GS×MHST's (メンツコアラ)
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四方世界
それはモンスターと絆を結び共存する、モンスターを狩るハンターとは対をなす者たちである。それ故に、ライダーは余程の事がない限り自分達の村から出ようとはしない。
しかし、何事にも例外というものは存在する。
彼もまたライダーだ。雷狼竜ジンオウガ "ライライ" をオトモンとしている。しかし、彼は訳あって自分の生まれ育った地を離れ、龍歴院を中心に多くの場所を転々としていた。
その間、自分の生い立ち故に問題が起こることもあったが、いろんな者たちと出会い、絆を結び、彼らはハンター達の仲間として認められた。共に狩りをし、探索をし、ある時は古龍に挑み、何時しか彼らは "轟雷のライダー" と呼ばれ、ライダー初のG級の称号を得られるのではと噂されるほどだった。
……だが、誰にだって終わりの時はやって来る。
「はぁッ……はぁッ……!」
「グルルル……」
場所はマグマが迸る灼熱の大地『溶岩島』。
ライダーたちと対峙するのは絶望の伝説。とある伝承で『怒れる邪龍』として語られている紅き古龍 "紅龍 ミラボレアス" であった。
「……………………」
ミラボレアスは空を悠々と飛び、遥か上空でライダーたちを睨む。一方のライダーたちは立てるのがやっとの状態。鎧も武器もボロボロで回復アイテムも殆どない。ライライに到っては甲殻はひび割れ、雄々しき角は砕け、自慢の毛は焼け焦げていた。
「俺たちもここまでか……」
そう呟いたライダーは体力の限界で倒れ伏しそうになるのだが、それを止める者……いや。モンスターがいた。
「ガウゥ……」
ライライが前足でライダーを受け止め、エメラルドに輝く瞳をライダーに向ける。その瞳を見たライダーは彼が伝えようとしている事を感じ取った。
「そうだな……───ライド・オン! ジンオウガ!」
残るの力を振り絞って、ライダーはライライの背中に飛び乗る。
「最後に散るなら、俺たちらしく散ろうじゃねぇか!!」
「オォォォォン!!」
「────!!」
ミラボレアスが雄叫びをあげ、空から巨大な隕石か幾つも降り注ぐ。
ライダーはライライと共に雄叫びをあげる。次の瞬間、ライダーの右手の手甲に取り付けられた蒼い石 "絆石" が眩い輝きを放った。
「行っけええええええ!」
「ウオオオオオ!!」
二人は轟雷を纏い、自分達に迫る隕石に向かって飛び上がる。
ぶつかり合う閃雷と流星。
次の瞬間、眩い閃光が溶岩島を照らした。
●●●●●●
カランカランと
四方世界の神々にとって、そこに住む生命は神々が求める刺激の為の
今日も呑気に賽子を転がす神々だったが、そんなとき、『混沌』の神が新たな刺激を求めるため、ある提案をした。
別の世界から新しい
神々の多くは混沌に賛同し、早速他の世界から良さげな
亡くなった者なら、どうなっても文句は言うまい。そんな考えでボロボロの駒を新品同様に直し、
───巨大な獣のような竜に股がっている、その駒を。
●●●●●●
気がつくと、
「何処だ……ここ?」
目覚めて一声。頬を撫でる暖かい風の感触で意識を覚醒させたライダーの口から出た言葉がそれだった。
木々の隙間から見える青々とした大空。木葉の隙間から漏れる日の光。鼻孔をくすぐる植物や土の臭い。
「いや。なんでだよ……」
「クゥゥ……」
明らかに溶岩島ではない。それに今頃気づいたが、古龍との戦いでボロボロになっていた武器や鎧、体の傷。それらが全て何事も無かったかのように消えている。
まさか、さっきまでの戦いは夢だったのか?
そんな事を考えたライダーだったが、すぐに否定する。実際、ミラボレアスとの戦いで使用したアイテムはちゃんと減っていたし、何よりも対峙した時の威圧感や攻撃を受けた時の痛みを体が覚えている。
(ここが死後の世界って奴なのか……? いや。俺は……そして、ライライも生きている。じゃあ、ここは一体───)
『───!!!』
「「───?!」」
二人の聴覚が捉えたのは女性の悲鳴。音の感覚からして、場所はそこまで離れてはいない。
「……とりあえず、考えるのは後回しだ。行くぞ、ライライ!」
「オォン!」
───ライド・オン! ジンオウガ!
その言葉と共に、彼の絆石はまた輝いた。
主人公設定
渾名:ライダー
性別:男性(18歳)
防具:ジンオウSシリーズ
(デザイン:MH4G)
武器:メイン・・・チャージアックス
サブ・・・ガンランス/双剣
趣味:料理
オトモン:ライライ(ジンオウガ)
四方世界の神々の気紛れで、オトモンと共に異世界転移させられた青年。基本は明るい性格だが、パニックになると頼りなく感じてしまうのが玉に瑕。
とある事情で、持ち主のいない絆石を幾つか持っている。
ライライ(ジンオウガ)
ライダーのオトモン。クールでありながらも熱い心の持ち主だが、ライダーとは別の事情からタマミツネが大の苦手で、視界に入ったら一目散に逃げるか身を隠している。
伝承の儀によって、とある古龍の力を伝承。結果、毛皮の白い部分が氷雪を思わせる淡い空色に変わっている。
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小鬼
今回は此方の投稿。
そろそろ境界線上の方も投稿しないと……
それではどうぞ。
辺境の街から半日離れた小さな森。
その中を一人の少女が全力で走っていた。
「はぁッ……はぁッ……!」
身につけた高価な鎧や武器、纏う雰囲気から貴族なのだろう。首から下げた鋼鉄の認識票が、彼女が冒険者であることを証明している。そんな彼女……令嬢戦士は整えた髪が乱れようが、スカートが枝に引っ掛かって破けようが、彼女はただ走り続けた。
背後から迫る
「GURGU!」
「GOBBO!」
「GIA!」
「GURRBOA!」
「いや! 来ないで!」
令嬢戦士は心の中で後悔していた。どうしてこうなたのかでと。
彼女は依頼でゴブリンの討伐に来ていた。準備はちゃんとしていた。油断なんて無かった。だというのに、
(まさか、
想像していなかったイレギュラーの存在に一党は壊滅。令嬢戦士だけは仲間が何とか逃がしてくれたが、果たして自分の命は一党の命を犠牲にしてまで助かっていいものなのか? むしろ、一党の為に自分が犠牲になるべきだったのではないのか? そんな自責の念が彼女を襲う。
しかし……いや。だからこそ、彼女はすぐ前方の足元にあった木の根に気づかなかった。
「キャア───!?」
盛大に転ける令嬢戦士。すぐに起き上がろうにも、転んだ拍子に足首を捻ったのか、上手く立ち上がれない。結果、ゴブリンたちの接近を許してしまった。
「GURRBOA!!!」
「イ、イヤァァァァァッ!!」
ゴブリンたちが令嬢戦士に襲いかかり、淑女の悲鳴が森林に響き渡る。
「イヤ! 離して!
最後の抵抗と暴れる令嬢戦士だが、手足を押さえられている状態ではただの身じろぎになり、彼女の泣き叫ぶ顔はゴブリンたちの劣情を増幅させるスパイスでしかない。
ゴブリンの一物が令嬢戦士の乙女の園に狙いを定める。
(誰か……誰か助けて……!)
届く筈のない想いを抱いて、純潔が散る痛みを耐えるために目を硬く閉じる。
……が、いくら待ってもその時は来なかった。令嬢戦士は恐る恐る目を開けると、ゴブリンたちの視線は彼女には向いておらず、別の方向を見て怯えていた。令嬢戦士はゴブリンたちの視線を追ってみれば、そこには狼に似た巨大な
「グルルルル……」
モンスターの唸りのみが静かな空間に響き渡る。
今、ゴブリンたちを支配しているのは性欲ではなく恐怖。生物としての本能が危険信号を発していた。
「───オォォォォォン!!」
モンスターが雄叫びを上げ、ゴブリンたちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。残された令嬢戦士は純潔が守られた安心感と同時に絶対絶命のピンチに追い込まれた事での恐怖心に支配されていく。
「あ……あぁ……」
あまりの恐怖で失禁する令嬢戦士。そんな彼女に、モンスターの顔が近づく。
食べられる。そう覚悟した瞬間、
「あの……大丈夫っすか?」
「───ふぇ……?」
落ち着いた男性の声。見上げれば、モンスターの背中に、モンスターを人型に変えたような鎧が跨がっていた。
●●●●●●
(さて……どうしたものか……)
場所は変わって、少し開けた場所。
気まずい空気が流れるなか、ライダーは腕を組ながらさっきまでとは別の考え事をしていた。内容は、
「えぐっ……ひぐっ……」
(どうやって慰めよう?)
「見られましたわ……私の彼処を……御父様にも見られたこと無かったのに……どうしてくれますの!」
(いや。俺に言われても……)
「クゥン…………」
ライダーの目の前には渡した毛布にくるまって泣きじゃくる令嬢戦士の姿があった。現在、彼女の顔は偶然とはいえ、男性に見られた(何処を?とは言わない)事に対する羞恥心でぐしゃぐしゃになっていた。
「といいますか、なんで冒険者がモンスターを連れていますの?!」
「それは俺のオトモンすから。それと冒険者ってなんすか?」
「貴方、冒険者ではないのですか?」
「俺は乗り人。モンスターライダーっす」
「……とりあえず、人と話すときはマスクぐらい外しては?」
「それもそうっすね」
留め具を外し、ヘルムを脱ぎとって顔をさらけ出す。
「あら。意外と整っていますのね」
「おい。どういう意味だ?」
「ヘルムで隠してるから、てっきりゴブリンのような顔かと思いましたわ」
「どんな顔すか……それに、ゴブリンって何? さっき、あんたを襲ってた奴ら?」
「貴方、冒険者の癖にゴブリンも知りませんの? あと、先程の事は全部忘れなさい! それに、そのわざとらしい敬語も結構です」
令嬢戦士は顔を赤くしながらもライダーにゴブリンについて説明する。
「ゴブリンとは
「ふーん……簡単にすると最低最悪、モンスターとは呼べない奴らって事ね」
「
「俺のいた場所じゃあ、そんな奴らをモンスターとは言わねぇよ」
「……ゴブリンを知らないといい、この様な魔物を連れている事といい、貴方はどんな所から来ましたの?」
「どんなところって言われても……話しても信じないよ
(まさか、こことは別の世界から来た……なんて───)」
ライダーはここが自分の元いた場所……いや。元いた世界ではないと理解していた。見たこと、聞いたことのない生物や植物。それだけなら知らない場所ですむだろうが、等級や冒険者なんて聞いたことのない単語。何よりも令嬢戦士の装備。ライダーの視点から見れば、彼女の物を装備と呼ぶことは出来ない。ジャギィノスのタックルを受ければ、簡単に変形すると思えた。
しかし、令嬢戦士はそれでも話せと言う。
「信じるか信じないかは私自身が決めることですわ。貴方の判断で決めないで下さい」
「……分かったよ。だけど、その前に───」
ライダーは立ち上がり、ある一方向に顔を向ける。彼の行動に疑問符を浮かべる令嬢戦士だったが、気づけばライダーの後ろで伏せていたライライも体を上げ、同じ方向を睨んで唸っていた。
「ライライ。彼女を守れ」
ライライは頷き、立ち上がって令嬢戦士を守る為に移動する。
彼らの行動に説明を求めようとする令嬢戦士だったが、彼女の聴覚が
「ま、まさか───!?」
「俺が合図したら目を閉じろ。ある程度はライライが守る。
───来たぞ」
ライダー達の視線の先、森の奥から緑色の体を持った醜悪の塊『ゴブリン』の群れが此方に向かって来ていた。奴らの奥には何倍の大きさを持つ巨体……恐らく、ホブゴブリンと言う奴だろう。その隣にはゴブリンシャーマンと思われる杖を持った個体を確認した。そして、
「───なんだ、あれは?」
ホブゴブリンが持つ盾……いや。あれを盾と呼ぶべきなのだろうか? 少なくとも、普通の人に対しては有効だろう。何せ、汚された女性の裸体がホブゴブリンの持つ盾に括りつけられていたのだから。
「あれは……!?」
「……知り合いか?」
「
悲鳴を上げそうな口を抑える令嬢戦士だが、一方のライダーは静かに怒りを滾らせていた。
(あんなのがモンスターだと? ふざけるな!
あれはモンスターじゃない!
あれは生きていて良いモノじゃない!)
ライダーは背中に背負っていた己の武器。五枚の黒刃が並ぶ双剣 "夜天連刃【黒翼】" の柄を撫でる。
(
ゴブリン達との距離は目測五メートル。本来なら強走薬の一つでも飲みたいが、そのような時間はない。ライダーは大地を蹴り、ゴブリン達に向かって走り出した。
それを見たゴブリン達は『間抜けが来た』と言いたげに笑い、群れの内二匹がライダーに襲いかかる。
……だが、次の瞬間。二匹のゴブリンが見たのは首を失った自分の体だった。ドサリ……と地面に落ちるゴブリンの首。少し遅れて、頭を失った体から血が噴水のように吹き出した。それを見ていた他のゴブリンは唖然としている。
一方、令嬢戦士はというと目の前で起こった出来事に目を疑っていた。
「な、何ですの……今の動きは……!」
駆けるライダー。襲いかかるゴブリンたち。その時、彼女は一回だけ瞬きをした。
……そう。その瞬き一回分の僅かな時間の間にライダーは武器を抜き、ゴブリン二匹の首をはねたのだ。
ライダーの攻撃は終わらない。
直ぐ様呆けているゴブリン達に肉薄し、その肉を絶つ。本来、普通の武器ならゴブリンを4~5匹切れば血と脂でなまくらになるのだが、ライダーが使っている夜天連刃【黒翼】は切れ味と改心率に優れた武器だ。その刃はゴブリンの骨を容易く断ち切り、振るう度に血を落とす。
「GURAAAAAA!!」
仲間が殺られたからか、それともたった一人を倒せない雑魚どもに痺れを切らしたのか、今度はホブゴブリンが盾を前に構えて迫る。
「───そうすると思ったよ」
ライダーがポーチから取り出したのはミラボレアス討伐で残ったアイテムの一つ "閃光玉" 。それを放り投げ、令嬢戦士とライライ。そして、盾にされている女性に向かって目を閉じろと叫ぶ。
ホブゴブリンは刃もついておらず、大した力を込められずに投げられたそれを防がず、そのままライダーを殺そうとする。
だが、次の瞬間。ホブゴブリンの視界を閃光が焼き殺した。
「目が!? 目がぁぁぁ!!?」
訂正。ホブゴブリンと令嬢戦士の視界を閃光が焼き殺した。
驚きと痛みに顔を抑え、叫ぶホブゴブリンだが、そんな隙だらけの状態をライダーが逃す筈もなく、僅か数瞬の内にホブゴブリンの体から首と腕が切り離された。
縄を切り、人質を解放するライダー。
残るはゴブリンシャーマンのみ。奴は直ぐ様呪文を唱え、"
「ライライ、殺れ」
次の瞬間。ゴブリンシャーマンは異界の狼竜に叩き潰され、その血で地面を汚したのだった。
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冒険者
少し書き忘れていた事があったので投稿し直しました。
それではどうぞ。
夜。ゴブリンの討伐を終え、今日はもう遅いからとライダーは令嬢戦士と共に夜営していた。彼らの側には既に亡き人となっていた令嬢戦士の仲間の墓が作られていた。ゴブリン達の盾になっていた令嬢戦士の仲間はライライの横で毛布にくるまっているが、生きているというのにその目に生気は感じられない。
焚き火の火が夜の闇を照らし、その焚き火の上で鍋の中を混ぜるライダーと膝を抱えて俯く令嬢戦士。気まずい空気が流れるなか、先にその静寂を破ったのはライダーだった。
「スープ出来たぞ。食べれるか?」
「………私は…私は生きていていいのでしょうか?」
「……どういう意味だ?」
「彼らの犠牲で私は今生きていています……私の命は彼らの命を犠牲にする程こ価値はあるのでしょうか……」
自分は彼らの命を奪ったのだと思うと、その重圧が肩にどっしりとかかってくるように思う。徐々に表情を暗くする令嬢戦士。そんな彼女に対して、ライダーは迷いながらも口を開いた。
「……そんなの俺が分かる訳ないだろ」
「そう……ですよ「でもな」……」
「でも、もしあんたがそう思うなら、自分で価値をつけろ。頑張って生きて、仲間が犠牲になった価値のある……そう思えるまで頑張ればいいんじゃないか? 結局、自分の価値を決めるのは自分自身だ」
「自分、自身……」
「それにな。例え体が死んだとしても、魂や一度結んだ絆は消えやしない。ちゃんとお前の此処で生きている」
そう言って、ライダーは自分の胸……心臓に当たる場所を叩く。
「……貴方も、同じような事がありましたの?」
「まぁな。その内話してやるよ。今は腹一杯にして明日に備えろ」
ライダーは鍋の中身を掬って持っていた器に移し、令嬢戦士に差し出す。令嬢戦士はそれを受け取り、まずは一口。
「───美味しい……」
「だろ? ドライシモフリトマトのスープだ。トマトは旨味成分をたっぷりと含んでいるからな。疲れた体にはもってこいだ」
「料理がお上手ですのね」
「趣味だからな。好きなだけ食べてくれ」
「お心遣い、感謝致しますわ」
こうして、二人と一匹の夜は過ぎて行くのだった……。
●●●●●●
西の辺境の街にあるギルド。
そこは辺境の地であるにも関わらず、昼を過ぎた今も大忙しだった。
「金貨三袋、今すぐッ!」
「はいッ! ただいまぁッ!」
「
「はいッ! 分かりましたぁッ!」
「地図ッ! 地図は何処ッ!?」
「え、えっと書類棚に……今持っていきまぁすッ!」
「ちょっとッ!
「す、すいませぇんッ!」
涙目になりながらも金髪の女性……新人受付嬢は言われた仕事をこなそうとする。
本当なら休みたい。ベッドにダイブして眠りたい。そんな気持ちを抑えながら精一杯頑張っていく。しかし、
「はい。ゴブリンの書類起こし、お願いね」
ドンッ、と新人受付嬢の前にゴブリンの依頼書の山が止めと言わんばかりに積まれ、彼女の肩がプルプルと震え始める。
ゴブリン。それは子供ほどの体格、膂力、知恵を持ち、徒党を組んで、村を襲っては女を拐い、慰みものにする、最も多く依頼が持ち込まれ、最も人気のない最底辺の化物。
その依頼は日に日に増える一方だが、『ゴブリンは素人の仕事だ』、『そんな物で名は売れない』と好んで受ける者は一切いない。
そんな依頼書の前で思わずタメ息が出る受付嬢だったが、そんな彼女の頬を先輩受付嬢がつついた。
「こぉら。そんな暗い顔しないの。私たち、受付が暗い顔してたら冒険者も依頼を受けられないでしょ?」
「…………はい」
そう答えたものの、あまりの忙しさに笑顔を作る元気もない新人受付嬢。とりあえず、指で口角を上げてみようと、顔に手を持っていく。
そのときだった。
「───た、大変だぁッ!!!」
突然開け放たれた扉に視線が集まる。見ると、一人の冒険者らしき男性が切羽詰まった表情で立っているではないか。
そのあまりの形相にギルドにいた冒険者の一人が何があったのか、と問いかける。
その問いに対して男性はこう答えた。
狼に似た大きな化物がこの街に向かっている、と。
ドライシモフリトマトの手抜きスープ
材料
ドライシモフリトマト
コンソメの元
塩
胡椒
水
大まかな作り方
①水を沸騰させ、そこにドライシモフリトマトを入れてふやけるまで置いておく。
②ドライシモフリトマトを戻したら、そこにコンソメの元、水を加えて煮込む。
③ある程度煮詰まって来たら塩、胡椒で味を整えて完成。
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心から御待ちしております。
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西の辺境
別にエタってはいませんよ?
ライダーが令嬢戦士と出会ってから3日。
無事に西の辺境の街に辿り着いたライダーとライライは冒険者ギルドと呼ばれる場所の裏手にある広場で座っていた。
「大丈夫かなぁ……お嬢」
令嬢戦士は現在、ギルドに今回のクエスト結果とライダーに関することを報告している。もし彼女が居なければ、ライダーはこの街の冒険者たち全員と相手をしなければならなかっただろう。
実際、後少しで街に到着するという所で多くの冒険者に刃を向けられたのだ。あの時は令嬢戦士が皆を説得してくれたが、
「よう。余所者さんよ」
(ま、そうなるよな……)
令嬢戦士が居ない所を見計らったのだろう。ライダー達を十数人の冒険者が取り囲んでいた。
「何のようっすか?」
「何のようだじゃねぇだろ? お前、混沌側の人間だろ? そんな化け物を連れてよ」
「混沌側なんて知りませんね。それにライライは俺の家族っす。モンスターではあるが、化け物なんかじゃあないっすよ」
「どうでもいいんだよ。それよりもその化け物にお前の鎧。そうとう良い物だよなぁ」
「……だとしたら?」
「殺されたくなかったら化け物とお前の装備を全部寄越しな」
もし断れば……分かるな、と冒険者たちがいつでも襲いかかれるように武器を構える。
多勢に無勢。萎縮したライダーは逃げ出し、あとはモンスターを倒せば良い。冒険者たちはそう考えていたのだが、ライダーは答えた。
「お断りしますわ。こいつは俺の家族だと言ったでしょ? 家族を見捨てるバカが何処にいますか?」
「じゃあ、死ぬしかねぇな!」
冒険者の一人がライダーに迫り、己の武器である長剣を振り下ろす。
しかし、その刃はライダーの体を切り裂く事は無かった。何故なら、ライダーがその刃を
予想外のライダーの行動に驚愕する冒険者たち。本来、そんな事をすれば籠手を着けていても血を流すことになる。しかし、ライダーのジンオウSアームは冒険者の持つ長剣では傷一つ付かなかった。
「こんななまくらを持ってるだけで冒険者ってやれるんすか?」
「この! 離しやがれ!!」
しかし、冒険者がいくら力を入れてもライダーは微動だにしない。
「……それで? これはあんたらから仕掛けた攻撃だ。つまり、俺が今からやることは正当防衛って事で良いっすよね?」
「な、なんの事だ!?」
「分かりやすく言うと───覚悟しろ」
●●●●●●
「───以上が今回の結果ですわ」
冒険者ギルドの一室。令嬢戦士からライダーと出会った経緯を聞いていたギルドの支部長と監督官の女性相手は頭を抱えていた。
「見たことのないモンスターを連れ、十数体のゴブリンの群れをあっという間に討伐か。いささか信じがたい話だが……」
支部長がチラリと監督官に視線を向けるが、彼女は首を横にふる。『看破』の奇跡を持つ監督官に嘘は通用しない。もし令嬢戦士の話が嘘なら彼女はすぐに教えるだろう。しかし、首を横に振ったということは令嬢戦士の話が真実であることを物語っている。
「男の出身は?」
「……実は、あり得ない話なのですが……本人曰く、
「別の世界? ……ふざけているのかね?」
「い、いえ。そういう訳ではありませんの。本人がそう言ってまして……」
支部長は監督官に確認を取るが、監督官はまた首を横に振る。しかし、異世界から来たなど、普通なら信じることが出来るわけがない。これは確認の為、ライダー本人に直接聞いた方が良いだろう。
支部長は令嬢戦士に頼み、ライダーをこの部屋に連れてきて貰おう。そう考えた時だった。
『ウォァァォォォォッ!!!』
「「「───!!?」」」
突如窓の外から聞こえた狼の遠吠えにも似た咆哮。
まさかと思い、令嬢戦士は窓に駆け寄って外を見てみれば、広場で冒険者たちに囲まれるライライとライダーの姿があった。しかし、その光景は異様で、ある冒険者は地面に倒れ付し、ある冒険者は武器を支えに何とか立てている状態だったりと、様々ではあるが冒険者全員が戦闘続行できる状態ではないことが分かる。
「これは……!?」
「あの人は何をやってますの!?」
令嬢戦士はすぐさま応接間から出ていき、ライダーたちの元に走っていく。
支部長たちも彼女を追って、応接間を後にした。
ライダー&ライライvs冒険者十数人。結果はライダー&ライライの圧勝。もっとも殆どの冒険者はライダーが戦闘不能にしたのだが、
(弱すぎね? 新人ハンターでももう少し奮闘するぞ。お嬢から聞いた話だと、冒険者って俺たちの世界で言うところのハンターじゃないの?)
冒険者=ハンター。令嬢戦士からそのような等式を作っていたライダーだったが、その考えを改める必要があるのではと考えていた。
まずは武器。ナイフや短剣等、その殆どがライダーからするとなまくらだった。
中には杖を持ち、ブツブツ言っている奴も居たが飛ばしてくるのは小さな火の玉。こんなのでモンスターを焼くつもりなのか、とライダーは思った。
(こんなので冒険者って、リオレウスなんか現れた日には街が崩壊するぞ。現れる事なんてないけど)
だが、ここまで弱いと心配になってしまうライダー。そんなとき、ギルドから令嬢戦士が走ってきた。
「貴方ッ! 何をやってますのッ!?」
彼女の顔を見れば、焦りと怒りがごちゃ混ぜになっているようで、特徴的な縦ロールの金髪も逆立っているような見える。
あぁ。これは長くなりそうだ。
ライダーは彼女のお説教を覚悟するのだった。
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心からお待ちしております。
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