魁!兄貴前線! (じゃすてぃすり~ぐ)
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零の章『プロローグでありマッスル』
プロローグなんで短いですがどうぞ。
―遥か銀河の彼方・・・。
大銀河ボディービルコンテストで10連覇を成し遂げた男がいた。
その名は『ボ帝ビル』。筋肉こそ至高であると言う文化を持つビルダー星の帝王である。
だが彼は、その名誉ある称号に固執するあまり、とんでもない暴挙に出てしまう。
母星のビルダー星にあるプロテインが底を尽き始めた為、それを確保する為に惑星を侵攻し始めたのだ。
蹂躙され、征服される惑星。そして、建設されたプロテイン採掘プラントで虐げられる民達。
ボ帝許すまじと、立ち上がり、反逆を始めたものもいたがビルダー軍の力は強大で、悉くビルダー軍に返り討ちにされた。
万策尽きた人々は、天に祈った。誰かこの暴君に天誅を下してくれる者はいないのか?と。
その人々の祈りに応えるかのように天から二柱の神が降り立った。
正義と筋肉の神『イダテン』と、正義と美の女神『ベンテン』の二人である。
彼らは、お供を連れビルダー軍に戦いを挑んだ。
二柱の神と硬い絆で結ばれたお供達は、その勇気と根性、そして筋肉でビルダー軍の精鋭を撃破していく。
そして、本拠地であるビルダー星での決戦。天を、地を、筋肉を揺るがす激しい戦いの末、二柱の神はボ帝を遂に討ち取る事に成功する。
ボ帝が倒れた事により、ビルダー軍は壊滅。こうして銀河に平和が戻ったかに思えた・・・。
しかし・・・。
―???
夜、何処までも続く暗闇。
その漆黒を引き裂くように、一筋の光が飛んで来た。
炎を上げ、光を放ち飛んできたそれは、この荒れ果てた大地に向けて落ちていく。
―ドォン!
そして、轟音が静寂の空間に響いた・・・。
この時、『この世界』の人々は誰も知らなかった。
「こ・・・、これは・・・!何と言うすばらしい『筋肉』だッッ!これならば、私の完璧な『戦術人形』を作る事が出来るッッ!!!」
この飛来してきた『モノ』が『新たなる脅威』を生むと言う事に。
そして、ボ帝を倒した二柱の神である『イダテン』、そしてイダテンと共にビルダー軍と戦ったお供である『アドン』と『サムソン』も知らない・・・。
「『時空のひずみ』が、ビルダー星付近で発生しただって?」
「はい、ひずみ自体は今の所対したことはないのですが、念のために調査してほしいとの事です」
「また、兄貴と出撃じゃあ!楽しみじゃのう、サムソン!」
「そうじゃのう、アドン!昨日買った勝負パンツを兄貴にお披露目しちゃうぜぇ!!!」
「な、何だ!?いきなりひずみが!」
「うおおおお!?何じゃあ!?」
「引っ張られるぅ!?」
『時空のひずみの調査』と言う何気ない任務が、
「わーちゃん、大変なの!空から筋肉ムキムキマッチョマンの変態が3人落ちてきたの!!!」
「え、何それは・・・?(ドン引き)」
「ハァ!?何言ってんのアンタ!?」
彼らを異なる世界へと誘う事を。
そして・・・、
「これは・・・ビルダー軍の技術!?馬鹿な、ボ帝はあの時倒したはず!」
終わったと思っていた戦いは終わっていなかった事を・・・、彼らはまだ知らない。
『兄貴』と『少女』。決して交わる事のない、二つが交わった時。壮大な物語は幕をあげるッッ!!!
『超兄貴』×『ドールズフロントライン』
魁!兄貴前線!
始まりマッスル。
やっちまいました、新連載(白目)
しかも、超兄貴とドルフロのコラボって・・・何でこんなの書いちゃったんだろうオレ(今更)
亀更新になるかもですが、この作品も頑張って書いていきたいと思います。
それでは~。
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壱の章『それは不思議な出会いでありマッスル』
色々駆け足気味なところがありますが、温かい目でお願いします。
―天界。
「『時空のひずみ』が、ビルダー星付近で発生しただって?」
天界のトレーニングルーム。そこでベンチプレスをしながら、青い髪の歪みねぇボディをした男は報告に来た天使にそう問いかける。
男の名は『イダテン』。かつて、銀河で猛威を振るったビルダー軍を打ち破った二柱の神の一人である。
「はい、ひずみ自体は今の所大したことはないのですが、念のために調査して欲しいとの事です」
「そうだな、放っておいて近くの星を飲み込むまでに成長したら一大事だ」
天使の答えに、イダテンはそう答えると、ベンチプレスを終え立ち上がると、近くにおいてあったタオルを手に取り、鍛え上げられたボディに滴る汗を拭いた。
「その依頼、引き受けた。シャワーを浴びたらすぐに出る」
そう言って、イダテンはシャワールームへと向かった。その様子を影で観ていた二人の男。その姿は異様だった。スキンヘッドに、腕輪とブーメランパンツのみと言う格好。そして、そのボディは歪みねぇマッチョであった。
「聞いたか、アドンよ」
「応とも、サムソン」
アドンとサムソン。お互いをそう呼び合った二人は、顔を見合わせる。
「兄貴が行くのならばワシらも行くのが道理、つまりはまた兄貴と出撃じゃあ!楽しみじゃのぅ、サムソン!」
「そうじゃのう、アドン!」
そう言葉を交わし、やいのやいのとはしゃぐ二人。何を隠そう、彼ら二人はイダテンのお供である。
ビルダー軍に滅ぼされた星の王子であった二人は、囚われていた所をイダテンに助けられ、以来イダテンのお供として宇宙を駆けたのである。
「昨日買った勝負パンツを兄貴にお披露目しちゃうぜぇ!」
「パンツよりも、鍛え上げた筋肉じゃあ!この魅惑のマッスルで兄貴をメロメロにしてやるんじゃあ!」
だが、忠誠心とかが変な方向に振り切れているが・・・まぁ、それは些細な事だろう。
「兎に角、早速天界のお偉方に直談判して・・・」
「何だ、お前達ここにいたのか」
鼻息を荒くしながら、まくし立てるアドンの背後に声がかかる。振り向くと、シャワーを浴び終えたイダテンが立っていた。
「兄貴どうしたんで?」
「ああ、今回のひずみ調査の事なんだが一緒に来るか?」
「いいんですかい!?兄貴!」
食いつくアドンに、イダテンはああ。と答えた。
「ひずみの場所がビルダー星に付近にあるらしいからな。ひょっとしたらビルダー軍の残党と鉢合わせする可能性もあるから念の為にと思ったんだ。
下手な護衛よりも、一緒に戦ってきたお前らならば安心して背中を預けられるからな」
「う、うおおおおおお!兄貴ィ、なんちゅう心意気じゃあ!!!」
「やっぱり兄貴は最高じゃあ!一生ついていきますぜ!!!」
イダテンの言葉に、感涙するアドンとサムソン。男泣きをしながらそのままガッシ!とイダテンに抱きついた。・・・ぶっちゃけその絵面は気色悪いの一言に限る。
周りのギャラリーは勿論、その光景を見てドン引き。そりゃ当然だ。
男同士で抱き合う光景など誰が見たいだろうか?
だけれども、イダテンは彼らを引き離そうなどはせず、しょうがない奴らだな。といいたげに笑っていた。イダテンの名誉の為に言っておくが、彼は
ビルダー軍との戦いでアドン達には随分と助けられたのだ。いくら神であるとはいえ、イダテン(それとベンテン)だけではビルダー軍に太刀打ちできなかっただろう。
そして、もう一つの大きな理由・・・それは・・・、
慣れたからである。
もう一度言う。
慣れたからである。
初めてアドンとサムソンと出会った当初、イダテンは彼らに抱きつかれてかなりドン引きしていた。
だけれど、ビルダー軍との戦いを続けるうちに兄貴と舎弟としての絆が深まっていった。その結果、イダテンは彼らに抱きつかれても動じなくなったのである。
「グ腐腐腐腐腐・・・、いい絵が描けそうだわ・・・」
「申し訳ないが、俺とアドン達をネタにBLモノを描くのはNG」
だが、自分達がBLのネタにされるのは嫌なのであった。げんなりした顔で、腐女子な女神にツッコミを入れるイダテン。
そんでもって、準備を済ませた後イダテンはアドンとサムソンを連れて、ビルダー星付近へと向かうのであった。
―それから暫くして・・・。
「これだな、報告にあった時空のひずみは」
ビルダー星付近、そこにたどり着いたイダテン達は揺らめくハンドボールほどの球体のようなものを見ていた。
これが、時空のひずみである。今、ここにあるひずみはまだ小さいものの、大規模なものとなれば星はおろか銀河をも飲み込んでしまうほどの凄まじい力を秘めているのだ。
そうならない為にも、ひずみを調査、封印し天界に持ち帰るのである。
「兄貴ー、周囲を警戒していましたがビルダー軍の残党はいませんでしたぜ」
「そうか、ご苦労だった。・・・まぁ、今の所小さいけどいつ大きくなるか分からないからな、封印して天界に持ち帰ろう」
残党の襲来に備えて周囲を見て回っていたアドンが戻ってきた。どうやら異常はないようである。
ビルダー軍の残党がいないとならば、心置きなくひずみの封印が出来る。残党と鉢合わせして、戦闘になった挙句ひずみが暴走・・・などと言う最悪の事態は回避出来たな。とイダテンは胸中で安堵し、ひずみの封印作業に移った。
「まぁ、これで終わりかのぅ。・・・しっかし、ビルダー軍の残党もいないし案外あっさりした終わりよなぁ」
「それほどこの銀河が平和になったって事じゃ。何事も平和が一番だぜ」
イダテンの背中を見ながら、笑いあう二人。このまま何事もなく終わるかと思っていた。
その時だ!
「な、何だ!?いきなりひずみが!?」
「兄貴!?どうしたんでさぁ!?」
何か異変があったのだろう、叫ぶイダテンに問いかけるアドン。それと同時に、ハンドボールほどだった大きさのひずみが大の大人を飲み込めるほどに大きくなったのだ。
「うおおおおお!?何じゃあ!?」
「引っ張られるゥ!?」
ブラックホールのように、吸い込もうとしているひずみ。それを3人は踏ん張って堪える。・・・だが、その力は予想以上に強く、次第に引っ張られていき・・・、
「「「うわああああああああああああああ!!!?」」」
ひずみに3人仲良く吸い込まれてしまったのだ。3人を吸い込んだ後、ひずみは消滅し、後は静寂の宇宙のみが残ったのであった。
―地球のとある場所。
荒野、大地は荒れ果て草木も枯れたこの地を、25人の武装した少女達が駆けていた。
ハンドガン、ライフル、サブマシンガン、アサルトライフル・・・各々が自らの手にその銃器を持ち荒野を駆ける。・・・これらを見れば、少年兵か何かなのだろうか?と思うだろう。だが、よく見て欲しい。
5人ずつ同じ顔なのである。まるで、5つ子か何かのように。・・・正確に言えば、彼女達は人間ではない。
―戦術人形
とある事件と、第三次世界大戦によって荒廃した地球における戦場の主役達だ。パッと見普通の人間のように見えるが、体は機械で出来ており常人の倍ほどの身体能力を持っているのである。
機械でありながらも、表情は豊かであり、人間と同じモノも食べる事もできるのだ。
『こちら、G19地区基地。01部隊、応答願う』
「01部隊、聞こえているわ。どうぞ」
赤みがかった長い茶髪の一房をリボンでまとめた気の強そうな少女が、聞こえてきた通信に答える。
『わーちゃん、最近どうなん?』
「特に異常はないわ。『鉄血の連中』やテロリスト共の影も形もない、だけど油断は出来ないからもう少し偵察を続けるわね。・・・後、わーちゃん言うな」
『いやぁ、スイマセ~ン』
「はぁ、もういいわよ。通信切るわね、指揮官」
通信機から聞こえてくる間の抜けた声に嘆息しながら、わーちゃんと呼ばれた少女・・・『WA2000』は通信を切った。
「え~、まだ続けるの~?」
「当たり前でしょM9?それが任務なんだから」
金の長い髪に、紅いカチューシャとフリフリの洋服を着た少女・・・『M9』にWAは呆れ顔でそう言う。
「だって、奴らも居ないのならこれ以上偵察続けたって意味ないのー!早く帰って買い物がしたいのー!」
「意味無いってアンタねぇ!もし、偵察怠って潜んでたテロリストとかを見つけそこなってたらどうするの!
隊長であるアタシが怒られるんだからね!!それに買い物ならオフの時だって行けるでしょうが!」
ギャーギャーと罵り合うWAとM9。こう言う事は彼女達、「01部隊」にとっては日常茶飯事であり隊員たちであるほかの人形は「またか」と言いたげにその光景を見ていた。
「もういいなの!私だけでも帰るなの!いこ、ダミーちゃん達!」
「勝手にしなさいよ!」
やがて、M9が頬を膨らませ自身のダミーを連れて基地へと向けて帰っていく。WAもまた、そっぽを向いてM9に言った。
ちなみにダミーと言うのは、ダミーネットワークシステムによって動く『ダミー人形』の事である。主となる戦術人形と戦闘能力は同等であるが演算能力は劣っている。
なお、主である戦術人形が強くなる事で最大4体まで使役する事が可能となるのである。
・・・話がそれたので元に戻そう。
帰っていくM9を、誰も止めようとはしなかった。する意味がないからだ。
何故なら、M9は口論してへそを曲げて帰ろうとしてもすぐに不安になり、こちらに戻ってくるからである。これもまた、01部隊のいつもの事である。
「わーちゃーん!皆ー!大変なのーーーーー!!!」
「誰がわーちゃんよ!!!」
暫くして、血相を変えたM9がこちらにやって来た。わーちゃん呼ばわりされ、激昂するWA。これを見たWAを除いた01部隊の面々は、「あれ?」と首をかしげる。
なぜなら、いつもは半べそをかくか、大泣きしながらこちらにやってくるはずなのに、大慌てで来たのである。
何があったんだろう。と同じ部隊である、『MP5』が問いかけた。
「何があったんですか?」
「そ、空から、空から筋肉ムキムキマッチョマンの変態が3人落ちてきたの!」
「え、何それは・・・?(ドン引き)」
「はぁ!?何言ってんのアンタ!?」
M9の言葉に、MP5は軽くドン引きしながら、WAは呆れ半分で反論した。
「ムキムキマッチョ・・・!それは本当ですか、M9ちゃん!」
「ホントぶれないね、9Aちゃん」
何故かムキムキマッチョの単語で反応したのは、ぽわぽわして不思議系な戦術人形『9A-91』。彼女は他の9A-91と違い、マッチョマンが好きと言う変わった性癖を持っている。
M9の言っていたムキムキマッチョマンに興味津々な彼女に苦笑いでそういうキツネ耳のオッドアイの少女の名は『G41』01部隊の癒し枠である。
「ほ、本当なの!嘘なんか言ってないの!兎に角着いてきてなのー!」
9Aの言葉に、M9はぱたぱたと走り出す。WA達は放っておこうと一瞬思ったが、M9がそんなデタラメな嘘を言うだろうか?と思いついて行くのであった。
―01部隊移動中・・・。
「ここなの」
M9が指を指した先には、クレーターがあった。まるで大きな隕石が落ちてきたかのようである。
「とは言っても、ただの隕石か何かじゃないの?3人の男が空から落ちてくるなんてそんな、ラ○ュタみたいな話がある訳・・・」
そう言いながら、WAはクレーターの中心を見て固まった。M9を除くほかのメンバーもである。
何故ならばクレーターの真ん中に『それ』がいたからだ。・・・そう、スケ○ヨの如く上半身が地面に突き刺さっている3人の男の姿が。しかも、その内の二人はどういう訳か、ブーメランパンツである。
「「「なぁにこれぇ・・・」」」
「ね、だから言ったでしょ?」
クレーターの真ん中の3人の男達を見て、WA、MP5、G41は眼を点にして呟く。そんな3人に、M9はうそつき呼ばわりしやがってと言いたげにそう言った。その時、
「む・・・うう~ん。何処じゃここは?」
「兄貴は無事なのか・・・?」
ズボっと、ブーメランパンツをはいている二人の男が地面から上半身を引っこ抜き起き上がった。
それを見て、M9を除く4人は再び固まった。何故ならば男二人の上半身は何も身につけていなかったからだ。
・・・つまり、ブーメランパンツ一丁だけ。後は、鍛え上げられたマッシブな肉体のみである。
「「「へ、変態だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」
そんな男達の格好を見て、3人は絶叫したのであった。一方の9A-91は・・・、
「ウホッ、いい筋肉」
うっとりしながらそう呟いていた。・・・本当にぶれない女である。
そんなこんなで、出会ってしまった『少女』と『兄貴』。この出会いから、物語は始まるのであった。
続くッ!
いかがだったでしょうか?
今回、超兄貴勢とドルフロ勢の絡みがあまりありませんでしたが、次回は思いっきり絡ませたいと思います。
ちなみに少しネタバレですが、本作で、WAちゃん達が所属する基地の人形達・・・一癖二癖もある奴らばかりです。どんな奴らなのかは・・・、次回のお楽しみに!
それでは~。
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第弐の章『ファーストコンタクトでありマッスル!』
新年一発目の投稿です。結構、グダグダな上にギャグが少なめな感じですが、温かい目でお願いします。
ではどうぞ。
「「変態?」」
WA、MP5、G41の言葉にピクリ。と反応するムキムキマッチョの二人組みの男。
キョロキョロと辺りを見回し、問いかけた。
「何処にもおらんじゃないか」
「何処におるんじゃ、その変態?」
「「「あんた等だよッッ!!!」」」
すっとぼけた反応に、3人はツッコミを入れる。言われた二人組みは「え!?ワシら!?」と意外そうな表情で言い返した。
「ワシらの何処が変態なんじゃ!」
「そうじゃ、この格好はワシらの普段着じゃ!」
「普段着!?パンイチが普段着なの!?」
「やっぱり変態じゃない!」
憤慨する二人組みに、ツッコミを入れるMP5とWA。そんなやり取りをしていると・・・。
「む・・・う~~~ん・・・」
むくりと、三人目の男が起き上がってきた。こちらは、二人組みのようにハゲてはおらずほどほどに伸びた青い髪に特徴的なティアラをはめた青年だった。
彼もまた上半身裸でマッチョではあるが、こちらはズボンを履いている。
「おお!兄貴、起きたんですかい!?」
「ああ・・・。ここは何処だ?ビルダー星じゃあなさそうだが・・・」
二人組みの片方が、起き上がった『兄貴』なる青年に気づき声をかける。・・・何故かポージングしながら。一方の青年は辺りを見廻しながら片方にそう問いかける。
「それがワシらにも分からんのじゃ。時空のひずみに引き込まれたと思ったら、いつの間にかここにいて向こうの娘っこ達に変態呼ばわりされたんじゃ」
「ビルダー星?時空のひずみ?何を言ってるのかしら?」
「きっと、宇宙人さんだと思うの。だって、空から来たんだし」
WAの言葉に、M9はそう断言する。何を馬鹿な・・・、と一笑しようと思ったが目の前のクレーターといい、その中心地に彼らがいたことといい、あながち戯言とは言い難い。
そんなWAに9A-91が提案をする。
「まぁ、とりあえず保護と言う形で私達の基地に来てもらって詳しい話を聞く・・・と言うのはどうでしょうか?」
「・・・それもそうね。・・・って言うか、9A-91・・・アンタ心なしか鼻息荒いけど、変な事考えてない?」
頷きながらも、ちらりと彼女の顔を見てジト目で問いかけた。なぜなら、9A-91の表情は頬を紅く染めており鼻息が凄く荒かった。・・・何と言うか、発情しているメスみたいに。
「そ、そんな事ないですよぉ!
別に、あの人達の筋肉を触ってみたいとかそんな事思ってませんから!事情聴取がてらに腹筋スリスリしたいとかそんな事考えてませんから!・・・グヘヘヘヘ・・・」
「思いっきり考えてるじゃない!!!」
WAの指摘に、顔を真っ赤にさせてパタパタと手を振りながら反論する9A-91。それを見て、WAはツッコミを入れた。
「これさえなきゃ、普通にいい人なんですけどね9Aさん・・・」
「まぁ、仕方ないよ。9Aちゃんだし」
「おっ、そうだな(白目)」
そんな9A-91を見て、MP5,G41,M9は口々にそう言った。M9にいたっては本来の口癖である「~なの」が消失してしまっている。
―閑話休題・・・。
「ゴホン・・・、と言う事で貴方達をこれからG19地区司令部へと連れて行く事にするわ。貴方達が何者で、何処から来たのかを知る為にもね」
ちょっとぐだぐだしたものの、彼ら・・・謎のマッチョマン三人組(青い髪のマッチョマンはイダテン、スキンヘッドの双子のマッチョはアドンとサムソンと名乗った)をG19地区司令部へと連れて行く事を伝えるWAちゃん。それはありがたい。とイダテンは答える。
「俺達も気がついたらここに飛ばされていて、何がなんだかさっぱりだからな。情報が欲しかった所なんだ」
「話が早くて助かるわ」
肩を竦めながらWAはイダテンの言葉にそう返す。何処かのバーバリアンチックな見た目とは裏腹に、話がわかる奴だな。と3人組を内心で評価しながら。
「す・・・凄い。このハリといい、ツヤといい・・・『指揮官』や『アベさん』達に負けず劣らずの筋肉・・・。エクセレントッ!エクセレントですッッ!!!」
「エクセレントとは嬉しい事を言ってくれるのう!」
「それに、その『指揮官』や『アベさん』達とやらにも会ってみたいのう!」
「是非とも会ってください!(私が)喜びますよ!!」
ふと、アドンとサムソンに喜色満面で語りかける9A-91を見かける。筋肉の何処がいいんだろうか・・・?そう思い、WAは嘆息。
まぁ、何はともあれこの三人組を連れてG19地区司令部へと帰る事を基地にいる指揮官に通信を入れようとしたその時だった。
『01小隊!01小隊、聞こえるか!?』
通信だ。しかも基地の方からである。何事だろうか?そう思い、応答する。
「こちら01小隊、どうしたの?」
『「02小隊」が担当している居住区地域が、鉄血の連中の襲撃を受けている』
「何ですって!?」
通信の声に、WAは驚愕の表情で返す。
『現在、02小隊が民間人を避難誘導させながら応戦してるが・・・何気に(数が多くて)ヤバイですね』
「・・・了解、急いで02小隊の救援に向かうわ」
『頼む、わーちゃん』
「わーちゃん言うなってのに・・・、通信切るわよ」
そう言って、WAは通信を切ると小隊の面々に告げた。
「皆、司令部に帰還するのは後。今から02小隊の救援に向かうわよ!」
「えー!?やっと帰れると思ったのにー!」
WAの言葉に、ぶーたれるM9。そんなM9をMP5が宥める。
「仕方ないですよ、それが戦術人形の仕事なんですから。
・・・でも、どうするんですか?イダテンさん達を連れて行く訳にはいかないですよ。一応、一般人ですし」
「それもそうね・・・。とりあえず、3人はヘリで護送するわ。貴方達もそれでいいかしら?」
「ああ、構わない」
「「ワシらも兄貴と同じじゃ」」
MP5の言葉に、頷きながらWAはイダテン達に提案をする。三人はその提案を快く了承した。・・・後は、
「付き添いを誰にするか・・・よねぇ」
ヘリにイダテン達だけを乗せる訳にはいかないので、付き添いを誰にするかを考える。そこへ、M9が名乗りをあげた。
「はーい!私が行くの!」
「却下」
「何で!?」
だが、即座に取り下げる。抗議の声をあげるM9。ジト目でM9を観ながらWAは訳を説明する。
「アンタ、イダテン達を送り届けた後そのまま帰るつもりでしょ。
そうは行かないわよ、彼らを基地に送った後は私達の所へ直行だからね」
「くっ・・・神は死んだの・・・」
がっくりとうなだれるM9。そんな彼女を尻目に、WAは誰を付き添いにするか考えていた。
―その結果・・・。
「じゃあ、3人の護送頼んだわよMP5」
「はい!頑張ります」
MP5が付き添いをする事となったのであった。イダテンらと共にヘリに乗り込みながらWAと会話を交わす。
そして、ヘリのドアが閉められると同時にヘリが飛び立つ。
それを見届けた後、WA達は02小隊の救援へと向かうべく居住区地域へと向かう事となったのであった。
―そのヘリの内部で・・・。
「しかし・・・、改めてみると荒野ばかりだな」
窓の外から見える荒野を見ながら、イダテンは呟く。その呟きに、アドンも賛同した。
「そうじゃのぅ。町もあるといえばあるが、廃墟が多い・・・。まるで戦争でも起こったかのようじゃ」
「起こったかのよう・・・じゃなくて、実際に起こったんですよ。世界を巻き込んだ戦争が」
「何だって?それはどう言うことなんだ?」
「詳しくは分からないんですけど・・・」
イダテンの問いかけに、MP5が答えようとしたその時だった。
「おい!あれは何だ!?」
ヘリのパイロットが叫ぶ。それと同時に、MP5達は外を見た。
「あれは・・・鉄血の『マンティコア』と『アイギス』の部隊!?」
見えたのは、グリフィンが敵対している『鉄血工造』の戦術人形である『マンティコア』と『アイギス』で編成された大部隊。
それを見て「何故、ここに!?」と疑問を浮かべるも、それはすぐに分かった。
「この進行方向は・・・、司令部の方。・・・って事は、居住区地域の襲撃は囮だった・・・!こうしちゃいられない!早く、指揮官にこの事を知らせないと!」
鉄血の大部隊が司令部に迫る。この緊急事態を、伝えるべくMP5は通信機を手に取り司令部に伝えようとする。
・・・だが、
「嘘・・・何で繋がらないの!?」
「まずいですよ!このままだと、司令部に・・・」
ジャミングがかかっており、全く繋がらなかった。このままだと、司令部が危ない!そんな状況の中、立ち上がった者がいた。
・・・そう、
「俺達が奴らを食い止めよう」
「な、何を言ってるんですか!?殺されちゃいますよ!」
イダテン達である。ただの人間が丸腰で戦術人形に挑む、はっきり言って自殺行為であるイダテン達の行動に、MP5はそう言ってとめようとする。
「娘っ子よ、安心せい!」
「兄貴とワシ等は、数々の修羅場をくぐってきたんじゃ!
その鉄血とやらの事は分からんが、あの程度の集団などに遅れは取らんわい!」
イダテンの代わりにそう答えたのは、アドンとサムソン。何故かポージングを取りながらであるが、そこは気にしてはいけない。
「そう言うわけだ、奴らの相手は俺達に任せて欲しい。行くぞ、アドン!サムソン!」
「了解でさぁ!兄貴ィ!」
「何処までもお供しますぜぇ!」
イダテンがそう言って、アドンとサムソンに号令をかけると共に、MP5とパイロットが制止する間もなくヘリのドアを開け、パラシュートをつけずそのまま飛び降りた。
そして・・・、
―ギュン!!!
「「と、飛んだーーーーーー!!!?」」
そのまま、重力に逆らい飛んだのである。これには、MP5もパイロットも驚きを隠せなかった。
そんな二人を尻目にイダテン達は鉄血の大部隊へと向かっていく・・・、果たしてイダテン達の運命や如何に!?
続くッ!
次回は、鉄血部隊との初戦闘&イダテン達の実力見せとなります!
お楽しみに!
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第参の章『炸裂ッ!メンズビーム!!でありマッスル』
今回、ついにイダテン達が大暴れ!鉄血の明日はどっちだ!?
―G19地区司令基地近く。
ザッザッザッザ・・・。
「こうもアッサリと敵の懐まで来れるなんて、ドリーマーの作戦さまさまよね」
基地へと迫る鉄血の軍勢。その中で、白髪のツインテールの少女・・・鉄血のハイエンドモデル『デストロイヤー』は呟いた。
彼女の仲間であるハイエンドモデル『ドリーマー』が立てた作戦はこうだ。
まず居住区域に、
『こちらドリーマー。デストロイヤー、貴方上手くいってる?』
「勿論よ。上手く行き過ぎて怖いくらいなんだけど」
入って来たドリーマーの通信に、デストロイヤーは答える。
『でも、万が一グリフィンの連中がこちらに気づいて応戦してきたとしても、防御力に定評のあるマンティコアとアイギスで編成された部隊だもの。
よっぽどの事がない限り遅れは取らないわ』
「そこまで言うんなら信じないでもないけど・・・。あれ?」
そうドリーマーに返しながら、視界に映ったモノを見て目を瞬かせる。
空から何かが3つこちらへと飛んできているのだ。あれは何だろうか?鳥?飛行機?そう思っていると。
―キラリ。
何かが光った。それが何なのか、そう思った瞬間である。ぞくり!とデストロイヤーは全身の毛が逆立つのを感じた。
あの光は危険だ。と電脳が警鐘を鳴らす。
「ひぃやあああああああっ!!?」
それからのデストロイヤーの行動は早かった。全速力で光が直撃するであろう場所から離れる。それと同時に・・・、
―ずわっ!?
「うきゃああああああああああああっっ!!?」
白い光が、アイギスとマンティコアで編成された軍隊を飲み込む。その衝撃と風圧で、デストロイヤーの体が浮き吹っ飛ばされた。
そのままゴロゴロゴロと地面を転がり、近くの岩にガツンとぶつかり漸く止まった。
「いったぁ~・・・、何なの今・・・の?」
頭を擦りながら起き上がり、目の前の光景を見て絶句した。
さっきまで自分達と行動を共にしていた、アイギスとマンティコアの大半が消失していたのだ。
何かで抉られたであろう、窪みだけを残して。・・・一体なんだコレは?何なのだ?正規軍の武器?それとも、グリフィンが作った新兵器?
全く何が何だか分からないこの光景に、電脳の情報処理能力がついていかずフリーズを起こすデストロイヤー。
「ふーむ、他愛ないのうメンズビーム一発でこれほどまでとは」
「お前ら、ちと鍛え方が足りんわい」
聞きなれぬ声で、デストロイヤーはフリーズから回復する。恐らく、この声の主は先ほどのビームをぶっ放した張本人だ!
突然の事に驚いたが、わざわざこっちに来るのは好都合!まだ兵力も残っている、あの一撃を放つ前にこちらから仕掛ければ・・・。そう思い、声のした方に視線を向け・・・、
「」
「「「む?」」」
固まった。
彼女の視線の先には3人の男達が浮いていた、しかもムキムキマッチョマンの。
その鍛え抜かれた上半身を惜しげもなくさらけ出しているのだ。青い髪の青年はまだいい、下の方が長ズボンだから。問題はその青年の両脇にいるスキンヘッドの双子らしき男である。
何故ならば、その双子の下にはいているのがブーメランパンツだからだ。
もう一度いう、
ブーメランパンツだからだ。
はっきり言って、通報したっていいレベルである。
・・・と言うか、何で浮いてるんだ?最近の戦術人形は空まで飛べるのか?
3人の男達を見ながらデストロイヤーがそんな事を考えると・・・、
「何じゃ?この娘っこ、ワシらの体をジロジロ見おってからに」
「ワシらのこの肉体に見惚れたのかのぅ」
「な訳あるかッッ!!!」
地上に降りて、変な事をのたまう双子に、ツッコミを入れるデストロイヤー。何が悲しくて、ムキムキマッチョの変態に見惚れなければならないのか?彼女はそう思った。
「あんた達!一体何者なのよ!?」
「む?ワシらが何者なのかとな?よかろう!教えてやろうとも!!!」
デストロイヤーの問いに、双子の片割れはそう言って、大胸筋をビクンビクンさせた。それを見て「ヒェッ!」とデストロイヤーは思わず、上ずった声をあげる。
そして、双子の男はそれぞれサイドチェストとサイド・トライセップスのポーズを取りながら自己紹介。
「ワシはアドン!」
「ワシはサムソン!」
そして、自分の自己紹介が終わった後、二人は蒼髪の青年の脇に移動し、バック・ダブル・バイセップスのポーズを取りながら叫ぶ。
「「そして、ここにおわすお方はワシ等の兄貴であらせられるイダテンじゃあああああああああああ!!!!」」
「・・・滅茶苦茶暑苦しいわね、この二人」
「ははは、でもいい奴らだよ」
そんなアドンとサムソンを見てポツリと零すデストロイヤーに、蒼髪の青年、イダテンは苦笑いで答えた。
んでもって、気を取り直すと睨みつけながら問いかける。
「それで?アンタ達、私達に何か用?まぁ、十中八九鉄血にケンカを売りに来たんでしょうけど」
「まぁな、お前達を止めに来た。この先は、俺達を保護してくれた人達の大事な所らしいんでな。
悪いがここから先は俺達が一歩も通さねぇぜ?」
デストロイヤーの問いに、イダテンはそう答えた。そんなイダテンを、デストロイヤーが鼻で笑う。
さっきのビームで大半は失ったものの、まだまだ多く残っている自分の軍勢をたった三人で止める。何と、阿呆で無謀な事か。そう胸中で嘲笑いながら、デストロイヤーは口を開いた。
「あらそう?だけどお生憎様、この軍勢に3人で勝てるわけないでしょ?」
そう言って、サッと手を挙げる。それと同時に、アイギスとマンティコアがイダテン達を取り囲んだ。そして、そのまま続ける。
「さっきのビームでちょっと驚いたけど、これならビームも撃てないでしょ?
ノコノコとこちらにやってきた自分のマヌケさを呪いなさいな。さぁ!やっちゃいなさ・・・」
―ボグシャアッ!!!(×3)
「い?」
自分の部下達に司令を下そうとした次の瞬間。凄まじい音が、鳴り響いた。3人とも拳を振り切った状態で制止している。
その先には、哀れにもイダテン達と近くにいたが為に、吹っ飛ばされた3体のアイギスが居た。3体ともぐったりとしており、顔、胸とどれも何かに殴られ、へこんでいた。・・・信じたくはないが、この三人は装甲人形であるアイギスをグーパンチでぶっ飛ばしたようだ。
「は?え?ちょ・・・えぇ・・・」
あまりの出来事に理解が追いつかず、眼を白黒させながら狼狽するデストロイヤー。
なぜならば、ここにいるアイギスは特注製。火力の高いライフルの弾丸ですらも貫通できない仕様だったのである。それを目の前の三人のマッチョは素手でぶっ飛ばした。しかも、殴った拳は傷一つついていない。
驚くなと言うのが無理であろう。
「悪いが、俺達はビームだけがとりえって訳じゃねぇんだぜ」
「しっかし、脆いのぅ。ワンパンでノビとるわい」
「これなら楽勝じゃのう」
「な、舐めるなぁ!マンティコア、包囲して銃撃!」
デストロイヤーの指示に、マンティコアが4体躍り出てイダテン達を囲む。
―ズバババババババ!!!
マンティコアのチェーンガンが火を吹く。これには流石にイダテン達も蜂の巣か!?否ッ!!!
「「ポージングバリアー!!!」」
アドンとサムソンがイダテンを守るように、前へ出たかと思うとサイドチェストのポーズを取りイダテンの周りを回り始めた。
すると・・・おお、見よ!マンティコアのチェーンガンを弾いたではないか!
「ぬぅん!この程度!」
「ビルダー軍の攻撃に比べれば屁でもないのぅ!」
「」
回転しながらそう言うアドンとサムソンに、デストロイヤーは空いた口が塞がらなかった。
「今度はこっちの番だ!行くぜ、兄弟!!」
「「応、兄貴!」」
イダテンの掛け声と共に、アドンとサムソンが両腕にドッキングする。そして、両腕を広げ、
「「「ローリング、メンズビーム!!!」」」
3人が叫ぶと同時に、アドンとサムソンの頭頂部から白い光が発射された。直線状にいたアイギスとマンティコアはその光に飲み込まれ、爆発する。
そして、イダテンがグルグルと回る。それと共に、爆発がイダテンの周りに巻き起こる。
やがて、光が収まる頃にはデストロイヤーの部隊は壊滅状態に陥っていた。無事なものはさらに少なくなっている。
「は・・・?え・・・?ウソ・・・」
目の前の光景に、ただ唖然となるデストロイヤー。そんな彼女に、3人の男達は無慈悲に歩み寄り、こう言い放った。
「さて・・・」
「「覚悟は・・・」」
「「「出来てるかのう!!!?」」」
―一方その頃・・・。
「一体何があったのかしら・・・?」
どっかのセーフハウスにて、少しデコが広めな長い黒髪の少女が呟く。彼女の名は『ドリーマー』、鉄血のハイエンドモデルだ。
デストロイヤーとの通信中に轟音がしたと思ったら、通信が途絶したのだ。通信の最中にマヌケにもグリフィンの連中の攻撃にでも巻き込まれたのだろう。ドリーマーはそう判断した。
「まぁ、アイツの事だししぶとく生きてる事でしょ。
・・・にしても、通信機越しに聞いたあの音・・・一体何なのかしら?銃声やロケットランチャーとは違ったみたいだけど・・・」
『ザザッ・・・ザ・・・。や、やっと繋がったぁ・・・』
ブツブツと、呟くドリーマー。あの轟音は一体なんだったのかと考察を立てていると、通信機が復旧したのかデストロイヤーの慌てたような声が聞こえる。
「ん?デストロイヤー?」
『ど、どどどどどドリーマー!助けてぇッッ!!!』
「・・・大きな声出さないでよ。どうかしたの?」
怒声に近い涙交じりの声で叫ぶデストロイヤーに顔をしかめつつ、ドリーマーは問いかけた。
『今、敵に襲われてるのよォッ!味方も全滅しちゃったし・・・』
「は!?ちょ、待って待って!味方が全滅!?特注のアイギスとマンティコアなのよ!?
たかだか、ちょっと『特殊』とは言っても、
味方が全滅・・・。もはやヤケクソ気味なデストロイヤーの言葉に、目を白黒させながらドリーマーはうろたえながらも、デストロイヤーに返した。
『それが出来ちゃってるのよ!しかも、たったの3体・・・筋肉ムキムキマッチョな男性モデルの奴に・・・』
「は?3体???」
『宙には浮くわ、ビームは撃つわ、殴った時のパワーは凄いわ、マンティコアのチェーンガンや、私のグレネードは効かないわでもう散々よ!』
「へ?ちょ、え?何それ?もはやそれ、オーバースペックじゃないの!?そんなスペックの人形を作れる技術、I.O.Pにはないはずだけど・・・」
はっきり言ってオーバースペックも良いとこな、相手の詳細にドリーマーは驚きを隠せない。うろたえてばかりはいられない。早い所、デストロイヤーと合流せねば。
そう思いデストロイヤーに、今いる場所の座標を送るように指示しようとした。
「とりあえず、合流しましょう。貴方が今いる座標を送って」
『うん、分かった。今座標を・・・「こんな所におったのか?」ってヒィィィッ!?見つかったァ!?』
「で、デストロイヤー!?」
どうやら見つかったようである。割り込むように聞こえてきた男の声に、恐怖で上ずった悲鳴を上げるデストロイヤー。
『嫌ァァァァ、来ないでェェェェェ!
ちょ・・・止め・・・ア”ッーーーーーーーー!!!』
―ブツン。
「デストロイヤー!?デストロイヤー!!?」
喉が張り裂けんばかりのデストロイヤーの断末魔と共に、通信が途切れる。
ドリーマーは慌てて、デストロイヤーに呼びかけるが、通信しようにも『ザザザ・・・』とばかりで応答する様子はない。そこから、ドリーマーは恐らくデストロイヤーはやられたのだろう。と判断する。
「こりゃあ撤退するしかないね」
ドリーマーは、そう決断的に言い放った。デストロイヤーが斃れれば、次に狙われるのは自分だと判断したからである。このセーフハウスが相手に突き止められる可能性はゼロに等しいが、もしかすれば通信を逆探知して、ここをかぎつけてしまう。と言う万が一が起きない保障はない。
任務失敗の事を上司であるエージェントとかに咎めらるかもしれないが、例の相手に鉢合わせしてボディを破壊されるよりかはマシだ。
そう思い、ドリーマーは行動を開始した。足が着かないように、重要なものをまとめようとしたその時である。
「「メェェェェェンズ・・・ビィィィィィィィィィィィム!!!!」」
「は?」
天を衝くような雄叫びが天井から聞こえてきた。間の抜けた声と共に天井を見上げると。
こちらに落ちてくる白い二条の光を見た。これはヤバイと本能的に察すると同時に、ドリーマーの行動は早かった。
「どおおおおおおっ!!?」
咄嗟に、フォースフィールドを張りその光を防いだ。が、あまりの出力に苦悶の声と共に、膝をついてしまう。
だが、何とか気合でそれを凌いだ。光が収まったのを見計らって、フォールフィールドを解除する。
「あ、危なかった。持っててよかったわ・・・。一体何なのよ、さっきのビーム・・・は?」
悪態をつきながら、上を見上げると絶句した。
なぜならば、3人の筋肉ムキムキマッチョマンな上半身裸の男が上空を浮いていたからだ。それだけならば大したショックにはならなかっただろう。
問題は、双子めいた2人の男だ。ブーメランパンツ一丁である。どう見ても変態の格好だ。
「・・・えぇ・・・(困惑)」
それを見たドリーマーは、ただただ困惑気味にそう呟くのであった。
続くッ!
悲報、デストロイヤーちゃん、この一件で筋肉ムキムキマッチョマンがトラウマとなる!
次回、ドリーマーにこれほどにない悲劇(笑)が!?
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