転生したら、レイヴン、リンクスだらけの街に住むことになった… (とある組織の生体兵器)
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一話

初めてではありませんが、二作目です。筆者が、ACの新作が出なくて、活力を失い、諦観のうちに壊死した結果です。


 

 

 

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ブゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 

「プランD、所謂ピンチですね。」

 

「こんなにスピード出しすぎるからだろ!120km超えてんじゃねぇか!」

 

ウ〜!ウ〜!

 

後ろからパトカーが…。

 

「待てー!そこの車!脇に寄せて停車しろ!法律を守らないクズどもが!」

 

現在、主人公は追われている。何故こうなったかというと、話は随分と前に遡る。

 

……………

一年前

 

「ヤヴァイ!遅刻だー!」

 

ブラック企業に勤めて5年未満、主人公(男)が急いで家を出る。

 

「俺!20代!サラリーマン!今日も元気に、残業付きの会社に出社するよ!今日も元気に頑張るぞい!」

 

主人公が走っていると…。

 

キキィィ!!

 

「えっ?」

 

ドガァ!

 

「グフゥ!グフゥ。グフゥ…。……。

 

トラックにはねられる。

 

「ちょ、君!大丈夫!?君…!」

 

主人公は、第一話で死んだ。

 

…………

 

……ん?ここは…?

 

主人公が思う。青い空、白い雲。緑の丘が広がっている。

 

……確か…、俺は…、バスに轢かれて…。

 

間違ったことを思い出していると、目の前に女の子が現れる。

 

「や!私はこの世界の神様だよ!」

 

明るい笑顔で挨拶してきた。

 

「どこかで聞いたことがあるようなセリフ…。」

 

「…死んでからの第一声がそれとは…。まぁいいや。暇つぶしに生き返らせにきたよ!」

 

「暇なのか…。」

 

「暇だよ〜。」

 

「そうか…。て、生き返らせるの?社畜人生も、やっとこれで終わったと思えたのに。」

 

「生き返らせるって言って、そんな言い方する人初めてだよ…。」

 

神様は苦笑いをする。

 

「でも、私が暇だから強制的に生き返らせる。ただの人間に拒否権なんてない。」

 

「わ〜い、差別かんじる〜。」

 

「じゃ、この世界とは別の世界に転生させるから。君の名前と、荷物は私が送るよ。あとは頑張って〜。」

 

「すっげーアバウトだな。神様とはこんななのか?」

 

そう言いながら、主人公はどこかの世界へ飛ばされた。

 

……………

 

「……。」

 

「う〜ん…。」

 

「おい、お前、聞いてんのか?」

 

「ハッ!ここは…?」

 

「ボケッとしやがって、何なんだお前は?」

 

「……。」

 

主人公は困惑した。なぜか、公園のベンチで目を覚まし、目の前に老人がいたからだ。主人公の荷物は隣にあった。いい天気だ。

 

「おい、頭でも打ったか?」

 

「…あっ、いえ…。私、こういうものでして…。」

 

主人公は荷物をあさり、名刺を渡す。

 

「…ソルディオス…か…。」

 

「へっ?」

 

主人公は慌てて、名刺を見る。

 

…………

 

インテリオルグループ会社員 ソルディオス

 

…………

 

……えーっと…。ナニコレ?

 

そして、主人公は思い出す。

 

……“名前と荷物は私が送るから。”から…、から……。

 

思い出した。そのうちに…。

 

「俺はファットマンだ。前は引っ越し業者をして、晴れた日に引退した。よろしくな。」

 

「えっ?あっ。はい。」

 

「君は新しくこの街に引っ越してきたんだな。顔を見りゃわかる。俺は、この街の人間、全ての人の荷物を運んだんだ。知っているかいないかなんて、すぐにわかる。」

 

「えーっと…。」

 

……。…これはYESで答えるのかな?

 

ソルディオスは、考えた。

 

「は、はい。引っ越してきました。」

 

「どこだかわかるか?荷物の中に地図か何かあるか?」

 

「えーっと…。」

 

ソルディオスが荷物を漁る。

 

「ありました。」

 

「どれ。」

 

ファットマンが見る。

 

「ほう、あの家か。最近できたばかりの…。」

 

「えっ?あ、はい。」

 

「暇だからな、俺が案内しよう。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

「そんな固くなるなって、これからは同じ街に住む仲間だ。」

 

ファットマンは笑いながら言う。

 

……いい人だな〜。

 

ソルディオスは気楽に思った。そこに…。

 

「何?何が起きてるの?」

 

青い髪の女性が近づいてくる。

 

「ああ、こいつがこの街に引っ越して来たらしいからな。案内してやろうと思ってな。」

 

「もう引退したでしょう?私はあなたのことが心配なの。」

 

「なんだお前、すねてんのか?マギー。」

 

ファットマンは、笑いながら話す。

 

「それに、あなたもよ。」

 

「俺?」

 

マギーは、ソルディオスを見る。

 

「自分の家も知らなくてどうするの。それくらい、自分でやりなさい。」

 

「はい…。その通りです…。すみません…。」

 

「…まぁ、最初は土地勘がわからない人もいるから、案内するけど。」

 

「おっ、出たな。マギーのちょいツンデレ。」

 

「はぁ…。」

 

こうして、ファットマンとマギーに、案内してもらう。

 

…………

道中

 

「あの…、彼女は一体…?」

 

ソルディオスはファットマンにこそこそ話す。

 

「あぁ、あいつはマギー。マグノリア・カーチスだ。ブルーマグノリアと呼ばれていたりするがな。俺が引退する前、荷物を運ぶのによく手伝ってくれていた。今も、たまに俺のところに来て、世話をしてくれる。」

 

「そうなんですか。」

 

「少しは静かにして、ファットマン。」

 

どうやら、マギーに聞かれていたようだ。

 

…………

 

「ここよ。ここがあなたの家の場所よ。」

 

「…だ、そうだ。」

 

マギーとファットマンは、案内してくれた。

 

「ありがとうございます。」

 

「次からは、ちゃんと地図を見るのよ。」

 

「そうだぞ。いつまでも甘えてちゃ、話にならねーからな。」

 

「はい、頑張ります。」

 

二人は、そう言い残したあと、歩いて行った。

 

「…ここが…、この家が、俺の魂の場所だ!」

 

そして、ソルディオスは家に入り、荷物を出し、色々し、地図を見たりしながら、会社へ出勤したりした。

 

…………

現在、朝

 

「ヤヴァイ!遅刻だー!」

 

ソルディオスは家から飛び出す。

 

「へい!タクシー!」

 

手をあげると…。

 

キキィ!

 

「はい、そのためのフラジールです。」

 

「インテリオルグループまで。」

 

「はい。」

 

「あっ!遅刻しそうなので、なるべく急いでください!」

 

「お任せください。」

 

そして、ドアを閉じた途端…。

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 

「ちょ、加速…。」

 

「いい傾向です。」

 

「どこがだ!」

 

ウ〜!ウ〜!

 

「なんか後ろからパトカー来てない!?」

 

「プランD、所謂ピンチですね。」

 

「こんなにスピード出しすぎているからだろ!120km超えてんじゃねーか!!」

 

ウ〜!ウ〜!

 

「待てー!そこの車!脇に寄せて停車しろ!法律を守らないクズどもが!」

 

「今の声、署長ですね。構わずに走ります。」

 

「ちょ、おま…。」

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 

「奴の車では追いつけません。」

 

「加速しやがった!これで事故なんて起きたら…。」

 

「その心配はご無用です。なぜなら…。」

 

ドガァァァァァン!!!

 

「光が逆流する…ギャァァァァァァァァァァ!!!

 

「言わんこっちゃねーー!」

 

壁に激突、ソルディオスは奇跡的に無傷。なんとか出社できました。




はい。終わりました。この小説は、のんびりです。一ヶ月先になるかもしれませんが、なるべく早く投稿します。


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2話

ただの傭兵…。もうそんな風には生きられぬ時代か…。(AC新作)


…………

インテリオルグループ社内

 

「おはようございます…。」

 

ソルディオスは怪我はなかったものの、遅刻した。

 

「遅かったじゃないか…。」

 

「あっ、ジャック・O先輩、遅刻しました。」

 

この会社の先輩、ジャック・Oで、ソルディオスの隣の席だ。

 

「ジャック・O先輩って、入社したの何年前でしたっけ?」

 

ソルディオスは席に座り、仕事をしながら聞く。

 

「2年くらい前だ。私は地元のバーテックスという小さな会社の社長だったが、金欠でな。この会社と併合をしたのだよ…。その時の社員も、ここの会社で働いていたが、一部は別の会社にいる…。」

 

「色々あったんですね…。」

 

ジャック・Oは哀愁満ちた声で言う。そこに…。

 

「ギャハハハハ!ソルディオスく〜ん、君が遅刻なんて珍しいねぇ。」

 

「あっ、主任。お疲れ様です。」

 

ここの場所の主任、主任だ。歩いてソルディオスのところまで来た。

 

「今日は少し変なタクシーに乗っちゃって…。」

 

「変なタクシー?」

 

「あぁ、穴タクシーか…。」

 

ジャック・Oが答える。

 

「「穴タクシー?」」

 

「知らんのか…。あのタクシーは有名だ。…事故が90%以上起きる確率でな…。」

 

どうやら、ジャック・Oも乗ったことがあるらしい。

 

「先輩の時はどうだったんですか?」

 

「警察署長に追いかけられて、壁に激突して全治1週間の怪我をした。」

 

「状況が同じじゃないですか…。」

 

ソルディオスは苦笑いする。

 

「ま!それより時間もったいないから仕事してねっ!社長に怒られちゃうよ〜。」

 

笑いながら主任は戻っていった。

 

「…仕事するか。」

 

「…そうですね。」

 

そして、仕事をするのだった。

ここ、インテリオルグループの仕事は、俗に言うIT企業である。

 

…………

お昼休憩

 

「はぁ…。仕事がうまくいかないなぁ…。」

 

「何か困りごとか?」

 

「あっ、ジャック・O先輩。」

 

隣からジャック・Oが覗いてくる。

 

「いや、クレームだらけですよ…。」

 

「それも、この仕事の一つだろう?」

 

「まぁ、そうですが…。」

 

「それより、お昼休憩だ。」

 

ジャック・Oは弁当箱を開ける。

 

「…先輩の弁当って、いつも豪華ですよね…。」

 

「む。そうか?」

 

ジャック・Oの弁当箱の中身

クレスト社産の牛ステーキ

本場だし巻き卵

今朝とった新鮮な野菜のサラダ

ユニオン産の米

 

ソルディオスの弁当箱の中身

スーパーのチンする米

冷凍食品

昨夜のおかず

 

「いつも自分で作っているから分からん。」

 

「奥さんとかいないんですか?」

 

「ああ。」

 

そして、ジャック・Oと共に食べていると…。

 

「ねぇ、この仕事が終わったらどこか行きましょうよ。」

 

「ああ。そうだな。」

 

「本当に?じゃぁ、さっさと終わらしちゃうわね。」

 

「ああ。頼むよ。」

 

二人の男女が通りかかる。

 

「…リア充め…。末長く爆発しろ…。」

 

ソルディオスが悪態づく。

 

「……。」

 

「…て、先輩?何見ているんですか?」

 

ジャック・Oは二人をずっと見ていた。

 

「…いい尻だ。」

 

「先輩…ダメですよ?人の女に手を出しちゃ。あの男は一応、あんなに興味のなさそうな顔してますけど、心の中はめちゃくちゃ愛しているかもしれないんですから。」

 

ソルディオスが言う。が、ジャック・Oは聞いていない。

 

……あの男…、いい尻をしている…。

 

別のことを考えていたからだ…。この世界ではゲイキャラである。そのうちに、休憩が終わり、仕事をすることになった。

 

…………

会社終わり

 

「今日は残業なしだぁ〜。」

 

「早く帰れるな。…私はあるがな。」

 

「先輩…。お先失礼します。」

 

「ああ。」

 

ジャック・Oを残して、ソルディオスは一人、退社した。

 

……もうタクシーはこりごりだ…。電車で行くか。

 

ソルディオスは駅で待つ。

 

『こちら、バルダー。まもなく到着します。』

 

キキィ…。プシュー。

 

ドアが開く。

 

「よいしょ。」

 

ソルディオスは入り、座る。

 

『こちらバルダー。出発します。』

 

プシュー。ガコン。

 

電車は出発した。

 

……今日は残業なかったな。久しぶりに。でも、この電車、この街以外に行かないんだよなぁ。

 

ソルディオスは考えている。

 

……この街の外ってどうなっているんだろう…?何もないのかな?それとも、戻ってきちゃうのかな?もしかしたら…。

 

そんなことを考えていると…。

 

『こちら、バルダー。まもなく終点です。』

 

そして、電車から降り、ソルディオスは歩く。すると…。

 

「ちょっとRD。もっと荷物持ってくれない?重いんだから…。」

 

「無理っすよ…。」

 

中学生の二人が来る。

 

「ん?ロザリィちゃんにRDくんかい?」

 

「あっ、ソルディオスおじさん。」

 

「なーにっ?」

 

「…せめてお兄さんにしようか。」

 

ソルディオスは苦笑いする。この二人は近所に住んでいる。

 

「ところで、もう暗いのにどこに行くんだい?」

 

ソルディオスは聞く。

 

「こいつが何か食べ物が食べたいんだとさ。」

 

「学生ってそういうもんなんすよ。」

 

二人は答える。

 

「そうか。でも、もう暗いし…。…もし良かったらうちで食べてく?」

 

ソルディオスは言う。

 

「太っ腹ねぇ。…でも、お金払わないわよ?」

 

「流石姉さんだよ…。」

 

RDが微妙な顔をする。すると…。

 

「姉さん!ヤヴァイ!」

 

RDが突然叫ぶ。

 

「RDうるさーい。話しているんだから…。」

 

「生徒会の書記っすよ!逃げるっすよ、今すぐ!」

 

ソルディオスが目を凝らすと、腕に腕章をつけた子が来ている。

 

「何で逃げなくちゃいけないの?」

 

「忘れたんすか!?この前、生徒会の部屋の窓割って逃げたじゃないすか!」

 

「そんなことしたの?君たち…。」

 

ソルディオスが微妙な顔をする。

 

「あの腕章…。学校では『生徒会』なのに、外では『見敵必殺』ね。」

 

「そんなこと言っている場合っすか!?」

 

話していると…。

 

「シャーーーー!」

 

「やば、見つかったわ。RD、あんた囮になりなさい。」

 

「嫌っすよ!無理無理無理!」

 

「いいからやりなさい。」

 

ドカッ。

 

ロザリィが蹴りを入れる。

 

「痛っ!痛いってー!蹴ることないじゃないすかー!やればいいんすよね!やれば…!」

 

そして、RDが囮になる。

 

「大丈夫かい…?」

 

ソルディオスは聞く。

 

「やれる…!やれるんだ俺は…!」

 

そして、あろうことか突っ込む。

 

「おお…!RD…!」

 

しかし…。

 

「無謀だぞ…。」

 

「姉さん!ヤヴァイ!」

 

「シャーーー。」

 

「あーあ。すぐに捕まっちゃった。」

 

RDは一瞬で捕まった。そのあと、二人仲良く謝った。




次もかかりそうです。


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さん話

あけましておめでとうございます。


…………

 

「新しい年を迎えましたね。ジャック・O先輩。」

 

「そうだな。」

 

「やっぱり家で過ごすのが一番ですよね?」

 

「その通りだな。」

 

ジャック・Oとソルディオスが話す。

 

「家が一番…。」

 

「……。」

 

「なのに、まさか会社で年を越すなんて思っても見ませんでしたよ!」

 

「残業だからな。」

 

現在、ソルディオスとジャック・Oはインテリオルグループ社にいる。残業だ。

 

「くそっ!総務の奴らめぇぇぇ!」

 

ソルディオスは叫ぶ。

 

「叫んだところで何も状況は進展しないぞ。さっさと仕事を片付けろ。」

 

「…はい…。その通りですね…。」

 

ジャック・Oがソルディオスに言い、手を動かす。

 

「総務の連中、なんであんなポンコツしかいないんですかね〜…。」

 

「悪態ずくな。あいつらもあいつら並に頑張っているのだろう。」

 

「だって、この前も…。」

 

…………

この前

 

「消える…消えてしまう…。これは面倒なことになった…。」

 

「保存容量がイカれただと!?ダメだ!保存できん!狙ったか!?古いパソコン…。」

 

「クソが!ウイルスだらけか!ここは!どうなんだこのパソコンは!?」

 

「……。」

 

…………

 

「あんな連中集めて、苦労するのは自分たちですからね…。」

 

「…その話、随分前だな。何人か転職したらしいぞ。」

 

「マジですか…。じゃぁ、今はどうなっているんですか…?」

 

「…確か、何人か入ったらしいな。」

 

「でも、ミスしすぎじゃないですか?かれこれもう4時間くらい残業してますし…。」

 

「ほかのブラックはもっとらしいぞ。」

 

「やばいですね…。」

 

ソルディオスとジャック・Oは手を動かしながら話す。

 

「…そう思ってみれば、主任は?」

 

「…あそこで寝ているのがそうじゃないか?」

 

「Zzz…。」

 

「随分と余裕ですね。会社で寝泊りタイプですか…。」

 

「仕事をしてほしいものだ。」

 

ジャック・Oとソルディオスが話していると…。

 

「残業の皆様お疲れ様です。この会社の人事部を担当しております。キャロル・ドーリーと申します。」

 

「じ、人事部さんがなぜここに…?」

 

ソルディオスが驚いていると…。

 

ガバッ

 

「キャロリ〜ン。聞こえる〜?」

 

主任が瞬時に起き出す。

 

「はい、なんでしょう。」

 

「このノートパソコン壊れちゃってさ〜。10年くらい前の。地下にあるパソコン。その新品のやつ。持ってきて。今すぐ。」

 

「社長にバレたら危険かと…。」

 

「あ、そうなんだ〜…。で、それが何か問題?」

 

「…わかりました。」

 

キャロル・ドーリーは部屋から出て行った。

 

「…主任、今の人と知り合いですか?」

 

「ん〜?昔の仲ってやつかな。」

 

「そ、そうですか…。随分と仲のよろしいご関係なんですね。」

 

「?」

 

「だって、『キャロリン』と呼んでいましたし…。」

 

「?」

 

「…もういいです。」

 

ソルディオスは仕事を始める。

 

「…ところで、なんのようだったんでしょうか…?」

 

…………

 

「お持ちいたしました。」

 

「いーじゃん!」

 

主任がそう話した後…。

 

「…それでは皆さん。集まりいただけますか?」

 

キャロル・ドーリーが話す。今気づいたが、その後ろに何やら明るめの女性がついている。

 

「仕事がのってきたのに…。」

 

「眠いな…。」

 

「う〜ん…。新しいパソコンでやるのが楽しみだ。」

 

集まる。

 

「皆さんお集まりいただいたようですね。…紹介します。明日からここに配属される『レジ…。」

 

「ちょちょちょ…、ちょっと待ってください。そんな話聞いてませんよ!?」

 

「…このことは社長から直前でそのことを明かせと命じられました。」

 

「な、何故!?」

 

ソルディオスが問い詰めると…。

 

「…確か理由は、“面白いから”です。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

キャロル・ドーリーの言葉に、全員が黙った。そして、沈黙の5秒後…。

 

「…改めて紹介します。明日から…。」

 

「いやいやいや、ちょっと待ってください。整理させてください。」

 

ソルディオスはどう考えてもおかしいので、どうやったら辻褄が合うのか考えている。すると…。

 

「ソルディオス。わかりやすく説明しよう。」

 

「先輩…。」

 

「まず、新しい新人が来るのはわかるな?」

 

「はい。」

 

「そして、ここに配属されるのはわかるな?」

 

「はい。」

 

「明日から配属するんだ。」

 

「そこから一気に分からなーい!」

 

10分後…

 

「そういうことだと。そういうことにしておけ。」

 

「…わかりました。」

 

ソルディオスは半ば麻痺している。

 

「では、紹介いたします。明日から配属される『レジーナ』と言います。」

 

「よろしくお願いします!」

 

新人は頭を下げる。

 

……可愛いな〜。

 

……男ではないのか。

 

……眠い。

 

残業で寝ていないため、少し脳が麻痺している。

 

「では、明日から配属されますので、自己紹介は明日行っていただきます。仕事内容は、そちらの場所からお聞きください。それでは。」

 

キャロル・ドーリーはきびきびと歩いて行った。

 

「…では、仕事するか。」

 

「そうですね…。」

 

「夜は長いね〜。ギャハハハハ!」

 

ジャック・Oたちはそれぞれ仕事の机につく。

 

「…なんだ?」

 

ジャック・Oのパソコンをレジーナがジッと見ている。

 

「先輩たちはどんな仕事をしているのかなって。」

 

「…あっちの主任の様子を見てこい。」

 

ジャック・Oは主任を指さす。

 

「…主任は…。!?」

 

「ん〜♪」

 

主任は新しいパソコンでゲームしていた。

 

「……。」

 

レジーナはたらい回しされた気分になる。

 

「……。」

 

最後の希望のソルディオスのパソコンを覗く。

 

「…どうかしましたか?」

 

「ソルディオス先輩は何をしているの?」

 

「先輩…。先輩…。つまり、君が自分の後輩?」

 

「えっ?うん。そうだけど…。」

 

「自分にも後輩が出来たんすか…。アハ、アハハ…。アハハハハ…。」

 

「……。」

 

わかると思うが、ここの場所の人たちは残業のしすぎで仕事以外に脳を活用させていないのだ。ちなみに、残業10日連続だ。

 

……変な場所に配属されちゃったなぁ…。

 

レジーナは苦笑いしながら一人思う。

 

…………

 

「仕事…終わりました…。」

 

「お疲れだな…。」

 

「Zzz…。」

 

ソルディオスたちはくたくただ。そこに…。

 

「先輩方!おしぼりとお茶です!」

 

レジーナが持ってきてくれる。

 

「助かる…。」

 

「どーもー…。」

 

「ありがとうございます…。」

 

ジャック・Oたちはもらう。

 

「何かあればいつでも呼んで。」

 

レジーナは太陽のような笑顔を見せる。

 

……かわいい。

 

……ふむ。人間性としては悪くない。

 

……いーじゃん。

 

ソルディオスたちはそう思った。

 

「…明日教えてあげましょう?」

 

「…そうだな…。」

 

「じゃ、今日はもう帰宅ってことで…。じゃ!」

 

「あっ!主任!それはないですよ!」

 

「騒がしいな。」

 

「あっ!先輩!待って!」

 

レジーナは次々と瞬時にタイムカードを入れていく先輩の後を追い、急いで入れた。

 

……明日から、この先輩たちと仕事するのね。

 

レジーナは気持ちよく考えていた。

 

…………

 

「あれ?東の空が明るい…。朝か…。」

 

ソルディオスは帰宅している最中見る。すると…。

 

「ドミナントの力…こんなはずでは…。オエーーー…。」

 

道路の脇道で飲み過ぎたのか、キラキラを出しているスーツ姿の男が…。

 

「大丈夫ですか?」

 

ソルディオスは駆け寄り、背中をさする。

 

「礼を言う…。助か…オエーーー…。」

 

「……。」

 

…………

しばらくして、キラキラを出し終わり…。

 

「感謝する。私はアライアンス株式会社の部長、『エヴァンジェ』だ。」

 

エヴァンジェは名刺を慣れた手つきで渡してくる。

 

「あっ、こちらインテリオルグループ社員の、『ソルディオス』です。」

 

ソルディオスも名刺を渡す。

 

「む。インテリオルグループ社だと?」

 

「知っているんですか?」

 

「ジャックが働いている場所だろう。」

 

「知り合いなんですか?」

 

「ああ。昔、ジャックが社長の『バーテックス』という会社に勤めたことがある。今も私がドミナントであることを証明しようとしているのに、全く相手にしてくれない。弱者扱いしてくる。」

 

「弱者?」

 

「…小さいと…。」

 

「?」

 

「…あそこが…。」

 

「…脚部の射突型ブレード…?」

 

「……。」

 

「……。」

 

ソルディオスは何と言っていいか分からなくなった。

 

「…まぁ、大丈夫ですよ。そのうち大きくなるかも知れませんし…。」

 

「…うむ…。」

 

「……。」

 

「……。いや、今は違う。契約件数のことだ。」

 

「あっ、なんだ…。そうなんですか。」

 

「そうだ。今はさすがに敵わないからな。かなうものの勝負をしている。」

 

「そうですか。…お名前は…?」

 

「エヴァンジェだ。」

 

「わかりました。今度会社で伝えておきます。」

 

「うむ。あとは頼んだぞ…。」

 

そして、ソルディオスは帰って行った。

 

……すっごいへんな人だったな…。

 

ソルディオスは帰宅中、考えていた。




平均一ヶ月一回投稿でしょうか?
誤字報告ありがとうございます!本当に助かります!


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ヨン話

2月ですね。


…………

朝 10時頃

 

「ふぁ〜…。」

 

ソルディオス起床

 

「今日は会社休みだな。明日は新人に色々教えてあげなきゃ…。」

 

そう言いながら二度寝をしようとするが…。

 

『なんか火が出てるっすよ!?』

 

『ちょっとちょっとちょっと!あんた何やってんの!?』

 

『姉さんが目を離してるからっすよ!』

 

『あーもう材料も何もないわよ。RD、買ってきなさい。』

 

『俺、パシリじゃないんすけど…。」

 

ドカッ

 

『痛っ痛いって〜、行けばいいんすよね!行けば!』

 

リビングから声が聞こえてくる。

 

「うん。寝れないな。起きよう。」

 

ソルディオスはリビングに向かう。

 

ガチャ

 

「二人とも、何をやって…。」

 

「「あ…。」」

 

ソルディオスは扉を開けて固まり、言葉を失った。そこにある光景は酷いものだったからだ。キッチンのフライパンからは火が出ており、小麦粉やら砂糖やら粉物が床に全てこぼれ、卵も床で割れ、醤油などが白い壁に跳ねていた。さらにいうならば皿も割れていたくらいか…。

 

「……。」

 

「「…ごめんなさい。」」

 

二人は素直に謝った。

 

…………

 

「で、何で君たちがここにいるの?」

 

ソルディオスは、RDたちを叱り、全て片付けたあと麦茶を出して聞く。

 

「お風呂場の窓が空いていたから…。」

 

「そんなところから侵入…。不法侵入だよ?俺だから良かったものの…。他のところでやったら刑務所行きだから。」

 

「ソルディオスおじさんが許すくらい計算の内だから。」

 

「流石姉さんだよ…。」

 

「うん。ふざけんな。」

 

「「ごめんなさい…。」」

 

二人は調子に乗っていたことを謝る。

 

「まぁ、家が燃えないだけ良かったかな…。で、何しようとしてたの?人の家で。」

 

「家に何もなかったから、食べに来たんすよ。」

 

「お金払わないわよ?」

 

二人は当然のように言う。

 

「……。…ロザリィちゃんはお姉さんいるでしょ…。」

 

「あんな奴に頼るなんて、タダ働きと同じで死んでも嫌。」

 

「めっちゃ仲悪いな…。…まぁ、二人の親は見たことないけど。」

 

ソルディオスが冷蔵庫の中を漁る。

 

「…買い置きしてた材料もなくなってる…。…本当の非常用のキサラギ産の安くてまずい食材まで…。」

 

冷蔵庫の中は空だった。何もない。氷すら無かった。

 

「こりゃ買い物だな。…買ってきてから食べるけど、二人はどうする?」

 

ソルディアス冷蔵庫の扉を閉めて振り向いて聞く。

 

「お昼食べれるんならどうでも良いわよ。」

 

「行くんすか?」

 

RDが少し嫌な顔をしている。

 

「何?ビビってんの?」

 

「何か、俺…嫌な予感が…。」

 

「まぁ、RD君の予感は大体当たるけど…。何もない状況からは進展しないから、買いに行こう。」

 

「マジっすか!?」

 

こうして、ソルディオスたちは買い物へ出かけた。

 

…………

道中

 

「何もないじゃない。」

 

「おかしいっすね…。」

 

まだ何も起きていないソルディオスたちが、住宅街を歩いていると…。

 

ブォォォ…!

 

どこからか車の音が聞こえる。

 

「…あ、まずい。二人とも、この家の塀の裏に隠れるよ。」

 

「え?不法侵入じゃ…。」

 

「それに、犬がいるじゃないすか…。」

 

「バウバウ!(マッハで蜂の巣にしてやんよ。)」

 

「時間ないから急ぐよ。」

 

ソルディオスは二人の意見を無視して連れて隠れる。すると…。

 

ドガァァァァン!

 

「ギャァァァァァァァァ…!」

 

車が近くに突っ込み、逆流したような声が聞こえる。

 

「…なんでわかったんすか…?」

 

「人には色々事情があるんだよ…。」

 

「「?」」

 

ソルディオスが重々しく言い、警察に連絡した。

 

…………

数分後

 

ウ〜ウ〜。

 

パトカーが到着し、警官が降りてくる。だが、この前の人とは違い、若々しい感じだ。そして、車を見るなり、すぐにどこかに連絡した。

 

「署長、こちらで所属不明の車を発見しました。運転手はおりません。」

 

すると…。

 

ウ〜ウ〜。

 

もう一台パトカーが来る。そして、前と同じ人が出てきた。

 

「穴タクシーのことか…。秩序を乱す汚物は消去されるべき。それが、我々警察の役目だ。」

 

警察署長が言っていると…。

 

キキィ…

 

またもパトカーが…。

 

「どれだけ暇なんだよ…。」

 

ソルディオスは呟く。だが…。

 

「秩序を破壊する者…プログラムには不要だ…。」

 

少し違う感じの人が出てきた。

 

「け、警視総監…。何故にここへ…?」

 

署長は敬礼しながら言う。

 

「…近頃犯罪者を捕らえられていないと聞いてな…。」

 

「は…、はい…。」

 

警察の方が話している。

 

「…うわー…。ここで見たくは無かったな。てか、早く事情聴取してくれ。ロザリィちゃんたちが犬と遊んでいる間に。」

 

RDとロザリィは犬と遊んでいた。ソルディオスは警察の二人の会話を聞いていた。そして、警視総監が署長を睨む。すると…。

 

ポンッ

 

「この頃この件について悩んで寝ていないのではないか?ゆっくり休め。我々がしっかりしてなくては、誰が犯罪者を捕まえるんだ。何度でも失敗しても良い。国民を守るのが我々の使命だ。だが忘れるな。その中に我々も含まれているのだから。」

 

「け、警視総監…。」

 

警視総監が署長の肩に手をやり、優しい感じで言う。睨んでいたわけではなく、ただ目つきが怖いだけだった。平和な世界だ。

 

「…すっげー平和な世界だな…。よくよく考えてみたら、犯罪件数も異常なくらい少ないんだよな…。こんな世界だから、犯罪する人も少ないのか。」

 

ソルディオスは暖かい目で見守っていた。だが、本当は警視総監が闇で…。すると…。

 

「おじさん、お腹空いたんすけど…。」

 

「私たちのこと忘れてない?」

 

二人がソルディオスの服を引っ張る。

 

「あぁ。ごめんよ。すぐ行くから。おーい…。」

 

ソルディオスたちは簡単な事情聴取を終えて、買い物へ行った。

 

…………

スーパー

 

ソルディオスたちは色々物色しながら歩いている。

 

『来たぜー、おい。ホントに買っていいんだな?』

 

『今日は特売だって話だぜ。買いまくれ!』

 

二人のヒャッハー系な会話を耳にするソルディオス。

 

「…なんか、バーゲンやっているらしいぞ。」

 

ソルディオスが2人を見る。

 

「らしいっすね。」

 

だが、そこにはRDしかいなかった。

 

「…あれ?ロザリィちゃんは?」

 

「なんか、どこかに走ってったっすけど…。」

 

「…もしかして…。」

 

ソルディオスたちは特売の場所へ行く。そこには、人混みをかき分けて進んでいるロザリィがいた。

 

「…ロザリィちゃんって、お金に関してあれだと思ってたけど…。…悪く言えば守銭奴なの?」

 

「さすが姉さんだよ…。」

 

しばらくして…。

 

「お肉を手に入れたわ。これで、少しはマシね。」

 

勝ち誇ったような感じでロザリィが来る。

 

「それ、キサラギ産だ…。だからこんなに安いのか…。」

 

300g20円の表示を見て、輝いた目をしているロザリィ以外が”騙して悪いが"された気分になった。もちろん、食品安全省認可のマークがどこにも書いてなかった…。まぁ、あったほうが余計に不安だが…。

 

…………

帰り道

 

「…それ、本当に食べるんすか…?」

 

「仕方ないでしょ…。ロザリィちゃんがあんなに輝いているんだから…。」

 

買い物袋の中にはあの肉が入っており、RDが信じられないような顔をする。ロザリィは軽いスキップじみたことをしていた。

 

「…もしかして、嫌な予感って…。」

 

「おそらく、これっすね…。」

 

ソルディオス達が歩いていると…。

 

「あっ!先輩!」

 

後ろから、可愛い声がする。

 

「…ん?レジーナさんですか。」

 

先日、ソルディオスと同じ場所に配属された、新人のレジーナだ。

 

「買い物帰りですか?」

 

袋を見るなり言ってくる。

 

「はい。…そちらは?」

 

「私は、散歩です。」

 

「そうですか。…お一人で?」

 

「はい。家を飛び出して、一人暮らしを始めたばかりで…。」

 

「そうなんですか。…家を飛び出して?」

 

「はい…。少し父ともめてしまって…。」

 

「人には色々事情がありますからね…。」

 

ソルディオスとレジーナが話す。すると…。

 

「お腹空いたんすけど…。あれからもう2時間くらい経過してないすか?」

 

「いーえ。もう3時間よ。」

 

RDたちが急かす。ロザリィはレジーナを見るなり、眉間に少ししわを寄せていた。

 

「…お子さんですか?」

 

「いえ、違います。お子さんだとしたら、何歳で子供作ったんですか…。」

 

ソルディオスは微妙な顔つきになる。

 

「…明日、色々アシストするのでゆっくり休んでください。」

 

「はい。」

 

「…本当に休んでくださいね?…じゃないと終わらないので…。」

 

「…そこまでハードなんですか…。」

 

レジーナは覚悟する。

 

「それでは、自分たちは帰るので…。さようなら。」

 

「さようなら。」

 

ソルディオスたちは帰る。…が。

 

「…家、こちらの方向なんですか?」

 

「…先輩もですか?」

 

4人で同じ道を歩き、しばらくして家の前に着く。

 

「ここ自分の家なので。それでは、レジーナさん。」

 

ソルディオスが挨拶する。RDたちはおぼつかない足取りで勝手にお邪魔する。

 

「えっ?ここが先輩の家なんですか!?」

 

「えっ?まぁ、そうですが…。まさか、隣ですか…?」

 

「隣のアパートの一室です。うるさいと思いますが、よろしくお願いします…。」

 

「いえ、こちらこそ…。…世間は狭いですね…。」

 

「そうですね…。」

 

二人は互いに挨拶した後、帰宅した。

 

…………

 

「で、こんな短時間で作ったんすか!?」

 

「野菜炒めだよ。ロザリィちゃんのお肉たっぷりの…。」

 

ソルディオスがテーブルの上に、二人のお皿の用意もする。

 

「「「いただきます。」」」

 

三人で食事をする…。が。

 

「ゴフッ…。」

 

しばらくしてRDが倒れる。

 

「RD!大丈夫!?」

 

ロザリィが床で倒れているRDを支えた。

 

「姉さん…。この肉…。やばいっす…。噛めないくらい固いし…食感がおかしいっす…。死ぬのだけは…死んでも…ごめん…で…す…。」

 

RDが遺言を残し、昇天した。

 

「RD…。あんたのこと忘れないわ…。」

 

「いや、まだ生きてるよ。」

 

そのあと、ソルディオスから胃腸の薬をもらい、治った。




次回は3月頃か、2月中旬です。


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Ⅴ話

4月…大変な時期です。


…………

インテリオルグループ社内 

 

「おはようございます。」

 

ソルディオスは出社する。

 

「今日はいつも通り2番ですか。主任はいつも通り何処かに寝ているはずだから…。」

 

ソルディオスは主任のことを気にせず、パソコンを開くが…。

 

「おはようございます。先輩!」

 

「!?」

 

レジーナがお茶を持って立っていたことに驚く。

 

「こんなに早くに…。今日は初めてだから最後に来ると思ってましたよ…。」

 

「いや、初めてだからこそ…です!」

 

ソルディオスは驚く。実際、彼が初めてここに来た時(とは言っても、元から勤めていた設定だが…)は最後だった。だが、ジャック・Oや主任が笑い流してくれた。

 

「でも…。」

 

「?」

 

「まだ朝の5時ですよ…?」

 

だが、忘れてはいけない。ここは超ブラック企業だ。

 

「朝日も登っているかどうかわからない時間帯ですのに…。」

 

「誰よりも早く来る予定だったから、朝の4時にはいました!」

 

「はやっ!?それは早すぎ!」

 

レジーナはソルディオスの言うことをしっかりと聞き、前日、早く就寝みたいだ。

 

「…ところで、仕事を教えたいんですが…。」

 

「あっ、うん。よろしくお願いします!」

 

「あっ、いえ。ジャック・O先輩がまだなので、教えられません…。」

 

「そうなんだ…。」

 

レジーナは少し気を落とす。

 

「…暇なら、主任を起こしてきてくれませんか…?自分、仕事をしますので…。」

 

「…わかったわ。」

 

「助かります。」

 

ソルディオスが言い、レジーナが探す。

 

……ついてない…。もしかして、ここは使えない人が来る場所なのかな…?私、あまり優秀じゃないから…。

 

レジーナはそんなことを思うと、少し悲しい気持ちになった。

 

……やっぱり、家を飛び出して、あまり世間を知らないから…。…お父さん…。

 

レジーナはふと、動かずに考え込んでしまう。

 

「…?どうしました?」

 

ソルディオスが手を動かしながら聞く。ソルディオスは一切パソコンから目を逸らしていない。どうして動かなかったことが分かったのか不思議だ。

 

「…!あっ、いえ!なんでもありません。」

 

レジーナはすぐに考えるのをやめて、主任を探す。

 

……床にもいないし、机の下にもいない…。

 

レジーナはあらゆるところを探すが、主任が見当たらない。すると…。

 

「出社した。」

 

「あっ、おはようございます。先輩。」

 

ジャック・Oが出社する。

 

「あっ!先輩、おはようございます!」

 

レジーナも挨拶する。

 

「ああ。おはよう。…ところで、主任の姿が見えないようだが…。」

 

「レジーナさんにやらせています。毎年のアレですよ。」

 

「あぁ…。アレか…。」

 

ソルディオスが言い、ジャック・Oが納得する。

 

……アレって何!?

 

レジーナは今のを聞いて不安になる。さっき考えていたこともあってか、先輩たちに虐められるのではないかと不安になる。世間知らずだから分からないのだと思っている。すると…。

 

「私が来た時は驚いたな…。」

 

「自分もです。あんなの、思いもしませんでしたよ。」

 

2人が思い出して笑う。そして…。

 

「主任見つかってませんね?ヒントは絶対にいないと思う場所ですよ。」

 

ソルディオスがヒントをくれる。

 

……絶対にいないと思う場所…?…机の中…はあり得ない…。いくらなんでも物理法則完全に無視してる。

 

そうは思いつつも机の中を開けると…。

 

「……。」

 

空。

 

「いえ、いくらなんでもそこは…。」

 

「私も流石にそこは開けなかったぞ…。」

 

「……。」

 

レジーナは2人に言われて、すごく恥ずかしい思いをした。耳まで真っ赤だ。

 

「じゃ、じゃあどこなんですか!仕事にならない!」

 

レジーナが顔を赤くしながら言う。

 

「いやぁ、それを言うと…。」

 

「だな。」

 

2人は顔を見合わせてうなずく。

 

……くぅ〜…!私に恥ずかしい思いをさせといて…!見つけたらただじゃおかない…!

 

レジーナはイラつきを覚えながらも、半分投げやりに適当に開けていると…。

 

「…あれ?そこにいませんか?」

 

ソルディオスが言う。

 

「何がですか?」

 

レジーナは少しイラつきながら聞く。

 

「あっ、いえ…。いない…みたいですね。すみません…。」

 

ソルディオスがすごすごとジャック・Oの近くへ行く。

 

主任…打ち合わせと違うぞ…。

 

そうみたいですね。…でも、主任、約束を破りましたっけ…?

 

いや、仕事は投げやりだが、破ったことは一度もないぞ…。

 

……聞こえてる…。…でも、ここにいる予定だったのね。

 

レジーナは2人がコソコソ会話するのを聞いていた。すると…。

 

……ん?何これ?赤いけど…。…血?が乱暴に塗られた跡みたいな…。

 

レジーナは血痕らしきものを見つける。

 

……なーんて。あるわけが無いし。

 

レジーナはそんなものを気にせず、辺りを探すと…。

 

「あれっ!?データがありません!」

 

「む!?私もだ!」

 

2人が大声を上げる。

 

「えっ?」

 

レジーナは2人の声に驚いた。

 

「前まであったデータが全て空です!しかも、重要な物ばかり!」

 

「私もだ…!パスワードを破られたか…!」

 

「!?先輩!見てください!荒らされた後もあります!」

 

「本当か!?」

 

2人が大慌てで探したり、見たりする。

 

「そ、そうなんですか!?」

 

……なんて。絶対演技よ。

 

レジーナは心配する素振りを見せる。

 

「…社内の費用や、計画、取引も全て抜き取られてます…。」

 

「…社長に見つかったら大目玉だ…。いや、余裕でクビだ…。」

 

「…どうしますか…?これ…?」

 

「…内密に処理する他ないだろう…。」

 

2人が頭を抱える。

 

「……。」

 

……もしかして…。本当…?

 

レジーナがことの重大さに気づき、背中から嫌な汗が出る。

 

「…レジーナさん…。一生のお願いがあります…。」

 

「このことは…。社内に漏らさないでくれないか…?」

 

「土下座もしますから…。」

 

2人が重々しく言う。

 

「は、はい…。バレたら私もクビ…どころか、入ったばかりなので、犯人と間違われてしまいます…。」

 

……本当…なのかな?あの声…。それに、土下座まで…。

 

レジーナが冷や汗を垂らす。まさか、入社して3日でこんなことになるなんて思いもしなかったのだろう。

 

「…そう思ってみれば主任は…?」

 

ソルディオスが主任の隠れていた場所であろうところを探す。

 

「せ、先輩!ここです!」

 

レジーナも協力する。

 

「これ、血痕…ですよね…?」

 

「……。」

 

ソルディオスが言い、レジーナが顔を青くする。

 

「見ろ。ここにもだ。…続いているぞ…。」

 

ジャック・Oが見つける。

 

「…荒らされた後もありますね…。」

 

「主任は犯人ではないだろう。こんなことはしない奴だ。」

 

「と、なれば犯人ともめたんでしょうか…?」

 

「……。」

 

ジャック・Oとソルディオスが話し、レジーナは息を飲みながら聞き、血の跡を目で辿っていく。

 

「いくぞ。」

 

「…あっ!ま、待って!」

 

レジーナが2人についていく。すると、分かれ道があり、そこで血痕が途絶えていた。

 

「…私とソルディオスはこちらを探す。」

 

「レジーナさんはあちらに。」

 

「い、嫌!先輩たちと一緒がいい…!」

 

レジーナが恐怖で首をいやいやと振る。

 

「…仕方ない。ソルディオス、行けるか?」

 

「はい、そのためのソルディオスです。て、マジすか!?」

 

そして、ソルディオスはしぶしぶレジーナと行く。しばらくして、薄暗く、蛍光灯がチカチカ点滅している場所に出会す。

 

「ここ、蛍光灯が古いんです。でも、誰も使わないからって、社長が変えてくれないんです。」

 

ソルディオスが言う。レジーナはずっとひっついたままだ。

 

「この先に部屋があるんですが…。レジーナさん、行けますか?」

 

「嫌!」

 

「まぁ、自分も入ったことがないのでわからないんですが…。」

 

「絶対無理!死んでも行かない!」

 

ソルディオスの後付けでさらに恐怖してしまった。

 

「…分かりました。共に行きましょう。」

 

レジーナが頷き、ソルディオスと共に行く。ソルディオスは全く恐怖を感じて無さそうだ。(もう、この時点で気付いているかもしれませんが、成り行きをご覧ください。)

 

……頼もしい…。先輩…格好良い…。

 

レジーナはソルディオスをジッと見ていた。

 

「どうしました?」

 

「あっ、い、いえ…。」

 

レジーナが俯きながら歩く。すると、部屋の前に立つ。

 

「…ここですね。入りますよ。」

 

「ちょ、ちょっと待って…。」

 

レジーナは深呼吸する。そして…。

 

「大丈夫…です。」

 

「では、入りますよ。」

 

ソルディアスが開けると…。

 

ドサッ

 

ビシャッ

 

中から血塗れの主任が出て来て倒れ、レジーナの顔に飛び血がつく。

 

「……。」

 

2秒ほど沈黙し、状況を理解したと思うと…。

 

「キャーーーーー…!」

 

レジーナの目が恐怖に変わり、思いっきり悲鳴を上げ、床に倒れ込み、後ずさる。だが…。

 

「……。」

 

ズルズル…パシッ

 

「いやぁぁぁぁぁぁ…!」

 

血塗れの主任がズルズルと動き出し、レジーナの足を掴む。

 

「ぁぁ…ガクッ…。」

 

レジーナは気絶した。

 

「…主任?やりすぎじゃありませんか?倒れるだけのはずですが…。」

 

ソルディオスはレジーナが気絶したことに気づかず、主任に言う。

 

「やるんなら本気でやったほうが楽しいだろ!ハハハハハ!」

 

主任がなんとも無さそうに起き上がり、いつも通りに振る舞う。

 

「成功か?」

 

すると、ジャック・Oがドッキリの看板を持って、通路から現れる。

 

「自分、最初本気で心配しましたよ。」

 

「私もだ。」

 

ソルディオスとジャック・Oが笑う。気づけば、誰もレジーナの悲鳴を聞いて駆けつけない。誰もが毎年恒例だと知ってて、心配しないのだ。

 

「まぁ、毎年恒例の新人を驚かせて、緊張をほぐす活動だよね〜。」

 

「でも、今回の足を掴むのはやりすぎだと思いますけど…。」

 

「む?私の時は終わったと見せかけて、後ろから抱きつかれたぞ。」

 

「えぇっ!?それで気絶しなかったんですか!?」

 

「ああ。」

 

「俺が気絶しそうだったよ…。」

 

ジャック・Oが言い、主任が重々しい顔で言う。そう、逆にジャック・Oに襲われそうになったのだ。すると…。

 

「う〜ん…。ハッ!?」

 

レジーナが目を覚ます。

 

「な、何が…。!?」

 

レジーナは全てがドッキリだったことに気づく。ソルディオスたちのアレも演技だったと気づいた。

 

「レジーナさん。緊張はほぐれましたか?」

 

「ほぐれたなら仕事だぞ。」

 

「シャワー浴びて来ようかぁ〜。」

 

ソルディオスとジャック・Oが言う。主任はシャワーを浴びにどこかへ行った。

 

「ほぐれた…?ほぐれたかどうかですか…?」

 

「あれっ?もしかして…怒ってらっしゃる…?」.

 

「私が…一体どれだけ心配して、心臓が止まりかけたか…!」

 

レジーナは確実に怒っていた。いくらなんでもやりすぎだ。

 

「…ソルディオス、合図したら逃げるぞ…。」

 

「はい…。」

 

ジャック・Oとソルディオスがコソコソ話す。

 

「この…!ばかぁぁぁぁ!」

 

「逃げろっ!」

 

「はいっ!」

 

「待ちなさい!逃がさない!」

 

笑いながら逃げるジャック・Oとソルディオスが走る。レジーナは怒ってはいるが、どこか安心したような顔で追いかけた。

 

……先輩たちは私のことを思ってやってくれた。…やりすぎたことはあるけど、皆んな面白くて良い人たち。役立たずなんかじゃない。いつまでも、この部署で働きたい!

 

レジーナはそんなことを考えながら走るのだった。




終わりです。次回は5月かな?


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六話

もうそろそろ夏か…。


…………

インテリオルグループ社

 

「おはようございます。」

 

レジーナ、入社。

 

「ふむ…そうか…。」

 

「どうですか?」

 

「ま、良いんじゃないのどうでも。」

 

先輩方が相談している。

 

「何しているの?」

 

可愛い仕草で輪の中に入った。

 

「む。いや、別に。仕事だ仕事。」

 

「そうですね。」

 

「じゃ、頑張って〜。」

 

各々が解散する。

 

……もしかして…ハブられてる…!?いや、でも入社して数週間で馴染むのには時間がかかるよね…。…よし!輪の中に入れるように頑張る!

 

レジーナは健気でへこたれない。

 

「先輩!お茶です!」

 

「そうか。そこに置いておいてくれ。」

 

「はい。…ところで、さっき何を話して…。」

 

レジーナが聞こうとしたが…。

 

「さてと。ソルディオス、出張へ行ってくる。」

 

「あっ、はい。行ってらっしゃい。」

 

ジャック・Oがお茶をグビリと飲んだあと、部署から出た。

 

「……。」

 

レジーナは突っ立ったままだ。

 

……明らかに避けて…。…いや、多分、タイミングが悪かったんだよね。

 

レジーナは少し頭を振り、そうだと決め付ける。

 

「主任さん!お手拭きです!」

 

「ありがとね〜。おじさんになると、意外と欲しいんだよこういうの。」

 

「そうなんですか。」

 

主任が良い、レジーナが微笑む。

 

「…ところで主任…。」

 

「ちょっとトイレに行ってくるよ。ソルディオス、頼んだよっ!」

 

「あっ、はい。がんばります。」

 

主任がパソコンを持っていった。明らかにトイレではないだろう。

 

……やっぱり…。いや!でも、まだ一人いる…!

 

レジーナがソルディオスの所へ行く。

 

「先輩。」

 

「どうかした?わからないところでもあった?」

 

ソルディオスは指を動かし、パソコンから目を離さずに言う。

 

「さっき、何を話して…。」

 

「べべべ別に…!?な、なんでもないよ。あはははは…。」

 

「先輩…。キーボードを打ち間違えて大変なことになってますよ…?」

 

「おっと、いけないいけない…。」

 

すぐに修正できるのだから、有能なのだろう。

 

「ところで、先ほど…。」

 

「おっと、他の場所に用事ができた。この部屋にいてくれる?あと、あそこに溜まっている仕事全部片付けちゃって。」

 

「えっ。あっ、はい…。」

 

「ごめんね。」

 

ソルディオスが大急ぎで出る。

 

……嫌われてるのかな…?やっぱり…。…ううん。でも、この前の時でそんなことをする人じゃないって分かってる。…分かってるけど…。

 

「お父さん…。」

 

レジーナが呟く。そして、仕事を片付けようと椅子に座ってパソコンを開いた。

 

…………

定時

 

カァー…カァー…

 

外でAC3のオープニングに出てきたカラスが鳴く。

 

「定時…。結局、誰も帰って来なかったなぁ…。」

 

レジーナが悲しそうに呟く。

 

「仕事…終わったし、帰ろうかな…。」

 

あの量を終わらせたのだから、新人にしては優秀な方だ。少しションボリした感じで立ち歩き、タイムカードを押した。

 

「はぁ…。」

 

ため息をつきながらエレベーターへ向かうが…。

 

「故障中…。」

 

そんな彼女に畳み掛けるような不運が起こる。

 

「…階段…。」

 

エレベーターの隣にある階段を見る。

 

「……。」

 

灰色のコンクリートの壁、錆びた鉄の手すりや床、電灯などもチカチカしている。風も入り、少し怖い感じだ。現在21階。

 

……でも、行かなくちゃ…。

 

少し怖いが、健気にも階段を使って降りる。

 

……他の階ってどうなっているんだろう…。先輩たちが言うには、他の部署の人たちがいるみたいだけど…。…いるよね…?

 

レジーナが階段を降りながら思う。すると…。

 

バッ!

 

「むぐ!」

 

何者かに猿轡をはめられ、袋の中に入れられる。そして、どこか運ばれる。

 

……怖い…!助けて…!ジャック先輩…!ソルディオス先輩…!主任…!…お父さん…!

 

そんなことを考えていたら…。

 

バッ!

 

「!?」

 

袋から出され、猿轡も取れた。

 

「歓迎会だ。」

 

「もう少し手荒じゃないことが出来ないんですか…?」

 

「この方が楽しいだろ!ギャハハ!」

 

「主任、何故私がここに呼ばれたのか意味が不明です。社内での飲酒は禁じておりますので、飲酒した場合は厳罰を下します。」

 

そこにいたのは、ジャック・O、ソルディオス、主任、キャロル・ドーリーだ。小さな部屋だが一応歓迎ムード、各々の席にはケーキなどが置いてある。

 

「歓迎…?」

 

「ソルディオスの案だ。まぁ、ソルディオスも歓迎を一応されたから、君にもしてあげたいそうでな。」

 

「ドヤァ。」

 

「ま!いつかする予定だったけどね!ギャハハ!」

 

「新人を歓迎する心意気は立派です。」

 

「あれ?キャロリンが褒めるの珍しいねぇ。」

 

各々が騒ぐ。

 

「歓迎をする暇がなかったから、会社でやることになっちゃいましたけど…。ほら、ここブラックですから…。」

 

「ソルディオスさん。次会社を非難することを言いましたら、謹慎処分を下します。」

 

「……。」

 

キャロル・ドーリーが言い、ソルディオスが“ほら”と肩をすくめる。

 

「まぁ、新人の歓迎を兼ねて…乾杯!」

 

主任が言い、水やらお茶やらジュースやらを掲げる面々。

 

「…先輩…。」

 

レジーナは心が温まるのを感じた。

 

「明日からも頑張ろう!」

 

「…!ソルディオス…。」

 

「はい。なんでしょう?」

 

「明日は会議だぞ…。…書類、終わっていたか…?私は今回忘れていた…。ソルディオスや主任に手伝ってもらいたい…。」

 

「……。」

 

シーン…

 

ジャック・Oの一言で静まり返る。キャロル・ドーリーは黙々とケーキを食していた。

 

…………

翌朝

 

「やっと…。終わった…。」

 

三人がやっと終わらせる。

 

「新人は返したけど…。俺たちがこれじゃぁ本末転倒だね。ギャハハ…はぁ…。」

 

「徹夜ですね…。ちなみに、これで2日目ですね…。」

 

「ブラックだな…。」

 

三人は徹夜で終わらせたのだ。

 

「主任さん、少し仮眠を…。」

 

「Zzz…。」

 

「…ジャック・O先輩…。」

 

「先に寝ていろ。私が起きている。」

 

主任は既に机の下で寝いた。ソルディオスも床で仮眠する。

 

「……。」

 

ジャック・Oも寝てしまった。

 

…………

 

「おはようございます!」

 

レジーナ、出社。歓迎会もあって嬉しかったのか、元気が良い。

 

「もう出社時間か…。」

 

「むぅ…。」

 

「……。」

 

ジャック・O達が起き出した。

 

「徹夜でやったんですか?」

 

レジーナが書類を見る。

 

「ああ…。あとは会議だけだ…。」

 

「会議…。」

 

「新人も参加させるみたいなので、これ、覚えておいてくださいね…。」

 

ソルディオスがレジーナにずっしりとした書類を渡す。

 

「こんな量…!そんなの聞いてない…!」

 

「あぁ…。それは今日の朝1時ごろだけど、キャロル・ドーリーさんが伝えてきた…。社長の無理難題らしい…。」

 

「そんな…。」

 

レジーナが無茶のような顔をする。

 

「かつてクリス・ミウラ先輩もそのようなことを言って、覚えずに会議に出ましたが…。変わり果てた姿で帰ってきました…。」

 

「薄汚い…清掃カートに運ばれて…。」

 

「何があったんですか!?誰ですか!?その先輩!?今いないですよね!?怖いです!」

 

「まぁ、そんなことは良いとして、覚えないと恐ろしい目に会うのは確かですので、覚えておいてくださいね。」

 

「わ、分かりました…。」

 

レジーナは死ぬ気で覚えるのだった。




遅れました…。


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seven話

春…桜…。


…………

 

「そろそろお花見の時期ですね〜。」

 

「そうだな。」

 

「鮮やかな青空…桜舞い散る春の丘…暖かなそよ風が優しく吹き、美味しい食べ物を食べて楽しく親睦会を開く…はずなのに何の飾りっけもないオフィスで過ごすなんて…。」

 

「喋ってないで手を動かしてねぇ〜じゃないと仕事終わらずに今日“も”会社で泊まることになるからさぁ。」

 

「「了解。」」

 

久々に仕事をしている。結局、会議は何とかなったらしい。

 

「はぁ…。若い者は良いですよね〜。」

 

「「?」」

 

「レジーナさん、今日は休みって…絶対に遊びに行くんですよ。お花見ですよ。お花見。」

 

「まぁ、貴重な20代前半の春だ。別に何をしようが、我々は口出すべきではない。仕事を終わらせていれば、文句などない。」

 

「まぁ、そうなんですけど…。…でも、今やっている仕事ってどこかの部署の後始末ですよね。これ…。あ、また開発部のD・Gさんがミスしています…。総務部は一体何をしているんでしょうかね…。」

 

「……。」

 

ソルディオスが言い、ジャック・Oが何も言わなくなる。何故なら…。

 

「……。仕事は捗っているようだな。」

 

「ええ、そうでしょうね。どこかの馬鹿がミスして、こんなところに押し付けるから…採用担当の人事部とかどうなってるんでしょうかね。明らかに人選ミスですよ。」

 

「…そうか。」

 

「本当ですよ!前もキャロル・ドーリーさんから無茶な…。……。」

 

ソルディオスがパソコンを見ていた人を見た。

 

「…人事部のハスラー・ワンだ。」

 

「まことに申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」

 

ソルディオスが瞬時に土下座した。

 

「ど、どうか島流しにあったトリエンデ先輩と同じ目だけは…!流石にアイスランド(グリーンランド近くの島)は勘弁です…!どうか…どうかお慈悲をください〜!」

 

「島流しにした覚えはない。それにここの所属に所属しているはずだ。しかもここの部署はキャロル・ドーリーが管理している。私は手を出せない。」

 

「良かった…。」

 

ソルディオスが心底安堵する。

 

「で、本人のキャロル・ドーリーも共にいるが…。」

 

「ソルディオスさん。先ほどの発言についてはこの後しっかりと話し合いましょう。飛ばされたい場所などがあれば、少しは考慮にいれますが。丁度アイスランドで人員が足りない申請が…。」

 

「のわーー!まぁぁことにすみませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

ソルディオスが土下座する。下っ端は辛いよ…。

 

「…皆さん、お集まりですね、」

 

「「……。」」

 

「はい…お集まりでございます…。」

 

ジャック・Oと主任は知らん顔だ。まぁ、実際自業自得なのだが…。

 

「明日から配属される新人がおります。」

 

「最近、やっとレジーナさんが仕事を覚えてきたのに…。」

 

「ソルディオスさん。何かおっしゃいましましたか?」

 

「い、いえ!何でもありません!」

 

ソルディオスは本気で飛ばされそうに感じたので、これからは文句を言わない。

 

「自己紹介をどうぞ。」

 

「『エマ』です。なんでもします。」

 

「以上だ。我々は失礼する。」

 

新人を置いて行って、人事部の2人が行こうとしたが…。

 

「残念だが、未成年が来るところではないな。」

 

ジャック・Oが鋭く言った。エネがビクッとした。

 

「経歴詐称…それは罪に問われる。」

 

「え?この子、未成年なんですか?何歳くらいでしょうか…?」

 

「…17です。」

 

キャロル・ドーリーが諦めたように、平常の声で答える。キャロル・ドーリーは知っていて、黙っていたのだ。

 

「ふむ…。17歳をこの会社に置いておく訳にもいかない。罪には問わない。その代わり、すぐに解雇するがな。」

 

ビクッ

 

「お、お願いです!ここで働かせてください!」

 

ハスラー・ワンが言うと、エネが必死に雇ってもらおうと言う。

 

「しかし、会社に置いておけない。未成年を働かせたと報道されれば会社が罪に問われる。」

 

「そ、そんな…。」

 

「仕方ないけどね〜。ここは子供が来るような場所じゃないよ〜。」

 

「人事部の言うことが最もだ。大人になってから、また来ると良い。その時は歓迎する。」

 

「……。」

 

周りの先輩や人事部が言う。キャロル・ドーリーは何も言わなかった。エネはどうしようもないことで泣きそうになっていた。

 

「……。」

 

…………。

 

すると、ソルディオスがエネの前に出る。

 

「どうして、この会社に入りたいと思ったの?」

 

ソルディオスは大体の予想がついていた。人事部の2人からしてみれば、面接と同じことだと思っていたが…。

 

「家族が…病気で…。…お金がなくて…。手術費が必要で…。」

 

ゆっくり、ポツリポツリいう言葉を全員が待ってあげる。面接の時に言っていた内容とは全く違った。

 

「どうしても…お金が必要で…。」

 

「やっぱり…。」

 

ソルディオスが哀れな気持ちになる。

 

「ソルディオス、何故分かった?」

 

ジャック・Oが聞いてきた。

 

「わざわざブラックで有名なこの会社に…。しかも未成年で働きたいって言うような子ですよ?17と言えば、青春を満喫出来る歳じゃないですか。そんな子が働こうとするってことは結構なお金が必要としている合図ですし。恐らく、そんなに貧乏なら保険に入っているお金もないでしょうから、薬もばかになりませんと思いますし。私たちの治療費は保険から引かれていますからね…。この子にとっては桁が違うんですよ…。」

 

ソルディオスは人事部の2人やジャック・O、主任の目を見て言う。

 

「それにスーツを見てください。目立たないようにしていますけど、所々に汚れがついています。一着しかないスーツ。色々な、様々な会社へ行ったけど雇ってもらえず、頼みの綱がもうここしかない…最後の希望をかけた場所なんですよ。ここ。」

 

「…そうか。」

 

ハスラー・ワンが呟く。

 

「…仕方ない。“20歳の新人”…この部署は大変だ。覚悟をしたほうが良い。」

 

ハスラー・ワンが一言言った後、人事部へ戻って行った。

 

「…私から言えることは一つ。もし年齢経歴共に詐称とわかっても私たちは一切の責任は取りません。明日からは20歳と同じように接します。ここに働く者として接します。以上です。」

 

キャロル・ドーリーも人事部へ戻って行く。

 

「…まぁ、そんな事情もある。選別だ。取っておけ。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

エネが缶コーヒーを渡された。

 

「ま、仕事が出来れば文句ないしね〜。」

 

「…まぁ、最初はお茶汲み係だと思うけど、頑張って。ここにはいないけど、少し年上の先輩お姉さんに色々教わってね。」

 

ソルディオスが言った後、ジャック・Oと主任がパソコンに張り付いて仕事をする。

 

「新人の君は明日からでしょ?今日はもう帰って、沢山休んで。明日からはハードな仕事だから…。…二十歳の新人さん。」

 

「はい!」

 

エマは目一杯瞳を輝かせて頷いた後、嬉しそうに帰って行った。

 

「…はぁ〜…。どうしましょうかね…。」

 

「とても17にやらせるような仕事ではないが…。…無理をしそうだな…。」

 

「ま!そこは先輩である俺たちがカバーするしかないでしょ〜。ギャハハハハハ!」

 

「では、無理してそうな顔だったり、少しでも変化があった場合は気をつけましょう。明日はレジーナさんも出社しますし。」

 

ソルディオスたちは各々頷くのであった。

 

…………

おまけ レジーナ

 

「お父さん、美味しい?」

 

「あぁ…。とてもおいしい…。あんなに可愛かったお前がもう正社員なんてな…。」

 

桜の木の下で、レジーナとトルーパーがお花見をしている。家族水入らずだ。

 

「泣かないでよ。お父さん。…お父さんが帰って来なかった理由、先輩たちを見て分かったから…。お仕事って、あんなに大変なんだって。」

 

「すまんな…。中々帰れなくて、心配をかけたろう…。それに、家事も任せっきりで…。」

 

「ううん!お父さんも大変だったって分かったから!」

 

レジーナは太陽のような笑顔になる。わだかまりが解けたようだ。

 

「ほう…。ところで、彼氏は出来たか?孫の顔が見たいな…。」

 

「早い早い…。」

 

レジーナは手を横に振った。

 

「なら、先輩たちはどんな奴だ?」

 

「んーっと…。変人だけど、優秀で優しい人たち!」

 

「ほう…。」

 

レジーナとトルーパーは桜の舞い踊る丘で、楽しそうに話していた。




花見…残業…。


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