UQ HOLDER!《BLADE JOKER》 (Million01)
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♠ A

不死身繋がりで作りました。
全三話のつもりです


ジオウ編とはまた別の世界軸です

あと、夏凜先輩すこ


───あれからいくつの年が経ったのだろう

 

十年?二十年?五十年?それともそれ以上なのだろうか。もはや人の身を捨て不死身(アンデッド)となった剣崎 一真にとっては時の流れが止まって見えた

 

地上からは宇宙にまで伸びる長い長い塔が見え、文明は剣崎が人間だった時代よりも遥かに進んでいた

更には人類は魔法と呼ばれるものを使用できるようになり、異形の怪物達とも戦えるものが数多く存在しているらしい

 

だが、今の剣崎にはどうでもよかった。いや、関わりたくないのだ。彼にはそうすることしかできないのだ

 

そんな剣崎は天高く伸びるその塔を見つめていた

 

「兄ちゃん、軌道エレベータなんか眺めてどうしたんだ?」

 

そんな中、黒髪の少年が剣崎に声をかけた。昔のガキ大将のように頭に鉄製の鍋を被り無邪気そうに剣崎を見る

 

「いや、なんにもないさ。ただ、アイツもあのエレベータが見えてるんだろうなって思ったんだ」

 

剣崎がそう言って天高く伸びる塔、軌道エレベータを懐かしむように見つめていた

 

「アイツ?」

 

「ああ、俺と同じように色んな場所を飛び回ってる奴さ」

 

「へぇー、けど兄ちゃん色んな場所を飛び回ってんだろ!次はどこ行くの!?」

 

剣崎は少年の言葉に首を振りこう答えた

 

「行く場所は決まってないんだ。ただ色々と走り回るだけだ」

 

そして剣崎は瓦礫の山から立ち上がるとぱっぱっ、と膝についていた埃を手で払う

 

「ほら、もう日が暮れるから君達は帰らないと皆が心配するぞ」

 

剣崎の言葉を聞いて少年がハッ、と気付いたように顔を上げた

 

「そうだ。もうこんな時間なのか!じゃあ、俺帰るよ!兄ちゃん、また今度、話を聞かせてくれ!!」

 

そう言って無邪気な笑顔で走り、剣崎に手を振った

思わず剣崎の顔が綻んだ。嵐のような少年だ。こんな貧民街(スラム)の中でも元気に生きている少年なんてそうそういない

 

「さて、と……」

 

剣崎も借りた部屋に戻るように足を運ぶ。夕日が沈み、夜へとなり町並みが暗くなる中、一人の少女と剣崎はすれ違う

 

黒いショートカットの髪にどこかの学園の制服を着てる少女だ。明らかにどう見たってここの住人ではないことは確かだった

だけど、剣崎が気にすることではなかった。そしてお互いすれ違うように横を通った

 

「───そこの貴方」

 

だが、少女が剣崎を呼び止めた

 

「はい?」

 

剣崎がくるりと体を捻り少女の方へと顔を向けた

 

「ここら辺では見ない顔だけど貴方どこから来たのかしら?」

 

「どこからって言われても、俺はただの浪人だ。どこから来たというわけでもない」

 

「…………」

 

剣崎の言葉を聞いて少女がじっ、と剣崎の瞳を見つめた

 

「…………」

 

剣崎も少女に睨み返す。しばらくの沈黙の後、少女が口を開いた

 

「そう。一応、言っておくけどあまりここに長居しないほうがいいわ。最近、危ない奴らがこの街にやってくるもの」

 

「…………」

 

少女の言葉に剣崎は黙って歩き始める。彼にとって危ない奴らがいたとしてもどうということはなかった。

 

「何なんだ、あの子……」

 

剣崎は借りた部屋に入るとそう小さく呟いた。

剣崎をじっと見て何かを感じたのかはわからないが不思議な子ではあった

 

「まぁ、いいか。とりあえずもう寝よう」

 

剣崎はそう言ってベッドで横になり、瞼を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───崎』 

 

暗い闇の中、彼の友の声が聞こえてくる

 

『───剣崎』

 

そして闇の中で徐々に姿が映し出されていく

 

『───すまない』

 

なぜ、謝る

 

『───もう俺には自分を止めることはできない』

 

あの時も自分に似たような台詞を言っていた

 

『───お前が俺を封印するんだ』

 

彼の姿が変わっていく。相川 始としての姿からJOKERの姿へと。人から異形の姿へと

 

『───結局、俺達は戦う運命なんだ』

 

一瞬、異形の姿をした友の姿がゆらりと仮面の戦士へと変わったようにも見えた

 

『───俺を───』

 

友の声が段々と遠くなっていく。剣崎はそれに無意識に手を差し伸べた

 

 

 

 

 

「───始っ!!」

 

ガバッ!と剣崎の意識が覚醒しベッドで起き上がった

 

「ハァ、ハァ……ハァ……ハァ……」

 

額にものすごい汗を浮かびながら乱れた呼吸を落ち着かせていく

 

「今のは……」

 

この夢が何を意味するのか剣崎にはなんとなくわかってしまう。だが、剣崎はわかりたくなかった。それでも剣崎は……

 

「ハァ……ハァ、ハァ……!」

 

ムクリ、と剣崎はベッドから立ち上がり荷物を纏めるとすぐに部屋を出ていった

 

「……?」

 

だけど、剣崎は違和感を感じる。あれだけ活気溢れていた街が妙に静かだった

 

「どういうことだ?」

 

剣崎が目を細めて周囲を警戒する。そして数秒後、彼女が剣崎の前に姿を現した

 

「───貴方は昨日の」

 

昨日の夜に出会った少女だ。どこから現れたのかは知らないが剣崎を睨む

 

「君は昨日の……」

 

「貴方はここから早く逃げなさい。さもないと死ぬわ」

 

お互いの視線が衝突し合う。剣崎が口を開く。何かあったのか、と少女に聞こうとしたとき

 

《───BLIZZARD》

 

乾いた機械音声が二人の耳に届く。剣崎はハッ、と少女の顔を見る

だが、彼女は警戒するだけでその場を動こうとしない

 

「伏せろ!」

 

剣崎が少女の方へと走り込み弾き飛ばす。直後、先程まで二人がいた場所に凍てつく冷気が通り過ぎる

 

「今のは……」

 

少女が冷気が飛ばされた方向へと見た。緑色のスーツに金色の鎧と蜘蛛を模したような仮面を纏った戦士がそこにいた

 

「……睦つ……いや、レンゲル」

 

その姿を見た剣崎がかつての仲間の名前を思い浮かべた。だけど、それはすぐに否定した彼は人間だ

自分のような何十年も生きて戦えるはずがないならばあのあの戦士……仮面ライダーレンゲルは誰だ?

 

「お前は誰だ!」

 

剣崎がレンゲルに叫ぶ。

 

『…………』

 

だが、レンゲルはそれを無視するかのようにゆっくりとこちらへと足を運んでくる

 

「貴方……」

 

少女が剣崎を見る。普通ならこんな状況に出会ったら逃げるはずなのにこの男は逃げなかった。それにそれだけではなく剣崎はあろうことか襲撃者を睨みつけていた

 

『これは思わぬ収穫だ。まさかもう一体のJOKERに出会うとはな……』

 

レンゲルが仮面の下で口を開く。

 

「っ!その声、カテゴリーA(エース)か!」

 

剣崎が歯ぎしりをしてレンゲルを睨む

 

『丁度いい。そこの女が目的だったがまずは貴様から封印するとしよう!!』

 

レンゲルが左手に持っていた棍棒を構えると剣崎に向かって走り始めた

  

「───逃げろ!」

 

剣崎が背後の少女に向かって叫ぶ

 

ブォン!とレンゲルが剣崎に向かって棍棒を振るう

 

「───っ!早く逃げろ!!」

 

剣崎はその棍棒をなんとか腕を交差させて防ぐ。だが、レンゲルの力は人の数十倍もの力を持ちもちろん生身の剣崎が耐えられるはずもなかった

バキバキっ、と剣崎の腕の中から骨が折れる音が聞こえてくる

 

『…………』

 

レンゲルの攻撃はそれで止まることはなかった。踏ん張る剣崎に右足を突き出した。

思わず後ろへよろめく剣崎にレンゲルがさらに棍棒を繰り出す

 

「くっ……!!」

 

棍棒の先に付いたトランプのクラブを思わせる三つの小さな輪が剣崎を襲った

 

「なっ!?」

 

ザシュリ、と剣崎の肌を傷付け彼の鮮血が飛び混じった

驚いたのは剣崎やレンゲルではない

少女だ。少女の瞳に映るものは謎の液体。いや、血である

 

だが、それは人間のものではなかった。普通の人間ならば人の血に流れるものは赤い血だ。

だが、彼の傷から出てくるのは黄緑色の液体だ

 

「貴方……」

 

少女が剣崎を見て目を細めた。彼は人間ではないと

 

(黄緑の血……私の知っている範囲ではそんな種族いなかったはず)

 

ならば、彼は何者だろうかと剣崎の背中を睨みつけた

 

『…………』

 

レンゲルが右腰から二枚のカードを取り出した

 

そしてそのまま棍棒にあるスラッシュリーダーにカードをラウズ(スライド)させた

 

《───BLIZZARD》

 

《───BITE》

 

二つの単語と乾いた機械音声が再生される。

 

「っ!」

 

まずい、と剣崎が顔を顰めて立ち上がる。たとえ、恐らくこの攻撃を喰らえば剣崎はレンゲルに……

 

『───』

 

レンゲルが跳躍し、跳んだ。そして斜め前に降下する。そしてそのまま足を突き出した

 

「くっ……!」

 

剣崎が背後の少女を一瞬だけ見やるとそのまま防御の構えを取る

レンゲルから繰り出される蹴りは冷気を纏いそのまま剣崎の方へ直撃した

 

普通の人間ならば恐らく体は粉々となるほどの威力。だが、剣崎の体は衝撃を受けるだけでそのまま遙か後方へと吹き飛ばされた

 

「───ァッッ!」

 

剣崎が仰向けに体を転がして蹴られた部分を抑えた。

 

『───』

 

そしてレンゲルは静かに剣崎に歩み寄ると新たにカードを取り出した

剣崎はレンゲルを睨みつけた。このままでは始が、カリスが、JOKERが

あの最悪の出来事が再び起こってしまうのだ

 

シュッ!とレンゲルがカードを剣崎に向かって投げたシュルシュルシュル!と風を切る音ともに回転しながら剣崎へと一直線へと向かっていく

 

(───すまない、始)

 

剣崎が飛んでくる一枚のカードを見てもう一人の自分と同じ存在( J O K E R )を思い浮かべた

自分の終わりを覚悟する剣崎は脱力してそのまま目を閉じた

 

 

 

 

 

パシッ、と乾いた音が近くで聞こえた。それは自分を封印する音ではなかった

 

「……?」

 

剣崎は違和感を覚えて目を開けた。目の前には少女がレンゲルの前に立っている

剣崎は目を見開いて少女の背を見つめた

 

「お前、何をやってる!!」

 

「それはこちらの台詞です。一応とはいえ助けられた者が目の前で見殺しにされるのはUQホルダーとしては見過ごせません」

 

「ゆーきゅー……ほるだー?」

 

「…………」

 

少女はレンゲルを睨みつけると手に日本刀とハンマーを持つ

 

『───邪魔をするな!』

 

レンゲルが怒りを噴り、棍棒を思い切り少女に振りかぶった

 

「邪魔なのは貴方でしょう」

 

少女が素早い手捌きでハンマーの柄尻で棍棒を受け流すとそのまま遠心力を利用する勢いでハンマーをレンゲルに振り払った

 

「なっ……!」

 

剣崎は目の前の光景が信じられないように目を見開いた

 

「───貴方は早く逃げなさい。貴方がたとえタフでも戦えないはずよ」

 

「───ッ!」

 

戦えない(・・・・)』。その言葉が剣崎の胸に刺さった

 

『───させるか!』

 

レンゲルが体を起こすと一枚のカードを投げる。少女が身構える。だが、レンゲルはさらにもう一枚、カードを取り出すとラウズさせる

 

《───REMOTE》

 

乾いた機械音声と共に一本の光線がレンゲルの投げたカードと直撃する

 

『───!!』

 

直撃したカードがその場に固定される。そしてカードから怪物が姿を現した

 

「───召喚魔法!?」

 

まるで蜘蛛を人型の怪物にしたかのようなその存在が少女の虚をついて背後の剣崎とぶつかりあって押し倒す

 

「コイツはっ!?」

 

剣崎が目の前の怪物を睨みつけた。剣崎は信じたくなかった。この怪物が自分を襲ってくるなんて

 

「カテゴリーK(キング)……嶋さん!!」

 

剣崎がかつての仲間の名前を呼んだ。かつて剣崎達の仲間であり、訳あってわざとレンゲルに封印された人だった

 

『───剣崎くん、どうした。変身しないのか!?』

 

「ぐっ……嶋さんっ!?」

 

怪物の声が心に突き刺さる。

 

「このっ!」

 

少女が剣崎を襲っている怪物に刀を振り下ろす。だが、すんでのところでレンゲルが少女を棍棒で吹き飛ばした

 

「俺が変身すればっ……!」

 

あの戦いが……バトルファイトが再開してしまう

 

『───彼を……始くんを気にしているのか?』

 

「───っ!」

 

剣崎は顔を歪め目の前の怪物を睨む

 

『───君も気づいている筈だ!彼は封印を破った!いや、封印を破らされた!!』

 

今日見た夢の出来事を剣崎は思い出す。今まで剣崎の首を締めていた怪物が剣崎の体を起き上がらせるとそのまま膝蹴りを繰り出した

 

「───始が……」

 

信じたくはないと剣崎が顔を俯かせた。

 

───タタカエ

 

「ぐっ……!」

 

剣崎が頭を抑える。彼の、本能が語りかけてくる。いつもならこんな声は聞こえないはずなのに……

 

───タタカエタタカエタタカエ

 

声がさらに強調するように段々と声が大きくなる

 

───タタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエ

 

「───うあああぁァァァァァァ!!」

 

───タタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタカエタタタタタタタタタタタタタタ

 

剣崎が怪物を蹴る。そして剣崎の意志に引かれてなのか呼ばれたかのように何かの機械とベルトの帯になるように複数枚のトランプが剣崎の周りをグルグルと周回する

 

「───」

 

剣崎が決意を覚悟を決め決めたかのように目の前の怪物を睨みつけた。そして剣崎に呼応するように周囲を飛んでいた機械が彼の腰へと収まった

 

「───変身!!」

 

剣崎が左手を前に出し、あの言葉を叫ぶ。くるりと左手の手首を返すとすぐに左手手をベルトに手をかけた

そしてベルトのバックルの右側のレバーを素早く引いた

 

《───Tern Up》

 

ベルトから流れる音声と共に彼のバックルがクルリと変わる。カブトムシのような絵からトランプのスペードの装飾へと変わる

そして彼の目の前にカードの形を巨大化したよう青い光のゲートが現れる

 

そして剣崎はそれを通るように青いゲートの中を歩く。青いスーツに白銀の鎧

まるでスペードを模したかのように頭頂部が尖っている戦士『仮面ライダーブレイド』が再び姿を現した

 

怪物が右手の鉤爪を振り下ろす。それを潜り抜けるように体を沈ませて避けると拳を突き出した

 

『───そうだ。それでいい……』

 

《───KICK》

 

《───THUNDER》

 

《───MACH》

 

そしてブレイドが腰から醒剣ブレイラウザーを引き抜くと三枚のカードを取り出しラウズする

 

《───LIGHTNING SONIC》

 

ブレイドの体が蒸発し煙を吹き出す。ブレイドがブレイラウザーを地面に突き刺すとそのまま跳躍。飛び蹴りを怪物に突き出した

 

稲妻を纏った超高速の蹴りが怪物に直撃する。小さな爆発を上げながら怪物は吹き飛ばされる

 

「嶋さん……」

 

そしてブレイドは吹き飛ばされた怪物を眺めながら一枚のカードを取り出すと怪物に投げる

美しい直線を描きながらカードは怪物の体に刺さると怪物がカードに吸収するように収束された

 

そしてカードが持ち主のもとへと戻るようにブレイドの手元に戻る

 

 

 

 

 

『───最強のライダーは俺だ。覚えてろ!』

 

《───SMOG》

 

レンゲルが少し離れたところにいるブレイドを見て一枚のカードを取り出すとカードをラウズさせる

直後、レンゲルが棍棒を振り下ろすと煙が噴き出す

 

「くっ……」

 

対峙していた少女が目を守るように腕で顔を隠した

 

「───待てぇっ!」

 

ブレイドがその煙へと突っ込む。だが、すぐに煙が晴れるとその場にはブレイドと少女しかいなかった

 

「…………。大丈夫か?」

 

レンゲルの姿が見当たらない事を確認するとブレイドは少女の方へと振り向いた

 

「ええ、それより貴方は一体……」

 

少女はブレイドを睨みつけた。人間ではないことはわかっている目の前の男に警戒していた

 

「───俺の名は剣崎 一真。またの名を仮面ライダーブレイド」

 

そう言って彼が変身を解く。

 

それが不死身となった剣崎 一真と不死人の一家『UQホルダー』の出会いとなる

 

 

 




カリスもギャレンも登場させるつもりです


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♠J・♥A

ジオウ「来ちゃった」
統制者「は?」(マジギレ)
ヨルダ「来ないで」




UQホルダーと出会い、あれから数カ月が経つ。剣崎の目の前にいるのは悪い魔法使いを自称する不死の吸血鬼である雪姫だ

白く長い髪に長身の女性。そしてどこか落ち着いた雰囲気を醸し出しながら剣崎を見る

 

「───来たな、剣崎」

 

剣崎 一真は訳あってUQホルダーの不死身衆(ナンバーズ)の一員となった。

 

そしてまたの名を仮面ライダーブレイドだ

 

「一応、言っておくが俺も色々と忙しいんだ。あのバサゴとかいうやつに雑用させられてんだ」

 

剣崎が若干苛立った声で雪姫を睨む

 

「ブレイド。貴方は口を慎みなさい」

 

かつてレンゲルに襲われていた少女、UQホルダー不死身衆(ナンバーズ)である夏凜が剣崎をギロリと睨みつけた

 

「……。それで俺に何の用だ?」

 

剣崎が雪姫の机に手を置いて身を乗り出した。雪姫はその様子を見てフッ、と笑みを零すと一枚の写真を取り出した

 

「!……レンゲル」

 

「!」

 

剣崎はその写真に写っている姿を見ると静かに呟く。剣崎の口から発せられた言葉を聞いて夏凜がわずかに体を硬直させた

 

「最近、こいつが一般人にも危害を加えていてな。不死狩り共も対応しようにもアンデッドを呼び出されては対象しきれなくてな」

 

54体もの存在しているそれぞれの生物の始祖であるアンデッドはあらゆる方法を使っても殺すことはできない。そしてまた通常の封印で封印することができないのだ

 

彼らへの対策はただ一つ、ブレイドやレンゲルが持つラウズカードと呼ばれるあのカードだ

弱ったアンデッドにアンデッドが封印されていないラウズカードと接触させることでアンデッドを唯一封印することができるカードだ

 

つまり、レンゲルが開放したアンデッド達をどうにかするにはブレイドの力が必要なのだ

 

「……わかりました。元々、仮面ライダーは人々を守る存在だ。あのレンゲルに好き勝手はやらせない」

 

剣崎が写真をグシャッ、と握りしめた

 

「よし、ではこの任務はお前に任せる」

 

「───待ってください、雪姫様」

 

「珍しいな、夏凜。お前が口を挟むなんて」

 

夏凜が一歩前に出てくる 

 

「その任務、私も同行させて下さい」

 

「ほう……?」

 

興味深そうに雪姫が目を細めて夏凜を見た

 

「───私もそのレンゲルという仮面ライダーに襲われた身。復讐、とまではいきませんが一発ぶん殴らないと気がすみません」

 

「なるほどな。だが、お前を同行させるかは私の一任ではない。剣崎だ」

 

雪姫が剣崎を睨む。その視線はお前が決めろと言わんばかりの目だった

 

「…………」

 

剣崎は考えた。これは自分とレンゲルの問題だ、と

そう考えて同行を突き放すのが妥当だ。だが、夏凜の気持ちもなんとなくわかる

チラリ、と剣崎が夏凜の方へと視線を移す。剣崎の目に写るのは相変わらず無愛想な顔の少女だ

 

「まぁ、だがUQホルダーの新人に一人でこの仕事を任せるのはよくないと私は思う。私からすればもう誰か一人同行させることを推奨する」

 

そう言われ剣崎が肩の力を抜いて大きく息を吐いた

 

「勝手にしろ」

 

 

 

 

 

カチャカチャ、と剣崎が愛用のバイクのメンテナンスをする

 

「これ、良いバイクね」

 

そんな様子を見ながら夏凜はバイクにそっと触りそう呟いた

 

「…………」

 

だが、剣崎は喋らない。どこか苛ついたような表情にも見えた

 

その様子に夏凜は視線を他所に外す。夏凜はこの剣崎という男がよくわからなかった

この男には夢や目標というものがない。あの近衛 刀太でさえ持っている

それに関してはどちらかと言えば甚平衛様や源五郎様に近いほうだろう

だが、この男にはあの二人とは違い。「皆を守る」という意志を持っている

 

UQホルダーのナンバーズの中でも屈指の意志だと夏凜は思う。故に夏凜は気になった

なぜ、そこまで人間にこだわるのだろうか。元々は人間だったとはいえ、今や化け物に等しい

それは人々に嫌われる存在でもあるのにどうしてそれほどまでの意志を持ってるのか疑問だった

 

「───い」

 

それが元からの彼の性格なのだろう。だが、そんな性格では裏切りはつきものなのでは?

この男がそうまでして人々を守るなんて戯言を吐くのだろうか……

 

「───おい!」

 

ガッ、と思い切り肩を捕まれ、夏凜は意識を現実に返った

 

「なんですか」

 

「なんですか、じゃない。メンテナンス終わったってさっきから言ってるだろ。ほら」

 

剣崎がそう言って夏凜にヘルメットを差し出した。

 

「…………」

 

「なんだよ……行くぞ」  

 

夏凜が剣崎をじっと睨みつける。剣崎は気味悪そうに反応しながらバイクに跨がる

 

「いえ、なんでもありません。それより、どうやってあのレンゲルを探し出すのですか?」

 

そう言って夏凜も剣崎の後ろに跨り剣崎の体を掴んだ。

 

「さぁな」

 

剣崎が短くそう答えた。どうやら何か策があるわけではないらしい

 

「なっ、仮に貴方もレンゲルと同じ仮面ライダーでしょう?」

 

「それがなんだって言うんだ。そもそもアイツの正体を俺は知らない」

 

「はぁ、使えませんね」

 

夏凜が短くため息をついて呟いた。直後、剣崎の目が鋭くなる

 

「じゃあ、夏凜は何ができるんだ!?アンデッドを封印できないお前が!」

 

「───っ!!」

 

夏凜が剣崎の言葉に表情を歪ませる。剣崎も自分が口にした言葉の意味を理解した

 

「…………」

 

剣崎は視線を落として数秒、バイクを動かし始めた

風を切る音ともに道路を走っていく剣崎のバイク。目的は雪姫から教えてもらった場所だ

バイクでも数時間かかる遠さだ

 

「…………」

 

「…………」

 

お互い、先程の事もあってか黙りながら道を走る

 

風の音、すれ違う車の音、歩く人の声、バイクのエンジン音、ただただそれが耳に届き時が流れていく

 

「ねぇ」

 

そんな刹那の中、夏凜が口を開いた。剣崎が反応し少しだけ視線を後方へと向けた

 

「貴方はなぜ、仮面ライダーに?」

 

なぜと聞かれて剣崎が口を開き始める。だが、剣崎自身も答えは出なかった

 

「…………」

 

昔は仮面ライダーだった。だが、最近まではどうだ?仮面ライダーとしての役目を終えていたはずだった

ただ一人のアンデッドとして過ごしていたつもりだった

そして今は始を探すために仮面ライダーに……

 

「それは───」

 

剣崎が口を開きかけたその時、誰かが何の突拍子もなく剣崎達のバイクの前に飛び出してきた

 

「「!!」」

 

二人は目を見張る。飛び出してきた者は恐らく二十代ぐらいの男だろう左目に黒い眼帯をした黒い髪の男がニヤッと微笑みながら二人を見据えた

 

剣崎はハンドルのブレーキをかけて減速する。そして夏凜は剣崎の体を支えにして体を浮かばせる。剣崎の体をしっかりと掴みこちらに飛び込んでくる男にローキックを食らわせた

 

「おい、なんだ今のは!!」

 

バイクを完全に停止させた剣崎は夏凜によって吹き飛ばされた男の方を向ながら叫んだ

 

「ブレイド、早くバイクを出しなさい!!」

 

「は?」

 

「早くしなさい!!!」

 

夏凜が一層、力強く叫ぶ。その様子に剣崎が再びバイクで走り出す

 

「さっきのはなんだ!?」

 

剣崎が走りながら後ろにいる夏凜に叫んだ。

 

「面倒臭い変態よ!恐らくまたすぐにおそってくるわ!!」

 

「何を言って───」

 

剣崎がそんな馬鹿な、と心の中で呟いた直後、剣崎の考えを裏切るかのように先程の男が目の前に現れた

 

「くっ!───変身!!」

 

《───Tern Up》

 

あの夏凜の蹴りを食らって生きている様子を見た剣崎は即座にブレイドバックルを装着しレバーを引いた

 

「───なっ!?」

 

剣崎の目の前に青いゲートが出現する。男が迫りくるゲートに目を見開いて防御の体制を取った

バチッ!と男がゲートに弾かれるように吹き飛び剣崎はバイクでゲートを通過した

 

「チッ!」

 

男が舌打ちしながら仮面ライダーブレイドへと変身した剣崎と夏凜を睨む

 

「───!?」

 

ブレイドはそんな男に気にせずバイクで遠ざかっていく。だが、何かに気付く

 

「傀儡ね……」

 

目の前に群がる子供ぐらいの人型の何か。お面で顔を隠し大きいコートを来た何かだった

 

「クグツ!?なんだそれは!!」

 

「あの変態の操り人形よ!!」

 

どうやらどうあっても俺達を止める気らしい。仕方ない、と剣崎が呟いた

 

「夏凜!俺の武器からカードを出してくれ!!」

 

「カード?」

 

夏凜が剣崎の醒剣ブレイラウザーを引き抜くとカードを展開させる

そんな中、目の前の傀儡達は段々と集まっていきこちらに迫ってくる

 

「───まだか!?」

 

「───どのカードかちゃんと言いなさい!!」

 

「───ああ、もう!スペードの6だ!!」

 

「これね」

 

夏凜がカードをブレイラウザーから引き抜き目前にいるブレイドに手渡す

 

そしてブレイドは渡されたラウズカードをバイクのタンク部分にあるカードリーダーにスライドさせた

 

《───THUNDER》

 

直後、バイクが稲妻を纏い青い軌跡を描いて傀儡の中を突き抜けた

バキッバキャバキャッ!!と衝突した傀儡達をバラバラに破壊して突き抜けた

 

「このまま突っ切るぞ!今度はスペードの9を出してくれないか!!」

 

「───人使いが荒いわね」

 

夏凜は独り言のように呟きながらブレイラウザーから新たにカードを引き抜いた

 

《───MACH》

 

夏凜から受け取ったカードをバイクに読み込ませた。直後、バイクが加速(・・)した

ただの加速ではない。それこそ本来のバイクではありえない速度を出して一気にその場を離れていく

 

 

 

「───ったく、何なんだよアイツ」

 

いつの間にか変身を解いている剣崎がバイクから降りてヘルメットを外して苛つきながら呟いた

 

「忘れなさい、あんな変態」

 

夏凜も降りてヘルメットを剣崎に投げた。大体、お前のせいだけどな、と剣崎が心の中で呟いた

そして、剣崎が建物の中へと入っていく

人気のない場所だ。恐らく空き巣なのだろう

 

「ここは?」

 

「元BOARDの寮だ。今はもう誰も使ってない」

 

「BOARDって確か……」

 

「ああ、俺が仮面ライダーとして戦っていた研究所だ。そしてここはその寮だ」

 

そう言って廊下を歩いて数ある扉の中、一つの部屋に入る剣崎と夏凜

 

「そう」

 

「好きな部屋を使え。どうせこの建物の鍵は全て空いてる」

 

そう言って剣崎がベッドに体を寝かせた

 

 

 

『───ザキ』

 

まただ。またあの夢だ。始が俺に語りかけてくる

始、どうしたんだ。なぜ、お前が夢に出てくる

 

『───剣崎』

 

やめろ!と思わず叫ぶ。来るな……来るなっ!!

直後、始の後ろで何かがこちらを覗く。白く長い髪の女性。

 

「アアアアアァァァァァァァッッッ!!」

 

ガバッ、と剣崎が体を起こす。荒れる呼吸、溢れ出る汗、増える心拍数、痛む頭、震える体、乱れる心。

 

「───ブレイド!?」

 

剣崎の叫び声を聞いて寝ていた夏凜が剣崎の部屋の扉を思い切り開ける

 

「───俺に近づくなっ!!」

 

両手で頭を抑えながら夏凜に叫ぶ。今の状態かなりヤバイ。

まさか、現状がこんなにまずいとは思わなかった

 

「馬鹿な事を言ってないで貴方は横になりなさい」

 

夏凜が剣崎に近づいて横になるように促す。さすがに夏凜も異常だと感じてるようでねかすように剣崎の体をベッド倒す

 

「か、夏凜……?」

 

痛む頭を抑えて夏凜を見る。

 

「さすがに初日にこんな体調でいられると任務に支障がきたします」

 

「すまない……」

 

そういって剣崎は瞼を閉じた。今なら安心して寝れそうなそんな気がした

 

 

 

再び剣崎が目を覚ます額に濡れたタオルが簡易タオルが置いてある

 

「起きたのね」

 

夏凜が剣崎の顔を覗く。そんな剣崎は体をゆっくりと起こした

 

「貴方、いつもこうなの?」

 

夏凜が心配そうにいいながら近くの椅子に座る

 

「たまにだ」

 

剣崎が視線を落として、何かを考え始めた

 

「…………」

 

夏凜は黙ってそれを見守っていると席を立ち上がった

 

「───俺は子供の頃、目の前で家族が死んだんだ」

 

剣崎が突然、口を開き夏凜がピクリと動きを止めた。

 

「それがきっかけだった。その日から俺は人間の皆を守りたいと願い、仮面ライダーになった。仮面ライダーになれなたのは偶然だった」

 

「───貴方、何を言って……」

 

夏凜が剣崎の方へと振り返る。そこで夏凜がここへ向かう前に剣崎に聞いた言葉を思い出した

 

『貴方はなぜ、仮面ライダーに?』

 

「最初はただアンデッドを封印するだけが仮面ライダーの仕事だと思っていた。だけど、実際は違ったんだ……」

 

剣崎の言葉に夏凜は何を言ってるのだ、と眉を寄せた

 

「アンデッド達は自分の種の繁栄のためにバトルファイトを再開させた」

 

「前もその言葉を聞いたけどバトルファイトとはなんですか?」

 

一瞬だけ、剣崎は言葉を詰まらせた。話すかどうか悩んでいるらしい

 

「バトルファイトは53体のアンデッドが自分らの種の繁栄をかけて戦うバトルロワイヤルだ」

 

「…………」

 

夏凜がその言葉を聞いて黙り始めた

 

「一万二千以上前に行われたバトルファイトの勝利者はヒューマンアンデッド……つまり、人間の始祖だ」

 

「っ!?」

 

夏凜は耳を疑った。なにせ、人間はそのバトルファイトによって進化したのだから

 

「……そして約80前、俺が仮面ライダーになった時にはバトルファイトはもう再開していた」

 

「……貴方はそのバトルファイトをどうするつもり?」

 

夏凜が剣崎を睨む。この男も種の繁栄を望んでいるのでは?と考えに至る

 

「……どうするつもりはない。ただ、このバトルファイトを止めたい」

 

ギュッ、と拳を握る手が強くなる。ポタリ、と黄緑色の血が床へと落ちた

 

「バトルファイトの勝利者は世界を思いのままに変える程の万能の力が与えられる。だが、80年前の戦いで勝利者となったのはJOKERと呼ばれるアンデッドだった」

 

「JOKER……」

 

夏凜がその名を呟く。ハッとしたかのようにこの間、レンゲルが口にした言葉を思い出した

 

『これは思わぬ収穫だ。まさかもう一体のJOKERに出会うとはな……』

 

「まさか、80年前の勝利者って……」

 

「俺じゃない。まだその時の俺はアンデッドじゃなかった。話を戻すがJOKERはアンデッドの中でも例外だ。どの始祖でもなく、バトルファイトに勝利した場合、地球は滅ぶ」

 

「───はっ?」

 

夏凜は剣崎の言ってる事が理解できなかった。なにせ勝利すれば地球が滅ぶJOKERが80年前のバトルファイトの勝利者なのだから

 

「───馬鹿を言いなさい。さすがにそれは私でも嘘だとわかるわ」

 

「悪いが事実だ」

 

「では、なぜ私は生きている!?なぜ!貴方は生きている!?80年前のバトルファイトを見ていたなら貴方は死んでるはずよ!!?」

 

夏凜が剣崎の胸ぐらを掴んで思い切り叫び、訴えた

 

「それは……」

 

剣崎が言いにくそうに呟き、視線を落とす

 

「───俺がアンデッドになったからだ」

 

「───」

 

剣崎の言葉に夏凜は言葉を詰まらせた。そもそも人が不死身になるなどそうそうなれるものではない

夏凜はいつの間にか剣崎を掴んでいた手を離していた

 

「俺達の持つライダーシステムはアンデッドの力を使うものだ。そしてその強化フォームのキングフォームは元々カテゴリーK(キング)と融合するだけのものだった」

 

「カテゴリーK(キング)……」

 

その言葉も確か前に剣崎が口にしていた事を思い出す。後から聞いたがどうやらアンデッドの中でも特別強い奴の一体らしい

 

「だが、俺のキングフォームは違うんだ。13体のアンデッドと融合した状態になるためJOKERに近しい存在となる。そしてこのキングフォームを使い続けると……」

 

「JOKERと同じ存在になる……」

 

コクリ、と剣崎が静かに頷いた。つまりだ、剣崎がJOKERとなったことでバトルファイトの勝利者が消えたということだ

 

「つまり、まだバトルファイトは続いている、と?」

 

「ああ、JOKERは……いや始はお互いのために力を封印していた。だけど、この間のカテゴリーK(キング)の話では誰かが始に力を使わせたらしい……」

 

「誰かわからないのですか?」

 

「ああ。誰かが始に力を使わせたせいで、俺もだんだん抑えが効かなくなってしまう。統制者が俺に語りかけてくる……」

 

剣崎がそう呟いた。そんな様子を夏凜は見るとため息をついて剣崎を寝かす

 

「とりあえず、今はやすみなさい」

 

「ああ……」

 

夏凜の言葉を聞いて剣崎が再び瞼を閉じた

 

 

 

 

 

 

「───で?あれこれ一ヶ月経ったけど未だに進展がないってどういうことですか?」

 

「俺に聞くな」

 

コーヒーを飲みながら剣崎が嫌々と答える

 

「BOARD研究所の跡地から持ってきたアンデッドサーチャーが反応しないから仕方ないだろ!」

 

「そもそも80年以上前の代物を使わないとレンゲルも探せないとはどうなんですか」

 

剣崎がディスクを取り出して夏凜にヒラヒラと見せる

 

「じゃあ、なんだ一空にこれを渡して最新型にでもしてもらうか!?」

 

「むしろそっちの方が信頼性が高い」

 

「あーあ、わかったよ!じゃあ、渡してこいよ、一空に」

 

「なぜ、私が渡さないといけないのですか?」

 

「お前の方がアイツと付き合いが長いだろ!?」

 

「だからと言って私が渡しにいく理由になりませんが?」

 

「くっ……この女!?」

 

三日に一回はあると言っていいほどの剣崎と夏凜の口喧嘩。一時期はお互い別行動をしていた時期もあったが結局、ここに戻ってきたらしい

お互い、レンゲルが見つからずに苛つき始めていることもあった

 

「はぁ、さすがにこの任務───」

 

ピピピピピピピッ、と夏凜の言葉を掻き消すようにパソコンのアラーム音が鳴り響く

 

「───!」

 

剣崎が急いでパソコンを開く

 

「この反応はレンゲル!?しかもかなり近いぞ!!」

 

剣崎が慣れた手付きで操作し、中身を確認した

そしてすぐさま寮を出ていった

 

「───はぁ、仕方ありません」

 

夏凜も剣崎の後を追うように寮を出ていく

 

 

 

『───』

 

レンゲルは何かを待つように静かにその場に立ち尽くした

 

「レンゲル!!」

 

ブレイドへと変身した剣崎が思い切りブレイラウザーを振り下ろす

 

ギィン!と二人の仮面ライダーの間に火花が散った

 

「ウェイ!」

 

お互いの武器に弾かれ、一歩後退する。だが、ブレイドはさらに踏み込み突きを放つ

 

それをレンゲルは避けるように上半身を逸して剣先を躱す。そして手に持つ醒杖レンゲル

ラウザーを横に薙ぐ

 

レンゲルの攻撃範囲内にいたブレイドはそのまま後ろへ吹き飛ばされる

 

『───』

 

その様子を見てレンゲルが腰へと手を伸ばす

 

(───今っ!!)

 

直後、レンゲルの背後から夏凜が襲う。

 

『───!?』

 

レンゲルは振り向くもハンマーが懐に食い込み、そのまま横へと吹き飛んだ

 

「夏凜!?」

 

「これでこの間の借りは返しました」

 

夏凜がそう呟いた。それはブレイドに言ったのかレンゲルに言ったのかわからない

 

「立ちなさい、ブレイド。レンゲルはまだ生きてる」

 

夏凜がブレイドの元まで来て言い放つ。ブレイドは静かに頷いて立ち上がる

 

《───REMOTE》

 

レンゲルラウザーの機械音声と共に立ち上がる煙の中から新たにアンデッドが姿を現した

 

像の始祖でもあるエレファントアンデッドは走りながら鉄球を投げ飛ばす

 

「───つっ!」

 

放たれた鉄球は目にも止まらぬ速さで夏凜に直撃する

 

「夏凜!!」

 

ブレイドが吹き飛ばされる夏凜を見て叫んだ。だが、ブレイドに助けに行かせる隙を当てえないかのようにレンゲルがブレイドを襲う

 

振り下ろされたレンゲルラウザーを間一髪のところで剣崎が避けた

 

「っ!」

 

お互いが睨み合い武器を構え合う。お互いが攻撃し合う瞬間を狙って待機した

数秒、二人の仮面ライダーが同時に動いた。お互いの武器がどちらも動きを捉えた

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

夏凜が迫りくる鉄球を器用に避けながら段々とアンデッドへと近づく。

傷一つつかない不死身の体に対して圧倒的な怪力を持つ像の始祖のアンデッド

 

お互いが自分の特性を持ってぶつかりあった

 

「なっ!?バリアっ!?」

 

迫りくるハンマーを障壁で防ぐアンデッド。夏凜は驚かざるおえなかった

 

『───』

 

アンデッドが夏凜を睨むとそのまま右手で彼女の首を掴み、そのまま地面へと叩きつける

 

「かっ!!」

 

ひび割れる地面に対して傷一つつかない彼女の体

 

(どうにかしてこいつを倒さないとっ!!)

 

彼女は目前のアンデッドを見て対策を考える。バリアをどう破るかそしてこのアンデッドをどうするか、と

 

『───』

 

彼女の体を持ち上げ何度も何度も左手で殴り付ける。それも四発や五発ではない。その三、四倍だ

 

『───っ!』

 

不意にピクリ、とアンデッドの動きが止まった。まるで強力な力をを察知したかのように彼女を殴る手を止めた

 

(───今だっ!)

 

直後、夏凜の体が光に包まれ輝いた。彼女の神聖魔法だ

 

「この距離ならバリアは張れないわね!!」

 

夏凜の左手で掴まれたアンデッドの腕を握り潰す。そしてさらに大きく踏み込む

その距離はほぼ零距離だ

 

───白光の拳(ホーリー・フィスト)!!

 

眩い閃光の一閃がアンデッドの体を貫いた。アンデッドはそのまま遙か後方へと吹き飛ぶ

いくつもの壁を突き破り工場の跡地へと転がった

 

「…………」

 

夏凜の体から光が消え、ビシヒシとアンデッドへと近づいた

 

だが、そこで夏凜も何かに気付いた。

 

「───っ!」

 

夏凜が背後へと振り返る。そこには新たな仮面ライダーがいた

 

赤いハート型の複眼にそこから生えた二本のアンテナ。黒と白の二色の装甲を纏った戦士だ

 

『…………』

 

その戦士は腰から一枚のカードを取り出した

 

『───JOKER……』

 

「なっ!?」

 

今まで黙っていた、エレファントアンデッドが始めて口を開く

 

『…………』

 

だが戦士は夏凜の背後のエレファントアンデッドを睨みつけたまま近づき、シュッとラウズカードを投げる

 

カードは吸い込まれるようにアンデッドの体へと刺さり封印に成功した

 

「これがJOKER……」

 

エレファントアンデッドを封印したカードをキャッチした戦士を夏凜は見た

 

『───ブレイドはどこだ……』

 

戦士は夏凜に聞いたわけでもなくそう呟いた。まるで操られているかのように探しているようにも見えた

 

「待ちなさい」

 

夏凜が武器を構えて、戦士へと声をかけた。スッ、とゆっくりと振り向いて夏凜を見る戦士

 

「───貴方はここで倒します」

 

そう言って夏凜がジェット機のように吹っ飛んだ。そしてそのままハンマーを戦士へと振り下ろす

 

『───俺の邪魔をするなぁッ!』

 

まるで拡声器のように声を発して、右手に刃のついた弓を展開させ攻撃を受け止めた

 

そして、流れるような動作で夏凜に蹴りを入れた。

 

「───つ!」

 

《───BIO》

 

《───TORNADO》

 

《───CHOP》

 

三枚のカードを弓にスライドさせアンデッドの力をラウズさせた

 

「───なっ!?」

 

弓から植物が発生し、そのまま夏凜の体へと巻き付き、身動きを封じられる

さらにそれだけではない

戦士が手刀を構え、その手には力が収束される。その手には小さな竜巻を纏い、夏凜を睨みつけた

 

『───』

 

そしてそのまま薙ぐかのような横一文字の手刀

が夏凜の体に叩き込まれた

 

「───がぁッ!!!」

 

当然、夏凜には傷一つ付かなかっただが彼女はそのまま遙か後方へと吹き飛ばされる

 

(さすがに厄介ね……!)

 

夏凜は立ち上がり戦士へと睨みつける。そして新たにカードを取り出した

そして戦士は弓にカードをスライドさせようとした時

 

『───っ!!?』

 

戦士の体が横へと吹き飛んだ

 

「おっし、不意打ち成功!!」

 

黒い髪の少年が黒い刀を肩に乗せ、拳をグッと握りしめた

 

「近衛 刀太。なぜここに……」

 

「夏凜先輩!大丈夫か!?」

 

夏凜の呟きに答えず刀太は夏凜の方へと駆け寄った

 

「ええ、私がこの程度で死なないのは貴方も知っているでしょう?それより、あの戦士の方は……」

 

夏凜と刀太が吹き飛ばされた戦士を目でのおった。

立ち上がる煙の中、人影が見えた。

 

「生きてる!?」

 

《───FLOAT》

 

戦士が新たにアンデッドの力をラウズさせた。そしてその力はすぐに現れた

 

カリスの体が宙を浮き、そのまま空の彼方を消えていった

 

「───しまった!?」

 

夏凜が追いかけるように走り始めた。それを見て刀太も彼女の後を追った

 

「───夏凜先輩!?」

 

「近衛 刀太、急ぎなさい。早くアイツを止めないと世界が滅ぶわ!!」

 

「世界が滅ぶ!?何をいってんだよ!!」

 

 

 

 

 

《───ABSORB QUEEN》

 

《───FUSION JACK》

 

 

ブレイドとレンゲルの戦いが終わろうとしていた。ブレイドが左腕に装着したラウズアブソーバーに二枚のカードをラウズさせる

 

直後、ブレイドの体が光に包まれ一部が黄金の鎧へと変化していった

背には六枚のオリハルコンウイング・フライトと呼ばれる飛行ユニットが装備されており、胸には鷲の紋章が刻印されていた

 

「はァァァっ!!」

 

ブレイドが宙に舞い、いくつもの斬撃をレンゲルに食らわせた。だが、彼の攻撃でこれで終わることはなかった

 

《───THUNDER》

 

《───SLASH》

 

二枚のカードがラウズされ、彼のブレイラウザーに力が宿る

 

《───LIGHTNING SLASH》

 

バチバチ、と彼のブレイラウザーに稲妻が走り力はより一層なものになる

 

「───ウェェェェェェェェェイッっ!!!」

 

雷を纏った斬撃がレンゲルを襲う。高々度からの無慈悲なる斬撃がレンゲルの体を引き裂いてそのまま爆発へと至る

 

「ハァ、ハァ……ハァ……」

 

ブレイドが着地するとそのまま変身を解いて本来の姿に戻る

剣崎がレンゲルの正体を確かめた。

だが、そこには何もない。黒い人型の炭が残っているだけだった

 

「どういうことだ……?」

 

剣崎が眉を寄せてその場所をよく見た。さすがに変身者まで殺さないように手加減はしたつもりだ。それにレンゲルのベルトもない

 

───キィィィンッ!!

 

そんな中、剣崎の頭の中で何かが感じ取る。唐突な出来事に一瞬だけ頭を抑えた

カッ、と目を見開いて剣崎は振り返る。剣崎が見た先にいるのは白いロングコートを着た茶髪の男だった

 

「───始……」

 

「───剣崎……」

 

お互いの名を呼び合う二人。Double JOKER(二体のアンデッド)。80年前のあの日、別れて以来お互い静かに過ごしてきたはずだった

お互いの視線が交錯する。片方は怒りにもえ、片やまるで生気を失ったかのように

 

「始、俺はお前のために自分の力を封印してきたつもりだった……お前が封印を破った!」

 

剣崎が目の前の男、相川 始に向かって叫んだ

 

「どうしてだ、始!!」

 

「剣崎、すまない……」

 

始がそう言って一枚のカードを取り出した。蟷螂(カマキリ)の絵が書かれたハートのAだ

そしていつの間にか始の腰に出現するハート型の装飾が飾られているベルト

 

「始……」

 

剣崎も一枚のカードを取り出した。甲虫(カブトムシ)の絵が書かれたスペードのA

剣崎はそのカードをバックルへと挿入し腰へと巻き付きた

 

お互いが睨みあって一拍子、お互いが口を開いた

 

「「───変身!!」」

 

《───Tern Up》

 

《───Change》

 

お互いが戦士の姿へと変える。

 

スペードとカブトムシをモチーフにした剣を持った仮面の戦士『仮面ライダーブレイド』

 

ハートとカマキリをモチーフにした弓を持つ仮面の戦士『仮面ライダーカリス』

 

再び出会った宿命の二人は衝突し合った

 

 




??「この距離ならバリアは張れないな!!」(零距離射撃)

TQホルダー・不死身衆(ナンバーズ)No13

剣崎 一真
不死身歴およそ80年。不死身の元ネタは様々な生物の始祖であるアンデッドの一体とされている
そして80年前に話題となった仮面ライダーの一人でもある
封印したアンデッドの力を使うことができる仮面ライダー
三太より少し後に加入している
13番目という事はそういうこと(13枚のカード



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