勇者システムはビルド式である (きし川)
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日常の終わり

「友奈ただいま戻りましたー!」

 

「東郷美森ただいま戻りました」

 

「あっ!友奈さん、東郷先輩お疲れ様です!」

 

「樹ちゃんお疲れ様ー!」

 

「おっ!戻ってきたわね。そっちの猫探しどうだった?」

 

「はいバッチリです!風先輩!東郷さんのおかげでだいぶ速く見つかりました!」

 

「そんな事ないわ、友奈ちゃんが一生懸命探してくれたからよ」

「いやーそれほどでもー」

 

えへへと笑いながら頭を撫でる友奈とそれを見て微笑む美森そんな二人見ながら風は言う

 

「相変わらず仲良しねー二人とも、あんた達見てると疲れが取れるわー」

 

「お姉ちゃん、木の上で降りられなくなった猫を助ける

ためにだいぶ体はってたからねー」

 

「いやー、あれはほんと大変だったわ」

 

あははと、肩をまわしながら笑う風

 

「あっ!じゃあ肩もみましょうか!?」

 

「あー今回はいいわまだ、もう一件あるから」

 

友奈の提案を断ると風は次の依頼について話す

 

「次は犬探しねー、体洗おうとしたら怖がって逃げちゃったみたい。はいこれ、その犬の写真」

 

写真を出しながら説明する風

 

「それじゃ樹、お願いね」

 

「はーい」

 

「私もこちらで探してみます」

 

風に頼まれた樹はタロットカードを取り出し占いを始める。それと同時に、美森もパソコンを使い情報を集める

 

「……出ました!南西の方角で水のあるところです!」

 

「おっ!はやーい!」

 

「こちらも出ました風先輩、樹ちゃんの占いの結果と照

合し、捜索範囲の絞りこみました」

 

「こっちもはやーい!」

 

樹の占いと勇者部のホームページにある掲示板の情報を使い範囲を絞りこんだ地図をプリントする美森

 

「よっしゃ!それじゃー勇者部出動よー!」

 

「「「オー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、ひと仕事した後のうどんはうまいわ」

 

「風先輩…相変わらずよく食べますね、もう三杯目ですよね」

 

「うどんは女子力をあげるのよ」

 

「「「それはないです」」」

 

どや顔で言う風とそれはないと首を振る三人。すると、美森は風に向かって

 

「ところで風先輩。今日はまだなにかやることがあるといっていませんでしたか?」

 

「あっ!そうそう。文化祭の出し物について、みんなと相談しようと思って。」

 

「え!もうですか?」

 

「去年はドタバタしてからね。今年は早めに準備しようと思ってね」

 

驚く友奈に理由を説明する風

 

「という訳でなにかアイデアよろしくね」

 

「「「はーい!」」」

 

そして四人は店を出る

 

「それじゃ、また明日ね」

 

「お疲れ様でしたー」

 

「風先輩、樹ちゃんお疲れ様でした!」

 

「お疲れ様でした」

 

四人はそれぞれの帰路に就く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「うーん。文化祭の出し物どうしよ…」

 

友奈が出し物について考えていると

 

「どうしたの?友奈ちゃん次の授業に遅れちゃうわよ」

 

「うわっ!大変!」

 

美森に言われて時計を見るとかなりギリギリの時間だったため慌てて準備する友奈

 

するとその時

 

 

 

テレレレレン!!テレレレレン!!

 

突然二人の端末が鳴り出す

 

「え!?…え!?なに!?なに!?」

 

「なんなのこれ…?」

 

突然のことに驚く友奈といままでに聞いたことのない警告音と画面に表示される‘樹海化警報’という文字に困惑する美森

 

「!?、東郷さんなにか来るよ!?」

 

窓の外を指す友奈にいわれ美森は窓から外を見ると光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりの眩しさに目を閉じていた二人が目を開けると景色が一変していた

色とりどりの木の根のようなものが広がっていた

 

「ここは…一体」

 

「だ、大丈夫東郷さん!なにがあってもあたしが守るよ!」

 

「友奈ちゃん…」

 

不安そうな顔浮かべる美森を元気付ける友奈

するとそこへ

 

「友奈!東郷!」

 

「!…風先輩!樹ちゃん!」

 

風と樹が合流する

 

「二人ともケガはない!?」

 

「はい大丈夫です!」

 

「大丈夫です」

 

風は二人の様子に安堵すると真剣な表情で告げる

 

「みんな…落ち着いて聞いて…あたし達が、あたりだった…」

 

「あたり?…それはどうゆう?」

 

「当たらなければずっと黙っているつもりだった…あたしは、大赦から派遣された人間よ」

 

「大赦?」

 

頭の上に疑問符を浮かべる友奈

 

「友奈ちゃん…大赦っていうのはね」

 

そんな友奈に若干呆れながら美森が説明する

 

「あ、あーだいたいわかったよ?」

「ほんとにわかったんでしょうね…ンンッ!話を戻すわ。今見えているこの世界は神樹様が作り出した結界。神樹様に選らばれた者は、ここで敵と戦わなければならない」

 

「敵って何ですか?」

 

風の言う敵について聞く友奈

 

「それは」

 

するとその時

 

「…っ!な、なに…あれ…?」

 

美森が震えながら指を指す、三人はその方向を見ると得体の切れない不気味な物体が浮いていた

 

「バーテックス…世界観を殺すために攻めてくる人類の敵…バーテックスの目的は、この世界の恵みである神樹様にたどり着くこと。そうなってしまったら…」

 

「どうなるの…?お姉ちゃん…」

 

「世界が…死ぬ」

 

「「「…っ!」」」

 

風の言葉に戦慄する三人

 

「戦うなんて…出来るわけ…」

 

「戦う意志を示すと神樹様が力を与えてくれる…つまり、神樹様の勇者となる」

 

震える美森と説明を続ける風

そこへ

 

ドガァァァァァン!!!!

 

「「「キャアアア!!」」」

 

バーテックスが放ったものが近くに落ち爆発する

 

「くっ!友奈、東郷と樹を連れて逃げて!アタシはバーテックスを封印する」

 

「はい…!」

 

「待ってお姉ちゃん!…私も一緒にいく!」

 

「樹…いいわアタシに続きなさい」

 

風が端末を操作すると足元から先端に大きなつぼみがついた枝のようなものが生えてくる。それは、風の腰の高さで止まりつぼみが開くと中にはレバーの付いたものと2つのボトルのようなものがあった。

 

風はレバーの付いたものを手に取ると腰にあてる。すると、レバーの付いたものからベルトが出て風の腰に巻き付く。さらに、風はボトルのようなものを手に取るとシャカシャカと振りふたを開ける。そして、先ほど巻き付けたものにセットする

 

『オキザリス!』

 

『勇者システム!』

 

装置から音声と音楽が流れ風はそのまま装置のレバーを回すと風を囲うように配管のようなものが展開されその配管を黄色い液体が通る。そして、風の前後に集中すると衣装に成形される。風がレバーを止めると

 

『are you ready?』

 

装置から音声が出る。そして、それを聞いた風は

 

 

「変身!」

 

風がその言葉を言うと前後に展開された配管が風を挟むように閉じると。風は、黄色い衣装を身に纏っていた。

変身を終えた風は樹の方を向くと

 

「樹!アタシと同じように!」

 

「う、うんわかったよ!お姉ちゃん!」

 

樹も先程風が行ったように端末を操作し装置をつけボトルを振りセットする

 

『ナリコユリ!』

 

『勇者システム!』

 

レバーを回す。そして

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

変身を完了し緑色の衣装を身に纏う

 

「風先輩…樹ちゃん…」

 

「よし…友奈!東郷を連れて出来るだけ遠くに逃げなさい!」

 

「は、はい!」

 

友奈は美森の車椅子のハンドルを持つとバーテックスがいる方とは逆方向に走る

 

「それじゃ、行くわよ樹!」

 

「うん!」

 

 

それを見届けた風は樹と一緒にバーテックスに向かっていく。そして、バーテックスも二人の接近に気付き爆弾を飛ばす

 

「樹!跳ぶわよ!」

 

「うん!わかった!」

 

二人は飛んできた爆弾を飛んで避ける。

 

「うわわわわわ!?ぐえっ!」

 

しかし、樹は爆風でバランスを崩してしまい着地に失敗してしまう

 

「うーん…あ、あれ?痛くない?…って!なにこれ!?かわいい!」

 

かなり高い所から落ちたにも関わらず痛みがないことに疑問に思っている樹の側に緑色の毛玉ようなものが浮いていた

 

「それは、精霊。この世界を守っていた存在よ。神樹様の導きでアタシ達に力を貸してくれるわ」

 

そう説明する風の側にも青い犬のような精霊が浮いていた

 

「さぁ、樹!イメージして…あいつを倒す力を!そうすれば神樹様がそれを具現化してくれるわ!こんな風に!」

 

そう言うと風の右手に大剣が出現する。すると、バーテックスがまた爆弾を飛ばしてきた

 

「オリャー!!」

 

風は飛ばしてきた爆弾を大剣で切り飛ばした

 

「樹やってみなさい!」

 

「せーの、えーい!」

 

樹が手を振り上げると手首に花の付いたリングが出現する。そのまま、振り下ろすと花の部分からワイヤーが伸び飛んできた爆弾切り落とす

 

「すごい…」

 

「樹!あぶない!」

 

「う、うわ!」

 

自分が使った力に驚いて、手首に出現したリングを見ていると風が叫んだ。その声にはっと顔をあげるとさらに複数の爆弾が自分に向かって飛んで来ていた。突然のことに驚き、固まってしまう

 

「ぐっ!ああああ!!」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

風は、なんとか樹と爆弾の間に割り込み大剣を盾のようにして攻撃を防ごうとするが防ぎきれず樹と一緒に吹き飛ばされ樹木に叩きつけられてしまう

 

 

「風先輩!!樹ちゃん!!」

 

その様子は避難中の友奈達にも見えていた。すると、バーテックスがこちらに顔?を向けていることに気づく

 

「こっち見てる…」

 

「まずい…友奈…東郷…」

 

風はなんとか立ち上がろうとするがダメージがまだ残っているためか立ち上がれそうにない

 

「友奈ちゃん…私を置いて逃げて…」

 

「何言ってるの!?友達を置いて逃げるなんてできないよ!」

 

「ダメよ!友奈ちゃんまで死んじゃう!」

 

「嫌だ!…友達を置いて逃げるくらいなら!」

 

友奈は端末を操作し、レバーの付いたものとボトルを手に持つ

 

「私は戦うよ…」

 

レバーの付いたものを腰に巻く。そして、風達と同じようにボトルを振りセットする

 

『ヤマザクラ!』

 

『勇者システム!』

 

友奈はレバーを回す。

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

掛け声と同時に展開された配管が友奈を挟み込むと桜色の装束を纏う友奈が現れる。友奈は、変身が完了したと同時にバーテックスに向かって走り出す

 

バーテックスは向かってくる友奈に爆弾を飛ばす

 

「ハッ!」

 

友奈が飛んできた爆弾を殴ると爆弾が爆発、煙が辺りに広がる

 

「キャァ!友奈ちゃん!!」

 

「友奈!」

 

「友奈さん!」

 

三人は心配そうに友奈のいたところ見ていると

 

「…嫌なんだ」

 

煙が晴れると無傷の友奈が立っていた

 

「誰かが傷ついたり、辛い思いをするのは…そんな思いをするくらいなら、私が頑張る!」

 

友奈は跳ぶ、同時にバーテックスもまた友奈に向かって爆弾を飛ばす

 

「ハッ!ヨッ!トッ!」

 

しかし、友奈は飛んできた爆弾を足場にしてバーテックスに向かっていく

 

「オォォォォ!勇者ァァ!!パァァァンチ!!」

 

さらに、落下の勢いをのせたパンチをバーテックスにぶつけ、その巨体を地面に叩きつける。そして、着地した友奈はバーテックスを見ながら宣言するように叫んだ

 

「勇者部の活動はみんなのためになることを勇んでやる。私は讃州中学勇者部、結城友奈!」

 

「私は勇者になる!!」

 

 

 

 



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謎のドラゴン

今回からクローズ友奈参戦です


「ハァァァ!!」

 

「オリャャャ!!」

 

「エェェェイ!!」

樹海でのバーテックスとの戦いは未だ続いていた。

 

「はぁ…はぁ…だめだ…何度攻撃しても治っちゃう…」

 

「もう…腕が上がらないよぉ…」

 

「っ…まずいわね…」

 

三人は何度攻撃しても、まるで無意味だと言わんばかりに再生を繰り返すバーテックスに苦戦を強いられていた

 

「お姉ちゃん…なにか良い方法はないの?」

 

「そうねぇ…少し賭けになるけど…」

 

風は二人に作戦を伝える

 

「まず、樹がありったけのワイヤーでバーテックスを拘束、アタシと友奈は全力の攻撃を一点集中でぶつけて御霊を出させる」

 

「御霊って?」

 

「御霊っていうのは、いわば心臓。それを浄化の儀で浄化することでバーテックスを倒すことができるわ」

 

「浄化の儀はどうやればいいんですか?」

 

「出てきた御霊を囲んで祝詞を唱えるだけだから、簡単よ。祝詞は端末で確認してね…よし!じゃあ作戦開始!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

三人はバーテックスに向かって走り出す

 

「止まってくださぁい!」

 

樹は全てのワイヤーを使ってバーテックスを拘束しようとするがバーテックスの力が強くなかなかうまくいかない

 

「だったら…これでぇ!」

 

樹はバーテックスを直接縛るのではなく周りの樹木も利用して動きを止める

 

「友奈さん!お姉ちゃん!」

 

「ナイスよ!樹!」

 

「樹ちゃん!ナイス!」

 

友奈と風はバーテックスに一気に接近する

 

「行くわよ!友奈!」

 

「はい風先輩!」

 

「「せーのォ!」」

 

「「オリャャャ!!」」

 

バーテックスの頭の部分に二人の渾身の一撃が入る。すると、バーテックスの頭が割れ中から御霊が出てくる

 

「よし!出てきた!あとは、祝詞を…って!長っ!これ全部読むの!?」

 

浄化の儀を始めるため端末で祝詞をみる友奈だったが祝詞が予想よりも長かったため驚いた

 

「え~と…かくりよのおおかみ、あわれみたまい…」

 

「めぐみたまい、さきみたま、くしみたま」

 

合流した樹が祝詞を読み始め、友奈も続く読んでいくが

 

「ひゃっ!だめです、動き出した!」

 

「この…おとなしくしなさぁぁい!!」

 

風が装置のレバーを回すとボトルのエネルギーが活性化され風の持つ大剣に集中する

 

『Ready Go!』

 

「オリャャャ!」

 

『ボルテックアタック!』

 

風は大剣にエネルギー宿したまま御霊に叩きつける

 

「「えええーーーっ!?それでいいのーーーっ!?」」

 

「魂込めれば言葉は問わないのよ!フフン!」

 

風がどや顔でそう言うと

 

「先に言ってよ!お姉ちゃん!なんで、どや顔なのー!」

 

「でも、とにかく壊せば良いなら…エェェェイ!!」

 

友奈は御霊に思いっきり飛び込み、そのままの勢いで殴り付ける。しかし

 

「いった~~い!これ硬すぎるよぉ!」

 

「御霊から出た瘴気で樹海が枯れていく…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人が御霊の堅牢さに苦戦している頃

 

「神樹様…どうか皆をお守りください…」

 

東郷は一人離れた場所で神樹に祈りを捧げていた。どうか、全員無事で生きて帰れるように

 

その様子を近くの茂みから見ていたものがいた。それは、美森の祈りを聞くと闘っている三人の元へと飛び立った

 

 

 

御霊から出て瘴気が樹海を枯らしていくなか、三人は焦っていた。一刻も早く御霊を破壊しなければ神樹様が死んでしまうと思ったからだ

 

「時間がない…!オォォォォ!」

 

友奈は再び飛び込み御霊を殴るがわずかにヒビが入るだけですぐに再生してしまう

 

(硬い…!痛い…!…けど!)

 

「私は大丈夫!」

 

友奈はレバーを回す

 

「ハァァァ!!」

 

『Ready Go!』

 

「オリャャャ!!」

 

『ボルテックアタック!』

 

友奈が桜色のエネルギーを纏わせた右手で思いっきり殴ると御霊の一部を砕く

 

「やった…っ!」

 

御霊を砕けたことに喜ぶ友奈しかし

 

「…っ!?キャァァァ!!」

 

御霊の割れ目から勢いよく吹き出した瘴気のせいで吹き飛ばされてしまう

 

「友奈!」

 

「友奈さん!」

 

「友奈ちゃん!」

 

そして、そのまま樹海の中に消えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…いった~…」

 

吹き飛ばされた友奈は、樹海の中で目を覚ます

 

「あれ…?変身が解けてる…」

 

吹き飛ばされた衝撃で変身が解除されてしまっていた。すると、遠くで爆発音がするのに気づく

 

「みんなまだ、闘ってるんだ…早くいかなきゃ…!」

 

早く合流しなければと変身しようとするが

 

「あ、あれ!?ない!ボトルがない!!」

 

どうやら吹き飛ばされた際に落としてしまったらしい

 

「どうしよう…このままじゃ…」

 

すると、突然途方にくれている友奈の後ろにある茂みからガサッガサッと音がした

 

「っ!だ、誰!?東郷さん!?」

 

友奈が驚き後ろを向くと、そこにいたのは

 

 

 

 

 

キュルル~♪

 

青いドラゴンのようなメカが飛んでいた

 

「…」

 

予想外の存在にポカーンとしてしまう友奈

 

キュル!

 

「…ハッ!なにこれ?これも精霊?」

 

呆然とする友奈を起こすようにドラゴンが鳴くと友奈は気を取り直しそして、突然現れたドラゴンを観察する

 

「うーん…害は無さそうかな…?」

 

しばらく見ていたが特に何も起きなかったので害はないと判断した友奈

 

「とりあえずなんとかボトルを見つけてみんなと合流しないと…!」

 

そう言い辺りを見回しながら走り出そうとすると

 

キュル!キュルル!

 

「うわっ!な、なに?」

 

ドラゴンが回り込んで友奈を止める。その事に友奈は疑問に思っていると、ドラゴンは口から青い炎を吐いた

 

「キャア!」

 

突然のことに驚き尻餅をつく友奈。そして、その頭上で炎を吐きつづけるドラゴン

 

「なにをする気なの…?」

 

友奈がその光景をやや怯えながら見ていると、ドラゴンが吐きつづける炎が徐々に圧縮され一つのボトルに形を変え友奈の足元に落ちる。友奈はそれを恐る恐る拾う

 

「ボトルだ…でも何のボトルだろう…それに一つだけじゃ…」

 

これでは変身できないと友奈が思っていると

 

キュル!キュル!

 

ドラゴンは鳴くと友奈の側にいき、自分にボトルを挿せとジェスチャーをする

 

「ボトルを挿せばいいんだよね?」

 

キュル!

 

そうだと、言うかのようにドラゴンは鳴く

 

「こうかな…?」

 

友奈はボトルを振りフタを開けドラゴンに空いた穴に挿す。しかし、何も起こらない

 

「何も起きない…なんで…?」

 

ボトルを挿したドラゴンを色々な角度で観察しながら疑問に思っていると

 

『ウェイクアップ!』

 

「うわっ!」

 

偶々ボタンを押してしまい突然流れた音声に驚いてしまう

 

「もしかして…」

 

もしやと思いドラゴンを装置にセットしてみると

 

『クローズドラゴン!』

 

装置から音声と音楽がながれる

 

「やっぱり!…てことは!」

 

友奈はレバーを回す。そして、展開された配管を青い液体が通り、友奈の前後で装束に成形される

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

前後の装束が友奈を挟み込むと

 

『ウェイクアップバーニング!!』

 

『ゲットクローズドラゴン!!』

 

『イャァ!!』

 

青い装束を纏った友奈が現れる

 

「さっきと違う…」

 

桜色の装束と比べ形状はあまり変わらないが全体的に青くなっており、所々に炎を象った模様がついている

 

「見た目も違うけど…みなぎってくる力が全然違う」

 

友奈は手を開いたり閉じたりして具合を確かめると

 

「…これなら、いける!」

 

そして、友奈は風達の所に向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オリャャャ!!」

 

『ボルテックアタック!』

 

風の一撃が御霊を削るがすぐ再生してしまう

 

「あーーもう!いつまでやれば良いのよ!?」

 

風は何度攻撃しようと再生を繰り返す御霊に嫌気が差していた

 

「お姉ちゃん…どうしよう…」

 

「…仕方ない!もう一度よ!」

 

風が再び攻撃するためにレバーを掴んだ。その時

 

「オリャャャ!!」

 

戻ってきた友奈が御霊を殴り地面に叩きつける

 

「友奈!…って、アンタなにその格好!?」

 

「ちょっと色々ありまして!…あっ!」

 

友奈は御霊の方を見ると再生が始まっていた。友奈はすぐにレバーを回すと

 

「今の私は…負ける気がしない!!」

 

『Ready Go!』

 

「ハァァァ!勇者ァァ!!」

 

跳び上がり跳び蹴りの態勢に入る

 

「キィィィィクッ!!」

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

そのまま青い炎纏って御霊を蹴り砕いた。砕かれた御霊からは、光が漏れ、天に昇る

 

「やっ…た?やったーー!!ナイスよ!友奈!!」

 

「友奈さん!さすがです!!」

 

「よかった~…うまくいった~」

 

力が抜けたように座り込む友奈

 

「ほんと、大したもんよアンタは!」

 

風は満面の笑みを浮かべ友奈に駆け寄り、友奈の手を握る

 

「いっいだだっ!風先輩!そんな強く握らないでくださいよ~…」

 

「あ、ごめん」

 

何時間も硬いものを殴っていた拳を風に強めに握られたため、苦痛な表情を浮かべ抗議する友奈とそれに対して謝罪する風

 

「本当に無事でよかったです」

 

そこに樹も合流そして

 

「友奈ちゃん!」

 

「あっ!東郷さーん!」

 

避難していた美森も車椅子を動かして近づいていた。そして、それを見た友奈は美森に駆け寄った

 

「東郷さん、大丈夫だった!?…ケガとかしてない?」

 

「それは、こっちのセリフよ友奈ちゃん…本当に無事でよかった…」

 

「あ、ごめんね…。心配かけちゃって」

 

涙を浮かべながら安堵する美森に申し訳なさそうに謝る友奈。すると

 

「っ!お、お姉ちゃん!樹海が!」

 

樹の言葉に三人は周りを見ると樹海全体が強く光輝き出す

 

「わっ!まぶしっ!」

 

四人は、眩しさのあまり目を瞑りそして、目を開けると

 

「あ、戻ってこれた!」

 

讃州中学の屋上にいた

 

「みんな動いてる…今の出来事、誰も気づいてないんだ…」

 

樹がグラウンドで運動している生徒を見下ろしながら言った

 

「そ。他の人からすれば、今日は普通の木曜日。ちなみに、今はモロ授業中」

 

「えええーーーー!」

 

「ま、あとで大赦にフォローしてもらうわ。ところで、樹ケガはない?」

 

「うん…おねぇちゃ…ふぇえ…っ。怖かった…もう、わけわかんないよう…」

 

無事に戻って来られた安心からか風に抱きつき、涙を流す樹

 

「樹…よしよし…。冷蔵庫のプリン食べていいよ……アンタのだけど…」

 

風は抱きつく樹の頭を撫でながら慰める

 

「風先輩…説明していただけませんか…今起きた、すべてのことについて…」

 

「…………わかった」

 

美森の言葉に風は頷いた

 




次回、東郷参戦


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アサガオ、出撃

東郷さん参戦回です


場所は変わって、勇者部の部室。そこで風は三人に説明を行っていた

 

「神樹様の予言によると、攻めてくるバーテックスは12体、つまり、残り11体。」

 

風は黒板にヘンテコな絵を書きながら三人に説明する

 

「あ…それ、敵の絵だったんだ…」

 

「き、奇抜なデザインをよく現した絵だねーっ!」

 

風の描いた絵にツッコミをする樹と風をフォローする友奈。それを、無視して風はつづける

 

「奴らの目的は神樹様の破壊と人類の滅亡…以前も襲ってきたらしいけど、その時は追い返すのが精一杯だったみたい」

 

「そこで大赦が作ったのが、神樹様の力を借りて勇者に変身するシステム…」

 

風は先程の戦闘で使用した装置と二本のボトルを机の上に置く

 

「これは、“ビルドドライバー”といってこれに勇者システムの基盤になる成分が入ったボトルとそれぞれに合った力の成分が入ったボトルをセットすることで神樹様の力を使える。その適合者がアタシたちってわけ」

 

「……勇者部はそのために風先輩が意図的に集めた面子というわけですか…」

 

「……うん、そうだよ。適正値が高い人は、大赦の調べで判ってたから」

 

「…知らなかった、私、ずっとお姉ちゃんと一緒にいたのに…大赦の指令を受けてたなんて…」

 

「黙っててごめんね…」

 

風は樹に対し申し訳なさそうに言った

 

「…あっ!風先輩、じゃあこのドラゴンも神樹様の力…何ですか?」

 

「わからない…少なくともアタシの見た資料には、そんなドラゴンは載っていなかったわ」

 

「そうですか…。次は…敵いつくるんですか?」

 

「明日かもしれないし、一週間後かもしれない…そう遠くはないはずよ」

 

友奈の質問に対しそう告げる風

 

「なんで…なんでもっと早く、勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか…友奈ちゃんも樹ちゃんも死んでたかもしれないんですよ!」

 

「勇者の適正が高くても、どのチームが選ばれるか、敵が来るまで分からないんだよ。むしろ…変身しないで済む確率の方がよっぽど高くて…だから」

 

教えてくれなかったことに対し怒る美森にその理由を述べる風

 

「そっか…他の所にも私たちみたいな候補者がいるんですね」

 

「そう、だからもし、選ばれなければ、ずっと黙ってようと思ってた…」

 

「こんな大事なこと、ずっと黙っていたなんて…」

 

美森はそう言うと部室から出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

讃州中学のとある廊下にて

 

 

「はぁ…」

 

美森は顔に後悔の表情を浮かべ溜め息をついていた

 

「あっ!東郷さんここにいたんだ!」

 

そんな美森に友奈が駆け寄る

 

「はい、東郷さん!私のおごり!」

 

友奈は持ってきたジュースを東郷に渡す

 

「えっ…友奈ちゃん、私おごってもらう理由なんて」

 

友奈の突然のおごりに困惑する美森

 

「あるよ。だって東郷さん…さっき私のために怒ってくれたんだもん」

 

「…!」

 

「ありがとうね、東郷さん!」

 

満面の笑みを浮かべ感謝の言葉を口にする友奈

 

「あぁ…友奈ちゃん、まるで天使みたいね……それに比べ、私は…みんなが戦っているのに怯えて…国の一大事なのに勇者になるどころか敵前逃亡…ははっ、足手まといねぇ…」

 

そんな友奈を見て頬を赤くする美森。しかし、また暗い表情に戻り自虐をし始める

 

「と、東郷さーん…?」

 

「先輩の仲間集めだって、国や大赦の命令でやっていたことだろうに…はぁ…私はなんて身勝手で女々しい…」

 

「東郷さーん!そうやって暗くなっちゃだめだよー!ほら、笑って笑って!」

 

美森が自虐の言葉を口にする度にどんどん重くなっていく空気に耐えかねたのか友奈が声をあげる

 

「友奈ちゃん……友奈ちゃんはなんとも思わないの?こんな大事なことを黙ってたことについて」

 

美森は友奈に問いかける

 

「う~ん…最初はさ、すごくびっくりしたけど、でも大丈夫だよ!ちょっと…大変なミッションが出てきただけで!」

 

「友奈ちゃん…」

 

「それに!適正があったから、風先輩や樹ちゃんに会えたんだから!」

 

「適正のおかげ………確かに、その通りだね」

 

友奈の答えにそういえばそうだと笑顔で同意する美森

 

「あっ!やっと笑ってくれた!…やっぱり東郷さんは笑ってる方が好きだし、きれいだよ!」

 

「もう…友奈ちゃんったら、そんなこと言ってもぼた餅しか出ないわよ」

 

「おっ!東郷さんのぼた餅!楽しみだな~!」

 

友奈の言葉に頬を赤くする美森とぼた餅に期待する友奈

 

「あっ…友奈ちゃん」

 

「うん?なに~?」

 

「私、風先輩に謝ろうと思うの…風先輩にも事情があったのに、私はそんなことも考えずに身勝手に八つ当たりしてたから…」

 

「いいよ!じゃあ行こう!私も東郷さんと風先輩の仲がギクシャクしたままなんて嫌だし!私も一緒に謝るよ! 」

 

「友奈ちゃん、ありがとう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、勇者部部室では

 

「説明不足でごめんね~♪(てへっ)…さらに怒りそうね」

 

「ほんとうに、申し訳ございませんでしたーっ!…これは、低姿勢すぎる…」

 

風は美森に対してどのように謝罪するか考えていた。すると、突然なにを思ったのか四つん這いになると

 

「ごめんなさいっ…ごめんなさい…っ!」

 

まるでどこかのバグスターのように泣きながら謝る風

 

「…これはやり過ぎ」

 

そう言い立ち上がる風

 

「お姉ちゃん、もうちょっと待っててよ。いかにして東郷先輩と仲直り出来るか占っているから……この最後の一枚で結果が…」

 

樹が最後のカードを捲ろうとすると

 

「あ、あれ?」

 

なぜか、カードはまるで時間が止まったかのようにまったく動かなかった。さらに

 

テレレレレンッ!テレレレレンッ!

 

「樹海化警報っ!?そんな…まさかの連戦!?」

 

「っ!」

 

そして世界は光に包まれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光がおさまるとそこは樹海。四人が見つめる、色鮮やかな樹木の先にバーテックスはいた。そして、その数は

 

「三体同時に来たわね…モテすぎでしょ、さすがに…」

 

その数なんと三体、一体だけでもかなり苦戦したのに、それが三体。その事実に四人に緊張が走る

 

「友奈ちゃん…」

 

美森は不安げな表情で友奈に声をかけると友奈は美森の手をとり、目線を合わせて笑顔で言った

 

「東郷さん…大丈夫だよ。さっきは初めてだったから怖くて苦戦したけど、今度は怖くないから大丈夫!それにこの子もいるし!」

 

キュル!

 

ドラゴンが任せろと言わんばかりに鳴く

 

「それもそうね…それでも敵は新手よ。なにをしてくるかわからない。二人とも、くれぐれも慎重にね」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

風は友奈の言葉にしながらも警戒を怠らないよう注意する。

 

「そんじゃ!いっちょ行きますか!」

 

「はい!…それじゃあ東郷さんちょっと行ってくるね!」

 

「あ…」

 

友奈が美森の手を離し風達の所に行くと美森は名残惜しそうな声を出す

 

美森から離れた三人はビルドドライバーを取り出し、腰に巻く。そして各々のボトルを振りふたを開けセットする。友奈はドラゴンを変形させボトルを挿しボタンを押した後ドライバーにセットした

 

『ウェイクアップ!』

 

『クローズドラゴン!』

 

 

『オキザリス!』

 

『勇者システム!』

 

 

『ナリコユリ!』

 

『勇者システム!』

 

 

各々のドライバーから音声と音楽が流れると、一斉にレバーを回し

 

『Are you ready?』

 

「「「変身!」」」

 

同時に掛け声をあげる

 

『ウェイクアップバーニング!』

 

『ゲットクローズドラゴン!!』

 

『イェア!』

 

変身を完了した三人はバーテックスの方に向かう

 

「友奈!樹!まずは、手前の二体からやるわよ!」

 

「はい!…でもなんで、あいつだけあんな遠くいるんだろ」

 

友奈が一体だけ遠くにいることに疑問に思っていると遠くにいた一体が口を開き針のようなものを吐き出した

 

「風先輩!樹ちゃん!」

 

「「っ!」」

 

友奈はバーテックスから何かが飛んでくるのに気づくと二人に警告する。そして、飛んできた針を風は大剣を盾にして、樹は周辺の樹木をワイヤーで動かして盾にして防ぐ。友奈は回避できるものはよけ、できないものははたきおとす。そうやって、攻撃をしのいでいるといつの間にか接近してきた長い尾をもつバーテックスが横から友奈に対し向かって尾の先端の針を使ったを攻撃をしかける

 

「まずっ!キャア!」

 

攻撃に気づいた友奈は咄嗟に両腕を交差させて防御姿勢をとるが踏ん張りきれず吹き飛ばされ転がる。幸い攻撃自体は精霊バリアのおかげで防げていた

 

「危なかった…」

 

友奈はすぐ立ち上がる

 

「致命傷になりそうな攻撃は精霊が防いでくれるわ!けれど、何回も使えるものでもないから多用は禁物よ!」

 

「はい!気を付けます!」

 

友奈は長い尾をもつバーテックス『スコーピオン』と対峙する

 

スコーピオンが再び針で攻撃すると友奈は跳んで回避しスコーピオンの尾に着地するとそのまま走り出す

 

「オォォォォリャァァァ!」

 

そして、スコーピオンに接近した友奈はそのままの勢いでスコーピオンを殴る

 

「よし!友奈に続くわよ!樹!」

 

先行した友奈に続こうと風が向かおうとすると

 

「!?お姉ちゃん!危ない!」

 

「なっ…!?」

 

樹の叫び声に振り向くと先程とは違う方向から針のようなものが飛んできた。慌てて防ぐ風、なんでと思い飛んできた方を見ると針を飛ばすバーテックス『サジタリウス』が放った針を硬い装甲をもつバーテックス『キャンサー』が板状の器官を使い反射させていた

 

「ちょっ!…そんなのありぃ!?」

 

「この!この!」

 

サジタリウスとキャンサーの連携に苦戦する風、風を助けようとワイヤーで針を落とす樹だが針が多く、落としきれない。

 

「どうしよ…あいつを何とかしないと…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風と樹がバーテックス達の連携に苦戦している頃友奈は

 

「オリャリャリャーッ!」

 

友奈はスコーピオンの懐に入り込むと連打を叩き込むが、スコーピオンもただではやられず胴体で押し潰そうとする

 

「おっと!」

 

友奈は押し潰される前に脱出するが、出てきた所をスコーピオンが刺突を放つ

 

「うあっ!」

 

友奈は辛うじて避けるが、続けて二撃目、三撃目と刺突が放たれる

 

「っ!」

 

これもなんとか避けるがかなり間合いを離されてしまう

 

「このままじゃ…一方的にやられちゃう…」

 

どう攻めるか考えているとスコーピオンは尾でなぎ払うように攻撃してきた。友奈は跳んで回避するが

 

「しまった!」

 

それを待っていたかのようにスコーピオンは刺突を空中の友奈に放つ

 

(…そうだ!)

 

スコーピオンの針が自分に向かって来るのを見ながら友奈はひらめく

 

(うまく…いきますように!)

 

友奈は自分の足元に精霊バリアを張るとそれを足場にしてスコーピオンの攻撃を避ける

 

「やった!」

 

思い付きがうまくいき、喜ぶ友奈

 

(これなら…いける!)

 

友奈は再びバリアの足場を作り、それを蹴ってスコーピオンに向かって飛び込む。スコーピオンを素早く尾を戻そうとするが

 

「ホッ!ヨッ!ハッ!」

 

友奈はさらにバリアを張り、それを蹴って加速する。同時に、レバーを回す

 

「ハァァァ!」

 

『Ready Go!』

 

「勇者ァァ!!…ッ!?」

 

友奈がスコーピオンに対し大技を繰り出そうとした瞬間横からサジタリウスに狙撃される。そして、狙撃され体勢を崩した友奈にスコーピオンの刺突が直撃し突き飛ばされる

 

「ウッ!アアアア!!」

 

突き飛ばされた友奈は樹木を数本折りながら飛ばされ地面に転がる

 

「ぅ…ぁ…」

 

痛みでまともに動かない体をなんとか動かし立ち上がろうとする。すると、

 

「友奈ちゃん!」

 

「東、郷…さん?…そっか、私、ここまで飛ばされたんだ」

 

友奈は気付けば美森と別れた最初の場所まで飛ばされていた

 

「あっ…!東郷さん急いで離れて…あいつが来る前に…!」

 

友奈はフラフラと立ち上がりながら美森に言った。しかし、美森は首を横に振る

 

「友奈ちゃん…もうやめて!やっぱり…無理だったのよ!」

 

「大丈夫…大丈夫…ヘーキヘーキ…っ!」

 

友奈は歩き出そうとしたがガクンと力が抜けたように膝をついてしまう

 

(攻撃…食らいすぎちゃったかなぁ…)

 

「友奈ちゃん!」

 

膝をつく友奈に美森が近づこうとした瞬間、ベキベキと樹木を折りながらこちらに向かって来るスコーピオン。そして、美森を狙って針を突きだす

 

「っ!」

 

恐怖のあまり目を瞑るが何も起きない。疑問に思い目を開けると

 

「ンググッ…!」

 

友奈が美森の前に立って針を止めていた

 

「東郷、さんは、私が、守る!」

 

押し返そうと力を込める友奈。すると、突然スコーピオンは尾を振り上げ針を止めていた友奈を空中に放り投げる

 

「うわっ!」

 

そして、放り投げた友奈に尾をぶつけ地面に叩きつける

 

「あぐッ!」

 

さらに、だめ押しと言わんばかりに刺突を何度も当て続ける

 

「うぐっ!かはっ!」

 

「やめて!友奈ちゃんが死んじゃう!」

 

しかし、スコーピオンは止まらない

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

 

美森は更に大きな声で叫ぶ。すると、スコーピオンは攻撃を止めた。そして、美森の方を見る

 

「友奈ちゃんを、いじめるなぁぁぁ!」

 

「東郷さん…だめ…」

 

更に叫ぶ美森、それを見て止めようとする友奈。すると突然スコーピオンは、美森を攻撃するが精霊バリアに防がれる。すると、美森の側に白い卵みたいな精霊と鉢巻を巻いた犬のような精霊が現れ持っていたビルドドライバーを美森に渡す。受け取った美森はそれを腰に巻く。続けてもう一体の精霊からボトルを受け取るとボトルを振りふたを開けドライバーにセットする

 

「私は、いつも友奈ちゃんに守ってもらってた…だから……、次は私が勇者になって…友奈ちゃんを守るんだ!!」

 

『アサガオ!』

 

『勇者システム!』

 

さらにレバーを回す

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

変身が完了すると青い装束を纏い白い帯状のものを使って立つ美森が現れる

 

「東郷さん…!」

 

「よくも、友奈ちゃんを傷つけてくれたわね…!友奈ちゃんが受けたその痛み、貴方も味わいなさい!」

 

美森はライフルを召喚するとスコーピオンにに対し発砲する。美森が放った弾丸はスコーピオンに着弾しその巨体を後退りさせる

 

「よし…これなら!」

 

威力を確認した美森は更に弾丸を放ちスコーピオンを後退させていく。その時、友奈が叫んだ

 

「東郷さん、危ない!」

 

えっ?と横を見るとサジタリウスから放たれた針が迫っていた。まずいと思い回避しようと帯を動かすがこれでは間に合わない。すると、そこへ友奈が割り込み飛んできた針を落とす

 

「東郷さんは私が守る!」

 

「友奈ちゃん…、っ!なら私は友奈ちゃんをもっと守るわ!」

 

いつの間にか迫ってきていたスコーピオンの針を弾丸で弾く美森

 

「東郷さん…ありがとう!」

 

「友奈ちゃんのためだもの同然よ!」

 

友奈に向けて親指を立てながら笑顔で言う美森。それを見た友奈は同じく親指を立て笑顔で返す。そして、美森の前に立つ

 

「すぅー…はぁー…よし!援護お願い!東郷さん!」

 

深呼吸し、構えをとり、美森に言った

 

「了解よ、友奈ちゃん!好きに暴れて!」

 

「うん!」

 

美森の言葉を聞いた友奈はスコーピオン目掛け一直線に走り出す。突撃してくる友奈に対しスコーピオンは針を突きだすが

 

「させません!」

 

先程と同じように弾丸によって弾かれる。ならばと、尾を薙ぐように振ろうとする。しかし

 

「それもさせない!」

 

美森は振るわれる尾の間接を狙って数発の弾丸を放ち穴を開ける。すると振った勢いで尾がちぎれ飛んでいく。すぐに再生が開始されるが

 

「東郷さんが守ってくれてる、今の私は負ける気がしない!」

 

そこへ友奈がスコーピオンの懐に到着する。そして、レバーを回す

 

『Ready Go!』

 

「勇者ァァ!!パァァンチッ!」

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

友奈は青い炎を纏った拳でスコーピオンを下から打ち上げるように攻撃する。すると、青い炎は龍の形に成りスコーピオンを貫通した。そして、貫通し天へと昇る龍の口には御霊が咥えられ、そのまま噛み砕かれた

 

「よーしっ!…まずは一体…撃破!」

 

「次は、風先輩の所にいる二体ね」

 

天へと昇る御霊を見ながらガッツポーズする友奈と端末で敵の位置を確認する美森

 

「それじゃあ、行こっか!東郷さん!」

 

「いきましょう!友奈ちゃん!」

 

そして、二人は風達の元へ向かうのだった

 




次回 東郷、無双


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アサガオ無双と動き出す者達

デューク美森「要件を聞こう…」


友奈と美森が無事スコーピオンを撃破した頃風と樹はサジタリウスとキャンサーの連携に苦戦を強いられていた

 

「あーもう!しつこい男はありがとう嫌いなのよ!」

 

「お姉ちゃん!モテる人みたいなこと言ってないで早くなんとかしてよーっ!」

 

「いやーちょっと隙がね…」

 

先程から止まることのないサジタリウスの射撃をよけ続ける二人、風はまだまだ動けるが元々運動があまり得意ではない樹は体力が限界に近づきつつあった。しかし、体を休めようと樹木の陰に身を隠してもキャンサーが装甲を操りサジタリウスの針を隠れても命中するよう調整してくるため二人は体力を回復させることが出来なかった

 

「あいつさえなんとかできれば…」

 

風が悔しげにサジタリウスを睨んでいると、サジタリウスがどこからか飛んできた青い光に貫かれ射撃を中断させられた。さらに、二発、三発と続けてサジタリウスに直撃しサジタリウスの体に風穴を開けていく

 

一体誰がと思い、立ち止まって呆然とその様子を見ていると

 

「お姉ちゃん!危ない!」

 

「っ!」

 

樹の声にハッ!とし上を見るとキャンサーの装甲が迫ってきていた。しまったと思い慌てて大剣を盾にして攻撃に備える

 

「オォォリャァァァ!」

 

そこへ合流した友奈がキャンサーの装甲を全力で殴り攻撃を逸らす

 

「風先輩、大丈夫ですか!?」

 

「ありがとう助かったわ!アンタの方こそ大丈夫なの結構ボロボロだけど」

 

「はい!東郷さんをおかげで大丈夫です!それと、バーテックスも倒しました!」

 

「東郷が…」

 

では、アレをやっているは東郷なのかとサジタリウスの方を見ていると風の端末通信が入る

 

《風先輩…》

 

「東郷!アンタ……戦ってくれるの?」

 

風がそう美森に尋ねると美森はすぐに

 

《はい、遠くにいる敵は任せてください》

 

力強く返した

 

「…わかった。任せたわよ東郷!」

 

《それと、風先輩…》

 

「ん?なに?」

 

《部室ではすみませんでした。風先輩の事情も考えず八つ当たりをしてしまって…》

 

キャンサーを倒そうと前に出ようとする風を止めて美森が言ったのは部室でのことの謝罪だった。それを聞いた風は

 

「悪いのはこっちの方よ…説明不足な上にいきなり戦えだなんてアタシが同じ立場でも怒るわ……ごめんなさい」

 

電話越しだが頭を下げて謝罪する風

 

《風先輩…》

 

「よし!二人共謝ったからこの話は終わり!後は、敵を倒すだけだーっ!」

 

二人の間にある重い空気を吹き飛ばすように友奈は大きな声を出してオリャー!とキャンサー向かっていく。その後を樹が追っていく。そんな様子を見て二人は自然と笑顔になる

 

「まったく、友奈はいつも通りね…」

 

《フフッ…でも友奈ちゃんらしいです》

 

友奈はいつも誰かが喧嘩しそうになったり、悲しそうにしているとそんな暗い雰囲気を飛ばすように立ち回っていた(本人に自覚なし)

 

「さてと、それじゃ東郷遠くにいるアイツ頼んだわ」

 

《はい!任せてください!風先輩もお気をつけて!》

 

「おう!」

 

風は通信を切るとキャンサーの元へ向かって行った

 

 

 

 

 

「さて…」

 

美森は端末をしまうとライフルのスコープを覗きサジタリウスを見る。すでに、先程の攻撃で空けた穴は再生され塞がっており、射撃の体勢に入っていた

 

「させない!」

 

ライフルの照準を今まさに放たんとしているサジタリウスの発射口に合わせ、撃つ

 

すると、放たれようとしていたエネルギーが発射口内で爆発しサジタリウスの体に穴を空ける。すると、空いた穴から御霊の姿が見えた。すぐに、御霊に照準を合わせ撃とうとすると

 

サジタリウスが急速にエネルギーを圧縮させ巨大な針を作りこちらに放とうとしていた

 

それに気づくと美森は瞬時に状況を分析する。

 

回避…帯の足では間に合わない

防御…精霊バリアを張ってもただではすまない

 

となれば

 

「…迎撃する」

 

しかし、かなりのエネルギーを圧縮した巨大な針を正面から迎撃するのは不可能だと思う。だが、美森は…

 

「御国のため…そして、友奈ちゃんのためだったら…私は不可能を可能にしてみせるわ」

 

レバーを回しボトルを活性化させる

 

『Ready Go!』

 

活性化でできたエネルギーをライフルに集中させる。そして、美森はライフルを構え、照準をサジタリウスに合わせる。それと同時に両者は引き金を引いた

 

互いに向かって真っ直ぐ進んでいく弾と針はやがて軽く接触しすれ違う

 

そして、サジタリウスの針は美森の頭上を通り、美森の弾丸は御霊に突き刺さり御霊に小さな銃痕をつける

 

『ボルテックアタック!!』

 

ドライバーから音声が流れると銃痕からヒビが広がっていき、御霊は砕け光になっていった

 

「ふぅ…うまくいった…」

 

額の汗を拭いながら一息つく美森

 

美森がやったことは単純なことで相手の弾に自分の弾を当て弾道をずらしただけである

 

遠距離の狙撃において小さなズレは狙いから大きくズレることになるという。美森はそれを使ってサジタリウスの攻撃を反らし射ぬいてみせた

 

「次は、アイツを…」

 

美森はライフルを構え、キャンサーに照準を合わせる。そして、撃つ。しかし

 

「っ!弾かれた!?」

 

キャンサーの装甲は予想以上に硬くライフルの弾丸は弾かれてしまった

 

「近づくしかない…」

 

遠距離では弾が通らないと判断し美森は帯の足を動かしてキャンサーの元へ向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

美森がサジタリウスを撃破した頃キャンサーと戦闘中の三人は

 

「オリャー!…うーん、やっぱり硬いなぁ…」

 

友奈がキャンサーの装甲を殴るがヒビすら入らない

 

「どうすればいい?……あ!そうだ!」

 

一向にキャンサーの装甲を突破できない中風がひらめくとベルトのレバーを回す

 

『Ready Go!』

 

「友奈、離れて!」

 

風は活性化させたエネルギーを大剣に集中させると友奈にキャンサーから離れるよう言った

 

「はい!」

 

風の指示を聞いた友奈はキャンサーから離れる

 

「ウオォォ!!」

 

風は友奈が離れたのを確認すると大剣を上段に構え、エネルギーを使って大剣を巨大化させていく

 

「デリャャャャ!!」

 

そして、巨大化が止まると一気にキャンサーに振り下ろす

 

『ボルテックアタック!!』

 

振り下ろされた大剣はキャンサーの装甲に激突、一瞬の拮抗後、装甲を砕きそのままキャンサーの体に叩きつけ大きな切り傷を付ける

 

「いくよ!樹ちゃん!」

 

「はい!」

 

それを見た、二人は傷が再生する前に追撃するためレバーを回す

 

『『Ready Go!』』

 

「勇者ァァ!!パァァンチッ!」

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

友奈は風が付けた傷に全力の勇者パンチを叩き込む。すると、キャンサーの体が砕け、そこから御霊が見えるようになる

 

「みぃ~つけた!」

 

御霊の姿を確認した樹はエネルギーを流してやや太くなったワイヤーで御霊をがんじがらめにすると、キャンサーの体から引っ張り出す。

 

「そして~お仕置き!!えい!えい!え~い!!」

 

『ボルテックアタック!!』

 

そして、そのまま地面に叩きつけさらに、バウンドした反動を利用してまた叩きつける

 

「うわ~樹ちゃん、結構ストロング…」

 

友奈が樹の意外な戦い方に少し驚いていると

 

「こいつの、せいで、こっちは、ずっと、走らせれ、てたん、ですよ!これくらい、やっても、ゆるされ、ますよねぇ!?」

 

そんな友奈の言葉が聞こえたのか御霊を叩きつけながらキレ気味に叫ぶ樹

 

「そ、それもそうだね!樹ちゃんがんばれーっ!」

 

「がんばれ!がんばれ!い・つ・き!!」

 

そんな樹に同情したのか応援する友奈とその横でチアガール風に応援する風

 

「おぉぉぉ!大・雪・山おろしぃぃぃ!!」

 

二人の応援を聞いて興が乗ったのか。今度は、御霊を振り回す樹。

 

すると、ワイヤーがブチッ!と音をたてて切れ御霊が飛んでいってしまう

 

「あ"!!やっちゃった!!」

 

「なにやってんの!!樹ぃぃ!」

 

「早く追いかけないと!!」

 

三人が慌てて御霊を追いかけようとすると

 

飛んでいく御霊に向かって青い影が飛んでいき御霊に取りつく。美森である

 

美森は御霊に取りつくと四本ある帯の足の内二本をアンカーのように御霊に刺す。

 

さらに、残りの帯の先端を裂き人間の手のようにすると召喚したショットガンを持たせ、自分も同じショットガンを装備し、計四丁のショットガンを御霊の割れてできた亀裂に差し込む。

 

「この距離ならいくら固かろうが関係無いわ…!」

 

そして、美森は同時に引き金を引く。

 

次々に撃ち込まれる銃弾に御霊は為す術もなく砕かれ、光になっていった

 

天へと昇っていく御霊を見ながら美森はどう着地しようか考えていると

 

「東郷さ~ん!」

 

「友奈ちゃん!」

 

落ちてくる美森に向かってバリアの足場を使い友奈が近づく

 

そして、美森に追い付いた友奈は美森をキャッチしお姫様抱っこでバリアの足場を使ってゆっくり降りる。そして、無事に地面に着地すると美森を下ろした

 

「東郷さん」

 

「なに?友奈ちゃん?」

 

「東郷さんのおかげで今回も無事に全員生き残れたよ、本当にありがとう」

 

「いいえ、友奈ちゃん…私だけの力じゃないわ。みんなが頑張ったからよ」

 

お礼の言葉を口にする友奈にそれは違うと否定する美森そんな二人に風と樹が合流する

 

「そんな謙遜しなくていいわよ。東郷、今回はほんとに助かったわ。ありがとね」

 

「風先輩…」

 

謙遜するなと美森に言いつつ感謝する風。

 

「それに、さっきはうちの妹が迷惑かけちゃったし」

 

「うぅ…すみませんでした…」

 

風は横にいる樹をジト目で見ると樹は申し訳なさそうに美森に謝罪した

 

「まったく樹ったら、調子乗るといつもこうなんだから。今日の晩御飯は樹の嫌いもの多め入れるからね」

 

「うぇ~…そんなぁ………お姉ちゃんの鬼(ボソッ)…」

 

「なんか言った?」

 

「ヴェ,マリモ!!」

 

「あはは!」

 

「フフッ」

 

小声で風の悪口を言う樹。しかし、聞こえていたのか風が問いただすと樹は慌ててなにもないと言おうとしたが呂律がまわっていない。そんな樹を見て友奈と美森は思わず笑う

 

「あっ…樹海が…」

 

四人が周りを見ると樹海が前日と同様に輝き始め。そして、

 

「あっ、戻った」

 

中学校の屋上に戻っていた

 

「あ~疲れた…」

 

樹がそう言うと三人も緊張が解けた途端一気に疲労感が来た

 

「あー確かに」

 

「そうねぇ…」

 

「こりゃ、明日は確実に筋肉痛だわ」

 

友奈、美森、風がひどく疲れた表情でつぶやく

 

「今日は、お役目初日にまさかの二連戦だったし…今日の部活は休みにしましょう…」

 

「そうですね…急ぎの依頼もありませんし」

 

風の提案に端末で依頼の確認をしていた美森も同意する

 

「それじゃ、解散…」

 

「「「お疲れ様でしたー…」」」

 

四人は各々の教室に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~つっかれたぁ~…」

 

時刻は夜10時を回った頃、友奈はベッドに倒れように横になる

 

「今日はいろいろな事が起こって大変だったなぁ…」

 

今日の出来事を振り替える友奈。そして、これからは、あんな敵と戦っていかなければならないのかと一瞬不安になるが、みんなが居れば大丈夫だと思い不安を吹き飛ばす

 

「おやすみ~」

 

机の上でクッションを齧っている牛鬼とその横に置かれているクローズドラゴンにおやすみを言うと電気消して瞼を閉じ、すぐ眠った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ?」

 

友奈は気づくと白い空間にいた

 

「えっ?…どこ、ここ…夢の中?」

 

「よぉ、やっと会えたな」

 

「誰っ!?」

 

突然の事に困惑している友奈に何者かが背後から声をかけた。友奈が慌てて振り返るとそこにいたのは

 

「…誰?」

 

見知らぬ男性だった、髪は茶髪で青いスカジャンを着て腰にチェック柄の服を巻いている。そんな変わった服装の男性がそこにいた

 

「あー自己紹介がまだだったな…俺は『クローズ』の精霊…バサッ…プロテインの貴公子、万丈龍我だぁ!」

 

突然現れて人差し指を上に向けながら名乗りをあげる男性にもう友奈の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。ふと、混乱する友奈の脳裏に黒い服を着た男がヴェハッハッ!!と笑いながら土管から生えてきた。その男は友奈を指を指しながら

ユウキユウナァ!と友奈の名前を言うと神託を告げる

 

ナゼイキナリシブンハコンナトコロニイルノカァ、ナゼシラナイオトコノヒトトソンナトコロイロノカァ!ソノコタエヲシルホウホウハタダヒトツ…メノマエノオトコニシツモンスルノサァ…ヴェハッハッ!!

 

それだけ言うと男は笑いながら土管に戻っていった

 

「あの…ここってどこなんですか!?」

 

とりあえず友奈は気持ち悪い男の人に感謝しながら、神託にしたがって質問してみた

 

「えっ?しらね」

 

思わずずっこける友奈。けど、と万丈龍我は続ける

 

「お前が使ってるドラゴンの事とか教えてやれるぜ」

 

「っ!教えて下さい!あのドラゴンはなんなんですか!?」

 

「おう。そのためにお前に会いに来たんだからな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、ここはどこかの研究所の一室。そこでは、一人の男性がパソコンにデータを打ち込んでいた。

 

すると、コンコンとその部屋のドアがノックされ、男性の応答を待たずに一人の男性が入ってきた。

 

「聞いたか葛城。今代の勇者達がバーテックスを撃破したらしいぞ」

 

それを聞いた。葛城と呼ばれた男性は打ち込むのを止め入ってきた男性の方を向く

 

「当然だ、勇者システムは二年かけてかなり強化したからな。それぐらいやってもらわなきゃ困る」

 

「しかもだ…初日で四体も撃破したんだぞ」

 

それを聞いた葛城は少し驚く

 

「ほう…今代の勇者は随分優秀だな」

 

「ああ…みんな優秀だ…特にとびっきりなやつがいる」

 

「へぇ…君がそこまで絶賛する子かどんなやつだい?」

 

「彼女の名前は、結城友奈。歳は14歳で元気な娘さ……そして、」

 

「三人目の『パンドラシステム適合者』だ」

 

「っ!」

 

それを聞いた葛城は目を見開き、思わず立ち上がる。

 

「それは…本当か?」

 

「ああ…間違いない」

 

男性はそう言うとタブレット型の端末を操作しあるデータを見せる

 

「たった今、『クローズ』パネルのデータが一部アンロックされた」

 

葛城は端末に表示されたデータを見ながら

 

「…春信」

 

「なんだい?」

 

「彼女をここに招待してくれ。出来るだけ早く」

 

「了解」

 

春信と呼ばれた男性は部屋を出ようとドアに向かおうとして立ち止まり、葛城の方を向いて

 

「あっそうそう、次の襲撃からうちの妹が参戦するから、サポートのご教授お願いしますよ。葛城先生」

 

それを聞いた葛城は嫌そうな表情を春信にむけると

 

「先生は止めろ。僕はそんな柄じゃない」

 

「フッ…そうかい」

 

そして、春信は部屋を出ていった

 

 

 

 




次回 赤が来る


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赤い蛇と折られたサクラ

初めて9000字以上書きました。それと、タイトルでお分かりな方が多いと思いますが今回ヤツが出てきます。ここからどんどん原作から離れていくかもしれません


友奈は突如現れた『クローズ』の精霊、万丈龍我に謎のドラゴンについて聞いていた

 

「クローズドラゴン?」

 

「おう、それがあのドラゴンの名前だ。」

 

「あのドラゴンって一体何なんですか?アレで変身するとスッゴく力が湧いてくるんですけど…」

 

「そりゃあ、勇者システムとはちょっとばかし違うからな…」

 

「えっ?違うんですか?」

 

万丈の言葉に首を傾げる友奈

 

「ああ…勇者システムは大赦が後から付け足したシステムだからな…で、ドラゴンの方は『パンドラシステム』っていうやつだ」

 

「パンドラシステム?」

 

「パンドラシステムってのは神樹様が大赦に授けた『パンドラパネル』に入っていた戦士のデータを元に作られたシステムだ。」

 

「戦士?」

 

「『仮面ライダー』…愛と平和のために戦った戦士達のことだ。」

 

「仮面ライダー…、パンドラシステム…うーん」

 

友奈が次々と聞かされる情報の処理に苦戦していると

 

「あっ、そろそろ時間切れだな」

 

「えっ!?もうですか!?」

 

「ああ、周り見てみろよ」

 

万丈に言われ友奈が周りを見てみると次第に空間が明るさを増していくのに気づく。そして、万丈の体もだんだんと透けていっていた

 

「わりぃな…もっといろいろ教えてやりたかったんだが…」

 

「い、いえいえ!とても助かりました!」

 

ほんとはよくわかってないけれど、自分のために教えてくれた万丈に友奈は感謝した

 

「そうか…じゃあな」

 

「あっ!万丈さん!」

 

「ん?なんだ?」

 

友奈は消えようとしている万丈に声をかける

 

「また、会えますか?」

 

「…おう!」

 

そう言うと万丈は消えていった。同時に友奈も周囲の光に飲み込まれ、気がつくと部屋のベッドで寝ていた

 

友奈は眠たげに上体を起こすと欠伸をする

 

「ふぁ~…なんだか、いろいろと突然すぎて眠れた気がしないなぁ…」

 

チラッと時計を見るとちょうどよい時間だったのでしぶしぶ起きるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は進んで登校時間、友奈はいつものように車椅子に乗る美森を押しながら、昨日見た夢の話をした

 

「東郷さん、私ね昨日不思議ね夢を見たんだぁ」

 

「へぇ、どんな夢?」

 

「えっとね…万丈龍我さんっていう精霊がね、突然現れて私にクローズドラゴンについて教えてくれたんだぁ」

 

「クローズ、ドラゴン?」

 

「あ!この子の事だよ」

 

友奈は自分のカバンを開ける。すると

 

キュル~♪

 

クローズドラゴンが出て来て友奈と美森の周りを飛ぶ

 

「あ!こらこら、そんな飛び回っちゃダメだよ」

 

キュル♪

 

友奈に言われクローズドラゴンは飛び回るのをやめると美森の太腿の上に着地する

 

美森がクローズドラゴンの頭を指で撫でるとクローズドラゴンは美森の指に頭を擦り付けるような仕草をする

 

そんな可愛らしい仕草を見て美森は薄く笑みを浮かべる

 

「あら、以外とかわいいわね」

 

「でしょ!」

 

キュルル~♪

 

「それで、クローズドラゴンについてどんな事を教えてくれたの?」

 

「えっとね…クローズドラゴンは勇者システムじゃなくて、パンドラシステムっていう別のシステムなんだって」

 

「…」

 

「で、そのパンドラシステムはパンドラパネルっていうのに入ってる仮面ライダーのデータを元に作られてるんだって」

 

友奈の見た夢のことを聞いた美森はしばし考えた後、心配そうな表情で友奈に顔を向ける

 

「……友奈ちゃん」

 

「ん?なに?」

 

「その…パンドラシステムは使って良いものなの?あれから、なにか体に異常とかはなかった?」

 

美森が懸念するのも仕方なかった。何せパンドラシステムは友奈にとっても未知の部分が多いもので今後、どんな事が起こるか想像つかない。

 

けれど、友奈はそんな美森にいつもどうりの笑顔を向けて

 

「大丈夫だよ、東郷さん!私はこの通り元気だよ!……ちょっと、筋肉痛になってるだけで!」

 

「友奈ちゃん…」

 

いつもどうり楽観的な友奈に美森の不安な気持ちは少し晴れるが。それでも考えてしまう、今は大丈夫でも戦うにつれ何らかのデメリットが出てくるのではないか。と

 

「それに私には今、この力しかないし」

 

そう、友奈は一回目のバーテックスとの戦闘中に勇者システムのボトルを紛失していた。ゆえに、友奈はパンドラシステムを使わざるを得ないのだ

 

「あ!もちろん、なにかあったらみんなに相談するよ!勇者部五箇条『悩んだら相談』だしね!」

 

「それもそうね…」

 

現状、それしかないのなら仕方がないと美森も割りきる

 

「そろそろ、学校に着くからクローズドラゴンも鞄の中に戻ってね」

 

キュルル…

 

クローズドラゴンは残念そうに鳴くと友奈の鞄の中に戻っていった

 

「よーし、今日も1日頑張るぞー!」

 

「フフッ…そうね」

 

そして、いつものように二人は学校に入っていった

 

「……」

 

その二人の背中を何者かが見つめていたとも知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、今日も勇者部!張り切っていくわよー!」

 

「「おおー!」」

 

「おおぅ…」

 

通常の授業を終え部活動の時間。いつもの風の掛け声に友奈と美森は元気良く応えたが樹はいつもより元気がなく、体の動きもぎこちなかった

 

「樹ちゃん…大丈夫?」

 

そんな樹を見て心配になった友奈が樹に声をかける。すると、樹はギギギ…と錆びたロボットのような動きで友奈の方を向き

 

「き、筋肉痛ぅ、です…」

 

「…あ~、昨日あれだけ動いたから」

 

友奈は昨日の樹を思い出す。普段の樹からは想像できないくらい暴れていたのでこの有り様も納得がいった

 

「え~と、今回の依頼は……あー、樹、今回屋外だわ」

 

「そ、そんなぁ…」

 

今の樹にとっては苦行でしかないその言葉にファントムが出てきそうな程絶望する樹

 

「樹ちゃん、よかったらマッサージしようか?」

 

「ぜひ、お願いします…!」

 

最後の希望と言わんばかりに友奈にすがる樹

 

「オーケー!じゃ、ちょっと待っててね」

 

そう言うと友奈は部室の椅子を一列に並べて即席のベッドにすると樹にうつ伏せで横になるように言う

 

「は、はい…」

 

樹は言われた通りベッドの上に寝転ぶと友奈は樹の背に手を置くと、強すぎず、弱すぎない力加減で的確に樹の体をほぐしていく

 

「んー、樹ちゃん、もうちょっと力抜いて?」

 

「んっ…すみません、マッサージされるの初めてなんです…こうですか?」

 

樹は友奈に言われた通りに力を抜いて見る

 

「あー、初めてのなら緊張しちゃうよね…うん、そんな感じで良いよー」

 

そして、ある程度樹の体がほぐれた所で友奈は自分の手を揉んでヨシッ!と気合いを入れ樹の背に親指の腹を乗せる

 

「よーし、樹ちゃん今から本番いくからね。そのまま力抜いててねー」

 

「…えっ?…本番?」

 

「えいっ!」

 

「ひゃうん!?」

 

友奈がぐっと力を込めて押すと樹の体を電流が走り。その後、快感になる。そのせいで樹が変な声をあげる

 

「おー、これはかなり固いねぇ」

 

「ゆ、友奈さん!ち、ちょっとまっ…ひゃ!…あぅ!」

 

さらに、追撃する友奈。その度に喘ぐような声をあげ止めるよう懇願する樹。しかし、友奈は止まらない、なぜなら、友奈は困っている人を見ると必ず助けようとするからだ。それも、後輩の樹が困っているなら、尚更だ。

 

「樹ちゃん!時間もないし、フルスロットルでいくよー!」

 

「ひぅ!はぅ!あひぃ!」

 

「これで……フィニィィィィシュ!!」

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

「ヒャァァァァァ!!」

 

友奈のとどめの一撃が振り下ろされるのと同時になぜかクローズドラゴンから音声が流れる。多分、友奈のフィニッシュ宣言に反応してしまったのだろう。そして、とどめをさされた樹は大きく仰け反った後ぐったりと倒れる

 

「はぁ…はぁ…う、ん…はぁ…はぁ」

 

体を痙攣させ、今にもどこぞのSSRシグマのように溶けそうな樹。そして、慈愛に満ちた無慈悲な一撃を喰らわせた友奈はふぅ…と一息つく。そんな友奈の頭を風は丸めた新聞紙で軽く叩く

 

「友奈、やり過ぎ」

 

「あっすいません…私ったら、つい…」

 

マッサージ前とは違う意味でぷるぷると震えている樹に肩を貸して起こそうとする友奈

 

「ごめんね、樹ちゃん…初めてだったのに。加減無しでやっちゃって」

 

「いえ…気にしないでください。友奈さん、おかげで体が羽のように軽いです」

 

その後、体から快楽の余韻が抜けた樹は、改めて友奈に礼を言って自分の足で立った。それを見た風は本題にはいる

 

「さてと、樹のマッサージが終わったところで本日の依頼を発表します!……本日は、猫探しね。で、これがその猫の写真」

 

そう言うと風は猫の写真を黒板に貼る

 

「また迷子のペット探しですか…昨日は犬でしたし、最近多いですよね、この手の依頼」

 

美森は最近の依頼内容に対して疑問を口にする

 

「そうねぇ…あっ!なにかの前触れだったり?」

 

災害が起きる前に動物は危険を察して逃げるって言うしと思いながら風が美森の疑問に適当に答えると

 

「もうお姉ちゃん不吉なこと言わないでよ!」

 

これから、猫を探そうって時に不吉なこと言う風に樹が怒ると風はごめんごめんと謝る。

 

適当にそんな事を言った風も内心まぁ、飼い主の不注意でしょうけどと思っていた

 

「それじゃ、樹、いつもの…って今は無理か…東郷そっちはどう?」

 

パソコンを使い掲示板で情報を集めていた美森は画面から目を離して風の方を向く

 

「それが…目撃情報はあったんですが…東と西の二ヶ所で目撃されてまして…」

 

「二ヶ所かぁ…」

 

「どうします?風先輩?」

 

指示を仰ぐ友奈。そして、風はしばし考えた後友奈達に顔を向けると

 

「二手に別れましょう。西は私と樹で、東は友奈と東郷に任せるわ」

 

「「はい!」」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の人気の少ない倉庫のような所で友奈と美森は猫の写真片手に迷子の猫を探していた

 

「う~ん、いないねぇ東郷さん」

 

「おかしいわね…目撃情報だとこの辺りなんだけど」

 

キョロキョロっと辺りを見回していると友奈の端末に着信が入る。友奈が画面を見ると風部長と表示されていた。友奈が電話に出ると

 

『もしもーし、そっちはどう?見つかった?』

 

「風先輩、それがまだ見つかってなくて…」

 

『あー、そっちもかー…わかった。後一時間ぐらい探して見つからなかったら、今日は切り上げるわ…じゃ、引き続き頼んだわ』

 

「はい!こっちも見つけたらそっちにかけますね!」

 

そして、友奈は通話を切り、端末をポケットに入れると猫探しを再開する

 

さーて、どこかな~と物陰やガラクタの下を覗いてみるが見つからない。友奈は一旦、美森と合流する事にした

 

「東郷さん!そっちはどうだった?」

 

「こっちも見つからなかったわ。友奈ちゃん」

 

「ほんとにどこ行っちゃったんだろう?……ん?」

 

友奈が辺りを見回しながら考えていると古びた倉庫の扉が少し開いておりその隙間に猫が入っていくのが見えた

チラッと見えた毛の色は写真の猫と似ていた。もしかしたら、自分たちが探している猫かもしれないと思い美森の車椅子を押して急いで猫が入った倉庫へ向かう友奈

 

そして、倉庫の扉の前に来ると友奈はスライド式の扉の取っ手を掴み力を込めて引っ張ると耳障りな金属音をたてながら扉がゆっくり開いた。

 

ある程度開いたところで友奈が中を覗いて安全を確認した後、車椅子を押して美森と一緒に入る。

 

倉庫の中は外に比べ少し暗かったがはっきりと見えていた。友奈は早速近くの積み上げられたガラクタの下を覗いてみる。すると

 

「あ!いた!」

 

さっきの猫がいた。しかし、友奈の驚いて物陰から飛び出して扉の方へと逃げてしまう。

 

「あ!待って!」

 

慌てて友奈も追おうとするが

 

『おっとっと』

 

扉から入ってきた人物によって猫は捕まえられた。

 

「すいません!ありがとうござい…っ!」

 

友奈は捕まえてくれた人に礼を言おうとしたがその人物の格好を見て止まってしまう

 

その人物は全体が血のように赤い装束を身に纏い、顔も装束と同じ色の仮面をつけ隠していた。しかも、体つきからして女の子ようだが、先程聞こえた声は男性の声であった

 

そんな怪しい格好をした人物の登場に二人は警戒する

 

『おーよしよし、ん?なんだ?ここが気持ちいいのか?』

 

そんな中謎の人物は捕まえた猫を撫でていた。そして、猫は気持ち良さそうにしていた。その時、美森が口を開く

 

「あなた…一体何者ですか?」

 

『ん?俺の事か?そうだなぁ……お、そうだ』

 

謎の人物は考える素振りすると抱えていた猫を見て思い付いたように美森達の方を向く

 

『今からゲームをしようじゃないか。それをクリアしたらお前らの質問に答えてやるよ』

 

「ゲーム?」

 

『ルールはいたってシンプル。こいつを倒せ』

 

謎の人物はどこからかバルブのついた剣のようなものを取り出すとバルブを捻る

 

『デビルスチーム!』

 

剣から音声が流れると猫を放り投げ、剣から蒸気出して猫に浴びせる

 

「ニャャャャャャッ!!!!」

 

猫の苦痛に歪んだ悲鳴が倉庫内に響き、二人はその様子を見て固まってしまう。すると、蒸気を浴びた猫に異変が起こる

 

体はみるみる大きくなり、腕に大きな爪が生えた人型になっていく。そして、人間ほどの大きさになると地面に着地する

 

「グガガガッ!」

 

猫だった怪物は一番近くにいた友奈に襲いかかる

 

「うわっ!」

 

友奈はあわてて攻撃を避けるとドライバーを取り出す

 

「やるしかない…!東郷さん!」

 

「ええ!援護は任せて」

 

そう言うと美森もドライバーを取り出し腰に巻く。友奈も再び飛び掛かってきた怪物を避けながら腰にドライバーを巻く

 

そして、友奈はドラゴンフルボトルをクローズドラゴンに差し込み、美森は二本のボトルのふたを開けドライバーにセットする

 

『ウェイクアップ!』

 

『クローズドラゴン!』

 

 

 

『アサガオ!』

 

『勇者システム!』

 

そして、二人同時にレバーを回す

 

 

『『Are you ready?』』

 

「「変身!!」」

 

 

『ウェイクアップバーニング!』

 

『ゲットクローズドラゴン!』

 

『イェア!!』

 

 

友奈は変身が完了すると怪物に向かって走り出す。美森はライフルを構えいつでも援護ができるようにする

 

「ガァ!」

 

「よっ!…オリャ!」

 

怪物は向かってくる友奈に対し爪で切り裂こうとするが、友奈はその攻撃をしゃがんで回避し、低い姿勢から打ち上げるように拳を叩き込む

 

『ガッ!』

 

「オォォォ!」

 

友奈の一撃を受け堪らずたたらを踏む怪物。その隙を逃さずさらに、ラッシュを浴びせる友奈。

 

そんな友奈に対し怪物も爪で反撃しようとするが

 

「ガァ!?」

 

振り下ろそうとした爪を美森の放った銃弾で弾かれ体制を崩す

 

「ハァッ!」

 

その隙をついて友奈は怪物の腹に蹴りを入れる。

 

友奈の蹴りを受けた怪物は地面に転がる。

 

「ガァァ!!」

 

しかし、なおも立ち上がろうとする怪物。

 

それを見た美森はレバーを回す

 

『Ready Go!』

 

エネルギーをライフルを集中させ、照準を怪物に合わせる。

 

「ごめんね…」

 

美森は小さく謝罪すると引き金を引いた

 

『ボルテックアタック!!』

 

美森が放った銃弾は怪物の胸に命中し突き刺さる

 

「グゥゥッ!…ガァァァッ!!」

 

そして、怪物は数秒苦しそうにもがいた後、爆発した。

 

爆炎が晴れるとその地面に猫が倒れていた。慌てて友奈が駆け寄り状態を確かめるとまだ、息があった。その事にホッとする友奈。その時、謎の人物の拍手の音が鳴り響く。その音に反応して二人は謎の人物を睨む

 

『ブラボー!さすがは、歴代最高と評価された勇者チームの一員だぁ!昨日、初陣を終えたばかりだってのにこうも容易くスマッシュを倒せるかぁ!ハッハッハッ!』

 

謎の人物は積まれたガラクタにくつろぐように座り。膝を叩きながら笑って二人を称賛した

 

「なんで…なんでこんなひどいことを!」

 

友奈は珍しく本気で怒っていた。猫を…命をゲーム感覚で安易に弄んだからだ。目の前にいるこの人物だけは絶対に許さないと友奈の頭の中は怒りに満ちていた。

 

『ん?じゃあ聞くがあの猫が死んだところで世界がどうにかなっちまうのか?…ならないだろう?それにだ、お前達が素早く倒してくれたおかげであの猫も死なず済んだんだからよかったじゃねーか』

 

「な…っ!」

 

謝罪の言葉すらなく、そして、悪びれることなく言った謎の人物の言葉に友奈はキレた。

 

今すぐ目の前のいるアイツ倒す、そんな怒りの感情に身を任せレバーを握り回そうとするが

 

「友奈ちゃん、抑えて…」

 

美森が友奈を掴んで止める

 

「東郷さん…離して、アイツだけは許せない!」

 

「その気持ちはよく分かる…でも今だけは抑えて。私達はまだアイツから情報を引き出せてない」

 

「っ!…わかった」

 

美森の説得を聞いて友奈はレバーから手を離す。そして、深呼吸をして自分を落ち着かせる

 

『おーい、話はすんだかぁ?』

 

「…ええ、終わったわ。じゃあ質問させて貰うわね」

 

相変わらずこちらの神経を逆撫でするかのような喋りに美森は手が出そうになるが先程友奈に怒りを抑えろと言った手前自分が手を出すわけにはいかないと我慢した。

 

そして、美森は謎の人物に質問した

 

「あなたの名前は?」

 

『俺の名はブラッドスターク…スタークと呼んでくれ!』

 

「…そう、スタークね…次の質問、あなたの目的は?」

 

『そいつぁ詳しくは言えねぇが…強いてあげるならお前達の成長を促すって所かなぁ』

 

「…約束を守ってよ、質問に答えるって言ったよね」

 

友奈が答えを濁すスタークに対し怒りが再燃しそうになるのを抑えながら言った。それを聞いたスタークは肩をすくめた

 

『確かに質問に答えると言ったがすべて答えるとは言ってないだろぉ?』

 

「そんな屁理屈!!」

 

友奈は怒りのあまり前に出ようとするが、美森がそれを手で制し、首を横に振る

 

「…ごめん」

 

「友奈ちゃんは悪くないわ…悪いのはすべてアイツよ……では最後の質問よ、あなたは私達にとって何?」

 

『そうだなぁ今のところは敵だn』

 

スタークの言葉は最後まで続かなかった。美森がスタークを撃ち、放たれた銃弾をスタークがどこからか取り出した小さな銃で撃ち落としたからだ

 

『おい、質問に答えてる時に攻撃するのは無しだろう』

 

「それだけわかれば十分よ…それに、あなたそんな事言って無かったじゃないお互い様よ」

 

正直な所美森はすでに我慢の限界だった。他にも聞きたいことがあったが堪えきれなかった。そして、今の一撃でわかったスタークは強いと、美森がスタークをどう倒すか思案していると

 

「オォォォ!」

 

「っ!友奈ちゃん!?」

 

友奈が檻から放たれた猛獣のようにスタークに向かい、スタークの頭部を狙って回し蹴りを放つ。

 

しかし、スタークの左腕にガードされる。

 

すかさず美森も銃弾を放つがスタークは転がるように避ける

 

そして、立ち上がろうとするスタークを友奈が蹴りも加えたラッシュをくり出すがスタークは左腕のみですべて捌き、飛んでくる銃弾は右手で撃ち落とす

 

『おいおい、そんな大振りじゃ当たらねーぞ』

 

「うるさい!!」

 

そんなスタークの煽るような言葉に友奈はさらに怒りに燃え、力任せで雑な攻撃になっていく

 

『あんまり力任せでやると…』

 

「オリャャッ!!」

 

友奈の渾身の一撃をスターク左腕の肘で受けた。そして、防御された友奈の右手はバキッと音をたてて折れた

 

『こうなるぜ』

 

「あぐ…っあ!」

 

あまりの痛みに右手を押さえて下がる友奈に銃を向ける

 

『ナイスパンチだったぜ友奈ぁ…では、終わりだぁ…』

 

そして、引き金を引こうとすると美森が銃弾を放ち阻止する

 

『おっと…まずは厄介なお前からだ美森ぃ!』

 

スタークはバルブのついた剣を出しバルブを捻る

 

『アイススチーム!』

 

そして、痛みでまともに動けない友奈の足元に放ち凍らせる

 

「なっ…!?」

 

なんとか抜け出そうとする友奈に飛んでくる銃弾を撃ち落としながら近付き友奈の肩を優しく叩くと

 

『ちょ~と、待ってな』

 

そう言うと美森に向かって走り出す

 

「くっ!」

 

美森は向かってくるスタークに銃弾を放ちながらレバーを回す

 

『Ready Go!』

 

「喰らいなさい!」

 

「ボルテックアタック!!」

 

スタークに高威力の銃弾が迫るが

 

『いやだね』

 

スタークはスライディングして回避しそのまま地面を滑るように美森の足下まで移動すると美森の帯の足を蹴り払う

 

「なっ!?」

 

美森は突然の事に反応できずそのまま転倒してしまう。慌ててスタークに向けようとするが銃を持つ腕をスタークに踏みつけられる

 

「いっ…!」

 

『全くお前の射撃の腕には驚かされてばかりだ』

 

スタークはバルブのついた剣を銃に合体させる

 

『ライフルモード!』

 

『次会うときはもっと腕を上げておけよ』

 

そして、美森に銃口を向け引き金を引く

 

『スチームショット!』

 

『コブラァ!』

 

「キャアアアア!!」

 

赤いエネルギー弾が美森のバリアに当たるがすぐに砕かれ美森を吹き飛ばす

 

「うぐっ…っ!」

 

『ほう…今回のバリアはずいぶんと頑丈じゃねぇか』

 

吹き飛ばされた美森はバリアのおかげで変身解除はされなかったが、ダメージを受けまともに動けないでいた。そんな美森にスタークは近づこうとすると

 

『Ready Go!』

 

「オリャャ!」

 

『なに?』

 

友奈はいつの間にか氷から脱出していた。実は、美森が最後にスタークに放った銃弾はスタークを狙ったものではなく友奈を拘束する氷を狙ったものだった。そして、美森の銃弾が氷に当たり氷が割れて友奈は脱出することができた。

 

そして、友奈はスタークに対し青い炎を纏った飛び蹴りを放つが

 

『いいキックだ…』

 

「なっ…!?」

 

スタークは友奈の蹴りを左手一本で掴んで止めていた。そして、勢いが減衰したところで美森の方に投げ飛ばす

 

『だが、俺には効かない…』

 

そう言うとスタークはライフル型の銃を美森に向ける

 

「させ、ない…っ!」

 

友奈は立ち上がりスタークと美森の間に入り庇うように両手を広げる

 

「東郷さんは、私が守る!!」

 

「友奈ちゃん…」

 

『青春だねぇ…俺、こういうの見るとウルッと来ちゃうんだなぁ……なら、守って見せろ』

 

そして、スタークは容赦なく引き金を引いた

 

『スチームショット!コブラァ!』

 

迫る赤いエネルギー弾に対し友奈は全力でバリアを張り備える

 

やがて、バリアに当たりエネルギー弾を受け止める。しかし、あまりの威力に友奈の体は徐々に下がっていく

 

「うぐぐぐっ…あっ…」

 

そして、バリアは破られ友奈は美森ごと吹き飛ばされ壁に叩きつけられる地面に倒れると同時に二人は変身解除される

 

そんな二人を見てスタークはため息をつく

 

『所詮はただの…資格があるだけの子供だったわけか…お前らには正直ガッカリだ。特に友奈、お前あれだけ守るって言ってたのにこの様はなんだ?』

 

「…っ!」

 

スタークの言葉になにも反論できずただスタークを睨む事しかできない友奈

 

そんな友奈を見てスタークは続ける

 

『なにも言い返せないか…はぁ…友奈』

 

スタークは友奈に近づき、しゃがんで友奈に顔を近づける

 

『お前は…勇者じゃない』

 

「っ!」

 

『だってそうだろう?…友達一人守れないやつに世界を守る大事なお役目が務まると思うか?…思わないだろう…?』

 

「わたし、は」

 

友奈は美森を見る。美森は気を失っていた。そして、体のあちこちに怪我をしていた。それを見て友奈は私守れなかったんだ守るって言ったのに…と思う。そして、認めてしまう

 

「勇者じゃ、ない…」

 

友奈は自分の考える勇者像と今の自分がかけ離れているのに気づいてしまった。だから、認めてしまった自分は勇者じゃないと。そして、意識がだんだん遠退いていくのを感じながら、もう一度美森の方を見て

 

「…ごめんね」

 

謝罪の言葉を口にして気を失う。そんな友奈の頭を撫でながらスタークは独り言を呟く

 

『そこから、這い上がって来い…友奈、お前にはそれができるはずだ』

 

スタークは立ち上がり二人に背を向けると

 

『チャオ』

 

銃から煙を出してその場からいなくなった

 




次回 返り咲け、サクラ


本作のブラッドスタークのについて

防人の戦衣を本家のブラッドスタークのカラーリングにして顔部分は同色の仮面をしています

変身者は皆さんがよく知ってるあの子です
ではまた次回チャオ♪


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返り咲くサクラ

明けましておめでとうございます。前回の投稿から少し間が空いてしまい申し訳ありません(^U^)今年もよろしくお願いします。


友奈復活回です


ブラッドスタークと名乗る少女に襲撃された友奈と美森。戦いに敗れ気を失った友奈はまた、謎の空間の中で目を覚ますのだった。

 

「んっ…?……ん!?」

 

友奈が目を覚ますとそこはどこかの喫茶店のようだった。何でこんな所にいるんだと思わず周りを見ながら驚く友奈。

 

「よぉ。目、覚めたか」

 

「あっ…万丈さん」

 

友奈が声のした方を見るといつの間にか現れた万丈がカウンターの中でコーヒーを淹れていた。

 

「おう。プロテインの貴公子の万丈さんだ。」

 

「以外と早かったですね。次会えるのもっと先だと思ってました」

 

「あぁ……実はな。ほんとはもう少しお前が戦いになれてきたら出てこようと思ったんだけどな……友奈」

 

「は、はい」

 

急に真剣な雰囲気で友奈を真っ直ぐ見る万丈。そんな万丈に友奈は思わず緊張してしまう

 

「お前…ホントに勇者やめちまうのか?」

 

「っ……はい」

 

「何でだ?」

 

「……だって、私…あんなに守る守るって言っときながら結局東郷さんを守れてなくて…無責任で…口先だけの勇者だと思ったから…です」

 

万丈の問いに暗い表情で返す友奈。そんな友奈の言葉を聞いて万丈は首を傾げる

 

「いやお前ちゃんと守れたじゃねぇか」

 

「えっ…?」

 

「だってそうだろ。もしあそこでお前が美森を庇わなかったら。もっとひどいケガをしてただろうし最悪、死んでたかも知れねぇ…あの程度で済んだのはお前が守ってくれたからだ」

 

「で、でもケガを!」

 

「それにだ。美森だって無傷で戦い抜こうなんて思ってねぇと思うけどな。あいつだって、それなりの覚悟を持って戦いに出たんだ、あんぐらいのケガは承知の上だろうさ」

 

「……」

 

万丈は友奈を励ますように言ったが、友奈の顔は一向に暗いままだった。そんな友奈を見て万丈は困った表情を浮かべながら頭を掻くと友奈に言った

 

「それにな、友奈。守りたいやつが生きてるだけ、まだましだと思うぜ」

 

「…?」

 

万丈の言葉に今度は友奈が首を傾げる

 

「俺には昔、香織っていう彼女がいてな。体が弱くてよく病気になってたりしたけど、俺はあいつの笑顔によく励まされたんだ。だから、こいつは何があっても守ってやる!…と思ったんだけどな。いろいろあって死んじまった」

 

「そんな…」

 

「だからな友奈。俺から言わせてもらえばお前は、よく守ったと思う。でも、勇者辞めちまったら今度こそ守れなくなるぞ」

 

「…っ」

 

「…で、どうすんだ?辞めんのか?」

 

友奈は目を閉じて考える。もし、またあんな状況になった時、自分は守りきることができるのかどうかを

 

いや、違うと友奈はその考えを否定する。できるできないじゃなくやるんだと決意する。

 

そして、思い出す自分の中で思っていた勇者は決して折れない不屈の存在だったと。

 

こんな大事なことを忘れるなんてと思いながら友奈は目を開けて万丈を見て言った

 

「万丈さん」

 

「なんだ?」

 

「私…もう一度やってみます!今度こそ、守りきってみせます!」

 

友奈は力強く万丈に言った。そんな友奈の顔を見て万丈はニヤリと笑う

 

「いい面構えになってきたじゃねぇか。…よし、なら早速特訓だな」

 

「特訓ですか?」

 

「おう。これでも元格闘家だからいろいろ技を教えてやるよ……おっと、その前に」

 

万丈は自分が淹れたコーヒーの入ったカップを手に取ると

 

「冷めねぇうちに飲まねぇとな」

 

そう言ってコーヒーを飲む。すると

 

「ブッ!……まっず!!」

 

「うわわっ!?…いきなりなにするんですか!?」

 

飲んだコーヒーを盛大に吹き出した。さらに、噴き出した先に友奈が居たため、慌てて避ける友奈

 

「あ~…まっず。誰だよこのコーヒー淹れたの」

 

「いや万丈さん自分で淹れてたじゃないですか…」

 

「あっそっかぁ…」

 

万丈の言葉に友奈は呆れた表情で答えるとバカみたいな間抜け面をする万丈

 

「……プッ!あっはははっ!」

 

そんな万丈の顔を見て友奈は吹き出して笑った。

 

「?…なに笑ってんだよ?」

 

急に笑われた万丈は顔をしかめて友奈に聞いた。

 

「ごっごめんなさい。その、万丈のさっきの顔がすごくバカっぽくてつい…」

 

「ああっ!?お前、人の顔見てバカってなんだよ!せめて筋肉付けろよ!」

 

「いや、バカの所はいいんですか?」

 

万丈は友奈の言葉に怒った後、ため息をつくと。吹き出したコーヒーを拭いて、カップ等を片付ける。

 

「友奈」

 

「はい?」

 

「この後の特訓……覚悟しとけよ」

 

「ヒエッ…」

 

 

万丈は片付けながら友奈に悪い笑みを向けそう言った。それを見た友奈はやってしまった…と後悔したが時すでに遅し、クククと笑う万丈を見ながら少し不安になる

 

「あっ!…万丈さん!」

 

「ん?なんだ?」

 

「すっごい今更なんですけど。何でここ喫茶店になってるんですか?」

 

不安になった友奈は話をそらすために喫茶店について万丈に聞いた

 

「ああ……前は何もなかったからな。それじゃ淋しいと思ってなとりあえず俺の思い出の場所にしてみた」

 

「へぇ~……なんてお店何ですか?」

 

「nasitaって名前の喫茶店なんだけどな。……あ、ちなみに店長の淹れるコーヒーは喫茶店なのにスゲー不味い」

 

「不味いんですか!?」

 

「めちゃくちゃ不味いぞ。俺のコーヒーより不味い」

 

万丈の言葉に友奈は驚く友奈。喫茶店なのにコーヒー不味いって致命的なんじゃ…と思いながら、でもそんなに不味い不味い言われるとちょっと飲んでみたくなった

 

「そこまで言われるとなんか気になりますね」

 

「これ飲んでみるか?」

 

友奈がそう言うと万丈は新しいカップを取り出してコーヒーを注いで友奈に渡す

 

「あ、じゃあちょっとだけ……」

 

そして、友奈は万丈から受け取ったまるで星の光さえ吸い込むブラックホールのように真っ黒なコーヒーを飲む

 

「……ウグッ!?」

 

口に入れた瞬間形容しがたい味に味覚を塗り潰され思わず噴き出しそうになるが手で口を押さえてなんとか耐え飲み込む。そして、涙目で万丈を見ると

 

「これで喫茶店は無理でしょ」

 

「だよな」

 

友奈から珍しく辛辣な言葉が出てきたがこれはしょうがない。万丈も大きく頷いて同意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして万丈が片付けを終えるとカウンターから出てくる

 

「よし、じゃあ特訓始めるか」

 

「えっ…ここでやるんですか?」

 

「ばーか、さすがにこんな所じゃしねぇよ」

 

そう言うと万丈は指を鳴らすと周囲の景色が変わるとそこは体育館のような感じの広めな場所だった

 

「あのここは?」

 

「ここはな別の世界で代表戦つう戦いの舞台になった場所だ。……ま、ここもある意味思い出の場所だな」

 

そう言うと万丈は友奈から距離をとると構える。

 

「んじゃ始めっか」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

友奈は元気よく返事をして構える。

 

「よっしゃ来いやぁ!」

 

「いきます!ハァァッ!」

 

友奈を万丈に向かって突撃する。

 

こうして万丈と友奈の特訓が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万丈による友奈の特訓が始まった頃、友奈の寝ている病室に何者かがドアを開けてひょこっと顔を覗かせる。そして、部屋の中を確認すると音を立てぬように忍び足で病室に入り友奈に近づく。

 

そして、友奈の側まで近づくと懐からボトルを取り出しそれをゆっくり振る。そして、友奈のギブスをはめた右手に当てる。すると、ボトルから光が漏れ右手から全身へと光が広がっていく

 

「…よし、こんなもんかな。」

 

謎の人物は光が友奈の全身に広がったのを確認するとボトルを離す

 

「じゃ、近いうちにまた合おうね。結城友奈ちゃん……see you」

 

そう言って謎の人物は病室を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、友奈は病室で目を覚ます。窓から射し込む光に眩しさを感じながらも上体を起こして伸びをすると間接から音がする。これはかなり寝てたかもと思いながら、昨日事を思い出す

 

「万丈さんかなりつよかったな~…私の攻撃全然当たんなかった」

 

友奈はあの特訓中万丈に一発も当てられなかった。そればかりか投げられたり、転ばされたり、間接決められたりとぼろぼろにされていた

 

「でも、おかげで強くなれた…気がする」

 

万丈から一本をとることはできなかったがそれでも、得るものはあったのか友奈の中には確かな自信がついていた

 

「今なら何が来ても負ける気がしない…!」

 

友奈は左手でガッツポーズしながら強く言った

 

「…あと、あのときの万丈さんかっこ良かったなぁ」

 

昨日の特訓中の万丈を思い出しながら友奈はやや頬を赤くしながら呟く。すると、すぐハッとして頭から布団を被りながら思った。

 

私ったら何をいってるんだと、確かにあのときの万丈さんかっこ良かったけどかなり年離れてるっぽいし、というか万丈さん精霊だよと変な事言った自分を戒める。それでも、納得がいかないのかでも~でも~と自問自答を繰り返す友奈。

 

そうやってうーうーいっているとしばらくして見回りでやって来た看護婦に心配され慌てて大丈夫ですと答える友奈であった。あと、看護婦に友奈はどのぐらい眠っていたか聞くと丸一日眠っていたらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間が経ち。夕方になり、友奈の病室に風達がやって来ていた。風はベッドの側に置いてある椅子に座って友奈に心配そうに声をかける

 

「友奈ケガの方はどんな感じなの?」

 

「それがですね風先輩…なんか全部治っちゃいました」

 

「え?私病院の先生から骨折やら内出血やらしてるって聞いたんだけど」

 

「そうなんですか?」

 

「いや何であんたが知らないのよ」

 

何故か友奈のケガは一日で完治していた。友奈本人としてはもう退院してもいいんじゃないかと思ったが病院側もあれだけのケガが一日で完治するのはおかしいとしばらく様子をみるためにしぶしぶここにいる

 

風はそんな友奈の様子に呆れたようにため息をつくと真剣な表情であのときの事を聞く

 

友奈はあのときの状況とブラッドスタークと名乗った少女の事を風達に話した

 

「ブラッドスタークねぇ……わかったわ、一応大赦の方にも確認してみるわ」

 

そう言うと風は椅子から立ち上がってカバンを持つと友奈に言った

 

「じゃあ私たちはもう帰るわね。それと、ケガが治ったからってはしゃいじゃダメよ…いいわね!」

 

「はーい!」

 

そんな風の言葉にまるでお母さんみたいだと思いながら笑顔で返事をする友奈。

 

「それじゃまた、学校で」

 

「友奈さんお大事に~」

 

「うん!」

 

出ていく二人に手を振って見送るとベッドに横になると心配そうな表情で呟く

 

「東郷さん大丈夫かな…」

 

病院の先生から聞いた話によると美森も今の友奈と同じようにケガが完治していたらしい。しかし、何故か未だに意識が戻っていなかった。診断では頭を強く打ったことが原因と思われているがはっきりとしていない

 

「早く話せるようになりたいな…」

 

一刻も早くあのときの事を謝りたいと思う友奈。どうか東郷さんが早くよくなりますように…そう祈りながら友奈は眠った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、病院から退院しても大丈夫といわれ退院した友奈は自分の部屋のベッドで寛いでいた。明日学校に行ったら質問攻めに合うだろうなぁ~と考えていると端末に一通のメールが入る

 

誰からだろう?と友奈がメールを見てると知らないアドレスからのメールで本文にはこう書かれていた

 

犬吠埼風、犬吠埼樹に危機が迫っています。注意してください。

 

そのメールを読んだ瞬間、友奈は嫌な予感がした。そして、すぐに風に電話をかける。早く早く…!と焦りながら風が出るのを待つ友奈。そして、数回のコールの後風が電話に出る

 

『もしもし、友奈?いったいどうし』

 

「すいません風先輩!今、どこにいますか!?」

 

風の言葉を遮るように友奈は声をかける。

 

『え?今?また、依頼で猫探しがあったから探してる最中だけど……どうかしたの?』

 

いつもと違う友奈の言葉に戸惑いながら答える風。そして、風の言った猫探しという言葉を聞いてさらに危機感が増す友奈

 

「風先輩…樹ちゃんも一緒ですか!?」

 

『そりゃもちろんいるけど』

 

「今すぐ樹ちゃんを連れて逃げてください!」

 

『いや、ちょっとあんたいきなり何をいっ』

 

その時だった

 

 

ザァァァァァァァァァァッ

 

突如、風の言葉を遮るようにテレビの砂嵐のような音が流れた。

 

「風先輩!?…風先輩!?」

 

友奈は何度も声をかけるが全く返事が返ってこない。その時、友奈の脳裏にスタークの言葉が思い浮かぶ

 

『強いてあげるならお前達の成長を促すって所かなぁ』

 

「っ!……まさか、スタークが」

 

その考えに至った瞬間、友奈の行動は早かった。ドライバーを持って家にいた母親にちょっと出てくると言い。戸惑う母親の言葉を無視して家を飛び出して走り出すが、しばらく走って気付く

 

「しまった!私、場所知らない!」

 

場所を聞く前に電話が使えなくなってしまったため、友奈は風達がどこにいるのかわからなかった。どうしよう…と途方にくれていると友奈の横に一台の車が止まる。不審に思い車の方を見ると助手席の窓が開き運転手が友奈に声をかける

 

「結城友奈様ですね?」

 

「は、はい」

 

声をかけたのは男性だった。そして、見知らぬ男性がなぜか自分の名前を知っていることに戸惑う友奈。すると、そんな友奈の姿を見てハッとした表情になると友奈に言った

 

「申し訳ありません。突然のことで驚かせてしまって、私は大赦に所属する者で名を三好春信と言います。」

 

「ああ…大赦の人だったんですか……それで何か御用ですか?」

 

なんだ……大赦の人だったのかと安心する友奈。そして、男性は事情を話す

 

「ええ…実はですね、現在犬吠埼風様と樹様に危機が迫っていると神託がありまして向かっている所何ですが結城様お乗りなりますか?」

 

「場所が分かるんですか!?」

 

「はい」

 

「是非お願いします!」

 

「では、乗ってください」

 

友奈は渡りに船だと思いながら、車に乗ると男性は車を出す。

 

「では、結城様とばします。しっかり、捕まってください」

 

「はい!」

 

そして、車はスピードを上げ風達の元へ急行する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻して、廃車置場で猫探しをしていた風達の方はというと

 

「友奈?友奈!?……ダメだこりゃ」

 

そう言うと風は電話を切る。そこへ、樹が風に近づく

 

「お姉ちゃん?どうかしたの?」

 

「いや~さっき友奈がね、いきなり電話かけてきてどこにいるか聞いてきたと思ったら今度は、逃げろっていってきてね」

 

「友奈さんが?」

 

なぜそんなことを?と疑問に思い首を傾げる樹

 

「あの子がいたずらでこんなことしないでしょうし、ここはおとなしく従っておきましょ」

 

猫探しは明日にするかと思いながら帰ろうとした時だった

 

『おいおい…まだ日が高いってのにもう帰るのかぁ?』

 

「「っ!」」

 

突然背後から声をかけられ二人は振り向くとそこにいたのは赤い装束に同じ色の仮面を付けた少女…ブラッドスタークがそこに立っていた

 

『せっかくだから遊ぼうぜぇ』

 

「あら、ごめんなさいね。私は晩御飯作らないといけないし、樹もこんな所に一人置いていくわけにもいかないから私たちは帰るわ。悪いけど遊び相手なら他あたってくれない?」

 

『おいおい……そりゃねぇぜ。こっちは楽しみにしてたってのに……しょうがねぇな、美森か友奈たたき起こして遊ぶとするかぁ』

 

「っ!……へぇ、その口ぶりからするとやっぱりあんたが友奈の言ってたブラッドスタークで間違いないのね」

 

『ほう……あいつもう目が覚めたのか。これは楽しみだ』

 

「友奈の所へは行かせないわよ」

 

風はドライバーを取り出し巻き付けながら前にでてそう言った

 

『おっなんだ遊んでくれるのかぁ?』

 

「よくもまぁ、うちの部員にケガさせといてそんな態度とれるわね…」

 

風はボトルをドライバーにセットしレバーを回す

 

『オキザリス!』

 

『勇者システム!』

 

『Are you ready?』

 

「変身!」

 

変身が完了すると大剣を召喚して構える

 

「とりあえずそのダサい仮面引き剥がして二人の前で土下座させてやるわ」

 

『ハッハッハッ!!こいつぁ威勢のいいこってこれは楽しめそうだぁ…』

 

すると、スタークは樹の方を見ると瞬間、樹はまるで蛇に睨まれたカエルのように固まってしまう。その様子を見てスタークはため息をはく

 

『それに比べて、こっちはとんだ臆病者だな。姉がこうして戦おうとしているのにそこで、突っ立てるだけかぁ?よくそんなんで勇者になれたなぁ!』

 

樹はスタークの言葉を聞いて悔しそうに制服を握りしめ下を向いて涙を流す。その時、

 

「なに、私の前で妹いじめてんだコラァ!!」

 

『おおっと!』

 

風はスタークに向かって突進してその勢いのまま大剣を振り下ろす。そして、スタークがその大剣を避けるとさらに横に薙ぐように大剣を振る。しかし、これも避けられる。

 

「確かに樹はちょっと臆病な性格な子よ。けどね、どんなに怖くても逃げようとはしない強い子よ!……あんたは知らないでしょうけどね、最初の戦いの時何の事情も知らされずいきなり戦えと言われたときあの子は一番最初に名乗りをあげたわ。私なら絶対にできない……だから、樹は強い子よ。私のなかでは一番の勇者よ!!」

 

「お姉ちゃん…」

 

「オリャァァァッ!!」

 

風は再びスタークに大剣を振り下ろす。すると、スタークは今度は避けずにスチームブレードで受け止める。

 

『泣かせるねぇ……なんて素晴らしい姉妹愛だぁ。いいもん見せてもらった礼だぁ…………一撃で終わらせてやる!!』

 

そう言うとスタークはさらに、力を込め大剣を弾く

 

「なっ!?」

 

そして、弾かれて体勢を崩しがら空きになった風の腹を蹴り飛ばす

 

「ガハッ!」

 

風は地面を転がり、腹を押さえながら立ち上がろうとすると

 

『ライフルモード!』

 

『スチームショット!コブラ…!』

 

『あばよ』

 

スタークがライフルモードにしたトランスチームガンを構え風にエネルギー弾を放とうとしていた

 

「しまっ…!」

 

そして、今まさに放たれようとした瞬間、横から伸びてきたワイヤーがトランスチームガンに巻き付きスタークの手から引き剥がした。

 

『なに!?』

 

「やらせない…!」

 

ワイヤーを飛ばしたのはいつの間にか変身していた樹だった。樹は奪ったトランスチームガンをスタークから離れた位置に投げ捨てると風に近づくと

 

「ありがとう、お姉ちゃんおかげで勇気がわいてきたよ」

 

「樹…」

 

「それとねお姉ちゃん……私の中の一番の勇者はお姉ちゃんだよ」

 

そう言いながら樹は風に手を差し出す。風が差し出された手を取ると樹はその手を引っ張って風を立ち上がらせる。そして、樹の言葉を聞いた風は笑って大剣を構える

 

「妹にそこまで言われちゃあしょうがないわね…やってやろうじゃないの」

 

『ほう……随分と調子いいじゃないかだが、俺に勝てるのかぁ?』

 

スタークが挑発するように言うと樹は笑って返した

 

「さっき、簡単な占いをしたんだけどね今回の戦いはあなたの負けだよ」

 

『ハッ!占いだぁ?そんなもん当たるかよ』

 

「フフッ……あなたは知らないと思うけど私の占いはよく当たるんだよね~」

 

『…ほーう。そこまで言うならみせてもらおうか。俺にどうやって勝つか』

 

「といっても倒すのは私たちじゃないよ」

 

「え?」

 

『あ?』

 

樹の言葉に風とスタークは一瞬呆然とするが、その時一台の車が廃車置場に止まる。そして、助手席のドアが開き降りてきたのは

 

「友奈!」

 

「風先輩、すいません遅れました。後は任せてください…」

 

友奈はスタークの方へ歩きながらドライバーを巻き、クローズドラゴンにボトルをセットする

 

『ウェイクアップ!』

 

そして、立ち止まってクローズドラゴンをドライバーにセットしレバーを回す

 

『クローズドラゴン!』

 

『Are you ready?』

 

そして、ファイティングポーズをしながら力強く叫ぶ

 

「変身!!」

 

『ウェイクアップバーニング!』

 

『ゲットクローズドラゴン!』

 

『イェア!』

 

友奈は変身を完了すると()()()()()()でスタークを見る。その様子を見てスタークは感心したように頷く

 

『ほう……あそこから立ち直ったか…だが、勝てるのかぁ?手も足も出なかったお前が』

 

「勝てるよ……だって、負ける気がしないもん」

 

そう言うと友奈は構える。

 

「今度こそ守ってみせる…友達を!仲間を!絶対に!!」

 

『クッハッハッ!…やってみせろ友奈ァ!』

 

スタークも構える

 

「ハァァッ!」

 

『オォォォッ!』

 

二人は同時に走りだし

 

「オリャァ!」

 

『ゼヤァ!』

 

互いの拳をぶつけ合う。

 

「ハァァッ!!」

 

友奈は拮抗した状態から拳と脚の連打を繰り出す。そして、友奈が攻撃を繰り出す度に青い炎が友奈の手足から出てくる。

 

『いいぞ!いいぞ!前とは段違いだぁ!』

 

スタークも友奈の連打を受け流してゆくが徐々に受け流せなくなっていく。そして

 

「オリャァァァ!」

 

『グワッ!』

 

スタークの胸部に友奈の渾身の右ストレートが直撃する。そのあまりの威力にスタークは吹き飛ばされ地面を転がる。

 

『ハザードレベル3.5…!3日前は2.8だったてのに…!この短期間で『覚醒』するか……やっぱり最高だお前わぁ!!』

 

「そりゃどうも…」

 

自身が押されているのに何故か歓喜しながら絶賛するスタークに友奈は嬉しくなさそうな表情でこたえる

 

「今の私は…」

 

友奈はレバーに手をかけ

 

「負ける気が…!」

 

回す

 

「しない!!」

 

さらに、回す。ボトルが光を放つが友奈はそれでも回す。そして、友奈の全身を青いオーラが包んだところで回すのを止める

 

『Ready Go!』

 

「ハァァァァ…」

 

友奈の全身を包んでいたオーラが解放され、青い龍が飛び出す。

 

「ハッ!」

 

友奈が飛び上がり龍も友奈に追従するように飛ぶ。

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

「オリャァァァァァァァァァ!!!!」

 

スタークに向け飛び蹴りの姿勢で突っ込む。そして、龍も友奈と同じように突っ込む

 

『ハァァッ!!』

 

スタークも友奈に対し拳を突き出して迎撃するが

 

『グッ!ガアァァァァァ!!』

 

抵抗むなしくスタークは周りの廃車を巻き込んで吹き飛ばされる

 

「やった!」

 

「友奈さん、さすがです!」

 

その光景を見て風と樹は勝ったと思った。しかし、友奈はまっすぐスタークが方を見ている

 

『クッハッハッ……やるじゃねぇか。友奈ァ』

 

「やっぱりそう簡単には倒されてくれないよね」

 

ややふらつきながら出てきたスタークを見て友奈は知ってたと言わんばかりにめんどくさそうな表情で構え、戦闘を続行しようとする。しかし、スタークはそれを手で制す

 

『今日はここまでだ。……よくあそこから立ち直ってくれたな友奈、次も期待してるぜぇ。チャオ♪』

 

スタークはいつの間にか回収していたトランスチームガンから蒸気を出して消えていった

 

「二度と来ないで」

 

友奈は心底嫌そうな表情でため息をはくと変身を解除する

 

「友奈!」

 

「友奈さん!」

 

そこへ変身を解除した風達が駆け寄る

 

「あ、風先輩、樹ちゃん。ケガとかしてない?」

 

「ちょっとまだ蹴られたお腹が痛い気がするけど、大丈夫よ。でも何で、私達の場所がわかったの?」

 

「ああ、それはですね」

 

「私が案内させていただきました。犬吠埼風様」

 

そこへ春信が近づく

 

「あなたは?」

 

「私は三好春信。大赦に所属する者です。」

 

「大赦の……ということは、神託で?」

 

「ええ、ですがかなり急な神託だったので未然に防ぐことができませんでした。申し訳ありません。」

 

春信は風と樹に対し深く頭を下げる。

 

「い、いえいえ頭を上げてください!……むしろありがとうございます。貴方が友奈を連れてきてくれたおかげで私も妹もケガしないですみましたから」

 

風の言葉を聞き春信は頭を上げるとほっとした表情になる

 

「そう言っていただけるとこちらもありがたいです。よろしければご自宅までお送りします」

 

「えっと、じゃあお願いします」

 

風は春信の提案を受け入れ、友奈と樹も賛同したので三人は春信の車に乗り込み帰路についたのだった

 

 

 




次回 てぇんさいのバラ

???「主役登場なんよ~」

友奈「え?」


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てぇんさいのバラ

園子のテンションってこんな感じですかね?


「え~と、ここを曲がってまっすぐいって……」

 

友奈は地図を見ながらある場所に向かっていた。

 

「香川先端科学研究所、かぁ……聞いたことないなぁ……」

 

『香川先端科学研究所』

 

それが今、友奈が行こうとしている目的地の名前だ。なぜ、友奈がそこへ行こうとしているのかというと先日、スタークを撃退した後、春信に家まで送ってもらった際に春信からここに来てほしいと言われたからだ。そして、その時もらった地図を頼りにこうして向かっている。

 

(あ!……ここかな?)

 

地図通りに進んでいくと友奈は大きな建物にたどり着いた。しかし、建物の壁に表示されている文字を見て友奈は首をかしげる。

 

(あれ、ここ市役所だ……)

 

建物には市役所と書かれていた。疑問に思いもう一度地図を見るが目的地はやはりここで間違いないようだった。

 

(春信さんが間違えちゃったのかな?……とりあえず中に入って職員の人に聞いてみよ)

 

目的地に着いた友奈は地図を鞄にしまうと建物に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈は建物の中に入るとさっそく職員に聞こうと受付の方に歩いていく。すると、一人の男が友奈に声をかける。

 

「失礼、君が結城友奈君かい?」

 

「?……はい、そうですけど……誰ですか?」

 

友奈が振り向くとそこには眼鏡をかけたスーツ姿の男が立っていた。男は懐から名刺入れを取り出しそこから一枚名刺を抜き出すと友奈に渡す。

 

「俺の名前は内海成彰。香川先端科学研究所の職員だ。」

 

「そうなんですか……あっ!えっと、結城友奈です!」

 

「知っている。三好のやつから君の案内を頼まれているからな」

 

「春信さんとお知り合い何ですか?」

 

「ああ、あいつは元部下だったからな……さて、時間も惜しいことだ、さっそく行くとしよう……付いてきてくれ」

 

「あ、はい!」

 

本当に時間が惜しいのか内海はすぐに友奈に背をぬいぐるみ向け足早に建物の奥へ歩いていく。そんな内海に友奈は置いていかれないよう付いていく。

 

しばらく歩くと内海はエレベーターの前で止まり、下降ボタンを押す。そして、扉が開くと中に入り、友奈も続いて中に入った。

 

内海は扉を閉めると懐からカードキーのようなものを取り出すと階層ボタンの下のスペースにかざす。すると、短い電子音がが鳴った後エレベーターは下降する。

 

数秒程降りた後エレベーターは止まり扉が開くと内海と友奈はエレベーターから出て廊下を歩く。

 

そしてある部屋の前で止まると内海は扉をノックする。すると、中から「どうぞ」という声がした。

 

内海はその声を聞くと扉を開け中に入り中にいた男にこう言った。

 

「葛城君、連れてきたぞ。例のシステム適合者」

 

「お忙しい中すみません、内海さん」

 

「ああ、では俺は仕事に戻るぞ。……それと、テストの結果は今日中にまとめて送ってきてくれ」

 

「今日中ですか……、相変わらずブラックですねぇ……」

 

「三人目の適合者について、俺も元科学者として気になって仕方がないんだ。……では頼んだぞ」

 

それだけ言うと内海は部屋から出ていった。そして、葛城は内海が部屋から出ていくのを見送ると友奈の方を向いた。

 

「さてと、まずはここまでご足労ありがとう。僕はここ香川先端科学研究所で科学者している葛城巧という、よろしく」

 

「は、はい!えっと、ご存知かと思いますが結城友奈です!今日はよろしくお願いします!……っと言いたいんですけど、何をやるんですか?」

 

「ハァー……春信のやつ何も説明してなかったのか……分かった。では、説明しよう、どこか空いてる椅子に座ってくれ」

 

友奈は近くにあった椅子に座る。葛城は友奈が着席したのを確認すると説明を始めた。

 

「今回、こちらに来てもらった理由だが、パンドラシステム適合者第三号である君のデータとクローズのスペックを測るためだ。そのためにいくつかのテストを受けてもらう。」

 

「は、はい!」

 

「……そんなに緊張しなくても良いよ。テストと言っても簡単なものだ」

 

「あ、そうなんですか……」

 

いきなりテストをすると言われ緊張した友奈だったが葛城の言葉に内心ホッとする。

 

「さて、ではさっそくだがテストを始めようか」

 

そう言って葛城は机の引き出しから数枚のプリントを取り出した。

 

「まずは簡単なペーパーテストから始めようか。」

 

「はい!」

 

と、元気よく返事をした友奈だったが……

 

 

 

 

 

 

テスト終了後

 

 

 

 

 

 

 

「あ、頭が痛い……」

 

机に突っ伏し、頭から煙を出しながら燃え尽きたと言わんばかりに白くなった友奈。

 

「……大丈夫かい?」

 

葛城もそんな友奈の様子に苦笑いをしながら声をかける。

 

「だ、だいじょーぶでーす……次のテストもこんな難しいものですか?」

 

突っ伏したまま手を小さく振りながら友奈は言った。そして、もうこれ以上頭を使いたくないのか不安げに葛城に聞いた。

 

「いや、次は実戦テストだ。」

 

「──!ということは、運動ですか!?」

 

ガバッと息を吹き返したように立ち上がる友奈。その表情は喜びで溢れていた。そのあまりの変わりように葛城は目を丸くする。

 

「……そんなに嬉しかったかい?」

 

「はい!とっても!」

 

さも当然だと言うように友奈は言った。そんな友奈を見て葛城は思った。

 

(女の子としてそれでいいのかい?)

 

と、しかし、思っただけで指摘するような事はせず本人が気にしていないのならそれでいいかと自分の中で完結させ頭の隅に追いやった。

 

そして、葛城は友奈に実戦テストの内容を説明する。

 

「このテストでは、勇者時のスペックとクローズのスペックを測る。まず、君にはテスト用のガーディアンと戦ってもらう」

 

「ガーディアン?」

 

「ガーディアンっていうのは、そうだな……簡単に言うとロボットだよ」

 

「ロボットですか!?」

 

実はこういう男の子が好きそうなものも好きな友奈、さらにテンションが上がる。

 

「早くいきましょう!葛城さん!」

 

「ははは……分かったよ。じゃあ行こうか」

 

「はい!」

 

その様子に葛城は苦笑いしながら友奈を案内する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

香川先端科学研究所・実験場

 

 

 

「今度はここでテストを行うよ。」

 

「うわ~……広~い……」

 

実験場はかなり広い空間で横は一般的な体育館の2倍程で高さは50メートル以上はありそうだ。

 

実験場を見回す友奈をよそに葛城は手元の端末を操作する。すると、友奈達の正面にある金属製の大きなスライド式の扉が開き、5体のロボットが実験場に入ってくる。そして、ロボット達は実験場の中心辺りまで進むときれいに整列する。

 

「お~っ!かっこいい!」

 

「あれがガーディアンだ。君にはこれらと戦ってもらう。……では、さっそく変身してくれ」

 

「はい!」

 

元気よく返事をすると友奈はドライバーを装着してクローズドラゴンにボトルを入れようとする。すると、

 

「あっ、ちょっと待ってほしい」

 

「?、何ですか?」

 

変身を中断して葛城の方を見る友奈。そして、葛城は友奈に止めた理由を語る。

 

「まずは勇者システムでの戦闘データを取りたいから、クローズへの変身はあとにしてほしい」

 

葛城から理由を聞いた友奈は少し困ったような表情を葛城に向けた。

 

「あ~……そのじつは、最初の戦いの時に勇者システムのボトル無くしちゃって……」

 

「……何だって?」

 

友奈がボトルを紛失した事を葛城に言うと葛城は小さくため息をついて友奈に言った。

 

「じゃあ、仕方ない……クローズの戦闘データを──」

 

「──ちょっと待ったァァ!!」

 

「……うるさいのが来たな」

 

「え!?なに、なに?」

 

突如、葛城の言葉を遮るかのように実験場に響く少女の声に葛城はめんどくさそうにし、友奈は困惑した。やがて、友奈達が通った扉とは別の扉が開きそこから、金髪の少女がこちらに向かって猛ダッシュでやって来た。

 

「ぜぇーっ、ぜぇーっ、──初めまして!そして、ようこそ~!結城友奈さん!私の名前は乃木園子っていいまーす!ここでは~、てぇんさい物理学者として働いてま~す!これから、よろしくね~!」

 

「……え?え?」

 

いきなりやって来て友奈の手を取って早口で自己紹介は始める乃木園子と名乗った少女。そんな少女の登場に戸惑う友奈。そして、葛城はため息を吐いて友奈に言った。

 

「結城君、こいつのことは無視していいぞ。このテストには関係ないからな」

 

「関係なくなくなーい!!このテストに必要なものを私は持ってまーす!!」

 

手を上げて、声を張り上げ、自身の必要性を主張する園子。

 

一方、葛城は騒ぐ園子の声に顔を歪める。

 

「あーもう、わかったわかった!ここにいていいから、静かにしてくれ!」

 

「わーい、やった~!」

 

渋々了承した葛城の言葉を聞いて、ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ園子。

 

そんな園子を見て葛城はため息も吐いた。

 

「はぁー……それで?お前が持ってるっていう必要なものってなんだ?」

 

「フフーン!よくぞ聞いてくれました!園子さんが持ってきた必要なものとは──ドゥルルルルルルル」

 

「ドラムロールなんかしなくていいからさっさと出せ!」

 

「もー、そう怒らないでよ先生~。はい、じゃじーん!!このボトルが目に入らぬか~!」

 

園子はそう言って○戸黄門のように2本のボトルを二人の前につき出した。

 

「あ~っ!!そ、それ私がなくしたボトル!」

 

すると、それを見た途端、友奈が声をあげた。

 

「何だって?……おい、園子。なんでお前が結城君がなくしたボトルを持っているんだ?」

 

葛城がそう問い質すと園子はどや顔をした。

 

「それは……結城ちゃんがこのボトルを落とした時に私も樹海にいたからなんよ~」

 

「えっ!そうなの!?」

 

その言葉に友奈は目を丸くした。

 

「そうだよ、結城ちゃんが吹っ飛ばされたときにボトルが私の近くに落ちてきたから拾っておいたんよ~」

 

「そうだったんだ……。ありがとうね!乃木

ちゃん!」

 

友奈は園子の手をとってお礼を言う。

 

すると、園子は笑みを浮かべた。

 

「園子でいいんよ~。あっ、でも、結城ちゃんの好きな呼び方でいいんよ~」

 

「ほんと!?じゃあ、園ちゃんって呼ぶね。あっあと、私の事も好きに呼んでいいよ!」

 

「おぉ~!じゃあ、私は結城ちゃんのことゆーゆって呼ぶことにするんよ~」

 

「じゃあ、改めてよろしくね!園ちゃん!」

 

「こちらこそよろしくなんよ~。ゆーゆ!」

 

キャッキャッと楽しげに会話する二人。その二人に完全に置いていかれた葛城は咳払いをして二人に話しかける。

 

「ンンッ!……仲良くなっているところ悪いがそろそろテストを始めたいんだか?」

 

「あっ……すいません葛城さん」

 

友奈が葛城に頭を下げる。一方、葛城は申し訳なさそうに友奈に言った。

 

「いや、結城君は謝らなくていいよ。悪いのはこいつだから」

 

葛城は園子を指さしながら言った。すると、指を指された園子はムッと不機嫌な顔をした。

 

「先生、人を指さすのは良くな「おら、さっさと行くぞ」あーっ!!待って!行くから!引きずらないで~っ!」

 

文句を言う園子の襟首を葛城が掴んで引きずっていく。

 

そして、ドナドナされていく園子を友奈は小さく手を振りながら見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

「はい!」

 

スピーカーから発せられた葛城の声に友奈はこたえると変身シークエンスに入る。

 

ドライバーを装着し園子から受け取ったボトルをセットする。そして、レバーを回して

 

《Are you ready?》

 

「変身!」

 

力強い掛け声と共に展開された管が閉じ勇者へと変身する友奈。

 

「では、これからテストに入るがその前に注意がある」

 

「はい!」

 

「まず、絶対に手加減しないでくれ。手加減されると正確な数値が測れないからね」

 

「……壊しちゃっても大丈夫ですか?」

 

「問題ない。それは大赦が無駄に大量生産してるから、いくらでもある」

 

「そうなんですか……」

 

「では、存分に戦ってくれ」

 

友奈は腰をおとして構える。同時に5体のガーディアンが一斉に動き始める。

 

「ハッ!」

 

友奈はまず中央のガーディアンに向け走りだし胴体に拳を打つ。

 

重い打撃音と共にガーディアンはよろけ、追撃をしようとする友奈を左右の4体が挟撃する。

 

「……せいっ!」

 

友奈はその場でしゃがみこんで攻撃をかわし、すかさず足払いを仕掛ける。

 

たまらず転倒する4体。その内の一体に友奈は拳を打ち下ろす。

 

「っ!──やっ!」

 

そこへ、最初に攻撃したガーディアンが攻撃しようとするがそれに気づいた友奈は肘鉄を近づいてきたガーディアンに叩き込む。

 

「せい──のォ!」

 

肘鉄を叩き込んだガーディアンの腕を掴むと立ち上がろうとした4体のガーディアンにぶつける。

 

「ハァーッ!」

 

友奈はさらに追撃を仕掛けるべく走り出し、ガーディアンは友奈を迎え撃つ。

 

「せいっ!やっ!おりゃーっ!」

 

友奈はガーディアンの攻撃を受け流し、拳または蹴りを叩き込む。

 

そんな攻防を繰り返しているとガーディアン達は友奈を囲うような配置になり、同時に友奈に向け突進する。

 

「すぅー……」

 

友奈は小さく息を吸いながらレバーに手をかけ、回す。

 

《Ready Go!》

 

《ボルテックアタック!》

 

「──ハァッ!!」

 

突進してきたガーディアン達にピンク色の光を纏った回し蹴りを放った。

 

友奈の蹴りを喰らったガーディアンは倒れ、スパークした後、爆発した。

 

「ふぅ~…………えっと、もう終わりですか?」

 

物足りないっと言いたげな表情を浮かべ二階からこちらを見ている葛城に顔を向ける友奈。

 

その様子を見て葛城は少し考えた後、マイクに顔を近づけた。

 

「そうだな。よし、じゃあ次はAIレベルを上げたものでやってみよ「エントリィィィ!!」──は?」

 

突如、窓を開けて、二階から飛び降りる園子。

 

そして、無駄にきれいな着地を決めると葛城の方を向いた。

 

「先生~!次のテストは私が相手になりまーす!」

 

任せろ。と言わんばかりの表情で園子は言う。

 

それを聞いた葛城はマイクを掴んで怒鳴った。

 

「園子!テストの邪魔はするなって言っただろう!!」

 

「邪魔してないもーん。貢献してるんだもーん」

 

「現在進行形でしてるんだけどな、君!?」

 

頼むからじっとしててくれそんな葛城の心の声が聞こえてきそうだか、そんな葛城の慟哭は園子には聞こえなかった。

 

やがて、なにを言っても無駄と判断したのか葛城はため息を吐いた。

 

「……わかった。次のテストはお前が相手をしろ園子」

 

「わーい、やった~。先生のご指名だ~」

 

(お前がそうさせたんだろうがっ!!)

 

葛城はまた怒鳴りそうになったが無駄に疲れるだけと思い口には出さない。

 

「……それで?テストの内容はどうする?お前が再起不能になるまでやるか?それとも、戦闘不能になるまでやるか?どっちだ?」

 

それでも、怒りを抑え込めていないのかやや低い声で園子に訪ねる葛城。

 

「ね~聞きました結城さん所の奥さん?葛城さんったらほんと物騒よね~」

 

「う、うん。……そうだね」

 

園子は葛城を茶化すようにふざけて友奈に絡む。

 

一方、友奈は二階から放たれる怒りのオーラを感じながらそれ以上はまずいんじゃ……と思った。

 

(……コイツの趣味で書いてる小説のデータ全部消してやろう)

 

葛城は園子に対する制裁を考えていた。

 

「はーい先生~!てぇんさいの園子から一つ提案がありまーす!」

 

園子は手を上げ、葛城を見ながら言った。

 

「……なんだい?」

 

「ヒエ……」

 

葛城の怒りを孕んだ声に友奈は顔を青くするがその怒りを向けられている園子自身はニコニコと笑顔を浮かべている。

 

「精霊バリアが3回発動した方が負けの試合形式なんてどうでしょうか~?」

 

「……いいだろう。それでいこうか」

 

葛城は園子の提案を了承した。

 

「フンフンフ~ン♪」

 

葛城の許可を得た園子はスキップしながら友奈から離れる。

 

そして、ある程度離れたところでビルドドライバーを装着、つづけて紫色のボトルと勇者システムボトルを振った後セットする。

 

《バラ!》

 

《勇者システム!》

 

レバーを回して成型管を展開する。そして、ファイティングポーズを決めて

 

「変身!」

 

と一言、同時に展開された管が閉じ園子は装束を身に纏う。

 

そして、どこからか槍を取り出してまるで演舞をするかのように振り回し、最後にポーズを決めた。

 

「勇者。乃木園子、参上!」

 

「お~!園ちゃんカッコいい~!」

 

カッコよく変身した園子に友奈はパチパチッと拍手をしながら称賛した。

 

「ありがとなんよ~。……さてと、それじゃ先生、合図よろしく~」

 

園子は槍を構える。

 

「手加減はしないよ!園ちゃん!」

 

同時に友奈も構える。

 

「はぁ……なんでこうなったんだろうな。……テスト開始」

 

葛城は渋々開始の宣言をした。

 

「ハッ!」

 

開始と同時に友奈は飛び込むように園子との間合いをつめる。

 

「えいや~」

 

なんとも気の抜けた声を出しながら、突撃してくる友奈を鋭い槍さばきで迎撃する。

 

「──ッ!」

 

その槍さばきにより槍の間合いギリギリから踏み込めない友奈。

 

「や~!」

 

「うわわ!」

 

頭部を集中的に狙った連続突きが友奈は襲う。その早さの前に友奈は避けるのに精一杯で反撃ができない。

 

「隙あり~!」

 

「──しまっ」

 

園子はいきなり狙いを変え胸部へ突き込んだ。頭部への攻撃に集中していた友奈はその攻撃に対応できず受けてしまい、精霊バリアが発動する。

 

「まずは一回目~」

 

「先制点、取られちゃった……強いなぁ、園ちゃん」

 

「いや~それほどでも~」

 

友奈に誉められ照れながら頭をかく園子。

 

「でも、次は私が取るよ!」

 

「いやいや~、つづけて園子さんが取っちゃうんよ~」

 

距離をとり再び構える両者。

 

「次はこっちからいくんよ~!」

 

今度は園子が槍をまっすぐ構え突撃してくる。

 

友奈は突撃してくる園子を見ながら万丈の教えを思い出す。

 

 

 

 

 

 

『いいか?友奈。長い武器を持ってる敵と戦う時はな懐に入り込むんだ。そうすれば、相手からの攻撃を受けることもないし、防御されることもない』

 

『でも、どうやって……?』

 

『簡単だ。サッと避けて、バッと踏み込んで、ドンッと打ち込む。……わかったか?』

 

『はい!』

 

『よし、いい返事だ!』

 

 

 

 

 

 

 

(槍の動きもさっきので慣れた。今ならサッ、バッ、ドンッの動き……できるかも!)

 

「はぁー……っ」

 

園子の槍が迫るなか友奈を静かに息を吐いた。

 

「や~!」

 

そして、園子が槍を突き出した瞬間。

 

「──え?」

 

園子の視界から友奈が消える。

 

「──サッと避けて」

 

「──!」

 

下から聞こえた声を追って下を見ると姿勢を低くした友奈の姿が見えた。

 

「──バッと踏み込んで」

 

(あっ、まず)

 

そこから一歩踏み込み園子の懐に入る友奈。そして

 

「ドンッと打ち込む!」

 

園子の胸部に全力で打ち込んだ。

 

「──かは……っ!」

 

打ち込まれた園子の体は精霊バリアに守られたのにもかかわらず後方へ飛ばされ転がる。

 

「ふぅ……取り返したよ、園ちゃん」

 

友奈は残心しながら言った。

 

「……やるね~ゆーゆ。今のはビックリしたんよ~」

 

立ち上がりながら友奈を見る園子。

 

(ははは……まさか、こんなに早く見切られるとは……)

 

さっきの一撃で槍を落としたため、手元に槍を出す。

 

「なら、もっと早く突けばいいんよ~」

 

そう言うと園子はレバーを回す。

 

《Ready Go!》

 

《ボルテックアタック!》

 

「やぁーっ!!」

 

「──!」

 

紫色の光を纏って友奈に突撃する。その速度は先程槍とは比べ物にならない程に早く、友奈は腕をクロスして防御するがあまりの威力に精霊バリアが発動、しかし、衝撃で空中に飛ばされる。

 

「──ふっ!」

 

突如、友奈は空中で体勢を変えて自分の後ろに精霊バリアを展開するとそれに足をつける。

 

同時にレバーを回す。

 

《Ready Go!》

 

そして、精霊バリアを全力で蹴って一気に園子へ飛び込み

 

《ボルテックアタック!》

 

「ハァーッ!」

 

「ちょ!そんなのありゴハァッ!!」

 

予想外の反撃に園子は反応できずピンク色の光を纏った拳が園子に打ち込まれた。

 

それにより精霊バリアが発動。再び、カウントが同じになる。

 

「ちょっと待った!先生、さっき、ゆーゆが精霊バリア使ったからゆーゆのカウントは三回だと思います!」

 

園子は葛城を見ながら抗議する。すると、葛城はお前は何を言っているんだ?といった表情で園子に言った。

 

「今のは結城君が自分で張ったバリアだ。カウントされるのは自動で発動したバリアだから今のはノーカウントだ」

 

「えーっ!そんな~……」

 

葛城の言葉にがっくりする園子。

 

「あはは……なんかごめんね?騙し討ちみたいになっちゃって」

 

友奈は申し訳なさそうに手を合わせて園子に謝る。

 

「いやいや、別にゆーゆは悪いことしてないんよ~。むしろ、おもしろい精霊バリアの使い方が見れたから感謝したいくらいなんよ~」

 

「そう?なら、よかった」

 

園子の言葉にホッと息を吐く友奈。

 

「さてと、これでお互い残り1カウントになったけど~最後はド派手にいこうか。ゆーゆ、クローズになって~」

 

「待ってました!」

 

園子の言葉を聞いて満面の笑みを浮かべる友奈。

 

飛んできたクローズドラゴンをキャッチしドラゴンフルボトルを挿入、ドライバーにセットする。

 

《ウェイクアップ!》

 

《クローズドラゴン!》

 

そして、レバーを回して構える。

 

「──変身!」

 

《ウェイクアップバーニング!》

 

《ゲットクローズドラゴン!イェア!》

 

展開された管が閉じ友奈はクローズ状態へと変身を遂げる。

 

「おお~!!それがクローズ~!!カッコいいね~!!」

 

「いや~なんだか照れちゃうね……」

 

園子に誉められ照れる友奈。

 

「じゃあ、こっちもやりますか~!」

 

園子はドライバーのボトルを抜くと赤いボトルと青いボトルを取り出す。

 

そして、そのボトルをシャカシャカと振る。すると、園子と友奈の周囲に数式のようなものが浮かぶ。

 

「えっ!?えっ!?なにこれ!?」

 

初めて見る光景に戸惑う友奈。

 

そんな友奈をよそに園子は次のステップに入る。

 

2本のボトルのキャップを開け、ドライバーにセットする。

 

《ラビット!》

 

《タンク!》

 

《ベストマッチ!》

 

「こ、今度はベストマッチ!?もう何がなんだかわかんないよ~!」

 

今度は全く聞き覚えない音声が流れたことでさらに困惑する友奈。

 

そして、園子はレバーを回し成型管を展開する。

 

《Are you ready?》

 

「──ビルドアップ」

 

成型管が閉じ、園子の姿を変える。

 

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

 

音声が流れる中ポーズを決める園子。その姿は赤と青の二色の配色の左右非対称のデザインになっていた。

 

「園ちゃん……それは?」

 

友奈が恐る恐る園子に聞いた。すると、園子は赤と青のオッドアイの瞳で友奈を見ながら言った。

 

「ビルド──創る、成形するって意味のビルドだ。以後、お見知りおきを」

 

「ビルド……」

 

「そうなんよ~。そして、これもゆーゆと同じパンドラシステムなんよ~」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

園子の言葉を聞いて驚く友奈。

 

「さてと、いろいろ話したいことがあるけどそれは一旦置いておいて──決着をつけようか」

 

園子はレバーに手をかける。

 

「そうだね。……負けないよ園ちゃん!」

 

友奈もレバーに手をかける。そして、二人は同時にレバーを回す。

 

《Ready Go!》

 

「ハッ!」

 

園子は飛び上がり

 

「オォーッ!」

 

友奈は走り出す。

 

《ボルテックフィニッシュ!》

 

グラフのようなものが現れその上を滑るような軌道で園子は飛び蹴りを放つ。

 

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

一方、友奈は上から来る園子を迎え撃つように飛び上がり空中で前転した後飛び蹴りの姿勢になり後ろから来た青い龍が友奈を押し上げる。

 

「「オリャーッ!!」」

 

空中で二人の蹴りがぶつかり合い拮抗した後、エネルギーが周囲に炸裂、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

二人は床に大の字で寝転んだ状態で息を整える。

 

「……引き分けだね。園ちゃん」

 

「……そうみたいだね~」

 

結果は引き分けだった。あの爆発の時に二人は同時に精霊バリアが発動したのだ。

 

「いや~とっても有意義なテストだったよ。ありがとうゆーゆ」

 

園子が上体を起こして友奈を見ながら言った。

 

すると、友奈も上体を起こして園子を見る。

 

「こっちこそありがとう!とっても楽しかったよ!」

 

そう笑顔で言う友奈に園子もつられて笑顔になる。

 

しばらく、笑い会う二人そこへ葛城が声をかける。

 

「あー、結城君。まだクローズのデータ取りが十分じゃないんだがまだ行けるかい?」

 

「あはは……ちょっと、疲れましたけど、まだ大丈夫ですよ」

 

苦笑いを浮かべて言った友奈の言葉を聞いて葛城は少し考えた後、マイクに向けこう言った。

 

「なら、一旦休憩入ろう。万全の状態じゃなきゃスペックを正しく測れないからね。園子も休んでくれ」

 

「はーい!」

 

園子は返事をするとドライバーからボトルを抜いて変身を解く。

 

それを見た友奈も変身を解いた。

 

「じゃ、休憩がてらパンドラシステムについて解説したあげよっか?」

 

園子が友奈にそう言うと友奈は嬉しそうに頷いた。

 

「うん!よろしくお願いしまーす!園子先生!」

 

「任された~!という訳でちょっと場所を移そうか」

 

二人は実験場から出て部屋へと向かった。

 

テストはまだまだ続く。




園子のビルド状態はわすゆ時代の装束をビルド風にしたものです(表現力不足)

園子の勇者システムはわすゆ時代のままです。

次回は説明とテストの続きです。


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