~もしも狛治が呼吸を使えたなら~ (あややや)
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~もしも狛治が呼吸を使えたなら~

ハッピーエンドを目指しました。


狛治(うーん…)

 

狛治(昨日、恋雪さんのために体にいいという薬草を山に採りに行ってから体の調子がいい気がするな…。前より体に空気が行き渡って動きが軽い感じがする)ヒュッヒュッ

 

狛治(あの山、空気がかなり薄くて呼吸しづらいとは思ったけど、もしかして関係あるのか?)

 

狛治(…もしかしたら今なら師範から一本とれるかもしれない)

 

☆☆☆☆☆

 

慶蔵「よーしそろそろ組み手やるか狛治!」

 

狛治「はいっ、…よろしくおねがいします」ッス

 

慶蔵「今日は調子良さそうだな。こりゃ一本とられるかもなぁ」ッス

 

狛治「そのつもりでいきますっ」ヒュッ

 

慶蔵「うぉっ!?」バシィ

 

狛治「…っ、…ふっ」ババッ

 

慶蔵「っつぅ、んのっ」ダダン

 

狛治「しぃっ」ダダン

 

慶蔵「まだまだっ…!?」

 

狛治「すぅーっ、ふぅっ」ヒュン

 

慶蔵(急に速くっ!?まずいっ!)

 

慶蔵「んぐぅっ!」ドンッ

 

狛治「師範!」

 

慶蔵「ははは、まともに入れられたのは、久しぶりだな。…っつぅ~、にしてもいいのもらっちまったなぁ」イテテ

 

狛治「す、すみません、加減できなくて」

 

慶蔵「謝ることじゃねぇ。お前が強くなってくれて嬉しいよ。これで素流も安泰ってもんだ」

 

狛治「あっ……ええと、はい」

 

慶蔵「…あの話をした夜にな、恋雪が来たんだ。泣いてた」

 

狛治「えっ、」

 

慶蔵「あいつはお前が考えてるよりずっと前からお前をのことを慕ってたんだぜ?母親のことで寂しい想いをさせていた恋雪を狛治はよく看ていてくれた。あの夜に恋雪は、゛いま幸せです。ありがとうございました。゛って泣きながら笑ってたんだ。お前がいてくれてよかった。ありがとう狛治。俺達といてくれてありがとう」ペコ

 

狛治「そ、そんなっ!俺の方こそ、師範と恋雪さんからいただいたものが、多すぎて…っ」

 

慶蔵「うん、強くなったな。狛治」

 

狛治「はい、お二人のおかげです…」

 

慶蔵「んー、」

 

慶蔵「まっ、一本取られたところでそろそろメシにするか!」ペカー

 

狛治「はい、お手伝いします!」

 

慶蔵「おう。あ、そうだ狛治」

 

狛治「なんですか?」

 

慶蔵「後でさっきのやつ、教えてくれよ」

 

狛治「はいっ!もちろんです!」

 

☆☆☆☆☆

 

~後日~

 

慶蔵「ほうほう、なるほど呼吸か」

 

狛治「はい。こう、全身に空気が行き渡るように神経を集中させるんです」スゥーッ

 

狛治「ふぅっ、はっ!」ヒュヒュン

 

慶蔵「おおっ、食らったらやばそうないい突きだな!」ペカー

 

狛治「とりあえずこんな感じです」フゥー

 

父「なかなか難しいな。なんとなく言ってることはわかるが」ウーン

 

狛治「一度コツを掴めばできるようになります。それに俺はできるようになってから一日中意識するようになったんですけど体の調子がずっといいんです」

 

慶蔵「そうなのか?」

 

狛治「はい。呼吸一つでここまで違うのかと驚いています」

 

慶蔵「…これ、恋雪にも教えてやってくれないか?」

 

狛治「恋雪さんにですか?」

 

慶蔵「ああ、病はすっかりよくなってきたが町の娘たちと比べるとまだまだ青白いだろう?狛治の呼吸方で体調がよくなるならもっと元気になれるんじゃないかと思ったんだ。別に娘を達人にしてくれって訳じゃないぞ?」ペカー

 

狛治「なるほどわかりました。後でお部屋に行ってみます」

 

慶蔵「うん。狛治」

 

狛治「はい?」

 

父「婚姻は済ませてあるから恋雪とナニしたって構わんからな?」ヒソヒソ

 

狛治「なっ!?えぇっ!そ、そんなことっっ!!」カオマッカ

 

☆☆☆☆☆

 

狛治「息を深く吸って細胞に染み込ませるような感じです」スゥー、ハァー

 

恋雪「すぅぅー……、はぁぁぁー………」コォォォ

 

恋雪「こう、ですか?」

 

狛治「えっ」

 

恋雪「えっ?」

 

狛治「あ、いや、そんな感じです。とても上手で驚きました」

 

恋雪「なんだ、よかった。わたし筋が悪くて呆れられたのかと思ってしまいました」ホッ

 

狛治「そんな、呆れるなんてことありえません。むしろ俺や師範より飲み込みが速くて、すごいですね」

 

恋雪「そうなんですか?あ、もしかしたら病でずっと伏せていたから深呼吸だけは得意なのかも…なんて」

 

狛治「そっか、なるほど…。そしたらすぐに元気になれますね」

 

恋雪「はい。続けてみますね。…わたし、父さんが狛治さんと一緒にお稽古しているのが羨ましかったんです」

 

狛治「師範が?」

 

恋雪「はい。布団の中でいつもお稽古の様子を想像していました。わたしがもっと強い体だったら一緒にできるのになって」

 

恋雪「お料理も、お洗濯もお買い物も、一緒にやってみたかったことがたくさんあります」

 

恋雪「だから、早く元気になります!」ムンッ

 

狛治「…はい。待ってます」ウンウン

 

恋雪「元気になったら、そしたら、今年の夏には狛治と一緒に花火が見たいです」

 

狛治「もちろん、俺も恋雪さんと…」

 

恋雪「狛治さん…」

 

狛治「恋雪、さん…」

 

慶蔵「メシできたぞーっ!!」ショウジバーン!

 

狛・恋「!!」ビクッ

 

慶蔵「あー、と……こりゃ失礼」アセアセ

 

狛・恋「……//」

 

☆☆☆☆☆

 

~数日後~

 

恋雪「はぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」ドゥッ

 

慶・狛「おわぁぁぁあああっっ!!!?」ドーン

 

恋雪「お、押忍っ」デーン

 

慶蔵「いきなり組み手をしてくれというから驚いたが、なんだこの強さは……うっ」アバライタイ

 

狛治「ま、まさか師範と二人がかりでも触れることさえできないだなんて……うっ」アバライタイ

 

恋雪「あっ!ご、ごめんなさい!すぐに手当てをっ」

 

慶蔵「いや、だいじょうぶだこれくらい。狛治は?」

 

狛治「鍛えてますから、でもこれは…」

 

慶蔵「ああ、いくらなんでも強すぎじゃないか恋雪?俺たちが何年修行してきたと…」ガクーン

 

恋雪「えと、昨日とても調子がよくて、庭の石畳を叩いてみたら割れたので組み手をしてみたいなぁって」テレリテレリ

 

慶蔵「呼吸ってすごいな」ボー

 

狛治「確かにこれほどとは思っても見ませんでした…」

 

狛治「でも俺だって恋雪さんみたいに上手く呼吸できるようになってみせます!」ムン!

 

慶蔵「よーし俺もだ!年寄りなりに精進するぜ!恋雪、今日から一緒に稽古するぞ!呼吸のコツとかあれば教えてくれ!」ムン!

 

狛治「俺からもお願いします!」

 

恋雪「は、はい!もちろんです!」

 

☆☆☆☆☆

 

~数日後~

 

狛治「それではいってきます」

 

慶蔵「おう。親父さんによろしくな」

 

狛治「はい。ありがとうございます」

 

恋雪「い、いってらっしゃい、あ、あな…」アタフタ

 

狛治「いってきます、恋雪」

 

恋雪「!はい、あなた」ニコ

 

慶蔵「……」ニヨニヨ

 

狛治「では、……あの、一つ気がかりなことが」

 

慶蔵「隣のことか?」

 

狛治「…はい。何か善からぬ気を感じます」

 

恋雪「そうですね。剣術場の方から、特に先日亡くなられた師範の跡取りさんから濃く漂ってきますね」

 

狛治「用心するに越したことはありません。くれぐれもお気を付けて」

 

慶蔵「おう。狛治も道中気を付けてな」

 

狛治「はい」

 

☆☆☆☆☆

 

~翌日~

 

恋雪「昨夜は何か井戸の周りに人の気配があって毒物を投げ入れられたような気がしたけど何だったのかな?あ、でももしかしたら犬か猫だったのかも、闘気があまりに小さかったし練り上げられてないし至高の領域に近くなかったし。きっとそうだね」

 

恋雪「はー、狛治さん今どこにいるんだろう。江戸ってどれくらいかかるのかな、早く帰ってくるといいなぁ。…顔洗ってお水飲もう」トテトテ

 

恋雪「あ、おはよう父さん」

 

慶蔵「おう、おはよう。ほら先に使いな」

 

恋雪「うん」イドミズクミ

 

恋雪「……?」センガンチュウ

 

慶蔵「ん?どうした恋雪」

 

恋雪「なんだかこの水…」クチフクミ

 

恋雪「!」ペッ

 

慶蔵「どうした恋雪!」

 

恋雪「父さんこの水毒入ってる!」

 

慶蔵「なんだと!」ペロ

 

恋雪「こんな毒くらいじゃなんともないけどもしかしてこれを入れたのって…」

 

慶蔵「剣術場のやつらか!」ペッ

 

恋雪「そんな!あの跡取りさんまだ根にもって…」

 

慶蔵「ちょっと隣行ってくる」ピキピキ

 

恋雪「父さんそんなの怖いよ!」

 

慶蔵「だが、犯人を捕まえないと…」

 

狛治「こいつらですよ」ドサドサ

 

犯人's「うぅっ…」

 

恋雪「狛治さん!」

 

慶蔵「狛治!」

 

狛治「ただいま戻りました。戻ってくる途中に挙動のおかしな者がいたので話しかけたら逃げようとするので問い詰めてみたところ道場の井戸に隣の息子に毒を入れさせられたとか…。お二人とも何ともありませんか?」

 

慶蔵「おぉ、俺たちはだいじょうぶだが、…やはり隣の仕業か。さすがに奉行所に届け出ないとまずいよな」

 

狛治「はい。もう届け出を出しました。罪人の俺の話をしまともに聴いてくれるとは思いませんでしたが、すぐに動いていただけるらしく、ほら捕り物が始まりました」ワーワーゴヨウダゴヨウダ

 

犯人's「お、俺たちはあの倅に脅されて無理矢理……た、頼む!許してくれぇぇっ」ピエン

 

狛治「どうしますか師範。と、いっても奉行所には突きだしますが」ボキボキボキボキ

 

犯人's「ひぃっ」

 

慶蔵「うーんそうだなぁ。まぁ、俺たちは何ともないしお縄についてもらえればそれでいいんじゃないか?なぁ恋雪」

 

恋雪「はい。わたしもそれで…」

 

狛治「よかったな、お二人が優しい人で。ただ…」ドゥッ

 

犯人's「ひぇっ!?」

 

狛治「金輪際うちに近づくんじゃないぞ!他の道場の連中にもそう伝えろ!俺はお二人の用に優しくはないからな!わかったらさっさと行け!」

 

犯人's「は、はぃぃぃーっっ!!!」スタタター

 

慶蔵「ふぅ、一件落着か」

 

恋雪「狛治さんっ」

 

狛治「恋雪さん」

 

恋雪「ありがとうございました」

 

狛治「いえ、俺はなにも。そんなに大したことは」

 

恋雪「わたしたちのために怒ってくれました」

 

狛治「そんなの当たり前です。二人は、その、家族なんですから」

 

恋雪「はい!家族です。それと狛治さんが優しくないなんてウソです。わたしは、狛治さんに優しくされて嬉しかったことをたくさん、たくさん覚えていますから」

 

狛治「恋雪さん…」

 

恋雪「狛治さん」

 

狛治「はい」

 

恋雪「おかえりなさい、あなた」

 

狛治「ただいま、恋雪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慶蔵「おーい俺事情聴取に出てくるけどー?」

 

慶蔵「……聞こえてねぇや」

 

慶蔵「まったく、明日にでも祝言挙げてやるかな?」ペカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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