織田3大軍師と恐れられた男〜女性ばっかの戦国時代で種子島で成り上がる (焼肉定食)
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戦国時代へ

目が覚めると俺、高校二年生の少年。伊藤浩介は戦場にいた

 

「は?」

 

もう一度言おう戦場にいた

 

「待て。何でだよ。ここはどこだ?ってやばいとりあえず隠れるか。」

 

そして少年何故か冷静だった。元々冷静に周りを見る性格であるが死の恐怖からかしらないけど逆に冷静になっていた。

……というかこれ本当に戦国時代みたいだなぁ。

回避をしながら周辺を見回す。

僅かに盛り上がっているから多分伏兵がいるのだろう。

家紋を見ると織田家と今川家の戦い。

それも小競り合い程度だろうか。

 

「……タイムスリップか?いや。俺元々大阪にいたんだけどなぁ。ここどう見ても……愛知の尾張だよなぁ。」

 

俺はそしてゆっくりと考え

 

「まぁいっか。面白そうだし。」

 

考えるのを放棄した。

もう一度言おう。この少年は目が覚めたら戦場にいたはずなのだ。

いたはずなのにもはや順応している

 

回避しようとして兵に攻撃し日本刀を奪って人を殺すことにも躊躇はしない。

少年は何故か剣道もしてないのに剣については名の無き武将くらいにはあった

 

……つーか頭が冴えているな今日。

危機感を覚えていたからか妙に脳を情報が入ってくる

俺は分かっていた

 

……これ逃げる方が死ぬだろうと

そうやって横にそれながら

それならば適当に戦ってとりあえず陣地を捜索するか。

そしてとりあえず俺は適当に切り捨てながら近くの川へ向かう。

旗の形は今川か?

 

「……ふ〜ん。」

「何しているのでごじゃるか?」

「ん?」

 

すると忍と思われし人とであう。くノ一なのかわ木の上からその現状を見た。

 

「ん。なんか知らんけど騒がしいなと思ったら戦場にでくわしたからな。見学しているんだよ。」

「見学でごじゃったか。」

「そう。つーか寝て起きたらな。まぁ旅人だよ。適当に生き延びているな。」

 

俺はのんびりと見守る

つーか遠目で見ていると女性が兜を被っているな

もしかして男女

 

「……今川軍の負けっぽいな。しばらく見ていると地味に押されているし。」

「そうじゃのう。そういえばお主は。」

「伊藤浩介。ただの旅人。まぁ資金が尽きて困っているんだけどな。だからそろそろちゃんと居座ろうと思っていたのだけど。」

 

俺は適当にごまかす。未来からやってきたとか信用されないだろうしな。

 

「まぁこれじゃあ織田に使えた方がいいかな。あんまり待遇は良さそうじゃなさそうだし。」

「ほう。それなら拙者の相方も連れて行ってくれないでごじゃるか?」

「相方?まぁいいけど。えっと。そういえば名前は?」

「拙者でござるか?拙者の名は、蜂須賀五右衛門でござる。」

「……」

 

聞き覚えがある。確か豊臣秀吉の部下だったよな?

確か川並衆の頭領だっけか

まぁ折角だし秀吉に使えるのもまた面白そうだし少し行ってみるか

 

「ん。んじゃ案内してくれ。ついでに織田陣地をその後俺たちは少しずつ近づいていこうぜ。」

「うむ。ところでお主は何ができるのでござるか?」

「俺は簡単な知略と内政だな。あんまり武力は得意じゃないし。頭を使う方が圧倒的にやりやすい。」

 

どちらかというと社会と数学系が得意だしなぁ

そうしながら適当に進んでいくとグスグスと泣き声が聞こえる

 

「ん?」

「……うむ。何かあったのじゃろうか。」

 

と俺はそこに向かうと

サル顔のおっさんが倒れているところだった。

 

「っ。どいて。」

 

俺は脈をとるがすでにない。

目の瞳孔を確かめるが焦点が当たっていないことから死亡したのかと考えられる。

死因はおそらく銃弾による大量出血の可能性が高いだろう。

 

「ダメだ。」

 

俺は首を二回横に振りなくなっていることを告げる。

 

「そうか。木下氏が死んだか……南無阿弥陀仏、でござる。」

 

すると五右衛門は少し残念そうに呟いた

 

「拙者の名は、蜂須賀五右衛門でござる。これより木下氏にかわり、ご主君におちゅかえするといたちゅ」

「あ〜俺は伊藤浩介。浩介って呼んでくれ。」

 

俺は少し苦笑してしまう。

 

「浩介?もしかして俺と同じ」

「ん?」

 

すると同じく学生服を着た人がこっちを見る。

 

「おう。多分な。」

「……ところでここは?」

「尾張と三河の間だと思われる。ってそういう暇はねぇだろ。その話は後だ。とりあえず織田側に向かうぞ。」

「お、おう。ところでそちらの人秀吉……じゃなくて、藤吉郎さんの友達か?」

「相方にござる。足軽の木下氏が幹となり、忍びの拙者はその陰に控える宿り木となって力を合わちぇ、ともに出世をはたちょう、そういう約束でごじゃった。」

 

なるほど。聞いたことがある。

木下藤吉郎と蜂須賀五右衛門

それは幼い頃からの友人関係であるのもそうだ。

 

「てか、三十文字ぐらいが限界なんだな。」

 

男が言うとマスクの下で五右衛門の顔がポッと赤くなった

 


「う、うるさい。ご主君、名をなんと申す?」

「相良良晴。」

「では拙者、ただいまより郎党“川並衆”を率いて相良氏と伊藤氏にお仕えいたす。」

「それはありがたい話だが、俺は一文無しで帰る家もない。お給料とか出せないぜ。」

「だから織田家に行くんだろ?折角だしおそらく同郷の人間だろうしな。俺も頭脳面では少し知恵が回る方なんだ。」

「うーん。藤吉郎のおっさんなら仕官できるだろうけど、俺はこっちの世界じゃ完全に身元不詳なんだよな……」

 


ふふふ、と五右衛門が忍び笑いを漏らした。

 

「相良氏、伊藤氏の髪の毛を一本いただく。」

 

五右衛門は相良の頭から髪を一本引き抜くと、胸元から取り出してきた藁人形の中にその髪を詰め込み始めた。

 


「え、なに? 俺を呪うの?」

「違うでござる。我が宿主になっていただく契約でござる」

 

ほへ〜そんな方法なんだ。忍者の主なやり方は理解はしているが

 

「相良氏には、わが幹として是非とも出世していただく。それがきのちた氏とのやくちょくであろう?」

「ああ、そうだ。それがおっさんとの約束だ。わかった、織田家に仕官してみせる」

 

木下藤吉郎はなくなり
歴史は、変わった、つまりは知識が役に立たないかもしれない。

 


「相良氏、伊藤氏合戦はまだ続いている。織田家の旗竿を持って槍働きをするがよい。」

「ああ。槍なんて使ったことねぇけど、やってやるよ。」

「ふふん。木下氏が見込んだだけのことはある。若いのになかなかの御仁だ。」

「そんな大層なもんじゃねぇよ。ただバカなだけだ。」

「ふふ、同じことよ。」

 


いや、違うと思うけど

五右衛門は俺がツッコミを入れる前に九字を切り、木の葉を舞いあがらせると同時にいずこかへと消えていた

これは、れっきとした現実。戦に敗れれば、逃れられない死が訪れる

だったら、情けない悲鳴をあげてる暇なんでどこにもない

 

「とりあえず行くぞ。さすがに安全地帯を確保するのが先決だ。」

「おっさん。あんたの夢、確かに俺が継いだ。声は弔い合戦だぜ。うおぉ!!!」

「……聞けよバカ。」

 

俺はため息を吐く。


これが未だに伝説になるととは誰も予想をしていなかった。



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仕官

「よっと。」

「うわぁぁぁぁ。」

「……大丈夫か?」

「すまない。助かった。」

「一点突破するから気をつけろよ。とりゃ。」

 

奪った刀はカ〜ンといい相手の刀を弾く

 

「お前よくできるな。」

「視線や重心。基本的分かりやすい奴ばっかだ。これくらいなら余裕だな。さすがに種子島や弓は無理だけど。」

 

と軽く脳を効率良く働かせていると

 

「皆の者! 勇気を奮い起こせ、あと一押しだ!」

 

馬に乗った鎧武者が、前線に出て兵を鼓舞した

一気に敵前線を崩す好機と判断した騎馬隊の突撃合図だろう

 

「足軽ども! 誰か本陣へ戻り、ご主君をお守りせよ!」

 

本当に欲しかない連中だな。

俺たち以外は戦場に夢中で本陣には関心がないらしい

 

「とりま本陣に向かうか。」

「お前本当に現代日本から来たのか?」

「東京の少し離れの出身だよ。でも俺の爺さんの家が昔武家の屋敷で職業が猟師だったから刀と鉄砲くらいは少し扱ったことがあるけどな。」

「いや。それ普通じゃないから。」

「冗談だ。」

「……ふぅ。やっぱり。」

「後あとはサバゲーで鍛えた現代銃とサバイバルナイフもだ。」

「てめぇガチで軍人じゃねーか。」

 

と話しながら進んでいる。まぁ事実だったりするのだが。特にギャグにとられているのだったらそれでもいいだろう。

すると馬に乗っている豪華な兜をかぶった女子がいた。

 

「……」

 

こいつが対象っぽいな。おそらくこの世界の織田信長とあたる人物であろう。そう思っていると

 

「「「おおおおおっ!!」」」

 

そこに、いずこからともなく急襲してきた今川方の決死隊が切り込みをかけていた

 

「……はぁ。早速か。んじゃ行って来る」

「えっ?あっおう?」

 

俺は刀を振りかぶり突撃する

 

「んじゃ行きますか。」

 

俺は刀を振り下ろす一人を斬ると、幾度もなく人が集まってくる

 

「何?織田勢の新手だ。」

「たった一人だぞ。やってしまえ。」

 

あ〜面倒臭いなぁ

 

「ちょっと待った!!織田家に仕官するため、素浪人・相良良晴、ここに参上。」

 

と相良も俺の隣に並ぶ

 

「……とりあえず槍をぶん回せ相良。どうせお前は殺すことなんてできないだろ?」

「うっ。」

 

相手は槍を持っているぶん射程は圧倒的不利だ。

敵は一直線に突いてくるだけなので、狙っている場所さえ分かれば躱すのは容易である

だから近づくなんて簡単だよな

一瞬の隙を突き俺は近づくと一瞬で首を跳ねる

 

その時直ぐにその時、ぼむ、ぼむ、と破裂音を立てながら、足下で煙幕が広がった

視界が白い煙に覆われている中で

 

「ぐおっ」

「うわっ」

「ふぎゃっ」

 

と、今川兵たちの声から悲鳴が漏れはじめる

 

煙玉か。まぁさすがにこれ以上相手にしてたら手間がかかるしな

そして、煙が風に流されて俺の視界が開けると……

本陣を襲っていた今川の兵士たちは全員、俺の足下に失神して突っ伏していた

間違いなく五右衛門がやったのだろう

 

「ご主君、戦はお味方の大勝利です! ご無事でしたか!」

 

するとある部分が特徴的な勇ましい騎馬にのった武将がやってくる

すると不意にキャット言い出し隣の相良を見る

 

「な、なんだ貴様はっ? あ、あ、足軽の分際で、あたしの胸をじろじろと!?」

「あっごめん。こんな巨乳な子リアルでは初めて見たからつい。」

「……」

 

ジト目で相良を見る。こいつ初対面の人に胸をいじるとかどんな頭しているんだ。

 

「はぁ連れが悪い。というより織田家ってここであっているか?」

「えぇ。貴方は?」

「伊藤浩介だよ。一応織田家に一時的にお世話になろうかなって思ってきた。」

「あら私の元に?」

「いや面白い情報があったからな。お前、うつけに見せかけて天下を狙っているんだろ?」

「……あら、何故そう思うの?」

 

すると目つきが変わる。

 

「……それ。種子島だろ?俺でも戦をするときは今後は弓や騎馬ではなく種子島を使うのがいいと思う。」

「…何故かしら。」

「理由は二つ。一つ目は老若男女誰と伴わないで同じ威力は同じ。つまりはだれでもちゃんと戦力になること。そして2つ目は最短距離で最速で高火力そして城の守りに優れた武器ってことだな。」

「城の守りに?」

「あぁ。特に天井がついている城のまもりにはとことん相性がいいんだ。火縄銃は雨では使えない。それは火薬が濡れて使い物にならないからだろ?」

「えぇ。……えっ?もしかして。」

「あぁ。多分思っている通りだ。」

 

俺が少し苦笑してしまう。

種子島は防御に優れた兵器なのだ。

 

「……使用法の良し悪しで使い方だって変わる。俺はそういう考えを持っている。……織田家って今知将と呼べる人は丹波様以外いなかったよな。」

「うぐっ。」

「生憎俺も天下を目指すもの。目指すもの同士協力し合うって言うのが最善策だと思うけど?」

「……貴方の天下を目指す理由は?」

「……う〜ん。まぁ一つだけ言うのであれば平和かな。」

「平和?」

「身分とかくっだらないもんがあるから今の世の中があるんだろう?それなら全部平等にしてしまえばいい。違うか?」

 

俺の発言にギャーギャー騒ぎまくっていた人も俺の一言で黙り込む

 

「……六。絶対こいつを仲間にするわよ。」

「えっ?姫様?」

 

恐らく天下を目指すものとして見逃せない発言があったんだろう。

 

「……ありがたき幸せ。」

 

俺は軽くそう言ったきり引き下がる。これでしばらくは安泰だな。

その様子に俺は軽く笑うとこうべを垂れた。



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交渉(強制)

その後、相良が同じく士官しようと織田信長だと思われる人に士官しようとすると

 

「はぁ?信長って誰よ。私の名前は織田信奈よ。」

 

俺も名前が変わっているのは驚いたがそれでも、まぁこんなこともあるのかと俺は苦笑する

まぁ結局猿扱いされて飼われることになったんだが。

 

「これからどうするんだ?」

「あんたは敬語は?」

「生憎知略や戦略を伝えるときはそういうことが邪魔になるからな。生憎正式の場以外では控えさせてもらうぞ。」

「……それもそうね。しかし軍師希望ってことでいいの?」

「どちらかというと内政官よりで。戦場も出てもいいけどな。独学で結構やってきたけどな。ちゃんとした戦を学んだ人の意見も聞いておきたい。」

 

いくらか戦国ゲームをやってきたがちゃんとした戦場に出たことはない

 

「そうなのね。」

「親父の時からこうやってぶらぶら歩きながら戦場を遠目に見てたんだよ。今回巻き込まれただけなんだけど。親父の知略が面白くてな。よく合戦の勝ち負けを賭けていたんだよ。」

「ふ〜ん。それじゃあその親父さんの勝率は?どれ位よ。」

「十回やって一回外せばいい方じゃないか?俺も十回やって二回外せばいいくらいだし。」

 

 

と適当にでまかせを言っておくと

 

「んでそっちはどうなんだよ。次の予定は?」

「そうそう今川軍が邪魔をしたせいで、すっかり遅れてしまったわね」

 

俺たちが連れて来られたのは山奥の池の畔だった

 

「こんな池に何しに来たんだ?」

「ほらほら、いいからとっとと水を汲むの!」

「……は?」

 

俺はキョトンとしてしまう。

 

「お前何を言っているんだ?そうしたらこの辺りの水源はどうするんだよ。」

「あんた、ほんとにこのへんの者じゃないのね。この『おじゃが池』にはね、龍神が棲み着いてるって噂があるのよ。それで、これまで村人たちが池に人柱として乙女を沈めたりしてきたワケ」

 

人柱か。つまり神道と呼ばれるものの一つだろう。

 

「迷信深い村なんだな」

「まったく、神だの仏だのなんているわけないのにね。そんなもの、人間の頭の中に棲み着いてるだけの気の迷い、要は幻じゃん」

「幻でもしんじていればそれはその人にとっては本物だろうよ。」

「どういうことだ?」

「迷信でも伝記に伝えてあったり。宗教でも日本でも神道と仏教二つあるだろ?」

「……そうなのか?」

「お前知らなかったのか?昔今の清から伝わってきたのが仏教。そして神道は古代日本に自然発生的に生れたとされて今の天皇家にも大きく関わっているのが神道だ。言うなれば寺が仏教で神社が神道ってわけなんだよ。」

「「へぇ〜。」」

「……お前ら頼むから。それくらいの知識は持っていてくれ。」

 

俺がジト目で二人を見ると

 

「は、ほら、六の隣に女の子が立ってるでしょ? あれが今年の生け贄、人柱なワケ」

 

信奈が指さす先に、確かに青白い顔をして震えている和服の美少女が一人立っていた

 

「……あ、あの子を沈めるんだって、もったいない。」

「そうよ。だからわたしが、この村の愚民どもに教えてやるのよ。池の底に龍神なんて棲んでいないってね。でも、そのためには池の水を全部汲み出す必要があるでしょ?今川の連中が邪魔さえしなければ、大勢の男手を使って汲み上げられたんだけど……」

「汲み上げる必要はないだろ?」

「「えっ?」」

「つまりは助けることが目的なんだろ。それならちゃんと村人に命を賭けさせればいい。」

 

俺はばっさりいうと全員が俺を見る

 

「どういうことだにゃ?」

「だってあの子に命を賭けさせてまで龍神を信じているんだろ。というよりもここの家の水を抜くこと自体が間違えているんだよ。お前ら以外にもそのため池の下流にいる村まで全部この池から水を引いているんだろ?逆にあんたら年貢の取り立てに応じることできなくなるだろうが。」

「……あっ。」

 

信奈は少し驚いたようにしている。すると村人が目を伏せる。

 

「どっちにしろお前らはここの池の水を抜いてでも龍神がいると確かめたいのなら別だし龍神様がいる証拠を出してくれれば俺たち文句は言わない。言い伝えはあるけどこのままでいったら多くの女が死ぬ。もし、今のお前らは犠牲にならなくても、将来の娘が犠牲になるのかもしれないんだぞ。」

 

すると若者の目がするとハッとすたようにする

 

「それにあんたらだってそうだ。自分が犠牲にならないからって人を死なせていいのか?神の貢ぎで人柱はやめろ。これは命令だ。」

「しかし。」

「もしこれ以上ごちゃごちゃするんだったら、強制的にあの池の水を抜いてしまうぞ。……それでいなかった場合は池から流れている下流の村の危機にもなるんだ。……いたならば俺は切腹するけど、もしいなかった場合は懲罰を受けることを覚悟しろよ。」

 

俺は軽く殺気を出すと全員が黙りこんでしまう

 

「これにて人柱はやめろよ。もし今後やるようなら……しっかり罰則を受けることを覚悟すること。じゃあな。」

 

俺はきっぱり答えを出し踵を返す

 

「……これでいいか?」

「え、えぇ。」

「御触書にちゃんと神の貢ぎものに人柱を使うことの禁止を立てろ。貢物なんかイノシシや自分たちで作った作物やお酒とかでなんとかなるだろうが。」

「お前すごいな。あんな方法で村人たちを黙らせるなんて。」

「昔からのしきたりを重視しているだけであいつらは龍神を信じてはいないんだよ。信じていないけど昔からやっているだけで実際はいないと思っている。」

 

俺はため息を吐くと少女が近づいてくる

 

「あ、あの。」

「ん?」

「ありがとうございました。助けていただいて。」

 

あ〜礼を言いにきたのか

 

「……ん〜まぁ。あまり気にするなよ。こういうのは慣れているし。」

「い、いえ。それでも命を助けてもらったので。」

「……はぁ。……しゃーないな。まぁお礼は受け取っておく。」

「あの、お名前は。」

「伊藤浩介。」

「伊藤様ですね。あなたのお名前は一生忘れません。ではまたどこかでお会いしましょう」

 

と真っ赤にした頬を染めながら立ち去っていった

 

「くそ〜!!」

「相良。お前思ったことを口にするのをやめろよ。少しは考えてからもの言え。」

「……でも、いいことしたあとって結構気分いいわね」

 

まぁこれくらいの手柄だったらすぐにあげられるんだけどなぁ

 

俺は苦笑しながらため息を吐いた。



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正徳寺にて

「どうしてあたしがお前の面倒をみなきゃいけないんだ、まったく」

「てか俺がもう侍大将まで出世したのは少しおかしいと思わざるをえないんだけど。」

「……姫様は使えると思ったらすぐ様官位を与える方だ。……お前は認められたと言っていいだろう。」

「ふ〜ん。まぁ給金が増えるのは嬉しいんだけど。こりゃ家臣団が納得しないだろうよ。今日会った身元不明の男を急に侍大将にしたって。」

 

俺は少し胃が痛く感じる

 

「……まぁ成果をあげまくれば関係ないか。」

「お前な。」

「知将が少ない織田家であれば俺でも手柄を挙げられることは結構あるぞ。今の織田家に足りないのは兵の質と知将や内政要員だ。それに内戦も未だに終わっていないはず。……とりあえずそれをまず纏めるのが俺の仕事だろうしな。」

 

俺は本質を理解して一番の利益になることが優先だろう

 

「なあ勝家。信奈のやつ、蝮がどうこう言ってたけど何しにいくんだ?」

「あたしを呼び捨てするな! まったく、馴れ馴れしいサルだな。われらは今より美濃の蝮に会いに行くんだ」

「龍の次は蝮か……どういう妖怪変化なんだ?」

「違う。美濃の斎藤道三のことだろ?油売りの商人での武将で稲葉山城の城主。戦略に優れているからなぁ。信奈と相性が悪いだろうなぁ。」

 

相良が聞くと勝家と俺が答える。

そういうと俺たちは少しずつ進んでいき

 

「そろそろ正徳寺に着くぞ。サルと浩介は信奈さまのもとへ行け。片時も目を離すなよっ」

 

 

この対面の儀の結果次第で、信奈が道三の娘を義理の妹として迎えることができるかどうかが決まる

もしも信奈が相変わらずのうつけっぷりを見せれば、道三は失望して娘を渡すことを渋るどころか、この場で信奈を暗殺するかもしれない

しかし正徳寺の門前に到着したばかりの信奈は、相変わらずのうつけ姿だった

 

「あれ。あんた、まだいたの?」

「いたよ。なんでいきなり存在忘れられてんだよ」

「ついでに浩介もいるわね。あなたも正装に着替えてきなさい。先に行って購入しておいたわ。」

「あぁ。助かる。」

 

一応和服の着方は屋台でバイトをした時にならったのでなんとかなるだろう

 


「よっしゃー! 気合い入ってきたわよ!」


何で? バカなの? 死ぬの?


「……姫さま、道三どのはすでに本堂へと到着されているとの由」

 

小姓らしき小柄な女の子が、信奈に拝礼しながら報告した

 


「デアルカ。わたしも着替えなくちゃね」

「ん、着替えるのか?」


「なんであんたが意外そうな顔をするのよ、サル?」

「無駄だと思うけどな。馬子にも衣装いうしな。」

「お前本当に失礼すぎるだろうが。」

「足軽のあんたは本堂にあがってきちゃダメよ。犬千代と一緒に庭で侍ってなさい。あっ。浩介は本堂に上がって。あなたの意見も聞きたいから。」

「御意。」

 


犬千代と呼ばれた小姓の女の子は、コクリと無言で頷き俺も一言入れる

 


「犬千代。蝮が妙なことをしようとしたら、即座に斬るのよ!」

「……御意」

「いざという時は、そのサルを『猿の盾』にしていいわ」

「せめて『人間の盾』って言ってくれよ」

「……御意」

 


あっさり御意って言ったなあいつ

 

 

すぱーん!

すると今度はいきなり、信奈が脱いだわらじが相良の顔面に飛んでいった

 


「それ、持っておきなさい!」

 


うーむ、足軽ってこんな辛い仕事だったのかー。織田家に仕官したの間違いだったかもと顔に出ている相良はほっといて俺は着替えに控えの部屋に向かった

 

 

「……失礼します。」

 

俺が入るとすぐに空気がかわったように感じる。

なんか見られているな

俺はそうしながら勝家の隣に座ると勝家は驚いたように俺の耳に呟く

 

「お前その髪どうしたんだ?」

「あっ?癖毛なんだよ。昔から。水でふやけたらすぐ癖毛に戻るからちゃんと伸ばしただけ。似合ってないか?」

「いや。似合っていないことはないんだけど。むしろ似合っている。」

「えっ?」

「あ、いや。なんでもない。」

 

すると顔を真っ赤にして目を伏せる

 

「……」

 

面倒くさいけど、癖毛を整えようかなぁ

そう思っていると

 

「信奈とやら、遅いのう」

 

道三が退屈そうに大あくびをした、その時だった

 


「美濃の蝮! 待たせたわね!」

 

最高級の京友禅の着物を艶やかに着こなしつやつやと輝く茶色がかった長髪をハラリと下ろした織田信奈がでてきた

その姿を見た道三は、口にしていたお茶を噴き出す

 

元々正徳寺の会談は有名である。

織田信長がうつけの格好をしているのには理由があり、それは理論的にも正しいことが分かっている

うつけ。

変わり者

しかし、信奈には自分をよく見える方法をよく分かっている

 

「う……うおおおおおおっ? な、な、な……なんという……美少女っ!?」

 

声に出すのかよっと思っていたのだが俺は声を出さなかった

 

「わたしが織田上総介信奈よ」

「あ、う、うむ。ワシが斎藤道三じゃ……」


道三は完全に度肝抜かれているようだった


「デアルカ」

「お、お、おう……」


「蝮! 今のわたしには、あんたの力が必要なの。わたしに妹をくれるわね?」

 


だが、さすがは「美濃の蝮」と恐れられる戦国大名・斎藤道三

 

「さて、それはどうかのう。織田信奈どの」

 

にやりと微笑む道三は、迫力満点の悪人面だった

 


「あんたほどの器なら、わたしの実力のほどはひと目見れば分かると思ったんだけど、こちらとの同盟は組めない……ということかしら?」

「ふふ、なに。いくつか尋ねたいことがあるのでな。もっとも……」

 

道三が鋭い眼光で信奈を睨みつけながら、ドスのきいた低い声で続ける

 


「場合によっては、この場でそなたのお命を頂戴するやもしれぬ。くっ、くっ、くっ」

 


言いやがったよ。平然と、笑いながらの暗殺宣言

しかしそれは面白そうにしている道三はどこか子供のようにはしゃいでいるようにみえた

 


「まず一つ目の質問じゃ。種子島なる南蛮渡来の武器を仕入れているらしいが、それは何故じゃ?」

「種子島はね、武士が撃とうが農民が撃とうがその威力は同じなの。これがどういうことか蝮、あなたなら分かるわよね?」

 


信奈は不敵に微笑んで

 

「つまり、種子島を揃えれば農民上がりばかりの我が織田軍もたちまち最強になるのよ!」

 

そう言い放った

 

「なるほど。じゃが、鉄砲も一挺二挺では役にたつまいて。高額で希少品の種子島を、はたして何挺集めたのかな? 十挺か、それとも二十挺かな?」

「五百挺よ!」

「五百挺!? 我が軍の何倍じゃ!?」

 

と道三が呻く

 


「はたして、それだけの種子島をどうやって調達したというのか? 尾張には、それほどの収入があるというのかの?」

「浩介。」

「はっ。確かに織田家の石高は低いです。しかし、貿易港の津島を押さえている。津島の商人に納入させた矢銭(軍用金)で買い揃えました。」

「なるほど。そなた、ただの大名ではないな。まるで商人じゃの」

 


こいつちゃっかり俺を試しやがったな。勝家に聞いていたのが正解だった

 


「では最後に一つだけ尋ねたいのじゃがな」

「なに?」

「なぜ、そなたの父君……亡き織田信秀公は戦ではワシにかなわぬと知りながら、美濃に何度も攻めて来おったのかのう?」

 


信奈は、胸を張って答えた

 


「父上の考えは知らないわよ。でも、わたしが攻めるとしたら東にはいっさい手をつけずに、ひたすら美濃だけを攻めるわ!」

「ほほう、それはなぜかのう?」

「それは蝮、あんたが最初に美濃を狙ったのと同じ理由だわ」

「むっ?」

「蝮!世間のバカな連中はあんたのことを『美濃を奪った蝮』と呼んでいるけれど、あんたは本当は『天下』を盗りたかったんでしょ?」

 

ぴくり、と道三の眉が動く

 


「信奈どの。なぜ、ワシが天下盗りを目論んでいたと断言できるのじゃな」

「浩介。」

「はっ。美濃を制する者こそが、天下を制する足がかりができます。 美濃こそが日本の中心とされていて。西は京の都に連なり、東は肥沃な関東の平野へと繋がっている。この美濃に難攻不落の山城を築いて兵を養い、天下を窺う。そしてときが来れば一気に戦乱の世を平定し、日本を平和な国にする。商人が自由に商いに精をだせる、そんな豊かな国にする。それがあんたの野望だったと考えられます。」

 

道三は、震えながらも、なんとか頷いていた

そして、カラリと道三の表情が陽気なものに変わる

 

「参った……参ったわい、信奈どの!それと浩介どの!誰にも話したことの無かったこのジジイの戦略をすべてお見通しだったのじゃな?いや、参った!しかし織田家に浩介という名前の武将いなかったはずじゃが。」

「今日戦場で浪人だった浩介を拾ったのよ。優秀な武将だから待遇もよくしてね。」

「……伊藤浩介と申します。以後宜しゅうお願いいたします。」

「ほう。信奈殿いい買い物したのう。こやつは将来有望な知将になるぞ。」

 

と高笑いしながら俺を見る斎藤道三


 

「蝮、わたしは美濃をいずれ併呑する。あんたの生涯の夢、天下統一の野望を、わたしが叶えてあげるわ!」

「商人が自由に商いに行える国を、そなたが?」

「商人だけじゃないわ。農民だって侍だって同じよ。日本をこんな風に乱れさせた古い制度なんか全部叩き壊して、南蛮にだって対抗できる新しい国に生まれ変わらせてみせるわ! わたしが見ているのは日本だけじゃない。『世界』よ!」

 

道三が、大きな笑い声をたてた

 


「そなたが尾張でうつけ者と呼ばれる理由が、やっと分かったわ」

「蝮、今のはここだけの話よ。あんたとわたしにしか分かり得ない話だもの。余人に聞かせれば、うつけどころか気が触れていると言われるわよ?」


「いえ! ここに理解できる者が一人おりまする!」

 

と庭先から少女の声が響いてきた

おでこの広い、道三の小姓だ


 

「おう十兵衛、そちも思わず熱くなったのじゃな。しかしまだ早い。今は、黙っておれ」

「……ぎょ、御意」

 


礼儀正しい奴だな

十兵衛ってことは明智光秀の確か幼名だったはず

 

「いいんじゃないですか?夢や野望を理解する同士がいれば、とことん表に出るべきだと思います。私達が目指すは農民や商人。侍や南蛮の者でさえ対等な世の中を目指すことです。そういった者が一人いるだけでも理解者として。同じ野望を抱くものとして協力関係を気づけるものだと思います。わずかながらその野望私も信奈様の頭脳として支えていく所存でございます。」

「……ふむ。」

 

すると何か考えるようにして少し笑う

 


「……さて、天下盗りのために美濃が欲しいという話じゃったな、信奈どの」

「そうよ。美濃が、わたしにもらわれたがっているのよ」

 


さすがに噴き出しそうになった

なんでそんな傲慢なんだ?

遠慮ってものを知らないのかよ

 

「ふ、ふ、ふ。老いたとはいえど、ワシは蝮と呼ばれた男。それは出来ぬ相談よ」

「でしょうね。そう言うと思っていたわ。わたしも、タダでくれとは言わないわ」

「ふふふ。そなたが一代の英傑であると分かってしまった以上、一度は戦場で相まみえて戦ってみたいのう……」

 

まぁ武将ならそういうよな

 

「……ふん。そうなの、そう来るの。あんたがそう言うなら、戦ってあげてもいいわよ」

 


それに応える方も方だけど

 

俺は少しため息を吐き言葉を発しようとした時だった


 

「思い出したぜ。爺さん。そこの斎藤道三!お前が考えていることが俺には分かる。どうせ美濃の行く末が分かっているくせに頑固ジジイみたいにひねくれているんじゃねぇ。」

 

……ちょっと面白くなってきたな

 

「無礼ね。黙っていなさい猿。」

「いいじゃねーか。外れていたら斬ればいい話だしな。」

「そうじゃのう。座興じゃ。言わせてみようぞ。わしの考えていることが分かるのか坊主

「このイベントはわりと有名だし、さっき全部思い出した」

 

恐らく戦国ゲームマニアなのだろうか。俺みたいに歴史がただ好きなのかはわからないが

 


「ふむ。南蛮語を喋るサル小僧か……しかし、デタラメを抜かせば、小僧であろうが我が小姓・十兵衛がそなたを斬るぞ」

 


スッと、首筋に刃が当てられる

 


「道三、あんたはこの後、家臣にこう言うんだ。『ワシの子供たちは、尾張の大うつけの門前に馬をつなぐことになる』ってな」

「ちょっ、サル! なんて失礼なことを言うのよッ? あんたわたしより口が悪いわよッ?」

 


さすがの信奈も顔色を変えていた。しかし

 


「なんと?」

 


道三の表情が、驚きに凍りついていた

図星だった。自分が美濃を譲らずとも、いずれ自分亡き後に信奈は実力で美濃を併呑するだろう、と道三は確信していたのだ

 


「こ、小僧! 貴様、我が心を読んだかッ? いかなる術を使ったッ?」

「術なんて大層なもんじゃねぇよ。信じてもらえねぇだろうけど、俺は未来から来た。だからあんたのことをいくらか知っていた、それだけの話だ」

「未来……そのようなことが……」

 

道三も信奈も信じられないものを見るような目で良晴に視線を向ける

 


「じいさん、あんたは自分の息子たちが信奈の器量に遠く及ばないと気づいているんだ。だから今は迷ってるが、あんたは必ず信奈宛に『美濃譲り状』を書く」

「しかし、美濃の蝮として、信奈どのと潔く一戦交えたいと願うのも我が本心!」

「いや、それも武将としてはあるかもしれないが。本当は信奈様との戦なんて望んでいないんだろう。『天下統一』というあんたの夢を継いでくれるのは、信奈様だろうしな。」

 

俺は良晴の意見に追撃する。

 


「信奈に美濃を譲れなきゃ、あんたの人生は無駄になっちまう。だから譲りたい。しかし美濃の蝮ともあろう者が、そんなお人好しぶりを見せるなんて沽券に関わる。世間から老いたと笑われる。だから信奈と一戦交えるという筋書きが必要だと考えた。どうだ図星だろ?」

 


しばらく道三は刀の柄に手をかけてわなないていたが、「ふはっ」と息を漏らした

 


「信奈どの。織田家に侍なしとは、謀られたのう。足軽風情の中にも、そしてそこの坊主もこれほどの者がおるとは……老いぼれたワシが勝てる相手ではないわい」

「えっ? 蝮?」

 

何もかもお見通しか小僧。そうよ、その通りよ、と道三が苦笑いを零した

 


「小僧!貴様のおかげで、この蝮、最後の最後に素直になることができたわ! ワシの夢を信奈どのに……いや、我が義娘に受け継いでもらうことにするわい」

 

信奈は道三と俺の顔を交互に睨みながら、唇をへの字に曲げていた

 


「信奈ちゃんのためじゃ。この場で『譲り状』をしたためよう。ワシはそなたに……我が義娘に美濃一国を譲って、隠居するぞい」

「蝮!?」

 


信奈の瞳が一瞬潤んだように見えた

斎藤道三ならば、自分の志を理解してもらえると信じてはいたのだろうが、これほどの無防備な好意を寄せられるとは思ってなかったのだろう

 


「これより信奈ちゃんは、我が娘じゃ。娘に国を譲るのは、父として当然のこと」

「本当に、いいの?」

「蝮と憎まれたワシの国盗りにも、かような意義があったのじゃと思わせてくれ」

 


道三は筆を取り出すと、「美濃譲り状」を書き始めた

 

「それと十兵衛よ。」

「はっ。」

「お主はそこの浩介という坊主に仕えろ。」

「えっ?」

「……いいのか?」

「あぁお主であれば我が後と継いでくれるであろうからな。」

 

恐らく気づいているな。この爺さん

……自分がこの後どうなるかを

 

「ちょっと待ってください。何で。」

「多分ワシよりも頭が回るやつじゃ。戦場の経験は浅いものの恐らく信奈ちゃんに使える最高の軍師になり得る存在じゃ。それに恐らくわしの行く末もお主には見えているのじゃろう。」

「……えぇ。」

 

俺は苦々しく答える。おそらくあの事件はこのままだったら必ず起こるだろう

 

「信奈ちゃんには発言を禁ずるぞい。十兵衛よ。頼む。」

「……分かりました。」

 

不満そうだけど頷く十兵衛に俺は少し苦笑する

 

「信奈ちゃん。いずれ我が一人娘をそなたの妹として尾張へ送るぞい」

 

全人生を賭して奪い取った美濃を、道三は笑いながらアッサリと信奈に譲った


「……というわけで、ちょっとだけお尻を触らせてくれんかの。我が娘よ」

 

台無しだった


「なんであんたなんかにお尻触らせなきゃならないのよ、エロジジイ!」

 

セクハラを働こうとした道三に回し蹴りを入れる信奈

道三って、やっぱただのエロジジイだったのか? と頭が痛くなった



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明智十兵衛光秀

会談が無事?終わった後俺たちは帰り道

 

「……何で私が織田に。」

「……お前露骨すぎるだろ。」

 

明らかに納得いきませんと言いたげの十兵衛に苦笑してしまう。

織田に仕えるには史実と比べたら少し早いな。

未来の明智光秀となる少女はでこが特徴的であるがしぶしぶ付いてきていた。

元々は確か織田信長の奥さんである帰蝶姫からの紹介により登用されたはず。

所謂その点においての変更点ができたのであろう

 

「……別にいいけどさ。俺も今日武将になったばかりだし。」

「…それ本当だったんですね。」

「生憎な。いきなり侍大将まで上がったからな。批判は集まるだろうよ。」

「……そうなんですか?」

 

十兵衛は首をかしげる

 

「武士は武士で厄介だぞ。特に俺みたいな内政や軍略を少しだけ齧っているやつは頭が堅いやつらからは舐められても仕方ない。俺は信奈に支えている分おそらく信勝がどうしてくるかが分からん。それによそ者だから丹羽さんとかどんな人なのかも分からないしな。俺みたいな知将は見えずらい功績で手柄を立てなければならない。恐らく治安や税の増加や開拓などで少しずつ成果を出していくしかないからな。」

「……」

「どうしたんだよ。」

「い、いえ。なんでもないです〜。」

 

俺は首を傾げる。まぁいいけどさぁ

 

「そういえば俺たちどうしたらいいんだ?」

「……こっち、こっち」

 

と良晴の言葉に犬千代が応える

 

「ん、どうした?」

「サルと二人に住み家を与えろ、と姫さまが仰せ」

「マジか、それは助かる。腹も減ったし、今日一日でかなり疲れたしな」

「……食べ物なら、たくさんある」

「あっ。俺給金貰えるって聞いたんだけど。」

「……それも後日。」

「あいよ。」

 

まぁ一日くらい構わないか。鎧とかも少し買わないといけないし

 

「……サルは、珍しい服を着ている」

「ああ、この学生服か? 俺の世界じゃ普通だぞ」

「……南蛮の人?」

「いや、未来の日本から来た」

「……ほらふき?」

「違う。何で誰も信じてくれないんだ。」

「アホか。俺たちが百年後から来たあなたの孫ですって言われたらお前は信じるか?」

「信じないな。」

「……そういうことだ。」

「なんかあの人の方がバカですね。」

「それでも信奈のお気に入りなんだからな。手を出すなよ。」

「しませんよ。」

 

俺は小さくため息を吐き

 

「これが武家の住むところなのか?」

「ここは、うこぎ長屋。下級武士が暮らしている」

「犬千代もか?」

「そう。お隣もの同士。」

「俺たちは?」

「ご近所同士。」

「……私もここで住むのですね。」

 

ちょっとショックを受けた様子の十兵衛。

 

「それなら出世すればいいだろ。道三も後が永くないから俺の元に十兵衛を預けたわけだろうし。」

「……どういうこと?」

「あ〜。もしかしてそういうことか?」

「…恐らくな。」

 

……もう歴史は変わっている。それでもこの運命だけは変えられないだろう

まぁ。少し策を考えるとするか

 

 

 

そして俺たちは自分の部屋で行った後になると名案を思いついた

 

「そうだ。十兵衛。お前が俺の主になればいいのか。」

「……へ?」

「生憎武道系は俺は苦手なんだよ。それに信奈直属の部下ならば俺は多分目をつけられる。……それなら十兵衛が出世してその下につけばいいんじゃないか?」

「…ちょ、ちょっと何を言い出すんですか。」

「いや。俺内政官や交渉する方に長けているんだよ。生憎表だって何かをするっていうよりも誰かを支えるっていう方があっている。」

「……いや出世とかは。」

「俺は興味無いからな。勝手にやってろって話。」

 

ぽかーんとしている十兵衛に苦笑してしまう

 

「俺が目指すのは天下だ。みんな平等な世界を作るのに俺たちが出世争いをしてどうする。」

「……本当におかしな人ですね。」

「こういうのは人に任せる。俺は俺のやり方で天下を目指すからな。そっちの方が俺にはあっている。」

 

クスクス笑う十兵衛に軽くため息を吐く

 

「とりあえず褒美は明日もらえるらしいし、ゆっくりしようぜ。今日の飯は期待できないけどな。」

「はい。そうですね。」

 

と俺は十兵衛は笑いあう。最初の雰囲気はどこにやら。しばらく話は続いていった。

……その後かなり面倒なことになるとは思いもしてなかったが



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流言

あれから三週間がたったある日。

それで俺はというと

 

「爺ちゃんこれくらいでいいか?」

「おぉ。いつもありがとうね。」

「別にいいって。それで」

「浩介さん。お茶入りましたよ。すこし休憩にしましょう。」

 

と鍬を握り近くの村で俺は汗を流していた。

というのも仕事を任されてはいるんだが十兵衛と生徒会で鍛えた書類仕事能力が役に立ち午前中で仕事を終えることが多く軍略の仕事は丹波さんから教わっているのだが昼間が空いている時間に俺は村で農作業に明け暮れていた

 

「そういえば知っておるかのう。最近織田家に来た武将のこと。」

「ん?」

「本当にありがたいみゃあ。わたみゃも自分の妹が人柱になって死んだもんだから。これからこんな犠牲はないにゃ。」

「商人たちも税率が下がって商売がしやすくなったって大喜びだみゃあ。」

「そうなんですか?」

 

と俺の最初の仕事は織田家構内における人柱の禁止だ。多くの反対意見がでると思っていたのだが案外受け入れられることが多かった。

 

そして二つ目はというと

 

「こっちは終わりましたで。」

「ん。お疲れ様。お前らも休め。」

「お兄ちゃんこっちも終わったよ。」

 

と俺の配下に元々山賊だった頭を中心に20〜30人程度の山賊や現在でいうところのスラム街の子供を俺がやとっていったのである。その数およそ300。

これは信奈に協力のもと昔から問題になっていた山賊とスラム街にいた捨て子を拾い育成かつ尾張の農民の手伝いを当てている。

軍事に当たっては勝家こと六に午前中稽古をつけられているらしい。

ついでに文官志望の人は俺と十兵衛が夜間に計算と簡単な軍略について教えている

なので実質的な兵はおよそ150人程度の少数部隊だが、俺はこれまでの功績を全て種子島を譲ってもらうことになっていた

 

その数およそ100丁。

 

元々軍師的扱いで武勇はそんなに優れているわけではないので専門的な知識と、戦略で自分でも扱える武器を使うことをきめたのだ

なお十兵衛がささっと俺が100丁の火縄銃を褒美にもらったというと悲鳴により良晴や犬千代、浅野の爺ちゃんにねねが何事だと俺たちの部屋に駆けつけたのは別の話

てか十兵衛。お前も部屋があるのに自分の部屋で泊れよと思ったのはいうまでもないのだが。

 

「また、村にでていたんですか?」

 

すると馬に乗った見知った女の人が現れる

 

「…に、丹羽様。」

「なんで私たちの村に何故にゃあ。」

 

と村人に驚かれるが

 

「万千代さん。どうした?」

 

俺が聞くと全員が絶句する

 

「緊急の軍議を行いますのですぐに城に来てもらえますか。浩介さん。」

「…今川か?斎藤か?」

「いえ。信勝様です。」

「……すぐ行く。」

 

俺はすぐに馬宿を向かい馬にのる

 

「……てめぇら。一応準備しとけ。」

「「「はっ。」」」

 

そして馬を走らせ万千代さんと並ぶ

 

「すいません。どういうことですか?」

「良晴さんに任していた兵糧買に信勝様の妨害が入って犬千代様が出奔されました。」

「…ごめん。訳がわからない。一から説明してくれ。」

「これは私としたことが。零点です。」

 

と聞いた話によりますとと聞くと

どうやら米が多すぎて少しばかり遅れてきた良晴は犬千代たちに頼んで米を運んで来たらしい。それを妨害しようとした信勝の部下を派遣。それを問答無用で斬りかかった犬千代ってことらしい

 

「……それ信奈大丈夫なのか?」

 

俺がポツリと呟くと万千代さんは首を振る

 

「姫様は実の妹のように扱っている犬千代様を失ったのはかなりの痛手になっています。10点。」

「……」

 

俺は歴史について結構知っている方だが多分利家は一年ばかり追放された出来事と関連付いているのであろうけど

タイミングが悪すぎるだろ

 

「やめだな。信勝攻めはいつかやらないといけないけど。」

「はい?」

「さすがに今の織田の家内争いは今川戦に響く。さすがに二正面でやりあえるほど尾張の兵は強くないしな。」

「……どういうことですか?」

「近いうちに分かるだろうな。まぁ信奈に壊れてしまったら織田家は逆に壊れるだろう。多くの民が死に。多くの将は不幸になる。」

「……」

 

俺は馬を走らせている。その後は終始無言だった

結局この騒動は大きく広がることになる

 

 

「で、何の用なの?」

「ええと……その、犬千代の件で参りました!」

「……犬千代なら、出奔してしまったわ。居場所はわたしにも分からないのよ」

 

むすっと頬を膨らませながら、信奈は窓の外に視線を逸らした

 

「の、信勝さまは、犬千代を引き渡せと……さもなくば再びご謀反申し上げる、と……」

「あいつはバカだから、取り巻きの連中に煽られてそんなこと言ってるだけでしょ? 六、あんたには信勝を抑えられないの?」

「も、も、申し訳ありません! この勝家、戦の場では誰にも後れを取らないと自負していますが、その、こういう話には実に疎く、怒鳴って脅すか、いっそ斬り捨てる以外に解決する方法を思いつかず……」

「……」

 

六は天は二物を与えずの典型例だろうな

 

「はぁ。まったく、六らしいわね。どうせ信勝を抑えられないのなら、次の合戦でいっそわたしの首を討てばいいじゃない」

「そ、そんなことできるワケがありません! 姫さまに反旗を翻さねばならぬのなら、切腹したほうがマシです!」

「ん?どういうことだ?」

「信勝が謀反するたびに負けてるのは、六がわたしと戦わずに適当に引き上げてくれるからなのよ。」

 

俺が聞くと信奈が答える。

 

「てか、信奈に忠誠誓っているんだな?六。」

「あぁ。そうだけど。」

「……なんとなくお前の立ち位置が見えてきた。結構苦労人だなお前。」

 

お茶飲むか?と聞くと六は少し考え頷く

そしてお茶をたてていく

そして万千代さんにもいれると茶道の心得があるのか可憐にお茶を飲む

 

「そういえば、お前お茶立てれたんだな。」

「俺の同居人に叩き込まれたんだよ。」

「あぁ。十兵衛ちゃんか。」

「あいつに礼儀作法を一から学んでいるからな。堅っ苦しいことありゃしない。」

「そういえば十兵衛ちゃんは?最近見てないけど」

 

あぁそういえば内密にしていたな

 

「三日前に京に向かわせた。元々京出身であるし、三ヶ月くらいの休暇を取らせた。俺は西日本の情勢はかなり疎いからな。ついでに朝廷の調略を仕掛けている。」

「……あれだけ報告をすませるようにと。40点です」

 

万千代さんは呆れたようにしている

 

「東は今川討伐したら松平に岡崎を取らせようと思っている。」

「松平?確か。」

「竹千代のこと?」

 

すると俺は頷く。

 

「元々岡崎は松平家のもの。俺たちは今川、武田、北条。東方には数ある大大名がいる天下を狙う武将がするならば東方は無視して西方に勢力を伸ばすのが一番。二週間前から服部、本多正信に調略を仕掛けていて駿府城を松平家に取らせることを条件に松平軍を離す調略が成功した。」

「「「「っ!!」」」」

「元々あそこは武将の強さだ。そのうち元松平家の武将だけは群を抜けて強い。軍師の本多正信も軍一の武将本多忠勝も全員松平家。相手にするのは得策ではない。その上味方につければ大きな力になる。後は奇襲を仕掛ける。タイミングや仕掛けを間違えなければ勝てる可能性が高いんだよ。土地の有利はこっちにある。今度の今川の上洛で落とせるかが一番重要なんだよ。」

 

俺がそういうと全員が絶句したようにしている

 

「今川に勝てるの?」

「勝たせるのが俺の仕事だぞ。……負ける戦を起こさせるかよ。」

 

俺は内密になとこの場にいる万千代さん、六、信奈に良晴は頷く

 

「……今川が上洛の準備を進めていることあってすぐにお家騒動を収める。」

「そうね。これ以上わたしを挑発するのであれば、受けて立つわ。勝家、信勝に伝えなさい」

「な、なんと?」

「次にわたしに謀反すれば、母上がいくら助命を嘆願しようがあんたを殺す、と」

 

まぁ当たり前だよなぁ。

 

「そ、それは」

「駿河の今川義元が本格的に上洛の準備を進めているのよ。義元が動けば真っ先に攻め込まれるこの尾張国内で揉めている余裕は、もうどこにもないわけ」

 

事実もはや時間の問題だ。隙を見せた途端やられる可能性が高いのはこっちだろう

 

「それに、あのバカ弟の面倒を見るのはもうこりごりなの! 誰のせいで犬千代が出奔したのよ、あいつが先に犬千代にちょっかいを出したんでしょう?」

「しかし、信勝さまは姫さまにとって、血を分けたただ一人の弟君」

「もういいのよ。戦国の世に、厄介ばかりかける弟なんて要らないわ」

 

ぶっきらぼうに呟く信奈の白い頬が、ひどく張り詰めていた

 

「なあ、ほんとに信勝を見捨てんのか? あいつは確かにバカだが、悪い奴じゃない。お前もそう言ってたろ」

「わたしのような姫大名はね」

「ん?」

「たとえ戦に敗れても、髪を下ろして出家すれば命は許されるワケ。そういう習わしなの。でも男は別。降伏しても許されなかった場合、首をはねられちゃうのよ。その上あいつは、人材豊富な今川方にしてみればわざわざ家臣団に組み入れたくなるほどの武将じゃないわ。謀反常習犯だしね」

「……なるほどな。」

 

だから死ぬくらいなら自分の手でか


「だからどのみち、あの程度の器じゃ戦国の世を生きられないわ」

「もう一度だけあたしが命を賭して説得してみます」

 

と勝家が名乗り出る

しかし信奈は首を振った


「六がいないと、わたしの天下盗りの計画は頓挫するわ。あんたより強い武将なんて、弱兵揃いの尾張にはいないもの。どちらかの首を選ぶとなれば、信勝よ」

「しかし、姫さま!」


「六。今、尾張国内で戦を起こせばたちどころに両者とも今川に蹂躙されるのよ。あんたがもしもこの信奈こそ尾張の主であると認めてくれるのであれば、ただちに信勝をおびき寄せて捕らえなさい。それが尾張のため、民のため、そして天下のためよ」

「……ぎょ、御意」

 

毅然とした口調、覚悟を秘めた眼差し

勝家は思わず頭をたれた

断じて、うつけなどではない。やはりこの人こそが尾張の主なんだ、と体が理解したのだろう

 

それに俺は数回ため息を吐き空を見上げた



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戦国時代

清洲城勝家は白装束で登城した

勝家の隣には涙目になって震えている信勝

そして織田家の重臣一同が、信勝と勝家の左右にずらりと居並び、信勝へ向けて同情の視線を送っていた

 

「信奈さま。信勝さまの不始末は、家老であるあたしの不始末。難しいことは分かりませんが……この場は、あたしの首でどうかご容赦ください!」

「勝家。あんたがいないと今川との戦に勝てないわ。言ったでしょう? 損得を計算すると、死ぬべきなのは信勝だという結論がとっくに出てるのよ」

「うあああああん!姉上、二度と逆らいませんからお許し下さい! ぼくは目が覚めました!名古屋名物のういろうを全国区にしようだなんて小さい野望を抱いて謀反ばかり起こしていたぼくの方がうつけでした! あねうえぇええ〜!」

 

……えっと。そんな野望抱えていたのかよ

俺は小さくため息を吐く

 

「死にたくないっ!しかし勝家は殺さないで下さい!勝家は姉上に一度も弓をひいていません!でもぼくも死にたくない!」

 

すると思わず少し俺は驚いてしまう

こいつ六のこと庇いやがった。

元々家臣を軽く見ていただけではないのかと思うと少し考えることが増える

 

「もう沙汰は決まっているの。六は本日よりわたし付きの家老に配置換え。信勝の取り巻きたちは追放。そして信勝はこの場で切腹」

「切腹!? そんな痛そうな死に方はイヤです無理です姉上ッ?」

「そう。拒否するなら、わたし直々に打ち首にするまでよ」

「姫さま、信勝さまは実の弟君です。なにとぞ」

「くどい、六! 身内の反乱ひとつ鎮められないで、天下なんて言えないでしょうッ? みんなもよく聞きなさい! 今後、わたしに逆らった者はたとえ家族であろうとも殺すわ! わたしはこれから私情を捨て、第六天の魔王になるの。それが天下のため、民のためなんだから!」

 

すでにうつけの信奈の顔は消えている

今の信奈は、ぞっとするような鋭い視線を持った絶世の美少女と化しており、その手には太刀が握りしめられていた

あまりにも美しく、あまりにも神々しく、それゆえにあまりにも恐ろしかった

しかし家臣たちが顔を伏せて震え上がる中、ただ一人だけ異を唱えた者がいた

 

「姫。」

「万千代さん大丈夫。」

 

俺はそういうと万千代さんを止める

 

「何を。」

「こういった場合だったらあのバカの方が有能だからな。」

「待てよ信奈。自分の弟を殺すんじゃねぇ!!」

 

良晴が信奈の元にかけていく

 

「ばっ……バカ!サル、お前まで手討ちにされるぞ!」

 

と勝家が悲鳴のような声を漏らした

 

「……こういうのは古参者よりも新参者の正直な奴が話かけた方が素直になりやすいんだ。特に良晴は信奈のよき理解者だ。俺だって言いたいことはいくつかあるけど、あいつは信奈の中では特別なんだよ。」

「……どういうことですか?」

「見てれば分かる。……あいつの家族好きも早々だからな。」

 

するとぎろりと良晴を睨む

 

「よくもわたしに逆らったわね。あんたはどうせここで死ぬのよ、サル。言いたいことがあるなら今のうちに言いなさい」

「ん、そうだな。そうするか。お前、ここで魔王と化して信勝を斬ったら、これからも自分の周りにいる親しい人たちを斬って斬って斬り続ける魔王人生一直線だぜ? お前それでもいいのかよ?」

「そうよ、それでいいって言ってるでしょうッ? 天下万民のためよ!家臣たちがわたしの命令に従わない限り、天下統一なんて無理に決まってるでしょう?どうせわたしの言ってることが理解できないバカばかりなんだから、黙ってわたしの言うことを聞けばいいのッ!わたしに逆らう弟なんて要らないのよ!」

「ふざけんなッ。何が天下だよ、このバカ女っ」

「な、なんですってッ?」

 

ざわめき始める家臣たちに

 

「本当に大丈夫なのですか?」

「欲望に忠実な良晴と変なところで不器用な信奈。相性は見た感じいいと思うぞ。あぁやって大名に向かってどうどうと意見を言えるって人物は今まで俺しかしてこなかっただろ?あぁいう輩がいる軍は強い。それにあんだけお調子者の良晴の意見は結構的を得ていることが多いんだよ。あいつが信用していることも結構あるしな。」

 

だから素直になりやすいんだ

 

「……殺したくないに決まってるじゃない! 自分の弟を殺したがる女の子なんて、いるわけないでしょ! いちいち言わせないでよ、バカ!」

 

「姉上……」と信奈の足下にうずくまっていた信勝が思わず声を漏らしていた

 

ならもう答えは最初から出てたんじゃねぇかよ。じゃあ、そう言え。お前は尾張の主で、一番偉いんだろ? 素直にそう言えばそれで済むんだ。ったく、とことん可愛くねぇ女だな」

「な、な、なんですってッ!?」

 

家臣たちの前で泣いてしまった。しかも事もあろうに、良晴に叱りつけられて

これからは家臣たちの前で魔王として振る舞おうと決意していたはずの信奈はうろたえ、錯乱していた。そして、ぶっきらぼうに怒鳴っていた


「わ、わ、分かったわよ! 信勝は許すわ!」

「あ、姉上……」

 

伏してうなだれている信勝のもとに、信奈が腰を下ろした

 

「ふ、ふん。勘十郎……刀のかわりに、ういろうをあげる。食べなさい、あんたの好物でしょ」

「……いいのですか、姉上?」

「仲直りの印よ」

「……い、いただきます……」


家督争いで家中が割れる以前は、信奈から毎日のようにこうしてういろうを貰っていた

高級品の「ようかん」に比べると、砂糖が少なく、ひどくさっぱりしている

それでも信奈が「ほーらほら勘十郎、餌をあげるわ」とはしゃぎながら分けてくれたういろうの味を、幼き日の信勝はどんなご馳走よりも美味しいと感じてきた

そもそも信勝がういろうを好きになったのは、姉が手づからくれた、自分へのご褒美だったからだと万千代さんが


それなのに周囲に野心家やおべっか使いを侍らせて、姉上をないがしろにしてきた

そして、あの姉上を家臣団の前で泣かせてしまったのだ

なんと自分は愚かだったのだろう、と信勝は心から後悔しながら、ういろうを頬張る

これで、信勝を殺すという件は落着した

スッと信奈が目を細めながら立ち上がる

そして、消えていたはずの殺気が再び蘇った


「さてと……サル、家臣たちの前で言いたい放題にわたしを罵ったあんたにはどう落とし前をつけて貰おうかしら?」

「え、何事もなく穏便にハッピーエンドを迎える雰囲気じゃなかったの? 」

「よくもわたしを泣かせたわね、サルのくせに生意気だわ! 死になさいよ!」

 

そして苦笑して

 

「いい加減にしろ。」
「まあまあ。姫もサルどのも、そのあたりで」


俺と万千代さんが止めにはいる

 

「信勝どのが姫に忠誠を誓うのならば、八十点です。それでよいではないですか」

「ダメよ万千代 。誰も罰されないんじゃ、家来たちに示しがつかないもの」

「その者は小者で、しかも姫の飼いザルですよ。それよりも信勝どのの始末のほうが大事」

「一応謀反を起こさせた訳だし、周辺の奴らも織田家当主を確実なものにするのにはいい機会だろうな。」

 

姉代わりの長秀が、包み込むような癒し系笑顔で信奈の癇癪を抑えていく

 

「それじゃ万千代、浩介あんたたちならどう始末をつける?」

「そうですね……」

「姉上。お許しいただけるのでしたら、ぼくは二度と取り巻き連中に担がれないよう、潔く織田姓を捨てます! ただいまより、分家の『津田』姓を名乗ります!」

「……それはいい案です、信勝どの。九十点」

「ついでに名前も改めます! これからは姉上に対して澄み切った心でお仕えします、ですから名前も『信澄』に改名します!」

「……ちょっと媚びすぎかもしれません。三点」

「まぁいいだろ。他のものには減給3ヶ月。および謹慎一週間あたりがだとうだろ。六は信奈付きの家臣団に変更。」

「ふ、ふん。まあいいわ。それじゃ、あんたは今日から津田信澄と名乗りなさい、勘十郎」

「ありがとうございます、姉上!」

「他の者は浩介の案に従うこと。」

「「「御意。」」」


こうして今度こそ信勝の始末は決着した

 

 

そしてその夜

 

「……やっと静かになったか。」

「なんだ浩介か。」

「俺の家もここだからな。たく。全く忍びからの報告に耳を傾けることもできない。」

 

と酒盛りをしている全員に対し呆れてしまう

 

「忍び?」

「五右衛門に頼んで雇ってもらったんだよ。服部半蔵からの贈呈もあるけどな。」

「…あぁなるほどな。」

 

元々調略を仕掛けるのは得意な方だと思っている

 

「真面目な話どれくらいになりそうだ?」

「勝率は半々。後は天候次第だな。」

「…やっぱり厳しいか?」

「厳しいどころじゃない。……というよりもこれでもギリギリまで上げて5割なんだよ。」

 

家康が早いか。こっちが今川義元を討ち取るのが早いか

 

「……てか桶狭間の戦いがあれ自体がキセキみたいなものなんだよ。元々。あんな綺麗に戦法が嵌ることが難しい。」

「それもそうだな。」

「月は叢雲花に風。うまいこと言ってても気を引き締めないと周りの者は全員死ぬからな。それくらいの覚悟はしているんだよ。」

「…そっか。」

 

良晴は少し考える

 

「戦国時代に本当に来ちまったんだよなぁ。」

「……そうだな。」

 

俺は軽く苦笑する

 

「んじゃ早く寝ろよ。明日からも大変だぞ。」

「おう。おやすみ。」

「おやすみ。」

 

と俺は寝どこに戻る

……恐らく最後の平穏となろう日々を踏まえて

 

 



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