インフィニット・ストラトス〜紛い物の大空〜 (腹黒熊)
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プロローグ①:案内役はご老人

初投稿です。
自分なりに書いてみたくて書いた感じなのでお手柔らかにお願いします。



雲一つない真っ青な大空と、その手前に見える緑色の木の葉が生い茂る木々。

それが今、俺『熊耳 蒼(くまがみ あおい)』の目の前に広がっている光景だ。

 

「……何処だ。此処?」

 

そう呟いて俺は、今まで横たわっていた自らの体を起こしてみる。

その後、軽く周囲を見渡してみるも、周囲にはただ森が広がっているだけだった。

 

「ええっと、とりあえず今思い出せる1番最後の記憶を思い出してみるか。ええっと……………あっ! そうだ、俺は死んだんだった」

 

確かその後……そうだ確か目を覚ますと…………

 

 

 

 

とある理由で死んだ俺が目を覚ますと、そこは見覚えの無い小川を流れる木製の渡し舟の上だった。

 

「此処は? 確か、俺は死んだ筈だよなぁ……」

 

そう独り言のつもりでポツリと口にした言葉。

しかし、その言葉に反応する様に

 

「ようやく目を覚ましおったか」

 

と突如背後から聞こえてきたその言葉に、思わず振り返ってみると、そこにはこの渡し舟を漕いでいるご老人が立っていた。

 

「ええっと、貴方は?」

 

「わしか? そうじゃなぁ、強いて言うとすれば、あの世への案内人って奴かのぉ」

 

「あの世への案内人ですか?」

 

こんな話、普通の人が聞けば、相手のご老人を唯の変人かなんかだと思うだけなんだが、現在の俺には確かに自分が死んだ時の記憶がある為か、不思議とこの言葉を素直に受け止めることができた。

 

「それじゃあ、俺は今、あの世へ向かっている途中って事なんですか?」

 

「まぁ、そうとも言えるし、違うとも言えるってところかのぉ」

 

「ええっと、話が見えないんですが……」

 

「嫌のぉ、わしも最初はそうしようかなぁーって思ってたのよ。しかしのぉ、君の人生を見てみると、それは少し可哀想だと思ってのぉ」

 

俺の人生を見て? それに可哀想って……

 

「なんせ、君の人生は、産まれて直ぐに両親に『なんだよ、男か』という理由だけでいらない子のような扱いを受けて、挙げ句の果てに言葉を喋られるようになるまでは、泣くたびにビンタに首締め、挙げ句の果てに水に顔を沈めるなんて事もされておった……」

 

あーそういえば、中学生の頃にお前は手のかかる奴で大変だったって、言いながらそんな事して泣き止ませたって言ってたっけ……

 

「その上、3歳になるかならないかというタイミングで生まれた妹さんの存在によって、その環境はさらに悪化。君の両親は3歳になった君に暴力を振りながら家事を覚えさせ、家事を覚えると、今度は毎日家で家事仕事。幼稚園なんかにも行かされず、毎日毎日自宅で家事仕事を奴隷のようにやらされる日々」

 

あー確かに、そんな時もあったなぁ……まぁ、でも料理なんかもやらされてたから、自分の分をこっそり作って食べる事で飢え死は避けられたんだよなぁ……

 

「ようやく小学生に通える年齢になると、渋々両親は君を小学校に通わせるが、友達と遊ぶ事が許されず、急いで家に帰って家事をやらされたり、両親の憂さ晴らしの暴力を受け続ける日々。おかげで君は学校で自然と孤立していっておったのぉ」

 

まぁ、高学年くらいになると、完全にボッチでしたよ。

 

「そんなこんなで、なんとか中学校に入学するも、生活は一切変わる事なく、知識をつけた君は教師にでも事情を説明すれば環境が変わるとわかっていながら、それをせずに過ごしておったのぉ。おかげでお金のかかる修学旅行や校外学習は全部参加せず、家で過ごす日々じゃった」

 

まぁ、一応親ですし……

あ、けど中学でできた友人に家の事情を愚痴ったりはしたよ。

 

「中学校を卒業すると、君の両親は喜んで君を働きに出しておったなぁ。その上、君は家では今までと一切変わらない量の仕事を押し付けられ、気がつけば君の平均睡眠時間は大体3時間くらいになっておったんじゃよ。気がついてたかね?」

 

「ええっと、一応?」

 

というか、そんな事気にした事もなかったな。

 

「そんな生活を5年近くしていたある日、お主の妹さんが重病にかかっでしまったのじゃ。妹さんを助けるには手術で妹さんの臓器を摘出し、そこに適合する臓器を新しく入れるという極めて難しい手術が必要じゃった。その手術は時間が経てば経つほど、成功する確率が低くなる為、早急に適合する臓器を見つけないといけなかったんじゃのぉ」

 

あー、そういえば、あの時の両親は物凄い顔してたなぁ。

 

「君の両親は最初自分達の臓器はどうかと検査したが、結果はダメじゃった。そこで今度は君の臓器はどうかと無理矢理検査させてみた。すると、結果は見事に適合すると判明。君の両親は迷わず君に臓器の提供を促しておったのぉ。とはいえ、君の体もかなり弱っていた事から、お医者様から、臓器を提供した場合、君の命の保証はできないと言われてたしのぉ」

 

まぁ、両親からすればそんなの関係なかったんだろうけど……

 

「それでも、君は臓器を提供すると、自分で言ったのぉ。それは君も妹さんの事を守りたかったからなんじゃろ。おかしな話じゃよなぁ。普通、ここまで対極に育てられれば対になったもう1人を恨んだりするのが当たり前じゃがのぉ」

 

まぁ、妹の事は大好きだったからなぁ。

 

「そうじゃのぉ、君ら兄妹は随分と仲の良い兄妹じゃった。両親は何度も君に関わらないように妹さんに言っておったが、妹はそれを無視して、君の家事仕事を手伝ったり、君と夜一緒に寝ようとしたり、おまけに君が修学旅行や校外学習に行ってないと知ると、自分も行かないと両親に駄々を捏ねたりと、本当に兄思いの出来た妹さんじゃったからのぉ」

 

本当にな。

普通なら、もうちょっと我儘に育ってもおかしく無いのにな。

 

「その後、手術が行われ、君の妹さんの命は救われたようじゃ。しかし、案の定君はそのまま息を引き取って、今ここにあるのじゃ」

 

改めて聞かせると、確かにあんまりな人生だな。

いや、性格に言えば酷い両親だったっていうのが正しいのか。

 

「そうじゃそうじゃ、その妹さんなんじゃがの、君のお葬式を両親がやらないと言ったらブチ切れして、両親をぶん殴りおったよ」

 

「へ、へぇーそうなんですかー」

 

そうゆう事聞くと、なんか嬉しいような、なんというか……少し複雑。

 

「それで話を戻すがのぉ。流石にこんな人生を終えた後に、あの世で来世が来るのを何百年と待つのは少し可哀想じゃと思っての。わしの上司に相談したところ、記憶を引き継いだまま、別の世界で生き返らせても良いと言われたんじゃよ」

 

「はぁ、という事はつまり?」

 

「そうじゃ、これから君が行く場所は、あの世ではなく、別の世界という事じゃ」

 

えらい長い話だったな。

というか、あの世にも上司とかっているんだ。

 

「そこで、別世界に連れて行く前に、いくつか注意点を話しておこうと思ってのぉ」

 

「はぁ……」

 

「まず、君がこれからどんな世界に行くかわわしにもわからんのじゃ。なんせそこはランダムじゃからのぉ」

 

ランダムなんだ。

 

「とはいえ、どんな危険な世界に生き返るかわからん以上、最低限のの力というのは必要になるじゃろ?」

 

いや、じゃろ? って言われても……

というか、どんな世界があるんだよ。

 

「そこでじゃ、お主の記憶にある漫画の中の一つに描かれている力をお主にプレゼントする事になったのじゃ」

 

俺の記憶にある漫画って、中学の時の友人かくれたあの漫画達か。

確か読んだ事ある作品は[ドラゴンボール]と[ハンターハンター]、後は[家庭教師ヒットマンREBORN]に[ナルト]、[とらぶる]だったかな?

 

「さて、心の準備は良いかの?」

 

「えっ、まぁ一応」

 

というか、ここまで流れで会話してたからなぁ……

 

「それじゃあのぉ。新しい人生を楽しんでくるが良い」

 

「えっ、あぁはい。ええっと、お世話になりました?」

 

「すぐに死ぬんじゃないぞー」

 

その言葉を最後に俺の意識はその場から消え去っていった。

 

 

 

 

それで、今見たことない場所にいるって事は、此処が別の世界って事か。

そういえばあのご老人、この世界で俺を生き返らせる時に適当な力を用意するって言ってたな。

って事は、身体に何か変化が……起こって無いな。

[ドラゴンボール][ハンターハンター][ナルト]の力なら、気とか念能力に後はチャクラだよなぁ。

って事は、この3つの作品じゃ無いって事か……

もしくは、修行とかしないといけないとかかな?

まぁ、だとすると今は確かめようが無いな。

とりあえず、今は違うって事にして、他の2作品の可能性を考えてみるか。

他の2作品だとすると[家庭教師ヒットマンREBORN]だと死ぬ気の炎だし、[とらぶる]だと……なんだろ、ラッキースケベが起こりやすくなってるとかか?

うーん……とりあえずわからないし、人のいる所にでも移動するか。

 

俺は立ち上がって移動しようとすると、ふとズボンの左右のポケットに何かが入っているのに気がつき、それぞれのポケットに手を突っ込んでみた。

すると右のポケットには、大空のボンゴレリング(枷は外れていない)と真っ白なボックス。そして左のポケットには、前の人生では持つことがなかったスマホが入っていた。

 

おお! これがスマホか。

前の人生じゃあ、お前にそんなもん要らん。って一言だけで結局持たせてもらえなかったんだよなぁ……まぁ、妹のを使わせて貰った事はあるんだけど。

ええっと、それとこのリングとボックスから察するに、俺に渡された力っていうのは『家庭教師ヒットマンREBORN』の力〔死ぬ気の炎〕って事か。

まぁ、とりあえずその事は後で考えるとして、とりあえずスマホで現在地でも調べてみるか。

 

そう考えた俺は一旦リングとボックスを右ポケットに戻してスマホの電源を入れた。

電源を入れて少しすると、画面がロック画面に飛ぶが、ロックがかかっていないのか上にスワイプするだけでホーム画面に行くことができた。

 

さてと、まずは地図アプリで……

 

そうして地図アプリを開こうとすると、突如非通知の電話がかかって来た。

俺は驚きはしたものの、とりあえずとその電話に出てみることにした。

 

「はい、どなたですか?」

 

『おおー、よかった無事に生き返ったんじゃな』

 

通話開始してすぐに帰ってきたこの声で、この電話の相手が誰なのか直ぐに理解した俺はそのまま

 

「もしかして、あの世への案内人さんか?」

 

通話を続けた。

 

『よかったよかった。実は君をその世界に送ってから上司に連絡したんじゃがの、その時に上司から、そういえば別世界へ送ると、偶にそのまま存在が消えちゃう人もいるから気をつけてね。って言われたもんじゃから焦った焦った』

 

おいおい上司さん!?

冗談じゃ無いぞ、全く。

 

『じゃが無事に生き返ったようでよかったわい。っと、そんなことより時間がないからのぉ。先に要件だけ伝えさせてもらうから黙って聞いてくれのぉ。

まず、お主のおる世界じゃが、そこは、[いんふぃにっとすとらとす]とか言う作品の世界みたいじゃ。

どうゆう世界なのかは、後でそのスマホで調べてくれのぉ』

 

へぇ、って事はこのスマホは、この世界の情報も調べられるって事か。

 

『次に君についてじゃが、まず君に関する情報例えば名前や誕生日、生まれた場所なんかは前の人生のままと考えて良いのじゃが、生まれた年と現在の年齢はこちらの都合で、変更してあるから後で計算してくれ。ちなみに、今の君の年齢は12歳で体も当時の状態に戻っとるらしいぞ』

 

まぁ確かに、さっきから目線が低くなった気はしてたけど、まさか本当に戻ってたとは……少し複雑な気分だ。

 

『それでじゃの、年齢を聞いて気がついたかもしれんが、君にはその町にある中学校に通ってもらう事になっておる。頑張って学業に専念するんじゃよ』

 

すいません、そんな事全然考えてませんでした。

 

『次に、この世界には君の家族は存在せん。しかし、国籍や戸籍なんかはしっかり存在しとるから安心せい』

 

つまり、この世界での俺は両親がなんらかの事故で他界した可哀想な子って事か。

 

『最後に、お金と家に関しては、こちらで用意しておるからそれを使うとええ。家の場所は地図アプリに設定してあるからそれを頼りにするんじゃよ』

 

つまりどちらにしても地図アプリは開かないといけなかったのか。

それにしてもそこまでして貰えるとは、本当にありがとうございます。

 

『あぁ、その他の細かい事は後でメールを送っておくから、家に着いたら読んでおくとええじゃろ。それじゃあ、新しい人生を楽しみなさい』

 

その言葉を最後に通話が切れたので、俺はそのままスマホを耳から離して、地図アプリを開いてみた。

地図アプリを開くと、案内人の言っていた通り自宅と記されたポイントが設定されていたので、俺はそれを頼りに山を降り始めた。

 

それにしても、[いんふぃにっとすとらとす]ってどんな世界なんだ?

 

 

 

 

 

 

 




話の中の漫画の種類は作者が友人から実際に貸して貰った作品です。
それと、今後の一話あたりの文字数は2〜4000字くらいでいきたいと考えています


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プロローグ②:自宅と入学

山を降りた俺は、地図アプリを頼りにしばらく町中を歩いて、ようやく自宅となる家を発見した。

発見してみると、そこは元の世界でもよく見る普通の木造の一戸建て住宅だったのだが、正直中学生のガキには贅沢過ぎる気がする。

中に入ろうと、玄関の扉に近づいてみると、そこには電子ロックと普通の鍵穴の2種類が着いているものの、電子ロック用のカードも普通の鍵も持っていないので、取り敢えずと扉を引いてみると、扉は簡単に開いてしまった。

 

「無用心過ぎるだろ」

 

そうは思ったが、こればっかりは俺がどうこう出来る話でもないので

、俺は取り敢えずそのまま中に入ってみる事にした。

俺がそのまま中に入って扉を閉めてみると、扉からカチャと鍵がかかったような音がしたので、すかさず扉を開けてみようと押してみるが、本当に鍵がかかったようで扉はピクリとも動かなかった。

 

つまりこれは、この扉は閉じた瞬間に鍵が閉まるシステムになっているって事だろう。

しかし、だとすればさっきの一回に限ってはそれが働いていなかったという事になる。

理由として考えられるのは、機械の故障くらいだけど、今さっき作動してた事から、故障という事はない。

となると、最初に閉まっていなかった理由は……

 

「ええっと、これどうゆう仕組みだろう?」

 

……とりあえず、後で色々調べてみよう。

そう一人で納得した俺は、玄関で靴を脱いでそのまま家の中を探索し始めた。

しかし家の中には、必要最低限の家電と家具が一通り置いてある以外は特に何もなく、これからどうしよう。っとリビングでキョロキョロしていると、ポケットに閉まったままだったスマホから急に音が鳴ったので驚いて、そのスマホを取り出して画面をつけてみた。

すると、そこにはメールが一件届いています。という通知が表示されていた。

 

「そういえば、後でメールするとか言ってたな。ええっと、中身は………長くね」

 

そこには250行近くにまとめられた文章が長々と打たれていた。

ちなみに内容を要約すると、

 

・お金を下ろせるカードと家の鍵はリビングのテレビの隣に設置されてるタンスの引き出しの中。

・今日の日付は4月6日の日曜日。

・明日が俺が通う【平城中学校】の入学式。

・二階の1番奥の部屋が君の部屋で制服もその部屋のタンスに入ってる。

・食料などは自分で買いに行くように。

・君に与えられた力は[家庭教師ヒットマンREBORN]の力で使い方などは原作と同じと考えていい。

・最後にこの世界の本来のお話に関わるかどうかは俺の自由。

 

という事らしい

 

「……取り敢えず、ソファーにでも座って考えをまとめるか」

 

そう呟くと、俺はボックスとリングをポケットから取り出してから、リビングのソファーに腰を下ろして、それらをソファーの前設置されてるテーブルの上に並べてみる。

 

「まず、この世界は[いんふぃにっとすとらとす]って世界らしいからそこから調べてみるか」

 

そう言って俺がスマホで[いんふぃにっとすとらとす]について調べてみて、わかった事はこの作品はISという女専用のパワードスーツがある事と、その本編が高校からスタートするという事。

そして、主人公の名前が『織斑一夏』という事などがわかった。

 

「という事は、俺がこのISっていうのを動かさなければいいわけか」

 

そうすれば、俺はこの世界の本来のお話に関わらなくても良くなるわけだ。

 

「まぁ、取り敢えず[インフィニットストラトス]については、これくらいでいいか。次は、このリングとボックスについてだな」

 

そう言いながらスマホをテーブルに置くと、今度はリングとボックスを手に取った。

取り敢えず、リングはつけてみないとな。

そう考えて今度は、リングを自分の右手中指につけてみると、リングの大きさは今の俺の指にピッタリのようで、すんなりと根本まで通す事ができた。

 

「リングの装着はできるな。それじゃあ次は死ぬ気の炎だな」

 

俺は原作のようにリングをつけたまま右手を握り、そのままリングに炎を灯すイメージを行なってみる。

 

「……………出ないな。となると、やっぱり原作通り、強い覚悟を炎にするイメージが必要って事か」

 

それにしても、覚悟か。

今の俺が、直ぐに思いつける強い覚悟っていうと……「臓器を提供した時か!」

あの時は確か、自分の命を捨ててでも妹を守りたかったんだよな。

でも今は、特にそんな人がいるわけでもないからなぁ…………まぁ、よく考えたら原作でもラル・ミルチが炎を灯すのに1ヶ月はかかるって言ってたし、取り敢えず今はこの世界で生きていく事だけ考えよう。

取り敢えずでもなんでも、この世界で生き抜く覚悟はしておかないとな。

 

「よし、そうと決まったら買い出しにでも行くか。おっと、その前に鍵やらカードを探さないとだな」

 

結局俺は、リングなどの事は後回しにして家の鍵とキャッシュカードそれとスマホを持って、そのまま買い物に出かけて行った。

着けたままのリングに一瞬小さな炎が灯っていた事に気づかずに……

 

 

 

 

翌日、俺はメールに書いてあった【平城中学校】の入学式に参加する為、スマホのナビを頼りに【平城中学校】へ向かっていた。

しかし……

 

「なんで、ナビの指す場所が毎回普通の定食屋なんだよ!!」

 

そう、ナビを頼りに歩いてみると、着いた場所は何故か普通の定食屋だったのだ。

ちなみに、その後何度も目的地を【平城中学校】に設定してみるも、何故か毎回この定食屋を指すばかりだったのだ。

 

うーん困ったなぁ……例えばここからでも学校の一部が肉眼で視認出来るならたどり着けるとは思うけど、生憎それっぽい物は見え無いし……

あっ、案外この定食屋が学校だったりして、ほら『ハンターハンター』の、ハンター試験みたいに………まぁ無いな。

マジでどうしよう、入学生の集合時間まで後15分くらいしか無いし、となると無駄に歩き回るのも頂けない。

最悪、この定食屋の人に聞いてみるしか……って定休日かい。

あーどうしようどうしよう、流石に両親がいない上に入学式早々遅刻ってなれば不良かもって烙印を周りの生徒達から押されかねないし……

うーーーーん

 

そう俺が考え混んでいると、

 

「あのーどうかしましたか?」

 

と、突然声をかけられたので、そちらを向いているみると、そこには明らかにモテそうな黒髪のイケメン君が立っていた。

しかも、そのイケメン君をよく見てみると、俺と同じ制服を着ているではないか。

これはありがたい。

 

「あーえっと、【平城中学校】って所に行きたいんだけど、俺昨日ここに引っ越して来たばっかりでそれが何処にあるのか分からなくてさぁ」

 

嘘は言ってません。

だって事実昨日この世界に引っ越して(生き返って)たんだもん。

 

「ああ、それで……あの俺もそこに向かってるのでよかったら一緒に行きませんか?」

 

こいつ今、俺が自分と同じ制服を着ている事を確認したな。

 

「いいんですか。それじゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな」

 

「それじゃあ、早く行きましょう」

 

「えぇ、そうしましょう」

 

そうして俺はイケメン君に案内される形で【平城中学校】にたどり着くことが出来た。

しかも5分前に……

 

「ありがとうございます。おかげで何とか間に合いました」

 

「気にするなって困った時はお互い様ってな」

 

こいつ、一緒に歩いた7、8分でもうタメ口になってる。

嫌、確かに歩きだったから少し話たりしてたけどさぁ……

まぁ、俺もそっちの方が話しやすいんだけど……

 

「そうだな。あっ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は熊耳蒼、熊耳でも蒼でも好きな方で読んでくれ」

 

「ああ、よろしく蒼。俺は織斑一夏、俺のことも一夏って読んでくれ」

 

織斑、一夏? ……同性同名か?

いや、それにしてはタイミングが良すぎるような………まさか!?

あのナビがあの定食屋を指してたのって、もしかしてこいつと合わせる為か!?

…………いや、考え過ぎだな。

案内人さんは関わるかどうかは俺の自由って言ってたんだ。

そんな事……無いと信じよう。

 

「こっちこそよろしく、一夏」

 

これが俺と、この世界の主人公『織斑一夏』との出会いであり、これから俺に起きる面倒への招待状になっているとは、この時の俺は思おうとしなかった

 

 

 




こうして読んでみると、まだまだだと思い知らされます。
特に前半の方はかなりめちゃくちゃに感じてはいるものの、直そうとすると余計にめちゃくちゃになりそうで手が出せないんですよね。

話を変えますが、一応、次くらいには本編に行けるようにしたいです。
それでは次の話も読んで頂けると嬉しいです。


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第1話 混乱はいつも突然に

という訳で一応本編開始です。



『織斑一夏』と出会った入学式から早3年、入学式に知り合った一夏を含めた数人の友人達とバカな事やったり、下らない口論をしたりと、そこそこに楽しい中学校生活を過ごす傍ら、色々なトレーニングや修行をして過ごしてきた俺は、現在、雪降り積もる街中で一夏と遭難しかけていた。

 

「ゆーきやこんこん♪あーられやこんこん♪降っては降ってはいい加減やめよ!!」

 

「そんな歌、歌っても雪は一向にやまなそうだぞ。蒼」

 

「そうか! 歌詞にあられが入っているからいけないんだな!」

 

そう確信をついたような顔で力説する俺に一夏は冷たく

 

「それ、本気で言ってるか?」

 

と聞き返す。

 

「んなわけないだろ」

 

「だよな……すまん」

 

「いや、こっちこそすまん」

 

そもそも、こんな事になったのは、受験生の日頃の行いとは関係なくやってきた試験日の大雪が原因である。

おかげ様で電車やバス、タクシーなんかの交通手段は全部ストップ。

まぁ、ヘリや自家用ジェットを使えばワンチャン……ないな。

ともかく、そんなこんなで俺達は歩いて試験会場まで向かっているのである。

 

「なぁ、それより試験会場まで後どれくらいだ?」

 

俺のふとした疑問に一夏は足を止めて

 

「……多分あと少し」

 

と答えた。

 

「そうか少しか、なら一夏、後どれくらいか全力ダッシュで見てきてくれ」

 

「……すまん、慰めてやろうと思ったんだ」

 

「……気にするな、俺も少しイライラしてた。すまん」

 

「とりあえず、歩こうぜ」

 

「だな」

 

そう話して、俺達は再び雪の降り積もる道を進み始めた。

 

「なぁ、蒼」

 

「なんだ一夏?」

 

「これで大雪の為、試験はちゅう「あーあー聞こえない聞こえない」すまん」

 

この野郎、こんな状況でそんな事考えさせるなっての!

 

 

 

 

その後、15分近く雪道を歩いて俺達はようやく試験会場に到着する事ができた。

いや、マジで疲れた。

俺、しばらく雪は見たく無いな。

あっ、よく考えたら帰りに絶対見るわ……一旦、雪の事は忘れよう。

 

「ふぅー、どうにか着くには着いたけど、何処が試験会場なんだ? わかるか、一夏?」

 

「悪い、俺も知らないんだ」

 

そりゃそうか。

そもそも試験をやってるのかすら怪しいしな。

 

「いや、謝るな。とりあえず適当に歩き回って出会った大人にでも聞いてみようぜ」

 

「そうだな」

 

そうこうして、俺達は、会場内を散策し始めたのだが……

 

「なんで、誰も居ないんだよ!! 普通1人くらい歩いてるだろ、あれか、ドッキリかなんかか? だったらそう言うのいいからさっさと出てこいや!!!」

 

何故か一向に大人に出会わない。

ちなみに、部屋の中を覗かないのは試験をしてたら申し訳ないからだ。

 

「お、落ち着けよ、蒼。ほ、ほら、あの部屋の中に誰かいるかもしれないだろ」

 

そう言って一夏は小走りで近くの部屋の扉の前まで移動した。

それを見て、俺も少しの間その場で落ち着きを取り戻してから、一夏の後を追う様にその部屋の前まで移動した。

 

「どうだ一夏、誰かいたか?」

 

そう言いながら、俺が部屋の中を除くと、そこには、甲冑の様な鉄の塊《IS》に触れている一夏とその一夏を見て驚きの表情を見せている30歳くらいの女性。

俺はどうゆう状況なのか、理解しようと一夏に近づくと、

 

「なにこれ? どうゆう状況? なんかあったの?」

 

と連続で疑問をぶつけた。

すると一夏は、よくわからないと言わんばかりの表情のまま、

 

「俺にもよくわからないんだ? ただ、このISどうやら男も動かせる新型みたいだぞ」

 

「はぁ? 新型?」

 

妙だな?

そんな物が発明されたならニュースになるはずだが……って、待てよ。

もしかして、この状況って……

そう、俺はあの入学式の日に一夏と出会った事から、念の為っと、[インフィニットストラトス]の原作について、もう少し深く調べていたのだ。

その中に、確か一夏が()()()()()に行く事になったきっかけは、試験会場が分からなくて、迷っていたらISを見つけて、それに触れたら動かせちゃった的な話だったような……

 

「そ、そうなのかー。そ、それより今は試験会場の場所を聞く方が大事じゃないか?」

 

取り敢えず、俺は逃げられるようにしておこう

 

「えっ、ああそれもそうだな」

 

「それで、お姉さん。藍越学園の入学試験の場所ってどこか知ってますか?」

 

俺がそう聞くと、目の前の女性はようやく我に帰ったようで

 

「えっ、藍越、学園?」

 

とポツリポツリと言葉を発し始めた。

しかし、直ぐにさっきの事を思い出したようで

 

「……じゃなくて、貴方今ISを動かしてたわよね!」

 

そう捲し立てる様に一夏に問いかける女性。

その勢いに思わず一夏が

 

「えっ、ええっとまぁ」

 

としどろもどろな返事を返す。

すると女性は目を見開かせて、急いで部屋を出て行った。

 

「……一夏、どうやらそのIS、男も動かせる新型って訳では無いみたいだぞ」

 

「えっ、でも俺、動かせたし、ほら試しに蒼も触ってみろよ!」

 

そう言って一夏は、俺の手首を掴んで無理矢理ISに触らせようとしてきた。

勿論、俺はそれに抵抗したよ。

 

「や、ヤメロー。俺を巻き込もうとするなー」

 

「い、いいから触ってみろよ!」

 

クソ、こうなったら力尽くで、

そう俺が考えたその時、さっき部屋を出て行った女性と一緒に同年齢くらいの女性が数人ぞろぞろとやって来た。

その瞬間、俺はうかつにも一瞬そっちに気がそれ腕の力を緩めてしまったのだ。

一夏はその隙を見逃さず、俺の手を無理矢理ISに触れさせた。

 

しまった!!

 

俺の手がISに触れると、妙な起動音と共に俺の頭の中に、このISの基本操作や操縦方法、機体の性能などの情報が流れて混んでくる様な感覚に襲われ、思わずISに触れていない方の手で頭を押さえる。

 

「なんだこれ? このISの情報か?」

 

その光景を目の当たりにした入り口の集団は、

 

「彼、今ISを動かしていたわよね」

 

「彼がISを動かした男なの?」

 

「いえ、私が動かしてるのを見たのは手前の彼です」

 

「って事は、もしかして2人目!?」

 

「もしかしたら偶然かも!」

 

「検査よ! 検査の準備をして!」

 

と、途端にざわつき始めた。

俺は、その光景をチラッと見ると一夏に近づいて、

 

「一夏お前、人を面倒に巻き込みやがって」

 

と軽く睨みつけた。

 

「悪い悪い」

 

その後、俺と一夏は女性の集団に捕まり、お互いに別室で別のISで検査された。

検査の結果、俺も一夏も別のISを動かせてしまった為、俺達2人はしばらく大変な生活を送る羽目になってしまった。

なんせ、世界初の男性のIS操作者だ。

マスコミなんかが黙っている筈がなく、俺達2人に取材が殺到した。

さらに、全国で他に男性でISを動かせる者が居ないか探す為の検査が行われたりもした。

その上、俺に至っては自宅に他国のお偉いさんが訪問してきて、良かったら家の養子ならないかと勧誘してくる始末だ。

これは多分あれだろう。

 

『貴重な男性操縦者が2人とも日本にいるのはズルイ!!』

 

って事なんだろ。

だから、親がいない俺を養子として引き取って自国の物にしようって考えたんだろうぜ。

まぁ、勿論断ったけど。

とまぁ、そんなこんなで自宅にいるんじゃ、おちおち眠る事が出来ないという事で、俺は現在、織斑邸に居候しています。

何故、織斑邸かって?

だってここなら、元世界最強の女『織斑千冬』の力により、マスコミなんかがほとんど来ないんだもん。

 

「なぁ、一夏さんや」

 

「なんだ、蒼?」

 

「静かに寝れるって素晴らしいな」

 

「えっ、あぁ、そうだな」

 

それにしても、こりゃ確実に例の場所、『IS学園』に入学する事になりそうだな。

後で、ISの勉強でもしておこう。

 

 

 




次の話は一応主人公の設定なんかをまとめてみようと思ってます。

それでは次も読んで頂けると嬉しいです。


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主人公設定1

今回は、主人公の蒼君についての設定をまとめてみました。


【名前】熊耳 蒼(くまがみ あおい)

 

【誕生日】7月24日

 

【年齢】12歳(1〜2話)→15歳(3話〜)

 

【性別】男

 

【属性】大空

 

【体格】身長168cm 体重54kg

 

【容姿】碧眼に黒髪。前髪が長く、顔の向きによっては右目が隠れたり見えたりする。

顔立ちは、整っているが、童顔なのでカッコいいというよりカワイイと言われる事の方が多い。

(家庭教師ヒットマンREBORNのバジル君を黒髪にして、少し成長させたイメージ)

リングは常に持って歩くようにしており、中学校時代は、校内では制服のポケットに入れていたが、IS学園では常に右手の中指に着けている。

 

【性格】基本的に面倒事には巻き込まれないようにするタイプだが、運悪く巻き込まれたりした場合には、自分の出来る事は精一杯しようとする。

普段は、少しおふざけ混じりの話し方をしているが、人に何かを注意したり、教えたりする時は真面目な話し方になる事が多い。

また、一人称は『俺』だが、ふざけたりする時は『僕』という事が多い。

 

【原作の知識】ISの登場人物に関しては、名前と専用機の名前などの基本的な情報は知っているが、全員の顔などはよく知らず、本人から名前を聞いてようやく、あーこいつが〇〇か。って感じである。

また、原作のストーリーは大雑把には知っているが、細かい描写などは全く知らない為、大雑把にこのイベントではこんな事が起きるらしい。という事が分かっているくらいである。

専用機に関しては、大雑把な兵器などについては一応調べているが、そこら辺の事はよく理解できなくて、ほぼ無知と変わらない。

 

【趣味】

・プチ旅行(基本的には歩く事が多い)

・読書(読むジャンルは、ミステリーやホラー、あと漫画も少々)

 

【中学校での修行の成果】

・死ぬ気の炎は自由に出せるようになった。

・それにより例のボックスの開口に成功(リングと一緒にポケットに入っていた奴)

・ボックスの中身は大空属性の炎を鍵として開くアタッシュケース

・アタッシュケースの中には、全属性分のA〜Dランクのリングが各1つずつと、大空以外のボンゴレリング。加えて、合計14個の真っ白なボックスに1組のトレーニンググローブ(どうゆう仕組みか、A〜Dランクのリングとボックスは、アタッシュケースから取り出した状態でアタッシュケースを閉めるとその時点で再生というか別の物が次開けた時に入っている為、事実上増殖可能)

・ボックスに関しては、現状他に開口できる物はなかった。

・トレーニンググローブはリングの炎を灯すと『沢田綱吉』が使用していた『Xグローブ』に形状を変化させる。

・『Xグローブ』で戦闘が出来る様に、死ぬ気の炎で空を飛ぶ事と最低限の格闘技術は会得済み。

・体力などをつけるためにランニングやクライミングなどを頻繁にしていた。

 

 

 

 

 

 




一応その内、蒼君のISや他の登場人物についての設定をまとめた物もあげると思います。

それでは次も読んで頂けると嬉しいです。


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第2話 何事も最初が肝心

冬の寒さが雪と共に消え、春の陽気が風と共にやってくる今日。

俺、ならびににもう1人の男は周囲からの注目を一身に浴びるという、ある意味での地獄の中にいた。

そう、俺ならびに一夏は、結局IS学園に入学する羽目になったのだ。

あっ、一応試験とかはしっかり受けてるよ。

 

「ねぇねぇ、あの2人でしょ例の男性操縦者って」

 

「2人とも美形〜」

 

「ねぇねぇ、どっち派?」

 

「やっぱり、織斑君が攻めじゃない。熊耳君はどう見ても受けでしょ」

 

「嫌々、そこはあえての熊耳君が攻めでしょ」

 

とまぁ、こんな感じの話がチラホラ耳に届いてくる現状に俺、ならびに一夏の精神面は既に限界に近くなっていた。

というか、そのどっちが攻めかって話はヤメロー

俺にはそっちの趣味はねーんだよ!!

あー本当に何故僕はここにいるのだろう。

そうだ例えばあの試験会場でISを触らなければこんな事にはならなかったのでは……嫌、どちらにしても一夏が先に動かしていたから、その関係でいずれISの適正調査は受けていたか……

 

そんな自問自答を繰り返していると、教室の周りにいた生徒達が次々引いていき、その後少しして教室の扉が開き、そこから先生らしき女性が入ってきた。

あれ? あの人って確か入学試験の時にいた、ええっと名前は確か、山田なんちゃら先生だ。

 

「初めまして。私がこのクラスの副担任を務めます『山田真耶』と言います。これからよろしくお願いします」

 

あぁ、そうだ山田真耶だ……まぁ先生だし、山田先生って呼べばいいか。

それにしても、あの見た目で教師って、制服着たらワンチャン生徒って言われても信じそうだぞ。(胸以外)

と、俺がそんな事を考えている間に、いつの間にか始まっていた自己紹介が、勝手に進んでいつの間にか一夏の番になっていた。

 

「お、織斑君? 織斑一夏くんっ?」

 

「は、はい!?」

 

一夏も、その事に気付いて無かったのか座ったままで大声で返信を返す。

すると、クラス内でクスクスと小さな笑いが聞こえるが、そんな事関係無しに山田先生は話を進める。

 

「ご、ごめんね。で、でもね主席番号順に自己紹介をしていくと、次は織斑君の番なんだよね。そ、それでね織斑君も自己紹介してくれないかな? ダメかな?」

 

「えっ?」

 

「ご、ごめんね急に大声で話しかけちゃって、お、怒ってる? 怒ってるのかな? あーえっとーー」

 

ここでようやく現状に気がついたのか一夏が

 

「い、いえ!? 大丈夫ですよ。自己紹介ですよね。今からしますからとりあえず落ち着いてください先生」

 

と慌てて弁解しはじめた。

 

「ほ、本当ですか? 約束ですよ。約束ですからね」

 

うーん、何というかワザとやってるんじゃないかって思うくらい低姿勢な先生だなぁ。

こりゃ、そのうち生徒に舐められるぞ。

じゃなくて、一夏の自己紹介だったな。

どうせ俺の番も回ってくるだろうし、あいつの自己紹介を参考にさせて貰うとするか。

 

「は、はい。ええッと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「「「…………」」」

 

ん? どうした?

 

「……以上です!」

 

((((ガタッ))))

 

その言葉に、クラスの半分くらいが思わずズッコケた。

まぁ、あれだけ引っ張ってこれだからな……

それにしても一夏よ、小学生でももう少しまともな自己紹介はするぞ。

しかし、俺はここでなにも言わない。

何故って……

 

ゴンッ!

 

俺が何にも言わなくても血族(織斑 千冬)様がやってくれるからさ。

その鈍い音が鳴った場所では、現在頭を押さえている一夏と、その後ろで拳を握っている千冬さんが立っていた。

 

「ち、千冬姉!? なんでここに?」

 

「ここでは織斑先生だ。それよりお前はまともな自己紹介もできんのか!?」

 

ごもっともです。

 

「あっ、織斑先生。もう会議は終わったんですか?」

 

「あぁ、任せてしまってすまないな。山田先生」

 

織斑先生は山田先生と話すと教壇に立って

 

「諸君。私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。お前達、役立たずを一年で使い物にするのが私の役割だ。私の言う事は、よく聴き、理解しろ。出来ない者は出来るまで私が指導してやる。いいな」

 

と言い放った。

おーおー、軍隊顔負けの指導方針ですなぁ。

けどそんな指導を喜んで受ける様な物好きは……

この瞬間、この教室内に黄色い歓声が響き渡った。

 

「「「「キャァァァァァァ!!!!!」」」」

 

「千冬様、本物の千冬様よー!!」

 

「私、ずっとファンでした!!」

 

「あの千冬様のご指導を受けられるなんて夢みたいです!!」

 

いっぱい、いらっしゃるようだ。

にしても、女性の歓声ってこんなに頭に響く者なのか?

 

「……はぁ、よくもまぁ毎年毎年これだけの馬鹿者達が集まるものだ。ある意味感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者共を集中させるように仕組んでいるのか」

 

そう言って頭を抱える千冬、失敬、織斑先生を他所に

 

「きゃぁぁ! お姉様! もっと叱って! なんなら鞭で叩きながら罵って!」

 

「けど、時には優しい笑顔を見せて!」

 

「そして、つけ上がらないように躾して!」

 

おーおー、すげぇーなー織斑先生にかかれば一声発するだけでその場にマゾを増やすことが出来るのか。

流石天下のドS姉さん……

などと考えていた俺の近くに、いつの間にか来ていた織斑先生が、俺を凄い眼力で睨みつけていた。

 

「熊耳、今なにを考えていた?」

 

何故バレた!?

そ、そうか、織斑先生はブラットオブボンゴレの超直感を身につけているのか。

おおー怖々、取り敢えず今はなんとかごまかそう。

 

「今日の天気について考えていました」

 

「そうか、今日は一日中雲一つない快晴だそうだ」

 

「そりゃ良い散歩日和ですなぁ」

 

「全くだ。さて熊耳、他に言う事はないか?」

 

誤魔化せなかったようだ。

 

「……お姉様に指導して頂けて光栄であります」

 

「そうか、それではしっかり指導してやろう」

 

そう言うと、お姉様は俺の頭に自身の拳を力強く落とした。

 

「全く、馬鹿者共のせいで時間も少なくなってしまったな。熊耳、最後にお前だけでも自己紹介しておけ」

 

「さっきので頭蓋骨が割れたのか凄く痛いので、遠慮したいのですが……」

 

まぁ、本当に頭蓋骨が割れてたら、もっとヤバい状況になるけどね。

 

「知っているか熊耳。昔はなぁ、電化製品を叩いて直していた家庭が多く存在していたそうだ」

 

つまり、叩いて直してやろうという事ですね、わかります。

 

「やらせて、頂きます」

 

「ふん、さっさとすませてしまえ」

 

そう言って教壇の方へ戻る織斑先生を他所に俺は立ち上がって自己紹介を開始した。

 

「ええッと、熊耳 蒼と言います。趣味は旅行と読書です。読書のジャンルはミステリーとかホラーとかが多いかな。ISについてはほとんど無知に近いです。これから一年間よろしくお願いします」

 

その後、次の時間になにをやるのかの軽い説明をして1時間目は終了した。

 

 

 

「もう、無理帰りたい」

 

「安心しろ、あと6時間くらいすれば帰れるぞ」

 

机に突っ伏した一夏の側に立って俺はそう言い放った。

1時間目が終わった現在も教室の外には他クラスの生徒がわらわらと集まって来ており、廊下はギュウギュウ状態になっていた。

世間の男性達にあの中に入れるチケットでも売れば、奇声を上げて喜びそうだなぁ。

などと下らない事を考えていると急に周りがざわつき始め、後ろから

 

「……ちょっと、いいか?」

 

と急に声をかけられ、振り向いてみると、そこには黒髪ポニーテールのいわゆる大和撫子風の女性がいた。

 

「一応、聞くけど、俺とこの突っ伏している奴のどっちにご用事?」

 

多分、突っ伏してる方だと思うけど……

 

「……箒?」

 

突っ伏していた方が顔を上げて彼女をみるとそう一言。

それに対して彼女は、少したじろいたがそのまま一夏の顔を見つめ返す。

 

「「…………………」」

 

なにこの空気、なんか少しイラッとするんですけど。

 

「あのさぁ、そろそろ喋ったら?」

 

「あ、あぁ……それで何の用だ?」

 

「……廊下でいいか?」

 

「あ、ああ」

 

「早くしろ」

 

そう言って2人は廊下へ向かって行った。

 

えっ、なに、なに? 修羅場、修羅場なの?

これから、キサマァァよくも抜け抜けとー、的なのが始まるの?

 

少し着いて行こうかと思ったが、周りの子らが、一切動こうとしなかったので、俺も空気を読んで自分の席に戻ることにした。

はぁ、これから授業まで視線は俺に集中砲火しそうだなぁ。

それにしても、一夏が箒って言ってたな。

って事は、あの子が『篠ノ之箒』さんか。

確か篠ノ之束の実の妹でいずれ第4世代ISの所持者になる人だったな。

そんな事を自分の席で考えていると、

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

癖っ毛なのかセットしているのかわからない金髪縦ロールのお嬢様口調のクラスメイトに声をかけられた。

 

「えっ、あぁはい」

 

「まぁ、なんですのそのお返事は!? 私に声をかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではないかしら?」

 

この私? 言い方からして、この人、有名人かなんかなのかな?

 

「……それもそうですね。すみません」

 

「ふん、まぁ、私は心が広いですからその謝罪に免じて許して差し上げますわ」

 

「はははぁ、それで僕にどんな御用ですか?」

 

「そうでしたわね。私は!」

 

キーンコンカーンコーン

 

「……話の続きは、また改めて」

 

そう言って、席に戻って行く金髪縦ロールを他所に俺は正面を向いて教師が入ってくるのを待った。

金髪縦ロールのお嬢様口調ってもしかしてあの人が……

 

 

 

 




自己紹介って結構大事ですよね。
ちなみに作者は、自己紹介が苦手でいつも同じ様な事しか言えませんでした。


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第3話 仕事はしっかりしないとね

俺が金髪縦ロールと話をした少し後に始まった2時間目を含めた残りの授業が若干一名の犠牲を除けば無事に終わり、現在俺と一夏は人の減った放課後の教室で軽く話をしていた。

ちなみに、金髪縦ロールは途中の休み時間で一夏の方にも話しかけに行って何やら騒いでいたが、俺にはその後話しかけてくる事はなかった。

おそらく一夏との会話で俺の事なんてどうでも良くなったんだろう。

ちなみに、一夏と金髪縦ロールが話をしていた時、俺は自分の席で『篠ノ之箒』と『篠ノ之束』について調べていたので、その会話には参加しなかった。

 

「あ〜〜もうダメだ。俺、このまま3年も続けていける自信ない」

 

「まぁ、気持ちはわかるけど、そればっかりはどうしようもないだろうな」

 

「だよなー。あっ! そうだ。お前、なんで2時間目の時に手をあげてくれなかったんだよ!?」

 

ん? なんの事だ?

 

「2時間目って……あ〜他にわからない人はいないかって奴か?」

 

そう言いながら俺は、2時間目の時に授業内容を全く理解出来ていない一夏が、事前に配られていた参考書を捨てたと言って織斑先生に叩かれていた事を思い出す。

 

「そうだよ。お前だってほとんどわかって無いんだろ?」

 

「すまん一夏。俺、お前と違ってしっかり予習してたからの割と理解出来てた」

 

「はぁ、なんでだよ。というか、そんな事いつしてたんだよ!」

 

その一夏の問いに俺は淡々と応え始めた。

 

「俺さぁ、お前の家で厄介になってる間、基本ゴミ出しと風呂掃除くらいしかしてなかっただろ」

 

まぁ、偶に料理をやってたけど……

 

「あぁ、そうだったな」

 

「だからな、それ以外の時間が結構あったんだよ」

 

「まさか……その間に」

 

おっ! ようやく察したな。

 

「うん、予習してた」

 

「うわーマジかよ……ん? 待てよ。お前確かゴミ出し担当だったよな」

 

「ん? あぁ、そうだったよ。だから?」

 

なんなんだ?

 

「って事はだ。俺が参考書を捨てた事も知ってやがったな!」

 

あぁ、その事か。

 

「あぁ、知ってたよ。けどそれは、てっきりお前が、内容は完全に覚えたからもう要らねえよ。って事で捨てたんだと思ってそのまま捨てたんだよ」

 

「お前なぁ、そうゆう事は!!」

 

そう言って一夏がジワジワと近寄って来ようとした時、教室の扉が開きそこから山田先生が入って来た。

 

「あぁ、よかったお二人ともまだ帰って無かったんですね」

 

俺は山田先生に返事をすると、

 

「あぁ、山田先生。どうかなさったんですか? あと一夏、とりあえずその件は後回しだ」

 

と、一夏の前に左手を突き出した。

 

「あ、おう」

 

「実はですね、寮のお部屋が決まったのでそれをお知らせしようかと」

 

寮の部屋?

 

「あの、質問いいですか?」

 

「はい、なんですか? 織斑君」

 

「あの、俺達って1週間は自宅から通学するって話だったような……」

 

そう言って一夏は目で俺に、だよな。と聞いて来た。

俺は視線に気づくと、一夏に向かって軽く頷く。

すると山田先生は

 

「確かに、最初はその筈だったんですけど、お二人とも事情が事情ということで一時的な処置として、部屋割りを無理矢理変更したようです。……そのあたりの事政府から聞いてませんか?」

 

と最後だけ自信なさげに言って来た。

おい、政府仕事はしっかりしてくれ!

 

「……って事は、俺と蒼は同室って事で良いんですよね」

 

当たり前だろ。何言ってんだお前は……

 

「ええっと、実は織斑君と熊耳君の部屋は別々なんです」

 

すまん一夏。俺の方が間違っていたようだ。

その山田先生の言葉に一夏は食いついた。

 

「えっ、どうゆう事ですか!?」

 

「あわわぁ、す、すいません。実は、政府からの『貴重な男性操縦者を一塊にしてもしものことがあったらどうする』という一声で……」

 

成る程、もしもの場合に備えて、俺達を分けておけば1人に何かあってももう1人は助かるだろうって事か。

まぁ、仕事しない政府にしてはよく考えたな。

 

「わかりました。それで、まさかとは思いますが、俺達2人とも女子生徒と同じ部屋、なんて事は無いですよね」

 

そう質問する俺に対して、山田先生は申し訳なさそうに

 

「実はですねぇ……」

 

おいおい、まさか……

 

「すみません。お二人とも女子生徒と同じ部屋なんです」

 

と答えた。

マジかよ!? それは流石にどうかと思うぞ。

すると、それを聞いた一夏が驚きながら続けて質問する。

 

「えぇ!! もしかして、3年間ずっとですか!?」

 

「あっいえ、少なくとも今月末までには、お二人用の部屋が完成しますので、それまでですよ」

 

流石にそこまでわからない程のアホじゃ無いみたいだな。

 

「わかりました。それじゃ、俺達は今から家に戻って必要な物を持って来ます」

 

「その必要は無い」

 

その声と共に俺達の後ろからそこそこ膨らんだ鞄を2つ持って織斑先生が姿を表した。

織斑先生は俺達の近くまで来て立ち止まると、鞄を床に置いて、

 

「最低限の物として、着替えと携帯の充電器は入っている。他に必要な物は休日にでも取りに行け」

 

「あっ、はい千、織斑先生、わかりました」

 

「熊耳、お前の分はお前が使っていた部屋の中から適当に持って来たがそれで大丈夫か?」

 

「あぁ、はい。あの部屋にある着替えとかは全部俺のですから、それで大丈夫です」

 

とはいえ、休日には他に色々取りに行かないとな……

 

「そうか、ならいい」

 

織斑先生が頷くと、続けて山田先生が話し始めた。

 

「それでは、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時の間に、一年制寮の食堂でとってください。ちなみに各部屋にシャワーが備え付けてあります。また、大浴場もありますが、各学年で使える時間が決まっていますので、今のところお二人が入る事は出来ません」

 

するとここで、隣のアホが

 

「えっ、なんでですか?」

 

アホな事を言い出しおった。

こいつ、少しは考えて発言してくれ。

 

「そうか、一夏。お前がそこまでオープンスケベだとは思っていなかったよ。そうかそうか、お前は女子と一緒に大浴場に入りたいのか」

 

ここで、ようやく自分の言った言葉の意味を理解した一夏が顔を赤くしながら

 

「あっ、いやそうゆう事じゃ無くてだな……」

 

と慌てだした。

さらに言えば、何故か山田先生も同じようになっていた。

 

「えぇ!? お、織斑君、女の子と一緒に入りたいんですか!! それは教師として流石に……」

 

「あっいえ、そんな事無いんです」

 

「えっ!? 女の子に興味が無いんですか!! それはそれで……」

 

「おいおい、マジかよ一夏。お前、そっちだったのか……」

 

そう言って俺が一夏から距離をとり始めると、

 

「あ、おい、待て蒼! 山田先生もさっきのはそうゆうのじゃ無くてですね……」

 

長引きそうだな。

俺はそのまま織斑先生に近いて

 

「織斑先生、そろそろ部屋に行きたいので、俺の部屋の鍵もらえますか?」

 

と声をかけた。

すると、織斑先生は俺の方をチラッと見てポケットから鍵を取り出して

 

「あぁ、間違えて別の部屋に入ったりするなよ。後が面倒だからな」

 

と言って俺に鍵を俺の手の平に落とした。

 

「わかってます。それじゃあ一夏、先に行ってるぞ」

 

「あっ、おい待てよ蒼」

 

後ろから聞こえるそんな声を無視して俺は自分の荷物を持って寮へと向かった。

あっ、そういえば一夏の部屋が何処か聞かの忘れてた。

まぁ、明日にでも聞けば良いか。

 

 

 

 




作者個人が友人から聞いた話なんですけど、年頃の男女の同室って、意外と大変なんですって。

それでは次も読んで頂けると嬉しいです。



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第4話 朝は1日の始まり

一夏を、置いて寮に向かった俺は、途中ですれ違う女子生徒の視線やらヒソヒソ話やらに耐えながらも、なんとか自分の部屋となる1032号室にたどり着いた。

さて、ルームメイトはどんな子なんだろうか?

確か、原作では一夏は篠ノ之さんと同じ部屋になるんだよなぁ。

まぁ、この世界でもそうかは知らないけど……

 

などと考えながら、俺は渡された鍵を使ってその部屋を開けて中に入っていく。

俺は部屋に入ると、扉を開けたまま部屋の中を一望してみる。

しかし、部屋のなかには、鞄などはおろか、誰かがいる気配すら無かった。

どうやら、同室の子はまだ来てないみたいだな。

俺がそう結論付け、扉を閉めようと握ったままだったドアノブを引っ張っていくと、突然扉と壁の隙間から手がスルッと飛び出てきたので、俺はすかさず扉から手を離して、少し後ろに下がった。

すると、その飛び出した手によって扉が開けられ、そこから制服をダボダボに来ている垂れ目の女の子が姿を現した。

あれ、この子って確か同じクラスの、

 

「あれ〜? クマミーだ〜なんで〜? どうして〜?」

 

クマミー? ……もしかして俺の事か!?

というか、この子なんて名前だっけ?

クラスメイトなのは覚えてるんだけど……

 

「あぁ実は、俺のこの部屋もここなんだ。まぁ、月末までだけどな」

 

「そうなんだ〜! よろしくね〜クマミー」

 

「あぁ、よろしく。ええっと……」

 

「布仏本音だよ〜」

 

「よろしく布仏さん」

 

そう言って俺が右手を差し出すと、布仏さんは、ダボダボな制服の裾ごと両手を俺の手を包んで、よろしくね〜。と言いながら手を上下に大きく振り出した。

 

「それで、布仏さん。1ヶ月とはいえ同室になるんだから最低限のルールを決めておかない?」

 

布仏さんは俺の手を離すと、首を傾げて

 

「ルール〜、なんで〜?」

 

と何故か聞き返された。

なんで、ってあんたこの歳の男女が同室になるんだから間違いがないようにするためのルールは必要だろ。

って説明した方がいいのかもしれないけど、今日はなんだか疲れたし、ここは、

 

「まぁ、俺がそうしたいからって事にでもしといてくれ」

 

と適当な理由で済ますことにした。

 

「わかったよ〜」

 

その後は、俺と布仏さんで適当な世間話なんかをしながら、部屋のルールを決めたりした。

ちなみに、俺のベットはジャンケンによって手前側になってしまった。

 

 

 

 

 

翌朝、7時ちょっと過ぎくらいに起きた俺は隣のベットで寝ている布仏さんを他所に制服に着替えて、そこから指にリングをはめて死ぬ気の炎を出す訓練を軽く行う。

この3年間の訓練で死ぬ気の炎は自由に出せるようになっていたのだが、その訓練の影響で毎朝、リングに炎を灯すのが癖になってしまったのだ。

ちなみに炎が最初に灯ったのは、この世界に来てから1週間経つか経たないかくらいの時でした。

それが終わって時計を見てみると、7時13分くらいだったので、俺は未だに寝ている布仏さんを揺すったりして起こし、2人でそのまま食堂に向かった。

ちなみに布仏さんはキツネ?の着ぐるみみたいなパジャマのままである。

 

途中、布仏さんの友達に出会って、「あれ? 熊耳君どうして?」とかなんとか聞かれたので、「食堂に行きながら話そうか」と言って食堂に向かいながら訳を説明した。

 

 

そんなこんなで食堂に着いた俺達は、食券を買って注文した料理を受けとる為、列に並ぶ。

俺は最初和食にしようとしたが、他の3人が洋食を注文しているのを見て何となく洋食を注文した。

 

料理を受け取って3人と適当な席を探していると、窓側の席に見知った人物を見かけ、3人とその近くまで移動した。

 

「…………なぁ、箒?」

 

「な、名前で、呼ぶな!」

 

「し、篠ノ之さん」

 

2人は何か言い合っていたが、俺はそんな事気にせず、

 

「隣良いか、一夏?」

 

そう言って一夏の席に隣に腰を下ろす。

 

「なんだ蒼か。って、もう座ってるじゃんか」

 

「気にするなよ。それよりほら3人もここ空いてるんだから、さっさと食べようぜ」

 

そう言って、布仏さん達を隣に呼ぶと、

 

「えっ、良いの」

 

と黒髪ロングの夜竹さんが聞き、

 

「やった」

 

「わーい」

 

と赤茶色のおさげの谷本さんとキツネのパジャマの布仏さんが喜ぶ。

しかし3人が俺の隣に座ると、何故か不機嫌そうな篠ノ之さんが

 

「先に行くぞ」

 

と呟いて食堂から出て行った。

篠ノ之さんって、朝は機嫌が悪くなるのか?

それとも、一夏がなにかやらかしたのかな?

確か篠ノ之さんって一夏に惚れてる筈だし。

すると俺がそんな事を考えてると知る筈もない、隣の3人組が、

 

「織斑君って、朝からそんなに食べるの?」

 

「すごい量!?」

 

「男の子だねぇ〜」

 

なんて、呑気な事を聞き出した。

対する一夏も

 

「そうか、普通だと思うけど、俺からしたら女子ってそれだけで足りるのかって思うけどなぁ」

 

なんて同じように呑気に答えている。

 

「あー私達はねぇ」

 

「お菓子、いっぱい食べるし〜」

 

それを聞いた一夏は今度は俺の方を見て、

 

「そういえば、蒼も朝はあんまり食べないよな」

 

と問いかける。

そりゃまあ、朝食べる量なんて、個人個人で違うからなぁ。

 

「……まぁ、俺はあんまり朝に食べないからなぁー」

 

「そうだったのか。一緒に暮らしてた頃は気づかなかったな」

 

「まぁ、一緒に暮らしてたって言っても、1ヶ月くらいだし気づかなくても仕方ないだろ」

 

俺のこの言葉に夜竹さんが素早く反応した。

 

「えっ、何々織斑と熊耳君って一緒に住んでたの」

 

「あぁ、ここに入学するまでの1ヶ月近くだけだけどな」

 

「へぇーそうなんだ。それじゃあ……」

 

谷本さんが、続けて何か言おうとしたその時、

 

パンッ、パンッ!!

 

「いつまで食べている、食事は迅速に効率良く取れ!! 遅刻した者はグラウンド十周させるぞ!」

 

食堂の中心でジャージ姿の織斑先生がそう言い放つ。

それを聞いた周りの生徒達が、急いで食事を済ませ始める。

そんな中、一夏はというと、

 

「千冬姉?」

 

何故ここに? と言った顔して織斑先生を見ていた。

 

「織斑先生、一年制寮の寮長なんだとさ」

 

それに気づいた俺は、食事を済ませて一夏にそう説明する。

ちなみにこれはこの世界について調べた時に知った事だ。

 

「へぇー、そうだったのか……」

 

1ヶ月、俺が、一夏と偶に帰ってくる千冬さんと一緒に暮らしていたのは確かにそれ期間だけだった。

その時にも感じていたけど、一夏は織斑千冬という人間についてあまり知らないように感じる時があるんだよなぁ。

本当、変わった兄弟だよなぁ。

 

「それじゃあ一夏、俺は先に教室に行かせてもらうぞ」

 

そう言って立ち上がった俺を見て、一夏が

 

「えっ、あぁ」

 

気のない返事を返したが、俺は特に気にする事なく、

 

「それじゃあ、後でな。それと布仏さんはちゃんと制服に着替えてから教室に来いよ」

 

と続けて、布仏さんに注意を促した。

 

「わかってるよ〜、クマミー」

 

そう言う、布仏さんに少し心配を覚えたが、横から谷本さんが、

 

「そこは、私達もついてるから心配しないで」

 

と俺の心配が伝わったのか、そう言ってくれたので、それに甘える事にして俺は、頼む。と一言残して食堂を後にした。

それにしても、篠ノ之さんか……今後の為にも近いうちに、少し話をしておいた方がいいかもな。

 

 

 

 

 

 

 




作者は朝食は時間的に食べない人です。
……どうでもいいですよね。

それでは次も読んで頂けると嬉しいです。


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第5話 イギリスからの果たし状

俺は朝食を済ませて、一夏達と別れた俺は、急いで教室に向かった。

目的は、『篠ノ之箒』と話をする事だ。

途中、他の女子生徒から声をかけられたりと色々あって結局教室にたどり着いたのは7時50分くらいだったけど……

しかしまぁ、目的の篠ノ之さんはいるし、時間も10分もあるんだ。

手短に話せばなんとかなるだろ。

そう考えた俺は、そのまま自分の席に座っている篠ノ之さんに近づいていった。

 

「篠ノ之さん、ちょっと良い?」

 

篠ノ之さんは一瞬俺を睨むように見るも、その後すぐに表情を戻して

 

「……あぁ、確か熊耳と言ったか?」

 

そう返事する。

ちなみに、この状況に少し周りがガヤガヤ言っているが、時間が無いので今は無視しておこう。

 

「そう、熊耳蒼。熊耳でも蒼でも好きな方で呼んで」

 

そうフランクに話を続けるも肝心の篠ノ之さんは、

 

「それで、私に何のようだ?」

 

と俺に警戒心剥き出しで返事をしてくる。

うーん、まぁ、よく知らない異性に急に声をかけられたら、警戒したくもなるか……

 

「いやぁ、用って訳じゃないんだ。ただ前に一夏が君の事を話してたから挨拶だけでもって思ってさ」

 

すると、一夏の名前が効いたのか篠ノ之さんは、少し警戒心を緩めてくれた様子で

 

「そうか、わざわざすまないな」

 

と軽く頭を下げる。

それにしても、一夏の名前1つで警戒心を緩めるとは……

 

「気にしないで良いよ篠ノ之さん。それで、一つ聞きたいんだけど」

 

俺は、そのまま篠ノ之さんにだけ聞こえるくらいの声で

 

「一夏となんかあったの?」

 

と問いかけると、篠ノ之さんは瞬時に目を晒して

 

「な、なんでもない」

 

と答える。

わっかりやす。

その反応で何もなかったてのは、いくらなんでも無理があるだろ。

 

「ふーん、それなら良いんだけど……。あっでも、あのアホが何かやらかしたならいつでも言って。俺じゃあ、頼りないかもだけど多少の愚痴くらいならいつでも聞くからさ」

 

「そ、そうか……では、その時は頼らせてもらう」

 

その篠ノ之さんの返事を聞いた直後、教室の扉が開きそこから一夏が入って来た。

俺はその事に気付くと、小声で素早く

 

「それと、一夏の事狙ってるなら、早めに仕留めないと後々面倒かもよ」

 

と呟く。

原作だと、後から()()()()も此処にくるらしいからなぁー

すると、それを聞いた篠ノ之さんが顔を真っ赤にして、

 

「べ、別に私はあいつの事など……」

 

と弁解しだすが、俺はそんな事気にせず

 

「はいはい、わかったから、まぁ、なんかあったら相談してよ。多少はアドバイスするから。それじゃあね」

 

と、俺は自分の言いたい事を言った後、自分の席に戻って次の授業が始まるのを待った。

そしてその後、少しして教室に入って来た織斑先生と山田先生によってHRが始まった。

 

 

 

 

朝、篠ノ之さんと話してから、特に目立った事件もなく、HRと1時間目を過ごした俺達は、現在2時間目の織斑先生による実習についての説明を受けようとしていた。

しかし、チャイムが鳴ると同時に、教室に入ってきた織斑先生は、教壇に立つと、

 

「さて、今日は実習について説明をするのだが……と、その前に、再来週に行われるクラス代表戦に出る代表者を決めなくてはならないな」

 

と授業を始める前に、思い出したかのように話し始めた。

 

「代表者は、代表戦以外にも生徒会の会議や委員会への主席など……まぁクラス長考えてもらって構わない。自己推薦は問わない。誰かいないか?」

 

織斑先生がそこまで説明し終えると、一瞬周りの音が消え、その直後、

 

「はい、私は、織斑がいいと思います」

 

「私も織斑君で!」

 

「それじゃあ、私は熊耳君で!」

 

「私も私も!」

 

とっ、勝手な推薦で俺と一夏が候補として上がった。

まぁ、大方俺達を見せ物にでもしたいって事なのだろう。

それを聞いた一夏が、

 

「なっ、ちょっと待てよ俺は……」

 

と何かを言おうとすると、

 

「納得がいきませんわ!!」

 

と昨日の金髪縦ロールがその言葉を遮った。

 

「そのような選出は認められません!」

 

俺も認められたくありません。

 

「第一、男が代表だなんて……いい恥さらしですわ!! このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!」

 

ほう、あの縦ロール、やっぱりセシリア・オルコットだったのか。

情報で金髪縦ロールのお嬢様口調が特徴のチョロインってあったからもしかしてって思ってたけど、やっぱりそうだったのか。

というか、よく考えたら、金髪縦ロールのお嬢様口調なんて、そうそういないよなぁー。

確か、イギリスの代表候補生で専用機の名前は『ブルー・ティアーズ』だったか。

そういえば、昨日の夜に布仏に聞いたら詳しく教えてくれてたっけ……

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならないこと自体、私にとって耐え難い苦痛で……」

 

おっと、ここでそこまで、言っちゃうか。

肝っ玉が座ってるのはいい事だけど、こりゃあそろそろ止めた方が良さそうだな。

俺がそう思い、発言しようとすると、そんな事知るはずもない一夏が、

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ!世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

と火に油を注ぎやがった。

あのアホ!!

 

「なっ、美味しい料理だって沢山ありますわ」

 

あたり前だろ!

そもそもイギリスの料理が不味い料理って言うのは、調理過程で味付けを殆どせずに、個人の好みに合わせて酢や塩なんかで後から味付けをするから、他国から観光に来た人達から、そう言われれるだけで、イギリス出身の人からすればそれが普通だったらするんだよね。

 

「貴方、私の国を侮辱しますの?」

 

「先に侮辱したのはお前だろ! 蒼、お前も黙ってないで何か言ってやれよ」

 

おいバカ! なんでそこで俺に降るんだよ。

 

「あら、貴方も私に言いたい事があるですか、熊耳蒼」

 

あら、僕の名前覚えてくれたのね。

ってゆう、おふざけはこれくらいにして、取り敢えずこの絶賛沸騰中のアホ2人の頭を冷やしてやるか……

はぁー、面倒臭い。

 

「まぁ、俺も自分の国を侮辱された事には少しイラッとしたけど、それはこっちもしちゃってるから、正直なんとも言えなくなってるんだよねぇ」

 

「だったら……」

 

「とはいえ、このまま引き下がるも、少し違う気がするから少し言わせてもらおうかな」

 

そう言う俺を少し睨むセシリア・オルコットを他所に俺は話を続けた。

 

「まず、一夏」

 

「えっ! 俺?」

 

「そう、お前だ。自分の国をバカにされたからって同じことを相手にしてどうする。それともなんだ、お前は自分がされて嫌な事を相手にもしろって、後ろにいるお姉様から教わったのか」

 

ここで俺があえて両親と言わなかったのは一夏の家族について多少なりとはいえ、一夏本人から聞いていたからである。

その代償として、織斑先生から注意でもされるかと思っていたが、織斑先生は、構わん。と言わんばかりの顔でこちらを見ていた。

本当、凄いお姉様だよ。

 

「……すまん」

 

「わかってくれるなら良いよ。これからは少し考えて発言する事を覚えておけ」

 

「あぁ……」

 

そう反省する一夏を見ると、次に俺はセシリア・オルコットの方を向いて話し始めた。

 

「さて、次にあんただセシリア・オルコット」

 

「なっ、なんですの!?」

 

「あんた、確か……ええっと、なんだっけ? 布仏さん?」

 

「えっ、わ、私〜!? ええっと何って何が〜?」

 

「ほら、昨日説明してくれたじゃん。確か、代表なんとかって」

 

「あ〜代表候補生だねぇ〜」

 

ここで布仏さんから聞いたって事にすれば、俺がその件について知っている事に関しては深く追求はされないだろう。

何故そんな事をだって、だって俺自己紹介でISについて殆ど知らないって言っちゃってるし、まぁあくまで、念の為だけど……

 

「あっそれだ! ありがとう布仏さん。で、話を戻すけどセシリア・オルコット、あんた自分がそうゆう立場だって事を忘れて発言してないか? 代表候補生って事は、文字通りいずれ国家代表になる可能性のある数人の内1人って事だよな。そこら辺って、そんな感じで合ってますよね、織斑先生」

 

「そうだな」

 

「だとしたら、あんたの言葉はイギリスの言葉と取られてもおかしく無いのでは? そんな貴方が、ISを生み出した人間や元世界最強の現教師が生まれ育った国を侮辱するような言葉を言おうものなら……って、流石にここから先は言わなくてもわかりますよね、イギリスの代表候補生さん」

 

そう言う、俺にセシリア・オルコットは自分の足元を見て軽く震えている。

少し反省してくれたかな?

 

「……け……です…」

 

ん? 今、何て言った?

 

「悪い、聞こえなかったからもう一度言ってもらっていいか?」

 

「決闘ですわ!」

 

「はぁ? ……ちょっと待て…」

 

少しは人の話で反省を……

 

「あぁ、いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」

 

「おい待て、一夏何故お前が了解する」

 

というか、さっきの俺の話聞いてました?

今、お前完全になんも考えないで発言してるだろ!?

しかし、そんな俺を無視して織斑先生が話を進めて行く。

 

「……わかった、ではお前らで戦って代表決めろ。試験日は1週間後だ」

 

いや、織斑先生、今代表を決めろっておっしゃいました!?

 

「あのー、織斑先生。俺もしないといけませんか?」

 

「なんだ熊耳。不満でもあるのか?」

 

俺の問いかけに織斑先生は、軽く拳を握ってそう聞き返した。

 

「いえ、何もございません」

 

そんな脅しながら聞くか普通……

そんな会話を俺達がしている側で一夏がセシリア・オルコットに話かける。

 

「それで、ハンデはどれくらいつける」

 

「あら、早速お願いかしら?」

 

「いや、俺がどれくらいハンデをつけたらいいのかなーっと」

 

この一夏の発言に、思わずクラス中で笑いが起こった。

 

「お、織斑君、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

「織斑君はIS使えるかもしれないけど、それだけでしょ?」

 

「やめときなよ。今の女に男が勝てるわけないんだから」

 

うーん、男としては、あんまりいい気持ちはしないけど、まぁ実績も何もない現状だと仕方ないか。

 

「だ、そうだ一夏。それでお前はどうするんだ?」

 

「わかった。ハンデは無しでいい」

 

「話はまとまったな。では」

 

そう言って、織斑先生が話し合いを終了しようとした時、俺はすかさず手を挙げて織斑先生にとある疑問をぶつける。

 

「あっ、ちょっと待って下さい織斑先生」

 

「ん? なんだ熊耳」

 

「いえ、イギリスの代表候補生さんは専用機っていうのがあるらしいんですけど、俺達はそこら辺はどうなるんですか?」

 

一応、原作では一夏には専用機が与えられるけど、俺はどうかわからないしな。

 

「あぁ、その件か。その件に関しては織斑には、学園側から専用機を用意するそうだ」

 

織斑には……か。

 

「せ、専用機!? 一年の、しかもこの時期に!?」

 

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」

 

「あぁあ〜、私も早く専用機が欲しいなーぁ」

 

そうクラス中で聞こえる声を無視して、一夏が俺に問いかける。

 

「なぁ、蒼。専用機ってなんだ?」

 

「まぁ文字通りお前のために作られたISって所だ」

 

「それがどうしてこんなに羨ましがられるんだ?」

 

だから、少しは考えて発言をって、こいつの場合、これが考えてからの発言なんだろうなきっと……

 

「ISのコアが限られた数しかないのはお前も知ってるよなぁ」

 

「あぁ、昨日の授業でそう言ってたな」

 

「って事はだ。作れるISにも限りがあるわけなんだよ。そのうちの一体をお前は独占使用できる。これが羨ましくないIS操縦者見習いはそうそういないだろ」

 

「成る程成る程。あれ、でもなんで蒼にはないんだ?」

 

……大雑把ではあるけど予想はしてる。

おそらく俺には後ろ盾が一切ないからだろうな。

一夏には織斑千冬っていう文字通り元世界最強の後ろ盾がある。

対して俺は一切後ろ盾のない上、此処(IS学園)にいなければいつ消されていてもおかしくない立場だからな。

だったら、そんな俺に専用機を持たせるよりは、一夏だけに専用機を持たせて、そこからデータを集める方がリスクが少ないとでも考えたんだろう。

けど、そうだって言う確信が無い以上、その予想を軽々しく口するのは良くないか……

 

「……さっぱり、なんでですか織斑先生?」

 

「……少し事情があるのだ。熊耳、お前には学園に置いてある訓練機を一機渡す事になっている」

 

「そうですか……」

 

「他に、何かあるのか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「それでは試合は来週の月曜。第三アリーナで行う。織斑、熊耳、オルコットの三名は準備しておくように」

 

その後、授業の続きが開始され、俺達は自分の席に座って授業を受けた。

 

 

 




イギリスの料理って本当に味がないんですよねぇ。
まぁ、感じ方は人それぞれでしょうけど……

それでは、次も読んで頂けると嬉しいです。


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訓練機と相談

今回少し短めです。

それではどうぞ。


その日の放課後、俺は山田先生に連れられて、学園のIS格納庫に来ていた。

なんでも、訓練機の種類が2つあるため、俺に貸し出す機体をどちらにするか選んで欲しいんだそうだ。

 

「熊耳君、こっちですよ」

 

そう言って手を振る山田先生の元へ駆けて行くと、そこには俺がこの学園へ来るきっかけを作った甲冑のようなISともう一機見たことのないネイビーカラーのISが置かれていた。

 

「この《打鉄》と《ラファール・リバイブ》の2つの内どちらかが熊耳君に貸し出される事になっています」

 

「はぁ、それで俺はどうすればいいんですか?」

 

「今日は、熊耳君に3年間貸し出す機体をどちらにするか選んでもらうだけになります。一応、通常状態に戻したりする作業がありますので……」

 

成る程、選んですぐに貰える訳でもないのか……

 

「それじゃ、こっちのネイビーカラーのにします」

 

「《ラファール・リバイブ》ですね。でもどうしてこっちなんですか?」

 

ん? 単純に俺がこの地獄に来る原因となったISと、同種の物が嫌だっただけなんだけど……そう言う訳にもいかないし……

 

「……直感ってやつです。ほらISは、パートナーとして扱えって山田先生も言ってたじゃないですか。だったらパッと見たときの直感的な物信じてみようかと……ほら、あれですよ運命の出会い的な……」

 

これでなんとか言い訳になったかな?

そう思いながらも、一応山田先生の顔色を伺ってみると、

 

「そうですパートナーなんです。運命の出会いなんです。先生嬉しいです。熊耳君、ちゃんと私の授業を聞いてくれていたんですね」

 

目を輝かせて、嬉しそうに力説してきた。 

俺も良かったです。今回一緒に来た先生が貴方で……そして、嘘ついてすいません。

 

「それでは、熊耳君にはこちらの《ラファール・リバイブ》を貸し出しますね。色々な設定を合わせて数日はかかると思いますので、準備ができましたらこちら連絡しますね」

 

「はい、それじゃあ山田先生、後はお願いします。では俺は寮に帰りますね」

 

そう言って頭を下げた俺は、元の姿勢に戻ってから、格納庫の出口へ向かった。

後ろから山田先生の

 

「気をつけて帰って下さいね」

 

と聞こえたので、少し後ろを向いて軽く頷くと、そのまま出口へ向かっていった。

 

 

 

さてと、これからどうしようかな。

山田先生と分かれた後、特に何事もなく寮まで戻って来た俺は自室のベットで横になって今後の事について考えをまとめ始めていた。

 

「とりあえず、6日、いや今日はもう殆ど無いから実質5日か……」

 

ISでの戦闘だとすると、リングとかボックスは一切使えないし、ましてや()()なんて着けても意味ないしなー。

とは言ってもたった5日で他の武器が使いこなせる訳ないしなぁー

 

「う〜ん…………どうしよ〜」

 

「なにが〜?」

 

「うーん、イギリスの代表候補生との試合について……って、布仏さん帰ってたの!?」

 

そう言って俺が飛び起きると、俺の足元には、布仏さんだけでなく、谷本さんと夜竹さんも側に立っていた。

2人は俺が起き上がると、それぞれ片手を軽く挙げて

 

「ヤッホー、熊耳君」

 

「お邪魔してまーす」

 

と挨拶してきた。

それを見た俺はベットに腰を下ろしたまま2人に

 

「どうも。それで2人はどうしてここに?」

 

と問いかける。

すると、谷本さんと夜竹さんはお互いの顔をチラッと見てから答えた。

 

「今朝、熊耳君から本音と同室って聞いたから、遊びに来ちゃった」

 

「せっかくなら、そのまま夕食も一緒にどうかと思って……」

 

「クマミーも〜緒に食べようよ〜」

 

そこまで聞いた俺が無意識に時計を見てみると、時計の針は5時3分くらいを指していた。

うーん、まだ夕食まで丸々1時間位はあるのか……

 

「うーん、せっかくの美少女3人からのお誘いだし、夕食はご一緒させてもらおうかな。とはいえ、夕食の時間まであと1時間くらいはあるけど、その時間はどうやって潰す気だい?」

 

「それなら大丈夫。トランプを持って来たから」

 

修学旅行のバスの中かここは! そんなの途中で飽きるぞ……少し適当な話にでも付き合って貰うか……

 

「成る程、トランプか……けどそれだけで1時間って意外と辛そうだな」

 

「えーそうかなぁ」

 

「そうだなぁ……そうだ! だったら俺の相談に少し乗ってくれないか。それで余った時間をトランプで潰そう」

 

俺はわざとらしく手を叩いて、そう提案した。

すると、谷本さんと夜竹さんが意外と食いついて来た。

 

「熊耳からの相談!! 何々!?」

 

「恋愛関係なら任せて、任せて!?」

 

えっ!? ここまで食いつかれるとは予想外だなぁ……まぁ提案した以上仕方ないか。

 

「期待している所悪いけど、相談って言うのは、来週のイギリスの代表候補生様との試合についてだよ」

 

これを聞いた2人はあからさまに、なーんだ。とがっかりしている。

というか、入学してたった2日で恋に落ちるなんて事そうそう無いと思うけど……

 

「そういえば〜、私たちが部屋に入った時にも悩んでたね〜」

 

「あぁ、最初は布仏さんだけにでも一応相談しようとはしてたんだけどな。丁度谷本さんと夜竹さんがいるんだから一緒に乗って貰おうと思って」

 

「成る程ね〜。私は良いよ〜」

 

布仏さんがそう言うと、谷本さんと夜竹さんも、私達も。っと軽く了承してくれた。

これは少し、お礼かなんかした方が良いな。

 

「ありがとう。お礼と言っちゃなんだけど、今日の夕食の代金俺が肩代わりさせて貰うよ」

 

「えっ!?良いの?」

 

「あぁ、相談に乗ってくれるんだ。それくらいはさせてくれ。それと、俺がお礼としてするんだから、変に気を使って安い物を頼まなくて良いからな」

 

「えっ、でも本当に良いの?」

 

「勿論だよ。寧ろこういう場面では、気を使われる方が割と辛いんだよ」

 

「わ〜い、クマミーの奢りだ〜」

 

そう言って、ジャンプするくらい喜んでいる布仏さんを、俺は指差して、

 

「そうそう、布仏さんくらい遠慮ない方がこっちとしてもありがたいんだ」

 

と笑顔で呟く。

それを聞いた2人はお互いに顔を見つめ合ってから、

 

「「ええっと、それじゃあ遠慮なく!」」

 

と笑顔で返事をする。

 

「それじゃあ、早速相談に乗ってもらおうかな。まずなんだけど、《ラファール・リバイブ》ってどんな…………」

 

その後、俺達は1時間どころか、2時間近く話し合ってしまったため、食堂で注文しても、5〜6分くらいしか食べられる時間が無くなるといった事態になってしまったり、それをなんとかする為に織斑先生に訳を話して、部屋で食べる事と食べ終わったら自分達で食器を洗う事を条件で夕食の時間を伸ばしてもらったり、と色々あったが、それはまた別のお話ってやつだ。

 

 

 

 

 



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イギリス戦での実験

久しぶりの投稿です。
先に言い訳をすると、体調を壊して寝込んでました。
すいません。

それではどうぞ。


布仏さん達と、部屋で話し合いをしたあの日から4日経った試合当日、俺と一夏、そして何故かいる篠ノ之さんの3人は第3アリーナの横にあるカタパルトで、試合が始まるまでの時間を過ごしていた。

ちなみに、俺と一夏は現在、国から支給されたISスーツを着用している。

 

「なぁ、箒」

 

「なんだ一夏?」

 

「俺、この1週間、剣道の稽古しかしてなかったような」

 

「仕方ないだろ。お前のISはまだ届いていないのだから」

 

「届いてないにしても、知識とか基本的な事とか色々あるだろ」

 

その一夏の言葉に篠ノ之さんは思わず目を逸らす。

 

「目を逸らすなよ」

 

そういえば、一夏はこの試合に向けた特訓を篠ノ之さんにしてもらうって言ってたな。

まぁ、そういう俺はこの5日間、ただ自分の技を鍛えてただけだったけど…………さてと、それじゃあそろそろイギリスの代表候補生様の機体でも見てみますか。

俺はさっきから口喧嘩をしている2人を他所にすでにアリーナで待機しているイギリスの代表候補生様の機体を確認する。

 

「あれが、あいつのISか」

 

実際に見てみると、やっぱり量産機とは違う感じだな。

イギリスの代表候補生様の機体にそんな感想を抱いていると、突如スピーカーから織斑先生が声をかけてきた。

 

『熊耳、織斑の機体が届くまでもう少しかかるという連絡が入った。よって、』

 

「俺とイギリスの代表候補生様との試合を先に行う。ですか?」

 

『察しが良いな。では直ぐに準備しろ』

 

「了解です。って訳で一夏先に行ってくるわ」

 

「おう、頑張れよ蒼」

 

「はいよ。それじゃあおいで《ラファール》」

 

そう言って自分のISを展開する。見た目は布仏さん頼んで色を黒に変えて貰った意外は特になんの変哲もない普通の《ラファール・リバイブ》だ。

ちなみに、黒にしたのは、REBORNのチョイス戦みたくスーツを着ているようにしたかったからだ。

まぁ、結果的には、そんな雰囲気は一切ない黒い《ラファール・リバイブ》なんだけどね。

 

そんな事を考えながら俺はカタパルトに乗ると、一夏の方をみながら、

 

「一夏、俺の戦いを見て参考にすると良い。お前の事だからセコいとか考えるかも知れないが、自分より実力が上の相手に本気で勝ちたいならそういう情報から戦略を立てるのは必須事項なんだ。今後の為にもよく覚えおきな」

 

と、軽くアドバイスをする。

すると、それを聞いた一夏が、わかった。と返事をした直後、カタパルトが動き出し、数秒後、俺はカタパルトを飛び出して、アリーナへ突入していた。

俺がアリーナへ入ると、数分前から待っていたイギリスの代表候補生様が

 

「あら、逃げずに来ましたのね。あら? 最初のお相手は織斑一夏だった筈では?」

 

「あー、あいつの機体が届くまで少し時間がかかるらしくてな。それで女性を待たせるは悪いと思って俺が先にやられにきたって訳だ」

 

「そうでしたの。ではまず、貴方へチャンスを差し上げますわ」

 

「結構です」

 

「ふぇ?」

 

俺の反応が、少し予想外だったのか、イギリスの代表候補生様は急に変な声を出して驚いた。

 

「あのな、ここにISを装着して立ってる以上、どんなチャンスを貰っても必ず戦う羽目になるんだ。だったら正面からぶつかって、綺麗に散った方が、まだ格好がつくってもんだろ」

 

「……んん、わかりましたわ。ではお望みどおり、華麗に散らせて差し上げますわ」

 

「へぇへぇ、よろしくお願いしますよ。イギリスの代表候補生様。いや、この言い方は失礼だな。……では改めて、胸をお借りしますよイギリス代表候補生セシリア・オルコット!!」

 

そう言ってすぐにセシリア・オルコットに向かって加速した俺に対して、セシリア・オルコットは落ち着いてライフルの標準を俺に合わせて引き金を引いた。

それに対し、俺は素早く全身を左にずらしてそのレーザーを回避する。

しかし、そんな事代表候補生なら読めて当たり前なのか、俺の回避先に向かってライフルを撃つ。

 

やっぱ、伊達に代表候補生を名乗って無いな。

 

そんな事を考えながらもそのレーザーを俺は下へ逃げる事で回避する。

俺はそのままセシリア・オルコットの足元へ向かって移動するも、今度はいつのまにか俺を囲むように配置された四機のビットによる射撃で再び下へ逃げる。

 

これが、ブルー・ティアーズのビット兵器、ブルー・ティアーズか。

……ややこしいな。

それにしても、このままじゃまずいな。

 

下へ逃げた俺を追うように、四機のビットはレーザーでの射撃を繰り返してくる。

それを俺はハイパーセンサーを頼りに回避するも、数発被弾しシールドエネルギーが削られる。

 

流石にこのままって、訳にはいかないよな。

だったらここは、力技でなんとかしてみるか。

 

俺は、未だに4機のビットが俺を追って来ている事を確認すると、その場で一時停止する。

勿論、その隙をセシリア・オルコットが逃す訳もなく、ビットで射撃を行なってくる。

俺はその攻撃を受けながらも、そのままアリーナの上を目掛けて加速を行った。

すると、セシリア・オルコットは俺を追っているビットからの射撃と自身のライフルによる射撃で攻撃してくる。

その攻撃を避けながら俺は

 

「よし、それで良い、そのまま上まで来い!」

 

そう言いながらも、今度は目の前に貼られているアリーナのシールドを足場にして、水泳のクイックターンの要領で今度は地面に向かって加速を開始する。

するとセシリア・オルコットは、加速する前に仕留めようと、急いでビットで俺にレーザーを放つが、そのレーザーは見事に俺が足場にしたアリーナのシールドに着弾する。

しかし、そんな事は一切気にせず、俺は地面に目掛けて加速を行う。

 

「な、逃がしませんわ!!」

 

そう言い放ったセシリア・オルコットは、再びビットで俺を追いかけながらレーザーを撃ってくる。

俺はそのレーザー達を、ハイパーセンサーを頼りに次々と避けていく。

すると、そのレーザーが地面に当たり、その場から次々砂煙が空中へ舞い上がってくる。

その光景を見て

 

「よし、いける!」

 

と、呟くと、俺はそのまま地面にぶつかるギリギリで、勢いを残したままで胴回し回転蹴りを地面に向かって行う。

すると、ISの力と加速の影響か、地面がえぐれ、そのまま大量の砂煙が空中に舞い上げる。

その後、俺はハイパーセンサーで急いでセシリア・オルコットの影をとらえると、そのままセシリア・オルコットの影に向かって加速を行う。

 

勿論、向こうも俺の影を狙っているだろう。

しかし、砂煙のおかげで、その狙いは……多少とはいえズレる!

 

「この砂煙じゃあ、しっかり狙えないだろ!!」

 

俺の予想通り、セシリア・オルコットから放たれたであろうレーザーは、俺から少しズレた所に飛んでいく。

俺はそのまま加速を行い、砂煙を抜ける。

すると、そこにはこちらを見て不敵な笑みを浮かべているセシリア・オルコットがいた。

 

「面白い作戦でしたわよ。ですが、ブルー・ティアーズは6機ありましてよ」

 

そう言って残り2機のビットからミサイルを撃ち出す。

やらかした!

その事に気づいた俺はすかさず上昇してそのミサイルをなんとか殴り落とす。

そうして俺が再びセシリア・オルコットの正面に移動すると、砂煙が晴れていき、アリーナの視界が元通りになっていった。

 

「ヤッベェな」

 

そう呟く俺を見て、何か思うところがあったのか、セシリア・オルコットはビットを自身の周囲に留めてから、

 

「貴方、どうゆうつもりですの!!」

 

と急に怒り出した。

 

「えっ、なにがですか?」

 

俺がセシリア・オルコットの反応に戸惑うと、セシリア・オルコットは

 

「貴方、先程から遠距離を主力としている私に向かって、接近しての攻撃を狙ってばかり、ましてや、《ラファール・リバイブ》に搭載されている武器を一切お使いにならないなんて、私を馬鹿にしていますの!!」

 

と、丁寧に説明をしてくださった。

ん? あぁそうゆうことか。

 

「あーそれは、誤解ですね。俺、単純にこの機体に搭載されている武器をどれも使えないんですよ。素人が使えもしない武器を使ってもマイナスにはなれどプラスになる事なんて滅多に無いでしょ。だったら、俺が使える武器はこの拳だけだと思って、懐に入ろうと努力してたんですけど……流石は代表候補生様そう易々と素人を自分の弱点に入れてくれませんね」

 

俺のこの言葉に、一瞬呆れ顔になったセシリア・オルコットは素早く表情を戻して

 

「それでは、このまま落としてしまってもよろしくて?」

 

と、俺にライフルとビットの標準を合わせてそう聞く。

さてさて、どうしたものかねぇ。

あの砂煙でセシリア・オルコットの、ビットとライフルの標準をずらした状態で、懐に入って一撃って算段だったんだけど……まさか、ビットが6機あったとは…………うーん、このままじゃ俺、落とされるな。

とはいえ、正直このまま落とされるって言うのは気分が良く無いし、一泡吹かせてやりたいけど……うーん…………あっ! そういえばREBORNで死ぬ気の炎のエネルギーを利用して動くモスカがいたなぁ。

あれって、ISでも出来ないかな?…………まぁ、やるだけやってみますか。

 

「………悪いけど、それは少しあれなんでな」

 

俺はそう言いながら試合開始前からずっと着けているリングに死ぬ気の炎を灯す。

すると、リングに炎を灯してすぐ、炎がISに注入されていく感覚や目の前に表示された異常事態発生の文字と共に、俺のISの全身にオレンジ色のラインが現れ始めた。

 

「変わりといっちゃなんでけど、俺の実験に付き合わせてやるよ」

 

その異常な光景に目の前のセシリア・オルコットを始め、周りで見ていた生徒達がざわつき始める。

 

「あ、貴方、一体何をしましたの!?」

 

「だから言ったろ実験だよ」

 

そう言い放つと、俺はセシリア・オルコット目掛けて突撃した。

すると、先程の速度の3倍いやそれ以上の速度で急接近した俺が、一瞬でセシリア・オルコットの懐まで入ってくると、セシリア・オルコットが驚きの声を上げるが、俺は咄嗟にそのままセシリア・オルコットの腹部に蹴りを入れた。

 

「んぐぅ!?」

 

そう吐き出すように聞こえる声と共にセシリア・オルコットはISごとアリーナのシールドに勢いよくぶつかる。

すると、その衝撃でアリーナに貼られていたシールドに亀裂が入る。

 

ここで、もう一発と俺がもう一度近づこうとすると、それと同時に超お怒りの織斑先生から

 

『熊耳!! オルコット!!今行っている試合は中止だ!! 2人ともそのまま一度カタパルトに戻れ!!!」

 

と、試合終了のホイッスルを頂いた。

俺はそれを聞くとリングから炎を放出するのをやめて、セシリア・オルコットさんの所へゆっくりと向かった。

 

「大丈夫ですか? セシリア・オルコットさん」

 

そう近づいた俺が手を差し出すと、セシリア・オルコットさんは俺から目を晒して

 

「えぇ、大丈夫ですわ。絶対防御が働いてますもの」

 

そう小声呟く。

これは、少しそっとしておいた方が良さそうだな。

 

「……そうですか。では先に戻らせて貰います」

 

俺はそう言い残して、鬼が待っているであろうカタパルトへ向かって飛んで行った。

 

 

 

 




急いで書いたので誤字脱字があるかも知れません。
見つけた場合は報告お願いします。

それでは次も読んで頂けると嬉しいです。


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謝罪と相談

まず初めにしばらく投稿出来なくて申し訳ありませんでした。
しばらく投稿出来なかったら理由としましては、一身上の都合で急に忙しくなったからです。
とはいえ、現在も落ち着いている訳でも無いので、投稿ペースは落ちると思います。
また、久しぶりに書いた物なので、違和感があるかもしれません。
よろしければそう言ったところはご指摘して頂けると幸いです。
それではどうぞ


「さて、熊耳。私が言いたい事はわかっているか?」

 

カタパルトへ帰ってきた俺を待っていたのは訳がわからないといった顔の山田先生と篠ノ之さん。

そして口パクで、やったな。っと、俺が勝ったと勘違いしている一夏。

そして眉間に青筋が浮かび上がりそうなくらいの睨みを向けた織斑先生だった。

俺はそのままISを待機状態であるネックレスに戻すと、

 

「ええっと……すいませんでした」

 

とりあえずの土下座を行った。

それを見て、一夏は?を浮かべ、織斑先生は呆れ混じりの溜息を吐いて

 

「土下座は良い。それよりなにがあったのか説明しろ」

 

俺に状況を求めて来た。

それを聞いた俺はゆっくり立ち上がると、織斑先生に適当な言い訳を述べ始めた。

 

「ええっと、ですね…………」

 

困ったな、今一夏達の前で死ぬ気の炎について説明する訳にもいかないし、かと言って織斑先生に中途半端な言い訳が通用する訳も無いし……マジでどうしよう。

 

「あの、ISが暴走して……」

 

「ほーう、暴走か、それはおかしな話だな熊耳。確かに貴様のISは本来であれば有り得ない程、異常な状態になっていた。しかし、貴様はその状態になる前にオルコットに実験に付き合ってくれと、言っていたように聞こえたが」

 

ですよねー

まったく、誰だよそんなセリフを口にした奴!!

……さて、それはそうと、本当にどうしたものか…………うーん、やっぱり此処で嘘は通じそうにないし、かと言って死ぬ気の炎の事は此処では言えない。

だったら此処は、場所を変えてもらうよう提案しよう。

 

「わかりました。それでは正直にお話します。しかし、それを此処でお話する訳にはいかない事情があります。よって、ふさわしい場所を用意してはいただけませんか?」

 

「その事情というのは、どういったものだ?」

 

「……これ以上、その事をこの場で説明すると、俺の全世界で自由が完全に失われる可能性があるんです」

 

あのISの感じからするとおそらくそれくらいの影響力はあるだろう……多分

 

「……わかった。それでは、後ほど別に席を設けよう。それで構わんな」

 

「はい、あっ、ですが話を聞く人は、織斑先生と山田先生以外の方を連れて来ても構いませんが、なるべく口の固い人にして下さいよ」

 

「そんな事、お前に言わらなくてもわかっている」

 

織斑先生は俺にそう言うと、今度は一夏に

 

「織斑、お前の試合は3分後に開始する。それまでに準備をしておけ」

 

と言い残して出て行き、それに気づいた山田先生も慌てて織斑先生の後を追いかけて行った。

さてと、どうするか……死ぬ気の炎についていっそ世界中に話してしまうか?

嫌々、そんな事になったら死ぬ気の炎を灯すことのできるリングを求めて各国が取り合いを始める可能性が出てくる。

ましてや、ボンゴレリングの事が公になればそのリングを唯一使える俺が世界から狙われる可能性も出てくるし……

とはいえ、織斑先生達に話しても、そこから情報が漏れないと言い切れる訳でもないし……いっその事今回の事は運良く俺がISの暴走に成功したっていう事にするのも……嫌、これはないな。

でもなー、先生達に話した結果、事態が余計に悪化する可能性も……

そんなこんなで俺が頭を抱えて悩んでいると、

 

「大丈夫だって、蒼」

 

いつの間にか専用機『白式』を纏っている一夏が、満面の笑みで言葉を続ける。

 

「俺、何があったのかよくわからねぇけど、千冬姉なら、お前に酷い事はしないって。だから、今はお前のやりたいようにやれば良いんじゃねぇか」

 

そう言ってくれるのは嬉しいけど、その一言で状況が変わるわけもないんだよなぁ。

とは言え、こいつなりに慰めくれてるんだろうし、お礼は言っておくか。

 

「一夏…………取り敢えず、慰めてくれてありがとうとは言っておくよ」

 

「おう、それじゃあ俺時間だから行ってくるな」

 

「頑張ってこい。それと、篠ノ之さんにもなんか言ってやれ」

 

俺がそう提案すると、一夏は、そうだな。と呟いてから篠ノ之に向かって、

 

「箒、行ってくる!」

 

と力強い宣言をすると、篠ノ之さんも一夏に向かって

 

「勝ってこい!」

 

と力強く応援の言葉をかける。

それを聞いた一夏は軽く頷くと、そのままカタパルトからアリーナへ飛び出して行った。

さてと、本当にこれからどうしよう…………

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

1時間後

 

まず最初に、一夏達の試合の結果について触れておこう。

試合の結果は、一夏の負け、しかも自滅というなんともしまらない結果だ。

えっ? 試合の様子を教えてくれ?

それは無理ですわ。

なんでって、だって俺もその試合見てないもん。

正確に言えば、試合開始してすぐに更衣室で制服に着替えてカタパルトに戻ってみたら試合終わってたんですよ。

えっ? だったらなんで一夏の自滅を知ってるのかって?

それは、俺が戻ってきたのとほぼ同時にカタパルトに戻って来た一夏と織斑先生、山田先生に篠ノ之さん達の会話を聞いたからです。

 

 

そして、現在。

俺はイギリス代表候補生、セシリア・オルコットに会う為に再び更衣室の前に来ている。

何故こうなったのか、それは俺が今後の事を考えていく上で代表候補生の意見を聞いた方が良いんじゃない? という結論に至ったからである。

ちなみにその肝心のセシリア・オルコットは現在シャワー室でシャワーを浴びているらしく、着替え終わったら更衣室の中に入れてもらえるらしいのでそれまで待機しているのだ。

 

取り敢えず、セシリア・オルコットは俺の『実験』って言葉を聞いてるんだ。

だったら試合中に俺が任意でISをあの状態にしたって事はバレてると考えてでもいいだろう。

だったら、その状態に任意でなる事ができると知った場合の各国の動きと、俺の扱いくらいなら聞き出せるだろう。

 

そう話す内容ををまとめていると、更衣室の扉が開き、そこから髪に多少の水滴をつけた制服姿のセシリア・オルコットが姿を現した。

 

「お待たせしましたわ。中へどうぞ」

 

「それじゃあ、失礼します」

 

そう言って俺がセシリア・オルコットの後を追って更衣室に入ると、セシリア・オルコットが急に振り返り頭を下げだした。

その行動に驚いた俺は、思わず

 

「えっ、何々!?」

 

と軽く取り乱す。

するとセシリア・オルコットは頭を下げたままで

 

「先日、貴方に失礼な事を言ってしまった事への謝罪です」

 

と話を続けた。

 

「貴方は、先日私の至らないところを指摘してくださいましたが、あの時の私は、家庭の事情から、男性に対して失礼な感情を抱いていました。よって、男性である貴方に自分の至らない所を指摘された事に腹を立てあのような態度をしてしまいました。しかし、今日の試合でそうでない男性もいると言う事を知り、貴方達に謝罪をしなければと思っていたのです。本当に申し訳ありません」

 

「ええっと……取り敢えず頭を上げてください。俺もそこまで気にしてないので」

 

俺がそういうと、セシリア・オルコットは、ありがとうございます。とお礼を言って頭を上げ、続けて、

 

「それで、私に用というのは、一体なんですの?」

 

と今回の話に話題を切り替えてくれた。

 

「あー、実はセシリア・オルコットさんに聴きたいことが」

 

「セシリアで構いませんわ」

 

「……了解です。それじゃあ、俺の事も蒼って呼んでください」

 

「わかりましたわ、蒼さん。それで聴きたい事というのは一体なんですの?」

 

「はい、例えば、俺とセシリアの試合の時に俺のISが変化というか、パワーアップというか、そうゆう現象が起こったじゃないですか」

 

俺がここまで話すと、セシリアが首を傾げて

 

「ええ、でもあれは貴方が何かしたのでは? 私に実験につきあってくれと言っていましたし」

 

と聞いて来た。

俺はその内容に賛同しながらも、そのままその事に関する疑問をぶつける。

 

「そうなんです。そこで俺が聴きたいのはあの状態に任意でなる事ができるって事を発表した時の各国の反応と俺の扱いについてセシリアの予想でいいので、教えてもらえませんか?」

 

すると、セシリアは、顎に人差し指を当てて、少し思考を巡らせると、顎から指を外して口を開きだした。

 

「……そうですわね…………。あの状態になった時の貴方のISの正確な状態にもよると思いますが、私が受けた印象では、高確率で貴方からあの状態のなり方について聞き出そうとすると思いますわ。その時の貴方の扱いについてですが……おそらく、各国の奪い合いになると思いますわね」

 

「……でしたら、その情報を俺が全世界に教えた場合はどうなると思いますか?」

 

「……可能性がありすぎて、予想がつきませんわ。ですが、少なくとも、その場合であれば各国での奪い合いの可能性は大きく減ると思いますわ」

 

成る程、大方予想通りだな。

となると、時間がいるな……しかし学園側が無償で時間をくれる保証は無いからなぁ……となると、やっぱり()()を差し出すしかないか……

 

「そうですか…………ありがとうセシリア。おかげで、今後の事についての考えが少しだけだけどまとまってきたよ」

 

「お役に立てて良かったですわ」

 

「それじゃあ俺はこのまま部屋に戻るけど、セシリアはどうする?」

 

「私は少しここで休んでから部屋に戻るつもりなので」

 

「そう、それじゃあね。あっ、その前にもう一つだけ聞いて良い?」

 

「なんですの?」

 

「一夏の事どう思う?」

 

俺がそう聞くと、セシリアは急に頬を赤らめて

 

「い、一夏さんですか。そ、その強くて勇ましくて、カッコ良くて………」

 

と答え出したので、俺はそれを聞いて直ぐに

 

「ああ、そうゆう意味じゃなくて、ISの操作技術についてのつもりで聞いてんだけど……」

 

と勘違いを正すと、セシリアは余計に顔を赤らめて

 

「い、今の話は、その、あの…………」

 

と言い訳を言い出したので、俺は苦笑しながら

 

「大丈夫、一夏には言わないから。それで一夏のISの操作技術についてなんだけど」

 

と無理矢理話題を切り替えた。

 

「そ、そうですわね。はっきり言えばまだまだ未熟ですが、弱くは無いと思いますわ」

 

「それじゃあ、俺と比べたらどっちが強いと思う? 勿論、例の状態はないって条件でだけど……」

 

「…………おそらくですが、一夏さんの方が有利だと思いますわ。蒼さんも一夏さんも近接戦闘タイプのようですが、そうなると武装を扱える一夏さんの方が有利になりますから」

 

つまり、はっきりとは言えないけど、戦闘スタイルを比べたら一夏の方が有利に働くって感じか。

 

「ありがとう。それじゃあお先に」

 

そう言い残して、俺は更衣室を後にした。

 

 

 

 



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交渉という名の説明会

続けての投稿になります。
前の話と同様にこちらも変なところなどが有れば報告して頂けると幸いです。


俺がセシリアと話をした翌日。

俺は朝の5時という普通なら大体の人が寝ている時間に、理事長室という部屋に来ていた。

ちなみに何故かというと、昨日の夜中に織斑先生が部屋を訪ねて来て、この時間にこの部屋に来いと言い残していったからだ。

おそらく織斑先生が、外部に情報が漏れない様に工夫してくれた結果だと思われる。

そして、今俺の目の前には、ビシッと立った織斑先生と首をコクリコクリしながら立っている山田先生、そして俺の正面で腰を下ろしている、何処かあの世であったご老人を思わせる雰囲気のおじ様、轡木理事長と俺の斜め右で腰を下ろしている、水色の髪という前の人生でもなかなか見かけない髪色の女性、更織楯無先輩の4人がいる。

しかし山田先生、眠いなら無理して来なくても良かったのに…………

すると、そんな事を思っていた俺に織斑先生が声をかけて来た。

 

「熊耳、お前の話を聴くのはこの4人で全員だ」

 

「よろしくね熊耳君」

 

織斑先生に続いて更織先輩が手を振りながら俺に声をかける。

俺はそれに対して、よろしくお願いします。と呟いて軽く頭を下げる。

そして頭を上げると同時に死ぬ気の炎について話を始めた。

 

「まず、今回皆さんに集まって頂いたのは、先のイギリス代表候補生セシリア・オルコットさんとの試合中に起こった現象についてです。まず、先に申し上げておきますが、あの現象は私の意思で起こした現象です」

 

俺は、ここまで一気に言い切ると、一旦周りの様子を確認するが、ここまでで特に驚いた表情をした人はおらず、山田先生もうつらうつらしたままだった。

その様子に俺は思わず軽く口から息を吐くと、そのまま話を続けた。

 

「ですがあの時、俺のISがどういう状態だったのかについて俺は何も知りません。よって織斑先生、山田先生には先にあの時俺のISがどういう状態だったについて教えて頂きたいのですが、よろしいですか?」

 

そう俺が2人に問いかけると、織斑先生はうつらうつらしている山田先生の方を軽く見て、から

 

「私が話そう」

 

と説明を開始した。

おそらく山田先生に気を使ったのだろう。

 

「あの時、こちらからの観測によると、熊耳のISラファール・リバイブはシールドエネルギーを全快以上に回復し、IS自体の出力を5倍近くに上昇させていた」

 

うわぁ、予想の数値を遥かに超えてるわ。

すると、ここで更織先輩が会話に参加して来た。

 

「一つ質問してもよろしいですか?」

 

「なんだ更織」

 

「いくらISとはいえ、急にそこまでの出力変化が起きれば、機体自体が大破してもおかしくないのではありませんか? しかし、昨日私が見た映像と整備の様子ではその様な節は見られなかったのですが……」

 

ここで俺が更織先輩に聞き返す。

 

「その状態で機体を動かした時間が短かったからなのでは?」

 

「だとしても、出力が5倍近くに跳ね上がっているなら少ない時間でも機体に多少の異常が生じると思うけど?」

 

言われてみたらそうだな…………ん、って事は。

 

「あの状態の時限定で、機体自体が強化されていた?」

 

「おそらくね。そこに関してはいかがですか織斑先生」

 

「私も貴様らと同じ意見だ。さて熊耳、以上が私達が観測しそこから予想した貴様のISの状態だ。そろそろあの現象について聴かせて貰うぞ」

 

「……了解です。まず、結論から申し上げますと、あの状態はとある高エネルギー物質をISに注入した事により起こった現象です」

 

ここまで話すと、まず織斑先生が質問してきた。

 

「その高エネルギー物質とは一体なんだ?」

 

この質問に俺は少し間を置いてから

 

「……『死ぬ気の炎』俺はそう呼んでいます」

 

ゆっくり答えた。

すると織斑先生は、さらに質問を重ねて来た。

 

「死ぬ気の炎?聞いた事がないのだが」

 

俺はその質問にリングを着けた右手を前に伸ばして、

 

「見てもらった方が早いでしょう」

 

死ぬ気の炎を灯して答えた。

すると、突如リングから現れたオレンジ色炎に織斑先生と更織先輩、轡木理事長そして、炎を見て眠気が吹き飛んだ山田先生までもがその炎に注目した。

俺は、全員の視線が炎に集まっているのを確認すると、そのまま話を続けた。

 

「これが死ぬ気の炎です。まず第一にこれは人間の生体エネルギーを凝縮した様なものなので、これを出し続けるとかなり疲労してしまいます」

 

そう言って俺リングの炎を消す。

すると、全員の視線が炎から俺に移った。

 

「次に教えなければならない事は、死ぬ気の炎を灯す方法ですが、その方法は現在このリングを使う方法しかわかりません」

 

事実、この世界で俺が知っている方法はリングに灯す事だけだ。

一応原作なら、死ぬ気弾や死ぬ気丸なんかがあるけど、この世界にあるなんて聞いてないしな。

 

「それじゃあ熊耳君、ひとつ聞いて良いかな?」

 

「はい、なんでしょうか轡木理事長」

 

「君が身につけているそのリング以外にも、死ぬ気の炎を灯す事ができるリングは存在しているかい?」

 

「はい、存在しています。そして、これがそのリングです」

 

そう言って俺は制服のポケットから大空以外のCランクリングを取り出し、目の前の机の上に広げた。

 

「ちなみにですが、これらのリングはここに広げた物以外にも、同じ物を複数所持しておりますので、宜しければこちらのリングは学園に献上しようと考えています。勿論、それ相応の対価は頂くつもりですが……」

 

「ほう、それはそれは、それではお言葉に甘えて、そちらの品はありがたく受け取らせて頂きましょう」

 

そう言って轡木理事長は織斑先生に回収する様に指示を出し、織斑先生はその指示に従ってリングを回収した。

 

「それで、貴方は我々に何をお望みなのですか?」

 

「私が学園側に要求する事は2つです。1つは学園に通っている3年間、私の安全を保証していただく事。2つ目は死ぬ気の炎に関する情報を夏休みまで外部に漏らさない様にして貰う事です」

 

この発言に更織先輩が反応した。

 

「夏休みまで? どうして夏休みまでなの熊耳君?」

 

「ええっと……そこに関して、今はお話出来ません」

 

だってなんも考えて無いもん。

けど、いくらIS学園でも3年間死ぬ気の炎について隠すのは不可能に近いだろう。

ましてや、その副作用で俺が3年間死ぬ気の炎を自由に使えないっていうのは原作を見た限り、かなりキツい。

となると、最低限の期限を設けて置いてその間に打開策を考えるっていうのが一番現実的な気がする。

 

「ですが、代わりとして死ぬ気の炎の注意事項を1つ説明しましょう。いかがですか、夏休みまでの理由を聞くか、死ぬ気の炎についての注意事項を聞くか、皆さんで選択してください」

 

この俺の持ち出した2択に真っ先に轡木理事長が反応した。

 

「わかりました。それでは注意事項についてお聞きしましょう」

 

その言葉に俺は周りの様子を伺うと、特に異論は無さそうな反応だったので、俺はそのまま注意事項を説明し始めた。

 

「では、死ぬ気の炎の注意事項、それは炎には種類が存在することです」

 

「種類、ですか?」

 

「そうです山田先生。何故その事が注意事項になるのか、それはその種類について知らなければ、死ぬ気の炎を一生灯せない可能性があるからです」

 

ここまで話すと、俺は織斑先生の方を見て、

 

「先程、織斑先生が回収したリングを確認してみてください」

 

と促す。

すると、織斑先生は全員が見やすい様に中央の机にリングを広げる。

俺はそこまで確認すると、説明を再開した。

 

「このリングを見ていただけると、お分かりになると思いますが、リングについている石が全て違う事が分かりますよね。これは、それぞれの石が灯す事ができる炎の種類を表しています」

 

「種類って、それじゃあ炎は6種類、いえ、7種類あるって事かしら?」

 

「……?!! よく解りましたね更織先輩。ここに広げられたリングは6つだったのに……」

 

「あら、正解だったのね。実はね、このリングの中に貴方の灯した炎と同じ色の石が無かったからカマをかけただけなのよ」

 

「あーそうゆう事ですか……」

 

しまった、油断してた。

少し警戒していかないと、余計な事口走りそうだな。

 

「更織先輩のおっしゃった様に、死ぬ気の炎は7種類あって、その見分け方は灯る炎の色で見分けます」

 

そう言って俺はそれぞれのリングを順番に指さしながら説明していった。

 

「まずこの赤い石のリングが灯す事が出来る赤い炎、これを『嵐の炎』、次の青い石のリングが灯す事が出来る青い炎を『雨の炎』」

 

ここまで説明すると、織斑先生が

 

「石の色と炎の色が同じ事は理解した。しかし、今はそんなことより何故その種類に注意しなければならないのか先に説明してもらえないか?」

 

と話題を切り替えてた。

それを聞いた俺は、わかりました。と呟いてからその事についての説明を開始した。

 

「まず、何故種類が大切なのかですが、死ぬ気の炎は人間の生体エネルギーを凝縮した物と説明しましたよね。それはつまり、1人1人が灯す事が出来る炎の種類が決まっている事を示しているんです」

 

「熊耳、悪いがもう少し詳しく説明してくれ」

 

「了解です。まず大前提として死ぬ気の炎は指紋や声紋の様に生まれつき決まっており、全く同じ物を灯せる人は存在しません。ですが、それらを大雑把に種類分けする事はできます。それが先にお話した7種類の炎です」

 

「一つ聞いても良いかしら、その同じ人はいないっていうのは具体的に何が違うのかしら?」

 

「それは波動ですね」

 

「波動?」

 

「はい、私達は皆産まれた時から決まったエネルギーの波動が身体を巡っているんです。その波動の強さや流れ方など1人1人違うんです。ちなみに、これ以上の詳しい事は私もよく知らないです。すみません」

 

するとここまでの会話を聞いていた織斑先生が

 

「つまり、DNAなどに近い性質といったところだな熊耳」

 

とわかりやすくまとめてくださった。

 

「そうです。そして、ここからが重要なのですが、その波動ひ産まれつき決まっている物なので変化する事がありません。よって、自身の波動に一致する種類のリングをつけなければ、そもそも炎を灯す事すら出来ないのです」

 

「成る程、確かにそれは注意すべき点だな」

 

その通りだ。

極端な話、自身の属性とリングの属性が違っているが為に炎を灯す事が出来ないなんて事が起こるって事だからな。

 

「さて、俺の話はここまでです。それで轡木理事長、俺の要求に対する返事をそろそろ聞かせて頂けますか?」

 

「おっと忘れかけていました。申し訳ありません。それで熊耳君の要求ですが、IS学園でお受けしましょう。それで、それに伴う具体的な案ですが、まず一つ目要求に関しては更織君を君の護衛に付けましょう。これで君の身の安全は大幅に上昇する。っという事でお願いしますよ更織君」

 

「了解しました。っという訳でよろしくね熊耳君」

 

そう言ってウィンクをしてくる更織先輩に、こちらこそ。と軽く礼を行うと、俺は再び轡木理事長のほうを向く。

 

「次に二つ目の要求ですが、夏休みまで学園側は、あの現象を原因不明の暴走として扱い、君のISの使用を担任又は副担任の許可がない限り使用禁止として扱わせて頂きましょう。勿論、公の場での使用も基本的には禁止させて貰いますよ」

 

「わかりました」

 

「それでは本日の話し合いはこれにて終了とさせてしましょうか。更織君、君は熊耳君と一緒にこのまま朝食を済ましてきなさい。織斑先生と山田先生には熊耳君のISの使用許可についてもう少し話し合えると助かるのですが……」

 

「……我々2人とも問題ありません」

 

「はい、それでは解散とします」

 

その轡木理事長の声と共に俺と更織先輩は学食へ向かい、織斑先生と山田先生は轡木理事長と理事長室で話合いを開始した。

 

 

 

 

 




死ぬ気の炎についての説明ですが、個人的な解釈になりますのでそこら辺は目をつぶって頂けると幸いです。


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