ハイスクールD×D 案①『遠坂凛に転生したら』 (ら・ま・ミュウ)
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ハイスクールD×D 案①『遠坂凛に転生したら』

2020年 春 Fate stay night Heaven's Feel劇場版第三部公開日当日に訪れた映画館が爆発した。対軍宝具と化したゲイボルグの一撃かと見間違うほどの爆発に巻き込まれた私は、どっかの赤い弓兵みたいに「ローアイアス!」なんて出来ないから、Fate/Grand Orderの始まり、コフィンの中に入ったカルデアの名も無きマスター達がテロ攻撃でミンチになった時と同じような状態になって死んだ。

………筈なのだが、扉のない知らない部屋で

Fate/Grand Orderのガチャ画面に固定されたスマホを握りしめている現状の私がいる。

 

(どういう、こと?)

 

情報が欲しくてスマホの画面に視線を落とすと聖昌石の数はゼロで呼符の数が四つ。

ピックアップは、マーリン………。

 

「良く分かんないけど、回せってことよね」

 

気づいたらガチャっていた。

 

一回目 fateの顔 『アーサー王』ではなく『遠坂凛』の概念礼装『ガンド』が出てきた。

 

二回目 金演出!からの赤い弓兵だった。

 

三回目『凛のペンダント』 星3の概念礼装だ。

 

四回目 またしても『遠坂凛』の概念礼装『カレイドルビー』だ!

 

「中々、当たりなんじゃない?」

 

ガチャ率の悪さに定評のあるFate/Grand Order略してFGOで星4鯖一体に星3以上の概念礼装はそこそこ良い結果だろう。

 

 

『転生体は遠坂凛に決定しました』

 

その瞬間、体が黄金色に包まれた。

 

『転生特典はアーチャー・カレイドステッキ・魔術刻印は継承後としておきます』

 

「はっ?えっ!?」

 

スマホを見ると謎の宛先から「サービスしといたるで!」その言葉を読み上げた瞬間私の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんこんにちは遠坂凛です。

謎の爆発事故の後、知らない部屋でスマホゲームのガチャを引いて気がつけば赤子になっていた私ですが、白髪褐色の皮肉屋さんの力を借りて本日まで元気にやっております。

 

「この屋敷が赤い悪魔と云われる魔術師の根城か」

 

生まれた時から私名義で結界を張り巡らしている屋敷の回りに五人ほど()()が侵入しているようですが、安心してください。

 

「アーチャー、生け捕りよ。殺してもいいけど、石化系や爆散する宝具は使わないで」

 

「了解だマスター」

 

あんな神秘溢れた触媒達。むしろ大好物なので。

 

 

 

 

 

駒王町

そこは、グレモリー家次期当主リアス・グレモリーが領地として与えられた地方都市の名である。しかし、ifの世界線 領主経験の少ないリアス・グレモリーに不安を抱いた日本の神々は一人の人間をセカンドオーナーとして招いた。

 

「あぁ、なんて素晴らしいの!これだけの触媒があれば、あんな事やこんなことも!」

 

その人間の名は『遠坂凛』悪魔にしか使えないとされていた魔法を体内に擬似的な神経を組み込むことで使用可能とする論文を齢五歳にして発表し、神器保有者の受け入れや三大勢力の抑止力として魔術協会を立ち上げ悪魔や堕天使の言いなりだった人間の地位を大幅に向上させたとして裏の世界に顔が広い彼女は今、涎を垂らしながら上級悪魔を切り刻んでいた。

 

ヤベェ奴連れて来ちゃった。日本の神々は本気で後悔していた。



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『私、頑張るから!…アンタは座に帰りなさい』『溺死しろマスター!』

皆さんこんにちは遠坂凛です。

先日は魔力の塊のような上級素材こと上級悪魔が屋敷に侵入し殲滅したのち一晩かけて素材に解体、魔力を宝石に移し終えたので若干の寝不足気味ではありますが、時刻は深夜1時。もうすぐ2時を迎えます。この意味が、分かりますか?fate好きの貴方なら分かりますよね!

 

「アーチャー!英霊召喚を始めるわよ!エクスカリバーを投影しなさい!」

 

「殺す気かマスター!?」

 

 

 

 

屋敷の地下にある魔術工房。

この世界に転生して遠坂凛の容姿、魔術回路、起源すら受け継いだ私はこの十年、研究に研究を重ねた英霊召喚用の魔方陣をサラサラと描いて行く。前世が超のつくオタクであるためその気になればアイリスフィールやウェイバー君が使用した魔方陣を寸分違わず書き写すことも可能な私だけど、この世界には聖杯がない。座に干渉する為の呼び水、聖杯のバックアップなしに維持する魔力などは個人で賄わなければならない。ユグドミレニアみたいにホムンクルスで魔力不足を補えれば良かったが原典の遠坂凛に出来ないのに小説読んだだけのオタクに再現出来る訳がなく、魔力消費を極限まで抑えたこの魔方陣を用いて通常の召喚ではギリギリ、Fate/zeroのバーサーカーなんて間違っても召喚しようものなら宝石魔術の遠坂といえど容易に干からびてしまう。

 

「だから、アンタの出番よアーチャー。投影とはいえその英霊が実際に使用した宝具は何よりの触媒。うっかり、モードレッドやリチャード一世を召喚するなんてアクシデントは起きない。アンタと私なら狙った英霊をほぼ100%召喚することが出来る!」

 

「待ちたまえ。だから何故エクスカリバーなんて大それた物を投影しなければならないのだ!下手をしなくとも死ぬぞ私は!?」

 

「うっさい!セイバー見たいの会いたいの!その為に死になさいアーチャー!」

 

「死んでしまえマスター!」

 

 

結局、チキッたアーチャーはカリバーンを投影して逃げた。

あの野郎………と思わず令呪で自害を命じたくなるが、時間が差し詰っている。

 

「はぁ………いけるわ、貴方ならいけるわ、遠坂」

 

その瞬間、アーチャーとのパスが切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!連絡も無しに切ったなマスター。

アーチャーが単独行動持ちだからと躊躇いなく、パスを切りおって。………令呪の拘束を逃れたサーヴァントに補給用の宝石まで持たせるとは。とんだ愚か者だよ。」

 

「ほうっ紅い外套…魔術師は女と聞いていたが?」

 

アーチャーの前に漆黒のローブを纏う男が現れた。あまりに破る者が多いので凛は忘れているが日本神話の後ろ盾を得てから遠坂は三大勢力と不可侵の条約を結んでいる。

この男。内包に秘めた魔力量からして上級悪魔だろう。知らぬ存ぜぬが通用する身分ではない。

 

「まぁいい、眷属になれ人間」

 

「完全にアウトだ。さて、サーヴァントらしくマスターを護らせて貰うぞ!」

 

悪魔と英雄が闇夜で激突する。

 

 

 

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュヴァインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、」

 

 

 

 

 

「どうした!我が同朋達を屠ったにしては歯ごたえのない!」

 

「くっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻は破却する」

 

 

 

 

 

 

 

「貴様を殺して眷属にした後、本命の小娘も眷属化して私は魔王へと至るのだ!」

 

「!?その異常な強さの正体は蛇、旧魔王派か!

ならば、死体を気にして戦う必要もない!

I am the bone of my――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「カラドボルグ!!!」

 

「馬鹿なぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、召喚も済んだ頃だろう。戻る………」ベキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、」

 

 

 

 

 

 

「あ、不味い」

 

 

 

 

 

「天秤の守り――!」

 

荒れ狂う魔力、そして光輝く魔方陣。

 

「(いける!間違なく英霊召喚は成功する!)」

 

それを嘲笑うかのように天井が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「………………うん、ふっ」ドヤ顔

 

「………令呪を持って命ずる自害せよ、」

 

「待て!?早まるなマスター!」

 

人生初めての英霊召喚は失敗に終わった。




そもそも、抑止力すらないのに英霊召喚出来るのかということ。


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『オーフィス、無限=最強』『いや、竜属性とか負けフラグだから』

「遠坂、グレートレッド一緒に倒す」

 

皆さんおはようございます遠坂凛です。

召喚未遂とはいえ、膨大な魔力を消費した影響で頭痛に苦しむ私の下に半裸の幼女が訪れました。

 

「へぇ、グレートレッドに次元の間か………」

 

「んっ。遠坂、世界の外側、根源知りたい。だから協力する。」

 

聞くところによると彼女はこれでも最強のドラゴンで今は人化しているそうなのです。(Fate/Apocryphaのジーク君みたいですね)

彼女の要件はたった一つ根源到達を条件にグレートレッドを倒す協力をしてほしいとのこと。(グレートレッドの力は全盛期のオーフィスと同列か少し上らしい)

 

Fateの偉大なる魔術師達を習い同じく根源を目指している私ですが、聖杯の汚染しかり、狂人愛歌しかり、ただではすまないのが根源到達です。何とな~く危ない匂いを感じ取った私は、取りあえず彼女の鱗と血を引き換えにアーチャーにバルムンクとアスカロン投影させてお引き取り願いました。

 

「また、来る」

 

「いつでもどうぞ~♪」

 

 

 

 

 

 

凛の魔術工房

 

「アーチャー、」

 

「何だマスター」

 

「グレートレッドを倒したら高確率で世界が滅ぶ気がするのだけれど、宝石剣って作ろうと思ったらどのくらい掛かるかしら?」

 

「並行世界に逃亡する気か」

 

「………どうせ滅ぶんなら天使も狩るか(うん、そうね。)」

 

「逆だマスター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

オッス俺の名は兵藤一誠。先日までただ冴えない中学生だった俺だが神器保有者とかよく分からん保証制度のお陰で国立の高校へ入学することが決まった超エリートだ。

 

「馬鹿なっ!世界中の美男美女が集結するというあの伝説の学校にお前が入学するだと!?」

 

「入学しているだけで一種のステータス、他校の女子にモテモテと噂の!…嘘だろイッセー、お前いつから勝ち組になったんだ!?」

 

松田と元浜が悔しそうにしていたのが笑いが止まらないぜ。

俺の高校生活は学園(エロ)ラブコメモードに突入したの、さ!

 

『あなたの願いを叶えます!』

 

うん?何か校門前のちっこい女子生徒から怪しげなチラシを貰ったけど、うちの学校オカルト部なんてあったけ?

 

『by駒王学園 オカルト部』

 

…うわ、駒王学園って生徒会選挙で不正が見つかったり、気づいたら学校の備品が壊されてるっていう有名な不良高校じゃないか。

ちょっと前まで、女学校だったから女子高生が多いらしいけど、あんな治安の悪い高校には入学したくねえな。

入学したら、帰宅途中に刺されて殺されそうだもん!

 

「まっ、そこまでヤバくねぇか!」

 

帰ったら元浜から借りたエロDVDの鑑賞会だぁぁぁ!

兵藤一誠は帰宅途中のコンビニでチラシを捨てた。




駒王学園の事件
『万を越える投票用紙』選挙一時中断
『はぐれ悪魔の暴走』直し忘れた


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『グハっ聖女様、傷を治して!』『ではこの麻婆豆腐を傷口に塗り込みますね』『!?』

此処は聖書の神を崇める神聖な教会。シスターであるアーシアがお花に水をあげようと花壇に出ると、「エェェェェイィィィメェェェンゥゥゥ!!!」「何なんだよお前!?」「悪魔に、開く口なんて、ねぇよ。大人しく死にやがれレレレ!」

最近、魔術協会から派遣された神父様と悪魔が激戦を繰り広げていました。あまりの光景に呆然としていると神父様に追い詰められている悪魔と目が合い「た、助けてくれアーシア!」何故か私の名前を呼び、助けを求められます。全く状況の読めない私ですが、助けを乞われれば、と。何も出来ないせめてもの変わりに主へ祈りを捧げます。「ぐわぁぁぁぁ」「ナイスだシスター!死ねぇぇェェェェ!!!」悪魔は苦しみだし、その隙に神父様が悪魔の首をスパンとハネてしまいました。

 

「ふぅ、上級悪魔ディオドラ・アスタロト討伐、完了」

 

「………きゅう」

 

その時は、ショックで気絶してしまった私ですが「これから俺たちは悪魔の掃討作戦に入る、お嬢ちゃんは安全な日本にでも避難しときな。あぁ、プロテスタントの教会には近づいちゃ行けねぇよ?遠坂凛ってその町の女を頼りな」

血の滲んだチケットを渡され、日本に旅立つことになりました。

 

日本語は不慣れなのですが大丈夫でしょうか?

 

「アイツら俺たち教会との不可侵を破りやがった!うちの聖女を悪魔にするだと!?………いいじゃねえか戦争だ。プロテスタントの野郎ども引き連れてこの国から悪魔を根絶やしにしてやるぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんくださーい!』

 

「あー、はいはい。今開けるわ」

 

こんにちは遠坂凛よ。

宝石剣作りに熱中して時間の感覚を忘れちゃったみたいで気づいたらお昼になっていたわ。

お客さんのアーシア・アルジェントちゃん?が来なかったら夜まで工房にこもりっきりだったかも。一応、年頃の乙女でもあるのだから一日三食は心がけているのだけど十時間ぶっ続けはやり過ぎよね。今度からはタイマー式の腕時計をすることにするわ。

 

『あの、神父様からここを頼るように言われて!』

 

そうそう、この子。神器保有者で私の管理する国立高校の今年の入学試験を受けさせたいんだっけ。

アンデルセン………全く、連絡なしに私に押し付けるなんて困ったものだわ。

 

『取りあえず、二階の部屋が空いているからそこに住みなさい。掃除は―――多分アイツがしてくれているでしょう』

 

『えっ!?いいんですか!』

 

まだ入試まで3ヶ月もあるし、神器保有者ならかなりの融通が効くから今から勉強しても充分間に合うわ。

日本語が喋れないみたいだから、先ずはそこから教えないとね。

 

『ただ、何もしないで(うち)に住めると思うんじゃないわよ!

私も丁度アーチャー以外に小間使いを雇いたいと思っていたから、アンタは客人兼メイド。それでいいわね!』

 

『はい!』

 

椅子から立ち上がったアーシアはお辞儀をしたら何故か転けた。

遠坂は謎の親近感を覚えた。




同意のない悪魔転生は殺人罪と同じです。
転生せざる終えない状況に追い込むのも同じです。
破ったら大変な事になります。


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『悪魔回ですって!断言するわ、つまらない!』『多方面にケンカを売るのは止めろマスター!』

最近、不良高校だと噂される駒王学園の生徒会を務めるソーナ・シトリーは頭を悩ませていた。「…眷属が集まらない」そう、学園の評価は勿論だが、来年に開かれるレーティングゲームのデビュー戦。ソーナは上級貴族として与えられた悪魔の駒の過半数を余らせ、このままでは参加出来るか怪しいと切羽詰まった状況の打開策を必死に模索していたのだ。

 

「眷属とはこれ程までに集まらないものなのですか………」

 

初めは神器保有者が好ましいと学園の生徒に目を向けた彼女だが――居ない。リアス・グレモリーの名目上の従者を除き駒王学園には神器保有者が存在しないのだ。

 

「遠坂家の実力を侮っていました。まさか、この町の神器保有者を丸ごと引き抜くなんて想定外です」

 

 

神器保有者は、覚醒するとその特異性から周囲の人間から孤立する。酷い時は迫害を受けることもある。そこをついて、眷属化してきた私たちを嘲笑うようにいつの間にやら国家を味方にした遠坂は、「危ないから殺す?馬鹿じゃない!大人として導くべきよ」

 

成人した神器保有者が教鞭を取り、神器の扱いについて正しく学ぶ事が出来る。数年前、愚かな悪魔が襲撃し火炙りにされていたので安全性は言うまでもない。まさに神器保有者にとって夢のような学校を建てた。

 

更に、知ってはいたがされるがままの状況に苦虫を噛み潰したような辛気臭い空気を漂わせる政治家の尻を蹴飛ばし悪魔に対する法律も立てさせた。

 

今や神器保有者を眷属にしようと思ったら政府に申請書を出して厳密な審査を通るか国外まで足を伸ばさなければならないという時代だ。

 

 

「嫌ですね。遠坂凛は私にとって間違いなく尊敬に値する人物です。それが悪魔にとって都合が悪いからと嫌悪を向けてしまうとは。」

 

ソーナは一瞬でも、「余計な事を………」

と、理不尽な怒りを抱いた己を恥じた。

 

ソーナの夢は『下級悪魔や転生悪魔が分け隔てなく通える学校を冥界に建てること』方向性こそ違えど遠坂凛の成したことはソーナの理想に近い。

 

それなのに、悪魔に対して都合の悪くなることばかり引き起こす彼女にソーナは怒りを抱いてしまった。

彼女の行いは良くも悪くも欲に忠実で三大勢力に並び立つほど成長した今となっても人間を下に見る悪魔達には良い薬なのだ。これに便乗するようではシトリー家の評価を落としてしまう。

 

「………いざとなったら予定より早く冥界に帰って眷属集めをしましょうか」

 

ちなみに、この学園に通うもう一人の悪魔リアス・グレモリーは原作より大分人数の少ないソーナ以上に眷属が居なかったりする。




それでも、一ヶ月近く掛かる申請を通して転生悪魔を持つソーナさんは、かなり凄い。現在のソーナ眷属二人。


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『あっ最後に良い所取りした死んだふりサーヴァントだ!』『それは言わない約束だマスター!』

「あー、はいはい。こっちも一段落ついたからアンタも孤児院に戻って大丈夫よ」ガチャ

 

………固定電話ですが何か?

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

この体に転生して機械音痴になるとは思わず生まれてから今日までスマホを使ったことのない私ですが、最近、固定電話ならイケることに気づいて特に意味もないのに知り合いに電話を掛けています。

 

えっ?迷惑?

貴方達は、握っただけで煙を発てるエアコンのリモコンを触った事があるんですか?

年中を通して温度を固定され、コンセントを抜いて止めるエアコンの空しさを味わった事があると?

(まぁアーチャーに投影して新しいのを用意して貰ったんですけど)

触れただけで破壊し、又は反応を示さなかった文明の利器達の中、もうダメだと思いながら受話器をとって会話し終えた黒電話の衝撃と言ったら、感動のあまりアーシアとハイタッチしてアーチャーと抱き合いましたよ。

 

後、一年は意味もなく電話を掛け続ける自信がありますね!

 

 

 

さて、冗談はさておき。

本日の私は少し遠出して、ロンドンに来ております。先ほどまで時計塔のロード達と談笑というなの魔術談義に花を咲かせておりましたが本命は魔術協会が支援する孤児院にあります。

 

「遠坂先輩、早く行きましょう!」

 

「急かさない、急かさない、事前に連絡を入れてるんだから、誰もいないなんてことはないのよ?」

 

「理解してやれマスター、数年ぶりに友と会うのだ。普段は冷静沈着な男だが、根は家族思いだと言うことだろう。」

 

私が幼少期、悪魔カレイドステッキに唆され全世界を暴れ回っていた頃、偶然助けた子供達。彼ら彼女らは今年で高校生になります。訪れた理由は一つ、私の開いた神器保有者の学校へ通わないかとスカウトに来たわけですね。

 

「年齢までちょろまかして()(まま)(ひめ)のお守りをする裕斗にご褒美を――なんて、まさか孤児院のみんなを同じ学校に進学させたいなんて言うとは思わないじゃない?」

 

「別にいいではないか、彼も来年には君の学校へ編入するのだろう。心の傷から未だに禁手(バランス・ブレイカー)に至れない彼には良い刺激になる筈だ」

 

そうこうしてる内に見えてきたのは、ロンドンにそぐわない日本の武家屋敷(想像としては衛宮邸をゴツくした感じね)聖書の神、絶対信じないマンの裕斗監修の下建てられたこの町、風変わりの孤児院。

――そして

 

「「ぉぉぉい!」」

 

「ッゥ皆ぁぁぁ!!!」

 

あぁあ。年甲斐もなくあんなに、ハシャイじゃって………

 

「ぅ、ぅぅズピー!」

 

「案外涙脆いんだなマスター」

 

うっさい!感動系には弱いのよ私!



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『今さらだけどこの小説、短編カテゴリーだから基本1話完結よ』『要するにギャグ漫画のノリだ、気にするな』

「よぉ遠坂先生」

 

何故お前が此処に!?

………皆さんこんにちは、遠、坂です。

アーシアの悲鳴を聞き急いで庭に出ると堕天使総督のアザゼルが大量の人工神器を両手に、護衛用の使い魔を踏み潰しているではないですか。

 

「………アンタ、まさか」

 

「あぁ、そうだ。へへっもう我慢ならねぇんだよ。俺はよぅ!」

 

「遠坂さん!」「下がっていろアーシア、あれは本気の目だ」

 

 

おさらいだけど、堕天使含む三大勢力と遠坂家は不可侵を貫いているわ。堕天使の幹部クラスが会おうと思ったら事前に連絡を取って第三者の立ち会いの下、会談を行わなければならないの。

お互い、堕天使と人間、トップに立つからこそ例え争う気がなくても気軽には会えない、会っちゃいけないのよ。

(ちなみに、これ↑を決めたのはオーディンよ)

アザゼルは、上級悪魔みたいに(おの)が感情でそんなルールを無視する男じゃない。仮にも北欧神話の主神が定めたんですもの。それとも、伊達に堕天使のトップじゃないと云うわけかしら?

………そんな男が、何の連絡も仲介役も通さずにうちの領域に踏み入れた、それってもう、理由は一つしかないじゃない!

 

「堕天使総督辞めてきた。お前の学校で雇って」

 

「和平結ぶまでは辞めるんじゃないって言ったでしょうがぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 

アザゼルはニートになった

 

 

 

 

 

「考え直せって言っても無駄だぜ?

お前が、あの学校作ってから。いや、魔術回路なんて面白れぇ論文発表してから研究したくてしたくてウズウズしてたって言うのに、仕事は増えるわ、部下は暴走するわで奔走する毎日。コカビエルの野郎がローマで吸血鬼と戦争するのだとか言い出した日にゃあ俺は決めたね。ぜってい総督なんて辞めてやるって。」

 

「だから、和平結ぶまでは我慢するって言ったじゃない。私もそれに安心して堕天使はスルーしてたって言うのに、アンタが総督辞めたって知ったら荒れるわよ天界も冥界も」

 

「問題ないだろ?どうせ人間に力でも文明でも劣る負け犬の傷のなめ合いみたいな状況だ。禍の団も英雄派がお前ん所に大半が流れたお陰で思ったより脅威になんなかったし、別に俺が一番賢くて最古参って訳でもないんだ。上手くやるよ………お、この紅茶旨いな」

 

アザゼル。アンタが全くの考えなしに総督を辞めた訳じゃないのは分かったから然り気無く床に荷物を広げるのはやめてくれないかしら。アーシアも紅茶の味を誉められて嬉しそうにしない。

 

「そう言えば、俺住む宛てないんだわ」

 

「ふーん」

 

「家賃払うから部屋貸して?」

 

「なら、アーシアの向かい側の部屋に―――それぐらい自分で探せェェェェ!!!」

 

アザゼルは遠坂家の庭に小屋を建てて寄生した

 

アーシアとの仲は良好のようだ。アザゼルは来年の肩慣らしにアーシアを対象とした日本語と一般教養レベルの授業を行っているらしい。遠坂凛は考える事を止めた



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『サーゼクスが来た!』『前半よ!』

クリスマス

本格的な冬を迎えた本日の駒王町は、お天道様の何とも粋な計らいで一面の雪景色である。

 

「ふぁあ!遠坂さん、遠坂さん!ホワイトクリスマスですよ!」

 

「そうねぇ………平和だわぁ」

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

宝石剣の制作に一段落ついた私は、こたつの中でクルマっております。アーチャー?彼はクリスマスケーキを買いに出かけました。アザゼルは用があって冥界に帰っております。多分年末まで帰らないでしょう。

裕斗達の住むマンション探しも何とかなって、何だか今年も「もう終わりなんだなぁ………」と思い耽っている私ですが、上級悪魔を狩る為に今まで()()()緩めていた、つまり上級悪魔程度がいくら暴れようがビクともしない結界に罅が入った瞬間、「アーシア!」

 

アーシアを抱き締め、地面に超濃度の魔力を凝縮した宝石を投げつけました。「くっ!?」屋敷の壁が吹き飛び、粉塵から突き刺すように伸びた魔力放出は私が急揃えで展開した結界と交わり直ぐにピシリピシリと嫌な音を発てる。お世辞にも原典を越えたなんて私は驕らないけど、神秘の溢れるこの世界で今、私の展開した防御結界のランクはA。英霊の本気の一撃だって防げるレベルだって言うのに「10秒も持たないとか、どんだけ馬鹿げた魔力なのよ!」すぐさま次の宝石を地面に投げつけた。

 

「でも、私程度の小娘に防がれるなんて、敵さんは下級悪魔かしら?姿を現したらどう!」

 

絶対に解体してやる!そう意思を込めた遠坂の挑発に答えたのは紅色の長髪に派手なローブを纏った男。

 

「…サーゼクス!」

 

「………………」

 

と言うかなんでこんな事をしてんだと盛大にツッコミを入れたいビッグネームだった。

 

 

 

 

 

 

「悪魔のトップが随分な挨拶じゃない。会うのは初めてだったかしら?シスコン野郎の無能さん?」

 

全身が震える。これ程のプレッシャーを遠坂は生まれて初めて味わった。気を抜けば膝をついてしまいそうになる精神を震い立たせ令呪を使用するべきか否か思考を回転させていた。

 

「(本当は直ぐにアーチャーを呼び出したいけど、魔王相手に英霊を差し向けるなんて開戦宣言にも等しい。なら、私一人で迎撃すべき?いえ、無理。カレイドステッキは簡単に解けない封印を施してあるし、宝石剣を取りに行く暇なんて与えてくれると思えない。手持ちの宝石は二十。ただの上級悪魔なら、十分対処可能なのに最上級それも他の魔王より強力な超越者をアーシアを守りながら戦うなんて無謀に等しいわ)」

 

今後の悪魔社会を思い、一瞬は躊躇う遠坂だが、そもそもお前が全部悪いんじゃないかと怒りを爆発させ三画以上ある令呪を行使し――――

 

「待ってくれ、そいつは私じゃない!」

 

――次回『じんこう悪魔』



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『サーゼクスが来た!』『後編よ!』

前回のあらすじ

 

「部屋でみかん食べてたら、サーゼクスが突撃してきたの!」

 

「そ、そしたら、同じ顔の人が現れたんです!」

 

「予約したケーキショップが閉まっていたんだ!」

 

「サーゼクスん所に行ったんだけど、アイツ留守だったぜ」

 

 

 

 

「待ってくれ、そいつは私じゃない!」

 

ど、どう言うこと!

皆さんこんにちは、私の名は遠坂。突然だけど、屋敷を破壊した悪魔と瓜二つの男が破壊した方を思いっきり殴り付けて頭を下げられたわ。

よく分からないけど、殴られた『目が死んだ方』が偽物で今『頭を下げている方』が本物、そういう解釈でいいのかしら!?

ステンノとエウリュアレみたいに瓜二つの兄弟とかだったら、襲撃を掛けてきたのがサーゼクス本人じゃなくてもグレモリー家は終わりな気がするけど大丈夫よね!

 

「安心してくれ、あれは我が血族の者ではない。いや、悪魔ですらない………のかもしれない」

 

「あぁ、つまり状況を理解出来ないまま、アンタの姿をしたアイツが私を襲う、そんな感じの情報を掴んで慌てて来たわけね」

 

悪魔のトップが私を襲ったとなれば魔術協会は勿論、神器保有者や教会、恩を売る形で天界と堕天使が動くもの。

悪魔嫌いが悪魔を根絶やしにしようとして、まず初めに考えつく計画ね。

だいたい分かったわ。

 

「だったら頭上げて、あんな奴、さっさと倒すわよ」

 

「………ありがとう。(噂とは違い寛大な方で良かった。いや、本当に。悪魔社会終わったと思ったよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解体したわ!

 

 

私、ガンドで援護射撃ぐらいしか出来なかったけど、やっぱり魔王の称号は伊達じゃない。偽物が滅びの魔力擬きを使った時にはサーゼクスも冷や汗かいていたけど、あれね。英雄王と征服王の対決を見ているようだったわ。

本当は持ち帰って原因を探りたいだろうにサーゼクスったら思い詰めた顔して死体丸ごと譲るって言うのよ!なによ良い奴じゃない!

 

「フフン~フフン♪」

 

「へくちっ」

 

魔王級の素材を何に使おうか?礼装か工房の強化か久しぶりにアーチャーの霊基を弄くるのもいい。

上機嫌に壁と結界を修復していく遠坂を見ながら、

そもそも、どうやって偽サーゼクスが遠坂邸を襲撃すると情報を掴んだのか、偽サーゼクスが滅びの魔力のような物(実際は圧縮した魔力の塊だった)を見せた時、あからさまに顔色を変えたのは何故か、数々の疑問点を一つも問い詰めなかった理由をアーシアは考えていた。

 

 

だが、幾ら考えても無駄である。

遠坂はうっかりしていただけなのだから。




「令呪を出し惜しみするぐらいなら、パスを繋げマスター!」

「痛っぁ~!」

全身雪だらけのアーチャーに遠坂はめちゃくちゃ怒られた。
………クリスマスケーキは手に入らなかったらしい。


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『入学式よ!』『アーシアの晴れ姿だ、原作主人公も出るらしい』

サーゼクス(偽)の解体も終え、アーシア専用の礼装を造りながらアザゼルと人工神器の開発に熱を上げていた私たち。月日は流れ桜舞い散る、春が訪れました。

 

「はわう!」

 

「………だ、だいじょうぶッスか?」

 

本日はアーシアの入学式です。

本心は、アーシアの保護者として出席したい私ですがアーチャーに投影して貰ったハデスの隠れ兜で現在『アーシア初めての友達作り編』の撮影をしております(小声)

そこ、暇人だとかお前も年齢で言えば学生だろ?とか言わない。私は大学卒業してるから今さら高校通う必要ないのよ。

 

『こちら赤い弓兵。マスター、プロフィール調査から最有力候補であった兵藤一誠がアーシアと接触した。私はポイントBに移動し、初門を記録する』

 

「了解」

 

因みに、アーチャーも協力してくれたわ。

………あら、あらあら!あの子達ったら神器保有者同士で意気投合したのから?『初めての友達編』はこれでほぼ完成ね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

オッス俺の名前は兵藤一誠。今日からエリートをバンバン世に排出するって噂の(モテモテになる高校)モテ高に通うことになる!っんだけど………お袋達が季節外れのインフルにかかって一人寂しく初登校だぜ。

 

「はわう!」

 

ん?女の子の悲鳴?

後方から何かが倒れる音と背中に少しばかり掛かる重量。そしてむにっと柔らかく僅かに押し付けるおっ○い!

俺、兵藤一誠は全てを悟った。俺の背中に今美少女(推定)が抱きついているということを!

 

「だいじょうぶッスか?」

 

「はいっすいません!」

 

ヤバイ。入学したらモテるって言われてたけどこんな直ぐにイベントがおきるのかよ!

一誠は心の中で一人騒ぎ立てるが、同年代らしい俺と同じ学校の制服を着た少女が振り返り、ふわりと舞った金髪が素顔を露にして――そのあまりの美しさに心奪われていた。

 

「あ、あのっ!」

 

「うえっあっすいません!俺、見惚れちゃったみたいで!」

 

「ふっえ!?見惚れるなんて!」

 

「気持ち悪いですよね!サーセン!」

 

「そうじゃないんです………ただ、恥ずかしくて」

 

ドキュン

 

可視化するほどはっきりと俺のハートを恋の矢が貫いた。

 

天使かよこの子。

つーか。ヤベェよ。胸の高鳴りが止まらねぇ!

なんか、この子の為なら、世界でも敵に回せそう。もう一目惚れだな!入学初日にこれとか俺、ツイてるぜ!

この調子ならハーレムも………!

 

「あの、私友達居なくて………良かったら一緒に登校しませんか?」

 

「勿論!友達にもなります、364日毎日貴方の為に皆勤目指します!」

 

「ふぁっふぁぁ!嬉しいです!」

 

その笑顔は、全ての不純を破壊する神滅具だった。

 

「あっ」

 

ガラガラドッシャーン!

↑イッセーの中でハーレムとかどうでもよくなった音。

 

 

 

アーシアは正ヒロインの座をゲットした

 

 

イッセーは魅了状態になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぉぉぉおアーシア!学校が見えたぞぉぉお!」

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

良い子の皆こんにちは!兵藤一誠だ!

突然だが、俺たちは入学初日から遅刻するかも知れん!

 

「まさか、迷子探しで隣街まで行くことになるとか普通あり得ないだろ!」

「はぁ、すいませんイッセーさん!私が、降りる駅を間違えたばっかりに!」

「結果的に、迷子の母親も見つかってスーパーオーケーだぜ。アーシア!ッゥ!?すまん、」

 

 

イッセーが時計を見ると、もう入学式まで10分もなかった。アーシアの体力を考えるとどう考えても間に合わない。

イッセーはアーシアに断りを入れて両手に抱き抱える。

 

「イッセーさん!?」

「俺は兎も角、アーシアを遅刻させる訳にはいかんのじゃぁぁぁ!!!らっしゃい!!!!」

 

威勢よく叫ぶイッセー。だが彼の両腕はここまで二人分のカバンの重量を支え続けた結果、既にボロボロだ。今のイッセーに少女一人分とはいえ、アーシアを抱えて全力疾走するにはキツすぎた。

 

「(だから、どうした!限界を越えろ、心のマグマを燃やせ俺!)」

 

筋肉が悲鳴を上げようが関係ねぇ!

 

「私、入学式楽しみなんです!」…あんな笑顔を向けられて、着いてみたら終わっちゃったじゃあんまりだろう!

 

だから、そうだ!

 

間に合わせるにはアーシアを俺がおぶって、「走るしかねぇんだよ!」

 

『Dragon Booster!!』 

 

俺の叫びに答えるように、左腕が熱く吼える。

 

「(体が軽くなった?)………よしっ行けるぞ!」 

「でも、カバンも持って貰ってるのにこれ以上はイッセーさんに悪いですッ」

「………アーシア。入学式、一緒に出ようぜ!」

「ぁ、はいっ!」

 

 

今世の赤龍帝は一人の少女の為に覚醒するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ入学式?もう皆帰ってしまったよ?」

「そんなぁ」「クソッ!」

 

しかし、イッセーとアーシアは間に合わなかったようだ。

 

「………何を勘違いしているのか分からないが、今日は簡単な保護者説明会と教材の受け取りだけだからね?」

 

「「えっ!?」」

 

イッセーは普通に勘違いしていた

 

アーシアは凛のうっかりに毒された

 

この後、凛はアーチャーに無茶苦茶怒られた

 

「参ったな。僕以外の上級生が神器保有者には学校を案内することになっているんだが、そうだ。教材を受け取るついでに、学校を見て回らないかい?」

「えっいいんスッか?先輩………?は部活動中ですよね?」

「ハハ、敬語は使わなくてもいいよ。僕も君たちと同年代なんだから」

「どういうことでしょうか?」

「ぁぁ、自己紹介が遅れたね。僕の名は木場裕斗。一応、2年生。キミの先輩だよ。――ただ、年齢を少しちょろまかしているけど、ね。」



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『そうそう、あの学校はね』『そう、そうなのか、マスター!』

「所で兵藤君。キミは、神器という物が何なのか理解しているかい?」

 

「神器って保証制度のあれか?」

 

「そう、それだ。特定の人間の身に宿る、規格外の力。分かりやすくいえば毛色の違う超能力だね。この学校ではその力が暴走しないように制御する方法を学ぶ為の学校でもあるんだよ」

 

「へぇ………へぇ!?超能力って、この学校にいる殆どがそうなのかよ!」

 

「ぁぁ、一部は何もしらない一般人だが殆どがそうだよ。何せ世界中の神器保有者がこの学校へ通いに来るんだ。元々希少とされる神器保有者だけど、多分これ程の数が集まるのはこの学校だけなんじゃないかな」

 

「………世界中って何か監視してるみたいだな」

 

「まぁその認識も、間違いではない。神器は物によっては抜き身の刃より危険な代物だから、この学校が出来るまでそういうのを危険視する過激派の奴らに実験やら処分やら酷い扱いを受けた人たちもいるんだ。それで言うと、この学校はあんな連中とは比べ物にならない、超のつくほどお人好しな穏健派かな?」

 

そう語る木場の表情は自然と硬くなり、拳は震えていた。

物陰に隠れていた遠坂は、「やっぱり教会を恨んでいるのね…」と分かっていたことだが少しだけ胸のうちが苦しくなるような錯覚を覚えた。

 

「この学校はちょっと俗臭いけど、そう言う愚かな連中から保護、国の発展に役立つような…例えば金銀財宝を産み出すような神器保有者を誰よりも先にスカウトする為にもあるんだ。勿論無理強いはしないが、それを不快に思う人たちもいるね。」

 

「そんな理由が…」

 

「ごめん、暗くなってしまった」

 

「いや、そんな事ねぇ。つまりこの学校が神器保有者の為に作られた良い所って意味だろ?世界中から集まるってことはそれだけ信頼されているってことだ。

辛そうだったのに話してくれてありがとな」

 

「っぅ………そうだね」

 

イッセーの混じりっけのない笑顔が、一瞬己の家族達と重なり木場は、息を吐く。

 

「そうだ。うちの学校は神器について学ぶ事が出来るっていうのはさっき説明したよね。今から特別顧問のOBに会いにいってキミの神器、解放してみないかい?」

 

「神器、解放?………もしかして俺も超能力が使えるようになるのか!ドラグ・ソボールの空孫悟みたいな!?」

 

「うん、男なら興味があるよね。アーシアちゃんはもう使えるみたいだけど、どうかな?」

 

「私も、自分以外の神器保有者の方に会ってみたいです!」

 

二人の笑顔に、「(神器保有者だから不幸になるなんて間違っている。やっぱり遠坂先輩は偉大だ)」

 

将来は遠坂をサポート出来る立場にありたいと密かに夢を抱く木場とイッセー達は『英雄派』と壁にかけられたプレートを横目に戸を開けた。




上位悪魔×
上級悪魔…すまない。アンケートは修正が出来ないんだ。


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『アーチャー!投影しなさい!』『了解だマスター!』

「木場です、少しよろしいでしょうか?」

 

木場に続きイッセーとアーシアが部屋に入る。

――すると、なんと言うことでしょう

 

「人間ごときがぁぁぁ!!」

 

何か眼鏡かけた薄着の人と深くローブを被った如何にも魔術師といった集団が制服姿の二人の青年にボコボコにされているではないですか。

薄着の人――まだ寒いので痴女でいいですね。彼女は辛うじて膝をつく程度のダメージですが、痴女を除く魔術師連中は顔面を執拗に殴られでもしたのかギャグ漫画の如く歪んでおります。

 

「魔剣バルムンク…こんな神が作った擬きとは比べ物にならない。しかし真名すら解放させてくれないとは。歯応えのない相手ですね。」

 

「どいつもコイツも。人間舐めすぎだろぁぁん?」

 

イッセーとアーシアは後で聞いた話なのですが、この学校で転移魔法を使うとこの場所に座標を変更され呼び出され無許可で転移してきた者達、その中でも人間に害意を及ぼす悪魔等は彼ら英雄派によって半殺しにされているそうなのです。

 

何と言うか御愁傷様。

木場はベルトコンベア式に運ばれていく素材と個人所有の財産一切を没収され20年は牢獄の中で過ごすことになる魔術師(擬き)に哀れみの視線を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁやぁ皆さんこんにちは曹操です。

人間の限界に挑戦するのも良いが、最近は英雄に憧れて人助けに精を出しております。

今日は1年前に卒業し、以後OBとして神器指導を行っている母校へ招かれたのですが…「現在の時刻を入力しなさいって『:』は何処にあるのよ!?そもそも現在の時刻って何よ!?何時何分何秒、地球が何回(まわ)った時か、はっきりしろぉぉ!」何やら扉前でわめき散らす遠坂凛と目が合ってしまいました。

 

「曹操!丁度良かったわ。この扉の破壊許可を頂戴」

 

「あげるわけないでしょう。と言うか、パスワードのヒントまで用意された電子ロックに手こずらないでください」

 

危機一髪なのでしょうか?

危うく学校の施設が一つ破壊される所でした。

 

「何度も言いますが、貴方は学校の創設者であり人間代表としての自覚を持つべきだ」

 

「嫌よ。遠坂凛とは優雅で美しく、常に己に正直に生きるの」

 

………過去、マジカル☆リンと名を馳せていた彼女の全盛期。決闘で負けて強制的に通わせられることになった過去からどうも彼女には強く出れない俺だが、仮にも人類代表がこんな奴で大丈夫なのか本気で心配になる。

 

「三大勢力の会談は来年。それまでには落ち着いてくれるとありがたいが………キミは変わらないのだろうな」

 

「ちょっと、皮肉ったわね!アーチャーみたいに!」




魔術を使うにも免許が必要です。新人の魔術師見習いは時計塔で免許を取りましょう。
この世界の魔術師は基本良い人です。この世界で切嗣みたいな事をやったら百年ぐらい牢屋にぶちこまれます。
この魔術師(擬き)らは無免許で他者に向けて魔術を使用しました。重罪です。逮捕です。


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『月日は流れ~入学式』『私はもう行かん!』

あれから、一週間が経った。

今日は本当の本当に入学式です。

 

「うん、アザゼルにも確認を問ったし今度こそ間違いないわ。アーシア行ってらっしゃい」

 

「はいっ行って来ます!」

 

 

―5分後

 

 

「………さて、私もそろそろ」

 

「何処へ行く気だマスター」

 

おほほほっ皆さんこんにちは遠坂凛よ。

…おかしいわね。前回はあんなに協力的だったアーチャーの顔が何だが怖いわ。「絶対に行かせない」そんな意思が隠れ見えるもの。転移の魔方陣はもう起動しちゃってるし今更止めることは出来ないのだけれど………「投影、開始(トーレス、オン)

 

「へぇ?」

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

 

パッリーン

 

投影された宝具が地面に突き刺る。その瞬間、私が一晩かけて組み上げた魔方陣が初期化。いえ、陣に傷が入っているから………もう、使えない。

 

「あ、ぁぁあ―――!?やった、やった、やりやがったわね!アーチャーァァァ!!!」

 

「キミのうっかりは伝染する。アーシアの為だ。赦せマスター」

 

「うわぁぁ!うわぁぁ!最悪最悪最悪!あんた私がこれ作るのに、何個宝石溶かしたと思ってんのよ!上級悪魔の魔力を込めた宝石を十個よ!学校の転移誘導を強引に突破しようと思って頑張ったのに、ぁぁぁあ、もうっ死ねぇぇぇ」

 

リサイクル出来る環境にもお財布にも優しい魔方陣だったのに!凛の悲しみが右手を赤く輝かせ魔術回路を活性化させる!

 

「令呪ブーストのマジカル八極拳だと!?グッグァァァ!!!」

 

言い忘れていたけど、令呪を増やすには下級悪魔一体分の魔力を術式に移せばいいの。

今の私の令呪は53画よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《魔王side》

 

「突然だが、悪魔の駒の使用を禁止しようと思う」

 

「………何を考えている、と言いたい所だが妥当か」

 

「これ以上、遠坂凛を刺激しては日本神界と魔術協会、二つの勢力との戦争は避けられない。協会の一部は上級悪魔に匹敵すると調査は挙がっているし、最近は教会の方でも聖堂教会なんて実力派の新勢力が出来はじめている。馬鹿な連中を止められない時点で仕方ない。」

 

「う~ん!私はいっその事、悪魔は日本から引き上げるべきだと思うんだけど………」

 

「レーティングゲームは転生する機能のない旧来の駒を用いて開けば混乱も最小限に収まるだろう」

 

「問題は貴族達が未使用の駒の回収に協力するかだが」

 

 

「「「絶対しないだろう(ね)」」」」

 

 

特に自分たち若手より古い家系の悪魔は絶対に応じないだろう。

下手をすれば、悪魔の駒を模倣した非合法な手段を用いて眷属を増やそうと人間界に侵略を開始する旧魔王派のような阿呆が現れる。

 

私たちの代で悪魔は滅びるかもしれない。

胃薬漬けの四大魔王はそう、思うのだった。




サーゼクスは自分の偽物が遠坂邸を襲撃する情報を掴んだ
四大魔王はストレスから血反吐を吐いた。

悪魔の駒の回収に古き悪魔は応じない
四大魔王はストレスから血反吐を吐いた。

ソーナが帰ってきた
レヴィアたんは復活した。

弟が教会に喧嘩売って死んだらしい。
アジュカは考える事を止めた。

カテレアが捕まった
王(旧魔王)は人(魔王)の心が分からない


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『ハイスクールD×D 案①『遠坂凛に転生したら』に付き合ってくれてありがとう最終回よ』『そのやり口は詐欺だマスター!』

時刻は午前一時三十分になりました

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

本日深夜行うのは『英霊召喚』第2弾。名付けて【セイヴァ―を召喚してみよう!】です。

あ、そこのfate歴の浅い坊や。今、誤字ったと思いましたね?

違います。セイヴァ―と言うクラスは救世主。

宗教上の理由から声を大にして真名をいえないFate/ EXTRAに出演したあの方とかクリスマスが誕生日のあの方とか、ただの英雄の枠には収まらない、グランドクラスとか鼻で笑うレベルの凄い人達なのです。

 

今まで魔力問題で絶対に召喚出来ないと諦めていましたが、「○○○を英霊として召喚出来るかもしれない」「………マジで!?

協力するからよ、そいつ堕天使のトップやってくれねぇかな?」もう少し重苦しい空気で懇願された気もしますが、堕天使勢力から大聖杯に迫る魔力炉を提供してもらい、部屋に溢れかえる大量の宝石と私の手元には聖槍ロンギヌス(投影品)があります。

 

「いいかマスター。己の手に余ると少しでも思えば令呪で自害を命じろ。英霊は所詮、座から切り離された末端に過ぎん。相手は神霊…召喚される以上多少の格落ちはありえるが、下手な情をかければ一瞬で持っていかれるぞ」

 

「分かってるわよ。私だってこんな博打みたいなもんに命捨てるつもりはないわ。私が死ぬときはセイバーの膝元って決めてるもの!」

 

ピピッピピッピピ―

 

時刻は午前2時。遠坂凛の魔力が一番満ちる時。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュヴァインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、

 

王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻は破却する

 

告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に。

 

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者

 

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、

 

天秤の守り手よ!」

 

魔力炉の魔力がごっそりと抜け落ち、凛の魔術回路が熱く輝く。

それは間違いなく召喚された英霊とパスが繋がった時に起きる現象に似ていて凛は少し、そう少しだけ気を抜いた。

 

「成功した?」

 

「ッゥ!?令呪を使えマスター!」

 

「■■■■■?■■■■」

 

黄金に輝く何かが凛に手を伸ばす

アーチャーが投影された宝具を投擲する

 

凛は訳が分からず呆然とそれを眺める

 

「■■■■■■■」

 

黄金が額に触れた。

その瞬間、遠坂凛の存在は大いなる()()によって塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………人間が神を召喚するなんて面白そうだから割り込んでみたら、へぇ観測次元の器なんて掘り出し物じゃない」

 

それは遠坂凛の姿であって中身は別物だ。

 

溢れる神性、金髪に紅い瞳。人と神が袂を別つ前から存在した神代の女神。ここに彼女がいれば「FGOの融け合うなんてレベルじゃない、完全に乗っ取られた!」そう叫ぶだろう。

 

「………女神イシュタル!」

「そう私は金星の女神イシュタル………ってあれ?何で貴方が私の名前知ってるの?」

「それは鏡を見てから言って貰おうか」

 

剣の丘から手鏡を投影するアーチャー

 

それを()()()()()()()()()受け取ったイシュタルは一瞬ポカンとした後、人間にしてはあまりにデカすぎるアーチャーに全てを悟った。

 

「えっ、嘘…ここってまさか!」

「己の不運を呪うのだな」 

 

女神イシュタルは冥界に訪れた。サーヴァント扱いのため逸話から物凄く弱体化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よこんな物!」

「抵抗するな!」

 

今日は生憎だがマスターがいない。変わりに私が挨拶しよう。皆さんこんにちはアーチャーだ。

 

現在我がマスターは女神イシュタルに肉体を乗っ取られ自我を深層意識に沈めている。不幸中の幸いマスターが堕天使から借り受けた聖杯の代替品を冥界から持ち出す作業を躊躇い、女神イシュタル最大の弱点ともいえる冥界で儀式を行った為、肉体を持ち逃げされるような最悪の事態は避けられたが――この女神、甘やかされて育ったせいか、

あーだこうだと言い訳をしながら一行にマスターの体から離れようとしない。一度手に入れた物は絶対に手放したくないという子供のような駄々を捏ねて、私の『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』を初めとする解呪魔術から全力の抵抗をしてみせるのだ。

 

「いい加減にしろ!マスターは日本神界の後ろ盾を得ているのだぞ!」

 

「ハッ!辺境の大した神性も持たない数だけが多い東洋の神が何だって言うの?悪魔ならまだしも私ぐらいの女神になると、とても脅威なんて呼べないわね!」

 

「クッ!ならば魔術協会はどうだ!マスターの記憶をサルベージしたのなら分かるだろう、魔術師は狂っている!根源に到達する足掛かりとなるなら神であるキミですら発狂する実験の数々に付き合わされることになるぞ!」

 

「それは並行世界のギルガメッシュが上手くやった世界での話でしょう?私のお父様は存命よ!そんな事になる前にロンドンは火の海になるわ!」

 

「貴様ッ人の心はないのか!」

 

「無いわ神ですもの!」

 

英雄と女神が睨み合う。

 

「「ァ――!」」

 

 

 

――話の途中だがワイバーン(アンケート)だ!



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『推しが出れば素が出る』『生前のキミはこのような感じだったのか……』

「う、うぅん?」

 

――あれ?

遠坂が目を覚ますと、そこはFGO世界の()()エレちゃんがいる冥界だった。

どういうこと?

凛は先程まで、○○○を召喚すべく所々近代文化の入り交じったファンタジー魂の萎える冥界(萎え冥界)にてサーヴァント召喚を行い………確か黄金の………ハッ!?

 

「も、もしかして私ったらエレシュキガルを召喚しちゃったのかしら!?」

 

凛が気絶する前の最後の記憶は金髪に紅色の瞳をした誰かが額に触れた時。

神霊、しかもサーヴァントで金髪、紅色の瞳と言ったら冥界の主『エレシュキガル』しかいないッ

 

「どうしよう………どうしよう!正直召喚される可能性はあったけど、生前はセイバーの次に推しキャラだったのよ!出るって判ってたらもっとお洒落してきたのに!」

 

今日の私ったらイメージカラーの赤で適当にコーディネートした私服じゃない!

エレシュキガルがでるなら奮発して高級ブランドでも何でも揃えたのに(イシュタルは同族嫌悪…なのかは分からないけど転生して苦手になったから無理)全くもぉぉ~!

 

『あ、あの大丈夫なのかしら?』

 

ァァァ!!!エレシュキガルちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『落ち着いたかしら』

 

「はいっ遠坂凛16歳。貴方のマスターに成れた事を誇りに思います!」

 

『そう、並行世界で依り衣とした少女のマスターに召喚されるなんて私も思ってなかったから罵倒されるんじゃないかと少し怖かったけど………誇りに思う、か………少し、嬉しいわ

 

あらやだ奥さん。このオタク殺し見ましたか?

今私三回ほど死告天使(アズライール)しましたよ。即死級の魅了スキルを有していたなんてお姉さん感激で首が落ちそう!

 

『でも、非常に言いずらいのだけれど………』

 

どうしました?だいぶ前のクリスマスイベントみたいに馬鹿な亡霊が苛めているとかですかな?

お姉さん、貴方の為なら今年のサンタになって叩きのめしてあげるわよ!

 

『貴方もうすぐ死ぬわ、そしたら契約が切れて私も座に還ってしまう』

 

「えっ」

 

………実装されてすぐ退去決まるあれですか

 

 

 

 

 

 

《アーチャーside》

 

「今のは………」

 

「何かしら、一瞬寒気が」

 

アーチャーの背後にある魔力炉の中身(サーヴァント三体分)の魔力が弾けるように器から流れだし一部が凛の敷いた召喚用の魔方陣に染み込む。

 

時間にして一秒もなかっただろう。魔方陣が淡く輝き視界に収めたわけではないが、

アーチャーとイシュタルは、自分達以外のサーヴァントの気配を感じたのだ。

 

「アサシン………にしては気配が大きすぎた。魔力不足で消滅したのか?」

 

三騎士の誰かアーチャーはそうアタリをつけるが、マスターとパスを繋げなかったからと召喚されたサーヴァントが一度も現界しないまま消滅するなどありえるのか?

彼自身が経験した聖杯戦争にも凛の記憶を夢を通して閲覧した数多の聖杯戦争でも召喚されたサーヴァントは必ず現界した状態で現れる。召喚されたものの、マスター不在などの魔力不足が原因で現界出来ずに消滅など中半端な結果はなかった。そもそもマスターは存在維持の魔力提供を主とする。

単独行動を持たなくても数分ぐらいは持つ筈だ。

 

「………嫌な予感がする。ぐだぐだとか、カーニバルとか、マンガで分かる!とか、深夜テンションでおかしくなったマスターが口走る何か、何かが………!」

 

「ヒャァァァ!?」

 

その時、地面が沈んだ




Q、推しが消えようとしています貴方ならどうしますか?
A、世界の意思って知ってる?

次回、『遠坂凛、守護者になる』『露骨な嘘は止めろマスター!』


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『魔法少女☆リン』『べっ別に続きが書けなくて過去編に逃げたわけじゃないんだからね!』『失踪する一歩手前だったことは黙っといてやろう』

―――数年前

 

「うわーやっぱり恥ずかしいというか、スカート短すぎじゃない?この服!」

 

『いやいや~凛さんったら厳しいこと言いますね。これでもかなり妥協したんですよ?これ以上伸ばしたらロングスカートになって『魔法少女』というより『戦うロリッ子メイド』になってしまいますよ!まぁルビーちゃん的には全然ありなのですが♪』

 

「うぅ…アーチャーがいれば変身しなくても!」

 

『魔力不足がどうにかなればですけどね~』

 

この頃の遠坂は、魔術回路と呼ばれる疑似神経を移植することで人間でも魔力を生成出来るという今までの常識を大きく覆す前代未聞の論文を発表したばかり。いずれ得る日本神界の後ろ盾もなく魔力問題でアーチャーを現界させ続けるにも限界があり…しかし、下手に目立ってしまったせいで上級悪魔に昼夜問わず命を狙われ…………遠坂凛5歳。彼女はカレイドステッキことルビーに頼りきりだった。

 

『その点私は神器扱いで魔力は不要!カードはただの飾りですが、上級悪魔なんてなんのその!あんなお兄ちゃん枠にも親戚のおじさん枠にも入れなかったプリヤの敗北者に凛さんが構う必要ないんですよ~』

 

「――後でバラされてもしらないからね?」

 

この時はまだ魔術師として割りきれていなかった魔法少女リンは縄でぐるぐる巻きにした悪魔を冥界へ届ける。

 

「あー、今月に入って十回目か。なんと言うかすまねぇなぁ、茶でも飲んでいくか?」

 

アザゼルとの付き合いは意外と長いぞ!

住む場所をことごとく破壊され廃墟を転々としていた凛を泊めてあげたり、魔王から賠償金を請求出来るよう堕天使総督として顔をたてたり、悪魔の引き取り相手となってくれていたのだ。赤い悪魔として覚醒した今でも遠坂は当時の恩から強くあたれなかったりする。

 

 

「思えば、悪魔ってfate世界じゃヨダレが出るほどの上級素材なのよね。決めたわ………悪魔専門のハンターになる!」

 

流石に悪魔=素材宣言をした時にはドン引きされたようだけど…是非もないよね!

 

 

 

 

 

その帰る道中、リンは傷ついた黒猫が道路の片隅でうずくまっているのを見つけた。

 

…ニャア

 

「あら、怪我をしているのね」

 

遠坂として魔術の研鑽を劣らないリンちゃんは治癒魔術が大の得意だ。(えっ?原典の彼女は苦手だろって?使う機会が多かったのよ察して)

 

とにもかくにも、リンはあっという間に黒猫の傷を治してしまう。黒猫は少し驚いたのかキョロキョロを辺りを見渡して安心したようにリンにすり寄る。

 

「――はくしゅ!」

 

リンは離れた。

 

「ニャア?」

 

「ごめんなさい。私、猫アレルギーなの」

 

「………ニャア」

 

最後に悲しそうに鳴き声をあげていたのが印象的だった黒猫はそれっきり姿を見ていない。




ちなみに、曹操が負けた遠坂凛の全盛期はこの時期ではありません。


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『たぶん誰も思い付かなかった展開よ!』『これを安易に思いつくようでは抑止力も過労死するだろうよ』

前回のあらすじ

 

『凛とエレシュキガルは並行世界のイシュタルの策略によって消滅しようとしていた』

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的な神性により自我が押しつぶされる魂の悲鳴を見かねたエレシュキガルは召喚されて直ぐにマスターの魂を冥界の更に深淵へと連れ去ったが、マスター()は消滅を受け入れるわけでも恐怖に心が折れてしまうわけでもなく驚くべき行動に出た。

 

「貴方を生前に限りなく近付けるわよエレシュキガル」

 

『はぇ!?近付けるって受肉ってこと!?聖杯もないのにどうやって!ただの魔力炉じゃ不可能よ!抑止力がないから誤魔化す必要のない英霊召喚は簡単に済んだけど過程をすっ飛ばして願いを叶える魔術式を組み込むなんて今の魔術師に出来る芸当ではないわ!』

 

エレシュキガルの口から語られたのは正に正論。神代の魔術師でも、それに教えを乞うたわけでもない魔術師に一から聖杯が造れる訳がない。遠坂もそんなことは始めっから分かっている。そもそも聖杯を造った御三家の一つに遠坂家はカウントされているが実際は上質な霊脈の提供が主で、聖杯製作の重要な部分はアインツベルンが行った。魔術刻印を受け継いでいる凛が当時の当主を実力で越えたとしても聖杯は造れないと彼女自身も感じている。

 

―――でも、英霊の受肉だけなら抜け道があるのよ

 

Fate/Prototypeのペルセウスのマスターは類い稀なる魔術の才能と三画の令呪を使うことでペルセウスを受肉させた。

この世全ての悪って方法もあるにはあるけど、正直エレシュキガルじゃ飲まれる。言い方は悪いけどあのヘラクレスにも無理だったのにエレシュキガルが耐えられると思えない。(ギルガメッシュ?あれは病気よ、病気)

…だから私はこの五十三画の令呪を用いて願う!

 

「我がサーヴァント、ランサーに令呪を持って命ずる、今再び神話を再現させよ」

 

『えっ』

 

「重ねて命ずる、イシュタルから全能を剥奪し、肉体を取り上げよ」

 

「重ねて命ずる、傲慢な姉にお灸を据えてあげなさい」

 

『あ、あぁ。そういうこと』

 

「残り全令呪を持って命ずる、宝具を使いなさい!」

 

『…了解したのだわ!』

 

 

 

 

 

『天に絶海、地に監獄。我が踵こそ冥府の怒り! 出でよ、発熱神殿!

反省するのだわ!霊峰踏抱く冥府の鞴(クル・キガル・イルカルラ)!』

 

 

 

 

 

エレシュキガルの宝具は端的にいってしまえばその空間を冥界に変えてしまうもの。

 

「ぐだぐだかァァー!」

「キヤァァァ!!!」

 

既に冥界なら発動しても意味がないと思うかもしれない。

しかし思い出してほしい。ハイスクールD×Dの冥界は複数の神話系統で区切られている。冥界の主として多少自由に動けるものの他の神話系統の冥界ではエレシュキガルは権能を奮えないのだ。

なら、宝具によって強引に塗り替えてしまえば?

 

「私の冥界に落ちた以上、貴方はもう私に逆らえない。返還するのだわイシュタル!」

 

「ちょっアンタ何でこんな所に!」

 

「問答無用!」

 

エレシュキガルは手慣れた様子でイシュタルの魂と遠坂の肉体を分離し、イシュタルの魂を籠に詰める。

その際に全ての権能を奪い、遠坂の肉体に本来の魂を戻した。

 

――そして、

 

「告げる!

  汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――”

 

 「―――我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」

 

「貴方を主として認めるわ凛!」

 

イシュタルに侵食され殆ど切れかけていたパスを繋げ直して契約成立。

いぇ~い!凛さん大勝利!

 

 

 

 

 

 

 




凛はエレシュキガルのマスターになった(まだ受肉してない)
イシュタルはエレシュキガルに捕まった
凛の肉体ではなく魂に令呪が宿っていたのは、凛の改造令呪だからと今は思ってくれ。後々情報は解放する

次回、『イシュタルが行方不明だけど最後に確認されたのって悪魔の領地だって。もしかして悪魔が誘拐とかしたりしてw』『………なん、だと?』最高神、動く
ハーデス「お前の娘達が上で暴れてな?(怒)」


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『黄金率Z』『あんまりよぉぉぉ!!!』『諦めろマスター』

「屋敷中の宝石を集めて令呪二画分かぁ………分かってはいたけど不安よね~」

 

かつては麻婆神父さながらの刺青令呪も先日エレちゃんの宝具魔力に使いきってしまい二画となった…三大勢力の和平会議など来年に控えちょっぴり不安な私、遠坂凛です。

 

「暫く無駄遣い出来んな」

 

「そ、そうね!その分私たちがサポートしないとっ」

 

「はいっ!」

 

現在我が家にはアーチャーとランサーのエレシュキガルちゃん、そしてアーシアがおります。いやー、実はあの後エレちゃんが張り切り過ぎてハーデスの冥界を一部乗っ取ってしまい大変お怒りのハーデスと危うく戦争待ったなしかと冷や汗を流したのですが、「…そうか、お前がコウモリ処理班の…消すには惜しい」何とか納得してもらい、作家サーヴァント並みに弱体化したイシュタルをこっちの世界のエレシュキガルちゃんに引き渡してゴールデンウィークを迎えました。

 

「(エレちゃんを召喚した記念に旅行に行きたいけどー、お金がねぇ…無いのよね………)」

 

領主として治安維持を行った報酬は宝石に使い込み、アーチャーが握っている食費を残せば万年家に余裕なんてありません。

間違いなく原典の貧乏属性を引き継いでいる気もしますが、あっちは宝石すら買えないので遥かにマシでしょう。

 

「………仕方ないか、」

 

「何が仕方ないのかしら?」

 

エレちゃんの為にも、アーシアの入学祝いも兼ねて遠坂は一つ決断する。

 

「久しぶりにティアマットの鱗を剥ぎ取って売る!」

 

「お、おぉぉぉお母様の鱗を!?それも、久しぶり!?」

 

さぁ往こう使い魔の森へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、着きました使い魔の森。

本日は暇そうにしていた英雄派のジークフリートと声だけはジークフリートのアーチャー。そしてエレちゃんと「怪我をした時には私が治します」とアーシア。アーシアの学友の兵藤一誠を連れて来ております。

 

「スッゲー!見ろよアーシア!あっちにペガサスがいるぞ!」

 

「うわぁぁ本当ですっ」

 

相変わらずあの二人は仲が宜しくて微笑ましいですね。彼の神器『赤龍帝の籠手』が目覚めた時は、歴代の赤龍帝は英雄色を好むというか、手当たり次第に異性に手を出し純粋なアーシアは傷ついてしまうのではないかと心配になりましたが、あの様子ではアーシア以外の女性なんて目もくれないでしょう。

願わくば彼女らが幸せに………て、いつから私は若い世代の幸せを願うお婆ちゃんポジションになったのよ。

流石にあれね、エレちゃんが来てから平和ボケしすぎたわ。

これから、戦うティアマットはビーストではないけど、カレイドステッキを使った私と固有結界まで使用したアーチャーでやっと鱗を剥ぎとれたほどの強敵よ。(その分、鱗は高く売れたわ…)

 

「ジークフリート、アンタは竜と戦ってみたいなんて理由でついて来たかもしれないけど、私たちが今から戦うのはドラゴンの中でも上位の素ざ………存在。気を抜いて大怪我してもしらないわよ?」

 

「………望む所だ」

 

「一誠、アンタは私たちがティアマットの相手をしている間、使い魔探しでもしてきたらどうかしら?」

 

「えー、アーシアは凛さんに付いていくんでしょう?「はい、でもイッセーさんは危険ですから…」なら、俺がアーシアの盾になります!」

 

ボンッと後ろで赤くなるアーシア。

 

「…その意気はよし、所でドライグ…彼が禁手(バランス・ブレイカー)したとして何秒持つ?」

 

『………気づいていやがったのか』

 

「えっ籠手が喋った!?」

 

『まぁコイツの為にもティアマットは良い練習相手になるから協力してやるよ。…体は出来ちゃいるが初めてだからな、禁手は30秒いや、50秒が限界だ。』

 

「それだけあれば充分ね。一誠、禁手が何か授業で習っているからだいたいは分かるでしょう。使い方はそいつが教えてくれるから使い時は自分で見定めなさい!」

 

「はいっス!」

 

「じゃあ皆いくわよ!」

 

「「「オー!!!」」」

 

 

 

 

 

「私は無視されているのか!?」

 




命を狙われることはないが、凛が金に困ると襲撃されるティアマットさん。そろそろぶちキレるかも?


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『ティアマットの鱗を剥ぎ取ろう!』『1』

洞窟。

遠坂達はハデスの隠れ兜で身を隠し奥底でぐぅぐぅと寝息をたてるティアマットを発見した。

てっきり、模造品の宝具ぐらい見破っているだろうと備えていた遠坂は拍子抜けするように首をふり、「アーチャー」「了解した」

アーチャーが竜殺しの宝具を厳選し始める

「エレちゃん」「名前だけで、お母様とは無関係なのね………うん、なら大丈夫」

エレシュキガルは宝具発動の為、槍を構える

「ジークフリート」「………あぁ」

ジークフリートは使いなれたグラムとアーチャーが投影したバルムンクを引き抜く

 

――そして

 

『………むにゃむにゃ、うん?』

 

全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!」

 

霊峰踏抱く冥府の鞴(クル・キガル・イルカルラ)!」

 

「ハァァァア!」

 

刺さって、落ちて、斬られて、目が覚めた

 

『また貴様かァァァァ!!!!』

 

【人と竜】戦いが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

『私はただ寝ていただけだというのに、毎度毎度!貴様は寝ていて、いきなりブスッと爪楊枝で刺される人の痛みと恐怖を知らんのかッ!』

 

「………キミには同情するが、我が家が金策において危機的状況なのは変わらない。(キッチン)を預かる者として年頃のアーシアに安物の米ばかり食わせるわけにはいかんのだ!」

 

アーチャーは干将・莫耶を投げつける。

ティアマットの鱗は傷つくことなくそれを弾いてしまうが、大きく飛び上がったアーチャーは投影した洋弓の弦を引き絞り、一瞬で投影した偽・螺旋剣を射つ。

 

『おぉぉぉぉ!?』

 

「チッ」

 

神秘の塊のようなティアマットは偽・螺旋剣の効果を打ち消し、鋭い矢として傷を受ける。本来なら呻き声を漏らすことなくアーチャーに噛みついてやりたい所だが、アーチャーが狙ったのはティアマットの爪…爪が割れた!

ティアマットはあまりの痛みに悲鳴を上げる。

 

「我が剣を受けて貰おう!」

 

そして追い討ちをかけるかのようにジークフリートが。

 

「邪悪なる竜は失墜し、」

 

『その剣は!』

 

五大龍王のティアマットはかつて、同じ龍王が一度殺された剣と限りなく近い神秘を内包するバルムンクに恐れを抱いた。

 

『神器ではない…聖書の神はその剣を回収出来ずに複製で代用した筈だ!何故貴様がそれを!』

 

私が造りました。その言葉を寸前で飲み込むアーチャー。

 

「世界は今、落陽に至る………撃ち落とす」

 

ヤバい!あの剣とあの剣の使い手と波長の似た力は私の心臓へ届き得る。翼を広げ空へ逃れようとするティアマット。しかし、エレシュキガルの冥界は深く障害物が殆どない―――つまり、良い的だ。

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

インドはヤベエ。その代表格であるカルナの宝具と数秒とはいえ均衡するほどの威力、そして《竜》特攻をこれでもかと詰め込まれた一撃がティアマットに直撃した。




※オーバーキル過ぎてドン引きするイッセーとアーシア
※凛は飛び散った鱗や爪を集めている(おおよそヒロインのする顔ではない、欲にまみれた顔だ)


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『ティアマットの鱗を剥ぎ取ろう!』『2』

「殺っちまった…」

 

バルムンクの一撃を受け爆煙と共に巨体が落ちて行く。

拍子抜けするほどアッサリとティアマットは倒されてしまった。

赤龍帝の籠手を発動させていたイッセーは隣で少し青ざめるアーシアに「女の子には刺激が強かったよな」と普段の彼では考えられないほど非常に穏やかな笑みを浮かべて頭をそっと撫でる。

 

「怖かったな、アーシア」

 

「…はぃ」

 

ドライグはつまらねぇと退屈そうに呟くが知ったことじゃない。

思えば、イッセーがこの龍退治?に参加したのはアーシアの身の危険を案じたからであり、元々戦う気などなかった。

 

「(たぶん、恋しているからだと思う)」

 

一目惚れしたあの時よりも、小さなことで笑ったり、困っている人を見逃せなかったり、目を離すと心配になるほどおっちょこちょいで…イッセーの中でアーシアという存在は次第に大きくなっていった。自分の思考回路の大半を占めるエロよりも赤龍帝としての本能よりもこの気持ちがきっと――

 

「なぁアーシア、俺達ってさ――」

 

『人間ンンァァンァンンン!!!!』

 

「イッセーさッ」とんっ

 

『ガァァァァァァ!!!!!!!!!!!!』

 

キミを愛しているというこの気持ちが優ってたんだ。

 

『イッセーさッゥ!?いやぁァァァァ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょう?」

 

凛はその光景があまりに信じられず呆然と呟く。

 

「ティアマット以外にもドラゴンが洞窟に潜んでいただと!?」

 

ティアマットに皆の意識が向いていた瞬間、爆炎が上空で一本の線となり冥界の上で見物していたイッセーとアーシアをイッセーが直前で突き飛ばしたアーシアは無事だが…巻き込まれた。

 

縄張り意識の強い龍が共存していた?

違う………凛が驚いているのは、その龍が洞窟の奥から出てきたのではなく確かに転移魔法を使って現れた事だ。

 

「ファフニールクラスが五大龍王以外にいたとは!」

 

そもそも、龍なんて特大の魔力を礼装まで使って感覚を強化している私とアーチャー、生命力に敏感なエレちゃんが見逃す筈ない。アーチャーの言うファフニールクラスなら、十キロは離れても感知出来る。

 

『………誰よアイツ』

 

傷ついていたティアマットはそう言葉を漏らした。

龍として長く生きたティアマットが知らない?

私達とティアマットがイッセーとアーシアに意識を削いだその瞬間を狙い済ましたように現れ………私たちではなくイッセーらを狙ってブレスを放つなんて、「………ドライグ、心当たりってある?」

 

「熱っ熱い!!?」

 

その時、爆炎から飛び出したのは禁手化を発動した若干熱で赤銅色に輝く赤龍帝。

 

『さぁ知らねえな!こんな奴がドラゴン族に居たなんて見たことも聞いたこともねえ!でも何だろうな、俺に近い力を感じるぜ、案外兄弟だったりしてな!』

 

「お前っそんな軽々しく!後少しで丸焦げになるとこだったんだぞ!」

 

『フッあの直前で禁手化するとは中々やるじゃねえか。俺も手伝ってやったが見直したぜ。今代の赤龍帝は甘ったれぇぬるま湯に浸かるとんだ腑抜け野郎かと思ったが気に入った!相棒と呼んでやるよ!』

 

「誰が相棒だ!?」

 

「(オーフィスの素材を混ぜ込んだ外套(礼装)を被っているからどのみち無傷だった………というのは野暮よね)」

 

「良かった、本当に良かった………!」

 

 

『ガァァァァァァ!!!』

 

「「「!?」」」

 

「兎に角、こいつを倒す!ティアマットは邪魔したら逆鱗剥ぐわよ!」

 

「「「おう!(はい!)」」」

 

『………もう勝手にしろ』




この後、ティアマットはどさくさに紛れて逃げた


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『これが緊急事態なのは分かるし、あの龍がなんなのか私も気になるが命が惜しいから逃げる』『3』

龍の籠手の亜種禁手を発動させ、全ての手にバルムンクを握りしめるジークフリート

最早、手加減やむ無しと壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)で投影した宝具による爆撃戦に切り替えたアーチャー

遠坂凛の守護に力を割きつつ、雷撃などの中距離攻撃で錯乱を試みたエレシュキガル

禁手化を発動し曹操ら英雄派の人間に鍛えられた赤龍帝は初めての実践ながらも上手く立ち回る、そんな彼を緑の光が包む。アーシアが神器で治療を行い少しでもイッセーの禁手の使用時間を伸ばせないかと試みているのだ。

 

『ガァァァァ!!』

 

戦闘が始まって一分が経過する。

 

謎の龍に致命打を与えられないまま、宝具の冥界を維持し続け何百と投影を繰り返すサーヴァント達に流石の遠坂凛の魔力は底が見え初め、「ぐっ!?」赤龍帝の禁手が解けた。

 

「ここまでか……皆撤退するわよ!」

 

「待ってくれ!俺のことは構わなくても!」

 

「うっさい!私はアンタの主でも親でもないの、保護者として少しでも危険だと判断したら迷わず撤退!以上!」

 

確かに持ち合わせの宝石で魔力をチャージすれば遠坂達はまだ戦えなくもない。しかし、今回はあくまでティアマットの鱗を剥いで適当な所で逃げるつもりでいたのだ。その前提で凛はアーシアと一誠が戦闘になるべく参加せず渡された礼装を絶対に脱がないという条件で連れて来たというのに、

………これ以上は、アーシアも一誠も怪我を。龍が隠し玉を持っていたり更に強力な存在が召喚されでもしたら凛は彼らに命を保証することが出来なかった。

 

「何かしらのドーピングで一時的に力を得たタイプでもなさそうだし、勝算が低すぎるのよ。一誠、魔術師ってのは準備に準備を重ねるのが基本。私が尊敬する切嗣さんならこういう緊急時はアーチャーを囮にしてコイツが何なのか調べようと自身は真っ先に逃げるけど、「おいっ!?」準備なんてしてないし、誰も犠牲になんてしたくないから皆で頑張った。けど、何にも分かんない。それで良いじゃない」

 

「………いいんスかね?」

 

「大丈夫、ここら辺はティアマットが縄張りにしてたから魔物も寄り付かないし、その内ティアマットに交流のある悪魔が洞窟の異変に気づいて討伐隊を組むなり捕獲するなり勝手に決めてくれるわ」

ティアマットが魔王と殺し合える強さと言うなら、あの状態のサーゼクスにコイツは敵わないだろうし。そう付け足した凛は節約すると決めた令呪を一画使用し、爆発的に速度を上げたアーチャーとエレシュキガルに一誠とアーシアを回収させて転移の魔方陣を発動させた。




『これを臆病と呼ぶか、保護者として当然の行いとして観るかは貴方次第………』
『ちなみに、一誠とアーシア、ジークフリートが居なければマスターは意地でも敗けを認めなかっただろう………彼女の負けず嫌いは原典の………いや、こう言うあやふやな表現はよそう“凛”以上だ』


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『魔獣創造とは?』『ティアマトの権能です』『違うぞマスター』

「曹操、悪い知らせだ………」

 

世界で初めて神器教育科を設立した魔術学校。そのOBとして卒業した後も割りと頻繁に訪れていた英雄派の集まる一室は重苦しい空気に包まれていた。

 

神滅具(ロンギヌス)を宿していた少年が………家族関係に問題はなかった。しかし、行方不明になったと我々に連絡が届いた時には、神器を抜き取られた事で死亡が確認されたッ」

 

「三大勢力のゴミ共め!」

 

英雄派の一部が殺気立つ

 

「待て、三大勢力と決めつけるのは早計だ。他の神話系統の独断とも」

 

「日本神話は遠坂凛との契約で国内にいる全ての神器保有者を保護すると約束を交わした筈だ!」

 

「言わせるな。スサノオとロキが戦えばロキが、天照大神とアレスが戦えばアレスが………古くはあるが、信仰自体が力となる神々…世界的に有名な彼らに比べ日本神話の知名度など無いに等しい、最悪の場合を除き他神話の神が関われば神器保有者ごときで日本の神は動かない」

 

現に遠坂凛の屋敷にオーディンが訪れた時も悪魔が襲撃した時も、日本神話は知らぬ存ぜぬで通した。

義理堅いだとかフェンリルの尻尾に火を浸けて土地神を守ったからだとか、分かりやすく貢ぎ物などを横流しして遠坂凛を上手く騙しているようだが、英雄派の彼らにとって、既に三大勢力や神々の評価は落ちる所まで落ちていた。

 

「なぁ、曹操。俺たち人間はこんなにも無力なのかよ」

 

「あの、遠坂凛でさえティアマットとその後に現れた龍には勝算が少ないと言葉を漏らしていた」

 

曹操と同等かそれぞれ以上の遠坂凛(魔法少女化)でさえ魔王級で手こずる。三大勢力を滅ぼせたとしても魔王を越える存在など百はいるであろう神の前で人は従うしかないのか。

英雄。無力な人間を守る為に集まった彼らに神という大きすぎる壁が立ち塞がったことで、その現実が改めて重くのし掛かった。

 

 

「――いや、一つだけ最強にして最上の手段ならある。遠坂は近々、第二魔法を使い降霊魔術を修めるのだと躍起になっていた。」

 

その時、ゲオルグが口を開いた。

 

「降霊魔術………?」

 

「英霊召喚の亜種、我々に合わせれば亜種禁手

 

英霊召喚は死後英霊として星に刻まれた偉人を再び現代へ甦らせる大魔術。しかし、大量の魔力や好意的ではない英霊が召喚された場合、召喚主に牙を向く可能性があり人類の守り手とするには問題があった

 

遠坂凛が成そうとしている事は、召喚ではなく己を媒介とした憑依。英雄の力を人間が借り受け擬似的なパワーアップを可能とする名付けて―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢幻召喚(インストール)!」

 

「ほぉ、並行世界の技術ですか」

 

その日はこれといって特別な日と言うわけではなかった。強いていうなら宝石剣を完成させたばかりでえらく上機嫌でありゲオルグの質問にペラペラと(勿論話すべきでない事には口を閉じるが)いつもと比べ、かなり口が軽くなっていた。

 

「そう、前々から興味はあったの。でも、私が修めているのって鉱石魔術で降霊科は専門外だからムリなのかなぁ~て諦めていたの。現にホムンクルスは私の才能をフルで働かせてみたけどムリだったし、たぶん成長するにつれて自然と原典と同じ魔術が使えるようになったのは『サービスしたるで!』あの変なメールのお陰。今さら学ぼうにもこの世界の時計塔に私以上の魔術師は居ないし、もう殆ど諦めていた時に、アーチャーがね「では、並行世界の魔術師に教えを乞うてみたらどうだ?」その一言にピカーンって来たのよ!

私年齢的には中三だし、今からでも全然!」

 

「今貴方が消えれば英雄派は空中分裂し、それを好機と悪魔達が一斉に攻め込んで来るでしょうね。何処へとは言いませんが」

 

「えぇー!」

 

これ以上の戦力は過剰。神という脅威を認識していなかったゲオルグには遠坂凛がこれ以上強くなるのは彼女のうっかり属性を真剣に危険視して避けたかった。

 

それだけの理由でその時は深く考えようとしなかったが夢幻召喚………これは、神々と矛を交える我々には必要になると英雄派に伝える。

 

「結局は凛さんに頼りきりじゃん。情けな~い」

 

「ぐっ!?」

 

「それってヘラクレスの力を俺が正式に受け継ぐって事だろ?スゲェじゃねえか!」

 

「………その場合、ジークフリートとシグルドどっちだ?」

 

「曹操か」

 

英雄派は盛り上がる。

この世界のギルガメッシュが成し得なかった全ての神々を滅ぼす

その野望を胸にして。




『この世界のギルガメッシュは神に負けた!』『貴様、我(おれ)が神に負けただと!?その侮辱は万死に値する!』『――ならば、神々が今も生きているのは何故だ?』『……………』


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『旅行に来た!』『“わくわくざぶーん”だと?』

「わははは!速いですイッセーさん!」

 

「うぉぉぉぉ俺の限界こんなもんじゃねぇぇぇ!」

 

「キャァァ♪」

 

「………何と言うか、砂糖吐きそう」

 

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

 

ティアマットの素材が思った以上に高く売れ、現在は不参加のジークフリートを除き鱗剥ぎメンバーで旅行に来ております。

事後報告になりますが、あの龍は悪魔と堕天使が共同で捕獲して研究され尽くした後、人工神器の材料となるようです。

 

アーシア達を帰した後に私とアーチャーで遠距離ボルグ即死コンボを極めに行っても良かったのですが、「ウォォォォ可哀想じゃねえかァァ責めて俺の人工神器に役立って成仏シテクレォォォ」龍を受け取ったアザゼルが顔面崩壊レベルで喜んでいたので良かったのでしょう。遠距離ボルグコンボだと穴だらけで素材として使えませんし。

 

「しかし、サーゼクス(偽)とファフニールクラスの龍が立て続けに現れるとは………偶然とは思えんな」

 

ブーメランパンツを穿いた変態が真顔でそんな事を言っております。あらやだ、新手のセクハラかしら?

 

「きっと!禍の団が絡んでると思うの!サーゼクスという悪魔は知らないけどあの龍からはマスターの礼装と同じ気配がしたわ。つまり犯人はオーフィスよ」

 

…凄い、凄すぎるわエレちゃん!ワンピース姿も煌めいてるけどその頭脳は常に閃きまくっているのね!

 

「おーとっ、ここでツッコミが来ると思うのは間違いだ。私がいつまでもギャグ要員に収まる男だと勘違いされてもらっては困るからな」

 

「………それにしても禍の団か、そろそろ本気で潰そうから」

 

「無視はよくないと思うの」

 

「ごめんなさいアーチャー」

 

「そんな憐れんだ目で謝罪するのは止めろ!」

 

 

―――フフフ、結局ツッコんだわね

 

アーチャーがシリアスに帰還する日は遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《魔王side》

 

 

 

「皆、集まってもらったのは他でもない。旧魔王派をぶっ潰そうと思うんだがどうだろうか?」

 

 

「「「意義なし!」」」

 

 

「あの糞害虫野郎共…なんか、神器を集めてると思ったらサーゼクスの人形作って遠坂凛に仕掛けていやがった!俺たちの心労は全部アイツのせいだったんだ!」

 

 

「赤龍帝を捕獲して洗脳するとか、もう確信犯だよね☆内臓引きずりだして細切れにした後、豚の餌にしてヤロウヨ☆」

 

 

「いや、開発中の新たな駒の実験台になってもらった方がいいだろう。長く苦しんで貰えば私たちの胃も安らぐからな」

 

 

「何それ最高じゃん☆」

 

 

「裁判では私が法廷に立とう。安心してくれ、有罪しかあり得ない。」

 

 

「胃薬生活も、おさらばだ!」

 

 

証拠は揃った恨み辛みも充分だ!

 

次回、「旧魔王派死す!」




カテレア「裁判終わった後で良かった~!」
白龍皇「…ラーメン食べるか」

今回の出来事を一言で纏めると「龍、調べられて全部バレた」


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旧魔王派の罪

※胸糞注意


1.悪魔の駒の悪用

 

同意のない眷属化。抵抗すれば殺してから転生させる鬼畜仕様。

四大魔王が悪魔の駒の使用を禁じ駒の回収を始めたが、逆に回収された駒を強奪し、人間、妖怪問わず眷属化を繰り返す。

 

2.神器保有者の殺害

 

眷属化された後も悪魔に従わない人間は多くいた。替えが効く存在なら見せしめとして殺したが、神器保有者となるとそうもいかない。一度親族共々殺して心身共に屈服したと思われた神器保有者の眷属が自滅覚悟で旧魔王派に挑んだ。神器保有者は戦いの最中『禁手』にまで目覚め最後まで人間として戦いぬく。手酷くやられた旧魔王派は神器保有者の眷属化を諦め神器の回収を始めた。

日本でも少なくない被害が出ている。

 

3.同盟者への攻撃

 

北欧の主神の立ち会いの下、結ばれた不可侵。

過去、数百回は破った。一部、旧魔王派ではない上級悪魔含む。

 

 

4.同族への裏切り

 

回収した神器の禁手に成功し、サーゼクスの遠い血縁関係にある悪魔の赤子を触媒とすることで四大魔王サーゼクスと同質の魔力を帯びた最上級悪魔を創ることに成功。偽サーゼクスは未熟ながら滅びの力の再現も可能としていた。

代償として悪魔としての寿命が万分の一となり、触媒となった赤子の魂は完全に塗り潰された。

遠坂邸に送り込む。

後に、遠坂凛の話で偽サーゼクスが生まれてまもない悪魔であることが判明。その時は奇妙な事件として処理されたが…

 

5.ドラゴン族の子供を拉致

 

非人道的な実験を繰り返し理性のない怪物を生み出す。

怪物は成体のドラゴン族と見た目は遜色なく、その強さは龍王級にまで及んだ。元々、素養があったのか偽サーゼクスの時のように大幅に寿命を削ることなく理性がない点を除けば無理やり成体にさせたそのドラゴンを少し弄った程度である。

偽サーゼクスと違い面影が残っていた為、行方不明だったドラゴン族の子供であることが発覚。

これについて元龍王タンニーンは「千度殺そうとこの怒りは治まらぬ」と言葉を残している。

またこの事件によって偽サーゼクスが行方不明だった悪魔の赤子であった事が発覚し、遺体を弔わず実験材料として提供してしまったサーゼクスは深い自責の念に苦しむ。

 

堕天使アザゼルはその事件を受けてドラゴン族の子供の魂を人工神器に収め悪魔の駒ではどうしようもないレベルまで磨耗していた魂の修復を試みる。

数ヶ月後タンニーンにアザゼルから黄金の腕輪が届けられた。

 

6.悪神への情報提供

 

神器保有者が力を蓄える事を快く思わない神へ神滅具保有者の居場所を伝える。

後に英雄派は、情報提供元が『禍の団』旧魔王派であることを知る。

 

7.遠坂凛を殺そうぜ!

 

その日、遠坂凛は英雄派を護衛に三大勢力の会談に参加する。予定がかなり早まったらしいが、神器や洗脳した眷属を従え力を蓄えた旧魔王は人間で最も厄介な遠坂凛や英雄派の人間もろとも三大勢力のトップ達を殺害する計画をたてる。

元々予定にあったサーゼクスとセラフォルーだけではなく四大魔王は全員が参加

堕天使は新しい総督とアザゼル、コカビエルが参加

天使はミカエルとガブリエルが参加

元龍王タンニーンが参加

ラーメン巡りに行ったきり白龍皇が行方不明

――らしいが、問題ないと切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8.喧嘩を売る相手を間違えた



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『オーフィス再び』『そしてアイツが現れた!』

「遠坂凛。君には並行世界へ行ってもらいたい」

「良いの!?」

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

英雄派が分裂するからとか、悪魔が調子に乗るからダメだとか全然許してくれなかったゲオルグが朝、菓子折りを持って来たと思ったら並行世界へ留学するのを許してくれたの!

どういう風の吹き回しかしら?ゲオルグも『夢幻召喚』したくなったのかしら!?

 

「悔しいが今の俺達では神々と――

 

夢幻召喚を―――」

 

あ、要するに本当に夢幻召喚したくなったのね!

うん分かるわ。私もプリズマ☆士郎を見た時は『クラスカード』 衝動的にアポゾンでポチったもの。格好いいわよね。何より召喚ではなく憑依ってのにロマンを感じたわ。

 

「同じ魔術師として、自分の力ではなく他人任せなのは少し癪だけど―――うん、貴方の願いこの遠坂凛が応えてみせる!」

 

そもそも、英雄派が私の抜けた穴を埋めてくれてるのだから感謝しないと。

 

逸る気持ちを抑えられない遠坂は学校から帰ってきたアーシアに暫く屋敷を留守にすると伝え、結界を強化し聖堂教会で最近悪魔狩りを楽しんでいるフリードという男に「定期的に上級悪魔が襲撃してくるけど、留守の間住まない?」「喜んで♪」アーシアのボディーガードを無料で頼む。

そして、一誠に「暫く留守にするからアーシアを気にかけてやってくれない?」………と、ちゃっかり恋のお節介をしつつ。アザゼルにアーシアに近づく害虫は抹殺するように念を押した。

 

――で、

時計塔の降霊科とエインズワース家の置換魔術をパクる為にハデスの隠れ兜を装備した遠坂は宝石剣ゼルレッチを工房から取り出しアーチャー、エレちゃんと共にハイスクールD×Dの世界から消えた。

………これまで僅かニ時間の出来事である。

アーシアは何が何だが制服姿で呆然とし、ゲオルグはまだ普通に残っていたので、少し遠いデパートに行ってくるような感覚で並行世界に渡る遠坂に唖然としていた。

 

 

 

 

《禍の団side》

 

「んっ遠坂、次元の狭間、飛び越えた。自力で根源、到達した?」

 

「オーフィス、蛇を用意しろ!」

 

「………うるさい。禍の団、英雄派よりも頭悪い。我の静寂、程遠い」

 

遠坂………英雄派よりも強い。旧魔王派、英雄派に勝てない、カテレア蛇あげたのに竜殺しに負けた。

禍の団捨てて遠坂を味方にすべき?

 

 

――数日後、オーフィス失踪。

禍の団、戦力の99,9%を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、並行世界『プリズマ☆イリヤ』

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!」

 

「どうしたんですか?お姉~さん♪」

 

遠坂は子ギルに見つかった




ギルガメッシュを登場させたい
1.賛成 206
2.反対 16
3.賢王なら……… 244

『つまり登場させていいという訳ね…』『それは詐欺だと言っているだろマスター!』


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『子ギルって最高最強の王だと思うの』『手加減したとは言え、小学生相手にエアを抜くがな!』

「(アーチャー!何で?何でバレてるの!?)」

 

「(分からんっ!だが、この宝具は英雄王の王の財宝(ゲートオブバビロン)から投影した物だ。持ち主が対応策を知っていてもおかしくはない!)」

 

「そろそろ、『それ』取ってくれると嬉しいのですが♪」

 

「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!申し訳ありませんッッ!」

 

子ギルが怒ってらっしゃる!

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。プリズマ☆イリヤの世界に訪れた私たちですが、手違いでエレちゃんだけ平和な方に転移してしまい急いで戻らねば!と、宝石剣を掲げたら鎖が飛んできて奪われた次第であります。

正直、奪ったのがクソえいむの爆乳娘なら恐れる所かむしろボコボコにして差し上げようかと思いましたが、子ギルは慢心を捨てたあの英雄王。小学生相手に躊躇いなくエアを抜いちゃうヤバい系の御方です。あんな百発中五十発は外しているような爆乳娘とは比べものになりません。

 

いくら財宝の何割かを奪われているからとはいえ

 

「アーチャー、慢心を捨てたギルガメッシュに勝てると思う?」

 

「ははっ面白い事を聞くな、無理に決まっているだろう」

 

今の私たちでは手も足も出ない。せめてエレちゃんがいれば何とかなったかもしれないけど、宝石剣を取り返さないことにはどうしようもない!

 

「あ、これはお返しします」

 

「えっはい」

 

「申し訳ない。並行世界の貴方に興味があり、少しでもお話を…と思ったのですがいきなり帰ってしまわれそうでしたのでつい、手荒な真似をしてしまいました。これに措かれましては賠償金は以下ほどにも――」

 

「いえいえいえ!大丈夫です、気にしていませんから!」

 

「それは良かった」

 

「じゃあ私たちはこれで――!」

 

 

「待って下さい、僕は「ごめんなさい!急いでいるから!」

――ほう、(オレ)の話が聞けないと?」

 

子ギルは、王の財宝からエアをチラつかせた。

 

「…何でもありません」「それはよかった♪」

 

やっぱりこの人、大人の時より怖い。

己の足に巻き付く神の鎖を見て遠坂はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、並行世界の僕は神々に負けてその世界で神々は今も、のさばっているんですか♪」

 

「はいそうです」

 

「この麻婆豆腐どこかで?」

 

場所を移動して子ギル行きつけの飲食店。

遠坂は微妙にトゲのある発言を繰り返す子ギルに怯えながら自分が観測世界の人間である。その情報だけは秘匿し、元々隠す必要がないので聞かれた事を素直に喋っていた。

 

「三大勢力……人の可能性を潰すカス。神は未だあり方を変えられないか、人はいずれ真なる無を受ける…冥界は妨げでしかないと云うのに……本当に並行世界の僕は何を………はぁ」

 

ただあんなに明るかった子ギルの顔が遠坂の話を聞けば聞くほど曇っていくので、遠坂の胃は禁手(バランス・ブレイク)目前だ。

 

「もう少しこの世界を視たかったですが、並行世界の僕の過ちは正さねばなりません。遠坂凛、僕をその世界に連れて行ってくれませんか?」

 

「「えっ?」」



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『違うの、失踪とかじゃないの!疲れてちょっとソファーに横になったら朝になってたの!?』『では明日から毎日投稿だな』『………ノーコメントで』

ここは遠坂邸。

「いつもは、アーチャーさんに任させっきりですが、私もメイド…今日という今日はお掃除してみせるのです!」

「あー、正直どこを掃除すんだってぐらい、埃どころか髪の毛一つ落ちてないが…頑張れよ?」

思えば、この家に来てからメイドらしい事は何一つ出来ていないアーシアは家事全般において右に出る者はいないアーチャーが居ないこれ幸いと、(自身の家事スキルはともかく)ドドンキホーテで買ったコスプレメイド服に身を包み、代理保護者であるアザゼルが心配になるほどやる気に満ち溢れていた。

 

「先ずは、床の雑巾がけです!」

 

「………落ち着け、ここは全面カーペットだ」

 

「なら、ハタキ掃除で!」

 

「(いつ椅子から転げ落ちてもいいよう、構えとくか………)」

 

危なっかしいアーシアの後ろにそっと回るアザゼル。

 

「………いい歳したオッさんが女子高校生にラッキースケベを期待するじゃないわよ?」

 

「ハッ!確かに数年すりゃ俺好みの可愛い子ちゃんになるだろうが、そんな事をすれば赤龍帝に殺され………うお!?いつの間に帰って来た!?」

 

慌てて振り向けば妙にげっそりした遠坂。

「ふふっ早速、()()使()ですかぁ~」

「止めろ、ここを血の海にする気か!」

金髪の子供を羽交い締めにするアーチャーと凛を守るように槍を構えるエレシュキガルがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《遠坂side》

 

どうも皆さん、こんにちは遠坂です。

子ギルに脅迫されて急遽並行世界から戻ることになりました。

正直もう胃が耐えられない………この人怖すぎです!?

何で直ぐエアを抜こうとするの!?zeroだとめちゃくちゃ出し惜しみしてたじゃん!stay nightじゃ泥掃除だったりセイバー苛めるのに「あれ?思ったよりポンポン使うなぁ………」って思いましたけど、もしかして本来のギルってエア使うのに抵抗ない感じなの!?

 

「では、僕はこれから神々を滅ぼす用事があるので♪」

 

「アーチャー!エレちゃんンン!!!」

 

「ギルガメッシュ!流石にそれは横暴すぎるのだわ!」

 

「おいたが過ぎるぞ英雄王!」

 

子ギルを拘束に掛かる二人。凛は迷わずガンドを射った。

もうこの時点で子ギルと完全に敵対してしまう訳だが、冥界や天界が同時に滅ぶような事態になればこっち側にどのような変化が起きるか分からない。

………殺られる前に殺っちゃえ!の精神である。

 

「でも残念でしたね」

 

アーチャーが伸ばした腕が子ギルをすり抜ける。

 

「「なっ!?」」

 

「貴方の立場上、僕の行いを許す訳にはいかない。敵対することは必然でした。

しかし、貴方は大人である僕が認めてしまうほど価値を示した人間だ。「…価値?」ただの人間が悪魔や天使達と対等になれる下地を作ったのですから当然でしょう?

実際に動いたのが、貴方でなくとも貴方が居なければ救われなかった人間は数多くいる。

殺すには惜しいんですよ………ですから、この世界に来た瞬間、今の僕が持つ最強の盾を使わせてもらいました。」

 

子ギルはそうニッコリ笑うと、うっすら胸から鞘を――丁度、エクスカリバーぐらいの剣が入りそうな鞘を浮き上がらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こ、こいつ!よりにもよって『アヴァロン』(原典)使いやがった!?




もう、凛とアーチャー達は物理的に子ギルを止められない。

アヴァロンとは、『Fate stay nightのセイバーが使う最強の盾でありエクスカリバーの鞘。効果は回復と遮断』弾くのではなく遮断する<ここ重要
元々ギルガメッシュは貯蔵していない宝具とされているのだが、それを言ったら同じく貯蔵されていない筈のエクスカリバーの原典メロダックを持っていた理由が分からないので、子ギルのそれは遮断の盾の原典。


次回『グングニルvsメロダック』サブタイトル:片目お爺ちゃん未知との遭遇


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『そういえば、何で子ギルがアヴァロン持ってるの?持ってない筈よね?』『プリヤは独自の設定で描かれるfate作品でも異色な代物だ。正直私もよく分からん』

いつものように、その老人は玉座に腰掛け「ついに円周率の最後の数字も割り出してしまったの…暇じゃなぁ」

とても退屈そうに頬骨をついていた。

 

「女も良いがワシの求める真なる欲は、あの娘以外満たせる者はいない、か………会談は最低でも一年後、長いのぉ」

 

いつも通り。そう、いつも通りだ。ただ退屈だと駄々をこね、老人は新たな知識を求めて止まない

円周率だとか、古代人の遺跡だとか一日中、頭の中で謎解きを楽しみ、気まぐれに女をからかう。

それがその老人にとっての日常で、老人の遣いが目にするいつもの光景。

今日は偶々、老人の一言でその遣いは居ない。

それ以外は何も変わらない、いつもの日常。思わぬ休日に心踊らせた老人の遣いはそう思っていた。

 

「あぁ、暇だ。暇で死んでしまうかもしれん」

 

「本当にそのまま死んでくれたら楽なんですけどね?」

 

「カカカっ!それはあの娘の頭の中を隅々まで覗き見てからにしたいのぅ」

 

「「メロダック!(グングニル)」」

 

北欧の神殿で戦いは始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だそれは、何だその力は!分からぬ解らぬぞ、小僧!神器でも魔術でもないただの剣や槍を打ち出すその能力は何だ!」

 

老人は効率の悪いグングニルを捨て空中にルーン文字を描き、炎、洪水、落雷、余波で神殿が吹き飛ぶ連撃を繰り返しながら笑う。

侵入者で己を殺し得る半神の小僧。ただ強いのでなく『知』において全知全能のゼウスすら越えたと自負するこのオーディンが知りえない武具、戦略、神という存在に対する異常なまでの執念。

………あぁ、何と何と素晴らしきかな!

 

「死んでくれるなよ!」

 

北欧の主神は期待を込めて死のルーンを刻んだ。

大抵の神々は死に絶えるだろうその一撃を半神の小僧は、いとも簡単に短剣で突き刺し、砕いてしまったではないか!

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)!」

 

そして次は「おおぅ………」三千は下らない黄金の波紋がオーディンを覆う。驚くべき事にその全てから神殺しの力を感じたとなれば最早笑うしかあるまい。「どういう理屈なのだ?その黄金に展開する数は限りがあるのか?この武具はお前が作ったのか、それとも単に貯蔵しているだけなのか!?」

 

「――これで終わりです!」

 

防御は不可能と悟ったオーディンはこの光景を脳内に焼き付けるべく目を見開いていた。千の宝具が射出される一瞬にも永遠にも感じられる時間の中でこの黄金や打ち出される武具は何なのか仕組み、原理、工程、法則を考え、考え、考え「このワシが知において遅れをとるとは幾千年ぶりか!」頬を刃が掠めた瞬間、北欧全体に響き渡るほど大きな笑い声をあげながらその姿を財宝の山の中に埋もれさせた。




『………コフッ』『マスター!!』
『ハァハァハァ………何とか、消滅する前に………冥界に投げ込んでやったのだわ』



次回『リアス・グレモリー』彼女は何故、眷属を持たないのか………孤高の王の正体に迫る!
別番組『大人気ゲーム配信者ギャスパー君出演、クイズ帝王!』『秀才!動物保育園。動物の声を聞く子猫さんスペシャル!』『朱乃の部屋』『エクソシスト24時 次世代のデュランダル使い』


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『一方その頃!』『原作ヒロインがやっと登場したか』

凛達が神界全体に頭を下げに行きつつ、「ふんっ人間ごときが気軽に」だの「英雄だか何だか知らんが、所詮は人、我々が後れを取るなどあり得ない」等、フラグを立てまくる彼らに胃を痛める一方で冥界のとある人気番組『冷血大陸』の放送が始まった。

 

 

『放課後になると、彼女は旧校舎で一人お茶を淹れる「この一杯の為に生きてるわ」鹿児島原産、わざわざ直接足を運んで手に入れたお気に入りのお茶である。

 

【グレモリー家次期当主リアス・グレモリー】

 

悪魔が最も意味嫌う駒王町で彼女は今何を思うのか謎に迫った』

 

 

Q,何故、家に帰らないのですか?

 

「ふふっ帰りなくても帰れないの………はぐれ悪魔の襲撃に壊された校舎の修復、そんな事に時間を費やすぐらいならいっそ学園に住んだ方が効率的だと思わない?」

 

『「シャワーに加えてこれも増設したの」、彼女は嬉しそうに、そう呟くと部室のカーテンを開け、ガスコンロと水道設備の施されたキッチンを我々に見せた。壁付きのI型キッチンである。』

 

 

「ハァッ!!!」

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

夜の学園に響き渡る爆発音。リアス・グレモリーの仕事の時間だ。この駒王町は数年前から悪魔被害がこの学園に集中し、彼女はその対処に追われている。しかし、苦だとは思わない。彼女にとってこの学園は悪魔を嬉々として食らう赤い※※遠坂凛から彼女が唯一独立の統治を認めさせた愛着のある学園なのだ。

 

 

 

「ああああああ!!!!京都がぁぁ私の修学旅行がぁぁぁ!」

 

高校生活の醍醐味『修学旅行』ですらも学園の為なら必要ないと言うのか?

我々は兼ねてからの疑問であった一言を放った

 

Q,修学旅行を楽しめばよろしいではないですか――何故貴方は

 

ごくりと唾を嚥下し、一拍空ける。

 

眷属を持たないのですか?

 

「申請が降りないのよぉぉぉぉ!!!!」

 

人間でなくともグレモリー家次期当主の貴方なら、優秀な悪魔が直ぐに集まるだろうに。取材班はその一言を飲み込んだ。

日本政府が定める眷属を持つ悪魔の適正年齢は15歳以上。彼女は既に三百回以上の申請書を提出していたのだ。

並々ならぬ人間への執着はある意味、急速に力を付けだした人間を快く思わない悪魔社会に対するアンチヘイト。彼女は自らが先陣を切ることで人間に対する認識を改めるべきであると悪魔社会全体に訴えていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《同時刻に放送された番組視聴率ランキング》

 

1位『秀才!動物保育園。動物の声を聞く子猫さんスペシャル!』20.1%

 

2位『エクソシスト24時 次世代のデュランダル使い』19.7%

 

3位『大人気ゲーム配信者ギャスパー君出演、クイズ帝王!』15.1%

 

4位『朱乃の部屋(再放送)』13.9%

 

5位『冷血大陸』2.4%

 

 

 

 

 

Q,番組最低視聴率ですが、この結果をどう思います?

 

「うわぁぁぁぁ!!!!」

 

その翌日、リアスは悪魔の駒の返還を求められた。



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『デッテレー!スペアキー!』『チート発動かマスター!?』

「なっ!?何だ貴様!」

 

「その鍵貰い受ける!」

 

とある山奥、ひっそりと研究を行ってきた魔術師の工房に赤い女が襲撃を掛けた。

魔術師の男は腕を切られた訳でもそのあと惨たらしく殺されることもなかったが、近々行われる亜種聖杯戦争でギルガメッシュを召喚するために用意した触媒を盗まれてしまい…新たな触媒を用意出来るほど財産に余裕がなかった為、事実上の敗退が決まった。

 

末端とはいえ被害にあったのは時計塔所属の魔術師、時計塔はこの事件を調査するために幾つか人材を派遣したが、亜種聖杯戦争が始まるとそれどころではなくなり、赤い女の正体は未だに謎のままである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だけど子ギルを倒す為に並行世界に行って『王の財宝(ゲートオブバビロン)』のスペアキーを取って来ました。遠坂凛です。今からこれで子ギルの『王の財宝』に鍵をしちゃいたいと思います。

…………いや~ギルガメッシュの倉に鍵をするとか流石に卑怯な事だと思うわよ?でもオーディンがやられて北欧は今、大変な事に為ってるの。もう半分以上の神々が冥界送りになってロキは神性の一部を封印され実態を保てず神霊のような虚ろな状態となり、エレちゃんが繋ぎ止めなければ誰も認識出来なくなるようなとても危険な状態にある。子ギルはフェンリンを警戒して停戦状態が続いているようだけどそれも時間の問題。もうなりふり構っていられる時間はない。

 

「――と言う訳でエレちゃんお願いします!」

 

「了解したのだわ」

 

鍵を受け取ったエレシュキガルはFate/strange Fakeでイシュタルがやったよう『王の財宝』を封じた。

 

 

 

「エア!」

 

だが、残念。ギルガメッシュは既にエアを抜いていた。

ついでに言うとアヴァロン(原典)を装備しヴィマーナまで取り出していた。本気と書いてマジ状態ではあるが上裸スタイルでもなくガチガチに宝具で装備を固めている。腰に付けたエリクサーとか蘇生の霊薬は見間違いだと思いたい。

 

 

「もう、ダメよ…………終わりだわ。毒も天敵も何もかも…………遮断する奴なんかにどうやって勝てばいいのよ」

 

 

普通ならヤれるであろうエルキドゥもヒュドラの毒も無駄だ。だって当たんないし、エルキドゥとか呼び寄せたらメソポタミア神界が大変な事になりそうだし。イシュタルとか確実に殺られるし。

 

 

「気軽に並行世界に渡るんじゃなかった」

 

遠坂は絶望する。もう万策尽きたと、自身の打てる手は残っていないと。

 

ギルガメッシュの手によって神々は消滅し、人間の時代が来るのだ。

 

謂わばこれは剪定事象…ロストベルト的なこの世界が本来の形に戻るような物よ…………悪いことじゃない。エレちゃんはサーヴァントだし子ギルも見逃してくれる。

 

私みたいな小娘は、ただ受け入れるしか……………………

 

 

――話の途中だがワイバーン(アンケート)だ!



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『シリアスとシリアルは紙一重なの!』『倉を閉じて直ぐにエレシュキガルは冥界に潜り被害を最小限に抑えようと足掻いている』

万策は尽きた。

主力を封じようと、此方の持ちうるあらゆる手札を晒そうと、慢心を捨てた英雄王を相手に勝ち目などない。

せめて、エアを抜く前に『王の財宝(ゲートオブバビロン)』を閉じていれば結末は変わっていただろうがそれもあくまで可能性の話だ。

 

 

「………もう終わりだ、諦めろマスター」

 

「……………………待ってよ」

 

「小手先が通用する相手ではない。君の観測次元で得た知識は確かに我々サーヴァントにとって脅威になるかもしれんが、アレは“知っているから”そんなアドバンテージを易々と踏み越えて行く正真正銘の化け物だ」

 

「…………でも、これ以上子ギルは宝具を取り出せない。アヴァロンを一瞬でも無効化して不意を突ければ――」

 

「勇気と蛮勇を履き違えるな!それがどれ程無謀で困難な事が分からない訳ではあるまい!」

 

「でも、でも!現存する全ての神を滅ぼすなんて、人間界にどれほど被害が出るか分からないのよ!?天変地異がひっくり返るなんて方がまだ優しく思える、子ギルが本格的に神々と敵対したら大陸が沈んでも可笑しくない!アーチャー、英雄王の慈悲になんて期待するとか言わないわよね!冬木の聖杯戦争でギルガメッシュが何をしようとしたか衛宮士郎の記憶を持つ貴方が知らないわけないでしょ!例え貴方がstay nightに召喚された記憶のない()()()でもギルガメッシュの危険性は!」

 

「――仕方あるまい」

 

アーチャーが鈍器のような投影武器を私に振りかぶる。

 

「いっ!?」私は咄嗟に魔術回路を全開にしてそれを避けた。

 

「何するのよ!」

 

「マスターを守るのが使い魔の務めだ。当然の行いだろう?」

 

「ばっかじゃない!?」

 

「それに私はキミの育ての親でもある。親は子を導き正すものだ。間違っても子の行く末に死地を用意するような外道ではない」

 

…………それじゃあ、切嗣全否定じゃん。アーチャーって切嗣嫌いみたいな設定あったけ?

 

いつまた襲ってきてもおかしくないアーチャーに冷や汗を流す遠坂はそんな事を考える。

 

「と言うか、ここにきて今さら父親気取り?

オシメを替えたのも、ミルクや離乳食を作ったのは俺だぞ~って?」

 

「あぁ、一度ぐらい父の言うことを素直に聞いてみてはどうだ?」

 

「ジョーダン!遠坂凛は優雅で美しく常に己に正直に生きるの!私が子ギルを倒したいって思ったら絶対に成し遂げる!魔術協会の時も聖堂教会の時もそうやってやり遂げてきた!」

 

顔を暗くするアーチャーに遠坂は満面の笑みで返してみせた。

 

「自分のマスターを信じなさいアーチャー。アンタが選んだ私は最強のマスターで原典を除けば最も強い遠坂凛なんだから!」

 

 

 

 

 

「…………はぁ、かつて私の言葉をオマージュするとはキミなりの嫌味か?」

 

アーチャーは鈍器を消して呆れたように首を振る。

 

「最強のサーヴァントに最強のマスターが揃ったのよ?褒め言葉じゃない」

 

「倒すあてもないのに随分と強気じゃないか」

 

アーチャーは相変わらず否定的な言葉を返す。だけど、先ほどまでの撤退する事しか考えてないような冷たい言葉ではない。

 

それってつまり信頼してくれたって事よね。

ふふっアーチャーの信頼なら何が何でも答えないと!

 

 

 

遠坂凛は考える

 

 

 

万策は尽きた…………だから何だ、一万で足りないなら一万と一の策を考えればいい

 

 

 

絶対に勝てない?…………勝てなくてもいい、誰も死ななければ良いんだから

 

 

 

思考を柔らかく子ギルを倒す事から視点を変更して――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ『キングハサン』喚べばアヴァロン貫通できんじゃね?」

 

「それだけは止めろマスター!」

 

最恐最悪の手段を思い付く。




ルビー ママ
エミヤ パパ
アザゼル おじさん
サイラオーグ 患者の息子兼舎弟
バラキエル 妻と娘の命の恩人



次回『何ですかこの音は…………鐘?』『首を出せぇ!』


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『現れよ【呪腕】【百貌】【静謐】!』『そして歴代ハサンを生け贄に捧げる…つもりかマスター!?』

『遠坂凛とアーチャーの!三分グランドアサシン召喚コーナー!』

 

はい皆さんこんにちは遠坂凛です。今日は初心者マスターの為にグランドアサシンの召喚の仕方をレクチャーするわよ!

 

『これは、聖杯戦争ではない?』

 

『何が…』

 

『…えぇ?』

 

先ず魔方陣に呪腕、百貌、静謐のハサンを触媒として置く。触媒なしで召喚すると大抵がアサシン(ハサン)だから魔力に余裕が有れば直ぐ揃うわね。

 

この時、詠唱が終わるまで彼らを魔方陣の外に出さないのがポイント

陣を敷く場所は冥界でエレちゃんの宝具の中だと最高よ!

 

じゃあ試しに召喚してみるわ

 

 

「素に銀と鉄――

 

 

 

 

―――天秤の守り手よ!」

 

「…………そんな方法でグランドサーヴァントが召喚出来るわけ」【教示を忘れ………誇りを忘れ……死して尚、満たされぬ己が欲の為に“ハサン・サッバーハ”の名を穢すか…………首を出せェ!!!!】「「「ハハッー!」」」

 

「何でさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーン ゴーン

 

「何ですかこの音は…………鐘?」

 

北欧もあと少しで終わりだという頃、子ギルは頭に響く謎の音色に眉をひそめた。

 

(精神干渉系の呪いか?)

 

この盾は展開したまま攻撃する事が出来ない。子ギルは攻撃をする瞬間だけ遮断の宝具の効果を切るのだが、そもそもエアを抜いた彼に近づける存在など片手で数えられるほどしかいないのでデメリットにはなり得なかった。

 

(だから距離的猶予を保ったままでいられる呪いを僕がエアを使う瞬間を狙って、と言う訳か……惜しい残念でしたね)

 

神にしては人間臭い事をする。冷笑を浮かべた子ギルは天高く飛び上がりエアを掲げた。

 

「僕の鎧は呪いに対する強い耐性を持っています。この呪いが如何なる物であろうと3日は正気を保っていられるでしょう―――少々無作法ですがこの一撃の元に北欧の神々を消し去り、ゆっくりと解呪を行いたいと思います!

天地乖離す(エヌマ)―――【死告天使(アズライール)

 

エアを握る腕がボトリと墜ちる。

遅れて子ギルの首に線が入り鮮血が迸った。

 

それはあまりに唐突だった。北欧神話を破滅の一方手前まで追い詰めた人類史最も強き王は一人の暗殺者によってその首を落とされたのだ。油断もなく慢心もなく、古今東西敵なしと思えた無敵の王。けれど、その首を落とした暗殺者は言う。

 

【若き王よ…………未だ未熟な孤高の王よ…………晩鐘は汝の過ちを断罪した…………その胸に刻むがよい、民を知らぬ王の弱さを】

 

お前は未熟である、お前が王として成熟していたのなら、私は勝てなかったと。

 

フザケル…な、僕があんな奴ニ劣る訳ガ!?…………

 

屈辱的な笑みを浮かべた子ギルは吼える

 

僕ハ人類ノ為ニ!今ノ人間ハ神ニ勝テナイ…ダカラ!

 

僕ガ僕ガ僕ガ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――阿呆、貴様(オレ)が人の可能性を否定してどうする?

 

 

 

 

 

…………エッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、血塗られたカードが地面に落ちた。




キングハサン「聖杯を欲する?私欲ですね。根性叩き直してやる!首を出せ!」


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『私ハ何モ悪クナイ』『受け入れろマスター』

【……契約は果たした】

 

「うん、ありがとう!」

 

『ちょっマスター!私達は帰らない帰らないですからッ』

 

『助けッうわぁぁぁ!!!!』

 

『あっ、初代様って私の毒効かないんだ…………嬉しいけど、怖い!助けて下さいマスター!』

 

【…………去らばだ】

 

『『『嫌だぁぁぁぁ!!!!』』』

 

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

………召喚したハサン達は帰りました。まぁ当然ですよね、聖杯は無いしキングは七章前なのか正真正銘グランドサーヴァントでしたし、個人に肩入れは出来ないと言うことでしょう。

 

「………クラスカードはアーチャーが一枚」

 

問題はこれからです。

ゲオルグに『夢幻召喚』を習得するって約束してきたのに、半日で帰ってきたなんて知ったら流石に…怒られる。

 

「でも、並行世界なんてこりごり。暫くは行きたくないわ。これ解析したら何とかならないかしら?」

 

「だがそのカードはエインズワース家曰く欠陥品なのだろう?」

 

「そうなのよね~」

 

何せ、英雄の力だけ借りパクする筈が、このカードを使うと逆に力の元であるギルガメッシュに精神ごと乗っ取られかねないのだ。

 

「変に弄くって復活されても困るから封印が妥当ね。機会があれば向こう側の衛宮邸のポストにでも放り込んでおきましょう」

 

諦める訳ではないが、夢幻召喚は当分先送りだ。「ゲオルグには後で謝ろ」先ずは冥界に落ちた神々を復活させるべく凛とアーチャーは冥界に降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HAHA!おいおい何の冗談ンだよ!オーディンのクソジジイが人間に負けたって?」

 

「人間ではない。遠坂凛が呼び寄せた“使い魔に”だ」

 

「遠坂凛………人間の小娘が」

 

「やはり殺すべきでは?」

 

北欧が半壊しオーディンが敗れた。それは瞬く間に全ての神話系統に知れ渡った。そして、その主犯が遠坂凛の可能性が高いことも使い魔の正体が「ギルガメッシュ!あの神殺しを呼び寄せるとは…メソポタミア神界は、パニック状態かっ!」

英雄王ギルガメッシュ。かつて神代の終わりと云われた時代。メソポタミアのアヌ神を初め、片っ端から神々をぶっ殺して回った超級の危険人物だ。冥界を破壊される前にギルガメッシュが死んだ為、神性を削られながらも消滅する神はいなかったが今でもメソポタミアでギルガメッシュの名前を出すことは最大級のタブーとされている。

 

「あの人間の行いは前々から目に余ると感じていた。これでギルガメッシュを呼び寄せたとなれば本格的に我らと袂を別つ気でいると、少なくともメソポタミア神界は理解するだろう…………」

 

「――白けるゼ。でも見物する分には面白れィ!始まるんだろ!神と人間の全面戦争が!」




「オフェリアぁぁぁぁぁぁ…………あ、ラグナロクが始まると聞いて」「勘違いです、帰って下さい」「神がでしゃばると我々旧魔王派の立場が…」


次回、『エレちゃんを労おう!』『フハハハ!我(オレ)、完、全、復、活!』


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『エレちゃんを崇めるのよ!』『北欧の神的被害は0、良くやった!』

「早く、早くっエレちゃんが帰って来ちゃう!」

 

「あわわわ!」

 

「……俺はチキンじゃなくて鮭派なのによぉ」

 

「ケーキ完成だ……時間は残り二分、あと二品は行ける!」

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

今日は、北欧で頑張ったエレちゃんの為にサプライズパーティーを企画して、私とアーシアが飾り付け、アザゼルが食材の盛り付けでアーチャーが料理担当をしています。

でもアーチャーったら飾り付けが終わったのにまだ揚げ物してるの!

なるべく有名で、評判が良く、気持ち良くてつい、うたた寝しちゃう美容室とエステサロンを予約したけど、もうそろそろ帰ってきても可笑しくない――って言うのに!「ただいまなのだわ~」

 

「完成だ!」

「ッ!全員配置につくのよ!」

「「「おー!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《エレシュキガルside》

 

今日は楽しかった。マスターにはお礼を言わないと♪

髪は濡れているように輝き北欧での疲れが吹っ飛ぶぐらいエステを満喫したエレシュキガルは爽やかな気持ちで扉を開ける。

 

「ただいまなのだわぁ~」

 

そして不思議に思った。

あら、誰もいないのかしら?

 

屋敷に光はなく夜目のきく自身の瞳に誰も映らないのだ。

 

困ったわ……鍵を持っていたから良かったけど、もうお腹ペコペコ。でも夜ご飯前にお菓子食べたらアーチャー怒るのよね。

 

疲れは取れたが一日中歩きづめでお腹はきゅうきゅうと可愛らしく音を立てる。サーヴァントであるから意識しなければ空腹なんて問題ないが、ここ暫く朝昼晩欠かさず食卓を囲んでいたせいか、今のエレシュキガルに食事を抜くという選択肢はなかった。取りあえずコートを掛けようと明かりのスイッチに手を伸ばす。

 

 

カチッ――――パンッパンッパン!

 

 

「えっ!?こ、壊れちゃっ――!?」

 

「「エレちゃん(さん)いつもありがとう!」」

 

「―――――えっ」

 

スイッチが爆発したのかと一瞬身構えたエレシュキガルであったが、聞きなれた声に顔を上げると満面の笑みを浮かべたマスターとこんな私でもいつもニコニコしながら話を聞いてくれるアーシア

 

「今日はとびっきりのご馳走を用意したぞ」

 

マナーにはうるさいけど、とっても美味しいご飯を作ってくれるアーチャー、その後ろには沢山のお料理が

 

「まぁ、お前さんには助手の真似事みたいな手伝いさせてばっかだったからな~」

 

いつも楽しそうに人工神器をいじくり回す堕天使のオジさん

 

 

「……これってもしかして!」

 

「サプライズパーティーの始まりよ!エレちゃん!」

 

 

 

あぁ――――私、この人に喚ばれてよかった

 

 

 

エレシュキガルは今、幸せの絶頂にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《???side》

 

くっ、このッ、うぉぉぉぉぉ!!!!!

 

バキッボキッガガガガ――パッキーン

 

フハハハ、神々よ!深夜テンションで宝物庫に制限をしたばかりか、七十五徹で過労死一歩手間だった(オレ)をサクッと冥界に送り、そこから更に神の鎖で二重三重とぐるぐる巻きにコキュートスに封印する所まではよかったな!

 

しかし……並行世界の我に神性を押し付け、自力で神の鎖を絶ちきった今の我に敵はない!

 

 

「何故なら(オレ)は一滴残らず神の血を捨て去ったからな!もう同じ手は通じぬぞ!フハハハハハ!!!!驚いた顔が目に浮かぶわ!」




次回、『うぇぇぇん!聖杯君!ヤバい奴が復活しちゃったよぉぉ!!あれ令呪対象外だし慢心王だし、もう胃に穴が空きそうなのぉ!』『もぉ~仕方ないなぁ~凛ちゃんは~(テッテレテッテーテテッ!)【解体用のメス】!』『――えっ』『あれは高く売れるぜ?』


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『絶対に負けられない相手』『ウルクの女は全員抱いた!……という奴か』

季節は冬

あっという間に一年が過ぎ、アーシア達は冬休みを迎えました。

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

いや~子ギル事件後は目立ったイベントもなく平和でしたね。

イベントと言えば体育祭の日にアーシアと一誠が正式にお付き合いしましたが、逆に「今まで付き合ってなかったの!?」って驚いたのも今では懐かしい思い出です。

 

『アーシア、好きだ!俺と付き合ってくれ』

 

『――私、いつか……イッセーさんとそんな関係に慣れたらいいなって!思ってました!こちらこそよろしくお願いします!』

 

 

 

『――何よ、あれ……私は悪魔家業に追われて夜も眠れないって云うのに、こ、こんな公衆の面前でっプロポーズなんて!見せつけちゃって!』

そう言えば、あの時の紅髪のマダムは何だったんでしょう?

マスクにサングラスと如何にも怪しい装いだったので警備員(英雄派)に連行されていましたが、その後どうなったのか謎のままなんですよね。

 

ピンポーン

「あ、はいはい今出ますー!」

 

遠坂は屋敷の扉を開けた。

 

 

「フハハハ!(オレ)を喚び出すとは運が尽きたな!雑種」

 

 

遠坂は屋敷の扉を閉めた。

 

 

(……何かの見間違えかもしれない)

 

 

もう一度開けてみる

 

 

「放置プレイか?それもまたヨシッ!我は森羅万象あらゆる―――!」

 

閉めた。

 

 

 

「ふぅ、落ち着くのよ遠坂凛……扉を開けたらギルガメッシュなんてあり得ない。あれは、夢、ピックアップに召喚出来なかったマスター達の怨念が造り出した幻想の生き物。『大丈夫、キャスギルだけでいいじゃない』落ち着いて、落ち着いてこの言葉を復唱するの。火力がないだとか周回乙だなんて思わない。心の底からキャスギルに感謝を捧げればあの幻想は遥か遠き理想郷へ帰る筈…」

 

 

「フハハハハ!良いだろうどちらが先に根を上げるか耐久勝負と行こうではないか!」

 

 

 

 

 

 

 

―――10分後

 

 

「なっ英雄王!?」

 

「貴様は――知っているぞ、並行世界の我の額をぶち抜いた贋作者だな」

 

「くっ」

 

「本来ならば四肢を切り裂き、その愚かさのツケをその身を持って永遠と償わせてやるものだが……面白かったから許す!」

 

「何だって!?」

 

 

 

 

 

―――20分後

 

 

「世界最古のペロペロキャンディーだ、これをお前にやろう」

 

「うわっいいんですか!?」

 

 

 

 

 

―――30分後

 

 

「神の奴隷でありながら人を想い、堕ちた天使か……その善悪は十人十色、人との交配は可能であり、むむっ「神はいなくても世界は回る」……だと?

ギリギリ合格点をくれてやろう。我宣言す、“堕天使は人だ”故に滅ぼさん!」

 

「何だかよく分からねえが、お客さんならゆっくりしていけや」

 

「うむ、あの小娘と我は真剣勝負中だが、愛い奴よ。我が勝利した暁には純潔を喰らい神々の終末を我の隣という特等席でみせてやろうというのに、頬を赤らめ恥ずかしさのあまり出れんとみえる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――勝つのはどっちだ!?




『……ここで悲しいお知らせです。私、遠坂凛は5章をクリアするまで失踪することを決めたした!』『ツイッターでネタバレを食らうのは私も辛いのだ。今回ばかりは理解してやってくれ』


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『終わった終わった終わった終わった“前半戦”?そんなの知らない!!!!』『それは兎も角、アーチャーだが……これはワンチャン狙えるぞマスター!!?』

「フハハハ!フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――――――――!」

 

 

王は笑う。高々と、雪積もる大地を一望する人の家の扉の前で

 

「フハハハハハ―――ハックション!」

 

王は笑う。高々と、決して燃える事のない衣を纏い永遠と燃え続ける灯火を掲げて

 

 

「フハハハハハハハハ!!!!」

 

王は笑う、高々と、笑い続ける。

寒ければ暖を取り、日が沈めば世界最古のテントを取り出し、腹が減れば極上の肉を何処からともなく調達して――

 

 

一週間が経った

 

 

 

 

「…星空を肴に酒を飲むのも一興よ」

 

 

 

 

 

「アイツ!いつまで居るの!?」

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

ギルガメッシュの処女奪っちゃうセクハラ発言&神々の終末一緒に観ようぜヤベーイ発言から一週間。事態は籠城戦(補給アリ)という思わぬ展開を迎えギルガメッシュが諦めて帰るまで屋敷から一歩も出ない決意を固めた私です。

あんな「(オレ)に身を捧げる事こそ至高の喜び」とか本気で考えてそうな奴に抱かれたくない気持ち半分、神殺し(大人ギル版)今度こそ地球規模の大災害へと繋がりかねない、それ。

…………まぁギルガメッシュが一度言った事を容易に撤回できるほどプライドが安くないのはよ~く知っています。

理想としては、神殺しを止めて教会なりプラモ屋なり好きな所に帰って貰えるのが最高ですが、今は時間を稼げるだけでありがたい。

 

「――天秤の守り手よ!」

 

工房で遠坂は詠唱を唱え魔力を活性化させる。

そう……対ギルガメッシュ用に新しいサーヴァントを召喚するのです!

 

「――――あれ?」

 

時間、魔方陣、霊脈の代わりを果たす大気中のマナ、高純度の魔力集積体(宝石)

触媒はないが、失敗する通りはなかった。

良くて三騎士の誰か、悪くてもアサシンクラスが召喚されると遠坂は確信に近い物をこれまでの経験から得ている。けれど、召喚は失敗に終わった。

 

 

「詠唱に間違いがあったのかしら?

それとも、魔方陣に誤りとか?」

 

 

もう一度、魔方陣から書き直し遠坂は唱える。

 

 

 

 

 

 

 

召喚は失敗に終わった。

 

「何か変よ……これ」

 

 

違和感、例えばハサン達を召喚した時に感じた針穴に糸を通すような感覚が、糸穴どころか針その物が消失したような、何もない所に手を伸ばす虚無感と言えばいいのだろうか?

 

「何なのよ、妨害されてると言うの…………?」

 

英霊召喚が行えない。

その事実は遠坂の中で想像を絶するほどストレスとして膨れ上がりギルガメッシュすら思考の片隅にして原因究明に勤しんだ。



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『悪魔ですか?好きではありませんが嫌いでもありません』『まぁサライオーグのような、まともな奴も居るからな』

遠坂は緊急会議を開き、うつむくアーチャーとエレシュキガルに重たく口を開く「前々から可笑しいって思ってたの。神代は終わり、徐々に神秘の薄れていく筈だった今、何故神々が存在するのか、神秘は薄れず抑止力すらないのに英霊が召喚出来るのか……私思ったのよ、この世界は異聞帯(ロストベルト)、本来有ってはならない切り捨てられた人類史なんじゃないかってね。

 

 

……まぁ違ったんだけど。」

 

一瞬まさかッて顔になったエレシュキガルは椅子から転げ落ちる。アーチャーはその先を察しているのか黙りだった。

 

「問題はユグドラシルが空想樹じゃね?そう疑って北欧に向かった時」

 

『次、うちのサーヴァント召喚したらコロスぞ☆』byアラヤ

 

「頭がキーンってなって…………並行世界のアラヤに脅されたのよね」

 

「成る程、キミがどうやってギルガメッシュの目を欺き北欧へ向かったのかは非常に興味深いがつまり、今後サーヴァントを増やすことが出来なくなった。召喚しようとすれば並行世界のアラヤを敵に回すことになる、そういう事か」

 

「うん…………このままじゃ、ずっと家から出れない。ギルガメッシュ相手に穏便に済ます方法なんてアーチャーはあると思う?」

 

「簡単だ。我の寵愛を受け入れろ、娘」

 

「誰が――――ほえ?」

 

まさか千里眼持ちの彼にバレないと思っていたのか、猫のように摘ままれた遠坂は目を点にする。

 

「屋敷を出たから我の勝ち、さぁ行くぞ!」

 

「ちょっいやァァァァ!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

―――ギリシャ・冥界

 

「何故封印を解いたのだハデス!」

 

「いや……解いたというか、自力で出ていったというか」

 

遠坂凛に加えて神嫌いのギルガメッシュまでもが解き放たれた。

その事について四大魔王は旧魔王派との対立で少々気が立っておりハデスに直接意見を求めに来ていた。

しかし、気づいたら脱獄していたギルガメッシュにハデス自身も疑問符を浮かべる事態であり答えようがない。

 

「クソッ、万が一あの二人が出会うようなことになれば今度こそ悪魔は終わりだ!」

 

「噂が本当ならば相性は最悪だが、利害の一致で協力関係はあり得るぞ!」

 

「ジワジワ系の悪意に!直球の悪意!もう殺しに来てるよヤバいよ!」

 

「伝説が本当なら滅びの魔力でも消し去れるかどうか、何故だ何故こうも悪いことが重なる!」

 

 

 

『――ギルガメッシュか。オーフィスが居ない今、丁度いい駒が手に入りそうだな』

 

 

サーゼクスの魂の悲鳴。

度重なる不運は積み重なり最悪の形で瓦礫しようとしていた。




今日の一言「ハイスクールD×Dは異聞帯ぽい」

次回『ゼウス、振られる』『オリンポス12神vsギルガメッシュ』


アルトリア・オンライン(シリアスzero)
SAO×Fate
新しい二次創作始めました。


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『オリンポス12神』『来るならこいっ!』

「むっ」

 

「うひゃぁぁぁ!―――おげっ!?」

 

ヴィマーナでギリシャ神話へ向かっていたギルガメッシュと遠坂。急停止したギルガメッシュに遠坂は何事かと顔を上げれば「貴様の客だ、小娘」

 

「客ぅん?」

 

目隠れロン毛、見覚えはないが蝙蝠のような翼から悪魔であることは間違いない男性悪魔が白い紙切れを掲げている。

 

「遠坂凛!人類代表の娘よ、私は四大魔王の遣いで参ったシャルバ・ベルゼブブである、如何なる理由でオリンポスを目指すかは伺いしれないが考え改めよ三大勢力会議は明日開かれる、「ハァ!?明日!?」既に他の勢力は同意を示し開催場所は冥界の我が屋敷を利用することとなった。至急準備されたし!」

 

言うだけ言って招待状を投げつけたベルゼブブは転移により消えた。

 

「和平だって準備に色々掛かるのに、私……言うだけ言って帰る奴が一番嫌いだわ」

「興が冷めた、ギリシャは後回しだ」

 

恐ろしくもその瞬間、

ギルガメッシュと遠坂の考えは一致した。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

突然ですが、明日の三大勢力和平会議……ギルガメッシュが参加することになりました。

私はてっきり「あの悪魔ウザくね処す処す?」ノリで冥界をエアるのかと勘違いしていましたが、私が三大勢力のトップらにどう思われているのか「我、自らが直々に裁定をくれてやろう」興味があるようで黄金スーツに身を包み、今はアーチャーの焼き菓子を摘まんでいます。

こっちのギルガメッシュは意外に沸点が高いのかもしれませんね。

 

「ふむ、王が口にするには味も質もなりより金粉が不足しているが兵士にはいい甘味として流行りそうだな」

 

「元々急揃えの材料だからな。機会があればちゃんとした物で作ってやろう」

 

「何?急揃えでこのクオリティーだと!?

並行世界の我額ぶち抜きといい、人の身で我にエアを抜かせた事といい…………貴様、どこまで我を楽しませる気だ!よしっ我の舌を唸らせる事が出来れば褒美としてウルクの民として市民権を与えてやろう!」

 

「――ハハッ寛大過ぎるのも考えものだな」

 

アーチャーはギルガメッシュのテンションについていけないのか苦笑いで答える。

 

私?私はもう慣れた。

 

……と言うか明日の準備でそれどころじゃないのよね。

宝石に礼装、足りない物は片っ端から作っていかないといけない。

 

本当何で明日なのよ!?

半年は先の筈でしょ!アザゼルも知ってたら教えてくれたっていいのに!

 

「ベルゼブブもベルゼブブよ!招待状送るの遅すぎ!絶対文句言ってやるんだからァァァァ!!!!」




次回『旧魔王派?終わったよ』


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『クリスマスだ!』『…………会議は?』

「ほお、クリスマスとは七面鳥かチキンだと聞いていたが、日本だと鮭なのか…うむ、和という奴は趣の深い」

 

「七面鳥はスーパーになくてな、チキンはこの時期だと高くなるし、流行りに乗っただけなんだが………まぁ喜んで貰えたのなら幸いか?」

 

どうも皆さんこんばんはアーチャーだ。

明日は三大勢力会議と言えど今宵はクリスマスイブ、工房に籠りっきりの彼女に変わってせめて雰囲気だけでも味わおうと内装に趣向を凝らし食事にはクリスマスらしいモノを取り揃えたのだが、アーシアは夕飯を兵藤家で取る事になっている。

そして、アザゼルは冥界だ。

 

正直に言おう、気まずい。

そもそも何故私は並行世界の仇敵と向き合い食事を取っているのだ?

「このタルタルソースとやら、癖は強いが味気ない鮭を飾るには丁度良い」

英雄王は、感嘆めいたため息と共に一々解説を入れてくるが、私は何かした方が良いのか?黙っておく方が正解なのか?

 

「――確か、美味い料理には全身を使い喜びをアピールするのであったな」

 

ギルガメッシュは唐突に立ち上がりアーチャーから少しだけ距離を取る。

 

「どうかしたか?」

 

「お前の料理は我が黄金率を謁見するに相応しい素晴らしいモノであった!見るがいい……AUO!キャフトオフ!!!!!」

 

その瞬間、ギルガメッシュはキラキラと輝き……服が弾けとんだ。

 

 

「あらいい匂いが…………キャァァ何脱いでんのよアンタァァ!!!!」

 

「フム、生娘には少々刺激が強すぎたか」

 

「生娘言うなァァ!!!」

 

 

 

 

 

…………明日の弁当には残り物を詰めるか。そう言えばケーキ屋はまた閉まっていたな。来年は自分で作ろう。

 

食事中、成人男性の裸体を見せられたアーチャーは死んだ目をして思考を別の所においやっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《明日の三大勢力会議参加者》

 

【三大勢力】

 

四大魔王サーゼクス セラフォルー アジュカ ファルビウム

 

堕天使総督シェムハザ

アザゼル バラキエル コカビエル

 

天使ミカエル ガブリエル

 

【人間】

 

遠坂凛 アーチャー

 

ギルガメッシュ

 

英雄派代表 曹操(付き添いゲオルク ジーク ヘラクレス ジャンヌ)

 

【中立】

 

元龍王タンニーン

 

【旧魔王派】

 

シャルバ・ベルゼブブを除き不明

 

 

 

 

本来なら神界勢力も招く予定であったが、開催時期の変更と北欧の主神が倒れた事により断念。

復活したオーディンは乗り気であったが、ギルガメッシュが参加すると聞いてワルキューレ達に全力で止められた。

 

オーフィスは行方不明

 

古参悪魔は少し前から怪しい動きをみせており、旧魔王派と接触したとの噂も、明日の会議……唯では終わらない気がする。



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『暴れるわ!』『抑え込んでいた欲望がついに爆発したかマスター!』

「じゃあ行ってくるわ!アーシアはお留守番お願いね」

 

「はいっ行ってらしゃいです凛さんにアーチャーさん!それと飴玉のお兄さん!」

 

「フハハハ!(オレ)の為に見送りとは称賛である。――しかしあぁ、飴一つでここまで虜になる我のカリスマ性は恐ろしい」

 

「とやかく言ってないで魔方陣に乗るのよ。遅れても迎えにこないから」

 

「まぁ待て、どちらにしろ間に合わないのだから少しはゆとり持ったらどうなのだ?引きこもり」

 

「誰がッ引きこもりよ!」

 

「はぁ…悪夢だ」

 

 

 

 

 

 

転移先は古ぼけたお屋敷

 

どうも皆さんこんにちはアーチャーだ。

シャルバ・ベルゼブブの屋敷とやらに転移したのだが、廃棄前の廃墟のようなあそこに上級悪魔が住むモノだろうか?

 

「おっ、やっと来たか。お前達が最後だぜ」

 

「貴方が人類代表の――」

 

「旧魔王派が見当たらんのぉ」ゴゴゴゴ

 

「遠坂凛、丁度良かった。この惰龍が殺気を振り撒いて迷惑なんだが……殺してもいいかな?」

 

アーチャーは四大魔王、堕天使勢力、天使勢力、元龍王に英雄派を視界に入れ、司会役を務めると思っていたシャルバ本人がいないのに少しだけ疑問符を浮かべる。

 

「シャルバの野郎がいないのは妙だが、俺は早く帰って神器研究に勤しみたいんでね、お前らはこのまま始めてもいいか?」

 

「あぁ」「問題ない、わ」「我は裁定者だ。居ない者として扱え」

 

「おぉう」

 

そして会議が始まった。

元々三大勢力が和平を結ぶ為に開き、我ら人間はその見届け人として参加しているので口を開くことはない。

堕天使総督から降りたアザゼルもそれは同じ筈だがアイツ、場の空気が凍るような事をベラベラと、後でどうなっても知らんぞ。

 

「…………」ただマスターは怖いぐらいに静かだ。

何も起きずに終わればいいのだが…………

 

 

 

「じゃあ和平を結ぶって事でいいな」

 

「あぁ我々悪魔は同意する」「天使も同じく」

 

『いや、悪魔は媚びぬ。この和平待ってもらうか』

 

 

「「「来たかッ」」」

 

ベルゼブブ式の魔方陣が輝き参加者達は一斉に戦闘態勢へと移る。恐らく…いや、確実に転移してくるであろうシャルバ・ベルゼブブは死ぬだろう。

アーチャーは何も知らされていないのでシャルバ・ベルゼブブという悪魔は声と顔ぐらいしか知らないが、長年の経験でこういう空気を作り出すクズ野郎だと察する。

 

「(マスターに被害が及ばないよう、盾の投影でも準備しておこう)」

 

アーチャー

彼は空気の読める男であった。

 

 

 

 

 

 

「クククッ間も無く我々悪魔が頂点に立つ時――」

 

「ガンド」

 

「ガバッ」

 

しかし、屋敷とは別の空間。シャルバ・ベルゼブブに続こうと魔方陣に足を踏み入れた上級悪魔は一人、全く別の場所に転移して――背後から近づく赤い悪魔にガンドされ気を失わされていた!

 

「名付けてエレちゃん替え玉作戦…おほほほっ!この遠坂様を出し抜こうなんて二万年早いのよ!」

 

遠坂凛、彼女は転移魔方陣の座標を書き換え法の下に処罰されるであろう上級悪魔を捕獲していた。勿論素材として利用する為である。

 

ギルガメッシュの間に合わないとは遠坂が和平会議に参加する気がなく、それを襲撃するだろう上級悪魔を捕まえる予定であった事を見抜いていたからである。

 

「これだけあれば令呪の補給も高位魔術なんて使い放題!この戦争、私の勝利よ!」

 

マスターとサーヴァントでこうも違うものか。

 

彼女は空気の読めなさはピカ一である。




シャルバ「私、一人ダケ転移シマシタ」


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『な、嘘でしょう』『シャルバ・ベルゼブブを我々は侮っていた!』

「六百、七百、八百、九百…………千!」

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

いや~三大勢力の和平に反対するであろうテロ組織の事は前々から知っていましたが、ここまで多いなんて予想以上でしたよ。

シャルバ・ベルゼブブは逃しましたが……彼らに勝てると思いませんし、どのみち大丈夫でしょう。

もうっウハウハです!これだけあれば並行世界なんて渡り放題だし、エレちゃんに擬似的に聖杯を捧げて限界を超えた強化することが出来る!

一度、FGOの世界に行ってみたかったんですよ私!

セイバーさんに会いに行きたいのでzeroの世界にも行こうと思います!あぁ、夢が広がりますね!

 

「…………ただオーフィスが居ないのに蛇なしでどうやって勝つつもりだったのかしら?神器も神滅具クラスの物は一個もないし、もしかしてシャルバが何か知ってるとか?」

 

オーフィスがテロ組織『禍の団』を抜けたのは周知の事実。オーフィスの蛇頼りだった旧魔王派は大幅な戦力ダウンを強いられた。今回の会議を早めたからには何らかの、蛇の代わりになる何かを手に入れたからだと遠坂は思い込んでいたが、違ったのか?

 

「シャルバが蛇に変わる何か持ってたとしてもあの無慈悲集団に勝てるとは思えないし、後でアーチャーにでも聞けばいっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり

 

「―――やはり、俺だけがこちらに来たか」

 

遠坂の策略により単独で転移したシャルバ・ベルゼブブが浮かべたのは嘲笑。

 

「四大魔王も72柱も要らぬ、俺こそが魔王ベルゼブブである!」

 

圧倒的戦力差に気が狂ったのか?各勢力が検討違いの推理をするなか、凛の影武者として会議に参加していたエレシュギガルは叫ぶ。

 

「何かデカイのが飛び出そうとしてる!気をつけて!」

 

英雄派や堕天使勢力はその言葉に首をかしげつつシャルバ・ベルゼブブから距離を取った。四大魔王や天使も結界で身を守るなど警戒の色を強める。

しかし、タンニーンだけはその忠告を聞かず突撃し

 

 

「見よ!これこそが世界を造り変える力!

魔獣創造――真の姿だ!」

 

 

津波のように溢れる“泥”に埋もれた。

 

 

 

 

 

 

 

思えば何故誰も疑問に思わなかったのだろう。

 

 

 

世界を産み出した筈の神が存在しないことに。

 

 

 

メソポタミア神話で語られつつ、神器が誕生してからティアマットというただ名が似ているだけの龍に存在を重ねてしまったのは。

 

 

 

「Aaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 

 

彼女は再び現世に蘇る

 

全ての母にして創生の女神

 

子を愛するあまり聖書の神によって神器に封印された

 

人理のみならず、悪魔、天使、堕天使、神、妖怪、怪異、愛ゆえに全てを喰らう

 

 

ビーストⅡ 存在悪 ティアマト

 

 

目覚める筈のなかった獣が目を覚ます。




次回『増えるタンニーン』


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『タンニーンオルタナティブ』『長いな』

「Aaaaaaaaa!!」

 

それは、神。

かつて封印される前の彼女を知っている堕天使も真には存在しない神だと教えられていた悪魔や天使も、その余りある神性、魔力に圧倒される。これを前にすればあの帝釈天が赤子のように思えて……いや、それは間違いではない。何故なら彼女はこの世全てを産み落とした――

 

 

「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』が意思のある…いや、魂の封印された神器だったとは…」

 

「……お母様」

 

「マジかよ……コイツだけは復活させちゃいけねぇって聖書の神は結構力使ったんだぜ?

これがなけれりゃあ神滅具クラスが後、五十個は出来たって話だ。高々数千年。悪魔に封印を解かれるとぁ、俺からしたらたまったもんじゃないね」

 

「キミは知っているのかあれを」

 

「知っているも何も―――」

 

 

『…母上』

 

「タンニーン!無事だったか!」

 

アザゼルの言葉を遮ったのは、シャルバ・ベルゼブブが召喚した泥から這い出るタンニーン。三大勢力は異常のない彼に安堵した瞬間……

 

禁手(バランス・ブレイク)!!!!」

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

鬼気迫る顔をした曹操が突きだした珠宝に元龍王が放つ全力のブレスが吸い込まれる「駄目だ破壊される!」しかし瞬く間に珠宝は赤銅色に輝き、漏れ出した炎が曹操を包む――「俺に任せろぉぉ!!!!禁手(バランス・ブレイク)!!!!」ヘラクレスがタンニーンの鼻先でロケットミサイルを爆裂させる事でブレスは中断され、曹操とその後ろにいた会議参加者全員の命を救う形になった。

 

「グゥっ」

 

だが、遠距離攻撃のヘラクレスと違い、ほぼゼロ距離で龍王クラスのブレスを受け流した曹操は無傷とは言い難く両腕に酷い火傷を負う。皮膚は爛れ、玉のような汗の浮かぶそれは耐え難い痛みだった。

 

『ガァァ』

 

「また撃つ気か!

ジーク……責任は俺が持つ、あの龍を討て!!」

 

「アーチャー!「了解した」」

 

流れるような動作でアーチャーの投影したオリジナルの投影品『バルムンク』を禁手かした複数の腕で握るジークフリート

 

「邪悪なる龍は失墜し!」

 

「待てドラゴン族の長を殺すなど何を!」

 

全身が沸騰し、明らかに限度を超えた力を引き出そうとしている反動か視界が揺らぐ。

 

ジークフリートは理解していた。

これで、これで俺が決めなければ皆が死ぬ!

 

剣は投影品。使い手の自分は紛い物ですら十全に震えぬ未熟者。ジークがタンニーンを滅ぼす為に即座に思い付いた手段はたった一つだった。

同一宝具による多重真名解放

 

外野の悪魔がうるさいが知った事ではない。

僕達のリーダー

僕の友達を傷つけ、奴は命すら奪おうと今も敵意をぶつけている!

 

ブチブチと血管が嫌な音を立てる。全身が重い、だからっ、だからどうした!

 

ジークフリートは己の全てを出し尽くすが如く雄叫びを上げ

 

「オォォォ!!!!幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!!」

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

一つの光はブレスを打ち破り二つの光は牙を砕き三つの光は元龍王タンニーンを貫いた。

 

 

 

 

 

「…………あぁ、何と言う事を」

 

タンニーンの亡骸と全てを出しきり倒れ伏すジークフリート。

最早『和平』所の話でなくなった。頭を抱えるそんなサーゼクスの頭上から伸びたのは複数の影。

 

『『『我が一端を滅ぼすとは見事である。誇るがいい人間よ、そして絶望するがいい…………我々は不死にして永遠。この泥が尽きるまで無限に産まれ続けるのだ』』』

 

泥から天上へと伸びる漆黒の龍の大群。

 

絶望するにはまだ早い。誰かがそう囁いたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参加者の安全と避難を急げー!」

 

「泥に触れるなぁ!!!!」「泥から出てきた奴は殺しなさい!アレはもう人じゃない!」 

 

阿鼻叫喚に包まれる冥界

シャルバ・ベルゼブブから溢れ出し異形の怪物、見境なく暴れるタンニーンの群れを産み出した泥は今や、悪魔達の敷く居住領域まで侵食しつつあった。

 

「何なんよあれは!」

 

「アジュカはインドの乳海に近いって」 

 

四大魔王は二手に分かれ、怪物とタンニーンの殲滅を担当するサーゼクス、アジュカ。泥の対処と民間人の避難を呼び掛けるセラフォルー、ファルビウム。

結界で泥を食い止め魔法で焼き払うなど、この緊急事態には、冥界に拠点を置く堕天使や天使も協力してくれているが……

 

「何で肝心な時に遠坂凛が居ない!?」

 

滅びの魔力すらはね除け、三大勢力の同時攻撃にビクともしない不死の怪物、そして殺しても殺しても増え続けるタンニーン。

 

あの人間なら喜んで飛び付きそうな案件なのに何故か居ない!?

 

 

戦力として期待出来た彼女の使い魔も英雄派とともに避難し、不干渉を貫いている。歯がゆい思いだが、もとより旧魔王派の襲撃を予期してそれでも彼らを招いたのは我々悪魔だ。

 

今回の襲撃は、四大魔王が全力をもってテロ組織に与した旧魔王派を一網打尽にすることが目的の一つであり、人間を軽視する今の悪魔社会を建て直す。それを遠坂凛や英雄派を通じて人間社会にアピールするつもりだった。

 

シャルバ・ベルゼブブという個人であるものの予期した通り襲撃は起こり――予想以上に強くて手に終えないから助けてくれ…………厚かましいにも程がある。ミカエルとアザゼルは人が良過ぎるのだ。

 

「あー最悪だ!何で神器に封印された魂の解放なんてアイツが知ってたんだ!

赤龍帝や白龍皇が今後復活する恐れがあるって証明された訳でもあるし…………あの戦争を知る悪魔が黙ってる筈がねぇ!」

 

「本当やることだけは魔王らしいよね旧魔王派って!」

 

 

 

今回の事件が済んだとして、あの二天龍の復活の可能性が僅かにでも浮上してしまった以上、戦争を生き残った悪魔達は赤龍帝と白龍皇の封印を要求し、四大魔王が若手と言われている現状から分かる通り、その規模は全悪魔の総意と言っても過言ではない量が予想出来る。神器保有者を同じ人として見る人間とは対立することになるだろう。

数で勝り、遠坂凛に英雄派など魔王に迫る戦力を備えた人間と今の悪魔が本気で争った時、果たして悪魔に勝ち目などあるのだろうか。

 

 

…………この戦い勝っても負けても詰む。

 

セラフォルーとファルビウムの顔は暗かった。







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『新年明けましておめでとうございます』『今年もどうぞよろしくお願いします』

※本編に関係ありません


「明けましておめでとうございます。遠坂凛です。」

 

「明けましておめでとう、アーチャーだ」

 

「ねぇ衛宮君、新年にクラス名で挨拶はいけないと思うの、時代は違うのよ?一区切りでアーチャーと言っても赤や金なんてありふれてる。貴方は衛宮切嗣さんの息子で衛宮士郎って名前がちゃんとあるのだし、カード名のエミヤは二人いるの、イベントを逃した私は復興が来るまでずっと!フードエミヤは正義の味方時代の――ムゥ!?」

 

褐色の腕が遠坂の口を覆う。

 

「マスターは、ガチャがダブって少々気がたっている。聞き流してくれ」

 

 

「ほう、zeroイベ後のzeroアニメ視聴者であったか……」

バシンッと、乾いた音を立てて右へスライドする障子。

 

「「ギ、ギルガメッシュ!?」」

 

この(オレ)は森羅万象全てを視ている!…と、ばかりに現れたのは黄金色の着物に身を包んだ英雄王ギルガメッシュ。冥界子供向けネット配信型番組『スペースエミヤ』主役と相棒役を勤める彼ら二人が新年放送向けの回をカメラに向かって撮っている最中に割り込んできた。

 

ちなみに『スペースエミヤ』は平均再生回数200万。そこそこの人気である。

 

 

「ラスボスである黄金帝を差し置いて新年挨拶とはなるたる事か!我自ら衣装を用意し登場してやったぞ!」

 

「だってあんたシーズン6で死んだじゃない!死人を出せるわけないでしょ!」

 

「ツノをとってチャッカリ新キャラとして登場した女がぬけぬけと……おのれ、ならば黄金帝に憧れる十字架の騎士は主演のケリィに金を握らせ子ギル化した我で再登場してくれるわ!」

 

「それは横暴だ英雄王、スペースエミヤは子供達が楽しめる作品を目指したアザゼルと私の共同合作だ!相棒兼監督の私がそんな大人の事情が絡みまくった主演交代など見過ごさん!」

 

「黙れ珍獣!」「そうよ、着ぐるみ出演の癖に監督とか調子に乗りすぎよ!」

「クソッ名前からして私がス○イ○ォ○カーであろう!何故チ○ー○ッカなのだ!」

 

 

「―――あぁ!もう、どうせならエレちゃんにアーシア、一誠も呼んでオールスターで撮るわよ!」

 

 

スペースエミヤの魅力の一つはその登場キャラの多さに反して演じる俳優、女優の少なさである。

現実はFGOみたいにイベントで英雄は召喚されないし、ふざけてくれないのだ。

誤認の魔術を使い数人で数百のキャラを使い分ける。

ネット世界ではそれが反響を呼び、「化け物かよ(良い意味で)」「七つの顔……所じゃねぇわww」などよく草を生やしている。

 

 

 

 

 

「わ、わ!久しぶりにこの姫様の服着ました!」

 

「いきなりパンイチになれってやっぱこれかよ」

 

「えっ今日は飛ばなくていい……挨拶だけなのね」

 

「僕は泥に侵され死んだ筈では……」

 

 

「じゃあみんないくわよ!」

 

 

 

 

「「「「明けましておめでとうございます!今年もどうぞよろしくお願いします!」」」」




失踪はする、だがいつか帰ってくるとも!(マーリン風)


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『原作十二刊まで読んだわ!』『私はアニメを見たぞ…サーゼクス、君は私と似ているな。主に声とか』

「――恥を承知で助力を願いたい」

 

生きとし生ける物全てを飲み込み作り替えてしまう、泥の海を天から見下(みお)ろす一隻の船【天翔る王の御座(ヴィマーナ)

黄金の人王が中央の玉座に座するそこで、アーチャーやランサーは此方を狙う泥の怪物達を撃ち落とす。英雄派と呼ばれる戦士達は、重度の傷を負い気絶するように眠る二人を囲い守るように武器を構える。

そして、赤髪の紳士が片膝をついていた。

 

「痴れ者が、アレが何を以て目覚めたか心当りがないわけではあるまい……寵愛者(遠坂)は呆れて姿すら見せぬわ!」

 

額に青筋をたてる人王ギルガメッシュ。神の血を捨て去り、今や完全な『人』となった彼はここ数日の機嫌の良さが嘘のように赤髪の紳士――四大魔王の一人サーゼクス・ルシファーを見下していた。

 

「……心当たり…とは、」

 

「我が逆鱗に触れてまで口に出させるか。

 

()()()()

 

ヤハウェめがティアマト神を封じ込めた箱に鍵を用意したのは貴様らであろう。」

 

「ッゥ!?…いえ、我々にそんなつもりは、」

 

「冥界が滅ぼうと悪魔が滅亡しようと内から招いた事だ。抗う活力すら失ったと言うのなら潔く受け入れろ。冥界を統べる神々はとんだ災難であったな。」

 

その一言と共に放たれる幾千の武具。巨大な顋でサーゼクスを船の一部ごと噛み砕こうとしていた泥の怪物は、元の形を残さず肉片となって地に落ちる。その中には、怪物の肉片()を浴び黒く汚染されながら光を失っていく、武具達の姿もあった。

 

「ここに、人と悪魔は袂を別つ事を宣言する」

 

ギルガメッシュが悪魔を逸話に持つ宝具を切り捨てたのはその決意の表れか。

最大最後の慈悲によって救われたサーゼクスは数秒ほど王を見つめ、タンニーンや別の並行世界でラフムと呼ばれる無限増殖する怪物達の討伐に戻った。

 

 

「さて、弓兵にエレシュキガル、勇者達よ。」

 

首をかしげ、ヴィマーナに乗る船員達に目を向けるギルガメッシュ。王が放つただならぬ雰囲気に場は緊張が走る。

 

「――(オレ)は寝る。時が来れば起こせ」

 

 

「「「いや、寝るんかい!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁ、やっぱり宝石剣の作り方間違ってたのね~」

 

どうも皆さんこんちは遠坂凛です。

私は今、家にいます。捌いた素材達を綺麗に整頓して宝石剣の設計図を見直していたら、偶然可笑しい点を見つけたんですよ。

どうりて、世界の終わりともいえるプリヤ時空に飛ばされた訳だ……素材も有り余ってるし、さっさと直しちゃいましょう。

 

「何か、忘れている気が……まぁいっか!」

 

「遠坂……それ、忘れちゃこまる。」

 

オーフィス何故貴様がここに!?

 

…なんて、嘘嘘。ちゃんとインターホン押してアーシアが出迎えました。

 

「遠坂…支度するまで、我待つ。冥界一緒に行く約束した。」

 

「分かってるわ。ええっと、令呪の補充は…百。クラスカードが七枚。遠坂式戦闘礼装に宝石剣バージョン2…ステッキは保険。宝石は空間を歪めたバッグに詰めるだけ詰めて――」

 

「なんで声に出す?」

 

「う、うっさいわね!慎重なのよ、私わ!」

 

 

 

 

「じゃあ留守はお願いね」

 

「はいっ!いってらっしゃい!」

 

近々、兵藤家に厄介になるらしく引っ越しの準備を楽しそうにしていたアーシアに見送られ、二人は冥界へ…いざ行かん!



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『期待してもいいわよ』『フラグだな、分かるとも』

冥界降りなんてFate世界では、英雄の武勇伝の一つに数えられるなるて大層なものだけれど、この世界だと小旅行感覚で行けるのよね。

 

どうも皆さんこんにちは遠坂凛です。

体の中の毒素を分解する礼装を装備して何気なく冥界に降りた私ですが…………何これ。

 

見渡す限りの泥、そしてラフム。

 

「Aaaaaaaaa!!!!」

 

ティアマト神。

 

……完全にFGOやん。どっからどうみても『絶対魔獣戦線バビロニア』じゃん。私知ってる、だって死ぬ前に某有料アニメアプリで見たもの。エレちゃんがギルがいて、第七特異点ちゃうん?

 

「ア、アーチャー!これどういう事なの!?」

「凛……か」

 

何かホッと息を吐く……お前が来れば安心だ、みたいな雰囲気出さないでよ。説明して、詳細な説明を要求します!

 

特にティアマト神が召喚されている事実を早急にね!

 

「後ろだ遠坂!」

 

そんな彼女の背後に迫るラフムが一体。

英雄派の誰だったか。黒い影を操る青年は顔を真っ青にして声を上げる。

奇怪な鳴き声を上げるラフムは腕を弦のように絞った。

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

その宝具、その技量。彼を思わせる最速の一撃が――

 

「―――遠坂、死なせてはいけない」

 

オーフィスが伸ばした手の平に止まる。

 

「ギギギィ!!!!?」

「グレートレッド、遠坂消したがってる。きっと、グレートレッドは遠坂が弱点。遠坂、我に必要」

 

そこからはあっという間だった。

オーフィスは腕をドラゴンの物へと戻して握り潰す。そこに一切の躊躇いはなくこびりついた泥を軽く払い、翼を広げた彼女は泥の海の中央に佇むティアマト神を見下ろした。

 

「……無限の力を感じる」

 

ただ、それだけ。力に振り回される器ではないだろうに怒りに狂い、冥界を滅ぼそうとする彼女にオーフィスは期待しなかった。

グレートレットを倒す為とはいえ、あんな泥に棲家を汚されたくはないし、何より地球上の生きた生命を()()()()()()次元の狭間においてアレの無限は死滅したも同然で有限とそう変わりない。

 

「雑魚は任せて!」

「ん、遠坂はタンニーン。我はあれを倒す。」

 

オーフィスはドラゴンとなり、ティアマトとその子らを含めて火を放った。

所詮、無限と無限との戦いに勝敗はないがティアマトと対峙しながら、この泥を全て焼き払う程度オーフィスには造作もない。

 

後は遠坂お前の番だ。

 

「英雄派の皆ぁ!受け取ってぇぇ!!」

 

遠坂は七枚のタロットカードを英雄派の人間に投げる。

 

フェニックスの涙により傷を癒したばかりの

曹操、ヘラクレス、

そして彼らの近くに居た

ジーク、ジャンヌ、ゲオルグ。

原作とは違い特に現メンバーと確執があった訳でもなく普通に在籍していた

アーサー、

 

彼ら六名はそのカードを手に取る。

 

遠坂はそれを見て自身満々に鼻を膨らませる。驚くんだろうなぁ~、ビックリするんだろうなぁ~、まるでドッキリ仕掛け人のような愉悦感に口を弧に歪め、使い方を施した。

 

「これが……遂に完成したんだな」

ゲオルグの言葉に満足そうに頷く彼女。

 

「何か、よく分からないけど……やるわよ皆!」

 

「「「おうっ!」」」

 

金色のカードを掲げる英雄派の六名。

 

「「「夢幻召喚(インストール)!」」」

 

簡略化した詠唱の後、全員を包む黄金の光。

とてつもない魔力が渦巻き、次の瞬間それらは!

 

 

――砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――へっ?」




ワカメ「プッぐ……フハハ!馬鹿じゃねぇの!
抑止力を魔力のゴリ押しなんかで突破できる訳ねぇじゃん!
それは、どの英霊とも繋がっていない正真正銘の屑カードなんだよぉ!」

新情報
グレートレッドは遠坂を消し去りたい。


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試練『1』

英雄派が手に取ったカードは詠唱と共に淡く光を放ち、脈動するカードから漏れだした魔力量に思わず舌を巻くゲオルグは『夢幻召喚(インストール)

この最後の言葉を持って手の内から弾けるように胸元に浮かんだカードに意識を集中させる。

 

 

 

ザァ……ザァ…

 

……ザァ…ザァ…

 

潮の香りと波のさざめき

 

「あら、こんな私を選ぼうなんて物好きな坊やだこと」

 

「………なっ!?」

 

ゲオルグは気付けば見ず知らずの孤島の上で、藤色の髪を風に揺らす妙齢の女性の目の前にいた。

彼は目を見開き、唖然として辺りを見渡す。

 

(馬鹿な……転移魔術の痕跡は欠片も感知出来なかった)

 

己はつい寸前まで冥界で泥の怪物達と死闘を繰り広げ、また遠坂凛が創造した礼装を用いて過去の英傑の力をその身に置き換える『自らの存在を一時的とはいえ全く別の何かにすげ替える』というある種、自我の崩壊すら招き兼ねない禁忌的なパワーアップを果たそうとしていた筈。

(無論、あの女の事だ。そうならないように対策はしているのだろうが、“普通”の魔術師では同じような事が出来ても廃人になるか暴走するかの二択だ)

 

その為、少し覚悟をもって術式を起動したゲオルグであったが、あれは間違いなく完成品であると、そう確証出来る実感があって間違いなく英傑の力がこの体に憑依した感覚があった。

 

――しかし、

 

「何をした」

 

状況を理解出来ないゲオルグは女に問う。

 

「……はぁ、全くこれだから尻の青いガキは嫌いなのよ」

 

女は嘆息してやれやれと首を振るう。その様はやけに道に入っていたが、今この時も彼の仲間達は戦っている筈だ。

女の言い回しは焦れったく、

故に、逸る気持ちを抑えきれない彼が転移魔術を行使して冥界へと赴こうと行動するのは無理もない話で――、

 

「ここは貴方の心象世界よ。転移魔術で現状を打開出来る訳ないわ」

 

冷たく言い放つ女に今度こそ面食らうゲオルグである。

 

 

 

 

「つまり……貴方が英傑なのか?」

「飲み込みは早いのね、そう言うの嫌いじゃないわよ」

 

女の言葉を完全に信じた訳ではないが、ここは己の心象“世界”だとすれば消去法から言って彼女はこの世界(ゲオルグ)に招かれた客人――クラスカードで降ろされた英傑である。

 

「まさか、そんな事が…」

 

立場上、心象風景を現実世界に映し出す大魔術。そんな物があると小耳に挟んだ事があったが、実際に体感するのとは訳が違う。

 

「その顔を見ているのも退屈しのぎにはなるのだけれど……あまり時間は掛けない方がいいんじゃなくて?」

 

見たこともない風景でありながら何処か親しみを感じる奇妙な感覚に意識を飲まれそうになっていたゲオルグはその言葉にハッとする。

 

「そうだ!早くしなければ曹操達が!?」

 

途端に焦りの顔を見せるゲオルグは女にどうすれば元に戻れると詰め寄り、

「そうね、私の真名を当てられたら教えてあげようかしら?」

此方が切羽詰まっていると分かっていながら卑しく笑う魔女の笑みにカードを使用した本来の意味を思い出す。

 

「……成る程、それが英傑の力を借り受ける為の試練というヤツか」

 

彼は眼鏡をかけ直し額から汗を流した。

 

 

 

――曹操side

 

朱色の槍とロンギヌスがぶつかり合う。

 

「オレの力が欲しいなら力ずくで奪ってみろや!」

 

「クッ!そんな時間はないんだ!お願いだ、俺を元の世界に帰してくれ!」

 

槍兵の英傑のカードを使用した曹操は、ゲオルグと同じく見覚えがないながら何処か既視感を覚える暗い闇に閉ざされた大地の上で、青タイツの男と矛を交えていた。

 

交渉とか敗けを認めるだとか相手は話を聞かない。

焦る気持ちで鈍る棒術に明らかに格上の相手である青タイツの男からは容赦のない攻めの嵐で、曹操は決して浅くない切り傷を作り続けながらそれでも致命傷だけは避けて――下唇を噛み締める。

 

「(すまない皆、俺が戻るまで何とか持ってくれよ!)」

 

「――槍よ!神を射貫く真なる聖槍よ!我が内に眠る覇王の理想を吸い上げッ祝福と滅びの―――」

 

朱の槍が懐へ突き抜ける。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ」

 

曹操の禁手化(バランス・ブレイカー)、『極夜なる天輪聖王の(ポーラーナイト)(・ロンギヌス)廻槍(・チャクラヴァルテイン)』の七つの宝珠の内の一つ『馬宝(アツサラタナ)』の能力で任意の相手を転移――青タイツの男を後ろに飛ばした。

 

「へぇ、少しはやるじゃねえか」

 

「貴方は強い人だ。人間は弱い…だから守る為には卑怯な手に染めるしかないと諦めかけていた俺とは違い、その力は己の身一つで手にいれたのだろう。だが、俺は仲間を守らなければならない!例え貴方ががどれだけ強くとも俺は倒しッ道を切り開く!!!」

 

獣のように獰猛な笑みを浮かべる青タイツの男。

起死回生の一手を賭けて全身全霊を闘志に燃やす曹操は光の速さで飛び出した。




ヘラクレス、ジーク、ジャンヌ、アーサー・ペンドラゴン、ペルセウス。
さて彼らのカードに宿った英雄は誰となるやら……。


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『消えちゃった』『……へぇ?』

そもそもこの世界には英霊の座が存在しない。エインヘリヤルという似たようなシステムこそ北欧にあれど、一般に死後の英雄はその他の魂と区別されることなく摂理の輪、輪廻転生の輪へと組み込まれる。

 

エミヤは限りなくオリジナルに近いコピー、

ギルガメッシュは本人曰く、過去にメソポタミア神話の神々と戦争を起こし、結果的に敗れてコキュートスといわれる牢獄に幽閉されていたこの世界のギルガメッシュらしい。

 

思えば子ギルのせいで未遂に終わったエインズワース家の置換魔術の最奥、英霊の座へと接続し、クラスカードを作成する方法は英霊の座がないこの世界では、使うことが出来なかった。

 

当然、英霊召喚も不可能であるが……前回例外的に三アサとグランドクラスたるキングハサンを召喚出来たのは、ぶっちゃけ訳が分からない。

魔力のごり押しで平行世界から無理やり引っ張ってこれたのか、私という特異な存在故に成せたのか。

改めて、召喚しようとしたら不発に終わった。当然クラスカードも無理である。

(エレシュキガルは召喚されたが、あれはイシュタルに喚ばれたようなもので、例外としてみるべきであろう)

 

 

だから私は趣向を変えた。

第三魔法の定義があやふやなこの世界では、魂の複製ぐらいやろうと思えばやれなくもない。

 

もう一から作った方が早いと思ったわけよ。

 

アーチャーに宝具の複製を頼んで、私が英雄の衣装に寄せた強力な礼装を作り、それをクラスカードの中に収める。そして展開時に武装を纏うだけの―――言ってしまえばカレイドルビーのような礼装を無茶苦茶強化しただけである。

 

エインズワースからすれば、私のクラスカードなんて玩具みたいなものだろう。

 

利点があるとすれば英霊の意思など存在せず、たとえギルガメッシュのクラスカードを作成しようと暴走などまずありえないこと。

 

 

「……何、消えた!?」

 

あり得ないったら、ありえない。

 

「凛……」

 

やめて、そんな目で私を見ないで。また『うっかり』しやがったみたいな顔を向けないで。

 

「あ、ははは……そうよ。きっと隠れてるのよ」

 

三徹で頑張ったの。術式は完璧だったの。

そりゃ、なんでギルガメッシュとか、カルナとか、ランスロットなど、強力なカードを作れる中、全部stay/night鯖で固めたのは失敗したとは思ったわよ。

でも、まさかティアマトがいるなんて思わないじゃない?

 

それに、さっきも言ったけど高速お着替えするだけの玩具『クラスカード(笑)』だから!

 

転移する機能なんてつけてないもん!

 

 

何の慰めにもならないが、ギルガメッシュはある意味安全な場所に居ると言った。

「クフフフ…ハ」

何が可笑しいのか体を丸めて震えている。

 

「まぁ兎に角だ。彼らを避難させる手間が省けた」

 

アーチャーは流石というわけか、切り替えるのが早い。

黒弓を投影するとタンニーン擬きを撃ち落としていく。

 

「もしかして、私…お邪魔かしら?」

 

「そんなことないのだわ!」

 

涙目になる私をエレちゃんが慰めてくれる。

尊い。それでも今の私って邪魔にしかならないのよね。

……せめてアーチャーとエレちゃんの魔力供給量を増やして隅で大人しくしていようと思う。

 

 

意気消沈して、とぼとぼと歩く遠坂。

彼女が丁度英雄派の皆がいた所に踏み入れた瞬間―――爆発した。



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