RELEASE OF SCULLMAN (ダグライダー)
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汝、しかと刻め。我が名は……

 どうも皆様、初めましての人は初めまして。
既にご存知の方は改めまして、ダグライダーです。
 刀使ノ指令ダグオンの続きを書かずに何をしているのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
 申し訳ございません。
しかし、ふと書かずにはいられなくなりまして、つい書いてしまいました。
 スカルマン、ご存知の方はどの程度いらっしゃるでしょうか?
 仮面ライダーのデザインの元になった存在、そんな作品を元に制作されたアニメ版の設定を使わせて頂いております。多少改編はしましたが。
兎も角、私の個人的な世界観的に合うだろうという思いのもとリリスパとクロスさせてみました。
 



 ━━人々は鷹揚に言う悪は正義に討ち果たされるモノだと。しかし思うのだ、悪と対となるのは善であって正義では無いのだと…。さもなければ、悪と呼ばれた者達の大義は何処に在るのか。

 無論、大義無き者が悪を為す事もあるだろう。

だが、喩え間違いであったとしても彼等には彼等の大義があったのだ。

 であれば、悪を倒すべきは同じ悪である事を自覚せねばなるまい。

 そも、人を傷付ける事は悪だと世界は言うのだ。

ならば、この手を鮮血に染めた我が身は悪となるだろう。しかし、この手が奪うは大義無き悪、弱きを喰らう悪、そして人為らざる悪。

 さぁ、今宵も示そう我が悪を。確と刻め無為なる悪よ。 

 この姿こそ確固たる悪である。

 

 ━━━我が名は、スカルマン。悪を以て悪を裁く者

 

 

 夢を見ている。いつもの夢を───

 

 「……たぞ!………完…した。………極……兵士…!」

誰かが何かを叫んでいる。別の誰かも何かを叫ぶ。

「博士……や…て……さい!?」

 「え……!…めるな!これさえ……………なぞ、ゴミクズ同然………。………会を………見返し………!」

 所々、聞き取れないが誰かと誰かが言い争っている。

どちらも白衣を纏っている。周りは水槽の様な物で囲まれている。中身は動…物…だろうか?

 「これこそ………全なる……人…、………9など必要無い!」

 少しずつ、鮮明に聴こえてくる会話、その中身は知識の乏しい自分でもおぞましいモノだと解る。

 「邪魔を……なら貴様もここで処分する。この成果は私の物!全ては黒き■■の為に!」

「こんな事は間違っています!こんな幼い…、組織はどうかしている!?」

 「煩い奴め!ももいい、その口を二度と利けなくしてやろう」

 パンパンッと乾いた音が鳴る、片方の男の手には黒い鉄の塊。

 もう一人は、一瞬驚く顔をするも己の腹部に手を充てる。手を見やれば赤黒い液体がベットリと手を染めている。

 「カフッ……逃がさ…なく…ては、ハァ…げほっ、こんな事は…あっては…いけない……」

 撃たれた男は残された力を振り絞り、手近な機械を操作する。

 すると水槽の蓋が開き、中の動物達が目を覚ます。

 

 そこから少し場面が飛ぶ、機械的な通路を誰かが自分を抱え走っている。

 顔はよく分からない、けれど白衣の男では無い。その誰かは自分以外にももう一人連れているようだ。

 誰かは必死に自分ともう一人を連れ走る。必死に──とは言ったが、顔が見えてないので、悪魔でもそう感じたという事に過ぎない。

 そうして、通路を抜けたのか眩い光の中に飛び込む。

 

 「ああ、また此処までか……」

 

 何時も、ここで夢は終わり、目が醒める。

この夢は何なのか?自分の記憶?けれど自分には両親が居る。ならばこの夢は何なのだろう?

 時計を見る、まだ夜中だ。 

 「……寝よう」

こうして何時も同じ事を繰り返す。今度は夢に微睡むことなく深く眠りにつくのだ。

 

 

 

 

 

 

 夜の海を一望する街、空崎。

大きな工場地帯があり、多様な文化の入り交じる港町。

 ネオンが照す夜景に複数の影が飛び交う。

ビルからビルへと移ろうソレはうら若き乙女達。

 年齢は15~18といった所か……。

 彼女達は私設諜報機関"ツキカゲ"、室町時代に金塊と同価値とされた香辛料を扱う商人が東南アジアの香辛料を売買する事で成した財を投じ設立された財団を母体とした自警団を前身とする正義の組織である。

 

 

 正式名称、空崎財団特殊事業部秘密工作課。

そこに所属する者は皆年若い少女ばかり、これは財団が独自に開発品種改良を施し、研究を重ね産まれた香草を調合した身体強化スパイス──通称"スパイス"を服用、効果を発揮出来る者が女性と限られ、特に高い効力を得られる年代が十代である為だ。

 しかし、スパイスの効力が発揮される期間は短い、何れは効き目が鈍くなっていく。その時が彼女達ツキカゲが引退をする時であるのだ。

 

 故に彼女達はその技術を、その信念を後世へと残し伝える為、弟子を採る。

 弟子は師匠と共に任務に就き、共に戦い、そして一人前となり、今度は己が師匠として次代の弟子を育てる。

 それを繰返し、様々な悪と戦い続けて来たのだ。

 

 そして今、21世紀も最たるかと言う平成の終わりが近付くこの時代に駆ける、現代のくノ一達はまさに今宵も悪事を働く不当な輩を退治せんと自らの正義を掲げ舞う。

 

 

 『皆さん、目標との接触まで後少しです。気を付けて』

 少女達の耳に同じ年頃の少女の声が伝わる。

 「大丈夫だいじょーぶ!初さんは心配性だな~」

一際明るいサイドテールの少女が答える。

 「千代女、油断は禁物よ」

それを嗜め、叱咤する真面目な少女

 「もう師匠ったら、幾らなんでもふざけすぎですよ!」

サイドテールの少女を師匠と呼ぶ、ツインテールの気の強い少女。

 「…あはは」

苦笑する背の高い艶やかな黒い長髪の少女。

 

 先の通信の声の少女──青葉 初芽、コードネーム局を含めた彼女達が、今の空崎を守る現在のツキカゲのメンバー、彼女達は長らく空崎を中心に暗躍するモウリョウなる組織と日夜戦いを繰り広げていた。今回はそんなモウリョウが関係したと思われる海外のシンジケートを潰す為の任務なのだ。

 

 「目標発見。このまま制圧する」

 「さぁて、やっちゃうよ!」

 「とっとと片ずけてやるんだから!」

 「頑張らないと…!」

四人は一気に、コンテナから飛び降り、敵の男達に駆ける。

 真面目な少女──半蔵門 雪、コードネーム半蔵が刀を抜き放ち、次々と自分の倍の身長の男達を倒す。

 

 「楽勝~!」

明るいサイドテールの少女──八千代 命、コードネーム千代女がその高い身体能力で相手を翻弄し舞う。

 

 「大人しくお縄につきなさい!」

ツインテールの少女──相模 楓、コードネーム風魔が特殊な手裏剣を投げ相手を張り付ける。

 

 「悪い人達はお仕置です」

背の高い少女──石川 五恵、コードネーム五右衛門が狙撃銃を手に相手の退路を塞ぐ。

 

 

 「糞がッ!商売の邪魔すんじゃねぇ!」

「畜生、逃げ場がねえ!」 「こうなりゃアレを…」

 「バカ!?商品だぞ!」  「構うことねえ、ヤレ」

男達は混乱の中、自らが運んで来た商品を彼女達への対抗策として使う事を選択した。

 

 「悪足掻きを」

風魔が呆れを含んで手裏剣を投擲する。しかし、一歩遅く積み荷は開け放たれる。

 「総員警戒!」

半蔵が皆に警告し腿に括り着けたホルダーに手を伸ばす。ホルダーの中身は彼女達の切り札であるスパイスが収納されているのだ。

 

 しかし彼女は知らなかった、連中が運んで来たモノの正体を……。

 これがもし人形兵器であったのならば別段問題は無かった。機械は精々硬い装甲に手間取る程度で済む。

 これがもし只の武器ならば問題は無かった、手に取る前に制圧出来るから。

 だが違った、出てきたのは獣、それも人と同じ様に二足で立ち動く獣。普通では有り得ない、しかしそれは確かに目の前に居る。

 

 「何あれ…?」

千代女が珍しく動揺している。それほど迄に異様な気配を纏っている。

 

 <Guull!GaaaoooO!!>

獣が吼え、周りの男達を喰らい始めた。

 「ひっ!?助け…ギャッ」 「何だよ?!何なんだよ!?話が違っグェッ」 「ヒィイイイ!」 「あ、あ…ああ!ブシュィ」

 

 その剰りに残忍な光景に絶句する彼女達。

五右衛門はついその惨劇に顔を背けてしまう。

風魔も顔を青ざめさせている。

 局もモニター越しに震えているのか吐息が荒い。

今までも人死にを見てこなかった訳では無い、だがこれは異質だ、異常だ、こんな事は初めてだ。

 彼女達はそれぞれに恐怖を憶えながらも、獣が何時此方を襲うかもしれないと考え、スパイスを摂取する。それは戦う為か、はたまた逃げる為か。

 

 

 そんな空気が蔓延るコンビナートに軍靴の様な靴の音が響き渡る。

 

 「誰!?」

「こんな時間に人……まさか連中の取引相手!」

 「いけない、今は危険過ぎる。取引相手を確保して撤退する」

 「逃がしてくれるかにゃ~?」

 

音が近付く、空を覆う雲間から覗く月光が音の方向の闇を僅かに照らす。

 

 顕れたのは骸骨……黒いコートの下に黒いライダースーツを纏う白い骸骨頭、辛うじて口元が肌色を露出している為、それが仮面という事が判る。

 「骸…骨…?」

「そこのお前何者だ」

五右衛門が見たままの感想をもらし、半蔵が誰何を問う。

 「…………」

 骸骨の仮面は応えず、獣を見やると黒い手袋で覆われた拳を握り込み、それに連動するようにナックルガードが展開される。

 メリケンの様なそれを獣に向かって走り出し殴りかかる。無論、獣とて来ると解っている攻撃を受ける気など毛頭無い。

 獣は跳躍しかわそうとする──が、骸骨頭はその動きに即座に併せ、拳を獣にめり込ませる。

 ギャインと悲鳴を挙げ地に叩き落とされる獣、骸骨は獣へ馬乗りになり殴る。殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 執拗に獣を殴る骸骨頭に四人は獣を見た時とは別の意味で畏れを抱く。

 

 やがて、虫の息となった獣に骸骨頭は懐から拳銃を取り出し、引き金を躊躇なく引く、1発、即座に2発を撃ち完全に死んだ事を確認すると獣の躰から退き、新たに懐から液体の入ったボトルとライターを取り出し、液体を獣だったモノに掛け、ライターを着火し放り投げる。

 異形は瞬く間に燃えて、跡形もなく消えた。

骸骨頭はそれを見届けると、先程己が来た方向に踵を還す。

 

 「待ちなさい!」

風魔が骸骨頭を止めようとする。

 「やめなさい」

しかし、それを半蔵が留める。

 「あれは、ヤバいね……正直今のままじゃ勝てないって思っちゃった…」

 千代女が弱気を口にする。

 「……(何だか悲しそうな背中…)…」

 五右衛門は骸骨頭の背中を眺め、心中で想う。

 

 

 

 

 骸骨頭が消えた先からエンジンの音が聴こえる。

恐らくはバイクであろう。

『皆さん、ご無事ですか?』

 「こちら半蔵、問題無い」

 「同じく千代女、問題なーし」

 「風魔、ありません」

 「………」

『五恵ちゃん?』

 「…は、はい!五右衛門、問題ありません」

こうして、彼女達は見た、そして出会った……出会ってしまった、決して出会ってはいけなかったモノ達に

 

夜が明ける、骸骨は日が登る前に街から姿を消した。

再び姿を顕すのは闇が支配する時なのだろう。

 

 骸骨頭───彼の者は"悪"。

 彼の者の掲げる悪は彼女達の掲げる正義とは相容れる事は無いだろう。しかし、彼女達はその存在を知り得てしまった。

 

 これは源 モモがツキカゲへと加入する数ヶ月前に起きた出来事であった。

 

 これは悪夢を見た少年が己の出自を知る事と向き合う前の出来事である。

 

 正義の影が舞い、悪を刻む髑髏が闊歩し、悪意をなす魍魎が踊り、正義でも悪でも無い少年が苦悩する。

 

 これはそんな物語。

 

 汝、眼を開け、真実から逃げる事など出来はしないのだから。

 罪を背負うて、悪となれ。

眼には眼を、歯には歯を、悪には悪を。

 

 しかと刻め、恐れ、怖れ、畏れよ。

 我が名を死を以て刻む事こそお前達に赦された唯一の贖罪。

 今一度、名乗ろう━━我が名はスカルマン。

悪にとっての悪夢、正義にとっての絶対たる悪である。

 

 

 

 

 

 




 如何でしたでしょうか?
こんなのはリリスパじゃない!や、こんなスカルマンは無いだろう。等言われる事を承知で書かせて頂きました。
 もし評判があるようでしたら、現在連載作品を完結させてから、連載しようかとは思っています。
 感想などがあればどうぞ。
 それでは


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己の心に正義を問え

 どうもダグライダーです。
はい、またやっちゃいました。
 息抜きがてらつい書いてしまいました。
まぁ、まだ連載では無いのでお目こぼし下さい。


 ○月×日、ある研究者の日誌。

 馬鹿ばかりだ。どいつもこいつも愚か極まりない馬鹿者だ。

 何故理解しようとしない、この研究が結実すれば人類はまた一歩、大きく進歩すると言う…いや進歩など生ぬるい、これこそ人類の新たな進化なのだ。

 その為に身寄りも不確かな屑や獣畜生共を使う事の何がいけない。奴等は放って置いても増えるのだから如何様にでも使い道が在るだろうに、倫理や道徳などとほざく愚か者共。

 今に見ているがいい、私の研究がもたらす成果を…

 


 

 早起きは苦手だ──

 毎晩毎晩、悪夢に魘されて日も上らない内に目が醒めて、今度こそはと二度目の睡眠に微睡み、気付けば昼を回ることもあるくらいだ。

 「今日から学校か……」

ついそんなことを口にしてしまう。

 とは言え無理を言って施設を飛び出し、ここ空崎で一人暮らしを許してもらったのだから、しっかりしなくては……

 【空崎高校】か…二年生の春に編入する事になった高校、借りたアパートから一番近い学校がそこだったから選んだけど、もっと考えるべきだったかな……。

 まあ、なるようになれだ!

いつまでも夢に左右されたテンションでいるのはよくない。さっさと仕度をして登校しよう。

 

 

 

 新品の制服が体の動きを阻害する、どうにも着なれない服というのは落ち着かない。

 ぎこちない動きで歩きながら商店街を通り掛かる。

目の前には…同じ学校の生徒なのだろう女子が何やらワタワタしている。彼女の視線の先には柄の悪そうな男達が談笑している。足元を注視すれば道に煙草の吸殻、成る程ポイ捨てを注意しようとして躊躇ってるのか……難儀だね。

 「あっ……」

 注意する気か?あんな腰が引けてるのに、出来もしない事はしないのが懸命だと思うけど……ほらやっぱり。

 結局、掃除してたお婆さんが男達を注意して彼らも素直に謝ってそれで終わり。

 女の子はお婆さんと顔見知りなのか、何やら楽しげに話している。

 自分に自信がないなら余計な事せずに黙ってれば良いのに、知り合いが助けてくれなきゃどうする気だったのか……自分には関係ない、行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校に着いた。

転校初日に寝坊や面倒事で遅刻だけは避けられたな…。

 当然だけど見知った顔が居ない、余計な感傷に浸らず職員室を探そう。

 

 

「君が転校生ね。ようこそ空崎高校へ、えぇと…」

 「隼人です、神楽隼人」

「そうそう!では改めてよろしくね神楽くん」

 一抹の不安を感じる──はぁ……。

 

 

 始業式もそこそこに、二年の教室の前に立ちその時を待つ。

 「───さぁ、入って」

何やら前降りを話終えていよいよ自分の二度目の高校デビュー。

 「……………神楽隼人です、よろしくお願いします」 

正直に言おう、自己紹介なんてこれといった趣味も特技も無い人間には苦痛以外の何物でもない。

 訂正、全くの無趣味な訳じゃない。現に今、自己紹介しながら教室全体を見渡すと、何となく……本当に勘レベルだけど何かが違うと感じる相手がチラホラ──。

 二人…いや、今朝見た女の子もこうして改めて観察してみると妙に……いやでもあっちの二人程違和感は無いか。

 趣味、一応人間観察。と言いつつ、決して他人には言わないが。後、特技も無いことも………アレを特技と見なすべきか否か…。

 兎も角、黒髪ストレートに平均的な同年代より高めの身長の娘とポニー?いやサイドテールの見るからに『私ムードメーカー』な茶髪っ娘、あの二人は何かある。

 別に好みとかそんな邪な目で見てる訳じゃない、ただまぁ、黒髪の方は割りと好みのタイプ……いや何言ってんだろ自分。

 心の中でそんな事を思い浮かべながら、周りの質問に無難に答え空いてる席に座る。

 窓側寄り、左隣は例の黒髪の娘に、右側一人挟んで今朝の娘、自分からみてやや右後ろにサイドテールか……席順としては可もなく不可もなくかな。

 

 HRが終わり、休み時間。

さて、どうしたものか…顔を机に伏せ狸寝入りをしながら教室の様子を観察する。

 黒髪の席の前の席にサイドテールがギターを持って陣取る、黒髪が此方を向き申し訳なさそな顔をする。

 まぁ、伏せてるから此方は表情を見せてないが。

今朝の娘の方は、知り合いなんだろう別のクラスの娘が遊びに来ている。

 知り合いとの会話を終えた仮称煙草娘に黒髪とサイドテールが話掛ける。

 聞き耳を立てると、朝の娘は源ももと言う名らしい。

もも…桃か?それとも百?モモ?或いは平仮名のままか……中々目が良いんだな。

 サイドテールが率先して訊いてくるから此方も助かる。そのサイドテールは八千代、黒髪が石川と言うらしい、名前は八千代がメイ、石川がゴエだとか…漢字は八千代の方は幾つかパターンがあるけど石川は割りと予想出来るな…後で名簿を確かめよう。

 

 そうして、学校が終わるまで適当に過ごす。

件の三人娘は仲良くなったのか、一緒に帰宅するようだ。

 自分はどうしようか……取り敢えず街を廻ろう、自宅から学校周辺に何があるのか憶えなくてはならない。

 決まりだ帰ろう。

 

 

 学校からの帰りの道すがら、迷子を避けるため地図アプリを起動して散策を開始する。

 ついでに、晩の食材も買って帰ろうかと思い至る。

途中、港に程近いモール近辺の飲食店が建ち並ぶ一角から香ばしい臭いがする。どうも本格的なカレーなどの専門店らしい。

 店から例の三人娘が出てくるのが見える。そう言えば、あの時、バイト先がどうこう話していたな、バイトか……自分も一人暮らしの身だ、施設に恩を返す為にも働かなくては……あの店、バイト募集してないのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が再びやってくる。

今宵もまた影が舞う、貨物コンテナが積み重なるコンビナートに、怪しい集団に取り囲まれ気を失っている婦警達と偶然予感を覚え、港に来ていたモモ。

 どうやら犯罪集団の取引現場に出会し婦警達は捕まってしまったらしい。

コンテナの陰に隠れ、様子を見ていると婦警が己の知人であることに気付く。

 「どどどうしよう……そうだ警察に連絡しなきゃ!」

 このままで知り合いがは殺されてしまう、そんな事を想像して慌てるモモ。

動転しながらモモはスマホを取り出す、しかし彼女の心が待ったを掛ける。

 "それで本当に良いの"かと数秒モモの手が止まる、彼女は異を決しスマホのカメラを起動し現場を撮影する。

 そのまま勇気を振り絞り犯罪集団の眼前に出る。

 「け、警察呼んでます!顔写真もバッチリ撮りました!!」

 震える声で精一杯、相手に叫ぶ。

「ちっ…まだいたのか」

 集団の頭目とおぼしき女性が煩わしそうに顔を歪める。

 「おおお大人しくして下さい!警察呼んでるんですよ!?」

「捕まえな!」

「了解~」

 モモの決死の行動も意に介さず、仲間に捕獲を命じる頭目。

 筋肉質な大女に追われるモモ。捕まるまいと必死に逃げるも回り込まれスマホを握り潰される

「証拠隠滅~」

 折角の精一杯の勇気も無駄に終わり、死を覚悟し恐怖に目を瞑り心の中で走馬灯のように回想するモモ。

 しかし、運命は彼女を見捨てはしなかった。

 「こんばんわ~!夜の空崎は良いね~♪」

待てども来ない死の一撃から疑問を抱き目を凝らせば、倒れる大女に、場違いな明るい声、声の主を探し上を見れば今日友達となった命と五恵、五恵のバイト先で偶々見た相模楓に学校ですれ違った先輩の青葉初芽と憧れの半蔵門雪の姿がそこにはあった。

 雪達は忍装束のような服を纏い、その手に刀や槍、様々な武器を持っている。

 驚くモモを尻目に次々と犯罪集団を薙ぎ倒してゆく彼女達。頭目が痺れを切らしたのか人形兵器を持ち出す。

 しかし、スパイスによって強化された彼女達の敵では無いのか、あっさり殲滅されてしまう。追い詰められた頭目、そこへ遅れた仲間が車で駆け付け逃亡する。

 雪達ツキカゲはモモを連れ、自らも逃げた相手の追跡に移った。

 

 

 

 暫くして、コンビナートには気絶した犯罪集団と婦警達だけが残る。既に彼女達はツキカゲの記憶消去針により今宵の記憶の一部を消されている。

 そんな中、海に落とされ記憶操作の難を逃れた者が一人──

「くそっ!何だってんだい奴ら…とにかく此処はもう駄目だね、ずらからないと」

──チリン、チリンとそんな空間に鈴の音が鳴る。

 音は女の耳に届く。

「あ?なんだい鈴の音?一体どこか…ガグゴッ!?」

 音を聴いた瞬間、女に変化が現れる。体の至る所が肥大化し血管が浮き出て理性が消えて行く。

『グッ……ガッgGallllllla!!』

 それは獣。女は熊のような姿に変化した。

女だった獣は辺りを見回し、餌を見付ける。

 獣がゆっくり、ゆっくりと眠ったままの嘗ての仲間に近付く。意識の無い人間は獣にとっては格好の獲物だ。

 沫やこれまでかと思われたその時、新たな影が現れる。

 全身を黒で塗り固めた格好に唯一白く映る頭部、獣にとっての悪夢となる者がそこには居た。

 『……人の道理より外れし者よ、断罪の時だ』

骸骨は言う、お前の終わりが来たと。

 既に言葉を解す事の無くなった獣は、唯々本能に従い敵を威嚇する。

 骸骨は意に返さず、袖口から短剣を取り出し獣に投擲する。

 寸分違わず右目に突き刺さった短剣に思わず痛みで絶叫する獣。骸骨はそれを隙と見て駆け出す。

 新たにコートから取り出した剣を振るい獣の躰を切り刻む。辺りに細かく血が飛び散り、獣は攻撃してくる骸骨の体を砕くため腕を振るうもあっさりとしゃがんでかわされる。

 そのまま骸骨は立ち上がる勢いを利用し剣を獣の顎から脳にかけて突き刺す。

 獣が後ろに躰を傾ける。骸骨は獣の腹を蹴りそのまま倒すと、剣を抜き今度は心臓のある場所に突き刺す。

 頭を貫かれた時点で既に息絶えた相手にこの行為、正しく容赦の欠片もありはしない。

 完全に動かなくなった事を確認した骸骨は獣だった塊の首根っこを掴み、口元に何かを捩じ込み海に放り投げる。やがて、小さな爆発が起こると骸骨の周囲はまるで雨が降ったかのように水浸しになる。

 骸骨は既に役目は果たしたと言わんばかりにその場を去る。

 一連の戦闘を目撃した者は居ない。

 

 ツキカゲが新たな仲間を加えた裏側で骸骨男は独り異形を討ち果たす。

 また夜が明ける。

人々は誰も知らない、例え知っていてもそれは悪魔でも噂でしかない。夜を駆ける正義の味方と夜に沈みゆく悪の仮面。

 ツキカゲが巨悪と戦う一方、仮面の骸骨は人外の悪を屠る。

 彼の名はスカルマン。

復讐と妄執、執念によって悪を狩る死神、或いは亡霊。

 誰にも知られず、また知る必要も無い。

今宵も悪が消えた、1つは正義によって裁かれ、1つは悪によって召された。

 

 鈴の音は最早聴こえない。

 

 


 

 悲劇なんてものは曖昧だ。

だってそうだろう?当事者からしてみれば哀しみや怒りがあるかもしれない。けれど、何にも知らない他人からすれば滑稽な話さ。

 悲劇とは喜劇の裏返し、精々俺を楽しませてくれよ人間達?

 

 

とある管理者の発言より抜粋





 うーん、ダークな雰囲気って難しい。
話は変わりますが自分、決して無双が嫌いな訳では無いのですが、どちらかと言えば主人公には苦しんでもらいたいタイプなので、この作品の主人公には私なりのやり方で苦しんで貰います。
 何せコンセプトが小林靖子風なので、まぁ千翼みたいな事にはなりませんよ。
 流石にあそこ迄のはねぇ…まあ隼人は後々の為にも色々酷い目に遇わせてやりたいですけどね。


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渾沌蠢く

どうもメリークリスマス。
ダグライダーです。今回こちらの筆が進んだので上げました。
 スカルマンを視聴した方はすぐに解るでしょうが、今回最後に出てきたキャラクターのモチーフは彼等です。
原典とは国籍など違いますがその辺りの事は追々に
 そろそろ不定期とは言え連載作品に切り替えるべきですかね。


 

 "とある調査員の経過報告"

 1××7年○月某日、N県にて目標を発見。サルベージに入る。

また、付近の瓦礫より用途不明の異物を発見、其方の判断を乞う。

 全ては黒き■■の為に

 

 


 

 夢だ…また何時もの悪夢だろうか?

 違う──よく分からないけど違う。此処は港?コンテナが積み上げられてる……最近何処かで見たような───そうだ、空崎!あそこのコンビナートがこんな感じだった。

 まだちゃんと自分で歩いたワケじゃないけども、遠目から、大体こんなレイアウトなんだろうとは思った……。

 いやそうじゃない、何故まだ行った覚えの無い場所が夢に出てくる?妄想にしては良く出来すぎだ。

 それに…体も何時もの悪夢のような子供の視点じゃない、大人の…でも何だこの格好、……っ違う、俺じゃない。ならこれは誰だ?何故他人になった夢を……。

 何だ…何の音?………これは……鈴?何処から?

 

 景色が替わる。違う視界が変わった。視点が高くなる、獣の唸り声が聴こえる。直ぐ側から──

 

 解らない、分からない、判らない、わからない、ワカラナイ。

 

 此は何だ?これはなんだ?コレハナンダ?

自分が自分で失くなる、無くなる、なくなる、ナクナル……。

 

 熱い、寒い、暗い、痛い、苦しい、寂しい、怖い恐いコワイ。

 

 オトガキコエル、イヤナケハイガスル、ダレダ?

 ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ ダレダ?

 

 『人の道理より外れた者よ、断罪の時だ』

 

 

 

 

 「うわぁああああっ!?」

 

 ッ…ここ …は……?

 「夢…はぁ…はぁ……そうだ、あれは夢、夢だ」

夢でなくちゃ、夢であって欲しい。

 本能があの影を恐れる、理性がアレは幻だと言い聞かせる。

そう、事実こうして自分はここに居て、あそこに居たのは別の誰か……それだけだ、それでいい筈だ。

 「今は…何時だ?」

また、中途半端な時間に起きたのかと思い時計を探す。

 ──5時……朝と言えば朝か、珍しく長く眠れたワケだ…。今二度寝したら遅刻するな、仕方が無い早めの朝食を採ろう。

 

 食事を終える、何と無しに残った時間で弁当を作る、作ると言っても冷凍食品中心の在り来りでツマラナイ物だ。所詮、男の1人暮しの弁当なんて、余程の凝り性でも無きゃこんなもんさ。

 ついでに軽い掃除をして着替えて、後は登校時間まで読書でもして時間を潰す。

 あぁ、バイトも見付けないと……。

 ……行ってきます……。

 

 

 

 

 

 

 sidechange

 

 

 

 隼人がまだ目を覚ますよりも前、骸骨男が獣の異形を殺した後。

 外はまだ暗く、闇夜に包まれる時分とある高層ビルにて蠢く悪意が1つ。

 仄かに薄暗い広い部屋に佇む女が一人、文鳥を片手に載せて真上から己を照す照明とモニターの光が女の姿を写し出す。

 『では、連中によって我々の計画はまた1つ遠退いたと言う事かね?』

 モニターの1つから責めるような声が挙がる。

 「ご心配なく、本命には何の影響もない」

 『では盗まれたと言うデータは大丈夫なんだね?』

 「アレだけでは何も解らんさ」

穏やかだが妖艶に慇懃無礼を隠さない語調で告げる女、彼女こそ空崎に根を張るモウリョウの幹部である。

 裏世界のバイヤーやマフィアなどとも繋がりがある秘密結社、彼女達は通信を介し会議を行っているのだ。

ツキカゲにより撃滅されたシンジケートの話題を含めた現在空崎にて進行中のある計画、その趨勢には何一つ問題など無いと言い張る女に画面越し──といっても声のみではあるがスポンサーである彼等は溜飲を下げる。

 幾らかのスケジュールを確認した後、議題は最近空崎近辺を騒がせている噂に移る。

 『そう言えば巷では骸骨男なる者が現れるとか』

『それならば私も耳にしたことがあります。何でも化物と戦っているだとか……』

 『おや?儂が聴いたのは犯罪組織を潰し回っているなどと言う話でしたが?』

 「根も歯も無い噂話だろう?問題ではないさ、むしろ潰された組織とやらはツキカゲの仕業では?」

文鳥の女が法螺話と切って捨てる。

 『奴等は殺しはせんのだろう?』

 「まぁ、頭の片隅にでも置いておくよ」

その会話の最中、文鳥の女の後ろに控えていた褐色の、恐らくは中東ないし南米系の褐色肌の少女が碧水の瞳を覗かせ現れる。

 「つい先程、ツキカゲ側の人間が1人此方に寝返りたいとの報告がありました」

 少女が語る報告は正義からの裏切り、それを聞いて文鳥の女は笑みを深くする。

 「今回の計画で目障りなツキカゲはこの街諸とも潰す」

『ならば我々の手の者にも手伝わせよう』

通信画面越しに1人、助力を申し出る者が現れる。

 「不要だ、もし必要となれば此方から連絡を回す」

「それは残念です。ええ、実に残念です」

 申し出を断った直後、2人しか居ない空間に何ともねっちっこい声が響き渡る。

 「何者ッ!?」

褐色の少女が警戒を露に声の主へ視線を投げる。

 「ああ、コワイ。これだから最近の若者は嫌なんですよ…ああ、嫌だ嫌だ…」

 気にせず、暗闇から光の当たる中心に歩み寄ってくる男。

 「貴様、何者だ?此処には我々しか入れない筈だが、何時から聴いていた?」

 文鳥の女が訝しげに男に訪ねると男は視線を左右に游がせ巡らした後、黙考する。

 『ソレは我々からの贈り物だ、有用に使え』

画面の声が先に答えを出す。

 文鳥の女もまさか既に手の者を入り込ませているとは思わなかったのか、目端が僅かに拡がる。

 「……と言う事です。ええ、上からの指示で誠に不服ではありますが、はい、私達No.9’sが派遣されまして、其方モウリョウの皆さんに協力します、ええ」

 「"私達"だと…他にもいるのか?」

 「ええ、まぁ、貴女の手駒の少女と桃源の小娘、傭兵の女だけでは、万が一の時もあるかと思いまして、ええ」

 男は心底疲れた声で投げやりに答える。

『ソレらは優秀だ……例え死んでも代わりは容易く用意出来る。全ては──』

 通信の人物と目の前の男の声が重なる。

 

 ───銀の車輪の赴くままに───

 

 

 

 

 

 sidechange

 

 

 

 みなさん、こんにちは源 モモです。

先日?昨夜?兎に角、大変な事に巻き込まれあれよあれよの内に正義の秘密組織の一員になることになりました。

 ……うぅ、大丈夫かなぁ…昨日は『私はこの街が好きです。この街を守らせて下さい!』なんて…あんな事言っちゃったけど……。

 落ち着いたらちょっと不安になってきちゃった……。

今日は学校が終わったら、昨日命ちゃん五恵ちゃんと一緒に行ったお店、Wasabiに来るように言われたんだけど……。

 「全部、本当にあったことなんだよね……」

 

 「何がホントなんだよ…

 

 「えっ?」

声?嘘!?聞こえてた!?

 ボソッと呟いたんだと思う声を探す、多分五恵ちゃんの席の隣の席の人……確か昨日転校してきた神楽隼人くんだったはず、どうしよう独り言聞こえちゃってたのかな?

 しばらく神楽くんを見るけど、昨日と同じ休み時間は眠いのか顔を俯せにして動かない……気のせい?ううんでも確かに聴こえた、何がホントって…でも寝てるみたいだし、それにちょっと近よりがたい空気があるし……どうしたら──

 

 

 

 sidechange

 

 

 源モモが自分の席で唸ってる。

つい聴こえてきた言葉に反応してしまった、失策だった。まぁ、あちらも独り言の様だし、暫く狸寝入りを強硬すればこちらの事も頭から追いやるだろう。

 それよりも──夢に出てきた埠頭、もし万一……イヤ、止そう。あくまで地理を叩きこむ為に行くだけだ。

デバガメじゃない。さぁ、そろそろ次の授業だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜、モモがツキカゲと出会い骸骨男が獣を倒した一件があった埠頭にて何かを探る様に見渡す人物が海面を眺めつつ誰かに向かって声に出さず語りかける。

 (そちらは何か見つけたか08?)

(……目ぼしいモノは特には、ただ此処の近辺に実験体七七号が投棄されたのは確か)

 (ふむ、そちらのセンサーでも掴んだか)

(微弱だけどね、七七号……コードはサイクロプスだっけ?大したこと無いね)

 (アレを含めGAROは我々ゼロナンバーとはコンセプトが違う)

(ふーん、そう言えばモウリョウだっけ?ぼくらの先輩が出向してるんでしょ?)

 (先輩?……ああ、あの廃棄個体達か。連中にはあれで十分と判断したのだろう、所詮アレらは旧時代の異物だ)

地上と水中で会話を行う者達、端から見れば、端正な顔の外人が黄昏ているだけの光景があるだけであった。

(銀の車輪ね、随分シンプルな名前だよ)

 (まさかとは思うが万に一つの可能性もあるからな、用心に越したことはあるまい)

 

彼等は会話を続けながら暫く辺りを散策していたが、やがて目当の物が見つからないと分かると08が海から上がってくる。その格好はジャケットを着たアメリカ系の黒人、水浸しの筈の服は何事も無かった様に乾いている。

「収穫は強いて言えばこのナイフかな、そっちはどうだい04?」

 04と呼ばれた男は2メートルの長身に美しい顔を持つロシア人であった。

 「こちらは何も…とは言えこの血痕を見るにサイクロプスは一方的に殺されたと見るべきか」

「血痕ね、とっくに消えたそれを見つけられるのはボクらくらいじゃない?」

 「これ以上はここに用はない、帰還するぞ」

「了解」

 04と08、自らをゼロナンバーと呼ぶ2人は何事も無いようにその場を去る

 彼等のジャケットが風に煽られる、その肩には刺繍された揺らめく黒い炎のワンポイントがまるで本物の炎のように揺れていた。

 

 世界をその手に納める為、黒い焔に包まれ亡者の幻影は人知れず踊る。

 




 うーむ、書いていると別の作品が思い付くジレンマ。
イース9の怪人と何れかのラノベとか、シンデレラガールズと天華百剣の中の人、外の人的ネタ作とか。頭に浮かんじゃうんですよね。
令ジェネとヒロアカの映画観に行ってきました。
 来年ははいふりとアビスと蟲かな。


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影を追う

 こんばんわ、ダグライダーです。
短めですがやっとリリスカ四話目が出来ました。
 私が投稿している作品で一番考えて考え抜いて書いているのがコレです。
 
 とじダグ
 脳内の設定をメモする→プロットを箇条書きする→全体の結末を決める→一度文章にする→読み返す→新しく文章にする→読み返す→投稿→読み返す→なるべく誤字脱字を直す。

 シンデレラ百剣
 脳内に煌めいたアイディアをそのまま新規小説機能に書き出す→読み返す→消す→衝動に従い書き直す→投稿→誤字脱字確認→追加事項があれば書き足す。

 リリスカ
 脳内からプロットを作る→結末のオチを決める→書く→見直す→何か違うと感じれば消す→書く→全体の雰囲気を見直す→暫く考える→書き足す或いは消す→投稿→誤字脱字確認。

 といった具合です。

いやぁ、シンデレラ百剣の書きやすさと来たら、状況次第ではリリスカやとじダグより早く話が作れるので、笑っちゃいましたよ。



 

 ──悪意はなんて事ない日常の中に知らない内に紛れているものだ。特に一件なんの変哲もない人が実はとんでもない悪党だったり──

 

 

 

 

 

 結論を言えば、放課後バイトを探すついでにコンビナートに寄ってみた。悪夢であろうと常日頃目にするであろう場所が出たのだから、確かめずにはいられなかったんだろう。なんて自己弁護する。

 つまり何が言いたいかと言えば……迷ったのだ。

そりゃ夢だし、何か証拠が残ってるワケでもないし、ただ気になっただけで来ればこうもなるか。

 幸い、迷うといっても夢に出た場所がよく分からないだけで、帰る事は出来る。

 「…何だアレ?」

しかし、何の収穫も無いとは情けないと思っていたら何だか変な奴を見掛けた。

 ………ウチの制服の女子か?やたらめったら辺りを見回しては四つん這いになってコンテナの隙間を覗き込んでる……うん、変人だな。

 

 「うんん?おやおやぁ?そこの君!」

ヤバい気付かれた、無視だ無視。

 「コラコラ、君だよ君ぃ?無視はいかんなぁ…その制服は空崎のでしょ?」

 無視、無視、無視。

 「ちょっとちょっと、こーんな美少女が目の前に居るのにシカトはいかんなぁ~」

 自分で美少女とか言いやがった…。

これはしつこく付きまとうタイプだな仕方ない……。

 「何用ですか………?」

 「うわっ!めっちゃ不機嫌、もう結構なイケメンが台無しダゾ♪」

 ウザい……。

 「おっと自己紹介がまだだったね、アタシは君と同じ空崎高校で三年生の黒戸音々子。新聞部ね」

 ──何だ只のパパラッチか」

 「んんー、声に出てるよー?誰がパパラッチやねん」

 「でも学生の新聞なんて相手を面白可笑しく書くんでしょう」

 「失敬だね君は!こう見えてちゃんとした記事を書いてるの!」

 やはり胡散臭い……何だよ頭に眼鏡って……………ってかさっきからペンでつつくな!

 「そのまっとうな記者様は一体此処に何の用ですか?」

取り敢えず、目的くらいは聴いてやろう。

 「よくぞ訊いてくれたね!実はこの空崎には結構前から妙なウワサがあるんだよ!」

 …妙なウワサ……気が変わった、もう少し聴いてやる。

 「曰く、空崎には悪の秘密結社がある。曰く、空崎では正義の美少女集団が活躍している。とかね」

 ちっ、思ってたのとは違った。只の法螺か。

 「おんやぁ?その目は疑ってるね?ならコレはどうだ!夜の街に出没する怪物とそれを狩る骸骨男のウワサ!」

 っ!骸骨男……。

 「んふ、目の色が変わったね?よしよし」

 「……続きは?」

 「そうだなぁ、明日学校で教えてあげるよ?」

話にならない、まぁ所詮ごっこ遊びの記者だ…適当に付き合ってキリの良いとこで終いにしよう、バイトだって見つからないし。

 「ごっこ遊びなんかじゃ無いよ…少なくとも骸骨男と正義の美少女集団に関しては」

 「…!?」

コイツ……、何だ?

 「まーた怖い顔してる…兎に角、明日部室に来てくれたら教えてあげる。ついでに君の相談にも人生の一年先輩として乗ってあげよう!」

 成る程、この女…猫みたいかと思ったがもっと別のモノだったか……。

 「分かりました、明日、放課後に」

 「オケオケ、約束ね!ばいにゃら~♪」

そんなふざけた挨拶を残して去る黒戸と名乗った女、俺も帰ろう…成果と言って良いかは解らないが収穫はあった。後は晩飯の材料と求人誌だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???

 漆黒を纏った白い仮面が跨がっていた鋼鉄の騎馬より降り立つ。

 『……』

「お帰りなさい、ご無事で何よりです」

 そこへ労いの言葉を掛ける者が1人……背格好は高く黒髪を短く切り揃えたその人物は骸骨男と同じ黒い服を纏っている、ただ骸骨と違い男のソレは神聖の象徴である神父服だ。

「連絡がありました、モウリョウに例の組織からの増援があったとか」

 神父の言葉を骸骨は黙って聞いている。

「それと…既にご存知かも知れませんが念のため………彼が空崎の高校に編入しました」

 『…………』

「今はまだ何とも無いようですが、努々油断なされぬように」

 神父の忠告に分かっているとでも言うかのように背を向け奥の扉へと消えて行く骸骨男、神父はそんな彼を悲しげに見送るだけであった。

 

 

 

 

 

 ──人は誰しも真に産まれた意味を理解してはいない。

しかし、稀にではあるが意味を持たされ産まれ墜ちた命も存在する。

 果たしてそれは善いことであるのか、悪しきことであるのか……其れを創り出した者にしか解らない。

 善きことならば喜ばしきモノだ、だがもしそれが悪しきことであったならば───

 

 


 

  とある医者の懺悔

 

 嗚呼、神よ何故この様な試練をお与えになるのか…。

私はただ、未来の医学に貢献出来る。そう聞かされていただけなのに……。

 此処は狂っている、人を人と思わぬ所業。生きとし生ける命に対する冒涜……私はこんなモノを造る為に此処に来たのでは無いのに!

 また、彼等は戦場に向かうのだろうか…?

嗚呼、何故、何故なんだ……。

 

 

詳細な日付等は消されている

 

 





 はい、また暫くはとじダグ優先でネタを考えます。
稀にシンデレラ百剣が挙がるかも知れませんがリリスカも一応書き進めていますので失踪らしき事は無いです。
 それこそアカウントが消されない限りは…。
では次回で!


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不可視の9番

 こんにちは、ダグライダーです。
やっとこさカタチになりましたリリスカ、いやはや一人称視点は難しいですね……。
 今回はタイトルにありますワード、見覚えがある方もいらっしゃるでしょう。あの漫画のネタが元になっています。
 いやぁ、あの漫画の設定とか結構好きでして、スカルマン寄りなら行けるかなと思い組み込んでみました。



 ──誰だってなりたくて悪党になったワケじゃない。

ただ、そうしなければ生き抜く事が出来ないから。或いは、好奇心を突き詰めていった先がそうであったから。或いは、訳も解らず身の内から溢れる衝動に従ってしまったから。

 

 ──或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは、或いは──

 

 気付いた時には遅すぎた、戻る事すら難しい、振り替えれば屍山血河。

 いっそ狂ってしまおうか…、開き直って楽しもうか…。

 引き返せぬならば、とくと御覧あれ、咲かせてみせよう惡の華。正義如きが容易く枯れさせられると思わぬ事だ──

 

 

 

 宵深い闇夜から朝陽昇る迄の僅かの時、空崎と隣接するとある街のとあるビルの一室にてそれは起きた。

 

 ボウボウォと炎が鉄筋コンクリートのビルの中を渦巻く、そこかしこに転がる人、人、人、人、ひと、ヒトであった黒い塊。

 下は最早炎の壁に覆われ、逃げ場は上に進むのみ。

 「ヒィッ!?…待て!待ってくれェ!何故なんだ?!我々は其方の要望に出来うる限り応えた筈、だと言うのに何故だ??!」

 悲鳴混じりの男の疑問に返ってくるのは炎の音と重たい足音、そして何かに遮られてくぐもって聴こえる声。

 『……コホー命令…シューだから、それに…燃やさなきゃシュコー……暖まらない』

 言葉の合間に挟まる規則的な呼吸の音と共に炎を割って現れた人物、その姿を一目見て表すならば宇宙服だろう。分厚い合成繊維で編まれた恰幅の良い上下の繋がった服に背中に背負った可燃性ガスが詰まったであろうボンベ、金魚鉢のようなヘルメット、知らぬ者が見れば誰もが驚き目を見張るであろう容姿である。

 「わ、分かった!?金だな!金を出そう!!私が貴様を雇う…!だから私を助けてくれ!?」

 男が宇宙服の人物に尚も命乞いをする、しかしスモーク硝子のヘルメットからは表情を読み取る事は出来ない。

 『…シュホーお金は……いらない、オレ、居場所…シュー……アソコしか無い…シュコー、だからオマエの言うこと……シュー…聞かない…コホー……』

 「そ、そんなっ!!」

無慈悲な返答に男は絶望を顕にする、目の前には巨大な炎が迫り彼を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、妙な奴に遭遇した。

何言ってんだと思うかもしれない、でも事実だ。

 そして更に変な事が一つ。これまた最近、源のヤツがおかしい。

 教室で見掛ける度、やたらと草臥れているような……?いや、俺には関係ないことだ。それより、石川の視線が気になる……。何だ?俺が何かしたのか?

 そういえば、こいつと八千代は源と仲が良かったな…まさか、この間の呟きについて源から相談でも受けたのか………?

 別に源の事はどうでもいいが、石川から見詰められるのは悪く無い。石川五恵、同い年の女子よりは背が高く、スタイルも悪く無い…いや、八千代も源もスタイルは良いんだが、石川には及ぶまい。

 何よりあの垂れ下がったつり目と黒く長い髪、自信無さげに見えて、しっかり芯の部分が分かるタイプと俺は診ている。つまりは目茶苦茶好みの女なワケだが……ん?前にも言った気がする…。

 それはまぁ兎も角、問題は放課後にあの女と会わなきゃならん事だが、ハァ…気が重い。

 

 

 放課後が……来てしまったか…………。

バックレるか?いや、あの手の輩は異様にしつこい。ここは大人しく向かって、奴さんのペースに乗らない様に会話を進める。それで聞くもん聞いて目的を果たしたらサヨナラ!よし、完璧。

 何せあの女、見た目の割りに得体が知れない、昔施設に来てた連中と同じヤバい感じがあの時一瞬だけ感じた。

 そうと決まればさっさと行くか。やっぱり帰りたい……。

 重くなりそうな足と気分を押さえ付け、無理矢理にでも前に進む、…………ってか、美術準備室かよ、そこは普通資料室かどこかの第二教室辺りだろ。

 微妙な気分のまま、扉のノブに手をかける。さて、長丁場は避けたいところだな。

 

 

 「待ちかねたよー!!」

扉を開けると同時に両手を大きく広げ、ハグの体制で飛びかかる…が俺はそれをあっさりと避けた。

 「べぶっ?!何故美少女の包容を避けるのさ!?」

 「あんたが嫌いだから……だとしたら?」

 「しくしくしく……なんて酷い男でしょう」

床に思いっきり顔を擦り付けたこの女は俺に批難まじりの文句をほざき啜り泣く。勿論どう見ても嘘泣きである。

「ぶちょー大丈夫デスカ?」 「部長なら大丈夫でしょ」

 準備室の奥から聞こえてくる二つの声、片方はカタコト混じりの少女、もう片方は淡々とした男のモノであった。

 「冷たい!冷たいよ!風見くん?!そして心配ありがと~ジーナ!!」

 男の方は風見と呼ばれ溜め息をつき、ジーナと呼ばれ少女はこのバカと抱き合う。

 「茶番はいい、それより他に人が居るなんて聞いてないぞ」

 「言ってないからね!」

 ……これはあれか?俺を苛つかせたいのか?

「流石、クソ部長。他人のコトはお構い無し、その上更に説明不足とか……その人が可哀想」

 風見某に同情の視線を向けられた、少々言い回しが癪に障るが…恐らくコイツが一番マトモだな。

「コーイチ!せんぱいにはケーキをはらうヨ」

 ジーナとやらはカタコトな上日本語があやしい、ケーキじゃなく敬意だろうよ。

「それを言うなら敬意ですユーリア先輩」

 どうやら風見の下の名はこういち、ジーナの姓はユーリアと言うらしい。

「オォ、ケーイ!コーイチは物識りダネ、ベンキョーになるヨ」

 「あれぇ、無視かなぁ?わたし部長だよぁ~、おーい?」

 コイツは部員からの扱いも雑らしい。

「そんなワケでウチのアホがご迷惑をお掛けして申し訳ないです。ユーリア先輩、僕らはお暇しましょう。では…ごゆっくり」

「ドーユー訳なの?コーイチ教えてヨ、コーイチ!あ!オイトマします。ゴユックリ!!」

 そんな台詞を最後に残して教室から出ていく二人、有難い事だ、風見某は見たところ一年のようだし、今度何か礼としてドリンクくらい奢ってやろう。そしてユーリアとやらはアホの子なんじゃないか?カタコトでやたらと他人の言うことを真似てら……さて、邪魔は居なくなった。

 「さっさと用件済ませようじゃないか、ええ?先輩」

 

 「わぁ……目茶コワーイ…」

 

 

 まず呼び出しといて他人が居る事を黙ってやがった事を説教する事10分、ついで、黒戸が言い訳とどうでもいい話に30分……長ぇ。

 「むむ?おっと、失礼失礼…つい長くなっちゃってね♪それじゃ本題だね」

 やっとか、このアマ。

 「先ずはこれ、夜な夜な現れる謎の正義の集団から」

焦らしてくれる……こちらの本命が骸骨男と知った上でこれだ…。やっぱり油断は出来ないな。

 「そう言えば、その集団が美少女だとか言ってたな、どうして分かる?」

 「デジカメには全く写んないけど、アナログはバカに出来ないよぉ~」

 随分とまぁ、用意がいい。所謂、レフカメラって奴なんだろうが、バズーカみたいなデカさだ…偶然持ってたなんてレベルじゃねぇな、ずっと前から張ってた訳か。

 「苦労したにゃあ~、何せウワサは在れども目撃者や証言は無いもんだから、自分で一から足を使わなきゃいけないしね」

 その結果が結実しているんだから恐ろしい。

 「んで、現像した写真を…まぁ素人鑑定だけど、昔から何人か被写体にしてるからね、体格からしておんにゃのこかなってさ!」

 後半半分セクハラだろ……、しかし、正義の集団ねぇ?物好きを通り越して異じょ…奇人だな。

 「?もしやキミって正義の味方とか嫌い系?」

 「別に……嫌いなワケじゃない、ただ…いや何でもない」

 「ふーん?まぁ、キミが知りたいのはどちらかと言えば()()()だよね?」

 そう言って黒戸が次に出した写真、今度はデジカメで撮ったモノだろう夜の漆黒より尚黒い黒衣の男、後ろ姿だが僅かに見える白い頭が俺が夢に見たあの骸骨男であることは間違いない。

 「これは何処で?」

 「コッチはホントに偶々撮れたんだけどね?さっきの集団を追っている内に遭遇したんだよ」

 また随分と危険な事を……今更か、さっきの集団然り、夜のこの街はえらく物騒だな。

 そしてそれを難なくカメラに抑えたコイツも只者じゃない。

 「凄かったよ!相手は人間じゃないみたいでね!?それを骸骨男が──」

 思えば、もう少し訊ね方ってもんがあったのかもしれない……黒戸のヤツは骸骨男の話をえらく興奮した様子で語り始めた。それがまた長かった…ホントに長かった……気が付けば日が暮れ、警邏巡回の教師に追い出されるまで永遠かと思うばかりの語りであった。

 流石にヤツもやり過ぎた自覚があるのか、別れ際に俺に丁度良いバイトがあると喫茶店のバイトの話を持って来た。ふん、まぁ有り難く受け取っておいてやろう。知りたい事は大体知れたしな。

 

 

 

 

 

 ━━sideout━━

 

 

 それは新聞部にて隼人が音々子を尋問している頃、空崎のモールに列なる様々な店、その中にあって本格的なカレーを提供する店Wasabi、その店内の更に奥、否、その地下深くにて──

 「工場から持ち帰ったデータが一部解読出来ました」

武家屋敷を彷彿とさせる内装に近未来的な装置の数々が置かれている此処は、私設諜報機関ツキカゲの所謂秘密基地である。

 そんな秘密基地のある一室にてブリーフィングが行われていた。

 「これは…花?」

先の青葉初芽の言葉と共にモニターに表示されたのは巨大な花のモニュメント。その存在に相模楓と石川五恵は疑問を呈したり、首を傾げている。

 「建造物の設計図のですが、具体的な所はまだ不明です」

 彼女達の質問に答えるように初芽はデータより解った事を説明する。と言っても未だ大した事は分かっていないのだが…。

 「モウリョウ絡みの疑いがある工場って事で侵入してみたけど、でっかいネタ掴めたねぇ~」

 少しばかり茶化す様に相槌を返すのは八千代命。

 「モウリョウは何企んでるんだろう…」

楓が視線をモニターから反らし、思案する様に顎に手を充てる。

 そんな弟子の様子を横目に見ながら命が初芽に更に訊ねる。

 「他に何かデータ入ってた?」

 その質問に対する返答は否定、そしてモニターに表示されている【GEKKAKO】の文字だけが現状の手掛かりであった。

 「いえ……これくらいですね。それでは次に例の骸骨男についてなんですが」

 骸骨男の話を皮切りに対モウリョウ会議を一先ず切り上げる初芽、そして骸骨男の話題が出た途端に他のメンバーにも緊張が走る。

 「実はここ何件か、空崎以外での活動もしているようでして、つい先日なども目撃証言があるようなんです」

 「その割には、本拠地らしきところは見付からないよね?」

 初芽の言う通り、骸骨男の目撃証言は多々あるものの、命が指摘した通り彼女達の様な組織が足取りを追って尚、未だ拠点らしきモノは見付かっていない。

 「本当に何者なんでしょう?」

楓がモニターに映し出された骸骨男を睨みながら返ってくることの無い誰何を口にする。

 「分かりません、男性である事は確かですが、敵なのか味方なのか、それ以外の事は何も……」

 「モウリョウに続いて手掛かりらしい手掛かりはなしかぁ…」

 命が溜め息混じりにやれやれと言わんばかりに首を振る。

 「……あの、師匠…。」

 その時、五恵がおずおずと初芽に向かって手をあげる。

 「五恵ちゃん、どうかしましたか?」

 「骸骨男さんは…悪い人じゃない気がします」

五恵のこの発言には三人も驚いた、彼女が優しい事は知っていたがまさか正体不明の存在に肩を持つとは思わなかったものだから。

 「何でそう思うのさ?」

命がなんとなしに理由を訊ねると五恵は自信が無いのか伏し目がちに言葉を探す。

 「そんなに難しく考えなくても、五恵ちゃんが思った通りの事を言って下さい」

 そんな五恵を見かね優しく諭す初芽、初芽の配慮に僅かに紅潮し喜ぶ五恵。

 「ありがとうございます師匠。それで…骸骨男さんの事……ですけど、正直よく分かりません、ただ何となく…そう思って……ごめんなさい」

 初芽に対する礼の後に続いた言葉は、完全な勘からの感覚的なモノ、その為最後は尻すぼみになり謝罪する。

 「大丈夫ですよ五恵ちゃん、そういう感覚も私たちには大事です。そうですね、次に彼に会えたならその辺り聞いてみましょう!」

 どうやらツキカゲの骸骨男に対するスタンスは決まったようだ。

 しかし、彼女達は知らない、知ることは無い。

 夜に虚ろう髑髏に刻まれているのは決して正義などでは無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の高速を掛ける一台の車、それはモウリョウの幹部である文鳥の女の物、彼女の車にはドライバーである彼女以外に三人の同乗者が居る。

 「月下香はどうなっている?」

文鳥の女が進捗を確認する。その問いに答えたのは真後ろに座る褐色の少女であった。

 「ベトナムで製造中です。夏には仕上がります」

 「ならばよし」

 「こちらに寝返ったツキカゲのスパイから連絡はありましたか?」

 「細々としたものはな。どれも本当のネタであったようだが……見返りは金だそうだ」

 「まだまだ信用は出来ませんね…。奴等も含めて」

褐色の少女がそう言って思い浮かべたのは、つい最近モウリョウのスポンサーより宛がわれた不気味な集団。

 「連中の方は心配はいらんさ、あれで中々に優秀なようだ。つい先日も派手にやったようだしな」

 文鳥の女の言う派手にやった事とは、モウリョウに協力している企業で反意のあるモノを粛正し、同様の意思を持つ者達に対する見せしめの事、そして見事にその企業を文字通り火達磨にしたのだ。

 そしてそれだけ派手に動いたにも関わらず、新聞やニュースでは悪魔でもガス栓の閉め忘れによる管理不行き届き。企業に属していた全ての人間が焼死、他に証拠は無く、警察も最低限の捜査に済ませる……これ等は全て銀の車輪──引いてはその裏側に居る亡霊の仕業であった。

 「銀の車輪ですか…あの様な存在がいるとは…」

 「良いじゃないか、例のビルの奴は何だったかな……ああ、そうそう、908HTTだったか?アレらに関しては人扱いはしなくても良いそうだ」

 文鳥の女はそう言って嗤う。すると先程からの会話を退屈に感じたのか、褐色の少女の隣に座る小学生くらいのアジア系の少女が文句を垂れ暴れる。

 「何難しい事さっきから話てんだ!負け知らずの白虎さまだぞ!早く仕事させろ~!!」

 その様を不快と見たか文鳥の隣──助手席に座る筋肉質の巨漢の女性が、白虎と名乗った少女に文句を言う。

 「うるさいチビだな、この美しいワタシのようにドカッと構えろ!」

 「ああっ?!」

チビと言われ腹が立ったのか巨漢を睨む白虎、そこへ嗜めるように文鳥の女が言葉を掛ける。

 「お前の出番は近い、まずは協力者との会談だ」

文鳥の女が示す通り、彼女達を乗せた車が向かう先はツキカゲを裏切ったスパイの元、4人の魑魅魍魎はそうして夜の帳の中に消えるのだった。

 

 

 

 

 

 908HTTと呼ばれた例の宇宙服──防火服、そして彼を含む銀の車輪からの尖兵、不可視の9番(インヴィジブルナイン)。彼等こそは嘗てとある国で推進された存在しない死の部隊、倫理や人道など二の次、目的は如何にして強力な敵兵や兵器を倒すか、それだけを追及した存在。

 故に彼等も又亡霊。

彼等を知る者はおらず、彼等を認める者もいない、最早彼等に残された道は、与えられた命に従い殺す事のみ。

 此は戦争に在らず、此は正義に在らず。

 帰る家など当に無く、引き返す事は不可能。

 ならば残るは殺戮だけ………。




 では今回はこの辺りで、また暫く時間が掛かりますが完結はさせますので宜しくお願いします。
 それまではとじダグとシンデレラ百剣で回していきます。


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