メイド悪魔に愛されて (早見 彼方)
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メイド悪魔に愛されて

 深紅の絨毯が床に敷き詰められ、素人目で見ても一級品とわかる調度品によって飾り立てられた部屋。俺のために用意したそうだが、正直好みには合わなかった。高い天井から吊り下がるきらびやかなシャンデリアといい、やけに広い空間といい、無駄が多すぎる。

 唯一気に入ったのは、部屋の中心に置かれた目を引くほどの大きなベッドだ。必要かどうか怪しい天蓋が付いているものの、その大きさは魅力的。ぐっすり眠れることは間違いないだろう。

「お気に召しましたでしょうか?」

 部屋を見回していた俺の横で、青と白を基調としたメイド服姿の女が口を開いた。メイドらしく慎ましい態度を見せながらも、人妻としての色香が匂い立つ。三つ編みにした銀色の髪から漂う甘い香りと混ざり合って、俺の男として本能を刺激した。

 メイド、グレイフィア・ルキフグス。一見したところでは人間の美女だが、実は人間ではなく悪魔と呼ばれる存在だ。普段は人目につかないように隠された悪魔の翼を見せてもらい、過剰に驚いてしまったのは記憶に新しい。

 悪魔のような、前世では空想上の生物がこの世界には大勢いるらしい。天使や堕天使は勿論、妖怪なども存在する。随分と物騒な世界に送られたものだと頭を悩ませる種となったが、悪いことばかりではない。

 グレイフィアと向き直って、視線を正面から向ける。

「いかがいたしましたか?」

 元いた世界では見たことがないほど整った顔立ちと、メイド服の胸元を内側から押し上げる豊かな果実。ロングスカートに隠された足を想像し、ごくりと生唾を呑む。俺の不躾な視線を受けてもグレイフィアは嫌な顔一つ浮かべず、むしろ俺に対する忠誠度の高さが感じられる眼差しでじっと俺の言動を待っていた。

「いや、何でもない……。それよりも……」

 部屋をもう少し庶民的にしてもらう要求は後にして、今は他に求めるものがあった。

 俺は持ち上げた右手を恐る恐るグレイフィアに伸ばした。その手は何にも遮られることなくグレイフィアの胸元に近づくと、俺の遠慮のない接触を許した。俺の大きな手にも余る大きさの乳房を服の上から鷲掴み、服に皺を作りながら中に収まる乳房に指を埋没させていく。

「お、おぉ……」

 想像以上の柔らかさに思わず声が漏れる。形を歪めていく胸から感じる人の温もり。偽物ではなく本物で、これほどの美しい胸がこの世にはある。触れてはいけない芸術品を自由に弄ぶような背徳的な興奮を俺が味わう中で、グレイフィアは揺らぎのしない微笑みで俺を愛おしそうに見つめていた。

「……お気に召しましたでしょうか?」

 先ほどと同じ言葉でありながら、その声に含まれた熱量は異なっていた。敬愛する主人の手に胸を掴まれる。下僕としての歓喜を表情から消すことはできても、声からは完全に隠すことはできていなかった。

「凄いな、これは……」

 俺の素直な言葉にグレイフィアは肩をわずかに震わせると、綺麗な声音を響かせた。

「どうぞご自由にお楽しみください。私の体は、髪の毛一本に至るまでご主人様の所有物です。ご主人様の『転生特典』の一つに選ばれた名誉に恥じぬよう、精一杯この体でご奉仕させていただきます」

 ドクンッ、ドクンッ。乳房に埋まった指を伝ってくる心臓の鼓動と、グレイフィアの宣言が現実味を帯びて俺の耳に入ってくる。さっき別室でグレイフィアから受けた説明に説得力が増し、これはやはり夢ではないのだと俺に悟らせた。

「やっぱり、俺は一回死んだのか……」

 俺はグレイフィアの胸から手を離し、小さく呟きながら肩を落とした。

 俺は交通事故というあり触れた死を迎えるまで、こことは別の世界で二十数年の時を生きてきた。あまりよい人生とは言えなかったが、実際失ってしまうと寂しいものだ。両親を早くに亡くし、友人や恋人もいない寂しい生活であってもそう思えるのだから不思議だ。

 少しの間寂寥感に浸っていると、正面から抱き締められた。

 グレイフィアだった。俺がこの世界に訪れた際に転生特典なるご褒美として与えられたらしい女。会った記憶はないが、グレイフィアの口から語られた神と名乗る存在によって俺はこの世界に送り込まれ、目覚めた直後にグレイフィアに出会った。

『初めまして、ご主人様。私はグレイフィア・ルキフグスと申します。本日より、ご主人様のお世話を任されることとなりました。ご主人様の転生特典として、また、下僕としてご主人様に永遠の時を楽しんでいただけるよう尽力いたします』

 恭しく頭を下げ、俺に笑いかけたグレイフィア。そのグレイフィアが俺の体を抱擁し、子を慰める母親のように頭と背中を撫でてくれる。驚きよりも先に安心感が胸に広がり、俺はグレイフィアよりも大きく筋肉質な体を縮こませて委ねた。

「大丈夫」

 耳元で囁かれた声は、過剰な甘さを含んでいた。

「ご主人様は私が幸せにしてみせます」

 それは俺の意識を誘い、絡め取るような逆らい難い強制力を伴っていた。

「私にお任せを。ご主人様の楽園を築いて差し上げます」

 その言葉が紡がれた直後、俺の唇が何かに塞がれた。

 何が起こったのかすぐにはわからなかった。瞬きを繰り返しているうちに、眼前にグレイフィアの顔があることに気がつき、その唇が俺の唇に宛がわれたのだと理解した。そのときにはもう俺の口内に舌が入り込んでいて、中を掻き回された。

 息が出来ない。呼吸を忘れていた俺は鼻で息を吸い、グレイフィアの甘い匂いで肺を満たした。弛緩してしまうような心地のいい匂いに心を解され、口中で唾液が触れ合う音で耳を犯される。

 舌が口内を自由に動き、擦る度に背筋が震えた。何もできないまま舌を絡め取られて、握手の要領で何度も接触を果たす。グレイフィアの口から漏れる熱い吐息と声が追撃のように俺の意識を犯し、甘美な快楽をもたらしてくれる。

 湿った音が室内に響き続ける。

 どれだけ繋がっていただろう。グレイフィアの顔が離れたと思ったときには、口の中は唾液で満ちていた。こぼさないように口を閉じた拍子に呑み下してしまった俺の前で、グレイフィアも唾液を飲みこんで舌なめずりをしていた。

 それを見た瞬間、わずかに残っていた理性が弱まっていくのを感じた。急速に狭まる視界の中で、俺はグレイフィアに向かって手を伸ばすのを他人事のように見ていた。グレイフィアの手を引いてベッドに連れて行き、広く柔らかいそこに押し倒す。

 銀色の髪をベッドに広げ、ロングスカートから艶めかしい足を覗かせたグレイフィア。それを確認した直後、俺は獣と化した。着ていた衣服を脱ぎ去って、グレイフィアに襲い掛かる。

 メイド服と下着を引き裂き、曝け出された女体。綺麗な丸みを形成した乳房に顔を近づけ、桜色に染まる頂を口に含む。ツンと立っていた乳首を唾液に濡れた舌で弄り、吸っても出ないはずの母乳を求めて吸引を続ける。

 すると、乳首を通じて口の中に程よく甘い液体が広がった。まさか、と思って視線をグレイフィアに向けた俺に対して、グレイフィアは「母乳が出るように肉体を改造いたしました。神から譲り受けた力を使って」と告げた。

 神というのはどれだけ万能なんだ。場違いな感想を抱いたのは一瞬のことで、俺はグレイフィアの母乳をひとしきり味わった。本来俺のような大人が飲むはずのないそれで喉の渇きを満たす。

 ふと、グレイフィアが人妻で子持ちであることを思い出した。グレイフィアの口から説明されて知ったのだが、本当にこのままグレイフィアを味わってもよいのだろうかという思いが脳裏を過る。

 俺は胸から顔を上げ、グレイフィアの瞳を見た。

 グレイフィアは何も言わない。長年待ち焦がれていた恋人との逢瀬を叶えた女のように、穏やかな歓喜以外の感情を浮かべていない。不貞に対する罪悪感も、子に対する遠慮も何もない。

「どこでも、ご自由にお使いください」

 グレイフィア自身の許可を得たのだ。何をしても構わないだろう。俺は人妻を自分の手で汚すことに強い興奮を覚えつつ、グレイフィアの股間へと場所を移した。

 引き裂かれたロングスカート。そこから生足が覗く。適度な肉付きのある太股を撫で、すべすべとした触感を満喫し、やがて両足を開いて股の付け根に顔を寄せる。

 黒く、下着にしては頼りない薄い生地のショーツの隙間から見える陰部。そこを隠す陰唇を指で左右に開くと、子を産んだとは思えない鮮やかなピンク色が視界いっぱいに映り込んだ。

 思わず見惚れ、息を呑んだ直後には、俺はグレイフィアの陰部に口をつけていた。

 舌をしならせるように動かし、陰部全体を何度も舐め回す。自分がここに触れた証を残すようにマーキングをし、満足感に浸りながら次のマーキング場所を求めて膣口に舌を滑らせる。

 狭いその穴に舌先をねじ入れ、中を直接舌で擦る。角度を変えて、唾液の量を増やして中を汚し尽くす心持ちで掻き回した。時折漏れるグレイフィアの艶っぽい声を聞きたい一心で舐め続ける。

 徹底的に舌で犯し、後に残ったのは唾液に濡れた陰部だった。その中心でヒクヒクと動く膣が何かを欲しがっているように見えて、俺はもう居ても立っても居られなくなった。

 体を起こし、グレイフィアの開いた両足の間で膝を突く。股間で痛々しいほど勃起した肉棒を左手に握り、体の位置を前へ前へと動かしながら亀頭の先端を膣口に触れ合わせた。

 いいか、などと確認を取ることはしない。

「私の中に来てください」

 俺はグレイフィアに促されるままに腰を前に突き出した。柔らかく熱を帯びた肉を掻き分ける。狭い空間に入り込む俺という異物を歓迎しつつ、絡みつくような刺激に舌を巻いた。ざらざらと肉棒の表面を襲う繊細な刺激もあって興奮が一気に高まる。

 油断すればすぐに出してしまいそうだ。俺は体に力を入れて欲望を抑え、グレイフィアの最奥へと自分の分身を侵入させた。

 膣穴に根元までその姿を隠し、膣肉の熱い抱擁を受ける肉棒。気持ちいい。ずっとこうして繋がっていたい。自然と浮かんだ想いにしばらく体が動かず、グレイフィアに折り重なるようにして抱き着いた。

「少しずつ、動かしてみましょうか」

 耳に入ってきたグレイフィアの声に誘導され、俺は腰を動かした。

「1、2、1、2。そう、お上手です……」

 蕩けてしまいそうな意識の中で、俺は一定の速度で上下に腰を振った。亀頭が膣から抜けきらないギリギリまで腰を引き、勢いに任せた突きを膣奥目掛けて繰り出す。ズンッ、ズンッと上から圧迫する乱暴な動きだが、グレイフィアは喜んでいた。

「ご立派ですわ、ご主人様のおチンポ。夫の矮小なそれとは全然違う」

 他人棒を受け止め、夫を蔑むグレイフィア。並々ならぬ優越感が表出して、腰の速度が次第に上がっていった。セックスに不慣れな身が適応し始め、グレイフィアの体に自分の臭いを擦りつけようと躍起になっている。

 参考にしてはいけないと思いながらも、アダルトビデオなどで見る激しい種付けプレスを行ってしまった。これは女を苦しめて男だけが喜ぶ一方的なセックス。そう思う一方で、苦しさなど微塵も表に出さないグレイフィアの賞賛の声を受けて調子に乗ってしまう。

「素敵です、ご主人様」

 心の底から喜びを示すグレイフィア。

「不要かとは思いますが、こちらからもサポートいたします」

 俺の首に両手で抱き着き、腰に両足を巻きつけてくるグレイフィア。

「ご主人様が望まれるのでしたら、いつでも股を開かせていただきます。ご主人様の精液をキッチリと子宮で受け止めます。ご主人様のご希望の数だけ子を孕み、産んでみせます。ご主人様を邪魔する者は全員始末いたします。ですからご主人様、どうかこれからも私をお傍に置いていただけないでしょうか」

 俺が喜ぶ言葉を連ね、女神のような美貌で笑いかけてくるグレイフィア。

 もう何も考えられなかった。グレイフィアと舌と舌を絡ませ、唾液の味を二人で共有しながらプレスを続ける。肉と肉が接触する音が遠くに聞こえる。互いの瞳に相手を映し合い、舌同士で唾液を使った遊びに興じ、グレイフィアの口に溜まった唾液の塊が舌を滑って喉奥に消えていったときだった。

 突き抜けるような快楽。それは俺がグレイフィアの子宮口に亀頭を押しつけたときに訪れた。あまりにも強いそれに抗うことなどできず、俺はグレイフィアを抱き締めて呻き声を上げる。

 出ている。肉棒が痙攣し、信じられないほど大量の精液が尿道口から膣内に拡散した。この感じでは子宮が精液で満たされるのではないか。これまで味わったことのない射精に頭がおかしくなってしまいそうだった。

「勝手ながら、ご主人様のお体を弄らせていただきました。これで、常人では体験できない射精が可能です。あぁ、ご主人様。無礼をお許しください。代わりと言ってはなんですが、新しい母胎を差し上げます。ご主人様に忠実な下僕に仕立て上げますので、性欲処理用の肉便器として、子を産む母胎として自由にご利用ください」

 水中に潜っているときのように、グレイフィアの声がくぐもって聞こえた。意識は霞みかけ、いつ気絶してもおかしくない状態に置かれていた。

 もう、何でもいいか。グレイフィアの腹を膨らませるほどの尋常ではない射精を続け、俺は快楽に屈した。グレイフィアの言うとおりにして生きていこう。この人は俺の味方だ。この人の傍にいれば、俺は何の悩みも抱かなくていい。

「これからも、どうぞよろしくお願いいたします。永遠に……」

 その言葉を聞き届け、俺は意識を手放した。



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