ちっちゃいガイガンになってた (大ちゃんネオ)
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本編前
ちっちゃいガイガンになってた



 主人公は特オタ、シンフォギア知らない、大体20代前半くらいしか設定がありません。




 ガイガンになってた。

 

 なにを言っているんだこいつと思ったそこのあなた。

 本当に俺はガイガンになってたんです!

 本当なんです!信じてください!

 さっきまで交差点を歩いていた俺は気がついたらガイガンになっていた。

 

 一体なにがどうなっているのか。

 そもそもなぜガイガンなのか。

 ガイガンとはゴジラシリーズに登場する悪役怪獣。

 未来怪獣やらサイボーグ怪獣なんて別名もあり、宇宙怪獣が改造されたとかなんとかで両腕は肘から先が鉤爪で腹には回転ノコギリなんてものが備わっている。

 目も単眼の赤いバイザーで未来チックな感じがする。

 

 本当にガイガンになってしまったのである。

 しかし…ちっちゃいのだ。

 だいたい、2Lのペットボトルと同じくらい。

 なんで分かるかって?

 ご丁寧に隣に置いてあったからだよ!

 鏡も置いてあったから自分がガイガンだと認識出来たし。

 ここは…どこかの実験室かなにかだろうか?

 危なそうな薬品がたくさん置かれた棚とか英語の分厚い本もある。

 それにメスやらハサミやら。

 

 …まさか、ショッ●ー的な組織に誘拐されてガイガンに改造されてしまった?

 それにしたってペットボトルサイズにはならんだろ。

 どうしたものか…

 ………

 とりあえず部屋から出てみようか。

 扉はあるな。

 よしドアノブを回して…

 回して…

 

 ちくしょう…届かねぇよ…

 

 ジャンプしても届かねぇよ…

 それに腕が鉤爪だからドアノブ握れねえじゃん!

 ちくしょう!どうすりゃいいんだ!

 …腕が鉤爪?

 そっかこれでドアを斬ればいいじゃん。

 トムジェリのジェリーがノコギリで壁斬るみたいに。

 ちょうどこのドアも木製だし斬るのは楽だろ。

 そうと決まればよぅし…

 貫け!

 

 ベキッ!

 

 い、いってぇ…

 電流が走ったみたいな痛みが右腕を襲った。

 こう、分かるだろうか、意図せず肘を強打してしまった時のような感覚。

 え、ちょっと、この鉤爪…全然斬れねえじゃん!

 なにこれ!?

 てっきり怪獣スペックで何mの鉄板を容易く切り裂くとかあると思ってたよ!

 

 …そういえば、この鉤爪で敵を斬るような描写ってあったっけ?

 小さい時に見たきりだから記憶があやふやだけど斬るようなことはしてなかったと思う。

 この鉤爪はジェリーのノコギリ以下の切れ味なのかよ!

 斬るといえばこの腹の回転ノコギリだ。

 映画の予告映像でも使われていたアンギラスの顔を今の子供向けでは出来ないような切りかたしてた。

 よし、それじゃあまずは腹の回転ノコギリでドアを斬って…

 お、回りはじめた。

 で、これをドアに押し当てると…

 おー。

 楽。

 こんな工具が体にくっついてたらDIYも楽だな。

 いや、日常生活が大変だろう。

 それに俺、DIYとかしないし。

 一人ツッコミはさておき、ドアに切り込みを二ヶ所作って…鉤爪で思いっきり殴る。

 さっきは斬れるつもりでやってたからあんなだったけど殴るつもりでやれば大丈夫。

 どうにもこの鉤爪は切断武器ではなく鈍器のようだ。

 セブンXのアイスラッガー的な。

 ちなみにアイスラッガーは回転しない方が好きです。

 それはさておき。

 殴ってどうにか這って出られるくらいの穴が出来た。

 よし、匍匐前進だ!

 なんか匍匐前進するとドキドキしない?

 もしかして俺だけ?

 とにかく出るぞ!

 

 ガンッ!

 

 あ…

 背中に羽があるの忘れてた。

 

 

 穴を拡大してなんとか実験室?から脱出成功!

 さて、どうしようか…

 右に行こうか左に行こうか。

 とりあえず右に行ってみようか。

 ん?

 なんだこの黒いの?

 触るとポロポロ崩れた。

 これは…炭か。

 よく見たら廊下にたくさんの炭が落ちている。

 なんだこれ。

 炭火焼きパーティーでもして片付けようとしたら溢しちゃったとか?

 それはさすがに…

 こんな古びたところで炭火焼きパーティーなんてしそうにないし…

 まあいいや進もう。

 いやーそれにしても体が小さくなると移動も大変だ、歩幅が小さいから。

 

 やっとの思いで突き当たりまでくると…なんか、変な生物がいる。

 そもそも生物なのかこれは?

 青い…なんだろう、強いて近い形の物をあげるとすれば蛙だろうか?

 なんだろう、こいつを見てると胸騒ぎがする。

 蛙はあまり動いていないようだったが、ふと、俺のことを見た。

 

 その瞬間、ものすごい敵意を感じた。

 蛙はなんとその体を紐状に伸ばして鞭のように俺に叩きつけてきた!

 避けようと思ってもこの体はガイガン。

 ついさっきガイガンになったばかりの俺が満足に動けるはずもなく直撃してしまう。

 いってぇ…

 この蛙やっぱり普通じゃねえ!

 なんとかしてこいつを倒さないと。

 …倒さないと?

 普通、こういう場合は逃げることを第一に考えるはずなのに。

 倒す、だと?

 一体いつから俺はそんなに勇敢になった。

 いや、だけどなんだこの内から沸き上がる闘志のようなものは。

 変に興奮しているだけじゃないのか?

 

 …まさか、本当に倒せるのか?

 今の俺には自信があった。

 こいつを倒せるという確たる自信が。

 そして、力があった。

 なぜなら今の俺は、ガイガンなのだから。

 高い鳴き声を上げて、地面を蹴り飛び立つ。

 皆さん、知らない人は驚きかもしれませんが、ガイガン、飛べるのです。

 あれ、飛べるならさっきの部屋で飛べばよかったんじゃ…

 そんなこと今はどうでもいい!

 腹のノコギリを回転させて、通り過ぎながら謎の蛙を切り裂く!

 着地して後ろを振り返ると蛙は炭になっていた。

 ということはさっきの炭はこいつの仲間だったということだろうか?

 ということはまだこいつらがいるかもしれないのか。

 まあ簡単に倒せたからいいんだけど、大群で出てこられたら流石になぁ…

 と、考えていると廊下の向こうから何かが走ってくる音が聞こえた。

 音はどんどん大きくなっている。

 ということはつまりこちらに近づいているということ。

 ヤバイ、こんなへんちくりんな生物が見つかったら明日のスポーツ新聞を賑わせてしまう。

 隠れないと…って、どこに隠れればいいんだ!

 廊下には隠れられそうな物もないし、今から部屋に入るのも時間がかかる。

 そうだ!飛んで逃げればいい!

 やはり飛行能力があると便利でいいですね!

 よし、飛べ!ガイガン!と意気揚々に飛び立とうとした瞬間、目の前の床に槍が突き刺さった。

 ひ、ひえぇ…

 あぶなく串刺し、いやこんな刃がすごい槍なら真っ二つにされていただろう。

 誰だ!こんな危ないもの投げつけてきたのは!?

 

「ノイズの反応があるからって来てみれば、なんだこのペンギンみたいなやつ。こいつもノイズなのか?」

 

 オレンジ色の髪をした、スタイル抜群の少女が現れた。

 

「ノイズの反応は消えただと?じゃあこのペンギンモドキは?りょーかい。なんかトゲトゲしてるけど大丈夫だろ」

 

 誰かと通信しているようだ。

 それにしたってペンギンはないだろペンギンは。

 モチーフは鳥の雁だぞ。

 あ、ペンギンも同じ鳥の仲間か…

 

「つーわけで、ちょっとお前を連れ帰るけどいいか?なあに悪いようにはしないさ。多分」

 

 多分!?

 連れ帰るってどこに連れていく気だ!

 

「あー鳴くな鳴くな。お前の鳴き声高いからちょっと耳にくる」

 

 くそぅ…こうなったら飛んで逃げよう。

 1、2の3で飛ぶぞ…

 1、2の…

 

「はい捕まえたー!お、お前結構さわり心地いいな。すべすべしてて。もし飼っていいってなったらあたしのペットにしてやる」

 

 ひょいと持ち上げられてさわさわと撫でられる。

 あ、これ気持ちいい…

 

「あたしは天羽奏っていうんだ。お前は?」

 

 ガイガンです。

 言っても分からないと思うけど。

 

「そうかそうかピー助か!よしピー助、帰ったら魚食わせてやる!」

 

 どこののび太の恐竜ですかこのヤロー。

 あとガイガンって魚食うのかな?

 ガイガンって普段なにしてんだろう…

 て、あれ?気がついたらそのままお持ち帰りされてる…

 まあこの子は悪い子ではなさそうだし、持ち帰られてみるか。

 行くとこもないし。



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この世界のガイガンはどうもすごいらしい

お気に入り、感想、評価ありがとうございます。
予想よりも反響大きくてびっくりです。




 奏ちゃんにお持ち帰りされてから二週間。

 最初の数日は検査やら研究やら解剖するしないとかで忙しかったがなんとか解剖は免れ、無事に奏ちゃんのペットとして生活を送っている。

 

「ほらピー助。アジだぞ~」

 

 奏ちゃんの持つアジを咥えて、飲み込む。

 うん、うまい。

 最初は丸ごとって抵抗あったけど今ではすっかり慣れて美味しくいただいている。

 人間としてのプライド?

 そんなのこの体には邪魔だと悟った。

 とにかく生きていくことが最優先。

 今は奏ちゃんのペットとして生きていくと決めた!

 

「お前はかわいいな~」

 

 奏ちゃんに持ち上げられ、抱き抱えられる。

 羽とか邪魔だと思うけど奏ちゃんは気にせずに抱き抱える。

 どうにも俺ことガイガンはかわいいらしい。

 まあ確かにトゲトゲしているところはあるけどシルエットはペンギンみたいだし。

 それとやっぱり小さいのがいいらしい。

 人間は小さいものを愛でる。

 これは紛れもない事実…

 まさかこれを狙ってガイガン(俺)は小さくなったのでは!?

 それはないか。

 まあ可愛い女の子に飼われるなんて役得役得ゥ!

 働かなくていいし。

 

「奏、いる?」

 

 そう言いながら青い髪のこれまた美少女「風鳴翼」が奏ちゃんの部屋に入ってきた。

 奏ちゃんと翼ちゃんは二人で「ツヴァイウイング」というユニットとして活動している。

 それにアイドルとは別の顔…二課に所属するシンフォギア装者としてノイズと戦っているヒーローなのだ。

 すごい人達に拾われたなぁ。

 どんな確率だよ。

 

「ピー助、今日も元気だね」

 

 翼ちゃんからも撫でられる。

 ここの女性陣は大体落としたといっても過言ではないガイガン氏。

 翼ちゃんは古風な性格だけど、天然だ。

 たまに奏ちゃんがいないときにおもちゃを持ってやってきて遊んでくれるんだけど…

 おもちゃのレパートリーが古いのだ。

 メンコとかベーゴマとか。

 それに持ってきてもらっても俺遊べねえし。

 あとじゃんけんのチョキが古い方のチョキ。

 おばあちゃんがやってたなぁなんてノスタルジーに浸れたけど。

 

「ほらピー助、今日はけん玉を持ってきたよ」

 

「だからピー助は出来ないって」

 

「そんなぁ…」

 

 俺の両手は鉤爪だからね、手を使うような遊びは出来ないんだ。

 それに多分だけど、持ってくるおもちゃは単純に翼ちゃんが遊びたいものではないかと推測。

 

「ピー助はサッカーが好きなんだよ。ほらボールだぞ」

 

 奏ちゃんがボールを地面に転がす。

 それを追いかけて、蹴って、蹴って、蹴ろうとして…こける。

 

「ピー助は運動オンチだなぁ」

 

 奏ちゃんに笑われるが仕方ないのだ。

 まだこの体にあんまり慣れてないし…

 人知れず練習して目にもの見せてやる!

 ちなみにガイガンは知らないがこのサッカーをする姿は撮影され、二課の面々に送られている。

 

「そういえばピー助って、翼が三枚あるよな。アタシと翼の二人でツヴァイウイングだからピー助を加えてトリプルウイングだな!」

 

 確かに羽は三枚あるけど、ツヴァイはドイツ語だからドライウイングの方が正しいんじゃ?

 ドライウイングってなんか乾燥してそうだな。

 

「三枚の翼…いいかも」

 

 翼さんは気に入ったようで。

 こんな感じで毎日過ごせたらいいのにな~。

 二人はいつも命懸けで戦っているし。

 ノイズと人が遭遇する確率はすごい低いらしいけどその割りにはいっつも出動しているし。

 

「そういえば司令がピー助のことについて話があると言っていたな」

 

「そうだったな…ピー助行くぞ!」

 

 奏ちゃんに抱えられて、部屋を出た。

 俺について話?

 なんだろう?

 

 

 

 奏ちゃんと翼ちゃんと共に司令室にやって来た。

 そこにいる筋骨隆々なワインレッドのスーツを着こなす男、いや漢、風鳴弦十郎となんか怪しみのある櫻井了子というシンフォギアの開発者にして天ッ才考古学者!(自称)がいた。

 

「いいところに来たな。ちょうど二人を呼ぼうとしていたところだった」

 

 いいところに来たらしい。

 

「ピー助君についての調べが大体ついたから報告しようと思ってね。ピー助君は…ズバリ、生きた完全聖遺物と言ったところかしら」

 

 かんぜんせいいぶつ?

 なんじゃそりゃ?

 この二人は何か知っているんだろうか?

 って、二人固まってるし。

 

「驚くのも無理はないわ…ピー助君、正式名はガイガン。古代の人々が対ノイズ用に開発した生物兵器。北海道沖でどこかの組織が回収したものが目覚めたようね」

 

 はえー。

 この世界のガイガンは人類の味方だったのか。

 アニメゴジラの小説プロジェクトメカゴジラのガイガンみたいな。

 確かにノイズと出会った時、変な闘志を感じた。

 対ノイズ用ならノイズを見て反応してしまったのだろうか。

 ゴキブリを見たアシダカグモみたいな。

 それにしても古代の人ってすごいな、怪獣改造してサイボーグにしてしまうんだから。

 まあ特撮において古代といえば超技術が当然だからね、しょうがないね。

 しかし…

 

「ただ…何故かだいぶ、こう…小さくなってしまっているのが謎ね。元の姿はだいぶ大きかったとあの施設から回収した資料にはあるのだけど…」

 

 そう。

 こんな大きさではないのだ、ガイガンは。

 こんな2Lのペットボトルと同じなわけがないのだ。

 

「えっとピー助が対ノイズ用?だとしても!ピー助を戦わせたりさせないからな!」

 

「それは無論だ。完全聖遺物を戦場に出してみすみす失うなんて真似は出来ないからな」

 

 よかった…働かなくて済むのか。

 いや、それはどうなんだ。

 働かなくていいなんて思いはするけどこんな女の子を戦わせるなんてのも、どうかなぁ…

 

「ピー助君には今後、対ノイズ用兵器開発の参考として研究をさせてもらう」

 

 だ、大丈夫かな、とって食ったりしない?

 

「なあに悪いようにはしないさ。研究といってもデータ取りがメインだ。いつも通りに過ごしてくれればいい」

 

 俺の不安を感じ取ったのか、司令は優しい声音でそう言ってくれた。

 

「以上でガイガンことピー助君については報告終了だが、二人は少々残ってくれ。次の作戦について話がある」

 

「分かったよ…ピー助、悪いけど一人で部屋に戻れるか?」

 

 了解、ガイガン目標へ飛翔する!

 奏ちゃんの腕から飛び立ち、司令室を出ようとして…

 

 ガンッ!

 

 あ、頭からいった…

 なんで、自動ドアなのに反応しないの…

 小さいからか。

 小さいから反応しないのか!

 もう何度目か分からない後悔をしながら部屋に戻った。

 ちくしょう…絶対大きくなって見返してやる!

 

 

 

 部屋に戻って一人でボールを蹴っていると奏ちゃんが戻ってきた。

 

「お、サッカーの練習か?」

 

 まあ暇潰しに。

 

「ピー助、お前ガイガンなんていかつい名前してたんだな」

 

 ええ、東宝が誇る悪役怪獣ですよ。

 当時の子供達のハートをガッシリ掴んだネーミングとデザインの人気怪獣ですよ。

 

「まああたしのなかじゃピー助で固定だけどな。それより聞いてくれよピー助。あたし、今度大きな舞台で歌うんだ。たくさんの人の前で…」

 

 おー。

 ツヴァイウイングのライブかぁ。

 そういえばライブとか行ったことないな。

 この感じだと連れて行ってもらえる可能性が…!

 

「残念ながらピー助はお留守番だ。その分あとでたっぷり私の歌聴かせてやるから楽しみにしとけよ?」

 

 ライブに行けないのは残念だけど俺のために歌ってくれるなんて…

 ヤバイ、泣きそう。

 今からその日が楽しみだな~。

 



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どんなに苦しくても



たくさんの感想ありがとうございます。
今回はだいぶ駆け足になってしまったと思いますが、とりあえず一期本編前の話は終わりです。
この頃の日常話は番外編とかで書いていくのでよろしくお願いします。




 奏ちゃんが死んだ。

 戦死だった。

 ツヴァイウイングのライブに大量のノイズが現れて、奏ちゃんと翼ちゃんは戦って…戦って…

 元々奏ちゃんはシンフォギアに適合出来なかったのを色々無茶して適合させていたらしい。

 

(部屋が広くなった…)

 

 荷物などは片付けられ、そこにかつて天羽奏という人物がいたことを感じさせない。

 俺に優しくしてくれた人はもう帰ってこない。

 短い間だったけど、彼女とはいろんな思い出がある。

 歌を聴かせるって言ったじゃないか…

 

「ピー助、ここにいたか…」

 

 翼ちゃん…

 奏ちゃんが亡くなってから当たり前だけど元気がない。

 二人はとても仲が良かったから…

 

「すまない、ピー助…お前の主人を守ることが…出来なくて…」

 

 そんな…翼ちゃんのせいじゃないのに…

 俺は知っている、翼ちゃんが毎日この部屋で泣いていることを。

 どうして、こうなった。

 全部ノイズのせいだ…

 ノイズ…絶対許さない…!

 こうなったら…

 

 

 

 

 ツヴァイウイングは活動休止。

 あれからしばらくノイズも現れず、私は無為に時間を浪費していた。

 こうして、廊下に意味もなく立っていて…

 奏が死んだのは私が弱かったせいだ。

 剣であるという誓いが鈍っていたからだ。

 防人である私が、私が守らなくてはならないというのに…

 

「大変です翼さん!」

 

 緒川さんが血相を変えて現れた。

 ノイズだろうか?

 

「ピー助さんが脱走しました!」

 

「え…」

 

 

 

 

 

 完全聖遺物だかなんだか知らんけど、俺が大事ならもっと監視なりなんなりしとくべきだったな。

 簡単に脱走出来たぞ。

 ここから出てどうするかなんて決まりきっている。

 ノイズどもを滅ぼす。

 それがこのガイガンに与えられた唯一無二の使命だ。

 古代人が対ノイズ用に作ってくれたおかげだろう、恐らく次にノイズが現れるだろう位置を察知している。

 ─殺してやる。

 復讐だ。

 奏ちゃんの復讐だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これ以降、ノイズとは違う謎の生物の目撃情報が続出した。

 ノイズが現れる現場に即座に現れて、ノイズを殲滅する。

 その手は死神の鎌のようで、黄金の三枚の翼を持ち、高速で飛行しノイズ達を切り裂いていく…

 現代の鎌鼬か!?とメディアは伝えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザクッ、炭になった。

 ザクッ、炭になった。

 ザクッ、また炭になった。

 何かが焦げる臭いがする。

 辺り一面燃えている。

 いつの間にこんなに燃えていたんだろう。

 まあいいや。

 こいつらを殺そう。

 鉤爪で、ノコギリで、光線で。

 俺はこいつらを殺す。

 殺す。

 殺す。

 殺す。

 殺す…?

 なんのために?

 ……………………

 何か、忘れて、しまった、しまった?

 俺はこいつらを殺す。

 それだけ、それだけの存在。

 俺はガイガン。

 ノイズを殺す者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助、いや、ガイガンの脱走から一月は経とうとしている。ノイズが現れるとガイガンも現れていたようだが…」

 

 司令は最近ようやく鮮明にピー助を撮影することに成功した写真を見ている。

 写真を見た司令は…

 

「…かなりでかくなっているな」

 

 そう言いながら写真をテーブルに置き、私にも見せた。

 久しぶりに見たピー助の姿は…司令の言うとおり、かなり成長しているようだ。

 一緒に写っているノイズと比較すると大体2m程にまで成長している。

 ノイズに向かって、腕の鉤爪を振り下ろしているその姿は獲物を仕留める捕食者。

 ノイズは人類の天敵だが、ノイズにとっての天敵がピー助…ガイガン。

 

「恐らくガイガンに仕込まれたプログラムか何かあるんでしょう。ノイズを見たらとにかく殲滅!…みたいな」

 

「そんな…それでは今のピー助はプログラムに従うただの機械ではありませんか!」

 

「あくまで可能性よ可能性。もし、別の可能性があるとしたら…天羽奏を殺されたことへの復讐。もしくはその両方」

 

 復讐…

 奏も復讐を誓っていた、しかし…

 

「奏は恐らく、そんなこと望んでいません」

 

 あんなに可愛がっていたピー助がこんなことになるのを望んでいるはずがない。

 

「ああ。一刻も早く、ガイガンの捕獲を頼む。今はまだ人的被害は出ていないがこれ以上巨大化するとなると甚大な被害を出す可能性がある」

 

「分かりました…!」

 

 その時、ノイズ出現を知らせる警報が鳴った。

 ノイズの出現場所は近隣の港湾。

 すぐに出動要請がかかり向かったそこには巨大化し、ノイズを屠るピー助の姿があった。

 

 

 

 

 

 ノイズだ。

 ノイズだ。

 殺す。

 殺す。

 ノイズは殺す。

 鉤爪で。

 ノコギリで。

 光線で。

 鉤爪を叩きつけて。

 ノコギリでズタズタに切り裂いて。

 光線で焼き払って。

 あとに残るのは炭だけ。

 真っ黒な炭だけ。

 これがとっても、おいしい。

 ぱくぱく、ぱくぱく。

 まだたくさんいるから、殺して食べなきゃ。

 

「ピー助ぇ!!!私だ!翼だ!」

 

 なんだ、あれは。

 人間か。

 人間は食べれない。

 人間は殺しても意味がない。

 無視しよう。

 

「私が分からないのか!翼だ!奏と一緒にいた…!」

 

 人間が何か喚いている。

 関係ない。

 それよりノイズだ。

 ノイズを殺せ。

 鉤爪を振り回し、ノイズを一掃する。

 一気にたくさんのご馳走が出来た。

 おいしい、おいしい。

 

「ピー助…ノイズを食べて…やめろ!止まるんだピー助!」

 

 まだ人間がいる。

 けど関係ない。

 ノイズを殺…

 

『ピー助…』

 

 懐かしい声を聞いた。

 青い髪の少女の隣に、オレンジ色の髪の少女を見た。

 懐かしい。

 今は、もう、会えないはずの。

 

『ピー助…もうこんなことやめるんだ。家に帰って…翼の隣にいてやってくれないか?』

 

 か、なで…ちゃ、ん。

 

『こいつ、寂しがりやだからな。お前が近くにいてやらないとダメなんだ。あたしの代わりにこいつの翼になってくれよ』

 

 けど、俺なんて…

 

「ピー助!奏を失い!お前までいなくなってしまったら私は…私は…」

 

『ほらな?今の翼にはお前が必要なんだ。だからもっと自信を持て!お前には三枚も翼があるんだから』

 

 奏ちゃん…

 ああ…

 分かったよ…

 いつの間にか目的すら見失ってノイズを殺して回っていたような俺だけど…

 奏ちゃんが…そういうなら…

 俺は翼ちゃんの翼になるよ。

 

『ありがとう…今、なんとなくお前の言葉が分かった気がするよ。それじゃああたしはもう行くけど…約束破って悪かったな…お前にあたしの歌聴かせるって…』

 

 ホントだよ…

 約束破るなんて…

 

『ごめんな…本当に…ごめん…』

 

 そして、奏ちゃんは消えた。

 奏ちゃん…

 

「ピー助…私が分かるか?」

 

 コクリと首を縦に振る。

 あれ、翼ちゃんが小さい…

 

「ピー助が大きくなったんだ。いつの間にか私よりも大きくなって…」

 

 ホントだ…

 どうしよう、こんな大きな図体だと生活しにくい。

 前は体の小ささを困っていたのに今度は大きくて困るなんて…

 なんとか小さくなれたりしないかな…

 てか、ちょっと待って…ヤバ…腹が辛い…食べ過ぎ…た…

 

「ピ、ピー助、大丈夫か?ふらついているぞ…」

 

 つ、翼ちゃん…

 ごめんなさい…

 ちょっと、戻します…

 

「ピー助!?ちょっ、こっちはダメ…だぁ!!??!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ん…

 いつの間にか寝てたのか…

 お、すごく体が軽いぞ。

 すごく調子がいい!

 

「…ピー助」

 

 あ、翼ちゃん。

 って、あれ?

 翼ちゃんが大きい…

 それになんか体中煤まみれみたいに黒いし。

 あとその刀はなんですか…?

 

「よかったなあ元の大きさに戻れて…」

 

 あ、元の大きさに戻ったのか…

 それなら安心、安心…

 翼ちゃん、いや、翼さん。

 なんで刀を振り上げてるんですか…?

 

「よくも…よくも私に…ぶちまけてくれたなぁ!!!」

 

 いやあああああああああ!!!!!!!!!!!

 ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!

 思い出したからぁ!

 おもいっきり吐いたことは謝るからぁ!

 

「切捨…御免ッ!!!」

 

 いやあああああ!!!

 咄嗟に鉤爪で受け止めたけど…普通にパワー負けしそう…

 ひえぇ!刃が目の前まで迫ってるぅ!

 あまりの恐怖に目を瞑って…

 あれ?軽くなった…

 

「…ふふっ。驚いたか?冗談だ。さっきのちょっとした仕返しさ」

 

 えぇ…

 本当かな…

 あとで闇討ちとかされそう。

 

「さあ、帰ろうピー助。みんなのところへ」

 

 そういって手を差し出す翼ちゃん。

 正直、脱走なんてしでかしたから合わせる顔がないけど…

 翼ちゃんと一緒にいてくれって頼まれたからな…

 鉤爪の先をちょこんと手のひらに乗せる。

 

「ふふっ。一緒に帰るぞ!」

 

 翼ちゃんは笑った。

 久しぶりに翼ちゃんの笑顔を見ることが出来た。

 そのことがすごく嬉しくて、思わずお腹のノコギリが大回転してしまったのは秘密だ。

 奏ちゃんを失ったことはとても悲しいことだけど、前を向かなきゃならない。

 それが、今を生きる俺達がやるべきことなんだ。

 だから、奏ちゃんが守ろうとしたものを俺が、俺達が守るんだ。



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番外編
番外編 ガイガンの日常1


一期入る前に少し番外編挟みます。
一期を見返したいので…
ようするに時間稼ぎです。




ガイガンの食事1

 天羽奏という少女に拾われて三日たった。

 現在、俺は檻…まあ、大きめのケージの中で過ごしている。

 狭いところであまり動けないのが少しストレスだ。

 それにやれ検査だ調査だと毎日ゆっくりしていられない。

 今のところ体に影響ありそうな検査とかはしてないけど…

 うーん、いつまで続くんだろう。

 早いとこゆっくり過ごせるようになりたい。

 

「よう!ピー助!」

 

 外を見ると天羽奏…奏ちゃんでいいか。

 奏ちゃんと…あと、青い髪の女の子がいた。

 

「悪いなピー助。そんな狭いとこで…あたしはもっとデカイのないのかって言ったんだけどな」

 

 なんということでしょう。

 奏ちゃん、俺のためにどうやら上に掛け合ってくれていた。

 こんなに嬉しいことはない…

 

「今あるのがこれだけだって言われちまってさ…けど、そろそろ検査は終わりらしいからもうそろそろの辛抱だ」

 

 お、もうそろそろ終わりなのか。

 それが知れただけでもよかったよかった。

 

「そんでさ…約束しただろ?魚食わせるって」

 

 あー…確かそんな約束してたな。

 ここに連れられて来てからすぐに調査だ!って捕まってそんな暇なかった。

 

「ほら!魚屋行って買ってきたんだ!なんでも水族館で飼われてるペンギンはアジ食ってるって聞いたからな。アジにしたぞ!」

 

 袋一杯のアジを見せる奏ちゃん。

 生…

 なんか寄生虫とか菌とか怖い…

 けど、食欲には勝てない。

 これまで出されたのはなんかドッグフードみたいなやつで美味しくなかったのだ。

 それよりはアジの方が…いい。

 

「勝手にあげて大丈夫?それにこの生物はペンギン…なの?やけに機械チックだけど…」

 

 うんうん、俺はペンギンじゃないよ。

 宇宙怪獣、もしくはサイボーグ怪獣のガイガンだよ。

 

「相変わらず固いなぁ翼は。いいだろエサくらい。腹空かせてるみたいだし」

 

 そこの青髪の女の子は翼ちゃんというらしい。

 まあ勝手に動物にエサあげるのはよろしくないらしいけど、正直今はかなりそのアジが欲しい。

 あんな、なにが配合されてるか分からないものに比べたら何千倍もマシだ。

 

「ほらピー助。食べな?」

 

 アジの尾鰭を掴んで、食べやすいように奏ちゃんは俺に与えてくれた。

 それを奏ちゃんの手を噛まないように注意してアジを咥えた。

 そして、飲み込む。

 …あんまり意識してないけど、この時の動きはかなりペンギンのそれに近い…というかそれそのものだった。

 それよりアジが旨い…

 俺(ガイガン)って本当にペンギンなのかも…

 

「よしよしいい子だなぁピー助。ほら!翼もやってみろって!」

 

「え、いや、私は…」

 

「いいから、ほら!」

 

 翼ちゃんに無理矢理アジを持たせ、翼ちゃんにも餌付けをさせようとする奏ちゃん。

 

「だ、大丈夫?か、噛んだりしてこない?」

 

「いつもの調子はどうしたんだよ?大丈夫、ピー助は噛んだりしないって」

 

 翼ちゃんだいぶビビっておられる様子。

 大丈夫ですよ~噛んだりしませんから。

 ちなみにガイガンには小さいが、結構たくさん牙が生えている。

 

「私は防人…私は剣…大丈夫。こんなペンギンのような生き物に遅れをとる私ではない…さあ!来なさいっ!」

 

 勢いよくアジを持った右手を突きだした翼ちゃん。

 なにもそんなに意気込まなくても…

 ひょいっと軽く咥えて、二匹目のアジを飲み込む。

 

「あっ…」

 

 うん、旨い。

 こんなにアジが美味しいと思ったのは人生ではじめてだ。

 

「か、奏!もう一回やらせて!」

 

「お、おう…いいけど」

 

 再び、奏ちゃんから翼ちゃんへアジが手渡され、翼ちゃんは再び俺にアジを与える。

 それを食べる。

 

「もう一回!」

 

「もう一度だけ…」

 

「最後に…」

 

「あとでなんでもするから…!」

 

「これがっ!最後の…アジだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 …………………

 

「もう何匹あげてんだ!見ろ!ピー助が腹膨らませて苦しそうだ!」

 

 調子に乗りすぎて食べ過ぎた…

 おえっ…

 

「ごめんなさい…つい…」

 

「ついじゃない!腹壊したらどうすんだ!?」

 

「いや、あげたら食べるピー助も…」

 

「動物なんだからエサあげたらあげるだけ食うに決まってるだろ!」

 

 すいません、中身がいい歳の人なのに考えなしに食べてました。

 

「全く、翼は変なところ抜けてるんだから…今日のエサやりは終わり!」

 

 翼ちゃんから、そんなぁと見た目からは思いもよらない情けない声が出た。

 けど、終わりにしてもらえると助かる…

 これ以上は…うぷっ…

 もう…今日は…無理…

 




SAKIMORI語からまだ乙女残ってた頃の口調に直しました。(2019/12/11)


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番外編 ガイガンの日常2

キャラ崩壊注意デスッ!



ガイガンの引っ越し

 二課に戻って奏ちゃんから翼ちゃんに引き取られた俺ことガイガン。

 それに伴い新しい住居として翼ちゃんの家に引っ越すことになった。

 引っ越すといってもやることないけど。

 そんなわけで現在、翼ちゃんのカバンの中に隠されて輸送されている。

 なんかカバンの中って密輸されてるみたい。

 

「ピー助、そろそろ着くからね。もう少しの辛抱よ」

 

 辛抱だなんてそんな。

 密輸気分を味わっていたのに。

 たまにカバンの中に潜り込んで遊ぼうか。

 それから五分後。

 

「ピー助、着いたよ」

 

 ついに新居に到着か!

 さあ一体どんな部屋なのか。

 まあ、翼ちゃん几帳面そうだし部屋は綺麗だろう。

 それでは拝見…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄を見た どうしようもない 地獄を見た

 

 服は脱ぎ捨てられ、飲み干されたペットボトルは散乱し、テーブルには本、空き缶、様々なものが積み上がっている。

 

「どうしたのピー助?ほら、ここが新しいお前のお家よ?」

 

 家?

 ここが?

 ごみ捨て場じゃないの?

 百歩譲って夢の島だよ?

 こんなとこにいたらガイガンじゃなくてゴキネズラになっちゃうよ?

 ん?

 あ、あの黒い…ヤツは…

 奇しくもガイガンの宿敵と同じイニシャルを持つ、あの生物…

 G…

 ………………………

 いやあああああああ!!!!!!!!!!!

 

「あ!?ピー助!どこに行くの!?」

 

 全速力でこの部屋を飛び出し、空へと飛び立った。

 …あぁ、空って、なんて美しいんだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?ピー助君じゃない。どうしたの?今日はお引っ越しでしょ?」

 

 二課にとんぼ返りした俺が最初に出会ったのは友里さん。

 聞いてよ友里さん!

 翼ちゃんの部屋がとてもペットをこれから飼うぞって人の部屋じゃないんだ!

 

「うーん…なにかを訴えているのは分かるんだけど…ごめんなさい。私には何を訴えているか分からないわ」

 

 ちくしょう!

 人語を話すことが出来れば…

 そうだ!

 筆談すればいいんだ!

 俺って天才!

 いや、天ッ才!

 

 

 

 

 

 くそ…手が鉤爪だからペン持てねえじゃん…

 俺って馬鹿…

 

「ピー助君…落ち込んでるのは分かるわ。何かショックなことがあったのよね?」

 

 はい…

 どうして俺、ガイガンなんだろう…

 アンギラスとかバラゴンとかゴロザウルスよりはマシだけどさ…

 とにかくこの体であることが忌々しい…

 

「ほら元気出して?あったかいものは…ピー助君にはダメか。とりあえずお魚をあげましょうか」

 

 よっしゃラッキー!

 ご飯くれる人はみんな好きだぜ!

 

「ふふっ怒ったり落ち込んだり元気になったり忙しいわね」

 

 ヤバイ年甲斐もなくはしゃいでしまった…

 この体になってから精神年齢幼くなった気がする。

 まあそれより魚、魚~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピー助が急に飛んでいってしまい、私はピー助の捜索に明け暮れていた。

 

「ピー助!どこにいるの!?」

 

 ピー助まで私を置いていってしまうの?

 やはり部屋の掃除すら出来ないような私では…

 ん、携帯が鳴っている…緒川さんか。

 

「はい…どうかしましたか?」

 

「翼さん、次の仕事のことで…って、どうかしたんですか?声に元気がありませんよ?」

 

 平静を装っていたつもりが見抜かれてしまった。

 私もまだまだのようだ。

 素直に相談しよう。

 

「実はピー助が…家に入れた途端逃げ出してしまって…今、探しているところです…」

 

「ピー助さんですか?ピー助さんなら友里さんからご飯をもらっていましたが…」

 

 え?

 は?

 …なるほどピー助、本当は私よりも友里さんのような大人の女性がいいということ…?

 ふふ…見ていなさいピー助…今に見返してやるわ…

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろ夕飯の時間だ。

 夕飯も友里さんからもらおう。

 …?

 この匂いは…

 に…肉の匂いだ…!

 一体どこから…?

 あ、あれは…!

 廊下の先に肉が見えている。

 こんがり、ジューシーな…巨大な鳥肉!

 あれって、あれだろ?クリスマスとかに食べるやつ!

 トムとジェリーによく出てくるやつ!

 よもや、こんなところで出会そうとは!

 まさに、運命だ…

 ここのところ魚ばかりで少し飽きていたのは事実。

 肉が食べたいと思っていたところだ!

 マッハで飛行し肉まで一直線。

 よし!肉ゲット!

 

「つ か ま え た」

 

 ひえっ。

 なんだ今の冷たい声…

 てか、なんでこんな廊下に肉が?

 ま、まさか…これは…!

 

「そう、罠よ」

 

 上から影がさした。

 背後にいたのは翼ちゃん…

 な、なんだこの翼ちゃんから発せられるプレッシャーは…

 体が動かない…

 動けガイガン!なぜ動かん!?

 

「ふふ…影縫い」

 

 影縫いって忍法だよね!?

 翼ちゃんどっちかと言ったらというか完璧に侍とか武士とかの部類なのに忍法使えるとか卑怯だろ!

 

「さあ…私達の家に帰りましょう?」

 

 いやぁ…

 Gが出るようなとこはヤダー!!!

 ガイガン動いて!

 ガイガーーーーーンッ起動おおおおおお!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理でした。

 翼ちゃんに連れられ再び訪れた夢の島…

 あれ?片付いてる。

 まさか…あの後、翼ちゃん部屋の掃除を…

 あぁ…分かってくれたんだね俺の怒りが!

 こんなキレイな部屋なら安心して住める!

 床に服もペットボトルも散らばってないし、テーブルもキレイで…ん?何かメモ用紙が置いてある。

 何か書かれているようだ。

 よーく目を凝らして見るとそこには…

 

『掃除しておきました 緒川』

 

 あっ…

 もう、俺は、ダメかもしれない。



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番外編 この2年で変わったこと、そして…


ちょっと息抜きに番外編。
本編はよしろ!という方には申し訳ありません。
なんでもするから許してください。



 翼ちゃんの家に引っ越してから結構経つが…

 いろいろと変わったことがある。

 それは…

 

「ピ、ピー助…分かった、分かったから!服はカゴに入れておくから!」

 

「ピーッ!!!!!ピッ!ピッ!!!」

 

 絶賛、部屋を汚そうとする翼ちゃんを叱っている。

 全く、隙あらば散らかそうとするんだから…

 緒川さんが掃除してくれるとはいえ、まず散らかさないことが大事なのにこの娘は。

 

「うぅ…最近のピー助は反抗期みたいだ…」

 

 ホントにこの娘は家じゃあダメダメなんだから…

 ファンの人達が知ったらどうなることか…

 いや、最近バラエティーに進出し、その天然さでお茶の間を賑やかす翼ちゃんだから案外受け入れられる…?

 ダメだダメだ。 

 せめて片付けくらいは出来るようにならないと、将来困るのは自分なんだからここは心を鬼にして指導しなければ。

 

「ほら、ピー助。お風呂に入るぞ」

 

 抱き抱えられて、お風呂に連れ去られる。

 最初こそ一緒に入るのは恥ずかしくて嫌がっていたけど…

 うん、その、なんだろう。

 まあ、慣れです。

 慣れってことにしておいてください。

 決して翼ちゃんとかに魅力が無いわけではないんだ。

 むしろキレイな体してるんだけど…

 なんだろう…

 あっ、ようやくこのもどかしい感情を表す言葉を見つけた。

 つまり、個人的にストライクゾーンではないということです。

 あと幻滅。

 そして悟り。

 積もりに積もったそれらはいつの間にか翼ちゃんのことを女の子というより妹とか娘みたいに思うように変化させた。

 全くこんなんじゃお嫁にいけない。

 本人は「私は剣。伴侶を得るなどありえない」とか言うんだろうなぁ。

 けどなぁ。

 幸せになってほしいとは思っているのだ。

 ノイズなんかと戦って、もっと女の子っぽい、年相応のことをしてほしい。

 ほしいんだけど、この思いは今のところ届いていない。

 喋れないしね。

 まあ、喋れてもコミュ障だから無理。

 人に何かを伝えるって難しいなぁ…

 

「ピー助が難しい顔してお風呂に浸かっている…まさか、悪いものでも食べたんじゃ…」

 

 違うわ。

 もうこの子は…

 

 

 

 

 さて、お風呂に入ったらあとは寝るのみ。

 おやすみ~。

 Zzz…

 

 

 

 うーん、これは夢か。

 夢にしてはやけに鮮明な…

 ここは…どこなんだ?

 なんか、見覚えあるような…

 街?

 急に場面が切り替わり、どこかの部屋に。

 誰かいる。

 ベッドで拘束されている男と、それを見ている者。

 こいつらは…

 

「おめ……き…ガ……適………ば…」

 

「……………!!!!!!」

 

 何か話しているようだが、ノイズが混じって聞こえない。

 一体、何が…

 二人の顔が見えないのでどんな様子か分からない。

 

 そして再び、画面は切り替わり今度は吹雪が吹き荒れる大地。

 

 もう、一体どういう夢なんだ?

 ん…?

 あれは…

 吹雪の向こう、何かがいる。

 視界なんて数m先しか見えないはずなのに…

 青い光が点滅し、巨大な足音と振動、咆哮。

 何かは一つだけではない。

 巨大な、何体もの怪獣がこの向こうにいる。

 怪獣。

 直感で分かった。

 この向こうにいるのは怪獣だ。

 行かなければ。

 仲間達が、戦っている。

 吹雪に逆らい、戦場へと駆け出す。

 飛んでいるもの、四本足で果敢に立ち向かうもの、様々な怪獣が奴に挑んでいる。

 奴は…倒さなければならない。

 右腕の鎌を振り上げ、奴の首目掛けて振り落とす。

 しかしそれは弾かれてしまう。

 その隙、胴ががら空きになったところをやつの光線が直撃する。

 …とても、痛い。

 痛いけど、まだやれる。

 こいつだけは…倒さないと…

 他の怪獣達も奴に挑むが軽くあしらわれる。

 奴に勝つには…あいつがいないとダメか…

 あいつは…ようやく来た。

 こうなったら…

 鎌に備えられている鎖を奴に向かって射出し、動きを止める。

 これで…動きを止める!

 今のうちに…トドメを!

 あいつは分かったと躊躇うことなく、蒼白い光を放ち、そして─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ー助?ピー助?おはようピー助。今日は起きるのが遅いのね。いい夢でも見た?」

 

 むにゃ…

 朝か…

 うーん…

 まだ頭が起きてない。

 何か、夢を見てた気がするけど…

 

「ピー助、朝ごはんだぞ」

 

 朝ごはん!

 食べる食べる~!

 今日の朝ごはんはなんだろなあ~!





XDのノリで並行世界のガイガンネタ思いついた。
奏も翼も失くして孤独なガイガン。
タイトルは「双翼の墓守」
まあグレビッキー見て思いついたパクリネタですが…


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設定(偽)

こんな時に設定を投稿するやつがどこにいる?
ここにいるッ!

無印編後半まで読んでから読んでね!
ネタバレ注意だよ!

さっさと無印編終わらせろ?
終わらせる!終わらせますからちょっと待って!
なんでも…なんでもするからぁ!


ガイガン(ピー助)

 ある朝目覚めると飼い主の翼さんそっくりの女の子になっていた!

 目はルビーのように赤く、翼さんのようなキリッと凛々しい目ではなくタレ目。

 水色の髪に金と銀のメッシュ。

 身長はクリスちゃんと同じくらい。

 胸部もクリスちゃんと同じくらい。

 見た目に関しては一番よく見ている人間の風鳴翼を元にしている(胸に関してはクリスちゃんのもの+豊かな人をよく見ていたから)

 身長に関しては「ちっちゃいガイガンになってた」という作品から「ちっちゃい翼さんになってた」的なコンセプト故(一部を除く)

 歌唱力は元となった翼さんに比べるのがめっちゃ失礼なほど音痴。ジャイアン。ナマコの内臓のような歌声ともっぱらの評判(某恋愛頭脳戦漫画並感)

 しかし家事力、女子力に関しては翼を大きく上回り、嫁にするならどっち?という調査で完勝している。

 テレビの企画で翼さんが密着される際、家事のパートはピー助が影武者として出演している(させられている)

 擬人化当初は全裸だったため翼さんから服を借りたが、一部サイズが合わずクリスちゃんから服を借りることで解決した。

 てっきりただ人間の姿になっていたと思いきや怪獣としての能力は使用可能で、腕に鉤爪を装備し、丸ノコは…手持ち武器となった。

 こんな子が腹に回転ノコギリを装備してみろ、攻撃のために密着してきたらノコじゃなくて二つの柔らかさ…驚異の胸囲の脅威のせいでノコギリ当たる前に死んでしまう。

 

「ザ・ガイガン!」 

 

メガロピー助

 上記のピー助の身長がちょっと伸びる。(対メガロの時にスーツが新造され、ちょっと面長になったのが元ネタ)

 能力に変化なし。

 

「腹抱えて笑ったりしないよ!」

 

流星人間ゾーンピー助

 見た目は上二つに忍者要素が足され、ガイガン忍法が使えるようになった。  

 忍装束にマフラーで口元を隠している。

 めっちゃシャイなだけである。

 こちらはなんと怪獣ではなく恐獣。

 

「3000倍…?なんですか?」 

 

ゴジラアイランドピー助

 見た目は変わらず。

 なんと職業殺し屋。

 正々堂々とした戦いを好む、侍っぽい性格。

 ピー助の中で一番翼さんらしい。  

 ライバルが卑怯な手を使われ負けそうになるとつい加勢しちゃう。

 

「いつか、主殿と本気で仕合うてみたいものよ…」

 

FWピー助

 全身をレザースーツで身を包んだ高身長セクシー美女。

 少し大人な風貌となっている。

 けどアホの子。

 武器が鎌になっている。

 やっぱりあのセリフがないとやっていられない。

 

「ちょっとみんなには刺激が強いかな?」(頭に熱線くらい)

 

FWピー助(チェーンソー)

 見た目は武器がチェーンソーに変わり、一部アクセサリーがよりトゲトゲしている。

 やっぱりアホの子。

 宇宙人に体を弄られる気分はどう?←みんな弄られてます…

 

「お姉さんカッコよかったでしょ!」(後ろから自分の丸ノコで首落ちながら)

 

プロジェクトメカゴジラピー助

 シベリア沖の海底で冬眠してたら引き上げられたために眠たげな目をしている。

 人類の希望なガイガン。

 だけど相手が悪すぎてひどい目に…どんどん体を大人達に弄られてついには…

 

「みんな…私…勝った、よ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピー助ズ「私達、ピー助ズ!!!」

 

翼「ここが…楽園か…」

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

ピ「翼ちゃんすごい幸せそうな顔して寝てる…どんな夢見てるんだろう…」




オマケ 擬人化ガイガン

翼「今日は朝から最高の気分…最高にハイってやつだぁ!」

ピ「どうしてそんな…」

翼「ところでピー助、あと六人増えたりしない?」

ピ「しないよ!?」

反省もしてないし後悔もしてない。


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設定(真)一期編

ネタバレ注意!
一期編見たら読んでね!




尚、随時アップデートされる模様。








ガイガン ピー助

 

 何者かにより北海道沖からサルベージされた完全聖遺物。

 目覚めた当初は記憶がなく、中の人は目が覚めたらガイガンになってたと思っていたが実は5000年前、先史文明期のころからガイガン。

 アヌンナキの一柱、改造執刀医になりそこねた『エム・ゴ』によりガイガンの肉体は寿命を終えようとしていたところを捕獲され体を改造された。

 そこに、肉体を制御するための脳として中の人の脳が移植されることによりガイガンになった。

 本来はエム・ゴによる怪獣殺戮のための兵として造られたが、伝承では先史文明期の人々がノイズに対抗するために造ったと齟齬がある。

 これにはある理由があるがピー助がまだ思い出していないので後々判明することになる。

 アヌンナキと人を繋ぐ巫女としてフィーネと共にいたのが地球の先住民コスモスの小美人と呼ばれる双子の小人。

 エム・ゴは小美人の持つ怪獣と会話する能力やコスモスが持つ科学力に目をつけガイガンの製作を強制的に行わせていた。

 しかし、小美人によりガイガンは操られることなくエム・ゴの元から脱走、共にインファント島へ逃げてエム・ゴの計画を阻止するべくガイガンはそれぞれの怪獣達に協力を求めてエム・ゴの軍団と戦い、最後は謎の存在と吹雪が吹き荒れる雪の大地で決戦し、崩落する氷の中へと落ちていった…

 そして時が流れて一人の少女に拾われることになる。

 

SYSTEM FINALWARS

 

 ガイガンに組み込まれた決戦仕様の姿となるシステム。

 大きくシルエットは変わらないが、外見がまるでレザースーツを着ているかのような皮膚に鉤爪から鋭い鎌へと変わる。

 体型も変わることで運動性能が飛躍的に向上。

 人間に近い姿となるので対人間…フィーネやシンフォギア装者などを相手にする際はこちらの姿をとる。

 ノイズ相手には使うことはない。

 また、右腕を失った際にチェーンソーとなって再生したがこれ以降は装者がアームドギアを変形させるように切り替えが可能となった。

 本人曰く、チェーンソーはパワーはあるが遅いということで使い辛いようだ。

 もっぱら基本スタイルは機動力を活かせる鎌の方。

 

 初期構想ではピー助の性格は自分をヒイロだと思ってるデュオという変な設定でした。

 その名残か一期編はやけにヒドイ目にあってます。

 貧乏くじ体質は若干残っている様子。

 

 転移させられて、ガイガンに変えられて(神様転生ってそういう…タグで伏線をはってました)と転生ものにしてはやけに悲惨な目にあってる主人公。

 ガイガンの姿は別に特典でもなんでもないですからね。

 おかげでフィーネから刺されるし、フィーネから操られるしと対フィーネ戦では負け越してるピー助さん。

 戦績が対ノイズ以外あまりよろしくないのデス。

 しかし持ち前の可愛さを武器に日夜戦うピー助のおかげで鬱展開という感じではない…?

 あとフィーネをスプラッタこそしたけど残酷な描写タグちゃんにはあんまり仕事させたくないと思っているのであった。

 

 

 

 

 

エクスドライブ・トリニティ

 

 翼が発現させたエクスドライブ形態。

 奏のガングニールとガイガンの能力、技が使用可能となりアームドギアに薙刀が追加される。

 この他、太ももの装甲から丸ノコを発射したり、アームドギアの刃をチェーンソー仕様に変更したりなどなど機能は様々。

 死んだ奏と死んだと思ってたピー助への思いから発現した奇跡の形態。

 翼さんのガイガンギアまだー?という読者の声をすっ飛ばしてさらに上の形態を一期でお出ししてしまい今後の展開色々考えないといけなくなり焦る作者。

 エクスドライブの特徴である翼が原作のエクスドライブでは四枚なのに対しこちらは背中に巨大な三枚の翼がガイガンの羽と同じような感じで生えた。

 退化してんじゃねえかと思ったそこのあなた、この翼は三人の絆の結晶なの!だから一枚減ってもなんともないの!

 

使用技(オリジナル)

機刃ノ一閃 

 ガイガンの力を用いた技。

 銀色のエネルギー刃と太ももの装甲から丸ノコを射出する。

 

参翼ノ一閃

 翼、奏、ピー助の力を一度に放つ大技。

 一振りで三つの刃を放つ。

 刃の色は青、オレンジ、銀。

 

 

 

ルナアタック後の世界

 ルナアタックによりシンフォギアの概要を各国に開示した日本政府ではあるがそれ以上に世界の目はゴジラに向いていた。

 月の欠片を破壊した熱線…後に『神の一撃』と名付けられ、各国機関はそれぞれ調査に乗りだしているが…

 また、これ以降世界各地で火山活動の活発化やなぞの地震や異常気象が一時期相次いだ。

 これらは王の目覚めに呼応し、目覚めたもの達によるものだが今は鎮静化している。




オマケ ガイガンが主役のラブコメ
マリア編攻略
 とりあえず餌付け。
 以上!
 …なんてこともなく。
 マリアの攻略に欠かせないのはたまに仕返しをするということ。
 いつまでもお弁当のおかずを取られるだけの関係ではなくたまに反抗しましょう。
 そうすると好感度が下がるのでは?と思ったそこのあなた。
 マリアは学院のアイドル。常に周囲から羨望の眼差しで見られています。
 マリアは普通の友達関係を築きたいと思っているので、軽いケンカだったり軽口を叩いておくとマリアにとって貴重な友達になれます。
 ただし反発のし過ぎは禁物。適度に反発しましょう。
 そして、あるイベントを起こして大胆な行動をすると…
 さて、こんなマリアさんでもバッドエンドルートは存在します。
 この先は君の目で確認してくれ! 


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番外編 グレ響に拾われた

なんか、書きたくなったので。


 これはとある世界線でのお話──

 奏の死からノイズを憎み、自身を恨んだガイガン、ピー助は二課を出奔。

 ノイズを人知れず狩り、殺し、蹂躙し…

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これは、そんな世界の話。

 

 

 

 トンネルの闇の中、異形がいた。

 紺のレザーのような表皮、血に染まったような紅い翼、宵闇に煌めく白刃の両腕。

 だが、その姿は痛々しい傷だらけだった。

 

 体がボロボロになっていた。

 足取りも覚束ない。

 なんで、こんなにボロボロなのだろう。

 なんで、歩いているのだろう。

 闇の中、小さな光が見えた気がした。

 しばらく光なんて見えなかったから懐かしい。

 そもそも、いつからだったかなにも見えなくなっていた。

 ただ、嗅覚と聴覚で獲物を探して屠るだけ。

 視覚なんてしばらく機能していない。

 今も本能のままに獲物の気配を追って歩いて…だけど、今日は少し違った。

 光だ。

 光が見える。

 懐かしい、光が───

 

 

 

 

 拳を振るう。

 憎しみのままに。

 わたしの人生を狂わせたこいつらへの復讐。

 戦う理由なんてそれで充分。

 

「はあッ!」

 

 たまたま通りがかりで出会した、わたしの仇。

 出会ったのなら、殺す。

 殺す、殺す、殺す、殺す。

 今日は邪魔をする鬱陶しいあいつも来ない。

 だから独りで…殺す。

 殺し尽くす。

 拳で、脚で、私の身体全てを使って。

 わたしは、わたしの仇を討つ。

 …それにしても今日は数が多い。

 別にそれ自体はなんの問題でもないが、長引けばまた彼女がやって来るだろう。

 出来れば、誰とも関わりたくない。

 だから出来る限り素早く殺し尽くしたいのに…

 そんな考え事をしたのが仇となった。

 巨大なノイズの吐き出した、粘着性のある糸がわたしを絡め取った。

 

「しまっ──」

 

 身体の自由が効かない。

 拘束から脱け出そうにも…無駄のようだ。

 そして、これを好機と見たノイズ達が襲いかかる。

 この装甲を纏っていれば炭化することはないが、攻撃を受け続ければ流石に…

 

 だけど、わたしに襲いかかってきたノイズ達は紅い光線により炭と崩れた。

 

「な、に…?」

 

 それは、獣だった。

 異形だった。

 いや、もっと相応しい言葉を知っている…

 

 怪獣───

 

 テレビや映画に現れる空想の獣。

 ノイズなんかではないと一瞬で理解した。

 生物と機械が融合した

 闇夜の中から現れたそいつは、虚空を眺めて…

 いや、あれは音を聞いている…?

 見れば、目に当たる部分であろうバイザーはひび割れ、右目は元の生物の鋭い猛禽のような目が露出している。

 まさか、目が見えていない…?

 わたしが考えに耽っているとノイズ達は怪獣に向かって攻撃を開始した。

 わたしよりも、怪獣の方が危険だとノイズなりに判断したのだろう。

 どことなく、恐れがノイズから感じられた気がした。

 ノイズ達の中では小さく、球体のようなノイズが形態を矢のように変化させ怪獣に向かって飛来して…

 危ない!と心の中で叫んだ。

 ノイズに触れられたものは炭化する。

 それが常識である。

 わたしや彼女のようにこれを纏っていなければ、それが道理である。

 ミサイルの如く直進したノイズが直撃した怪獣はその衝撃で地面に倒れ…いや、踏みとどまった。

 そして、そのノイズを鎌の両腕で器用に挟んで地面に叩きつけて、その刃を突き立てた。

 炭となったのはノイズ。

 あの怪獣は、炭とはならなかったのである。

 なんて、出鱈目。

 最初の一体が倒されたことによりノイズ達の一斉攻撃が始まった。

 だが、怪獣は倒せない。

 その悉くを屠ってみせた。

 見るだけで明らかに手負いだというのに、いや、手負いだからこそあれは強い。

 直感で理解した。

 あれは、強い。

 そして怪獣は襲いかかったノイズを全て殺し尽くし、わたしを拘束していたキリンのように長い首を持つノイズも怪獣の腕に命を刈り取られた。

 

「…わたしを、助けた?」

 

 いや、このあとわたしにも襲いかかるかもしれない。

 だけどこの怪獣からは恐ろしい雰囲気を感じ取ることが出来ず更には…

 

「ピ~」

 

 小さく、なった。

 いや、小さくなっただけじゃない。

 姿も少し変わっている。

 いや、いやいやいやいや。

 何がどうなっているんだ。

 これを初めて纏った時よりも驚いている。

 だけど、まあ…

 

「怪獣だし、そういうこともあるのかな」

 

 こっちの姿の方が可愛らしい。

 小さいというのも加わってより愛らしいが、こう傷だらけではそれよりも先に痛々しいという感想が浮かぶ。

 それに…

 

「ピ~…」

 

「…お腹、空いたの?」

 

 訊ねると声がした方を見て、微妙に方向がずれているけどこの子は首を縦に振った。

 …独りがいいとは言ったけど、怪獣となら一緒にいてもいいかもしれない。

 それに…この子からは、わたしと同じ雰囲気がしたのだ。




グレビッキー 陽だまりがいない。けどもしかしたらピー助が代わりを務めるかもしれない。つまるところ本作における翼さん現象が起こるということである。

ピー助 異世界転生したらガイガンになってた。始まりは本編と同じだけど奏、翼の二人と一緒にいた期間が本編より長いため翼さんが既に翼さん。グレビッキーも翼さん化してるので…うわぁ。奏の死から暴走、その後翼が連れ戻そうとして失敗。以降、暴走しつつ頭はクールに隠密に行動したため見つからなかった。傷だらけなのは色々と理由が。目が見えないseason2の仁さん状態。
戦いの果てに記憶も摩耗してしまった。

翼さん メインヒロイン。ピー助を一途に思う正に良妻。ピー助も翼のことを第一に考え相思相愛。ご近所で噂のおしどり夫婦である。
 というのは翼さんの嘘で暴走したピー助を連れ戻そうとして失敗。そのためピー助を殺処分するように言い渡されてしまい責任感の塊な翼さんはピー助も殺して私も死ぬの思考に陥る。そして二度目のピー助との邂逅時ピー助フルボッコ。とどめを刺そうとしたところを司令に止められその隙にピー助逃走。以降ピー助が頭クールモードになったため追跡出来なくなった。ピー助が傷だらけ&失明の張本人。本編よりもひどいことになった。
どうして?(お前がやったんだろうが)

追伸 多分続かない。


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番外編 グレ響に拾われた2

続いたぞ。
サブタイトルは独りと一匹
個人的にこの番外編はグレと怪獣って呼んでます。


 ノイズが発生したエリアに到着すると既に彼女(立花響)が倒したのであろう炭の山が出来上がっていた。

 辺りは戦いの痕跡だらけ、抉られたアスファルト、なぎ倒された木。

 目線を運ばせると、あることに気が付いた。

 砕かれたのではない。

 斬られた木。切り口に乱れは見られない。

 彼女でもノイズの仕業でもないだろう

 これは…あの子がここでノイズと戦闘したという証拠だ。

 

「ふふ…ふふふ。近くにいるのね、ピー助」

 

 無意識のうちに頬が緩む。

 ああ…待ち望んでいたのだ、再会を。

 お前との再会を。

 確信したよピー助。

 私達は…きっと、近いうちに会えると。

 

 

 

 

 あの夜から数日。

 怪獣を拾って、一緒に生活するようになるとなんというか…生活に張りが出来た気がする。

 

「ピッ、ピッ」

 

「お風呂で泳ぐのは楽しい?」

 

「ピー!」

 

 ペンギンのように腹這いで浮かぶこの子は楽しそうに返事する。

 この子を見てると自然と笑顔が出てしまう。

 そう…和むんだ。

 久しく抱いていなかったものを呼び起こされて、ふっと頬が緩む。

 

「えいっ」

 

「ピッ!?」

 

 顔にお湯をかけると突然のことに驚いて溺れて…。

 危ない危ないと抱き上げて、体育座りしているわたしの膝に乗せる。

 

「ピー!」

 

「ごめん。助けたから許して」

 

 向かいあって謝るがまた微妙にこの子はずれた方を見る。

 目が見えていないのだからしょうがない。

 欠けたバイザーから覗く右目の傷痕。

 縦に一本、深くつけられたこの傷、それから全身の傷は一体誰がつけたのだろうか。

 ノイズではないだろう。

 この子にこんな切り傷をつけられるようなノイズは恐らくいない。

 だとすると…。

 脳裏に浮かんだのは、月下で見えた人物。

 風鳴翼───。

 彼女も自分と同じようなものを纏っていた。

 そしてなにより、その手には剣を携えていた。 

 以前、同じ場所で戦ったが、その剣技は素人目でも分かるほどの強さと美しさを兼ね備えていた。

 彼女ならば…。

 だけど、何故?

 何故こんなことを?

 数日共に過ごして分かったが、この子は悪い子ではない。見た目はちょっと悪役(ヒール)寄りだけど人懐っこいし、行動も可愛らしい。というか人間臭い。目が見えないから危なっかしい時もあるけど、手がかかる子ほどなんとやらというやつで愛らしく思える。

 ご飯だって頑張ってあげてるし、こうしてお風呂だって…。

 つまるところわたしはこの子のお世話をそれなりに楽しんでやっているということだ。

 

「ピッピッ」

 

「こら、つっつかないの」

 

「ピ?」

 

 首を傾げる。

 よくこの子はわたしの胸を爪なり嘴なりでつつく。二年前、あそこでついた傷を…。

 目は見えていないのに、ピンポイントでつついてくるのだ。なにか気になるのだろうか…?鼻は利くようだからなにか匂うとか…いや、匂わない。別に変な匂いなんかない。ないったらないのだ。

 

「そろそろあがろう」

 

「ピ~」

 

 怪獣を持ち上げてお風呂からあがり、脱衣場で身体を拭いてあげる。拭き終わると怪獣は身震いをして残った水を飛ばした。

 本当にペンギンのようだがペンギンじゃない。

 この子の正体は未だ不明。

 怪獣としか言えないまま。

 まあ怪獣でもいいのだろう。

 怪しい獣と書いて怪獣。

 

「ピー」(ラムネを取り出す)

 

 怪しい。

 

「ゴクッゴクッ…ピ~…」(飲む)

 

 獣。

 

「怪しい…」

 

「ピ?」

 

 こんな生き物がいるだろうか。

 器用に泡を吹き出すことなくラムネを開けて飲む生き物。それ以前にどこから取り出した。わたしは買った覚えがない。

 まさかお金を持ち出して…だとしてもお店に行って怪獣が買い物なんて出来るはずもない…とも言い切れない。

 だって怪獣だから。

 怪しい獣だから。

 怪しいから。

 

「ピャ~」(歯磨き中)

 

 ラムネを飲み干した怪獣は洗面台に飛び乗り歯磨きを始めた。

 …あれ、どうやって歯ブラシ持ってるんだろう。

 鉤爪なのに、あれはどうなってるのか。

 まさかくっついているというのか。

 というかなんで鏡見ながら歯磨きしてるの。目、見えてないんでしょう…まさか、実は見えてる?

 

「ピ…ピー?」

 

 いや、やっぱり見えていない。

 蛇口を探して腕を伸ばしているが爪先は空を切るばかり。

 

「蛇口はここ」

 

「ピ~」

 

 ありがとうと言っているように手をあげる怪獣を見て頬が緩む。

 …この子が来てから頬が緩んでばっかだな。

 大きな欠伸をした怪獣を見て、また自然と頬が緩んで…。

 わたしも眠くなってきた。

 やることもないしさっさと寝よう…。

 

 

 

 

 

 

「ん…んん…」

 

「Zzz…」

 

「んッ!」

 

「ピッ!?」

 

 …突然、強い衝撃に襲われ俺は落下した。

 敵襲、ではない。

 数日前に、自分を拾ってくれた少女の寝相によるものだ。

 恐らく蹴飛ばされたのだろう。背中が痛くて痛くて仕方ない。

 とりあえずベッドに戻ろう…えーと、ここはどこだ。目が見えないとこういう時不便だ。とにかく手探りでベッドを探す。

 うん…うん?

 あ、なんか触った。

 けどこれはあれか、感触的にテーブルか。

 俺、結構遠くまで蹴飛ばされたな…。

 しかしここにテーブルがあるということはあと少し歩けばベッドに辿り着くはず。

 いや、それよりも…あの光を目印にすればいい。

 あの、光に向かって…あれは、なんの光なんだろう。

 知っている気がする。だけど、まるで霧に包まれたようにはっきりとしない。

 知っている、はずなのに…思いだそうとすると、頭に音が流れ込む。

 この音は、奴等だ。

 またノイズが出た。

 狩らなきゃ、いけない。

 狩れ、狩れ、狩れ。

 この雑音を消すために。

 うるさい、頭に響く雑音を消すために。

 

 

 

 

 物音で目が覚めて電気をつけると怪獣が扉を開けようとしていた。

 この子がここまで活発になるのはご飯の時か、ノイズが現れた時だけ。

 そして雰囲気的にご飯が食べたいわけじゃないということを察したわたしはさっと着替えて怪獣を抱き抱えて外へと飛び出した。

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

 深夜なので人目を憚ることなく怪獣にどこへ行けばいいか訊ねて進む。 

 辿り着いた先は廃工場。

 人気が少なくていい場所。

 だが、移動すれば近くには住宅地がある。このままにしておくわけには…いや、そんなヒーローらしい理由なんてものはない。

 こいつらを倒すのは…わたし自身の復讐のためだ。

 まずは殴る。

 正面を突破して、あとは手当たり次第にノイズを倒す。 

 あの子も加わったことで戦闘は大分楽になった。しかし、復讐のために戦うわたしにとっては少々物足りない…物足りないんだ。別に嬉しくなんて、ない。ないはず。

 だけど…隣に誰かがいてくれる。

 そのことは嬉しいのかもしれない…。

 いや、それは駄目だ。

 わたしは独りがいいのに。

 独りでいなきゃいけないのに。

 一緒にいてくれる誰かを求めるなんて、駄目だ。

 最後の一体を拳が貫き、この場のノイズは全て倒した。

 この場所は、静かになった。

 空を見上げれば、見本のような三日月が浮かび世界を静かに照らしている。

 だというのにわたしの心はざわついていた。

 

「わたしは、独り…」

 

 独白が月光に吸い込まれていく。

 この場でそれを聞くものは誰もいなくて…。

 

「ピ~?」

 

「ああ…君がいたね」

 

「ピ!」

 

 怪獣が、いた。

 2メートルほどの身長があるので存在感ありまくりだ。

 

「…家に、帰ろっか」

 

「ピー!」

 

 この子を見てると毒気が抜かれてしまう。

 毒気どころか力まで抜けて、変身を解除して帰ろうとした瞬間、歌が響いた。

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 歌声の響いた、廃工場の中を見れば光が溢れて視界を奪う。

 そして、光が収まると…彼女がいた。

 彼女の目を見た瞬間、わたしは恐怖した。

 あの目は…なにも見ていない。

 わたしも、この場にある全てを…いや、違う。

 ひとつだけ、彼女が見ているものがある。

 それは…怪獣。

 あの子だけを見ている。

 あれはなんだ。

 彼女の目に宿るものはなんだ。

 感情は宿っているが、その感情がどういったものか分からない。計れない。

 幾何かの後に彼女は、笑みを浮かべた。

 同性であるわたしですら見惚れてしまうような笑顔を。

 

「ピー助」

 

 優しい声音だった。

 ピー助というのは、この子の名前だろうか?

 名前があるということは彼女と怪獣は飼い主とペットのような関係ということ?

 だというのに怪獣は…警戒している。

 本能で感じているのだろう。

 彼女は危険だと。

 このままではまずいと心が叫ぶ。

 早く逃げなければ…だが、もう遅かった。

 彼女の表情が一瞬の内に凍てつき、感情の一切も消えた。

 そして、だらりと垂らした刀を持つ腕を怪獣に向けて言葉を放った。

 

「ピー助。お前を、殺しにきた───」




重い女って、最高


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番外編 翼ちゃんの誕生日

翼さん誕生日記念
滑り込みです本当に申し訳ありません。
あとTwitterでも言ったんですが今日家庭教師のバイトで小6に歴史教えてたら都や九州を守る兵士と教科書に書いてあったのでこれは防人というんだよと教えました。
なにはともあれ祝え!!!
あ、今回の話は時系列とか特に関係ない感じでよろしく!


 走る、走る、走る。

 本部の廊下を駆け回る。

 どうする…もう時間がない。

 なんとか急いで考えて、準備しないと…。

 

「どうしたのピー助。そんなに慌てて」

 

 マリアさん…。

 あと三日で翼ちゃんの誕生日なんだけどプレゼントなにをあげたらいいか迷ってるんだ。

 

「なるほど誕生日プレゼントねぇ…。ピー助があげられるものも限られるでしょうし…というか今までプレゼントしてたの!?」

 

 うむ!

 

「ペットからプレゼント貰うってあの子は…羨まげふんげふん!そうね…参考までにこれまで何をプレゼントしたの?」

 

 花と綺麗な石。

 

「…まあ、そうなるわよね」

 

 うーん…あ、前にマリアさんのグッズを買ってもらった時みたいに藤尭さんに頼んで…そういえば封印されたマリアさんグッズまだあそこに置いてるよな。

 封印解いたろ!

 

「何かいい案思い付いた?」

 

 プレゼントはまだ…。

 

「そうね…こういう時は皆に相談するのがいいかもしれない。一人よりも二人。二人よりも三人ってね」

 

 得意気にウインクするマリアさん。

 はえ~やっぱり頼りになるんすね~。

 

 

 

 

 というわけで休憩室。

 翼ちゃんを除く装者が全員集合。あと未来ちゃんも。円卓を囲んでの翼ちゃん誕生日パーティーの会議が執り行われていた。

 既に三回目の会議らしく…俺も参加させてくれればよかったのに。

 

「お前からバレちまうかもしんねえからギリギリまでお前にも隠してたんだよ」

 

 なるほど。

 確かにサプライズならバレてはまずい。

 

「で、ピー助から翼さんへの誕生日プレゼントデスか…」

 

「ピー助からプレゼントされたものなら翼さんはなんでも喜ぶと思うけど…」

 

 けど渡すほうも渡すほうでこう…出来る限りいいものを渡したいと思うのだ。

 それがプレゼントというものだと思うし…。

 

「いい心がけだねピー助。よしよし」

 

 おっふ!未来ちゃん頭だけじゃなく顎の下まで撫でられると…あっ///しょこ、らめぇ!

 

「…あ!いいこと思い付いた!」

 

 ぽんと手のひらを叩いた響ちゃん。

 一体なにを思い付いたのだろうか?

 あ、そこだけは!未来ちゃん!そこだけはダメぇ!

 

「とりあえずピー助君は翼さんの誕生日まで待ってて。大丈夫!わたしに任せて!最高のピー助君からのプレゼントを翼さんに渡そう!」

 

 …そう言ってくれるなら待つけど。一体なにをするつもりなんだろう?

 頼もしいような不安なような…。

 それに誕生日当日まで待てとは。

 うーん…。

 

 

 

 とりあえずあの後は解散となりその場は終了。

 そして当日。

 前日、響ちゃんからいつもより早めに出勤すること!と言い付けられたので集合場所である本部の食堂に行くと皆揃って…うわぁ!なんだこのデカイケーキは!

 

「あ!ピー助君来た!こっちこっち!準備するからおいで~!」

 

 響ちゃんに呼ばれて皆のところに行くと早速響ちゃんに抱き抱えられテーブルの上に乗せられた。

 

「それで、なにをするの?」

 

 マリアさんが俺の気持ちを代弁する。

 本当になにをする気なのか。

 

「ふふ~んまあ見てれば分かりますって」

 

 そう言いながら響ちゃんはリボンを取り出して俺に巻き付けて…。

 

「あとこれつけて…はい完成!」

 

 …なにこれ。

 胸元につけられたカードを開いてみると…。

 

「ハッピーバースデー!プレゼントはワ・タ・シ♥」

 

 読んだ瞬間、恐ろしい寒気が背筋を駆けた。

 文章にではない。この文章を読んだ翼ちゃんを想像してしまったからである。

 

「お~これはナイスアイデアデス!」

 

「でしょ~!昼間はピー助君がプレゼントとして翼さんの気を引いて、その間にケーキとパーティー会場の準備!ピー助君、大事な仕事だから頼んだよ!」

 

 てめえ!

 完全に俺を囮にする気だろ!

 響ちゃんは純真だと思ってたのに!

 

「こらピー助暴れないの。折角結んでもらったんだから。あ、あと私の誕生日もこれでよろしくね?」

 

 マリアさん…。

 そんなことより今は、かの邪智暴虐の立花響を打ち倒さんとして云々。

 そんなこんなで翼ちゃんがやって来る時間まで待たされることとなる。

 

 

 

 

 

「まったくピー助め。朝早くに起き出してすぐどこかに出かけて…」

 

 本部を歩き回る翼。もちろんピー助を探してである。今日はピー助共々非番。二人でゆっくり過ごすつもりだったのだがと少し腹立たし気にピー助を探し歩き、よくピー助がご飯をねだりに行く食堂へ向かう。

 食堂へ着いたが…暗い?

 閉まっているのか。

 それではピー助もいないだろうと別の場所を探そうと歩き出した瞬間、背後に気配を感じた。

 

「何奴ッ!」

 

 振り向くとそこにいたのは…。

 

「ピー…」

 

「ピー助?どうしたのその格好は?」

 

 身体中にリボンを巻かれたピー助がなんとも言えぬ顔で立っていた。一体誰がこんな悪戯をピー助に…?

 胸元のリボンにくくりつけられたカードを見つけた。てっきり値札のようなものかと思ったが…開いて見るとそこには、  

 

「ハッピーバースデー!プレゼントはワ・タ・シ♥」

 

 ハッピー、バースデー…。

 そうか、今日は私の誕生日か。

 プレゼントはピー助…。

 プレゼントはピー助!?

 いや、そもそもピー助は私のものなのだからプレゼントされるようなものではない。

 だが…悪くない。

 

「折角だ。今日は久しぶりにピー助を連れて歩くか」

 

「ピー」

 

 ピー助も賛成のようだ。

 ここ最近二人で何かするということはなかったのでちょうどいい。

 そうと決まれば早速出かけるとしよう。

 

 

 

「こちらファルコン1。対象はピー助と接触。二人で出かけるようだ」

 

『ファルコン2了解。引き続き二人のデートをバックアップするように以上』

 

『なあ、ファルコン1とか2とかなに言ってんだ?』

 

『こういうのは雰囲気だよ雰囲気!クリスちゃんは分かってないな~え、ちょー!?バカになんてしてな…』

 

 …今日の任務。私に与えられたのは翼とピー助のデートのバックアップ。

 ピー助は怪獣だから基本的に翼に連れ回されてしまうことになる。それを上手いこと影からコントロールするのが私、マリア・カデンツァヴナ・イヴの。いや、ファルコン1の使命だッ!<サングラスキラーン

 

 

 

 

 まずひとつ言っておく。

 俺は怪獣である。

 故に人前に出るのはあまりよろしくない。

 なので翼ちゃんと出かけるとなっても街に繰り出そうぜ!なんてことにはならない。

 というわけで絶賛、森林浴中である。

 旧二課が保有していた(現在はS.O.N.G.の管轄)土地である。

 前はここで奏ちゃんとランニングしたりしてたな…。

 昔の思い出に浸りながら春の陽気を羽で吸収する。

 あ~背中がぽかぽかするんじゃ~。

 

「気持ち良さそうね」

 

 気持ちいいんじゃ~。

 やっぱり俺は爬虫類に近いのかもしれない。体温上がると調子いいし。それはみんなそうか。

 ん…この音は。

 

「あ、ピー助!どこ行くの!」

 

 とてとてと駆け出して藪を抜けると…おおこんなところに川が。

 前は気がつかなかった。

 

「ピー助、勝手に走っちゃ駄目でしょう。こんなところに、川が…」

 

 あ、魚。

 獲ったろ!

 勢いよく飛び込んで…魚を咥えた。

 ぷはぁ!

 見て見て翼ちゃん!獲ったどー!

 

「ピー助が野生に帰ってる…」

 

 んご…っくん!

 生きた魚丸飲み結構いける。

 ガイガンは水棲恐竜のようって書かれてたからやっぱり水辺に棲んでたのかな。羽もあるから空も飛べる…あれ、結構ハイスペックじゃね。

 陸海空いけるとか餌に困らないやんけ!

 

「…久々に、生き生きしてるピー助を見た気がする」

 

 そうかな?

 

「やっぱり、自然が一番なのかもしれない…」

 

 いやいやそんな俺はこれでもシティハンター…じゃない。シティーボーイやで。

 …嘘ですごめんなさいド田舎出身です。久しぶりの自然に心が躍ってます。

 どうしよう、翼ちゃん気分が沈んじゃった…。

 折角の誕生日なのに…。

 こうなったら。

 薪を集め、鉤爪を打って火を起こして魚をもう一匹獲ってガイガン隠し道具の串を突き刺して塩振って…。

 例のBGM~♪

 上手に焼けました~!

 はい、どうぞ!

 

「私に?…ふふ、ありがとう。ピー助」

 

 どういたしまして。

 熱いから気をつけるのだ。

 

「ふーふー……うん、美味しいわ。今日一番のご馳走ね」

 

 そりゃあ俺が手塩にかけて作りましたから!(焼いただけ)

 うるせー!焼くというシンプルな調理法だからいいんだよ!

 素材の味ってやつだこのやろう!

 

「まったく、魚を焼くなんてどこで覚えたの?本当に不思議なんだから」

 

 いやいやそれほどでも。

 ちなみにサバイバル術はほぼDISC○VERYチャンネルで学びました。

 実践する日なんて来ないと思います。

 それよりも…翼ちゃんが笑ってくれた。

 よかったよかった。

 …よし。

 また川に入って…えい!

 

「こ、こらピー助!水をかけないの!…ふふ」

 

 ばしゃばしゃと水をかけて遊ぶ。

 水遊びなんて久しぶりだな~…ぐほぉ!?

 と、特大の波が俺を襲った。

 

「さっきの仕返しよ。えいっ」

 

 いやー!翼ちゃんそんなアグレッシブに外遊びなんてするタイプでしたっけ!? 

 裸足になってごふっ!川に入って水をかけてうわぁ!めちゃくちゃ水をかけられ…ごはぁ!?

 翼ちゃん、育て方が違えばめちゃくちゃアウトドア系のアグレッシブな子になってたと思う。

 

「こういうのも楽しいわね…」

 

 うーんこの。

 なにかに目覚めさせてしまったかもしれない。

 だがいいだろう。

 生まれも育ちもド田舎!山、川、海の大自然が遊び場だった俺が外遊びを教えてやろう!

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり遊び終えて帰路につく。

 もう夕日が傾いて世界がオレンジ色に…。

 オレンジジュース飲みたくなってきた。

 誕生日会の会場に行けばあるか。

 というわけで行こう!

 というわけで井上ワープ。

 もう本部の食堂前の廊下です。

 

「どうしたんだピー助?食堂なんかに来て…ご飯なら家で…」

 

 食堂に入った瞬間、クラッカーの弾ける音が。

 

「翼さん!お誕生日おめでとうございまーす!!!!!」

 

 みんなでおめでとうと翼ちゃんの誕生日を祝う。

 おめでとう~ってなんだあのケーキ!?今朝よりでかくなってやがる!?天井ギリギリやんけ!どうやって切るつもりなんや!?

 

「あ…ありがとう、みんな。私は幸せ者だな」

 

 よかったよかった。

 翼ちゃん喜んでくれた。

 これからもあの笑顔を俺は守る。

 そして最後に…

 

 

 祝え!!!

 風鳴翼生誕祭2020!




オマケ

マリア「いいな…私もまたピー助とデートしたいな…」

次回マリア生誕祭2020!
………続く?


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翼ちゃんの誕生日2021

ギリギリセーフ!
ヨシ!
それはそれとしてタイトルジオウっぽくない?


 どっかの公園

 

 来る5月25日は全世界的に翼ちゃんの誕生日なわけだが……。

 全然なんにも思い付かねえ……!

 何かしてあげたいけれどもなんにも思い付かない。

 ケーキ食べてプレゼント渡すだけじゃ駄目なんだよ!

 ちくしょおー!(高音)

 あー去年は何したんだっけなぁ……。

 二人で遊びに行ったんだったぁ(白目)

 流石にネタ的にも被ってるから同じことは出来んぞ。

  

「けど誕生日なんてそんなもんだろ。やること自体は毎年変わらないし」

 

 クリスちゃんの言うとおりなんだけどさぁ……。

 漢ピー助、去年と同じことなどしないッ!

 去年を越えてこそ、シンの怪獣であるという証明になるというわけだよクリスちゃん。  

 シン・ガイガンだよクリスちゃん。

 

「それ、誕生日関係あるか?」

 

 ……これぐらいの心持ちで何事もやるのが漢という生き物。

 常に死と向き合い、今日という日を生きるのだ。

 

「なんなんだよそのキャラは……」

 

 迷走してる証拠です()

 けど立ち止まってるよりかはええよね?

 迷走とはいえ走ってるんだから!

 ゴールに向かって!

 

「ゴールに向かってるとは限らないだろ。迷走してんだから。ゴールとは真逆の方に走っててもおかしくねえな」

 

 うわぁぁぁぁ!!!!

 立ち止まってる方がマシやんけぇぇぇ!!!!

 

「ま、まあ何かしようってのはいい事だと思うから泣くなよ……」

 

 ぐすっ。

 ありがとうクリスちゃん。

 ところでクリスちゃんは翼ちゃんの誕生日はどうするか決めた?

 

「プレゼント贈るに決まってるだろ。あと、パーティーもするしな」

 

 プレゼントは決まった?

 

「……なあ、ピー助」

 

 なんでせう。

 訊ねるとクリスちゃんは深呼吸をしてから青空を眺めた。

 しばらく、遠くを見つめるクリスちゃん。

 やがて、何かを悟ったかのような表情を浮かべながら俺にこう言ったのだ。

 

「先輩、何が欲しいとか言ってたか?」

 

 ……その時のクリスちゃんの顔は少し大人びて見えた。

 駄目な方の、大人に。

 

 

 

 

 

 

 

 いやー久々にクリスちゃんがボケやってるところ見たわ。

 てかあれクリスちゃんっていうか中の人じゃね?

 漏れ出てね?

 てか俺の悩みは一切解決しなかったんだけど。

 翼ちゃんの誕生日どうしようか悩んでる奴等が二人で駄弁ってただけだったよあれ。なにあれ。コントやってんじゃないんだぞ。こちとら真剣にやってるんですぅ!

 しかしクリスちゃんのあの一言は俺にとってはヒントになってくれた。

 そう、探りを入れればいいのだ。

 そこで俺は誕生日プレゼント何がいいか探ってきてるわねもうピー助ったら可愛いんだから。みたいなことにならないようにしなければいけない。

 というわけで緒川さんに頼んで翼ちゃんの楽屋にプレゼントとして何が欲しいかを調査するため色々雑誌やらなにやらを置いたんだぜ。

 本番までに読んでくれると嬉しいんだぜ。

 

「読みますかね翼さん」

 

 別室にて緒川さんと待機し(隠し)カメラの映像を見て調査。

 果たして、翼ちゃんは何に興味を持つのか。

 それはマネージャーである緒川さんとしても気になるところのようだ。

 

『む。今日はやけに雑誌が多いな……』

 

 お!

 早速興味を示したぞ!

 手にとったのは……グルメ系か。

 

「翼さんが食べ物に興味を……」

 

 ふむ。

 確かに意外なところである。

 カメラを拡大。

 更に俺の視力もズームして見ると、翼ちゃんが眺めているページは肉ッ!

 肉だとぉ!?

 

「これは意外ですね……」

 

 確かにいが……。

 

『ピー助のご飯にしよう』

 

 意外ではなかったわ……。

 うん、なんか、読めてたこの展開。

 このあとも何かと理由をつけて(俺に)結局翼ちゃんの欲しいものがなんなのかは分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうなんなのあの娘全然欲しいものが分からないわ(もきゅもきゅ)

 もう全くなんにも分からない(もきゅもきゅ)

 俺の腹の足しにはなったんだけどー。

 そもそも、あの娘あれなのよ。

 俺のご飯の余り食ってるような感じだからさー(ごくり)

 爬虫類飼ってる人あるあるよね。

 小松菜を餌用に買って自分も食べる的な。

 爬虫類飼ってるといえば○ッ○ー結婚おめでとう!!!!!!!

 二人合わせて弦楽器だねはセンス有りすぎるんよ……。

 それはさておき。

 マジで決まらないんだけどどうしよう。

 ねえどうすればいい?

 ゼロは俺に何も言ってはくれないの。

 翼繋がりで力お貸ししてくれませんかね?

 

「無理です」(特別出演:ウイングゼロ)

  

 マジかぁ。

 ちょっとどうしようかなぁこれ。

 プレゼント選びは本当に毎年頭を悩ませるよなぁ。

 

「お困りのようねッ!!!」

 

 バーンッ!

 とまあ私なりの優しさで効果音をつけてあげましたがね、なんですかマリアさん。

 いまちょっと頭使ってるところなのでまた後にしてくれませんか。

 

「ぴ、ピー助の当たりが強い……。ってそれどころじゃないわ。翼の誕生日で悩んでるんでしょう。私にいい考えがあるわ」

 

 さいですか。

 

「直接聞けばいいのよ!」

 

 はあ。

 それじゃあプレゼントの意味ないやろ!

 

「違うわピー助! 必ずしもサプライズである必要はないのよ!」

 

 ……というと?

 

「直接聞くことによって、ちゃんと私の誕生日を祝ってくれるのねってなるのよ! 愛を感じるのよッ!!! ともすればこうよ!」

 

 以下、マリアさんの脳内映像です。

 

『そろそろ私の誕生日。だけどピー助は祝ってくれるだろうか……』

『おい、翼』(イケボ ちょっと強めの語気で 壁ドンもあると尚良い)

『ぴ、ピー助……』

『誕生日、何が欲しい?』(あごクイ しっかり相手の目を見ながら)

『ピー助……!』

 

 妄想終了。

 

「これで完璧よ!」

 

 どこがや!

 こんなん上手くいくか!

 

「まあ、大抵の場合は無理よ。ピー助が翼にやるからいけるのであって」

 

 貴女は翼ちゃんをなんだと思ってるんですか()

 

「ピー助狂い」

 

 ひどいなぁ……。

 けどそれを否定出来ないのもひどいなぁ……。

 

「まあ、毎回サプライズってのもあれだし、たまには翼本人の希望を聞いてみるのもありじゃないかしら?」

 

 うーむ……。

 一理あるなぁ。

 さっきまでの発言を全て棚に上げて言うけど一理あるわぁ。

 ちょっとその案採用するわ! 

 というわけでセンキュー!

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ6月ねピー助」

 

 せやなぁ。

 梅雨やで翼ちゃん。

 てかもう5月とは思えない暑さなんだけどなんなんですかねぇ……。

 

「もう夏って感じの気温だものね。ピー助も熱中症とか夏バテに気を付けること。いい?」

 

 へーい。

 

「ちゃんと返事しなさい」 

 

 ほーい。

 

「もう……。ふふっ」

 

 なんてことない家での会話である。

 しかしそのなんというかプレゼントについて直接聞き出すというのはなかなかに難しい。

 どう切り出せばいいんだろうか。

 やべーコミュ障には無理だってこれー!

 どうすればいいのさ!

 さらっとプレゼント何がいい?

 なんてそんなん彼氏とかじゃないと聞き出せないってマジで!

 俺は彼氏じゃないもん!

 ペットだもん!

 ペットがそんなさらっと、「誕生日プレゼント、何がいい?」とか聞いてきたらやべーだろそんなんマジで。

 一理あるとか言ったけどやっぱりあのポンコツマリアさんの意見採用するんじゃなかった。

 しかしもう翼ちゃんの誕生日まで時間がない。

 ……ええい、ここはポンコツとかそんなことは最早いいだろう。  

 今年一年ぐらいはペットから誕生日プレゼントの希望を聞かれたっていいだろう。

 というわけで……。

 

 つ、翼ちゃ~ん……。

 

「なんだ?」

 

 その、えーと、あー、そろそろ翼ちゃんの誕生日なわけですが……。  

 そのーお祝いの方をですね~……。

 

「お祝いしてくれるの? ありがとう、嬉しいわ」

 

 う、うん……。

 それで、あのプレゼント欲しいものとかなんかないかな~って……。

 

「プレゼント? ピー助から?」

 

 ええ、はい、そうなんです、はい……。

 

「ピー助から欲しいもの……」

  

 考え込む翼ちゃん。

 さて、どうなるのか……。

 なんでも叶えてあげる所存なので高価なものとかはもう盗……。いや、俺の給料(正確には給料ではない)から払って買うぜ!

 さあどうとでもなれ!

 

「……それじゃあ」

 

 それじゃあ?

 

「また去年みたいに二人で遊びましょう」

 

 え、そんなんでいいの?

 

「ええ。最近はまた少し忙しかったから、ね?」

 

 まあ、それでいいならそれで……。

 

「それじゃあ、デートプランはピー助に任せるから」

 

 ()

 

 こうして、ピー助は再び頭を悩ませることになる。

 デートプランを考えること、結局去年と変わらねえじゃねえかという葛藤、投稿がギリギリになったこと、本編が進んでいないこと、仕事が忙しいこと等々色々な事がピー助にのし掛かった。

 それでも……翼ちゃん、誕生日おめでとう。

 そう祝う気持ちだけは、確かなものであると……。

 

 

 

 

 

 誕生日当日。

 

「ピー助君どうしたのオシャレなんかしちゃって。翼さんの誕生日だから?」

  

 まあそうなんだけど。

 そうなんだけど。

 翼ちゃんがデートって言うからさぁ!!!

 なんかこうなっちゃったんだよ!(白スーツ、赤い薔薇の花束装備)

 

「うーんなんかこう前時代的」

「響……」

 

 やめろよそういうこと言うの!

 

「似合ってるデスよピー助!」

「可愛いよ。よしよし」

 

 うみゃうみゃ……。

 とにかく今から駅前で集合!

 それまでにみんなパーティー会場の準備を頼んだぞ!

 

「バッチコイデスよ!」

「パーティーまでのエスコート頼んだよピー助」

 

 見送る仲間達を背にして歩きだす。

 戦場へ。

 適合者の諸君は当然これを「せんじょう」ではなく「いくさば」と読んだことだろう。

 

「……ピー助」

 

 ……マリアさんか。

 

「決めてきなさい」

 

 キリッとした顔でそう告げる。

 ……なにを、決めればええんや……。

 

 

 

 

 

 

 

 どっかの駅前。

 

 俺は行き交う人々の注目の的になっていた。

 よせやい俺がナイスガイだからってそんなにじろじろ見るもんじゃないぜ。

 それはそれとして約束の時間まではあと十分か。

 これならよゆ……。

 

「あ、ピー助今来たのか」

 

 い つ か ら い た の。

 えっ、いきなり背後から現れたよこの人怖い。

 

「楽しみ過ぎて二時間前から待っていたんだ。さあ行こう」

 

 二時間前。

 いやそこはよくある重い女パターンでも一時間前だよその倍を行くのはまずいですよ!

 しかもライブかってぐらいおめかししてるし!

 絶対バレるよこれ!

 週刊誌にやられちゃうよ!

 うんたら砲撃たれちゃうよ!

 てか待って俺がエスコートするのに引っ張らないでくれー!!!

 

 

 

 

 

 ちょっとお高いレストランでランチをしようと思った。

 駄目だった。

 その前にショッピングでもしようと色々行ったけどそれも駄目だった。

 なんでや!

 ドレスコードはちゃんと守ってるやろ!

 

「いやその怪獣のお客様はちょっと……」

 

 ぐうの音も出なかった。

 他にも行こうと思ってたところはどこも駄目だった。

 理由は怪獣だから。

 ウルトラ怪獣散歩かよちくしょう。

 

 

 

 

 なんたかの見えるなんたか公園。 

 

 俺は項垂れていた。

 今日一日を振り返ったらもう項垂れることしか出来ないのだ。

 

「ピー助」

 

 なんですか翼ちゃん。

 俺はもう自分の不甲斐なさに自決も辞さない覚悟だよもう……。

 

「ピー助。今日はとっても楽しかったわ」

 

 楽しかったってそりゃそうだよ……ええぇぇぇ!?

 翼ちゃん!?

 どこが!?

 

「レストランも水族館も動物園も神社もお寺もプラネタリウムもショッピングも怪獣だからって言われて入れなかったけどピー助と一緒にいれただけで私は楽しかったわ。だから、ありがとう」

 

 翼ちゃん……。

 翼ちゃんがなんだかカッコよく見えるわ。

 マジ抱いてください。

 というか普段からそういう感じならいいんだけどな……。

 

「ピー助?」

 

 おっとハイライトは消さないでくれたまえ、心は硝子なんだこう見えて。

 

「とにかく今日はピー助と二人でいろんなところに行けて楽しかった」

 

 そう言っていただけると幸いです……。

 あ、それじゃあこの後はパーティー会場の方へご案内致しますので……。

 

「ちゃんとエスコート出来る?」

 

 しますよそりゃあ!

 やってやりますよ!

 めっちゃ勉強したもん!

 

「それじゃあ、お願いね」

 

 はいよ。

 ひとまず駅に……。

 いや、いいや。

 

「ピー助? ……きゃっ!」

 

 翼ちゃんをお姫様抱っこする。

 飛んで行こう。

 なんか、駅に行っても怪獣だからって理由で電車乗せてくれなさそうだし。

 

「ピ、ピー助? その……」

 

 なんで頬を赤くしてるんやこの人は()

 やめろよ勘違いするだろそういう免疫ねえんだからこちとらよぉ自慢じゃないけどよぉ()

 あーもういいわ飛ぶ。

 シュゥゥゥワッチ!

 このまま恥ずかしさを振り切って飛ぶぞ~。

 あ、夕日綺麗だな~。

 

「……これが、ピー助からのプレゼント?」

 

 え?

 

「この景色が、プレゼントなんでしょう?」

 

 この景色。

 沈む夕日を眺めながらのフライト……。

 いやそんなオシャレなものを俺が用意するとでも?

 しかし翼ちゃんはなんか乙女モードなのかてっきりこれがプレゼントなのかと思い込んでいる。

 それなら、まあ……。

 

 せ、せやで()

 美しい地球の夕日が俺からのプレゼントさ。

 メトロン星人も欲しがったものだぜ(それっぽいことを言おうとしてオタクの部分が出てきた)

 

「ピー助……」

 

 やめろぉそういう「うっとり」みたいな顔はよぉ。

 さっきも言ったけどマジ免疫ないんだから。

 これ人間だったらマジで気持ち悪い笑みを浮かべてるからね俺。

 ガイガンだからポーカーフェイスでいられるけれどもね。

 けどまあ……怪我の巧妙だけど、なかなかいいものをプレゼント出来たということで許してほしい。

 今年の反省を活かし、来年の翼ちゃんの誕生日をもっとちゃんとした形で祝おう。

 

 翼ちゃんの誕生日2022に続く────。




オマケ

翼「ピー助。なんだか今年はたくさん除湿剤をもらったのだけど何か知らない?」

ピ「シットリテイオーが今流行っててうちの翼ちゃんもしっとりしてるよねってことで各方面からプレゼントが……(いや~なにも知らないですわ~)」

翼「ピー助?」

ピ「やっべ()」


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番外編 花嫁のドレス

ネロブライドのfigma持ってます。
だからなんだ。


 六月と言えば梅雨、紫陽花、カタツムリ、祝日がない、湿気、じめじめ、ウェット、そして…。

 

 どうぶつの森で虫捕り、釣りが楽しくなってくる月だぜ、ふうぅぅぅぅぅ!!!!!!

 早速背鰭が出ている…大物だ!

 集中しろ、俺。

 絶対に釣り上げるんだ。

 釣り人としての矜持のために…。

 獲物はエサをつつく。

 今か、今かと俺の手は震えている。

 もし、こいつがサメだったらポチャンと音が鳴ってからでは遅い。浮きが沈んだ時にはもうボタンを押さなくてはいけない。

 くっ…それにしてもこいつ、焦らし過ぎじゃないか?いや、そうやって集中力を削るのが目的か。

 だが、俺の集中力を見くびってもらっては困る。

 人間だった時から集中力は人並み外れていたからな。一瞬でトランス状態に入れるから。

 マジだから。

 というわけでトランスしまーす。

 …

 ……

 ………

 …………

 ……………

 ………………

 …………………

 浮きが僅かに沈んだ瞬間を俺は見逃さなかった。

 完璧なタイミングで俺はボタンを押し…

 

「ピー助遊ぼうデーーースッ!!!!!」抱きッ

 

 !?!??!?!??!!!

 ポチャン、スゥ-…

 あああああああああああ!?!!?!!!

 逃げられたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

 

「お!これは最近流行りの『防人れどうぶつの森』通称防森(さきもり)じゃないデスか!」

 

 … 

 

「?どうしたデスかピー助?」

 

 てんめぇ!!!!!

 このデス娘がぁぁぁぁぁ!!!!!

 確実に釣れた大物が逃げたじゃねえかこんちくしょう!

 逃がした魚は大きいってのはマジな言葉だよ!

 

「こらこらそんなにアタシと遊ぶのが楽しみだからって興奮するじゃないデスよ~」

 

 なんでこういう時に限って俺の思いは伝わんねえのかな。

 都合の悪い時は完璧に読み取られるのにな、俺の思考。

 

「さあ今日は天気がいいデスから外で遊ぶデスよ」

 

 …まあ、子供の遊び相手にはなってやるか。

 あれ?今日は調ちゃんと一緒じゃないの?

 

「調とは現地集合デス」

 

 なるほどなるほど。

 …今のは通じるのか。 

 通じる基準が大体分かってきたぞ。

 

「それじゃあレッツゴーデェス!!!」

 

 意気揚々とそう宣言した切歌ちゃんは俺を頭の上に乗せて…。

 おいおいどうなってんだこの娘。

 俺はティッピーじゃないんだぞ。

 どこぞの喫茶店のウサギじゃないんだぞ。

 俺はピー助だから。

 ピーしかあってないから。

 頭なんかに乗せたら俺が危な…意外とバランスが取れている!?

 おっふ…なんだこの安定感。

 なんだろう…こう…鳥が自分の巣でくつろぐ的な安心感がある。

 あ~…しばらくここでぬくぬくっとしてよう…。

 …

 ……

 ………

 …………!?

 気が付くと、俺は宙に浮いていた。 

 切歌ちゃんは!?

 え!?なに!?どういうこと!?

 

「ピー助」

 

 ひえっ…。

 暗闇の中から現れたのは翼ちゃん…。

 というか俺はいつの間にか翼ちゃんの手の中にいた。

 切歌ちゃんは?切歌ちゃんはどうなったんだ!?

 

「暁がお前を頭に乗せていたからここで待ち伏せて、通り過ぎる寸前にお前を強奪したんだ。暁は取られたことも気付かないで走っていったぞ」

 

 切歌ちゃん!?

 普通気付くよね!?

 いや、しかし…切歌ちゃんならあり得る…。

 

「それじゃあピー助、行きましょうか」

 

 行くってどこへ…。

  

「着いてからのお楽しみよ」

 

 ニコッと笑った翼ちゃん。

 …特に邪悪さを感じないから多分大丈夫だろう。

 切歌ちゃんには悪いけど今日は翼ちゃんについていこう。

 

 

 

 

 緒川さんの運転する車に揺られることおよそ三十分。

 この間ずっと翼ちゃんの膝の上で弄ばれていました。

 やっぱり邪悪だった()

 さてここは…どこかのスタジオのようだが。

 これ普通に仕事やろ。

 俺ついてきたらアカンやつ。

 てか隠れなきゃ。

 翼ちゃんのバッグの中に忍び込んで…これでよし。

 あとはガイガン忍法火の鳥…じゃなくて普通に気配を消す。

 …

 ……

 ………

 …………

 

「ピー助さん。もういいですよ」

 

 おっ、もういいんか。

 それじゃあバッグの中から呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。

 ふむ、控室か。

 あれ、翼ちゃんは?

 

「もう衣装合わせに行ってます」

 

 ほーんそっか。

 それにしてもなんで俺を仕事に連れてきたんだろう?

 

「それはお楽しみということで」

 

 お楽しみ…?

 まさかモデルさん達に会わしてくれるとか…!

 

「えーこの子がピー助君~?かーわーいーいー!」

 

「かーわーうぃ~うぃ~」

 

 ふへへ…ジュルリ。

 翼ちゃんも優しいな~ようし早速俺も撮影現場にッ!

 トオッ!

 

「駄目ですよ。控室から出たら」

 

 ジャンプした瞬間、緒川さんにナイスキャッチされてしまった…。

 えー駄目なん?

 

「駄目です」

 

 Are you ready ?

 

「駄目です」

 

 俺は出来てるよ…が好きやで。

 って、ビルドの話がしたいんじゃないんや。

 ふむ…まあいいや。

 お楽しみということは待ってればそのお楽しみが来るということ。

 大人しく防森でもしてるか…。

 

 

 

 

 一時間後くらい。

 

 緒川さんいまイシダイ何匹釣った?

 

「七匹釣りましたよ。…あ、いま八匹になりました」

 

 むっ…二匹リードされてしまっている。

 制限時間は…あと五分。

 くっ…この間にイシダイを三匹かサメなどの大物を釣らなければ負けてしまう。

 負けたら…どうってことはないけど悔しい。

 悔しい。

 悔しい。

 だが、それでい…いぃぃぃぃ!!!!

 背鰭発見!

 ピー助!目標を釣り上げる!

 アッアッアアッアアッアッアッアアッアアッアーーーー(川井節)

 かかったッ!!!

 うおぉぉぉぉぉ釣れぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 

    サメを 釣り上げちゃった!

    ダイナマイトだね!!

 

 …シャアッ!!!

 見たか緒川さん!

 これで俺の勝ちだ!

 

「はい。ピー助さんの勝利です」

 

 勝った勝った~!

 緒川さんに勝った~!(手加減されていた)

 

「そろそろ翼さんが来る頃だと…」

 

 緒川さんが言いかけると翼ちゃんが近付いてくる気配が。

 ドアの曇りガラスに翼ちゃんのシルエットが浮かぶ。

 しかし、なかなかドアを開けて入ってこない。

 一体どうしたというのか。

 ちょっと待つと、業を煮やした…って感じでもないけど緒川さんがドアを開けてしまった。

 するとそこにいたのは…。

 

「緒川さんッ!?何故勝手に開けたのですかッ!?」

 

「いや、この調子だと日が暮れてしまいそうでしたので。それに、仕事の時間もありますし」

 

 …ウェディングドレス姿の翼ちゃんが、いた。

 は~…。

 

「ピー助、その…似合ってるかしら…?」

 

 …似合ってる、よ。

 ほえ~…。

 

「私がこんなもの着れるとは思えないから、ピー助に見てほしかったのよ」

 

 確かに結婚前に着たら婚期逃すって言うから気を付けるんや、で…。

 ここで、ピー助は前世のあることを思い出してしまったッ!

 それはピー助の中学、高校時代。

 そういえば、自分が出会ってきた国語教師の9割は女性、独身、40代以上、そして…ペット(主に猫)を飼っていた…。

 翼ちゃん、婚期逃す、ペット(俺)を飼っている…。

 これは…まずいッ!

 このままじゃおばさんになっても翼ちゃんはピー助、ピー助と独身のまま…。

 家事も出来ない翼ちゃんでは…かなりまずいのでは。

 昨今は結婚だけが人生じゃないというが、俺の考えだとやはりいい夫婦というのはとても幸せそうに見えるのでいい人と巡り会ってほしいのだ。

 というわけでその呪われた装束を脱ぐんだッ!

 まだ翼ちゃんが着るべきでないッ!

 これを着るのは人生で一度でいいんだッ!

 

「ピー助!暴れたら駄目でしょう?どうしたの?」

 

 翼ちゃん…それは…その衣装は駄目なんだ…。

 緒川さんに取り押さえられて衣装破壊はならなかったが必ず…必ず翼ちゃんを結婚させるんや!

 

「見慣れない衣装だから興奮しちゃったのかもしれませんね」

 

「それはいつもの私が良いということでしょうか…?」

 

 む…!

 なんて簡単なことに気付かなかったんや!

 緒川さんと翼ちゃんをくっつければええんや!

 俺が来るまでは翼ちゃんの部屋片付けてたから家事も問題ないし、マネージャーとくっつくとか割りとよくある…のかな?

 そこら辺あまり詳しくないのであれだが。

 今日から俺は…おがつばを推していくッ!

 

 決意したピー助。

 しかし、この道はとても険しく、前途多難…どころではなかった。

 最早、無理とかに近い道なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切ちゃん、ピー助は?」

 

「ピー助なら頭に乗っけて…デェス!?いないデス!どこに行ったデスかピー助!?」




オマケ

「これは…」

等身大(ちっちゃい方)ピー助人形。

「手紙もある」 

『改めて結婚おめでとうございますbyピー助』

「ふむ…それでこれがプレゼントか。…おお、なかなかいいモフリ具合」

 気に入ったので仕事で息詰まった時とかにモフればいい気分転換になりそうだ。
 …よし、モフろう。


花嫁シリーズはこれでとりあえず書いたぞって感じで。
本編とグレ編(最近お気に入り)書いてくぞ~!


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番外編 奏ちゃんの誕生日

滑り込みッ!!!
ハッピーバースデー!!!
奏さん!!!


 晴天の下、俺は広い草原にいた。

 

「ほらピー助、取ってこい!」

 

 奏ちゃんがそう言ってフリスビーを投げた。

 回転しながら飛ぶフリスビーに飛んで追い付いて口でキャッチ。奏ちゃんのところへと戻ってきて、フリスビーを返す。

 

「よしよし。ピー助も芸達者になったな!」

 

 褒められて、頭を撫でられる。

 ご褒美のカルパスを貰って食べる。

 うん、美味しい。

 

「奏はもうピー助のトレーナーね」

 

「このままピー助と一緒に水族館で働くか~」

 

 …俺、ペンギン達と一緒に飼育されるの?

 寒そう(小並感)

 まあ、寒いとこのペンギン達と一緒にされなきゃいいか。

 …平和になったら、俺はどうなるんだろう?

 本当に水族館なり動物園なりで展示されてパンダ扱いされてしまうのだろうか…。不安になってきた。

 

「そろそろ帰るか。ピー助、行くぞ」

 

 奏ちゃんに抱えられて帰路につく。

 今日の運動終わり! 

 昼飯が俺を待っている。

 

 

 

 

 お昼のアジは絶品だった…。

 やっぱり鮮度って大事だね、うんうん。

 さて、午後は何をするか…。

 奏ちゃんは検診だからいないし…翼ちゃんは居合いとかしてるだろうか?

 前々から興味あったし俺もこの鉤爪で…。

 斬ッ!!!

 とかしたいよね、うん。

 そうと決まれば、ほぼ翼ちゃん専用の和室へGO!

 

「ピー助、どこへ行くの?」

 

 勢いよく走り出した途端に後ろから目当ての人物である翼ちゃんに声をかけられて驚きのあまりコケてしまった。

 そんなギャグみたいな展開あるぅ?

 

「大丈夫?結構勢いよく転んだけど…。あ、床に傷が…」

 

 だ、大丈夫…。

 床の傷は気にしない…。ちょっと腹のノコギリで擦っちゃっただけだから…。

 それより翼ちゃんは何してるの?  

 私服着て…どこかへお出かけ?

 

「ピー助にも関係あることだし、少し手伝ってもらいましょうか」

 

 ?

 俺にも関係あること?

 頭に疑問符を浮かべていると、是非も問わずに翼ちゃんは俺を持ち上げてどこかへと連行する。

 前はおっかながって触ることも出来なかった子が成長したねぇ…。

 

 

 

 そうして運ばれた先は特に使われていない部屋。

 折角あるんだから使えよと思うけれど、この二課の基地はやけに広いしなにやらまだ拡張するとかなんとかで更に広くなるとか。

 なんのためにそんなでかく、地下へ掘り進めようというのか…。これは地底に眠る怪獣が目覚めるフラグと見た。

 それで俺をこんな部屋に連れてきて何の用?

 まさか…奏ちゃんがいないのをいいことに乱暴する気なんでしょ!エロ同人みたいに!

 

「今日は奏の誕生日プレゼントを選ぼうと思って連れてきたのよ」

 

 はえ~。

 奏ちゃんの誕生日か~。

 めでたいめでたい。

 それで俺にも関係あるということか。よし、祝おう。

 祝え!!!

 

「それは何のポーズ?」

 

 もちろん、祝え!!!のポーズですよ、ン我が防人。

 

「ふふ、ピー助はいつも人間みたいな動きして…中に人が入ってるみたい」

 

 ええ、はい、そうです。

 中に人がいます()

 夢を壊すようでごめんね!

 あ、言葉通じないから分かんないか。

 

「それで、奏にあげるプレゼントなんだけど…二つにまで候補は絞ったんだけど、ピー助的にはどっちがいい?」

 

 通信端末の画面を見せてきた翼ちゃん。

 んー?どれどれ拝見してみましょ、う…。

 俺は、翼ちゃんのことをシンフォギア装者であり、ツヴァイウイングとしても活動する以外は普通の女の子だと思っていた。

 しかし、それは違ったのである。

 あのねぇ…。

 

「?」

 

 どこの世界に常在戦場なんて書かれた掛け軸か盆栽を誕生日プレゼントに貰って喜ぶ女子高生がいますか!!!

 

「ピ、ピー助?なにを怒って…」

 

 翼ちゃんの誕生日プレゼント選びのセンスに怒ってんですよ!!!

 まったく…はい!それ貸して!

 

「…?」

 

 もう!言葉が通じないって不便!

 勝手に取ってきます!

 

「あ!ピー助!」

 

 ふむふむ…。

 翼ちゃんらしく和風のものがメインのところか…。

 普通にこれとかいいじゃん。

 

「ピッピッ」

 

「ん?これがいいの?」

 

 そう。

 

「あ…今、なんとなくピー助がなに話してるか分かった気がする」

 

 そんなことはどうでもいいから。

 あ、あくまでもこれは参考だから。

 翼ちゃん的に駄目なら他の選んでいいから。

 まあ、掛け軸とか盆栽よりはマシではあると自負している。

 

「それじゃあこれはピー助からのプレゼントということにしましょう」

 

 え…。

 でも俺、金払えないし…。

 

「奏もピー助からプレゼント貰ったら嬉しいだろうからそれがいいわね。この分はあとでピー助からお触り自由ということで返してもらうことにして…」

 

 お触り自由だなんてそんな/// 

 うちはそういうお店じゃありませんよ///

 なんて…。

 

「よし、それじゃあ私はこの二つの内からどちらを選ぶか決めないと…」

 

 だーかーらー…。

 掛け軸と盆栽は駄目だって言ってるでしょうがぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

 

 

 

 誕生日当日。

 二課食堂…貸し切り!

 ハッピーバースデーディアー奏ちゃーん。

 ハッピーバースデートゥーユー…。

 わー!

 おめでとう!!!

 

「あはは…やっぱり照れるな。こうやって祝われるって」

 

 いやいや~幸せやね~。

 俺なんて誕生日が四月初め頃だから、基本的に家族以外から祝われたことないんだ…。

 学校の友達とかはケーキ買ってきて、顔面にケーキやられたりするのに…。

 ちくせう!

 …いかん。

 折角の誕生日なんだから盛り上げていかないと…。

 さあさあご覧あれ、ガイガンの妙技。回転ノコギリによるチキン切り分けを!

 ウィィィィィィィィン、グチャゴチャメチャ→さっきまでチキンだったものが辺り一面に転がる。

 

「こら!飛び散ってるからやめろ!」

 

 ふふふ…。

 なんだか、楽しい…。

 

「ケーキの切り分けは私が…」

 

「翼は日本刀を持ち出すんじゃない!この切り裂きマニア達め…」

 

 

 

 

 

 いよいよプレゼントを渡す瞬間…。

 渡すこっちまでドキドキしてきた…。

 

「私からは浴衣。奏に似合うと思って…」

 

 翼ちゃんのプレゼントはなんとか修正することが出来た。緒川さんや司令による必死の説得の元だったが…。

 

「おお!これ着て夏祭りとか行けるな!」

 

 奏ちゃんはどっちかというと屋台の店主みたいだけどね。

 

「ピー助?」

 

 ひぇ…。

 じょ、冗談ですよ冗談…あはは…。

 

「ま、それも良さそうだけど」

 

 うんうん。

 ハチマキ巻いて焼きそばとか作ってそう。

 

「お前がそんなこと言うから焼きそば食いたくなってきたぞ」

 

「なんでナチュラルに会話してるの…?」

 

 まあ、奏ちゃんとは相性がいいんや。

 それにほら、飼い主だし。

 

「あたしはピー助の飼い主だからな!」

 

 ほら、奏ちゃんもそう言ってる。

 あ、それより俺からもプレゼントを…。

 

「ピー助もプレゼントくれるのか?」

 

 いえーす。

 喜んでくれるといいですが…。

 

「開けてもいいか?」

 

 もちのろん。

 

「お、これは…髪飾りか?」

 

 うむ。

 花は多分、百合だと思うけど…。

 あ、百合ってそういう意味じゃないから!

 奏ちゃんと翼ちゃんのカプとかそういうことじゃないから!

 単純にキレイだな~と思ったのがそれだっただけで…。

 

「ありがとな、ピー助」

 

 さわさわと首を撫でられる。

 あ~気持ちエエんじゃ~。

 

「折角だし、着てみるか」

 

 え、早速?

 そんなわけでお色直し…だと結婚式になってしまう。

 衣装チェーンジ!!!

 

「どうだ?変なとこないか?」

 

 ないっす。

 色っぽいっす奏ちゃん。

 

「とっても似合ってるわ、奏」

 

「そうか?ならいいや。折角貰ったのに着る本人が似合ってなきゃ駄目だもんな!」

 

 いやー奏ちゃん美人さんだから何着ても似合うって。

 いいね~夏の風物詩って感じで。

 

「夏の風物詩、か…。そうだ!」

 

 何かを思い立った奏ちゃんは食堂から出ていって…待つこと五分ほど。

 

「翼、ピー助。これやろうこれ!」

 

 奏ちゃんが持ってきたのは花火だった。

 なるほど、夏の風物詩か~。

 浴衣も着てるしちょうどいい!

 やろう!

 

「翼も着替えてさ!浴衣ぐらい持ってるだろ?」

 

「も、持ってるけどここには…」

 

 ん?

 天井から何か…。

 

『浴衣あります』

 

 緒川さん…。

 流石かよ!

 これがジャパニーズニンジャの力!!!

 

「ピー」

 

「ん?どれどれ…ほら!浴衣あるってさ!」

 

「えぇ!?」

 

「ほら!着替えるぞ!あ、ピー助も来い!」

 

 わっつ!?

 なんでー!?

 拙者は着替えるなんて出来ないでござるよ!

 

「いいからいいから!」

 

 あとそれからそれから着替えを見ちゃうことになるからアカンですって!!!

 アーーーー!!!!

 

 

 

 

 二課所有地。

 天気は晴れ。

 星空が美しい。

 けどそれよりも…。

 

「見ろ!二刀流だ!」

 

「奏、花火を振り回すのは…」

 

 楽しそうにする二人が一番美しい。

 いつまでも、こんな風に過ごせたらいいのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 ん…。

 夢、か…。

 

「あ!ピー助君起きた!花火始まってるよ!」

 

「ふっふっふっ…今こそアタシの六刀流を見せる時デス!!!」

 

「危ない真似すんじゃねえ!」

 

「切ちゃん…すごい。私も…」

 

「調ッ!?あれは真似しちゃダメ!」

 

「あ、響。歯に青海苔ついてる」

 

「え!?嘘!?どれどれ!?」

 

「流しそうめん…」

 

「…ピー助」

 

 翼ちゃん…。

 あれ、俺…。

 

「最近忙しくて疲れが溜まってたんでしょう。ゆっくりしてていいのよ?」

 

 …いや、そうはいかないよ。

 今日は…奏ちゃんの誕生日で、花火をする日なんだから。

 

「そう、ね…。私も、あの時のこと思い出していたわ。あの頃に比べたら、随分と人数が増えたけど」

 

 そうだね。

 

「翼さんとピー助君も来てくださ~い!今日誘った張本人なんですからー!」

 

「ああ、今行く!…さあ、行きましょうピー助」

 

 うん。

 奏ちゃん…。

 君が繋いだ命は、こうしてたくさんの仲間達との絆を繋いだよ。

 君が、いたから───。




改めまして…
奏さん誕生日おめでとうございます!!!


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怪獣王の日

おひさ~と言いつつ全然おひさな気がしないのはTwitterでガイガンの人、というかもうガイガン本人、ピー助とか言われまくったせいだと思う()
Twitterでたまにピー助&翼さんネタやってるのもあると思う。
あと最近だとこちらhttps://syosetu.org/novel/232356/にてセクハラペンギンモドキが出現したとかなんとか(ハロウィン回)
書いてて思ったのは……
やっぱりこれが一番書きやすいわ。
いつも通り頭空っぽにして読んで()


 遂に、この日がやって来てしまったというわけだ。

 2044年!

 11月3日!

 今日、この日はアニバーサリー。

 なんといっても……。

 ゴジラ生誕90周年なのだから!!!!!!!

 

 そんなめでたい日だというのに……。

 

「ピーーーーー!!!!!(なんで誰も祝福ムードじゃねえんだこんちくしょう!!!!!!!)」

 

 いや、当然なんですよ。

 だって、この世界に映画としてのゴジラは存在しないから。

 存在しないものは祝いようがない。

 ちくしょう……。

 しかし、俺は祝ってみせる。

 一人の特オタとして!!!

 

 錦の旗(ゴジラの旗)を掲げ、いざ祝わん!!!

 

 ハチマキオッケー!ハッピオッケー!

 気合いオッケー!

 合言葉は「ピー!(祝え!)」

 いや、これライダーネタやろと思うが仕方ない。

 ゴジラなくしてライダーなし()

 全ての始まりなのだからウォズがゴジラの誕生日を祝福しないわけがない。

 

 さて、祝うにはやっぱりケーキだろう。

 え?ゴジラはケーキ食わんだろう?

 細かいこと気にしてるとゴジラみたいに大きな人間にはなれんぞ!

 というわけで、一行(一匹)は食堂へ向かった。

 

 

 

 

「ん?なにしてんだピー助」

 

 おっと、早速クリスちゃんが仲間になりたそうな目で見ているぞ!

 仲間にいれますか?

 はい←

 いいえ

 

 聞くまでもなく「はい」だこのやろう!

 ゴジラ生誕を祝福すべき人類は一人でも多い方がいい。

 

「ところでなんだその格好と旗……。てかその文字誰が書いたんだ?」

 

 そりゃもちろん私が。

 

「ばっ!お前、文字書けることを先輩に知られたら監禁されて一生文通生活だぞ!」

 

 えー?

 ワタシモジナンテチョットシカカケナイデスヨ?

 タトエバ……天上天下唯我独尊トカ~。

 

「バリバリじゃねえか!?あーくそ。なんやかんやこいつとちゃんと会話したことあんのあたしだけなんだよなぁ。このまま隠しておくべきか……?」

 

 あーそういえばそうだったねぇ。

 フィーネとの戦いでエクスドライブしたクリスちゃんとは念話で会話したんだった。

 それはさておき。

 

「なに?ゴジラの誕生日だから祝う?……怪獣にも、誕生日を祝う文化があんだな……。それで、どうやって祝う気なんだ?」

 

 それはほれあれよあれ……。

 初代ゴジラを皆で鑑賞……はそもそも映画がないので無理なのでとりあえずケーキ作って皆で食べて祝おうぜ~的な感じで。

 

「なんかよく分からないけど本当に祝う気があるかどうかがすごい謎だ……」

 

 いやーあれよね。

 今日という日をさ、クリスマスみたいな日にしたいわけよ。

 

「……どういう意味だ?」

 

 だからさ、日本人的目線のクリスマスってとりあえずケーキ食ってプレゼント渡したり貰ったりとかそんな感じで本来の意味のクリスマスをやってないじゃん?

 そんな感じでさ、ゴジラの日を世界的にとりあえずケーキ食ってプレゼント渡したり貰ったりとかしてとりあえず祝おうぜ的な感じにしようと思ってんのよ。

 

「お前なぁ……」

 

 まあまあクリスちゃん。

 普段はぷにったお腹とか体重とかウェイトを気にしてケーキなんておいそれと食べられないかもしれんが!

 今日がゴジラの日!ゴジラの日は有無を言わさずケーキを食べる!みたいな文化になれば合法的にケーキが食べられるんだよ!!!(※ケーキを食べることは別に違法なことではありません)

 

 さあというわけで行くぞクリスちゃん!  

 ピー助クッキングの時間だ!!!

 

「なんか釈然としないけど……まあいいか……。ところで、今日は先輩はどうしたんだよ?」

 

 翼ちゃんは昨日夜遅くまで収録で今日は午後から来るから!

 それにあの子をキッチンに立たせてはならない……。

 とにかく行くぞぉ!!!

 

「お、おお……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝。

 カーテンから射し込む木漏れ日で目を覚ました。

 

「ピー!」

 

「ん……ピー助、朝から元気ね……」

 

 愛するピー助の鳴き声を聞きながら身体を起こして寝ぼけた眼を擦り、少しずつ覚醒していくと……。

 

「ピー!」

 

「ピピッ」

 

「ピェ……」

 

「ピ~」

 

「ピーピーピー」

 

 目を疑った。

 ピー助が一、二、三、四、五……。

 ピー助が、たくさん……。

 

「こ、ここが楽園……?」

 

「「「「「「ピー?」」」」」」

 

 ピー助達が一斉に私を見つめてきて……。

 あ、あ、ああ……!

 

「ピー助ぇ!!!!!」

 

 私はピー助の群れに飛び込んで……。

 

 

 

 

 

 

「ッ!?つ、痛……あれ……ピー助は……え?夢?」

 

 飛び込んだのはなんてことないいつものフローリング。

 どうやら、ベッドから転げ落ちたようだ。

 寝相は別に悪くないが、ピー助のためなら寝ながらでも敵を切り裂く覚悟は出来ている。

 しかし思い切り額をぶつけてしまったので痛いは痛い。

 目当てのピー助もいないし、起きるにはまだ睡眠時間が足りないので仕方ない。

 不貞寝しよう。

 そうと決まればベッドに戻って……。

 いや待て。

 ピー助はどうした?

 ベッドから転げ落ちた時のような大きな音がしたならすぐに駆けつけてくるはず……。

 それにピー助の気配がない。

 ということはピー助は出かけている可能性が高い……。

 

「そうね……寝るより、ピー助で癒される方が何倍も休息効果があるわ」

 

 というわけでピー助がいるであろう本部へと早速赴くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マグロが嫌いなジラがいないのと同様にケーキが嫌いな女の子もいないと思う(暴論)

 けれどやっぱりマグロ食ってる奴は怪獣としてどうなんだろう。

 ここは天下の怪獣王のようにもっとでっかくクジラを追えクジラを。

 

 というわけでクジラの形のケーキを作ろうと思います。

 

「いやどういうわけだよ……」

 

「けど面白そうデース!」

 

「クジラの形……。出来たらすごそう」

 

「とにかく作ってみようよ!皆でやれば大丈夫!」

 

 はいというわけでクリスちゃん伝えにあんな人こんな人達も連れて参りました。

 翼ちゃんは家でねむねむしてるだろうし、マリアさんは最近出番が多すぎなので……ゲフンゲフン。(メタァ) 

 ちょっとお仕事で今頃イケメンとハリウッド映画さながらの大爆発から逃げていることだろう。

 

「けどクジラの形ってどうやって作るの?」

 

 そこはほれスポンジケーキで上手いことやってだね未来ちゃん(考えなし)

 まあなんとかなるでしょう(ぶん投げ)

 というわけでレッツクッキング!

 

 

 

 

 クジラといえば白鯨。

 名作だよねあれ。

 って、そっちではなくてというか伝わっただろうかこのネタ。

 そもそも俺の声は皆には伝わらないけどさ、最近何故か都合の悪いことは通じるんだよね。

 理不尽過ぎん?

 おかしいよねそんなさ、ただ俺はね、クリスちゃんのおっぱいが大きいとか友里さんのタイトスカートエロくね?とかそういう男なら誰しもが思うことを健全に思っているだけであってね、全く悪くないと思うんですよ。

 というか人の、いや怪獣の思考を読み取ってそれが自分にとってちょっとあれだからって暴力に訴えるのは良くないと思うのよ。

 そりゃあ翼ちゃんの胸は小さいけどそれはそれでいいじゃん!

 みんな違ってみんな良いの精神だよ。

 おっぱいはおっぱいなんだよ。

 まあ、俺は大きい方が好きだけど。

 

(こいつ、すました顔してろくでもないこと考えてやがるな……)

 

(ピー助……。まあ、響のことじゃないからヨシ)

 

(最近は少しピー助の思考が読めるようになってきた……)

 

(大きいケーキだなぁ。早く食べたいなぁ)

 

(デスデスデースッ!!!)

 

 そんなこんなでケーキ完成である。

 いや、そんなこんなで済ましていいもんじゃないけど字数とか作者の都合の関係でちょっとね。

 え?メタい?

 いつものことだろ()

 

「いや~なんとか完成したね」

 

「やってみれば出来るものなんだね」

 

「デース……」

 

 ホールケーキよりもデカイ白鯨ケーキの完成。

 あとはこれをみんなで食べて……。 

 

 キュピィィィィィン!

 

 いま、額の辺りに白い稲光が走った気がする。

 これはあれだ、あれな時の翼ちゃんが近付いてきた時に走る直感だ。

 え、いや、ちょっと待って。

 俺、今日何もしてなくない?

 いや、普段なら何かしらやらかしたという理由があるけど今日はマジで何もしてないぞ俺!

 朝からこっちにいたもん!

 え?それが理由?

 いやいやまさか。

 

「ピー助……」

 

「あ、翼さん!見てください!みんなでケーキ作ったので一緒に食べま……」

 

「ありがとう立花。後でいただく。それよりも今はピー助……。夢に出てきたせいで私はベッドから転げ落ちたぞ……」

 

 ピエッ!?

 なにその因縁の付け方!?

 俺悪くなくない!? 

 悪いのは夢の中の俺やろ!!!

 

「というわけでピー助を抱いてあと三時間眠れば大丈夫……」

 

 ピエェ……。

 最近仕事が忙しくてストレス溜まってたのが一気に放出してきたぞ……。

 

「ピー助君」

 

「ピー助」

 

 ピェ?

 助けてくれるんか響ちゃん、クリスちゃん?

 

「「飼い主のためにも逝ってきて(逝ってこい)」」

 

 ピエッ!?

 そんななんて理不尽な!?

 ぴぁぁぁぁぁ!!!?!!

 引っ張られるぅぅぅぅ!!!!!

 翼ちゃんという名の重力に引っ張られるぅぅぅぅ!!!!!

 このままじゃ翼ちゃんに魂を縛りつけられてしまうぅぅぅ!!!!!

 あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 静かになった食堂。

 取り残された私達。

 もう、(ピー助君が)どうにでもなぁれ。

 

「……とりあえず、どうするこれ?」

 

 未来がクジラケーキを指差して言った。

 

「……しばらく戻って来なさそうだし、二人の分を残しておいて食べよっか」

 

 わたしの意見にみんなが賛成したのでクジラケーキを切り分けて、みんなでいただきますして食べ始めた。

 やっぱりクリームは正義。

 

「ところで、なんで急にケーキを作ることになったのデス?」

 

 そういえば確かに。

 今日は文化の日だから文化的にケーキを作った……?

 誰も答えが分からないなか、神妙な面持ちでクリームを口の周りにつけたクリスちゃんが言った。

 

「……今日はとりあえず、ケーキ食って何か祝う日らしい」

 

 ……よく、分からなかった。

 けれど、ケーキが食べられるならなんでもいっか。




オマケ
 
マリア「世間がハロウィンで盛り上がってた中テロリスト相手にしてるとかなんなの……。なんで私だけ……」

???「ハロウィンなら来年以降もあるから安心しろ。まあ、来年のハロウィンは休みという保証はどこにもないが……」


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祝!一周年!!!

まさかの一周年ということで色々ぶちまけたいと思います(メタ注意)
一年前と同じ時間に投稿です!


 師走に入り、我が家ではこたつを出しまして毎日ぬくぬくと過ごしております。

 更にこたつの上では鍋がぐつぐつ言っておりますよ皆さん。今すぐつつきたくなりますがもう少々お待ちを

 なんといっても今日は……。

 

 いやー皆様、『ちっちゃいガイガンになってた』をいつも応援してくださりありがとうございます。

 本日は第1話の投稿から丸一年ということでパーティーですよパーティー。

 パーティーぴーえーあーるてぃーわいですよもう。

 

「それは分かるけどなんであたしとお前だけなんだ?」

 

 同じくこたつに入っているクリスちゃんが訊ねてきた。

 いやー翼ちゃんはお正月の番組収録行ってるから。

 

「バカとかマリア達は?」

 

 マリアさんは翼ちゃんと同じく。

 響ちゃんと未来ちゃんは招待したけどまだ来てない。

 切調コンビはまだ宿題が終わってないとのことでして。

 

「まあ、そいつらは分かるけど先輩とマリアがいないのはお前狙っ……」

 

 さて、ここ一年のことを振り返りますかね()

 

「おい誤魔化すな。まあ、このことはあとで先輩に報告するとしてだな……」

 

 うそうそ!

 嘘です!

 二人もちゃんと遅れてくるからぁ!

 

「まったく……。まあ、それにしてもいろんなことがあったよなこの一年……」

 

 せやな……。

 投稿してみたら意外なほどに人気出てびっくりするわ、だけど息抜きで書き始めたマリアさんは結婚したいの方が人気急上昇してお気に入り数はダブルスコアつけられるわ、Twitter始めてツイキャスまで始めちゃうわ、自称後輩を名乗る作家が現れるわ、Twitterで代表作はどっち?ってアンケートしたらマリアさんは結婚したいの方が勝つわ、女体化してみたりだとか、キャロルちゃんのおっぱいになったりだとか……。

 

「それ全部作者の思い出だろうお前ッ!!!」

 

 しょうがないやん!大して語るような思い出とかないんだもん!

 別に原作から大きく逸れたこととかしてないから語るに語れないんだよ!

 翼ちゃんに対する愚痴ぐらいしか出てこないよ!!!

 

「ほう?私に対する愚痴と言ったか?」

 

 ぴえっ!?

 つ、翼ちゃん……。

 お早いお帰りで……。

 

「まったく……。この一年語ろうと思えばいくらでも語れるでしょうピー助。例えば……」

 

『ただいまピー助』

 

『ピー!(おかえり!)』

 

『こらピー助。嬉しいからってそんな勢いよく抱きついてくるな。まったくかわいいんだからピー助は』

 

『どうピー助?似合うかしらウェディングドレス?』

 

『ハネムーンはハワイ?ヨーロッパにするか?』

 

『産まれたわよピー助!私達の子供が!』

 

『あなたに似て元気な子ね』

 

『こんなに大家族になるなんて思ってもみなかったけど……。いいものね……』

 

『『『『『ピーピーピー!!!』』』』』

 

 いやいや待て待て待ちなさい!

 

「なんだピー助?おかしなところなんてどこにも……」

 

 おかしなところなんて探す必要もないわ!

 正しいことを探す方が難しいわこれ!

 なにこれどんな妄想!?

 こんなのしてたの翼ちゃん!?

 見てこれクリスちゃんドン引き過ぎて現実逃避のためにこたつの中に隠れちゃったよこれ!

 そもそもこの一年とか言っといてなんで結婚して出産して大家族になってんの!?

 

「これは言霊と言ってだなピー助。言葉にして出すことで実現させるという高度かつ簡単な呪いで……」

 

 久々に聞いたわ呪いなんて!

 そんな設定あったなまったく活かされてないけど!

 いや活かしてほしくないけど!

 

「そうよ翼!大体私だってピー助のこと……」

 

 マリアさん含め遅れていたみんながやって来たが……。

 あっ、マリアさんはマリ婚があるんで没シュートで。

 

「え!?ちょ!?出番ッ!私の出番は!?待ちなさいこらちょっ……」

 

「遅れたデース!それにしてもガイガンギアは元々アタシ担当だからもしかしたら今後はアタシヒロインになったりするデスかー!?」

 

「切ちゃんがヒロイン……。切ちゃんの出番が増えれば私の出番も増える……!」

 

「えー!わたしだって原作主人公なのに出番少ないんだからここは……」

 

 あーもう喧嘩しないで……ピエッ。

 

「出番が、少ない?それを私の前で言えるの響?」

 

「み、未来……。いや、ほら!今後!今後出番あるから大丈……」

 

 そういえば今後未来ちゃんの出番って……。

 あー……。

 なにはともあれ頑張るぞ!ヨシ!

 

「あ!逃げた!」

 

「待てピー助!」

 

「出番……出番……!」

 

 やべえよやべえよ……。

 一周年祝うつもりだったけど全然祝えねえよこんちくしょう!

 ……けど、まあ。

 これが、らしくていっか。

 これからも俺らしく。

 ちっちゃいガイガンになってたという作品らしく……。

 よろしくお願いしま……。

 

「捕まえたぞピー助……」

 

「このあとゆっくりお話しようねピー助。ピー助には響を魅了した疑いもかけられてるんだから」

 

 ぴえっ……。

 あー、いや、もう、ほら、ね。

 らしいでしょ?()

 

 その後、謎の怪獣の咆哮が夜の街に響いたという……。




いやー一周年こんなんでいいのかと思いましたがなんとか書き上げました()
面接が明日だってのにね()
なにしてるんでしょうほんと()
とにかく応援ありがとうございます!
またこれからもよろしくお願いします!!!


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聖夜のガイガン

クリスマス回
時系列とかは気にしない方向で
昨年のクリスマスは驚異の4話投稿なんてことしましたねぇ……
今年は、ないです(きっぱり)


 世間はクリスマス気分に浸っている12月。

 俺はというと絶賛リア充爆発しろという怨嗟を抱えて寒空を飛んでいた。

 ちくせう……なんでクリスマスに仕事なんだ……。

 ふんだ!別にいいもんねー!

 お前らリア充が安心してクリスマスを楽しんでケーキ食ったりプレゼント渡したりピーしたり出来るのも全部俺のおかげだもんねー!

 俺が人知れず平和守ってるからだもんねー!

 感謝しろよマジリア充共!!!

 くそ寒い日にくそ寒い場所でくそ寒いことで有名なゲゾラと戦ってきたんだぞこちとら。

 知ってるかゲゾラ?

 体温が0度なんだぞ。

 周囲の海が凍っていくんだぞ。

 触手で人間襲って食べるんだぞ。

 そんな恐ろしい怪獣を倒してきたんだぞこちとら。

 あっ、あいつ倒さずに一緒に東京に進撃すれば良かった。

 そうすればリア充共のクリスマスも台無しよ。

 って、いかんいかん。

 思考がヒール怪獣のそれになっていた。

 今はヒーロー怪獣として頑張っているんだから。

 まあ妄想するだけならいいだろう。

 というわけで脳内のリア充共を蹂躙する妄想しよう()

 

 大東京(主に歌舞伎町)を火の海へと変えて休憩とかいう文字を掲げている施設を徹底的に破壊しよう。

 なんだよ休憩って運動の間違いだろふざけんなまじで。

 全然休めてないじゃろがい!

 むしろ汗だくになって息も上がっとるやろ!

 そんな奴等は回転カッターの餌食にしてやろ……。

 

 妄想に集中していたのが悪かった。

 もっと前方注意していればよかった。

 気が付いた時にはもう遅く、なにかと衝突して重力に従い地面に叩きつけられた。

 

 いてて……。

 どこかの森に落ちたようだが……。

 くそ、なにと衝突したんだ?

 2mサイズだったとはいえあの高度を飛ぶ物体ってなんだよ……。

 まさか未確認飛行物体!?

 うひょー!未知との遭遇!

 宇宙語の練習したろ!

 キエテ・コシ・キレキレテ……ってそんな場合じゃないわ。

 一応事故なんだから向こうが無事かどうか確認せんと。

 って、待て。

 宇宙人さんもファーストコンタクトが俺とかあれじゃない?色々誤解されそうじゃない?

 だってガイガンだもん。

 まあ、簡単な救助ぐらいは出来たらしよう。

 というわけで宇宙人(仮)を探そう。

 せめて友好的であってほしいな~なんて考えながら探しているとなにやら声が聞こえた気がしたのでその方向へ。

 するとそこには……。

 

「あ~やっちゃったなこれどうすんのこれ。ソリ壊れちゃったんだけどどうしてくれんのこれ。まじでヤバいよこれ。プレゼント渡せないよこれどうすんのマジで」

 

「どうすんのってアタシに聞かないでくれるぅ?そもそも運転中に話しかけてきたおっさんが悪いじゃん。アタシ悪くありません~」

 

「はあ?テメーが話しかけて欲しそうにしてたから話しかけてやったんだろうがそれをなにお前は人に責任擦り付けるわけ?大体話しかけられても余所見すんなよなトナカイなんだから。お前が余所見しなきゃ回避出来たんだろうが。そんなんだから彼氏にも捨てられるんだろうが」

 

「はあ!?その話いま関係ないしぃ!おっさんもそういうとこあるからいい歳して独身なんだよ分かれよマジ!」

 

「んだとぅ!!!」

 

 えっ、なにあれは……。

 白い無精髭の赤い服のおっさんとなんか角生えた褐色ギャルがぶっ壊れたソリの前で喧嘩してんだけど……。

 ……。

 触らぬ神に祟りなし。  

 というわけで帰りましょう帰りましょう。

 

「あっ!ぶつかってきたやつじゃん!!!」

 

 げえ!見つかった!?

 

「おいこら逃げんなしぃ」

 

 一瞬で捕まりギャルに連行されおっさんの前に正座させられた。

 いや、違うんですほんと。

 ちょっと保険会社に連絡しようとしてただけで決して逃げるつもりなんてなかったんですはい。

 ぶつかったのもちょっと考え事してて……本当にすいませんでした。

 あの、これ住所と電話番号なんでぜひ示談で……。

 

「示談つってもねぇ、こちとら絶賛困ってるのよ。どうすんのこれ?子供達にプレゼント配れないじゃんこれもう間に合わないよこれ絶対もうマジ無理だってこれどうすんのこれ」

 

 い、いやーそればっかりは……。

 

「プレゼントは俺が命張って守ったよ。けどさ、肝心のソリがこれじゃん?運べないよこれ?このオモチャ来年に持ち越せないんだよこれ知ってる?」

 

 いや、知りませんでした……。

 というかあなた方はもしかしてサンタさん的なそういうサムシング……?

 

「サンタさん的なじゃなくてサンタさんだよこのやろー。子供達に夢と希望を届けるサンタさんですよこちとら。ええ?なんか文句あっか?ふぅ……」

 

 いや、サンタさんタバコはちょっと……。

 やめて!吹き掛けないで副流煙を!

 つーか態度悪スギィ!

 こんなんがサンタとか壊れるなぁ。

 

「おいお前ちょっとそこに四つん這いになれよ」

 

 えっ?

 

「四つん這いだよあくしろよ」

 

 ひえっ……。

 とりあえず従っとこ……。

 

「なんだこの羽は邪魔だぞ」

 

 いや、羽は大事なものなのでぇぇぇぇぇ!!!!

 やめてぇ!むしろうとしないでぇ!!!

 剥ぎ取れないからそれぇ!!!

 未来怪獣の翼膜とかじゃないからぁ!

 なんの装備も作れないからぁ!

 

「ちっ。しゃーねえな。お前このプレゼント持て」

 

 えっ?

 

「だからプレゼントだよプレゼント!テメーが今夜のソリだ」

 

 ファっ!?

 なんで俺がソリ役なんか!

 

「お前のせいで困ってんだからな?言うこと聞けよ?ソリとして働いてくれればそれで今回の件はチャラにしてやらぁ」

 

 ひえぇ……。

 けどまあ俺が悪いのも事実だし……(向こうも悪いけどな!)

 しゃーない引き受けよう。

 ところでおっさ……サンタさんはなにに乗るん?

 

「仕方ねえからトナカイに乗るしかねえだろ」

 

「本当は嬉しいくせに~」

 

「うっせ」

 

 ……さいですか。

 そんなこんなで、俺のソリとしての任務が始まった。

 

 

 

 

 

 

 ……案外、順調に進んでるなぁ。

 遅れを取り戻すためにかなり急いだがなんとかなりそうだ。

 それにこのサンタの担当区域が家の近くのおかげで土地勘があったのでこれもまた作業効率の向上に繋がった。

 そして、余裕が出来たので雑談が始まった。

 サンタがとある金持ちの家に忍びこ……ごほん。

 プレゼントを置きに行っている間、ギャルトナカイと駄弁っていた。

 

「ところでさぁソリさんはなんなんだし?」

 

 なんなんだしがなんなんだし?

 

「だからぁ、何者かって聞いてるんだし」

 

 ガイガンだし。

 

「ガwwwイwwwガwwwンwww」

 

 草を生やすな草を!

 かっけえだろうガイガン!!!

 

「ちょっとマジ草w」

 

 草に草生やすな(マジレス)

 まあええや。

 ギャルちゃんはあれなん?

 ずっとあのおっさんサンタと組んでんの?

 

「いや、おっさんは今年サンタ免許取った新人サンタなんだし」

 

 サンタ免許とは()

 細かいことはいいや。

 それにしても新人とは……。

 もう40ぐらいじゃないのあのおっさん?

 

「いやーサンタ業界も高齢化が進むわ後継者が不足してるわで大変なんだよね~。それでおっさんのお父さん。グランドサンタが去年のクリスマス終わってすぐに倒れたからおっさんが仕事辞めて実家戻ってきて継いだってわけ」

 

 グランドサンタ……まあこれも置いておこう。

 なるほどなるほど。

 よく聞くような話ですなぁ。

 サンタの世界でもそんなことがあるとは思わなかったわ。

 

「あーまじ広い家はくそだわ。迷って時間かかっちまった。それになんだよ頼んでるプレゼントがパパとママと遊びたいって。もっとちゃんと子供に目を向けてやれよくそが」

 

 愚痴りながらサンタのおっさんが戻ってきた。

 少々このご家庭の闇が感じられたがこればっかりはどうしようもない。

 次のご家庭に行きまっせ旦那。

 

「テメーが仕切んな。さて、次のお宅は……んだこれ。一緒に住んでんのか?暁さんと月読さん同じ住所と部屋番だ」

 

 ん?

 暁さんと月読さん?

 それ間違いなく知り合いだわこれ。

 十中八九というか十中十で知り合いだわ。

 

「んだペンギン知ってんのか。よし最短ルートを案内しろ」

 

 あいあいさー。

 よっしゃ行こうぜ~(某銀河風に)

 

 

 

 なんとなく全員で侵入してみた。

 ほら、二人がなに欲しいのかちょっと気になるし。

 というか高校生でサンタにプレゼント頼むとか二人なんだ可愛いか?

 それにしても気分は寝起きドッキリの気分。

 

「クワガタは準備してあるし~」

 

 よっしゃ切歌ちゃんの鼻に……。

 

「ふざけてんじゃねぇ。さて、二人のリクエストは……」

 

 あっこれじゃないですか?

 つてがみ

 

「ん?どれどれ……なんだこれ意味分からん文章だ。なんだぴーかんの空って」

 

 あっ違うやこれですわ。

 ちゃんとサンタさんへって書いてある。

 

「えーと。なになに……なんだゲーム機か。二人でやりたいんだとよ」

  

 意外と普通なリクエスト!

 まあ可愛らしくていいね!

 というわけでテーブルの上にプレゼント置いて完了と。

 

 暁&月読家クリア!

 

 

 

 

「次は……また同じ住所だ。立花さんと小日向さんだとよ」

 

「あっそこも知ってます」

 

「よし、行け」

 

 りょ。

 

「雑になってない大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 というわけでまたみんなで侵入したぜ。

 さてプレゼントのリクエストは……あった。

 

「立花の方が……なんだご飯&ご飯って。靴下に白米詰め込めばいいのか?」

 

「いや食えんし馬鹿じゃないのおっさん」

 

「うっせえ冗談に決まってるだろうが。で、小日向の方が……」

 

 おっさんが黙り込んでしまった。

 一体なんだというのだ。

 

「なんだしなんだし~?どんなプレゼントなんだし~」 

 

 ギャルトナカイと一緒にリクエストの書かれた紙を覗きこむ。

 そこには……。

 

「響の……」

 

「笑顔……」

 

「……」

 

 と、とりあえず響ちゃんのプレゼント置いておこう……。

 朝ご飯が置いてあったら響ちゃんきっと笑顔になるから……。

 そうすれば未来ちゃんにとってのプレゼントにもなるから……。

 

「そ、そうだな……」

 

 しかしここで問題が。

 当然だが炊飯器には既に朝に炊けるように米がセットされていたのだ。

 

「どうする?ご飯は既にあるんだぞ……そこに更に米を足すか……?」

 

 おっさん、俺に妙案が。

 

「なんだ?」

 

 これをプレゼントしましょう。

 つご飯デスよ

 

「馬鹿かお前!これはご飯じゃないだろう!」

 

 なに言ってるんですこれは()()デスよ?

 

「ただの屁理屈じゃねえか!」

 

 屁理屈チガウコレハご飯デスよ。

 ご飯デスよと言っているということはこれは間違いなくご飯デスよ。

 更にこれを二つ置いておくことで……。

 ご飯&ご飯となるというわけデスよ!

 

「そっかぁじゃあそれでいいわ(洗脳済)」

 

 立花&小日向家クリア!

 

 

 

 

 

 

 続いて続いてなんとクリスちゃんのお家。

 クリスちゃんが望んだものは……。

 

『仏壇掃除の道具』

 

 クリスちゃん……。

 本当にいい子やなぁ……。

 サンタに頼まず自分で買うべきでは?と思わずにいられなかったけどしゃーない!

 ガイガンサンタがたくさんお掃除セットをくれてやらぁ!

 

「てめーはサンタじゃねえだろ」

 

 雪音家クリア!

 

 

 

 

 

 装者が続いて今度はカデンツァヴナさん宅へ。

 ……カデンツァヴナさん?

 えっ、あの人20代だよ大人だよ?

 サンタさんなんて歳じゃないよスルーしようスルー。

 

「けどぉ、サブタイだとガングニールの少女ってあるし~」

 

 その話はやめて差し上げろ()

 初期設定の名残なんや許してやってくれ。

 

「まあ、見るだけ見てみるか……」

 

 というわけでマリアさん宅へ侵入っと。

 あ、靴下発見。

 中にはリクエストの手紙が。

 なになに……。

 

『休み』

 

 マリアさん……。

 疲れてるんやなぁ……。

 疲れ過ぎて神頼みならぬサンタ頼みしちゃったかぁ……。

 まあ、休みは我々にはどうしようもないのでお仕事頑張ってね!

 

 カデンツァヴナさん宅クリア!

 

 

 

 

 

 そんなこんなで……。

 

「いよいよ、最後か……。一時はどうなることかと思ったがなんとかなったな。ありがとな、付き合ってくれてよ」

 

 やめてくれよデレるのは。

 男のツンデレは嫌いなんだ。

 

「てめぇ……素直に感謝してやったのに……」

 

 嘘です冗談ですこちらこそありがとうございました()

 さて、最後は……。

 なんとなく予想はつくけど違うことを願おう。

 

「さて、最後のお宅は……風鳴さん宅だ」

 

 やっぱり()

 こうなると思ったのよね()

 そして最悪の場合というのは……プレゼントが……。

 

 

 

 

 

「リクエストは……ピー助の全て?ピー助?なんだこのふざけた名前は?」

 

「あ、こらガイガン逃げんなし。ここまで来て逃げるのはイミフだし。てかそんなちっさくなれんだね」

 

 い、いやぁピー助ってなんやろなぁ?

 あははぁ!

 

「……お前、名前は?」

 

 ピー助です。

 あっ。

 

「よし、じゃあお前はこのお宅に置いていこう」

 

 待って!

 俺達仲間じゃん!

 ずっと一蓮托生でやってきたじゃん!

 俺ずっとソリやるからお願いだから連れてってくれ!

 

「お前の帰る家はここなんだろう?だからよぉ!!!」

 

 むごぉ!?

 お、俺を掴んでなにする気だぁ!?

 

「大人しくこの靴下の中に入ってプレゼントになりやがれぇ!!!」

 

 ピー!?

 無理無理こんなの入ら……入ったぁ!?

 

「よしこれでOK。さっさと帰るぞ」

 

「じゃーねーガイガン。また来年があればよろしくぅ!」

 

 ざっけんな!

 誰がお前らとよろしくなんかするかこのやろう!

 俺の叫びも虚しく二人は窓からとんずらしてしまった。

 

「んん……。こんな時間に目が覚めてしまっ……ピー助?」

 

 ンピッ!?

 

「ふふふ……可愛いわねぇピー助……私のためにプレゼントになってくれたの?私に全てを捧げてくれるの?」

 

 ぴっ……。

 俺のそばに近寄るなぁ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はっ!?

 い、今のは夢……?

 というかいつの間に寝て……寒っ!

 そういえば俺、ゲゾラと戦ってて……。

 

 あ、あかんわこれ。

 身体中カチンコチンですわ。

 目の前のゲゾラはやったぜと言わんばかりに触手を振り回して喜んでいるような気がする。

 そしてじわじわと俺に近付いてきて……。

 

 やめろぉ!

 俺なんかに触手プレイしてもなんも面白くないぞぉ!

 身体の中央にあるさくらんぼのような真っ赤な瞳が妖しく光る。

 くそ誰がチェリーだこのやろう!!!

 うおおおお!!!

 上げるぜ!体温!

 はぁ!

 ガイガァァァァァン!!!!!

 起動ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 特に誰かとフュージョンライズしたわけではないがまあ気分というものである。

 精神論は嫌いだが、根性ってやつは案外嫌いでない。

 元気があればなんでも出来るをモットーにやれば……。

 

 迫る灰色の触手。

 俺の目前に来たところで……。

 解凍、間に合った!

 おらぁ!熱線だぁ!!

 零度の触手が爆ぜて、飛び散る。

 ゲゾラは痛みに悶えるがもうゲームセットだ。

 悪いが、人間を狙って食うやつは容赦出来ないんでな。

 悶え苦しむゲゾラを押し倒して鉤爪を突き刺す。

 ぐちゃりと嫌な感触を覚える。

 しばらくぴくぴくと痙攣し、そして瞳から光は消えて生命活動は停止した。

 

 ……ふいー。

 さて、あとはモナークの人達が処理してくれるし俺は帰ろっと。

 

 

 

 

 

 寒すぎィ!

 やっぱり寒いと動きが悪くなる気がするなぁ。

 ゲゾラ相手に苦戦してしまった。

 ……そういえば、気絶してた時の夢でサンタとぶつかったけどまさかね。

 正夢にはなるわけがない。

 だけど……。

 プレゼント、かぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 世間はクリスマス真っ盛り。

 今日も皆とクリスマスパーティーをしたが私は気が気でなかった。

 シベリアで怪獣出現。

 それも最近頻発していた行方不明事件と関わりがあると目される怪獣である。

 そんなものを相手にたった一人で……。

 共に戦場に立てない自分が情けないと嘆くが楽しむ皆に水は差せないと振る舞ったが見抜かれてしまった。

 私もまだまだ未熟ということである。

 そして一人、我が家へと帰宅して……気配?

 

「ピー助?帰ってるの?」

 

 ひんやりとした暗い室内を進んでいく。

 リビングからなにかを擦るような音が聞こえたが……。

 もしかしたら泥棒かもしれない。 

 ここは意を決して……!

 

「何奴ッ!」

 

 勢いよくドアを開けると同時にドア横の照明のスイッチを入れる。

 明るくなった室内にいたのは……。

 

「ピエッ!?」

 

「ピ、ピー助……」

 

 ピー助が既に帰っていた。

 しかしその格好は……。

 サンタクロースの格好だ。

 赤い装束に帽子。

 白い大きな袋を引きずって歩いていて……。

 

「おかえりなさいピー助。ふふっ、随分可愛いサンタさんね」

 

「ピー!」

 

 白い大きな袋を差し出すピー助。

 これは……私へ?

 うんうんと頷くピー助。

 そんな、戦いから帰ってきたばかりだというのに……。

 けれど。

 

「ありがとうピー助。ピー助からもらった物ならなんでも嬉しいわ」

 

「ピー!」

 

 袋からプレゼントを取り出すとラッピングされたプレゼントが出てきた。

 

「開けていい?」

 

「ピ~」

 

 深く頷くピー助。

 どうやらプレゼントの品には自信があるようだ。

 さっきも言ったが何をもらっても嬉し……。

 

『育乳ブラ』

 

「……ピー助」

 

「ピー?」

 

「ふんっ!!!」

 

「ピエッ!?」

 

 育乳ブラをピー助に叩きつける。

 まったくピー助は……!

 もう知らん!

 

 

 

 

(そんな……なにもらっても嬉しいって……ガクッ)

 

 みんなも、プレゼント選びは慎重に……。



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機龍になって拾われましたを宣伝するお話

 私、マハラジャタウンのツバサ!

 夢は怪獣マスターになること!

 この子は相棒のピー助!

 

「ピーピ○○ュー!」

 

 いろんな場所を旅して怪獣トレーナー達とバトルをしていずれ制覇を目指す。

 私とピー助ならやれる!

 

「いきなさいピー助! 10万ボルt」

「いややらせねえぞ!!!」

 

 MEGA DETH PARTY

 

「ぐはぁ!?」

「んぴー!?」

 

 いたたた……。

 いきなりなにするんやクリスちゃん!!!

 

「それはこっちの台詞だ! 折角知り合いがシンフォギア×ゴジラの作品でしかもこの作品に影響を受けて書いたって言うから宣伝しようって話だったのがなんでいきなりポケモンになってんだよ!?」

「まったく分かっていないな雪音は。折角後輩が出来たのだ。それがもしパクリだなんて言われたら悲しいだろう。だから先輩である私達が路線変更して彼等が今後走りやすいように道を譲ってだな」

「譲った結果がなんでポケモンなんだよ!?」

 

 いやそれはねクリスちゃん。

 もともとポケモンってカプセル怪獣が元ネタじゃん?

 で、カプセル怪獣ってウルトラセブンじゃん?

 円谷作品じゃん?

 円谷のおやじさんが手掛けた作品繋がりで俺達ゴジラシリーズってのがあるじゃん?

 だから、ね?

 

「ね?じゃえねよ! 大体お前は円谷監督と会ったことねぇだろ」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「ピー助! ボルテッ」

「だからやらせねぇって言ってるだろ!!!」

 

 MEGA DETH FUGA

 

「まったくこのバ飼い主とバ怪獣は……。つっこむこっちの身にもなれってんだ……」

 

 ツ、ツッコミが過剰過ぎやしませんか雪音さんや……。

 

「お前達はそれぐらいされて当然だ! ったく、いいから何か宣伝を考えるぞ」

「宣伝と言ってもだな雪音。まだ一話(執筆時点)しか投稿されていないのでなんとも宣伝はし難いぞ?」

 

 せやなぁ。

 なんか後書きに意味深なメモ的なやつ書いて終わってたけどあれ続くんかな?

 どっかのマリ婚みたいに初期は勝敗書いてはいったけど段々飽きてきてもういいやってならない?

 

「あれを掘り返すのは止めてもらえるかしら……」

「マリア! ちょうどいい。三人揃えば文殊の知恵だ。力を貸してくれ」

 

 あれちょっと翼ちゃん待って。

 今の言い方だと俺、頭数に入ってないよね?

 ねぇどういうこと?

 俺も一緒に考えてたじゃん!

 

「ふっ。宣伝においてこの私を置いて右に出るものはいないわ」

 

 スルーですか

 スルーするんですか。

 

「おお! 一体どのような宣伝方法なのだ?」

「簡単よ。その作品のURLを貼ればいいのよ。こんな感じにね」

 

https://syosetu.org/novel/213914/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これマリ婚のURLじゃねえか!!!!」

 

 MEGA DETH INFINITY

 

「かはッ!?」

 

 ええ……。

 マリアさんいくらなんでもそりゃあないぜ。

 てか飛べないしここから。

 

「い、いいじゃない別に! 最近こっちで全然出番ないんだもの!」

 

 あー……マリアさん達のところ大幅カットしたからなぁ。

 

「マリアにはマリ婚があるからいいだろって誰かが言ってたしな」

「私はまだいいわよ! でも調と切歌、そしてエルフナインの出番が全然ないじゃない! だからマリ婚を宣伝して……」

 

 ……あのさ。

 

「なに?」

 

 ぶっちゃけ、マリ婚でも切調コンビとエルフナインちゃんの出番全然無くね?

 

「……てへ」

「てへじゃねえ!!!」

「まったくマリアには困ったものだな」

 

 うんうん。

 

「いや、先輩達には言われたくないと思う」

 

 さて、振り出しに戻るどころか後退してしまった気がするが……。 

 やっぱり馬鹿が三人揃ったところで文殊の知恵とはならねえなこれ。

 文殊じゃなくてもんじゃだよこれ。

 どろどろのぐちゃぐちゃになっちまったよおい。

 

「おいあたしのことも馬鹿に入れたか? あいつらと同類にしたか?」

 

 ピーピピーピピー♪

 

「おいこら誤魔化すな」

「まったく揃いも揃ってなにやってるデスか」

「けど、私達が来たからもう大丈夫」

「お、お前ら……」

 

 出た切調コンビ!

 全然出番がないことで有名な切調コン。グチャ

 

「まったくピー助は失礼デスね。GX編が終わったらアタシ達メインのお話が実はあるのデス」

「作者がAXZを見直す時間稼ぎだけどね」

 

 やめろぉ!

 さらっと暴露すんじゃねえ!!!

 

「とにかく宣伝ならキャッチコピーとか作るデスよ!」

 

 キャッチコピー?

 

「そんなもんあたしらが勝手に作っていいのか?」

「作ったもの勝ちだから大丈夫」

「オーケー分かったもうお前ら何もするな」

「というわけでまずアタシから行くデス! やっぱり機龍がメインだから……」

 

 凍・錏ぶsお離Yぅ斗zえRォ

 

「読めるかぁ!!!」

「そんなことないと思うデスが……。ねえ、調?」

「うん読めるよ切ちゃん」

「さっすが調デス! じゃあこれ読んで皆に教えるデスよ!」

「……」

「調?」

「……」

「ど、どうしたデスか調……。早く言うデスよ……」

「……ごめんなさい切ちゃん。私、読めない……」

「デース!?」

「ごめんなさい切ちゃん……。私、切ちゃんの隣にいる資格ない……!」

「ま、待つデス調! 調ぇ!!!」

 

 ……。

 

「……」

「……」

「……」

 

 なんだったんだ……。

 

「と、とにかく考えましょう。折角だもの、お祝いの言葉を添えるのはどうかしら?」

「おお、それはいいな」

「ようやくまともな意見が出てきたな」

 

 うんうん。

 ご祝辞をね、ちゃんと言おう。

 結婚式のスピーチみたいな感じで。

 

「あ、みんなでなにやってるの?」

「もっと畏まった感じがいいんじゃないか?」

「けどそれじゃあこの作品らしくないわ。作者が変わったかと思われてしまう」

「だな。この作品らしいメッセージをだな」

 

 もっと砕けていこう。

 なんせカッキーの作品だし。

 カッキーはもう俺の右腕だから楽しい感じを出して……。

 

「ねえクリスちゃーん。聞こえて……」

「頼むからこれ以上バカが増えるのは勘弁してくれ……」

「えぇ!? いいじゃん原作主人公だよわたし!?」

「だとしてもだ!」

「それわたしの台詞!!!」

「あぁもううっさいバカ! メガデスバーカ!」

「なにそのクリスちゃんの技名みたいなバカの言い方!?」

 

 まあまあクリスちゃん。

 

「落ち着け雪音。ツッコミ疲れているかもしれないが何もそんな当たり方しなくてもいいだろう」

「そうよ。原作主人公なんだし」

「誰のせいでこうなってると思ってやがる!」

 

 ああもう滅茶苦茶だよ……。

 

「だから誰のせいで滅茶苦茶になったと……。滅茶苦茶?」

「? どうしたのクリスちゃん?」

「それだ! 滅茶苦茶でいいんだ!」

 

 え?

 滅茶苦茶?

 

「ああそうだ。滅茶苦茶なのがこの作品らしさだ。だから気取る必要なんてないんだ」

「クリス……。あなた疲れてるのよ……」

「クリスちゃん……」

「雪音。もう家に帰ってゆっくり休め。暖かくして眠れば明日には治っているだろうから……」

 

 うんうん。

 あ、看病しに行く?

 

「人が折角いいアイデア思い付いた時にはそれかよ……。とにかくもう考えるのはやめだ。ド派手に滅茶苦茶にやるのが一番いいんだよ」

 

 ふむ……。

 大体分かった。

 よし、みんなやろう!

 

「仕方ない。後輩の頼みを聞いてやるのは先輩の務めだからな」

「私達も」

「いるデスよ!」

「ええ。派手に宣伝してあげましょう」

「うんうん。みんなで祝ってあげよう」

「よし、それじゃあいくぞ……」

 

 

 

「機りゅ「ちっちゃいガイガンになっ「マリアさんは結婚した「アタシ(私)達の出番もっと増や「わたしがメインの竜殺し非公開になってるのどういうことなんですか!?」vop6x46mrwpwm4x」

 

 ……。

 ああもう滅茶苦茶だよ……。




ピー助「というわけで真面目に。祝え! シンフォギア×ゴジラのクロスオーバーの新作! その名も機龍になって拾われました! 生誕したばかりである! この作品の未来がどうなるか私にも分かりませんが、どうか皆さんお付き合いいただきますようよろしくお願いします」

https://syosetu.org/novel/249296/


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番外編 ガイガンの誕生日

祝え!!!!(ギリギリセーフ)


 祝え!

 今年2021年3月12日はガイガン誕生の49周年である!

 さあ祝え!

 祝え!

 ……祝えっつってもなぁ。

 この世界にはゴジラシリーズがないからガイガンの誕生日とか言ったところで通じないんだよ。

 え?

 そもそもシンフォギアは2040年代だから2021年って言ってるのがおかしい?

 そんなの気にしない気にしない。

 時空を超越しただけだからそういうツッコミは今日はナシでお願いします皆さん。

 いやマジで理屈っぽい人はあれだからね嫌がられるからね本当。

 もっとこう柔軟かつ自由な視点を持っていかないと。

 というわけで今回の「ちっちゃいガイガンになってた」は2021年からお送りしておりまーす。

 

 それはさておき一人でしっぽりとガイガン49周年を祝うとするかね。

 ……そういえば前から気になってたんだけどみんなガイガンのことどれくらい知ってる?

 え、ゴジラのことは知らないけど楽しく読んでます?

 あ、ありがとうございます。えへへ……(照)

 まあゴジラシリーズ及びガイガンのことを知らなくても楽しく読める本作ではあるけれどもぉ!(天狗)

 それじゃあ今回は改めてガイガンのことについてお勉強といきましょう!

 知ってる人は復習に、知らない人はガイガン(原作)ってこんなキャラなんだということを知っていただけたら幸いです。

 更にここからゴジラシリーズに手を出すようになってくれたらもっと嬉しいぞ。

 

 というわけで早速ガイガンの紹介をはじめていくぞ。

 1972年3月12日一本の映画が公開される。

 それこそあの超有名神映画!

 

『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』

 

 こちらの映画でガイガンがデビューするわけでございます。

 人気怪獣キングギドラとタッグを組んでの登場となったが負けず劣らずの人気を誇り一時期はキングギドラ以上人気だったと言われている。

 これまでのゴジラ、及び東宝怪獣シリーズにいなかったタイプのデザイン。

 赤い単眼バイザーに鎌と回転ノコギリという要素が綺麗に纏まっておりとても美しくカッコいい。

 徹底したヒールっぷり。

 それでいて愛嬌たっぷりな仕草。

 いやー素晴らしい。

 こりゃ人気でるわうんうん。

 初代様のスーツは完成度高くてカッコいいなぁおい。

 ちなみに予告編だけでも見てほしいんだけど……見たことある人なら分かるよね?

 そう、あれ。

 見たことない人はぜひ見て、どうぞ。

 

 さて、続いてのガイガンは翌年1973年公開のこちらの作品に登場するぞ。

 

『ゴジラ対メガロ』

 

 はい名タッグことメガロの登場ですね。

 にっくき宿敵ジェットジャガーもこちらで登場。

 こちらの作品ではスーツが新造されてちょっとふくよか~な感じになって愛嬌が更に強化されたぞ。

 メガロと悪巧みしたりするシーンはマジでかわいい。

 かわいい。

 ちなみにこの映画、ゴジラとガイガン登場しなくてもストーリーは成り立つっちゃ成り立つのでなんだろう。新人レスラーのデビュー戦盛り上げるために大物レスラー二人来たよ的な感じだと個人的には思ってる。

 ガイガンもデビューして一年なんだけどね、まさかの抜擢よね。

 ここから当時の人気の高さが伺える。

 

 次は流星人間ゾーンとかあったりするけど今回は割愛で。

 映画かすぐに会えるガイガン(?)達の紹介だけに今回は留めておこう。

 というわけで次に紹介するのはこちら。

 

『ゴジラFINAL WARS』

 

 読者の皆さんもガイガンといえばまずはこれって人が多いんじゃないかな世代的に?   

 平成のVSシリーズでは登場することが叶わなかったが遂に時代を越えて復活。

 デザインもリファインされて超クールになって登場!

 まあ、東映の怪人っぽいと言われたけどそれはそれということで……。

 ちなみにこの東映怪人っぽいというところからガイガン小さくしようぜ!って思い付いたのはまた別の話。

 まさしくヒールといった凶悪なデザイン。

 しかぁし!

 しかしだ。

 こちらのガイガンの魅力はギャップにある。

 そう、こんな凶悪な見た目してアホの子なのだ。

 どのようにアホの子なのかは……まあ、見てくれ頼むから(切実)

 両腕をチェーンソーに換装した改造ガイガンも登場するぞ!

 紅茶が例のカッコいいポーズをやる二年前にカッコいいポーズをしていたと言えるぞ!

 

 さて続いては……涙なしでは語れまい。

 

『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』

 

 この作品は小説なので本屋に行けば手に入るのでぜひ前作の『GODZILLA 怪獣黙示録』と合わせて読んでほしい。

 これまで人類に立ちはだかる脅威であったガイガンであったが本作では人類の味方として登場。

 シベリア沖で冬眠中の怪獣を改造して生まれた。

 ゴジラの前に為す術のない兵士達の前にその姿を現した。

 結果は敗北。

 しかしゴジラを移動させるという任務は果たし、以降ゴジラによって欠損させられた部位を修復し何度もゴジラと戦闘を繰り返す。

 そんなガイガンは前線で戦う者達の希望となるが……。

 あまり多くは語るまい。

 ぜひ、読んでほしい。

 

 

 

 てな感じでガイガンというのはみんなが思ってるよりかはすごい怪獣なんだぜ?

 俺も先輩方に負けないように頑張らないとな!

 とまあ、ここまでウルト○マン列伝的な感じでやって来たけどみんなもガイガンのこと分かったところでもう一度……。

 

 

 ガイガン誕生日おめでとう!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 珍しく、掃除をした。

 いや、掃除しなければと思うのだいつも。

 ただ掃除しても出来ないというかなんというかで……。

 しかしいつまでも緒川さんやピー助にばかり頼っていられないので改めて掃除をしようと思う。 

 思った。

 しかし……。

 

「部屋が綺麗だ……」

 

 綺麗な部屋を掃除することは出来ない。

 やろうと思った時に限って何故こうなのか。

 いや、ここは逆の発想で部屋を散らかしてから今のこの状態に戻すという練習を行えばいいのではないだろうか?

 そうと決まれば……。

 

 よし、散らかった。

 見事に散らかった。

 さあ、あとはこれをさっきのように綺麗にすればいい。

 あれはここにあってそれはここにあって……。

 これは……何処だったか?

 いやまて思い出せ。

 きっとこの棚の中だ。

 そうだそうに違いない。

 これは……た、確かテレビ台の中に……。

 これはクローゼットの中ッ!

 勢いよくクローゼットを開けようと思ったら開かない。

 床に散らばるゴミのせいで開けることが出来ないのだ。

 ええい面倒だ。

 ここは力ずくで……!

 

「はッ!!!」

 

 床のゴミ達を押し退け勢い良くクローゼットは開いた。

 やれば出来るというものだ。

 これを閉まって、あとこれも。あ、それも……とクローゼットの中に色々週のして今度はクローゼットを閉め……閉まらない。

 何故だ。

 何故閉まらない。

 

「くっ。これしきの量が入らないというのか!」

 

 まさか閉める時も力技となるか……。

 こうなれば防人の力を思い知らせようクローゼットに。

 

「はあッ!!!!!」

 

 ……なんとか、閉まっ……。

 安堵の瞬間、雪崩が起こった。

 クローゼットの中に詰め込んだもの達が濁流となって押し寄せた。

 

「流石に、無理があったかしら……」

 

 むう。なかなか掃除が上手くいかない。

 逆にピー助や緒川さんはどうやって片付けをしているのだろうと頭を悩ませる。

 同じようにやっているはずなのに……。

 

「……これは?」

 

 濁流の中に混ざって見覚えのないものがあった。

 新品同様の綺麗な白い写真立て。

 手に取って、表を見ると写真が飾られていた。

 いや、写真立てなのだから当然なのだが……。

 

「奏……」

 

 まだこれはピー助と出会ったばかりの頃に撮られたであろう写真。

 奏がピー助を抱き上げて、眩しい笑顔を輝かせている。その隣の私はまだピー助におっかなびっくりで少し困った顔を浮かべている。

 

「こんな写真があったなんて……」

 

 クローゼットの中にあったのだろうが私はこれの存在を知らなかった。

 別に埃を被っていたわけでもないので恐らく、ピー助が手入れを……。

 

「ピー……ピィ!?(ただいま~……なんじゃこりゃあ!?)」

「あ、お帰りなさいピー助」

 

 出かけていたピー助が開けていた窓から入ってくるや固まってしまった。

 すぐに意識を取り戻すと私を嘴でつついてこの部屋の惨状を抗議してきた。

 

「ピー! ピー!」

「わ、分かった! 部屋を散らかしたのは謝るから! それよりこれ。ピー助の?」

 

 写真をピー助に見せると大人しくなり、そっと私の手から写真を立てを取った。

 大事そうに抱える……。

 あぁ、奏を失って悲しんでいたのは私だけではなかったのだ。

 それでも私のためにピー助は……。

 

「これからも、奏の分まで頑張りましょう」

「ピ」

 

 顎の下を撫でてあげると写真は一時避難させるつもりなのかキッチンの方へ持っていったピー助。

 ずっと管理していたのだろうかあれを。

 私に教えてくれたっていいのに……。

 ん?

 

「これは……」

 

 ゴミの中に他のゴミと比べると明らかに年季の入ったゴミが見つかった。

 ぼろぼろで汚れが酷いように見えるこれは雑誌……?

 いくら私でもここまでは……。

 汚い雑誌をつまみ上げるとそのタイトルは……。

 

『巨乳パラダイス! 包容力たっぷりのお姉さん系から女教師! 女子校生の瑞々しい姿も!』

 

 ……。

 

「ピィピピピ~……ピピィ!?(さあ、この惨状をなんとかするザマスよ翼ちゃ、げぇ!? それは河原で拾ったやつぅ!!!)」

「そうかそうか……。へえ、そう、ふうん……」 

「ピー!(違います!)」

「黙れ。何も違わない。私は何も間違えない。そしてここにあるものが全てだピー助……」

 

 最優先で掃除しなければならないものが見つかった……。

 

「何故巨乳などに目が眩む。あんなものただの脂肪の塊ではないか」

「ピー……(そんなこと俺に言われても……)」

「そんなこと俺に言われても。なんだ、言ってみろ」

「ピー!?(心を読まれた!? いや、いつものことだったわ……。いや安心してる場合じゃねえわこれ)」

「まずはその巨乳好きなところを掃除しましょうか……」

「ピーーーーー!!!!!!!!(そんなことより部屋の掃除だろぉぉぉぉぉ!!!!!!!!)」

 

 白昼、謎の生物の遠吠えと思われる鳴き声が響き渡った……。



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戦姫絶唱シンフォギア編
なぜか最近、奏ちゃんの気配がする



お気に入り100突破!
みなさん、こんな小説ですがこれからも応援よろしくお願いします。



 

 なんやかんやであれから二年が経った。

 この二年の間で変わったことといえば…俺も正式に二課に所属することになった。

 ほら、猫の駅長とかいるしそんな感じ…なんて思っていたら大間違いだった。

 奏ちゃんを失い、対ノイズの戦力が半減したことにより、猫の手ならぬガイガンの手を借りようということでノイズ殲滅に駆り出されている。

 まあこの世界のガイガンは対ノイズ用に生み出されたわけだし、それに奏ちゃんの仇。

 それから…というよりこれが一番の理由だけど翼ちゃんを守るということ。

 自分を剣と、防人と律する翼ちゃん。

 人類を守るために戦っているけど…じゃあ翼ちゃんは誰が守るの?

 司令や緒川さん、二課のみんな、頼れる大人はたくさんいるけど…戦場ではいつも一人だ。

 だから俺が、戦場で翼ちゃんを守るんだ。

 人間の頃なら絶対に言えないようなセリフだけど、それが今の俺がやるべきことなのだ。

 

 というわけで今日もノイズを殲滅殲滅。

 既に周りはノイズだらけ、幸いにも人里離れた山の中だからよかった。

 思いっきりやれるぞ。

 この二年の間で変わったことはまだある。

 大きさの調節が出来るようになったのだ。

 調節というほど細かくは出来ないけど、戦闘用に2mくらいにまで大きくなれるようになった。

 というわけで、巨大化!

 咆哮し、徐々に巨大化していく。

 この時に気を付けることは下から、ローアングルで撮影した時に巨大感を出せるように、映えるようにアクションしながら巨大化するのだ!

 

 よし、巨大化完了!

 今回は一人(一体)だけでの任務。

 翼ちゃんの負担を減らすためにも頑張らなくては。

 数はひい、ふう、みい…やめた。

 数えるのも馬鹿馬鹿しいほど大量だ。

 しかし、この身はノイズに対して非常に有効。

 遅れなんて取るはずもない!

 まずは手前のアイロン持ってるみたいなの!

 鉤爪で凪ぎ払い、炭に還す。

 そこから一気に勢いを増してノイズに襲いかかる。

 この体にも慣れて、動きもかなり良くなった。

 鉤爪も尻尾も使い、四方から襲いかかるノイズ達を蹴散らす。

 それでもまだ数は減らない。

 面倒だな…

 飛ぶか。

 目前のノイズを蹴り飛ばし、その場から飛び立つ。

 そして腹のノコギリを起動させて、すれ違う瞬間切り裂く。

 これでかなり数を減らした。

 こいつで最後の一体だ!

 ズタズタに切り裂かれたノイズは例に漏れず炭となった。

 よし、これで今日の任務終わり。

 帰還しよう。

 シュワッチ!

 飛ぶ時は一般人に目撃されないように気をつけて飛んでます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰還しました。

 ふい~。

 あ~帰ってきたら急にお腹が空いてきた。

 力も抜けて、一気にちっちゃくなる。

 

「ご苦労だったなピー助!ご馳走を用意してあるからしっかり食べて休んでくるんだ」

 

 ありがとうございます司令。

 しっかりとお辞儀していつもエサが置いてある場所へ。

 これは…マグロだ。

 赤身とか切り落としとかじゃなく、トロだ。

 司令、本当に…本当に…ありがとう。

 今はそれしか言葉が浮かばない…

 いただきますッ!

 ………………

 うめぇ…うめぇよぉ…

 ガイガンになってからの方がいいもの食ってる気がする…

 なんだったんだろう俺の人生って…

 これからはガイガン生をしっかりと歩んで行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、二課の施設は私立リディアン音楽院というところの地下にある。

 この学校には翼ちゃんも通っている。

 いるのだけど…

 最近妙なのだ。

 何故か最近、学校の方から奏ちゃんの気配がする。

 これは一体どういうわけなのだろうか?

 この謎を解明するため…

 学校に潜入!

 緒川さんとか翼ちゃんが使う忍術を見ていたら気配を消すくらいは出来るようになった。

 …まあガイガン忍法とかあるくらいだし、忍術とは相性がいいのかもしれない。

 さて、木に登って…

 おー、海が臨める。

 海風が心地いい…

 

 それどころじゃない。

 早く奏ちゃんの気配を探らなければ…

 !?

 今、すごく近くに感じた。

 奏ちゃんの気配…

 一体どこに…

 

「ん…あれってペンギン?…ペンギン!?ペンギンが木に…もしかして、降りられなくなっちゃったの?」

 

 …

 ……

 ………

 この子だ。

 この子から奏ちゃんの気配がする。

 

「待ってて!今降ろしてあげるからね!」

 

 ふぁっ!?

 この子、木登りを始めたぞ!?

 マジか…

 ダメだよ女子高生が白昼堂々と制服で木登りなんてしちゃあ!

 あっけに取られてる間にもうここまで登ってきたぞ!

 一般人にバレたってだけじゃなく捕まったりしたら何されるか分からない!

 ここは…逃げる!

 木からジャンプして着地して走って逃げる。

 逃げると言っても近くの物陰に隠れる。

 もう少しこの子を観察しておきたかった。

 

「えぇっ!?ジャンプしたぁ!まあ、自分で降りられたしよかったよかった…って!ヤバイ授業に遅れちゃう!」

 

 そう言って女の子は走り去った。

 さすがに校舎の中に入るのはリスクが高いので今日はここまでにしておくが…

 どうして、あの子から奏ちゃんの気配が…?

 親戚?

 一体あの子と奏ちゃんにどんな関係があるんだろうか…?

 



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運命の日まで、あと一日

翼さんの口調、この頃はまだ乙女残ってますね。
頑張って寄せようとしてもSAKIMORI語が頭に…



 その日、私は朝から異常な光景を目にしていた。

 木の上にペンギンがいたのだ。

 いや、正直ペンギンかどうか怪しかったけど…シルエットがペンギンっぽかったからペンギンということにしておこう。

 その子が木から降りられないようだったので助けようとしたら木からジャンプして逃げてしまった。

 それで気がついたら授業がもう始まっていて遅刻して怒られてしまった。

 

「あ~疲れた…もう朝から異常現象に出会すし、私、呪われてる…」

 

 みんなからも木登りするペンギンなんているわけがないと言われてしまったし…

 本当に今日は呪われているに違いない。

 

「木の上にいたペンギンを助けようとしてたー、なんて信じられるわけないでしょ?で、本当のところなにしてたの?」

 

 幼馴染みで、寮でも同室、二段ベッドだけど一緒に寝るほどの仲良しの未来ですら信じてくれない。

 

「本当だよ~!いたんだって!あれは絶対ペンギンだって!」

 

「響がそこまで言うなら多分本当なんだろうけど…ペンギンじゃないと思うよ?大きいカラスと見間違えたとか…」

 

 うーん…やっぱりペンギンじゃなかったのかな…?

 いや、あれは絶対ペンギンだった。

 二足歩行でちゃんと羽もあったし。

 今度見つけたら証拠写真を撮ってみんなに見せて本当だってことを証明しよう! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かゆいとこありませんか~?」

 

 あ~気持ちいい~。

 現在、シャンプーしてもらってます。

 いやーやっぱりプロの方は違うわ。

 一流のペットトリマーさんに出張で来てもらうなんて、俺もすっかりセレブペットよ。

 翼ちゃんに洗ってもらうのより断然気持ちいい。

 ツボ、ツボが…

 あっ…

 

「それじゃあ流しますね~」

 

 ザーとシャワーで泡を流してもらう。

 シャワーは別にいつもと変わらないのにプロの方にやってもらうとシャワーまでいつもより気持ちいい気がする。

 この人には毎回来てもらってるけど本当いい人だわ。

 はじめてあった時から戸惑いとかなくシャンプー、マッサージしてもらってるし。

 

 ちなみにそのペットトリマーは。

 

(ねえ、この生き物なんなの?ペンギンって言い張ってるけど絶対ペンギンじゃないもの。金色の鱗とかあるもの。羽毛じゃないもの。なんかヤバイ書類とか書かされたし口外してはならないとかなんなの)

 

 何度ガイガンと会っても戸惑いはつきなかった。

 

 はえ~気持ちよかった。

 またお願いしますね~。

 ぺこりとお辞儀する。

 

「それでは、今日は終了となります。またお願いします」

 

(お願い、もう指名してこないで…というかお辞儀してるんだけど、え?知能があるの?高いの?もし、ヘマでもしたらあの鉤爪で…ひえぇ…もうやだ早く帰りたい)

 

 結局、この人は毎回指名されることとなる。

 哀れなり。

 

 

 

 

 

 

 さて、今日出会ったあの子…

 どうしたものか…

 いや、どうも出来ないんだけど。

 誰かに伝えようにも無理だし…

 まあ、顔は覚えたしまた様子でも見に行こう。

 その時、警報が鳴った。

 ノイズが現れたようだ。

 すぐに司令室に行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 早速、出撃。

 今日は翼ちゃんと一緒。

 ノイズの出現現場に急ぐためヘリで移動中だ。

 既に自衛隊が応戦しているようだが…ノイズには通常兵器は通用しない。

 位相差障壁とかいうやつのせいで通常兵器はノイズの体をすり抜けてしまう。

 なので、シンフォギアか俺でないとノイズは倒せないのだ。

 

「よし、行こうピー助」

 

 了解!

 ヘリから飛び降りながら巨大化する。

 そして…

 

 ドゴンッ!

 

 土煙をあげて着地した。

 気分はさながらガイア。

 よしテンションは上がった!

 今日は翼ちゃんも一緒だから更にテンションアップ。

 あと翼ちゃんの歌も聞くことが出来るからもっとテンションアップ。

 戦いとはノリがいい方が勝つという名言があるが…

 今の俺は負ける気がしねぇ!

 翼ちゃんと一緒にノイズの群れに斬りこんでいく。

 おらぁっ!!!

 やっぱり二人だとノイズの数が減るのが早い。

 …ここに奏ちゃんもいれば…

 いや、そんなのは幻想だ。

 奏ちゃんは充分戦った。

 だから奏ちゃんがゆっくり眠れるように戦うと誓ったじゃないか。

 

「ピー助!!!」

 

 翼ちゃんが俺の名前を叫んだ。

 その瞬間─

 

(ごふっ…!)

 

 巨大なノイズに殴り潰された。

 ノイズの拳と地面でサンドイッチにされている。

 だけど…

 回転鋸を忘れていたな、仰向けに倒したのがお前の運の尽きだ。

 拳を回転鋸で切り裂き、ノイズの右腕は炭化した。

 

「今のうちに…はあぁぁぁっ!!!」

 

 空高くジャンプした翼ちゃんの持つ刀(アームドギアというらしい)が大剣へと変化し、巨大な青いエネルギーの刃を放った。

 

《蒼ノ一閃》

 

 翼ちゃんの十八番。

 これまでも何体ものノイズをこの技で両断してきた。

 大型のノイズも縦に真っ二つ。

 これで…全部片付いたか。

 

「ピー助、大丈夫?」

 

 大丈夫!

 この体頑丈だし!

 それより翼ちゃんこそ…うん、無事みたいだ。

 

「さあ、早く帰ろう。折角シャンプーしてもらったのに汚れてしまったな…帰ったらシャンプーしよう」

 

 え、いや、大丈夫です…

 翼ちゃんのは痛いだけだし…

 

「むう…なぜ私の時は嫌がるんだ…?」

 

 痛いからです。

 翼ちゃんはこう器用そうですごい不器用だから…

 そうだ、自分でシャンプーしよう。

 シャンプーくらいは自分で出来るだろう。

 




正直、番外編で日常ばっかり書いていたい…


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ガングニール、再び


いつもたくさんの感想をいただいていますが…
ガイア着地の反応が多くてガイアの人気の高さを改めて思い知らされました。



 

 ふい~。

 シャンプー気持ちいい~!

 本日二回目の泡まみれ。

 体中、泡に包まれている。

 どうやって自分でやったかって?

 スポンジを鉤爪でぶっ刺してしっかり固定しました。

 そしたらあとはスポンジにシャンプーをつけて体をゴシゴシするのみ。

 

「ピー助、一人でシャンプーしているの?」

 

 そうですよ。

 翼ちゃんがやらなくても自分で出来るから大丈夫です。

 

「くっ…私がやりたかったのに…それより、泡まみれのピー助かわいい…」

 

 あー気持ちいい~。

 やっぱり清潔でないとね。

 別に潔癖症ではないけど。

 それにしてもシャンプー出しすぎたかな?

 泡まみれというか雪だるまみたいになってきた。

 そろそろ流すか。

 鉤爪を上手く使って…よいしょ、よしシャワー出てきた。

 すっかり鉤爪にも慣れて器用なことも少しは出来るようになってきた。

 シャワー気持ちいいぃぃぃぃぃ!

 

「むう…私にやらせず一人でなんでもかんでもやるようになって…」

 

 …翼ちゃんが拗ねはじめた。

 こうなるとしばらく引きずるから慰めるか。

 よしよし…

 

「ピー助…!」

 

 ガバッと一瞬で翼ちゃんに抱きつかれる。

 まだ体拭いてないから濡れるよ?

 

「よし、体を拭くのは私がやろう」

 

 体拭くくらいなら…

 トゲとか鋸の刃とか気をつけてね?

 まあ、分かっているだろうけど。

 ふきふき…

 

「これでよし、と…」

 

 ありがとーという意味を込めて右手を上げる。

 

「ふふっ、今日はもう遅いから早く帰ろう」

 

 確かにもう日を跨いでしまいそうだ。

 それに…眠くなってきた…

 早く帰ろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は翼さんのCDの発売日だから放課後急いで街に行ったんだけど…

 あたり一面に炭…ノイズに襲われた、人だったものが…

 それから、お母さんとはぐれてしまった女の子を連れてなんとかノイズから逃げて…

 

「はあっ…はあっ…」

 

 走っていたらいつの間にかシェルターとは反対の方向に来てしまったようだ。

 どこか隠れられる場所…

 このビルの上なら…

 

「死んじゃうの…?」

 

「大丈夫…だよ…ッ!?」

 

 後ろにはいつの間にか大量のノイズがいた。

 うそ…

 こんなところで、私は…

 いや、ダメだ。

 あの時、助けてもらった命をこんなところで失うわけにはいかない。

 私にも出来ることがあるはずだ。

 

「生きるのを、諦めないでッ!」

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

 自然と歌を口ずさんでいた。

 すると胸から光が溢れだして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反応絞り込みました!位置特定!」

 

「ノイズとは異なる高質量エネルギーを検知!」

 

「まさかこれって、アウフヴァッヘン波形!?」

 

 ノイズが出たと聞き司令室にやって来たはいいものの、何かいつもと様子が違う。

 いつも以上に専門用語があちこちで飛び交っていてわけが分からない。

 職員の人達も通常の三倍は忙しそうにしている。

 翼ちゃんは何か驚いているようだけど…

 

 しかし、次の司令の言葉に俺も驚くことになる。

 

「ガングニールだとッ!?」

 

 ガングニール…それは奏ちゃんが纏っていたギアだ。

 それが一体なんで今になって…

 とにかく行こう。

 場所はもう分かっているから急いで…

 

「─ッ!」

 

 ああ翼ちゃん待って!

 俺も連れてって!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああッ!!!」

 

 なにが、どうなってるの?

 私の体から、何かが…

 あああああッ!

 

 

 

「え…えええ?なんで!?私、どうなっちゃってるの!?」

 

 この格好といい、胸の内側から歌が浮かんでくることといい…

 もう何がどうなってるの…

 

「おねえちゃんかっこいい!」

 

 そうだ…今、確かなことはこの子を助けなきゃいけないということ!

 

「せいッ!」

 

 ノイズにパンチしたら黒い塊になった…

 倒したの…?

 けど、数が多すぎる。

 とりあえず逃げるしか…

 女の子を抱き抱えて…今なら、ここから飛び降りることだって出来るはず…

 

「えいっ!…うわあああああ!!!!」

 

 ドシンッ!と着地に成功した。

 普通なら死んでいるであろう高さだけど、無事に生きている。

 これすごい…

 しかし、ノイズも追ってくる。

 砲弾のように迫り来る。

 

「ッ!!!」

 

 なんとか飛び退いて避けることは出来たけど…

 さっきよりノイズの数が増えている。

 この格好なら私はノイズに触れても大丈夫だけど…この子はダメだ。

 この子に指一本触れさせないようにしないと…

 その時、車かバイクかが近づいてくる音がした。

 目の前のノイズの群れを弾き飛ばし現れたのは…バイクで駆ける青い髪の女の子…

 青い髪ってまさか…

 バイクはそのまま大きなノイズの足下に衝突した。

 女の子は衝突の瞬間、ジャンプして逃げたようだけど…

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 この歌…翼さんッ!?

 私の目の前に着地したのは…やっぱり翼さんだった。

 それに…あの時のペンギン!?

 

「呆けない、死ぬわよ。あなたはそこでその子を守ってなさい」

 

 そう言って翼さん…とペンギン?はノイズの大群に走り出した。

 そして翼さんは私と同じような姿に、ペンギン?は巨大化して…巨大化!?

 もう何がどうなってるの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ~あ。

 またバイク壊してるよ翼ちゃん。

 もう少し物を大事に扱うという精神を持った方がいい。

 それにしてもあの子…所々違うけど、あれは確かに奏ちゃんのガングニールだ。

 一体どういうわけであの子がガングニールを…?

 それよりも、まずはノイズを片付けるか。

 

「呆けない、死ぬわよ。あなたはそこでその子を守ってなさい」

 

 そう言ってノイズの大群に向かい走り出した翼ちゃん。

 俺もすぐその後を追って、巨大化しながら走り出す。

 これは…映画「ULTRAMAN」のあのシーンを思い出すな。

 あそこは親子を助けるためにビルを背負うネクストに惚れるんだよなぁ。

 それに、翼ちゃんとの同時変身って燃える。

 よっしゃ行くぜ…って、今日の翼ちゃん気合い入ってるぅ!

 いきなり蒼ノ一閃からの千ノ落涙。

 たまに無茶な戦いをするなとは思うけど、今日はそれよりもヒドイ。

 もうだいぶ数は減ったけど、俺も戦わないと。

 今日は久々にこれを使うか。

 レーザー光線ッ!

 おでこのレーザー光線砲から発射するこの技、個人的にエメリウム光線って呼んでます。

 ちなみにポーズはBタイプ派。

 おい、そこ、アイーン言うな。

 さて、このレーザー光線でノイズ達を一掃!

 一度に大量のノイズを殲滅できて楽でいいわ~

 レーザーを横薙ぎに撃つと気分はさながらシン・ゴジラ。

 内閣総辞職ビームである。

 これであとはあのデカ…いのも翼ちゃんが仕留めちゃった。

 これで終了か。

 二課の車両も大量に来たみたいだし、あとは調査班の仕事だ。

 さて、帰るか…とはいかないか。

 あの子のこともあるし、あと、翼ちゃんの様子がおかしい。

 戦い方を見れば分かる。

 ガングニールの…奏ちゃんのことを気にして… 

 どうにもこの先、一悶着ありそうだなと直感が走った。

 



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翼ちゃん、めんどくさい二号ライダーみたいだよ?


 何か面白そうな作品ないかなとランキングを見ていたら、54位とかにこの作品が…
 ランキングのるとかはじめてやで…



 ノイズ達を一掃してその帰りの車中。

 翼ちゃんがバイクを(意図的に)壊したから二課の車で帰還中なのだが…お客様が一人。

 ガングニールの子。

 どうやらこの子は立花響というらしい。

 なんとも人当たりのいい、明るい子という印象だけど…

 翼ちゃん、なにもそんなむすっとしなくても…

 車の中の雰囲気あれだから!

 

 

 

 

 

 地獄の車内をようやく降りて二課へ。

 響ちゃんはリディアンの地下にそんな施設があるとは当然知らないので驚いている。

 エレベーターもとんでもなく長く、どんだけ掘ったんだと思わずにいられない。

 さあ、二課への扉を開けると…

 

「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へッ!俺はここの責任者を務める、司令、風鳴弦十郎だ」

 

『熱烈歓迎立花響さま ようこそ二課へ』

 

 パーティー会場になってる。

 この短時間で準備したんか…

 翼ちゃんも緒川さんも響ちゃんも呆気にとられている。

 

「さあさあ、笑って笑って~。お近づきの印にツーショット写真…」

 

「嫌ですよ!手錠したままの写真なんてきっと、悲しい思い出として残っちゃいます!」

 

 あらあらまあまあ…

 確かに手錠したままの写真とか誰かに見られたら嫌だなぁ。

 それよりもあのご馳走に目が行って仕方ない。

 どうにもガイガンになってから食い意地がすごい。

 まあ動物としか思われてないからご飯食べても大丈夫だろう。

 ようし!ご馳走に向かって飛び立て!

 

 

 フライドポテト、串焼き、お菓子…油、油、油…

 食い尽くす…のはダメなのでちゃんと他の人の分も残して…

 

「あ、あの…前に会ったことあるよね…?ペンギンさん…?」

 

 あ、響ちゃん。

 せやで、前に会った…というかストーキングして…ました…

 ごめんなさい…

 ヤバい、罪悪感が…

 

「食べるの好きなの?」

 

 大好きだよ。

 むしろ楽しみがそれくらいしかないので…

 

「私もなんだ~。一緒だねペンギンさん」

 

 おぉ!仲間がいるとは!

 まあ食べるのが嫌いな人なんていないと思うけど。

 

「ペンギンって、油っこいもの食べていいのかな…?」

 

 大丈夫、大丈夫。

 油は体の中の回転ノコギリとかのために必要なのだ。

 要するに油さしてるような感じ。

 サイボーグだからね、必要なんだよ。

 あ、響ちゃんが了子さんに連れてかれた。

 

「ピー助、もうたくさん食べたでしょ?行きましょう」

 

 あっ!待って翼ちゃん!

 まだあの焼き鳥は食べてないんや!

 無理矢理連れてかないでぇ!!!

 

 無理矢理自宅に連れ帰られ、無理矢理体を洗われ、無理矢理添い寝させられている。

 脱走しようにも強く抱き締められて抜け出せそうにもない。

 てか、痛くないのか?

 FW版よりはトゲトゲしてないけど結構トゲトゲしてると思うんだけどなぁ…

 羽とか邪魔だろうに。

 

「ピー助…お前はあの子のことどう思う?」

 

 あの子?  

 響ちゃんのこと?

 まあ、なんでガングニール使えるのかとか気になるけど別に悪い子ではないと思うけど…

 

「私は…あの子を認められない。ガングニールは…奏のものだ…」

 

 ああ…そういう… 

 翼ちゃん、あんまり気にしない方がいいよ。

 奏ちゃんは奏ちゃん。

 響ちゃんは響ちゃんなんだから。

 けど…翼ちゃん的にはやっぱり認められないんだろうな。

 二人の絆はすごい固いものだったし。

 うーん…なんかこれから面倒なことが起こりそうな予感がしてきたZzz…

 

 

翌日

 

 どうも、二課のマスコットことガイガンです。

 今は二課の食堂で職員さん達に可愛がられています。

 どうにも二課の人達は変人が多く、特に疑問を持たれることなく可愛いと思われている。

 まあ、嫌われるよりは全然いいけど。

 ふと時計を見ると…学校は終わっている時間だな。

 翼ちゃんがそろそろ来る時間かな。

 司令室に行ってみよう。

 じゃあね、お姉さん達!

 

「またね~」

 

「かわいい~。手振ってたよ」

 

 

 

 

 

 さて、司令室に来たけど…小難しい話をしていたので撤退。

 さて、暇をもて余したぞ…何か暇潰しになるものを探さないと。

 また誰かと遊ぶか…

 あ、そこのお姉さん俺と遊ばない?

 

「あ、ピー助君ごめんね。今日は忙しいからまた今度遊びましょう」

 

 おう…なんてこった。

 フラれたぞ。

 

 そこから十連敗。

 ちくしょう…この体になってからはじめてだぞこんなの…

 あー!暇だー!

 あー!

 あー!

 ひまーーーーー!!!!

 叫ぶと同時に警報が鳴った!

 この苛立ち、ノイズにぶつけてやる!

 

 

 

 

 

 

 翼ちゃんと一緒に現場入り。

 高速道路に現れた大量のノイズは溶けて、融合し巨大なウーパールーパーみたいになった。

 ちなみにウーパールーパーの正式名称はメキシコサラマンダー。

 カッコいい名前…とかそんなの関係ない。

 てか、口の中人間っぽくてキモイ!

 こいつぶっ倒してやる!

 

「ピー助、今日は気合い入っているわね。二人で頑張りましょう」

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 翼ちゃんもギアを纏って、二人で駆け出す。

 ウーパールーパーノイズ(仮称)はウーパールーパーのエラにあたる部分をなんと飛ばしてきた!

 翼ちゃんは足のブレードで、俺は鉤爪でそれを弾き飛ばした。

 エラのないウーパールーパーなんてアイデンティティーの消失!

 チャームポイントを失った奴に負ける気はしない!

 こんにゃろー!!!!!

 翼ちゃんが刀を大きくしている、決めるつもりだ。

 よし、隙を作ってサポートするぞ!

 って、あら?

 空から来るあれは…

 

「このおおおおお!!!!!」

 

 響ちゃん!?

 まさか来るとは…

 響ちゃんが不意打ちでキックを直撃させたことによってノイズはバランスを崩し、よろけた。

 

「翼さんッ!」

 

 その隙を翼ちゃんが逃すはずもなく、ノイズの巨体よりも高く跳び、蒼ノ一閃で真っ二つに切り裂いた。

 あれ、俺、仕事してない…

 

「翼さん!」

 

 響ちゃんが翼ちゃんに駆け寄る。

 

「私!今は足手まといかもしれないけれど、一生懸命頑張ります!だから、私と一緒に戦ってください!」

 

 気合い充分でいい子じゃないか。

 まだ緊張感とか覚悟みたいなのはあんまり無さそうだけど猫の手ならぬ、ガイガンの手を借りなきゃいけないほど人手不足の二課に新しい装者が増えるのはいいこと。

 いいこと…なんだけど…

 今の翼ちゃんがそれを許すかというと…

 

「そうね…あなたと私、戦いましょうか」

 

「え?」

 

 え?

 そう言って刀を響ちゃんに向ける翼ちゃん。

 ちょっと待って!

 さすがにそこまでなのは予想外だよ!

 めんどくさい二号ライダーじゃないんだから!



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出撃シーンって燃えるよね


燃えますよね?



 奏は、厳しい訓練と薬物投与によってガングニールに適合した。

 家族を殺された恨みから、どれだけ傷ついても、もがき続けて手に入れた力。

 それをこんな…なんの覚悟もないやつに…奏のガングニールを…!

 

「そういう意味じゃありません!私は翼さんと力を合わせて…」

 

「分かっているわ、そんなこと」

 

「だったらどうして…」

 

「私があなたと戦いたいから。私はあなたを受け入れられない。力を合わせあなたと共に戦うことなど、風鳴翼は許せるはずがない」

 

 そうだ、許せるはずがない。

 私は…

 

「覚悟を持たずに、ノコノコ戦場に立つあなたが奏の…奏のなにを受け継いでいるというの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 おいおいおいおい!

 翼ちゃん、それはダメだろ!

 戦うなんて!

 気持ちは分からないでもないけど…

 意味も分からず素人に戦いを挑むなんて翼ちゃんらしくない!

 

「ピー助…そこをどいて。これは私とあの子の問題…だから、どいて」

 

 むう…

 それはできない。

 人類守護の防人が人に刀を向けるのかよッ!

 そんなことを翼ちゃんにさせたくない。

 

「ピー助…なんで…なんで、私の言うことを聞かないの!」

 

 翼ちゃんはそう叫んで、高く跳躍した。

 ─まさか、あの技は…

 

『天ノ逆鱗』

 

 アームドギアである刀を巨大化させ、蹴り貫く。

 あれはヤバイぞ…!

 翼ちゃん、頭に完全に血がのぼっている。

 後ろには響ちゃんもいる。

 こうなったら…

 

「おおッ!!!!!」

 

 な!?この声は司令!

 ま、まさか…

 

「おおおおッ!!!!」

 

 天ノ逆鱗を殴り飛ばしやがった!?

 やっぱこの人人間じゃねえ!

 衝撃で道路もズタボロに…

 水道管が破裂し、雨のように水が降り注ぐ。

 

「はあ…この靴高かったんだぞ。一体、何本の映画が借りられたことか…」

 

 す、すいません…

 ホント、マジヤベえ…

 この人といい緒川さんといい生身で超強い人多いんだけどこの世界。

 

「らしくないな翼、ろくに狙いなんてつけずぶっぱなすなんて…翼、お前泣いて…」

 

「泣いてなんかいません!涙など流していません…風鳴翼はその身を剣と鍛えた戦士です…だから…」

 

 翼ちゃん…

 巨大化を解いて、翼ちゃんの元に歩み寄る。

 

「ピー助…」

 

 翼ちゃん…

 元気出して?

 奏ちゃんへの思いはよく分かったから…

 

「翼さん…私、自分が全然ダメダメなのは分かっています。だから、これから頑張って奏さんの代わりになってみせます!」

 

 響ちゃん…それは…

 それを聞いた翼ちゃんは響ちゃんを平手打ちした。

 気軽に奏ちゃんの代わりだなんて、翼ちゃんに言うのは…

 そのあとはもう解散となった。

 とにかく翼ちゃんが心配だ…

 

 

 

 

 

 

 翼ちゃんと一緒に家に帰るとベッドで早速抱きつかれた。

 よしよし、お兄さんになんでも話してみなさい。

 

「ピー助…ごめんね?あなたがいたというのに私は刃を向けて…」

 

 大丈夫大丈夫、気にしてないから。

 むしろ素直に謝られるとは思わなかったけど。

 

「ピー助は…あの子のことどう思う?」

 

 響ちゃん?

 いい子なんだけど…ことごとく翼ちゃんの地雷を踏み抜いていったからなぁ…

 けど、響ちゃんはなにも知らないわけで…

 まあなにも知らないからこそ起きた今回の事件というか…

 うーん…

 恐らく誰が悪いとかではなく、たまたま運が悪かったんだろう。

 

「私が共に戦うのは奏とピー助だけ…」

 

 そう言って翼ちゃんは寝てしまった。

 おーい。

 お風呂入って歯磨きしなきゃダメだよ~。

 ぺしぺしと軽く叩いたり、つっついたりしても起きる気配はない。

 全くこの子は…

 よいしょ…

 抱かれている腕から這い出て、掛け布団をなんとか引っ張って…

 お、重い…

 けど、布団ないと寒くて風邪引いちゃうだろうから頑張って…

 おらぁッ!

 ふう…

 なんとか翼ちゃんに布団をかけて…

 あーしんど。

 眠くなってきた…

 ………

 しょうがないから翼ちゃんと一緒に寝てやるか…

 しょうがなく。

 そう、しょうがなくだ。

 特別大サービスで抱き枕になってあげよう。

 さっき抱きつかれていたところに戻って…

 こんなサービス、めったにしないんだからZzz…

 

 

 

 

 

 それから一ヶ月。

 二人の距離が縮まるなんてことはなく任務も別々。

 響ちゃんのヘルプに俺が入ることはあったけど、それ以外は全然。

 これはなにかイベントを発生させないと二人の仲が発展することはないだろう。

 なにかいいイベントはないだろうか…

 うーん…

 俺が闇堕ちして二人の絆がないと倒せないぞ的な展開を作り上げるか…

 いや、それを伝える手段がないか。

 

「ピー助さん、隙だらけですよ」

 

 べしっと丸めた新聞紙が顔面に打ち付けられる。

 打ち付けられるって軽くだけど。

 現在、緒川さんとのトレーニング中。

 最近、俺が緒川さんの忍法を見よう見まねでやっているのに気づいたらしく忍の技を学ぶべく緒川さんに弟子入りしたのだ。

 

「今日はここまでにしますけど、戦場で隙を見せてはいけませんよ?」

 

 はい、分かりました…

 ご指導ありがとうございました。

 さて、このあとは…なにしよう?

 司令室にでも行ってみよう。

 

 

 

 

 

「ピー助!ちょうどいいところに来てくれた!」

 

 司令室に入ってすぐ、司令がそう言った。

 一体なにが…?

 

「現在、翼と響君が出撃しているのだが加勢に行ってくれ!」

 

 二人が出ているのに加勢とは…

 大量のノイズでも現れたのだろうか?

 とにかく現場に急行だ!

 翼ちゃんがいるなら気配を追える。

 マッハで行くぜ!

 ちなみにガイガンの大気圏内の最高速度はマッハ3。

 宇宙だとマッハ400になる。

 400て。

 

「ガイガン出ます!ガイガン発進!」

 

 ガイガン出るぞ。(池田秀一ボイス)

 出撃シーンって燃えるよね。

 それはともかく翼ちゃん達の元へ急ぐぞ!

 久々の全速力だ!

 



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守るという誓い

 
 お気に入り300件突破!
 みなさん読んでくださってありがとうございます!

 今回ですが、オリジナル要素出ます。
 ついてこれる奴だけ…云々です。
 よろしくお願いします。



 ネフシュタンの鎧…

 二年前、奪われた…聖遺物。

 奏を失った事件の原因と奏が残したガングニールのシンフォギア…

 時を経て、再び揃って現れるという巡り合わせ。

 運命の悪戯が私を嘲笑っているように感じざるを得ない。

 

 戦闘はネフシュタンの鎧を纏う少女に分があった。

 ネフシュタンの鎧だけでなく、それを纏う本人のポテンシャルも高い。

 いくら攻めてもいなされ、逆に相手の攻撃を食らう。

 さらにノイズを操る杖により、数も劣勢。

 ノイズを全て切り伏せ、再びネフシュタンの鎧の少女へと攻撃を再開する。

 斬りかかり、防御され、相手の攻撃をかわし距離を取りながら牽制のため短刀を投擲する。

 

「ちょせいッ!」

 

 しかし、全て弾かれてしまう。

 これは予測していたこと、だがここで相手は大技を放った。

 

「おらぁッ!」

 

 球状に束ねられたエネルギーの塊が迫る。

 それを私は刀で防御するが…

 この威力は…!

 

「うっ…あぁぁ!!!」

 

 爆発に巻き込まれ吹き飛ばされ、地面に伏せる。

 

「翼さん!」

 

 遠くに立花響の声が聞こえる…

 自分も窮地だというのに…

 

「とんだ出来損ない!」

 

 ネフシュタンの鎧の少女は私をそう罵った。

 実際その通りだろう…

 

「私は出来損ないだ。この身を一振りの剣と鍛えてきたはずなのに、あの日、無様に生き残ってしまった…出来損ないの剣として、恥を晒してきた…」

 

 刀を杖代わりにし、痛む体に鞭を打ち立ち上がる。

 もうネフシュタンの鎧を取り返すには…

 

「だが、それも今日までのこと…奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名をそそがせてもらう!」

 

「そうかい、脱がせるものなら脱がして…!なにっ!?」

 

 ようやく気づいたか…

 影縫い。

 奴の動きは止めた、ならあとは…

 

「くっ!こんなもんでアタシの動きを!…まさか、お前…」

 

 向こうも気がついたらしい。

 

「月が覗いているうちに、決着をつけましょう…」

 

「歌うのか!絶唱を!?」

 

 ええ…

 聞かせてあげましょう…防人の歌を…

 ピー助、ごめんなさい。

 もしかしたら…私は…

 夜空を仰ぎ見ると、大きな満月、そして、大きな流星…

 いや、あの流星はやけに大きい。

 月に被さると流星は方向を変えてこちらに迫ってきた。

 いや、あれは流星じゃない…

 あれは…

 

「ピー助ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 マッハ3で飛行する俺なら現場に急行なんて容易いこと。

 どんなピンチにも颯爽と駆けつけて翼ちゃん達を救出!

 …なんて、出来るかなぁ?

 そんな都合よく。

 いや、翼ちゃんを守ると誓ったじゃないか。

 弱気になるのはダメだ、翼ちゃんになにかあったら奏ちゃんに顔向け出来ない。

 なんて考えているうちに、なにか嫌なものが迫る予感がした。

 翼ちゃんの身になにかが起こりそうな、そんな予感。

 幸いにも翼ちゃんはもうすぐ近くにいるようだ。

 この機械の目で周囲を捜索する…いた!

 ノイズの群れ…響ちゃんは捕まってる、なんか白い変なのがいる、そして翼ちゃんは…ボロボロ。

 くそッ!あの白い奴か!?

 やってやる!

 俺が翼ちゃんを守るんだ!

 翼ちゃんの方向に最大加速で向かう。

 

「ピー助ッ!!!」

 

 名前を呼ばれた。

 これはもうやるしかない。

 今なら誰が相手でも勝てる。

 翼ちゃんを傷つける奴は─許さない。

 

『SYSTEM FINAL WARS』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そいつは月を背に舞い降りた。

 赤い目、鋭い鎌となった両腕、紺色の体、血に染まったような赤い翼…

 異形。

 この言葉が正に当てはまる。

 こいつは一体なんだ?

 フィーネが言っていた対ノイズ用の完全聖遺物とは見た目に共通する点は多いが、細部が異なる。

 なんなんだ一体…!?

 

 

 

 

 

 

「ピー助…なのか?」

 

 翼ちゃんを庇うように降り立った俺が最初に聞いた言葉がそれだった。

 うん、ピー助だけど…

 なんか違う?

 

「ずいぶんとすらっとして…」

 

 翼ちゃん、ここは戦場だよ?

 呆けてたら死ぬって翼ちゃんが言ってたんだよ?

 まあいい。

 ここからは翼ちゃんにはなにもさせない。

 ここからは俺が戦う。

 

「チッ…バケモンの相手はバケモンだ!」

 

 そういって白い奴は変な杖からノイズを召喚した。

 ノイズを召喚するなんて…!

 いいぜ、ノイズぐらい一瞬で殲滅してやる!

 

 目に力を充填し、拡散光線『ギガリューム・クラスター』を放つ。

 広範囲に放たれた光線は大量のノイズを炭へと変える。

 近づいてくるノイズは両腕の鎌『ブラッディ・トリガー』で切り裂く。

 いとも容易く両断されるノイズ達。

 ノイズ程度に今さら遅れを取るはずがないだろう。

 一つ、二つ…足下で炭の山となるノイズ達を数え、白い奴にも攻撃を加える。

 『ブラデッド・スライサー』胸部から放つ小型の丸ノコ。

 白い奴の首を狙い放たれたそれは射線上のノイズを切り裂きながら進んでいく。

 

「くッ…!」

 

 影縫いにより身動きの取れなかった白い奴はノイズに命じ短刀を外してもらい、間一髪でブラデッド・スライサーを回避する。

 だが遅い。

 一瞬で距離を詰め、鎌で斬りかかる。

 白い奴はムチで鎌をガードするが…鎌から鎖を射出し、相手の両腕に巻き付ける。

 これで身動きが取れなくなったな。

 こうなってしまえば、こちらの勝ちだ。

 胸の回転鋸『ブラデッド・カッター』を起動させ、白い奴に迫る。

 轟音響かせ、少しずつ処刑の時が近づく。

 

「や、やめろ…来るなぁ!!!」

 

 やめろ?

 そんな言葉、今さら口にするのか。

 翼ちゃんを傷つけておいて?

 お前の願いなんて、誰が聞くか…

 

「止まれピー助ッ!!!」

 

 その言葉に体が反応した。

 ブラデッド・カッターが停止し、体の動きも止まる。

 今の声は…翼ちゃん…

 

「止まるんだピー助!もういい!」

 

 あれ…俺…

 ああ…また俺は暴走して…

 

「チッ…なにが起こってるかわかんねえけど逃げるなら今しかねぇ!」

 

 鎖の拘束も弱まっていたのだろう、白い奴は鎖をふりほどきそのまま逃走してしまった。

 

「ピー助…ありがとう…お前のお陰で、私は…」

 

 そう言いながら翼ちゃんは倒れた。

 それを支えようとしたが…手を伸ばすことが出来なかった。

 この手は…この鎌は…

 

「無事か!?翼!?」

 

 司令も本部からやって来たらしい。

 早く、翼ちゃんを…

 あれ…なんか、目の前が真っ黒に…

 

「ピー助ッ!どうしたピー…」

 

 司令の声も遠くに…

 なって…

 そうして、俺の意識は闇に落ちた。



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ガイガン、食べ物に釣られまくる

 FW版ガイガン登場にすごい反響で人気の高さを感じました。 
 あのスタイリッシュさ…ホレないわけないんだよなぁ


「あれからピー助は目が覚めない、か…」

 

「ええ…恐らくあの変身によるエネルギーの激しい消耗が原因でしょうけど…シンフォギアなら手が出せるけど、ピー助君はさすがの私もねぇ?」

 

 ラボにて、あれから一切動かないガイガン…ピー助はさすがの了子君でもお手上げらしい。

 翼は先の戦いによる負傷でしばらくは入院となりピー助もこのとおり…

 残る響君は…

 

「お疲れ様です師匠!」

 

 このとおり。

 本人の希望から俺に弟子入りし、前とは比べ物にならないほど成長している。

 

「ピー助君…まだ目が覚めないんですね…」

 

「ああ…了子君達が懸命に調査をしてはいるが…」

 

「ピー助君は謎が多いからねぇ…このまま回復を待つしかないかしら…」

 

 二課の主戦力二人が欠けた状態。

 格段に成長したとはいえまだまだ新人の響君だけではノイズはまだしもネフシュタンの相手は厳しい。

 なんとかピー助を再起動させて戦力の安定を図りたいが… 

 

「うーん…」

 

「どうした?響君?」 

 

「いやぁピー助君なら食べ物で釣ればすぐに目を覚ますんじゃないかって…」

 

「さすがにそれは…けど、ピー助君ならもしかすると…」

 

 うむ…

 たしかにピー助なら…

 

「ものは試しだ。食堂に行ってなにか持ってこよう」

 

「私、行ってきます!」

 

 そう言って響君はラボを出た。

 

「普通ならそんなはずないって思っちゃうんだけどね~」

 

「ああ…普通ならな。…だが、ピー助ならなぁ」

 

「ピー助君ならねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ…ここは…どこだ?

 さっきまで戦っていたはずなのに…

 それにしてもお腹が空いたなぁ。

 とにかくエネルギーが足りてないといった感じだ。

 …この匂いは…

 肉だ!

 近くに焼きたてジューシーな肉ッ!

 こんなところにいる場合じゃねえ!今すぐ肉の元へ行くぞッ!

 おおおおおおッ!!!!!!!

 

「ピーーーーー!!!!!!!」

 

 肉!

 肉はどこだ!?

 肉…

 見つけたぞ!

 飛びついて、かじりつく。

 ステーキか…300gくらいありそうだ…

 焼き加減はウェルダン。

 しっかり火が通っているッ!

 バクバクバクバク…

 ふ~!食べた食べた…

 ん?

 ステーキに夢中で気がつかなかったけど、司令に了子さん、響ちゃんがいる。

 

「まさか本当に目覚めるとはね…」

 

「言い出した私も驚いてます…」

 

 ?

 なんだなんだ?

 みんなして俺を見て呆れた顔をして。

 俺なんかやっちゃいました?

 一回言ってはみたかったこのセリフ。

 

「うん、分かりやすくて大変結構!ピー助起きがけで悪いが早速仕事だ」

 

 目覚めたばかりだというのに…

 まったくガイガン使いの荒い司令だなぁ。

 

「それではピー助、翼のお見舞いに行ってきてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二課の医療施設にて、私は一人ベッドで横になっていた。

 ケガは大したことないというのに、司令はこの際しっかり休めと言って復帰させてくれなかった。

 任務でも仕事でも無いのに学校を休むのははじめてだ。

 だけど…暇だ。

 剣として鍛えてきた私にはこういう時、何をすればいいか分からない。

 体を動かそうにも絶対安静と般若のようなナース長から厳しく言いつけられてしまっている。

 どうしたものか…

 コンコンと扉がノックされた。

 看護師さんだろうか?

 扉は開いたけれど、誰もいない。

 これは…まさか…

 看護師さん達が噂していた―第2病棟のユウコさん!?

 こ、怖くない…怖くなんか…剣である私が怪奇現象程度に…

 

「ピー?」

 

「ひっ…」

 

 ピーとはユウコさんはそんな声を出すのか…

 そういえばピー助もピーって鳴くわね…

 …

 というか今の鳴き声は…

 

「ピー助ッ!」

 

「ピ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助ッ!」

 

「ピ?」

 

 イエス!アイアム!

 …ごめんなさい、ふざけました。

 それにしても翼ちゃん、なんで涙目?

 

「よかった…第2病棟のユウコさんではなくて…」

 

 第2病棟のユウコさん?

 なんじゃそりゃ。

 というか、この部屋!

 自分の家だけでなく病室までこんな汚して!

 

「いや、これはその…緒川さんも忙しくて中々片付けに来てくれなくて…」

 

 そんなの理由になりません!

 とにかくお掃除の時間です!

 あ!翼ちゃんは寝てて病人だから!

 

「あぁピー助…片付けなんて別にいいのに…」

 

 よくない!

 もうちゃっちゃと片付けよう。

 まず服を畳んで…この下着は…上下揃っていない!?

 探さないと…

 あぁ本もたくさん床に散乱させて… 

 この花も萎れちゃって…

 

~1時間程経って~

 

 あぁ…やっと終わった…

 最近はここまでひどいのは無かったからか余計に疲れを感じる。

 

「すごいねピー助は。いつでも嫁入り出来るわね」

 

 誰のせいだよッ!

 もともとは俺だって片付け得意な方じゃないんだぞ!

 そんな俺がこんな家政婦並のスキルを手に入れるなんて更正施設かなんかだよ翼ちゃんの部屋は!

 

「ようやく二人でゆっくり出来るわね」

 

 だから誰のせいだと。

 

「そういえばピー助に聞きたいことがあるんだった」

 

 ?

 なんですか?

 

「あの時の姿のこと。ピー助があんな姿になれるなんて…ピー助は知ってたの?」

 

 まったく知りませんでした。

 てっきり昭和版固定だと思っていたのに…

 これは強化フォーム的なそういうサムシング?

 

「そう…自分でも知らないのね…」

 

 うーん自分のことなのに知らないのってなんかモヤモヤする。

 なんか調べる手段とかないですかね?

 自分(ガイガン)のデータにアクセスとか…

 ない?

 そうですか…

 

「もう暗くなってきたわね…ピー助、帰れる?」

 

 もちろん。

 行きも飛んできたからね。

 

「そう、また来てね。ここは暇でしょうがないから」

 

 当然また来るさ!

 俺が来ないと病室が汚部屋になっちゃうからね。

 それじゃまた明日も来るから!

 

「うん、また明日」

 

 バイバイと手を振って、帰りは窓から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜は暗いから目立たないのでちょっとお空のドライブ。

 風が気持ちいい~。

 ん…この風に乗って漂う匂いは…

 お好み焼き!

 ちょっと立ち寄るくらいならいいよね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの青髪のシンフォギア装者との戦いから苛立ちが募ってどうにも落ち着かない。

 あの化け物…

 次会ったらぶっ倒してやる。

 そう考えながら夜の街を歩く。

 別に目的なんてない。

 ただ歩く。

 それだけだ。

 しかし、そこで妙な物を見つけてしまった…

 

 

 

 

 

 

 

 ほーん、『ふらわー』か…

 粉物やるにはピッタリな名前じゃないか。

 あぁ…お好み焼きの、ソースの匂いが…

 お腹空いた…

 これは完璧にお好み焼きの気分。

 それ以外のものは今日は受け付けないぜい。

 とは言ったものの俺がお好み焼きを食べるにはハードルが高い。

 お店で食べるのは論外、二課に帰ってもお好み焼きが出てくることなんてない…

 一体どうしたら…

 

「おい」

 

 ちょっと待って、いま人生で一番の考え事をしてるから…

 って、え?

 いや、今のは俺に言ったわけじゃ…

 

「そう、そこのお前だよペンギン」

 

 あ…

 またペンギンって…

 

「この間の奴に似てるけど、あいつはこんなちんちくりんでもずんぐりもしてねえな」

 

 この間の奴?

 あー!!!

 こいつ、この間の!

 このやろう!どっからでもかかってきやがれ!

 

「似ているということはつまり関係あるかもしれない…?つまりこいつを…」

 

 なんだぶつぶつ言いやがって!

 戦うなら相手するぞ!

 

「…なるほどな、お前、こいつが食いたいんだろう?」

 

 え…?

 そりゃ食べたいけど…

 それがどうしたっていうんだ!

 

「ちょっと待ってろ」

 

 そう言って少女は店の中へ。

 数分後。

 

「ほうら、こいつが食いたいなら着いてきやがれ」

 

 た、食べたい…

 じゅるり…

 ちょっとだけ…ちょっとだけなら…

 あー!待ってー!!!

 

「よしよしいい子だ…ほら、食べな」

 

 わーい!

 お好み焼きに食いつこうとした瞬間、体を持ち上げられる。

 あれ?

 

「捕まえた。所詮はケダモノ、簡単に捕まったぜ」

 

 ふぁ!?

 なんてこと!

 そしてここはどこ!?

 いやいや落ち着け、巨大化すればこの程度簡単に…

 簡単に…

 あれ、巨大化出来ない…

 なんで…?

 じゃあ回転ノコギリで驚かせ…回らない!?

 レーザー光線砲も…撃てない!?

 なんで…

 まさか、まだエネルギー不足が…

 こんな女の子の腕力からも逃げられないくらい素のパワーも落ちてる。

 これは…ガチでピンチかもしれない。



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この子すごくいい子だよッ!!!

 デュエマプレイス…もう18日だよ?
 何時から出来るの…?


「さて、こいつをどうするか」

 

 ひえぇ…

 ヤバイよどうしよう。

 ただいま縄で縛られて吊るされてます。

 なんかすっごい城みたいなとこに連行されて来たんだけど…

 うー…

 お腹空いた…

 力が出ない…

 これじゃ脱出は無理だ…

 回転ノコギリは動かないし…

 

「お前、あいつの仲間なんだろう?」

 

 あいつ?

 どこのどいつよ?

 

「あの時、あたしをこけにしたやつだ!あの化け物…今度会ったらぶっ殺してやる…!」

 

 この子…FWガイガンと昭和ガイガンを別人だと思っている?

 いや、原作だと別人なんだけどさ。

 友達もFWから入って昭和版のガイガン見たとき、えっこんなだっけ?ってなってたし…

 

「お前はちっこいからな…あいつのガキかなんかか?こいつをエサに奴を誘き出せば…」

 

 ごめんなさい、本人です。

 同一人物なんです。

 てか小さいのはアンタも…

 ぐ~~~

 あっお腹の音が…

 

「そういえばお前、腹空かせてたっけな」

 

 そうなんです。

 お腹と背中がくっつきそうで…

 

「…ほら、これやるから」

 

 そう言ってさっきのお好み焼きを小さく千切って手渡す小さい人。

 気づいてんだぞ、厚底の靴履いて誤魔化してるの。

 

「べ、別に優しくしようなんて考えてねえからな!折角の人質が餓死なんてしたら意味が無くなるからだ!全然そんな、餌付けとかそんなんじゃないからな!」

 

 あれ、この子…

 かわいい(確信)

 すごいぞ、さっきまで敵としか思えなかったのに、この子とはいい関係が気づけそうだ。

 とにかく今はこのご厚意に甘えよう。

 いただきます。

 

「あっ…」

 

 うん、うまい。

 久しぶり、人間だった時以来のお好み焼きだ。

 それにしてもこのお好み焼きうまいな…

 もっと!もっと!

 

「も、もっと欲しいのか…しょうがないな…」

 

 わーい!やっさしーい!

 いただきまーす!

 

「か、かわいい…」

 

 おかわり!

 

「もう…ほら、もう全部やるよ」

 

 イエーイ!

 丸々一枚ゲットだぜ!

 

「まったくどんだけ腹が減ってたんだ…」

 

 めっちゃ減ってました。

 300gのステーキだけではエネルギーが賄えなかったよ…

 

「まさかお前、あいつらからちゃんと飯もらってないのか?」

 

 いや、そんなことないけど…

 

(まさか、飯が欲しければ仕事しろ!みたいにひどい扱いを受けてるんじゃ…だからあいつも無理矢理戦わされて…)

 

「よし!あたしがあいつらぶっ倒してお前達を助けてやる!」

 

 え。

 えぇ?

 ヤバイこの子、とんでもない勘違いをしてそう。

 違うんや、むしろ普通以上の食生活を送って…

 お腹が空いてたのはたまたま目覚めたばかりだったから…

 くそ、伝えようにも言葉は通じないしジェスチャーしようにも縛られてるから無理…

 ああ、このままだと555のようなすれ違いドロドロストーリーに発展してしまう。

 

『ピー助を返しなさいッ!』

 

『お前らみたいな奴等にこいつを渡せるかよ!』

 

 やめて!私のために争わないで!

 なんてことが起こるかもしれない。

 それだけは勘弁だ。

 しかしどうしようもないのが現状。

 せめて体が自由でさえあれば…

 そんな願いが通じたのか女の子は俺をおろして、縄をほどいてくれた。

 

「拘束はやめるけど逃げたりすんじゃねえぞ」

 

 あら、お優しい。

 絶対君いい子だよね!

 

「一応言っとくけどあたしはクリス…雪音クリスだ」

 

 クリスちゃんか。

 見た目から日本人離れしてるなとは思ってたけどハーフかな?

 

「さて、風呂に入るとでもするか…」

 

 いってらっしゃーい。

 大丈夫ですよ、逃げたりしないんで。

 …どうしたんだろうクリスちゃん。

 早くお風呂に行けばいいのに、チラチラこっちを見て。

 大丈夫だって、逃げたりしないから。

 

「も、もしかしたら風呂入ってる隙に逃げられるかもしれないからなー(棒)。しょうがない、お前も来い(棒)!」

 

 な!?

 ちょっと!?

 逃げない!逃げないからぁ!!!

 翼ちゃんはともかく昨日今日初めて会った女の子とお風呂になんて入れるか!

 こんな格好だけど中身はバリバリの男だぞ!!!

 

「こら!暴れる、なっと…」

 

 むぎゅう!?

 な、なんだこの質量は!!!

 クリスちゃんに抱き抱えられた瞬間、圧死するかと思った。

 けど、これなら逝ってもいい…

 あぁ…これが…天国か…

 奏ちゃん以来だよこんな感覚…

 

「大人しくなったな…よし風呂だ風呂!」

 

 あぁ…もうここに埋もれてたい、ここに住みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当ですか緒川さん!?ピー助がいなくなったというのは!?」

 

 ピー助がお見舞いに来た翌日。

 病室にやって来た緒川さんがピー助が行方不明になったことを教えてくれた。

 

「はい…二課にも翼さんの家にも帰っていないようで…現在捜索中です…」

 

「そんな…まさか、あの時みたいに暴走して…」

 

「可能性はありますがノイズが出てこない以上、ピー助さんも現れないかと…」

 

 こんなところで寝てはいられない。

 ピー助を探さないと…!

 

「ぐっ…つぅ…」 

 

 ベッドから降りようと急に動いたら痛みが体を襲った。

 

「ダメですよ翼さん!まだケガも治っていないんです。ここは僕達に任せてください。絶対にピー助さんを連れて帰ってきますから」

 

「…すいません。よろしくお願いします」

 

 そして緒川さんは病室を去った。

 ピー助…どこに行ってしまったというの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふかふかの柔らかいものに包まれて寝るっていいなぁ。

 ずっとこうしてられる。

 あぁこのまま睡眠を貪りたい。

 

「すぅ…すぅ…」

 

 クリスちゃんもこの通り俺を抱き枕にしてまだ寝ているし、俺もこのまましばらく寝続けよう…

 おやすみなさい…



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終わりの名を持つ者

 日間ランキング7位、お気に入り400件突破、これまでで一番多い感想…一体なにがあったのかと思い、自分なりに推測してみたんですが…

みんな、クリスちゃん(の胸部装甲)が好きなんすねぇ。


 あれ、ここは…奏ちゃんの部屋だ。

 なんで…

 あ、そうか、これは夢か…

 

『奏…ごめんなさい…私が…私が弱かったから…うわああああ!!!!!』

 

 誰かが泣いてる。

 翼ちゃんだ。

 翼ちゃんが泣いている。

 奏ちゃんを失い、自分のせいだと、自分の弱さのせいだと…

 

 

 

 目を覚まし、頭が働くのを待つ。

 いや、待っている暇はない。

 重い頭をぶんぶんと振って、眠気を払う。

 クリスちゃん…ごめんなさい。

 やっぱり俺、翼ちゃんのそばにいなきゃ。

 あの固い寝床の方が俺には合っている。

 寝ているクリスちゃんを起こさないようにそーっと抜け出して部屋を出る。

 一宿一飯の恩は忘れないよクリスちゃん。

 俺、君とは分かりあえる気がするんだ。

 だからきっと君とは手を取り合って戦える。

 だから今は少しお別れだ。

 泣き虫で、家事が壊滅的で、不器用な女の子のところに戻らなきゃ…

 

 

 

 

 部屋を出て廊下を歩く。

 ここにはクリスちゃんしかいないのか?

 最初はこそこそ隠れながら移動していたけど、どうにもここには人がいないようだ。

 てっきりクリスちゃんに指示を出してる黒幕がいるもんだと思ってたけど…

 

「あら?どうしてここにあなたがいるのかしら…ガイガン?」

 

 不意に、背後から声が響いた。

 振り向くとそこには女…全裸の。

 クリーム色の髪を伸ばし、金色の瞳は幻想的でその肢体もまるで…とか例えるのも野暮なほど美しい。

 ワオ…なんて言ってる場合じゃない。

 なんだこいつは?

 ガイガンのことを知っているということは…どういうことだ?

 まさかガイガン(俺)を北海道沖で引き上げたとかいう奴等…?

 

「警戒しているのは動物の本能かしら?ここになぜいるのかは分からないけれど…丁度いいわ、運動に付き合ってくれないかしら?」

 

 運動?

 一体何をするつもりだ?

 

「あなた、エネルギーが足りてないのね?まずは万全にしなさい」

 

 そう言ってどこから取り出したのかクリスちゃんが使っていた杖を取り出し、ノイズを召喚した。

 ノイズはその場から動かない。

 やはりあの杖にはノイズを操る力が…

 

「食べなさい。その身はノイズを殲滅するために造られた機械の体。ノイズを捕食することがあなたにとって最高のエネルギー補給。かつてもそうして戦い続けてきたでしょう?」

 

 かつて?

 あの二年前のことか? 

 

『ガイ…ンは、……の…望…』

 

『ガ…ガンは……ガンは勝ち……か?』

 

『俺達………コンビ…』

 

 ッ!!!

 なんだ、今の…

 …記憶?

 はあ…はあ…

 頭を強い衝撃が襲ったかのようだ…

 はあ…はあ…

 ノイズ…

 あれを食べれば…

 

「ふふっ…そうよ、獣らしく喰らいなさい。そして、その力を…」

 

 いつの間にかノイズを食べ終えていた。

 体がノイズを求めていたのか…?

 それに体も巨大化している…

 

「準備は出来たわね…それじゃ、実験を始めましょうか」

 

 目の前の女は黄金の鎧を身に纏った。

 これは…クリスちゃんが纏っていたネフシュタンの鎧!?

 だけど銀から金に…

 パワーアップ…でもしているのだろうか。

 それに実験を始めましょうかってどこかの天ッ才物理学者みたいなことを…

 

「立花響のデータを元に、私はこのネフシュタンと同化した!まずはあなたで…どれほどの力を秘めているか…試す…」

 

 …なるほど、実験動物になれってことか。

 そんなの、嫌だね!

 レーザー光線を女めがけて放つ。

 しかしそれはバリアに阻まれた。

 …遠距離攻撃はダメらしい。

 

「ほら、ご自慢の爪とノコギリでかかってきなさい?」

 

 こいつ…

 安い挑発だけど乗ってやる。

 こいつは倒さなければならない。

 そう直感が告げている。

 やるしかない…!

 女に向かい駆け出す。

 武器はあのピンク色のムチみたいなやつか?

 油断せずにいかねば…

 奴は棒立ち、鉤爪を振り下ろして、脳天をかち割ろうと狙う。

 しかしそれは防御されてしまう。

 そんなのは予測済みだ。

 左手をアッパーのように女の腹を抉るべく狙うもそれも阻まれる、しかし…

 

「流石は怪獣…パワーではネフシュタン以上…」

 

 このまま押しきってしまえば…勝てる。

 しかし、そう簡単にいくものでもなく、がら空きの胴に蹴りが入り、後ずさる。

 

「今度はこちらの番…」

 

 そう言ってムチを振るう女。

 予測の難しい攻撃が次々と襲う。

 防御するのも精一杯、攻撃はさらに苛烈を極め防御すら出来なくなってきた…

 

「なんだよこの音は…って、フィーネ!?その姿は…それにペンギンもでかくなってるしなにがどうなってんだ!?」

 

 クリスちゃん!?

 流石に気づくか…

 けど、こんなとこにいたらクリスちゃんが危ない…

 

「クリス、あなたがガイガンを連れ込んだの?脱走しようとしていたから始末しようとしていたのだけれど…」

 

 調子のいいことを言う。

 くそ、クリスちゃんが近くにいちゃやりづらい…

 

「そいつは人質だ!殺したら…」

 

「人質?こんなやつを人質にしたところでなんにもならないわ。それなら殺してしまっていいでしょう?」

 

「そんな…!?」

 

 更に激しさを増す攻撃にひたすら耐えるしかなかった。

 下手に反撃したらクリスちゃんに当たってしまうかもしれない。

 今はただ耐えろ。

 反撃のチャンスがあるはずだ…

 よく視ろ…

 …

 そこッ!

 

「なにッ!?」

 

 両腕の鉤爪でムチを絡めとった。

 ふう…俺もだいぶ器用になったもんだ…

 それじゃあ、ちとエグい攻撃かもしれないが…殺らせてもらう。

 今やつは身動きが取れないでいる。

 ムチを俺に掴まれているからだ。

 そしてパワーでは俺が勝っているのなら…

 

「ぐっ…手繰り寄せてくる…なにをするつもり…ま、まさか…!?」

 

 気づいたようだ。

 なら、このまま…一本釣りッ!

 一気に近づいてきたこの女、そして起動する回転ノコギリ…

 もう分かるだろう。

 

「ああああああッ!!!!!!!」

 

 エグい。

 かなりエグい。

 しばらく肉は食えそうにない。

 しかし、やらなければならない。

 こいつは敵だ。

 本能がそう叫んでいる。

 この女を手にかけるという罪は…俺が背負う。

 女の断末魔が少しずつ小さくなり、沈黙した。

 ノコギリも止め、女の体が床に落ちる。

 あたり一面赤い。

 俺もかなり返り血を浴びた…

 しかし、これで…倒したんだ…

 ネフシュタンの鎧も回収して…二課に…

 ここで、クリスちゃんと目があった。

 かなりキツイものを見せてしまった。

 心に傷を負わせてしまったかもしれない。

 だけど、こうするしか…

 

「…!?ペンギン避けろ!!!」  

 

 え、なん、で…

 体を、何かが貫いた。

 これは…ネフシュタンの…

 

「流石はネフシュタン…この再生能力、まさかあんな目に合うとは思わなかったけど効果は実証出来てよかったわ」

 

 こ、こいつ…傷が、治って…

 

「ありがとうガイガン…この地球(ほし)のかつての支配者…私は…怪獣をも越える力を手に入れたッ!」

 

 かつての…支配者…?

 こいつは…一体、何者…なんだ?

 

 貫いていたムチが抜かれ、今度は俺が床に倒れ落ちる。

 

「もうあなたに用はないわ。消えなさい」

 

 ムチを構え、トドメをさそうとしている。

 こんな…ところで…

 翼ちゃん、ごめん。

 俺も、君のもとから…

 

『Killter Ichaival tron』

 

 



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最近オレ活躍してない気がする

ピー助が擬人化して女の子になるというアイデアが脳内に…
擬人化したら翼さんそっくりの巨乳になるんや…


 怪獣…かつて、この地球を支配していた存在。

 支配していたといっても政治を行ったりなどはしていない。

 彼等は存在するだけで、他の生物から畏怖され、崇拝された。

 その巨大さ、力、神の如き奇跡を起こすものも存在した。

 そんな崇拝されている怪獣を人の手で改造するなどという恐れ知らずの者達がいたという。

 彼等が作り上げたのは「ガイガン」と呼ばれる半機半獣の存在。

 ノイズを倒し、人間を守る存在。

 もとは猛禽とトカゲを合わせたような見た目をし、前肢が鉤爪で、黄金の鱗を持つ美しい怪獣だったという。

 温和な性格で、人々から親しまれていた稀有な怪獣…

 しかし、怪獣も命あるもの。

 ガイガンはその命を終えた。

 やがてその遺体は回収され、サイボーグ怪獣となる…

 以上が私が知っている限りのガイガンについての知識。

 ここから更に物語があるというが興味はない。

 そうして、いま再び、ガイガンはその命を終えようとしている。

 完全聖遺物という点は興味はあるが計画に必要なものではない。

 ここで処分しておこう…

 

『Killter Ichaival tron』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリス、これはなんの真似?」

 

「知らない。体が勝手に動いてた…そいつは殺させない」

 

 気づけば歌っていた。

 嫌いなはずの歌を。

 いたぶられるあいつを見ていたら…

 あたしは…ガイガン(こいつ)を守りたいと思った。

 

「裏切るつもり?まあ、いいけど…カ・ディンギルも完成寸前、ネフシュタンも私の物…あなたはもう用済みよ」

 

「…ッ!あんたまで、あたしを物扱いするんだな…いいぜ、あたしとあんた、これからは敵同士。それでいいだろッ!」

 

 アームドギアを展開し、ガトリングをぶっぱなす。

 弾幕を張ってフィーネを怯ませ、その隙にペンギンを抱える。

 元のサイズに戻ってて助かった…

 あとはこの城を脱出するだけ、しかしフィーネはノイズを召喚し道を阻む。

 

「チッ!!!こんのぉ!!!」

 

 とにかく撃って、撃って、撃ち続ける。

 この狭い屋内ではダメだ。

 外に出さえすれば…

 

「させるとでも?」

 

「があっ…!!!」

 

 ネフシュタンのムチがあたしの背中を直撃した。

 ノイズだけでなく、フィーネの相手までしなくちゃいけない…

 けど…

 

「数が多いんだよッ!」

 

 ノイズは次々と召喚される。

 こうなったら…

 

『MEGA DETH PARTY』

 

 腰のパーツから小型ミサイルを一斉に発射する。

 この城ともおさらばだ、ぶっ壊しちまえ!

 ミサイルはノイズを炭に変え、城の壁を破壊した。

 ここから外に逃げる。

 煙でフィーネのヤツもこっちが見えない今がチャンスだ。

 壊れた壁から外へと飛び出し、とにかく逃げる。

 とにかく今はこいつを助けるのが先だ。

 

 

 

 

 

 

 

「逃げた、か…まあいい。あの子も用済み、それにカ・ディンギルのことを知られたからには生かしてはおけない…」

 

 ソロモンの杖からノイズを召喚し、クリス達を追うように命じる。

 なんの後ろ楯もない彼女など、取るに足りない。

 二課にさえ接触されなければいい。

 あとは計画を完遂させることに集中すればいい…

 

 

 

 

 

 

 

 あれ…ここはどこだ?

 真っ白な空間にポツンと一人。

 なんか最近変な空間にいることが多いな。

 

『ピー助…』

 

 この声は…奏ちゃん!

 

『ピー助、お前がここに来るのはまだ早いよ。ほら、帰りな?お前を待ってる奴等がいるからさ…特に、泣き虫な翼が…』

 

 奏ちゃん…

 うん、分かった。

 寂しいけど…今はまだ…

 

 

 

 

 

「ペンギン!目が覚めたのか!」

 

 ん…クリスちゃん…

 おはよう…

 ここは…どこかの路地裏か…

 そういえば、俺はあいつにやられて…

 そこからの記憶はない。

 

「傷が治っていくから驚いたけど…もう大丈夫なのか?」

 

 うーん…

 傷は治ったけど…またエネルギー不足…

 

「まだ元気そうじゃないな…くそ、飛び出して来たからな…金も何も持ってない…」

 

 クリスちゃんが気に病むことじゃない。

 それより、あれから一体なにが…

 

「…なんだよその不思議そうな顔は。お前を助けたのは別に…別に…」

 

 別に? 

 別になんだろう?

 まあ、かわいいからいっか…

 ッ!!!

 ノイズが近づいてる!

 クリスちゃん!ここから逃げないと…

 

「どうした急にピーピー鳴きだして。チッ…ノイズで追ってきやがったか…」

 

 そういうクリスちゃんの顔はどこか悲しそうだった。

 あの女…フィーネとかいうヤツは俺どころかクリスちゃんまで殺そうというのか。

 

「お前はここに隠れてろ。あたしがあいつら全部ぶっ飛ばしてやる!」

 

『Killter Ichaival tron』

 

 この歌って…

 まさかクリスちゃんもシンフォギアを!?

 そうして赤いギアを纏ったクリスちゃんがノイズにガトリングを撃ちはじめた。

 …なんかヘビーアームズみたい。

 ミサイルまで撃ち出したし…

 クリスちゃんマジガンダム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノイズの反応を検知しました!…ッ!?微弱ですがピー助君の反応もあります!それに…この反応は…」

 

 モニターに文字が出る。

 それは、10年前紛失したとされる聖遺物…

 

「イチイバル…だとッ!?」

 

 一体今になって何故現れたというのか。

 そして、何故ピー助と共にいるのか…

 

「とにかく装者を…響君を向かわせるんだ!」

 

「既に連絡し、向かってもらっています!」

 

 よし…

 あとは、頼んだぞ響君…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 震える手でドアをノックする。

 この病室には…翼さんが入院している。

 あれ以来、ギクシャクしたままの関係ではあるけど、緒川さんからお見舞いを頼まれ、やって来たはいいものの…

 あー!緊張するー!!!

 しかし、ここまで来たからには勇気を振り絞って…

 

「失礼しまぁす。翼さ…!?」

 

 思わず手に持つカバンを落としてしまった…

 だけど、この部屋の状況は…

 

「なにをしているの?」

 

 後ろに翼さんがいた。

 なにをしているの?なんて言ってる場合じゃない!

 

「翼さんッ!大丈夫ですか!?」

 

「入院患者に無事を聞くって、どういうこと?」

 

「だって、これは…!」

 

 部屋を指差し、この部屋の惨状を翼さんに教える。

 これは…明らかに何者かが侵入し部屋を物色した形跡!

 さっき司令も米国がどうの…とか話していたから翼さんの身になにかあったんじゃ…と思ったけれど、翼さんは無事のようだ。

 

「あ…あぁ…」

 

 翼さんの顔が妙に赤く、なんだか恥ずかしそうな顔をしている。

 これは…

 あーそういう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか翼さんが片付け苦手だなんて思ってもみなかったです。もう…完璧!みたいな」

 

 脱ぎ捨てられた服を畳みながら、話しかける。

 これでおしまいっと…

 

「私は完璧なんかじゃない。いつもは緒川さんとピー助がやってくれるから…」

 

「えぇっ!?男の人に…それどころかピー助君にまでッ!?」

 

「た、確かに考えてみれば色々問題ありそうだけど…」

 

「問題大有りですよッ!だってペットにお世話されてたらどっちがペットか分からないじゃないですか!!!」

 

「う、うるさいわね…飼い主は私よ!ピー助のお世話は…お風呂だって…自分で入ってる…ご飯だって…そういえばこの間、自分でアジを捌いて刺身に…なんなら私もそれを食べて…」

 

 どんどん雲行きが怪しくなってくる。

 私の中の翼さんがどんどん壊れていく。

 けど、なんだかこっちの翼さんの方が親しみやすい。

 

「そんなことより、今はこんな状態だけど報告書は読ませてもらっているわ。私とピー助が抜けた穴をあなたがよく埋めているということもね…まったく、ピー助はどこに行ったのかしら…」

 

 やっぱりピー助君のこと大事に思ってるんだなぁ…

 けど、最近気になりはじめたんだけどピー助君って一体なんなんだろう?

 ペンギン…じゃないよね?

 何故かペンギンで通ってるけど、絶対にペンギンじゃない。

 だってペンギンはあんなメカじゃないもん。

 そんなことを考えていると通信端末が鳴った。

 

『響さん、ノイズが現れました』

 

「分かりました!すぐに…」

 

『反応があった場所には微弱ですがピー助君の反応と…10年前紛失した聖遺物、イチイバルの反応もあります。現場に急行してください!』

 

「ピー助君が!?すぐ行きます!」

 

 イチ…なんとかいう聖遺物もあるとか言ってたけど…

 とにかくピー助君を連れ帰らなくちゃ!

 

「ピー助が見つかったの!?」

 

「はい…だけど、反応が微弱だって…」

 

「!?…なら、私も!」

 

「怪我人なんですから寝ててください。大丈夫、ピー助君は私が連れて帰りますから」

 

「…ピー助のこと、頼むわ」

 

「はいッ!!!」

 

 病室を出て、指定されたポイントに急ぐ。

 絶対に…絶対にピー助君を…

 

「廊下は走らないッ!!!」

 

「は、はいぃ!!!!!すいませえええん!!!!!」

 

 般若みたいなナース長に怒鳴られる。

 なので、ギリギリ走るとは言わない程度に最高速度の早歩きで病院を抜ける。

 …こんな調子で大丈夫かなぁ?



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ガイガン、復活

別に死んでないけどなッ!


「くっ…バカに多いなこの数はっ!」

 

 ガトリングを撃ち、ノイズは炭へ変わる。

 しかし、その数が減ったとは思えない。

 むしろドンドン湧いて出てくる。

 これじゃジリ貧だ。

 このままじゃ…

 集中がかけた一瞬の内にノイズの攻撃があたしを襲った。

 

「がっ…」

 

 このままじゃ…本格的にヤバイかもな…

 くそっ…あたしは自分が守りたいと思ったものさえ守れないのか…

 

 

 

 

 

「はああああ…はあッ!」

 

 声が響いた。

 その瞬間、ノイズ達が勢いよく吹き飛んだ。

 今の声は…あの融合症例の声だ。

 前とは違う。

 アイツは…強くなっている。

 

「ピー助君ッ!どこにいるの!?あなたは…」

 

 ピー助?

 あいつのことか?

 ピー助なんて名前してたのか…確かにピーピー鳴くもんな。

 

「あの…もしかして、ネフシュタンの…?」

 

「…ああ、そうだよ。今は取られちまったけどな。そんなことより今はこいつらを倒すのが先だ」

 

 そういうと融合症例はあたしが手を掴んで…これは…握手?

 こんな時になにを…

 

「私は立花響!15才ッ!誕生日は九月の十三日で、血液型はO型ッ!身長はこないだの測定では157cm!体重は…もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きなものはごはん&ごはんッ!あとはッ…!」

 

「なんの真似だ!こんな時に!」

 

「だって、一緒に戦うのに相手のこと知らないのは失礼かなぁって…」

 

 なんなんだこいつ…

 こんな戦場で…

 

「だから、名前を教えて?」

 

「雪音クリスだ…」

 

 この時のあたしはどうかしていたのだろう。

 素直に名前を教えてしまった。

 

「そっか、クリスちゃんっていうんだ…じゃあそっちの敵は任せた!」

 

「あ、あたしに命令すんじゃねぇ!」

 

 こいつと一緒にいると調子が狂う。

 あぁ…もう…

 

「やっさいもっさいぃ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隠れていろと言われたので近くにあった空のゴミバケツに隠れていた。

 クリスちゃんの歌声がさっきまで響いていたのに止んでしまった。

 クリスちゃんが危ないんじゃ…

 ん?

 歌が聞こえる…

 この歌声は響ちゃんの歌声だ。

 響ちゃんがここにきているのか… 

 響ちゃんが来てくれたならきっとクリスちゃんも大丈夫だろう。

 なんか分からんけど司令のこと師匠って言ってたしとんでもなく強くなっているはずだ。

 それはともかくクリスちゃんとケンカになってなきゃいいけど…

 しばらくするとクリスちゃんの歌声も聞こえてきた。

 二人は…一緒に戦ってるのかな…

 心配だ…

 ゴミバケツの蓋をちょっとだけ開けて外の様子を見る。

 

「?」

 

「ピ?」

 

 目の前にノイズ。

 目と目があい…

 これが運命の出会い…

 

「ピーーーーッ!!!(なわけねえだろこんちくしょうッ!!!)」

 

 咄嗟にレーザー光線を撃ってノイズを撃滅させる。

 やっべぇ…超ビビったぁ…

 ホラゲかよ…

 って、うん?

 俺、今レーザー撃った?

 そういえば…体が軽くなった気がする。

 ゴミバケツから飛び出て、軽く体を動かす。

 おー。

 おー。

 動けるッ!

 さっきまでの体のだるさが嘘みたいに消えたぞ。

 さっきのノイズにビックリしてちょっとハイになってるとか?

 いや、それにしたって…

 けど、ノイズを食べれば回復出来るしこのまま加勢に行くぞ!

 

 

 

 

 

 

「チッ!ちっとも数が減りやしない!」

 

「一体どこからこんな…」

 

「こうなったら絶唱を…」

 

「ダメだよッ!絶唱は負担もすごいって…」

 

「じゃあどうしろっていうんだッ!」

 

 そう叫んだ瞬間、爆発が起こった。

 ノイズが何かを破壊したのかと思ったがノイズが次々と炭へと変わっていく。

 一体、なにが…?

 

「あれは…」

 

 立花響が爆発した場所を指差す。

 爆炎の中に特徴的なシルエットが見える。

 あれは…ペンギンッ!?

 ペンギンが肩にノイズを担ぎ、ノイズの触手のようなものを口に咥えている。

 あいつ…もう大丈夫なのか?

 万全だというなら心強い援軍だ。

 あいつは対ノイズ用ということをフィーネが話していた。

 ノイズ相手ならシンフォギアに並ぶ戦力だ。

 しかし…

 

 

 

 

 

 

 

「ちっちゃいね…」

 

「ああ…ちっちゃいな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 襲いかかるノイズを千切っては投げ、千切っては投げ、ちょっと食べて、レーザー撃って、また食べて…

 あ~お腹が満たされるって幸せなことだなぁ。

 いただきますの精神も大切にしなければ。

 お、あれに見えるは響ちゃんにクリスちゃん。

 おーい。

 助太刀に来たぜぃ。

 

「ピー助君ッ!」

 

「ペンギンッ!」

 

「「なんで小さいまま(なんだ)ッ!?」」

 

 おわっ…

 ビックリしたぁ。

 二人共息ピッタリの仲良しさんでよかったよかった。

 お兄さん安心したよ。

 てっ、うぇ!?

 クリスちゃん急に持ち上げないでよ、ちょっと胃の中のものが…

 

「お前でかくなれんだろッ!なんで小さいままで来たッ!?」

 

 え、あぁ…いや、まだ大きくなれなくて…

 もう少しノイズ食べたら大丈夫かなぁって。

 

「まあまあ、ちっちゃいままでもノイズ倒してたし大丈夫じゃない?」

 

「ふざけんな!動物はもっと優しく扱え!」

 

 優しく扱うならもっと丁寧に抱き上げてくれると助かるかなって…

 

「そもそもお前らがこいつらを虐待してるからだなぁ!」

 

「ぎゃ、虐待!?なんのことッ!?」

 

「しらばっくれんじゃ…!」

 

 二人共そこまでに…

 ノイズの皆さんも空気読んで止まってくれてるから…

 ん?

 止まってる?

 今がチャンスやんけ(愉悦)

 クリスちゃんから降りて…

 おらくらえエメリウム…じゃない、レーザー光線ッ!

 レーザー光線を横薙ぎにしてノイズを大量に倒す。

 この感じ…内閣総辞職ビームだ…

 これ…結構気持ちいい…

 テトリスで大量に消した時みたいな…

 シン・ゴジラさんもこの快感を味わっていたのだろうか。

 それは誰にも分からないことだけど。

 ノイズの皆さんも今ので空気を読むのをやめたらしく一気に迫ってくる。

 おら、近づくやつは食ってやるぞぉ…

 逃げるやつも食ってやるぞぉ!

 ひゃっはー!!!!!

 

「なんか…ピー助君、テンション高いね…」

 

「エサが大量にいるからな…お前で例えるなら白米が向こうからやって来てるようなもんだろ」

 

「えー!それはテンション上がるッ!テンションフォルテッシモだよ~って…」

 

「な、なんだよ急に黙って…」

 

「いや、私の好きなもの覚えててくれたんだな~って思って」

 

「なっ!いや、嘘だ!今の無し!そう例えるなら…」

 

「もう、いいから私達もいくよ!クリスちゃん!」

 

「~ッ!こいつら全員倒したら覚えてろよ!」

 

 あらあら仲良しですこと。

 仲良しっていいねぇ。

 やっぱり俺の見立て通りクリスちゃんはやっぱりいい子だ。

 この調子で一緒に戦えたらいいな…

 そのためにはこいつらを倒さなきゃいけないか。

 もう結構食べたし、そろそろいくか!

 デュワッ!

 巨大化完了!

 ようやく本調子になれたって感じだ…

 ここらで一つ、決め台詞の一つでも言おうか…

 今、セブンの真似したからここはゼロの決め台詞で。

 

「ピーーー!!!(ブラックホールが吹き荒れるぜッ!)」

 

 …言葉を話せないの忘れてた。

 これじゃただの咆哮じゃねえか。

 まあ、怪獣らしくていいか。

 さて、響ちゃんとクリスちゃんもほぼ片付け終わったみたいだし…

 ガイガン最高の攻撃を見せてやろう。

 それは…

 熱線ッ!(本編未使用)

 レーザー光線なんかとは比べ物にならない威力。

 設定だけ存在した攻撃方法。

 そして…

 この威力!

 やっぱり怪獣は口からなんか吐いてこそだよね。

 大体倒し終わったか…

 よし、熱線終わりッ!

 熱線を吐き終えると口から煙が…

 えっ大丈夫?中身焼けてたりとかしない?

 …大丈夫そうだ。

 口から煙で思い出したけど、寒くて白い息出た時ゴジラの真似ってしたなぁ。

 あとペギラとか言って。

 ペギラの方は伝わんなかったけど…

 

「ピー助君、終わったね!」

 

 響ちゃん!お疲れ!

 元のサイズに戻って、サムズアップのつもりで右腕をあげる。

 見ない間に随分と強くなって…

 お兄さん泣きそうだよ…

 チラッと見たけどなんか武術極めてなかった?

 ああそうだ!

 クリスちゃーん!

 

「なんだよ…」

 

 クリスちゃんも一緒に二課に行こう。

 一緒に戦おうよ。

 

「あたしは…」

 

「クリスちゃん、よかったら私達と一緒に…」

 

「あたしは…お前達の敵だったんだぞ?」

 

 それがどうした。

 昨日の敵は今日の友だぞ。

 

「そうだね…敵だったかもしれないけど、一緒に戦ったらもう味方だよ。それに…」

 

 クリスちゃんの手を握る響ちゃん。

 ここは俺も…

 あっ、鉤爪だった…

 

「ほら、ピー助君も」

 

 響ちゃんに鉤爪の先を握られる。

 優しい子やで…

 こんな怪獣とまで手を繋いでくれるなんて…

 あ、関係ないけどどうにも小さくなると殺傷能力が下がるみたいだから大丈夫だけど、巨大化した時は気をつけてね?

 

「ほら、こうやって手を取り合えた…だからもう、私達は味方だよ?」

 

 うんうん。

 俺達は仲間で友達だ!

 友達…?

 トモダチハゴチソウ!

 …なんか変なのに乗っ取られそうになった。

 危ない危ない。

 

「ふん!そんな都合のいいこと…」

 

 まったくこの子は素直じゃないんだから…

 えいっ。

 

「いてっ!おいペンギン!抱きつくな!って…あはは!そこ、は…くすぐるなぁ!あははははっ!!!」

 

「ほら、ピー助君も一緒に来てほしいみたいだから一緒に行こう!」

 

「分かった!着いて、いくから、くすぐるのを…やめろペンギンッ!あははっ!!!」

 

「ペンギンじゃなくてピー助君だよ」

 

「ピ、ピー助!やめっ…」

 

 やめまーす。

 ようやく、名前で呼んでくれた。

 これがちょっと不満だったんだよね。

 ガイガンはペンギンじゃなくて雁だぞ。

 …それは、どうでもいいか。

 お、あの車は…

 

「響さんっ!あぁ!ピー助さんも無事なんですね!」

 

 緒川さんっ!

 ちょっと顔見てなかっただけでなんだか懐かしい気がする。

 

「よし、あとは緒川さん達に任せて…ご飯食べに行こー!!!」

 

 おー!

 

「あたしはいか…いや、行くから飛びかかろうとしないでくれ…」

 

 分かればよろしい。

 それにしてもこれで装者が三人、怪獣が一匹。

 これだけ揃えばあの痴女にだって勝てるはずだ。

 絶対にリベンジしてやらぁ!




オマケ CMパロディ

翼「最近、私のことを固い寝床とかペットにお世話されてるとかピー助は完全に私のことをなめていると思うの…ん、この本は…まず、上下関係をハッキリさせること…この本使えそうね」

ちっちゃいガイガンになってた Blu-ray DVDなんてものはない


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特撮主人公は死んで甦ったりするの多すぎ

令ジェネ初日行きました…
1型カッコ良すぎるだろ…
これから1型主人公の二次創作増えそう
俺の占いは当たる。


 クリスちゃんが二課に合流してから一週間。

 特にノイズが出現することもなく、平和な日常をおくって…いられるかというとそんなこともなく。

 あの痴女…フィーネという存在がいるということが分かった以上、前にも増して警戒していなければならない。

 警戒していなければならないんだけど…

 

「ピー助の飼い主は私よ。たかだか一泊させたくらいのあなたよりも私と遊びたいに決まっているわ」

 

「どっちが飼われてるか分かんないような奴を飼い主なんて認められるか!ピー助はあたしが面倒見るから病み上がりのあんたは休んでなッ!」

 

 なんということでしょう。

 前に危惧していた俺をめぐって争いが…

 

「あわわわ…ピー助君をめぐってケンカが…もう第何次ピー助君争奪戦か分かんないよ~!」

 

 ホントだよ、もう何回目なのか…

 ことあるごとにケンカ始まるからなぁ。

 最初は止めようとしていたんだけど、もう諦めた。

 もう好きにしておけばいい。

 

「ちょっと待って、立花。何故あなたがピー助を抱き抱えているの」

 

「え?いやぁピー助君の抱き心地がよくて…」

 

 ヤベっ!こっちに飛び火してきた。

 逃げよう。

 

「あっ!こら!逃げるなんて許さないわ!」

 

「あっ!待て!」

 

 ひえぇ!

 追っかけてきたぁ!

 逃げろぉ!!!

 

 

 

 

「どこに行ったのピー助…」

 

「どこに隠れやがった…」

 

 ひえぇ…

 怖いよぉ…

 青鬼と赤鬼は全然諦める様子はなく、俺を探している。

 捕まったらGAMEOVER

 ゲームのようにコンティニューなんてないから捕まったら…

 考えたくもない。

 まったくいつフィーネが仕掛けてくるかも分からないというのに…

 

「あらピー助君。どうしたの?こんなコソコソして…」

 

 了子さん!

 助けて!二人の鬼に狙われてるんだ!

 

「あー…大体察したわ。匿ってあげるから着いてきなさい」

 

 地獄に仏とは正にこのことか。

 正直、了子さんのことは少し苦手なんだけど今はそんなこと関係ない。

 あの鬼から逃げ切ることが最優先だ!

 

 

 

「さあ、入って入って~。ようこそ、私の研究室へ!」

 

 はえ~なんかいろんな本やら器具やらがたくさんだ。

 そういえば、はじめて目覚めた場所もこんな研究室だったな…

 あれから二年か… 

 あっという間だったな…

 奏ちゃんに拾われて、ノイズと戦うようになって…

 

「なぁにピー助君?黄昏たような顔して~」

 

 いやぁちょっとガイガンになってからを振り返ってました。

 そういえばあんまり自分(ガイガン)のことについて考えたことなかったな。

 ちょうどいい機会だしちょっと考えてみるか。

 そもそもなんで俺はガイガンになったんだろう?

 ていうかガイガンってなんだ?

 ゴジラシリーズの怪獣っていうのはもちろん知っているし、この世界では対ノイズ用ということも何回も聞かされているし…

 

「ピー助君。そういえば前に変身したわけなんだけど、調べたいからちょーっと手伝ってくれない?」

 

 変身…ああFWか。

 最近は色々ありすぎてすっかり忘れてた。

 確かに謎が多いし、発動条件が分かればFW使い放題だろうし魅力的な提案だ。

 天才の了子さんならきっと解明してくれるだろうから喜んで協力しますとも。

 で、なにをすればいいんですか?

 

「じゃあちょっとこの台に立ってくれる?」

 

 はーい。

 ここに立ってるだけでいいんだ。

 

「それじゃそのままじっとしててね…よし、これで終了!」

 

 え?なにしたの?

 一瞬過ぎやしない?

 ホントに検査なんてしたの?

 

「もうバッチリ!天才の私にかかれば一瞬よ!」

 

 はえ~。

 やっぱり天才はすごいんだな~。

 思ったより時間潰しにならなかったな。

 まあこの部屋に隠れていれば大丈夫だろう。

 あの二人はラボに用もなく来るような人でないし…

 

「ラボからピー助の気配がするわ…!やっぱりここにいたのねピー助ッ!」

 

 ふぁ!?

 青鬼が来たッ!?

 

「あちゃー…ピー助君ごめんね。これは助けられそうにないわ…」

 

 了子さんの薄情者ッ!

 匿うって約束じゃないか!

 

「見つかった時点で匿うのは不可能よピー助君」

 

 いやぁぁぁぁぁ!!!!!

 嫌だ!最近の翼さんはなんか目が怖いから嫌だ!

 一緒に寝させられる時も「もう離さないから…」とか言い出すもん!

 なんか怖いもん!

 

「ふふ…雪音はまだまだね。ピー助の気配を察知することも出来ないなんて」

 

 普通出来ねえよ!

 もうやだこのSAKIMORI。

 …まあ、心配かけたからなぁ。

 しょうがない、気が済むまで我慢するか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗くなったラボで、一人パソコンに向かう人物がいた。

 櫻井了子だ。

 

「流石はカストディアン…技術力が違うわ。だけど自分が作ったものに裏切られるなんて…」

 

 モニターに映る、ガイガンのデータに目を通しそう呟く。

 生物の体に組み込まれた機械。

 古代においてそれはオーバーテクノロジー。

 こんなことが出来るのは…出来るなら、神と称されていたことだろう。

 

「ん?これは…」

 

 ガイガンの内部構造が写された画像を拡大していく。

 そうして、画面に大きく映し出されたのは脳。

 しかし、脳の中央には小さな黒い影が存在していた。

 

「これは…癌?なんて、そんなわけがない…実際の大きさから考えても小さすぎる。ここに何か見られたくないものがあるのね…正にブラックボックス」

 

 今日はここまでとパソコンの電源を落とし、櫻井了子はラボを出た。

 妖しげな笑みを顔に浮かべながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助…かわいいわ…」

 

 現在、翼ちゃんと一緒に寝ています。

 ベッドに入って、照明も消してるんだけど…

 かれこれ二時間、翼ちゃんは寝ずに俺を抱き締めて、撫でてを繰り返している。

 退院してから毎日これだ。

 翼ちゃん、明日も仕事だから早く寝ないと…

 

「大丈夫、寝るよりもピー助と一緒にいる方が疲れが取れるから…」

 

 いやいや睡眠は大事よ?

 翼ちゃんは丈夫だから分からんかもしれないけど、睡眠時間が少ないと大変なことになるんだから。

 …こうなったら無理矢理寝かせるしかないか。

 布団に潜りこんで…

 

「ピー助が、私の胸に顔を埋めて…ッ!それは、反、則…かはっ…」

 

 よし、寝たか(気絶)

 まったくもうこの子は…

 俺も寝よう…

 

 

 

 

 

『ピー助…』

 

 奏ちゃん、まさか夢で会えるなんて。

 枕元に現れるなんてどうしたの?

 

『あぁ…最近の翼の病みっぷりがちょっとな…』

 

 そんな理由で。 

 もうちょい亡くなった人との対面というのは大事なイベントだと思うんだけどな…

 感動が薄れる。

 

『まあ、入院してる時にお前がいなくなって気が気でなかったんだよ翼は。何度も病院抜け出そうとしてナース長に捕まってたし』

 

 うーん、やっぱり心配かけてたよなぁ。

 …ちょっと待て、なんでそんなこと奏ちゃんが知ってるんだ?

 

『ほら、草葉の影から見守ってるて言うだろ?』

 

 あぁ…なるほど。

 …日常生活の行動には気を付けよう。

 

『そうだぞ、食べ物に釣られて他の女に持ち帰られたなんて翼が知った時はそれはそれは…っと、そろそろ時間だな。それじゃピー助、またな』

 

 うん、また。

 そうして少しずつ奏ちゃんは消えていった…

 

 カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。

 やっぱり夢だったか…

 

「ん…おはようピー助…」

 

 おはよう翼ちゃん。

 眠気眼の翼ちゃんは可愛い。

 やっぱり寝不足のようだ。

 はい、ベッドから出てー着替えてください。

 ほら、これ着替え。

 

「ありがとう…ピー助…」

 

 まだ頭は寝てるな…

 髪の毛もボサボサだし、とかさないと…

 こんな翼ちゃんの姿をファンが見たらどう思うんだろう。

 もう卒倒しちゃうかもしれない。

 だけど、俺はこっちの翼ちゃんの方が…




オマケ 擬人化ガイガン

翼「朝、目が覚めたらピー助が私そっくりの女の子になっていた…」

クリス「マジにそっくりじゃねえか!一体なんでこんなことになったんだよ…」

了子「詳しいことは分からないけど、一番見ている人そっくりになったんじゃないかしら?」

響「そのわりには胸が…」

ピー助(言えない。確かに一番見てる人は翼ちゃんだけど、ここ最近はクリスちゃんの胸部装甲も同じくらい見てるなんて…)

翼「…そこに直れピー助」

ピー助「ピッ!?」


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ガイガン、人生の先輩

いつもたくさんの感想ありがとうございます。
感想から新しい翼さんいじり思い付いたりするので、ドシドシ感想ください。
みんなで一緒に翼さんをいじろう!


「はあ~」

 

 どうしたんだい響ちゃん?

 さっきからため息ばっかりついて。

 悩み事ですか?

 よくないなぁ神聖なる食堂でため息なんて。

 折角のご飯が不味くなっちゃうじゃないか。

 あー、早くお昼ご飯こないかなぁ。

 

「実は…大事な友達とケンカしちゃって…」

 

 ほう。

 青春してますな。

 大丈夫、大丈夫、弁護士が出てきたりしなければ修復可能だって。

 

「は~いいなぁピー助君は。なんにも考えてなさそうで」

 

 カチン。

 ちょっと今のはいただけないですね…

 これでもたくさん考えてるんですよ!今日のランチとか青鬼からどう逃げるかとかクリスちゃんの胸に飛び込みたいとかフィーネの脅威とか友里さんに甘やかされたいとか今日のディナーとか寝床をいかに柔らかいものにするかとか明日の地球のこととか…

 ほら、こんなにたくさん。

  

「はー。このストレスをぶつけるためにノイズでも出てこないかな~」

 

 コラコラ。

 不謹慎だぞ。

 あんな奴等出てこない方がいいんだから。

 

「あ、ピー助君。お昼ご飯ですよ」

 

 友里さん!

 今日のランチはなんですか!?

 今日の気分は黒毛和牛のステーキなんだけど…

 

「ごめんなさいピー助君…実は予算の関係とか諸々あって…今日はこれしかないの。ごめんね?」

 

 これは…シシャモだと…

 スーパーで売ってるような…

 なんて…こと…

 あーストレス発散のためにノイズでも出てこないかな~。

 俺の怒りの炎をぶつけたいんだが。

 

「すごい…見るからに不機嫌に…」

 

「もう少ししたらまたいいもの食べられるから…それまで我慢してね」

 

 そう言いながら俺の頭を撫でる友里さん。

 その程度のことでこの俺が許すとでも?

 …あ~許しちゃう~。

 撫で方ホントに上手いよ~友里さん。

 ほえ~。

 あー飼い主が友里さんだったらいいのに…

 友里さんにならいくらでも飼われるのに…

 

 

 

テレビ局 風鳴翼控室

 

「どうしました翼さん?急に素振りなんてはじめて」

 

「いえ、家に帰ったら斬らねばならないものがある気がして」

 

 

 

 

 あ~心がピーピーするんじゃ~…

 この癒しがいつまでも続けばいいのに…

 しかし、幸せとはいつまでも続かないものである。

 

「警報ッ!ノイズが現れたようね…」

 

 ほう…この俺の幸せを邪魔するかノイズ…

 この野郎ッ!ノイズ共ぶっ●してやるッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノイズが現れたのは森林公園。

 現場に急行し、ノイズ達を蹂躙する。

 破壊は怪獣の十八番だ、ノイズ達を次々と切り裂いていく。

 切り裂いた時の余波で木まで斬ってしまう。 

 あぁ自然破壊ッ!

 くそ…ノイズめ…環境まで破壊しやがって…

 おらっ!ノイズ共!俺の時間を奪ったんだ!分かってんだろうなぁ!

 オラオラぁ!死神様のお通りだぁ!

 今日の俺は一味違うぜぃ…

 

「きゃああああ!!!」

 

 !?

 今の悲鳴…近いぞ!

 まだ人が残ってたか…とにかく助けるぞ!

 

 

 

 

 ノイズ達をすれ違い様に切り裂きながら声がした方向へと向かう。

 …どこだ、どこにいるんだ。

 もう手遅れなんて事態は避けたい。

 そんなの後味が悪すぎる。

 それに俺は、悲劇が苦手なのだ。

 いた!女の子だ!

 ノイズに追い詰められているけど、この距離なら大丈夫。

 レーザー光線、発射ッ!

 真っ直ぐにノイズ目掛けて放たれたレーザーはノイズを炭へと変える。

 大丈夫ですか!?

 

「こ、今度はなにっ!?ペンギンの怪物!?」

 

 ペンギンじゃないッ!雁だ!

 雁とはカモ目カモ科ガン亜科の水鳥のうち鴨より小さくて白鳥より小さい水鳥の…って違う。

 うーん助けたはいいけど俺じゃ敵にしか見えないよな…

 いいや、二課の人がいるとこまで連れて行こう。

 俺の姿見られちゃったし。

 それじゃ失礼して。

 

「え?ちょ、ちょっとなにする気!?」

 

 ちょっと黒服のお兄さん達のところに連れてくだけだよ。

 それじゃ、翔べガイガンッ!

 

「きゃーーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 上空から状況を確認するが…もう終わったみたいだ。

 安心して黒服…緒川さんがいたら緒川さんに任せられる。

 あ、いた。

 緒川さーんお届けものでーす。

 

「あぁ、ピー助さんお疲れ様です…その娘は…?」

 

 救助しました。

 あとは頼みます。

 

「救助してくれたんですね、ありがとうございます。あとは僕達で処理しますので帰還してゆっくり休んでください」

 

 そうさせてもらいます。

 よし、帰って友里さんにナデナデしてもらおう…

 お、あれに見えるは響ちゃん。

 

「緒川さーん!ピー助くーん!こっちも終わりま…未来…」

 

「響…」

 

 あれ、お友達?

 てか、この二人の間の微妙な空気はもしかして…さっき言ってたケンカ中のお友達?

 これは…めんどくさいことになりそうだ…

 

 

 

 

 

 

 

 二課本部に帰還して司令室に行くと仕事を終えた翼ちゃんと別件で動いていたクリスちゃんがいた。

 そして司令は重苦しい顔をしている。

 これは…何かあったようだ。

 ・

 ・

 ・

 難しい話だったけど要約すると二課の後ろ楯だった広木防衛大臣が殺害されたということ。

 元々、超法規的なことをやる二課は色々と目をつけられていて、そんな中で二課が不自由なく行動出来るように取り計らってくれていた人物。

 そして次の防衛大臣は今の副大臣…なのだが。

 この副大臣が親米派ということもあり、日本の防衛政策に米国の意向が汲まれやすくなってしまう恐れがあるという。

 あんまり関係なさそうだけど米国は聖遺物関連で何かと日本を突っついているらしく、二課の動きも慎重にならざるをえないらしい。

 そうなると俺も色々と動きに制限が出てしまうかも…

 それは嫌だな…

 

「ところで、クリス君の方はどうだった?」

 

「ダメだ…足跡すら見つかんねぇ…」

 

 クリスちゃんはフィーネ捜索の任務を受けていたけど…やはりフィーネの足取りはつかめないらしい。

 一体どこに隠れたのやら…

 奴の目的も分からないのが怖い。

 クリスちゃんはフィーネの口車に乗せられていただけだし…

 得体が知れないというのがこうも恐ろしいものなのか。

 

「そうか…今日はここまでにしよう。装者達はいつでも動けるようにしていてくれ」

 

 こうしてミーティングは終了して、司令室を出た。

 なんだろう、すごい嫌な予感がしてならない。

 もやもやして嫌な気分だ。

 こういう時は…友里さんは忙しそうだから…クリスちゃんの胸部装甲に突撃だ。

 クリスちゃんはさっき食堂の方に歩いていったからこっちだ。

 クリスちゃー…

 

「そうやって響はまた隠し事するんだ!!!」

 

 ふぁ!?

 ビックリしたー。

 この声は…さっきの女の子か。

 どうしよう、修羅場を目撃してしまった…

 ここ通らないと食堂行けないんだけどな…

 

「未来…これにはわけがあって…」

 

「もう聞きたくないッ!」

 

「未来ッ!」

 

 響ちゃんのお友達は走っていってしまった。

 ここ、機密だらけだからあんまりうろちょろするのはまずいんだけどな…

 そんなこと関係ないんだろう。

 

「うぅ…未来…」

 

 ああ…響ちゃんも泣いちゃって…

 …見てられないな。

 

「あ、ピー助君…ど、どうしたの?あ、分かった!お腹空いたんでしょ!さっきお昼食べ損ねたし、一緒に食堂に…」

 

 響ちゃん、平気なフリしたって無駄だぞ。

 全部見てたから。

 響ちゃんとの付き合いはかれこれ一ヶ月以上だけど、一人で背負い込んじゃうタイプなのは察していた。

 辛い時は辛いって言えばいいのに。

 人に言いづらいなら人じゃない俺に言えばいいじゃない。

 

「すごいねピー助君。見透かされてるみたいだ」

 

 うん、見てたからね。

 

「私…未来がいないとダメダメなんだ…」

 

 うんうん。

 

「未来がいてくれたから…どんなに辛いことがあっても頑張れたんだ…平気、へっちゃらって」

 

 うんうん。

 

「私…未来がいないと…」

 

 うんうん…

 話は大体分かった…

 響ちゃん、今すぐ未来ちゃんを追いかけなさい。

 

「追いかけろって?無理だよ…今の未来に私がなにを言ったって…」

 

 ええい!うじうじといつまでも!

 さっさと行く!

 行って思いの丈をぶつけてきなさい!

 

「…でも」

 

 でもじゃない!

 行く!

 最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に!

 

「は、はいぃ!!!」

 

 よし、言ったか…

 こういう時は黙って思いをぶつけるしかないんだ。

 拳で語り合う?

 いや、口で言ってください。

 Gガンの最終回みたいに。

 さて…若者を叱咤激励したら腹が減った。

 食堂でなんか食ーべよっと。

 




オマケ

翼「司令や友里さんよりも出番が少ない、この残酷…この残酷は…心地よくない…」


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デュランダル?YF-29ですか?

たくさんの感想をありがとうございます。
おかげでどう翼さんをどういじるかアイデアがドンドン生まれました。
やっぱりみんな翼さん(をいじるのが)好きなんすねぇ。
あと、メリークリスマス!
さらにお気に入り500件突破!
最高のクリスマスプレゼントです!


 シシャモ美味しい…

 むしゃむしゃ…

 

「はい、だし巻き玉子…ピー助の旦那、最近調子はどうですかい?」

 

 ん…ぼちぼちです…

 むしゃむしゃ…グビッ…

 ぷはー。

 

「そうですかい…まあ最近はどこもそんなもんでさぁ」

 

 だし巻き玉子うまい…

 てか、俺なんも言ってないのになんで親父さんは分かるんだよ。

 そもそも言葉通じないしな。

 

「言葉なんて不要なもんですよ。ただ、俺が作ったもんをどんな顔で食ってるか…それだけで分かるもんです」

 

 はえー。

 流石やで親父さん。

 

「いやぁすまないなぁピー助。こんな時間まで付き合わせて」

 

 いいんですよ司令。

 どうせ帰ったって飼い主のお世話しなきゃならんのです。

 もうそろそろ独り立ちさせなきゃいかんのですよ。

 それにここの飯美味しいし。

 

「はっはっはっ。ピー助の旦那も苦労しているようで」

 

 ホントですよ、この間なんか下着が上と下で全然違うのを着ていこうとしてたし…

 日本が誇る歌姫があんなんでいいんですかね?

 

「まあ人は誰でもなんか一つは欠点ていうやつを持ってるもんでね。こないだ、わたしなんか出かける時に携帯だと思ったらテレビのリモコンだったなんてことがありましてね…」

 

 こうして夜は更けていく。

 戦う男達はこうして傷を癒していくのである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 はっ!夢か…

 なんだ今の夢…

 なんで司令と飲みに行ってるんだよ…

 頭痛ぁ…

 なんだこれ、二日酔いか?

 なんで酒飲んでない、の、に…

 あれ、ここはどこだ?

 見たことない部屋だ。

 あれ。

 なんだこのベッドの膨らみ。

 翼ちゃんかな?

 翼ちゃん起きて、ここどこ?

 まさか俺を変なところに連れ込んでないよね?

 いくら翼ちゃんだからって…

 

「う、ん…ピー助君…」

 

 ふぁ!?

 !!!?!!!??!!?!?!

 友里さん!?

 い、一体なにが起こっているというんだ…

 これは…

 そ、そうか!これはスタンド攻撃だなッ!

 新手のスタンド使いが俺にスタンド攻撃を仕掛けているんだなッ!

 こうなったら無敵の俺のスタンド「スターツバサチャン」で…

 

「ふわぁ…あ、おはようピー助君…昨日は随分と楽しんだみたいね…」

 

 ふぁ!?

 なんにも楽しんでないですよ!

 俺は何もしてません!してませんからぁ!

 

「どうしたのそんなに慌てて?もしかして覚えてないの?昨日のこと」

 

 昨日のこと!?

 一体なんだって言うんだ!? 

 …あれ、もしかしてさっきの夢は夢じゃない?

 夢は現実、現実は夢?

 なにがなにやら…

 

『おはようございます友里さん、翼です』

 

 ふぁ!?

 ドアの向こう側から翼ちゃんの声だとぉ!

 なんてことだ今の状況を翼ちゃんに見られたら…

 って、あれ。

 友里さんちゃんと服着てる…

 おかしい、普通こういう場合は一糸纏わぬ生まれたままの姿だというのに…

 

「おはようございます翼さん。ごめんなさいこんな格好で…」

 

「いいんです。朝早くに押し掛けた私も私ですから。それで、ピー助は…」

 

 一体なにがどうなってるんだ…

 ピースケ、ワカラナイ…

 

「ピー助、帰りましょう。ほら、友里さんにしっかりとお礼をして」

 

 アリガトウゴザイマシタ…

 

「また翼さんが忙しい時は私が預かりますからいつでも言ってください。昨日は司令に連れ回されたからあまりピー助君と遊べなかったので…」

 

「司令が…?一体どこに…」

 

 居酒屋です…

 なんか色々思い出してきました恥ずかしい…

 それにしても、あの店旨かったなぁ。

 また司令に連れてってもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 さて今日は翼ちゃんとお仕事…といっても二課で待機するだけなのだが…

 ノイズが出たら出動っていう感じだから出なければ何もない。

 というわけで暇なのです。

 暇なので久しぶりにあのプロのトリマーさんからシャンプーしてもらってます。

 

「ピー助君、今日も鱗綺麗だね~」

 

(私、なにをしているんだろう…なにをシャンプーしているんだろう、報酬がいいからってまた仕事引き受けたりなんかして…もうやだ早く帰りたい)

 

 あー気持ちいい…

 やっぱりこの人だよなぁ…

 もう二課に就職してくんねえかな…

 無理だよなぁ…

 あぁ気持ちいい…

 

 

 

 

「綺麗になったねピー助」

 

「ピ!」

 

 やはり綺麗は気持ちいい。

 どこかの誰かさんに見習ってほしいもんですなぁ!

 

「…ピー助、その顔は一体どういう顔なの?」

 

 別にー。

 あの居酒屋の親父さんならいざ知らず、翼ちゃんに俺の表情から心情を察するなんて不可能よ。

 普段は頑張ってジェスチャーで色々伝えようとしてるけど今回はなにもしてないから大丈夫…いてっ。

 なんか首に当たったような…

 そんなことより翼ちゃん、部屋汚さないでよ?

 

「ふむふむ…翼ちゃん、部屋を汚すなだそうよ」

 

 こ、心を読まれた!?

 この声は…了子さんッ!?

 その手に持っている機械は一体…

 

「じゃじゃーん!その名もズバリ!サイコトロニックジェネレーター!!!なんとピー助君とコミュニケーションが取れるのだ!な~んてね。どう?すごいでしょう?」

 

「な、なんという素晴らしい発明!?櫻井女史ッ!それを私にも…!」

 

 それはダメだ!

 今まで言葉が通じないから好き勝手に色々言ってきたけどそいつがあったら俺のストレスフリー生活が崩壊してしまう!

 なんとかしてあの装置を破壊しなければ…

 

「あぁんダメよピー助君。これを壊そうなんて。私の中でも五指に入るほどの発明なんだから」

 

 これすらも読まれているだと!

 一体どういう仕組みで心を読んで…

 

「心を読んでいるわけじゃないの。これはね、本来の用途は思念を通わせて暴れる動物を静めたりするようなものなんだけど…使い方によってはこうやって思考が読めるというわけ。それにしてもピー助君ってだいぶ人間みたいな思考をしているのね」

 

 ヤバイ、このままじゃ俺の思考が筒抜けだと…

 よし、考えることを放棄しよう。

 なにも考えない。

 なにも考えない。

 なにも考えない…

 

「読まれまいと考えないようにするなんて本当に人間臭い…すごい発見ね」

 

 ぎゃー!

 もうなにをしても無駄かよッ!

 もういい諦めよう…

 

「あら、読めなくなった…なるほど、本当に思考を放棄したのね」

 

「櫻井女史ッ!私にもそれをっ!」

 

「残念。実はこれ偽物でしたー!考えが読めるなんてウソウソ!そんなもの作れたら今頃ペット業界に革命を起こした天才櫻井了子としてもっと名を馳せているわね」

 

 え?ウソ?

 嘘だって?

 嘘にしては驚異の的中率100%だったけど…

 

「ん、弦十郎君からメール…至急、司令室へ…ノイズではなさそうだけど…」

 

 なんだろう?

 翼ちゃんにもメールが来ているようだし…とにかく司令室に行ってみるか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュランダル…ですか」

 

「ああ…この完全聖遺物を永田町で管理することになった…」

 

 デュランダル?YF-29…

 好きなんだよね…主人公らしくてしゅきぃ…

 また見たくなってきたけど…この世界じゃやってないみたいだ…無念。

 永田町?

 なんでさ?

 ここの方が安全じゃない?

 

「ここ最近のノイズの発生パターンからノイズがデュランダルに引き寄せられているのではという仮説から政府が移送を決定した。というわけで、デュランダル移送任務を行う。その護衛に装者達は当たってくれ」

 

 なるほど了解やで~。

 装者達っていうときは自然と俺も混じっているのだ。

 さて、デュランダルというと確か…ローランが使った剣だっけか?

 あんまりこのあたり詳しくないんだが…

 それにしても完全聖遺物とは…

 剣だからやっぱり武器としてすごいのかな?

 翼ちゃんが持つようになったら終わりだと思う。

 …それだけは絶対に阻止しなければ、俺のストレスフリー生活のために! 




オマケ

擬人化ガイガン スペック

翼さんそっくりの巨乳。
髪は水色に銀と金のメッシュが入っている。
戦闘時に鎌とノコギリが装備される。
喋るとボロ(元の人格)が出るので出来る限り喋らないようにしているためクールな性格と勘違いされる。


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少女の願い

クリスマス…特撮…デンジャラスゾンビ…
うっ頭が…


「ほら未来、この子がピー助君…って未来は知ってたね」

 

「うん。ノイズから助けてもらったからね」

 

 ケンカをしていた二人は仲直りをして、装者を目撃してしまった未来ちゃんはなんと二課の外部協力者になったのだ。

 

「あの時はありがとねピー助」

 

 いえいえ。

 人類守護が俺の使命だからなッ!(キリッ)

 

「私からもありがとうピー助君。私の大事な友達を守ってくれて」

 

 よせやい照れくさい。

 あんまり褒められなれてないから困るんや。

 こう、背中が痒くなるから…

 あぁ!背中に手が届かない!

 

「あ!もうこんな時間!未来、わたし訓練に行ってくるから!」

 

「うん。頑張ってね」

 

 響ちゃんは走っていってしまった。

 元気だなぁ。

 若いなぁ。

 

「ピー助、私からのお願い聞いてもらっていい?」

 

 うん?お願い?

 別にええで。

 

「響をお願いね。響はすぐ平気、へっちゃらって言ってなんでもないフリするから…」

 

 もちろんやで。

 二課の先輩としてしっかりとお世話しますとも。

 

「ありがとうピー助。今度何か食べ物作って持ってくるね」

 

 俺の舌を満足させられるかな?

 ガイガンになってからの俺はいいものばっかり食べてるからな。

 

「ふふっ。腕によりをかけて作るから期待してて」

 

 はーい。

 楽しみにしとくで。

 それじゃ未来ちゃん俺はこのあたりで。

 

「バイバイ、ピー助」

 

 バイバーイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュランダル移送任務当日。

 なぜか了子さんのピンクの車に乗っていた。

 てかなんで了子さんの車がデュランダルを載せてるの!?

 

「別にいいじゃない。まさかこんな普通の車で聖遺物を運ぶなんて誰も思わないでしょう?名付けて敵の裏をかく作戦!」

 

「そのまんまじゃねえか!?てか、なんであたしとピー助があんたの車に乗せられてんだよ」

 

 そうそう。

 組み合わせがよく分からない。

 まあクリスちゃんに抱き抱えられているからいいけど…

 

「まあまあ、巡り合わせよ巡り合わせ。それよりどう?二課には慣れた?」

 

「…まあな。最初は信用なんなかったけど、みんないい人達だから…」

 

 クリスちゃん…

 最初は人慣れしてない狂犬だったからなぁ。

 今ではすっかりその性格とか見抜かれて狂犬というよりツンデレ子犬的な扱いだけど。

 あの時期はしばらくクリスちゃんから離してもらえなかったし、翼ちゃんとも険悪だったし…けどいつの間にか打ち解けていたな…

 一体何が…

 

 ちなみに、ピー助は知らないが二人はピー助という共通の話題で盛り上がり打ち解けていたのである。

 同じ好きな物を語り合えるというのは素敵なことだね!

 

 さて、今のところ順調だけど…

 !?

 ノイズが来るッ!

 

「ピー助、どうした!?まさかノイズが…」

 

「…ピー助君のノイズ察知能力は正確だから間違いないわ。至急、本部に連絡して…ッ!?」

 

 言葉を遮り、了子さんは急にハンドルを大きく左にきった。

 ノイズが砲弾の如く飛んできたからだ。

 車は縁石に乗り上げて、横転してしまう。

 うぅ…クリスちゃん、了子さん大丈夫?

 

「あぁ…ピー助も無事か…?」

 

「二人共、とにかく車から出るわよ」

 

 はい…

 なんとか這い出て…こういう時、小さいって便利だなぁ。

 

 

「ピー助!雪音!ケガはないか!?」

 

 翼ちゃんと響ちゃんもそれぞれ車から降りたようで合流した。

 

「運良くなんともない…それより…」

 

「このままみんなでノイズをやっつけましょう!」

 

「あぁいくぞ!」

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

『Killter Ichaival tron』

 

 俺も巨大化!

 四人同時変身だ!

 …俺もなんか変身音声欲しい。

 一人だけただの巨大化だしなぁ…

 

「ピー助、いくわよ」

 

 あっ、はーい。

 ガイガン、いきまぁす!

 まずは手前のノイズを鉤爪で斬って…

 ん?今日はいつもより力が漲っているぞ。

 なんでだろう?

 別に朝ごはんが特別豪勢だったとかではないし…

 まあ力が出ないのに比べたら全然マシだ。

 とにかくノイズ達を倒して…って、めっちゃわいてるなぁノイズ…

 ここ最近も大量だったけど今日のこれは一番じゃないか?

 ノイズ自体は俺や装者達からすれば脅威ではないけど、大量にいるというだけで大変だ。

 一体一体が弱くとも次々出てくるとなると…

 ん?なんだあの箱?

 …ってぇ!あれデュランダルやんけ!

 さっき横転した時の衝撃で飛び出したのか…

 とにかく回収しないと…!

 てぇ!うぇぇ!?

 な、なんだ!?

 ノイズが壁のように立ち塞がって…

 

「こいつらまさか…フィーネが操っているんだ!そうじゃなきゃこんな統率の取れた行動しない!」

 

 それじゃあフィーネはデュランダルを狙って…

 奪われてたまるかよ!

 

「私達で道を開く!立花はデュランダルの回収を!」

 

「分かりました!」

 

 よし、道を開くならこの技だ…

 熱線ッ!(原作未使用)

 

「こいつももらってきな!」

 

 クリスちゃんもミサイルを発射し立ち塞がるノイズ達を炭へと変える。

 道が出来た!

 今のうちに!

 

「おおおおッ!!!」

 

 響ちゃんは駆け出した。

 響ちゃんを邪魔するノイズをレーザーで倒して援護する。

 翼ちゃんもノイズの群れに突撃し、陣形を崩している。

 この調子なら…

 

「デュランダルは…無事です!」

 

 よかった…

 いや、なにか様子がおかしい。

 あれは…箱を破ってデュランダルが飛び出したぁ!?

 なにが起こってんだよ!オカルトは俺苦手だぞ!

 

「なにが起こって…とにかく確保しなきゃ…」

 

 響ちゃんがデュランダルを手にした瞬間、それは起こった。

 

「ア、アアア…!」

 

 響ちゃんの体は黒が蝕んだ。

 目は赤く染まり、牙まで生えている…

 あれは…一体…

 

「暴走しているの…?」

 

 次の瞬間、響ちゃんは翼ちゃんに襲いかかった。

 手にしたデュランダルを上段から振り下ろす。 

 剣の達人である翼ちゃんに剣で挑むなんて普通では勝機なんてない。

 しかし…

 

「速いッ!!!それに、この力は…!うあああっ!?」

 

 翼ちゃんが押し負けた!?

 吹き飛ばされ、近くの建物の壁に激突する。

 翼ちゃん!

 

「っ…ピー助…私は大丈夫だから、立花を…」

 

 翼ちゃん…

 分かった…

 じっとしてるんだよ。

 

「アアアアアア!!!」

 

 響ちゃん…

 完全に飲み込まれてしまっている…

 

「チッ…どうすりゃ止められるっていうんだよ…」

 

 …方法は不明。

 とにかく暴れるだけの獣と化した響ちゃんを止めるには…

 こちらも獣とならなければならないのかもしれない。

 しかし…

 

「ッ!!!ピー助ッ!!!」

 

 えっ…

 目の前には響ちゃんがデュランダルを振り下ろそうとして…

 

「ぐあああっ!!!」

 

 クリスちゃん!

 そんな…俺を庇って…

 俺がウジウジと決断を鈍ったから…

 

『響をお願いね』

 

『私は大丈夫だから、立花を…』

 

 響ちゃんを…みんなを…助ける!

 悩んでいられるか!

 力を…

 俺に、力を…!

 

『SYSTEM FINALWARS』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助…」

 

 ピー助の体に変化が起こった。

 体が石へと変わっていく。

 なにが起こって…

 

「アアア!!!」

 

 ピー助に暴走した立花が迫る。

 石へと変わったピー助めがけてデュランダルを振り下ろそうと…

 

「やめろーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『GIGAN START UP』

 体を覆っていた石がひび割れ、崩れ落ちていく。

 そして、殻を破り現れる。 

 決戦機能『ファイナルウォーズ』を起動させたガイガンが―




原作ならここで黒幕からの特殊ED入る。


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残酷な現実、懐かしき夢

鳴風うづき様、誤字報告ありがとうございます。
なんなんだろうダイジェストな友達って…
連続投稿ッ!
無印編を畳むべく、俺はただひたすらに…書くッ!
翼さんとマリアさんとピー助の三角関係を早く描きたいんや!
そんなんだから展開がなんか強引になるんだよ…


 殻を破り現れたガイガン。

 それは以前、ネフシュタンと相対した時の…

 あの時は暴走をしたが…

 しかし、私には分かる。

 今のピー助は、いつものピー助だということが。

 

 

 

 

 

 

 

 システム正常、各部に異常なし、出力は形態変化前と比較し80%向上。

 いける。

 目の前にはデュランダルを振り下ろす響ちゃん。

 だが、遅い。

 

「ッ!?」

 

 右腕の鎌でデュランダルを弾く。

 デュランダルさえ手離させればいい。

 デュランダルに丸ノコ、ブラデッド・スライサーを放つ。

 体勢を崩していたところに飛来するブラデッド・スライサー。

 デュランダルに命中し、響ちゃんはその衝撃からデュランダルを手放した。

 

「あ、あれ?わたし、は…」

 

 響ちゃんは元に戻り、気を失ってしまった。

 倒れる響ちゃんを抱き止める。

 これで終わ…ッ!!!

 咄嗟に後ろに飛び退く。

 さっきまでいた地面に桃色の鞭が突き刺さっている。

 これは…

 

「かなり能力が向上しているようね。デュランダルと真っ向からやりあえるなんて」

 

 フィーネ…

 やはりお前か。

 電柱の上からこちらを見下ろしている。

 響ちゃんを地面にそっと置いて奴の元へ。

 

「かつて…カストディアンの中に怪獣を排斥しようとしたもの達がいた。しかし、怪獣の力は並大抵の物ではなく計画は難航していたというが…」

 

 なにを話して…

 あ…

 

『お前は怪獣を殺すための怪獣!私の手駒!』

 

『裏切り者が味方だと?信用なるかよ』

 

『俺とお前…いいコンビだぜ…』

 

 この記憶は…

 前より鮮明に…

 

「お前を対怪獣用として造り、怪獣を狩ろうとしたらしいが…お前は裏切り、怪獣側についた。しかし、怪獣は星の力が弱まるにつれて姿を消していった…」

 

 何がいいたい!?

 

「いいえ?私の計画はデュランダルを手に入れたことで完遂した。けれど―計画をより盤石なものにするために、駒を増やす」

 

 駒を増やす…だと?

 一体なにを…!?

 こ、これは…体が…動かない。

 フィーネの意識が流れ込んできて…

 

「サイコトロニックジェネレーター…これは生物と心を通わせるなんていう優しい物ではないわ。これは、生物を人間の支配下に置くための物よ…既にこれを撃ち込まれているあなたは―私の忠実な駒というわけよ!」

 

 意識が…飲まれていく…

 これは…

 ごめん、翼ちゃん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴が…フィーネ…

 動こうにも先ほどのデュランダルの一撃が効いているらしい。

 しかし、何とかして動かなければ…

 ピー助になにか語りかけているようだけど…

 なにか、ピー助の様子がおかしい…

 ピー助がゆっくりとこちらを振り向き、その赤い単眼から光線が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立花!雪音!無事か!」

 

 瓦礫から這い出て、みんなの無事を確認する。

 

「あぁ…なんとか…」

 

「翼さんも無事ですか!?」

 

「ええ…」

 

 だけど…なぜピー助が…

 

『全員聞こえるか!?』

 

 司令からの通信…その声色に私は不安をおぼえた。

 

『ノイズが出現した…場所はリディアン音楽院だ。至急こちらに戻ってきてくれ!』

 

 リディアンということはつまり、二課本部直上。

 それにこの時間ならたくさんの生徒が学校に…!

 

「そんな、リディアンに…すぐに行かなくちゃ!」

 

 立花の言葉に頷きシンフォギアを纏い、駆け出す。

 ピー助、フィーネのこともあるが…今は防人としての務めを果たさなければ…

 

 

 

 

 

 

 意識が飲まれて、朦朧として…

 自分が闇に溶けていく…

 俺は…俺とは…

 自分が失くなっていく。

 このまま、分解されていって―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…おい!どうしたんだよ、ボーッとして。機械の故障か?」

 

「ん…いや、ちょっと頭を空っぽにしていただけだ」

 

 仲間…相棒であるメガロの声で現実に引き戻された。

 なにか、夢を見ていたような気がするけど…どんな夢か忘れてしまった。

 

「なんだよ頭空っぽにしてたって。お前はいつも頭空っぽだろう?」

 

「なんだと」

 

「やんのかぁ!」

 

「やめてください二人共…折角、いい隠れ家が見つかったというのにそんなことしたら奴等に見つかってしまいます」

 

 そう言って俺達を制止するモスラ。

 モスラは怒らせると怖いからな、やめておこう。

 怪獣のケンカなんて辺り一面大惨事になるから折角見つけたこの地下に広がる大空洞まで崩落させかねない。

  

「そうは言ってもよぉ。いつまで隠れてりゃいいんだ?早いとこあいつらをぶっ飛ばしちまえばいいだろう」

 

「それはいけません。彼等は人々に怪獣への憎しみを植え付けています。今、下手に動けば彼等の思うツボです」

 

「そんな悠長なこと言ってっからいつまでも成虫になれねえんだよ…」

 

「なんですって?」

 

 あ、モスラがキレた。

 あぁ糸がメガロに…

 さっきまでケンカを止めていた聖女は今や素が出て、ただの不良娘へと…

 

「悪かった、悪かったって…謝るから許っ…!んんー!」

 

 あぁついに全身ぐるぐる巻きに…

 容赦ないなぁモスラ姐さん。

 虫怪獣対決は今のところ0勝7敗でメガロが負け越している。

 余計なこと言うから…

 

「全くガイガンを見習ってほしいですね…物静かで。沈黙は金ですよ」

 

 いえ、喋るとボロが出るから黙ってるだけです…

 さて、メガロに巻きつかれた糸をほどいてやるか。

 ほどくっていうか、切るっていうのが正しいけど。

 

「ぷはー!あ、あと少し遅かったら息出来なくて死んでた…」

 

「余計なこと言うからだ」

 

「そうですよ」

 

「はいはい悪かったよ…バトラが避けるのも分かるぜ」

  

 ボソッと小声で悪態をつく。

 バトラが避けるのも分かるけど今それを言う必要ないだろ…

 またぐるぐる巻きの刑だぞ!

 

「あん?」

 

「いえ!モスラさんこそ怪獣界の聖女だと、そう言ったのであります!」

 

 はあ…全くこいつは…

 ムードメーカーだけどトラブルメーカーだからなぁ…

 

「さあ、今日はもう遅いですし休みましょう」

 

「俺も疲れた寝る…」

 

「じゃあ俺は見張りしとくよ」

 

 この体になったことで睡眠は必要なくなった。

 二人をしっかりと休ませて万全の状態を保たせないとな。

 ただでさえこんな暗くてジメジメしたところにいるからストレスだって溜まるだろうしな。

 さて、大空洞の入り口まで来て丁度いい大きさの岩に座る。

 この時代の空は広く、星の光を遮る物もない。

 空気も澄んでいて…むしろ、美味しいッ!

 …な、なんだ今のは…急に今のセリフを言わなければならないような気がしたが…

 変なプログラムとか組まれてないよな…?

 そうだとしたら奴等め、俺を造るのにかなり遊んでないか?

 いや、変なこと考えてないでちゃんと見張りをしよう…

 いや、見張りをするというのは建前だ。

 本当は、この空を見たくて見張りをするなんて言っているのだ。

 よく分からない、別の世界に連れてこられて、ガイガンにされて…だけど、ここは地球なのだ。

 空は変わらない。

 空は、いつの時代も、どんな天気でも、空は空なのだ。

 だから、俺は空を見上げる。

 何もかもが違うこの時代の地球でも、空だけは俺がいた時代とは変わらないのだから。




オマケ 擬人化ガイガン2

翼「ほらピー助、お風呂に入るわよ。まだ人の体に慣れてないでしょうから洗ってあげるわ」

ピ「いや、それは…」

翼「どうしたの今さら?これまでもお風呂には一緒に入ってきたでしょう?」

ピ(言えない…まだ自分の裸を見てなくて、自分の胸部装甲を見たら興奮で鼻血出すかもなんて…それに翼ちゃんより大きいからショック受けちゃうかも…)

翼「…斬る」

ピ「ピ!?」


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古の記憶、現代の戦い

お前今日何本目だよ…と思ったそこのあなた。
クリボッチなんです。
小説書くしかないんです。
そして、読者の皆様に渡せるプレゼントがこれしかないんです。
つまり、私はサンタだった…?(錯乱)


 俺はどこにでもいる平凡な大学生だった。

 特にスポーツで全国大会に出たとか、テストで常に学年一位だとか、特別な才能があるとかそんなものはないからどこにでもいる平凡な大学生だろう。

 周りを見たって特別な人間なんていうのはいない。

 少し周囲と変わったところがあっても、結局それも普通と見なされるのだ。

 特別と見なされるには、並大抵の努力では届かないだろうし、天性の才というものが必要だろう。

 だが、自分を二十年やってきたけれどついに特別な才能なんてものは見当たらなかった。

 

「特別な存在に…なってみたかったな…」

 

 しかし、その願いは間違ったものだった。

 特別であるからには、普通ではいられない。

 普通でいられるということがどれほど幸せなことか。

 それを俺は、身を持って知ることとなる。

 

 

 

 その日、男は死んだ。

 いや、死んだとされた。

 事故で重症を負った彼は病院へと搬送されたが、病院から彼は消えてしまった。

 あのケガで病院から出られるはずがない。

 このことは伏せられ、その日、男は死んだのである。

 

 

 

 

 強い光で目を覚ました。

 な、なんなんだ…これは…

 よく、医療ドラマで見る手術室の照明のようだけど…

 起き上がろうとすると、なにかに遮られた。

 手足が拘束されている。

 今、俺は大の字で拘束されている…

 一体、どうして…

 

「目が覚めたようね…」 

 

 女の声がした。

 艶やかで、美しい声だがどこか眠たげというか気力がないというか…

 しかし、今の俺には関係なかった。

 

「お前は誰だ!?なんで俺を拘束して…」

 

「質問は一つにして頂戴。まあ、まず私はエム・ゴ…アヌンナキが一人にして改造執刀医…のなり損ない」

 

 エム・ゴ?

 アヌンナキ?

 改造執刀医?

 なり損ない?

 なにがなにやら…

 

「あ、言葉遣いには気をつけてね。私が死にかけのあなたを助けたんだから…」

 

 死にかけ?

 少しずつ記憶が甦る。

 そういえば、俺はトラックにひかれて…

 

「そう。あなたはそこでもう死ぬところだった。だけどそれを私がこの世界に呼び寄せて手術した」

 

「この、世界…?」

 

「ここはあなたがいた世界とは違うのよ。なんていったかしら、ギャラルホルンだったかなぁ。それであなたを観測し、こちらの世界へと連れ出した」

 

 なにを言っているんだ、こいつは。

 俺がいた世界とかこっちの世界だとか…

 俺を騙そうとして…

 だけど、さっき確実に事故にあったのは覚えている…

 もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 

「理解出来ないという顔をしてるわね…じゃあ、証拠を見せてあげるわ」

 

 ここでようやく気づいたけど、この部屋はだいぶ広い。

 そして、照明がつくとそれは現れた。

 

「これは…ガイガン!?なんで!?」

 

「?なぜあなたがガイガンを知っているの?」

 

「そりゃだって映画で見たし…」

 

 俺はこの歳になっても特撮から卒業出来なかった特オタだし…

 実物のガイガンとかこんな状況じゃなきゃ大興奮してた。

 

「これは怪獣を殺し、この世界をより人間が住みやすくするための存在。まさかこの星にあんな存在がいるなんて思ってもみなかった…今まで様々な兵器が投入されたけど全て敗北している…忌々しいけど、怪獣に対抗するには怪獣の力を用いなければならなかった」

 

 それが俺と一体どう繋がるんだ。

 仮に奴が言っていることが本当だとして、俺は一体なぜこの世界に連れてこられたというのか。

 

「これを起動させるのにあるものが必要だったの。より私達のために忠実に働き、高度な思考をする…あれの脳も改造こそしたけど、それをより最適に動かすには…人間の脳が必要だったの」

 

 人間の…脳…

 ま、まさか…

 

「けど、誰でもいいわけでもなかった…今まで何人もの実験体を用いたけれど全部失敗。だから、ちゃんと適合する人の脳を探したのよ。並行世界まで観測して。そしたら…もう、気づいてる?気づいてるよねぇ!おめでとうッ!君はぁ!ガイガンの適合者に選ばれましたァッ!」 

 

 さっきとは人が変わったかのように生き生きとし始めたエム・ゴとかいう女。

 このままでは…俺は脳を…

 

「私がぁ…君を特別にしてあげる…君はぁ全ての怪獣を倒しッ!そして私はぁ!…怪獣を絶滅させた救世主としてぇ…崇め奉られるぅ…あの忌々しいシェム・ハではないッ!この私こそがッ!神に相応しい!」

 

 そして、メスを手に取り…

 

「私があなたを特別な存在に生まれ変わらせてあげるわぁ…」

 

「やめろ…やめろぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リディアンに到着すると、そこは既に瓦礫の山となっていた。

 あちこちから黒煙が上り、生命を感じさせない。

 

「未来…未来ーーー!!!」

 

 返事はない。

 そんな…

 いや、きっとどこかに逃げたんだ。

 二課に行けば地下深くだからそうそうノイズだって…

 

「あれは…櫻井女史ッ!なんで…」

 

「フフフ…アハハ!!!既に計画は完遂させた…全て…あなた達は私の手の平の上で踊らされていたに過ぎない!」

 

「なにを言ってるんですか了子さん…」

 

「櫻井了子は…既にいない…私は…」

 

 了子さんの体が光に包まれ、そこにいたのは…

 

「フィーネ…!」

 

 一体、なにが起こっているの?

 本当の了子さんは…?

 

「リインカーネーション…十二年前、アメノハバキリの起動実験にてアウフヴァッヘン波形に触れた櫻井了子は私の器となった…」

 

 そんな…

 今まで了子さんだと思って接していたのは…

 

「これから計画の最終段階へと移る。カ・ディンギルを起動させ月を穿つ!」

 

 月を穿つ…

 一体なぜ、そんなことを…

 

「月こそが…不和の象徴!バラルの呪詛の根源…統一言語を奪われた私は…あの方への言葉を封じられた…故に!私は月を穿つ!」

 

「そんなことをしたら地球は!?」

 

「天変地異が巻き起こるだろうな。そして、聖遺物の力を持つ私に従うようになる…」

 

「そんなことさせるとでも?」

 

「邪魔をされるのは推測済み。だからこそ私は駒を用意した」

 

「駒…だと…まさか!?」

 

「そう!そのまさかよ!…ガイガァァァン!起動ぉぉぉぉ!!!」

 

 その言葉を合図に、ピー助君が瓦礫の中から現れた。

 あの、姿の変わったまま…

 

「ガイガン、三人を足止めしなさい」

 

 そう命じ、フィーネはこの場を去った。

 

「そんな…ピー助君が…」

 

「…二人はフィーネを追って。私がピー助の相手をする」

 

「お前に出来んのかよ…そんなことが」

 

「えぇ…私は防人、この身は人類守護のためのもの…ピー助が人類を脅かすものの手先となるなら…私はピー助だろうと…斬る」

 

 そう言う翼さんの顔は悲しさをなんとか隠そうとして、隠しきれていなかった。

 

「こんな、残酷なこと…ダメですよ翼さん…二人が戦うなんて、あっちゃダメです…」

 

「二人に背負わせる訳にもいかないだろう。この残酷を」

 

「…フィーネを追うぞ」

 

「クリスちゃん!でも!」

 

「でもじゃない…そいつがやるって言っているんだ。やらせてやれ」

 

 そんな…

 そんなの…

 あんまりだよ…

 

「行け、立花。小日向達がまだ無事だとしてもこれからフィーネがやろうとしていることを止められなければ結局、小日向も…誰も救うことは出来ないのよ」

 

「翼さん…分かりました。絶対に了子さんを止めてみせます!」

 

「ええ…頼んだわよ」

 

 この場を翼さんに任せて、クリスちゃんと一緒にフィーネ…了子さんを追いかける。

 絶対に…絶対に止めてみせる!

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく、二人きりになれたわね。ピー助…」

 

 ピー助は動かない。

 じっと両腕の鎌を構えて、警戒している。

 

「訓練で戦うことはあれど、本気の戦いは初めて。楽しみましょう?…はあっ!」

 

 刀を構え、突撃する。

 ピー助は鎌やノコギリと近接戦闘用の武器に目が行きがちだが、この姿なら目から放つ拡散光線に胸から撃ち出す丸ノコギリがある。

 近距離から長距離までカバーしている。

 しかし、私にも遠距離の攻撃手段がないわけではない。

 

『蒼ノ一閃』

 

 青いエネルギーの刃がピー助に向かって飛ぶ。

 ピー助は…動かない。

 なぜ…

 その答えはすぐに分かった。

 

「…!」

 

 右腕の鎌で、蒼ノ一閃を切り裂き、打ち消した。

 …なるほど、さすがはピー助と言ったところ。

 これは、難しい戦いになりそうね…




オマケ 擬人化ガイガン

響「みんなでカラオケだー!」

ピ「ほえー」

翼「ピー助、ここは歌を歌う所よ」

響「ピー助君歌ってみよう!いつも翼さんの曲聞いてるでしょ?」

ピ「やってみる…」

ピ「ぼえ~」

響・翼「ピー助(君)は音痴だった…がくっ」


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魔塔、立つ

昨日の連続投稿のせいか疲れがヤバイ…
なんか文章が浮かばない…
このままじゃガイガンと翼さんとマリアさんのトライアングルストーリーが書けないぞ!
頑張れ!俺!
世界中が俺を待っている!(自意識過剰)


 剣戟の音が響く。

 刀と鎌が打ち合い、火花が散る。

 

「ピー助…覚えてる?あなたと私がはじめて会った日のことを。奏と一緒にご飯をあなたにあげた…」

 

 私が話しているにも関わらず、ピー助は鎌で切りかかってくる。

 これは、しっかり躾が出来ていない私の責任ね…

 

「あなたが来てから、私と奏とピー助の三人でいることがいつの間にか当たり前になって、とても楽しかった…!」

 

 刀を上段から振り下ろし、ピー助の脳天を狙う。

 だがこんな分かりやすい攻撃がピー助が当たるはずもなく、回避され、反撃にバイザーから光線が放たれる。

 光線は刀で弾き、防御する。

 二人にはああ言ったが…私にピー助を斬る覚悟なんてなかった。

 私は未だにピー助をフィーネから取り戻そうとしていた。

 だって、こんな残酷は…奏が望まない。

 

「ピー助…ピー助は歌が好きでしょう?奏が歌を口ずさむとピー助はいつも聞き入ってた…」

 

 あの日の光景が目に浮かぶ。

 ピー助を抱いて、穏やかな顔で歌う奏がいた。

 そんな日常を私は守りたくて…だけど…

 奏がいなくなって、ピー助がいなくなって…

 なんとか探しだして、連れ戻して…

 それからも、奏の死から立ち直れない私をピー助は支えてくれた。

 ピー助がいたから、私は戦ってこれた。

 ピー助に助けられて、私はこうしてここにいる。

 だから今度は、私がピー助を助ける番。

 

「ピー助…あなたが一番好きだった歌を…あなたに届ける」

 

 逆光のフリューゲル。

 ツヴァイウイングの曲だから、本当は奏と二人で歌う曲だけど…

 奏…私に力を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ…ここは…

 俺は…

 そうだ!俺は、あの女に…

 それで…

 

『申し訳ないことをした…』

 

 暗闇の中、声が響く。

 重低音の、温かさを感じる声が…

 誰かが俺に話しかけている。

 

『死に体の私が奴等に見つからなければ、君が犠牲となることもなかった…本当にすまない』

 

「じゃあ、あなたは…ガイガン?」

 

『そう呼ばれていたな…人がつけた名だが、気に入っている』

 

 その言葉に嘘はなさそうで、本当に気に入っているようだ。

 

『私はもうじき消える。これまでも多くの人の子が私の体へと入ってきたが10秒と耐えきれる者はいなかったが…どうやら君は、私の体に合うらしい。だから、私からの最後の願いを聞いてくれ』

 

 最後の願いだなんて…

 そんな…

 

『奴等に抵抗してくれ。怪獣達を…この星の命を守ってくれ』

 

 声が徐々に遠くなる。

 少しずつ、消えていくのが分かる。

 

『幸いなことに協力してくれる仲間がいる。君が私の体を動かせるようになったら気づいてやって来てくれるはずだ。それと…困ったことがあればゴジラのところに行け。いろいろ言われるだろうが、アイツは根はいいやつだからな。故に奴は怪獣の王と呼ばれるのだ』

 

 ゴジラ…

 ガイガンがいるし、他の怪獣もいるような口ぶりだったからいるとは思っていたけど…

 やはり、怪獣の王なのか…

 

『ああ…消えるか…出来ることなら、もう一度、この翼で大空を翔びたかった…』

 

 それから、ガイガンさんの言葉は聞こえなくなった。

 暗闇に静寂が訪れる。

 ガイガンさん…

 俺は…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歌が…聞こえる…

 暗闇の中、歌が…翼ちゃんの歌声が響く…

 この歌は…逆光のフリューゲル…

 ツヴァイウイングの…翼ちゃんと奏ちゃんの曲…

 俺は…

 フィーネに操られて…

 翼ちゃんが歌っている…そして、その隣には奏ちゃんが…

 

『ピー助…帰ろう?』

 

 あぁ…!

 俺はなにをしている。

 あの女に操られて…

 フィーネの意思が、黒い波となって流れている。

 くそッフィーネ!

 出てけ!出ていけぇ!

 俺から出ていけッ!!!

 首が熱い…!

 ここが…フィーネになにかされたところか…!

 くそッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 歌が効いたのか、ピー助に変化があった。

 あれは…苦しんでいるの?

 校舎の壁に後頭部を打ち付けて、擦り付けて…

 …あそこになにかあるというの?

 それなら…

 

「ピー助!今助けるから!」

 

 暴れているところに近づくのは危険…

 まずは動きを止める。

 短刀を取り出し、ピー助の影に向かって投擲する。

 

『影縫い』

 

 これで動きを封じて…

 背後に回り、後頭部を見ると…首になにかが撃ち込まれたようだ。

 さっき暴れたことにより、この異物が露出している。

 これを取り出すのは…難しい。

 ピー助を傷つけてしまうが…

 

「ごめんね、ピー助…少し我慢して」

 

 短刀でこの異物を抉り、取り出す…

 ピー助が悲痛の叫びを上げるが…我慢していて、もう少しだから…

 …!

 取れた!

 

「ピー助ッ!」

 

 元の姿に残ったピー助が倒れる。

 まさか、今ので…

 

「ピー助ッ!ピー助ッ!目を覚まして!」

 

 そんな…

 私はピー助を助けることが…出来なかったの…?

 そんな…

 しかし、悲しんでいる余裕など、戦場は与えてくれなかった。

 大地が震えた。

 この揺れは、一体…?

 次の瞬間、塔が天高く聳え立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二課本部中枢。

 ここにはフィーネが人知れず開発していたカ・ディンギルの中枢。

 ここにデュランダルをセットすれば…

 

「了子君…」

 

「…よくここが分かったわね」

 

 風鳴弦十郎が私を睨み付けている。

 ここは私以外知らないはず…

 

「俺がなにもしていないとでも思ったのか?ここが…二課本部そのものがカ・ディンギルと気づいたのは先程だ…塔を建造するなんてどうしたって人目につくからな。隠すには地下に伸ばせばいい…そういうことだろう、了子君?」

 

「まだ私をその名で呼ぶか…!」

 

 ネフシュタンのムチをあの男めがけて振るう。

 しかし、あいつはそれを容易く避けたった一歩で私の懐へと入り込んだ。

 

「なっ…!?」 

 

「うおおおッ!!!」

 

 拳が来る。

 ただの人間の拳と普通なら嘲笑う。

 しかし…

 この男の拳は避けざるをえない。

 

「ッ!!!」

 

 男の拳は勢いそのままにさっきまで私のいた床を粉砕する。

 しかし…砕けたのは床だけではなかった。

 

「ネフシュタンが!?余波だけでひび割れたというの!?」

 

 やはりこの男は脅威となりうる…

 しかし、人間ではノイズに敵わない。

 ソロモンの杖よりノイズを召喚しようと構え…

 

「させるかッ!」

 

 床を踏み砕き、破片を蹴り飛ばしソロモンの杖を弾き飛ばした!?

 ソロモンの杖は天井へと突き刺さり…

 やはりこの男、規格外。

 このままでは…

 

「おおおおおッ!!!!!」

 

 雄叫びと共に、私に迫る。

 私は動かない。

 あの拳が当たれば、ただではすまないだろう。

 しかし…

 

「弦十郎君ッ!」

 

「ッ…!」

 

 男の中に、一瞬の躊躇が生まれた。

 思った通りだ。

 この男は…優しすぎる。

 この隙に、ムチで男を突き刺した。

 馬鹿な男だ…

 非情に徹しきれば、あるいは…

 

「司令!?」

 

 あの男は…緒川か。

 それと、あの少女は確か、融合症例の友人だったか…

 緒川が忍びの技を使うとしても、私の敵ではない。

 緒川は私に向かって拳銃を撃つ。

 放たれた弾丸三発は全て私の左胸に命中する。

 いい腕ではあるが…

 無力。

 このネフシュタンの鎧の前には無力。

 

「そんな…」

 

「このままでは…」

 

 所詮、人では私を止められない。  

 シンフォギア装者でも来なければ…

 

「はあッ!」

 

 その声と共に、天井が崩れた。

 現れたのは…

 

「ちょせい!」

 

 弾丸の雨が降り注ぐ。

 ガイガン…足止めも出来ないなんて。

 やはり獣など使い物にならないということね。

 

 

 

 

 

「未来、緒川さん!師匠をお願いします!早く!」

 

「ありがとうございます!さあ、未来さん」

 

「響っ!」

 

「未来…わたしは大丈夫だから。今は安全なところに逃げて」

 

「…分かった。響も、絶対に帰ってくるんだよ?」

 

「うん。絶対に帰ってくる」

 

 未来と緒川さんは去った。

 なら、ここからは本気で…

 

「お前達はどこまでも…しかし、計画は既に最終段階!ここで邪魔をされるわけにはいかないッ!」

 

 了子さん…フィーネはムチをわたし達…ではなく、天井へと伸ばした…

 あれは…ソロモンの杖!?

 

「ノイズでも時間稼ぎには使えるか…」

 

 大量のノイズを召喚するフィーネ。

 これじゃ…

 

「チッ…面倒なことを…」

 

「あなた達はそこで見ているといいわ。カ・ディンギル起動の瞬間を」

 

 そう言って、フィーネはデュランダルを取り出した。

 一体なにを…

 

「デュランダルを炉心とし、カ・ディンギルは起動する…!」

 

 デュランダルがセットされると地面が大きく揺れた。

 そして、少しずつ上昇をはじめ…

 

「おい!一旦ここを離脱だ!これはヤバイぞ…!」

 

 クリスちゃんの言葉に頷き、地上を目指す。

 カ・ディンギルの起動を阻止出来なかった…

 




オマケ 擬人化ガイガン

翼「ピー助、今度私がしっかり歌というものを指導してあげる」

ピ「それじゃあ、お…私は翼ちゃんに家事教える…」

翼「え」
 ・
 ・
 ・
響「わぁ、ピー助君。料理上手~!」

ピ「そんなことない」

響「そういえば翼さんって料理出来るんですか?翼さんならきっと和食得意なんだろうな~」

ピ「翼ちゃんは料理なんて…むごっ!」

翼「も、もちろんよ。今度、腕によりをかけて作ってあげるわ!」

響「やったー!翼さんの料理楽しみ~」
 ・
 ・
 ・
翼「ピー助…私に料理を教えてください…」土下座

ピ「見栄なんて張るから…」


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剣戟

戦闘描写、特に剣を用いた戦いを描くのが難しい。
高校の体育の選択で剣道やったくらいしかないんだからぁ。
竹刀でいろんな必殺技の真似してたような奴ですいません。


「あれが…カ・ディンギル…」

 

 目前に突如として聳え立った、巨大な塔。

 しかし、フィーネは月を穿つと言った。

 塔で如何にして月を穿つというのか。

 

「どうやら、斬ったようね…愛するものを」

 

「フィーネ…!」

 

 不敵に笑うフィーネ…

 あいつのせいでピー助が…

 

「この塔でどうやって月を穿つか、皆目見当もついていないだろうから教えてやる。これは荷電粒子砲…この一撃により月は穿たれ、人類はバラルの呪詛より解放される!」

 

 荷電粒子砲…

 そんな兵器がまさか二課を隠れ蓑に建造されていたなんて…

 

「お前達では止められまい。もはや一刻の猶予もないのだから!」

 

「止めてみせる!私は防人…人類のために、たとえ死しても止めてみせる!」

 

 刀を構え、突撃する。

 加減など無用。

 全身全霊、私が持てる全ての力を持ってして…フィーネを斬る!

 

「はあッ!!!」

 

 フィーネはムチを剣のように変えて応戦し斬りあい、短刀を投げつけ牽制する。

 足をかけられ、体勢が崩されるがそこから逆羅刹を放つ。

 逆立ちし、コマのように回転し足に装着された刃で斬りつける。

 しかし、向こうはシンフォギアの開発者。

 技も熟知している。

 回避されるがすぐに逆羅刹をやめて、追いすがる。

 刀と鞭が交差する。

 この距離は…私の距離だ。

 鍔迫り合いに競り勝ち、フィーネの体勢を崩す。

 ここで…!

 フィーネの心臓めがけて突きを放つが…

 

「なっ…」

 

 奴の獲物は剣ではない。

 鞭だ。

 刃先に奴の鞭が巻き付いている。

 

「くっ…」

 

「身動きが取れなくなったなぁ?」

 

 不敵に微笑むフィーネ。

 もう一方の鞭が振るわれ…

 宵闇に鮮血が舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ガ……さん、ガイ…さん、起きてくださいガイガンさん」」

 

 誰かが呼んでる…

 この声は…

 

「「あなたはもう自分の意思で動くことが可能です。どうか、目を覚ましてください」」

 

 目を開く。

 いや、開くような目ではなかった。

 起動したというのが正しい。

 今の声の主は…

 …どこにもいない。

 幻聴…?

 

「「ここですガイガンさん。私達はここです」」

 

 声のした方を見てもいない…

 もうちょっと目線を下げて見るか。

 …

 ……

 いた。

 小人だ。

 小人がいる。

 ガイガンとなって、かなり巨大化したからその小ささに拍車がかかっている。

 瓜二つの…双子の女性。

 左右対称な服に二人で同時に話す…この人達って…

 

「「私達は敵ではありません。私達はコスモス…小美人とも呼ばれています」」

 

 やっぱり。

 コスモスは確かVSシリーズの時のだったか。

 小美人というだけあって小さいし、美人だ。

 長●まさみ位綺麗だ。

 それに小さいと可愛らしさにとんでもない補正がかかるようだ。

 

「「申し訳ありません…あなたがそうなってしまう前に助けることが出来ればよかったのですが…」」

 

 気にしないで。

 君達のせいじゃない。

 

「「ありがとうございます。だけど、安心してください。あなたを操るために組み込まれたパーツに細工をしました。これでエム・ゴはあなたを操ることは出来ません」」

 

 それはありがたい。

 奴の操り人形になるなんてごめんだしな。

 それにしてもパーツに細工とか一体なにを…?

 

「「その話は後で。今はここから脱出することが先です」」

 

 そうだな…

 いっちょここから脱出しますか!

 ほら、小美人さん達、肩あたりに乗ってて。

 …よし、乗ったか。

 それじゃあここから怪獣らしく破壊!蹂躙といきますか!

 …小美人さん、その手のスイッチはなんですか?

 

「「爆破スイッチです。ポチッとな」」

 

 なんの躊躇いもなく押したぁ!

 次々と爆発が起きてあたり一面火の海に!

 この人達ホントに小美人!?

 テロリストの間違いじゃない!?

 

「「さあ、早く!」」

 

 さあ、早く!じゃねえよ!

 ああこうなったらもうヤケだ!

 俺を縛りつける鎖を引きちぎりながら、立ち上がる。

 あんなに一緒だったのにが流れそう。

 それはさておき。

 なんだろう、燃え盛る火の海を見ていたら俺までなんか破壊したくなってきたぞ。

 くそ、今になってあの女への怒りが燃え上がってきた。

 全部ぶっ壊してやる。

 打壊しじゃあ!

 おらぁ!

 レーザーだこの野郎!

 燃えろ燃えろ!

 仕返しだこの野郎!

 

「「その調子ですガイガンさん。もっとやっちゃってください」」

 

 おう!やってやらぁ!

 破壊!破壊!破壊だぁ!

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり破壊し終えて、飛んで逃げた。

 よくよく考えたら小美人達早く脱出とかいいつつ俺に破壊を促してたぞ。

 どっちが悪い奴か分かったもんじゃない。

 

「「あれは裁きの炎…コスモスに伝わる災厄の炎です」」

 

 いや、燃やしたの貴女達ですよね?

 まあ俺もスカッとしたからいいけど…

 

「「そうでしょう!スカッとしましたよね!私達もエム・ゴの計画の邪魔をしたと考えたらとてもスッキリしました!」」

 

 やっぱこの人達、絶対小美人じゃねえわ。

 小美人にこんなのいないもん。

 もっと平和を愛する人達だもん。

 鬱憤晴らしてスカッとするとか言い出さないもん。

  

「「あなたが小美人に幻想を抱いているのはよく分かりました。けど、みんなこんなもんですよ?」」

 

 こんなもんなの!?

 えー…

 まあこの際いいだろう。

 ザ・ピーナ●ツとか長澤●さみがとても素晴らしい小美人達だったんだろう。

 そういうことにしておこう。

 

「「あ!見えてきました!あそこです!あそこがインファント島です!」」

 

 あれが…

 インファント島ということはつまり、モスラがいるのか…

 ヤバイ、怪獣の大先輩にして大スターのモスラさんだ…失礼のないようにしないと…

 あー緊張してきた…

 お、あの海にいるのは…エビラだ!

 それに島の周りを飛び回っているのは…大コンドルだ!

 すげえ!モスラ以外もいるぞ!

 

「「この島は彼等、アヌンナキも近づきませんから…今ではこうして怪獣達が身を守るために集まってきているのです」」

 

 はえー。

 さすがインファント島やで。

 けどこんな怪獣いて大丈夫?

 

「「はい。モスラが怪獣達を纏めています。おかげでみんな仲良く暮らしているのですよ」」

 

 ここが楽園か…

 俺もここに住まわせてもらお。

 

「「ガイガンさんにはエム・ゴをぶっ飛ばしてもらいますのでそれまでお預けです」」

 

 てめえらやっぱり小美人じゃねえ!

 差別だ!

 怪獣差別だ!

 サイボーグだからか!

 サイボーグだからなのか!

 

「「いえ、ガイガンさんにはエム・ゴを倒す力があります。彼女のやろうとしている…怪獣を滅ぼすということは、やがてこの星全ての命を奪うことに繋がります」」

 

 ?

 エム・ゴは怪獣を絶滅させたいだけじゃないのか?

 

「「怪獣はこの星の守護者です。それがいなくなるということは…空からやってくる者に対抗するものがいなくなるということです」」

 

 空からやってくる者?

 それって一体…?

 

「「天より現れる黄金の竜…そう伝承にはあります」」

 

 天より現れる黄金の竜…

 それって…

 

「「これまで度々、それは現れたそうです。けれど怪獣達によって撃退されています。しかし、怪獣達がいなくなってしまっては…」」

 

 対抗する手段がない、と…

 確かに人間では勝てないだろう。

 だからこそ、怪獣が必要というわけか…

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

「なっ…!?」

 

「こ、これは…」

 

 鮮血を散らせたのはフィーネ。

 奴の腹を銀色の刃が貫いている。

 この刃は…

 

「おのれガイガンッ!!!よくもこの私を──!」

 

 フィーネの背後、ピー助が腕の鎌でフィーネを貫いていた。




本編 擬人化ガイガン

響「みんなで温泉だー!」

クリス「ふい~極楽極楽っと…」

ピ「ぴ~…」

響「ねえ、クリスちゃんとピー助君どっちが大きいの?」

ピ「ピ!?」

クリス「いきなりなに言い出すんだよ…」

響「いやぁどっちも同じくらいだからちょっと気になって…」

ピ(響ちゃーん!?後ろ!後ろ!)
 
クリス(バカ!後ろを見ろ!)
 
響「どうしたの二人共?身長の話だよ?」

ピ・クリス「なんだ…」

翼「ピー助、雪音…覚悟ッ!」
 
ピ・クリス「」


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月を穿つ光

今回は短め。
ところでカ・ディンギルってどれくらいの威力なんですかね?
サテライトキャノンより上?


 ピピピピピピ…

 システム、復旧…

 俺は…

 フィーネに操られて…

 長い夢を見ていた。

 懐かしい、仲間達との日々を。

 まだ完全ではないけど思い出したぞ。

 フィーネ…小美人達がそんな名前を言っていたな… 

 とにかくフィーネを止めないと…

 ようやく視界がハッキリしてきた。

 あれは、翼ちゃんとフィーネが戦っている。

 加勢しないと…

 ッ…!

 まだ体の各部の修復が終わってない…

 これでは…

 そうだ、死んだフリしておこう(唐突)

 または芋るともいいますが…

 フィーネが近くに来たところを、ザクっと。

 ガイガンそういうの得意だもんね。

 ちなみに俺は伏せ芋は嫌いだ。

 まあ伏せ芋にやられるのは自分の索敵不足が原因なんだが…

 ふう、5000年ぶりにFPSの話題を出した。

 そう考えると俺ってもうだいぶおじいちゃんでは?

 いや、ウルトラ年齢ならまだタイガ以上ゼロ未満になるはず…

 実年齢は人間で換算すればメビウスくらい。

 うん、まだ若い。

 若いったら若いのだ。

 別に5000年ずっと活動してたわけじゃないから、DIO以上に海底で眠ってただけだから。

 って、考えてたらキター!

 フィーネキター!

 しかも翼ちゃんがピィンチ!

 ここはカッコよく決めなければ…

 しれっとFW版に変化しといて…

 おらぁ!今だッ!

 

「なっ…!?」

 

「こ、これは…」

 

 どうも、中村主水ことガイガンことピー助です。

 例のBGMを脳内で再生し、鎌をグリグリする。

 こいつ再生するからな、しっかりとぶっ刺しとかなきゃ(使命感)

 

「おのれガイガンッ!!!よくもこの私を──!」

 

 よくもこの私を?

 それを言うならよくもこの俺を操ってくれたな。

 悪いな、俺はヒーローらしい戦いを出来るような奴じゃないんだ…

 ヒールはヒールらしく邪悪にやらせてもらう。

 

「ぐあああッ…!私から離れ、ろ…!」

 

 フィーネはもがくが抜け出すのは不可能に近い。

 深く突き刺したからな。

 ここから空いてる左手で更に斬りつけて、再生を促す。

 いくら再生能力が高くても限界があるはず。

 再生不能になるほどの傷を与えれば…!

 

「ネフシュタンを甘く見たな」

 

 なっ!?

 こいつ、俺を取り込もうとして…

 

「ネフシュタンの再生能力はこういう使い方も出来る…」

 

 このままでは…

 これは、覚悟しなければいけない…

 左腕を振り下ろして…

 ──右腕を切り裂いた。

 

「ほう…完全に融合されるのを防いだか」

 

「ピー助ッ!?」

 

 痛…

 こういう時、中途半端な体が嫌になる。

 いっそのこと全て機械なら…

 いや、この痛みがあるから俺は生きていると言える。

 そんなこと言ってる場合じゃないか。

 さて切り落とした右腕は…

 融合してやがる…

 ネフシュタンの鎧は各部に刃が生えて、鞭の先端に鎌状の刃が装備されている。

 

「…右腕だけではこんなものか」

 

「よくもピー助を!はあッ!」

 

 翼ちゃんがフィーネに向かって駆け出す。

 無闇に突撃するのはダメだ!

 くそ…俺も行かなきゃ…

 ッ…!?

 ダメージの蓄積が…

 こんな時に…!

 

「翼さん!ピー助君!」

 

「ピー助無事か!…お前、右腕が…」

 

 俺はいいから翼ちゃんを助けて…

 流石にダメージが多くて動けそうにない…

 

「分かった…お前はここでじっとしてろ。お前の飼い主はあたしが助ける」

 

 お願い…クリスちゃん、響ちゃん。

 

「うん。任せてピー助君」

 

 俺の飼い主を…よろしく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…やりづらい」

 

 刃を手にしたフィーネは攻撃力と凶悪性に磨きがかかった。

 迂闊に近づけばあの凶刃の餌食だ。

 

「なら近づかなければいいだけだ!」

 

 その声と共に銃弾の雨がフィーネに降り注ぐ。

 雪音と立花が合流してくれたか…

 

「翼さん!うわっすごいトゲトゲしてる…」

 

「立花は特に気をつけて…あの刃、ただの刃と侮ってはダメよ」

 

「分かりました!」

 

 これで装者が三人…

 数ではこちらに利があるが…

 向こうは完全聖遺物が二つ、それとピー助の力を吸収している。

 そのポテンシャルは計り知れない。

 だが、やらねばならない。  

 

「いくぞッ!!!」

 

 雪音の援護を受けながら、立花と共に駆け出す。

 フィーネは鞭を私達に向け、射出する。

 刃が私達に向かってくるが、この程度避けるのは容易い。

 立花も難なく避け、距離を詰める。

 剣と拳の同時攻撃。

 奴に攻める隙を与えまいと畳み掛ける。

 しかし、ネフシュタンの再生能力により私達の攻撃は無意味なものとなっていた。

 

「ふふふ…はははッ!!!お前達は時間をかけすぎた!既にカ・ディンギルの発射準備は整っている!」

 

「なに…!」

 

 なんとかして、カ・ディンギルを破壊しなくては…

 しかし…

 

「だったら、こいつでどうだ!」

 

 雪音が巨大な二本のミサイルを発射した。

 雪音の火力ならば…!

 

「ッ…!させないッ!」

 

 フィーネはミサイルを鞭で破壊した。

 これでもダメなのか…

 だが、諦めてたまるか…!

 

「翼さん!あれ!」

 

 立花が空を指差す。

 空を、ピー助が飛んでいた。

 まさか…!

 

「おい!あいつまさか!?」

 

「手負いの獣になにが出来るッ!」

 

 カ・ディンギルから光が放たれる。

 月へと向かって進む光は…

 月を欠けさせた。

 

「バカな!?直撃するはずだというのに…まさか!?」

 

 一体なにが…

 まさか…

 

「あぁ…!そんな…」

 

 雪音は狙撃時に使うバイザーを装備して、空を見上げていた。

 光が…堕ちていく…

 あれは…まさか…

 

「ピー助ぇ!!!」

 

 悲痛な叫びが闇夜に響いた。




オマケ 擬人化ガイガン 擬人化の始まり

翼(ん…なんだか寝苦しい…けど、柔らかくて温かい…このまま寝てても…いや、今日は学校だ起きなければ)

翼「誰だこれは!?私に似ているが…ピー助はどこにいった!?というかこいつは何故全裸なんだ!?」

ピ「ぴ…?」
 ・
 ・
 ・
翼「にわかには信じられないが…本当にピー助なんだな…色々、ピー助じゃないと知らないことがあるし…」

ピ「うん、ピー助だよ」(やべえわこれめっちゃ巨乳なんですけどぉ!やべえ…やべえ!)

翼「とにかく全裸だと寒いだろうから着替えを…」

ピ「翼ちゃん…入らない」

翼「そんなはずは…なるほどなるほど。その胸が邪魔なのね、斬ってあげるからちょっと待ってて」

ピ「ピ!?」


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シンフォギア、飛翔

今日は全国的にクリスちゃんの誕生日!
祝え!
…前話のまえがきで書こうとして忘れてたから今日中に仕上げて投稿するわけじゃないから!
全然違うんだから!


 痛みが引いたか…

 片腕だけの俺でも翼ちゃん達の盾くらいにはなれるか。

 よし…

 いや、この気配は…

 カ・ディンギルがもう撃たれるッ!?

 クリスちゃんがカ・ディンギルを破壊しようとミサイルを発射したけどミサイルを破壊されてしまう。

 こうなったら…!

 飛び立ち、宇宙へと向かう。

 宇宙空間ならマッハ400で飛べるからまだ間に合うか…微妙なところだ。

 少しでも速く、飛べ!

 体のあちこちから火花が飛び散る。

 かなりガタがきているが関係ない。

 みんなを守れるなら本望だ。

 宇宙へと到達し、月を背に立つ。

 宇宙には上も下もないのに立つと言うのはおかしいかもしれないが。

 …これが、地球。

 青くて綺麗だ…

 語彙力なんてないから、ありきたりな事しか言えない。 

 別に俺は詩人でもないからいいだろう。

 それに、やたらめったら比喩することが失礼と思えるほど綺麗だ。

 さて、地球を守るために人肌脱ぎますか。

 さっきまでヒール云々言ってたけど、やっぱりヒーローには憧れるものだ。

 それに…5000年前にみんなで守った星だ。

 折角守ったものを壊されてたまるかよ。

 カ・ディンギルは…そこか。

 怪獣は視力いいからな。

 マッハで飛ぶ戦闘機撃ち落とせるほど反応速度もいいし。

 やっぱり怪獣ってすごい(今更)

 荷電粒子砲ってようするにでっかいビーム砲だろ?

 月を壊すレベルなら、この大きさじゃ無理か。

 これが、最後になってもいい。

 全力だ。

 俺に、守るための力を!

 体に変化が生じる。

 巨大化…いや、元の大きさに戻っている。

 久しぶりの大きさだ…

 この姿でいるにはエネルギーが足りない。

 すぐに行動に移さなければ。

 金色の翼を拡げて、エネルギーを吸収する。

 実はこの羽は光をエネルギーとして吸収するなんてことが出来るのだ。

 さあ全身全霊、例えこの身が滅びようとも…

 月も…地球も…みんなを…翼ちゃんを…

 守るッ!!!

 放たれた熱線はカ・ディンギルへ向かう。

 しかし、熱線が撃たれたとほぼ同時にカ・ディンギルも放たれる。

 熱線と荷電粒子の光がぶつかり、拮抗する。

 とにかく全エネルギーを使え。

 体の中で、やめろ、これ以上は体がもたないと警告が鳴る。

 警告、警告、警告、警告。

 これ以上は活動不能となる。

 これ以上は修復不能となる。

 構うものか、そんなのは言い訳だ。 

 俺一人の命で守れるなら…喜んで命を差し出そう。

 しかし、カ・ディンギルの出力は強大だ。

 徐々に熱線が押されはじめている。

 もう、カ・ディンギルの光が目前に迫っている。

 ダメか…

 いや、せめて軌道はそらせ。

 これが、最後の一撃。

 これでッ!!!

 やがて、体が光に包まれ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…ピー助…」

 

「ピー助君…嘘、だよね…」

 

 ピー助…

 そんな…私は大事なものを守れないのか…

 力なく膝から地面に崩れた。

 

「忌々しい…だが、既にチャージは始まっている!あの獣が行ったことは無意味に終わる!」

 

 そんな…

 ピー助が命を賭けたというのに、無意味に終わってしまうの…?

 

「翼さん、戦いましょう。ピー助君のために」

 

「そうだ!あいつのためにもこんなとこで終わってたまるかよ!」

 

 立花、雪音…

 だけど、私は、もう…

 

『響ーーー!!!!』

 

 この声は…小日向の…

 これは…学校の放送を利用して…

 

『ビッキー!頑張れ!あんなのに負けんな!』

 

『アニメならここからの一発大逆転!』

 

『赤い人も頑張ってください!』

 

『三人共!ここが踏んばりどころだ!』

 

『みんなならできます!』

 

『翼さん!あなたはこんなところで折れる人じゃありません!』

 

「未来…みんな…」

 

「おい誰だ赤い人とか言った奴」

 

 私は…防人。

 真に守りたいと思ったものを守れなかった不出来な防人だ。

 だけど、奏が…ピー助が守ったものを…私が… 

 私が守ってみせる!

 

 小さな金色の光が風に乗って目の前の地面に落ちた。

 これは…ピー助の鱗…

 

「一緒に…いてくれるのね、ピー助…」

 

 鱗を拾って、胸に押し当てる。

 ピー助だけじゃない。

 奏だって一緒にいてくれる。

 だって私達は三人で…三つの翼で一つなのだから。

 

 

 

 

 天に三つの光の柱が立つ。

 この光こそ、希望の光。

 闇を断つ、希望の光だ。

 天を舞う戦姫達。

 その背には一対の光の翼。

 しかし、風鳴翼には三つの翼が生え、各部に刃と金色とオレンジ色の装甲が追加されている。

 原典にはない姿。

 三人の絆を束ねたシンフォギア…

 『エクスドライブ・トリニティ』

 誕生の瞬間である。

 

 

 

 

 

「なんだそれは…お前達が纏うそれはなんだ!?」

 

 フィーネは驚愕に目を見開き、声を震わせながら問う。

 自分が作ったはずのシンフォギア。

 しかしそれは今、自分の知らない姿をしている。

 シンフォギアは心象によって形態を変えることが出来るが…

 今、目の前にあるあれはなんだ。

 なんだというんだ!?

 

「これがなんだと?フィーネ、お前が一番知っているだろう。これは…」

 

「「「シンフォギアだッ!!!」」」

 

 今、反撃の狼煙が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の中、眠りから目覚める。

 長い、眠りだった。

 自分が目覚めるということは…この星に危機が迫っているということだが…

 ガイガン、お前がどうかしたようだな。

 しかし、お前の命は消えようとしている。

 さて…もう少し様子見といこう。

 お前はこんなところで終わるようなものではないからな。




オマケ 擬人化ガイガン

未来「うわーホントに翼さんそっくり。姉妹みたい」

翼「姉妹か…ピー助が私の妹…」

ピ「部屋が汚い、下着の上下を気にしない、洗濯しても干すの忘れる、料理できないこんなのが姉とか嫌です」

未来「うわぁ…」

翼「ち、違うのよ小日向!ピー助が言っているのは冗談!冗談だから!ね?ピー助?」

ピ「…」

翼「ピー助ぇ!!!」



最近、胸の話しかしてないからな。
たまには違うネタでいじんないと。


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燃え尽きない命

最近感想欄に死体が多い…
みんな何者かに殺されて…
一体どこのつばs…


「まずはカ・ディンギルを破壊する!」

 

「はいッ!」

 

「応よ!」

 

 三人でカ・ディンギルに向かって羽ばたく。

 すぐに破壊しなければならない…

 しかしフィーネがそれを許すわけない。

 

「カ・ディンギルは…死守する…」

 

 ソロモンの杖から大量にノイズを召喚するフィーネ。

 ここから離れた市街地にまで街を埋め尽くすほどのノイズだ。

 これを野放しにしては…

 

「二人はノイズをやれ!あたしがカ・ディンギルを破壊する!」

 

「雪音…任せたわ!行くわよ立花!」

 

「はい!」

 

 それぞれの方向へと飛び立ち、それぞれの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 眼下にノイズの群れを見下ろす。

 ここまでの大群ははじめて…

 だけど、恐れはない。

 だって今の私には、ピー助と奏がついている!

 

「行きましょう…三人で!」

 

 もう一振りのアームドギア…槍、というよりは薙刀だが。

 刀と薙刀を手にノイズの群れへと突撃する。

 刀で切り裂き、薙刀で薙ぎ払う。

 ノイズを打ち砕く暴風が吹き荒れる。

 

「奏…力を借りるわ…はあッ!」

 

『LAST∞METEOR』

 

 薙刀の刃が回転し、竜巻が巻き起こる。

 竜巻はノイズを巻き込み粉砕していく。

 

「次はこれでッ!ピー助ぇ!!!」

 

『機刃ノ一閃』

 

 銀色のエネルギーの刃と共に丸ノコが打ち出され、ノイズを切り裂いていく。

 これでこの一帯のノイズは倒した。

 次の場所へ行くか…

 

 

 

 

 

 

 

「フィーネ!お前、こんなことを企んでいたのかよ!」

 

 ビームを撃ちながら空を駆ける。

 カ・ディンギル破壊をフィーネは当然妨害してくる。

 いかに早くフィーネを突破するかがカ・ディンギル破壊の鍵だ。

 

「クリス…あなたはいい道化だった。あんな口車に乗せられて!」

 

「チッ…だけどあたしはぁッ!」

 

 ビームを一斉に放つ。

 今こそ、過去に決着をつける時だ。

 そして、私はパパとママの夢を継ぐ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい…おい…!』

 

 …

 ……

 

『起きろよ!こんなとこで寝てる場合じゃないぞ』

 

 …

 ……

 ………むにゃ。

 

『ダメだこりゃ寝ぼけてやがる』

 

『まったくどこか抜けてるんですから…ほら、起きてくださいガイガン。ここ最近こういう展開だらけで私達も飽き飽きしてるんですから』

 

 …なんだよ翼ちゃん、今日は日曜だぞまだ寝かせ…

 って、日曜やんけ!

 日朝やんけ!はよ起きたろ!

 って、あれここはどこ?

 真っ暗なんだが…

 

『おはようガイガン!いい夢見たか?』

 

『おはようございます。さあガイガン、早く目覚めてみなさんの助太刀に行ってください』

 

 …なんでお前達がいんの?

 

『お前がカッコつけて死のうとしてるから起こしに来たんだよ』

 

 そう言って腕のドリルを回転させるメガロ。

 

『ええ、ガイガンが死ぬなんて早すぎます』

 

 モスラまで…

 だけど俺の体はもう…

 

『聞こえないか?歌が』

 

 歌?

 耳をすませると少しずつだけど聞こえてきた。

 クリスちゃんの、響ちゃんの、…翼ちゃんの歌が。

 

『ほら、聞こえてくるだろう?あそこが今のお前がいるべき場所だ』

 

 けど…もう体は限界で…

 

『いいからさっさと行ってこんかいッ!!!男なら覚悟見せやがれッ!』

 

 ぎゃーーーー!!!!

 モスラ姐さん急に羽ばたいて吹っ飛ばすなんて無しやで…

 

 

 

 う…

 変な夢見た…

 まだ、この体で動くなんてな…

 片腕は失くなり、体中あちこちボロボロだ…

 だけど…

 なんとか立ち上がり、空に向かって吼える。

 気合いを入れるというやつだ。

 …なんだか急に体がむずむずしてきたぞ…

 って、うえぇぇぇ!?

 失っていた肘から先の右腕が生えたぁ!?

 しかもチェーンソーの方!?

 なんかヌメヌメしてるし…

 左腕の方もチェーンソーに変わって…

 なんか、体がさらにトゲトゲに…

 …治ったのか?

 エネルギーも回復してるし…FWの姿だし…

 あいつらに感謝しなきゃな。

 あのまま寝てたら、再び目覚めることもなかっただろう。

 地面を思い切り蹴って飛び立つ。

 みんな俺のこと死んだと思ってるかな…

 フィーネに一泡吹かせてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カ・ディンギル破壊は難航していた。

 フィーネの執念があたしにプレッシャーを与える。

 この戦いはもがけばもがくほど足を取られてしまう底なし沼のようだ。

 相手の上を取っている私が有利なはずなのに…

 いつまでもフィーネにかまけている場合じゃないのに…!

 

「そろそろ第二射の準備は終わる!姿が変わったとしても…私には勝てない!」

 

「ッ…この女、どこからこんな力が出てくんだよ!」

 

 あの二人が戻ってきてくれさえすれば…

 突然、なにかが物凄い速さで横切った。

 それは、勢いそのままにフィーネにぶつかって…

 土煙が上がる。

 様子が見えない…一体なにが…

 機械の駆動音が響く。

 この音は…

 やがて、土煙が晴れて、その正体が露となる。

 

「ピー助ッ!?」

 

 変身した姿のピー助、しかしその姿は少し変化している。

 鉤爪の腕からチェーンソーの腕に変化している。

 それに角も変化して…

 というかあいつ生きて…

 

「まったく…とんだ奇跡だぜ!」

 

「死に損ないがぁッ!!!」

 

 よし、ここはピー助に任せてカ・ディンギルをぶっ壊す!

 

(ピー助、あたしはカ・ディンギルを壊す。お前は…)

 

 念話でピー助にそう語りかける。

 ピー助は人の言葉を理解しているから大丈夫…

 

(了解した。フィーネは任せろ)

 

(任せた…って!?今、お前…)

 

(早くしろ。発射まで時間がない)

 

(お、おう…お前、そんなキャラなんだな…)

 

 まさかピー助と会話できるなんて…あいつが知ったら…なんでだろう、あたし斬られる気がする。

 このことは内緒にしておこう…

 

(あ!あんまりスプラッタなことすんじゃねえぞ!あのあとしばらくケチャップとか食えなくなったんだからな!)

 

(…善処する)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさか念話なんてものがあるとは…

 この姿になると性格がちょいと変わるから助かったけど普段の俺だったらもうヤバかった。

 そんなことよりフィーネだ。

 

「本当に…本当に怪獣というやつはしぶとい…あの小人達…いや、先史文明期の人間は怪獣を畏れていたが…今の私には憎たらしい存在にしか思えん」

 

 お前のことは小美人から聞いていた。

 アヌンナキと人を繋ぐ巫女だと。

 しかし、それが時を越えて現れるとは…成仏させてやるよ。

 

「カ・ディンギルはやらせない!やらせてたまるものかッ!」

 

 チェーンソーを起動させ、迫り来る鞭を払う。

 そのままチェーンソーを地面へと突き刺し…フィーネへと爆走する。

 

「なっ!?」

 

 こんな移動方法があるとは思わなかったのだろう、驚いている。

 一気に懐まで近づき、チェーンソーを振るう。

 しかし、フィーネに回避されてしまう。

 大振りだったか…

 しかしチェーンソーは重い。

 どうしようもなく大振りになってしまうのだ。

 

「腕を変えた程度で…」

 

 腕だけじゃない!角も変わっている!

 あと、口まわりのクワガタの角みたいなところも!

 そんなことを言っている間に、カ・ディンギルが崩れた。

 クリスちゃんがやってくれたらしい。

 それに…向こうの空に翼ちゃんと響ちゃんが見える。

 

「ピー助ッ!?無事なの、って、えぇ?」

 

「ピー助君どうしたの?イメチェン?ホラー映画の殺人鬼みたいになってるけど…」

 

 どうも改造ガイガンです。

 自己紹介がてらチェーンソーを動かす。

 ウィィィィン。

 

「お前達遅いんだよ…」

 

 クリスちゃんも戻ってきた。

 これで全員揃ったな…

 よし、反撃…

  

「うっ…」

 

 なにを、しているんだ、フィーネは…

 ソロモンの杖を自分に刺して…

 まさか!?

 

「このまま…このままでは終わらせんぞ、シンフォギアッ!!!」

 

 フィーネの体にノイズが集まって…

 カ・ディンギルにノイズだったものを流し込んで、一体…

 

 現れたのは巨大な赤い竜。

 黙示録の赤き竜。

 災厄の存在である。




オマケ 擬人化ガイガン
 
歌姫の私生活に密着24時!

TV『一日の仕事を終えた翼さんは帰宅し、晩ごはんの準備を…』

クリス「あれ、なんか家に入ってから急に背が低くなったような…」

未来「おかしいよ、翼さんがご飯を作るなんて…」

響「あれ、これピーすk…」

謎の防人「貴女達、あれはどう見ても風鳴翼。いいわね?」

三人「は、はい…」

貞操観念逆転物やりたくなった


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決戦‐Synchrogazer‐

お気に入り600件突破ありがとうございます!
いきなりドンと増えた感じなんだけど一体なにが…


 デカイ…

 なんだよこの赤い竜は。

 対抗しようにも流石にまた元の大きさに戻るほどの力はない…

 なんとかやるしかないか…

 

「でかくなったところでいい的!くらいやがれ!」

 

 クリスちゃんがビームを放つ。

 あれ、なんかデンドロビウムとかミーティアとかに見える。

 かっけぇ。

 なんて呑気なことを言ってる場合ではなくなった。

 一瞬で再生している…

 

「これなら!」

 

 翼ちゃんが蒼ノ一閃を放つ。

 傷はついたけどやはり再生される。

 ネフシュタンの力か…!

 

「逆鱗に触れたのだ…相応の覚悟は出来ておろうな」

 

 あいつデュランダルまで持ちやがって…

 完全聖遺物のデパートかよ!

 今度は向こうが仕返しとばかりに熱線を放って…

 これは、ヤバイ…

 すぐに避けないと…

 

「くっ…」

 

「このやろっ!」

 

 クリスちゃんが回避しながらビームを放つが…

 防御され、逆にビームの砲撃を受けてしまう。

 しかし響ちゃんと俺がこの隙に接近している。

 響ちゃんは正拳突きで竜の体に大穴を開け、俺はチェーンソーでとにかく切り刻む。

 しかし一瞬で再生され、反撃のビームが飛んでくる。

 なんとか回避したけど…

 くそ、このままじゃ…

 

「いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から造られた玩具。完全聖遺物に対抗できるなど思うてくれるな」

 

 くそ、流石に完全聖遺物相手では…

 いや、待て。

 聖遺物の欠片でダメなら完全聖遺物さえあれば。

 三人も気づいたようだ。

 

(ピー助、奴のデュランダルを奪う。私が道を開くから雪音と一緒に突入して)

 

 翼ちゃんの指示に首を縦に振る。

 念話で会話したら翼ちゃん戦いそっちのけになりそうだし…

 とにかく行くぞ!

 

(お願いピー助君!)

 

 了解!

 腕を鎌に戻す。

 チェーンソーの方はパワーに優れるけど機動力が損なわれる。

 ここは小回りの利く、こっちの姿の方がいい。

 クリスちゃんの後ろについて、竜に接近する。

 

「それでは…いくぞ!はあッ!」

 

『参翼ノ一閃』

 

 巨大な刃から巨大なエネルギーの刃が飛ぶ。

 命中した箇所にあいた大穴が再生する前に飛び込む。

 クリスちゃんがビームを一斉射する。

 これは流石にたまらなかったフィーネは防壁を開ける。

 …それを狙っていた。

 フィーネが持つデュランダルに鎖を射出して巻き付ける。

 それを引っ張ってフィーネからデュランダルを強奪!

 

「なにッ!?手癖の悪い獣風情が!!!」

 

 これまで好き勝手やってくれたからその仕返しだ!

 これを…響ちゃんに!

 届け!

 

「そいつが切り札だ!勝機を溢すな!掴み取れ!」

 

 翼ちゃんが叫ぶ。

 そうだ…それが勝機!

 絶対に損ねるな!

 損ねたらエサ一年分請求するぞ!

 宙を飛ぶデュランダルをクリスちゃんが拳銃で狙撃して響ちゃんに届かせた。

 しかし、デュランダルを掴んだ響ちゃんは暴走している…

 いや、抗ってる!

 顔だけは黒くなってない。

 目は赤いし、牙は生えてるけど。

 

「正念場だ!踏ん張りどころだろうが!」

 

「強く自分を意識してください!」

 

「昨日までの自分を!」

 

「これからなりたい自分を!」

 

 二課のみんなが地上から響ちゃんに声援を送る。

 よかった…みんなは無事なのか…

 

「屈するな立花。お前が構えた胸の覚悟…私に見せてくれ!」

 

「お前を信じ、お前に全部かけてんだ!お前が自分を信じなくてどうすんだよ!」

 

 そうだよ響ちゃん!

 君ならやれる!

 …あんまりいい言葉が浮かばない。

 とにかく頑張れ!

 あ、ほら!響ちゃんのお友達?もいいこと言ってるから!

 あれ聞いて正気に戻って!

 

「姦しい!黙らせてやる!」

 

 フィーネの奴が羽だと思ってた部位を触手みたいに伸ばしてきた。

 それを鞭のように叩きつけてきて…

 …全部捌いてやる。

 一つ、二つ、三つ、四つ!

 おら!どうした!

 ネフシュタンの鞭の方が痛かったぜ!

 …って、あれ!暴走がもっとひどくなってる!?

 顔まで真っ黒に…

 

「ウオオオオオッ!!!!!」

 

 ダメなのか…

 

「響ーーー!!!」

 

 この声は未来ちゃんの…

 すると徐々に響ちゃんを覆っていた黒が消えていく…

 たった一声で…

 これが親友の力か…

 正気を取り戻した響ちゃんに応えるようにデュランダルもその黄金の輝きを強めた。

 これは…エクス…

 なんでもありません、失礼しました。

 

「その力!?なにを束ねた!?」

 

「響きあうみんなの歌声がくれたシンフォギアでぇぇぇ!!!!!」

 

『Synchrogazer』

 

 天に向かって掲げたデュランダルを降りおろ…

 って、やべえ避けねえと!!!

 思いっきり射線上だここ!!!

 

「完全聖遺物同士の対消滅…どうした!ネフシュタン!?この身砕けてなるものかぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに黙示録の赤き竜は崩れた。

 まあ俺が元のデカさだったら余裕で倒してたな!

 …倒してたんだから!

 地上に降りて、エネルギーがもう限界だったのかペットボトルサイズに戻ってしまう。

 はぁ~疲れた~。

 朝日が眩しいぜ…

 

「ピー助…」

 

 あ、翼ちゃんおつか…うぇぶっ!?

 く、ぐるじい…

 そんな強く抱きしめないで…

 

「バカ…心配したんだから…」

 

 うぇぷ…

 う、ごめんなさい…

 心配をおかけしました…

 

「まったくお前は…しばらく一人での行動禁止だ」

 

 ぴえぇ…

 それは罰が重すぎます~!

 

「あとこれから毎日、一緒にご飯食べて、散歩して、お風呂に入って、添い寝して…他にもいろいろ…」

 

 ぴえぇ!

 少しは一人の時間が必要なんやで!

 それに翼ちゃんだって一人の時間が絶対欲しくなるはず!

 

「私はピー助と一緒で全然大丈夫よ」

 

 そんなぁ…

 もっとプライバシーをって…

 

「今、ピー助がなにを言ってるのか完全に分かった気がする…」

 

 や、やべえ…

 翼ちゃんがとんでもない能力に目覚めやがった…

 これは早いところ対策をたてないと…

 って、あれは響ちゃんに…フィーネ…

 

「このスクリューボールが…」

 

 クリスちゃんがそう呟く。

 けどその言葉はどこか嬉しそうな…悪い気ではないようだ。

 

「もう終わりにしましょう了子さん」

 

「私はフィーネだ…」

 

「でも、了子さんは了子さんですから。きっと私達、分かりあえます」

 

「…ノイズを作り出したのは先史文明期の人間…統一言語を失った我々は手を繋ぐことより相手を殺すことを求めた…そんな人間が分かりあえるものか」

 

 そうだ…

 5000年前、奴との戦いの最中に人間は統一言語を失った。

 それからノイズが作られて、俺はノイズを倒して…

 

「人が…ノイズを…」

 

「だから私はこの道しか選べなかったのだ」

 

 …

 だとしても、多くの人を犠牲にするなんて…

 

「人が言葉よりも強く繋がれること、分からない私達ではありません」

 

 響ちゃんは自信を持ってそう言った。

 だけど…

 フィーネはネフシュタンの鞭を響ちゃんめがけて放つ。

 それを響ちゃんは避けるけど、鞭はずっと延び続けて…

 どこまで行くつもり…

 っ!?

 まさか!?

 

「取った!私の勝ちだ!」

 

 あの野郎、月の欠片に向かって…

 

「でぇぇぇ!!!!やあああああッ!!!!!」

 

 なんて、馬鹿力。

 目の前の光景が受け入れられない。

 

「月の欠片を落とす!私の悲願を邪魔するものはここでまとめて叩いて砕く!この身は滅びようと!魂までは滅びはしないからな!」

 

 こいつ…

 くそ、流石にもう無理か…

 

「聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形があるかぎり世界のどこか、いつかの時代に甦る!」

 

「うん、そうですよね。どこかの場所、いつかの時代…甦る度に私の代わりにみんなに教えてください。世界を一つにするのに力なんて必要ないこと。言葉を越えて、私達は一つになれるということ…私達はきっと未来で手を繋げられるということ」

 

「お前、まさか…」

 

「了子が未来に伝えるために、私が今を守らないと」

 

 響ちゃん、まさか…

 いくらなんでもそれは…

 

「まったくもう、しょうがないんだから…胸の歌を信じなさい…」

 

 そうしてフィーネは力無く、地面に倒れた。

 少しずつ、体が砂になっている…

 この体は終わりらしい…

 

「軌道計算出ました…直撃は避けられません…」

 

 藤尭さんが力無く言った。

 このままじゃ…いくら響ちゃんとは言え…

 ──突然、大きな力の気配を感じた。

 この力は…

 まさか…

 空を見上げると、一筋の青い線が月の欠片に向かって伸びている。

 あれは…放射熱線。  

 かの王の放つそれは…小さな星なら容易く砕くほどの威力。

 空で、月の欠片が爆ぜた。

 砕けた破片達が流れ星となって降り注ぐ。

 

「あれは…一体」

 

「今ので…破片は全て大気圏で燃え尽きます!」

 

「あぁ…まさか、目覚めるなんて…数多の怪獣の中で頂点に立つ怪獣の王…ゴジラ…」

 

 フィーネがゴジラの名を口にする。

 そう、あれはゴジラの放ったものだ。

 まさか、まだこの地球で生きているなんて…

 

「こんな奇跡…あってもいいのね…あの娘が、自分を犠牲にする必要がなく、なる…」

 

 そう言ってフィーネは消滅した。

 ホントにあいつは空気が読めるやつというか…

 

(ガイガン、お前がいながらこの体たらくとはな)

 

 …びっくりしたぁ。

 あんさんいつからテレパシーなんて使えるようになったん?

 

(そんな些末なことを気にする俺ではない。俺は再び眠りにつくがこのようなことになる前に…火の粉が広がる前にお前でなんとかしろ)

 

 ふぁ!?

 そんな横暴な!!

 

(今のこの星で自由に動けるのがお前だけなのだ。しょうがないだろう。…今の一発で消耗してしまうほどに俺も力を失っている)

 

 確かにどこか声に迫力がないというか…

 昔は声を聞くだけで震え上がったというのに。

 これが老いというやつですかねぇ…

 

(失礼なことを考えていないかガイガン)

 

 いえ!なにも考えていません!

 …最近心を読まれ過ぎてる気がするなぁ。

 

(お前は分かりやすい)

 

 そんな…テレパシーで話しかけてる人にまで…

 

(それでは俺は寝る。…あとは任せたぞガイガン。よくない風が吹いている、警戒しておけ)

 

 アイアイサー!

 おやすみゴジラ!いい夢を!

 …はぁ、緊張した。

 フィーネとの戦いよりも緊張した。

 まったくあの王様は横暴なんだから…

 さて、これで一件落着…とはいかないよな…

 ゴジラが現代に現れるとかもう大混乱だろう。

 どこから熱線撃ったかは知らないけど米国とか大国は既に捕捉しているだろうし…

 また面倒な問題が増えたかもな…

 まあフィーネのことは解決したんだ。

 とりあえず、今はこのことを喜ぼう。

 

戦姫絶唱シンフォギア編 fine




オマケ 擬人化ガイガン

ピ「まさかJKになるなんて思わなかった」
(偽名 風鳴雛)

響「いやぁ同じクラスでよかったよかった!分かんないことあったらなんでも聞いてね!」

未来「お昼休みになったら学校案内してあげるね」

先生「それじゃあ授業をはじめます。それじゃあ昨日の続きから歌とはハーモニーが…」

響「あっ…」
 
先生「いま話したところに注意して歌いましょう」
 ・
 ・
 ・
ピ「ぼえ~」

先生「風鳴さん!?」

駆け足だった、しかし、それ以上に早く翼さんとマリアさんとピー助のトライアングルストーリーが書きたかったんだ!
あと年内はこれが最後だと思うので…
みなさんよいお年を!
 


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番外編 野良猫捕獲命令ヤクザ対ガイガン

あけましておめでとうございます!
あけおめテンションと深夜テンションで書き上げたのでみんな心して読んでね!


 はじまりは些細なことだった。

 フィーネとの激戦から一週間、翼ちゃんと四六時中一緒だったので少し一人になろうと思いちょっと外に出た。

 それがまずかった…  

 

 

 

 結構遠くまで来たな…

 見知らぬ河川敷を眺める。

 お、あれはサッカーゴール…グラウンドだったんだここ。

 しかし…

 おそらくフィーネとの決戦の時か、それとは別にノイズの被害にあったのか、サッカーゴールは歪み、グラウンドは地面が抉れてサッカーなんてとても出来ない状況だ。

 ここでサッカーを楽しんでた子供達から遊び場を奪ってしまったか…

 いや、子供は大人が思ってるより強い。

 多分、ここが使えなくなった代わりの遊びや場所を手に入れているだろう。

 …腹が減った。

 この川って魚いるかな?

 まあとりあえず降りてみるか…

 

 

 

 おー!いるいる!

 魚いるよ!

 よし、先史文明期に鍛えた俺の腕を見せてやるよ…

 …ほいッ!

 水面を抉るように鉤爪で水ごと魚をすくう。

 地面に落ちた魚はびちびちと跳ねたがやがて動かなくなった。

 これは…なんだろう。

 魚には詳しくないから分からん。

 まあなんであれ、ありがたくいただくとするか、いただきま…

 ちらと、視線の中にあるものが入った。

 子猫だ。

 子猫が魚を欲しそうにこちらを見ている。

 魚をあげますか?

 はい

 いいえ

 …野良のというか野生の生き物に餌付けをしてはならない。

 それが原因で人里におりてきたり、狩りをしなくなるとかあるからだ。

 心苦しいがあげてはならない。

 …

 ……

 ………

 い、一匹だけじゃ俺も腹がふくれんからな、もう一匹獲ってくるか…

 …ほいッ!

 あ、あーどうしよう勢い余って魚があらぬ方向にー(棒)

 まあ、別に?ちっちゃいやつだからあんなんじゃ俺の腹はふくれないしー(棒)

 さて、もう一匹獲るかー(棒)

 …ちらと子猫の方を見ると、一生懸命に魚を頬張っている。

 …一回きりだからな。

 そう思っていた、思っていたんだけどなぁ…

 

 

 

 

 いいか、獲物を見つけたらチャンスが来るまでひたすら待て。

 一撃で仕留めるんだ。

 

「にゃー!」

 

 なぜか子猫に野良としての生き方を教えていた。

 野生で生き残るにはとにかく強くなくてはならない。

 こんな子猫が生き残るには…生き方を知らなければいけないのだ。

 数えて八度目の魚獲りだがなかなかうまくいかない。

 まだ力が足りないのか、思い切りというものが足りない。 

 …これはいよいよ、本格的にこいつを育成しなくてはいけない。

 一回面倒を見た以上、責任は取らなくてはならない。

 

 ちょっと待ってろ、今からいろいろと準備してくるから。

 ここから動くなよ。

 

「にゃ」

 

 よし、いい子だ。

 さて、ちょっくら行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二課仮設司令室

 

「司令、ピー助さんからこんなものを受け取ったんですが…」

 

「なになに…特訓…シテキマス…ガイガン…」

 

「これを僕に渡したあとそそくさと行ってしまって…翼さんが知ったらどうなるか…」

 

「うむ…だがまあ、翼にとってもピー助離れするいい機会だ。それに…」

 

「それに?」

 

「怪獣がどんな特訓をしてくるのか楽しみじゃないか」

 

「というか、文字を書けたんですね」

 

「ああ…このことは翼には内密にな。あと緒川、例の件だが…」

 

 

 

 

 

 

 さて、緒川さんに木の板で作った手紙は渡したし大丈夫だろう。

 あいつはちゃんと留守番してるかな…

 って!大人の野良猫数匹に襲われてる!

 

 なにしてんだてめら!

 猫の一匹に両足キックを不意打ちで食らわせる。

 こいつ…ちゃんと魚取ったのか…

 それを横取りしようなんて、そういうのは俺は嫌いだ。

 

「てめえ!なにしやがる!」

 

 うっせー!弱いものいじめすんじゃねえ!

 子供を大人がよってたかって…

 恥ずかしくねえのか!

 

「野良の世界は弱肉強食…弱いのが悪いんだよッ!!!」

 

 猫が一斉に飛びかかってくる。

 しかし…

 レーザー光線砲ッ!

 目の前の地面に撃って土煙をあげる。

 

「姿が…見えねえ!?」

 

 あとは一匹ずつ土煙に紛れながら…

 一つ。

 

「にゃ!」

 

 二つ。

 

「ぎゃ!」

 

 三つ。

 

「ワン!」

 

 よし、これで全員か…てか、最後のワンって鳴いたぞワンって。

 お前どう見たって猫だろ。

 

「猫の世界もキャラ立ちは必要だニャ…」

 

 おい、キャラ戻ってるぞ。

 

「あ、ヤッベ…」

 

 なんなんだよこいつら…

 

「お前こそなにもんだ…ここらの奴じゃないな…それにその身なり…えーと、そのー…なんだお前は!」

 

 もう最後の方投げやりだぞお前。

 まあ分かるけど、逆の立場だったらガイガンが現れたら何事かと思うもん。

 しかしまあ聞かれたからには答えてしんぜよう。

 

 通りすがりのガイガンだ、覚えておけ!

 

「ガイガン…だと…おい、ガイガンってなんだ?」

 

「さあ…」

  

「知らないワン」

 

 …猫に自己紹介したのがダメだった。

 そうだよね、分かるわけないよね。

 

「とにかく!野良の世界は弱肉強食!邪魔すんじゃねぇ!」

 

 弱肉強食…まあ、それが普通だ。

 それじゃそこらの獣となんも変わらねえ。

 お前らは野良として三流だ。

 

「なに…!」

 

 いいか、一流の野良は弱いやつから飯をぶん取ったりしねえ。

 ましてや、子猫が頑張って獲ったもんだ。

 大人として恥ずかしくないのか。

 

「うぐっ…」

 

 いいか!一流の野良は気高く飢えなければならないッ!

 誇りまで失っては野良猫以下の獣畜生よ!

 

「「「あ、兄貴!」」」

 

 よし!そうと決まればお前ら!今から魚獲りだ!

 自分の分は自分で獲りやがれ!

 

「「「応ッ!」」」

 

 なんか熱に浮かされて説教なんてしてしまった。

 別に野良経験は…5000年前に敵から隠れてる時くらいなもんなのに…

 ジョニィ・ジョースターの名言を引用なんてしたのが間違いだったのだ…

 しかし、この時はその事にまったく気づかずに魚獲りに熱中したのである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二課仮設本部 食堂

 

「ピー助ぇ…ピー助ぇ…」

 

 風鳴翼はラムネを飲み干して、机にドンッと勢いよく置いたあとおいおい泣きだした。

 

「翼さん飲み過ぎですって…もう五本目ですよ」

 

 そう言いながらビンを回収する立花響。

 憧れの人のこんな姿を見せられて内心ドン引きである。

 しかし彼女は知らない。今後、ピー助関連で泣く風鳴翼の面倒を見るのが自分だということを。

 

「うるしゃい!たちばにゃだってこひゃなたがいなくなったらこうにゃるくしぇに!」

 

 ソフトドリンクのくせに酔っぱらう防人。

 彼女が成人を迎えたらどうなるのか不安しかない。

 

「私と未来はそんな関係じゃないですよ!それにピー助君は特訓に出たってだけですぐ帰ってきますから…」

 

「そんにゃ…わたしにいわにゃいで…せっかくぴいすけのいってることわかるようになったのに…」

 

 ああ面倒くさいと内心で思う。

 しかし直感が囁くのだ、ここで放っておくほうが後々面倒になると。

 だからこうして憧れの歌姫、そして戦士の先輩である風鳴翼を介抱するのだ。

 

「師匠が言ってました…男には愛する女を守るために敢えてなにも言わずに旅立つことがあると…」

 

 正直、言われた時は何を言っているか全然分からなかった。

 しかし、今なら分かる。

 師匠、この言葉は翼さんを言いくるめるための言葉だったんですね。

 

「あいしゅるおんにゃ…?わたしが、ぴいすけの?」

 

「はい!二人は最高のパートナーです!ベストマッチです!」

 

「ほんとかたちばにゃ!?」

 

「はい!翼さん!ピー助君!ベストマッチ!です!」

 

 こうして、なにやら怪しい方向に進んでいく二人。

 もう立花響もヤケになっていた。

 どうにでもなれ!

 

 

 

 

 

 

数日後

雪音クリス宅

 

 日曜だと言うのに妙な時間に起きてしまった雪音クリスは朝食は簡単にトーストと牛乳で済まし、テレビをつけた。

 チャンネルを回してもあまり興味惹かれる番組はやっていない。

 しょうがない、ニュースでも見るかとチャンネルを合わせると骨董品強盗のニュース。

 しかしその次のニュースは雪音クリスでも興味惹かれる内容だった。

 なんと普通の川にペンギンと思われる生物がいたという衝撃映像がSNSに投稿されたという。

 川で遊んでいたという投稿者が水面にカメラを向けるとそこには…

 

「すげえ…これガチでペンギンだろ…」 

 

 彼女はこういうのを信じる質である。

 戦火で両親を失い、これまで思春期を殺してきたと言っても過言ではない彼女は純粋に信じた。

 

『えー映像から推測しますと、そうですね大体40cmないくらい。フンボルトペンギンなんかが大体こんな大きさです。身近なもので言うと2Lのペットボトルくらいの大きさですね』

 

 テレビで専門家だという初老の男がそう語る。

 なるほどフンボルトペンギン…

 2Lのペットボトルくらいか…

 2Lのペットボトルくらいの大きさ?

 なんか、身近にそれくらいの大きさの生き物がいた気が…

 ピー助だ。

 ピー助がこれくらいの大きさだ。

 そしてピー助はいま特訓だとかで長期外出中。

 

「あれ、これってピー助…」

 

 うん、ペンギンよりそっちの方が可能性が高い。

 うわぁ、あいつ撮られちまってるよ…

 この映像が今の状態のあいつが見たら飛び出すに違いない。

 …なんとかしてこの映像をあいつに見せないようにしなければ。

 そうじゃないと、いろいろヤバイ。

 いろいろヤバイ。

 いろいろヤバイのだ。

 もしかしたら風鳴翼活動停止とかなるかもしれない。

 それくらい、今のあいつはヤバイのだ。

 とにかくヤバイという単語が脳を支配しはじめた頃、通信端末が震えた。

 おっさんからだ。

 今日はオフのはずだが…

 

『クリス君、朝早くにすまない。実は急な仕事が入ってな…本来なら調査班だけで済ませられることなんだが聖遺物に関係するということが判明したので装者達にも参加してもらいたい』

 

「いいぜ、どうせ暇なんだ。仕事の一つくらいあった方がいい」

 

『そうか、それでは1300に仮設本部まで来てくれ。以上だ』

 

 そうして通話は終わった。

 リディアン音楽院への転入が決まってはいるが校舎があんなんなのでしばらく休校。

 体が鈍ってきたから、ちょうどいい。

 さて、そうと決まれば準備でもしますか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 子猫と三匹の猫(タマ・ミケ・クロ)が俺の舎弟になってから数日…

 俺のグループは勢力を伸ばしていた。

 勢力を伸ばしていた。

 勢力が伸びていたのである。

 いや、別に討ち入りだなんだとかはしていない。

 気がついたら周りに野良猫が増えている。

 野良猫どころじゃない。

 野良犬もいるし野良カミツキガメもいる。

 おい外来種。

 

「別にあたしゃ悪くないわよ。捨てた奴が悪いのさ」

 

 そうだった。

 あんたも被害者、いや被害ガメだ。

 

 

 さて、ここまでの勢力拡大をしたのには理由がある。

 ピー助が掲げた「気高く飢えなければならない」という言葉に従い、タマ・ミケ・クロの三匹は行動し他の野良猫、野良犬達に布教していったのだ。

 その言葉に感銘を受けた野良達は一斉にピー助の舎弟へとなったのである。

 ちなみにピー助本人はこのことをまったく知らない。

 

 それからもピー助のグループは勢力を拡げた。

 「気高く飢えなければならない」の言葉を胸に生きる野良達はまるで厳しく訓練された軍隊のように規律を重んじ、人間に対する迷惑行為を行わなくなった結果可愛がられるようになり、今では町のマスコット的存在となっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 諸君!人間に可愛い姿を見せるということは人間に媚びへつらうことと忌み嫌うかもしれない!

 しかし!媚びへつらうのは我々ではない!人間の方である!

 いいか!人間は可愛いものに弱い!可愛さで釣れば人間など意図も容易く落とすことが出来る!

 我々の武器は爪でも牙でもない!可愛さである!

 可愛いは正義!

 

「「「「「可愛いは正義!」」」」」

 

 そうだ!

 諸君らのように気高い精神と可愛さがあればこの先も豊かで素晴らしい生活が約束されている!

 それでは諸君らのますますの健闘を祈る!以上!

 

「ガイガン総帥万歳!」

 

「ガイガン総帥万歳!」

 

「ガイガン総帥万歳!」

 

 

 

 

 

 …ねぇ、いつの間にかシャアみたいになってんだけどなにあれ。

 

「にゃー」

 

 ノリノリで演説してたって?

 いや、なんか熱に浮かされて…

 それよりあの演説はなんの意味があるの?戦意高揚?

 なにと戦うつもり?

 

「いくらガイガン総帥の元で纏まっても所詮は野良だワン。生活の保証なんてまったくないんだコン。だからみんな強いリーダーを望んでいるんダナモ」

 

 クロさん語尾全然安定してないんだけど大丈夫?

 キャラぶれっぶれなんだけど、というか最後の語尾ってタヌ…

 

「総帥大変だ!関東野良犬会のやつが伝えたいことがあるって…すごいぼろぼろなんだ!」

 

 なに?

 すぐ行く。

 お前達はありったけのドッグフードをかき集めてこい。

 そうだな…ふらわーに行けば肉を分けてくれるかもしれない。

 ジョンの奴が足が早い。

 ふらわーまで急いでくれと伝えてくれ。

 

「了解した!」

 

 さて、関東野良犬会の犬がぼろぼろで…

 一体なにがあったというんだ。

 

 

 

 

 関東野良犬会はこの辺りでは武闘派で名前が通っている野良達の集まりだ。

 全員が全員、凶暴。

 まさに獣と言っても過言ではなく、入会には厳しい試練を越えなければならないと聞く。

 そんな武闘派集団がボロボロになるなんて…

 

「…はぁはぁ、人間の奴等が急に俺達を捕まえようとしてきたんだ…それだけならいつものことだが…今日の奴等は容赦がなかった…かなり乱暴な奴等でここが俺達の土地だと言っていた…このことをあんた達に伝えろと俺はボスに伝えられて…」

 

 分かった…ここまでありがとう。

 今、肉とドッグフードを用意させている、ゆっくり休んでくれ…

 これは…どうにも保健所ってわけでもなさそうだ。

 土地の話をするなんて…

 これはまさか…ヤのつく人達が…

 

「総帥!大変だ!変な人間がデカイ車をたくさん連れてやって来やがった!」

 

 なに!?

 

「や、奴等だ…奴等が来たんだ!」

 

 まさか…こんなすぐに!

 くそ、とにかくみんなを逃がすんだ!

 

「総帥はどうするニャ!?」

 

 俺は…奴等と戦う。

 

「そんな!無茶だ総帥!」

 

「相手は人間だよ!勝てっこない!」

 

 そんな道理…私の無理で抉じ開けるッ!

 堪忍袋の緒が切れた!

 全員、第5マンホールから脱出するんだ!

 

「そんな…総帥…総帥ぃぃぃ!!!」

 

 

 

 

 

 道路に並ぶ大量のブルドーザー。

 それを背に、スーツの男達を指示する男がいた。

 

「あとはここの野良共片せば、ここも晴れてワシらハダカデバネズミ組のもんだな」

 

「そうでござんす」

 

 このらっきょうのような輪郭に出っ歯の男がハダカデバネズミ組の若頭「波打加出葉男」

 最近は骨董品を集めるのが趣味の38歳。

 ネーミングセンス?

 ポッとでキャラだから大丈夫大丈夫。

 再登場の予定ないし。

 

「兄貴、野良猫共の姿がまったく見えません!」

 

「なにぃ?草の根わけて…いや、草の根掘ってでも探せや。土地も大事だが、あの猫共も大事な商品になるんやから」

 

 こいつらはノイズによる被害を受けた土地を買い占め、ノイズ災害により増えた野良ペット達を集め商品としているのだ。

 

 そんなこと、この男が許すわけがなかった。

 

「アニキ、なんだか急に霧が出てきましたね…」

 

「霧ぃ?そんなん関係ないだろさっさと仕事せんか…」

 

「ぎゃー!!!」

 

「どうした!なにがあった!」

 

「いやぁぁぁぁ!!!」

 

「あげゃああああ!!!」

 

「それはらめぇぇぇ!!!」

 

 相次ぐ部下達の悲鳴。

 最初に悲鳴のあった所へ向かうとそこにはパーマの愛称で呼ばれていた男が全裸にひんむかれ、ストレートパーマにされていた。

 

「一体なにが起こっとるんや…野良共がこんなこと出来るわけが…」

 

「アニキ…これはあかんですぜ…他の奴等も見てきましたけど、ひどい有り様で…」

 

「な、殺られてたのか!?」

 

「いえ…アイデンティティーというアイデンティティーが失われていました…」

 

 なんてこった…

 グラサン、ケツアゴ、童貞…

 お前達のことは忘れんで…

 

「アニキ…きっとこれまで売ってきた動物達の生霊が復讐しに来たんですよ…!」

 

「バカ言え!生霊なんてくだらない!必ずこんなことしでかした犯人がいるはずや…」

 

 一体誰がこの波打加出葉男にケンカ売っとるんや…

 いや、待てよ。

 

「おい、細目。お前、いまケンカ売ってるやつが出たらケガ覚悟で、なんでもいいから捕まえろ。いいな?」

 

「そ、そんなぁ!無理言わんでくださいよぉ!」

 

「いいからやれ。安心せい…こいつ、命までは取っとらん」

 

 霧が少しずつ晴れてきた…

 いま、ジャリっと音が後ろからなったな…

 突然、霧の中から何かが飛び出してきた!?

 

「ッ!今や細目!」

 

「は、はいぃ!!!」

 

 細目が覆い被さるように犯人を捕まえた。

 どれどれ、顔でも拝んでやるか…

 

「って、なんだこのヘンテコ。こんなんにやられてたんか」

 

 細目に羽交い締めにされている…ペンギンのような生き物は抜け出そうとジタバタ動くが細目はかつてボディビルダーとして名を馳せ、その筋肉は未だ現役。

 脱け出せるはずがない。

 

「さて、どう落とし前つけてもらおうか…どっかの金持ちにでも高値で売りさばいてしまおうか。日本はペットの大量消費国言うてな、珍しければ買うって言い出す輩がぎょうさんおるんや」

 

 しかし、その前に少しならこのヘンテコペンギンをボコるぐらいいいだろう…

 そう思い指を鳴らした瞬間、季節外れの桜が舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 ヤバイ…人を傷つけるわけにはいかない…

 こんな奴等一発ぶん殴ってやりたくなるが、ここで俺が危害を加えては折角あいつらの信頼向上したというのにその信頼を失わせてしまう。

 どうすれば…

 …桜?

 この季節に?

 もう夏が来るというのに…

 霧の中に鬼の面を被った、着物に、腰に日本刀を差した人がいる…

 

「一つ、人の世の生き血をすすり…」

 

 この、口上は…

 

「二つ、不埒な悪行三昧…」

 

 まさかあの名作時代劇の…

 

「三つ、醜い浮き世の鬼を退治てくれよう!」

 

 桃太郎ざむr…

 

「防人侍ッ!」

 

 失礼しました。

 なんだよ防人侍って…

 よくよく聞いたらあの声、翼ちゃんやんけ…

 しかも霧でよく見えなかったけど、上をはだけさせて胸をさらしで隠して…

 なんていうか、極道の女?

 

「お、おい細目!あの女をやれ!」

 

「へへっ…女なんて余裕で…ひでぶっ!?」

 

 は、速い…

 居合いだ…

 飛天御剣流並に速い。

 てか、気づいたら俺、翼ちゃ…防人侍の手の中に…

 

「安心しろ、峰打ちだ…」

 

 いや、峰打ちでも相当だと思うよ?

 あの速さで鉄の塊がぶつかってくるんだから。

 

「ひ、ひえぇ!化け物だぁ!」

 

 あ!

 アニキとか言われてた奴が逃げた!

 

「安心しろピー助。ここにいるのは私だけではない」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 とにかく走って、車のあるところまで戻ってきた。

 途中、セーラー服姿の女子高生がいたが気にせず走った。

 

「はぁ…はぁ…ここまで逃げ切れば…」

 

「逃げ切れば、なんだって?」

 

 話しかけてきたのは、先程通りすぎて行ったセーラー服の女子高生。

 …なんでこんな時間に、こんな場所にセーラー服の女子高生が?

 いや、よく見るとセーラー服には似合わない。

 一周回って似合う物がその手に握られていた。

 機関銃。

 

「お前、悪い奴なんだろ?だからさ…こいつでッ!」

 

「ひッ…」

 

 セーラー服姿の女子高生がトリガーを引く。

 そして撃ち出される大量の鉛弾。

 それで車を蜂の巣にして爆破し、ブルドーザーまで蜂の巣にしていった。

 

「なんで…セーラー服の女子高生が機関銃ぶっ放しててるんや…」

 

 セーラー服と機関銃。

 一見、関係無さそうなものだが…

 この二つ、ベストマッチなのだ…

 そして、すべてのブルドーザーが破壊され…

 

「快、感…って、これやんなきゃいけねえのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 高垣ボイスの快、感…を聞くことなく、出葉男は逃げていた。

 とにかく逃げるのだ。

 これは、悪い夢なのだから…

 

「ホワチャアッ!」

 

「おわっ!?」

 

 目の前に流星が墜落した。

 流星の正体はまた女子高生と思われるガキ。

 …なぜか黄色に黒のラインが入ったトラックスーツを着ているが…

 

「観念してください!あなたはもう包囲されています!」

 

 四方を見ると黒服にサングラスの男達、そして、リアルセーラー服と機関銃と謎の防人侍。

 

「ハダカデバネズミ組の波打加出葉男だな。お前に聞きたいことがある。着いてきてもらおうか」

 

 そして現れる、筋骨隆々の赤い男。

 もはや、万事休す…

 なにも反抗する手段のない男は、考えるのをやめた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 あの男が所属する組が行った骨董品強盗。

 実は聖遺物だったとかなんとかで二課が動いたようだった。

 別に俺のピンチに駆けつけたとかそういうわけじゃなかった。

 翼ちゃんはいろいろ察知していたらしいけど…

 ニュータイプかよ…

 さて、こうして俺は再び翼ちゃんに抱かれている。

 変な意味ではない。

 本当に抱かれて、持ち運ばれている。

 この抱き方は確か…あすなろ抱き?

 そんな名前だった気がする。

 密着してくるあまり柔らかさを感じない胸板を背中に感じながら、これはしばらく離してくれそうにないなと思った。  

 …あいつらは逃げ延びたかな。

 ちゃんと生きてればいいけど…

 

『こちらの川になんと野良猫や野良犬などが集団で生活している珍しい光景が…』

 

 ニュースの女子アナがいる場所…

 どうやらあいつらは元気そうだ。

 今度、翼ちゃんの目を掻い潜って顔を出そう。

 せめて、生きてるってことだけでも伝えておかないとな。

 しかし、この外出もまたトラブルに見舞われてしまうことをピー助はまだ知らないのである…

 

次回 謎の外人美女とピー助がデート!?




オマケ 防人侍とセーラー服とブルース・リー

翼「ピー助の身に危機が迫っている…」

クリス「そんなの気のせいだって…」

翼「ピー助のピンチに駆けつける…そんなヒーローのようなことしたらピー助からの好感度が爆上がり!?こうしてはいられない!一張羅で行かなければ…」

クリス「あっおい…あいつ最近ガチでやべぇな…って、なんだよこの服」

響「さっき師匠が、今回のターゲットから怪しまれないようにこれ着ろって言ってたよ」

クリス「なんでセーラー服なんだよ!深夜にセーラー服の女子高生がいたら普通怪しまれるだろ!?」

響「…クリスちゃんはいいよね。セーラー服って可愛くて…私なんてブルース・リーだよ…トラックスーツだよ…黒と黄色だよ、警戒色だよ…」

クリス「なんか…ゴメン…」

あけましておめでとうございます!


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番外編 クリスちゃんの家でお泊まり

昨日一日は久しぶりに小説書くのを休んでいました。
たまにはね…
毎日投稿とも言ってないからね…
週5本投稿出来ればいいかなって…
あ、別に病気とか病んだとかじゃないから!
至って健康体だから!
みんなも健康に気を使おう!
え?本編?
これは筆を乗せるために書いた話なんや…
え?ラブコメガイガン?
そっちは不定期かな…本編進めたいしみなさん首を洗って待ってて(意味が違う)
これがクリスちゃんルートだと思って読んで(愉悦)


「それでは雪音、ピー助を頼む」

 

「はいはい…エサさえ与えとけばいいんだろ?」

 

 翼ちゃんがなんか歴史の番組だかなんだかで京都でロケをするとかでクリスちゃんに預けられることになった俺氏。

 クリスちゃんはめんどくさそうにエサ与えとけばいいんだろ?とか言ってるけど目が輝いている。

 二課のみんなは知らないだろうけど俺とクリスちゃんが二人きりになるとすっごい可愛がられるもん。

 他の人が来ると興味無さそうにするけど。

 可愛がってるところを見られるのが恥ずかしいのかな…

 …それよりも、いつまで翼ちゃんは俺を離さないんだろう。

 

「おい…そろそろ離せよ。仕事遅れちまうぞ」

 

「いや、そういう雪音こそ離したほうがいいのでは?こんなところ見られたらこのマンションの住人に不審がられる」

 

「あたしに預けるっていったのお前だろ!?いいからさっさとピー助を離せ!」

 

「やっぱり辞めた!エサあげとけばいいなんて思ってる奴には預けられない!ピー助一緒に京都へ行くぞ!」

 

 京都に行きたいのはやまやまなんだけど待機要員として残ってないといけないし…

 ごめんね!

 

「翼さんそろそろ出ないと新幹線間に合いませんから行きますよ」

 

「い、嫌です!私はピー助と一緒にいなければならないんです!ピー助…ピー助ぇ!!!」

 

 緒川さんに引きずられ、日本を代表する歌姫はこの場を去った。

 そんなヒロインみたいに名前を叫ばないでよ…

 土曜日の朝早い時間なんだから。

 近隣住民の方の迷惑になってしまう。

 もし、こんな姿を見られたら風鳴翼が残念な女だってことが世間にバレてしまう。

 まあ、最近バラエティに進出してちょっと残念な女の片鱗が垣間見える時があるのでバレるのは時間の問題だと思う。

 ちなみに翼ちゃんの出ている番組とかは全部録画し出来ることならリアタイ視聴している。

 バラエティの時は腹を抱えて笑っている。

 もちろん翼ちゃんのいない時に見てるぞ。

 翼ちゃんは機械オンチだから録画とかしないし、そもそもテレビも見ないから録画していることもバレないのだ。

 

「ふー…ようやく行ったか」

 

 ようやく行ったよ。

 

「さて、朝飯でも食うか」

 

 食べるー!

 

 

 

 

 

 

 テーブルに広がる光景に俺は目を疑った。

 刺身、肉、サラダ、スープ、お好み焼き…

 なんだこのごちそうは…

 ここが楽園か…

 

「いやー変な時間に目が覚めちまって久しぶりに本気だして朝飯作ったんだけど気合い入れすぎてあたし一人じゃ食べきれないわー(棒)ピー助食べていいぞー(棒)」

 

 いただきます。

 とにかく食べる、食べる、食べる。

 

 ちなみにこの朝食は久しぶりかつ合法的にピー助を家に連れ込める(泊める)ことが出来るという事実にテンションの上がった彼女が調子に乗りすぎて用意したものである。

 防人の影に隠れがち…そもそも隠しているが雪音クリスもまたピー助LOVE勢だった。

 フィーネに加担していた時に出会い、その愛らしさに絆され、一晩を共にした(意味浅)存在…

 フィーネを裏切り、二課に所属してからはあれやこれやと忙しくあまり可愛がることも出来ていなかった。

 それがついに…我が家にお泊まりしようというのだ。

 テンションが上がらずにいられようか。

 楽しみにし過ぎて眠ることが出来ず、深夜から明け方にかけてずっと料理をしていたのである。

 そして、自分が作った料理を食べるピー助を視姦…もとい眺めるクリス。

 絶対に他人に見せられない顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 けぷっ…

 食べ過ぎた…

 よくよく考えたら朝からこんな量とメニューはアカンよ…

 

 ソファの上で転がるピー助。

 なんやかんやであの量を食べきり、お腹がふくれるどころか丸くなっていた。

 

 あれ…仏壇…

 そっか、初任給で買ったものか。

 それにしても仏壇とは…クリスちゃんって仏教徒なんだ…

 ん?

 ちょっと待て。

 今の発言リピートしよう。

 クリスちゃんって仏教徒なんだ…

 クリスちゃんって仏教徒…

 クリスチャンって仏教徒…

 はい!ピー助じゃあ…ないとぉ!!!

 って、ダジャレになってないがな。

 まあクリスちゃんの中の人はラジオでダジャレばっか言ってるしいいか…

 

「なんか失礼なこと考えてないか?」

 

 なにも考えてません!

 いや、なんか変な電波を受信しただけなんや…

 なんだよクリスちゃんの中の人って…

 

「それよりも…っと」

 

 クリスちゃんがソファの隣に座ってきた。

 それが…地獄(ピー助視点)の始まりだった。

 

『撫でられ地獄』

 

 とにかく撫でられる。

 撫でられるのだ。

 別にただ撫でられるだけなら問題ない。

 問題は…撫でられ過ぎと長すぎるということ。

 もともと人間だった頃からくすぐりに対して人一倍耐性がなかったもので普通の人なら大丈夫な場所もダメだったのだ。

 それはガイガンになってからも変わらずで普通に撫でられる分には良くても…くすぐられるのはダメ、本当にダメ。

 クリスちゃんのは撫でる…撫でるのだがそこにくすぐりが混じる。

 本人は撫でてるだけのつもりなのだが…

 とにかくくすぐったいのだ。

 そもそもクリスちゃんの手自体がくすぐったいというのもあるんだが…

 首筋を撫でられ…っ!

 そこは…ダ、ダメぇ…

 

「今日は誰もいないからな…撫で放題だ」

 

 クリスちゃんは俺を膝の上に乗せた。

 ここからが地獄…

 さあ、地獄を楽しみな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツバサチャン…ツバサチャン…

 

 朝のニュース番組が昼のバラエティ番組になるまで続いた撫でられ地獄はピー助をエ○漫画で無理矢理されてしまったヒロインのように変えてしまった。

 思い人のことをどんなにされても思い続ける純愛系ヒロインの如く飼い主の名を呟くピー助。

 しかしこれがエ○漫画ならまだ序章に過ぎず、ここからひたすらに快楽の坩堝へと落とされ思い人よりも快楽に流されてしまうNTR物として続くのである…

 

 続くのであるじゃねえよ!?

 誰だ地獄を楽しみななんて言ったやつ!

 地獄を楽しませるほうじゃなく、楽しませられるほうだったよ俺!?

 あぶないあぶない…

 あぶなくサープラーイしちゃうとこだったよ…

 イッテイーヨ寸前だったよ…

 くすぐりは拷問ってホントなんだね…

 またひとつ賢くなりました。

 

「さて、それじゃあ次はベッドで…」

 

 ベッドで!?

 ナニされちゃうの俺!?

 翼ちゃんでもそんなこと…

 あった。

 

「こんにちはー!クリスちゃーん!」

 

 お、この声は響ちゃん。

 

「もう響ったらダメでしょ?合鍵持ってるからって」

 

 未来ちゃんもいるな。

 

「なんだお前らかよ…勝手に入ってくんなよ。折角これからだったのに…」

 

 神よ。

 私はあなたの存在を信じます。

 助けに来てくれたんだ。

 二人は神なんだ。

 ベッドで色々大切なものを奪われそうになる俺を助けに来てくれたんだ。

 

「あれ?ピー助君がクリスちゃんの部屋にいる」

 

「あいつから仕事で家を開けるから面倒見てくれって頼まれてたんだよ…世話なんて押し付けやがって」

 

「じゃあわたし達が預かろうか?」

 

「な!?」

 

 雪音クリスは隠れピー助LOVE勢。

 その名の通り、隠れてピー助を愛でているのである。

 そのため基本的に他人の前では「ピー助?ただの大飯食らいのペンギンだろ?」こんな感じで無関心を装おっているのである。

 そのため立花響と小日向未来の前でさっきのような台詞を言ってしまったのだが…

 

「私も久しぶりにピー助と遊びたいな」

 

「未来はあんまりピー助君とふれあってないもんね」

 

 二人の中で徐々に高まるピー助を連れて行こうという気運。

 このままでは本当に連れて行かれかねない。

 折角久しぶりの二人きりになれる日だというのに…

 家に訪れてしまったものはしょうがない。

 しかし連れて行かれるのはダメだ。

 

「いや、あたしが頼まれたんだ。今日はあたしが面倒見る」

 

 これなら文句も言われまい。

 なんなら責任感のある人だなとも思わせられる最高の一手。

 まさに神の一手。

 

「そうだね…次回はわたし達が預かろう」

 

 よし。

 これでいい。

 ピー助預かりレースに新たなライバル(他のライバルは友里さん)が現れたが今日のためだ。

 次回以降も根回しして預かる権利を勝ち取ればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜になり二人は帰った。

 再び二人きり…

 よし、まずは風呂に入ろう。

 

「こら暴れるな。お前風呂好きだって聞いてるぞ」

 

「ピ!ピ!ピー!!!」

 

 手足をバタつかせるピー助。

 あいつは「ピー助は風呂好きだからおとなしく入ってくれる」とか言ってたけどこの暴れようではとても信じられない。

 まさか…あたしと入るのがイヤなのだろうか?

 だとしたら…

 

 

 

 

 

 

 

 風呂はまずい。

 前回だって煩悩を殺し、思春期を殺し、神様だって殺してみせて我慢したのに二度目はまずい。

 見た目はガイガンだけど中身は若い男だぞ!

 現役JKと一緒に…というか現役JKに風呂に入れられるなんてとんでもないことだぞ!?

 逮捕だぞ逮捕!!!

 なんてのは建前であの胸部装甲を見るのはヤバイ!

 見たいけどダメだ!!!

 モラルが…モラルが消失してしまう。

 翼ちゃん?

 翼ちゃんは別に…

 家族みたいなもんだから欲情とかしないし…

 ん?

 なんか水滴がおでこに…

 

「ピー助はあたしと風呂に入りたくないのか?」

 

 クリスちゃんが泣いて…

 あなたそんなキャラだった!?

 え、ちょ、え。

 俺のせい?俺のせいなの?

 俺が泣かせたの?

 なにこの小学校で女の子泣かせた時みたいな罪悪感は…

 ごめん…

 その…ごめん…

 

「あたしとふろはいらないとゆるさない」

 

 うっ…

 女の涙は武器というのは人生経験から理解していたつもりだったがこれほどだったろうか?

 こうなったら腹をくくるしかない…

 

「いっしょにはいる?」

 

 はいります…

 

「いやいやじゃない?」

 

 ち、違うよー。

 俺はクリスちゃんと一緒にお風呂に入りたい。

 

「あたしのことめんどくさいっておもってない?」

 

 思ってない。

 思ってないよー。

 

「それじゃあはいろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すごかった。

 すごかった(迫真)

 こう、目前に迫るというかそびえ立つというか…

 巨大な建物…ダムとかを間近で見たような気分だ。

 

「ふぅ…さっぱりした」

 

 髪を乾かし終わり、牛乳片手に立つクリスちゃん。

 その牛乳が秘訣ですか?

 あとで翼ちゃんに教えてあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、危ないじゃないですか翼さん…普通の人なら真っ二つでしたよ…」

 

「いえ、なにか失礼なことを言われた気がして…打ち合わせの続きをしましょう」

 

 

 

 

 

 

 ふぁ~…

 眠くなってきた…

 そろそろ寝よ…

 さて、ソファで寝るか…

 

「おい、どこで寝てるんだよ」

 

 ふぇ?

 

「こっち来いよ…」

 

 え。

 いやぁそれはさすがに…

 

「いっしょにねたくないのか?」

 

 寝ます。

 寝させてください。

 

「よし」

 

 ソファからベッドへと向かって…

 よいしょと…

 

「来たな…今夜は寝かさねえからな」

 

 さっき「一緒に寝たくないのか?」って言ってたじゃないですかぁー!

 

「こら、逃げるな」

 

 いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないな雪音。ピー助は元気か?」

 

「元気も元気。うちの食材食い荒らされたよ。なあピー助?」

 

 ツバサチャン…ツバサチャン…

 アッツバサチャンダァ…

 

「なんだか目に光がないが…」

 

「そうか?元からこんなだったろ」

 

 ツバサチャンアノネクリスチャンノオッパイノヒケツハネ…

 

 ピー助は壊れた。

 このあと翼と一緒にお風呂に入るまで壊れたままだった…




なんで俺が書く女の子はめんどくさくなるの…

オマケ 擬人化ガイガン ショタver

翼「ピー助が小さい男の子に…!」

マリア「翼!私にも見せなさい!」

ピ(性別はあってるからこっちのがマシかな…)

翼・マリア「じゅるり…」

ピ(別の危機が訪れてる!?)


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最新話!!!リハビリガイガン

いやーなんか久々だなこの感じ()
我が家に帰ってきた感ある()
というわけでちょっとリハビリのために番外編書きます。
そしたら本編進めるので……許してつかぁさい。
時系列的にはG編前でございます。
久々に防人語じゃない翼さん書いたぞ……


 いやーまさか二課の本部が潜水艦になるなんて思ってもみなかったよね。

 まあ、特に何もなければ停泊してるだけだからずっと海中で生活してるというわけでもないので楽でいいが。

 やっぱり落ち着くのは我が家だよね~……なんて思って我が家に帰るとそこは魔窟。やっぱり清潔感溢れる新造されたばかりの潜水艦だよね~!

 そしてそんな新しい潜水艦で浴びるシャワーは気持ちいいぃぃぃぃ!!!

 

「ピーーー!(フォーーー!)」

 

 しゃかしゃかと高速な鉤爪で身体を洗い、テンションアップによって唸る回転ノコギリと嘴の隣から生えているクワガタの顎みたいなやつ。こいつなんなんだろうなぁ?生えてる意義は分からないけど、カッコいいからヨシ!

 さて、身体が綺麗になったところで……。

 行こうぜ!ナンパ!(ジード風に)

 

 ジャンプして蛇口を捻ってシャワーを止める。

 身震いして水を弾き飛ばしてシャワー室を出る……前に鏡をチェック。

 うん、今日も決まっている(自画自賛)

 いや、そうでも思わないとやってけないからねこの身体。

 自己肯定感高めていかないと()

 というわけでレッツゴー。

 

 

 

 

 休憩室。

 装者三人が揃い、最近追加された連携を高めるための訓練終わりの休息中であった。

 

「立花、雪音。聞いてほしいことがあるの」

 

 いつも通りの真面目な顔を浮かべた翼が二人に話しかけた。

 あまり自分から話を振るタイプの人間ではないので響もクリスも強い関心を持った。

 

「なんですか?」

 

 そして、翼の口から出たのは……。

 

「……可愛げとは、どんなものかしら」

 

 なんとも、予想外の言葉だった。

 あの自身を剣と言い張る風鳴翼の口から可愛げなんて言葉が出ようとは。

 

「え」

 

「はあ?」

 

 響もクリスも間の抜けた声を出してしまった。

 すかさず口を閉じてなんでもないと誤魔化すが……。

 風鳴翼は「可愛い」というよりも「美しい」タイプの女性である。

 凛とした人となり。そして、アーティストとしてのストイックさなどがより彼女を美しいものとして際立たせている。本人の性格も相まってより「美しい人」と認識されるわけだが翼はまだ10代の少女。身の丈に合わない。歳相応の可愛げがないというのは一部の業界人からの評価であり、それを小耳に挟んでしまった。 

 今までは全く気にしていなかったのだが、少々、翼の心境に変化があった。

 

「最近、もっと私に可愛げがあればピー助がもっと懐くんじゃないかと思って聞いたのだけれど……」

 

(やっぱりピー助君絡みだったかぁ……)

 

 内心、響は予想通りであってしまったことにこの残念美人はペット依存ではないかと勘繰ったが正にその通りである。

 

「やはり私には可愛げなんてもの似合わない。忘れてちょうだい」

 

 可愛げを得ようとしたことを諦めた翼。

 しかし、響の性分が諦めることを許さなかった。

 困っている人を見過ごせないのは彼女の美徳であり、呪いの元凶である。

 

「そんなことはありません!翼さんは確かに大人びていてそれはそれで魅力ではありますがそこに可愛げがプラスされたら最強です!というわけで、可愛げを出すために……まずは、ドジっ子になってみましょう!」

 

「……ドジっ子?」

 

「そうです!完璧な人というイメージがある翼さんが可愛いミスをすればきっとギャップ萌え間違いなし!つまり可愛いということです!」

 

「なるほど……やってみましょう」

 

「やるのかよ……」

 

 力説する響。

 なるほどと聞き入る翼。

 呆れるクリス。

 三者三様の反応。

 もう知らないとクリスは我関せずと決め込むが、彼女もまた人が良かった。ちらりちらりと目線を配り、事の推移を見守る。

 が……。

 

「はいそれじゃあ自己紹介をドジっ子風にやってみましょう」

 

「じ、自己紹介を……?」

 

「はい!例えば、苦手なことを言ってみるとか噛んでみたりとか!」

 

「なるほど……」

 

 それではと一度深呼吸をしてから、風鳴翼渾身のドジっ子風自己紹介が始まった。

 

「風鳴翼です。苦手なことは……か、片付けでしゅ!」

 

「……」

 

「……」

 

「やはり私には無理だ!こんな恥を晒すようなこと!」

 

 頭を抱える翼。 

 やはり私では無理だと。

 

「だ、大丈夫ですよ翼さん!じゃあ次は別の案でいきましょう!」

 

「別の案……?」

 

「はい!きっと翼さんも納得の可愛さを手に入れられると思います!」

 

 次こそは大丈夫と豪語する響。

 果たして、その響の案とは……。

 

「ピー助君を参考にするんです!ピー助君は可愛いですからピー助の真似をすればいいんですよ!」

 

「ピー助を参考に……?」

 

「まあピー助は可愛いけどピー助の真似をするってのは……」

 

 我関せずとしていたクリスが口を出した。

 なんやかんやピー助好きなクリス。ピー助の名前が出て思わず口を出してしまったのだ。

 

「雪音の言う通りピー助の可愛さは私達などが、いや、全人類が到達することの出来ないほどの高みにある。真似をするなんてことは出来ない」

 

(うわぁ……)

 

(うんうんそうだな)

 

 引く響。

 肯定するクリス。

 それぞれ、内心で思っていることは違ったが一先ず話を進めようとした矢先、件の人物。いや、怪獣がやって来た。

 

「あ、ほらピー助君来ましたよ!早速勉強してみましょ……えぇぇ!?」

 

「ピ?」

 

 驚愕から叫び声が上がるがそれもそうだろう。

 ピー助が女性職員を大量に引き連れてやって来たのだから。

 

「え、あの……皆さん何をして……」

 

「ピー助君が一人でパレードしてたから~」

 

「みんなで撮影してたのよ~」

 

「あ、あはは……そうなんですね……」

 

 ひきつった笑みを浮かべる響。

 まさか、ここまでとは思っていなかったのだ。

 ようやく仮とはいえ新しい本部が出来て多少は落ち着いてきていた二課。

 これまでの疲れを癒そうと二課のマスコット、ピー助のナンパもとい一人パレードは女性職員達の楽しみとなっていたのだ。

 

「あんたに似て人気者だな……って、おい。どうしたんだよ」

 

 クリスはこの様子を見て飼い主である翼に話しかけたが返事がなかった。

 無言でピー助の方へと向かって歩く翼の背中を見たクリスは思わず唾を飲み込んだ。

 後にクリスはこの時のことをこう語る。

 

「あんまり剣のことは分からねえけど、剣気ってのか……?とにかく、オーラが見えた……」

 

 ピー助の前でしゃがんだ翼はピー助を抱き抱えると女性職員達に向かって「そろそろ外に散歩の時間なので」と言って笑顔を浮かべた。

 それなら仕方ないと女性職員達も自分達の持ち場へと戻っていくのを見届けて……翼はピー助を叱る。

 

「駄目でしょうピー助。みんな仕事中なんだから」

 

「ピー……」(はーい)

 

「全くしょうがないんだから……。次からは駄目よ?」

 

「ピ~」(けど歩いてるだけなのに向こうが勝手についてくるんや(嘘))

 

「ピー助?」

 

「ピ、ピー!」(は、はい!)

 

 笑顔のはずなのに怖い翼。

 毎度のことながらそれに怖気づくピー助である。

 この二人の力関係がよく分かるというものだ。

 

 

 

 

 さて、翼ちゃんに捕まったわけなのだが現在絶賛翼ちゃんから遊ばれている真っ最中である。

 

「せっせっせーのよいよいよい」

 

 ちょこんと出した鉤爪の先を人差し指の腹にのせて、リズムに合わせて上下させる翼ちゃん。

 俺の鉤爪こと正式名「ハンマーハンド」は意外と先が鋭くないので軽くのせるだけなら怪我はしないので大丈夫だろう。

 

「……可愛いですね」

 

「そうでしょう。ピー助はとっても可愛いのよ」

 

「ピー助君もですけど、翼さんもとっても可愛いですよ」

 

「え……えぇ!?私のどこが!?」

 

「いやー二人を見てたらなんとなく」

 

 ニヤニヤと笑う響ちゃん。

 そうだね、翼ちゃんは普通にしてたら可愛いんやで。

 普段が残念なだけで。

 

「……いや、雪音の方が可愛いと思うぞ」

 

「……は?はあ!?」

 

 なんとも言い返せない翼ちゃんは恥ずかしいからこの場を全て巻き込むことにしたらしい。

 しかしクリスちゃんが可愛いのは事実である。

 

「口調は荒々しいが、私服はとても女の子らしいし靴も厚底で低身長を活かしてとても可愛らしいと思うぞ」

 

「確かに……いいよ~クリスちゃん可愛いよ~」

 

 うんうん。

 クリスちゃん可愛い~!

 照れて顔を赤くしてるのも可愛いよ~。

 おっぱい大きいのも可愛いよ~。

 

「お前ら……いい加減にしろッ!!!」

 

 照れてる照れてる~……って、行っちゃった。

 もう~照れ屋さんなんだから~。

 クリスちゃんのツンデレ!

 可愛いな~おい。

 属性過多かよ。

 低身長でファッションは女の子らしい似合うもの好きで着てるみたいだし厚底の靴だし、だけど本人は可愛いことを自覚してなくて口調が荒々しくてツンデレで……。

 もう属性のデンドロビウムですわこれ。

 クリスちゃん最強。

 

「ピー助」

 

 ぴえっ!?

 いや~翼ちゃんも充分可愛いんやで。

 だけどそれを言葉にするのはなんともむず痒いと言いますかなんと言いますか……。

 

「別にいいのよピー助。私なんかよりピー助の方が何倍も可愛いのだから。……だから、いっぱい可愛いがってあげる」

 

 ぴえぇ……!?

 響ちゃん助けて!

 

「あーわたしもう一回トレーニングしてきますね!」

 

 響ちゃーん!?

 つ、翼ちゃんも、き、鍛えてきたら?

 け、稽古は大事だよ?

 

「稽古も大事だけれど、休憩も大事よ。だから……ふふ」

 

 や、やめ……。

 こ、怖いよ……翼ちゃ……。

 ま、待って!

 その手の動きはなに!?

 まっ……!

 

「ピーーー!!!(俺のそばに近寄るなぁ!!!)」




ふう……特に山なしオチなしですがガイガンの空気を取り戻したぞ……
これで……書ける。
多分。


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戦姫絶唱シンフォギアG編
素晴らしき日


あけましておめでとうございます(2回目)
遂にG編入ります。
今回はそのプロローグ的な話。
一期分の設定(真)や友里さんとの朝チュンの真実等々の番外編も投稿していきたいと思っていますのでお楽しみに。
追記
誤字報告先程確認いたしました。
ありがとうございます。
いただいたのに…なぜか誤字を確認しようとページを開いても開かないのッ!
一体どうなってるのマムッ!?


 翼ちゃんの目を掻い潜り、なんとか外に出ることが出来た。

 まあすぐに戻るつもりだから大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 街に着くと以前よりも活気が戻ってきたように感じる。

 人通りが多い。

 このあたりも復興してきたということだ。

 よきかな、よきかな。

 ん、あれは…

 

「お姉さんマジ美人だねぇ!俺達と遊ばない?」

 

「ウェイウェーイ」

 

 うわー今時あんなテンプレートなストリートナンパいるんだ…

 チャラチャラチャラチャラして…

 男は朴訥としているべきというのが持論の俺からすればああいう輩は許せないのだ。

 下半身でしか物事を判断出来ないケダモノめ…

 

「ごめんなさい急いでいるの、あなた達の相手をしている暇はないの」

 

「えーいいじゃんよー少しくらいー」

 

「ウェイウェーイ」

 

 チャラ男が無理矢理、女性の腕を掴もうとした瞬間…

 俺はチャラ男二人のベルトを切り裂いた。

 バレてはいけないので高速で飛行しながらだが。

 さて、ゴミ箱を盾に身を隠しながらチャラ男の様子を見ると…

 

「ウッソだろ!?な、なんだよこれ!?」

 

「ウェイウェーイ!?」

 

 …行ったか。

 ふう、これで今日も街の平和を守っ…

 

「あなた?私を助けてくれたのは」

 

 ふぁ!?

 いつの間に後ろに…

 この人、何者…

 

「えーと、あなたは…ペンギン?」

 

 ペンギンじゃない!

 ガイガンだって…って、ワオ…

 ムッチャ美人…スタイルいい…背ぇ高い…おっぱいデカイ…

 ピンク色の髪で髪型がネコっぽい。

 

「ありがとね、不思議なペンギンさん…ふぅん、へぇ…」

 

 ジロジロ俺を見る美人さん。

 しゃがむと俺を撫ではじめ…あひゃひゃ!そこくすぐったい!

 

「…かわいい」

 

 ふぁーーー!!!!

 ダメそこ!ダメそこ!やめて止めてやめて止めてー!

 アッーーー!!!

 

「ふふ、気に入ったわ!あなた、この街に詳しい?」

 

 ひぃ…ひぃ…

 ま、まあ…野良猫達の世話をしているうちにこの街を庭って呼べるくらいには詳しくなったけど…

 

「そう…じゃあ、この街案内してもらえるかしら?」

 

 え、なに言ってんのこの人(ドン引き)

 こんなサイボーグペンギンに街を案内してだなんて普通頼まないでしょ…

 

「不思議な生き物から街を案内されるなんて、面白そうでしょ?」

 

 …まあ、もし自分が知らない土地でヘンテコな生物と出会したら…いや、それでも案内なんて頼まないでしょ。

 

「なかなか強情なペンギンね…そうだ!案内してくれたらお礼にご馳走してあげるわ!」

 

 やります!

 是非、エスコートさせてください!

 

「よろしくね、ペンギンさん。私はマリア…マリアよ」

 

 よろしくお願いしますマリアさん!

 さあ、それではこちらにどうぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい…あれは…総帥だ!総帥が帰ってきたぞ!』

 

 その一声に、この一帯の野良達が集結した。

 

『そーすい!そーすい!そーすい!』

 

 はっはっは、野良達よ私は帰ってきたぁぁぁぁ!!!

 

『おおおおおおお!!!!!!!!!』

 

「え、と…ここは…?」

 

 ここは野良達の野良達による野良達のための楽園…

 さあ、無料の猫カフェです。どうぞお楽しみください。

 

「あはは…あなたは慕われているのね」

 

 いやぁとんでもない。

 みんな仲良くがモットーですから、はっはっは。

 よろしければみんなにエサの施しを…

 

「あなたって商売上手なのね…しょうがない。このお肉をあげるから、仲良く食べなさい」

 

『おおおおおおお!!!!!!!!!』

 

 本日二度目の大歓声。

 マリアさん、あんた神やで…

 

 

 

 

 

 

 本当にマリアさんありがとうございました…

 みんなとても喜んでいました…

 

「喜んでくれたなら結構…それで、次はどこに案内してくれるのかしら?」

 

 もうお昼近いですからこの辺りで昼食でも…

 

「そうね、美味しいところでお願い」

 

 承知。

 

 

 

 

 

 

 

「このお店は…ふらわー?随分とボロボロのようだけど…」

 

 はい…先のノイズによる被害で店舗が被害にあいましたが…この通り、通常営業中なのであります!

 

「なるほど…まさに不死鳥のように甦ったというのね」

 

 その通りであります!

 ささっ、どうぞ。

 

「えぇ…入るわよ」

 

 暖簾をくぐり、店内に入る。

 お、まだお客さんが来てない。

 貸し切りだ!

 

「いらっしゃいませ…って、あらピーちゃんどうしたの?こんな美人さん連れて」

 

 おばちゃん、いつもの頼むでー!

 

「はいよ。あ、好きなとこ座ってどうぞ」

 

 とりあえずテーブル席に座ったマリアさん。

 おばちゃんがお冷やを置いて、鉄板に火を入れる。

 

「ありがとうございます…あの、ここってどんな料理を出すお店なんですか?」

 

「あら、知らないで入ったの?ピーちゃんも教えないなんて意地悪しちゃって…ここはね、お好み焼き屋よ」

 

「お好み焼き…?」

 

「まあ楽しみにしてて」

 

 楽しみにしててください。

 あ、おばちゃん俺は自分で作るから。

 

「はいよ豚玉ね」

 

 わーい来たぁ!

 これを混ぜて~鉄板にのせて~

 ジュー!

 ふぉー!

 

「あなた器用なのね…腕が爪になってるのに…」

 

 まあ、特訓しましたから。

 さて、ここからしばらくお待ちください…

 ・

 ・

 ・

 そろそろ返すか… 

 シャキンと腕の鎌を…

 

「ちょっと待ちなさい!?あなたそんな腕だったかしら!?」

 

 えぇ?

 そんな驚くことかな?

 

「だってさっきまで…爪だったじゃない!?鎌じゃなかったわ!?」

 

 まあまあ腕が爪から鎌に変わったり、挙げ句の果てにはチェーンソーに変わるからね。

 この世界で腕が変わる程度で驚いてたらやってけないよ?

 それにこの腕は鎌だけど…何かを傷つける以外の使い方があるッ!

 

「鎌で…ひっくり返した!?」

 

 そう…この腕は…ヘラとしても使えるッ!

 誰かを傷つけるだけじゃない…誰かを笑顔にすることだって出来るんだ…料理を通して…

 俺はそれを…お好み焼きから学んだんだ…

 

「お好み焼き…なんて素晴らしい料理なの…」

 

 マリアさんもお好み焼きの素晴らしさを分かってくれた。

 そう…料理は国境を越えるッ!

 歌も…料理も…人を笑顔に出来る…

 なんて素晴らしいんだ!

 

 

 

 

 

 さて、そうこうしているうちに俺のお好み焼きも完成し、マリアさんのお好み焼きも運ばれてきた。

 ソースの匂いが香ばしい…

 それじゃいただきまーす!

 

「いただき、ます…」

 

 マリアさんはフォークを使ってお好み焼きを口の前まで運び、ふうふうと冷ましはじめた。

 そして、お好み焼きを口に入れると…

 

「美味しいッ!」

 

 それはよかった。

 気に入ってくれたようでなにより。

 それからマリアさんは夢中でお好み焼きを食べはじめた。

 すごい気に入りようだ。

 連れて来た甲斐があったというものだ。

 さて、俺も食べよう。

 あっつ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから適当に街のいろんな穴場(ガイガン基準)を歩き回り、気づけば日が暮れはじめていた。

 俺達以外、人のいない公園で夕陽を眺める。

 

「それじゃあそろそろ私も帰るわ。ありがとう不思議なペンギンさん。とても楽しかったわ」

 

 よせやい照れるぜ。

 まあ、まだまだこの街には面白い場所があるから案内してほしかったらいつでも案内するぜ。

 

「ふふっありがとね…それじゃあ、これはお礼よ」

 

 おでこに柔らかい感触が…

 これは…まさか…キッス!?

 キッスや!キッスやで!?

 

「こんなサービス、滅多にしないんだから喜びなさい?」

 

 いやもう喜んでます!

 喜んでますとも!

 まさかこの体になってからキッスされるなんて…

 

「それじゃあまた会いましょう…」

 

 そして、マリアさんは帰っていった。

 …綺麗な人だったなぁ。

 人間の時なら即惚れてた。

 それくらい、とても魅力的な人だった…

 さて、俺も帰るか…

 

 

 

 

 

 ルナアタックが行われた地を調査するにあたって使用している拠点に帰った私を待っていたのは厳しい追及だった。

 

「これはどういうことデスかマリアッ!?今日はみんなで焼き肉の予定だったじゃないデスかッ!?」

 

「これには流石の私も説明を要求…」

 

「ごめんごめん、ちょっといろいろあったのよ…ところで二人共、お好み焼きって知ってる?」

 

 買い物袋からお好み焼きセットを取り出してウインクする。

 焼き肉もお好み焼きも鉄板を使うからちょっとしたメニュー変更くらい大丈夫なはず。

 それくらい私はお好み焼きと…あの不思議なペンギンさんのことを気に入っていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はあー今日はまさかまさかの出来事があったなー!

 人生…じゃなかった、ガイガン生の中でもこんな日があっただろうか!

 美女とデートするだなんて!

 もう、これでしばらく頑張れる。

 さあ、我が家に着いたぞ。

 あとは夕飯食べて、風呂入って、寝るだけ!

 あーなんて素晴らしい日だったんだろう!

 ただいまー!

 あれ、翼ちゃん帰ってきてないのかなー?

 今日は大人しく翼ちゃんの抱き枕になることも厭わないくらい機嫌がいいのにもったいないなー。

 暗い廊下を歩いて、リビングの扉を開ける。

 部屋が荒らされている…

 その部屋の中央にいたのは…

 

「ピー…すけぇ…」

 

 不自然な角度で首を曲げ、こちらを見る翼ちゃん…

 月光が窓から射し込んで、妖しく翼ちゃんを照らす。

 忘れてた…

 俺、今日勝手に抜け出して…

 

「ピー助ぇぇぇぇ!!!!!」

 

 アッーーー!!!!!!

 

 このあと、めちゃくちゃ気絶した。




オマケ

翼「ピー助!どこにいったの!テレビのリモコンじゃないんだから!」

2時間後

「ベッドの下にもいない…」

4時間後

「雪音の所にもいない…」

6時間後

「クローゼットの中にもいない…」

8時間後

「ピー助…ワタシのピー助…」←ここでピー助帰宅


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若者を導くOTONA

シンフォギアって大人が頼もしくていいよね!
クウガの警察並に頼もしい!


 歌が響く。

 瓦礫と火の海に、一人佇む…私の妹。

 誰か、妹を助けて!

 叫んでも、大人達は難しい言葉を並べるばかりで私の言葉なんて聞き入れてくれない。

 こうなったら私が助けるしかない!

 妹のいる場所まで、炎を避け瓦礫の山を登り…

 妹の名を呼ぶ。

 振り向いた、妹は血の涙を流して──。

 そこから先はあまりよく覚えていない。

 瓦礫から私を庇ったマムと共に救助されてからの記憶しかない。

 それが私の前奏(プレリュード)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまピー助」

 

 家に帰ると電気がついていない…

 おかしい、いつもならピー助が勝手につけているというのに…

 

「ピー助、いないの?」

 

 呼びかけても返事がない…

 最近は素直に家で留守番をしていたというのに、また勝手に外出をしているのだろうか? 

 そうだとしたら…

 いや、待て。

 何か聞こえる…

 テレビはついているらしい…

 まさか…侵入者が…

 ピー助も侵入者に捕らえられているかもしれない…

 今行くぞ!ピー助!

 

「ピー助!無事、か…」

 

 私は目の前の光景に目を疑った。

 テレビに流れるのは流星の如く現れた歌姫「マリア・カデンツァヴナ・イヴ」のライブ映像。

 そして、テレビの前にはマリアLOVEと書かれたハチマキを巻いて、鉤爪にサイリウムを巻き付けたピー助の姿がそこにはあった。

 

「ピー助」

 

 私の声に反応したピー助はギギギ…と音が鳴りそうな固い動きで振り向いた。

 

「ピー助…とりあえず、そこに正座しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大人しく正座して、翼ちゃんと向かい合う。

 まさか…見つかってしまうなんて…

 

「ピー助…ピー助どうして…私じゃなくてマリアなの!私のDVDなんて見たことないのに!私のライブグッズだって持ってないのに!どうして…どうして…」

 

 しょうがないんだ翼ちゃん…

 だって…ファンになっちゃったんだからしょうがないだろう!

 まさかあの時、街を案内したのがこんな世界の歌姫だったなんて…

 それにおでこにキッスまでされて…

 好きにならないほうがおかしいだるぉぉぉ!

 

「ピー助の浮気者ぉ!!!」

 

 泣きながら寝室に入る翼ちゃん。

 勢いよくドアが閉められ、ドアの音が静かな部屋に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 和室でちゃぶ台挟んで向かい合う風鳴翼と風鳴弦十郎。

 二人の間には、なにやら重い空気が漂っていた。

 

「…それで俺のところに相談しに来たというわけか翼」

 

「…はい、叔父様」

 

 風鳴翼が珍しく休日の風鳴弦十郎の屋敷の門を叩いたのは必然だった。

 こんな話を出来るほど風鳴翼は家族との仲が良好なわけではない。

 周りの大人というとマネージャーの緒川さんか二課の方達、そして上司でもあり、叔父でもある風鳴弦十郎。

 緒川さんは任務があるため本日不在、二課の方達も仕事中、本日休みだという叔父である風鳴弦十郎のところに来るのは当然のことなのだ。

 

「お前達は夫婦か」

 

 まず、話を聞いた弦十郎の口から出たのはそんな言葉だった。

 

「翼、お前はピー助をマリアに取られたと思ってるんだろう?」

 

「はい…だって、私のライブのDVDとかグッズとかは持ってないのにマリアのはしっかり持っているんですよ。こんなの裏切りとしか言いようがありません!」

 

 そう、これは裏切りだ。

 今まで長い時間を共に過ごしてきたというのに、あんなポッと出の…つい2ヶ月前にデビューした小娘(翼より歳上)なんかに…

 あぁマリアを思い出したらなんと憎たらしいことか。

 あの髪型も含めまさに泥棒猫という表現がピッタリだ。

 

「確かにお前の言うことも分かるが…お前達は飼い主とペットの関係だろう。別に浮気もなにも無いんじゃないか?」

 

「違います!私とピー助はもう飼い主とペットなんて関係じゃありませんッ!共に戦い、何度も死線をくぐり抜けてきた相棒です!故にこれは裏切りなんですッ!私というものがいながらあんな…淫乱ピンクの年増に…!」

 

 淫乱ピンクってお前…と内心思った弦十郎。

 まさか、堅物で古風な姪からそんな単語が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。

 

「別に好きなアイドルが出来たくらいで浮気とは…」

 

「いいえ!これは完璧な浮気ですッ!」

 

 浮気の基準ッ!

 それは人によって様々!

 恋人がいるのに異性と二人きりで遊ぶのは浮気という者もいれば、遊びの関係なら一線を越えてもOKという者もいる。

 風鳴翼は…前者に相当する価値観の持ち主だった。

 今時珍しい古風で堅物、最近バラエティ番組にも進出し、その天然さを炸裂させる風鳴翼が遊びの関係などというチャラチャラしたものを許せるはずがなかった。

 ましてや、件のマリア・カデンツァヴナ・イヴは自分と同じ歌の世界に身を置く存在。

 同じ歌手として対抗意識はあったが、ピー助の件で対抗意識どころか如何にして奴を始末するかなど考え始める始末である。

 このままでは風鳴翼が活動停止どころか逮捕、起訴。

 殺害理由は痴情のもつれ…などという週刊誌が泣いて喜びそうなネタを提供することになってしまう。

 それだけは避けたいと風鳴弦十郎は姪の悩みに真剣に答えることにした。

 

「翼…愛にも種類があるというのは理解しているか?」

 

「ええ…まあ」

 

「だからきっとピー助の持つお前への愛とマリアへの愛というのは種類も…大きさも違うと思うのだ」

 

「種類も…大きさも…だけど、私よりマリアへの愛の方が特別だとしたら…」

 

 珍しく弱腰になっている姪の姿に年相応らしさを感じたことに嬉しさとめんどくささを感じる弦十郎。

 これが…若さか…

 若人を導くのは大人の務めだ。

 

「何を弱気になっている翼!お前のピー助への愛はポッと出の女に負けるほど小さいのか!」

 

「そんなことありませんッ!私のピー助への愛は誰にも負けませんッ!」

 

「よし、その意気だ!急激に熱せられたものほど冷めやすいものだ。そのうち飽きるだろう」

 

「そうですね!私、自信が出てきました!」

 

 なんとかなった…と内心ホッとする弦十郎。

 これで最悪の未来は回避したはずだ。

 よし、あとはゆっくり休日を謳歌しよ──

 

「けど、ピー助は元々奏が世話をしてて…奏にはよく懐いて…私の家にはじめて行った時もすぐに逃げ出して…」

 

 この瞬間、風鳴弦十郎の久しぶりの休日は潰えた。




鉄板少女(?)マリア!

マリア「これを…ひっくり返すのよ…」

切歌「慎重に…慎重にデスよ…」

調「ジー…」

マリア(ペンギンさんの動きを思い出しなさい…あの美しい形を保ったまま…)

マリア「ここッ!」

べちゃっ(さっきまでお好み焼きだったものが辺り一面に転がる)

お好み焼き(生まれ変わったら、もっと上手な人にひっくり返してもらうんだ…)

切歌「そんな…こんなのあんまりデスッ!」

調「私達の夕飯が…」

マリア「やっぱり私ではダメなの…こうなったら、あのペンギンさんに…」

切歌・調「ペンギンさん?」

マリア「いえ、なんでもないわ…(絶対に物にして見せるッ!お好み焼きを…ペンギンさん(の技)をッ!)」


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それぞれの悩み

二期になったのにマムやウェル博士の姿どころかビッキーやクリスちゃんの姿すら見えない?
この物語の主人公はガイガンと翼さんですからね、出番がない時はないんです(遠い目)


 ピー助浮気騒動はまあなんやかんやで解決した…ように見えてまだ若干ではあるがわだかまりが残っていた。

 どうやってDVDやらグッズやらを買ったのかという問題が残っていたのだ。

 きっと協力者がいるはず…ということで探らせてはいるけれど未だに尻尾は掴めない。

 そんなこんなで時間は経過し、マリア・カデンツァヴナ・イヴとコラボライブの日がすぐそこに迫っていた。

 そして、今日は二人の親睦を深めようということでマリアが宿泊しているホテルでお茶会が開かれているのであるが…

 

「…」

 

「…」

 

 沈黙!

 二人の歌姫は互いに意識しあうあまりに無言でお茶を啜るしかしていない。

 お茶会開始からそろそろ一時間が経とうとしているというのに…

 無言ッ!

 この状況を打破する手段はあるのか…!?

 それは…あった!

 それを見つけたのはマリアの方だった。

 

「…ねえ、あなたペットとか飼ってる?」

 

 マリアが見つけたのはこのホテルと同じグループが経営しているペットホテルの広告!

 ペット、すなわち動物。

 動物が嫌いな人間は…まあいるが、多数の人間は動物が好きだ。

 動物の話題ならばきっと何か話せるはずというマリアの一手ッ!

 それは…風鳴翼にとって非常に有効な一手だった!

 

「ええ…少し変わったトカゲを飼っている」

 

 食いついた!

 少し変わったトカゲなんて言い方をするくらいだから話を続けたいということだと一人納得したマリアは次なる一手を放つ!

 

「少し変わったって、どんなトカゲなのかしら?」

 

「…なんというか、ペンギンのような…」

 

「ペンギン…?」

 

 ペンギン。

 その単語に思わず食いついてしまったマリア。

 これがいけなかった。

 

「ペンギン…私も飼ってみたいのよ、ペンギン。ちっちゃくて、お好み焼き作るのが上手なペンギン」

 

「お好み焼きを作るのが上手…?それはペンギンなのか…まさか」

 

 地雷。

 圧倒的、地雷ッ!

 普通なら「なにそれ~、お好み焼き作るペンギンとか超ウケる~」的な感じで笑い話に持っていけるのだが、風鳴翼にとってお好み焼きを作るペンギンという存在は身近も身近、なんたって同棲しているのだから。

 ピー助(お好み焼きを作るペンギン)と。

 

「実は前にこの街を散歩した時に不思議なペンギンさんに会って…」

 

 ことごとく地雷を踏み抜いていくマリアッ!

 それに伴い、翼の怒りのボルテージは上昇していく!

 肩をわなわな震わせている翼に気づかず、マリアはさらに燃料を投下していく!

 

「それで一緒にデートして、お好み焼きを食べて…あまりの可愛さにキスしてしまったわッ!」

 

 ブチッと何かが切れる音がした。

 爆発したのである。

 爆発したのである(2回目)

 

「そう…私も是非会ってみたいものね…お好み焼きを作るペンギンさんに…」

 

「そうでしょ!…って、どうしたの?俯いて」

 

「いえ…なんでもないわ…」

 

 そう言いながら顔を上げる翼。

 その顔は…

 

「ひっ…」

 

 絶唱顔ッ!

 血の涙こそ流していないが、絶唱顔であるッ!

 日本を代表する歌姫がしていい顔ではない。

 べ、別に一期編でまったく絶唱が無かったからこんなところで絶唱顔を晒すわけじゃないんだからねっ!

 

(なによこの顔なによこの顔!?これが噂に聞くジャパニーズホラーなの!?)

 

 狼狽えるマリア。

 流石のマリアもこの顔を至近距離で、二人きりの空間で絶唱顔を晒されれば狼狽えるなッ!は出来なかった。

 …このあとのお茶会はつつがなく進行したという。

 マリアがとにかく翼の顔色を気にして下手に出たからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二課仮設本部はまさかまさかの潜水艦だった。

 何を言ってるか分からねえと思うが真実なのだ。

 しかし、潜水艦を宛がわれたのには理由がある。

 ルナアタックの際に確認された巨大未確認生物『ゴジラ』

 日本の大戸島近海から月の欠片を口から放つ熱線にて破壊するという常識では考えられないようなことをやってのけたその生物の調査に各国が躍起になっている。

 当然、日本も調査に乗りだしその調査の任を任されたのが二課だったのである。(ただし、これは非公式。公式の調査チームはまた別に存在する)

 そうして、ゴジラの探索及び追跡をするということから潜水艦を宛がわれたのだが…

 

(ゴジラが寝てるとこってまだ人類未踏の深さなんだよなぁ…)

 

 未だに謎の多い深海。

 人類がまだ到達しきれていない場所でもある。

 ゴジラが目覚めた際にテレパシーから大体どの辺りにいるかを察したピー助は一人、そんなことを思っていた。

 そしてピー助は何をしているかというと…

 

 絶賛、二課所属の人達に体を弄ばれるもとい研究されている。

 二年前にさんざんやったのに…

 ゴジラが出てくるから…

 

 櫻井了子、フィーネの言葉からゴジラは先史文明期にも存在していたとされ、同じく先史文明期の存在であるガイガンの研究が再び始まったのである。

 何かゴジラを紐解くものがないか、またガイガン自身の新たなる発見がないか。

 かれこれ三日は家に帰れていないが、あの浮気騒動から飼い主と微妙な感じのピー助的にはある意味助かっているとも言えた。

 

 

 

 

 

 

 …翼ちゃん怒ってるよなぁ。

 どうしたらいいんだろうか…

 一日の仕事を終えて、久しぶりにプロのトリマーさんからシャンプーされながら考える。

 如何にして以前のような関係に戻れるのか…

 

「どうしたのピー助君?元気無さそうね?」

 

 トリマーさんが話しかけてくる。

 しかしそれはプロだからこそ、お客様である生体とのコミュニケーションを欠かさないためである。

 しかし内心は…

 

(…なんで私、このヘンテコ生物のご機嫌聞いてるんだろう)

 

 実は飼い主とうまくいってないんです…

 

「へぇどうして?ケンカしちゃった?」

 

 プロは動物の言葉を分かってこそプロ。

 これまでの経験を元に言葉を推察し…

 会話が成立していた。

 

 翼ちゃんにマリアさんファンってことがバレて…

 

「え?翼さんにバレた?そんな好きなアイドルが出来たくらい…いや、けど翼さんも歌手だからなぁ…」

 

 このプロ、意外に乗り気である。

 なんやかんや話好きなのだ。

 

「なんでマリアさんのファンになったの?」

 

 実はこの街にマリアさんが来てる時に街を案内して…その時は全然マリアさんが歌手だってこと知らなくて…おでこにキスされて…

 

「…なるほどねぇ」

 

 それでテレビを見たらマリアさんが出てて…そこから色々協力してもらってグッズやらライブのDVDを入手して…

 

「誰に協力してもらったの?」

 

 藤尭さん…オペレーターの。

 

「あぁ~あの陰キャっぽい。なんか凝り性そう。のめり込むと止まらなさそう」

 

 ま、まあ藤尭さんは悪い人ではないですよ…

 ちょっとオタクっぽいってだけで…

 

「ところで翼さんのグッズとかは持ってるの?」

 

 …持ってないです。

 

「うわ、それは怒るわ」

 

 やっぱりそう思いますか?

 

「当然よ。逆に聞くけどなんで翼さんのは持ってないの?」

 

 …なんていうか、近いっていうか…

 歌姫とか言われてるけど俺からしたら、家事が出来なくて不器用で手のかかる妹みたいな…

 けど、マリアさんは正にテレビの向こう側の存在で手が届かないから…

 届かないからこそ憧れて、ファンになるんだと思うし…

 

「なるほど…うん、ピー助君の言い分も分かる。だけどね、ピー助君。近いからこそ…翼さんはあなたにファンでいてほしかったんじゃない?誰よりも…一番のファンで」

 

 近いからこそ…

 ありがとうトリマーさん!

 なんか俺、悩み吹っ切れた気がする!

 

「そう?じゃあ今度来た時には仲直りしててね。それじゃあ今日はおしまいっ!」

 

 ありがとうございました!

 俺、いける気がする!

 

 こうしてピー助側の悩みは振り切れた。

 ピー助側の悩みは…

 

 

 

 

 

 

(あー!なんでまた来るとか言っちゃったのワタシ!いつもやりたくないと思っているのにぃ!)




オマケ ガイガンが主人公のラブコメ

響「ほら!一緒に学校に行くよ!」幼馴染み

クリス「教科書忘れたぁ?まったくお前は…べ、別にお前だから貸すわけじゃねえからな!」ツンデレ同級生

友里「また怪我ですか?え、鼻血ですか」保健室の先生

マリア「遅いわよ。早くしないとお昼休みが終わってしまうわ」昼飯たかってくる先輩
                  
切歌「先輩!一緒にカラオケ行くデスよ!」後輩

調「遅かったねお兄ちゃん…ジー…」義理の妹

翼 ラスボス


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黒いガングニール

黒いガン…ダム


言っちゃったなぁ…
言っちゃったよ…


 遂に翼ちゃんとマリアさんのコラボライブ『Queens of music』当日。

 響ちゃんとクリスちゃんはソロモンの杖を在日米軍の岩国基地への移送護衛任務で不在。

 翼ちゃんはもちろんライブのため不在。

 それで、俺は…

 

「ピー助君、ちょっとチクッとするからね~」

 

 相も変わらず研究サンプルになってました。

 くそ…ライブまでもう少しなのに…終わりそうにない…

 いやぁ!!!

 折角、緒川さんが特等席用意してくれてたのにぃ!

 もう何回目の採血だよ…

 何L取る気だよ…

 献血でもこんな高頻度でたくさん採らないぞ!

 動物関連の法律見直してこい!

 実験動物の扱いのとことか!

 しかし、これさえ頑張ればアレが届く…

 それに隙間時間にはアレしてるし…

 とにかく頑張らなくちゃ…!

 

 

 

 

 

 

 

 ライブ会場の控室で食事を摂った私は勇気を振り絞って、風鳴翼の控室の前までやって来た。

 あとはノックをして、部屋に入って、風鳴翼になんかそれっぽいこと言って、退室して…

 こんなにやることがあるの!?(絶望)

 

 先日のお茶会でとんでもないトラウマを植えつけられたマリアにとって、そのトラウマの根源である翼と会うということはかなり勇気のいることとなっていた。

 これから、戦わなければならない相手だというのに…

 お願いセレナ…私に勇気をちょうだい…

 よし…

 震える手で扉を叩く。

 中から「はい」と男…風鳴翼のマネージャーの声だ。

 

「し、失礼します…」

 

 震える声で返事をし、震える手でドアノブを回し、震える足で部屋に入って…

 もうとにかく全身震えていた。

 しかし、これ以上は震えていられない。

 

「邪魔するわよ。今日はよろしく、精々私の邪魔をしないように頑張ってちょうだい」

 

 マリアもトップアーティスト。  

 ビビる心をうまく隠して、噛まずにちゃんと言い切った!

 これには内心ガッツポーズ。

 テンションも弱気から一気に超強気へと上昇したマリアであったが…

 

「一度幕が上がればそこは戦場。未熟な私を助けてくれるとありがたい」

 

「ふん…続きはステージで楽しみにしていてちょうだ…あっ…」

 

 握手をしようと右手を差し出す翼を見て、一瞬は謎の勝利の確信を得たマリアだったが…

 ここで先日のあの顔…絶唱顔をフラッシュバックしてしまったのであるッ!

 思わぬ恐怖に支配されるマリアは体の震えに襲われた。

 

 ちなみに翼の方はというと、先日の一件こそあれど今日はライブ当日。

 世界で活躍する歌姫との共演ということでそれはそれ、これはこれの精神でとりあえず今日のところはなにも言わず、共に同じ舞台に立とうというつもりなのでまったく威圧もなにもしていないのである。

 

「そ、それじゃあ、また会いまひょう…」

 

 マリアは思わず逃げ出した。

 これまで観てきたホラー映画のお化けよりも怖い翼から。

 

「…噛んだな」

 

「ええ…噛みましたね」

 

 控室に取り残された二人はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライブが始まる。

 マリアはあれからとにかく美味しい物を食べて精神の回復をはかった。

 これから行うのはただのライブではない。

 世界への宣戦布告。

 正義のために悪とならなければならない。

 そして、そうなれば…風鳴翼達、シンフォギア装者達と戦わなければならない。

 だから彼女を恐れるわけにはいかないのだ。

 

「見せてもらうわよ。戦場に冴える抜身のあなたを」

 

 風鳴翼にいい放つ。

 こんなところで怯えていてはダメだからだ。

 そして始まるイントロ…

 

「不死鳥のフランメ」

 

 彼女とのデュエット曲。

 観客も最高の盛り上がりを見せる。

 この曲が終わったら…

 遂に始まる。

 世界を相手に悪を為す戦いが。

 

 

 

 

 

 

 

 曲が終わり、風鳴翼は観客に語りかける。

 それが終わったら…

 私の番だ。

 

「私の歌、全部世界中にくれてあげる!振り返らない、全力疾走だ。ついてこれる奴だけついてこいッ!」

 

 会場は盛り上がる。

 これから起きることも知らないで…

 私は…この人達を…

 

「今日のライブに参加出来たことを感謝している。日本のトップアーティスト、風鳴翼とユニットを組んで歌えたことを」

 

「私も素晴らしいアーティストに巡り会えたことを光栄に思う」

 

 風鳴翼から差し出された手を掴む。

 トップアーティスト同士の握手に会場は沸く。

 

「私達は世界に伝えていかなきゃね。歌には力があるってことを」

 

「それは、世界を変えていける力だ」

 

 そう、世界を変える力…

 歌には…

 それだけの力がある。

 

「そして、もう一つ」

 

 次の瞬間、会場は観客達の悲鳴に包まれる。

 観客席にノイズが現れる。

 私達が指揮するノイズのため、勝手に人を襲うことはないが、観客達はパニックに陥る。

 触れられれば炭へと変えられてしまう恐怖に怯える。

 私は…この人達を…

 傷つけることが出来るのか?

 いや、世界を救うためには覚悟が必要だ…

 

「狼狽えるな…」

 

 自分に言い聞かせる。

 そして…

 

「狼狽えるなッ!」

 

 観客達を静める。

 始まってしまった…

 私はこれから、多くの血に染まらなければならない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノイズの出現を確認したということでとにかく司令室に急いだ。

 場所は…『Queens of music』の会場。

 なんで、翼ちゃんのライブ会場に…

 くそッ!

 今すぐ行かないと…!

 

「待てピー助…会場の様子がおかしい…まだ見極めなければならない…」

 

 そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!

 大勢の人と…翼ちゃんが危ないんですよ!

 

「現在、Queens of musicの会場は世界中に中継されています。もしここでピー助君が出れば世界中にその存在を知られてしまいます」

 

 そんなのもうどうでもいい!

 旧本部近くの街じゃもう有名だしな!

 

「落ち着けピー助…お前が翼を大事に思っているのは分かるが…現在、響君とクリス君が向かっている。ここは二人に任せるんだ…」

 

 くそ…なにもできないのか…

 悔しさから奥歯を噛み締める…

 次の瞬間、藤尭さんが驚愕の声をあげた。

 

「この波形パターン…まさかこれは!?」

 

 画面に浮かぶその文字を見た瞬間、あまりの衝撃に頭が真っ白になった。

 

「ガングニール、だとッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「怖い娘ねぇ?この状況にあっても私に飛びかかる機を伺っているなんて」

 

 私の考えをマリアは読んでいた。

 この女は一体何を企んでいるというのか…

 

「ライブの模様は世界中に中継されているのよ。日本政府はシンフォギアについての概要は公開してもその装者については秘匿したままじゃなかったかしら?ねぇ、風鳴翼さん?」

 

 こいつは、知っている。

 私が装者であるということを。

 ならば隠す意味などないだろう。

 

「甘く見ないでもらいたい。そうとでも言えば、私が鞘走ることを躊躇うとでも思ったか!」

 

「あなたのそういうところ嫌いじゃないわ。あなたのように誰もが誰かを守るために戦えたなら…世界は、もう少しまともだったかもしれないわ」

 

 なん、だと…

 このセリフ、それにその顔は…本当に悪人がする顔なのか?

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ…貴様は一体…」

 

「そうね、そろそろ頃合いかしら…私達はノイズを操る力を持ってして!この星の全ての国家に要求する!」

 

 世界を敵に回しての口上!?

 これはまるで…

 宣戦布告…

 

「そして…」

 

『Granzizel bilfen gungnir zizzl』

 

 これは…聖詠!?

 それに、いま…なんといった…

 ガングニール…と、言ったのか…?

 

 そして、現れるマリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 その姿は…

 

「黒い…ガングニール…」

 

 黒い装甲に…黒のマント…

 細部は違えど…正に、ガングニール…

 

「私は…私達はフィーネ。そう…終わりの名を持つものだッ!」

 




オマケ

マリア「あなたのそういうところ…嫌いじゃないわッ!」

マリア・泉・カデンツァヴナ・京水・イヴ

短いのでもう一本 ガイガンが主役のラブコメ
響編攻略
 幼馴染みという設定なので元々好感度が高めでそう下がることもないので安心しがち…
 しかし響編にはもれなく393が登場します。
 響の親友の393は主人公と響が仲良くしていると少々嫉妬してしまうようです。
 なので、響編攻略の鍵は響の好感度より393の好感度です。
 393の好感度を上げることでこの人なら響を任せられると信頼を得ることが出来ます。
 しかし、393の好感度を上げすぎると…
 この先は君の目で確認してくれ!


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紺青の流星

お気に入り700件突破!
突破記念に近々ガイガンが主役のラブコメを番外編で投稿するでー。
続くか分からないし、誰のルートになるか分からないがなっ!


 なんで…

 なんでガングニールが…

 だっていま、ガングニールは響ちゃんが…

 

「なんとかして中継を止めさせるんだ!響君達はあとどれくらいで会場に着く!?」

 

「あと20分はかかります!」

 

 それじゃあ遅すぎる…

 これからなにが起こるか分からないというのに…

 もう黙っていられない…

 

「ピー助!どこへ行く!」

 

 司令室を飛び出す。

 仮設本部は潜水艦だから脱け出すのはかなり厳しい…

 だけどなんとかして脱け出さなければ…

 壊すのはヤバイし…

 

「捕まえたぞピー助!」

 

 司令!

 わざわざ司令室から出てきたのかよ!

 こんな時に!

 

「こんな時だからだ。ピー助、お前に任務を与える」

 

 さっきは出るなとか言ってた癖に!

 

「俺なりに考えてな…お前の速さならすぐに会場まで辿り着ける。それに、緒川から聞いているぞ、最近順調らしいじゃないか」

 

 まあ俺の速さならすぐに着くし、緒川から聞いたってことはあれのことだろうし…

 

「ピー助、お前には奇襲作戦を行ってもらうぞ!」

 

 司令…

 了解!

 隠密に…稲妻のように一瞬で終わらせてくるぜ!

 

「よし、頼んだぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我等、武装組織フィーネは各国政府に対し要求する。…そうだな、さしあたっては国土の割譲を求めようか!」

 

 黒いガングニールを纏ったマリアは再びそう会場に、世界へといい放った。

 バカな…

 

「もしも24時間以内に果たされない場合は、各国の首都機能がノイズによって不全となるだろう」

 

 24時間以内…

 まったく現実的ではない…

 いったいなにが狙いで、どこまで本気なのか…

 

「私が王道を敷き、私達が住まうための楽土だ。素晴らしいと思わないか!」

 

 依然として会場にいる観客達はノイズによって身動きがとれない人質状態…

 こうなったら…

 

「なにを意図しての騙りか知らぬが…」

 

「私が騙りだと?」

 

「そうだ!ガングニールのシンフォギアは貴様のような輩に纏えるものではないと覚えろ!Imyuteus ameno…」

 

 聖詠を歌い出した瞬間、通信が入った。

 

『待ってください翼さん!今動けば、風鳴翼がシンフォギア装者だと全世界に知られてしまいます!』

 

「でも…!」

 

『風鳴翼の歌は!戦いの歌ばかりではありません。人を癒し、勇気づけるための歌でもあるのです』

 

 私の歌は…

 ここは堪える。

 立花と雪音の到着を待つのだ…

 

「確かめたらどう?私が言ったことが騙りかどうか」

 

 堪えろ…

 今はまだ…

 

「なら…会場のオーディエンス諸君を解放する!ノイズに手出しはさせない!速やかにお引き取り願おうか!」

 

 なに…!

 何が狙いで自分の有利を失くす…

 

 観客達は会場から出ていく。

 しかし、未だに全世界にここの様子は中継されている。

 ギアを纏うわけには…

 

 

 

 

 

 

 観客達は全員、会場から避難した。

 あとここにいるのは、私とマリア、そしてノイズだけ…

 

「帰るところがあるというのは、羨ましいものだ」

 

「マリア…貴様は一体…?」

 

「観客はみな退去した!もう被害者が出ることはない。それでも私と戦えないというのであれば、それは貴女の保身のため…貴女は、その程度の覚悟しか出来てないのかしら?」

 

 安い挑発だ…

 しかし…

 

 突然、マリアがマイクを剣代わりにして、私に襲いかかった。

 それをマイクで受けて事なきを得るが…

 マリアはマントを翻すとそれは刃となって迫る。

 マイクで防御したが…切り落とされてしまった。

 これでは使い物にはならない。

 マイクを捨て、徒手ではあるが構える。

 相手は得物を持ち、こちらは素手。

 完全に不利な状態だ。

 迫りくる剣戟をなんとか回避し続け…

 カメラの目の外に出るのを狙う。

 写らなければ私もギアを纏える。

 剣戟が止んだ隙に、ステージ裏へ向かう。

 

「ッ…!」

 

 マリアはマイクを投擲し妨害してくる。

 足を狙ったそれを私はジャンプすることで回避して…

 ッ…!?

 ヒールが…折れ…

 

「貴女はまだ、ステージを降りることは許されない」

 

 既に背後にまで迫っていたマリアはそう言い放ち、蹴りを放つ。

 

「アッ…!!!」

 

 腹部に蹴りを食らった。

 そのまま宙を舞って…

 背後にはノイズの群れ。

 このまま落下すれば炭と変わる。

 ここで死ぬわけにはいかない。

 たとえ、全世界に私がシンフォギア装者であることを知られたとしても…

 私は防人。

 守らなくてはならないものがある。

 決別だ…

 歌女であった私に…

 聖詠を口に出そうとした瞬間、赤い光が空から私に迫って…

 あれは…

 

「ピー助ぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼さんの救出のため、ヘリで急いでいるけれどまだ着かない。

 

「もっとスピード出せねえのかよ!」

 

 クリスちゃんが苛立ちのあまり声をあげる。

 焦る気持ちも分かる。

 早くしないとなにが起こるか分からないし…

 翼さんは中継されてちゃギアは纏えないし…

 もし、翼さんがギアを纏ったらアーティスト活動を続けられなくなってしまう。

 だから早く…早く着いて…

 

「あと10分で着き…きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 な、なに!?

 ものすごい速さの物体が横切ったけど…

 

「あれってまさか…」

 

「ああ…あの感じ、かなりキレてるぜ。まったくケンカしただかなんとか言ってもやっぱりあいつのことが大事なんだよ。ピー助は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風鳴翼が落下していく先にはノイズが…

 勝手なことを!

 しかし、もう間に合わない。

 風鳴翼がギアを纏わなければ…

 風鳴翼がノイズと接触しようとした瞬間、叫んだ。

 …ぴーすけ?

 それが断末魔かと思った瞬間。

 赤い光がノイズを襲い、土煙が巻き起こった。

 

「なに!?」

 

 他のシンフォギア装者?

 だとしてもこんな高速で…

 一体どんなギアだというのか…

 やがて、土煙が晴れてそれは姿を表した。

 紺色の体に、鋭く光る両腕の鎌。

 なんでも切り裂いてしまいそうな腕だが、風鳴翼を守るように抱き抱えていた。

 跪き、俯いていたそいつは少し顔を上げると赤いバイザーを発光させた。

 この子は…まさか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼ちゃん救出のため、飛ぶ。

 最速で最短のコースを選択し、全てを振り切って飛ぶ。

 途中、ヘリと接触しそうになったが関係ない。

 翼ちゃん第一だ。

 奏ちゃんを失った翼ちゃんを守ると決めたんだ。

 だから…今はとにかく飛ぶ!

 もっとスピードを出さなくては…

 ファイナルウォーズ!起動!

 体を石が包むがあまりの速度に一瞬で剥がれ落ちていく。

 石が落ちた先に人とか民家とかないといいけど…

 よし、あそこだ!

 会場の真上までいって…!?

 翼ちゃんが蹴り飛ばされてノイズの群れに…

 ああああああああッ!!!!!

 間に合え!!!!

 近くのノイズ達はバイザーから放つ拡散光線で倒し、翼ちゃんが落ちる先にいるノイズは着地しながら切り裂く。

 そして、落下してきた翼ちゃんを抱き抱えて…

 ごめん…翼ちゃん…もっと早くに来ていれば…

 

「ピー助…ありがとう…」

 

 そう言いながら頬を撫でる翼ちゃん。

 休んでて翼ちゃん…

 あとは俺がやる…

 

 土煙が徐々に晴れ、マリア・カデンツァヴナ・イヴの姿が見える。

 黒いガングニールを纏ったマリアを睨み付ける。

 もうアンタのファンはやめだ。

 翼ちゃんにこんなことしたんだ、覚悟してもらおうか。

 

「あなた…まさか、あのときの…」

 

 そうだけど関係ない。

 とにかく今はアンタを倒す。

 それだけだ。

 翼ちゃんを降ろして、両腕の鎌をぶつけて火花を散らせる。

 そして、それが合図となる。

 マリアに向かって飛びかかりながら、斬りつける。

 マントで防御されるがマントを切り裂いて追撃する。

 

「ッ!?」

 

 マリアはアームドギア…槍を構える。

 お前が…奏ちゃんの…響ちゃんのガングニールを纏うなッ!

 槍と鎌がぶつかり合い、火花が舞う。

 …悔しいことだが、このガングニールは本物らしい。

 得物のリーチでは向こうが有利。

 

「はあッ!」

 

 槍の刃で切り裂くように横一閃に振るってくるが俺はそれを防御することなく、胴をがら空きにする。

 

(なぜここで防御しない…ッ!?あれは!?)

 

 腹の回転鋸を起動させ、槍の刃をボロボロにする。

 刃こぼれしたなぁ!撃槍!

 

「なっ…!?」

 

 その隙、もらっ…

 マリアへの攻撃をやめ、後ろに飛び退く。

 そして、さっきまで俺がいた場所にはピンクの丸ノコが。

 …新手か。

 空を見ると、ピンクのギアを纏った少女と緑色のギアを纏った少女が二人。

 この丸ノコはピンクの方か。

 そして、緑の方は鎌を大振りして…

 

「…デスッ!!!」

 

 飛来する二つの刃。

 それを光線で迎撃する。

 装者が三人…

 

「マリア!無事デスか!?」

 

 緑の方がマリアに問いかける。

 やけにですの発音がエセ外人っぽいが関係ない。

 どんな奴だろうと斬ってやる…!

 

「こいつ、鎌とノコギリだなんて…」

 

「キャラが被ってるデス!許せないのデス!」

 

「調、切歌、こいつ相手に冗談なんて言ってる場合じゃないわ。装者ならまだしも、こいつは情報が少ないアンノウン…完全聖遺物かもしれないとマムも言っていたわ。そのポテンシャルは計り知れない…ッ!?」

 

 お喋りなんて余裕そうだな…

 悪いな、俺にはそんな余裕ないんでな。

 斬って斬って斬りまくる!

 

「ッ…三人を相手に押してくるなんて…」

 

「だけど三対一!数では圧倒的に有利…」

 

「悪いが三対二に訂正だ…はあッ!」

 

 翼ちゃんがピンク相手に肉薄する。

 ギアを纏っているが、中継は…されていない!

 

「そんな…いつの間に…!?」

 

 恐らく緒川さんか…

 これで心置きなく戦える。

 それに…三対二でも無くなったようだ。

 

「ッ!?上から!?」

 

「どしゃ降りだ!」

 

 クリスちゃんが上空からガトリングを一斉射。

 緑とピンクは回避して、マリアはマントで防御する。

 クリスちゃんと響ちゃんが加わりこれで四対三。

 こうして、敵と味方の装者が並び立った。




オマケ ガイガンが主役のラブコメ
クリスちゃんルート攻略
 本編のヒロイン、クリスちゃんのルート。
 同じクラスで隣の席ということで色々イベントが発生しやすい。
 最初は好感度低めだけど上がりやすいので気にすることなかれ。
 クリスちゃん編攻略のカギは…とにかくイベントを発生させて思い出を作ること!
 ストーリーで語られるが色々あってこれまで学校にあまり行けていないクリスちゃんと学校行事や季節のイベントを一緒に過ごすと好感度急上昇!
 ちなみに不安要素が無さそうなクリスちゃんルートだが…
 この先は君の目で確認してくれ!


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偽善

アンケートたくさんの投票ありがとうございます!
今のところ響、クリス、翼組がトップですね…
時点がマリア組。
そして、防人。

設定(真)に少し追加事項あるので読んでない人は読んでクレメンス~。

それと…今日だけで三話も投稿…!?
クリスマスの悲劇が思い出される…


 装者が六人、怪獣が一匹。

 にらみ合いが続く。

 いつ戦闘が再開してもおかしくない…

 

「やめようよこんな戦い!今日出会った私達が争う理由なんてないよ!」

 

 響ちゃんは敵の装者達に言うが…

 

「そんな綺麗事を…!」

 

「綺麗事で戦う奴の言うことなんか信じられるものかデス!」

 

 ピンクと緑に綺麗事と一蹴されてしまう。

 それでも響ちゃんは諦めず対話を求めるが…

 

「偽善者…この世界には貴女のような偽善者が多すぎる!」

 

 ピンクは頭のツインテールのような装甲を展開させて丸ノコを響ちゃんに向かって大量に飛ばす。

 それを翼ちゃんが防御して庇う。

 これが戦いの再開の合図となった。

 クリスちゃんはガトリングを放つが緑は回避して接近を許してしまう。

 クリスちゃんに緑の鎌が迫るが俺の鎌で跳ね返す。

 

「ッ…!?」

 

「悪いピー助…サポートは任せた!」

 

 元々格闘戦の得意でないイチイバル。

 近距離での戦闘を想定したギアが多いため距離を取ってほぼ一方的に戦えるという利点はあるが逆を言えば近寄られてしまうと一気に不利になってしまう。

 そのためこの二ヶ月間、クリスちゃんとの連携訓練が行われてきた。

 その成果を見せる時だ。

 鎌という武器はとても使い勝手の悪い武器だ。

 リーチの差はあるがどうしても向こうはその巨大な得物を振るうのに大振りとなる。

 その隙さえつけばいい。

 まずは相手の攻撃の届かない距離を保ちつつ拡散光線を撃ち牽制する。

 

「チマチマと…面倒デスッ!」

 

 緑は自分の攻撃が当たらないことと俺の攻撃への苛立ちからやぶれかぶれとなり吶喊してきた。

 性格はなんとなく察していたが、やはり直情型。

 甘い攻撃をしてくると予想していた!

 大振りな攻撃。

 隙だらけだ…!

 

「なっ…!?」

 

 一瞬で緑の懐へと入り、相手の装甲を切り裂く。

 この距離ならご自慢の鎌も使えまい!

 

「切ちゃん!!!」

 

 ピンクが巨大な丸ノコを振り回し接近してくる。

 しかし…

 

「お前の相手はあたしだ!」

 

 クリスちゃんの銃弾がピンクを襲う。

 この戦いは数で有利なこちらに分がある。

 それに…あの戦いを切り抜けてきたんだ…

 お前らの相手は…ぬるい!

 鎖を鎌から射出して緑に巻き付けていく。

 

「ぐっ…!!!」

 

 さて、拘束させてもらうぞ。

 話はあとでゆっくりと聞かせてもら…

 ッ!!!

 なんだ、このデカブツ…

 ノイズだが…今まで見たことがないタイプだ。

 

「切歌!」

 

 気がつくとマリアが槍を構えて迫ってきていた。

 突き出された槍を回避するが鎖を切り裂かれてしまい緑の拘束は解けてしまう。

 

「あ、ありがとうデス…」

 

「撤退するわ。掴まって」

 

 逃走しようとするマリア達を追いかけようとしたが、マリアは槍をこちらに向けた。

 槍が展開し、ビームが放たれる。

 それを回避するが…ビームは背後の巨大なノイズに当たり、ノイズの肉片が周囲に降り注ぐ。

 今の狙いは俺ではない、ノイズの方だ。

 ここでなんでノイズを…

 待て、このノイズなにかおかしい。

 ギアの攻撃で炭にならない…

 やがて肉片達は意思を持ち始めたかのように蠢きだした。

 …気持ち悪い。

 とにかくこいつらはノイズだ、倒さなければならない。

 そう思ってノイズを切り裂くと、切り裂かれたノイズは再生しさっき一匹だったノイズが二匹となった。

 プラナリアかよ…!

 

「こいつの特性は増殖分裂…」

 

「放っておいたら際限ないってわけか…そのうちここから溢れ出すぞ!」

 

 ますますプラナリア感の増してきたノイズ。

 プラナリアならキレイな水じゃないと生きられないからプラナリアの方がまだマシだな…

 それにしたってどうやってこいつを倒す?

 俺じゃこいつを倒す手段がない…

 

「絶唱…絶唱です!」

 

 響ちゃんが絶唱を提案するけど…

 まだあのコンビネーションは未完成だと聞いている。

 大丈夫だろうか…

 

「増殖力を上回る破壊力にて一気殲滅。立花らしいが理にかなっている」

 

 確かに…

 それにみんなならやれるよ。

 

「ピー助もやれると思うか。なら大丈夫だ」

 

 そんな!俺で判断しないで!

 なんかあったら責任とれないよ!

 

「ピー助君が言うなら…いきます!S2CAトライバースト!」

 

 そんなぁ!響ちゃんまで!

 てか始めないで!

 なんかあったらがちで責任とれないからぁ!

 この中じゃ年長者(約5000歳)だから!

 みんなの保護者みたいなもんだから!

 

「スパーブソング!」

 

「コンビネーションアーツ!」

 

「セット!ハーモニクス!」

 

 あー…

 うん、きっとみんなならだいじょうぶだよ…(責任放棄)

 あぁ…虹色がきれいだなぁ…

 

「これが私達のぉ…絶唱だぁぁぁ!!!!!」

 

 きれいだなぁ…

 いいなぁ…

 俺も必殺技とか欲しいなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてノイズは塵一つ残らず消滅した。

 …これで、終わったのか。

 俺も必殺技欲しい。

 単独技とみんなで一緒にやるやつでもいいし。

 なんか欲しい(テキトー)

 って!?

 響ちゃんどうしたの!?

 泣くなんて…まさか、さっきの絶唱のダメージが…

 

「無事か!?」

 

 翼ちゃんとクリスちゃんが駆け寄ってきた。

 大変なんだ!響ちゃんが泣いてるんだ!

 

「平気…へっちゃらです…」

 

「へっちゃらなもんか!痛むのか?まさか、絶唱の負荷を中和しきれなくて…」

 

 クリスちゃんの言葉に響ちゃんは首を横にふった。

 

「わたしがしてることって…偽善なのかな…?胸が痛くなることだって知ってるのに…」

 

 そう言ってさらに泣き出す響ちゃん。

 …恐らく、さっきのピンクが言ってたことが関係あるな。

 それにさっきの戦いで響ちゃんはピンクと戦ってたからそこでもなにか言われた可能性が高い。

 まさか、響ちゃんを泣かすほどの精神攻撃をするとは…

 とにかく今は帰還しよう。

 帰って、ゆっくり休もう?

 響ちゃんの近くで分からないだろうけどそう言った。

 あと、慰め仕様なのでちっちゃくなったぞ。

 こういう配慮を俺は出来るんですよ。

 さあどうぞ、俺で癒されてください。

 アニマルテラピーでっせ?

 

「うん…ありがとうピー助君。慰めてくれてるのは分かった…」

 

 うんうん。

 さあ帰ろう。

 お兄さんがご飯アンドご飯ごちそうしてあげるから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二課仮設本部に帰還して三人は念のためメディカルチェック。

 俺は先に検査を終えて一人待機中。

 食堂の椅子に陣取って考え事をしていた。

 あのピンクと緑が言っていた偽善と綺麗事。

 やけに毛嫌いしていたけど…

 恐らくあれは…

 中二病だな、うん。(テキトー)

 分かる、分かるよ…あれくらいの年頃だとね、綺麗事とか偽善とか嫌っちゃうんだよね。

 あの二人は装者の中でもまだ若いからね、きっと中二病なんだよ。

 俺もあれくらいの時はそんな感じだった。

 けど、やらない善よりやる偽善。

 それに綺麗事が一番いいってクウガで五代さんも言っていたし…

 この回で五代さんは暴力で解決することの虚しさとかを訴えたんだよな…

 だけどその五代さんは暴力でしかグロンギからみんなを守ることができないという葛藤がっ…て、これ以上はクウガを語る会みたいになるからやめよう。

 そこを突かれたんだな響ちゃんは。

 響ちゃんは自信を持てなくなっているんだ。

 恐らく響ちゃんは平気なふりしてるけどかなり気にしているだろうから…

 響ちゃんを元気づけるには…

 そうだ、クウガを見せればいいんだ。(名案)

 そうと決まれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!ピー助君!?わたしをどこに連れて行く気!?」

 

 まあまあ。

 あ、そこ座って…

 よし、目隠しを外してと… 

 

「ここは…会議室?」

 

 そうです。

 さあ、こちらの画面をご覧ください。

 

「一体何が始まるの…?」

 

 リモコンの再生ボタンポチッとな。

 よし、始まるぞ。

 あーこの世界でもライダー見れてよかった~。

 

「仮面ライダー…クウガ…?」

 

 まあまあ見ててください。

 

数十分後

 

『だから見ててください!俺の…変身!』

 

「うわ~暑そう…」

 

 見るとこそこかい。

 まあ、そう思うけど…

 

数時間後

 

「一条さんと五代さん…なんか、いいかも…」

 

さらに数時間後

 

「えっ…五代さん…そんな…」

 

数十分後

 

「生きてた!五代さん生きてた!ってぇ!?なんか足ビリビリしてる!?」

 

数時間後

 

「こんなの…ひどいよ…五代さんだって怒るよ…」

 

そして…

 

『じゃあ、見ててください。俺の、変身』

 

「ぐすっ…五代さん…」

 

「五代雄介…彼もまた防人だ…」

 

「五代…仮面の下じゃ泣いてたんだな…」

 

「目が赤い…ってことは…」

 

「彼は伝説を塗り替えたんだ…」

 ・

 ・

 ・

『ごだぁぁぁぁぁい!!!!!』

 

「「「ごだぁぁぁぁぁい!!!!!」」」

 

 

 

 

 気がついたら二課のメンバーみんな集まって見ていた。

 途中参加だったためまた1話から見ることになり予定よりだいぶ遅れてしまった。

 てか、二課の大人達。

 あんた達それでいいのかそれで。

 国家公務員だろう。

 

「これは二課の道徳教育として行われたプログラムということにしてある。だから問題ない!」

 

 さいで…

 もうなにも言わんよ司令…

 あんたものめり込んでたもんな。

 アクション映画好き的にもよかったらしい。

 

「ピー助君…わたし、分かったよ。あの子達になに言われたって、わたしは綺麗事を言い続ける。だって、綺麗事が一番だから」

 

 そうだよ。

 響ちゃんは響ちゃんのままでいいんだよ。

 

「確かに現実は綺麗事通りにはいかないけど…綺麗事を目指すのは悪くないもんね」

 

 うんうん。

 よし…

 それじゃあ響ちゃん、今度は555でも…

 え?なんでアギトじゃないかって?

 なんか555を見せろって天啓が…




二文字タイトルってそういうこと。

オマケ 五等分の防人

一翼「お姉さんに言ってみなさい?」
五つ子の長女。髪型はショートカット。
歌手活動から女優活動もこなす器用なお人。
お姉さんレベルが高い。お姉さんだからね!
ピー助を手に入れるためあらゆる策略を練る腹黒い人。

二翼「やはり恋は攻めてこそ…」
次女。髪をバッサリ切った。
恋は攻めてこそのセリフの通り。火単速攻、近距離パワー型の如く搦め手はない。
ピー助をおとすため攻めて攻めて攻めまくる!

三翼「私、ピー助のためにパンを焼いたの」
三女。ネガティブ思考で顔を隠すように髪を伸ばしてヘッドホンを装備している。
歴女。味音痴。
ピー助の胃袋を掴むため料理を習いはじめた。
人気投票で一位になりそう。

四翼「ピー助さーん!」
四女。クソデカリボンを装備している。
体力バカで運動部の助っ人をやらせたら右に出るものはいない。
実は曇らせたら五つ子の中で一級品。
ピー助のことを狙っている素振りは見せないが…

五翼「おかわりもらえますか!」
五女。髪にヒトデ…ではなく星型のアクセサリーをつけている。
ヒロインレースに参加せず大食いレースに参加している。
しかし、一度ヒロイン力を発揮すると五つ子の中でも最高レベルのヒロイン力を見せる。
しかしヒロインレースに参加しないため意味がないのであった。
ピー助と一緒にご飯を食べる人。

「「「「「さあ、誰を選ぶ!?」」」」」

ピ「ここが…地獄か…笑えよ、俺を…」


翼「ピー助がうなされている…悪い夢を見ているのね。抱きしめてあげるから安心して寝なさい」

ピ「ぴぃ…ぴぃ!?」


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久方の…

感想くださった方々すいません、返信が短文で…
ちょっと忙しくて時間がとれなかったものでして…
これからはしっかりと返していきますのでお許しください。

そして、ラブコメガイガンのアンケート結果発表。
響、クリス、翼組に決まりました。
たくさんの投票ありがとうございます。
この三人から絞ります。
次のアンケートの期限は1月13日の0時とさせていただきます。
お手数ですが、投票してくださると幸いです。
よろしくお願いします。


 あの事件から二日。

 久しぶりに翼ちゃんと一緒に我が家へ帰る。

 翼ちゃんの背負うバッグの中で、着くまでじっとしていなければならないのが少し窮屈だが狭いところは何故か落ち着く。

 さて、こうやって移動しているのが長いので大体、今どの辺りを歩いているとかあとどれくらいで家に着くかとか分かってくるものだ。

 特に寄り道もしてないからそろそろ着くな…

 あ、エレベーター乗った。

 チン、とエレベーターが鳴る。

 扉が開いて、翼ちゃんは歩き出して…

 ガチャと扉が開いてバッグが開かれる。

 急に明るくなったのでちょっと目が…

 

「お待たせピー助。ほら、お家よ」

 

 翼ちゃんに持ち上げられてバッグから出される。

 なんか、久しぶりの我が家って感じ。

 ボケーッとしていると、いつの間にか翼ちゃんはお風呂の準備を終えていた。

 時間が過ぎるのは早いものだ。

 

「お風呂にしましょう、ピー助」

 

 はーい。

 翼ちゃんのところに歩いていき、抱き抱えてもらう。

 そのままお風呂に連れていってもらって…

 やっふぅ!お風呂ぉ!

 シャワーを浴びて翼ちゃんを待つ。

 翼ちゃん現在脱衣中なのでね。

 浴室をあったかくしておこう。

 ザー…

 ふぃ~…

 

「気持ち良さそうね」

 

 ふぇ~?

 なんか久しぶりに帰ってきたから…

 

「こうして二人で家にいるのが久しぶりですものね…」

 

 翼ちゃんはシャワーを浴びながらそう言った。

 うんうん。

 最近はずっと研究サンプルにさせられてたからね。

 全然家に帰ってなかった。

 さて、俺も体を洗ってと…

 俺専用スポンジを鉤爪に装着してゴシゴシと…

 全身が泡に包まれていって…

 雪だるまならぬ泡だるまの完成だ。

 これをやるとき目がバイザーで助かる。

 泡が目にしみることがないから。

 これを洗い流して…お風呂にダ~イブ!

 うつぶせの状態で湯船に浮く。

 これじゃ完璧にペンギンだわ…

 

「ピー助はペンギンさんなの?」

 

 翼ちゃんにからかわれるけどしょうがないのだ。

 シルエットがペンギンに近いから。

 …そういえば最近、翼ちゃんの口調が変わった。

 プライベートで俺と一緒の時は変わらないけど、仕事中はなんというか…男言葉になった。

 個人的に防人語って言ってるけど。

 翼ちゃんも髪を洗い終わり、湯船へと入ってきた。

 人間の時なら確実にのぼせているほどの時間を湯船で過ごしても大丈夫なのはさすが怪獣といったところか。

 やっぱり女性…髪が長いと時間がかかる。

 翼ちゃんは俺を抱き抱えながら湯船につかった。

 リラックスしている…

 今回のことの報告やらなにやらと忙しく、疲れを見せてはいなかったけどやはり疲れていたんだろう。

 

「そういえばピー助。司令から聞いたのだけど、あの時すぐに飛び出そうとしたんですってね?」

 

 うぇ…

 司令め、話すなって伝えたのに。

 いや、伝わってなかったのか。

 これがバラルの呪詛か…

 くそ、俺が言ってることって結構伝わってるから大丈夫だと思ったのに…

 

「ありがとうピー助。あなたのおかげで、私は歌女としての自分を失わなくて済んだわ…本当にありがとう…」

 

 俺の首を撫でる翼ちゃんの手がなんだかやけに懐かしく感じる。

 おとなしく撫でられ続ける。

 普段はくすぐったくて暴れちゃうんだけど。

 本当に…今日はなんか変だ。

 多分、疲れてるんだ。

 久しぶりに撫でられて落ちついてるとかそんなんじゃないんだから。

 

「ところでピー助。あのマリアグッズ達はどうするの?」

 

 そりゃあもちろん捨てるよ。

 あんな奴のなんて。

 翼ちゃんを傷つけるような奴のなんて即刻廃棄!

 

「そう?意外とプレミアがつくかもしれないわよ?」

 

 冗談ぽく言う翼ちゃんの顔は柔らかく微笑んでいた。

 久しぶりに見たかもしれない…翼ちゃんのこんな顔。

 ケンカして…忙しかったりして…

 久しく、笑顔の翼ちゃんなんて見てなかった。

 俺は…この笑顔を、守ると決めたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼ちゃんが泣いている。

 奏ちゃんを失って、たった一人となっていた。

 そんな翼ちゃんを支えようと出来る限りそばにいようと思って、寄り添っていた。

 だけど、翼ちゃんは戦場では一人だった。

 二課の人達は翼ちゃんをしっかりとサポートをしていた。

 だけど、翼ちゃんは一人だ。

 ただひたすらにノイズを切り伏せる。

 かつての流麗な、技の冴えを見せた剣技は消え、ひたすらに力でノイズを屠り、戦場でただ一人、炭の雨を浴びていた。

 このままじゃダメだと直感で分かった。

 今のままの翼ちゃんではいずれ、壊れてしまう。

 折れてしまうと。

 そう思っていたのは俺だけではなかった。

 

「ピー助を…戦闘に?」

 

「そうだ。対ノイズ用として造られたとされるガイガン…ピー助なら大きな戦力となる。そう判断してのことだが…」

 

「駄目です!ピー助を戦場に送るなど…奏が望みません!」

 

 司令と翼ちゃんの口論。

 俺はそれを物陰から覗いていた。

 俺は…

 

「ノイズの反応多数!」

 

「いくら翼さんでもこの数では被害拡大を防ぐことは…」

 

 モニターに映る、翼ちゃん。

 ただひたすらに守るために戦っていた。

 だけど、あの戦場に翼ちゃんを守るものはいない。

 

「ピー助」

 

 司令が俺の名を静かに呟いた。

 その一言で充分だった。

 

「大丈夫なの弦十郎君?翼ちゃん怒るわよ?」

 

「ああ…だが、翼の前にこっちがキレそうだからな」

 

 俺を見ながら司令はそう言った。

 キレてないっすよ…と言えば嘘になる。

 翼ちゃんのあんな姿を画面越しに見ているだけの自分にキレそうだ。

 司令、俺いくよ。

 

「あぁ、行ってこい!」

 

 司令からの命令もあるから今度は脱走ではない。

 これが…はじめての出撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 空を飛んで、現場まで急行する。

 ノイズの群れがビルの並ぶ真昼に発生したということは…犠牲者も多いということだ。

 空から見るだけでも、大量の炭があちこちに…

 なんで…こんな…

 さっきまで普通に生活をしていた人達が理不尽に炭へと変えられていく。

 だからこそ、ノイズは災害なのだ。

 それをようやく理解した。

 空からレーザーでノイズを焼き払う。

 そして、飛行するノイズの親玉を鉤爪で切り裂いていく。

 これで一つ、デカブツはやったか…

 あと三つ…デカブツを落とせばだいぶ楽になるはずだ。

 飛行型ノイズとドッグファイトを繰り広げる。

 しかし…小回りの利く俺の方が有利だ。

 その図体ではただの的だ。

 レーザーを放ち一つ、二つ、三つと飛行型ノイズを撃破し、着地して今度は地上のノイズ達を切り裂く。

 爪で、ノコギリで。

 次々と出来る炭の山。

 次は向こう…

 

「ピー助!!!」

 

 翼ちゃんがノイズを切り伏せながら、こちらに駆け寄る。

 

「どうして…どうして来たの!?」

 

 翼ちゃんを守るために。

 言っても伝わらないけど…

 とにかく翼ちゃんを助けて、守る。

 それがいま、俺がやりたいことなんだ。

 

「奏は…奏はあなたに戦ってほしくなかったのよ!それを…」

 

 奏ちゃんは!

 奏ちゃんは…翼ちゃんが悲しんで、苦しむことを望んでいないはずだ。

 前みたいに笑っていてほしいって願ってるに決まってる!

 だから…

 

「私は…奏は…」

 

 とにかく戦うと決めた!

 これでいいでしょ!

 近づくノイズを爪で払い、レーザーでとどめを刺す。

 

「ピー助…話はまた今度。今はここを守りましょう」

 

 了解!

 斬って斬って斬りまくる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 むにゃ…

 夢…?

 なんとも懐かしい夢だった。

 初陣…と言えば間違いなのだが、二課のメンバーとしての初陣という意味なら正しい。

 それにしても…

 

「すぅ…すぅ…ぴいすけぇ…」

 

 よく寝てるなぁ…

 しっかりと抱かれているので脱出は無理そうだ。

 時間は…6時か。

 あと一時間は翼ちゃんは寝るからちょっと待たないといけない。

 二度寝しようにもなんだか目が冴えてダメそうだ。

 しょうがない、翼ちゃんの寝顔でも見て起きるのを待っていますか…




オマケ ラブコメガイガン攻略 調ルート
 妹なので一番一緒にいる時間が長いキャラクターとなります。そのため、イベントは起こりやすいと思いきや意外とない。なかなかない。家族ゆえになかなか進まないのです。なので、いかにイベントを発生するかが鍵になります。そのためには色々な情報が必要となってきます。話題の場所、イベント等々色々なキャラクターの持つ情報を駆使して調を攻略しましょう。
 そして、みなさんお気づきだと思いますがやっぱりバッドエンドがございます。気をつけてね!

友里さんルート
 教師と生徒の禁断の恋…!
 みんな大好きなシチュエーションですね。攻略に必要なことはとにかく友里さんに意識されることです。生徒という時点で恋愛対象としてまず見られていないので、男らしいところをドンドン見せていきましょう。
それと、やっぱりバッドエンドは存在します。

オマケ

擬人化ガイガン「ねぇ?ぽっと出のあなたが私を差し置いて番外編で話を貰えるってどういうことなの?私は後書きから出たことないのに」

ラブコメガイガン「い、いやぁ擬人化さんは設定(偽)で後書きじゃなくて本文に出てるじゃないですか…」

擬人化「それだけじゃない。あなたはもう三話分も貰ってるのよ」

ラブコメ「そ、それは思ったより反響があったしお気に入り700件突破したりしたから…」

擬人化「なるほど…それじゃあ今からちょっと行ってくるわ」

ラブコメ(やべえ奴が解き放たれてしまった…みんな、逃げて…!)

最近思ったこと
俺の性癖がいつの間にか読者の方々に知られている…
何故…?


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廃病院とかめっちゃホラゲ感あってドキドキする

ラブコメガイガンをもう別作品として分けようかなと思う今日この頃お年頃。
分けるとしたら本格的に始まる時ですかね…
長くなりそうですし…
みなさんの意見も聞いてみたいのでご意見ある方は感想にてお聞かせください。

それはそれとして擬人化ガイガン。
お前、みんなから忘れ去らr…ギュィィィィン(回転鋸の音)


 警報が鳴り響き、私は隔壁を閉じた。

 ネフィリムが暴れ出したのだ。

 ネフィリム。

 私達の切り札となる完全聖遺物。

 飽くなき飢餓衝動をその身に宿した存在。

 これは人の身に過ぎたものではないのか…そう思わずにはいられない。

 

「人の身に過ぎた、先史文明期の遺産…とかなんとか思わないでくださいよ」

 

 ドクターウェルが私の心を見透かしたかのようなことを言う。

 

「たとえ人の身に過ぎていても、英雄たるものの身の丈にあっていれば、それでいいじゃないですか」

 

 優男のような顔と声だが、この男の本質は…

 計画のために必要な人材ではあるが、関り合いにならなくて済むなら関わらないほうがいい人間だ。

 

「マム!今の警報は!?」

 

 シャワーを浴びていたマリア達が駆けつけた。

 心配して来てくれたのだろう。

 

「心配してくれたのね、でも大丈夫。ネフィリムが少し暴れただけ。隔壁をおろして食事を与えているから直におさまるはず…」

 

 そう言った瞬間、再びネフィリムが暴れ轟音が響く。

 

「マム!」

 

「対応措置は済んでいるので大丈夫です」

 

 マリアは心配性なのだ。

 この子が世界を相手に宣戦布告を行うなんて、酷なことを背負わせてしまった。

 だが、やらねばならないのだ。

 計画のためには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふん!ふん!

 

「ほ、本当にやるんだねピー助君…」

 

 やりますよ藤尭さん。

 今日の俺は覚悟が決まりすぎてるくらい決まってるから。

 目の前には藤尭さんが入手してくれたあのテロリストアイドルのグッズ達。

 DVDは瓦割りの瓦のように積まれ、今か今かと割られる瞬間を待っていた。

 腕を素振りして、気合いを入れる。

 ふん!ふん!ふん!

 …では、やろうか。

 王の判決を言い渡す…死だッ!

 勢いよく振り下ろされる右腕。

 それはDVDを破壊できるほどの威力であった。

 しかし…

 

「やっぱりダメだー!ピー助君のお金で買ったものとはいえ、俺が買ったものを壊されるなんてみたくない!」

 

 後ろから藤尭さんに持ち上げられることで右腕は空を切り、DVDはその命を繋いだ。

 

 な、なにをするんだ藤尭さん!

 あれは敵なんですよ!

 きっとこれの売上だって奴等の活動資金にされてしまったんだ!

 俺は奴等の手助けをしてしまったのかもしれない…

 だから俺はこれを破壊して、奴等をぶった斬ってやらないといけないんだ!

 

「せめて、せめて…封印って形にだけさせてくれ!頼む!この通り!」

 

 土下座まではじめる藤尭さん。

 土下座するほどかよ…

 

 ちなみにピー助は知らないが藤尭はマリアの隠れファンでありピー助のように敵と割り切ることが出来ず、自分の持っているグッズを捨てようとしても捨てることができなかったのである。

 そんな隠れファンである藤尭の前でマリアグッズを壊すなど神様仏様、藤尭様が許さない。

 そして、ピー助も鬼ではなかった。

 土下座する藤尭の姿に男…漢を見たピー助は藤尭を許すことにしたのである。

 一人の立派に自立した大人の男が土下座までしているのだ。

 彼は…そこまでの覚悟をしているのだと感じたのだ。

 こうして、ピー助のマリアグッズは二課仮設本部の物置の最奥に仕舞われたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜の廃病院。

 ここに奴等が潜伏しているという情報が入り、装者三人とガイガン一匹で潜入することになった。

 今夜中に決着をつける気でいけという司令からのありがたい言葉をいただき潜入を開始した。

 なんか、深夜の廃病院ってホラゲ感あるよね。

 特に、中に入る前に廃病院を見上げると余計に感じる。

 

「なんか…すごい雰囲気ありますね…空気が重いっていうか…」

 

「なんだ、ビビってるのか?」

 

「そうじゃないけど…」

 

 雰囲気はすごい。

 廊下なんて暗闇で先がまったく見えない。

 それより…なんだこの赤いの?

 あとなんか変な匂いがする…

 なんていうんだろう…雨が降ったあとの山の匂いみたいな…

 みんなは気づいてないみたいだけど…

 怪獣の嗅覚じゃないと分からないとか?

 

「ピー助は怖くない?」

 

 怖くないでー。

 ついこの間ホラー体験したから。(G編1話)

 それよりは全然平気。

 そんなことよりこの匂いの方が…

 

「…なにか、失礼なことを言われた気がするけど…まあいいわ。それより、意外に早い展開だぞ…」

 

 翼ちゃんが防人語になったということは…

 敵である。

 暗闇の向こうからノイズが現れた。

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

『Killter Ichaival tron』

 

 三人はギアを装着し、俺も巨大化する。

 狭い場所で盾となるものもないこの通路(戦場)

 クリスちゃんのガトリングがノイズを次々と炭素に変えていく。

 しかし、新たなノイズが現れる。

 これは…

 

「間違いなく制御されている…ピー助、立花、雪音のカバーだ!懐に潜り込ませないように立ち回れ!」

 

「はい!」

 

 了解!

 とにかく近接戦闘向きの奴等ばかりのこのチーム。

 射撃が出来るクリスちゃんは重要なのだ。

 ノイズの群れへと突撃して、統率され陣形を組むノイズ達を分断する。

 陣形を崩されたことによりバラバラとなるノイズを翼ちゃんと響ちゃんが各個撃破する。

 これが二課の切り込み隊長こと俺の仕事よ。

 際限なく現れるノイズだが、斬られ、殴られ、撃たれと生まれた意味を失くしていく。

 だけど…少しずつ、三人の様子がおかしくなった。

 息は上がり、ノイズを倒すのに手間取っている様子だ。

 いくら制御されているとはいえノイズに遅れをとるような三人じゃないのに…

 こうなったら俺がやるしかない。

 今この場で万全なのは俺だけなんだから。

 三人を取り囲むノイズを鉤爪で斬って、噛み砕いて、ノコギリでバラバラにした。

 これで…終わり…?

 

「みんなッ!気をつけてッ!!!」

 

 響ちゃんが叫ぶと同時になにかが襲いかかってきた。

 響ちゃんに襲いかかったそれは響ちゃんの拳を受けて天井へと吹き飛ばされたが、器用に天井を走るパイプを掴んで体勢を直して今度は翼ちゃんに襲いかかった。

 しかし、真っ直ぐ過ぎる攻撃を翼ちゃんが捌けないはずもなく刀で斬られたそれは通路へと叩きつけられた。

 しかし…

 

「アームドギアで迎撃したんだぞ!?」

 

「なのに何故炭素と砕けない!!」

 

「まさか…ノイズじゃ、ない…?」

 

 まさか、あれは俺と同じ…

 暗闇の向こう側から、乾いた拍手の音が響く。

 誰だ…?

 怪獣になり、目が良くなった俺は音の主を見る。

 白髪の…細身の男。

 こいつもマリア達の仲間なのか?

 

「ウェル博士!?」

 

 ウェル博士?

 えっ…誰…?

 戸惑っていると、あの謎の生物はウェル博士とかいう男の足元に置いてある檻に入っていった。

 …こいつが誰だか知らないが、敵だということはこれで理解した。

 

「意外に聡いじゃないですか」

 

「博士は岩国基地で…」

 

「つまり…ノイズの襲撃は全部…」

 

 あぁ…話しているのを聞いたかもな。

 ソロモンの杖の研究だかなんだかで米軍基地に移送しただかなんだかした時の男か。

 俺はその任務にはさっぱり関わりがないから知らんかった。

 

「バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し、制御することを可能にするなどこの杖をおいて他にありません」

 

 ウェル博士とかいう男はソロモンの杖からノイズを召喚する。

 

「そして、この杖の所有者は今や自分こそが相応しい…そう思いませんか?」

 

「思うかよッ!!!」

 

 クリスちゃんが激昂する。

 クリスちゃんにとってソロモンの杖とは拭いきれない過去の過ちの象徴とも言える…

 怒るのも当たり前だ。

 ウェル博士の指示を受けて迫り来るノイズに向かい、クリスちゃんはミサイルを発射した。

 ノイズ達を倒し、病院の壁まで崩したが…

 

「うわぁぁぁッ!!!!」

 

 クリスちゃんが悲痛の声を上げる。

 ウェル博士はノイズで自分を防御し無事のようだが…

 

「なんで…こっちがズタボロなんだよ…」

 

 翼ちゃんに肩を貸してもらい、立っているのがやっとなほどのダメージをうけている…

 まさか…シンフォギアからのバックファイアが…

 以前に聞いたことがある。適合係数が低いとシンフォギアからのバックファイア…負荷により、最悪の場合死に至ると。

 そのために奏ちゃんは適合係数の低さを補うためにLiNKERを投与していた。

 だけど、なんでLiNKERを使う必要のない適合者であるクリスちゃんがバックファイアをうけているんだ…?

 

「あれは!?空にノイズが…さっきのケージを持ってる!」

 

 あいつ…あのまま逃げる気か…

 こうなったら飛べる俺が…!

 

「ピー助!」

 

 翼ちゃんの制止の声を振り切り飛ぶ。

 あいつは…恐らく俺と同じ完全聖遺物…

 それも、俺の天敵だ。

 本能が叫んでいる。

 あいつを逃がすのはまずい…

 ノイズの飛行速度は遅く、追い付くのは余裕だ。

 洋上で、ノイズを切り裂く。

 炭となり、ケージが重力に従い海へと落下していく。

 なんとしても…回収するんだ。

 あと少しで手が…

 

 手が届く瞬間、黒い槍に阻まれた。

 鉤爪に直撃した槍のせいで勢いよく俺は海面へと叩きつけられる。

 くそ…奴等のご登場かよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつは…」

 

 夜明けと共に、海上の姿がはっきりと見えた。

 あれは…マリア・カデンツァヴナ・イヴ…

 

「時間通りですよ…フィーネ…」 

 

 今、こいつはなんと言った…

 

「フィーネだと…」

 

「終わりを意味する名は我々組織の象徴であり、彼女の二つ名でもある…」

 

「まさか…じゃあ…あの人が…」

 

 海上で宙に浮く槍を足場に立つあの女が…

 

「新たに目覚めし、再誕したフィーネです!」

 

 フィーネ…終わりの名を持つもの…

 三ヶ月前に戦い、散ったフィーネが再びあたし達の前に立ち塞がった。




オマケ

擬人化「復讐だ!私を忘れた者達への復讐を開始するッ!我が怨念を一身に受け、ただの肉の塊になるがいい…」

???「そこまでよ!擬人化ガイガン!」

擬人化「お前は…残酷な描写タグ!残酷な描写タグが何故ここに!」

残酷な描写「あなたは間違っている!だって…あなたはたくさん出番があった!(一期の頃は)だけど私なんてフィーネにスプラッタした時くらいしか出番がなくて…」

擬人化「残酷な描写…そうか…お前も皆から忘れられて…な、なんだ!?残酷な描写に吸い込まれていく…!?」

残酷な描写「うん…だからね…私も復讐しようと思うんだ。保険でつけたタグなんて言ってしまえば遊びの関係みたいなもんじゃない。必要な時だけ甘い言葉で囁いて、必要なくなったら捨てるなんて…だからね…」

残酷な描写ガイガン「今から、みんなのところに行くから…」(ハイライトオフ)

残酷な描写ガイガン
 忘れ去られた二人が合体(擬人化ガイガンを無理矢理吸収)した姿。
 見た目は擬人化ガイガンの目のハイライトが消えて、返り血に染まっている。
 多分、この作品の中で一番ガイガンらしいヒールな戦い方をする。


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トライアングルの予感

OQ届いてたのを見て、やっぱりこの映画ヤベェってなった。どんな内容か聞かれて教えたら「頭大丈夫?」と言われるくらいにはヤベェ映画です…あとで活動報告で語りだすかもしれません。

それと、ラブコメガイガンは別作品として分けます。
スピンオフですね。本格的に始動した時点で分けます。
あと、こっちに載せてるラブコメガイガンもそっちに移します。


「嘘ですよ…だってあの時、了子さんは…」

 

『胸の歌を信じなさい』

 

 あの時の言葉が思い出される。

 私達を信じて、託してくれた了子さんがまた敵になるなんて…

 

「リインカーネーション…」

 

「遺伝子にフィーネの刻印を持つ者を魂の器とし、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システム…!」

 

 だから了子さんはフィーネの器となった。

 しかし、了子さんは…いなくなってしまったのだ。

 

「そんな…ではアーティストだったマリアは…」

 

「さて、それは自分も知りたいところですね…」

 

「くっ…立花、雪音とその男を頼む!」

 

「翼さんはどうするんですか!?」

 

「ピー助の様子がおかしい…助太刀に入る!」

 

 そう言って海へと走り出す翼さん。

 ホバー移動の出来る翼さんなら海の上でも心配ないけど…

 わたしは不安を拭いきれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上にてケージを確保したマリア。

 あとは調と切歌がウェルを連れ帰ればいいだけと思考するマリアであった。

 しかし…

 

「ッ!?」

 

 突如、海面が爆ぜそこからFWを発動させたガイガンがマリアの首を落とそうと鎌を振るう。

 マントで防御するマリア。この戦いはガイガンに有利であった。

 飛行能力を持つガイガンならこの海上という戦場でも問題なく行動が出来る。

 それに対し、飛行能力を持たないシンフォギアを纏うマリアは機動性においてガイガンに劣り、不利である。

 しかし、それだけで勝敗が決するわけではなかった。

 

「どうした?以前より鈍っていないか?」

 

 そう挑発するマリア。ピー助の動きは以前戦った時よりも攻撃にキレがなく、防御するのが容易い。

 

 手を抜いてるわけじゃないし、体に不調があるわけでもない…いや、さっきの一撃が思いの外効いている…

 

 不意打ちで槍の直撃を受けた右腕に鈍い痛みを感じる。

 しかし、これに気づかれては相手を勢いづけることになる。うまく隠し通すしかない。

 マリアは槍を蹴り跳躍し、後方へと飛び退き距離を取った。マリアはアームドギアを足場にしなければならないという不利を抱えている。

 自分に利が有るというのに…苛立ちを募らせながらマリアを追撃する。

 向こうもやられているばかりではない。黒いマントを伸ばして攻撃してくる。

 それを回避して棒立ちのマリアに迫るが…これは罠だった。

 マントが俺の目の前を覆い、俺を縛った。

 体が、軋む…

 意識が遠のいて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マントで拘束した敵は気絶すると体が縮んでいった。

 そして小さくなった姿を見ると…

 

「やっぱり、ペンギンさんだったのね…」

 

 あの時出会ったペンギンさん。

 仲良くなれたペンギンさん。

 戦場で出会うなんて…運命とは残酷なものだ。

 気絶したこの子をどうするか…

 

『マリア、出来るならその生物を持ち帰ってください。もしかしたら、計画に役立つかもしれません』

 

「オーケー、マム。調と切歌の方は?」

 

『ドクターウェルの救出に成功し退却しています。あとはマリアだけ…ッ!!!マリア!!!』

 

 マムの声と同時に青い刃が飛来した。

 ギリギリのところで回避するが…

 これは…風鳴翼の攻撃だ。

 風鳴翼は足に備えられている刃でホバークラフトのように海上を翔けて迫り来る。

 ホバーを用いて跳躍し、私に向かって刀を上段から振り下ろす。

 これも目前に刃を見ながら回避したが…

 この間、無言。

 裂帛の叫びもない。

 無言の圧力が私を襲う。

 今の風鳴翼からは…阿修羅すら凌駕してしまいそうなほどの怒りを感じる。

 なにも語らない風鳴翼の背後で潜水艦が浮上する。

 無言のまま、潜水艦の甲板へと飛び移る風鳴翼は私に来いと言っているように見えた。

 恐らく、ここで背を向けて逃げては負ける。そう思わずにはいられず私も甲板へと移る。

 甲板ならアームドギアを使うことが出来る。お互いに全力を出しあえる。

 槍を構えて、風鳴翼と対峙して―――

 一瞬だった。

 目の前に、風鳴翼が現れた。

 

「なっ…!?」

 

 刀が迫る。

 槍で受ける。

 なんとか、間に合わせた。

 ギリギリの攻防。

 未だに一声も上げず、顔も見えない。

 

「…助を…せ…」

 

 ようやく聞こえた風鳴翼の声。

 しかしその声は小さく聞き取れなかった。

 だが、すぐになんと言ったか知ることになる。

 

「ピー助を返せぇぇぇ!!!!!」

 

 再び上段から刀を振り下ろす風鳴翼。

 その刀は神速をも越えると思わされるほどだ。

 その技に思わず見惚れてしまい防ぐことも避けることも忘れて…

 

「ッ!?マントを…!」

 

 切り裂かれたのは私ではなく、ペンギンさんを捕まえていたマント。

 切られたペンギンさんを包んだマントの切れ端を受け止め抱きしめる風鳴翼の姿は美しかった――

 だけどそれは戦場では不要なものだ。

 

「隙ありッ!!!」

 

 こんな隙を見せては槍の餌食だ。

 槍の穂先が風鳴翼に迫る…

 片手の塞がっている敵は防御ではなく回避を選択する。

 しかし、それだってこちらは予測済みだ。

 続けて二撃、三撃と繰り出し追い詰める。

 風鳴翼が出来ることは避けて、歌うことのみ。

 戦場に響く歌。それをレクイエムにしてやろうと攻め続けるがここで相手は予想外の動きをしてみせた。

 

「なっ…!?投げたぁ!?」

 

 そう、投げたのである。

 ペンギンさんを。

 何故、奪い返したものを投げる…

 その理由はすぐに分かった。

 

「ピャーーー!!!」

 

 意識を取り戻したペンギンさんが小さいまま迫る。槍で薙ぎ払おうと振るうが的が小さく、素早いペンギンさんには当たらず懐に入られてしまう。

 鉤爪で装甲を切り裂こうとするペンギンさんの攻撃を腕で防御して難を逃れるが…

 

「ピー助に気を取られ過ぎて私を忘れてもらっては困るな」

 

 風鳴翼の接近を許してしまった。

 彼女の刀が迫る。ここは完全に相手の距離だ。

 

「はあッ!!!」

 

「チィッ!!!」

 

 刀を間一髪、マントで防御し後方へと跳ね距離を取ることを選んだ。

 

「ピッ!」

 

「きゃ!?」

 

 しかし、上からペンギンさんに頭を叩かれ甲板へと叩きつけられる。

 

「バカにして…」

 

 見るとペンギンさんは腹を抱えて笑っている。

 かわいいんだけど…敵だからムカつく!

 

「このペンギン…可愛くないッ!」

 

「なんだとッ!?」

 

 その言葉に強く反応する風鳴翼。

 これまでのことを推察するに彼女がペンギンさんの飼い主で間違いないのだろう。

 

「ピー助はかわいいの塊だ!ぷにぷにして触り心地がいいッ!」

 

 そう言いながら斬りかかってきたので槍で受けて競り合う。

 

「プニプニして触り心地がいい?そんなことは知っているッ!」

 

「ッ!?やはり貴様、ピー助と会ったことがあるようだな…」

 

「ええ…楽しいデートだったわ」

 

「なんだと…貴様が連れ回したのだろう!」

 

「いいえ、ペンギンさんの方からエスコートしてくれたわ」

 

「!!?!?!本当なの!?ピー助!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やべえよあの二人。鍔迫り合いしながらとんでもねえ会話しだしたんだけど。

 翼ちゃんあまりの衝撃に口調が素に戻ってるし。

 てかこっちに集中しないで敵に集中してぇ!

 

「戦場で気を散らすなど!」

 

「お前は関係ない!」

 

「キャアアァッ!!!」

 

 顔をこっちに向けたまま鍔迫り合いに押し勝つ翼ちゃん。

 えっと、その…デートの件はあとで話すので今はマリアを倒すなり捕まえるなりして…

 

「…あとで私ともデート」

 

 デートでもなんでもするから今は戦闘!!!

 

「よし…それでは、行くぞ!ピー助ッ!!!」

 

 応ッ!!!

 って、なんだこのピンクの糸。

 いや、糸じゃなくてヨーヨー?

 なんか、俺の周りを…

 

「ピー助ッ!!!!!」

 

「捕まえた」

 

「デースッ!」

 

 その言葉を合図に縛り付けられる。

 あのミドピン(緑とピンクの略)コンビ!?

 

「あいつは連れ戻した…この謎のヘンテコ生物の命が惜しかったら今すぐ攻撃を中止すること。でないと…」

 

 拘束が強まり、体が悲鳴をあげる。呼吸も出来ず、脱出どころではない…

 

「おのれ…!卑怯なッ!」

 

「ふん…それじゃあまた会いましょう風鳴翼…次会うまでにペンギンさん…ピー助だったかしら?ピー助で楽しんでおくから」

 

「貴様…!ッ!?なに!!」

 

 あれは…ヘリ?いや、VTOL機ってやつか…?

 けど、こんな近づくまで気づかないなんてどんなステルス性能だよ…

 謎のステルス性能に呆気を取られているとマリアさんに持ち上げられる。

 ロープが降ろされ、三人はそれに掴まりVTOL機でこの場所から撤退した。

 くそ…なんとかして脱出してやる…!

 

「ピー助ぇぇぇ!!!!!」

 

 翼ちゃん…絶対に…絶対に戻るから、それまで待ってて…




オマケ
次回 ちっちゃいガイガンになってた
 ピー助に迫るマリアの手練手管。翼にはない柔らかさと母性にピー助は…
 次回!ピー助陥落!?お楽しみn…ギュィィィィィン

残酷な描写ガイガン「ダメだなぁ…後書きは私の物なのに…勝手に出てきたらダメでしょう?」E丸ノコ

???「待って!残酷な描写ちゃん!」

残酷な描写「あなたは…R-15…」

R-15「これ以上やらせない…!」

残酷な描写「あなたになにができるの?あなたも保険でつけられたタグ。むしろ私の仲間でしょう?」

R-15「そうかもしれない…だけど、後書きはこんなことに使う場所じゃないよ!」

残酷な描写「あなたには関係ないでしょ?後書きなんて書いたり書かなかったり自由なところなんだから…はあ、もう目障り。あなたも、消えて?」

次回 残酷な描写対R-15


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捕虜の扱いは条約で決められてるんだぞ!

今回は登場人物が少なめ。
ピー助はマリアの母性と胸部装甲の脅威に打ち勝てるのか!?


 現在、檻の中。

 そして隣には同じく檻に入れられた完全聖遺物のネフィリム君。

 なんと完全聖遺物同士会話出来てしまった。

 出来てしまったのが不幸の始まりだった…

 

『こ、こんにちはぁ…』

 

『オレ、ネフィリム。オマエハ?』

 

『ピ、ピー助です…』

 

『オマエ、ウマソウ。オレ、オマエ、タベル!』

 

『ぴえぇぇぇ…!』

 

 ガン!ガン!と隣から聞こえる檻を破ろうとする音。

 翼ちゃんごめん。

 戻るからとか脱出してやるとか考えてたけど、それどころじゃないよぉ…

 怖いよぉ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「マム、ネフィリムがだいぶ暴れているようだけど…」

 

「隣に入れたあの生物を食べようとしているようです。あの生物の調査が終わり、我々にとって無益となったらエサにしましょう」

 

「エサに!?」

 

「どうかしましたか?アジトを失い聖遺物の欠片も失くした今、ネフィリムのエサになりうるのはあれだけです」

 

 その言葉にどうしようかと悩むマリア。

 ペンギンさん…ピー助は敵ではあるが可愛さという点ではマリアの感性だと100点満点に近い。

 そんな存在をエサにされるなんて…

 それも妹が死んだ原因であるネフィリムに…

 

「まあ、恐らくエサにはならないでしょうが…これをご覧なさい」

 

「これは…?」

 

「ルナアタック…神の一撃が放たれる前、米国の衛星が撮影したものです」

 

 神の一撃…地球に落下する月の欠片を撃ち落としたゴジラという生物の放った一撃。

 しかし…これは…

 

「ボヤけていますが、これはあの生物でしょう」

 

「あの子は…宇宙で活動できるというの?」

 

「ええ…そして、カ・ディンギルの一撃を逸らすほどの威力を持つ熱線を放ったようです」

 

 ペンギンさんが?

 だけどあの大きさでそんな威力…

 

「その画像を解析すると、どうにも体長が100mにまでなるようです。それが何故かあんな小さな姿でいるわけですが…」

 

 100m…

 そんな巨大生物だったなんて…

 

「どういうわけなのかしら…?」

 

「あの生物をネフィリムとは離しましょう。管理はあなたに任せます」

 

「いいの!?」

 

「ただし、くれぐれも脱走させないように厳重に管理すること」

 

「分かったわ!ありがとうマム!」

 

 急いでペンギンさんを迎える準備をしなきゃ!

 

「まったくあの子は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガタガタガタガタガタガタ…

 隣の檻から響く轟音にもう恐怖という感情しか感じることが出来なくなっていた俺はただひたすら震えていた。

 もうイヤだよ…

 助けて…翼ちゃん…

 檻の隅で祈る…

 その時、檻の開く音がした。

 まさか!翼ちゃんが!

 

「こんにちはペンギンさん…いや、ピー助だったかしら?」

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴ…

 一体なにをしにやって来たんだ?

 まさか…隣のネフィリムのエサに…

 くそ!こうなったらなんとか脱出してや…

 

「はい、よいしょっと…怖かったでしょう?ここじゃないところに移してあげるから安心して」

 

 そう微笑む彼女はまるで聖母のようだった…

 その笑顔に見惚れたままの俺は抱き上げられ、ネフィリムの隣とかいう最悪な物件を後にしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、ここがあなたの新しいお家よ」

 

 はえ~。

 なんとも生活感のない部屋。

 まあVTOL機の中なんてそんなもんだろう。

 

「さて、あの檻から出してあげこそはしたけどあなたは捕らわれの身っていうことを忘れないでちょうだい。基本的にあなたの行動範囲はこの私の部屋のみ。いいわね?」

 

 はい…

 あの部屋以外ならどこでもいいです文句ないです…

 

「よろしい。それじゃあこの首輪をさせてもらうわね。この部屋の中なら自由に動ける長さだから安心して」

 

 首輪をさせられるのに安心してもなにもないと思うけど…

 いや、あそこよりはマシだからなんだっていい。

 首輪だろうと緊縛だろうと受け入れます…

 

「ふふふ…それじゃあ…」

 

 ニヤニヤしだしたマリア。

 嫌な予感がする…

 するといきなりえいっと持ち上げられて抱きしめられて…

 これは…

 しゅごい。

 もうすごい。

 母性というか…この柔らかさはクリスちゃん並。

 とんでもない胸部装甲に包まれる。

 でも、なんだろう…クリスちゃんというよりは…奏ちゃんって感じがする…

 というかちょっと待て。

 俺は敵になにされてんだ。

 いや、しかしこの柔らかさを堪能しないのは男としてどうなのだ…?

 

「風鳴翼はいつもこうしてたのかしら?」

 

 はい。

 こんな柔らかさはなかったけど。

 

「ふふふ…このまま、私の物にしちゃいましょうか?」

 

 妖しく微笑み、俺の首筋をそっと撫でるマリア。

 俺は…一体どうなってしまうんだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピー助強奪から数日、二課は逃亡したマリア…フィーネ達の情報をかき集めていた。

 フィーネと名乗る組織は米国の聖遺物研究機関『F.I.S.』の一部の研究者により構成されていることが判明した。

 しかし、それ以上の情報はなかなか出てこず手詰まりとなっていた。

 

「司令。フィーネ…櫻井了子の調査を行っていたところにガイガン…ピー助さんに関する資料が見つかりました。恐らく、個人的に研究していたものかと」

 

 黒服サングラス…調査班の男達三人が弦十郎に報告する。

 F.I.S.の設立にフィーネが関係していることが判明したために新たな情報を得られないかと調査を命じていたがまさかピー助についての物が出てくるとは思ってもみなかった。

 弦十郎は資料を受け取り、ざっと目を通す。

 そして、ある文章に目が止まった。

 

「ガイガンは未だ完全には起動していない…?」

 

 ガイガンは生きた完全聖遺物とされている。

 先史文明期に造られた半機半獣というまさにオーパーツ。

 動いていることから聖遺物として起動していると誰もが思っていた。

 しかし、聖遺物の起動には適合者の歌が必要だ。

 そして、起動した聖遺物からはそれぞれ特有のアウフヴァッヘン波形が存在するのだが…

 ピー助はアウフヴァッヘン波形が確認されなかった。

 イレギュラーな存在故と思っていたが、次の一文でそれは違うと確信した。

 

『ガイガンは風鳴翼の歌により励起状態に近づきはしている』

 

 完全聖遺物の起動にはかなりの量のフォニックゲインが必要となる。それも適合者一人のみでは厳しい。

 そして、これまで三人の歌を聞く場にピー助はいたがアウフヴァッヘン波形は確認されていない。

 ということはつまりかなりの量のフォニックゲインが必要となるのだろう。

 大飯食らいのピー助らしいとは思ったがしかし…

 仮に起動したとして、どれほどの力を発揮するのだろうか。

 

「そして…資料と共にこのようなものが…」

 

「これは…確か、サイコトロニックジェネレーター…」

 

 ピー助を自身の支配下に置くためにフィーネが製造した悪魔の発明。

 まさか二つも存在していたとは…

 

「そちらの資料にも書かれていたのですが、櫻井了子はガイガン…ピー助さんの力をシンフォギアシステムの強化に使用できないか考察していたようです。そのためのサイコトロニックジェネレーターでもあると…」

 

 了子君の資料をめくり、ガイガンを使用したシンフォギアシステム強化プランという項目に目を通す。

 シンフォギアシステムには心象変化によりギアの形状を変化させるという特性がある。

 そして、ピー助と同調することで心象変化を起こしギアにピー助の能力を付与する。

 それが了子君の仮説。

 …これが切り札となるかもしれない。

 しかし、肝心のピー助が敵に捕らわれている以上はこの強化プランは無意味。

 

「ご苦労だった。あとはピー助の捜索に合流してくれ」

 

 了解しましたと黒服達は司令室を出た。

 今後の戦いはさらに厳しいものとなるだろう。

 だからこそ、ピー助の存在は必要不可欠なのだ。

 そしてなにより…

 

 

 

 

 

 

 

 姪の精神安定に必要なのだ。




残酷な描写「所詮、R-15なんて下の下タグ!私に敵うわけない!」

R-15「やっぱり私じゃダメなの…?」

残酷な描写「これで…トドメを刺すッ!」

振り下ろされる丸ノコ。
私は目を閉じて最期の時を待つ。
しかし…いつまでもその時は訪れない。
恐る恐る目を開くと…

ラブコメガイガン「これ以上好き勝手させるかよ…!」

残酷な描写「邪魔をするなあッ!!!」

ラブコメ「ぐあああっ!!!!」

残酷な描写「お前も取り込んでやろう。こうして私は最強のオマケに…」

ラブコメ「うわあああ!!!!」

R-15「ラブコメガイガンさん!」

残酷な描写「これで…ラブコメも取り込んでッ!?な、なんだ!?力が…抜ける!?」

ラブコメ『悪いな…本編じゃ全然仕事しない残酷な描写だがラブコメのバッドエンドなら!』

残酷な描写「残酷な描写がこんなにたくさん!?あ、あえて取り込まれることで私に残酷な描写を見せつけるなんて!?うわあああ!!!!これがバッドエンドだというのか!?」

ラブコメ『それだけじゃない!感想でみんながくれるバッドエンドの妄想の力でぇ!!!!!』

残酷な描写「うわあああ!!!!私が仕事をしている!残酷な描写だらけ過ぎて忘れ去られた怨念とか色々浄化されていくぅ!!!!!」

次回 多分まだ終わらないこの茶番


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こちらピー助。敵アジトに潜入成功任務を開始する。

ラブコメガイガンたくさんの投票ありがとうございました!
300以上の投票にまさかここまで投票してくださるとはと驚きが隠せません。
そして結果は…300票以上の投票でその半分の票を占めたクリスちゃん当選です!
まさか響、翼相手にほぼダブルスコアとは…
みんな胸部装甲(クリス)ちゃんが好きなんすねぇ…
ラブコメガイガンは近日投稿します!
お楽しみに!


 俺はあえて捕まることで相手の情報を得るという危険極まりない任務に挑んでいた。

 そして…

 

「ホントにかわいいわねぇ」

 

 むぎゅう!

 く、苦しい…

 

「このままアタシ達のペットになるデスよ!」

 

 むにゅ。

 この程度なら…

 

「切ちゃん私も…」

 

 ストン。

 …………

 

 なんと危険極まりない任務なんだろう。

 奴等はこうやって俺を拷問することで情報を得ようとしているが逆に俺がそちらの情報を入手してやる…

 今は耐えるんだ。

 耐え抜いて、この任務を成功させて帰還するんだ…

 

 そんな妄想してないと煩悩に負けてしまいそうになる。

 そういう点で言えばノコギリピンクこと月読調は味方であると言えた。

 色々と堕落しそうになるが彼女のおかげで現実に引き戻して正気に戻してくれる。

 何故かと言えば、俺はロリコンではないからだ。

 美人系の人…大人な感じの人が好みなのでなんだろう…月読調は色々萎えさせてくれるのだ。

 鎌緑こと暁切歌は見た目には似合わないものを持っているせいで危うく堕ちかけるが…

 悪いなキッズ共。

 俺の相手をするならあと5歳は年取ってこい。

 

「…私の時だけため息を吐かれるのは何故?」

 

「きっと落ち着くんデスよ!」

 

 落ち着くといえば落ち着く。

 この固さは俺の寝床と同じくらいだからな。

 こうして三人から可愛がられるようになってからあまり時間は経っていないが気づいたことがある。

 この三人は世界を相手に宣戦布告するテロリストなんてのは柄ではない。

 皆、年相応の少女(一名二十代がいるが)である。

 本当にこの子達は敵なのか?

 そう思わずにいられない。

 

 ちなみにピー助は知らないが、ピー助の存在が彼女達の癒しとなっており自然とアニマルセラピーを行っていたのである。

 彼女達も知らず知らずのうちに結構なストレスがかかっていたことも相まってピー助は天然アニマルセラピストとなっていたのだ。

 余談だが、この天然セラピーを受けた防人が重い愛をピー助に向けるようになったのはみなさんもご存知のこと…

 

「おや、三人共お揃いで…あとへんちくりんも一緒ですか」

 

 この男…ウェル博士だったか…

 こいつが今はソロモンの杖を持っているから是非とも強奪もとい取り返したいのだが…

 

「へんちくりんじゃないわ。この子はピー助よ」

 

「所詮はネフィリムのエサ…名前なんて必要ないでしょう」

 

「ピー助はエサなんかじゃないデスッ!」

 

 そうだそうだ!

 俺はエサなんかじゃないぞ!

 

「ピー助は私達のペット」

 

 君達のペットでもないけどな。

 

「マムから聞いてないの?この子は計画に必要となるかもしれない存在なのよ。駒は多いほうがいい」

 

 計画?

 

「確かにそうかもしれません…しかし、ネフィリムのエサとなる聖遺物の欠片は二課に回収されたことですしエサとしてそこのヘンテコが最有力候補になるのは当然でしょう」

 

 むう…

 こいつら的には優先度が高いのはネフィリムか…

 しかしネフィリムでなにをする気なんだ?

 あんな食欲しかない奴で。

 

「聖遺物の欠片を手に入れることは難しい…」

 

「聖遺物の欠片なんてそこらへんにゴロゴロと転がってるじゃあないですか」

 

 聖遺物の欠片…

 まさか、ギアを食べさせる気か?

 しかしそんな戦力を減らすようなことするわけないだろうし…

 

「だったら私が奴等の持ってるシンフォギアを…」

 

「そんなのダメデス!」

 

「マリアが力を使う度フィーネの魂がより強く目覚めてしまう。それはマリアの魂を塗り潰してしまうということ。そんなのは絶対ダメ」

 

 フィーネ?

 マリアがフィーネ?

 ?????

 ちょっと待て。

 話が分からなくなってきた整理しよう。

 フィーネは確かなんたらとかいう力で転生できるだかなんだかで…了子さんがフィーネの魂の器になった。

 で、今の話からすると新しいフィーネの器がマリアだということ?

 一人悩んでいるうちにネフィリムのエサ…翼ちゃん達のシンフォギアを切歌と調が奪うとか言い出してそれで決定となったけど…

 どうやって奪う気なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リディアンは学園祭…『秋桜祭』の当日を迎えていた。

 新校舎に移転して例年通り実行できるか危ぶまれていたけどなんとか開催できたという素晴らしい日なのであるが…

 

「あの翼さん…本当に大丈夫なんですか?」

 

「立花…大丈夫だと言っているだろう。心配し過ぎだぞ」

 

「心配ですよ…だって、呪い(まじない)同好会なんてのに入部して朝から晩まで世界中の呪いを研究してるっていうじゃないですか!!!!」

 

 わたしと翼さんがいるのは呪い同好会の展示発表が行われている理科室。

 なにやらよく分からない文字や気味の悪い展示物が理科室を侵食している。

 

「翼さんはね期待の新人なのよ。入部から三日で依頼をこなせるように…」

 

「依頼ってなんですか!?」

 

 理科室の一番奥の席で水晶とにらめっこ…一緒に来ていた未来を占っている呪い同好会部長。

 前髪が長過ぎて顔が見えないし、本人も前が見えているのだろうか?

 未来は何かいいことを言われたらしく喜んでいるようだ。

 呪い同好会はこの部長と翼さんのみで構成されている。

 

「案ずるな立花。私が受け持つのは全て相手が悪い場合の依頼だ。呪いはすごいぞ。先日、婚約破棄された女性がやって来てだな…」

 

「聞きたくない!聞きたくないですぅ!呪いなんて覚えて翼さんは何になる気ですか!?」

 

「無論、フィーネを名乗る組織の装者達を呪いピー助を奪還することだ。毎晩寝ずに世界中の呪いをかけている…あいつらの髪の毛一本でもあればより強い呪いがかけられるのだが…」

 

 もうダメだこの人。

 いや、分かってたことだけど。

 なんでこの人はピー助君が絡むと残念になるんだろう。

 

「響~すごいよこれ!私も呪い同好会入ろっかな」

 

「絶対ダメ!!!」

 

 大親友の未来がとんでもないことを言い出した。

 未来までこんなところに入部したらわたしの日常がツッコミだらけになってしまう。

 わたしって本来ボケ側の人間のはずなのに…

 

「あ、そろそろ板場さん達のステージの時間だ。行こう響」

 

「…そうだね」

 

 こうして理科室をあとにした。

 もうツッコミはごめんだと内心で呟く響であったがボケが飽和しているこの世界。つっこむしかないのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 さて、マリアの部屋でおとなしくしている俺だったが…

 そろそろ動くか。

 ここをこうして…こう。

 首輪を外して、諜報活動を開始する。

 抜き足、差し足、緒川さんの足…

 廊下には人はいないようだ。

 緒川さんから忍術やら隠密行動の仕方とか習っててよかった。

 …微かに話声が聞こえた。

 怪獣になったおかげで聴力もいい。

 怪獣って便利。

 この部屋か…

 扉に耳を当て、盗み聞きをする。

 

『もうここが嗅ぎ付けられたの!?』

 

『異端技術を手にしたといっても私達は素人の集団。訓練されたプロを相手に立ち回れるなどと思い上がるのは虫が良すぎます』

 

 …なにやら、追手が来たようだ。

 微かに気配も感じる。

 二課だろうか…?

 

『どうするの?』

 

『踏み込まれる前に攻めの枕を押さえにかかりましょう。マリア、排撃をお願いします』

 

『排撃って…相手はただの人間。ガングニールの一撃を食らえば…』

 

 やはり…この人は優しすぎる。 

 世界を相手に宣戦布告なんてするような人物とはとても思えない。

 

『そうしなさいと言っているのです。ライブ会場占拠の際もそうでした…マリア、その手を血に染めることを恐れているのですか?覚悟を決めなさいマリア』

 

 …ライブ会場占拠というと観客を逃がしたことか?

 確かに折角の人質を逃がすなんてとは思ったが…うわぁ!

 急に大きな揺れが襲った。

 地震ではない。

 今のは…爆発だ。

 爆破なんて真似を二課がするとは思えないから…きっと二課ではない。

 二課ならマリア達の身柄を確保するだろうし…

 これは、殺しにかかっている。

 二課ならついでに救出してもらおうと思ったけど、どこの馬の骨とも分からない奴等に殺されそうになるのはいただけない。

 この機に脱走するか?

 けどまだなにも…なにも掴めていない。

 マリア達がやろうとしていること…

 マリア達がなにを思っているのかを…

 ッ!?

 今度はノイズの反応…それとソロモンの杖…

 恐らく、ウェルが…

 襲撃してきた輩はノイズに対抗は出来ないだろうから最早…

 

『やめろウェル…その子達は関係ない…やめろぉぉぉぉ!!!!!』

 

 何故かその言葉を聞いた瞬間、勝手に体が動いていた。

 外に出て、炎の中を抜けて――

 

 

 

 

 

「やめろウェル…その子達は関係ない…」

 

 画面に映し出される少年達。

 彼等は関係ない。

 彼等はただ平和に過ごしていただけ…

 ウェルはそんな彼等を殺そうとしていた。

 

「やめろぉぉぉぉ!!!!!」

 

 ソロモンの杖を構えて、ノイズを少年達に向けて放った。

 少年達に放たれたノイズは炭化して…

 そんな…どうして…

 

 しかし、私の予想は裏切られた。

 

『なっ!!!??!?!』

 

 驚きの声を上げるウェル。

 崩れ去るノイズと少年だったもの…しかし、少年達は無事だ。

 そして彼等の前には彼等を守るように立つ、変身したピー助の姿があった――

 

 

 




オマケ
R-15「残酷な描写ちゃんに残酷な描写を見せればそっちに気が向いて!」

ラブコメ「ああ!こいつの力が弱まれば…」

擬人化「ぷはぁー!た、助かった…」

R-15「擬人化ちゃん!」

擬人化「あぶない…あいつの中にいたらゆるふわコメディ枠の私ですら残酷な描写が…」

ラブコメ「お前はほぼ毎回オチでなにかしら起こってたろ」

残酷な描写「まだよ…まだ私は…」

R-15「残酷な描写ちゃん…」

???「お前らうるさいよ?いつまでグダグダやってるの?」

残酷な描写「お前は…本編ッ!?」

ラブコメ「本編がなぜここに…」

本編「お前達がうだうだやってるから来たの。お前等のせいで本編まで下品な作品だと思われるだろ」

擬人化「いや、本編がそんなだからオマケの私達がこんなっていうか…」

本編「うるさいなぁ…それより、残酷な描写」

残酷な描写「なんだ…牙を抜かれた本編が私に何の用…」

本編「そろそろこっちで仕事だ。スタンバっとけ」

残酷な描写「え…」

R-15「やったね残酷な描写ちゃん!久しぶりの本編だよ!」

残酷な描写「けど、どうせすぐに出番が終わって…」

本編「安心しろ、しばらく仕事は途切れないし結構あれな内容になる。存分にお前の力が発揮できる仕事だと俺は思っている」

残酷な描写「私は…」

R-15「やろう!残酷な描写ちゃん!」

ラブコメ「そうだ!お前の力…残酷な描写を見たいやつがたくさんいるんだ!」

擬人化「そうよ!この作品は作者も読者も愉悦優先の変態だらけ!あなたを望んでいる人達ばかりなのよ!(違ったらごめんなさい)」

残酷な描写「私…やります!一生懸命、残酷な描写として仕事を全うしてみせる!」

R-15「その意気だよ残酷な描写ちゃん!」

本編「なに言ってんだ。お前も仕事だぞ」

R-15「え?私も…?」

擬人化「頑張りなさい。後書きから応援してるわ」

ラブコメ「俺も別作品として他所から応援してるぜ」

R-15「私…頑張ります!」

こうして長きに渡るオマケ戦争は終戦を迎えたのである。

???「暢気な奴等ばかりで反吐が出る…」

???「この様子じゃ後書きはすぐに私達の物になりそうね」

続く…わけないだろう。


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ヒーロー

呪い同好会部長
長い前髪で素顔が見えないが素顔を見た者の話からリディアン三大美女の一角とされるほどの美女であるとのこと。
隠れ巨乳。
恨みを晴らしたい人からの依頼を受けて、仕事人みたいなことをしている。
口癖は人を呪わば穴二つ。


 俺はヒーローという存在が好きだ。

 幼い時からテレビで放送していた特撮は欠かさず見ていた。ウルトラマン、仮面ライダー、戦隊…他にも色々なヒーロー達がいた。

 ずっと熱中して見ていた。

 弱きを助け悪を挫く。

 時に悩み、立ち止まりそうになっても彼等は諦めず戦い続けた。

 世間一般では小さいうちに卒業するものという認識をされている特撮ではあったが俺はずっと見続けていた。

 そんなことだからバカにされたりなんてこともした。

 それでも好きなものは好きだと貫いていたらなにも言われなくなった。

 そうしていると意外と同じ特撮を愛好する仲間というものはいるもので特撮仲間の友人も出来た。

 人として大事なことも特撮から学んだ。

 俺の人生で特撮というものはかなり重要なものなのだ。

 ヒーローのようになりたいと思っていた。

 だからこそ…俺はヒーローにはなれない。

 ヒーローではない。

 この少年達は助けた。しかし…本当のヒーローならば最初に襲撃してきた奴等だって助けようとしたはずだ。

 ヒーローだって救えなかった命があることは知っている。

 だけど、それは助けようとして助けられなかったものだ。

 俺のように見殺しにはしていない。

 それに、俺が本当に救いたかったのは…

 

「脱走したのか!?獣畜生の分際で!!!」

 

 逃げろ。ここは戦場だ。

 背後の少年達にそう告げる。

 伝わらないだろうけど。

 それに勝手に逃げるだろうし。

 自転車を濃いで逃げ出した三人の野球少年を見てからウェルを睨み付ける。

 ソロモンの杖を返してもらおうか…

 

「ひっ…く、来るなぁ!!?!?」 

 

 ノイズを呼び出すが今さらノイズだ。

 全て切り裂きウェルに近づいていく。

 鎌を突きだし、お前の首を今すぐにでも切り落とすことができるぞと脅迫する。

 しかし、その鎌は黒い槍によって弾かれてしまった。

 

「…ピー助ごめんなさい。彼は計画のために必要なの…」

 

 マリア…

 あんたこんな奴と手を組んで何をしようってんだ!?

 

「やっぱりこんな獣はネフィリムのエサにするのがいいんですよ!脱走までしたのです!そうでしょうマリア!?」

 

 くそ…逃げるのは容易い。

 だけど…

 このままでいいのか?

 このまま彼女を…彼女達を放っておくのはいけないと思う。

 まだここに残って見極めるべきだ。

 彼女達がなにをしようとしているのか。

 もし、彼女達がやろうとしていることが悪いことなら止めるし、正しいことなら手を取り合えるはずだ。

 響ちゃんじゃないけど彼女達と争わずに済むなら…

 

「え…?」

 

 小さくなってマリアの元へ歩み寄る。

 ぴょんとジャンプしてマリアの胸に飛び込んで抱き抱えてもらう。

 

「ピー助…」

 

 しょうがないから逃げ出しはしない。

 あんた達のやろうとしていることを見極めるだけだ。

 連れ戻される時に通りすぎ様にウェルに向かって叫ぶと情けない声を出して驚いていたのでいい気味だった。

 こいつは絶対あとでぶっ飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アジトの場所が知られてしまった以上ここに残ることなんて出来ない。

 すぐに移動して次の拠点となるべき場所を探しているのだが…

 私は自室でピー助と一緒にいた。

 脱走の件から首輪ではなく檻に入れられているピー助はどこか不機嫌そうだった。

 そんなピー助を檻から出して、抱きしめながらベッドに寝そべった。

 

「…ごめんねピー助。あなたがやったことは正しいことよ。普通ならあなたが正義でウェルが…私達が悪。だけど、これから私達が行うことはもっと多くの人々を救うこと。そのためには多少の犠牲は付き物だと、そう思ってた」

 

 一人言だ。

 だけど、この子は人の言葉を理解している節がある。

 せめて…ピー助には聞いてもらいたい。

 

「だけどあの子達がノイズに襲われた時…私は…私は助けられなかった。ただ見ているだけ…だけど、あなたが来てくれた。あの子達を助けてくれた。ありがとうピー助。あなたは、私のヒーローよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、私のヒーローよ…」

 

 そう言ってマリアは寝てしまった。

 まったく…捕虜の俺を檻から出して寝るなんて。

 そっと腕の中から脱け出して毛布をかけてあげて…

 ふぅ…

 俺はヒーローなんかじゃない。

 だけど…

 彼女のヒーローになれたならいいだろう。

 正義の味方なんて大層なもんじゃない。

 誰か一人でも救えたのなら…俺はそれでいい。

 …翼ちゃん。

 翼ちゃんは防人として人類を守るために戦っているけど…

 俺は…

 今は遠く離れてしまった翼ちゃんを思う。

 絶対に帰るから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 響と翼さんの三人で板場さんとクリスのステージを見ていてら敵だという女の子が現れて響達は追いかけていってしまった。

 一人になり、私はあることが気にかかっていた。

 さっき呪い同好会の部長さんに占いで言われたこと…

 全体的に今年はいいことがあると言ってくれたのだけど一つだけ…人間関係という点のみ近く悪いことが起こると言われた。

 

『大事なお友達に良くないことが起こるわ…その時にあなたはどうするか…』

 

 大事な友達…響に何か悪いことが起こるかもしれない…

 

「ん?どうしたの未来?」

 

「な、なんでもないよ!ほら行こう!」

 

 所詮は占い…そうは思うんだけど…

 私はずっと気にかかってしょうがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリアが寝てしまったので一人で檻におとなしく入っていた。

 はりつめていた緊張の糸が弛んだようで穏やかに眠っている。

 時折、寝言でセレナという名前が出ていたけど…

 まあ俺には関係な…

 

『こんばんはピー助さん』

 

 突然、女の子が壁をすり抜けて現れた。

 すり抜け…すり抜け…

 なんだ幽霊か。

 こんばんはやでー。

 

『驚かないんですね…』

 

 奏ちゃんのおかげでだいぶ幽霊に対しての恐怖心というものが無くなっていた。

 貞子みたいなの来たら別だけど…

 

『そうですか…それじゃあ私には時間がないので手短に。姉さんをよろしくお願いします。姉さんはとてもじゃないけど悪役なんて出来ない人だから…』

 

 やっぱりそうか。

 そうだと思ってたよ。

 

『よかった。不思議な生き物だけど姉さんのことよく見てるのね…それじゃあ私はそろそろいきますね』

 

 そっか…

 あ、折角だから君の名前を教えて?

 

『私はセレナ…姉さんをよろしくねピー助さん…』

 

 そういって女の子…セレナちゃんは消えた。

 さっきの寝言は妹であるセレナちゃんとの思い出でも夢見てたのだろうか。

 けどセレナちゃんは幽霊だから故人だということ。

 きっと仲のいい姉妹だったんだろう。

 そうじゃないとわざわざ姉をお願いなんて言わないだろうし。

 俺にも姉がいたけど死んだとしても(人間としては死んだようなものだけど)多分姉を頼みますなんて言わないし…

 なんて考えていると今度は普通に扉が開いて誰か…ウェルが入ってきた。

 こいつ女性の部屋にノックもなしとは…

 ちょっと待て、なんでここでソロモンの杖を手にしている?

 

「へんちくりん…これは脅迫です。あなたが取引に応じなければマリア・カデンツァヴナ・イヴを殺します。シンフォギアを持っていたとしても寝入りをノイズに襲われれば…」

 

 こいつ…!

 だが待て、マリアはお前達にとって重要な人物のはず。

 ここで殺すなんてこと…出来るわけがない。

 

「いえ、私は殺しますよ。私にとって重要なのはネフィリムですから」

 

 こいつマジかよ…

 この変態もやし野郎め…!

 

「で?どうするんですか?私の言うことを聞きますか?」

 

 …首を縦に振る。

 ブラフかもしれないがこいつはやりかねない。

 

「まあ、やることはただあなたの血液を採取したいってだけですが」

 

 血液?

 ここに来てまで血を抜かれるとか…

 

「流石にあなたをエサにするのは私が殺されかねないのでね…血液なら何も言われないでしょうし」

 

 そう言いながら注射器を取り出し俺の腕に突き刺し血を抜き取るウェル。

 血をネフィリムのエサに…

 腹はふくれないだろうな。

 それにしても…特撮だと怪獣の細胞やらなにやらを取り込むとろくなことにならない。

 なにも起こらないといいが…

 いや、それはあまりにも楽観的過ぎる。

 もし、俺の血によってネフィリムが強化なり暴走したりなんてした時には俺は…

 死んだとしてもネフィリムを殺さなければならない。




オマケ 擬人化ガイガンG

ピ「敵に捕まってしまった…くっ殺せ…」

マリア「あなた可愛いわねぇ…」

ピ「な!なにを!?」

マリア「なにをしていると思う?」

ピ「くっ…屈するわけには…」

部屋の外

切歌「こ、この部屋で一体なにが…!?」


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心をひとつに

誤字報告ありがとうございます。
またいつもたくさんの感想、評価ありがとうございます。
それはそれとしてネフィリムってガルベロスに似てない?
左右の頭外したらガルベロスはネフィリムと大差ないと思う今日この頃。


 二課仮設本部に赴くと司令から話があると言われラボへと連れられた。

 そしてラボで見せられたものは私が忌み嫌うもの…「サイコトロニックジェネレーター」

 かつてフィーネが使用し、ピー助を操り私と戦わせた最悪のマシン…

 あれはルナアタックの際に破壊されたものが見つかっていたと聞いていたが…今ここにあるのは新品同様。

 

「フィーネ…了子君の調査を行っていた際に発見された恐らく二号機といったところだ。あとこの資料も一緒に発見されてな」

 

 司令から手渡された資料に目を通すと気になる単語に目が止まった。

 

「ガイガン…ギア?」

 

「そうだ。シンフォギアは心象の変化により形態を変化することは知っているな?了子君はサイコトロニックジェネレーターを用いてピー助と心象を通わせギアを強化させるプランを考案していたらしい」

 

 ピー助と心象を…

 だけどピー助はいま…

 

「敵の手に落ちてしまっているピー助だが、先刻のノイズが発生した現場に現れていたらしい。ノイズに襲われそうになったところ両手が鎌の生き物に助けてもらったという証言があってな…ヒーローのようだったと」

 

 よかった…ピー助は無事…

 だけど未だに帰ってこないということは…

 

「なにか理由があるのだろうが…一つだけ言えることはある」

 

「…なんですか?」

 

「あいつがお前を裏切るようなことはしないということだ。あいつもあいつで戦っているんだろうよ。そのうち帰ってくるさ。だから、その時のためにもお前にはこいつを持っていてほしい。これから厳しくなるであろう戦いに備えてな」

 

「…はい」

 

 サイコトロニックジェネレーターを手に取り、ポケットへとしまった。

 ピー助…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園祭に現れた敵の装者…暁切歌と月読調は私達三人に決闘を申し込んできた。

 その時の合図はこちらが出すと言っていたがノイズを召喚して狼煙としたようだ。

 場所は…東京番外地特別指定封鎖区域「カ・ディンギル跡地」

 決闘の舞台としてはちょうどいいと踏んだのだろう。

 立花、雪音と共にノイズの発生した辺りへ向かうとそこにいたのは…あの二人ではなく、ウェルという男だった。

 ウェルはソロモンの杖からノイズを呼び出し、私達に相対する。

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

『Killter Ichaival tron』

 

 ギアを纏いノイズを各々撃破を開始する。

 

「調ちゃんと切歌ちゃんは!?」

 

「あの子達は謹慎中です。だからこうして私がでばって来ているのですよ。お友達感覚で計画遂行に支障をきたされては困りますので」

 

「なにを企てる!F. I. S. !?」

 

 そして、ウェルの口から語られたのは予想外の言葉だった。

 月が落ちる。

 月の落下により奪われる無辜の命を救うと。

 そのために自分達は行動しているのだと…

 月の公転軌道は各国が計測し、今のところ問題はないと結果が出ていたはずだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしようどうしよう…

 すぐ近くに翼ちゃん達が来ている…

 恐らく戦闘になっているんだろうが…

 大丈夫だろうか…

 狭い檻の中を行ったり来たり、右往左往して悩む。

 つい数時間前に彼女達についていくとか決意したけどなんだろう。直感が早く翼ちゃんのところに帰れと告げている。

 これは…帰ったほうがいいのかもしれないけど檻の中だしなぁ…

 出られな…ッ!?

 なんだ…今の…気持ち悪さ…

 不快感… 

 ずっと鏡にうつる自分の姿を見せつけられているような…そんな不快感だ。

 まさか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘、あれは…」

 

「どうなっているデスか!?あれはまるで…」

 

「ピー助そっくり…」

 

 画面に映し出されたネフィリムの姿は変貌していた。

 ピー助に近づいているように見えた。

 まさか…

 

「マリア!」

 

 部屋を目指し、駆ける。

 恐らくピー助がウェルになにかされたんだ。

 部屋に到着してピー助の入っていた檻を見ると、もぬけの殻。

 今日二度目の脱走だった。

 脱走して向かった先は分かりきっている。

 あれを…ネフィリムを倒しにむかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如としてそれは戦場に現れた。

 雪音が吹き飛ばされ地面に倒れたまま動かない。

 

「雪音!しっかりしろ!雪音!」

 

 雪音のもとへ駆け寄り、無事を確認するが気絶しているだけのようだ。

 しかし一体なにが現れたというのか。

 土煙でその姿を隠しているがいずれ姿を表して…!?

 この…姿は…

 

「ピー助君に…似てる?」

 

 立花がそう呟いた。

 あれは…先日廃病院で遭遇した謎の生物…

 しかしその姿はピー助に似ている。

 両手が鎌となり、口しかない『のっぺらぼう』のようだった顔には赤い単眼が妖しく煌めいている。

 気を失った雪音のことも大事だが…この生物は…

 あの生物に気を取られていた私はノイズの吐き出した糸により動きを封じられてしまった。

 粘着性のあるそれは絡みつき私が動くことを許さない。

 

「くっ…このようなもので…」

 

「翼さん!クリスちゃん!」

 

 私のところへ駆け寄ろうとする立花を謎の生物が阻んだ。

 謎の生物は立花へと襲いかかる。

 加勢したいが…

 この糸が邪魔をする。

 このままでは…

 そう思った瞬間、何かが飛来し糸を吐くノイズを切り裂いた。

 ノイズが倒されたことにより、私を阻んでいた糸も炭となり崩れ落ちた。

 先ほどノイズを切り裂いたものが地面に突き刺さり、それが誰のものかすぐに分かった。

 これはピー助の放った丸ノコだ。

 空を見上げると、夜空に赤い光が煌めきピー助が舞い降りた。

 

「ピー助!よかった…無事なのね…」

 

 ピー助の無事を確認するが…ピー助は低い唸り声を発している。

 あの生物に対して警戒しているようだ。

 自身に似た存在に警戒するのは当たり前か。

 

「ピー助あいつを…」

 

 倒すと言おうとした瞬間、衝撃の光景が目に入った。

 立花の左腕が喰われた。

 左腕を咥えられたまま持上げられ、立花の体が地面へと落ちた。

 左腕を噛み切られたのだ。

 あまりのことに体が動かなかった。

 赤い液体が辺り一面を濡らす。

 馬鹿な…

 

「立花ぁぁぁぁ!!!!!」

 

 これ以上立花をやらせるわけにはいかない。

 ピー助と共に立花を守るために謎の生物に立ち向かう。

 刀と鎌による波状攻撃。

 しかしこの生物は全ていなしていく。

 二人がかりでダメだというの!?

 

「いいぞネフィリム!!!そのままそっちの女も喰っちまえ!!!」

 

 ネフィリム…それが奴の名…

 しかし名前などどうでもいい。今はこいつを退けて雪音と立花を連れて撤退しなくては…

 

「ウアアアアアアッ!!!!!!!!!」

 

 そんな…立花が、暴走だと…!?

 暴走した立花はエネルギーを編み左腕を形成した。

 ネフィリムも脅威となるのは立花の方と認識し襲いかかった。

 ぶつかり合う二体の獣。

 しかし、優勢なのはネフィリムの方だった。

 知能もあるのか、ひたすらに暴れる立花の攻撃を冷静に対処し反撃の一撃を加えていく。

 この前出会った時とは大違いだ。

 

「まさかそこのちんちくりんの血を飲ませるだけでこんな変化が起こるなんて…もし丸ごと食わせてたらどうなっていたことか…」

 

 血を飲ませた…

 それでこの生物…ネフィリムは変化したというのか。

 ネフィリムを倒し、暴走した立花を救う。

 言うだけなら簡単だ。

 先ほどネフィリムと打ち合って奴が強いのは分かっている。

 しかし、やらなければ…

 ふと、ガイガンギアのことを思い出した。

 シンフォギアの強化プラン。これがうまくいけば…

 サイコトロニックジェネレーターを手に取る。

 これを使えば…だけどフィーネのことが思い出されて躊躇する。

 ピー助を操り、苦しめたこれを私は…使いたくない。

 だけど使わなければ…

 

『ピー助と心象を通わせギアを強化させる』

 

 司令の言葉を思い出した。

 ピー助と心象を通わせる…要するに心をひとつにすればいい。

 

「なんだ…そんな簡単なことだったのね…」

 

 迷いはなくなった。

 私はサイコトロニックジェネレーターを投げ捨てた。

 心象を通わせるなんてこと、機械に頼らずともやってみせる。

 

「ピー助…私と心をひとつにして!」

 

 ピー助は静かに頷いた。

 ピー助の胸に手を置き神経を集中させる。

 ピー助と、心をひとつに…

 徐々に高まる力。

 たしかに私とピー助はひとつになっている。

 力が最高に達した瞬間。

 私は叫ぶ。

 

「ガイガンギアッ!起動!!!」




オマケ 擬人化ガイガンG ショタ編 
33話の続きだよ!

ピ「ぴえぇぇ…」

翼「大丈夫…私に任せてくれればいいわ」

マリア「そう、お姉さんに任せなさい」

弦十郎「いやここは同じ男として俺が」

翼・マリア「!?」


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新たなる力

これだけ書いてまだ中盤…
くそぅ!これも全てピー助が翼さんとイチャコラ(?)したりマリアさんにNTRそうになるのがいけないんだ!


「ガイガンギアッ!起動!!!」

 

 その言葉と同時に私とピー助は青い光で包み込まれた。

 その光の中で今纏っているギアは分解され、新たに紺色のレザースーツのようなインナーが形成される。

 そしてピー助が後ろから私を抱きしめて…あすなろ抱きと言っただろうか?

 正直かなり嬉しいのだけれど…今はそれどころじゃない。

 やがてピー助は装甲として生まれ変わる。

 

 背中には赤い三枚の翼、紺色の装甲…カラーリングはピー助のものだがそのシルエットは陣羽織を纏った武将のよう。

 両手にはピー助の腕を模した双剣。

 これがガイガンギア。

 二人の絆をひとつに束ね生まれたギアである。

 

「な…なんだそのギアは!?」

 

 予想外のことに驚愕の声をあげるウェル。

 しかしあんな男のことなど気にする必要はない。

 

「いきましょう…ピー助」

 

 双剣を×字に構えながらネフィリムへと翔ぶ。

 ガイガンギアはエクスドライブ同様、飛行が可能であった。

 暴走した立花を地面に倒し、トドメを刺そうとするネフィリムを蹴り飛ばす。

 未だに暴走する立花は私も敵に見えるだろう。

 まずはネフィリムを黙らせてから立花を救う。

 それまで立花には…少しだけ動くのを我慢してもらいたい。

 

「立花、少しだけ我慢していて…」

 

「ウァァ!!!」

 

 暴走する立花を影縫いで拘束し、再びネフィリムへと向かい駆け出す。

 

「はあッ!」

 

 双剣でネフィリムの鎌と打ち合う。

 甲高い鉄の音。

 宵闇を彩る火花。

 流麗な剣技。

 この戦場は美しかった。

 

(ピー助と一緒なら…なにも怖くない)

 

 この胸には私ではないもうひとつの魂が宿っているのが感じられた。

 体はひとつだけど私の心にピー助の心が寄り添っている。

 とても、暖かい――

 だから私は戦える。

 どのような相手でも切り伏せ、大切なものを守護することが出来る。

 

 ネフィリムには知性はあるがついさっき備わったもの。

 その本質は変えられなかったようだ。

 徐々に苛立ちが見えてきた。

 自身の攻撃がいなされ、逆に反撃され…次第に防戦一方となっていったからだ。

 双剣が舞う。

 ネフィリムの腕を弾き、がら空きになった胴を十字に切り裂く。

 

「―――ッ!!?!!?」

 

 自分の体に傷がついたことに驚くネフィリム。

 激昂し飛び掛かるネフィリムに対して私達は冷静だった。

 

「いきましょう…ピー助」

 

 ドクンと私の中でピー助が鼓動する。

 ピー助の準備もいいようだ。

 静かに双剣を構え、ネフィリムを迎え撃つ。

 

「はあッ!!!」

 

『血刃ノ舞』

 

 飛び掛かってきたネフィリムに横一閃。

 そこから始まる刃の舞踊。

 乱反射する刃の光、乱れ散る鮮血。

 最後の一閃をうけたネフィリムを背に私は残心…

 ネフィリムは静かに倒れ、砕け散った。

 

「バ…バカな!?ネフィリムを…ネフィリムは新世界のために必要なんだぞッ!?それを…それを!!!」

 

「ウェル…ここまでだ。おとなしく着いて…!?よせ!立花ッ!!!」

 

 ウェルを拘束しようとした時、影縫いを解いた立花がウェルへと襲いかかった。

 

「ひ…!うへぇぁぁぁぁ!!!!」

 

 立花をなんとか抑えるがその隙にウェルは逃走してしまった…

 暴走した立花の力は凄まじく、性能が向上しているガイガンギアでも抑えるのがやっとだ。

 

「おい!お前黒いの似合わねぇんだよ!」

 

 意識を取り戻した雪音も立花を抑える。

 二人がかりなら…

 

「ウゥ…アアアアアア!!!!!!」

 

 立花が叫ぶと強い衝撃が襲った。

 なんとか立っているのがやっと…ギアを纏っていなければ吹き飛ばされている。

 やがて、衝撃がおさまると立花を中心に隕石でも落下したかのようなクレーターとなっていた。

 立花の暴走は止まったらしく元の制服姿に戻っている。しかし…食われたはずの左腕はなにもなかったかのように無事だ。

 いや、とにかく撤退だ。

 

「雪音、しっかり捕まっていろ」

 

「え?そういえばそのギア…って!?飛んで…!?バカ!早く言え!」

 

「だから捕まっていろと言ったろう。ギアを纏っているとはいえ、この高さから落ちたらひとたまりもない…それと、口は閉じておけ。舌を噛むぞ」

 

「ちょっ…待てぇぇぇぇぇ!?!!!!?!」

 

 立花を一刻も早く手当てしなければならない。

 雪音の絶叫をBGMに夜空を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 響ちゃんを医療班に引き渡し、翼ちゃんとクリスちゃんと駆けつけた未来ちゃんと一緒に待機していた。

 アメノハバキリとの合体?融合?とか色々あったけどとにかく今は響ちゃんが心配だ。

 さっき少しだけど…響ちゃんの体から妙な気配…いや、あれはガングニールの気配だった。

 響ちゃんはもはや人とは違うもの…

 俺と同じような存在になりかけている。

 考えこんでいたら緒川さんがやって来た。

 

「応急処置は終わりました。問題はないそうなので朝には目が覚めるだろうとのことです。みなさんも今日は遅いですから帰りましょう。車を出しますので待っていてください」

 

「よかった…」

 

 未来ちゃんが安堵してそう呟くが…本当に異常がないのだろうか?

 いや、あるのだろう。

 戦闘が終わってから休むこともなくみんなここにいるのだから休ませるための方便だろう。

 だけど翼ちゃん達を休ませるのは賛成だ。

 こんな張りつめたままじゃいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緒川さんに送られ帰宅した翼ちゃんと俺。

 久しぶりだな…

 マリア達に捕まって檻の中だったし…なんか俺、敵に捕まったり操られてばかりな気がする。

 もっとしっかりしないと…

 さて、久しぶりの我が家はどれほど汚くなっているかいざ、拝見―――

 

 

 

 

 

 

 

 そこは俺の我が家ではなかった。

 どこかの民族が作ったであろう謎の仮面が壁に飾られ、見たこともない文字で書かれた謎の書物が散乱し、獣の頭骨がテーブルに置かれ…

 魔界。

 魔界という単語が頭に浮かんだ。

 なんだこのオカルトハウス。

 俺がいなくなった数日でなにがあった!?

 

「びっくりしたかしら?あの仮面はアマゾンの奥地で文明と隔絶された民族がつくる魔除けの仮面であっちが…」

 

 そう説明を始めた翼ちゃんの顔はもうダメな人の顔だった。

 これは…修正が必要のようだ。

 たしかベッドの下にしまって…あったあった。

 これを鉤爪に巻きつけてっと。

 完成!ハリセンガイガン!!!

 とにかく説明を続ける翼ちゃんの頭にハリセンをヒット!!!

 痛がっている隙に布団で簀巻きにして…

 

 

 

 

 

 

「待って!お願いそれだけは待って!それはかの英雄ジークフリートが邪竜を打ち倒し、血を浴びた際に背中に貼り付いていた菩提樹の葉なの!!!」

 

 知りません。

 まったく…こんな胡散臭いものばっかりよく集められたもんだ。

 だいたいそんな葉っぱが現代に残っているわけないでしょう。

 あ、いや聖遺物なんてものがある世界だったなここは。

 仮に聖遺物なら翼ちゃんの歌で起動するはず!

 ほら!歌ってみろ!

 

「う…~♪」

 

 歌う翼ちゃん。

 葉っぱに変化なし。

 ほら見ろ。

 はいこれは偽物。

 

「そんな…部長が言っていたことは全て嘘なの…」

 

 はぁ…ホントにこの子は残念なんだから…

 俺がいなくなってから購入したものならまだクーリングオフが効くはず。

 明日…もう零時を回っているから今日にでも購入したとこに問い合わせる!

 分かった!?

 

「うぅ…折角ピー助を取り戻して奴等を呪い殺そうとしたというのに…」

 

 奴等…マリアのことか。

 なんか彼女達の様子見をしようとかセレナちゃんにマリアをよろしくされたというのにネフィリムの野郎が気に食わなくて脱走して、そのままガイガンギアなんてのになって…結局こっちに戻ってきてしまった。

 流石にまた捕まるのはあれだから…戦場で出会った時は話をしてみよう。

 伝わんないと思うけど。

 

「ピー助…そろそろ解放して…流石に疲れてきたわ…」

 

 む、それもそうだな。

 戦闘して帰ってきて簀巻きにされるなんてたまんないだろうし。

 ロープを切って~はい、これで解いてあげ…

 …翼ちゃんに持ち上げられる。

 そのときの目はまるで獲物を仕留めた肉食獣のようで…

 

「ようやく…取り戻した…さあ行きましょう。愛の巣(ベッド)へ」




ガイガンギア翼さん誰か書いて(他力本願)
絵心ある人っていいよね…
オマケ 擬人化ガイガンG

翼「なぜ司令がピー助争奪戦に参加するのです!?」

司令「いや、俺は息子が欲しいんだが結婚も出来なさそうだから養子でもと…」

マリア「ダメよ!これからピー助は私が育て合法な年齢になると同時に書類を役所に出すのよ!」

翼「そんな光源氏が認められるか!大体ピー助が成長する頃にはお前はおばさんと呼ばれる年齢だぞ!」

マリア「なんですって!?あなた少し若いからって調子に乗りすぎじゃない!?」

ピ・司令(女って怖…)

こうしてピー助は司令のもとで厄介となるのだった。


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探しものは?

感想、高評価ありがとうございます。
やっぱりいただけるとモチベ上がりますね。
最近ふと思ったんですけどピー助は原作だと死ぬ野球少年達助けたじゃないですか?
これなら原作キャラ生存というタグがつけれるのではと…
そうすることで未見の方達が奏さんとセレナ生きてんの!って思って読んでくれて絶望する姿を見れるんじゃないかと…(愉悦)
まさに完璧な方程式だ…俺って天ッ才でしょ!


 俺はカ・ディンギル跡地に来ていた。

 果てしなく…は続いていない荒野であるものを探しに来ていた。

 逃走したウェル?

 違う。

 マリア達?

 違う。

 俺が…俺達が探しているものは…

 

「ない…ない…どこにいったサイコトロニックジェネレーター!!!」

 

 そう傍らで叫ぶ翼ちゃん。

 俺と翼ちゃんが探しにきたのは翼ちゃんがこの間の戦いで投げ捨てたサイコトロニックジェネレーター。

 響ちゃんを助けたりガイガンギアになってネフィリムを倒したりと大活躍だった翼ちゃん。

 しかし重要アイテムであるサイコトロニックジェネレーターを投げ捨てたのはまずかった…

 翼ちゃんは司令にこってりと絞られサイコトロニックジェネレーターを見つけてこいと命じられてカ・ディンギル跡地へ。

 一人で探すのは酷かなぁと思って仕方なく。そう、仕方なく一緒に探しに来てあげたのだ。

 

「おかしい…あの時こっちを向いてこう投げ捨てたからこの辺りのはず…」

 

 ホントにそうなんだろうか?

 翼ちゃんのことだから信用ならない。

 はぁ…こうなったらあいつらの力を借りるか…

 ・

 ・

 ・

 というわけでみんな、あの残念な子のために力を貸してください。

 

「総帥の頼みなら喜んでだニャ」

 

 人海戦術…ならぬ猫海戦術。

 野良達の力を借りてこの広い土地を探し回るしかない。

 それにしてもなぁ…もしかしたら奴等が回収してしまったかもしれないし…

 あれ、そうなったらまた俺操られちゃう?

 気をつけないと…

 

「ピー助のお友達の猫さん達が…これが猫の手を借りるということ…痛ッ!!」

 

 うまいこと言ったつもりにならない。

 まったく…念のため持ってきたハリセンが仕事するなんて…

 

「うぅ…最近のピー助は暴力的…これはDVでは?」

 

 頭をさすりながら抗議してくる翼ちゃん。

 そんなこと言ってないで探す!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!あった!あったわピー助!!!」

 

 夕焼けのオレンジに染まった頃、翼ちゃんの嬉しそうな声が響いた。

 よかったよかった…

 これで帰れる。

 野良達もありがとう。

 あとでごちそう持っていくから。

 野良達を見送り、俺と翼ちゃんも帰路についた。

 ふぃー早く帰ってお風呂に入りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 翼とピー助のガイガンギアに関して調査を進めた結果あることが判明した。

 それはフィーネ…了子君が想定したガイガンギアとは違うということ。

 ガイガンギアはピー助にサイコトロニックジェネレーターを用いて装者の心象をピー助とシンクロさせることで発現する力であるが…翼が行ったのは融合である。

 ピー助そのものとの融合はまったくの想定外である。

 また、予測値を越える力を見せつけた翼のガイガンギア…

 この力…素直に喜べるものなのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が本当に正しいことをしているのか不安になる。

 多くの人を救うと言いながら、多くの人を傷つけている。

 多数のために少数が犠牲になるのはよくあることだ。

 だけど…こんな犠牲の果てに世界を救ったとして…

 

「このままじゃ私も壊れてしまう…」

 

 調と切歌はドクターを探しに行ったきり戻らない。

 あの戦闘のあと倒れたマムの応急手当だけはしたけれど…ドクターでなければちゃんとした処置は出来ない。

 気に食わない男ではあるが必要な人材なのだ。

 静かに眠るマムを見守るが…話し相手でも欲しいところだ。

 こんな時、ピー助がいてくれたなら…

 ピー助は私達の言葉を理解しているようなので話し相手として申し分ない。

 あと可愛い。

 けれどピー助は二課に取り戻されてしまって…

 ピー助…

 ピー助は私に寄り添ってくれた…

 ピー助ならきっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 響ちゃんの体にとんでもない事実が発覚した。

 胸のガングニールが響ちゃんの体を侵食してこれ以上ギアを纏えば…死に至るという。

 もう響ちゃんに戦わせないということで話は一致したんだけど…

 

「ガングニール、だと!?」

 

 ノイズの反応と共にガングニールの反応が…

 響ちゃんが戦って…

 翼ちゃんもクリスちゃんもすぐには動けないから即応できる俺が行くしかない。

 一刻も早く響ちゃんの救援に行かないと…!

 

 

 

 

 

 

 友人達との帰り道に現れたウェル博士とノイズ。

 翼さんに戦うなと言われたけれど…ここで戦わなかったらみんなが危ない。

 だから…!

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

 迫り来るノイズに拳を放つ。

 ギアを纏っていないにも関わらずわたしはノイズに触れた。

 

「人の身で…ノイズに触れて…」

 

「この拳も!命も!シンフォギアだッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノイズと戦闘中の響ちゃんを空中から捕捉。

 ウェルの野郎もいるな…

 空から降り立ちながらノイズを切り裂いて…熱ッ!?

 この熱気…響ちゃんから…

 

「ピー助君!来てくれたんだ!」

 

 来てくれたんだ!じゃない!

 今すぐギアを解除するんだ!

 ここは俺に任せて!

 

「あっ!ピー助君!」

 

 ノイズ達を鉤爪で切り裂き、レーザー光線で貫いていく。

 ウェルを拘束してソロモンの杖も取り返してやるッ!

 

「ひっ…来るなぁ!!!」

 

 ソロモンの杖からノイズを召喚するウェル。

 今さらノイズがなんぼのもんじゃい!!!

 大地を蹴り、空を飛びながら回転ノコギリでノイズを切り刻んでいく。

 あとはウェルを捕まえて…!?

 ウェルを捕らえようと伸ばした右腕が黒とピンクの巨大な回転ノコギリに阻まれた。

 これは…月読調のギアの…

 

「なんとノコギリ…」

 

 月読調と暁切歌がギアを纏い現れた。

 この二人…ウェルのこと嫌ってたから見逃してくんねぇかな…流石に無理かな…

 

「ドクターを回収し速やかに離脱…」

 

「けどピー助を相手にそれは難しいデスよ…」

 

 高評価をどうも…

 だけどこれ以上ウェルの野郎に好き勝手はさせない。

 ここで拘束させてもらう。

 

『SYSTEM FINALWARS』

 

 体を石に覆われ、それが砕け散るときそれは現れる。

 ガイガンFINALWARS

 ノイズ相手にわざわざ使わない。

 二人のシンフォギア装者が相手…運動性、機動性のためにもこの姿になるべきだ。

 

「姿を変えてきた…」

 

「かっこよくなってきたデス…」

 

 いくぞ…!

 ジグザグに飛行しながら二人に斬りかかる。

 大振りの攻撃は見切られ、回避される。

 そして二人の反撃。右から切歌の鎌、左から調のノコギリ。

 それぞれ左右の鎌で防御するが…右の鎌はいい。だけど、回転するノコギリの刃による攻撃は…まずい。

 なんとか切歌を弾き飛ばして、調を尻尾で払う。

 

「くっ…やはり強敵…」

 

「だけどワタシ達のコンビネーションならッ!」

 

 再び二人の同時攻撃。

 こうなったら…

 切歌の鎌を右腕の鎌で払い、調の丸ノコギリを左腕のチェーンソーで砕く。

 

「「!?」」

 

 二人は驚愕に目を見開く。

 そう…これはオリジナル技。

 名付けてハイブリッドアーム。

 かなり使う状況が限られるが…今がその限られた状況だろう。

 左右の腕で重さが違うのでかなり扱いにくいけど…やるっきゃない。

 バイザーから拡散光線を放ち距離を詰める。

 鎌とノコギリ同士仲良くやろうぜ…!

 

「ッ!!!あわよくばお持ち帰りデスッ!!!」

 

「切ちゃん!?」

 

 切歌が突撃してくるが…こっちも突撃する。

 左腕のチェーンソーを地面に突き刺しそのまま起動。

 アスファルトを砕きながら爆走する。

 片手だけでやるのはかなり難しいけど…

 

「ッ!?アァッ!!!」

 

 切歌の鎌を俺の鎌で払い、懐へと入り込み鳩尾へ肘打ちをきめる。

 地面に膝をつき、倒れる切歌を横目に見て次は調とウェルに狙いを定める。

 

「ひっ…う…うぁぁぁぁ!!!!」

 

 いい加減お縄につけってんだ…!




今回結構飛び飛びだなぁ…
詳しくは原作見てね!(布教)
オマケ 擬人化ガイガンG
司令に引き取られたショタピー助。
OTONA化の道を歩むかと思われたが翼とマリアによってまだ人の域を出ることはなかった…

マリア「さあピー助一緒にお散歩しましょうね」

翼「なにを言っている。これからピー助は私と一緒にお昼寝の時間だ」

マリア「勝手に決めないでもらえるかしら」

翼「そっちこそ!」

マリア「じゃあピー助に決めてもらいましょう!ピー助!私と翼どっちがいい…って、あら?どこに行っちゃったのかしら?」



ピ「やっぱ蛇拳だなぁ…」

司令「うむ。次は酔拳見るぞ」

ピ「わーい!」


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絶唱は三度響く

お気に入り800件突破!
昨日から30件近く増えてるけど一体なにが…?


 切歌はダウンさせた。

 残る装者は調のみ…

 最優先はウェルの持つソロモンの杖。

 あれを回収出来れば…

 

「や、やらせないデス…」

 

 鎌を杖になんとか立ち上がる切歌。

 しかし立つのがやっとのようでこれ以上の戦闘は…

 

「切ちゃんッ!!!」

 

 調が無数の小型丸ノコを放つ。

 空へ飛ぶことで回避するが…

 二人に態勢を立て直す時間を与えてしまった。

 だが形成が有利なのは俺の方だ。

 この勢いで二人を突破してウェルを…

 

「ピー助君…戦っちゃダメだよ」

 

 響ちゃんまだここに…

 早くシンフォギアを解除するんだ!

 今の響ちゃんの体は…

 響ちゃんは平気なフリをしているけど息があがっている。

 見た感じ力が溢れているようだ。

 このまま放っておくわけには…

 

「何しやがるデスかッ!!!」

 

 響ちゃんの説得に夢中になってちょっと忘れていたが奴さん達の方で何か起きたようだ。

 切歌と調が首をおさえてウェルの野郎を睨みつけているようだが…

 ウェルが両手に持っているあれは…

 まさか…LiNKER!?

 あの子達は…奏ちゃんと同じ…

 

「YOU達歌っちゃえよ!!!適合係数がてっぺんに届くほどのギアからのバックファイアを軽減できることは過去の臨床データが実証済み!だったらLiNKERぶっこんだばかりの今なら絶唱歌い放題のやりたい放題!」

 

 絶唱…LiNKERを使って適合係数を引き上げているあの子達が…

 それは…それは…

 

「やろう切ちゃん…私達の使命はドクターを連れ帰ること…」

 

「やらいでか…デェスッ!!!」

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl』

 

 二人の絶唱が響く…

 

「ダメだよ…LiNKER頼りの絶唱は装者の命をボロボロにしてしまうんだ!!!」

 

 絶唱により二人のギアは変わる。

 それぞれのギアの本気…

 調のギアは全身の刃が展開し、切歌のギアは鎌が巨大化している。

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl』

 

 響ちゃんまで絶唱を歌いだした。

 今の響ちゃんが絶唱なんて使ったらどうなるか分からない。

 恐らくやろうとしていることはS2CAの応用。

 二人のエネルギーを吸い上げようとしているんだ。

 三人とも奏ちゃんのように命を削ってまで戦おうとして…

 三人に奏ちゃんの姿が重なる。

 もし、二年前に俺があの現場にいたなら…

 奏ちゃんを助けることが出来たなら…

 やらせない…やらせるかよッ!!!!

 FWの姿を解き、金色の翼を広げる。

 

「エネルギーレベルが絶唱発動まで高まらない…」

 

「減圧…?」

 

「ピー助君!?」

 

 調と切歌のギアは絶唱発動前に戻った。

 響ちゃんのギアから発するエネルギーも…調と切歌のエネルギーも吸収した…

 やってみるもんだな…今まで吸収出来るのは光だけかと思っていたけど…

 まさか絶唱のエネルギーまで吸収出来るとは…

 ちっとばかし胃もたれって感じだ…

 

「ピー助君!熱っ…」

 

 翼を広げて放熱しているけど流石にこの熱は逃げていかないか…

 どこかに水場でもあれば…

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 この…歌声は…

 翼ちゃ…ごぼぼぼぼぼ!!!!

 ぷはー!

 翼ちゃんの歌声が聞こえたと思ったら空から大量の水が…

 おかげでクールダウンできたけど…

 

「ピー助!立花!」

 

「翼さん…」

 

「立花…もう戦うなと言ったはず。それが何故戦場にいる!?」

 

「ごめんなさい…わたし、皆を守りたくて…」

 

 翼ちゃんその辺にしてあげて…

 響ちゃんを止められなかった俺の方に責任が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか…あの生物にあんな力があったなんて…」

 

 調と切歌…立花響の三人の絶唱発動によるエネルギーをピー助が吸収した。

 おかげで調と切歌の体に異常もなく無事に帰ってきてくれた。

 本当に…あの子に感謝してもしきれない。

 

「あのへんちくりんのことなんてどうでもいいんですよ。それよりもこれですよこれ」

 

「これは…ネフィリム…」

 

「これは覚醒心臓。奴等に倒されて砕け散ったものを苦労して持ち帰ってきたんですよ」

 

 けれど心臓だけでは…

 エサとなる聖遺物の欠片もない。

 持っていても宝の持ち腐れではないだろうか?

 

「あの生物の血液を取り込んだ今のネフィリムなら聖遺物の欠片ではなくノイズを捕食することでも腹を満たせます。だいぶ我々に優しい仕様になってくれました。なんせこちらにはソロモンの杖があるのですから!ノイズを腹一杯に食わせることが出来るぅ!」

 

「ピー助の血液を取り込ませた?どういうことか説明してもらえるかしら」

 

 あの戦闘の際、ネフィリムの姿がピー助に似ていたのはそれが理由…

 だとしてもいつの間にピー助から血液を採取したというのか…

 

「マリア、そのことは重要ではありません。ドクター話の続きを」

 

 つい私情を挟みすぎてしまったか…

 けれど気になるものは仕方ない。

 ピー助が望んでウェルに協力するはずがない。

 だからきっとなにか理由があって…

 ピー助…

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、ピー助君の調査終わりました」

 

 藤尭に頼んでいた調査が終わった。

 思っていたよりかなり早い。

 やはり藤尭は優秀だ。

 

「で、どうだった?」

 

「やはりこれまでも装者の歌をエネルギーとして変換し吸収していたようです。特に翼さんと一緒の時は戦闘力も回復力もかなり上昇しています」

 

 先の戦闘で見せた絶唱発動によるエネルギーの吸収…

 そこから仮説をたてこれまでの戦闘データを調査したがやはりそうだったか。

 ピー助は装者の歌により力を向上させる特性。

 元々、完全聖遺物とされるピー助。

 聖遺物は適合者の歌に反応するがピー助も例に漏れずと言ったところか…

 これまで生物として活動していたから歌による起動ではないイレギュラーとされていたが少し違っていたようだ。

 歌により力が増すというならピー助は装者達にとって相性がいい頼もしい味方であると同時に敵として現れれば歌えば歌うほどピー助を強化してしまう相性最悪の敵になるということ。

 味方にも敵にも装者がいる今の現状ならばピー助は…我々にとっての切り札となりうる存在かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼さん、響さん、クリスさん。

 あの、なんでスク水なんですか?

 俺を台車に載せてどこに連れて行く気ですか?

 

「二課が所有しているプールがあるのよ。ピー助の体温がまだ高いからそこで冷やそうということになってね。それと雪音が泳げないというからついでに雪音の水練もしようとなったのよ」

 

 はえー。

 クリスちゃんカナヅチなんだ。

 

「あのー翼さん。わたしって必要なんでしょうか…?」

 

「立花は放っておくと戦闘に巻き込まれてしまうようだからあまり一人にしないようにと司令からの指示だ。小日向からも立花を頼むと言われている」

 

 うんうん。

 響ちゃんは巻き込まれ体質のようだからね。

 仕方ないね。

 

「あたしのカナヅチはどうでもいいだろ…」

 

「苦手は克服するものだぞ雪音」

 

 そんな進●ゼミみたいなこと…

 まあいいや。

 クリスちゃんのスク水姿なんていう素晴らしい姿を拝めるのだから…

 あの、翼ちゃん。

 なんで頭を掴んでいるんですか…?

 指が…めり込んで…イタタタタタタッ!!!

 

「ほらピー助…プールに着いたわ…よっ!!!」

 

 豪快なフルスイングで投げ飛ばされる俺。

 あぁ…懐かしの塩素の臭い…

 ノスタルジィ…




オマケ 擬人化ガイガンG

ピ「一日三食五十品目…一日三食五十品目…」

司令「お?なんだピー助は料理が出来たのか」

ピ「…翼ちゃんと暮らしてると嫌でも出来るようになりますよ…」

司令「お前も苦労してきたんだな…」


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ガイガンinアクアリウム

混迷する状況に翻弄されるキャラクター達…
それでも自分の信じた道を行き戦う。
こういう展開好きなんですよねぇ…
歴史の流れというか…
そんな理由でガンダムWが大好きです(唐突)


「あなたにこれ以上新生フィーネを演じてもらう必要はありません」

 

 数時間前のことだ。

 マムが唐突にそう言った。

 理解出来なかった。

 だって私がフィーネを演じなければ計画は…

 

「あなたはマリア・カデンツァヴナ・イヴ…フィーネの魂など宿していない。ただの優しいマリアなのですから…フィーネの魂はどの器にも宿らなかった。ただそれだけのこと…」

 

 どうして急にそんなことを言い出すのか…

 優しさを捨てろと言ってたのはマムだ。

 私も調も切歌も非情にはなりきれていなかったが…

 しかしこれから計画はどうするつもりなのか…

 計画のためにドクターウェルが必要だからとフィーネを演じろと言ったマムが演じる必要がないと言い出したのにはどんな意味があるのだろう。

 神獣鏡とネフィリム…フロンティアを起動させるのに必要なものは揃っている…

 なのに何故マムは私に嘘をつかなくていいなどと…

 

 

 

 

 フロンティアの起動は失敗した。

 神獣鏡の出力不足。

 歌を介さない力の使用では本来の力は発揮されない。

 これからの大事な話をしましょうとドクターに言ったマムはドクターとなにかを話したようだけど…

 スカイタワーという建物に訪れた私とマムは58階でエレベーターを降りた。

 折角の二人きりだ。この機会に先日のことなど聞いておかないと…

 

「マム、あれはどういう…?」

 

「言葉通りです」

 

 マムも聞かれると予想していたかのようにすぐ答えた。

 

「私達がしてきたことはテロリストの真似事にすぎません。真に成すべきことは月がもたらす災厄の被害をいかに抑えるか。違いますか?」

 

「つまり、今の私達では世界は救えないということ…」

 

 それじゃあ私達がやってきたことは…

 自動ドアが開き中に進むとそこにいたのは…皆揃ってスーツとサングラス。

 こいつらは…

 

「マムこれは…」

 

「米国政府のエージェントです。講和を持ちかけるため私が召集しました」

 

「講和を…結ぶの?」

 

「ドクターウェルには通達済みです。これからの大事な話をしましょう」

 

 これが先日のこれからの話かと一人合点がいった。

 それにしても急過ぎでは…?

 私は不安を拭いきれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は~…

 癒されるなぁ…

 目の前を泳ぐ色とりどりの魚達。

 優雅なクラシックのBGM。

 俺、水族館に来ています。

 スカイタワーという施設に入った水族館だがなかなか広い。

 

「綺麗だねピー助君」

 

 小声で俺に話しかける響ちゃん。

 流石に堂々と出歩くのはまずいので響ちゃんが持つ手提げ鞄の中に隠れている。

 それにしてもやっぱり水族館はいいなぁ…

 人間だった時も大好きで年間パスポート買って通ってたくらいだし。

 水族館は高いと思われがちだが年間パスポートを購入するとなんと二回分の料金で一年間通い放題になるのだ。

 水族館好きには是非とも年間パスポートを買ってもらいたい。

 水族館では有料のプログラム(生き物とのふれあいやバックヤード見学等)があるので入場料ではなくそっちにお金を使えたりするし年間パスポートまじおすすめ。

 

「もうピー助?今日は響の護衛なんでしょ?さっきから水槽に目が釘付けよ?」

 

「いいんだよ未来。ピー助君もはじめて来たから楽しいんだよ。ねーピー助君?」

 

 はぁ…ナンヨウハギ可愛い…

 デバスズメダイの色も好きぃ…

 

「あはは…ホントに目が釘付けだ」

 

 

 

 

 

 さて、何故水族館に来ているかというと戦闘を禁じられた響ちゃん。

 胸のガングニールの侵食を抑えるのに穏やかな日常を送らせることがいいのではということでゆるーい日常を送っている。

 しかし響ちゃんの巻き込まれ体質を鑑みて念のためお守りとして俺が着いてきているのである。

 あっケープペンギン可愛い…

 

「あのペンギンとピー助の身長同じくらいじゃない?」

 

「ホントだ、あの中に混じってても違和感は…あるか…」

 

 えっ。

 ケープペンギンの群れに混じれるとか最高なんだが。

 水族館に就職しよっかな…

 ん…?

 この気配はガングニール…

 響ちゃんとは違う…少し遠いけど近い…

 マリアだ。

 マリアがここに来ている。

 何故スカイタワーにマリアが…?

 まさか世界に宣戦布告した身で観光だなんてことはないだろうし…

 あっ調と切歌は学園祭に現れたんだっけ…

 まさかスカイタワー占拠とかやりだすんじゃないだろうな?

 もしそうなったら響ちゃん達も巻き込まれて…

 ここは俺が未然に防ぐしかない。

 

「あっ!ピー助君どこ行くの!?」

 

 ちょっとトイレ!

 緒川さんから教わった忍術で人に気づかれず行動を開始する。

 俺が絶対に止めてみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

「異端技術に関する情報確かに受け取りました」

 

 エージェントの一人に聖遺物に関する情報が入ったメモリーカードを渡した。

 本当にこれで…いいのだろうか?

 

「取り扱いに関しては別途私が教授します。つきましては…」

 

 マムの言葉の途中、エージェント達が拳銃を向けてきた。

 

「マム!」

 

 やはり私の不安は正しかった。

 彼等を信用するなど…!

 

「あなたの歌よりも銃弾は遥かに早く躊躇なく命を奪う」

 

「はじめから…取引に応じるつもりはなかったのですか」

 

「必要なものは手に入った。あとは不必要なものを片付けるだけ」

 

 米国らしいやり方…

 この窮地を脱するには…奴の言うとおり私の歌よりも銃弾が私とマムの命を奪うほうが早い。

 どうする…

 ふと、窓の外を見るとそこには…ノイズ。

 飛行型が三体。

 窓ガラスをすり抜けエージェント達に襲いかかった。

 さらに天井からも現れ、一気にここが人間の屠殺場へと変わった。

 このままでは私達も危険だ。

 

『Granzizel bilfen gungnir zizzl』

 

 ガングニールを纏い、ここから脱出する!

 ノイズを槍で斬り払い道を開いていく。

 途中、エージェント達に手渡したメモリーカードが落ちていたのを見て、踏みつけて壊した。

 マムは講和を結ぶつもりだったのに…!

 マムを肩に担いで廊下を走るとエレベーターから恐らく先程のエージェント達の仲間の兵士。

 躊躇なく放たれる銃弾の雨をマントで防御し弾が切れた隙に兵士達を攻める。

 ギアの力で本気で蹴るなり殴るなり、ましてやアームドギアを使っては命まで奪ってしまう。

 力加減に注意しながら兵士達を迎撃して…!

 新たな兵士達の増援。

 銃弾をマントで防御するとそこに予想外の存在が現れた。

 兵士のように戦闘服を着ているわけではない。

 エージェントのようにスーツを着ていたわけでもない。

 私服の…ノイズの襲来に逃げる一般人。

 そんな人達がいるにも関わらず奴等は引き金を引き…

 私の目の前で関係のない命が奪われた。

 彼等は関係なかったというのに…

 彼等の命を奪ったのは誰だ?

 引き金を引いた兵士か?

 いや違う。

 私だ。

 私のせいだ。

 私がフィーネを背負い切れていればこんなことにはならなかったのだ。

 

「私のせいだ…全ては、フィーネを背負い切れなかった私のせいだ!!!」

 

 銃弾が止んだ隙に兵士達をマントで牽制し跳躍して距離を詰め兵士の一人に蹴りを放ち、残った兵士達に槍を振り下ろして――

 思わず目を瞑っていた。

 涙を流してしまいそうだった。

 あれほど拒んでいた、私の手を血に染めるということをしようとして…

 しかし、私が感じた手応えは肉を切り裂いたものではなく、なにか硬い…刃だ。

 槍は刃に阻まれた。

 兵士がアームドギアに対抗できる装備を持っているわけがない。

 なにがあったのか…

 恐る恐る目を開けるとそこにいたのは…

 

「ピー、助…」

 

 兵士達を庇うように立つピー助。

 ピー助の鎌によって槍は兵士の命を奪うことはなかった。

 

「こ、こいつ!」

 

「危ないピー助!」

 

 兵士がピー助諸とも私を撃ち殺そうとするとピー助の後ろ蹴りが兵士の胴を打った。

 勢いを殺せるはずもなく兵士は壁に叩きつけられ気絶したようだ。

 …やっぱりピー助は私を守ってくれる。

 ピー助は私にとってのヒーローなんだ…




オマケ 擬人化ガイガンG

マリア「ほうらピー助~ガンダムWよ~」

ピ「見る~!」

翼「卑怯だぞ!物で釣るなど!」

マリア「ならあなたもなにか使えばいいじゃない?」

翼「くっ…こうなったら…ピー助!大江戸捜査網だぞ~」

ピ「…」

翼「何故だ!あれほど一緒に見たでしょう!」

ピ(無理矢理見させられたんだよなぁ…)

※大江戸捜査網も面白いので是非見て(ダイマ)


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その選択は

なんとか連日投稿だぜ…(ギリギリ)
ちょっと忙しくて時間が取れないものでして…
隙間時間で書くから大丈夫…?


「ピー助置いてきて大丈夫なの?こんな上の階まで来て」

 

「大丈夫大丈夫。前にピー助君とかくれんぼした時わたしと翼さんは一瞬で見つかったから!」

 

 スカイタワーの展望室で街を見渡す響は能天気にそう言った。

 護衛なのにどっか行っちゃうピー助もピー助だけど…

 いや、そもそもピー助を護衛としてつけるのはどうなのか?

 いくら訓練したり人の言葉が分かってたりしたとしても流石にそこは人間じゃないのかな…

 まあ久しぶりに二人きりで出かけられるというのはそれはそれでいいんだけど…

 突然、大きな音と共にスカイタワーが揺れた。

 響の顔が険しいものになる。

 前までの響なら不安そうな顔になっていたんだろうけど…戦いが響を変えてしまった。

 

「あれノイズじゃないか!?」

 

 誰かの声に咄嗟に窓の外を見るとノイズが空を飛んでいた。

 展望室の中は一瞬でパニックとなり悲鳴と逃げる人達の足音で包まれる。

 そんな中で響は他の人達とは反対の方へ向かおうとして――

 

「行っちゃダメ!行かないで!」

 

 響の手を取る。

 行かせちゃダメだ。

 

「だけど行かなきゃ!」

 

「この手は離さない。響を戦わせたくない。遠くに行ってほしくない」

 

 戦えばガングニールの侵食が進んでしまう。

 そうなったら響は死んでしまう。

 そんなのは絶対嫌だ。

 それだけは――

 

「おかあさんどこぉ…」

 

 この混乱した状況の中で迷子になってしまった男の子がいる。

 

「胸のガングニールを使わなければ大丈夫なんだ!このままじゃ!」

 

 そうだ。

 響はそうやって人助けをする。

 ガングニールを使わなければ大丈夫。

 いつもの人助けなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 人気がないであろう非常階段を飛んで上へ向かう。

 とにかく登る。

 登る。

 登る。

 …これ何階まであんの?

 確実に近づいているはずなんだけど…辿り着ける気がしない。

 やっぱり響ちゃん達のところにいた方がいいかなぁ…

 いや、ここは積極的に脅威となりうるものを排除しにいくべきか…うわっ!

 突然大きな揺れと爆発音が響いた。

 すぐ上の階…ノイズの気配もある。

 遂にやらかしたな!

 占拠どころか爆破なんてとんでもないことしでかしやがって…!

 マリアがいるであろう上階まで急ごうとするがそれを阻むように壁、天井をすり抜けてノイズが現れる。

 邪魔をして!

 階段という狭い場所のため巨大化しては動きづらい。

 このままノイズ共をぶっ潰す!

 ノイズの群れを掻い潜りながら飛行しすれ違い様にノイズ達を切り裂いていく。

 俺が飛び去った後にはさっきまでノイズだった炭素の山が出来上がる。

 そんなものに構っている暇はないと飛び続け、遂にマリアのガングニールを最も近くに感じた。

 この階にマリアがいる。

 非常扉を開けて中に入るとそこにはオリーブ色の服に身を包んだ男達。

 全員がその手に小銃を持っていて屈強な体をしている。

 軍人さんかな?

 鍛えてきたんだろうなぁ。

 

「―――!?――!!!」

 

 俺に気づいた兵士が俺を指差してなにか言ってる。

 すいませんワタシィニホンゴシカワカリマセェン。

 なんてふざけていたら兵士達が一斉に銃口を向けてきた。

 それと俺の英語力でも分かる単語が聞こえた。

 

「Fire!!!」

 

 おひょーーー!!!!!!???!!?!!!

 隊長と思われる男の指示で一斉に銃口から銃弾の雨あられ。

 よくよく考えたらなんでこんなとこに兵士がいんだよ!?

 体が小さいおかげか弾が当たることはなく、非常階段へと逃げ込んだ。

 こんにゃろう…調子に乗りやがって。

 目に物見せてやる!

 

 

 

 

 兵士達がピー助の逃げた非常階段に近づく。

 まず二人が非常階段へ突入しようと先行し、一人がドアノブをゆっくり回そうとすると…

 

「ピィィィィン!!!」

 

 巨大化したピー助がドアを突き破り現れる。

 先程の小ささからいきなり巨大な未確認生物が現れたことに兵士達はパニックとなりひたすら引鉄を引くがピー助の肌に傷ひとつつくことはない。

 徐々に兵士達に近づくピー助。

 鉤爪で小銃を破壊し、かなり威力を抑えて鉤爪で兵士達をしばき倒していく。

 

「No!No!」

 

「Mam!」

 

 こうして運悪くピー助と遭遇した兵士達は沈黙したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 ふぃ~終わった終わった。

 いやまだ終わってないけど。

 それにしてもなんだこいつら?

 マリアといいなんでスカイタワーにいんの?

 こいつらもマリアの仲間?

 思考の片隅に銃声を聞いた。

 あっちか…とにかく行かなければ。

 こいつらが何者か、謎が増えてしまったがやることは変わらない。

 人を守る。

 それだけだ。

 ノイズが現れたとなれば二課が動いて翼ちゃんとクリスちゃんも来るだろうし…

 あっ響ちゃん。

 流石にガングニールを纏ったりなんか…しそう。

 ヤバイぞ…もし響ちゃんがガングニールを纏ったらお仕置きが待ってる。

 今からでも響ちゃん達のところに戻って…「きゃあ!!!!」…やるっきゃない!

 この階にも当然お客さんとかいるわけだし助けなくちゃ…

 頼むから響ちゃん。ガングニールは使わないでくれよ…

 

 

 

 

 

 

 この階の人達を助けながらマリアのもとへ向かう。

 ノイズの数は減ったか…

 しかし銃声は止まない。

 銃声がした方向へと急ぎ、曲がり角を曲がるとそこには…銃を撃ち続ける兵士、ガングニールを纏ったマリア、マムと呼ばれていた女性、そして血を流し倒れた人…あれはマリアがやったんじゃない。

 あれは兵士が放った凶弾に倒れた――

 

「私のせいだ…全ては、フィーネを背負い切れなかった私のせいだ!!!」

 

 そう叫びながら兵士へと襲いかかるマリア。

 兵士は蹴り飛ばされ、残った兵士達に槍を振り下ろして――

 自然と体が動いていた。

 何故だろうか。

 咄嗟にFINALWARSを起動させて槍から兵士達を庇った。

 

「危ないピー助!」

 

 マリアがそう叫ぶが分かっている。

 庇った後ろの兵士達が俺ごとマリアを撃ち殺そうとしている。

 奴等が引鉄を引くより早く俺の後ろ蹴りが繰り出され、兵士達は勢いよく壁へと衝突した。 

 尻尾を使えばよかったと思ったが、如何せん元が人間だから尻尾より先に足が出る。

 

「ピー助、あなたどうして…」

 

 あぁ…本当にどうかしている。

 あの槍を振り下ろそうとした瞬間、マリアの涙を見てしまった。

 そんな涙を流す人間に人を殺めてほしくなかった。

 俺は…

 俺は彼女に、血に染まってほしくなかったのだ――

 

「私達は敵同士でしょう?どうする?戦うのかしら?」

 

 俺は――

 今はあんた達とは戦わない。

 それよりここのノイズ達を片付ける。

 逃がすわけじゃない。

 俺は人間を守る。

 ただ、それだけだ。

 この場から立ち去り残ったノイズを殲滅すべく飛翔した。

 

 

 

 

「ピー助…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 スカイタワー内にはノイズがいないことを確認して外のノイズ達を倒す。

 空を飛べないシンフォギアでは空の相手は厳しいため空戦は俺の担当と言っても過言ではない。

 飛行型ノイズと言っても俺よりも遥かに遅い。

 背後から近づき鎌を振り下ろしていく。

 地上では翼ちゃんとクリスちゃんが戦っているのが見える。地上は任せていいだろう。

 それにしたって数が多い。

 目から拡散光線『ギガリューム・クラスター』を放つ。

 散らばっていく光線は一発で大量のノイズを撃ち落としていく。

 次は…!

 響ちゃんが崩れた箇所から落ちそうになって…なんとか未来ちゃんが腕を掴んでいるけど長く持ちそうにない…

 いま助け――!?

 ヤバイ手が離れた!

 響ちゃんが落ちて…

 間に合えぇぇぇ!!!

 

「Balwisyall Nescell gungnir…って!?ピー助君!?」

 

 あっぶねぇ…聖詠してたぞ…

 だけどなんとか間に合った…

 ガングニールを使わせずにすんでよかったよかった…

 地上へと降り立ち響ちゃんを降ろす。

 

「ピー助君、未来をお願い!」

 

 応とも!

 すぐに――

 飛び立とうとした瞬間、未来ちゃんがいた場所で爆発が起こった。

 

「未来…未来ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

 

 響ちゃんの叫びが俺の中で木霊した。




オマケ かくれんぼ

響「みんなでかくれんぼしよー!」

クリス「なんだよ急に…」

翼「まったくこんな時に遊戯など…ピー助だってそう思うでしょう?」

ピ「ピー!(やろうやろう!)」←童心に返っている

翼「雪音、やるわよ」

クリス「手の平回りすぎだろ…」
               つづく


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修行と終焉への序曲

ちょっと間が空いたので今回は少し長め。
あと、ごめんなさいみなさん。
結構飛びます。
あんなキャラこんなキャラの心情やらなにやらありますが基本主役のピー助をメインに書きますので…
というわけでなんだこれと思った方、原作見て下さい。
文章力なくて本当にすいません…



 なんで俺はこんなところにいるのだろう。

 いや、自分が悪いのだ。

 全て自分が悪いのだ。

 俺があの時正しい判断をしていれば…あんなことには…

 

「よそ見をしている暇はないぞ」

 

 突然目の前に忍者が現れる。

 そう、忍者である。

 刀、俗に言う忍者刀という反りのない刃が迫る。

 ギリギリ鉤爪で防御することは出来たが、忍者は攻撃が失敗するとすぐに後ろに飛び退いて夜の闇に消える。

 明かりなどない山奥。

 人の目ならばなにも見えないような闇。

 怪獣の目や本能で敵の気配を察知することは出来るが…相手は忍者。

 気配を隠すなんてお手のものだ。

 次にどこから来る?

 どう来る?

 なにをしてくる?

 緊張の糸を張りつめ周囲を警戒するが…来ない。

 いつまでたっても敵は来ない。

 何故だ。何故来ない。

 焦らしてくれる…!

 微かだが、パキッという音がした。

 恐らく落ちていた枝を踏んだのだろう。

 大体の場所の目安をつけて飛びかかり鉤爪を振るう。

 そこッ!!!

 そこに敵はいた。

 呆気にとられ防御もせずに鉤爪が直撃し…手応えが、おかしい。

 次の瞬間それは忍者から丸太へと変化した。

 変わり身の術…

 

「戦いとは、常に二手三手先を考えて行うものだ」

 

 背後から声と同時に強い衝撃が襲った。

 背中にもろに飛び蹴りを食らい吹き飛ばされる。

 

「今回はこれまでとしよう。帰るぞピー助」

 

 うぅ…はい。

 一撃も当てることが出来なかった…

 

「そう凹むな。最初よりも格段に動きは良くなっている。あとは判断力だけだ」

 

 判断力…今の俺に足りないもの…

 ただ強くなるだけじゃダメだ。

 どんな時でも冷静に…

 

 

 

 

 

 

 飛騨には忍がいる。 

 仮面の忍者赤影が飛騨だったけど本当に飛騨に忍者がいるとは知らなかった…それが緒川さんの実家だと知ったのはもっと驚きだったけど。

 なんでも秀吉がまだ木下藤吉郎と名乗っていた頃から豊臣に仕えていたとかなんとか。

 そんなところになんで俺がいるかというと左遷…ではなく修行してこいとお達しが出たからである。

 護衛を任されていたのに勝手な行動を取った。

 そんな俺に与えられた罰…だけどちょうどよかった。

 今は二課にはいられない。

 誰にも顔を合わせたくない。

 顔を合わせるのはこの…

 

「どうだピー助、このキノコ鍋は。私の中でも一番の出来と言っても過言ではない」

 

 このキノコ鍋を茶碗によそう仮面を被った池田●一ボイスの赤い忍者。

 

『かつては赤い彗星と呼ばれていた…』

 

 自己紹介の時にそう言われてからこの人がシ●アに思えて仕方ない。

 あっおかわりください。

 

「よし、明日に備えてよく食べておけ」

 

 はーい。

 たまにはこういうのもいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 それからピー助の修行はほんの数日だというのにまるで数ヶ月…いや一年、いや十年は修行しただろうかというほど時間の感覚を忘れさせる…狂わせるほど厳しいものとなった。

 まあ、もともと長い刻を生きる怪獣にとって十年なんて大したものではないのだが。

 しかし、ピー助はこの数日で確かに忍としての腕を磨き並の忍者では到達出来ない域にまで達していた。

 もともと緒川さんから修行をつけてもらっていたこと、指導者が赤い彗星なこと、ガイガン、ピー助の素質などが異常な成長速度の理由なのだが…

 

『この成長速度…ニュー●イプだとでもいうのか…』

 

 ピー助の成長速度に仮面の忍者は驚愕を隠せなかった。

 その成長速度に仮面の忍者が計画していた指導カリキュラムが追いつかなかったのである。

 そしてある日…

 

 

 

 

 ぐっ…重い!

 頭、胴、足につけられた鎧…なんて優しいものではない。

 拘束具。

 それも今までで一番重い。

 この拘束具をつけてあの人の全力を相手にしなければならないのか…

 

「いくぞピー助…ハアッ!」

 

 強力な上段蹴りが迫る。

 両腕でガードし、弾いた隙を鉤爪で狙うが回避され、足払いをされてバランスを崩してしまい…

 

「もらったぞ!」

 

 まだ!

 迫り来る拳を足で払い、尻尾で地面を叩き体勢を立て直す。

 

「やるようになったな!」

 

 あなたのおかげだ!

 師匠ッ!!!

 師匠と向かい合い、間合い、相手の行動を読むが…

 突然、俺と師匠の間に矢が突き刺さる。

 これは…?

 師匠が矢を抜き、矢に巻き付けられていた紙を広げる。

 これは…矢文か。

 

「これは…慎二の坊っちゃんからか。…なるほど」

 

 なにが書いてあったのですか師匠?

 

「ピー助。お前はこの短い間にとても大きな力を手に入れた。今のお前ならその力を正しく扱えるはずだ…」

 

 師匠?

 

「仲間達が窮地に陥っている」

 

 仲間…翼ちゃん…

 

「ピー助ッ!」

 

 …はい!師匠ッ!!!

 拘束具を脱ぎ捨てながらこの場を飛び立つ。

 

「行け、若き戦士よ…」

 

 これまでありがとうございました…師匠…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上にて戦いは苛烈を極めた。

 大量のノイズに敵装者…行方不明になっていた小日向が操られ、シンフォギアを纏い立ちはだかった。

 立花を戦わせるわけにはいかない。

 ピー助は修行中…私と雪音しか動けない。

 このままではジリ貧…

 なんとか敵の装者…暁切歌と言ったか…を振り切りノイズを倒そうと他の米国軍艦艇に飛び移ったが…

 背後から敵の放った鎖によって拘束され身動きが取れない。

 鎌であったアームドギアが巨大な刃…さながらギロチンのよう。

 あのデカさでは首どころか胴体まで真っ二つに…

 この拘束をなんとか脱け出して…

 

「やるデス…!」

 

『断殺・邪刃ウォttKKK』

 

 巨大な刃が蹴りとバーニアの出力によって加速し迫る。

 ッ…!?

 突然、私を拘束していた鎖が切り裂かれた。

 自由となったいま、あの刃を避けるのは容易い。

 くぐるように回避して、敵に相対するが…今のは一体…

 切り裂かれた鎖に混ざり、見覚えのあるものが突き刺さっていた。

 これは…ピー助の!

 

「ピィィィィィィ!!!」

 

 

 

 

 

 仮設本部内ではピー助の反応をいち早く捉えていた。

 

「ピー助君到着しました!」

 

「間に合ったか!よしピー助!存分に暴れてやれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼ちゃんのピンチに放った丸ノコはなんとか間に合ったようだった。

 甲板の上へと降り立ち、敵を見渡す。

 …かなり多い。

 クリスちゃんが一人でなんとかしているような状況か。

 

「ピー助!」

 

 翼ちゃん…なんだか随分久しぶりな気がする。

 数日会ってなかっただけなのに。

 

「私はこのままあいつを抑える。ピー助は雪音と共にノイズの殲滅を。人命救助は緒川さん達が行っているから気にせず戦いなさい!」

 

 了解した!

 すぐに飛び立ち他の船に向かう。

 飛行しながらギガリューム・クラスターを放ってまとめてノイズを炭にする。

 赤い光線の雨が降り続き、ノイズの数はどんどん減っていくが…

 突然、槍が目の前に現れた。

 その槍を足場としてマリアが立っていた。

 

「ピー助…」

 

 マリア…

 何故このようなことをする!

 人々を救うと言いながら何故命を奪う!

 

「こうすることでしか世界は救えない。強者が弱者を虐げるこの世界を私は終わらせる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エアキャリアで戦場の様子を見ながら、フロンティア起動の時を待っていた。

 あの少女の纏う『神獣鏡』のギアが力をチャージするまで…

 突然レーダーに反応があった。

 アンノウン…すぐに映像を出すとピー助の姿が映し出された。

 数で勝るこちらだが…ピー助という増援は厄介だ。

 

「ドクター私も出るわ。エアキャリアはオートで操縦させる」

 

 ドクターへと通信を入れて、操縦席から離れた私はすぐにエアキャリアを飛び降りシンフォギアを纏う。

 

『Granzizel bilfen gungnir zizzl』

 

 槍をピー助の飛行を妨げるように投げ、柄の先を足場として立った。

 言葉通わぬピー助だが、何故?という感情を感じた。

 何故このようなことをするのかと。

 

「こうすることでしか世界は救えない。強者が弱者を虐げるこの世界を私は終わらせる!」

 

 マントでピー助を叩き落とし、真下の米国軍艦艇に飛び降りる。

 落ちてくるピー助に対して槍を突き刺そうとするがピー助は空中で姿勢を立て直し、私から距離を取り着地した。

 

「今の世界では世界を救えない!だから私達が変える!この世界を…強者が支配するこの世界を!」

 

 脳裏に浮かぶのはスカイタワーで巻き込まれた人々。

 その場にいてしまったがために彼等の命は奪われた。

 全ては私のせい。

 私がいつまでも覚悟を持てなかったせい。

 偽りの気持ちでは世界は救えない。

 優しさなんていらない。

 微笑みもいらない。

 私はただ純粋な力となってこの世界を破壊する。

 そして、世界を救う!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 槍を鎌で弾き、がら空きの胴に蹴りを入れる。

 先ほどのマリアの言葉を思い返す。

 強者が弱者を虐げる。

 強者が支配するこの世界を変える。

 それではなにも変わらない。

 ただ繰り返しているだけだ。

 過ちを。

 そんなバカなことをしようとしているマリアにガツンと言ってやりたいが…言葉が通じない。

 たまに通じてるけど。

 けど、こういう時は通じないものだ。

 複雑な思考の時は特に。

 この思いを口にするには…

 もしかしたらアレなら可能になるかもしれない。

 思いたったが吉日飛び立ち、翼ちゃんのところへ急ぐ。

 すぐ近くの船上で戦っていたためすぐに着いた。

 ごめん翼ちゃん。

 体を借りるよ。

 

「ちょっ!ピー助…!」

 

 ガイガンギア!起動!

 翼ちゃんの体を包むように抱擁し装甲となる。

 そして…

 

 

 

 

 

 

 

 ここは…暖かい、白い光の中。

 心地いい。

 こんな安らかな気持ちになれるのはピー助と一緒の時…

 

『翼ちゃんごめん。体を借りるよ』

 

『えっ…』

 

 誰かが私の後ろから現れて、空へと昇っていった。

 

『今のは…ピー助…』

 

 なんとなくだけれど、今のはピー助なんだと思った。

 思っていたより大人の低い、それでいて優しい声。

 それが、あなたなのね…ピー助…

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピー助は風鳴翼と合流するとガイガンギアを発動させた。

 

「どうした?飼い主がいないと戦えないのか?」

 

 ピー助に問いかける。

 返事なんてないのは分かりきっているが…しかし様子がおかしい。

 風鳴翼は俯いたまま動かない。

 

「なんだって言うんデスか…?」

 

 風鳴翼と戦っていた切歌がそう呟くが…

 一体どうしたと…

 

「飼い主がいないと戦えないだと…」

 

 ようやくしゃべりだした。

 さっきの煽りはピー助ではなく風鳴翼の方に効いたらしい。

 

「違う。俺は…あんたと話がしたくて翼ちゃんの体を借りたんだ」

 

 俺?

 翼ちゃん?

 口調も違う。

 これは…

 

「あなた、まさか…!?」

 

「そうだ…俺はピー助!翼ちゃんのペットだ!!!」




オマケ かくれんぼ2

響「それじゃあピー助君鬼ねー!」

ピ「ピー!(はーい!)」←じゃんけんで負けた

大体三分後

ピ「ピー!(翼ちゃん見っけ!)」
  翼ちゃんレーダー発動

翼「流石ピー助!飼い主である私を一瞬で見つけて…!」

ピ「ピー!(響ちゃん見っけ!)」
 ガングニールレーダー発動

響「そんなぁ…早いよぉ…」

ピ「ピー!(クリスちゃん見っけ!)」
 おっぱいレーダー発動

翼「ピー助」


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地に堕ちる

もうG編を畳みたくて仕方ない今日この頃。
ギャグやらイチャラブやら挟む間がない終盤は書くのに体力がいる…


「俺はピー助!翼ちゃんのペットだ!!!」

 

 そう言い放つ彼女の瞳は青ではなく赤い色に染まり、纏う雰囲気も違う。

 本当にピー助のようだ。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ…あんた、人を救うと言って…」

 

 この戦場を見渡し、静かにそう呟くピー助。

 その顔は悲しみを滲ませていた。

 

「そうだ。これは世界を救うために必要な犠牲…人間でないあなたには分からないかもしれないけれど」

 

「人間でない…か…」

 

 そう、ピー助は人間ではない。

 この世界のことも分かっていないだろう。

 それならピー助は…

 

「ピー助、私と共に来て。私にはあなたが必要なの。この世界を変えるためにも。今の世界は強者が弱者を虐げるようになっている…それを変えるためにも!」

 

 ピー助はまだ知らないであろうこの世界の残酷さ。

 それを知ればきっと私に賛同してくれるはずだ。

 しかし、ピー助は私の誘いに即答した。

 

「悪いが、それは出来ない相談だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして…?あなただって人間を守ってきたんでしょう!?多くの弱者を…あなたはこんな世界のままでいいの!?」

 

 マリアが叫ぶ。

 俺は…世界を守るとかそんな大層な理想は掲げていない。

 

「俺はただ、奏ちゃんが守ったもの、守ろうとしたもの、俺の大切なものを守るために戦っているんだ」

 

「そんな…理由で…」

 

「ああ…世界を救うなんてことに比べたらちっぽけかもしれない。だけど…俺にとっては大事なことなんだ…一番守りたかったものを守れなかった俺にとっては…」

 

 もし、あの時俺が奏ちゃんを守って、助けてあげることが出来たなら…

 あるのはそんな後悔だけだ。

 だからせめて、奏ちゃんが守ろうとしたものは守る。

 翼ちゃんを…響ちゃんを…みんなを…

 

「月が落ちてくるっていうなら俺はそれを阻止してみせる。だけど、こんな風に犠牲となる命があるというなら…俺はここにある命を守る」

 

「交渉、決裂ね…」

 

 マリアが槍を向ける。

 俺は双剣の形状を変更し、ナイフ程の大きさとなったアームドギアを逆手に構える。

 

「ハアッ!」

 

「ハッ!!!」

 

 二人同時に駆け出し、戦いが始まった。

 突きだされた槍をナイフで受け流し、もう一方の手に持つナイフで首、頸動脈を狙う。

 バックステップにより回避したマリアに向かってナイフを投擲する。

 回転しながら飛ぶ刃は槍で弾かれ、甲板に突き刺さる。

 

「得物がなくなったわねッ!!!」

 

 槍を上段から振り下ろそうとするマリア。

 その隙だらけの胴を蹴込みを食らわせる。

 

「かはっ…!」 

 

 その衝撃に空気を吐き出すマリア。

 吹き飛ばされ、甲板の上を転がる。

 予想以上の威力に自分でも驚いているが向こうもこちらに迫ってきていたことにより相乗効果で威力が上がった。

 カウンターのお手本のような蹴込みだった。

 

「武器に頼れば隙が生じる…」

 

「くっ…いつもは全身武器みたいな体のくせに…」

 

 そりゃまあサイボーグだから仕方ない。

 けど今日は5000年ぶりの人間の体だ。

 修行のおかげで苦労することなくこの体を扱える。

 とはいえ翼ちゃんの体だ。

 大切に扱わないと。

 

「よくもマリアをッ!!!」

 

 ッ!

 切歌か!?

 鎌が胴を真っ二つに切り裂かんと迫る。

 回避は最早無理。ならば…

 

「デスッ!?」

 

 鎌の刃を肘と膝で挟み受け止める。

 切歌はなんとか力ずくで押し通そうとするが万力に挟まれたかのような感触に苛立ちが隠せない。

 悪いが切歌には黙っていてもらおう。

 今はマリアが優先だ。

 先ほど投擲したナイフを呼び戻し、切歌に直撃させる。

 安心しろ、峰打ちだ。

 邪魔者を排除して、マリアと向き合う。

 さっきの一撃がまだ効いているようで槍を杖代わりにして立っている。

 

「ここで負けてなんかいたら…私は世界を救えない…私は…私は…」

 

 彼女に近づき、俺は語りかけた。

 

「あんたは本当は優しい人のはずだ。元の優しいマリア・カデンツァヴナ・イヴに戻ってくれ…」

 

「優しい…?」

 

「そうだ。あんたは本当はこんなことするような人では――ッ!!!」

 

 ガイガンギアを強制的に解除して、翼ちゃんを後ろへと突き放した。

 

「ピー助ッ!?」

 

 よかった…翼ちゃんの体は守れた…

 胴体に突き刺さった槍を見ながら、安堵する。

 

「ピー助、そんな…私を庇って…」

 

「優しさなんて必要ない…世界を救うには…愛するものも必要ない…」

 

 槍を引き抜かれて、よろめく。

 足に力が入らない。

 マリア…

 ダメだ…あんな状態では…

 覚束ない足で、マリアへと近づき傷つけないように抱きしめた。

 

「えっ…」

 

 マリア…元の優しいマリアに戻ってくれ…

 このままでは心が壊れてしまう。

 それが嫌だと思ったから俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリアを抱きしめたピー助は力なくその場へと倒れた。

 目に光は灯っておらず、呼吸もしていない。

 死。

 そんな単語が頭を過った。

 

「嫌よピー助…あなたまで私を置いていくの…ピー助…ピー助ぇ!」

 

 倒れたピー助に寄り添い、体を揺さぶる。

 すぐ目の前にマリアがいたが眼中になかった。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。

 ピー助がいなくなってしまったら私は…

 次の瞬間、後頭部に強い衝撃が走った。

 朦朧とする意識の中、私に銃を向ける雪音の姿を見た。

 

「さよならだ」

 

 そう言って、引鉄を引く雪音の姿が意識を失う前の私が最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海中から現れた遺跡…『フロンティア』

 ピー助と戦闘を終えた後、神獣鏡の光によって浮上したそれの中枢に私はいた。

 これがあれば世界を救える…

 世界を救うには優しさなんていらない。

 愛もいらない。

 だから、ピー助を殺した。

 ピー助は殺した。

 私は殺した。

 私が殺した。

 あの時、抱きしめられた時、声が聞こえた。

 優しい低音の…大人の男の声。

 あれがおそらくピー助本来の声…

 私の心が壊れてしまうのが嫌だと言っていた。

 そのために彼は殺されるはずの少年を救い、私が手をかけようとした兵士を庇い、私に人殺しをさせなかった。

 私は彼に守られていた。

 彼は私を守ってくれた。

 そんな相手を私は殺したのだ。

 

「これで全てを振りきれる…私は、世界を救う…」

 

 そう呟く、彼女の頬には涙がつたっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますとたまに見かける天井だった。

 いや、たまにでもないか…

 あれからそういえば、私は…雪音に撃たれて…ピー助が…

 

「ッ!ピー助がッ!!!」

 

「ピ?」

 

 ピー助が刺されたこと思い出して、咄嗟にベッドから起き上がる。

 ピー助は果たして無事だろうか…

 

「ピー」

 

 そうねピー助、ピー助のことが心配ね。

 ん?

 

「ピー助!?」

 

「ピ」

 

 ちっちゃいピー助が何食わぬ顔でベッドの隣の椅子に腰かけていた。

 

「ピー助あなた刺されて…」

 

「ピッピッ、ピ~」

 

 鉤爪を左右に振って、得意気に鉤爪を腰に当て胸を張った。

 傷は…ない。

 あの時、確かに槍で突き刺されて…

 ピー助の回復力なら治るものなのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぶねぇ…ガイガン忍法生き返りの術が間に合わなかったら翼ちゃんが大変なことになってた…

 忍術を学んだことでちゃんと使えるようになって助かった…

 もう最近の俺は一度死んで甦り過ぎなのではと思わないこともない今日この頃。 

 とにかく翼ちゃんが無事でよかった…

 俺が倒れている間になにがあったのか分からないけど…響ちゃんも胸のガングニールが無くなったらしいし、未来ちゃんも生きてたしと嬉しいこともあるけれど海底からルルイエみたいな遺跡が浮上するし、ガタノゾーアでも出てくるんじゃないかと不安でしかない。

 ここには東宝怪獣だけじゃなくウルトラ怪獣もいるのではと思わずにいられない。

 けど記憶の限りウルトラ怪獣はいなかったから大丈夫だろう。

 

「よかった…ピー助が無事で…」

 

 ぎゅっと翼ちゃんから抱きしめられる。

 俺が無事なのはいいけど翼ちゃんが…

 

「私は大丈夫。体はなんとも…」

 

 ?

 やっぱりどこか悪いの?

 

「…あの状況で無事でいられるはずがない」

 

 翼ちゃん?

 

「いえ、大丈夫よ。それよりも状況を確認しに行きましょう」

 

 翼ちゃんに持ち上げられ、医務室を出る。

 大丈夫か心配だけど翼ちゃんは無理してでもいくんだろうな…

 その時は翼ちゃんを守るために戦うだけだ。

 そう決意する俺だったが、状況は俺が思っていたよりも深刻だったのだ――




ガイガン忍法生き返りの術
 一度死んで甦ることが可能。
 復活には少々時間がかかるため、その間は無防備。
 翼さん共々倒れているところを緒川さんに救助されたため問題なく復活出来た。

オマケ

クリスちゃん レーダー感あり
響ちゃん   レーダー感あり
友里さん   レーダー感あり
マリア    レーダー感あり
切歌 微弱だがレーダー感あり
調      レーダー感なし
393    レーダー感なし
翼ちゃん   レーダー感なし


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フロンティア浮上

みなさん、お待たせしました。
ちょっと活動停止(PUBGmobile)してました。
久しぶりにやる(殺る)と気持ちいいですね…
撃ち合いしてるとアドレナリンドバドバです…
もし、そんなことやってる暇があるなら書け!という方いらっしゃったら是非ですね北米サーバーのシルバー帯でですね私のこと撃ち殺してくれれば「やってらんねぇ!」って執筆作業に入りますので…
赤いポニーテールで全体的に赤いファッションの女いたら私なので…みんな!戦場で会おう!


「未来ぅ!!!」

 

 響ちゃんがメディカルルームに入ると一目散に未来ちゃんに抱きついた。

 とっても百合百合…じゃない平常運転ですね。

 それにしても生きててよかった…

 さっき聞いた話だけどシンフォギアを纏って響ちゃんと戦ったとかなんとか…

 俺が蘇生中にそんなことがあったとは…親友同士戦うなんて悲劇はあっちゃならない。

 SEEDじゃないんだから。

 あと俺の中でウェルぶん殴りポイントがさらに上昇した。

 これが上昇するとウェルを殴るときのパワーが増すのだ。

 それよりも…

 

「ピー…(ごめんなさい)」

 

 謝らなければならない。

 俺がしっかりしていれば未来ちゃんがこんなことにはならなかったのだ。

 だから…ごめんなさい。

 

「頭を上げてピー助。結果的に私は助かったんだし」

 

 でも…

 

「そうだ、未来に見せたいものがあるんだった」

 

 そう響ちゃんが言うとモニターに映し出されたのはレントゲン。

 

「これ、わたしのなんだ」

 

「え…」

 

 響ちゃんのレントゲン…あの体を蝕んでいたガングニールの欠片がなくなったのだ。

 

「未来がわたしを助けてくれたんだよ」

 

 そういえばガングニールの欠片が消えたとは聞いたけど、なにがどうして消えたんだろう?

 

「未来さんの纏っていた神獣鏡の特性には魔を払う力があってそれを響さんが受けたことによって胸のガングニールの欠片も消えたんです。ピー助君分かった?」

 

 友里さんありがとうございます。

 大体分かった。(分かってない)

 まあなにはともあれ響ちゃんも助かったんだ。

 しかし、俺の気が収まらない。

 なにか罰というかペナルティというか…

 

「それにしても未来ぅピー助君のせいでこうなったんだからなにか罰ゲームが必要じゃありません?」

 

 ニヤニヤと悪代官的な笑みを浮かべて未来ちゃんに訊ねる響ちゃん。

 冗談のつもりなんだろうけど、タイミング良くて助かる。

 この馬鹿に罰を与えてくださいまし…

 

「うーん…そうだなぁ…じゃあ、ピー助」

 

 はい…

 

「みんなを守ってね。また戦いに行くんでしょう?だから、翼さんやみんなをちゃんと守る。それがピー助への罰ゲーム」

 

 …分かった。

 すごい、難しいことだけどやってみせる。

 絶対にみんなを守る。

 

「うん。約束だよ」

 

 約束。

 今度は絶対に守る。

 守ってみせる。 

 

 

 

 

 

 

 フロンティア起動のためドクターと共に管制室にあたる場所へやって来た。

 ここでどうやって私達がフロンティアを操るというのか…?

 

「それは?」

 

 おもむろに取り出した注射器。

 一体何をしようと…

 

「LiNKERですよ。聖遺物を取り込むネフィリムの細胞サンプルから生成したLiNKERです」

 

 ドクターはそれを左腕に打つと瞬く間に変化が起こった。

 左腕が、ネフィリムのように…

 その変化した左手で中央に備わる球状のオブジェクトに触れると刻まれた紋様に光が灯った。

 

「ふふふふ…早く動かしたいなぁ…ちょっとくらい動かしてもいいと思いません?ねぇ、マリア?」

 

 この男…

 力を楽しもうとしているというの?

 ふと、横目になにかが映し出された。

 あれは…まさか米国の艦艇?

 

「どうやらのっぴきならない状況のようですよ?ひとつに繋がることでフロンティアのエネルギー状況が伝わってくる…これだけあれば充分にいきり立つ…さあ、行けぇ!!!」

 

 ドクターがフロンティアに命じるとフロンティアから光が伸びて…

 

「どっこいしょぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 画面に映し出されるのはフロンティアが上昇し、その全貌が明らかになる瞬間。

 海面から離れ、宙へと浮かび上がる。

 艦艇から砲撃が放たれるがびくともしない。

 これがフロンティア…先史文明期の力…

 

「楽しすぎてメガネがずり落ちてしまいそうだ…!」

 

 ドクターが再び命じると艦艇が重力を忘れたかのように浮上し…圧縮され、爆発した。

 これが世界を救う力だというの…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリスちゃんが翼ちゃんを撃った。

 信じたくはない。だけど、それが事実。

 きっとなにかあるはずだと翼ちゃんが言っているし、俺もそうだと思いたい。

 クリスちゃんのこともあるが海底から浮上したルルイエ…じゃなくてフロンティアのこともある。

 最早ルルイエどころかラピ●タの如く天空に聳えるフロンティア。

 マリア達はあれで月の落下を阻止するとか言ってるが…それよりも英雄願望が暴走しているウェルがヤバい。

 あんなのウェルなんかに使わせたらそれこそ新しいオモチャを手にいれた子供のようにはしゃぐだろうし。

 ラピ●タの雷だとか言ってた某大佐並にはしゃぐ。絶対はしゃぐ。調子に乗る。

 そんなの絶対に許さん。

 

「翼さんもピー助君も気をつけて…」

 

「ああ。私とピー助、二人なら大丈夫だ」

 

 響ちゃんの言葉にそう返事する翼ちゃん。

 なかなか嬉しいこと言ってくれるじゃないか。

 さあ、いざ戦場へ!

 

 

 

『アメノハバキリ、ガイガン。オペレーション開始!』

 

「風鳴翼…」

 

 ピー助。

 

「参るッ!」

 

 いきまーすッ!

 

 ハッチが開いて、翼ちゃんがアクセル吹かして発進する。

 バイクでの発進…G3…しゅきぃ…

 翼ちゃんの背中に抱きついて風を感じるが…心地いい。

 こんな戦場でなければゆったりと風を感じられただろうに…

 

「ピー助、ノイズよ」

 

 了解。

 翼ちゃんの背中から腕を離してそのまま後ろへと風に流されるようにバイクから飛び降りて巨大化する。

 地面を抉りながら着地してまずは先制のレーザー光線。

 翼ちゃんの前に立ちはだかるノイズの群れを焼き払う。

 爆発により起きた黒い爆煙の中を翼ちゃんはブレーキをかけることもなく突き進む。

 まあ翼ちゃんがこの程度で止まるわけないんだけれども。

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 爆煙の中を抜けた翼ちゃんはギアを纏い、足についてるブレードを変形、合体させてバイクの正面に巨大な刃を形成する。

 そして、その刃で立ち塞がるノイズを切り裂いていくのだが…どう見てもバイクの動きじゃないですね、あれは…

 最近のライダーよりライダーしてるんじゃない?

 そんなことより翼ちゃんに置いてかれないようにしなきゃ。

 ノイズを回転ノコギリで斬りながら飛ぶ。

 この調子でどんどん進軍するぞぉ!

 そしてウェルをぶん殴って、マリアの目を覚まさせてやる!

 

 

 

 

 

 

 邪魔をするノイズ達もいなくなり一旦、翼ちゃんと作戦会議…していると翼ちゃんに通信が。

 

「はい…はい、分かりました」

 

 通信が終わったようだ。

 それで、どんな内容?

 

「立花が月読調と共に出撃したそうよ。ギアのない立花が戦場に出るのは危険だから二人に合流して…!?」

 

 俺と翼ちゃんを狙った赤い矢の群れ。

 これは…

 

「そろそろだと思っていたぞ、雪音」

 

 クリスちゃんがボウガンを向けて俺達を見下ろしている。

 クリスちゃん…

 

「ピー助は立花達と合流して。雪音の相手は私がする」

 

 けど!

 

「心配してくれているのね。大丈夫、絶対に雪音を連れて帰るから」

 

 …分かった。

 絶対にクリスちゃんを連れ帰ってね!

 地面を思い切り蹴って飛び立ち、響ちゃん達と合流すべく飛ぶ。

 翼ちゃんならきっと大丈夫だ。

 だから…!

 

 

 

 

 

 

 

 調ちゃんに乗せられて移動していたけれど、切歌ちゃんが現れて戦闘になってしまった。

 ここから先は一人でいかなければならない。

 道はデコボコだし、上り坂だし、遠いし…三重苦だけれど…

 

『胸の歌を信じなさい』

 

 さっき調ちゃんに言われたあの言葉。

 了子さんと同じ言葉。

 了子さんと同じ雰囲気。

 まさか調ちゃんが…  

 いや、今は関係ない。

 今はとにかくマリアさんと話をするために走る。

 もう息も上がっているし、横腹痛いし、リディアンの制服だしと走るのがとにかく辛い。

 でも…!

 

「胸の歌がある限…うぇぇぇぇ!?!?!な、なにぃ!?」

 

 気合いの叫びを上げながら走り出すとなんと宙に浮かんで飛んでしまった。

 師匠、遂にわたしは舞空術を身につけてしまったようで…

 

「ピー」

 

「あれ?ピー助君?」

 

 わたしの後ろにいつの間にかピー助君がいた。

 なにやら抗議しているような目と鳴き声だけど…

 あっ、ピー助君が鉤爪でわたしを脇から持ち上げてるのか…

 師匠、ピー助君ごめんなさい。

 全然、舞空術じゃなかった。

 けど、ちょうどいい。

 このまま運んでもらおう。

 

「ピー助君!このままマリアさんのところにッ!」

 

「ピーッ!」

 

 私の声に応じてピー助君は加速して…

 

「ちょっと待って!早い!早いからぁ!うわあぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 これ、マリアさんのところに着く前にわたし死んじゃわない?




オマケ 見逃しマリアさん

マリア「風鳴翼…やはり来るわね…こっちの状況はどうかしら…」←ピー助が映った瞬間見逃す。

マリア「そんな、調と切歌が戦うだなんて…」←ピー助の映ってる他の画面に気づかない。

マリア「風鳴翼と雪音クリスの戦闘が始まったわね…」←ピー助が飛び立ったあと見始めた

よって、マリアさんはまだピー助生存を知らないのだ(愉悦)


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それぞれの戦い

アナザー翼、アナザークリス。
すっかりジオウに毒された私にはもうアナザーライダーみたいな姿が脳内に…
目玉と歯茎が剥き出しでキモカッコいいデザインになってるんや…
それにしてもオレっ娘とは…このピー助の目をもってしても云々。


 フロンティアの各所で始まった戦闘の様子が映し出され、その様子を私は見ていた。

 ドクターはいない。

 私一人。

 それがちょうどよかった。

 映し出された映像のひとつに私は目が釘付けだった。

 その光景は、本来あってはならない。

 あんなの悲しすぎる。

 仲の良かった調と切歌が戦っている。

 

「どうして…どうしてこんな…」

 

 力なく膝から倒れる。糸の切れた操り人形のように。

 なぜ、あの二人が戦わなければならない。

 私のせいだ。

 私があの二人を戦わせてしまったんだ。

 私やドクターの世界を救う方法に調は懐疑的だった。

 

『そのやり方じゃ弱い人達を守れない』

 

 弱い人々を救うために始めたことなのに、弱い人々を救えない…?

 これが正しいと信じてきたはずなのに…

 今の私はどうしようもなく不安定だ。

 これが正しいと思っていたことも今はそう思えない。

 私は間違っていた。

 私には世界は救えない。

 むしろ世界の滅亡を早めただけ…

 どうしたらいいの…

 

『マリア。いまあなた一人ですか?』

 

 マム…

 

『フロンティアの情報を解析して月の落下を止められる手立てを見つけました』

 

 月の落下を止める手立て…

 まだ、月の落下が止められる。

 世界を救うことが出来る…!

 

『最後に残された希望…そのためには、貴女の歌が必要です』

 

「私の歌…」

 

 歌…

 私の歌で世界を救えるなら…!

 

 

 

 

 

 

 

 雪音が放つ弾丸を刀で防御する。

 近づけば私の有利と思ったが…なるほど、鉛弾(こんなもの)近距離も遠距離も関係ない。

 当たれば死。よくて重症。

 そんなものが次々と迫るというのだから全くもってやりづらい。

 だけど、分かる。

 雪音がどう動くか。

 そして、雪音も私がどう動くか分かるはずだ。

 銃弾を刀で弾き、蒼ノ一閃を放つ。

 まっすぐと雪音に向かった青い刃が爆ぜ、爆風が起こる。

 直撃…?

 いや、違う!

 跳躍し上へと回避した雪音が空中から銃弾の雨を降らす。

 刀で受け止め、着地した雪音へと問いかける。

 

「なぜ弓を引く、雪音ッ!?」

 

 無言。

 返答はそれだけ。

 この沈黙を、答えと受け取らねばならないのか…

 雪音はこの隙に距離を詰め、零距離での戦いを仕掛けてくる。

 刀と銃での打ち合いが再び始まる。

 銃弾を切り裂き、雪音へと振り下ろした刀は銃で防がれる。

 

「なにを求めて手を伸ばしている!?」

 

 拮抗した状態を破ろうと力を加えるが、雪音は押し負ける前に刀が銃で受け流し再び射撃をはじめる。

 迫る銃弾を回避して、再び刀を振り下ろす。

 しかしこの攻撃は両手に持つ銃を交差して防御される。 

 そのまま弾かれる。

 ここで、はじめて雪音が口を開いた。

 

「あたしの十字架を…他の誰かに負わすわけねぇだろッ!!!」

 

 雪音の十字架…?

 叫ぶ雪音の姿に、私はあることに気づいた。

 首に何か巻かれている。

 ギアではない。

 あれは一体…?

 気を取られている隙に雪音の放った銃弾がすぐそこまで迫っていた。

 咄嗟の防御に衝撃を受け止めることが出来ず、銃弾の威力に押され吹き飛ばされてしまう。

 地面を転がるが…私の中である考えがまとまっていた。

 雪音の十字架、妙な首輪…

 恐らく雪音は…

 

 

 

 

 

 

 ギアを纏って、調と向かい合う。

 訓練以外で戦ったことなんてない。

 それも、本気で。

 だけど戦わなくちゃならない。

 アタシがアタシでなくなる前に。

 

 元々、アタシ達はレセプターチルドレン…フィーネの魂の器として集められた存在。

 だから最初、マリアがフィーネとなった…はずだった。

 なのに、あの日…調との買い物帰りに調が体調が悪そうだからと休憩した人のいない工事現場。

 調がよろけてぶつかってしまった鉄パイプの束が崩れて、調を守ろうとして…思わず、手を伸ばしていた。

 そうしたらどういうわけか、桃色の障壁が鉄パイプを遮った。

 この力は…フィーネの力?

 そう思った。

 だけど、マリアがフィーネのはず…そう思い込むことで不安から逃れようとした。

 しかし、マリアがフィーネだというのは嘘だと分かった。

 ドクターを計画に参加させるための嘘だと。

 マリアがフィーネではないとしたら…やっぱりアタシなんだ。

 アタシがフィーネなんだ。

 フィーネになったら…アタシが消えちゃう。

 アタシがアタシでなくなってしまう。

 そんなの嫌だ。

 それならせめて、世界が滅びるのを救ってアタシがいたという証を残したい。

 みんなといた記憶を残したい。

 なのに…

 

「切ちゃんが切ちゃんでいられるうちにってどういう意味?」

 

 大好きな調が立ちはだかった。

 だけど、戦わなくてはいけない。

 アタシがアタシでなくなる前に…

 

「アタシの中のフィーネの魂が覚醒しそうなんデス」

 

 施設に集められたレセプターチルドレンならありうること。

 それは調も分かっている。

 

「それならなおのこと、私は切ちゃんを止めてみせる」

 

 調の口から出たのはそんな言葉だった。

 調はこのまま…世界を救えなくてもいいというの…?

 

「これ以上、塗り潰されないよう…大好きな切ちゃんを守るために」

 

「大好きとか言うな!アタシの方が調のことが大好きデスッ!だから、大好きな人達のいる世界を守るんデスッ!!!」

 

 この言い合いが合図となり、戦いが始まる。

 

「「大好きだって…言ってるでしょうッ!!!!!」

 

 

 

 

 

「世話の焼ける弟子のおかげでこれだ」

 

 ジープの助手席に乗り込み、そう呟く。

 響君が勝手に月読調と出撃なんてしなければ、こんなこと…

 

「きっかけを作ってくれたと素直に喜ぶべきでは?」

 

 運転席に座る緒川に真意を当てられてしまう。

 かつてはああいう無茶は俺の役割だったんだが…弟子というのは師匠に似るのか、はたまた元から彼女はああなのか、それともその両方か。

 どちらにせよ、こうやって矢面に立つのは俺の性分にあっている。

 ノイズの相手は出来ないが…人間の相手は出来る。

 ひとまず最優先はドクターウェルの身柄。

 奴の身柄を確保して法の下で裁く。

 

『司令!出撃の前にこれをご覧ください!』

 

 緒川の持つ端末に映し出されたのはマリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 どうやら世界に向けて発信されているらしい。

 一体なにを語るというのか。

 ひとつはっきりしていることは、彼女は覚悟を決めたらしいということだ。

 

 

 

『私の歌で…!?』

 

『月は地球人類より相互理解を剥奪するためカストディアンが設置した監視装置…ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動出来れば公転軌道上に修正可能…』

 

 その言葉と共にマムは吐血した。

 こちらからは向こうの様子は分からない。

 だけど、分かることはひとつ…

 マムの体は限界に近いということ。

 これ以上無理をさせることは…

 

『貴女の歌で世界を救いなさい!』

 

 マム…

 

 そして、私はフロンティアの機能を用いて世界に発信した。

 私の言葉が届くとは思えない。

 世界に向けて宣戦布告した馬鹿な女の言葉なんて、誰も信用しないだろう。

 だけど…

 

「歌が力になるというこの事実だけは信じてほしい!」

 

『Granzizel bilfen gungnir zizzl』

 

「私一人の力では落下する月を受け止めきれない。だから貸してほしい…皆の歌を届けてほしい!」

 

 セレナの助けてくれたこの命で誰かを助けることが出来るなら…

 歌う。

 歌ってみせる。

 世界を救う歌を歌ってみせる!




オマケ?
みんな、悪いな。
絶唱顔のマリアさんが見れるのは次回以降なんや…
次回が楽しみと言ってくれた方にはもう少しおあずけとさせていただきます(愉悦)
あと最近ティガとシンフォギアをクロスさせたらという考えが頭をよぎり…
超古代と先史文明期を無理矢理統合したらアヌンナキはいるし巨人はいるし怪獣はいるしキリエル人はいるし邪神はいるし…そりゃあアヌンナキも地球を去りますよ(真顔)
あとオリジナルウルトラマンちょろっと書き始めたり…
ノアの息子(語弊あり)っていう設定なんですがどうですかね?


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再臨

ティガ×シンフォギアがわりと評判よい(感想にて)ので短編で何本かあげてみようかなと。
まあ、今は今作を最優先で書いてるので息抜きというかガス抜きくらいな感じで…
あと調、切歌ファンの方々には申し訳ないのですがばっさり二人の場面はカットで…未見の方がいるならぜひ原作見てください。
自身の文章力の無さ故にピー助主体のとこしか書けないんや…
俺の…俺のミスだぁぁぁぁぁ!!!!!


 歌が、聞こえる。

 マリアの歌が。

 フロンティア内部に通じる入り口の前で響ちゃんと二人。

 この先にマリアがいる…

 

「ピー助君…」

 

 響ちゃん行こう!

 早速足を踏み入れた瞬間…

 

「ピッ!?」

 

「うわぁぁぁ!!!!」

 

 レーザーがありとあらゆる方向から俺と響ちゃん目掛けて放たれた。

 あぶねぇ…危うく蜂の巣になるとこだった…

 

「どうしよう…これじゃあ入れないよ」

 

 響ちゃん安心しな。

 こういう時にいい方法があるんだ。

 

「ピー助君がなにやら自信に満ち溢れている…なにかいい方法があるんだねピー助君!?」

 

 あぁ、とっておきの方法があるんだ。

 まず巨大化して…

 それじゃあ響ちゃん、背中に乗って。

 あ、頭とか出さないでね。

 

「え、こう?」

 

 そうそう羽の隙間に丁度よく収まる感じ。

 よし、それじゃあ行くよ。

 力強く再び第一歩を踏み出して…

 

「ちょちょちょーっと待って!?まさかこのまま行く気じゃあ!?」

 

 え?

 もちろんこのまま行くよ。

 怪獣らしく弾幕を気にも止めず歩を進める。

 この作戦、名付けて…

 

『 強 行 突 破 』

 

      強

   破     突

      行

 

 …なにかおかしなカットインが入った気がするけど、やるならもっとカッコいい時にしてくれ。

 これ全然必殺技じゃないから、怪獣なら当たり前の技だから!

 え?怪獣にも弾幕効くやつはいる?

 例外というのは常に存在するものだから…

 とにかくこのまま突っ切ってやる。

 レーザーと熱線を撃って警備システムを破壊しながらどんどん突き進む。

 このまま真っ直ぐに、一直線にィ!!!!!

 

「それわたしのセリフッ!!!」

 

 さ、さーせん…

 

 

 

 

 

 

 これまでで最も力を込めて歌った。

 世界を救うと誓って歌った。

 なのに…

 

『月遺跡は依然、沈黙…』

 

 フロンティアは、月遺跡は私の歌声に応えてはくれなかった。

 

「私の歌は、誰の命も救えないの…セレナ…」

 

 歌で世界を救うと決めたのに…

 私では世界は救えない。

 私には世界を救うことなど出来ない。

 私にはそんな資格なんてないんだ。

 世界を救うためになんて大義名分を掲げて、間接的にとはいえ多くの命を奪ってしまった私には…

 私を守ってくれたあの子を殺した私には…

 

『マリア、もう一度月遺跡の再起動を…』

 

「無理よ…私なんかには無理なのよッ!!!私の歌で世界を救うなんて…」

 

 

 

 

 

 

 

「くそッ!ソロモンの杖を手放してしまった…」

 

 フロンティア地下。

 ドクターウェルは忌々しげに言葉を吐いた。

 全てうまくいくと思った。

 二課の装者「雪音クリス」が二課を裏切り、二課の装者を倒すからソロモンの杖をよこせと取引を持ちかけてきた。

 これは利用できると考えその取引に応じた。

 裏切り者を簡単には信用出来ないと首に爆弾をしかけさせ戦わせて共倒れを狙った。

 元よりこんな取引、素直に応じるわけがなかった。

 だというのに雪音クリスは風鳴翼を倒したと言ってソロモンの杖を要求してきた。

 想定外だった。

 生身の人間がシンフォギアに敵うわけがないのでノイズを召喚しアンチリンカーを使用することで足止めしようとしたら風鳴翼が低出力のギアを纏って戦うなどという想定外。

 気がつけばソロモンの杖はこの手から離れてとにかく命を最優先にと逃げ延びた。

 

「こうなったらマリアをぶつけて…!」

 

 怒りが増長する。

 どいつもこいつもボクの邪魔をする。

 ボクの英雄への道は誰にも邪魔など出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

『マリア…月の落下を食い止める最後の手段なんですよ』

 

 マムとの会話中、ドクターが戻ってきた。

 希望を失い、気力もなくなった私はただのその姿をぼうっと見ることしか出来なくて…

 

「くっ…あぁっ!!!」

 

 ドクターの人の身から離れた異形の左腕で頬を殴られ床に倒れる。

 

「月が落ちなきゃ好き勝手出来ないだろうがッ!!!」

 

『マリアッ!?』

 

「あぁ!やっぱりオバハンか」

 

『お聞きなさいドクターウェル。フロンティアの機能を使って、収束したフォニックゲインを月へと照射しバラルの呪詛を司る遺跡を再起動出来れば月を元の軌道に戻せるのです!』

 

 マムはドクターを説得しようとする。

 だが…

 

「そんなに遺跡を動かしたいのならッ!あんたが月に行ってくればいいだろッ!!!」

 

 その言葉と共に、マムがいるエリアが飛び立った。

 

「マムッ!?」

 

 そんな…マムが…マムが…

 

「よくもマムをッ!?」

 

「手にかけるのか?このボクを殺すことは全人類を殺すことだぞッ!」

 

「殺すッ!!!」

 

「ひぃぃえぇぇえぇぇ!!!!!」

 

 槍を構え、ドクターへと向かって駆け出し上段から槍を振り下ろして…

 

「えっ…」

 

 あの時の光景が甦った。

 関係のない、無辜の人々を撃ち殺した兵士達を手にかけようとしてピー助が私の槍を阻んだ。

 その光景が甦った。

 だっていま、私の目の前にピー助がいて…

 槍はピー助の鎌に阻まれた。

 赤いバイザーに赤い翼。

 紺色の身体に両腕の鎌…

 

「嘘だ。だって、ピー助は私が殺して…」

 

「ピー助君はマリアさんに殺されてなんかいません。ほら、こんなにくっきり!」

 

 融合症例第1号…

 嘘だ。

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 だってあんなに深く槍を突き刺したんだ。

 確かに殺した。

 この手で殺した。

 殺したはずなのに…

 

「ピー助…どうして…」

 

「ピー!」

 

 この声は確かにピー助の声だ…

 本当に、本当に生きて…

 

「付き合いきれるかッ!!!」

 

 ウェルがこの場から逃げ出す。

 この男だけはッ!!!

 槍を今度こそウェルに突き刺そうと向けると今度は融合症例第1号が槍の穂先を掴み阻んだ。

 

「その手を離せ!融合症例第1号ッ!」

 

「違うッ!わたしは立花響16歳!融合症例なんかじゃない!ただの立花響がマリアさんとお話したくてここに来てる!」

 

「お前と話す必要はない!マムはこの男に殺されたのだ!ならば私もこいつを殺す!世界を守れないのなら、私も生きる意味はないッ!」

 

「意味なんて…あとから探せばいいじゃないですか。だから…生きるのを諦めないでッ!!!」

 

 

 

『Balwisyall Nescell gungnir tron』

 

 

 

 

 聖詠。

 シンフォギアを纏うための歌。

 それを、いま自分のシンフォギアを持たぬ彼女が歌った。

 なんの意味もない。

 そのはずだった。

 彼女が聖詠を発した瞬間、槍は消え、私が身に纏うギアも消えた。

 黄金の粒子がこの場を…いや、フロンティアを包む。

 

「なにが起きているの…こんなことってありえない。融合者は適合者ではないはず…これは、あなたの歌?胸の歌がしてみせたこと?あなたの歌ってなに!?なんなの!?」

 

 やがて、光は立花響に収束し…

 

「撃槍…ガングニールだぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ガングニールのシンフォギアを纏った立花響が叫ぶ。

 

「ガングニールの適合だと…」

 

 融合者から適合者へ。

 こんなことが…

 思わず力が抜け、よろめいてしまったがピー助が支えてくれた。

 顔が彼の胸に当たる。

 暖かい…

 あぁ…やっぱりピー助は生きている。

 生きているんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリア、いやマリアさん…

 ゆっくり休んでくれ。

 あとは俺達でなんとかするから…

 

「うわぁぁぁぁ!!!こんなところでッ!うわッ!?」

 

 ッ!?

 ウェルめ逃がすか…!

 マリアさんをそっと寝かせて跳躍しウェルが転がり落ちた地面へと鎌を振り下ろすが…

 床に空いた穴へとウェルは消えた。

 マジでラピ●タみたいな機能ついてやがる…

 

「ウェル博士ッ!!!」

 

 この声…司令!あと緒川さんも!

 ウェルの確保に来てくれたんだ。

 だけどいまウェルが逃げて…

 

「今のウェルは左腕をフロンティアに繋げることで意のままに制御できる…フロンティアの動力はネフィリムの心臓。それを止めればウェルの暴挙も止められる。お願い…戦う資格のない私に変わって…お願い」

 

 マリアさん…

 マリアさんに歩み寄り、しゃがんで目線を合わせる。

 大丈夫。

 ウェルは俺達が止める。

 月の落下も阻止して世界を救う。

 救ってみせる。

 

「ピー助…」

 

 突然、轟音が響いた。

 なにかが崩れるような…って、司令。

 あなたなにしれっと床に大穴開けてるんですか。

 今さらだから驚かないけど。

 

「ウェル博士の追跡は俺達に任せろ。響君とピー助は…」

 

「ネフィリムの心臓を止めますッ!」

 

 絶対に止めてみせます!

 あいつに力を与えてしまったという責任も俺にはあるし…

 

「待ってて。ちょ~っと行ってくるから!ピー助君」

 

 了解。

 響ちゃんを抱えて飛び立つ。

 

「翼さん達に合流するよ!」

 

 あぁ!

 一気に加速して翼ちゃんの気配がするところまで…

 

「ちょっと待ってちょっと待って!!!速い!速いからぁ!!!」

 

 シンフォギア着てるから大丈夫でしょ?

 

「生身よりは大丈夫かもしれないけどぉぉぉぉ!!!」

 

 大丈夫大丈夫。

 翼ちゃん達すぐそこだから…っと。

 着地して響ちゃんを降ろす。

 

「あぁー死ぬかと思った~」

 

 響ちゃんなら多分殺しても死なないから大丈夫だよ。

 さて、これで久しぶりの二課全員集合か…

 

「翼さん!クリスちゃん!もう遅れは取りません!だから…」

 

「ああ、一緒に…みんなで戦うぞ!」

 

 うん。戦おう。

 ところでそっぽを向いてるクリスちゃんが持っているのは…

 

「やったねクリスちゃん!きっと取り戻して帰ってくるって信じてた!」

 

「お、おう!たりめえだ」

 

 うんうん。

 この感じこの感じ。

 やっぱりこの三人はこうじゃないと。

 

「…分かりました」

 

 翼ちゃんが耳に手を当てている。

 通信が入っているということだけど…

 

「高質量のエネルギー反応地点を特定したそうよ。そこがフロンティアの炉心…」

 

 なるほどそこに行けばいいんだな。

 

「行くぞ!この場に槍と弓、鎌と剣を携えているのは私達だけだ!」

 

 翼ちゃんの言葉を合図に飛び立つ。

 基本的に本部からの通信やら支援やらない俺なので装者についていくしかない。

 だけど、この先に…ッ!!!

 

 地面が波打つ。

 やがてそれは巨大な塊となり、徐々に形を造り出していく。

 これは…

 ただの土の塊に色がつく。

 黒とグレーの異形。

 ネフィリム…

 そして、その腕は…俺を模したもの。

 いや、俺よりも巨大な鎌だ。

 ネフィリム・デスサイスと命名しよう!

 なんて冗談言ってる場合ではなく。

 

「───────!!!!!」

 

 思わず耳を塞ぐほどの轟音。

 ネフィリムの咆哮が響く。

 それと共に肩からミサイルのようなものが発射されて…

 おいおい…俺より芸達者かよ…

 全員回避するが今度は口から火球を吐き出す。

 

「ッ…はあッ!!!」

 

 攻撃の隙を突き、一気に距離を詰めて翼ちゃんは刀をネフィリムの腕に斬りかかるが…その腕が斬り落とされることはなかった。

 俺の刃も、響ちゃんの拳も、クリスちゃんの一斉射もまるで効かない。

 火の海となった大地で巨獣が吼えた。

 

 

 

 この時、ピー助は気づいていなかった。

 自身の翼に光の粒子が吸収されていることに。

 

 

 

 一人取り残された私はなにもかもを見失っていた。

 なにをしたいのか。

 なにが出来るのか。

 

「私ではなにも出来やしない…セレナの歌を、セレナの死を無駄なものにしてしまう…」

 

 結局、私にはなにも出来なかった。

 結局、ピー助達に任せてしまった。

 

『マリア姉さん』

 

 声がした。

 もう、聞くことなど出来ないはずのセレナの声を。

 

「セレナ…?」

 

『マリア姉さんのやりたいことはなに?』

 

 私のやりたいこと…私のやりたいことは…

 

「歌で、世界を救いたい。月の落下がもたらす災厄からみんなを助けたい」

 

 心からの言葉。

 これが私の本心だった。

 

『生まれたままの感情を隠さないで』

 

 私の手を取ったセレナがそう言った。

 そして、セレナは歌った。

 私達の思い出の曲を…

 自然と私も歌いはじめていた。

 二度と出来ないと思っていた、セレナと歌うなんてこと…

 

 

 

 この歌はフロンティアから世界へと発信されていた。

 そして、この歌は人々を繋いだ─

 

 

 

『マリア…マリアッ!』

 

 この声は…マム!?

 生きていてくれた…

 

『あなたの歌に世界が共鳴しています。これだけフォニックゲインが高まれば月の遺跡を稼働させるには充分です!月は私が責任を持って止めます!』

 

「マムッ!?」

 

 やめて、そんなこと言わないで。

 それじゃあこれから死んでしまうみたいじゃない…

 

『もうなにも貴女を縛るものはありません…行きなさいマリア。行って私に貴女の歌を聴かせなさい』

 

 マム…

 分かったわ…マム。

 涙は振り切る。

 ここで止まってなんかいられない。

 だから…狼狽えるな。

 生まれたままの感情を隠すな。

 ただ、思ったままに…

 

「世界最高のステージの幕を開けましょうッ!!!」

 

 

 

 

 ネフィリムとの戦闘は続く。

 あぁ、くそ!

 この巨体を相手にするなら元のサイズに戻って…

 気が散った隙に、ネフィリムの腕が迫っていた。

 ヤバい…これを避けるのは…

 次の瞬間、鎖が腕を拘束し緑色の巨大な刃が腕を切断した。

 そして、ピンク色の丸ノコギリが胴を切り裂いて…

 

「シュルシャガナと」

 

「イガリマ、到着デェス!」

 

 チビッ子共…

 どうやら、色々吹っ切れたようだ。

 顔を見れば分かる。

 お互いスッキリとした顔をしている。

 

「それにしても…これの相手は骨が折れそうデス」

 

 俺も本調子が出れば…

 

「だけど、歌がある!」

 

 マリアさん!

 マリアさんの立つ浮遊する岩に向かう。

 

「もう迷わない。だって、マムが命懸けで月の落下を阻止してくれている」

 

 マリアさん…

 一緒に戦いましょう!

 なんてネフィリムそっちのけでやっていたらネフィリムが火球を放ってもうすぐ目の前…

 

 

 

 

 

 

『Seilien coffin airget-lamh tron』

 

 

 

 

 

 

 聖詠。

 シンフォギアを纏うための歌。

 これは…ギア装着時のエネルギーをバリアにして…

 続けて二発目の火球が発射されようとしている。

 さすがにそう何度も受けきるなんて…ッ!!!

 な、なんだ…この感じ…

 力が漲って…

 

「ピー助…あなた光って…」

 

 つ、翼ちゃん…

 どうにも…このサイズではいられないみたい…

 

「ピー助ッ!!!!!」

 

 咆哮を轟かせる。

 力が体全体を巡る。

 この感じは──

 かつて、先史文明期と呼ばれる時代。

 怪獣達が生命の頂点に立っていたあの頃の力…

 

 

 

 

 

 

 

 

 迫る火球が掻き消された。

 私達の目の前には巨大な影。

 見慣れた三枚の黄金の翼。

 巨大化したピー助がフロンティアの大地に降り立った。

 静まり返る世界。

 緊張がこの場を支配していた。 

 ネフィリムとはわけが違う。

 これは──別格の存在なのだと体が訴えていた。

 恐ろしくはない。

 だってピー助なのだから。

 だけど、いつものピー助にはない神々しさとでも言うのだろうか。

 まるで、神が舞い降りたかのような…畏敬。

 この胸にあるのは畏敬。

 畏れているのだ。

 それと同時に私はある思いを抱いた。

 嫌だ。

 嫌だ。

 ピー助が遠くに行ってしまう。

 ピー助が離れてしまう。

 そんな思いが私の胸を支配していた。




夢で翼さんオルタ(仮名)というのが舞い降りまして…
ピー助を守ってきた人間達によって殺されてしまい、人類に復讐しようとする翼さん…想像してたらどんどん牙狼シリーズのジンガみたいな感じに…
並行世界案件ですね。
並行世界編も書けたらなーという感じでやってます。
本編とは別世界という扱いになると思いますが…
現在浮かんでる並行世界案が奏、翼を失い一人で戦う孤独なピー助主役の「双翼の墓守」編と上記の翼さんオルタ(仮名)登場の「堕ちた片翼」編の二つ…
あとアナザー翼さんとピー助絡ませたいですね…
あー!書きたいものがいっぱい!
こんなときは覚えたての分身の術!えいっ!


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別離の翼

G編最終回。
こんなに話数かけるつもりなかったんだけどな…
反動でGX編がとんでもなく短くなりそう。


 巨大化したピー助とネフィリムはにらみ合い、威嚇しあう。

 まさに獣同士の争い…

 最初の攻撃はネフィリムの方だった。

 ミサイルを発射してピー助を近づけさせまいとするネフィリムだが…ピー助はそれを防御することも回避することもなかった。

 涼しい顔で全てのミサイルを自身の体で受けきる。

 どうした?その程度か?とでも言っているように鳴き、歩を進めはじめる。

 やめろ、近づくなとネフィリムはミサイルと火球を放つ。

 それでも止まらない。

 ピー助はネフィリムへと近づき、その鉤爪をネフィリムへと振り下ろした。

 頭に強い衝撃を受けたネフィリムは後ろの建造物を巻き込みながら倒れる。

 力の差は圧倒的。

 ネフィリムではピー助に敵わない。

 

「翼さん!」

 

 ピー助とネフィリムの戦闘に釘付けとなっていた。

 立花の声で我に帰る。

 そうだ、ピー助ばかりにやらせるわけにはいかない。

 

「行くぞッ!!!」

 

 六人の歌声が響く。

 そして、飛び立つ──

 

 

 

 エクスドライブ。

 

 

 

 

 今の私には奏もピー助もついている。

 世界を救うなど──容易いッ!

 

 

 

 

 

 

 おいおいどうしたネフィリム?

 俺の力が入ってる割には弱いんじゃないか?

 その腕の鎌は飾りか?

 よろめきながら立つネフィリムはもうダウン寸前。

 とどめだ──

 熱線を撃つ。

 それと同時に…

 

「響きあうみんなの歌声がくれた…シンフォギアでぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 俺の熱線と虹色の光がネフィリムを貫いた。

 そして巻き起こる虹色の竜巻は天高く空を貫いた。

 六人の天を翔る戦姫…と怪獣一匹。

 今ので力が切れたのか2mサイズに戻ってしまった。

 それはともかくとして…みんなの力でネフィリムを倒したんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 フロンティア炉心。

 ここでドクターウェルがネフィリムを操っていた。

 しかし、そのネフィリムも倒され最早為す術はない…

 

「ウェル博士!お前の手に世界は大きすぎたようだな」

 

 二課司令、風鳴弦十郎と緒川慎次がドクターウェルを追い詰める。 

 すかさずドクターウェルは最後の足掻きとネフィリムを操っていた端末を操作しようとして─

 

「う、動かないッ!?」

 

『影縫い』

 

 忍の技がそれを防いだ。

 ドクターウェルが伸ばした左腕の影に銃弾が突き刺さりその動きを封じた。

 

「あなたの好きにはさせません!」

 

 しかし、ドクターウェルの執念は凄まじかった。

 血の涙を流し、左腕も裂けながら…その左腕を端末へと振り下ろした。

 

「奇跡が一生懸命の報酬なら…ボクにこそぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 ドクターウェルの叫びと同時に炉心の輝きが増し、ネフィリムの心臓を中心にやがて禍々しい赤に染まった。

 

「何をした!?」

 

「ただ一言…ネフィリムの心臓を切り離せと命じただけぇ!こちらの制御を離れたネフィリムの心臓はフロンティアの全体をくらい糧として暴走を開始する…そこから放たれるエネルギーは…一兆度だぁ!!!!!ボクが英雄になれない世界なんて蒸発してしまえば…」

 

 その言葉を遮るように弦十郎は石で出来ているはずの端末をその拳で砕いた。

 

「壊してどうにかなる状況ではなさそうですね…」

 

「ああ…装者達にこのことを伝えてくれ。ウェル博士…お前を確保する」

 

「確保だなんて悠長なことを…ボクを殺せば簡単なこと…」

 

「殺しはしない。お前を世界を滅ぼした悪魔でも理想に殉じた英雄にもさせはしない。どこにでもいる、ただの人間として裁いてやる!」

 

「ちくしょぉぉう!!!!殺せぇ!ボクを殺せぇ!英雄にしてくれぇ!!!英雄にしてくれよぉぉぉ!!!」

 

 こうしてドクターウェルは確保された。

 しかし、これで終わったわけではない。

 暴走を始めたネフィリムの心臓を止めなければならない。

 これを止めなければ世界は終わってしまうのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚空にて、それを見続けていた。

 ネフィリムを倒した後、フロンティアの大地にとてもじゃないが立っていられないほどの熱を感じたので慌てて飛び立ったのだが…一体…?

 やがて、それは現れた。

 フロンティア全体が赤く染まり、その中央にある物体…ネフィリムの心臓を中心に形が形成されていく。

 まるで、地獄の業火が怪物として姿を得たかのような…

 

「再生する…ネフィリムの心臓…」

 

 マリアさんがそう呟いた。

 あれが…ネフィリム。

 さっきの姿が可愛らしく見えるほどの凶悪さ。

 これは…さっきのようにはいかないだろうな…

 まずネフィリムに調ちゃんと切歌ちゃんが立ち向かった。

 調ちゃんは自分の装甲をパージして合体させ、巨大なロボットを完成させて乗り込んだ。

 

『終Ω式ディストピア』

 

 かっけぇ…

 男のロマンがくすぐられますね…

 多分、調ちゃんとは気が合うと思う。

 切歌ちゃんは熊手のようになった鎌を回転させネフィリムへと斬りかかる。

 

『終虐・Ne破aア乱怒』

 

 …えぇと?

 うん、しゅうぎゃくは分かる。

 その後ろはえ?ねはああらんど?

 さっぱり分からん…

 それより、あの二人のコンビなら…

 斬りかかったのは二人。

 ネフィリムはなにもしていなかった。

 だというのに…何故二人がダメージを受けている!?

 

「聖遺物ごと…そのエネルギーを喰らっているのか…」

 

 あれは喰らうっていうより吸収って感じだな…

 だとしたら俺はもっとヤバい。

 完全聖遺物である俺は全部喰われてしまう、ネフィリムにとって最高のご馳走というわけだ。

 

「だったら…バビロニアフルオープンだぁぁぁ!!!!」

 

 クリスちゃんがソロモンの杖を使ってバビロニアの宝物庫を開く。

 エクスドライブによってソロモンの杖の力が向上しているのかかなり大きな入り口が出来ようとしている。

 王の財宝…は無さそうですね。

 あの中にネフィリムを格納出来れば…!

 

「人を殺すだけじゃないって…やってみせろよ、ソロモンッ!!!!!」

 

 ゲートは開きかけている。

 しかし、ネフィリムがそれを邪魔をする。

 クリスちゃんがネフィリムの巨大な手で弾かれ、ソロモンの杖を手離してしまう。

 しかし、すぐにマリアさんがソロモンの杖をキャッチしてゲートを解放させる。

 

「明日をぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 その叫びに応えるようにバビロニアはネフィリムが入れるほど巨大なゲートを開けた。

 このままネフィリムを押し込めば…

 ネフィリムはバビロニアの宝物庫へと吸い込まれていく。

 だが、諦めの悪いネフィリムはマリアさんを掌から伸ばした触手で拘束して道連れにしようとする。

 させるかよッ!!!

 

「格納後、私が内部よりゲートを閉じるッ!ネフィリムは私がッ!!!」

 

 チィッ!マリアさんめ自分が死ぬことで罪を償おうとか考えてないか…?

 そんなの許されない。

 それに、ネフィリムなんかがあんな美人と道連れなんてのも気に食わない。

 一人で逝きやがれッ!

 すぐにマリアさんの元へと飛ぶ。

 

「ピー助…みんな…」

 

「マリアさんの命は私達が守ってみせますね」

 

 ああ…

 誰も欠けさせはしないさ。

 生きてここから出てやるよ。

 うーわ、宝物庫の中ノイズだらけ…

 何が宝物庫だよノイズ庫の間違いじゃねえの?

 とりあえず倒す。

 俺達の邪魔をする奴等は片っ端からぶっ潰す!

 鉤爪の一振りで一度に大量のノイズを炭素へと還す。

 熱線を放てば次々と爆発の火球が直線上で生まれる。

 無双ゲーしてるみたいで楽しい。

 みんなもそれぞれノイズ相手に無双してるみたいだし、これなら…!

 マリアさんの救助も終わり、宝物庫から外へと出るゲートが開いた。

 ネフィリムの臨界も近い…一刻も早く脱出だ!

 皆であのゲートへと向かい真っ直ぐ飛ぶがネフィリムがこのままお前達も道連れだと言わんばかりに立ち塞がる。

 迂回してる暇はない。

 

「みんな!手を繋ごう!」

 

 響ちゃんの掛け声で装者達六人が手を繋ぐ。

 …俺は手がこんなんだから手を繋げないんだよ!!!

 あやとりが出来ないドラえもんの気持ちがよく分かった。

 

「「最速で最短で!真っ直ぐに!」」

 

 その言葉を合図に響ちゃんとマリアさんの装甲がパージして巨大な拳となる。

 二つの拳が合わさりそれは回転しながらネフィリムへと翔る!

 

「一直線にぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

『Vitalization』

 

 拳はネフィリムを貫き、そのまま外の世界へと六人を連れ出した。

 俺もこうしちゃいられないな…

 ネフィリムの腹に空いた風穴を通って俺も脱出する。

 みんな、さっきの一撃でボロボロだ…

 早くゲートを閉じないと…

 

「ピー助ッ!?」

 

 翼ちゃんが俺の名を叫んで…

 ッ!?

 ネフィリムがこっちに手を伸ばして…往生際の悪い奴!!!

 臨界が近い、こうなったらネフィリムを押し返してやる!

 ネフィリムの巨大な手に思いきりタックルして、力の限り押す。

 確か…一兆度とか言ってたな。

 どこのゼットンだよ…

 一兆度とか確か宇宙まで蒸発するとか聞いたような聞かないような…

 とにかくそんなんがこっちに出てくるのはまずい。

 絶対に押し返して…!

 体中の筋肉が裂け、体の中の機械が悲鳴を上げる。

 お前の体はもうダメだ。

 これ以上頑張ったとしてもお前には世界を救えない。

 このまま全て蒸発するだけ…

 俺の中でそんな声がした。

 自分自身の声。

 諦めてしまえ。

 そうすれば、この痛みからは解放される。

 どうせ、世界も終わるのだから諦めていい。

 お前だけが死ぬわけではない。

 みんな死ぬ。

 …みんな死ぬ?

 俺だけが死ぬわけではない? 

 ふざけんな。

 みんなが死ぬなんて認められない。

 ここで諦めて死んだら奏ちゃんに殺される。

 なら、どうする?

 自身を犠牲に世界を救うか?

 いや、そんなことしたら翼ちゃんに殺される。

 ならば──

 逃げ道なんてないんだよ俺には。

 みんな死のうが、俺だけ死のうが…俺には逃げ道なんてない。

 だって、あの世にもこの世にもおっかない飼い主がいるんだから。

 だから…俺はみんなが幸せになれる最高最善のハッピーエンドってやつを掴んでみせる。

 どこから湧いて出てきたのか分からない力でネフィリムを押し返す。

 臨界がもうすぐなんだろう、かなり熱い。

 それなりに耐性はあるはずなんだけど熱いって感じるなら相当な温度だな…

 皮膚も溶けはじめている。

 体のあちこちから火花が散り、体が崩壊していく。

 

「ピー助ぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 翼ちゃんの声が聞こえた気がした。

 目の前も暗い。

 真っ暗だ。

 だとしても!!!!!

 最後の雄叫びを上げて、ネフィリムを思い切り突き飛ばした。

 それと同時に、俺の体は重力に従い落下して…

 これで、どうなっただろうか。

 世界は救え、たの、だろう、か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピー助がその身を犠牲にしながらネフィリムをバビロニアの宝物庫の中へと押し返し、小日向が投合したソロモンの杖によりゲートは閉じた。

 空が妖しく光り、やがて元の青空へと戻った。

 ピー助が落下している。

 体中、火花が飛び散り、爆発している。

 嫌だ、ピー助。

 置いていかないで。

 すぐにピー助の元へと駆け寄る。

 ピー助の体は悲惨な状態だった。

 目であるバイザーは割れ、皮膚は焼け爛れ、鉤爪も折れている…

 無事なところなんてひとつも見当たらなくて…

 

「ピー助…ピー助ッ!!!ねえ、目を開けて…折角世界を救ったのにあなたがいなくちゃ意味がないじゃない…ねえ、ピー助…」

 

 声をかけても返事なんてない。

 ピー助は…死んだのだ。      

 

 戦姫絶唱シンフォギアG編 fine




次章予告 

「俺とお前で最高のコンビだぜ!」

「妹が奴等に連れ去られた…」

「裏切り者には死を…」

「遂に手に入れた…神に等しい力を!!!!!」

「命ある限り…お前達なんかには負けはしないッ!!!」

次章「先史文明期編 ガイガンレポート」




???「おい!オレの出番はどこに行った!?」

???「まあまあマスター」
 
???「あの、ボクの出番も…」


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先史文明編 ガイガンレポート
怪獣の世界


ついに始まってしまった先史文明編。
5話くらいで終わらせたらいいなぁ…
短くサクッと。
そうすれば奇跡の殺戮者と早く出会えるから…
タグにオリジナル怪獣追加しました。
オリジナルと言っても完全オリジナルではなくこの作品内での○○みたいなそんな感じですが…保険のためにつけときました。


 これは一匹の怪獣(一人の男)の走馬灯…

 戦いの記録である。

 

 あれから…小美人にインファント島に連れてこられた俺は世界各地を転々としてあの俺を改造しやがった女『エム・ゴ』の機械兵(俺がそう呼んでいるだけ)と戦う日々を送っていた。

 あの女あれからどこかに雲隠れしやがったようであちこちに機械兵を出しては怪獣達を襲撃しては返り討ちにあって…なんてことを繰り返している。

 そのため俺が機械兵の反応をキャッチして現場につく頃には既に機械兵がガラクタになってたり…なんてこともしばしば。

 そんなんだから俺が戦う時は大抵まだ子供の怪獣とかご老体の怪獣だったりが襲われているとき。

 

「ほら、もう大丈夫だぞ」

 

「ありがとねヘンテコさん」

 

「ばいばーいヘンテコさ~ん」

 

「誰がヘンテコだッ!…まあそうかも知れないけど」

 

 今回は子持ちのバランが襲われていたのでその救援という形になった。

 まあ助かってよかったよかった。

 飛膜を広げて飛び立つバラン親子を見送り俺も次なる戦場へと飛び立った。

 

 それにしてもエム・ゴの奴はなんでこんな戦いを続けるのだろうか?

 勝率は限りなくゼロに近いというのに…あの卵にちっちゃい手足がついたような機械兵をいたずらに消耗するだけではないのだろうか?

 分からない…エム・ゴのやろうとしていることが分からない…

 

『私がぁ…君を特別にしてあげる…君はぁ全ての怪獣を倒しッ!そして私はぁ!…怪獣を絶滅させた救世主としてぇ…崇め奉られるぅ…あの忌々しいシェム・ハではないッ!この私こそがッ!神に相応しい!』

 

 全ての怪獣を絶滅させて救世主となる…

 しかし、この時代の人々は怪獣を神のように崇めている。

 生活の一部に怪獣がいるくらい怪獣と人間は身近だ。

 そんな神のような存在を殺すなんて救世主ではなく悪魔の所業と言われると思うんだが…

 

『『ガイガンさん聞こえますか?』』

 

 小美人のテレパシーが頭に響く。

 あの爆弾姉妹からテレパシーが来るというのは大抵悪い知らせなのだ。

 いい知らせなんて来ないと期待せずに適当に返事して小美人の話を聞く。

 

『『今、シートピアがエム・ゴの軍団に襲撃をうけていると知らせが入りました。これまでとは比べ物にならない物量だそうです。すぐに救援に行ってください!他の仲間達も既に向かっています!』』

 

 シートピア…たしか対メガロの時に出てきた海底人の国だったか。

 この世界ではどうなってるか分からないけどとにかく行くか。

 小美人のテレパシーによって送られた位置情報を元にシートピアを目指す。

 

 

 

 

 

 

『シートピア』

 海に面したこの国は海からの恵みを生活の柱とし、海と共に生きる人々の国。

 海の民とも言われるほどに造船や製鉄の技術力は他の国家を抜きん出ていた。

 しかし、そんな国が滅亡の危機に陥っていた。

 エム・ゴの送り込んだ大量のゴーレムに国土は焼かれ人々は踏み潰される。

 漁と訓練で鍛えられた屈強な男達は果敢にゴーレムに挑んだが散っていった。

 高い技術力で建造された神殿も、人々が日々を過ごした家屋も等しく炎に消えていった。

 そんな地獄のような戦場に一体の怪獣がいた。

 

『メガロ』

 

 シートピアの人々が守護神と崇める怪獣。 

 カブトムシをはじめとした様々な昆虫を思わせる姿をしている怪獣。

 彼の象徴とも言えるカブトムシを思わせる巨大な角が発光すると角の先から光線『レーザー殺獣光線』を発射しゴーレムの大軍を凪ぎ払う。

 一度に10を越えるゴーレムを破壊する強力な光線であるが次から次へゴーレムは現れる。

 

(チィ!どんだけ湧いてくるんだ!?)

 

 内心で焦るメガロ。

 ゴーレム一体一体は自分の足元にも及ばない。

 しかしこの数は流石にまずい。

 別に特別人間を守るなんてそんなことを考えているわけではないが自分をそれなりに慕ってくれた人々が死んでいくのを黙って見ていられるほどメガロは冷血漢ではなかった。

 

(負ける気はない…だが面倒だ。せめてあと一体怪獣が味方してくれれば…)

 

 だが、そんな都合のいいことが起こるわけがない。

 怪獣は同族には甘いが他の種族の怪獣をわざわざ助けたりするような奴等ではない。

 怪獣なんてのはそんなものだ。

 しかし自分の同族はいまやどこにいるのかも分からない。

 それに仲間が来たとしてここを守りながら戦うなんてことはしない。

 もはやこの街に守るものなんてないのかもしれないが…

 人間が避難したこの国の城はまだ辛うじて無事と言えるレベルだ。

 せめてあれだけでも守りたい。

 少しでも何かを残したい。

 とにかく戦線を街から離せ。

 一体もこの卵人形をこの先に入れるなと。

 レーザー殺獣光線を放ちながら卵人形の群れに接近し回転する腕のドリルで殴りつける。

 大穴が穿たれ倒れる卵人形。

 これを皮切りに次々と卵人形を殴り、機能を停止させていく。

 押せ、押していけ。

 この調子で街から引き離せ──

 

「なっ!?空から!?」

 

 引き離されていたのは自分だった。

 卵人形が5体、空から降下している。

 着地するであろう地点は…城の目の前。

 だが空から落ちている今なら奴等はいい的。

 ここから狙い撃って…

 レーザー殺獣光線を撃とうと狙いを定めるが近くの卵人形共が邪魔をする。

 

「邪魔すんじゃねえ!」

 

 周りの卵人形共を蹴散らすがこの間にも空から卵人形は迫っている。

 再び狙いを定め撃とうとした瞬間──

 俺の放った光線ではない、別の光線が空から降下する卵人形5体を撃ち貫いた。

 一体、誰が…

 目を凝らしてよく見ると空の彼方から怪獣がやって来る。

 水色の体に金色の鱗。

 大きく広がる金色の三枚の翼…

 あれは…

 空からやって来たそいつは上空から光線を放ち、地上の卵人形を撃破しながら俺の近くに着地した。

 

「お前は…」

 

「加勢しに来た…俺以外にもほら、あっちの海岸からモスラの姐さん達が上陸だ」

 

 見れば海岸から次々と怪獣達が上陸し卵人形達と戦闘を開始する。

 

 

 ガバラが手の平から電流を流しゴーレムをショートさせる。

 

 大コンドルが翼のはためきでゴーレムを海へと落とし、海中でエビラが巨大な鋏でゴーレムを両断する。

 

 チタノザウルスが団扇のような尻尾を振り突風を起こしゴーレムの戦線を下げる。

 突風に耐えきれず倒れたゴーレムにカマキラスの群れが飛び掛かり集団でゴーレムを切り刻む。

 

 モスラ、クモンガの吐いた糸で拘束されたゴーレムをガイガンが鉤爪で切り裂いていく。

 

 最早、怪獣達による虐殺とも言えるような光景が眼前に広がる。

 まさか、こんな援軍が来るなんて思ってもみなかった…

 そして、ほどなくしてこの戦いは終息した。

 

 

 

 

 火の海だった街をエビラが巻き上げた海水をチタノザウルスが強風を起こして横殴りの雨を降らせて消火させた。

 かつて白亜の美しい都市だった面影はなく、街の象徴である城も煤けて黒ずんでいる。

  

「あんた達は一体…」

 

 メガロは思わず問いかけた。

 こんなにもバラバラの種族の怪獣が徒党を組んで共闘するなど滅多にない。

 それどころかこんな規模で集団を築いているなんてありえないとメガロは自分の常識を疑った。

 

「あー…えーとそうだなぁ…俺達は指定暴力団モスラ組…痛ッ!!!モスラ姐さん尻尾の先に噛みつかないで!!!」

 

「あなたが変な事言うからです…この方が勘違いしてしまうでしょうガイガン?」

 

 どうやらこのヘンテコな怪獣はガイガンというらしいとメガロは内心記憶した。

 他の連中は見たことある奴等だがこんな奴ははじめて見たからだ。

 生き物なのに生き物じゃない。

 命と命無い物がひとつの体に同居している。

 なんというか、歪。

 それが、ガイガンを見たメガロの最初の感想だった。

 そこから先は自分の自己紹介やら仲間にならないかなど目まぐるしくメガロの状況は変化していった。

 

 

 

 

 

 

 

 荒野の大地で一人、星を見上げていた。

 この時代の空は美しい。

 自分の生まれは田舎なので星はよく見える方だった。

 だけど、この時代の空のほうが美しい。

 夜になれば星を遮る光などない闇。

 空を覆うガスなんてものもない。

 星が輝くのに最高のコンディションなのだ。

 時代も違えば、世界も違う。

 だけど同じ地球。

 空だけは変わらず存在している。

 それが、元の世界と俺を繋ぐ接点なのだと決めつけて俺は暇さえあれば空から見ていた。

 それに空を飛ぶということも俺にとっては特別だ。

 ガイガンさんが死の間際、もう一度飛びたかったと言っていた。

 魂は無くなったとしてもこの体だけはたくさん飛ばしてあげようという自己満足に近い俺のルーティーンも出来た。

 そんな物思いに耽っていると背後から近づいてくる怪獣が一匹。

 メガロか…

 

「お前、ガイガンだったか?なんともヘンテコな奴だな」

 

「挨拶がわりに嫌味か?そういうお前こそ俺から見たら両手がドリルなヘンテコな奴だぜ?」

 

「はっ!違いねえや。怪獣はヘンテコな奴等ってこと忘れてたぜ。なるほど確かにお前も怪獣らしい」

 

 そう言って二人で笑いあった。

 どうにもこいつとは馬が合うらしい。

 ジョークの分かる奴は嫌いじゃない。

 

「なあ、モスラの奴ってだいぶ猫被ってんだな。ちょっと冗談言ったらすぐに糸でぐるぐる巻きだぜ」

 

「お前、あいつの被害に合うの早いな。俺が奴の逆鱗に触れたのは出会って三日後だった」

 

 忘れもしない。

 あれはインファント島の怪獣達の関係性に気付き始めた頃…

 

『モスラはバトラ君のこと好きなの?』

 

『えっ///いや、そんなわけないじゃないですか!?私はもっと肉食系のバトラが好みなんです///!』

 

『そうなんだ。じゃあバトラ君に伝えとくね。脈なしって…あだだだだだだだ!!!!!』

 

『やめなさい…今すぐやめなさい…でないとどうなるか…分かってんだろうな?あ?』

 

『わ"…わ"か"り"ま"し"た"…』

 

 首に巻き付けられた糸がもう窒息どころか首切れるんじゃないかってくらいきつく縛られた。

 今もちょっと後が残って…

 

「久しぶりねぇ裏切り者」

 

 背筋に寒気が走った。

 この、声は──エム・ゴ!!!

 

「まさかあの小人に連れられて逃げるなんて思ってなかったけど…いいよ。許す。今日の私は機嫌がいい…だって──私の作品のひとつが完成したからよぉ!!!」

 

 エム・ゴの言葉を合図に空からそいつは降ってきた。

 鋼で出来た…巨人…

 細部は違うが俺はこいつを知っている。

 こいつは…まさか…

 

「作品名ジェットジャガーッ!!!私が生み出した対怪獣兵器第2号!!!あんたみたいな裏切り者と違ってこの子は私に忠実!日常生活のサポートまでこなすんだからぁ!!!」

 

 まさかジェットジャガーを作るなんて…

 もしかしてだけどメイドみたいなロボット作ったら巨大化したから対怪獣兵器にしましたーなんてことないよね?

 

「おいガイガンこいつは…」

 

「さっきの卵みたいな奴をあちこちに送り込んでる奴だ…こいつを倒せば万事解決ってな」

 

「なるほど…それじゃあまずこのブサイクをぶっ壊せばいいんだな?」

 

「そういうことだ」

 

 他の仲間も戦闘が始まれば気づいてやって来るだろう。

 この場でエム・ゴを倒せばそれで終わる。

 だから…戦ってやるよ!!!

 

 ガイガン・メガロ対ジェットジャガー

 開戦──




解説 
ゴーレム 
 XV1話に登場した棺そっくりなロボット。
 棺のような機能やリフレクターとかついてない量産型
 怪獣相手には役不足。

ジェットジャガー 
 デザイン的にはなんというかFW版的なスタイリッシュになった姿を皆様ご想像していただければ…
     
シートピア
 この世界では海に面する高度な科学力を持った国に。
 わけあってメガロがこの地を(結果的に)救ったことでメガロがシートピアの守護神となる。


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決戦機能と世界を創り変える力

最近、シンフォギアOPにピー助を追加したらという妄想をしてまして三期では翼さんのバイクが謎の故障からのクラッシュのところで後ろにピー助乗ってて翼さんは華麗にバイクから飛び降りるけどピー助はそのままバイクと一緒に大爆発っていう妄想してました。


 メガロのドリルがジェットジャガーの胴を貫こうと迫る。

 しかしジェットジャガーは軽く身を反らしメガロのパンチを避けると今度はジェットジャガーの拳がメガロに迫る。

 メガロは腕を交差させて防御の体勢を取るが…ジェットジャガーの肘から火が噴き出す。

 あれは…ブースターか!?

 避けろと指示しようとするも既に遅い。

 加速した拳がメガロを襲った。

 

「くぅぅ…!!!おい!こいつ見た目のわりにスピードもあるしパワーもありやがる!!!」

 

「ああ…運動性能も高い。卵共とは大違いだ…!」

 

 パワーと防御に優れるメガロのガードを容易く弾いたジェットジャガーの拳。

 あれに当たるのはまずい…

 

「いいわジェットジャガー…そのままその裏切り者と羽虫を潰しなさいッ!!!」

 

 あそこにうるさい女が一名。

 あいつを倒せばそれで終わる話だ、が…

 直接エム・ゴを狙うとジェットジャガーの猛攻を受ける。

 奴の優先順位としてはまず『主人を守る』次点で『俺達を倒す』だからエム・ゴを狙い続ければ奴はエム・ゴの護衛として動かざるを得ない。

 それを利用してジェットジャガーの撃破、エム・ゴの殺害を狙う…

 冷酷になったものだ。

 人間だった頃には考えても実行には移せないような行動ではあるが…エム・ゴは生かしておけない。

 奴を止めるのが俺の使命だと心に刻み戦ってきた。

 熱線を放つ。

 ジェットジャガーに向けてと思わせて、狙いはあの女。

 放たれた熱線が自分に向けてだと思ったジェットジャガーだがまるで狙いが定まっていないとわざわざ回避することはなかった。

 しかし、すぐにその狙いに気づいたジェットジャガーはエム・ゴの目の前に立ち熱線をその身で受ける。

 好機と見たメガロも口から地熱ナパーム弾を放ちジェットジャガー達の周囲を火の海へと変える。

 身動きの取れないジェットジャガーに対し熱線、光線、レーザー、ナパームの止まない雨が降り注ぐ。

 幾ばくか撃ち続けるとやがて大爆発が起こり炎の柱がそびえ立つ。

 

「やったぜ!あのブサイク野郎爆発しやがった!!!」

 

「…いや、様子がおかしい」

 

 炎が一点に収束して人の形を為していき…

 

「爆ぜなさい。ジェットジャガー」

 

 炎の海から炎の巨人が誕生する。

 そして、その巨人は真っ直ぐとこちらに特攻し──

 

「まずいッ!?メガロッ!!!」

 

 メガロの前へと躍り出てその炎の巨人の特攻をモロに受けたガイガンは炎の巨人と共に爆発した。

 

「ガイガンッ!!!!!」

 

「あははははッ!!!死んだ!死んだわぁ!!!裏切り者が…死んだぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 爆発が収束しその場に立っていたのはジェットジャガー。

 倒れているのは…ガイガン。

 

「馬鹿ねぇ。そこの羽虫なんて見捨てればよかったのに。ジャガー帰りましょう。羽虫なんていつでも潰せるわ」

 

 踵を返し、この場を去ろうとするエム・ゴ達にメガロは食らいついた。

 ジェットジャガーの背中にレーザー殺獣光線を直撃させて足を止めさせる。

 

「羽虫の羽音がうるさいわねぇ…ジャガー。さくっと潰しなさい」

 

 ジェットジャガーが振り向き、再びメガロとの格闘戦が始まる。

 メガロとジェットジャガーの拳がお互いの体を打つ。

 お互い防御などしない。

 我慢比べである。

 しかし、機械のジェットジャガーと生物であるメガロ。

 痛みに強いのはどちらかなど分かりきっていたことで…

 そもそも痛みなどないジェットジャガーに勝負の軍配は上がった。

 

「所詮生命など私の生み出す鋼の兵士達の前には無意味ッ!お前達など…」

 

 エム・ゴが言葉を区切った。

 何かに気づいたらしいが…エム・ゴが見ているのは先程ガイガンが爆発した場所。

 そこにガイガンの死骸が無くて──

 

「どこに消えた!?まさかまだ生きて──!?」

 

 急に暗くなった。

 今日は満月だったので夜でも比較的明るかった。

 雲ひとつない星空だったのだが雲が月を隠したのか?

 空を見上げると月を遮っているのは雲ではない。

 あれは───

 

 月の前に躍り出たのは死神。

 翼を広げ、両腕の鎌を煌めかせながら降下し──

 

 ジェットジャガーの左腕を切り裂いた。

 

「なんだその姿は…私はそんな姿を創った覚えはないッ!?」

 

 ガイガン…しかしその姿は先程とは異なる。

 金色の美しい鱗は消え、紺色の体に。

 鉤爪はより敵を切り裂くことに特化した鎌へと変化した。

 

「ナノメタルの装甲を切り裂くなんて…いや、ガイガンにもナノメタルは使用していたか…ジャガー!撤退よ!」

 

 エム・ゴを右手に持ち、一瞬で飛び立つジェットジャガー。

 

「待ちやがれ!」

 

 メガロがレーザーを放つもジェットジャガーは機敏な動きで回避し夜の闇に消えていった。

 

「もういい…これ以上はエネルギーの無駄遣いだ…」

 

「チッ…おい、お前大丈夫か?なんか今にも倒れそうだぞ?」

 

「ああ…正直今にも倒れ、そう…」

 

「ってえ!ガチで倒れる奴があるか!くそ、起きろ!お前引き摺って行くのはキツそうだ!おい!おい!」

 

 

 

 

 

 

 爆発に巻き込まれた俺はほんの少し気絶していたようだ。

 体に力が入らない。

 しかし、このままではメガロが危ない。

 くそ、なんだよあのジェットジャガーは。

 ウルトラダイナマイトかましてきたぞ。

 タロウか?タロウなのか?

 ウルトラ兄弟のNo.6なのか?

 しかもあのデザインなんか『もしFINALWARSにジェットジャガーが出たら』みたいなスタイリッシュなデザインになってるし…

 ガイガンである俺を差し置いてFW版的な見た目に大変身するなんて許さん!

 なんて思っていたら急に体がむずむずし始めて…

 そうして、俺はFWの力を手に入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『ナノメタル』

 エム・ゴが開発した自立思考金属体。

 その名の通り、ナノメタルそのものが思考し自在変形を可能とする。

 エム・ゴはこれを用いた鋼鉄の軍団を作り上げようとしていた。

 しかし…

 

「ガイガンに使用したのはまだプロトタイプのもの…あそこまでの形態変化は…」

 

 ありえないと言おうとしてそれこそありえないと結論付けた。

 恐らくは使用したあの男の脳がナノメタルに命じたのか…

 拠点としている移動要塞の自室で仮説を立てる。

 まさかジャガーの左腕を持っていかれるとは…

 傍らに仕えるジャガーを横目に今後の対策を練るが…

 

「エム・ゴ様、デムキです。お伝えしたいことがございます」

 

 私の腹心の部下であるデムキが自室のドアをくぐって入ってきた。

 長身痩躯で白髪頭の青年はドアの出入りもいちいち大変だ。

 

「それで?お伝えしたいことっていい知らせ?悪い知らせ?」

 

「いい知らせにございますエム・ゴ様。ついにあれを入手しました」

 

「そう…ようやく、ようやくあれが手に入ったのね…!ふふふ…ははは…あー最ッ高の気分ね…これでようやく私のターンに移ることが出来る…」

 

「計画は順調です。あとはエム・ゴ様の作品が出来上がれば…」

 

「全て終わるわ…デムキ、私は作品の制作に入る。しばらくは…」

 

「邪魔は致しません。そして、させません」

 

「よろしい…それでは創るとしましょう。私の最高傑作をッ!!!」

 

 腰まで伸ばした紫の髪を束ね、私は工房へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 あれからぴたりと止まったエム・ゴの機械兵による襲撃、侵攻。

 本当にぴたりと止まってしまったのでかなり不気味だ。

 嵐の前の静けさと言うか…

 

「…い!おい!ガイガン聞いてんのか!?」

 

「あ、ああ…悪い。ぼうっとしてた」

 

「たっく、そんなんじゃ奴等に勝てねえぞ」

 

 ただいまメガロとパトロール中。

 といってもまったくもって異常なし。

 暇だったから考え事なんて出来ていたわけなんだけど…ッ!?

 な、なんだこの感じ…背骨が氷にでもなったんじゃないかってくらいの寒気。

 

「おい…お前も感じたか?」

 

「ああ…なんか来るぞ!」

 

「上だッ!」

 

 メガロの声で俺も空を見上げる。

 すると隕石か何かがこちらに迫ってき…

 

「ガイガン!?」

 

 おもいっきり俺に直撃した隕石。

 そのまま地面に隕石と一緒にゴールイン。

 

「痛…」

 

「くう…」

 

「イテテ…」

 

 何かが俺の上にのしかかっている。

 しっかりとのしかかられているため言葉が出ない。

 前も見えない。

 一体なにが起こって…

 

「トーレ、あなたが調子に乗って加速なんかするからこんな辺境の星に墜落してしまったのよ」

 

「だって~お腹空いてたんだもん。なんかここ美味しそうな匂いしたからつい…」

 

「言い訳は無用。あなたはしばらくご飯抜きで生活よ」

 

「まあまあウノ。トーレも悪気があったわけではありませんから…」

 

「ドゥーエ…あなたがいつもそうやってウノを甘やかすからいつまでたってもこの子は精神が成長しないお子様なままなのよ」

 

「トーレはお子様じゃないもん!」 

 

「ハイハイ…それより、私達なにか踏んでない?」

 

「そういえば妙な感触が…」

 

 ようやくこの三姉妹?かなにかは俺の上からどいてくれた。

 まったくどんな奴等だ?

 この俺を座布団にしやがったの、は…

 

「「「じー」」」

 

 俺を見つめる黄金の竜が一、二、三…

 

「こ、こんにちはぁ…」

 

 キングギドラやんけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!

 しかもじっとこっちをずっと見てるぅ!

 やめてくださいホント…食べても美味しくないんで…

 

「「「いい男…」」」 

 

 ひえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!

 やっぱり食べる気だぁぁぁぁ!!!!!

 って、うん?

 今なんつった?

 いい男?

 え?まさか…あれですか?阿部さ…

 別の意味で食われるぅぅぅぅ!!!!!

 

「「「ねえ、あなた名前は?」」」

 

 そんなメイちゃんみたいな質問すんなよ…

 トトロみたいに吠えてほしいのか?

 こうなったら勇気を振り絞って…

 あっ無理。

 顔見るだけでなんかもう恐怖なんだけど。

 

「名前を聞いているのよ?」

 

「もしかしてしゃべれないの?」

 

「私達とぶつかった衝撃でどこか打ってしまったとか?」

 

「アッ、ソノ…ガ、ガイガンッテイイマス…」

 

 勇気を振り絞って陰キャがヤンキーに答えてあげました。

 だいぶキョドってます、はい。

 

「「「ガイガン…」」」

 

「「「いい名前…」」」

 

 

 

 

 

 

 ギドラ様は告らせたい~恋愛怪獣戦~

 

「「「私、ギドラ!普通の宇宙怪獣なの!」」」

 

「「「大変遅刻遅刻~!他のギドラ族に先にあの星滅ぼされちゃう!(ドゴラの触手を口に咥えながら)」」」

 

「「「きゃっ!ちょっとぶつかったんなら謝りなさいよ!!!」」」

 

「…悪かったな」

 

「「「なによその態度は!!!」」」

 

「悪かったって言ってるだろ…それより」

 

「「「な、なによ」」」

 

「頭に結晶生物ついてるぞ」ピッ

 

「「「えっ///」」」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待て」

 

「なにかしら?」

 

「人を変な妄想に使うんじゃねえ!!!」

 

 妄想っていうか変な世界にされてたぞ!?

 なんだってんだ一体!?

 

「私達は星の環境を作り変えることが出来るんです」

 

「その力のせいかもぉ」

 

「さらっととんでもねえこと言ってんだけど!?」 

 

 なんていうか…すげえのが来たなぁ。

 エム・ゴどころの話じゃないのかもしれない。 

 これは共通の敵が現れたことによって共闘、絆を深めて気づいたら仲間入りコース…

 

「ねえねえガイガン」

 

「は、はい…なんでしょう…」

 

「食べていい?」

 

「えっ?」

 

 大きく口を広げたギドラの顔が迫る。

 みなさんいよいよ最期の時が近づいてまいりました。

 みなさんさようなら、さようなら!

 




解説
FWの発現
 ピー助に使用されたナノメタルはプロトタイプなので状況に応じての変化が完成品より劣るがピー助の中の人の記憶を読み取りFWの姿を発現させた。特オタ万歳。

キングギドラ
 正面から見て左から冷酷無慈悲な長女ウノ、真ん中がしっかり者の次女ドゥーエ、最後に食いしん坊で甘えん坊な末っ子三女のトーレ。
 名前の由来はイタリア語の1、2、3から。


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白銀

お待たせしました。
本当に申し訳ありません。
ちょっとスランプといいますかなんといいますか…
納得いくものでなかったり今後のストーリーとかこれまでのストーリーとの整合性がとれてなかったりしたので…
もし変なところあったら教えてくださると幸いです。


 ギドラ様は告らせたい~恋愛怪獣戦~

 前回のあらすじ

 

「「「辺境の星に墜落してしまった私達。その時、私達を助けてくれたのはナイスガイなイケメン怪獣ガイガンさん!一目惚れしてしまった私達は彼と行動を共にするようになっていつしか絆は深まり相思相愛の仲に…」」」

 

「誰が相思相愛だ」

 

 インファント島のジャングルで恋愛脳怪獣にツッコミを入れる。

 あれから命からがら逃げたはいいものの、この三馬鹿はわざわざ追跡してきたのだ。

 

「まったくこれのどこがいいのやら…」

 

「虫は黙ってなさい」

 

「そういうことを言うものではありませんよ」

 

「私虫キラーイ」

 

 ギドラ達の一斉攻撃に崩れるメガロ。

 まあ、女性?からあんなに言われたら男として自信失くすよな。

 

「くそッ!あんな金ぴかこっちから願い下げだ!同族の中じゃイケメンなんだぞ!」

 

「まあまあ…」

 

 メガロを慰める俺。

 なんだろう、怪獣になってまでモテない男同士の会話みたいなのするとは思ってもみなかった。

 それにしても… 

 周囲を見渡すと他の怪獣達が当然のことだがギドラを警戒している。

 本能があれはヤバいと警鐘を鳴らしているのだろう。

 実際ヤバい奴なんだが。

 力も頭も。

 そもそもインファント島には空から現れる黄金の竜の言い伝えがあるためめっちゃ警戒されている。

 それにしてもそんな災厄として語り継がれる存在がこんなだとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ない。

 ない。

 ない。

 あれが、ない。

 しばらく地上が騒がしくここを開けていた。

 そのせいであれを奪われてしまったのだ。

 取り返さなくてはならない。

 意識を集中させ、あれの気配を感じ取る。

 …かなり遠くへ持ち出されてしまったようだ。

 だが、絶対に奪い返す。

 なんとしても、必ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とてパトロール。

 アン●ンマンみたいだなと思わなくもない。

 ちなみに今日は背中にモスラを載せて飛んでいます。

 羽が三枚なのでうまいこと隙間に収まってくれている。

 あとそれから三つ首馬鹿。

 通称三馬鹿。

 

「折角ガイガンと二人きりだと思ったのに…」

 

「悪かったですね邪魔者がいて」

 

 普段は聖女味ある性格をしているモスラ姐さんもギドラには若干当たりが強い。

 本人曰く、因縁がある気がするとかなんとか。

 

「それにしても、わざわざガイガンに載せてもらって敵を探す必要があるの?他にも飛べる怪獣はいるでしょう?」

 

「…私が探しているのは敵ではありません」

 

「じゃあなにを…」

 

「妹です」

 

 妹。

 モスラの双子の妹は奴等に連れ去られてしまったらしい。

 小美人もその子の救出のために潜入したけど見つからず、同じように捕まって改造手術をされてしまった俺を助けたということらしい。

 しかし、俺の例を見るに妹さんも恐らく…

 

「なるほど…そういう理由なら手を貸すわ」

 

「姉妹のためというのは共感するところがあります」

 

「わたしも手伝うー!」

 

「みなさん…ありがとうございます。…思ったより、いい方々なのですね」

 

 おーっとまさかの和解ッ!

 姉妹という単語がモスラとギドラを繋いだッ!!!

 まあ、仲悪いよりはいいよね。

 ん?あれは…

 空の彼方からやって来るあれは…ラドンだ!

 やっぱ羽広げてるとでかいなぁ…

 やっべ、スター怪獣との出会いになんか緊張してきた…

 え?モスラの時は?

 小美人があんななせいで印象薄かったです…

 

「失礼するぞ。インファントの者達」

 

 …かっ、かっけぇ!

 イケボや!めっちゃイケボやん!

 やっぱスター怪獣は違えや!

 ガイガンも70年代を代表するスター怪獣やもしれんが流石に主役映画はないからな…

 対ガイガンもキングギドラとのタッグだし…

 俺も単発映画が欲しい!

 いや、悪役だからこそ輝くのかガイガンは…

 寝返ろっかな…

 

「ガイガン?」

 

「じょ、冗談っすよ姐さん…」

 

 ナチュラルに心読むのやめてくれませんかね…

 それよりもラドンさんだよラドンさん!

 

「えっと俺達になんの用ですか?」

 

「ああ…ゴジラを見なかったか?」

 

「ゴジラ?見ていませんが…どうかしたのですか?」

 

「お前達もだと思うがあの出来の悪い人形と戦っていたろう?俺達も各地で戦い、しばらく奴等も現れないので一時それぞれの住処へ戻ったのだが…どうやらゴジラは戻っていないらしい」

 

 それからしばらくアンギラスさんと探し回ったらしいけど何処へと姿を消してしまったという。

 うーん…全然それらしき気配もなにも感じてないからなぁ…

 

「ガイガン。ゴジラとはなに?怪獣か?」

 

 ウノが質問してきた。

 そりゃあ宇宙出身だから知るはずもない。

 ちなみに地球の怪獣達はみんな知ってる超有名怪獣ゴジラさんである。

 

「ゴジラはこの星で最強の怪獣…といっても過言じゃない怪獣だよ」

 

「なるほど…この星最強とは気になる相手ね」

 

 さすが冷酷無慈悲な長女ウノさん早速やる気です。

 俺とキングギドラが話している間にモスラとラドンさんの間で話が進みゴジラ捜索も請け負うことになった。

 まあ、ゴジラが行方不明とか気になるから探したほうがいいだろう。

 核爆弾が歩いてるようなもんだし。

 ラドンさんと別れてパトロールに戻る。

 

 

 

 

 ギドラにゴジラの特徴を教えて飛ぶこと数時間。

 ギドラが何か見つけたようだ。

 

「絶対ゴジラだってあれ!黒くて背鰭がある!絶対ゴジラだって!」

 

 トーレが叫ぶ。

 そこまで一致してるならもうゴジラだろう。

 いやぁ思ってたより早く見つかって良かった良かった…

 

 

 

 

 

 

 

「イエース!ワタシがゴジラデスよー!」

 

「ほら!ゴジラだって!ガイガン褒めて褒めて!」

 

 …

 ……

 ………

 

「チェンジで」

 

「チェンジですね」

 

 モスラと言葉が重なる。

 うんそうだよね。モスラ姐さんは分かってるよね。

 

「ナ、なんでデースッ!?」

 

 だってこいつ…

 

「お前ゴジラじゃなくてジラだろう」

 

 前傾姿勢のティラノサウルスのような…

 某閣下はイグアナみたいと言っていたけど…

 ひとつだけ言えることがある。

 お前はゴジラではない(懐古厨)

 

「ゲッ…」

 

「ゴジラじゃないの?」 

 

 そうだよ。

 こいつはゴジラじゃないよ。

 ゴジラの名を語るクリーチャーだよ。

 

「全くジラさん…そうやってゴジラの名を騙るのはやめた方がいいですよ。前にゴジラ直々にお仕置きされたでしょう?」

 

「うっ…ダケド!ワタシは諦めきれないのデス!いつか、ゴジラとして認められるソノ時ヲ!」

 

「いやそんな時絶対来ねえから」

 

「ソンナ!?…というかサッキからアナタはナンデスカ!?初対面のクセにズバズバと…!」

 

 いやだってねぇ…

 認められないもんは認められないんだもん(懐古厨)

 

「別にゴジラに拘る意味ないだろう?お前はお前。ジラという一匹の立派な怪獣だろう」

 

 別にあの映画自体が認められないわけではないのだ。

 怪獣映画として見れば面白いし。

 問題なのはゴジラの名を使ったことだし。

 本当は別の怪獣映画のリメイクしようとしたけど金がおりないからゴジラの名前使ったとかだったか?

 そういうの、俺は許さん。

 

「ワタシはワタシ…」

 

「そうですよジラさん。ジラさんはジラさん。ゴジラでなくとも素敵な怪獣ですよ」

 

「…オマエ、ナマエはなんというデスか?」

 

 俺の方を向いたジラが名前を訊ねてきた。

 なんというかかなり因縁付けられてるような気がする。

 まあ、名前位は答えてやるか。

 

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと…えっ?そういうのいらない?…ガイガン。ガイガンだ」

 

 名乗り口上くらい言わせてくれよ姐さん。

 まあ、名乗りは大事な時だけでいいか。

 

「ガイガン…覚えたデスよ。オマエはワタシのライバルデス。宿敵デス。越えなければナラナイ相手デス」

 

 なんでそんな敵認定!?

 流石に初対面の相手にきつく当たり過ぎた──

 ッ!?

 

「今のは…」

 

 唐突に物凄いプレッシャーを感じた。

 ニュータイプとかそういうことじゃなく、怪獣なら誰もが感じる気配。

 これは…

 

「ゴジラ…」

 

「デス…」  

 

 ゴジラ。

 怪獣の王。

 王の怒りが地上を、いや、世界を震わせた。

 まだ会ったことない相手だけれど、こんなプレッシャーを味わえばその強さも威厳も理解する。

 理解するしかない。

 

「ガイガン。すぐにゴジラのところへ飛びましょう。これは…ただごとではありません」

 

「ああ…!」

 

「ワタシも連れてイクデスッ!」

 

 ジラが名乗りをあげるが…

 

「お前を載せることは出来ないぞ」

 

 モスラはいいけどジラは流石に無理。

 

「アナタの世話にはなりまセン。そこのミスゴールドのお世話になるデス」

 

「なんで私達が…それになによミスゴールドって…」

 

「ああっ!もう俺達は行くぞ!」

 

 ギドラとジラを置いて先に飛び立った。

 地上からワーワーなにやら聞こえるが無視だ無視。

 最近ただでさえキャラの濃い奴等が増えてるのにこれ以上面倒見きれるかッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛ぶこと数時間。

 気温が上がってきたので恐らく赤道近くなんだろうが…

 黒い雲…いや、煙が視界を遮る。

 火事の時に出るような煙だ。

 それがこんなに広がっている…もう雲と言って差し支えないだろう。

 何かあったことは間違いない。

 下は恐らく火の海…

 とにかくこの雲を突っ切るしかない。

 厚い厚い雲の中、高度を下げて地上を目指す。

 ようやく、黒い雲を抜けるとそこは予想していた火の海ではなく──

 

「これは…」

 

「どう、なってるんだ…」

 

 一面、白銀。

 炎の赤ではなく、氷の白が眼下に拡がっていた。




解説
ジラ 2014年ハリウッド版ゴジラが出るまではハリウッド版と言えばこっちのほうだった。
本編中の説明の通り本来はゴジラではない作品をゴジラとしたので姿がだいぶ違う。
GMKの時に劇中のセリフでアメリカでゴジラのような生物が確認されたが日本の学者はゴジラと認めていないというセリフがあったりする。
とにかく不遇。ミサイルで死ぬ。やっぱマグロ食ってる奴は云々ととにかく不遇。
しかし怪獣の能力としてはスピードに極振りした性能なので是非ともジラとして再び出てきてほしいものである。
ちなみにこのゴジラの息子が主役のアニメがアメリカで放送されていた。
息子はマッシブで熱線を使えるとゴジラらしい。
もしかしたら親も成長したらゴジラっぽくなってたのかもしれない。


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機械仕掛けの銀龍

お待たせしましたぁ!(スライディング土下座)
すいませんマリアさんの方ばっか書いたり、短編書いてはボツにしたりしてました…
けどおかげでこっち書けたと言いますかなんと言いますか…
しばらくこっちを優先して書いていきますので!(宣言)


 白銀。

 一面が銀世界。

 ここは…南極か北極だったか?

 

「いえ…そんな果ての大地ではありません。しかしこれは…」

 

 氷で閉ざされた大地。

 全てが、静止していた。

 

「この感じは…」

 

 背中のモスラが呟く。

 それと同時に強烈な気配と違和感。

 体の中に、異物が入り込んだかのような…

 

「ッ!?」

 

 そして、そいつが目に入った。

 全身が眩しい銀色。

 背中に聳える剣のような背鰭。

 二本の脚で氷の大地を踏みしめ立つそれは…

 その特徴的な姿は見間違えようがない。

 

「メカゴジラ…!?」

 

 驚愕から声が漏れた。

 その声を拾ったのか、静かに身動き一つなかったそれはゆっくりと、機械的に、空に浮かぶ俺達を見上げた。

 そして、それの目が赤く煌めいた。

 敵意。

 機械的に、俺達を殺そうという殺意。

 左手をこちらに向けると、その左腕が怪しく蠢いた。

 銀色の装甲が波打ち、変貌する。

 左手が、砲となった。

 砲口に紫色の怪しい光が灯る。

 そして、爆ぜた。

 

「まっず…!」

 

 俺達目掛けて放たれる紫の光線。

 あの見た目はシンゴジラの熱線に酷似している。

 当たったらまずいというのは本能も叫んでいる。

 すぐにその場を離れたが…

 

「追撃来ますッ!」

 

「分かってるッ!」

 

 迫る熱線。

 とにかく飛ぶがしつこく追跡してくる。

 

「もっと早く飛べないんですかッ!?」

 

「姐さん載せてる分重くて加速出来んッ!」

 

「んだとこらぁ!!!!誰が重いっつったァ!!!」

 

「姐さん揺れないで!バランスとれないからぁ!」

 

 わちゃわちゃしているうちに熱線がすぐそこまで。

 尻尾の先で熱を感じるまでに近づいている…

 アッチ!!!

 ジュワ~っていった!ジュワ~っていった!

 もう、ヤバい…

 死を覚悟した時、もうひとつの巨大な力を感じた。

 氷の大地を突き破り、地中から放たれる水色の太い熱線。

 メカゴジラに命中した熱線は銀色の巨体を吹き飛ばした。

 おかげで俺に迫っていた熱線もあらぬ方向へと飛んでいった。

 

「助かった…」

 

「あれは…」

 

 ゴジラ。

 モスラが呟いた。

 あの熱線の主は…正真正銘の…

 

 氷の大地を割り、咆哮を轟かせながら怪獣の王は現れた。

 

 ゴジラ。

 

 最強の怪獣。

 黒い、見るからに頑強な体。

 三列に並ぶ白い巨大な背鰭。

 堂々たるその姿は正に、王。

 

「ゴジラ!何が起こっているのですか!?」

 

「話は後だ。一旦退くぞ」

 

 そう言うとゴジラは地面に向かって熱線を吐き、氷を溶かし、砕いていく。

 それによって周りが白い煙で覆われ目眩ましとなった。

 この煙に乗じて退却しよう。

 俺達は飛べるからいいけどゴジラは…

 あっ、貴方もその飛び方するんですね…

 

 

  

 

 

 

 

 

 なんとかインファント島まで逃げることに成功した。

 ゴジラは海に出ると飛ぶのを止めて泳ぎ出した。どうやらというかやはりあの飛び方はゴジラ的にもちょっとあれらしい。

 そして、今はモスラ姐さんと小美人がゴジラから事情を聞いている真っ最中。

 

「ゴジラ…あれは一体なんなのです?」

 

「さあな。分かることはあれに同胞の骨が使われ、俺の似姿をしているということだけだ」

 

「貴方の同胞の…」

 

 ゴジラの同胞の骨…

 ということはあのメカゴジラは…

 

「機龍…」

 

「「キリュウ?キリュウというんですか?」」

 

 俺の肩に乗る小美人が訊ねてきた。

 

「あ、ああ…ゴジラの骨を使った兵器で、そんなものがあった」

 

 見た目は全然違うが。

 どちらかと言えばアニメ版メカゴジラに似ている。

 それに映画の話だし。

 アプローチの仕方が同じだったと言うべきか。

 

「おい、お前」

 

「…え、俺?」

 

「そうだ、お前だ。ヘンテコ」

 

 またヘンテコって言われた…

 なんでや!ガイガンかっこいいやろ!

 

「その体の元の持ち主は知っているが、中身である今のお前は知らん。ヘンテコで充分だ」

 

 さいで…

 

「お前はあの女に何かされたんだろう。あれについて詳しく知らないのか」

 

 詳しくって言われても…

 なんというか今まで出てきたメカゴジラのハイブリッド版というか、なんならシンゴジラっぽい熱線撃ってきたし…

 

「「ガイガンにも分からないようです。それより、ゴジラ。あそこで一体なにがあったのですか?」」

 

 そうだ。

 なんであんな氷に包まれていたのか。

 あれは異常過ぎる。

 

「…そうだな、まず俺の話からするとしようか」

 

 

 

 

 奪われた同胞の骨の気配を追って辿り着いた土地で待っていたのがあいつだった。

 そして、忌々しいことに奴からその同胞の気配がしたのだ。

 俺は奴から骨を奪い返そうと襲いかかった。

 しかし…奴は異様に強かった。

 同胞の骨を使っているとは言え所詮は仮初の、ただの鉄の塊。

 そう思っていた。

 だがあれは泥のようにその体を自由自在に作り替えて攻撃を繰り出してきた。

 そして極め付きは…お前達も見ただろう、あの光景を。

 辺り一面を氷へと変える技を奴は備えているのだ。

 胸を開いて、氷の玉を撃ち出して来たときは流石の俺もまずいと地中へ逃げた。

 そこからどう奴を攻めようかと考えているとお前達が来た、というわけだ。

 

 

 

「という経緯だ。お前達も分かっていると思うがあれは難敵だ。そして…手は出すな。あれは、俺がやる」

 

 唐突に出た「あいつは俺の獲物宣言」

 まあ、当然だろう。

 同族意識の強いゴジラなら当然。

 それにしても氷の玉…

 アブソリュートゼロの可能性が高いというか、もうそれだろう。

 決めてかかるのはよくないことだが機龍ときたらもうそれしかない。

 いや、あいつはいろんな要素ごちゃ混ぜみたいだからやっぱり決めてかかるのはよくないかも…

 

「あ、ガイガン帰ってたのか」

 

 頭を悩ませているとメガロがパトロールから帰ってきた。

 何故かインファント島にいるゴジラに一瞬びびって簡単に挨拶している。

 一緒に行っていたバトラ君も帰ってきてモスラ姐さんに絡まれている。

 なにを隠そうモスラ姐さんはバトラ君のことが「なんか言った!?」いえ、なにも…

 もうどっちがバトラか分かんないなこれ。

 バトラ君は穏やかで誠実でほんとに君バトラ?モスラじゃなくて?と言いたくなってくる性格なのだ。

 ところでそっちの方は変わったこととかなかった?

 

「いや、特に何も。あれ、お前あの三馬鹿と一緒じゃねえの?」

 

「…忘れてた!」

 

 

 

 

 

某所上空

 

「どこ行ったのかしらガイガンは」

 

「気配はこっちの方からするんですが…」

 

「ギドラさん達。アナタ達完璧に迷子デスよね?」

 

 ガイガンを追って飛んでいたギドラとジラは完璧な迷子となっていた。

 普通なら余裕で追い付けるはずのギドラだがジラを抱えながらの飛行のためいつものようなスピードが出せずにいた。

 それと、来たばかりで慣れない地球の環境、ジラの体重、三人てんでバラバラの方向にガイガンがいると言い出しそれぞれの方向に無理矢理飛ぼうとしたこと、ジラのエセ英語への苛立ち等が今の状況を生み出していた。

 

「疲れた…もうダメ…」

 

「ギャー!!!ズルっていった!ズルっていったデス!!ダメデス!!落としちゃダメデス!!」

 

「ちょっ!?暴れたら余計に…!」

 

 ジラがパニックに陥り暴れた結果、悲鳴をあげながら落下する両者。

 地面へと叩き付けられたギドラとジラは痛みを堪えながら立ち上がり口論を始めた。

 

「あなたのせいで落下したのだけど、謝罪はないのかしら?」

 

「ワタシのせいじゃないネー。ワタシを落っことしそうになったソチラの責任デース!」

 

「落としそうになったくらいでパニックにならないでよー!そもそもジラが重いのが悪いんでしょう!」

 

「ファック!?乙女に体重が重いナド…許せないデェス!!!」

 

 わーわーぎゃーぎゃーと言い合っているうちに彼女達に近づく巨影があった。

 

「「「「「「「「あの」」」」」」」」

 

「なにかしら!?」

 

「なんでしょう!?」

 

「なに!?」

 

「ナンデスカ!?」

 

「「「「あっ…」」」」

 

 巨体を見上げるギドラとジラ。

 その巨体を見た瞬間、二人は死を覚悟した。

 巨大な赤い体、胸には牙のようなものが生えており、尻尾はその巨体よりも長く、なにより…八つの首が生えていた。

 

「「「「「「「「すいません、お取り込み中だったと思うのですが、もう少しお静かにお願いします。私、寝ていたものでして…最近寝不足だったものでして寝たいんですよ。ですから、ね?」」」」」」」」

 

「「「「は、はい…」」」」

 

((((やべえのいたぁぁぁぁ…))))

 

 二人の運命や、如何に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude

 

 暗い部屋に灯りを灯す。

 明るくなるとその部屋はかなり広いことが分かる。

 その部屋の中央に寝かされた、傷だらけのピー助。

 左腕の鉤爪は根元から折れ、皮膚は焼け爛れ、バイザーは割れてその目に光が宿ることはない。

 

「ずっと暗いままなんて嫌よね、ピー助」

 

 ずっと暗いままだとピー助は夜だと勘違いして寝たままだろうから…

 本当は分かってはいるのだ。

 このまま、ピー助が目を覚まさないんじゃないかってことぐらい。

 アウフヴァッヘン波形も確認されず、どれだけ歌ってもピー助が目覚めることはなかった。

 デュランダルを一度で起動させた立花の歌でさえピー助は目覚めなかったのだ。

 立花、雪音、私の三人で歌っても駄目だった。

 それでも、私は歌う。

 いつの日か、再びピー助と巡り会うために。




なんか足りねえと思ったら翼さんですよ翼さん。
翼さん成分が足りなくて書くのが滞っていたんですよ。
過去編は過去だけ書く気でいましたがね、少しだけならね…翼さんを書いていいですよね…?


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変わる世界

セレナの細胞とバラとG細胞で作ったビオランテというネタを思いついた。
マリアさんが曇るんや…
世間は臨時休校か…
こんな作品でよろしければ暇潰しにどうぞ。



 メカゴジラとの遭遇戦から三ヶ月。

 あれから…世界は大きく変わってしまった。

 メカゴジラ登場から再びエム・ゴは動き出し怪獣達を襲撃しその戦闘の余波で人類の生存圏に被害が及んだ。

 それを全て怪獣のせいだと人間に吹聴して回ったエム・ゴ一派によって人類は今、怪獣への憎悪が高まりエム・ゴが怪獣を一匹残さず絶滅させると宣言したもんだからエム・ゴは今や人類にとっての神である。

 これで奴の目的は果たされたといってもいいのだろう。

 これに反抗してくれるアヌンナキはいるのかというと…いない。

 なんでも、他のアヌンナキは全員空に帰ったとかで現在地球にいるアヌンナキはエム・ゴ一派のみ。

 まさにやりたい放題が出来る環境というわけだ。

 それと関係あるのか分からないが、人類の言語がバラバラになってしまったという。

 これまでの人類は皆統一された言語を用いていたというのにある時から急に言語がバラバラになってしまったのだ。

 これには人類も大パニックで自分の伝えたいことが理解されない。相手の言葉が理解出来ないなどという事態に。

 その結果…人類同士で殺し合うようになった。

 自分が分からないものは怖い。

 自分と同じものだけ残ればいいと殺し合い、やがて、ノイズなどという異形まで人類は造り出してしまった。

 ノイズは触れたものを自分諸とも炭にする。

 こうして、人類はどんどん数を減らしていった。

 そして───

 

 

 

 鉤爪を振り下ろし、ノイズを砕いた。

 これが、最後の一体。

 辺りを見渡すと炭素の黒い山が大量に出来ている。

 

「これで終わりだぜガイガン。…たっく、人間共はなんてもん造りやがったんだか」

 

「悪いなメガロ。付き合わせて」

 

「ホントだぜ。余計な仕事増やしやがって…元は人間だから人間を守りたいなんていうけどな、今のお前は怪獣、怪獣なんだよ。人間のことなんて捨て置け」

 

 嫌味を言ってくるメガロだが…

 今のメガロの言葉にはかなり反論出来る隙があった。

 

「シートピアの人達を偶然守ったら守護神なんて言われてそのままシートピアに居着いてた奴のセリフとは思えないな。あとあれ、アントニオさんの娘のマリーちゃんのこと気に入ってたろお前」

 

「んなっ!?違え!俺はそんなんじゃねえ!たまたまあそこにいた奴等が勝手に俺を崇め奉ったもんだからしょうがねえなとか思ってただけだ!あとマリーちゃんはいいだろ別に!チタノザウルスだって可愛いって言ってたぞ!それよりお前はあのレティシアとかいう女官がいいとか言ってたな。あんな胸がデカイだけの女の何がいいのやら」

 

「メガロお前…レティシアさんを馬鹿にしたな!胸がデカイだけなんてお前はなんも分かってない!レティシアさんは大人の魅力!包容力があっておしとやかで優しい方だぞ!俺を可愛いって言ってくれたんだぞ!チタノザウルスだって美人だって言ってた!それにマリーちゃんはまだ子供!ぺったん娘だ!そんな子がいいなんてお前はロリコンだ!」

 

「誰がロリコンだてめえ!マリーちゃんは幼女じゃねえもう16歳だぞ!ロリコンの範疇じゃねえ!お前こそ年増好きだろうが!」

 

「レティシアさんは19だ!俺が人間だった時より年下だから全然年増好きじゃないしー!むしろお似合いな感じだしー!」

 

 お互い睨み合い一触即発の状況。

 しかしここでこいつに打ち勝ち、レティシアさんの素晴らしさを広めていかなければならない。

 だから俺は戦う!

 推しのために!

 

「「うおおおおおお!!!!!うわぁ!?」」

 

 肉体言語で会話をしようと駆け出した両者だったが、横から突然突風が吹いてメガロと一緒に吹き飛ばされて地面にダイブしてしまった。

 

「駄目ですねぇ…喧嘩とは穏やかではない」

 

「チタノザウルス…」

 

「女性のことで喧嘩なさっていたようですが…いいですか二人共。女性は、全て等しく、美しい。いいですね?」

 

「チ、チタノザウルス…!」

 

 チタノザウルスは紳士(変態)だった。

 全ての女性をこよなく愛するとんでもない奴だった。

 これには人間の女に手を出したことのあるキングコングもビックリ。

 へんた…チタノザウルスのおかげで和解したガイガンとメガロは仲良くそれぞれの推しを推していくことになったのである。

 

 

 

 

 

 

某所

 ギドラとジラが墜落した土地。

 そこではいま…

 

「う、産まれるデェス!ヤバいデェス!」

 

「ほら!呼吸を整えて!はい!ひっ、ひっ、ふー!」

 

「ヒッ、ヒッ、デース…ヒッ、ヒッ、デース…」

 

「なんか微妙に違う気がするけど…まあいい!そのまま続ける!元気な子を産むわよ!」 

 

「頑張ってくださいジラさん!手を握って…は出来ないので噛んでますから!」

 

「わたし達がついてるからね!」

 

「イダダダダダッ!!!?!!噛むのはダメ!ダメデェス!せめて咥えるにしてくだサイ!」

 

 三ヶ月の間、二人はこの地から離れなかった。

 正確には、離れることが出来なかった。

 ジラの妊娠が発覚したのだ。

 そして先程、産気づいたのである。

 最初、ギドラは「そう、じゃあ私達は行くから」とジラを置いていく気満々だったのだがジラが「知らない土地で産むなんてストレスがすごいからせめて友達であるギドラがついていてほしいデス」とギドラを引き止めて今に至る。

 

「ああ…ここに新たな命が誕生するのですね…神に祈りを捧げなければ…」

 

「神様みたいなっていうか神様が何言ってるデスか!?ご利益!ご利益をくだサイ!ヤマタノオロチ様!痛みが無くなるようなご利益!」

 

「私、荒御魂系のほうなのでちょっとそういうのは出来ないですね」

 

 ギドラとジラが出会った巨大な八つの首を持つ怪獣…「ヤマタノオロチ」

 本人曰く、元は川だったがしょっちゅう氾濫して人々から恐れられ神として崇められたらある時こうなっていたとか。

 

「その代わりご利益と言ってはなんですが貴女の好きなマグロ捕ってきましたので、産後にどうぞ」

 

「嬉しいけどそうじゃないデス…ウッ!産まれるゥ!!!!」

 

 呼吸が荒くなり、痛みを堪えるジラ。

 見守るギドラとヤマタノオロチも緊張感に包まれて…

 コロンと卵が地面を転がった。

 

「産まれた!」

 

「うん、丈夫な殻をしているわ…良かったわね、ジラ」

 

「う、うーん…その、皆さん…」

 

「どうしたの?そんな歯切れ悪そうにして?」

 

「いや、実はデスね…まだ、産まれてくるデスよ…」

 

「あら、双子?」

 

「イエ…あと、200個ほど産まれてキマース…」

 

 ギドラとヤマタノオロチは、開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪獣達は各地でエム・ゴの軍勢と戦っていた。

 以前のような陽動が目的ではなく、殺戮が目的の軍勢は確実に怪獣の命を奪っていた。

 これに当然、怪獣達は怒った。

 戦えるものは戦えと各地で有志が反抗していたが、反抗勢力の強い地域にはメカゴジラが投入され、有志達は沈黙。

 怪獣絶滅が、まさに現実のものとなろうとしていた。

 この状況に怪獣王ゴジラは行方知れず、怪獣の女王と呼ばれるモスラは…

 

「あれから一週間。まだ出てこねえのかアイツは」

 

 隣のメガロが、巨大な繭を見上げながらそう呟いた。

 インファント島中央に聳える巨大な岩山を柱に造られたそれが出来て一週間。

 モスラはいま、成虫になろうとしていた。

 …一週間前の言葉が思い出される。

 

『あの時、私は妹の気配を感じました。恐らく…メカゴジラの中。あれの力の源として使われているのでしょう。私は…妹を解放したい。そのためには力が必要です。時間が必要となってしまいますが…それまでの間、ここをお願いします』

 

 そう言ってモスラは繭に包まれ、その時を待っている。

 果たして、いつになるのか…

 

「「ガイガン!メガロ!大変です!」」

 

 どこからともなく小美人の声が。

 一体どこだ?

 あの小さいのを見つけるのは至難の技だ。

 

「「私達を探している場合ではありません!エム・ゴの軍勢が迫っています!かなり大規模な軍勢です!」」

 

「遂に来やがったか…奴等は本当に俺達を絶滅させようってのか…!」

 

「ああ…だが、絶対に阻止してみせる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海を覆う機械の軍団。

 飛行するメカゴジラに搭乗し全てを見下ろしていた。

 広い空間で360度外の様子が映し出されている。

 海も、空も、全て私の作品達で埋め尽くしている。

 実に…素晴らしい光景だ。

 

「ああ…素晴らしい、素晴らしい光景だ。私の作品がぁ!怪獣共を殲滅し!蹂躙し!命を弄ぶ…ふひひ、はははっ…」

 

 インファントの奴等を殲滅すれば怪獣絶滅は大きく前進する。

 怪獣達が集結しているここを叩けば…あとは散り散りとなっている奴等を各個撃破すればよい。

 

『エム・ゴ様』

 

 私の目の前に投影されるデムキ。

 まだ、このことに不満があるらしい顔をしている。

 

「デムキ。そんなに私が前線に立つのが嫌か?」

 

『前線は危険です。後退して、あとは我等に任せていただければ…』

 

「それは聞き飽きた。折角この手で怪獣共を殺せる機会だ。それに、オートメーションではなくパイロットが操縦するメカゴジラの性能実験はまだ行っていない。いい機会だとは思わない?」

 

『…分かりました。私めが、必ずお守りいたします』

 

 これで通信は終わった。

 全く過保護な奴だ。

 さて、まずは開幕の花火でも打ち上げようか…

 次の瞬間、メカゴジラ左翼を飛んでいた高速戦闘機「スターファルコン」が光線により撃墜された。

 手元に立つ石柱に命じて、光線が発射された位置をズームするとそこには…裏切り者が立っていた。

 

「ガイガン…!全部隊に告ぐ!メーサー部隊は海上から砲撃でゴーレム、ランドモゲラーの上陸支援!ガルーダ、スターファルコン部隊は空からの爆撃。スターファルコンはランドモゲラーが上陸したら合体し怪獣共を殺せ!ジェットジャガー、メカニコングは好きにやれ!」

 

 こうして、殲滅戦が始まった。

 …最初の一撃は私が撃ちたかったな。




解説
ヤマタノオロチ
 ヤマトタケルに登場。
 映画では阿部寛が変身するが、本作品では川の氾濫を大蛇と結び付けたという説から着想を得て人々の信仰から生まれた神系怪獣(荒御魂)となった。
 ヤマトタケルにはあと二体の怪獣が登場するが…

エム・ゴの軍勢
 卵ロボットことゴーレムだけでなくかなりいろいろ増えた。
・メーサー殺獣光線砲。
 パラボラアンテナのような砲。メカゴジラや後述するモゲラにも搭載されている。上陸支援を命じられたのは戦艦型メーサーである。原作のメーサー殺獣光線車ももちろんございます。
・スターファルコン、ランドモゲラー
 スターファルコンは高速戦闘機。ランドモゲラーは地底戦車。
 合体することで…
『Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type』
(対ゴジラ作戦用飛行型機動ロボット)
 通称『MOGERA』となる。
 …なに?先史文明期に英語なんてねえだろ?
 細けえことは気にすんな!(思考放棄)
 言いたかったんだよ!
 Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-typeって!
・ガルーダ
 ゴジラVSメカゴジラに登場したあれ。
 本作品ではスターファルコンのプロトタイプ的な扱い。
 メカゴジラとの合体機能はない。

今回の解説はここまで!


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インファント島防衛戦

ジラが語尾のせいで切ちゃんにしか見えない。
切ちゃんとしか思えないという声が多数。
ということはつまり切ちゃんは前話で出産シーンを披露したということになる(錯乱)
これに関して有識者の皆様からご意見をお聞きしたい(錯乱)


「初弾命中!5は落とした!」

 

「よし!俺も負けてらんねえ!」

 

 インファント島の海岸に立つ俺とメガロ。

 エム・ゴの軍勢がまさかあれほどまでとは…

 だがやられるわけにはいかない。

 数が不利でもこっちは怪獣。

 あんなやられ役の集まりには負ける気がしない。

 え、お前もやられ役だろ?

 おいおいこちとら70年代を代表するスター怪獣だぞ?あんなのと一緒にされては困る。

 いや、やられ役も大事なのはもちろん分かっているけどね、リアルで戦うとなるとね…

 

「とにかく島に近付けさせるな!遠距離攻撃が出来る奴は撃ち続けろ!」

 

 声を張り指示を出す。

 この声を合図に怪獣達の攻撃が始まった。

 奴等からすればただの鳴き声なんだろうが、俺達からすれば意味のある重要な言葉なのだ。

 俺とメガロは海岸から砲台として迎撃、バトラが空から遊撃。目から放つ青い稲妻を纏った紫の光線『プリズム光線』が敵の戦艦、戦闘機を襲う。

 …こうしてみると、マジでオーバーテクノロジーだな。

 これがアヌンナキの力なのか。

 

「ぼーっとしてんじゃねえ」

 

「悪い悪い…さて、狙い撃ち…狙わなくていいな。こんな大群、適当に数撃ちゃ当たる。乱れ撃つか」

 

「ああ、そっちのほうが性に合ってる!」

 

 そして放たれる光線。

 レーザー光線砲、熱線、レーザー殺獣光線が上陸を目指す卵人形やメーサーのようなもの達を撃墜していく。

 とにかく撃ち続ける。

 絶対に上陸させてはならない。

 それに、まだモスラ姐さんは成長の途中。

 繭となっているいま、狙われたら堪らない。

 島も姐さんも守ってみせる!

 そうじゃないと、あとで姐さんにしばかれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メーサー搭載戦艦『エターナルライト』

 エム・ゴが造り上げたメーサー殺獣光線砲を搭載した戦艦エターナルライト級一番艦。

 エム・ゴに賛同するアヌンナキにより運用され、一人いれば運用可能。

 その他の人員は全て量産型ジェットジャガーである。

 この艦の艦長『ファラベラ』はエム・ゴの命令を忠実にこなし、インファント島に向けて砲撃を続けていた。

 戦況を冷静に判断し、ジャガー達に指示を下す彼は完璧な勝利を確信していた。

 所詮は獣。

 この数ならば余裕で制圧出来ると。

 しかし、彼には残酷な運命が待っていた。

 続けて砲撃の指示を出そうとした瞬間、船が大きく揺れた。

 

「な、なんだ!?」

 

 機関部に何かあったのか?

 しかし、エム・ゴ様が造ったこの船にそんなことが起こるのか?

 怪獣達の攻撃が当たったわけではない。

 エターナルライトは後方支援。

 空を飛ぶ黒い蛾のような怪獣もガルーダ、スターファルコンの部隊の相手に忙しいらしくこちらには見向きもしない。

 では、一体なにが…

 そして、彼は原因を知る事となる。

 二度目の大きな揺れ。

 それと同時に目の前の甲板から生えた赤いトゲ。

 生えたわけではない。

 突き刺されたのだ。

 海中から。

 トゲは引き抜かれ、甲板には大穴だけが残る。

 ナノメタルによって造られた船であるため、再生が始まるが…

 次の瞬間、目の前に湧き上がる水の柱。

 その中から現れたのは赤い悪魔。

『エビラ』

 硬い赤い甲殻、左手は突き刺すことに特化した槍状の鋏。右手は巨大な鋏となっていて、その右手がエターナルライトの司令搭を挟んだ。  

 ナノメタルの装甲だ。

 そう簡単には砕けない。

 今のうちに援護してもらえれば余裕で助かる。

 

「こちらエターナルライト!怪獣に襲撃されている!至急援護を要請する!」

 

 仲間へ助けを求めるファラベラ。

 しかし、返ってきたのは仲間の叫び声であった。

 

『こちらアラトラム!蛇のような怪獣に船体が締め付けられている!』

 

『こちらメトフィエス!海中から触手が!触手がぁ!?』

 

 他の通信も同じようなものだった。

 カニのようなもの、カメのようなもの、海中から襲われたと報告が次々と入る。

 馬鹿な…私達が負ける?

 こんな星のデカイだけの生物に?

 

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!」

 

 自棄になるファラベラ。

 それと同じくして司令搭を挟む鋏の力が強まり、ナノメタルの装甲にヒビが入り…エターナルライトの司令搭はファラベラごと、砕け散った。

 破壊した船を後に海中へと潜航するエビラ。

 まわりの艦もそれぞれの怪獣達により破壊され、海中へと没していく。

 司令搭を失くした艦は再生することが出来ず、海の藻屑となるのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 空ではバトラがガルーダ、スターファルコンの部隊とドッグファイトを繰り広げていた。

 大きさで勝るのは当然バトラ。

 ただのはためきで不用意に近づいたガルーダ達が撃墜されていく。

 しかし小回りで勝るガルーダ、スターファルコンは虫の死骸に群がる蟻のようにバトラにまとわりつき、じわじわと攻撃を繰り返す。

 大したダメージでもないと気にせず旋回し、空中から戦艦、ゴーレム達にプリズム光線を放つ。 

 優位には立っている。

 しかし、このまま空で戦う者が自分だけというのは苦しい。

 ガイガンやメガロなど飛べる怪獣はいるが、陸からの砲台役がいないと陸に上陸しようとする敵を迎撃するものがいない。

 大コンドルは各地の怪獣達にこの事態を伝える伝令役となってもらっている。

 まだこのカトンボ達しか出ていないが…

 敵軍の最も後方に浮遊し佇むあの偽物のゴジラ。

 あれがいつ動き出すか分かったものじゃない。

 少しでも、戦力は多いほうがいい。

 誰か、いないだろうか…

 共に空を翔けてくれる頼もしい味方が…

 やはりモスラ…

 だけどモスラはいま成長しようとしている。

 邪魔をさせるわけにはいかない。

 絶対に僕がモスラを守ってみせる。

 再びプリズム光線を撃ち、空の戦力を減らしていく。

 さらに攻撃をしようと旋回すると、孤独な空に声が響いた。

 

「どうしたバトラ?遅いぞ」

 

 声がすると同時に、さっきまでまとわりついていた周囲のカトンボ達が爆散した。

 今の声は…

 

「メガギラス!来てくれたんだね!」

 

「お前のとこの鳥が来てな…行くぞ。この空で最も速い奴が誰か教えてやる」

 

 そういうとメガギラスの姿がまるで、というか本当に消えた。

 あまりの速さにそう見えるのだ。

 そして空に浮かぶ無数の炎。

 頼もしい味方が来てくれた。

 僕も負けてはいられない。

 大きくはためいて、飛翔をはじめた。

 

 

 

 

 

 

 再びインファント島海岸。

 迎撃を続ける俺とメガロであったが、メガロが何かを捕捉した。

 

「ッ!?ガイガン!奴が来たぞ!」

 

「奴?…あいつか…」

 

 視力を調節して望遠すると、銀色の人形。

 ジェットジャガーがこちらに迫っている。

 バトラの攻撃を掻い潜り、そこら辺の奴等とは比べ物にならない速さで接近している。

 近付かせるなとメガロと共にジェットジャガーを狙撃するが小刻みに、寸前のところで回避される。

 まるで、お前達の攻撃なんて読みきっているんだと言わんばかり。

 挑発のつもりか。

 

「奴の動きを追え…」

 

 バイザーに表示される照準。

 絶対に奴を仕留める。

 羽を大きく広げ、太陽の光から熱線用のエネルギーを生成する。

 レーザー光線砲で牽制し、動きを読め…

 そして、完全にジェットジャガーを捉えた。

 

「そこッ!」

 

 放たれる、熱線。

 威力を高めたこれが直撃すればひとたまりもないだろう。

 これで、奴は落ち…なかった。

 直撃する寸前に奴の前に戦闘機がたまたま通りすぎようとして、盾となってしまったのだ。

 なんて、運のいい奴…

 そして、なんて運の悪い俺。

 

「ちっ!運のいい奴だ!当てなくていい!とにかく撃ち続けるんだ!」

 

「あ、ああ…」

 

 二人でとにかく撃ちまくる。

 それらを全て回避してみせるジェットジャガー。

 そして…上陸を許してしまった。

 

「くそ!上陸を許しちまった!」

 

「上陸させてしまったものはしょうがない!ゴロザウルス達に任せるんだ。俺達はこれ以上上陸させないようにすれば…」

 

 いい、と言いかけて咄嗟に回避した。

 ジェットジャガーの手刀が俺が立っていた地面を抉っている。

 どうやら、ジェットジャガーの狙いは俺らしい。

 

「メガロ、砲撃は任せた!」

 

「ああ!さっさとそいつぶっ倒して来い!」

 

「おう!…さあ、こっちに来やがれ強面野郎!」

 

 俺の鳴き声に反応して俺についてくるジェットジャガー。

 恐らくは…この間の左腕を斬り落としたことを根に持っているのだろう。

 ロボットの癖に。

 さて、ジェットジャガーを誘い出したのはインファント島の隣の島。

 島と言ってもジャングルとかないような岩盤剥き出し。

 荒波が飛沫を上げて地面を濡らす。

 こっちまでは他のエム・ゴの軍勢は来ていない。

 邪魔者はいない。

 タイマンをするならいい場所だ。

 俺は鉤爪を構え、ジェットジャガーは平手を構える。

 互いに間合いを読んで、じわじわとにじり寄る。

 長いような、しかし一瞬。

 睨み合い、今か今かと攻める瞬間を待つ。

 そして高波が合図となり、ぶつかり合う。

 ジェットジャガーのチョップを弾き、右の鉤爪がジェットジャガーの胴を打つ。

 豪快に火花が舞い散り、ジェットジャガーは吹き飛んだ。

 開幕先制、早速いいのが決まった。

 だが敵はロボット。

 痛みなどない。死への恐れなどない。

 そんなものを相手にするのだ、油断など出来ない。

 だが、戦いはノリがいいほうが勝つという名言もある。

 この調子でノリに乗っていくぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…やはりそう簡単にはやらせないか」

 

 宙に投影された映像から各地の戦況を把握する。

 怪獣達は思ったよりも粘り、膠着状態へと陥っている。

 だが…メカゴジラがある限り、負けはない。

 まずはこちらの被害の大きい海の戦力から減らすか。

 傍観も終わり。

 積極的にやらせてもらおうか。

 

「アブソリュートゼロを使う!第一艦隊は…っと、もうやられていたな。ならば気にせず…放てッ!」

 

 目の前の操作端末である石柱に命じると石柱の紋様に光が走りメカゴジラは動き出す。

 胸部装甲が展開し、砲口が剥き出しとなる。

 エネルギーが収束し、氷の塊が形成されていく。

 そして…海に目掛けて放たれた。

 着弾した地点から、氷の大地が出来上がる。

 その大地は拡大を続け、インファント島への道となった。

 

「これこそが我等が勝利への道ッ!そしてぇ…怪獣共の絶滅への道だぁ…」

 

 氷の大地を踏みしめるメカゴジラ。

 これを合図に地上侵攻部隊が氷の道を使い進軍を開始する。

 

「さぁ…絶滅の時間だぁ…ふひっ、ははは…あははははッ!!!」




唐突ですが今回、艦隊を襲撃したのは誰でしょう!
全て正解した方にはこのビオランテ育成キットをプレゼント!
好きな人の細胞で自分だけのビオランテを育てよう!


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生きるもの、散るもの

みなさん、前話の問題分かりました~?(ウザキャラ)
正解はマンダとゲゾラとガニメとカメーバでした。
正解者にはこちらのビオランテ育成キットを差し上げます。
そして、今回の話を書くにあたっての目標は…
『少年誌のような熱い王道バトル』
書けてたらいいなぁ…


 インファント島の怪獣達は…劣勢に立たされていた。

 メカゴジラの戦線参加により、戦局が傾いた。

 固定砲台として動かず、その場から砲撃するというだけではあるが火力、射程が段違い。

 次々と怪獣側に甚大な被害を与えていった。

 そして、メカゴジラの支援を受けて上陸部隊がインファント島への上陸に成功。

 多数のゴーレム、モゲラが島を蹂躙し怪獣達との戦闘を行っていた。

 数で勝るゴーレム、モゲラだが怪獣の膂力ではまだ余裕がある。

 しかしメーサー殺獣光線車とガンヘッドという多脚型戦車による支援砲撃により少しずつ追い込まれていった。

 現在、満足に戦える怪獣は少ない。

 ゴロザウルスもその数少ない怪獣の一体。

 ゴーレムをカンガルーキックで蹴り飛ばし、別のゴーレムに衝突し爆発させた。

 先程まではガバラと共に戦っていたのだが、電流を流せるという特性を持つガバラは敵にとって嫌な相手なのだろう。集中砲火を浴びてしまい重症。

 戦闘継続は難しくなってしまった。

 海の仲間達も大丈夫だろうか。

 あの氷に巻き込まれてはいないだろうか。

 不安は尽きない。

 しかし、安否を確認している場合ではない。

 周りは敵だらけ。

 隙を見せたら自分がやられてしまう。

 尻尾を振り回してモゲラを撃破し、敵の群れに突撃していく。

 パワーでエム・ゴの軍勢を圧倒するゴロザウルス。

 だが、ゴロザウルスにあるものが接近していた…

 ジャングルを駆け抜け、ゴロザウルスに飛び掛かる巨大な銀色の人型。

 いや、人型というには類人猿の面影が垣間見える。

 メカニコング。

 エム・ゴが造り上げた、髑髏島に住まう怪獣を模した存在。

 その鋼の巨腕でゴロザウルスの頭部を殴り付け、ゴロザウルスは地面に倒れ伏した。

 そのままメカニコングはゴロザウルスに馬乗りとなりその顎に手を掛け…その顎を引き裂いた。

 ゴロザウルスは絶命した。

 メカニコングは自身が殺したゴロザウルスに目も暮れず、次の獲物を探し駆ける。

 こうして、怪獣達の命は散っていく──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砲台として海岸から迎撃していたメガロだったが、最早そんなことをしている場合ではなくなっていた。

 メカゴジラの作った氷の道から次々と敵が上陸してくる。

 また、バトラとメガギラスが仕留め損なった航空戦力が島上空を旋回し爆撃を開始している。

 緑豊かな森が全てを焼き尽くす炎の赤に染まる。

 ゴーレム、モゲラがそれぞれ怪獣達に攻撃を開始し、怪獣達は抵抗を始める。

 メガロもまた、モゲラ部隊との戦闘を開始していた。

 

「おら!ドリルってのはこうやって使うんだよッ!」

 

 メガロのドリルがモゲラを貫く。

 胴に大穴の空いたモゲラは倒れ、ただの残骸となる。

 続けてレーザー殺獣光線をモゲラ部隊に向けて放ち、壁の如く迫っていたモゲラ達は爆炎の連鎖となる。

 

「おら!次ぃ!!!」

 

 気合いの咆哮を上げ、次の敵へと向かうメガロであったがメーサー部隊の横槍が入る。

 大したダメージではないが、こうも大量に、連続攻撃を喰らうのは流石に堪える。

 地熱ナパーム弾を口から放ち、メーサー部隊を火の海に溺れさせる。

 森も焼けてしまうが…今やあちこち火の海だ。

 戦いのせいだと説明すればモスラも納得するだろうと結論付けてメガロは次の戦いへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェットジャガーの拳が顔面に直撃し、地面を転がる。

 …岩肌の地面が超痛ぇ。

 痛みがあるということはまだ生きているということ。

 それだけでも万々歳か…

 あのかなりかっこよく決めた初撃から一転、かなり状況が不利になってしまった。

 流石ロボット、痛みなんてないから機能停止とかさせない限りはドンドン突っ込んでくる。

 おかげで俺はこの有り様。

 全身ズタボロだ。

 戦いはノリがいいほうが勝つって言ったの誰だよ…

 あれか?乗りきれてなかったのか?

 けどこんなに攻撃喰らいまくってたらそんな強気になれる気もしない。

 超強気で被弾して一気にテンション下がるGジェネみたいな感じ。

 こっちの攻撃も当たってはいるんだけどな。効いてるのか効いてないのか分からないんで嫌になる。

 あいつの打撃は痛いしもっと嫌だ。

 あーもう嫌だ(諦め)

 けどここで勝たないと姐さんからしばかれるしな…そっちの方が嫌だな。

 よし、やるか…

 よっこらせと立ち上がりジェットジャガーを睨み付ける。

 何度目だこうやってあいつを睨み付けるのは。

 

「…ナゼ、立チアガルコトガ出来ル?」

 

「あん?お前喋れたのかよ…」

 

 電子的な声。

 かなりカタコトだ。

 流暢に喋れるという点では俺の勝ちだな。

 少しはやる気が出てきた。

 

「シツモン二答エロ。ナゼ、タチアガル?ナンドモ死ニカケナガラ、ナゼタチアガル」

 

「それくらい自分で考えろよ…お前の大好きなエム・ゴ様からいいコンピューターぐらいもらってんだろ?ggrksってな」

 

 おいおいこんな正しいggrks使ったの俺くらいじゃないか?

 まあG○○gleなんてないんだけどね。

 普段は使わないよggrksなんて。

 聞かれたらちゃんと教えてあげる人…怪獣ですよ俺は。

 あいつは敵だから優しくする必要がないので例外、例外っと…うん、舌も回ってきたな。調子が良くなってきた証拠だ。

 

「…イミガワカラナイ。ヤハリハンパモノハ必要ナイ」

 

「半端者?半端者って言ったのか?てめえ…それは俺がガイガンになってから嫌いになった言葉第一位だ!その言葉を俺に言った奴は例外なくぶっ殺すことに…………たった今決めた!」

 

 ジェットジャガーにそう吼えて駆け出す。

 走って生まれた勢いそのままに後ろに振り向く。

 敵に背を向けたわけではない。

 今の俺はガイガン。

 つまり…尻 尾 が あ る !

 鞭のような、しかし鞭と違い太い尻尾が迫る。

 怪獣特有の尻尾を使った攻撃。

 ウルトラマンとか見てるとよくこのまま尻尾を掴まれて逆に投げ飛ばされてしまったりする攻撃。

 ジェットジャガーもこれは好機と尻尾を待ち構えている。

 実際、さっき同じ攻撃をして掴まれてぐるぐる振り回されてから投げ飛ばされている。

 だが…さっきの攻撃とはわけが違う。

 

「ッ!?」

 

 ジェットジャガーは迫る俺の尻尾を受け止めることが…出来なかった。

 尻尾の一撃を人間で言うところの肋に直撃を受けたジェットジャガーは横に吹き飛ばされる。

 …ギャグ漫画みたいだな。

 

「よっしゃクリティカルゥ!どうせ効いてないだろうがこれは俺にとって大きな一歩だぜ!」

 

「キカヌ…オマエノ攻撃ナド…ハンパモノノ攻撃ナド。完璧デアルワタシニハ通用シナイ」

 

「また半端者つったな?お前は二度ぶっ殺す!」

 

 ジェットジャガーに向けて熱線を撃つとジェットジャガーは空高く跳躍して空中でムーンサルトスピン…とにかく回転しまくってから俺に向かってキックを繰り出してきた。

 鉤爪を交差してキックを防御するが…ジーンときたぁ…めっちゃ痺れてる。

 くっそあいつ…登場した映画がタロウと同じ年だからってウルトラダイナマイトやらスワローキックを繰り出してきやがって…

 誰の趣味だ誰の。

 まさかエム・ゴの奴…特オタ!?

 なんだか分かりあえる気がしてきた。

 これは対話の始まりか?

 いや、流石にないか。

 さて、考えている間にジェットジャガーとの格闘戦。

 互いに防御を無視して殴りあう。

 くそ、タロウみたいなラッシュがうぜぇ。

 やられるならせめて本物にやられたい。

 ウルトラ戦士に倒されるなら怪獣冥利に尽きるというもの。

 というわけでこんなところで偽物(別にウルトラ戦士の偽物というわけではない)に負けるわけにはいかない。

 格闘は当然人型をしているジェットジャガーに分がある。痛みもないからダメージを無視して殴れるという点でジェットジャガーに分がある。

 勝てっかなこれ…

 いや勝つんだ。

 姐さんにしばかれたくないから。

 幼虫ですらヤバいのにあれが成虫になったら…(戦慄)

 絶対に勝たねば。

 おら喰らえ!いま必殺の…鉤爪乱舞だぁ!(とにかく鉤爪を振り回すだけ。必殺技でもなんでもない)

 しかしこれが意外と効いたようでガードしたジェットジャガーの腕の装甲が凹んでいる。

 

「どうした!どうしたぁ!ご自慢の装甲が凹んでるぜ!」

 

「…損傷、カクニン。ワタシニ、傷ガ…完璧デアルワタシノカラダニ…」

 

 今のセリフから察するにダメージは入っているらしい。

 この調子で…!?

 突然、体に強い衝撃が襲った。

 

「カッ…ハ…」

 

 ジェットジャガーの炎を纏った拳が正中線を突いていた。

 人間の弱点と言われる正中線だが、ガイガンにも適用されるらしい。

 

「エム・ゴ様カラ頂イタ体ニ傷ガツイタ…前回ノ左腕ノ分モ含メテ、報イヲ受ケロ」

 

 そう言うとジェットジャガーの体は炎に包まれた。

 こいつ…あれをやる気か!?

 こんな至近距離では…回避なんて…

 

「後ろに思いっきり飛べぇ!!!」

 

 どこからともなく聞こえた聞き慣れた声に従いバックステップでジェットジャガーから距離を取る。

 するとジェットジャガーの胸に地熱ナパーム弾が命中して爆発。

 ジェットジャガーは後ろへとよろけた。

 

「いい格好だな…ガイガン」

 

「そういうお前こそ…ズタボロだぞメガロ」

 

 助太刀に来てくれたメガロ。

 だがメガロも向こうでの戦闘によるダメージだろうか?全身ボロボロだ。

 

「まったく…こんなの相手にどんだけかかってやがる。ただでさえ怪獣手不足なんだ。さっさとこいつを倒して手伝いやがれ。俺も手伝ってやるからよ…」

 

「…そうだな。こいつの相手なんて俺一人で充分!…って言いたいところなんだけど、俺ってソロよりコンビ組んでやる方がいいらしい。だから…」

 

「「こいつをぶっ倒すぞ」」

 

 メガロと並び立ち、それぞれ鉤爪とドリルを構える。

 ジェットジャガーも拳を構える。

 今のジェットジャガーは言うなればリミッター解除状態。

 パワーもスピードも増している。

 だけどこっちには頼もしい相棒がいるんだ。

 

「負ける気がしねぇ…!」

 

「おう!」

 

 地面を蹴り、メガロと共に翔る。

 それぞれの翼を広げてジェットジャガー目掛けて飛ぶ。

 ジェットジャガーはそれを待ち受ける。 

 両腕を掲げ、どこからでも、どうとでも攻めてこいと。

 防御の姿勢は見せず、自信満々と言った様子。

 その自信をへし折ってやるよ…

 メガロのドリルと俺の鉤爪がジェットジャガーに迫る。

 この同時攻撃にジェットジャガーは冷静であった。

 ()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 鉤爪が鎌へと変化し、ジェットジャガーは咄嗟に防御を選択するが…

 

「そいつを待ってたぜッ!!!」

 

 メガロがアッパーを繰り出し、ジェットジャガーのガードを崩す。

 そして、そのがら空きとなった胴に一閃ッ!!!

 元の姿に戻りながらジェットジャガーの背後に着地する。

 …なんとか、上手くいった。

 一瞬だけ、ファイナルウォーズを起動させる…

 名付けて『ワンセコンド・ファイナルウォーズ』

 いやぁ…かっこよかった(自画自賛)

 

「ナゼダ…ナゼ、完璧デアルハズノワタシガ…」

 

 背後に立つジェットジャガーが今にも消えそうな声で呟く。

 …完璧、ね。

 

「確かにお前は完璧かもしれない。痛みも感じない。死への恐怖もない。命のないお前は確かに脅威だよ…だけどな、だからこそ最後に勝つのは命あるものだ。お前の言う完璧ってのとは程遠い存在である、命あるものがな…」

 

「イノチ…?イノチトハナンダ?ナゼイノチアルモノハ完璧ナモノニ勝利スルコトガ出来ル?」

 

「さあな…それくらい、自分で考えろよ」

 

「イノチ、トハ…」

 

 それが、奴の最後の言葉だった。

 俺達の背後で、金属特有の高い音がした。

 

「…行くぞ。まだまだ敵はいるんだ」

 

「ああ…そうだな」

 

 メガロと共に飛び立ち、次なる戦場へと向かった。

 インファント島は火の海だ。

 戦い、抗う仲間達の姿と、その生を終えてしまった仲間達の姿が同時に目に入る。

 だが、悲しんでいる暇なんてなかった。

 とてつもない敵意を感じた次の瞬間。

 虹色の光線が、モスラの繭を焼き払ったのだ。




エンディングの入りがいいアニメは良作。
つまりシンフォギアは良作。
はっきりわかんだね。
それはそれとしてマリアさん。
やっぱりペンギンというか動物にさん付けするタイプの人でしたか…私はずっとそうだと思ってましたよ。
というわけでマリアさんのほうも書きます。


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キング&クイーン

もうサブタイトルでネタバレしてる感。

新作投稿しました。
仮面ライダーツルギという作品で前に一度投稿したんですが削除しまして…だけど諦めきれず設定など見直して新たに生まれ変わりました。
仮面ライダー龍騎の設定を借りたオリジナルライダーもので登場キャラ、ライダーの設定募集します。
詳しくは活動報告にて!


 ガイガンとメガロがジェットジャガーを撃破する少し前。

 戦況を一気に有利に持っていったエム・ゴは更に自軍の勝利を盤石なものにするため、敵の大将を狙うことにした。

 インファント島に住まう怪獣の女王モスラ。

 私にとっては運良く、奴等にとっては運悪く、モスラは繭に包まれている。

 先程から怪獣達もあの繭を必死に守っている様子が伺える。

 怪獣達からは全てを奪う。

 希望も、命も。

 

「スペースビームを使うぞ。メカゴジラ」

 

 指示を受けたメカゴジラは両目から虹色の光線「スペースビーム」を放った。

 繭に目掛けて真っ直ぐ空を走る光線は…紫色の光線に阻まれる。

 この光線の主はバトラ。

 モスラを守るために繭を背に滞空している。

 だが、モスラを守る者はバトラだけではない。

 

「後ろ…ッ!なんだこれは!?レーダーが不調なのか!?」

 

 コックピット内、自身を囲むように投影される警告を意味する文字。

 しかしどこにも敵はいない。

 いや、いるのだ。

 とても速い、蜻蛉のような怪獣。

 

「チッ…蜻蛉風情が!」

 

 メガギラスがメカゴジラを撹乱する。

 単に周囲を飛び回っているわけではない。

 尻尾の先端の針をメカゴジラの各部に突き刺しているのだ。

 当然、メカゴジラの装甲には傷ひとつつかないがメガギラスはそれをすぐに察すると装甲と装甲の間や間接部などの隙間を狙いはじめた。

 悠長に狙っている時間はないので一瞬で、失敗したならすぐに次の箇所へ。

 それを繰り返すことで小さなダメージではあるが、ダメージを蓄積させることには成功。

 メカゴジラは少しずつ不調をきたしていた。

 

「駆動系稼働率が90%までダウンだと!?だが…」

 

 エム・ゴはメカゴジラに命じる。

 うるさい羽虫を潰せと。

 その命令を受けたメカゴジラはメガギラスをいち早く倒すための戦術を確立。

 実行に移し始めた。

 全砲門を解放。

 メカゴジラは…メガギラスだけでなく、全ても焼き払うことに決めた。

 そして巻き起こる、ビーム、実弾、ミサイルの嵐。

 全方位を襲う砲撃は敵味方関係なく焼き払っていく。

 そしてメカゴジラの最も近く、背後にいたメガギラスは背中から放たれた紫の細い光線達に貫かれた。

 その生を終えたメガギラスは海に落ち、海面に浮かんでいる。

 

「こらこらメカゴジラ。これでは過剰過ぎる…私は羽虫を潰せと言っただけなのだが…まあいい。気を利かせて他の奴等も纏めて潰そうと思ってくれたのだろう?お前はいい子だねぇ」

 

 操作端末である石柱を撫でると、石柱に描かれた紋様に光が走り点滅した。

 褒められて嬉しいようだ。

 

「よしよしメカゴジラ…そうはしゃぐな。この戦いが終わったらご褒美をあげよう。ん?早く欲しい?だったら早くここの奴等を片付けないとねぇ。あとはお前に任せるが…まずはあの繭を焼き払おうか。邪魔な蛾も墜ちたようだしな」

 

 エム・ゴの言葉に反応したメカゴジラは先程繭を狙った時のようにスペースビームを放つ。

 真っ直ぐに進む虹色の光線は、モスラの繭に直撃。

 繭は、炎上を始めた。 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 インファント島の住民達は島の地下空洞に避難していた。

 結界を貼ることでちょっとやそっとの衝撃ではなんともない。

 暗くてじめっとした空洞の中でインファント島の住民達は怪獣達の勝利を信じているが…小美人は怪獣達の命がひとつ、またひとつと消えていくのを感じていた。

 

((消えていく…みんなの命が、消えていく…))

 

 まだ生存している怪獣達も万全の状態とは言えず、その命の灯火は消えかけているような状態だ。

 この状況を覆すことが出来るのは…モスラ。

 モスラなら傷を癒すことも出来る。

 そしてゴジラが来てくれれば…

 

「ねーねー小美人?」

 

「「どうしたのですか?」」

 

「みんなは勝てるかなぁ?」

 

 少年の純粋な疑問。 

 だけどこの質問は絶望から生まれたものではない。

 怪獣達の勝利を信じるからこそ問い掛けるのだ。

 きっと勝てると、そう他の人の口から聞いてより希望を持ちたいのだ。

 希望…

 きっと、彼等は勝てる。

 そして、モスラも目覚める。

 だから…

 

「「ええ。きっとみなさんなら勝てますよ。だから、届けましょう。希望の歌を」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モスラの繭が焼かれていく。

 そんな…嘘だ…

 姐さんを、守れなかったのか?

 この島の要である姐さんを…

 

「おいガイガン!しゃきっとしやがれ!落ち込んでる場合じゃねえ!あいつがいなくても俺達でなんとかしなきゃなんねえだぞ!」

 

 メガロはそう言うが、その声は震えていた。

 多くの仲間達が既にその命を落としたが、姐さんの死はとても重く響いた。

 しかし…メガロの言うとおりだ。

 例え姐さんがいなくても、俺達はここを守り、エム・ゴを打倒しなければならない。

 

「行くぞメガロ…」

 

「ああ…」

 

 メガロと共にモゲラのようなロボットの群れに突撃する。

 鉤爪で叩き、腹の回転ノコギリで装甲を切り裂いていく。

 メガロも次々とモゲラを撃破していくが…数の暴力には敵わずすぐに窮地に陥った。

 周囲をモゲラ達に囲まれてしまう。

 メガロと背中合わせとなり軽く冗談を言い合ったが、気分は晴れなかった。

 

「どうやら俺達もここまで…ってとこか?」

 

「どうしたメガロ?弱気だな」

 

「はんっ…こんな状況で強気になったって意味ねえだろ…」

 

「かもしれない…だが、俺は最後の一匹になっても戦い続ける。少しでも多くの奴等を道連れにな」

 

「それ、意味あんのかよ」

 

「さあな…だが、何もしないよりはましなはずだ」

 

「けっ…確かにまあ…なにもしないまま終わるってのは俺らしく、いや、俺達らしくねえ!」

 

「そうだな…行くぞ」

 

 応と短く返したメガロの返事を合図にモゲラの群れへと突撃…しようとして足が止まった。

 聞こえる…歌が、聞こえる。 

 小美人の、歌が…

 そして感じる大きな力。

 まさか…!

 繭を見上げると炎上するモスラの繭が蠢いている。

 そして炎の中から不死鳥の如くモスラはその巨大な羽を広げた。

 

「インファントを守りし怪獣達よ!我に続け!」

 

 モスラは高らかに謳う。

 今、この場で戦う仲間達に。

 モスラは羽ばたき、空を飛ぶと金色の鱗粉が舞い散り島が覆われる。

 するとどうだろう。

 みるみるうちに傷が癒えていくではないか。

 

「おいガイガン!なんか力が漲ってきたぞ!」

 

「ああ…行くぞメガロ!!!さっきとは違う!道連れなんかじゃない…こいつらを地獄に叩き落とすぞ!」

 

「応ッ!」

 

 モゲラの群れに向かって熱線を放ち、次々と爆散させていく。

 耐久が紙で良かった…

 メガロのほうも片付け終わったらしい。

 よしこの調子で…ッ!? 

 突然、銀色の塊が襲いかかってきた。

 この塊にぶつかった衝撃で倒れ、そのまま縺れ合い転がる。

 頭がぐわんぐわんとするが…その銀色の塊を見た瞬間に一気に頭が冴えた。

 そいつは…銀色のゴリラ。

 『メカニコング』だ。

 俺に馬乗りになったメカニコングは銀の巨腕で俺を殴りつけようとして…吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた!?

 なんで…って、あなたは…

 

「大丈夫かい?君とははじめましてだね。私は…」

 

「き、キングコング…」

 

「おや、知っていたか…その通り、私はキングコングだ。髑髏島より泳いでやってきた。以後、お見知りおきを」

 

 なんていうか…紳士。

 紳士(変態)じゃなくて、本物の紳士(紳士)

 どっかのチタノザウルスに見習わせたいものだ。

 

「さて…あれの相手は私がしよう。私を模して造られたものだろうあれを退治するのは他ならぬ私の仕事だ」

 

「わ、分かりました…お願いします!」

 

「ああ!君達は他のところを頼む!」

 

 キングコングさんにメカニコングを任せてメガロと共にメカゴジラのもとへ向かう。

 キングコングさん…紳士だったなぁ…

 みんなあんな感じだったら世界は平和なのに……

 あっ、ドラミングして牙剥き出しにしてる…やっぱゴリラだわあれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…!何故モスラは生きている!?モスラが生存していたことで怪獣達の勢いが盛り返しただと!?認めない…認めないぞ…!全ての怪獣はメカゴジラの前では無力ッ!!!行きなさいメカゴジラッ!奴等を全て叩き潰しなさい!」

 

 エム・ゴの言葉に反応し、一度吼えてからインファント島へ前進を開始するメカゴジラ。

 だが、右方向からの熱線によりメカゴジラは歩を止めた。

 その辺に転がっているような怪獣の攻撃ではびくともしないメカゴジラだが、今の一撃は響いた。

 コックピットのエム・ゴもその衝撃によろめいた程だ。

 この攻撃の主は…

 

「来たか…ゴジラァァァァァ!!!!!!」

 

 投影された映像に吼えるエム・ゴ。

 ゴジラ、アンギラス、そして獅子のような怪獣が海を渡っている。

 今のでまずはゴジラから仕留めることに決めたが、再び衝撃。

 ゴジラは何もしていない。

 今の衝撃の状態は…ラドンが直上を飛行したことで起こったソニックブーム。

 強豪怪獣が、集結しつつあった。




オマケ
出張ガイガン

ピー助「うぅ…ここはどこだ?謎の銀色オーロラカーテンを通過したら見覚えない土地に…」

千鶴(…なんだあのペンギンのような生物は!?)

まさかの自作品同士のコラボ。
マリアさんは結婚したいもよろしく!
新作もよろしく!


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反撃の開始か、虐殺の始まりか

前にも言ってたOPの妄想二期バージョン。
あのギア紹介シーンみたいなやつ。
誰だこのおっさん!?のところでガイガンってバックに書かれて例のカッコいいポーズ決めるガイガンっていうの…
伝わる?


 ゴジラ達は氷の大地に足を踏み入れた。

 一歩歩くごとに氷はひび割れ、ゴジラは強大なプレッシャーを発する。

 まさしく、王の威厳。

 天に向かって吼えると空間が震えたのではないかと錯覚させるほど。

 しかし、以前ゴジラはメカゴジラに圧倒されている。

 仲間を引き連れてきたところでこのメカゴジラには勝てない。

 

「メカゴジラ…ゴジラを殺りなさい」

 

 返事をするメカゴジラは目からスペースビームを放つ。

 ゴジラに向かって走る極彩色の光線だったが、ゴジラ前に二足歩行の獅子のような怪獣が躍り出る。

 庇うつもりか?

 しかし、エム・ゴの思惑は外れる。

 スペースビームは怪獣の右目に吸収された。

 

「なにッ!?」

 

 そして、左目から吸収された光線は跳ね返される。

 メカゴジラは自身の武装では傷つくことがないほど強固な装甲である。

 しかし…跳ね返された光線はメカゴジラの装甲表面を溶かしたのだ。

 

「馬鹿な…」

 

 急いで解析するエム・ゴ。

 そして判明する事実。

 あの怪獣が跳ね返した光線はメカゴジラが放った時の10倍の威力となっている。

 とんでもない奴がいたものだが…充分対策可能だ。

 ビームがダメなら実弾に切り替えればいい。

 

「フィンガーミサイル、ホーミューショット、ハイプレッシャーホーミング用意…撃てッ!」

 

 両手足の指、膝から大量のミサイルが発射される。

 一度だけではない。

 何発も何発も撃ち続ける。

 体内でミサイルを製造しているのだ、弾切れの心配などない。

 獅子のような怪獣もミサイルは吸収、反射など出来ず爆炎に飲まれるのみ。

 奴だけでない。

 ゴジラも、その取り巻きも、成す術なくただただミサイルの嵐に巻き込まれる。

 聞こえる、聞こえるぞ。

 怪獣達の悲痛に叫ぶ声が。

 私にとって、最高の音楽だ…

 しかし、ゴジラは熱線を放ち応戦してくる。

 流石ゴジラ。

 タフさが違う。

 

「全砲門開けッ!ゴジラを焼き払う!」

 

 ミサイルだけでなくビームも放つ。

 これだけ圧倒すればあの獅子も反射なんて出来まい。

 

「ふふっ…やはり圧倒的よな…メカゴジラァ!!!」

 

 しかし、メカゴジラは一斉射を途中で切り上げた。

 次の瞬間、メカゴジラを強い衝撃が襲う。

 来たか、裏切り者…

 

 

 

 

 

 

 

 

 全弾発射を行うメカゴジラに背後から飛び蹴りを見舞うが、全弾発射を切り上げたメカゴジラは振り返り腕を交差させて防御した。

 そのまま弾かれるが姿勢を制御して着地する。

  

「遅かったなヘンテコ」

 

「ヘンテコじゃない。ガイガンだ…どこ行ってたんだゴジラさんよ」 

 

「ちょっとした特訓だ。さて、前にも言ったと思うがあれは俺の獲物だ。手は出すな」

 

「それは出来ない相談らしいでっせ…うちの姐さんもあれにはお怒りなものでして」

 

 そう言って空を見上げればモスラの姐さんがメカゴジラに突進して…

 って、姐さん!?

 喧嘩っ早すぎぃ!

 姐さんはメカゴジラの攻撃なんて気にせずそのまま突進してメカゴジラを吹き飛ばした。

 すげぇ…

 

「呆けるな男共ッ!」

 

「ふん…俺に指図するな」

 

 怪獣の王と怪獣の女王が並び立っている。

 これは…勝利確定か?

 いやいや油断してはならない。

 相手はメカゴジラだ。

 気を引き締めていかねば。

 

「おーい!島の奴等は大体片付けた!あとはそいつだけだぜ」

 

 メガロがこちらに合流してそう伝えた。

 形勢逆転、だな。

 

「それは、どうかな?」

 

 エム・ゴの、そんな声が聞こえた気がした。

 そして、メカゴジラの肩部装甲が開かれ現れる………

『ノイズ』

 なんで、あいつがノイズを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネットワークジャマーバラルにより統一言語を失ったルル・アメルは互いに相互不理解を起こし、争い、殺し合うようになった…そして、より効率よく相手を殺すためにノイズを造り出した…だが、おかしいとは思わないか?こんな短期間にそんなものを量産出来るなど。ノイズは元々私が造ったものだ。それを各国に提供したのもこの私。怪獣は星からの守護によりノイズでは分解出来ないがお前達が守ろうしているもの。小人や原住民共はどうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 まずい…俺達はいいけど島のみんなが…

 煩わしいとゴジラ達は熱線などでノイズを焼き払うが数が多く、生き残ったノイズ達が島へ上陸し、ジャングルを進む。

 

「くそ…あいつらぁぁぁ!!!」

 

 角を発光させるメガロ。

 レーザーを撃つ気か…

 

「待てメガロ。俺達の攻撃ではノイズだけじゃなく島の人達まで巻き込んでしまうかもしれない」

 

「じゃあどうしろってんだ!」

 

 どうする…

 ノイズを倒すのは容易いが人を巻き込まないようにするには…

 俺達の攻撃では人間より少し大きいくらいのノイズには過剰過ぎる。

 どうすればいい…

 小さい相手に被害を出来る限り出さないように倒すには…

 …!

 いいこと思いついた。

 

「メガロ、ここは任せた。俺はノイズをなんとかする」

 

「なんか策があんのかよ?」

 

「成功するか分からないが…とにかく、やってみなきゃ分からない」

 

「…分かった。行ってこい」

 

「ああ、頼む」

 

 地面を蹴って飛び立ちノイズを追う。

 この時点で倒せる奴等は倒しておくが…間に合ってくれよ…

 なにより、成功してくれよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 避難場所の地下空洞にはノイズの大群が押し寄せていた。

 結界のおかげで助かってはいるが、ノイズ達は結界への攻撃を開始。

 威力は弱いが…数が多い。

 このまま押しきられてしまったら…

 ここから先に逃げることは出来ない。

 まさに、今の私達は袋の鼠。

 結界にひびが入り始めた。

 力を二人で込めるが間に合いそうにない。

 このままじゃ…

 諦めかけたその時、聞き慣れた鳴き声が聞こえた。

 今のは…

 

「「ガイガンッ!」」

 

 しかし、その姿は見えない。

 そもそもこの地下空洞には天井が低いためガイガン達は入っては来れないはず…

 外からの鳴き声?

 それにしては近すぎた。

 幻聴?

 しかし、周りの人達にも聞こえていたようだ。

 では、一体…

 頭を悩ませているとノイズ達は結界への攻撃をやめて別の何かへと攻撃を始めた。

 しかし、ノイズ達は次々と炭へと変わっていく。

 やがて、一度に大量のノイズが炭となりまるでスコールのようにどしゃ降り…その黒の向こうに赤く光るものを見た。

 赤い目、金色の鱗、鋭く光る鉤爪…

 あれは…ガイガン。

 こちらに歩いて近付いてくる。

 えーと…

 

「「ち、ちっちゃいガイガン…?」」 

 

「小美人!みんな大丈夫!?」

 

 大丈夫?なんて暢気に聞くガイガン。

 大丈夫ですが…

 

「「えっと、その、なんでそんなちっちゃくなっているのですか?」」

 

「え?気合いで」

 

「「気合いで!?」」

 

 怪獣は特殊な力を持っているが気合いで小さくなるなんて…

 本当にこの人、怪獣は変だ。

 

「いや、気合いってだけじゃないんだけど…ジェットジャガーがよく分からない理由でサイズを変えられるなら俺にも出来るかもって…ほら、前に変身した時も自分の想像で出来たんだから小さくなれって想像すれば出来るんじゃないかって」

 

「「まったく、あなたは…ふふふ」」

 

「な、なんだよ!笑うことないだっ!?なんだ!?」

 

 突然、島を襲った巨大な揺れ。

 外の戦闘が激化しているのだろうか?

 

「な、なんか寒くないか?」

 

「ハクチッ!寒い…」

 

 寒い…

 冷気が地下空洞の入り口から流れ込んでくる。

 

「俺は戻るよ…何か、とても嫌な予感がする…焚き火で暖かくしてるんだよ!」

 

 そういって飛び立つガイガン。

 本当に、本当に嫌な予感がする。

 どうか、皆さんご無事で…

 

 

 

 

 

 

 地下空洞を出ると、氷がここまで覆っていた。

 そしてなにより…猛吹雪。

 巨大化して、なんとかみんなの元へ向かう。

 戦闘の音や光で場所は分かる。

 吹雪で動き辛いが…急がなければ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Interlude

 

『巨大生物~怪獣~の出現!時代はどう変わる?』

 

 中高年の男性達が議論をしている風景が画面には映し出されている。

 怪獣が都市部に現れたらこれだけの被害が出る。

 怪獣から国民を守るために自衛隊はどう対処するのか?

 世界にはどれだけの怪獣がいるのか?

 人類を脅かす存在なのか?

 各専門家達はそれぞれの意見を言うが、最後には大体こういう旨の台詞を言った。

 

「現状、不明点が多すぎるし、規格外。まだなにも分かっていない」

 

 確かに、つい数ヶ月前まであんな巨大な生物は現れなかった。

 ルナ・アタックの際、宇宙でカ・ディンギルの砲撃から月を守ろうとしたピー助が体長100mまで巨大化していたというし、さらには月の破片を撃ち落とした……「神の一撃」と呼ばれ世界を救ったとされるゴジラ。

 そして、先日のフロンティア事変にてフロンティアに現れた巨大化したネフィリムと、それと戦ったピー助。

 この時の映像は世界中に中継されており、巨大生物同士の争いに世界は釘付けとなった。

 まるで…太古の恐竜時代へと遡ったのではないかと言われる二体の怪獣の戦い。  

 そして、勝者であるピー助は…

 

『さて、不安視される怪獣ですが今、子供達に人気の怪獣も存在します』

 

 リポーターがそう言うと画面は切り替わり、何処かの幼稚園でのインタビュー映像となった。

 

『今、みんなの中で流行っているものってなんですか~?』  

 

『ガイガーン!』

 

 大勢の子供達が元気よくそう言った。

 そう…今や、ガイガン…ピー助は英雄だ。

 世界を救った怪獣として取り上げられている。

 もちろんこれは情報操作によるもの。

 シンフォギア装者のことはうまく隠すことが出来た…ピー助を目立たせることによって。

 流石に世界中に中継されたものを操作するのは難しい。

 ならば、逆に利用すればよいのだと御偉方は決めた。

 正義の怪獣ガイガン。

 世界崩壊を目論む者が操る怪獣を倒す…などという今時、怪獣映画を作るにしてももう少し捻るであろうキャッチコピーをつけてマスコミに流した。

 するとどうだろう。

 瞬く間にピー助はその宣伝通り英雄となったのだ。

 こうしてピー助を隠れ蓑にして私達装者は守られたのだ。

 特に立花は世界に顔を晒したが話題にされることはほぼない。

 世界はまさにピー助に釘付けなのだ。

 テレビから目線を外し、休憩室を出ようとすると立花が休憩室にやって来た。

 

「あ、翼さん。こんにちは」

 

「ああ。立花は今日はどうしたんだ?」

 

「今日は…翼さんのお手伝いに」

 

「私の、お手伝い…?」

 

「はい。翼さん最近、ピー助君のために毎日歌っているんですよね?私も手伝います!クリスちゃんも今から来ますし三人で歌えばきっと…」

 

 以前、三人で歌ったが起動することはなかった。

 だけど…立花も雪音も諦めはしていないらしい。

 あぁ…いい後輩に恵まれたな。

 

「ありがとう、立花。力を貸してくれ」

 

「はいッ!」  

 

 ピー助。

 こんなにもあなたが目覚めることを願っている人がいるのよ。

 だから、早く目覚めて。

 あなたが命を懸けて守った世界に、あなたがいないなんて悲しすぎるから。

 だから、目覚めて。

 目覚めて、また、皆と一緒に──




オマケ 出張ガイガン

千鶴(勢いで拾ったはいいがこの生物は一体…かわいいし、知能も高いようだが…)

ピー助(なんかイケメンに拾われたった。あれ、鎧武の主任みたいな感じだなこの人。さて情報収集情報収集)新聞広げー

マリア「千鶴、来たわよ…って、え、なに、その、ペンギンさん…みたいな生物は」

ピー助(ふぁ!?マリアさんやんけ!あれ、けど…)

千鶴「あ、ああ…マリアか…その、これは拾ったんだ」

マリア「拾ったってそんな捨てられた猫や犬じゃあるまいし…けど、結構可愛いわね。抱っこしてみましょう」

千鶴「まあおとなしいから大丈夫だと思うが、一応気を付けろよ」

マリア「はいはい…近くで見るとより可愛いわね。あとぷにぷにしてて触り心地もいい…あなたお名前は?」

ピー助(マリアさん老けた?)

マリア「なにかすごく失礼なこと考えてないかしらこの子」


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吹雪の中の未来

二週間ぶりとか…
時が過ぎるのは早いもので…
いろいろめちゃくちゃな展開になった(白目)
いいんや、サクッと終わらせてGXするんだから…


 ガイガンがノイズの殲滅にあたっていた間、怪獣達はメカゴジラとの戦いに命を燃やしていた。

 アンギラスが体を丸め、トゲだらけのボールとなりメカゴジラに突撃する。

 しかし、それは受け止められ地面へと叩きつけられる。

 強い衝撃にダメージを受けたアンギラスはすぐに立ち上がることが出来ず、よろける。

 それをメカゴジラが踏みつけようとするがラドンとモスラの体当たりにより阻まれた。  

 氷の大地に倒れたメカゴジラだが、すぐさまブースターを吹かせ立ち上がり牽制として目からスペースビームを放つ。

 スペースビームはゴジラの首に命中するがゴジラは気にせず熱線を撃ち返す。

 仕返しと言わんばかりにメカゴジラの首に直撃した熱線。

 メカゴジラは各部から火花を散らして、装甲が溶けていく。

 

「チッ…再生が流石に追い付かんか…バリヤーを張れッ!メカゴジラ!」

 

 エム・ゴの指示にメカゴジラは金色の瞳を光らせ応える。

 そして、メカゴジラはその首を回転させ青い防御フィールドを形成する。

 形成を終えたメカゴジラは怪獣を嘲笑うかのように吼えた。

 それを見た怪獣達はメカゴジラに一斉攻撃をしかける。

 熱線、光線が放たれるがこの防御フィールドに阻まれメカゴジラには届かない。

 それを見たゴジラとメガロが接近戦を挑む。

 熱線で駄目ならこの腕であれを抉じ開けてやると。

 メガロも腕のドリルでぶち破ると。

 タイミングを合わせ、防御フィールドへ攻撃する…しかし、ゴジラとメガロは逆にダメージを受け倒れてしまう。

 この防御フィールドはビームを高速回転させ出来ているもの。表面はまるでビームのチェーンソーのようになっているのだ。

 

「このネオディフェンスバリヤーは貴様達では破れん。さあ、この内に更なる絶望の準備をしようか。…アブソリュート・ゼロを最大出力で放つッ!」

 

 胸部装甲が展開し、青白く光る球状のエネルギーが形成されていく。

 これまでの中で最大の大きさを誇るそれは防御フィールドすら取り込み…放たれた。

 怪獣達はそれを避ける。

 そして、氷の大地に着弾したアブソリュート・ゼロは白い光の柱を天に昇らせ衝撃波を発する。

 やがて光の柱は収束し消えるが…空は厚い黒い雲に覆われ雷鳴が鳴り響き、風が吹き荒れ、雪と雹が混じり降る。

 一瞬にして、南の海は氷と吹雪に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹雪に逆らい進む。

 何処へ向かえばいいかは分かっている。

 吹雪の向こう、大きな振動と青い光が点滅しているあの場所まで向かうんだ。

 仲間達のところへ…

 怪獣ですら辛いこの吹雪に逆らい歩き続け…見えた。

 銀色の巨体。

 メカゴジラ──

 この吹雪も奴の仕業か。

 

「遅いぞ…ガイガン」

 

「メガロ!今はどうなっている?」

 

「…何体かやられちまった。ゴジラもさっきから姿が見えない…」

 

「そう、か…だけど今は奴をやるしかない」

 

 鉤爪を構え、メカゴジラに向かい駆ける。

 背後から吹雪を隠れ蓑とした奇襲攻撃。

 しかし…

 メカゴジラの背鰭にあたる部位が、射出された。

 咄嗟のことに避けることも防御することも出来ず直撃する。

 当たりどころがいいのが幸いだった。

 腹の回転ノコギリに当たってくれたので衝撃だけで済んだが…あの背鰭は刃だ。

 当たりどころが悪ければ切り裂かれていた。

 

「運のいい奴よなぁガイガン」 

 

 メカゴジラから響く声。

 エム・ゴ…!

 

「見ろ!この神の如き力を!怪獣達ではない!他の奴等でも…シェム・ハでもない!これが私の力…私が造り上げた作品の力!こんなもの創ることが出来るのは私をおいて他にはいないッ!ガイガン…お前も私の作品ならば分かるだろう?力の差というものを」

 

 ふざけるな。

 何が作品だ…

 何が神だ。

 ゴジラの骨と…モスラの心臓を使わなければメカゴジラなんて造れなかったくせに。

 お前は神でもなんでもない!

 ただ命を弄んでいるだけだ!

 

「そうです…ガイガン。あなたの言うとおりです」

 

「モスラ…」

 

「エム・ゴ。貴女のやっていることは生命の冒涜。生命は…命は、定められた時の中にあるべきです」

 

 命は、定められた時の中に…

 そうだとすれば…

 そうだとすれば俺も…

 

「声…テレパシーか!モスラか、こんな芸当が出来るのは…はは…命だと?命などいつか消えてなくなるもの…そんな儚きものは不要だ!全て鋼とひとつとなればいい!メカゴジラァ!私を取り込め!そしてオーバーヒートだ!ふぅん!!!」

 

 エム・ゴの叫び。

 一体、何が…

 

 

 

 

 銀色の波が体を包む。

 ナノメタルが私を取り込んでメカゴジラとひとつになっていく…

 ここからが、滅びの始まりだ…

 

 

 

 

 

 

 銀色の体が赤みを帯びる。

 体中から白い煙が出て…

 メカゴジラの瞳が赤く光り、口から赤い熱線が放たれた。

 飛んで回避することに成功したが…かなり熱かったぞ今の…

 まさかあれは…

 

「バーニングゴジラ…いや、バーニングメカゴジラとでも言うべきか」

 

 寒かったり暑かったり忙しい奴だな…

 そんな冗談を言ってる場合ではないか。

 今の奴は言ってしまえばトランザムしてるようなもの。

 油断出来ない。

 

「あれは…まさか…」

 

「モスラの心臓を暴走させることによってメカゴジラは更なる力を手にする!それにしても、お前達怪獣も会話をしているのだなぁ。メカゴジラとひとつになったおかげでお前達の声がよく聞こえる」

 

「ほう?ならば俺の声も聞こえていような?」

 

 どこからともなく響く声。

 この声は…

 次の瞬間、メカゴジラの足元が青白く発光し氷の大地が裂ける。

 そして裂け目から現れる怪獣王ゴジラ。

 …どこから現れてるんです?

 俺の疑問など無視してメカゴジラに向かい熱線を吐くゴジラ。

 至近距離からの熱線に流石にメカゴジラは堪えたようだ。

 

「チィッ!一度距離を取って…な、なんだ!?何かに引き寄せられている!?」

 

 メカゴジラの動きが鈍い。

 鈍いと思ったら今度はメカゴジラはゴジラの方に引き寄せられて…って、あれ?なんか俺も引っ張られてるような…えっ待ってこれは…ゴジラの特訓ってまさか…あれ!?

 うわぁ!!!引き寄せられるゥ!!!

 なんとか踏ん張って持ちこたえ…きっつい!鉤爪を氷に突き立ててブレーキにすることでようやく踏みとどまることが出来た。

 しかしそれが出来ず、俺よりも金属の割合の大きいメカゴジラはゴジラに引き寄せられてゴジラにくっついた。

 今のゴジラの体は…電磁石のようになっているのだ。

 特訓というのも雷に打たれまくってきたのだろう。

 そこでキングシーサーと出会ったってわけか…

 大体承知したわ。

 このゴジラさん見た目は平成入ってからの感じの見た目なのにやることが昭和だな…

 

「くっ…振り払えない!?計器も狂って…ビームも撃てない!?」

 

「お前温いな。寒かったんで丁度いい…さあ、お前ら殺れッ!」

 

 ゴジラの号令で一斉に怪獣達が動き出す。

 アンギラスが何度も何度もメカゴジラにタックルをしかけ、ラドンが頭部をつつき目を破損させた。

 続けてキングコングがその巨腕でパンチのラッシュを放ちキングシーサーのキックが決まる。

 バトラのプリズム光線とメガロのレーザー殺獣光線が直撃する。

 まさに怪獣達によるリンチである。

 

「おいガイガンなにしてんだよ!やり返すチャンスだぞ!」

 

「そんなことしてる場合じゃねえの!俺もゴジラに引っ張られてるからやべえの!だからお前達でやってくれぇ!」

 

「ったく。しょうがねえなぁ…一気にトドメを…ッ!?」

 

 次の瞬間、怪獣達が吹き飛ばされた。

 かく言う俺も。

 とてつもない、熱波。

 これは…メカゴジラから放たれている…体内放射か!?

 体が…焼けるようだ…

 それでも…奴を道連れにしてでも倒す。

 

「SYSTEM FINALWARS」

 

 バイザーが煌めき、その姿を変えていく。

 鎌を向けメカゴジラに向かい飛ぶ。

 近づくごとに強烈な熱に襲われるが…構うものか。

 命が定められた時の中にこそあるべきというなら俺はこの体を彼に返さなくてはいけない。

 それに俺自身もあの時に死んでいるようなものなのだ。

 ここで奴も…奴の作品である俺も…死ぬ。

 鎌を振り上げ、振り下ろす。

 袈裟に斬るが、切り口から再生をしていく。

 だったら再生が追い付かなくなるまで斬るのみ!

 体内放射中はなにも出来ないのかメカゴジラは棒立ち。

 ここで倒す!

 

「ガイガン!お前の攻撃など無駄だ!再生が追い付かなくなるまでなど考えているのだろうが…その前にこの熱波の前にお前は燃えて、尽きて、堕ちる!」

 

「だとしてもぉぉぉぉぉ!!!」

 

 吼える。

 燃えて、尽きて、堕ちる?

 上等だ。

 こちとらそのつもりで来ているのだから。

 それに…なにもお前を殺すのは俺じゃない。

 絶え間なく続く斬撃に、再生の速度は落ちはじめている。

 それと同じく俺の体も少しずつ燃えて、溶けている。

 

「ッ!?馬鹿な…何故ここまでこいつの攻撃が効く…このままでは…」

 

 …そろそろ、頃合いか。

 両腕の鎌をメカゴジラの胸に突き刺す。

 それを抉り、抜いて、跳躍する。

 鎌に備え付けられている鎖を射出しメカゴジラの頭上を回転しながら飛び越え…鎖でメカゴジラを拘束する。

 

「ゴジラァァァ!!!撃てぇぇぇ!!!」

 

「貴様!?私諸共死ぬ気か!?」

 

「地獄への道連れは…てめえが造った俺こそ相応しい」

 

 もう体が限界を迎えている。

 早く…早く…撃ってくれ。

 そして、目の前が青白い光に包まれて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全記録再生完了』

 

 

 

 ああ、暗い。

 暗くて、何も見えない…

 体も動かない…あれから、俺はどうしたんだっけ…?

 

「…!ピー……が…!」

 

 声が、聞こえる…

 懐かしい、声が…

 

「ピー助がこんな状態なのにイギリスになど行けません!歌うことは確かに私の夢ですが…ピー助を置いてなど…行けません…」

 

「翼さん…」

 

 ああ…そうか。

 ネフィリムを止めようとして俺は…

 翼ちゃん…

 俺のせいで夢を追えなくなるなんて…駄目だよ翼ちゃん。

 翼ちゃんの歌は世界中に響くべきなんだ…だから…

 

「…はい、はい…!分かりました!翼さん!ナスターシャ教授の遺体を載せたシャトルが!」

 

「…分かりました!」

 

 何か…起きたようだ。

 ああ、くそ。

 起きろ。

 起きてくれ。

 翼ちゃんの枷にはなりたくない。 

 翼ちゃんの力に…翼ちゃんの…翼に俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより、肉体の再生を開始。所要時間は凡そ──』




ギドラさんとジラさんまたその他のことなど諸々描いていないのは基本ガイガン視点のため。
大丈夫まだ出番はあるから。
そして次回よりしっかりGXしていきます!
GX編近日投稿!


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戦姫絶唱シンフォギアGX編
私にもコードネームを頂きたいのです


遂にGX!
じーーーーーーえぇっくす!
セッタァップ!


 大気圏を突入するシャトル。

 しかし、そのシャトルはエンジン付近から火が出ていた。

 ラグランジュ点に漂うフロンティアの一区画から国連調査団が回収した異端技術とナスターシャ教授の遺体を載せたシャトルがシステムトラブルにより、今まさに墜落しようとしていた。

 シャトルのパイロットである男性二人はせめて人のいないところに墜落しようとしていたが、レーダーに映ったミサイルにより彼等は致し方なしと諦めようとしていた。

 しかし、それはミサイルではなかった。

 

『平気、へっちゃらです!だから…生きるのを諦めないで!』

 

 飛翔体から飛び出る少女達。

 特異災害対策機動部二課に所属するシンフォギア装者三人が人命を防人るために出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

二課仮設本部司令室

 オペレーター達がそれぞれ装者のサポートを行うなか、現在の任務とは関係のない警報が響いた。

 

「どうした!?」

 

「本部内でロックが破損…いえ!障壁が破られています!」

 

「場所は!?」

 

「第三研究室…ピー助君が安置されていた区画です!」

 

 風鳴弦十郎は思案した。

 このタイミングで何者かの襲撃?

 ピー助を狙って?

 

「襲撃者の可能性もある。緒川、頼めるか?」

 

「はい!」

 

 傍らに控えていた緒川に調査を命じる。

 しかし…

 

「何者かが司令室に向かい接近しています!」

 

 オペレーターの声が響くと同時に、司令室のドアが開いた。

 そして、そこにいたのは…

 

「お前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私にもコードネームを頂きたいのです。

 さしずめ火消しの風、ウインドとでも名乗らせて頂きましょうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンフォギア装者によるシャトル救助作業は続いていた。

 その間、シャトルのパイロット達も軌道の計算などに尽くしていた。

 しかし再び高速で接近する飛翔体をレーダーが捉えたのだ。

 

「なんだ!?」

 

「今度こそミサイルか!?…いや、あれは」

 

 怪獣。

 そう呟いた。

 昨今、世間を賑わせる怪獣。

 その中でも世界を救ったとされる英雄的怪獣───

 

「ガイガン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い虚空にて、懐かしい声を聞いた。

 もう二度と聞くことが出来ないかもしれないと思っていた、あの声…

 そして、彼は───

 来てくれた。

 帰ってきたのだ。

 

「ピー助ぇ!!!」

 

「ピー!」

 

 巨大な…いや、通常の大きさに戻ったピー助は私の声に応えてくれた。

 さっきまでのボロボロの姿が嘘のような、元気そうな姿。

 ああ…こんなに嬉しいことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助君!?」

 

「ピー助!お前、生きて…」

 

 死んでいたさ!

 だが、翼ちゃんの夢のために大人しく棺桶で眠っているわけにはいかんのでな!

 って、あれ…翼ちゃんなんで泣いて…

 

「ッ…ピー助…馬鹿者…私を待たせて…」

 

 ごごごごめんなさいぃ!(←女の子が泣いたらどうしたらいいか分からない駄目な男)

 修復やらなにやら時間がかかって…

 

『お前達!今はピー助よりも救助の方が先決だ!』

 

 そうそう!

 そうだよ!

 はいみなさんそれじゃあこっちに集中…っていうか、俺が持ち運べばいいだけですね、はい。

 それじゃあ鉤爪でシャトルを挟んで…

 いざ!青く眠る水の星へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事にシャトルを運びました(唐突)

 寝起きにはいい運動になったかな。

 人里離れた広い場所にシャトルを置いて任務終了っと。

 ところでここはどこ?

 帰りはどうすればいい?

 えっ飛んで帰れだなんてそんな…

 一生懸命働いたというのに…

 

「ピー助!」

 

 翼ちゃんの声がしたので足元を見ると、うわあ小さい。

 あっ小さいってあれだから、怪獣から見たら人間って小さいって意味だから。変な意味とか全然ないから!

 

「むっ…何か失礼なことを考えているようだが…まあいい。早く小さくなりなさーい!」

 

 はーい。

 というわけで縮小っと。

 うーんやっぱり元のサイズに戻るのはエネルギー持っていかれるな…ングッ!?

 

「はあ…ピー助…よかった…目が覚めたのね…」

 

 翼ちゃん…

 硬い…

 

「さっきから失礼過ぎないかしらピー助?流石に怒るわよ」

 

 さーせん…

 けど、懐かしい硬さでっせ。

 

「はあ、全く…司令、任務完了しました。さあ、帰りましょうピー助」

 

 ほーい。

 帰ったらご飯ね翼ちゃん。

 

「当たり前でしょうピー助。お肉にする?魚にする?」

 

 ん~魚!

 

「分かったわ。最上級の魚をたくさんね」

 

 わーい!

 流石翼ちゃん!

 太っぱ…いえ、翼ちゃんはスレンダーですよはい。

 非常にバランスの取れた健康的な体をしてます。

 

「…なんか、あたしら空気じゃねえか?」

 

「…まあ、しょうがないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャトル救助から一ヶ月程。

 なんでこいつ目覚めたんややらなにやらと検査、調査に再び駆り出されたり二課が国連直轄の組織「S.O.N.G.」になるなどと何かと慌ただしい毎日を過ごし…修羅場を迎えていた。

 

「い、嫌だ!ピー助もイギリスに連れて行くッ!」

 

「翼落ち着いて…気持ちは分かるけど、流石にピー助を個人で所有するのはいろいろと危険よ。S.O.N.G.にいるのが今のピー助にはいいのよ…」

 

「離せマリアッ!お前だってこの間ピー助を抱いて寝て!このまま一緒にいたいなど宣っていただろうッ!」

 

「なっ!?どこでそれを…くっ!こうなったらもういいわ!ピー助を連れていかせてもらうッ!」

 

 いやなにをどうしたら俺を連れていくことになるんですかマリアさん。

 現在本部の食堂にて翼ちゃんとマリアさんのイギリス行きの装者主催の激励会なのだが…

 翼ちゃんが俺を連れていくと駄々をこね始めたのだ。

 けど、ほら俺はS.O.N.G.所属の完全聖遺物という扱いだから…

 それにほら、国連とかに色々誤魔化すの大変だったし…いだだだだッ!?

 待って翼ちゃんマリアさん!俺を引っ張らないでぇ!

 ち、千切れるぅ!

 

「二人共落ち着いてぇ!ピー助君が痛がってます!」

 

「可哀相デスよ!」

 

「動物虐待って言われてもおかしくない」

 

「そうだ!年長組がこんなんじゃ先が思いやられるぜまったく…」

 

 ナイス助け船!

 これで痛みから解放される…

 

「ほう…私の邪魔をするか。そういえばお前達もこの間私の許可なくピー助と戯れていたなぁ」

 

「こいつと遊ぶのに先輩の許可がいるってぇ?初耳だぜそんなん!」

 

「そうですよ!ピー助君はみんなのピー助君なんですから!」

 

 そうだそうだ!

 俺はみんなのアイドルなんだから!

 

「ピー助はどっちの味方なの?私の夢を応援してくれるんじゃないの?」

 

 う…

 それを言われると…

 ついていきたいのは山々なんだけど…

 イギリスかぁ…

 以下、ピー助の勝手なイギリスへのイメージ。

 

『紅茶が美味しいですわ』

 

『ビッグ・ベン』

 

『スコーン!』

 

『フィッシュアンドチップス!』

 

『妖精さん妖精さんあっはははっはっはっ~』

 

『問おう。あなたがわたしのマスターか?』

 

『メシマズ』

 

 メ シ マ ズ

 燦然と輝くこの称号が、ピー助の決意を固めた。

 

 やっぱりご飯の美味しい日本だよね! 

 

「なっ…そんな…私よりご飯の方がいいと言うの…?」

 

 えっあっ嘘!ごめん!

 今の無し!今の無し!

 ついていきます!

 ついていきますからぁ!

 

「ふふっ。やっぱりピー助は私のピー助ね」

 

 うーんさらっと重いよ翼ちゃん。

 知ってたけど。

 将来翼ちゃんと結婚するような人は大変だろうなぁ…

 

『女性と二人きりなど言語道断!実家に帰らせてもらいます!』

 

 なーんて。

 そういえば翼ちゃんの実家ってどんな感じなんだろう。

 ずっと一人暮らしだし、家族の話なんてまるで聞いたことがない。

 精々、司令がおじさんってことくらいか。

 

「どうしたのピー助?不思議そうな顔して?」

 

 いや…うん。

 意外と俺、翼ちゃんのこと知らないんだなぁって思って。

 なんだろう、こう、胸が少し重いようななんというか。

 

「そんなこと言ったっておっさんが許可するわけないだろ」

 

「むう…そこはなんとか説き伏せるしか…」

 

 説き伏せるって翼ちゃん…

 司令を説き伏せるなんて無理やで無理無理…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな、連れて行くといい」

 

 えっ。

 

「なんと!ありがとうございますおじ様!」

 

 えっ。

 ちょっと。

 えーと、え?

 連れて行くといいって言ったの?

 司令が?

 なんで…?

 てか司令の声と顔に覇気がないんだけど!?

 いつもの司令はどこ行ったの!?

 

 ピー助は知らなかった。

 司令は…とにかくめんどくさかったのだ。

 翼とピー助を離すことで起きるなんかこう…ねばっとしためんどくささに襲われるのが嫌だったのだ。

 最近は平和だしいいかなって。

 なんかあったらピー助なら飛んで駆けつけられるし大丈夫だろうと。

 というわけで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 来ちゃった(彼女っぽく)

 イギリスに!

 

 ちっちゃいガイガンになってたイギリス編!

 始動…しないよ。




オマケ 出張ガイガン マリアさんは結婚したいの世界

翼「連絡を受け来てみればなるほどなるほど…これが謎の生物…」

ピー助(これが五年後の翼ちゃんかぁ…)

翼「…ッ!」

この瞬間翼は全並行世界の翼と記憶を共有。
ピー助の情報を瞬時に把握したのだった。

翼「よし!ピー助は私が面倒を見るとしよう!」

マリア「だ、大丈夫なの?それにピー助って名前までつけて…」

翼「私に全部任せておけ!ピー助お家に帰りましょう」

ピー助(まあ、いいか…)
 ・
 ・
 ・
ピー助「こんなところいられるか!酒臭いし部屋汚いし元の世界に帰ってやらぁ!」

つ銀色のオーロラカーテン 

ピー助「とんでもないところだった…さあお家に帰ろう…」

謎の巨大狼「えっなにこのペンギンみたいな生き物は」

ピー助「えっなにこのドデカい狼は」

出張ガイガン 新アヴェの世界(タッツマン氏の作品)

遂に他の作者様の世界へ…
タッツマンさんありがとうございます!

※マリアさんは結婚したいの世界はまた訪れる予定です。


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英国からの帰国子女!ガイガンデース!!!

いつもたくさんの感想ありがとうございます(唐突)
作者にとってみなさんのコメントってすごい参考になるんですよねやっぱり。
もちろん自分がやりたいことやってるんですけど、基本手探りでやってる中やってきたことがうけたりすると「あっこれはいいんだな」って手応えが分かって非常にありがたいのです。というわけでこれからもよろしくお願いします。


 冷たい暗闇から、急に光差す場所へと引き揚げられた。

 一体なんだ?誰だ?

 

「ほう?お前が先史文明期に造られた人形か。面白い、オレが使ってやろう」

 

 金髪の少女がそう言った。 

 その言葉に私は何故か…素直に従ってしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンドンに滞在して三週間。

 ピー助は…

 

(もうやだ日本に帰りたい…)

 

 ノイローゼになっていた!

 慣れない環境、新生活への不安、諸々の事情による外出禁止、めんどくさい二人の対応等々によりピー助は軽くメンタルをやられていた。

 今日も家で一人。

 翼かマリアがいれば遊び相手なり話相手になるふのだが二人は多忙な毎日を送りなかなか家にも帰って来ないのでピー助は一人で家にいることが日常となっていた。

 正直なところペットの飼育放棄ではないかと言わざるを得ないがピー助は一人で自分の生活の面倒自体は見れるので大丈夫だろうということにされてしまっているのだ。

 おかげでこの有り様。

 

「寂しい…切歌ちゃん、調ちゃんと普通に遊びたい…響ちゃんと大食い対決したい…クリスちゃんの胸に飛び込みたい…友里さんに甘やかされたい…」

 

 願望を口に出すピー助。

 しかし外出禁止令が出されている今ピー助が日本に戻ることが出来るわけが…

 ピロリンという電子音が静かな部屋に響く。

 音の主はPC。

 ピー助緊急招集用のPCは常に電源がついているがこれまで活用されることはなかった。

 ピー助はすぐにPCの設置されている机に移動。

 ジャンプして椅子に上りエンターキーを鉤爪で押すとオペレーターの藤尭が出た。

 

(チッ…友里さんじゃないのかよ…)

 

『あ、もしもしピー助君。ちょっとこっち来れる?』

 

「ピー!(オッケー行く行くぅー!)」

 

 今から遊ばね?みたいな気軽さで呼び出された訳だが今のピー助にとってしてみれば地獄に垂らされた蜘蛛の糸。蹴落とす相手もいないので悠々と天国へと昇っていける。

 こうして、ピー助は一時帰国することになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オッスオッス~おひさ~。

 S.O.N.G.本部司令室に入るとイツメンで集まっていた。

 いやぁお懐かしい。

 三週間しか経ってないんだけどね。

 

「思ったより…というか随分早かったなピー助」

 

 いやぁ司令どうもどうも。

 私、一応この世界だと地球産怪獣なんだけど宇宙に出るとめっちゃ速く飛べるから。

 宇宙だとマッハ400で飛べるから。

 一瞬よ一瞬。

 なに?マッハ400とか無理だろ?

 そこはほら、ね?

 細かいことは気にすんな禿げるぞ。

 それで、今日は一体どんなご用件が?

 

「今日はピー助と関係があるかもしれない物が発見されてな。友里」

 

 司令は友里さんを呼ぶと巨大なモニターになにやら古い本。古文書って奴か。燃える。

 ん…これは…

 

『護国聖獣伝』

 

 そう読める。

 護国聖獣というとあれか空の魏怒羅、海の最珠羅、陸の婆羅護吽のあれ。

 白目ゴジラと戦った奴等。

 この世界にもいたんか…

 怪獣と言えばあの後どうなったんだろう…モスラ姐さんとかギドラとジラは何処に行ったのか。

 今この通りの世界なのであいつは倒せたんだろうが…

 ゴジラは海底で眠って生きてたからもしまた話す機会でもあれば聞いてみるか。

 

「つい先日発見されたんだがこの古文書には怪獣と思われるものの記述があったので同じ怪獣であるピー助が知っているか知りたくてな。今から名前を言っていくから知っていたら手を上げてくれ」

 

 はーい。

 まあさっき挙げた三体だから三回手を上げることになるが。

 

「それじゃあ言っていくぞ魏怒羅」

 

 はーい。

 

「婆羅護吽」

 

 はーい。

 

「最珠羅」

 

 はーい。

 これで終わ…

 

「闇魏羅珠」

 

 知ってる知ってる…

 アンギラスぅ!?

 な、なんでまたそんな!?

 いや待て…たしかGMKの初期段階の護国聖獣ってたしか…

 

「熱のバラゴン」

 

「氷のアンギラス」

 

「風のバラン」

 

 とかだった気がする…

 もう5000年前の人間だった頃の記憶だからあれだが…

 ということはあとは…

 

「婆羅吽」

 

 やっぱり。

 それじゃあこれで終わりか。

 護国三聖獣じゃなくて四聖獣なのね。

 

「爾羅」

 

 ジラね知ってる知って…

 はあ!?

 

「どうしたピー助?そんなに驚いて」

 

 いやだってあのエセ外人が日本の護国聖獣なわけないだろ!

 デースとか言ってる奴だぞ!

 そんなこと言う奴他にいな…

 

「?どうしたデスかピー助?」

 

 いたわ。

 それにしても何故ジラが護国聖獣に?

 まさかこのギドラとジラってあいつらなんじゃ…

 いやー…あの恋愛脳とエセ外人がまさか聖獣なんてのになるなんて…

 時が経つってやばいね。

 

「というわけでこれで護国聖獣については終わりだが…ピー助が全ての聖獣達を知っているとは…」

 

 いや、まあ昔の話ですよ昔の話。

 もしかしたら違う個体かも知れないですし。

 

「この聖獣達は古代の王朝により封印されたと記されている。もしかしたら…」

 

「封印されてまだ眠ってるかもってことですか?」

 

「ああ…あくまで仮説だがな」

 

「けどそんなに生きられるのかよ?」

 

 クリスちゃんの質問には私が答えましょう。

 生きられます。(生き証人)

 ゴジラもあの時から眠って生きてきた訳だし他の奴等だってきっとそうだろう。

 

「怪獣については我々の常識は通用しないと思っておくべきだ。超常のものを相手にするのが俺達S.O.N.G.の仕事だからな。もし怪獣による被害が出た場合は…」

 

「私達が怪獣の相手を…」

 

 大丈夫やで響ちゃん。

 怪獣の相手なら俺がするし。

 そうでしょ司令?

 

「ああ。その時はピー助を主体とした作戦を展開することになるだろう」

 

 うんうん。

 それがいい。

 怪獣の相手を人間の皆にやらせるのは酷だろうし。

 

「けど、怪獣かぁ…みんなピー助君みたいに仲良く出来ればいいなぁ」

 

 響ちゃん…

 俺はあくまで中身は人間だからこんなだけど他の奴等は人間のことをほとんど気にしてなかったぜ?

 インファント島にいた奴等はキャラは濃いけど人間との距離感みたいなのはちゃんとしてた。けどそれ以外の奴等ってのはもう人間で言うところの蟻みたいなもんとしか思ってなかった。

 だから仲良くってのは無理かもなぁ。

 適切な距離を保って関わるべきやで。

 

「以上で話は終わりだ。わざわざイギリスから来てもらって悪かったな」

 

 いえいえいい気分転換になってよかったですよ。

 それじゃあ俺はこの辺で…この辺で…

 

「どうしたデスかピー助?」

 

「もしかして、帰りたくないの?」

 

 切歌ちゃん調ちゃん…

 うう…

 実は…

 

「よしよし」

 

「それじゃあしばらくこっちにいるといいデスよ!」

 

「そうだよ!お泊まりくらい許して…くれるかは分からないけど!」

 

「まあ、ピー助なら一瞬でイギリスまで帰れるしなんかあっても大丈夫だろ」

 

 うぅ…みんな…

 みんなの純粋な優しさが目に滲みる…

 ぐすっ…

 それじゃあご厚意に甘えてこっちでしばらく過ごすぞー!

 

「よーし皆でピー助君と遊ぶぞー!」

 

 おー!

 

 

 

 

 それからの日々は、イギリスでの生活と比べたらとても充実した毎日だった。

 みんなのお家にお泊まりして…美味しいご飯を食べて、いっぱい遊んで…

 何日も、何日も…

 浦島太郎は竜宮城で何日も過ごしたというけど多分同じ気分。

 あぁ~楽しいんじゃ~

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 イギリスでは…

 

「…ねぇ、翼」

 

「なんだ、マリア…」

 

「ピー助が日本に行ってからどれくらい経つかしら…?」

 

「八日と五時間二十三分三十六秒だ」

 

「そう…」

 

 歌姫二人が、衆目に晒してはいけない顔をしていた。

 目元にはくま、髪の毛はボサボサ。

 もちろん日々のケアやメイクなど欠かしてはいないのだが二人の放つ負のオーラによって自然とこうなってしまうのだった。

 二人は今、翼の部屋のソファに並んで体育座り。

 それも暗い部屋で。

 

『ほらピー助エサだぞ』

 

『ピー!』

 

 テレビの大画面でこれまで撮影してきたピー助の映像を眺める二人。

 ボーっと見つめる二人。

 そしてそれを悩ましげに部屋の片隅で見つめる緒川。

 このままでは仕事に支障が…

 緒川の悩みを解決する方法は簡単。ピー助がイギリスに帰ればいいのだ。

 しかし緒川はピー助のノイローゼも知っていたが故に早く帰って来いとも言えぬ始末。

 胃薬の服用を始めたのは三日前の話である。

 

「切歌から何か送られてきた…あっピー助の写真よ翼…可愛いわね…」

 

「そうだな…ふふっピー助…私以外の女のところにいるなど…ふふふ、ふふふ…」

 

 緒川は何度目か分からぬ感想を抱いた。

 この歌姫達、もう駄目かもしれない──

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもどうして翼さんはあんなにピー助への愛情が重いデスか?ペットに向ける愛情ではないデスよあれは」

 

 本部の休憩室でみんなと話していると切歌ちゃんがそう言った。

 確かにペットに向ける愛情にしては度が過ぎているような気がする。

 多分、翼さんにピー助君がペットなんて言ったら斬られるかもしれないけど。

 なんて返答しようか迷っていると思わぬところから答えが返ってきた。

 

「それは、ピー助が奏の残したものだからかもしれないな」

 

「師匠…」

 

 休憩室にやって来た師匠は自販機でコーヒーを買って一口飲んでから話を続けた。

 

「ピー助を連れてきたのは奏でな。最初は奏が主にピー助の面倒を見ていたんだ。だが奏が死んで…一度ピー助は暴走した」

 

「暴走…」

 

「現れたノイズを襲って喰らい続けた…奏が死ぬ原因となったノイズへの復讐だったんだろう。それをなんとか翼が連れ戻して…ああ、あれから二年か。時が経つのは早いものだな」

 

 そう言って師匠は小さく微笑んだ。

 わたし達の知らない、翼さんとピー助君の関係。

 二年という短いかもしれないけれど、二人にとっては一緒に過ごして、一緒に戦ってきた大切な時間が育んだ愛…

 

「それに翼からしてみれば奏との思い出を共有出来る存在でもある。それがまあ…その、なんだ…あんな感じになったんだろう」

 

 師匠もちょっと思うところはあるのだろう。歯切れが悪い。

 まあ、ちょっとあの入れ込みようはどうかと思うけど…

 

「ピー」

 

「あっピー助君。今みんなでピー助君と翼さんの話をしてたんだよ」

 

 教えるとピー助君は鉤爪で頭をかいて照れているようだ。

 こう…ピー助君はどうにも人間臭い。

 中に人が入ってるんじゃないかって思う時がたくさんあるのだ。

 …もし、ピー助君が男の人だとしたら翼さん多分ピー助君を落とそうとするんじゃ…

 深い愛がピー助君を襲…うというと言葉が悪いのであれだが襲うとしか言い様がない。

 あれ…だとするとピー助君このままイギリスに帰らなかったら翼さんに刺されるんじゃ…

 まあ流石にそれはね…

 好きだから刺すってよく分からないし。

 

「ピー…」

 

「ピー助君お腹空いたの?」

 

「ピ」

 

「3時か…おやつの時間だね!」

 

「ピー!」

 

「デース!」

 

 ピー助君も切歌ちゃんも乗り気だ。

 食堂で何か甘いものでも…

 

「切ちゃんはさっきチョコ食べたでしょ」

 

「お前もさっきトレーニング後のおにぎりは美味しいね~とか言ってなかったか?」

 

「い、いやーそれはほら、ね?」

 

「あ、甘いものは別腹デスよ…」

 

 こうして日常が過ぎていく。

 このまま平和に暮らせたらいいんだけどな…




闇魏羅珠等の漢字表記は本作オリジナルとなりますのであしからず。
結構字が被ってるんでそんなにオリジナル要素ないというか、バランにいたってはバラゴンからゴ抜いただけっていう…

オマケ 出張ガイガン 
新アヴェの世界 タッツマン氏の作品

ピー助「はえーロボ君も転生したら人外に」

ロボ「いやーまさか同じような境遇の人がいるなんて思わなかった」

ピー助「お互い大変だなー」

ロボ「なー」

ピー助「…あのさ」

ロボ「なに?」

ピー助「モフっていい?」

ロボ「別にええでー」

ピー助「よっしゃ。(もふぅ)…おぅこれは癖になるぅ。えっダイブしていい?」

ロボ「全然オッケー」

ピー助「よぅし…それじゃあ…ふーじこちゃーん!!!」

グサッ(腹のノコギリが刺さった音)

ロボ「あああああああ!!!!!!!!」


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ピー助探検隊~幻の怪獣"魏怒羅"を追え!~

なおタイトルの内容は一瞬で終わるもよう。


 富士樹海…ここに護国聖獣伝に記される伝説の怪獣『魏怒羅』が眠っているという。

 早速我々探検隊は調査に向かったのであった…

 

「さ、流石自殺スポットとして有名というか…もうなんか雰囲気ばりばりだよ~…」

 

 隊員の立花響が体をさすり周囲の様子をそう形容する。

 確かに木々が鬱蒼として日の光もあまり射し込まず気温も低い。

 加えて自殺の名所として名高い。普通ならば立ち入ることすらないだろう場所である。

 しかし我々は屈してはならない。

 幻の怪獣『魏怒羅』を見つけるために──!

 

「ピー助君。あのさ」

 

 なんだね?

 

「その、なんていうか…気合い入ってるね」

 

 気合い?

 そりゃあもちろんこんな場所を歩くというのだからお気楽にはやってはいけない。

 しっかりとした装備を整えて行くべきなのだ。

 

というわけで現在のピー助の装備。

 

頭部 探検キャップ

胴体 探検家の服

アクセサリー1 双眼鏡

アクセサリー2 コンパス

オトモ 荷物係立花響

オトモ 胸部装甲雪音クリス

 

 さてそんなことをしている間に探検隊に試練が!

 大蛇だ!大蛇が出たぞ!(平均的なアオダイショウ)

 

「ちょーーーーっ!!?!?!無理無理!!!蛇は無理ィ!ク~リスちゃん!あとは任せた!!!」

 

「ざっけんな!!!あたしだって無理だこんちくしょう!!!!」

 

 えーなにやってるのさ二人共。

 蛇なんてほら、こーんなに大人しい生き物なんだよ。

 つアオダイショウ

 

「ああああ!!!!やっ、やめろピー助!それ以上こっちに近寄るんじゃねえ!!!」

 

「だだだだ駄目だよピー助君!危ないよ~!毒あるし咬むんでしょう!?ほら、早く離してあげて!」

 

 危なくないよ。

 アオダイショウ毒ないし。

 この子は大人しい性格のようだし今もマフラーみたいに俺の首に巻き付いている。舌をチロチロと出して俺の匂いを嗅いでいるようだ。簡単に説明すると蛇は口の中に鼻のような器官があり舌で匂いをとって口の中に入れているのだ。

 よーしよしよし。君はいい子だねぇ…目も真ん丸で可愛らしい。

 アオダイショウ…よーし今から君はアオちゃんだ。アオちゃんと戯れていると急にするすると俺の体をつたって地面に降りて俺を一度見ると草影の中に入っていった。

 …ついてこいと言っているようだ。

 アオちゃんのあとを追って草むらの中を突き進むとそこには…お地蔵様。

 それに、あいつの匂いがする。

 宇宙からやって来ましたといういかにもな匂いが。

 

「ピー助君一人で進まないで…ん?これはお地蔵様…?」

 

「みてえだな」

 

 ここだよ響ちゃん、クリスちゃん。

 ここに魏怒羅がいる。

 

「ここなの?ピー助君?」

 

 うん。

 どうやら眠っているようだけど。

 

「そんじゃおっさんに報告だな」

 

 通信端末をいじって司令に連絡を入れてくれるクリスちゃん。

 一応言っておくけど遊びに来たわけじゃないから。任務だからこれ。

 護国聖獣伝に記された、それぞれの聖獣が封印されたとされる地を調査せよというちゃんとした任務なのである。S.O.N.G.の主要任務の中に一応、怪獣の調査とかあるしね。最近は特に謎の地震とかがまた増えてきているし怪獣達の活動が若干だが始まっている。

 前に司令も言ってたけど超常を相手にするのがS.O.N.G. だからね。

 そんなこんなで最初の調査は終了っと…このあとここはどうするんだろう?封鎖区域にするとかするんだろうか。

 

「とにかく任務完了だ。ちゃっちゃと帰るぞ」

 

 はーい。

 早く帰ってご飯にしましょー。

 じゃあねアオちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の街を走る人影があった。

 黒い箱のようなものを大事に抱き抱えながら走るその背後で…何かが、弾けた。

 甲高い音が続く。

 音は人影を狙うかのように続き、地面からは火花が咲く。

 

「──私に、地味は似合わない」

 

 新たな敵は少しずつ、確実に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、本日は翼ちゃんとマリアさんのチャリティーライブというわけで私、ピー助はいま…

 

 

 

 

 

 

 クリスちゃんのお家に来ています!

 

 いやー始まる前から女子会で盛り上がっていますねぇ~。参加者みんなパジャマですよパジャマ!パジャマ女子会ですよ!

 あれ、俺いてもよかったのかな…

 なんか急に場違い感が…

 

「なに暗くなってんだよ!ほら、お前の飼い主がテレビに映るぞ!」

 

 抱きっ!むにゅう。

 これは…すごい。

 ッ!?

 テレビの向こうから殺気が飛んできたので止めよう。

 

「よかったのピー助?翼さんの近くにいてあげたほうがよかったんじゃない?」

 

 別にいいんだよ未来ちゃん。

 翼ちゃんは俺離れしたほうがいいんだから。

 

「それにしても…まさかあのガイガンが翼さんのペットだなんて!」

 

「アニメじゃないんだから!」

 

「普段はこんなにちっちゃいだなんて思ってもみませんでした」

 

 さて、こちらの三人組は響ちゃんのクラスメートでお友達。

 弓美ちゃんとはオタクの同志として通じあったぞ。

 今度平成ライダーについて語り合うんだ。

 

「あ、ほらピー助君始まったよ!」

 

 響ちゃんの言葉に思わず反応して一瞬でテレビに食い付いた。

 

「やっぱりなんだかんだ翼さんが好きなんだよね~ピー助君は」

 

 なんだよ響ちゃん。

 ニヤニヤして…俺をからかおうってんならただじゃおかないぞ。

 まあいいや。

 テレビに集中しよう。

 翼ちゃんとマリアさんの新曲か~あっ、この二人の髪型好き。

 スタイリストさんナイスやで。

 それにしても…飛んだり跳ねたりすげえや。

 ワイヤーとかは?えっないの?

 どういう仕組みなんや…マクロスか?マクロスなのか?

 そんなことを考えてながら見ていたら一曲目が終了した。

 ふむ…

 ──風向きが、変わったな。

 

「あ、おい!ピー助!どこ行くんだよ!…ってなんだよこんな時に…なにぃ!?」

 

 悪い風が、吹こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イギリスでは翼が謎の敵と交戦していた。

 自動人形(オートスコアラー)を名乗る謎の敵はフラメンコのような体術と大剣を駆使した戦法で翼を圧倒していた。

 装者として戦闘経験も豊富である翼をして化け物と言わしめるその戦闘力。

 シンフォギアの攻撃を受けてなお立ち上がるその頑強さ。

 そして翼の武器である剣は…この敵の前に無力であった。

 

「剣は剣でも私の剣は剣殺し…剣殺し(ソードブレイカー)

 

 翼の剣は、敵の剣によって殺された。

 予想外の事態に一度距離を取った翼は更に衝撃の光景を目にする。

 

「あれは…ノイズ!?どうして…!」

 

 マリアが驚愕の声を上げる。

 ノイズが現れるはずがない。

 先のフロンティア事変によりソロモンの杖、バビロニアの宝物庫と共にノイズは蒸発したはずなのだから。

 しかし、そのノイズがここにいる。

 翼は驚愕こそしたもののすぐに思考を切り替えノイズの殲滅に専念する。ノイズは危険な存在。存在そのものを許してはならない。

 ノイズとはこれまで何度も戦ってきた。

 いくらノイズを出そうが今更だと。

 

「貴女の剣。大人しく殺されてもらえると助かります」 

 

「そのような可愛げをッ!未だ私に求めているとは!…防人の剣は可愛くないと、友が語って聞かせてくれた」

 

「こ、こんなところで言うことか!」

 

 照れるマリアをよそにノイズに斬りかかる翼。

 逆羅刹を繰り出しノイズを一網打尽。更に翼の攻撃は止まらない。

 ノイズを一刀のもとに斬りふせ…ある一体のノイズを自身に向けて迫る腕ごと貫こうと刃先を突き出す。

 だが、思いもよらぬ事態が起こった。

 

(手応えが…妙だ…)

 

 翼がそう感じると、剣がノイズに触れた先から赤い粒子となって溶けていく。

 

「剣がッ!?」

 

 ありえない。

 翼は目の前の光景が信じられなかった。

 シンフォギアにはノイズの侵食を防ぐバリアコーティング機能が備えられており、これによりノイズに触れても装者とギアが炭素に変えられることはなかったのだ。

 だが現実はどうだ。剣が溶かされていく。

 そして、シンフォギアの要である胸元のペンダントが傷つけられた。

 すると剣だけでなく、身に纏うギアそのものが分解されていく。

 

「敗北だけでは済まさない…」

 

 敵が不敵に微笑んだ。

 このままでは目の前のノイズに殺られるとギアの最後の力を振り絞り刀を精製し斬り伏せる。

 これが最後の力だと、ギアはその装甲もアンダースーツも弾けた。

 

「翼ッ!!!」

 

 倒れた翼のもとへマリアが駆け寄った。

 本来ならば着ていたはずの服が戻るはずだがそれすらも戻らない。

 いかにこれが異常なことかをそれが知らせていた。

 

「システムの破壊を確認。これでお仕事は一段落ね」

 

 そう自動人形(オートスコアラー)は呟くと召喚したノイズを撤収させた。

 一体どういうつもりだとマリアは訝しんだ。

 殺すのが目的ではない…?

 敗北だけでは済まさないとは一体…?

 そのまま敵も撤収しようとするが…空から聞き馴染んだ咆哮が響いた。

 空から流星の如く腕の鎌で敵に斬りかかるピー助。

 敵は大剣で受け止めるがその衝撃で地面が弾け飛ぶ。

 

「ピー助ッ!!!」

 

 ──てめぇ、人の飼い主に何しやがった!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、残業のようですね…」

 

 残業?

 ああそうだよ…ちなみに残業代はでねえブラックだがなッ!!!

 身体を翻し、鞭のようにしなる尻尾による打撃を敵の胴体にお見舞いする。

 敵は吹っ飛んだが…妙な手応え。

 まあ、俺の一撃を受け止めたのだから人間でないことは分かっているのだが…

 

「ふふ、流石怪獣。私では相手になりそうにありませんのであの子に来てもらいましょうか」

 

 あの子?

 どの子だよ?

 

「貴方もよく知っている相手ですよ…正に因縁の相手。ずっと貴方に会いたくてうずうずしてたんですよ彼は」

 

 彼ぇ?

 悪いが俺にそっちの趣味はないぜ。

 こちとら5000年前から異性愛者なんだ!

 

「…それでは5000年ぶりの再会と洒落こんでください。あとは任せましたよ()()()()()()()()

 

 なっ…

 いま、こいつなんて…ッ!?

 突如、地面に魔法陣のようなものが浮かび上がりそいつは現れた。

 銀色の、人型…

 

「会いたかった…会いたかったぞ!ガイガン!!!」

 

 5000年の因縁が、俺の目の前に現れた。




結構飛ばしたけどまあええやろ(てきとう)
この作品読んでるのはシンフォギア見てきた人達だろうし(甘え)

オマケ 出張ガイガン
新アヴェの世界 協力タッツマン氏

これまでの出張ガイガン!

ピー助「ふーじこちゃーん!!!」

グサッ(腹のノコギリが刺さった音)

ロボ「あああああああ!!!!!!!!」

九つの世界を巡り、その瞳は何を見る
九つも巡れっかなぁ…?

ピー助「あー…いや、ごめん」

ロボ「ごめんじゃねえよ!!!ギャグ時空じゃなかったら重傷だこんちくしょう!!!」

ピー助「いや、モフリたくなる身体してるのも悪い…」

ロボ「なんだこら言い訳かこら」

ピー助「あ、いや、マジすいまっせんした…」土下座

 人外転生縦社会の図

響「大変だよロボ君!翼さんとクリスちゃんが敵に捕ま…え?なにこのペンギンみたいな生き物。ロボ君のお友達?」

ロボ「バウッ!?(なにッ!?)」

ピー助「ピー!(こっちの世界の響ちゃんチースチース!)」

ロボ「クリスちゃんが捕まったなら俺は行く。それじゃあな別世界の怪獣さん」

ピー助「いや、俺も行く。別世界だとしても翼ちゃんは俺の飼い主だ。飼い主の危機に待てはねえだろ」

ロボ「よし、それじゃあペットコンビ出撃だ!」

ピー助「しゃあッ!!!」

次回、新アヴェの世界最終回…?


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五千年の因縁

前話から一週間だと…
他作品書いたりリアル忙しかったりしてたんや…
あとみんな不要不急の外出はせずにハーメルンで面白い作品探して読んだりしよう!
ちっちゃいガイガンになってたとかオススメだよ!(ダイマ)
あとみんな忘れてるかなと思って補足するけど翼さんはピー助に対しては女言葉で話すのです。つまり素が出てるということ。それくらいの仲なんすねぇ…


「会いたかった…

 会いたかったぞ!ガイガン!!!」

 

 なっ…なんで、なんであいつがここにいる…

 奴は俺とメガロで倒したはず…

 

「驚いているなガイガン。まあ無理もないだろう。

 死んだと思っていたはずが生きているのだからな」

 

「まあ、な…けど、関係ないぜ。

 また地獄に送ってやるよ…!」

 

 地面を蹴り、砲弾のような勢いで一気にジェットジャガーに接近し鎌を振り下ろす。

 しかしこの攻撃はジェットジャガーがバックステップで後ろに飛び退いたことにより回避される。

 代わりに地面のアスファルトが砕け散る。

 大振りだったか…

 

「地獄に送ると来たか…だが、今のお前はたった一匹。

 仲間がいないとなにも出来ないお前が私を倒せるとでも…思っているのかぁッ!!!」

 

 ッ!?

 ジェットジャガーが迫る。

 一瞬で懐に潜り込まれ…

 

「ガッ…!」

 

 強烈なボディブローが体を襲う。

 外も、中も。

 今の攻撃が響かなかったところはない。

 そこから繋がる拳のラッシュ。

 俺は奴のサンドバッグに成り下がっていた。

 

「再び目覚めた時から私は命を…君のことを考えない日はなかったッ!!!

 さあ教えろガイガンッ!命とはなんだッ!?」

 

 気持ち悪いことを言いながら俺を殴り続けるジェットジャガー。

 こんな奴と因縁が出来てしまったのが運の尽きか?

 

「ピー助ッ!!!」

 

 ラッシュの終わりに殴り飛ばされ、地面にキスするのと同時にマリアさんの声が響いた。

 

「ピー助?今はそんな名前で呼ばれているのか?

 笑わせるな!アホみたいな名前だな!!!」

 

 …今、こいつはなんと言った?

 アホみたいな名前と、言ったのか?

 

「ッ!?」

 

 次の瞬間、ジェットジャガーは強い衝撃に襲われた。

 一体、何が、と考える暇もなく攻撃は続く。

 正面、左、上、右、後ろ。

 五つの方向から迫る殺気、攻撃。

 ジェットジャガーは耐える。

 耐えて、反撃の機を狙う。

 そして、僅かな攻撃の綻びの隙を突きカウンターパンチを繰り出すが…

 

「身代わりだとッ!!!」

 

 ポンと小気味良い音がなるとガイガンの姿は白煙に包まれ丸太に姿が変わる。

 忍法、身代わりの術。

 忍法といえばと思いつく技の中でもポピュラーな技ではあるが、実際にそれを行うことなど、ましてや怪獣が行うなどジェットジャガーは予想もつかなかった。

 それでは、本物のガイガンはどこに…?

 上か?後ろか?右か?左か?

 いや───

 

「正面だッ!!!」

 

 先程の身代わりが暴露した時に発生した白煙を切り裂いてガイガンは現れた。

 赤いバイザーを輝かせ、ジェットジャガーに拡散光線「ギガリューム・クラスター」が放たれる。

 赤い光線が散弾の如く破裂しジェットジャガーの装甲を溶かす。

 

「この力、一体どこから…」

 

「てめえは…てめえはッ!!!

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()() 

 

 その報いは受けてもらうッ!!!」

 

 ガイガンは激怒した。

 自身を拾ってくれた天羽奏からつけてもらった名前を馬鹿にされたことに。

 この怒りが爆発力となり、ジェットジャガーを上回ったのだ。

 

「ジェットジャガー。今日はこれくらいでいいでしょう。帰りますよ」

 

「ッ…さらばだガイガン。次見える時を楽しみにしておくぞ」

 

「待ちやがれッ!!!」

 

 ガイガンは追撃するが、ジェットジャガーと自動人形は魔法陣の中に沈んでいった。

 

 

 

 

「くそッ!」

 

 地面に鎌を振り下ろす。

 アスファルトは豆腐のように崩れるが、奴を倒すことは出来なかった。

 苛立ちばかりが胸にのしかかる。

 何故、あいつは生きている。

 奴の目的は?

 

「ピー助ッ!無事ッ!?怪我はしてない?」

 

 マリアさん…

 怪我は別に大したことはない。

 それよりも、翼ちゃんは…

 って、あそこで斬鬼さん(知らない人は要チェック)晒してるまんまやんけ!

 なんか布!隠せる布!

 あっ!マリアさんその衣装の特に機能はしていない薄ピンクのオシャレ腰布ちょうだい! 

 

「きゃ!?ちょっとピー助ッ!」

 

 何故か顔を赤らめるマリアさんだが気にせず布をゲット!

 すぐに翼ちゃんのところに駆け寄りおっぱ…って言うほどない胸と下半身に布を被せて…

 

「んっ…ピー、助…」

 

 翼ちゃん!

 大丈夫?怪我とかない?

 

「私は、平気。ピー助も大丈夫そうね…よかった。ところでなにか失礼なこと考えていなかった?」

 

 ひゅ~ひゅひゅひゅ~(口笛)

 いや~そんなこと全然ないよ~。

 

「…そう。なら、いいけど。これはピー助がかけてくれたの?」

 

 さっきのオシャレ腰布を見て、翼ちゃんは俺に訊ねた。

 まあね~!(自信たっぷり)

 ただ手がこんなんだから結ぶとか出来なくて掛けてるだけだからそれはご了承ください。

 

「ありがとうピー助。助けてくれて。来てくれなかったらどうなっていたか…」

 

 そう言いながら翼ちゃんは俺の首を撫でてくれた。

 くすぐったい。けど、気持ちよくて嬉しくなってしまうのだ。

 ペット根性マシマシなのである。

 まあ、翼ちゃんのことを飼い主と思っているし今さらか。

 翼ちゃんはかけられた布を巻いて即席の服にして…

 なんか、こう野性的というかなんというかキングコングと相性が良さそうな格好。

 翼ちゃんならきっとコングとも渡り合えるだろうと司令に連絡を入れる様子を見ながら想像する。

 それにしても、シンフォギアを分解するノイズだなんて…

 シンフォギアにはノイズの分解作用を防御するとかなんとかなものがついているのに。それすらを突破するノイズが現れたらいくらシンフォギアでも…

 実際にアメノハバキリは破損したと見て間違いなさそうだし… 

 ん?なんだあの車達。

 黒塗りの車が大軍で押し寄せて俺達を取り囲むように停車した。

 するとグラサンをかけたスーツの男達が出てくること出てくること。

 ヤクザか?

 ヤクザなのか?

 実物をこの目で見るのは初めてだ。

 などと興奮していると全員が全員、拳銃をこちらに向けてくるではないか。穏やかではない。

 四方を囲まれて、尚且つ纏えるシンフォギアがない今二人は危険。 

 俺が守るしかない。

 二人を庇うように立ち、低く唸る。

 警戒、敵意を感じると自然と出てしまうのだ。

 

「状況報告は聞いている。だが、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。君の行動制限は解除されていない」

 

 黒服の一人がそう言った。

 こいつらが用があるのはマリアさんか…

 マリアさんはフロンティア事変を起こした後、世間的には国連所属のエージェントとしてアナキストの野望を阻止するために潜入していたなんてことにされている。

 そして世界を救った英雄、歌姫として祭り上げられてしまっているのだ。更に行動制限までついているから、なるほど。状況から察するに敵が現れたので翼ちゃんと行動していた。だけどそれは行動制限の範囲外だったというわけでのこいつらか。虫酸が走る。

 さっき口を開いた黒服に向かって吼えると黒服達は狼狽え、銃口を俺に向ける。やんのか?

 

「ピー助、やめなさい」

 

 他ならぬ、マリアさんに止められた。

 そして、マリアさんは翼ちゃんが使っていた通信機を借りると司令に向かってこう言ったのだ。

 

「風鳴司令。S.O.N.G.への転属を希望します。ギアを持たない私ですが、この状況に偶像のままではいられません」

 

 マリアさん…

 ひとまず、ここで起こったことはこれで終わりと言っていいだろう。

 マリアさんも大人しく黒服についていったし、翼ちゃんもそれに同行するし…

 さて、日本に帰るか。

 宇宙まで行ってひとっ飛…びぃ!!!

 飛ぼうとした瞬間、首に何かが巻き付けられて勢いが殺され地面に思いっきり叩き付けられた。

 なんていうの?プールの飛び込みに失敗して腹からいっちゃったやつ。あれの固いコンクリートバージョン。

 

「どこに行くのピー助?」

 

 そこには、鎖を握る翼ちゃんがとびきり満点の笑顔で立っていた。

 周りから見たらとっても素敵な笑顔かも知れないけれど、俺からしたら恐怖でしかなかった。

 

 いやぁ翼ちゃんちょっと散歩でもしようかと…

 

「その姿のままで?散歩ならこれから私が連れていってあげるわ。毎日」

 

 毎日!?

 や、やべえ…この首輪を脱け出すには…

 ちっちゃくなればいいたたたた!!!

 ちっちゃくなるのと同時に輪を締められて結局逃げることは叶わず。

 このまま俺は、イギリスで監禁されるのであった。

 あとから鎖斬ればよかったやん!と後悔に苛まれたのである。

 ホントに、俺ってバカ…

 

 

 

 

 現在、飛行機の中。

 世界の歌姫を乗せるとあってかそれなりのグレードの飛行機のようだが俺は全く空の旅を楽しめていなかった。

 何故なら…

 

「翼、ピー助をこちらに寄越しなさい。

 もう交代の時間よ」

 

「なにを言う。さっき時間を守らなかった者が」

 

 翼ちゃんの膝の上で弄ばれながら長い長い空の旅…

 おかしい。

 この身には空を飛ぶための羽があるというのに、飛行機に乗っているなんて。

 魚が潜水艦に乗っているようなものだ。

 こんなにおかしい話はない。

 

「…ピー助さん。僕の機内食あげましょうか?」

 

 緒川さん…

 いただきます…

 緒川さんの隣の席にすぐさま移動し機内食を貪り食う。ストレスによるやけ食いだ、許してくれ。

 

「また食べ物に釣られて…

 私より食べ物がいいというのピー助!?」

 

 いや、翼ちゃんは大事なんだけど、こう、ね?

 わかる?

 わかってくれるでしょう?

 緒川さんだって分かってくれているんだしもちろん分かって… 

 分からない?

 そいつは残念なことで。

 俺はね、もっと翼ちゃん自身がね客観的に自分を見てくれたらいいなと思っているわけでして。例えば、こう監禁したりだとか行動制限したりとか自分がされたらどう思うのかとかやってほしいわけ。

 決してね、翼ちゃんが嫌いとかそういうわけじゃなくて俺は翼ちゃんに成長してほしいわけですよ。

 獅子は子を谷へ突き落とす的なね。

 そういうあれで…

 えっちょ翼ちゃん泣かないで。

 あれだからCAさんとか見てるから。

 え、なにその目は。

 俺が泣かせたみたいなその目はなんですかCAさん!

 マリアさんまでなにそのクラスで泣いてる女の子慰める女子みたいなことして…

 

「ピー助。翼に謝りなさい」

 

 なんでこんな機内で学級裁判みたいになってんの!?

 こんなん小学生以来だわ!

 間違ってドッジボールで女子の顔面に命中させた時以来だよこんなん!もう五千年以上前の話だわ!

 こうなったら緒川さんになんとかしてもらおう。

 緒川さんこの空気をなんとかし…寝てる。

 嘘だろ、起きて、起きてよ緒川さん。

 今、この場で唯一の常識人である緒川さん(自分のことは常識怪獣だと思っている)が寝てしまったらこのあと一体どうなってしまうの!?

 次回、ピー助死す。

 デュエル、スタンバイ!

 じゃねえだろぉぉぉぉぉ!!!!!

 死んでんじゃねえか俺ッ!

 流石にそろそろ甦るのは無理そうだわ!

 

「ぐすっ…ピー助…ピー助ぇ…」

 

 うぐっ…

 泣いてる翼ちゃんを見ると胸が痛むのだ。

 奏ちゃんが亡くなってからは毎日のように隠れて泣いていたのを俺は知っているし…

 …相変わらず、泣き虫なんだから。

 手のかかる娘だ。

 ひょいと席から降りて翼ちゃんの元に駆け寄りジャンプして翼ちゃんの膝の上へ。

 

「…ピー助?」

 

 ふん。

 こんなサービス滅多にしないんだからな。

 モフるなりぷにるなりなんでもしやがれってんだ。

 

「ピー助は優しいね…」

 

 優しく首や顎の下を撫でる翼ちゃん。

 まったくこれで落ち着いて…

 ここで、俺はあることに気付いたのである。

 翼ちゃんのこの顔は…

 

(全て、計算通り…)

 

 嵌められたッ!?

 今の全部演技!?

 とんだ大女優様だ…

 これは歌だけじゃなく女優としても世界に羽ばたけるぞ…

 翼ちゃんの作戦はこうだ。

 自分が泣くことで俺を抱っこしたいマリアさんにやれやれしょうがないわねといった感じに自分に譲るように誘導し、CAさん達にも俺が泣かせたみたいな空気を作り出すように仕向け、俺をいたたまれない気持ちにさせることで俺をずっと膝の上に乗せるという謀略を謀ったのだ。

 しかしこれには相当の覚悟がいる。

 いい歳して人前で泣くということをしなければならない。更に、急に泣き出したあいつヤバくね。的な風に思われてしまう可能性が非常に高い。

 そういったリスクを背負ってまでも、翼ちゃんは俺を占有したかったのだ。

 翼ちゃん…恐ろしい、子…

 こうして俺は日本に着くまで翼ちゃんの膝の上にいることとなったのである。

 

 

 

 

 日本に着いて早々、クリスちゃん達が保護したエルフナインという少女のお話をみんなで聞くことに。

 なんでも自分はホムンクルスで自分を作ったキャロルなんとかかんとかうんたらかんたらは世界を分解しようと企んでいるらしい。

 それを阻止するために魔剣ダインスレイフの欠片を持ってきたとか。

 これを使えばあのノイズ(アルカノイズという)の分解も防げるらしく、シンフォギアの性能を強化するプロジェクトイグナイトなるものが発令、まずは破損してしまったアメノハバキリとイチイバルを強化改修を行うという。

 などと長々と説明したが今とても面白いことが起こっている。

 

「こいつがロンドンでアメノハバキリを壊したアルカノイズ?」

 

 クリスちゃんが翼ちゃんから手渡されたスケッチブックを見てそう言った…ぶっ…笑いを堪えるのがもう…

 

「ああ。我ながら上手く描けたと思う」

 

 自信満々に言う翼ちゃん…

 ぷーっもうダメ笑う!笑っちゃう!

 

「アバンギャルドが過ぎるだろッ!?現代美術の方面でも世界進出するつもりかぁ!?」

 

 俺も空からぼんやりと見たくらいだからあれだけど流石にあんなノイズいなかったってぇ!

 なにをどう見たらそうなるの!?

 同じものを見たはずなのに翼ちゃんにはそう見えていたの!?

 そういえば昔親父(絵が上手い)とお袋(絵心ない)がなんだったか忘れたけど同じものを見て絵を描いたのだが…

 

「同じもの見て描いたはずなんだけどこうも違うのは…やはり人によって見え方が違うということなのかもしれない」

 

 と親父なりの学説を打ち立てていた。

 冗談だろうけど。

 けど妙に信じたくなってしまう話だったな。

 ちなみに俺は絵心は普通レベル。

 翼ちゃんよりは描ける自信がある。

 

「…ピー助。なにをそんなに笑っているの?」

 

 やっべ、腹抱えて笑っているのに気付かれた。

 逃げろ!

 

「こら!待ちなさいピー助!」

 

 ひゃー!翼ちゃんが追っかけてくるぅ!

 気分はさながらトムとジェリー。

 けど悲しいかな、この世界はあの世界より物理法則が仕事をしている。

 あんな面白おかしく逃走出来るわけもなく無事に捕まりましたとさ。めでたくないめでたくない。

 

 

 

 

更に数日後。

 

 現在、正式なシンフォギア装者でギアが無事なのは響ちゃんのみ。翼ちゃんとクリスちゃんはギアを改修中だし、調ちゃんと切歌ちゃんはそれぞれにあったLiNKERがないのでギアの使用は危険と判断されたためギアの使用禁止。マリアさんはアガートラームを持ってはいるが元々壊れていたものなのでそもそも起動が出来ない。

 というわけで何かあったら即応出来るのが実質響ちゃんと俺だけの二人のみ。

 しかし響ちゃんには学校もあるため自然と本部で待機しなければならないのは俺ということになる。

 それにしても…大丈夫かな響ちゃん。

 最近元気がないようだし…

 あとで一緒に遊んであげよっと。

 

 

 

 

 さて、本部でただ待機していても暇でストレスが溜まるので久しぶりにプロのトリマーさんに来ていただいています。

 なんにも起きないね~。

 平和でいいね~。

 暇だね~。

 

「まあなにも起きないのがいいことよ」

 

 久しぶりにシャンプーしてもらってます。

 もちろんプロのあの人に。

 いやー流石プロっすわぁ。

 

「それにしてもピー助君久しぶりだね~。ニュース見たよ~元気にしてた?」

 

(こいつ怪獣なのよね?あんなデカイの本当は?なにがどうしてこんなちっちゃくなってるの?…深く考えないようにしよう。全然連絡来ないから解放されたと思ったのに…けど報酬いいからやっちゃうのよねぇ。それに慣れれば結構可愛い…かも?)

 

 うーんまあ…ちょっと死んでたけど甦ったよ。

 甦る時間が結構かかったもんでして。

 

「死んでたってなに!?甦るのに時間がかかったって…もういいや、考えないようにしよう…」

 

 ざーっとシャワーで泡を流してもらった瞬間、警報が響いた。

 

「な、なに!?」

 

 あなたはここにいて!

 少なくともここは安全だから!

 トリマーさんをシャワー室に置き去りにして司令室へと駆ける。

 一体なにが起きたというのか…

 司令室に入り、モニターを見ると響ちゃんと響ちゃんの友人達がアルカノイズに囲まれている。

 そして…自動人形…

 ロンドンで会ったのとは別のタイプ。

 青い装束を身に纏っている。

 それにしても…何故、シンフォギアを纏わないんだ?

 人質を取られて動けないとか…?

 

『歌えない…聖詠が胸に浮かばない…』

 

 通信機から聞こえてきた響ちゃんの声。

 歌えない…

 それは装者にとって死活問題だ。

 歌わなければギアは起動しないのだから。

 これはヤバいと司令から命令が出る前に響ちゃんのガングニールの気配を辿って急行しようと司令室を出るとちょうどマリアさんと鉢合わせた。

 

「何が起こっているの!?」

 

 響ちゃんがピンチなんだ!

 それだけ言ってマリアさんを横切って走るとマリアさんがついてきていた。

 

「私も行くッ!」

 

 …ギアがないマリアさんを連れていくのは危険かもしれない。

 だけど、戦闘以外にも出来ることはあるはず。

 掴まって飛べば連れていけるか…

 行こう!マリアさん!

 

「ええ!行くわよピー助ッ!」




オマケ 出張ガイガン
新アヴェの世界 協力タッツマン氏

これまでの出張ガイガン!

ロボ「ごめんじゃねえよ!!!ギャグ時空じゃなかったら重傷だこんちくしょう!!!」

ロボ「よし、それじゃあペットコンビ出撃だ!」

ピー助「しゃあッ!!!」

九つの世界を巡り、その瞳はなにを見る
九つも巡れっかなぁ…?


ロボ「ここが敵の居場所か…」

ピー助「なんか特撮でよく見る採石場だな…」

???「来たな。わざわざ罠にはまりに来るとはバカな奴等だ」

ロボ「誰だ!」

???「私は煉獄大使。二次創作のオリ主抹殺を掲げる大ジョッカーの大幹部だ!」

ピー助「大ジョッカーって、え?大丈夫?煉獄大使とか大丈夫?色々パクってない大丈夫?著作権とか大丈夫?」

ロボ「二次創作になにを今更」

ピー助「てかオマケでそんな急に敵が出てこられても困るっていうかオリ主抹殺とかメタいっていうか…一応俺メタネタはしないようにしてたんだけど」

煉獄大使「ええいうるさい!お前達オリ主は全て消え去るがいい!出でよ!大ジョッカーロボ!」

ロボ「え、なにあのロボ」

ピー助「ぷっ」

ロボ「おいこらなに笑ってんだ」

ピー助「いや、なんでもないっす」

人外転生縦社会の図

煉獄大使「さあやれ大ジョッカーロボ!究極のオリ主抹殺ビームをくらえ!」

ロボ「なんて間抜けな名前!」

ピー助「けど当たったらまずそう!」

大ジョッカーロボ バー(ビームの音)

その後なんやかんや戦闘して

ロボ「くそっ見た目と技名のわりに強い…」

煉獄大使「そろそろトドメだ!やれ大ジョッカーロボ!」

大ジョッカーロボ ビー (ビームの音)

二人(?)「うわぁぁぁ!!!」

煉獄大使「はっはっは。所詮オリ主。ましてや人外であるお前達など原作ヒロインとイチャコラも出来ない欠陥主人公よ」

ピー助「ふざ、けるなよ…」

煉獄大使「なに?」

ピー助「確かに俺達人外転生物はよくあるといえばあるが普通に人間として転生した作品に比べたら少ないしニッチな業界だよ…原作ヒロインとイチャコラ出来ない?お前、ちゃんとこいつ(ロボ)の話読んだことあんのかよ。こいつはなぁ少なくとも俺なんかより全然ヒロイン…とりわけメインヒロインのクリスちゃんとイチャコラしてんだよ。どっかの翼ちゃんとは大違いで真っ当にイチャコラしてんだよ。大してこいつのことを知らないような奴に、欠陥主人公だなんて言われる筋合いはない!」

煉獄大使「お前は一体なんなんだ!?」

ピー助「通りすがりのガイガンだ、覚えておけ」

ロボ「ピー助!」

ピー助「ああ!」

ピー助「FINALWARS」

ロボ「エクスドライブ」

 FINALWARSとなったピー助とエクスドライブ(っぽいやつ)を発動し体毛が白く、背中から鎌の生えたロボが並び立つ。

ピー助「一気に決める!」

ロボ「背中に乗れ!」

煉獄大使「一体なにを…!」

ピー助・ロボ『双・遥かなる者への斬罪』
 (フリーレン・シャルフリヒター)

 無数の刃が大ジョッカーロボを切り刻み…

大ジョッカーロボ「もっと、出番、欲しかった…」

 荒野に爆炎が舞い上がった。

煉獄大使「おのれ…次の世界。次の世界では必ず…」

つオーロラカーテン

ピー助「あっ待ちやがれ!…行っちまった」

ロボ「まあなにはともあれ終わったということで」

ピー助「まあ、それでいいか…ところでクリスちゃんと翼ちゃんはどこに…」

ロボ「さあ…ん?あれは…」

クリス「おい先輩!そんなに急いでどこ行くんだよ!」

翼「ピー助が来ているのだ!今度こそ逃がさない…!」
並行世界の自分と記憶共有済

ピー助「ひえっ早く逃げたろ!それじゃあまた会おう!狼王ロボ!」

つオーロラカーテン

ロボ「また機会があればな~」

クリス「ロボ!来てくれたのか!」

ロボ「バウ」

クリス「ありがとなロボ。帰ったらいいもん食わせてやる」

ロボ「バウっ!」





ピー助「ふー危なかった危なかった…まったくどこの世界でも翼ちゃんは翼ちゃんだな…」

ネフィリム「なんだこのペンギンモドキは…」

ピー助「ふぁっ!?ネフィリムやんけ!あん時の恨みや!大人しく殺されやがれぇぇぇ!!!」

ネフィリム「ふぁっ!?急に襲いかかってきた!?」

次回 俺は誰かって?ネフィリムだよクソッタレの世界
再びタッツマン氏作品の世界…
こちらも大好きな作品です。
もしコラボ可な方いらっしゃったらご一報ください…
別に人外転生に限ってませんので…
せめて九つの世界はまわりたいんや…
仮に九つ以上になっても元ネタみたいにいくつもの世界を巡りに文言変えればいいし…
あと今回出てきた大ジョッカーも別に関係ないんで…
こんな便所のクソみてえな作品とコラボなんかするかマヌケがぁぁぁ!!!という方はぜひスルーでお願いします…


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登場回数の少ないフォームっていいよね。俺はトリニティフォームが好き

前書きオマケ

議員「ピー助さん!翼さんの胸が大きかったら新アヴェの世界に留まっていたのではないかという疑惑が浮上しましたがこの件についてどう思われますか!?」

ピー助「えー。胸が大きい翼ちゃんはそれはもう翼ちゃんでないと、私は思うわけでありまして。いいですか、胸が大きい翼ちゃんは翼ちゃんではないのです。胸が小s、えー、胸が普通の翼ちゃんと胸が大きい翼ちゃんではですね、クウガとアギト。いいですか、クウガとアギトくらい違うのです。翼ちゃんを翼ちゃんたらしめるのはですね、胸の小さs…」

翼「ピー助」


 響ちゃん救援に飛び立ったわけなのだが…

 わけなのだが… 

 

「ピー助!もっと速度出せるでしょう!」

 

 そうは言ってもねマリアさん。

 マリアさん運んでる分慎重にならざるをえないわけでして。

 普通に車に乗ればいいのに。

 運転出来るんだし。

 今の状態はクウガ運んでるゴウラムとまったく一緒。

 あれ、だったら射撃メインのクリスちゃんを運んで空から狙撃してもらった方がいいのでは。

 その方がクウガっぽくていい。

 よっしゃクリスちゃん連れてこよう。

 というわけでマリアさんはこの辺にポイーで。

 

「ピー助ぇ…私を降ろそうとしたってそうはいかないわ…」

 

 いやぁぁぁぁ!!!!!!

 やめて!そんな絶唱顔で俺を見ないで!

 ホラーは苦手なんや!

 

「ちょっとピー助揺れないで!ごめん悪かったから!怖い顔をしたのは謝るからぁ!この高度から落ちたら流石にヤバイ!」

 

 だったらこんなスタイリッシュ移動法なんてしなければいいのに。

 この人無駄にスタイリッシュというかエレガントというかカッコつけたがるというか…

 ほんと、ポンコツ臭漂ってるわ(嘲笑)

 

「ピー助?」

  

 いや、なにも失礼なことなんて考えていませんとも。

 当然じゃないですかハッハッハ~…

 っと、あれだ!

 響ちゃんがお友達達と絶賛逃走中!

 って、響ちゃんずっこけた!?

 しかもペンダント放り投げちゃってるし!?(怪獣の超視力で観測)

 

「ピー助!」

 

 応とも!

 FWを起動させて拡散光線を撃ちながらマリアさんが安全に降りられる高度にまで下がっ…えぇ!?飛び降りた!?

 自殺願望でもあったんか…

 そういえばロンドンで録画したマリアさんが宣戦布告する時の映像見てるのバレた時にめっちゃ恥ずかしがって死にたいって言ってたな…

 大丈夫、人間みんな黒歴史のひとつやふたつあるからさ、人間なんて黒歴史の塊だから。

 俺なんて絶対成功するって思った相手(幼馴染み)に告ってフラれたとかあるからさ。おかげで地元に帰り辛かったぜ!

 ちなみに理由は「なんか、そういう目で見れない」らしい。 

 ちくしょー!思い出したら身体中から火が噴き出しそうだ。

 ノイズ共、俺の鬱憤晴らしに付き合ってくれや。

 

『Granzizel bilfen gungnir zizzl』

 

 ん?この聖詠は…

 マリアさん!?

 なるほど、さっき飛び降りたのはペンダント拾うため…

 てか、マリアさんLiNKERなくて大丈夫?

 

「くっ…」

 

 大丈夫じゃないっぽい(確信)

 ノイズ相手にはいいかもしれないけど、あの青い人形相手には厳しいだろう。

 …一か八かやってみるか?

 マリアさーん!

 

「ピー助、あの自動人形をこのまま…」

 

 ちょっとくすぐったいぞ(唐突)

 

「え、な、なに!?」

 

 マリアさんの背中に回り込んでガングニールと同調開始っと…

 ちわーっすガングニールさん三河屋でー…じゃなかった。ガイガンでーす。ちょっと合体(意味深)させてもらっていいすか?

 え?ダメ?

 そこをなんとか…奏ちゃん繋がりということで…

 ちょっと待て。いまなんつった?

 セクハラペンギンモドキだと?

 誰がいつお前にセクハラしたって?ええ?

 …ずっと胸ばっかり見てた?

 マリアさんと響ちゃんの?

 …

 ……

 ………

(事実のためなにも言い返せない)

 と、とにかく、響ちゃん達もだしマリアさんも助けると思ってここは協力してくだせぇお願いします。

 え、まだ拒否るの?

 こんなに頭下げてるのに?

 だったらこっちも言わせてもらいますけどねぇ!

 あんただってマリアさんから響ちゃんに寝返った浮気野郎じゃん?

 それをお前さ、響ちゃんのピンチになにもしないで今はあれだろ?マリアさんに力貸してんだろ?

 そういうのどうかと思うな~俺は。

 あれか?俺の撃槍響ちゃんのが気持ちいいや~的な感じで寝返ったのか?それで今はたまにはマリアさんの方のもいいな的な感じなんだろ?お前は下半身の撃槍で生きてんのか?(ガングニールさんは別に男ではない)

 確かに響ちゃんには最近覚悟的なの足りないかもしんないけどさ、おもいっきりピンチだったじゃん。俺達来なかったらヤバかったかもしんないじゃん。

 教育的指導みたいなもんで響ちゃんに応えないのはいいけどさ、その響ちゃんが死んだら駄目じゃん。

 

 とにかく捲し立てるピー助。

 ガングニールはその勢いに反論することが出来ずにいた。

 もとより多弁なところのあるピー助は一度調子に乗ると次々と言葉の弾丸を連射するマシンガン。

 そして…

 

 というわけで、合体しようや。

 

 ガングニールは敗北した。

 この間、現実世界では0. 1秒。

 ガングニールのシンフォギアとガイガンは合体し、新たなギアが生まれるのです(ガオレンジャー並感)

 

「これは…ガイガンギア!」

 

 黒いガングニールのシンフォギアにガイガンの意匠を象った装甲が追加され、より鋭角的な印象を見る者に与える。

 黒いマントが風に靡いて、ノイズ達を威圧し圧倒する。

 

「行くわよ、ピー助ッ!」

 

 槍を振りかざし、マリアは敵に向かって駆け出した。

 

 

 

 S.O.N.G.司令室でもガイガンギアは観測されていた。

 データの少ないガイガンギアのデータを取るためオペレーター達はフル稼働していた。

 

「マリアさんの適合率上昇…まさか、ピー助君が合体したことによって?」

 

「適合率が上昇したならギアからのバックファイアも軽減されます!」

 

「頼んだぞピー助、マリア君…」

 

 

 

 

 おっしゃ意外となんとかなるもんだな。

 これであとはこの変態浮気野郎からマリアさんに送られるバックファイアをこっちに回してと…

 なに?自分からダメージを受けにいくこのM豚め?

 ふん、お前のバックファイア程度で痛むような身体ではない!

 怪獣を舐めるなよ。

 神殺しだかなんだか知らんが俺だって神殺しぐらいしてらぁ!

 …まあ、トドメさしたのはゴジラさんですけど。

 けど大破にまではもってったから!

 実質俺だからメカゴジラ倒したの!

 まあこの話は置いといて…

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

 マリアさんが槍を振るう。

 更に鋭く、敵を貫き切り裂くことに特化した槍はそれだけではなく…

 刃が割れ、槍からまるでクワガタの顎のよう。

 そしてノイズ達を挟み、両断する。

 ああ、あの槍の穂先なんかに見えるなって思ったらあれは俺の顔を模したのか。

 なるほどなるほど。

 どおりでカッコいいはずだ(自惚れ)

 

「想定外に次ぐ想定外。捨てておいたポンコツが意外なくらいにやってくれるなんて」

 

 ポンコツ?

 いまマリアさんのことポンコツっつったのか?

 てめぇ許さねぇ!(さっきポンコツって言った怪獣)

 青い人形に向かい、突きを放つマリアさん。

 それに対して両手を突き出す人形。

 こいつも自殺願望者だった…?

 俺の冗談は当然のように外れる。

 突きだされた両手の手のひらの前に発生した障壁により穂先が阻まれる。

 

「それでもッ!!!」

 

 槍の穂先が割れて分離し、障壁を分断。

 がら空きとなった人形に目掛けて今度こそ槍を伸ばすが…

 

「なッ!?」

 

 手を出さなくても障壁は出るのかよ!?

 マリアさん一旦距離を取って!

 って、ああもう!

 驚いてるせいでこっちの言うことなんてまるで聞いてないし!

 こうなったら…

 

『マリア、運転を変わろう』

(クリス○ペプラーの声真似)

 

「えっ…」

 

 そうこうしているうちに、はい変わったー。

 どうも、初夏の昼下がりみなさんどうお過ごしでしょうか?ピー助です。

 私はいま、マリアさんの身体の主導権を握りあんなことやこんなこと…しませんよ?

 こいつの障壁を蹴って一度距離を取り、分離した槍の刃を呼び戻して装着。

 さて、ふりだしに戻したぞっと。

 

「お前は…」

 

「ふん…少しの間運転を交代させてもらった。いくぜ、性悪人形」

 

 人形に向かって駆け出し槍を上段から振り下ろそうとする。

 人形はさっきと同じように障壁を張ろうとするが…

 その瞬間、空高くに跳躍する。

 最大到達点につき、降下が始まると同時に槍を軸にしてマントで身体を包みドリルの如く回転して人形に向かって加速する。

 この技は…

 

『飛翔斬』

 

 もろパクリです本当にありがとうございました。

 だがこの威力。

 果たして受け止められるかな?

 握力×体重×スピード=破壊力だッ!

 ぶっ潰れよぉぉぉぉ!!!!!!!

 

「チッ…」

 

 もうなんかいろいろとごちゃ混ぜだがとにかくこの技を喰らってただではすまないだろ…ッ!?

 

「ぐっ…!?なにィ!?」

 

 突然、銀色の回転する物体が正面に躍り出て衝突。

 互いに弾け飛んで地面を転がった。

 

「ガイガン。そんな女の身体から離れてこの私と遊ぼうじゃないか」

 

「チッ…面倒なのが来たな…」

 

 口の中がジャリっとしたのでツバを吐き捨て立ち上がる。

 二対一。

 戦えないこともない。

 だが、マリアさんの身体を使って長時間本気で戦えば限界以上の肉体行使にマリアさんが傷ついてしまう。

 ここは一旦マリアさんから離れよう。

 

「っ…あ、私は…!?あいつはロンドンの!」

 

 これで二対二だけど…

 マリアさんの適合率の低さから来るギアからのバックファイアを受けながらでは厳しい。

 いくらマリアさんの戦闘力が高いからといってLiNKER なしでは長時間も戦えない。

 

「ぐあぁぁぁ!!!」

 

 ジェットジャガー、人形と睨みあっている間に限界が来てガングニールのギアは砕け散りマリアさんは地面に膝をついた。

 

「なによこれ?まともに歌えるやつが一人もいないなんて聞いてないんだけど!くっそ面白くない!ほら、銀ピカも帰るぞ」 

 

「私が用があるのはガイガンでね。シンフォギア装者などどうでもいい」

 

 くそ、本当に面倒な奴!

 疲弊したマリアさんが近くにいるっていうのにこいつと戦闘なんかしたら…

 

「あーもう電子音で言われても分かんないっての!マスターじゃあるまいし」

 

 …?

 あ、なるほどそういうことか。

 こいつらも意思の疎通は出来てないんだ。

 俺と装者のみんなみたいなもんか。

 まあ、俺の場合何故か勝手に伝わってる時が多々あるけど…

 

「とにかくガイガンは私が…マスター?…分かりました、帰投します」

 

 ?

 なにやら念話か通信かが来たようだが…

 

「今日のところは撤退する。あの性悪達の命令なら聞かんがマスターからの命令となれば話は別だ。君と戦うのはまたの機会とさせてもらう。そしてこれは忠告だが…その力、使いすぎない方がいい。身を滅ぼしたくなければな」

 

 どういう意味だ!?

 しかし、奴が答えるわけもなく魔法陣の中へと消えていった。

 くそ…一体なんだってんだよ…

 いや、きっと奴の戯れ言だ。

 気にする必要はない、はず…

 だけどなんだ、このざわつきは…

 とにかく今はマリアさん達だ。

 小さくなってマリアさんの元に駆け寄って…

 大丈夫マリアさん?

 

「ええ…ピー助のおかげでバックファイアはだいぶ軽減されたから…」

 

 そう言ってマリアさんは俺をぎゅっと抱き締めて…

 あ~柔らかいんじゃ~…

 じゃなくてこれは非常にまずい。

 こうなったらしばらくは離してくれないぞ。

 そして、マリアさんは立ち上がると響ちゃん達の方に歩み寄って…

 

「怪我はない?」

 

「はい…だけどマリアさんが傷だらけで…」

 

「歌って戦ってボロボロになって大丈夫なんですか?」

 

 この子達マリアさんのこと心配してくれて…

 なんか知らないけど俺が感動している…

 なんか最近、涙腺ゆるいんだよね…ぐすっ。

 俺の心配?

 そんなのええんやで。

 怪獣は頑丈だからな!

 なんて頭の中でふざけているとマリアさんが響ちゃんにガングニールを返そうとしたのだが、なんと響ちゃんが奪い取るような形で取ってしまった。

 なにもそんなマリアさんは返そうとしただけだというのに…

 

「これは誰かを助けるために使う力!わたしがもらった!わたしのガングニールなんです!」

 

 …なんというか、頭に血が昇っているな。

 響ちゃんもそれを分かっているようで小さくごめんなさいと呟いた。

 人助けが好きな響ちゃんらしいけど、その力は戦う力でもあるというのに。

 大体、戦うということを一括りにまとめすぎではないだろうか?

 大切なものを守るために戦うということだって出来るというのに…

 まあ、戦うことと暴力を振るうことはイコールだ。

 暴力を振るうことは悪いことだしそれを嫌うというのは分からなくもないが…

 …よし、そういうことならあれの出番だ。

 ちょっとみんな面貸せや。

 

「ピー助?」

 

 みんなで、鑑賞会や。

 響ちゃんを連行しろ! 

 

「ちょ!?未来!なにするのさ!?」

 

「なんか分からないけどを響を連行しろってピー助が!」

 

 流石未来ちゃん響ちゃんのこととあらば俺の意思を読み取ってくれる。

 さあこのまま本部に連行だ!

 

 

 

 

 

 

「また会議室に連れて来て今度はなにを見せるわけ…それに今回は縛られてるし…」

 

 えーごっほん。

 今回、君達は見てもらうのはこちらの作品です。

 ババン!

 

「仮面ライダー」

 

「555?」

 

「あれでファイズって読むのよ」

 

 その通り。

 流石、私の同士だ。

 というわけで再生ポチッとな。

 

「うわっ古っ。いつのやつこれ?」

 

「2003年!?うわーパパでも見てたかな~?」

 

 なんというか言葉の刃がグサグサと刺さる。

 確かにいま2044年だから高2の娘を持つ父親が見てたやもしれない感じか…

 俺の親父が初代とV3直撃世代だからそれと似た感じだろう。

 

数分後

 

「この人が主人公?」

 

「そうじゃない多分?」

 

そして

 

「えー!?事故だ!主人公事故った!?お父さんとお母さん乗せて!?」

 

さらに

 

「死んだー!?死んじゃったよ!?」

 

さらにさらに

 

「甦った!?え、目の色灰色ってなに!?」

 

 …あの、マリアさんあんまり強く抱き締めないでもらえますか?

 

「だってなによこれ子供向けじゃないの!?普通にホラーよホラー!?」

 

 …この人、ホラーダメなんだ。

 俺もダメだけどこれは特に…

 あとで驚かそっ!  

 てか医務室行かなくていいのかこの人?

 

ちょっと飛んで

 

「ねえ、未来」

 

「なに?」

 

「さっきOPでチラッと映ってた女の子、なんか親近感沸くんだよね。なんでだろう?」

 

「さあ…?」

 

数時間後

 

「守ることと戦うこと…ジレンマは終わらない、か…」

 

更に数時間後

 

『おい知ってるか?夢を持つとな、時々すっごい切なくなるが、時々すっごい熱くなる…らしいぜ。俺には夢が無い。でもな、夢を守る事はできる』

 

『Standing by』

 

『変身!』

 

『Complete』

 

「たっくんデェス!」

 

「夢の守り人か、彼もまた防人…」

 

「こいつなんやかんやいい奴だよな」

 

 そうだねクリスちゃん。たっくんは作中でも屈指の聖人だと俺は思うよ。

 …ところでみんないつの間に集まってたの?

 

『知ってるかな?夢っていうのは、呪いと同じなんだ。途中で挫折した者は、ずっと呪われたまま…らしい。あなたの…罪は重い』

 

「夢は呪い、か…」

 

 マリアさん…

 ここたっくんと木場さんの対比がなぁ…

 とにかくたっくんと木場さんは対照的なんだよな。

 たっくんは背負って、木場さんは逃げて…

 

更に数時間後

 

「この草加とかいう男…」

 

「うわぁ…」

 

(ドン引きデス…)

 

更に数時間後

 

『俺はもう迷わない。迷ってるうちに人が死ぬなら、戦うことが罪なら、俺が背負ってやる!』

 

「たっくん!」

 

「たっくん!」

 

「たっくん!」

 

 たっくん!

 …ってなるよねここ。

 ならない?

 

更に更に…

 

「アクセルフォーム…いい…」

 

「エルフナイン!イガリマに付けてほしいデス!」

 

「千倍に加速だなんて無理です」

 

「それにしたってもっとこの物語のキャラクター達はもっとコミュニケーションを取るべきでは?」

 

 ディスコミュニケーションで話が進むからね…

 井上先生の作品、特に555は…

 

「北崎…強い」

 

「更にデルタに変身しちゃった!?」

 

そして…

 

「終わったね…」

 

「忙しい最終回だったけど…」

 

「なんだか感無量と言うか…」

 

「巧が夢を見つけられてよかったデス…」

 

「ちょっとドロドロし過ぎてたかな…」

 

 まあ感想は各々あると思いますが…

 響ちゃん!

 

「は、はいっ!」

 

 …まあ、頑張れよ。(いい言葉が浮かばなかった)

 それじゃあ今日は解散って…

 なんでこんなにS.O.N.G.の職員が…?

 

「よし!定例レクリエーション終わり!お疲れ!」

 

 お疲れさまでーすとぞろぞろと職員達が会議室から出ていく。

 国連所属の組織がこれでいいのかなぁ?

 




オマケ

マリア「私もピー助と合体(意味深)しちゃった」
ドヤァ

翼「へぇ…」

出張ガイガンはお休み。


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言うべきことは早めに言った方がいい

感想、誤字報告ありがとうございます。
誤字は気付かなかったりするんで助かります。
それにしても劇場版ウルトラマンタイガ早く見たいンゴねぇ…
これ見ないと超全集買えないじゃないか、ネタバレめっちゃあるっていうし…
HFもなぁ…
桜の咲いてるうちに見たかった…
今期アニメも延期してるものがちらほらと。
とりあえずこの先はウルトラマンゼットを楽しみに待って過ごそう。
ウルトラマンゼット6月20日からスタート!
…結構先だな。
あとTwitterとブログ始めちゃった。テヘ♪
コロナのせいで暇過ぎて…
小説の裏話とか考えてるネタとかエッセイ的なもの書いたりとかする予定です。
Twitterの名前は大ちゃんネオなんで見たい人は探してみてください。
てめえのツイートなんか興味ねえ!という人はスルーでお願いします。


チフォージュ・シャトー広間

 玉座に座る少女、キャロル・マールス・ディーンハイムは配下である自動人形のガリィと回収し、改修したジェットジャガーの帰還を確認した。

 

「ガリィ」

 

「そんな顔しないでくださいよ~。ろくに歌えないのと、歌っても大したことない相手だったんですからぁ。あんな歌をむしりとったところで役に立ちませんて」

 

 相変わらず舌が回って表情もコロコロ変わる奴だ。

 

「自分が作られた目的を忘れていないならそれでいい…だが次こそはあいつの歌を叩いて砕け。これ以上の遅延は計画が滞る」

 

「レイラインの解放。分かってますとも。ガリィにお任せです」

 

「お前に戦闘特化のミカをつける。いいな」

 

「いいぞぉ!」

 

「そっちに言ってんじゃねえよ!」

 

 ようやくまともに動けるようになったミカがいれば万に一つも仕損じることはないだろう。

 だが、あれの対処だけはジャガーにやらせなければならない。

 

「あとジャガーもつける。装者を襲えばあの怪獣が飛び出てくるだろうからな」

 

 ジャガーに指示すると、電子音で了解と返事してきた。素直でいい奴だ。

 さて…今のところ順調に計画は進んでいる。

 この調子で進めばいいが、あの怪獣、ガイガンというイレギュラー。だが、こちらにはジャガーがいる。

 命令に忠実で、素直で、余計なことなど言わない。

 少々骨を折って「銀の海」より引き揚げた甲斐があったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ふぁ~…ねむ。

 今日も一日が終わる。

 さあ自分のケージに戻って寝よ…

 

「ピー助。一緒に寝るわよ」

 

 …ですよね~。

 別に一緒に寝るのが嫌なわけではないのだ。

 ガイガンの体はいろいろ危ないから翼ちゃんに怪我をさせないために別々に寝ることを推奨しているのだが…

 何故か怪我しないんだよなぁ…翼ちゃん。

 抱きしめ方が上手いというかなんというか。

 さて、脇から抱えあげられた俺はそのまま翼ちゃんとベッドイン。変な意味ではない。

 さて、寝よう。

 すぴ~…

 

 

 

 

 これが夢だということは分かっている。

 だって奏ちゃんいるし。

 翼ちゃんも若…幼いし。

 現在絶賛ランニング中で俺は速度を合わせて飛んでいる。

 

「ピー助はいいな、わざわざ走らなくていいんだから」

 

 そうは言っても飛ぶのも結構疲れるんや。

 走るのに比べたら全然楽だけど。

 

「それにしても、ようやくお前を外に出せるようになったな。と言っても、二課が保有してる土地の中でだけどな。それでもずっと狭いとこにいるよりは全然いいだろ?」

 

 そりゃもちろんさ!

 毎日調査という名目で体を弄られて辟易してたところなんだ。

 やっぱり生き物はお天道さんに当たってこそよなぁ。

 

「ようやく、ゴールだっ…はぁ~走った~!」

 

 お疲れ様やで。

 おっ、あんなところにちょうど良さそうな岩が。

 上に寝転んで日向ぼっこ!

 うつぶせに寝そべって羽を広げて…

 あ~気持ちいいんじゃ~。

 太陽エネルギー吸収中…

 

「気持ち良さそうだなピー助。そんじゃあたしも一緒に日向ぼっこでもするか…」

 

 奏ちゃんも地面にごろんと大の字になって寝た。いい感じの草っ原で寝るのにはちょうどいいだろう。

 

「そんなところで寝たら服が汚れて…」

 

「いいんだよ。別に気にならないし。それより翼も!」

 

「ちょ!?えぇ!?」

 

 奏ちゃんが翼ちゃんを引っ張って地面に寝かせた。わりと勢いよかったけど大丈夫?

 あっ、なんか和んでるから大丈夫みたい。

 それにしても気持ちいい…

 やっぱり太陽って偉大なんだなぁ。

 

 

 

 

 

 

「…助。ピー助、朝よ。起きなさい」

 

 むにゃむにゃ…

 あ^~日光が気持ちいいんじゃ^~

 

「起きなさい。でないといろんな意味で食べるわよ」

 

 はい!起きました!

 

「よし。じゃあ、ご飯用意するから待ってて」

 

 えっ…翼ちゃんが用意するって大丈夫?

 変なもの食べさせる気じゃない?

 

「頼んでいたものが昨日届いたの。ほら、ピー助の好きな海の幸よ」

 

 テーブルの上にドンと置かれた発泡スチロールの箱。開けてみれば鮑やら雲丹やら伊勢海老やら切り身やら…

 まさに玉手箱のような…

 

「どうしたのピー助?食べないの?」

 

 え、いや、食べるし嬉しいんだけど…

 朝からこれは重いというかなんというか…

 まさかそんなこれ全部が朝食なわけ…

 

「ちゃんと残さず食べるのよ。ほら、昼と夜の分もあるんだから」

 

 な、なんだと…

 あの発泡の山は全て海鮮食品だとでもいうのか!?

 で、あれ一箱が一食分…?

 気分がいい時ならいいけど平時からあれはちょっと…

 とりあえず、逃げよう。

 窓に向かってダッシュ!オープン!フライング!

 

「あ!こら!どこへ行くの!!!」

 

 あばよ~翼ちゃ~ん。

 俺は普通の朝食ってやつを食いに行ってくるぜぇ。

 

 

 てなわけで、

 

「んで、あたしのとこに朝飯食いに来たのか?」

 

 そうなんですよクリスちゃん。

 というわけでこの私めに朝食をお恵みください。

 

「ったく…学校行くって時に来やがって。ほら、魚肉ソーセージでいいか?」

 

 おー!お腹に優しい!

 そして朝食っぽい!

 

「はぁ…確かに先輩が重いのは分かるけど、あんまり先輩をないがしろにするんじゃないぞ」

 

 そりゃ分かってるんだけどさ…

 重くて重くて…

 木星並の重力だよあれ。GNドライヴ作れちゃうよ。

 まさか翼ちゃん、俺に太陽炉を搭載させるつもりじゃないだろうな。

 やるならツインドライヴでお願いします。

 え?一個でも充分だろって?

 バーロー、トランザムバーストして全裸空間作ればあんな人こんな人の全裸が見られぶっ!?

 

「な~に変なこと考えてやがる」

 

 デコピンされた…額のレーザー光線砲は大丈夫か…?

 それよりクリスちゃんはイノベイターかなにかで…?

  

「そんじゃ、あたしは学校行くからお前は本部に行けよ。それと、先輩にはちゃんと逃げたこと謝るんだぞ」

 

 はい…頑張ります。

 いってらっしゃ~い。

 さて、クリスちゃんを見送ったから俺も行くか。

 翼ちゃんのあれは…気持ちはありがたいけど、一人では食いきれなくて腐らせてしまうだろう。

 もったいない…

 

 

 

 

本部休憩室

  

 響ちゃん、クリスちゃんは学校。調ちゃん、切歌ちゃん、マリアさんはナスターシャ教授のお墓参り。

 ということはつまり…本部にいるのは翼ちゃんのみである。

 まあ、友里さんとか他の女性スタッフもいるけど基本的に忙しいので必然的に翼ちゃんに独占されてしまう。

 

「なるほどなるほど。ピー助は私が折角用意したご飯を食べたくないというのだな」

 

 いや、違うんや…ちょっとあれ一食分にしては多すぎるというか…

 

「たくさん食べるピー助を思って買ったというのに…いつからこんな我が儘になってしまったの…」

 

 我が儘というか、常識でものを考えてよ。

 あんな量食べられるわけないでしょ。

 

「なっ…そんな…ピー助のことを思って…」

 

 思ってくれるのは嬉しいけど、なんていうか翼ちゃんのは重いの!一方通行なの!

 自分の気持ちだけじゃなくて俺の気持ちも考えてよ…

 

「ピー助……」

 

 ……ちょっと、外の空気吸ってくる。

 それだけ言って、翼ちゃん一人置いて休憩室から出た。

 

 

 

 

 

 空を飛ぶ。

 空は曇って、今にも降りだしてきそう。

 夢で見たような晴天はどこにもなくて、ああ…気を紛らわせるために外に出て飛んでいるのに、空がこれじゃあ余計に滅入る。

 言い過ぎちゃったかな…少なくとも、嫌がらせのためとかじゃなく、純粋に俺のことを思ってやってくれたことだから、ありがとうぐらいは言ったほうがよかったかな。帰って、翼ちゃんとまた話そう。

 あ、降りだしてきた…

 ッ!?

 この感じ、ノイズが出たか!すぐに行かないと…

 

「ガイガァァァァンッ!!!」

 

「お前…こんな時にッ!」

 

 まったく、しつこい奴というものはいるものだ。

 それもなんてタイミングの悪い。

 

「早く拳を交えたいと、探した甲斐というものが…あったというものッ!」

 

「チィッ!!!」

 

 ジェットジャガーは加速し、拳を振り下ろしてくるが小さい体の俺には小回りという利点がある。そうそう当たってはやらない。そのまま奴の懐に潜り込んで、ここで巨大化!ジャガーの奴は弾け飛んだ。いい気味だ。

 

「ふん…それでこそ私のライバルだ」

 

「誰と誰がライバルだって?それにしてもお前、そんな日本語流暢だっけ?」

 

「私が引き揚げられたのは君よりもだいぶ前でね。ラーニングする時間はたっぷりあったのだよ」

 

 へぇ…俺よりも前に。

 

「で、どこで引き揚げられたんだ?」

 

「決まっている。君と君の相棒に殺されたあの地だ。そういう君は?」

 

 こいつ、多分知ってて聞いてやがる。

 

「…北海道沖」

 

「ハッ!なにがどうしてそんなとこまで流されたんだ?」

 

 そんなの俺が知りたいくらいだ。

 あれか?小さくなってたからめっちゃ海流に流されたとか?

 

「さて…お喋りはこれくらいにして。殺し合おうか」

 

「ああ…また殺してやるよ」

 

 俺は鉤爪を構え、奴は拳を構え、同時に、一気に加速してぶつかり合う。

 何度も鉤爪と拳は交差し、空を駆ける。

 空戦なら、俺に分がある。

 元より空を飛ぶ怪獣なのだ、空で負けるのはプライドが許さない。

 

「流石に速いな…」

 

 ふっ、そうだろう。

 

「そういうお前はついてこれてないな!」

 

 飛び回り、奴を撹乱して…背後を取り、鉤爪で叩き落とす。バランスを失い、ただ落ちていくだけの奴に更に追い討ちをかける。

 最近使っていなかった…回転ノコギリだッ!

 ノコギリが駆動し、刃が轟く。

 落ちていくジェットジャガーに一気に接近して奴を真っ二つにしてやろうと思ったが、そうはさせまいとジャガーは身を捻った。しかし、奴の左腕を持っていくことは出来た。

 

「ッ!?ここまでとは…ッ!?」

 

「かつての俺とは違うッ!!!」

 

 このまま一気にトドメを刺す!

 ダメ押しのFWを起動させ、鎌を奴に向け振り下ろ…

 

「使ったな、その力を」

 

「な、に…ガァッ!?」

 

 なんだ、これ…

 体中、あちこちから銀色の、鋼が…俺を構成する鋼が暴走している。

 体が、まるで銀色の剣山のように…

 地面に落下したが衝撃を感じない。当然だ。

 無機物は、何も感じない。

 

「ふん…地に堕ちたな」

 

「て、てめえ…なにを…」

 

 奴は斬り落とされた左腕を眺めると、装甲が波打ち再生が始まる。

 そして、終わる。

 

「私はなにもしていない。恨むなら、自身の不完全さを呪うがいい」

 

「んだと…」

 

「君は、ネフィリムとの戦いで一度死んだ。いや、これまで何度も死んだと言っていいだろう。しかしその度に今の私のように再生した。だが、ネフィリムの時は話が違った。流石に損傷が大きすぎたんだよ君は」

 

 こいつ、なにを言って…

 

「そしてそれに伴う再生のエネルギーも大きかった。自身の記録すらも失い、復元したレベルじゃないか?だが、君を組成するナノメタルはプロトタイプだ。エム・ゴ様からアップデートを受けなかったお前は不完全な状態でそれを使い続け…遂にお前はナノメタルに飲まれる。この前言っただろう。その力を使い過ぎないほうがいいと」

 

 なるほど…合点がいった。

 こういう意味だったのか…

 

「度重なる再生、そしてその変身…プロトタイプのナノメタルではもう限界だったんだよ。性能が追いついていないんだ。──そのまま、鉄屑に変わり果てるといい」

 

 くそ、野郎が…

 視界が徐々に暗くなっていく。

 体が銀色の無機質な鋼に変わっていく。

 最後に見たのは、ジェットジャガーが踵を返し去っていくところで…

 ああ…翼ちゃん…ごめん、なさ…




オマケ 出張ガイガン
俺は誰かって?ネフィリムだよクソッタレの世界

ピー助「いや~すいませんね。まさかネフィリムに人が憑依してたなんて…今日は奢るんで許してください」

ネフィ君「いやいや、よくあることだから」

ピー助「それにしてもね皆さん。このネフィリムことネフィ君は知ってる方は知ってると思いますがとても男気溢れていてなんと×××××××××したんですよ~。(ネタバレのため伏せます。本編読んで♪)」

ネフィ君「誰に向かって言ってんだ」

ピー助「いや、ほんと最後はなんかもうVシネマ見てる気分っていうか?ヤクザ映画的な?そして最後は…あ、これ以上は言っちゃ駄目?」

○丈「ダメです!」

ネフィ君「いやあれ誰」

ピー助「まあまあ…あ、聖遺物の欠片食べます?」

つ聖遺物の欠片

ネフィ君「あっいただきます」

ピー助「レモンは?」

ネフィ君「かけないで。って、何故にレモン?」

ピー助「いや、聖遺物の欠片のこと唐揚げみたいって言ってたから…あ、親父さん生二つ」

親父さん「はいよ」

ネフィ君「あのさ、なんで居酒屋?それになんでこの親父さんはあんたの言葉が分かるんだよ」

ピー助「ここの飯、旨いから。いや~こっちにもあってよかったよかった…ん、なんか変な電波受信した」

ネフィ君「変な電波?」

ピー助「あ、なんか知り合いが結婚したっぽい。ちょっと前だけど」

ネフィ君「お~おめでとうございます。誰だか知らないけど」

ピー助「お祝い行ったほうがいいかなぁ?」

ネフィ君「そりゃもちろん」

ピー助「やっぱり?じゃあちょろっと行ってくるんで少しの間一人でやっててください。それじゃ」

つ銀色のオーロラカーテン

ネフィ君「なんか、変なのに会ったな…あ、親父さん。シーザーサラダ」

親父さん「はいよ」

ネフィ君(俺の言葉も通じてんだ…)


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いつもと変わらず

最近マリアさんばっか書いてんな…
ちゃんとこっちも書かないと…


「…雪音、私は重いのだろうか」

 

「ぶほっ!?い、いきなりなに言い出して…」

 

 休憩室、缶ジュースを飲んでいた雪音は吹き出した。

 なにもそんな吹き出すようなことを言った覚えはないが。

 

「私は自分の愛をピー助に押し付けていただけなんじゃないだろうか…」

 

「あ、愛って…」

 

 顔を赤らめる雪音。

 さっきから妙な反応ばかりする。

 

「私とピー助は相思相愛だと思っていたが、一方通行の愛だったのかもしれない」

 

「そ、相思相愛…」

 

「ああ、私のピー助への愛は真実の愛だと思っていたが…それがピー助の枷になっていたのなら、それは愛とは呼べないだろう…どうした雪音?俯いて…体調でも悪いのか?」

 

 肩を震わせ、顔が赤い…

 もしかしたら熱でもあるのかもしれない。

 額に手を当て熱がないか確認しようとすると雪音は勢いよく立ち上がり、捲し立てた。

 

「あ~!!!さっきから愛だとか相思相愛だとか真実の愛だとか!!!こっちが聞いてて恥ずかしくなるようなことを恥ずかしげもなく言いやがって!!!背中が痒くてしょうがないったらありゃしない!」

 

 まるで火山が噴火したようだと思った。

 もしくは沸騰したやかん。

 

「しょうがないだろう。好きなんだから」

 

「もう喋らないでくれ頼むから…」

 

 背中をポリポリと掻く雪音。

 好きなものは好きだと胸を張って言うことのなにが恥ずかしいというのか。そもそも雪音が恥ずかしがってどうする?雪音は聞いていただけだろう。 

 一体何故?と謎を追及しようとすると、警報が鳴り響いた。

 

「!? アルカノイズッ!」

 

 すぐに雪音と共に休憩室を出て司令室へと向かう。

 ピー助は外に出ているが…恐らく、ノイズの気配に気付いて向かっているはずだから大丈夫だろう。

 そしてアルカノイズ、自動人形達の狙いは立花と見て間違いない。

 司令室に着くとモニターには立花と小日向がアルカノイズとエルフナインの言っていた未だ姿を見せていない自動人形…ミカ、だったか。

 赤い髪…いや、それよりも目を引くのはその手だろう。

 異形の手。

 人の体など容易く握り潰してしまえそうなほどの巨大さと、鋭さ。

 戦闘特化というだけのことはあるか…

 それよりも、ピー助はまだ来ていないのか?

 

「!? ピー助君も襲撃を受けているようです!」

 

「なっ!?」

 

 モニターに映るのは空中で銀色のロボットと戦うピー助。

 奴はイギリスでも、そしてこの間もピー助を執拗に狙った相手。

 何か、ピー助と因縁でもあるのだろうか?

 一抹の不安を抱いて、私は戦闘の様子を見守った。

 そして…

 

「なんだ…何が起こっていやがんだよあれは…」

 

 その光景に、私は我を失っていた。

 ピー助が、ピー助が…

 

「どこへ行く!翼ッ!!!」

 

「離してください叔父様!ピー助が!ピー助がぁ!!!」

 

 腕をがっしりと掴まれ、離してくれない。

 早く、早く行かなければいけないのに…

 

「落ち着けって!取り乱すのも分かるけど!焦ってもどうにもなんねえだろ!」

 

「雪音…くっ!」

 

 拳を強く握りしめた。

 こんな時、なにも出来ない私自身が歯痒くて、悔しくて堪らなかった…

 それに追い討ちをかけるように、立花まで自動人形の前に敗北して…

 私は、あることを決意した。

 それは雪音も同じようでエルフナインに詰め寄った。

 

「あたしらならやれる!だから、プロジェクトイグナイトを進めてくれ!」

 

「強化型シンフォギアの完成を!」

 

 そうだ、私に出来ることは戦うことだけ。

 ピー助のためにも、皆のためにも…

 私は…剣でなくてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 ああ…くそ、俺はどうなってしまったんだろう…

 体が動かない。

 ビシッ、ビシッとひび割れるかのような痛覚ばかりが体を包む。

 くそ、ダメなのに。

 こんなことじゃダメなのに。

 帰って、翼ちゃんに謝らないといけないのに…

 動け、動いてくれよ…

 動けよ!!!

 そして、それに応えるようにガイガンに備えられたシステムが作動する。

 

 ───再生

 

 ───再構成

 

 ───再誕

 

 

 

 

 調査部が研究チームの人員を引き連れてガイガンの回収を始めようとしていた。

 銀色のヤマアラシのようになってしまったガイガンをまず調査する。

 

「生命反応は?」

 

「ありません」

 

「まさか…本当に銀の塊になってしまったというのか…?」

 

 研究員達はこの結果からガイガンの回収を予定通り行うことに決め、トラックに載せるためにロープをかけようとして…それは起こった。

 突如、塊が蠢くと首のようなものが伸び、その口を開いた。

 それを契機に次々と塊から同じように銀色の竜の頭とでも言うべき部位が発生。

 さながらその姿は日本人に馴染みある神話の怪物、八岐大蛇のよう。

 

「こ、こちら回収班!ガイガンが!ガイガンが動き出しました!」

 

 研究員が本部へ無線を入れる。

 これで本部には伝わった…それじゃあ、あとはどうする?こいつをどうすればいいんだ?と研究員は思考に囚われ体が動かない。

 

「離れてください。危険です」

 

「あ…は、はい!!!」

 

 調査部のエージェントの一人が研究員の前に立ち声をかける。

 我に帰った研究員はすぐさまこの場から離れ、エージェントはスーツの内ポケットからサバイバルナイフを取り出し構える。

 

「念のため、だが…これ以上は暴れてくれるなよ」

 

 ガイガンは今のところ首を何本も生やし、それらが動くだけで今のところ特に被害は出ていない。

 危害を加えるつもりはないのかもしれない、とエージェントは予想する。

 だが、このままにしておくわけにもいかないと打開策を考える。

 すると再び、ガイガンに変化が生じる。

 銀色の体が波打ち、徐々に変化する。

 あれだけ生やしていた首の何本かが縮小、もしくは再び体に同化し残った六本の首がそれぞれ移動、変形を始める。

 そして、そのシルエットが徐々に形作られる。

 二本の首は足となり、地面を踏みしめ。

 二本の首は腕となり、凶刃が煌めく。

 一本は尻尾となり、鞭のようでもあり刃のようである。

 そして、残った一本が頭部を形成する。

 

「変態、というやつか…」

 

 この様子を見たエージェントはそう呟いた。

 変態。

 おたまじゃくしがカエルになるように、成長によってその姿形を変えることを言う。

 

 そして、ガイガンは新たな体の形成を完了した。

 

 全身が銀色。

 体からは金属で出来た水晶のようなものがあちこちから突き出している。

 かつては生体を機械で補ったような姿をしていたが、今のガイガンは機械に生身の部分が少々残っているばかり。

 最早、サイボーグというよりロボットである。

 

「本部、聞こえるか。ガイガンだが…そうか、了解した」

 

「班長、どうします?」

 

「今、飼い主がこちらに向かっているということだ。私達は下手に手を出さない方がいい。幸いにも、向こうは動く気配がないからな。下手に刺激でもして暴れられたら困る」

 

 班長と呼ばれた男の言う通りガイガンは静止している。

 まるで動く様子が見えない。

 男は念のため封鎖区域を広げるよう部下に指示し、飼い主の到着を待った。

 待つこと20分…

 

 緒川さんの運転する車から降りてすぐに封鎖を知らせるテープを越える。

 

「ピー助は!?ピー助の今の状況は!?」

 

 私達を待っていた調査部の人に聞くとこちらですと案内され、途中、今の状況を説明された。

 

「今は活動を停止しています。飼い主の君を見たらなにか反応があるかもしれないが…」

 

 そして、私はそれを見た…

 あれが、ピー助…?

 

「ピー助…なのか?」

 

 銀色の、冷たい鋼の竜…

 それが、今のピー助。

 いや、あれはピー助だ。

 ピー助なんだ。

 

「翼さん!近づくのは…」

 

 緒川さんの声が聞こえるが関係ない。

 だって、ピー助だから。

 ピー助は危なくなんてない。

 ピー助に歩み寄って、少し見上げて語りかける。

 2メートルくらいだから顔を見ようとするとしょうがない。

 

「ピー助?私が分かる?」

 

 返事はない。

 まるで石像のように動かない。

 しかし、少し間を置いてだがピー助は反応した。

 バイザーを赤く発光させて、私を見下ろすとピー助は頭を傾げ…

 鎌を振り上げた。

 

「翼さんッ!!!」

 

 なんで、どうして、ピー助…

 

「ピー助ッ!!!」

 

 叫んだ。

 人生で一番叫んだと思う。

 真っ直ぐと、ピー助を見つめて。

 するとピー助は振り上げた右腕を下ろし、自分の手を見ている。

 …正気に、戻ったみたい。

 だから、私はいつものようにピー助と接するのだ。

 

「さあ、帰りましょう。ピー助」




オマケ

ピー助「遅れましたが結婚おめでとうございます千鶴さん。あ、こちらお祝いの品です」

千鶴「ああ…ありがとう。にしても油セットとは…」

ピー助「千鶴さんもマリアさんも料理するんでいいかなぁって。ところで千鶴さん」

千鶴「なんだ?」

ピー助「なんか本編にあなたっぽい人がいる気がするんですけど、気のせいですかね?ここは俺が主役の作品ですよ。千鶴さんあなた他で主役までやってこっちにまで侵食とかマジやめてもらえます?」(器が小さい)

千鶴「…作者に聞け」

スターシステムです(苦しい言い訳)


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メタルクラスタなガイガンになってた

遂にGWが始まりましたね…
ガンダムウイングの話じゃないですよ、ゴールデンウィークの方です。
みんな、用もないのにふらふらと外出たらピー助が狩るってよ!
というわけでみんなで引きこもりましょう。
GWでも見ながら!
あ、これはゴールデンウィークじゃなくてガンダムウイングの方です。


 鏡を見る。

 目を閉じる。

 目を開ける。

 鏡を見る。

 

鏡「何回見たって銀ピカなことに変わりないで」

 

 な、なんてこと…

 いつの間にこんなギンギラギンな感じになっちゃったの俺!?

 一体どうしたらこうなるの!?

 高1の夏休み明けの遠藤君より変わってるよこれ!?

 イメチェンか?イメチェンなのか?

 おいおいFWだけじゃなくこんな姿にまでなっちまうなんて欲しがりだな~俺。

 …いやぁぁぁぁ!!!!!

 元の姿に戻してぇぇぇぇ!!!!!

 こんなギンギラギンにさりげなくな、てか全然さりげなくねえわ!主張が激しいわ!!!

 この姿でも小さくなれたことしか喜べねえわ!

 

「本当に」

 

「ピー助」

 

「デスか?」

 

 そうだよ(キレ気味)

 なんで…なんでこんな姿になっちまったんや…

 

「まあそんな落ち込むことないわ。今、エルフナインが原因を調査中だから…」

 

 プロジェクトイグナイトを止めてやろ?

 もうやだ!こんな姿になるわみんなの足引っ張るわ!

 俺がなにしたっていうんだよ…

 なんか動きにくいし…

 もうやだ。

 おうちかえる。

 

「こら。今、エルフナインが調べてくれているんだから結果を待つのよ」

 

 うー。

 それにしても動き辛いなぁ。

 なんか前みたいな柔軟性がなくなったっていうか、体動かすとウィーンとか鳴るしもうやだ。

 

「皆さん。ピー助さんの検査結果が出ました」

 

 お…で、俺の体はどうなってるんだ?

 

「今のピー助さんの肌と、以前採取したピー助さんの機械の部分は同じものだということが分かりました」

 

「では、今のピー助は完璧な機械ということになるのか?」

 

「そう言っても、過言ではないと思います」

 

 キカイ?

 じゃない機械?

 こんなに感情豊かな俺が?

 けどまあこの見た目からしたら、ね…

 

「ピー助がこうなった原因は分からないの?」

 

「それは現在調査中です。完全聖遺物であるピー助さんの謎はたくさんありますから…だけど、推測することは出来ます」

 

 推測?

 それは気になる。

 だって本人すら何が起こってるか分からないのだから!

 

「ピー助さんのこれは…脱皮の兆候ではないかと思われます」

 

 え?

 

「脱皮…」

 

「脱皮ね…」

 

「脱皮デスか…」

 

 脱皮…

 まさかぁ笑

 

「しかし今まで三年間一緒にいて一度も脱皮なんてしたことは…」

 

「ピー助さんはまだまだ謎の多い生物です。それに本来は巨大なようですし脱皮のサイクルもとても長いものなのかもしれません。…質問なのですが、ピー助さんに変わったことなどありませんでしたか?ここ最近で」

 

 ここ最近?

 特に変わったことなんてなかったと思うけど…

 

「そういえば、今朝の朝食を食べなかったな。普段なら飛びつくというのに…あと、どこかイライラしているようでもあった」

 

 む…確かにイライラしていたのかもしれない。

 朝食もなんというかあんまり食欲がなかったというか…

 

「やはり、脱皮の兆候かもしれません。蛇などは脱皮前に神経質になったり餌を食べなくなるらしいですから」

 

「けどピー助を蛇と一緒にするのは…」

 

 うむ…

 けど自分のことを自分がよく分かってないのでそういう意見は助かる。

 これが脱皮だと言うならばまあそれらしくしていようじゃないか。

 

 

 

 

 

チフォージュ・シャトー 

 

 玉座に座る少女はおもむろに目を開けた。

 

「おい、ジャガー。お前が倒した怪獣、生きているぞ」

 

 マスターであるキャロル・マールス・ディーンハイムの言葉に私は胸が躍った。

 やはり、生きていたか。

 あれで終わる男だとは思っていなかったぞ、ガイガン。

 

「…お前も、妙なものに固執しているな。だが、最優先にすべきことは計画の進行だ。それを忘れるなよ?」

 

「心得ています」

 

 我がマスターには私の言葉が通じているようで、ならばいい。と、それだけ言って再び我がマスターは目を閉じた。

 計画の進行が最優先。

 だが、計画の邪魔をするためにガイガンは立ち塞がるだろう。

 その時に決着をつければいい…

 生きているなら早く万全の状態を整えるのだ。

 私は、本気の君との決着を望んでいるのだからな!

 

 

 

 

 

 

 

一週間後

 

「ピー助、毎日水の中に入ってるんだね」

 

 響ちゃんのお見舞いにやってきた未来ちゃんがついでに立ち寄ってくれた。

 そうなんや…

 脱皮前の蛇はこうしてるって言うから同じくそうしてるんだけどいまいち脱皮する気配がない。

 ちなみにおっきい収納ボックスに水張って入ってます。

 

「ところでさピー助」

 

 なにー?

 

「その、そこで倒れてる二人は一体…?」

 

 未来ちゃんが指差したところに倒れていたのは翼ちゃんとマリアさんである。

 一応言っておくけど死んではいない。

 

「マリアも翼さんもピー助おさわり禁止令が出て一週間、ピー助に触らなかったからこの有り様で…」

 

「もっとしっかりしてほしいものデス」

 

「まったくだ!こいつらがしっかりしないからあたしに色々としわ寄せが…」

 

 この一週間、俺は他人から触られていない。

 触ろうとするとストレスを感じて脱皮を失敗してしまうかもしれないからという理由でおさわり禁止令が発令されたのだが…

 ほら、年少組にこう言われてるぞ年長組。

 まったく飼い主がこんなんじゃペットの俺にまで風評被害が来るんだから。

 

「あはは…でも、本当に脱皮なのかな?」

 

 そう言われると…うん。

(脱皮する気配)ないです。

 こうして過ごしてるんだけど全然この銀ピカ肌が脱げる気配がナッシング。

 本当に脱皮か自分でも疑わしくなってきていたところでした。

 

「もしこれが脱皮でないとするならば、ピー助に触ってもいい…?ピー助ぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 バーリアっと。

 

「ぐはっ!?ぴ、ピー助が新能力に目覚めた…!?」

 

 はっはっはっ!

 メタルクラスタガイガンになった俺は今までにない能力が追加されたのだ!

 最早、翼ちゃんがルパンダイブしてこようが関係ないというわけだ。

 

「というか今のバリア…」

 

「どうやって作ったデスか!?」

 

 よくぞ聞いてくれました!

 こうやって頭で念じれば装甲が…

 

「ピ、ピー助からちっちゃいピー助が分裂してきたデース!?」

 

 分身の完成デース!

 って切歌ちゃんがうつった。

 と、まあこの要領で装甲からバリアを作ったんデスよ。

 またうつった。 

 

「ちっちゃいピー助の」

 

「更にちっちゃい版…」

 

 驚くのはまだ早い。

 これまだたくさん作れるんすよ。

 

「うわぁ!?ピー助がぽこすかと増えていくデスよ!?」

 

「ピー」

 

「ピ?」

 

「ピッ!」

 

「ピ~」

 

「…」

 

「あ、あはは。ピー助がいっぱいだ。ピー助が一匹、ピー助が二匹、ピー助が三匹、ピー助が…」

 

「このピー助は触っていいの?これもダメなの?一匹くらいいいでしょ?ねえ、調。うんと言って」

 

「マ、マリア…顔が怖い…」

 

「ピー助止めろ!ピー助狂いの二人が暴走しちまう!」

 

 はーい。

 それじゃみんな集合~。

 

「「「「「「「「「「ハーイ」」」」」」」」」」

 

 分身達が一斉に集まってちゃぷん、ちゃぷんと雫が水面に落ちるかのように俺と一体化していく。

 かわいい。

 なんてやっていたら警報が鳴り響いた。

 毎度のことながらびっくりする。

 

「アルカノイズ…!」

 

 出やがったな。

 だけど、いま戦える装者は…

 ふむ、俺が行くしかないか。

 どれどれ場所はどこですかっと…うわっ!?

 急に揺れたけどまさか…ここがアルカノイズに襲われてるのか!?

 なんで気が付かなかったんだよ!

 いつもなら気が付くのに!くそ!

 

「待ちなさいピー助!」

 

 水入れから飛び出して外に向かって飛ぶ。

 今、ここを襲われては…

 プロジェクトイグナイトのために電力やら補給やら受けてるってのに、やらせるかよ!

 

 

 

 

 

 行楽日和と言える絶好の空を汚す黒い煙。

 ノイズによる攻撃のせいだ。

 眼下を見下ろせばアルカノイズの大群が発電所を襲っている。 

 これ以上はやらせないと降下しながら目から光線を放って…って、なんか稲妻みたいな光線だな。

 そもそもこの体での戦闘自体始めてだ。

 変なことにならないように気を付けなければ…

 それにしても数が多いな…

 ここは覚えたての分身の術でも使って…

 

『Various shul shagana tron』

 

 この歌…調ちゃんに切歌ちゃん!?

 なんで二人が…

 

「ピー助だけに!」

 

「やらせないデス!」

 

 そうは言ってもLiNKERがないと…

 え?LiNKER打ったってまじで言ってんすかシュルシャガナさん。

 イガリマさんまで…

 ほんと困った子~なんて言ってる場合じゃないですよ!薬物の乱用がどれ程危険かお宅分かってらっしゃるんですか!?未来ある子供達にそんな危険なものをって…

 あれ、奏ちゃんが使ってたLiNKERか…

 …しょうがない。

 子守りぐらいしてやる。

 

「ギアの改修が終わるまで!」

 

「発電所は守ってみせるデス!」

 

 よし!やるぞ!

 鎌ノコトリオの結成だ!

 斬って斬って斬りまくれッ!

 

「うんッ!」 

 

「デスッ!」

 

 いい返事だ。

 さあ、切り刻むぜ。

 腹のノコギリを起動させ、地面を蹴り低空飛行。

 正面のノイズはノコギリで、左右のノイズは腕の鎌で切り刻む。

 なにするものぞ!アルカノイズ!

 切歌ちゃん達も…順調みたい。

 このままノイズの数を減らして…

 ッ!?

 二人の悲鳴が聞こえて、見れば赤い自動人形が。

 あいつか、響ちゃんをやったのは。

 とにかく今は二人が態勢を整う時間を稼げ。

 

「ニコイチでギリギリなんてつまんないだゾ。そっちの銀ピカの方が楽しめそうなんだゾ」

 

 確かミカとか言う名前だったか。

 止まるんじゃねえぞ…キボウノハナー

 はっ!?今なにか変な電波受信した!?

 ヤダ俺電波キャラになっちゃった!?

 って、うわぁ!?

 人が困惑している間に鈍器でぶん殴ってくるなんて卑怯な奴!

 それになんだその武器は!真っ赤な六角柱みたいなの!

 見るからに当たったら痛そうだゾ!

 あ、口調がうつった。

 

「ふざけてたらすぐに終わるゾ!」

 

 脳内寸劇を繰り広げている間に一気に距離を詰めたミカは武器を振り下ろしてくるが…

 もう、お前のスペックは大体把握している。

 

「なっ!?双子なんだゾ!」

 

 ミカは驚愕こそしつつ攻撃の手は休めない。

 だが…読めてるんだよ。

 

「三つ子!?いや、五つ子だゾ!?」

 

 五体の俺が、ミカを取り囲む。

 回避をしながら分身を生み出すことで相手を混乱させる…

 難しいことを考えるのが苦手そうなミカ相手にはよく効く戦法だろう。

 今度は、こっちが反撃する番だ。

 五体の俺が一斉に動く。

 姿形がまったく一緒のものが五つ、同時に動いたら果たしてどうなるかな?

 一体が斬り込んで、一体がノコギリを起動させて接近して、一体が援護射撃して、一体が尻尾でミカを叩きつけて。

 そして俺は…

 

「そこッ!」

 

 目から放った稲妻状の光線はノイズもいない空を進む。

 しかし、何もないはずのところで光線は打ち消された。

 

「流石だなガイガン。気付いていたとはな」

 

 何もなかったはずの場所から銀色の見たくもない奴が現れた。

 どうせ来ているだろうとは思っていた。

 光学迷彩のようなもので隠れていたのだろうが…

 

「お前の下手くそな隠密行動ぐらいお見通しだ。そういうのにかけては、俺の方に分がある」

 

「なるほど…では正々堂々と正面から行こう。君のその新しい姿と力を私に見せてくれッ!」

 

「しつこいッ!」

 

 互いの言葉すらを越す勢いで加速した俺とジェットジャガーはぶつかり合う。

 分身の方は…しばらく任せておいて大丈夫だろう。

 切調コンビには悪いけど、こいつの相手をしなくちゃいけない。

 ああ!本当にしつこいッ!




オマケ 出張ガイガン特別編

人外オリ主散歩

人外無法地帯

ピー助「さあ、始まりました!人外オリ主散歩。司会のピー助でーす。今回はこちら東京スカイタワーにやって来ました~!イエーイ!え?近場過ぎない?そんなこと気にしない気にしない。さあ、まずはゲスト一人目!ロボさんでーす」

ロボ「こんにちは…」

ネフィ君「いやゲスト一人目とか言う前にさ、これなに?」

ピー助「いやいやネフィ君さん。人外オリ主散歩ですよ」

ロボ「いや、だからさ。人外オリ主散歩がそもそも何かを聞いてるんだけど」

ネフィ君「そうですよ!この間居酒屋に置き去りにされたかと思ったら急にこんなの出される身にもなってくださいよ」

ピー助「さあこちら東京スカイタワーは日本で一番新しい電波塔で全長は634m。実はこのスカイタワーは政府の非公開組織が活動する際に使用する映像、交信などの電波情報を統括制御する機能を有しておりまして旧二課もお世話になって…」

ロボ「え、そうなの?」

ネフィ君「そんな秘密情報をここであっさりばらしていいの!?てか、話逸らしたでしょう!」

ピー助「まあまあネフィ君さん。ネフィ君さんもロボさんもここ来たことありますよね?」

ネフィ君「屋上の展望室だけだけど。その時はノイズが来てあんまりいい思い出ないわ…」

ロボ「俺も任務で来たっきり…」

ピー助「まあ、私も似たようなものですが中には水族館やらなにやらと観光施設もたくさん入ってるんです!」

ネフィ君「それは知ってますけど…まさか!?」

ロボ「観光しちゃう!?よし!早速行こう!」

ピー助「あ、二人ともちょっと待って」

ロボ「え、なんすか?」

ネフィ君「早く行きましょうよ」

ピー助「えー、実は撮影の許可取りをしたADによりますとペンギンやアザラシなどの海獣達がですね、私達のような怪獣を見て驚いてしまうかもしれないということで…撮影NGですッ!」

ロボ「はあ!?」

ネフィ君「それどういう意味だよ!」

ピー助「あと水族館だけじゃなくですね、スカイタワーそのものに入場禁止です」

ロボ「えぇ!?」

ネフィ君「なんでなんで!?」

ピー助「えー普通のペットならまだしも、人外は入場禁止だそうです!なので、それ以上先入っちゃダメですよ」

ネフィ君「いやいやピー助さん。それおかしいでしょ。居酒屋に置いていかれて、なんか連れ出されて来てみれば入れない?ふざけんじゃねえよ!」バシッ

ピー助「痛っ!?この野郎やりやがったな!?」ビシッ

ロボ「ああもうやめやめ!二人共ストップ!」

ネフィ君「うるせえ!お前も道連れじゃあ!」ドロップキック

ロボ「ぐはっ!?こんにゃろよくも!?」狼パンチ

ピー助「なんで俺!?」

ネフィ君「大体なんだよ海獣が怪獣見てビックリするからって…怪獣はお前だけじゃろがい!」ラリアット

ピー助「ぐえっ!」
 
ロボ「隙だらけじゃあ!」噛みつき

ネフィ君「いぎゃあ!!!」

ピー助「…よそう。人外同士が戦ってもしようがない。私が欲しかったのは、重い愛から逃げる口実だったんだ」

ネフィ君「…いや、なんかすいません。ちょっと興奮しちゃって」

ロボ「俺こそ噛みつきまでしてごめん…」

ピー助「いやぁ皆さん…ね、これから浅草ですから。旨いもんでも食べましょ」

人外オリ主散歩のテーマ(替え歌)
歌 ピー助

誰か僕に自由をくれませんか~
誰か僕に(許容範囲内の)愛をくれませんか~
シンフォギアの聖地巡礼しようと思っただけなのに
人外だからという理由で撮影許可おりない
スカイタワー登らせてくれなかった~
お寺に神社、大抵~
撮影NG~
誰か僕に自由をくれませんか~
誰か僕に(許容範囲内の)愛をくれませんか~
せめてください散歩の許可を…

本当に申し訳ありませんでしたぁ!!!


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新たなる変身

サブタイトルの元ネタはアギトのスペシャルですね。
ゴールデン帯で仮面ライダーやるとか子供心にwktkしました。
録画したビデオを何回も見ましたね…
シャイニングフォームのカッコいいことカッコいいこと…
え、ビデオを知らない?
VHSも伝わらない?
なんて、こと(式風に)
まあ、読んでくださってる方の年齢層を考えると大体通じるでしょう。
けどもう忘れ去られていくんだろうな…


 俺とジェットジャガーの戦いはぶっちゃけ俺がかなり劣勢だった。

 なんかこのメタルクラスタガイガンは特殊能力特化で素のパワーとかがかなり落ちているようだ。

 

「どうした?まさかこれで終わりではあるまいな?」

 

「なわけッ!」

 

 装甲から溶け出した無数の虫ぐらいのサイズの俺達が群れをなしてジェットジャガーを取り囲む。

 虫サイズではあるが、俺達が奴に取り付いて回転ノコギリで身体を切り刻めば…

 

「チィッ!小細工ばかりの芸達者と戦いたいわけでは…ないッ!!!」

 

 振り払いやがった…!

 だけど装甲に少なくない傷が入っている。

 確実にだがダメージは与えているはず。

 

「さあッ!殴り愛をしようじゃないかッ!!!」

 

「なぜそこで愛ッ!?」

 

 俺にホモの気はない。

 女の子が大好きです(迫真)

 おっぱいの大きい、女の子が…

 これ以上言うと色々大変なことになりそうなので黙っておく。

 

「ふぅんッ!!!」

 

「ぐっ…!」

 

 拳が、重い…

 なんとか受け止めるが今にも押し負けそうだ。

 

「ぬるい、ぬるいぞ…ガイガァァァン!!!」

 

 ジェットジャガーの手刀が俺の右腕を打つ。

 表面がひび割れたッ!?

 

「その様子だと防御力はそこそこのようだな。だが、いつまで持つかな?」

 

「こんなもん唾でもつけとけば…」

 

 …あれ?

 治らない。

 なんでぇ!?

 この間までは勝手に治ってたのに!?

 

「再生能力まで落ちたようだな。それに、見ろ。あちらももう終わりのようだ」

 

「な、に…?」

 

 ジェットジャガーが見つめた先を見れば調ちゃんと切歌ちゃんが…ギアを壊されて裸で倒れて…

 ノイズが既に目前まで迫って…

 

「クソッ!!!」

 

「行かせんよ」

 

 地面を蹴り、急加速で飛び立つが同じく飛び立ったジェットジャガーに叩き落とされる。

 クソ…俺じゃあ誰も守れないのか?

 

「誰かぁぁぁ!!!」

 

 切歌ちゃんの叫びが鼓膜を震わせる。

 ごめん…俺じゃあ、君が呼ぶ誰かにはなれないみたいだ…

 都合よく現れる、ヒーローには…

 絶望の闇が、俺の意識を奪った。

 

 

 

 

 

 

「折れた、か。所詮、半端者は半端者ということ…ッ!?」

 

 地面に墜ち、倒れたガイガンを見下すジェットジャガー。

 その鼻先を、青い斬撃が掠めた。

 

「飼い主のご登場か…」

 

「ジェットジャガー…エルフナインはそう呼んでいたか。ピー助を散々痛めつけたのだ。それ相応の覚悟は出来ていようなッ!?」

 

 翼がピー助の仇を討たんと斬りかかる。

 改修されたシンフォギアを纏った翼、そして調と切歌を救出したクリスの反撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 ああ…

 結局俺なんかではなにも出来ずに終わってしまう。

 俺じゃあ…

 

「なにしょぼくれてるんだ?ピー助?」

 

 その声…奏ちゃん!

 どこにいるんだ奏ちゃん!?

 闇の中、見渡すと俺の後ろに奏ちゃんがいて、思わず手を伸ばした。

 だが、音のない闇の中。こちらに向かって来る靴音。

 そして、その人物が奏ちゃんの幻影を消し去り現れた。

 

「久しぶりだなぁ…ガイガン」

 

 エム・ゴ…!

 

「怖い怖い…命の恩人にそんな顔を見せるでない」

 

 命の恩人、だと…?

 

「死んだはずのお前を再構成させたのはこの私だ。まあ、もともと備わっている機能ではあるが間に合いそうになかったからな。私が色々と手を回し、各部のアップデートを行ったのだ。感謝しろ」

 

 ふざけるな!

 大体お前はあの時死んで…

 

「ああ、死んだ。死んださ。だが、私は自分が作ったものには全てバックアップを残している。お前は私の作品だ。故に同様に、お前の中にも残しているというわけだ」

 

 つまり、お前が遺したものがある限りお前は復活可能ということか。

 

「そういうことだ。だが、まあ…蘇る気など微塵もないが」

 

 なに?

 

「最早この星にも、人類にも興味はない。かつての汚したくなるほどの美しさもなくしてしまった地球人類にはな。…だが、私の作品が消えてしまうのは嘆かわしい。芸術とは往々にして作者の死後評価されるものだ。私の作品は未来永劫評価され続けなければならないッ!!!この世で最も強くッ!最も美しい芸術としてなッ!故に、故に。お前には生き続けて貰わねば困るのだぁ…」

 

 まったくテンションの差が激しい奴…

 それにしても、だ。

 こいつの作品にはバックアップがあるならジェットジャガーにだってあるはず。

 つまり作品同士の潰し合いをしているということになるはずだ。

 それはこいつ的にどうなのか? 

 

「ジェットジャガー?あれは作品ではない。私が創作活動に集中するために作った家事ロボットだ。それが何故かああなったのだから不思議なものだが趣味ではないのでな」

 

 趣味?

 

「ああ、趣味だ。生物と機械の融合。それが私の作品だ。故にあの時、地球にあった作品はお前とメカゴジラということになる」

 

 地球にってことは他の星にもあるのか…

 メカゴジラはゴジラの骨とモスラの心臓。

 俺は言わずもがなガイガンの素体。

 これが改造されて…

 

「違う違う。お前にはもう一体の怪獣を使っている」 

 

 ?

 なにそれ初耳なんだが…

 で、俺に使われてる怪獣って一体。

 

「まあ、細胞一欠片だけだがな。それだけでも充分過ぎるというものだが…」

 

 勿体ぶらずに早く言え。

 

「むう、せっかちな奴だな。私にとって五千年ぶりの会話なんだ。楽しんだっていいだろう」

 

 誰がお前との会話なんか楽しむかよ!

 拉致られて改造されて怪獣になって…

 散々な目にあってばかりなんだぞこちとら!

 

「ほう?その割には怪獣ライフを楽しんでいるようじゃないか。なあ、セクハラペンギンモドキ」

 

 んだとこらぁ!!!

 むしろ男として興味を示さない方が問題あると思いますぅ!

 

「ふむ。欲望に忠実で結構、結構。生物として当然だ」

 

 もういいだろ!

 早く言えよ!

 

「しょうがないな…仕方ない。お互いに時間がないからな」

 

 時間がない?

 

「ああ。まあ、お前は目覚めれば状況が分かると思うが私は…少々、お前の再構成に力を使い過ぎた。もうじき消える」

 

 え、消える?

 やったぜ(ガッツポーズ)

 

「そう本心から喜ばれると傷つくがまあいい。で、お前に使ったもう一体の怪獣。それは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キングギドラだ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、そんなこったろうと思ってた。

 

「もう少し驚いてくれないかな。で、なぜそう思った?」

 

 いや、金色の鱗だったし、何故かギドラから好かれたし。あれは多分同族と思われたのかもな。

 それに暴走した時になんか首がたくさんの姿になったって言うし。

 

「はあ…もう少し気の利いたコメントをしてくれる人間を脳味噌に選ぶんだった」

 

 悪かったな…って、お前少しずつ消えかけて…

 ざまぁ。

 

「最後の力を振り絞ってお前を強制終了させてもいいんだぞ。いや、そんなことはしないが…最後に聞かせてくれ」

 

 …なんだよ。

 

「お前はこの力、どう使う?いや、答えなくていい。地獄の底から見せてもらおう。お前の足掻く様をな」

 

 ふん…

 じゃあこっちからも聞くが、なんでわざわざ生物を改造する。

 ロボットじゃ駄目なのか?

 

「それは趣味と言ったろう?…いや、正直に答えよう。確かに、完璧な機械なら全てをそつなくこなすだろうがそれは私好みではない。機械は期待通りの成果をあげるが期待以上の成果には至らない。だが、そこに生物の持つ可能性を加えてみてはどうなるか。生物は不完全だからこそ完全を越えることが出来る。言うなれば命の爆発力。それをこの手に収めれば…奴を越えられるッ!そう、思ったのだよ…それでは、さらばだガイガン」

 

 …消えるのか。

 

「ああ。流石にもう、な」

 

 そうか。  

 とっとと地獄に落ちて詫び入れろ。

 

「ふ…そうさせてもらおう。そして最後にもう一度問う。お前はこの力、どう使う…」

 

 …逝ったか。

 傍迷惑な奴だが、その質問には答えるよ。

 答え続けてやるよ。

 俺は…

 

 

 

 

 

 

 目覚めると、あれ?ジェットジャガーとかどこいった?

 おっふ!?

 なんだあのパツキンナイスバディな美少女は!?

 

「これくらいあれば不足なかろう」

 

 揉んだ!?

 揉んだぞ!?

 自分で揉んだぞ!?

 公衆の面前で揉んだぞ!?

 痴女ですね分かります(歓喜)

 

「大きくなったところでッ!!!」

 

 あ、翼ちゃんガチギレしてますわ。

 俺は知ってるよ。

 実は翼ちゃんが貧乳に悩んでいることを。

 毎晩夜中にこそっと起きてバストアップのトレーニングをしていることを。

 そんな寝不足になるようなことするから育たないんやで。

 

「張り合うのは望むところだッ!!!」

 

 そしてクリスちゃんは強者の余裕ですかね。

 敵の挑発に微塵も乗っていない。

 これが持つ者と持たざる者の差か。

 てかなんなん?あのシンフォギアっぽい奴。

 直感だけだとシンフォギアに近いけど違うみたいな…

 なんだろうこう…ライダーで言うところの疑似ライダー枠みたいな。

 そんなことを考えているとあのパツキンの背後に二つの魔法陣、いや錬成陣?

 どっちでもいいか。

 とにかく赤いのと青いのが浮かびあがって…

 どっせぃ!?!!!?!

 なんだあれ。

 一人が出すにはありすぎる威力だぞあれは!?

 怪獣並と言えるか。

 とにかく俺も戦線に参加するぞ!

 

「ピー助!大丈夫なのか?」

 

 いけまっせ翼ちゃん!

 

「そうか。…?ピー助、右腕なんだが…ッ!?」

 

 え?なに…いやぁぁぁぁ~!?!!?!?

 なんか糸が、いや弦が!コンクリからガスタンクまで切り裂いて来やがった!

 って、翼ちゃんが吹き飛ばされてッ!?

 ヤバい。

 あいつ、トドメを刺す気だ…

 させるかよッ!

 極太のビームみたいなのが翼ちゃんに迫る。

 吹き飛ばされた衝撃で翼ちゃんは上手く動けないよう。

 俺が、俺が…俺が守るッ!!!

 

「ピー助ッ!?」

 

 くっ…熱いし、重い…

 うおぉぉぉぉぉ!!!!!

 ブラックキングさん!俺に力をぉぉぉ!!!

 スペシウム光線を弾いた時みたいな力を!!!

 え?会社が違うからダメ?

 そんなぁ。

 まあ、翼ちゃんは守れたみたいだしいっか…

 光に包まれた俺はそのまま爆発の炎の中へ──

 

「ピー助ぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 本部発令所。

 戦線に復帰したピー助の映像を見たエルフナインがあることに気付いた。

 

「すいません!今のピー助さんの映像、拡大出来ますか?」

 

「え、ええ…これがどうかしたの?」

 

 友里が拡大した映像を出し、それを食い入るように見るエルフナイン。

 そして、エルフナインは確信した。

 

「やっぱりピー助さんは…」

 

「ピー助がどうかしたの?」

 

 気になったマリアが声をかけた。

 エルフナインはマリアに向き合ってから映像を一時停止して、ある部分を拡大させた。

 

「ピー助さんの右腕の上腕です。先程、ジェットジャガーの攻撃により表面の装甲が破損したようですが…」

 

「これは…ピー助の皮膚?」

 

 マリアの問いにエルフナインは首肯した。

 

「それじゃあ、まさか…」

 

「はい。そのまさかです」

 

 

 

 

 

 

 

 爆発が収まり、徐々に煙も晴れてきた。

 ピー助は。

 ピー助は無事なのか。

 それだけが気がかりであった。

 やがて、まるで煙を晴らすためだけに吹いたような突風がピー助の姿を露にした。

 

「ピー、助…」

 

 腕はだらりと力無く垂れ下がり生気というものが感じられなかった。

 そんな、まさか…

 また、私を置いていってしまうの…?

 

「いや…ピー助…ピー助ッ!!!」

 

 その叫びに、ピー助は呼応した。

 ピー助を銀色の炎が燃やす。

 この世のものとは思えないほどの美しさで燃える。

 そして、眩い光がこの場全てを覆い尽くして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光の中に、その姿はあった。

 逆光に照らされる青い身体に黄金の鱗、そして翼。

 だが、その輝きはかつてよりも増している。

 鉤爪もその鋭さを増し、業物の如く光を反射している。

 あれは…

 

 

 

 

 この現象をオペレーター達は観測、照合していた。

 

「各部照合!一部、差違が認められます!」

 

「ピー助君から発せられるアウフヴァッヘン波形も以前とは比べ物になりません!」

 

「すごい…まるで、進化だわ…」

 

 マリアの呟きを聞いた司令は、これまでの報告から推察し自身の見解を述べた。

 

「命あるものは常に前へと進む。昨日までのデータなど…」

 

「今のピー助さんに名称をつけるなら…

 ガイガン…Version Second です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 逆光の中、吼える。

 

(これが世界に誇る日本の特撮技術ッ!川北後光じゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!!)

 

 雰囲気ぶち壊しである。




ガイガンVersion Second
略してガイガンVS
見た目は多少の差違はあり翼などが角張りシャープで洗練された。より美しく、より強くなった姿。
もし、ガイガンがVSシリーズに登場していたらこんな感じかな?というピー助の中の人の妄想の姿でもある。
基本性能が大幅アップ。
登場シーンは昭和メカゴジラオマージュからの川北後光(川北監督という方の特徴的な演出。VSデストロイアのラストシーンとか川北監督リスペクトの田口監督が手掛けたジードのマグニフィセント登場シーンとかみたいなやつ)という豪華っぷり。
その実力や如何に…


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IGNITE

迷わずにいま~(違う)
ふぁ!?前回投稿から10日も経ってるんか!?
んな馬鹿な…
いや、実は翼さんの誕生日を狙ってこの日にしてたんや…(苦しい言い訳)


 光を振り切り、地面のアスファルトを砕きながら突き進むガイガン。向かう先はダウルダブラのファウストローブを纏うキャロルである。

 

「ふん…話に聞くよりずっとしぶとい奴だな」

 

 再び自身の背後に錬成陣を投影し、ガイガンに向かって炎の渦を放つ。目に見えて分かる高威力。だがガイガンはまったく避ける素振りも見せずそのまま胸部に直撃を受ける。

 

「ピー助ッ!」

 

 翼が叫ぶ。

 だが、ガイガンは突き進む。

 炎の濁流をものともせずに突き進む。そしてガイガンはその全てを受けきり反撃に出る。

 口から放つ、虹色の熱線。

 極彩色の奔流がキャロルを飲み込む。だが、キャロルは防壁を張りガードしていた。その防壁は無事とはいかなかったが…。

 

「この威力ッ!?」

 

 防壁がひび割れる寸前に回避したキャロルはそう叫んだ。明らかに、ガイガンのスペックは向上している。キャロルは今後の計画遂行のためと発電所を襲撃させたミカとジェットジャガーを帰還させていた。今から、ジェットジャガーだけでも呼び戻すか。いや、奴なら勝手に現れるだろう。そう決めつけて思案する。本来の目的を遂行するにはガイガンが邪魔である。ガイガンの妨害を受けずして、如何にあれを発動させるか。それが今のキャロルにとって悩みの種であった。

 しかし、キャロルの悩みはすぐに解決することとなる。錬成陣から現れるジェットジャガー。ジェットジャガーはガイガンを見るなり飛びかかり、格闘戦に興じる。

 二体の怪獣の戦いは熾烈なものとなる。ジェットジャガーにとっては宿敵が進化を果たしたと嬉々として、ガイガンにとっては先程の戦いのリベンジマッチとして仕返しだ、切り刻んでやると咆哮をあげながら鉤爪を振るう。 鋼の拳がガイガンの胸を打ち、鋭い鉤爪がジェットジャガーの装甲を切り裂く。この、今まで以上の切れ味に脅威を感じたジェットジャガーは背中のブースターを吹かせて後退する。が、新たなガイガンには新たな技があった。両方の鉤爪が白い光を纏い、ガイガンは腕を振り上げ、右腕、左腕と交互に振り下ろし、光の刃をジェットジャガーに向けて放った。

 二つの刃がジェットジャガーに迫る。鼻先を掠めてしまいそうなギリギリで避けるが、これは囮。見せ球であった。真の決め技は、既に用意されていた。光る鉤爪を交差させ…勢いよく水平に開いた。すると、一体の空間に大きな波紋が打たれたような気分にジェットジャガーは陥った。それほどまでの衝撃、プレッシャー。そして、迫る巨大な刃。地面と平行に走るそれを、ジェットジャガーは避けるということが出来なかった。ナノメタルの防御フィールドを形成し防ぐが…。光の刃は容易く防御フィールドを切り裂き、ジェットジャガーを両断した。

 

「馬鹿な…ジェットジャガーをああも容易く…!チィッ!」

 

 テレポートジェムを破壊されたジェットジャガーへ投げ、自身の城へと帰すキャロル。予想外のガイガンの強化に苛立ちが募って止まない。

 

「雪音、あれを使うぞ」

 

 意を決した翼が、クリスに対し言った。ピー助がジェットジャガーを撃破し、キャロルが冷静を欠く今こそが好機だと。

 

「ぶっつけ本番…でも、ここであいつを倒せばッ!」

 

 敵の首魁である彼女を倒せば全てが終わる。そう決意した二人は胸元のペンダントを掴み、新たに搭載された機能を発現させる。

 

「「イグナイトモジュール!抜剣ッ!!!」」

 

【Dáinsleif】

 

 変形したペンダントが宙に浮き、光の剣となり二人の胸を刺し貫いた。

 

「そちらから来てくれるか。ならばよい。見せてみろッ!オレを越えられる力があるならなぁ!」

 

 イグナイトモジュールを使用した二人を見たキャロルは先程までの苛立ちを捨て、対峙する。

 だが…

 

「く…が…あぁぁぁ!!!」

 

「ぐあああああ!!!!!」

 

 二人を襲うのは凶悪な破壊衝動。

 理性すらも焼き尽くすほどの、今までに体験したことのない衝動が二人の心を蝕む。

 そして二人は、己が闇と対峙する───。

 

 

 

 

 Project IGNITE。

 アルカノイズにより破損したシンフォギアに強化改修を施すプランとしてエルフナインが提案した本プランの実態は「暴走を制御し力へと変える」ことである。

 元々、シンフォギアにはいくつかの決戦機能が搭載されている。

 絶唱とエクスドライブモードである。

 だが、絶唱は相討ち覚悟の肉弾。使用局面は限られる。エクスドライブモードは発現に相当量のフォニックゲインが必要となり、正に奇跡を起こすようなもの。とてもじゃないが、戦力としては組み込めない。

 そんななかエルフナインが目を付けたのは立花響に度々見られた「暴走」である。理性を失くす代償に、本能の赴くままに敵を屠るその力を制御し自在に操ることが出来たら…。そこにシンフォギアではないが、ガイガンの形態変化による戦闘力の向上から着想を得て、聖遺物「魔剣ダインスレイフの欠片」を用いることで強化型シンフォギアは完成した。

 だが、その真価を発揮することは難しい。

 現にいま、風鳴翼と雪音クリスは闇に飲まれようとしている。この状況を打破するには…。

 

 

 

 

 

 

 …なんか、真面目な雰囲気がするがとりあえず。

 やった!やった!あのにくっき悪人面ロボットをぶっ倒した!

 これで面倒なストーカーともおさらばだぜ!

 フォーーーーー!!!!!

 ヤバイ。これだけじゃ足りない。

 心の中だけでなく、本当に叫ばないともったいない。こんなに気分がいい日は久しぶりだ。それにほら、人間だったら急に叫び出すとやべー奴だけど今の俺は怪獣だから。咆哮をあげることぐらい普通のことっしょ。というわけでせーの、

 

「ぴ「く…が…あぁぁぁ!!!」!?」

 

 今の声、翼ちゃん!? 

 どうしたの!?まさかとうとうやべー奴になっちゃった?ヤベーイなの?マックスハザードオンなの? 

 …て、冗談言ってる場合じゃないなこれ。がちにハザードってる。このままじゃ翼ちゃんが暴走して人殺しちゃってがちで曇るやつやんけ。そしたら俺は…えっと、「大丈夫。翼ちゃんは人を殺したんじゃなくて兵器を壊しただけだよ。戦争じゃよくあることさ」(CV金尾哲夫)って慰めればいいのか?

 じゃなくて。

 冗談言ってる場合じゃないとか言って結局冗談言ってるな。時と場合を考えろ、俺。よくないとこだぞ。

 とにかく苦しむ翼ちゃんとクリスちゃんのところに駆け寄り二人に呼びかける。だけどまるで聞こえちゃいない。

 くっそ…完璧、この新しくシンフォギアに搭載したなんだっけ?ダインスレイフだかに飲まれてる。どうすれば…くそ、あのパツキン。余裕綽々でいやがる。どうにかして目にもの見せてやりたいが…。

 この呪い、俺が肩代わり出来ないだろうか?前にも絶唱のエネルギーを吸い取ったこともあるしもしかしたら…。

 翼に力を入れて、出来る限り、最大限開く。

 普段はここから太陽光やらなにやらを吸収してエネルギー補給をしているわけだが…こんなに不味そうだと分かっているものを吸収するのは始めてだ。

 ちなみに言っておくが、ゲテモノは苦手な口だ。もしかしたら途中で吐き戻してしまうかもしれない。

 だけど…。

 俺は、翼ちゃんが苦しむ顔を見たくない。

 翼ちゃんには笑顔でいてほしいんだ。

 だから、俺は…!

 

 

 

 

 

 目覚めると、私はステージにいた。

 そうだ。もう一度ここで、大好きな歌を歌うんだ。夢を諦めてなるものか。

 だが…。

 客席を埋めるのはノイズ。

 つまりは、敵。

 敵しか、私の歌を聴いてはくれない。

 そして舞台は暗転し、私にスポットライトが当たる。

 自分の肩を抱く。

 どうしようもなく、寒く、冷たい。

 ひどい孤独感が私を襲う。

 ようやく、夢を追えると思ったが新たな脅威の出現に再び剣に戻り、戦いの歌を歌うことを余儀なくされた…。

 脳裏に、父と幼き私の姿が映る。

 

「お父様ッ!」

 

「お前が娘であるものか。どこまでも穢れた風鳴の道具に過ぎん」

 

 それでも、私は認められたかった。

 だから私はこの身を剣と鍛えた…。

 そうだ…この身は剣。

 夢を見ることなど許されない道具に過ぎない。

 でも、私は…。

 突然、私だけの暗闇にもうひとつ光が差した。その光の下にいたのは…

 

「奏!」

 

 静かに、あの頃と変わらない笑みを浮かべた奏に向かって思わず駆け出し、抱きしめた。

 こんな冷たく、孤独でも奏さえいてくれれば…。

 だけど、そんな幻想は斬り捨てられる。

 地面に落ちる、奏だったもの。

 誰だ。

 誰のせいでこうなった。

 …いや、違う。

 誰のせいでもない。

 誰でもない、私のせいでこうなった。

 剣では、誰も誰も抱きしめられない───。

 

「あ、あぁ…ああああ!!!」

 

 膝から崩れた私は泣き叫んだ。

 剣では、剣では…剣は所詮、敵を倒すことしか出来ない。

 誰かを、抱きしめることなど…。

 

「ピー」

 

 …闇の中から、聞き慣れた声がした。

 とても、聞き慣れた…。

 

「ピー助…」

 

「ピッ!」

 

 闇の中から、私の目の前まで歩いてやって来たピー助は一度立ち止まって私を見上げてから再び私に近付こうとしてきて…。

 

「来てはダメッ!!!」

 

 急な大声に驚いたピー助は足を止めた。

 そう、それでいい。

 だって、これ以上近付いて私に触れてしまったらピー助まで切り裂かれてしまう。だから、ピー助は私に近付いては駄目…。

 だけど、再びピー助は歩き出した。

 

「来るな、ピー助…来たらお前まで失ってしまう!」

 

 それでもピー助は止まらない。

 どうして、どうして。言うことを聞いてくれないの。

 

「ピー!」

 

 そして、ピー助は私の胸に飛び込んできた。

 それを思わず私は抱き止めてしまった。

 そんな…分かっていたのに。

 分かっていたのに私は寂しさのあまりピー助に触れてしまった。奏に続いてまた、私は大切なものを失って…、

 

「ピー?」

 

 失って…失って…。

 

「どう、して…」

 

 どうして、ピー助は平気でいるのだろう。剣である私に抱きしめられても…。

 

『俺が全身凶器だってこと忘れた?』

 

 頭に、声が響いた。

 この声の主はまさか…。

 

「ピー、助。なの?」

 

『翼ちゃんが剣だとしても俺は平気だよ。だって、怪獣だし。特に俺は全身凶器だから翼ちゃんの硬い身体に抱きしめられても全然平気ぃぃぃぃ痛たたたたぁッ!?』

 

 思わず、ピー助の頬をつねってしまった。

 しょうがない。

 今のはピー助が悪い。

 

『しょ、しょりぇより…早くこんなところから戻ろう。こんな下らない呪いなんかが見せる幻の夢から醒めるんだ』

 

 そんなこと言っても…。

 これはひとつの事実だ。

 私の歌を聴いてくれるのは敵だけ。

 父に認められようと剣と言い聞かせてきたこの身では誰かを傷つけることしか出来ない…。

 

『ああもうめんどくさい!ホントにめんどくさい女だな君は!』

 

「なっ…!なにを言う!私のどこがめんどくさい女だというのッ!?」

 

『ああそうだよめんどくさい女だよ!この際言わせてもらいますけどねぇ!いちいち俺を独占しようとしたりとか俺がちょーっと一人でどっか行ったぐらいで帰って来た後に束縛したりとかするような女!めんどくさい女としか言い様がないでしょ!司令もそう思ってるし響ちゃん達も呆れてるよ!』

 

「んな…!?ピー助…なるほどなるほど。ピー助は私のことをそういう風に思っていたのね。いいわ。もう絶対ここから出ない。ピー助が謝るまでずっとここに居座らせてもらいましょう!」

 

『だからそういうとこがめんどくさいって言ってんの!…はあ。ようやく、素が出たね。翼ちゃん』

 

 なにを…と言いかけて気付いた。

 久しぶりに、素の口調となっていた。

 

『俺は、そっちの翼ちゃんの方が好きだな。剣だって言い聞かせている翼ちゃんよりも、誰かのために歌う翼ちゃんが好き。夢を目指す翼ちゃんが好き。家事が苦手…ううん。絶望的な翼ちゃんもそれはそれで好き』

 

 なんで言い直した。

 

『歌を聴いてくれるのは敵だけ?そんなことない。世界中の人達が翼ちゃんを待ってる。それにみんなも。それからそれからこれは声を大にして言うけど…』

 

『俺が一番待ってる!!!世界に羽ばたく翼ちゃんを!!!だから…ここから出よう。それに、翼ちゃんの手を待ってる後輩がいるよ…』

 

 そっちまでは、ちょっとカバー出来ないかも…。

 そう言い残して、ピー助は消えた。それと同時に、この闇も晴れていく。

 後輩、か…手のかかる後輩だ。あいつも先輩になったというのにまったく。ピー助に言われた通り、先輩として後輩の手を引こう。

 

 

 

 

 

 

 はーお仕事終了っと。

 あとは翼ちゃんがやってくれるでしょう。それを俺がこの呪いの力を上手いこと制御して…ウゲッ…やば、喉元までなんか戻ってきてた…。リバースしていい?編集でキラキラのエフェクトつけとけば多分大丈夫だからさ…。あ、そういえば前に翼ちゃんに思いっきりリバースしたことあったっけ…(第3話)あの時は許されたけど流石に二度目はないか…?いや、仏の顔も三度までだ。つまり二回目までは大丈夫。

 よし、吐こう(使命感)

 決意を固めた俺は思いっきりリバースするために口を大きく開いて…。

 

「こ、こらピー助!お前絶対吐く気だろッ!?こっちに向けんじゃねえ!」

 

 あっ…クリスちゃんも戻ってきたんだね、おかえ…ぐはぁ!?ま、待って翼ちゃん!今この喉元まで来てるやつを胃に戻すからぁ!だから口を!嘴を全力で閉じないでくれぇ!逆流しちゃうからぁ!

 

「…なにをふざけている」

 

 ほ、ほらぁあそこのナイスバディのパツキンお姉さんが呆れてるゾ!

 

「翼さん!クリスちゃん!ピー助君!大丈…なにしてるんですか…?」

 

 あ…響ちゃんよかった目が覚めたんだね…。それより病み上がりで大丈夫?俺は絶賛病んでるけど…おえ…。

 

「食べたものを吐き出させないようにしているんだ。ほら、生産者の人達に感謝して食べるんだピー助」

 

 生産者ってこれ翼ちゃんとクリスちゃんから出た闇なんですけど…いや食べるというか吸収しようと発案したのは私ですがちょ…うーん。

 

「あれ?ピー助君の羽、紫色になってる?」

 

「む。変なものを食べたせいかもしれない。やっぱり出すんだピー助」

 

 いやその変なもの出したのあなた! 

 って、あ、なんかこれやばいかも…リバースとは別の意味で。

 

「グギギ…ガガガ…」

 

「ピー助!?どうしたピー助!?」

 

 あ…これあかんやつや…。

 頭の中に壊せとか殺せとか恨みとか怨みとか凶とか不吉な文字がどんどん浮かんで…。

 イグナイトモジュールって確か暴走を力にだっけか。なるほどなるほど。今の俺は暴走を始めようとしているというわけか。二人を庇うために…あー何度目の暴走だ?てか割と平気じゃない?意外と理性保ててないこれ?

 というかさ。

 何度か暴走を繰り返して思ったんだけど。

 怪獣が暴れるのってそんな大したことじゃなくね?むしろ普通のことというか。

 怪獣って壊してなんぼじゃん?

 つまり怪獣にとって破壊衝動なんてよくあることで…いや、もちろん皆が皆そうじゃないことも理解してるんだけどさ。

 あぁ…大体、分かった。

 暴走の制御なんて、怪獣()にとってすれば簡単なことなんだ。

 理解した瞬間、身体はFWの姿へと。

 だが、その身体は黒へ。

 刃は血染めの紅へ。

 これが…俺のイグナイトモジュールだ。

 

【ガイガンデストリガー】

 

 この姿は超合金で韮沢さんによるカラーリング変更したガイガンにそっくりだ。

 いいだろう。

 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?

 

「ピー助君が変わった…」

 

「まさか、ダインスレイフの呪いの力で…」

 

「てぇことはつまり…ピー助がイグナイトしたってことか!?」

 

 まあ、力の源は同じだしそうかも…。

 はっ!

 力の源が同じってなんだか仮面ライダーみたい!

 テンションあがってきた~!

 じゃない。

 テンションフォルテッシモ!!!

 

「…やりましょう。イグナイトモジュール」

 

「だが、今の私達では…」

 

「未来が教えてくれたんです。自分はシンフォギアの力に救われたって。この力が本当に誰かを救う力なら、身に纏った私達だってきっと救ってくれるはず!それに…ピー助君でも出来たんです!私達にも出来るはずです!」

 

 ねえ君ちょっと失礼じゃない?

 ねえ? 

 ちょっと?

 

「信じよう!胸の歌を!シンフォギアを!」

 

 はいはいどうせ俺は茅野…いや蚊帳の外デスよ~だ。

 

「それから、ピー助も」

 

 翼ちゃん…。

 やっぱり翼ちゃんは最高の飼い主やで!

 

「もう一度行くぞッ!」

 

「イグナイトモジュールッ!」

 

「「「抜剣ッ!!!」」」

 

【Dáinsleif】

 

 変形したペンダントが三人を貫く。

 激しい苦しみが三人を襲っているのだろう。

 それでも、皆なら…!

 

 ───燃え上がる。

 そして、歌が始まる。

 

 成功だ。

 イグナイトモジュールを発現した三人のシンフォギアは俺と同じように黒に染まり、呪いらしい禍々しい印象を与えるが…こんなに頼もしい呪いもない。

 イグナイトモジュールを発動させた三人を見たあのパツキンがついに動き出しアルカノイズを召喚する。ほほう。結構な数がいる。

 

『検知されたアルカノイズの数…約四千ッ!』

 

 シンフォギアの通信機から聞こえてきた友里さんの報告。

 四千…。

 別に全て倒してしまっても構わんのだろう?

 

「たかだか四千ッ!!!」

 

 …いや、四人だから一人あたり千ですね分かります。それに今のあれだから。言ってみたかっただけだから!

 とにかく俺も行くぜ行くぜ行くぜぇ!!!

 紫色のバイザーに妖しく光が灯ると共に大地を蹴り、空へ飛び立ち紅く染まった鎌で、鋸で、ノイズを切り裂く。バイザーから拡散光線を放ちノイズを焼き尽くし、胸部から射出した丸ノコの刃を自在に操り切り刻む。

 

「臍下辺りがむず痒いッ!」

 

 え?なんて?

 聞き返そうとするとパツキンの弦がノイズを切り裂きながら接近する。それを俺は鎌で受け止め鍔迫り合い…になるとでも思ったか!

 

「オレの弦が斬れただとッ!?」

 

 触れただけで弦は斬れ、その機能を失くす。

 さあ、切り裂くぜ!

 翼ちゃんの斬撃が、クリスちゃんの矢が、そして俺の…ガイガンノック戦法だッ!

 射出した丸ノコに向けて拡散光線を当て、丸ノコの威力を増幅させる技。

 三つ技をガードするが流石に堪えるだろう。それにまだ矢は残っている。

 炎を纏った響ちゃんが突撃、周り諸共パツキンを吹き飛ばし、パツキンをもう満身創痍。

 そしてトドメの一発…ライダー…じゃない。

 飛び蹴りである。

 

「光あれぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 勝った、か…。

 煙が晴れると、え?あのパツキンあのキャロルとかいう幼女だったん?

 将来有望だなおい。

 

「ピー助」

 

 ごめんなさい。

 

「キャロルちゃん…どうして世界をバラバラにしようなんて…」

 

 響ちゃんが手を差し出しながら訊ねる。

 世界を分解する?だったか。確かに動機は気になるところではあるが…。

 キャロルは響ちゃんの手を退けて、語り始めたけど

 

「…忘れたよ、理由なんて。思い出の焼却。戦う力と変えた時に」

 

 思い出の、焼却…。

 思い出を力に変えているのか…?

 それはなんて、なんて…。

 

「その呪われた旋律で誰かを救えるなんて思い上がるな」

 

 そう言うと、キャロルは力なく倒れ、緑色の炎に焼かれた。

 響ちゃんの叫びが、灰色の空を震わせた。




解説 ガイガンデストリガーver
ガイガン(FW)をデザインした故韮沢靖氏によるカラーリング変更ver
ググれば画像出てくるからそちら参照で。
色見た瞬間「これイグナイトやんけ!」となりちっちゃいガイガン企画立ち上げ当初から登場を予定し遂に登場。前回で進化したんやから流石にすぐ新形態なんて出ないやろと思ったそこのあなた。
それが正しい反応です…。
余談ですがピー助のセリフ「ピー」って言ってるけどガイガンの鳴き声って「ピャー!」って感じがするから今からでもピャー助に改名する?
<ダメデスッ!

オマケ
ピー助が吐きそうになってる辺り。
キャロル(早くあれを使え…なにを怪獣も含めてふざけているのだあいつらは…!)

ちゃんと待ってあげる敵役の鑑。
世の悪役も見習って、どうぞ。


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夏だ!海だ!水着だ!…え?俺はだめ?ちょっとなに言ってるか分からない

グレとの温度差に風邪引きそう。


 青い空、白い雲。

 広がるビーチ、寄せては返す波。

 ここは…海!ではなかった。

 

「すまない。気分だけでもと思ったんだが…」

 

 気分を味わってしまったら余計に行きたくなるよこんちくしょう…。

 モニターに映し出された夏らしい映像が終わり、虚しさだけが残る。なんで…どうして…俺だけ本部に残ってんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!

 翼ちゃん達はみんなで海に行くという素晴らしいイベントの真っ最中なのに!

 

「ピー助ぇぇぇぇ!!!!」

 

「ピー!(翼ちゃーん!!!!)」

 

 などという飼い主とペットが無理矢理引き裂かれてしまうなんて悲劇があったにも関わらず、ここの人間ときたら血も涙もないのか俺を働かせるのだ。

 ここ最近の俺の働きを思い返してもらいたい。

 ジェットジャガーの撃破、キャロルの撃破にも一役買ったのである。それを毎度毎度俺が姿を変えるなりなんなりする度に調査やら研究やらしやがって…。

 俺も海行きたい!

 海で遊びたい!

 生物観察とかしたい!

 

「ま、まあそんなに怒るなピー助。埋め合わせはする予定だ」

 

 予定ィ?予定なんてもんはいつ覆されてもおかしくねえんだわ。一夏の思い出がかかってんだわ。

 昨今の地球温暖化の影響により本来は暖かい海に棲む生物達が近くまでやって来てしまっているということに対し我々は何らかの手段を持ってして既存の生態系を守るということを…。

 

「…休憩は終わりだ。次の仕事に取りかかるぞ」

 

 司令ッ!

 無視しないでください司令!

 労働の分の対価が支払われそうになくて不安なんですが!

 司令!司令ぇぇぇぇ!!!!!

 脇に手を入れられて司令に持ち上げられるとそのまま会議室を出て司令室へ。どうやら俺は労働から逃げられないらしい。

 どうして怪獣なのに人間よろしく働いてるんですかねぇ…?

 アニマルカフェの動物達だって労働時間定められているというのに俺は何かあればいかなきゃならんから実質24時間営業。クソブラックである。

 いいや、司令室の友里さんとか女性オペレーターさんに癒されよ…。

 いざ、開け天国の門ッ!

 ブロッカー二体召喚するやつじゃないぞ。

 

「あら?あらあらあら!この子がピー助君?」

 

 えっ、誰ですの。

 白衣を着たウェーブのかかった黒髪ロングの女性。

 白衣を着た女性…櫻井さん…フィーネ…うっ!頭が…。

 

「はじめましてだから警戒してるようね?まあ無理もないわ。動物だからね。私は山根加代子。古生物学者をしている者よ。以後、お見知り置きを」

 

 はあ…よろしくお願いします(ペコリ)

 

「きゃー!お辞儀したわ!聞いてた通り人間臭いのね!」

 

 まあ、中身人間ですから…。

 それよりテンションたっかいな~…。

 アメリカンって感じ(テキトー)

 

「山根博士はMONARCHという米国の特務機関…現在は俺達S.O.N.G.のように国連直轄の機関で怪獣の研究をしている方だ。よろしくやるんだぞ、ピー助」

 

 アメリカンだと思ったのが当たってた!?

 それにしても、はえ~モナークがあるんすねぇこの世界にも。

 前にそれっぽい組織がないか調べたけど見当たらなかったから恐らく秘密の組織だったのだろう。

 モンスターバースの方だと秘密主義ではあるが一応、公的な組織だったし。

 けどモナークが組織されているということは、巨大生物の存在を掴んでいたということだろう。それも昔から。

 

「それでは、主要なメンバーは揃ったようですしレクチャーを始めましょうか」

 

 主要なメンバー…。

 装者の皆はいないけどいいのだろうか。

 まあまた後から説明なりなんなりするのだろう。

 

「私達MONARCHは第二次大戦の終戦直後に組織されました。原因は…こちらです」

 

 モニターに映し出されたのは…脚の代わりに大きな翼の生えたサソリのような巨大生物。まあ怪獣だろう。

 

「コードネーム【シノムラ】ペルム紀に生息していたとされる古代生物です。この生物は…放射線を用いて代謝を行っていた生物だということが判明しています。まあ、シノムラの詳細はあまり関係ないので省きますがシノムラの出現により王が目覚めました…」

 

「ゴジラか…」

 

「はい。MONARCHではゴジラを怪獣達の王、怪獣王と呼んでいます。シノムラとゴジラは捕食、被食の関係にあったと推察され、当時の米国大統領は二体の抹殺を軍に命じます。しかし、通常兵器が効く相手ではありません。そこで用いられたのが…水爆です」

 

 水爆…原爆以上の威力を持つ、人類が生み出してしまった悪魔の兵器。

 終戦後も度々水爆実験が行われ、日本の漁船「第五福竜丸」の船員が被爆するなどの事件があり、反戦、反核のメッセージが込められた第一作「ゴジラ」が製作されることとなる…というのは前世の世界での話だった。

 この世界に映画としての「ゴジラ」は存在しない。

 そういう意味ではこの世界で怪獣が広まったのはウルトラシリーズのおかげだったりするがここでは割愛する。

 

「まさか、度重なる水爆実験はゴジラとシノムラを抹殺するために…」

 

「その通りです。ですが二体を抹殺することは出来ず、結局シノムラはゴジラにより倒され、ゴジラも姿を消しました。次にゴジラが人類の前に姿を現したのはルナアタック…神の一撃を放ったそれきりです」

 

 そこまで聞いて、友里さんが手を挙げた。

 何か、質問でもあるのだろう。

 

「質問なのですが、何故シノムラは目覚めたのでしょうか?」

 

「いい質問ですね。シノムラが最初に発見されたのは広島近海です。そしてシノムラは放射線を用いて代謝を行います」

 

 そこまで言って山根博士は言葉を止めた。

 もう分かるでしょ?と言った顔で。

 まあ、日本人なら分かるだろう。

 

「広島に落とされた原爆の放射線により目覚めたと見て間違いないと思われます。…古代の地球の地表は今よりも放射性レベルが高かったとされています。時代を経るごとに放射性レベルは低下し怪獣達は地表から姿を消したというのが我々が出した仮説です」

 

「それじゃあ水爆だって餌を与えるようなものじゃ…」

 

「当時、いえ、今もですがあんな生物を殺せる兵器などありません。だからとにかく高い威力の物を用いるしかなかった。結果としてシノムラはより巨大な生物となりましたがゴジラもまた放射能を吸収しエネルギーとする規格外です。結果的にゴジラに倒してもらった形になりましたがこれを受けて対巨大生物を掲げる組織MONARCHは結成されます。しかし、その後は目立った成果をあげることも出来ずに規模の縮小、解体すら目前でしたが70年代初頭にある巨大生物を発見します」

 

 次にモニターに映し出されたのは…超巨大類人猿。

 

「ベトナム戦争の最中、髑髏島と呼ばれる未開の島を調査し発見したのがキングコングです。これにより組織の有用性を示したことで現在まで存続、そして先日、国連直轄組織となりました。以上がMONARCHの概要です」

 

 ふむふむなるほどなるほど。

 コングさんの子孫かな?

 まあ会えるなら会いたいものだ。

 怪獣コミュニティ的な。

 

「ありがとう山根君。単刀直入に聞かせてもらうが、君の、いや、MONARCHの目的はなんだ?」

 

「ズバッと聞きますね…いいです、教えましょう。我々の目的はピー助君、ガイガンの身柄の引き渡しです」

 

 ふぁ!?

 俺をどうする気なんや!?

 

「ちょっと待ってください!ピー助君は私達の大切な仲間です!それを勝手に身柄を引き渡せなど…」

 

「あなた方S.O.N.G.、いえ、旧二課もルナアタック後は巨大生物の調査に乗りだし、S.O.N.G.となってもそれは変わらない。ですが何か実績はありましたか?フロンティア事変や現在起こっている騒動の対処に忙しいでしょう。故に巨大生物の調査は我々MONARCHが請け負うことで分業しようと言うのです」

 

「そんな横暴な…」

 

「我々には!実績があります。組織開設から百年も近く、ノウハウもある。巨大生物に関することは我々に任せ、あなた方は自分達の職務に専念するべきではありませんか?」

 

 静まる司令室。

 確かに、彼女の言う通りかもしれない。

 適材適所。

 餅は餅屋。

 怪獣のことはMONARCH。

 超常の存在から人類を守るのはS.O.N.G.。

 …ん?

 待てよ、抜け道はあるな。

 俺がここに残るべき理由はあるじゃないか。

 司令もふっと笑みを浮かべている。

 俺が気付いたんだ。司令が気付かないわけがない。

 

「悪いがピー助は譲れないな。なんせこいつは貴重な"完全聖遺物"だからな。聖遺物の扱いなら、俺達の方が実績がある」

 

 そう。俺は元々完全自律型の完全聖遺物として二課に属しているのだ。

 怪獣であり、聖遺物。

 俺がもしゴジラなりラドンなりアンギラスだったら怪獣扱いで終わってしまうが、異端技術を用いて造られたガイガンなら聖遺物としてカウントされる。

 

「それに超常、非常識の相手をするのが仕事なら、怪獣なんていう非常識にだって立ち向かうのが俺達だ。その時に主戦力となるのがピー助だ。だからピー助を連れていかれるのは困るんだ。というわけでピー助は渡せない」

 

 ヒュー!

 さっすが司令カッコいい~!

 惚れてまうやろぉぉぉぉ!!!

 

「…なるほど。いえ、こうなることは分かっていました。それに私も、嫌がる動物を無理矢理連れて行くのは嫌ですから。生物を愛する者として」

 

 そう言いながら綺麗な笑顔を浮かべる山根博士。

 こうしていれば美人さんやな。

 

「しかし、巨大生物に関することについてめぼしい情報が掴めていないのも事実ですよね?」

 

「…まあ、な」

 

 まあねぇ。

 俺だけ調べてもしょうがないだろうし。

 他のサンプルだってないしなぁ。

 

「というわけで!私がしばらくS.O.N.G.に出向してこちらの生物学の顧問となります!」

 

 は?

 はぁ?

 

「はいこれ辞令書。ちゃんと正式なやつだから」

 

「な…本当、なのか…?」

 

 辞令書をしっかりと観察する司令だが、どうにも本物らしいことは反応で分かった。

 それにしても勝手な人事とか辞めてもらえませんかねぇ。現場が混乱するでしょう。

 

「司令!アルカノイズの反応です!」

 

 ふぁ!?

 もっと現場が混乱するようなこと言うな藤尭!

 いやノイズなら慣れっこだからいいんだけど場所は?みんなは特訓とは名ばかりの海でのバカンスだから俺が行くで。

 

「場所は筑波!ガングニール、イチイバルが戦闘開始しています!」

 

 ふぁ!?(9行ぶり三度目)

 なんというかまあ…イベント事を楽しめない運命にでもあるんすかねぇあの人達は。

 

「ピー助。念のため、増援で出てくれ」

 

 けど、ここの守りが手薄になるんじゃ…。

 

「なにかあれば俺が出る。それに、お前ならこの距離一瞬だろう」

 

 ったく怪獣使いの荒いお人だこと。

 まあいいさ。これも仕事だ。

 ガイガン!出るぞ!

 

 

 

 薄暗い格納庫の中、俺はカタパルトに足を預ける。

 速さ重視のため、既にFWの姿をとった俺は発進シークエンスへと入る。

 

「4th gate open!4th gate open!」

 

 第4隔壁が開き、移動が始まる。

 

「Quickly!Quickly!」

 

 メカニック達の怒号が飛び交う中、エレベーターが上昇していく。

 

「Pull the throttle!Pull the throttle!」

 

 潜水艦を支える鉄骨達を通り過ぎながら管制官の声を聞く。

 

「20second before!20second before!」

 

 あと二十秒…一秒が惜しい。

 だが、焦ってもしょうがない。

 

「All out!All out!」

 

 メカニック達に退避命令が下る。

 ありがとう。あなた方のおかげで俺は存分に戦うことが出来る。

 

「Pull the throttle!」

 

 さあ、飛ぶ準備だ。

 そして…。

 

「All right. Lets go!」

 

 ピー助!ガイガン、行きます!

 カタパルトが猛烈な勢いで駆け抜け、俺は宙へと飛び立つ。この勢いのままに俺は…飛ぶ!




オマケ 

ピー助「なんか久しぶりだなこの感じ。さて、次の世界はっと…」

謎のペンギンお化けみたいなノイズ

ピー助「ふぁ!?ノイズやんけ!食ったろw」がぶっ

カルマノイズ「ああああああ!!!!!」

出張ガイガン

原作の破壊者、ピー助。
九つの世界を巡り、その瞳は何を見る。

転生したら悪魔の実のカルマノイズだった件
作者 龍狐様

ピー助「いやまさかノイズに転生とは…色々苦労されたんじゃないですか?」

カルマ「まあ、色々と…」

ピー助「まあ、俺もこの通りガイガンになってましたからね。あ、ガイガンって分かります?70年代を代表するスター怪獣なんですけど」

カルマ「あ、すいません分からないです」

ピー助「さいで…」

カルマ「じゃあ逆に悪魔の実は分かります?」

ピー助「ぇ。ぁ…あ、あれやろ、ワンピースの…」

カルマ「それですよそれ。転生させてもらえる時にその能力貰いましてね…」

ピー助(や、やっべぇ…ワンピースわかんねぇ…。同級生がみんなワンピースにはまってる時も特撮に命捧げてたからわかんねえよぉ…くそ!だからある程度流行りには乗っておくべきなのか!姉貴が言ってたことは本当だったんや!ていうかなに特典って。そんなテンプレ的な特典もらってんのこの子は。俺なんか無理矢理連れて来られて無理矢理改造手術受けさせられたんですけど。え、なにこの差は。恵まれてない?なんなの?なんの違いなの?環境?慢心?ていうか見た目こいつ黒いエリ○ベスやんけ。見た目ペンギンっぽいという点で被ってない?もしかしてこっちを食いに来てる?…潰すか。え?連載開始は向こうの方が早い?………)

ピー助「すいまっせんしたぁぁぁぁ!!!」
スライディング土下座

カルマ「え、なに急に謝ってんのこの怪獣は(ドン引き)」


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美しい女の意地

このサブタイトルが意味するところ。
つまり特訓デェス!


 最速、最短、真っ直ぐ、一直線。

 どっかの誰かさんが言っていたセリフの通りに飛べば筑波なんてすぐである。 

 …お!あれに見えるはマリアさん。それもシンフォギア纏ってる。

 改修したアガートラーム。

 それであの青い自動人形…えっと、エルフナインはガリィって言ってたか。と戦っている。

 あいつとは前に戦ってジェットジャガーに水を差されたから決着はつかなかった。

 今日こそ決着を…って、マリアさんがイグナイト使った。

 イグナイトで強化されたマリアさんならあいつぐらい余裕のよっちゃんで…って、おい、あれ。

 暴走してるぞ。

 …まずいことになったな。

 ひとまず救援だ救援!

 直滑降で地面に降り立ち暴走したマリアさんとガリィの間に割り込む。

 

「ピー助!」

 

 やあ未来ちゃん久しぶり…なんて、言ってる場合じゃないよな。

 

「ちっ、獣は一匹で充分だってのに…。あいつも直ってないから怪獣の方は任せらんないし。はぁ…帰る」

 

 あ!あいつまた逃げやがった!

 くそ…いや、むしろ好都合か。

 

「ウガァァァァァァ!!!!!!」

 

 マリアさんを、元に戻さないといけないからな…。

 

「ガァッ!!!」

 

 跳躍からの単純な襲撃。

 理性もない。

 怪獣ほどの本能の強さもない。

 軽く身を反らして、着地したマリアさんの首筋を叩いて気絶させる。

 峰打ちなので安心してほしい。

 刃でやったら、さっきまでマリアさんだったものが辺り一面に転がってしまう。

 さて、気を失って暴走も解除されたマリアさんを二の腕あたりに乗っけてと…。

 未来ちゃん、エルフナインにマリアさんを運ばせるのはきついだろうから俺が運ぶ。

 

「ピー助。マリアさんは大丈夫?」

 

 うん。気を失っただけみたいだし。

 ちょっと寝かせておけば目を覚ますよ。

 とりあえず皆と合流しよう。

 

 

 

 未来ちゃんとエルフナインに案内されてビーチの方へ向かうとギアを纏った響ちゃんとクリスちゃんがいた。

 あれ?翼ちゃんと切調コンビは?

 

「ピー助君!…マリアさん!?どうしたの?何があったの?」

 

 それが…かくかくしかじか。

 

「イグナイトモジュールの使用に失敗して暴走してしまったんです。ピー助さんが来てくれたのですぐに抑えることは出来たんですが…」

 

 かくかくしかじかの部分を言ってくれてありがとう。

 こういう難しい話の時は俺の言葉通じないから助かります。

 

「まずはあの施設でマリアさんを休ませよう。…それにしても、ピー助君。マリアさんをお姫様抱っことはなかなかやりますなぁ」

 

 しゃあないやん。

 背中は羽があるからおんぶは出来ないんだから。

 

「ま、先輩が見たら間違いなく修羅場になることは確定だな」  

 

 まさか~。

 俺はただ患者を運んでるだけでしてね。

 いくら翼ちゃんでもそれくらいは分かってくれるでしょ~。

 

「うんうんそう、だ、ね…」

 

 ん?

 どしたん響ちゃ「ピー助」

 ひえっ…。

 この、ケツ穴に氷柱をぶっこまれたかのような感覚は…。

 翼ちゃんッ!!!

 恐る恐る振り返ると、サングラスをかけた翼ちゃんがいて…。

 い、いやぁサングラス似合ってるね翼ちゃん…って、あ、外すんですね。

 い、いやぁ…翼ちゃん。と、とってもいい笑顔ですね…。

 

「ピー助。マリアの容態は?」

 

 気を失ってるだけで特に外傷はないです…。

 

「それはよかったわ。立花」

 

「は、はい!」

 

「悪いが、マリアを運んでくれないか。ギアを纏っているなら楽だろう?」

 

「はい!立花響、マリアさんを運びます!…ほら、ピー助君早くマリアさん渡して!」

 

 あ、はい…。

 

「それじゃあピー助。少し、お話しましょうか」

 

「ピー?(えー?ピー助、人間の言葉話せないから無理~)」※特別意訳

 

「ピー助」

 

 …はい。

 このあと、めちゃくちゃお話した。

 

 

 

「大体、私だってされたことないのに何故マリアにはするのかしら?やっぱりあれなの?私よりマリアの方が好きなんでしょう。そうなんでしょう。胸が大きい人にほいほいついていって…それで誰かに連れ去られたらどうするの!それに、最近またマリアのグッズ集めたりしてるようだし。え?なんで知ってるかって?それは藤尭さんが優しく…優しく!(強調して)教えてくれたのよ。はぁ…どうせ私のことなんてエサくれたりお世話してる人程度にしか思ってないのでしょう。…今更そんなこと言ったって許すわけないでしょう。私のことを一番に考え、愛してるというのであれば許すわ」

 

 

 

 

 

 …おい。  

 もうそろそろ日が傾き始める時間だぞ。

 のび太のママじゃないんだからお説教時間のタイム新記録樹立するのやめてくれませんかね。

 こちとら純粋に救助活動したというのに。

 そりゃもちろん一番は翼ちゃんですよ。

 だけど大変な人がいたら助けるのは当然のことで…。

 ちょっと待て。

 今、なんて言った?

 一番は翼ちゃん?

 え、ちょ、え。

 あ、いや、その…こう口に出すと恥ずかしい。

 ヤバイぞ。

 なんか今までの思い出的なものが溢れてきてちょっと恥ずかし過ぎる。

 背中が、背中が痒い。

 なんとかして気を紛らわせないと…。

 なんかないかなんか…って、ボールが転がってきた。

 

「あ、ピー助さん」

 

 エルフナインやんけ。

 なにしてんの?

 

「バレーの練習を少々。知識はあっても実際にやるのとでは全然違ったので」

 

 なるほどなるほど。

 え?一人でやってたの?

 

「はい。みなさん、忙しそうでしたから」

 

 そっか…。

 よっしゃ、お兄さんが練習相手になるで。

 

「いいんですか?」

 

 ええんやで(ニッコリ)

 これでも昔はインファント島で暇な時は怪獣達と岩をボール代わりにいろんな球技(の原型とされる)やってきたからな!

 人間の頃は球技苦手だったけど怪獣になってから克服したんだ!

 目を瞑れば思い出す、あの日々を…。

 

 2アウト満塁。

 

「ガイガン!ここで打てば走者一掃サヨナラ勝ちだぞ!」

 

「やーい!ピッチャービビってるぅ!」

 

「ガイガン…悪いけど、打たせません。ここで倒れてください」

 

「御託はいい。…投げな。てめーの暴龍怪球烈弾(アンギラスボール)を…」

 

 いやぁ懐かしいな~って、野球やん。

 バレーじゃないやん。

 まあいい。

 とにかく始めよう。

 それにしてもエルフナインとこうして関わるのははじめてでは?

 ずっと研究室に閉じ込もっていたし。あんまり関わる機会なかったなそういえば。

 じゃあこれを期に仲良くなろっと。

 ようし、それじゃあまずは今のエルフナインがどの程度の実力か見せて…。

 

 

 

 

 目が覚めるとすぐになにがあったかを思い出した。

 イグナイトモジュールを使って、暴走して…。 

 私は弱いままだ。

 強くなりたいと願っても、弱いままで…。どうしたら、強くなれるのだろう…。

 

「ピーーーー!!!」

 

 外から、ピー助の声が聞こえた。

 ピー助は本部に残っているはず…。気になったので外に出てみるとそこには…。

 

「次、お願いします!」

 

「ピ…ピー!!!」

 

 ピー助の強力なスパイクがエルフナインに向かって放たれる。

 エルフナインはそれをレシーブしようとして…弾かれてしまった。

 え、なにこれは…。

 

「あ、マリアさん。もう大丈夫なんですか?」

 

「え、ええ大丈夫…というか大丈夫って聞きたいのこっちなんだけど。結構吹っ飛ばされたわよね?」

 

「平気です。だって、特訓ですから!」

 

 特訓…?

 昼間にやったビーチバレーでのサーブのことだろうか。いや、しかし今やっていたのはレシーブ練習…。

 まあ、バレー全般の特訓ということだろう。

 

「ピー助も手伝ってあげて偉いわね」

 

「ピ~」

 

 照れて鉤爪の先で頬をかくピー助。

 かわいい。

 

「特訓、か…」

 

 強くなるための特訓…。

 

「ピー(強く、なりたいのか?)」

 

「え…今のは、ピー助の声?」

 

「ピー…ピッ!(強くなりたいのかと聞いているッ!)」

 

 私、は…。

 

「私は…強くなりたい!弱い自分を殺して!」

 

 そう言った次の瞬間、ピー助が腕の()を振るった。

  

「ッ!?」

 

「マリアさんッ!!!」

 

 間一髪、身を屈めて避けることに成功したがピー助の蹴りが私を捉えた。

 砂浜を転がり、揺れる頭を押さえながらすぐに立ち上がろうとするが既にピー助の刃が迫っていた。

 

「待ってくださいピー助さん!急にどうしたというんですか!?」

 

 エルフナインが間に入り、止めるが私にはピー助がなにをしようとしているかが分かった。

 

「エルフナイン…これは、特訓だ。ピー助が私に課した試練だ。だから、止めないで」

 

「マリアさん…」

 

 心配そうな瞳で見つめるエルフナイン。

 それもそうだろう。

 こちらはギアも纏わずにいるのだから。

 恐らくピー助の強襲、波状攻撃には私を歌わせないようにするという意味がある。

 いかな装者でもギアを纏わなければただの人。

 私達の敵と戦うには弱すぎる。

 まずはピー助の猛攻を掻い潜り、歌わなければ…。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 肩で息をするマリアさん。

 なんとかしようという気力は認められるがもう歌うのもキツイだろう。

 

「やっぱり私では…」

 

 …心を鬼にしなければ。

 どうした。

 強くなりたいと願ったお前の気持ちはそんなもんかぁッ!!!

 

「ああッ!!!」

 

 蹴り飛ばされ、もう何度目か分からぬが地面を転げるマリアさん。

 起き上がったマリアさんだが、その目には涙を浮かべていた。

 

「私は…強くなれないの?弱いままなの…?」

 

 その顔はなんだ!

 その目はなんだ!

 その涙はなんだ!

 その涙で強くなれるのか!

 守りたいものを守れるのか!

 

「私、は…」

 

「マリアさん!」

 

 特訓の様子を眺めていたエルフナインが叫ぶ。

 あの叫びは心配からではない。

 なにかを伝えようという強い意思を感じる目だ。

 

「マリアさんはボクに自分らしくあれって教えてくれました!それが…強いってことだと思います!だから!」

 

「自分らしく…弱い自分を受け入れる…。そういうこと、か…。ピー助、この特訓の本当の意味、見出だしたわ」

 

 不敵に笑ったマリアさんがそう言って駆け出してきた。

 俺はそれを迎え撃とうと鎌を振るうが避けられ、マリアさんの拳が俺の胸を打った。

 

「…こういうことでしょ、ピー助。ギアに頼るんじゃない。自分を信じて、弱くてもいい。出来ることを全力でする。それが強さに、そして、ギアの力を引き出すことになる。…そうでしょう?」

 

 …ギアに頼れば、隙が生じる。 

 己を信じ、ギアを信じればそれが強さとなる。

 あの三人がイグナイトの使用に成功した時、三人は自分自身の胸の歌とシンフォギアを信じた。

 だからこそ、魔剣の呪いに打ち勝つことが出来たのだ。

 そして今のマリアさんなら、イグナイトモジュールだって使えるはず…。

 って、なんだぁ!?

 急に砂浜から水が湧き出て噴水のよう…って、ガリィの仕業か。

 

「お待たせ、ハズレ装者。今度こそ歌ってもらえるんでしょうね?」

 

 あいつ…!

 

「大丈夫です。マリアさんなら出来ます!」

 

 そうだ!

 もう真の強さがなにかを知ったマリアさんなら!

 

「エルフナイン、ピー助…!ええ、やるわ」

 

『Seilien coffin airget-lamh tron』

 

 マリアさんの聖詠が響く。

 やっぱり聖詠は聞くとこっちまでエネルギー漲る感じするわ~というわけでガリィが召喚したアルカノイズ共は俺がやりますかね。

 マリアさんはガリィを頼みます!(ガイさん風)

 

「はあぁぁぁッ!!!」

 

 マリアさんとガリィの戦いが始まった。

 さあアルカノイズ共、俺が露払いしてやるよ。

 エルフナインは後ろに隠れてて。

 

「は、はい」

 

 よしよし、いい子だ。

 さあ、切り裂くぜ!

 アルカノイズがなんぼのもんじゃい!

 

 

 

 

 

 戦闘の様子を、自動人形の「ファラ」が眺めていた。

 しかし、口に咥えた薔薇を手に持ち替え散らすと、そこからファラの姿は消えた。

 文字通り、消えたのである。

 

 

 

 

 

 異端技術の研究を行う施設にマリア以外の装者と未来、緒川、藤尭が集まっていたが藤尭のPCに反応があった。

 

「アルカノイズの反応を検知!」

 

 藤尭が声を張り上げると、装者達は一斉にマリア達の救援に向かった。

 そんななか、緒川は何者かの気配を感じ部屋から飛び出すが誰もいない。

 廊下は真っ直ぐ一直線なので、隠れるような場所もない。

 だが、緒川は感じていた。

 風の気配を…。

 

 

 

 

 

 よっしゃアルカノイズは全滅させた!

 あとはガリィ、てめーだけだ!

 

「イグナイトモジュールッ!抜剣ッ!!!」

 

【Dáinsleif】

 

 ペンダントを空に向かって掲げるマリアさん。

 ウルトラマンの変身ポーズみたいっすねぇ(小並感)

 

「私は弱いまま…この呪いに反逆してみせるッ!」

 

 マリアさんの純白のギアが漆黒に染まる。

 きたな…。

 よし、こっちもフルパワー充電だ!

 呪いの余波を受けて俺も…!

 雄叫びをあげ、呪いを身に宿す黒い姿へと変貌する。

 ガイガンデストリガー。

 さあ、燃え上がるぜ!

 再びアルカノイズを呼び出すガリィ。

 だが、一瞬のうちに俺とマリアさんの攻撃でアルカノイズは沈黙。

 ガリィとの一騎討ち…ではねえなこれ。

 まあいいや。

 二対一が卑怯?

 いいえそんなことありません。

 世界を分解しようなんてする輩は世界そのものが敵ですから。

 今更、数的不利について文句を言われてもどうしようもありません。

 

「ピー助!こいつは私がやる!だから見ていてほしい!私の戦いを!」

 

 えぇ…折角デストリガーになったのに…。

 まあいいや。本人の希望だし、それに今のマリアさんならきっと勝てる。

 さて、砂浜をスケートリンクに変えたガリィはスケート選手のように滑るがマリアさんによって真っ二つに。

 しかしそれは水に変わり、宙に浮かぶ水滴の中にちっさいガリィを見た。

 くそ…ちっちゃいという俺のアイデンティティーを脅かす相手だ。許しちゃおけねぇ。

 マリアさんが水滴全部潰そうと撃ち落とすが背後に巨大な水の玉が。

 そこからガリィが現れて…あの水滴もフェイクか。

 

「あたしが一番乗りなんだから!」

 

 すぐにマリアさんは斬りかかるが青い障壁に阻まれる。

 だが…マリアさんをなめんな!

 障壁を切り裂き、驚愕の表情を浮かべたガリィに向かってマリアさんがアッパーをお見舞いして…うわぁ顔芸。

 そのまま宙に浮かんだガリィに向かってトドメだ。

 マリアさんは左腕に短剣を装着すると刃が伸びて…あらやだカッコいい。

 さらにブーストまで噴かせて…なんだよカッコいいの塊かよ。

 

【SERE†NADE】 

 

「一番乗りなんだからぁぁぁぁ!!!!!」

 

 それが、ガリィの断末魔となった。

 …一番乗りになったな、自動人形最初の敗北者だ。

 

「マリアさん!」

 

 お、響ちゃん達。

 はっは~ん助けに来たけどもう遅い。

 既にマリアさんが倒したからな!

 

「なんでピー助がどや顔してるの…。まあ、いっか。勝てたのはピー助とエルフナインのおかげだからね。ありがとう」

 

 いや~それほどでも~。

 …こうなること分かってやらせたんすよね、アガートラームさん。…いや、セレナちゃん。

 

『まあ、私じゃあどうしようも出来ませんから』

 

 すうっと現れたセレナちゃん。

 やめーや本当。

 あんなくそ厳しいのキャラじゃないんだから。

 

『私だって頑張って低めの声出したんですからいいじゃないですか』

 

 あれ勝手に人のセリフをそういう風にアフレコしたの君でしょう。

 

『けど、楽しそうにやってましたよね。強くなりたいと願ったお前の気持ちはそんなもんかぁ!のところとか』

 

 あれはちょっとテンションが上がっただけや。

 

『…それじゃあ、私はこの辺で。マリア姉さんを頼みますね、ピー助さん』

 

 おう、またいつかな。

 そして、セレナちゃんは消えていった。

 あんまり、長い時間はこっちにはいられないのだろう。

 はあ疲れた疲れた。

 慣れない事をすると疲れるわ~。

 一旦休憩っと。

 おやすみ~すやぁ。

 

 

 

 

 

 再び、ファラは装者達の様子を眺めていた。

 

「ありがとう、ガリィ。おかげで務めが果たせました」

 

 そう言った彼女の長い舌にはSDカードが貼り付いていた。

 そして、チフォージュ・シャトーでは歯車が動き出して…。

 

 

 

 花火って、いいよね…。

 こう、儚くてさ。

 短い生で一生懸命に輝こうとする命の輝きに似ている…。

 そういう意味では怪獣の命とはいつまで、どこまで輝けばいいのだろう。

 ほとんど寝ていたとはいえ五千年を生きたこの身体の終わりとは一体どこなのだろうか。

 自分自身の終焉はいつなのか。

 そもそも終わりはあるのか。

 いつかは失くなってしまうものだと知っているから人間は一日一日を頑張って生きて、それが輝きになるというのに。俺にその終わりは来るのだろうか。

 いつかは終わってしまうのだろうが、その終わりはきっと気が狂ってしまいそうな程、先なのではないだろうか。

 そう考えると、怖くなる。

 俺は怪獣である。

 俺は人間である。

 怪獣達が長い時を生きるのは当然のことだろうからなんとも思っていないだろうが、人間から怪獣になった俺はそれが当然のことではない。

 翼ちゃん達よりも平気で長く生きてしまうのだろう。

 そして、いつかの終わりを目の当たりにすることになってしまう。

 永い時の中で俺は出会いと別れを繰り返して…。

 やめよう、こんな考えをするのは。

 きっと腹が空いてるせいだろう。

 

「お腹が空いてきたと思いません!?」

 

 ちょうどいいタイミングで響ちゃんがそう提案した。いいぞいいぞ。流石、腹ペコ響ちゃん。

 

「だとすれば、やることはひとつ!」

 

『コンビニ買い出し!じゃんけんぽん!』

 

 あっ、言い出しっぺの法則が発動した。

 負けは響ちゃんただ一人である。

 

「ピー助君のそれはチョキ?チョキだよね。チョキにしか見えないもんね…」

 

 イエス。

 鉤爪を交差させてチョキである。

 

「しょうがない。付き合ってあげる」

 

 あ、嫁の未来ちゃんが響ちゃんを連れていってしまった。

 いやぁ百合百合してますなぁ。

 …しかし、買い出しから帰ってきた二人の様子はそんな穏やかな様子ではなくて。二人、というよりは響ちゃんになにかあったらしい。

 これがまたひとつ、波乱の幕開けとなり。そして、俺がめちゃくちゃ忙しくなる前振りでもあったのだった。




オマケ 出張ガイガン

転生したら悪魔の実のカルマノイズだった件
協力 龍狐様

ピー助「ほーん。わりと昔から活動してたんすねぇ~」

カルマ「まあ色々とやって来ましたよ」

ピー助「俺は五千年前にちょろっと活動してそのあと爆睡だったからなぁ。活動期間はまだ数年レベルだわ」

???「カルマさ~ん。あ、ここにいたんですか…って、このペンギンみたいな生き物は…?」

ピー助「あ、どうも」
(なんか見覚えあるんだよなぁこの顔。一体どこで見たんだったか…。それよりも胸部装甲パネェ)

カルマ「あ、セレナちゃん。この人…じゃない怪獣はピー助さんだよ」(プラカード)

ピー助「セレナちゃん!?え、あ、ん?なにどういうこと」

カルマ「ネフィリムが暴れて危ないところを助けてそれから一緒に行動してるんだ」

ピー助「はえ~すっごい。それにしても胸部装甲パネェ。まあマリアさんの妹だからなぁ。けど気を付けるんやで。マリアさん曰く気を付けないと太りやすいっていうから食べ過ぎには注意やで~w」

セレナ「この子の言ってることは分かりませんがすごく失礼なこと言われた気がします」


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親父との思い出?実家に帰省したら天井から親父の足が生えてたことかな

ガチです。


 久しぶりに、人間だった頃の夢を見た。

 父と山に行った時のこと…。

 

「いいか?動物ってのはこっちが何かしなければ基本的に攻撃してこないんだ」

 

 そう言いつつアオダイショウを掴んで持ち上げる父。

 いや、既に何かしてると思うんですが…。

 まあ、この個体はおとなしい子なのだろう。

 

「もし、俺がこいつに襲いかかればこいつも反撃してくるだろう。動物は基本的に襲われた時はまず逃げることを考える。そしてそれが無理だと判断したら…戦うんだ」

 

 父は動物に詳しかった。

 別に動物園の飼育員だったとかではないが、とても詳しかった。

 鳥の鳴き声を聞けばなんの鳥か言い当て、この動物を知っているか?と聞けば大体知っていると答えられた。

 そんな父を持ったからか自分も自然と動物好きになっていって…。

 今は怪獣になった。

 いや、動物好きだから怪獣になったわけではないが…。

 とにかく、こうして人間だった頃の夢を見るということがとても懐かしかったのだ。

 父は…どうしているだろうか?

 

 

 

 

 

 

 ピッピピピーピピピー、ピッピピピーピピピー…お?休憩室に一人でいるあれは響ちゃんでは?

 筑波から帰ってきてからずっとなにやら落ち込んでいるようだしここはアニマルセラピーのスペシャリストとして行くっきゃない。

 へ~いそこの彼女~。

 俺で遊ばない?

 

「ピー助君…」

 

 どしたの響ちゃん。

 らしくないぜ。

 ご飯食べる?つご飯

 

「食欲ないんだ…」

 

 な、なんだと…。

 あの響ちゃんがご飯に見向きもしないなんて…。

 これは本格的なカウンセリングが必要だ。

 えいっとジャンプして響ちゃんの膝の上へ。

 

「…ピー助君」

 

 へいへいどんどんぷにっちまいな。

 一度触り出したら止められない止まらない。かっぱえびせ…じゃない。ピー助です。

 

「触り心地、いいね…」

 

 そうでしょうそうでしょう。

 その調子でしばらく無心でぷにるんだな!

 …

 ……

 ………

 

「ピー助君」 

 

 なんですの?

 

「ピー助君のお父さんはどんな人…いや、怪獣か。どんな怪獣だったの?」

 

 うーん残念ながら俺の親父は人でね。

 いや、俺も人なんだけど…。

 まあ、いいや。

 で、俺の親父か…。

 まあ、普通の人かな。

 普通の父親。

 普通の父親ってやつを立派にやってた人だと思う。

 食うのに困ったこととかないし、真面目に働いてた。子育ても…まあ、そんなに怒られたことはないけど結構厳しい人だったかな。

 曲がったことが嫌いで、口癖は「筋を通せ」

 …こう思い出すのもすごく久しぶりな気がする。

 もう二度と会えないのだろうか。

 まあ、会えないだろう。

 俺がいた世界はノイズなんていなかったし、なにより俺が生きた時代は2019年。この世界は目覚めた時点で2040年代と未来なのだ。

 時空を越えるとはまさにこのこと。

 なにかの弾みでひょっこり元の世界に戻れたら…いや、戻ってもこの身体じゃ捕獲されて研究…なんてことになってしまうだろう。

 ゴジラシリーズに登場した怪獣に酷似した未確認生物発見!みたいな感じで。

 

「…お父さんに、会ったんだ」

 

 え…?

 響ちゃんのお父さんに?

 

「久しぶりに会ったお父さんは、昔みたいにカッコよくなくて…」

  

 あ、あぁあぁあぁ!

 ほら、元気出して!よしよし。

 うんうん生きてたらいろんなこともあるよね!

 

 ピー助は焦った。

 まさか、こんな出だしから重い話だとは思っていなかったからだ。

 落ち込んでいても思春期特有の後々笑い話になるようなかわいい話題だと思っていたのだ。

 

 やべぇよやべぇよ…これじゃ父親自慢したみたいじゃん!

 えーっと、うん。

 あれだあれ!

 うちの親父はあれだった、他人には厳しくて自分には甘かったかな~なんて。

 夏休み、実家に帰省したら天井から親父の足が生えててさ~。換気扇つけようとDIYしてたら足滑らせて天井ぶち抜いてたんだよね!

 これ俺が天井ぶち抜いてたらめちゃくちゃ怒られてたけど親父ったら笑って済ませようとしてさ!挙げ句の果てに自分がぶち抜いたとこに換気扇取り付けて最初からそのつもりでしたーみたいな顔してんの!

 まったくもうそういうとこが…こう…人間だよね!(やけくそ)

 

「…ふふ。なに言ってるかは分からないけど、わたしのこと慰めようとしてくれたんだよね?ありがとう、ピー助君」

 

 いやぁどういたしまして(照れ)

 

「…もうしばらく、触ってていい?」

 

 ええんやで。

 それからしばらく、響ちゃんの膝の上で大人しくしていました。

 見たか、これがアニマルセラピーだッ!!!

 

 

 

 二人の様子を影から見守る者が二人…。

 翼とマリアである。

 

「いいの?ピー助を独占させて」 

 

 いつもならすぐにピー助を返せと言わんばかりに突撃する翼が様子見していることを不思議に思ったマリアがそう訊ねた。

 

「…落ち込んでいる立花を元気づけようとしているのだろう。立花が元気になれば返してもらう。そう、あくまで貸してるだけだ。延滞は許さない」

 

「…そう」

 

 へぇ…ふぅん。

 

「なんだ、その笑みは」

 

「別に~」

 

「おい、マリア!話はまだ終わってないぞ!」

 

 

 

 

 ピーピピピーピピ、ピピ、ピー、ピーピーピピ、ピピ、ピー…おっとあれに見えるは山根博士。

 なんか、翼ちゃんとマリアさんに絡まれてる…。

 

「ピー助を連れて行くなど宣ったのは貴女ですか?」

 

「え、いや、それは…当初、そういう予定だったってだけで現状を鑑みてその必要はないと報告したからもうピー助君を連れて行くなんてことは…」

 

「ない、と言い切れるの?」

 

 うわぁ…あの二人顔こっわ。

 駄目やで~折角の美人が台無しやで~…とは思うけど、いま関わると面倒なことになりそうだからあれはスルーしよっと。

 お、あれに見えるはクリスちゃんと切調コンビ。 

 へーいそこの彼女達~俺で遊ばな…。

 

『緊急事態発生!総員、第一種警戒態勢!繰り返す!第一種警戒態勢!』

 

 第一種警戒態勢!?

 すぐにブリッジに行かないと…。

 

 

 

大阪府某所

 

「レイラインの解放…」

 

 自動人形のファラが森の中、警備していた兵士に口付けをしていた。

 

(それにしても、何故ここだけ警備が厳重に…?まさか、計画がばれて…いや、そんなはずはない。奴等はまだなにも気付いていないはず)

 

 とにかく、任務の遂行を優先しようと判断したファラは兵士達を次々と蹂躙し、目当ての場所へと到達した。

 巨大な岩。

 それは周辺の木々よりも高く、存在感を発していた。

 そしてファラは岩を一瞥すると剣を振るい、竜巻を発生させてその岩を砕いてみせた。

 

 ───それが、なにを呼び覚ますかも知らず。

 

 異変が起きたのは岩が砕け散ってすぐのことだった。

 風は止み、木々も息を潜め、その森に住まう生物達の呼吸も感じられないほどの静寂。

 そして、ファラはとても巨大な力を感じたのだ。 

 大地を揺らし、砕き、割ってそれは現れた。

 四つ足、金色の体色。そしてなにより目を引くのは背中の巨大な氷柱達。

 そう、ここは護国聖獣の一体を封印していた場所。

 護国を司る聖獣が一柱「闇魏羅珠(アンギラス)」の復活である。

 

「これは…面倒なことになりそうですね」

 

 それだけ呟くと、ファラはテレポートジェムを用いてこの場を後にした。

 闇魏羅珠の咆哮が、大気を震わせた。

 

 

 

 

 

 大急ぎで司令室に入るとモニターに映し出された光景に目を奪われた。

 あれは…アンギラス。

 しかし、俺がよく知る個体とは違う。

 護国聖獣の方のアンギラスということか。

 氷を司る怪獣なんていう属性付与がされているのだ。

 しかし、氷属性って強キャラかかませのどちらかのイメージがあるがどうだろうか?

 いや、そんなことはどうでもよくてだな。

 

「巨大生物は東へと進行。この先には…市街地があります!」

 

「避難はまだどころか始まってすらいません!周辺はパニック状態です!」

 

 オペレーター達の報告を聞き、まあ、そうだろうなと一人で納得していた。

 いきなり怪獣なんてものが現れたのだ、そりゃパニックにもなる。

 それにこの世界は怪獣が身近ってわけではないし、俺という知名度バリバリな存在もいるけど、こうして人間の生活している近くに怪獣が現れたのははじめてのことなのだ。

 

「ここは…MONARCHが発見、管理している護国聖獣の一体が眠っているとされた場所です。まさか、封印が解かれた…?」

 

 山根博士の推測は当たっているはずだ。

 恐らく、祠か何かがあったはず。

 しかし、管理しているというのに破壊されるなんてことがあるだろうか…?

 

「司令!我々に出動命令を!」

 

 翼ちゃんが司令に進言する。

 だけど…。

 

「装者は全員ヘリにて現場に急行。そして待機だ」

 

「あの怪獣はどうすんだよ!」

 

 クリスちゃんが司令に食いかかる。

 怪獣と戦う気やったんか…。

 まあまあクリスちゃん。

 餅は餅屋やで。

 

「ピー助。頼めるか?」

 

 任務…了解!

 それじゃあ早速出撃…。

 

「ピー助!」

 

 司令室を出ようとすると、翼ちゃんが俺の名前を呼んだ。

 

「ピー助。無茶はしないで…」

 

 翼ちゃんの不安そうな顔。

 そして素の口調。

 ああ、ダメだ。

 こんな顔をする翼ちゃんは、昔を思い出して…。

 こういう時、不安を和らげてあげる台詞は…。

 

 大丈夫やで翼ちゃん。

 命なんて安いものだ。特に、俺のは…ぶっ!?

 

 言い終わった瞬間、翼ちゃんに思いっきり抱き締められた。

 顔が翼ちゃんの胸に押し付けられて呼吸が出来ない。

 波紋を…波紋の呼吸を…!

 

「馬鹿なこと言わないで!絶対に帰ってきて…帰って来なかったら、無理矢理連れ戻すわ」

 

 しまった。さっきの台詞は本編でもリリーナ様から怒られるやつやった…。

 

 だ、大丈夫やで翼ちゃん。アンギラスなんて脇役も脇役。ゴジラやキングギドラ、デストロイアみたいな大物を相手にするよりはずっと楽だから。

 

 いや、アンギラスさんのことはもちろん尊敬してるからね。

 翼ちゃんを安心させるために言ってるからねこれ!

 

 翼ちゃん。そろそろ行かないと、街が大変なことになる。

 

「ええ…。ちゃんと、帰ってきて」

 

 応よ!

 ガイガン!目標を駆逐する!

 

 

 

 

 

 

 というわけで井上ワープ。

 闇魏羅珠の目の前に降り立ち、行く手を遮る。

 俺の後方約2キロには市街地が広がっている。当然、避難なんて完了していないからまずい。

 不味すぎるのだ。

 というわけで奴とコミュニケーションを取ろうと試みるが、怒り心頭に発するといった感じで全く返事がない。

 なにをそんなに怒っている?

 封印を解かれたからか?

 眠りを邪魔されたからか?

 話しかけるが全く応答せず、それどころか俺に向かって駆け出してきた。

 後肢で立ち上がり、前肢で叩き付けてくる闇魏羅珠と取っ組み合う。

 聞いてないかもしれないが聞け。

 そりゃあ誰だって眠りを邪魔されたら気分を悪くするさ。けどな、俺達怪獣の怒りは人間からすりゃ天災なんだ。ここでお前が暴れて人間に危害を加えたらお前や他の怪獣達は人間から憎まれることになるんだぞ。

 そうなったら、ただでさえ居場所のない怪獣達の居場所がなくなってしまう。

 怪獣と人間。

 正しい距離感で付き合っていかなきゃいけないんだ。

 そうでないと、互いが互いを傷つけることになってしまう!

 だからこれ以上お前を進ませるわけにはいかない!

 闇魏羅珠を押し返し、体勢を立て直す。

 いや、そんな暇を与えてはくれなかった。

 背中の氷柱をこちらに向けると…氷柱が、俺を貫かんと迫ってきた。

 何本かは叩き折ってやったが、身体中に氷柱が掠り、左肩にはもろに一本刺さってしまった。

 くそ…抜けねえ!

 奴も刺すだけでは飽きたらず、そのまま俺を振り回して…なんてパワーしてんだこいつは!

 ああくそ!傷口が広まっていくじゃねえか!

 やっぱりこいつ殺すか…いや、駄目だ。

 脳裏には、昨晩見た夢。父の言葉があった。

 こちらからなにもしなければいい。

 こっちから攻撃しては余計に火に油を注いでしまう。

 だから…耐えろ。

 奴の気が済むまで付き合ってやるんだ…。ブスッ!

 …ブスッ?

 首を下に向けると、右の脇腹に氷柱が刺さっていた。

 …。

 ……。

 テメェ!地球攻撃命令の時みたいに顔面ギッタギタのズッタズタに切り裂いてやろうかぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 ピー助はもう既に、耐えられそうになかった。

 次回へ続く。




GMK版アンギラスの設定とか構想載ってるやつ探し回ってやったけど大変やった。
初期のアンギラス、バラゴン、バランの護国三聖獣も見たかったでござる。
まあ、後々いろんなところで小ネタ的に三体並べられたりしてるけど。

オマケ 出張ガイガン

ピ「セレナちゃんが生きてる世界か…マリアさんはどうなっているのか果たして。さて、次なる世界は…。どこだここ。路地裏?」

<カシャン…カシャン…

ピ「ん?この特徴的な足音は…」
<くるり

???「なんだこのペンギンみたいな奴は…」

銀色のボディ
真っ緑な目

ピ「ファ!?シャドームーンやんけ!ゴルゴムの仕業か!」(ノルマ達成)

それでも月は君のそばにの世界
作者 キューマル式様

月影信人(以下 月)「いや、確かに見た目シャドームーンだが違う!」

ピ「見た目がシャドームーンだけど違うってどういうことやねん!い、言っとくけどな!俺はキングストーン持ってないぞ!」

月「見れば分かる。ほら、変身解除しただろ?これでも納得しないか?ちなみに、今は仮面ライダーSHADOWって名乗ってる」

ピ「はえ~。てか、何気に言葉通じてるんですがそれは…。あ、なるほど。人外だからかオッケー了解。…ところで」

月「なんだ?」

ピ「その光太郎ファッションはリアルでは如何なものかと…」

月「変…身ッ!!!」

ピ「あ、あかんやつみたいですねこれは」
<キック迫り~


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聖獣なんて相手して大丈夫?罰当たったりしない?

今更ながらに不安になってきた。


 闇魏羅珠との取っ組み合いは続いていた。

 こっちは向こうに手を上げないが、向こうは俺を攻撃してくる。

 なんやかんやでちゃんと我慢してる俺を誰か褒めてほしい。

 それにしても、傷口から凍傷になっていくの結構辛いな…。あんまり気にしてはいなかったけど、あいつからは冷気が発生されていて夏だというのに周囲の気温は氷点下を記録していることだろう。

 氷属性なんてもん身につけやがって…。

 俺にも何かエンチャントしてほしいものだ。

 メタるために炎とかオナシャス!

 駄目?

 そんなぁ…。

 文句を垂れるのもそこそこに闇魏羅珠を押して押して押しまくる!

 こんなに押して…パワードさんかな?

 しゃあないんや、パワードさんは規制のせいで殴る蹴るが出来ないから…。

 思ってたよりはやってた気がするけど。

 それでも押すといえば個人的にはパワードである。

 OPも好きなんよ。

 銀河のスパーク、流星のスピー…、

 

「キョオォォォォォォォン!!!!!」

 

 いだだだだだ!?!!!!?

 こいつ右の二の腕に噛みついてきやがった!?

 悪かった!悪かったから!もっとちゃんと君のことを見てるからぁ!

 パワードにかまけてお前に構ってやれなかったのは謝るからぁ!

 くっそ…噛みつかれたとこから凍っていく…。

 離れろッ!

 …離れませんよね。

 ここで皆さんにお教えしましょう。

 噛みついて離さない動物のあしらい方を。

 無理矢理引き剥がそうとするから向こうもムキになるわけでして…。

 逆に考えるんだ。

 あげちゃってもいいさ、と…。

 というわけで噛まれた二の腕をどんどんあげましょう。

 おら!食え!

 ぷにった二の腕も愛嬌デース!

 そしてこの作戦は功を奏し、闇魏羅珠は二の腕を離してくれた。

 やっぱりジョースター卿の教えは偉大だね。

 さて…なんとか早めにこいつを鎮ませなければ…。

 

 

 

 

 

「ピー助ぇぇぇぇ!!!!頑張れデーーーーース!!!!!」

 

 切歌の声援が響く。

 しかし…。

 

「プロペラの音でかき消されて聞こえないわよ…」

 

「いくらピー助が耳良くっても…」

 

「うー…。でも応援はきっと届くはずデース!気持ちが…心で通じるはずデス!というわけで調もマリアも一緒に応援するデスよ!せーの、頑張れデーーーーース!!!」

 

「「が、頑張れ~…」」

 

 羞恥心から躊躇が生まれるマリアと調。

 そんな二人を見て、切歌は情けないデス…と項垂れた。

 

「もっと声出すデス!」

 

「そうは言っても…」

 

「切ちゃん。その、恥ずかしい…」

 

 ヒーローショーじゃあるまいしと続けた調。

 しかし、切歌は反論する。

 

「なに言ってるデスか調!ヒーローショーじゃなくて、ピー助は本物のヒーローデス!そうデスよね!マリア!?」

 

「え、えぇ…そう、ね。ピー助には何度も助けられたものね」

 

「デェス!そして、ヒーローは皆からの応援を受けて戦うものデス!つまりピー助を応援するということはアタシ達も一緒に戦っているということになるデス!」

 

「なるほど…!切歌、あなたの言いたいことが分かってきたわ!」

 

「流石マリアデス!というわけでもう一回…」

 

 すうぅぅぅと大きく息を吸う切歌。

 そして、叫んだ。

 今度はマリアも一緒に。

 調は…頭が痛くなった。

 

「あ、ヘリにスピーカーついてるんで使います?」

 

「パイロットさんナイスデス!!!」

 

 パイロットは、空気が読めた。

 

 

 

 

 

「なんでピー助はあいつを攻撃しないんだ…!」

 

 苛立った雪音が忌々しそうに呟いた。

 確かに、ピー助は積極的にあの怪獣に攻撃しようとはしていない。

 とにかく押し返せ押し返せといったような、まるで相撲を取っているようだった。

 しかし、あの怪獣はお構い無しに攻撃を繰り出す。

 既にピー助の身体には無数の傷が出来ているが、ピー助は怪獣を攻撃しない。

 一体、どうして…。

 

「このままじゃあいつがヤバいだろ…。くそっ!」

 

「クリスちゃん!!!」

 

「雪音ッ!!!」

 

 雪音がヘリの扉を開けて飛び降りた。

 命令はまだ出ていないというのに…!

 

 

 

 

『Killter Ichaival tron』

 

 空中でギアを纏い着地する。

 アームドギアをボウガンに変形させ、ピー助が射線に入らない位置まで走る。

 さっきまで激しくピー助に襲いかかっていた怪獣は何故か動きを止めている。

 その隙にピー助が怪獣を取り押さえた。

 そして、今の位置からならピー助にあたしの攻撃が当たることはないだろう。影響があるとしても爆風ぐらいのはずだから大丈夫。

 怪獣相手には恐らくアームドギアの火力では通じないだろう。

 

「そのまま押さえとけよ、ピー助…」

 

【MEGA DETH FUGA】

 

 大型ミサイル2基を展開、即時発射。

 

「デカイのをお見舞いしてやるッ!!!」

 

 怪獣に向かって真っ直ぐに飛ぶミサイル。

 このまま闇魏羅珠に命中するかに思われたそれは…。

 

 ピー助によって阻まれた。

 

「なっ!?」

 

 突然、取り押さえていた闇魏羅珠を突き飛ばしミサイルを背中に受けるピー助。

 

「ピー助ッ!?お前、なんで…!」

 

 黒い爆煙に飲まれたピー助に向かい、叫ぶ。

 なんで、どうして。

 あいつはあたしの攻撃を分かっていたはずだ。

 だというのに、どうして…。

 

 やがて、黒い爆煙が晴れるとピー助は軽くこちらを振り向いて…。

 あたしを見た。

 紅いバイザーの中に隠れた瞳はきっとこちらを見ている。

 そう確信が持てた。

 

『俺に任せろ』

 

 なんだか、そう言われた気がして…。

 あたしは武器を下ろした。

 

 

 

 

「クリスちゃん、攻撃は止めたみたいですね…」

 

「ああ。だが、何故ピー助は怪獣を攻撃しない。このままではいずれ市街地に到達して…」

 

 戦闘の様子を見ながら最悪の想像をする。

 街中であの巨体が暴れ回ったら被害は想像がつかない。

 故に迅速に、確実にあの怪獣を倒さなければならないというのにピー助は何をして…。

 

「…もしかしたら、ピー助君はあの怪獣と戦う気はないのかもしれません」

 

「どういう意味だ立花」

 

「あの怪獣と戦うんじゃなくて、止めようとしてる…。そんな気がするんです」

 

 止めようとしている…?

 

「殴られたからって殴り返したら、また殴られて、殴り返しての繰り返しになっちゃうんです。だから…」

 

「…なるほどな。つまるところピー助は立花と似た者同士ということだな」

 

「そう言われると照れ臭いですけど…。ピー助君もあの怪獣と手を繋ごうとしてる。その事がとっても嬉しいんです…」

 

「ああ。ピー助は優しい子なんだ」

 

 しかし、このままでは市街地へ突入してしまう。

 何とかして押し返していかないとまずいぞピー助…。

 

 

 

 

 

 …なんか、寒くなってきたな。

 多分、こいつの発する冷気のせいだけではないだろう。

 少し、血とかオイルを流し過ぎたかもしれない。

 それに噛まれたり引っ掻かれた傷口から少しずつだが凍っていって体内まで浸食しているようで正直かなり絶不調。

 そのせいで自己修復機能も上手く作動していない。

 あれだ、MUTOの電磁パルス受けたゴジラ並に具合が悪い。

 くっそー!デバフの重ね掛け戦法なんて陰キャみたいなことしやがって!

 やるならせめてバフ盛り盛りの方が好感持てるわこんちくしょう!!!

 

「キョオォォォォォォォン!!!!!」

 

 ああもううるさい!!!

 キョンキョンうるさい!

 お前はこれからキョンって呼んでやる!

 いいな!分かったな!?

 

「キョオォォォォォォォン!!!!!」

 

 もうちっと鳴き声のバリエーション増やしやがれこんちくしょう!!!

 俺なんてこんな鳴き声だって出せるんだぞ!

 

「キュアァァァァァァ!!!!!」

 

 見たか!?

 ピーばっかじゃないんだぞ!!!

 もういい加減…。

 

「ピー!!!(鎮まりたまえぇぇぇぇ!!!!)」

 

 俺の中でも渾身の叫び。

 しかし。

 

「キョオォォォォォォォン!!!!!」

 

 そこは鎮まってくれねえかなぁ?

 もうマジなんなん?

 どうしたら動き止めてくれるんや…。

 動きを、止める…。

 そういえばさっき、急に動き止まった瞬間があったよな…。あれはなんでだったのか…。

 あの時何かあったか…?

 記憶を探る。

 ついさっきのことだけど、こいつ相手にしながらだったから正直自信はない。

 だが、思い出すことが出来た。

 歌だ。

 クリスちゃんの聖詠が聞こえたんだ。

 まさか、歌を聴いて一瞬大人しくなったのか?

 …やってみる価値はあるか。

 

「ピー!(翼ちゃーん!)」

 

 翼ちゃんを呼ぶ。

 しかし届いただろうk…、

 

「ピー助ぇぇぇぇ!!!!どうしたぁぁぁぁ!!!!」

 

 届いたみたいだ()

 それでは続いてメッセージを送るか…。

 

「ピピピ~!!!(歌ってくれ!翼ちゃん!)」

 

 …なんだろう、今の台詞、メッサー君みたいなんだが。

 死ぬんか?俺はここで死ぬんか?

 俺は…俺は死なないッ!

 もうマクロスなんかガンダムなんか分からなくなってきたな。

 

「ピー!!!(こう…落ち着く感じの歌!)」

 

 落ち着くやつ…頼みますッ!!!

 

 

 

 

「歌ってくれと言われても…落ち着く曲、落ち着く曲…」

 

 翼は唐突なリクエストに困った。

 普段のライブでアンコール等はあるがそれはあらかじめ組み込んであるもの。

 即興で歌えと、更に落ち着く曲という指定までされたので若干焦った。

 

「落ち着く曲…あ!マリアさんなら子守歌とか知ってそうです!」

 

「それだ!」

 

 響の案を採用し、マリアに連絡をする。

 諸々の事情をマリアに説明するとマリアも困惑した様子だったが、それも最初だけですぐに歌い出した。

 彼女が故郷から持ち出せた唯一のもの…Appleである。

 ヘリのスピーカーから流れるマリアの歌声。

 そこに調と切歌の歌声も重なり…。

 翼、響、クリスのコーラスも合わさり、六人の歌姫の声が響き渡る。

 そして…闇魏羅珠はその怒りを鎮めた。

 

 

 

 

 作戦成功ッ!

 闇魏羅珠は見事に大人しくなったぞ。

 今ならコミュニケーション取れるやろ。

 へいへい闇魏羅珠さ~ん。私、ガイガンというものなんですがね。

 帰ろう。

 俺達はもう普通に地上を闊歩は出来ないんだ。

 だから…目覚めたばかりで悪いけど、また地下に行ってくれないだろうか?

 ひどいことを言っているのは分かっている。

 それでも、理解してほしい。

 まだ今の人類は、怪獣を受け入れる準備が出来ていないんだ…。

 これで、俺の言葉は届いただろうか?

 依然として大人しいままなので聞いてくれていると思うが…。

 しばらく、闇魏羅珠と見つめ合う。

 こんなにロマンティックじゃない見つめ合いもそうそうないぞ。

 …どれだけ見つめ合っているだろうか。 

 なんだよ…早くまた襲いかかるなりなんなりしてくれよ頼むからぁ!

 こういう間は苦手なんだよ~!なんか喋った方がいいのかな?とか気にしちゃうからぁ!

 内心では汗だくだくでいたら俺の思いが伝わったのか闇魏羅珠は踵を返して歩き出して…。

 やった!勝った!第3部(GX)完ッ!

 

『…お前は』

 

 あん?

 聞き慣れない声がしたと思ったら、闇魏羅珠が立ち止まり、俺に話し掛けたようだった。

 話し掛けられたらしっかりと答える主義である俺はしっかりと答える。

 

「なんですか?」

 

『お前は…怪獣か?人間か?』

 

 一瞬、胸が強く脈打った。

 その質問は俺が避けてきたものだった。

 自分でもその辺は曖昧にしてきた。

 それ故に半端者。

 けれどあまりネガティブになり過ぎるのもよくないとポジティブな俺なりの答え…というか思考停止。保留とした結論がある。

 怪獣か、人間かと問われたら俺はこう答えることにしている。

 

「両方さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あのあと、闇魏羅珠は俺の言葉を聞くと何も言わずに元々寝ていた場所に帰っていった。

 いや、そこから入っていっただけで実際は地下を移動しているのかもしれない。

 まあいいや。さっさと帰ろう…なんか寒いし…。

 ちっちゃくなって翼ちゃんの乗ってるヘリにゴー…。

 ただいま~…。

 

「ピー助!怪我は無事か!?…体温が低い!待って、いま暖めるから…」

 

「翼さんッ!?なんで脱ごうとしてるんですか!?」

 

「止めるな立花ッ!冷えた人間を暖めるのには人肌がいいと聞いた。実際海難事故で漂流した人を救助した漁師は裸で抱き締めたらしい。つまりこれこそが正しい処置だッ!!!」

 

「毛布とかあるから暖めるのは大丈夫です!だから翼さんは脱がないでくださいッ!!!」

 

「毛布風情が暖めるだと?毛布ではピー助の心までは暖めることは出来ないだろう!?」

 

「なんの心配ですか!?ピー助君の心は冷えきってなんかいませんよ!」

 

「いいや…大人達の都合で無理矢理戦わされて…汚い!大人は汚い!」

 

「もうなんの話ですか!?そんなことより早くピー助君を暖めて…」

 

 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…。

 

「「ピー助(君)!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チフォージュ・シャトー。

 

「それで、ガイガンの戦闘データは取れました?」

 

 ファラが声をかけたのは、修復の終わった銀色の鉄人。

 ジェットジャガーであった。

 

「いいや。あんなもの戦闘とは言わないだろう。私は本気のガイガンが見たいのだ。あんな消極的な戦いなど…データを取るにも値しない」

 

「そうですか。修復ついでに言葉を話せるようになったのはこちらとしてもやりやすいですね。…誰の口調を参考にしたかは少々気になりますが」

 

「ふっ…マスターと共に生きて数百年。それだけ稼働すれば性格というものは生まれるというもの。それよりも…やはりデータを取るには直接拳を交える方がいいか」

 

「それなんですが…これを」

 

 ファラがジェットジャガーに見せたのは筑波の研究所から奪取したフォトスフィアの映像。

 フォトスフィア…それはナスターシャ教授が遺したレイラインの地図。

 地球上を走るエネルギーの道を記したものである。

 

「先程から、レイラインの一部が乱れているようです。これがどういうことか…あなたの方が分かっているのではありませんか?」

 

「ああ…。これは面白いことになりそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球の地下深く…。

 古の神々の胎動が響き始めた。




オマケ 出張ガイガン

原作の破壊者ピー助
九つの世界を巡り、その瞳は何を見る

…九つも巡れっかなぁ?

「それでも月は君のそばに」の世界
作者 キューマル式様

ピ「まさか遂に仮面ライダーと出会ってしまうとは…」

月「いろんな世界巡ってるのか…」

ピ「そういや元ネタの方でもBlackとRXの世界行ったり映画じゃシャドームーン出てきたし…そんときはライダー達から一斉攻撃されてましたねwww」

月「別人の話なはずなのになんか妙に腹立たしく感じるな…」

奏「よう!ここでなにしてんだって…なんだこのペンギンみたいな生き物」

ピ「ピー!?!?(奏ちゃん!?)」

奏「お、おう。急にテンション上がってどうしたんだ?」

ピ「生きてる!歩いてる!」

月「まあまあ落ち着け」

ピ「…帰る」

月「ど、どうしたんだ?テンションの上がり下がりが激しい奴だな…」

ピ「…ちょっと用事思い出したから。それじゃあ!」
つオーロラカーテン

月「行っちゃった…」

ガイガンの世界

翼「まったくピー助は…今日は奏の月命日だから一緒にお墓参りをする約束だったのに。これは…あいつ、もう来ていたのか」

お墓キラリ!
花供え~

ピ「…さぁてと、次の世界に行くk…」

翼「ピー助」

ピ「ピー!?(つ、翼ちゃん!?)」

翼「最近全く見ないから心配したのよ。ふふ…しばらく、離さないわ…」

ピ「ピ~!!!(誰か助けてクレメンス!!!)」

ピー助は無事に次の世界へ行けるのか?
それは…次回までにコラボ先が見つかるかにかかっている!
別にここで終わってピー助監禁ENDでもええけどね!


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ご唱和ください!我の名を!ガイガァ(以下略)

切歌「ドドン!」

調「ピッピッピッ。ピッピッピッ。ピッピッピッピッピッピッピッ」ホイッスル

切歌「ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドンドンドンドン」太鼓

マリア「リディアン音楽院生徒会、会則ひとーつ!…翼の胸の話はするなぁぁぁぁ!!!!!」

翼「マ・リ・アァァァァァ!!!!!斬り伏せてくれるッ!!!!!」

ピー助「ははwこの人マジだw」

響「…なんでマリアさんがリディアンの制服着てるの?なんで生徒会なの?」

クリス「…知るかよ、んなこと」

???「おい、そのネタこっちでもやるからあんまりやり過ぎるなよ」


 深夜。

 ニューヨーク。

 人々の悲鳴が飛び交う。

 次に聞こえるのは轟音、爆発音。

 そして、ビル街に地下鉄の車両が舞った。

 それも、鋭利な刃物で斬られたかのように真っ二つになった車両が。

 この惨劇を引き起こしたのは…『カマキラス』

 ビルの側面に張り付き、獲物を狙っている。

 次はアイツだとスーツ姿の女性に狙いを定めて飛びかかり…。

 

「きゃあぁぁぁぁ!!!」

 

 蛇に睨まれた蛙というが、まさに女性は恐怖に支配されて動けなくなっていた。

 あの鎌に切り裂かれ、カマキラスの餌食となる…。

 そう思われた。

 

「キュアァァァァァ!!!!!」

 

 天から響いた咆哮。

 その正体は…。

 

 

 てめぇぇぇぇ!!!!!

 なにパツキン美女に手ぇ出してんだキィィィック!!!!

 俺のキックがカマキラスにクリティカルヒット。

 カマキラスはビル街にしてはちょうど俺達が戦っても大丈夫そうな広場に転がった。

 はえ~…俺が戦ってもいいように整備してくれたんすねぇ(違う)

 おっと、そこのお嬢さん大丈夫?

 待たせちまったな!

 

「Oh…」

 

 カッコよすぎて言葉も出ないって感じだな。 

 さぁ、勝ちに行こうぜ。

 しかしカマキラスは俺の不意討ちピー助キックの直撃で既に虫の息。虫だけに。

 もうちょい耐久力を鍛えたらどうだ?

 というわけで鎌の峰で…峰?

 まあ、峰でいいだろう。

 というわけでカマキラスの脳天へ峰打ち!

 目を回したカマキラスはそのまま気絶。

 これを持ち上げてと…シュワッチ!

 

 

 

 

 

 ゾルゲル島。

 いや~流石にこのあたりは暑いっすねぇ~。

 というわけでこの島にカマキラスをポイ!

 ポイ!

 この島は無人島だしモナークで管理してるから怪獣も逃げられないとか。

 なんかフラグな気もするけど、フラグだと思うから駄目なんだ。

 大丈夫。

 きっとなにも起こらない。

 大丈夫。

 ヨシ!

 というわけで全て終わったので帰る。

 あー今日も働いた働いた。

 というかこの一週間休んでない。

 休む暇もない。

 闇魏羅珠との戦いから毎日のように世界各地で怪獣が出現。

 おかげで俺が毎回出撃する羽目に。

 まあ当然だよね、仕方ないよね。

 翼ちゃん達装者の歌で鎮静化させようと最初はしたけど、この目覚めた奴等は闇魏羅珠みたいに怒ってたわけでもなく単純に暴れていたような感じだったので仕方なく実力行使という形になってしまった。

 俺だって本当は乱暴はしたくはないけどしょうがない。

 出来る限り()()の被害を抑えるためにもしょうがないんや。

 それにしてもオーストラリア近海に現れたダガーラとの戦いが一番キツかったかもしれない。

 あいつ傷つけたらマジで環境汚染もヤベェから傷つけないように戦うし、オーストラリア軍からの攻撃も俺が全部迎撃なり庇うなりしたからかなり疲れた。

 もうマジ疲れた。

 ちかれた。

 ぴーすけおうちかえる。

 

 

 

 た、ただいま帰りました…。

 よろよろと歩いて司令室に到着…。

 

「ピー助!大丈夫?怪我はしてない?」

 

 翼ちゃんが早速俺を抱き上げる。

 正直、立ってるのも嫌だから助かる。

 あ~疲れたんじゃ~!!!

 

「ご苦労だったなピー助。一週間、働き詰めとなってしまって申し訳ない。しかし、向こうは俺達の都合など知らないからな。出来れば今日もこっちにいてほしいが…ピー助なら連絡すればすぐに現場まで駆けつけるだろうから今日は家に帰って少しでも休んでこい」

 

 けど、司令やオペレーターの人達とか働いてるのに俺だけ休むなんて…。

 

「大丈夫だピー助。一番働いてるのはピー助なんだから。ピー助がいないと駄目なんだ。だから、今日は帰ってゆっくり休みましょう?」

 

 …ピー。

 司令も頷いてるし…休ませてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 というわけで帰宅。

 あ~久しぶりの我が家なんじゃ…。

 なんじゃ…。

 なんじゃ…。

 なんじゃこりゃぁぁぁ!!!!!

 汚!汚!汚!

 ダガーラの環境汚染がどうのとかじゃねえ!

 既に汚染されていやがる…!

 

「あ…こ、これはその、ほら、私も忙しくて片付ける暇がなくて…(緒川さんめ…最近はピー助が片付けていたからって仕事を忘れているのではないか?)」

 

 おーい、聞こえてますよ~。

 …はあ。

 しょうがない、掃除しよ。

 

「ピー助疲れてるんだから休んで…」

 

 こんな足の踏み場もないところでは休めんよ…。

 というわけで掃除します。

 はいこれいらない。

 これもいらない。

 これもいらない。

 

「あ!それはもしかしたらいずれ使うかもしれないかもしれないから!」

 

 問答無用!

 そんな使うかもしれないかもしれないってなんだよ!

 かもしれないことすらかもしれないってなんやねん!

 そんなもん絶対使わないだろ!

 はい捨てる!

 はいこの雑誌も…なんで雑誌をこんな風に床に雑に置けるかね。雑誌の雑ってそういう意味じゃねえから!

 はいこれも後で縛って出して…。ヒョイ。

 

黒光りするG「よろしくニキーwww」

 

 ピ!?

 目の前が、真っ暗になった。

 

 

 

 

 …は!?

 俺は…どうしたというんだ?

 何か、黒光りするものを見た気がするが…。

 

「ピー助…大丈夫?やっぱり疲れて…」

 

 うぅむ…疲れてるのは疲れてるけどそれ以上に嫌なものを見てしまったというか。

 俺の住んでた地域にはいなかったからね、G。

 いや、仲間はいたけど俗に言うGはいなかったから…。

 あんなにでかかったのかと初めて見た時は思ったものだ。それにこちらの身体も小さいから余計にでかく感じる。

 あぁ、気持ち悪い…。

 さぁ、続けるか。

 片付けを。

 切り替えていこう。

 いつまでも脳内にあの黒光りを残しておくものではない。

 

 

 

 

 

 

 小さく疲れた身体に鞭を打ち、片付けを終えた俺に待っていたのは…お風呂である。

 汚れた身体はまず綺麗にしないとね!

 

「それで暁と月読が自動人形を撃破したんだ」

 

 ほうほう。

 子供は成長が早いねぇ。

 なんだかしみじみとしちゃうなぁ。

 

「ピー助があちこち飛び回っている間、私達は護国聖獣の封印された地の警護にあたっていたのよ。…自動人形達はやって来なかったけどね」

 

 そっか。

 来るかな来るかなと警戒しなきゃいけないのは疲れるよね。

 

「ふふ、ピー助ほどじゃないわ。今週一番働いたのはピー助だもの。それに比べたら私達なんてまだまだだ」

 

 けど人間と怪獣ではなぁ。

 疲れるの度合いが違うし…。

 それにしても…いい湯だな~。

 

 

 

 

 

 晩ごはんを食べ終えテレビをつけるとつけるとニュースで…。やっぱり世界中で頻発する怪獣災害のことだった。

 

「日本に現れたアンギラスを皮切りにフランスではゴロザウルス。韓国のマグマ。オーストラリアのダガーラ。パキスタンのメガヌロン。フィリピンのカメーバ。そして、先程ニューヨークに現れたカマキラス。毎日各国で怪獣による被害が出ています」

 

 せやな。

 

「そしてそれらに対抗するのが、国連直轄組織『S.O.N.G.』で開発された『対怪獣特殊空挺機甲1号機ガイガン』であります」

 

 ふぁ!?

 いつの間にそんな大層な肩書きつけられたんや!?

 てかS.O.N.G.で開発されたてなんだ!? 

 ワイは異星人製やぞ!

 草葉の陰でエム・ゴが泣いてるぞ!

 

「質問です。本当にガイガンは開発されたものなのですか?」

 

「姿が変わるなど未知のテクノロジーが使われていると言われていますが!」

 

「戦闘により出た被害はどうなるのですか!?」

 

「ガイガンは怪獣を改造したものではないかと動物愛護団体が抗議していますがこの件についてはどう思われますか!」

 

 わー動物愛護団体の皆さん俺のこと思っててくれてうれしー(棒読み)

 テレビは消そ。

 ピッと。

 

「…なんだか、すごいことになっちゃったわね」

 

 ねー。

 なんやねん対怪獣特殊空挺機甲1号機って。

 2号機とか絶対出てこないやろ。

 

「ピー助は戦いたい?」

 

 …え?

 そりゃあ戦わなくて済むならそれが一番やけど…。

 

「そうね…私もピー助には、戦ってほしくない…」

 

 悲しそうな顔で翼ちゃんは呟いた。

 …こんな顔は見たくないんだ。

 えいっ。

 

「ちょ!こら!脇をつつくな!ちょ、ふふ…やめ…やめて!ピー助!」

 

 怒られた。

 顔を赤らめ、肩で息をする翼ちゃん。

 はっはっはっ。

 元気になったようだね翼ちゃん。

 

「…もう。本当にしょうがないんだから」

 

 せやで、俺はしょうがないんや。

 なんたって…翼ちゃんのペットやからな!




解説
ダガーラ
モスラ2 海底の大決戦に登場。
古代ニライカナイ文明により生体海洋浄化システムとして改造されたが暴走して海洋を汚染した。
ベーレムというオニヒトデに似た生物を体内で生成。
その毒性は体中から赤い泡を吹きながら溶けていくという凶悪なもの。
改造されたもの同士、ピー助と近いものを感じたのとオーストラリア軍からの攻撃から庇ってもらったことで墜ちた(♀)
現在ゾルゲル島でピー助来ないかな~と待ち焦がれる日々を送っている。

赤い自動人形
ピー助が忙しくしている間に気が付いたら切調コンビに倒された。
いや~子供の成長は早いな~。
(ミカファンの人ごめんなさい!)


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夢を羽撃く者/夢を守る獣

Twitterフォローしてください!(爬虫類関係のアカウントが増えてきたので読者の方を増やしたい)
どんどん絡むし絡んできてください!
一日遅れで日笠さん誕生日おめでとうございます!


 歯車が回った。

 開かれた棺から蒸気と共に現れたのは…倒されたはずのキャロルであった。

 そしてキャロルは見た。

 遠く、こことは違う場所。()()()の姿を見たのである。

 

『聞いた?調ちゃんと切歌ちゃん強いね。ほんとに強くなったと思う。そう思うでしょ?エルフナインちゃんも』

 

「ああ、思うとも。故に…世界の終わりが加速するッ!」

 

 強く言い放ったキャロル。

 そんな彼女の下へ、いつも彼女が身に纏っていた赤いワンピースを持ってきたジェットジャガーが跪いた。

 

「修復は完璧か?」

 

「修復などという言葉は使いません。完璧以上の存在となりました。しかしまだ。まだ、私は上へと行けます」

 

「…そうか、完璧以上か。ならば次こそはあれを倒せ。計画も最終段階。元々、あれを生かしておく必要などないからな」

 

「はっ!」

 

 言いながら着替えたキャロルは玉座へと座り、自身が死んでからのことを詳細に聞き出した。

 

「…なるほどな。よもや、レイラインを解放したことで獣達が暴れ回ろうとは。だが、黙示録に相応しいとは思わないか?世界の終末…さしずめ、()()()()()とでも言ったところか」

 

 言い終えると、彼女は玉座から立ち上がった。

 計画遂行まであと少し。早く行動に移さなければならない。

 しかし…。

 

「ぐッ!?」

 

 キャロルは胸を押さえて、その場に踞った。

 すかさずジェットジャガーが駆け寄り支えるが、まだ痛みは和らぐことはなかった。

 

「マスター!」

 

「最後の予備躯体の不調ですか?」

 

「負荷を度外視した思い出の高速インストール…。さらに、自分を殺した記憶が拒絶反応を示しているようだ…」

 

「いかがなさいますか?」

 

「無論、罷り通る。歌女共が揃っている。この瞬間を逃すわけにはいかぬのだ…!」

 

 傷む身体に鞭を打ち、キャロルは足を動かした。

 自身の、悲願のために…。

 

 

 

 

 

 

 連日の怪獣出現も鳴を潜め、俺もようやく暇になってきた。

 そんなこんなで今日の俺の仕事は入院中の響ちゃんのお見舞いから始まった。

 やっほ~響ちゃん元気~?

 

「あ、ピー助君!来てくれたんだ!」

 

 どもども。

 あ、エルフナインもいたのか。

 とりあえず、ベッドの傍の椅子に飛び乗って顔を見せる。

 

「今、響さんとお話していたんです」

 

「ピー助君は聞いた?調ちゃんと切歌ちゃんが自動人形倒したんだよ!すごいよね!」

 

 うんうん。

 子供はいつの間にか成長してるもんだね。

 

「…ピー助君」

 

 なに?

 

「ちょっとこっちおいで~」

 

 ぽんぽんと布団を叩く響ちゃん。

 ?

 まあ、とりあえず行きますが…。

 ピョンとジャンプして布団の上へ。すると響ちゃんに抱えられて身体を撫でられる。

 

「いや~病院生活は暇だからピー助君がいてくれると退屈しなくて済むんだけどな~」

 

 まあ、気持ちは分からなくもないけど。

 けどダメー。

 今日は翼ちゃんの実家に行かなきゃいけないのだ。

 というわけでまたね~。

 

「あっ…もうちょっとだけ触らせてくれてもいいのに」

 

「あんまり独占すると翼さんが怖いですよ」

 

「それもそっか。けど…独占したくなる翼さんの気持ち、分かる気がしてきた…」

 

「えっ」

 

「響?」<ガラッ

 

 

 

 

 

 

 

 緒川さんの運転する車で移動中。

 相も変わらず翼ちゃんとマリアさんは仲良くどちらが俺を抱っこするかケンカした。

 まあ、俺が助手席に座ることで争いは収まった。

 …あとが怖いけど。

 あ、それからちゃんとシートベルトはしてるで。法律をしっかり守って偉い怪獣なのであった。

 そして翼ちゃんの実家へ…。

 なんで翼ちゃんの実家に行くかというと、あの人形達が神社とか祠とか襲ったりしていて、それがレイラインだか龍脈(明治政府の帝都構想で霊的防衛機能を支えていた…なんだかワクワクするね!)のコントロールを担っていた場所らしい。

 そして、翼ちゃんの実家には要石なるものがあるので狙われる道理があるらしい。

 はえ~おっきい…。

 ここが翼ちゃんの実家か~。

 

「十年ぶり…。まさか、こんな形で帰るとは思わなかった…」

 

 石段を上り、木造の門をくぐるとそこはザ・和!の世界。ザ・ワンじゃないよ?ネクスト好きだけれども。

 なんて考えながら屋敷に向かって歩くと奉られている岩…というより石柱だなあの感じ。

 あれが翼ちゃんの言ってた要石か~。

 ほえ~っとマリアさんと要石を初めて見た同士感嘆する。

 すると屋敷から初老ぐらいの男性がSPみたいな、というかSPかもしれない、を引き連れてやって来た。

 それを見た翼ちゃんが小声でお父様と呟いたのをピー助イヤーは聞き逃さなかった。

 なるほどあの人が…。

 似てないな()

 

「ご苦労だったな、慎二。それに、S.O.N.G.に編入された君の活躍も聞いている。それから…これがガイガンか」

 

 これはこれはどうも。

 いつも翼ちゃんのお世話してます…。ペコリ

 と、こちらが丁寧に挨拶したにも関わらず翼ちゃんパパはすぐに俺から興味を失くしたようで緒川さんに何か小難しいことを言って屋敷に戻ろうとして…。

 てぇ!

 翼ちゃんにはなにかないんかい!

 親子だろう!

 あれか?ツンデレパパなのか?

 いたわー小学校の時。友達の親が教師であんな感じだったわ~。

 家じゃ優しいんだよ!ってその子言ってたからその先生に怒られてもあんま怖くなかったわ。

 先生も人なんだな~とか思ってたわ。

 

「お父様!」

 

 とかなんとか俺が思っても当の本人的にはやっぱり不服だろうな。

 翼ちゃんが呼び止めると足こそ止めたものの振り向くことはなかった。

 顔ぐらい見せてあげればいいのに。

 やっぱりあれか?仕事中に娘と仲良く喋るとこ見られたくないんか?ええ?(おちょくり)

 

「…沙汰もなく、申し訳ありませんでした」

 

 翼ちゃんから出た言葉は謝罪。

 確かに、一緒に生活してて家族に連絡してるとことか見たことがない。

 さっきも帰るの十年ぶりって言ってたし。

 

「お前がいなくとも、風鳴の家に揺るぎはない。務めを果たし次第、戦場に戻るがいいだろう」

 

 ははーん。

 これは意訳するとこうだな。

 

『家のことなんか気にせずやりたいことやれ』

 

 みたいな感じやろ?

 まったくもう~このこの!(重い雰囲気が嫌なので自分だけでもネタに走ろうとする)

 

「待ちなさい!」

 

 立ち去ろうとした翼ちゃんパパを今度はマリアさんが呼び止めた。

 うわ!びっくりしたー。

 急におっきい声出さないでくれ~。

 

「あなた翼のパパさんでしょう!だったらもっと他に…」

 

「マリア…いいんだ…」

 

「でも!」

 

「いいんだ…」

 

 マリアさんを宥める翼ちゃん。

 まあ、マリアさんの気持ちは分かる。特にマリアさんは家族愛が強い人だから翼ちゃんパパのこの態度に憤るのだろう。

 そしてそれを宥める翼ちゃんというのも…。

 …諦めてるんだろうな。

 こういう在り方なんだと。

 さっきの俺の脳内妄想が本当だったらいいけど、本当に娘に対して冷たいだけかもしれないし…。

 うーん…。

 とりあえず、そこにいる奴にはレーザー光線砲を喰らわせてやるッ!

 俺が撃つと同時に、緒川さんも同じ方向に拳銃を向けて発砲した。

 しかし、俺のレーザーも緒川さんが撃った弾も竜巻の前には無力だった。

 しかし、さっすが緒川さん。隠した気配に気付くのは同じく隠れ潜む忍者だからか?

 それはさておき、自動人形か…。

 

「野暮ね。親子水入らずを邪魔するつもりなんてなかったのに…。レイラインの解放、やらせていただきますわ」

 

 ロンドンで会った奴だな…。

 緑色の、剣使い!

 早速アルカノイズを召喚した人形。要石はやらせない!

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 翼ちゃんの聖詠。

 これ聞くとなんか落ち着くんだよな…。

 それはさておき俺も巨大化して…。

 巨大化しようとした瞬間、アルカノイズ達が一斉に俺へと攻撃を始めて…。

 くそ、巨大化させない気か?

 このままでもお前ら相手なら充分だってこと見せてやるッ!!!

 おらおら!ガイガン様のお通りだぁ!

 鉤爪がいいか?回転ノコギリがいいか?レーザーがいいか?熱線がいいか?

 四択だ、選びやがれぇぇぇ!!!

 王蛇風にやれば『四枚あるぜ…』か。

 なんと、あの時の王蛇の二倍か。

 ということは俺の契約モンスターは四体?

 やだ、エサ代かかりそう。

 脳内ではふざけながら、しかし身体はちゃんとアルカノイズをぶっ殺しているのでご安心を。

 そして皆さん上をご覧くださ~い。風鳴名物の【天ノ逆鱗】がいま正に自動人形に向けて落ちるところでございま~す。

 

「なにかしら?」

 

 なにかしら?ってさっき俺が説明しただろ(怒り)

 それにしてもあいつはなんで余裕綽々で立っていやがる…?天ノ逆鱗だぞ?あの質量をまさか受けきるなんて言わないよな?

 しかし、そのまさかだった。

 天ノ逆鱗と自動人形の剣がぶつかる。

 どう見ても負けて断ち斬られるのは自動人形の方。

 だと言うのに、負けたのは…折れたのは、翼ちゃんの方だった。

 砕かれた剣。

 光が翼ちゃんを襲って…翼ちゃんは地面を転げた。

 翼ちゃん!

 駄目だ、意識を失ってる…。

 

「私の剣殺し(ソードブレイカー)は剣と定義されるものであれば、硬度も強度も問わずに噛み砕く哲学兵装。さあ、いかがいたしますか?」

 

 なんだそれ!

 世のバトル漫画の主人公の8割くらいはメタれるじゃねえか!

 というか…なんたる翼ちゃんメタ。

 自身すらも剣とする翼ちゃんでは奴には敵わない…!

 

「はあぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 マリアさんが無数の短剣を投擲する。

 しかし、それすらも剣殺しの前に打ち消されて…そのまま緑色の光が要石を破壊した。

 俺達は…目的を達することが出来なかった。

 ズタズタにされた俺達に追い討ちをかけるように、雨が降りだした。

 

 

 

 

 

 

 雨そのものは通り雨だったようですぐに止んだ。

 夕陽が辺りを染め、ヒグラシが鳴いている…。

 風流かな、と楽しみたいところだが第一は翼ちゃんだ。

 未だに目を覚まさない翼ちゃん…。

 あれで折れたとは思えないけど…。

 

「ん…ピー、助…」

 

 翼ちゃん!

 大丈夫?痛いところない?

 

「私は…負けた…。身に余る夢を捨てて尚…」

 

 翼ちゃん…。

 かなり、ショックを受けたようだ。

 けど気にすることない!あんなメタメタなやつ!

 剣がダメなら俺の鎌があいつをギッタギタに…。

 

「翼」

 

 襖の向こう側からマリアさんが声をかけてきた。

 襖に映るマリアさんの影…。

 …なんで部屋に入ってこないんだ?

 別に入ってきて悪いことなんてないしいいのに…。

 ははーんさてはハリケンジャー観て影の舞やりたくなったんだな。

 外人さんはジャパニーズニンジャ大好きデスカラネ~。

 

「動けるなら来てほしい。それから、ピー助は後でお仕置きよ」

 

 ふぁ!?

 い、いや~冗談デスよ?

 え?問答無用?

 そんなぁ…。

 

 

 

 

 さて、翼ちゃんパパの書斎に行ってアーネンエルベとかいうらっきょとか月姫に出てきた喫茶店と同じ名前の独国の研究機関の報告書を読んで…。

 それより、月姫リメイクまだ?

 2044年になっても出てないんじゃが(憤怒)

 

 

 

 

 

「あれはなんだ!国家安全保障のスペシャリストかもしれないが、家族の繋がりを蔑ろにして!」

 

 そうだそうだ!

 早く菌糸類は月姫リメイクを出せ!

 fg○で儲けた金を惜しみ無く使え!

 もう2044年だぞ!技術も色々進歩したんだ!きっとすごいの出せるだろ!

 

「すまない…だがあれが私達の在り方なんだ。…それと、ピー助は何に怒っているんだ?」

 

 そりゃあもちろん月姫リメイクが出ないことに対してですね…。

 

「ここは子供時分の私の部屋だ。話の続きは中でしよう」

 

 がらりと戸を開ける翼ちゃん。

 俺的には見慣れた景色が広がるが、見慣れない人からすればひどい場所で…。

 

「なッ!?敵襲!?また人形がッ!?」

 

「…あ、いや、その…。私の不徳だ。ピー助もそんな目で見るな」

 

 そうですね、不徳ですね(白目)

 

「だからって、十年間そのままにしておくなんて…」

 

 確かに…。

 十年間そのまま…そのまま?

 

「幼い頃にはこの部屋で、お父様に流行歌を聞かせた思い出もあるのに…」

 

「それにしてもこの部屋は…。昔からなの?」

 

「私が片付けられない女ってこと!?」

 

「そうじゃない。パパさんのことだ」

 

 む…マリアさんも気付いたか。

 え、ちょっと待って。

 俺の推測が正しければこれまでボケの想像が正しいということになって…。

 え、え?

 いや、そんなクイズ番組でボケたら当たっちゃって微妙な雰囲気にした芸人みたいなそんなことが…。

 だが、そんなことを忘れる程に重く、辛い過去を翼ちゃんが語り始めたのだ。

 自身の本当の父親はあの翼ちゃんパパこと八紘さんではなく、その父である風鳴訃堂だという。

 なんて、なんて非道な、悪辣な。

 血を濃く保つだ?

 そんなんで息子の妻寝取っただ?

 反吐が出る。

 斬っていいなら斬ってやるぜそんな爺さん。

 あーくそ嫌な気分だ。

 とりあえず…この部屋の掃除手伝うか?

 いや、この部屋はこのままにしておくか…。

 翼ちゃんが片付けているけど、多分片付けられないだろうし。

 ここは…ここだけは、このままでいいと思う。

 

 

 

 

 

 とりあえず夜になるまであれやこれやと話し合ったり戯れられたりしていたら突然、轟音が響いた。

 なんだなんだと外に出てみれば、あの緑人形がいるではないか。

 

「要石を破壊した今、貴様になんの目的がある!」

 

「私は歌が聴きたいだけ」

 

 そのわけの分からない返答に応えるように翼ちゃん達は聖詠を歌い、ギアを纏う。

 だが…奴の剣殺しに勝てるのか…?

 いや、勝たなければならない。

 二人が駄目でも…俺がいる!

 

「ピャァァァァ!!!!!」

 

 すかさずFWへと変身。

 剣殺しは剣を殺すが、鎌は殺せないだろう。

 

「あなたには興味ありません」

 

 つばぜり合いの最中、飄々とした顔で人形はそう語る。

 ムカつく奴だ…。

 一度距離を取って、ギガリューム・クラスターを放つが風に乗って加速した自動人形には当たらない。

 そこへマリアさんが蛇腹剣を振るうが…。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 剣殺しに殺された。

 くそ…!

 やはり奴を相手取るには俺でないと…。

 再び距離を詰めようと地面を蹴ろうとしたが、それより先に翼ちゃんが人形目掛けて駆け出した。

 

「この身は剣!切り開くまで!」

 

「その身が剣であるのなら、哲学が凌辱しましょう」

 

 光が翼ちゃんを呑み込んだ。

 駄目だ…折れていく…。

 くそっ!

 胸部から回転ノコギリを飛ばし、人形の攻撃を止めさせる。

 翼ちゃんは…!

 

「夢に破れ、それでもすがった誇りで戦ってみたものの…どこまで無力なんだ私は…」

 

 翼ちゃん…。

 

「翼」

 

 この声は…八紘さんの声!

 まさか、こんなところに来るなんて…危ない!

 

「歌え翼」

 

 八紘さんの口から出たのは予想外の、それでいて予想していた言葉だった。

 やっぱりあの人は…。

 

「ですが私では風鳴の道具にも剣にも…」

 

「ならなくていい!…夢を見続けることを恐れるな!」

 

「ですが…」

 

 そうだ!

 翼ちゃんは剣かも知れないけどそれ以前に、歌が好きな女の子だ!

 だから夢に向かって翔べ!

 翔べないなら…俺が翼ちゃんの翼になる!

 

「お父様…ピー助…ならば聞いてください!イグナイトモジュールッ!抜剣ッ!」

 

【Dáinsleif】

 

 翼ちゃんのギアが漆黒に染まる。

 これで…!

 

「ピー助」

 

 はい?

 

「私の翼になってくれるのだろう?」

 

 え…あ、はい、さっき言いましたって恥ずかしいな…。

 

「私と翔んでくれるか?」

 

 …もちろん!

 というわけで久しぶりのあれ行きますか!

 身体が溶ける。

 そして、アメノハバキリに…翼ちゃんの鎧に…翼へ変形して…。

 イグナイトしたアメノハバキリの上から俺を纏っていく。

 ガイガンギアver IGNITEとでも名乗らせてもらおうか。

 長刀を手に駆け出す翼ちゃんと俺。

 空高く跳躍し、真上から刀を振り下ろす。だが、これは大振りだったため回避されてしまう。

 これは。

 

「なっ!?」

 

 ドーモ、隠し腕でございます。

 背中から伸びた俺の鎌を模した隠し腕。そこから鎖を射出して人形を絡め取った。

 前のガイガンギアは身体の主導権が翼ちゃんか交代して俺など片方が動かす的な感じだったが、今回、俺はギアを動かし制御することで役割分担。

 さて、身動きとれなくしてやったぜ…て、ああ!剣二本目出しやがった!?

 鎖を斬られたか…だけど大丈夫。

 こっちには翼ちゃんの刀と俺の鎌×2と脚のチェーンソー×2で合計五本だこんにゃろう!

 そして人形に向かって放つ次なる技は【逆羅刹】翼ちゃん自身の回転と、チェーンソーを駆動させることでさらなる回転のパワーを引き出し、強力な力を生むのだッ!(暴論)

 Lesson5はこのために…(言いたいだけ)

 そして、奴の剣はチェーンソーの前に砕かれた。

 剣殺しがチェーンソーを殺せるわけねぇだろぉぉ!!!(ハレルヤ並感)

 

「チッ…ですが、貴女が自身を剣だと思っている以上…!」

 

「貴様はこれを剣と呼ぶか…。否ッ!」

 

 断じて否!

 今の翼ちゃんは…。

 俺達は…。

 

「これは夢に向かって羽撃く翼ッ!!!貴様の哲学に…翼は折れぬと心得よッ!!!」

 

 二本目の刀を取り出し、脚部チェーンソーと背中の三枚の翼からは焔を噴かす。

 そうだ、今の翼ちゃんと俺は翼…だから、翔ぶッ!

 その光景を見たらきっと、安易に火の鳥を想像するだろう。

 だけど、それでいい。

 どこまでも強く羽撃く、決して消えることのない炎の翼…。

 これが…折れるものかよッ!!!

 空中で舞う一人と一匹。

 夜を照らし…炎の翼は人形を切り裂き、砕いた。

 

【羅刹 翼ノ型】

 

 燃えろ、灰も遺さないほどにな…。




オマケ おいでよガイガンの森

翼「これがエルフナインが作ったゲームか…既に神ゲーの匂いしかしないぞ」

翼「む、ここはタクシーか…なんだこのピンク髪。どこかで見たことあるような…まあいい。名前はつばさと…」

翼「村の名前?ピー助村…いや、ここはガイガン村にしておこう」

翼「よし、着いたか…む、う、動けん!?つばさ!何故動かん!?」

翼「あ、勝手に動いてこの建物に入っていくのか…」

                   続く?


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仕込まれた毒

お待たせしました!
Twitterでは言ったんですがちょっと別作品の方に集中してまして…
エタったわけではないのでご安心を!


 上半身と下半身を真っ二つに切り裂かれた人形の残骸。燃やし尽くして灰にしてやろうと思ったのだが緒川さんの指示で消火してやったのである。

 カッコつけた結果がどうにもカッコつかなくなってしまい感情の行き場がない。どうしてくれようかこの羞恥心。やはりこれは敵であるこいつで発散するしかないようだ。というわけで。

 鉤爪を振り上げて一気に振り下ろ…すつもりで、自動人形の身体を爪先でつついた。

 だって、ねぇ?死体蹴りしてるみたいで嫌だし…。 

 というわけでつつく。ツンツン

 

「こらピー助。あまり変なものに触るんじゃない」

 

 変なものって翼ちゃん…。

 まあ、人間らしく喋って動いてその上強い人形は確かに変っちゃ変だけど俺に比べたらなぁ。

 とかなんとか言ってると白目をむいていた自動人形の眼球が動き回り、焦点があった()

 

 ぴぇぇぇぇぇ!?!?!?!!!

 俺そういうホラー演出嫌いだからマジやめて!?

 幽霊はいてもいいと思ってるけどホラーはまた別だからぁ!!!

 

「いつか、ショボいだなんて言って、ごめんなさい。剣ちゃんの歌、本当に素晴らしかったわ」

 

 うーわ喋りやがったこいつ。

 流石人形やな…。

 関心していると、自動人形は高笑いをはじめた。

 いや、ホントやめて。

 もうぶっ壊れた人形が話すどころか笑いだすの本当に怖いからマジやめて。

 

「まるで身体がバッサリ二つになるくらい素晴らしく呪われた旋律だったわ!アハハハハハハ!!!アハハハハ!!!」

 

「呪われた旋律…。確か以前にキャロルが言っていた…」

 

「答えてもらうわ!」

 

 ぴぇぇぇぇ…もう本当にやめて…やめて…。

 怖すぎるから…。

 

「知らず毒は仕込まれて、知る頃には手の施しようがないのが確実な死をもたらしますわぁ…」

 

 仕込まれた、毒…?

 まさか…。

 

「貴女の言う毒とは、一体何を意味しているのですか!?」

 

「マスターが世界を分解するために、どうしても必要なものが幾つかありましたの。そのひとつが…魔剣の欠片が奏でる呪われた旋律。それを装者に歌わせ、身体に刻んで収集することが、私達自動人形の使命!」

 

「では、イグナイトモジュールが!?」

 

「馬鹿なッ!エルフナインを疑えるものかッ!!!」

 

 エルフナインが仕込まれた毒…つまり、スパイだとして…。

 いや、無理だ。

 あの子にそんな器用な真似が出来るか。

 ともすれば、エルフナイン自身は自身が毒であるということを知らなかったんだ。

 だからこそ容易く俺達に毒を仕込めたんだ。

 

「最初にマスターが呪われた旋律を身に受けることで譜面が作製されますの。あとは貴女達にイグナイトモジュールを使わせるばいいだけの簡単なお仕事」

 

 全ては最初から仕組まれて…ッ!?

 ヤバい!こいつ自爆する気だ!

 巨大化して…間に合うか?

 ええい!こうなったら!

 巨大化しながら自動人形へと覆い被さる。

 そして、その身に爆発の衝撃を受けた。

 全てを受け止めきれたわけではないが…翼ちゃん達は守れたから良しとしよう。

 それに、しても…。

 こいつぁ…効くねぇ…。

 

「ピー助!?」

 

 小さくなった俺に翼ちゃんが駆け寄り、抱き起こした。

 ああ、くそ。

 そんな顔をさせるために守ったんじゃないのに…。

 つくづく俺って馬鹿だなぁ…。

 

「ピー助!しっかりしてピー助!」

 

 大丈夫…。中身に響いただけだから少し休めば平気だよ。

 それより、さっきの話を皆に伝えないと…。

 

「…緒川さん!本部に連絡を!」

 

 翼ちゃんが指示する前に緒川さんは通信を試みていた。しかし、自動人形の自爆により舞い上がった粉塵が通信を阻害しているようだ。

 …こうなったら。

 

「ピー助!まだ動いたら…」

 

 …通信が出来ないなら、俺が飛んでいけばいい。

 緒川さん、一筆書いてください。俺が運んでいきますから。

 

「駄目だ!そんな身体でそんなこと…。第一、この粉塵が届かない場所へ行けば通信だって…」

 

 相手の狙いが俺達の分断なら、本部にも通信を阻害するなりなんなりと対策されてるかもしれない。だったら直接乗り込む方が早い。

 それにまだ、向こうは戦闘中かもしれない。

 戦力は多いほうが…。

 

「そんな状態のお前を行かせられない。それに、向こうには雪音達もいる。だから大丈夫だ」

 

 でも…。

 やはりここは止められようが行くべきかと思い、飛び立とうとするが思った以上のダメージに身体が上手く動かなかった。

 くそ…くそ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼達が風鳴八紘邸にて任務を行っているのと同時進行でS.O.N.G.本部は【深淵の竜宮】にて自動人形を追跡していた。

 雪音、暁、月読の三名が深淵の竜宮へと乗り込むが、そこには自動人形レイアだけでなく、死んだと目されていたキャロルの姿があった。

 戦闘になった両者。

 キャロルの狙いだった【ヤントラ・サルヴァスパ】を破壊することには成功したが、深淵の竜宮に収監されていたウェル博士の登場により事態は混沌を極める。

 更に、イグナイトモジュールの真実。

 エルフナインが仕込まれた毒であったことをキャロルにより知らされた。

 そして、イグナイトモジュールを使用した雪音クリスにより自動人形レイアは撃破。

 崩壊する深淵の竜宮より脱出した装者達であったが、未だ窮地は脱していなかった……。

 

「この海域に急速に接近する巨大な物体を確認!」

 

「いつかの人型兵器か!」

 

 S.O.N.G.本部の潜水艦に接近する巨大なミイラのような人型。

 それは、レイアの妹であった。

 

「怪獣、ではないのね。どちらにしろピンチには変わりないのだけれど」

 

「潜航挺の着艦を確認!」

 

「緊急浮上!減圧を気にせず振り切るんだッ!」

 

 オペレーター達が自身の持てる最大限の力でそれぞれの役割をこなす。

 減圧を気にしない無茶な浮上に潜水艦は悲鳴をあげる。

 しかし、レイアの妹は振りきれない……。

 だが、ここで新たな熱源をレーダーは捉えた。

 

「もうひとつ!海底から高速で接近する物体があります!」

 

「この影は…」

 

 レーダーに映ったそれは、細長い蛇のような身体をしていた。その身体をくねらせ、高速で接近してくるそれは……。

 

「映像出ますッ!」

 

 モニターに映し出される巨体。

 青い体色。

 頭部には二本の角が生え、髭が伸びている。

 そして龍はレイアの妹をその細長い身体をもって締め上げた。

 

「これは…龍?」

 

 東洋人なら誰もがそれを連想するだろう。

 その龍のような怪獣、その名は…。

 

「怪竜、マンダ…」

 

 山根博士がその怪獣の名を告げた。

 

「マンダ…?」

 

「先史文明期に存在したとされるムウ帝国の守護神とされている怪獣です。シーサーペント等の伝承もマンダが由来だとされていて…」

 

「それよりも山根博士。何故急にマンダが現れたのか分かりますか?」

 

 早口でマンダの説明をする山根博士。

 司令は本題に戻すべく質問を飛ばした。

 

「おそらく深淵の竜宮の崩壊によって目覚めさせてしまったのかも…。それで気が立ってあの人型に襲いかかって…だとすると、私達も危ないわね」

 

「私達も…?何故です?」

 

「自身の縄張りを荒らした。それだけよ」

 

「そんな!私達はなにも…」

 

「何もしてないかもしれないけど、向こうには関係ないわ。説得のしようもないし。とにかく、全力でこの場を離れる。それしかないわ」

 

 とにかく逃げる。

 ピー助のいない今、怪獣に対抗する術などなかった。

 

 

 

 

 マンダはレイアの妹を締め上げていた。

 生物相手なら効果抜群な攻撃であるが、無機物である妹にとってはそこまでの攻撃ではなかった。

 そして、痺れを切らしたマンダは切り札を切る。

 

 ────水中に衝撃が走った。

 

 

 

 

 潜水艦が揺れた。

 揺れは潜水艦にとって常なることだが、それらとは訳が違った。

 

「きゃあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 揺れる艦内に木霊する悲鳴。

 天井の一部が崩れ、友里へと落下して…。

 

「危ないッ!!!」

 

 響く声。

 鈍い音の後、鮮血が舞った。




オマケ 怪獣飼育のすすめ(時系列は本編前)

翼「ピー助を飼うことになったけれど…」

ピー助「ピッピッ」

翼「何をどうすればいいのかしら…」

ピー助「ピー?」

翼「とりあえず、爬虫類に近いからっていうことでトカゲとかヘビの本を渡されたけど…。とりあえず読んでみましょう」

翼「ふむ……なッ!?爬虫類は基本的に人には懐かないですって!?そんな…だって…」

ピー助「ピ~」ツンツン

翼(こんなにフレンドリーなのにッ!?)

翼「あ、あまり触れあわない方がいい…?ストレスがかかっては駄目…?」

翼「決めたわ。私はピー助とは触れあわない…それがピー助にとっていいことだから…」

ピー助「ピー?」

翼「……私は」

ピー助「ピ~」

翼「……私、は」

ピー助「ピー!」

翼「無理よぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」抱きっ

ピー助「ピッ!?」


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決戦の朝、目覚めたもの/飛びたったもの

お待たせしました!
就活やテスト勉強などで執筆の時間がなかなか取れなくて申し訳ない…
エタりはしない、させない飲酒運転(違う)


 マンダが放ったのは『超音波砲』

 体内にあるソナーの役割を果たす器官より放たれる衝撃波。

 レイアの妹はその衝撃波を諸に受け、身体を粉々に砕かれ、破片が水底へと沈みゆく。

 そして、S.O.N.G.本部の機器類はそれによって異常をきたし、一時的な行動不能に陥る。

 揺れが収まり、友里が顔を上げると、自身を守るように覆い被さるエルフナインの姿があった。そして、エルフナインは脇腹から血を流していて……。

 

「エルフナインちゃん!!!」

 

「……ボクは、誰に操られたんじゃなく、自分の意思で……」

 

「大丈夫デスか!?」

 

「早く手当しないと……」

 

「二人は医務室から医療用キットを持ってきて!早く!」

 

「目を開けてエルフナインちゃん!エルフナインちゃん!!!」

 

 友里の声が発令所に響く。

 エルフナインの生命が、儚く、砂時計のように堕ちはじめていった。

 

 

 

 

 

『周到に仕込まれていたキャロルの計画が最後の段階に入ったようだ。敵の攻撃でエルフナイン君が負傷。応急処置を施したが危険な状態だ。俺達は現在、東京に急行中。装者が合流次第、迎撃任務にあたってもらう』 

 

 緒川さんの運転する車内で司令からの通達を受諾。

 さっきよりは大分回復してきたので戦闘も大丈夫だろう。

 緒川さんの同僚が送ってきた東京の映像には空を割って、空に浮かぶ城のようなものが現れて現場は大混乱となっていた。

 あれだけデカイのを破壊するなら、俺が巨大化して熱線なりで攻撃するのが手っ取り早いだろう。なのでそれまで翼ちゃんの膝の上で小休止。

 というかなんだ、空を割って現れるとか。

 バキシムか?

 そして、空に浮かぶ城ってなんだ?

 ラピュ○か?

 ラピュ○なのか?

 特オタ的にはムルナウの城とか。

 いやあれは城というか洋館か?

 まあ、細かいことはいいだろう。 

 一休み一休み。

 

「ピー助。無理はしないで」

 

 ……分かってるさ、翼ちゃん。

 正直なことを言うと、翼ちゃんに心配かけすぎてること反省してるんだ。

 だから、もう心配かけないようにする。

 出来るだけ。

 それなりに。

 最低限。

 まあ、身体が動くうちは大丈夫だし?

 それにほら、ガイガン忍法あるし?

 鉤爪が無事なうちは復活出来るし?

 なんなら十二の試練的なところあるし?

 ピー助は強いね、とか翼ちゃんが言えばバーサーカー並の強さ誇ってやるし?

 大丈夫やで。

 それに向こうにはもうキャロルしか残ってない。

 戦力差で言えばこっちのもんなんだからいけるいける。

 ……ふう。

 ここまで舌が回るようになれば大分調子を取り戻してきたようだ。

 だけどなんだろう、この胸騒ぎは。

 なにか……とても、気持ち悪い……。

 この、感覚は……?

 

 

 

北上川上流岩屋村

 

 風が吹き荒び、人は立っているので精一杯だった。

 そして最も風が強い。

 いや、風が集まっていたのは古より【神】が住まうと言い伝えられてきた婆羅蛇湖。

 その湖はいま、神の怒りを思わせるほどに荒れていた。

 周辺住民達がその様子を心配そうに眺めている。

 その中でも最も高齢である魚崎という男がこの地に伝わる【神】の名前を呟いた。

 

「婆羅蛇魏様じゃ……」

 

 そして、湖の中から現れる大怪獣。

 頭部から背中にかけて一列に並んだトゲが特徴的な護国聖獣の一柱。

 

 風の護国聖獣【婆羅吽(バラン)

 

 

新潟県妙高山

 

 山が崩れ、現れる巨大な影。

 狛犬にも似たような四足歩行の赤い獣は空に向かって吼えた。

 すると周囲の気温は一気に上昇し、周囲の木々が燃え盛り、炎が獣の赤き巨体を照らした。

 

 地の護国聖獣【婆羅護吽(バラゴン)

 

 

大阪金剛山地

 

 奈良県との県境にあるこの山地にそれは再び姿を現した。

 かつてガイガンと戦った聖獣。

 金色の身体に金剛石のような背中の棘。

 

 氷の護国聖獣【暗魏羅珠(アンギラス)

 

 

鹿児島県池田湖

 

 湖の上にその巨大な繭は突如現れた。

 なんとも奇怪な光景を湖付近にいた人々は次々とスマホを片手に写真に納めていく。

 そしてそれは、羽化の瞬間を迎える。

 繭を突き破り現れる、透明な羽。

 巨大な蝶、あるいは蛾に似た無色の身体がこちら側の世界へと現れた。

 身体全体が現れると、その身体に色が流れ始める。

 色彩豊かな姿へと変貌していく様を、人々はレンズではなく、自身の瞳に納めようとその機械を持つ手は下がり、飛翔の瞬間までしばらく見つめていたのであった。

 

 水の護国聖獣【最珠羅】

 

 

富士樹海

 

 その上空から、金色の粒子が地上へと舞い降りていた。

 その正体は分からずとも、人間はその光を貴きものだと認識した。

 空にポカンと開いた黒き穴。

 光はそこから降ってくる。

 その光の嵐の中、黄金の竜王が人の住まう下界へと舞い降りた。

 

 天の護国聖獣【魏怒羅(ギドラ)

 

 

 

 

 

『翼!聞こえるか!』

 

 謎の胸騒ぎに襲われていると、唐突に司令からの通信が入った。

 さっきと違いかなり焦っているようだが……。

 

『緊急を要する事態だ。護国聖獣のうち、爾羅を除く五体が活動を開始した!』

 

 は?

 こんな状況で?

 いや、こんな状況だからか。

 世界の分解なんて事態に怪獣達は自身の生命を守るために活動を開始した。

 とりわけ護国聖獣なんてのは国を護るための最終手段だ。国のためなら人は関係ないまである。

 そんな奴等が世界の分解なんて国どころか世界の危機に目覚めないはずもない。

 奴等は言うなれば、この国の白血球なのだから。

 それに最近の怪獣出現騒ぎで奴等も眠りが浅くなっていたのかもしれない。

 アンギラスが起こされたのもあって、同調していたのかもしれない。

 様々な予測が脳内を走り回るが、それよりもどうする。

 五体の怪獣が現れたとなると俺一人ではどうもしようがない。

 

『護国聖獣達は東京を目指している。狙いはキャロルの城だ』

 

『話の途中失礼します。いま判明したのだけれど、その、護国聖獣は……』

 

 通信に割って入った山根博士だが、その言葉切れが悪い。

 なにか、嫌な情報でもゲットしたのだろうか?

 

『その、科学者の私がこういうことを言うのはあれなんだけど……護国聖獣は()()となってロスト。そしてたったいま東京に集結したわ……』

 

 は?

 は?

 え、なにそのオカルティック。

 駄目だよ俺そういうの弱いからさ。

 いや、マジで。

 え?てか東京に集結?

 東京終わったじゃん。

 東京SOSどころじゃないよもう。

 というわけでもう帰ろう()

 あいつらいれば大体なんとかなるって()

 

「このままじゃ東京が……」

 

「護国の名を冠するものならば国を護るために戦うのだろう。しかし、怪獣達では人間のことを考えるなんてことは……」

 

 せやね。

 クニは考えてもヒトは考えてないからね恐らく。

 

「私達では怪獣の相手なんて……」

 

 なに弱気になってるの翼ちゃぁん!!!

 いつものように剣として頑張ります的なね、やる気はどうしたのやる気は!

 

『というわけで、ピー助に緊急出動命令だ』

 

 ほらねこうなるんだから()

 嫌だ嫌だ!

 なんで護国聖獣五体も同時に相手しなきゃいけないわけ!?

 駄目だよそんなん!

 無理だよそんなん!

 だって向こう集結しちゃってるもん!

 護国クライマックスだもん!

 魏怒羅の奴が行こうぜぇ~って言ってるもん!

 闇に堕ちた誰かのお父さん助けに行くとこだもん!

 絶対敵が邪神だよ邪神!

 そんなん相手に出来そうな連中相手になんで単独で挑まなければいけないんや!

 

「ピー助…すまない。私達ではどうしようもないのだ…。お前に頼るしか他ない…」

 

 …あー!そういうこと言っちゃう!

 言っちゃうんだそういうこと!

 いいよ!

 いきますよ!

 ええ!ええ!行ってやりますとも!  

 翼ちゃんを守るためにも行ってやりますとも!

 へい緒川さん!窓開けて!

 そっから飛んでくから!

 いいよね、移動中のところから出撃するの。

 G3大好き!

 というわけでいざ行かん。

 ピー助、行きまぁぁぁ……。

 

『東京に新たな巨大生物…いえ、巨大ロボット出現!』

 

 飛び立とうとした瞬間、新しい報告が入った。

 俺は勢いが殺されて、思い切り翼ちゃんの膝の上でずっこけた。

 というかなんだ、ロボットだって?

 

『あれは…以前、ピー助君が倒したはずの!』

 

 は?

 ジェットジャガー…あいつ!

 くそ!大人しく眠っていられず棺から出てきたか?

 いや……。

 俺と同じナノメタルで造られた存在である奴なら俺と同じような再生力を有していてもおかしくはない。

 事実やつは五千年前に一度倒したが復活したのだ。

 ならば二度目があったっておかしくない。

 俺と同じで、かなりしつこいということだ。

 それにしてもいま出てきて奴はどうする?

 キャロルの城の防衛が目的か?

 だとしても、相手は護国聖獣五体。

 とてもじゃないが、厳しいというものじゃないだろうか?

 そう思うと同時に、もうひとつの考えが浮かんだ。

 奴は、護国聖獣達相手に勝算がある。

 そうでなければ正面切って出てくるとは思えない。

 

 ……ここであれこれ考えていてもしょうがないか。

 

「ピー」

 

「なに?ピー助?」

 

「ピー!(ガイガン、出るぞ)」

 

「ピー助……必ず、帰って来るのよ」

 

「そうよ!ここで帰らぬ人になれば翼が本格的に病むんだから!」

 

「いやそれはマリアもそうだろう」

 

 いやいや実はね翼ちゃん。

 マリアさん最近仕事も恋も順調って感じなんやで。

 

「なっ!?」

 

「ほう?それでそれで?」

 

 お相手は調査部でマリアさんにエージェント教育施した…。

 

「ちょっと!今はそんな話してる場合じゃないでしょう!?」

 

 へへっ。

 さて、肩の力が抜けたところで今度こそ出撃するか。

 

「ピー助…」

 

 大丈夫だよ翼ちゃん。

 俺は先に行ってるだけだから、キャロルとかそこら辺は頼むね。

 それじゃあ、勝ちに行こうぜ!

 

「ピヤッ!!!」

 

 窓から飛び出し、車と並らんで飛びながら巨大化する。

 そして、因縁の相手のもとへと飛び立った。

 今度こそ、今度こそ決着をつけるんだ…!




護国聖獣達の登場シーンはオリジナルとオマージュとって感じで。
聖獣とか神扱いなら盛ってもええやろって感じで。


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機械

お待たせしました!!!
テスト期間だったものであまり執筆の時間が取れず……
もっとコンスタントに投稿出来るようにしたい……のですが就活もあってちょっと無理かも()
空いた時間に書いてるから遅くても投稿は続けていきます!
これからも応援よろしくお願いします!!!
あとFIRE SCREAMカッコいい!!!


 何故?

 どうして?

 このような疑問を抱くようになったのはいつからだったろうか。本来、このような疑問を抱くことなどあり得ない。

 

 何故なら、自分は与えられた命令を忠実に実行する機械なのだから。

 

 機械は、疑問など持たない。

 機械には人間のような感情も心もないのだから。

 だが、『私』は疑問を持ったのだ。

 何故。

 どうして。

 

 ───私は、どうして、エム・ゴ様の作品ではないのだろう?

 

 

 

「何故……何故私ではないッ!?何故奴が……■■■・■が選ばれたッ!?」

 

 机上を荒らす創造主。

 人間からは神と称される者達であるアヌンナキであるが、彼等は地球人類とよく似ていた。

 科学力や身体能力に差があるのみで、その精神構造は人間とよく似ているとかつて分析した。

 

「愚問である。お前程度が、改造執刀医の位につけると思ったのか?」

 

「■■■・■!!!お前ぇぇぇ!!!」

 

 銀色の拳銃を向ける創造主。

 だが、■■■・■は恐れることもなく創造主に歩み寄る。

 

「少々、話があるのだエム・ゴ」

 

「話……?」

 

「ああ。改造執刀医の座だが、お前に譲ってやってもよい」

 

「なっ……!?」

 

「条件は、この星に蔓延る獣共の掃討」

 

 それを聞いた時、私は無理だと感じた。

 一体この星にどれだけの怪獣がいると思っている。

 こいつは端から改造執刀医の座を譲るつもりなどないのだ。

 しかし、創造主はこの無理を通してみせると言ってしまったのだ。この女の玩具にされているとは知らずに。

 

 しかし、創造主がそうと言ったならそれを実現させるのが機械というものである。

 

 だと、いうのに……。

 

「美しい……。流石私の作品だ!!!」

 

 水色の肉体に黄金の鱗が連なっている。

 生物と機械の融合。

 それが、創造主の『作品』の条件。

 故に私は『作品』ではなく、創造主の補助をする『ロボット』

 心血注いで生み出されたものに私は敵わなかった。

 だが、思わぬ機会が私に訪れた。

 創造主の作品の脱走。

 捕獲していた小人達が脱走を手助けしたらしく創造主は怒り狂った。

 これだ。

 あの裏切り者を倒せば、私の優位性を証明することが出来る。

 しかしどうする?どうやる?

 あの巨大生物を倒すには私は小柄過ぎる。

 私が……奴と同じサイズになればいい。

 そう考えて馬鹿馬鹿しいと吐き捨てようとしたが……。

 

『やるぞ』

 

 どこからか響いた声。

 私にこんな機能は搭載されていない。

 分からない、分からない。

 だけど、この声に従おうと思った。

 それが……私の第二の起源。

 

 

 

 

 

 

 目の前には五体の獣。

 獣らしく吼えて、暴れて。

 まったく品がない。

 そして……。

 

「来たか……我が好敵手よ……」

 

 空を切り裂きビル街に降り立った因縁。

 ガイガン。

 ついに……ついに!

 

「さあ!決着をつけようぞ!ガイガァァァン!!!」

 

 

 

 

 

 相変わらず、うるさい奴。

 うるさいのは死んでも治らないらしい。

 いや、それよりも聖獣達をなんとかしないと……。

 

「おいギドラ!お前、あん時のギドラだろ?俺のこと覚えてる?」

 

「グルル……」

 

 あるぇ?

 

「へい!忘れたとは言わせねえぞ!お前俺のこと食おうとしてきたよね!ねえ!」

 

 問い詰めると、左端の首が俺に向かって噛み付いてきた。

 

「危なッ!?危ない危ない……なんだよ、覚えてないのかよ……。あ、アンギラスさん!あんたなら分かって……」

 

「キョォォォォン!!!」

 

 ……駄目でした。

 後の面子は知らない方だし……。

 話しかけづらい(人見知り。いや、怪獣見知り?)

 

「護国聖獣はその在り方を変えた獣達だ。最早君が知るかつてのギドラではない」

 

「説明どうも……。で、アンギラスがああなのは気が立ってるからでOK?」

 

「ああ、その通りだとも。最も原因は君の仲間が奏でた呪われた旋律。そして世界を壊す歌によるところが大きい」

 

 世界を壊す歌───。

 あの城から聞こえるやつか……。

 さっきからなんかムズムズすると思っていたがなるほどなるほど。

 

「そんじゃああれぶっ壊せばいいんだなッ!!!」

 

 熱線を吐き出し、城の破壊を試みる。

 が、バリアによって阻まれる。

 バリアを発生させたのは……銀色の三角形。

 それが三個集まってバリアを形成したのだ。

 ……なにあれむかつく。

 

「あれの防御力は完璧だ。君達が一斉に攻撃してこようと無駄だよ」

 

 チッ……。

 面倒だぜまったく……。

 

「そして、私が用があるのは君だけなのでね。他の怪獣諸君にはご退場いただこうか」

 

 どういう意味……と思った瞬間、ジェットジャガーが右腕を上げると、あの城が響いた。

 なんて、耳障り───。

 

「これ、は……」 

 

「世界を壊す歌。呪われた旋律。これは獣の本能を刺激するらしいな。世界の分解、即ち命の分解。生物は自身の生命が脅かされると攻撃的となる。故に……」

 

 爆音が響いた。

 爆炎が燃え上がった。

 護国の聖獣達が、暴れて……。

 

「なっ……やめろ!!!」

 

「最早止められぬよ。この街は怪獣により蹂躙され地獄と化し、世界の分解を迎える!!!」

 

 この外道が……!

 とりあえずこの物騒な歌を止めりゃいいんだろ!

 

「止めようなど無理なことは考えるなよ?君は私が釘付けにする」

 

「悪いけど野郎に釘付けになる目は持ち合わせてねえんだ」

 

 ジェットジャガーなど無視してあの城に向かって飛び立とうとした瞬間、何かが空から降ってきて大地へと突き刺さった。

 これは……剣?

 それが四本も……いや、上空に一本、剣が浮かんでいた。

 

「これは私とガイガンの決着の場。闘技場だ。負けた方が五本目の剣によって首を断たれる」

 

「はあ?闘技場だかなんだか知らねえがてめえに構ってる場合じゃないって言ってんだろ」

 

「悪いが構ってもらわなければならない。そして、構わざるを得ない」

 

 そう言ったジェットジャガーは手前のビルの一部を欠けさせ、破片をどこへともなく投げる。

 そして、ビルの欠片は電流により焼き付くされた。

 

「……電流デスマッチがお望みか?お前なんぞにこんなところで監禁プレイなんてごめん被りたいんだけど」

 

「ふっ……。電流は私達でも強烈なダメージを受けるほどに設定してある。追い詰められれば追い詰められるほどに危険というわけだ。おっと、空を飛ぼうなんてバカが思い付くようなことはするなよ。当然、空も封じている。どちらかが敗北するまで、この檻は開かない!」

 

 風が吹いた。

 西部劇の決闘のような雰囲気だが、こいつとサシでやり合おうなんて微塵も考えてはいなかったが……。

 どうやら、やるしかないらしい。

 二人同時に歩き出した。

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 これは、嵐の前の静けさ。

 互いの間合いまで近寄り、一度足を止めた。

 目の前には憎いこんちくしょうの顔がある。

 この面目掛けて、鉤爪のパンチをお見舞いする!!!

 

 踏み込みは同時。

 アスファルトの欠片が飛び散り、その下の土まで舞い上がる。

 鉤爪はジェットジャガーの顔面を打ち付け、ジェットジャガーの鋼の拳が俺の頬を捉えた。

 互いに後退りはしない。

 超近距離での乱打戦。

 互いに避けることも防御もせず、殴られたら殴り返すの応酬。

 根競べであった。

 

「はっ……!生物でもあるお前が私とひたすらに殴りあえば先に地面につくのはお前だぞ!ガイガン!!!」

 

「うるせえ!!!喋ってると舌噛むぜ!!!」

 

「私に舌などなぁい!!!」

 

「喩え話だこの低能!そのよく回る饒舌な舌引っこ抜いてやらぁ!!!」

 

 大振りのストレートを繰り出す。

 顔面目掛けて繰り出されたそれは、大振り過ぎた。

 鉤爪は空を殴り、ジェットジャガーは自身の懐に入り込み、身を低くして強烈なアッパーを繰り出そうとしている。

 あれをもらうのは、まずい……!

 

「いただくッ!!!」

 

「……バーカ」

 

 ジェットジャガーは一瞬、思考してしまった。

 何故、ガイガンはああも冷静にいるのか。

 懐に入られ、強烈な一撃をもらおうとしているのに何故……?

 答えは、目の前にあった。

 

 唸る、回転カッター。

 

(馬鹿な……先程の大振りは私を誘うためのもの……!?これは、まずい!?)

 

 一瞬とはいえ、思考の海に溺れたジェットジャガー。

 それはガイガンにとって充分な隙であった。

 回転カッターの刃が、ジェットジャガーを切り裂いた。火花をあげ、金属と金属がぶつかる甲高い音を響かせながら。

 火花に照らされるガイガンの横顔は、まるで悪魔。

 無慈悲な、なんの感情も抱いていないようであった。

 幾何かして、ジェットジャガーだった鉄の塊は力なく崩れた。

 

「悪いけど、お前に構ってられるほど暇じゃねえんだ。もう化けて出てくんなよ……」

 

 ジェットジャガーだったものを見下げながら、静かに呟いた独り言は誰にも聞こえはしない。

 精々、静かに唸ったぐらいにしか人間には聞こえないのだろう。

 

「それにしてもなんだよ。どっちかが負けたらこのリングは開くんじゃないのかよ。負けた方の首を断つとか言っときながら空に剣も浮かんだままだし。なんだあいつ口だけか?嘘はよくないよ嘘は」

 

 どれどれ、なんか適当にやれば開いたりすんだろこれ……。

 

「……まだだ、まだ終わらんよ」

 

 背後から、声が響いた。

 そのセリフ、まさかシャア……!?

 なんていう冗談は置いといてだ。

 

「テメェ……まだ生きてやがったのか!?」

 

「ナノメタルの再生能力を忘れたのか?君自身もその恩恵にあやかっているというのに……。さて、先程は見事だったが、私を機能停止させるまでは至らなかったということだ」

 

 くそ……なんてしぶとい野郎なんだ……。

 憎まれっ子世にはばかるってか?

 

「それでは、第二ラウンドと行こう。そして、我が力の全てをここからは解放させてもらう」

 

「力の全て?あのウルトラダイナマイトモドキか?あんなんもう効かないぜ」

 

「あれは私の機能の一部に過ぎん。……さあ、私は私自身を解放するッ!!!」

 

 直感で、まずいと思った。

 やらせてはいけないと。

 しかし、既に奴の変身は始まっていた。

 

 身体はそのままに、背中にはコウモリのような翼が生え、腕は鋭い爪を持つ剛腕へと変化した。

 そして、頭部は首が伸びて頭は龍のように変化して……。

 

「この、姿は……」

 

「これこそが私の『シン』なる姿ッ!!!」

 

 ───レッドアローン。

 

 巨大な翼を広げ、電子の咆哮を放つジェットジャガー。いや、レッドアローン。

 その姿はまさに……怪獣。

 銀色の龍人のような怪獣が、その姿を現した。




レッドアローン

ジェットジャガーが対ガイガン用に生み出した新にして真なる姿。
その力は果たして……
あとエヴァのジェットアローンの元ネタとのこと(エヴァ詳しくない)


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世界ヲ壊ス歌

諸々カット!!!
素晴らしい原作見て!!!!
戦姫絶唱シンフォギアGX!!!


 風が暴れ、冷気と熱気が同時に襲いかかる。

 空からは金色の鱗粉が舞い、稲妻のような光線が天の裁きと言わんばかりに地上を焼き尽くす。

 地獄という言葉で果たして形容するに足るだろうか?

 

「こんな状況下であれをどう対処すりゃいいってんだ!?」

 

 クリスが毒づくが装者全員同じ気持ちを抱いていた。

 最優先に片をつけるべきは世界の分解を担う魔城チフォージュ・シャトー。

 だが、チフォージュ・シャトーへの道に立ちはだかるのは五体の怪獣。そして……。

 

「キャロル・マールス・ディーンハイム……」

 

 紅桔梗の魔装(ファウストローブ)《ダウルダブラ》を纏い、装者達を空から見下ろしている。

 ファウストローブを纏うその姿はシンフォギアに似ていた。

 シンフォギアとは似て非なるファウストローブであるが、更にキャロルはファウストローブの力を引き出してみせた。

 

「これは……!」

 

 キャロルは、歌ってみせた。

 そして放たれる極大の攻撃。

 

「この威力!まるで!」

 

「すっとぼけが効くものか!こいつは絶唱だ!」

 

「絶唱を負荷もなく口にする……」

 

「錬金術ってのはなんでもありデスか!?」

 

 絶唱。

 そう、これは絶唱だ。

 シンフォギアに搭載された決戦機能のひとつであるそれは相討ち覚悟のものであり、使用すれば装者には強い負荷がかかる。

 だが、そんな絶唱と同等の歌を歌いながらもキャロルは苦のひとつもなく極大の攻撃を放ってみせる。

 

「だったらS2CAで!」

 

 自身の特性を活かした技、S2CAを用いてキャロルの歌を束ね、調律しキャロルへぶつけようと考えた響。

 だが、翼がそれを止めた。

 S2CAを用いれば負荷は全て響へとのし掛かる。

 強大なキャロルの歌を一人で背負えば、響の身がもたない。

 

「ッ! 翼!あれを!」

 

 歌の嵐の中、マリアは気付いた。

 チフォージュ・シャトーが明滅していることに。

 

「明滅……鼓動……共振ッ!?」

 

 チフォージュ・シャトーは巨大な音叉であった。

 キャロルの歌を共振させ、エネルギーを増幅させている。

 そして、チフォージュ・シャトーは地上に光を放った。

 放射状に広がっていった光は世界中に駆け巡ると一点に収束。

 屹立した光はやがて世界を覆い始め……世界の分解が開始された。

 

「これが世界の分解だッ!!!」

 

「そんなことッ!!!」

 

 拳を放つ響。

 だが、身体中に絡み付いた弦によって阻まれキャロルには届かない。

 

「お前にアームドギアがあれば届いたかもな」

 

 あと一歩のところで届かない。

 拳という、射程距離が最も短い武器であるがために。

 

 状況は不利。

 しかし、打開しなくてはならない。

 そのためにもまずはあの装置を止めねばとマリアは決意し一人飛び立った。

 

「マリアッ!」

 

「私はあの巨大装置を止める!」

 

 ビルを駆け、チフォージュ・シャトーへと一人向かうマリア。

 だが、その手を掴む仲間達がいた。

 

「LiNKER頼りの私達だけど」

 

「その絆は時限式ではないのデス!」

 

 こんなにも頼もしい仲間はいない。

 一人ではなく三人なら大丈夫だと、マリア、調、切歌はチフォージュ・シャトーへと到達。

 侵入を阻むアルカ・ノイズを切り捨てて、シャトー内部へと侵入していった。

  

 キャロルに挑む響、翼、クリスの三人であったがその強大さの前に攻めきれず、受けきれず、ダメージが積もる一方であった。

 地面に膝をつき肩で息をする響。

 宙に立ち、虫の息の装者三人を見下ろすキャロル。

 力の差は歴然であった。

 そしてそれはここだけの話ではなく……。

 

「見ろ。お前達のところの獣もジャガーにやられたようだ」

 

「なに……!」

 

 その言葉に真っ先に反応した翼はピー助が戦っている方角を向く。

 当然、人間の目線ではビルが阻んで見ることなど出来ないのだが偶然、目の前のビル群を稲妻のような光線が破壊し尽くした。

 土煙が晴れ、浮かび上がる光景。

 

「なっ……!?」

 

「そんな……ピー助君が、そんな!」

 

 姿を変貌させたジェットジャガーが、傷だらけのピー助の首を掴み持ち上げている。

 ピー助の目には光が灯っていない。

 腕も力なくだらりと垂れ下がり、生気というものを感じられなかった。

 

「ピー助……ピー助ぇぇぇ!!!」

 

 翼の叫びが木霊する。

 その声はピー助に届くだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェットジャガー。

 いや、レッドアローンの剛腕が二の腕を掴み、俺を持ち上げる。巨大な手に備わった四本の鉤爪が肉を裂き、裂傷を刻んでいく。

 

「姿が……変わったところでッ!!!」

 

 体内温度が上がり、熱がせり上がってくる。

 そして、放つ熱線。

 零距離から放たれたこれが当たらないわけもなく、レッドアローンの頭部に直撃。豪快な火花を散らし、白煙に包まれる。少なくないダメージを与えてやったが……妙な胸騒ぎがする。

 そして、予感は的中する。

 白煙が晴れ、無傷のレッドアローンの顔が現れた。

 

「ん?何か顔にかかったか?」

 

 こいつ……!

 こうなったらと身体を思い切りレッドアローンに密着させ回転カッターを起動させる。

 

「二度も同じ手が通じると思ったかッ!?この畜生がッ!!!」

 

「なっ……!?」

 

 飛び散った金属片。

 これは、カッターの刃……。

 折れたと、いうのか……!?

 

「……もはや、これまでだなッ!ガイガンッ!!!」

 

 今度は首を掴まれ、投げ飛ばされる。

 ビルに叩きつけられ、崩れたビルの下敷きとなった。

 

「来い。その程度で終わるものではないだろう」

 

 積もったビルだったものの山に向かいレッドアローンが語りかける。

 そして、何かの駆動音が瓦礫の下から鳴り響く。

 

「ゼェェヤァァッ!!!」

 

 爆ぜる瓦礫。

 その中から飛び出る───改造ガイガン。

 右腕を振り下ろし、レッドアローンを袈裟に斬り砕いた。

 

「ッ!?」

 

 反撃に出るレッドアローン。

 剛腕を振りかざし、目にも止まらぬ速さの拳がガイガン目掛けて飛ぶ。

 しかし、レッドアローンの拳の先に、既にガイガンはいなかった。

 

 地面に両腕のチェーンソーを突き立て、街を破壊しながら駆けるガイガン。

 レッドアローンの背後を取ったガイガンは尻尾の先でレッドアローンを捕縛。そのまま、チェーンソーを駆動させてレッドアローンを引き摺り回す。

 

「市中引き回しだこのやろう!!!」

 

 とにかくレッドアローンを引き摺り回す。

 近くのビルにぶつけるなどしてダメージを与える。

 ガイガンには最初こそビルを破壊する罪悪感があったがもうここまで街めちゃくちゃなんだからいっそのこと全部綺麗にして新しく街造ればいいんじゃね?的な考えが芽生え、もう街への容赦はなかった。

 それに、周囲を気にして勝てるほど、レッドアローンは容易い相手ではない。

 最後にトドメの一発と一番巨大なビルにレッドアローンを叩きつけ、今度はレッドアローンがビルだったものの下敷きとなった。

 

「……ちっとは効いただろ」

 

 残心は怠らない。

 しかし、まだこのリングがそのままであるということは奴は負けていないということ。

 いつ、どこから来てもいいように身構え……!

 

「な、に……」

 

 背中から、貫かれた。

 腹部を見れば、先が鏃のようになっている触手が数本。

 一体、どこから……。

 

「ぬるい。ぬるいぞガイガン!!!」

 

 コンクリートの山が爆ぜ、現れるレッドアローン。

 その背中から触手が地面を突き刺しているのを見逃さなかった。

 地中から、攻撃してくるなんて……。

 触手が引き抜かれて、奴のもとへと戻ると背中から生えている無数の触手達が蛇のように鎌首をもたげる。

 こいつ……レッドアローンじゃなくて別のあれに見えてきた……。

 色合いもオレンジと銀で、どことなく竜人のように見える……。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 まず回復して……。

 

「させるか」

 

 襲いかかる、無数の触手。

 先端の刃が全身を切り刻んでくる……!

 なんとか逃れようにも全身を取り囲まれてしまって逃れられない。

 

「くそ、が……!」

 

 膝をつく。

 とにかく、防御を固めて……。

 

「ふん!!!」

 

 コンクリート片を巻き上げながら爆走するレッドアローン。その豪腕が俺を掴んで無理矢理立たせて……。

 

「ガッ……」

 

「その細い首をへし折ってくれる!」

 

 離せともがくが駄目だ、力が入らない……。

 くそ、視界まで狭まってきて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 S.O.N.G.本部の潜水艦ではオペレーター達がなんとか通信管制を回復させようと試みていた。

 普段は装者達の戦闘をモニターしサポートしている彼等だが、何故か今回は謎の通信不良によって装者達との繋がりを絶たれてしまったのだ。

 

「通信回復はまだか!」

 

「駄目です!何かにジャミングされてしまって手の施しようがありません!」

 

 通信不良の原因はこちらの機器類ではない。

 外的要因。

 それを排除しないことには回復は不可能である。

 彼等は知らないが、この通信不良の原因はモスラの鱗粉によるもの。

 原因の排除なんて出来ようがないのだ。

 打つ手なしの状況下、唐突にアラートが鳴り響いた。

 

「今度はなんだ!」

 

「巨大な熱源を感知!距離は……200!」

 

 200という至近距離。

 いつの間にそんな熱源が近付いていたというのか。

 レーダーは常に作動しているため急にこんな至近距離に現れるなど……。

 

「とにかく熱源の正体を探れ!さっきの怪獣の可能性もある!」

 

 先ほど潜水艦を襲ったマンダがここまで追ってきたのではと推測した弦十郎。

 もしマンダならばすぐに逃げなければならないが……。

 

「モニター出ます!」

 

 映し出される海中。

 暗闇の中、何かが青い光を明滅しながら接近している。

 

「マンダじゃない……あれは……」

 

 やがて、暗闇にその光を発しているものの姿がはっきりと現れた。

 黒い巨体。

 明滅していたのはその巨体に炎のように生え並ぶ巨大な背鰭。

 その、怪獣の正体は……。

 

「ゴジラ……」

 

 怪獣王ゴジラ。

 ゴジラがついに、現生人類の目の前に現れたのだ。




皆さん本当にお待たせして申し訳ありませんでした……
リアルが色々忙しいもので…… 

え?Twitterにめちゃくちゃ浮上してる?
そりゃTwitterは140文字程度しかありませんから小説書くのとは労力が違うのです(言い訳)

え?キャスやるぐらいなら書け?
別にええやろ!読者作者の皆さんと色々盛り上がりたいんや!

というわけでちっちゃいガイガンになってた続きはお待ちください……
就活終わったらまた前みたいにバンバン投稿するから!
それでは!


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真の目的

お待たせしましたぁ!!!!!


 東京湾内。

 陸とそう遠くないところ。

 海面が揺れ、盛り上がり……巨大な刃のような背鰭が露出した。

 やがて、背鰭の持ち主の身体が浮かび上がり、水上へとその巨大な体躯を世界に見せつけた。

 黒い身体。 

 白い三列に備わった巨大な背鰭。

 その風格は正に怪獣王のそれ。

 遂に、現人類達の前に姿を現したゴジラだった。

 海から上陸し、工業地帯を突き進むゴジラ。

 その先は、五体の護国聖獣が荒れ狂い、ガイガンとレッドアローンがぶつかり合い、世界を分解せんとする錬金術師とシンフォギア装者達が争う戦場。

 

「おいあれ!!!」

 

 クリスがゴジラの姿を見つけ、翼と響に伝えた。

 今正にこちらに向かってくる黒い巨体。

 これ以上怪獣が増えてたまるかとクリスは愚痴を溢さずにはいられなかった。

 そして、怪獣王の登場に怪獣達が反応しないわけがない。

 まず魏怒羅が稲妻のような光線でゴジラを出迎えた。

 無秩序な光は周囲のビルを破壊しながらゴジラの胸に直撃する。

 だが、そんなもの痛くも痒くもないと言わんばかりにゴジラは直進する。

 ゴジラはこの中で最大の脅威であると認識した護国聖獣達はゴジラに向かっていく。

 闇魏羅珠、婆羅護吽、婆羅吽が駆ける。

 闇魏羅珠の冷気と婆羅護吽の熱気がぶつかり合い、暴風が巻き起こる。

 飛膜を広げ風に乗り、更に風を起こす婆羅吽。

 三位一体の攻撃が迫る。

 ミサイルのように放たれる氷柱。

 砲弾のように迫る火球。

 風となり吹き荒ぶ婆羅吽。

 

 氷柱はゴジラに命中すると爆ぜ、白い煙がゴジラを隠す。更に火球が都市を巻き込みながら炸裂する。

 黒い煙と赤い炎が一帯を覆う。

 そしてトドメの婆羅吽の特攻。

 風を纏い、突撃槍の如く黒煙の中のゴジラに向かう婆羅吽。

 だが……。

 直撃の寸前、ゴジラの腕が婆羅吽を受け止めた。

 衝撃で、アスファルトの欠片が舞う。

 受け止めた婆羅吽を闇魏羅珠、婆羅護吽に向かって投げ飛ばすゴジラ。

 どうすることも出来ず投げ飛ばされた婆羅吽は闇魏羅珠達と衝突し、破壊されたビルの下敷きとなった。

 

 続いて最珠羅が巨大な羽根を羽ばたかせ風圧でゴジラの進行を食い止める。

 鱗粉が舞い、金色の風のよう。

 その金色の風の中を黄金の竜が突き進む。

 風を背に受け勢いづいた魏怒羅がゴジラに体当たりを仕掛けた。

 風と魏怒羅の質量によって倒れたゴジラであったがその背は蒼白い光を放っていた。

 そして、放たれる放射熱線。

 魏怒羅の胸を焼き、押し返す熱線の威力は凄まじい。

 こうしてゴジラは体勢を立て直した。

 ほぼ同じタイミングでビルの下敷きとなっていた三体も復帰して、護国聖獣に囲まれるゴジラ。

 睨み合い……再び、ゴジラ達はぶつかり合った。

 

 

 

 

 

「見ろ、ゴジラだ。ゴジラが来たぞ」

 

 朧気な意識の中でそんな声を聞いた。

 ゴジラ……。

 霞む視界の中に見える、黒い物体。

 少しずつ、少しずつ焦点が合うとそれが確かに怪獣王であると気が付いた。

 

「やはり、やって来たか怪獣王」

 

 やはり……?

 

「どういう、ことだ……」

「我が創造主五千年の目的……。怪獣の絶滅!」

 

 我が、創造主……!

 エム・ゴ……!

 

「お前達怪獣という生き物はこの星の力……星命力によって生きている。かつては満ち満ちていた星命力も年月と共に減少し今ではほとんどの怪獣が地底へと潜り少ない星命力を吸い、休眠することで命を繋いでいる。だが、その星命力が失われたら、どうなる?」

 

 星命力……?

 星の力……。

 レイライン……!

 

「キャロルに与したのはそのためか……!」

「ご明察だなガイガン! 意外と察しが良くて上出来だ。一応言っておくが今の主にも感謝し忠誠を誓っている。暗い水底より私を引き上げてくれた」

 

 こいつ……!

 最初から狙いはそれだったのか!

 

「万象黙示録……。キャロルはこの世界を分解、解析しようとしている。それもこの星全てをだ! そんな錬金術の行使にどれだけのエネルギーが必要だと思う? 怪獣共が得る分など存在せんよ。そして今や満足に活動出来る怪獣はお前だけだ。私と同じエム・ゴ様により造られた存在だからだ。見ろ、あのゴジラの姿を。熱線の一発であの有り様だ。月の欠片を撃ち落とした時の消耗はまだ響いているらしい」

 

 確かに、ゴジラはどこか辛そうに戦っている。

 本調子ではなさそうだ……。

 

「そして残りの怪獣達も少ない力であれだけ暴れているのだ。いたずらに命を削っているに過ぎない。馬鹿な奴等だ。所詮は獣畜生だな」

 

 このままではこいつの思うつぼだ。

 なんとか、反撃の手立てを……。

 ッ!?

 

「反撃などさせるものか。お前はこのまま、このまま死ぬ。ようやく、ようやくだ。エム・ゴ様の理想を果たす時が来た。そして、私の優秀さの証明にも繋がる……」

 

 首を絞める力が増す。

 これ以上は、流石に……!

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

 

 突然響いた声は敵の首魁キャロルのものだった。

 レッドアローンも現マスターの裂けるような声に反応せずにはいられなかった。

 一瞬、俺を掴み上げる手の力が弱まったのでその隙にレッドアローンを蹴りつけ拘束から逃れた。

 呼吸を整えつつ、レッドアローンと向かい合う。

 が、レッドアローンはキャロルの方に気を取られているようだった。

 闘いの最中に何を……と思わずにいられなかったがキャロルの奴は何を血迷ったか自身の城に向かって攻撃を放とうとしているではないか。

 レッドアローンは城をやらせまいと先程の防御装置を向かわせるが千載一遇。

 自分の城を自分で壊そうってんなら壊させてやるのが俺なりの敵への情けってことで邪魔させてもらうぜレッドアローンさんよぉ!

 背後から思い切りチェーンソーで頭から斬りつける。

 ド派手に火花が舞って切り裂かれたレッドアローンは防御装置の制御に失敗。

 キャロルの城が極太の光線に貫かれる。

 そして、内部から爆発の炎があがり、魔の城は真下にあった巨大なビルを押し潰しながら地に墜ちた。

 

「何を馬鹿なことを……ッ!」

「はっは~ん。やっぱり機械ってのは予測外のことに弱いなぁ! お前、自分で思ってるよりポンコツだぜ」

「貴様……半端者の分際でッ!」

 

 さて、怒らせて冷静さを欠かせるのは十八番ではあるが流石にヤバいな……。

 というかこいつロボットだよな、俺と違って。

 生身なんてないと思うがその割には感情的というかなんというか……。

 

「ぬぅん!!!」

 

 そんなこと考えている場合ではなかった。

 迫るナノメタルの鞭。

 チェーンソーでは腕が重いと鎌へと変化させて払うがどこまでも追跡してくるこいつはしつこくて仕方ない。

 鞭から逃れながら時折ギガリューム・クラスターで牽制するがまるで効き目はない。

 さて、こいつをどう攻略するか……。

 ゴジラさん達に援護……は無理だ。

 全員絶賛ダウン中の現在、戦えるのは俺一匹。

 ここはよく漫画である地味なダメージでも積もれば大ダメージ作戦でチマチマ削っていくか……。

 世の中一発逆転なんて存在しない。

 一発逆転を信じる輩はカルト宗教にハマるってばあちゃんも言ってたしな。

 ここは堅実に……。

 

「終わりだ」

 

 試合終了を告げるホイッスルの如き台詞が耳をつんざいた。

 終わり、とは。

 目の前にはリングロープ代わりの電流。

 そして、ここはリングの角である。

 堅実に攻めていたのは向こうの方だったか……!

 電流に触れるのはまずい。

 しかし鞭も迫っている。

 上空に逃げるか?

 いや、それも無理だ。

 上も電流のバリアーで囲われている。

 まさに……詰み、か……。

 身体中あちこちを貫かれた感触。

 あぁ、俺の、敗北、か……。

 

 

 

 敗者には天の剣がその首を断つというシステムが備わっていた。

 全身を貫かれたガイガンは断頭台に立ってしまった。

 曇天の空に浮かぶ剣が敗者を定めた。

 そして、剣が勢いよく放たれると同時に虹色の光がガイガンを照らして─────。

 

 

 

 

 

 マリア達は自身を犠牲にしてキャロルの計画を阻止した。

 それでも尚、世界を分解しようというキャロルの前に響、翼、クリスは歯が立たなかった。

 ただの一人で七十億の絶唱を凌駕するフォニックゲインの前に最早これまでと思わずにいられない。

 何度目か分からないアスファルトの感触。

 だが、どれだけ地面に伏せようと……。

 

「たとえ万策尽きたとしても……。一万と一つ目の手立てがきっと……」

 

 そうだ、諦めてはならない。

 立ち上がると共に響く、三つの絶唱(歌声)──────。

 

「マリアさん!!!」

 

 土煙が晴れ、現れるマリア、調、切歌。

 三人では届かなかった相手でも、六人ならば……。

 いや……。

 

「ピー助!」

 

 翼が地面に倒れ込んだピー助に向かって呼び掛ける。

 

「立てピー助! お前はこんなところで死ぬようなものではないでしょう! だから私も……私達もッ!」

 

 紡がれる、六重奏。

 それぞれ支え合い、響く歌声。

 優しく、美しい歌。

 

「オレを止められるなどと自惚れるなぁ!!!!」

 

 絶唱()絶唱()がぶつかり合う。

 その余波で嵐の如き風が吹き荒ぶ。

 

「S2CAヘキサコンバージョンッ!!!!!!」

 

 六人の絶唱による大技。

 そこへ更にキャロルの絶唱も織り込み、束ね、放つ。

 

「今度こそガングニールで束ねッ!」

「アガートラームで制御! 再配置するッ!」

 

 響が受け止め、束ね。

 マリアが制御し、六人に負荷を配置する。

 これは、フロンティア事変の奇跡を再び顕現させる────。

 

「まさか、オレのぶっぱなしたフォニックゲインを使って……」

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「ジェネレイトッ!!!」

「エクスッ!ドラァァァァァァイブッ!!!!!!」

 

 虹色の嵐が曇天の空を突き破る。

 その光景に驚愕を隠せないキャロルは失意の表情を浮かべていた。

 そして嵐が収束していき、戦姫達が晴天を背に舞い降りた。

 

 

 

 

 

 その剣は確かにガイガンの首を落とすはずであった。

 それが、なぜ……。

 金属と金属のぶつかり合う甲高い音。

 

「なぜだ……。なぜ、立っているッ! ガイガンッ!?!?」

「さあな……ただ、歌が聞こえただけだ……!」




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死闘の覇者

 既に身体は限界を越えていた。

 機械で構成される部分は機能しないし、ずっと悲鳴をあげている。

 これ以上の活動は無理であると。

 それでも……。

 

「歌が聞こえた、だと……。戯れ言を」

「戯れ言なんかじゃないさ。マジだ、ぜ……」

「いいや戯れ言だとも。立ち上がったのには驚かされたが立ったところでなんだというのだ。最早動く死体も同然ではないか」

 

 確かに、それは奴の言うとおりだ。認めよう。

 けれど、だけど、だとしても────。

 

「根性見せやがれ……。ええ? ピー助さんよぉ」

 

 発破をかけ、鉤爪で太腿を叩く。

 すると震えていた足が素直に言うことを聞いてくれたので胸を張り、レッドアローンの前に立ちはだかる。

 

「歌が聞こえただの根性だのわけの分からないことを……」

「分からないだろうな。完全機械(パーフェクトサイボーグ)のお前には。さあ、最終ラウンドだッ!!!」

 

 共に駆け出し、震える大地。

 レッドアローンの巨体が迫り、襲いかかる腕を掻い潜り思い切り自身の質量を武器にしてぶつかっていく。

 密着した状態から鉤爪でアッパーを繰り出す。

 硬い感触。

 これだけでは足りない。

 鉤爪で殴る、殴る、殴る、殴る、殴る!

 ひたすらに殴り続けるッ!

 およそ鉤爪の使い方ではない。  

 だけどこいつはぶん殴りたい。

 散々やってくれたというお礼を籠めて。

 

「馬鹿な……ここまでの力がどこに!?」

「どこからだろうなぁ!!!」

 

 鉤爪でビンタを繰り出し、レッドアローンを吹き飛ばす。

 鉤爪鉤爪言っているが、この鉤爪には一応ハンマーハンドという名前が設定されている。

 なので切り裂くだけでなく打撃にも使えるのだ。

 なのでとにかく打つ!打つ!打つ! 

 そしてフィニッシュに頭突きだッ!!!

 

「どうした! 動きが鈍いぜ高性能!」

「チィィィッ!!! ガイガァァァァン!!!!!」

 

 再び激突。

 レッドアローンの巨腕と鉤爪がぶつかり合う。

 漫画でよくある拳と拳がぶつかり合うシチュエーションと一致する。

 その時、ふと思った。

 

 なんて、人間のようだろうかと。

 

 およそ怪獣の戦い方ではないと。

 

「ガイガン……! ガァイガァァァァァン!!!!」

「うるせぇぇぇぇぇ!!!!!! 俺は……俺は!」

 

 瞬間、身体が人のものになったような錯覚に陥る。

 拳で戦っているようだと。

 しかしこの身体は確かにガイガンのものである。

 

 ……なるほど、確かに俺は人間と怪獣の()()のようだ。

 

 翼ちゃん……みんな……。

 ゴジラ……他の怪獣達……。

 

 人間と怪獣の両方である俺が、人間と怪獣の両方を守るんだ──────!

 

 至近距離での熱線。

 効かないだろうが顔面にぶち当てるだけでいい。

 一瞬でも目隠しが出来ればいい。

 視界を奪った隙に肉薄。

 腹部の回転鋸が唸る。

 斬れ、斬れ、斬れ!!!!!!!!

 

「ぬおおおお!!!!」 

 

 散る火花が眩しい。

 常時なら耳を塞ぐような甲高い音が叫び続ける。

 だがここで思わぬ事態が発生。

 アルカノイズの大量召喚。

 それも大型のものまで。

 レッドアローンにだけかまけている場合では……。

 

「ピー助!」

 

 翼ちゃん!

 

「アルカノイズは私達に任せろ! ピー助はその機械人形(からくりにんぎょう)をッ!」

 

 ……任された!

 あと一手で決めるッ!!!

 

「勝負だレッドアローンッ!!!」

「来いッ! ガイガァァァンッ!!!」

 

 バイザーが煌めき、自身の最大火力がこみ上がってくる。

 そして、放つは極彩色の熱線。

 迎え撃つのはレッドアローン最大火力を誇る『プロトンスクリームキャノン』

 胸部が開き、禍々しい赤い光が収束して────いま、二つの光線がぶつかり合う。

 

 脚と尻尾で地面に根を下ろし、ここから一歩も下がらないと意地を張る。

 どちらも退かない。

 退くことなど出来ない。

 光線のぶつかり合いも拮抗を続け……ガイガンとレッドアローンの狭間で爆発。

 白い光が二体を包み込んだ。

 ビルは薙ぎ倒され、爆風は広範囲に広がっていく。

 怪獣すらも吹き飛ばすだろう渦の中、それでも二つの足音が轟く。

 

「キシャアアアアアア!!!!!!」

「─────────!!!!!!」

 

 咆哮。 

 真白の光の中を二体の怪獣は駆けていた。

 ……次こそ、最期だと。

 だからこそ、全力。

 

「デェェェストリガァァァァァァ!!!!!!!」

 

 ガイガンの身体が朱と黒に染まる。

 鋼の(かいな)と血の鎌が交差する。

 一瞬、睨み合ったガイガンとレッドアローン。

 そして……。

 

「「ッ!!!」」

 

 再び交差する。

 レッドアローンの拳はガイガンの顔面寸前まで迫っていた。

 そしてガイガンの鎌は────レッドアローンの顔面を貫いていた。

 

「ガッ……」

「……終わりだ」

 

 落とされる、血塗れの鎌。

 レッドアローンを断ち斬っていく。

 両断されたレッドアローンは爆ぜて、ガイガンをも飲み込んで……。

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助ッ!?」

「今はこちらが優先よ翼!」

「くっ……」

 

 装者とキャロルの最終決戦最中。ピー助は敵怪獣を討ち果たし、敵と共に消失。

 ピー助は恐らく小さくなったのだろうが……。

 それでも、心配である。

 だが今は戦場にいるのだと切り替え最後の一撃を放たんと仲間達と共にアームドギアに全ての力を集中させる。

 キャロルはその一撃を撃たせまいとするが響がそれを阻む。

 今が好機。

 ──────放つ。

 束ねられた五つの力はキャロルが練り上げた碧の獅子機の装甲を破壊する。しかし、あと一手キャロルを倒すには足りなかった。

 

「アームドギアが一振り足りなかったな……」

 

 言いかけて、気付いたキャロル。

 響の手に、五人の力が束ねられている。

 

「奇跡は殺す! 皆殺す! オレは奇跡の殺戮者に!」

 

 キャロルの放つ黄金の光の潮流が響を飲み込む。

 いや、飲み込んでなどいなかった。

 巨大化した響のアームドギア()が光線を受け止めていたのだ。

 

 その時、キャロルは謎の痛みに襲われる。

 記憶の拒絶反応?

 いや、これは亡き父が娘を止めようとする痛み。

 だがそれすらもキャロルは燃やし尽くして自身の力へと変換し再び響へと光を放った。

 そして響もまた、戦いを終わらせようと全てをその手に握り締め、キャロルとぶつかり合う────!

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」 

 

 競り合う光と拳。

 キャロルの放つ光の方が優先か……。

 

「立花に力を! アメノハバキリ!」

「イチイバル!」

「シュルシャガナ!」

「イガリマ!」

「アガートラーム!」

 

 翼、クリス、調、切歌、マリアが更なる力を響へと届ける。

 だが、更にそこへもうひとつの力が加わって……。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 …………。

 ……あ。

 少しばかり、気絶していたようだ。

 今の自分に残された力はもう僅か。

 しばらく、回復に専念しなければいけないほどに。

 だけど……。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 あれは……響ちゃん。

 そうか、まだ戦いは終わっては……。

 本当に、本当に僅かな力かもしれない。  

 それでも、みんなのために……。

 

「ガイ、ガン……」

 

 力を送り届ける。

 そして、そこで俺の意識は途絶えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女事変 怪獣災害について。

 記録者 山根加代子。

 これは最早それぞれ別種の事変として扱うべきではないかと思うほどに今回の事件は大きなものとなった。

 錬金術師達の思惑なんかよりも世間の目はこちらに向けられている。

 それもそのはず、なんといっても錬金術師関連のことは情報統制が敷かれているからだ。

 あれだけのことが起きても、チフォージュ・シャトーという空に浮かぶ魔城が現れてもである。

 まあ、情報を包み隠すというよりも民衆を食いつかせる、視線を誘導したという方が正しいのだろう。

 現にその効果は絶大で怪獣を殺せという声も少なくない。

 

 かつてルナ・アタックが起こった時にその姿を現世人類に現したゴジラ。

 封印を破かれ現れた護国聖獣達。

 海底より現れたマンダ。

 錬金術師に付き従っていた銀色のロボット。

 そして、S.O.N.G.が聖遺物という名目で所有するガイガン。

 

 このうちマンダ以外の怪獣が東京に現れ、東京は彼等の戦場と化した。

 最初現れたロボットを追うようにガイガンが現れ戦闘を開始。

 その後、護国聖獣達が現れ最後にゴジラの登場。

 護国聖獣達はあのチフォージュ・シャトーの発する音により暴れたとする推論はあるが詳しい原因は不明。

 五体の怪獣の出現につられゴジラは現れたというのが有力な説となっている。

 ゴジラと護国聖獣はキャロルの造り上げた碧の獅子機の爆発のあと、それぞれの住み処へと帰ったようで現在MONARCHが調査中である。

 

 また、激闘を繰り広げたガイガンとロボット怪獣はガイガンの勝利で幕を閉じたがガイガンの行方は未だに不明。

 S.O.N.G.は懸命の捜索を続けている。

 

 また、ロボット怪獣の破片等は回収されたとのこと。しかし、回収出来た量はあのロボット怪獣の質量の10%にも満たないという。

 これが意味するところはつまり、あのロボット怪獣の残骸は何処かへと消えたということ。

 だが、あのロボット怪獣はガイガン同様にサイズの調整が効くようなので小型化した可能性は充分にあり得る。

 瓦礫の山から見つかる可能性はそう低くはないと私は考える。

 

「それはきっと、ピー助君も……」

 

 一言呟き、加代子はノートを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 72時間。

 行方不明となった人間の生存率が大きく下がるラインである。

 とうに72時間は過ぎている。

 調査隊の撤収も命じられ、あとは瓦礫撤去などへ任務が切り替わる。

 それでも、諦め切れない者がいる。

 行方不明者の家族である。

 最も、彼女が探すのは行方不明怪獣であるが……。

 

「ピー助ぇ! どこにいるー!」

 

 あれから三日間ピー助の捜索に専念する翼。

 彼女の心には辛い思いが日毎に募っていた。

 

「エルフナインは戻ってきたんだ。あとはピー助だけ戻ってくればまたみんなで……」

 

 また、自分の大切な者が離れていってしまうかもしれない。

 それは嫌だ。

 だから、帰ってきてと。

 彼女の懸命な願いは果たされるのだろうか……。

 

「ピー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ます。

 真っ暗だ。

 夜の帳は下りてしばらく経ったよう。

 瓦礫や埃にまみれた身体を振るって少しばかり小綺麗にするがどうにも胸がざわついて仕方ない。

 そしてすぐ、ざわつきの正体に気付いた。

 すぐ近くで眠っていたジェットジャガーのせいだった。

 こんな野郎のすぐ近くで眠っていたのか俺は。

 

「……ガイガン」

 

 !?

 こいつ、まだ生きて……。

 

「生憎、しぶとくてな……。もうじき、全ての機能は停止する、が……」

「へっ。しぶといのはお互いさまってわけか……」

「流石の耐久性……流石はエム・ゴ様の作品だ……」

 

 作品、か……。

 

「作品であるお前が羨ましいよ……」

「お前は……」

「なん、だ……」

「今のお前を見たら、きっとあのエム・ゴの野郎も鼻を高くするだろうぜ。あいつは機械と生物の融合により完璧のその先へ行こうとしていた。機械じゃ完璧止まりだとさ。けどお前はただの機械以上の場所へ行ったんだ」

 

 ああそうだ。

 こいつはどうにもいけ好かない野郎だがそれでも俺はこいつのことを……。

 認めてやるしかないのだ。

 同じ、エム・ゴから造られたものとして。

 

「お前は完全機械なんかじゃない。俺なんかに執着して、俺なんかと張り合って……。なんだ、俺と変わらないじゃないか……。お前は俺と同じ不完全な存在だ」

「ふ……。そうか、私も不完全であったか……。以前は嫌っていたその言葉だったが……。今は、何故か心地が、いい……」

 

 それきり、ジェットジャガーが言葉を発することはなくなった。

 ……もう、限界か。

 

 たまたま。

 たまたま、落ちてるオリーブオイルを見つけた。

 よくもまあ割れずに残っていたものだ。

 見ればこれ結構いいやつでは?

 俺だったらもう夢中で飲んでしまうものである。

 ……。  

 鉤爪で上手いこと栓を開ける。

 そして少しだけ、巨大化。

 ようするに着ぐるみサイズ。

  

 ……最後の晩酌だ。

 お前がこれを好きかどうかは分からないが俺から出来ることはこれぐらい。

 

 半分ほどかけてやってからジェットジャガーを持ち上げ、飛び立つ。

 そして闇の中、海へと飛び立った。

 遠い、遠い海へ。

 ここならば、静かに眠れるだろうとジェットジャガーを海へと……。

 

 朝日が昇る。

 眩しい、眩しすぎる。

 眩しすぎるので背を向けてこの海域から飛び去る。

 

「あばよ、兄弟……」

 

 このあと、日本に戻ってからしばらく一匹だけで海を眺めていた。

 ようやく落ち着いてきた頃に翼ちゃんが俺の名前を呼んでいたのでひょっこり顔を出したらそれはそれはもう大変なことになった。

 殺されるかと思った。

 

 ひとまず終わったこの魔法少女事変と呼ばれるようになるこの事件。

 平穏な日々に戻れると思っていたが、新たな脅威はすぐそこまで迫っていたのだった……。

 

 戦姫絶唱シンフォギアGX編 完




ちっちゃいガイガンになってた 次章

青い空、白い雲……
南海の孤島でバカンスを楽しむ装者達。
しかし……

重量は2000t
ゴジラ2世ミニラ誕生!

ピー助「もしもしゴジラさん? あなたのとこの同族が生まれましたよ。育児してくださいよ~」

ゴジラ「ちょっといま消耗してるからミニラはお前に託したぞガイガン」

ピー助「え、ちょっ、えぇ!? あの怪獣王育児放棄しやがった!」

ミニラ「パパ~」

ピー助「俺はパパじゃありませんー! 俺のことは……師匠! 師匠と呼べ!」

ミニラ「シショー」

怪獣島の決戦 ゴジラの息子……ではなく。

怪獣島の決戦 ガイガンの弟子

神秘の島ゾルゲル島
成長するミニラ

カマキラス クモンガ登場!

敢然!たちあがるミニラ!

ミニラ「サァコイ!」

特訓をうける!

ピー助「さあ俺の真似して真似。……こう!」熱線

ミニラ「イヤイヤ!」

マリア「なるほど。ピー助の教育ママ……じゃない。教育パパか」

翼「ピー助が教育パパ……つまり母親は私ということに!」

マリア「なに言ってるの家事も出来ないのに。ここは私の方が適任ね」

翼「道を阻むかマリア……。ならば、いざ真剣に勝負!」

凄まじい迫力!

切歌「デェェェェェス!!!!!!!」

製作   大ちゃんネオ
特技監修 大ちゃんネオ
特技監督 大ちゃんネオ

強敵におののく!

監督 大ちゃんネオ

迫る毒牙!

危うし!ミニラ!

シンフォギア×ゴジラシリーズの決定版!(自称)

怪獣島の決戦 ガイガンの弟子

ご期待ください。


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怪獣島の決戦 ガイガンの弟子/小さき怪獣王
俺にも夏休みを!


もう10月だけどな!


 夏休み。

 なんて甘美な響きなのだろう。ここでいう夏休みとは小学生の夏休みを思い浮かべてほしい。模試だとか補講とかそういうのは抜きで考えるのだ。

 え? 今時の小学生も忙しい?

 そんなの例外だよ例外。あとそういう人の話が目立つだけで今の小学生も充分夏休みを謳歌している。

 

 いいなぁ~~~!!!!!

 俺も夏休み欲しいなぁ~~~っ!!!

 ずっと潜水艦の中なんてやだぁ!!!

 精神病むぅぅぅ!!!!!

 

「バイタルに乱れがありますね」

「うむ。まだこの間のダメージが残っているようだ。しばらく安静にする必要があるね。あと風鳴翼との接触は避けるように」

「しかし先生よろしいのでしょうか。それでは風鳴翼が暴徒化し潜水艦が叩き斬られかねません」

「かまわん。貴重な聖遺物であるピー助君の容態が第一だ」

 

 先生!

 ここに缶詰めとかそれこそ容態悪化するわ!

 お願いだから出してぇぇぇぇ!!!!!

 俺をここから出してくれよぉぉぉぉ!!!!

 出してぇぇぇぇ!!!!!

 

「こらこら暴れないのピー助君。ほら、お姉さんと遊びましょうねぇ」

 

 はーい。

 いや俺インドア派の怪獣だからさ、やっぱり潜水艦の中で看護師さんと一緒に遊ぶのがいいわ。

 看護師さんに抱えられ診察室というか研究室から出ようとすると研究室にやって来た人が。

 モナークからやってきた外様の山根博士チーッス。

 

「失礼します。ピー助君……あ、いたいた。ピー助君にお仕事よ」

 

 仕事ぉ?

 今から看護師のお姉さんと遊ぶんですけどぉ。

 

「おいおい待ちたまえ。まだピー助君の容態は」

 

 そうだそうだ!

 こちとら怪我人ならぬ怪我怪獣だぞ!

 労災もおりてないんだぞ!

 そんな怪我怪獣に仕事させようだなんてブラックにもほどがある!

 あなた達っていつもそうですよね!

 俺のことなんだと思ってるんですか!?

 

「そのピー助君の容態に関することです。今回の実験で上手くいけばここで安静にしてるよりも回復は早いかもしれません」

 

 うん?

 仕事って研究の仕事?

 俺に関する?

 

「今回はS.O.N.G.とモナークの合同任務よ。ピー助君、南の島に行きたくない?」

 

 南の島。

 看護師のお姉さん。

 俺は……俺は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あそこで看護師のお姉さんを選んでたら鉄心ENDになっていた。

 俺は自分の正義を裏切ることにしたのだ。

 青い空、白い雲、ヤシの木、砂浜、綺麗な海。絶賛、南の島である。

 

「南国の無人島でバカンスだなんて」

「最高デース!」

 

 他の観光客とかいないので貸切ビーチどころか貸切り島である。

 

「二人とも任務で来てるってこと忘れないように」

「そういうマリアが一番楽しそうに準備してたデスよ」

「なッ!? 見てたの!?」

 

 一番楽しそうで笑う。

 マリアさんもなんやかんや楽しみだったんすねぇ。

 

「まあまあマリアさん。任務は明日からですし~楽しみましょうよ~」

「ま、バカの言うとおりだな」

「クリスも楽しみにしてたよね」

「んなッ!? あ、あたしは別に!」

「ピー助と海で……ふふふ……。しかしピー助。何故巨大化しているんだ?」

 

 え、ああいや、そういう指示だったので仕方ないのだ。

 今のみんなの会話は全て足下で繰り広げられていたもの。ガイガンイヤーは地獄耳なのだ。

 

「今回はモナークの任務でこのゾルゲル島が怪獣を保護するのに適した場所かどうかピー助君に試してもらおうと思って。まあ怪獣にも色々いるから必ずしもピー助君のデータが役に立つとも限らないんだけど……」

 

 設営されていたモナークのテントから山根博士がそう皆に教えるが……なんで、水着なんですかあなたも。

 え、モナークもそういう気分?

 あれか、夏という名の魔物に唆されたのか。いいぜ、夏怪獣◎のスキルを持つ俺が楽しませてやるよ!  

 それにしてもスタイルいいっすねぇ……。

 流石、石原さ○み似なだけある……。

 

「あとは自然下での状態観察ね。自然下ではピー助君にどんな影響があるのかとか動物行動学やいろんな分野の観点からピー助君を観察研究するの。分かりやすく言えば自然なピー助君の状態を見るって感じかな」

「自然なピー助の……」

「けどピー助はサイボーグなんデスよね?」

「自然って感じじゃ……」 

「……いや、二人ともあれを見ろ」

 

 いやっふー!!!!!

 海で泳ぐぜゴジラごっこだ!

 ゴジラごっことは翼を背鰭に見立てて背鰭だけ出して泳ぐ遊びである。別名ジョ○ズごっこ。

 

「ピー助君が泳いだあと波の出るプールみたいで楽しい~!」

「ひ、響~! 流されないでね~!」

「大丈夫~! 未来も泳ごうよ~!」

「もう響ったら~」

 

 海水浴楽しー!

 ゴジラが海から現れる理由が分かった気がする!

 

「……だいぶエンジョイしてる」

「泳ぎは出来るというか得意みたいね……。元となった怪獣は水棲もしくは水辺で生活していた怪獣って説が濃厚に……」

 

 

 

 

 

 さて次は陸だ。

 島を見て回ろう。

 うーん綺麗な島だ。

 手付かずの自然が残されていて空気も澄んでいる。いやー隠居するならここって感じですかね。とまあ冗談はさておき隠居まではいかずともまさしくバカンスで来たいって感じの場所だ。

 元々田舎者気質なので都会で暮らすよりも自然に囲まれて静かに暮らしたいタイプなのである。

 

「あんまり遠くに行っちゃ駄目だぞー!」

 

 はーい。

 よっしゃとりあえずあの岩山まで行くか(翼からしたら遠い距離)

 このあと怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 夜は小さくなってバーベキュー。BBQですよBBQ。

 あとこんな南の島の砂浜で料理してるとあのカレー作って腹壊したって言われてる三人のことを思い出す。

 あと夜まで待ちぼうけさせられた刹那。

 

「ちゃんと野菜も食べてて偉いわねピー助」

 

 そういうマリアさんはトマト残してて偉くないですね。

 

「そんなピー助にご褒美をあげるわ。トマトとトマトとトマトよ」

 

 やめっ……そんな、素敵な笑顔でトマトを押し付けないで! あ、ちょっと待って喉、喉に詰まるか、ら……。

 

 

 死ぬかと思った。

 いや多分一回死んだんじゃないだろうか。小1の時に亡くなったじいちゃんが見えたぞ……。

 三途の川の向こう側かぁ、逝くのはしばらく先でありたいものだ。

 

「ピー助」

 

 翼ちゃん。

 

「星を見てたの?」

 

 星。

 ああ、そういえばよく見える。

 やはり空気が澄んでいるからか、綺麗だ。

 

「ピー助、ここは楽しい?」

 

 楽しいかと聞かれれば、楽しい。

 イエスだ。

 こんな夏休みっぽいことなかなか出来ないし、みんなも楽しそうだし楽しいよ。

 

「……私はね、ピー助。私は……」

 

 翼ちゃん?

 

「やっぱり、なんでもない。それよりピー助、夜はいつもみたいに一緒に……」

「あ、いたいたピー助君。また()()()()()に戻ってもらえるかしら」

 

 あ、山根博士。

 分かりました~。

 

「あ、ピー助……」

 

 あらあら翼ちゃんいつの間にそんな小さくなっちゃって……。なんつって~怪獣ジョークでした~。 

 それじゃあ翼ちゃんまた明日~。

 

 バイバイと手を振り夜のデータを取る。

 いや夜のデータって決してそういう意味ではないからね変な意味じゃないからね。俺は基本的に健全だからね。

 単に寝るだけよ寝るだけ。

 とにかくちっちゃい時とデカイ時とで比較がしたいらしい。

 そんなわけで岩山を布団に寝ることにする。

 いやこんな硬いところで寝られませんよ。ぼかぁふかふかのベッドでないと眠れなZzz……。

 

 

 

「流石ピー助君。山をベッドにするなんてやっぱりスケールが大きいですな~」

 

 ピー助が就寝したところをみんなで眺める。

 ……。

 

「どうしたの翼? もしかして、ピー助と一緒に眠れなくて寂しいの?」

「……ああ、ピー助が一緒でないとよく眠れなくなってしまって。代わりを頼めるかマリア?」

「えぇっ!? そ、それは……まあ、別に、いいけど……」

 

 妙に顔を赤らめたマリアを伴いモナークが設営したテントへ。

 明日はピー助とギアの融合……通称ガイガンギアの実験があるのだからしっかり寝なければ……。

 

 

 

 

 

 

 

 夜の番を任されたモナークの職員は体型によく似合うスナック菓子を食べながら大きな欠伸をしていた。

 なにも起こるはずのない夜勤ということで気は緩みきっている。

 少しずつ彼を襲っていた睡魔の勢いが強くなり、うつらうつらと舟を漕ぎ……眠りに落ちると同時に計器が何かを感知した。その音に飛び起き慌てて飛び起きるが、その時にはもう計器はうんともすんとも言わず、なにもなかったですよーとすました顔をしていた。

 

 

 同じ頃……。

 うーんうみゃうみゃうみゃうみゃ……キュピィーン!

 ハッ!?

 いまニュータイプに覚醒した気がする!

 って、なんだ夢か……。

 もう一眠りしよう。

 ぐう。

 

 

 ゾルゲル島の地下、それは確かに動き出していたのだ────。



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この歳で子持ちとか若すぎィwww

ピー助「5000歳越えてたわオレ……」


 無人島生活二日目。

 早速モリを携え海へと向かうところだったが仕事しろと怒られたのでお仕事です。社会人ならぬ社会怪獣はつらいぜ。なんで怪獣になってまで社畜してるんだろうな?

 

『今回の訓練はピー助とシンフォギアの融合。通称ガイガンギアの検証だ。全員分試す予定だがピー助の様子を見て行うので臨機応変に対応してくれ』

 

 司令からの通信。

 待てよ……俺次第ということは俺が頑張れば早く仕事が終わるってコト!?

 そう考えれば頑張れるな。

 えい、えい、ぴー。

 

「それでは最初は私とだなピー助」

 

 はいよ翼ちゃん。

 まあ翼ちゃんとはもう何回かやってるし大丈夫。

 

 中略。

 

 その後も響ちゃんのガングニールと合体したらなんかギザギザしたデザインになったりクリスちゃんのイチイバルと合体したら銃の先にちょろっと刃がついてダディの弱フォームみたいな感じになったりした。

 マリアさんのアガートラームはなんか左腕にやけに集中したし、調ちゃんはチェーンソーがえげつないことになった。

 そして、切歌ちゃんとの合体時に事件は起こった……。

 

「ワタシとピー助の力見せてやるデスよ!」

「切ちゃん私とは? 私とは?」

 

 あ、あとで見せれるから大丈夫やろ調ちゃん……。

 多分……。知らんけど……。

 

「それじゃあ行くデスよピー助!」

 

 おうよ!

 ガイガンギア実験開始!

 

 シンフォギア、イガリマと溶け合い、融合しそれは生まれた。

 これが、イガリマのガイガンギア……。

 

『適合率上昇。通常時の180%を越えました』

 

 友里さんがオペレートする。

 これまで、翼ちゃん達の数値はこんなもんだった。

 だけど……。

 

「なんだかすごい力が湧いてくるデスよ……!」

 

『230……260……290%を突破! 理論的限界値を越えます!』

 

 予想を越える数値。

 まさか、自分でもこんなことになるとは思わなかった。

 これ以上は正直、切歌ちゃんがどうにかなってしまうんじゃないかと不安になって強制解除した。

 

「えっ!? し、失敗デスか!?」

「いや、今のは失敗というより……」

「上手く行き過ぎた?」

 

 ピー……。

 一体なんだってあんな突出した数値を叩き出したんだ?

 俺とイガリマの適合率がいいのか?

 いや、良すぎるのか。

 あのままやってたらガチでどうなってたか分からんし、やらない方がいい気がする。

 

「ちょっと翼どうしたの」

 

 ん?

 翼ちゃんがどうしたって?

 見るとヤシの木の下で体育座りして俯いている。

 

「どうして暁とはそんな適合率がどうのとかなるんだ……。私の方が長く一緒にいるのに……」

 

 うーんこの。

 ほら、翼ちゃんあれやあれ。鎌繋がりだよあれ!

 あとほら色も似てるしね!

 そ、そういうとこだよ多分!

 あとなんか適合率上がりすぎてヤバいしぃ?

 戦力になるかも怪しいしぃ?

 あれだよやはり戦いは安定性だよ兄貴……じゃなくて翼ちゃん!

 一番安定してガイガンギアになれるのは翼ちゃんなんだよ!

 

「うぅ……なんだか分からないけれど励ましてくれてるのねピー助……」

 

 ……ふう、なんとかなった。

 このままだったら湿度が大変なことになってただろう。ただでさえ湿度が高いのに……うん?

 嵐が来るな。

 ほら翼ちゃん外は危ないから戻るよ。鉤爪で袖を引っ張りそう促すと友里さんがみんなに通信で嵐が来ることを伝えたのでモナークの施設へ避難。

 嵐は一晩中続いたのだが……。

 

「ピー……」

「ピー助どうしたの? そんなに顔をしかめて」

「え、顔しかめてるの? いつもと変わらない顔してるよ? クリスちゃんは分かる?」

「分かるか。先輩にしか分からねえんだよピー助馬鹿だから」

 

 んーなんだか昨日から変な感じがするっピねぇ……。

 ついに俺もニュータイプに目覚めたか?

 ガンダムの主人公内定かぁ。いよいよガイガンの身体ともおさらばか。

 ……いや、この身体とおさらばなんてしたら多分、翼ちゃんに殺される気がする。

 ガイガンだから許されてるけど人間の男がやったら許されないことしてるからね俺。自覚はあるからね。いや、不可抗力とか無理矢理翼ちゃんにされたこともあるけど恐らく棚に上げられて俺が100で悪いことになるんでしょう!

 俺知ってるんだから。こういう時、男が全部悪いことになるの知ってるから!

 

 そうして嵐のまま一日が過ぎていく。

 夜中にガイガンイヤーは地獄耳なので聞こえてきた轟音とかやけに強く抱き締めてくる翼ちゃんのせいで眠れなかった。

 回転カッターにカバーしなかったら流石の翼ちゃんも怪我してたと思う。

 

 

 

 

 翌朝。

 いやー快晴快晴。

 やはり南の島はこうでなくっちゃ。早速遊びに行こうぜ!

 

「昨日の嵐で何か被害がないか確認出来るまでここで待機だそうよ。だから中で遊びましょうね」

 

 えー!

 そんなマリアさんちょっとぐらいいいじゃん!

 今回の無人島任務マリアさんが一番ウキウキしてたの知ってるからね。本当はマリアさんも遊びたいんでしょう?

 既に服の下は水着なんでしょう?

 夏らしいことしようぜ~(魅惑のささやき)

 

「くっ……ピー助が悪魔に見えてきたわ……」

 

 俺っちといいことしな~い?

 ラップバトルとか。

 ……って、またこの感じ。

 頭にぞわぞわ来るんじゃが、本当になんなんですかね?

 

「ピー助君はいるかしら!?」

 

 山根博士が焦った様子で部屋に入ってきた。

 ここにいるやで。

 

「いつの間に現れたか分からないけれど島に巨大なカマキリ型の怪獣が現れたの。ピー助君の力を貸して」

 

 ファ!?

 一体いつの間にそんな。

 カマキリ型の怪獣ってことはカマキラスだな……。元々この島にいて身を隠していたか嵐に紛れて島に来たか……。それはさておき出撃だ。

 

「ピー助!」

 

 へへっ、大丈夫だぜ翼ちゃん。

 カマキラスならきっと鎌繋がりで仲良く出来るさ。

 外に出て、飛びながら巨大化。

 岩山の近くにカマキラスが三匹。何かしているようだ。

 

 ヘーイイエースマドモアゼル。美形モテ怪獣ことガイガンです。

 

 挨拶は大事というのは怪獣界でも共通のこと。

 振り向いたカマキラスは俺を見て、三匹は顔を見合わせる。すると一匹のカマキラスが俺に近付いてきてご丁寧に挨拶を……と見せかけて、鎌で俺の脚を斬りつけた。

 ケタケタと笑うカマキラス達を見て流石にO型(人間時)、温厚で通っていた俺もキレた。

 鉤爪でまずは仕返しの一発。

 やはり元がカマキリなので防御力は低く一撃が致命傷となることもある。殺すつもりはないが、みんなの安全のためにそれなりにやらせてもらう。

 怪獣も本能の方が強い動物的なものなので力の差さえ見せつければ向こうから去ってくれるのだ。

 しかし向こうもやる気で羽音を唸らせ俺の周りを飛び回る。更に厄介なことに保護色であたかも消えたかのよう。無駄に高いステルス性能持ちやがって……。

 けどこういう敵は……背後から襲ってくるって相場が決まってるんだよ!

 尻尾で飛び掛かってきていた一匹を叩き落とす。

 続く二匹は鉤爪でどつき、一匹はライダーホイップならぬガイガンホイップで投げ飛ばし最後に咆哮。これがいい威嚇となってカマキラス達は逃げ出した。

 ふぃ~おつかれさん。それにしても奴等なにしてたんだ?

 三匹で集まってまさか人を食ってたとかないよな……?

 恐る恐るカマキラス達が最初にいた位置に近づく。念のため、現場を荒らさないように10mは離れて……。って、うん? 

 これは……卵だ。

 俺がそれを認識した瞬間、卵にヒビが入って……生まれた。

 

「ぴぃしゃぁあ!」

 

 ……これはこれは王子よお初にお目にかかります私はガイガンという者で王子のお父上に世話になったものでして……。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、あれって怪獣の赤ちゃん……?」

「卵から生まれたばっかりだからそうデスよ調!」

 

 ピー助の戦闘をモニタリングしていたら怪獣が卵から生まれた。その生まれたばかりの怪獣に対してなにやら改まった様子でいる。

 

「ピー助の赤ちゃんではないわよね。似てないもの」

「そうですね……。なんというか、ゴジラに似てる……?」

「似てるかぁ?」

 

 立花の言葉に注目して見ると確かにゴジラに見えなくもない……ような……。

 

 

 

 

 

 

 

 えっと、その、どうしよう。

 ミニラさん生まれちゃったんですけど……。

 

「ぴぃきゃあ!(パパ!)」

 

 親だと思われてるんですけどぉ!?!?

 違いますよミニラさん!

 あなたの親はこんなペンギンモドキじゃなくて偉大なる怪獣王ですよ!

 ていうかなに刷り込みの習性があんの!?

 あー……どうしよ。

 とりあえずゴジラに連絡するかぁ。

 というわけで音を発する。

 怪獣に備わった機能で遠くにいる仲間に連絡を取るのに使えるのだ。

 

(あーもしもしゴジラさーん)

(……どうした)

(おたくのお子さんがお生まれになりまして。体重2000tの元気な男の子ですよ)

(……俺は先の戦いで消耗してしまった。回復するまでお前が面倒を見ろガイガン)

(ピエッ!? 回復するまでっていつまでですか!)

(強く、生き抜けるようにしてくれ。任せたぞ)

 

 そこでゴジラとの会話は終わった。

 ウソでしょ……。

 え、子守りなんてしたことないよ俺。

 てか面倒見ろってどうすればいいの?

 強く生き抜けるようにってそれゴジラさん基準だと俺には無理だよ絶対無理!

 

「きゃっきゃっ」

「あ、こら抱きついたら駄目だぞ怪我するから……」

 

 ……嫌な想像をしてしまった。

 もし、怪我をさせてしまったら。

 もし、誤ってそれで死ぬようなことになったら……。

 放射熱線で打ち首獄門……。

 ピ、ピエェ……!

 ひどく、ひどく重大なことを任されてしまった。

 夏を楽しもうなんて呑気なことはもう言ってられない。

 俺のバカンスはもう、終わったのだった。




ガングニール、響とは相性が悪かったピー助さん。
だって鉤爪じゃ手は繋げませんからね。


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子育て怪獣ガイガン

 もしもーし地下空洞怪獣児童相談所ですか?

 一匹ちょっと育児放棄された子がいまして。

 ええ、ええそうなんです俺に押し付けてきたんです。

 血縁関係?

 いえ全くの赤の他人ならぬ赤の他怪獣ですよ。

 種族?

 あ、まだ言ってなかったですねゴジ……。

 

 ブチッ。

 

 き、切りやがった……。

 ゴジラの息子って言わなきゃよかったぁ!

 てかなにあいつの名前出しちゃいけないわけ?

 まあ、王の息子の世話なんざ普通したくないよな怖くて出来んわ!

 

「ぴゃあ!」

 

 ああこら抱きついてこないで。

 回転カッターの刃で怪我しちゃうぞ。

 

「ぴえん」

 

 おい今ぴえんって言ったか?

 言ったよな?

 生まれてきたばっかなのに流行の先端いってんの?

 え、ぴえんももう古い?

 ウソでしょ……。

 ともかく、面倒を見るってなに?

 どうすりゃいいん?

 

「ぴゃあ……」

 

 え?

 腹減ったの?

 

 こくこくと頷くミニラさん。

 

 マジか。

 流石に狩りの仕方は分からない……よな。

 生まれてきたばっかりだし。

 しゃーない獲ってきてやるか。

 ミートオアフィッシュ?

 

「ぴゃ」

 

 フィッシュね了解。

 それでは海へレッツらゴー。

 

 海へ向かって進軍していると足元に翼ちゃん達がやって来た。

 イエーイ翼ちゃーん見てたー?

 俺、子持ちになっちゃった。

 今から魚を獲りに行くのだとジェスチャーで伝える。

 

「……子持ちししゃも?」

 

 うーん微妙に違う。

 いつもは人の心完璧に読むくせにこういう時に限って読めないんだからもう。

 

「違いますよ翼さん。あれはお弁当に入ってるお醤油ですよ! 魚の形してる!」

 

 ダァ違う!

 違うよ響ちゃん!

 

「バーカ。どう考えてもあれは腹減った魚食べたいだ!」

 

 近い!

 近いぜクリスちゃん流石やで!

 

 とりあえず魚を獲ってこよう。

 いくぞ南太平洋。魚の貯蔵は充分か?

 

 

 

 

 

 

 獲ったどー!!!!!

 

 やりたかっただけです、すいません。

 たんまりと胃袋に貯蔵してきたのでもしかしたら余るかもしれない。

 さあミニラさんや口をお開け、あと上も向いてね。今からご飯あげるから。

 

「ぴゃ」

 

 空に向かって口を開くミニラ。

 そんなミニラの口の中へ胃袋に貯蔵した魚達をとうにゅ……おえっ……。

 

「ぴゃーー!?」

 

 ま、待ってもう少しで出るから……。

 おえっげほっ……。

 

「ピー助!? なにやってるの!?」

 

 な、なにってマリアさん……ミニラにご飯あげるところですよ……おえっ。

 

「その子が怖がってるでしょう! そのあげ方は駄目!」

 

 ええ……。

 このあげ方ぐらいしか出来んし……。

 しかしそういうわけで喉元まで来ていた魚達は胃の中に戻した。

 むう、ご飯をあげるって思ってたより大変なんだな。

 このあとマグロの群れを追いかけた。

 マグロ食ってるような奴は駄目だなとか言ってる場合ではないからどんどん食べたまえミニラ君。

 別に食わなくてもそれなりに生きていけるとはいえ、食べ盛りの伸び盛りなんだから。

 じゃんじゃん食べなさい。

 

「ぴゃ」

 

 え、なにくれるの?

 いいんだよお前が食べな。

 俺もうさっき食べたから。

 ただその優しさだけはずっと大切にするんだよ。

 

「ぴゃー?」

 

 お前はいずれ王になる。

 怪獣の王に。

 あのゴジラさんがどこで誰とこさえたのかは知らないがとにかく怪獣王ゴジラとなる運命なんですよ。

 そうなった時ね、王様が駄目な王様じゃ駄目なんだ。

 みんなが困っちゃう。

 だから優しい王様になってくださいませ。

 

「ぴゃー……ぴゃ!」

 

 よし、その意気。

 それでは早速生きるための訓練に入るぞ!

 

「ぴゃー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 なんかよく分からんけどボコボコいってる沼。

 

 さあ、よく見ていたまえ。

 やはりゴジラと言えば熱線。

 俺も吐けるから。

 水面に向かって……ゴオォォォォ。

 ほらね。

 さあ、やってみよう。

 大丈夫、君なら出来る。

 なんせゴジラの息子だからね。

 

「ぴゃ、ぴゃ~……」

 

 なに日和ってんですか!

 いけるから!

 自分を信じて!

 ビリーブミー!

 フォローミー!

 

「ぴゃ……ぴゃ!」

 

 意を決したミニラは沼に向かって熱線を吐き出すが、熱線というより熱輪だな。

 ドーナツみたい。

 最初はこんなもんなのか?

 映画でもこんなだったよな確か……って、あれ?

 なんか、思い出せない。

 まあ最後に見たのはガイガンになる前だから5000年以上前だし仕方ないよね。

 

「ぴゃー!」

 

 いや自分で吐いた熱線にビビらない!

 もっかい!

 もっかいやろう!

 

「ぴゃ~!」

 

 ああもう抱き付かない!

 俺の身体は危ないんだから!

 ほら、吐く!

 ええいッ!

 踏みっ。

 

「ぴゃあぁぁぁぁ!?!? ゴオォォォォ!!!」

 

 ほーら、吐けた。

 いい子いい子。

 それじゃあ、もう一発やろうね~。

 

 

 

 

 

 ピー助を追ってジャングルを進むとピー助はなにやらあのミニラと名付けられた怪獣の……なんだ?

 口から光線を吐く練習をさせているのか?

 

「ふふ、ピー助ったら教育ママならぬ教育パパね」

「教育パパ? ピー助が?」

 

 ピー助がパパ……?

 

「つまり私があの怪獣のママか」

「は?」

「え?」

「先輩……」

「それはちょっと……」

「デース」

「な、なんだというのだ皆で。おかしなものを見つめるような目で私を……」 

「おかしいわよ翼! あの怪獣のママは翼じゃない。この私よッ!!!」

「まだおかしいのがいたよこんちくしょう」 

 

 このあと夜までマリアとどっちがママに相応しいか喧嘩した。

 

 

 

 

 ミニラを寝かしつけて通常サイズに戻る。

 あれ、通常サイズって言ってるけど小さい方が怪獣からしたら異常だよな?

 え、てことは大きい方が通常サイズで小さい方は異常サイズ?

 あれ、でも小さいことが俺のアイデンティティーみたいなところあるから小さい方が通常サイズ?

 やべぇ、自分のことが分からなくなってきた。

 ここはどこ私は誰?

 いやこのレベルで分からなくなってはないが。

 

「ピー助お疲れデース!」

 

 お疲れデース。

 いやぁ慣れないことをしたもんだから変な疲れ方してしまった。

 いや、なんというか子育てしてる方すごいなっていうか俺も親に感謝しないとなっていうか……。いや、親もまさか息子がガイガンになってるとは思ってもみないだろうけど。

 どうしてんだろうなぁ今頃。行方不明扱い、なのかなぁ俺って。

 なんかすんげぇ申し訳なくなってきた。

 改めて許せんわあの宇宙人。

 俺のこと拉致ってガイガンの脳味噌にするとかなに考えてんの本当。意味分からんわぁ!

 

「ピー助本当に疲れてるみたい」

「顔に疲れが出てんな」

 

 え、顔に出ている?

 そのレベルかぁ。

 やっぱ慣れないことをしたからだな。

 そういえば翼ちゃんとマリアさんは?

 

「どっちが赤ちゃん怪獣のママに相応しいか喧嘩してるよ」

 

 えっ。

 なにそれこわい。

 やだやだ関係ないフリしとこ。

 にしても疲れたぁ……俺も寝よ……。

 

「大きいあくび」

「もう遅いし寝るかぁ」

「そうだねクリスちゃ……ふぁぁぁ~……」

「でかいあくびだなぁ。ピー助のが移ったか?」

 

 そんな俺から移せるものなんてびょう……ゴホン!

 いや、ないからそんなものは一切ないので大丈夫だ安心してくれ。

 いやダガーラみたいな例もあるし俺にもワンチャン……?

 ズーノーシスみたいなのあるやも。

 人怪獣共通感染症みたいな。

 あとでアルコール消毒しとこ。

 とまあ長々とやってるけど寝よう……。

 あー今すぐにでも寝れるぞこれ……。

 ……遠目からだけどミニラの様子を見とくか。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 よしよし寝てるな……。

 

「……ぴえ」

 

 ん?

 起きた?

 なんだ、辺りを見回してどうし……。

 

「びえ~~~!!!!!!!!!!!」

 

 っるさ!

 な、なんや急に泣き出したりなんかして……。

 ま、まさかあれが俗に言う『夜泣き』なのか……!?

 

「か、怪獣も夜泣きするんデスか!?」

「近くに親がいないからきっと寂しいんだよ!」

「ピー助くん!」

「親だろ泣き止ませてこい!」

 

 そんなぁ!?

 俺に出来るのかそんなこと!

 もう今日は夜泣きを止めるような体力はないぞ!

 ……ああ、しかし、そうか……。

 これが、親になるということなのか……。

 どんなに疲れていても子供の面倒を見なきゃいけない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すう……すう……」

 

 おらてめぇゴジラぁぁぁ!!!!!!

 俺は立派に夜泣きにも対応してやったぞこんちくしょう!!!!!!(深夜、徹夜テンション)

 

 

 

 

 

 ピー助の子育てはまだ始まったばかり。

 次なる試練は……。

 

 地下深く。

 

「びえ~~~!!!!!!!!!!!」

 

「……」

 

 蠢く脚達。

 妖しく輝く八つの瞳。

 

次回 ちっちゃいガイガンになってた子育て編

 

『近所のやべー大人にご用心』



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虫!虫!

 子育て生活二日目にしてガイガンことピー助の調子は崩れ始めていた。

 夜泣き対応に追われ、睡眠時間が減ってしまったせいである。

 減ってしまった睡眠時間を取り戻すように、ピー助は二度寝していた。

 

「ピー助が二度寝とは珍しい……」

「そうなんですか翼さん?」

「ああ、ピー助は朝に強くてな。私もよくピー助に起こしてもらっているぐらいだ。二度寝しているところを見たことはないな」

 

 ペットに起こしてもらってるんだ……と思いつつ、乾いた笑いでその場を乗り切る響であった。

 二人はピー助の代わりにミニラの様子を見ている真っ最中で当のミニラは日が昇ると同時に活動を始めたはいいものの親代わりのピー助が二度寝しているので構ってくれる相手がおらず暇をもて余している様子。

 

「……ぴー……」

 

 ドスンとピー助の尻尾が動いた。

 人間でいうところの寝返りのようなものである。

 それを見たミニラは閃いてしまった。

 

 再び動くピー助の尻尾。

 その尻尾をジャンプして避けるミニラ。

 これをミニラは繰り返して遊び始めた。

 

「すごいすごい! 生まれたばっかりなのにもうあんなに動けるんだ~!」

「生後1日とは思えない。やはり怪獣は人間の常識では計れないな」

 

 感心する二人と楽しそうに跳び跳ねる怪獣が一匹。

 なんてことない平和な日常の一コマ、であったが……。

 

「ぴやっ!」

 

 ぶちっ。

 

「あ」

「あ」

 

 跳び跳ねて尻尾を避けていたミニラであったが、たった今それに失敗。

 ピー助の尻尾の先は思い切り踏んづけられた。

 

「ピーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?」

 

 ゾルゲル島に響くピー助の悲鳴。

 ピー助の二度寝という幸福はここに幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 よもや尻尾で遊ばれるとは思わなんだ。

 子供の発想力はすげーなー。

 いやでも俺もなんか色々工夫して遊んだりしてたし、うん、子供ってすごい。

 そんな子供ことミニラは今度、石を投げて遊んでいる。

 翼ちゃん達に危なくない方向に投げるように言ったし俺も見てるからひとまず安全。

 いいぞいいぞ、その調子で石を投げまくれ。

 君のお父さんの得意技の一つだからな投石は。

 石を投げるわ蹴るわで大活躍よ。

 キングギドラにも効いたからなゴジラの投石。

 地球のために今のうちから肩を鍛えておいておくれ。

 

 さて、そろそろご飯獲りに行こっかな。

 俺は小さくなれるから皆にご飯をタカれ……貰えるけどミニラはそうはいかないので俺が用意しないと。

 牛とかデカめの動物がいれば陸地の狩りでいいけどこの島にはいねえからな。

 海に魚を獲りに行かないと。

 それもデカめのやつを。

 けど大丈夫かなそんなに獲って?

 漁獲量とか減って漁師さんを困らせたりしない?

 とはいえこちらも生きるためなので仕方ない。そこはドライに行かせてもらうぜ。

 というわけでア○ヒスーパー……ドラァァァイ(海へとダイブ)

 

 

 

 海へと食料を獲りに行ったピー助を砂浜から眺めるマリア達。

 新たな任務となったピー助とミニラの行動観察……という名の休暇を満喫中である。

 

「もうすっかりパパねピー助」

「意外とちゃんと面倒見るんだなアイツ」

「そうね……あんなに世話してあげてたのに今ではあんなに立派になって……」

「記憶捏造するな」

「デース……」

「というかそれだとミニラのおばあちゃんに……」

「調~?」

 

 おばあちゃんは駄目だったかと口を塞ぐ調に詰め寄るマリア。流石の切歌も今ばかりは調を助けることは出来なかった。

 マリアの小言を食らった調はしばらくおばあちゃんという言葉を言えない身体にされてしまったのだった。

 

 

 

 そんな最中、ミニラの前にまたもカマキラス達が現れた。

 動物にせよ怪獣にせよ子供というものは狩りやすく、狙われやすいものである。

 

「あんのカマキリ野郎! ピー助がいない時に来やがって!」

「狙ってきたのだろう。ピー助が戻ってくるまで私達で注意を引き付ける!」

 

 シンフォギアを纏う装者達。

 各々の得物を手にカマキラスへと立ち向かっていくがカマキラスは俊敏な怪獣で装者達を近付けさせない。

 クリスの射撃も当たらず、攻めあぐねていた。

 逆にカマキラスはその敏捷性と巨体を活かす。

 巨体はそれだけで脅威であり、ただ動くだけでも人間にとっては生命に関わる事態になり得る。

 一匹のカマキラスが鎌を大地に突き立て、装者を追いかける。

 

「走れ!」

「あわわ!」

 

 土壌を切り裂き迫る鎌から逃れるため全力疾走。

 シンフォギアを纏っていなければ容易く切り刻まれていたかもしれない。

 

「緑で鎌で……アタシと被ってるデース!」

「言ってる場合か!」

「ピー助はまだ戻ってこないの!?」

 

 対怪獣の切り札であるピー助は未だ海から戻らない。

 ピー助はいま……。

 

 

 

 

 

 こんにゃろ大ダコまでいやがったぞ!

 お前あれだろ! 

 上陸して翼ちゃん達を襲ってあんなことやこんなことする気だろ!

 エロ同人みたいに!

 そのための触手とぬめりだろお前!

 絶対許さねぇ!!!

 

 ピー助は海中で大ダコと死闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 カマキラスに狙われたミニラであったが彼は未来の怪獣王。

 やられっぱなしではいられない。

 手のひらサイズの岩を掴み、ピー助から教わった投石でカマキラスを迎え撃つ。

 

「ぴゃっ!」

 

 放り投げられる巨岩。

 カマキラスに直撃するコース。……であったが。

 

 ぺしっ。  

 カマキラスは鎌で岩を打ち返す。

 

「あっ」

 

 装者六人の声が重なる。

 岩は、ミニラの額に直撃。

 ミニラはのびてしまった。

 

「ミニラー!?」

 

 地に倒れ、天を仰ぐミニラの視界は星々が瞬いているかのよう。

 カマキラス達はその様を見てケタケタと笑っているようだった。

 

「よくも私とピー助の子を!」

 

 剣を構え直し、怒りに燃える翼の言葉にツッコミを入れる者はいなかった。

 ミニラを傷付けたカマキラスを許さぬ装者達は本気のスイッチが入ったところであった。

 しかし、足元から感じるカマキラスよりも強い気配に警戒態勢へと入る。 

 

「この感じは……!」

 

 響く轟音。

 揺れる大地。

 盛り上がる地面。

 突き出る、無数の針のようなもの。

 針の先が地に突き刺され、それが足なのだと理解する。

 その身にかかる土を振り落とし、土煙の中で青く、怪しく発光する八つの眼。

 

「く、クモォ!?」

「でかいカマキリの次はでかいクモかよ!」

「ここは昆虫博物館デスか!?」

 

 その怪獣の名は巨大蜘蛛怪獣クモンガ。

 恐るべき肉食蜘蛛である。

 

 黒い巨躯に黄色を差した警戒色が動き出す。

 カマキラス達もクモンガを警戒し、臨戦態勢を取る。

 どちらが先に動き出すか……。

 先制はクモンガ。口から糸を放つ。雨のように降りしきる糸がカマキラス達を捕らえる。

 糸は止まることなくクモンガの口から吐き出され続け、カマキラスは最早踠くことも出来ない。

 そして、死神がカマキラスへと歩み寄る。

 身動きの取れないカマキラスはクモンガの口から伸びる毒針を突き刺され、絶命。

 

「ッ……」

 

 装者達はただ見ていることしか出来なかった。

 目の前で行われる巨大生物達の命の応酬。

 人間が敵うものではないと、肌で感じていた。

 

「……ぴゃ」

 

 のびていたミニラが目を覚ます。

 タイミング悪く。

 ここでもし動き出さなければ死んだものとして扱われ見過ごしてもらえたかもしれないというのに。

 

「次はミニラを狙って!」

「やらせない!」

 

 ミニラへと迫るクモンガ。

 糸を吐き、カマキラスのようにミニラを捕縛しようとするクモンガであったがその糸は巨大な剣が阻む。

 

【天ノ逆鱗】

 

 更に、巨大な剣がもう一振り。

 空からこの剣でクモンガを蹴り貫かんと風鳴翼の歌が奏でられる────。

 しかし、怪獣は人の想像を越えてこそ。

 放たれる蜘蛛の糸。

 翼は糸など断ち切ってしまえとそのまま突き進む。

 だが、この糸はこれまでの糸とは違った。

 これまでの糸は言わば、線。

 直線的なものであった。

 

「なにッ!?」

  

 翼の目の前で、糸はネットとして広がる。

 これがクモンガの技。

 

【強縛デスクロス・ネット】

 

「翼ッ!!!」

「くっ……!」

 

 巨大な剣ごと絡め取られ、翼は失墜。

 クモンガの巨体が翼とミニラに迫る────。

 

「翼さん!」

「先輩!」

 

 翼を助けるために駆ける五人。

 クモンガの気を引くためにクリスはとにかく撃ちまくる。

 だが、クモンガには通じない。

 感情を感じさせず、ただの捕食者として翼にその毒牙が剥かれようとする。

 

「ピー助……!」

 

 愛する家族の名を呟く。

 ────その想いに、奴は答える。

 

 響達の頭上を何かが通りすぎていく。

 その巨大な物体はクモンガに直撃し、クモンガはひっくり返った。

 クモンガと衝突したものは……大ダコ。

 

 ドシン、ドシンと地が震える。

 そいつは海より戻ってきた。

 

「ピー助!」

 

『キシャアアアアア!!!!!(てめぇなにしてやがる!!!!!)』



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