくCを遠くから見つめながら、真姫をエスコートしていった。

 

 

 

「……/////」

 真姫は背中や手を握られて、少しときめていた。

「あ、すみませんね」

「…それだけ?」

「はい。殴りたいのならどうぞ殴ってくれても構いません」

「いいわよ。そこまでしなくても」

 真姫はそっぽを向いた。

「ただ…」

「?」

 真姫がまたほほをそめた。

 

「…あまり他の女の子にやらない方が良いわよ」ゴニョ

「……」

 真姫の様子を見て、飛鳥は口角を下げた。

 

「そうですね。私が軽率でした」

「もうちょっと嬉しそうにしなさいよバカァ!!!」

 と、真姫が飛鳥の頭を叩こうとしたが、飛鳥は受け止めた。

「男らしく殴られなさいよ!!」

「嫌ですよ。痛いものは痛いんです」

 と、小競り合いをしていると花陽と凛もやってきて、じゃれあった。

 

「どうしてあいつばっかり!!」

「オレも女とじゃれあいてぇよぉ~~~~!!! 性的な意味で!!(泣)」

 と、陰からAとBが見つめていた。

 

 

つづく

 



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第40話「リターン」

 

 

 次から次へと救助活動を行っていた飛鳥の評判は最高潮になっていた。

 

「ねえ、あの人じゃない?」

「え?」

「違うわよ」

「どんな人なんだろう…。一丈字飛鳥くん」

 

「……」

 

 飛鳥は超能力で存在感を消していて、女子生徒達の前を素通りしていた。

 

 だが、飛鳥が所属する1組の教室の前は飛鳥を一目見ようと女子生徒達が集まっていた。だが、飛鳥は存在感を消している為、気づかれる事はない。

 

『早急に元に戻してください』

『今回だけじゃ』

 

 神様と会話をしながら、飛鳥は教室で静かに過ごしていた。

 

 勿論μ’sも例外ではない。

 

「あ、飛鳥くん! おはよー!!」

「おはようございます」

 穂乃果が急にじゃれてきたりした。

 

「穂乃果。一丈字さんが困ってるでしょう」

「ごめんねー」

 海未とことりも普通に話しかけてきた。

 

 他のメンバーも同じで、飛鳥に好意的に話しかけてくる。気難しい真姫やにこですら、飛鳥の事はある程度認めている。おまけに教師たちの評価も高い為、飛鳥はすっかり音ノ木坂学院でハーレムを手にしたのだった。

 

 勿論本意ではないが…。

 

(本位だったらこの世界から出ていこうなんて思わないからなぁ…)

 

 とにかく穂乃果達が無事なのと、フォーをあぶりだせばそれで良いと考えていた。

 

 当然、面白くないのはフォー達である。

 

「……!!」

 陰から飛鳥の事を睨みつけている。

 

 そう、本来そこにいるのは自分である筈だったと言わんばかりに睨みつけている。これまでいろんな世界で無茶苦茶な事をやってハーレムだの天下だのを満喫してきた3人。転生しては女を犯し、転生してはハーレムを作り上げるなどと、まさに本能のままに生きてきた。

 

 しかし、この世界では今までの自分達は通用しないどころか、チート能力もある程度取り上げられて、王様から転落してすっかり負け犬となり下がっていた。これでは最初に転生する前の元の冴えない自分ではないか。死んで尚こんな負け犬の人生など送りたくない。とうか何故送らなければならないのだと彼らは思っていた。

 

 自分達は勇者だ。世界を何度も救って祭り上げられる筈のヒーローなのだと目で訴えているが、もう彼らの時代は終わったのである。

 

 たとえヒーローであろうと、悪い事をすれば普通の人間と同じように裁かれなければならないのが道理であり、神様ではない。ましてや見返りを求めるなどヒーローとしてあり得ないのである。しかもヒーローになれたのは自分の力ではなく神様がこのゲームの世界で遊ぶために与えたものであり、決して彼らが思い描いているヒーローにする為ではない。

 

 教師からも同級生からも、ましてや肝心のμ’sメンバーからも嫌われて、現実をつきつけられているにも関わらず、未だに現実が見えておらず、過去の栄光に縋ろうとしている彼らは哀れでしかない。

 

 幸い、μ’s以外のメンバーに強姦しなかったが、それももう時間の問題だろう。μ’sメンバーに触れないともなれば、もうモブで妥協する可能性もある。しかし、モブにももう触れられることはない。神様に目をつけられたからである。彼らが本当の意味で処刑されるまで、そんなに遠くも無かった…。

 

 ところかわって、ある日の放課後。

 

「ねえねえ飛鳥くん」

「何です?」

「今日一緒に帰ろ!」

 と、穂乃果が話しかけてきた。ことりと海未も一緒である。

 

「そりゃあ構いませんけど…何かあったんですか?」

「いや、何かあったわけじゃないけど、飛鳥くん頑張ってるからさ! ファミレスとかでどう?」

「構いませんよ」

「穂乃果。それはいいですけど、お金は持ってるんですか?」

 ファミレスに行こうと張り切る穂乃果に対して、海未が待ったをかけた。

 

「持ってるよ。お店の手伝いをしたんだけど、凄く売れたからお小遣い沢山貰っちゃった!!」

「お、おう…」

 海未とことりが驚いた。

 

「だから大丈夫だよ! 行こっ!!」

「あ、はい…」

 と、穂乃果が飛鳥にくっついたが、穂乃果のおっぱいが飛鳥の腕に当たっていた。

 

「ほ、穂乃果ちゃん!!//////」

 ことりが頬を染めた。

「え?」

「え、じゃありません!!////// 殿方に何をしてるのですか!!/////」

 海未も顔を真っ赤にした。

 

「何もしてないよー。ただちょっと腕を絡めてるだけじゃん」

「その…えっと…は、破廉恥です!!/////」

「破廉恥ってなにが?」

 穂乃果は全然分かっていなかった。

「飛鳥くん。何で破廉恥かわかる?」

「私の口からは言えません」

 飛鳥は困惑していた。

「と、とにかく離れなさいっ!!//////」

 と、海未が穂乃果と飛鳥を引き離した。

「何海未ちゃん…あっ」

 穂乃果が気づいた。

「分かった! もしかしておっぱ」

「ワ――――――――――――――――――――!!!!////////」

 海未が穂乃果の口をふさいだ。それを見て飛鳥は困惑していた。

「ご、ごめんね…」

「あ、はい…」

 ことりに謝られて、飛鳥は困惑しながら頭をかいた。

 

 そんなこんなで4人はファミレスに移動しようとしたが、

 

「あ、穂乃果ちゃん達にゃ!」

 と、りん、花陽、真姫たちと合流した。

 

「あ、凛ちゃん達」

「飛鳥くんも一緒なの?」

「あ、はい」

「凛たちこれからラーメン食べに行くんだけど、穂乃果ちゃん達もどうにゃ?」

 凛たちから誘われたが…。

 

「あ、ごめん。私達ファミレスに行こうと思ってるの」

「ファミレス? うーん…ファミレスでもいいにゃ」

「ちょ、あんたついて行く気?」

「ダメかにゃ?」

 凛が穂乃果達を見た。

「別にいいよー。ねえ」

「あ、はい…」

 飛鳥も承諾した。

 

「あ、それやったらうちらもいい?」

 にこ、希、絵里が現れた。

 

「勿論いいよー」

 と、穂乃果達がOKした。

 

「勿論オレもいいよね」

「オレも行きたいな」

「僕も行くのは当然の原理です」

 フォー達も現れた。

 

「……」

 飛鳥とμ’sは困惑した。

 

「そんなつれない顔しないでよー」

「そうそう」

「独り占めなんてさせませんよ」

「いや、そうじゃなくて後ろ…」

「え?」

 飛鳥に言われた通りにフォー達が後ろを向くと、山田が仁王立ちしていた。

 

「こっち来い!!(怒)」

「ババア~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 と、3人は連行された。

 

「じゃ、ファミレスにいこっか!」

「えっ」

 穂乃果のテンションに飛鳥はちょっと驚いた。

「さんせー」

「……(汗)」

 他のメンバーもいつも通りにしていた為、飛鳥は驚いた。

 

『やっぱり女って怖いのう』

『そうですね…(汗)』

 

 

つづく

 



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2つの世界編
第41話「旅先のトラブルはお約束」


第41話

 

 ある日の事。

 

「気の向くままに電車で移動したらこんな所に来ちゃったよ」

 

 ここは沼津市の内浦。飛鳥は海沿いを歩いていた。空は雲一つない青空で、海も青かった。フォーの戦いに疲れた飛鳥は気の赴くままに出かけた。そしてたどり着いたのがここである。

 

(良い所だ…。老後はこういう所で隠居したいなぁ…生きてたらの話だけど)

 飛鳥がふと砂浜を見ると、1人の少女が海に向かって立っていた。特に意識せずそのまま通り過ぎようとしたが、

 

「…輝きた~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!!!!」

 

 と、突然叫び出して、思わず振り向いた。

 

「ふぅ…」

 少女が後ろを振り向くと、飛鳥と目が合った。しかしその少女の姿を見て神様は慄然した。

 

「……」

「……!!!//////」

 少女が顔を真っ赤にした。

(よし、逃げよう)

 飛鳥が逃げようとしたその時、神様が待ったをかけた。

 

(待て)

(何ですか?)

 

(…あの娘、どうしてここにいるんだ?)

(どういう事ですか?)

(あの少女は高海千歌と言ってな。今君がいる「ラブライブ!」の次回作「ラブライブ!サンシャイン!」の主人公だ)

(と、いうと…)

 神様が珍しく焦った表情を見せた。

 

(…2つの世界が1つの世界になってしまった可能性がある)

 神様の発言に飛鳥がけげんな表情を浮かべた。

(それって…マズいんですか?)

(とってもマズい。転生センターの運用にかかわる。恐らくフォーが次元の壁に何かしらダメージを与えたせいだろう)

(次元の壁?)

(その話は後で話そう。高海千歌がこっちに向かって走ってきてるからな)

「え」

 すると千歌が走って来た。

 

「あ! えっと! す、すみません!! 大声出して…」

「……」

『理由を聞いてみるのだ』

『は、はい…』

 神様のアドバイスに飛鳥は従う事にし、千歌に事情を聴いてみた。すると千歌は素直に答えた。

 

「そうだったんですか」

「はい…」

 飛鳥と千歌が横に並んで話をしていた。

 

「友達が活躍していて輝いてるから、自分も輝きたいと…」

「そうなんです…」

「ふーん…」

 飛鳥が口角を下げる。

「高海さんでしたっけ」

「はい」

「高海さんにとっての輝くって何ですか?」

「え?」

 千歌が飛鳥を見た。

 

「何をしたら、自分は輝いてるって思えますか?」

「そ、それは…」

 千歌が答えに迷う。

「そりゃ分かりませんよね。分かってたらさっきみたいに「輝きたい」って叫びませんし」

「お、思い出させないでください/////」

 千歌が頬を染めた。

「高海さん。私は「輝く」って事に対する考えを持っているんですけど、発表しても宜しいでしょうか」

「え、ど、どうぞ…」

「ありがとうございます」

 飛鳥が一礼した。

 

「高海さん、輝くって自分が自分でいる事だと思います。まあ、自分に自信を持つ事ですね」

「自分に自信を持つ事?」

「ええ。まあ、正確には自分を持つ事ですがね」

 飛鳥が青空を見た。

「…高海さん。アナタは今、何か輝く為に努力はしていますか?」

「そ、それも全然…」

「そうですか」

 飛鳥が口角を上げる。

 

「それでしたら、自分に自信を持つ事から始めてみては如何でしょうか」

「自分に自信を持つ事?」

「ええ。自分はやれる、自分は出来るんだっていう気持ちを持ちながら物事に取り組むんです。失敗もありますが、そこはまだやれるって気持ちで。簡単な事で良いんです。テレビゲームでも、勉強でも、とにかく自信を持って何かを最後までやり抜いてください。それが「自分は出来る」っていう自信に変わって、アナタを輝かせてくれる筈です」

 千歌が驚いた。

「…と言っても、半分は自分に言い聞かせてるんですよ。コレね」

「そうなんですか?」

「ええ」 

 飛鳥が苦笑いした。

 

「あ、でも始めようとしてる事があるんです」

「何ですか?」

「スクールアイドルです」

 千歌の言葉に飛鳥は驚いた。

 

飛鳥「やりたい事があるならそれで良いですけど、軽はずみでやっても上手くいきませんよ」

千歌「……」

 千歌が俯いた。

「自分が輝きたいからスクールアイドルをやる。これは自分の為だけにやっていて、お客さんの事とか考えてないでしょう。自分の事しか考えない奴にスクールアイドルは無理だと、No.1スクールアイドルグループの方達が言ってましたよ」

「No.1スクールアイドルグループ…」

A-RISEの事だが、敢えて名前を出さない飛鳥だった。

「まあ、その人達も最初は自分達の事しか考えてなくて、結果的に大きな失敗をしたそうです。それで、反省や努力を繰り返してNo.1になってますからね。あと、1年生の頃から始めているそうです」

「そ、そうだったんですか…」

 千歌が俯く。

「でも私…」

「……」

 千歌が俯いた。

「それでも、普通で何の取り柄もないから…」

「だったらそれを魅力に変えましょうよ」

「え?」

 千歌が飛鳥を見た。

「スクールアイドルをやらないにしても、普通で取り柄がないっていうのは、まさに輝くチャンスだと思いますよ」

「ど、どうしてですか…?」

「だってそれ、いくらでも成長できるチャンスじゃないですか。普通で取り柄がないからで終わらせるには勿体ないと思いますよ」

「そ、そうですか…?」

「スクールアイドルをやれって言ってる訳じゃないですけど…、アナタがその気になれば、0から1にも2にもなって、輝けると思いますよ。まあ、私が言いたいのは、守りに入らないで前に進んでいきましょ。若いんですから!」

 千歌が俯く。

「…不安な事があるなら、周りにいる人たちに相談して御覧なさい。力になってくれるから」

「…分かりました」

 千歌が飛鳥を見た。

「い、いきなり大きな事は出来ないと思うけど、実践してみます!」

「その意気です」

 飛鳥が口角を上げる。

 

「あ、ところで一丈字さんって何歳ですか?」

「15…」

『この世界では君は高校2年生だ』

『あ、そうだった…』

 思わず自分の年齢を言いそうになったが、神様に言われて訂正した。

 

「じゃなかった、16です」

「えっ!!? 16歳って事は高校2年生!!?」

「え、ええ…2年生ですけど」

「私と同い年じゃん!!」

「そうでしたか…」

 千歌が驚いた。

 

「あ、えっと。その…」

「?」

「…電話番号、交換してください」

(何で!!!?(汗))

 そんなこんなで後にスクールアイドルグループ「Aqours」のリーダーとなる高海千歌と連絡先を交換した。

 

「あー、疲れたー」

 飛鳥が帰りの電車で呟いた。

『それはそうと神様』

『何だ?』

『高海さんに会う前に話していた「次元の壁」って何ですか?』

『おっと、忘れる所だった。次元の壁というのはな、文字通り壁だ』

『はあ…』

『壁に穴を開けるとどうなる?』

『そりゃ…穴が大きかったら、その穴から別の部屋に入れますね』

『その通りだ。先ほどの高海千歌は元々別の次元の人間だ。まあ、別の星の住人とでも言っておこうか。それが次元の壁に何かしらのトラブルが起きた事で、ラブライブ星と、ラブライブサンシャイン星がくっついてしまい、1つの星になったと考えてくれたまえ』

『という事は…』

『2つの世界の世界観や設定がゴチャゴチャになり、シナリオも何もかも滅茶苦茶になるという訳だ』

『えっ!!? それだったら私を使って遊んでる場合じゃないでしょう! 今すぐ元に戻さないと!!』

 飛鳥が驚く。

『それが出来んのだ。アニメやゲームの世界とはいえ、立派な一つの世界だ。規模も大きすぎるし、そこまで時間や労力も割けん。ラブライブの世界は3月末までいられるのだが、その3月末を過ぎたら、転生者達は全員星から追い出されるようになっている。その時にメンテナンスをすれば正常になる。それに、今回はフォー達をあぶり出して地獄に落とすのが第一優先だ。恐らく高海千歌のいる浦の星女学院に…フォーが現れる可能性がある』

「……」

 

『私がサポートする。浦の星女学院にも気にかけてくれ』

 

 と、急展開になってしまったラブライブの物語。飛鳥はどう出るか!!

 

 

 天界

「む、無印とサンシャインのクロスオーバーだと!!? 何て贅沢なぁああああ!!!」

 と、テレビを見ていたザキラが発狂していた。それを見た妹のコロロは引いていた。

 

 

 

 

つづく

 



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第42話「輝くために」

 

 

 ある日の静岡県・内浦

 

「……」

 そこには私服姿の飛鳥がいて、腕時計の時刻を気にしていた。

 

「あ、あのっ!!」

「!」

 飛鳥が横を向くと、千歌が現れた。彼女もまた私服姿だった。

 

「高海さん」

「あのっ…遅くなってすみませんっ!」

「いや、約束の時間までかなりあるけど…」

 飛鳥が千歌を見た。

 

 実を言うと連絡交換をした飛鳥は早速千歌から相談を受けていた。折角だから直接会おうとなり、飛鳥が内浦にやってきたのだった。

 

「あ、あの…。態々来てくれてありがとうございます!」

「うん。大丈夫。どっか話せる所に行こうか」

「は、はい…」

 飛鳥と千歌が移動するが、それを陰から誰かが見ていた。

「……」

 そしてそれを飛鳥は見逃さなかった。

 

飛鳥「ここでいいかな」

千歌「は、はい…」

 飛鳥と千歌は喫茶店の前まで来て、中に入っていった。

 

「好きなの注文していいよ。ご馳走するから」

「え、いいんですか!?」

「うん。出世払いだけど」

「……」

 飛鳥の言葉に千歌はまずそうな顔を下。

 

「冗談だよ。ちゃんとご馳走するさ。ただし、味をしめない事と、感謝の気持ちを忘れない事。分かったね?」

「は、はい! ありがとうございます!」

 飛鳥が口角を上げると、そのまま注文した。

 

「さて、注文が来る間にここに呼び出した用件を聞こうか。助けてってのは…」

「…それが」

 千歌が現状を話した。

 

「…成程、前に話した事を踏まえて考えた結果スクールアイドルをやる事にしました。でも、色んな人に反対されたと」

「それで…どうしたらいいか分からなくて」

 千歌の様子を見て、飛鳥が口角を下げる。

 

「まあ、確かに周りの人の言ってる事が正しいかもね」

「!?」

 千歌が飛鳥を見ると、飛鳥が頭をかいた。

 

「話は前にも聞いたけどね。厳しいようだけど、君は人から信頼を失うような事をしたんだ。それは受け入れるしかないよ。周りの人がね、そう思ってもしょうがないし。何も結果を出してないんじゃ、信じようがない」

「……」

 飛鳥の言葉に千歌が俯いた。

 

「でもね、大事なのはこれからどうするかだ。何か考えてる?」

「そ、それも…」

 千歌が沈んだ顔をした。

「…スクールアイドル、まだ目指してる?」

「……」

 千歌が涙目になる。

 

「高海さん。怒ってる訳じゃないけど、そうしてても何も解決しないよ」

「ごめんなさい…」

 

 千歌を見守っている二人の女子生徒は困惑していた。1人はくせ毛のある灰色の髪の少女、もう一人は赤茶色のロングヘア―の少女だった。そして飛鳥は考える素振りを見せた。

 

「高海さん」

「はい…」

「もし君にやる気があるんだったら、オレから一つ提案があるよ」

「え?」

「ここに来る途中で知ったんだけど、コレ」

 

 飛鳥が一枚のチラシを取り出した。

 

「これ…」

「遠泳大会だ。5㎞、10㎞、15㎞、20㎞と4つの部に分かれている。君の地元で来週やるんだろ? それに挑戦してみたらどうだい?」

「遠泳…」

 千歌が困った顔をする。

「順位を競うんじゃないし、速く泳げって言ってる訳じゃないよ」

「!」

「最後まで泳ぎ切るんだ。途中で投げ出したりしない、最後までやれるって事を皆に証明する事。それが君の一番やるべき事だ」

「!!」

 千歌の目が大きく開いた。

 

「まあ、強制はしないけど…。スクールアイドルをやりたいんだったら、証明出来ないとね」

 千歌が口角を下げた。

「やっぱり…やめますか?」

「や、やる!!」

「!」

 千歌が立ち上がった。

「やります!! 遠泳!!」

 飛鳥が驚いた。

 

「高海さん」

「な、何ですか?」

「他にもお客さんいるから…静かにね」

「あっ! す、すいません!!/////」

 廻のお客さんが自分を見ている事に気づいた千歌は顔を真っ赤にして座った。

「まあ、やる気があるのはいいけど…ちゃんと家族の人達にも言っておくんだよ。暇な時は旅館の手伝いがあるんでしょう?」

「は、はい…」

「よし、それじゃ決まりだ」

「あ、それからまた相談が…」

「何?」

「その…スクールアイドル活動に向けて、曲を作ったんですけど…」

「ふむ」

「これです…」

 千歌が歌詞を見せた。

 

「へー、中々いいじゃない。ちょっと修正した方が良い所もあるけど」

「あ、ありがとうございます…」

「作曲してくれる人がいないの?」

「は、はい…。ピアノをやっている子がいるんですけど、断られちゃいまして…」

 赤い髪の少女は困惑した。

 

「成程ね」

「……」

 千歌が俯いた。

 

「オレのセンスで良かったら作曲しようか?」

「え!?」

 飛鳥の提案に千歌が驚いた。

 

「まあ…もしかしたら、そのピアノを弾いてる子が見るに見かねて、手直しをする可能性もあるけど。どう?」

「で、出来るんですか!?」

「まあ、どういう感じの曲か分かれば」

「ぜ、是非お願いします!」

 千歌が一礼した。

 

「分かりました」

「あ、もしよかったら今からうちに来て頂けますか!?」

「え」

「!!!?//////」

 二人の女子生徒が頬を染めた。

 

 しばらくして、明日かは千歌に連れられて、千歌の家族が経営している旅館に案内された。

「結構立派な宿だね…」

「そ、そうですか…?」

「まあ、おうちが宿なら分からないとは思いますけど」

「あ、どうぞどうぞ」

 千歌が飛鳥を連れて中に入る。

 

「ただいまー。ちょっとお客さん連れてきたからー」

「お邪魔します」

「おかえりー…って、うおおおっ!!!」

 千歌よりも年上らしい女性が現れて、驚いた。

「あ、あんた!! 何男連れて来てんのよ!! か、彼氏!!?」

 千歌が顔を真っ赤にした。

 

「ち、ちがーう!!!!////// ぜんっぜんちがうぅ!!!!/////」

首をブンブン横に振った。

 

「美渡―千歌―」

「!」

「お客様に失礼でしょう?」

 更に女性が現れた。

「ゴ、ゴメン志満姉…」

「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」

「あ、いえ。千歌さんとは仲良くさせて頂いている者です」

「ちょっと相談したい事があるから、家に来て貰ったの」

「何? まだスクールアイドルの事諦めてないの?」

「う、うん」

 次姉・美渡の反応に千歌は尻込みし、美渡は呆れたように千歌を見た。

 

「前にも言ったでしょ! ここでスクールアイドルをやるのは無理だって! 第一浦の星女学院は」

「ゴホン!」

 志満が美渡の足を踏んだ。

「千歌。ご案内してあげて」

「はーい。それじゃ行きましょう」

「お、お邪魔します…」

「あ、すみませんが…」

「?」

 飛鳥が千歌の長姉・志満を見た。

 

「話が終わったら、恐れ入りますが談話室でお待ち頂けますか? あなた、音ノ木坂学院の人ですよね?」

 飛鳥が気づいた。

「え? 志満姉知ってるの?」

「テレビで見た事あるの。用件が終わってからでいいので、宜しくお願いしますね」

「……」

「それだったらそっち優先してよ! 気になるから!」

 志満が千歌を見た。

 

「美渡。悪いんだけど、応対お願いできるかしら?」

「はーい。その代り、後でアタシにも教えてね」

「分かったわ」

 

 応接室

「さて、時間を割いてしまってごめんなさい。一丈字さん」

「いえ…。それで、私にお話って何でしょうか?」

 志満が飛鳥を見た。

「アナタのこれまでの活躍はテレビなどで拝見させて頂きました。物凄いお方なのですね」

「いや、本当に勘弁してください。そんなんじゃありませんから」

 飛鳥が困惑した。

「それはそうと志満姉、飛鳥さんにお話って何?」

「アナタの事よ」

「え」

 志満が飛鳥を見た。

 

「一丈字さん。この度は妹がご迷惑をおかけして、申し訳ございません。お忙しいのに…」

「あ、いえ…それは別に構わないんですよ」

 志満が頭を下げると、飛鳥が慌てた。

 

「それで…妹がスクールアイドル活動をやる事についてなんですけど」

「反対されているんですか?」

「いえ、反対ではないのですが…ちゃんとやれると思えないんです」

「それでしたら、来週に行われる遠泳大会に出場して、結果を出させます」

「え?」

 飛鳥の返答に志満は思わず驚いた。

  

「それで…来週の日曜日、千歌さんをお借りしたいのですが」

「それは構いませんが…宜しいのですか?」

「ええ」

 志満が心配そうに見つめる。

 

「一丈字さん」

「何でしょうか」

「何故そこまでしてうちの妹を?」

 飛鳥が口角を下げると、千歌も心配そうに飛鳥を見た。

 

「理由は主に二つあります」

「!」

 

「まず、千歌さんと話をして、スクールアイドルの素質は十分にあるという事が分かった事が一つ。それと、千歌さんとお話をしていて気になった事があります」

「何ですか?」

 飛鳥が真剣な顔をした。

 

「浦の星女学院にも数名ほど…男子学生がいるそうですね」

 

 志満の表情が曇った。

「…一丈字さん」

「……」

「…実は、その事について貴方にご相談があるんです。私、これでもこの地域の安全管理をする団体の一員でして」

「何でも仰ってください」

 志満が困惑した表情で飛鳥を見た。

 

「実は…浦の星女学院は今年度で閉校する事になったんです」

 

「そうですか…」

「しかし、そんな時に何故か男子学生が転入する事になったんです。理事長が弱みを握らされてるのかどうかは分かりませんが、何でもお偉いさんだそうで…」

「で、その生徒達が好き勝手やっていると?」

「はい。特定の生徒に対して尾行したり、舐めまわすような視線で見たり、セクハラを繰り返したりしているんです」

 志満の発言に飛鳥は片眉を上げた。

 

「警察には相談できなかったんですか?」

「…警察に話してしまえば、閉校が早まる可能性があるんです。今の浦の星の生徒達は沼津の高校に行く事になっているんですけど、最悪の場合…受け入れを拒否されて路頭に彷徨う事になってしまうんです。そうなる為、警察にも相談できませんし、退学にも出来ないんです」

『神様…こんなに事態が大きくなっているなら、神様の力で何とかした方が良いですってコレ』

『色々ややこしい事になる。君がフォー達をやっつけてくれ。その時に私がうまい具合に修正する』

 飛鳥と神が会話をした。

 

「このままだと浦の星女学院が…」

 志満は少し泣きそうになっていた。

「…その、志満姉もさっきの美渡姉も浦の星女学院の卒業生なんです」

「そうだったんだ」

「だから…これ以上悪さをされたままだったら、浦の星女学院が変な学校だって思われちゃうんです」

「……」

「そんなの嫌だよぉ…」

 千歌が泣くと、飛鳥が真剣な顔をした。

 

「志満さん」

「?」

 飛鳥が真剣な顔をした。

「お話は分かりました。お恥ずかしい話なのですが…先日、我々音ノ木坂学院でも同じような事がありました。そして近くにあるUTX学院という所でも似たような現象があり、そちらの対応も行わせて頂きました」

「そう…」

「今のお話を聞く限りだと、浦の星女学院もかなり危険な状態といえます。もしかすると…最悪の事態も予測されます」

 志満が俯いた。

「私から一つご提案があります」

「何かしら?」

 飛鳥が志満を見た。

 

「千歌さんを私に預けて頂けないでしょうか」

 

「!」

「!!」

 志摩と美渡が驚いた。

 

「千歌を…音ノ木坂学院に?」

「いえ、そうじゃなくて…千歌さんのマネジメントをやらせて頂けないでしょうか」

 千歌も驚いた。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 美渡が現れた。

「別にそんな事しなくていいのよ!? 千歌の為にそこまで…」

 飛鳥が美渡を見た。

「…すみませんが、千歌さんの為だけじゃないんです。考えすぎかもしれませんが…もしかすると、うちの生徒も狙われる可能性があるんです」

「はぁ?」

「…それは、どういう事ですか?」

 

「志満さんと千歌さんのお話を伺っていて…音ノ木坂で起きていた事とほぼ一緒なんですよ。その男子生徒が女子生徒にちょっかいをかけていた事や、近辺で迷惑行為を行っていた事など…。これ以上被害を出したくないので、彼女にも力を貸してほしいんです」

 千歌が反応すると、飛鳥が千歌を見た。

 

「ですが、改めて確認を取りたいと思います。千歌さん、これが最後の忠告だ。やめるなら今だけだ。やるんだったら今からこの契約書に名前を書いて貰って…志満さんにも名前を書いて頂きます。あなたがこれからやろうとする事は、浦の星女学院の運命を大きく左右する事になる。話が全部本当だったら猶更だ。それでもやる覚悟があるなら、契約書にサインして欲しい。やめるなら…残念だけど、交渉は決裂だ。私も助ける事が出来ない」

 千歌が口角を下げると、契約書を受け取った。

「ペンを貸してください」

「やるんだね?」

「やる!! やっぱり浦の星女学院に変な噂をつけられたまま終わらせるなんて、私も志満姉も美渡姉も嫌だもん!!」

「……」

 飛鳥が千歌の顔を見た。

 

「え、な、何ですか?」

「高海さん」

「?」

 飛鳥が口角を上げた。

 

 

「今のアナタ、とっても輝いてますよ」

 

 

つづく

 

 



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第43話「遭遇! 新たなフォー!」

 

 

 

 夕方

 

「それでは、私は東京に戻ります」

「はい。本当に今日一日付き合って頂いて、有難うございました」

 

 高海三姉妹に見送られて、飛鳥は東京に帰ろうとしていた。

 

「それでは千歌さん。来週楽しみにしてるから」

「あ、はい…」 

 千歌が寂しそうにする。

 

「ほら、ちゃんと挨拶しろ!」

「わ、分かってるよぉ!」

「飛鳥くん。こんな妹だけど、宜しく頼むねー。奥手だから」

「はぁ…」

「み、美渡姉!!!!//////」

 美渡の冷やかしに千歌が顔を真っ赤にした。それを見て飛鳥は苦笑いした。

 

「それでは、私は行きますね」

「あ、帰り…分かりますか?」

「ええ」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「千歌。折角だから駅まで送ってあげなさい」

「いえ、それは結構です」

「何よ。不満?」

 千歌も少しショックを受けていた。

 

「ど、どうしてですか?」

「帰る時に一人になりますし、この距離だと暗くなると思うんです。その、今回の事があるので危険です。あ、千歌さん。何かあるか分からないので、極力一人で帰らないようにしてください」

「わ、分かりました…」

「ま、そういうんじゃ仕方ないわね。諦めなさい」

 美渡の言葉に千歌が残念そうに俯く。

 

「それでは、失礼します」

「お気をつけてー」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

「…ホントに不思議な子ね。一丈字くんって」

「う、うん…」

「……」

 美渡の言葉に千歌が返事するが、志満が心配そうに見つめた。

「志満姉?」

「…本当に良かったのかしら。あんな無茶なお願いして」

「大丈夫だよ志満姉」

「!」

「私だっているから!」

 千歌が口角を上げた。

 

「だから心配なのよ。無茶なお願いした上に、アンタがいるから」

「な、何でよ!!」

「それなら来週頑張りなさいね。美渡に認めてほしかったら」

 千歌と美渡が志満を見た。

 

「何かしら?」ニコリ…

「いえ! 滅相もありません!!(大汗)」

 志満の謎の圧力に美渡と千歌は慌てふためいた。

 

「だったら宿の掃除とかお願いね!?」

「は、はいっ!!!」

 

 

(ずいぶん遅くなったな…)

 飛鳥が急いで帰ろうとすると、二人の女子生徒が立ちはだかった。

「!!」

「……」

 二人の女子生徒に飛鳥は警戒をしていた。

「…何ですかアナタ達は。ハニートラップを仕掛けに来たんですか?」

「違います!!!(汗)」

 二人が突っ込んだ。

 

飛鳥「それでは何か御用ですか?」

「…その」

 灰色の髪の少女が言いにくそうにする。

「…渡辺曜さんですね」

「えっ?」

 飛鳥が灰色の少女の名前を言い当てた。

 

「お間違いないですか?」

「は、はい…」

「で、そちらの方は桜内梨子さん。お間違いないですか?」

「は、はい…」

 梨子も俯いた。

 

「千歌さんからお話は伺っていますよ。それから…ずっと私と千歌さんを付け回していたことも存じ上げています」

「ごめんなさい!!」

 二人が頭を下げた。

 

「…時間がありませんが、何故そういう事をしたか、ご説明頂けますか?」

「そ、それは…」

 曜が事情を説明した。

 

「そうですか。スクールアイドルを始めた事に対して「出来る訳がない」って言って、そのまま大喧嘩に発展したと」

「そうなんです…」

「それで、梨子さんは千歌さんから作曲を依頼されたけど、断った上にひどい言葉を」

「……」

 梨子が俯いた。

 

「それで、千歌さんと話をしていた私が来るのをここで待っていたと」

「はい…」

 飛鳥が一息ついた。

「渡辺さんと桜内さんは…高海さんに謝りたいんですよね?」

「はい…。流石にちょっと言い過ぎたと思ったので…」

 曜が俯いた。

 

「それで、千歌ちゃんが私達の事について何か言ってなかったか聞きたくて…」

「喫茶店で少しだけお話ししたので気になったと」

 曜と梨子が俯いた。

 

「謝るのは今からでも良いと思いますけど、来週の日曜日に高海さん、遠泳の大会に出る事になってるんですよ」

「え?」

 飛鳥が曜を見た。

 

「もし時間があれば、高海さんの姿を見ていてくれませんか? 絶対に完泳させてみせますから」

 飛鳥が真剣な顔で曜と梨子を見た。

 

「それは勿論!!」

「うん」

「そうですか…」

 飛鳥が口角を上げたその時、何かを感知して目を大きく開いた。

 

「…どうしたんですか?」

「そういや、お二人さんの家ってどちらですか?」

「えっと…私の家、千歌ちゃんの隣…」

「私はあっち…」

「そうですか…」

 飛鳥が真剣な顔をした。

 

「どうしたんですか?」

「一旦高海さんの家に行きましょう。付けられてます」

「えっ!?」

 その時だった。

 

「おい! お前!!!」

 

「!?」

 怪しい太った男が現れた。

「!!!」

「い、Eくん!!」

 曜と梨子が青ざめた。

 

「……」

 飛鳥が感知した。

『神様…』

『間違いない。フォーじゃ!!』

 飛鳥がEを睨みつけた。

 

「お前ぇ…何僕の梨子たんと曜ちゃんに手を出してるんだよぉ」

 Eが鼻息を荒立てて近づく。

 

「渡辺さん、桜内さん。私の傍から離れないでください」

「う、うん!」

「わ、分かった!」

「今のうちに警察を」

「分かりました」

 飛鳥と梨子がぼそぼそと話をしていた。

 

「アナタですか。浦の星女学院で、女子生徒を付け回している方は」

「そ、それがどうしたぁ!! お前には関係ないだろぉ!! それより、誰に断って好き勝手やってるんだぁ!! ここは僕の縄張りだぞぉ!!?」

 素っ頓狂な声を上げるE。顔はそれなりに良いが、中身はとても不細工である。

 

(こんな所で遭うなんて…コナン君になった気分だよ。全く…)

 飛鳥が辟易する。

 

「梨子たんと曜ちゃんを離せぇ!! このストーカー!!」

「それはアナタでしょ!!」

「一丈字さん!! あいつがストーカーです!!」

「うん、見たら分かる。相当ヤバいね。離さなかったらどうなるんだ!」

「この僕の正義の拳で…お前をケチョンケチョンにしてやるぅぅぅぅぅぅ!!!」

 飛鳥がさっと構えた。

 

「な、何だ」

「ケチョンケチョンにすんだろ? だったらさっさとかかってこいよ!!」

「な、生意気なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 Eが両手にスタンガンを持って、襲い掛かって来た。

 

「きゃあああああああああああああああ!!!!

 飛鳥が瞬時に隙を見抜いて、Eの顔に蹴りを入れた。

「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 Eは岩壁に叩きつけられた。

「桜内さん! 渡辺さん!! 今のうちに逃げますよ!!」

「は、はい!!」

「……!!」

 曜と梨子を連れて、飛鳥は千歌の家の元に向かった。

 

 千歌の宿

「そ、そんな事が…!!!」

「……!!」

 飛鳥から事情を聴いた志満と美渡が衝撃を受けた。志満はショックを受けているのに対し、美渡は怒り狂っていた。

「怖かった…」

「ひっく…ひっく…」

 梨子と曜は怖がって泣いていた。

 

「どうしたのー…って飛鳥さん!! それに曜ちゃんに梨子ちゃん!!?」

 千歌が驚いた。

「高海さん…」

「な、何があったんですか…!?」 

 飛鳥が事情を説明した。

 

「…うそ」

 千歌がショックを受けた。

「という訳で、桜内さんと渡辺さんをこちらに避難させたんです」

「…許せない」

「……」

 千歌が握り拳を握った。

 

「梨子ちゃんや曜ちゃんにもそんなひどい事をするなんて…!!!」

 千歌の表情は怒りに満ちていた。

「くっ!!!」

 美渡が壁を殴った。

「どいつよ…」

「?」

 

「どいつよ!!! そんな馬鹿な事をするクズは!!! 今度こそ殺してやる!!!」

「落ち着きなさい。美渡、千歌」

「…あの、どういう事ですか? 今度こそって…?」

 志満が飛鳥を見た。

 

「…ゴメンなさい飛鳥さん。あなたにお話ししてない事があったんです」

「え?」

 千歌が俯く。

 

「千歌も…前に男子生徒に性的な嫌がらせをされかけた事があるんです」

「!!?」

 飛鳥が驚いた。

 

「恐らく、千歌が相手にしなかった事で、梨子ちゃんや曜ちゃんに標的を変えたのかも…」

 飛鳥が困った顔をする。

 

「そうなんだ…」

「!」

「私のせいで曜ちゃんや梨子ちゃんが…!!」

 千歌が涙を流した。

 

「そんな事ないよ高海さん。君のせいじゃない。悪いのはあいつらだ」

 飛鳥が千歌をなだめると、志満を見た。

 

「志満さん」

「な、何ですか?」

「渡辺さんのお家に電話をかけてください。出なければ渡辺さんをここに泊めてください。非常事態です」

「わ、分かったわ!」

 飛鳥が千歌を見た。

 

「千歌さん。もう泣かないで。大丈夫だから」

「…はい」

「千歌ちゃん…」

「?」

 曜と梨子が話しかけた。

 

「曜ちゃん…梨子ちゃん…」

「その…本当にゴメン!!」

「ゴメンなさい!!!」

 曜と梨子が頭を下げた。

 

「え? ど、どうして…」

「言い過ぎたと思ったの!! 本当に酷い事を言ってゴメン!!」

「私も!! 千歌ちゃんがそこまで真剣に取り組んでたなんて分かってなかった! 本当にゴメンなさい!!」

「ようちゃん…りこちゃん…」

 千歌の目からまた涙が溢れる。

 

「ごめんなさい…」

「……」

「わたしも…ほんとうにごめんなさい…いっぱいめいわくかけたり…ひっく…ごういんなことしてほんとうにごめんなさい…」

「ちかちゃん…ちかちゃあああああああああああん!!!!!」

「うえ~ん!!!」

 曜が千歌に抱き着いた。そして梨子も2人に抱き着いて、そのまま泣いた。

 

(…まあ、これでひと段落だな。それにしても)

(……)

(神様…?)

(久しぶりだな)

(え?)

 神様は怒りに満ちていた。

 

(次元の壁を破るだけではなく、色々好き勝手やりおって…ここまで私を怒らせたのは久しぶりだぞ…!!!)

(…それだったら早く何とかしてくださいよ)

(出来るならそうしたいが、事を収めるには、次元の壁を元に戻す必要があり、フォーを消滅させる必要がある。ただ、次元の壁を元に戻すにはかなり時間がかかる。神の力を持ってしてもな)

(そ、それじゃ…)

(ああ…それまでは君に頑張ってもらう必要がある。こうなると私だけの力じゃどうにもならん)

 飛鳥が歯軋りをした。

 

「曜ちゃん」

「?」

「は、はい?」

 志満が困った顔をしながら、曜に話しかけた。

 

「おうちの方…今誰もいないわ。今日は泊まっていきなさい。代金はいらないから」

「えっ、で、でも…」

「しょうがないよ。そうだ、そのバカに請求してやろうかしら…」

 曜が申し訳なさそうにした。

 

「梨子ちゃんはどうする? 家が隣だけど…」

「あ、私は…」

 すると電話が鳴った。

 

「はい、こちら…あ、桜内さん?」

 梨子が反応した。

「はい…はい…分かりました」

 志満が電話を切った。

「梨子ちゃん。あなたも今日泊まっていきなさい。ちょっと色々あって家を空けるから、一緒にいなさいって」

「わ、分かりました…」

「これなら一先ずは安心ですね」

 飛鳥が口角を上げた。

「あ、そういや飛鳥くんは…」

「私はこのまま帰ります。電車あるかな…」

「タクシー拾ってあげるから、それで帰りなさい」

「……」

 飛鳥が困惑した。

 

「何? その顔」

「いや、タクシーって結構金かかるんで…」

「しょうがない。それじゃお姉さんがバイクで送ってあげようか?」

「タクシーで帰ります」

「アタシじゃ嫌?」

「いえ、美渡さんが帰り道危ないので、ここにいてください」

「ありがと。流石紳士ね」

 

 そして飛鳥は今度こそ東京に帰る事になった。

「お世話になりました」

「今度こっちに戻ってきたら、泊まっていきなさいね」

「金取るけどね…ぐえっ!!!」

 志満が美渡の脇腹に裏拳をお見舞いした。

 

「…そうならない事を願ってます」

 飛鳥も辟易した。

「……」

 千歌、曜、梨子が心配そうに飛鳥を見つめた。

 

「それじゃ3人共、またね」

「は、はい…」

「本当にありがとうございました!」

 曜と梨子が頭を下げた。

 

「仲良くね。あ、もしよかったら千歌さんのスクールアイドル活動、協力してあげてね」

「は、はい!」

 そしてタクシーがやって来た。

 

「あ、飛鳥さん」

「?」

 千歌が話しかけた。

 

「あの、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫」

 飛鳥はすぐに言い放った。

 

「今までもこういう事しょっちゅうあったけど、乗り越えてきたから」

「……!!」

 

「それじゃ!」

 こうして飛鳥はタクシー乗り込んで、東京に帰っていった。

 

 同じ頃

「…くそ!!」

 Eが面白くなさそうにしていた。

「どうしたんだよ」

「あんな所で寝ちゃってさ。誰かにやられた?」

 ワイルドな風貌な男Fと、小柄で可愛らしい少年Gがいた。

「転生者だ…」

「?」

 

「転生者を見つけたぞ! あいつを殺せば…μ’sもAqoursも僕達のものだ!!」

 

 

つづく

 



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第44話「いつ何をしてくるか分からないのがフォー」

 

 

 東京に帰った後、飛鳥は真剣に考えていた。

「……」

 そしてパソコンで調べ物をしていた。

 

 それは音ノ木坂学院に帰って来てからも同様だった。

「…くん。飛鳥くん!!」

 

 穂乃果が話しかけても上の空だった。

 

「よーし…」

 穂乃果が何かしようとすると、飛鳥が我に返った。

「あ、ごめん。何だって?」

 飛鳥が穂乃果の方を見て喋った。

「えっとね…」

 と、穂乃果と他愛のない会話をしていたが、ことりと海未も飛鳥の様子がおかしい事に気づいた。

 

 あっという間に昼休憩になった。

「ふぅ…」

 飛鳥が一息ついて、昼食を取ろうとすると電話が鳴った。使用が許可されている黒い携帯電話である。

 

「誰からだろ…」

 飛鳥がスマホで連絡先を確認して、電話に出た。

「はい、一丈字です」

「もしもし一丈字くん!!?」

 電話の相手は梨子だった。

 

「桜内さん。どうかされましたか?」

「大変なの!! 千歌ちゃんが…」

 電話の相手は梨子で、電話の内容を聞いた。

 

「何ですって!!?」

 飛鳥が慄然した。他のクラスメイトも飛鳥を見た。

 

「警察は!!?」

「電話したんだけど取り合ってくれなくて…」

 梨子が憔悴した表情で事情を説明すると、飛鳥が困惑した。

 

(…何て事だ。まさかここまでやるとは)

 フォーのあくどさに飛鳥は困惑した。

 

「分かりました。すぐにそちらに伺います。本当に私を連れてくるように仰ったんですね?」

『ええ…お願い!! 千歌ちゃんを助けられるのはアナタしかいないの!! 早く来て!!』

「……」

 飛鳥が困惑して目を閉じた。

 

「分かりました。それではまた詳しく話を聞かせてください」

 飛鳥が電話を切った。

「ど、どうしたの!? 飛鳥くん」

 穂乃果が飛鳥に声をかけると、飛鳥は穂乃果達の方を見た。

 

「高坂さん。悪いんだけどちょっと学校出る。深山先生にはHRまでに戻るって伝えといて」

「な、何があったんですか!!?」

 海未が飛鳥に聞いた。

「…今は言えない」

「ど、どうして!?」

 

 ことりが飛鳥に聞いた。事情を話してしまえば穂乃果達もパニックになるのは目に見えている上に、何よりも時間が無かった。

 

「それだけヤバい事になってるんだ。事が済んだらすぐに連絡する。本当に済まない!」

 そう言って飛鳥は去っていった。

「飛鳥くん!!!」

 

 穂乃果の制止を振り切り、飛鳥が校舎を走っていった。

 

(神様…!!!)

(転生アイテムを悪用したみたいだな…)

(そんな呑気な事言ってる場合ですか!! このままじゃ…)

(ああ…このままだと本当にマズい。ここで瞬間移動を使う訳にも行かないだろう)

「……」

 飛鳥が考えた。

 

「使います!」

「何だと!?」

「後始末、お願いしますよ!!」

 飛鳥が瞬間移動を使った。

 

 静岡県・内浦

「さてと…」

 飛鳥が内浦についた。

(そういやAqoursの事を事前に調べてたんだったな…。さて…)

 

 待ち合わせ場所

「…あっ」

 飛鳥の目の前には梨子がいた。

「あ!! 一丈字さん!!」

 梨子と曜がいたが、服装が乱れていた。

「あれ!? でも何か早すぎませんか!?」

「知り合いに送って貰ったんですよ。それよりも高海さんが連れ去られたって本当なんですか!?」

「う、うん…」

「それで返してほしければ一丈字さんを連れて来いって…」

 曜の言葉を飛鳥が神妙な顔をした。

 

「恐らく昨日の件だな…。報復をしようって魂胆だ」

「ど、どうしたら良いんですか?」

「あのストーカーがいる場所って分かりますか?」

「う、うちの学校にいる…。浦の星女学院」

「そこまで案内してください」

 

 浦の星女学院前

「ここに…」

 飛鳥の後ろに梨子と曜がいた。

「2人は安全な場所に避難してください」

「えっ!!?」

(神様。お願いします)

(分かった)

 神様が指を鳴らすと、梨子と曜が洗脳され、どこかへ行った。

 

(行くぞ、飛鳥)

(はい)

 飛鳥がそのまま歩を進めていった。

 

 飛鳥が敷地内に入ると、アナウンスが鳴った。

 

「一丈字飛鳥くん。浦の星女学院へようこそ」

「!」

 Eの声がした。

「昨日はよくも僕の顔に傷をつけてくれたな。今すぐグラウンドに来たまえ」

「……」

 飛鳥が前に進んだ。

 

 グラウンド

「……」

「待ってたよ。一丈字くん。早かったじゃないか」

 飛鳥の目の前には、3人の男子学生が立っていて、その後ろには怖い顔つきをした女子生徒達がいた。

 

(な、何だコレは!!)

(…どうやら別の世界の薬を使って、女子生徒達を洗脳したようだな。見ろ)

(え?)

(本来、千歌達と同じスクールアイドルグループとして活動する事になるメンバーもいるぞ)

 

 千歌・曜・梨子が後に結成する事になる「Aqours」はμ’sと同じく9人組なのだが、そのうちの6人はE達の手によって操られていた。

 

「また会ったな一丈字くん。昨日はよくも僕の顔に傷をつけてくれたな」

「で、その腹いせに高海さんを退学にしたのか。彼女は今どこにいる!!」

「ここにいるよ」

「一丈字さん!!!」

「!?」

 千歌が檻に閉じ込められていた。

 

「高海…さん…」

「あの…あんまり見ないで…//////」

 ピンク色のとってもセクシーな下着を着せられていた。千歌は顔を真っ赤にして涙目だった。

(あぁ…もうやだ。何でこんな変態ばっかり…)

 飛鳥は脱力した。

(脱力してる場合じゃないぞ)

(アレもお願いしますよ!!)

 飛鳥が体勢を整えた。

 

「それはそうと…一体何の用だ!」

「そんなの決まっている。お前が邪魔だから消しに来たんだよ」

「何?」

「お前に生きていてもらうと、オレ達の計画が台無しになりかねないんだな。ここでサクッと消えて貰うぜ」

「痛くはしないからさ、サクッと死んでよ」

 大柄な男Fと、小柄な少年Gはニコッと微笑んだ。

 

(解除)

 神様が指を鳴らすと、女子生徒達の正気が戻った。

「あれ? 私達は…」

「ん?」

「は?」

「え?」

 女子生徒が正気に戻った事に気づいたフォートリオは唖然とした。知っている飛鳥は目を閉じた。

 

「わ、私達は一体何を…」

「…What’s this?」

 生徒会長の黒澤ダイヤと小原鞠莉が辺りをキョロキョロ見渡す。

 

「あれ? ルビィ達…どうしてたんだろ?」

「何か記憶にないずら…」

「まさか…悪魔に魂を吸われていたの!? ヨハネとした事が!!」

 黒澤ルビィ、国木田花丸、津島善子の1年生トリオも正気に戻った。

(意識は取り戻したみたいだ…)

「…ん?」

 長身の少女・松浦果南が千歌に気づいた。

 

「千歌!? 千歌!!! アンタなんて格好してんの!!?」

「果南ちゃん…Eくん達に服を脱がされて、閉じ込められたんだよ~!!!! え~ん!!!!! あとあんまり見ないで~~~~~!!!////////」

 千歌が号泣した。そして果南達はE達を見た。

 

「アンタ達が…千歌をこんな目に…!!!」

「こんな事してただで済むと思ってますの…!!?」

 果南とダイヤの言葉を皮切りにAqoursメンバーは怒りに満ちていた。Aqoursだけでなく、他の女子生徒も怒りの視線をぶつけた。

 

「うゅ…」

「最低!! 今こそ悪魔の裁きを下してやr」

「少し黙るずら」

 そして…

 

「ホントのホントに怒ったわ!!! E!! F!! G!!! 直ちに退学を言い渡します!!! これ以上は我慢できないわ!!!」

 

 鞠莉の言葉にうろたえるフォートリオ。

 

「お、おい…どうすんだよ…」

「完全に洗脳が解けたぞ…」

「心配いらない。忘れたのかな? お前の親父がどうなっても知らないぞ」

「……」

 

 Eの言葉に鞠莉がたじろいた。

 

「心配いらないよ」

「!」

「さっさとその3人に退学を言い渡してください!!」

「!!?」

「ふ、ふざけるな!!」

「やろうってのかぁ…?」

「お前達はここで終わりだ」

 飛鳥の言葉にFとGの青筋が立った。

「舐めやがって!!!」

「お前が終わりだ!!! 死ねーっ!!!!!」

 FとGが凶器を持って襲い掛かった。

 

「一丈字さん!!」

 

 千歌が悲鳴を上げると、飛鳥がFとGの攻撃をかわして、

 

 ドゴッ!!

「おぐっ!!!」

 ガッ!!!

「がっ…!!!」

 

 FとGを一撃で気絶させた。

 

「な…な…!!!」

 Eが慌てふためくと、飛鳥が本気怒った顔で詰め寄った。表情はよく分からないが、体から電流が怯えていて、周りにいた女子生徒もガタガタ怯えて切っていた。そして飛鳥がEの胸ぐらをつかんだ。

「ひっ!!」

「檻の鍵を渡せ」

「か、か、かかかか、かぎ…」

「……」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~~……!!!!!!!!」

 飛鳥が超能力で圧をかけると、そのままEは涙と鼻水と泡、そして失禁して気絶した。

 

「脆すぎる…」

 飛鳥は乱暴にEを地面に叩きつけ、Eの胸ポケットから鍵を取り出した。

 

「…ハァ、手間取らせんなよ」

 飛鳥が正気に戻って頭をかいた。そして飛鳥は果南に目をつけた。

 

「ひっ!!?」

 本気でキレた飛鳥を見て、果南はすっかり怯え切っていた。それを見て飛鳥は少し悲しそうにした。

「…あの、すみません」

「はいっ!! な、何でしょうか!!?」

「これ、高海さんの檻を解くカギなので、お渡ししたいのですが」

「は、はい!! あ、ありがとうございましたぁ!!!!」

 果南が飛鳥から鍵を受け取ったが、終始テンパっていた。

 

「あ、それから高海さんに服を用意して、学校の運営者の方に退学を取り消しするように手配しておいてください。こいつらは私が始末するので」

(怖い!!!)

「そ、そそそそそ…それはそうと、アナタは一体何者なんですか!? 急に現れたりして!! ここは女子高ですよ!!? これ以上の不埒な行為はこの生徒会長である黒澤ダイヤが許しませんわよ!! ホワッチョー!!」

「お、おねえちゃん!! はずかしいからやめて!!!/////」

 テンパっているダイヤの姿を見て飛鳥は少し困惑した。

 

「あ、この始末が終わったら私は帰りますのでご心配なく。あと外に渡辺曜さんと桜内梨子さんが外で待機しているので、どなたか呼んで頂けませんか?」

「わ、わかりましたぁ!!」

 3人の女子生徒が慌てて呼びに行った。

 

(解!!)

 神様は術を解いた。

 

「これでお前達は終わりだ!!」

「うわあああああああああああああん!!! 折角のハーレム生活がああああああああああああああああ!!!!」

「だから欲張らずにサンシャインだけにしようって言ったじゃないか!!」

「うるさい!! お前だって賛成してたじゃないか!!!」

「果南~!!!!」

 E、F、Gはお縄になってパトカーで連行されようとしていた。泣き叫ぶEに対してFとGが激怒していた。

 

「Get out!! もうカナンにもワタシ達にも近づけさせないわ!! 二度と帰ってこないで!!」

「そうだそうだ!!」

「全く…晩年にこのような不埒者が在籍していたなんて…二度とその姿を見せないで頂戴!!!」

「そうだそうだ!!」

「サメのエサとかにすればいいんじゃない? あ、サメも嫌がるか」

「そうだそうだ!!」

「言葉のバリエーション!!」

「覚悟しろよ。お前達の親父も脅迫の罪で捕まったからな。一家揃って牢屋で反省して来い!!」

 こうして、EFGは連行されていった。

 

(神様、毎回有難うございます)

(まだいっぱいいるからな)

「」

 飛鳥が困惑した。

 

「それはそうと高海さん。大丈夫でしたか?」

「一丈字さん…」

 着替えて檻から解放された千歌が飛鳥を見た。

 

「…って!! 一丈字さん!! 学校は!!?」

「ああ。渡辺さんと桜内さんが非常事態だって言ったから、抜け出してきちゃった。さっさと戻らないと偉い事になりそうだ」

「抜けてきたぁ!!? そんな私なんかの為に…」

「まあ、学校を抜けてきたのは悪いとは思うけど、高海さんが死ぬのはもっと嫌だし」

 飛鳥はあっけらかんと言い放った。

 

「それはそうと、今度の遠泳大会出れそう?」

「そ、それは問題ないですけど…」

「ならそれでいいじゃない」

「ちょ、ちょっと!!」

 ダイヤが話しかけてきた。

 

「さっきから何なんですのアナタ! 学校に侵入するだけじゃなくて…」

「ダ、ダイヤさん! この人は…」

「アナタが黒澤ダイヤさんですね。Aqoursの」

「!!?」

 飛鳥が自分の事を知っていた為、ダイヤが驚いた。

 

「それから、松浦果南さんと小原鞠莉さん。事前に調べさせていただきましたよ」

 果南と鞠莉も驚いていた。

「Aqours…?」

「高海さん。以前アナタは生徒会長にスクールアイドルになるのを反対されていましたね?」

「は、はい…」

「反対していた理由は2つあって、1つ目は自分もスクールアイドルをやっていたが故に、その厳しさをアナタが理解していないと判断したから。そしてもう一つは…浦の星女子学院のスクールアイドルは、今でも自分達だと思っているから」

「!」

 ダイヤの目が大きく開いた。

「お姉ちゃん…」

「だから高海さんにスクールアイドルをやられると困るんですよ。Aqoursの存在が薄れてしまうから」

 飛鳥がダイヤを見た。

「黒澤さん。いきなり初対面でこんな事を言うのは大変失礼だと思いますし、偉そうだと思いますが、敢えて言わせて頂きますね」

 飛鳥が口角を下げた。

 

「そんな理由で他の子のアイドル活動を邪魔するのはやめなさい。そんなんじゃ負けて当然だ」

「!」

 

「今度の日曜、高海さんはある挑戦をして頂きます。もし機会があれば、是非見に来て頂きたい。本当に高海さんがアナタの言う通りの人間なのかどうか…その目で確かめてから判断して頂きたい」

「!」

「そういう訳ですので高海さん」

「!」

 飛鳥が千歌を見た。

「本番、逃げないように」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

「…って、よく考えたらあの子逃げたよ!!」

「ホントだ!!」

(神様!!!!)

(おう!!!!)

 

 飛鳥は全速力で逃げた。

 

 

つづく

 



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第45話「無茶は主役の華」

 

 

 音ノ木坂学院

 

「……」

「……」ニコォ

 

 帰ってから早々、飛鳥は理事長室に呼び出された。山田も雛子と同じく怖い顔をしている。

「浦の星女学院から連絡がありました。アナタが多くの女子生徒を救ったと」

「そうですか…」

「アナタのやった事は大変立派です。ですが、それを何故私達に報告してくれなかったのですか?」

「メールを送らせて頂きましたが…」

「確かに届きました。ですが、これは事後報告ですよね? 何故事前に報告してくれなかったのですか?」

「被害に遭った女子生徒の安否を気遣うあまり、報告を忘れました」

「今度からは事前に報告なさいッ!! あと、勝手に学校から出てはいけませんッ!!」

「申し訳ございませんでした!!」

 飛鳥が頭を下げた。

 

 1組教室

「えー…。そういう理由があって学校を抜け出しました。本当にご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした…」

 飛鳥が深く頭を下げて謝罪をした。

「もう! 本当に吃驚したよぉ…」

「うん…。でも、本当にその女の子が無事でよかった」

「……」

 海未が俯いた。

 

「それはそうと飛鳥くん」

「何ですか?」

「…まだ、その子に会うつもりなの?」

 穂乃果がジト目で見つめる。ことりと海未も心配そうに見つめる。

 

「ヤキモチ?」

「ちがうよっ!!/////」

 穂乃果が頬を染めて否定した。

 

「一応次の休みで最後にするつもりです」

「どうして?」

「最後の決着をつけに。あの子のスクールアイドルライフの。最後まで見届けたくなりましてね」

「そ、そうなんだ…」

「……」

 その様子を見ていた深山が口角を下げた。

「一丈字くん」

「はい」

「それは構わないけど…。いくら何でも無茶し過ぎよ」

「申し訳ございません」

 飛鳥が俯いた。

 

「そうだよ! 出来る事があったら穂乃果達だって手伝うよ!?」

「気持ちは有り難いですが、高坂さんは冗談抜きで今度のテストを頑張ってください。まずはそこからです」

「……」

 寂しい気持ちになる穂乃果だった。

「飛鳥くん。文句言いたいのは穂乃果達だけじゃないからね」

「ええ。覚悟はしております」

 

 その様子をフォートリオが聞いていた。

「ど、どういう事だ!!?」

「何故Aqoursがこの世界に…」

「他の転生者が…」

 3人が顔を合わせると、下種な妄想を浮かべた。

 

(こりゃあいい! μ’sとAqoursのハーレムも捨てがたい!! μ’sは海未だが、Aqoursは梨子だ!!)

(μ’sでは絵里押しだが…Aqoursはマリー押しだ!!)

(Aqoursでは善子ですね。ですが、僕が彼女を従えますが)

 

 そうすると…。

 

(何としてでもあいつには消えて貰わねば!!!)

 と、飛鳥の抹殺を改めて誓った。

 

 

 その夜。飛鳥がのんびりしていると電話が鳴った。相手は千歌であると、飛鳥は確信して電話に出た。

 

「もしもし一丈字です」

「もしもし…」

 

 電話の相手は予想通り千歌だったが、元気がない。

 

「ああ。高海さんですか。一丈字で」

「何で急にいなくなったんですか!!」

 千歌が怒鳴った。

 

「……」

 飛鳥が黙っていると、千歌が涙を流した。

「…お礼、言いそびれたじゃないですか」

「お気遣いなく。それよりも、日曜日に向けて練習はちゃんとしていますか?」

「う、うん…あ、ちょっと待って。代われって」

「?」

「もしもし!? 飛鳥くん!? 志満ですけど…」

 千歌の長姉である志満の声がした。

 

「志満さん」

「その…千歌を助けてくれたって本当なんですか?」

「ご無事で何よりです」

「……」

 飛鳥の言葉に志満が黙り込む。

 

「…志満さん」

「一丈字くん…」

「?」

 志満は口元をつぐませて、泣くのを堪えている。

 

「本当に何てお礼を言えばいいのか…」

「お気持ちだけで結構です。今は千歌さんのケアと、日曜日に行われる遠泳大会の応援をしてあげてください」

「……」

 志満がまた黙り込んだ。

 

「志満さん」

「な、何?」

「浦の星女学院がどうなるって…まだ聞いて無いですよね」

「聞いて無いわ」

「そうですか…」

 志満が口元を噤んだ。

 

「…ゴメンなさい。美渡がちょっと代わってくれって」

「分かりました」

 飛鳥が美渡に電話がかわるのを待った。

 

「もしもし」

「もしもし」

 美渡の声がしたが、ちょっと怒っていた。

「アンタ…千歌を助けたんだって?」

「ご無事で何よりです」

 志満と同じような言葉を言うと、美渡が息を大きく吸った。

 

「このバカ!!! 無茶してんじゃないわよ!!!」

 美渡が怒鳴った。

「…申し訳ございません」

「ホントに…もし、アンタの身に何かあったら、アンタの親御さんに申し訳ないわよ…」

「あ、はい…」

「お父さんとお母さんに何か言われなかった?」

「いや、僕1人で暮らしてるので…」

「あ、1人暮らしなんだ。実家にいるんだね?」

 

(神様。そういや私って家族居ない設定でしたっけ)

(天涯孤独だ)

(なのにこの生活!!?)

(ラブライブの世界だ。いる筈ないし、お前の父親と母親は1人ずつだけだろう)

(そうですけど…)

 飛鳥が困惑した。

 

「…あ、はい」

 飛鳥が苦し紛れに答えた。

「…そう」

(絶対家族居ないって思われてるー)

 飛鳥は心の中で両親に謝った。殺してごめんなさいと。

「ま、まあとにかく! 千歌さんが無事だったらいいじゃないですか。それで」

「良くない!!!!」

 美渡が怒鳴った。

 

「それはそうとアンタ…日曜日こっち来るのよね。千歌の応援の為に」

「はい」

「土曜日って予定ある?」

「今の所はないです」

「だったら来なさい。宿代とかサービスするから」

「……」

「何? 嫌なの? 断る権利あるのかしら」

 美渡が威圧をかけた。

 

「いや、宿泊に関して、志満さんに少し質問があるのですが」

「アタシでも良いわよ」

「あの、土曜日の空き部屋ってどれくらいありますか? もしかしたら10人程泊めて頂く可能性があるんですけど」

美渡「10人!!? 流石に全員分サービスすんの無理よ!」

「いや、全額ちゃんとお支払いしますので…」

「恩人に金取れるか!! 10人って確定じゃないのよね!?」

「ええ。私一人でそちらにお伺いするかもしれません」

「ちょっとちゃんと確認してきて! 人数によるから!」

「分かりました…」

「あ、念の為もう1回言っておくけど、アンタは土曜日に来て泊まりなさい! 色々聞きたい事あるから! 分かったわね!」

「予定が入ってなければ…」

「分かった。アンタの学校の偉い人に言っとくから」

「行きます」

「じゃ、宜しくー」

 と、美渡が電話を切った。

「……(汗)」

 

 翌朝

「えー、そういう訳なので、行きたい方は今日中に返事ください」

 飛鳥がμ’sにメールを送ると…

 

 その夜

「志満さん。部員全員でそちらに伺います」

「分かったわ」

 飛鳥が電話で報告した。

 

 千歌の部屋

「……」

 あれから、協力的になってくれた曜の指導の元、千歌は遠泳の特訓を受けていた。

 

 そんなこんなで土曜日がやって来た。

「やって来た! 静岡―!!!」

 μ’sが内浦に降り立った。飛鳥が頭をかいた。

 

「それにしても…この時期に遠泳をやるなんて」

「海でやるのではなくて、新しく出来るプール場でやるんですよ。そこで延々と泳ぎ続けるのです」

 真姫の言葉に飛鳥が説明した。

 

「飽きないかにゃー」

「だからこそ、今回のテストにもってこいなんですよ。同じ事を続けられるかどうかを試すには。それはそうと…」

 凛の言葉に飛鳥が答えると、怪訝そうにある人物を見た。

「まさか山田先生が顧問として来られるとは…」

「不満か?」

「いや、本当にやって頂いて良かったんでしょうか?」

 山田が引率者になっていた。ちなみに深山よりも先に申し出ていた。

 

「おーい!!!!」

「?」

 美渡が現れた。

「こっちこっちー!!」

「美渡さん!?」

 飛鳥が美渡を発見し、そのまま近づく。

「音ノ木坂学院ご一行様ですね?」

「はい。宜しくお願い致します」

 

 山田がそう答えると、美渡は飛鳥をチラチラ見ていた。

「…何かずっと見られてるわよ」

「ナンデデショウ」

 にこが飛鳥に近づいて話しかけると、飛鳥が片言で返事した。

「そりゃ浦の星と千歌ちゃん家を救った英雄様やもん」

 希がそう答えた。

 

「それじゃご案内しまーす。貸し切りバスに乗ってください。あ、そこの男の子は私の隣に来るように」

「……(汗)」

 

「……」

「……」

 バスの中、隣同士になった美渡を見て、飛鳥は冷や汗をかいた。

 

「それはそうと楽しみだねー」

「そ、そうだね」

「穂乃果。ちゃんと勉強道具は持って来たでしょうね?」

「持ってきたよ。ノートと鉛筆!」

「教科書は?」

「……」

「分かりました。こんな事もあろうかと、私がテキストを持って来ています。それ使いましょう」

「あああああああああん!!!!」

 飛鳥が困惑した。

 

「それはそうと飛鳥くん」

「はい」

「此間はうちの妹を助けてくれてありがとう」

「はい」

 山田が反応した。

 

「先日はうちの生徒がご迷惑を…」

「いや、もう本当にとんでもありません。お宅の一丈字くんが来てくれたお陰で、最悪の事態を免れました。他の親御さんも一丈字くんにお礼を言いたいと仰ってるくらいなんですよ」

「そ、そうですか…」

「ええ。うちの妹、とてつもなく恥ずかしい下着を着せられてて、行為に及ぶ前に止めてくれたんです」

「……」

 

(あぁ、下着を見た事に関して追及されるな)

 飛鳥が横を見る。

「そ、その…とてつもなく恥ずかしい下着というのは…」

「えっと、ピンクのブラジャーにガーターベルトをしてたって言ってたわね」

(それ、喋って大丈夫なの!!?)

 空気が止まった。

 

「は…はははははは破廉恥です!!!//////」

「と、とってもえっちにゃ!!!/////」

「これからお会いしますけど、本人の前では絶対に話さないように」

「あ、それはそうと飛鳥くん」

「?」

 美渡が口角を上げた。

 

「アンタに下着姿を見られたことに対してね」

「裁判起こすって言ってました?」

「言ってないわよ!! ただ、あの後自分の下着姿を鏡で確認してたわよ」

「それ喋って大丈夫なんですか!!?」

「大丈夫よ。ていうかあの子、今までそんなに下着とか気にした事無かったのに。やっぱり男の子に見られて、少しは気にするようになったんじゃない?」

「……」

 

「私も学校を追い出される時が近づいてるようです」

「それは無いから安心しろ」

「女の子の下着姿を見るのは流石にえっちにゃ!」

「美渡さん。私、野宿しますのでどこか寝れる所紹介してください」

「それはそれで悪いよ!!!」

 

 こうして、飛鳥達は高海家の宿に近づいていった。

 

 

「間違いない…高海美渡だ」

「ああ…」

「……」

 フォートリオもついてきていたが、いかにも気持ち悪い目つきと舌なめずりを見せていた。

 

 

(μ’sとAqoursをまとめていただきまーす!!!)

 

 

つづく

 



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第46話「輝いてみせる!(前編)」

第24話

 

 

 そんなこんなで、千歌の家の宿「十千万」についた。

 

「結構大きい所じゃないですか!」

「そう?」

 

 穂乃果の言葉に美渡が苦笑いした。

 

「ふーん。結構アンティークでいいんじゃないかしら」

 

 真姫が髪を弄りながらそう呟くと、山田が真姫の頭を拳骨した。

 

「あ…あははははは!! すみません!!」

「いえ、結構言われるので…」

 山田が美渡に謝罪すると、美渡は苦笑いした。

 

「パパにも殴られた事ないのに…」

「今のは真姫ちゃんが悪いにゃ」

「アハハハ…」

 真姫の言葉に凛が突っ込み、花陽が苦笑いした。

 

「いらっしゃいませ」

「予約していた音ノ木坂スクールアイドル部です」

「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」

 志満が飛鳥を見た。

 

「あ、その節は…」

「お待ちしておりました」

(うわっ、何か圧がある)

 志満の発言に飛鳥が困惑した。

 

「お部屋はこちらになります。6名様のお部屋が2つ、個室が2つです」

「え? 個室って誰が使うの?」

「私と山田先生です」

「えっ!!? 飛鳥くん個室なの!?」

「…いや、普通に考えて当たり前じゃないですか」

 飛鳥が口元をひきつらせていた。

 

「何だお前。男と寝たいのか?」

「…ふぁっ!!?//////」

「ほ、穂乃果!! 破廉恥です!!」

 

 山田の冷やかしに穂乃果が赤面して、それに海未が追随した。

 

「あ、いや! そういう意味じゃないんです!! 今の無し無しー!!!//////」

(あぁ…オレは生きて東京に帰れるのだろうか…。神様も今はいないし…)

 飛鳥は不安そうにしていた。

 

「あ、飛鳥くん!!? 違うからね!!?/////」

「あーはい」

「ホントなんだからね!!?/////」

「分かりましたから。とりあえず荷物置きましょう」

「う、うん…」

 それぞれの部屋に入っていった。

 

「…ふぅ」

 飛鳥は自分の部屋に荷物を置くと、一息ついた。

 

 そんなこんなで夕方

「早っ!!!」

 飛鳥はそう突っ込んだ。

 

「お風呂の準備が出来ましたので、どうぞお入りください。夕食は7時からです」

「やったー!! お風呂―!!」

 談話室にほぼ全員が集まっていた。

「ウチのお風呂広いんだよー」

「そうなんだー」

 途中で合流した千歌とすっかり意気投合した穂乃果。その姿を見て、飛鳥は安心して口角を上げた。

 

「改めて飛鳥くん。うちの妹を助けてくれてありがとう」

「それから、乗っ取られていた浦の星女学院を救って有難ね」

「本当に私達の為に戦ってくれて…ありがとう!」

 μ’sや関係者の前で千歌たち三姉妹にお礼を言われる飛鳥。

 

(やべぇ…もう本当に昔の事があったせいで、色々ヤバい)

 

 飛鳥は青ざめて、蕁麻疹が起きていた。実は以前からこのような人助けをしているのだが、それによる同級生からのやっかみや嫌がらせがあり、素直に喜べなかったが、穂乃果達はすっかり自分の味方であり、文句を言う人間が誰一人なかった為、飛鳥は素直に喜べないでいた。

 

(ありがとうって気持ちが伝わり過ぎて、どうしたらいいか分かんない!!!)

 

 おまけに千歌たちの気持ちがまぶしすぎて戸惑っていた。

 

(…地獄だった)

 飛鳥は見上げた。

 

「あ、それはそうとアンタ」

「はい」

 にこに話しかけられて、飛鳥はにこの方を振り向いた。

 

「お風呂だけど…絶対覗かないように!」

「あ、私は個室に風呂があるので、そっちに入りますね」

「……」

 飛鳥の発言に皆が沈黙した。

 

「言いたい事は分かります。でも、今までの事があったので」

「今なら裸見たって何も言わんって」

「申し訳ございません。何名かそんな事ないって顔をしてらっしゃるんですが」

 飛鳥の突っ込みに海未、真姫、にこ、絵里が反応した。

 

「飛鳥くん! そんな空気の読めない事をするのは良くないと思うな!」

「高坂さん。それ、覗いてくださいって言ってるようなものですよ」

「ふぁっ!!?/////」

(学習しないなぁ…)

 赤面する穂乃果を見て、飛鳥が目を閉じた。

 

「まあ、お気づかないなく。ごゆっくりどうぞ」

 そう言って飛鳥は去っていった。

「ま、千歌の奴見たからいっか」

「良くないよ!!!///// 美渡姉のバカ!!!!///// ていうか全部見せてないから!!」

 μ’sの一部が頬を染めた。

 

 そして、皆風呂に入ったが、本当に飛鳥は何もしなかった。

「クビになるんで」

「……」

「え、何ですか」

 その場にいた美渡がジト目で見つめたが、飛鳥はツッコミを返した。

 

 

 そして食事の時間になり…

「うわ~!!!!」

 穂乃果や凛が興奮した。

 

「ご馳走だ!!」

「海の幸がいっぱいにゃ!!」

「ありがとうございます」

 飛鳥が志満たちにお礼を言った。

 

「いえいえ。これくらい」

「まだ足りないくらいよ。飛鳥くん?」

「……(汗)」

 美渡の言葉に飛鳥は苦笑いするしかなかった。

 

「さあ千歌。アンタも手伝うのよ!」

「分かってるよぉー」

 千歌も手伝いに出ていた。

 

「折角だから飛鳥くんにお酌してあげなさい」

「み、美渡姉!!」

「……」

 

 そして千歌が飛鳥にお酌した。

「明日、頑張って」

「あ、はい…」

 それを穂乃果達がじっと見ていた。

「何ですか」

「いや、何か穂乃果たち以外の女の子と仲良くなったなーって。A-RISEもそうだけど」

「お付き合いですよ」

 穂乃果の皮肉に飛鳥は普通に答えた。

 

「アナタ…女の子にモテそうよね。顔は女っぽいけど、やってる事とか男らしいし」

「ご冗談を。頂きましょうか、あ、それじゃ乾杯の音頭を矢澤さん」

「に、にこっ!!?」

 にこが驚いた。

「にこっちはアドリブが弱いなー。ホント」

「そ、そんな事ないわよ!!! それじゃ皆! グラスを手に持って!」

「湯呑やけどな」

「そんな細かい事は良いのよ! それじゃ、かんぱーい!!!」

「か、かんぱーい!!」

 皆が乾杯して、そのまま料理を堪能した。

 

 そして…

「ふー! 美味しかった!」

「そうだねー」

 穂乃果・ことり・海未が部屋にいた。

「何か寝れないね!」

「穂乃果。今回は遊びに来たんじゃないんですよ」

「分かってるよ。明日千歌ちゃんが水泳の大会に出るんでしょ。だから自分の事のように考えてるから寝れないんだよ」

「そ、そうですか…」

「それなのに海未ちゃんときたら勉強の事ばっかり考えて! 全くもう!」

「喧嘩売ってるんですか。え?」

 海未が黒い笑みを浮かべた。

 

 その頃…

「何か緊張してきたにゃー」

「アナタが緊張してどうすんのよ」

「花陽も緊張してきました…」

「いや、だから何でよ」

「明日ある意味で、浦の星女学院の運命を左右するんやもん。しょうがないで」

「どうして? 閉校が決まってるんでしょ」

「だからや」

「!」

 希が真面目な顔をした。

 

「学校が閉校になるからって、そこで終わりやないんや。終わるとしても、次の始まりの為の何かが始まるって事や」

「何それ。イミワカンナイ」

「もうちょい大人になれば分かるで」

「な、何よそれ!!」

「そんなのにこには分かるわよー」

「ふーん。それじゃ、この問題分かる?」

「そ、それは関係ないでしょ!」

「大人なら、解ける筈やでー」

「え、えっとぉ…」

「…にこ。これ、中学校の問題よ?」

 絵里が呆れたように突っ込んだ。

 

「よっしゃ。ウチがほんまもんの大人にしたるわ」

「えっ、ちょ…それは…いやあああああああああああああ!!!!」

「うるせぇ矢澤!!!」

「何でにこだけ!!?」

 

 にこだけ山田に怒られて、夜が過ぎていった。

 

 

 そして迎えた当日

「でかい…」

「でかいね…」

 会場となるダシママリンプールは東京ドーム並みのでかさだった。

「名前!!!」

 ちなみに、冬の時は温水プール、もしくは熱湯になるそうです。

 

「確かあの一番手前にある1周500mのプールを延々と泳いでればいいのよね」

「千歌ちゃんは10㎞やから20周やな」

 真姫の問いに希が答える。しかし穂乃果が疑問に感じていた。

 

「でも深さ2mって深すぎない?」

「調節できるらしいわよ」

「そっか」

 絵里の返答に納得する。

 

「……」

 千歌がぐっと握りしめた。

 

「高海さん」

「?」

 千歌が飛鳥を見た。

 

「肩に力を入れ過ぎないように。あと、準備体操を怠らないようにね」

「は、はい!!」

 と、千歌が力強く返事した。

 

 

「いたぞ!!」

「十千万には入れなかったが、ここで終わりだ…」

「フフフフ…」

 と、フォートリオも会場にたどり着いていた。

 

 

 

 つづく

 



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第47話「輝いてみせる!(後編)」

(緊張してるな…)

 強がっていても緊張しているのが分かっていたので、飛鳥はどう声をかけようか考えていたその時だった。

 

「千歌ちゃん♪」

千歌「?」

 

「がしっ!!」

 

 何という事でしょう。希は背後から千歌の胸を揉んだ。

 

「ぴゃ―――――――――――――――っ!!!/////」

「!!!/////」

「……」

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

「リラックスできた?」

「え、あ、え、えっと/////」

「ゴメンね。うちのバカが本当にゴメンね」

「にこっちに言われたないわ」

「誰が馬鹿だってぇ!!?」

 にこが謝罪するが、希が茶々を入れて激怒した。

 

「まあ、冗談抜きで頑張りや」

「は、はい!」

 その時だった。

 

「千歌ちゃん」

「!」

 

 曜、梨子の他に、ダイヤ、果南、鞠莉、ルビィ、花丸、善子が現れた。

(あれ? いきなり勢ぞろいだな…)

「連れてきたよ」

「……!」

 神妙な面持ちをするダイヤ。

「千歌さん」

「!」

 ダイヤと千歌が向かい合う。

 

「あなたがどれだけ本気か、見せて貰いますわ!」

 千歌が口角を下げた。

 

「はい!!」

 千歌が返事した。

「千歌…」

「信じましょう。彼女を」

 心配そうにする果南を鞠莉が諭した。

 

「それじゃ皆さん! 行ってきます!!」

 千歌が更衣室へ歩いていった。

「溺れんなよー!!」

「分かってる!!」

「……」

 ちなみに旅館は他の従業員に任せている。

 

「……」

 すると飛鳥も更衣室に向かって歩き出した。

「ちょい待ち。アンタはこっちでしょ」

 にこが止める。

「え、まさか覗きをするつもりじゃ…」

 穂乃果の言葉に皆が飛鳥を疑い出した。

 

「何しに静岡まで来てるんですか。私も出場するんですよ」

「え?」

 飛鳥が微笑んだ。

 

「千歌さんの2倍の20㎞コースで。山田先生には事前にお話ししています」

「全く…無茶すんなよ?」

 μ’sや曜達、美渡は驚いていた。

「ど、どうして遠泳すんの!?」

「アンタ! あの子の応援しないといけないんじゃないの!!?」

「それはそうですけど、もう一つ目的があるんですよ」

「?」

 

「千歌さんに教えるんですよ。突然起きたアクシデントの対応の仕方をね」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「ま、結果的には千歌さんが20周泳げばいい訳ですから。それでは、行って参ります」

 そう言って飛鳥も去っていった。

「……」

 呆然とする穂乃果達。

 

 

 女子更衣室

「……」

 スクール水着に着替えた千歌は念じた。

「よし!!」

 絶対成功するようにと念じながら、千歌が外に出てきた。

 

「え…」

「……」

 しかし、出てきた矢先千歌の目の前には競泳水着に着替えた飛鳥の姿がいた。

 

「い、一丈字さん!!? 何で…」

「驚いた?」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「一丈字さんが出場するなんて一言も…」

「いやね、スクールアイドルやるんだったら、予想だにしないアクシデントにも慣れて貰わないと」

「!」

「柔軟な対応力も必要だよ」

「……」

「それでは競技を開始します! 出場者はこちらに集まってください!」

「行こう」

「は、はい…」

 飛鳥が移動すると千歌もついていき、ゼッケンをつけられた。

 

 観客席

「…まさか飛鳥くんも出場するなんて」

「本当に私達や千歌さんの為に頑張ってくれてるんですね」

「……」

 他のメンバーも驚いていた。

 

(千歌ちゃん…)

 曜達も千歌を見守っていた。

 

「それでは、位置について!!」

「……」

「よーい…ドン!!!」

 

 そして飛鳥と千歌が泳ぐ時間帯のレースが始まった。この時午前9時である。

 

「高海さん。これは順位を競うものではないので、焦らないで行きましょう」

「は、はい!」

 飛鳥は千歌に並走していた。

 

「へ、並走なんてありなんですの!!?」

「ルール上、問題ないネ!」

「そうだよ。それに並走って言っても、あの子は千歌の2倍泳がないといけないんだから、寧ろあの子が大変だよ」

 曜も真剣な顔をした。

 

 そしてその後、飛鳥と千歌はずっと泳ぎ続けた。

「……」

「高海さん。後もう少しだ!」

「は、はい…」

 15周目にさしかかった所、千歌の体力は限界に近づいていた。

「ハァ…ハァ…」

 千歌は力が入らなくなっていた。

 

(つ、辛いよぉ…苦しいよぉ…)

 と、千歌は何とか手足を動かして耐えていた。それににこ達が気づいた。

 

「あ、あいつら止まってるわよ!」

「体力が限界に近づいとるんやろうな」

「千歌ちゃん!!」

 と、皆が慌てだした。

「どうすんのよ! あのまま止まってたら失格なんでしょ!!?」

「千歌ちゃん…」

 曜が歯軋りして、立ち上がった。

 

「!?」

 曜が息を大きく吸い込んだ。

 

「千歌ちゃーん!!!!!!」

 

「!?」

 飛鳥と千歌が曜を見た。

「全速前進!!!!! ヨーソロー!!!!」

 と大声で叫んだ。手や足を豪快に振って応援していた。

「曜ちゃん…」

「……」

 千歌と飛鳥が曜を見ると、ルビィたちもそれぞれ顔を合わせて立ち上がった。

 

「頑張るずら~~!!!!!!」

「が、頑張るビィ~~~~!!!!!」

 花丸やルビィも応援すると、皆も続いて応援し始めた。

 

「みんな…」

 飛鳥が口角を見た。

「千歌」

「?」

 千歌が飛鳥を見た。

「やめる?」

「え?」

 

「皆が応援してる。だけど、本当に無理しなくてもいい。やめる?」

「……!」

 千歌が口角を下げる。その時だった。

 

「バカチカー!!!!」

「?」

 美渡も立ち上がっていた。

 

「根性見せろー!!!!!」

「……!」

 志満も千歌を見ていたが、美渡と同じ気持ちだった。

 

「さあ、どうするんだ? やめるか?」

「やる!!!」

 千歌が叫んだ。

 

「最後までやるよ!! 行こう!! 一丈字さん!! 0から1にする為に…私はやるんだ!!!」

 千歌の表情を見た飛鳥は確信した。

 

「行こう!!」

「うん!!」

 飛鳥と千歌が再び泳ぎ出した。

 

「……!!」

 ダイヤは昔の事を思い出した。舞台で呆然と立ち尽くして何もすることが出来なかった自分達の姿を。

 

「ダイヤ」

 後ろから果南が抱きしめた。周りの皆が不思議そうに見つめる。

 

「もう千歌にスクールアイドルをやらせてあげようよ」

「!」

「私達がいけなかったんだよ」

 果南が涙を流した。

 

「逃げずにちゃんと続けてれば良かったんだよ。自分達に甘えないでさ」

 

「果南さん…」

 ダイヤの目から涙が溢れ出た。

「お姉ちゃん…」

 ルビィが心配そうに見つめる。

「カナンの言う通りヨ。ダイヤ」

「!」

 ダイヤが鞠莉を見た。

「アスカも言ってたでショ。自分達の勝手な都合で、他の子のアイドル活動を邪魔するなって。そんな事をやってるからいけないんだって」

ダイヤ「……!!!」

 ダイヤはそのまま嗚咽した。

 

「頑張れ!! もう少しだ!!」

「はい!!」

 飛鳥と千歌は最後まで一緒に泳いだ。どんなに少しずつでも、ゴールに向かって…。

 

「……!!」

 μ’sやヒフミトリオも感動して泣いていた。

 

 そして最後の周。

「行くぞ。高海さん」

「うん…」

 飛鳥と千歌が顔を合わせて進み、ラインを割った。

 

「20周クリアー!!!!」

 事前に配布された腕時計が千歌の分だけ光っていた。千歌がクリアしたのを分かると皆が喜んだ。

 

「やったぁ!!! 20周泳ぎ切ったよ!!」

「やったやったー!!!」

 μ’sも自分の事になって喜んでいた。

 

「志満姉…!」

「ええ。本当に最後までやったわね。これなら…」

 志満が口角を上げた。

 

「それにしても美渡」

「何?」

 志満が美渡の顔を見てクスッと笑った。

 

「応援に凄く気合が入ってたわね」

「…千歌には内緒で/////」

 美渡が頬を染めた。

 

「やったよ!!」

「おめでとうございます。ゆっくり休んでください。他の人の邪魔になるから出口の方に」

「…あれ?」

 千歌がある事に気づいた。

「一丈字さんの時計がなってないよ?」

「ええ。だって私、まだ半分ですもん」

「え?」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「高海さん、本当にお疲れ様でした」

 そう言って飛鳥は泳いでいった。

 

「え…ええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!?」

 

 

つづく

 



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第48話「これからはいっしょに」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 浦の星女学院でのスクールアイドル活動を認めて貰うため、途中で投げ出さない事を証明する為に、遠泳大会に参加した千歌。しかし、参加直前に飛鳥が参加する事が発覚。戸惑う千歌だったが、そのまま大会が行われる事になった。

 

 終盤に差し掛かり、体力が限界に近づく千歌だったが、ずっと併泳していた飛鳥の言葉、観客席からの曜達の応援により、活気を取り戻し、目標としていた10㎞遠泳を見事に成功させた。

 

 千歌の成功を見届けた飛鳥は、自身のノルマである20㎞遠泳を成功させる為、千歌に別れを告げて、遠泳を続けるのだった。

 

 

「な、何だあいつ!! 滅茶苦茶早いぞ!!?」

「音ノ木坂学院の奴だ!!」

「な、何者なんだ!!?」

 

 飛鳥が全速力で泳いでいたが、次々と選手を追い抜いていった。

 

「……」

 μ’sは絶句していた。

「ち、千歌先輩がゴールした途端に凄く早くなってるずら…」

「うゅ…」

「な、何者なのよ…アイツ」

「善子ちゃん! 年上ずら!」

 花丸、ルビィ、善子が驚きを隠せなかった。

 

「あ、飛鳥さん…」

「す、すごい…」

 泳いでる飛鳥を見て、海未とことりは驚いていた。

 

「あ、でもよく考えたら飛鳥くん…体育ダメじゃなかったっけ?」

「だから競泳水着着とるんやん。肌を隠す為にな」

「!」

 皆が希を見た。

 

「それに、今日はそんなにアツないやろ。暑過ぎたら棄権するつもりやったんちゃう? だけど、飛鳥くんの事やから…多分無理しとったやろうな。千歌ちゃんとうち等の為に」

「……」

 穂乃果が飛鳥を見つめた。

「だけど、何で20㎞もやる事になってんのよ。肝心の千歌より10㎞多いし。確か20㎞完泳したらインタビューして貰えるんでしょ?完全に自分が目立とうとしてるだけじゃない」

 皆がにこを見ると、希はため息をついた。

 

「な、何よ! ため息つく事ないでしょ!」

「ホンマに何も分かっとらんな。それでも宇宙No.1アイドルなん? 片腹痛いわ」

「全然痛そうに見えないわよ!」

 千歌も遠くから見つめている。

「一丈字さん…」

 

 そんなこんなで飛鳥は20㎞完泳した。

 

「終わった…」

 飛鳥がプールから出てきた。

「おめでとうございます!! 20㎞運営完了しましたね!」

 と、インタビュアーが出てきた。

「ありがとうございます」

「こちらへどうぞ!」

 

 と、そのまま飛鳥はインタビュー場へ連れられた。

 

 第1部・参加者全員の競技終了後…

「皆さん! 大変お疲れ様でした!」

 司会者がマイクでアナウンスをした。

「それでは、20㎞を遠泳した参加者の方々にインタビューを行いたいと思います!」

 と、飛鳥以外の20㎞を遠泳した選手にインタビューが行われていた。

 

 そして飛鳥の番が来た。

「次は飛鳥くんの番にゃ!」

「うん…」

「おめでとうございます!」

「あ、はい…ありがとうございます」

 飛鳥がインタビューを受けていた。

 

「20㎞を泳いだ感想は如何ですか!?」

「え、まあ…最後まで泳ぎ切れて良かったですね」

「バカ!もうちょっと明るく喋りなさいよ!」

 飛鳥がやや冷めた感じにインタビューに答えていた為、にこがツッコミを入れた。

 

「ありがとうございました! 続いてなんですけど…」

(まだあるのか)

 飛鳥は困惑していた。

 

「そういや一丈字さんは前半、女の子とずっと一緒に泳いでましたけど…」

「ああ。彼女の事ですか? 残念ながらスキャンダルになるような事はございませんよ。彼女は内浦にある「浦の星女学院」の生徒さんです」

「!」

 千歌達が反応した。

 

「スクールアイドルを目指されてるんですけど、ご家族や周りの方が本当に出来るかどうか、ご心配されていたので、今回この遠泳を通じて本当に出来る事、最後までやり切れる事を証明する為に参加されたんですよ」

「その彼女とはどこで知り合ったんですか?」

「えーとですね…。これは一部あの子に口止めされていますし、話せば長くなるのですが」

「構わん。続けろ」

「良いんですか!? ていうか何で命令形!!?」

 飛鳥のツッコミに笑いが生まれた。これにより、音ノ木坂学院と浦の星女学院の知名度が上がったのは言うまでもない。

 

「飛鳥くん…」

「何て言うか…凄く喋るの上手いわね。慣れてるのかしら…」

 絵里と真姫が呆れていた。

 

「…そういう訳で、彼女…高海さんをサポートする事を理由に参加させて頂きました」

 飛鳥が真剣な顔をした。

 

「そうですか…」

「まあ、これで彼女の方は大丈夫でしょう。約束もちゃんと守りましたし」

「……」

 鞠莉が口角を上げて、立ち上がった。

「!」

 

 鞠莉が両手で大きく○を作った。

 

「大丈夫でしたね。後はちゃんと話をするだけですね」

 飛鳥が千歌を見た。

「あ、沢山時間を割いて頂いてありがとうございました」

「あ、はい…ありがとうございましたー!!!」

 こうして、インタビューは終わった。

 

 そして…

「……」

「……」

 千歌、曜、梨子とダイヤ、果南、鞠莉が向き合っていた。それを飛鳥達が囲んだ。

「そういやかよちんは?」

「…トイレだって」

 花陽だけいなかった。

 

 

「千歌さん」

「はい…」

 ダイヤは静かに目を閉じた。

 

「今でも正直に言えば、スクールアイドルにかける知識や情熱に関しては、私から見てまだまだ未熟です」

「はい…」

「ですが…」

「!」

 ダイヤが千歌を見た。

 

「今回の頑張りは…素直に認めざるを得ません。よく頑張りましたね」

 

「ダイヤさん…」

「それじゃ…!!」

「ただし!!」

「!?」

 ダイヤが声を張り上げて、千歌を睨む。

 

「…やるからには、浦の星女学院の名前を背負っている事を自覚して、途中で投げ出さないように!」

 千歌が口角を下げて、真剣な顔をして返事をした。

 

「千歌…」

 凛とした顔つきを見て、果南は口角を上げた。

「それで良いんですわ」

 ダイヤが苦笑いした。

「そう言えば黒澤さん達はこれからどうするんですか?」

「え?」

 飛鳥がダイヤに質問をすると、ダイヤは飛鳥を見た。

 

「Aqoursは解散したって聞いたんですけど…」

「やらないんですか!?」

 ダイヤ、果南、鞠莉の3人が顔を合わせた。

「わ、私達はもう3年ですし、受験もありますから…」

 飛鳥が口角を下げたその時、

 

「嘘ばっかり!」

 

「!」

 ルビィが口を開いた。

「お姉ちゃん…嘘ついてる! 本当はまだスクールアイドルをやりたいんでしょ!」

「ルビィ…」

 ルビィが口角を下げる。

 

「まさか…自分達が前にやった失敗がまだトラウマになってるんですか?」

「そ、そういう訳では…」

 ダイヤが視線を逸らした。

 

「映像があったので、見せて頂きましたよ。あのライブが最後でしたよね?」

 3人が反応すると、ルビィが千歌を見た。

「千歌先輩!」

「?」

 ルビィが千歌に頭を下げた。

「お願いします! お姉ちゃん達にもう一度スクールアイドルをやらせてください!」

 ルビィが頭を下げた。

 

「お姉ちゃん…ずっと千歌先輩達に厳しい事を言ってましたけど、本当はAqoursの事も忘れられなかったんです! 一丈字さんが言っていたように、千歌先輩達がスクールアイドルをやる事で、Aqoursが消えるんじゃないかって…」

 ルビィの声が段々涙声になると、花丸が肩を抱く。

 

「あ、その事でダイヤさん達に話があるんです!」

「?」

 千歌がダイヤ達を見た。

 

「ダイヤさん達も一緒にやりましょう!! スクールアイドル!!」

「!」

 

 

つづく



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第49話「そして別れ」

「千歌…」

 千歌が俯いた。

 

「それがダメだったら…Aqoursの名前を使わせて頂けませんか!!?」

 ダイヤ・果南・鞠莉の3人が驚いた。

 

「……」

 ダイヤはどうしたらいいか分からなかった。

「本当にいいの? 千歌」

「え?」

 果南が千歌を見つめた。

 

「本当に…もう一度やらせてくれるの? スクールアイドル」

「…うん!!」

 鞠莉が口角を上げた。

 

「それじゃお願いするわ。アナタが逃げずに最後までやり切ったのに、ワタシ達が逃げたままじゃ、収まりがつかないもの。ダイヤ」

「……」

 鞠莉がダイヤを抱きしめた。

「本当にいい後輩や妹を持ったじゃない。アナタ…いえ、私達は本当に幸せ者ヨ」

 ダイヤの目から大粒の涙が溢れた。

 

「……!!」

 μ’sの殆どのメンバーが貰い泣きした。飛鳥が口角を上げた。

 

 

 その時だった。

 

 

 パチパチパチ!

 

 

 という拍手の音と共に、A、B、Cが現れた。

 

「Aさん!!?」

「B!!」

「Cまで…」

 

 不敵な笑みを浮かべて堂々と現れた。警戒する飛鳥と穂乃果達だったが、飛鳥が何かぼそぼそと念じた。

 

「ここまでつけてたなんて…」

「どういうつもりよ!!」

 と、にこが怒鳴ると。

 

「おっと怒らないでくれ。オレ達だって素直に祝福したいんだよ」

「そう。本当の意味でオレ達と君たちの関係も0から1に…」

 

 飛鳥が超能力を普通に使って3人を痺れさせた。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」

 3人が倒れこむと、花陽がいた事に気づいた。

 

「かよちん!!」

 花陽は縄で口と体をふさがれていた。

 

「お前ら…!!!」

 山田が激昂した。そして飛鳥が指を動かすと、花陽を吸い寄せた。

「!!!」

 

 助けられた花陽自身も何が起きているか分からなかったが、凛と真姫が目の前にいる事で安心しきったのか、大粒の涙を流していた。

 

「あ、飛鳥くん…!!?」

「……」

 飛鳥は前に立った。

 

「て、てめぇ…!!」

 フォー達が立ち上がると、飛鳥は穂乃果達の方を振り向いた。

 

「小泉さんを無事に助ける為には、こうするしかなかったんです」

「!」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「あとは私に任せてください」

 飛鳥がAたちを睨みつけていた。

 

「な、なんだてめぇ!!」

「これ以上てめぇの良いようにさせるか!!」

「あなたの天下もこれで終わりです!!」

 飛鳥はAたちの前に立つと、本気で超能力を使いはじめ、手から黒い影のようなものが出て、Aたちを拘束した。

 

「!!!」

「ぐわあああああっ!!!」

 A、B、Cはなすすべもなく捕まった。

 

「く、くそぉ!!」

「ほどけねぇ!!」

「こ、こんな時こそ異世界で培ったチートを…」

「無駄だよ」

「!」

 飛鳥はAたちに近づいてしゃがんだ。

 

「もうお前達はチートを使えない。神様も運営もお怒りだ」

「!!!」

 穂乃果達もフォー達も驚いた。

 

「もうお前達は終わりだ。英雄ごっこはもうおしまい。現実の世界に戻る時が来たんだよ」

 

 飛鳥がそう言い放つと、Aたちは青ざめた。

 

「ウソだろ…」

「そんな筈がねぇ!!」

「どうしてあなたが!!」

 するとAが気づいた。

 

「待て!!! それだったらやっぱりお前は運営と繋がってたのか!!?」

「ああ」

 飛鳥はあっさりと答えると、何やら念じた。

 

「飛鳥くん…」

 穂乃果が話しかけたが、ショックを受けていた。

 

「さ、さっきから一体何の話をしてるの…?」

 飛鳥が悲しそうに穂乃果達の方を見た。

 

「高坂さん」

「!」

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

「ごめんなさい」

「!!?」

 

 すると飛鳥とフォー達の身体が光り始めた。

 

「あ、飛鳥くん体が!!」

「飛鳥さん!!!」

 と、皆が悲鳴を上げた。

 

「信じて貰えないかもしれないんですけど、私とフォーはこの世界の住人じゃないんですよ。別の世界から来たんです」

「え…」

 

 何を言っているか信じられない穂乃果達だったが、今目の前で飛鳥はゲームのように消滅しようとしている。

 

「そ、そんな!! オレ達はどうなるんだ!!」

「嫌だ!! 現実の世界に戻りたくない!!」「

「このまま持て囃されてたい!!! 助けてくれぇ!!!」

 と、フォー達は絶望し、泣き叫んでいた。その様子を飛鳥は見ていた。

 

「皆さん。本当にこの3名の悪行を今まで止めれなくてすみませんでした。ですが、もうこれで終わりです」

「……!!!」

 穂乃果がショックを受けた。

 

「本当にどういう事なの!!?」

「ちゃんと説明してください!!!」

「……」

 ことりと海未の言葉に飛鳥は目を閉じた。

 

「飛鳥くん!!」

「飛鳥さん!!」

 という声がした。千歌たちも叫んでいる。

 

「皆」

 希が言い放った。

「……!!」

 

 希が飛鳥を見た。

「よう分からんけど…飛鳥くん。君がそいつらをやっつける為に色々頑張ってくれた事は分かった」

「東條さん…」

 希は口角を上げて、飛鳥に近づいた。

「寂しくなるなぁ」

 希は苦笑いした。

 

「しかも急にいなくなるやなんて、君ホンマに女泣かせやで」

「東條さん…」

 希が飛鳥にハグしたが、静かに涙を流した。

「ホンマに…今日までありがとうなぁ…」

「……」

 すると飛鳥は千歌を見た。

 

「高海さん」

「!!」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「今の貴方ならもう大丈夫。私はもういなくなるけど、あなたには渡辺さん達がついてる。そして…水泳大会。とても輝いてました」

「……!!」

 千歌が大粒の涙を流した。そして飛鳥は穂乃果達を見た。

 

「高坂さん。そして、皆さん」

「!!」

「急にこんな事になって、本当にゴメンなさい。名残惜しいですが、ここでお別れです」

「そ、そんな!! 嫌だよ!!! 飛鳥くんがいなくなったら穂乃果達…」

「それも大丈夫です」

「!」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「私がいなくなっても、皆さんも沢山の人達がいてくれて、皆さんがあなた達を愛してくれます。だから悲しまないで」

 すると飛鳥を包む光が強くなった。

 

 

「皆さん」

「!」

 

「短い間でしたがお世話になりました。本当にありがとう」

 

 そして飛鳥とフォーは消えた。

 

「……!!!」

 穂乃果達は涙を流していた。

 

 

「飛鳥…くん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして

穂乃果「あっという間だったねー」

千歌「そ、そうだね…」

 Aqoursとの別れの時、音ノ木坂の関係者がバスに乗り込もうとしていた。

穂乃果「Aqoursも9人体制かー」

花丸「まあ、オラは運動は得意んじゃないけど、面白そうだし…」

善子「……」

 スクールアイドルをやりたがっていたルビィ、付き添いで花丸と善子が加入した。

曜「また遊びに来てね」

ことり「うん!」

梨子「頑張ってね」

海未「ありがとうございます」

 μ’sとAqoursの交流が深まって、飛鳥が口角を上げていた。

絵里「それはそうと、飛鳥くん今日も大活躍だったわね」

飛鳥「それは違いますよ。絢瀬さん」

絵里「え?」

希「せやで。今回凄く大活躍したんは…千歌ちゃんや」

千歌「えっ!!? そ、そんな事は…」

飛鳥「あるよ。高海さんが途中で投げ出さずに、最後までやり切ったから皆の心を動かしたんだ。オレの心もね」

 飛鳥が口角を上げた。

飛鳥「あ、今だから言うけどね高海さん」

千歌「?」

飛鳥「途中で「やめる?」って聞いたでしょ」

千歌「はい」

飛鳥「で、君はやめない、最後までやるって言ったじゃない」

千歌「はい…」

飛鳥「あの時の顔がね、一番輝いてたよ」

千歌「そ、そうでしょうか…」

飛鳥「勿論。だって本当に確信したよ。君なら出来るって。その気持ちをずっと持ち続けるんだよ」

千歌「は、はい…」

飛鳥「あ、でもね」

千歌「?」

飛鳥「本当にダメだったらやめてもいいんだよ。君は頑張り屋だから、無茶するだろうから。あと、もう一人じゃないから、渡辺さん達にも頼って良いし」

穂乃果「ちょっと待って飛鳥くん。めっちゃ喋るね!!」

 穂乃果が突っ込んだ。

飛鳥「まあ、そんな頻繁に会えなくなるから、言いたい事を全部言っておこうかなって」

希「にしてもめっちゃ喋るやん。何でなん?」

飛鳥「まあ、それだけ高海さんに夢中になってたって事ですかね?」

 飛鳥が冗談っぽく言い放った。

飛鳥「高海さん、今回の事で、多くの人達を魅了出来る事も出来るし、輝ける事も分かりました。だから、自信を持って頑張って…って、高海さん?」

千歌「……」

 千歌は顔を真っ赤にして、絶句していた。

飛鳥「おーい。高海さーん。聞いてるー? あと、こういう時は「気持ち悪い」とかツッコミを入れてもいいんだぜ…」

 飛鳥が近づこうとすると、

千歌「ひ…ひゃああああああああああああああああ/////////////」

 千歌が果南の後ろに隠れてしまった。

飛鳥「…多分聞いて無いだろうから、伝言をお願いします」

曜「わ、分かった…」

 

飛鳥「それじゃ、そろそろ行きましょうか」

山田「お、おう…」

 山田も若干呆気に取られていた。

飛鳥「さ、バスに乗り込んでください」

「う、うん…」

 希以外のメンバーは言われるがまま、乗り込んでいった。

千歌「あ…」

 そして飛鳥だけになった。

飛鳥「それじゃ浦の星女学院の皆さん、志満さん、美渡さん。お世話になりました」

志満「ありがとう」

美渡「また遊びに来いよー」

 飛鳥が千歌を見た。

飛鳥「千歌さん」

千歌「!」

 飛鳥が微笑んだ。

 

飛鳥「またな」

 

 そう言って飛鳥もバスに乗り込んでいき、そのまま発車していった。

「さよーならー!!」

 千歌達が手を振って、バスが見えなくなるまで見送った。

 

「……」

 そして静寂が残る。

曜「…行っちゃったね」

梨子「うん…」

千歌「……」

 千歌が口角を上げた。

曜「千歌ちゃん?」

千歌「……」

 すると千歌は倒れた。

曜「ち、千歌ちゃん!!!?」

梨子「しっかりして!!!!」

志満「あーあ。完全にあの子に惚れちゃったわねー」

美渡「ていうか…何か神様みたいじゃなかった? あの子…」

 

 

 

つづく

 



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第50話「現実の先にある希望(最終回)」

駆け足になりましたが、最終回です。
評価、お気に入り登録、しおり登録、コメントをしてくださった皆様。
本当にありがとうございました!


 

 

 成り行きで飛鳥はラブライブワールドに別れを告げたが…。

 

 

「はぁ…」

 

 飛鳥はため息をついていた。

 

「今までご苦労じゃったのう」

 と、羅城丸がねぎらいの言葉をかけていたが、落ち込んでいた。

 

「やっぱり強引過ぎましたかね…」

「うーむ…」

 と、いきなり穂乃果達に別れを告げた事に関して、これで良かったのか迷っていた。

 

「あ、神様」

「何じゃ」

 飛鳥が神様を見た。

 

「そういえばA達はどうなるんですか? 前に捕まったD達も…」

「見てみるか?」

 

 と、神様に連れられて飛鳥が向かった先は、地獄にある簡易刑務所だった。その中にAたちは収監されていて、囚人服を着せられていた。

 

「どうして…どうしてこうなったんだぁああああああ!!!」

「オレはこんな所で終わる男じゃなぁああああああああああああい!!!」

「うわぁああああああああああああ!!! 栄光の日々を返してくれぇえええええええええええ!!!!」

 と、泣き喚いていた。

「ちなみにDたちも同じような感じらしい」

「……」

 飛鳥が困惑した。

「所詮、偽物の力で手に入れた栄光や名誉など無に等しい。現実を受け入れてそこから努力しなければ希望などないのだ。飛鳥、今のお前さんなら分かるだろう」

「はい」

 飛鳥が返事した。

 

「ちなみにだがの。あのゲームセンターはもう閉鎖する事となった」

「え!?」

 飛鳥が神様を見つめた。

 

「やはりゲームに夢中になり過ぎて仕事をしない若者が増えてきとってな。ましてや入り浸るものだからトラブルも絶えないんじゃよ」

「そ、そうですか…」

「フォーもわしらが責任を持って探し出す」

 飛鳥が俯いた。

 

「そういえばあの無印とサンシャインの穴は…」

「あれもわしらが責任もって修復する。安心してくれ」

「そ、そうですか…」

 飛鳥はまた俯いた。

 

「ラブライブはアニメであって架空の世界。すっかり情が移ってしまったかの?」

「…そうですね」

 飛鳥が口角を上げた。

 

「アニメのキャラクターとはいえ、あっちの世界では私達と同じように普通の人間と生きていて、私もあの世界にいる時は彼女達と共に生きていましたし、時間を忘れる程楽しかった。そして今でも…どこかで会えるんじゃないかなって思うくらいですよ」

「そうじゃな…」

「A達の肩を持つわけじゃないけど、とってもいい人たちですね。μ’sも、Aqoursも」

「ああ。勿論だとも」

 神様が口角を上げる。

 

「さて」

「!」

 神様が飛鳥を見た。

 

「飛鳥。フォー討伐任務はいったんこれでお終いじゃ」

「はい。短い間でしたが、お世話になりました」

 飛鳥が頭を下げた。

「一晩こっちで過ごしてみんか」

「!」

「そして翌朝に元の世界に返してやろう」

 飛鳥が神様を見た。

 

「お言葉に甘えさせていただきます」

 

 そしてその夜、飛鳥は神様とコロロの3人で食事をとっていた。

 

「本当にお疲れ様でした」

「ありがとうございます」

「そして…兄がご迷惑をおかけしました」

「あ、いえ…」

 コロロが申し訳なさそうに頭を下げると、飛鳥は苦笑いした。

 

 食事が終わってしばらくたつと、飛鳥は用意して貰った寝室で横になっていた。

 

「……」

 穂乃果達の事を考えていた。アニメの世界でありアトラクションの世界でもあるとはいえ、ちゃんと無事にやっていけるだろうか。フォーの件で恐怖を持っていたりしていないだろうか。ずっとその事ばかり考えていた。

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。瞼には穂乃果達の笑顔や今までの思い出が浮かんできた。

 

 最後に見た彼女達の泣き顔。本当にこれで良かったのだろうかと。

 

「……」

 

 飛鳥はゆっくりと眠りについた。

 

 そして迎えた朝。飛鳥は一足早く起きて身支度をし、神様やコロロと共に食事をとった。

気まずい空気はなく、何気なく食事は行われていた。ただ、穂乃果達の話はそこではしなかった。

 

 

「では、飛鳥を送ってくる」

「はい」

 と、神様がコロロに言い放った。

 

「コロロさん。お世話になりました」

「いえ」

 飛鳥がコロロに言うと、コロロは笑顔を見せた。

「飛鳥さんもお元気で」

「ありがとうございます」

 飛鳥が口角を上げると、神様が飛鳥の肩に触れた。

「行くぞ」

「はい」

 すると神様は瞬間移動をすると、コロロ一人だけが残った。

「……」

 コロロは口角を下げた。

 

「…本当に良かったんですか? 兄さま」

 コロロが横を向くと、陰からザキラが現れた。

 

「構わん。そもそも私は奴とそんなに仲良くはない」

「そんな事言って。ずっと心配してたじゃないですか」

「……」

 ザキラが口角を下げた。

 

「そんな事はない」

「そうですか」

 コロロが一息ついた。

 

「それはそうとコロロ」

「なんですか?」

 ザキラがコロロに近づいた。

 

「…あのゲームセンターについては」

「兄さまの出番はないそうですよ!」

 

 

 そして…

「懐かしいだろう」

「そうですね」

 と、神様と飛鳥が初めてであった虹島のとある草原に来ていた。

「思えばここからすべてが始まったの」

「ええ…」

 飛鳥が口角を下げた。

 

「飛鳥。彼女達の事は気にするな」

 飛鳥が神様を見た。

 

「わしが何とかしておく。だからお主は…前を見るんじゃ。ちゃんと生きる事が彼女達への償いじゃよ」

「神様…」

 神様が口角を上げると、そのまま飛鳥と握手した。

 

「本当にありがとう。お前さんのお陰で護衛隊の連中も少しはやる気を出すようになった」

「そ、そうですか…」

 そして手を離すと神様は距離を取った。

 

「ではな。またいつか会おう」

 そう言って神様は消えた。

 

「……」

 飛鳥は空を見上げると、優しい風が吹いた。

 

「…帰るか」

 そう呟いて飛鳥はその場を後にした。

 

 天界

「はぁ…」

 神様は残業をしていた。

 

「全く、厄介な事をしてくれたわい…」

 その時だった。

 

「羅城丸様!」

「何じゃ」

 天使の一人がやってきた。

 

「その…羅城様にご依頼されていたラブライブの件なんですが…」

「どうかしたか?」

「修復を試みたのですが…残念ながら」

「そうか…」

 羅城丸は俯いた。本来イレギュラーが発生した場合は早急に処分しなければならないのだが、飛鳥の事もあり迷っていた。

 

「それから一つ気になる事がございまして」

「何じゃ?」

「その…いくら記憶を消しても、登場人物たちが「一丈字飛鳥」という男の事を覚えていて…」

「何じゃと!!?」

 羅城丸が驚いていたが、俯いた。

 

「はぁ…本当に厄介な事をしてくれたわい」

「ど、どうされますか…」

「……」

 

 

 ある日の事。

 

「……」

 飛鳥は買い物をする為に町まで歩いていた。ふと通りかかったCDショップのとあるポスターが目に映った。

 

 それは穂乃果達μ’sと千歌たちAqoursのニューシングルのポスターだった。

 

「……」

 それを見て飛鳥は安心したように口角を上げると、

 

 

(飛鳥くん)

(一丈字さん!)

 

 

「!!」

 と、穂乃果と千歌の声がしたような気がして、飛鳥は振り向いたが、当然アニメの登場人物である2人がいる筈もなかった。

 

「行くか」

 

 

 そう呟いた飛鳥はその場を後にした。

 

 

 

THE END

 



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