臆病なる影の刃 (はさみ@気が向いたら書く)
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少女、配属される

初投稿です、たいせんよろしくおねがいします

2020/02/07 加筆修正 新年明けて一ヶ月以上明けてやったことがお話の投稿じゃなくて修正らしい、許してヒヤシンス……

03/04 草、生えます、生えないんですけど、遅筆がすぎるぞ


「御影尊、お前を特殊廃棄物処理隊隊長に任命する」

「……はい」

 

鎌府女学院学長室、そこで私、御影尊(みかげ みこと)は高津学長に呼び出されていた。そして訳の分からない部隊の隊長になってしまった。特殊廃棄物とは一体何なのか、説明が一切ないまま半強制的に任命されてしまったこの役職が不安を募らせる。

 

「隊と言っても基本はお前一人だ。指示はするが、現場での判断は全てお前に委ねられる、そしてこの事は極秘の案件だ。部外者への情報漏洩は厳罰に処される、わかったな」

「……了解しました、失礼します」

 

退室後三秒で地面に手をつき、声も無く絶叫した。

 

「(チクショーーーー!ふざけんなヒステリークソババア!)」

 

 

私は刀使だ。

刀使とは特殊な金属で作られた刀、『御刀』を振るい、荒魂と呼ばれる怪物を斬って祓い人々を護る存在で、『御刀』は何故か歳若い女性しかなることができないという性質を持っている(簡単に説明すると刀で怪物と戦う巫女さんだ)。荒魂は色々な所で発生し、人に危害を加える、最悪の場合は災害にまでつながる恐れがある上に、普通の兵器では倒すことができず、御刀でしか致命傷を与えられない。

それ故、刀使はある種国防の要ともいえる存在で、内訳は主に中高生で占められているが、特例として公務員として認められている。

 

そして、日本全国五ヶ所に刀使の育成と、一人の学生としての成長を兼ねる存在として五箇伝と呼ばれる学校が設置されている。

その中の一つ、私が所属しているのが鎌倉に置かれている鎌府女学院なのだが、数日前、荒魂を討伐する際に、鎌府女学院において秘匿されていたはずの廃棄された実験施設へ迷い込んでしまった。周りにバレる前に施設を脱出して合流し、その後任務を遂行した。

報告をする際は迷い込んだ事は隠していたが、他の隊員の報告内容を聞いた学長から施設へ入ったことを知られ、現在に至る。

学長は教育者としては優秀だが、暗い噂や隠し事が絶えず、人間性は依存体質とDVに加えて、頻繁にヒステリーに陥るという悪性のジェットストリームアタックウーマン、最も近寄りがたい危険人物というのが学生の共通認識だった。

近寄りたくなかった。目を付けられないで卒業したかったという心持ちだったがもう遅い、ゲームオーバー、お手上げチクショーベイベー、脳内に色んな言葉がよぎるが、全てまとめるとさらば平穏な日々。

これから先自分はどうなってしまうのだろうか、考えれば考えるほど嫌な想像しかできず、再び歩き出すもすぐに壁を背に座り込んでしまう。足は震え、心臓はバクバクと音を鳴らし、汗が止まらない。部屋の中にいる時は全て隠していたが、正直全力で逃げ出したい一心だった。

 

「あ、無理、吐きそう」

 

私は極度の緊張から廊下で吐いた。幸い授業時間だったので、片付ける時もリバース時も、誰からも見られることは無かったがこの日、大事な物を失った様な気がした。

 

その後、学長に呼ばれた事を他の生徒から追求されるも、全てを誤魔化しながら授業を終え、寮へ戻った。

私は自室のドアを閉じると同時に大きく溜息をついた。今日から訳の分からない極秘部隊に所属することになり、そこではきっと通常の荒魂討伐よりも危険性の高い任務を遂行することになるのだろう。なんだろう鎌府女学院(うち)の実験施設の廃棄物と言われたら人体実験か研究者の口封じ、後は訳の分からない新種の荒魂(バケモノ)の相手とかだろうか。

極めて強い生命の危機を感じる、社会的にもヤバい気がする。ていうか脳内で赤信号が全力でキレてる、警鐘を鳴らしている、鳴らしまくっている。

自分の間の悪さというか、運の悪さがとても恨めしく感じるが、なってしまったことはもうしょうがないし、諦めるしかない。

ポジティブに考えれば裏で授業の評価や、特殊公務員である刀使の給料も大幅に増加される、卒業後の就職先や進学先もきっと便宜を図って貰えるはずなので、悪いことばかりではない、その代価が命がけの戦いというのが納得いかないのだが。

 

「鬱だ、鬱だよ……」

 

風呂から出て、パジャマに着替えカピバラを模したキャラクターのクッションを抱き現実逃避する、明日の朝になればきっと気持ちも落ち着いているだろう。そう思い横になった瞬間携帯が鳴る。

 

嫌な予感がする。

 

出たらロクでもないことが起きる気がするが、無視する訳にも行かない、相手の名は──高津雪那、学長だ。

 

「……もしもし、御影です」

「任務だ。詳細はメールで送った。今晩中に済ませておけ」

 

配属初日、投げやりに任務が始まる午後十一時。



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夜の仕事、お客様は神様(荒魂)です。

前の投稿から4ヶ月くらい経ってるらしいです。
二話投稿すんのに時間かけすぎだよって思ったら、ツイッター突き止めて脅迫文送ってみてください、文を書く速度が気持ち上がります。


森の中を歩く、周辺は灯りもなく、辛うじて道があることを示すのは手元にある心許ない懐中電灯だけだ。

何となく懐かしいような、懐かしく思いたくないようなそんな気持ちだ。

まあ何というか、辿り着いたのは私がこの職務に就く原因となった施設だった。まあ、メールの内容からわかってはいたけれど。

 

電話の後、頭を抱えていた私の元に送られてきたメールには、処理対象である廃棄物の名称と対処法、そして目的が記載されていた。

今回は私への試験も兼ねているらしく、任務を遂行すれば正式に隊員として任命され、装備なども支給されるらしい。

話が短いと思ったらそういう事だったのか。

 

この任務は口封じと私への試験が兼ねられているのだろう。きっと今までにもそうやって、少なくない数の刀使がこの任務に就いては死んで行ったのだ。だから私は何も期待されていないのだろう。

その為、最初は比較的危険度の低い廃棄物からという事だが、これが最初にやらせる事なのだろうか。

 

今回の任務内容は特殊廃棄物『複合型荒魂:オニグモ』の処理。

荒魂とは、珠鋼という特殊な金属を精製する際に発生する、『ノロ』と呼ばれる負の神性を宿した不純物が結合することで生まれる怪物だ。

 

この施設は、荒魂の身体を継ぎ接ぎして新たな荒魂を生み出す実験をしていたが、求めていた成果が得られなかった為、次第に研究費が減っていき、最終的に閉鎖された。

しかし、研究対象となった荒魂は処理されることなく施設の中に閉じ込められていた。

しかし、突如施設内の荒魂の反応が消滅し始めた。

一部の凶暴な個体が壁を破壊し、荒魂の蠱毒が発生。強大な荒魂が発生した可能性が高いと判断され、早期に調査、解決する事が求められている……らしい。

『オニグモ』はその中の一匹で、蜘蛛型荒魂の足と熊型荒魂の上半身を組み合わせた個体だ。

接続の際に拒絶反応が発生し、熊型は活動を停止しかけたが、再生力に優れる蜘蛛型の足が熊型を侵食して新たな荒魂『オニグモ』となった。

しかし、無理な再生を行った代償として『オニグモ』は全てのリソースを身体の維持に回さねばならなくなり、通常の再生能力を失ったそうだ。

蓄えたエネルギーを全て身体の維持に回さないと自壊してしまうなら『オニグモ』はどうすれば欠損した部位を再生するのか。

実験の結果判明したその回復手段は共食い、つまり『オニグモ』という荒魂は荒魂(同族)を喰らう事で身体を再生する荒魂なのだ。つまり、こいつが原因で施設が壊れて荒魂同士の蠱毒が始まって、『オニグモ』自身はただ自分の身体の維持のために食うだけだけど、周りは生き残る為に蠱毒をし始めて、更にこいつらが外に出るといけないからお前やれよと、ワオ、ジャパニーズ尻拭いだぁ。

 

とりあえず纏めると、

1.標的は『オニグモ』という荒魂

2.任務が長期化すれば他にも変な荒魂が出てくる可能性大

3.『オニグモ』は他の荒魂食べて回復する

 

この任務において、最も重要なのはこの三点、事前にドローンを送り込んで得た情報によると、施設の損害はまだ大きくないから早期に決着をつけられれば『オニグモ』以外の特殊な荒魂と遭遇する可能性は低い。

『オニグモ』のいる区画は比較的危険度の低い個体が多いが、少し離れた所には同等の個体もいるそうなのでそれらを解放するのは極力避けていきたい。というかそんなもの放置してるの頭おかしい、なんで自分たちで廃棄しなかったんだろう。これこそ責任問題でしょ、助けて。

 

「御影尊、現場に到着しました。現在の時刻は一時三十六分、これより任務を開始します」

 

任務開始の連絡を終わらせて施設へ踏み込む。

施設内は明かりがない、それ故に明眼という能力を使い、暗視を可能にする。

 

刀使は御刀を持つことで、超能力のような力を振るうことができる。

炎を操るとか水を生み出すとか、そんなファンタジーなことはできないけれど、高速移動や暗視等、元々身体に備わっている機能を増幅する様な能力が使える。

例えば、瓦礫を持ち上げる事も可能にする、筋力強化の八幡力や、身体を鋼鉄よりも強靭に変質させる金剛身、車よりも速く動ける様になる迅移、暗視や遠視を可能にする明眼等、人によって得意不得意があるけれど、刀使は皆これらの能力を扱える。

 

私が得意なのは、順番に並べていくと一番目が今も使っている明眼、次いで八幡力と金剛身、だけど迅移は苦手で、何故か他の人よりも燃費が悪く、使うとすぐ疲れてしまうという致命的な問題がある。

それ故、チームで動く際には周りのペースに付いて行くことが難しいので、今回のような単独行動の方が自分の好きなように動ける方が楽なのだ。

 

 

施設の地図は確認済みだけど、『オニグモ』が居ると思われる区画は施設の中心に近く、それまでに多数の荒魂と遭遇するはず。

『オニグモ』の討伐の為にも雑魚の数は減らした方が良いけど、こちらが消耗してしまっては元も子もない。目に写る全てを、なんて考えていたけど現実的じゃないよね、現代っ子はドライなのだ。手の平はドリルより回るぞ。

 

それに荒魂としても『オニグモ』は捕食者なのだから、その周辺にいる荒魂の数は多くないはずだし、早期に『オニグモ』と接敵する事が最も消耗を抑えられる。

という想定を元に考えた、私なりに完璧のルートが有ったのだが……。

 

「嘘でしょ……」

 

瓦礫で道が塞がれていて、奥が見えない。この道を通るのは不可能では無いけれど困難といった感じで、初っ端から計画が崩れてしまった。あーめん。ところで夜になると無性にラーメンが食べたくなるけど、ダメかな、そろそろ深夜の二時なんですけど。

ダメなんだろうなぁ。朝ごはんはラーメンにしよう、そうしよう。

一先ず今日の目標は朝日を拝むことだ。やってやるぞ、絶対経費で落として学長(ヒステリークソババア)に微妙な顔させてやるからな。



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廃墟を歩く時は好奇心と恐怖を忘れずに。

おいっす。ナイスネイチャなので初投稿です。


その後、地図情報との差異を補完しながら探索を続けた結果、目的の区画へ行くにはかなり遠回りになる事がわかった。

というか、この施設外見より広い。周辺には民家も何もないし、小高い丘の上に位置しているのだけど、地下にかなり拡張されている。

多分、改造された荒魂が外へ逃げ出すのを防止する為に地下に閉じ込めたんだろうけど、こっちからしたら無駄に広くて探索にかける労力が増えるだけなんだよね。やっぱ違法スレスレ、というかこんなアウトな施設作るやつはロクでもないな。ババア、おまえのことだぞ。

 

 

 

現実逃避しながらも歩き続けると、衰弱している荒魂が閉じ込められている檻が増えてきた。

ここにいる荒魂達は実験の失敗作、身体全体のバランスが崩れて歩くことすら不自由な熊型、翼が縮み、胴体が肥大化した鴉型、ほとんどの個体が力を失い、檻の中で一生を過ごすと定められている存在だ。

 

正直、見ていてあまり気持ちの良いものじゃないなぁ。牙を奪われて、いつ来るとも知れない死に怯えるだけの無価値な存在。

まるで……うーん、なんだろう。なんだか似た様なものを見たことがある様な。

 

……なにか、思い出しそうな気がしたんだけど、まあ多分大した話じゃないんだろうな。

 

檻を眺めつつ歩き続けてようやく、『オニグモ』が収容されていた檻までやってきた。

ここは施設の最深部、最も危険な研究が行われていた場所だ。

今までの浅い場所は荒魂の性質の操作、その失敗作が収容されていたけど、ここはその操作を行った上で組み合わせられた荒魂等の、危険度の高い失敗作が収容されている。

そもそも何故二種類の荒魂を合体させたのかというと、最初は研究者達の気まぐれだった。

ノロを流し込む事で強制的に延命し、どの程度の負傷なら再生できるのかという再生能力の試験中だった蜘蛛型に、性質操作で上半身の肥大化を行った際の失敗作だった熊型を接合したらどうなるかという実験。

その結果産まれた『オニグモ』は暴走、研究者達を虐殺し、多くの被害を出しながらも収容された。

 

というのが施設の資料から読み取れた内容。知ってるってバレたらそれだけで目付けられそうだし勘弁してほしいね……、多分もう手遅れなんだけど。

 

私達刀使には予め、荒魂の存在を感知するレーダーが配布されている。

今回は危険度の高い大型荒魂以外の反応は遮断されているらしく、それなりに危険な荒魂以外はレーダーに映らない……はずなんだけど。

 

「この先の広間に反応が11体……?」

 

地図と照らし合わせてみたところ、この先にある施設の中心部でもある場所に11体の荒魂の反応がある。

本来数体集まることすら稀な大型荒魂がこんなにも集合しているのは聞いたことがない。厄ネタのギネス記録更新だよ。バカ。

しかし、よく見るとその反応は1体の荒魂を囲うように10体が並んでいるように見える。

 

瓦礫に隠れながら道を進んでいると、広間の方から複数の大きな叫び声と、何かが壁にぶつかる様な衝撃音が聴こえてきた。

 

……嫌な予感がする。

 

広間の様子が見える位置に付き、中の様子を見ると、そこには地獄のような光景が広がっていた。

 

身体の一部分が肥大化した大型の狐型荒魂達が、更に巨大な歪な体型の荒魂──おそらく『オニグモ』と思われる個体に飛び付いては巨大な腕に弾かれて壁に激突していた。

怪獣大戦争かなにか?と思っていたのも束の間、『オニグモ』は下半身の機動力を活かし、弱った荒魂へ接近していった。

 

「……え?」

 

『オニグモ』は巨大な腕で狐型の大型荒魂を掴んだかと思うと、もがく狐型を無視してそのまま口へ運び、貪り始めた。

 

他の荒魂は今がチャンスとばかりに『オニグモ』に襲いかかる訳でもなく、全個体が私とは反対の通路へ逃げ出した。

ここで私はようやく理解した。荒魂達(アイツら)は『オニグモ』を囲んで倒そうとしたのではなく、飢えた捕食者に対して少しでも自分が餌になることから逃れる為に単独ではなく群れていたのだ。

『オニグモ』が弾いていたのはダメージを受けるからではなく、弱らせることと、小蝿のように、ただ邪魔だったから振り払うことを兼ねていただけだったのだ。

 

通常の刀使ならば数人で対処するレベルの大型荒魂を片手間に処理し、捕食する怪物。

それが私が倒すべき対象らしい。

 

「え、無理でしょ無理。あのババア私を殺す気ですよね、更年期か?」

 

『オニグモ』は食べ終わったと思ったらその場で足を下ろし、沈黙している。

食休み、というか身体の燃費が悪いから獲物を探すとき以外はこうやって消費を抑えているのだろう。

改めて観察してみると、この個体は写真よりも明らかに巨大化している。身体の接合部分は溶け出したノロか重なり固まったようで大きなカサブタのように身体を保護する鎧としての機能も備えているようだ。

どうやって倒せば良いんですか、これ。

まあでも愚痴った所で何も変わらないので事前に考えていた通りに動こう。

そう、私には事前に考えていた作戦があるのだ。

作戦名はそう、──【ガンガン行こうぜ】。

 

「もう何もわからない、『オニグモ』、とりあえず殴り合おう」

 

私は迅移を使い、全速力で『オニグモ』に斬りかかった。

私の御刀は無銘の野太刀だ。刀身が1.2m程の大きさで、とても分厚く、強靭(つよ)い。名刀とは言えずとも、こういった荒魂相手にはとても有効なのだ。

不本意ながら、私もこういった荒魂に対する戦闘の適性は高いのである。本当に不本意ながら。

刃が『オニグモ』に触れた瞬間、私の身体にとてつもない衝撃と、手応えが伝わってくる。

コイツは滅茶苦茶硬い、斬り辛い。でも"斬れる"。そして、斬れるということは、殺せるということでもある。

勝機はある。やっぱり正面から殴り合うのが正しかったんだね。

 

しかし、こんな巨体相手では数発食らっただけで写シも剥がれて死んでしまうだろう。とても恐ろしい、恐怖で体が震えてしまいそうになる。

それと同時に、今の状況を楽しんでいる私が居るのも事実だった。私は私が思っていたよりも、強いのかもしれない。

 

「行くぞデカブツ。私の為に死ね」

 

さあ、戦いの始まりだ。ぶっ殺してやる。




お久しぶりです。覚えてる人居たらですけども。

なんでコイツこんな血の気多いの?
久しぶりに設定とか見直してたら主人気がかなりメンタルジェットコースター人間でした。
暇な時、気が向いたら書いて投稿します。バイバイ。


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