「完結」無惨様をメス堕ちさせてみた (flyfull)
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無惨様をメス堕ちさせてみた

習作


○月1×日

今日から日記をつけ始めようとおもう。私は文字を書くのが致命的に下手くそなので、練習もかねて出来るだけ丁寧に書くことを心がけよう。

 

 

 

○月×1日

私の家は呉服屋だ。後継ぎは私しかおらず本格的な修行が今日から始まる。頑張ろう。

 

 

 

○月×5日

常連のお客さんから、最近繁盛してるとくに男性のお客さんが増えてると言われた。言われてみればたしかに、男性のお客さんが多いかもしれない(家は男女両方の呉服をうっている)。男性用の呉服の在庫を増やさないと。

 

 

 

△月×日

何故だろうか?店に来るのはほぼ男性客になり、品物を送られるようになった(相当な頻度で!)。貰える分にはありがたいが、どうせ貰えるなら女性に貰いたい(私は男だ)

 

 

 

△月1×日

とても美しい男のお客さんが来た、これが女性だったら間違いなく惚れていただろう。ちょうど西洋かぶれの服を初めて取り扱ってみていた時で、割りと好評だった。美しい男性客(無惨さんというらしい)もまたくるといって何着か購入してくれた。

値段的にそう易々と買えない服なのだ、複数買えるということは相当なお金持ちなのかもしれない。上客になってくれるといいが…。

 

 

 

△月2○日

更に貰い物が送られるようになった。訳がわからない。

 

 

 

_月

今日初めて告白された……それも男に。あり得ない!私は男だぞ!?

もちろん丁重にお断りしてやった(脳内に豚の糞でも詰まっているのだろうから、農場の紹介状つきで!)

 

 

 

^^月○日

何か悪いことでもしたのだろうか?あの日を皮切りに男に告白されることが増えた…。巷(男性のみ)では私のことを絶世の美男と呼ぶらしい。それなら女性にも告白されてもいいはずだが、女性には全く異性としてみられないといわれた。(とてもきれいな景色を見てるみたいだとか)

 

 

 

A月-日

絶望が顔に出ていたようで、お客さんからとても心配された(もちろん男性客)。

もしよかったら、なんとか極楽教?というのに入らないか?教祖様はとても素晴らしい方で相談にものってくれるという。

丁重にお断りしておいた。

 

 

 

D月×日

運命に出会った!店に男性客しか来なくなったのもどうでもいい!

前に一度だけ来た無惨さんの妹で、憐哀(れあ)さんという方だ。兄妹なだけあってとても似ている。無惨さんが女性になったらこんな感じだろう。お兄さんはとても物腰柔く好青年といった感じだったが、憐哀さんはとても高圧的な女性だった。普通だったらあまりいい気を起こさないが、所々で好意が滲み出てたし(男限定だが恋愛的な好意を受け続けたため、好意には敏感なのだ)私は照れ隠しをしているのだと思った。ちょっと事故で手と手が触れたとき、顔を紅く染め(とても可愛い)申し訳ないと上目遣いで言われた時に心を撃ち抜かれた(可愛いと美しいが共存して最強)。

今後は度々訪れるが無惨さんは忙しくて来れないので、代わりに憐哀さんが来るという。

ありがとう神様…。この出会いに感謝を

 

 

 

 

 




無惨の類義語、憐れ哀れ


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2

無惨さま万歳


?月?日

運命の出会いから数日。相変わらず女性客は憐哀さんしか訪れないが(3日に一度くらい!)、まるで干ばつの村に恵みの雨が降るように私の心にも憐哀さんという恵みが私の心を癒してくれている。

しつこく告白してくる嫌な奴も何があったか店に訪れることがなくなったし、私の心は晴れ模様だ!(恵みの雨なのに晴れ模様とはこれいかに)

 

 

 

 

 

 

┐月×日

人の気配があるので店の外を確認してみたら、店の目の前に半裸の刺青をいれた男性がいた。(しかも筋肉モリモリマッチョマンの変態だ!)

思わず腰が抜けそうになったよ。今までの経験から襲われるのかと思ったがどうやら違うらしい(もう男に襲われるのも、告白されるのもこりごりだ)

確かに好意(恋愛的な)があまり無いようだったので、一応話を聞いてみることにした(通報はそのあとだ)

男はアカザ殿というらしい。どうやらこの町で失踪事件があったらしく、心配した憐哀さんが護衛として手配してくれたという。

なんと心優しい方なのだと感動した。

アカザ殿いわく「お前は憐哀さまに守られている。お前は憐哀さまに感謝をすればいい。」

といっていたが、憐哀さんは本当は仏さまかなにかなのだろうか?今度店に来たときに贈り物をして感謝をしよう。

憐哀さんに贈る物を考えながら、アカザ殿に感謝と護衛に必要なものを聞いて就寝した。

 

 

 

 

 

┐月××日

早朝になる(朝日が登るくらいには)とアカザ殿はいなくなっていて朝食とわずかだがお給金を渡そうと思っていのだが、渡せなかった。

そういえばアカザ殿が来る原因である、町で起きた失踪事件は告白常連客(告白ばかりしてくる嫌な奴だが売り上げには貢献していた)が被害にあったのではないかとふと思った。来なくなった時期が一致しているような…いや気のせいだろう。

嫌な奴だが死んで欲しいとは思わないので、無事に店の売り上げに貢献しにこい(今度告白してきたら出禁にしよう。)

 

 

 

 

 

┐月×○日

アカザ殿が護衛をしてくれるようになって少し日が流れたころ、憐哀さんが店に訪れてくれた。

さっそく憐哀さんにアカザ殿を派遣してくれたお礼を伝え、そしてアカザ殿に私からお給金を渡したいのだが、早朝にはいなくなっているので代わりに渡して欲しいといった。

お給金は憐哀さんが払っているのでいらないと断られたが、それならと憐哀さんに渡した。最初は断られたが憐哀さんに負担をかけたくないのと、末永く付き合っていきたい(商売的な意味でいったつもりだったが打算ももちろんある)ので貸し借りはしたくないと真剣に伝えたら了承をもらえた(何故か顔が赤かったが可愛いすぎて気にならなかった)。憐哀さんが店に訪れるのは毎回日が暮れてからなので、失踪事件のこともあり送って行こうと伝えたが誰かといるところを見られるのはまずいらしい(兄妹でお忍びといわれた)。とても優秀な護衛がいるとのことなので、ちょっと不安だが店先でお見送りをした。

 

 

 

 

┐月〇日

失態だ…。贈り物をしようと思っていたのにすっかり渡せなかった。せっかく海外から伝を使って希少な口紅を入手したのに、会話に夢中になりすぎた…。ただその成果があってか、今度月見の約束を取り付けられた!その日に絶対に渡そう。

 

 

 

 

 

A月c日

失踪事件が続いている。容疑者ではないかと私が怪しまれているようだ。どうやら失踪している被害者達が私に告白して来た男性客で、男性以外の被害者がいまのところいないかららしい。だがそもそも失踪事件なんてアカザ殿が来て初めて知ったのだ、私ではない。

事情を聴取されるため連行されてしまう…憐哀さんとの月見まで日が近い。その日まで疑いをはらせるだろうか?

 

 

 

 

 



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無1

誤字脱字報告、評価、感想、ありがとうございます。正直こんなに読んでくれると思わなかったです。
感想返しは今は余裕がないので、余裕が出来たらします。


「頭を垂れて蹲え 平伏せよ」

 

眼下にいる鳴女に呼ばせた下弦の肆に言う。

 

「も、申し訳ございません お姿も気配も異なっていらしたので……」

 

やはり愚かだ

 

「誰が喋って良いと言った?

貴様のくだらぬ意志で物を言うな 私に聞かれた事にのみ答えよ

私が問いたいのは一つのみ、何故こうも奴は私の心に荒波をたてる?私は何故不快に思わないのだ?」

 

(そ、そんなのわかるわけが「ないか?」

 

「あ、貴女さまの心を私ごときが理解するなど、おこがましいので!」

 

何を当たり前のことを言っているのだ?完璧な存在である私を貴様ごときが理解しようとするなど、本来なら殺していたがまぁいいだろう。今はそんなことよりも、この心の震えをどうにかしたかった。

 

「これだから下弦は使えんのだ!だがお前の無礼など、どうでもいい。もう一度いう、何故奴を見ると心が震える?胸が苦しくなる?何故奴は声を交わすだけで私の心を乱すのだ?答えよ!」

 

一目見た時からなのだ。未知の心の波。呉服屋が日が落ちてもやっているなど珍しくて、興味本意で立ち寄った店で心が波うつような感覚を覚えた。

私の物にしたい。だが、何故か傷付けたくない。胸が痛くて切ない。こんな気持ちなど私にはいらない!むしろこの気持ちを与える完璧なる存在が私だ。

 

「そ、それは…」

 

じれったい。殺すべきだ。

 

「恋ではないでしょうか?」

 

恋だと?私が?あり得ない。やはり下弦は使えんのだ。

さっさと殺そう。……体が動かない。頬が熱い、まるで日に焼かれるようだ。頭の中が奴でいっぱいになる。黒い綺麗な髪で、金色の月のような瞳。その瞳に見つめられながら、私の瞳も美しいと言っていた。私が美しいのは当たり前だが、もっと言って欲しい。

そういえば、手と手が触れたこともあったか。とても滑らかで、触れただけなのにはしたない事をしてしまったような気がして思わず謝ってしまった。だが奴の手が美しいのが悪いので、今度謝罪させよう。だが…

 

「…恋ではない。これは怒りだ。私の手に無闇に触れたのだ、そのせいだろう。」

 

「も、申し訳ありません!」

 

「私を奴は虚仮にしたのだ。下弦の肆よ奴には正当な罰が必要だ。」

 

「そ、それはもちろんでございます!私もお手伝い致します!」

 

思い返せば私をここまで虚仮にした奴はいない、奴には重い罰を与えなければならない。

 

「まずは私と同じ気持ちを味わってもらう。その後奴を依存させ私がいないと何も出来ないようにする。」

 

奴の行動理由を私が支配するのだ。とても屈辱的だろう。

 

「その後奴を鬼に変え、永遠を私と過ごしていく。」

 

屈辱を受けたままの永遠だ。奴にはこれぐらいしないと気がすまぬ。

 

「下弦の肆よ。お前には最優先事項としてすべき事を与える。」

 

貴様は女だ。ならば、これ位は出来るだろう。

 

「何なりとお申し付けを…。」

 

 

 

「私に化粧を教えるのだ。」

 

 

 



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無2

無限城にある一室に彼らは集められていた。

「十二鬼月」

最強の鬼の称号である。下から下弦の陸に始まり上弦の壱に終わる12の強者の鬼達だ。

彼らは普段は顔を合わせることはなく、さらにいうなら下弦と上弦の間には途方もない実力の差があり一度に呼ばれることはなかった。

十二鬼月の上弦の参アカザは感じていた。

十二鬼月全てが呼ばれるなど、何かが起きる。

あのお方はついに鬼殺隊の本拠地を突き止め、決戦のために我らを喚んだのかもしれない。

強者達の柱と武を競い、新たなる領域「至高の領域」に至るかもしれない。さすれば、入れ替わりの血戦にて上弦の弐を超えるだろう。上弦の壱のいる「至高の領域」とはそれほどのものだった。アカザは静かに闘気を高めていた。

 

 

 

 

「十二鬼月は解体する。」

 

十二鬼月全てが騒然とした。

 

「うるさい。平服して耳を傾けろ。私を虚仮にしたある男がいる。殺すのは生ぬるい。奴の全ての自由を奪いとる。貴様等にはそれを手伝ってもらう。」

「だが、貴様等は目立つ。鬼殺隊の狂人どもは十二鬼月を見つけると羽虫のようによってくる。」

「貴様等は囮だ。」

「各地を移動しながら騒ぎを起こし鬼殺隊に、追わせろ。」

「それは半天狗、玉壷、下弦の肆を除く下弦全てで行え。瞳の数字は残すが貴様らはもう十二鬼月ではない。囮だ。十二鬼月という特別はもういらない。駒として動け!貴様等は鬼殺隊を殲滅するか鬼殺隊から逃げ続けるのか勝手にするがいい。だが、騒ぎを起こさなければ私自ら殺してやろう。」

「妓夫太郎、アカザ、童磨、黒死牟、零余子は別の用件があるから残せ。他の奴等にはもう用がない。鳴女」

 

ベベンっ

 

 

「黒死牟お前にはある町にいる、鬼殺隊と思わしき奴等を排除してもらう。奴等は鬼殺隊の中でも一際狂人で男色だ。すぐに見つかる。囮が暴れていればこちらで鬼殺隊が数名消えても、応援は少ないだろう。奴等は貧弱ですぐ死ぬ人間で、万年人手不足だからな。」

 

「……御意」

 

「童磨、貴様には気持ち悪い信者供がいたな?それを使い私の言うように噂を流し、情報を操作しろ。」

 

「ご随意に。それにしてもお美しい格好でいらっしゃいますね!逢い引きに行ぐっ…」

童磨の首が飛ぶ。あの方の許しもなく話すからだ。

「私は貴様が話す許可を出していない。」

今度は童磨の手足全てが切り飛ばされた。さすがの童磨もあの方の怒りには逆らえないらしい。黙ったようだ。

 

「アカザお前は私と一緒に来い。零余子もだ。お前達には護衛をしてもらう。」

 

鬼の祖たるこの方の護衛だと!歓喜するとはこういうものなのだろう。この身を呈して守るのだ。

 

「妓夫太郎には追って用件を伝える。以上だ。励むがいい。」

 

ベベンっ

 

視界が急に切り替わる。あの琵琶鬼に飛ばされたのだろう。

状況は瞬時に把握した。頭をたれる。

 

「アカザ。ここがお前の護衛場所だ。」

 

どうやら、このお方を護衛するわけではなかったようだ。

 

「アカザお前はこの場所と中にいる人物を、守り抜くのだ。奴は私を虚仮にした人物。私が罰するために私の物にすると決めた人物だ。傷一つつけることは許さない!」

 

「は!」

この方の怒りをかって生きているなど本当に何者だ?

強者なら一度死合たいが残念だ。

 

「今から3日後に奴と会え。黒死牟が鬼殺隊を排除し、童磨の信者が失踪事件を町に広めるだろう。そして伝えよ。お前は憐哀の2人いる護衛の一人であるがこの前失踪事件があり、奴を「私」が守ってやるために護衛するように言われて来たと!」

「奴は私に感謝し、私に恩を返さなければいけなくなる。そして、少しずつ奴から全てを奪っていくのだ!」

「失敗は許されない。わかったか?」

 

「は!期待にこたえてみせましょう!」

 

ふと何か思いだしかけたような気がしたが…思い出せなかった。

 

 

 



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3

誤字脱字報告本当にありがとうございます。
感想、評価は凄い励みになっています。
感想の返信は土日にします。

無惨様万歳。


J月a日

色々書きたいことがありすぎるので、整理しながら書いていこう。

連行された私は、取り調べを受けていた。

乱暴されるかもしれないと怖かったが、想像していたようなことはなかった。

そもそも私には犯人ではない証拠があった。

警察がいう犯行が行われたであろう日にはお店で接客していたし、何人ものお客さんに目撃されていた。

なので警察も疑ってはいなかったという。

ならどうして連行されたかというと被害者全てが私に好意を持っていたことから、逆恨みの可能性もあるとのことだ。

事件に何かしらの関係があるであろう私を連行すれば、犯人が事を起こすと読んだ警察が仕組んだ連行というのが今回の真相だ。

恐らく犯人は私に好意を持っていて、他の男共が煩わしかった。排除するために犯行に及んだのではないかと警察は言っていた。

 

警察の読み通り犯人が尻尾を現したのは、連行されて3時間後位だろうか?

町で大きな音がしたので警官を派遣すると、外れの方にある家が切り崩されていた。

近くの家の住人に話を聞くと、犯人らしき人物を目撃したとのことだ。

額に痣があり、長髪で上半身が裸の男だそうだ。

そいつはふんどし一丁の男を担いで、西の方に去って行ったそうだ。

犯人の特徴を聞いて誰か心当たりはあるか?と聞かれたがまったく心当たりがなかった。

かわりにやはりと言うべきか、連れ去られた男の特徴を聞くと私の常連客だった。(こちらもやはりと言うべきか、告白してくる常連客だ。)

 

警官は犯人である剣士が、衆道であるだろうことから事件を衆道剣士事件として捜査を続けていくみたいだ。

 

 

 

 

J月b日

憐哀さんに心配をかけてしまった。警察に連行されたことが噂になっていて、憐哀さんの耳にも入ったみたいだ。

警察から戻ると、店の前にアカザ殿と憐哀さんがいた。

憐哀さんは私の顔を見ると駆け寄って来て、月見が行けなくなったらどうするんだ!?貴様、私との約束を破るつもりだったのか!?

と言われてしまった。

破るつもりは更々ないので、

ご心配をかけてしまい、すみません。

憐哀さんとの月見は私も楽しみにしています。

憐哀さんの為に特別な場所を用意しているので憐哀さんも楽しみにしていて下さい。と伝えた。

憐哀さんは顔を赤くしながら(相当怒らせてしまったみたいだ)

私は心配などしていない、お月見さえお前と出来ればそれでいいと言って去ってしまった。

アカザ殿に憐哀さんを怒らせてしまった。挽回するにはどうしたららいいのか?

と聞いて見たが、答えてくれなかった。

 

 

 

 

J月f日

あれから憐哀さんと会えていない。気配はしないが、アカザ殿はずっと護衛に来てくれているみたいだ。(アカザ殿の夜食にでもと置いておいた、おにぎりがなくなっている)

 

 

 

J月g日

今日もアカザ殿が来てくれているみたいなので、声をかけた。

いつも護衛ありがとう。アカザ殿のお陰で安心して眠れる。感謝の気持ちを少しでも形にしようと、おにぎりを置いたんだけど口にあったかな?

と聞いたら、

口に合わなかったが次も置いておけ、お前のおにぎりは何故か食べたくなる。

と言ってくれた。明日もまた作ろう。

 

 

 

 

 

J月m日

お月見前日。アカザ殿と仲良くなって来た気がする。度々話すようになった。

いつも雑談しかしないが、今日はアカザ殿もっと仲良くなろうと思い提案した。

 

明日は憐哀さんとお月見なんたけど、あれから憐哀さんと会えていないので不安だ。

月見といったら月見団子だし、団子とお詫びの一つとして手作りの料理を心を込めて作ろうと思うんだ。

アカザ殿手伝ってくれないかな?

といったら最初は断られたが、どうしても手伝って欲しいというと手伝ってくれた。

 

アカザ殿がお月見団子を捏ねている姿はちょっと可愛かった。

 



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無3

「この町の警察を殲滅しろ!」

 

これほどの怒りは久しぶりだ。

警察は奴を連れていってしまった。日がまだ差していたため、私は手がだせなかった。

奴の体は隅から隅まで私の物だ!

私以外の輩は触れることすら許さない!当たり前のことだ。

それを連れていっただと!?

誰の者に手を出したか、今夜嫌というほどわかることになるだろう。

 

「お待ち下さい。」

 

頚を飛ばす。

今、私に待てといったのか?

アカザ!

 

「私に意見を言うことは許してはいない!貴様等に許されていることは頭をたれ私の命令に従うことだけだ!」

 

「警察を殲滅した場合、奴は我らの姿を見るでしょう。我らの正体が奴にばれます。それは貴女様が望まれていないのではないかと思い差し出がましいながらも進言いたしました。」

 

正体がばれるくらいなど、どうでもよい。

最後には鬼にするのだ。

だが、何故か即答出来なかった。

 

「ならば、こういうのはどうでしょうか!」

 

「童磨か下らないことなら分かるな?」

気味が悪い奴だ。あまりあてにはしたくないが…

 

「我らが見逃していた警察の介入ですが、事件として成立してしまったからでしょう。」

「本来鬼が起こした事件に対処し、情報規制するはずの鬼殺隊は我らの計画により黒死牟殿が消し続けています。」

「厄介なことにあの鬼殺隊の奴等は町の住人と交流していたのか知らないものがいないほど有名、町の住人は半分もう住人として扱っていたみたいですね!こちらとしては奴等が失踪したという噂がたてやすかったですが、警察が捜査を始めるほどの騒ぎになってしまったわけです!」

「警察が貴女様の大事な方をつれて行った理由は簡単で、犯人候補だからです!」

「つまり本当の犯人が姿を現せば、奴は用済みになり解放されるでしょう!」

 

つまりは、誤解でつれて行ったのだな?

計画が終わり次第この町を消すとしよう。

 

「…黒死牟よ、貴様は柱と思わしき人物を見つけたといっていたな?」

「その柱を殺せ。住人に目撃されるため目立つように出来るだけ、激しく戦闘しろ。」

 

「……御意」

 

「黒死牟殿!仮に目撃されなくても、俺の信者が見たことにするから安心して戦闘していいぜ。」

 

「無駄話は許可していない。さっさと取りかかるがいい。」

 

鳴女が黒死牟と童磨を飛ばす。

 

まったくもって忌々しい。鬼殺隊といい警察といい、人間ごときが私の邪魔をするとは許されないことだ。

 

「鳴女。私とアカザを奴の店に飛ばせ。」

 

気持ちが急ぐ。早く奴に会いたいそんな気持ちになった気がしたが、気のせいだ。私が会いたいのではなく奴が私に会いたいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅い!黒死牟柱は倒したか?「……予想以上に粘られましたが抜かりなく。……予定通り西に向かいます。」

童磨!警察は動いたか?「ええ!もちろん信者を使って誘き寄せました。間違いなく黒死牟殿を犯人と断定して動くでしょう!」

 

奴になんといってやろうか、まずは私の手を煩わせたことへの謝罪を貰わねばな。

そして私自らが足を運んでやるのだ、頭を垂れて感謝をしろ。

…どうやら来たようだな。駆け寄る。

 

『…あれ?…憐哀さん?もしかして噂を聞いて来てくれたんですか?』

『ありがとうございます。憐哀さんには心配をかけてしまいましたね…。すみません。』

 

心配だと?私がするわけないだろう!

私が聞きたいのは

「心配などしていない!貴様警察なんぞに連れていかれるとは、月見が行けなくなったらどうするつもりだ!?」

違うこれでは月見が行けなくて怒っているみたいだ。

「私との約束を破るつもりか!?」

そうだ私との約束が貴様の最優先事項だ。

 

『いえ、憐哀さんとの月見の約束を破るつもりは更々ありません。なんとかその日だけ交渉するつもりでした。』

『本当に楽しみで楽しみで…。』

『私が月見をするときは、いつもある場所に行くんです。誰も知らない私だけが知っている秘密の場所。』

『そこから見る月はとても綺麗で…。絶対憐哀さんに見せたいって思っていたんです。』

『だから、忘れるなんてことは絶対にありません。』

 

金色の瞳に見つめられる。見惚れてしまう。

「わ、私はお前と月見が出来ればそれでいい!」

違う。違う!違う!違う!

私が見惚れるのではない。私が見惚れるのはあり得ない。

私は完璧な存在だ。そんな完璧な私が劣る存在になど絶対にあり得ないのだ!

 

「ではな!期待はしておいてやろう!」

 

 




あの方が去った。いつも通りこいつを影から護衛しよう。
『アカザ殿!まってくれ!』

「…なんだ。用があるならさっさとしろ。」
こいつを見ていると頭のなかがサワサワするのだ

『アカザ殿も来てくれてありがとう!それと、いつも護衛してくれてるのにお礼も言えてなかったからお礼をいわせて…。アカザ殿ありがとう!アカザ殿が守ってくれてるお陰で安心して眠れる。』

「あの方の命令だからだ、感謝なら前にいったようにあの方にするんだな。」
そうだ。あの方の命令だからこんな弱い奴を守ってやっているんだ。だが…懐かしいようなそんな気がして何故だか悪くはなかった。

『もちろん、憐哀さんにも感謝はしてるよ!ただアカザ殿にも感謝してるってこと伝えたかった。』

「…変な奴だ」

『そうだ。聞きたいことがあって…。見ての通り憐哀さんを怒らせてしまってさ…。憐哀さんとは仲良くしたいし、挽回するにはどうしたらいいと思う?』

俺は護衛するために影に潜み気配を消した。


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無4

自分では見直しているつもりなんですけど、誤字脱字がなくなりません!
本当に誤字脱字報告ありがとうございますm(__)m
感想は全て読んでおります。とても励みになってまして、土日つかって全て返信するので今しばらくお待ち下さい。




無惨様を書ていると、勝手に皆殺しルート行くんですけどバグですかね?
私はハッピーエンド厨なんでハッピーエンドにしようと思っても、無惨様がバットエンドに全力疾走するんですけど。



「あの方が人間の男にご執心て、本当?」

 

零余子は自称「元上弦の鬼」の前にいた。

あの方に元上弦の陸(十二鬼月は解散された)の下に行って来いと言われて来たものの、目の前にいたのは見たことがない花魁。

無限城で見た元上弦の陸は男性だったはずなのに、彼女が私がその元上弦の陸と言うものだから訳が分からなかった。

まさかあの方のように女性になってしまったのだろうか?

 

「あ、あの。その前に元上弦の陸である妓夫太郎様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?あの方の命令でお聞きしなければならない事があるのです!」

 

「アタシが元上弦の陸だって言ってんの!あんた下弦でしょ?上弦のアタシの言う事は絶対よ!」

 

 

本当に女性になってしまった?

いやそれは無いとおもう。上弦独特の雰囲気がまるでない。

彼女ではないと思った。

そもそも、上弦も下弦もそういった枠組はもう存在しないのだ。

私だってあの方の命令で来ているし、あの方の命令は絶対。それは変わらない。

 

「も、もう一度いいますが、私はあの方の命令で来ています!妓夫太郎様にお会い出来ないと、あの方の命令が達成出来ません!」

「貴女が上弦を騙るのは自由ですが、あの方の邪魔をするつもりですか?」

 

「ち、違うわよ!それにやっぱりアタシが元上弦の陸って信じて無いわね!瞳の数字でわかるでしょ!?」

 

もう瞳には数字は存在しない。数字が残っているのは囮になった鬼だけだ。知らなかったのだろうか?

 

「す、数字はもう瞳から消えています!判別できません!さっさと妓夫太郎さまを出して下さい!」

 

「そ、そうなの…?」

「というか!さっさと出せって、やっぱりアタシの事馬鹿にしてるわね!アタシみたいな美しくて強い鬼は何をしても許されるの!あんたに痛いめをあわせてやるわ!」

 

「あの方の邪魔をするおつもりですか?」

 

「うっ……。わーん!!お兄ちゃぁぁん!!こいつ生意気!!アタシのほうが強いし美しいし!アタシ上弦の陸だもん!教えてやってよ!」

 

お兄ちゃん?

 

「うぅううん」

 

「こいつっ!アタシの事を馬鹿にしたの!一生懸命説明したの!凄く頑張っていたのよ!それなのに上弦の陸って信じてないの!何とかしてよお兄ちゃぁぁん!!」

 

「そうだなあ。そうだなあ。俺の可愛い妹がたりねぇ頭で一生懸命やっているのを馬鹿にするような奴は皆殺しだあ」

 

(まずい!)

 

「お待ち下さい!私は零余子と申します。元下弦の肆で今はあの方の付き人をしております!彼女をいじめるつもりはなかったんです!私はあの方の命令で妓夫太郎様に会いに来ました!」

 

「あの方の命令なあ。梅と俺の部下を使って最近の流行を調べろってやつだったなあ。」

 

「はい。あの方は火急の用事でこれなくなりましたので代わりに私が。」

 

「梅。調べたのかあ?」

 

「もちろん調べたわよ!でもアンタには教えないわ!アタシが代わりに直接伝えるわ!アタシがあの方に誉められたいもん!」

 

「残念だったなあ。梅がそうゆうなら俺もあの方に直接伝えさせてもらう。」

 

「そ、そんな…。」

 

これでは間違いなく、私はあの方に殺されてしまう!

どうすれば…。しかたがない…。

 

「あの方の気になっている男性。興味ありませんか?」

「取引いたしましょう。」

 

「しょうがないから乗ってあげる!アタシは従順な奴には優しいの!お茶でもだすわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわーん!!お兄ちゃぁぁん!あの方をとられたよお!?」

 

なんだか、可哀想になったのでしばらく慰めてから戻った。

 

 

 

 

 







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4

本日2話目


J月m日

月見当日。日記は月見に行く前につけておこう。

天気は晴れでいい月を眺められそうだ。曇りや雨などにならなくて本当に良かった。

集合時間はアカザ殿に伝えたので、憐哀さんが来てくれるのを待つばかりだ。

 

 

 

 

 

 

『少し寒くなってきたなぁ…。けど寒い夜は月がとても綺麗だ…。』

 

雲一つ無い。月は遮るものもなく光を放っていた。

太陽とはまた違った暖かさだった。

これ以上無い、いい日だ。

 

『忘れものはないよな…?お供えもののサツマイモや、お団子は持った。料理も重箱にいれて持った…。うーん、ちょっと料理は作りすぎたかも。昨日アカザ殿と二人で、張り切りすぎたかな?』

 

団子と重箱が風呂敷の半分をしめていた。

 

『……あとは…口紅。』

 

憐哀さんに贈り物。赤過ぎず、自然な色で色白な憐哀さんに似合うと思った。

 

『絶対に綺麗だよなぁ…。口の形とか凄い整ってるし…。だめだめ!煩悩退散!』

 

喜んで貰えるだろうか?

喜んでくれたらいいな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だ!

完璧な存在である私は常に余裕をもち優雅であらねばならない!

だというのに…何故こうも落ち着かないのだ!

それにこの服はなんだ!流行だからと着ては見たが、袴など男が着るような服ではないか!

頭の「りぼん」というやつも、簪よりは固くなくていいかもしれないが使いなれないものはやはり違和感がある。

ただこの「ぶーつ」とかいうのは、履き心地がいいかもしれないな。

 

「零余子!化粧は変なところはないか?」

 

「は、はい!とてもお美しいです!」

 

「当たり前だ。

奴も私の美しさに驚くことだろう!」

 

好みじゃなかったら?

肝心なのは奴にはどう見えているのか?ということ。

流行の服を着て、化粧でおめかししたとしても奴に…奴に良く思って貰わなければ意味がないのだ。

 

「違う!私こそが美の頂点である。好みは奴が私に合わせるのだ!」

 

何故私が奴に合わせなければならない。私こそが基準である。

女が男に合わせるなど、それではまるで…

 

 

 

 

「奴との集合時間です。店に行きましょう。」

 

あり得ない。私が望むのは奴が私に服従することだけだ。

そのはずなのだ…。

 

「アカザ。月見に行くのは私だけでいい。お前は店にいろ。」

 

「は!」

 

「鳴女。」

 

琵琶の音とともに地に足をつく。少し歩いたら、奴の店につく。

何かの血鬼術でも使われているのか?

胸が苦しい。私に血鬼術を使うとは無礼な鬼だ。

おかしい。鬼はいない。

奴の店に近づくごとにどんどん苦しくなる。

なんだこれは!?

 

『あ!憐哀さん!お待ちしておりました。』

 

心臓が爆発した。

変な声が出てしまったかもしれない。

 

『突然声をかけてすみません…。脅かせてしまいましたね。』

 

やはりこいつはこの私を愚弄するのが得意なようだ。

 

「驚いてなどいない!」

 

『ふふっ』

 

何が可笑しい?

 

「何が可笑しい?」

 

『ごめんなさい憐哀さんを笑ったんじゃなくて、憐哀さんが来てくれて嬉しくて思わず笑ってしまいました。物凄く楽しみだったんです!』

 

「何を当たり前のことを…私との約束だぞ?楽しみで無いはずがない。」

 

『そうですね!』

 

計画は順調のようだ。

 

『憐哀さん!』

 

「なんだ?」

 

何だ突然?一応聞いておいてやろう。

 

『今日の憐哀さんとっても可愛いです!頭のりぼんが似合っていますね。靴もブーツなんて凄く今時ですね。こんなに可愛いハイカラさん見たことがありません!』

 

可愛い?不敬だぞ

 

「…うれしい」

 

私は今なんといったのだ?

まて可笑しい!私が言うはずがない!

 

『寒くなってきましたし、そろそろ行きましょう?』

 

手が差し出される。

手を繋げというのか?

反射的に繋ぎそうになってしまった。

繋ぐはずがないだろう!

 

『行きましょう!』

 

「あ」

 

私の手を勝手に触るな!

引っ張るな!万死に値する!

 

 

 

 

嫌なはずなのに振りほどこうとは、思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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5

皆様には感謝しかありません。


平安の時代。お月見といえば祭事で、仲秋に行われるものだった。

あれから果てしない時を過ごしたが、ざっと1000年は過ぎただろうか?

冷たい空気が体を冷やす中で、二人夜道を歩いて行く。何故こんな寒い日にお月見をやるようになったのだ?と問う。

 

『何でなんでしょうね…?そうだ。きっと月が綺麗にみえるからですよ。憐哀さんも思いませんか?』

 

空を見上げてみる。月灯りが顔を照らす。心から綺麗だと思った。

そういえば、何故だろう?

さっきから、この身を蝕む焦燥感と怒りがない。

 

『着きました。ここです!私はここから見る月が大好きで…独り占めしたくて、誰にも教えた事がありません。でも憐哀さんには教えたいと思った。初めて人をつれてきました。憐哀さんも気に入ってくれるといいんですけど…。』

 

そこは湖で、手入れは行き届いていた。誰が手入れをしているのかは明白だ。

私は刹那的なものには全く興味がない。

人間のその一瞬の生で、この景色を残して何の意味がある?

その一瞬に何の意味があるのだ?

永遠であるならば、その一瞬は一瞬ではなくなる。

この景色も私が覚えている事で永遠になる。

間違いではないはずだ。

 

「……やっと着いたか!遅い。遠い。服も靴もが汚れてしまった!責任をとれ!……だが…そうだな…悪くない景色だ…」

 

二人なら?私だけじゃない。お前が私と永遠にこの景色を覚えていけたら?それはとても意味があることだ。

湖に写る月を見る。

 

『良かった…。…さっそく準備しますね!その間湖の周りの景色を見てみて下さい!見る場所によって色々変わるんですよ!』

 

一人で見ろと?不敬である。

 

「お前は私を一人にするつもりか?」

 

『それじゃあ…。一緒にお月さまのお供え物を、飾る準備をしませんか?』

 

私に一緒に雑用をしろだと?断る。と、いいたいが特別だ。気分がいい。少しだけならこの私が!手伝ってやろう。

 

「いいだろう…。特別に手伝ってやる。感謝するんだな!」

「…少し寒そうだな?…お前の側に行ってやる。」

 

『ありがとうございます。じゃあお団子を山にしましょう!』

 

月に御供えか…この世に神も仏もいない。

 

『このお団子アカザどのが作るの手伝ってくれたんです。手先が器用でびっくりしました!あまりにも手際がいいので料理も手伝ってもらっちゃいました。』

 

一緒に料理だと?こいつに近づくなど、何をしている!アカザ!アカザ!アカザァ!

 

『アカザ殿と仲良くなれたのも、憐哀さんが心配して私の護衛に寄越してくれたからですね。』

 

全くその通りだ!さすが分かっている。

 

…アカザァ…次はない!

 

『他にも色々憐哀さんには助けられてばかりだなぁ…。』

『…憐哀さん。』

 

何だ?飾りつけは終わったぞ。完璧な配置といえよう。

 

『ずっと渡そうと思ってました。でも渡す勇気がなくて…。』

 

贈り物か?いい心がけだ…。貰ってやろう。

 

『これ…憐哀さんに似合うと思って…。感謝の証です!女の人に贈り物ってしたことがないので、迷惑だったらすみません!良かったら受け取って下さい!』

 

こいつは私に口紅を渡す意味を、わかっているのか?

 

 

…いいんだな?返事などいらん。

証を刻み着けてやろう。

唇に唇を合わせてやった。

 

 

 

 



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6

誤字脱字報告ありがとうございます!
感想もありがとうございます!
めちゃめちゃ嬉しいです。


ところでキスの描写ってどこまでセーフ?
生々しい言葉は避けたけど、つたわるかな?(語録がたりない)


なんて幸福なのだろう。

 

意識が曖昧になっているようだ。

 

 

 

この感覚は、どこかで感じた事があったような気がする。

 

そういえば、初めて人を食べたときも意識が曖昧だった。

あのときは怒りが感情を占めていたが。

最初の一口。自分の口の中の、味覚という味覚を刺激された。

人は食べ物。それも極上な。私にとってはそれが当たり前。

 

 

 

それなのに、私は今何をしているのだろうか?

口付けをしている。誰と?

目を開ける。金色の瞳が、驚いたようにこちらをみている。

まるで月のようだ。目があった。魅いられる。

意識がさらに朦朧となる。

私の舌が奴の唇に触れた。

 

「吸え」

 

江戸の時代に…かつてみた本の内容を思い出していた。

恋のむつごと四十八手だったか…?

集めていた資料の中に紛れていた本で、当時は下らないと思っていたがなるほど。

 

役に立つとはな。

 

 

 

『れ、憐哀さん?』

 

何故躊躇している?私に求愛しただろう?

 

 

『こ、こういうのはまだちょっと早いんじゃ…。』

 

 

だめだ。私のものという証を刻みこむといった!

 

私の言うことは絶対だ!

 

…断るなど言うまい?

 

「私とするのは嫌なのか!?口付けをせがんだのはお前だ!」

「無理やりにでもやってもらう」 

 

『嫌じゃないです!あ、ちょっと憐哀さ、』

 

 

もう一度、口付けをする。

舌で唇をなぞる。

私を受け入れろ!

 

 

…奴の口がちょっと開いた。

それでいい。が、吸ってくれない。

じれったいので、私が直接入ってやろう。

 

『ん~~!』

 

強引にねじ込む。

目をみる。

今度こそ。

吸え。

 

 

「んっ」

 

何だこれは?

口付けを交わした時とは、比べ物にならない位の幸福と快感。

唇で舌を挟まれた。

今度は優しく擦るように奴の唇が動く。

きもちいい。

さらに、今度は舌が奴の舌と絡まって…

 

 

 

 

 

 

気をやってしまったのか…。

私が?失態だ。奴の膝に頭をおかれていた。無礼だ。

だがやはり怒りがわかない。

奴といると怒りや焦燥感がなくなる。

 

 

……もう分かっているのだ。

この気持ちを。

 

 

 

だがまだ言えない。

奴は私が鬼だと知らない。

もし、知ってしまったら?

もし、拒絶されてしまったら?

 

自分でもどうなるのかわからない。

 

奴を依存させる計画も、絶対奴に拒絶されないようにするためだった。

 

それに、悔しいのだ!

私だけが好きだなんて!

奴にも好きになって欲しい…。

奴の口から好きだと言って欲しい。

 

 

私は狂ってしまったようだ。

 

 

 

『憐哀さん?起きましたか…?』

 

 

「…ああ。」

 

 

『良かった…。憐哀さん』

 

 

「何だ?」

 

『すみません!やり過ぎました!舌を絡めるなんてはしたない…。』

 

 

「また、お願いするといったら?」

 

『え?』

 

「なんだ?」

 

『い、いえなんでもないです。……やっぱりあります!』

 

まったく…一体どっちなんだ?はっきりしろ。きいてやる

 

 

『貴女が気をやってしまったとき思ってしまったんです…。目を瞑る貴女はおとぎ話のかぐや姫のように儚げで、もしこのまま目を開けなかったらどうしようって。月に連れていかれたらどうしようって…。』

『考えれば考えるほど、貴女と離れるのは嫌でした。』

『憐哀さん!初めて見たときから、ずっと貴女の事を思わない日はありませんでした。』 

『貴女の事をお慕い申しあげております。結婚を前提にお付き合いをお願いします!』

 

「私と…?」

 

もちろん了承するに決まっている!

だが、なんと答えればいい?

口が上手く回らない。

 

ならもう一度行動で示そう。

 

 

幸せとはこういうものなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの屋敷で

 

 

 

 

「よく来たね。私の可愛い子供たち。」

「鬼舞辻無惨の手掛かりをみつけたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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7

誤字脱字報告ありがとうございます。
感想ありがとう!
めっちゃ嬉しいです!




J月w日

 

月見の日から数日。あの日は、もう忘れられないだろう。

しかし困った。憐哀さんが……可愛いすぎる。

 

相変わらず夜しか会えないのだが、態度の変化がすごい。

まず今までは身体的接触などめったになかったのだが、よく私の手を握るようになった。

この前など肩に頭を乗せてきたり、膝枕が気に入ったのかねだってきた。嬉しい…。

 

店の手伝いや、料理を覚えたいとも言ってくれた。

これってそういうことだよな?

帰りには、その、毎回口付けを交わす…。

あの時は憐哀さんからだったが、私から…。

なんと幸せなのだろうか?

この幸せがずっと続きますように…。

 

 

 

 

 

M月t日

憐哀さんが一人でも料理が出来るようになった。

最初は包丁の持ち方すら分からなかったのに、今では野菜を切ったりお魚を焼いたりお煮付けなども美味しく作れるようになった。

自信満々で出してくる姿は本当に可愛い。

美味しいというと、ちょっと照れるのも可愛い。

 

 

 

 

1月a日

憐哀さんと年を越す。除夜の鐘の音を二人で聞く。

幸せだ。

いつも憐哀さんは、日の出前に帰ってしまう。

でも、今日はもう少し一緒にいたい…。

 

なので初日の出を見たり新年の初詣を誘ってみたが、実は憐哀さんは太陽の光に当たれない身体らしい。

 

夜しか会えなかったのも、家が厳しいからではなくて太陽に当たらないためだそうだ。

私と朝を向かえられないと、少し寂しそうに話してくれる。

 

そうだったのか…でも話してくれて嬉しかった。

なら…。

今日は泊まって行かないか?と提案した。

初日の出や初詣は行かなくてもいい。

今日一日ずっと一緒にいようといった。

日が入り込まないようにするし、しばらくお店は休みだ。

両親以外は誰も来ない。

そのうち両親に憐哀さんを、結婚を前提にお付き合いをしている女性と紹介しないと。今まで女性の影すらなかったのだ。驚いて、喜んでくれるだろう。

 

 

憐哀さんが一日居てくれることになった。こんなに長く一緒にいられたのは、初めて。

愛しい人と一緒に居れることはこんなに素晴らしいことなのだと、改めて実感した。

 

今年はいい年になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

1月s日

今日からお店を再開する。

常連さん達は朝早くから来てくれている。

外国から仕入れた、最新の洋服を今日解禁する。

新春初売りだ!

 

 

 

 

 

 

1月t日

常連さん達から町に変な輩が出入りしている、と聞いた。

去年失踪事件があったばかりだし、剣士はまだ捕まっていない。

またあんなことが起こらなければいいが…。

 

 

 

 

:月。日

今日は珍しいお客さんが来た。女性客は相変らず少ないが、その方は女性客でとても綺麗な方だった。

憐哀さんが一番綺麗だが、その方も負けない程には綺麗だった。

夫に贈り物をしたいらしい。

その日は厚手の着物をお買い上げになっていった。

 

 

 

 

:月w日

度々あの女性が来るようになった。実はその方(産屋敷さんというらしい)の夫は病気で永くなく、少しでも夫に尽くしたいといっていた。

でも、幸せだと言っていた。

 

とても共感して、私も太陽に当たれない方を恋人にしている。夜しか会えなくも幸せですといったら、

そうですね。と笑っていた。

 

 

 

 

>月m日

産屋敷さんと仲良くなって来たなぁと思う。だが産屋敷さんはこの町の人ではなくて、探している人物がいるらしくその手掛かりがあったのがこの町なので来ていたみたいだった。もう帰ってしまうらしい。

最後の挨拶に今日は来てくれたみたいだ。

 

ところで、と話しかけられる。

鬼舞辻無惨という男を知らないか?といわれた。

 

知っている。憐哀さんの兄だ。一度お店に来てくれたことがある。その縁で憐哀さんと出会い恋人になれたのだ。いわば恩人である。

 

どういった関係なのか聞いてみると、大変な恩をうけたらしい。

だが、なぜかその時私は寒気がした。

 

知らないと答えてしまった。

 

そうですか…と彼女は笑っていたが…

…怖かった。

 

 

 

 

@月2日

産屋敷さんの屋敷に招待された。

旦那さんが、産屋敷さんとこの町に滞在中仲良くしてくれたことを感謝しているので、恋人も一緒におもてなしさせてくれないかとの事だった。

 

ありがたいことだ。

だが、お断りさせていただいた。

やはり、何故か怖かったのだ。

 

 

 

 

@月5日

今日は憐哀さんとお祭りに行く。

毎日一緒にいるのに、出かけるのは久しぶりなような気がする。

今日は楽しんでこよう。

 

そういえば、産屋敷さんからて

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい!」

 

お客さんが来てしまった。日記はあとでまた書こう。

 

『はい!いらっしゃいませ!本日はどういったご用件でしょうか?』

 

二人連れの女性客とはかなり珍しいぞ…

しかし…また綺麗な女性達がきたなぁ。憐哀さん一番だけど。

 

「鬼舞辻無惨について知っていますよね?お館様のところまでご招待させていただきます。お断りにならないでくださいね?怪我は治せますけど、痛い目を見たくはないでしょう?」

 

 

彼女は笑顔だったが、その裏にある憎悪を隠そうとはしていなかった。

 

 

 

 

 



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8

誤字脱字報告ありがとうございます!
ついにサブタイトルまで間違ってしまいました…生き恥…。
感想ありがとうございます!
続けていられるのも皆様のおかげです!






今日も鳴女にお店の近くに飛ばしてもらい、すぐにに向かう。

今日はお祭りの約束がある。

浴衣も久々に着たと思う。

私の浴衣姿なのだ。泣いて喜ぶだろう。

 

その前に晩御飯の準備をしよう、早く祭りに行きたいが二人で準備すればすぐに終わる。

たしか今日の夜。お客さんが、鰆をお見上げに持って来ると聞いた。

今日は焼き魚で決定だろう。

晩御飯の準備が終わって、それから一緒にお祭りにいく。

 

 

花火が一番の楽しみだ

 

 

 

ほんの少しの時間で着いた。

 

…まさかこの私が料理をするようになったり、花火を見るのが楽しみだと思うとはな…。

 

 

 

店の前に立つ。

閉まっている。おかしい…。

奴は出かけるとはいってなかったはずだ!

鍵を開け中にはいる。

 

誰もいない。とても不快だ。

 

童磨に聞こう。奴の信者はこの町に点在して、情報収集及び操作にあたっている。

何か知っているはずだ。

童磨を呼ぶ。反応がない。

おかしい、童磨の頭の中がのぞけない。

奴は死んだのか?

いつ?何故気付かなかった?

おかしい…おかしいおかしい!

何かがおかしい!

 

 

店の中を探す。いない

 

台所。いない

 

部屋。いない!

 

ふと、机が目に入る。

いつも綺麗に整理されている机に、手紙が三通置かれている。

どれも送られてきた日付がちがう。一つは開封済みだった。

 

日付が書いて無いものも一つある。私宛だった。

奴を屋敷に招待したと書いてある。

 

意味がわからなかった。だが差出人を見て心が凍る。

次に来るのは憤怒。奴のお陰で奥底に消えていたはずの心が、ものすごい勢いで溶岩のように溢れていく。

歯に力をいれる。砕けた。気になどしない。何かに力を入れていないと、爆発しそうだった。

 

他の手紙をみる。

開封済みのものから。

なるほど、そういう事なのか。誘いに乗らなかったことで直接来たようだ。邪魔されないように昼間に!

 

未開封のもの。

私が奴に秘密にしてきた事が書いてあった。

粉々に破り捨てる。

 

いいだろう。産屋敷。

一体誰のモノに手を出したのか知りたいようだ!

教えてやろうではないか!

しつこいと呆れている内に、天災にあったと思って諦めておけば良いものを。

 

 

鳴女を呼ぶ。

明日までに鬼殺隊の全隊士の場所を調べておけ!

 

 

無限城で奴ら全てを、全鬼の力をもって皆殺しにしてやろう。

だが、産屋敷。お前は他の奴には殺させない。

私自らが殺してやろうではないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産屋敷邸

 

「よく来たね。私の可愛い剣士たち」

 

 

「お屋形様におかれましても御壮健で何よりです 益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

鬼殺隊。鬼を殺す先鋭の集まり。その中でも最強足る8人が私の目の前にいた。

 

「実弥ありがとう。ついに来たよ。兆しが、運命が大きく変わり始める時が来たね。この波紋は広がってゆくだろう。周囲を巻き込んで大きく揺らし、やがてはあの鬼の許へ届く。必ず奴はここに来るだろう。十二鬼月全てを連れて。この場所にたどり着く手掛かりも残してある。全ての戦力でこれを倒す。」

 

炎、水、岩、風、音、蛇、恋、花。

過去最強の柱たち。

そして、奴も予想できないであろう切り札もある。

切り札は三枚。

鬼舞辻無惨を私の代で終わらせるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産屋敷邸一室

 

気づいたら、知らない場所にいた。抵抗したが、女性に似合わぬ怪力で落とされてしまった。

ここは何処なのだろうか?

憐哀さんはここにいることを知らないだろう。

心配をかけてしまう。

早く戻らなければ。

 

足音がする。

誰か来たみたいだ。

 

「やあ、起きたみたいだね。」

 

『…無惨さん?』

 

いや違う。無惨さんには顔に痣はなかったはずだ。

 

「いいや、違うよ。はじめましてになるかな?私は産屋敷耀哉。私が君を招待したんだ。」

「鬼舞辻無惨について聞きたいことがあってね。」

 

『…知りません』

 

「それじゃあ、憐哀さんについて教えてもらえるかな?」

 

目の前の男性は優しそうな声をしていたが、違う。

私に対して、心に優しさなど秘めていない。

 

これは、嫌悪だ。

 

「鬼舞辻無惨の妹なんだよね?」

 

答えない。

 

「悪いけど、日記は読ませて貰ったよ。私は君に感謝をしなければいけない。」

 

勝手に日記を読むなと怒鳴ろうと思ったが、言葉が飲み込まれた。

 

目の前の彼が発していた、感情の波によって。

さっきまで私を嫌悪していたはずのソレは、また違う感情となって襲いかかってきた。

あまりにも強すぎるそれ、言葉で表すならば「喜び」だった。

 

 

 

呆然とするなか、彼はこういった。

 

 

 

鬼舞辻無惨をずっと追っていた。

彼は鬼である。

 

 

鬼とは人を食べる存在で、彼はその始祖。

罪の無い人々を食い殺し、悲劇を起こしつづける。

鬼は日光に当たると死ぬ。

そのため日中は活動しない。

奴の目的は日光を克服すること。

そのためならば犠牲は厭わない。

奴を殺せばすべての鬼が死ぬかもしれない。

私たちはその被害を防ぐため鬼を殺す組織である。

 

 

 

奴は姿を変えられる。

君は騙されている。

 

最初はそうおもっていた。

ずっとそうやって1000年以上人を騙してきた為、手掛かりを掴めなかった。

奴は卑怯もので臆病者だからと。

 

 

でも、違った。

やっと見つけた。

 

 

奴はいままで一度も、人と関わるとき無惨という名前を出さなかった。

君の日記を見たとき、目を疑ってしまったよ。

君は間違いなく、無惨の…君のいう憐哀さんの特別だ。

唯一君にだけ無惨の名前を出していたのだから。

と。

 

 

私の話が嘘か本当かはすぐにわかる。

と言って考える時間が必要だろうと部屋を出ていった。

 

 

 

 

産屋敷さんの言葉は信じられない。

憐哀さんを倒さなくては、罪の無い人々がずっと犠牲になる。

 

そんなの信じられない!

 

だって…憐哀さんは…私の恋人なのだ…。

 

どうすればいいのかわからない。

混乱する頭の中で一つ確かなことは、憐哀さんに無性に会いたいということだけだった。

 

 

 



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9

いつも誤字脱字報告ありがとうございます!
感想もとても嬉しいです。ありがとうございます!

今話から起承転結の結に入ります。



琵琶の音とともに降り立つ。

昨日あれほど溢れていた心は自身でも、奇妙なほどに静まっていた。

 

上を向き空を見上げる。

月は半分しか出ていない。

月を雲が隠している。

隠しているなら、晴らせばいい…。

 

前を向く

 

目の前の屋敷は門が開いていた。

誘っているらしい。なら、乗ってやろう。

このような屋敷など、上弦で襲撃させればすぐに攻略出来るだろう。

だが…ここには奴がいる。

万が一奴に危害が加わると考えたら、そんなことは出来ない。

 

 

まずは奴を見つけてからだ。

見つけさえすれば、鳴女の血鬼術で取り戻せばいい。

そのあとなど、どうとでもなる。

この私を呼び寄せるなど余程自信があるようだが、鬼殺隊の策など握りつぶす!

 

 

歌?子供でもいるのか?

まさか門まで開けておいて、今日私が来ると思っていないのか?愚かな奴らだ。

 

 

屋敷を探す。探す。探す。

いない。

 

 

ある一室で気配を感じる。

7つの心臓が脈打つ。

血液の流れが速くなる。

流れが速くなりすぎて、決壊しそうだ。

これほど迄に脈打つのは、月見以来だ。

期待して扉をあける。

 

 

 

「初めましてになるかな?鬼舞辻無惨。」

 

「誰だ貴様は!」

 

殺そう。腕をしならせる。

 

「君の探している人なら、私が知っているよ。」

 

何?

目前で機動を変える。

 

「鬼舞辻無惨。話に付き合って貰うよ。そうしたら彼の居場所を教えてあげよう。」

 

気持ちの悪い奴め!

私に何の用事があるというのだ!

貴様に出来ることは奴の居場所を吐くことだけ!

力ずくで答えさせることも出来るのだぞ!

だが…やはり万が一の事を考えると動けない。

話し位は聞いてやろう。

 

 

「…いいだろう。」

 

「良かった。先ずは何から話そうか…。そうだね、私と君は顔が似ていると思わないかい?」

「私と君は同じ血筋なんだよ。君が生まれたのは千年以上も前のことだろうから、私の血と君の血はもう近くないだろうけど…」

 

 

私とこいつが?

 

「私にはそんな醜い痣はない!一緒にするな。」

 

「酷いことをいうね?この痣は君のせいなんだよ?

君が鬼になったせいで呪われたのさ。お陰で私たち一族は三十と生きられない。」

 

 

呪いなどない。この世に神も仏もいやしない。

もしいるなら天罰が下っていただろう。だが1000年間私には天罰など、起きてはいない。

 

「無惨。君が死ねば全て鬼が消える。そうだね?」

 

そうだ。だがそんなことよりも。

いい加減無駄話しばかりするな!

 

「貴様奴の隠し場所に随分と自信があるようだな?」

「しかしお前と違い私にはたっぷりと時間がある。」

 

こいつの相手などする必要がない。

無視して探せばいい。

 

「君の心が私にはわかるよ。当てようか。無惨」

 

何?

 

「君は彼との永遠の生活に夢を見ている。ずっと一緒にいることを望んでいる。」

「そうだろう?」

 

そうだ。私は奴がいればそれでいい。

 

「幸せを望むのは自由だよ。だけどね。無惨。君は今まで眠っている龍や虎の尾を何回踏んだ?」

「君が誰かの幸せを奪ったように、君が奪われる可能性を考えたかい?」

 

私が奪われるだと?

まさか!

 

「安心しなよ。無惨。君と違って暴行や殺しなんてしないよ。…そうだね中庭でも見にいかないかい?」

 

 

産屋敷ィ!この私を虚仮にするとは!

向かわないという選択肢は、無い。

……怒りはあるが、こいつの言うことに嘘がないならば奴は無事だ。

もし…もし…万が一があるとしたなら

自分でもどうなるのか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

中庭に着いた。

花の香りが強い。

奴の姿を見つける。

 

安堵感が襲う前に、血の匂いを感じた。

まさか!

 

急いで向かう。

気を失っているようだ。

だが、外傷はないようなので安心した。

すぐさま鳴女の血鬼術で無限城へ飛ばす。

奴を取り戻した!

愚かだな!産屋敷!鳴女の血鬼術は予想外であっただろう!

 

「愚かだな!産屋敷!私は奴を取り戻したぞ!貴様は失敗したのだ!」

 

「血鬼術の力かい?」

 

「そうだ!これで憂いはなくなった!貴様等はこれから地獄を見るだろう!」

 

「知っていたよ。」

 

「…何?負け惜しみか?醜いぞ」

 

もう何を言おうが遅いのだ。

 

「空間作用型の血鬼術。使うのは琵琶を持った鬼だ。」

 

何故知っている?

 

「何故知っているって考えているね?」

 

やはりこいつは気持ちが悪い、さっさと殺すべきだ。

 

「ところで無惨。さっきの彼は本物だったか確かめたかい?」

 

「何を…」

 

鬼が死んだ時に感じるあの感覚がある…

鳴女が死んだ…?

轟音。

少し遠くの方で無限城が浮上していた。

 

「何が起こったか、理解出来ないって顔だね。」

 

一体何をした!

 

「無惨。さっきの血の匂いはしなかったかい?」

 

した。奴の血の匂いだと思ったのだ…。

まさか…まさか…まさか!

 

「鬼舞辻無惨。大切なものが奪われる痛みが、少しはわかりましたか?」

 

珠世!

 

瞬時に殺すべく動く。

だが、体が凍る。

この血鬼術は…!

 

「もう一つ君の疑問に答えないとね。なぜ、琵琶鬼の血鬼術を知っていたか。教えてくれる鬼がいたからさ。」

「無惨。部下の管理は徹底しないといけないよ?」

「でないとこういうことになる。」

 

「童磨ァ!」

 

「無惨さまごめんね!救ってあげようと思って!」

 

名前を呼ばれた?

馬鹿め!呪いが発動…しない?

 

「呪いが発動しないか不思議だよね?珠世ちゃんが外してくれたよ。俺達友達だからさ!」

 

「黙れ!珠世様の名前をお前が呼ぶな!」

 

何時からだ?何時から裏切っていた?

 

「何時から裏切っていたか、知りたそうだね無惨様!2ヶ月位前かな?」

「無惨様の指示で信者を使って、情報操作していたでしょう?町の噂とか集まってくるからさぁ。町に変な輩が出入りしてるって調べて見たんだ。そしたら変な二人組が夜中に、献血を求めて来てるっていうじゃないか!」

「夜中限定の献血みたいだったし、間違いなく。鬼だと思ったんだ。」

「無惨さまが新しい鬼を配置したとは聞いていないから、無惨さまが行動を知らない鬼だとすると珠世ちゃんだと思ったんだよねえ。信者に献血する人を尾行させて見たら、案の定珠世ちゃんだったわけさ!」

「最初は攻撃されたけど今では、二人とも友達さ!」

 

「珠世様も俺も友達じゃない。気安く呼ぶな。」

 

わけが分からない。何故童磨が…。裏切って何になる?

 

「ちょうど、産屋敷さんとお話の最中だったからさぁ。盗み聞きしたんだよねぇ。無惨様が恋したんだって聞いたとき悲しくて涙がでたよ。かわいそうって!だからさ、俺が救済しようと思って珠世ちゃんに話しかけたんだ!」

 

許せない。だが童磨ごときどうとでもなる。

その内十二鬼月もここに来るだろう。

私の目の前に立ったことは失敗だったな!

 

「無惨様!さすがにお強い!もう拘束が解けそうだ!」

 

先ずは童磨貴様からだ!

 

しかし、直後脇腹に痛みを感じる。

こいつは童磨と話していた小僧。いつの間に…

何かを刺している。まぁいいすぐに治る。

 

私に触れるな。殺そう。

 

「ガッ!」

 

だか、凄まじい痛みが走る。なんだこれは!

 

「苦しいですか?それは鬼を人間に戻す薬です。私が作りました。」

 

「俺も協力したんだぜ。珠世ちゃんに呪いを外してもらうついでにさ!」

 

「完成するには時間が足りませんでした。が、体は思うように動かないでしょう?これから日の出までこのまま拘束させてもらいます。」

 

だがっ!そろそろ十二鬼月が無限城から向かって到着する頃だろう。

拘束など黒死牟がいれば問題ない!

 

「鬼舞辻無惨。十二鬼月がここに来ると思っているね?」

 

ああそうだ、産屋敷ここで貴様達は終わりだ!

 

「来ないよ。十二鬼月は到着しない。なぜなら鬼殺隊の柱と隊士達が命を賭して引き留めているからさ。鬼舞辻無惨。君はここで終わりだ。」

 

 

 

 




お屋形さまが童磨を受け入れるかどうかは、無惨さまを殺せるなら受け入れると思ってます。

ただ、一部の隊士以外には秘密にすると思ってます。


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10

誤字脱字報告ありがとうございます。
感想ありがとうございます。

戦闘描写初めて書いたけど難しいよ!


一瞬の出来事だった。

 

黒死牟が異変に気付き胴体を一刀両断するも、間に合わなかった。

 

居合一閃。鳴女の頚は切られていた。

何故鳴女は血鬼術でこの鬼殺隊士を隣に呼んだのか?

分からない、自殺行為だ。

 

この隊士の格好も問題だった。

これは奴の服だ。着ているのを見たことがある。

顔も似ているかもしれない。

 

産屋敷邸で何か起こっているのだ。

 

あのお方の手筈ならば、鬼殺隊が知らない鳴女の血鬼術で奴を奪い返す予定だった。

奴の服を着ているからといって、あの方が奴を間違えることは決して無い。

 

さっきのあの隊士の動きも妙だった。

柱ではないと思う。それに近い実力は有るだろうが、我らが遅れを取る程では無い。

迷いがなかった。それに尽きる。

初めから鳴女だけを殺す為だけに全力を注いでいた。

何故鳴女を?

 

嫌な予感がする。

遠い昔感じた事があるような、嫌な予感。

 

浮上した無限城から脱出する。

急いであの方の下へ向かわねば。

 

だが易々とは行かせてくれないらしい。

どこから現れたのか、鬼殺隊の奴等が襲いかかってくる。

普段なら物の数ではない。が、煩わしい。

 

それにこれは…。

 

「…柱か。」

 

黒死牟も脱出したらしい。一瞬で周りの隊士は切り払われていた。

残っているのは柱のみ。

 

「…アカザ…お前は先に…あのお方の下へ向かうのだ…」

「…柱は私が…引き受けよう…」

 

「礼はいわんぞ」

 

向かう。恐らく、柱はあの場には7人いる。

だが黒死牟なら大丈夫だ。

後に無限城から他の上弦も脱出するだろう。

すぐに柱を殲滅し、合流できるはずだ。

今優先すべきは、あの方の下へ向かうこと。

全力で足を走らせた。

 

 

 

 

 

 

屋敷が見えてくる。

もう少しであの方と合流出来るだろう。

 

「ここを通す訳にはいかないな!!」

 

闘気を感じる。体を反らし刃を回避する。

 

「ふむ!見事な回避だ!完全に不意をついたと思ったのだがな!」

 

「俺は急いでいる。邪魔をするな」

 

炎のような男だった。

柱であろう。

屋敷を守る最後の壁か。

 

「だめだ!君はここで俺が倒す!お館様は俺が守ろう!」

 

不快感。

 

「俺はお前とは初対面だが、俺はお前の事が嫌いだ」

 

     術式展開ー破壊殺・羅針

 

「俺も君の事が嫌いだ!」

 

     炎の呼吸 一ノ型 不知火

 

袈裟斬り。恐ろしく正確で素早い一撃。

炎の呼吸を使う柱を殺すのは初めてだ。

こいつは嫌いだが、このような状況でなければ鬼に誘っていたかもしれない。

 

     術式展開ー破壊殺・乱式

 

連続の拳打を放つ。

 

     炎の呼吸 伍ノ型 炎虎

 

競り負けただと?

腕が切り飛ばされる。

追撃してくるが甘い。

 

     脚式・冠先割

 

下段から蹴り上げる。

回避されたか…。

距離を取られる。

ならば。

 

     破壊殺・空式

 

虚空に拳を放ち、空気を飛ばす。

 

     炎の呼吸 肆ノ型 昇り炎天

 

これも防がれた。

が、予想通り。

瞬時に接近して乱打をしかける。

確かに強い。

だが、一撃でも当たれば終わりだ。

鬼に人は勝てない。

 

     脚式 流閃群光  

 

連続の横蹴り。

なんとか防いだようだがこれで終わりだろう。

なのに。

 

「何故立つ」

 

確かに強かった。

だが、お前では俺には勝てない。

鬼には勝てないのだ!

 

「俺は俺の責務を全うする!弱き人々の未来がかかっているのだ!ここから先には行かせない!!」

 

弱き者を守って何になる。

 

「そうか。なら死ね」

 

     破壊殺・砕式 万葉閃柳

 

 

     炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり

 

腕が切り落とされる。

瞬時に治るが、二度も競り負けるだと!

こいつ急に動きが!

違う、動きは変わらない。

俺が鈍くなっているのか?

 

「弱き人々を守ることこそが俺の使命!君は絶対に俺が倒す!!」

 

「弱き者など価値は無い!強くなければ何も、」

 

何も…何なのだ?

また、まただ。何か思い出せそうなのに思い出せない!

おまけに、こいつと話していると苛々する!

 

「死んでくれ鬼殺隊の柱。若く強いまま!」

 

     破壊殺・滅式

 

「断る!!」

 

     炎の呼吸 奥義 玖の型 煉獄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頚が飛んでいる。

負けたのか…。

 

…走馬灯だろうか?

この光景は奴と料理を作った時だ。

 

『アカザ殿手慣れていますね?もしかして料理の経験ありました?』

 

「あるわけないだろう。」

 

『でもアカザ殿は料理作っているときに、凄くいい顔してますよ!きっと誰かの為になることが好きなんですね!』

 

「好きではない」

 

『だって私の為に護衛してくれますし、料理も手伝ってくれます。』

 

「命令だからだ。」

 

『料理手伝ってくれるのは、命令じゃあないですよね?』

 

「…」

 

何故手伝ってしまったのだろうか?

 

そうだ。懐かしかったからだ。

俺はきっと誰かの為に、大切な何かをしたことがあったのだ。

 

(狛治さん)

 

声が聞こえる。

そうだ。この声も大切な…。

 

思い出せ、俺は

 

(私は狛治さんがいいんです。私と夫婦になってくれますか?)

 

恋雪。大切なもの。

守れなかった…守りたかったのに守れなかった!

 

誰よりも強くなって、一生守り続けるはずだった!

 

 

ごめん!ごめん!守れなくてごめん!

大事な時に側にいなくてごめん!

 

約束を何一つ守れなかった…!! 

許してくれ 俺を許してくれ 頼む 許してくれ…!!

 

(私たちのことを思い出してくれて良かった 

元の狛治さんに戻ってくれて良かった…)

(あなた…でもまだ此方には来ては行けないわ)

(守りたいのでしょう?私達は何時までもまっています)

(狛治さん。やりたいことをやって下さい)

 

…ありがとう。

二人を守るのだ。

俺達のように終わらせてはいけない。

 

 

 

 

 

 

起き上がる。

 

「頚が再生した…!」

 

「勝負はお前の勝ちだ。だが俺は行かなければならない!」

 

柱の体が透けて見える。

相手の動きが手に取れるように分かった。

 

「殺しはしない。寝ていて貰う」

 

首に一撃。

気絶させた。

 

「今度こそ、間に合ってみせる」

 

屋敷に向けて走り出した。

 

 

 



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11

誤字脱字報告ありがとうございます!
感想ありがとうございます!




体が冷たい。

体がダルい。

鬼になる前。病で寝たきりだった頃、その時に戻ったみたいだった。

 

 

顔色は悪く見えるだろう。

 

顔は青白くて、病弱に見えるだろう。

長く生きられないように見え、死にそうに見える。

 

 

違う違う違う違う

 

 

私は限りなく完璧に近い生物なのだ!

その筈なのに…奴一人にも会えない!!

十二鬼月も使えない!

此方に来るどころか、いつの間にか一人欠けている。

半天狗がすでにやられていた。

童磨の奴が血鬼術で複数の分身を、鬼殺隊の援護として送っているようだった。

忌々しい!童磨など鬼にしなければ良かった!

 

 

屈辱だ!

目の前の裏切り者や、産屋敷を殺してやりたい!

戦国時代の頃。

耳飾りの剣士に出会った時に、同じ屈辱を感じた。

あの時は撤退したが今回はそれは出来ないし、しようとは思わなかった。

奴に会いたい。

奴が一番大事だ。

 

 

私が一番嫌いなものは変化だ。

不変にして、永遠こそが至高。

だが、奴に会ってから変わってしまった。

自分の命よりも大事になってしまった!

奴との日々を奪われたくない!

一番嫌いなものだった筈なのに、この変化だけは嫌いじゃなかった。

 

 

このまま何も出来ないのは、あり得ない。

私を人間にする薬だと?

そんなもの分解すればいい。

一度膨張し拘束だけを剥がす。

体を肉の繭にする。

姿が醜くて嫌になる。

常に美しくありたい。奴に誉められていたい。

こんな姿でいたくない。が、奴に見られなければいい。

全力で薬を分解するのだ。

その上から氷が覆って拘束されるが、人間化薬さえなんとか出来ればいい。

 

それからまず、童磨を殺す。

童磨さえ殺せれば、奴の分身も消え上弦がすぐに鬼殺隊を全滅されるだろう。

 

 

 

「無惨。聞こえているでしょう?私の気持ちが少しはわかりましたか?大事なものが奪われる気持ちです」

 

珠世。お前とは違う。

お前は私が奪ったというが、お前が自分の手で殺したのだろう。

 

「とても私達が憎いでしょう?殺したいでしょう?」

 

ああ、憎い!私に屈辱を味わわせていること!

奴を巻き込んだこと!!

 

「私達も同じです。奪った貴女を許さない!」

 

お前達に何故許されなければいけない!

 

「無惨。彼には全てを話してある。彼は君を受け入れると思うかい?」

 

やめろ産屋敷。

 

「君は怖かったんだ。彼に秘密にしていたのは、そういうことだろう?拒絶されたくなかった。」

 

その口をとじろ!

 

「君はずっと大事なものを奪ってきたと言ったろう?それがこの結果さ」

「彼との永遠なんてこない。私達が君からそれを奪う」

 

やめろ!

私から奪うなど絶対に許さない!

薬がまだまだ分解出来ない!

 

「無惨様なんと憐れなんだろう!彼に会いたいんだね?」

「でも今の無惨様は醜いからねえ。まるで肉の繭だ。彼も見たら、化け物だってそう思うかも!」

「きっと無惨様は拒絶される。可愛そうな無惨様。俺が絶対に救ってみせる!」

 

今の姿だけは、見られたくない。

常に奴の好みでいたい。

今日も綺麗ですねと誉められたい。

一緒に料理をしたり、食べさせたい。

また月見に行ったり、行けなかった花火を見たい。

永遠が許されないなら、死が二人を別つまででいい。一緒にいたい!

奴に拒絶されたら私は耐えられない。

だから

 

 

 

『一体何の用でしょうか?急に中庭に来いなどと。あまねさん。申し訳ないのですが旦那さんから聞いた話は、信じられないのです。憐哀さんが鬼だなんて。信憑性がありません。なので早く帰してくれませんか?』

 

まさかまさかまさか

奴が屋敷の奥からやって来る。

 

『これは…一体?いや、まさか、憐哀さん?』

 

私を見るな!見ないでくれ

 

「急にすまないね。そう。あれば無惨だ。醜い肉の繭。君はずっと無惨に騙されてきた。人はあんな繭にならない。私が君に言ったことは、信じてもらえたかな?」

 

奴が此方に目を向ける。

 

『そんな……まさか。…でも分かる。憐哀さんだ。』

 

奴の目が悲しみに染まる。

やめろ!そんな目をしないでくれ!

 

『憐哀さん…!』

 

奴が駆け寄ってくる。来ないでくれ…!きっと拒絶するのだろう?

あぁ…ついに目の前に来てしまった。

あれほど会いたかったのに、今だけは会いたくなかった…!

 

『憐哀さん……全部聞きました。まさか真実だったなんて…。貴女が人ではないこと。人を食べること。その始祖で、そんな存在を増やしていることも。産屋敷さんは私を貴女が騙していると言いました。』

 

奴の手が氷の上から繭に触れる。

冷たい筈なのに、そこだけ温かい。

 

『何故言ってくれなかったのですか!私は貴女が人でなかろうと、別にいい!人を食べることも一緒に業を背負います!人だってもう貴女に殺させない!やりようはある!もうこれ以上貴女に業を背負わせない!』

『私は貴女を愛しています。憐哀さん』

 

あ、あぁ…

私もだ!

私も愛している!

 

「残念だけど、無惨に生きることを許すことはできない。」

 

産屋敷。邪魔をするな奴と話しているのだ。

 

『私は…どんな結果になろうと憐哀さんと一緒にいます。』

 

私とお前はずっと一緒だ。

お前は私のものだ。

 

「君は…申し訳ないね。」

 

『謝らないで下さい。貴方が嫌いです。私は貴方を許さない』

 

 

 

 

 

「えらい!頑張ったね!俺は感動したよ!」

「こんな弱い人間がここまで言うなんて!」

「鬼にとっての人なんて所詮食料だ。愛なんて勘違いを持つなんて奇跡だ!」

「全部全部無駄だというのにやり抜く愚かさ」

「これが人間の儚さ人間の素晴らしさなんだよ! 

君は俺が救済するべき人だ!言い残すことはあるかい?」

 

待て、童磨何をするつもりだ!

やめろ!

 

扇子が振り下ろされる。

奴に当たる寸前で童磨が何かに、殴られたように吹き飛ぶ。

 

「アカザ殿!俺達親友じゃないか!突然殴るなんて!」

 

「俺はいつも思っていた。お前はいつか殺すと。」

 

 



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12

誤字脱字報告ありがとうございます!
感想ありがとうございます!

難産!


『アカザ殿!』

 

「無事か?」

 

ギリギリだった。

だが間に合った。

 

『ありがとうございます!助かりました。』

 

ありがとう、か。

今度こそ守る。

今度こそやり遂げる。

そして恋雪と師範に、胸をはって言うのだ。

長い間生き恥を晒してきたが、その意味はあったのだと。

二人を忘れてしまっていた、俺の最後の贖罪だ。

…童磨に近づいていく。

 

「ここから先には絶対に手出しはさせない。お前にはやるべき事があるだろう?」

 

『アカザ殿には助けてもらってばかりですね。アカザ殿は最高の友達です!きっとご無事で!』

 

友か…もう一つだけ二人に報告しよう。

唯一無二の友が出来ていたこと!

それにお前は助けてもらってばかりというが、それは違う。

俺が貰った物に比べれば、助けた内に入っていない。

 

それに、友とは助け合うものだ。

お前が俺に大切な二人を思いださせる切っ掛けをくれたように、今度は俺がお前の望みを達成する切っ掛けとなろう!

 

 

「童磨。お前は俺のことを一番の親友と言ったが、それは違う。俺はお前の事が嫌いだ。」

 

童磨と対峙する。

 

「アカザ殿!照れているのかい?俺は悲しいよ」

 

もういい

 

「もう嘘ばかりつかなくてもいい。お前は何も感じていない。違うな感じられないんだ」

「今の俺は心臓が鼓動する所や、血の巡りまで全てが見える。お前は悲しいと言うが、一切なにも変化していない。お前は空っぽだ。空っぽの心を嘘で固めている。お前は空虚だな?」

「お前は一体何のために生まれて来たんだ?」

 

雰囲気が変わる。

不快感はあるらしい。

 

「そんな酷いこと言うのは、アカザ殿が初めてだよ」

 

童磨が動く。

右側からの扇子の斬撃。

速いな。

前なら受けていたかもしれない。

 

      破壊殺__滅式

 

何が起きたか分かっていないようだな?

お前は一体幾つの分身を作っている?

それにあの方を覆う氷を、維持するのは大変だろう?

今の俺はお前より強い。

 

だが、鬼と鬼では決着はつかない。

今この場でこいつを殺す事が出来るのは、あの方だけだ。

 

ならこうすればいい。

俺はお前を一方的に殴り続ける。

お前に出来るのは再生だけだ。

 

いくぞ。

 

      終式__青銀乱残光

 

 

 

 

 

 

 

 

アカザが童磨を殴りながら離れていく。

お手柄だアカザ。

生きた心地がしなかった。

童磨の扇子はあと少しで首に届いていた。

もう奪われたくない。

 

『憐哀さん…今とても怖かったです』

 

そうだろう。死ぬのは怖い。嫌だ。

怪我はないか?

怪我なんぞで死ぬのは許さない。

 

『死ぬかもしれなかった…でもそれ以上に憐哀さんと会えなくなるのはもっと怖かった!』

 

私もだ…。

私も自分の命よりもお前が大事だ。

同じ気持ちなのだ!

 

「貴方はいままで無惨がしてきたことを知っても…人ではなく人を食べる鬼だとしても受け入れるんですか?」

「この鬼を愛しているんですか?」

 

珠世!

何をするつもりだ!

こいつに近づくな!

 

『もちろんです。この気持ちに嘘はありません』

 

「私が鬼になったとき、私は余命が幾ばくもなかった。よくも分からず無惨の提案に乗って鬼になってしまった私は息子と夫を喰い殺していた!」

「無惨は鬼になれば人を食べることなど、言ってはくれなかった!」

「そんなことが分かっていれば私は鬼になどなりたくなかった!私が病で死にたくないと言ったのは、我が子が大人になるのを見届けたかったから…!」

「無惨はそんな私を見て楽しんでいた!残虐な鬼なんですよ!」

 

『貴女は…いえ』

『貴女になんと答えればいいのでしょう…。私の言葉はきっと貴女を傷つけてしまう。でも嘘偽りなく貴女に答えます。それが貴女に対する誠意だと思ったので…』

『私は…憐哀さんがどんなに悪人だったとしても、どんなに化け物だったとしても、私にとっては憐哀さんと過ごした日々が全てです。貴女の事を聞いた後でもそれは変わりません!きっと人としては、おかしいのでしょう。ですがそれでも。私は憐哀さんを愛しています!』

 

珠世は自業自得なのだ。

まともに聞く必要はない!

薬の分解さえ間に合えば全てが収まるのだ!

珠世の戯れ言すらどうでもよくなる。

 

珠世がつめよってくる。

 

「どうして…どうして!!」

「お前のような最低な鬼が!」

「ずっとずっとずっと!奪っていたでしょう!?」

「私からも奪っていった!」

「私が愛する夫も!子供も!」

「それなのに!幸せを手にするなんて許せるはずがないでしょう…!」

 

今度は奴につめよっていく。

 

「貴方はとても残酷だ!」

「無惨からなら後腐れなく奪えたのに!」

「貴方から無惨を奪ったら、私は無惨と同類になる!

貴方さえいなければよかったのに!」

「…すみません。……童磨が薬の分解を妨害することが出来なくなった時点で貴方を力ずくで退かしてでも、無惨に人間化薬を追加で投薬しようと思ってました」

「ですがその必要は無さそうです。太陽が無惨を焼き殺す」

「やはり私は無惨を許せない。無惨と同類になろうとも、無惨には命で償って貰います。」

 

 

『憐哀さんはきっと諦めていません。私も諦めない』

『私は憐哀さんと運命を共にします。最後まで』

 

勿論だ。

 

 

 

 

 

先程までよりも明るくなってくる。

日の出までもうほんの僅かだろう。

薬がまだ分解できない。

死んだらもう二度と会えない

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

『憐哀さん繭の中に入れてくれませんか?』

 

繭の中に?

わかった。

私も顔がみたい。

死の恐怖が襲う。

童磨はもうこっちの事を伺う余裕などないらしい。

簡単に氷を砕き

奴を招きいれた。

 

 




無惨様反省するところが、想像できんかった…。


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13

誤字脱字報告ありがとうございます!
感想ありがとうございます!

次でラストです


氷が散乱する。目の前の肉の壁が私を向かい入れるように蠢いている。

きっと、この先で待っている選択はこれまでの人生の中で一番大きな選択になるだろうという確信があった。

深呼吸を一回。緊張しているのか、体が震える。

憐哀さんに会いに行く前に、服装が乱れていないか確認しよう。

だらしない格好で会いたくなかった。

いざ、向かおうとした時。庭先に、木蓮の花が咲いている。

何故か憐哀さんが思い浮かんだ。

どうしても一輪だけでも欲しい。

…失礼だろうけど、お願いしてみよう。

産屋敷さんは心よく頷いてくれた。ありがとう。何するのか分かっていたみたいで、小刀を貸してくれる。

小刀で枝の形を整える。これなら上出来だろう。

産屋敷さんに小刀を返し改めてお礼を言う。

憐哀さんを待たせてしまった。

少し急ごう。背中に少し太陽があたる。

 

 

肉の繭に入る。十歩ほど進むと憐哀さんがいた。声を掛ける前に憐哀さんの顔を見て、気が付いたら駆け寄っていた。

憐哀さんはとても怒り、そして酷く怯えている。二つの感情に飲み込まれていたから。

 

『憐哀さん!』

 

「あと少し時間があれば、こんな薬など分解し奴等を皆殺しに出来る!その後に奴等の屋敷で夜まで待てば私の勝ちだった!不滅の存在になる筈の私が死ぬなど許されない!私はお前と永遠を手に入れる筈だ!」

 

繭の外からは、何か焼けるような音がする。

憐哀さんが苦悶の表情を浮かべる。

助けたい!どうすればいい?

私はただ憐哀さんの心配をするしか出来ない無力感と、屈辱を感じていた。

出来る事はないか?今憐哀さんの為に出来る事は!

ふと、憐哀さんが手を握ってくれた。

私も握り返す。

 

「苦しい!体が焼けて塵になっていく!!必死で再生しているのに、再生が追い付かないのだ!」

「もっと私に触れてくれ!お前に触れているその部分だけが暖かい!苦しく無いのだ!」

 

抱き締める。私が抱き締めている部分だけで楽になるのなら、きっと助けになれるのだと思って。

両腕の中で収まっている、彼女が堪らなく愛おしい。

守りたいのに…

 

「…とても楽になった。お前は不思議な奴だな。私の心を変化させる唯一の存在だ」

 

繭の所々から、日差しが漏れてしまう。

 

『私は憐哀さんの唯一になれて光栄です。それに、貴女も私の特別です。貴女に一目惚れをした時からずっと…』

 

憐哀さんは、そうかとフッと笑った。

それはとても自然な笑顔でとても美しかった。

 

「これを私につけろ。」

 

憐哀さんは懐から、口紅を出した。

あの時の口紅だ。

 

憐哀さんの口に口紅を塗る。綺麗だ…涙が出る。

 

『憐哀さん。渡したい物があります。』

 

憐哀さんは少し不思議そうに、面白そうにしながら

「いいだろう受け取ってやる。」と言っていた。

 

木蓮の花を憐哀さんの髪に挿す。

 

『櫛の代わりです。勿論、貴女に渡す事の意味は知っています。そう言うつもりで渡しました。少し古くさい求婚の方法ですけど…受け取ってくれたなら嬉しいです』

 

突然の求婚だ。

憐哀さんは驚愕しているようだった。

 

「お前という奴は…どうしてくれる!太陽に焼かれて、とても痛くて苦しいのに!とても幸せなのだ!全てを共にしてくれると?そう思っていいのだな?」

 

勿論です…貴女は私の全てなのだから。

 

『私は共に同じ結末を迎えたい。貴女とならば何処に辿り着いたとしてもきっと大丈夫です。憐哀さん、私と結婚してくれませんか?苦しい時も…死ぬ時も、この世で背負った業でさえも全てを分かち合いましょう』

 

返事は口にくれた。

 

 

 

 

ほんの数秒なのかもしれないし、数分かもしれない。

気が付いたら唇を離し、見詰め合っている。

朝日が辺りを照らす。

繭は完全に塵に変わっていた。憐哀さんの体が焼け始めてしまった。震えていた。それは私の震えなのか、憐哀さんのものなのかは分からない。

お互いが恐怖を感じていた。

太陽から隠すように、より強く抱き締める。

 

「……お前は私と結末を共にすると言ったな?」

 

『はい。貴女はきっと地獄に堕ちてしまう。でも一人にはさせない。貴女が地獄に堕ちるのならば、私も地獄に堕ちます』

 

憐哀さんが私の頬に触れている。

そんな事をすれば太陽にあたってしまう!

憐哀さんの手が塵になっていく、それは頬に掠めて風に舞う。

 

「地獄なんて信じてはいない。だが、お前とまた会えるのならば地獄がある事を許してやる。待っているぞ」

 

体の大半が塵に変わってしまった…。

もっと早く出会えていたならばよかったのに…きっと幸せに暮らせていた筈だから。

 

「愛している。永遠に」

 

『私も愛しています!永遠に…!』

 

塵に変わる。腕の中に確かにあった温もりが無くなる。

空を切った腕は、憐哀さんが死んでしまった事を証明していた。

最後に残った服を抱き締める。

何も出来なかった事が悔しくて、憐哀さんが死んでしまったのが悲しくて涙が止まらなかった。

 

 



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Fin

鬼無辻無惨がこの世を去った。恐れていた太陽の克服は、最後の切り札たる彼が、無惨の未練を絶ちきることで発生しなかった。

全てが思い通りに進み、完全勝利と言っていいだろう。

庭先にある木蓮の花を見て思う。

私がしたことは、無惨のしていた事と変わりがない。

しかし後悔は無かった。私の代で全てを終わらせたのだから…。鬼の被害は無くなり、理不尽な悲劇は少なくなるはずだ。

ふと、視線を感じる。彼が此方を見ていた。一つ会釈をし去っていく。…そうか。

彼は無惨の後を追うのだろう。私には止める資格はない。

せめてもの敬意を込めて彼が見えなくなるまで…居なくなくなっても頭を下げていた。

 

 

 

 

 

 

鬼無辻無惨が死んだのに、私は心が晴れなかった。だってずるいではないですか!

愛するものに看取られて逝くなんて!私にはもういないのに…。

…無惨がこの世を去ったことで、全ての鬼は消えるだろう。

私も例外にしてはいけない。今は私だけが唯一鬼を作れる。私も悲劇を産み出せる存在である以上、生きていてはいけないのだから…。

太陽に向かって歩いていく、一人で死ぬのは惨めだ…。

そっと手を握られる。兪史朗…。私の唯一の従者。

そうですね。私は一人ではありませんでした。

兪史朗と共に太陽を浴びる。まぶしい…太陽とはこうも光溢れるものだったのか…。体が焼けて落ちていく中、夫と我が子の声が聞こえた。

ずっと…。ずっとそばにいてくれたんですね…?

 

 

 

 

 

 

殴る殴る殴る殴る。一瞬たりともこいつの好きには動かせない。

本当に気持ちが悪い奴だ。殴られているのにずっと、笑顔だった。

太陽が昇っていく。関係ない。太陽に焼かれようがこいつを野放しにはしない。あの方とあいつの下にはいかせない!

童磨が再生を止めた。太陽に焼かれて、諦めたか?構わない。殴り続けようとして、違和感を覚えた。

そして始まる体の崩壊。まさか…!

童磨を吹き飛ばし、あの方の下へ向かう。

ギリギリだった。もう少しで太陽が俺を殺す。だがまだ死ねないのだ…。俺はまた守りきれなかったのか…?

なんとかたどり着く。あの方は…いない…!

守りきれなかった…!

倒れこみ目の前が真っ暗になる。誰かが起こしてくれた。

奴だ。

すまなかった!もう少し速くたどり着けていれば!

そう言おうと口を開く。

 

『アカザ殿ありがとうございます…!私は憐哀さんに全ての思いを伝えられました!貴方が守ってくれたお陰です!』

 

そうか…こいつはきちんと思いを伝えられたのか。

ならば、あの方は自分の死を受け入れたのだろう…。

あの方の望みはこいつと、最後の時まで一緒にいることだった。

あの方はきっと…死を後悔していない。

俺は守りきれたのか…?分からないが、そうだな…悔いはないと思った。

こいつは馬鹿な奴だ。きっとあの方を追ってしまうのだろう。こいつは弱い。地獄では護衛がいるはずだ、恋雪の次いでに守ってやる。

もう体はほとんど残っていない。

最後に一つだけ言っておこう。

 

「またな」

 

 

 

 

 

 

アカザ殿が憐哀さんと同じように、塵になってしまった。

残っているのは衣服だけ…。鬼とはなんと悲しい生き物なのだろう。

生きているのは、産屋敷さん、そのご家族と私だけ。

すぐに憐哀さんの下へ向かおう。でもここでは嫌だ。憐哀さんとアカザ殿の衣服だけでも埋葬したい…。それに私はこの場所にいたくない。とても辛くて耐えられないから。

産屋敷さんと目があう。憎い。でも恨んでどうなる?憐哀さんもアカザ殿ももういないのに。

会釈して去っていく。もう会うことはない。

 

 

 

ずっと歩いていく。自宅には向かわない。向かっているのは月見をした湖。私と憐哀さんしか知らない秘密の場所。

 

「すみません!落とし物をしましたよ!」

 

どうやら歩く事に夢中で落とした事に気がつかなかったようだ。

拾ってくれたのは額に痣がある男の子。

ずいぶん若い。背中の薪を見ると炭焼きだろうか?

 

『ありがとう…!これはとても大切なものなんだ。私の妻のものでね…何かお礼をしよう』

 

口紅を落としてしまっていたらしい…よりにもよって口紅とは。

この子は恩人だ。

 

「いえ!お礼なんてそんな!」

 

手をブンブンふって断られる。

 

『なら、その薪を全て買おう』

 

持っているお金を全て渡す。もう必要ない。

 

「ありがとうございます!じゃあ…」

 

薪を渡そうとしてくるのを止める。

 

『君はその薪をまた拾ったんだ。それは君のものだよ』

 

「それは!」

 

『いいんだ…。もう私には用がなくなるものだから』

 

もう少しで湖だ。そこで私は命を断つ。

 

「俺は鼻がいいんです。貴方からは悲しい匂いがします。きっと貴方は命を捨てるつもりだ!命は尊いものなんです!簡単に捨ててはいけない!」

 

この子はとても優しい子だ。そしてとても正しい。

真っ直ぐな眼だ。

 

『そうだね…君の言うことは正しいよ。でもね私は自分の命を捨てたとしても、自己満足であったとしても。彼女に会えるかもしれないなら命を捨てるよ』

『どうしても、彼女に会いたいんだ…』

 

「間違ってます!彼女も喜ばない筈です!」

 

『君は本当にいい子だね…。いつか…いつかきっと君にも自分よりも大切な誰かが出来る。君は絶対にその人と、死ぬまで幸せになるんだ』

『私には出来なかった…。この気持ちはとても辛いから、君みたいな優しい子にはそうなって欲しくない』

 

君は幸せになるんだよ、と言ってその場を去った。

あの子は見ず知らずの私に、本気で心配してくれていた。

あの優しさに触れていると、泣き出してしまいそうだったから…。

 

 

 

 

 

 

 

湖に着いた。満月。あの日と同じ。

違うのは憐哀さんがいないこと…。

空を見上げる、月が綺麗だ。

憐哀さんのお墓とアカザ殿のお墓を作る。

アカザ殿もこの場所を知ってしまったな…きっと憐哀さんに怒られる。

 

少し前に戻りたい…。きっと幸せだから。

お墓を作り終える。

憐哀さんのお墓と、アカザ殿のお墓の間に寝転び月を見上げる。

手を伸ばすけど月には届かない。月がとても遠くに離れているのを、見せつけられるようでとても悲しかった。

 

『憐哀さん…アカザ殿いまから、そちらに向かいます…』

 

木蓮を切った小刀。それを首に当てる。

自分で命を断った者は地獄に堕ちるという。

待っていてくれているはずだ。さっさと憐哀さんに会いにいこう。

ためらわずに刃を引く。

 

意識が薄れていく。憐哀さんとの思い出が次々と過ぎ去り…そして。

 

 

 

「遅い!私を待たせるのは許さない」

 

『憐哀さん!』

 

駆け寄る。

抱き締めてから口付けを交わす。

これからは離れない。地獄でどんなことがあろうとも、ずっと一緒だ。

 

 

 




完結です!
皆様ここまでお付き合い頂き誠にありがとうございました!
誤字脱字報告してくれた方々にはとても助けて貰いましたし、評価感想を頂いた時はモチベーションがとても上がりました!
完結続けられたのも皆様のお陰です!
本当にありがとうございました!



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