ジャンプワールドオールスターズ 鬼滅の刃編 (犬原もとき)
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プロローグ

書ききったので投稿。
終わりまで止まるんじゃねぇぞ…


ゲームでチートを使うのはアリなのか?

多くのゲーマーはこう言うだろう。

邪道だ。と。

僕はそうは思わない。

無論チートの被害に合えばコノヤロウとも思うし、お前の両手をBANしてやろうか?!とも思う。

けれどオンラインでそれをやればアカウントは無効になるし、売りさばけば当然前科者になる。

オフラインソロでやってるならそもそも議論に上げる方が間違いだ。それは個人趣味の領域だ。

某オンラインゲーム小説のとあるキャラが主人公に向かってチートだのなんだの言っていたが、僕からすれば攻略する意志がないのと同意だ。

そもそも黒幕がそんな自分の世界を壊すような存在を見過ごすとは到底思えないし、仮にチートを使っていて利用停止されていないなら、そいつに任せておけばクリアできるわけだ。黒幕にとってはともかく、被害者側からすればメリットしかない。

まぁ、あの世界のゲーマーは基本的に人間性がひどい奴らしかいないんだけど。

とにかく僕が何を言いたいのかと言うと、チートは最高ということだ。

他人に迷惑にならなきゃいいんだよ。

フレイザードも言ってたじゃん。戦うよりも勝つ方がいいって。

「さーて、モッドもチート呼び出しも覚えたし、早速やるか。ジャンプワールドオールスターズ」

ジャンプワールドオールスターズ

週刊少年ジャンプで連載されていた漫画の数々を一つのゲームとして纏めたのがこのゲームだ。

リリース当初は詰め込み過ぎて不評だったが、作品毎のDLCが追加される毎に評価はジワリジワリと覆り、現在ではオールインワンパッケージが出るほどの人気だ。

僕は早くからこの作品の価値に気づいていて、早期購入以来プレイしているヘビーユーザーだ。

VRでもってプレイするこのゲームは小さい頃思い描いた超人になれるというのもポイントだ。

さて、いつもは無敵とかなんだとか使ってプレイするけど、今回は趣向を変えよう。

今回使用したモッドは戦闘バランスのオーバーホール、追加の自宅、能力の上限開放、エトセトラエトセトラ…。

その中で最も重要なのはアダルト系モッドとアダルト系チートだ。

セクシーな見た目になる美化モッドはもちろんの事、プレイしながらでも体型を好きに弄れるモッドや、プレイヤーと行為をする物もある。

売春させる事もできるし、レイプも勿論できる。

非常に完成度の高いこのアダルト系改造の道のりは長かった。

その分多くの中毒者を出す程のクォリティになっている。パトロンになった僕も鼻が高いというものだ。

因みに投資額は1000万だ。

リターンに見合ってない?バカを言うな。

八百万のおっぱいが。ねじれのムチムチボディが。

アイミのエロティックボディが。蜜璃の乳柱が。

美樹のロリ巨乳が。ロビンの瓢箪ボディが。

全部好き放題にできるんだぞ?誰からも文句を言われずに。

払うだろう……!金で実現できるなら……!払う……!

1000万……!2次元に行くのに……1000万……!

安い……!人類の夢が叶うのに……!安い……!

動作確認は終えた。既に感触も確かめている。

気をつけるべきは戸締まりと防音と…。

さぁ!準備万端。プレイスタートだ!

 

 

新しく初めてキャラメイクを終えた僕はこの大地に立っている。

最初のステージはトリコだ。

僕はここで食義を含めたいくつかの技を習得する。

何もしなくてもネオは倒されるし、トリコの世界は何よりご飯が美味しいしグルメ細胞のお陰で死ににくくなる。

早速知っているコンソール画面を呼び出し、ステータスを上げて最低限僕が好きな食材を単独で狩れるレベルにまでしておく。

さーて行くか!

 

「こんなところかな?」

アイリス 男

24歳 レベル101

STR 174 MND 114 HP3820

DEF 208 INT 205 MP3190

VIT 109 LUK 252 CRI164

技 パイルバンカー ツインバンカー スクリューバンカー 神の杖 ノッキング タイムノッキング

スキル 食義 食没 料理Lv10

フルコース

オードブル アーモンドキャベツ 捕獲レベル1

スープ  コンソメマグマ 捕獲レベル2800

魚料理 フグ鯨 捕獲レベル28

肉料理 にんにく鳥 捕獲レベル45

メイン 

サラダ メテオガーリック 捕獲レベル不明

デザート シャボンフルーツ 捕獲レベル98

ドリンク スパークサンダーサイダー 捕獲レベル639

こう見ると上から下への落差がすごいなぁ。

でも仕方ないじゃん?アーモンドキャベツ美味しいんだもん。

カロリー凄すぎて現実に帰っても残ってる感あったりするけど。

さて、あとはメインを決めればトリコの世界は一先ずのクリアだ。

ぶっちゃけトリコの世界てやりたいことって飯食うことぐらいしかないんだよね。

作者があんまり女描かないもんだからメインキャラの大半は男だし。

男の娘もいないし。

つーわけでさっさとメインを決めたいけどこれがなかなかなァ…。

流石この世界のメインコンテンツなだけあって、どれを見てもそれだと感じるし、そうじゃないとも感じる程に、食材は豊富だ。

まぁいいか。いざとなれば適当な食材でもメインに据えよう。

この世界で欲しいものは手に入っているし…。

 

「結局最終戦が終わっても見つからなかったよ…」

響き渡るエンディングテーマを遠くに聞きながら、僕は遠い目をしている。

そう、結局メインとなる食材は見つからなかったのだ。

どれもしっくり来なかったのだ。

だがまぁいいか。人生のフルコースを完成させるのはメインコンテンツでもありエンドコンテンツでもある。

だからこそトリコの世界を選んだ。

トリコの世界はストーリーが終わるとDLCが無くとも宇宙航行できる物があれば他の世界へファストトラベルできる。

トリコが原作とは違いこのゲームで人気な点の一つだ。

つまり他のDLCの体験版的なことが出来る。

まぁ、全部購入している僕には関係のない話だ。

気を取り直して早速他の世界へとジャンプしよう。

「ここにおったか」

この声は…

「全くお主という男は…世界の危機であろうと1ミリもブレんな」

「ユダ先生」

僕の料理の師匠。原作でもファンのユダ先生だ。

「無事に世界は救われたようじゃ。故に聞かせてもらおう。ワシの店『膳王』を継ぐかどうかを」

マジか。正直前に適当にはぐらかしたときスッゲー起こってたしフラグ折れたと思ってたわ。

僕は器用さが低い。故にユダ先生の繊細な技術を必要とする、薬膳料理は習得できなかった。

丁度いいやと思って店を飛び出し、美食屋家業に移ったのは懐かしい。

「お主の不器用さは知っている。だが知恵がある。そして努力家だ」

すみませんユダさん。僕の能力はチートなんです。

「ふふふ…そんな事はないという顔をしておるな」

「うぇ!?」

え?心読めるの?

「お主のフルコース、メインが決まっておらぬが、それは何故かわかるか?」

「いえ、全く」

教えて下さい先生。

「お主が自由なようで自由でないからじゃよ。どこか誰かに遠慮している」

遠慮しているつもりは無かったんだけどなぁ。

「ふふふ…自分の心というのは案外自身でも分からぬものよ。さて…」

ユダ先生がそっと懐から何かを取り出す。

風呂敷に包まれているそれを先生が開けると、そこにあったのは…。

「米?」

「うむ。グルメ界で見つけたものだ。お主のフルコースに良いのではないか?と思ってな」

つまりどんなものかは分からないと…。

うん。とりあえず食べてみるか。

「一つ頂いても?」

「勿論。その為に持ってきたのだからな」

じゃあ遠慮なく。

「頂きます……」

こ、これは……。

「メイン確定ですわ」

噛めば噛むほど味が変わるのが米。

この米は逆だ。噛むほどに味が無くなる。

これまで食べた味を優しく解していく。噛み続けたらやがてなくなると確信するほどに。

そしてそれが凄く良い。僕のフルコースにはソレが良いんだ。

とにかく味のパンチが強い僕のフルコースを、コイツが和らげてくれる。

そして程よく噛めば、前の料理の味を残しつつ、次の料理を楽しことができる。

恐らくこいつ単体だとそこまで価値はない。だけど、他の食材と組み合わせることにより、その真価を発揮する。

さすが先生だ…僕なんかじゃ見つけられなかった。

「先生…」

「この米は無色米というらしい。稲の頃から透明で普通なら見つけられん食材じゃが、人間界へ帰る途中偶然目にし、ゲットしたのじゃ」

種籾だと言って小袋を渡してくれた。

「ありがとうございます先生。お陰でフルコース…完成しました」

 

フルコース

オードブル アーモンドキャベツ 捕獲レベル1

スープ  コンソメマグマ 捕獲レベル2800

魚料理 フグ鯨 捕獲レベル28

肉料理 にんにく鳥 捕獲レベル45

メイン 無色米 捕獲レベル5000

サラダ メテオガーリック 捕獲レベル不明

デザート シャボンフルーツ 捕獲レベル98

ドリンク スパークサンダーサイダー 捕獲レベル639

フルコース完成ボーナス ステータスに永久ボーナス

アーモンドキャベツ 交渉の際に+4%のボーナス

コンソメマグマ 熱・爆発・火耐性に+1130%のボーナス

フグ鯨 重力・毒・水耐性に+873%のボーナス

にんにく鳥 スタミナ・HPに+30%のボーナス

無色米 任意のステータスに+980%ボーナス

メテオガーリック スタミナ・HP・STRに+990%のボーナス

シャボンフルーツ MND・LUK・INTに+820%のボーナス

スパークサンダーサイダー VIT・CRI・雷耐性に+721%のボーナス

ちょっと規格外すぎる上がり方じゃないですかね?(驚愕

そりゃ解放モッド入れたけどこの上がり方は予想以上ですわ。

 

STR 1772 MND 902 HP 196212

DEF 208 INT 1681 MP 25830

VIT 1854 LUK 2066 CRI 1182

 

HPの桁がおかしくないですかね?

まぁDEFが低いからそこは見逃してもらおう。

しかしVIT上昇はありがたい。無色米の指定ボーナスもあって薬膳料理も楽楽覚えられる。

うぅむ…覚えられると分かったら途端に惜しくなっちゃったぞ。

いいか!覚えちゃおう!

「先生…例の話ですが…」

「ふふふ…分かっておるとも。予想はしておったよ」

What?

「これを授けよう。私が直筆で書いた薬膳料理の指南書じゃ。1ミリたりとも書き漏らしはない」

マジか。ユダ先生直筆とか垂涎ものですやん。

「アイリスよ。膳王を継ぐ等と狭い枠で納められる器では無いと私は見抜いてたよ」

「先生…」

「だが、もしお主が旅に疲れた時は、何時でも戻ってきなさい。この膳王ユダが饗そう。比類無き無敵のフルコースでな。1ミリとて残してはならんぞ?」

そう言ってユダ先生は、パチリとウインクを飛ばす。

ユダ先生…貴方のそういうところ好きです。

「先生…ありがとうございます!」

「ふふふ…では行ってきなさい。また会える日を楽しみにしているよ」

「はい!」

そう言うと僕は早速その場を後にするのだった。

 

勢いのままトリコの世界を出たけど何だったんだあれ?

まぁお陰でステータスは上がったし、ユダ先生の薬膳料理は習得できたし、ユダ先生直筆サインも貰えたしいいか。

さて、このステータスでも実は全然安心できない。

なにせジャンプはパワーインフレの著しい世界だ。

どんなに強くても安心はできない。

だけどまぁ、僕は原作の流れに沿って色々するわけじゃないしいいか。

そしてタイムノッキング。これは時間停止をそれっぽく言い換えただけのモッドだ。

タイムノッキングは次郎が使っていたノッキングタイムと違い、世界そのものを止めるノッキングという設定だ。

うふふふ…さぁ、どの子から手篭めにしてやろうか…。

 

 



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鬼滅のなんとか

ここは鬼滅の世界にしよう。

原作介入とかあまりしない方の僕だけど、ことこの作品に限っては積極的にしていきたい。

童磨と無惨マジコロス。

その為にはまず…

「鬼殺隊と合流しないとね」

幸いにして今は童磨のクソヤローがカナエさんを殺そうとする位だ。

正確な場所は分からない上にさしもの僕でもアホみたいにある人物IDは覚えていない。

よってチートによる追跡も無理。

出来るなら五体満足で助けたいけど…。

 

数時間後

 

 

ーーー!!やっと見つけたーーーーー!!

いかん!カナエさんが虫の息だ!

殺らせるか!お前が死ねや童磨ーーーー!!!

「万膳薬刀!」

「ん?」

「医食同源一切抜締!」

説明しよう!

一切抜締とは、複数の締めが必要な繊細食材に対して使用する繊細技術である!

なお童磨は鬼畜外道のクソヤローなので同時に骨を抜き取っておく!

普通にグロい絵面なので大人こども関係なく見られたもんじゃないね!

「うわっといきなりなんだい?酷いなぁ」

「パイルバンカーーー!」

「ちょっ」

「パイルバンカー!パイルバンカー!パイルバンカー!兎にも角にもパイルバンカーーーーーー!!!」

息をつかせぬ連続パイルバンカー。新しい技に目覚めそう。

というか閃いた。

「いい加減に…」

「うおおおぉぉぉぉ!喰らえ!!マシンガンパイル!!!」

高速で打ち出される杭はさながらマシンガン!

秒間38発。質量1tの杭の雨だ!防げるもんなら防いでみろや!!

「オオォラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」

「ちょ!ま!本当に何!?何なのいきなり君は!?」

「通りすがりの薬膳料理人だ!覚えてあの世に逝きやがれこのド腐れがーーー!!!」

細切れになっている童磨だが残念ながら僕には倒す手段がない。波紋の呼吸も覚えてないし、日輪刀だってない。

童磨が余裕気味なのもそのへんに由来しているんだろう。

しかし、再生速度を有に上回るこのマシンガンパイルを前に、ろくに反撃の隙きをつかめていたい。

つまりは千日手なんだけど

「姉さん!!」

ここでしのぶちゃん登場。

これで童磨にとって分は悪くなった。

一瞬の硬直は僕の前では致命的だ。

VIT3170をなめるなよ!

「吹っ飛べ!オォラァッ!!」

「ぐふっ!!??」

童磨顔面にシュウウゥゥーーーーーッ!!超☆エキサイティン!!!

宣言通りはるか上空へと吹っ飛んでいく童磨の頭は、途中で現れた襖の中へと飛び込み、消えていった。

ちっ、鳴女か。アイツめんどくさいんだよな。

「姉さん!しっかりして!姉さん!」

おっと。どっか行った奴はどうでもいい。

今は救える命を救わなくては。

「ちょっとどいて!」

「離して!姉さんが・・!」

「まだ助かる!僕が助けてみせる!!」

「どうやって・・・」

おそらくしのぶさんも分かっている。

これは助からないと。

そりゃそうだ。内臓が引きずり出されている。

普通なら助からない。

だが問題ない。そこに身体があるのなら・・・!

「先生・・・力を貸してください」

そう言って僕は万膳薬刀を構える。

しのぶちゃんが息を飲む。

「あなた・・・!!」

「医食同源・・・蘇生切り」

素早く、そして正確に細胞の隙間を捌き、自己再生能力を活性化させる。

しかしこれだけでは足りない。

ここから更に栄養価の高い食材を食べさせなければ・・・。

「君。少し協力してほしい」

「な、何をした!姉さんに何を・・・」

「良いから聞くんだ!今から君が口移しでこれを食べさせるんだ」

そうして僕が渡したのは調理済みのメテオガーリックとスパークサンダーサイダーだ。

僕のフルコースメニューだけど他に栄養価の高い代物なかったんだよ・・・。

「これは・・・」

「はじめに断っておくとこれはめちゃくちゃ美味い上に数が少ない。うっかり飲み込まないようにしてくれ」

メテオガーリックはそれそのものが滋養強壮効果の高い食材だが、スパークサンダーサイダーと合わせて食べるとスパークサンダーサイダーの凄まじい刺激が効果を更に跳ね上げる。

「僕がやっても良いけど性別は違うし、食べ慣れちゃってるから加減がわからない。君が飲み込みやすいと思うまで噛んで、彼女に口移しで食べさせるんだ。そうすれば助かる」

「・・・・それを信じろと?」

「信じて。時間はない」

暫く見つめ合うも、そう間をおかず決心したようにメテオガーリックとスパークサンダーサイダーをひっつかみ、口の中へ含む。

目を白黒させて暫く呆然としたあと、思い出したように口を動かし、カナエさんに口移しをする。

うーん・・・実に眼福。美しい。

コクコクと喉を動かすカナエさん。

その瞬間、傷はみるみるうちに塞がっていく。

因みに飛び出た内臓は全部切り取った。雑菌まみれで危険だからね。

しばらくすればすぅすぅと寝息を立て始めた。

ふぅ・・・なんとか成功したみたいだ。

グルメ細胞を持ってないから、失敗するかもしれないと危惧していたけど、ちゃんと機能して本当に良かった。

「傷が・・・」

「グルメ細胞を持ってないからちゃんとなるか不安だったけどどうにか成ったみたいだね。本当に良かった」

原作ファンには悪いけど、悲しみなんて少ないほうが断然良いと僕は思う。

限りなくリアルに感じられるゲームだからこそ、僕は僕が思う最高のハッピーエンドを目指す。

そのせいで原作とはかけ離れようと、これは僕が作る話だ。誰にも文句は言わせない。

これが僕が作る鬼滅の刃・・・言うなれば鬼滅の・・・鬼滅の・・・うん!まぁいいか!

 



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那谷蜘蛛山に行こう

アイリス視点

 

「アイリスさん。今日の分の薬膳できましたか?」

「出来てるけどさ・・・なんか量多くない?」

「仕方ありませんね。負傷者は後を絶ちませんし」

「いや、カナエさんの話じゃ今日はあんまりいないんじゃ・・・」

「沢山食べる君が好きは誰の言葉でしたかね?」

「いや、それは蜜璃ちゃんに言ったのであってしのぶちゃんじゃ・・・」

「料理人だって体力勝負ですよね?」

「いや・・・その・・・」

「ですよね?」

「・・・・・はい」

しのぶちゃん最近原作寄りになったなぁ・・・。

蘇生切りによって身体は元通りに成ったカナエさんだけど、僕がいなければ死んでいたという理由で、柱を引退し、今は蝶屋敷の管理人さんみたいな立ち位置に収まっている。

僕はというとその薬膳料理の腕を買われ、蝶屋敷に運ばれた隊士達の食事を作る係になっている。

僕の薬膳料理はご存知グルメ食材ばかりで数に限りがある。もちろん取りに行こうと思えば何時でも行けるんだけど、あまりちょくちょくだすと逆にこれを目的にわざと負傷する可能性も出てくるから、よほどの重症、重病人でないと出さないようにしている。

例外として現柱のしのぶちゃんや継子のカナヲには常に食べさせている。

しのぶちゃんのお気に入りは捕獲レベル5461のマントラレタス。一つの根っこから曼荼羅のように何箇所も渦を巻いており、その一つ一つが味が違う。

咲いている場所がグルメ宇宙の中でも太陽に近い星の一番深い場所にしか生えないのに大きさも半端ないので持ち出すのも一苦労だ。

僕のフルコースの中で一番高い無色米より捕獲レベルが高いので最初は本当に苦労した。

今は難なく取りにいけるけど、非常に難しいし行くのもしんどいからあまりせがんで欲しくない。

カナヲちゃんはシャインレインボーラムネ。

捕獲レベルは87で虹色諸島の中心の島の湖から取れる。

年に1回、毎秒500L噴出するレインボーラムネの中で1Lほどで、しかも噴出中にしか取れないため捕獲レベルが高い。

マントラレタス程じゃないにしろこちらも中々大変だ。

でもカナヲちゃんはあんまりおねだりして来ないから本当にいい子だ。

そこぞの蟲柱さんも見習ってよ。マジで。

蘇生切りで瀕死から回復したカナエさんだけど、何から何まで完璧に回復とまではイカなかった。

やはりグルメ細胞がない影響か、本来なら万全か少し強くなって回復するはずだけど、以前の半分程の実力に落ち込んでしまっていた。

全集中の呼吸も1時間もすれば倒れてしまうほど弱体化してしまい、僕の行動は本当に命をつなぎとめるだけに終わった。

生きているだけマシだと言ってはくれるけど、僕はこのユダ先生から教わった薬膳料理にだけはチートを用いない。

ステータスを弄ることはあっても、料理の腕前だけは嘘を付きたくなかったからだ。

ユダ先生なら難なく治したに違いない。

どうやら僕は知らず料理の面でもチートに頼ろう。などという甘い考えがあったようだ。精進しなくては。

「・・・という訳でですね。今日はマントラキャベツのざく切りサラダなんか良いと思うんですよ」

・・・・それこの間も食べなかったっけ?

 

「産屋敷さんのところに僕も?」

「はい。薬膳の材料を補充したいということですので」

「別にしのぶちゃんがついでに持っていけば良いような・・・」

「良いじゃないですか。たまにはお館様にも顔を見せましょうよ」

お館様こと産屋敷耀哉さんだが、彼にも少し手を加えている。

呪いというものがどんなものかはわからないが、そこはグルメ素材。

回復は無理でも進行を大幅に遅らせる素材があり、薬膳として調理することで更に効果が見込めた。

残念ながらその効果も長くは持たず、定期的に食べなければならない。

材料費なんかはもらっているが、そもそも大正時代の価値観だとマジで国が傾くレベルの価格が飛んでいくので適当な金額にしている。

そもそもお金はチートで何時でも増やせるから特に気にしなくていいしね。

「ともかく一緒に行きましょうよ。帰りにお団子でも買って」

「またぁ?団子なら何時でも作れるじゃない」

「たまには良いじゃないですか。いつもご自分で作ってますし、たまには楽をしても良いのでは?」

楽ならいつもしてるんだよなぁ。

「ほら、行きましょう。時間もあまりありませんし」

「あっ!もう分かったよ。行くから引っ張らないでよ。僕の方が小さいんだからさぁ」

はー、全く仕方ないなぁ。

 

しのぶ視点

 

私達の命の恩人は色んな意味で凄い人だ。

まず最初にあったときから意味がわからない。

通りすがりの薬膳料理人だというが、私の知る限り料理人は拳一つで鬼を、それも十二鬼月の上弦を圧倒しないし、包丁一つで人体を再生したりなんかしない。

おまけに知り合いと師匠だという人達もぶっ飛んでいる。

知り合いだという人物は毒を料理するし、師匠などは124歳という。

まぁ、そんな人達から料理やらなにやらを教えてもらった私もその仲間入りを果たしているようなものだけど。

元々筋肉量で劣っていた私が、今では同じ柱である不死川実弥と同じくらいに成っている。

グルメ食材は好物を食べるほど強くなるということなので、お気に入りのマントラレタスを何時もおねだりするのだけど、偶にしか食べさせてくれない。

今度からは別のを探そうかしら。

・・・ううん。それは鬼を全て滅ぼしてからにしよう。

姉さんは奇跡的に生き残ったけれど、アイリスさんがいなければ間違いなく死んでいた。

姉さんは鬼にも優しいけれど、私はそこまで優しくなれない。

鬼は私達から大切なものを奪う。

たとえそこにいかなる経緯があろうと、それを自分の勝手で奪っていく鬼に、情けをかける価値はない。

おっと鬼への悪口を考えてたらお館様の屋敷に着いてしまった。

正直着いてきてもらったのって、完全に私の個人的感情からだからどう言い訳しようかな。

 

アイリス視点

 

特に理由なく着いてきたからやることの無い僕。

産屋敷さんの話が終わるまで暇な僕は、奥さんに改良した薬膳料理を教えていた。

監修はご存知小松くんだ。

「…とまぁこんな感じです。大分調理しやすくなったと思います」

「はい。ありがとうございます」

良い人達だなぁ。死なせたくないよ。

その為にも更に腕を磨かなくちゃ。

そんな事を考えていると、向こうから誰かが近づいてくる音がした。

多分しのぶちゃんだろうけどなんだ?なにか引きずってるような…

「アイリスさん」

「どうし…冨岡くん?」

「…お久しぶりです」

現れたしのぶちゃんが引きずってたのは、水柱 冨岡義勇くんだ。

然し体格差からじゃ見られない光景だよなぁ。

しのぶちゃんに引きずられる冨岡くんなんて。

「アイリスさん。お館様から直接の指令です。急ぎ那谷蜘蛛山に向かい、隊士を救助せよ。と」

那谷蜘蛛山か。等々そこまで時間が進んだ訳だ。

母蜘蛛ちゃんエロいんだよな。残念ながら死んでるだろうけど。

「柱の二人だけじゃなく僕まで行かせる…それ程逼迫した状況な訳だね。分かった。すぐ行こう」

「ありがとうございます。さぁ行きますよ!冨岡さん」

「……鮭大根が欲しい」

「終わってからね」

会う度に要求されるんだけど、どんだけ好きなの鮭大根。

 



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そんな血鬼術僕は知らない 那谷蜘蛛山在住の下弦の陸

アイリス視点

 

さて那谷蜘蛛山。

しのぶちゃんは西。富岡くんは東で僕は南から行ってるわけだけど、まぁ見事に死体ばかりだ。

隠の子達が見つけやすいよう一箇所に纏めつつ、居ないだろうけど他の鬼に食べられない様、藤の花エキスを辺りにぶちまけておく。

藤の花を抽出して出来たこのエキスは一滴だけでも下級鬼なら1分程で死ぬし、理論上は10滴程で下弦の鬼も殺せる。上弦はちょっと未知数で分からないけど。

まぁ、僕はチートで大量に増やしてるんだけどさ。

ともかく一瓶まるごとぶち撒けておけば隠は匂いで気づくし、匂いが濃いから鬼は近寄れない。一石二鳥だ。

それが終われば開けた場所に向かって走る。

当たり前だけどこの辺は原作通りに鬼は殺されている。

これ僕が一番ハズレくじじゃんかよ。

 

死体の安置などを終え、しのぶちゃんと合流するべく西へと向かう。

途中死にかけの善逸くんを見つけたからタピオカミルクの実を飲ませ、安静にして待つように伝えておいた。

そして辿り着いたその先では、しのぶちゃんが姉蜘蛛に向かって日輪刀を振りかぶっている所だった。

だが様子がおかしい。

筋肉量が増えたとはいえ、しのぶちゃんは別に切る必要が無い戦法の筈だ。

それに鬼絶対ぶっ殺すレディのしのぶちゃんが、鬼を前にしてあんなに隙を晒すことは無い。

何かあるな。よし。

先手必勝。

「ノッキング!」

「カッ……ハッ!?」

背後からノッキングされた姉蜘蛛はそのまま動けなくなった。

ノッキングマジ便利。

そのまましのぶちゃんの方を見る。

すると

「はぁ…はぁ…はぁ…」

顔を紅くして息の荒い、なんか発情してる感じのしのぶちゃんが…ちょっと待て。

ステータスを確認しよう。

 

胡蝶しのぶ NPC

状態 血鬼術「情淫毒」

 

なにこれ…聞いたことないんだけど。

てか原作にないよねこれ?

姉蜘蛛に近づき、口だけノッキングを解除する。

「何あれ?」

「…ッ!?ハァ…ハァ…く、口が動く」

「質問に答えて。なにあれ?」

話進まないじゃん。

「ハァ…ハァ…し、知らないわ。無我夢中で私にも何がなんだか…」

「えー?本当にござるかぁ?」

「本当に決まってんでしょ!何よその言い方!凄くムカつくわ!」

あっ、怒った。まぁそりゃそうだ。

僕だって同じように煽られたら腹立つと思う。

ふぅむ…どうしたもんかなぁ。

これは多分発情、淫乱が間違いなく発症している。

今はそれを理性でなんとか抑えてる感じだ。

よし。ここは姉蜘蛛を殺そう。

女の子とはいえ鬼だしね。すまんね。

そう思いしのぶちゃんの日輪刀を、借りようと近づいた。

「ほぇ?」

急に天地がひっくり返り、気がつくとしのぶちゃんが跨がっている。

「あ…いや…身体が…ん…勝手に…」

そう言いながら日輪刀を置いて顔を近づけてくるしのぶちゃん。

わ、わわわ!!

近い近い近い!

あっ、凄い良い匂いする!身体柔らか!顔!顔エロい!

「ま、ままままま待って待って!?しのぶさん!?胡蝶さん!?」

「アイリスさん…ん♡」

「おちつ…んむ!」

き、キス!?キスされてるよね!?しかも…

「あむ…んむ…れろ…んちゅ…んちゅ…」

「はむ…ん…ん…れろ…れろ…んん…」

す、凄く…僕のツボ…

こういうの…好き…

「ん…ぷはぁ…」

「ん…はぁ…♡」

「ご、ごめんなさい…でも身体が…勝手に…」

「ふぇ…あ…うん…」

頭がポヤポヤする…しのぶちゃん上手…

「お陰で身体が動きます…!」

いうが早いか、しのぶちゃんは置いた日輪刀を蹴り飛ばし、姉蜘蛛の首を斬り飛ばした。

わぁ凄い。あれ本来斬るものじゃ無いのに。

そのまま僕から離れ日輪刀を拾うと

「後は任せます」

と言って去ってしまった。

うん。恥ずかしいよね。僕もだよ。

特に僕は身体は小さいけど頼れるお兄さんキャラで通してたから余計にね!

明日からどんな顔して会えばいいんだろ…。

 

しのぶ視点

 

わー!わー!わー!?

どうしようどうしようどうしようどうしよう。

血鬼術に掛かってしまったとはいえあんな破廉恥な真似を!

クソ!あの鬼め!ぶっ殺してやろうか!あっ!ぶっ殺してた!クソぅ!

はっきり言おう。正直興奮した。

普段なら絶対に見せないあの蕩けた顔は堪らなかった。

元々顔立ちは可愛いし背丈も私より低い。

誰からも好かれていて、いつも余裕を崩さない人だった。

そんな子が私の拙い舌技であんなに風に蕩けてくれた。感じてくれた。

あの顔は私だけしか知らないと分かった時

(もっともっと知りたいと思った。私だけの貴方にしたいと思ってしまった)

なんて醜いんだろう。あの人は物じゃないのに。

でも

もし、もしもあのまま続けていたらあの人は私だけを見てくれたのだろうか?

夜中にこっそりとしている自慰の種になったのだろうか?

私の名前を呼びながら、あの可愛く蕩けた顔で、みっともなく果てるのだろうか?

それを想像すると…

嗚呼…堪らない。

頬が釣り上がっているのがわかる。

全身に寒気にも似た感覚が走る。

もっと…もっと見たかった…。

…………ハッ!いけないいけない。

まだ血鬼術の効果が残っているのだろうか?

帰ったら薬を調合しないと。

…………媚薬ってどう作るんだっけ。

 



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()の中も喋れよ! 蝶屋敷在住の蟲柱

しのぶ視点

 

暫く進んでいると、進路上に冨岡さんと隊士の子がいた。

隊士の子は何かを庇っている。

あれは……鬼か。

(むむ、冨岡さんが危ない。急がなくちゃ)

走っている脚に力を込める。

それだけで私はぐんと速くなる。

息をつく間もなく鬼の首元に刃が…あ。

(マズい!この速度だと折れちゃう)

鬼を殺すのは構わないけど柱の日輪刀は基本的に特別製だ。

折れたら出来上がるのに時間が掛かる。

(くぅ!間に合え!)

なんとか身体を捻り軌道を変えることに成功したが、ギャリギャリと嫌な音がした。

折れてはないみたいだけど…。

ん?冨岡さんが日輪刀を構えている。

と言うことはさっきのは刃が刃を滑った音でしたか。

………良かった。いや本当に良かった。

最近気血アップとかで身体を強化して振るうから、日輪刀から嫌な音がしてましたし…いつか本当に折ってしまいそうで怖い。

それはそれとして…

「冨岡さん?どうして邪魔をするんですか?出る前には鬼とは仲良く出来ないとか言ってたくせに…そんなんだからみんなに嫌われるんですよ」

まぁ、アイリスさん辺りはそれも個性と笑って受け入れるでしょうけど。

 

炭治郎視点

 

誰だ?

隊服を着ているって事は鬼殺隊なのは間違いけど…。

この人は強い。

全く動きが見えなかった。

富岡さんのお陰でなんとかなったけど…どうする!?

「さぁ富岡さん。そこをどいてくれます?」

「………俺は(鮭大根を作ってくれるから少なくともアイリスには)嫌われていない」

…………え?!

今?!今否定する所ですか富岡さん!?

「あぁすいません。嫌われている自覚がなかったんですね。それはすみません」

「アイリスは(毎回採るのが手間な野菜を頼むしのぶの愚痴を聞くことがあるから)お前の事を苦手に思っている」

「………………は?」

い……今のは俺でも分かるぞ。

富岡さん…今あの人に言っちゃいけない事を言った気がするぞ!?

「(その点俺は頼むと毎回快く鮭大根を作ってくれるから)俺の方が好かれている」

ちょっと馬鹿にしてる様な笑顔で勝ち誇ってません冨岡さん?!

絶妙に腹立たしいぞこの表情は!?

相手の女の人も怒りでこめかみ辺りがひくついているし!

「私は四六時中一緒にいますからね!冨岡さんと違って良い所も悪い所も目に付きやすいですからね!」

「今更だが(婚姻前の男と女が1つ屋根の下なのは)どうかと思っている」

「鬼をやったあと覚悟しておけよ冨岡ァ!!」

マズい!すごい怒ってる!

九分九厘冨岡さんのせいだけどなんとかしなくっちゃ!

九分九厘冨岡さんのせいだけど!

「動けるな?」

「え?」

「(正直無理難題を言っているのは分かるがここはお互いの為に)真っ直ぐ走れ」

「冨岡さん…」

「(俺の数少ない友人の)アイリスなら(自慢の手料理でこの場を)何とかしてくれる。行け」

「冨岡さん…!」

ちょっと拗れてしまったけれどマズい状況には変わりない。

冨岡さんの言うアイリスって人がどんな人なのかは分からないけれど、ここは真っ直ぐ行った先にいると信じるしかない!

「すみません!ありがとうございます!!」

俺は禰豆子を連れて走る。

真っ直ぐ!真っ直ぐ!

途中で禰豆子の為の箱を持っていくから少し寄り道したけど真っ直ぐ走る!

 

アイリス視点

 

「うーん。これ僕が来る必要あったかな?」

到着した隠の子達と合流し、後処理の手伝いをしてるけど、彼らでも十二分に対処できている。

血鬼術を受けた人達もキチンと処理出来てる。

善逸は少し危なかったけど原作でもちゃんと間に合ってたしなぁ。

「薬膳さん」

「ん?」

カナヲちゃんが話しかけてくる。

カナヲちゃんは僕の事を薬膳さんと呼ぶ。

多分薬膳料理ばかり持ってくるからだろう。

「あらかたの指示は終わったので辺りの鬼を斬ってきます」

「うん。分かった。行っておいで。しのぶちゃん達が戻ってきたら鴉をとばすから」

「はい。行ってきます」

そう言うとカナヲはすぐに森の中へと消えていった。

暫くすると鎹鴉から禰豆子と炭治郎を確保しろという伝令が届いたが、そこはやはり継子と柱。

伝令から間を置かず二人の鎹鴉がやってきて、目標の確保に成功したので人を寄越して欲しいと告げられた。

………すげー顔あわせにくいけど行くか。

 



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柱合会議と僕

その後、緊急柱合会議の場になぜか僕もいる。

本当になんでだ?

「ねぇねぇ」

袖を引っ張ってくるのは時透無一郎くんだ。

色々とすぐ忘れる彼だけど、僕の事はふろふき大根の人という事で覚えてるみたいだ。

「今日は持ってきてないの?」

「うん。ないかな。いきなりだったし」

「そっか」

あっ、ちょっとシュンとなってる。

無一郎くんのお兄さんも救いたかったけど…出来なかったもんな。

当時は蝶屋敷もてんてこ舞いだった。

………うん。止めよう。詮無いことだ。

「柱の前だぞ!!」

お、炭治郎が起きた。そしてびっくりしている。

そりゃそうだ。起きたら知らない人達に囲まれてるもんね。

「ここは鬼殺隊の本部。あなたはここで裁判を受ける事になります。覚悟は良いですか?竈門炭治郎君」

笑顔だけど怖いよしのぶちゃん。

「裁判って事は弁護人がいるんじゃないかい?」

「いるのか?どう取り繕っても鬼を連れていたことには変わりがねえ。ド派手に斬首だろう」

「うむ!薬膳殿には悪いが弁護人など必要なし!鬼を連れ歩くなど明らかな隊律違反!我等だけで対処できる!」

まぁ普通ならそうだよね。

「どうかな。果たして彼女は本当に普通の鬼なのかな?」

「普通でないのなら尚更だろう…家族を鬼にされた。それだけでも不幸だと言うのに…あぁ、なんとも悲しい…」

うーむこの切り口でも駄目かぁ。

「薬膳。お前がなぜこんなところにいるのか…それは後にしておくとして、俺としては何故富岡が拘束されていないのかが気になるのだが?胡蝶めの話では奴も隊律違反だろう?どう処罰する?どう償わせる?次いでに薬膳も処罰しろ。甘露寺に色目を使うと目を潰すとか」

「私怨が混じってるじゃねーか!」

この甘露寺ガチ勢め!

その蛇蒲焼きにしてやろうか!しないけど!!

「薬膳さんがここにいる理由はお館様のご意思です。富岡さんは大人しくついてきてくれたので、処分等は後で決めるとしましょう。それよりも私は坊やに話が聞きたいですね」

当事者だもんね。

「…ッ!ガハッ!ゴホッ!ゲホ!ゲホッ!」

「……水を飲ませた方が良いですね。顎が割れてますから、ゆっくりと飲んでください」

しのぶちゃんが僕の方を見る。

うんうん。なんとなく分かりましたとも。

「ちょっと待ってね………うん。これが良い」

取り出したのは凍らせた蜜飴レモンだ。

これをそのまま擦りおろせば鎮痛作用が働く。

正しい力加減でないと寧ろ痛みが増すけど。

擦り下ろした蜜飴レモンを瓢箪の中に入れて軽く振る。

これで完成だ。

「はい。しのぶちゃん」

「ありがとうございます。さっ、これを飲んでください」

そうやって差し出された蜜飴レモン水を飲む炭治郎。

若干前のめり気味なのはまぁ仕方ないだろう。

飲んだことが無かったら普通に甘くて美味しい水だし。

「……説明してくれますか?薬膳さん」

……他人の前だからしのぶちゃんも薬膳さん呼びだ。ちょっと悲しい。

「蜜飴レモンは適切な力加減で擦り下ろすと鎮痛作用がある。とはいえ疲労や傷が癒えた訳じゃないからね。あくまで痛みを鈍くしただけだって言うのを忘れないで」

「あ、ありがとうございます。その…甘くて少し酸っぱいのが美味しかったです」

「うんうん。それは良かった」

お礼をすぐ言える子は好きだよ。

何処ぞの蛇柱と違って良い子だな炭治郎は!

「あの…俺の妹は…禰豆子は鬼になりました。でも今までも、これからも…人を食べる事はありません。絶対にです」

「下らない妄言を撒き散らすな。身内なら庇って当然だろう。そんな言葉、俺は信用しない。信用ならない」

「可哀想に…鬼に取り憑かれて居るのだろう…すぐにでも解き放ってやるべきだ…」

「まぁ、世の中に絶対と言うことは計算上しか存在しないしね」

炭治郎が目を見開いている。

あれか。僕は味方と思われていたのか。

そりゃ優しくしたからね。

「…ッ俺は禰豆子を人間に戻すために剣士になったんです!禰豆子が鬼になったのは2年も前で、その間人間を食べたことは一度もない!」

「それを裏付ける証拠は?」

「証拠…?」

「先程そこにいる柱が言ったとおり、君でなくても家族を庇うのは当然の行為だ。けれど、ここにいるのはそれを知らない他人ばかりだ。僕も含めてね」

まぁ僕は信じられるけど他はよく知らない下級隊士が鬼を連れてるって認識だしね。

「そんな他人に君の妹が無害である事を信じさせるには、その疑問を解消させるだけのなにか…つまり証拠や証人が必要な訳だ。分かるかい?」

この場合で言えば鱗滝さんがそれに当たるだろう。

炭治郎もそれに気づいたようで顔を上げる。

「居ます…!俺の育手の鱗滝左近次さんです!」

「知ってる人―」

…………誰も手を挙げない。いや、お前は反応しろよ冨岡!

「冨岡さん…」

ほら!炭治郎くん絶望の表情浮かべちゃってんじゃん!

「………(みんなも知っているとは思うが)鱗滝左近次は元柱だ」

「……なんですぐ反応しないの?」

「…………(みんなも知っていると思っていたから)」

なんか喋れよ…。

「はぁ…まぁいいや。証人はその鱗滝さんでいいとして、これからも襲わない証拠はあるのかい?」

「……そ、それは」

「その必要はねぇな薬膳」

…この関智ボイスは。

「鬼を連れた隊士も・・・その鬼も今ここで殺すからな」

おーおー、好き勝手言いなさる。

まぁ境遇には同情する。

実弥からすれば、炭治郎達はあり得たかもしれないもう一つの未来だから。

苛立たしいだろうな・・・。

だがそれとこれとは話が別だ

「例え結果がそうでも、それはお前が決めることじゃあないんじゃないか?」

「ならお前がしていることは何だ?柱でもなければ日輪刀すら持ってない臆病もッ――!」

「んっん~♪その柱でもない臆病者の下敷きになっているのはどこの何という柱ですかなぁ?♪」

「んの・・・!」

甘い甘い。

実力で黙らせたいなら最低でもグリーンパーチレベルに成ってから出直しな。

「・・・・薬膳さん。不死川さんの言うことは半分正しいですよ」

「知ってる。けど産屋敷さんが来る前にある程度情報の整理をしておいたほうが良いと思ってやっただけだよ」

「そうですか。でも出過ぎたマネは自重してくださいね。それと不死川さん。彼の実力はこの中でも抜きん出ているのは周知のとおりです。上弦の弐を素手で圧倒したのは知っているでしょう?」

「・・・・・ならなぜ日輪刀を持たない」

「耐えきれないんだよ。日輪刀が。この間も説明したでしょうに」

血を流しすぎてそんなことも忘れちゃったのかね。

正直さ、もちろん握りたかったよ日輪刀。

刀とかそういうのはさ、男の子の夢じゃん。

でもさ・・・・でもさぁ・・・・

「まさか・・・爆散するとは思わないじゃん・・・ねぇ・・・」

本当にもう・・・もう・・・うぅ、悲しくなってきた。

「うおぉん・・・」

(マジ泣きだ)

(マジ泣きですね)

(マジ泣きだわ)キュン

(ド派手にマジ泣きだ)

「うむ!豪快に泣いておるな!何、気にするな!薬膳殿!」

「いうなよぅ!!」

「お館様のお成りです!!!」

コントしてたら来ちゃった。

 



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おのれうぶやん キャンピングモンスター在住のPC

なんやかんやあってとりあえず炭治郎と禰豆子の二人はお館様に認められた。

結局僕が呼ばれた意味ってなんだったんだ?まぁいいか。

炭治郎を連れて先に蝶屋敷に戻るか。

「じゃあ僕はこのへんで・・・」

「あぁ、アイリス。君は残っていて欲しいんだ」

「ほへ?」

なんじゃろうか?

とりあえず座り直そう。

「アイリス。君にやってほしいのは、君の薬膳で禰豆子を人間に戻せないか試すことだ」

「薬膳で・・・ですか」

「あぁ。君が扱う摩訶不思議な食材なら、禰豆子を鬼に戻すこともできるかもしれないし、そうでなくても人を食べなくても良くなるかもしれないからね」

「・・・・」

確かにできる可能性もある。が、それよりもだ。

「産屋敷さん。僕がどうしてグルメ食材を使った薬膳を柱や一部の隊士にしか出してないのか覚えていますね?」

「もちろん」

「可能性はあります。いくつか心当たりもありますし。ですが、それは今まで極力避けていた僕の懸念を根本から覆すことになる」

僕が最初に懸念していたことだ。

「グルメ細胞に適合した人間は、胡蝶さんを見れば分かる通り身体能力が上がります。そしてそれはおそらく、元が人間である鬼も同じです。適合しなかったやつはまだいい。強化などされず言い方は悪いですが腹を満たすだけですから」

問題なのはそう

「適合してしまった時それが一番マズい。その時の鬼の力は、今の比ではなくなるでしょう。それこそ名もない鬼ですら下弦並とまでは行かなくとも、それに迫るほどの強さを手に入れるでしょう。人を食べ続ければ」

グルメ細胞は好みの食材を食べれば食べるほど強くなる。

もちろん人を食べ続ければ強くなるのはそもそもの鬼にもある話だけど、グルメ細胞を獲得してしまった鬼が、その上限を軽く超えてしまう可能性は高い。

そうなれば・・・

「今の鬼殺隊では全滅は必至でしょう」

蝶屋敷にいる子達は良い。僕もいるし、カナヲやしのぶちゃんはグルメ細胞を使いこなしているし、元が強い。

柱に振る舞っているのも元が強いので死にづらいからだ。

だが下位隊士は違う。彼らは非常に死にやすい。

その中でグルメ細胞に適した子が食われてしまったら?

ましてやその鬼が適合してしまったら?

そんな事になったら僕は・・・ある意味プレイヤーとしては正しくても、一人の人間としては最悪の行動を取るかもしれない。

この世界を・・・最初からやり直すという行動を。

時々、ここがゲームの世界であることを忘れてしまう。

ゲーマーとしては情けないかもしれない。のめり込み過ぎている。

はは。VRゲームにのめり込む側に成るなんてなぁ。

効率を考えるなら最初に薬膳料理を出して、全員強化するのが正解だろう。

どんなに鬼が強かろうと初戦は個体だ。

実力が拮抗している場合、マンパワーの前には敗北するだけだ。

だけど現実にほど近いこのゲームは、たった一つの違いで何が変わるのかわからない。

正直ゲームだから食材の残渣が残ってないだけっで、その残渣を食べて鬼が強くなってしまう可能性が現実にはある。

僕の存在そのものがこの世界では異常なんだ。

・・・いけないな。

考えが変な方向に行ってしまっている。

「アイリス。君の懸念は最もだ。だけど、私の気持ちは先程炭治郎達が居た時に行った言葉の通りだよ」

産屋敷さんの声が響く。

「私は彼らこそが、鬼舞辻との長い戦いの歴史を変える存在と思っている。やれるだけのことはやっておきたいんだ」

「・・・・」

「その為なら私は君に頭も下げよう」

「はっ!?」

「なっ!」

「お館様!?」

そう言うと産屋敷さんは僕に向かって本当に頭を下げた。

「私は私の剣士たちを守る義務がある。そして君の料理ならそれを可能にできる。私の頭を下げるだけでそれができるなら・・・安いものだよ」

やめろやそういうの(遠い目。

これ断ったら僕が完全に悪者じゃないの・・・。

おのれ図ったなうぶやん。

「・・・・ははは。そこまでされたら断れないじゃないですか」

「・・・ふふふ。卑怯だと言ってくれても良いんだよ?」

「まさか。やりましょう」

「ありがとう。じゃあこれからよろしく頼むよ。食柱」

「えぇ。わかり・・・んん!?食柱!?」

「あぁ、少し早いけど君は柱を名乗るのに必要十分な実力はあるしね。鍛冶屋の里に行って日輪刀を貰えばすぐにでも柱であることを全員に通達するつもりだから、すぐにでも行ってほしいな」

「ちょ、ちょちょちょ!?日輪刀って僕が奮ったら爆散するんじゃ・・・」

「うん。その為にも君のその万膳薬刀を是非調べさせて欲しいって鍛冶屋の里から要請があったからね。行ってくれるかい?」

「いやいやいや!?猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を貰えればこっちでどうにか・・・いや、待てよ。向こうの職人を連れてくれば早いか」

「じゃあそういう方向でお願いするね。楽しみにしてるよ」

そういって微笑む産屋敷さん。

しのぶちゃんは表情こそ変わってないけどキラキラした顔でこっちを見てるし、富岡くんも雰囲気がそんな感じだ。

周りも一部(主に蛇とか風とか)はともかく歓迎ムードだ。

おのれうぶやん。

 

柱合会議が終わり超屋敷へ戻るなり、しのぶちゃんはすぐさま走っていった。

あの様子だとカナエさんに早速言う気だな・・・。

外堀が埋められていく・・・ちくせう。

まぁ、それはそれとして・・・。

「今いるのは伊之助に善逸。それと炭治郎か」

そして禰豆子を含めた4人・・・彼らがグルメ細胞に適合すればかなり戦力アップになるはずだ。

とりあえず今の容態を見てみるか。下手に与えちゃうと良くないし。

 



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女の子は素晴らしいだろ!? 鬼殺隊隊士の金髪の少年

善逸視点

 

蝶屋敷に連れて来られた俺達は、はっきり言って散々な状態だった。

炭治郎は顔も含めて全身に切り傷や擦り傷が沢山付いてて、全身筋肉痛で肉離れも起こしてる。オマケに下顎も割れてるって言われてた。

伊之助は見た目は酷くないけど、喉を酷く痛めてる。何かあったのかいつもの様な元気がない。

俺は一番酷いらしく、あの気持ち悪い蜘蛛の毒のせいで腕と足は縮んじゃってる。左腕なんか痙攣してるし。

でも後遺症は残らないって話だから良かったって思ってる。

蜘蛛になっちゃった人は残るって言ってたから。悲しいね

しのぶさんって人は面白い音をしてる人だ。

優しいかと思ったらある人が来ると少し熱が入ったみたいにツンツンしだす。

蜘蛛になっちゃった人達を治す時は女神様みたいだったな。

みんなしのさんの所に行ってたし。

反面分からないのが薬膳さんって呼ばれてる人だ。

優しい音はしてる。

してるんだけど、まるで壁の向こうか、水の中から聴こえてくるようなくぐもった音なんだ。

それと一緒に悲鳴の様な、泣いてる様な、そんな悲しい音も聞こえてくる。

どうしてあの人の音はあんなにもくぐもっているんだろう?

どうしてしのぶさんの音が柔らかになるのに、薬膳さんの音は苦しそうになるんだろう?

 

「皆さん。どうですか?身体の具合は?」

「はい。お陰様でかなり良くなってます」

「そうですか。それでは、竃門くんと伊之助くんは、予定通りに機能回復訓練に移りましょう」

入るなり、しのぶさんはそんなことを言ってきた。

え?なんなのそれ?

そう聞き返す前に炭治郎達は連れて行かれた。

 

機能回復訓練とやらが始まって数日、炭治郎と伊之助は毎日やってるんだけど、帰ってくる度にげっそりした顔でやってくる。

何やるの?って心配になって聞くんだけど

「ごめん…」

とか

「キニシナイデ…」

しか返ってこない。

なんだよ!?こえーよ!

教えてくれよ!俺も明日からやるんだからさぁ!

そしてその明日が今だ。

怖いよぅ…何やらされるんだよぅ…。

そう思ってついて行った先の道場っぽい大部屋には、女の子が居た。

女の子だ。

キリッとした雰囲気の二つ結びの女の子。

それを真似して本人達なりにキリッとした顔をする3人の女の子達。

あとは奥に湯呑が並んだちゃぶ台の側に座ってる女の子。

女の子。女の子。お・ん・な・の・こ!!!!

「善逸さんは初めてですのでご説明します。先ずは寝たきりで固まった身体を解していきます。次にあそこのちゃぶ台で反射訓練を行います。湯呑の中は薬湯が入っており、それを先に相手に掛けると言うものです。掛けられたくなければ、相手の湯呑を抑えてください。最後は全身訓練。端的に言えば鬼ごっこです。相手は私アオイか、あちらのカナヲになります。また、無いとは思いますが希望があればアイリス様がお相手してくださる事もあります。なにか質問はありますか?」

その時…俺は理解した。

こいつら…こいつら…こいつら!!!

うおぉぉぉのれちくしょおおおおぉおぉぉぉーーーーーー!!!

「すいません。ちょっといいですか?」

溢れる怒りを抑えて手を上げる。

「はい。なんですか?」

「いえ、ちょっと……お前ら。来い」

そう言ってゆらりと立ち上がり、二人のボケを連れて行く。

行かねぇとか知るかそんなもん!

そんでもって二人を外に連れ出した瞬間。

俺はキレた。

「このクソどもが!ゴミ共が!!そこに正座しろ正座!ゴラァ!」

「ナンだとテメェ…!」

うるせぇ!俺の不安と怒りと恨みの一撃を喰らえ!

バッキャア!!!

「ゴッハァ!?」

「伊之助ーーー!?何をするんだ善逸!?伊之助に謝れ!」

なにをーーーー!!!

「お前が謝れ!お前らが詫びれ!!天国にいたのに地獄にいたみたいな顔してんじゃねぇ!!毎日女の子とキャッキャキャッキャしてただけのくせに何やつれた顔してたんだよ!土下座して謝れよ!切腹しろ!!」

「なんてこと言うんだ!」

「黙れこの堅物デコ真面目が!!そして聞け!いいか!?女の子に触れるんだぞ?!身体を揉んでもらえて!湯呑で遊んでる時は手を!鬼ごっこする時は身体に触れるんだぞ!!!女の子にはおっぱいが二つにお尻も二つ!太ももも二つ付いてんだぞ!!すれ違えばいい匂いするし見てるだけでも楽しいだろーが!幸せ!!うああぁぁぁ!!!幸せええええぇぇぇぇ!!!!」

 



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機能回復訓練

アイリス視点

 

「幸せえええぇぇぇぇぇ!!!!」

「………アイリス様。私嫌です。あの人の相手」

だろうね。同じ立場なら僕も嫌だ。

然し善逸の気持ちもすごく良くわかる。

皆良い子だしアオイとカナヲに至っては美少女だ。

そりゃ善逸でなくてもあわよくば…なんて考える。

…………まぁ善逸のアレは行き過ぎだけど。

僕だって薬膳料理人として早くからここに来なかったら、善逸みたいな事を……いや、しないな。流石に。

善逸のアレは限界を超えた童貞って感じだ。

ん?大正時代の平均の結婚適齢期って何歳からだっけ?

ひょっとしたら善逸の行動は普通なのかもしれない。

後で調べて置こうっと。

そうこうしているとやる気に満ち溢れた善逸と伊之助。遅れて申し訳無さげに炭治郎が戻ってきた。

 

柔軟

ギチギチギチギチ

「うふふふふふ」

(アイツやる奴だぜ…俺でも涙出るくらい痛えってのに笑ってやがる…)

「ふむ。どうやら効いてないようだね。なほちゃん。すみちゃん。きよちゃん。代わりなさい。僕がやろう」

「え?いや俺3人が…」

「深呼吸して〜♪」

ギチギチギチギチギチギチ!!!!!

「ぎぃやああああぁぁぁぁ!!!!???」

「いいぞ〜♪このままゆっくり10数えて〜♪」

「痛い痛い痛い痛い!!??折れる!背骨折れるからぁ!!?

「ぜ、善逸ーー!!??」

 

反射訓練

シュバババ!

ピッ!

「ふっ…俺は女の子にお茶なんか掛けたりしないぜ」キラーン

「………(腹立つ)」

「じゃあ次は僕がやろう」

「え?」

「When to jump out, enjoy!」

「え?え?!な、なに?!」

「ヨーイドン!!」

シュバババババババッ!!

「ちょ、ちょちょっ…わぶ!」

バッシャバッシャ!

「どうしたどうした?びしょ濡れだぜボーイ?」

「善逸ーーー!?」

(は、はえぇ…少しも見えねぇ)

 

全身訓練

「うっひょーー!」ダッ!

「ひっ!?」

「わっしょーい!!」ダキッ

「ッの!!」

ドカッバキッ!

「勝負で勝ち戦いに負けた!!」ボロッボロ

(流石に止めとこう)

 

炭治郎視点

 

とまぁこんな感じで善逸は薬膳さん…アイリスさんに偶に手酷くお仕置きされながらも機能回復訓練はこなし、続く伊之助もそれまでが嘘のように勝ち進んだ。

(俺だけ負け越してる…不甲斐ないなぁ)

だけど二人の快進撃もそこまでだった。

カナヲには勝てない。

3人とも彼女の湯呑みを抑える事も掛けることも出来なかった。

負け慣れてない伊之助は不貞腐れ、善逸は早々に諦めに入り、訓練場に来なくなった。

「また貴方だけですか」

「すみません…明日には連れてきますから」

「いいえ。あの二人には構わなくて良いです。あなたも来たくないならそれで構いません」

そういう訳にはいかない。

機能回復訓練と言うからには、これをこなせないと任務に戻る資格が無いということだ。

そうだ!俺がカナヲに勝って、二人に教えてあげよう!

「いえ、頑張ります!」

「うん。いい心掛けだね。炭治郎くん」

「アイリス様」

いつの間にかアイリスさんが訓練場に来ていた。

この人は不思議な人だ。

なんと言うか嗅いだことのない匂いに溢れすぎている。

そのどれもが食べ物の匂いだっていうのは分かる。

どの匂いを紐解いても美味しそうだ。

「さて、炭治郎くん。そんな君にこれをあげよう」

そう言うとアイリスさんは俺に鉢植えを渡す。

鉢植えには俺の名前が書かれていた。

「ありがとうございます。それでこれは…」

「これは僕と知り合いが品種改良したとある花でね。有ることをしながら一念に思い続けると、その熟考具合で咲くんだ」

「へぇ…何だか不思議な花ですね」

「うん。その花はね…実は食べることができるんだよ」

「花を…ですか?」

食べられる花…海の向こうにはそんな物があるのか。

アイリスさんは日本とアメ…リカ?と言う国の人の間の子らしい。

アメリカ…凄い国だ。

「あぁ、そして咲く速度によって味が変わるんだ。試しに食べさせてあげよう。これが僕が今朝咲かせた花だ」

そう言って差し出して来たのは、花というか花の形に丸まったお肉みたいだ。

茎がちゃんとあるから花なんだろうけど。

凄い国だなぁアメリカ。

「えっと…生でですか?」

「生でもイケるよ。焼いても美味しいけどね」

うーん…大丈夫かな?

「い、いただきます」

取り敢えず花弁を一枚取って口に入れる。

モムモム…モムモム…

………!!!

う、美味い!

美味すぎて良く分からない!!

美味しいお肉って生でも食べられるものなのか!?

も、もう一枚…

「あっ、ごめん。カナヲ達にあげちゃった」

「えっ…そ、そうですか」

そ、それもそうか。あんなに美味しいもんな。

でも…あれがこの鉢植えから…。

「炭治郎くん」

「はい。なんでしょうか?」

「僕はあんまり直接的なアドバイスは出来ないんだけど、一つだけ。今の君ではカナヲには一生追いつけない。それは根本的な違いがあるからだ」

根本的な違い…。

それを正せば追いつけるのだろうか?

「僕が言えるのはこれだけだ。精進しなさい」

「はい!ありがとうございます!」

良い人だなぁアイリスさん。

俺よりずっと小さいけど。

 

アイリス視点

 

「意外と上手くできたなぁ」

炭治郎に渡したのは全集中の呼吸向けに改良…いや、新しく生まれたローズハムだ。

しのぶちゃんとカナヲとIGOの協力の下生まれたこの特殊調理素材は、食林寺だけでなく料理人の集中力向上の為に広く普及している。

感謝の念という一般人には少し理解しにくい感覚を、呼吸という形として落とし込んだのがこのローズハムだ。

その所為もあってか、味は本家本元のローズハムより数段落ちる。

でも食べた事ない味だったのだろう。炭治郎は実に美味しそうな顔をしていた。

うんうん。苦労したかいがあったってものだ。

 



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別に身長差を妬んだわけじゃない 蝶屋敷定住のPC

じっさい機能回復訓練ってどの辺り迄が合格ラインなんだろ?
リハビリ的なあれなのかな?


アイリス視点

 

「やいちび!俺にも権八郎に食べさせた肉を寄越しやがれ!」

「おい!そんな言い方するなよ!食べさせてもらえないかもしれないだろ!?」

翌日、伊之助と善逸が押しかけてきた。

恐らく炭治郎から聞いたのだろう。

「権八郎ってだれ?」

「すいません。炭治郎の事です。コイツよく人の名前間違えるんです。あ、俺は吾妻善逸です」

知ってるけどね。

「ふむふむ…それで二人はアレを食べたいと?」

「権八郎は食った。なら俺も食える!」

「どういう理屈だよ」

全くだ。

「うーん…とはいえあれは何回負けてもめげない炭治郎君だから食べさせたんだよねぇ」

「うっ…」

「ぐっ…」

僕がそう言うと二人はバツが悪そうな顔をする。

炭治郎が頑張っている間、二人は遊び回っていたからね。

「伊之助くんは昨日までどこで何をしていたのかな?善逸くん。こっそり食べるご飯は美味しかったかい?」

「げぇ!?き、気づいてたの!?」

「お、俺は山の主だ!山にいて何が悪い!」

「気づくとも。僕が君達のご飯を作っているからね。それと山の主とか言うけど、女の子一人にも勝てないんじゃ主とは言えないんじゃないかい?」

善逸は恐怖で顔を青くしてガタガタ、伊之助は怒りで顔を赤くしてブルブルと身体を震わせている。

面白い対比だな。

「まぁ、ついて行けないなら無理しなくても構わないよ。その代わり回復の見込みなし。ってことで鬼殺隊を辞めて貰うだけだから」

「なんだと!?」

「一度の瀕死で使えなくなる奴は要らないってことさ」

残酷だがこれは彼らを守る為でもある。

下弦ですらこれならより強い上弦に会えば、何の情報も得られずに死ぬだろう。

そも機能回復訓練はアオイに勝った時点で実戦復帰の判定になる。

一般の隊士なら。

だが彼等は仮にも下弦の鬼に迫る実力がある。アオイでは役不足だ。

継子であるカナヲに勝てなければ、今後下弦の鬼に遭遇する度に瀕死になる。

ギリギリの戦いばかりすれば、何時再起不能の重症を負うかわからない。

特に善逸はそれをひしひしと感じているだろうね。

「あの…もし隊士をクビになったらどうなるんですか?」

「そうだね…その隊士の育手が育手の権利を失ったり、引退を取り消して現役に戻すかもしれないね」

「え…」

実際の所どうなんだろうね?

そこんところは明かされてないから僕も良くわからないんだよね。

「爺ちゃんは…俺の育手は片脚ないしもう歳なのに?」

「そりゃそうだよ。その人が育てて送り出した子が駄目だったんだ。その人自身がその身を以て責任を取る。当たり前でしょ?」

「だって…だって逃げたのは俺だよ?俺が悪いのに、どうして爺ちゃんが悪いってことになるんだよ!?」

「それが隊服と刀の重さだよ」

 

善逸視点

 

「それが隊服と刀の重さだよ」

眼の前が真っ暗になった。

この人は本気で言っている。

俺がここでサボりまくってたら本気で辞めさせる気だ。

そこには勿論優しい音もある。

けれど大半は駄目なら仕方ないって感じの音だ。

そりゃそうだよ。俺は死にたくない。

全然弱いし。

正直辞めさせるって聞いたとき嬉しかった。

俺にしては良くやったんだって爺ちゃんに報告して、怒られながらも暮らそうなんて考えてた。

でも…もし俺がここで辞めたら、今度は爺ちゃんが死ぬ様な目にあう。

俺のせいで。

俺が逃げたせいで。

爺ちゃん怒るかな?

いや怒るだけなら全然良い。

もし…もし…爺ちゃんが今度こそ見捨てたら?

見捨てなくとも、爺ちゃんが自分を責めたりしたら?

………嫌だ。それこそ俺は俺が許せない。

大好きな爺ちゃんを俺自身の手で傷つけたんだ。

きっと自殺する。

鬼にもひょっとするとなるかもしれない。

俺は…俺は…。

「まぁ、まだ時間はあるんだ。ゆっくりしていきなよ」

その言葉にはあからさまな嘘と少し申し訳無さそうな音がした。

 

アイリス視点

 

「……やり過ぎちゃったかな?」

はっきり言って善逸は強い。

原作ではなんのかんの言って成り立てとはいえ上限の鬼を一撃で倒せる実力を身につけるし。

あの時は気絶してない状態だったし。

そのパフォーマンスを常に保てれば3人の中でも一番の実力者だろう。

ヒノカミ炭治郎は除くとして。

荒療治とは思うけど、ガッツリ関わると決めたなら、あの三人の強化は急務だ。

無限列車までに、猗窩座を倒せなくても煉獄さんの援護はできる程度にはしておきたい。

悪いとは思うけど要な事だ。発破をかけておかなくちゃね。

 

そんなこんなで不安な所もあったけど、三人は無事に全集中常中を会得し、更にはグルメ細胞にも適合した。

グルメ細胞のことを話した三人の反応は

「好物を食べるほど強くなるって何だか子どもみたいですね」

「はい!明日から高いもの下さい!好物なんで!!」

「天ぷらだ!天ぷらよこせ!!」

ある意味予想通りだった。

三人はこれから無限列車に乗るわけだけど…正直不安だ。

だけどその前に日輪刀をが届く。

一応鍛冶屋の里に行ったとき、伊之助の刀の担当の鉄穴盛さんには刃をギザギザにする様に伝えておいたけどちゃんとしてるかな。

それと同時に僕の日輪刀も届く。

どんな形でどんな色になるんだろ?

楽しみだなぁ。

 



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僕の日輪刀

炭治郎視点

 

「よぅ!持ってきてやったぞ!ガッハッハッハ!!」

そう言って鉄穴盛さんと鋼鐡塚さんと一緒にやって来たのは、えらく背丈の低い肌の黒い髭だらけのお爺さんだ。

子どもくらいの背丈で、鋼鐡塚さんたちよりずっとガッチリしていて、如何にも鍛冶屋をやってます。といった風体だ。

「やー久しぶり。元気してた?」

「おぅ!実は最近体の調子がよ…」

深刻そうな顔をしてるけど、アイリスさんからは何の心配もしてなさそうな匂いがする。

「頗るいいんだわ!毎日嫁さんを夜泣かしてばっかりよ!だっはっはっはっ!!!」

「あれだけ黒マカ亜鉛の実を食べてりゃそうもなるよ」

「毎日ギンギンよ!5人とも満足してらぁ!」

凄い人だ。色んな意味で善逸には聞かせられないなぁ。

 

アイリス視点

 

「ちぃっと費用と時間は掛かったがよ。お望みのもんは出来上がったぜ」

そう言う彼はトレード要求をしてくる。

そう、実は彼はオフラインで僕とこのゲームをプレイしているプレイヤーの一人だ。

名前はエルガルド。本名は前川猛。

NPCではどうあっても僕のステータスに耐えうる日輪刀が作れなかったので、急遽呼んだ。

ちなみに彼は鬼滅の中ではアオイちゃん派だ。このロリコン共め!ってね。

今の僕のステータスだけどこんな感じだ。

 

STR 6262 MND 4352 HP 686585

DEF 469 INT 5219 MP 95710

VIT 12339 LUK 6674 CRU 2570

 

薬膳料理を作りまくってたお陰でVITがあり得ないほど高い。

けどこれだけあってもドラゴンボールの世界だと不安しかない。

まぁ、幸いにしてここは鬼滅世界。十分すぎるほど早い。

寧ろこれ電車より走った方が速いぞ。

炭治郎君たちも軒並み200代には載ったみたいだし、恐らく下弦とやりあっても大怪我は負わないだろう。

因みに柱の基準のしのぶちゃんはこう。

 

STR 337 MND 405 HP 6940

DEF 357 INT 464 MP 8694

VIT 738 LUK 364 CRU 236

 

柱はこれを基本的に前後する。

炎柱の煉獄さんなら全体的にバランスがとれつつMNDが高めとか。

岩柱の悲鳴嶼さんだとSTRに尖ってたり。

炭治郎達はこれより100-200少ない感じだ。

これなら猗窩座との戦いで動けないなんてことは無いだろう。

懸念があるとすれば場慣れしてないから動けない可能性があるくらいか。

その辺は僕がフォローすれば良いか。

「それで?どんな風になったの?」

「おぅ。お前はVITたけーしよ。やっぱり刀が合うぜ。まぁ見た目がすげぇ事になったけどよ!」

そう言って一旦トレードを終えると、目の前にバカみたいに長い刀が現れる。

「長っ!?」

「長い!?」

「なげぇ!?」

「長いですね」

「長過ぎだろ」

現れたのは全長4m。刃渡り3.5m。柄50cmの巨大な日輪刀だ。

「名前は陽光丸。モデルは物干し竿だ。鞘は普通の作り方じゃ抜けねぇからこうやって開閉式にした。刃の幅を通常より厚めにすることで耐久性もある。理論値上はお前のフルパワーで振るったって折れねぇよ」

「つまり折れと」

「はぁ!?巫山戯てんのかてめぇ!折るなって言ってんだよ!」

「なんでオメーがキレるんだよ。それと折れるもんなら折ってみやがれ。隕石とキスしたって折れねぇぞ。そいつは」

そう言って猛はニカッと笑う。

かなりの自信作みたいだ。

「それと普段はこうやって布に巻いとけ。この布も特殊なやつでな。多少形が変でも相手を別の物に誤認させる効力がある。ほれ。お前らにもやろう」

そう言って差し出して来たのはマドワシ蚕の糸から織られた布だ。

元から隠れて相手から身を守るマドワシ蚕の絹糸だから、その効果は折り紙付きだ。

 



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無限列車に行く前に

炭治郎視点

 

「刀が折れねぇかまで確認してからが引き渡しだ」

そう言ってエルガルドさんは俺達の任務に着いてくることになった。

鉄穴盛さんと鋼鐡塚さんは帰っていった。

出発までの間に、エルガルドさんにもし目の前で折られたらどうするのか聞くと

「そんなの決まってんじゃねぇか。打ち直すだけだ。今度はもっと頑丈にな!ガッハッハッハ!」

と笑った。俺の日輪刀もエルガルドさんに打ってもらいたい。怒らないし。

アオイやカナヲとも話をした。

アオイは剣を振れない事を気にしてたけど、以前アイリスさんがアオイが薬膳料理を覚えてくれるから、心の底から助かっている。と言うことを伝えたら嬉しそうな匂いがした。

カナヲは心の声が小さいから、カナヲが持ってたコインを使って賭けをした。まぁ、一度ダメでも何度もやるつもりだったけど。

カナヲも心のままに生きていけたらいいなぁ。

その後、蝶屋敷の持ち主で元柱のカナエさんからカナヲや皆をよろしくと頼まれた。

カナエさんは元々柱だったけど、ある上弦の鬼と対峙したとき、瀕死の重症おったらしい。

その時偶然居合わせたアイリスさんのお陰で一命を取り留めたけど、もう鬼殺隊としての仕事が出来ない身体になったという。

カナエさんが言うには、緊急事態だった為、俺達のようにグルメ細胞を馴染ませる事が出来なかった弊害だと伝えられた。

それでも死ぬ寸前の人間がああして生きていられるほど回復出来たのは純粋に凄い。

ただ、アイリスさん曰く柱だったから成功した事例だそうだ。

普通は急激な細胞の変化と自己再生能力に身体が追い付かずに、却って死を早めてしまうらしく、ギリギリの賭けだったらしい。

思うところが無いわけじゃないけど、俺達の家族を襲ったのが鬼舞辻無惨なら、幾らアイリスさんでも死んでしまったかも知れない。

その上弦の鬼も圧倒はしてたけど斃すことはできず、逃げられたそうだし。

でも今度からは日輪刀があるんだ。

鬼舞辻を斃す日はすぐそこだ!

 

アイリス視点

 

「よし。ちゃんと僕の薬膳を食べてるようだね」

「はい。欠かしてません」

診察しているのは不死川玄弥くんだ。

鬼食いという特異性を持って戦う彼の負担を、なんとか減らせないかとしのぶに相談され、禰豆子ちゃんの人間復帰の料理に苦心していた僕は、息抜きと手掛かりになるかもと言う打算を含めて、彼の為に薬膳を作った。

結果として言うとデメリットを完全に帳消しする事は出来ないが、薬膳を食没する事で、バッドステータスを順次解消する事で、デメリットの大きな軽減には成功した。

更に本人の類まれなるフィジカル面を強化する為、食義を教えたのだが、習得は驚く程早かった。

食林寺の師範代として認識されており、あの珍師範が一発で名前を覚えるくらいだ。

僕はゲーム内の時間じゃ2年掛かったのに…。

これで原作のように上弦の壱を食べて死ぬ様な事は無い筈だ。

また、原作と違い食義を修めたことで、功名心や無力感が無くなり、生来の優しさが全面に出ている。

一番変わったんじゃないかなこの子。

「まだ上弦や下弦と大敵はして無いから、何とも言えないけど、この分だと斃すのは難しくても、手も足も出ないなんてことにはならない筈だよ」

「油断大敵っというやつですね。ご忠告ありがとうございます」

深々と頭を下げる玄弥くん。

うーん。良い子だ。炭治郎と良い玄弥くんといい親族の教育が行き届いてるなぁ。

だからこそ

「二人が仲違いしてるのがなぁ…」

玄弥くんが去ったあと、僕はそう呟いた。

 



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眠らないとか卑怯だろ 無限列車兼下弦の壱

無限列車に到着し、僕らは煉獄さんと合流した。

「うむ!ヒノカミ神楽というのは聞いたことがないな!初耳だ!君のそれが攻撃に転用出来たのは喜ばしい事だが、この話はこれで終わりだな!」

「え!?ちょ…ちょっともう少し…」

「俺の継子になれ!知識の面では力にはなれないが、その他の面では面倒を見てやろう!」

「えぇ…」

「それにそういう話なら薬膳殿の方が詳しいだろうな!彼の知識はお館様並だ!」

そう言って炭治郎他四人が僕の方を見る。

うーん。余りネタバレにならないように配慮しつつ、彼が自力でたどり着けるようにするには…。

「お館様並は言いすぎだけど、察するにヒノカミ神楽は君のご先祖様辺りが、伝え聞いたなんならかの武術の型では無いかな?」

「武術の型…ですか」

「昔から極め抜いた人の動きは”舞”に喩えられることがあるんだ。お祭りの時の踊りが、当時の村に起こった一大事の一部始終を伝えていた。なんかと似たような事だね」

「なるほど!ならばやはり俺の下に来い!溝口少年!」

「俺は竃門です!?」

「炎の呼吸は古い!水と炎の柱はどの時代でも必ずいる!ヒノカミ神楽と言われるくらいだ。恐らく通ずる物が有るやもしれん!」

うんうん。これで炭治郎と煉獄さんのフラグは建ったな。

 

そして後は原作通りにねむらされるんだけど、MNDがこの世界では規格外に高い僕と猛は眠れないので、眠ったふりをして頃合いを見て起き、下限の壱を撃破しに行く。

「下弦の壱位なら余裕だろう。後々人手がいるこっちは俺に任せろ」

猛がそう言うので僕はさっさと先頭に行き、下弦の壱の頸を落とす。

そうなると必然的に列車を止めるイベントが発生する。

魘夢がなんか言ってるけど気にしない。

列車内で破壊音がし始めたから猛達が奮戦しているんだろう。

さてと。

「試してみるか…僕の呼吸がどんなものか」

日輪刀 陽光丸を改めて見る。

その色は浅縹。陽光という明るいイメージとは結びつかない色だな。

日輪刀は色変わりの刀だし、こういう銘のイメージから剥離する事が多いから付けないのかな?

さて、今の魘夢は列車そのもので、更に言えばこの後に猗窩座戦がある。

時間は掛けたくないな。

よし。やってみるか。

「雲の呼吸…」

この全集中の呼吸は急遽生み出したものだ。

とはいえその力は申し分ない筈だ。

なにせ猛の所のドラゴンボール世界の精神と時の部屋で修行したからね!

この呼吸を使えばSS2の悟空になら勝てたよ!SS3は無理だったよ…。

「上雲の型」

陽光丸を構え体勢を取る。

魘夢が分身を使って襲ってくるがもう遅い。

「筋雲」

太刀筋は緩やかに伸びやかに。

しかし迅速に細やかに。

余計な動きを一切せずに。

ただ一筋の線を描く。

ただ一筋に閃が奔る。

振り切る頃には軌跡の跡しか残らない。

視界という空に、剣閃という一筋の雲を残すのみ。

 

炭治郎視点

 

「ぎぃいいいいやあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

両断された先頭車両は瞬く間に崩れ落ち、断末魔を上げながら列車が揺れる。

「凄い…俺と伊之助が見つけるより早く頸を落としたんだ!」

「ちぃ!ししゃもに触るがやりやがるぜ!あいつ!」

「それを言うなら癪に障るだ!伊之助!」

俺が目覚めるより早く、エルガルドさんとアイリスさんは起きていて行動していた。エルガルドさんはその体躯を活かして見つからないように隠れていたらしい。

『こんなチンケなもんで金払いたくねぇしな!ガッハッハッハ!』

本当に凄い人だと思うんだけど無賃乗車はどうかと思う。

そのお陰で助かってるから複雑だ。

「伊之助!このままじゃ皆が危ない!お願いだ!急いで助けよう!」

「おぅ!親分の俺に任せろ!!」 

よし!俺は俺にできることをやろう!

 

アイリス視点

 

「うむ!大事ないようだな!薬膳殿!」

「そっちこそ乗客全員無事とは流石だよ。僕だったら何人かは見捨ててた」

列車が転倒し乗客の避難が一段落したあと、僕は鬼殺隊の面々と集まって隠を待っている。

結構大規模な事になっちゃったけどこれ隠し切れるのかな?

ドゴォォン!!

「ッ!?」

「え?何何!?今度は何!?」

「…どうやらもうひと踏ん張り必要のようだぞ。薬膳殿」

ようやく来たか。さぁ、ここからが本番だ。

 



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チートとかズルじゃん パワハラに悩む上弦の参

猛視点

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!???」

猗窩座からすれば今日という日は災難だろうな。

無惨とか言うパワハラ上司からちょっと鬼殺隊殺してこいよ。近いだろ?おん?て言われて来てみれば、猗窩座的には黒死牟と無惨を足しっぱなしにしたような柱とやり合う羽目になったわけだし。

猗窩座のストイックさにはファンも多いけど、アイリスには合わない。

アイツはバッサリと

「知らんよ。使えるなら使うでしょ」

とシステム的に恐らくチートを使ったことに対してキレた猗窩座に対して言い放った。

言ったとおりアイリスは昔から使えるものなら何でも使うタイプだ。

ホグワーツに入学したら秒でスリザリンと言われるに違いない。

何故ならアイツは正攻法で勝てない体だからだ。

生まれつき鍛えれば鍛えれる程筋肉量が落ちる。

適切な治療を受けてるから日常生活には困らないが、普通に働くなんてまず無理だ。

投資でお金が儲けられる資本主義万歳だ。

アイツと鬼舞辻はよく似ている。

どちらも生まれ持った身体で不便を強いられた。

だけど同情こそすれ共感はしないだろう。

アイリスにとって鬼になると言うのは正しく無駄だからな。

『好き勝手外で歩けないとか今より不便じゃん』

同じ悩みを持っているのに、見ている方向は真逆だもんな。

 

アイリス視点

 

「雲の呼吸 上層の型 巻雲」

「炎の呼吸 壱の型 不知火!」

そろそろタイムリミットだな。

いやー、敗北イベントを覚悟したけど良かった良かった。

僕一人でも割とオーバーキルだけど、雲の呼吸の出来を見たかったからちょっと不安だったんだよね。

そこに煉獄さんも加わったわけだしそりゃー余裕だ。

うん。決して私怨なんか混じらせてないよ?

チートカッコ悪いとか、人の気も知らねぇで男なら鍛えてなんぼだろJKとか、そもそも女みてーな顔してるから悪いとか言われて良し。フラグとかしーらね!とかなったわけじゃない。断じて。

猗窩座はどんなに強くてもドラゴンボールで言う所のナッパクラスだ。強いは強いが、今の僕の敵じゃない。

シナリオの都合上、死にはしないけど、僕らも死ぬ事はない。

あと1分もすれば夜明けだ。

ふっ、勝ったな。

「うおおおおぉぉぉぉ!!!許せぬ!貴様だけでも討つ!!!!」

叫びながら猗窩座が構えを取る。

あれは!!

「滅びろ!終式 青銀乱残光!!」

「煉獄ーーー!!!離れろーーーー!!!」

やっべぇ!!ブチ切れやがった!!

くそっ!やれるか?!いや防ぎ切ってみせる!!

時間によって変わるがこんな所で死者を出せるものか!

限界を超えろ!!

「界王拳!!6倍だーーーー!!!!!」

そう叫ぶと身体が赤いオーラに包まれる。

同時にHPが物凄い速度で減っている。

ぐきぎ…!やはり満足に使える2倍より明らかに負担がかかる。

だけどこれなら間に合う!

ステータスをフルに、いやそれ以上に活かして飛び回る。全方位同時に100発の拳が乱れ飛ぶ。

原作では冨岡さんですから避けれなかったが、避けるだけなら僕には可能だ。

しかし衝撃波までは如何ともし難い。

そしてそれは、ブチ切れて半ばヤケになっている猗窩座のパワーによって衝撃弾と化している。

これら全てを打ち消してしまわないといけない。

これは煉獄さんにも無理だ。

一発でも誰かに当たればそれは僕の負けだ!

ゲーム上では勝っても、僕の中のゲーマーとしてのプライドが許さない!

間に合わせてみせる!!

舐めるなよ!こちとら食柱だ!!!

 

炭治郎視点

 

離れろと言われた煉獄さんは、すぐさま俺たちの場所まで一気に下がってきた。

その瞬間だった。

ドムン!!!

凄まじい音がしたかと思うと、猗窩座とアイリスさんのいる地面が割れたいた。

もうもうと上がる土煙の中、背後から陽の光が差してきた。

その光を感じたのだろうを土煙から何かが森の中へと入っていった。

「貴様は殺す!!武を極める者を侮辱する貴様は!俺の手で必ず殺す!!」

そう叫んだ猗窩座の気配は向こうへと去っていった。

そして土煙が晴れると

そこには

倒れ伏したアイリスさんの姿があった。

 



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君ならどうする?

猛視点

 

「生きてはいます。生きてはいますが、いつ目覚めるのか検討も付きません」

蝶屋敷に運ばれたアイリスはそう診断された。

んー、てことはシステム的には24時間超えのクールタイムってところか。

現実での24時間クールタイムはなかなかしんどいぞ。

ゲーム内でどれくらい経ってるか分からんし。

まぁそれでもアイツが調整した鬼殺隊なら余裕だろう。

都合よく日輪刀もボロボロになってるし、刀鍛冶の里に帰るって名目で俺もリアルに帰るか。

「あの…」

「ん?」

そうやって俺が腰を浮かして直ぐに声をかけてきたのはしのぶさんだった

 

しのぶさんの話は、自分の診断が合ってるかどうかの確認だった。

まぁしのぶさんからしたら意味分からんわな。

絶対無傷で帰ってくると思ってた人が、日輪刀は壊すわ倒れたまま目を覚まさないわ。

とりあえず界王拳のざっとした説明をしておいて、死んだわけじゃないならそのうち目を覚ます。とだけ言っておいた。

現実に帰らんと時間わからんし。

「ちゅーわけだ。お前さんがそこまで不安に感じる必要はねぇと思うぞ」

第一NPCだろ。そこまで考えなくても問題ないっしょ。

まるで恋してるみたいに・・・

「それでも」

ん?

「それでも私は不安なんです」

ん〜?

「気づいてしまったから…私が…私が彼の事を好きだと」

ん〜ふっふっふっ♪

そこからの告白劇はまぁ面白いものだった。

出るわ出るわ。

恋してる子特有の気になる相手の所作が魅力に見える惚気。

はにかんだ顔が好き。

怒ってる顔も好き。

困った顔も悩んでる顔も。

ちょっと失敗した時も嬉しそうな時も。

そういった何気ないもの全てが愛おしい感情。

だから俺はあいつの本性を全部教えた。

割といや、かなりドスケベな事。

目的の為なら犯罪も辞さない事。

まぁ実際にはしないけど、ヒロアカ世界じゃ結構やってたみたいだし一緒一緒。

そしてほんのちょっぴりリアルの話を。

怒ったり戸惑ったり笑ったり泣いたりした。

だから俺はこう聞いた。

「それでもあんたはアイツが好きだって言えるかい?」

その返事だけど・・・まぁ俺から言うのも野暮だろ。

 

しのぶ視点

 

友人だと言うエルガルド(発音しにくいなぁ)さんから聞かされたのは、聞きそびれてた彼自身の話だ。

驚いたのは彼は私と同じ…いや、もっと酷い身体をしていたという話だ。

鍛えれば鍛えるほど衰えてしまう…。

私だって人より筋肉量が少ないのに、彼はそれ以前の問題だ。鬼殺隊でなかろうと普通に働いて生きていく事すら難しい。

それでもと彼は足掻いて、もがいて、今を掴み取っている。

その努力の程は、私では推し量れないだろう。

だからこそより惹かれた。

そして・・・・・真実。

正直に言うと聞かされた時は目の前が真っ暗になった、それならどうあっても私達は・・・。

「それでもあんたはアイツが好きだって言えるかい?」

その残酷な質問を前に私は・・・。



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ワカメじゃない!地毛だ! 無限城在住の小物

アイリス視点

 

「起きたーーー!!」

クールタイムが終わりしばらく経って、僕はこの鬼滅世界でのプレイを再開した。

覚えてやったぜ…波紋の呼吸を!!

丁度いいからとクールタイム待ちがてらよぉ〜〜〜〜!

どうやらそっちの方の才能はあってみたいで、結構すぐに覚えられた。

ただジョナサンは普通に強かった。

戦法がトリッキーな分読みにくいんだ。

だがお陰で見よ!このスキル群を!!

アイリス

スキル 食義 食没 料理Lv10 波紋 全集中 雲の呼吸

    界王拳(4倍) 舞空術 スタンド

スタンド名:ウィッシュボーン・アッシュ

本体:アイリス

パワー:B スピード:A 射程距離:E

持続力:C 精密動作性:C 成長性:E

能力 描線や紐等の線上の上を高速移動する。

 

いや…その…ちゃうねん…つい楽しくて5部までやったとかそういうのじゃなくて…うん。嘘です。楽しかったです。ごめんなさい。

まぁ、波紋とこいつがあれば今度は頸取れるでしょ!

さーてやるぞー!

 

「……ッ!アイリス様!」

「アイリスくん…目を覚ましたのね」

「うん。遅くなっちゃったね。皆は?」

寝室を出て玄関に向かっていると、アオイちゃんとカナエさんに会った。

これまで誰と会わなかった。

つまりは…

「緊急収集がかかって今本部に向かっているわ」

やはりな。

もう最終決戦か。

間に合うか?

「大丈夫。今行けば間に合うから」

「ご友人から預かった日輪刀です。ご武運を」

そう言って手渡されたのは、全長3m程の大太刀だ。

「最小限まで縮めたけどこれ以上は無理なんですって」

「十分。行ってきます」

さぁ!締めに掛かろう。

 

VITを活かした高速移動は、瞬く間に産屋敷さんと無惨を捉えた。

この距離…イケるか?

「話は終わりだな?」

「あぁ、こんなにも長く聞いてくれるとは思わなかったよ」

…ッ!このままだと産屋敷さんは間に合わない。

ならば!

「界王拳!!」

赤いオーラを身に纏い、独特の飛行音を立てながら一気に近づく。

「君なら必ず来てくれると信じていたよ。雲柱」

「何!?」

「波紋疾走<オーバードライブ>!!!」

思いっきり無惨を殴り地面に叩きつける。

「耀哉さん!!」

「あぁ。無事だよ。君が思い描いた通りになってないだろう?」

「え?ん?」

「君はどういうわけか私がやろうとしてる事を知っていそうな気がしてね。皆には黙っていたんだよ。よく言うだろう?敵を騙すには先ず味方からと」

……おのれうぶやん!

「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉ!!おのれ!貴様!!動けない筈ではなかったのか!!!??」

「やかましいぜこのワカメが!毟り取って吸い物にしてやろうか!?」

「それは不味そうだね」

「性格も悪くなりそうだしやっぱ止めよう」

むぅ。やはり効果は薄いか。

太陽でないと即死できないみたいだ。

いや、もちろん練りが甘かったのは否定しないけど。

「…目覚められたか。薬膳殿」

「えぇ。ラストダンスに遅れるのは紳士ではないでしょう?」

物陰から悲鳴嶋さんが出てきた。

凄いな。どうやって隠れてたんだ?

「万が一君が来なかったらこの屋敷を私ごと吹き飛ばす算段だったよ」

やはりな。

この僕がいる限り産屋敷ボンバーとかやらせないぞ。

「おのれ!この異常者集団が…!?」

効いてきたか!

ここから更に…!

「ぬぐ!?これは…なんだ!?血鬼術だと!?」

読み通り!浅草の人の血鬼術!

なら次に来るのは

「こんなもの吸収して…!ぐおおおおぉぉぉぉ!!!??」

「思った通り…吸収しましたね!鬼舞辻無惨!!」

珠世様ーーーー!!

人に戻す薬の完成度…手を加えたかったけどクールタイムの関係上出来なかった。

どの程度完成してるか分からないけど、波紋を打ち込んだんだ。

原作より効きは良いはずだ!

駄目押ししてやる!!

「鬼舞辻ーーーー!!!!」

「うぬおおおおおぉぉぉぉ!!!???」

「COOOOOOOOO!!!!!」

今、過去最高の波紋を練り上げる!!!

太陽が登っていない!?関係無いな!長き歴史に伝わる太陽の波紋!人間の勇気の素晴らしき系譜の前には!!

「太陽の波紋!!」

唸れ!

「山吹色の<サンライトイエロー>!!!」

届け!

「波紋<オーバー>!!」

そして滅べ!!

「疾走<ドライブ>!!!」

 

無惨視点

 

い、いかん!?

アレはマズい!何かしらないがアレに当たれば私は死ぬ!!

嫌だ!私は限りなく完璧に近い存在だぞ!

こんな異常者集団の手で死ぬなどあってはならない!!

た、助かるためには…そうだ!

この女だ!この女を盾に。

嫌だが待て。

この男は凄まじい速さで軌道を変えられる。

それにもし、もしもだ。

この技がこの女を素通りして、私に直撃でもしたなら…!

クソ!どうする!?

考えろ!考えろ考えろ考えろ考えろ!!!

こいつが拳を止める方法を!

…………ふは

ふははは!!

そうだ!アイツだ!

これならばどうする?!

なぁ!

「鳴女ーーーー!!!」

ベベン

 

炭治郎視点

 

「なっ!?」

「これは…!?」

追いついた俺達が見たのは、突如として無惨とアイリスさんの間に現れたしのぶさんだった。

間に合わない。

恐らく誰もがアイリスさんの拳がしのぶさんを貫く様を想像した。

だが

「甘いだよワカメ頭が!!」

アイリスさんはそう言うが、アイリスさんの拳は止まることなくしのぶさんに当たる。

「っ!?」

「何!?」

「身体を伝われ!生命の波紋!!そして…」

光り輝く電撃のような何かが、しのぶさんの身体を伝わり、障子へと流れる。

「生命を冒涜するものに、太陽の裁きを下せ!波紋疾走<オーバードライブ>!!」

電撃が障子の中へと流れる吸い込まれる。

そして

「キイイイイイイィィィィヤアアアァァァァァァァァ!!!!!」

甲高い叫びが聴こえたかと思うと、障子がボロボロと崩れ落ちる。

瞬間、いくつかの影が障子を突き破って出てきた。

 

アイリス視点

 

「貴様…その女を殺しても良いというのか?!」

ワカメがなんか言ってる。

あぁ〜ん?聞こえんなぁ?

甘いな。僕はしのぶさんが死んだらリセットするくらいには好きになっちゃってるぞ。

それにな。僕は不安要素は徹底的に潰す派なんだ。

お前が誰か親しい人を囮に使うなんて予測済だよ!

強すぎる波紋は人間にも激痛を与える。

しかし鍛えられた人間ならば、逆に活力を与える!

鬼には即死級だが鬼殺隊にとっては有益!

あそこまで効果があるとは思ってなかったけど。

「アイリスさん…」

「あっ」

低い声で声を掛けられた。

ヤバい。

その事を知らないしのぶちゃんからしたら、無事だったけどいきなり殴られたようなもんだ。

………怒ってる?

「………色々と言いたい事は有りますが、今は大事な時です。後にしましょう」

―――だから生き残ってくださいね?

…勿論。

他の柱も隊士達も次々と到着した。

「終わりだ!鬼舞辻無惨!!」

皆を代表する様に炭治郎が叫ぶ。

「抜かせ!今宵終わるのは貴様らだ!」

応じる様に無惨が吠える。

さぁ、最終決戦だ。



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対決!黒死牟

「界王拳!4!倍!!ずぇい!!」

「むっ」

口火を切ったのは僕だ。

理由は簡単だ。

雲の呼吸は対月の呼吸だからだ。

他の世界を回っている内に、4倍界王拳も安定して使えるようになった。

しかし流石厳勝。

完璧に意表を突いたのにギリギリ反応した。

だが上空に上げることは成功した。

ぶつかり合った衝撃でみんな吹っ飛んじゃったのは申し分ないと思ってる。マジで。

「月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・籮月」

来た!

早い!

だがこれなら余裕だ!

「雲の呼吸」

見せてやるよ!

「中層の型」

これが対月の呼吸専用!

「朧雲!」

 

黒死牟視点

 

「これは…!」

無惨の話していた童が見たこともない呼吸で技を放つ。

それは正しく月の呼吸殺しとも言うべきものだった。

私が月の呼吸の型を放てば、朧雲という技で全て返される。

壱から拾までの型全てだ。

更に言えば元より怪しかった地力の差も、赤い闘気を纏った時より大きく離されている。

だがそれならば勝ち目もあろう。

良い剣士だ。

猗窩座は卑怯だの何だの言っていたが、私からすれば彼の言い分は正しい。

所詮強さとは手段の結果だ。

誇りある戦いなど後世の後付や本人の自己満足に他ならない。

勝てば良いのだ。例え相手が老いさばらえようと。

そして勝つとは生き残る事だ。

そこに貴賤などない。

ただ生き残った勝者と死んだ敗者があるだけだ。

故に。

時間に余裕がある私が勝つのは道理だ。

「月の呼吸 弐拾ノ型」

やつの雰囲気が変わる。

どうやら察したようだ。

だが半歩遅かったな。

「新月 厭忌月・銷り」

「新月!?くっ!」

勘付いたか。

この型に朧雲は通用せぬと。

 

アイリス視点

 

「くっそ!やっぱりあったか!」

75も型があるんだ!そりゃあるに決まってる!

対応の対応策くらい。

分かっちゃいたけど実際やられると焦っちゃうな。

「素晴らしいな。まさかあそこから反応してみせるとは」

「やらなきゃ死ぬんでね」

死にたくないのよ。

「ほぅ。童とてそう思い鍛錬を積めばそうなるというのか」

ん?

「いや、確かに僕は小さいけど童って年じゃないぞ」

「ぬ?」

「僕はこう見えて24だよ。悪かったね。小さくて」

「………それはすまなかった」

………おいどうすんだよこの空気。

「……そうか。そういうことか」

今度はなんだ?

「げに天晴なり。身体が育たぬと知りながらそこまで磨き上げる。真に一つの刃と称してよかろう」

……うん。何か知らんが乗っかっておこう。本人も納得してるみたいだし。

「そりゃどうも」

「既に私は人ならざるもの。然して嘗ては日ノ本一の侍を志した」

そう言うと若干緩かった空気が再び締まる。

第2ラウンドってやつか…上等。

「十二鬼月が筆頭。上弦の壱、黒死牟」

黒死牟が名乗りを上げて構えを取る。

「鬼殺隊。専門薬膳料理人、食柱及び雲の呼吸、雲柱。アイリス・ルーティアエレー・大山」

僕もそれに答えて改めて界王拳4倍を発動し、構える。

「いざ」

互いの刀を握る手に力が籠もる。

「尋常に」

互いを見合う瞳に熱が籠もる。

「勝負!」

互いのぶつかる声を皮切りに、再び死合の幕が上がる。

 



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お待ちしておりましたよ兄上 あの世在住の日の剣士

アイリス視点

 

「ちいぃ!!」

速い!

弐拾から始まる型を使われだしてから、一方的にダメージを負っている。

種は分かった。

新月から始まる月の呼吸の型は、僕ですら追うのが難しい神速の太刀だ。

辛うじて朧雲や雨雲で威力を弱めてはいるけど、それでも驚異的だから、避ける事を強いられる。

幸いにもHPが大きいから大事にはなってない。

けれどそれも時間の問題だ。

「月の呼吸 弐拾伍ノ型 新月・月魄災渦」

「…ッ!雲の呼吸 中層の型 雨雲!!」

ノーモーションの斬撃!

雨雲は分厚い雲をイメージした防御の技だ!

肌に刃が触れた所を一気に弾く!

「…っう!」

ダメージを貰うけど仕方ない!

そんなの織り込み済みだ!死ななきゃ安い!

「月の呼吸 弐拾壱ノ型 新月・宵の宮」

かわせる!

跳ぶ!

「月の呼吸 弐拾弐ノ型 殊華ノ弄月」

ナメるなよ!

「雲の呼吸 上層の型!筋雲!3層!」

舞空術で空中でも動けるんだよ!こっちは!

くそ、だがこっちもうかうかしてられないぞ。

現在HP 7258/686585

もうこれだけしかない!

黒死牟と界王拳4倍の代償。

界王拳を解除すればまだ戦えるだろう…だが!

アレを気取らせるわけにはいかない!

 

黒死牟視点

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

息も絶え絶えと言ったところか。

確かに驚異的な実力だった。

はっきり言おう。

あの赤い闘気による自傷が無ければ、私が彼の立場だった。

私に迫る実力者と言っても過言では無い。

「賞賛しよう……異国の剣士よ」

「はぁ…はぁ………何が?」

「貴様の腕前だ…私と同等……いや…それ以上だったやもしれん」

「………」

「猗窩座の言う事なら……隅にでも捨て置くがいい。奴は……貴様の力を…手に入れた経緯だけを見て…憤慨しただけだ。力とは……素材だ。結果…ではない。貴様は間違いなく……与えられた力を我が物にし…使い込んできた。故にこそ………私に迫れた」

そうとも。

私とてそうだった。

切っ掛けは緣壱への嫉妬だった。

奴は優れていた。恐らくは貴様もだろう。

こうしてみれば分かる。

貴様はあの時の私だ。

実力の前に膝をついている。

私があの時の緣壱だ。

実力を手に立っている。

だが貴様は…違うな。

真っ直ぐに私を見ている。

どうしてそんなに綺麗な瞳で私を見ている。

だから童だと勘違いした。

まるでようやく遊び相手を見つけた様な瞳じゃないか。

そうか…そうなのか…。

そういうことなのか緣壱?

お前は…ただ遊んで欲しかったのか?

「ようやくだ…」

「何…?」

「はっきり言うよ。正直もう終わりかと思った」

「どういう…意味だ?」

「界王拳は倍率に合わせて体力を削り、身体能力を上げる諸刃の剣。安定している4倍ですらダメージを貰えばすぐ危うくなる。童磨位なら余裕でも、あんたを相手にしてたらこうなるのは分かってた」

「…………」

分かっていて挑んだのか。

何故…。

待て。

こいつは先程なんと言った?

「だから僕は賭けた」

こいつは!

「あんたが対応への対応策を持っている事に!」

まさか!!

「っ!月の呼吸……」

「雲の呼吸 奥義!!」

間に合うか!?

「参拾ノ型!!」

「積乱雲!!!」

童の叫びが耳に伝わった瞬間、斬撃が私に襲いかかる。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!????」

それはまぎれもなく、私が今で放ってきた月の呼吸の数々ではないか!?

 

アイリス視点

 

「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!???」

「いよおっし!!!」

成功した!

雲の呼吸 奥義 積乱雲!

蓄積されたダメージを何倍にも増幅させ解き放つ最強のカウンター技!!

物理ダメージでないと効果を及ぼさないから、黒死牟や猗窩座の様な敵でない限り真価を発揮しない。

ダメージを受けないといけない上に射程距離が短い。

難点ばかりだけど威力に関しては群を抜く!

「黒死牟ーーーー!!!」

「ぐぅ!!??」

「日ノ本一の侍の頸!!貰い受ける!!!」

「!?」

「雲の呼吸!上層の型!!」

さらば!強き男よ!!

「筋雲!!!!」

 

黒死牟視点

 

一閃。

暗闇を切り裂く一筋の線が。

私の頸を両断する。

一瞬の油断と言えばそうかも知れない。

だが私はその一瞬だけ、彼に緣壱でも私でもない日ノ本一の侍 愛流守を見た。

愛の流れを守る…名は体を表すと聞くが…。

この私に流れる愛すら守るというか。

そうだな。

確かに私は。

私と縁壱の縁は。

同じ愛から生まれたものだ。

 

アイリス視点

 

「はぁ…はぁ…!」

ギリギリだ!

本当にギリギリだった!

黒死牟が油断していたら!

もしも胡座をかいて対応策を用意していなかったなら!

あの一撃は出せなかった!

止めはさせたはずだが…どうだろうか?

「………強き剣士よ」

飛ばされた頸から声がする。

身体が崩れているから、そう長くはないだろう。

「私は…君に何か残せただろうか?…日ノ本一の侍と…称してくれた君に…」

原作の黒死牟…厳勝の心残りはそうだっけな。

……そうだな。

「勿論。貴方は僕が出会った中で最強の剣士だ。貴方と戦えた事。其れそのものが何よりの誉れだ。その上勝ったのだからこれ以上のものは無い」

「………そうか………そうか」

嬉しそうに、噛み締めるように呟く黒死牟。

互いにギリギリの戦いだった。

恐らくはメタ読みで雲の呼吸を編み出していなければ、負けていたのは僕だったろう。

それを差し引いても最強に相応しい男だった。

「見たことない天才よりも、私は貴方こそが終生の強敵です」

「………」

「さらば我が強敵。さらば我が宿敵。さらば…さらば」

「あぁ…さらばだ…あぁ…口惜しや…」

最早一念と言った所だろう。

口元と涙を流す目を残すだけだ。

「貴公と…もっと…試合…を…」

最強の剣士は…そこで消え去った。



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慌てて飛び出たら襲われたんです 無限城在住だった教祖

しのぶ視点

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

渾身の突きが今再び童磨を森の奥へと吹き飛ばす。

これで5度目だ。

「あぁ!もうなんだいなんだい?!全く酷いじゃないか?」

やはり突きでは効果が薄いか…。

とはいえだ。まだ取っておきが残っている。

恐らくこれはやつには解毒できないだろうけど…アイリスさんはいつも言っていた。常に備える者こそ勝つ。

その点で言えばこの鬼…童磨は厄介だ。

見に徹していて手札を見せない。

だが…そこが弱点にもなり得る。

「獣の呼吸!壱の牙!」

「花の呼吸!肆ノ型!」

「んん?」

「穿ち抜き!」

「紅花衣!」

伊之助くんとカナヲの型を難なく防ぐ童磨。

やはり上弦には少し届かないか。

「無駄無駄ぁ。さっき言っただろ?グルメ細胞だっけ?それを持ってるのは君たちだけじゃ無いんだぜ?」

そう言うと童磨は筋肉を一気に膨張させ、二人を投げ飛ばす。

「ごわっ!?」

「かはっ!?」

「二人とも!」

「よそ見はいけないなぁ」

呼吸を乱してないか気になったが今はそれどころじゃない。

「ちぃ!」

「おっと。危ない危ない」

早いな。

だけどなんだ?この違和感は。

確かにグルメ細胞を食べれば身体能力は上がる。

アイリスさんもそれを危惧して、最近になっても柱と一部の隊士にしか振る舞っていない。

入手経路もアイリスさんを除けば私とカナヲ位しか知らない筈だ。

鬼が手に入れられるとはにわかには信じられないが…。

「どうやって手に入れたのか不思議そうな顔してるね。なら教えてあげるよ!」

……ちっ。顔に出ていたのか。

だが教えてくれるなら好都合だ。

「一番最初に言ったように、俺は万世極楽教の教祖でさ。信者が色々と贈り物をしてくれるんだ」

嬉しそうな顔してるな。

本当にグルメ食材なのか?

「だから俺は聞いたんだ。グルメ食材持ってないかな?ってそしたらくれたんだよ。なんて言ったかな?えーと……」

穴があるとするならアイリスさんが眠っていた期間だ。

だけど誰があの子に近づこうと思うんだろう?

正直私でもたまに怖いと思うのに。

「そうそう!確かエスカルゴって奴だ!君たち凄いね。確かに美味しかったけどあんなの毎日食べてるの?カタツムリの親戚だって言うじゃないか」

……………は?

「いま…なんと?」

「だからエスカルゴだよ。君達も食べてるんでしょ?」

「ふ……ふふ……」

なんだそれは。

「うふふふ…はは」

なんだこの…なんだろう?

「あっははははは!はははは!アーハッハッハッハッ!!」

「ありゃりゃ。自分達しか持ってないのが分かったからって壊れちゃったのかな?」

「バカらしくて笑ったんですよマヌケ。上弦ってなんですか?無惨の笑いを取る為にいるんですか?」

「ん〜?どういう意味?」

「いくつか聞きたいことがあるんですけど…構いません?」

「そりゃ勿論。なに?」

「そのエスカルゴとやら…何回食べました?」

「え?一回だけど。まさか君たち何回も食べるの?」

バカだ。もう笑いすらおきない。

こいつは何を聞かされてたんだ?

 

「おいしのぶ。こいつバカだぜ」

「なんだって?」

「伊之助くん。はっきり言うのは止めてあげなさい。かわいそうですから」

そうとも。例えそれが事実でも。

はっきり言ってやるのは可哀想ってものだ。

「いきなりどうしたんだい?揃いも揃って俺をバカ呼ばわりしだして」

「おかしいのがたまらないからだよ」

 



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分からねぇけどコイツは許せねぇ 鬼殺隊隊士の猪頭

「アイリスさん!」

ふぅ〜。なんとか間に合った。

散り散りになってたせいで何処にいるのか分かんなかったよ。

それにしても童磨…可哀相な子…。

「エスカルゴはフランス料理。リンゴマイマイっていうカタツムリを調理した物を指すんだ」

「……嘘でしょ?」

「ホントだよ。確かに普通の人になら滅多に食べることのないグルメな料理だと思うよ。グルメ食材ではないけど」

僕が言い切ると童磨は呆れたように天を仰いだ。

「なんだよそれ…じゃあぬか喜びじゃないか」

「それに仮にグルメ食材を手に入れたとしたら、その人はお前より遥かに強いぞ」

「…どういうことかな?」

フッフッフッ…教えてやろう!

カモン!

「ロッキー!!」

「キュオオオオオン!!」

甲高い鳴き声とともに遥か上空から姿を表したのは、巨大なプレシオサウルス。

首から尻尾全長はなんと3000km!これは日本列島の長さだ。

全幅も3000km。全高4000m!

戦艦の艦橋や砲台なんかを背負ったプレシオサウルス。

その名もバトルシップレシオ。

それが僕のキャンピングモンスター、ロッキーだ。

「何じゃありゃあ!!!うははは!すっげぇ!!」

「こ、これは…その…なんだい?これ?」

「バトルシップレシオの捕獲レベル…謂わば強さだが、それは中に住んでいるグルメモンスターの総合数値で変わる。卵から大事に育てた僕の言う事は聞くが、僕の許可無く近づくものには容赦しない」

そして今のロッキーは僕より遥かに強い。

この間じゃれつかれたときは本気で死ぬと思った。

悟空達が相手してくれたから良かったけど。

そんなロッキーに一般人が中へ入ってグルメ食材を、持っていけるとは思えない。

なにより

「ロッキーは僕としのぶが呼ぶ時以外は、成層圏で宇宙浴を楽しんでいる。物理的に侵入する手段が無いんだよ」

これがもう少し時代が進んでたら怪しかったけど、流石に血鬼術も無しの普通の人間が、成層圏まで行ける手段はない。

グルメ食材の存在を明かしても問題無いと踏んだのはこういう理由もあったのさ。

「……なるほどね。してやられたよ」

「終わりだ童磨。手品のタネが割れたお前に勝ち目はない」

「そうだね。どういう訳か血鬼術をまともに食らったのに何とも無さそうだし。君たち本当に人間?」

「グルメ細胞は無敵だ」

いや、ホント化け物じみてるとは思うよ実際。

原作のヘラク戦のトリコの復活の様とか人間じゃねぇ!って普通に思った。

童磨の血鬼術もグルメ細胞の超回復能力で無効化してるんだろうな…。

今のしのぶさんなら出来そうだもん。

「確かに無敵だ…ならば…」

ん?なんだなんだ?

「その君達の心を折る」

は?

「胡蝶しのぶぅ!!」

は?え?は?

「何故君達が…グルメ細胞等と言うものを受け入れたのか」

「何いってんだお前!!」ガキン!キュイン!

「何故彼だけが異様に強いのか…」

「くっ!隙だらけなのに頸が取れない!」キン!キィン!

「何故君が彼に恋心を抱いたのくぁ!!」

「……!それ以上言うな!」

「その答えは唯一つ…!」

「……」

「止めろぉー!」

「ふは…胡蝶しのぶ!君達が…彼を喜ばせる為の!舞台装置に過ぎないからさ!!あーはっはっはっ!」

こいつ!やりやがった!

メタ発言をする事でAIの思考ルーチンを止めるって算段か!

知っている自分はなんとも無いから動けるのを良い事に!

くそ!しのぶちゃん!

 



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私の答えは

しのぶ視点

 

「それがどうした?」

「え?」

「あーはっはっはっはっはっはっ!…………は?」

「それがどうした?と聞いている」

そんなのはとっくの昔に聞いた。

他ならない彼の友人から。

私は現実ではなくて、彼はやがて年老いて。

私の心はここにはなくて、彼の心はここにある。

だけど

「私の魂はここにある。彼の魂もここにあるなら!」

「ひっ!?」

「私が彼を愛している事実は変わらない!愛が!魂があるのなら!」

「くっ!?結晶の御子!」

「不可能なんてない!蟲の呼吸!!」

アイリスさん

「蜈蚣ノ舞!!」

アイリスさん。私ね

「嫌いだ!嫌いだ!!!!君達みたいな人は!」

「獣の呼吸!伍ノ牙!狂い裂き!!」ギャリン!!

「花の呼吸!弐ノ型!御影梅!!」バキィン!!

「なっ!?貴様ら…!」

「こっちを忘れんな!」

「師範の邪魔はさせない!」

例え貴方と会えるのが一時でも良いの

「銀色の波紋疾走<メタルシルバーオーバードライブ>!!」

「ぐあっ!?」

「お膳立ては得意なんだぜ?」

だってそうでしょ?

「百足……蛇腹あああああぁぁぁぁぁぁ!!」

好きな物だっていつも食べてたら美味しくないもの

「ぐ…、うおおおおおぉぉぉぉ!!!??」

「づああああぁぁぁぁぁ!!」

「伊之助ーーー!!!」

「応よ!!獣ノ呼吸!!」

あ、でも

「拾壱ノ牙!!投げ裂き!!」

「がっ!?」

「怯んだ!」

「師範!」

「くたばれ!パイル…!!」

「!伝われ!生命の波紋!!」

やっぱり

「バンカアアアアアアァァァァァァァ!!!!」

ちょっぴり悲しいかな。 

 

アイリス視点

 

「ちくしょう…ちくしょう…」

しのぶちゃんのまさかのパイルバンカーにより、後ろにあった大樹ごと爆散した童磨が、ボロボロと崩れ落ちていく。

最初に囮に使われたときに流していた波紋と、さっき既の所で流した追加の波紋が合わさり、更にしのぶちゃんの毒もあってか最早上弦とてどうにもならないようだ。

「なんで…どうして…」

「負けた理由かい?なら…」

「違う…違うよ…」

「?」

「やっと…やっと見つけたのに…俺が…欲しかったもの…君たちが魅せてくれた…愛…素敵だ…」

……あれって愛か?

どっちかというと友愛の類じゃないか?

伊之助とかカナヲちゃんもいたし。

「なのに…俺は…死にたくない…もっと見たい」

「……貴方に食われた人も…同じ事を思っていたと思いますよ」

「……そっか…あぁ…それは…悲しいな」

その言葉を最後に、上弦の弐 童磨は消えた。

最後に本心から溢れた想いを流しながら。

 



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幸せの味ってなんだろうね 鬼殺隊隊士の金髪の剣士

善逸視点

 

「………出てこいよ。居るんだろ?」

散り散りになった俺は一人…いや、一人じゃないか。

そこに居るもんな。

「出てこいか…威勢が良くなったもんだなぁ。えぇ?」

「そういうお前は随分ちっぽけになったな」

獪岳。

上弦の陸で…俺の元兄弟子。

「爺ちゃん…師範が死んだよ。あんたが鬼になったせいでな」

「あ?だから何だ?泣いて悲しめっていうのか?」

「介錯はつけなかった。あんたの分と合わせて…長く苦しむようにって師範からの申し出だった」

「そうかよ。清々するな」

「……ッ!あんたは!そんなことしか言えねぇのかよ!」

「当然だろうが!俺を正しく評価しない奴なんてな!どーでもいいんだよ!」

あぁ…もう駄目だな。

「獪岳…鬼になったお前をもう兄弟子とは思わない」

「あぁ?」

「適当な穴埋めでなった上弦の使いっぱしりに用はねぇって話だよ」

「あぁ!?もう一遍言ってみろや!!!」

鬼が斬りかかってくるがまるで遅い。

俺は身を翻す訳でもなく、ゆらりと少し動く。

それだけで鬼の攻撃は逸れていく。

「な…!」

「どうした?足でも悪いのか?」

「っ!のやろぉ!!」

2度、3度。

鬼は刀を振るうけど俺には掠りもしない。

鬱陶しいから蹴り飛ばす。

「うぐぉ!?」

「止めとけよ。お前じゃ俺には勝てない」

「ぐぐ…!やかましい!」

雷の呼吸独特の呼吸音がする。

「雷の呼吸!弐ノ型!稲魂!!」

弐ノ方稲魂。確か一息で瞬きの内に5連撃する技だ。

普通なら厄介だ。

だけど俺は知ってるから。

日輪刀を抜いて全て弾いた。

「ちっ!」

鬼が距離を取りまた呼吸を始める。

苛立たしいな。

お前如きが師範の…爺ちゃんの呼吸を使うなよ。

「参ノ型!聚蚊成雷!」

鬼が俺の周りを取り囲む。

聚蚊成雷って集まった蚊のことを指してたんだっけ?

あぁ、なるほど。鬱陶しいな。

俺は一瞬で襲いかかってくる鬼を

「ぐぉわっ!?」

全て切り払った。

「ば、馬鹿な…なぜだ!どうしてお前みたいなカスが、俺の攻撃に対応できるんだ!」

「…知ってるからだよ」

「知ってる…あぁなるほどな…そう言うことか!あの耄碌クソジジィめ!やっぱり贔屓してやがったな!型の弱点を教えてやがったんだな!だから俺に教えなかったんだな!?最強の壱ノ型を!!」

「………」

なんて言葉を掛けたらいいのかわからないな。

なんというか…。

「哀れすぎて何も言えねぇよ」

「あぁ!?」

「爺ちゃんは贔屓なんてしなかったよ。知ってるのはそれがどんな技かってだけで、弱点なんか教えてもらえなかった」

「やかましい!!ならば…雷の呼吸!」

またなにかするのか。

「肆ノ型!遠雷!」

「遅え」

「なっ…!?」

遅過ぎる。

俺はもう既に鬼の後ろにいる。

「猿真似は終わりか?」

「なんだと!?」

「猿真似は終わりかって聞いてんだよ。お前如きが爺ちゃんと…獪岳の真似をするな」

「……っ貴゛様゛あああぁぁ!!」

鬼が怒り狂う。

巫山戯んなよ。

怒り狂いたいのは俺の方だよ。

「死ねぇ!陸ノ型!電轟雷轟!!!」

避けられるが敢えて受ける。

俺の体にヒビの様な傷が入る。

「ふひ、ひゃっはっははは!!終わりだ!お前はもう終わりだ!俺の剣戟を受けた奴はなぁ!そうやって罅が入る!そうなるとどうなると思う!?」

わざと当たってやった攻撃が嬉しいのか、満面の笑みで俺に説明してくる。

「死ぬんだよ!血鬼術による火傷だ!あり得ねぇがなにか対抗策が有るならやってみなクソが!ねぇだろうな!お前は所詮無能だからな!ひゃーはっはっはっ!!」

そうかい。

「態々ありがとよ」

「ひゃーはっはっはっ……は?」

もう俺の傷は塞がっている。

当然だ。

こいつは俺の手紙も真面目に読まなかったんだろうな。

俺もグルメ細胞保有者だ。

適合率は確か全体の3割だった筈だ。

「ば…ばかな…そんな…」

「グルメ細胞って奴だよ。お前は知らされてなかったみたいだけどな」

「なんだよそれ…なんだよ…巫山戯んな!巫山戯んな!!ずりぃぞ!なんでお前が…!!」

「ホントなんでだろうな…あの時偶々蝶屋敷にいたからかもな…」

「巫山戯んな…巫山戯んなちくしょう!お前ばっかり!どうして俺じゃないんだ!!」

「………ッ!あんたが振り払ったんだろうが!!」

そうさ。あんたはいつもそうやって来た。

脇目も振らず一心に。

ただ爺ちゃんに褒めてもらいたいから。

ただ爺ちゃんに凄いと言われたくて。

それを叶えるだけの実力があったのに。

それを手にするだけの努力をしてきたのに。

「あんたが零したあんたの過ちだ!!誰のせいでもない!あんたがやったことだ!!」

「俺の何が悪い!生き残る為なら俺は鬼にだってなる!なってやった!なのに何だお前のそれは!そんなのがあるんなら…俺は…!」

いまさら…!

「今更後悔するんじゃねぇ!!!獪岳!!!」

ごめんよ爺ちゃん…

「雷の呼吸…!」

ごめん…

「漆ノ型!」

「ッ!雷の呼吸!!」

俺達の道は分かれた!

「火雷神!!!」

 

鬼の…獪岳の首が飛んだ。

あぁ…この技を隣で見てほしかったな。

知ってるか?

グルメ細胞ってさ…好きな物を食うと成長するんだぜ。

それ聞いたときにさ、俺思ったんだよ。

なんて平和な奴なんだって。

オマケにグルメ食材って元がすっげー美味しいんだ。

一粒10万円のお米とか本当にこの世の食べ物なの?ってくらい。

好きをたらふく食べたら、また別の好きを食べる。

好きって一つじゃないしな。

そうやってたらいつかは誰かと重なる。

奪い合う事もあるけど分け合う事もある。

俺は…俺はさ。兄貴。

「皆で食べた方が…もっと美味しかったと思うよ」

爺ちゃん…俺…ごめんよ…。

頑張ったけど…駄目だった…。

もう会えないけど……!?

「善逸!」

え?うそ?あそこにいるの…え?

「爺…ちゃん…?」

生き…てない。薄らぼんやりしてる。

幽…霊?

「お前は…」

あぁ…でも…でもこの声は

「お前は…!」

あの顔は…!

「お前はわしの誇りじゃ……!!」

「爺ちゃん!!!」

涙を流した俺の、俺達の爺ちゃんは

言うだけ言って満足気な顔で

鳴柱の名の通り、轟音と共に消えていった。

 



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(煉獄と良い感じに連携できているから)俺は嫌われていない 鬼殺隊の水柱

今更ですけどファンブック買ってないんで所々想像による保管という名のオリジナル設定があります


炭治郎視点

 

「ふんっ!」

「ぐっふ!」

「炭治郎!」

「余所見をするな!冨岡!」

ぐっ…不甲斐ない!

だけど押している!確実に!

俺のヒノカミ神楽はどうか分からないけど、少なくとも義勇さんと煉獄さんは、猗窩座の力量を超えている!

「流石だな!柱ともなればこうともなるか!」

「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」

「やはり素晴らしい!!」

だけど中々当たらない!

クソ!どうしてなんだ!

見えない方向からでもなんともないかのように避けてくる!

考えろ炭治郎!考えろ!

こんな時アイリスさんなら…どうする!

『動きが早くて避けられる?それより早く動けばいいのさ!』

駄目だ!参考にならない!

そんな事できるのは貴方くらいです!

だが本当にそうだろうか?

なにか、なにか手掛かりはあるはずだ。

なにか…!なにか!

『ヒノカミ神楽は舞』

『無駄が無くなって透き通った世界に』

『弱いから感じられねぇ』

………舞。

そうだ!それだ!

舞うんだ!俺も!父さんのように!

ヒノカミ神楽を!!

一心不乱に!誰も感じられない程に真っ直ぐに!

頑張れ炭治郎!頑張るのはお前の十八番だ!!

猗窩座の首を取りつつ、ヒノカミ神楽を舞う!

一心不乱に、無我夢中に!やるぞ炭治郎!

 

杏寿郎視点

 

「やはり至高の領域に至った者達は素晴らしい。故に惜しいな。何故鬼になろうとしない」

「愚問だな。俺達は君の様な鬼が嫌いだからだ」

俺はきっぱりとそう言い放つ。

「無限列車であった時から言っているだろう。今更答えは変わらない」

「そうか。それは残念だ」

分かっていただろうに。

白々しい奴だな。

「無限列車と言えば…」

「参ノ型 流流舞」

猗窩座が何か言おうとするが、隙きと見た冨岡が技を放つ。

俺も続こう!

「参ノ型!垂れ火花!!」

垂れ火花とは上から強襲する技だ。

また火花の名のとおり、技を繋いだりする時にも使われる。

つまり

「ふっ、その程度」

たとえ避けられたとしても

「弐ノ型!昇り炎天!!」

「むっ!」

こうして間髪入れずに技を放てる!

更に!

「壱ノ型 水面斬り」

「くっ!」

意思を汲み取ってくれた冨岡との連撃!

良いぞ!このまま…

「あの男は死んだのか?」

あの男?誰の事だ?

いきなりなんだこいつは。

「肆ノ型 盛炎のうねり!」

「おっと。あの男だ。至高の領域に不作法な手で入り込んだ女童だ」

「…………薬膳殿の事か」

「そうだ。あの男は我らの至高の領域に土足で入り込み、剰えその力を存分に振るおうとしない。実に軟弱でみっともない蛆虫だ。動かなくなったことは聞いたが死んだのか?」

薬膳殿を語る猗窩座は心底忌々しいと言った顔だが

「そこまでにしておけ」

「ほぅ?」

「彼は生きている。そしてみっともないと言うのなら猗窩座。お前はより一層みっともない」

胡蝶から聞いた。

彼は生まれつき鍛えれば鍛えるほど衰えてしまう身体だと。

「お前に彼の何が分かる」

悔しかっただろう。他の人と同じ事ができずに。

悲しかっただろう。普通の暮らしが送れずに。

彼はともすれば鬼にもなったかも知れない。

この場にこうして相対していたかも知れない。

それほどの不幸だ。

だが!

「人として生きる事を諦めず!その手の限りを尽くし!人間で有り続けた彼を貴様が冒涜出来ると思うな!!」

「だからなんだというのだ!死ねばそんなものは意味がない!」

「意味はある!」

「なにっ!?」

「竃門少年!?」

いつの間にそんなところにまで!!

猗窩座の頸に日輪刀が迫っているじゃないか!

「お前がアイリスさんを…人間をバカにするな!!」

「(そうだ!行くぞ!炭治郎!)水の呼吸…!」

「ヒノカミ神楽!!」

おぉ!冨岡!いつの間に!

こうしてはおれん!

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」

「拾ノ型 生々流転!」

「日暈の龍!頭舞い!」

 



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ただいま。 あの世在住の予定の武闘家

炭治郎視点

 

初めに仕掛けたのは義勇さんだ。

義勇さんの生々流転が次々と繰り出される。

猗窩座はそれを時に避け、時に受け捌いていく。

一定の調子で、さながら神楽の時に奏でられる音の様に。

時折煉獄さんがそれを盛り上げる様に、或いは抜けた音を補う様に技を放つ。

トントン、トントン。

俺の日暈の龍頭舞いも揃えていく。

三人の…いや、猗窩座を含めた四人の鼓動が、動きが一つになっていく。

猗窩座が右へ行けば俺が。

左へ行けば義勇さんが。

引けば二人で進めば煉獄さんが。

トントン、トントン。

揃っていく。

猗窩座の

舞の終わりを迎える。

「ぜええええええぇぇぇぇぇやっ!!!!」

「終わり……だっ!!」

「ぐおおおおぉぉぉぉ!?」

俺と義勇さんの技が猗窩座の四肢を斬り落とす。

「煉獄さん!!」

「炎の呼吸!!奥義!」

猗窩座の視線の先には、炎の呼吸最強の技を構える煉獄さんがいる。

これが

「玖ノ型!!」

俺の

「素晴らしい…」

俺達の

「煉!!獄!!!!」

お前への手向けだ。猗窩座。

 

「見事だ…素晴らしい…それ以外に言う事がない」

ボロボロと崩れていく猗窩座。

その顔はとても晴々としている。

「思えば俺は恵まれていた…ただのゴロツキではあったが…愛する人を持ち…尊敬すべき師にも会えた…」

「…」

「そうだ…人は初めから強くない…強くなろうとして…積み重ねて…強くなるのだ」

「猗窩座…」

「俺はきっと…嫉妬していたのだろう…彼の様に強ければ…大切な存在を守れた…かもしれない…そう思って…」

猗窩座の顔は間もなく崩れ落ちる。

けれど、それに俺は何も

「だろうな。俺も嫉妬した」

え?

「俺も薬膳殿の実力には嫉妬した。あれはそういう類の領域だ」

「煉獄さん…」

「彼程の力があれば、父上は腐ら無かったかもしれない。もっと大勢の人を守れたかも知れない。何度もそう思った」

そう言うと煉獄さんは少し目を瞑り、すぐに開いた。

「然し彼が倒れても歩みを止めなかった者がいる。例え辛い壁が目の前に幾つも有ろうと、乗り越え踏み越え先へ行こうとするものを見た」

煉獄さんが俺の方を見る。

その目と匂いは、まるで陽だまりのように温かい。

「だから俺もこの嫉妬の心を受け入れる事が出来た。心は動力源とはよく言った物だな!竃門少年!」

「わわっ!?」

「先程の動きは実に見事だったぞ!やはり君は炎の呼吸の素質がある!俺の継子になれ!」

「(炭治郎は水の呼吸を習ったし、鱗滝さんの継子だから)駄目だ」

「義勇さん!?」

「ぬぅ!だが俺は諦めんぞ!」

どうして俺の継子の話に!?

「……ふ、なるほど…勝てる筈もない…か」

俺達の前で、猗窩座は楽しそうに消えていった。

 



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伊黒さんは空気を読むべき 鬼殺隊の霞柱

玄弥視点

 

「霞の呼吸 弐ノ型 八重霞!」

「恋の呼吸!伍ノ型!揺らめく恋情・乱れ爪!」

「蛇の呼吸 壱ノ型 委蛇斬り」

「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪!」

「岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚」

柱の皆が辺りを蹴散らしていく。

だが

「全然突破出来ないや」

「きゃー!?また来たわ!」

「うじゃうじゃと鬱陶しい。全く鬼というやつはこれだから嫌いなんだ。往生際の悪い。さっさと首を差し出せばいいと言うのに…」

「伊黒さん。そう言うの後にしてくれますかィ?」

「然り。今はかの協力者を助けるが先決」

柱を持ってしても、この高密度の血の棘は突破しきれない。

そして奥には肉の繭。

そこに協力者が取り込まれかけている。

急ぎたい。早く助けてやりたいけれど…。

(焦るな不死川玄弥…焦りは食義を乱す。それに落ち着いた考えも出来なくなる)

荒れ狂う焦りと燃えたぎる怒りを感じるのは良い。

だが今は蓋をして待つべきだ。

何かある…絶対に…この状況を打破するものが。

「やはりここは一点突破しか…」

「誰が行くというのだ。この棘の網は何層にも成っている。考えもなしに突っ込めば柱でも無傷ではすまんぞ」

「とはいえ他に方法も思いつかねェ」

「きゃー!こっち来ないでー!」

「薬膳殿が来るが早いか、私達が力尽きるが早いか」

………いや、その二択じゃ有りませんよ。悲鳴嶼さん。

道は俺が…!

「動くんじゃねェ!三下隊士が!!」

「!?」

兄貴…!

「てめぇが何やってもどうにかなるわけねェだろ!そこで大人しく震えてろ!!」

「兄貴…」

「俺に弟は…」

「こんな時に諍いを持ち出すのはやめてよ。実弥さん」

時透さん…。

「今彼を遊ばせておく理由はないんじゃない?彼がなにか思いついたと言うのなら、やらせてみようよ」

「どうせ無駄だ。下級隊士の考えることなんざ…」

「その下級隊士の手も借りなくちゃダメなんだよ。いい加減にしなよ」

最もな言い分に兄貴も押し黙る。

そうだ…俺は何やってるんだ。

俺はここに、鬼殺隊としてきたんだ。

兄貴に認められる為だけじゃない。

俺や兄貴…炭治郎達のような人をこれ以上出さない為に来たんだろ!

震えるな!怖がるな!

弁えるな!尻込みするな!

今がその時だろ!

「皆さん。俺に考えがあります」

 

「〜〜〜〜ッ!!!馬鹿野郎ゥ!そんなの認められるか!」

やっぱり兄貴には反対されるよな…。

「危険だよ玄弥くん」

時透さん…心配してくれてありがとうございます。

「……………然し現状最も打破できる可能性を秘めている」

悲鳴嶼さん…涙を流してくれて感謝します。

「何でもいいから早くしなくちゃ!」

甘露寺さん…その…しかたないとはいえあんまり激しく動かないでください…その…胸が…。

「実弥の感情がどうだと言うのも、時透の先程の言葉の矛盾もどうでもいい。そこの下級隊士がそんな事が可能ならそれをやらせるべきだ。そしてあわよくば死ね。甘露寺をいやらしい目で見た罪で死ね。せめてもの情けでどこぞの元柱の好みの様に派手に死ね」

「伊黒ォ!ウチの玄弥に死ねってのかテメー!」

兄貴ィ…。

「とにかく!今は玄弥くんに任せましょう!大丈夫!あの時も玄弥くんはちゃんとできたんだもの!!今回もきっと大丈夫!」

甘露寺さん・・・!

「・・・・だが」

「・・・風柱様」

「・・・あァ?」

「俺は確かに未熟です。この中では一番弱い。それは分かってます」

そう。それは知っている。だけど

「敵は目の前にいます。俺達鬼殺隊が生まれてからずっと追ってきた元凶です。今討てば全てが終わります」

あの日の惨劇がなくなるわけじゃない。

俺が兄貴のことを・・・化け物と言ってしまった過去がなくなるわけじゃない。

「俺は鬼殺隊です。例え弱くても俺だってアイツの頸を落とすためなら、命だって賭けられます!!」

 



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デカくなったなァ 鬼殺隊の風柱

実弥視点

 

弟には・・・生き残ってくれた玄弥にだけはこんな所には来てほしくなかった。

鬼殺隊は命懸けだ。いつ死んだっておかしくない。

俺は良いさ。化け物だから。

玄弥の言う通り、素手で鬼を何とかできるくらいだ。

・・・・・それを言ったら薬膳さんもそうだけど。

ただあの人は俺と違って馬鹿みたいに強いから死ぬなんてことはないだろうな。

そんな事は良いんだ。

俺は玄弥に生きていてほしい。

俺はそれだけでいいんだ。

なのに・・・

どうして今俺の心は喜んでいるんだ。

玄弥が死の覚悟をしてるんだぞ!

弟が死ぬことがそんなに・・・

『いつまでも弟が子供とは限らないよ』

『・・・何のことっすか』

『人は成長するんだって話さ。そうやって・・何時も困難を乗り越えてきた。今までも、そしてこれからもね』

『・・・・そうっすね』

・・・・あのときはぶっきら棒に返事をしたっけな。

あの人が俺と玄弥の仲を心配していたのは知っていた。

それでまぁ照れ隠しは確かにあった。

でも本当は違ったんだな。

俺は分かってなかったんだ。

改めて弟を・・・玄弥を見る。

不安を隠しきれていないけれど

真っ直ぐな瞳で俺を見ている。

俺が知っている頃の顔で。

俺の知らない顔をしている。

あぁ・・・

「でかくなったなァ・・・玄弥」

「え・・・あ・・・うん」

そうだな。

愛しの弟が腹ァ括ってんだ!

「しくじるなよ玄弥ァ!!」

「・・・・・ッ!!はい!!」

俺も気張らなくっちゃぁな!

なんたって俺は鬼殺隊で風柱で!

不死川玄弥のお兄ちゃんなんだからよォ!!

 

「作戦は分かってんだろうなァ!!」

「えぇ!!」

「くどいぞ。それとなぜお前が仕切って・・・」

「そういうのホント今は良いから」

「然り、私達の役目は・・・」

「前進有るのみ!!」

日輪刀を握る力に皆力が籠もる。

これから俺たちは死地を行く。

誰かが犠牲に成るかもしれない、誰も犠牲にならないかもしれない。

だが、俺達は行く。行かなければいけない。

俺たちの後ろを・・・繋げるために!

「いいいぃぃっくぞおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

俺の叫びとともに全員が走り出す。

下位隊士も。柱も。

そこに何の貴賤もない。

俺たちは唯只管に

鬼舞辻無惨の頸を目指す!

「ぐわぁ!」

「ぎゃあ!」

隊士が犠牲になる。

「こ・・・のぉ・・!」

「動かさねぇ・・ぞ!」

だが彼らは折れない。

誰が言い出したわけでもなく、自らの身体をどこかに縛り付ける。

時には果敢にも切り落とす隊士もいた。

死ぬなとは言えない。

俺も含め全員死ぬ気だから。

だからせめて

「風の呼吸!!壱ノ型!塵旋風・削ぎ!!!」

己の全力を持って辺りを散らす。

そうすることで少しでも助かる命があるのなら。

そうすることで少しでも無残に迫れるのなら。

俺達は迷わずそう動く!

それが俺たち鬼殺隊。

鬼を滅ぼす者たちだから!!

「恋の呼吸!陸ノ型!猫足旋風!!」

「霞の呼吸 伍ノ型!霞雲の海!!」

甘露寺が辺りを蹴散らし、時透さんが道を切開く。

「蛇の呼吸 伍ノ型 蜿蜿長蛇!」

「岩の呼吸 荷ノ型 天面砕き」

伊黒が道を増やし、悲鳴嶼さんが開かれた道を広げる。

例え俺たち一人一人は弱くとも。

束ねれば鬼舞辻!お前に迫れる!!

「調子に乗るなよ・・・異常者共が・・・!!」

肉の繭から鬼舞辻の声がする。

それと同時に先程までとは比べ物にならない量の血の茨が襲いかかってくる。

避ける隙間はない。

だが

「玄弥ああああぁぁぁぁ!!!」

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉあああああぁぁぁぁ!!!!!」

俺が叫ぶと、後ろから人間大の散弾が無数に飛んできた。

 



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多分もう二度とあんな事しない 鬼殺隊隊士のサラツヤヘアー

玄弥視点

 

出来た!!!俺にも・・・アイリスさんやシュウさんのような、想像の具現化が!!

『イメージの具現化?』

『はい。あれが使えたら便利だなと』

『そうですね。用途がハッキリしているとイメージしやすいかもしれません。僕のはペティナイフですね』

『あの薄っぺらな小刀ですよね』

『えぇ。相手を切り裂くほどの威力はありませんが、激しい動きをしても操作できるという利点があります。そういう風に、何を、どうしたいという点を明確にしておくと、自然とグルメ細胞がカロリーを消費して作ってくれますよ』

俺が考えたのはなんてこと無い。何時も使っている銃だ。

辺り一面を攻撃するこの散弾がもっとでかくなれば、もっとみんなの役に立てるから。

そしてこれが俺の想像だと言うなら

「ぐおおおぉぉぉ!?馬鹿な!なぜ人間を避ける!?」

俺の想像通りに人を、仲間を避ける弾丸も出来る!!

次々と襲いかかる茨を間髪入れずに俺の想像散弾で押し止める。

ただ・・・

(皆・・・早く!食没した分が尽きちまう・・・!!)

俺の溜め込んだ分はこれを想定していないってことだ・・・・・!

 

玄弥の不思議な技のお陰で俺たちは活路を開いた。

だが玄弥の話では長くは持たないという話だ。

だから俺達はその僅かの間に奴の頸を落とさなければならない。

「風の呼吸!!」

「蛇の呼吸・・・!」

「恋の呼吸!」

「霞の呼吸!」

「・・・岩の呼吸!」

ぶった斬ってやる!!

「参ノ型!晴嵐風樹!!」

「弐ノ型 挟頭の毒牙!」

「壱ノ型!初恋のわななき!」

「肆ノ型!移流斬り!」

「壱ノ型 蛇紋岩・双極」

多方面からの同時攻撃。

その図体だ!避けれるもんなら避けてみやがれ!

その頸…貰った!!

「兄貴!」

ようやく終わるぜ…玄弥

「避けて兄貴!皆ああああぁぁぁぁ!!!」

 

村田視点

 

一瞬の出来事だった。

本当にもう少しだった。

誰もが頸を、無惨を倒せると確信していた。

だけどそれは…やはり一瞬で跳ね返された。

肉の繭が爆散したかと思えば、柱も不死川も吹っ飛んでいた。

皆重症だ。

最年少最速で柱になった霞柱も。

最年長で最強と謂われた岩柱も。

自分よりも恋柱の身体を思う蛇柱も。

お互いに謝り合う不死川兄弟も。

俺達は皆より遠くにいたから助かった。

ただそれだけだ。

俺達の心を絶望が覆う。

「はぁー…はぁー…この異常者共め…」

人型になった鬼舞辻無惨がそこにいる。

今までよりも一層鬼というものを強めた姿だ。

勝てない…。

柱でも駄目だったんだ…。

どうすれば良いんだ…。

…?

女の人の足?

そう言えば協力者が居るって言ってたっけ。

鬼だって話だった。

鬼か…炭治郎の奴大丈夫かな。

アイツの妹、太陽の下でも生きていけるって言ってたな。

無惨を倒したら人間に戻れるのかな?

そう言えばあの鬼が蟲柱と人間に戻す薬作ったって言ってたっけ。

助けなくちゃな。

え?おいおい。無理だろ俺。

柱でも返り討ちにあったんだぜ?

柱と同期ってだけの一隊士の俺に何が出来るってんだよ。

止まれよ俺の体。止まれって。

あぁほら、無残が気づいたぞ。

死ぬぞ俺。死んじゃうぞ。

「水の呼吸!」

いや、何力んでんだよ。

勝てないだろ常識的に考えて。

俺は水の形すら作れないんだから。

無惨の茨がすぐそこまで来てる。

ほら、死んだ。

「参ノ型!流流舞い!」

あれ?

嘘だろ。

俺の日輪刀から…水が出てる。

ギリギリだけど躱せている。

一歩毎にあの人に近づいている。

もう少しだ。

あと少しで…。

「私に触れようとするな。ゴミめ」

あっ、これ駄目だ。

横から来てるのは分かる。

分かるけど俺の身体はこの人を助ける為に全力だ。

今更方向転換しても致命傷だ。

あ〜ぁ…悔しいなぁ。

「村田さああああぁぁぁぁん!!!」

 



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全員集合って熱いよね 今界王拳使えないPC

炭治郎視点

 

急いできてみれば、村田さんに無惨の攻撃が迫っている。

大丈夫だ!助ける!

そんな気持を込めて叫べ!

「村田さああああぁぁぁぁん!!!」

無惨と村田さんの意識がこちらに向く。

無惨は見せつけるように動きが止まる。

やったぞ!成功だ!

「水の呼吸 捌ノ型」

「炎の呼吸!壱ノ型!」

その一瞬を義勇さんと煉獄さんが掴み取り、一気に無惨に迫った。

「何っ!?」

「滝壺!」

「不知火!!」

動揺した無惨を二人の技が斬る。

そして珠世さんへの道が開いたのなら!

「愈史郎さん!!」

姿が見えないけど、愈史郎さんが珠世さんを掴み引き摺り出している。

「なに!?貴様…!」

「珠世様は返してもらうぞ!!鬼舞辻無惨!!」

「させる……ぐあっ!?」

愈史郎さんを殺そうとした無惨を、誰かが邪魔をした。

あれは!

「いやあああああぁぁぁぁぁぁ!!!??(汚い高音)何?!何なの!?何あれ?!思わず攻撃しちゃったけどさぁ!?何なのよあれ?!炭治郎!あれ何?!もしかして鬼舞辻!?」

「善逸!!」

生きていたんだな!

「この…!」

「余所見してんじゃねえええぇぇぇ!!」

「ぐぉ!?」

「伊之助!」

「待たせたな権八郎!!」

「違う。炭治郎」

「伊之助!カナヲ!」

二人が来たってことは…!

「ずええええぇぇぇぇりゃああああああぁぁぁぁぁ!!!」

「ぬ!?うおおおおぉぉぉあああああぁぁぁぁ!!??」

「しのぶさん!?」

え?今の…え?!しのぶさん!?

凄いぞ!無惨も踏ん張っていただろうに向こうまで後退させられた!

「よし!絶・好・調☆!!」

なんだか何時もと雰囲気が全然違うぞ!?

なんと言うかやけくそになってる様な違うような…でもやっぱりやけくその様な…なんだこれ?!

「………(一体どうしたんだ?)胡蝶」

「なんですか冨岡さん!?大丈夫ですよ冨岡さん!えぇ!私は大丈夫ですとも冨岡さん!!」

全然大丈夫そうに見えませんしのぶさん!?

「うむ!そちらも何事も無かったようで安心した!」

「えぇ!何事もありませんでしたとも!えぇ!えぇ!」

「…………う、うむ!そうか!そうか!」

あの煉獄さんが言い淀んだ!?しのぶさんに何があったんだ!?

「おのれ……貴様らぁ……!」

「COOOOOOooooo!!!」

この呼吸音は!

「なっ!?」

全集中のどれにも当てはまらない独特の呼吸音は!!

「波紋疾走<オーバードライブ>!!」

「ぐおおおぉぉぉ!!??き、貴様あああぁぁぁ!!」

「アイリスさん!!」

倒したんだ!!上弦の壱を!

「さぁ皆…ラストダンスだ!派手に行こう!!」

 



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裁きは下された

アイリス視点

 

「ぐおおおぉぉぉ!?く、おのれええぇぇぇ!!!」

苦しがっているが恐らく今だけだろう。

珠世様は一応無事だけど肉体の損傷も激しい。

原作の最終形態には近いけれど、恐らくはそこまでは

「くくく……はははは………!!!」

何だ?

「なるほど…これが童磨の求めていたグルメ細胞と言うやつか!」

はっ!?まさか…使ったのか!?人間を戻す薬に!

グルメ食材を!?

「素晴らしい!良いぞ!実にいい!なるほど!貴様等も良い仕事をしてくれる!最早禰豆子などどうでもいい!太陽の下でも活動できそうな気分だ!!」

なんてこった…最悪の…いや、そうでもないな。

アイツは気付いてないみたいだがやはりそうだった。

だがこの事は知られるわけにはいかないな。

「………すみません。アイリスさん」

「いや、そうでもないよ。寧ろやりやすくなった」

「え?」

「…なんでもないよ」

そう…これは奴に知られるわけにはいかない。

絶対にだ。

「無惨がグルメ細胞を…!」

「どうするんだよ…炭治郎〜…」

「大丈夫さ」

そう言って僕は前に出る。

「生きている限り死は訪れる。生命の根幹に根ざす真理には何ものも逃げられない。それを思い出させてやろう!」

なに。その不安はすぐに消し飛ぶ。

「無駄だ。私は最早完璧な存在だ。死ぬがいい異常者共よ。天災である私に平伏せぬのならな」

「虱も1000余年も生きればこんなにもイキがれるんだね。一緒使わない知識を有難うよ」

「ぶっ殺す」

最後のラウンドが幕を上げる。

 

「水の呼吸!参ノ型!流流舞い!」

「炎の呼吸!伍ノ型!炎虎!」

冨岡くんと煉獄さんの力と技によるコンビネーションが無惨に迫る。

「甘いわ!」

無惨は両手から生やした血の茨でそれを捌き、カウンターを入れる。

「ちっ!」

「むん!」

冨岡くんは何とか躱し、煉獄さんは切り払う。

「獣の呼吸!弐ノ牙!切り裂き!」

「花の呼吸!伍ノ型!徒の芍薬!」

「蟲の呼吸!蜻蛉ノ舞!複眼六角!!」

しのぶちゃん達の技が一斉に放たれる。

「ぐっ!?」

「死に晒せ!このド外道があああぁぁぁ!!」

しのぶちゃんの怨嗟の声と共に全ての攻撃は命中する。

「無駄だ!完璧な存在の私にこの程度の攻撃や毒が通用するか!」

「なっ!?」

「嘘だろおい!」

「日輪刀を…!」

うわぁ…日輪刀を取り込んだよ。

自殺行為だろ。

「ふふふふ……はははは!!!見たか!もはや私に敵などない!あの太陽すら私にとっては弱点になるまい!」

やはり気付いてないな。

その方が都合がいい。僕は今動けない。

この技は放つのに時間は掛かるし、斜めにしか放てない。

オマケにその場から動けなくなる。

然し威力は絶大だ。

その時がお前の最後だ。

「くっ…!それでも!」

「まだだ…まだ俺達もいる!」

不死川兄弟も立ち上がり、無惨へと立ち向かっていく。

先に負傷した皆にグルメ食材を与えて正解だった。

順次回復していくだろう。

「貴様らは眼中に無い」

「うるせェ!行くぞ玄弥ァ!」

「あぁ!想像散弾…!」

「風の呼吸!」

無惨はつまらなさそうに構えるが

「恋の呼吸弐ノ型!懊悩巡る恋!」

「蛇の呼吸伍ノ型!蜿蜿長蛇!!」

左右から蜜璃ちゃんと伊黒の攻撃が迫る。

前の二人に対応すれば左右の二人の攻撃を受ける。

後ろに引いても前の二人の攻撃を受けるから同じ事だ。

普通ならダメージを追うだろう。

「壱ノ型!塵旋風・削ぎ!!」

「炸裂榴弾!!」

だけど今の無惨は普通じゃない。

轟音と共に激しく土煙が上がるが

「………何!?」

晴れた後にあった光景は、左右の攻撃を両腕で受け止め、玄弥の具現攻撃を肌を硬質化して防ぎ、実弥の日輪刀を歯で抑え込んだ無惨の姿だ。

「こんなものか……ふん!!」

「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

「うおおおおおぉぉぉぉ!!」

そのまま乱暴に振り回し、蜜璃ちゃんと実弥を森の中へ放り投げる。

「兄ちゃん!!!」

「甘露寺!!」

「お返しだ…はっ!!」

身体に残っていた散弾は力を込めて逆に弾きだす。

「ぐわあああぁぁぁぁ!!!」

「があああぁぁぁぁぁ!!!」

玄弥くんと伊黒が動かなくなったのを確認し、僕の方へゆっくりと向かってくる無惨。

「貴様だ…貴様と竃門炭治郎さえいなければ…この時代も何の不自由なく…人を喰らい、生き永らえていただろう」

そうかよ。

「だが…ふはは…変化と言うのも悪くない。この様な変化もならいつでも歓迎だ。実に気分が良い…そこでだ人間」

無惨の顔が人間のそれに戻る。

顔だけは良いからなコイツ。

「お前も鬼にしてやろう。未来永劫私に仕えられる名誉だ」

「………答えはノーだ。地獄に堕ちろ」

「岩の呼吸!弐ノ型!天面砕き!」

悲鳴嶼さんの技が無惨に向かって炸裂するも、それを難なく避ける。

「無駄な足掻きを…」

「霞の呼吸…漆ノ型!朧!」

無一郎くんの朧が無惨を捉える。

大ダメージが与えられるが、無惨はそれらを直ぐに修復する。

「無駄だと言っている」

「ちっ…!」

「雷の呼吸…壱ノ型…」

「むっ?」

「霹靂一閃・神速」

目にも留まらぬ速さで無惨に迫る善逸。

さしもの無惨も防ぎきれないと判断したのか、避ける為に跳んだ。

「ふはは!惜しかったなぁ!だが残念だったな!私の方が早かったようだ!」

「くっ…!」

「素晴らしい…素晴らしいぞこの体は!もっと早くに出会いたかった!そうすれば上弦なぞ必要なかった!増やしたくもない雑魚どもを増やす必要もなかった!最早この世に鬼は私一人でいい!そして!」

無惨が僕の方を見る。

「その門出として!貴様の血肉を食らってやろう!死ね!!アイリ……ぐぉっ!?」

最高潮のテンションの中、空中へと跳んだ無惨はある地点でピタリと止まる。

それは僕の右斜上だ。

そこにはある物のイメージが出来上がっている。

「な…なんだ…これは…う、動けん!!!???」

「上に飛んでくるとは思っていたが、まさかこう上手くいくとはね…LUKが高くて何よりだ」

それは目標へ狙いをつける為のバレルだ。

3本の爪が空に向かって真っ直ぐ伸びている。

「が…ぐ…くそ…!離せ!離せぇ!!」

「自分から飛び込んでおいて離せなんて我儘なやつだ。なに。気にしなくてももうすぐ離してやるよ」

拳に力を込める。

ありったけの力を。

「音速2倍…」

これまでの怒りと

「1000……万トン!!」

「や、やめろ…!やめろやめろやめろ!!」

これからの未来と

「4兆ジュール!!!」

「鳴女ーー!何をしている!!猗窩座!私を助けろ!黒死牟!こいつを斬れ!!誰か!誰か私を助けろぉ!」

人間の勇気を込めて!!

「必殺!!」

「やめろおおぉぉぉ!!死にたくない!死にたくなああああぁぁぁぁぁい!!!!」

「神の杖!!!!」

空気をも突き破らんとする轟音と共に、神の杖は放たれた。

 



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陽はまた昇る

無惨視点

 

私の躰は爆散した。

塵と化し、最早そこからの再生は敵わないだろう。

だが私の頭はまだある。残っている!

ふはは!たとえ何と言おうと、止めを刺せなかったようだな!

グルメ細胞を駆使すればこの程度の再生など…。

むっ?何故だ?再生が遅いな。

そう言えば奴は波紋疾走等という妙な術を使っていたな。

アレのせいかもしれん。

一先ず頭から腕だけでも生やしておくか。そうすれば不格好だが移動は出来る。

ぐっ!?

地面にぶつかったか…まぁいい。どれだけ遠くに離れたかは分からんが、奴らと距離を取れたのだ。良しとするか。

………屈辱だ。完璧な存在であるはずの私がこんな無様な姿になるなど。

躰が戻った時はあの男の目の前で女を食らってやろう。

絶望の底に叩き落としてその上で…

「何処へ行く…鬼舞辻無惨」

「!?」

この声は…!?

「何処へ行くと聞いてるんだ…答えろ。無惨」

「竈門…炭治郎…!」

馬鹿な…なぜここに…!

 

炭治郎視点

 

「何故…貴様がここに…!」

「俺がここにいるのはアイリスさんの命令だ」

アイリスさんは俺に話してくれた。

アイリスさんの最強の技が周りに及ぼす影響。

今無惨に起こっている事なんかを。

凄まじい音と衝撃で、辺りはしっちゃかめっちゃかになるから、俺達は他の隊士達を連れて安全な場所に移動した。

空から蛇の様に長い首の蜥蜴の顔が、威嚇してきた時は心底驚いた。

カナヲと玄弥が話しかけると怖い顔が途端に綻んで、首の所についている扉を開けて待っててくれた。

お館様がそこで出迎えてくれたから、皆をそこに預け、日輪刀も身体も無事な俺と善逸は戻ることにした。

善逸は持ち前の足を活かして先に行くよう促した。

一人でも多く加われば無惨を倒せると思ったからだ。

それから間もなくして……善逸が間近で聞いたら死んじゃうんじゃないかって位大きな音が聞こえて、その後に大木をしならせる程の衝撃が辺りを襲った。

何とか持ち堪えていると、無惨の匂いが紛れていることに気付いて、その後を追いそして…今に至る。

「鬼舞辻無惨。今日ここでお前を殺す」

「出来ると思っているのか?貴様に…日輪刀では私は殺せぬ!」

「そうかも知れない。ヒノカミ神楽でもダメかもしれない」

「そうだ!無駄な事だ!私も間もなく再生する!」

「それはない」

「なに!?」

「お前はグルメ細胞のことを知らな過ぎる」

前にアイリスさんが話してくれた。

自食作用。

恐らくはそれが無惨に起きている。

アイリスさんはそう言っていたし、今見て俺もそうだと確信してる。

自食作用は極端に腹が減った生き物の最後の一踏ん張りだ。

その間は良いけれど、早く食べないと悪くて身動きが取れなくなり、最悪死ぬ。

無惨はそれを知らずに戦った。そのせいで今身動き一つ取れなくなった。

最凶最悪の鬼は…惨めな姿になった。

「おのれ…!やはり劣化だった!変化など!するべきでは無かった!」

「いや、お前の敗因は一つだ」

そう…たった一つ…単純な話だ。

「なに!?」

「お前は人間<オレたち>を怒らせた」

「ヒッ!?」

「GOOOOOOOooooo!!!!」

ヒノカミ神楽!!

「円舞!!」

「ぎっ……ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!」

朝日が昇る。

打ち上げられた無惨の頸が。

縦に裂かれた全ての元凶が。

陽光煌めくこの時間の中へと還っていく。

「ひか…り…朝…だ…太陽…太陽……」

変わらないな。

鬼舞辻無惨と言う人は、最後にそう言い残して消えた。

 



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エピローグ

「この世界もこれで終わりかぁ」

鬼殺隊が無惨撃破で湧く中、僕はロッキーの前にいた。

お祝い用の料理は作り終わったし、厨房には誰もいない。

誰も僕がいない事には気付かない。

このままこっそり出ていこう。

「そう思っていたんだけどなぁ」

後ろを振り返ると、そこには怒った顔をしたしのぶちゃんがいた。

うーん。キューティ。

「どこに行くんですか?」

「……散歩?」

「なら私も行きます」

「え?いや、ほら駄目だよ。あれだ。他の星に行くから…」

「グルメ界なんかに連れて行っておいて今更ですよ」

うーむ困った。

「言っておきますけど私は諦めませんよ?」

「へ?な、なにが?」

本当に何が?

「貴方の事ですよ。私と貴方は確かに次元1つ違います。けれど前例が無いわけではありません」

強さの事…なわけないよね。

「色々教えてくれましたよ。エルガルドさんが」

「あんにゃろう!!」

本当にあんちくしょう!

「2次元と結婚する人が居るんですから、私だって良いはずですよね?貴方が私をそこまで思ってくれる様に頑張りますから、着いてくるな!なんて言葉は聞きませんからね」

グイグイ来るなぁ…。

でもそう言うの嫌いじゃない。

「でも」

「ほへ?」

押し倒された。

ん?あれ?心做しか表情がエロい様な…はっ!?

あそこの木陰に何人かいるぞ!?

「きゃー!きゃー!しのぶちゃんったら大胆だわ!」キュンキュン

「全く破廉恥な……まぁ今日くらいは良いだろう。やれ胡蝶そのまま既成事実を作ってしまえ。そうすればそいつも甘露寺に手を出そうなどと…」ネチネチ

「伊黒さん煩いよ。見つかっちゃうよ」 

「うむ!よもやよもやだ!二人の仲がここまでとはな!」

「頑張れしのぶ!そのまま一気よ!一気!」フンフン!

「おぉ…なんとめでたきかな…2人のこの先に幸多からん事を…」ジャラジャラ

「あいつは派手に俺と同じ匂いがすんだよな」

「(そう言えばアイリスの友人も5人いたな)5人の嫁か」

「よく見とけよ玄弥ァ。男は女にゃ勝てねェって良い見本だァ」

「に、ににににに兄ちゃん!?止めなくていいのかな!?」アワアワ

「なんだ!?取っ組み合いか!?」フンガフンガ

「伊之助、今は駄目だよ。私と炭治郎の参考にしたいから」シンケンッ

「カ、カナヲ!?」

「お、俺も禰豆子ちゃんとの将来の参考に…!」エヘエヘ

「ナンダって?」ズモモモ…

「ひょええええぇぇぇぇぇ!!!???(汚い高音)」

「見てご覧あまね。いや若いねぇ」

「ふふ。そうですね輝哉様」

全員集合!!??

誰も助ける気がねぇ!?

「うふふ……先ずはこの昂りを鎮めましょうか…お互いに♪」

「ま、まって!?昂ぶってるのはしのぶちゃんだけだから!僕は全然普通だか」

「うるせェ!媚薬どーーーん!!!」

ガボゴボガボ!!!???

あ、甘い……ふにゃふにゃするぅ……。

「うふふ……私なしじゃ生きられない様にしてあげますね♡だ・ん・な・さ・ま♡」

や……優しくしてぇ…♡

 

 

 

   鬼滅の刃〜珍味街道〜

    これにて終幕



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