Fate/Grand Order 案①『間桐桜に転生したら』 (ら・ま・ミュウ)
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Fate/Grand Order 案①『間桐桜に転生したら』

私の姉が2020の春に公開されたFate stay night Heaven's Feel。それをいち早くこの目に納めようと寝坊する私を捨て置いて最も早く上映される映画館に駆け込み謎のガス爆発に巻き込まれ死んだ。本当に何をやっているんだ。何で私と一緒に行かなかった…馬鹿っ馬鹿!

………と、Fate/Grand Order‐神聖円卓領域キャメロット‐劇場版公開日当日に訪れた映画館で物理的に爆死した自分が言ってみる。

 

ハハハ、どうした笑えよ?

 

どうせ居るんだろう?

この真っ黒い空間に閉じ込めた神様的な奴がよお!

 

現在私の手にはFGOのガチャ画面の開かれたスマホがある。何の当て付けか知らないが、私がクリア出来ずに逃げ出した第七特異点のピックアップガチャが開催されており、聖昌石の数はzeroの癖に呼符は百枚と椀飯振舞だ。

 

「………分かってる。私は姉と違って勘がいいんだ。引けってことでしょう?これを」

 

ガチャ画面から変更出来ないのは散々試したので、滅茶苦茶ガチャってみた。

 

桜の特製弁当×1

 

いつかの夏×1

 

ライオンのぬいぐるみ×1

 

麻婆豆腐×67

 

 

残り30枚

 

……何なんだろう。嫌がらせしたいんだろうか?この神様は。

 

 

 

虚数魔術×5

 

黒の聖杯×2

 

魂喰い×2

 

エウリュアレ×5

 

魔導書×4

 

技巧×2

 

頑強×3

 

繁栄×1

 

 

 

 

………と思ったら本家っぽくガチャ率が変動した。

何がしたいんだ?

 

残り6枚

 

虹演出!からのペルセウス…だと!?(ライダー)

 

残り5枚

 

『百貌のハサン』(アサシン)

 

残り4枚

 

永久機関のあの人だ………いつの間に実装した!?(バーサーカー)

 

残り3枚

 

アヴィケブロン(キャスター)

 

残り2枚

 

虹演出!からのエルキドゥ(ランサー)

 

残り1枚

 

虹演出!からの騎士王…私持ってないのに(セイバー)

 

 

「うわー凄い幸運...って!絶対確率操作したでしょ。課金勢に謝れ!これが神のやり方か!」

 

何だかギルガメッシュが神々を皆殺しにした理由が分かった気がする。こんな奴らに人類任せちゃダメだわ。ギルガメッシュの神殺しは英断だったよ。

 

『転生体は間桐桜に決定しました』

 

その瞬間、体が黄金色に包まれた

 

『転生特典は七騎のサーヴァント・令呪の自動回復・2004年の断片・聖杯の欠片・間桐桜が修めた魔術の自動習得・泥耐性EX』

 

「はぁっ!?間桐桜に聖杯の欠片って!」

 

『第七特異点 絶対魔獣戦線バビロニア 転移を開始します』

 

「よりにもよって転生先が型月それもFGOぉぉぉ!!!!」

 

 

あのプリヤでさえ救済されることのなかった悲劇のヒロイン間桐桜(聖杯の欠片持ち)

 

それに加え転生先はトップサーヴァントがサクサク消滅するFGO

 

どう見ても地雷としか思えない特典を抱えた、転生者の絶望的過ぎる戦いの火蓋が切って落とされた。




???『儂も居るぞ』


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『ホッまだある(意味深)』『聞こえるか?儂は今、お前の体内から話しかけておる』

《王の間》

 

「何?」

 

玉座に腰かけるギルガメッシュ王は神妙な面持ちで粘土版を見つめ報告にきた兵士に問いかける。

 

「魔獣の数が減っているだと?」

 

「ハッ!計三百を越える魔獣は日を逐うごとに都市部を離れ北部を目指し今では百を切る勢いです!」

 

「何故過去に攻め落とした北部へ戻るような真似を?」

 

「さぁな、(おれ)の千里眼でそのような未来はなかった。

可能性としては三女神同盟が何らかの形で決裂し、魔獣の女神が守りを固めたか…だが、シドゥリよ期待はするな。あのイシュタルめがこの国を守る為に…などと愛国心溢れる奴でないことは百も承知であろう。大方、光り物を野鳥に盗まれ、魔獣の女神が敵対したのでは?と、うっかり勘違いして自爆した所だろうよ!」

 

ギルガメッシュは間抜け過ぎるその姿を想像して笑い、

僅かに眉を下げるシドゥリ。直ぐに表情は戻ったが信仰している女神をいくら敵対関係にあるとはいえ、ここまで小馬鹿にすることはないだろうと内心はプンプンお怒りであった。

※ギルガメッシュの昼休憩が消えた瞬間である。

 

 

 

 

 

 

《間桐桜side》

 

あれから何日ぐらい経ちました?

転移して口調と思考が桜よりになっていることに恐怖を抱く間もなくアッチを見てもコッチを見ても魔獣、魔獣。

空腹とかテリトリーに入ったとか全然警戒するような感じじゃなくて、憎悪剥き出しに一斉に此方へ魔獣達が迫ってきた時は気絶しかけました。

特典として一緒に転移してきたアーサー王さん、エウリュアレちゃん、エルキドゥさん、ペルセウス君、アヴィケブロンさん、百貌のハサンさん、マックスウェルさんが居なければ確実に死んでいたでしょう。

でも、日が沈んで上がってまた沈んで………マックスウェルさんが宝具を発動中だから魔力切れにはならないですけど戦い詰めるのはないんじゃないかな?

魔獣の群れに囲まれ続けてちょっとおかしくなりそうだよ。

何か、『殺せ、殺せ!人間は敵だぁ!』って声が聞こえるし、実際おかしくなってるのかもしれないよ?

いくら死亡率の高い型月だからって精神崩壊で死亡とか洒落にならな………ダメだ全然あり得る。

 

 

『わーい!お人形さんだー!』

 

『そっちは魔獣の群れだマスター!!!』

 

『あはははー!』

 

『ガブッ』

 

 

間桐桜 精神に異常をきたし魔獣に喰われ死亡 ‐BAD END‐

 

 

 

「うーん、ウーン……」

 

 

『エクスカリバーァァァ!!!!』

 

『マスター行くよー』

 

悪夢に頭を抱える間桐桜はそれから2日後にエルキドゥに抱えられ魔獣の群れから脱した。

 


 

原作魔獣 13%減

 



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『眠ーむれ、眠ーむれ、』『卵を植え付け…増ーえる』

「――これは、廃棄された街ですか。」

 

「いや、破棄と言うより住む人間が居なくなったんだ。皆殺しだよ」

 

「スンスン………?」

 

「何はともあれ僕らにとっては好都合だ。早く工房造りに取りかかりたいな」

 

「………………」「おーいマスター大丈夫?」

 

「「我々は周囲を見張ろう」」

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………ハッ!?

 

目を覚ますと魔獣の唸り声が聞こえない。

あの変な黒い部屋でもない。傍らには快楽殺人鬼…林檎の皮を剥くペルセウスとバーサーカー状態で寡黙なヤンキーみたいな装いになったマックスウェルさんが静かに椅子に腰かけていました。

 

「――あの、」

 

「おや、目覚めたかい。丁度林檎を切っていた所だ。お一つどうぞ」

 

「ありがとうございます…あの私が気絶した後、魔獣の群れはどうなったんでしょうか?」

 

「セイバーの宝具で木っ端微塵、ランサーに急所を付かれて殆どが死滅したさ」

 

―――ハハハハハと、こう言う事を真顔でいうペルセウスは少し怖いと思う。

てか、プロトのキャラって少し尖りすぎだと思うの。

そもそも、何で桜なのにメデューサじゃないの?

第七特異点はゴルゴーンとアナがいるからダメなの?

だからってペルセウスはあんまりじゃありませんか?

 

「マスター?」

 

「っ!何でもないのライダー」

 

「なら、外に出てみるといい………きっと驚くよ」

 

爽やかすぎて逆に裏があるように感じてしまうペルセウスに促され桜は表に出る。

 

 

 

 

「ふははは、素晴らしい、素晴らしいよ!神代の土はこれ程までにゴーレム造りに最適とは!」

 

ガジャガジャ ガジャガジャ ガジャガジャ

 

ギギギ ギギギ ギギギガッシャン ギギギギギギギギギ

 

右を見ても左を見てもゴーレム、ゴーレム、ゴーレム。あの時の魔獣より多くないですか。

何か、Apocryphaで裏切った時みたいにテンション高めなアヴィケブロンさんが狂ったようにゴーレム大量生産してるんですけど…あれ、アヴィケブロンの皮を被ったエジソンじゃありません?

と言うかこんなゴーレムの大軍を造る魔力なんて何処から供給してるんですか。

 

 

トントン

「ん?」

 

私の魔力は全く減ってないし一体何処から?魔獣に魂喰いでも仕掛けたのだろうか?

その疑問に答えるように肩を優しく叩かれ、後ろを振り向けば羅針盤みたいなのを纏うマックスウェルさんが親指を立ててグッチョブサインを………………はっ!?

 

「もしかして、一睡もせずに魔力供給を!?」

 

コクりと頷く。

この時、桜はマックスウェルを一生呼び捨てに出来ないと思ったのだった。



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『聖杯の魔力が勝手に漏れ出したんです!冤罪なんです!』『ハハハ!面白い、聖杯の器にこんな機能が有ったとは!』

「士郎…ご飯………」

 

「残念ながら我々に調理サーヴァントはいない。今日もご飯は魔力だけだ」

 

「ぅぅ、ぅうぁぁぁああ!!!!」

 

「ちょっと高台で泣き叫ばないでよ!魔獣が寄ってくるでしょ!?」

 

「人間の食へのこだわりはよく分かんないなぁ…」

 

「林檎いるかい?」

 

「「食事…パン…葡萄酒………ウッ頭が!」」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも皆さんこんにちは、桜です。

アヴィケブロンのゴーレム制作が飛行型にまで進化し始めたこの頃、そう言えばカルデアの主人公達はもう来ているのだろうか?

牛若オルタで心が折れてしまった私ですが、活かせるもの(原作知識)は活かしていこうとアサシンに調べてもらいました。すると、はい巴御前が居たんです。

 

先せぃ………ジャガーに敗北し、霊核を破損しながらも魔獣と懸命に戦い続ける、見るからに痛々しい、ね………

 

「マスター、助かるのでしょうか?」

 

しかも、アサシンったら、拾って来ちゃったの………可愛い人格ちゃん呼び出して涙目で訴えるとか卑怯よ。

別に悪いとは言わないけど、うちに霊核を修復できるサーヴァントなんて居ないし、必然的に私が視る羽目になるでしょ

 

「出来る限りのことはするつもりです」

 

虚数属性ってエーテル体に干渉するって云われてたけど、私がやったら泥がね、混ざる気がするの。こう、治療魔術の魔力に紛れてアンリマユが「うひゃっ新しい体だぜ!」みたいな感じて霊核を汚染する光景が、容易に想像出来る。

精一杯頑張ってみるから巴御前。オルタ化だけはしないでね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「忠義とか~クソ食らえ!私はゲームに生きるんだ~!」

 

オルタ(反転)化しちゃたね。

何か想像とは大分違うけど、全体的に装いが黒っぽくなって、あの生真面目さが嘘のような廃人っぷり。(角は生えっぱなしみたい)

ギルガメッシュのパスも切れて成り行きで私が繋げちゃったけど、「ゲームコントローラーより重たい物は持てません」キリッ

…戦闘には毛ほども役に立ちそうにない。

その癖、オルタ化で向上したステータスは全てA相当なんだから宝の持ち腐れだ。

 

「マスター、森の前に二基のサーヴァントが!」

 

そんな「親方、空から女の子が!」みたいなノリで言われても………

 

 

 

 

「ハァ………祈るだけで生きていきたい」

 

「やっぱり前髪は切ったほうが視やすいな」

 

 

何か、逆に色白になった天草四郎時貞

オルタ化した途端にクナイでバッサリやった風魔小太郎

 

………天草四郎推しの皆さん、目隠れ萌えのバーソロミュー!

ごめんなさい!頑張ったけどオルタ化しちゃった!



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『桜死す!』『うおっ危な!』

「最近は魔獣も減って平和ですね」

 

「絶滅したのかな?」

 

「このゴーレム乗り心地、悪いわね」

 

「恵まれているんだ」

 

「…何とかして神を素材と出来ないものか、三体もいるんだし一体ぐらい消えても気づかないのでは?」

 

「「魔獣の女神は完全に沈黙し、エルキドゥと同個体と思われるゴーレムの単独行動が活発化し出した………此処に気づくのも時間の問題か?」」

 

「………!」グッチョブ!

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様らが僕の母さんの邪魔を!」

 

―――え、キングゥが居る。

 

どうも皆さんこんにちは間桐桜です。

朝、大きな揺れと共に目覚めれば鎖を振り回すキングゥと宝具解放をバンバン行うサーヴァント達のガチバトルが繰り広げられていました。………状況が全く飲み込めません。

 

何か、キングゥボロボロだしアヴィケブロンさんのゴーレム軍団は動きが三次元過ぎて気持ち悪いし、セイバーは黒セイバー並みにエクスカリバーぶっぱするし、「この程度でウルクを滅ぼせると本気で思っていたのかい?だとしたら心外だな………」エルキドゥが怖い。ス間ブラでもこんなコンボ決まらんだろって打撃連打に鎖を鞭のようにしならせバチンッと…容赦ねぇ。

 

「僕が旧人類のサーヴァントごときに!」

 

――そして、

流石のキングゥも、このままでは危ないと悟ったのか大量の魔獣を呼び出し上空へ飛び上がります。

 

逃げるのかな?

 

そう思ったのも束の間。

 

「中々やるようだね。でも、サーヴァントがマスターから離れるとこうなるんだよ!!!!!」

 

私に向かって鎖が伸びる。

近くにいたアヴィケブロンさんのゴーレムが咄嗟に私を庇うがむしろ視界がふさがっただけかもしれない。

 

「あっ」

 

少しの衝撃と左胸辺りがじんわりと温かくなっていく感覚。

痛みを感じるより先に急速な眠気に襲われた。

 

「こんな………所で」

 

膝の力が抜けてゆっくりと視線が下がる。多分、走馬灯という奴だろう。

最後に、ポッカリと空いた心臓の穴を叫び声を上げながら直視するサーヴァント達が何だがおかしく思え、「………ごめんなさい」苦笑を浮かべ、力なく地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フフフフっお腹すいちゃったなぁ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

目が覚めた時、そこは魔獣の群れの中であった。

 

『ガルル♪』

 

『グガガ♪』

 

しかも何かめっちゃ懐かれてる!?

もしかして、ティアマト原産の泥に飲み込まれて私も同族に仲間入りしたからなのか!?

そう思ったが、特に体に異常は診られない。

 

だが、左胸に手を当てた桜はピタリと動きを止める。

 

「えっ心臓動いてない………?」

 


 

やったね!外道神父に仲間が出来たよ!



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『魔獣使い』『うわ、マジか』

魔獣の女神ティアマトは恐怖する。

 

「何故じゃ、何故お前達が私を裏切る!?」

 

我が子の魔獣達。その二割を失った。

……殺させたならまだ分かる、人間への憎しみのあまり先走って人間どもに捕らえられた。それも理解できる。

しかしキングゥと共に侵略者の討伐に向かった魔獣二割は、たった一人の人間に寝返ったのだ。

 

「分からぬ!どういう事なのじゃキングゥ!」

 

「…………落ち着いて下さい母上」

 

「これの何処が落ち着いてられるのじゃ!?妾の魔獣連合は半分をきった!第二世代が産まれようと殺させる所か乗っ取られては妾は、妾は!ただの道化ではないか!」

 

ティアマトの叫びに誰が異を唱えられようか、

与えられた彼女の泥は黒桜として覚醒しつつある桜の濃度に負けたのである。

たかが数十年、神性も持たぬ人間ごときに借物と言えど『支配』神の本文であるそれで負けた。

人を憎むアベンジャーの嫉妬は己すらも燃やし尽くしてしまうほどの憎悪へと変わる。

 

「間桐桜ァァァ!!!!」

 

母の願いに答えられず、このままでは最悪の目覚めを提供することになるかもしれない。魔力を肉体の修復に回しているせいで魔力不足により気を失いそうなキングゥは強く唇を噛みしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《桜side》

 

魔獣の支配権を得た間桐桜はその使い所の限られた手勢に困っていた。

今のギルガメッシュなら余程の事がない限り負ける事はないので魔獣を戦力として取り入れた結果――ウルクと敵対するような形になるのは正直言って問題はない。問題なのはカルデアと敵対するような状況になることだ。

あの二部六章を知っている間桐桜はどれだけ戦力を集め高めようと、それこそ神霊を手に入れようと勝てないのは理解している。

それ故、出来るだけ……ストーリーの都合上死ねとか言われるまでは敵対したくないのだ。

 

「だが、この魔獣達の食料を人食以外で賄える訳がない。

マスター、カルデアとの敵対を避ける為、切り捨てるのは理解するが僕らの戦力は今どの勢力よりも大きい。よく考えるべきだ。」

 

そう、この鬼畜特異点を生き残る為に魔獣連合は大いに戦力として期待出来る。ただでさえ死亡率の高い私が、私というifが誕生した時点でもしかしたら来ない可能性もあるカルデアなんかに臆して戦力ダウンなど容易に決断出来る訳がない。

 

 

「グルル(お母さん大丈夫)?」

 

「ガウガウ(カルデアなんて僕らで喰ってやるよ)!」

 

 

泥のお陰か下手に言葉が分かるせいで殺処分とか考えただけで胃にダメージが!

 

「私はどうすれッ

 

―――話の途中だがワイバーンだ!



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『天草と私』『泥の制御を完璧にしておる!』

魔獣・ゴーレム・英雄連合(通称 桜陣営)はここ最近になって新しく誕生した陣営だ。

主である間桐桜を中心とし、七騎の英霊(サーヴァント)が各々の得意分野で勢力を拡大していき、その版図は女神同盟、ウルク、冥界に食い込む勢いで急速に成長していた。

それが間桐桜の采配かと言われれば、彼女は英霊(サーヴァント)の働きを見守っているだけなので、正しくはないだろう。しかし魔獣の女神の天敵とも云える彼女が女神同盟と本格的に覇を争うような事態になれば勝敗はどちらに傾いても可笑しくはなかった。

 

 

「―――カルデアと争って勝てるわけないし……だからって、必ずこの特異点に来るとは限らないカルデアの為に魔獣達を切り捨てるなんて」

 

 

問題はカルデア。

圧倒的主人公補正の塊、藤丸リツカだ。間桐桜は、いやビーストであれ、クリプターや異聞帯の神であれ彼又は彼女と敵対して絶望しない者はいないだろう。

何故か?

簡単だ。藤丸リツカは原典と同じく選択ゲーの主人公の癖してBadendが用意されてない。

正に、約束された勝利のなんたらの人間体。

負ける事が想定されていない恐怖など計り知れない、運命力が死人と変わらない私など一捻りに違いない。

 

桜は今、彼らと少しでも友好的にあるために食料補給的な意味で人食を止められない魔獣達を切り捨てるか、人食を続けさせ兵力として保持するか真剣に悩んでいた。

 

 

「どうしよう……」

 

「マスター、お困りですか?」

 

そんな時に現れたのは天草四郎時貞(オルタ)。私の聖杯の欠片からにじみ出た泥に霊核を汚染され黒くなる所か元々黒いので逆に白くなったビックリ英霊である。

 

「話を聞いてくれますか?」

 

「――はい、喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程、カルデア。ギルガメッシュ王の仰っていた予言の救世主ですか」

 

「あぁ、ギルガメッシュが“視た”…もう確定で来るんですね」

 

「ならば魔獣は切り捨てる、そう簡単にはいかない」

 

「そうなんですよ……泥で存在が近くなった分、あの子達の声が聞こえるんです。楽しいとか嬉しいとか……人としてどうかと思いますけど、今は知らない人間よりも彼らの方を優先して考えてしまう」

 

「それは、難しいですね」

 

天草四郎が私の為に悩んでくれている…………正直意外だ。

最終的な理由は生き残るという人間らしい欲求からくるものであっても、人を食う魔獣を兵力として取り入れるなど正気の沙汰じゃない。私が死ねば解き放たれた魔獣達がどうなるか、大変なことになるのは間違いないので、いきなり暗殺されるような事はなくても、直ぐに殺せと訴えるとか、もっと険悪なムードになると思っていた。

 

「天草さんは、私が魔獣を残すって言ったらどう思います?」

 

「反対します。ですがマスターの為になるなら納得するしかないのかと」

 

「全人類が滅んじゃうかもしれないんですよ?」

 

「その時は、私じゃない私が大聖杯にすがるのでしょうね…………

マスター、安心してください。先に召喚された七騎含め、泥に犯された私達は()()()()の英霊とは似て非なる者だ。貴方の敵に回ることだけは絶対にあり得ない」

 

「絶対にあり得ない?」

 

「ええ。例えそれが人類史に刻まれた天草四郎という存在を否定する行いであっても私は貴方の味方であり続ける。だから貴方は貴方が思うがまま突き抜ければいい」

 

「思うがままに…………」

 

桜は胸に手を当て、聖杯の欠片の位置を意識する。

 

「……魔獣達の下へ向かいます」

 

 

 

 

この日、間桐桜に寝返った大量の魔獣の気配が消えたことをティアマトは感じ取った。



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『カルデア来訪』『Zzzz』

「マスター……カルデアの者が現れました」

 

空から落ちる二つの影を睨む小太郎は、「計画を実行しますか?」一欠片の慈悲も感じられない冷たい声で泥に横たわる間桐桜に語り掛ける。

 

「…………」

 

しかし、桜は答えない。寝ているとは少し違う。目は開いているのだ。心ここにあらずと言うか、考え事をしていると言うか…………兎も角、意識疎通が出来る状態ではないのは確かだ。

 

マスター(桜)が魔獣達を飲み込んでから()()()。カルデアの来訪すら目覚める兆しにすらならないと、小太郎は少し眉を下げる。

 

「…………我らは貴方様の為に」

 

アヴィケブロンと交渉を行い、ゴーレムを数十体借り受けた小太郎はカルデアの最後のマスターと桜陣営による友好作戦を決行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアの最後のマスター藤丸立香はスカイダイビングを終えヨロヨロと立ち上がる。

 

「痛てて……大丈夫、マシュ?」

 

「はい、何とか。先輩こそお体に支障は?」

 

「俺は大丈夫――」

 

『いきなりですまない!何者かが正面から急速接近している!』

 

これまでの特異点で鍛えられた二人はドクターの言葉に反応し、マシュが盾を構え立香は後ろに下がる。

 

『霊基パターンは英霊(サーヴァント)!野良サーヴァントかもしれないが、油断は禁物だよ!』

 

「「了解!」」

 

間も無くして平原をあり得ない速度で駆ける人影を捉えた立香とマシュは警戒を強める。

出来れば味方なら良いのだが……立香の淡い願いはその人影が上空へ投げた数十個の小石を見た瞬間に裏切られた。

 

ドゴッ ボコボコ

 

ボコボコ ゴボゴホ

 

『おいおい嘘だろ!?』

 

小石だと思っていたそれは空中で二メートルほどの巨体のゴーレムへと膨れ上がり、地面を揺らす巨体を地に下ろす。あっという間に立香達は囲まれる形になってしまった。

そしてゴーレム達はアメリカで見たゴーレムのようにガトリング銃らしき物を構えている。

 

「マスター!」

 

―撃たれれば死―

 

マシュが横に立つ立香は打開策を模索する。

その時である。ゴーレムの間を通り一人の少年が立香達の前に歩いてきた。

 

「……君は?」

 

「アサシンの英霊(サーヴァント)。真名は控えさせていただきたい。

……カルデアの者達よ」

 

少年が片腕をあげ、ゴーレム達が一斉に照準を上に向けた。

 

「―――我ら桜陣営は貴方様達を歓迎いたします」

 

そして、ポンッと気持ちのいい、音が何百発も鳴り響き、赤や青に黄色、色鮮やかな花を―――花火だった。

 

「えっ……と、もしかしなくても敵じゃない?」

 

「はい、アーチャーの言葉を借りるなら超超味方です」

 

「…………」

 

 

「…………」

 

微妙な空気が流れた。



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『くっ私は負けない』『お菓子を食べましょ?』

突如として現れたゴーレムを従える謎の英霊(サーヴァント)

二メートルを優に越えるゴーレムの大群に囲まれた時は、一触即発かと思われたリツカ達であったが、その英霊(サーヴァント)に敵意など欠片もなく、むしろ手厚い歓迎を受けることとなった。

 

「この先に、貴方々の拠点があるのですか?」

 

「ええ…」

 

変形型ゴーレム(車)の助手席に腰掛けるマシュは口を開く。変形型ゴーレム(大型二輪)に跨がる小太郎はグラサンを光らせそう答えた。

 

「……一応確認するけど、この時代の物じゃないよね」

 

「キャスターの研究の賜物ですよ」

 

自動操縦である変形型ゴーレム(車)の操縦席に腰掛けるリツカは、「(エジソンか…ニコラ・テスラあたりがいるのかな?)」ぼんやりとそんな事を考えていた。

 

ゴーレムのデザイン的にはチャールズ・バベッジという線も捨てがたいが、ゴーレムの数と変態的な性能をみて、どうしてもあの二人が関わっているような気がしてならない。

多分、百キロは出ているのではないだろうか?

ダヴィンチちゃんには悪いが、第六特異点で乗ったオーニソプターより乗り心地はずっと良い。

 

最後の特異点ということで色々と覚悟していたリツカだが順調な滑り出しにほっと胸を撫で下ろしていた。

 

『あぁ、いきなりですまない!ワイバーッ』

 

だが、彼を休ませる暇など無い…最後の特異点バビロニアそれは最も難易度がッ

 

「――撃てぇ!!!」

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!

 

小太郎の号令と一斉にガトリング銃をぶっぱするゴーレム達。

 

「「(ポカーン)」」

 

「……ふぅ殲滅完了」

 

砂煙が晴れた先にあったのは原型と留めていない肉の塊だった。

 

リツカとマシュは口を開いたまま呆然と立ち尽くす。

 

「そろそろ喉が乾いたでしょう。お飲み物は何になさいますか?」

 

何気ない顔で数種類のジュースを差し出す小太郎。

この特異点……“ぐだぐだ”だ。リツカとマシュはそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間ほど変形型ゴーレムを走らせ鋼鉄を思わせるネズミ色の城壁が見えてきた頃、うとうとする二人は目を覚ます。

 

「うわー!あれが君たちの拠点なのかい!」

 

「キャメロットよりも高くて頑丈そうですね先輩!」

 

頼もしい守りに感嘆を覚え、重厚な門を潜った二人は――目を見開いた。

 

見渡す限りのゴーレム。

変形型(車)やら十メートルを越える物、人のような造形のもの、数万いや、数百万は下らない種類豊富な数の暴力に圧倒され、

 

「先輩……私、夢でも見ているんでしょうか?」

 

「いや……俺にもハッキリと見える」

 

幽霊でもみたような、キョトンとした顔を浮かべた。

 

「どうかしましたか?

…さぁ我らが拠点に案内しますよ。」

 

「拠点?……拠点ってあれのこと?」

 

「はい、あれですよ?」

 

「いや……あれってどう見ても……」「はい、どう見ても」

 

「カルデア(偽)ですが何か?」

 

「「カルデア(偽)!?」」



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『メルヘン!』『くっ内なる桜が暴れよる!』

「流石に、中身までは一緒じゃなかったね……」

 

「ですが、先輩のマイルームと食堂…そして中央管制室は本物と見分けがつかなくて、驚きました」

 

「……そうだね」

 

「「ハァ……」」

 

近代的な喫茶店

ため息を漏らすリツカとマシュ。

何から何まで……カルデアの来訪が予測されていた特異点は今までにもあったが、ここまで完璧に“おもてなし”される事などなかった二人は……“逆に”疲れていた。

 

「聖杯は、三女神同盟のティアマトと名乗る……ゴルゴーンが、所持していて此方には対ゴルゴーンにこれ以上ないと云われるペルセウスさんがいるようですが、先輩……」

 

「うん、分かるよマシュ。出来すぎている。まるで、裏切る前の敵の本部に上がり込んでいるみたいだ」

 

ゴーレムを操るサーヴァントと最低でも後二体のサーヴァントが活動するこの城塞都市。エジソンの例もあり、これから敵対したとすればどれだけ厄介な事になるか……悪い癖だがつい考えてしまう。

 

「明日、望めばウルクまで送ると言われましたが、どうしましょう」

 

『僕の意見から言わせてもらえば、行く必要はないんじゃないかな?だってギルガメッシュ王だぜ?

慢心で冷血で暴君で人の事をすぐ雑種呼ばわりする差別しゅ……『あーはいはい。これ以上は黙ろうかロマニ』と、兎に角、現状は安全圏から情報収集に勤めるのが得策じゃないかな?』

 

「そうですか……情報収集…」

 

リツカは謎のサーヴァントこと、前髪の短い小太郎に渡されたこの都市のパンフレットを見る。

 

カルデア(偽)

 

ゴーレム工場

 

修練場

 

ゲームセンター

 

公園

 

神殿

 

図書館

 

モノレール

 

喫茶店(現在の場所)

 

 

「この中だと図書館かな、マシュは何処か気になる場所はある?」

 

「私は修練場が少し…この街にはサーヴァントとゴーレムしか見当たらないので、誰が利用するのか疑問に思いまして」

 

「ああ、そうか。だったらモノレールをここで乗り継いで「あっカップルなら無料って書いてあります」うぇ!ど、どうしたんだマシュ!?」

 

人形ゴーレムが運んできたケーキと紅茶を嗜みながらパンフレットを眺め話し合う二人。

綺麗に塗装された道路や桜の“ガワ”の趣味が影響してメルヘンチックに改修されつくした建物の数々。

 

『フフフッ友好作戦その1…一生の思い出作り作戦は成功ですねぇ』

 

ゲームコントローラー片手にタブレットを眺める自称警備担当の巴御前は、桜が眠りにつく前に出した大いなる作戦の一つが達成された事に頬をつり上げる。

 

『ですが、まだまだですよ……貴方々とは長い付き合いになるのですからねぇ~』

 

それはゲーム画面の御三家ポケモンに対してか、リツカとマシュに対してか真相は分からない。

 

『悩みます、悩みますよぉ……』




「おーぅ、勘弁してくださーい」

「駄目だ。君は僕の最高傑作の触媒となってもらう」


「うそ……何故お前がここに!?」

「アナいきなりどうしたんだ!」

「……捕獲対象発見♪」


「ゴーレムにしてはまぁまぁの出来ね。
…ライダーはまだかしら。小さい方の妹を連れて来るって言ってたけど」


「カリバーァァ!!!」

「ウヒャア!?何なのよこの“ちんちくりん”は!」


「首を出せぇ」

「「「はわわわわ!!!」」」


「やぁギル」

「――なん…だと!」


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『アハハ!』『何ッ支配権の50%を奪われただと!?』

それは、何千何万種類ものゴーレム達を思い付くがままに創造し自動製造マシーンの調整を終えた深夜の事だった。

 

ジャラリ

 

コーヒーを片手に一息をつく…丁度彼の目の前、壁に掛けられた一房の鎖が地面に落ちる。

それを直そうと立ち上がったキャスター。彼は手元に光る神秘を内包した鎖。それを見てポツリと呟く

 

「捕獲用の網は手に入れた……後は獲物を釣る餌があれば…」

 

エルキドゥ協力の下、神の鎖を手に入れた彼は考える。

どうすれば、神(素材)を手に入れられるかと。

 

この特異点には地上に三体、冥界に一体、女神が存在する。

過去、彼は言った『三体もいるんだし一体ぐらい減っても問題ないのではないか?』

その時は、余裕がなかった。手段も加工できる環境も揃っていなかった。

しかし、ウルク、ゴルゴーン、ケツァルコアトル、イシュタル、エレシュキガル、

 

現在、我ら桜陣営の保有する武力や技術力、未来すら予測する情報力は全てにおいて圧倒している。

 

マスターが目覚めるまで現状維持に勤めるべきだという意見もある。しかし、アヴィケブロンはマスターである間桐桜が眠りにつく前、創りたい物を造れとありがたい許可をいただいていた。

 

アヴィケブロンが創りたい物。

 

それは至高のゴーレム。存在するだけで世界を楽園へと作り替える自立歩行型の固有結界。

 

本来なら核として一流の魔術回路を持った人体を利用するのだが、キャスターは少し欲を出して神を使おうと考えた。

 

「餌……餌……かぁ」

 

 

 

「ご飯~ご飯!」

 

 

 

「あっ、セイバー。一つ頼みたいのだが……女神の捕獲、対価は霊脈を利用した調理師(エミヤ)サーヴァントの召喚でどうだろう。」

 

 

 

 

 

そして現在。

神の鎖に繋がれた南米風の衣装を纏う彼女=ケツァルコアトル

 

「飯の恨みは恐ろしいと言う格言があるらしいが……これほどとは。」

 

一体で充分だったが、二体目の捕獲に向かった騎士王に呆れとも畏怖ともとれるため息をつく。

 

「オーゥ、勘弁シテクサダサーイ」

 

「駄目だ。君は僕の最高傑作の触媒となってもらう」

 

――そして、女神に向き直った彼の背後がライトアップし、巨大なゴーレムが顕となる。

 

「胸の中心が空いているだろう?

…君はこれからアレの一部となるのさ。」

 

「コレは……貴方は神話のぶつけ合いデモするつもりデスカ?」

 

「ぶつけ?何のことだが……」

 

指を鳴らしケツァルコアトルをゴーレムに運ばせるアヴィケブロン。

 

ケツァルコアトルの同化が始まると詠唱を開始した。

 

 

(はは)に産まれ、(ちせい)を呑み、(いのち)を充たす

 

「ぐぅぅぅ!!!」

 

(ぶき)を振るえば、(あくま)は去れり。不仁は己が頭蓋を砕き、義は己が血を清浄へと導かん

霊峰の如き巨躯は、巌の如く堅牢で。万民を守護し、万民を統治し、万民を支配する貌を持つ

 

汝は土塊にして土塊にあらず。汝は人間にして人間にあらず。

汝は楽園に佇む者、楽園を統治する者、楽園に導く者。汝は我らが夢、我らが希望、我らが愛

 

()()()()()()()()()()()

 

 

ケツァルコアトルの神性が特異点から消失し、【彼女】は誕生する。

 

 

聖霊(ルーアハ)を抱く汝の名は――――『原初の人間(イブ)』なり」




『……ここは?』

『士郎!』

『えっ……セイバー……いや、私はただの弓兵…あれ?肌が白い……まさか、これが世に云うリリィ化か!?』

『士郎ぉぉぉ!!!』

『ぐわっ止めないかセイバー!』


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『負けた……ガクッ』『フフフッ……』

一日かけて、桜陣営を探索し終えた藤丸リツカは、カルデア(偽)にある自身のマイルームと酷似した部屋を寝室として提供してもらい――夢をみた。

 

気持ちの良い風が風鈴を鳴らす由緒正しき日本屋敷。

その畳の間に……いつの間にか腰かけていた自分。

 

「…いつもの奴だ。」

 

レイシフト中に起きた事は無かったが、夢から始まる冒険の旅……

 

「あ…」

 

「君は、」

 

一週間ぐらいで目覚めるんだろうか?

そんな彼の服の袖を引っ張ったのは幼女である。

もう一度言おう、幼女である。

 

「私はロリにして、悪、悪にして×××目ヒロインランキング堂々No.1…黒桜には勝てなかったよ…間桐桜(敗北者)。」

 

「ええっ……と」

 

「…アイツ、魔獣の支配権とか肉体の色気とかスポンジみたいに吸いやがって、その癖、並行世界で使わせてもらいます、命だけは助けて上げますとか何様のつもりだよ、こっちは不思議なポッケを作りに潜っただけなのに、残されたのは×××目ランキングNo.1のこの体だけってこんなんで特異点生き残れるわけないじゃないですか」ブツブツブツ

 

 

駄目だ。話が通じない。

視線が上の空な幼女はリツカの言葉に耳を傾ける様子はない。黒桜(?)と云われる何かへ、ひたすら呪詛を吐くばかりである。

 

 

「て言うか、桜ルートで魔獣達が暴れるじゃんヤバイよヤバイよ……腕士郎君死んじゃうよ、無理だよあの化け物マジで容赦ねぇよもう、アレだ……全部ワカメが悪いんだ。ワカメさえいなければワカメさえ存在しなければ黒桜が誕生することはなかったんだ。おのれ~ワカメめ」

 

 

……ワカメ?

 

 

「あー、でももうそろそろ目覚めないと不味いですよね。カルデア来てるし男だと、アニメ版かな。マシュ以外使えない鬼畜仕様じゃないですか……ティアマトにダブルマーリン使わずに勝てるわけないじゃんこのご都合主義主人公!あ……牛若地獄がないからマシかな」

 

 

「カルデア…君はもしかしてアサシンやペルセウスのマスターなのかい?」

 

「はい、そうですが?」

 

会話が通じた。初めて幼女はリツカを見て返答をする。

ほっと息をついて先ずはここが何処か尋ねようとしたリツカは強い睡魔に襲われる。

 

 

嘘…まだ何もしてないぞ!?

 

 

現実へ戻される感覚に驚くリツカであったが、幼女は倒れたリツカを優しく抱き止め、薄れ行く意識の中……囁く。

 

「私……死ぬつもりだけはないので、貴方が私を生かそうとしてくれる限りは私も貴方を生かそうと足掻きましょう……そんな契約は如何ですか?」

 

悪意は感じない……それに、頷いたリツカ。

 

幼女は満足そうに頬を緩めて―――意識は暗転した。




『怖いにゃーマジヤバにゃー、セイバーちゃんのあの目はガチだったにゃー』

↑戦わずして逃げた虎


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『私はロリにして頂点』『……』

人の文明は蹂躙され、地に耳を当てれば獣が足踏みする音が絶えることはない荒野。その魔獣すら消えてしまった今、そこは一片の草木も残さ無い命の消失した死の大地となった。

 

―――私は、誰だ。

 

黒い蹄が土を抉る。

 

ここは何処だ。私は何のために呼ばれた。何を成せと言うのだ。

 

右を見ても、左を見ても何もない。

“それ”が歩いてから既に三日は経っている。体力の限界もさることながら、喉の渇きを潤せず、身を寄せる木陰すらない其所では何よりも孤独が恐ろしかった。

 

我が父…我が主……分からぬ。分からぬ。

 

自分は人を超越し神を統べる、尊き御方に創られ、素晴らしき主に従える運命にあったという。

しかし、御方()とは誰なのか。犬か猫かそれとも神なのか。少なくとも人でないということしか思い出せず、主に関しては僅かに残る御方の記憶が、主へ従えと命ずる……最早何も覚えていなかったほうが幸せに思えるほど朧気だった。

 

……もうすぐ、日が沈む。何処か休める場所を……ハァ、そんな場所はなかったな。

 

記憶は欠損、神性は無いモノとして召喚され、挙げ句の果てに魔力不足。

既に、色々と諦めた。消えるというなら仕方ない。

半身が埋まるほど、土を掘って体に被せる。

 

この季節は冷える。…もし次があるのなら、贅沢は言わない。主と一緒に…暖かな暖炉の前で眠りたいモノだ。

 

孤独に耐え、訳も分からず足を動かしていた獣の一生は間も無く潰える。

 

「――グガランナ、なぜ貴女がこんな所に、」

 

筈だった。

 

孤独に耐え続け、何か変わると足を止めなかったからこそ、その願いは報われる。

 

「並行世界からの強い干渉を受けて調査に来ただけなのですが……流石にこれは」

 

毛布を両手に、ゆっくりと抱き上げられる彼=グガランナ

その目に映ったのは、小さいながら大きな魔力を宿した、そしてとても悲しげな瞳をした童女である。

 

――そうか、私はこの方の為に喚びだされたのか。

 

地獄の中でまさに仏でもみたかのような、強い感情に支配されるグガランナが真に従える主を見つけた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「ほーれ、ビーフジャーキ―ですよ~」

 

主がお目覚めになられた。

そう報告を受けて、カルデア(偽)の中央管制塔に駆けつけた藤丸とマシュが見たのは、黄金の外骨格で覆われた小型の生物にハイライトのない目をした幼女が乾いた牛の肉を与えている所だった。

 

夢の中の幼女と姿形が一致している為、彼女がアサシンとペルセウス、そしてキャスターのマスターであることは間違いない。

 

「君は何者なんだ?」

 

「私ですか?…私は桜ですが。」

 

「桜さん…いえ、ちゃん?」

 

「桜ちゃんは止めて下さい。蟲に喰われて死にますよ?」

 

「じゃあ、桜さんで。」

 

呼び名が落ち着いた所でマシュが口を開く。

 

「桜さんは先輩と同盟を結ばれたのですよね?」

 

「はい」

 

「でしたら、この特異点攻略へ協力してくれるという事に…」

 

「今さら裏切りませんよ。桜陣営はカルデアへの支援を惜しみません。勿論、貴女方が裏切るようなことがあれば話は別ですけど。」

 

そこで黄金の生き物が威圧するようにマシュを睨み、とても鋭い殺気に心臓が縮こまる。

桜陣営と敵対すれば、とても恐ろしい事になるだろう。

マシュは本能で感じ取った。

 

『横からすまない』

 

ドクターが通信機器から桜さんに話しかけ、幾つかの問答の後、正式な契約が交わされる。

 

先輩…これは、正しい選択なのでしょうか?

 

どの特異点よりもスムーズに事が進み、誰一人の犠牲もなく聖杯を獲得するまでの目処はたった。

しかし、マシュだけは桜陣営の底知れない“何か“に恐怖を抱く。




『むぅぅぅぅ!!!』

『約束通り連れてきたよ』

『あら、やっとね。
フフっ本当に小さい頃の妹じゃない…』

『むぅ!?むぅぅ…ぷはっ姉さまが何故ここに!?』

ナデナデ

『あぅ……止めてください』

『これで、大きい方もいれば楽園ね』ボソッ


ウルク

「大変だ!ギルガメッシュ!アナが拐われっ」

「フハハハハ!飲め歌え!オレが許す!
備蓄が少ない?兵の士気が緩む?ぬかせ!我が友の帰還を祝わずして何が王か!」

ワーワー!

エルキドゥ様!

今度こそ本物だー!

これでウルクは安泰だぞ

ワーワー!

「……ギルガメッシュ?」


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