とある六花の一方通行(アクセラレータ) (とあるミサカの匿名投稿(ネームレスノベル)
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転生(?)〜幼少期編
記憶と母親、過去。
同時に、そのような違和感その他を確認したら、是非感想欄などにてご指摘ください、とミサカは露骨な誘導をします。
※第一話は抹消したので、これがシン・第一話となります、ご了承下さい、とミサカはやっと新劇場版が完結する某アニメ風に言ってみます。
では、どうぞ。
「俺、は………な、にを…………」
足元を見れば、原型を留めない程に粉々になった白い破片。赤黒い血溜まりの海に浮かぶ、それら。
ぐちゃぐちゃの肉塊から、途切れること無く流れ出る鮮血は、頭部というゲートが破壊され、意味を成さなくなった体というダムから溢れる濁流だ。
自らの血肉と角の残骸という土砂を押し流しながら、確実にその領土を広げて行く侵略者だ。
だが、その侵略の渦中に立ち尽くす
直撃した筈の角によって付けられた傷も無ければ、潰れた頭から噴き出した返り血を浴びて、紅く染まっているのでも無く。
緑の大地を侵食する赤と、茜色の海に浮かぶ生成の骨片。
酷く混沌とした色の世界の中で、唯一人、染まることの無い清純の白。白い服、白い髪、白い手足。しかし、その彼の双眸だけは。
血よりも赤く、夕暮れよりも紅く、彼岸花よりも緋いその双眸だけは、恐怖に見開かれていた。
「あ、あァ………ウ、ぁ…………………」
自分が何をしたのか、理解
「俺、は……おれは…………鈴科、
突如として、流れ込んできた、『記憶』。
一人の人間が、生まれ、生き、苦しみ、踠き、そして、幾重もの試練の果てに、幸せを…平穏を掴み取り、眠った軌跡。一人の
ありとあらゆる、成功と、失敗と。繊細な感情の起伏すらも内包した、
「記憶………違う、これは、俺の……? ……いや、だが、だとしたら………」
『鈴科小百合』と『
「………っ、小百合!?」
「…?」
混濁する思考の中に、投げられた声。その声の主を探し、振り返ってみれば、何という事は無い。自分の母親、
…だが、今の彼女は、明らかに様子がおかしかった。
いつもの彼女の、全てを包容し、受け止めてくれるようなおおらかさや、大袈裟な程に、彼を、そして、父を愛する眼差しが、どこか
『愛に狂っている』…そう言うべきだろう。
愛情や安堵、様々なプラスの感情が混じり合ったその瞳は、逆に、恐ろしいほどの、まさに、狂
(って、冷静に考えてる場合じゃ無ェ…)
先の出来事。甦った記憶。それらが示すものは、つまり。
(生体電気……血液の流れ……
「心配したのよ…!」
「むがっ」
間一髪。能力を解除した瞬間に抱き着いて来た。…にしても。
「うぅ………良かった……本当に、本当に良かった………死んでしまったかも、なんて考えた、愚かな私を許して…ね……?」
「許すも何も、ンなコトで怒らねェよ……怒らねェから、取り敢えず、そォやって抱き着くのをやめてくれ……胸、苦し…」
俺の母親、清姫は胸が大きい。それこそ、強く抱き締められると苦しいほどに。詳しくは知らないが、前にFよりもどうとかと嘆いていた……いや、今は置いておこう。
「いいえ。…こうして抱き留めておかないと、どこかへ行ってしまいそうだから……そんな危うい雰囲気を、
「……」
俺が黙り込むと、母おy…じゃない。清姫は小さく微笑んで、少し力を弱めてくれた。(何故か知らないが、いつも『清姫』と呼ぶように言ってくる)
…昔からこうだった。
どんなに小さな秘密や隠し事でも、敏感に気付いて…いや、感じ取って、と言うべきなのだろうか? そしてこう言うのだ。
『何を隠しているのかは分からないし、無理に知ろうとも、聞き出そうとも思わない。言いたく無ければ言わなくても良い』と………そして、こうやって優しく抱かれている内に、ぽつぽつと話し始めてしまうのだ。
話し始めると、清姫は最後までしっかりと、黙って聞いてくれる。聞き終えると、いくつか質問をしたり、しなかったり。
そして最後に、何が悪かったのか、誰が悪かったのかと、やんわりと、だが、しっかりと言ってくれるのだ。
…そんな、どこか不思議で、でも素敵な……立派な女性だった。
………だが、これは。これだけは、そう易々と話すわけにはいかない。
たとえ、育ての……産んでくれた、親だとしても。
「……怖かった」
「…ん?」
だが、これもまた『真実』……その一端を、話すだけならば。
「いきなり、
『ベクトル操作』だと、気付けてしまったから。
「今まで生きてきた日常が…崩れていきそうな気がして」
またあの時のような闇の中…能力ゆえに遠ざけられ、傷付き、傷付けてきた暗い日々に。戻ってしまうのではないかと考えると…怖くて。
「自分が、『自分』で無くなるような……そんな気がして」
"鈴科小百合"という『自分』と、"
……しかし。
「…けど、自分自身は……
俺は、
「………俺は……
「…………………
「……え?」
「だって、さっきからあなたは……小百合は、『自分を
「………っ」
どんなに切れ切れで、断片的な話をしても、必ず一発で結論を…悩みを言い当ててくる。それこそ、心を読めるんじゃないかと何度も疑ったし、どこぞの
…だが、結局のところ彼女は……自分の母親は、『
嘘を嫌い、誰よりも…何よりも、『真実』を尊ぶ。何と清く、何と純粋なのだろうか。
………そんな彼女から生まれた自分は、どうなのだろうか…。
「きっと、私には分からないこともあるのだろうけれど…………あなたは……小百合は小百合よ。『自分は誰で、何者なのか』なんて……そんなもの、誰にも分かる筈無いわ。どれだけ迷っても、何があろうとも、全てを決めるのは、小百合……あなたなのだから」
「……」
「何をどう感じて、どう決めるのか。それがたとえ、誰かの真似だったとしても。……それを"そうする"と、あなたがそうすると決めたのなら、それはあなたの判断。
『あなたが決めたこと』なのよ」
「………決めた…こと、か………」
「……それに、あなたは『自分』を見失っている………そうは言ったけれど、あまり変わっていないもの」
「……は…?」
「だから、そのままの意味よ。『自分を見失っている』割には普通じゃない、ってこと。……実は、そこまで悩む程の問題ではなかったりして……ね?」
きよひー(を真似たキャラ)の口調が定まりません…、とミサカは少し不安げに呟きます。
次回…次回は、気付いたら深夜テンションでメモ帳に書き殴っていた怪文書となります……、とミサカは次話へのハードルを下げようとします。…え? もともとハードルなんて無い…? し、知っています、とミサカはちょっぴりしょんぼりします。
感想評価、誤字報告などお待ちしております、とミサカは何の衒いも無くお願いします。
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死後、束の間の夢。
出来る限りの速度で更新していきますので、思い出した時にでも『更新されてるかな~?』という軽い感じで見ていただければ幸いです、とミサカは堂々と不定期投稿になることを宣言します。
それと、本話の正確なタイトルは、『気付いたらメモ帳(物理)にシャーペンで一部難読な程馬鹿みたいに細かい文字で書き殴られていた深夜テンションの産物である怪文書』となります、とミサカは息継ぎ無しで言い切ります。
そして、深夜テンションの産物なので、作者自身ですら理解出来ていない内容及び表現、そして意味の重複が存在する可能性が高いです、とミサカは本当にお前が書いたんだよなというツッコミを無視しつつ注意を述べます。
では、第二話、どうぞ。
死。そう自覚出来たのは何故だったのだろうか。……いや、自覚しているのでは無い。
勝った。終わった。
何もかも全てが、馬鹿馬鹿しいぐらいキレイに、何のわだかまりも、遺恨も災禍も何事も残さず終わりを告げたのだ。
偽りの終わりでも、嵐の前の静けさでも無い本当の、
あまりの馬鹿馬鹿しさに、誰かが笑った。それにつられて、二人が、三人が、四人五人六人七八九十 誰も彼もが笑いに笑って、笑いが止まらなくなった。
笑って笑って笑い合って笑って、気付いたら泣いていた。これが泣き笑いというものなのか、それとも本能的な安堵によるものなのか、全く答えが分からなかったが、そんなことは気にならなかった。終わった。
…確かに、喪ったモノはあまりに多い。自分が殺した何十人何百人、
だが、終わり良ければ全て良しとはよく言ったものだ。それもこれも、全てが
天使、魔神。もうそんなモノを気にする必要も無い。
ただただ平和な全てが、いっそ気持ち悪いくらいに自分達を祝福している。
喜べ、騒げ。これからまだまだ素敵な
ありとあらゆる
何せ、ここには
『
それは、
それは、
それは、神の意思すら意に介さない、
─── 過去の記憶。
その後自分は、一応それなりに幸せに生きて ────── 一応、幸せに死んだ筈で。
…そして、今に至る。
意識はある。問題無い。だがそれ以外が分からない。何の情報も無い。
当然生体電気は解析出来ないし、そもそも今どういう状態なのかすら不明。
…まあそんなのはどうだって良い。
問題は ─── どうにも、生きているらしい。ということだ。
そう、
生涯を終えた筈の自分が、生きている。これはどういうことだ。
そうでもなくて。
まずそもそも手を出すなと警告した筈だ。では何だ? まあ良い。
結局のところ、
殺した相手の供養なんてものはしていないし、
未練を残したまま死んだ人間はどうなるのか…そもそもまず人間は死ぬとどうなるのだろうか。そんな研究は、学園都市にもさんざんあって。自分の脳は、どうも、解を見つけ出しているようで。
。 。そんな、身も蓋も無い言葉がストンと頭に収まる。
全く未知の法則、元素。つまりは
自分は幸せだったという確証が、打ち止めが幸せだったのならば、そこに意味があり、そこが一つの
つまるところ、終わった事を気にしてもどうしようも無いのだ。
自分は死に、今は何の因果か転生を果たしたらしいという事実は既にあるのだ。ならばもうそれを受け入れて
今、自分には『意識』以外に何も無いらしい。つまり成程、これが死と生の狭間、そこで思考しているようなモノなのか。…まあどうでも良い。
どうせ解析など出来はしないし、出来たところでどうしようも無い。むしろ逆に、こんな空間を創って何に使えと?
…異世界とか転生とかいう、
─── かつて、世界が
自分が目指しているのは最早英雄では無いと。
自分の心に巣食う、歪んだ偶像だと。
それは、気付いてさえしまえば、捨てるのにさして苦労は無かった。
そして青年は、
自分が出来ること、自分にしか出来ないこと、自分がやらなければいけないこと、自分がしたいこと。
そんな全てに、理由付けや精査などせずに走る。
"自分"を自らで定め、歩む、英雄。
したくて、出来て、"やりたい"と。
出来なくても"やってみせる"と。
意気込み、意地を張り、傷付いても、無用に争うのでは無く。
不幸だと叫んで、泣きながら笑い、静かな憤りと、最善を引き寄せる事を願って。
そんな、当たり前の、"えいゆう"に、なりたいと。
かつて、護ると誓った人が居た。
かつて、自分のために笑ってくれた人が居た。
…そういえば、
『アナタが居なくたって、しっかりと生きてみせるからって、ミサカはミサカは涙を隠して小さく意地を張ってみたり!』
『"自分なんか"なんて思わないでよねって、ミサカはミサカはアナタを励ましてみたり!』
『アナタが居ないとやっぱり寂しい…でも、アナタに笑われないように頑張らなきゃって、ミサカはミサカはさらっとアナタを
…あァクソ、あの能天気な笑顔が、声が。『励まし』が幾らでも浮かぶ。気持ち悪ィ。…コレじゃァ、ロリコンなンて呼ばれて当然だな………
「アナタとの別れはとっても寂しい。………でもね。これは終わりだけど、"おわり"じゃない。だって、アナタが死んでハイおしまい、『物語は終わり』なんて、酷いよね? …だからこれは、新たな始まり。延々と続く ─ かは分かんないけど、途切れることの無い"道"の、少しの隙間。ここからはもう戻れないけれど、でも、何度だって振り返れる。何度だって思い出せる。何度だって………だって、『道は繋がっている』。だってそうでしょ? 先の無い道に、
…そォだ。コレは終わりで始まりだ。
忘れない、何度だって思い出す。振り返って立ち止まって、だけど俺は進み続ける。
"終わった"から何だ? 生まれ変わったから何だァ? ソレで"今まで"の意味とか価値とかゼンブ消えるってか? はっ、冗談じゃ無ェ。寝言は寝て言えって教わらなかったのか三下ァ?
『想い出は、いつだって
安っぽくて俗っぽくて、ソレはつまりそンだけありふれてて、かつ廃れてねェってコトだ。
過去は変えられねェ、過去には戻れねェ。だったら何だ? 永遠に悔いるか? それともカミサマにでも縋るかァ? 『全部無かったことにして下さい』って? ソレこそ三下以下だろォが。
過去があって
…あ? イイ加減要点を絞れだァ? ったく、コレだから三下はよォ……まァイイ。俺も流石に飽きてきた。
俺は死ンだ。間違い無く。ンで今は生きてる。コレも間違い無ェ。何で異世界とか転生とかって確信してンのかは後でジブンに聞くとして、つまり俺はこっから先、『二度目の人生』ってヤツを送るワケだ。
そこで俺が目指すのは………『
ンでもってとりあえず、平和に生きて償う。俺が奪ったアイツらの命を、感情を持った者として持つべき、享受すべきだった平穏を、背負う。……つっても、何となくまた戦うコトにはなりそォな気がすンだよなァ…………。
…だから、何回でも何十回でも、償い切るまでは生まれ変わり続けたって構わねェ。……あァ言っとくが、俺は過去に縋ってンじゃ無ェ。過去があって今がある。
"罪"は、自覚が有る限り、どンだけ経っても付いて来る。
アイツが
俺はしっかり生きて、生き抜いて、俺の"罪"を忘れない。ソレが俺にとっての贖罪だ。笑いたきゃ笑え。何とでも言って………はィ? "言わない"? …………………く、は。面白ェ。
なら、俺の"過去"の『精算』に、自己満足に、罪悪感からの逃避行に、最期まで付き合って貰うぜェ? 勿論、拒否権なンてモンは無ェ。
"はい"か『Yes』か、特別に選ばせてやる。さァ、準備は出来たか? ンじゃァ、最後にもォ一回だけ言うぜ?
─── 彼はかつて、過ちを犯した。一生をかけても償い切れない程の罪。
だが、それを償い続けるのは、彼の意志だ。彼がそれを望み、それを選んだから。
だからもし、赦しが得られたとするならば、その時は。彼はただ、面白そうに笑い ───
彼は振り返る。彼は立ち止まる。だが決して、
……と言うより結局のところ、後は
支離滅裂。だって彼は、やはり彼なのだから。
過去の罪を、過ちを、想いを糧に、彼は立ち止まり、振り返り、座り込み眠り思い出すだろう。 を、 を、 を を を。
だが、"世界"はもう
さあ、幸福な
過去には戻れない。だって"道"には、
こっから先はァ…………、一方通行だ!!!
過去に、現在に、未来に。総ては一つで、
文字に起こしてみると、やっぱり深夜テンションって怖いなぁ…、とミサカは他人事のように言います。
それと、非ログインユーザーからも感想を受け付けるように設定しました、とミサカは報告します。…その内また戻すかもしれませんが。
感想をくれた方がどんな小説を
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『学
入学式、或いは疑惑の目と根負け
では、『学
「このように…我が校では、次世代を担う優秀な人材を育成すると共に、
「くァ、ァ………、眠ィ…」
何十、何百と用意された、簡素な椅子の群れ。一式の制服に身を包んだ生徒の群れ、群れ、群れ ─── その中で、
いかにも眠そうに欠伸をこぼし、周囲の視線を意にも介さずに堂々と脚を組んで椅子に座る"彼"は、ステージの上で続く『お話』を聞き流していた。
言わずもがな。今はここ、星導館学園の入学式の真っ最中である。
『
確かに、彼の知性は常人の域を超えて久しいし、大学どころか、いきなりNASAのようなトンデモな職場に放り込んでも、それこそ何の違和感も無くそつなく仕事をこなせるだろう。
だが、たとえNASAに放り込んでもGoogleに放り込んでも大丈夫だとしても、面接で『中卒?』『はい』では取り合う筈も無い。と言うか、まずオハナシにならないだろう。書類審査で落とされて終わりだ。
適当な企業に
「…どっかの暗部にでも入らねェ限りは、な」
そして或いは、傭兵か。
「ではここで、星導館学園の生徒会長であるエンフィールド·クローディア女史よりお言葉をいただきます。どうぞ」
そう呼ばれて無数の明かりに照らされたステージに登壇したのは ───
「おはようございます、皆様。改めまして、クローディア·エンフィールドと申します」
輝くような金色の髪と、深い碧の瞳を持った少女。百人中百人が『美女』或いは『美少女』と評するであろう程の整った微笑は、淑やかな魅力を辺りに振り撒いているかのようだ。
しかし、その
(あの女、
長年"闇"の中に身を置いていた彼。そんな彼だからこそ気付いた、少女の纏う闇の匂い。
彼女の持つ、或いは関わっている闇が、中途半端なモノではないということ。そして、彼女もまた"闇"に生きる一人なのだと。その黒く淀みきった、それでもまだ
(『星導館学園高等部入試成績総合二位』、『星導館学園序列第二位』……優等生の肩書きの裏で、ナニを企ンでンだか…)
壇上で、見た目に違わぬ凛とした声で語る姿を眺めつつ、彼は思案を巡らせる…
水上学園都市「六花」通称アスタリスク
《落星雨》の爪痕たる北関東多重クレーター湖上に浮かぶ正六角形型のメガフロートに築かれた学園都市で、日本の領土に位置しながらも治外法権領域となっている。統合企業財体によって六つの学園が設置されており、所属する学生は、年に一度開催される《星武祭》で闘うために集められ、当然ながらその大半は《星脈世代》が占める。
《
かつては8つ存在したと言うが、現在では「銀河」「EP(エリオット=パウンド)」「界龍」「ソルネージュ」「フラウエンロープ」「W&W(ウォーレン・アンド・ウォーレン)」の6つにまで減っている他、銀河は星導館学園のバックに、他の5つもそれぞれの学園のバックについている。
企業であるが故に、利益にならない事業を世論操作によって潰している、より多くの利益を得る為に経済格差を"作っている"、などと黒い噂は絶えないが、恐らくそれらは、噂と言うよりは、漏れ出した真実、と言うべきなのだろう。
(邪魔だな、コイツ……)
鈴科小百合は、一人悩んでいた。
優に三人は並んで使える筈の長椅子、長机を一人で占領し、教室に並んだ椅子の中でも、最後列左端という、最高に日当たりの良い場所を独占して、一人で眠りこける小柄な少女。
「オイ……オイ。オマエ、沙々宮だろ?」
見覚えのある…と言うか、
「……ん……………む。おまえは…………」
「……オイ。まさかいくらなンでも、忘れたとか言うなよ?」
「………そう、すずしな。うん、鈴科。忘れてない」
「今の"間"は何だ間は」
「…そんなことより」
「話題を逸らすな」
ゆっくり、ゆっくりと。腕に埋めていた顔を上げ、その少女は、漸く眠そうな顔を小百合に向ける。
「何の用?」
「…あァ、そォだった。単刀直入に言う。ソコを退け」
「断る」
「なら譲れ」
「しかし断る」
「なら特別に、俺の隣に座らせてやる。窓から二番目なら文句は無ェだろ」
「だが断る。…鈴科が二番目」
高速問答の末。
ぽんぽん。と、可愛らしく
「はァ……まァイイ。っつーか、何で俺ァこンなコトしてンだァ…?」
小百合は一人
「……じーーーーっ………………」
「……………、なンだよ?」
じーっ…と、ご丁寧に擬音語を発音して、小百合を見つめる少女。
「…何の躊躇いも無く、見ず知らずの異性の隣に座れるとは」
「オマエの"異性"に対するイメージはどォなってンだよ。っつーか、『見ず知らず』でも無ェだろォが。
少女の言葉に、小百合は呆れつつも言葉を返す。
「ん、それもそうか。じゃあ、改めて宜しく………えっと?」
「……あァ、小百合だ。
「…
「……ン」
差し伸べられた手を取り、軽く握り返して離す。しかし、今度は擬音こそ無いが、やはり不思議そうに小百合を見つめる紗夜。
「む、そこはすぐ離すのか…」
「意味が無ェだろ。それに、変に誤解されても損すンのはオマエだぜ? 俺は三下のコトなンざどォだってイイし、何て言われよォが知ったこっちゃ無ェが…」
「それなら、私も特に気にしないけど?」
「………ンじゃ、ほらよ」
「……?」
突然再び差し出された手を、不思議そうに見つめる紗夜。しかし、手はすぐに引っ込んでしまう。
「つまり、こォいうコトだ」
「いや、どう「おぉ~……!」「誰だ? あの綺麗な女の子…?」…い、う……?」
首を傾げた紗夜が再び尋ねようとするが、突如教室に広がったざわめきが、それを打ち消してしまう。
「……なに…?」
「ンだァ……?」
自らの問い掛けを中断された紗夜と、ほんの僅かな興味こそ抱いているが鬱陶し気な小百合。不機嫌な二人は、教室の前方から広がる動揺に目を向ける───そこに居たのは、まさしく"美少女"。
肩を越える桃色の髪と、整った顔立ち。どこか気品や気高ささえ感じるその立ち居振る舞いは、確かにこれだけの騒ぎを引き起こすに足る衝撃を教室に与えたようだった。
「…誰だ、ありゃァ……?」
「………さあ…?」
だが、"誰だアレ"程度の二人。騒ぐ生徒達の誰とも言葉を介することも、目を合わせることすら無く一人座る少女を見ながら、二人揃って首を傾げる。
「おいお前ら、全員揃ってるか~?」
そんな教室の雰囲気に割って入ったのは、あまり女性らしく無い、ドスの効いた低い声。
「あれは……」
「釘バット…だな……」
「不良? まさか先生?」
『さっさと座れ』と、たった一言でざわめきを消し、全員を着席させたその女性は、お世辞にも柔らかいなどという言葉とは微塵も縁の無さそうな、そんな鋭い眼光でクラスを薙ぎ払うと、短く告げる。
「お前らの担任をすることになった、
(((自己紹介だったの今の!?)))
「……
(アレは………ただの不良だな。間違っても
各々がそれぞれの感想を抱く中、その渦中に立つ『教師』は、特に気にする様子も無く事を進める。
「それじゃまずは、挨拶がてら自己紹介でもしろ。"あ"から五十音順で呼ぶからな……まず最初、
「はいっ」
(自分は"す"ずしな……割と後ろだな)
「……次、
「は、はいっ…」
(…
いや、しかし、だが………脳内に浮かぶあらゆる否定的な仮定の言葉。だが、
「いや、まァ、居て困るワケでも無ェか……
「自己紹介、か。何を言おうか…鈴科、何か………鈴科?」
「……ン、あァなンだ?」
「何をぶつぶつと…それより、自己紹介って何言えば良いと思う?」
「あー……テキトーでイインじゃねェか? 名前と、好きなもの、嫌いなもの…そンだけ言えば充分だろ」
「…なるほど」
一瞬、誤魔化すように視線をずらした小百合だが、すぐに何事も無いように紗夜にアドバイスをする。
「…次、
「ん……はい」
名前を呼ばれ、のんびりマイペースに立ち上がる紗夜。喋り始めた声の調子も、どこかゆったりとしている。
「沙々宮 紗夜。好きなのは、
それだけ言ってまたのんびりと座り、同時に視線を向けてくる紗夜。
「まァ、順当だろ。テキトーとは言えねェなァ。俺だってそンくらいしか言うコト無ェし」
「まあ、教師もテキトーだし」
「ホント、なンでココで教えてンだろォなァ…」
さらっと教師を批評する紗夜に、当然のように同意する小百合。
「………次、
「ハイハイ…」
そして、番が回り、呼ばれた小百合が面倒臭そうに立ち上がると、ほんの少しだけ教室がざわめく。
「アレが、
「真っ白い髪…」
「"小百合"って、男だったのか…普通、女の名前だよな?」
「……?」
不思議そうにする紗夜の疑問に答えるように、匡子が口を開く。
「聞けばお前は、前代未聞の入試成績全科目満点、文句無しの
(突然何言い出すンだァコイツは…?)
「……どォも、
匡子の発言の意図は図れないが、素直に(そして彼なりに丁寧な口調で)返答する。
だが、続く匡子の一言によって、彼の適当な
「 ───
「…………っ、」
……なるほど。つまり、
そんな細い
「……… …………… 、 ……」
小百合の顔が、僅かに俯く。
「く………くく…くかか……」
しかしこの時、隣に座っていた紗夜だけは、辛うじて気付くことが出来た。
「オイオイ……誰に向かってモノ言ってンのか…分かってンだろォなァ……? く、くかか…………」
その肩は、まるで笑いをこらえるかのように、小刻みに震えていることに。
「…………、すず、しな…?」
─── その口が、歪んだ三日月のような、笑みの
「ハジメマシテ。聞いての通り、俺は"第一位"
人を食ったような笑みと共に、唐突に始まり、終わる
「…ったく…。じゃあ次…」
どこか呆れたような匡子の声と共に、少しずつ喧騒が戻り始める。
「鈴科…」
「ン…なンだよ?」
暫くの逡巡の後に、紗夜が放った言葉は………
「…私よりテキトー」
「……なンか悪ィかよ」
その後、
んー……区切りが悪いような気しかしませんが、まあ大丈夫だろうとミサカは一人適当に頷きます。
小百合と紗夜はいつ出会ったのか…(ある意味言うまでも無いですが)…『シオリ』とは一体何者なのか…(タグで分かる人は分かりますよね)………伏線の張り過ぎはウザいだけだって習った気がする、とミサカはアホの子になってみます。
次回、『投稿日未定!ミサカ、まさかの失踪!?この二次創作の未来は如何に!』
君の中の(作者にやる気を出させる)
と、ミサカは色々混ざった次回予告風の文章を放り投げてみます。
感想評価等是非ともお願いします、とミサカは何の衒いも無くお願いします。
それと評価をする際、特に低評価を付ける際には、何故その評価値なのかを一言お願いします、とミサカは呼び掛けます。今後の執筆の参考になりますので。
……ただ『話になってない』と言われても、まだ四話ですし……
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