東方三紅姉妹録~異界に喚ばれし幻想郷~ (松雨)
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序章 異世界組の顔合わせ編
紅魔館のパーティー準備


主人公達の解説については明後日までに書いて投稿します。


 八雲紫とレミリア達がフランを見つけ、幻想郷へと戻ってきた日の翌日の朝方、博麗神社の縁側にて霊夢と魔理沙の2人は一緒にお茶を飲みながら会話をしていた。

 

「平和ね。何にもする事なくて暇だけど、縁側でお茶を啜りながらのんびり出来るって良いわね」

「そうだな……そう言えば、フランはまだ見つからないのか? 霊夢」

「みたいよ。でも、紫が大体の居場所を掴んでレミリア達が『異世界』に乗り込んで行ったから、見つかるのも時間の問題だと思うわ」

「マジかよ……『外の世界』じゃなくて『異世界』だったのか。それじゃあなかなか探り当てるのが難しかった訳だ」

 

 フランが数ヶ月前に異世界召喚されてしまい、幻想郷から姿を消してしまった際にレミリア達に次いで焦っていた魔理沙。紅霧異変の際に弾幕ごっこでやり合い、異変後から友人として付き合う様になり、今では親友と呼べるまでの関係を築いた彼女が居なくなれば、それも当然と言えるだろう。

 

「これで無事にフランが見つかって、レミリアも元気を出してくれれば良いけどね」

「ああ、確かにな。レミリア、あの日を境に少しずつ元気が無くなってたし、こないだなんか……」

 

 何とか無事にフランが見つかり、レミリアが元気を取り戻してくれるように2人が願っていると、空の向こう側から良く見知った人物が飛んで来るのが見えた。その人物は霊夢と魔理沙の近くへゆっくり降り立って話しかけて来た。

 

「咲夜か! なあ、フランはどうなったんだ?」

「妹様でしたら、異世界で無事に発見する事が出来ましたよ」

「おお! やったぜ霊夢!」

「無事だったのね。まあ、あのフランだし大丈夫だとは思っていたけど、良かったじゃない」

「それでですね、1つお誘いがありまして……」

 

 咲夜曰く、無事にフランを発見した記念と、新たに紅魔館に住む事になった3人を紹介する事も兼ね、あらゆる幻想郷の人妖や神々を紅魔館側が費用を全負担で招待していると言う事らしい。

 更に、そこで出される料理や飲み物の中にはフランが居た異世界の物も含まれていると言う。

 

「異世界の料理か。気になるが、私ら幻想郷の人や妖怪が食べても大丈夫なのか?」

「ええ、問題ありませんよ。妹様は向こうに居る時に幾多もの料理を食べて来た様ですが、体調は特に何も変化はなかったそうです。私やお嬢様、パチュリー様や美鈴も試食しましたけど普通に美味しく頂けましたから」

 

 幻想郷とも外の世界とも違う未知の異世界の料理。食べた事はおろか本などから知識を得てすらいない。その為、食べても大丈夫な物なのかどうか不安な霊夢と魔理沙に対して咲夜は、もう既に紅魔館の全員で毒味済みかつ何もなかった事を伝えると、安堵の表情を見せた。

 

「毒味済みで、何も無かったなら安心ね。どうせ暇だし、私はパーティーに参加させてもらうわ。魔理沙はどうするの?」

「勿論、霊夢が行くなら行くぜ! フランと久しぶりに弾幕ごっこもしたいし、新しく紅魔館に暮らす事になった奴が気になるしな」

「分かりました、お嬢様に伝えておきます……後行っていない場所は、人里に守矢神社ですか。守矢の二柱と早苗はとにかく、慧音さんは寺子屋もありますし、厳しそうですね」

「へぇ~。結構誘うんだな」

「ええ。お嬢様にとにかくひたすら誘えと言われましたから」

 

 霊夢と魔理沙のパーティーへの参加の意思を確認すると、咲夜はメモ用紙にそれを書き込む。そして、次の目的地である『人里』に居る上白沢慧音に声を掛けるべく博麗神社を後にした。

 

 

 そして、大して時間も掛からず人里へ到着した咲夜は真っ先に慧音が居そうな寺子屋へと向かい、中に入ろうとすると……

 

「お? 紅魔館の所のメイドじゃないか。寺子屋に何か用なのか?」

「あ、丁度良かったです。実は、貴女に用事がありまして」

「私に?」

「ええ。実は……」

 

 偶然にも、会いたかった慧音に話し掛けられた。どうやら、人里の屋台で少し早めの昼食を取った後、明日の授業に向けての準備をしにここへ来た所だったらしい。

 

「ほう、行方不明だったフランドールが見つかったのか。良かったじゃないか」

「ありがとうございます。特に悪い所はなく、むしろ精神的に成長が見られる位の良い変化がありました」

「成る程。今だから言えるが、この数ヶ月の経験がフランドールに取ってかけがえのない物になったのだろうから、まあ良かったのかもしれないな。それでさっきの返事なんだが、申し訳ない。今日は色々やることがあって行けないんだ」

「そうですか。分かりました」

 

 どうやら、彼女は明日の授業の用意を含めてやるべき事が沢山あり、参加は出来ないらしい。それを聞いた咲夜はメモ用紙に慧音は参加しないと書き込んでから彼女に会釈をしてこの場を後にし、守矢神社へと向かおうとした時、その方面から日傘を差したレミリアがこちらへ飛んで来るのを目撃した。

 

「咲夜、そっちはどう?」

「霊夢と魔理沙は参加、慧音さんは用事が多くて参加出来ないとのことです」

「分かったわ。ちなみに守矢神社の面々は全員参加するみたいよ。ついでに聞きに行ったらそう言われたわ。後、私はこれで全員に聞き終えたから戻るけど、咲夜は?」

「私も担当箇所は全て回り終えました」

 

 レミリアが上空を通ったついでに立ち寄って聞いた所によると、守矢神社の面々は面白そうだと言って参加を快諾してくれたらしい。これで、咲夜の行った場所を含めて全て聞いて回る事が出来た。後は紅魔館へと戻り、妖精メイドを含む皆の準備が終わっていれば待つだけで、終わっていなければ手伝うだけである。

 

 そうして、やる事を全て終えた咲夜とレミリアの2人はこの後特に寄りたい場所等はなかった為、館へと戻っていって中に入ると、入り口付近で妖精メイド達と一緒に会話をしていたフランがレミリア達に気づくと、話を中断して一目散に駆け寄ってきた。

 

「あ、お姉様に咲夜! お帰りなさい! 聞いて回るのはもう終わったの?」

「はい、終わりました」

「ええ、終わったわ。それとフラン、会場の準備の方はどうなってるの?」

 

 フランがもう用事は終わったのかと聞いてきたのでレミリアは終わったと答え、逆に会場の準備は終わったのかと聞き返す。すると、満面の笑みを浮かべながらこう答えた。

 

「えっとね、ヴァーミラの作った水の小鳥さんのお陰もあって全部終わったよ!」

「……ミラが吸血鬼なのに水を操れる能力を持っていると言うのは聞いてたけど、そこまでとは驚いたわ」

「ええ。きっと、あの世界とこちらとでは常識が違うのでしょうね」

 

 それを聞いたレミリアと咲夜は、ヴァーミラ自身に備わる能力の扱いの上手さにかなり驚いた様子を見せる。吸血鬼なのに水に完全耐性を持ち、更にそれを自由に操れると言うだけでもおかしいのに、水を小鳥にしてまるで生きているかの様に操れる彼女が異質すぎるのだから、そうなるのも当然だ。

 

「フラン、準備が終わったなら後は時間までゆっくりしていても大丈夫よ」

「はーい! じゃあ妖精さん、早く地下に行ってお話の続きを……え、真っ暗で怖そうだから嫌だ? 大丈夫だよ、明るくするからさ!」

 

 レミリアがそう言うとフランは妖精達を引き連れて、自分の部屋でもある地下室へと向かっていった。

 

 




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水を操る吸血鬼少女

「魔理沙さん、何か御用でしょうか? まだパーティーの時間には早いですが」

「時間にはまだ早いのは聞いたから分かってる。ただ、フランの奴が見つかったって聞いたから会いに来ただけなんだよ」

「なるほど、妹様に会いに……」

 

 レミリアと咲夜が、幻想郷中のほぼ全ての実力者や一部の妖精等をパーティーに招待し終えて戻ってきてから少し経った頃、魔理沙は紅魔館を訪れていた。数ヶ月ぶりに異世界から戻ってきたフランに会い、冒険話を聞くと共に弾幕ごっこをしようと思ったからである。

 

「だから美鈴、ここを通してもらえないか?」

「ちょっと待ってて下さい。お嬢様に聞いてきますので」

「ああ、頼む」

 

 そう言うと、美鈴はレミリアに魔理沙を入れても良いかどうかを聞きに、館の中に入っていった。

 美鈴が許可を取って来るのを待っている間、魔理沙はフランにどんな事を聞こうか考えていた。

 異世界には魔法はあるのか、どんな世界であったのか、どんな経験を積んだのか等だ。

 

 最近は幻想郷でも異変は無い。なのでこれを良く言えば平和、悪く言えば退屈だったと感じる彼女にとって、フランから聞かされるであろう冒険話を想像し、心が勝手に踊り出す。咲夜から少しだけ聞いたけど、数ヶ月の間にこことは比べ物にならない位の濃密な経験と戦闘を積んだらしい。

 

 つまり、それに比例して弾幕ごっこの腕も上がっているだろうから、油断していると速攻で負けてしまう可能性が高い上、油断しなくても負けてしまう可能性も出てきている。もちろん、魔理沙もこの数ヶ月の間もたゆまぬ努力を積んできているが……

 

「すみません魔理沙さん、お待たせしました。どうぞお入り下さい。妹様は何時もの地下室に居るそうですので」

「おう! 助かるぜ!」

 

 そんな事を考えていると、美鈴が館から出てきた。どうやらレミリアからの入館許可が無事に降りたらしい。

 こうして門を通り、館へといつものように入っていく。一瞬パチュリーにも挨拶しておこうかと思った魔理沙であったが、フランに会った後にしようと思いとどまり、地下室へと向かっていく。

 

 そうして地下へと降りる階段を降りている時にレミリアともフランとも違う、強力な魔力を放ちながらこちらへと向かって来る黒髪の少女を魔理沙は目撃する。背中に立派な羽がある事と、スカーレット姉妹と似た圧力を感じた事から吸血鬼だと判断は容易につく。

 

 そもそも、フランが居る紅魔館の地下室へと1人で立ち寄る人間の少女など居る筈がない。いくら昔よりも遥かに狂気に支配される回数が減ったとは言え、完全に脱した訳ではない。それに手加減も完璧とは言い難く、万が一何かがあれば危険すぎる。この事が、彼女が少なくとも人ではない事が誰にでも簡単に読み取れるだろう。

 

「貴女は誰? フラン姉様の友達?」

「……あ、私か? 私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いでフランの親友だぜ! それよりもお前、フラン姉様って言ったがマジなのか?」

「うん、そうだよ。まあ、義理の妹だけど……」

 

 思考を凝らしながら吸血鬼の少女と魔理沙がすれ違おうとした時、少女が魔理沙に話し掛けて来た。それだけなら特に気にせず普通に会話をするのだが、少女が『フラン姉様』と言ったのを聞き、少しだけ驚いてしまう。

 

(いつの間に義理とは言え、2人に妹が増えたんだ……あ、そう言えば!)

 

 その瞬間、魔理沙は目の前の吸血鬼少女が咲夜の言っていた紹介したい3人が居ると言う、レミリア主催のパーティーの目的を思い出す。自身の目の前に居る彼女がきっとその内の1人なのかもしれない。

 

「あ、魔理沙。1つ良いかな?」

「ん? 何だ?」

「フラン姉様に会いに来たんだよね。今、姉様寝てるから遊べないよ……」

「マジか。じゃあ待ってる必要があるな。教えてくれてありがとうな、えっと……」

「ヴァーミラ・スカーレット。これが、私の名前なんだ……姉様の親友の魔理沙なら、どう呼んでくれても良いよ」

「う~ん……よし、じゃあ『ミラ』! 教えてくれてありがとうな」

 

 目の前の少女と会話をしながら頭の片隅で色々考えていると、フランが寝ている事を教えてくれたその少女が自身の名前を『ヴァーミラ・スカーレット』と名乗ったのを聞いた。更にフランの親友であるなら、呼び方はどう呼んでくれても構わないと言う。魔理沙は少しだけ悩んだ後、『ミラ』と彼女の事を呼ぶ事にした。

 

「どういたしまして。あ、何なら起きるまで地下室の中で待ってても大丈夫だけどどうする?」

「寝てるのに良いのか……」

 

 寝てるなら仕方ない、また出直すか。そう独り言を呟き、魔理沙が引き返そうとした時に地下室で待ってても大丈夫だと、ヴァーミラが言った。寝てるのに良いのかと思いつつ、義妹である彼女がそう言うのであれば大丈夫だろうと、言葉に甘えて地下室に入る。

 

「おお……」

「一体どうした……あ、もしかしてこの小鳥達の事を言ってるの? 魔理沙?」

「ああ。だってコイツら、身体が水で出来てるんだぜ? なのにまるで生きているかの様に振る舞うんだ。大抵の初見の奴等は驚くだろ」

 

 するとそこには、魔理沙が思わず立ち止まってしまう程の光景が広がっていた。人間でも周りが見える程度には明るい室内に、薄い水色をした小鳥達が沢山飛び回っているのだ。

 それだけなら特にそれ以上気にしなかったが、たまたま近づいてきた小鳥に触って……魔理沙は驚いた。何故なら、身体が水で出来ていたからだ。

 

「確かに、これを初めて見せた時にフラン姉様もレミリア姉様も驚いてたからなぁ」

「これを見せたって……まさかこの小鳥達は、ミラが作ったのか!?」

「そう。私の水を操る能力でね、暇潰しに作ったんだ」

 

 更に魔理沙を驚かせたのは、この小鳥達は吸血鬼であるヴァーミラの能力によって作られた物であると言う事実だった。水に対して弱い筈の吸血鬼が、水を自由自在に形を変える事が出来る、それを知った瞬間、彼女の中で常識が音を立てて崩れ去った。

 

「いやぁ……いくら幻想郷では常識に囚われ過ぎない方が良いとは言え、水を操る吸血鬼なんて居るとは常識的に思わなかったな」

「まあそれは、私が特別なだけだから。魔理沙が思う吸血鬼像で合ってると思うよ」

 

 フランが寝ていると言う事を忘れ、思わずいつも通りの声量で会話をしていた時……

 

「ふぁぁ……ヴァーミラに、魔理沙? いらっしゃい。それと、久しぶり」

「あ、済まん。起こしちまったか、フラン」

「ううん、魔理沙だから気にしなくて良いよ。それより、遊びに来てくれたの?」

「ああ。勿論そのつもりで来たぜ」

「やったぁ! じゃあ、何して遊ぼうか?」

 

 その声に反応したのか、寝ていたフランが起きて向かってきた。気持ち良く寝ていたのに不味いことしたなと、そう思った魔理沙はすぐに謝る。しかし、特に気にしていない様子でありむしろ、親友が遊びに来てくれた事に喜んでいた様だった。

 

「よし! じゃあ久しぶりに弾幕ごっこでもするか!」

「うん! 今度は負けないからね、魔理沙!」

 

 こうして、最初はフランとの弾幕ごっこで遊ぶ事になった。




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魔理沙とフランの弾幕ごっこ

「よし、やる前にルール決めとくぞ。スペルカードは3つまで、あくまでも遊びだから1回につき1分半。これで良いな?」

「うん! じゃあ行くよー!」

「ちょっ……」

 

 魔理沙にそう言ったフランは、高密度の通常弾幕を先制して放つ。並みの相手ならばこれだけでも避けきれずに倒せる位の密度だが、そこは霊夢と共に異変解決をする位の弾幕のスペシャリストである魔理沙、不意討ちであるにも関わらず避けきる。

 

 お返しとばかりに、魔理沙も同程度の弾幕をフランへと向けて放ち、更に追尾するレーザーや分裂する巨大弾幕等を織り交ぜ、彼女に殺到させる。

 

「またっ! やっぱり強いなぁ、魔理沙は! だったらもっと行くよ……『禁忌 レーヴァテイン』!」

「早速来たか!」

 

 分裂する巨大弾幕に気を取られ、自分を追尾してくるレーザーに何発か被弾してしまうフラン。前の弾幕ごっこの時も似たような感じで弾に当たった記憶が甦り、全然成長してないと心の中で悔しがる。

 

 しかし、そんな事を思っている暇など弾幕ごっこをしている最中には無い。気を取り直し、フランはスペルカード『禁忌 レーヴァテイン』を宣言する。数ヶ月居た異世界での戦闘でも多用していた為、扱いに更に磨きが掛かっている。

 

「アイツの剣の扱いもそうだが、撒き散る紅い炎の弾幕の数と威力がやべぇ……死にはしない程度にはなってるがな」

「アハハ、楽しいねぇ! まだまだ行くよ、魔理沙!」

「テンション上がって来てるな、フランの奴!」

 

 厳しそうにしてはいるものの、まだこの状況を楽しめるだけの余裕は魔理沙にはあった。しかし、炎の剣だけは弾幕ごっこ仕様とは言え、まともに食らうと立てなくなるだけの力はある為絶対に避け、それを振って飛来してくる弾幕は、回避不能の物のみを同じく弾幕で撃ち落とす。

 

 だが遂に、捌き切れなかった弾幕に連続で当たってしまった魔理沙。今までレーヴァテインをかなりの確率で切り抜けられただけに、フランの成長を感じた瞬間であった。手加減も上手くなっている様で、いつぞやの時みたいに死にかける事はなかった。

 

「『魔符 スターダストレヴァリエ』!」

 

 しかし、成長しているのはフランだけではない。魔理沙も終わりのない、たゆまぬ努力を今までしてきていると言う事を証明するべく、最初のスペルカードを宣言する。

 

 星形の弾幕を広範囲にばらまいてフランの自由自在な飛行を大幅に制限しつつ、更に本人に向けても弾幕を放つ。これにより、実質的に狭い部屋の中で弾幕ごっこをする状況に1人だけ追い込まれてしまった。

 

「避けきれない……だったら『禁弾 スターボウブレイク』!」

 

 自身の羽を象った七色の弾幕を大量に打ち上げてから降らせ、魔理沙の出した星形の弾幕を全て相殺、更に本人に殺到させるほどの圧倒的弾幕を展開した。

 

 それでも、魔理沙を倒しきるには至らない。圧倒的な弾幕の中でも何とか隙間を見つけて掻い潜り、かすり傷を作りはするもののスペルカードの制限時間まで耐えきられてしまった。これでフランの、この弾幕ごっこで使える残りのスペルカードは1つだけとなった。

 

「むぅ……これしかないか! 『禁忌 フォーオブアカインド』」

 

 最後のスペルカードをフランが宣言した瞬間、彼女が合計で4人に増えた。

 

「ここが正念場か。何とか耐えきって見せるぜ!」

 

 そうして4人に増えたフランは散開し、一糸乱れぬ連携を見せながら魔理沙に弾幕を雨あられの様に浴びせかける。流石に4人からの連携攻撃は堪えている様で、被弾する回数が増えてきている。

 

「不味い! 『星符 ドラゴンメテオ』!」

 

 このままでは弾幕の大嵐に巻き込まれてしまうと判断、堪らず魔理沙はスペルカードを宣言する。

 

 上空の魔方陣から極太のレーザーを下に向けて照射し、通常弾幕もろともフランの分身を消しにかかるが、残念ながら避けられてしまった。ただ、今ので弾幕のかなりの部分が消滅していた為そこから抜け出し、何故かまとまっていたフラン達にミニ八卦炉を向けて最後のスペルカードを宣言する。

 

「私の最大級の技だ! 食らえ……『恋符 マスタースパーク』!」

 

 虹色に輝く、灼熱の極太レーザーをフラン達に向けて魔理沙は放った。避けづらい距離だったので、回避はかなり難しいと思われたが、分身達が本人を掴んで放り投げたお陰で分身達が消し飛ぶだけで済んだ。しかし、これで全てのスペルカードを互いに使いきってしまった為、弾幕ごっこはこれでおしまいとなった。

 

「あ~あ。また魔理沙に勝てなかったなぁ。これで3戦連続勝利出来ず……か」

「ふぅ……何とか引き分けに持ち込めたが駄目だ、もう疲れ過ぎて動けん……。と言うか、まだまだ余裕そうだなフラン」

「そりゃあ、私は吸血鬼だもん。基礎体力が違うからね。でも、楽しかったよ魔理沙!」

「それは良かった。楽しんで貰えたなら何よりだ」

 

 結果は引き分け、同時にスペルカードが攻略されてしまった為だ。本気で魔理沙に勝とうとしたフランは少しだけ落ち込むも、そもそも弾幕ごっこ自体が楽しい遊びであったので特に引きずる事はなかった。

 

「魔理沙って凄い……本気の殺り合いではないとは言え、姉様にあそこまで食らいつけるなんて」

 

 魔理沙とフランが会話していたその時、ほぼ透明な氷のドームの中からヴァーミラがそう喋り出した。巻き添えで弾幕を受けないように防御していたのだろう。

 

「でしょ? 魔理沙って弾幕ごっこ強いんだよ、ヴァーミラ!」

「うん。魔理沙と弾幕ごっこやってみようかと思ったけど、瞬殺されそうだから止めておく……」

 

 本気の実力での殺り合いではないとは言え、フランと互角かそれ以上でやり合う魔理沙にヴァーミラは驚き、称賛の意を表した。どうやら、この戦いを見る前は実力試しに弾幕ごっこをやってみようかと思っていたらしいが、フランに食らいついて打ち勝てそうな実力者だと分かり、その気も失せたようだ。

 

「ん? ミラも弾幕ごっこ出来るのか?」

「うん。異世界でフラン姉様に教えてもらったんだ。スペルカードもあるよ」

「へぇ~。フランに教えてもらったのか……それじゃあさ、また今度私とやってみないか?」

「えっと……お手柔らかに、最初から本気で来ないでね」

「勿論だぜ!」

 

 しかし、魔理沙はヴァーミラが弾幕ごっこが出来る事が分かると興味が出てきたらしく、やってみないかと彼女に勧めていた。断りづらかったのか、本気でやり合わない事を条件に了承していた。

 

「となると、スペルカードが圧倒的に足りないから魔理沙とやり合うまでにいくつか作っておかなきゃ……」

「足りないって……いくつあるんだ? 」

「2つ。これじゃあ少ないでしょ?」

「確かに少ないな。じゃあ、早速作るか」

 

 その後は、ヴァーミラのスペルカードが2つしかないと分かった魔理沙の一声でいくつかスペルカードを作ってみたり、それを試し撃ちをしたりしながら楽しく3人で過ごしていた。

 

 そうして話が彼女の能力についての事になろうとした時、地下室の重厚な扉が開く音がして、中にレミリアが入ってくるのが見えた。

 

「あら、随分楽しんでいたようね。フラン、魔理沙」

「おう! お陰様でな。フランも元気そうだし、良かった良かった」

「うん! で、どうしたのお姉様?」

「パーティーがもう始まってるから呼びにね」

「マジか、いつの間にそんな時間になってたんだ」

「まあ、随分長い時間楽しんでたしね。もうそんな時間だったとしても不思議じゃないよ。さあ行こう! 魔理沙、ヴァーミラ」

 

 どうやら、パーティーの時間が来ていたのに来ないものだから、見かねて呼びに来たらしい。それを聞いたフラン達は、少し急いで会場へと向かった。

 

 

 




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紅魔館の顔合わせパーティー

「凄いな……」

「沢山呼んだんだね、お姉様と咲夜。私の知らない人まで居るよ」

「この人達が、幻想郷の実力者だよねきっと。何とも言えない圧力を感じるよレミリア姉様」

「そうね。思い付く限りの人妖を呼んだから、かなり多いわ。勿論、大半が幻想郷のパワーバランスを担うような実力者達よ。私達も含めてね」

 

 レミリアに誘導され、パーティー会場に入ったフラン達は驚いた。たまに開かれる博麗神社での宴会よりも遥かに規模が大きいからだ。異世界料理を含めてバイキング形式になっている為、我先にと料理の取り合いがあちこちで発生している。

 

 料理は咲夜と妖精メイド達に加え、妖夢や人里の有名料理店の人が総出で作っているらしいが、一部鬼の様にドカ食いする人物が居る為、休憩が出来ない状態との事。

 

「ああ……幽々子の奴か。そりゃあ追い付かないわけだ」

「ええ。あの亡霊、1人で何十人分かって位の量を取ってはものの十数分で全部食べきるから、もう材料が半分しかないわよ。止めても『美味しい美味しい』言ってて聞きやしないし、妖夢ですら止めるの無理だって諦めてるわ」

「そいつは不味いな。しかし、レミリアや妖夢が止めても無理となるとなぁ……」

 

 その正体は、冥界にある白玉楼と言う屋敷の主で、そこで飛び交う幽霊の管理をしている『西行寺幽々子』だった。彼女は飛竜(ワイバーン)のステーキや唐揚げ等の肉料理をメインに、レミリアの言っていた通りに手当たり次第に取っては食べ、取っては食べを繰り返していた。

 

 ただでさえ沢山の人妖が来ていると言うのに、それの影響も加わって増築した調理場はフル稼働、八雲紫がいつの間にか集めていた大量の材料も凄い勢いで減ってきていて、もう半分近くの消費だそうだ。

 

「どうするんだこれ? このまま放置してると本当に底を尽きそうだぞ?」

「そんなの分かってるけど、あれとやり合って止めろと? せっかくフランが楽しそうにしてるのに……」

 

 レミリアと魔理沙が幽々子のとんでもない食欲をどう抑えようか思案していると、その様子を見ていたヴァーミラが動き出した。

 

『水の鷹と鷲よ、私の元へ集え』

 

 すると、彼女の両肩にそれぞれ水で出来た鷹と鷲がそれぞれ1羽ずつ現れた。当然、生きているかの様な動きを見せる精密さを兼ね備えている。

 

「おい、ミラの奴一体何をする気なんだ? まさかやり合う気じゃ……」

「……いえ、違うわ。でも、このまま様子を見ましょう」

 

 その後、まだステーキを美味しそうに頬張っている幽々子に近づいていったヴァーミラは、普通に話しかけた。

 

「あの……!」

「……何かしら? そう言えば初めて見る顔ね、貴女。それにその鳥、良く出来てるわね。能力かしら?」

「うん、そうだよ。私の名前はヴァーミラ・スカーレットって言って、レミリア姉様やフラン姉様の妹なんだ。まあ、義理だけど……よろしくね」

「じゃあ、次は私ね。西行寺幽々子、冥界にある白玉楼に住んでいるわ。それで、私に何の用事かしら」

「えっと……」

 

 そうしてヴァーミラは、幽々子に対して単刀直入に『材料が不味い事になっているから、食べるペースを周りの人並みに落として』とお願いした。

 

「あらあら、ごめんなさいね。あまりにも美味しかったものだからつい……」

「喜んでくれたみたいで、本当に良かった。調理場の皆も喜ぶと思うよ」

 

 すると、そう言われて不味いと思った彼女は食べるペースを大幅に落とした。ヴァーミラの行動が見事に上手く行った瞬間だった。

 

「水の鷹と鷲で自身を目立たせて話しかけ、反応してくれたら自己紹介し、その流れでお願いをする。成る程なぁ」

「ミラにしか出来ないわね、あれは」

「そりゃそうだろ。仮に私にあの『水を操る』能力があったとしても、あそこまでの事が出来てたかどうか……」

 

 ヴァーミラと幽々子のやり取りを、ずっと遠目で見ていた魔理沙とレミリアの2人は感心していた。自分達が止められなかった彼女を、戦わずして見事に止めて見せたからだ。

 

「さて、私達も何か食べに……」

 

 色々考えたりしていたせいでまだ何も食べる事が出来ていなかったレミリア達は、こんな事をしている場合ではないと急いで皿を取り、料理のある方に向かおうとした。

 

「ん? あそこに居る永琳と話し込んでいる銀髪蒼瞳の女の子、見かけない顔だな。妙に綺麗で神々しいオーラを放っているが……レミリア、アイツもミラと同様にここで暮らす事になった奴か? 」

「ええ、そうよ。ミアって言うんだけど、幻想郷に来てから少し経った何故かあのオーラを放ち始めたのよね」

「成る程……もしかしたら、何らかの能力が発現したのかもしれないな」

 

 すると、魔理沙が永遠亭に住む、幻想郷唯一の医者『八意永琳』と話し込んでいるミアを発見した。ぼんやりとではあるが綺麗で神々しいオーラを放つ彼女は、実力者が集うパーティー会場でもよく目立っている。恐らく、それに目を付けた永琳に声をかけられたのだろう。

 

「凄いわね、貴女。本当に普通の人間なの? その傷の治り方、再生能力が蓬莱人と同等は確実よ。もしかしたら超えてるかも」

「はい、人間ですよ。生命の神様から加護は受けてますけど」

「異世界の生命神の加護……それにしては強力すぎるわね。まるで貴女が神そのものであるかの様に」

「それで、蓬莱人って何ですか?」

「えっと、蓬莱人と言うのはね……」

 

 レミリア達が彼女達2人の元に近づくと、会話の内容が耳に入ってきた。どうやら、ミアの再生能力が異常さについて話していた様だった。

 

「老いることもなく、死ぬ事もなくなる薬を飲んだ人ですか。それだけ聞けば良い事かもしれないけど、わたしだったら精神が壊れそうです」

「ええ、不老不死も良い事ばかりじゃ……」

 

 永琳が次の言葉を言おうとした時、近づいてきていたレミリア達に気がついたらしく、ミアとの話を中断してレミリア達の方に自分から近づいて行った。

 

「何かご用かしら? 魔理沙にレミリア、フランドールに……誰?」

「ヴァーミラ・スカーレット。姉様達の妹だよ、異世界出身で義理だけど」

「成る程。私は八意永琳、永遠亭って所で医者をやっているわ。宜しくね」

 

 案の定、ヴァーミラを見た瞬間にそう聞いてきた永琳。聞かれたヴァーミラは簡単な自己紹介を済ませ、軽く話をした後別れを告げ、改めてバイキングの料理を食べに行く。

 

 幽々子含む全ての人の食べるペースが低下してきている為、料理制作のスピードが料理の消費スピードを上回る事に成功した。これでようやくのんびり料理を食べる事が出来る。やはり、飛竜のステーキやそれを使った野菜炒めが人気の様で、ここだけ行列が結構長い。

 

「飛竜ってそんなに美味しいのか?」

「うん。きっと、美味しいから皆か食いついてるんだよ、魔理沙!」

「だろうなぁ」

 

 そうして行列に並んで、やっと目的の飛竜の料理を手に入れたレミリア達。その肉をゆっくり噛み締めて味わい、満足げな表情を浮かべる彼女達であったが、1人だけフランにたいして微妙な感じの表情を浮かべて見ながら食べていた。

 

「お姉様、どうしたの?」

「……いや、何でもないわ。ただの考え事よ」

「あ、そう? まあ良いや」

 

 レミリアである。その彼女に見られていたフランが不思議に思って聞いてみてもはぐらかされるばかりだったので、まあいいやと諦めたみたいだ。

 

 その後は特に何もなくパーティーは進み、幻想郷の実力者達に顔合わせを済ませ、大盛況の中食糧も底を尽きた為、これにて終了となった。




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救済の祈り

今回は、幻想郷ではなく異世界側の話になっています。


 幻想郷とも、フランが前居た異世界とも違う別の異世界。そこに存在する数ある海沿いの小国の1つは今、とんでもない危機に瀕していた。

 

「……では、どうあっても我が『エンデント王国』王国軍はあの人の心を持たぬ残虐非道な畜生共には勝てぬと申すか」

「残念ながら。彼ら『キーリマイラ魔導連合』の魔導軍は我が方を質と量、共に大幅に上回っています。王国軍も奮戦してはいますが、彼らの圧倒的質や物量に壊滅に近いかと」

「町の非戦闘員である住民達も惨たらしく殺されているか連れ去られているとの報告もございます!」

 

 エンデント王国と言うその小国は、自国を圧倒的に上回る規模の軍事力を誇るキーリマイラ魔導連合と言う複数の国が1つになった国に戦争を仕掛けられていたのだ。

 

 戦況をエンデント王に報告してきた各村や町から派遣されてきた伝令兵士達は一声置き、町の被害報告がまとめられた紙を見ながら内容を読み上げた。それは全員の悲しみと怒りを増大させ、報復をしようとの意見も出たが軍事力の違いから諦めざるを得なかった。行った所で無駄死にするだけであるからだ。

 

「くそ! キーリマイラの畜生共めぇ……」

「アイツら、やりたい放題殺りやがって許さねぇ」

「我が国の民達すら守れぬ、情けない!」

 

 対キーリマイラ魔導軍の会議に出席していたエンデント王国の上層部の人達は、口々に暴言を吐きまくるが出来るのはそれだけである。現実は非情だ。

 

 さて、そんな暴言が飛び交う会議の中でもどうしようかと話し合いが続いていたある時、1人の兵士がこんな提案をし出した。

 

「神様頼み、してみますか? 昔の言い伝えにこんなものかあるのですが」

「取り敢えず言ってくれ。少しでも救いがあるのなら何でもいい」

「分かりました。では言いますね……」

 

 困った時の神頼みをしようと言う提案であった。普段であれば誰もやろうとはしない提案であるが、この非常事態では仕方ないと皆が納得した。

 

「『外界からの侵略者により国が滅亡の危機に晒されし時、指導者一行が慈愛と光の女神【チリテラト】に1日飲み食いせず、眠らずに救いを求めよ。さすれば滅亡から救われるだろう』です」

「成る程……やるしかないか。どちらにせよ、それしか望みが無いのだから」

「1日飲み食いせずと言うのはまだしも、眠らずと言うのは厳しいな」

「まあ、頑張ろうや」

 

 こうして王国の指導者一行は、今から不眠不休で1日神の像があるこの玉座の間で祈りを捧げる事になった。

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 幻想郷ともフランの居た異世界とも違う世界、そこを見守る神界の一角にてとある2人の神がある会話をしていた。

 

「っ! まさか!」

「どうしましたか? チリテラト」

「イーシェン様、実はエンデント王国から『救済の祈り』が届いたの! まさか、こんなにも早く使ってくるなんて、一体何が……」

「確か、それを伝えたのは150年位前でしたっけ? 確かに早いですね」

 

 慈愛と光の女神『チリテラト』と、創造神『イーシェン』である。偶然にも休憩時間が重なった為、一緒に会話をしていた。

 

 更に偶然が起こり、そのタイミングで150年前にエンデント王国に伝えた救済の祈りがチリテラトに届いた。彼女は自身の持っていた『神の石板』と呼ばれるアイテムを使い、何が起きているのかを創造神のイーシェンと共に見た。すると、そこに書かれていたのはキーリマイラ魔導連合の残虐非道な行為の数々だった。

 

「……イーシェン様。今から軽く『裁滅(さいめつ)の光』でキーリマイラ魔導連合を消し飛ばしに行っても良い?」

「申し訳ないですが、下界への神々の直接介入は特別な場合を除いて許可されていないので出来ません。間接的な介入であればある程度許可されますが」

「何でよ!」

「上位神である我々が無闇に下界への介入を行えば、世界がめちゃくちゃになるからです」

「……」

 

 自身を信仰してくれている穏和なエンデント王国の人々、そんな彼らをまるで自分の子のように思っていた彼女が怒るのも無理はなかった。

 

「とにかく、間接的な介入に留めてください。良いですね?」

「……分かったよ、もう!」

 

 そんな神の世界の決まりに腹が立って仕方がなかったチリテラトだったが、創造神に言われてしまえばそれまでである。流石に悪態をつきながらではあるが、彼女は直接介入を諦めて自室に戻り、間接介入の備えに入る。

 

「間接的な介入って言ってもねぇ……一体どうしろと言うの?」

 

 自分の部下である天使を向かわせようと思ったが、大天使クラスでも十分世界に与える影響は大きいので却下、通常天使だと戦力的に不安が残るのでこれも却下となった。そうして悩みに悩んだ結果、彼女がパッと思い付いたのが別世界からの強者召喚だった。

 

 しかし、良く考えて召喚しなければ最悪、その世界の神々の怒りを買って神界を巻き込む大戦争になってしまうのは確実。なので彼女は、それから何日も何十日もどの世界から召喚するか候補を絞り、最終的にある一地域ごと召喚する事に決めた。

 

「『幻想郷』か。その地域がある国を見守る女神様には申し訳ないけど……」

 

 幻想郷である。一地域であるのにも関わらず、妖怪やそれを上回る強さを持つ人間、果ては神々まで集う場所を召喚すればきっとあの国程度であればどうにかなるだろうと考えたのだ。まあ、勝手な事をしてその地域が協力してくれない可能性とか、見守る女神が抗議にやって来たり等、悪い可能性を考えてはいない様ではあるが。

 

 こうして、異世界の慈愛と光の女神チリテラトは、自身が見守る国の1つであるエンデント王国を救うべく、間接的な介入の準備に取りかかった。

 




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主人公解説(スカーレット姉妹達)

程度の能力について、独自の解釈が存在します。


 〈フランドール・スカーレット〉【種族】吸血鬼

【能力】『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』

 

 破壊したい対象の最も脆い部分である『目』を自身の手に移動させ、握りしめる事によってその対象を破壊する事が出来る。

 

 物質であれば何であろうと防御無視で破壊してしまう。対策としては、彼女の手を何らかの手段で封じる・能力無効結界等を張る・彼女の視界に3秒以上入らない等が挙げられる。

 

 

 

【人物解説】

 

 紅魔館に住んでいる吸血鬼『レミリア・スカーレット』の妹。数ヶ月前に、1人で異世界に召喚されると言う出来事に巻き込まれていた。昔と違って狂気は鳴りを潜め、姉との仲も周りが引くレベルで良くなっている。

 性格も割と活発で明るくなっているが、たまに常識の外れた危ない発言をしては皆を驚かせている。

 

 異世界に召喚されていた際の影響で魔法好きになっており、幻想郷でも2冊の魔導書を周囲に浮かせながら日傘を差して出歩く姿がたまに目撃される事がある。

 

 闇属性は全く効かず、火属性に対してもほぼ無効と言う強力な耐性を持つ。

 その反面光属性に対してはかなり弱く、水属性にも若干弱い。それらの属性を扱う敵に対しては慎重に事に当たる必要がある。

 

 状態異常については即死と呪いは効かず、その他の異常にも基本高い耐性がある。しかし、睡眠の状態異常には比較的弱い。

 

 

 

【使用魔法】

 

『浮遊する火』

 

 前異世界の魔導書"フルスペリア"に書かれた、火属性生活系魔法。火力を極限まで抑え、周囲を照らす松明の様に使われる事が多い。

 攻撃にも使えない事はないが、初級魔法以下の威力しかない為オススメはしない。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 〈レミリア・スカーレット〉【種族】吸血鬼

【能力】『運命を操る程度の能力』

 

 現在よりも先に起こりうる出来事を予知し、それを回避したり変えたりする事が可能な『未来予知』と、彼女と出会った者の運命を数奇な物に変えてしまう可能性を上げる能力。

 

 その内、未来予知の方に感じでは戦闘の際に応用する事が可能だが、自身の妖力・魔力を多く使う事になる為、本人は戦闘にはあまり多用はしない。

 

 

 

【人物解説】

 

 幻想郷にある『紅魔館』の主で、『フランドール・スカーレット』の姉。昔は情緒不安定さから来る能力の暴走や狂気を危惧し、なおかつフランを守る為に地下室に閉じ込めていた故に仲が非常に悪かった。

 

 しかし、今では周りが引くレベルで仲が良く、それはフランが異世界召喚に巻き込まれて居なくなった際に寂しさのあまり大幅に弱体化してしまう程。

 

 闇属性は吸収し、風属性や土属性にも強い耐性を持つ。

 その反面光属性と水属性にはかなり弱く、それらの属性を扱う敵に対しては強く警戒する必要がある。

 

 状態異常への耐性はフランと同じである。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 〈ヴァーミラ・スカーレット〉【種族】吸血鬼

【能力】『水(氷)とその状態変化を自由自在に操る程度の能力』

 

 自身の見える範囲に在る全ての水(氷)やその状態変化を意のままに操る事が出来る能力。生物の体内に存在する水にも作用するが、相手の魔力量によって効果が変化する。

 

 どういう訳か、副次的に水属性と氷属性攻撃に対する完全自動防御に加えて、幻想郷に来てからそれらの攻撃に対する回復の力が備わる様になるなど、能力が強化されている。

 

 

 

【人物解説】

 

 紅魔館に住む事になった前異世界出身の吸血鬼で、レミリアとフランの義妹。性格は穏やかで優しく、睡眠を邪魔された時以外に怒る事は殆んどない。

 

 前異世界ではある吸血鬼一家に生まれたが、能力・性質の異質さや一家の吸血鬼とは全く違う性格等の要素が重なってしまい、捨てられてしまった経歴を持っている。

 

 幻想郷に来てからは霧の湖の妖精達、特に氷の妖精であるチルノと仲良くなり、良く遊びに行ったりしている

 

 闇属性は効かず、能力の副次効果強化によって体力・魔力・妖力が半分以下に減少時は水属性と氷属性攻撃を吸収して回復、それ以上の時は完全自動防御する。

 その反面火属性や雷属性に対して異常に弱く、光属性にもかなり弱い。これらの属性攻撃を得意とする敵とは例え地力の差があったとしても戦闘は避けた方が無難である。

 

 状態異常耐性はほぼフラン達と同じであるが、睡眠には多少強く、氷結は効かない。

 

 




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第1章 異変の始まり編
混乱する人々


 紅魔館の顔合わせパーティーが開かれてから1ヶ月経ったある日、レミリアとフランは仲良く2人で日傘を差し、人里を気の赴くままに歩いていた。

 

「最近お姉様とか美鈴がさ、良く私と遊んでくれるから嬉しいなぁ。でも、どうして急に遊んでくれる回数を増やしてくれたの?」

「だって、私の大好きだった妹が突然半年近くも居なくなったのよ? 冗談抜きで寂しくて死にそうだったんだから。美鈴だって貴女の事、ずっと気にかけてくれてたし」

「大好きって……お姉様、ありがとう! 私もお姉様の事、大好きだよ!」

 

 非常に仲の良い姉妹が楽しそうに喋りながら散歩している微笑ましいその光景に、周りの人間達の視線が思わず彼女達に向く。紅魔館の吸血鬼姉妹である上、人里にあまり2人同時で姿を見せる事が無いと言うのも物珍しさで見られる原因になっている様だった。

 

 しかし、そんな視線など知らんとばかりに楽しく会話を続けるレミリアとフラン。と言うよりは、お互いとの会話に夢中になっていて周りの視線に気づかないだけの様だが。

 

 そんな感じで会話をしながらとある八百屋兼食器店の前を通り過ぎようとした時に、店主のおじさんが2人に声をかけてきた。

 

「おーい! あんたら、紅魔の所の姉妹だろ?」

「そうだけど、何か用事かしら?」

「用事って言うか……1ヶ月前にあんたの所のメイドがうちで作ったり仕入れたりした、食材やら食器やらを大量買いしてくれたお陰で借金がゼロになったそのお礼がしたくて呼び止めただけだが、迷惑だったか?」

「いえ、別に迷惑とは思ってないわ」

「私も同じく。て言うか、お礼を迷惑がる人なんて居るの? どうでもいい話とかだったら解るけどさ」

 

 どうやら、1ヶ月前に開かれたパーティーに使われた大量の食器や食材はこの店の店主が作ったり、どこからか仕入れたりしたものだと言う。

 

 ただ、作りすぎた上に売れなかった為か借金があったらしく、どうしようかと迷っていた所にタイミング良く咲夜が来て大量買いをしたお陰で、何とか立ち直れたらしい。だからたまたまレミリアやフランを見かけた際に、お礼をしようと咄嗟に思い付いたとの事。

 

「そうか、ならこれを受け取ってくれ。紅魔のお嬢様方にとっちゃあ大した物じゃないかもしれないが……」

「これは……凄いわね。この首飾りの宝石、私が持った瞬間に色が紫になったわよ」

「ねえねえ! お姉様が持つと紫色で、私が持つと緋色になるのは何で!?」

「済まんが、聞かれても分からん。たまたま手に入れたんだが、何せ俺が試しに首に掛けてみても変わらなかった上に、どう見ても男の俺が掛けるようなデザインじゃねぇと思ってな」

 

 そうしてレミリアが受け取ったのは、持つ人によって色が変わり、誰も持っていない時は向こう側が見える位の透明度を誇る不思議な宝石のついた首飾りだった。魔力を全く感じない店主のおじさんが持っても何も起こらない事から、持ち主の魔力を吸って光るのだろうと2人は判断した。

 

 デザインも店主の言う通り、男向きと言う感じではなさそうだった。どちらかと言えばレミリアやフランみたいな、特に西洋系の少女が付ける様な首飾りだろうか。

 

「本当に良いの? 誰かに売ったりすればおじさんの生活、もっと楽になるのに……」

「確かにそうかもしれねぇが、もう良いんだ。と言うか、ぶっちゃけここじゃあそんなに沢山金を持っててもしょうがないだろ?」

「ああ、なるほど」

 

 店主とのやり取りの後、レミリアは貰った首飾りをフランに付けると、首飾りは先ほどよりも強く緋色に輝き始めた。と言っても、眩しいほど輝いてはいないが。

 

「うん。似合ってると思うわよ、フラン」

「そうかな?」

「俺なんかがつけるよりも、遥かに良い画になってるな。まあ当たり前か」

 

 そうして何分か話してから、店主と別れて人里の有名な甘味所に

 向かって和菓子を食べようと思い立ったその時、割れ物にヒビが入ったかの様な音が辺りに響いた。

 

 今現在人里に居たあらゆる人々は、今の謎の現象によって響いた音を不思議に思っていた。自分の荷物を確認している人、家の中に戻って様子を確認している人も中には何人か見かけたりもしていた。

 

 すると、最初に例の音が聞こえてから30秒で再び例の音が辺りに響き渡り、それと同時に辺りに霧が出始めると言う謎の現象も発生し始めた。ここまで妙な現象が続くと流石に何か不味い事でも起きるかもしれないと思い、慌てて家の中や店内に避難する人達も出始めた。

 

「お姉様! これって何かの異変なんじゃないの!?」

「そうでしょうね。しかし、これは厄介な霧よ。何せ目の前に居るフランや店主ですら見えづらいもの。妙な力も感じるし、この現象を引き起こした者は相当強力な存在である事は間違いないわ。多分」

 

 レミリアやフランはこの現象に驚きはするものの、すぐに冷静になって分析し、この現象は何者かによって引き起こされた異変だと判断した。ただ、この状況を解決する為の手段は持たない為、無闇に動かずこの場で待機する選択をした。

 

 しばらく待っていると、今までで1番大きな例の音が響き渡ると同時に眩い光が空間を覆い尽くし、地面が一瞬大きく揺れる。まさか揺れるとは思わなかった2人は、目を腕で覆って光を防いでいた事もあって踏ん張る事が出来ず、手を使えなかった為に仲良く一緒に顔から転んでしまうが、怪我はなかった。

 

 更に時間が経ち、もう良いだろうと思って目を開けてみると光は収まり、辺りを覆っていた霧が綺麗に消え去っていた。それだけなら良かったが、思わず2人が固まってしまう程驚く現象が起こっていた。

 

「えっと……お姉様? さっきまで昼だったよね? 私には今、夜になっている様に見えるんだけど……」

「私もよ、フラン。それに、月が1つ増えてるわ。大きさも少し大きい様な……」

「あ、本当だ! どうして? これも異変の一部かな?」

 

 妙な現象が起こる前は昼だったのに、起こった後は夜になっていたと言う超常現象だった。レミリアやフランは元々夜に行動する種族である為、暗闇でも問題ない。しかし、人里の人間達は突然暗闇になってしまったが故に、何も見えずに誰かとぶつかったりパニックになったり等の被害が出始めてしまう。

 

「えっと……あった! 『浮遊する火』」

 

 それを見たフランは、持っていた魔導書の生活系魔法の欄に乗っていた、『火力を極限まで抑え、その分の魔力を光に回して辺りを照らす』と言う魔法を使用して大量の火の球をばらまいた。ただ、極限まで抑えられていたとしても所詮『火』である為、触れれば火傷するし、非常に燃えやすい物であれば燃える事もある。なのでフランは、建物がない上空にまで調整して浮かばせた。

 

「ねえ! 今なら早く帰れるでしょ?」

「お、済まねえな。ありがとうよ!」

 

 そうして、見渡す限りの人が家の中に入った所で魔法を解除したフランは、レミリアと共に紅魔館へと飛んで帰っていった。

 

 




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実力者達の話し合い

「お嬢様に妹様! ご無事でしたか!?」

「ええ、私もフランも大丈夫。無事よ」

「美鈴、心配してくれてありがとうね!」

 

 あの数々の妙な現象が起こり、人里歩きを楽しむ所ではなくなったレミリアとフランは紅魔館へと戻り、滅多に使わない会議室に全員で集まっていた。彼女達が幻想郷に来て以来、周囲に最も混乱をもらたした『異変』である為だ。

 

 まず、周囲が夜になった事によって野良を含む妖怪達が急激に活動を開始、その際に何故か紅魔館に野良妖怪が襲来すると言う事態が発生したらしい。しかも、美鈴曰く襲撃してきた野良妖怪は普段よりも強化された状態だったらしいが、自分も普段より力が漲る様な感じがした為、特に問題なかったとの事。

 

 次に、大きな地揺れによって館の内部が散らかり放題になってしまった。それによって最も被害を受けたのは調理場で、仕込みを終えたスープやら割れた皿やらが散乱してしまい、今夜の食事が出せなくなったらしい。まあ、館自身にダメージがなかっただけ良かったと言えば良かっただろうが。

 

「とは言え、紅魔館が受けた被害は軽微です。今夜中に解決するレベルなので問題はないでしょう。しかし、調理場のスープ鍋の置場所は反省しなければ……」

「まあまあ、その程度で済んで良かったじゃない。次から気をつけてやれば良いだけだし」

「はい。お嬢様」

 

 地下の図書館はパチュリーの魔法で保護されていた為無傷、フランの寝ている地下室は元々彼女が弾幕出して暴れても耐えるレベルで頑丈な為、同じく無傷だった様だ。

 

「これ以外に報告は無い?」

「今の所はありません。しかし、いきなり妙な音が聞こえたと思ったら霧が辺りを覆い尽くして、更に眩い光と地揺れが起こり、収まったと思ったら昼間から夜に時間が進んでいたなんて、驚きました」

「本当、衝撃的でしたよね咲夜さん」

「私は図書館に居たから、妙な音と地揺れしか経験していないけど、まさかそんな事が起こっていたとはね」

 

 そんな感じで紅魔館の面々は話し合いを続けるものの、いくら彼女達とは言え幻想郷全体で起こっているであろう異変を、一気にどうこう出来るだけの力は持っていない。自分達だけで動いた所で、大した事も出来ずに空回りするのがオチだろう。彼女達もそう考えている様で、取り敢えず普段通りで良いと話し合いをした結果、その結論に達した。

 

「さて、私は妖精メイドと共に館の片付けをしてきますので、お嬢様方はごゆっくりお過ごし下さい。あ、美鈴はまだ門番ね」

「ですよね~」

 

 こうして、咲夜と美鈴はそれぞれの仕事へと戻った。それ以外のレミリア・フラン・パチュリーの3人は会議室にて少しのんびりした後、各々のいつも居る場所へと戻っていった。

 

 ただ、フランだけは気が向いた様で地下室に戻らず、美鈴と一緒に話ながら終わるまで門番を勤めた。その時に強化されたらしい命知らずの野良妖怪が再び襲来してきたが、フランの放った前異世界の魔導書『フルスペリア』に書かれた『フレアボール』と言う火属性初級魔法2発によって灰にされてしまった。

 

「いやぁ、凄いですね~。そう言えば妹様、異世界から戻られてから良く魔法を使うようになりましたよね」

「まあね。向こうに行ってた時にこの魔導書を貰ったんだけど、これが思いの外面白くて、そこから魔法の面白さにハマって、今はパチュリーから貸してもらってる魔導書『グラディマナ』って言う魔導書に書かれ何処か別の異世界の魔法も練習し始めてるんだ~」

「成る程。それだけ熱心にやっていれば、その内パチュリー様を超える魔法使いになりそうですね、妹様」

「う~ん。パチュリーは寝なくても大丈夫だし、その間魔法の研究とかずっとしてそうだからなぁ。無理だと思う」

 

 その様な会話をしつつ美鈴の仕事の終了時間が来るまで門番の仕事を共にした後、フランは地下室へと戻って行って眠りについた。

 

 

 そして翌日の昼間、日の光がまんべんなく幻想郷を照りつけている非常に良い天気で雲ひとつ無いとある日、フランはレミリアに起こされた。心なしか、多少急いでいる様にも見える。

 

「お姉様……? どうしたの」

「たった今霊夢が来て、幻想郷を揺るがすとんでもない大異変が起きて、対策を協議する為に実力者を出来る限り集めてるからって、私達も来て欲しいらしいのよ」

「へぇ~。て言うか、幻想郷を揺るがす大異変って何なの?」

「それは聞いたんだけど、博麗神社についてから話すって言ってたわ」

「なるほど。じゃあ行こう」

 

 レミリア曰く、霊夢が珍しく火急の件があると焦った感じで紅魔館に来たらしい。普段、焦る事の殆んど無い霊夢が焦っているとだけあって、『幻想郷を揺るがす大異変』は確実に悪い影響を与えている事が分かる。

 

 なのでレミリアとしても断る理由など無いし、むしろ自分から参加しても良い位だと言う理由で参加する事を決めたようだ。フランや他の紅魔館の面々も同様である。

 

 そうして、寝間着だったフランはいつもの服装に着替え、2冊の魔導書を持ってレミリア達と共に霊夢の待つ博麗神社へと向かった。

 

「来たわね、レミリア」

「ええ。霊夢が珍しく焦っているんだもの、断る理由なんてないわよ」

「本当、これは流石の私でも焦らざるを得ない事態ね。紫も相当焦っている様だし」

「あのスキマ妖怪がね……一体何があったのかしら?」

「ちょうど早苗達も来たみたいだし、それは今から説明するわ」

 

 すると霊夢は、深刻そうな顔をしてこう言った。

 

「博麗大結界が……大幅に弱体化したわ。実質消滅したと言えるでしょうね」

 

 その瞬間、事態の深刻さを理解した実力者達の中にどよめきが起こった。

 

「おいおい、冗談は止してくれよ……と言いたい所だが、霊夢がそんな質の悪い冗談を言うとも思えないから、本当なのだろうが」

「まさか、そんな事が……となると、外の世界で力を失いかけた妖怪や神々等は消滅するかもしれないと。そう言う事なんでしょうか? 霊夢さん」

「今の所そう言う事態は起きてないから大丈夫よ。今の所は、だけどね」

「そうですか」

 

 その中でも、守矢神社の風祝(かぜはふり)東風谷早苗が先に霊夢に対して問い掛ける。彼女は元々外の世界の出身であり、幻想郷に来た経緯が経緯なので、心配になったが故にこう言った。それに対して霊夢はまだ大丈夫だと言い、不安がっている早苗を安心させる。

 

「話の途中で申し訳ないけど、うちには早速影響が出てるとしか思えない出来事が起きているわ。一応報告をと思って……」

「そうなの? 幽々子」

 

 霊夢と早苗が話し合いをしていると、そこに幽々子が話に割り込んできた。どうやら、彼女と妖夢の住む白玉楼で今回の大異変に起因する影響としか思えない出来事が起こっているらしい。

 

 幽々子曰くこの異変が起きてから少し経った時、普段では絶対にあり得ないほどの幽霊が白玉楼に現れ始めたらしい。その中には非常に攻撃的な怨霊も多数混じっていた為、対処が忙しくなり始めたと言う。

 

「今は何とか落ち着いてきたからここに来れたけど、今後も続く様だと参るわね……本当にあの時はご苦労様。妖夢」

「いえ、滅相もありません! 私は幽々子様の護衛でもありますから」

 

 彼女の話を聞き、さてどうしたものかと霊夢が頭を悩ませていると目の前に突然、八雲紫が空間の裂け目から現れた。

 

「ふぅ……全く、何処の誰なのかしら! こんな手の込んだ事をするのは」

「紫? 何か分かった事でもあるの?」

「ええ、結論から先に言うわ。今回の大異変、幻想郷全体が何者かによって異世界に飛ばされた事によるものよ。博麗大結界の大幅弱体化も含めてね。ただ、残念ながら犯人はまだ掴めていないのよね」

「異変……ね。やっぱりそうだったと」

 

 そうして彼女が伝えたのは、この大異変が自然的な物ではなく、何者かによる人為的な行動によって引き起こされた物だと言う事だった。

 




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不穏な空気の博麗神社

「そうなの? 紫」

「ええ。さっきも言った通りたけど、正確な犯人の名前や種族はまだ分からないわ。ただ、結界を詳しく調べてみた所、最低でも私と同等の存在が関わっていると思うのよ。最高で上位の神って所かしらね」

「成る程な。まあ結界云々はともかく、幻想郷ごと異世界転移なんて大層な事は紫でも出来ないだろうから、上位の神って説を私は推すぜ。それで、大幅弱体化したって言う結界は修復するんだろう? 後、幻想郷は元居た世界に戻れるのか?」

 

 紫の、結界大幅弱体化も含めたこの大異変は何者かによる人為的な物であるとの発表は、喧騒に包まれた神社に一瞬で静寂をもたらした。幻想郷ごと異世界へ飛ばし、妖怪の賢者や博麗の巫女が管理する博麗大結界を、実質消滅させると言う大それた現象を引き起こせる存在が何処かに居ると分かって驚いたのだろう。

 

 その静寂を破ってレミリアが紫に訪ね、その後魔理沙が幻想郷は元居た世界に戻る事が可能なのかと言う質問を投げ掛ける。魔理沙にそう聞かれた紫は、きっぱりと()()()()()()()()()()()()()()()()()事を伝える。

 

「今回の大異変の犯人は用意周到にこれを計画していたらしく、どうあがいても幻想郷を元に戻す事は出来なかったわ。結界の方は応急処置として体をなす位にまでは修復したけど、それ以上は強力な術式で妨害を受けているからやはり無理ね。私にはどうする事も出来ないわ」

「う~む……成る程な」

 

 妖怪の賢者である彼女からの言葉を聞き、改めて事態の深刻さを認識する魔理沙。

 

「ええ。それに、今の幻想郷が居るのは周りを海に囲まれた、妙な生物……魔物と呼びましょうか。それが沢山存在する無人島よ。おまけに目と鼻の先に人が住んでいる町があるのだけど、どうもその町、きな臭いのよね」

「きな臭い?」

 

 紫曰く、その町があるエンデント王国は強大な魔導連合国家であるキーリマイラとの戦争で負け続け、領土が猛烈な勢いで減り続けていると言う。このままの勢いで侵略されてしまえば、1週間もしない内に幻想郷の目と鼻の先の町まで来てしまうかもしれないとの事。

 

 しかも、紫が町の地図を貰って見てみたら何と、この無人島は見事な程エンデント王国領土に入っていたらしい。要するに結界が大幅弱体化した幻想郷に、キーリマイラ魔導連合軍が侵略しにやって来る可能性が大きいと言う事である。

 

「おまけにその侵略国家の軍団、征服した場所の無抵抗の民を弄んだ挙げ句に殺したり、強盗・奴隷・誘拐等も平気でやるらしいわ……」

「成る程。畜生の集まりと言う訳ね」

「そうよ。だからもしここにそう言う奴らが来てしまい、噂通りの奴らだったら……慈悲は要らないから、能力込みの本気を出して徹底的に排除してちょうだい。幻想郷から逃げたら追わないで。他の皆も、それでお願いしますわ」

「「「了解!!」」」

 

 更にキーリマイラ魔導連合軍の畜生ぶりに加え、幻想郷襲来の確率が極めて高い事が判明した。あくまでも『遊び』である弾幕ごっこでは洒落にならない程の死者が出てしまう可能性が大きい為、各自能力込みの本気を出して無慈悲に排除する様にと、紫がそう指令を出した。

 

 その後は各自対策を話し合い、大まかな結論が出た所でそれぞれの神社や館等に帰って行った。

 

「美鈴、帰ってきたわよ」

「ただいま! 美鈴」

「お嬢様と妹様、お帰りなさい。長かったですね、どうでしたか? 正直霊夢さんの焦り具合からして、ろくでもない事だったのでしょうが」

「ええ、正にその通りよ。実はね……」

 

 そうして紅魔館に帰って来たレミリアとフランは、美鈴に出掛けて帰って来た時のいつもの挨拶をして、実力者達の集まりで得た情報を話した。案の定、他の実力者達と同様の反応を美鈴は見せる事となった。

 

「とんでもない事になりましたね……本当に畜生じゃないですか、そのキーリマイラ魔導連合は。紫さんが排除を命じるのも納得ですね……分かりました。それらしき存在が現れて攻撃され次第、排除します」

「ええ、よろしく頼むわね」

 

 門を通り抜け、出会った咲夜にも美鈴の時と同様の説明をしたレミリアとフラン。普段は冷静な彼女もこの時ばかりは衝撃を受け、顔が歪む。

 

「成る程、霊夢が珍しく焦っていたから不味い事態にはなっているのだろうと思っていましたが、まさかその様な大異変が起こっているとは……」

「と言う訳だからよろしく、咲夜」

「分かりました。キーリマイラ魔導連合らしき者が館に侵入しようものなら、即座に排除致します……あ、少しお待ち下さい」

 

 すると、咲夜は能力を使って2人の目の前から消える。一体どうしたのだろうかと不思議に思いながら待っていると、すぐに2人の目の前に現れた。その手には筒状に丸められた2枚の紙を持っている。

 

「すみません、お待たせ致しました」

「咲夜、それなに?」

「これですか? 実はですね……」

 

 咲夜曰く、ヴァーミラが3週間という長い時間をかけて書いた、2人の為の似顔絵の紙だとの事。何時だか撮ってもらった時の写真を見ながら必死に作業を続け、ついさっき完成したばかりらしい。

 

 本人曰く、絵は今から200年前から暇潰し程度に嗜んでいただけとの事だが、2人はそれを見て驚いた。何故なら、どう見ても嗜む程度とは思えない上手さであったからだ。まあ、200年と言う途方もない時間努力を掛けている事も影響しているのだろう。

 

「成る程……道理で最近あまり見かけなかった訳ね。それにしても、本当にミラは絵が上手いわ。まさかこんな特技を隠し持っていたとはね」

「うん。私も知らなかったなぁ~」

 

 ヴァーミラと異世界で冒険していたフランですら、彼女の趣味に絵を描く事があるのを知らなかった。ただ、その時は冒険がメインだったし、3週間ゆっくり絵を描く暇も道具もなかったから知らないのも無理はなかった。

 

 そして、彼女の書いた似顔絵を咲夜から受け取った2人。わざわざ自分達の為に貴重な時間を割いてまで、理由はどうであれ書いてくれた彼女に心の中で感謝した。

 

「さて、今日は何か疲れたから……フラン、一緒に私の部屋で寝ましょう。もしかして、嫌かしら?」

「ううん、そんな事無いよ。お姉様! 早く!」

 

 こうして、夕食はお腹もあまり空いていない事もあって食べず、フランと一緒にレミリアが手を繋ぎながら彼女の自室へと向かい、ベッドに寝転がるとそのままの格好で眠りについた。

 




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招かれざる客

「ふぁぁ……」

 

 次の日の早朝、いつもはほぼ同時に目が覚めるのだけど、珍しくレミリアはフランよりも先に目が覚めた。時間が時間である為人が殆んど居ないこの時間帯、1人で起きていても暇で仕方ないと思った彼女は再び寝ようとしたが、完全に目が冴えてしまったのか、全く眠る事が出来ずにいる様だ。

 

 なので、レミリアは皆が起きるまでの暇を紛らわす為に、隣ですやすや寝ているフランの寝顔を見ながら考え事をする事にした。

 

「相変わらず可愛い寝顔ね……ちょっとくらい、触れても良いわよね」

 

 思わずそんな事を口に出す。フランが前異世界に召喚され、戻って来てから余計にそう思う様になってきていたレミリアが、彼女が寝ているのを良い事にそっと頭を撫でた時、心なしかフランが笑った様に見えた。

 

 寝ている所を起こしてしまった様に見えて焦ったレミリアだったが、寝息を立てている所を見てそうではなかったと分かり、ホッとした彼女であったが……

 

「お姉様ぁ……えへへ~」

「ちょっとフラン、起きてたの?」

 

 突然フランがそう言ったかと思うと、隣で寝ていたレミリアに対して抱き付いてきた。これには彼女も少し驚いて、起きているのかとフランに問い掛けるが反応がない。恐らく彼女に関連した何らかの夢を見ていて、現実でも身体が動いてしまったと言う事だろう。

 

「凄い力……離れるのは無理そうね」

 

 普通の人間であれば、骨が砕けて死んでしまうレベルの力でレミリアに抱き付いて離れないフラン。同族の吸血鬼である為無理やり引き離す事も出来なくもないが、彼女が幸せそうな顔をして寝ている上、自分もフランに抱きしめられて幸せを感じている。別に引き離す必要など無いのだ。

 

「一体どんな夢を見ているのかしらね、フラン」

 

 そんな事を囁きながら考え事をしていると、フランの身体の暖かさも相まって眠気を再び感じるようになったレミリア。なので、自身もフランを抱き返してそのまま再び眠りについた。

 

 

 次にレミリアの目が覚めたのは昼間だった。目が覚めたと言うよりは、申し訳なさそうにしている咲夜に起こされたのだが。

 

「お嬢様、妹様。幸せそうにして寝ている所大変申し訳ありません。実はご報告がありまして……罰を与えると言うのなら後で受けますので、まずはお聞きください」

「別に罰なんて与えるつもりなんて無いわよ。貴女がわざわざ私とフランを起こすって事は何か重要な事が起きたのでしょう?」

「ありがとうございます、お嬢様。では美鈴、パチュリー様、どうぞ」

 

 そう言うと、咲夜が美鈴とパチュリーの名前を呼んだ。すると、中に1人の箒と杖を持った魔女のイメージそのままの、推定10代の少女が美鈴によって縛られた状態で入ってきた。ご丁寧にパチュリーも後ろに控えている所を見ると、相当厄介な魔女の侵入者だったのだろうか。

 

「咲夜、一体何があったの? そいつ、侵入者?」

「はい。今朝方美鈴が館上空を箒に乗って飛ぶ3人を発見して監視していた所、館に侵入しようとした為捕らえたとの事です。しかし、妙な魔法らしき力を使われて2人には逃げられてしまいました。1人ば図書館に迷い込んだ際にパチュリー様に捕らえて頂きましたが……申し訳ありません」

「過ぎた事なのだから気にしないで。1人捕らえられただけでも十分よ……さて」

 

 すると、レミリアは侵入者の少女をじっと見据え、ゆっくり歩いて近づく。その様子はまるで、獲物を見つけた肉食動物が獲物を狩ろうとしているかの様に見えた。捕らえられた少女は何らかの魔法を唱えようとするも、縛られている状態では満足に魔法を出す事など不可能である。当然、不発に終わった。

 

「なぜ、館に侵入しようとしたのかしら? 一応言っておくけど、私と後ろに居る子は吸血鬼よ。事と次第によっては……後は分かるわね?」

「……こんな仕事受けなきゃ良かった。もちろん、捕まったからには全てを話しますよ。死にたくないので」

 

 すると、その捕らえられた少女はレミリア達に対して全てを話し始めた。どうやら、彼女は紫が言っていたキーリマイラ魔導連合軍に所属する、偵察魔女部隊の『カーレ』と言うらしい。ここに来た訳は、港町に潜んでいたスパイから『突然現れたデカい島を調査してくれ』と指令が下り、その過程で強力な魔力の波動を感じ取ったからとの事。

 

「幻想郷に来たのは3人だけ?」

「いえ、私を含めて10人は居た筈です。何処に居るかは知りませんが、貴女達のような猛者に捕まらなければ――」

「お姉様、そう言えばキーリマイラ魔導連合の奴らって全員壊さなきゃいけないんじゃなかったっけ? 私がやる?」

「え……?」

 

 その後、カーレとレミリアが話をしている途中にフランが割り込んで来て、キーリマイラ魔導連合の奴らなら殺さなきゃいけないのではないかと、そうであれば私がやろうかと、レミリアにそう問い掛ける。

 

 突然のフランの発言により、カーレの身体が凍りつく。死にたくないから情報を全部公開したのに、ここへ来て殺されてしまうかもしれない可能性が出てきたからだ。

 

「確かにそうよ。でも、それは攻撃を1度でもされてからの話であって、まだカーレはここに侵入してきただけ。壊してはいけないわ」

「はーい!」

 

 しかし、レミリアによって死ぬ事はないと確約された為、その可能性は潰えた。カーレは小声で『あの時魔法が不発で良かった!』と、自分の幸運に感謝をした。

 

「とは言え、どうしようかしらね……」

「じゃあさ、霊夢の所に連れていけば良いんじゃない? 紫は何処に居るんだか分からないから却下で」

「まあ、そうね。じゃあ行きましょうか。咲夜、ちょっと出掛けてくるわね」

 

 そうして、捕まえたカーレの処遇をどうするか聞く為に、レミリアとフランの2人とカーレは、博麗神社へと向かっていった。

 

「あ、フラン姉様にレミリア姉様~!」

「ヴァーミラ? どうしたの……ってその女の子は?」

「えっとね、この女の子が箒に乗って空を飛んでたんだけど、その時にチルノと激突しそうになったから私が庇ったの。それで落っこちて気絶したから、今ミアに治してもらおうと思って……」

 

 道中、カーレと似たような背格好をした女の子を背負ったヴァーミラとチルノの2人に出会った。話を聞いてみるとどうやら、箒に乗って飛んでいた女の子とチルノが激突しそうになった為、ヴァーミラが魔力を纏って代わりに激突し、そうして落っこちた彼女を念の為にミアの元に連れていく所らしい。

 

「ちょっと宜しいですか? その娘の治療、私がやります」

「カーレ、回復魔法使えるの?」

「いえ、回復薬学です」

 

 すると、カーレがポーチからほんのり緑に輝く液体の入った瓶を取り出し、その中の液体を気絶していた女の子の口に入れた。更に傷口には濃い緑に輝く液体を豪快にかける。すると、吸血鬼の再生能力と同等の速度で傷口が再生し始め、あまり待たない内に完治した。この効力は、ほぼ魔法と言っても過言ではないだろう。

 

「これでもう大丈夫、直に目を覚ますでしょう。それに、その娘もキーリマイラ魔導連合の偵察魔女部隊所属ですし、一応霊夢って人の所に連れて行った方が良いのではないでしょうか?」

「そうね……ミラ、チルノ。一緒に来てくれるかしら?」

「良いよ、姉様」

「あたいも、ミラが構わないなら構わないぞ!」

 

 こうしてレミリア達は魔女2人を連れ、霊夢の元へと向かっていった。

 

 

 

 

 




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神社でのやり取り

「成る程ね……この娘達がキーリマイラの関係者と名乗った訳か。お手柄よ、レミリア」

「まあ、捕まえたのは私じゃないんだけどね。で、その捕まえた彼女からはまだ『攻撃』はされてないからどうしようかと思って迷った結果、ここに連れて来る事に決めたの。それで、処遇をどうするか言ってくれないかしら?」

「分かったわ。でもその前に、一応聞いておくけど金髪のあんたとミラの抱えてる娘、名前は何て言うの?」

 

 博麗神社に到着した後境内の掃き掃除をしていた霊夢に声をかけ、キーリマイラ魔導連合の関係者であるカーレと、もう1人の女の子の処遇をどうするかを聞いたレミリア達。すると、声をかけられた霊夢は掃除の手を止めて縁側に腰かけ、全員を招いて魔女である2人の自己紹介を求めた。

 

「私は、カーレ。偵察魔女部隊所属で、薬師を副業としてやってます。こっちの青い髪の娘はユキと言って、同じく偵察魔女部隊所属ですね。訳あって気絶していますので、彼女自身の口から自己紹介出来ない事をお許し下さい」

「許すも何も、怒ってなんかないわよ。それにしてもあんた、聞いていたキーリマイラの奴らとは真反対の性格してるじゃないの」

 

 幻想郷の人間の中では最強と言われ、数々の異変で妖怪や神等とも渡り合ってきた霊夢。そんな彼女の底知れぬ何かに気圧されつつも、何とか機嫌を悪くしないように言葉を紡いでいくカーレ。

 

 その甲斐あって、良い感じで話が出来ている様だった。話の過程でカーレと、ヴァーミラの連れてきた青い髪のユキと言う少女は殺されない事が決まり、彼女はほっと胸を撫で下ろした。

 

「ただし、幻想郷に居る事が条件になるわ。色々情報を持ち帰られる訳には行かないからね」

「まあ、当然ですね。私的には死ななければ何でも良いですので、その条件を飲みましょう。これでようやく、軍から抜けられてむしろ私が感謝する位です」

 

 霊夢から出された1つの条件も飲み、幻想郷に住む事になったカーレとユキの2人であったが、ここで住む場所はどうするのかと言う、大きな問題に直面した。神社で良いのではないかとレミリアが言ったものの霊夢曰く、生活費の関係上無理との事なので却下された。

 

「だから……レミリア、紅魔館はどうなの?」

「私的には2人位なら増えても問題ないわ。部屋数はまだ余裕があるし、生活費とかはレイゼが人里とかで工面してくれてるから……まあ、正直言って館に侵入しようとした輩を正式に入れるのは気乗りしないけどね」

「私は霊夢さんの指示に従うまでです。野宿しろと言われればしますし、吸血鬼の館に行けと言われれば行きます……と言いたい所ですが、ユキがまだ起きないので何とも――」

 

 カーレが更に言葉を発そうとしたその時、気絶していたユキと呼ばれている少女が目を覚ました。回復ポーションのお陰か、怪我の後遺症等もなく手足を動かす事が出来ている様だ。

 

「……生きている、私は今生きているーー!!」

「えっと……どうですか、ユキ。怪我の具合は?」

「あ、カーレ様! 怪我なら大丈夫! 箒はどっかいったけど!」

「なら良かったですが……ユキ。この状況、理解出来ますか?」

「……ここの住民に捕まったのかな?」

「貴女の場合は少し違いますが……大体そんな所です。流石、理解が早くて助かりますよ」

 

 それに、問い掛けに対してもやかましい位の声で返事をしている所から見て、痛み等も完全に消え失せている様だった。

 

 今のこの状況もほぼ理解しているらしく、ユキはこの場から逃げ出したり攻撃をしたりはせずに、カーレと共に大人しく座ったままでいた。

 

「あ、そうそう。貴女が気絶している間の話し合いの結果、吸血鬼の館で暮らす事になりましたので」

「へ……嘘ぉ? と言うか、何故カーレ様はそんなに落ち着いていられるの……?」

 

 その際、レミリア達の暮らす紅魔館で暮らす事になった事実を伝えられると、ユキは人生の終わりが訪れたかの様にして絶望した。

 

 彼女の頭の中、と言うよりキーリマイラ魔導連合に住む人達の中では吸血鬼と言ったらおぞましい化け物で、聖職者でもない限りは出会えば()()()()()()()()()()()()と教えられてきている。

 姿を表す絵は実際よりもおぞましく、文献にはあることないこと書かれている上、純粋な吸血鬼と言う種族が非常に少ない事も相まって、絵や文献の内容はほぼ全て信じられている。

 

 ユキの反応もその絵や文献、噂などの内容を信じているが故の物である。それに、自分もそう教えられている筈なのに、何故か比較的落ち着いていられるカーレにも驚いていた。

 

「私はその文献の内容に半信半疑でしたので。それに、出会った3人の吸血鬼は文献や絵とは大違いですし。試しに見てみて下さい」

「……本当だ。感じる圧力は文献通りかそれ以上だけど、私よりも小さな少女の吸血鬼なんて……!?」

 

 レミリアやヴァーミラを見たユキは、文献とは大違いの姿や行動に拍子抜けする。しかし、最後にフランを見た時に言葉を詰まらせ、思わずこの場から逃走しようとした。

 

「カーレ様……あの娘だけは駄目! 化け物……!」

「ユキ、それってどう言う事なのですか? 確かに吸血鬼ですけど――」

「違うの。あの娘の中に居るもう1人のあの娘が怖いの! 今は眠っているけど、もし目覚めたら……文献に書かれてる通りの事が起こるかもしれないよ……」

「落ち着いて下さい。まず……」

 

 ユキのあまりの怯え様を見て、この場に居る全員が衝撃を隠せないと同時に、紅魔館に住むのは無理だろうと全員が思った。

 

「と言う訳で霊夢、こんな様じゃ紅魔館では無理そうよ」

 

 レミリアが霊夢に対してそう言った後、急に妖力と魔力を解放しながら再び言葉を発した。突然の事に、その場に居るフランとヴァーミラ以外の人は身構える。

 

「それに私としても、わざわざフランを苦しめてまでねぇ、出会って高が1時間程度の幻想郷の住民ですらない2人に対して気を使わせるなんて事は絶対にさせたくないから……化け物呼ばわりしたから余計にね!」

「……分かったから、ひとまず落ち着きなさい! レミリア!」

 

 ユキが、フランの『秘められた狂気』に対して怖がっているのはレミリアには分かっていたし、その気持ちも分かっていた。自分だって過去の事もあり、未だにフランの狂気には恐怖を抱いて居たからだ。

 

 ただ、それを差し引いても有り余る程愛しているフランを化け物呼ばわりするユキをどうしても許せなかったレミリア。思わず戦闘時と同様の力を解放してしまい、周囲を騒がせてしまうが……

 

「お姉様……私の為にありがとう。もう大丈夫だから、早く帰って一緒に遊ぼ!」

「……うん、ごめんね。フラン」

「そう! お姉様はやっぱり笑顔じゃないとね!」

 

 フランがレミリアにそう声を掛けた事によって落ち着き、大乱戦の弾幕ごっこと化してしまうのは阻止された。

 

「ねえ霊夢、この2人一旦よろしく頼める?」

「まあ、こうなったらしょうがないし……良いわよ」

「ありがとう! じゃあヴァーミラにチルノ、お姉様……館に帰ろう!」

 

 そうしてカーレとユキの2人を霊夢に預けた後、彼女達にごめんねと一言そう言ってから、レミリア達を引き連れて博麗神社を後にした。

 

 

 




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魔法使いと三姉妹の魔法談義

「なるほど……ミラ様の連れてきたカーレの仲間だと言う娘が、妹様を化け物扱いしたと。その事情を考慮しても全く許す事が出来ず、彼女もろとも神社に置いてきたと言う訳ですか」

「ええ、そうよ。自分で言うのもなんだけど、キレる私を窘めた後……あの子、謝ったの。霊夢や魔理沙に対してならともかく、自分を化け物扱いしたアイツら2人に対しても。その時に一瞬見せた悲しそうな顔がどうしても頭から離れなくてね……」

「化け物ですか……昔なら百歩譲ったとしても、今の妹様をそう呼ばれるのは全くいい気はしませんよ」

 

 カーレとユキの2人を霊夢に預けた後、館に戻ってきたレミリアは、出迎えてくれた咲夜や美鈴に神社で起きた出来事を全て話した。

 

 フランに窘められたとは言え、未だにあの2人に対しての怒りが収まらないレミリア。妖力と魔力は解放しなかったが、普段の彼女からは想像がつかないほどの剣幕に、側を通った妖精メイド達は思わず気絶しかけるが何とか踏ん張り、その場を急いで離れていく。

 

「そう言う訳だから、今後は一切合切あの2人を門より内側には入れない事。侵入してきたら問答無用で放り出しなさい。用件がある様なら門前で聞くこと。ただし、その用件がフランに関連する事であれば門前払いしなさい。良いわね? 咲夜、美鈴」

「「分かりました!!」」

 

 その際にレミリアから無意識に発せられる圧力に、この命令の本気度が窺える。仮に命令を無視したとすれば、恐らく苛烈な罰が与えられるであろう事が本能的に理解出来た咲夜と美鈴は、絶対に入れてなるものかと、固く心に誓った。

 

「まあ、そんな命令を出されずとも個人的には入れませんけど……あ、お嬢様。妹様達の所に行かなくても宜しいのですか? 魔法談義、でしたっけ? それを楽しみにしてましたし、早く行ってあげた方が――」

「そうだったわ! ありがとう、咲夜」

 

 咲夜からそう言われ、あの2人への怒りのあまりフラン達をほったらかしにしていた事を思い出したレミリアは、急いで皆の待つ大図書館へと向かっていった。

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 一方その頃大図書館ではパチュリーとフラン、若干話に置いてきぼりのヴァーミラの3人が用意されていた椅子に座り、机の上に置かれた魔導書を見ながら和気あいあいと話をしていた。もしも、紅魔館にキーリマイラ魔導連合の連中が大挙して攻め込んできた場合の魔法方面の対策も兼ねている。

 

「初めて借りた時も思ったけど、なんて量なの……フランの行った魔導書があった異世界はとんでもない魔法世界ね。攻撃系は勿論の事、防御系や補助系に生活系、果ては娯楽系の魔法まで充実しているなんて驚いたわ。これ一冊あれば、仮に異国の侵略者の大軍が相手でも良い感じで戦えそうね」

 

 パチュリーが、フランから借りた魔導書『フルスペリア』を見ながらそう言った。書物の厚さが薄い割には情報量が非常に多く、流石の彼女でも会得に手こずっている様だった。それに対して、フランが反応を示す。

 

「まあ、大軍って言うのがどれくらいにもよるけど……パチュリーでも流石に魔力が持たないんじゃないかな?『命失の雨(ロストライフレイン)』とか『死呪(しじゅ)追槍(ついそう)』、『魔崩陣(まほうじん)』みたいな即死系魔法を使うなら簡単にお掃除出来そうだけど、どうなの?」

「……確かに敵を始末するには持ってこいだけれど、どれもこれも恐らく魔力消費が凄いだろうし、効かない敵も出てくるだろうから大軍の殲滅は無理ね。それに『命失の雨』に至っては効果範囲が広すぎるし、敵どころか味方や関係のない人妖まで殺しかねないから話にならないわ。だから、通常魔法で行くしかないと思うの」

「ふ~ん、なるほど」

 

 自分の案をパチュリーに却下されたフランだったが、理由を説明されてあっさり引き下がった。魔力消費を抑えようとして魔力消費が大幅に増えてしまえば本末転倒であり、加えて敵味方関係なく殺す危険性があるともなれば使用など出来るものではないと、彼女も理解したのが理由だ。

 

 そんな感じで時々フランが物騒な発言をして、それに対してパチュリーが反応し、ヴァーミラが適当に書物を読み漁りながらいつ話に入ろうか窺っていたある時、咲夜と美鈴との話を終えたレミリアが大図書館に入ってきた。

 

「あ、お姉様おそ~い! 何してたの?」

「レミリア姉様、やっと来た……」

「随分遅かったじゃない。待ちくたびれてたわ、レミィ」

「話し込んでて待たせたみたいね。ごめんなさい」

「良いよ~! じゃあ、お姉様もこっち来て!」

 

 こうして、レミリアも談義に加わる事になった。側にあった書物を手に取り、パラパラめくって見ていた時にヴァーミラがようやくタイミングを見つけたらしく、話に入ってきた。

 

 彼女曰く、それなら自身を含めた三姉妹での合体魔法、パチュリーも含めた4人での合体魔法の開発をすれば、1人の消費魔力を抑えながら大軍を殲滅する事も出来るのではないかとの事だ。

 

 しかし、仮にそんな威力を誇る合体魔法やスペルカードを開発・実用化したとして、一体何処で練習をするのかと言う問題が出てきてしまう。と言うか、そもそも開発の段階で試し撃ちをするだけの場所もない。

 

「じゃあさ、私の地下室でやろうよ。元から丈夫で凄く広いし、物を守る強力な結界魔法も私の持ってる魔導書に書いてあるから、皆で張ればきっと良い場所に――」

「本当に良いの? 魔法の開発って凄く時間が掛かる物なのよ。夜通しになる事が多くなるから、貴女が1人でゆっくりする場所が……」

 

 そんな議論を皆でしていると、フランが自分の部屋となっている地下室でやろうと提案を皆にしてきた。その提案に思わず本当に良いのかとレミリアは聞き返す。

 

「お姉様の部屋で一緒に居れれば良い……もしかして駄目だった……?」

「そんな訳……むしろ、フランと居れるのは嬉しいわ!」

「良かったぁ~。あ、それとヴァーミラも一緒が良いな。私達三姉妹で一緒、良いでしょ? お姉様」

「確かに、姉妹皆で一緒の部屋って言うのも良いわね」

「やったぁ!! ねえ、ヴァーミラもそれで良い?」

「うん……良いよ」

 

 どうやら、レミリアの部屋に一緒に居れれば問題は無いようだった。これで開発場所と練習場所の確保は済み、後は実際にやるだけとなったが、その際にパチュリーが『新合体魔法の開発には早くても1ヵ月は掛かる見込み』と皆に伝える。彼女曰く、味方まで殺さないようにする為の調整等に非常に時間が掛かるのが原因らしい。

 

「考えてみたら、お姉様とパチュリーと私が共同で魔法の開発なんてやったことなかったよね!」

「確かにそうね。まあ必要性も感じなかったし……そう言えば話は変わるけど、ミラの能力で出来る事とか、使える魔法もよく知らなかったわ。丁度いい機会だし、結界張ったらよろしくお願い出来る?」

「分かった……フラン姉様にレミリア姉様に見せたのと同じので良い?」

「勿論よ」

 

 その後、フランの地下室に入った一行が全員で協力して、パチュリーの所持していた魔導書に書かれていた魔法の欠点を改良し、更に優れた点を魔改造した『魔消(ましょう)電磁障壁』を張り、魔法対策を万全にした。

 

 そうして、来るかもしれない事態に備えた彼女達の、合体魔法の開発が始まる事となった。

 

 

 

 




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侵略の行進

期間が開き過ぎました。すみません。それと、異世界国家側の話になります。




 エンデント王国を侵略しようと躍起になっているキーリマイラ魔導連合軍。その最前線にて魔法剣士や大魔導師、各小隊の隊長達が集まって会議を行っていた。

 

「では、これから王国攻略軍の会議を始めたいと思います」

「すいませーん。よりにもよって最前線で会議とか馬鹿な――」

「黙りなさい、クウネ。我が国の大魔導師達の防御障壁は最強なのです。規模も質も何もかも劣っている国の攻撃程度では破れません。この世界の列強国家レベルの強さであれば別ですが、魔女の偵察隊の報告ではそんな事はないとの事ですし……」

 

 本来、もう少し後方の安全な場所で行うはずであったこの会議は、相手を『蛮族』『雑魚』等と舐め腐っている司令官の一声で、危険な場所で行う事に決まってしまった。いくら相手が劣るとは言え、流石に最前線で会議など馬鹿ではないかとの反対意見もあったものの、押し切られてしまった様である。

 

 実際、この司令官は高い質の大魔導師や各種最新武器や兵器、隠密性に優れた偵察魔女部隊と言った軍備を持つ自国を盲信する性格であり、遥かな格下が相手であるとこのような態度を取ってしまい、もしかしたら一矢報いられるかもしれないと言う可能性を考えない欠点があった。

 

「はぁ……まあとにかく、報告でーす。本日、眼下に見える町『イーティエラ』を占領完了致しました。こちら側の被害は歩兵300名程の負傷のみとなってまーす」

「当たり前です。相手は1500人程度に対し、我が方は質と練度で大きく上回った上で5000人……負けるはずがありませんよ」

「……そうですねー」

 

 そうして最初に大魔導師の1人、クウネと言う男の人から報告するも、興味がなさそうに司令官は答えた。ここの所連戦連勝の報告ばかり届いていたため、聞き飽きていたからだ。被害も負傷のみであった事も、それに拍車をかけている。

 

「イリー司令官。だからと言って油断は禁物でしょうよ。それに連戦連勝の報告ばかりとは言え、真面目に聞いてくれないと困るぞ?」

「はいはい。全く、カノスはいちいち……」

「これが普通なんだが……」

 

 そんなイリーと言う名の司令官に釘をさす様にして言ったのが、今回の侵攻軍の主力隊を率いる魔法剣士のカノスと言う男だ。キーリマイラ軍が連戦連勝出来ているのも、彼と彼が率いる主力隊の獅子奮迅の活躍のお陰と言うのが大きい。

 

 他にも色々人脈を持っているため、イリー司令官も彼と彼の率いる隊がいる限り、多少失礼な発言をされようとも、たまに命令に従わない事があろうとも、今みたいに指摘されようとも理不尽な指令を誰にも出す事は出来ないし、するつもりもない様だ。

 

「それで、占領した町に居た民衆はどうしているのです?」

「ああ、それなら中央広場と役場と我が方の陣地の余った場所に拘束した上で防寒防雨の結界内に押し込んでまーす。どうするかは司令官の指令待ちでーす」

「分かりました。それでは、全員に――」

 

 そうしてイリー司令官が捕らえた町の民の扱い方を指示しようとした時、不意に大きな爆発音が辺りに響いた。部下が何が起きたか調べると、どうやら防御障壁に火属性爆発魔法が数発着弾した痕跡が見つかった。

 

 しかし防御障壁は無傷であるため、会議には支障はないが、制空権を取られた状況下で地上部隊の派遣など、いくら蛮族の魔導師部隊が相手でも勝てはするだろうが好ましくないと思っているイリー司令官は……

 

「司令官、上空にエンデント王国の空戦魔導師部隊が!」

「慌てる事はありません。この中に居れば死ぬ事はないでしょうけど、このまま派遣しては地上部隊に少なからず被害が出るでしょうね……こちらは大魔導師空戦部隊を出しますよ。クウネ、行けますか?」

「はーい。では行って参りまーす」

 

 空の敵にはこちらも空の部隊をぶつける事に決め、大魔導師クウネ率いる部隊に出撃の指示を出した。そうしてやる気なさげに出撃していった彼らを見送ると、安心して再び椅子に座る。

 

「これで制空権の奪取は確定ですね。哀れな王国軍、我が方に攻撃してきた事を後悔する事でしょう」

「しかし、あの火属性爆発魔法の威力は相当なものでございました。無防備な状態で受ければかなりの犠牲者が出ていた事だろうと思われますが……」

「それはそうでしょう。いくら精強な列強国家の軍でも、無防備な状況で受ければ相当の負傷者と少数の死者が出るのは当たり前です」

 

 防御障壁内に残った魔導師とそんな会話をしながらイリー司令官が空戦を見ていると、僅かに10分程度でエンデント王国の魔導師部隊を全員撃墜する事に成功した様だ。

 

「えーっと……全員撃墜してきました。こちらの被害はありません」

「ご苦労。相変わらず練度が高いですね、流石クウネの率いる部隊です」

「……どうもー。それで、これでもまだここで会議する気ですか?」

「当然でしょう。防御障壁は無傷でしたので。これにヒビでも入れば別ですが」

「……本当、このアホの目覚ましに誰か障壁にヒビでも入れてくれないかな? 出来れば粉々に……」

「ん? 何か言いました?」

「いいえ、何も」

 

 いくら障壁が無傷だったとは言え、高威力の魔法攻撃を放てる敵が居るこの状況でまだ最前線に居座ろうとするイリー司令官に呆れるクウネ。思わず小さな声で、障壁にヒビを入れるか破壊してくれないかと愚痴をこぼした。

 

 そんな状況のため、若干雰囲気が悪くなりかけた時、上空に箒に乗った魔導師が数名現れた事にクウネは気づく。良く見ると、とある港町に偵察に行った魔女隊だったので、障壁に少しだけ穴を開ける。そうして全員が通った後、穴を閉じて話を聞いた。

 

 すると、魔女隊の語った事が神話でしかないような物であったため全員が衝撃を受ける。

 

「なんと、ラスフの港町付近に前はなかった巨大な島が突如出現していたと……そんな事があるのか。まるで神話だな」

「人間はともかく、妖精や吸血鬼に妖怪と呼ばれる種族、幽霊に不老不死の存在に……神々まで存在しているとは……冗談でしょう?」

「イリー司令官、冗談ではありません。現にこの目で見てきましたので……それに、吸血鬼が住んでいると思われる館に侵入しようとしたカーレ様が……あっさり捕らえられてしまいました。ユキ様も行方不明ですので、恐らくは……」

 

 魔女隊曰く、ラスフと呼ばれる港町の近くの海に大きな島が出現していて、そこには神も含む多種多様の種族が存在していたと言うのだ。それだけでも荒唐無稽な話だと言うのに、偵察魔女隊の精鋭1人が捕らえられ、もう1人が行方不明だと言う。これを聞いた時の衝撃が大きすぎて、声すら上がらなかった。

 

「……あの2人がこうもあっさり捕らえられてしまうとは、恐らくはその報告は事実なのでしょう。して、その島の名前は?」

「『幻想郷』と言う様です。文明レベルは大きく劣りますが、先ほど申し上げました通り、そこの住民の一部は非常に強力かつ危険です。仮に王国軍の拠点をそこに移されたら……いくら精強な我が軍でも……」

 

 まさか、こんな格下の国に危険な存在が突然現れるとは夢にも思っていなかったイリー司令官は驚きを隠せない様だ。

 

「ふむ……ならばどれだけ危険な存在が居るのか偵察を継続するしかありませんね。決して、2人が捕まった場所への潜入はしないこと。そして、戦闘は必要最低限にする事。この2つを守らせましょう。念のため、本国に援軍を要請しなさい!!」

「「「了解!!」」」

「それと、港町への進軍は継続の方針で行きますよ」

「「「分かりました!!」」」

 

 そうして気を取り直したイリー司令官は改めて幻想郷なる場所の偵察を指示し、目の前の戦争に集中する事にした。

 




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